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1973-06-06 第71回国会 衆議院 決算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月六日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 松岡 松平君 理事 森下 元晴君    理事 綿貫 民輔君 理事 久保田鶴松君    理事 芳賀  貢君 理事 庄司 幸助君       中尾  宏君    中村 弘海君       濱野 清吾君    吉永 治市君       稲葉 誠一君    原   茂君       多田 光雄君    坂井 弘一君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       丸山  昮君         警察庁長官官房         会計課長    室城 庸之君         警察庁刑事局保         安部長     綾田 文義君         警察庁交通局長 片岡  誠君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         北海道開発庁予         算課長     首藤 泰雄君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         建設大臣官房長 大津留 温君  委員外出席者         警察庁刑事局参         事官      小林  朴君         法務省人権擁護         局調査課長   加藤 泰也君         食糧庁総務部長 森  整治君         自治省税務局固         定資産税課長  川俣 芳郎君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         会計検査院事務         総局第二局参事         官       立花 寛英君         会計検査院事務         総局第三局参事         官       小沼 敬八君         北海道東北開発         公庫総裁    吉田 信邦君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ――――――――――――― 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     中村 弘海君   中村 梅吉君     吉永 治市君  橋本登美三郎君     中尾  宏君   江田 三郎君     稲葉 誠一君   田代 文久君     多田 光雄君   竹入 義勝君     坂井 弘一君   池田 禎治君     折小野良一君 同日  辞任         補欠選任   中尾  宏君    橋本登美三郎君   中村 弘海君     篠田 弘作君   吉永 治市君     中村 梅吉君   稲葉 誠一君     江田 三郎君   多田 光雄君     田代 文久君   坂井 弘一君     竹入 義勝君   折小野良一君     池田 禎治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十五年度政府関係機関決算書  昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管警察庁北海道開発庁)及び北  海道東北開発公庫〕      ――――◇―――――
  2. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管警察庁北海道開発庁及び北海道東北開発公庫について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がございますので、順次これを許します。森下元晴君。
  3. 森下元晴

    森下委員 初めに江崎国家公安委員長お尋ねしたいと思います。決算委員会ですから、法務委員会のような専門的な質問はできませんので、抽象的なお答えでもけっこうでございます。  きょうの私の質問の要点は、選挙違反、これに対する人権問題、これについてお尋ねをしたいと思います。  はじめに江崎委員長お尋ねしたいのは、民主警察あり方。戦前の警察につきましては、いろいろと権力政治一端を背負いまして非難があったように私ども承っておりますが、新憲法下警察はいろいろなりっぱな内容を持っておるように思います。昨年のあの軽井沢赤軍派事件でも、一人の女性を救うためにずいぶん警察は大きな犠牲を払って、そして人権を守るために国民拍手かっさいを受けておる。これは非常にりっぱなことでございますし、その他の面におきましてもずいぶんりっぱな業績もあげております。そういうことで、私は、警察あり方というものは、いわゆる政治基本でございます民生安定、その一端を受け持って、いわゆる治安維持、この一言に尽きると思うわけでございますけれども、しかし、いい中でもときにはやはり行き過ぎと申しますか、昔のカラーが出るようなこともたまにあるようでもございますし、その点長官からまず民主警察あり方についてお尋ねしたいと思います。
  4. 江崎真澄

    江崎国務大臣 民主警察あり方、これは非常に表現としては多岐にわたるむずかしい問題でありまするが、何といっても国の治安が保たれる、これが根底にあることによって民主主義というものが伸びるわけで、確保されるわけでございまして、やはり国の治安に当たる、それには厳正公平、中正な立場警察官国民奉仕をする、この心がまえでなければならぬというふうに考えています。警察官目的とか、警察官心がまえとか、そういったことにこの場面で触れるべきかもしれませんが、時間の関係もありますので、いまさららしく長々と申し上げませんが、とにかく平和な国民生活を守り育てるために国民奉仕をする立場に立つべきであるというふうに考えております。
  5. 森下元晴

    森下委員 この新憲法下ではいわゆる国民主権制度をとっておりまして、議会中心民主主義を基礎として政治は動いております。その絶対権限を持つ国会議員をはじめとする地方議員の選出、すなわち選挙というものが明るく公平でなければ政治はりっぱにならないと思っておりますけれども、この選挙取り締まりにおける基本的な考え方について、ちょうど刑事局小林参事官がおいでになっているようでございますので、いわゆる選挙に対する取り締まり一つ基本的な考え方、これについてお答えを願いたいと思います。
  6. 江崎真澄

    江崎国務大臣 選挙取り締まりにつきましては、これはもうその選挙がどういう選挙でありますかを問わず、やはり違反取り締まりを通じまして厳正公平、それこそ不偏不党、適切な納得のいく取り締まり、ここが大事なところだと思うのです。非常に警察側としても、この違反性について、選挙違反というものは非常に微妙な解釈も成り立つ性格を持っております。それからまた、この選挙運動を遂行する上においても、私どももみずから選挙をやる立場にありまするからわかりますが、最大限に法を活用しょう、これがいいますると法に触れるすれすれぐらいのところを動くというようなことがありまして、なかなか納得のいく取り締まりということがはなはだむずかしい点であるというふうに思いまするが、いま申し上げましたような形で、やはり適正な取り締まり、これが厳正公平に行なわれることが基本であるというふうに考えております。こまかい点につきましては、政府委員から申し上げます。
  7. 森下元晴

    森下委員 ただいま委員長から選挙取り締まりについては厳正公平でなければいけない、私もそのとおりだと思います。ただ、選挙違反取り締まり内容につきまして、またその結果われわれが感じますのは、いわゆる公平な取り締まりが行なわれておる面もございますけれども、やはり受ける印象というものは、いわゆる一罰百戒で、かかった者は運が悪かったのだ、こういう非常にあと味の悪い印象が残っております。法は平等でなければいけないという原則と、ちょうど徳川時代のように、はりつけの制度とか、いろいろみせしめをすることによって未然に犯罪を防ぐ、こういう考え方が現在の選挙違反取り締まりの中にもあるように思います。これはもちろん交通取り締まりにおきましても、ネズミ取りといわれておりますような方法で、一罰百戒的取り締まりをやっておる。こういうことは否定できない事実であると私は思います。この点につきまして、いわゆる一罰百戒というものと、法は公平でなければいけない、平等でなければいけない、この関係につきましてお答えを願いたいと思います。
  8. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまおっしゃられる点は全く同感であります。厳正公平、不偏不党、しかも適正な取り締まり、これが根本である。そしてその効果からいうならば、まさに御指摘のような要素は多分に含まれておるというふうに思います。
  9. 森下元晴

    森下委員 いま委員長お答えで、基本的には私の考え方に御賛同いただいたように思いますけれども、そういうようないろいろ一罰百戒的な面が出まして、不公平な点がかなり出ておる。せっかく民主警察といわれまして、戦後の警察に対する国民の信望を得ながら、そういう面でそれを打ち消しておる、これは非常に残念なことでございます。そういう面で、われわれ先ほど申しましたようにいろんな矛盾を感ずる中で、たとえば国政レベル選挙、いわゆる衆議院参議院、このような選挙の場合の違反取り締まりと、それから地方選挙取り締まり、これにずいぶん不公平なと申しますか、地方選挙ではあまり取り締まりが行なわれておらない。これはおそらく予算関係だろうと私は思います。それから総選挙の場合にはかなりきびしくやっておる。この点は決算の問題にからむわけでございますけれども、総選挙の場合には、国庫からかなりのいわゆる捜査費とか、いろいろまた選挙対策費が出ておるわけなんですが、地方選挙においてはそういう予算がない。それから予算が少ないから取り締まりをやらない。またやることも非常に手薄である。予算が多いからうんとやるんだ、この考え方ですね。だからこの決算考え方というものは、いわゆる予算の効率的な使用面から見た場合、軽井沢赤軍派のような事件では、これは幾ら予算を使ってもいわゆる予算の効率というものは一〇〇%以上である。しかし、国庫支出金の使い方によっては非常に逆効果を及ぼすというようなことで、予算を使いながらその効果というもの国民に非常に不信感を与えておる。まあ四十五年度に、いろいろ地方国庫支出しておりまして、私の手元の資料では、約三百億ぐらいの金が国費として都道府県別に配分になっております。これもいわゆる総選挙の場合には予備費から支出しておるようでございまして、私はこの額が多い少ないはわかりませんけれども、ともかくそういう経費の多い少ないによって選挙違反の手薄な点、また非常に厳格にやる面、このアンバランスをつきたいし、お尋ねもしたいと思っております。  それからいろいろちまたの声は、選挙が終わりますと、どうしても一陣営に片寄る点とか新人に片寄る点がありまして、一般に与える印象は、どうも強きを助け弱きをいじめるんじゃないだろうか、こういう声も実は聞かれるわけであります。そういうことについて選挙取り締まり法施行に当たっての当局のお考え方、そういう点において実際にそういう感じをしておるのかどうか、またそういう感じがございましたら、どういう方法でそれを直していくのであるかということをお伺いしたいと思います。
  10. 小林朴

    小林説明員 参事官小林でございます。  いま強きを助けるというようなお話がございましたけれども、よく選挙の場合には大ものを逃がして小ものをつかまえておるということがございますが、選挙の問題にかかわらず、法律といいますのは法律違反行為をした者から順次違反摘発されるというようなことになるものでございますので、そういう違反行為者実行行為者から検挙をするというようなことになるわけでございます。ところが、その背後にいろいろな教唆をした者とか、あるいは共同謀議をした者というものがあるのではないかというようなことで、私どものほうも現実に適正に執行したいということで追及をいたすわけでございます。しかしながら、それが必ずしも、現在の刑事訴訟法のたてまえから言いまして、十分にできない場合もあるいはあるのではないかと思いますけれども法律の許す範囲内におきまして厳正にやるということには変わりはないわけでございます。その取り締まりをすべて神さまのように見通しましてやれれば、これは理想だと思うわけでございますけれども、われわれのところがすべて知っておるというわけにまいりませんので、われわれが知る範囲内において適正に執行するというような面で、軽微な犯罪につきましては警告措置というようなことをやりまして、とにかく犯罪を軽微な形で押えるというような努力をいたしておるわけでございます。これはもう年々ふえてまいっておりまして、警告件数はどんどんふえておるわけでございますので、そういうような形で公正さというものを確保しておるわけでございます。
  11. 森下元晴

    森下委員 警告制度お話がございましたけれども、私はこの警告制度には賛成でございます。法的に非常に詳しい陣営もあるし、また無知な陣営もございます。しかしその気持ちは、やはり国のため、地域のためという気持ち候補者は出ておるわけでございまして、そういう点で、できるだけ事前にいろいろ警告して指導していただくことは、たいへんありがたいことなんです。  そういうことで、先ほどちょっと私が申し上げたことでお答え願わなかったことなんですが、いわゆる地方選挙の場合にはあまり摘発がなくて、総選挙の場合には非常に多いという予算との関連、これをずばり言っていただきたい。制度的に、地方選挙地方負担は十分でないから国費等でこうすべきであるとか、何かお考えがございましたらお答え願いたい。非常にアンバランスがございまして、われわれも現実にその不平というものは、ある選挙ではそれがまかり通った、しかし総選挙ではそれが通らずに、非常に警察にも御迷惑をかけるし、また逮捕とか当事者は打撃を受けておる、こういう矛盾が全国至るところで起こっておるように思っております。その点で遠慮なしにずばりとお答え願いたいと思います。
  12. 丸山昴

    丸山政府委員 ただいまの森下先生の御質問の中で予算関係につきまして、私からちょっと御説明さしていただきたいと思います。  大体私どものほうの警察予算は、大きく分けまして二つございます。一つは直接国費負担する分と、それからもう一つ地方費でございます。地方費のうち部分的には国が補助金を出しまして補助をする、こういう形になっておるわけでございます。  そこで選挙でございますが、選挙関係では、国の行ないます衆議院参議院選挙につきましては、それぞれ全額国負担をする、こういうことになっております。参議院のほうは選挙が予定可能でございます。したがいまして、年度の当初予算でそれぞれ組み込むわけでございまして、たとえば四十九年でございますと参議院選挙が見通されますので、四十九年度の当初に、予算の要求をいたしまして、それを組み込んでおります。それから衆議院のほうは、御案内のとおり解散が予定がつかないということで、当初の予算で組み込めません。したがいまして、これは財政法によりまして、予備費でそれぞれの時期に組んで支出をしていただいておる、こういう状況でございます。地方選挙のほうは地方費でそれぞれの府県で組んでおります。ただ例外的に、統一地方選挙の場合には国から補助金を出す、こういう仕組みになっております。以上でございます。
  13. 森下元晴

    森下委員 そこで、先ほど委員長がおっしゃいましたように、選挙違反については厳正公平にやりたい、その実をあげるために、現在の予算では十分その成果があがっておるのかあがっておらないのか。予算増額等を考えまして、これでは不十分である、どうしてもアンバランスで、一罰百戒的摘発もできないのだ、厳正にやるにはもっと要るのだというような地方もあるであろうし、地方選挙の場合に、いろいろな形で地方にその財源を流す場合の額の多い少ない、それについてちょっと御所見をお伺いしたいと思います。
  14. 小林朴

    小林説明員 ただいまの予算との関連でございますけれども予算も必ずしも十分だという形ではないわけでございますが、特に地方選挙と国の関係する選挙との取り締まりアンバランスという問題は、予算の問題から生じたものではなくて、国の選挙の場合は、A県B県とで取り締まり方針が違ってはいかぬ、またそのAの選挙区とBの選挙区で取り締まり方針が違ったらいかぬというようなことで、全国的に取り締まり方針が違わないようにという調整をいたすわけでございます。ところが地方選挙になりますと、その地域だけに関係があるものでございますので、その地域においての調整ということになりまして、非常に小さな単位選挙になりますと、警察署限りで執行ができる、あるいはそれが府県単位選挙になりますと、府県単位執行をするというようなことで、そこに若干先生がおっしゃるようなアンバランスが生じるのではなかろうかというふうに私はいま思っておるわけでございます。法律でございますので、その運用というのはできるだけ同じレベルにおいて運用されたいということは当然のことだと思いますので、今後はそういう面につきましてよく注意をしてまいりたいというふうに思います。
  15. 森下元晴

