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1973-07-13 第71回国会 衆議院 建設委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十三日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 服部 安司君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 田村 良平君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺 栄一君 理事 井上 普方君    理事 福岡 義登君 理事 浦井  洋君       小沢 一郎君    小渕 恵三君       梶山 静六君    澁谷 直藏君       野中 英二君    林  義郎君       廣瀬 正雄君    藤波 孝生君       渡部 恒三君    清水 徳松君       中村  茂君    松浦 利尚君       渡辺 惣蔵君    瀬崎 博義君       新井 彬之君    北側 義一君       渡辺 武三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 金丸  信君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         内閣審議官   粟屋 敏信君         内閣審議官   藤井 直樹君         首都圏整備委員         会事務局長   小林 忠雄君         経済企画庁長官         官房参事官   北川 博正君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省住宅局長 沢田 光英君  委員外出席者         議     員 井上 普方君         環境庁企画調整         局防止計画課長 冨崎 逸夫君         農林大臣官房企         画室長     松本 作衛君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 七月十三日  土地対策緊急措置法案井上普方君外六名提  出、衆法第五三号) 同月九日  建築家職能法制定に関する請願亀岡高夫君紹  介)(第八一五七号)  同(塩谷一夫紹介)(第八一五八号)  同(中村梅吉紹介)(第八一五九号)  同(大橋武夫紹介)(第八二一二号)  同(近藤鉄雄紹介)(第八二一三号)  同(和田耕作紹介)(第八二一四号)  同(宇野宗佑紹介)(第八二五〇号)  同(亀岡高夫君紹介)(第八二五一号)  同(塩谷一夫紹介)(第八二五二号)  同(竹内黎一君紹介)(第八二五三号)  同(西銘順治紹介)(第八二五四号)  同(葉梨信行紹介)(第八二五五号)  同(松永光紹介)(第八二五六号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第八三〇三号)  同(森山欽司紹介)(第八三〇四号)  同(天野公義紹介)(第八三五一号)  同(近藤鉄雄紹介)(第八三五二号)  同(坂本三十次君紹介)(第八三五三号)  同(羽生田進紹介)(第八三五四号)  同(坊秀男紹介)(第八三五五号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第八三五六  号)  同(武藤嘉文紹介)(第八三五七号)  東関東自動車道市潮来線宮野木検見川  間)  の建設計画検討に関する請願金瀬俊雄君紹  介)(第八二一五号)  建築設計監理業法制定に関する請願廣瀬正雄  君紹介)(第八三〇五号) 同月十二日  東関東自動車道市潮来線宮野木検見川  間)  の建設計画検討に関する請願北側義一君紹  介)(第八四四七号)  建築家職能法制定に関する請願橋本龍太郎君  紹介)(第八四四八号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第八四九二号)  同(小坂徳三郎紹介)(第八四九三号)  同(楢橋渡紹介)(第八四九四号)  同(藤井勝志紹介)(第八四九五号)  同(赤城宗徳紹介)(第八五四四号)  同(井出一太郎紹介)(第八五四五号)  同(金子一平紹介)(第八五四六号)  同(園田直紹介)(第八五四七号)  同(林義郎紹介)(第八五四八号)  同(小川平二紹介)(第八六〇〇号)  同(奧野誠亮紹介)(第八六〇一号)  同(左藤恵紹介)(第八六〇二号)  同(羽田孜紹介)(第八六〇三号)  建築設計監理業法制定に関する請願山崎拓君  紹介)(第八六〇四号)  建築設計監理業法制定反対に関する請願村田  敬次郎紹介)(第八六〇五号)  国土総合開発法案反対に関する請願外一件(神  門至馬夫君紹介)(第八六〇六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  工業配置・産炭地域振興公団法の一部を改正  する法律案内閣提出第五六号)  都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)  国土総合開発法案内閣提出第一一四号)  土地対策緊急措置法案井上普方君外六名提  出、衆法第五三号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野(光)委員長代理 これより会議を開きます。  去る八日から十日までの三日間、工業配置・産炭地域振興公団法の一部を改正する法律案都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案国土総合開発法案審査のため、沖繩県委員を派遣いたしました。  この際、派遣委員から報告を聴取いたします。服部安司君。
  3. 服部安司

    服部委員 派遣委員を代表して、沖繩調査の御報告を申し上げます。  本委員派遣は、工業配置・産炭地域振興公団法の一部を改正する法律案都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案及び国土総合開発法案、以上三法案審査に資するため、七月八日より三日間の日程で、沖繩縄県における開発計画都市計画及び住宅建設等の事情を聴取するとともに、関係現地視察を行なってきたのであります。  派遣委員には、団長であります私のほか、村田敬次郎君、渡辺栄一君、井上普方君、福岡義登君、浦井洋君、北側義一君、渡辺武三君が参加されました。  まず、九日午前、沖繩開発庁沖繩総合事務局及び沖繩県より、昨年の十二月に策定された沖繩新興開発計画について説明を聴取いたしました。本振興開発計画は、沖繩本土復帰を遂げた時点において、長期的、総合的観点に立って将来の展望を行ない、県民の意向を反映しつつ、今後の沖繩振興開発の向かうべき方向等を明らかにしたもので、沖繩振興特別措置法に基づいて策定された計画であり、計画期間昭和四十七年から同五十六年度までの十カ年計画であります。  本振興開発計画説明聴取後、派遣委員及び説明者の間において、新全総計画と本振興開発計画との関係基地依存経済からの脱却の現状、自然環境保全工業誘致基本方針、約八千ヘクタールに及ぶ海津線土地買い占め地価上昇乱開発防止のための土地利用規制及びこれらの問題と国総法案との関連、本振興計画財源措置、国の出先機関である沖繩総合事務局と県との協調、その他海洋博覧会関連工事建設軍用地の地代、米軍基地返還あと地教育施設への利用等について、熱心な質疑答弁がかわされたのであります。次いで、沖繩縄県における都市計画及び住宅建設について説明を聴取いたしました。  続いて同日午後、石嶺及び大名住宅団地建設状況視察した後、平安座島周辺石油備蓄基地及び石油精製工場視察関係会社から公害防止対策埋め立て計画等について説明を聴取しました。次いで沖繩縦貫道路について日本道路公団より用地買収進捗状況等説明を受けたのであります。  以上が沖繩調査の概要でありますが、基地依存経済からの脱却過疎県としないための第二次産業振興沖繩が持つすぐれた自然環境保全との調整をどのように行なうか、また、土地利用規制等々の問題について、本委員会の今後の審査の参考になること多かろうと思うのであります。  最後に、今回の調査にあたり、関係方面から本委員派遣に対して御協力を賜わりましたことを深く感謝し、御報告といたす次第であります。(拍手)
  4. 天野光晴

    天野(光)委員長代理 これにて派遣委員報告は終わりました。      ————◇—————   〔天野(光)委員長代理退席委員長着席
  5. 服部安司

    服部委員長 次に、内閣提出工業配置・産炭地域振興公団法の一部を改正する法律案都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案国土総合開発法案、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬崎博義君。
  6. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は質問に先立って、共産党国土政策基本的立場質問観点を明らかにしておきたいと思います。  われわれはまず第一に、公害災害から国民が守られ、美しい自然が守られる、住みよい国土をつくり出す。第二には、各地域の長所を生かしつつ、経済、文化のつり合いのとれた発展都市と農村との格差縮小を進める。第三には、ほんとうの意味での無公害産業、無公害都市へ着実に近づいていくことが国土政策基本的課題と考えてまいりました。したがって、計画内容はこれらを課題とした総合的なものでなければならず、計画づくりとその実行民主主義原則に基づいて進められるべきだと考えるわけであります。  すなわち、第一に、少数の巨大企業資本力にものを言わせて国土を食い荒らしている事実に対して、住民の利益を守る立場からきびしく規制する制度を打ち立てる。  第二に、地域発展計画作成段階から必ず住民代表が参加し、広範な住民意向がくみ尽くされるようにし、地方議会の承認を得て決定することや、全国的な計画は下からの民主的積み上げによること。  第三に、事業主体としては地方自治体が開発に大きな役割りをになうようにすることが、計画づくり計画実行原則だと考えているものであります。  こういう立場から、共産党歴代自民党政府がとり続けてきた高度成長政策、旧全総、新全総列島改造論に一貫して反対してきました。高度成長をささえるための一連の法律であった新産都市建設促進法工業整備特別地域整備促進法工業配置法琵琶湖総合開発特別措置法などにも反対をしてきたわけであります。今日の事態は、残念ながらわれわれの批判の正しさを証明していると思います。大企業は六〇年代の十年間、毎年一五・二%という世界にも例を見ない設備投資の伸びを続け、ばく大な利潤を国民から吸い上げる一方、圧倒的多数の国民には公害交通事故災害、物価高等々、衣食住すべてにわたって苦しみを与えるはめになってきているのです。いま提案されている新国総法案が結局現行法の延長線上のもの、高度成長路線に沿った国土政策である点で、多くの国民がこの法案に現在の矛盾の解決を期待していないし、列島改造基本法案などとあだ名されていることがよくその本質をついていると思います。特に附則第三条では新全総計画が当分そのまま生かされていくと定められていることからも、新国総法案が現国総法の危険な遺産を引き継いでいるといわなければなりません。政府もみずから、新国総法案提案理由説明の中では「六〇年代における貴重な経験と教訓を踏まえ、」と述べております。今日までの高度成長政策がもたらした事実に正しい科学的な評価を下すことによって、新しく提案された国総法案が過去のあやまちを繰り返さない保証を備えたものであるかどうかを明らかにしていきたいと思うのであります。  そこで最初に過密過疎の問題です。旧全国総合開発計画では、国民所得倍増計画に即し、「都市過大化防止地域格差縮小を配慮しながら、」「資本、労働、技術等諸資源の適切な地域配分を通じて、地域間の均衡ある発展をはかることを目標とする。」さらに「とりわけ、わが国経済発展機動力である工業の既往の配置が、過大都市問題と地域格差問題の発生に大きな役割を演じたといえる。したがって、都市過大化防止し、地域格差縮小するためには、まず工業分散をはかることが必要である。」との基本構想に基づいて総合計を立てております。また新産都市建設促進法でもその目的を「大都市における人口及び産業の過度の集中防止し、」と定めているのでありますが、さて現実人口動態はどう変化をしてきたのか、お聞きをしたいのであります。三十五年以後今日までの期間において、まず第一に、新産都市指定地区十五及び工業整備特別地域地域人口が、それを持つ都道府県人口に占める割合推移、第二に、同じく新産業都市十五地区工特地域地域を持つ二十四道府県の人口全国人口に対する割合推移、第三に、三大都市圏人口推移、これについて答弁をいただきたいと思います。
  7. 下河辺淳

    下河辺政府委員 お答えいたします。  新産業都市人口推移でございますが、新産業都市昭和三十五年の人口は約百万人であったと思いますが、これが昭和四十年、百四万人、四十五年百十万人、四十八年、これは国勢調査ではございませんで人口調査でございますが、約百十五万人でございますので、全県に占めます新産業都市人口のシェアといいますか、比率は、三十五年は三二・七%、四十年には三四・五%、四十五年には三六・五%、四十八年には三七・三%になっております。  それから工業整備特別地域につきましては、昭和三十五年の工業整備特別地域内の全人口が三百五十一万人でございますが、これが四十年には三百七十三万人、四十五年には四百五万人、四十八年には四百二十九万人になりましたので、全県に占めます工業整備特別地域内の人口比率は、三十五年一九・一%、四十年一九・一%、四十五年一九・四%、四十八年におきましては一九・七%でございます。  なお、新産工特、以上の数字を合計いたしました場合に、全県に占めます新産都市あるいは工業整備特別地域人口比率でございますが、三十五年は二八・六%、四十年は二九・四%、四十五年は三〇・五%、四十八年は、三一%になってございます。  なお、大都市人口推移につきましては、いますぐ調べてお答えさせていただきます。
  8. 瀬崎博義

    瀬崎委員 これは長官にお尋ねしたいことなんですが、過密過疎解消という目的から見て、いまの人口動態推移は一体どういう結果を意味するとお考えですか。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 新産都市工特都市、それぞれ特徴があるわけでございますが、その中におきましても、非常に計画どおりいったところと、あるいは計画のようにいかなかったところもございます。新産工特のねらいは、重点的に地区を選定して、そこの生産を上げるというような方向でございましたので、むしろ集中が行なわれたというふうに思えるわけでございます。総じて、大都市集中から、工業拠点をきめてそこへ集中していこうという点で、若干の効果はあったと考えるわけでございます。
  10. 瀬崎博義

    瀬崎委員 若干の効果ということばを使われましたが、先ほどの数字からもわかるように、結局三十五年から四十八年の十三年間の推移を、五年刻みで各府県ごとに見れば、人口新産都及び工特地域に一貫して集中をしていっている。さらに、その新産都、工特地域全国人口に占める比率を見た場合にも、これは逆に新産都、工特地域人口比率が高まっているというふうに、いえば若干の人口分散効果があったどころではなくて、結局は大都市及び特定の工場立地の行なわれた地域人口集中さして、本来の意味で、つまり法律が掲げた目的過密過疎解消には役立たなかった、こういう評価が正しいのではないのですか。
  11. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 申し上げましたように、新産工特考え方は、昭和三十年代の高度成長期において顕現化いたしました人口産業大都市集中過疎の進行、地域格差の拡大などを解消するために、地方拠点を選びまして、この開発によって地方分散促進をはかるということで考えたわけでございます。その意味からいうと一応の効果があった、こう判定しておるわけでございます。しかし、その反面において環境問題、生活環境整備の立ちおくれ、あるいは地方財政の圧迫、地価上昇というのが一部的に生じておることは事実でございまして、それこれ勘案いたしますと若干の効果、ということばを使ったわけでございます。
  12. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先ほど保留された三大都市圏人口動態を言っていただければさらにその点もはっきりすると思うのですが、わかりましたか。
  13. 下河辺淳

    下河辺政府委員 三大都市圏集中人口につきましては、もうちょっとお待ちいただきます。  ただ、いま大臣からお答えいたしましたとおりでございますが、御指摘いただきましたように、政策目標にもかかわらずやはり過大都市あるいは拠点都市人口集中しているということは、先ほど新産工特で御報告をしたとおりでございます。この背景には、やはり過去十年間を推移いたします際に、第一次産業人口が千五百万人から一千万人を割る状態になり、そしてさらにその一千万人も半分程度に減るのではないかという一つ背景、つまり都市化が非常に進んでくるという背景の中で、やはり過大都市のみに人口集中することを、新産都市あるいは工業整備特別地域で、できるだけ地方都市への集中をねらっていたということは事実でございまして、その限りにおいて、もし新産都市工特地域がなかった場合には、その分が過大都市集中してしまったのではないかということからいえば、長官から申しましたように、新産工特地域における若干の人口集中が、大都市の過密に対して多少役立ったという評価長官から申し上げたと思います。  なお、大都市集中につきまして、昭和三十五年、東京圏大阪圏名古屋圏が三千四百九十五万人というふうに国勢調査が示しておりますが、これは四十年には四千三十九万人、四十五年には四千五百五十八万人に推移しております。
  14. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ですから、結局は大都市圏への集中が、これをやったことによって多少とも緩和されたのではないかということも、住みにくさが高じて、確かに東京都心部とか大阪の旧市内をとれば若干の人口分散にはなったけれども、それが結局、今度の四十八年度の自治省の発表した人口動態経過から見て、隣接府県に急増しているということからも、いま言われたように、新産都、工特によって多少なりとも過密過疎解消効果があったという評価、もしそういう評価政府がしているとしたら、これは今後の新国総法案にますます期待が持てなくなると思うのです。特にそういう点で、新国総法案第二条の「基本理念」で「国土の均衡ある発展」とうたっているわけなんですが、これがもし過密過疎解消意味するものであったら、この保証が一体どこから出てくるのか、お伺いしたいと思います。
  15. 下河辺淳

    下河辺政府委員 過密過疎に関することにつきましては、いま御指摘いただきましたように、生活環境の悪化ということを通じて、全国的に国民がひとしく健康で文化的な生活環境を確保するという観点、つまり国土総合開発の仕事からいえば、生活環境施設水準ということから申し上げるとすれば、それはやはり政策目標としてある一定の水準を確保すべき努力を私どもとしてはしなければならぬと考えております。  もう一つ、そのことと並びまして、いかなる人口配置が良好な環境を得るために適正であるかということはまた私どもとして調査研究を怠ることはできないと存じておりますが、人口配置につきましては、現実の問題として巨大都市へ非常に膨大な人口が集まっていて生活環境が悪化しているという事実を認識するということ、そしてそれを解決するために、施設的な物理的な限界、つまり資源的な限界があるということに基づいて、目下巨大都市におきます人口の規模に関する限界性についての総点検を行なっているわけでございますが、その結果を踏まえた上で、はたして全国的にどのような人口配置が快適な環境を確保するために必要であるかということになるわけでございます。従来のように工業開発にのみ依存することについては相当多くの疑問が提出され、現実の問題としてもそういう問題があるわけでございますから、地方都市育成ということについてどのような進め方をしたらよいかということについても、先ほど基本的な考え方として御指摘いただきましたように、地域符性あるいはその歴史的な背景を踏まえて、地域住民の方々の御意向をできるだけいれることを通じまして、新しい都市化の波に対する都市適正配置ということを考えてまいりたいというのが基本理念にあらわれた春景でございます。
  16. 瀬崎博義

    瀬崎委員 地方都市育成がいま言われた理念どおりにいくかどうかはあとの論議に譲るとして、新国総法案と表裏の関係にある経済社会基本計画ではこういっています。「これら三業種のみならず、第二次、第三次産業全体としても」「これらの過密地域に集積すると考えられるので、このような産業人口のいっそうの集積の動きは、」「各種の困難を予想させる。」これでは、結局人口分散していくのではなしに、集中していくということをあらかじめ前提にしているような政府の態度といわなければならないので、矛盾を感ずるわけなんです。そういう点で、新国総法案過密過疎解消保証があるのかと先ほどお尋ねしているのですが、そういう矛盾政府自身お感じになりませんか。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 従来の大都市集中動きというのは、いま非常な反省期に立っておるわけでございまして、われわれもこの問題をどうするかという点で、実は東京を例にとってみますと、その近隣のいわゆるニュータウン、これはニュータウンではありますけれども、結局東京のベッドタウンであるということになっておるわけでございます。そこで、私どもは新しい都市をつくる、ニューシティーをつくるのだということは非常に必要だというふうに考えておるわけでございます。それには交通、通信のネットワークというものをもっと充実をいたしまして、そうしてその地方都市それ自身が十分快適な環境を保ちながら、住民福祉にふさわしい機能を持ち得る、そういうものをつくっていかなければならぬのだということを深刻に考えているわけでございます。そうして、その地区における産業なり行政なりというものは、その地区住民の希望というものを十分くみ入れた形で運営されていくべきであるということを具体化しようとするのが、ただいま御審議をいただいておりまする国総法基本理念でございまして、そういうことをいままでの反省の上に立って、これからの行く道をこの国総法によって私どもは仕上げてまいりたい、こう存じておる次第でございます。
  18. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ネットワークが快適な住みごこちのよい地方都市をつくるのに役立つかどうか、私にはわからないわけでありますが、とにもかくにもそういう快適な地方都市をつくることが過密過疎解消になるのだということではわれわれの主張を認められているように思うので、はたして、言われているとおり産業優先住民福祉優先になるかどうかという問題に移っていきたいと思います。  そういう主張は何もいまあらためて政府が打ち出したものではないわけです。旧全総では、「国土総合開発の究極の目標は、」「わが国経済の均衡ある安定的発展と民生の向上、福利の増進をはかり、もつて、全地域、全国民がひとしく豊かな生活に安住」できるようにすることである、こういっているわけです。そのために、「住宅、上下水道、交通、文教および保健衛生施設等国民生活に直接関連する公共施設については、たんに経済効果等にとらわれることなく、」「整備拡充をはかること。」としていたわけであります。だから、いま言われていることとほとんど変わらないわけなんです。  さて、旧全総の目玉であった新産業都市指定地区及び工業整備特別地域における生活関連投資及び生産関連投資基本計画の数値に対する最近の実績はどうなっておりますか。
  19. 下河辺淳

    下河辺政府委員 お答えいたします。  新産業都市実績でございますが、新産業都市工業整備特別地域の、地区別ではなくて合計で申し上げたいと思います。  その前提といたしまして、工業規模の拡大から御報告を申し上げますが、工業出荷額につきましては、新産業都市が六兆三千億円ということでございます。工業整備特別地域が約五兆円ということで四十六年の出荷額がきまっておりまして、これは五十年の目標に対しまして約八〇%近い実績をあげているというふうに考えております。それに対しまして施設についての累積投資額に対する実績でございますが、新産業都市には約三兆一千億円、工業整備特別地域には約一兆二千億円の施設の投資を行なっておりますが、そのうち生産関連施設という分類が一つございまして、これは新産業都市が一兆八千二百億円、工業整備特別地域が七千八百億円でございますが、生活関連施設につきましては、新産業都市が一兆二千八百億円、工業整備特別地域生活関連施設四千二百億円ということでございまして、五十年の目標に対しまして生産関連施設のほうは新産業都市が約七五%、工業整備特別地域が六八%程度になっておりますが、生活関連施設につきましては新産業都市が五七%、工業整備特別地域が四二%でございまして、目標に対しましては、工業の規模がかなりの水準に達しておりまして、それを追いかけて生活関連施設が、工業の伸びよりも小さいですけれども、ほぼ追いついてきつつありますが、生活関連施設のほうがおくれておるというのが実情でございます。
  20. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ほぼ追いついておるという表現なのですが、いまの数字でも、結局進捗率で見れば約二割、これは大きい数字だと思うのです。生活関連のほうが生産関連の投資よりおくれておることは事実だとお認めになるわけでしょう。特にその中でも優等生とよくいわれる大分地区で、産業基盤施設と生活基盤施設の進捗率は目標に対してどうなっておりますか。
  21. 下河辺淳

    下河辺政府委員 お答えいたします。  大分地区につきましては、生産関連施設が七七・四%、生活関連施設が四九・二%、合計いたしまして六四・三%の進捗率になっております。
  22. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先ほど全国平均の数値でお話しになって、生産関連生活関連の進捗率に約二割の差があって生活のほうがおくれておる。個別にとって最も優秀だといわれる大分の場合はその差がもっとひどいといういまのお話なんです。こういう、過去掲げた目標とその実績から見て、今度の新国総法案で同じような基本理念を掲げたからといって、実際に先ほどから言われている生活施設の整備が必ず優先するという保証はどこに求めたらいいのですか。長官のお答えをいただきたいのです。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 生活関連施設のおくれは主として下水道でございます。下水道に対しましての重要性の認識が最近になって非常に盛り上がってまいりましたのでございますけれども、両三年のことでございまして、その前にはどうもこの点がなおざりになっていたという感じはするわけでございます。私どもの「基本理念」のところにも明確に書いておりますように、何といっても住民福祉というものと、それから資源の有限性、環境も有限であるという考え方に立って新国総法をお願いするということでございますので、もう根本の認識が、やはり住民福祉があって産業振興していく、そうして産業振興があって住民福祉が確保される、この二つは車の両輪のようにいかなければならない。従来とかく産業のほうが優先されておって、生活関連施設が若干立ちおくれを見たということは深く反省しておるのでございまして、その反省の上に立って行ないたい、こう思っておる次第でございます。
  24. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それでは建設省のほう、あまりひまでもいかぬのでちょっとお尋ねしたいと思うのですが、本建設委員会審議されました道路整備緊急措置法改正案で新しく生まれた第七次道路整備五カ年計画は第六次に比べて、国土開発幹線自動車道、列島改造ではネットワークの中心に置かれている計画でありますが、これはどういうふうに変わりましたか。——建設省がおきめになったことでしょう。
  25. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 道路整備計画の点でございますけれども、担当の局長がちょっといませんので、詳しい内容を私知りません。あとでまた御説明申し上げたいと思います。
  26. 瀬崎博義

    瀬崎委員 冗談じゃないですよ。これは結局国土開発幹線自動車道路の完成年度を二年繰り上げることにしたわけでしょう。ずいぶんこれが高度成長優先で批判されて、自民党以外の政党は全部これに反対されているわけなのです。  一方、日本住宅公団の四十七年度の住宅建設の当初の計画戸数は幾らですか。
  27. 沢田光英

    ○沢田政府委員 八万八千戸でございます。
  28. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その計画の遂行状況をお伺いしたいと思います。
  29. 沢田光英

    ○沢田政府委員 四十七年度末におきまして発注を完了いたしました戸数が三万戸とちょっとでございまして、半分を割っておる状態でございます。したがいまして、私どもはもちろんこの四十八年度に繰り越しても努力はしておるわけでございますけれども計画といたしましても、四十七年度の末に手持ちの用地あるいはその用地がどういうふうに具体的に使用できるかということを十分監査をいたしまして、その結果、四十八年度のおしまいにいってもどうも残りの戸数が消化できそうもないというものにつきましては、実は一万八千戸削減いたしております。計画といたしましては七万戸ということにいたしました。しかしその中で、先ほど申しましたように四十七年度発注のものは三万余戸というのが現状でございます。
  30. 瀬崎博義

