運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-09-12 第71回国会 衆議院 建設委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十二日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 服部 安司君    理事 天野 光晴君 理事 田村 良平君    理事 村田敬次郎君 理事 渡辺 栄一君    理事 井上 普方君 理事 福岡 義登君    理事 浦井  洋君       稲村 利幸君    今井  勇君       江藤 隆美君    小沢 一郎君       小渕 恵三君    國場 幸昌君       澁谷 直藏君    浜田 幸一君       林  義郎君    廣瀬 正雄君       藤波 孝生君    村岡 兼造君       渡部 恒三君    清水 徳松君       中村  茂君    松浦 利尚君       森井 忠良君    山口 鶴男君       瀬崎 博義君    中島 武敏君       増本 一彦君    新井 彬之君       北側 義一君    渡辺 武三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 金丸  信君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         文化庁長官   安達 健二君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省河川局長 松村 賢吉君         建設省河川局次         長       川田 陽吉君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君  委員外出席者         農林大臣官房参         事官      京谷 昭夫君         農林省構造改善         局計画部技術課         長       長  高連君         林野庁指導部長 松形 祐堯君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      柴田 益男君         工業技術院技術         審議官     木下  亨君         参  考  人         (水資源開発公         団総裁)    柴田 達夫君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    川崎 精一君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 委員の異動 九月十二日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     江藤 隆美君   梶山 静六君     村岡 兼造君   澁谷 直藏君     今井  勇君   野中 英二君     稲村 利幸君   渡辺 惣蔵君     山口 鶴男君   瀬崎 博義君     増本 一彦君 同日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     野中 英二君   今井  勇君     澁谷 直藏君   江藤 隆美君     小渕 恵三君   村岡 兼造君     梶山 静六君   山口 鶴男君     渡辺 惣蔵君   増本 一彦君     瀬崎 博義君     ————————————— 九月十一日  建築設計監理業法制定に関する請願外二件(福  田篤泰君紹介)(第一〇二二八号)  同(谷垣專一君紹介)(第一〇三八六号)  屋外広告物法の一部を改正する法律案反対に関  する請願瀬崎博義紹介)(第一〇三四三  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  水源地域対策特別措置法案内閣提出第一一一  号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 服部安司

    服部委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  水源地域対策特別措置法案審査のため、本日、水資源開発公団から総裁柴田達夫君及び理事川崎精一君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 服部安司

    服部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 服部安司

    服部委員長 次に、内閣提出参議院送付水源地域対策特別措置法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺武三君。
  5. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 本法案審議に際して、しばらく休暇をいただいておりましたから前からの各委員方々質疑内容がよくわかっておりませんので、あるいは重複する点が出てまいるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。  そこで御質問を申し上げるわけですが、いわゆる生活向上に伴って水の需給がたいへんに逼迫をしてきた。そこで水資源確保、それには水源地対策が必要なんだ、そこでこのような法律が策定をされてまいったというふうに見るわけでございますが、ともすると水源地域というものが、その地域住民に対するメリットといいますか、これがたいへんに少なくあるいは無関係のまま、いわゆる被害だけが残される、こういうことでたいへん住民方々反対運動をなさる、こういう経過であろうかと思います。したがって、国民全体の生活水準向上に伴う水需要必要性から、やはり水源地域整備拡充ということはどうしてもはからざるを得ない。多くの方々のために、ある一部の方々のみが犠牲を負うということ、そのこと自身を何とか解決をしなければいかぬ、こういうことでございますから、そのためにいろいろな措置がなされておるわけでございますが、しかしこの法律の中では、特に「指定ダム」ということがきめられておりまして、政令でそれを定めることになっておるわけでございますけれども、その指定基準というものが一応つくられておるわけです。この指定基準というものがどういう考え方によって出されてまいったのか、特にその根拠等があればお聞かせを願いたい。
  6. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  本法の適用になります「指定ダム」の基準でございますが、第二条該当指定ダムにつきましては「相当数の住宅又は相当の面積の農地水没するダム」ということでございますが、基準の内規として考えておりますことは、戸数において三十戸以上の水没、それから農地におきましては三十ヘクタール以上の農地水没ということを考えております。戸数三十戸を取り上げました理由は、一九七〇年の農業センサスによりまして、農業集落の代表的な戸数というのは一単位としては何戸であるかということを調査したわけでございます。その結果大体三十戸から三十五戸という単位集落が一番パーセンテージとして多い、四十数%というものが大体農業集落の一単位としては三十戸ないし三十五戸というかたまりを示しておるわけでございます。そこでそういった三十戸程度戸数水没するような場合には何らかの水源地域に対する特別な対策を必要とするというふうに考えた次第でございます。それからまた農業の経営の一戸当たりの水田の平均値は大体一ヘクタール程度になっておるわけでございます。これも統計上出てまいりました。そこで三十ヘクタール以上の水没水源地域の特別な対策として取り上げるという考え方をとったわけでございます。  また、九条該当につきましては二百戸以上または二百ヘクタール以上の農地水没ということにしておるわけでございますが、その基準は、建設省の考えております地方生活圏構想におきまして一番基礎となる基礎集落圏単位が大体戸数にして二百戸程度のものになるわけでございます。二百戸ということになりますと、中に幼稚園とか保育所とか、そういったものも含まれまして、一つのある程度のまとまりを持った生活単位となる集落圏という考え方になります。そういったものが水没するということは地域社会にとって相当大きな影響があり、もろもろ対策事業を特に必要とする。事業規模も大きくなる。そこで何らかの特別な財政援助かさ上げということで必要とするのではないかと考えて対象とした次第でございます。
  7. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 たまたまその基準農業集落単位というものを一応とったのだ、こういう御説明でございますが、それだけでほんとうにその関係住民に対する利益が擁護できるであろうかという点に若干疑問を持たざるを得ないわけです。つまり、明確に戸数が三十戸以上ということが基準として設けられておりますから、たとえば二十五戸の水没農家が出てきたというような場合は、この指定ダムといいますか、その基準に達しないわけですから指定がされない、こういうことになろうかと思います。そういう場合にいわゆる指定ダム以外のダムということになるわけですが、そういう場合の関係住民に対するそういう利益というものはどのようにして守っていかれるおりもりか、あるいは何らかの行政指導がそこでなされるのかどうか、この辺をちょっと詳しく御説明を願いたい。
  8. 川田陽吉

    川田政府委員 三十戸という一つ基準を定めますと、いろいろボーダーラインに近い問題ももちろん出てくるわけでございますが、この水源地域対策として実施する事業各省の所管にわたっている事業でございます。非常に関係各省の数も多いわけでございます。そこで、そういった整備計画の立案及び実施を円滑にするために、関係各省連絡協議会次官会議申し合わせによりましてつくっている次第でございます。そこで私どもとしては、もしもこの法律指定基準から見て該当しない、しかしいろいろ公共事業等集約化等当該地先に対して何らか協力しなければならない事業があるといたしますと、そういう場を使いまして具体的に問題を解決していきたい、そのように考えております。
  9. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは再度確認いたしておきますが、基準というものは一応設定しておっても、たとえば二十五戸あるいは二十戸というような、現実にそういう該当家屋が出てきた場合に、基準面から見れば基準に達しないんだけれども、この指定ダムに準じたような方向生活基盤整備とかいろいろな公共事業をもってこれらの関係住民に対する今後の生活方策というものをやっていくのだ、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  10. 川田陽吉

    川田政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  11. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 水源地域指定だとかあるいは水源地域整備計画を決定する手続過程が書かれておりますが、いわゆる関係市町村長意見を聞くというようなことになっておりますけれども現実にそこに住む住民方々意見というものはどういうところで集約されることになるのでございましょうか。
  12. 川田陽吉

    川田政府委員 水源地域対策特別措置法を必要とする基本的な考え方は、ダム建設の際に土地を買収されあるいは家屋等も買収される方々が当然あるわけでございますが、そうした方々に対しましては損失補償基準要綱によりまして個人補償、及び地域全体に対しましては、水没する道路とかいろんな公共施設に対しましては代替施設等建設、すなわち公共補償が一応行なわれるわけでございます。が、それによって完全に解決し得ない地元に残るもろもろの不利益を補てんしなければならないというふうな考え方でこの法律を考えたわけでございます。したがいまして、そういった損失補てんの行為といたしましてその基礎になる個人補償及び公共補償相談をする際に、当然地先住民方々の御意見は拝聴しているわけでございます。また制度的には都道府県知事の発案をもちまして地元市町村長意見も聞くということで、両方の措置によりまして地元住民の方方の御意向というものも十分知り得るものと考えている次第でございます。
  13. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 市町村長意見を聞くということは、その該当区域の中に居住をしておられる住民方々意見を聞くということになるのだ、こう解釈するのだという御意見だと思いますが、私は、それでほんとうに万全であろうかというふうに考えますと、やはり若干問題があるのではなかろうか。地方議会等では相当住民方々意見というのが反映をされてくるわけですけれども、その地方公共機関の長の意見のみを徴するということがほんとうに公平な立場で該当住民意見がすべて集約されてくるであろうか、こういうところに疑問を持つわけでございます。というのは、御承知のように、もうすでに何カ所かで工事が始められあるいは始められようとする場合に、地方公共機関の長のほうは一応の賛成の意を表しても、現実生活をしていらっしゃる住民方々から反対運動が起こるという実例は私は間々あると思うのです。そういう意味で、地方公共団体の長のみの意見を徴するということで、はたして万全かどうかということについて疑問があるものですから、長だけの意見を徴すれば該当住民意見もその中に入っておるのだという解釈はやや間違っておるのではないだろうか、こう考えるわけですが、それを補完する意味で何らかの方向を考えられておるかどうか、重ねてお伺いをしておきたいと思います。
  14. 川田陽吉

    川田政府委員 地元方々の直接の御意見は、用地買収あるいは個人補償移転補償というような個々の折衝の場を通じて知り得る機会がございます。また現実の問題といたしまして、ダム建設される場合には、当該市町村あるいは市町村議会の中にダム対策協議会とかダム対策相談室とか生活再建相談室とか、そういうようなものが必ずできるわけでございます。非公式機関でございますが、そうしたところのものと十分御相談をしながらダム建設を進めていっている実情でございますので、単に市町村長さんの意見だけを聞くという体制ではない。現実的にそういう進め方をいたしておりますので、支障はないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  15. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは時間がございませんので、次の重要な事項についてのみ若干お伺いをしておきます。  この水資源、たいへん貴重でございまして、やはり水を利用するそのこと自身を非常にロスを少なく、つまり高度化をはかっていかなければならぬ、こう思うわけですが、従来ややもすると、水源施設そのもの建設する時点において設定されております、あるいは固まっておりました設置目的だとかあるいは運用方法だとか費用の負担割合というようなものが、この建設完了後において変更される、こういうことが間々あるようでございますが、そういう場合の統一的な運用ルールというものが実は確立がされていないのではないか。ケース・バイ・ケースで進められていって、トラブルの発生原因にさえなっているというふうにも感ぜられるわけでございます。そういう場合におけるやはり統一的な運用ルールというものを確立をする必要があるのではないか。さらには、この工事の時期等により、あるいは取水のいろいろな方法等によって、現実にその水の単価といいますか、これが非常に変わってくる、こういうことがあるわけでございまして、同じ日本国民として同じ水を利用するについても、片方は非常に安い水が利用でき、片方はたいへん高い水使用料を払わなければならぬ、こういう問題も実は起こっておるわけでございまして、私はこの水の単価原水単価というものをもう少しやはり見直してみる必要があるのではないであろうか。一番生活基礎となる水そのものが、同じお金を出しても相当な量的な違いが出てきてしまう、こういうことがあるわけですから、単にそのダム工事費等々で、そこだけで水の単価というものがきめられていいものかどうか。これについてもやはり再検討をしなければならないと思うわけですが、その辺についてはどのようにお考えになっておるのでございましょうか。
  16. 松村賢吉

    松村政府委員 お答え申し上げます。  ダム建設計画を立てるにあたりまして、その水の配分、これ等につきましては、多目的ダムでございますと基本計画というものをつくるわけでございます。その際に内容をきめるということになります。また水公団ダムでございますと、水資源開発基本計画あるいはそれに基づきます実施計画、こういうようなもので内容がきまっていく。そういうことで、その段階におきまして関係者皆さんが協議いたしましてきめるということでございます。最初の計画と水の配分等が変わってくることが間々あると言われましたが、これにつきましては、実はその計画のできる以前にいろいろと経緯がありまして変わる段階が実際問題として多いわけでございます。その計画がきまった以後内容が変わるという事態は比較的少ない、皆無とは言いませんが、そういう状態でございます。今後ともその配分をきめるに際しましては慎重を期しまして、後ほどの変更がないようにきめていきたいということでございます。  また原水単価が非常にアンバランスがあるということ、これは非常に大きな問題でございます。御承知のように、日本ダムサイトというものは比較的有利な地点というものは少ないわけです。そういたしますと、そのつくるダムによりまして原水単価というものはどうしても変わってくる。たとえば目的別農業用水とかあるいは水道用水工業用水、こういうものの原水単価バランスは、そのダムの中においてはとれているわけでございますけれども、これが他地域あるいは他のダムと比べると、ダムごとの精算をしておりますので、どうしても変わってくる。また現在やっているダムと将来のダムとはどうしても地点の有利さが違ってきますので、だんだん原水単価というものは高くなる傾向で、この間のバランス、これは何らかの形でとらざるを得ないということで、私どもとしては非常に問題にしておりまして、河川審議会特別委員会みたいなものを設けましていろいろ検討している次第でございますが、まだ結論には至っておりません。しかしこの問題は重要な問題でございまして、今後とも検討を進めまして、早急に何らかこの原水単価公平化——全部を一律にすることはできないと思いますけれども、この公平をはかる方向検討していきたいと考えております。
  17. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私はこの水資源確保ということはたいへん重要なことだと思います。したがいまして、そのために一部の人たちだけが犠牲を受けるという方向、これもやはり万難を排して避けていかなければならない。ためにこういう法律提出をされたと思うわけですが、この法律そのものでも、はたして万全を期せられるかどうかについてはいろいろな問題がまだ残されておると思いますので、論議をされました過程におけるいろいろな問題点については、できる限りそういうことのないように配慮をされまして、一日も早く、その生活基礎である水が夏になるとこないということのないような方策を強力に進めていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  18. 服部安司

  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 法案内容に入る前に、いろいろ水の問題、ダム等の問題について基本的なことを質問させていただきたいと思います。  まず第一点は、実は昭和四十六年の四月に「広域利水調査第一次報告書」というのを出しておられます。それから四十八年八月にさらに「広域利水調査第二次報告書」というのを出しておられるわけであります。この広域利水調査第一次報告書を修正した根拠は、実は田中総理日本列島改造論という冊子の一四五ページ以降にこれからの水資源問題等が書いてあるわけでありますが、どうも日本列島改造論という個人著書中心にして広域利水調査第二次報告書に修正された、内容を読みますとこういうふうに理解をせざるを得ないわけですけれども、これは私の推測なのか、あるいは建設省の科学的な根拠による修正なのか、その点をまず冒頭に明確にしておいていただきたいと思うのです。
  20. 松村賢吉

    松村政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十六年四月に「広域利水調査第一次報告書」というものを出しております。このときの内容といたしまして、これは広域利水調査中間報告であるという旨を断わっておると思います。  具体的に申しますと、第一次調査報告書、これは実は全国を全部網羅したものではございません。全国のうち約百八十二水系対象にいたしまして、これにおきます開発可能量というようなものを出しました。そういうことで一部の地域は漏れておるたとえば九州の南とか北海道とか、漏れておるところが相当あるわけでございます。今度の報告書におきましてはこれを三百三十水系に拡大いたしまして、ほぼ全国を網羅したということが一つでございます。  それから、前の一次報告書におきましては上流のダム開発地点、これを主体に調査を進めております。それで中流、下流、河口ぜきあるいは流況調整河川、こういうような、中下流において水を生み出す施設というものが比較的十分に調査されていなかった、こういうものも今度はさらに補完して開発構想を立てておるわけでございます。  それから水の需要関係でございますが、これにつきましては、昭和四十六年に出しました需要の想定よりも、今回の分が分散政策を加味して集中を排除している形にはなっております。こういう点におきましては列島改造論と多少の関係はないとは言えませんけれども、しかしこの改造論が出たからということではなくて、第一次報告書を発表して以来、この問題につきましては、われわれのほうとしてそれとは無関係調査をいたしまして出しましたものでございます。  まあ具体的に申しますと、今回の報告書におきましては、昨年十二月に出しました建設省の新国土建設長期構想、これで人口あるいは工業出荷額、これの分布をもとにいたしまして算出しておる。それで、これのもとになりますフレームの形といたしましては、人口が全体で一億二千万人余りを想定しておりますけれども、これの分布自体につきましては、集中をできるだけ排除するということで、各ブロック別シェアが現状とほぼ同じ、ということは、南関東地区等への人口集中をできるだけ排除するということで、全国シェアを変えないという形をとっております。また工業出荷額分布につきましては、工場の分散と一いうものを考えまして、これも集中の度合いをずっと減らしておるというふうな形をとって、今回の調査報告書をつくったわけでございます。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そのことは議論をするつもりはないのですが、文章上、表現上、非常に類似したことばが使われておる。ですから、日本列島改造論というのを読んだ人は、この第二次調査報告書を見ると、何か日本列島改造論という田中さん個人著書を読んでおるような感じもするわけです。そのことは否定できないと思う。そのことはこれからいろいろ議論する中で明らかにしていきたいと思うのですが、それでは第一点として、従来建設省河川局というのは治水中心としておったと理解しておるわけなんですけれども、この第一次から第二次調査報告書に進んでまいりますと、従来の治水という問題から利水中心河川行政にだんだん転換をしていきつつある、そういう気がしてならないわけです。これからの河川行政というのは、もちろん水供給の不足という問題から出てくる構想でしょうが、従来の治水という構想から利水中心とした河川行政に進むんだ、これを読んでいくと中に書かれてあることもそういう表現かあるわけですので、その点は私の判断に誤りがあるのかないのか。従来は治水中心だったけれども、これからは利水中心で、治水というものがあとからそれに付随していく。相当河川行政の違いだと思うのです。河川法その他の法律上の解釈ではなくて運用の問題です。そういう問題について明確にしていただきたいと思うのです。
  22. 松村賢吉

    松村政府委員 建設省河川に対する考え方の問題でございますが、河川事業というものにつきまして、当初の段階におきましてはなるほど治水が主になってきたわけでございます。建設省設置以前でございますが、戦前の話といたしましては、こうしても治水が主体にならざるを得ない状態できたわけでございます。ところが戦後、水の需要というものが非常に多くなってきまして、これに対する河川の利用のしかた、あるいはこれの管理の方法、こういうものが非常に重要になってきたことは事実でございます。建設省といたしまして、これは治水から利水に重点が変わったということではもちろんございません。治水治水として重要性がございまして、これの完ぺきを期すように、これに対する対策その他管理等をやってきているわけでございます。それに加えますのに、利水の重要性ということが戦後、特に昭和三十年以降、これが強くなってまいりまして、現在におきましては、治水利水は並行いたしまして重要な施策として考えておる次第でございます。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)委員 常識的にこれを読んでまいりますと、四十六年度の第一次は、大体全国一千百カ所のダムが必要だが当面緊急四百八十カ所、第二次調査報告書では一千百カ所の五百八十カ所と、百カ所六十年までにふえるわけですね。いま昭和四十八年ですが、昭和六十年に向かって十二年間、この第二次調査報告書がいうように約五百八十カ所のダム建設を実現していかなければならない。そのためには当然五百八十カ所についてのプランあるいは地質調査、こういったものに入っておらなければ、私はこれは絵にかいたもちになると思うのです。現実にこの報告をした段階で、五百八十カ所の地点、あるいはそれに伴う地質調査、こういったものが開始されておるのかどうか。そして、現実にこの予算規模が第一次調査で七兆円、百カ所ふえて、四十七年を試算にして八兆円必要だ、こう書いてあるのですね、建設資金だけとして。もちろん工事調整等の費用も含めて八兆円。ところが現実にこうした物価上昇の段階で、総額八兆円で五百八十カ所のダムというものがはたして建設できるかどうか。それに伴う今度の法律、いまわれわれが審議しておるこの法律による補償その他を含めると相当大きな規模の予算が必要だ、こういうふうになってくるのですね。だから、そういう計画現実的に五百八十カ所というものがもうすでにきまっておるのかどうか、きまったものについて優先順位をきめ、地質調査その他が始まっておるのかどうか、予算規模は八兆円のワクの中に入るのかどうか、その点について具体的にお答えいただきたいと思います。
  24. 松村賢吉