    森下委員 われわれいろいろ直接選挙をやっておりまして聞くことばなんですが、どうもこの選挙違反についても、ちょうどスポーツのように考えて、選挙違反をやってもルール違反であるというふうに安易に考える節があります。これは非常にいけないことであろうと思います。しかし、この取り調べ状況を見ましても、たとえば町長選あたりで二人が出て、非常に選挙違反をやっておる。しかしルール違反的に考えました場合、スポーツ的に考えました場合、両方同じように違反をやっておれば同じことではないかというような安易な考え方もございまして、現実にそういう事実がありながら取り締まりもなかったというところに有権者の方々が、結局選挙違反というのは政治犯的な犯罪であって、いわゆる自然犯的な、非常に恥ずかしい犯罪でないというふうに安易に考えまして、そのためにも違反を犯して、当事者は非常に悲劇のどん底におちいっておる、こういう事態でございます。それと、いろいろ末端警察活動を見ておりましても、やはり年度末になりますと、各省とも、これは私証拠を持って申し上げておるわけではございませんけれども、いわゆる予算を消化するためにいろいろと無理に予算を使うということが昔からあるようでございますし、これも捜査費が各府県に渡る、やはりそれを消化しないと次の選挙にももらえぬのじゃないかというような間違った考え方もあるのじゃないかと思いますね。だから、そこにかりにかなりきれいな選挙が行なわれましても、少しのそういう選挙取り締まりで実をあげなければいけないというところに末端において無理な面も出てくるのじゃなかろうか。捜査費内容等を見ましても、情報を提供した者に対する報償費とか、いろいろそういうものもあるようでございまして、一般の方の協力を求めるための費用も出ておるようでございます。それと、やはり選挙違反等は投書とか密告ということでその証拠が出ておるようでございますけれども、少し行き過ぎますと、昔の目明かし的な根性が出まして、あくまでも犯罪をつくるために、ちょうど交通違反ネズミとりのようなかっこうで、そういうことも勇み足的にあるのじゃないか。何かこのごろ週刊誌なんかの漫画に出ております仕掛け屋のようなものがおりまして、どうもそれにひっかかる。これは警察ばかりが悪いのではなくて、お互い同士陣営情報を提供したり、自分選挙違反であげられないために、情報を提供して自分の分を消してもらう。いろいろ末端においては戦略、戦術が行なわれておるようでございますけれども、しかし一番あとまでいやな味が残るのが選挙違反でございます。そういうこともございまして、もう少し末端の実態も大いに認識していただきたい。せっかく法というもの国民の幸福のためにあるのだ、人を生かすためにあるのだといいながら、案外末端の分野では法がむしろ人をいためつけるためにあるのだというような結果も生じておるように私は思っております。  それから、最後になりますけれども、どうもこの選挙違反あとで最もいやなのは、自殺者が出たり、かなりの年配の方が長期勾留されるために、特に冬の寒いとき、また夏の暑いときに勾留されるために、あとでたとえば中風になるとか、またいろいろの病気の原因になる間接的なそういうような事態が起こりまして、人権尊重人権擁護上ゆゆしき事態選挙のたびに起こっておるような感じがしておりますし、それから裁判を受けて罰金刑が一万円とか二万円のような軽科的な犯罪であっても、その取り調べの過程におきまして四十日も五十日も長期勾留されておる。勾留目的証拠隠滅とかその人を保護してやるのだというような面もあると思いますけれども、やはり純真な人ほど長期勾留によって、それを精神的な拷問と感じて、そのために精神がおかしくなった、ノイローゼになったような事態もあるようでございます。昨年末の総選挙でも、新聞等では、たとえば北海道また埼玉県その他でも、釈放されてから村八分にされたとか、いろいろ感情的な問題で自殺をしておる事例もあるようでございまして、その点、ちょうど法務省人権擁護局調査課長がお見えになっておるようでございますので、抽象的でけっこうですから、選挙違反人権問題、特に自殺者中心とする、ほんのわずかな罰金五千円とか一万円くらいの犯罪でありながら自分の命を縮めなければいけないというようなものは、かえって法が人を殺す結果になって、これは警察とか検察ばかりの罪ではございませんけれども社会制度がそうなっておるのだということも含めて、ひとつ人権擁護局のほうの御見解をお伺いしたいと思います。
  16. 加藤泰也

    加藤説明員 選挙違反捜査につきましては、御承知のとおり刑事訴訟法等、法にのっとって行なっておりまして、刑事訴訟法第一条には、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにするようつとめるべきだと明確に定められております。したがって捜査機関方々はみなこのことは十分守っておられると思いますし、さらに行政処分につきましては、裁判所が法律上さらにコントロールを加えております。したがって、御指摘のように自殺者とか病気の者が出たような場合、これは人権擁護上もはなはだ遺憾でありますので、つとめてそういうことがないように捜査機関方々に常に心がけていただくことが第一と思います。  また先生指摘の、警察に供述したために村八分になったというケース、これも間々ございます。法務省人権擁護局関係機関で扱いました人権侵犯についてもその種の事件がございまして、この種の事件につきましては、法務省としましては、地元の法務局の担当官あるいは全国におります人権擁護委員を通じまして、関係人を説得して村八分解消につとめて成功したという事例もございます。したがって、捜査機関並びに地元方々をはじめといたしまして、この種の事件がもし起きた場合には、法務省人権擁護局といたしましては、申告あるいは具体的な情報の提供を待って調査を行ないまして、この種の人権侵犯が起きないように十分努力したいと思っております。
  17. 森下元晴

    森下委員 ちょうど時間が参りましたので締めくくりをいたしますけれども、要は、なまはんかな予算をつけると、どうも法の精神末端行政では生かされない。特に刑事行政の場合は、かえって民主警察の名を汚すような事態も起こりかねない。また、そういう事例もあると思います。そういうことで地方選挙国政レベル選挙を問わず、厳正公平に行なわれるような予算を組んでいただいて、いやしくも選挙違反であろうと交通違反であろうと、すべてにおいて一罰百戒的な見せしめのための、徳川時代のような刑事行政が行なわれないようにということを、私は指摘をしたい、また希望もしたい、このように思っております。  この四十五年度決算内容を見ましても、決して捜査費選挙違反関係予算が多いとは言えません。そういうところから、われわれは決算を通じて、将来の予算面において明るい公平な選挙ができるような予算執行体制を希望したい、このように感ずるわけでございます。  なお、同僚の松岡議員から関連質問があるようでございますので、一応私の質問をこれで終わります。
  18. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 この際、松岡松平君から関連質疑の申し出がございますので、これを許します。松岡松平君。
  19. 松岡松平

    ○松岡委員 国家公安委員長にちょっとお伺いしたいのですけれども地方警察官の人事、一例をあげますと、その県で採用されてそこで育ってきた、まあ警部になり、警視になる、依然としてそれはほかへ転任にならないんですね。そういうことをどういうふうにお考えでしょうか。土着の警察官ですよ。――政府委員でけっこうです。
  20. 丸山昴

    丸山政府委員 大体、国家公務員である警察官地方公務員である警察官の二種類になっております。それで、ただいま先生指摘警察官は、地方で採用いたしまして、地方でずっと育て上がる警察官のことをおっしゃっておられるのじゃないかと思いますが、これは地方公務員。例をあげますれば、富山県の県警の警察官は富山県で採用して、そこで富山県の治安にあたるということで、大体原則として富山県から以外に出ることはないわけでございます。それで警視正以上の階級にある警察官、これは地方警務官と称しておりますが、これは国家公務員でございまして、中央の国家公安委員会で任命されるという仕組みになっております。ところで、富山県の警察官が警視になりまして、さらに一階級上の警視正になりますときは、身分は地方公務員から国家公務員に切りかわるわけでございます。かりに富山の署長が警視正であるといたしますと、しかも富山の署長さんが富山県の採用の警察官であるという場合には、これは警視正になった段階で国家公務員に身分が切りかわるということになります。この国家公務員になることによりまして、俸給の出場所が県から国にかわる、こういう仕組みでございます。それで、ただいま先生の御指摘の、一生ずっとその県内だけで、ほかへ動かないのかということでございますが、これにつきましては、私どもの現在の制度といたしましては、推薦警視制度というのがございます。本人が希望をいたします場合で、しかも非常に優秀な能力を持っておるという警察官につきましては、警視以下の身分である場合においても、この警務官の交流をできるだけ進めたいというふうにいたしております。こういった範疇に属する警察官も現在若干ございますが、御本人の希望、その他の問題もございますし、できるだけ府県間の交流を促進いたしたいと考えておりますが、現在はなかなか思った方向に進まないというのが実情でございます。
  21. 松岡松平

    ○松岡委員 官房長にお尋ねしたいのですけれども地元からはえ上がってきた警視正などというものは、地方勢力と結んで反対派をねらい打ちやるのですよ。この事実がたくさんあるのですよ。まことに弊害が多い。昔はうんとあったが、いまでもあるのですね。はっきりと富山県にあるのです。これは名前は避けます。いずれお調べになれば、わかるのです。これは警視正です、大警察の署長なんです。これなんかはもう地方勢力と結んでいる。まことに弊害百出している。それがあらわれてこないのですよ、裏でやっている仕事ですからね。  ところが、あらわれてきた今度の一つのケースがある。その人がやったかどうか知りませんよ。賭博で賭博屋へ部屋を貸した。それをとってもろて逮捕した。それがだんだん枝葉を生んで、それは略式命令で処罰して罰金で本来は出すべきなんです。ところが、それを再逮捕している。それは今度贈収賄で再逮捕した。反物をやったとかやらぬとか。その反物を売ったとか売らぬとか、それはわからぬですよ、私は。これがいま起訴になっているから、裁判所において明らかになることですが、いわばその証人、警察段階、検事段階における証人として調べている呉服屋の家で、家宅捜索として約十名近くで警察の権威をもってうちじゅうひっくり返した。一体、こういうことをどうお考えになりますか。反物をやったとか買ったとかいう争い。これは被疑者ははっきり名前を言ってもいい。私は五十年近くも弁護士をしておりますが、こういう事犯というものは聞いたことがない。証人の家に、被疑者でない者に家宅捜索に行くために警官が十名近くも行って、うちじゅうひっくり返す。こういう異例中の異例ですな、こういうことが行なわれていいかというのです。
  22. 丸山昴

    丸山政府委員 ただいま先生指摘の事案でございますけれども、非常に残念でございますが、ただいま初めてお聞きする事案でございます。もしおっしゃるとおりのことであるとすると、明らかにこれは問題であると思うわけでございまして、私どものほうでよく調査をさせていただきたいと思います。
  23. 松岡松平