    瀬崎委員 これは建設大臣にお伺いします。  用地買収が困難だといういまの説明でありますけれども、それにもかかわらず高速道路のほうはどんどんつくっていく、住宅のほうはばっさりと計画も切って捨てていく、こういうことがはたして生活優先なんですか、いまの政府の方針の。
  31. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいまの、高速道路だけつくればいいということではございませんが、高速道路の問題も、これは必要があってつくることでありますが、住宅問題等につきましては、たびたび申し上げておりますように、用地の取得の問題や、また各公共団体の拒絶反応等があるためになかなかっくれないという問題もあるわけでありまして、先生の御指摘の高速道路だけをつくるというようなことを考えておるわけではございません。
  32. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういうふうな考えではないとおっしゃるけれども、事実、住宅のほうはできないからという理由であえて減らしていく。実際に高速道路は、全く国民一般が利用しないというわけではないだろうけれども、基本的にはやはり産業基盤の整備、これが優先する。こういうことが先ほどの経済企画庁長官生活優先の中身だとするならば、これは新国総法案に期待は持てないということになるのでお聞きしておるわけなんです。もう一ぺん答弁願いたいと思います。
  33. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先ほどの道路の点につきまして、ちょっとうっかりいたしまして質問をお聞きしませんで、あとでと申し上げたわけですが、御承知のように、第六次から第七次になりました際に、いろいろ今後の道路整備の将来の構想といたしまして、先ほどから企画庁からもいろいろお話がございますように、国土開発の可能性を広げるという意味の、国土の広域的利用を広げるという意味におきましての高速自動車国道の重点的先行的整備ということが第一でございます。同時に、生活環境の改善だとか福祉向上というような意味の、生活の場というような感じの道路整備、地方道、市町村道についての整備を重点的にやろうというのが重点で、いろいろ変わったわけでございます。  それからただいまの建設大臣に対する御質問でございますけれども住宅用地につきましても、私どももちろん大いに円滑な取得に努力をいたしておるわけでございまして、それと同時に、もちろん道路整備も行なっておるわけでございます。これはどちらをどうということではなしに、それぞれ用地の取得についてはどちらも非常に困難な事情があるわけでございまして、もちろん住宅用地は大都市地域に非常に用地不足することが多うございますから困難なことは多うございますけれども、これにつきましてはいろいろな改善策、たとえば先行取得を講ずるとか、また公有地拡大法によるところの先買いを発動するとか、その他円滑に土地を取得する方法も講じておるわけでございますので、私どもといたしましては、道路用地のほうを重点的にやる、住宅用地のほうをおろそかにしておるというつもりはないわけでございます。道路につきましてもし詳しい御質問がございましたら、また所管の局長からお答え申し上げます。
  34. 瀬崎博義

    瀬崎委員 経済社会基本計画を見ますとこうなっておりますね。「部門別公共投資額」において、全体を一〇〇とした場合、交通通信、つまり主として産業関連施設の投資と生活環境投資との割合で見て、昭和四十二年−四十七年度の実績はそれぞれ四四%対二一%、ほぼ二対一の割合です。これが四十八年−五十二年度の計画になるとどうなっておるかというと、交通通信関係四一・五%、生活環境は二二・二%で、やはりこれも比率は二対一です。  それで、新国総法案に入っていくわけなんだけれども、先ほども申し上げた、これと表裏の関係にある基本計画のほうで見れば、どこまでも産業基盤が先々に行って、生活基盤のほうはあとからしかついていかない、その比率もたいして変化していない、こういうことが出ておるんです。それから現実に今国会で高速道路は優先する、住宅はカットされる、こういうような事実と見比べていただきまして、政府はこれでもだいじょうぶなんだとおっしゃっていただけますか。
  35. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 いまおあげになりました経済社会基本計画での部門別の公共投資額、これは五カ年でございますから、確かにおっしゃるとおり、生活環境施設が過去の五カ年に比べて二一%から二二・二%くらいに上がるということで、比率として向上はわずかでございますけれども、あるいは交通通信施設については四四%が四一%に下がる、そういうことで資源配分の転換ということが行なわれてはおりますが、そう急にはできないという形にはなっております。これから将来、特に今回御議論になっております国土総合開発というような非常に長期の問題になりますれば、こういった資源配分の方向が大きく変わっていくということはこの計画にも書いてあるとおりでございまして、いわばその指導条件をここでつくっておる、こういうことになっておるわけであります。
  36. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうすると、結局当分はやはり生産が優先して生活のほうはあと回しだ、しばらく国民はしんぼうしろ、こういうことなんですか。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 道路とか通信とか、こういうものは産業と限ったことでございませんで、こういうものがよくなることが生活がより文化的なものになる一つのモメントでもあるわけでございます。しかも、いろいろな上下水道であるとかあるいは住宅であるとか、こういうものは生活そのものでございますけれども、この両方を比較して、これがいわゆる独占資本、これが庶民生活というふうに分ける分け方は必ずしも正鵠を得たものではないのじゃないかというふうに私は思っております。  いま局長から申し上げましたように、道路、通信等に対する投資と、それから住宅その他に対する投資、この比率は、若干ではございますけれども住宅のほうへより多く傾斜しておるわけで、五年間でありますので、急に大きく道路を全部ぶった切って住宅にばかりといいましても、いままでの一つのイナーシアがございますから、この慣性を急に破るわけにもいかないという点は、どうぞひとつ現実に即して御理解をいただきたいと思います。ただ、われわれの方向といたしまして、この五カ年計画あとの今後の方向といたしまして、たとえば国総法の指向するようなそういう先の問題については、さらに直接的な生活関連の投資額をふやしていこうということをきめておりますことは、先ほど局長も申し上げたとおりでございます。
  38. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私自身も、先ほども言っておるように、高速道路をつくることが全く国民に役に立たないとは言ってない。しかし、いま国民が切実に求めているものが何かということになれば、千葉のどこでしたかの公団住宅の抽選率がきわめて激しい競争率だったでしょう、そういうことがある。住宅がきわめて不足しているのですよ。また、いま長官自身が、生活関連投資のおくれは極端な下水道建設のおくれだ、こういうふうに言われていますけれども、大体新産都市をつくるのに、下水道の計画が先にあって新産都市をつくるなら話がわかるのだけれども、それを逆にしているところに問題があるのですよ。そういう点では、全国市長会新産都市協議会の四十六年六月発行の「新産都市の現況と問題点」の中でもこういっています。「特に、現在、各市とも立遅れている公害対策、住宅、下水道、公園等の整備、都市施設の集積は、工業開発よりも住民福祉優先観点から配慮されなければならない。」と市長さんもいっているのです。ですから、いまのようなわずかの数字の転換をもってこれが政策の転換だと言われたのでは、これはわれわれたまったものではない。一体、ほんとうに生活優先に政策転換したのですか、していないのですか。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 転換をしておるわけでございます。ただ、非常なスピードで走っている車が急に方向を変えればそこにまたいろいろな事故が起きるので、なだらかな方向方向転換をしなければならぬということでございます。
  40. 瀬崎博義

    瀬崎委員 今日でもなお、福祉は天から降ってこないとか、成長なくして福祉なし、これは田中総理が言っているのです。結局、生活関連投資を先行させることによって経済成長を優先させる。しかる後生活関連投資を行なうべきなんだ、こういう従来のパターンを続けることが政策の基調になっているように、こういう点から受け取らざるを得ないわけなんです。したがって、新国総法案の「基本理念」は、場合によっては国民をあざむくための単なる修辞ではないかしらんとすらわれわれ思うわけなんです。特にいまのお話を聞いているとなおさらそういう疑いを深めるわけなんです。  さて、この基本理念が国会で議決されたら、必ずこれがワクがはまってそうなるのだと下河辺局長がこの間言いましたが、いまの論議を通じてみて、基本理念だけで生活優先に必ずなると、どこに保証があるのですか。
  41. 下河辺淳

    下河辺政府委員 考え方あるいは基本的な姿勢は長官から申し上げたとおりで、それが偽りであるとは思っておりません。ただし、それを実際に実務上こなしていきます際に、諸制度にまだ補完しなければならないものがあって、それを補完しないと言っているとおりにならないという側面があるという御指摘であれば、私どもとしてはそれを補完しなければならないというふうに思います。  御指摘いただきました大分の新産業都市の場合について考えます際に、先ほど長官からお答えいたしましたとおり、下水道の整備が事業計画の中で非常におくれているという点、あるいは都市公園の整備がおくれているという点が、生活関連施設の中でおくれている部門であるというふうに私ども考えておりますが、この下水道整備と都市公園整備というものにつきましては、実は大分湾におきまして大型の工業開発が進むに応じまして都市計画の大きな変更あるいは道路計画の変更等を伴っておりまして、下水道、公園というものは、下水道だけを先に整備いたしますと街路事業との調整で再び手戻りが出るということを通じて、大分県あるいは大分市として非常に御苦労をいただいておるところでありますし、下水道などにおきましては特に市民の方々の負担をお願いするという側面も出てまいりますので、市民の方々の負担との調整も進めなければならないということからおくれているわけでありまして、生産関係を急ぐために下水道をおくらしているということではございませんで、これからいよいよ大分におきまして下水道、公園等の生活環境の整備に大いに努力して、目標を達成しなければならないという基本的な考え方でございまして、そういう一つ一つを積み上げまして、実は「基本理念」の具体化ということをこれからはかってまいりたいという考え方でございます。
  42. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いみじくもいま、下水道事業のおくれは結局住民負担をさせるというところに問題があるのだというお話があった、そうなんですよ。結局、本来ならば国が責任を持たなければならない部分を住民に負担させようとするからそういうものがおくれてくる。そういうことがまた環境破壊の問題とも密接に結びついてきていると思うのです。ですから公害環境問題のほうに話を進めたいと思います。  新産都市建設基本計画工業整備特別地域整備基本計画にも、必ず公害防止に配慮しつつ整備を進めるべきであると注釈がついているわけなんです。しかし現実はどうなったかということになるわけなんですが、環境庁がお見えになっているはずだと思うのです。お見えになっていますね。——先日発表されたPCB、水銀の危険水域をいま一度ここで発表していただきたい。
  43. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 ただいまちょっと資料を手持ちいたしておりませんので、後ほど御報告申し上げます。
  44. 瀬崎博義

    瀬崎委員 肝心のことを資料を持ってこられなかったら、来てもらっている意味がないわけです。  では私のほうで言いますよ。赤信号の出たのは大分湾、岩国市、大阪湾の北西部等、播磨灘、敦賀湾、琵琶湖瀬田川、新潟県関川。こういうものと六〇年代の高度成長を比べてみたら、特にどういうふうな地域がこういうPCBや水銀の汚染地域になったと考えますか。
  45. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 ただいまの水銀、PCBの関連で申し上げますと、新産あるいは工特地域の中で、すでに地域の指定の当時に若干の工場の集積がありましたような既成の企業の中でそうした事例が多いかと思います。そういうような趣旨からいいますと、たとえば水銀等につきましては、新居浜でございますとかあるいは大牟田、あるいは富山というような区域等があげられるわけでございます。
  46. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先日もここにお見えになりました公述人の方からも、例外なく新産都市工特地域公害地域になっているというお話がありましたし、また旧全総以前の民間主導型で進んだ大型コンビナート建設の時代を考えても、あまりにも有名な四日市、それからヘドロの富士、徳山、京葉、堺、泉北——これは私前に泉大津の助松海津に住んでおりましたからよくその実態も知っておりますが、こういう点から、まず、この公害が結局高度経済成長政策の産物であるという点だけは認めざるを得ぬと思うのです。この点の政府の確認をまずとっておきたいと思うのですが、お答え願います。
  47. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新産業都市及び工業整備特別地域におきまして公害問題が非常に起きている、そうしてそれに対して公害防止対策を立てなければならないという点についてはおっしゃるとおりであります。特に最近四年間におきます公害関係の事件が非常に大きくなっているということは事実でございます。これに対して各県とも公害防止条例を制定し、あるいは環境庁の指導を受けて公害防止に取り組んでいるわけでございまして、現在公害対策基本法十九条に基づきます公害防止計画は、第五次地域まで含めますと、仙台地区、常磐郡山地区、富山高岡地区、岡山県南地区、大分地区、不知火有明大牟田地区、鹿島地区、東駿河湾地区、播磨地区、備後地区、周南地区についてそれぞれ公害防止計画を立て、万全を期したいという考え方でございます。
  48. 瀬崎博義

    瀬崎委員 公害問題は別の質問者を立てて、もっと突き詰めた質問をする予定なんですけれども、もしほんとうに徹底した公害対策を講ずる気なら、共産党が提案している公害法の抜本改正などは政府は喜んで受け入れなければならない問題だと思うのです。ところが田中総理は、先日のPCB、水銀問題に関連して中島議員の質問に何と答えていますか。
  49. 下河辺淳

    下河辺政府委員 あらためて正確に読みましたあと、お答えさしていただきます。
  50. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私はことばじりをとらえようという気はありませんから、これは大臣が責任をもって、田中総理が答えた答弁の内容くらいは言ってください。それによっていまの田中内閣の公害に対する政治姿勢を判断したい。逃げなくていいですよ。それでは私、もう一ぺん質問します。  私たちは、本来、新産都とか工特地域などを設定するにあたっては、その前にきびしい公害法がなければならない、これが逆になっているということを一つは指摘したいわけなんです。いま下河辺局長の話を聞いていれば、きわめてもっともな施策をいまとりつつあるように、地域もあげて害われた。しかしそれがほんとうに実効あるものになるのかどうかということを確かめるために、この間の田中総理の答弁どもここに引用したかったわけです。この田中総理の答弁の要点を申し上げますと、公害対策基本法については現行規定の運用により十分対処し得るものであって、現在のところ法改正は考えていない、いま一つは、今後個別に改正強化をはかるから、共産党案はもう採用する意思はない、こういうことなんです。しかし、ほんとうに文字どおりいままでの工業立地が公害を生み出したのだという反省があるならば、きびしければきびしいほどいいのですから、文句なしに共産党案を採用すべきなんだと思う。これにこういう条件を付して、注釈をつけて、とりあえず現在は受け入れようとしない、こういう態度に問題があるのじゃないかというのだ。そこでひとつ再度、現在出席の大臣答弁を求めたいのです。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はその委員会に出ておりませんので、実はいま伺いましたが、それぞれ私もそのとおり、総理の答弁のとおりでよろしいと考えます。
  52. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ほんとうに公害防止しようとするのなら、なぜきびしい内容のものの採用の必要はないと言うのですか。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のとおり新産法、工特法ができましたのは三十七年でございましたので、その当時公害が今日ほど問題になっていなかったわけでございます。その公害に関する諸種の法律ができました今日、その法律によって、これを厳正に運営することによって目的を達し得る、こう考えておる次第でございまして、その意味で総理がさように御答弁された、こう理解しております。
  54. 瀬崎博義

    瀬崎委員 総理がこの間、六月二十七日ですか、参議院で、公害というものに目を奪われて、ただ公害の点のみをとらえて云々という発言をして、これは結局……(「いいことだ」と呼ぶ者あり)これはいいことか。それじゃ聞きましょう。こういう発言が自民党としてはいいことだと思っているのですか。どうですか、長官。(「自民党に聞くのか長官に聞くのか」と呼ぶ者あり)自民党の長官に聞こう。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も自由民主党の党員でございますが、この答弁の場所におきましては国務大臣としてお答えを申し上げているので、自民党としてどうかということは党の幹事長なりからまた申し上げたほうがよろしいと思います。
  56. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では国務大臣として答えてください。田中総理はいま申し上げたような発言をして、これは不穏当だといって取り消されているわけなんです。こういう総理の公害軽視、またあまり公害をやかましく言うと経済成長に影響する、結局ぶち明けた腹の中ではそういう気持ちがある、こういうようにわれわれは理解せざるを得ないと思うのだけれども、そういう点についての大臣の見解を伺いたいと思う。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 田中総理の御答弁は決して公害を軽視しているというふうにはとりません。ただ総理大臣とされては、公害の問題も非常に重要であるけれども政策というものはすべて総合的なものでなければならぬというお気持ちを述べられたものと理解いたします。だからといって、これは繰り返して申し上げますが、公害を軽視しているということでは決してございません。
  58. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先ほども引用いたしました四十六年六月の全国市長会新産都市協議会の報告によりますと、「工業開発公害を引き起こすことは、絶対とは云えないまでもかなり確かなことである。」こういうふうに当事者の市長さんはいっている。ですからあらためてここで、こういう工業開発が優先をする場合に、当時は公害は問題にならなかったなんという認識が問題なんで、当然そういうことが前提になって進められていてあたりまえなんです。ですからそこの点は政府の手抜かりであったことだけははっきり認めますか。
  59. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新産業都市につきまして、昭和三十七、八年、県当局で計画を立てて計画を決定したわけでございますが、その当時におきましてやはり一つの問題は、鉄鋼、石油その他の企業のプラントにおきまして、適正な規模というものが現在よりもかなり小さい規模であったことは事実でございます。鉄鋼基地でも五百万トン、あるいは石油でも十万バーレルというようなことが一つの尺度として議論されておりました。しかしその後高度成長を続け、技術革新が進む結果、その基準プラントが非常に大型化したということは事実でございまして、その計画をきめたあとで大型プラントがきまりました際にそれを十分指導しきれなかったということについては、私どもにはいろいろと問題があるというふうに考えておりまして、そのために、このたびは通産省から工場立地法を出していただきまして、土地の大きさ、基地の大きさというものと、中の生産のための施設の大きさとの関係について行政上の規制ができるようにという措置を一方では講じたいと存じますし、それからさらに、これから工業都市をつくろうとする場合には、今度御審議いただいております国土総合開発法によりまして特定総合開発地域の手続というものに非常に重要な要点があると考えておりまして、そういった手続を十分経て決定してまいりたいというところに、新産業都市時代からの経験を一方生かしたというふうに理解しております。
  60. 瀬崎博義

    瀬崎委員 新しい手続を盛り込んだからだいじょうぶだというような発言のようなんですけれども、しかし先ほどの局長のお話の中には、当時はプラント自身が非常に小型なもので、大型のものは予想していなかったということがあったのでしょう。そういう点から見ますと、今後の経済成長を政府はどう予想しているかというと、新全総では昭和六十年度の国民生産を四十年度の四ないし五倍、百三十兆から百五十兆円と設定している。田中総理は列島改造論でこれを三百四兆円に引き上げるといっていることは御承知のとおり。新経済社会基本計画では経済成長率で依然として実質九・四%の経済成長を見込んでおる。そして五十二年度の国民生産を四十七年度の一・六倍、四十年度価格にして百五兆円と設定している。数字に多少違いはありますけれども政府基本的立場は結局高度成長政策の遂行に置いているように数字が示しているわけです。ですから、こういう点で見る限り、現時点での公害防止を予想していたのでは必ずまたいままでの轍を繰り返すと思うのです。そういうふうに考えませんか。
  61. 下河辺淳

    下河辺政府委員 現在高度成長というものについて、GNPについて御説明がございましたが、日本列島改造論という田中さんの書いた本は、昭和四十年価格で三百四兆円ということで書いていることは事実でございますが、総理から伺いましても、三百四兆円が合理的な目標であるとはお考えになっておられないというふうに私ども理解しておりまして、全く白紙の立場で、新全総の総点検を通じて昭和六十年度のGNPを再び考えてみたいというのが総点検の趣旨でございますが、そのときの考え方といたしましては、新しい国総法に盛り込みましたように、国土の有限性ということが非常に大きな課題であると考えまして、経済上需要があったから需要に応じて基地を何でもつくってしまうという考え方を改めて、やはり水資源の観点あるいは公害防止観点から一体どの程度の経済開発が日本の国土で可能であるかという、国土の有限性の角度からこの段階では経済成長を検討してみる必要があるということが国土開発行政からの考え方でございまして、もちろん経済成長はそのほか国民福祉観点あるいは経済政策観点、いろいろ多角的、総合的に経済企画庁としては判断していくべきものと考えますが、国土開発行政の観点からは、国土の有限性ということから考えることがこの段階できわめて重要であるという認識に立って今度の法律を策定したつもりでございます。
  62. 瀬崎博義

    瀬崎委員 何も田中総理の列島改造の三百四兆円を引き合いに出されなくとも、一番低い数字経済社会基本計画ですら実質九・四%の経済成長を見込んでいる、私は現在こういう点を指摘しているのです。ですから、こういう点では高度成長政策の基本にあって国土政策が打ち立てられているのだから、いままで起こったようなことに対する公害対処策だけでは、必ずまた将来、予想していなかったような事態にぶつかるということになりますよ、こう申し上げているのです。  この点については四十七年十二月の中公審の中間報告でも警告をしております。「産業公害防除努力の充実などにより、こうした環境破壊因子のすべてが環境中に排出されることにはならないだろうが、これまでのような経済活動のパターンを続けていけば、上にみたような膨大な潜在環境破壊因子に直面しなければならないといえる。」こういうふうに報告しているわけです。まず、環境庁のほうに伺っておきたいのですが、こうした中公審報各に基づく今後の国土政策は、公害環境保全との関係で見た場合にどのように転換すべきだと考えるのですか。
  63. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 御指摘になりました中央公害対策審議会の企画部会が昨年十二月に「環境保全長期ビジョン中間報告」という形で提言をいたしておるわけでございますが、いま産業構造あるいは消費構造等につきましても、従前のようなパターンを続ける場合において環境破壊がますます深刻化するであろうということを計数的に示しておるわけでございます。こうした従前の方式をそのまま踏襲するのでなくて、この際、環境資源が有限であるというようなことを十分勘案し、環境基準、排出基準の強化等を進めるというようなこと、あるいは工場の地方分散による過密の弊害の是正、環境破壊をもたらさないような新産業構造への転換、ないしは開発に際しまして事前に十分に環境に及ぼす影響を調査して、その範囲内でのみ開発を進めるというような方式をとることが、その中間報告で提言されているわけでございます。政府といたしましても、こうした提言を真剣に受けとめまして今後の環境保全上の万全を期したいというふうに考えておるわけでございます。
  64. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一言ではっきり言ってくれませんか。結局これまでの高度成長経済政策のパターンを転換しろ、こういうふうにいっていると、これは理解していいのですか。環境庁はそういう立場をとっているのですか。
  65. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 ただいま申しました長期ビジョンは、あくまでも現在の産業構造あるいは消費構造を前提にしておるわけでございまして、その限りにおいては、ある経済成長率を従前以上に高める、あるいは従前のパターンを踏襲するというような場合には環境破壊の因子がますます増大するであろうという予測に立っておるわけでございます。この中間報告のねらいは、そうした計数的な分析を通じまして、環境破壊を起こさないための行政の転換ということを重要視しているというふうに考えてしかるべきかと思うわけでございます。
  66. 瀬崎博義

    瀬崎委員 お答えしにくいのでしょう。長官、この経済活動のパターンの転換ということをどういうふうに受け取りますか。
  67. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どういうふうに受け取るかというと、非常にお答えしにくいことでございますけれども、先ほどから申し上げているように、われわれは成長路線の段階を終わって国民福祉充実の段階に入ってきた、そうした傾向にふさわしいような経済のパターンを持つということが適当である、こう考えているということです。
  68. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そのパターンが九・四%の経済成長だ、こういうことですか。
  69. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 経済社会基本計画におきましては、そこに書いてございますように、四十五年から五十五年までについては九%程度の成長、しかしてその後は六%ないし七%の成長ということにいたしておるわけでございます。御承知のように今日は二けたの成長でございまして、この二けたの成長の勢いを九%にとどめるためには実質的には後年度においてはもっと低い成長でなければならぬわけです、これを足して平均していくわけでございますから。そういう意味におきまして平均値が九%ということになっておるわけでございます。
  70. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局、さっきの急ブレーキを踏んだらいろいろ問題が起こるからということの繰り返しだと思うのです。特にそういう点では農業に対して今後どういう配慮をしていくのか、こういうことが今後の問題を占う一つのパターンの基礎になると思うので、移します。  旧全総によりますと、「産業および都市配置を主軸とし、それとの関連において農林漁業部門の開発」に及ぶはずであったわけです。昭和四十年から四十六年の間で、農家戸数はどう変わったのか、農業就業人口の変化はどうなったのか、耕地面積はどういうふうに変わったか、食糧農産物の自給率の変化はどうか、これはこの間もお話がありましたが、あらためてお聞きしたいと思います。
  71. 松本作衛

    ○松本説明員 ただいま御質問がありました耕地面積、農家戸数、就業人口等でございますが、耕地面積につきましては、四十年の六百万ヘクタールが四十七年に五百六十八万ヘクタールということでございます。それから農家戸数は、五百六十七万戸、対しまして四十七年におきましては五百十七万戸でございます。それから農業就業人口は、四十年におきましては九百九十万人でございますが、四十七年におきましては六百八十七万人でございます。それから自給率につきましては、四十年におきましては総体といたしまして八一%でございますが、四十六年度におきましては七四%ということに相なっております。
  72. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この間、確実に農業のほうが圧縮されていったということをその数字は示しておると思うのです。  そこで、「農工一体でよみがえる近代農村」というのは日本列島改造論のキャッチフレーズであります。その展望はこう説明されている。「現在の農地から道路、宅地、工業用地などに転換する面積を決め、転用地を差引いた農地を“永久農地”に確定し、財政援助によって集中的な土地基盤整備を行なうのである。」こうしたら、はたしてでは農業はうまくいくのか。こういう点ではすでにもう実験済みだと思うのです。工業整備特別地域に指定された茨城県鹿島開発は、農工一体ではないけれども、農工両全を課題として進められて今日に及んでおります。そこでお尋ねしたいまず第一は、この鹿島の農地の買収方法の特徴はどうなっていたか。第二は、工業用地として全面買収された農家に対する代替地は確実に保障されたのか。第三は、農業団地は当初計画されたとおりにうまく事が運んでいるのか。第四に、特に農業団地の土地利用の現状は一体どうなっているのか。第五に、農業団地の団地数は幾つで、一団地当たりの面積は最小幾ら、最大幾らになっておるのか。お答えいただきたいと思います。
  73. 松本作衛

    ○松本説明員 ただいま御質問の内容につきましては、あらかじめ御質問の趣旨を承知しておりませんでしたために、さっそく調べたいと思います。
  74. 瀬崎博義

    瀬崎委員 大体私のほうでもある程度のことはつかんでいるわけなんです。もう少し正確に知りたかったわけなんです。これはあまりにも有名なことだから、おそらく経企庁のほうでもこのくらいのことは調べてあるはずですね。この農工両全が一体どうなっておるのか。私がいま申しました設定について、詳細な数字は要りませんから、大体どうなったと評価しているのか、その点だけまずお答えいただきましょう。
  75. 下河辺淳

    下河辺政府委員 鹿島地区につきましては、茨城県知事が農工両全ということを非常に大きな政策課題として取り組んでいるということは事実でございまして、現在その途中におきまして、農工両全ということについていろいろな問題があり、それを解決しなければならないということについては、私どもも幾つかのことについて知っているわけでございますが、その政策目標自身は知事も捨てているわけではございませんで、知事はその目標に向かって今後も鹿島の整備を進めたいということで、私どももその方針に従って全面的に協力して進めていきたいということで考えております。
  76. 瀬崎博義