    松村政府委員 この五百八十カ所のダム昭和六十年までにつくるということでこの報告書はできておるわけでございますが、このための調査が進んでおるのかというお話でございます。この五百八十のダムにつきましては、広域利水調査、これにおきまして概査はやっております。航空写真をとるとか、必要なところはボーリング等をやりまして地質の調査を一部やっておるところもございますし、また弾性波探査と申しまして地質の探査、それから地質学者の現地の踏査、こういうようなことをやりまして、この五百八十カ所のダムにつきましては一つ一つダムにつきまして、これのいわゆる調査の概査、こういうものは進んでおります。もちろんこの五百八十の中で、すぐ着工するようなものにつきましてはさらにこれの調査段階が進んでおるところもあるし、あるいはもうすぐ着工になる分については概略調査はほぼ終わっておるというものもございます。こういう段階でございまして、これらについて全部が完全な調査が終わっておるというわけではございませんけれども、概査はこれは全部やっております。  それで、これに要する事業費が八兆円ということにつきましても、これは厳密な意味においてこれが変動しないかということになりますと、もちろんこれはいますぐ断言できません。物価等の変動の要素は考えておりません。現在時点における建設費をもとにしてはじいておるわけでございます。また、調査が概査でございますので、必ずこれでできるということではございませんが、現在の概略の費用といたしまして、八兆円あればこのダムができるということでございます。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そこで一つお尋ねをしておきたいのですが、この報告書によりますと、需要を見込んで、需要発生に先行して先行投資をするという構想になっておるのです。ですから、列島改造によって水需要が将来増大するであろうという計画中心にして、需要が発生する以前に先行投資をするというダム建設計画になっておるのです。従来のダム建設というのは、需要という見込みが明確に立ってからダム建設というものが行なわれておるのですよ。ところがこの五百八十カ所については、もう事前に先行投資をする、こういうふうに書かれておるんだから、現実にいうと、いまあなたが概査しておる五百八十カ所のダムにつきましては、そのダム利水計画農業用水工業用水生活水、こういったものについてすでに計画されておるということになれば、それぞれの工業出荷額あるいは人口の増大、こういったものが五百八十カ所のダム地点についてすでになされておるのかどうか。そういう経過があった上で五百八十カ所というものが先行投資されるのか。それともただ単なる推定によって、ただ単なる水需要が危機におちいるというそのことだけで、当面いずれにしても五百八十カ所だけ先行投資しておけ、こういう理解のしかたで進められておるのかどうか。私はその点はこれからの建設行政で非常に重要な意味を含んでおると思う。だから、そういう問題を前提にして五百八十カ所というものがあるのか、それともここに書いてあるように、需要発生前に、要するにそういうふうになるだろうということだけで、マスタープランなしでそういうものが進んでおるのかどうか、そのいずれなのかをひとつ明確にお答えいただきたいと思う。
  26. 松村賢吉

    松村政府委員 昭和六十年の需要を想定いたしましたのは、先ほど申し上げましたように新国土建設長期構想のフレームに基づいてはじいておる、こういうことでございます。これを達成するのに必要な開発をするためにダム計画いたしますというと、五百八十のダム昭和六十年までにできる見込みでございますということをいっておるわけでございまして、需要に対処するものとしてこれだけのダムが必要であるという言い方をもちろんしておるわけでございますが、しかしこの一つ一つダムにつきまして、これがどこの需要に張りつくかというような配分まではもちろんいっておりません。もちろんすぐかかる一部のダムについては、これはそういう配分ができておるものもありますが、全部が全部そこまでいっているわけではなくて、ダム建設するということはこれだけの水が生み出せるということで、これをこう配分すればこうなるという計画ができておる段階でございます。  それから、先ほど先行投資の話がございましたけれども、われわれが普通使っております先行投資の考え方、これは単にばく然と需要が発生するからこれに対して先行投資をするということではなくて、需要が発生することが確定するような段階になりまして、ただしどこの事業主体がこの水を直接受けるか、たとえば資金を投下するのは一体どこが出すかということを確定していない部分、こういう部分につきまして、政府といたしまして資金を借り入れて直接投資して、ダムができ上がるまでに事業者をはっきりさせて分担をきめるという形をとっておるわけでございます。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はひとつこの際資料を要求しておきたいと思うのです。その五百八十カ所の地点はどこなのか、そして先行投資する規模が一体幾らなのか。そこの点についてそういう明確な計画がなければ、昭和六十年までにあと十二年間で五百八十カ所はできないと思うのです。現実に水飢饉になる、こう書いてある。水需要が増大してどうにもならぬ状態だから五百八十カ所つくるということになっておる。その点をひとつ資料として私はここに出していただきたいと思う。  それからもう一つは、従来のダム建設というのは利用者が明確になって、その分担金がきまった上でダムというものが建設されておった。だからその資金の調達も非常に容易であった。償還も容易であった。ところが今度の場合は、いま局長が言われたように、先行投資だから、つくったあとでどういうものが利用するのかということによって分配される、経費の負担がふえてくるという形ですね。だからダム建設のしかたが従来と全く違うのです。だとすると、場合によったら国民の血税を使って、先行投資で借り入れるわけですから、この前の改正で財投資金をどんどん繰り入れてやる、こういうふうになっておるんだから、逆の場合で言うと、つくってみたけれども利用者がだれもおらぬじゃないかという、要するに工業用水なら工業用水のたれ流しという問題も当然起こってくると思うのです、先行投資だから。だからそういったことを考えると、そういった計画が明確になっておらないと、この報告書というのはまさしくただ単なる絵にかいたもちであり、列島改造に合わしただけのものだ、実行性の乏しいものだということにならざるを得ない。この資料を建設省のほうからぜひ本委員会提出をしていただきたいというように思います。
  28. 松村賢吉

    松村政府委員 まず先行投資の問題について申し上げますが、私どもでやっております先行投資というものは、需要の発生ができるかできないかわからぬというような、将来これがむだになるというようなものについての先行投資を考えているわけではございません。需要はもう非常に確定している、ただしこれはどこの事業者がやるかということがまだ未確定だという部分について、ダムが完成するまでにこの見通しがはっきりするものに限ってやっておるわけでございまして、まあ今後も方針としてはそういう形で進めていく、厳正にやっていきたいと思っております。  それから今後のダム建設地点別の資料でございますが、これは実を申しますと、個々のダム建設を決定するには御承知のように地元関係等のいろいろの問題があるわけでございます。したがいまして、個々のダムの名前を公表するというのは非常にむずかしい問題でございますが、水系別等にどの程度ダムができるという資料をお届けしたいと思います。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま言った資料をすぐ取り寄せてここへ出していただきたいというふうに思います。それは委員長、きょうじゅうに出るのですか。
  30. 服部安司

    服部委員長 きょうじゅうに……。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)委員 では、ぜひその資料を提出していただきたいと思うのです。  それからもう一つ、そういう先行投資を容易ならしめる手段として今回提出されたこの法案があるのではないか。いろいろトラブルがあるがどうしても先行投資していかなければならぬ、その先行投資を容易にするために今回出されておるこの法律が出てきたのじゃないか。現実に今度の報告書ではその結語として、昭和四十六年四月の「補償、地域開発問題等地元要求の受けとめ方」ということを中心にして、今日われわれが審議しておるこの法案提出することになった。そうすると、四十六年度の第一次報告書のあと、四十七年に全国知事会議から建設省構想に従った法案制定の要求書が陳情されておる。ですから、今度ここに出されておる法律というのは、これからのダム建設を容易ならしめる先行投資を中心とした利水行政に必要な法案として提出されたもの、こういうふうに理解をするわけですが、そういう理解で間違いないでしょう。
  32. 松村賢吉

    松村政府委員 現在、ダム建設には地元関係等いろいろな問題がございます。このダム建設による地元の影響を緩和するための施設がどうしても必要であろうということでこの法律案を提出したわけでございます。これは先行投資を容易にするためということではございません。水の需要が増大する、こういうものに対応するために必要なダムをつくる、それを容易といいますか、できるような形に持っていきたいということでつくっておるわけでございまして、先行投資そのものとは直接は関係ございません。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、とり方だと思うのですがね。十二年間に五百八十カ所つくる。そうすると、この法律がなければトラブルが起こってなかなか五百八十カ所のダム建設は不可能だ、先行投資できない。そのことが中心で発想として出てこなければ、第一次報告書の中にそういうことをうたう必要はないでしょう。第二次報告書でわざわざそういうことを書く必要はないですね。それはまあ事務当局と私たちの見解の違いだろうけれども、私たちはそういうふうに理解をしておるので、この際、個々の問題についてちょっと質問させていただきたいと思う。  その一つは、実は非常に重大な問題があるので農林省の説明員の方に御出席をいただいておるのですが、いずれにしてもいま建設省で考えておる広域利水、結局極端に言うと、流況の相違する複数の水系間を連結する多目的導水路網の建設によって需給のアンバランスをなくしていく、同時に、従来ある慣行水利権、こういったものも広い意味で調整をする、そういうために建設省のほうに水利調整室というのができ上がっておる。ということになれば、建設省としてはこの際、農業用水工業用水あるいは生活用水等の問題を含めて抜本的に水利権というものを総合調整する。しかもその異質の水系から分水することによって調整する多目的導水路網の建設といったようなことを考えておられる。その場合に、農業水利権について現実どのように考えておられるのか、その点ひとつお聞かせいただきたいと思う。
  34. 松村賢吉

    松村政府委員 ただいまお話がございましたのは、私どものほうで言っております流況調整河川のことかと思います。この流況調整河川建設は、流況の違う河川、片っ方の川でもって水が余っている時期に片っ方の川でもって水が不足するというような事態も間々あることでございまして、これらの流況の違う河川の間をつなぎまして彼此相通ずるということを考えているわけでございます。またそれとともに、これの内水の排除その他治水上の問題もこれによって解決しようということで、すでに全国で幾つか計画し、着工しているわけでございます。  それで、これといまの水利調整室との関連、これはまあ直接にはございません。水利調整室といたしましては、やはりその水利権の問題、特に慣行水利権、こういうものが非常に現在たくさんありまして、調査を進めておりますが、実態もなかなかつかみにくく、またこれを明確化するのも非常にむずかしい。それでこれが一つの水管理のガンになっていることは事実でございまして、こういうものの解決をはかっていくということを主体にしていろいろ考えているわけでございます。したがいまして、流況調整河川といまの慣行水利権の問題とはこれは別個の問題でございます。それはそれぞれとして私どもは解決していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ちょっと質問の趣旨を取り違えておられるかもしれませんが、要するに流況の相違する河川を多目的導水路網の建設によって流量を調整する。ところがその河川についてはすでに水利権というものが存在しておるわけですね。農業水利権が存在しておるわけでしょう。ですからそれとは異質のものではなくて、やはり関連をしてくるわけですよ。  そこでこの際農林省のほうにお聞きしておきますが、実は従来は利水というのは農業中心だったのですね。ところが都市部に人口集中いたしまして、現在では都市利水農業水利とが大体同じレベルにきたわけですね。ところが、水は有限であると最近盛んにいわれておるのですが、実際流量は一定しておるということになってまいりますと、どうしても都市用水を取らなければいかぬ。取るところとしてはもう農業用水から取る以外道はなくなってくるわけでしょう。ところが、実際に人口は都市部に集中するけれども、耕地面積そのものはあまり減っておらない。自給率を高めるということでさらに耕作を進めていけば進めていくほど、さらに水というものは必要になってきますね。そういった場合に、一体農林省のほうでは、建設省のいま言ったような多目的導水路網の建設によって流量を調整するという問題を含めて、農業利水について話し合うコンセンサスがあったのかどうか。あるいは合理的な、まあことばではこういうふうに書いてあるのですが、農業用水の合理化ということばで慣行利水というものが律せられておるのですね。そうなってくると、極端に言うと、どこかで水を取らない限り、ないわけですから。そういう問題について農林省のほうは建設省がいっておる利水調整の問題について了解を与えておるのかどうか、トラブルが起こったときにはどういうふうにそれを調整するのか、その点について農林省の見解をひとつ聞かしていただきたい。
  36. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 ただいまの先生の御質問農業用水がわが国における水利用の大部分を占めておった、それが最近におきます経済の発展等に伴いまして都市用水の需要が増大し、それに対して農業用水側の対応をどう考えるか、あるいはその対応の過程で、建設省の担当しております河川行政の運営にあたって、農林省としてどういう受け答えをしているかということにつきまして御説明いたしたいと思います。  御指摘のように、農業用水の状況というのは非常に歴史的に形成されておりまして、その実際の存在形態も、慣行水利権と呼ばれているものが非常に大量に存在しておりまして、権利内容も非常に複雑多岐にわたっております。したがいまして、今後非常に水の需給が逼迫してきますと、そういった内容の複雑な農業水利権を近代化、合理化しまして、全体としての水需給がうまく立ち行くようにしていくという考え方は、私ども基本的にとっておるところでございます。  その際に、私ども考え方としては、御案内のとおり農業水利というのは非常に長年にわたる農民の努力、費用をかけて形成されてきたものでございますので、当事者の十分な理解と納得を得ると同時に、将来のその地域における農業の水利用に不安の生ずることのないように十分の手当てをしていくということが基本的に重要であろう、かように思っておるわけでございます。したがいまして、そういった農業用水の合理化、近代化をするために、農林省固有の仕事といたしまして、御承知のとおり土地改良法に基づきまして各種の、かんがい排水事業と呼んでおりますけれども、いわば農業水利の改善、合理化のための事業相当量行なっておるところであります。それで、その事業を進める過程農業用水が節約される場合、これを河川行政と十分調整をとりまして、河川管理者として水利権の許可といった手段を通じて河川の適正な維持を行なう場合に、十分河川管理者側と相談をして、農業サイドでも不安が生じない、その地域の全体としての水需給にも一つの安定要素を加えるということで、十分な話し合いをしておるところでございます。  実はその一環として、先ほど御指摘のございました、先般の河川法改正で流況調整河川河川工事の制度が設けられましたが、この仕事、御指摘のとおり関係する河川農業水利権と非常に関係が深うございます。したがいまして、この制度の運用にあたりましては、私ども建設省のほうとも御相談いたしまして、既存の農業水利権には影響を与えないという範囲内でこの仕事をひとつ運用してください、それからさらに、私ども関係する河川につきまして、農業用水の改善、合理化のための諸般の仕事をしております、この仕事と十分タイアップして、関係する河川について水利権を持って農業を営んでいる方々に将来の不安を与えないというように、十分農林省ないしは各都道府県段階の農林部局と相談をしてこの制度を運用していただく、こういうお話をしまして、私どもも、全体としての水需給安定策に協力してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そのことばの上では非常にできるような感じがしますけれども、今度の異常渇水のときに、御承知のように琵琶湖周辺の農民と都市部、大阪を中心としてたいへんいろいろとトラブルがあった。ことばでは非常に簡単だけれども現実に異常渇水時における農業水利権という問題、それと都市用水という問題はたいへん重要な問題を含んできておると思うのです。ことばだけでは解決しない異常なものがあると思う。  そこで、これは政治的な意味ですから大臣にこの際お尋ねをしておきたいのですが、五百八十カ所のダム建設されるまでは——できてしまえばある意味で全体的な需要をまかなうことが可能かもしれませんが、それができるまでの間に、かりに今年度のように異常渇水が起こった場合の対処のしかたというものもある程度明確にしておかなければいかぬと思うのです。そこで、これは本で、読んだのですが、河川関係の有名な教授である板橋邦夫さんの論文を読ましていただいたのですけれども、異常渇水時における行政指導という基準日本では非常に必要ではないか。そのための一つの提案として、生活用水に優先順位を与えて、各目的別に標準利用水量というものを、もちろん許可水量は除くのですが、定める。そして利水合理化というものの指針とする。そういった意味行政指導基準というものが異常渇水時には必要ではないか。そうしなければ非常に古い形の水騒動といったものがこの近代社会において起こり得る可能性があるという指摘があるのです。私は一つの見識だと思うのですが、農林省のほうから非常にきれいなことばで表現されましたが、この際大臣の御見解を承っておきたいと思うのです。
  38. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ことしは異常渇水で、非常に建設省といたしましてもこの問題につきましては考えさせられるいろいろな問題点があったわけでございます。たとえていえば、香川県が非常に渇水をいたしまして、成田委員長から私に、どうしてくれるのだ、何とか考えてくれというようなことで、いろいろその場面をしのぐような方策は講じたわけでございますが、幸い雨が降っていただきまして、(「天然現象じゃないか」と呼ぶ者あり)天然現象で済んだわけでございますが、そのような問題に遭遇いたしまして、行政の指針として渇水期のあり方というものについては何か考えなければいけない、しっかりしたものを今後つくってまいりたい、こう考えております。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そこで大臣、もう一ぺんお尋ねしますが、具体的な提案として、一つの提言でありますが、生活用水に優先順位を与え、各目的別の標準利用水量、こういうものを定めて、異常渇水時における利水合理化の指針とする必要があるのではないか、こういう一つの提起が学者から出されておるわけですが、この学説、この提起についてはどう思われますか。
  40. 金丸信

    ○金丸国務大臣 貴重な御意見だと私は思います。十分そういう問題も参考にしてまいりたいと思います。
  41. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そこで事務当局にお尋ねをいたします。  先ほどいみじくも大臣が言われたように、今度の異常渇水は、東京の第二次制限を前にして東京も雨が降った、わが党の成田委員長地元の高松も雨が降った、そのことで救われたんですね。ところが、来年かりに異常渇水という事態が起こってきたときに、たいへんな問題がまた繰り返されるわけですね。雨が降らなかったらどうなるのかという問題が出てくると思う。ですから、いまの異常渇水時の提言、異常渇水時の行政指導というのが、私はそのダムをつくるという問題以前の緊急かつ重要な問題だと思うのです。異常渇水という事態をわれわれ経験したわけだし、国民も非常に苦労したわけでありますから、その点について、来年度は少なくともこういう異常渇水時でも問題はないのだという、解決する提起をやはり何らかの形で早急に行なっていただきたいというように思います。大臣もいま研究されると、こういうことでしたから、事務当局も直ちにこの問題について取り組んでいただきたい。年内には結論を出して国民を安心させてあげたいと思うのですが、その点はどうです。
  42. 松村賢吉

    松村政府委員 異常渇水に対処する方策でございますが、需要に対しまして水の供給施設が足らないということがもちろん根本原因でございます。したがいまして抜本的には水資源開発というものを積極的に進めないことには解決できないわけでございますが、と申しまして来年の問題、すぐの問題といたしましては、やはりこれの暫定的な対策がもちろん必要でございます。したがいまして、ただいま先生からの御提言もありました標準使用量でございますか、生活用水優先という形の一つの水の制限の方法、これ等につきましては十分研究いたしまして進めていきたいと考えております。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから、近畿圏、東京圏の水飢饉解消のために、日本列島改造、田中さん個人の発言でありますが、これは、京葉地帯については信濃川水系と利根川水系の結合や、富士川の水を関東に導水する、そのことを考えておる。それから近畿では紀の川、新宮川、由良川の導水が緊急的に考えられている。ところがそれを調べていくと、そういうことは建設省構想の中には入っておるわけですが、そういうことは現実に準備され、現在計画されておるわけですか。
  44. 松村賢吉

    松村政府委員 昭和六十年までの計画、この中には、京浜地区に対しまして関東区域以外からの導水という計画は、まだそこまでは入っておりません。ただし、二十億トン不足という指標が一応出ておりますので、これに対処する対策としては一部検討をこれからさらに進める必要があろうと考えます。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの問題はあとから山口先生のほうから詳しく指摘があると思いますので、私の質問はそのことについてはいまお聞きした程度で、日本列島改造に書いてありますから、そのことについて確認をさせていただいて省略をさせていただきたいと思います。  そこでもう一つ問題になりますのは、ダムと環境の問題であります。全国的に五百八十カ所もダムをつくりますと、当然いろいろと環境の問題が出てきます。私の言うのは河川そのものの環境の問題であります。周辺環境ではなくて、ダムをつくることによる河川そのものの環境です。いま私の手元に、電気事業連合会、電源開発株式会社、住友共同電力株式会社、公営電気経営者会議「第七回利水ダム管理資料」というのが来ております。その中で、それを中心として「貯水池水質調査中間報告」電力会社土木保守課長会議ダム保守研究会議というもののデータがここに出されてきておるわけです。最近ダムをつくることによって河川が汚濁をする。そのために農業用水にも重大な影響を与える、あるいは上水道自体にもたいへんな、薬品投入その他の苦労をかける、そういった状態が出てきておるわけですが、特にその中で、ダムをつくることによって河川が汚濁をするという問題がいま重要な問題になっておるのです。私はしろうとでありますから詳しいことはわかりませんが、「貯水池水の流動形態」という中で成層型A、成層型B、あるいは混合型B、こういった形で、貯水されておる水の形態を分類しておられるわけであります。その中で、特にダムをつくることによって汚濁する現象というのは、成層型A及び混合型Bの貯水池に顕著にあらわれておる。その第一原因は池水の交換機会が長いということと、成層型の貯水池では——これは前回申し上げた私の郷里の一ッ瀬貯水池の例でありますが、中間流の形成によって懸濁物質の沈降が阻止される。要するに表面水の温度と底面の温度とが非常に格差があるために懸濁物資が沈でんせずにそのまま浮遊をしておる。それが放出取水口から出されるために農業用水その他にもたいへんな障害を与えておる。そういうことがここに記載をされておる。しかもその研究結果はいまだ不十分である。これからこういった問題についてさらに研究していかなければならぬ。こう書いてあるのですが、実質的に五百八十もずっとダムをつくってまいりまして、いま出ておるこういった河川の汚濁、特に懸濁物資が、土粒が河川をどんどんと流れ回る、こういった事態になったらこれはたいへんな環境破壊だと思うのです。こういった問題について一体どれほど河川局のほうでは現在研究され解決する努力をしておられるのか。現実にいまあるものについて解決されたのかどうか。これが一つであります。  それからもう一つ問題点は、実はそれぞれの各電力会社のダムについてここに書いてあるのですが、当初の計画水位に従って用地補償その他をやって移転をさせた。ところが河床が上がることによって計画水位がさらに上に上がる、従来の水位よりもさらに上がる。そのために、ダムができたあと移転をしなければならぬ、あるいは道路のつけかえをしなければならぬというような事態が全国至るところに、利水ダム管理資料の中に出てきておる、それぞれの各電力会社ごとに。これは開発その他の国の機関についてのものは除外されておりますね。こういった問題について一体どういうふうに解決しようとするのか。いまここにある法律というのはダムをつくるときの補償の基準。ところがダムをつくったあと、河床が上がるために計画水位が上がることによってまた二次的に出ていかなければならない住民というものが非常に多い。その場合には、これに書いてありますけれども、解決のしかたとしては全部金銭で解決しておる。このこともダムをつくるときに忘れてはならない大切な問題だと思う。  この二つについて、建設省のほうはどういうふうに判断され、どういうふうに対処しようとするのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。   〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  46. 松村賢吉