    ○松岡委員 それから、その賭博で引っぱって、つまり完全な見込み捜査なんです、私どもから見ると。引っぱる理由がないから、賭博で部屋を貸したというので引っぱっておいて、たたいたわけです。尋問は、はなはだきびしいものです。被疑者がおととい上京しまして、私は両方から聞きました。ともかく、金を借りている、人に金を貸した、この事案を、預けたのだろう、やったのだろうという尋問なんです。検察段階でこれは起訴になりましたが、多少供述にあいまいな点もあるから、あるいは起訴したのかと思います。しかしながら、拘禁されていてそういう問題でたたかれると、被疑者というものはもう一種の麻酔にかかってしまうわけなんです。だから、自分の心でものを言っているのやら、誘導でものを言っているのやら、わからない。私どもこれは完全な見込み捜査から起こった事犯と見ているのですが、これも結局その背後に動いているものは土着の警察官。富山県は元来がよくないところなんです。四十四年の選挙のときにも、私の後援会の幹部が後援会の事務所におったという理由でしょっぴかれて、熱が七度八分もある病人なんです。それを引っぱっていった。それを拘禁して、帰して一週間たたずに死にました。これは人権擁護委員会にも聞いておいてもらいたい。調べてもらったんだけれども、それもいいかげんなんです。何らそういうもの取り調べ警察官に対する上司の処罰もなければ、何もない。私は選挙があるたびにその人のことを思うと、いまだに実に気の毒にたえない。りっぱな人なんです。そして取り調べ中に相手方犯罪が出ているかというと、何にも出てない。こういうことをやる。それはみんな土着の警察官の動きなんです。だから私はいま聞きましたように、地方警察官と国家警察官との差別のあることは、制度として、ばなはだ矛盾だと思う。警視以上になってからやっと国家警察官になる。私なんかもずいぶん冤罪で苦しんできたことがあるのです。はっきり言うと、みな土着の警察官が仕組むのです。私なんかは剛の者だから戦いますよ。一審であろうと二審であろうと、三審まででも戦いますが、普通人は戦う気力がないです。たたかれでもすると、それで終わりです。これは日本にある封建的警察の残滓がいまなお巣食っているのですよ。あなた方非常に上部にあられて理想的なことばかり考えておられるけれども現実警察官なんというものは実にどす黒い根性を持っております。言うことを聞かなければやってやる、こういうことを常に放言しているのです。おまえなんかいつでもやってやるぞ、これが現実にあらわれてくるんだから、普通のナマズの地震程度じゃございませんよ。やられた者はたまったものじゃない。いまの場合でも賭博でひっくくっておいて、そしてたたいて、それで反物をやったとか買ったとか買わぬとかいう問題で、十日おいてこれをさらに蒸し返して、借金のカタに渡した、それで借金を受け入れたんだ、貸し金だと言うても聞かない。それをたたいてたたきまくるのです。これは東京都内じゃ、うるさくてありませんよ。その間検察庁も検察庁だ。接見禁止してしまうのです。弁護士に会わせない。私のほうではようようそれを取り消さして会わせるようにさせましたが、ともかくそうなってくると、被疑者というものは頭がどうかなっておるのですよ。債権があるといえば、それははっきりいうと出世証文だ、出世証文で金をもらう手はない、こう言うて押しつけるものだから、いつの間にやら麻酔にかかっておる。私はおととい会ってみて、おまえ債権者、債務者でその話をしたか。そんな話をしたことはありません。本人の留守中にそれを救ってやった。だから債権者、債務者で話し合いができない。それを出世証文だと錯覚を起こしている。  これを私はいろいろ考えてみますと、土着警察官のどす黒いやり方がこういうことになってくるのです。だから民主警察を確立される上において、長官はじめこれは大いに考えていただかぬと、四十四年の総選挙で私の最も親愛なる同士が殺されてしまった。殺されたんですよ、これは完全に。七度八分もの熱を発している者を拘禁していく、ひっぱっていく。そして一緒におったのは、女房ともいえないのですけれども警察の協力会がありまして、そこの書記なのです。それも首切ってしまい、あらゆる迫害を加えるのですね。私はこれは署を言います。魚津警察署管内、一番傾向の悪いところ。選挙違反のたびに何でもいいから松岡なら片っ端からひっくくってやれ。歴代の署長はみんなそうです。私はどういうわけかわからぬです。私はそこでわずか千票しかとれない。たった千票しかとれないところで、私の違反だったらあることないことみんなしょっぴいてしまう。この間もやりました。この間もやったけれども、結局事犯にならぬで帰しました。何でも一ぺんやってみるのです。まるで判で押したようにひっくくっていくのです。ここは伝統的に土着の警察官が多い。今度はあいつをやりましょう、今度はこいつをやりましょうといってやっているんですよ。こういうことを見のがしておかれていては困るから、私は少なくともこれから警視正以上になった者はその県に置かないほうがいいと思います。富山県にいまなお一人おります。これがボスだという。地方民はみんなこれをボスと言ってふるえ上がっていますよ。それがみんな暮夜ひそかに暗示して子分にやらせるのだから、何をするかわかったものじゃない。あなた方の考えておられるようなものじゃないですよ、土着警察官というものは。いわゆる昔の代官以上ですね。映画に出てくる悪代官以上のものです。これははっきり私は断言しますよ。これは代官より知識があるからやっかいなんです。まだ代官のほうが腕っ節だけでやるからいいようなもので、いまの悪警察官くらいやっかいなものはない。知識がある。ごまかしがきく。つべのこべの理屈をつける。これではたまらない。住民を圧迫されてはかなわぬと思うのです。大都市では最近そういうことはやり得ないです。地方のいわゆる封建的な残滓の多いところでは、私なんか今日になるまで、小作争議のときにはやられるし、治安維持法ではやられるし、もうやられっぱなしなんです。よく心得ておるのです。私は治安維持法でやられておりますからね。警察に約一年、刑罰は二年。そんなわけで、あまり長くやっておってもしようがありませんが、ひとつ富山県をよく調べてください、いまの事案を。岡崎という被疑者と山口という市会議員です。これは完全に見込み捜査でやられたのです。このままほっておいてはいけませんよ。お調べ願えますか。
  24. 江崎真澄

    江崎国務大臣 松岡先生、すでに何十年も弁護士としてその道でも権威のある方であります。そういう方からこういう具体的な事犯をさして、いま言われまするようなことがもしありといたしまするならば、さっき森下さんからも御質問がありましたが、いわゆる民主警察の本義にもとるもはなはだしいものだというふうに思います。警察官は、「その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」と警察の責務の第二条にはっきり明文化されておるわけです。なるほど地方に参りますると、これは警察官の全般的な教養の問題とも関係があるわけでありまするが、かりそめにもそういうようなことがありといたしまするならば、これはやはりたいへんなことだと思います。今日非常に国民に親しまれ、信頼をされる警察官ということで、国際的にも日本の警察官というものは信頼度が高い。この点は私も大いに賞揚をし認めておるものでありまするが、数ある警察官の中にそういう者がありとするならば、そういう信頼を一気に欠くものでありまして、十分ひとつ実情にわたって調査の上、御回答申し上げたいと思います。
  25. 松岡松平

    ○松岡委員 終わります。
  26. 宇都宮徳馬

  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま松岡先生質問を聞いていたのですが、私はそれで感ずるのは、これは将来の問題として私も質問したいと思うのですが、警察の署長あるいはその他の者がやめてからどういうところに就職するかということが一つからんでくる、こう思うのですよ。ぼくは栃木県ですけれども、そこではほとんど署長が自民党の議員というか、あるいはその他の人たちというか、そういう人たちの経営している会社に入るとかなんとかというのが多いわけですね。これはそういう人たちが経済界の実力者だからということかわかりませんが、そういうところに私は問題があると思うのです。これはきょうでありません、別の機会に質問をしたいと思うのです。  そこで、たとえば地方税法の一部を改正する法律案、これがいま出て、衆議院を通って参議院に回っているのだと思うのですが、この中に、料理飲食等消費税で、旅館における宿泊及びこれに伴う飲食の免税点を現行千八百円から二千四百円に引き上げるということになっているわけですね。そこで、これをさらに三千円に引き上げたいということで、これは旅館の何とかあるのですか、全日本旅館か何か知りませんけれども、各県の旅館に割り当てをして運動資金を集めている。これはぼくは旅館の二、三の人から具体的に聞いたんですが、さらに私のほうでももちろん内容をよくこれから調べますけれども、その額が二億円といわれている。二億円の運動資金を集めて――いま集めようとしているわけだ。今度免税点が二千四百円になる、これをさらに三千円に上げるために運動するのだ、こういうことです。それで二億円集めようとしている。その金が一体どこに行くのだろうか、こういうことになってくるわけですね。これはただ純粋に政治資金という形ではなくて、具体的に免税点を引き上げるという目的をもって金を集めているわけだから、その金の行くところはどこかわからないけれども、大体想像はつくと思う。これはいやな質問なんだけれども、どういうところに行ったら一体贈収賄が成立するのですか。そこら辺のところをちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  28. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまの問題でありますが、これは三千円に免税点を引き上げるという目的でやったのか、あるいはそれが政治結社のようなものをつくって、たとえば為政連盟あるいはその旅館の関係の、名称はどういうふうか存じませんが、政治団体というようなものをつくって、そして免税点ばかりでなくて、旅館というのは環境衛生の整備の問題から、いろいろな事が多うございます。そういうことで政治的に、その三千円に引き上げるという問題もあるいは含んでおると思いますが、いろいろな政治活動をするということになって、これが政治献金のような形になって自民党なりあるいは何党なりということでこれが出ていくという場合、おのずとそこに問題の区別があろうかというふうに思うわけでございます。その目的のためにたとえば国会議員に働きかけて、そして一々その関係国会議員に何がしかの金員を贈るということになれば、これは当然贈賄を構成するわけでありましょうし、これはやはり問題になると思いますが、そのあり方がどういうふうかというあたりに問題が存するというふうに考えます。詳しくは政府委員からお答えいたさせます。
  29. 小林朴

    小林説明員 若干補足をさしていただくならば、そういうことで地方税法の一部改正に関連をする職務を持つ公務員の方々にお金が行く、不法な報酬として行くという場合には贈収賄罪ということになろうかと思います。あるいはまたそういうような関係で第三者に金が渡るというようなことになるならば、あっせん収賄罪というような形になろうかと思うわけであります。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはあなたの言うのはそのとおりで、私も直接旅館の人たちに聞いた範囲では、これは今度二千四百円に上がるけれども、それじゃとてもだめだから、とにかく三千円に免税点を引き上げるのだ、引き上げるためには運動資金が要るのだから金を集めたいということで、みんなに割り当てをして集めておるようです。どうも各県ごとに割り当てしているのじゃないかと思います。ぼくはそこまでつかんでいませんけれども、私の聞いている範囲では、たとえばある県、非常に迷惑がかるから名前を出してくれるなというのですが、そのある県で割り当てをして集めている。三千円までが免税点だということになると、小さな旅館はあまり影響ないらしいですね。小さな旅館は熱がないらしくて、大きな旅館が熱があるらしいのですが、それがそういう説明をしているらしい。そうすると、具体的な目的が出てくるわけですから、その目的で、たとえばいま江崎さん自民党と言ったけれども、ぼくは遠慮してそういうことは言わなかったんだけれども、政党の名前なんかぼくは言いませんが、ある政党へ免税点を三千円に引き上げてほしいと言ってその資金を献金する。具体的な目的を持っているのですよ。その場合に贈収賄罪が成立する場合としない場合とあるわけでしょう。そこら辺のところはどういうふうになるのですか。ぼくもよくわからぬから教えてもらいたいのだけれども……。
  31. 小林朴

    小林説明員 その場合でございますと、直接に法律改正の問題に関連する人方の不法な報酬、そういうものの対価ということになるわけでございますから、これの使途そのものが一体どういうような形で使われたかによらないと何とも言えないと思うわけでございます。
  32. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は自治大臣でもありまして、この税法の改正の直接の責任者なわけでございますが、今度の税法改正にあたってそういう忌まわしい話は私実は承知していないのです。ですから、率直に、たとえば政党に献金された場合ということばも申し上げたわけでありますが、もとより自治省においても役人にそういうことがあろうなどとは思っておりません。それからもうこの引き上げは見直しの時期に来ておったわけです。千八百円ではとうてい素泊まり程度、二千四百円ということになっても、普通の旅館では晩めしと朝めし、この二食がつくのが普通でありますが、なかなか二千四百円じゃおさまらない。その程度にまで引き上げることはまあ妥当じゃないか。これは都会地では三千円でもむずかしいかと思いますが、これは全国おしなべての話でありますから、税改正は一応妥当なところへ落ちついたというふうに私ども考えておるわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二千四百円の税改正の問題じゃなくて、それでは足りないといっているらしいのですよ。それでは足りないから三千円まで免税点にしてほしいということで、二億円を集めるのだといって、何か各県の割り当てをして、そしてその県の旅館の中はその下にいるところへ割り当てをしているらしいといまの段階では申し上げておきます。私の聞いたのは、二、三から聞きまして、はっきりそういう目的で集めて、出てほしいという話はあったらしいのです。ですけれども、いまの段階で、ぼくはこういう場合の政治のいき方、これは根本的におかしいと思うのですよ。何かというとすぐ金を集める。それを政治献金をするという形、あるいは政治献金しようとする、あるいはいろいろなことで運動費に使うという形でかりに日本の政治が動かされておるとすれば、これは大きな問題点があると思うのです。しかしきょうは警察関係のことですから、一応その程度にして、その金がどういうふうに流れるのか。過去においても、おそらくぼくは千八百円から二千四百円にするときにも金を集めたのじゃないかと思うのですが、その金はどうなっているかということ、これは自治省あたりの届け出はどうなっているか、いろいろな点がありますけれども、よくまた私どもは調べてみたいと思うのです。  そこで、また一つの問題は、これは福井県の県会で副議長選挙があって、そこで党内で副議長候補者を事前にやるわけですね。そこで、副議長にしてくれと言ったのかあなたをすると言ったのか、金が動いたということで起訴されて、一審で無罪、二審で検事抗告で有罪、最高裁で上告棄却で確定している事件があるわけですよ。これはお知らせしておきましたが、ぼくも新聞でちょっと小さな記事で見まして、全部判決をとってあるのですが、それなんかを見てみると、だから議長なりあるいは副議長、あるいはことばは悪いかもわからぬけれども総理大臣――大臣というと悪いかもわからぬけれども、何でもいい、そういうところに直接すぐ金がいくんじゃないとしても、その前の段階で金銭が動いた場合に贈収賄になるということがあり得るということを最高裁の判決では物語っているとぼくは思うのです。それのあなた方の理解している内容と、それからこの判決、ぼくは問題点があると思うのですよ。ということは、具体的にあらゆる場合に適用されるわけではありませんから、その限界がこの判決の中にはあると思うんだけれども、どういうふうにあなたのほうで理解しているのか、まずお聞かせ願って、それからまた関連して質問に入っていきたい、こう思うのです。
  34. 小林朴

    小林説明員 福井県の事件につきましての判決の状況を見てまいりますと、一審におきましては、結局党内で副議長になる人を選び出したという場合に、それは党内において副議長の候補者を選び出すことであって、公の、要するに議場における投票依頼ということまで含んでいないということで無罪にしたわけです。ところが二審におきましては、いや、そういうふうに党内で選び出す、それは一審の場合は、いわば選び出すための準備行為なのだ、その準備行為のために金が流れたのだということなのでございますけれども、二審のほうは、いや、そうじゃない、これについては党内で選び出すと同時に、それは今度は議会の席においてその人に投票してくれという趣旨も含めて、要するに公の職務に関係して投票を依頼する行為なのだというふうに認定されまして、そして有罪になった。同時に、それが上告されたわけでありますけれども、棄却になってその判決が確定をしたというような経過をたどっておるわけであります。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その判決は確定したわけですけれども、最高裁の判決が確定していますから従わなければならない。その具体的な内容としてはどういうことがあるわけですか。
  36. 小林朴

    小林説明員 国家公務員あるいは公務員の立場で、地方公務員も含めてでございますが、そういう公の職務にある人が、その公の職務の執行関連をしまして不法な報酬をもらったかもらわないかということの点から判断をしておるのではないかというふうに私は考えるわけでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、これはちょっといやな質問になって委員長恐縮なんですけれども、いまの判例が確定していることから見ると、ある党で内部で総裁選挙をやる、そこで金が動く、そうすると、そのある党の総裁がそこで選ばれることによって、ある非常に大きな役職につくということが考えられる。笑わなくたっていい。ぼくも注意してしゃべっている、あまり変なことを言っても悪いから。そういう場合に、この判決と一体どういう関係があるのか。これはあるあなたのほうのいまの大臣は、毎日新聞で非常にきたない選挙だといって憤慨しておられた。福田さんだ。ぼくは一ぺん福田さんに聞きたいと思っているんだけれども、どうなのか、この判例から。ちょっといま参事官じゃなくて、公安委員長の話を聞きたい。どうなのか。そこら辺のところは、あなたの常識論でもいい。法律論かもわからないけれども、初め公安委員長から……。
  38. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ちょっと政府委員から答えさせて、あとで言います。
  39. 小林朴