    瀬崎委員 全体として、いま私が質問申し上げた項目についてはすべてがうまくいっていないというのが現状なんです。これは認められると思う。特に農業団地などは三十二カ所に点在しておって、団地数は四十に及ぶわけです。規模は一団地当たり最小五・九ヘクタール、団地とはいえない小さいものです。最大のものですら三百四十四ヘクタールであります。つまり、これは工業団地をまず優先的にいいところをまとめて取ってしまって、残りを農業団地にするというふうなことにすれば、必然的に農業用地のスプロール化が起こってくるということをこの農工両全の鹿島の実験は示したと思うのです。列島改造の田中総理の発想は、いえばこれの繰り返しなんです。ですから、こういう点で農林省のほうにお聞きしておきたいのですが、こういう鹿島で農工両全をうたいながら失敗したものが、先ほど私が読んだ田中総理の構想による農工一体ならうまくいくという保証があるのでしょうか。
  77. 松本作衛

    ○松本説明員 お答えいたします。  農業の近代化を考えていきます場合には、現在の農業が持っております就業人口というものが現在の農業の規模に比べましてはまだ多い。やはり日本の農業といたしましては、規模の拡大をはかっていくということになりますれば必要な就業人口というものは漸次減少していくということが考えられておるわけでございます。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕 私どもがつくりました昭和五十七年を目標といたします生産目標にいたしましても、現在の農業就業人口が七百三十万ほどでございますものを、約四百三十万程度に減少していくであろうということを考えておるわけでございます。農業の実態といたしましても、専業的な農業経営を育成いたしますとともに、一方におきましては兼業農家が安定した就業の機会を得るということが必要であるというふうに考えております。そういうふうな観点からいたしますと、やはり農村地域工業が導入されるということが農政上の構造改善からいたしましても必要ではないかという点で、農業の面からいたしましても、適正な土地の利用調整を前提といたしまして、その上に立って農業者が農村における安定した就業の機会を得るというための農村地域工業導入促進法というものの運用をはかっておるような事情でございますので、総体といたしまして今後の国土開発のあり方というものは、政府全体として現在考えております方向というものは農業にとっても必要であり有効であるというふうに考えておるわけでございます。
  78. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私がいま申し上げているのは、これから工業地方分散をはかる場合に、まず工業用地を優先的に取って、その残りで農業をやるのだという田中構想があるわけなんです。こういうことで農業ははたして発展できるのか。特に世界的にも食糧問題がいま深刻に問題にされている時点で、わが国の食糧はそれでいいのかということからお尋ねしているわけなんです。四十七年度のおたくの年次報告を見ましても、「農業にとって最も基本的な生産要素である土地については、近年の工業化、都市化の急激な進展に伴い農地の転用が増大しているが、とくに最近その傾向が加速化するとともに土地利用をめぐる非農業との競合や地価の高騰などへの対応を迫られるに至っており、わが国農業は農業経営の円滑な遂行と高能率農業の展開を図るうえで大きな障害に遭遇している。」そう報告しているわけなんです。だからその障害になっている点をはっきりしてほしいと思うのです。
  79. 松本作衛

    ○松本説明員 お答えいたしたいと思います。  ただいま御指摘のありましたように、いわゆる国土利用の変化が農業の土地利用にとりましていろいろと問題が起こっておるということは、私どもも率直に認めなければならぬというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、やはり今後の農用地というものが他産業との調整のもとにおいて確実に確保されていくということが必要である。面積の全体といたしましては、私ども生産目標をつくりました段階で、五十七年に、現在の約五百八十万ヘクタールの耕地に対しまして五百二十万ヘクタールの耕地が必要であるというふうに考えておりまして、この面積を確保いたします方法といたしまして、現在農業振興制度というものがございまして、農業振興制度に基づきます農用地の線引きというものが各町村におきまして計画的に進められておるわけでございますので、この農業振興制度による農用地の確保というものをはかっていく。その農用地の具体的な規制につきましては、農地法に基づきます農地制度の適正な運用によって進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、このやり方が農業面からだけではなくて、国土全体の総合的な利用というふうな観点から調整をはかられるということが必要であると考えておりますので、ただいま御審議いただいております国土総合開発法の中におきまして土地利用計画を立て、それによって土地利用の区分を明確にしていくというようなこと、ないしは開発につきましての適正な規制を行なっていくというようなことが成立いたしますならば、さらに農業と非農業との土地利用の調整が適切に行なわれていくのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  80. 瀬崎博義

    瀬崎委員 はたしてそういうふうに適切に農用地と非農用地の区分けが行なわれるかどうか、そこが問題で、私が先ほどから申し上げたのは、そういうことを目的とした鹿島の農工一体がみごとに失敗していることから考えて、そういうことがさらに全国的にできるであろうかという疑問を投げかけたわけであります。  時間の関係もありますから農業問題は終わって、次に地方自治との関係について質問したいと思います。  旧全総によりますと、「中規模、小規模開発拠点開発がすすみ、それぞれの影響の及ぶ範囲が拡大連結されて、やがてこれらが新たに経済圏を形成し、それぞれの経済圏が有機的に関連しあつて均衡のとれた地域発展が期待できる」はずであったわけであります。六〇年代前半、各地方自治体が競って新産都市指定や工特地域指定を政府に求めた理由の一つには、地方財政へのはね返りの期待があったと思うのです。しかし現実にはその逆に、新産都市工特地域としての開発地方財政に負担になったというふうな例はありませんか。
  81. 下河辺淳

    下河辺政府委員 工業開発を進める場合に、従来の工業開発を進めなかった時代の市町村の公共事業に対する需要というものと比較いたしました場合、工業開発を進めますと非常に大きな公共事業に対する需要が見えてまいりますので、そのための市町村の負担が大きくなるということは事実でございまして、そのために、工業開発を進める建設期間中の財政というものについて、市町村の財政が非常に苦しい状態にあるということは事実でございます。
  82. 瀬崎博義

    瀬崎委員 よく引き合いに出される、これも新産都市としてはかっては優等生であった水島などの例はおそらく政府のほうも認めていると思うのですが、特に水島などではどういう点で地方財政に問題を起こしているか、特徴を御説明いただきたいと思います。
  83. 下河辺淳

    下河辺政府委員 水島地区につきましても、先ほどから私が一般的に申し上げたことで一般論としては尽きるかと思いますが、水島を持ちます倉敷市におきまして、やはり生活環境を整備していくときには市町村の財政に依存するところが大きいわけでございます。財政という上ではやはり問題があるということでありますが、これは短期的に市の整備をするということと、租税その他によりまして毎年標準的な事業を進めていくということのギャップが、水島地区に非常に典型的にあらわれたものではないかと考えております。
  84. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私も数字は持っておりますが、政府が認めているからあえてそれ以上申し上げませんが、結局最初に掲げた目標からいえば、地方自治体の財政に地域開発が決してプラスにならなかったという結論だけはここではっきり確認をしておいていただきたいのですが、そういう理解でよろしいですね。
  85. 下河辺淳

    下河辺政府委員 市町村財政に問題があるということはただいま御説明したとおりでありますが、市町村財政に問題があるということが開発目標に対して問題があるということには直接つながりませんで、市町村財政についてさらに自治省その他と協力をして改善をしてまいりたいということは考えておりますが、市町村財政が苦しいからその市の環境整備をスローダウンさせるとかやめるということにはやはりまいらないのではないかというふうに考えております。
  86. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私の聞いているのはそういうことではなくて、本来、地方自治体の財政を豊かにするためには地方自治体の自主財源を確保すること、それから当然国が行なうべき事業等に対する補助金等は国が責任をもってめんどう見るということ、こういうことがなくて、そのかわりに工業を誘致しろ、そうすればそれが波及効果を及ぼして地方自治体の財政を豊かにするんだ、こういうふうな考え方があったわけなんですが、それが間違いであったということを認めていますか、こういうことなんです。
  87. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新産業都市におきまして市町村財政を豊かにするということがその政策目標ではございませんで、政策目標を達成するためには、市町村財政というものにいろいろな適切な措置が必要であるということを申し上げておるわけでございまして、特に市町村財政につきましては、先ほど申しましたように、建設期間中の支出が増大するということでございますが、その増大をいたします、公共投資を集中的にいたします時期には実は工業はまだ操業を始めていない、あるいはそれに従業員として従業させる労働力の方々もまだ定着を進めていないということから、事業税あるいは従量税その他住民税についても歳入がふえてこないということは事実でございます。公共投資の峠を越えた段階のころから若干市町村への財政の収入がふえてくるということで、建設期間中と、その開発をいたしましたことによりますその地域の所得効果があらわれてくる、その時間のギャップがいま問題になっておるところでありまして、開発を進める際にそういったことを市町村財政としてどう考えるかということについては、私どもも一そう努力を申し上げたいということを申し上げたわけでございます。
  88. 瀬崎博義

    瀬崎委員 さっきの生活優先かそれとも生産優先かと関連するわけなんですけれども、本来住民に密着しておる地方自治体の財源を豊かにする方策を講じないで、どうして一体生活優先が保証できるのか、そういう点をもう一ぺん質問したいし、そういう点から、地域開発が当初から地方自治体の財政を豊かにする目的ではなかったと言われるなら、いよいよもってこれは何を目的にしたのかといわざるを得ないと思うのです。  そういう点では、全国市長会新産都市協議会の先ほどの資料ですでに一定の集約も出ておるように思うのです。こういっております。「端的にいつて新産都市の財政状況は全国都市のそれと大同小異であり、この調査においては特に大きな特徴はみられないといつても過言ではなかろう。また、新産都市等財特法による財政援助において、新産都市全般の問題として最近においても、あまり、メリツトを受けているとは必ずしもいえないであろう。」「個々の都市についてみた場合はともかくとして、新産都市全体としては、必ずしも、工業開発等による新産都市への税収入にはほとんど寄与していないといつては過言であろうか。」こういうことなんです。ですから、いままでの答弁等を集約すれば、結局一部始終が生産基盤優先であった、生活のほうはあと回しであった。また生活関連投資を行なわなければならない地方自治体といたしましても、財政の圧迫にこそなれプラスにはならなかった。こういう事実からして、今後そういうことがないという保証が新国総法のどこにあるのかという点をお伺いしたいと思います。
  89. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土総合開発法におきましては、先ほど御指摘いただきました「基本理念」のところで、前の全国計画でも書いてあるという御指摘をいただきましたが、過密過疎が非常に深刻化した今日においてあらためて明確に再確認したいということで基本理念を書いたわけでございまして、基本理念で再確認をして、これから私ども全力をあげて努力をしたいということの意思表示というものをきょうは中心に御質疑をいただいたと思います。  私どもとしてはそれをやりたいということで、それを裏づけるために、開発というものについても、やはり開発するだけでなくて、開発に伴って生じますいろいろな問題が御指摘いただいたようにあるわけでございますから、土地に関する規制というものもやはり同時にあわせて考えていかざるを得ないということから、土地価格あるいは利用について行政上の権限を知事を中心に明確にするということが一つでございます。  さらにもう一つは、開発を進めていきます場合に環境条件あるいは公害問題を特に重要視しなければならないということから、環境庁とともに、環境行政と開発行政の一体化ということによりまして、公害というものに十分な措置を講じたいということを明確にしたつもりでございます。  さらにもう一つは、やはりそういった開発を進めます場合に、在来の地域住民の方々との関係は御指摘いただいたようにきわめて大きいわけでございますから、そういった方々との話し合いの手続を明確にすることによってこれからの開発を進めてまいりたいということを焦点といたします新しい国土総合開発法の御審議をお願いしたわけでございます。
  90. 瀬崎博義

    瀬崎委員 従来の開発方式がもし踏襲されるとするならば、今後地方自治体に対する財政圧迫がますますひどくなるおそれがあるという点で、私はいま地方自治体の財政問題と地域開発関係について質問しているのであって、いまの答弁は必ずしもそれに答えられたものではないように思うのです。そういう点で、新しい国総法案の場合、さらに大規模な開発が見込まれているし、それがどうもいままでの話から見ると同じようなパターンで行なわれそうだから、そういう点で、地方自治体サイドから見てこれに期待をかけられないのではないか、われわれはこういうふうに結論を持つわけなんです。  同時に、いま地域住民の意見の反映の問題にも言及されておりますから、あらためて、いまのむつ小川原開発の問題で地方自治体がどういう立場に置かれたのか、若干質問しておきたいと思うのです。むつ小川原開発というのは、新国総法案でいいますと第五章の特定総合開発地域に該当するわけなんですか。
  91. 下河辺淳

    下河辺政府委員 むつ小川原開発地域を新しい国総法の特定総合開発地域にするかしないかということについては全く白紙でございまして、この法をもし制定していただければ、知事の判断によるところでございます。しかし、むつ小川原地域については、国総法の指定ということで特定地域にするということよりも事態はやや進んでいる状態ではないかと考えております。
  92. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私どもは決して新国総法案に賛意を表しているものではないけれども、もし新国総法案政府の思惑どおりになったとして、では、むつ小川原開発には新しい法案が何らかの計画の変更やあるいは開発方式の変更を求めるものなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  93. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新しい国土総合開発法の考え方というものは、むつ小川原地域についても適用されなければならないということは事実だろうと思います。しかし、新しい国土総合開発法によります手続に乗るかどうかは、知事と話し合いをしなければきまらないことであるというふうに考えております。
  94. 瀬崎博義

    瀬崎委員 一般的にいって、今後の地域開発において、規模の大小によって地域住民の意思や市町村の意見の開発計画あるいは事業への反映のさせ方というのは異なるのですか、同じなんですか。
  95. 下河辺淳

    下河辺政府委員 大小によるということは非常にむずかしい御質問だろうと思いますが、きわめて日常生活に身近なものについての施設整備をする際に、国土総合開発法の特定総合開発地域を適用するという考え方はございません。むしろ、従来の地域に対して重大な生活環境の変化を伴うものであるということになりました場合には、やはり国総法の特定総合開発地域の制度によりまして十分な手続を必要とするというふうに考えておるわけでございます。
  96. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その点では昨日の公聴会で寺下六ケ所村長の公述があったわけであります。大臣、お聞きになっていますか。その村長のことばをそのまま引用するならば、むつ小川原の巨大開発は、地震か津波が突然襲ってきたように、村ぐるみ人ぐるみ、のみ込もうとしており、われわれはその被災者、開発難民にならぬよう必死に努力している。村外の人たちは反対運動というが、そうではなく、生きるための努力、生きるための権利の主張である。文字どおり、いまいわれているこの開発がまさに村民の生活に重大な影響を及ぼしてきている、こういうことを村長みずからが告白されておるわけなんです。そうなってくると、当然いま言われているこの開発の手続等については政府としても考慮しなければならないという場合に該当するのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  97. 下河辺淳

    下河辺政府委員 昨日の六ケ所村の村長のお話は私ども深刻に受け取っております。しかし、六ケ所村につきましてはかなり長期にわたる開発の歴史がございます。そのたびに村民の方々あるいはあの地域一帯の方々の御苦労がありまして、いままでの開発におきまして幾つか挫折したものがございましたが、今度こそはという気持ち、私どもにも地域の方々にも非常に期待が大きいというふうに私は判断しております。村の方々に突然であるということについては、県その他私どもにつきましても、村の方々への御連絡のしかたについて万全であったとは考えておりませんで、さらに十分な御連絡をしなければならぬという反省は持っております。計画をきめる以前にいろいろな御連絡をする、あるいはしたいということは事実でございまして、いま政府といたしましても、県の第二次基本計画が策定されるのを待ちまして、政府としての最終的なプランを固めたいというのが事実でございます。新しい国総法におきましては、指定時におきましてやはり必要な手続をするということをきめておりまして、そして、指定になるときにはまだ計画というところまで住民の方々の合意が得られてないということを予想いたしまして、少なくとも指定後三年間以内にはひとつ計画をきめていただきたい、それには指定のときと同じ手続を経てきめていただきたいということで、もし計画がきまらない場合には指定が無効になるという規定を設けているのもその趣旨であります。六ケ所村の場合でも、これから第二次基本計画が策定され、国の計画が策定されるという中で、十分地域の方々の公害その他に対する御疑念を払ってまいりたいというのが考え方でございます。
  98. 瀬崎博義

    瀬崎委員 きのう村長が特に要望していた点は、開発内容が秘密にされている。もちろん、石油の精製能力はどれくらいのものができる、あるいは電力はどれくらいの規模の発電所ができる、こういうことは示されているけれども、六ケ所村のどの地域にどういう工場ができるのか、いつ建つのか、こういう内容が公表されていないのが問題なんだ。ここに民主的な手続が踏まれていないゆえんがある、こういうことなんです。そういう点では政府は、ほんとうにいま言われていることが真実であるとするならば、まずこういう計画内容を発表することによって村民との話し合いに入るべきじゃないと思うのですが、どうですか。
  99. 下河辺淳

    下河辺政府委員 先ほど申しましたように、政府あるいは県におきまして、操業の規模、配置について計画を持っていて秘密にしているという事実はございません。現在では基礎調査をさらに続けておりまして、約五千ヘクタールという用地の中で、どの程度の規模、どの程度の業種の工場配置が適当であるかということについての調査を繰り返しており、県あるいは国、あるいは専門家との間で話し合いをしているわけでございます。きのうもお話し合いになりましたが、確かに県の第一次基本計画におきましては石油精製二百万バーレルを前提として考えておられることは事実でございますが、県の第一次基本計画の二百万バーレルを国が受け取りまして各省間で協議を重ねた結果、二百万バーレルという規模についてはもう少し再検討を要するという結論が出ましたので、現在では規模もきめておらないというのが実情でございます。ほぼ石油ということであの基地を考えるという前提で調査を進めているということは事実でございますが、配置、規模その他についての結論が明確に出ているというわけではございません。
  100. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いまの話を聞いておりますと、結局県が計画を先行さして、政府のほうでまだ明確にその計画に賛意を表していない、そういうふうな話し方に私には聞こえるのです。ああいう大規模な事業計画であり、あとでまた話しますが、むつ小川原開発株式会社という第三セクターもすでにできていて、その中には財界のお歴々も並んでいるというふうな状態のもとで、六ケ所村はどうなっているかということ、きのうお話しになったそういう現実から見て、あまりにもいまの答弁政府立場は無責任のような感じがします。これは第四十国会で新産都市建設促進法審議されたときの経企庁の政務次官の答弁なんですが、「本法の方はそうでなくて、大産業が進出するにふさわしい地区に、先行投資としてもろもろの公共施設その他の方を先に都市建設をしてかかる。しかもそれは主として国家の責任において——もちろん知事の申請に基づき、地方の協議会の意見を盛りまして立案もいたしますし、実施も地方にまかせますけれども、国が高度に関与いたしまして、先行投資としての都市建設をしてかかるという点が非常に大きいのですから、」云々、こう言っている。また他の部分では、「法律だけ読んでみますと、申請から事が始まるようになっておりますけれども、実際はその基礎調査の段階におきまして、府県の側も業者の側も、それから中央の方も、みんなが結局いろいろ相談し合って研究し調査をするということから始まることが多くて、従いまして、その間において、実際上は中央の指導といいますものがかなり行き渡って行なわれると思うのであります。」新産都市程度の区域すらこういう状態なんです。ですから、むつ小川原というかつてなかった巨大規模の開発の場合に、政府あとで県が先行しているということはわれわれ常識では考えられない。やはりまず政府が一定の案を持っていればこそ、ああいうプロジェクトが生まれてきたのではないかと思う。その点で政府はまだそういう、どこに何という具体的な計画を持っていないと言われたが、そういう意味でわれわれを納得させるような答弁をもう一度いただきたいと思うのです。
  101. 下河辺淳

    下河辺政府委員 むつ小川原開発について政府が介入していないとか、あるいは責任を持ってないとは決して申しません。政府としても、前国会でも明確にお答えしておりますように、県知事とともに政府としての責任を持っているということは否定しておりません。ただ、そういう責任のもとで十分なる公害対策を講ずるために開発計画のレイアウトをどうするかということについては、さらに責任を持つためにももう少し調査を進めなければならないということを申し上げたわけでございます。
  102. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうしますと、小坂長官が予算委員会の分科会で津川議員の質問に答えて、前段は省略しますが、むつ小川原について、「国及び青森県が行政的に介入すべきではない、そういう認識に立っておるわけでございます。」と言って、あの村内でのいろんなトラブルが起こっている問題を傍観視するような発言をしておられますが、これは取り消されますか。
  103. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あの当時、御承知のように村長に対するリコールが出ておる、また賛成派の村会の方に対するリコールも出ておる、あの地域において地域住民が全く二つに分かれているというような状況であったわけです。そこで、その争いの中に政府は調停をすべきではないかという趣旨の御質問であったように思います。そこで、私は、そういう時期においてわれわれが入っていくことは適当でない、こう考えている旨を申し上げた次第でございます。
  104. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういう趣旨のものではないと思うのです。村長の意向からいっても、少なくともこういう問題について住民が正しい判断、正しい賛否の態度がきめられるようにするためには、いま下河辺局長から発言があったように、やはりどうも石油基地ということが大きな中心課題になっているようなのですから、そこまであるものなら、一応現在の時点での、政府が県あるいは財界などと進めている相談の内容を明らかにすることが、ほんとうにそういう住民の間のトラブルを解消していく政府の責任ではないかと思うのです。われわれは何も調停しろと言っているのじゃない。どうですか、これは長官にお答えいただいておきたい。現時点での最も進んでいる計画内容について発表いたしますか。
  105. 下河辺淳

    下河辺政府委員 現時点で私どもが決定したものはすべて県を通じて公表するつもりでおります。
  106. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いつそういう公表が行なわれますか。
  107. 下河辺淳

    下河辺政府委員 一つ一つきまり次第、刻々公表してまいります。
  108. 瀬崎博義

    瀬崎委員 こういう総合的な巨大な開発基地について、刻々、一つ一つというようなものなんですか。大体の青写真というものがあった上で個別の計画ということになるのじゃないですか。
  109. 下河辺淳

    下河辺政府委員 政府としての公式の公表というものはせんだって閣議口頭了解ということを通じて行なっておりまして、その中に、約五千ヘクタールの用地を対象としながら工業開発を進め、そしてその中で石油というものを中心とした工業開発を進めるということは、すでに全体のマスタープランという形で公表しておりまして、これからはそれを進めていく際に、港湾、あるいは工業用水、あるいは農業との調整、あるいは公害防止計画、あるいは企業進出との協定というふうに順次進んでまいりますので、そのつど公表したいということを申し上げたわけでございます。
  110. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういうふうなマスタープランに対して非常におぼろげな計画だからはっきりと地元に言えないのだろうと思うけれども、特に指摘されている点は、六ケ所村のまん中の一番いいところを取られてしまう。村は二分されてしまう。人間にたとえたら——どう言われたかね、頭のようなところを取られて手足だけ残される、こういう村長の表現だったと思うのです。そういう意見がもしも下から上がってきた場合に、政府はそういう意見を尊重して計画は変更する余地を持っているのですかどうですか。
  111. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いまのお尋ねは二つの観点から私ども考えてまいりたいと思います。その一つは、現在地元の土地を持っておられる方々あるいは住民の方々と土地買収あるいは生活保障等のことについて話し合いを進めておりまして、そのことでどういう協力が得られるかということによりましてプランが変更になることは十分予想されておるところでございます。もう一つ観点は、港湾をつくる、あるいは公害防止計画をつくるときの技術上の観点から多少変更を余儀なくされる場合が出てくるものと考えておりますが、そういった二つの観点からさらに県と村民の方々とのお話し合いをしていただかなければならぬということは、閣議口頭了解のときに事務次官通達として知事のほうにお願いをしているわけでございまして、県当局と六ケ所村当局との話し合いというものを重要視しているということは事実でございます。
  112. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では今後六ケ所村の意見が十分反映するものだというふうにわれわれ理解していいわけですね。
  113. 下河辺淳

    下河辺政府委員 六ケ所村の御意見というものは十分承りたいと思います。
  114. 瀬崎博義

    瀬崎委員 承りたいだけではなしに、承って、それが実質、計画の変更ということに結びつくという余地は十分残っているということなんですね。
  115. 下河辺淳

    下河辺政府委員 できるだけ結びつけたいと思います。
  116. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そのできるだけはたいへんくせ者だと思いますけれども、そういうふうな答弁内容から推して新国総法案がやはり問題になってくると思う。都道府県総合開発計画策定については市町村長の意見を聞くということにしか表現上はなっていなくて、市町村議会の議決を求めることにもなっていない。その市町村長の意見を聞くという程度がいまのような、できるだけというふうな内容になってくると、これは結局上からの押しつけになるのか、ほんとうに住民の意見を盛り込んだものになるのか、疑わしいと思うのです。なぜもっと明確に、地元の地方自治体の意見、少なくとも市町村議会の議決くらいが都道府県の計画案に反映するようにしていないのですか。
  117. 下河辺淳

    下河辺政府委員 六ケ所村で考えます際に、六ケ所村を含む十六市町村の総合開発計画ということで県当局が御苦労になっているわけでございます。十六市町村という地域の中で漁業、農業、畜産業、林業、工業開発都市開発というものについて総合的な開発を進めたいというのが青森県としての考え方でございまして、その中心になる目玉として石油を中心とする六ケ所村の開発というものが現在話題になってきているということでございますが、その際に、十六市町村の方々とお話し合いをして六ケ所村というものをどういうふうに判断をするかということと、六ケ所村に直接重大な影響があるわけでございますから六ケ所村の方々とお話し合いをするということも必要でありますが、さらには五千ヘクタールという工業用地の中で移転を余儀なくされる、直接的な被害を受ける村民の方々とのお話し合いということも出てくるわけでございまして、そういった複雑した関係を、十分御議論を承った上で結論を出したいということを考えておりますので先ほどのようなお答えになったというふうに考えております。
  118. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私の言っているのは、そういうような政府現実のむつ小川原に対する態度から見て、ほんとうに民主的手続による計画作成を新国総法案保証しているのかどうかという点で疑問がある。特に市町村長の意見を聞くというだけにとどめて、議会の議決を経るでもない、必ずそれを反映するというのでもない、こういうふうなあいまいな表現になっている理由を聞いているわけなんです。
  119. 下河辺淳