    松村政府委員 問題が二つございます。その一つは、ダムを築造したことによっての汚濁の問題、この問題につきましては、先生から御指摘ありましたように、一ツ瀬ダム等におきまして大きな問題になっておりました。それでこれらの問題につきましては、各ダムによりまして非常に状況が違うわけでございます。一つには上流の流域の荒廃の状況あるいは地質の状況、流入する土砂の粒子の問題、いろいろございまして、全国一律にどうということはもちろんできないわけでございます。したがいましてこれらにつきましては、ダム建設する際に十分調査を進めてその対策は考えるわけでございまして、この機構につきましても一ツ瀬等で十分いろいろ研究しておりますが、まだ全体のはっきりした結論というものはもちろん出ておらないので、さらに研究を進めなければならぬわけでございます。が、現在でき得る対策として最大限のものをやりたいということで、一ツ瀬等においてはその水を取る場所を、任意の場所から取れるような施設を——表面から取ることもできる施設でございますが、こういうような取水の方法におきましての施設を現在着工しているわけでございます。その他のダムにつきましてもこういうような方法をあわせ考えて問題の起こらないようにしていきたいということでございますが、もう一つ抜本的な方策といたしましては、流入する土砂を減らすということが一番の問題でございまして、上流の治山関係あるいは砂防関係、こういうものの事業を積極的に進めまして、これの撲滅を期したいというふうに考えております。  また第二の問題といたしまして、貯水池の河床が上がるというお話でございましたが、これは堆砂の量がふえまして貯水池の末端の底が上がりまして、その関係でいわゆる水没がふえるとか、いろいろな道路等の被害が起きておる事態が、非常に数が多いというわけではありませんけれども全国でやはり相当数ございます。それでこれに対する対策といたしましては、一つは土砂を除去する方法、それから再補償と申しますか、移転その他補償をする方法、これらをあわせ考えていかなければならぬと思いますが、できるだけその現状を維持するため土砂掘さくの方法等を進めていきたいと思っております。また、これも先ほどに関連いたしますが、抜本的には上流の砂防工事、これを進めましてこれらにも資していきたいというふうに考えております。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ダムの問題は確かに水需給の逼迫を満たすために必要である、そのことは全部そのとおりだと思う。ところがそれをつくるということによって、これは一つの例ですが、私の郷里の一ツ瀬ダムなどというのはたいへんな濁水が流れて、現実農業用水にも影響を与えてしまっておる、そういう状態がある。これは全国的にもあらわれてきておるのですね。それからいまあなたが言われたように、当初計画水位よりも上がったために、二次的にまた出ていかなければならぬ、そういう人がおる。金で解決する問題じゃないと思う。そういう人たちはこの補償対象にないわけだから、そういう人たち関係ない。しかしその人たちはやはり集団でどこかに出ていかなければならぬ。ですから、ダムをつくるということは大切なことだが、それと同時に、いま周辺に起きておる問題を早急に解決する必要があると思うのです。そのことが何ら手をつけられておらないでしょう。一つの例ですが、本委員会で私がこの一ツ瀬ダムの汚濁問題を取り上げてことしの四月に御回答いただいた。ところが取水口の変更ですら来年の八月ごろにならなければ解決しないでしょう。できてしまったものについてはそれだけ長期間かかる。ですから、これからのダムの構造その他についてもそういったものが技術基準の中に生かされていかなければならぬにもかかわらず、依然として研究段階でどんどん新しいダムが同じようにつくられていく。砂防、砂防というけれども、実際に砂防の予算は、建設大臣が一番御存じだけれども、そんなに建設省の予算のワクの中で大きくない。ですから、砂防をやればいいのだけれども、砂防をやっておらぬから土砂が堆積をする、河床が上がる。それなら砂防をやればいいじゃないか、砂防の予算はあまりない。そういうふうに、一つのことをすることに関連性がなくばらばらでやっていくために、私は国民の間に非常に不平、不満が起こると思うのです。そういう点について私はもっと早急に積極的に取り組んでもらわなければ、この五百八十カ所のダムはとうてい不可能だと思うのです。その点について大臣の御見解をひとつ承っておきたいと思います。
  48. 金丸信

    ○金丸国務大臣 水の飢饉という問題につきましては、これからますますその度合いを深めてくると思うわけでありまして、そういう意味ダム建設というものは必要である。必要であるけれども、その建設にあたりましては、いわゆる工法の開発もやらなくちゃならぬだろうし、またその地域住民の手厚い補償もしていかなければならぬだろうし、また及ぼす影響等についても、考えざる障害も出てくる、そういうものにつきましてもねんごろな、背中のかゆいところまで手の届くような行政というものが必要だろうということを私は痛感をいたします。今回提案いたしました法案それ自体を見ましても、これで全きものであるとは考えておりません。これからダム建設していく上におきましてはなお一そうの努力をして、法律整備もし、そして行政の面では十分な手の届く、行き届いた考え方で指導し、また協力も願わなければならぬ、こんなふうに考えておる次第であります。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひ早急にやらなければならない水の確保でありますから、いま申し上げた問題についても、大臣が言われたように早急に本質的な解決ができるように、来年の委員会でまたこういう質問が出ないように、すかっとやっていただきたいということを事務当局に要望として申し上げておきたいと思います。  そこで、通産省から来ておられますから、通産省のほうにお尋ねをしておきたいのですが、実はこれは先ほどの方も、この前の委員会でも、各党がそれぞれ通産省なりあるいは建設省質問をしたところでありますが、問題は工業用水基準料金、これが四大工業地域では一立方当たり十一円五十銭、四大工業地域を除くその他七円、それから地盤沈下対策事業については四大工業地域は十円、その他については六円五十銭。工業用水が非常に安いですね。これは原価主義をとっておりますから工業用水は安いのだという話はこの前も聞きました。そのことはそのとおりでしょう。ただし問題は、安い工業用水が湯水のごとく使われておる。極端な言い方をするとたれ流しておる。ところがこの第二次報告書によりますと、昭和六十年までに水の需要が、工業用水が減ることになっておるのです。この需要計画ですと、必要量はふえておるけれども、実際にほんとうに水を必要とするものはここで減ってきておる。減ってきておる最大の理由というものは、回収する、再生産するのだ、そしてその再生産の動きが非常に活発になってきたので、工業用水についての需要の伸びを押えて第二次報告書というものがつくられておるのですね。現実にどれだけの水を現在回収して再生しておるのか、これをひとつ通産省の柴田さんからお聞かせいただきたい。
  50. 柴田益男

    柴田説明員 工業統計表の四十五年度の実績によりますと、工業用水の回収率は五一・七%でございます。約半分を回収して使っておるわけでございますが、われわれが事務的に検討しておりますところの六十年の回収目標は、一応七〇%を目途としております。そのために昨年度から業種別に回収率向上のための技術的な検討を重ねているのが現状でございます。
  51. 松浦利尚

    松浦(利)委員 昭和六十年までに七〇%の回収をするのだ、そのために回収技術の向上に努力をしておるのだ、こういうお話でございますが、率直に申し上げまして、工業用水の回収コストというものと現在の四大都市における十一円五十銭というものとは、むしろ回収コストのほうが高くなるということもあり得るわけですね。そうすると結局回収のほうよりも工業用水十一円五十銭ということのほうにウエートがかかっている、回収コストのほうが安ければ、もうすでに七〇%近くにほんとうはいっておらなければならぬ。回収技術というものはもうすでに相当前から通産省でも研究され、民間でも研究されて、現実に行なわれておる。やろうと思えばいますぐでもできる。それが現在は五一・七、やっぱり半分だ。六十年までに七〇%だ。それはどこに原因があるかというとコストの問題だと思いますね。あまりにも工業用水というのは優遇されておる、原価主義だからかどうか知りませんけれどもね。電気でもガスでも工業用水でも、工場という企業が使うものについては全部原価主義をとっておるがゆえに安いんだ。ところが一方、上水道、国民が生命に必要とする水道料金は幾らかというと、全部各県おしなべて平均した場合に一立方当たり三十四円三十銭、工業用水の三倍近いですね。ところが、先ほども建設省のほうからお話がありましたように、これから水需要中心としてダムをどんどんつくっていく場合に、だんだんコストが上がる。コストが上がれば原水価格というのは当然上がっていくわけです。ところが、原水価格が上がっても工業用水のほうは原価主義だから安いんだ、家庭のほうは高くなっていくんだ。こう考えていきますと、自治省からここに森岡さんが来ておられますけれども、この際、建設省、自治省、通産省で一体となりまして、こういった原価主義という、合理性はあるけれども現実に沿わない、こういった原水の価格というものについて再検討を加える時期に私は来ておるんじゃないかと思う。そういう点について再検討をする意思があるのかないのか。これではやはり国民はおこりますね。同じ水を使っておって、片一方は十一円五十銭で、何だ、おれのほうは三十四円三十銭じゃないか。そういった問題について、これから、いまあることはしようがないですが、こういった原価主義を中心とした原水料金の問題について体系的にやり直すお考えはあるのか、ないのか。この前商工委員会で中曽根通産大臣は、電気料金について政策料金を導入したい、こういう意思も発表しておられますね。そういうものも含めて、建設大臣を含めて各省それぞれ御答弁をいただきたいというふうに思います。
  52. 金丸信

    ○金丸国務大臣 検討する必要は十分あると思いますので、今後検討してまいりたいと思います。
  53. 森岡敞

    ○森岡政府委員 御指摘のように、現在は工業用水道も上水道も適正な原価を償うということで料金をきめておるわけでございます。上水道につきましては、水源開発あるいは広域化というふうなことで、だんだんコストが上がってまいります。厚生省のほうからその面につきまして、コストの上がりを押えるように補助金が年々拡充されておるわけでございますけれども、必ずしも十分ではございません。ですから、そういうふうな面を通じまして、上水道の料金について国民生活に多大の影響を与えないような努力をしてまいるということは、ぜひとも必要であろうかと考えております。  工業用水道につきましても、有収水量が建設当初、なかなか当初の予定まで参らないというふうな問題も含めまして、その料金についてはなお、建設大臣の御指摘のように、将来検討してまいる必要があろうかと考えております。
  54. 柴田益男

    柴田説明員 先生御指摘のように、工業用水は上水道の料金に比べますと約三分の一と申しますか、四分の一程度、これはコストが基本的に違うわけでございまして、上水道は四十六年度の公営企業年造の実績ですと、コストが三十九円かと思いますが、工業用水に比べまして、御案内のように一トン当たりの配管の長さが二十倍だとか、あるいは集金に手間がかかるとか、あるいは浄水の費用がかかるとか、そういうことで、工業用水と上水とは基本的に原価構成が違っておるわけでございます。しかしながら工業用水につきましても最近原価が上がってまいりまして、ここ一、二年、年々値上げをしているのが現状でございまして、一方では地下水のくみ上げ、これを規制する必要がありまして、地下水は非常に安いということで、地下水の転換をスムーズにさせるためにもある程度低く押えていかなければならないという面がございますが、今後の水資源開発が非常に困難を加えてくるということから、今後工業用水の料金もだんだん上がっていくという方向にある、そういうふうにわれわれは理解しております。
  55. 松浦利尚

    松浦(利)委員 工業用水がだんだん上がっていくということは、それはわかります。しかし現実に原価主義、コスト主義をとっておるがゆえに工業用水は安いんだ、家庭用水は高いんだ、三倍、四倍だ、これじゃ国民が納得しませんぞ。だから、それはそれとして、政策的な料金体系にしたらどうか、こういうことなんです。建設大臣も先ほど政策料金というものについて検討を加えようという御返事ですからね。通産省も中曽根通産大臣が電気料金について、企業の大口利用についても家庭需要とのバランスを考え政策料金にしたい、こういう発言を現に商工委員会でしておるわけです。だとすれば、当然国民生活中心であるこの水というものについてもそういう政策料金があってしかるべきじゃないか、そういうことを申し上げておるのですよ。その点をひとつ、あなた説明員だからそれ以上のことを聞くほうが無理だし、通産大臣に来てもらうわけにいかぬですから、国務大臣である建設大臣のほうで通産相のほうにぜひそういうふうに伝えていただいて、その料金体系について政策料金を導入するように、ぜひ法改正その他の手続をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、もういただいた時間が参りましたので、工業技術院の方にお尋ねをしたいんですが、これほどダムその他を五百八十カ所もどんどんつくっていくということもけっこうですが、それと同時に、四面海に囲まれておるわが国における海水の淡水化という問題が当然議論されなければならぬというふうに思っておるのです。それで工業技術院のほうから資料をいただきました。通産省工業技術院東京工業試験所から「海水淡水化のしおり」というのをいただいたわけでありますが、現実にいま五十円ぐらいのところまでは成功しておる。ですからこれをもっと下げて四十円台にすれば、大体国民生活に見合うんではないかというようなお話を事前に承っておるのですが、この海水の淡水化計画というのは一体いつごろ実現をするのか。しかも、この海水の淡水化という方法は、原子炉とかあるいは発電所とかの冷却水という問題とどうからむのか。結局淡水化するために相当な加熱を必要とするわけですが、これまた公害発生企業のように、海水から淡水をつくるために温度の高い水を海に放出せざるを得ないのかどうか。そういう点についての見通し、それからいま私が申し上げた点について、私たちしろうとですから、その点についてひとつお答えをいただきたいというふうに思います。
  56. 木下亨

    ○木下説明員 工業技術院で海水の淡水化の研究開発を実は四十四年から行なっております。それで、これは四十四年度から五十年度までの計画で進めておりまして、先生御指摘のといいますか、お話のありましたように、おおよその見込みは、いまのところ五十年度に完了いたしましたところで五十円程度の淡水、いわゆる上水でございますが、上水ができる技術が完成すると思います。やっておりますこの開発は、一日の能力が十万トンのものを設計をするという段階までがわれわれの目標でございますので、五十一年度以降、その設計に基づいて実際に建設をするということができる段階に立ち至るものと思っております。  それから第二番目に冷却水の問題の御指摘がございましたが、これは蒸気を使うわけでございますので、火力発電所等と併設をすることでこの淡水化をやっていくのが一番経済的であろうと思っております。したがいまして、火力発電所からの温排水よりは、この淡水化装置を通して出る温排水は少なくともそれより高くなるようなことは絶対ございませんで、いわば排熱利用でございますから、淡水化をやるから特に温排水問題を引き起こすというようなことはないものと思っております。
  57. 松浦利尚

    松浦(利)委員 河川局長、いま工業技術院から、昭和五十年までに一日十万トンの淡水化実用化の方向に進んでおるんだ、こういうお話ですが、将来の水需給計画の中で海水から淡水をとるという総需給計画、それは建設省のこの「広域利水調査第二次報告書」の中では触れておらないが、それは一体どのくらいに見込んでおられるのか。その点をひとつお聞かせいただきたい。
  58. 松村賢吉

    松村政府委員 私どものほうといたしましては、昭和六十年までの計画といたしまして海水の淡水化に実は触れておりません。そのとおりでございますが、これはどういうことかと申しますと、海水の淡水化というようなものの実用化、これについてはできるだけ積極的に進めていただきまして水需給の緩和に資していただきたいということで、通産省等とも十分打ち合わせておる次第でございます。ただし、六十年段階におきましてこれを水需給の全体のバランスにどれほどの影響をさせるかということにつきましての自信はまだございません。したがいまして、南関東地区では二十億トン不足しておるというようなことでございますので、これの不足解消等にはぜひこういうものを開発して進めることが必要ではないか、その一部として考えていきたいと思います。
  59. 松浦利尚

    松浦(利)委員 建設大臣、いまお聞きのとおりで、昭和六十年までの水需要を見込んで、第二次広域利水調査報告書によると冒頭述べましたように五百八十カ所のダムをつくる。そして総需給の水の量を規定しておる。それだけあればだいじょうぶなんだ、こういうことなんです。一方では大型プロジェクトによって、たいへんな経費を投資してこの海水の淡水化が計画され、実用化されつつある。ところがそういうものが全然この計画の中に見込まれておらないですね。だからいつも言うように、水なら水という問題について、建設省建設省サイド、通産省は通産、農林省は農林、自治省は自治ということで、それぞれのサイドでばらばらにやっておるから、せっかく建設省河川局がこういう報告書国民に出しても、計画そのものがかみ合わないですね。やはりこの際大臣にお聞きしておきたいのは、この海水の淡水化が五十年から実用化される。   〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 東京圏で二十億トンの水が不足するから、その一助にすればいいくらいのことでは、一体この淡水化の開発計画というものをどのくらいにしていいのかということもわからないのですね。そういった点は、先ほど申し上げましたように、やはり意見を調整して、私はもっと計画的なものをつくっていただきたいと思いますね。大臣のお答えをいただきたいと思うのです。
  60. 金丸信

    ○金丸国務大臣 水の問題につきましては、建設省だけで解決できる問題ではありません。各省庁と十分な連携をとってまいりたい。その点につきましては、きょうまでも連携をとっておりますが、ほんとうにスムーズな連携であったかどうかという点については疑わざるを得ない面もあろうと思うわけでございますが、水の工業化というような問題から考えてみましても、そういうものも含めながら、ひとつ今後十分連絡をとって、そして統計等につきましてもちぐはぐのないような方向で指示をいたしたい、こう考えております。
  61. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう時間が参りましたが、法案内容等につきましてはすでに参議院で十分議論されておりますので、法案の条文は省略いたします。  ただ最後に局長に一つお尋ねしておきたいのですが、河川行政がちぐはぐなんですね。この前までは河川砂利は取ってはいかぬという禁止のふれを出した。ところが今度は田中総理が陣頭指揮しまして、公共事業の促進だということで河川の砂利を取りなさい、こういって号令をかけたわけですね。現状のように河川を保全する意味で砂利採取を禁止しておったのを、今度はそれを採取してよろしいというほうに急にまた変更を加えるということについて、事務当局はそれでいいと思っておられるのかどうか、これが一つ。  もう一つは、あのダムサイトの下にたくさんの砂利があるのですよ。いまダムでせき切っていますから、下のほうに砂利が落ちません。そのために下流の砂利が不足しているわけですが、ダムの下にはたくさんの砂利がきている。この砂利は一体だれが管理して、だれの所有なのか。これについて利用するような考え方はないのか。その二つ、お聞かせいただいて質問を終わります。
  62. 松村賢吉

    松村政府委員 ダムの砂利の問題を先にちょっとお答え申し上げます。  ダムにたまっております砂利の採取につきましては、これを掘さくして資材として使うということは非常に必要かと思います。ただし問題はコストの問題、またそれを掘ることによっての下流に対する汚濁の問題等、いろいろございますので、いろいろと検討している次第でございますが、一部のダムにおきましてはこれの掘さくを進めて、相当成果をあげているところもございます。今後ますます進めていきたいと思います。  それから河川の砂利全体の問題でございますが、これにつきましては、私どものほうとしては河川の一定計画河川の改修計画がございます。ただしその河川の改修計画というものが、最近流出機構等非常に変わりまして、洪水量がふえる傾向にございます。このふえるためには河積を増大して水を流さなければならぬということで、計画変更をしている部分もございます。こういうことによって、河川計画に矛盾しない範囲でもって、生み出される砂利、これは採取して資材等の供給に資したいというふうに考えておるわけで、河川計画と矛盾したようなことはやらないつもりでございます。
  63. 松浦利尚