    小林説明員 たいへん技術的、法律的になりますので、ちょっと私かわりに答えさせていただきますが、そういう場合に、福井の例の場合は、いわゆる議員という身分、公務員の身分にある人だけが集まって、同時に投票をやってくれというようなことになっておるわけでございます。したがいまして、そういう意味では、公務員の職務に関係して、今度は本会議なりの議場においての投票に関連をして金をやったかどうかということがたいへん認定の争点になっておるわけでございますけれども、そうでなくて、たとえばそれ以外の、要するに政党の投票者でございますが、たとえば地方の代議員だとか何だとかいうような名称で出ておられる、公の身分のない人も寄り集まって選挙をされるというものは、これはまず準備行為だ、要するに党内でだれを投票者として選び出すかという準備行為だというふうに考えるのが筋合いではなかろうかというふうに、私どもは従来からそういう解釈をとって、それ自身が直ちに贈収賄の対象になるというふうには客観的には言えないわけでございます。ただし、それは特定の人に対して、要するに公で投票するという、そういう者のためによろしく頼むというようなことで金が出たというようなことになれば、やはり福井の例と同じような形になってくるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  40. 江崎真澄

    江崎国務大臣 重要な問題ですから、念のために私からもお答え申し上げておきますが、いま福田行管長官のお名前まで出して言われまするから、何となくぼおっと意図されるところをおっしゃっておられるわけですが、すでにこの問題については予算委員会等においてもこれに類似した議論があったわけですが、そういうことは全然なかった、それはきたないとかきれいとか、その人の主観においていろいろ判断することはあったかもしれませんが、ことさらにいまの党内的な動きにおいてきたない金が動くとか極端に不明朗であるというようなことはなかったということを、その当時の関係者である人々から率直にもう表明されておるわけですから、これは御了解願いたい。法的にはいま小林君が申し上げた解釈が成り立つであろうというふうに考えております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も具体的なことを聞いているのじゃなくて、法的なことを聞いているわけです。だから、私は何党とも言わぬし、どういう役職だとも言わぬわけです。一般論として聞いたわけですが、いま答弁した中で問題点は、一つの党なら党の総裁を選ぶときに、それは一般の人も入っておるけれども国会議員なら国会議員という身分で代議員の資格を取得している場合があるわけだ。そういう場合は、一般の人が必ずしも入ったからといって、まあ私も人のことは知らないけれども、そうなってくると、これはそこに問題があると思うのですよ。これはここで論議してもおかしいと思うけれども、どうも福井の判決から見ると、相当総裁選挙その他の中で金が動いた場合に、法律的にやり得る場合とやり得ない場合と二つに分けられると私は思うのだ。やり得る場合もあるのじゃないかということを私も感ずるんですよ。これは学問的に研究した結論じゃなくて、感ずるわけだ。そうなってくるのですが、しかしこれはここで議論しても始まらぬことだと思いますが、いずれにしても、どうも政治をやる、一つの法案を通すということのために前の造林汚職の場合と同じことだと思うのだけれども、そういうふうに金がなければ全く法案ができ上がらない。これは仮定ですが、とすれば私は非常に日本の政治というものはおかしいと思うのですよ。ぼくはいま一番疑問を持って研究したいと思っているのは、ぼくも法律家だけれども、法社会学で立法動態学というのを研究しようと思っているんだ。法律がどうやってできて、その前の過程でどこからどうやってできてくるのだということを学問的にだれかやってくれないかと思っているんだけれども、だれもやらない。ぼくもやりたいと思うけれども、なかなかそんな能力がないけれども、これは問題だな。二億円集めようとしているでしょう。これは間違いない。二億円集めて、それで免税点を三千円に引き上げるということの運動資金というんだけれども、私は聞かなかったけれども、どこにその金が動くかということは、これについては贈収賄罪が成立する要素は十分にあるんですよ。まあ、これはこれだけにしておきますけれども、この点についても、その金の動きについては私はもっと調べますけれども、これはお互いにどうも、日本の政治でこういう点はいかぬと思うのですよ。不明朗だし、かりにあるとすれば粛正しなければいかぬと思うのだ。
  42. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはやはり重要な問題でして、大体そういう免税点引き上げのために金を集める、そして政府ないし行政府、いろいろ関係省庁に圧力をかけるとか、あるいは頼むとか、ことばはどっちでもいいですが、そういうような疑問を持たせることだけでも、私はたいへんな問題だと思います。また、考えようによっては、これは政治に対する侮辱ですよ。そういうことを旅館組合の役員が公然と言っておるとするならば、これは私どもとしてもほってはおけぬ問題だと思います。これは政治家全体の責務において、やはりしっかり、はっきりさせていくということが大切だと思いますので、私のほうでもよく調べます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは上のほうの役員が公然と言っているとは言ってないですよ。だんだん下へくるに従って話がそういうほうへいってしまっておるかもしれないですね。私は、役員が言っておるかどうか、これは言ってませんから。よく調べてください。  別のことを言いましょう。  ぼくは小選挙区制反対のデモなどに参加しておったのだけれども、いろいろ問題がある。現行犯でつかまるわけだ。現行犯としてつかまえること、それはそのときのいろいろな問題があると思うのですけれども、たとえば、これは通告しておいたのだけれども、黒宮君というのが麹町の警察へつかまって連れていかれた。ぼくもあとから行っていろいろ話をしたのですけれども、私が疑問に思うのは、逮捕すると、それを検察庁へ送るか送らないかということ、その法律的な根拠、その判断をどこでやるのかということです。きわめて政策的にというか恣意的に行なわれているのではないか、こう思うのだ。だからこの点について、黒宮君の場合を例にあげて、一応これは警備局長でもどなたでもいいですけれども話をしてもらって、それからその点について質問したいと思います。
  44. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 ただいまのお話しの事案は、五月十九日の昼の請願デモの関係だと思いますが、事実は、われわれのところへ来ております報告によりますと、当日午後二時半ごろ、千代田区霞が関三の一の大蔵省の上の交差点で、旗、プラカードを掲示したまま、道路一ぱいの小刻みかけ足行進で行進してきたある一梯団に対して、機動隊がこれを制止して、ここからは請願行動であり請願行進である、こういう警告をしたとき、その梯団の先頭から二番目ぐらいにいた動力車の宇都宮支部所属の一人が、持っておったプラカードで警備中の機動隊の一人の隊員の左手を打った。そうして全治一週間の挫傷を与えたという容疑で、公務執行妨害罪及び傷害罪、これで検挙した、こういう事案でございます。そういうことで、証人もおりますことですし、はっきりした事実が確認されておりますので、その罪名で送致した、こういう報告になって、別に恣意的とかほかの意図とか、そういうことは判断に入っていないというふうにわれわれ考えます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 恣意的とかなんとかいうのは、つかまえたことが恣意的というのではないのです。  ところが、それを警察で検察庁へ身柄を釈放して送る場合と、身柄を入れたままで送る場合とあるでしょう。それでその分かれるときには、一体どこでどうやって判断してきめるのか、問題はその法律的な根拠がどうかということです。そこで署長が恣意的にいろいろなことをしてきめるのではないかということです。本件の場合は、ぼくらは誤逮捕だと思っておった。話を聞いてみると、ぼくらの調べでは人違いらしいのだ。それはプラカードを持っていたというけれども、プラカードなんか持っていないのだ。プラカードなんてずっと下の別のところに落っこっていたんだから、全然違うところにあったんだから。それは事実の認定だけれども。そこで、どういうわけで検察庁に送ったのか。あなたのいま言うことでは、はっきりしているのだ、身柄もはっきりしているのだ。ぼくは自分で行ったからどうこういうのではなくて、これはいろいろ折衝があるから行ったんですが、その身柄を引き受けるとまで言っているのだ。それはここで出しては悪いと思うけれども、いずれにしても、何で身柄つきで検察庁へ送るのか。身柄つきで検察庁へ送る場合と送らない場合との区別をどこでつけているのか、法律的にどうなのか、そこがわからない。だから聞くのです。
  46. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 やはりその判断は取り調べ官の捜査上の必要によって判断するというふうにわれわれ考えます。罪証隠滅とかいろいろな問題がありますけれども、本人の自供の内容とか、真実の自供をしてないとか、そういう総合的な問題を取り調べ官が判断して、それで身柄をつけるとかつけないとか、こういう基準にしているというふうに考えます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、だけれども検察庁へ行って釈放になってしまったでしょう。それはどういうわけなんですか。この事件は釈放になったでしょう。
  48. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 それはやはり検察庁で検事の判断で独自にそういう決定をしたと思います。われわれその内容については存じません。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの説明でいけばはっきりしているわけです。あなたのほうに言わせれば、本人はなぐったというけれども、見ていた人がいるのだし、はっきりしているわけなんだ。しかもそれは警察官のほうでしょう。それに対して証拠隠滅だといったって、証拠隠滅なんかできっこないんで、それならそこでまた身柄は、住所なんかもはっきりしているのだし、そこで何も身柄つきで検察庁へ送らなくたっていいんじゃないですか。そこで、一つの問題になってくるのは、デモなんかのときに逮捕されるでしょう。そして警察で釈放する者と、検察庁へ身柄つきで送って、検察庁のほうで釈放しちゃう人といろいろありますね。それから検事のところへ行きまして、それで勾留請求する者と、勾留請求した中で小さいのに分けるのといろいろあるわけですけれども、顕著な例というのは、警察としてつかまえたけれども、検事のところへ行くと釈放するのは相当あるのじゃないですか。警察でつかまえて身柄を釈放する者のパーセンテージと、それから身柄つきで検事のところへ送ったけれども、検事のところで釈放しちゃうパーセンテージ、こういうようなことを考えてみると、警察のほうでは、ただつかまえれば目的を達したのだ、検事のところへ送って、それは検事がどうしようとおれのほうは関係はない、権限が違うということで、ただ逮捕しておる。それでみんなのみせしめに、こういうことをやれば逮捕されるのだということで、やればいいんだという形をとっておるのじゃないか。これは疑われるわけだ。疑うというのは、ぼくの主観かもわからぬけれども。  そこで聞きたいのは、どうしてそんなに逮捕して、警察署長の権限か何か知らぬけれども、釈放しちゃう率と、残った者が検事のところへ行って検事が釈放しちゃう率と、それからあと勾留するかしないか、それは関係ないけれども、検事のところへ行く率、そこら辺のところはどういう数字が出ていますか。大ざっぱのところでいいです。きょう持っていなければあとでもいいですけれども……。
  50. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 ちょっといまその数字は持っていませんので、いずれあとでお知らせします。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大ざっぱに言うと、どのくらいですか。とにかく警察で釈放するのがどのくらいあるのか。検事のところで釈放されるのが相当多いのじゃないか、デモの場合は。
  52. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 デモの場合ですが、警察の場合で釈放するというのが、私の大体の感じでは非常に少ない、大部分は身柄つきで検事に送る、このように私ども了解しております。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 検事に身柄つきで送って、検事のところで釈放しちゃうのが非常に多いのじゃないですか。それは半分以上、七割、八割は検事のところで釈放しちゃうのじゃないですか、ぼくの感じでは。数字はあとでいいけれども、それならば何も検事のところへわざわざ送らなくたっていいんじゃないですか。警察で釈放すればいいじゃないか。これはぐあいが悪いのか、どうなっているのか。だからおかしくなってくるのだ。
  54. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 それは先生よく御存じかと思いますが、捜査上の必要からやはり起訴とか不起訴とかいろいろな問題もありますし、そういうことで、検察庁はまた独自の御判断でやっておられると思いますけれどもかなりのパーセンテージが検事で直ちに釈放されると私は思いませんが、ただ検察庁に行くと、警察で言わなかったようなことを自供する者もかなりあるというふうに聞いております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 このデモの場合は、いろいろな例というか数字、あなたのほうで逮捕して、それから警察で釈放した場合と、それから身柄つき送検をして検事のほうで釈放した場合と、それから勾留請求して、裁判官が勾留を認めた場合と勾留を却下した場合、勾留却下でも準抗告してまた勾留が認められた場合と、そのまま準抗告も棄却になる場合といろいろあるわけでしょう、順序が。あなたのほうでどの程度の事実がわかるかは別として、いろいろなデモの場合で、三、四の集会のときの例をあとで資料を出していただきたいと思うのですが、そうすると、見るとわかるのは、ほとんど警察でつかまえたのは、ぼくの感じでは、検事のところで釈放になっていますよ、特別なやつは別として。何もそんなことなら警察で釈放すればいいだろうと思うのだけれども、麹町の場合は相当感情的になったのだ、こう思うのです、ぼくは。だから、検事のところで勾留請求するかしないかということは、結局証拠隠滅のおそれがある、逃走のおそれがあるということでしょう。問題は、いまの話は、警察官がなぐられたとき警察官が見ておった、こう言うのだけれども、これはおかしいと思うのだ。それなら何も身柄つきで送る必要はない。どうもそこら辺のところがぼくは理解できないのですよ。まああとで資料を出してもらってやります。だから本件の場合なんか、検事がどういうふうにして釈放したのか、理由は、ぼくはよく聞いておりませんけれども、私たちの聞いた範囲では人違いだとぼくは思うのだ。そういう話を聞いて、警察署に聞いたら、人違いなんだ。こういう人がいるのだから調べてくれと言ったって、ちっとも調べやしない。時間が四十八時間しかないからかもわからないけれども、調べやしない。そんなに時間がかかるわけがない。それをまたやっているわけだ。どうも逮捕もある程度みせしめにやらないと困るからやるという、しかもそこで警察で釈放しちゃったんでは与える影響もよくないというので、検事のところへ送る。あとは検事のほうでどうやったのか、それはおれのほうは知らないという形でやられているのじゃないか、こう思うのです。いまの問題は誤逮捕か何かは今後の調べの中で明らかになると思うのですが、それはその機会にまたやりますけれども、その点がおかしいと思うのです。これは資料を出してもらうということ、それから松岡先生がたいへん熱弁をふるわれて、時間がなくなった。私もほかへ行かなければならないのですが、次は、沖繩へ警察庁長官が行かれた。  復帰後の沖繩県の犯罪状況というものは、ぼくも非常に関心を持っておるところなんですが、まず行かれて、一体どういうことを調査し、どういうふうな結論に達したか。その結論に対して、今後どういうふうにしなければいけないというふうに警察としては考えたのかということをまとめてお伺いしましょう。
  56. 丸山昴