    下河辺政府委員 これは知事の意見を聞く、あるいは市町村長の意見を聞くということを法定しております。これは法制上そういう形を形式上とっておりますが、御指摘いただいた問題はそれを聞く側の姿勢の問題であるというふうに考えておりまして、聞く側の姿勢としてとにかく地方自治を十分尊重したいということを繰り返し申し上げているわけでございまして、法制上は聞くということでよろしいのではないかという判断をしたわけでございます。
  120. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうすると、いまの政府の姿勢ではこの条項はあまり期待できないという結論になります。  次に、地方中核都市の問題です。これは五日の記者会見で総理大臣が、国土総合開発法案はぜひ通してもらいたい、大都市から三十キロくらいのところで水と交通、通信網を完備させた都市が十年も十五年もかからずにできる。われわれがこれを読んだら手品のように聞こえるのですが、はたして地方中核都市建設はこんなに簡単にできるものなんですか。
  121. 下河辺淳

    下河辺政府委員 簡単にできるというふうには考えておりません。ただし、実際には私どもも現在大都市圏人口集中についていろいろと推計をしておりますが、一都三県、東京圏で考えます場合に、現在約二千四百万の方々が居住しておられます。これは推計の方法によっていろいろ御見解もあるかと存じますけれども、このまま放置すれば昭和六十年で三千九百万になる可能性さえ持っているというようなことを考えておりまして、これは水資源、電力あるいは交通事情等から考えて非常に困難な事態におちいってしまうことは明らかでありますから、地方都市を通じて都市化の波がそれだけ激しく押し寄せるという前提があるとすれば、十年間に相当緊急に地方都市の整備を進めない限りは巨大都市に取り返しのつかない問題を起こしてしまうという意味では、十年間でいかほど苦労があってもつくらなければならないという事情があるのではないか。そのことをおそらく表現なさったものと考えます。
  122. 瀬崎博義

    瀬崎委員 緊急にやらなければならないという努力の意味であって、十年も十五年もかからずにできるという断定は必ずしも肯定はできないということですね。
  123. 下河辺淳

    下河辺政府委員 それは地区ごと、ケース・バイ・ケースでおのずから異なると思います。
  124. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この地方中核都市構想は必ずしも今度初めて登場してきたのではないように私は思います。たとえば列島改造論にも随所に中核都市、二十五万都市ということばが出てくる。これも同じ構想のように思うし、新全総では、「地方中核都市について、広域生活圏の中心都市として、新たに土地利用と主要施設にかかる都市計画を定める。」といっている。この地方中核都市も大体同じような方向に私たちは理解していたわけなんですが、どうですか、だいぶ抜本的に違う内容を今度の場合は含んでいるのですか。
  125. 下河辺淳

    下河辺政府委員 一つ考え方は、おそらく、旧全総、新全総、最近におきます過疎問題を含んだ生活圏構想という一連性は持っているかと思います。しかし、非常に大きく違ってきている点をもし言うとするならば、従来、六〇年代は、その地方都市をつくる際に工業誘致が出発点であるということに非常に焦点があったというふうに思います。これからの地方都市の場合には、工業開発が必要であることは従来どおりだろうと思いますけれども、しかし、その都市がつくられる生活環境あるいは自然環境というもの、あるいはその都市の歴史的な文化的な環境というものがどのように国民生活に有効に溶け込んでいくかというところに焦点があるというところは、従来とは変わってきたということを申し上げることができるかと思います。
  126. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうは言われるのですけれども工業配置・産炭地域振興公団の「業務案内」を見ますと、「この地方中核都市は、道府県で一−三カ所、全国で八十−百カ所つくられますが、」「中核都市建設のうち、当公団の役割りは、道県などの要請をうけて、主として中核的工業用地の造成、分譲を行うことです。」といっているわけなんで、やはりここでも中核的工業用地の造成ということを中心に置いているし、しかもその中核都市のまた中核が工業用地だといっているわけなんです。さらに列島改造論でこの部分の表現を見ますと、地域開発の主導力となり地方都市の形成の核となる内陸工業団地というふうにいっている。結局、こうしてみると、工業立地を引き金にして地域開発を考えるという従来のタパーン、これを臨海型から内陸型に押し広げていこう、こういう発想の転換だけでしかないように思うのですが、私の理解に間違いがありますか。   〔天野(光)委員長代理退席委員長着席
  127. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御披露なさいました工業配置・産炭地域振興公団の業務案内でございますけれども、これは昨年十月に、昨年の通常国会で産炭地域振興事業団を改組いたしまして工業配置・産炭地域振興公団といたしたわけでございますが、その際、工業配置業務、これに重点を置いた案内ではないかと思うわけでございます。今回政府で御提案申し上げております国土総合開発公団、すなわち工業配置・産炭地域振興公団法の一部改正法案におきましては、工業団地のみならず、地方都市の整備のための住宅団地、流通業務団地、研究学園団地等、これらも整備することといたしておりますので、工業団地のみを中心としておるということにはならないと存ずる次第でございます。
  128. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私は工配・産炭地公団だけをとっているのじゃないのです。その表現だとか田中総理の列島改造論の中でいわれていることだけをひっつけて考えたら、地方中核都市構想のその核になるものは結局は工業立地ではないですか、こういうふうに尋ねているわけなんです。ただ、その工業立地を、いままで臨海型であったものを内陸型に押し広げようとしているのじゃないか、ここが新しい構想ではないか、こう言っているわけです。
  129. 下河辺淳

    下河辺政府委員 これからの産業構造を考える場合、あるいは就業構造を考える場合、二次産業によって働くということが中心になるということは否定し得ないと思います。しかも過密地域におきます工業については、新増設というものについてはきびしい規制を必要としますし、場合によっては過密地域におきます工業をスクラップダウンする、あるいは地方分散するという必要があることは御指摘いただいたとおりだろうと思います。そのために、非常にかなりの仕事が工業基地をつくるということと関連するということであればそれは否定し得ないと思いますが、ただ政策考え方といたしまして、量の問題ではなくて、工業都市だけをつくればよいということであるかというお尋ねであるとすれば、決してそうではありませんで、やはり教育を中心とした町、その他たとえばレジャーを中心とした町、いろいろな形でこの都市建設を進めてまいるということが重要であるということを申し上げたつもりでございます。
  130. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そういうふうにうまくいくかどうかという点について、これも一つの典型的な例をあげておきたいと思います。これは住宅公団のつくった工業団地でありますから建設省にお聞きすればいいけれども、時間の関係もありますからこちらで概要を説明します。私の出ております滋賀県でいまから十二年前、つまり昭和三十六年から湖南工業団地という工・住・店舗混合団地の造成が日本住宅公団の手で開始されました。そのために日本住宅公団は三十六年から滋賀県の東南部、甲西町に田畑、山林等を買収して、二百九十一万平方メートルの団地造成にかかったわけであります。当時関西では内陸工業団地としてはきわめて大規模なものであって注目を集めていたものなんですが、この団地がどういうふうな経緯でその機能を発揮していったのか、建設省、大体御存じですか。
  131. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先生の御指摘の滋賀県の、住宅公団のつくりました湖南団地でございますが、これは三十六年に区画整理事業で造成をして四十一年に完成いたしておるわけでございます。その際に、大体各企業に分譲を四十二年から四十五年にわたって行なったことは御承知のとおりでございますが、これは大体四十四社について行なわれたわけでございます。この四十四社のうちで現在操業中のものが三十三社でございまして、残りの半分くらいが工場を建設中、残りは未着工ということになっておる次第であります。
  132. 服部安司

    服部委員長 この際、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時十一分開議
  133. 服部安司

    服部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬崎博義君。
  134. 瀬崎博義

    瀬崎委員 先ほどの説明で明らかなように、この湖南工業団地は昭和三十六年に造成事業を開始したにかかわらず、最初に土地の売却が成立したのが四十二年三月、最初の工場が操業に入ったのが四十三年十一月、非常におくれたわけであります。そうして現在が先ほどの説明のとおり、土地は四十四社に全部売れたけれども、三十三社が操業しているにとどまっている。その三十三社の占める面積は百十八万平方メートルです。工場用地の全体が百七十三万平方メートルですから、三分の一がまだ未操業、もちろん工場も建ってない部分もある、こういう状態にあります。住宅用地のほうが全部で四十一万平米あるわけですが、現在利用されている部分が十八万平方メートル、未利用が十万平方メートル、土地ブームで工場用地に追加売却されたのが十三万平方メートル、住宅用地のほうも約三分の一が空地、こういう状態にあります。  この経過を振り返ってみますと、ごたぶんに漏れず、六〇年代の地域開発地方自治体がたいへん乗り気になって、農民はきわめて安い値段で土地を提供させられた。それでもなお住宅公団の買収価格があまりに安かったので、甲西町は独自に農協から一億円のやみ借金をして農民に一部地価の補償をしたわけです。工場がすぐに誘致されれば、売れた造成地代金の一部を町がもらってそのやみ借金はうまく返済されるはずだったのです。ところが工場の進出があまりにもおくれてきたためにつじつまが合わなくなってきた。甲西町は共有林を一坪当たり四百円前後の安値でゴルフ場にたたき売って農協からのやみ借金の穴埋めをせざるを得なくなった。  こんなにまで住民に負担をかけ、町が無理をして、住宅公団のつくった工業団地にはさっぱり工場が建たない反面、名神高速道路、栗東及び彦根インターチェンジ周辺にはスプロール的に工場が進出してまいりまして、今度は地域計画的、総合的な発展をめちゃくちゃにしてしまったわけです。この点については、一国の総理である田中角榮氏が、個人的にもせよその著書で、以前から美田豊かであった栗東町を「寒村」と表現し、これが名神高速道路とインターチェンジで一挙に新興工業地区へと一変したなどというに至ってはあまりに無責任きわまると私も思ったものでありますから、私はその隣の町に住んでいますから事実をもって反論していたわけです。金丸建設大臣は、「建設省ばかりの関係ではありませんから、各省庁よく連絡をとって、実態調査というものをやれるように努力してみたい」とお答えになりました。どうですか、だいぶ日がたちましたが、アセスメントをしてみられましたか。
  135. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 いまの湖南団地の件につきまして先生いろいろ御指摘ございました。先ほど申し上げましたように、まだ未操業の会社が十一社ございますけれども、面積は、ちょっと私のほうで調べたのを申し上げますと、百七十三ヘクタールが譲渡されているわけであります。あとの百九十との差は、じんかい処理場その他の公共公益施設でございます。そうして、すでに操業しております面積が百十八ヘクタール、未操業が五十五ヘクタールでございます。したがって未操業のほうがおおよそ三分の一の面積というふうに考えております。それからもう一つ住宅につきましても、四十一ヘクタールのうちに社宅住宅用地としては三十ヘクタールでございまして、その中で未着手が六ヘクタール、工事中が五ヘクタールということでございます。これも三分の一がまだできてないというかっこうでございます。  これにつきましては、ちょうど二、三年前の景気の停滞の時期でございまして、そういうことで見通しがつかなかった企業が多かったということ、それからもう少し公害対策上のいろいろな措置を講ずるということで少しおくれておる企業があるわけでございますけれども、これについては住宅公団から各企業にいろいろ督促をいたしまして、工場建設に着手してない六社——十一社のうち五社はすでに工場建築に着手いたしておりますが、着手していない六社につきましても七月中に着工の予定ということになっておる次第でございます。そういうわけでございまして、大体来年までにはこれはすべて工場ができまして操業できるというふうに考えている次第でございます。
  136. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私が言ったのは、田中総理が、栗東町の一寒村が名神高速道路の開通で一躍近代的な工業都市になったという表現をとったので、それは事実に反するということを申し上げたら、金丸大臣が一ぺん調査しましょう、こういう話だから、調査しましたかということをお尋ねしたのです。時間の関係もありますから省略しましょう。  金の卵を産むはずの湖南工業団地は、結局甲西町にとっても重荷になったわけなんです。甲西町というのは私の隣の町なんだから一番よく知っている。全国総合開発計画や近畿圏基本整備計画、年度事業計画と、幾重にも手をかけてつくった計画に基づく事業が、結果としては当初の計画どおりにちっとも進まなかったわけであります。そうして逆に、地域が立てている計画を破壊してまでインターチェンジ周辺には大企業あるいはその関連企業がスプロール的にどんどん進出していった、こういう事態になったということを私は指摘しておるわけなんです。しかも、住宅公団が一たんやった団地をほうっておくわけにいかぬから、いまおっしゃったように強引に工場誘致を進めて、確かに地価が上がってきたから、土地は財産として保全する値打ちもあるというのでそのほうの買い取りは進んだわけです。  ところが、工場立地のためにどんな無理が行なわれたか。最大のネックであったのは工業用水が確保できなかったことなんです。そのために、すぐそばを流れている、琵琶湖に注ぐ最大の川であります野州川の伏流水をせきとめて、湖南工業団地へ一日四万トン送水の工業用水道を建設した。さて工場が操業し出すや、野州川の水はどんどん工業用水に取られます。そこで、もともと野州川にたよっていた私の町、石部町、栗東町、水口町、これは野州川の水から締め出されまして、川のすぐそばにある町でありながら地下百メートルの深井戸にたよらざるを得なくなったわけであります。現在なお水道はピンチであります。工場立地の初志貫徹のために住民の飲み水まで奪うようなことが起こって実際よいのか。これはどなたか大臣にお答えをいただきたい。まず建設大臣
  137. 金丸信

    ○金丸国務大臣 人間の生命を維持する水というものは大切だと私は思います。そういう意味で、工業用水が先か人間が使う水が先かということになると、まず人間の使う水が先だということは言える、こう私も思います。
  138. 瀬崎博義

    瀬崎委員 その人間の水を犠牲にして無理やり工業団地へ工場立地が進められたんです。近畿全体から見ますと、阪神地帯へ工場、ビル、人口集中いたしまして、近畿全体の水不足が深刻になり、御承知のとおり琵琶湖の水位を一・五メートル下げてまで毎秒四十トン以上の水を新たに送ろうという琵琶湖総合開発計画政府が開始したわけであります。六〇年代の高度成長の結果は、滋賀県内も水不足、近畿全体も水不足にしたわけであります。つまり、工場という入れものづくりだけが先行していくようなやり方でありますと、当然こういうようなことが起こるのではないかと私どもは考えるのですが、政府はこの滋賀県内の水不足、近畿全体の水不足についてどういうふうにお考えですか。
  139. 下河辺淳

    下河辺政府委員 近畿につきましては、淀川水系によります水資源開発基本計画をすでに決定してございますが、その中で、昭和五十五年までに要します新規の水需要は約六十七・四トンというふうに推計しております。その中で都市の上水道のために必要な水は四十二・七トンというふうに考えております。工業用水については、京阪神に必要な新規の需要が二十三トンというふうに考えております。それに対応いたしまして琵琶湖から、いま御指摘いただきましたように、四十トンの水を供給するということでございますが、この工業用水の二十三トンというものは、工業がこれから開発されるために必要な水ということではございませんで、御承知のように京阪神におきまして工業用水等のくみ上げのために地盤沈下が起きておりますので、地盤沈下対策として二十三トンの水を供給することによって、地下水のくみ上げの規制に効果をあげたいという趣旨からでございまして、純粋の新規需要分については、特に大阪を中心といたします京阪神地区の上水道の水の不足を補うために琵琶湖の開発をするというのが考え方の基本でございます。
  140. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私の言ったことに対する答えになっていませんね。私が言っているのは、工場分散と称して工業団地を内陸部につくった、これが結局水不足でなかなか工場の立地が進まない、強引に工場立地を進めるために工業用水道をつくったら、今度は付近の住民のほうの水が干上がってしまった、こういうことになったのです。そして、さらにより大きな視野で見るならば、阪神方面への工場の集中人口の過密も生み出して、いま説明のあったようなことになった。だからそういう点では、六〇年代の高度成長政策の繰り返しではこういうことはちっとも解決しない、新しい困難を生み出すという実例として私は指摘しているわけなんです。  しかも、内陸工業団地づくりはあたかも無公害産業立地になるかのような宣伝が列島改造などで行なわれておるわけなんですが、そうではないといういい証拠は琵琶湖の汚染が証明していると思うのです。琵琶湖がPCBや重金属に汚染されているという調査結果が、政府がいう、知識集約型産業とかあるいはエレクトロニクス産業などだから無公害だという宣伝を事実で破っていると思うのです。結局、当然起こってくる工場排水や産業廃棄物、こういうものに対する処置、規制がまず先に準備されて、そこへ工業団地をつくり工場誘致をするというんだったらこうはならないだろうと思うし、この場合はそう無理な工場誘致があちこちで進められるわけがないと思うのです。こういうことがない場合に、結局いま私が例を申し上げた湖南工業団地、滋賀県のようなことが起こる。  下水道建設がいまやっと手がつけられているわけなんですけれども、これだって結局、琵琶湖総合開発という名のもとに、琵琶湖の水位を下げて阪神工業地帯へ水を送るならば、そのかわりに下水道の建設等々もやってやろう。引きかえ条件でしょう。こういう考え方のそもそもに、どこまでいってもまず生産関連優先だ、生活関連あとからだ、こういう思想があると思うのです。ですから、もしもこれが逆になるというならば、さっきのわずかな数字の変化を云々するのじゃなしに、実際にまず琵琶湖の周辺の下水道の建設政府が責任をもってやりましょう、それからきれいな水を下流に送りながら滋賀県内の工業立地をいたしましょうということにならなければうそだと思うのです。今度の地方中核都市建設というのは私がいま言ったような手法になるのですか。
  141. 下河辺淳

    下河辺政府委員 工業団地をつくって工場誘致に成功して、工業生産ができて所得がふえるというだけの地方都市づくりは今後否定されなければならないと思います。生活の基盤の整備を並行して進めていくということはわれわれ大いに努力しなければならないと思います。
  142. 瀬崎博義

    瀬崎委員 列島改造論でこういうことをいっていますね。「昭和六十年を展望すると、資源型工業の比重は二〇%程度に低下し、内陸型工業の比重が八〇%程度に増大するという推計がある。」このうち、資源型工業の二〇%に低下というのは絶対生産量で低下することでないわけは、むつ小川原での建設政府が考えていることではっきりしている。だとすれば相対的に工業生産がふえて、その八〇%が内陸型工業になっていくという意味なんです。いまの下河辺局長の論法からいくならば、こんな八〇%もの内陸型工業が可能になると思いますか。どうですか。
  143. 下河辺淳

    下河辺政府委員 二〇%、八〇%という議論は、いま御指摘いただきましたように絶対量とは無関係でございますから、基礎資源型でもまだ若干ふえざるを得ない情勢にあると私ども思っておりますが、しかし、御承知のように資源問題、エネルギー問題、その他公害問題、いろいろな問題があるわけで、国土の有限性ということで臨海型の基礎資源型工業について特に重大な段階であるという認識からすれば、産業構造をかなり根本的に変えなければならないということは私ども一つの命題ではないかと思います。その際に、やはり臨海部よりは内陸型の工業に依存する程度というものは、構造的にいって従来よりは大きくなるということは事実でございます。しかもなお、大都市の三十キロ圏あるいは四十キロ圏の範囲に従来のとおり求めることはいま不可能な状態になってきているわけでございまして、全国的に適地を求めて、先ほど申しましたような地方都市づくりとあわせて、生活環境を重視した工業都市づくりをしなければならないという要請は今後非常に強くなってくるというふうに考えております。
  144. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いまの政府答弁にも明らかなように、結局、いえば矛盾したことをやろうとしている。片一方では内陸型工業立地によって生活環境を破壊してはならない、まずそれを優先してかからなければならないと言いながら、しかし内陸型に依存する割合は増加するだろうという見込みも持っている。ですから、そこらにこの新国総法案の持つ大きな矛盾があって、われわれはこれに乗っかったからといっていままでの公害過密過疎がうまく解決するとは思えない。そういう点で、中核都市づくりが失敗してからまたああだこうだということじゃ困るから、前もって私はそういう構想が間違いだということを申し上げておきたいと思うのです。  その内陸型工業団地をいまから初めて実現するのではなしに、政府の機関である日本住宅公団が長年の経験と体制でやってきたわけであります。それを今度は名前の変更と若干の機構改革を行なった新公団でやってみようというわけなんですが、住宅公団ですでに経験済みのことが新しい公団で成功するという保証は一体どこにあるのですか。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、今度は国土総合開発庁というものができまして、それが主体になっていくわけでございますが、経済企画庁と環境庁が、これは合い議という形でなくて、共同して総理を補佐していくという形になるわけでございます。これは、先ほどからいろいろ御指摘があったような従来のやり方についてのきびしい反省の上に立って、その足らざる点を補っていこうということでございまして、保証とおっしゃいますと、これは実際やってみなければわからぬという御議論が出ると思いますけれども、少なくともそうした失敗を繰り返さないようにするという強い意図を持っているということはこの法案の随所に出ておるものでございまして、御懸念のような点はわれわれとしてないように十分心がけておるつもりでございます。
  146. 瀬崎博義

    瀬崎委員 私がいま申し上げておるのはそうじゃなくて、この地方中核都市づくりに似たようなことは住宅公団がやってきたことなんですね。それでうまくいっていないのを、新公団に事業を移したからといってうまくいくだろうか。つまり、新公団がやろうとする地方中核都市づくりと、いままで住宅公団がやってきた工・住・店舗共同団地づくりなどと、湖南団地の例をあげましたが、こういうこととは似通った事業なんです。そうじゃないのですか。似通った事業ではない、こういう新しい要素があるといわれるならば具体的につけ加えていただいたらいいと思う。答弁願います。
  147. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御承知のとおりに、住宅公団は三十年に創設されまして、そうしてわが国の住宅開発土地開発に大きな役割りを果たしてまいりましたことは事実でございます。新たなる公団に住宅公団の住宅問題を取り次ぐということにおきましては、御承知のとおりに、新たなる公団は、都市人口地方集中いたし、そうして新たなる地域開発のもとにおいて工業の団地等の開発をやるという大きな事業でございまして、資金の上からも、また高度な技術等も必要としてまいってくるのでありまして、そうした仕事をやるのには新公団が最もふさわしい地位にあり、また権能を持つということで、われわれは、いままでの住宅公団が行なっていた業務を新たなる公団において行なうということは非常に意義が深いのではないか、こう存じておる次第であります。
  148. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ことばとして意義があるとおっしゃっただけのことで、中身は何もおっしゃってないのですね。  では、住宅公団の研学都市建設部門をわざわざ新公団のほうに合併させようというねらいは何なのですか。
  149. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  国土総合開発公団を新たに設置しようとする趣旨につきましては大臣の先ほどお話し申し上げたとおりでございますけれども地方都市の整備と大規模な地域開発事業をあわせて行ないまして、国土の均衡ある発展をはかろう、その中核的な部隊といたしたいという趣旨でございます。そこで、筑波研究学園都市建設事業は、先生もお話しのように住宅公団でかねてやっておったわけでございますけれども、大規模な地域開発事業でございますので、これをやはり本来の任務といたします新公団でやらしたほうがいいという判断に立ったものでございます。
  150. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ということは、結局新公団の母体になっている工業配置・産炭地域振興公団のほうは本来それをやれるような人材なり体制を持っていなかった。新たにそういうものをひっつけなければならない。むしろふさわしいという点からいうならば、住宅公団のほうに何らかの体制を強化したほうが地域開発をやるのにふさわしいわけです。私はそれをいいと言うんじゃないけれども、論理からいえばそうなるんじゃないですか。
  151. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 瀬崎さんの論理は論理として一応理解できますけれども、さっき申し上げましたような立場から、新たなる公団に大事なわが国の住宅施策すべてを引き受けて、高度な技術あるいは資金、そうした立場からすべて統一していくほうがより意義があるというようなことで期待をしていただきたいと考えるのでございます。
  152. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局わかりやすく言えば、住宅公団よりもこの工業配置・産炭地域振興公団のほうが、今後の政府新国総法案などで考えている開発にふさわしい公団なんだ、そのほうが近いんだ、こういうことなんですか。
  153. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 基本は、ただいま先生の御指摘がございましたように、また先ほど私から御説明申し上げましたように、公団の性格といたしまして地方都市の整備とか大規模な地域開発事業をやる専門の公団を今回設立いたすことになりましたので、そちらにやらすほうが適当であるということでございます。
  154. 瀬崎博義

    瀬崎委員 全く新しいものならいざしらず、工業配置・産炭地域振興公団という土台があるわけでしょう。いままで住宅公団でやったのを工配公団に移すわけでしょう。ということは、政府考え方はやはり、そういう今後の開発住宅公団でやるよりも、いままでの工配のやっていることに近いからこそそちらに持っていこう、そういうことに考えているんじゃないかという質問なんですよ。
  155. 金丸信

    ○金丸国務大臣 住宅公団は勤労者のための住宅をつくり、宅地を造成するということが目的でありまして、その目的が最近かなえられないというところに一つの大きな政治問題もあるわけでございます。しかし、えりを正してこの問題にはなお積極的に取り組まなければならない。しかし住宅公団の仕事といたしましては、大都市住宅、宅地造成というような問題に専心するということが住宅公団の仕事で、いわゆる中核都市の造成という問題については新たな方向でいくことが賢明な方法であろう、こう私は考えておる次第でございます。
  156. 瀬崎博義

    瀬崎委員 住宅公団のほうの話が先に出ましたから、重ねて建設大臣にお聞きしておきたいと思うのです。住宅公団のほうの業務を今後とも縮小することは絶対ない、もっとどんどん、いろいろな困難があっても拡張していく、こういうふうにわれわれは考えておいていいのですか。
  157. 金丸信

    ○金丸国務大臣 住宅公団の仕事を縮小するということは考えておりません。充実して、そして勤労者に満足できるような住宅提供、宅地提供というものをしていくために専心努力をしていく考えであります。
  158. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いま一つ住宅公団の側から見て、この研学部門の切り離しについて、大臣、それはいいと思っているのですか。
  159. 金丸信