    松浦(利)委員 終わります。
  64. 服部安司

  65. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵政務次官がお忙しいそうですから一番先にお尋ねをいたしましょう。  今度の水源地域対策特別措置法、私ども、きわめて不備であり、不満であり、反対であります。それは、ダム指定をする、そしてダム指定は、三十戸水没とか、三十ヘクタール農地水没するとか、小規模の直轄ダム、補助ダムについても指定をするわけですが、問題は、この法律によりまして水源地域整備計画を立てる、そしてその仕事をする場合においては国が補助のかさ上げをする、ただしその場合の対象水没戸数二百戸以上あるいは農地水没二百ヘクタール以上のいずれか、あるいは利水地域が水源県になくてという場合においてはこれを百ヘクタールあるいは百戸に切り下げる、そういうものについては補助金のかさ上げ対象にする、こういうのがこの法案内容だろうと思うのですが、そこで指定ダム全部が補助金のかさ上げ対象になっていない、こういう点は非常に不備だと思いますし、また利水地域が当該県の中か外かということで差別がありまする点についても問題があると思いますが、その点はあとで議論するとして、しばらくおきましょう。  問題は、そういったきびしい条件のものについて補助金のかさ上げをするということになっておるわけでありますが、全国知事会等がこの問題について長い間実は陳情行動を続けてまいったわけであります。それで、その際全国知事会が補助金のかさ上げについて具体的な要望をしておるわけでありますが、それと今回の法律案を対比いたしてみますと、全国知事会の要望に比べて相当落ちておるものがある。どういうものが落ちておるかというと、公営住宅でありますとか廃棄物処理施設でありますとか、そういった住民生活に直結した問題が落ちておるわけなんです。これらの点について——山本大蔵政務次官は御出身が建設省のようであります。建設省出身の方がたまたまいま大蔵政務次官をやっておられるわけでありますから、その点についてはこの事情をたいへんよく知っておられると思うのでありますが、何で生活に結びついた事項について落としたのか。  それからさらに、整備計画をつくって補助金のかさ上げ法律できまっても、問題は水源地域整備計画に盛られた事業内容というものを関係省庁が十分に採択をするかしないか、また採択をされた事業が予算編成の過程で十分尊重されるかどうか、これによって——きわめて不満な法律でありますが、その不満な法律の中にわずかに見られる、従来の機構から見ての一歩前進というものも、問題はその事業を十分各省が採択するか、予算を完全につけるかどうかによって、もしそれが十分にいかないという場合は全くこれは絵にかいたもちだ、こういうことにならざるを得ないと思うのであります。この点に対する大蔵省のお答えをまずお伺いしたいと思います。
  66. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 今回のこの法律は、非常に重要な水資源開発、水に対する需要の増大に備えてそれに非常に役に立つ、そういう立法であろうと思います。いまお話しのように、水源地域整備計画の策定という一つの大きな仕事、それができた場合に、それがやりやすいように補助率を格上げするというわけでございます。  その中でいまお話は、今回取り上げた補助率アップの対象事業のほかにさらに取り上げるものはないかというようなお話もございます。これらは、水源地域問題点は項目としては相当拾い上げてあるように私は思います。全体の事業を円滑に推進するためにはいろいろ財政的な見地、これは国の財政ということよりもむしろ地方財政という観点からも考えていかなければならぬことであろうと思います。さすれば、国のほうとしましてはできる限り地方に援助をいたしまして、全体としてこの事業が円滑に進んでいくようにしたい、こういうことでありまして、これらの対象になっております事業にはそれぞれの予算がつくわけでありましょうが、それらの事業の中でそれぞれについておる予算の一つ運用として、これらの格上げされた補助率でもって水源地確保事業に当たる、こういう観点になるだろうと思います。その場合に、国の財政の立場としましては、できる限り、これらの整備計画の推進に十分に役に立つように配慮をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  67. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もう少し歯切れよくお答えになっていただきたいのですが、計画に盛られた事業は必ず各省で採択をする、採択して予算要求したものについては必ず予算はつける、こういうことをやはり明確にしていただきたいと思うのです。そうでなければまさに絵にかいたもちですね。それから、ついでに自治省と大蔵省にお尋ねしたいと思うのですが、この整備計画をする、補助金のかさ上げはある、これが十分採択されたといり場合ですね、しかし補助率は一〇〇%にするわけじゃないのでありますから、自治体の持ち分というものはある。しかし、この法律の第十二条に「整備事業についての負担の調整」というのがございまして、そうして経費を業者でありますとかあるいは利水県の地方公共団体に負担させることができる、こうなっているわけですね。この場合、私は第一義的には、この利水県の地方公共団体というのではなくて、利水によって利益を受ける企業あるいはこの利水の仕事を進める水資源公団等の事業者にやはり負担をさせることが第一義でなければならない。そうして次いで、水道等の問題もありましょうから、水道については地方公共団体が管理運営しているわけですから、そういう立場から利水県の地方公共団体に持たせるということがあってしかるべきだと思いますが、これは二義的。そうしてその第一義的、第二義的の負担をする者によってこの事業計画の仕事というものが完全に財源的に保障されるということが必要じゃないかと私は思うのです。もしかりに、いや、そうではないんだ、やはり水源地域整備計画を立てた県なり市町村が応分の負担をして、まあまあその場合には起債でも充当してやろうという考えがあるとすれば私は問題だと思うのです。起債といったって借金で、返さなければならぬわけですから……。建設省からもお答えいただいていいと思うのですが、そういった整備計画を実行するにあたっての財源は、補助金のかさ上げ並びにこの負担によって一〇〇%これを充当する、そういった方針でこの法律運用されるかどうか、この点ひとつ建設省、大蔵省、自治省からお答えをいただきたいと思うのです。
  68. 松村賢吉

    松村政府委員 整備事業実施するに必要な経費、これを、地元市町村の負担を全額なくして、下流から全部取ったらどうかというお話ですが——下流と申しますか、事業者等を含めました者で、負担をゼロにしたらどうかというお話でありますが、これにつきましては、私どもの考えといたしましては、やはり補償そのものではないわけでございます。補償そのものでございますと、当然これは事業者が全部負担するというか、これはもうあたりまえの話でございます。ところが、これに関連いたしまして整備計画事業を行なうということになりますと、やはり本来の公共事業として地元負担の性格というものが当然残るのではないか。しかし事業の性質そのものが、その地域の影響をいろいろ緩和するということが主体でございますので、地元の負担は極力減らす方向に持っていきたいということで、補助率のアップあるいは十二条の協議による負担等を考えているわけで、極力地元の負担を軽減する方向に持っていきたいと考えますが、ゼロにするということまでは考えておりません。
  69. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 特に法律にある、森林法によるところの保安施設事業河川法によるところの河川の改良工事、砂防法によるところの砂防工事、こういったたぐいのものはまさに当該の地域——私はなぜそういうことを言うかというと、ダムをつくる地域というのはそうでなくても過疎地域ですよ。財政力が非常に弱いわけです。そういうところでいま私があげたような事業というものは、まさに当該地域のためというよりは、むしろ国土保全、治水といった、いわばダム施設を効率的に運用するための施設として付帯的にやる仕事でしょう。こういったものまで、財政カの弱い過疎地域というものがなけなしの一般財源を充当するとか、あるいは起債をして自治体が借金をしてやるということについては、私はきわめて不当だろうと思うのです。建設省からお答えもありましたが、大臣、ひとつ政治家という立場でどうお考えですか。また、そういった自治体の状況を十分踏まえておる自治省としてのお考えはいかがですか。
  70. 森岡敞

    ○森岡政府委員 御指摘のように、ダム建設される地域地方公共団体は過疎団体が多うございます。そういう意味合いでは財政力は非常に弱いということが一般的にいえると思います。したがいまして、各種の計画に基づく事業実施いたします場合に、その地方負担が膨大なものになりますと、これはとても地方公共団体では処理できないということになる危険がきわめて多うございます。ただ、いま御指摘の砂防工事あるいは森林法に基づく保安施設あるいは河川改良の工事など、率直に申しますと、やはりどの地域でも必要に応じて、お話しの国土保全という観点から実施をしなければならない経費というのはそれぞれあるのではなかろうか、かように考えます。ただ、ダム建設が行なわれます地域におきましては他の地域と異なりまして、こういう事業必要性というものが比較的多くなる、また事業量も多くなる、こういうことではなかろうかと思うのであります。そういうふうに考えますと、先ほど建設省からお答えがございましたように、できるだけ地方負担を軽減する。その軽減する方法として補助負担率の引き上げをやり、また下流利水負担というものも導入する。利水負担の求め方につきましては、これから各省でいろいろ御相談をして詰めてまいらなければならない事柄でございますが、地元地方公共団体の負担を思い切って軽減するような方向で私どもとしては努力をしてまいりたい、かように思うわけでございます。しかし、そういうふうに考えましても、やはり一部地方負担というものが残ってまいるということ、これは避けられないと思うのであります。それにつきましては、お話がございましたが、地方債を充当する、あるいは地方交付税の事業費補正というふうな方式も一部あるわけでございます。そういう財源措置を適確に行ないまして、関係地方公共団体の財政運営が支障なく行なわれるようにしてまいる、こういうふうに考えるべきではなかろうかと思っております。
  71. 松村賢吉

    松村政府委員 ちょっと間違いがございましたので一部訂正いたします。  地元負担金をゼロにすることは考えないと申し上げましたが、この地元というのは、市町村ではゼロになる分が相当ございます。ただし県という意味におきましては負担金があるということでございます。
  72. 金丸信

    ○金丸国務大臣 山口先生のおっしゃることは、政治家として私も、現在山村の市町村ということになりますと、当然財政不如意であることは申すまでもないわけでありますし、またダムをつくるということによって影響を受ける、それが犠牲ということばに変わってきておる、そういうことがダムをつくる上で非常に困難な結果になって、拒否反応も出てくることを私もおそれます。そういう意味で、できるだけの方途を講じてやることが今後の水飢饉に対処する姿勢でなければならぬ。そういう意味で、地元の負担というようなものに対しましては、できるだけ国なり県なりで持つ。大部分は国で持つあるいは事業者が持つというような考え方で今後の事業推進を考えなければ、ダム建設というものはできぬじゃないかということを私は考えておるわけでございます。そういう意味で、この法案が十分なものとは思っておりませんし、ダム建設のためにはもっとりっぱな法律をつくり上げていかなければならぬ。今後とも努力いたしたいと考えております。
  73. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 松村さん、市町村の場合はゼロになるものが相当多いと言いましたね。具体的にどういう事業ですか。ここで明確にお答えできますか。
  74. 松村賢吉

    松村政府委員 これは町村事業につきましては負担はどうしても残るわけでございますが、県事業の中では大部分、たとえば河川事業とか砂防事業あるいは道路事業等につきましては地元負担はない。地元負担というより市町村負担はない、県負担はございます、そういうことでございます。
  75. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 河川法に定める改良工事、砂防法に規定する砂防工事、道路法に規定するところの市町村道の新設または改築については地元市町村の負担はゼロになる場合が相当多い、こういう意味ですね。明確にいたしておきたいと思います。  それでは山本さん、けっこうです、お忙しいようですから。  次にお尋ねをいたしたいのは、治水利水の問題でございます。全国的な問題を議論しますと時間がありませんから、利根地域の問題に限ってお尋ねをいたしたいと思うのですが、利根川の治水計画につきましては数次にわたって改定がなされております。資料を拝見いたしましたが、明治三十三年に「利根川改修計画」というものが策定をされた。そのときは明治二十九年の洪水を対象として、八斗島−栗橋における高水量三千七百五十トン・パー・セコンド。ところが明治四十三年の大洪水によってこれではだめだということになり、明治四十三年に改修計画を改定し、その際は八斗島−栗橋における高水量を七千トン・パー・セコンドに直し、この工事昭和五年に完成しているわけですね。そのとき、時の政府が記念碑を建てたそうでありますが、その際、「関東の沃野の大半は今後長く洪水を免れ、衆民その生に安んじ、産業いよいよ興るべし」と書いたそうです。ところが昭和十年に大洪水があって、これではいかぬということになって、八斗島−栗橋における高水量を一万トン・パー・セコンドに改定せざるを得なかった。その後、昭和二十二年にキャスリン台風がありまして、さらに一万トンを上回る高水量があった。したがってこの昭和二十四年に「利根川改修改訂計画」というものが策定をされて、そのときには八斗島における高水量は一万七千トン・パー・セコンドに改めざるを得なかった、こういうことなんですね。そうして水源地域である群馬については、この八斗島で一万七千トンの水が流れたのではどうにもならぬ、したがって三千トンを上流のダム群によってカットをする、そうしてこの八斗島における高水量を一万四千トンまでに落とすんだ、たいへんだろうけれども群馬県はぜひ協力をしてくれというのが建設省の今日までの経過だったわけです。  そこでお尋ねしたいのですが、何回もこの改修計画が改定をされてきたわけですね。河道というものが整備されれば確かに時間的に早く水が出るということは当然でしょう。そういう中で改定がされたという理屈については私はわかりますが、それならばこの一万七千トン・パー・セコンドというものについては絶対だいじょうぶなのか。これが達成されれば関東の沃野は再び洪水というものはないのか。ことしは震災の五十周年記念、大震災に対する国民のいろいろな危惧というものがございますが、はたして洪水は「利根川改修改訂計画」で十分なのか、この点ひとつお尋ねをいたしたいと思います。  それからさらに、三千トンカットするということで、群馬県は、こういった法律もなしに、しかもまた水源地域住民人たちは非常な苦痛を忍んで、治水のためならば協力もしなければいかぬということで今日まで協力をし、矢木沢あるいは薗原、下久保あるいは相俣、藤原等々のダム群がすでに群馬県にできたわけですね。その際の水没者の方々の苦痛は私はたいへんだったろうと思うのです。そしてすでに建設省計画をした三千トンカットはいま申し上げたダム群で完全にできているわけですね。とすれば、今後関東においては治水のためのダムというものは必要ないのか。先ほど松浦委員全国五百八十のダム計画をいろいろ追及をされました。そうなればきっと群馬県などはまさにダムだらけになるでしょう。そういうもの利水のためのダムだ、こうなるわけでありますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  76. 松村賢吉

    松村政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお話にございましたように、現在の利根川の治水計画といたしましては、八斗島の高水のピーク流量毎秒一万七千ということで進めているわけでございます。それで、そのうち上流のダム群において三千トン満たすということで、下流の改修工事を一万四千トンということで進めているわけでございます。この工事につきましては毎年鋭意進めているわけでございますが、下流の改修工事につきましてはまだこれが完成するというような段階にまでは至っておりません。多分の工事があとに残っておるわけであります。また上流のダムにつきましては、おかげさまをもちまして、あと八ツ場ダム、これができますと、当初計画としての三千トンのカットができるということになるわけでございます。ただし、その後の流出機構のいろいろの変化等を検討いたしますと、現在のところこれで十分という結論は出ておりませんで、根本的には全体の流量の改定の検討をいろいろと進めている段階でございます。幸いなことに、昭和二十二年のキャスリン台風以来、翌年にアイオン台風ですか、ございましたが、その後著しく大きな洪水というものが利根川水系には来ておりません。昭和三十三年、三十四年と、八斗島のピーク流量約一万弱というのがございましたのが最大で、それ以後はそう大きなものが来ていないわけでございます。しかし、末端の改修工事の進捗、それから流域内の流出機構の変化等によりまして、キャスリン台風のとき程度の雨、これは大体二百年確率の雨でございますが、この程度の雨を対象にした場合に、とても一万七千トンという流出では済まないということで、いろいろと流出機構その他の検討をしている次第でございます。  したがいまして、上流のダムにつきましても三千トンということで十分ではなく、さらに下流の流下能力その他総合的に勘案いたしまして、さらに治水ダムによります洪水調節ということも必要になってくるものと思われます。またその方針で検討を続けているわけでございます。またかりに三千のカットといたしましても、雨の降り方の機構、これは上流の利根川本川を主体にした雨の降り方のときには八ツ場までのダムでもって三千のカットが可能なのでございますが、烏、神流方面を主体にした雨、あるいは吾妻川を主体にした雨、こういうような雨の降り方の主体におきましては三千のカットは不可能な部分がございます。こういうものもあわせて検討いたしまして、洪水計画の抜本的な改正と申しますか、これをいま盛んに作業を進めている段階でございます。しかし上流のダムにつきましては、今後洪水調節の必要性というものを相当お願いしなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  77. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 建設省からいただきました「利根川水系工事実施基本計画」、昭和四十八年三月三十一日大臣決裁になっている書類を拝見をさせていただきました。これを見ますと、せっかくいま松村さんのお答えですけれども、非常に解せない気がするのです。結局八斗島一万七千トンを中心とした改修計画、これでは不十分だというようなことを言われました。しかし、四十八年三月三十一日大臣決裁のこの文書を見れば、結局利根川の工事計画は八斗島一万七千トンをカットすることを目的として計画ができているじゃありませんか。そうしてダムについても、八ツ場が足らないようなことを言われましたが、この二八ページから二九ページを拝見いたしますと、矢木沢、藤原、相俣、薗原、下久保、それぞれ何トンカットするのだという数字がずっと上がっております。これを合計すれば三千八百九十トンカットになるじゃありませんか。三千トンカットがすでに八百九十トンオーバーしています。その数字は何も私がかってな数字を言っているんじゃなくて、この二八ページから二九ページにかけての数字の合計ですよ。それからさらに、これに利根水系においてこれこれのダムでカットをする必要がある、こう書いてありますが、吾妻川についても触れておりますが、品木ダムのことについて書いてあるだけで、矢木沢ダムが必要だなんということはこの文章には一つも書いてないじゃありませんか。これは本年の三月三十一日大臣決裁になった書類でしょう。これに基づいて、私どもはいまこういった法律もこの確認の上に審議をやっているわけですね。こちらのほうがあやふやだというようなことではとても審議できないと思うのですね。一体どうなんですか。群馬県民は、三千トンカットが必要だ、これは関東地域治水のためにも必要だ、そして協力してきました。そして三千トンカットはすでにできたのだということも建設省から聞いておるのです。そこへもってきてなおかつ足らぬのだということをここでお伺いしたのでは、私はどうもこれは全く理解しがたいと思います。文章だってそうでしょう、いかがですか。
  78. 松村賢吉

    松村政府委員 この四十八年三月三十一日付の「利根川水系工事実施基本計画」でございますが、これにつきましては、実は鬼怒川水系基本計画が改定になりまして、この部分の変更ということで利根川水系工事実施基本計画の全体の変更を出しているわけでございまして、鬼怒川以外のものにつきましては実は変更しておらないわけでございます。と申しますのは、ただいま申し上げました八斗島の基本高水、こういうものにつきましての検討がまだ終わっていないということで、まだオーソライズする段階にまでいかないわけでございます。それでこの検討をした暁にこの実施基本計画を変更したいということで、いま鋭意作業を進めている段階でございます。  また、ただいまの上流のダム群のおのおのの調節量の総計が三千をこえるというお話でございますが、これにつきましては、各ダムの調節した量がそのまま八斗島における流量にきくわけではございません。各ダムの時差等がございまして、こういうもののカットした量の総計が三千になるということではなくて、それが時差等あわせて八斗島で三千にきくことが必要なのでございます。
  79. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時差の話をされましたが、そういうことだったら初めから、時差もこれあり、洪水調節量の合計ではだめなんですよという話を建設省は明確にしておいたらいいじゃありませんか。三千トンを協力さしておいて、できた段階でそういうお話をされたのでは、私は当該地域は非常に迷惑すると思うのです。  それから、鬼怒川云々の話をされましたが、少なくとも昭和四十八年三月三十一日大臣決裁の計画であることは間違いないので、これですでに具体的な数字をあげておって、そうして八ツ場ダム云々というようなことをここには一言も触れていないのですから、そういうことをここの場で言われるということについては私は非常に遺憾に存じます。そういうことではこの水源地域人たちを納得させることは私はできないと思うし、まして地域住民人たちが、これからつくるダムは、先ほど来松浦君が指摘したような、まさに利水のための五百八十カ所のダムなんだ、その一つが群馬県にも来るのだ——一つじゃありません、たくさんでしょうが——というふうに理解をするのは私はやむを得ぬと思うのですね。こういう点、過去の建設省の施策の姿勢について私は重大な疑義をここで表明をいたしておきたいと思います。さらにこまかく議論をしたいのですが、時間もないようですから先に進みたいと思います。  それでは今度は利水の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、最初に、経企庁の下河辺さんがお見えでありますから、経企庁が最近策定されました「新全国総合開発計画総点検作業中間報告」「巨大都市問題とその対策」、これについて若干お尋ねをいたしたいと思います。これの三九ページを拝見をいたしますと、「水源開発事業進捗状況」の表がございます。それから経済企画庁が昭和四十六年六月十八日閣議決定による「水資源開発基本計画」利根水系の分でありますが、そういうものも拝見をいたしました。これを拝見をいたしますと、「利根水系における各県各用途別需要量想定一覧」というのがございまして、昭和四十五年から昭和五十年までの需要を想定をいたしております。それから「各事業別各用途別供給目標一覧」というのがございまして、ここにも各ダムの用途別の供給目標を示しております。それを見ますと、たとえば具体的にいいますと草木ダムです。こちらの基本計画によりますと、草木ダム利水地域が栃木、群馬、埼玉、東京となっております。ところがこの中間報告の三九ページのほうを拝見いたしますと、利水地域は東京、埼玉、栃木ということになりまして、群馬県はどういうわけかはずれております。一体これはどういうことなんでしょうか、それをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  80. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 三九ページのほうは、群馬県が落ちていることがミスであります。
  81. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ミスとは何ですか。ミスプリントの表をいただきましたが、ここはミスプリントという表をいただきませんでしたよ。私は、政府全体の姿勢の中に、そういう上流県に対する配慮のなさというものがこういった問題にもはっきり出ていると思うのですよ。要するに水源県から水を持っていけばいいのだ、利水県のいわば各企業に対してサービスをすればいいのだというような姿勢で現在の田中内閣ができておる、こういうところにこういうミスがあらわれているのじゃないかと思うのですが、御感想はどうですか。
  82. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 利根川水系につきましては、水資源開発促進法によります基本計画によりまして計画を持っておりまして、昭和五十年までをきめてございますが、それは大体年間三十五億トンの水を必要とする。その中で、上流県といいますか、北関東と南関東とに分けて議論を進めており、需要を計算しておりますが、その中で北関東については十三億トン、南関東については二十二億トンということが需要として想定されて、それに対して供給施設建設して供給してまいりたいということで、群馬県におきましても農業用水、上水、工業用水について考えていくということでございます。
  83. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それから、同じ三七ページの表についてお尋ねしたいと思うのですが、先ほどお話のありました八ツ場ダムを見ますと、十六トン・パー・セコンド、開発水量ですね。この水量をあげて全部都市用水に使うと書いてあります。農業用水はゼロです。先ほどあげた草木ダムについては、農業用水は若干こちらの基本計画でも見ておるようでありますし、この三七ぺ−ジでも「内都市用水」というので、一〇〇%ではありませんから理解ができるのですが、そうしますと八ツ場ダムを、まあ私はできないと思いますけれども、かりにつくるということを想定した場合に、これは全部都市用水ということですね。
  84. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 水資源開発促進法によります基本計画の中におきましてはまだ八ツ場ダム需要の内訳をきめておりませんので、現在では全部が都市用水かどうかということは確定しておりません。
  85. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまのお答えはおかしいと思うのですね。この三七ページでは全部都市用水と書いてあるじゃありませんか。はっきり書いてあるのですよ。下河辺さんというのは田中内閣の閣僚のスタッフの中では頭のいいほうでは指折りだといううわさを私は聞いておるのですが、つくりました書類がみんなどうもおかしいのでは困りますね。
  86. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 いま先生が御指摘になっております三七ページのほうには書いてないつもりでございますけれども、三九ページのほうの表に八ツ場ダムの十六トンが都市用水というふうに確かに書いてございます。しかしそれは先ほども申しましたように、基本計画がきまる際に正式にきめさせていただきたい、こういうふうに思います。
  87. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 訂正がお好きなようですから、これもついでに訂正したらどうですか、三九ページのやつは全部都市用水となっているのですから。私はそういうところに水源地域に対するいわば政府としての配慮が足らない点が明確に出ている、こういわざるを得ないと思います。  さらにお尋ねをしたいと思うのですが、今度はこれの一〇七ページを拝見いたしますと次のように書いてあります。これは結局、人口が都市において現在の趨勢でもって伸びる、趨勢が鈍化した場合、それから分散型になった場合、この三つを分けていろいろ議論をいたしておるようでありますが、結局物理的な供給限界まで利根水系開発いたしましても最大限四十三億トン、これはパー年だと思いますが、これだけ開発できる、ここにこう書いてあります。そうして趨勢型でいきますとさらに需要量がふえるので、これはたいへんなことになる。したがって趨勢鈍化型あたりで押えなければたいへんなことになるということを指摘をされております。その指摘の問題はここで議論をするのはおきたいと思います。問題は、四十三億トンが物理的限界だ、こう書いてあるわけです。それからさらに、先ほど来松浦君が全国的な規模で問題にいたしました五百八十カ所のダム昭和六十年までの需給計画の中で想定をしておられる。そうして南関東におきましては需要量が六十二・八億トン・パー年、これに対して供給可能量が四十三・一億トン、不足分が十九・七億トン、こうなっているわけです。そうして水系別には個所を示すということを松浦君の質問について答えたわけですね。私はこの問題は聞くということをあらかじめ建設省にも経企庁にも言っておいたわけでありますが、この物理的な限界までの開発四十三億トン、これについては一体どことどことどこに幾つくらいのダム計画をしておるのか、これは明確にしていただきたいと思う。これは松浦君の質問全国のとは違ってお答えできるはずだと思います。経企庁でも建設省でもどちらでもけっこうです。
  88. 松村賢吉