    丸山政府委員 私が随行いたしましたので、私のほうからかわりまして御報告を申し上げたいと思います。  五月の二十一日から二十四日までの四日間でございます。第一日目は、九州管区内の各公安委員さん方の総会が開かれました。初めて那覇で開かれまして、それに出席をさしていただいたという関係で、実際は、三日間で沖繩の本島の那覇署、それから南の糸満警察署、それからコザ警察署、名護警察署、それから目下海洋博の工事が進んでおります渡久地の警察署、こういったところと、それからそれぞれの駐在所、派出所といったところを視察をさせていただいたわけでございます。  まあ非常にこまかになりますので、大ざっぱに申し上げますと、沖繩の犯罪の特徴と申しますと、一つは、刑法犯のうち特に凶悪犯の発生率が非常に高いということでございます。それから、それに対応いたします検挙率のほうでございますが、これは本土に比べまして低いということでございます。それだけを見ますと、非常に問題があるわけでございますが、沖繩の復帰前の状況からずっとながめてみますと、凶悪犯の発生を見ました場合に、やや横ばい状態であるということ、それから検挙率の面では、実は四十七年の復帰その他非常にいろいろな問題がございました関係で、これは確かに検挙率は落ちておりますけれども、本年に入りまして、本年前半を見ますと、また上向きになっておるという状況でございます。  それから何と申しましても、一番特徴的なのは、傷害犯罪、米軍人による犯罪でございますが、これが多い。絶対数で見ますと、本土の中で行なわれますトータルと大体同じぐらいのものが沖繩県一県で発生しておるという状況でございまして、これも復帰後、急にふえているかと申しますと、かえって復帰後は逆に少しづつ減少の状況にございます。しかしながら大幅に減少しているのではなくて、これも大体横ばいの状況であるということでございます。  それから刑法犯の中で少年の犯罪率、少年犯の占める比率というのが本土に比べまして圧倒的に高いということが、これは将来の問題を考えますと、沖繩の治安の問題としては一番関心を持たなければならぬ問題だろうと思います。この点に関しましては、本年の前半の件数だけで判断するのもどうかと思いますが、やや減少状況にあるので、現地の本部長としては、できるだけこの点に力を注いでやってまいりたい、こういうふうに言っておりました。  それからあとは麻薬でございますが、これも本土に比べますと非常に多いわけでございます。それで、麻薬の中で、国籍別に見ますと、米軍人、それから民間になりました米人、こういった者が約七〇%を占めておるということでございまして、この点はやはり基地のほうで米軍関係で相当厳重な措置をとってもらわなければならぬという感じがいたすわけでございます。  それから売春関係でございますが、これはああいうことで復帰後売春婦の更生措置といったものを徹底してまいるということで、これらの行政施策と相まってできるだけ効果のあがる方法をとっいかなければなるまい、こういう状態でございます。  それから交通でございますが、これは急激に車両がふえた、しかも道路状況は依然としてよくない、ただいま建設途上にございますので、時間をかさなければなるまいと思いますけれども、この点で昨年から本年、死者はやはり増勢をたどっておるということで、交通問題は非常に大きな問題ということでございます。  個別的にただいま申し上げましたわけでございますが、全般的に見まして、復帰後いろいろな混乱期を切り抜けて、ただいま沖繩県警察として非常に努力をされて、よくやっておられるわけでございまして、できるだけ資材、施設、そういった面で私どもはよく援助をいたしたいと思いますし、それからできるだけ経験交流を行ないまして、捜査官その他の質を高めるということもやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 沖繩県の犯罪の場合は、アメリカの軍人や何か、その他の問題ともからんでくるわけですから、実は私も沖繩の警察だけの問題ではなくて、裁判、検察、それから矯正関係、全体の関係を一ぺん視察といいますか、行きたいと思っているわけですが、国際的な問題いろいろな問題を含んでいますから、あらためて別の機会にどういうふうに対処していくかというような問題を含めてやりたい、こういうふうに思っております。  きょうはちょっと時間があれですから、これで質問を終わります。
  58. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 この際、午後零時三十分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩     ―――――――――――――    午後零時三十七分開議
  59. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最初に警察庁関係について質問いたします。  当委員会において、四月の十七日にモチ米等の未検査米の買い占め事件について、大手商社である丸紅を筆頭にした一連の食管法違反事件等について、当時中野食糧庁長官並びに警察庁の斉藤保安部長の出席を求めて、事件内容並びに捜査方針等について説明を聴取したわけでありますが、現段階においては、おおよそこの事件については、警察庁当局は全国的な捜査が完了してそれの取り扱い等について結論段階に入ったというふうに承知しておるわけであります。したがって、この際まず順序として、警察庁当局から総括的な報告とこの事件の処理方針等についてお尋ねすると同時に、あわせて食糧庁当局からも、一連の食管法事件についての食糧庁としての行政的な処置等についていかように対処するかという点について、順を追って報告を願いたいと思います。
  61. 江崎真澄

    江崎国務大臣 この問題は相当調査も進んでおりまするし、また捜査自体も御指摘のように最終の段階になっておる具体的な事犯でございますから、一々関係政府委員より御答弁をさせます。
  62. 綾田文義

    ○綾田政府委員 丸紅事件のその後の捜査状況でございますが、先生も御承知のように、三月中旬に茨城、北海道、福島各県警本部において告発を受理いたしまして、四月十一日に丸紅の東京本社の捜索を行ない捜査を進めてまいりましたが、まず茨城県警では、五月十五日に丸紅関係者など六名を逮捕して取り調べを行なった結果、丸紅関係者が、茨集と称しておりますが、茨城食糧集荷組合やその他の商店から未検査のモチ米約千七百トンを買い受け、これを実需要者に売り渡した事実が判明されましたので、五月十七日、一法人、十六名を送致し、その後、一法人、九十七名を送致いたしております。  北海道警察では、丸紅関係者が北海道の農産物集荷組合等から、これは同じく未検査のモチ米約八百八十トンを買い受け、これを実需要者に売り渡した事実によりまして、五月二十五日に十四法人、三十二名を送致しております。  福島県警では、丸紅関係者が商店から同じく未検査のモチ米約六十四トンを買い受け、日通関係者による証拠隠滅の事実によりまして、五月二十九日、一法人、十四名を送致いたしております。したがいまして、現在までに十五法人、百四十二名を送致したことになりまして、丸紅の関係者が取り扱ったモチ米は約二千六百六十トンになります。  なお現在、捜査を継続しておるものもございますが、これらにつきましては、できるだけ早く送致をいたしたいというふうに考えております。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その他当委員会で取り上げた秋田県下における政府配給米の逆ざや事件が報告されておりますか。  それとあわせて、いま報告の中にあったと思いますが、日本通運の福島支店の丸紅事件に連座する不正事件等についてもどうなっておりますか。
  64. 綾田文義

    ○綾田政府委員 最初の点につきましては、必要な捜査を遂げまして送致をいたしております。  それから、第二の点につきましては、先ほど申し上げましたように、証拠隠滅の事実によりまして、五月二十九日に送致をいたしております。
  65. 森整治

    ○森説明員 食糧庁といたしましては、ただいま警察当局から御説明がございましたが、われわれが把握した以上にいろいろな新しい事実が出てきております。  それから、送検されましたものの取り扱いにつきまして、検察当局がせっかくいまいろいろ措置を考えておられるようでございますから、それらが具体的になり次第、われわれといたしましても、食管法に照らしまして適切な措置をとってまいりたいと考えております。  それからまた、食管法の運用も適切にやってまいる観点から、社会的に批判をいろいろ受けておるわけでございますから、それらも勘案いたしまして、適切な措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 事件の起訴等については、警察当局から検察庁へ送検された後に、当然方針がきまるわけですが、特にこの丸紅についての食管法違反としての起訴等の問題については、主要な役割りを果たした者等に対する起訴方針についてはどうなっておりますか。
  67. 綾田文義

    ○綾田政府委員 聞くところによりますと、きょう地検のほうで最終的にきめるということのようでありますが、起訴等のことにつきましては、私どもの分野でありませんので、ちょっと私のほうからは意見は申し上げられないのじゃないかというふうに考えております。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、江崎国家公安委員長からでもいいですが……
  69. 江崎真澄

    江崎国務大臣 起訴の問題につきましては、これは検察のほうにおいて決定するわけでありますが、警察としては、やはり国民の主要な食糧であるという見地から厳正に取り締まりに臨んだわけでございまして、これは当時も申し上げましたように、一罰百戒の意味からいって、こういう問題はなおざりにされてはならないというふうに考えております。おそらく私どもが予想するような方向で検察のほうにおいてもしかるべき処置がなされるものというふうに期待いたしております。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 江崎さんは、けさの朝刊を読まれたのですか。
  71. 江崎真澄

    江崎国務大臣 どうも、北海道開発庁長官であったり国家――いろいろで、なにですが、朝刊、見ました。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、政府委員としても朝刊は見ておると思うのですよ。しかも警察当局が相当力を入れて捜査した事件が検察段階においてどうなったかというようなことを無関心であってはならぬと思うのですよ。何ですか、いまの答弁は。どうなったかわからぬ。国民は全部知っているじゃないですか、朝刊等を通じて。いやしくも国会に対して、知り得る範囲は明確にしてもらわなければならぬ。
  73. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いま保安部長お答えしましたのは、起訴になるかどうかということは検察側の判断にゆだねておりますということでお答えをしたわけでございまして、手をゆるめるとか、この問題の終末をゆるやかにするとか、そういうことを申したわけじゃないのですね。ですから、私がさっきお答え申し上げましたように、対象物が対象物であるだけに、これはやはり厳正に取り締まられ、また違法行為は間違いないのですから、起訴されるであろうと私どもは予想をするわけです。これは権限が違いますから、予想する以外にどうも方法はないわけでありますが、必ず私どもが思っておるような方向に結論づけられるであろう、こうお答えしたわけでございまして、ことばの足りない点がありましたら、これはどうぞ御了解願いたい。
  74. 綾田文義

    ○綾田政府委員 ただいま、ことば足りなかった点があったかと思いますが、私どももきびしい態度で全力をあげて捜査に当たっておるわけでございまして、この結果いかんにつきましては、重大な関心を持って、最高検とも連絡をいたしておりますけれども、私が最初に申し上げましたのは、表面的なたてまえのことを申し上げたわけでございまして、この点は御了解願いたいと思います。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 新聞によると、丸紅事件については食管法違反事件として、罰則適用については食管法第三十七条を適用して起訴する、そういうことが国民に伝わっておるわけですね。これはもうそのとおりに起訴すると思うのですよ。問題は、食管法違反事件として、しかも法三十七条というのは両罰規定になっておりますから、そういう形の起訴ということは、これは捜査に精力を尽くした警察当局としても当然であるというような見解を持っておると思いますが、その点はいかがですか。
  76. 綾田文義

    ○綾田政府委員 そのように考えております。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、森総務部長にお尋ねしますが、今度の一連の食管法違反内容を区分すると、もちろん丸紅が中心となった未検査米の買い占めが基礎になっておるわけですが、これに関連して、たとえば食管法の制度によって集荷業者としての登録を受けておる集荷業者、あるいはまた罪を意識しておったとおらぬとにかかわらず、たとえば生産者が余り米の処分等の目的で未検査米を集荷業者等に売り渡しておるというような内容がおおよそ判明しておるわけです。したがって、検察当局の起訴あるいは処分の問題と別途に、食糧庁としては食管法の規定に基づいた行政処分等についてはいかような方針で臨むか、その点を明らかにしてください。
  78. 森整治

    ○森説明員 遺憾ながら今回の事件で食管法の登録あるいは指定を受けております業者が関連をしていることは確かに御指摘の点のとおりでございまして、われわれといたしましては、食管法で登録を認めているそういう趣旨から言いまして、業務が今後適正に行なわれるよう、それらの関連をいたしました者につきましてそういう措置をとってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。場合によりましては当然取り消しということもあり得ることではなかろうかというふうに考えております。ただ、事実がもう少し具体的になりました段階で、今回いろいろ新聞紙上に出ました丸紅関係以外の者につきましても同じような措置をとってまいりたいというふうに考えております。ただ、実はこれから米の植えつけから収穫期に入るわけですが、指定集荷業者はやはり農家との登録関係にあるわけです。そこの問題をどういうふうにいたしますか、業務といいますか集荷が適正に行なわれるよう当然考えていかなければいけないわけでございます。その辺をどういうふうに処置してまいりますか非常にむずかしい問題でございますけれども、やはり違反違反ということで厳正な態度で臨んでまいりたい。ただその場合に、農家に迷惑がかからないような方法はないものだろうかということをいろいろ検討しておるわけであります。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 前回の当委員会においても、中野食糧庁長官は、この事件については、まず生産者についてはいまの食管制度の運用の実情から見て、この部分には手を伸ばさないようにしたいという意味の発言を委員会で行なっておるわけです。しかし、いやしくも集荷業者あるいは販売業者の場合は、無知で行なったということにはならぬと思うのですね。食管法そのものが空洞化しておる現状にかんがみた場合に、やはり食管制度基本に戻るという意味合いから見ても、あるいは情において忍びないような点があるとしても、この際農林省当局として厳正なこれに対する対処をする必要があると思いますが、その点どうも不明確なので、長官にかわってきょう来たのでしょうから、もう一度明確にしてください。
  80. 森整治