    ○金丸国務大臣 切り離すことにつきましては、ことに職員が新たな公団に入るということについては、指導監督の地位におる立場としてまことに断腸の思いがいたすわけでありますが、しかし生々発展のためにはこれはやむを得ない。そういう意味で、公団から新公団に移る場合にいたしましても、退職してそのまま移るとか、またいやだという人は休職して、向こうへ移っておっても復職ができるというようなことも考えておるわけでございます。
  160. 瀬崎博義

    瀬崎委員 やや大臣の構想はわかりましたが、しかしいまの説明では、研学部門を住宅公団から切り離さなければならない根拠とか、あるいは工配・産炭地公団のほうがより今後の地域開発を考る上で適当なんだという説明にはちっともなっていないと思うのです。そこを説明してほしいのです。
  161. 金丸信

    ○金丸国務大臣 都会を中心に住宅公団は宅地の造成から住宅の提供ということに専心すべきであって、地方中核都市の造成という問題にまで手が伸びるという段階まではいっておらないという判断のもとでございます。
  162. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では、いまの工業配置・産炭地域振興公団に新しい都市づくりなどをやれるような技術者、職員というものは配置されているのですか。またそういう経験がちゃんとあるのですか。
  163. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  工業配置・産炭地域振興公団は、その前身として産炭地域振興事業団でございます。産炭地域振興事業団の大きな仕事といたしまして、石炭産業の衰退によりまして疲弊をいたしました市町村の振興のための工業団地等も造成しておるわけでございまして、団地造成の経験はございます。また工業配置につきましては、工業団地もつくることにいたしておりますのでそういう意味の経験は持っておると思います。さらに今般地方都市の整備業務が加わわることによりまして、機構、人員等の拡大も行ないますので、重点的に技術者の充実をはかろうと考えておる次第でございます。
  164. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうすると、いまのを言いかえますと、結局、今後の中核都市づくりというのは、先ほどの下河辺局長の話によれば、文化都市建設もその中の重要な柱にあるように聞こえたけれども、それは研学部門をひっつけることによってそういう見せかけが行なわれるのだ。実際いままでやってきた工配・産炭地公団のやり方からいけば、どこまでも工業配置、産炭地域振興を中心としたものが、それが中核都市づくりの主たるパターンになるのだ、こうなってくるのですね。そう理解せざるを得ないと思うのですが、この問題にもうあまり時間もとれません。  最後に、住宅公団の労働組合自身、最近はこの研学部門の切り離しに反対していらっしゃる。これは政府も御存じだと思います。出向などは拒否するというような態度だとも聞いております。こういうふうな労働組合の意向であるにもかかわらず、忍びないけれども切り離すのだという大臣の先ほどの答弁はどうも矛盾を感ずるのです。もう少し職員の意見を聞くべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  165. 金丸信

    ○金丸国務大臣 筑波学園の仕事を現在やっておるわけでありまして、その筑波学園の仕事に熟練いたしておりますし、そういうような関係もこれありまして、筑波学園がそちらのほうに移管されるということでありますので、私が先ほど来申し上げましたように、まさに断腸の思いだと言っておるのはその辺にあるわけであります。しかしまた、どうしても行くのをいやだということであるならば、これは考えなければならぬ問題点もあろうと思うわけでございますが、向こうの完成を見た暁には住宅公団に復職できるならいいということであるならば、それもできるような道を開く、こういうことでございます。
  166. 瀬崎博義

    瀬崎委員 開発主体の問題でもう一つ気になるのが第三セクターであります。すでに話も出ておりますが、政府の考えとしては、今後新国総法でいう特定総合開発でしたか、あの中で予想される巨大開発地方中核都市などは、こういう第三セクターなどに事業をやらせるというような方向を考えているのですか。
  167. 下河辺淳

    下河辺政府委員 総合開発を進めます際に、どの開発でも第三セクターが中心であるとは考えておりません。むしろ地方公共団体が中心になるということが基本であって、地方公共団体の開発の仕事を補完する意味で、第三セクターなりあるいは新しくできます新公団に期待するということになれば、第三セクターあるいは公団を活用するということは当然考えてまいりたいと思います。
  168. 瀬崎博義

    瀬崎委員 第三セクターの問題を除けば、いまの下河辺局長の答弁というのはわれわれが考えている内容と一致するわけなんですが、実際はそうなっていないところに問題があると思うのですね。特にむつ小川原株式会社の出資構成はもちろんのこと、役員構成を見ますと、これはたいへんですね。社長安藤氏は小野田セメントの前社長。常勤の役員の中には鶴海さんとか岩本さんというふうな、建設省、農林省出身の高級官僚がいらっしゃる。そして、表には出ないけれども非常勤の役員のほうを見ますと、取締役相談役に植村経団連会長、木川田東京電力会長、中山日本興銀相談役、永野新日鉄会長、平井東北電力会長。取締役で言いますと出光興産の出光社長、稲山新日鉄社長、井上第一銀行頭取、岩佐富士銀行会長、小川国土総合開発社長、辻日商岩井社長、長谷川住友化学社長、花村経団連専務理事、宮崎日本長期信用銀行会長、渡辺三菱地所会長、越後伊藤忠社長、江戸三井不動産社長、これも時の人ですね。それから監査役に福田大阪商船三井船舶社長。こういう人をずらっと並べて、これが地方自治体の言うことを聞いて地方自治体主体の開発に協力するような会社と言えるでしょうか。もうそれこそ日本の財界のベストメンバーを集めてきた、これ以上の会社をつくりようがないというふうな会社じゃないかと思う。結局これは財界主導のむつ小川原開発にならざるを得ないのじゃないかとわれわれは危惧せざるを得ませんが、ひとつ政府の率直な見解、反論があるならば言っていただきたい。
  169. 下河辺淳

    下河辺政府委員 むつ小川原の場合につきましてお答えいたしますが、むつ小川原開発株式会社という会社をつくりますときの知事との話し合いについて御報告申し上げるのが適切かと思います。この青森県におきましては、一つの問題は、青森県の御承知のような財政によりましてはなかなかあれだけの開発の財政を負担することは不可能であるという点、それからもう一つは、ちょうどあのころ特定の企業があの地域土地の買い占めをし始めているということから地域の混乱が始まっているという実態に対しまして、それをやめていただかなければならないという実態が一つあったということは事実でございます。で、それを一体どういうふうにするかということを考えた際に、政府あるいは県が出資をした会社をつくりまして、そして民間部門のほうはむしろ一財界に片寄らない、あるいは一業種に片寄らない形で民間の出資をお願いするということができないだろうかということから、この五百万円、百五十社という平均割りの株主をお願いするという形をとって会社をつくりまして、そしてその会社の設立にあたりましては、国と県との計画の指導を受けて経営をしていくということの約束を株主との間に取りかわして会社を設立したということでございますので、いま御指摘いただきましたように、すべての経済界が含まれているということにむしろむつ小川原会社の特色があるというふうに考えております。
  170. 瀬崎博義

    瀬崎委員 これが特色だと言われるに至ってはもう何をか言わんやなんですが、このむつ小川原株式会社が財団法人青森県むつ小川原開発公社に、言うならば土地を買わせるわけなんでしょう。この開発公社のほうの実施事業を読んでみますと、主としてむつ小川原開発株式会社からの委託により用地買収業務を行なう。青森県でつくった公社が、先ほどあげたような財界のお歴々が並んだ株式会社の下請として土地買いに走る。文字どおり、先ほど言われた地方自治体が主体でそれに協力するのとはこれはまさにあべこべになっているじゃありませんか。これは大臣、そういうふうに思いませんか。
  171. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の考えは全く御説とは逆でございまして、そう思いません。というのは、局長から申し上げましたように、ある地点、特にあのむつ小川原のごとき、非常に開発のおくれている地域開発するという場合に、県の財政がきわめて不如意である、まあ、ことばは不適当かもしれませんが、あまり豊かでない、これは事実でございます。そこでその開発を担当するのに従来の公社、公団という考え方でまいりましたならば、とてもそれにふさわしいような資金を集めることは期待できない。そこでむしろ第三セクターという新しい考え方をとって、そしていま局長から申し上げましたような非常にたくさんの、百五十社というような大きな資金源を基盤といたしまして、そして開発に民間の創意くふうを大いに生かしながら、しかも県の開発の構想を実施するということを考えたのがこの構想でございまして、私は御説明のようには思っておらないわけでございます。
  172. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ここにいみじくも今後の政府開発に対する考え方が出たと思うのですよ。先ほどから私たちが六〇年代の高度成長政策を批判した中では、あたかもわれわれの言い分を認めるような答えもあった。そして今後は過去の反省の上に立ってまず生活関連投資などを大いに優先させていきたい、そういうたてまえからいえば、青森県がそういうふうに財政が貧弱で、県民生活住民生活水準が低いならば、国がそこへ集中的に援助すればいいのであって、いまの考え方からいえば、こういうふうな財界のお歴々の寄った大きな企業によって開発をやって、その潤いを県民に及ぼそうという考え方になってくる。結局は開発優先で、それからおくれて、そのおこぼれという形で福祉はやっていく。成長なくして福祉なし、文字どおりそれを端的にいっているのがこの会社と公社との関係ではないかと思うのです。私のこの見解に対していま一度大臣の見解を求めて私は終わりたいと思うのです。
  173. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 すべて財政によってやればいいではないかというお考えでございますが、財政というものは国民の税金でございますので、国民の税金をその一カ所に集中していいかどうかという議論になりますとかなり乱暴な議論ということになるのであります。そこで、企業によって集められるということを考えます場合に、非常に有力な、しかも非常に多数な企業ということになりますと、一業種の代表とかあるいは一会社の代表とか、そういう意味でなくて、非常に広域的な考え方に立たざるを得なくなってくるわけでございます。しかもその運営におきましては、先ほども言うたように非常に創意くふう、いわば役人的な固定した考え方でなくて、非常に柔軟な、開発にふさわしい考え方もあるわけでございます。そうした長所をとりながら、しかも県というような公的な機関の持つ公益性、そういう面を調和していけばいいのではないかというふうに思うのです。先ほどから申し上げておりますように、いままでの開発のやり方で多くの反省すべき点はあると思う。環境、資源が有限であるという点を忘れたと思われてもしかたのないような点もなかったとは申せないと私は思います。だからそういう反省の上に立って、いま申し上げておる公的な部分と私的に非常に柔軟な考え方とを調和した新しい第三セクターの考え方というものは十分御理解を願って、今後のやり方としてお取り上げを願いたい、こう思っておる次第でございます。
  174. 服部安司

    服部委員長 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  175. 服部安司

    服部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新井彬之君。
  176. 新井彬之

    ○新井委員 私は、国土総合開発法をはじめとして、三法についての質問を行ないます。  初めに、いままでいろいろ議論が出ましたので、時間も制約ありますので、簡単に答弁を願いたいと思います。  いままでの議論の中で、結局、現在の国総法に基づいた全国総合開発計画あるいはまた新全国総合開発計画というようなことでいままで日本の国土というものが開発されてまいったわけでございますが、その上に去年の七月田中総理の日本列島改造論というものが出た。これはいろいろ批判があるわけでございますが、今回のこの「目的」あるいは「理念」、こういうことからいきますと、当然、経済も構造を改善していく、そういうようないろいろの理由の中でいま大臣にお伺いしたいのですが、日本列島改造論は、結局今回の経済社会基本計画においても否定されているものなんだ、こういうお立場なのかどうか。それとも、あれはあれでいいのだ、だけれども、あれはちょっと行き過ぎのところがあるから少し手直しをしなければいけないというような考え方なのか。それとも、この問題については、一つの提言であるというような言い方をしているし、三百四兆円の経済のGNPにいたしましても、これについては九%の場合はこうで、一〇%の場合はこうで、一二%の場合はこうなるのだという計算をしているだけである、そういうような答弁をされていますが、その辺のところをちょっとお伺いしたいと思います。
  177. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国総法に関しまする新井委員の御質問でございまするが、その御質問がまことに中心であると考えます。  そこで、まず田中総理の日本列島改造論でございますが、これは総理大臣としての田中さんではなくて、個人としての御意見でございまして、私ども非常にすぐれた発想であると思っております。しかし、正式の機関を使ってのいろいろなデータの集積によるものではございませんので、ここで御審議をいただいておりまする国総法が今後の国土総合開発の基本的なものである、かように御理解をいただきたいと存じます。  その意図するところは、新井委員もうよく御承知のとおりでございますが、あらためて要点だけを申し上げますと、環境も資源も有限であるということから、やはり国民のために最もふさわしい国土分散的なしかも総合的な開発を考えねばならぬ。もう一つは、地域住民のしあわせということを中心に、その意見を聞きながら開発をしなければいけない。この点が一番大きな点かと考えている次第でございます。
  178. 新井彬之

    ○新井委員 ちょっともう少しお伺いしておきたいのですが、いま長官は、これは田中総理個人がいわれたものである、そういうぐあいに言われるということは、要するに、日本列島改造論というあの一つの提言というものはこの国総法においては無視しているのだ、要するにゼロなんだということか。それとも、それに非常に影響されて、その考え方というものがすごく入っているということか。ということは、いま言われた住民参加であるとか、あるいはまた今後、いまの国土自然環境が保たれて発展をしていくということについては、これはやはり経済の成長というような問題、あるいはまたその経済の中の構造転換、そういうようなこともからむでしょうし、あるいはまた私たちのための環境の整備一つにしましても、いまの経済からいきますと非常に過熱している、したがって公共投資も繰り延べをしなければいけないというような現状も出ているわけですね。したがいまして、やはりそういうものとのからみ合いがなければ何にもならないのじゃないか。  たとえていいますと、家を一軒建てる場合に、百坪の土地の中に家を建てる。いままでは経済優先ですからそこに工場を建てて、私たちの住むところというのは忘れられておったような状態であるわけですね。しかし今後は見直されて、そこに木も植えよう、あるいは庭もつくろうじゃないか、そういうふうな方向に転換してくるときに、一体そっちのほうの考え方、要するに田中総理の考え方というのはどっちに向くのかということでございます。
  179. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本列島改造論の骨子というものは、これも御承知のことでございますが、あらためて申し上げますと、交通、通信のネットワークの完成、整備、それから地方中核都市を育て上げる、それから大都市に集まっておる機能を全国的に再配置する、この三本柱であろうかと思うのでございまして、その考え方は私は非常にけっこうなことで、いままで私どももさように思ってきたところでございます。この国総法にはそういう考え方はもちろん入っております。入っておりますが、さらにいまお話しになりました住民意向を非常に入れるとか、環境保全であるとかいうことは特に国総法の強調しているところでございます。そういう点が違うといえば違う。しかし、田中総理個人としてもそういう点を否定なさっておるわけじゃございませんし、お考えになっておることだと思いますが、そういう点が特に強調されたとお考えいただきたいと思います。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  180. 新井彬之

    ○新井委員 いまお話しありました交通、通信ネットワークの整備、あるいはまた地方中核都市、あるいは大都市への人口集中ということは、これは全国総合開発計画昭和三十七年の段階においても問題になっておることじゃないのですか。それからそれが手直しされた段階においても、四十四年の新全国総合開発計画においても問題になっておるわけでしょう。そうでしょう。そうしますと、それは何も目新しいことじゃなくて、国土の整備というものを環境を守りながらやっていくにはどうしたらいいかという問題になってきたのじゃないですか。この日本列島改造が進められた場合には、これはもう一つ経済の三百四兆円というものが一つの大きなウエートを占めます。たとえていうと、この日本列島改造論というのは十三万文字で書かれておるそうでございますが、その中の単語の回数から見ますと、林業という単語がゼロ回です。それから山村が八回、森林が三回、山が二回、山地が一回、それから山林が二回、たった十六回しか書いてないわけですね。これに対して工業という単語は三百十七回出てくるのですね。それから工場は百二十三回、それから都市というのが三百八十六回、こういうような状態で、やはり成長なくして福祉なしという考え方ですね。こういう問題についてはあとでまた論じますけれども、そういうような考え方の中で経済をどんどん発展させよう。この中核都市にしても何にしても、いまの経済状態からいっていろいろ指摘された段階では間違いだったのだ、直さなければいけない点がたくさんあるのだということはいわれていることですね。そういうことから考えて、要するに日本列島改造論自体をどういう立場で見ているか、否定的な立場で見るのか、もう一ぺんお答え願います。
  181. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一九六〇年代の私ども考え方発展成長ということに主眼がございました。これは、敗戦によりほとんど壊滅的な打撃を受けたわが国としては、まず経済の成長をはかって分配に移行しなければならないというように考えたわけでございますが、その後、たとえば所得倍増計画とかあるいは経済社会発展計画あるいは新経済社会発展計画、みんな発展、成長ということをいってきたわけでございますが、それと同時に過密と過疎という問題が非常に色濃く出てきたわけでございます。田中総理の個人的な著作である列島改造論過密過疎の同時解消ということを非常に強くいっていられるわけで、この考え方は私は当然な考え方であると思うのでございます。そこで工場が行き過ぎたものをほかへ移す。移すと工場は、工場、工場と二回になるわけでございますが、そんな関係で工場という字がよけいになったり、農村という字が少なくなったりしたことがあると思います。  要するに国全体を総合的に考えて、新しい構想で今後の発展を考えていかなければならぬ。発展ばかりじゃなくて、国民のしあわせということを環境の問題を含めて考えていかなければならぬということはもう当然な発想でありまして、私はこれを否定する者はだれもないと思うのでございますね。そこで私どもの列島改造というのは総理のお考えを否定しているわけじゃもちろんございません。総理は現に公人としてはわれわれの統率者でございまして、内閣の首班であるわけでございますが、その個人的な著作になりますとやはり個人のアイデアであって、いろいろ膨大な今日の官庁機構から詰め合わせていくと、たとえばいまのGNP三百四兆円というようなものは、この数字自体が少し検討を要するとか、あるいは重油の消費量にいたしましても七億五千万キロリットルというものは少し多過ぎるのではないかとか、そういう点はいろいろあるわけでございます。そこへもってきて、いまの環境問題があの当時より非常なウエートをもって登場してきたわけでございまして、そういう点を、私ども過去の経験に反省々加えまして、この法律案では非常に強く前面に押し出しているというふうに考えておる次第でございます。
  182. 新井彬之

    ○新井委員 いままで拠点開発方式がずっと行なわれてきて、産業基盤整備のための地域開発として、中央、地方の行政の手による公共投資がずっと行なわれてきたわけですね。それによって、いろいろまたありますけれども経済の状態によって、大体太平洋ベルト地帯に集中的に立地を加速させて現在のようになってきたわけです。このやり方自体において結局は都市問題あるいは公害問題というものを引き起こした。そのまた半面に過疎問題というものも政策的に打たれてきたということになると思います。そういうことから、今回そういうような面を改めていかなければ、今後幾らやっても何回も同じ轍を踏むということですね。これはもういろいろの人から指摘されたとおりだと思います。この問題については時間がありませんからもうこのくらいにしておきますが、そういう面についてかっちり腹に入れてやっていただかなければならないということです。  それからもう一つは、経済社会基本計画というのが二月十三日に閣議で決定されましたね。その中で、いろいろなことが中心になってうたわれておりますけれども、物価上昇という問題一つ見ても、おおむね四%くらいだということをいっていますね。あるいはまた卸売り物価にしてもそんなに上げないんだと。いまこの一つ目標が非常に違っていると思いますけれども、そういうところの認識はどのようにされていますか。
  183. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 物価の見通しとかあるいは経済の成長の度合いとか、こういうものは、率直に申し上げましてこの年の初め以来の状況はかなり私どもの予想を上回っております。正直にそう申し上げます。しかし私どもはこれでいいと言っているわけではもちろんございませんで、何とかこの状況をおさめたいということで、財政、金融その他個別的な対策をいろいろと講じておりまして、この物価上昇に立ち向かっておるわけであります。私どもは、経済社会基本計画の示す、おおむね九%台の十年間の成長あるいは物価の四%台というようなものにつきましては、今後この状況をおさめまして、そういうところにおさめたいというふうに思っておる次第でございます。しかしこの年になりましてからの上昇は私どもの予期に反しているということを率直に認めます。
  184. 新井彬之

    ○新井委員 そこでもう一つお聞きしておきたいのですが、これが二月に閣議決定されて、こういう方向でいくのだという一つの立案はできたわけですね。しかし、少なくとも物価上昇という問題については、何とかしなければならぬ、それに全力をあげます、四%でいきます、こういうぐあいな答弁でございますけれども、実際それができるのかどうか。それができなければ、土地問題を考えてみても、あらゆる公共投資一つ考えてみましても、これはいまの経済社会基本計画そのもの、九十兆円の予算でやるというその裏づけ的なものは全部なくなるということですね。そういう点についていかがですか。
  185. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 九十兆円の公共投資という中に、用地費というものは除いてあるわけです。しかしながら、全体にいまの物価のような状況でまいりますと、これはなかなか困難な問題が多いというふうに私ども考えておりまして、これは何しろ五年間の計画でございますので、その過程におきましてそこへおさめるような最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  186. 新井彬之

    ○新井委員 それからもう一つ、これもこの前出た話ですけれども、田中総理の日本列島改造論におけるところのGNPの伸び、その中の石油消費量であるとかあるいは鉄鋼の生産量であるとか、いろいろ出ていますが、経済社会基本計画においても出ておりますね。そのほかに今度産業計画懇談会がいろいろ指摘をしているわけです。この指摘の内容というものはよく御存じだと思いますが、鉄鋼業に関しては「一九八五年まで設備拡大は全然いらないのである。もし万一不測の状態が起ったとすればその時に不足する鉄鋼は、いまの米国のように輸入に頼れるよう、今から海外投資による鉄鋼生産計画すべきであろう。」このようにいっておりますね。電力についても「火力への依存率を極力低下させ、」「原子力発電の開発も行なうが、並行して一次エネルギーとしての水力への依存度を極力維持すると共に、地熱、海流等新循環エネルギー源による発電も極力開発する。」このようにいっておりますね。また、この前も出ましたけれども、「妥当輸送量は、」「日本列島改造論に示された数字二〇〇億トンの四〇%に過ぎない。」こういうことで、極言すれば、これからの重化学工業、鉄鋼や自動車や石油化学、こういうものはこの日本の狭い国の中では考えてはいけないのだということですね。こういうぐあいにわれわれはとるわけです。これもわれわれが言うとかあるいは一部の学者の方が言うなら別でありますけれども経済の主体者である方々がこういうものを——現実的にはそれは総論賛成、各論反対ということになると思いますよ。思いますけれども、こういうことをやらなければこれからの国土保全はできないのだ、こういうぐあいにいっているわけですね。こういうようなことについては一体国総法とのからみ合いでどのようにお考えになっているか。
  187. 下河辺淳

    下河辺政府委員 御指摘いただいたとおりでございまして、特に石油を中心としたエネルギーについての限界性についての御提案が民間から出ていることはいまおっしゃったとおりであります。新しい国土総合開発法におきましては、このエネルギーの需要が先決されて、それに応ずるだけの基地をつくるという一方交通ではなくて、そのことも重要でありましょうが、国土がどれだけ受けて立てるかということをチェックして将来の需要を考えてまいるということが一つ今日重要であると考えております。  石油につきましては、全国総合開発計画におきましては約四億九千万キロリットル程度の処理量を頭に描いて基地をいかにつくったらよいかということを検討したわけでございます。日本列島改造論の場合には、七億五千万キロリットルということも考えられるのではないかという御指摘が著書の中にございますが、現在私ども、六十年で七億五千万キロリットルのエネルギー源としての石油処理を考えることは困難であるというふうに考えております。しかし、民間から御提案がありましたように昭和六十年に三億六千万キロリットルまでカットできるかどうかということについては、内容についてかなり検討を必要といたしますし、国際的な関係についても検討する必要があるのではなかろうかという判断でおります。
  188. 新井彬之

    ○新井委員 そうしますと、田中総理が日本列島改造論の中で、昭和六十年のGNPを三百四兆円の日本の経済の規模ということで想定しているわけですが、可住地というのはせいぜい国土の二割、そのうちの非農地というのはその二割のうちの一割五分。日本の二十六倍以上の面積を有する米国の国民生産、これが一九七〇年で一兆ドルであるわけですが、その米国の経済に近い経済というものを想定しているわけです。過密なき経済成長をはかりつつ、しかも公共の福祉、インフレなき経済をどうしてはかっていくのかということが問題になってきますけれども、そういう面の調整というのはどのようになりますか。
  189. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどクォートされました産業計画懇談会の想定というものも、たとえば石油にいたしましても三億二千万キロリットル、あるいは経済成長を一〇%程度、GNPが百八十五兆円というふうな見方をいたしております。田中総理個人の著書である列島改造論においては、石油の消費量が七億五千万キロリットル、成長が一〇%ぐらい、それでGNPが三百兆円。私ども、GNP百八十五兆円くらいに見まして、いまの石油の消費量等で、GNPをそれだけ少なく見ても四億五千万キロリットルくらいになるわけでございまして、どうもやはり田中総理の列島改造論に見られると同じく、実際の数字との食い違いが産業計画懇談会の提言にもあるようでございます。そういう点から見ますと、なかなか意あって舌足らずと申しますか、どうもやはり政府のようないろいろな調査機関を持ったものの調査でないと、なかなか実際の数字はつかみ得ないんじゃないかという感じを強くするわけでございます。  御指摘のアメリカ型の経済を一体日本でどのくらいまでやれるのかという点は、私はなかなかそうやれないというふうに思います。ハーマン・カーンという人が来て、もうすぐ日本の世紀が来るので、日本はアメリカを追い越すといっておだてた時代がありましたけれども、当時から私はそれは無理だと考えておりました。日本には日本の持っております立地条件がありまして、この狭い国土に大ぜいの人口がある。しかも三分の二以上が山である。こういう立地をかかえている日本の総合開発というものはやはり独自なものがなければならぬ、かように考えております。
  190. 新井彬之

    ○新井委員 きのう公聴会の中で公述人の方からいろいろ御意見がございました。その中で、この国総法をきめるということは悪いことではないけれども、その前に資本企業によるところのそういうものを規制するということが前提になる、こういうような御意見があったわけでございます。きのうの公聴会についてはお聞きになっておると思いますけれども、そういうことについてはどのようにお考えになりますか。
  191. 下河辺淳