    松村政府委員 関東ブロック全体といたしまして十一水系、これは利根川、荒川、相模川、酒匂川、養老川、小櫃川、小糸川それから那珂川、久慈川、花貫川、大北川、それから信濃川の一部、天竜川の一部、木曽川、富士川の一部、こういうものの全体の開発といたしまして、施設が、十一水系で六十七のダム等をつくりまして——失礼いたしました。これは開発可能量でございます。後ほどすぐ提出いたします。
  89. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 建設省の「広域利水調査第二次報告書」を拝見いたしました、十一水系について。この水系と東京へ持っていく水の量だけは書いてあるのですが、どこにダムをつくってどうだということがございません。群馬の関係からいえば、利根川上流から十八・七六億トン、これを東京へ持っていく、こういうような計画になっておるようです。利根水系全般について、水系別の個所並びにどのような個所にダムをつくる予定か、資料をきちっと出してお答えをいただきたいと思います。  次に、それでは時間の関係もありますからお尋ねしたいのであります。法律の問題でありますけれども、冒頭、法律について若干お尋ねをいたしたわけでありますが、問題は何と言いましても、ダム建設によって犠牲を受けるのはもちろんその周辺の自治体、地域住民であることは当然でありますが、中でも一番の被害をこうむるのは直接水没対象になる人たちであることはもうだれも否定してないと思うのです。それに対する措置というのは第八条の「生活再建のための措置」、これだろうと思います。これを見ますと、たいへん書き方が不十分だと思うのでありますが、「あつせに努めるものとする。」こう書いてあります。片や第七条におきましては、この法律で、指定ダム等の建設については、関係地方公共団体は「できる限り協力しなければならない。」というようなことを書いてあるわけでありまして、つまらぬものしか内容にはないのでありますが、ダムをつくるほうは協力をしなければならぬというようなことがきちっと書いてあるというところにこの法律の大きな問題があると思います。そのことと、生活再建については昭和三十七年の公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、閣議決定ですね。昭和三十七年のこの閣議決定の内容、時間がありませんからこまかいことはいろいろ申し上げることはやめたいと思いますが、この要綱の内容は、結局お金でもって、時価でもって補償すればいいのだ、そうして精神補償でありますとか、事業損失に対する補償でありますとか、生活権補償でありますとか、こういうものについてはしないのが原則だという立場を貫いておられるわけですね。私はこれは間違いだと思うのです。しかも、水源地域水没される諸君に対して手厚い措置を講じようとするならば、単に訓示的な第八条の規定を書くだけではなくして、もとになっている閣議決定の要綱について、水没者の人たちに対していままで以上に補償をしていくのだと、この閣議決定の要綱というものをこの部分については改定をする、こういつたくらいの積極的な施策がなければ私は何にもならぬと思うのです。この点に対する当局の御見解を承っておきたいと思います。
  90. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  第七条の協力義務は関係行政機関の長、これは、ダム建設する大臣から、整備計画事業実施する大臣から、利水関係の監督官庁から、すべてそういった関係各省の長をさしているわけでございます。それからまた関係地方公共団体の中身といたしましては、当該県及び当該市町村、それから関係事業者は利水に関連する事業者等すべて、このダム建設に関連すること及び水源地域整備計画実施につきましては「できる限り協力しなければならない。」ということで、これらの方々が全員一致して努力することによって円滑なダム建設及び水源地域整備計画実施が推進されるというふうに考えている次第でございます。  それから「生活再建のための措置」につきましては「できる限り」ということではなくて、「協力して、当該生活再建のための措置のあっせんに努め」なければならないという趣旨で条文を書いているわけでございますが、運用上やはり関係各省の協力が必要でございます。そういった意味で、すでに関係各省の局長クラスをもって構成する連絡協議会の場もひんぱんに使いまして、生活再建について十分な対策を講じていく考えでございます。  また補償基準要綱の点につきましても、本法案審議に関連いたしましていろいろ御指摘もいただいておりまして、これは河川局からお答えするのはどうかと思いますけれども関係各局それぞれ、補償要綱のよりよき姿に持っていくための検討ということについても十分やっていく考えでいる次第でございます。
  91. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、具体的に聞きましょう。  米軍の基地あるいは自衛隊の基地等に対して防衛施設庁が補償するわけですね。この防衛施設庁の基準というものとこの公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱とは差があるということを承知しておりますが、何でこんな差があるのですか。その具体的な違いというものを改めるつもりというのは一体あるのですか。
  92. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 お答えいたします。  現行の損失補償基準考え方は、御指摘のとおり公共事業のために私有財産を使用または収用されましたような場合に、その生じます損失を補償するということを原則としておりまして、この財産権の回復、これを補償基準の中で基準化しておるのでございます。したがいまして、生活再建とかあるいは環境の整備といったような措置は、この基準の中では財産権に対する補償とは別個の体系のものとして扱っておりまして、具体的にあるいは個別的に起こる一種の行政援助の問題としてそういう措置をしなければならないのでございますが、補償の体系の中には考えていないという考え方できているわけでございます。  ところが最近、たとえば水源地立法あるいは米軍基地その他の大型の、社会的な変動を多く起こすような事業がしばしば出てまいっております。そこで各法律の体系におきましては、それぞれそういった行政措置等の義務づけをただいま河川局次長が申しましたような形で、いろいろ形がございますけれども、それぞれ個別的に法定化したりあるいは措置しているような次第でございます。  でございますので、この補償の基準要綱の中身は財産権に対する損失補償ということで、一種の財産権の権利として認める体系をとっておりますのでこの中に入れることについては種々問題がございますけれども、こういった要請にかんがみまして、建設省におきましても、従来権利として認められなかったような、あるいは認めにくいような、たとえば事業損失、日照あるいは騒音といったようなものについても、個別的ではなくて、何らかの統一的な基準をつくるということの必要性を感じまして、目下損失補償の制度の改善研究会というようなものを設けまして鋭意検討中でございます。御指摘のような大型のプロジェクトに伴うそういった措置につきましても、何らかの統一的な基準化をはかるような方向で今後検討を進めてまいりたいと存じておる次第でございます。
  93. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 お答えがありましたけれども、統一的基準をつくるために作業をやっているというのですが、現に建設省として大型のダムというのはたくさんつくってきたわけです。そしてそれに対する補償についてはこれから一歩も出ない。個々には具体的な戦いの中でそれはかちとったものもありますけれども、それは一応おきましょう。しかるに、建設省と防衛施設庁との実際の取り扱い、基準というものが違っておったということは私は問題じゃないかと思うのですよ。そうじゃありませんか。そういった違いがありながら、今日までまだ統一的な基準についてつくるべく努力中だということは私は怠慢だと思うのです。この点は大臣、どうですか。そういった各省別の行政措置の違いがばらばらにある。しかも肝心の建設省の統一的な基準についてはおくれているということについては十分反省をして、大臣としてひとつ何らかの措置をとるように御決意を明らかにしていただきたいと思います。
  94. 金丸信

    ○金丸国務大臣 補償基準要綱等につきましていろいろ御質問があったわけでございますが、基地の民生安定というような面につきまして格差もある。これは水源地域にありましても基地の地域におきましても、日本人であることは間違いない、平等であってしかるべきだと私も思います。そういう面につきまして、ただいま局長からもいろいろ御説明があったわけでございますが、ひとつ速度をつけて御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  95. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最後に、先ほど保留した分を除きましてお尋ねをして終わっておきたいと思うのです。  その一つは、林野庁にお尋ねしたいと思うのです。この法律によりますと、第十条に「国の普通財産の譲渡」というのがあります。過疎地域においてダム建設される場合に、特に農民の方々が代替地がほしいというのは当然です。そうした場合問題になるのは、国有林の譲渡を円滑にやってくれるかどうかということになるわけでありますが、「国の普通財産の譲渡」、この「普通財産」の中に林野庁が管理をしております林野財産たる国有林野というものは含まれておるのか、いないのか。そしてそういうものに対して林野庁としては快く協力をする気持ちがあるのか、ないのか、これをまずお尋ねをいたしておきたいと存じます。  それから、文化庁の長官に来ていただいておりますのでお尋ねをしたいと思うのですが、先ほど来お話の出ました八ツ場ダムというのは、あの地域に名勝、天然記念物がございます。私はこの法律ができても、文化財保護の立場からの天然記念物、名勝等の保存の問題はおのずから別な問題だと存じます。したがいまして、あの八ツ場の地区にございます岩脈並びに耶馬渓という天然記念物並びに名勝、これを当然保存する、こういう態度を文化庁は貫くべきだと私は思うのです。かつて昭和十九年から二十年にかけまして、あの地域に鉄が出るというので鉄道の建設をやりました。その際、鉄道の路線をどう敷くかということで議論があった際に、当時の文部省が当時の軍に対して、あくまでもこの名勝、天然記念物を残すべきだという立場で強く主張して、そして現在のあの岩脈が保存されたと聞いております。戦時中でもそうであったものが、文化財保護、自然保護というようなことがいわれておる現在において、それの破壊が許されるなどということは絶対にあり得ぬ、かように思います。それに対する文化庁長官の御決意を承っておきたいと思います。
  96. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  国有林野は御承知のとおりほとんど全部が企業用財産でございます。しかし、この法案の趣旨にのっとりまして、私ども水源地整備事業の用地につきましては積極的に、国有林野事業との調整をはかりながら御協力申し上げるつもりでございます。したがって、必要があります場合は用途廃止をいたしまして、これを普通財産といたしまして譲渡するつもりでございます。  以上でございます。
  97. 安達健二

    ○安達政府委員 御指摘のございましたように、問題になっておりまする地域に名勝の吾妻峡と、天然記念物の川原湯岩脈が指定されておるわけでございます。吾妻峡は昭和十年の指定になるものでございまして、全国で三十四カ所ございまする天然の峡谷の一つでございます。この問題が起こりました機会に、私どもといたしましてもさらに現状を調査する必要があるということで、一昨年の十一月に文化財保護審議会の専門委員の三人の方々に現地の調査をしていただきました。その結果、この名勝吾妻峡は非常に大切なものであるからぜひ保存をするように、こういう御意見もございまして、私どもといたしましてはこの名勝吾妻峡の本質的なものをぜひ保存したいという方針のもとに、建設省に対しまして、かりにダムをおつくりになる場合におきましても上流のほうで、吾妻峡の本質を阻害しないような場所にお願いをいたしたいということを申し上げておるわけでございます。私どもといたしましては、この名勝吾妻峡の本質的なものをぜひ現状で保存するようにいたしたい、かように考えているところでございます。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 文化庁長官のお答え、けっこうです。  林野庁にお尋ねしたいと思うのですが、あるいは大臣にお尋ねしたほうがいいかと思うのですが、私はやはり国の財産の譲渡を規定する場合、ダムができるのは過疎地域なんですから、結局問題になるのは、対象になるのは何かといえば林野財産なんですよ。ところがこの法律の規定では普通財産だけであって、林野財産である企業財産については書いてないわけです。この法律の趣旨にのっとって協力をするというようなことは言われましたけれども、それでは私は不備だと思うのです。水源立法をつくる場合に国の財産の譲渡を考えるとすれば、当然企業財産を入れるということ、それが目玉なのであって、肝心の目玉のほうが抜けておって、関係ない——関係ないとは言いませんけれども関係の比較的薄いものだけがちょっと書いてあるということでは、私は法律のていさいとして間違いだと思うのです。当然これは改めるべきだと思うのですが、いかがですか。それだけ承っておきましょう。
  99. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいま林野庁からもお話がありましたように、法律のていさいという問題はさておきまして、十分に連絡をとりまして、地域住民の土地の交換というような問題につきましては親切丁寧にいくように、ひとつ林野庁と全き連絡をとってまいることで御了解をいただきたいと思います。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 了解できません。了解できませんが、時間だから打ち切っておきましょう。
  101. 松村賢吉

    松村政府委員 先ほどのダムの個所数を申し上げます。  利根川水系が十六カ所、荒川水系が八カ所、それから相模川水系が一カ所、酒匂川水系一カ所、それから小櫃川水系三カ所、養老川一カ所、小糸川一カ所、那珂川六カ所、それから久慈川二カ所、合計三十九カ所でございます。  それでおもなるものにつきましては、利根川は草木、八ツ場、南摩、川治、奈良俣、それから渡良瀬、桐生川、霞ケ浦、それから河口ぜき、それから房総導水路等でございます。(山口(鶴)委員「「等」が肝心なんだ、いままでのものはみんな出ておる」と呼ぶ)「等」はちょっとまだ未定の分がございますので、ひとつ個所数だけあげておきます。それから荒川は滝沢外七カ所でございます。それから相模川は宮ケ瀬でございます。酒匂川は酒匂ダムでございます。以上、全体で三十九カ所ということであります。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その「等」が肝心なので、「等」が明らかにできないようでは、その「等」についてはおやめになったがよろしい、こういう意見だけ申し上げておきましょう。
  103. 服部安司

    服部委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  104. 服部安司

    服部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬崎博義君。
  105. 瀬崎博義

    瀬崎委員 水源地域対策特別措置法案は、ダム建設にあたって、第一に真に関係住民生活の安定と福祉の向上を保証し、第二に真に関係住民の要求をくみ上げ、住民意見に沿って事業が行なわれる、真に水質保全等、国土の保全を確保することを保証するものなのか。それとも、従来のやり方では関係住民の抵抗を受けたり、地方自治体の消極性を招いて、ダム建設が思うようにいかないから、若干の利益誘導でそれを促進しようとする意図のものなのか。提案している政府の意図がそのどちらに重点を置いているのかという点について、しばしば本委員会でも論議はされておりますが、根本的な問題ですから、再度大臣の御見解を聞いておきたいのです。
  106. 金丸信

    ○金丸国務大臣 水源地域関係につきましては、水没者と、またはその下流人たちの問題とを比べてみますと、まことにいろいろの問題点が起きておるわけでありまして、そういう問題点を考えてみますと、犠牲というようなことばになってあらわれてくる、その犠牲を最小限にするということが政治であろうと思いますし、また生活再建というような問題につきましても考えなくちゃならない。そういう意味で今回の法案を提案いたしたわけでございますが、先般来からこの法案につきましての御討議をいただいている中で、この法案が全きものではないじゃないか、私も全きものであると申し上げるわけにはいかないと思いますが、しかし足らないところはいわゆるその精神を心といたしまして、あくまでも行政の面で補って、そして全きを得ていきたいという考え方であります。
  107. 瀬崎博義

    瀬崎委員 つまるところ、水を利用するサイドと、それからそれを利用されることによって犠牲をこうむる住民のためと、一体この法案でどちらに重点を置こうとしているのですか。
  108. 松村賢吉

    松村政府委員 この法律は、ダム建設されることによって影響を受ける地域、この影響をなくすようにしようということが第一の目的でございます。したがいまして、湖沼施設につきましては水質の保全ということも目的にしておりまして、これを第一の目的としまして、こういうことをすることによってダム建設促進ということも考えようということでございます。
  109. 瀬崎博義

    瀬崎委員 事実を通じて一体どちらを政府は真に意図しているのか見ていきたいと思う。  いま大臣は全き法律ではないと言われた。そういう法律でありながら、第二条や第九条等についてはその適用範囲を制限しております。じゃ、この法律の適用を受けないようなダム建設にあたっては従来どおりのやり方でいい、こういう考えなんですか、政府は。
  110. 松村賢吉

    松村政府委員 この法律を適用しないダム、これにつきましても、そのダム建設することによって、事の多少はありますけれども、やはり影響ある部分もあると思います。したがって、そういうものにつきましては行政措置によりまして、この法律に準ずるような措置関係各省協力してやっていきたいというふうに考えております。
  111. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それじゃ、なぜ法律でこういう制限を設けようとしたのですか。
  112. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  新しい整備計画法律によって組んで事業実施するという場合には、ダム建設による相当程度の大きな影響が地元にあるということを前提にしているわけです。しからばどの程度をもって相当程度の影響があるかという判定につきましては、戸数にして申し上げますと三十戸というのが一つの最小の部落、集落としての単位であるという考えで、三十戸を一応の標準にして、関係各省と打ち合わせをやって、実施に入るという考え方にしているわけでございます。
  113. 瀬崎博義

    瀬崎委員 もう一ぺんはっきり聞いておきますけれども川田次長は、この法案の審査の過程で、個人補償公共補償をさらに補完する、いわば不利益補てんともいうべき考え方を入れているのがこの法案の特徴だという話をしていますね。だから、そういうふうな法案の一定の基準にかからない、つまり本法案対象にならないようなダム建設でも、同様な事態が起こるならばすべてこの法案の精神にのっとって今後処理していく、そういうふうに考えていいわけですね。
  114. 川田陽吉

    川田政府委員 運用上の基準を定めておりますので、ボーダーラインとか、それからラインからはずれるものも出てくるわけでございますが、実質的にそういう整備計画と同じような事業実施する必要があるという場合が起きた際には、指定はいたしませんけれども関係各省連絡協議会の場におきまして取り上げて、同じような扱いをするようにいたします、こういうことでございます。
  115. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この法案対象になっておるようなダム、湖沼とよく似た現実に行なわれている事業、あるいはこの法案対象となるであろうダムについて現実の事例をあげて、ひとつ実態を一ぺん見てみたいと思うのです。一つは琵琶湖、一つは福島県の大川ダムです。  まず、琵琶湖のほうから……。この委員会の論議の中でも、琵琶湖総合開発特別措置法について、これが、事業実施する者に生活再建措置に対する特別な配慮を義務づけておる点とか、下水道事業、土地改良事業等に若干の国の補助のかさ上げが行なわれるように規定されている点がどうも特別強調されておって、この琵琶湖法案並みにすれば水源地域対策法案がよいような印象を受ける話もあったので、あえて私はその点で若干の注意も促すという意味質問しておきたいのです。  まず、琵琶湖総合開発特別措置法の第三条、計画の決定、変更の問題については、公聴会等で「住民意見をきき」、こうなっているわけなんです。すでにもう当初の計画の決定は見ておるわけでありますが、私の見るところ、公聴会そのものが、私どもの党で出席した人があるわけなんですけれども、きわめて制約したもとにおいて行なわれている。その意見も十分に反映されていない。しかも、事業が始まってまだ、具体的にはやっと着工段階に来たばかりなのに、御承知のように浄化センターの建設などで激しい住民の抵抗を受けて、大臣もいろいろ弁解されておったが、結局事業は一時中断せざるを得なくなってきている。こういうことから見れば、「住民意見をきき」ということがほんとうに政府に理解されておるのならば、この時点で当然住民意見をくんでの計画変更などがあってしかるべきだと思うのですが、そういう点について、第三条でいわれておる住民意見を聞くという、その根本問題をどの程度に政府は考えているのか。もう一度聞いておきたいのです。
  116. 川田陽吉