    ○森説明員 確かに先生指摘のとおり、ここで食管法の運用上われわれがどういう態度に出るかということは非常に重要な問題だと思います。したがいまして、法規に照らしまして適切な措置をとり、厳正な態度をとって臨んでまいるという考え方に変わりはございません。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あわせて、丸紅が食管法第三十七条の本条によって起訴されるということになれば、これは違反行為を行なった者並びに法人である丸紅が起訴されて処分されるわけですから、そうなれば、いままで延引しておったいわゆる国家貿易であるところの輸入食糧の業務の代行商社としての丸紅については、当然これは登録取り消しの処分を行なうべきであるというふうにわれわれは委員会を通じてしばしば指摘しておったわけですが、それが行なわれていないのです。その点はどうしますか。
  82. 森整治

    ○森説明員 先ほど保安部長からお答えがございましたように、きょう検察当局から措置につきましての発表があるそうでございます。その場合には当然登録の取り消しという問題までまいりますかどうか、いろいろな措置が考えられるわけでございまして、今回の社会的な責任というものについて、もし丸紅本社につきましてもそういうことがございますれば、われわれの行政上の適切な措置は十分とってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点が中野長官の場合もあなたもまことに不明朗なわけですね。どうして取り消しができないのですか。中野長官に言わしめれば、要綱の規定から見て処分を受けたときとか処分が決定したときというふうになっておるので、最終結論が出なければ取り消しできないというようなまことに不明朗な答弁を行なっておるわけです。あなたの場合は、それになお輪をかけたような、そこまでいきますかどうかというのでは、一体食糧庁というものは、そういう不正の業者を弁護するために業務運営を行なっておるのかどうかということになるわけですよ。これは食糧庁として取り消す場合、あるいは丸紅自身が進んで登録を辞退するということもできると思うのです。絶対に登録の取り消しはさせないから心配するなというものじゃないと思う。その辺はどうなんですか。
  84. 森整治

    ○森説明員 仮定の議論になるわけでございますけれども、いろいろな考え方がございます。たとえば今回の事件につきまして丸紅の扱いました問題というのは、米に関する問題でございまして、国内米の扱いにつきましての問題でございます。それに関連いたしまして、丸紅はいろいろ輸出入の業務を取り扱っておる、その輸出入の業務につきましても、登録は米と麦とそれぞれ別々にいろいろ措置がされておるわけでございます。いろいろ経済的な制裁ということになりますれば、おそらく外国食糧でも、小麦なり麦、えさも含めました麦類の扱いをどうするかということが相当商権としても大きな問題ではなかろうかというふうにわれわれ考えております。そこまで及ぶかどうかということにつきましても議論が実はあるわけであります。その中で、それをどういうふうな扱いをするかということについてもいろいろ議論がある。いままだ法人の責任が問われるかどうかということにつきまして検察当局の発表がない段階でございますから、私どももそれに関連する問題につきましてただいまお答えするのは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、われわれとしましては、丸紅が、まあ俗っぽく言えば非常に痛い目にあうということは相当やらなければいけないという立場からいろいろ検討しているわけでございます。  それから先のことをどういうふうにするかということにつきましては、ただいまのところちょっとお答えは差し控えさしていただきたいと思いますけれども先生の御指摘のようにいろいろなやり方がありますけれども、そのやり方でわれわれとしては相当厳正な態度でいろいろな措置を考えていきたいということだけ申し上げておきます。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたの答弁は中野食糧庁長官の当委員会における答弁よりずっと後退しておるですよ。いいですか、出てくる場合は、上司である長官決算委員会において――丸紅は政府の輸入食糧業務の代行商社としての登録を受けているんだから、委員会としても、すみやかに、道義的な責任の追及という段階においてもこれは取り消しすべきであるということをしばしば指摘しておるわけですから、そういう経過も知らないで、米の違反をやったのだから麦のほうまで取り扱いをやめさせるのはかわいそうだというようなことは、これは食糧庁の高級役人としては当を得ない発言じゃないですか。輸入食糧についても、輸入米あるいは輸入麦類は全部食糧管理法の対象になっておるわけでしょう。これは当然国の貿易として政府自身が輸入業務をやらなければならぬということになっているわけです。それを代行制によって、政府が適格者として認定した者について業務の代行をやらしているわけですから、政府において、これは不適格であると認めた場合には、いつ何どきでも指定の取り消しをするのは当然じゃないですか。これは江崎公安委員長、どう考えていますか。内閣の一員として、こういう問題に対する、食管法を所管しておる農林省あるいは食糧庁としてのこのような態度というのをどう思いますか。
  86. 江崎真澄

    江崎国務大臣 食糧庁の総務部長としては、さっきお答えしたような程度しか、これはやはり慎重にかまえますと御答弁できないのじゃないかと思います。しかしこれだけ世の中を騒がせ、これだけ問題になったのですから、農林省としてもこれをそう軽く結論づけるわけにはいくまいということで、私どもも今後の動向を見守っておるわけでございます。そのことはやはり芳賀さんにおいても注視されるわけです。世間一般も注視しておるわけです。そういう間においてどうなるか、これはある程度想像がつくような気がいたします。このことが、たとえば、言いかえれば、いやどこの商社もある程度やみ米の買い付けやなんかはやっておるのだ、だからたまたまひっかかった丸紅だけが何か代表罰を受けるような形でそういう重い処罰を受けることはかわいそうだというような解釈がなされるとしたら、これは法というものを曲げて考えるはなはだしい顕著な例ということになりますから、そういうことがあってはならぬというふうに思って、この動向を見守るわけでございます。農林大臣はじめ関係者としても、これは相当慎重に扱わなければならぬ問題であろうというふうに思います。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は裁判の問題と切り離しできると思うのですよ。政府が行政的にきめた要綱に基づいて業者指定をやっておるわけですから、そこに不適格要件が出た場合においては、起訴とか裁判の結果が関係ないとは言いませんが、場合によっては最高裁の最終結論が出るまではどうしようもないなんということは国民が許さぬと思うのです。この点はぜひ江崎大臣において、政府の方針というものを固めて、国民から見てなるほど当然に処理したというふうな判断を受けられるようにひとつ善処してもらいたいと思います。
  88. 江崎真澄

    江崎国務大臣 おっしゃるようにいたしたいと思います。また森総務部長も言うておりましたように、法人が起訴されるかどうか、これなども一つの重要な判断の根拠になろうかというふうに思います。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この三十七条というのは両罰規定ですから、法人と、違反を直接行為した者と両方が処分されるわけです。こんなのは食管法のイロハですよ。  次にお尋ねしたいのは、きょうは自治省関係を扱うわけではありませんが、たまたま江崎大臣が自治大臣もやっておられるので、この際一点だけ自治省の方針をただしておきたいと思うわけです。  それは地方税法の中の固定資産税の中の特に土地に対する固定資産の評価基準の設定あるいは賦課基準というものをどのように指導しておるかという点であります。地方税法の第三百四十一条によりますと、この中で固定資産である土地については区分いたしまして、「田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地」ということに区分されておるわけであります。  この際お尋ねしたいのは、特定の富裕者階層が所有しておる別荘地なるものは、固定資産税の三百四十一条の二号の土地の規定のどこに入るか、  この点をまずお尋ねしたいと思うわけであります。  こういうことを質問しますのは、先日地方税法の改正の中で、特に市街化区域内の農地に対するみなし課税を、これは田中総理の裁断で国会に改正案が提出されて、内容については一部委員会修正で成立した経過があるわけですが、これとの関連において別荘地あるいは都市中心部の庭園等に対しては、固定資産としてはどのような評価基準等を設けて適正な税の賦課を行なっておるか、その点を示してもらいたいと思います。
  90. 江崎真澄

    江崎国務大臣 こまかい点は政府委員から説明させますが、別荘地の評価につきましては、土地の現況によりましていわゆる地目認定をやるわけです。固定資産の評価基準に定めたところによりまして、その地目に応じてそれぞれ評価していくことは御承知のとおりであります。そこで地目の認定にあたりましては、建物があります場合は、その敷地、それからそれを維持もしくはその役に立つといいますか必要な土地の部分は宅地、建物が存在しないという場合でありましても、道路、それから電気、水道というような将来住宅として住むにたえ得るような環境が整備されておる土地につきましては、これは宅地ということで認定評価しております。なお、道路などの整備がなされておりません土地、それは状況によりまして山林とか雑種地等ということで認定をしていくわけでございます。もちろんそういう場合にありましても、そのあたりの宅地であるとか農地とかとその評価の均衡を失せないように適切な評価をして課税する、こういうことにいたしておる次第でございます。
  91. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、別荘地につきましては、これをどの地目に当てはめるかということが問題でございまして、別荘地にすでに建物が存在をいたしておるという場合におきましては、その土地を宅地といたしまして評価をし、課税をいたすことになっております。それから建物が建っておりません別荘地につきましては、道路でございますとか、電気、水道等の諸設備が整備をされておるということでありますれば、地目を宅地と認定いたしまして、評価をし、課税をいたすということでございます。ただ、将来別荘地になることが予定されておりましても、まだ全然道路等の整備がなされておらないという土地につきましては、その土地の現況によりまして、あるいは山林、あるいは雑種地というふうに認定をいたしまして評価をいたしますが、この場合におきましても、付近の宅地あるいは農地との評価の均衡を考慮しながら評価をいたす、こういうことにいたしておるところでございます。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、警察庁政府委員が退席したいという申し出がありますが、この際、先ほどの丸紅事件が相当広範にわたっておるわけですから、捜査の結果とか処理の内容等について 警察庁並びに食糧庁から、できれば一覧表を作成して当委員会を通じて提示するように委員長から指示してもらいたいと思います。
  93. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 ただいま芳賀委員から申し出がありましたが、警察庁、食糧庁において申し出のようにお計らいを願います。
  94. 江崎真澄

    江崎国務大臣 承知いたしました。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、別荘地の固定資産の関係について、具体的な事例をあげて説明あるいは資料を提出してもらいたいと思います。  長野県の軽井沢町、これはもう古くから別荘地として代表的な町ですが、先般私ども社会党としまして、実は国有林の現地調査関係で当地に参りました際に、たまたま広大な別荘地が展開されておるわけであります。別荘地ということになると、軽井沢町等においては百年、二百年経た立木が相当生長しておるわけでありまして、たとえば一所有者で五千坪とか、あるいは一万坪というような相当広大な面積を、個人が私有財産として占有しております。こういうものについては一体固定資産税というものは、どのような評価基準を自治省が示して適正な課税をしておるかというような点にも実は関心を持ちまして、国有林の調査の帰途一回り中心的な別荘地帯を回ってきたのです。その中にたまたま田中角榮氏の別荘地であるという場所にちょうど行き当たりました。地元の人に聞きますと、田中さんという人は、土地や財産を取得してもなかなか直接自分の名義にはなさらぬような人ですね。現在地元では、これは田中首相の別荘地だということをみんな認めておりますが、おそらく固定資産としての名義は他の名義になっておるということであるが、こういう別荘地に対しては、都市の市街化区域の中において農業をしようとする農家に対しても宅地並み課税を強行しようとする総理大臣が、はたして――地価はあの周辺は坪十万円ないし十五万円というようにいわれておるわけですから、五千坪ということになれば、坪十万円の場合には五億円、十五万円ということになれば七億五千万円ということになるわけです。こういう点はぜひ一国の政治の最高責任者として、別荘地の固定資産税等についても明朗にやってもらえぬだろうかというような地元お話等もありまして、それじゃさっそく国会に帰ってから、自治省関係等の取り扱いをよくただして皆さんの希望にこたえるようにしたいということで、実は帰ってきたわけです。  そこで、これはいま即刻説明はできないかもしれませんが、軽井沢における別荘地、これは所有者の数も多いし面積も広大でありますが、これに対して自治省におかれては、地方税法第三百八十八条には固定資産の評価基準を自治大臣が定めて告示しなければならないという定めがあるわけですから、適正な固定資産税の課税の指導をはたしてやっておるかどうかというような点について、これはぜひすみやかに資料として提出してもらいたい。もし、その件はわかっておるというならば、それは小選挙区制以来田中総理の一番信用をあなたは得ておるわけですから、そのくらいのことはわかっておるというのであれば、それはだれから買ってこうなっているという点も、この際参考に述べてもらってもいいと思う。
  96. 江崎真澄