    下河辺政府委員 開発を進めていきます際に、たとえばモータリゼーションの限界でありますとかあるいは公害防止計画というようなものが並行して進んでまいる必要があるということは御指摘のとおりでございまして、限界に対しての規制行政というものはこれからやはり開発行政と並行して強化していく必要があるという考え方でございます。
  192. 新井彬之

    ○新井委員 その場合に、たとえていいますと、土地企業がこういう利用目的で買うと言いますね。その利用目的に合うというようなときにおいても、その中における公害の設備であるとか、そういうような内容的なこまかい部分を検討しなければ最終的にはそれがいいか悪いかわからない。たとえていいますと、この自動車はいいといっても、走ってみて非常に炭酸ガスだとか一酸化炭素を出すということであれば、これはやはりよくないわけですね。そういうことで、結局は企業の届け出と、それからその内容というものを公開させる、好ましくないときはそれをとめてしまう、そういうようなことが考えられるわけですけれども、そういう面についてはどうですか。
  193. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ただいま工場立地法の審査もしていただいておるわけでありますが、工場が立地する際に、その計画の全貌及び公害防止計画についてできるだけ公表いたしまして、そして都道府県の責任者と企業の責任者の間においてしっかりした協定が成り立って工業開発が進むということが適当かと存じます。
  194. 新井彬之

    ○新井委員 この法律を考えた場合に、今後日本の国の進むべき道というのは経済成長なのか公共の福祉優先なのか、これを明確にしなければならないと思います。たびたび公共の福祉優先ということがいわれておりますけれども、「総合的」ということがこの法案の中でいわれておるわけです。その総合的という中で過剰開発というものが生まれてくればたいへんなことになってしまう。日本の保全か、あるいは経済成長のための総合開発か、このことについての基本的な態度についてお伺いしたいと思います。
  195. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 結論から申し上げて、福祉優先という政策を考えております。ただ、地域発展がなくてはやはり福祉がないわけでございますので、そういう点の総合性、斉合性を考えてまいりたいと思います。先ほど下河辺局長が申しましたように、ある工場が進出されようとする場合に、工場の責任者とその地域の責任者と十分に話し合って、そして地域発展にも裨益し、しかも工場も栄えるということを考えなければならぬというふうに思っております。
  196. 新井彬之

    ○新井委員 そこで、この国総法における第一条の「目的」、それから第二条の「基本理念」ということがこの法律の一番大事なところだと思います。この規定をただの美辞麗句で飾るということはとんでもないことでございまして、この内容について少しお伺いしたいと思います。  「国土の総合的かつ計画的な利用、」といわれておるわけでございますけれども、その「総合的」というものをもうちょっとかみ砕いて教えていただきたいと思います。
  197. 下河辺淳

    下河辺政府委員 第一条「目的」におきまして、「国土の総合的かつ計画的な利用、開発及び保全を図ることを目的とする。」と書いてございます。その「総合的」といいますのは、経済開発にだけ重点を置くという考え方ではなくて、やはり生活の問題ということも当然でありますし、第二条の「基本理念」にも書いてありますとおり、将来の国民のための自然を保存するという角度も十分考えなければならないということで、「基本理念」に盛り込まれております観念全体を含めて「総合的」ということばを使っておるわけでございます。
  198. 新井彬之

    ○新井委員 その問題、また順番に言います。  そうしますと、総合的なということについては、個々の問題について基本的なもう一つの理念といいますか、哲学といいますか、そういうものが一つの骨子になっていなければならないと思いますけれども、それについてはどのようなお考えをしていますか。
  199. 下河辺淳

    下河辺政府委員 必ずしも御質問の趣旨を明確につかまえ得なかったので、御答弁がちょっと違っていくのかもしれませんが、私どもはやはり問題は、全国民の、あるいは地方公共団体との合意性ということも含めていま申しました基本理念が成立するということは非常に重要なことであると考えております。
  200. 新井彬之

    ○新井委員 結局、「総合的」という一つの中にきちっとした国土保全、これが一番の理念である、こういうことが入っていないと、あとは総合的というものの解釈は、これは会社の社長が考えるのと、住宅に困っている人が考えるのと、これは全然違うわけですね。いろいろな多様化の中の要望の中で何がいままで一番引っぱってきたかといえば、やはり経済成長、そういうことの確保ということが、財源的にも、あらゆる面で強い作用をしておった。そういうことでここら辺がはっきりしなければならないということであるわけでございます。いままでの国土利用のそれ自体が乱開発的に利用されて国土の荒廃を進めてきたわけですから。この中に「利用」「開発」「保全」ということが書かれています。そういう、いま局長が言われたような考え方からすれば逆に、国土保全ということを第一に考えるならばまず「保全」それから「開発」「利用」である、こういうぐあいにならなければならないと思いますが、いかがですか。
  201. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いま先生がおっしゃった基本的な問題としての「保全」ということばの問題でございますが、私どもがここで「利用、開発及び保全」と三つに分けてございますが、この三つを共通して、国土を将来のために、あるいは現在の国民生活のために、保全するということばで締めくくるという考え方一つ成り立つのではないかというふうに思います。この利用、開発保全と分けましたときの「保全」というのはかなり狭義の保全という意味で理解されるものと理解しております。
  202. 新井彬之

    ○新井委員 このところに、目的と理念の中に全部集約されているのだ、こういうぐあいな答弁が前の委員会下河辺局長からあったわけでございますけれども、その点をひとつ腹に据えてやっていただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。  それから、この国総法では、この基本理念として、国土国民の限られた資源として、「国土の利用、開発及び保全」こういっているわけでございますけれども国総法ではたしてその役目を十分に果たすことができるのか、こういう疑問がありますけれどもいかがですか。
  203. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国総法は、限りある国土とその環境保全していくということが大きなねらいでございますが、それにはやはりいろいろな地域を分けて考えようじゃないかということで、都市については都市地域であるとか、あるいは農業地域であるとか、あるいは森林地域であるとか、あるいは自然保全地域であるとか、あるいは自然公園地域であるとか、そういうふうに各地域を分けまして、その地域地域の特性を生かしながら開発するということを考えておるわけでございます。それら土地利用基本計画というものも、その都市地域の中でも市街化区域と都市計画区域とさらにそれ以外のものとかいうようにこまかく分けまして、しかもその地区開発に責任を持つ地方長官、また地方長官はその地域の市町村長というものの意見を聞いてきめていくというふうな考え方をとっておりますので、御質問の趣旨と私どもの考えというのは全く同じである、かように思っておる次第でございます。
  204. 新井彬之

    ○新井委員 私が申し上げたかったことは、国総法の役目というものを多く果たすものは現行の都市計画法でありますし、あるいはまた建築基準法である、あるいはまた道路整備五カ年計画だとか、また下水道整備五カ年計画、こういうような関係法においてそういうことが実施できる、こういうことで考えるわけでございます。この件についてはきのうも公述の方からも意見でございましたが、その関係法というものがいままであったにもかかわらず、やはり地価の高騰を招いている。そういうようなことで、その中でまた乱開発が行なわれたりいろいろしているわけでございますけれども、そういう面についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  205. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新しい国土総合開発法におきましては二つの点を考えていると申し上げることができるかと思います。一つの点は、従来の縦割りの関係法令におきましては土地の取引の規制までは及んでいないということについて、今度の国土総合開発法におきましては土地の取引段階において乱開発防止したいという点が一つでございます。もう一つの点は、従来縦割りの土地利用関係の法令が幾つかございますが、それらの法令を横に調整するという機能が必ずしも十分ではなかったということから、知事のレベルにおきまして、この縦割りの土地利用関係の法令の調整ということを中心として土地利用基本計画を立て、これに即して縦割りの法律によりまして開発行為の規制を行なっていただきたい。この二点におきまして従来よりも改善が見られるのではないかと考えておるわけでございます。
  206. 新井彬之

    ○新井委員 それから、この「基本理念」の中で、一つは「公共の福祉を優先」させる。それからまた「自然環境保全を図りつつ」、それから「地域の自然的」それから「社会的」あるいは「経済的」、または「文化的条件に配意」し、それから「健康で文化的な生活環境の確保」、それから「国土の均衡ある発展」、こういうぐあいに多種多様なことが基本理念の中にうたわれているわけですね。たくさんあることは当然だと思いますけれども、このあまりにも多目的なことをどのように調整するのか、ここがまた大きな問題だと思うのです。たとえていいますと、公共の福祉を優先させた場合に、自然破壊が起こる。あるいはまた文化的な土地を保存しよう、ところがそれでは開発ができない。あるいはこっちには住宅を建てなければいけない。そういうことで、理念だから全部うたっていますが、このとおりが理念でございますといった場合に、一体これを判定するのはだれなのかということです。もちろん審議会だとか、あるいはまた総理等が決定をしてやるというようなこともあるかもわかりませんけれども、それをほんとうに守っていった場合に、一体きちっとしたものができるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  207. 下河辺淳

    下河辺政府委員 この「基本理念」につきましては、私どもは国の開発政策の基本的な姿勢として第二条を受け取るべきであるということを考えておるわけでございますけれども、これは実は地方公共団体が開発する場合でも、あるいは民間企業開発事業に参画する場合においても、この基本理念は守らなければならないということを前提にこの第二条をうたっているつもりでございます。  お尋ねの、第二条がどのように生かされていくかということにつきましては、全国総合開発計画の場合、都道府県総合開発計画の場合、特定地域の総合開発計画を立てる場合、それぞれによりまして調査、企画あるいは科学的な判断ということと同時に、手続によりまして地域の方々あるいは関係の方々との意見調整ということを通じて、具体的に第二条の精神を生かしてまいりたいということで法制を構成しておるつもりでございます。
  208. 新井彬之

    ○新井委員 とにかく、文章に書くことはやさしいのです。それからそういう答弁をすることもやさしいのですけれども、いままでも道路一つつくるのでもなかなか大きな問題があるわけですね。これはもう裁判をやっておるところもありますし、いろいろなところがあるわけです。そのときに、それが公共の福祉になるのか、あるいは環境の破壊になるのか、そういうようなことについては、よっぽど判定がしっかりしないと、この基本理念のとおりやってこうなりましたということになりかねない、このように思うわけです。公共の福祉の優先ということについては大事な問題でありますけれども、公共優先という名のもとに個人の財産や生活を踏みにじる行為が出たということもあるわけです。個人的利益と公共的利益の対立はいかなる社会にも存在するわけですけれども大臣に、公共の福祉というのはどのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  209. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ことばでいろいろ申し上げましても、もうよくおわかりのことなんで、別の表現で申し上げますと、最近日光の太郎杉を金丸建設大臣の英断によって切らぬことにした。訴訟している建設自身大臣があの太郎杉を切るなと言った、あの考え方が公共の福祉であると私は考えております。
  210. 新井彬之

    ○新井委員 これから木を切らないことがその大きなあれですれけども、公共の福祉といってもいろいろあるわけです。高速道路だって公共の福祉ということでどんどん走っておるわけですし、新幹線だって考え方によったらこれも公共の福祉です。いろいろのことが見る立場によって違ってくると思いますけれども、そういうことで、私はやはりその地域の方々にほんとうに利益を与え、喜んでいただけるというようなことが基本でなければならないということを明確にしておかなければならないと思います。  それで、公共の福祉ということを言われましたが、現実の問題として、現在の土地政策において、ではそういうものがどのように生かされているか、こういうことについてはいかがですか。
  211. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 土地政策につきましては非常に混乱をしておったわけでございますが、今度の国土総合開発法の中に土地利用計画というのが御存じのように出ておるわけでございまして、土地利用の区分を設けまして、しかもこれを総合的に計画的に開発していこう。しかも土地取引の内容について、その必要性によって規制措置を設けていこう。そうして特別規制地域というものについては全く新しい考え方として、その地価を凍結するという考え方まで入れておるわけでございまして、ここでひとつ土地問題についての新しい考え方を出そうというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  212. 新井彬之

    ○新井委員 きのうもいろいろ話がありましたが、経済関係もありますけれども土地が非常に上がってきた、この土地が上がってきたことについては日本列島改造というあの一つの論が引き起こしたということを思うわけでございます。  全国総合開発計画の決定権は依然として政府にあるわけです。その場合に都道府県知事の意見を聞くということがあるわけなんですけれども、最終的には国会の審議には乗らないで、そうして閣議決定をされてしまう。その閣議決定された一つ全国総合開発計画というものが、あらゆる地域開発において影響するようになっているわけですね。そういうことで、ここで地方審議会だとかあるいはまた都道府県知事の意見というものがほんとうに生かされるかどうか、こういうことについては非常に疑問を持つわけですけれども、いかがですか。
  213. 下河辺淳

    下河辺政府委員 提案いたしました法律の中では都道府県知事の意見を聞くということに法律の手続上とどまっておりますが、私どもといたしましては各都道府県知事からの意見を聞くということを非常に重く見ておりまして、私どもアンケート調査あるいは基礎調査を通じて実態と接触することを一方でいたしますが、知事の意見はあくまでも尊重したいと思っておりますし、知事から意見をいただきます際にはできるだけ市町村あるいはその当該都道府県の区域の事情についての詳しい御意見を承りたい。そしてそれを尊重することによって、地方との意見の交換をする努力をしたいということでございます。
  214. 新井彬之

    ○新井委員 この意見を聞くということについても前に議論があったと思いますが、とにかく国が推進をしてきたようないままでの実態の中で、各都道府県にはいろいろのことで計画があるわけでございます。そういう中でほんとうにそれが取り入れられるかどうかということは、これは現実を見ないと、ことばの先ではわからないわけでございます。たとえていえば、審議会なら審議会というものを設けますけれども、この審議会には国会議員はメンバーに入れない、こういうぐあいにあるわけです。どういうメンバーで構成するわけですか。
  215. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土総合開発審議会におきましては、十七人以内の学識経験者及び十七人以内の関係行政機関の職員、それに地方公共団体を代表する長五人ということで、合計三十九人以内で審議会を構成するということを考えております。
  216. 新井彬之

    ○新井委員 人数はちゃんと書いてありますからわかりますけれども、その選ばれる人によっては、さっきの第三セクターじゃありませんけれども、日本じゅうの一流の財界人を集めて論議をする、そうなった場合に基本理念なんか全然変わっちゃうのですよ。そうじゃありませんか。その点ちょっと答えてください。
  217. 下河辺淳

    下河辺政府委員 説明が不十分でございましたが、学識経験者十七人以内という、学識経験者の任命の際の選択の基準についての御質問かと存じますが、その際に財界人に片寄るということは不適当と考えております。
  218. 新井彬之

    ○新井委員 この審議会についても、実際問題、メンバーがきまらなければ、この目的あるいはまた理念というものがどういうぐあいになるかということはちょっと言いようがありませんけれども、とにかく財界に片寄るとかそういうことじゃなくて、ほんとうに民主的な構成メンバーによってその審議がなされるかどうか。これはこの法案を生かすか殺すかの一番大きな、大事なところだと思うのです。そういうことでこの問題についてはよく見守っていきたいとは思います。   〔天野(光)委員長代理退席委員長着席〕  それから、この法案ができますときに問題になりました、国土保全ということを中心にするということになれば当然環境長官の意見というものをよく聞かなければならないわけでございます。この環境長官の意見については、これは補佐するということで入っているからいいのだということを聞いたのですけれども環境問題についてチェックはどのようにされるのかということです。
  219. 下河辺淳

    下河辺政府委員 環境問題につきまして、環境を保護するあるいは保全するという事柄につきましては、環境庁だけではなくて、開発関係者の間におきましても十分みずから環境アセスメントをいたしまして判断いたしてまいりたいと思いますが、さらに、いまお尋ねがございましたように、組織といたしましても環境行政との接点を求める必要があることは当然でございますので、環境行政と開発行政との接点をいかなる形で求めるかということは内部的に相当議論があったことは事実でございます。中間の段階で、協議だけでよろしいのではないか、あるいは協議だけでは不十分で、同意を得なければいけないのではないかという議論を進めておりましたが、やはり協議、同意ということはつまり開発行政の外側に環境行政があるということではないかという強い御意見もいただき、したがって私どもといたしましては、開発行政の部門と環境行政の部門が一体となって全国計画をつくる、あるいは特定総合開発計画をつくるということが適当ではないかということから、内閣総理大臣の権限につきまして補佐する立場開発行政と環境行政とが共同で補佐するという形で、一体となって作業あるいは行政事務をつかさどることが適当だろうということから、この附則の第六条におきまして環境庁設置法の一部改正ということで明定してあるわけでございます。
  220. 新井彬之

    ○新井委員 今回の国総法は、目的、理念ということは書いてありますけれども、総理が非常な権限を持ち、その総理は何といっても、ほかの人は別として、日本列島改造論の唯一のトップの推進論者ということは間違いないわけです。そういうことから考えまして、いま問題になっていることは、やはりいかにして国土保全するかということが先ほどからの議論では一番大事だということが言われているわけです。したがって、環境長官の同意だということになれば、これは同格の人になるわけですね。補佐するということと同意ということについて、一体違いがあるのか同じなのか、ちょっとお答え願いたいと思います。
  221. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 同意と申しますと、案がどこかにあって、それがその人のところに来て承諾を求めるという形でございますが、補佐ということになりますと、その案自体の起案者として環境長官が入る、そしてそれを内閣で決定するということでございます。その点でむしろ、補佐という表現ではございますけれども環境長官が主体の一人である。開発環境というものが二者一体になって開発を進めていくというふうになると読んでいただきたいと私は考えております。
  222. 新井彬之

    ○新井委員 いままでの日本の国の開発というのは、四日市のぜんそくであるとかイタイイタイ病であるとか、あるいはまた水俣病だとか、そういうことでいろいろな問題が出ているわけなんです。それだけじゃなくて、東京都内には光化学スモッグという警報が発令されておるわけです。そういう中で、そういうものを繰り返さないということで、いままで政府としても、水島だとか鹿島だとか、無公害だということをキャッチフレーズにしていろいろやってきたはずなんです。いまになってこんなことになるはずではなかったということだと思うのです。あるいはあのときにこうなるんだということがわかっておったわけだと思うのです。いままたこの国総法において、結局新産都市もつくっていくんだし、あるいはまた工場もつくっていくというふうに進められる中で、やはりそういうもののチェックといいますか、そういうものが非常に大事だということですね。  そこで、工業配置・産炭地域振興公団の総裁は、公害は技術と金で必ず解決できる、こういうぐあいに言っておりますけれども、まず、もしも公害というものがチェックできてやれるというならば、いまの東京の光化学スモッグであるとか、いろいろ起こっている瀬戸内海の汚染、そういうものがこのようになくなるんだということを見せるほうが先じゃないかと思うのです。したがって国総法においてはこういうぐあいになるという、これは一つの証明になると思いますが、いかがですか。
  223. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 誤りを通じて賢くなるということばがございますけれども、私どもまさに、いままでの体験にのっとって、今後もう少し改善していかなければならぬというふろに考えておるわけでございます。やはりある程度の量が進みますとそれが質の変化になるということもございまして、この程度ならばと思っているのがいつしかそれが公害発生の原因になっていくというのが現実の姿だと思いますので、そういう点をひとつ規制するということをきびしくやらなければならぬというふうに思っておるわけでございます。すでに発生いたしておりまするこの東京における光化学スモッグの問題、あるいは瀬戸内海の汚染の問題、こういうものも、何とか現在の科学の粋を生かして解消しなければなりませんけれども、それと同時に、今後そういう問題を起こしてはいけないということもたいへん大事なことでございまして、その意味で、開発長官環境長官が全く同じ立場でこの開発を考えていくというふうにこの国総法の中でしているような次第でございます。
  224. 新井彬之

    ○新井委員 国総法でもう一つ見られる性格というのは、大企業本位の国土開発計画遂行の下請機関として地方自治体が利用されるのではないか、こういうような心配があるわけです。これは「産業立地基盤の開発」あるいは「交通結節拠点開発」、こういうことが含まれておりますけれども、列島改造の基本方針に沿う地域を特定総合開発地域に指定して自治体の協力義務を明らかにしております。その場合に、大資本であるとか大企業に対して土地の提供などの便宜がはかられるということ等があるのではないか。  その一つの例は、借手県の雫石町。人口が約一万七千人ですけれども、特に産業はありません。盛岡から列車で二十三分。町当局はここに観光開発によって過疎の歯どめとして企業誘致を行なったわけです。この町に「国土計画」が、これは西武系ですけれども、約四百六十万平米、それから「東カン」が百七十万平米、それだけの土地を取得しているわけですが、この二社の開発基本計画に町当局が同意をいたしまして、そうして計画どおりの開発を実施することを条件に公有地を二社に払い下げる、それ以外の土地が必要なときには町当局が土地の取りまとめに骨を折ること、こういうぐあいになっているわけです。結局自治体は、そういう大資本がずっと入ってきた場合には、そういう手伝いをして土地を買う、そういうような開発になってしまうというようなことが一つあるわけです。  それからもう一つ、自治体と企業の力関係を比較して、非常に企業の優位性が見られるときには自治体は企業の意のままになるというようなことがあるわけです。一つの例をあげますと、岡山県の備中町。人口が約五千人でございます。岡山から四時間で、この五年間で人口が三千人減っておりまして、この近くを中国縦貫自動車道が通ることになっている。丸紅と町とが契約をいたしまして、その中で、住民のわりかた反対があったのですけれども、協定が取りかわされたわけです。そうして千三百二十万平米の土地の買収計画が立てられた。その計画内容というのは、西山部落の百五十世帯の全戸が所有地の八〇%を丸紅に提供すること、土地の買収は町当局が行なう、そうして土地はレジャーランドとしての開発、従業員はその土地を提供した人から優先して採用するというようなことがいわれているわけです。現在反対同盟等ができて、土地の売買も最終的まで終了してないわけですけれども、こういうような問題についてこの国総法との関係等はどのようになりますか。
  225. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いま御指摘いただきました二地区の事情につきましては、それぞれ個別の事情がございますからお答えしかねますけれども、いま御説明いただきました考え方に対しましてお答えさしていただきます。  現在過疎地域にあります市町村の過疎対策というものは非常に御苦労のあるところでありまして、政府といたしましては山村振興あるいは過疎対策あるいは辺地対策あるいは豪雪対策という形で始めておりますけれども、事態はなかなかむずかしい事情もあるわけでございまして、そういう際に、関係市町村長が民間の資金あるいは民間のエネルギーを導入して何とか過疎対策について対処したいというお気持ちが全国の市町村の中に幾つか出てきているということは御指摘のとおりであります。そのときに起こってまいりますいろいろな付随する悪い面につきましては、やはり自治省を中心としてかなり指導を強化しなければならないということで考えておるわけでございますが、国土総合開発法におきましては、やはり土地の届け出制ということを通じて市町村長から知事へ上がってきて、知事のところでそのことの是非についての判断をするということを考えておりますし、もし特定総定開発地域として指定をして開発を進めるということが可能であり、あるいは適当であるとすれば、その特定総合開発地域制度の中でいま御指摘いただいたような問題をチェックし得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  226. 新井彬之

    ○新井委員 現実の問題というのは、そういうところでは、一つ計画を立てる場合に非常にたいへんなことだと思います。それからまたそれを今後解決していくこともたいへんな問題であろう。それは局長よくおわかりだと思うのですね。  そこでいま一つ大きな問題といわれていることは、大企業が非常に土地を買い占めているということになっております。いろいろデータはありますけれども、どの省でもけっこうですが、いまこれだけの土地を買い占めているというデータをお持ちですか。
  227. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 私ども昨年調査いたしました東証の一部、二部上場会社企業の約千三百社についての調べでございます。これは四十一年四月から四十七年三月末までに取得しましたものが、その間に譲渡しましたものを除きまして四万一千二百五十六ヘクタールでございます。
  228. 新井彬之

    ○新井委員 一部、二部上場会社の現在の未利用地的な土地の保有、あるいはまた近年に買っておいてある、そういうことについての調査というものが本来ならば完ぺきに行なわれなければならないと思うのですね。こういう国土総合開発法というものをやるときには、一体土地利用はどうするのか。したがってそれについては国有地だとかあるいは公有地、そしてまた買い占められたものはどれだけのものがあるかということは当然なければならないと思いますが、そういうこともまだ調査されていない。こういうことはちょっと遺憾だと思いますが、結局この土地については明確でないわけです。いろいろ発表はありますけれどもね。  いまもちょっと発表がありましたが、東京証券取引所の一部、二部上場会社についての調査で見れば、四十六年九月期の和光証券調査で、千二百九十三社の保存面積は四十六万七千五百ヘクタール。四十七年八月の経企庁調査では、千三百一社中、回答七百三社で十二万ヘクタール。四十七年八月三十日建設調査では、千二百二十九社中、回答した土地保有企業六百九十六社で三十三万四千七百十一ヘクタール。こういうことになっております。さらに、四十一年四月一日以降六年間に土地取得をした企業二百九十四社の土地保有面積は四万三千七百二十六ヘクタールで、五八・六%が首都圏、近畿圏、中部圏にある、転売残の四万一千二百五十六ヘクタールの約六〇%はまだ開発に着手していない。さらに、そのうちの商品用土地は一万五千四百四十三ヘクタールで、五千三百十一ヘクタールは市街化区域内に所在している。これらの土地の八八・七%は未利用のままである。これが土地ブームに乗った大企業土地買い占めの断面の一部といえる。これらの数字調査回答率から見て実際より小さいことがわかるが、その範囲だけで見ても、市街化区域内で大企業に買い占められた土地は、建設省の長期構想による理想的な中高低層組み合わせ住宅、一戸当たり二百平方メートルをつくるとしても二十六万五千五百戸分、同じく第二期建設五カ年計画住宅規模、一戸当たり百八十三平方メートルで二十九万戸分に当たる。また、三大都市圏で買い占められた五〇%を利用すれば六十一万七千戸が建つことになる。こういうような土地がどんどん放出されてきた場合に、今後のそういう公共福祉の前進ということになるわけですけれども、そういう面についてはどのようにお考えになっておりますか。
  229. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、法人によります土地買い占めが相当進んでおることは事実でございますが、新しい国土総合開発法におきましては、この法人が買った土地は、個人の所有の土地と違いまして、必ず払い下げるとか分譲するとかあるいは活用するという動きが間近に起こるのではないか。つまり、投機的な目的で買い占めたにいたしましても、長期にわたって投機的に保有するということは法人の性格上できないと考えておりますので、やがて近い機会に、買い占められた土地の利用あるいは分譲が始まるものと考えておりまして、その際に、国土総合開発法の土地取引規制あるいは開発行為の規制ということを通じて、大企業の買い占めた土地の価格あるいは利用に関してある程度の規制措置を講じ得るものというふうに考えておるわけでございます。
  230. 新井彬之