    川田政府委員 先生御承知のように、琵琶湖の総合開発事業というものは、この琵琶湖総合開発特別措置法によって初めて実施されるわけでございます、法律的に。一方、水源地域対策特別措置法が考えております、そのもとになりますダム建設という事柄自体は、御承知のようにずっと前からやっているわけでございます。具体的にダム建設する場合はどうなるかと申しますと、ダム建設計画を定めた場合には、何をおいても地元の土地所有者との個別の折衝に入るわけでございます。また同時に、市町村あるいは都道府県の当局とも折衝に入るわけでございまして、その間におきまして、個人の補償及び公共補償に対する地元の御意向はそこで十分知ることができるわけでございます。そこでこの水源地域対策特別措置法は、手続といたしましては、都道府県知事水源地域整備計画をつくる際には市町村長意見を聞くということによって、地元住民方々意見も知り得ることができますので、実質上全く支障がないというふうに考えているわけでございます。
  117. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一体何を答えているのですかね。私が言っているのは、水源地域対策特別措置法案でも整備計画などをきめるにあたって、確かにいまおっしゃっておるように市町村長意見を聞くということになっておるけれども、さらには、公聴会を開いて住民意見を聞くということになっておる琵琶湖総合開発の場合の計画決定の際に、住民意見が聞かれていないし、現在すでに住民の抵抗にぶつかっておるのじゃないか。それと同じ程度のものであるならば、住民意見を聞いて計画などをきめることにならないし、そういうことがわかっておるのに計画を変えようとしないというのであれば、この水源地域対策特別措置法案市町村意見を聞くということの内容がどの程度のものであるか、同じ方式だということになるのだ。だから、琵琶湖総合開発計画そのものについて、一度大臣は住民意見をいまこそ真に聞くべきじゃないか、そう思いませんかとお尋ねしておるわけなんです。
  118. 川田陽吉

    川田政府委員 先生御承知のように、琵琶湖総合開発計画の案の作成については、第三条によりまして正確な手続が規定されております。それでそのとおりの運用も行なわれているわけでございますが、特に先生御指摘のような、住民方々の御意見というものもこれは一応伺った上で定めた計画でございますので、特に支障はないと考えるわけでございます。
  119. 瀬崎博義

    瀬崎委員 意見が完全にくみ尽くされておった民主的なものであるならば、そもそも事業のしょっぱなからその事業の中断を余儀なくされるような事態にならないはずなんですね。そういうふうな現実に起こっておる事態を正しく見直しているかどうかということを聞いているので、川田次長によれば、手続が合法的だから、これで住民意見を聞いたことになったのだといえばそれまでですが、それが公式の政府の態度、法律的な手続さえ踏んでおれば、いかに住民内容について批判を持ち、意見を持っておっても、そういうものは無視していいのだ、そういうことなんですね。どうなんですか。
  120. 川田陽吉

    川田政府委員 法律運用上のあり方として、無視していいのかどうかというお尋ねでございますが、まあ無視という言い方は、何かたいへんひどいといいますか、そういった一部の反対の方々があるのだということを全く忘却するという姿勢がいいのかと言われれば、やはりそういう声も十分聞かなければならぬというふうにお答えしなければならないわけですが、かといって、法律に定められた手続を踏んできめた計画を変更しなければならないかということになりますと、これまた事実上の判断の問題ではないかと考えるわけでございまして、ただいまのところ近畿圏整備本部等からも、特にこういった計画を変えるという話を伺っていない次第でございます。
  121. 瀬崎博義

    瀬崎委員 だから政府の、住民意見を聞くというのはどういう程度のものかは、そういうことから大体察しがつくわけなんです。だから、今度の水源地域対策にあたっても、整備計画のつくられる過程ほんとうに民主的なものになるかどうかについては、過去のそういう例から、あるいは現実に起こっている例からして、われわれは疑問をはさまざるを得ないということになると思うのです。  同じく琵琶湖で、生活再建措置の項目が入っている唯一の法律だということで評価されておりますが、その琵琶湖総合開発特別措置法第七条で、「その者の申出に基づき、」ここが第一点、「事情の許す限り、」ここが第二点、「当該生活再建のための措置のあっせんに努めるものとする。」ここが第三点、これの具体的な実施について水資源開発公団のほうに聞きたいのです。どういう配慮をいま行なっていますか。
  122. 柴田達夫

    柴田参考人 事業実施する私ども公団のような建設に当たるものが、生活基礎を失う者に対しまして生活再建対策を講ずることはもう当然のことであるというふうに根本的に心がまえております。  生活再建と一口に申しますが、公団の自体の事業では補償いたします。しかし、この補償の実質におきましても、実際上生活基礎を失う者に対して生活再建に役立つものがございますので、まず私ども考え方といたしましては、公団で許される範囲において、許す限り、補償措置におきまして実質上生活再建に役立つように考えてまいるということが基本でございます。  次には、いかに補償措置を講じましても、住民生活再建に対しては補償措置だけでは不十分でございます。したがいまして、この不十分であり、補償措置では解決できない問題につきましては、私どもとしてはこの琵琶湖の法律の七条なり、あるいは今回の法律では八条に同じような趣旨のことがございますが、土地、建物の取得あるいは職業の紹介、指導あるいは移転先の環境整備、こういうようなことにつきまして、地元の県、市町村等と相協力いたしまして、あっせんにも極力つとめる、こういう基本的な考えでおります。
  123. 瀬崎博義

    瀬崎委員 「その者の申出」というのは、一体どういう人からの申し出を受けようというんですか。
  124. 川田陽吉

    川田政府委員 これは第八条では、整備事業実施する者、それから関係行政機関の長、関係地方公共団体、そうしたもの及び整備事業実施する者が、指定ダム等の建設、それからダム建設に伴って必要とされる整備事業実施に伴いまして生活基礎を失うこととなる者すべてを含んでおります。
  125. 瀬崎博義

    瀬崎委員 問題をそらしちゃいけないんですよ。それはいま審議されている法案でそうなっている。その同じ内容がすでに琵琶湖総合開発の中に盛られている。このほうはいま事業実施されている。だから、そこで現実水資源開発公団がどういう態度をとるかによって、いまのかかっている法案の第八条の内容がわかる。もう一ぺん水資源開発公団に聞きます。「その者の申出」という「その者」というのは、どういう範囲の人々であれば意見を聞こうというのですか。具体的に……。
  126. 柴田達夫

    柴田参考人 ただいま河川局次長がお答えになりましたけれども法律上の文章といたしましては、この琵琶湖措置法の七条の場合は、土地に関する権利、漁業権その他の権利に関して損失を受けた者、生活基礎を失うこととなる者が対象でございますので、「その者の申出」とは、つまり土地に関する権利を失った者あるいは漁業権その他で損失を受けた者、そういう対象になる方々の申し出によって措置するわけでございます。
  127. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それは個人的な申し出であっても受けるわけですね。
  128. 柴田達夫

    柴田参考人 結果的には個人的な申し出に対しても当然考えなければならないと思います。しかし補償の場合におきましては、多くは交渉団体等を設けまして、事柄によって、あるいは地域によって補償交渉をいたす例が多いのでございまして、この生活再建措置は補償と一緒になって要望が出てまいるわけでございますので、実際の場合には補償の交渉等において、困る人たちはこういう人たちであるということを、地元の責任者、市町村長なり関係団体の長からお申し出がありまして、それに対しまして、A、B、Cという一人一人のものでなしに、包括的に、生活基礎を失われる者に対しまして生活再建策を講ずることが通常であると思います。
  129. 瀬崎博義

    瀬崎委員 霞ケ浦なんかの場合も共通してくるのだろうと思うのですが、水資源開発公団が実施する琵琶湖開発事業工事及び水位変動に伴う補償対策の基本的な態度については「基本事項の取扱要領」というものが出て、これに基づく説明がすでに第一回行なわれている。出先の建設部長の話によれば、これ以上に金額などを入れた、通常ダム等建設に伴う損失補償基準というようなものは出さない方針だ、こう言っているわけなんです。そうなってくると、この「基本事項の取扱要領」の内容が非常に問題になってくるのだけれども、これが非常に抽象的なんです。一、二御紹介してみますと、湖岸堤、管理用道路の計画内容決定にあたっては「県と予備協議を行ない、関係市町及び関係団体等に事業計画説明を行なって意見を聴取し、地域の実態等を調査検討した上、それらの意見を調整し決定する。」となっているし、内水排除施設計画については「諸調査の結果に基づき県、関係機関と協議調整のりえ決定する。」となっているし、南湖、瀬田川しゅんせつの計画内容の決定にあたっては、これも同じく「諸調査の結果に基づき環境保全、水産業、湖底遺跡等との関係を十分配慮して県、関係機関等と協議する。」となっているわけなんです。これでは実際何ぼ説明を聞いたって、住民のほうは具体的にどうしてくれるのか、ちっともわからないと思うのです。ですから、こういう点についてはもう少し具体的に公団側の態度を示すべきではないかと私は思うのです。ですから、いまここに書かれている内容をもう少し具体的に方針を説明してほしいと思うのです。
  130. 柴田達夫

    柴田参考人 琵琶湖開発事業の補償は、御承知のとおり非常に区域も広範でございまして、かつ水位変動に伴う損失というような、非常に複雑な内容を持っております。したがいまして全部の補償基準をこまかく統一的にきめることは困難でございます。しかしアンバランスを生ずることはよくないことでございまして、ただいま先生がお読み上げになりましたのは「基本事項の取扱要領」と書いてあると思いますが、これを先般八月の事業開始の一番最初におきまして県と十分協議を遂げまして、県と共催で八月以来ずっと説明会は開いているようなわけでございます。こまかいものがなければこれではわからぬではないかというお尋ねでございます。確かにいまお読みになりましただけでは具体的でございませんが、そういう統一方針をきめまして、あとはこの方針に従いまして個々の補償対象物件、施設の種類あるいは地区ごとに実情に即した補償基準をきめまして、補償交渉に当たるという所存でございます。
  131. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局何も説明してないじゃないですか、この「取扱要領」以上のものは。いま私が例を引いた文章に共通しているのは二つあるのです。一つは、諸調査の結果に基づきということ、いま一つは、県関係、市町関係、団体関係機関と協議、この二つなんです。そこで具体的に問題になるのは、この調査は、公団側としてはこれから行なうものについてはどういう形で行なおうとしているのかということ、過去の資料も含め、今後調査された資料内容について住民に対してこれを公表するのかどうか、この点が問題になると思うのです。まずこれを聞きましょう。
  132. 柴田達夫

    柴田参考人 具体的な補償交渉を進める際に、どういうふうな手順でやるかということにつきましては、先ほど申し上げましたような統一方針によりまして、まず方針はきまっております。それに基づきまして、さらに今度は具体的にその事項を各地域、各種類の施設に適用いたしますために調査方法を統一いたしまして、また土地等につきましては不動産鑑定評価等を活用いたしましてやってまいります。これはダムのように、点と申しますか、そういうような補償の場合は、一つの場所でございますので一つの統一基準でやれますが、長い道路の場合でございますとか水路の場合等は、いずれもこういうようなやり方でうまくやっているわけでございます。  それからお尋ねの実態調査にあたりましては、全体の施行計画に合わせまして、行政区域を勘案をいたしまして調査個所、調査対象を選択をいたしまして、さらに調査方法を統一して実施してまいることにいたします。  次に補償交渉のやり方でございますが、補償物件、地域によって実態が異なりますので、一律に処理することは困難でございますから、実態に応じて、たとえば漁業補償につきましては一括交渉、築堤の用地の買収でございますれば地区ごとに交渉を進める。また公共補償でございますれば、これは地方公共団体等の機関相手のことでございますので、市町村等と個別に協議していくことに相なると思います。  最後に、そういう実態調査をやるのだが、その結果を公表するかというお尋ねでございますが、補償交渉に当たります際に、まとまりました調査関係者に十分相談をしてまいる。一般的に公表はいたしませんけれども、実態調査の結果を関係機関、関係者に十分内容を御説明してまいる、こういうやり方でやる所存でございます。
  133. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そこでまた二つの問題が出てきたと思うのです。一つは、公団だけの調査ではこれは済まないと思います。いわゆる事業主体もいろいろ入り組んでいるし、利害関係者も複雑多岐だから、同じ実態調査といっても、結果が違うような資料が幾つか出る場合がある。そういうような場合の調節はどうするのかということ。いま関係住民には示すと言われた。その関係住民とは一体どういう人々をさすのか。また示す時期は、この補償の話し合いに入る前にちゃんと示すのか、それとも一定のところまで進んで初めて明らかにするのか、こういうことが問題になると思う。しかし時間もありませんから、事こまかには聞きません。  ひとつこれは大臣のほうに聞いておきたいのです。そういうふうな資料というものはもう事前に十分公開されて、そしてそれぞれ結果の違った資料とか、あるいは専門学者などの意見が違うような場合には、やはり民主的に協議することが必要だということと、それから関係住民については、かってこの席で松村河川局長が、水資源開発公団の個々の事業については、「原則的には基本的な同意——個々の一人一人の同意ということは、これはまた場合によってはございますが、基本的な同意を得て着工いたします。」こういう答弁をしておるのです。だから私ははっきりさせておいてほしいのは、ここでいう関係住民とは関係する個々の住民を含むのだ、こういう点をはっきりと大臣から回答を出しておいていただきたいと思うのです。
  134. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私も詳細の事務的な問題については承知しないわけでございますが、先ほど来から河川局次長あるいは水資源公団の総裁からいろいろ説明がありまして、その範囲という問題は、万人ひとしくということもなかなかむずかしい問題じゃないかということを考えてみますと、関係の町なり団体なり、そういうものに通達することによってその趣旨が下に浸透していくということになるのじゃないか、こう私は思います。
  135. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それじゃ重ねてお聞きしますが、そういう資料を公表するという原則と、公表する資料が、確かにそういう市町村関係団体を通じてではあるけれども関係する末端住民に十分熟知されるという条件だけは満たすべきだとお考えになりますか。
  136. 金丸信

    ○金丸国務大臣 いま民主的な時代でありますから、そういうことを皆さんに熟知させるように地方公共団体の長なりその関係人たちが十分なPRをして、徹底をしていただくことは十分に必要だと私も思います。
  137. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうだとするならば、この間私は出先の水資源開発公団の琵琶湖開発建設部へ行ったわけです。部長は、この地下水位の変動調査について近畿地建がデータを出しているのですが、これの提出を拒んだわけです。理由を聞いたら、こういうものを出すと円滑な補償交渉ができなくなる、こういう理由なんです。いま大臣の言われた内容と出先のやっていることと違うのです。詰めたら、政府が明快な方針を出してくれればそれに従う、こういう見解であったので、私はあえて聞いたのです。結局こちらに来て本省のほうで詰めれば、その資料を出すということになりましたけれども、一番必要なのはわれわれよりも対象になっている住民なのです。ですから常にそういうものは求められれば公表すべきなのだということだけ、もう一度はっきりしておいていただけませんか。
  138. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ものごとを隠しながら仕事を実施して前へ進めるということはやるべきでない。すべてを明らかにしながら、協力を得ながらやっいくことが賢明な策だと私は考えております。
  139. 瀬崎博義

    瀬崎委員 水資源団総裁、よくわかりましたね。出先に伝えてください。  次に大川ダムの問題です。これは大臣もたしか現地に行かれたのじゃないですか。よく御存じなんでしょう。  まず、このダム建設の要請は、地元住民サイドから見ればどういう目的でつくってくれということであったのですか。
  140. 松村賢吉

    松村政府委員 この大川ダム計画でございますが、当初段階、一番最初の予備調査をやっている当時の段階でございますけれども、これは第一番に洪水調節、それからかんがい用水の補給、それから発電を入れたものとして考えております。ただし、そのかんがい用水というのは当時としてはまだ具体的な問題としてはなっておりませんでしたが、こういう三目的を持つ多目的ダムとしてよず実施計画に織り込み、昭和四十六年に着手したということでございます。
  141. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それ以前のものも含めまして、地元の陳情等を見ればほとんどがいまの治水とかんがい用水で陳情がされているわけなんです。こういうことだけは大臣も御存じなんでしょう。委員長、大臣の確認を求めてください。
  142. 金丸信

    ○金丸国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  143. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一番最初、四十五年八月ですか、「大川ダム建設事業計画書」ができたのは。その内容、及び四十六年四月の北陸地建が出している事業計画内容におけるダム目的はどうなっておりますか。
  144. 松村賢吉

    松村政府委員 四十五年八月につくりましたダム計画といたしましては、洪水調節とかんがいと発電でございます。
  145. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ところがそれが四十七年十月の「大川ダム計画概要」、こういう公表されたパンフがあるのです。これになりますと、ダムの効果として、洪水調節、特定かんがい用水、都市用水、それから揚水発電、こうなっていますね。それは公表されているのです。その点をひとつ注意してください。こういう公式パンフレットによって広く住民内容が宣伝されているのです。さらに四十八年九月の「大川ダム計画概要」になりますと、内容がさらに変わります。大川ダムの効果としては、洪水調節、それから水道用水、会津若松市ほか三町二村に二万七千五百トン・パー・デー、それから工業用水、会津若松市に対して七万二千五百トン・パー・デー、それから揚水発電百万キロワット、ダム式発電二万一千キロ、こうなってきたのです。それがこういう四十七年十月に出たのと全く同じようなていさいのパンフレットとなって今回公表された。  ですから、この一連の変化のあとをたどりますと、最初九十六万キロワットであった揚水発電の計画が百万キロワットに増加、そして今度はついに二万一千キロワットのダム式発電まで加わった。また、最初計画になかった都市用水が昨年の段階で大まかに計画に顔を出し、その後、上水道、工業用水道と利用区分も明確になり、九月四日には、工業用水については名目を県で会津若松地区工業用水道とすることにきめたという話もある。結局、この経過をたどってみますと、最初の大目的であった農地に対するかんがい用水は今日では計画から消え去って、最初なかった都市用水、工業用水などがさらに大きくクローズアップされ、発電容量もふえた、こういうことになっておるわけです。しかも、そういうことを住民には逐一知らさずに、うっかり見ているとこの内容の違ったパンフが全く同じにしか見えない。これはもう地元住民をペテンにかけたような詐欺行為じゃないかと思うのですが、そういう点については、大臣どういうようにお考えになりますか。
  146. 松村賢吉

    松村政府委員 大臣がお答えする前に、事務的に私のほうから見解を申し述べます。  大川ダム計画につきましては、先ほど申し上げましたように四十六年、七年と、二カ年実施計画調査という段階でやってきているわけでございます。したがいまして、この段階におきましては調査内容確立ということが一つ目的でございますので、内容におきまして、調査段階その他におきまして多少変更するということはあり得ることでございます。したがいまして、この発電の規模等が多少変わったということ、それから新たに都市用水の要請等が出てきまして、会津若松市等に供給するということを計画に組み入れることになったわけでございます。また農業用水につきましては、当初からいろいろとお話し合いを続けてきたわけでございますが、これは農林省の工事計画等とも関連するわけでございますが、計画等がまだ確定しないということで、このダム計画からは一応特定の農業用水としてははずしておるわけでございますが、この確定を待ちまして、こちらのほうとしてはやはりこのダム計画に入れる用意はあるわけでございます。  それで、ダム計画といいますものは、多目的ダム基本計画、これができる段階において一応確定するわけでございますので、正式には基本計画の確定ということで確定するわけでございます。その場合に、地元等に対するPRの問題といたしまして、パンフレット等におきましていろいろ誤解を生じたことにつきましては、私どもやり方がまずかったと深く反省しておりまして、これについては十分反省いたします。
  147. 瀬崎博義

    瀬崎委員 地元に対するPRがまずかったと言われるけれども、四十七年十月と四十八年九月発行の一般向けパンフレットの内容について、あなた方の出先、阿賀野川工事事務所に私が行って、私自身も見のがすところだったのです。全然出先の所長から変化しているという説明がないのです。まあ偶然かどうか、私、ほっと気がついたから変化がわかったわけなんです。ですから、もしいまの河川局長の答弁がほんとうのものとするならば、直ちにこういう間違った内容、あなた方の意図を正しく表現していないという大川ダム計画概要、四十八年九月発行は回収して、もう少し正確な内容のものにして出し直すべきだと思うのです。そしてこれからきめられようとする基本計画にあたっては、必ず当初の約束どおり農業用水を含むのだということを明記しなければいかぬと思う。これはここで断言しますか。
  148. 松村賢吉

    松村政府委員 古いパンフレットを回収するということは事実上不可能かと思います。
  149. 瀬崎博義

    瀬崎委員 古いものを言っているのではない。四十八年九月を言っている。
  150. 松村賢吉

    松村政府委員 四十八年九月でございますけれども、すでに配布したパンフレットを回収するということはむずかしいと思いますが、ただし、新しい計画内容におきましてこれを周知徹底するようにさしたいと思います。  それから農業用水を入れるということでございますけれども、これは基本計画におきましては、現在まだ農林省の計画がきまっておりませんので、このダム計画内容といたしましてはこれを入れる余地はございます、ございますが、これはまだ農林省の計画が確定しない段階におきましては、これは入れるということは表面上はできないと思います。
  151. 瀬崎博義

    瀬崎委員 入れる余地があるということは、かんがい用水として起こり得るということじゃないですか。それだったら何も隠す必要はないのであって、ちゃんとそれだけの水はこのように農業用水にとってあって、これだけはかんがい用水として従前の流況に加えてかさ上げできるのだと、はっきり言えばいいじゃないですか。
  152. 松村賢吉

    松村政府委員 これは先ほどからのことばを繰り返すようになりますけれども農業用水のいわゆる農林省の改良事業計画、これが確定いたしませんと、いろいろ費用の負担の点その他から、この計画の中に入れてはっきり確定することが事務上できない問題になります。
  153. 瀬崎博義

    瀬崎委員 事務上できないことと、そういうことを何も知らない一般の人が、いまの状況であれば農業用のかんがい用水が削られたとしか思えないような説明しか外には行なっていないということと、この矛盾を一体どこで解決するのですか。
  154. 松村賢吉

    松村政府委員 誤解のないように説明することにしたいと思います。
  155. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その誤解のないような説明を、広く会津地域の農民の方々にどういう方法でしようとしているのですか。一番広く知り得るパンフレットがこういうものであって、これは回収しないというのでしょう。まだ幾らも出ていない。四十八年九月だから、今月ですよ。だから具体的な処置を私は求めているわけなんです。こういうものにはっきりと追加して、農業用水はこういうふうな形で確保されているのだ、事務上はこういうことになっているのだ、そういうふうにはっきりさすのかどうかということを私は聞いているわけなんです。
  156. 松村賢吉