    江崎国務大臣 その別荘地の問題は私は全然知りません。  軽井沢町として別荘地の固定資産税の基礎となる評価額をどのように見積もっておるか、これはひとつ至急資料として御提出いたします。これはもう簡単に出ます。ただ、いまは持ち合わせはございません。  ただ念のために、これは非常に政治的な問題ですから私は率直に申し上げたいと思います。今度の改正で、住宅用地に対する固定資産税の負担軽減の特別措置で、住宅については課税標準を評価額の二分の一にするという特例措置を設けたわけです。ところが、いま御指摘のような別荘地については、それは住宅の用に供されるものでしょうが、しかしこれは保養を目的としたり、多少まあ時節柄とはいいながら、やはり家のない人がまだ多い、たくさんあるという現況から見て、ぜいたくであるというそしりは免れません。したがいまして、この評価額の二分の一とする特例措置は、別荘地には適用しない、こういうことで自治省では検討いたしておるというわけでございます。この点をはっきり申し上げまして、いま御質問の点等については資料として提出したい。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、資料を出してもらうのに、たとえば田中角榮氏の別荘といっても、これは名義が御本人でないということも伝わっておるので、よくわからぬと思うんですよ。たまたまこの別荘なるものには二千四百二十五番という門標にかわる番号の札が立っている。大体面積が約五千坪という話であります。聞くところによると、これは昨年かつての水戸藩の徳川家の当主が死去されまして、遺族の方がそれを処分されたという、そういうことは判明しておるわけであります。ですから、この二千四百二十五番なる別荘地について名義人がどうなっているとか、これは国民として縦覧してもらえばわかるわけですけれどもね。それから評価がどうなっておるか、その実在する所有者はどうなっておるか、これに対する固定資産税の課税額がどうかというような点についてもあわせて、個人に対して資料を提出というのもちょっとあつかましいかもしれませんが、必要上これはぜひやってもらいたい。参考までに、その近辺に佐藤榮作氏の別荘もあるのですよ。これは番号は二千四百三十九番ですね。その下に佐藤と書いてある。これは子供が見てもわかるのですよ。田中さんのは番号だけで名前が書いてないですからね。こういう点も留意して、現地の町村と連絡して的確なる資料をぜひお出し願うように。都会においては個人の住宅が建てられないというような時代ですからね。そういう中において、ごく少数の特定の富裕階層だけが五千坪、一万坪という、金があるから個人の資産を所有してもいいじゃないかということになるかもしれませんが、こういうのはやはり政治の師表として行動する人にとっては、いま江崎大臣の言われたとおり相当自粛、慎重を期する必要があると私は政治姿勢の一環として考えておるわけですが、そういう点についても、きょうでも田中首相に会われた場合にはそのまま伝えてもらいたいと思うのです。自分が財産を所有した場合、なるたけ自分の名義で、天下はばからぬというような、そういう所有の方法がいいじゃないかという意見が委員会において出た、これはぜひあなたから伝えてもらいたい。
  98. 江崎真澄

    江崎国務大臣 おっしゃる意味は、機会があればよくお伝えいたしますが、田中さん個人の持ちものという場合もありましょうし、たとえば佐藤前総理が鎌倉において何か前田さんとかいう方の別邸を借りておったということもありますね。それから会社が所有をして、その寮であるというような場合もあります。その寮を総理であるとかあるいは何がしという人が借りる、これは世間一般にあることでありまして、その実情がどういうふうでございましょうか、御指摘の意味は私どもも受け取れまするので、御趣旨を体しながらできるだけの資料を提出したい、こういうふうに考えております。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、北海道開発庁関係に入ります。  まず第一は、北海道開発の第三期総合開発計画、これは昭和四十五年七月十日の閣議決定になるものでありまして、昭和四十六年から五十五年までの長期十カ年計画ということになっておるわけでございます。したがって、本年四十八年度は長期計画の第三年目ということになるわけですが、この際率直にお尋ねしたいのは、現在の第三期総合開発計画に対して、この時点において内容の再検討並びに計画の改定について、大臣としてはどのように判断されますか。
  100. 江崎真澄

    江崎国務大臣 第三期北海道総合開発計画は、策定しまして以来、社会経済の情勢も急速に変化をいたしておりまするが、これはあくまで計画でありまして、大体時宜を得たもの、適切なものというふうに私どもは認めまして、その推進をいたしておるわけでございます。ただ問題なのは、最近大都市問題が非常に深刻になってきておる。それからまた環境の保全、福祉水準の確保という面について国民的な要望が非常に強くなっておるわけです。そんなことから私ども政府といたしましても、本年の二月に、国民福祉の充実と国際協調の推進を充実する、いわゆる新たな経済運営の方向づけを示して、経済社会基本計画を策定したという経緯もございます。  北海道は、御承知のように、国土の二〇%を占めております。人口は、それに比しましてわずか五%というわけで、非常に国土の狭い日本としては数多い将来性を包蔵しておる地域であるということが言えます。特にその潜在発展力を今後効果的に発現をして、国土利用の抜本的な再編成の実現に寄与させていく、これが大事な点であるというふうに思います。  第三期北海道総合開発計画では、生活と生産が調和する、いわゆる豊かな地域社会を創造して、わが国の新たな発展に先駆的役割りを果たす、こういうことをねらいとして進められてまいったわけでございます。したがいまして、この基本計画においていま直ちに変更する必要は、冒頭申し上げましたように、ないと思います。しかし新全国総合開発計画ができ上がり、そしてこれとのからみ合わせ等々から、いまいわゆる総点検を実施しておる次第でございまして、この総点検を、これは各関係省庁でやっておりますから、それを待って新しい全国総合開発計画を作成する、こういうことになっておりますので、ひとつ北海道につきましても、計画立案当時とは異なった、いま芳賀さんのおっしゃるような社会経済的変更、そういった徴候等を十分計画内容の細部にわたって取り入れ、十分検討を進めていく、この必要は大いにあるというふうに考えております。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま大臣が言われたとおり、北海道の第三期総合開発計画というのは、これは全国的には、新全総といわれた新全国総合開発計画、これは昭和四十四年五月三十日に閣議決定になっておるわけですから、これとの関連で第三期開発計画というものが策定されておるわけです。ところが昨年田中内閣の出現、これは結局日本列島改造論を盛んに流布されたわけですが、全く国民の不評を買っておる。しかしこの改造論なるものを基礎にした経済社会基本計画というもの昭和四十八年二月十三日の閣議決定ということになっておるわけですし、また現在国会で審議中の関連法案としては、国土総合開発庁の設置法案あるいは国土総合開発法案が審議中であります。はたして今国会でこれが成立するかどうかということは、これは未定の問題でございますが、これらの事情を考えた場合において、当然第三期計画に対する影響、あるいは機構的にも北海道開発庁に対する影響というものは避けがたいものがあるというふうにわれわれは判断しておるわけです。ただ信念的に、せっかく策定した第三期計画であるので、これを柱にして長期計画を貫くという大臣に信念があれば、これは別ですよ。その辺のことをここで明確にしておいてもらいたい。
  102. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は北海道というものは政府が手をつけるようになってからようやく百年、しかも戦後北海道開発庁を発足させましてここにもう二十年になんなんといたしまするが、その間相当な成果をあげております。いま申し上げたようにきわめて地域は広い、人口は過疎であるというような点から、これはやはり国土の総合開発とは別途に、従来の方針に基づいて北海道開発庁中心になって開発整備をしていくことが望ましい。このことは総理大臣も深く理解をいたしまして、今日北海道の開発整備については別途相当多額な国費をもって進めるという基本方針を肯定いたしております。そればかりか、総理も非常な熱意を燃やしておるわけです。したがいまして私どもも、全国総合開発と十分にらみ合わせて、均衡のとれた形で北海道の開発整備を進めなければならぬことはもとよりでありまするが、やはり地域は全然別なものであるという観点で大いにひとつ開発してまいりたいというふうに考えております。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、江崎さんは北海道開発庁長官の何代目なんでしょうか。
  104. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いまちょっと聞いております。  何代目か存じませんが――三十六代ですか。佐藤さんであるとか、前尾さんであるとか、何かたいへん有能な大物が、まあ当時は大物であったかどうかわかりませんが、なっておりまするが、そういう人たちから比較しますと私も小物でありまするが、その熱意においてはたいへんなものがあるのです。ですからどうぞ御期待ください。一緒になってひとつ大いに開発整備を促進したいと思っております。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 三十六代というと、北海道開発庁が発足したのは昭和三十六年ですから、二十二年間に三十六人北海道開発庁長官がかわった。だから平均すると一年に満たないのですよ。北海道はどういうところかということを一回りながめることもできないままにまた選手交代ということになるわけですから、熱意だけで北海道開発の実績をあげるということは、時間的な制約といいますか、まあ八月改造であなたが旺盛な熱意で留任されればけっこうな話ですが、そういう一つ政治上、行政上の欠点があるのですよ。そういう点も十分留意して、この長期計画のゆるぎない実行ということについて精力を尽くしてもらいたい。
  106. 江崎真澄