    ○新井委員 それについても、そういう考え方ではどうしようもないと思うのですけれどもね。実際問題ここら辺が大きなネックになっておりまして、それをほんとに吐き出させてちゃんとやれるということでなければ、地価の高騰というのはとまらないと思いますね。  それからもう一つ、中国縦貫自動車道の沿道開発関係ということについてお伺いしておきますが、中国縦貫自動車道の建設が進むにつれて、兵庫、岡山両県のインターチェンジを中心とする沿道での土地の買い占めがたいへん進んでおります。兵庫県下では、特に東条町では千七百八十八ヘクタール買い占められておりますが、これは町全体の三五・七%、山林の実に四五・一%が買い占められました。それから岡山県下の九市町村合計五千五百八十九ヘクタール、これは全面積の四・五%、山林の五・八%、こういうことでいろいろな人が買い占めておるわけでございます。  この自動車道による効果というのは、沿道開発効果のみではなくて、中国地方あるいは西日本の交通体系の中で重要な役割りがあり、インターチェンジには少なくとも大規模な流通基地の設置による経済効果というものが多大にあるわけでございますが、この自動車道の沿道の自治体についても積極的な対策や計画を持っておるわけでございます。  兵庫県では開発のイメージとして「緑の回廊——自然と文化の地域社会創造」ということをうたっておりまして、その中で「いまや人間性の回復と自然回帰を実証する理想的なコミュニティ建設の可能性をもつ日本における数少い地域のひとつであり、緑の回廊と呼ぶにふさわしい美しい道路でなければならない」こういうぐあいにいっておるわけでございます。しかし、もうインターチェンジができるというか、その計画がある段階において非常に買い占められまして、その近所というのはもはや地価が何倍、何十倍というようにはね上がっているわけでございます。  先ほども言いましたように、東条町では全面積五千一ヘクタール、買収面積は千七百八十八ヘクタール、買い占められたのが三五・八%です。山崎町が一万七千七百七十九ヘクタールに対して二・三%が買収されている。多いところで三五・八%、少ないところでも三%以上買われているというようなことであるわけですが、この地域都市計画区域指定外です。それからまた近畿圏整備法による開発区域外です。しかし、そういうことを兵庫県なら兵庫県だけでやるということにした、いいことだということで集中して買われておりますけれども、こういうところについてはどのような処置をとられていくのか、お伺いしたいと思います。
  231. 下河辺淳

    下河辺政府委員 高速道路ができ上がり、そして新幹線が建設されて、大都市からの非常に強い、週休二日などにささえられたレジャーブームが起こっておる今日におきまして、やはり土地の需要が、不動産を中心とする企業によって土地の買い占めという形になってあらわれたということはいま御指摘いただいたとおりだろうと思いますが、今度の国土総合開発法におきましては、そういったものが予想されます場合に土地の規制をしたいということもございますので、特定総合開発地域におきましてあらかじめ指定をし、そして指定をしてその計画を練る間の時期におきましても土地の売買について強い規制をするということをきめたわけでございまして、岡山の事例などが再び起こらないようにという配慮をした制度であると考えております。
  232. 新井彬之

    ○新井委員 これはもう買い占められてどうしようもないような状態でありますので、それを何とか解決するような制度でなければならない。これをこれからとめるといっても、もう買い占められるところは買い占められちゃっておるわけです。  それから、この国総法第六条には「土地利用基本計画を定めるもの」としておりまして、その土地利用基本計画では都市地域と農業地域、森林地域などを定めるようになっておりますが、この六条第四項によると、「都市地域は、相当規模の市街地があり、一体の都市として総合的に開発し、整備し、及び保全する必要がある地域並びに新たに住居都市工業都市、研究学園都市その他の都市として開発し、及び保全する必要がある地域」こういうぐあいにされておりますが、都市地域の中に都市計画区域を含むのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  233. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いまお尋ねがございました、都市地域都市計画法上の都市計画区域であるかというふうにお聞きしたようなことを前提でお答えさせていただきたいと思います。  国土総合開発法におきます土地利用区分の中の都市地域は、できるだけ都市計画法都市計画区域と一致させる運営をしたいというふうに考えておりまして、国土総合開発法で計画を練ります際に、練った時点でまだ都市計画法の適用を受けてない地域が一時入ってくるということもございましょうけれども、私どもといたしましては、国総法都市地域都市計画法によりまして都市計画区域として開発の規制をしてまいりたいという考え方でございますので、考え方都市計画区域と一致しているものと考えております。
  234. 新井彬之

    ○新井委員 もう一度確認しますが、都市、要するに市街化区域と市街化調整区域が入るということですね——。  そこでお伺いしますけれども、埼玉県知事は土地の思惑買いを封ずるねらいで、去る五月二十二日、都市計画法による市街化調整区域の線引きを少なくとも向こう五年間は変更しない、こういうことを発表したわけです。調整区域の凍結方針を打ち出したわけでございますが、新国総法案では開発促進を義務づける都市区域の中にこの調整区域を繰り込んでしまうことになるわけです。そこで、市街化を抑制すべき調整区域に対し開発が必要であるとする新国総法案は明らかに都市計画法矛盾すると思いますけれども、いかがですか。
  235. 下河辺淳

    下河辺政府委員 結論から申しますと、矛盾しないという理解で法制を練ったつもりでございます。都市が健全に環境を整備する、あるいは都市の周辺を保全するという考え方都市計画法の中でも生きておりますし、私ども国土総合開発法の中でも、その都市の健全な発展のために開発、利用し、保全するという考え方を述べておりまして、都市計画法の精神と矛盾するものではないという前提で法案を練ったつもりでございます。
  236. 新井彬之

    ○新井委員 建設大臣、これは内容をちょっと聞いてみないと開発という意味がわからないのですが、少なくともこの新都市計画法においては市街化区域を線引きいたしまして、そしておおむね十年で公共施設の全部整ったりっぱな市街地にするということで発足したと思うのです。ところが、今回この法案では調整区域も全部入るということになりますと、前の委員の方からもいろいろ議論がありましたように、線引きのときに八十万ヘクタールぐらいを想定したのが百三十万ヘクタールになっているという中で、では公共事業が十年間でそれだけできるのかという問題、地方自治体との問題があってそれでなくても問題になっているのに、なおまたこの市街化調整区域まで発展をさすということについては、いかがお考えになりますか。
  237. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 国総法の定義でも都市計画一法の都市計画区域の定義でも、開発保全、相伴っての一体としての都市地域の整備という意味でございまして、都市計画区域の全部を開発し尽くす、こういう意味ではなくて、都市計画法でいうならば中心的な区域である市街化区域を当面開発し、その周辺は将来に備えて保全しておく、こういうわけでございます。国総法都市地域というのも全く同じでありまして、文章の表現としても「開発及び保全」ということをうたっておるわけでございます。
  238. 新井彬之

    ○新井委員 もう一ぺんちょっと確認しますけれども、そうすると、この国総法においては調整区域については保全しておくのだということですね。それでいいのですね——。  それからもう一つは、これも確認をしておきますが、調整区域内において、農業振興地域整備法に基づく農業振興地域、農地確保のため他の事業への転用を禁じた農業の聖域ともいうべき地域があるわけですが、市街化を抑制すべき調整区域には多くの農業振興地域を含んでおるわけでございまして、その中で、いまの答弁と同じならけっこうなんですが、新国総法においてはそういうところもちゃんと保全するのだということですか。
  239. 下河辺淳

    下河辺政府委員 新しい国総法土地利用の中で、都市地域については先ほど先生がおっしゃったとおりでありますが、都市地域の中に農振法に基づきます農振地域がある場合におきましては重複して農業地域を指定したいと考えておりまして、都市計画法観点と農業の振興観点と両方から開発行為のチェックをしたいということで、法制上も、その両者の調整の方針について、知事のところで土地利用計画の中であらかじめ方針を定めておくようにということを予定しておるわけでございます。
  240. 新井彬之

    ○新井委員 次にお伺いしたいのですが、特別規制地域の指定にしても、土地取引の許可制と、許可を得ない売買契約の無効処分の権限が新たに知事に与えられるようになっておるわけですが、地域指定は総理大臣の承認が必要である上に、第十四条で内閣総理大臣には知事への指示権と独自の指定あるいは解除の措置をする強力な権限が与えられておるわけです。そういうことで自治体の主体的な計画が国によって変更される心配はないかということですが、いかがですか。
  241. 下河辺淳

    下河辺政府委員 今度の特別規制地域制度につきましては、知事というところでこの権限を行使するということが大原則でありまして、一切を知事におまかせして適正な運営をはかっていただくというのがこの法の精神であると思いますが、ごく限られた特定の事例の場合、つまり広域的な判断を必要とする、あるいは重大な国民の権利義務に対する規制として非常に強いものでございますから公平ということを期する意味で、必要な場合、非常に事例を限って内閣総理大臣の権限を十四条に明定したわけでございまして、知事の適正なる判断というものについて内閣総理大臣が権限を行使するということではないということで考えたわけでございます。
  242. 新井彬之

    ○新井委員 それも具体例がないので何とも言いようがないのですが、変えようと思えば変えられる規定になっているわけですよ。これは間違いないと思うのです。したがいまして、そういうところは、われわれとすれば逆に住民の声を聞いてやっていかなければならないという立場、そういうことはどんどん強化しなければならない、こういうように思うわけです。それから、そういうことをやることについては、地方公共団体とか住民を無視する、それから中央本位の計画になるおそれがある、こういうことはいろいろ公述人の方からも言われたわけですけれども、この中で主権在民の民主主義の精神でやるためにはどうしても住民の声というものを反映をしなければいけない。そういうことでは公聴会というようなことがありますけれども、この公聴会を開くということまで法案にうたってきたということについて、それにはもっといろいろなつながったものがあると思うのです。そこら辺、ちょっと聞かしていただきたいと思います。
  243. 下河辺淳

    下河辺政府委員 今日の社会におきまして、地域の方々の御発言、考え方が私どもに伝わってくるルートというものは非常に多様であると思います。これは端的にいえば新聞その他によっても伝わってまいるということもございますし、学者の方々の調査報告書によって伝わることもございますし、私どものほうからアンケートあるいは基礎調査ということで知る場合もございます。さらには法令的な手続によりまして知事からの意見書を正式にもらうという場合も出てまいります。そしていま御指摘いただきましたように公聴会制度ということへも一歩踏み込んできておりますが、私どもといたしましては、地域の方々の意向をくむためにかなり多様な方法でこれから開発行政を進めてまいりたいということが基本的な考え方でございます。
  244. 新井彬之

    ○新井委員 そこで私は思うのですけれども住民参加と公開の原則、きちっとしたルールがないとうまくいかないと思うのですね。公聴会を開いて、よしんばみんな反対であった、だけれどもそれは通ったではなくて、その場合にそれは通らないんだ。要するに、たとえていうなら、その公聴会に集まった人が、極端にいえば、十人いて六人が反対した場合はそれはだめなんだ、あるいは六人が賛成であった場合は、これはいろいろのほかの人の意見を取り入れてそしてそれを実行する、こういうような一つのルールというものが必要じゃないかと思うのですね。ただ公聴会を開いた、だからちゃんと民主的にやったんだということも、ある意味立場からいえばできると思います。そこで一つの何か計画ができる前に、こういう計画をつくりますということをまず住民に言って、そしてそのためにまた公聴会を開いて聞く。まあいいということになれば今度は計画を出して、それでまた公聴会を開いて、またいいということになればそれを進める、そういうような一つの方式といいますか、そういうものがその公聴会ということばの裏には考えられているのかどうかです。
  245. 下河辺淳

    下河辺政府委員 特定総合開発地域制度を検討いたしました際に、指定の時点と計画を決定する時点とに分けましたのはいま御指摘いただいた点への考え方のあらわれであるというふうにお答えできるかと思います。指定をいたします際におおむねこういうことにしたいということで、それから調査なり地域の方々とのお話し合いを進めるということで、地域指定をするという段階をまず一つつくりまして、その指定することについてもやはり公聴会その他を含めた手続をするということをしております。その段階ではまだ計画というものが必ずしも明確ではないけれども、一応の考え方を公開して指定の是非を問うということを一度したいというふうに考えておりまして、そして指定をいたしましたあと、本格的に計画の内容に入りまして、計画を練る段階で指定の際と同じような手続をとりまして計画を最終的にきめたいということで、やはり私どもといたしまして、できるだけの公開制というものは守りながら地域の方々の意向をくむという制度をここへ一歩築いたという考え方をとっております。
  246. 新井彬之

    ○新井委員 日本弁護士連合会からそういう住民参加の原則といいますか、そういうことで出ております。いまのようなことをやりましてでき上がった案を公告し、縦覧させなければならない。また住民が施策の差しとめをしたいときは、有権者総数の十分の一以上の連署で選挙管理委員会に申し出る。住民投票で過半数が差しとめに賛成したら開発計画はやめなければならない。こういうようなことで出ております。ほんとうに問題があった場合にそこら辺までのことを今後やらなければならない、当然だと思いますけれども、そこまでの考え方はどうですか。
  247. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ものごとをきめます際に、手続によりまして多数決できめるという原則それ自体はやはり貫いていかなければならないと思いますけれども、しかし少数意見を全く無視してよいということにはならないわけでございますので、少数意見でありましても、その事情、内容については十分お聞きをし、調査をした上で、適切な判断をしてまいりたいと考えます。
  248. 新井彬之

    ○新井委員 では、まだたくさんありますけれども、ちょっと次の質問を進めます。  公団法についてお伺いしておきます。先ほど公団の組織、機構、人員、こういうことで先の委員のお尋ねがありましたけれども、産炭地域振興部門、工業配置部門、それから地方都市開発部門、この三つの柱でもって開発公団ができるわけでございますが、この中で第一の産炭地域振興部門あるいはまた工業配置部門についてはいままで継続してやっておるわけですから問題ないと思いますが、この三番目の地方都市開発部門については今後新たになるわけですね。その中の人員、そういうものはどのように見ておりますか。
  249. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  新たに地方都市開発整備関係の業務が加わるわけでございますが、これは大きく分けまして地方都市開発整備事業と筑波研究学園都市建設事業に分かれるわけでございます。人員につきましてはまだ詳細な詰めを完全には終わっておりませんけれども、筑波研究学園都市建設事業につきましては、現在住宅公団で四十八年度は百三十名の定員ということになっておりますので、その百三十名に相当数を加えて事業を実施したいと考えております。また地方都市開発整備事業につきましては、別途八十人ないし百人程度の増員を考えておる次第でございます。
  250. 新井彬之

    ○新井委員 ちょっと確認しますが、筑波研究学園都市については住宅公団からの派遣で充てるというのですか。
  251. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 住宅公団で、四十七年度は九十五名、事業量の増大に伴いまして定員増、合わせまして現在百三十名くらいの定員になると聞いておりますが、その所要定員に、新公団になりまして事業量がふえます関連公共施設整備事業に要します人員を加えてやっていくという考えでございます。
  252. 新井彬之

    ○新井委員 さっき、今度できた公団において学園都市をやることのほうがいいのだというような答弁があったのですが、いままで住宅公団が、新しい、それこそ中核都市づくりの一つのモデル的なものとして何年にもわたって全力をあげてきたわけですね。それについて、今度新しく急にできたからといって、間もなくでき上がるでしょうそのところを切りかえてこの公団が新しくやらなければいけないという理由ですね。それを切りかえてやったら何のプラスがあるのですか。
  253. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 先ほど瀬崎先生にも御答弁申し上げたと思いますが、従来住宅公団は、本来の任務といたしましては住宅難の著しい地域における住宅建設、市街地の造成、そういう知識、経験を生かしまして、筑波研究学園都市建設事業に当たっておったわけでございます。この際、国土総合開発公団を設置いたしますのは、地方都市の整備と大規模な地域開発事業を主たる任務とする専門の機関をつくるという趣旨でございますので、その設立の趣旨から見まして、新公団に筑波研究学園都市をやらしたほうが適当であるという判断をいたしたわけでございます。従来も、既存の公団でございますとかあるいは国が行なっておりました事業を、新しい専門の機関をつくりましてそれに承継をさした例もございますので、それと同様な趣旨でやらすことにいたしたわけでございます。
  254. 新井彬之

    ○新井委員 いまの答弁の内容からいきますと、別にいま住宅公団がやっていることについてそれを切り離さなければならない理由にはならないと思いますし、それからもう一つは、切り離したプラスなんというものは何もない。さっきも答弁がありましたけれども、新しい公団におきましてそういう都市計画の専門家あるいは土木技術者というのは現在何名いるのですか。また予想されるのは何名ですか。
  255. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 現在の工業配置・産炭地域振興事業団におきましては、そういう経験者が大体六十名程度おると思います。将来の傾向でございますが、先ほど来申し上げておりますように、地方都市開発整備とか筑波研究学園都市、これはやはりそういう意味都市づくりの専門家を必要といたしますので、住宅公団の御協力を得ますとともに、さらに充実をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  256. 新井彬之

    ○新井委員 いま現在、そういう都市の技術者あるいはまた土木の技術者というのは六十名ぐらいいるのですね。——それで、その方々では足らないから、要するに住宅公団に御援助願う、こういうことですか。——そうですね。そうしますと、結局、現在百三十名でいろいろ向こうの事業をやっているようでございますけれども、そこのところには予定としてはその六十名から何名行くのですか。
  257. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 現在の六十名は、産炭地域振興業務あるいは工業配置業務の、そういう団地造成関係を主として所掌をしておるわけでございますのでこれの相当数をさくわけにはいかないと思っております。筑波研究学園都市につきましては、従来とも住宅公団の職員の方で実施をされておりますので、従来その方面の経験を有した方にできる限り来ていただきたいと存じますし、さらに加えまして、新公団におきましても新規採用等の道を講じまして充実をいたしたいと考えておる次第でございます。
  258. 新井彬之

    ○新井委員 それじゃ上の名前だけ変わって、あとは全部出向するということじゃないですか。要するに、住宅公団が一生懸命つくってきた、そうして新しいそういう一つ都市づくりにいままで熱意を燃やしてきたけれども、とにかく新しい公団ができたからその者はそのまま今度は出向してやってくれ、そういうことになるだけのことでしょう。それが何かプラスがありますか。たとえていったならば、それに対する仕事の引き継ぎから、あらゆることを操作する必要があるわけですよ。まあ中核都市もどんどんつくらなければいけない、そういうことでそういう公団でやるということはわかりますけれども、この件についていますぐそういうことをやるということはちょっとわからないですね。労働組合のほうとしても、ストをやって、とにかくこのことについてはわれわれで責任をもってやりたいのだ、ほんとうに鋭意全力を込めてやろう、こういうぐあいに言っているわけです。実際問題は、このいまつくっている内容というものに、これはものすごく時間がかかりますので、まだまだ非常に中途半端なところがたくさんあるわけですね、あとで具体的に指摘しますけれども。そこでやはり専門的に、いままで住宅公団はそれこそ技術者とそれからいままでの研究、そういうものの積み重なった中でやっている。そしてその離すことについての何のプラスもない。その中でまたそういう働いている方々もわれわれでやらしてくださいと言っている。そういうことについて建設大臣、もう一度お考えになっていただいて、この仕事については住宅公団がその最後までやるのだというようなこと、どうですか、そういうことについてのお考えは。
  259. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先ほど来から申し上げておるわけでございますが、いわゆる住宅公団の使命というものは大都市住宅あるいは宅地造成、これがいま御期待に沿えないような状況でありますので、これに全精力を傾けていくということは当然の義務であると考えるわけでございます。たまたま筑波研究学園は今度新しくできる公団に一元化するということでございますから、私は断腸の思いでそれをさくということに賛成せざるを得ない、こういうことでございます。やってもやらなくてもそんなに関係はないじゃないか、こういうような仰せでございますが、私は、仕事を積極的に進行させるためには一元的に、あっちに籍を置いてというようなことでなくてやっていくことが賢明な策だ、こう思っております。
  260. 新井彬之

    ○新井委員 とにかく、この公団に出向するということについて、さっき大臣は、いやだという人は行かなくてもいいのだ、それから、向こうの仕事が終わって帰りたいというなら、そのまま住宅公団のほうへ戻ることはすぐできるということだったのですが、その点どうですか。
  261. 金丸信

    ○金丸国務大臣 いやなら行かなくてもいいということではなくて、現在建設に必要な人でありますから、その人がどうしても私は住宅公団に将来籍を置きたい、こういうことであるならば、筑波学園の完成の暁には、休職で向こうへ出向して、そして帰ってくるという道はあけておく、こういうことでございます。
  262. 新井彬之

    ○新井委員 その点も、ほんとうに新しい公団ができて、その職員に出向しなさいというようなことで一方的に言う。そのときについては、前の産炭地法あるいは工業配置法の中でも、銀行員が雇われておったり、その賃金格差があったり、いろいろな問題があったわけですね。そういうようなことでいろいろな面の解決をしていかなければならないと思いますけれども、どっちにしても、この住宅公団がいままでやってきたことについて、それを新しい公団で、メンバーはだれもいない、それをただ名前だけの、実質をとらないで、そういうことで切り離すということは私は納得ができません。それならば、いままでそういう公団がなかったからかわりに住宅公団にやってもらっていたというようなことで、もともとそれは住宅公団が手がける問題ではなかったというようにも解釈できるわけです。そういうことで、そういう面についてはよく考えていただきたい。  それからもう一つ、ここが早く建設ができるということで、いろいろなことがあります。まことに申しわけないのですが、ここは私は行ったことがないのですけれども、図面で見たり、ちょっと写真なんか見せていただくのに、非常にいいところである、学園都市にふさわしいということで、表面的にはそういうことがわかるわけですけれども、実際問題は、そこに伴うところの生活施設、そういうような問題については具体的にいうとものすごくおくれているわけですね。あるいはまた下水道の整備という問題についても、この問題がいま非常におくれているということを聞いておるのですけれども、こういうような内容について御存じですか。
  263. 小林忠雄

    ○小林(忠)政府委員 研究学園都市建設は、東京都内等にあります国の試験研究機関及び大学等を集中的に移転をするという事業でございます。当然にこれを受け入れる道路、上下水道、住宅、小中学校、医療施設等々の生活関連施設等が完備した上で移転をするということがもちろん望ましいわけでございますが、こういうような公共施設等はいずれも主として県、市町村等の公共団体が整備をする責任を持っておるわけでございます。そこで従来、国の試験研究機関がいつ、どのくらいのスピードで移転をするかということについてややはっきりしない点がございましたために、受け入れ体制が非常におくれていたわけでございますが、昨年来、昭和五十年度一ぱいに大多数の移転が完了するという計画が確定をいたしましたので、その移転前の四十九年度一ぱいまでに大体の公共施設については概成をいたすということを決定しておりますので、予算も大体順調についております。あと事業の執行に努力をすればあまり不便をかけないでいけると確信いたしております。ただ下水道につきましては、下水道の放流方式につきまして関係市町村の間で合意がややおくれておりましたために、四十九年度一ぱいということはなかなかむずかしい情勢でございますが、五十年の出水期までには何とか完成をいたすように現在事業を進めております。
  264. 新井彬之

    ○新井委員 この下水道整備については、計画はまず二転、三転をした。当地にある麒麟麦酒であるとか、そういうところの反対があったりいろいろしましておくれたわけですけれども、これが五十年の後半につくられるとしてもたいへんな問題があるわけです。たとえていいますと、ここに住む方々の終末処理場にいたしましても、大体十ヘクタールの下水処理場の用地があるわけですけれども、その流す段階において、何カ所かの町からも一緒に流さしてくれ、したがってそれを計算すると十九ヘクタールくらいになる。その九ヘクタールの用地の確保というのはまだめどがついてないでしょう。そういうこととか、あるいはまた、現在もう住んでおる人がいるわけです。移って、向こうに住まなければならない。しかしながらそこに下水道というものが全然ありませんので、とにかく排水して、吸い込ます以外に手がない。それが五十年度後半までといえば、いままだ四十八年なんですね。そういうような一つの大きなおくれがある。  それからまた、こういう事業は市町村でやるといっておりましたけれども、その市町村に対する財政負担ですね。そういうものについて明確に幾ら市町村が払ったらいいのかということがまだ出てないでしょう。だから、これは国の事業ですからどんどん国がやっておりますけれどもあとで精算した場合に非常な支出をしなければいけない。すぐにもう赤字再建団体に入らなければいけないような状態になる。そういうようなことがほんとうに市町村とも打ち合わせができて順調なあれで進んでおるということではないということ、そういうことはよくおわかりになっておるのですか。わからないのですか。わからないならやはりまた一つ一つやりますから。
  265. 小林忠雄

    ○小林(忠)政府委員 関係市町村の負担がどのくらいになるかということでございますが、実はただいままでのところ、主として事業というものは住宅公団あるいは県というようなところが執行しておりますために、現実の市町村の負担というのは四十九年度以降に生じてくるわけでございます。市町村負担の最大のものは教育施設、小中学校の問題でございますが、関係の町村の財政というものが貧弱でございますので、とりあえず住宅公団等が立てかえて建設をし、長期にこれを市町村のほうに譲り渡すということになろうかと思いますが、その段階において町村の負担が現実化してくるわけでございます。その金額がどのくらいになるかということにつきましては、現在関係町村、県等でいろいろ検討しておりますが、最小限五、六十億、最大百億程度であろうかと思います。これにつきましては、最終的には税金の増収によりまして処置すべきものでございますが、その間、相当期間にわたりまして御指摘のような赤字が生ずるおそれが十分ございますので、その間の補てん措置につきまして現在関係省庁間で協議をいたしまして、来年度には何らかの措置をするつもりでございます。
  266. 新井彬之

    ○新井委員 現地のいろいろな問題からいきますと、そういう費用負担というものは一方的に、公団が立てかえて、そうしてあとになって市町村に幾らですといえばいいのですか、どうですか。
  267. 小林忠雄