    松村政府委員 やり方の方法としてはいろいろあるかと思いますが、説明会等を開く等も一つ方法かと思います。いずれにいたしましても周知徹底するようにいたします。
  157. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では農林省のほうに聞きます。  農林省としては、いまのようなダム目的変更についてはちゃんと建設省から相談を受けておりましたか。
  158. 長高連

    ○長説明員 お答え申し上げます。  私どものほうの会津南部という地区でございますが、これにつきましては会津総合開発調査事務所が私どもの機関としてございまして、常に建設省の出先機関と協議して事を進めております。
  159. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私どもは、そのあなた方の言う出先機関、東北農政局あるいは総合開発調査事務所にも行ったわけなんです。ところが、この出先機関としては、七月二十五日、知事と副知事と地建の局長と河川部長、用地部長、この間でとりあえず表面上かんがい用水は排除した形で基本計画がつくられることに同意した、その話し合いには加わっていないということを聞いてきているのです。それでもあなた方はちゃんと協議を受けて行なっているということになるのですか。もしそうだとしたら、あなた方もこれを承知したということになるのですよ。
  160. 長高連

    ○長説明員 お答え申し上げます。  正式の協議は受けておりませんけれども、福島県のほうからそういう情勢であるということの報告は受けております。
  161. 瀬崎博義

    瀬崎委員 本来農業用水、かんがい用水を確保しようということで出発したダムが、こういうふうに大きく目的を変えられようとしているときに、県を通じて建設省がそういう意図を持っていることを伝え聞いている程度のことで農民に対して責任が持てますか。もう少しはっきりしてください。
  162. 長高連

    ○長説明員 これにつきましては、私ども決して農民の利益を無視しているということではございませんので、私どもの会津南部の計画につきましては、いろいろ地域内で詳細な技術的な研究を行なうわけでございますが、その結果、中間報告でございまして、これは来年確定したいと思いますが、私どものいまの計画内容では、現在の会津南部地域の許可、慣行合わしての水利権内容で水がまかなわれるのではないかというような調査報告も出ておりますので、そういうことでいま私どものほうからも、大川ダムの貯水量の中に農業用水を入れるかどうかということについてはやや疑点が生じておりますので、決して農業用水を、農民の利益を無視して削除されるのを黙っているということはないので、その間の事情を含めて御協議申し上げております。
  163. 瀬崎博義

    瀬崎委員 あなた重大な発言をしましたよ。あなた方の調査等によれば、問題になっている会津南部地区の農業用水について、いまの大川ダムに、特別、水をためてもらう必要がないかのような話でしたね。ところが「会津南部地区土地改良事業計画概要」という、会津若松市農政部発行、昭和四十八年二月二十一日の説明書によりますとこう書いてありますね。「用水の不安定により圃場条件は低位の域に停滞しており用水改良が強く叫ばれておりその開発は緊急を要するものである。」と事業目的を書いた上、水源計画について「不足水量は大川ダム建設省多目的ダム)依存とする。」と、はっきり書いてあるじゃないですか。それでこういうものを発行するようだったら、あなたのほうは何の調査もなしに、勘でやっておった、こういうことなんですか。
  164. 長高連

    ○長説明員 お答え申し上げます。  私の表現が悪かったと思いますけれども調査は数カ年にわたって継続しますので、その段階でいろいろの問題が生じまして、確かに中間でよく固めていないでそういう発表をするのは遺憾と思いますけれども、いま、正直申し上げまして、右か左かということを決定するのに非常に微妙な段階でございまして、そういうふうなあやふやな表現をとるという結果になっていると思います。
  165. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私、東北農政局の総合開発事務所に行ったときに相手に出られた方のことばをここに控えてもらっておる。農林省の出先は、建設省は独断でやってしまうので困る。——大臣どうです、これはちゃんと事前にこういう結果になるのだということを十分出先農政局あたりと相談しながらやりましたか。
  166. 金丸信

    ○金丸国務大臣 大川ダムの問題につきましては、長年調査、研究いたしてまいったダムでありまして、その経過につきましては詳細は私も知り尽くしておらないわけでございますが、農業用水問題等につきましても、いま農林省関係から答弁がありましたようにいろいろな問題点もあるようであります。しかし一番最初の出発目的がかんがい用水ということであるということでありますれば、当然それを考えながら、いわゆる水の高度利用ということを考えるべきだと私は思いますので、この問題につきましては今後農林省とも十分連絡をとり、いままであるいは連絡が不十分である点は改めまして、御期待に沿うようにいたしてまいりたい、こう考えます。
  167. 瀬崎博義

    瀬崎委員 誤解があってはいけませんから農林省に言いますが、地元住民は水が要らないと言っているのじゃないのですよ。問題はダム工事費に対する地元負担がかなわぬ、こう言っているわけなんです。その地元負担の計算も建設省サイドと農林省サイドで発表が違っているわけです。農林省のほうの発表でいけば、ダム費用に関する地元負担は三十五億円、十アール当たり七千五百五十一円なんです。ところが建設省サイドの発表でいけば、これは去年の時点ですが、四十八億なんです。したがって十アール当たりは一万円をこしていくようなことになる。こういうふうな状態でいままで来ているわけで、だから農民サイドからは非常な不信と非難が出てきたわけなんです。そこをごっちゃにしないでほしいのです。水は要るのです。金が出せないのです。ここを大臣もよく考えてほしいのです。ですから、水源地域対策特別措置法案の提案の趣旨を最初に聞いたのも、ほんとうに、水没する水源地域の人々を含め、水源地域の水にたよっている人々の利益を考えるのか、それとも電力会社や工業用水で受益する大企業の利益を考えるのか、どっちなんですかということであったわけです。ですから、いまのよく検討したいという具体的な内容として、正式の基本計画にはちゃんと当初の予定どおりかんがい用水は入れますか、入れませんか。これを大臣、はっきり答えていただきたいと思うのです。
  168. 金丸信

    ○金丸国務大臣 かんがい用水の問題につきましては、これは必要であるということでありましょうし、私もうすうす聞いておりましたのは、いわゆる工事費の負担の問題があってこの問題がなかなか解決しないというように聞いておるわけでありますが、その水によっていままで十分な生活をやっておったということでありますから、一つの水源というものもあろうと思いますし、そういう意味で、これは農林省とも十分話し合い、ひとつその調整をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  169. 瀬崎博義

    瀬崎委員 農林省と相談し、農林省の意見を尊重すると言われますけれども、現地の実情はきわめて複雑な関係にあるわけなんです。といいますのは、相当地域がすでに基盤整備事業をやっておりまして、それの農民負担が相当額にのぼっておるわけです。ですから、その上にいますぐこのダム建設費用の一部を農民負担にかぶせるというふうなことになってくれば、結局関係市町村ごとの農民の利害関係の対立も含まれて、なかなか事は早急に解決しない、これが実情を一番よく知っている農林省の出先機関の意見なんです。ですから、ほんとうにかんがい用水のことを重点に置きながらダムを考えておるんだったら、こういう見切り発車をやめてほしい、ますます交渉がある意味ではせかれてくるし、それだけ困難になる、こういうことなんです。ですから、もしも事務的な手続上、基本計画にいまかんがい用水を明記することが困難だといわれる条件があるんだとするならば、基本計画の設定は私は延期されなければならないと思います。そのどっちかだと思うのであります。かんがい用水をはっきり基本計画にのせるか、それともそれが困難だということなら延期する、このどっちかでしょう。これがほんとうにいまの大臣の答えの具体的な内容になるんじゃないかと思うのです。いま一度お願いをします。
  170. 金丸信

    ○金丸国務大臣 かんがい用水は基本計画の中に入れてやることが私は当然のあり方だと考えます。十分御意思に沿いまして調整をしてまいります。
  171. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ではその一つは大臣の前向きの御答弁があったので、本席での答弁ですから、まさかそれがまたうやむやになるということはないと私は確信して、いま一つの問題に移ります。  というのは、先ほど松村局長の話でいけば、表向きかんがい用水の確保をうたっていないけれども、しかし——ちょっと、こっちの言うことを聞いてくださいよ。言ってしまったことはそのまま……。表向きかんがい用水のことをうたっていないけれども、その該当する水の余裕を残している、こういうことでありましたね。そうなんでしょう。ところが実際にはこの揚水発電所のために一千万トンの水を一日間で上下さすわけでしょう。片一方、二万一千キロワットの揚水発電のほうには毎秒四十五トンの水が必要になってくるんでしょう。こういう条件を加味して、どうしてもやはりダムの満水位の高さとかあるいは低水位の高さというものが一定の範囲内に位置せざるを得なくなってくると思うのです。それでもなおこの農業用水、かんがい用水に送るだけの余裕は十分とってあるということは言えるのですか。
  172. 松村賢吉

    松村政府委員 これは容量の中の配分におきまして、揚水発電一日において必要な量、これも考慮いたしまして、農業用水としての必要な量は確保できます。
  173. 瀬崎博義

    瀬崎委員 発電の場合は、これは年間大体平均してやはり水が要るということになります。農業のほうはそうではありません。ですから、ある時期には農業用水は不要だ、しかし将来の渇水等、あるいは水需要が見込まれるために水をためておいてほしいというような状況があっても、発電の事情からいけばやはりそうはいかないということになって、矛盾してくると思うのです。こういう点は私も昨日ずいぶん建設省説明に来られた方に問いただしたわけでありますが、結局そういう状態の場合には発電量のほうを制限して必ず必要な水は保持するんだ、こういう話だったのです。はたしてそれができるかなと私は言っていたんですが、問題は、そういうダム操作をするときに一体だれが主たる判断者になるのか、ここが問題だと思うのです。ほんとうに農民が水が要ることが目先に見えているからしばらくいまは水をためてほしいと要望したらそうするのか。そういうふうな点についてもこの際はっきり聞いておきたいと思います。
  174. 松村賢吉

    松村政府委員 このダムの操作につきましては、管理規則あるいは管理規程、こういうものをつくる際にそういうところを明記するわけでございまして、発電とそれから農業との水の使い方、これははっきりさせることでございます。
  175. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では、そのダムの操作規則をつくるときにどういう関係者に相談してきめるのですか。それもはっきりしておいてください。
  176. 松村賢吉

    松村政府委員 ダムの操作規則、これをきめるときには、関係行政機関の長、それから関係都道府県の知事及びダム使用権の設定予定者またはダムの使用権者の意見を聞きまして、建設大臣がきめます。
  177. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それでは現状では農民を代表するような団体の意見は、操作規則設定のときに入りますか、入りませんか。
  178. 松村賢吉

    松村政府委員 関係行政機関の長といたしまして農林大臣がもちろん入っておりますし、また関係都道府県知事、これが入っておりますので、これらによりましてその意見を反映させることになります。
  179. 瀬崎博義

    瀬崎委員 福島県知事が入っているからといって問題の解決にはなりませんよ。福島県知事があなたのところの局長と会って、農業かんがい用水は要らないと七月二十五日に言ったために建設省はそうしたんだ、こういうことになっておるのです。ですから、直接やはり大川の水にかかる関係の農民の何らかの代表が参加している必要があると私は思うのです。ですから、川田次長がもうすぐさま法律を出して、それにさえはずれていなければいいんだという態度をとるんだけれども、政治的な判断でこれは大臣ひとつ御検討いただきたいと思うのです。大臣の答弁を求めます。
  180. 松村賢吉

    松村政府委員 ただいまの形式論といたしましては、当然いまの都道府県知事あるいは関係行政機関の長ということになりますが、実際問題といたしまして、この内部の原案その他を調整する段階には、地元の団体等ともこれは十分打ち合わせをいたしましてやっていくのが実情でございます。そういうことからこのダムの操作規則等もでき上がるわけでございますので、各方面の意見をいれたものとお考え願いたいと思います。
  181. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は大川ダムの場合特にそれを心配するのは、発電容量が非常に大きいためにダムそれ自体の水位変動幅も非常に大きくとられてくる。だからそういう点で従来のような考え方では私は困るんで、やはりこの本席なり、あるいは基本計画の中なりに、ダムの操作規則をきめる場合には農民の利害関係についてはこういうふうな形で反映するんだということをはっきりさしてもらわなければ、おそらく現地の住民として安心できないんじゃないかと思います。それでそういう答弁を求めておるわけですから、従来そうだからということではちょっと困ります。はっきり、大川ダムの場合こうするんだというふうに言ってください。
  182. 松村賢吉

    松村政府委員 私どもは知事を不信任しているわけではございませんで、これは全面的に信用するわけでありますが、しかしそれだけでいいということじゃなくて、やはり地元住民意見も十分考えて、また打ち合わせをしまして操作規則をきめていくつもりでございます。
  183. 瀬崎博義

    瀬崎委員 揚水発電ですから、この大川ダムの水を上に揚げて大内沼にためる。この大内沼のほうも私、非常に危険があるのじゃないかと思う。といいますのは、結局六百万立米と最大千六百万立米の間を変動するわけなのです。つまり、変動する量のほうが固定する量より大きい、そういうため池になってくるわけです。ですからそういうことが、その周辺の地下水等々含めて、自然環境に予期せざる影響を与えるのではないかという心配もあるのですが、こういう点についての危険性はないのですか。また、そういうことは調査は十分されているのですか。
  184. 松村賢吉

    松村政府委員 このダムを使いましての発電の計画は発電事業者がやるわけでございますけれども、これは私どものほうで河川管理者として水利権の審査もいたしますので、これの影響等については十分調査をいたしますし、その結果支障がないということでやることにいたします。
  185. 瀬崎博義

    瀬崎委員 つまり、調査はこれからであり、その調査結果を見た上でこの揚水発電の問題も最終的には決定するのだ、こういうことですか。
  186. 松村賢吉

    松村政府委員 調査はもうすでに続けておりますし、また発電事業者としていろいろ調査もしておりますし、これらのものを全部総合して審査して決定するということでございます。
  187. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は引き続いて、この水没地域の方方からも要望書が出ているので、その代表的な問題について取り扱いの基本方針をお尋ねしたいと思ったのですが、時間がありません。ただ、基本的に見て、これは大臣が御存じかどうか知りませんが、水没地域方々がこういうふうな要望書を市議会あてに出していらっしゃるのです。この中には、いま提案されている水源地域対策特別措置法案の中に盛られているような内容と合致するものもあれば、若干それより幅の広いものもあるわけなのです。ただこれが、努力義務として政府が鋭意解決につとめる程度であっては困る切実な問題が多いので、個々の問題はいま省略させてもらって、いずれかの機会に譲りたいと思うけれども、全体として現地の人が切実な要望として出されている項目等については、これは生活再建の問題も含んでおりますが、どうでしょうか、これはやはり新しい考え方に基づいて、従来の基準においてではなしに積極的に解決をはかるお考えですか。そういう行政指導をされますか。どうですか。
  188. 金丸信

    ○金丸国務大臣 この法案内容につきましては十分御審議をいただきましたわけですが、この法案、全きものでない、もっと盛るべきものもあろう。なお、この法の足らざるところにおきましては行政の面で、先般来申し上げましたようにかゆいところへ手が届くようなことを考えなければ、いわゆる水没地域水源地域等の人たちの拒否反応が起きてくるということになれば、ダム建設というものはますます困難になってくるということを考えるわけであります。その意味で、ほんとうに親切な、愛情を持った行政をもって足らざるを補ってまいりたい、こう考えております。
  189. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ダム建設が困難になるからその住民の要求を聞くという発想じゃなしに、ダム建設があろうとなかろうと、やはりそういう地域住民生活問題を常に考える、こういう姿勢でおってくださいよ、それを強くお願いしたいのです。  最後に、私は琵琶湖問題なども含めて、水源地域の問題に関して常々思っていることなのですが、一方では非常な勢いで山を削り、谷を埋め、緑をはぎ取って土地造成、ゴルフ場などが建設されているわけです。また山林は乱伐されたままで、植林事業はさっぱり進んでいない。これはもう大臣だって認められると思います。日本全国至るところそのとおり。琵琶湖の周辺はまさにそのモデル地区です。ですから、一口で言って、こういう大企業の乱開発をいままで許してきた、あるいはそれを現在そのまま野放しにしている状態で、片一方水源地域住民や農民に犠牲を強要して、人工的に何とか水を確保しようとしても、これはたいへん矛盾した話だと思うのです。ですから、こういう水源地域対策を考える大前提として、むしろ琵琶湖などのような水源地域に対しては特別な保全の措置を講じなければならないと思うのです。必要ならきびしい規制も必要だと思いますね。売りたい土地も売れない場合もあるかもしれないが。それにはやはり国が積極的な助成をする、植林事業などについても抜本的にやはり国の補助率を引き上げてどんどん木が植えられるような仕組みにする、そうして自然の保全作用というものを十分やった上でなお琵琶湖に手をつけるというなら話はわかるのですけれども、いまは全く逆だと思います。そういう根本的な問題についてひとつ大臣のお考えを伺って終わりたいと思います。
  190. 金丸信

    ○金丸国務大臣 最近の環境破壊というものは著しいものがあるわけでありますが、そういうことを考えてみますと、本来人間尊重という立場から考えてみましても、また人間の生存という上から考えてみましても、当然環境整備ということは必要であるということでありまして、そういう意味で政治の姿勢としてはあくまでも、水没地域あるいは水源地域人たちのことに関しましては、またあるいは山間地のゴルフ場等を開設する、乱開発が行なわれる、こういうようなことにつきましても、細心の努力をして、いわゆる環境保全というようなことをやっていくことが私は今日の政治だと思うわけであります。そういう意味で、各官庁と十分に連絡をとりますし、また建設省でやるべき仕事は建設省でもそういう面について十分な配慮をして今後まいりたい。なお、法律的にこれはやれないということであるならば、法律をつくってもやるべきだ、こう考えております。
  191. 服部安司

    服部委員長 福岡義登君。
  192. 福岡義登

    ○福岡委員 一般論につきましてはすでに同僚委員質疑をしておりますので、私は具体的な事例について若干の質問をさしていただきたいと思います。  建設省は広島県に灰塚ダム計画されまして、予備調査をおおむね終了し、昭和四十九年度から実施調査に入ろうとされておりますが、このダム目的、規模などについて御説明をしていただきたいと思います。
  193. 松村賢吉

    松村政府委員 灰塚ダムにつきましては、江の川水系治水全体計画の一環といたしまして、昭和四十年ごろから調査に着手したわけでございます。ところが昨年の七月の集中豪雨災害の実情から、その早期実施の要望が非常に強くなっております。そこで四十九年度、来年度には実施計画調査に着手したいという考えでおります。  このダムは、江の川水系上下川の広島県双三郡三良坂町に建設するものでございますけれども、洪水調節と既設用水の補給を行ないますほか、庄原市、三次市周辺に都市用水を供給することを目的といたします多目的ダムでございます。現在の予定では、高さが五十メートルほど、総貯水容量は約五千六百万立方メートルでございます。それでこれに伴います水没戸数は約二百三十戸前後という見込みでございます。
  194. 福岡義登

    ○福岡委員 水没する耕地面積、山林あるいは公共施設、そういうものもあると思うのですが、概略でけっこうですからつけ加えて御説明をいただきたいと思います。
  195. 松村賢吉

    松村政府委員 まだ詳しい調査はできておりませんが、現在の概略で申し上げますと、耕地が約二百二十ヘクタールで、山林が八十ヘクタール、それから公共施設といたしまして約四カ所ほど、学校が二つ、神社が二つ、大体そんなところでございます。
  196. 福岡義登

    ○福岡委員 実施調査は四十九年度から始められるのですが、基本計画が決定されるのは大体いつごろになる見通しでしょうか。  そして、ついでに一緒にお伺いします。ダム建設実施者、これは建設省だと思うのですが、管理者は将来どう考えられておるのか。  それからダム使用権の設定予定者はどういうものが考えられておるのか、一緒に……。
  197. 松村賢吉

    松村政府委員 基本計画はいつできるかというお話でございますけれども、普通は基本計画実施計画調査が終わって計画が固まった段階においてつくるわけでございますので、まだ実施計画調査の進み方がはっきりしませんが、通常の例でいきますと実施計画調査というのは二年くらいやるのが普通でございます。ただし、この場合は緊急を要しますので、できるだけ縮めてやりたいというふうに考えております。  それから、この管理者は直轄管理を予定しております。建設省直轄ということになると思います。  それからダム使用権設定予定者でございますけれども、これもまだ具体的にあれをしておりませんが、庄原市、三次市でございますので、ダム使用権は、この都市用水を取水をする、使う者でございますから、おそらく市ではないか。はっきり確定しておりませんが、いずれ打ち合わせをしましてきめていきたいと思います。
  198. 福岡義登

    ○福岡委員 ダムの使用権の設定予定者のことで念のためにお伺いしたいのですが、仄聞するところによると、江の川水系から芦田川水系に分水をするという計画が一ころあったようですが、そういうことは全然ございませんか。
  199. 松村賢吉

    松村政府委員 この灰塚ダム計画につきましては、分水計画は考えておりません。
  200. 福岡義登

    ○福岡委員 わかりました。  次の問題は、いわゆる住民参加といわれておるダム建設について、灰塚の場合、今日までどのよりな関係町村、もちろん県を含めてでありますか、建設省との接触といいますか、協議、意見を求められた場合があるでしょうか。今後、来年度から基本計画調査に入られるわけですが、どういうことを考えられておるのかということをお伺いしたいと思うのであります。
  201. 松村賢吉

    松村政府委員 現在灰塚ダムにつきましては予備調査中でございますので、組織だった地元との話し合いという段階まではもちろんいっておりませんけれども、やはり地元住民あるいは市町村、こういうところと打ち合わせをしながら調査を進めている段階でございます。今後もこの調査をぜひいたしまして、地元と接触を保ちながらお願いしたいと思います。
  202. 福岡義登