    ○小林(忠)政府委員 これは、立てかえはあくまで立てかえでございます。事業の責任は市町村でございます。したがって、そういうものは市町村の議会で債務負担行為その他の議決を必要とするわけでございます。
  268. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、その計画そのもののときにいろいろのことがつきますね。それは市町村がやらなければいけない、確かにそれもありますね。ところがここら辺の市町村というのは非常に財源が少ないところなんですね。その財源の少ないところでそれだけのことをやった場合には、当然赤字になることがわかるでしょう。わかりますから、公団のほうとしては分割払いにしてあげようとか、そういうことになっているわけですね。しかし借金は借金ですよ。そうするとほかの措置は何にもできなくなるわけですね。毎年そういうことになる。十年になれば十年間できないでしょう。五年なら五年できないでしょう。そういうことから考えて、やはり町自体をよくしていこうという考えになれば町としての一つの考えがあるわけです。そういうようなことは完ぺきに打ち合わせができているわけですか。
  269. 小林忠雄

    ○小林(忠)政府委員 筑波研究学園都市の所在いたします市町村は全部で六カ町村あるわけでございますが、個々の市町村が単独で責任を負えるものと、共同でなければできない種類のものがございます。たとえばごみ処理の問題でございますとか、あるいは下水道の管理とか上水道の管理というのは、実は一体の都市としてでなければ建設、管理が適当でない。すなわち、そういう行政事務につきましては何らかの共同処理を必要とするわけでございます。そこで財政問題といたしましても、その際に個々の町村が別々の財政規模で運営いたします場合と、それから何らかの共同処理施設をする、あるいは場合によりましては合併いたしました場合とでは非常に違うわけでございます。そこで、そういうような問題につきまして、現在県及び大蔵省、自治省、総理府、われわれのほうで相談を寄り寄りしているところでございます。
  270. 新井彬之

    ○新井委員 だから、そういうことをいま相談しているわけでしょう。それではまずいでしょう。それは現実計画ができて、大体の費用はわかるし、予算はわかるわけでしょう。建設省あるいは公団としてはこういう予算でやっていこうということでやっているわけでしょう。そうすると、とにかく大体このくらいの市町村あるいはまた県の負担がある。ところがそれが小さな事業じゃなくて、あれだけでかい規模になった場合に、その負担率はすごいわけですね。そういうことは何にも知らないと町当局は言っているわけです。だから、あと幾ら来るのか、とにかく国が全部出してくれるのじゃないかと思っている人もいるわけでしょう。そういうところはほんとうに問題だと思う。あるいはまた下水道についても、あと九ヘクタールはどうなったのでしょうか。
  271. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 研究学園都市関連の上でも、下水道終末処理場を利根町に設けるべく用地買収中でございますが、所要面積二十ヘクタールのうち十六ヘクタールは買収済みでございます。残る四ヘクタールにつきましては、代替地を要望されておりますのでこれを物色中という状況でございまして、大体見通しは立ちつつあるという状況でございます。
  272. 新井彬之

    ○新井委員 それからあと関連施設ですね。ショッピングセンターであるとか、いろいろな生活するに足るだけのそういう関連公共施設が必要なんですけれども、そういうものも非常におくれているわけですね。したがってそういうようなこと。あるいはまた、いろいろと土地なんかを手当てした場合に、その担当の職員の方がいろいろと約束しております。これはよく問題になりますけれども、新幹線の土地を買いに来た。そのときに、新幹線を通すとかそんなことを何も言わないで交渉して、何ができるのだといったら、あとこんなのができてこうなったということがよくあるのですけれども、そういう一連の公共事業を進める場合は、途中困ったからうそを言っておこうということであってはならないと思うのです。そういうようなものをよく引き継ぎをしてやっていかなければまずいわけですね。  そういうこともあって、今回住宅公団が全力をあげてこのおくれを取り戻さなければならないということで、この事業には全力をあげているわけです。その中でこういう切り離すという問題については納得できないわけでございますけれども、これはひとつ検討していただきたいということを要望して私の質問を終わりたいと思います。  あとたくさん問題があったのを保留しておりますので、聞きたいのをあれしておりますので、これを保留させていただいて、またいろいろの問題について掘り下げてやっていきたいと思います。
  273. 服部安司

  274. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私は質問に入ります前に、主管大臣である小坂経企庁長官の現段階におけるこの法案の成立見通しについての御見解を承っておきたいと思います。  御承知のように、私ども建設委員会には一番あとで付託された法案にもかかわらず、実は建設プロパーの法案あと回しにしてまでも私どもは一生懸命に審議をしてまいりました。実は今週に入って月曜日から本日まで一日も休みなく審議を続けておるわけでございますが、いまの状況から判断をいたしますと、私は、わが国が二院制度をとっておる関係から、物理的に成立は不可能であると見るのがきわめて常識的な見方であろうと思うわけでございます。したがいまして、この法案の成立についてどのような御見解をお持ちか、まずお伺いしておきたいと思います。
  275. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 本法案の重要性にかんがみまして、私といたしましては、皆さまの御熱心なる御討議を通じまして、ぜひとも一日も早く成立させていただきたいと心から念願をいたしておる次第でございます。さはさりながら、どうも国会の終末期を迎えまして、参議院の情勢もございまして、私の希望にもかかわらず、また服部委員長の非常な周到な行き届いた御配慮にもかかわらず、状況はきわめて楽観を許さぬというような気がいたしておりますが、私といたしましては、冒頭に申し上げましたように、ぜひともこの重要な法案を成立させていただきたいと心から念願をいたしておる次第でございます。
  276. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 大臣のお気持ちとしてはよくわかりますが、物理的に考えてそのように考えるほうが常識的であろうと私は考えざるを得ないわけでございます。したがいまして、あらためて次の国会なりあるいは通常国会なりに再提案をされるであろう、かように私は考えますから、本日は私自身はこまかい事務ベースの御質問はすべてそのときに譲りたい。したがって、この法案の根幹といいますか、基本的な問題についてのみ、大臣についてのみ二、三御質問を申し上げますので、明確にお答えをいただきたいと思います。したがって冒頭に、もうすでに大部分保留するということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  昨日の公聴会等を通じましても、公述人八人の方々の御意見、賛成者、反対者、それぞれございましたが、無条件でこの法案に賛成した方々はきわめてわずかでございます。また絶対に反対を唱えた方も私はごく少数であったと思います。したがって、賛成論者も反対論者も、願わくはこの法案をもっとよりよい法案にすべきではなかろうかという御意見が大多数を占めておったのではないかと思います。その中でも基本的な考え方は、やはり開発というものに対する限界というものをよくわきまえなければいけない、開発限界を一体どう理解をするか。これは反対論者の中にも、いわゆる人間の命を尊重する、こういう立場から開発限界を考慮しつつやっていただきたいという御意見、さらに賛成論者の中からも、経済効率をこえていわゆる周囲に害を及ぼさない限界、こういうものを把握をしなければいけない、こういう御意見があったわけであります。私もこの御意見はきわめて重要な御意見であろうかと思います。そこで、現在の情勢において開発限界というものをどのようにお考えになっておるのでございましょうか。
  277. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常に重要な、基本的な問題だと考えまするが、私は、人間というのはやはりよりよい生活を希望するものでございますし、その意味開発ということはそれ自体において魅力のあることでございますと思います。しかしながらこれが行き過ぎますると、現在われわれの直面しておりまするような環境汚染の問題、これとまた資源の問題も考えなければなりませんけれども、いろいろな困難な問題が出てくるものでございまして、それには一つ限界もございますが、また開発の速度という点もたいへん大事なことではないかと思うのでございます。日本は申し上げるまでもなく小さな島国でございまして、三千七百万ヘクタールというような非常に狭小な土地でございますし、その上、三分の二以上が山でございますので、そういう自然的な環境を十分頭に入れる必要がある。しかもまた、この国を盛んにし、民生を盛んにいたしますためには、やはり資源に恵まれませんので、海外から資源を持ってきて、これを加工して付加価値をつけて、また海外に売っていく、また国内の消費に備えるということでございますけれども、そういう品物をつくります工場の立地というものもおのずから制限がございますし、海外から持ってくる原材料にいたしましても、これは海の環境とて無限でございませんで、非常な海水の汚染もございますし、危険も伴います。そういうものが一時に殺到しないような、順序をつけて考えていくということが必要でございまして、その意味国総法というものが、全体の総合的な開発計画をつくるということがやはり反対はないという原因ではないかと思います。さりとて、この国の開発をするというような重要な問題なんだから、いやが上にもよい知恵を出す必要があるんじゃないかということで、この出ている法案に全面的な賛成もないということではないかというふうに考えております。問題は、開発そのことはいいんだが、環境との調和、そしてそのスピード、そうしたものの全体の計画、その点において一つのたいへん重要な問題があるというふうに思っておる次第でございます。
  278. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 開発限界ということは、遠い将来の限界をいまの時点で選び出そうとすることはきわめて無理があるであろう。科学技術の進歩によって、いま自然が持っておるいわゆる自主的な浄化作用といいますか、自然の浄化作用、それがとってかわられるものが人工的にできるようになるならば、これはもっと変わった開発ということが考えられていくと思います。ところがやはり現状では自然の持つ自然浄化作用に代替するものが出ていない。つまり、自然を破壊することによって人間の命と健康に重大な影響を及ぼしてくるというわけですから、当然その辺は一番重要に考えられていかなければいけない。  そこで、私は開発ということは悪ではないと思います。というのは、開発そのものにも人間環境をよりよくするための開発、これは当然あるはずでございますから、したがって、いま現時点で考えられることは、そのような環境をよりよくする方面の開発、こういうことがやはり中心になるべきではなかろうかと思う。残念ながら、工場再配置等の計画によって地方に工場を再配置をいたしますと、またぞろそれらの工場周辺から公害という問題が起きてくるというのがいまの現実の姿であるわけでございます。したがって、現時点で考えられる開発というものは、もうこれ以上の悪を分散させないという基本的な考え方の上に立って考えられるべきではないであろうか。もちろん科学技術の進歩によってそれらが克服できる状態が来たときには、これはやはりまた考え直す必要があろうかと思いますが、いまの時点はそのような基本的な考え方を持つことが必要ではないかと思うわけですが、いかがでございましょうか。
  279. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘でございまするが、私は現状より開発の余地がないということは言えないと思うのであります。このいまの環境の問題はたいへん重要でございますし、われわれは非常に困難な問題に直面しておると思います。だからといって、今後の開発は望み得ないかというとそうではないのだと思うのでございます。ただ、いまのあまりに過密な開発、そういうことが行なわれておる時点におきまして、これ以上開発することはもうむずかしい、これは新たなる構想に立って考えなければならぬということがかなりあるのではないかというふうに思っております。
  280. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 もう一つは、やはり開発のしかたにも問題があると思うのです。これは建設大臣もお認めになると思いますが、わが国の下水道の普及率というものは先進諸国に比べてきわめて低い、せいぜい二〇%程度であろうかと思います。東京二十三区を例にとってみましても、これは五〇%を割っておると思うのです。そういう基礎的な社会資本がおくれておる、そういう状態の中で開発を進めていきますと、どうしてもやはり公害分散ということが頭に浮かんでくるものなんです。したがって、そのような社会的な基礎的な開発、これはもちろんあるでしょう。人間の環境を、よりよき環境整備を整えていくということですからあるわけでございますが、しかしいまの現状から申しますと、そのような全国平均二〇%という下水道の普及率、そういう中においてほんとうにどんどんと工場立地なり、そういうニューシティーなりを考えていくことだけでいいだろうか。これからの開発の基本的な考え方は、むしろ生活基盤を先に十分に整備をしておいて、そしてそれに伴って、それらの進捗度とも合わせながらやはりやっていかなければいけないのじゃないか、こう考えるわけです。したがって、いまの現状から見ればということは、それぞれの行なわれておる生活基盤の状況、整備状況、こういうものをやはり見てみる必要があるのではないか。一番肝心な下水道一つ見てみましても実際はそのような状況なんです。そうしますと、せっかくニュータウンとかあるいはニューシティーをつくろうといたしましても、やはりその団地から流れ出るものはたれ流しにならざるを得ないというのがいまの現状であろうかと思うわけです。  そういう意味では、いま提案をされておりますこの国総法なるものは、きわめて緊急を要するいわゆる土地利用政策といいますか、土地利用に関する問題と、それからきわめて慎重に対処しなければならない開発の問題とが一緒になって、ワンセットになって提案をされていること自体にきわめて重要な問題があろう、こう考えるわけです。そこで、本来ならば、そのような緊急を要する土地利用政策、あるいは土地利用の規制に関する問題は、これは当然分離をして早く提案をしなければいけない、一日も早く成立をさせなければいけない性質を持っておると思うのです。ところが一方、開発の問題は、いまも申し上げましたようにきわめて慎重を期さなければならない現状に置かれておる。こういうことですから、いかがでしょうか、分離提案をされる御決意はございませんか。
  281. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点は、過日福岡委員からも御指摘があった点でございまするが、私はかように考えております。  いまの国土の現状は、これをもっと機能的に考えてみて、先ほどから申し上げておりますことでございますけれども、全体の総合的な計画を立てて、開発をさらにすべきところ、その開発の度合いを調整すべきところ、あるいは開発がもう限界に来ておると思われるところ、しかもその開発の場所の中において環境保全をさらにやらなければならぬところ、いろいろあるわけでございますが、そういうものについて町村長や、またそれを通しての知事の意見、そういうものを聞いて全国的な一つ計画を立てるということが必要であると思うのでございます。その計画の中において、ここではこの土地地価は凍結したほうがいい、取引は凍結したほうがいいという点が出てくると思うのでございまして、これは、この法律の非常に大きなポイントでございます。土地利用については私権をある程度制限する、いままでになかった考え方を出してきているわけでございますが、その制限のしかたは、べたにやるわけではなくて、全体を見渡して必要度の最も多いところからやっていくという考え方に立っているので、やはりこれは切り離せないものでないか、かように思っておる次第でございます。
  282. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 大臣、この前の国総法昭和二十五年に制定されましたね。昭和二十五年に国総法が制定をされて、それから実際に国土総合開発計画なるものができたのが、十一年間、その長期な期間を要しておるわけですよ。今度の場合も、この国総法ができ、実際は土地利用計画あるいは開発計画なるものが策定されるという期間はこれは想像にかたくないのです。昨日の公述人の県知事さんの公述でも、同一土地に対する多くの人の要請があるときは調整がきわめて困難だと、知事みずからが言っているわけですからね。したがって、知事がつくるべき土地利用計画そのものも、これは相当な年月を要するであろうということが考えられる。そうなりますと、その間に土地はどんどん上昇を続けていくのですよ。現実がそうなんだったでしょう。だから、土地というのは分離をして、一日も早くその高騰を防ぐような緊急的な措置をとる、強力な措置をとらなければいけないのだ。開発ということばが出るだけで土地ははね上がるという現状なんです。しかも、その法律ができて実際の計画ができるまでには一体これから何年かかるかわからぬ、こういう状況の中にあって、一方土地はどんどん値上がりをしていってしまう、乱開発が続けられていってしまうという状況ですから、そういうことを考えるならば、当然それらを分離をして、打つべき手があるのだから、それを緊急的にやるべきではないかと考えるわけです。再度お答えを願いたい。
  283. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見のほどはよく傾聴いたします。私も実はさようなことを考えた時期もあるわけでございますが、専門家の意見等をいろいろ聞いてみますと、何せこの土地取引というものは非常に多数あるものでございまして、一方においては土地の供給を促進しなければならない。土地が新しく出てこないでよいということになりますれば全面的なフリーズもいいでございましょうけれども、やはり一方においては供給を促しつつ、必要な土地は供給しながら価格を適正に維持していくということがポイントであるということでございます。そういう点からすると、この法案の中にございますような特別規制地域という地域においてまずこれをやってみなければならないということでございます。しからば特別規制地域というものはどういう考え方であればいいのかという考え方が全体の国土総合開発法の構想でございまして、その中においての、全体の部分としての一番規制を要する地域はこれだということにしてやっていこうというのがこの法案の全体の構成でございますので、その中から一部分だけ取り出してきめることはどうも不適当であるという専門家の意見に私は同調せざるを得ないという感じを持っておる次第でございます。
  284. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私は一部分だけ取り出してやりなさいと言っているのではありません。あくまでも必要な土地政策、基本的な土地政策については緊急的に設定をする必要があるのではないですか、こう言っているのです。したがって、緊急的に設定をしなければならない土地政策と、きわめて慎重を要する開発の問題とをワンセットにしておることに実は大きな矛盾があるのではないですか。そうしておると、過程でも、意図しておることとたいへん相反する状態が必ず出てくるであろう。それらを心配するあまり、本来ならば土地政策、基本政策ががっちりと確立をされておって、それらに開発みずからが規制を受けていくという進行状況、これが好ましいわけですから、実際はそうあるべきではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  285. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は物価の問題について責任を持たされているわけでございますが、その中で一番問題はやはり地価の問題だと思うのでございます。その意味で、この国総法を三月末につくりましたときに、ぜひひとつこれが早く成立をしてと思っておりましたのでございますが、諸般の事情でなかなかこれができないということで、私もはなはだ困却いたしておる次第でございます七これは私のお願いでございますが、国会のいろいろな情勢は困難だと思いますけれども、この際勇断をもってこれを早く通していただいて、参議院まで通していただくことを心からお願いを申し上げる次第でございます。
  286. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 この中に中途はんぱな土地政策が盛られておること自身にも私は問題がある。したがって、もっと分離をして、はっきりした、確立した土地政策をほんとうはつくらなければいけないのだ。経企庁長官は物価の問題で頭を悩ましておって、たまたま国総法が出るからそれに便乗したというような形で土地利用規制なるものをお出しになっておるから問題があるわけであって、私は基本的に土地政策なるものの確立を考えなければいけないのではないか、こう考えるわけですよ。  たまたま時間もきておりますからやめますが、ちょうどいい機会ですから、一ぺん頭をお冷やしになって、そして十分にこの案を再検討されて、あらためて分離提案をなさいますことを強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  287. 服部安司

    服部委員長 この際、理事の協議に基づき、本日付託になりました井上普方君外六名提出、土地対策緊急措置法案を議題といたします。
  288. 服部安司

    服部委員長 まず、提案理由の説明を聴取いたします。井上普方君。
  289. 井上普方

    井上(普)議員 ただいま議題となりました土地対策緊急措置法案につきまして、日本社会党を代表いたしまして提案の理由及びその趣旨の説明を申し上げます。  まず、法案の内容に入ります前に、わが党の土地問題に対する基本的な考え方を申し述べます。  そもそも土地は、本来、一般の商品のように再生産の不可能なもので、いわば天与の基本的な資源であり、国家存立の基礎たる国土そのものにほかなりません。いわば国民共通の財産であり、ひとしくこの恵沢に浴する権利を有するのでありまして、断じて一部の者の独占に放置されるべきものではないのであります。  しかるに、最近におけるわが国経済の動向は、資本の利潤追求を第一義に置き、一般国民福祉を顧みない政府の高度経済成長政策の強行に伴い、一方では企業及び人口大都市集中による市街地及び都市周辺における地価のとどまるところを知らざる暴騰現象を生み、他方では国土開発を推進する政府の公共投資の成果である土地の利用価値の増大を予測した投機的な土地投資及び大企業の過剰流動性の増大と相まって、大企業の大規模な土地買い占めの現象を生むに至りました。いまや、土地は、あらゆる企業資本にとって、飽くなき利潤追求の対象となっているのであります。私は、ライオンが小羊を倒してもてあそび、むさぼり食う姿を連想するのであります。  さて、公共投資ないし社会資本の充実による土地の利用価値の増大による利益は、元来、社会公共に帰せられるべきものであるにかかわらず、あげて大資本によってひとり占めされているのであります。かかる状況のもとで、最大の被害者はまさに一般国民大衆であります。しかも、皮肉にも、政府高度成長経済成長政策は、みずからが生んだ地価の暴騰によってみずからの開発政策自体をも行き詰まらせているという矛盾を露呈しているのであります。思うに、資本土地買い占めによる利潤は、公共投資の成果たる土地利用価値の増大の利益を横領する不労所得にほかなりません。また、土地の買い占めは国民大衆にいわれなき害悪を流しているばかりでなく、その生産性を欠く投機的性格によって資本の体質自体をもむしばかものであるといわなければなりません。  事態はすでにここまで来たのであります。いまや、われわれは、営々として働く国民大衆の名において、断固、土地資本の手から大衆の手に取り返し、国民がこの天与の恩恵を受けるための徹底した変革の措置を講ずべき段階に立ち至っていると思うのであります。  このため、政府は、近い将来において、第一に、土地所有権その他土地に関する私権については、他の一般の財産権と区別し、国民一般の生存権の立場から土地の財産権の内容を限定し、財産権の内容が公共の福祉に適合するよう定められるべきであるとの憲法第二十九条第二項の精神を時代の要請にこたえるよう拡充する立場を確立して、土地に関する私権は国民福祉及び生産に寄与する限度においてのみ認められることとする法体制の基本的変革を行なう措置を断行すること、第二に、土地が私人間で商品のように取引されることを原則として禁止し、土地を売ろうとする者は国家に対してのみ売ることができ、土地を買おうとする者は国家からのみ買うことができることとする体制、すなわち土地取引の国家管理制度を断行することの二つの措置をとるよう早急に準備に取りかかるべきであります。  本法案は、この基本的体制の変革が断行されるまでのさしあたりの緊急措置として、第一に、ここ数年来大資本の手によって買い占められた土地を国家が強制買収して広く国民のために解放する措置をとるとともに、これを勤労者を含む一般国民のための住宅建設、社会福祉施設の整備等に計画的に利用すること、第二に、地価の凍結を前提とする土地売買等の許可制及び土地の乱開発を規制するための土地開発行為の許可制等を定めようとするものであります。  次に、この法律案の内容についてその概要を御説明いたします。  土地の売買等の許可制につきましては、次のように規定しております。  第一に、土地に関する所有権または使用収益権の移転または設定をする契約を結締しようとする場合には、当事者は、市町村長の許可を受けなければならず、この許可を受けないで締結した土地売買等の契約は無効とすることといたしております。  なお、この許可制の対象から、農地を農地として利用するため土地に関する権利の移転または設定をする場合、民事調停に基づく場合その他政令で定める場合はこの許可制の対象から除外しております。  第二に、許可基準として、予定対価の額が規準価格をこえないこと、権利の移転または設定後における土地の利用目的が自己の居住の用に供する住宅または自己の業務の用に供する建築物を建築するためのものであること等を定めておりますが、ここで、規準価格とは、土地に関する権利が所有権であるときは当該土地についての昭和四十八年度の固定資産税の課税標準となった価格に、土地に関する権利が所有権以外のものであるときは別に、市町村長が定める価格に、それぞれ当該土地についての宅地造成等の費用の額を加えたものとすることといたしております。  なお、この法律の施行の日から起算して二年間は、土地に関する権利の取得に要した金額、もし宅地造成等の費用を負担しているときは当該費用の額を加えた額で、土地に関する権利の移転または設定をする契約が締結できるよう、経過措置を設けております。  第三に、土地に関する権利を有する者は、土地に関する権利の移転または設定をする契約の締結につき市町村長から不許可の処分を受けたときは、国に対し、土地に関する権利の買い取り請求ができるものとし、国は、規準価格で、当該土地に関する権利を買い取るものとすることといたしております。  次に、開発行為の許可制につきましては、次のように規定しております。  第一に、この法律では、開発行為を、宅地の造成その他の土地の形質の変更または水面の埋め立てもしくは干拓とし、農地以外の土地を農地にする行為並びに通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行なう行為を除外することといたしております。  第二に、開発行為をしようとする者は、あらかじめ、市町村長の許可を受けなければならないことといたしておりますが、この許可の基準といたしましては、当該開発行為が周辺の自然環境もしくは生活環境保全上、または公共施設もしくは学校その他の公益施設の整備の予定から見て明らかに不適当なものでないこと、当該開発区域内の土地について災害防止上必要な措置が講ぜられるよう設計が定められていること等といたしております。  なお、開発行為につき不許可の処分を受けたときは、当該土地につき権利を有するものは、国に対し、当該土地に関する権利の買い取り請求ができることといたしております。  次に、ただいま述べましたように、土地に関する権利の移転または設定をする契約及び開発行為を市町村長の許可制といたしましたことにかんがみ、無許可でこれらの行為を行なった者または土地に関する権利の移転または設定の対価の授受につき脱法行為を行なった者は、三年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金に処することとし、なお、土地に関する権利の移転または設定に関し現実に授受された対価の額が五百万円をこえる場合においてその差額の三倍が五百万円をこえるときは、罰金は、当該差額の三倍以下とすることといたしております。  次に、この法律は、昭和四十八年十月一日から施行することといたしておりますが、近年、大企業等により大規模に買い占められ、未利用のまま保有されている土地の国による強制買収に関し、次のように規定しております。  すなわち、国は、昭和四十四年一月一日以降対価を支払って政令で定める規模以上の土地を取得した者が当該取得した土地で、この法律の施行の際、現に保有する未利用地であるもの、つまり、自己の居住の用に供する住宅の用もしくは事務所、事業場など自己の業務の用に供する施設の用に供しておらず、または供することが明らかでない土地、あるいは地上権その他の政令で定める使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地で、当該権利の設定を受けた者が自己の居住の用に供する住宅の用、もしくは自己の業務の用に供する施設の用に供しておらず、または供することが明らかでないもの等につきまして、強制買収することができることといたしております。  なお、この強制買収の対価の額は、昭和四十八年度の固定資産税の課税標準となった価格に宅地造成等の費用の額を加えた規準価格とし、かつ、その支払い方法としては、その全額を交付公債によるものとし、また、国は、強制買収により取得した土地が、勤労者を中心とした国民のための住宅建設、社会福祉施設の整備、その他国民福祉を増進するために必要な施設の整備のために優先的に利用されるよう必要な措置を講じなければならないものといたし、これに必要な所要の手続等を規定した次第であります。  以上が、この法律案の提案の理由及びその趣旨の説明であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを願います。(拍手)
  290. 服部安司

    服部委員長 以上で提案理由の説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十分散