    ○福岡委員 じょうずを言えばいまおっしゃったようなことになると思うのですが、実際には予備調査をさせてもらいたい、あるいは実施調査をしんいという建設省の申し入れがなされておることは事実なんですが、いわゆる地元意見を聞くというような場は、公式的にはもちろんですが、非会式にもなかったように思います。この問題はまたあとで出てくるのですが、特に実施調査に入られるということになれば十分関係市町村なり——市はこの場合ないのですが、地元といろいろ疎通をはかってもらうようにしていただきたいということを強く要望しておきたいと思うのであります。そこで基本計画を作成する場合には、建設大臣は知事の意見を聞かなければならないときめてあるのですが、先ほどの御説明によると、通常基本計画が決定するまでは二年くらいかかる、こうおっしゃったのですが、今回の場合できるだけ急ぎたいという注釈も加わったのですが、かりに二年の実施調査を必要と仮定すれば、県知事に意見を求められるのは、通常どの時期に求められるのか。建設省構想が九九%固まった段階でお聞きになるのか、それとも実施調査に入ってそう時間が経過しないときに聞かれるのか、その辺の、県知事の意見を聞かれる時期についてお聞かせいただきたいと思います。
  203. 松村賢吉

    松村政府委員 基本計画につきまして正式に知事の意見照会は、基本計画の形ができまして正式に協議をする段階でございます。ただし、実際問題といたしましては、素案をいろいろ検討している段階に、知事さん直接ということではございませんけれども、担当者間、事務局間の調整は十分やりまして、その御意見を入れながら内容をつくってまいります。
  204. 福岡義登

    ○福岡委員 実際はそうだろうと思うのですが、問題は知事が意見を述べる場合、議会の議決を経なければならない、こうあるわけですね。この知事が議会の議決を経る時期、いわゆる議会に具体的に問題が出てくるその時期ですね、ここが私は非常に大切だと思うのです。それまではそのつど建設省と知事部局が協議をする、そのときには議会意見というものは入らないわけですよ。したがって、県議会にも出ぬくらいですから、関係町村の意見を聞くこともおそらくないのじゃないか。固まって、知事が議会の議決を求める、その前後に——後は含まないでしょうが、そのときに初めて関係住民なりあるいは関係町村に計画内容というものがわかるのであって、そのときにはすでに、地域住民あるいは関係町村の住民意見を述べても、積み重ねてきておるわけですから、事実上はある意味では、県議会が、知事が進めてきた積み重ねに同意しない場合があるかもしれぬ。あるいは同意するとしても相当問題を残しながらやる場合があるように思うのです。法律の規定から申しますといま申し上げましたようなことになっておるのですが、実際面、それではうまく関係者の意見を聞くというようなことにならぬように私は思うのです。その辺についての御見解はいかがでしょうか。
  205. 松村賢吉

    松村政府委員 形式論からいきますとただいま先生の言われたようなことになるわけでございますが、実際には、この内容をいろいろ打ち合わせる段階、これは県当局とももちろんやるわけでございますけれども、あるいは市町村それからまた水没者の団体、こういうところとも実際問題とすると打ち合わせを続けて、正式の場に持ち出すまでにそういう場をつくってやっていきたいと思っております。
  206. 福岡義登

    ○福岡委員 その点を強く善処を要望しておきたいのです。  さて本論の水源地域整備特別措置法のことなんですが、ダム建設基本計画と並行して整備計画の作成を行なう、できれば同時決定されることが望ましいんじゃないかと私は思うのであります。そうでなければ開発が先行しまして、地域住民生活犠牲にするということになると思います。むしろ、開発のメリットがその地域住民にも及ぶことを事前に示して、そしてダム建設それ自体にいろいろ意見を出してもらうということが非常に私は重要だと思うのですね。また、この法律が成立をする意義というものも、考え方としてはそこにあると思うのですね。ところが法案を見ますと、ダム建設基本計画が先行しまして、そうして水源地域指定の申請を知事が行なう。内閣総理大臣がそれを指定する。そうして今度、遅滞なく、県知事は整備計画の案を作成して出す。こうなってまいりますと、ダム建設というものだけが先行いたしまして、水源地域整備というのがはるかにおくれていく。この灰塚ダムの場合でも、関係者は強くまだ反対の態度をとっているわけであります。その主たる理由というのは、おそらく、ダム建設されて、御説明がありましたように二百数十戸の立ちのきをしなければならぬ、生活再建はどうなるのか、いろんなことが心配だから反対をしておると思うのですね。もしダム建設をされ、その地域整備が行なわれることによっていまよりも生活がよくなる、こういうことが明確になればまた話は別の局面が出てくるように私は思うのですが、その時間的な時差、いわゆるダム建設基本計画水源地域指定、そうして今度整備計画の決定というようにあるのですが、その時間的なズレというものがむだな摩擦を招く場合が相当あるように私は思うのですが、その辺について一体どういうようにお考えになるでしょうか。法理論その他よりも、灰塚ダムに具体的な例を置きまして、来年度から実施調査に入る、いつごろどうなってという一般論でけっこうですから、大体この法律が成立をしたならばどういう手続になるであろうかということをちょっと述べていただければ参考になると思うのです。
  207. 松村賢吉

    松村政府委員 実施計画調査の進め方その他によって違うと思いますけれども、一般論でいきますと、来年実調に入るという形になりますと、普通は二年間ほど実調をやるわけでございますから、次に事業計画事業に入るということになると思います。その段階において実施基本計画をつくるということになるわけでございます。しからばこの法律によります整備計画、これがいつできることになるかということでございますけれども、これは理屈からいいますと、基本計画ができたあとにつくるというのが本来でございましょうけれども、しかしこれは政令でダム指定すれば、これに基づいて知事さんがこの地域指定の申し出なり水源地域指定、それから整備計画の案を内閣総理大臣に出すことができます。したがいまして、この政令の指定というのを早くやりまして、この整備計画のほうも基本計画と同じ時期においてできるような形にできるだけ努力をして持っていきたいと思います。
  208. 福岡義登

    ○福岡委員 ぜひそういう配慮というか、善処をするべきだと思いますので、強く要望しておきたいと思うのであります。  それから問題は整備計画の手続なんですが、先ほどもちょっと触れましたが、水源地域として内閣総理大臣が指定したならば、遅滞なく、県知事は関係町村長その他の意見を聞いて、整備計画案を作成し、提出をしなければならぬ、こう書いてあるのですね。「遅滞なく」というのは、これは知事がやるわけですから建設省に明確に答えてもらうことも不可能かと思いますが、この立法をされるときにはおおむねどういうことを考えられまして——結論はさっき言いましたように、基本計画が確定するまで整備計画をやるというような、そういう河川局長のお話がありましたから、それで一定の方向は明らかになっておるのだが、立法段階における、この条文を書かれたときの「遅滞なく」というのは大体どの辺に置いておられるのか。
  209. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  この法律目的からいたしまして、水源地域整備計画を策定するということは、当該地域生活環境と産業基盤等を整備いたしまして、関係住民生活の安定と福祉の向上をはかる目的をもって行なわれるわけでございます。したがいまして、都道府県知事は、水源地域指定されたならばできるだけ早く水源地域整備計画の案を作成して、内閣総理大臣に持ち込むことが地域住民利益につながるものでございますので、これはできるだけ早いほうが望ましい、こういう私ども考え方でございます。
  210. 福岡義登

    ○福岡委員 県知事は、整備計画案を作成するときには関係町村長の意見を聞かなければならぬ、こう書いてあるわけですね。ところが、これは法律の形の上でそこまでは規定できないのかもしれませんが、関係町村長の意見を原則的には知事は尊重しなければならぬ、これは当然のことなんですが、法文上にはその規定は何にもないですね。それから問題は、いろいろ町村長が意見を知事に述べる場合に、——たとえば県知事が総理大臣に意見を述べるときに県議会の同意を得なければならぬということが基本計画のときにはありましたね。そういうような町村長はおそらく関係地域住民なりあるいは議会にも相談すると思いますが、この法案の中にはそれがないわけですね。その辺はどういうように行政指導をされようとしておるのか。この法案をつくられる段階ではどういう配慮がなされておるのか、そこのところもお聞かせをいただきたいと思う。
  211. 川田陽吉

    川田政府委員 水源地域整備計画は、一種の地元に対する不利益補てん事業として行なわれる補償関連の事業計画である、個人補償及び公共補償の補完的な一種の不利益を補てんするための事業であるという考え方でございまして、地域の大規模な総合開発というようなものと若干本質において異なる面がございます。そこでむしろ補償の際に個人的な折衝、あるいは市町村団体等との水没の道路のつけかえの折衝とか、そういうものの関連において出てきます御要望というものは十分市町村長も把握し、また間に立っておる都道府県知事も把握できますので、特に別段の機構的なものを間に置かなかった次第でございます。
  212. 福岡義登

    ○福岡委員 大体理解できそうなんですが、この灰塚の場合、いまおっしゃったようなことばかりでも解決できぬ場合があるのじゃありませんか。大きい問題がありますのは、この三良坂町の人口は四千数百名しかいない。そこで水没戸数が二百戸をこえる。人口にしますと千人をこすのじゃないでしょうか。そうすると相当の割合になりますね。かりに千だとすれば、四千の二五%ですか、二〇%前後の人口が減る。一万も二万もおれば別ですが、わずか四千数百名の人口である三良坂町から二百戸あまりの戸数が減っていく。それが他の町村に全部かりに出ていったとすれば、三良坂の町の形態それ自体が維持できないのじゃないかというように思われます。それじゃ町内にこれらの人の移転先を考えるということになりますと、限られた土地の中に一挙に二百数十戸の人たちが移動するのはたいへんなことになると思うのですね。そういうようなことを考えてみますと、これは川田次長がさっき言われたようなことだけでは解決できない。ある意味では三良坂町の総合開発的なものを考えなければいけない場合もあるのじゃないかという気もいたします。それから二百三十戸の方々生活再建を考えてみましても、ほとんどが兼業農家ですね。水没する自分の家の周辺におそらくこの農地はあると見なければならぬと思うのです。そうしますと住宅の移転だけでは済まない。農地造成もそれに当然関連をしてくる。それが先ほど言いますように、三良坂町内で農地造成をやろうとすれば、宅地造成その他を合わせて相当開発になるのじゃないか。そうなってまいりますと、ただ単に折衝の過程で個々の事情を掌握をして、それでそれぞれ対策を立てていくというやり方では不可能な場合がある。ですから、三良坂町という町をつくり直さなければならぬ。そういう意味では、再開発という開発計画を、独自のものを立てなければならぬ場合もあると思うのですね。  こういうことを考えてみますと、町長が知事に意見を述べる場合には、最小限、町議会なりあるいは町内の住民の意思を尊重しなければ、聞かなければいけないということが予想されるわけであります。これ以上ここで論争はいたしませんが、そういう配慮をぜひこの三良坂、灰塚の場合はやってもらわないと、ただ単に川田次長がおっしゃったようなことでは解決できないのじゃないかということを、強く訴えておきたいと思うのであります。  さらに、もう御承知だと思うのですが、かりに集団移転をするとした場合、いなかの生活様式は町中と違いまして、たとえば、農業はしていなくても自分のうちで食べる野菜ぐらいは軒先でつくっておる。野菜その他を買いに行くとしましても近所に店屋がない。灰塚の場合もそういう生活様式なんですよ。そうすると、ただ単に百坪の宅地があればいいのだ、こういうわけにちょっといかぬ。宅地プラスのそういう蔬菜園といいますか、小さな畑くらいは、というようになってくるわけであります。そういうものも、地域整備計画が立てられるときには相当配慮されなければならぬのじゃないかという気もいたします。そこで重ねて申し上げるわけなんですが、灰塚ダムが具体化する段階ではまたわれわれも意見を述べたいと思いますが、ぜひそういう立場からの整備計画というものを考えていただきたいと思うわけであります。  以上で終わるのですが、初めに申し上げましたのは、ダム建設それ自体について摩擦のないように、町村あるいは地元と十分パイプを通していただきたい。いまは御承知のように強い反対をしているわけですから、その反対の理由もいろいろあると思うのですが、間違ってもそれを権力で押し切ることのないように十分配慮していただきたいということが一つであります。もしいろいろな経過を経てダム建設をするということになった場合、できるだけ早く地域整備計画もやっていただきたい。それでダム建設基本計画ができるまでには整備計画もできる、こういうような御配慮をしていただきたいということを重ねてお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 服部安司

    服部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  214. 服部安司

    服部委員長 これより本案を討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。村田敬次郎君。
  215. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、自由民主党を代表して、水源地域対策特別措置法案に対し、賛成の意を表するものであります。  最近における経済社会の発展と生活水準向上に伴い、ダム及び湖沼水位調節施設等の建設を促進し、水資源開発と国土の保全をはかる必要があることは言をまたないところでありますが、他方、大規模なダム等建設は、その周辺地域生活環境、生産機能等の基礎条件に著しい影響を与えるため、その建設の隘路となっているのであります。  これらの問題に対処するため、従来とも、水源地域整備関係住民生活再建等について各般の施策が講ぜられてきたところでありますが、本案は、これらの施策を一そう推進するため、水源地域生活環境、産業基盤等の計画的な整備及び湖沼の水質保全等水源地域対策について特別な措置を制度化し、関係住民生活の安定と福祉の向上をはかろうとするものであり、本案は、水資源開発等が緊急な課題となっている今日、まことに時宜に適したものと考えるのであります。  以上で賛成討論を終わります。(拍手)
  216. 服部安司

    服部委員長 森井忠良君。
  217. 森井忠良

    ○森井委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に反対をする立場から討論に参加をしたいと思います。  私ども社会党が本法案に反対をいたしますその第一の理由は、本法案は、水資源確保のためのダム建設または湖沼の水利用の促進をはかる上で隘路となっております周辺地域住民の反対に対し、一定の水源地域整備生活再建、国の負担の割合の特例を設けるなどによって事業の促進をはかることが目的でありますが、法案内容検討いたしますと、水源地域住民にとって最も大きな問題点である生活再建の問題をはじめ、住民の要求にこたえるものでなく、この法案成立の後は、本委員会の答弁でも明らかになりましたように、むしろ住民の意思を無視した建設強行のてことされる危険があるということであります。  その二つ目は、この法案の眼目は水源地域住民生活再建にあるわけでありますが、いわゆる金銭補償の原則をいささかも出るものでなく、法案に示されたような内容は法制化するまでもなく、水資源公団あるいは地方自治体等ですでに実施していることでありまして、それ以外の条項はほとんど水源地域住民に直接影響を及ぼす事項でなく、したがって問題解決のために意義あるものとは認めがたいのであります。  三つ目は、水資源問題については、やはりこの委員会で明らかになりましたように、新全総あるいは田中首相の個人著書といわれます日本列島改造論の中においても重要な位置づけがされておることが明らかでありますが、基本的な水資源問題に対する政策検討をさらに深める必要が幾つか残っておることを私ども発見をいたしております。  したがいまして、私ども社会党といたしましては、本法案はきわめて中途はんぱなものであり、再度あらためて抜本的な水資源対策を立てる必要があると考えるわけであります。  以上をもちまして反対討論を終わりたいと思います。(拍手)
  218. 服部安司

    服部委員長 浦井洋君。
  219. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、水源地域対策特別措置法案に対する反対討論を行ないます。  第一に、この法案水源地域指定は知事の申し出に基づいて内閣総理大臣が行ない、水源地域整備計画は、案を知事が作成して内閣総理大臣が決定するとなっています。  われわれは、この法案で、地域指定における住民異議の申し立て、地方議会の議決、計画案作成への住民の参加などを規定すべきであると強く主張するものであります。  第二に、水没地域住民生活再建及び水源地域における地域的な再建措置が全くあいまいであるという問題であります。  この法案では、生活環境施設として公共住宅の建設、宅地の造成、造林、保育所、公民館、消防施設、電話等が水源地域整備に欠くことのできないものであるにもかかわらず、これらが国の負担割合の特例から除外されています。  さらには、水没住民生活再建に対するダム起業者の再建事業等についての実施義務は単なる倫理規定に終わり、明確ではありません。  われわれは、現行補償制度を憲法第二十五条及び第二十九条の精神に照らして、財産権だけでなく、生存権をも補償するよう改めるべきだと考えます。また、生活再建等に対する国、都道府県の負担やダム起業者の責任を明確にし、対象範囲も、水没地域住民の総合的な生活を保障し得るものに拡大されなければならないと考えます。さらに国の負担、補助の特例を認める事業対象を広げることが必要であり、水源地域市町村ダム建設に伴って行なわなければならない事業に対する財政的保障をも行なうべきであると考えるものであります。  第三に、水源地域整備事業に要する費用の一部を下流自治体に負担させる問題であります。  本来、広域的な災害防止や生活用水の確保等はすべて国の責任で行なわれるべきが当然であります。その責任を、ダム建設ということで下流の自治体に事業費の一部を負担させるなどということは、責任転嫁もはなはだしいといわなければなりません。  最後に、この法案は、水源地域住民生活再建、地域再建の要求を逆用し、わずかな国の負担のかさ上げを代償にダム建設を上から押しつけ、下流住民の負担を強要し、さらに国民犠牲で大企業中心の国土の利用と工業用水、業務用水を確保する政策の一環であることは明らかであります。  われわれは、かたくなにダム建設に反対するものではありませんが、水質汚染の防止、工業用水、業務用水の制限、処理水の再生利用、より根本的には大都市圏への集中抑制等の政策を強力に行ない、その上になお生活用水の確保に前提を置き、水源地域の諸条件を科学的に検討し、住民の十分な納得の上に実施されるべきものであると考えるものであります。  この法案に対し反対の立場を表明し、討論を終わります。(拍手)
  220. 服部安司

    服部委員長 新井彬之君。
  221. 新井彬之

    ○新井委員 私は、公明党を代表して、水源地域対策特別措置法案に対して反対の討論を行ないます。  わが国の水資源量の将来見通しについては、急激に増大する水需要の予想に比べて、その供給量は南関東、京阪神、北部九州の都市圏において大きな不足を来たす見通しとなっております。  さらに、水資源の不足と同時に、水質面におきましても年々悪化しているのがその実態であります。それは今日までの公共投資が産業優先の投資に片寄り、国民生活優先につながる下水道事業への投資がおくれたのが水質汚濁の大きな原因となっているのであります。  本法案におけるダム及び湖沼水位調節施設建設については、関係住民生活再建措置や国の負担増額等について一歩前進への姿は見られますが、水没地域住民にとって、先祖伝来の土地、家屋はもちろんのこと、長年の生活基礎となった職業まで失うことになり、新たな生活への道となる次の職業にしても、わずかな補償金ではどうにもならぬのがその実態であります。ゆえに、本法案生活再建措置がとられても、今日のような対価方式の公共用地の取得に伴う損失補償基準考え方では、今後の水需要をまかなうだけの水源地対策ではないと思うのであります。  このような理由から、政府原案に対して反対の意思を表するものであります。(拍手)
  222. 服部安司

    服部委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  内閣提出水源地域対策特別措置法案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  223. 服部安司

    服部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  224. 服部安司

    服部委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、天野光晴君、福岡義登君、北側義一君及び渡辺武三君から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者天野光晴君から趣旨の説明を求めます。天野光晴君。
  225. 天野光晴

    ○天野(光)委員 ただいま議題となりました水源地域対策特別措置法案に対する附帯決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してあります。  御承知のとおり、本法律案につきましては当委員会において慎重に審議されてまいったのでありますが、水源地域指定等の際の地元の意向の尊重、関係住民生活再建措置及び損失補償制度の改善、水源地域市町村の自主財源の確保等のほか、特に霞ケ浦の開発については、整備事業の範囲の拡大、汚濁している水質の回復、自然公園事業の国の負担割合の引き上げ等が、審議過程において特に議論された重要な問題でありますので、ここに附帯決議を付し、以上の諸点について政府の適切なる措置を強く要望する必要があると存ずるのであります。  以上が、本案に附帯決議を付さんとする理由であります。  各位の御賛同をお願いいたす次第であります。(拍手)     ————————————— 水源地域対策特別措置法案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一 水源地域指定及び水源地域整備計画の策定にあたっては、地元の意向を十分尊重すること。 二 関係住民生活再建については、ダム等の規模の大小にかかわらず、関係機関協力して万全の措置を講ずるものとし、なお、生活補償を考慮した損失補償制度の改善について検討すること。 三 水源地域市町村の自主財源確保のため、ダムのうち、水道及び工業用水道に係る部分についても、固定資産税等の対象とするよう検討すること。 四 霞ケ浦の湖沼水位調節施設建設にあたっては、その特殊事情を考慮し、次の措置を講ずること。  イ 第五条の政令で定める整備事業には、水産振興事業及び漁港整備事業のほか、自然環境の保護等を含めるよう考慮すること。  ロ 下水道事業の早期完成、排水規制の強化等、すでに汚濁している水質の回復について特に配慮すること。  ハ 自然公園法に規定する公園事業を第九条第二項に準じ整備事業対象として国の負担割合を引上げるよう早急に検討すること。  右決議する。     —————————————
  226. 服部安司

    服部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  227. 服部安司

    服部委員長 起立総員。よって、天野光晴君外三名提出のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。金丸建設大臣。
  228. 金丸信

    ○金丸国務大臣 本法案の御審議をお願いして以来、本委員会においては熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすようつとめるとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に尊重し、今後の運用に万全を期して努力する所存でございます。  ここに、本法案審議を終わるに際し、委員長をはじめ委員各位の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  229. 服部安司

    服部委員長 なお、おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 服部安司

    服部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来たる十四日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時九分散