    江崎国務大臣 まあ政治情勢によって長官いわゆる担当大臣がかわるということは、ほかの省にも言えるわけでございます。しかし率直に言えることは、この間も北海道へ参りまして、地元の記者から同じような質問を受けたのです。私が言下にお答えしたのは、それだけ北海道に親近感と熱情を持った有力な政治家が一人でも二人でもふえるというふうに考えたら北海道のために非常に力強いことじゃないか、開発庁長官をやめれば北海道のことを忘れるということではないと思います。これはやはり、政治家である以上、責任をもってこの開発整備に協力をしていくということになれば、代が移り変わりましても、さしたる問題ではない。むしろ理解者として党内にとどまって、特に政党政治でありまするから、その予算措置等に協力体制をとっていくということになれば、これは私望ましい面もあるわけであります。まあ事務当局においては、その責任者である事務次官というものがおりまするし、これも聞けばいまが十三代目だそうです。したがって大臣よりは半分ぐらいのテンポで交代しておるわけでありまするが、しかし、そういうことでこの北海道開発がなおざりにされるということはないと思います。これはおっしゃる意味を体しまして、ひとつ十分長期計画をしっかり見据えて今後に処したいと思います。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、昭和四十八年度の開発予算執行についてお尋ねいたします。  実は当委員会において五月十日、愛知大蔵大臣が出席しました際に、政府が五月八日の閣議決定で昭和四十八年度の主として公共事業予算の繰り延べの方針を決定したということについて質問をしたわけでありますが、その際、愛知大蔵大臣は私の指摘に答えまして、公共事業の繰り延べについても、特に地域の実態等を十分に配慮して、たとえば北海道をはじめ積雪寒冷の地域等については、公共事業の工事施行ということになれば、五月からせいぜい十一月までということにしかならぬわけでありますからして、その場合、上半期の事業を繰り延べするなんということになればたいへんな狂いが生ずるので、北海道などについては繰り延べ方針の対象から除いたということの説明があったわけですが、中身について論及する時間がありませんでしたので、この際、北海道開発予算というのはほとんどが公共事業を内容としておるわけですからして、ことしの事業執行について遺憾のない体制というものをどういうふうに進めておるかという点について明らかにしてもらいたい。
  108. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは閣議でもしばしば問題になりましたし、私、自治大臣としても、各都道府県に対して緊密な連絡をとって、この事業推進のテンポについて調整をする役割りをになっておるわけでございます。したがいまして、北海道については、事務当局と将来の打ち合わせをして今日に至っておりまするが、北海道は、いま芳賀さん御指摘のように積雪寒冷地帯で、事業を繰り延べるということができにくい地域でございまして、全部予定どおりこれは事業を進めております。上期契約は五九・六%というわけで、前年に比較しますと比較的低い率に押えられておるわけですが、そこの中に北海道はすべて含まれておる。木材、鋼材、それからセメント、こういった公共事業の基礎資材が一〇%から三〇%程度の値上がりを見せまして、地方公共団体に非常な不便を与えております。不便ばかりか、超過負担がいわれるおりから、ややもすれば超過負担になりかねない情勢でありまするので、私ども自治省としては、関係各省庁と緊密に連絡をしまして、現在その実態把握につとめておるというのが実情でございます。北海道開発庁としては、詳しくは総務監理官から申し上げさせますが、いまはまあ遅滞なく仕事が進んでおる。ただ、総括的に言えますることは、資材の値上がりを見直すことによって事業量が減るという問題が出てくるのです。これを一体どうするか。減ったままでいいのか。たとえば住宅不足のおりから、計画どおり住宅ができないなんということになりますると、これは容易ならぬことでありまするから、今後実情を的確に把握しまして、これは北海道だけではなしに全国的な問題も関連しまするので、全国的にこれを把握して、たとえば将来補正予算でこれを補うかどうかという問題等々、北海道の場合もあわせ考えなければならぬ問題があろうというふうに思います。
  109. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 ちょっと長官の御答弁を補足して申し上げますと、上期の契約率五九・六%という御答弁がありましたのは、これは全国でそういう状況でございますが、まあ北海道は特に積雪寒冷地でございますので、特別の措置が認められておりますので、北海道は五九・六%ではございません。最近の契約の状況を見ますと、四月末で、これは国の直轄の事業の契約状況でございますが、一七・四%契約しております。昭和四十五年と申しますのは公共事業の繰り延べも促進もやらないで普通にやった年でございますが、その年の同期の契約率が一四・七%でございますので、それを上回っておりまして、その後におきましてもおおむね順調に推移しておるような状況でございます。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あわせて、本年度予算編成が一月で、成立が四月でありまして、その間相当資材費の値上がり等は全体に及んでおるわけでありますから、予算編成の際に前提とされた工事単価というものと、完全な工事が行なわれる場合と、それではなかなか実行至難というような面が出てくると思います。そういう場合に予算上の拘束を受けるということになりますれば、完全な工事を進める場合には当然事業量を圧縮するということになるわけです。それでやはりその計画が進まぬということになるわけですから、その場合には、残された方法としては、補正予算等で財源を確保するとか、あるいは先行投資的な財政措置を講ずるということでなければならぬと思いますが、それに対する対応というのはどう考えておりますか。
  111. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはさっきもすでに申し上げましたように、補正でいくかどうかということは今後の問題です。したがいまして、北海道だけを取り上げてどうこうするということはちょっとにわかに判断できません。そこで、いま自治省としては、公共事業をかかえておる関係各省庁に実態調査をしてもらっております。そしてこれはあわせ私どものほうでもやりまして、その実態をつかんだ上で、たとえば住宅ではこんなに大きなひずみができたとか、これでは困るじゃないかということになった時点で、あと補正をするかどうか、これは今後の問題でございますから、もうしばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、開発事業執行上の参考資料として、昨日連絡をしておいたわけですが、毎年実施官庁である北海道開発局において事業実施のための業者指定をやっておるわけですね。たとえばA、B、C、Dというふうなランクを設けて、それに業者を当てはめて、そうして工事の入札等については指名業者というものに対して入札を行なうということになっておるわけですが、こういう問題についてはたびたび指摘した点ですが、北海道開発予算全体が公共事業の実施ということになるわけですから、ほとんど業者等が大部分請負をして工事を行なうことになっておるが、結局中央に膨大な資本力を持っておる独占的な土建業者等がやはり北海道及び地方に指導力を握っておるわけでして、結局地域開発を行なう場合においても、地元の要求としては、できるだけ地元の労働力、あるいは請負等についても地域性を発揮したそういう工事の実施体制というものが望ましいということになっておるわけですが、なかなかそういうことに改善されないわけですね。そういう意味もありまして、この際、指定業者の一覧表、特に過去三年なら三年を通じてどういうような状態で工事金額というものが消化されておるかというような点についても一覧表として提出をしてもらいたい。  もう一つは、農業関係の国営開発事業等については、つとめて農地開発機械公団を活用するということになっておるわけですが、一体この機械公団なるものは最近どの程度の機能を発揮しておるかということがなかなかつまびらかでないわけですよ。ですから、この際、北海道を例にとって毎年機械開発公団が農業開発等についてどのように事業分量と仕事の額等においても寄与しておるか、機能を発揮しておるかという点についても詳細な資料を提出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  113. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 芳賀先生御要求の建設業者の格づけ一覧表、それから発注の状況及び機械公団の北海道における受託の実績、過去の調べでございますね、この二つの資料、いずれも早急に提出いたします。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今月の一日、二日にわたって農林省において地方農政局長会議が開催されたわけでありますが、この地方農政局長会議には、北海道の場合には北海道開発局が出席することになっておるわけです。内地府県地域は、これは地方農政局長が出てくるわけですが、北海道の場合には地方農政局長がないわけですから。特に奇異なことには、地方農政局長会議には決して北海道開発局長は出席しないわけです。必ず開発局次長が出席するというのがいままでの慣例のようになっておるわけです。これにも何らかの理由があると思いますが、たまたま先日の農政局長会議においては北海道開発局の斉藤稔次長が出席して、北海道の農業事情を踏まえた相当重要な発言を行なっておる。いまの役人としては相当思い切ったようなことも提起しておるわけですが、これについては当然北海道開発庁としてもあるいは農林省においても斉藤発言なるものについては関心を持っておると思いますが、まず斉藤次長の発言あるいは提起された問題点等について一通り述べてもらいたい。
  115. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 斉藤北海道開発局次長の農政局長会議における発言の要旨というペーパーでございますが、これを私どもも次長のほうから入手しておりますので、それに基づきまして概要を簡単に御説明申し上げますと、稲作、畜産、畑作の三つに分けて北海道の農業の現況と問題点というような点を述べておられますが、稲作につきましては、四十八年度生産調整の目標数量が昨年と同様の二十一万九千三百トンということで据え置かれたのでありますけれども、天候の不順を告げるような長期予報等もございまして、農民が本年の稲作の動向について相当不安を持っておるというようなこともございまして、どうも現在のところ目標の二倍程度生産調整が行なわれそうであるということをまず述べております。  それから次に、北海道の稲作の基本方向といたしましては、日本の中における米の主要生産地域といたしまして、中核地域を主体に高生産性の米作経営を確立していきたいということが開発庁の方針でもございますので、そういう方向につきましては、引き続きそういう中核地帯の育成ということを推進していきたいのだということでございます。同時に、その周辺の不安定地帯につきましては、転作の方向に誘導をしてまいるということでありますけれども、稲作以外のものにつきましては、それらの作物についての価格の支持安定対策等、国のかなり積極的、総合的な対策が確立されないと、なかなか転作が思うように進まないのではないかということ。それから、基幹的な稲作中核地帯の育成につきましては、圃場整備をはじめといたしますところの土地基盤整備の強力な推進が必要である、特に従来圃場整備の夏季施行ということで、休耕奨励金をもらいながら通年施行をやってまいりましたけれども、それを四十九年度以降どうするかということが非常に大きな問題になっておるということを述べております。  それから、次に畜産でございますが、畜産につきましては、乳牛につきまして、ごく最近は乳の生産量及び乳牛の頭数とも伸びがかなり急激に鈍化をしておるという傾向があらわれておる。これはやはり畑作と酪農の混合地帯、たとえば十勝とか網走などの地帯でございますが、そういう地帯において特に著しいようでありますが、これはどうも酪農について農民が、負債の累増でございますとか、あるいは後継者の取得難、あるいは労働力の制約、酪農というものに対する農民の不安感というようなものがあるため、またあるいはごく最近の事情といたしましては、飼料が世界的に非常に高騰しておる、あるいは牛の肉の価格が非常に急激に高騰しておる事情があるかと思われるということを述べております。こういうことで、酪農の振興をはかるために、負債整理を含む金融の充実とか、あるいは酪農の生産基盤の充実等を特に強力に推進する必要があるのではないかということを述べております。  畑作につきましても触れてございますが、これは格別御紹介するほどのこともないと思いますので、結びといたしまして、社会経済の進展に伴って、北海道の農業の構造変化にかなり憂慮すべきような事態も起きておる。それは、一つは投機的な土地の取得に誘発されまして、地価が非常に上昇しておる、これがために土地の流動化が従来に比べて停滞をしておるという問題。それから農産物の自由化という問題がございますので、それについても農民の不安感ということがありまして、いずれもこれは北海道農民の存立にかかわる大きな問題だ、こういうことに対して、政府として北海道農業の進むべき道を明確に示して、これを誘導してもらいたいということを言っております。特に要望といたしまして、二つ出しておりまして、根室のいわゆる新酪農村と申しておりますが、広域農業開発事業制度の確立、それから先ほども触れました、圃場整備の通年施行にかかるところの助成措置をぜひ実現してほしいということを要望されております。  大体以上のような内容でございます。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま山田監理官から説明のありました北海道開発局の斉藤次長の報告内容等については、これはやはり開発庁長官としても十分内容の検討と理解を進めてもらいたいと思うのですよ。相当具体的に北海道のかかえておる問題、あるいは北海道の農業開発、あるいは食糧生産の基地としての社会的使命の上に立って困難性が多いわけですから、これらの問題の解決を怠ると、結局第三期総合開発計画の進展にいろいろな影響を及ぼすと思うのです。つまり投影するところが多いと思うのです。  そこで、この中の幾つかについて明らかにしてもらいたいのですが、その第一は、水田のいわゆる圃場整備事業の夏季施行については、本年度までは生産調整によって、休耕田については、この時期に夏季施行をやることが最も効率的であるということで、相当実績をあげておるわけですが、来年からは休耕奨励制度は今度はなくなって、転作を対象にするということになるわけですから、今後北海道における土地改良事業の中心を占める圃場整備事業の夏季施行をどう進めるかということが、これは非常に大事な点であります。したがって、この夏季施行を行なう場合に、当然水田を休耕させるわけですからして、その休耕に対して、少なくとも現状と同じような条件で、名称は休耕奨励金でなくてもいいですが、実質的には工事施行のための休耕については、一定額の助成を国の土地改良長期計画を進めるためにも実行するということがなければならぬと思いますが、これについて、特に昭和四十九年度の各省の予算編成作業に入るわけですから、この点は、特に開発庁並びに農林当局においても十分具体案を設定して、すみやかにこれによって来年は圃場整備の夏季施行を進めるという方針を打ち出してもらいたいと思うわけです。  それから第二の点は、農家負債整理対策というものが、第三期計画の中においても、農家経済発展の上から重要であるということが掲げられておるわけでありますが、先般四十八年度の加工向けのなま乳価格決定の際に、百五十億円の北海道の酪農家を対象にした負債整理の資金を導入するということが方針としてきまったわけでありますが、これをどういうような具体的な方法で実行するか、あるいは負債整理のための一戸当たりの負債農家の限度額というものをどうするかというような点については、まだ内容が未定でありますので、こういう点についても、これは単に農林省の施策の中で行なうというだけでなくて、開発庁当局としても、北海道の悪条件で苦しんでおる農家の累積した負債整理の対策というものについても、強力にこれを進めていく必要があるのじゃないかと思うわけです。これに対する方針。第三は、北海道の農山漁村が相当過疎が激化しておるということは、大臣も御承知のとおりであります。例をあげると、中学校、小学校等についても、町の中心部の学校に統合するというような計画がもう実施に入っておるわけでありますからして、部落的な学校というものが統合によって廃校になるということになれば、学校を中心とした集落の社会形成というものが全く根拠を失うというようなことになるわけでありますし、これがまた部落的に農家の離農を進めるというような作用も果たしておるわけです。ですから、学校統合の問題、あるいはスクールバスの運行の問題も社会的に大事でありますが、それによって生ずる部落に散在する農家の住宅問題、生活問題というものをどうするかということは、第三期総合開発計画の中にも掲げてあるわけです。だから住宅の集団化の問題についても、都市住宅の公営的な建設等とあわせて農村の住宅等についてもこの際集団化を進める必要がある。農業を近代的に機械中心の集団化を経営的に進めると同じように、並行して農家住宅の集団化というものをやはり開発計画の一本の柱と設定して、特に明年度予算編成等については、これは積極的に対応する必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。  それからもう一点は酪農対策の問題てすが、御承知のとおり、北海道が全国一の生乳の生産地域であることは言うまでもないわけです。ところが、北海道で生産された生乳の九三%が加工原料乳ということで処理されておるわけです。残り七%だけが飲用牛乳ということになっておるわけでありますので、こういう点については、いま山田監理官から述べられたいわゆる斉藤報告の中においても、北海道の新鮮、良質な生乳というもの、これをすみやかに飲用化、飲用向けに処理する方途というものが必要であって、それをやるためには生乳の国鉄輸送等を中心とした遠距離輸送というものが政策的に実施されなければならぬわけです。東京、大阪等においても新鮮な生乳が市乳として枯渇しておるわけでありますから、結局加工乳や還元乳によってこれはまかなっておるわけですね。こういう点は生乳の価格政策あるいは酪農の振興対策とあわせて可能な限り積極的に解決する問題であるというふうに考えるわけであります。  もう一点は、斉藤報告にありましたとおり、これはあとで資料を出してもらえばいいわけですが、田中首相の日本列島改造論以来、北海道においても大手商社あるいは不動産業者によって全面的に土地の買い占め、未墾地の買い占めが行なわれているわけです。買い占め面積については、これは北海道が全国随一であるというふうに考えるわけです。だから、この点は後刻北海道における土地の買い占めが農用地についてどうなっておるか、あるいは未墾地である山林原野についてどうなっているか、あるいは農業振興法に基づいた農業振興区域内の未墾地等についての買い占めがどのように行なわれておるというような点についても、第三期計画発足以来の昭和四十六年、七年、まあ今年度あとう限りの実態というもの調査して、これも資料を提出してもらいたいと思います。したがって、これに対処するためには、結局第三期計画でも指摘しているとおり、特に生産性の劣悪な水田等については、所有者の希望あるいは国の計画に基づいて適正な時価で農地の買い上げを行なうというようなことを積極的に進めて、それをさらに農業協同組合等を通じて、農業の規模拡大のために、農業生産拡大のために十分活用するというような点も方針には載っておるが、なかなか実行が進んでいないわけです。  まだ幾つか問題ありますけれども、こういう点について特に江崎開発庁長官として、この問題にについては先ほど言われた私う熱意でどうするというような点があれば、この際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  117. 江崎真澄

    江崎国務大臣 最初の、休耕田を認めて、その間に圃場整備をやる、休耕についての補償金がもらえた、今度から食糧事情の変化で休耕の制度がなくなる、補償金がなくなるがうまくやれ、そういう陳情を私も承っております。従来そういう形で北海道の圃場整備が行なわれてまいりましたことも知っておりますだけに、無理からぬ要請であろうというふうに思って、農林省側にも北海道開発庁としては協議もし要請をしておるわけですが、農林省としてはちょっとこれは難色を示しておりますが、今後の問題として十分努力してまいりたいと思います。  それから農家負債の整理計画、これは推し進めなければならぬと思います。あらゆる機会にできるだけ大きくこの問題は取り上げてまいりたいというふうに思います。  それから、学校が移転をされると集落形成がこわれる、なるほど学校の統合も必要であろうが、どうもこの移転は困るではないか、これもやはり実情に触れたお話だと思います。これはむしろ北海道開発庁長官というよりも、自治省として過疎地域の対策をいたしておるわけでありますが、山形だったと思いますが、学校の移転をいたしまして、その移転のあと過疎債を用いてそのあとを縫製工場にした、そこで非常にそれが成功したといういい例もあるわけです。したがいまして、何かそういうモデル的な地域をこの地域の人たちにも視察をしていただいて、同時にまた私ども北海道開発庁中心になってそれらの対策を行なっていくということで時代の要請にこたえ、教育の充実という方向にもとらないような形で、こういった問題は、地元のいま御指摘になる集落形成がこわれるといったような問題とあわせバランスのとれた形で、あとをどうするかというようなことも考慮に入れながら、慎重に配慮されるように開発庁としても協力してまいりたいと思います。  それから集落の移転、これはやはり過疎地域においてぜひ行なわなければならぬ問題だと思います。過疎債については、交付税で裏づけをして、相当部分、七〇%程度認めておりますので、そういうものを大いに北海道においても利用されて、そして集落移転等を活発にする、これはぜひ私は推し進めたいものだと思います。これはまた自治省としても開発庁と協力体制をとることは可能でありますので、今後の問題として十分推し進めてまいります。  それから酪農対策、これもいま御指摘のとおりでありまして、先般の加工原料乳の単価の是正の問題等でも大問題になったように、いつも政治問題になっております。これをおっしゃるように加工原料乳として用いられることももとよりけっこうですが、生乳としてもっと本土にさばく方法はないのか、これは農協のセクトで東京に持ってくるといえば、関東地方の農協等、またその酪農業者の反対もありますが、もっともっと私は日本人全体が生乳をとるという奨励方途を考えて実現していく、そうすればやはり北海道から入れなければならぬ。いまおっしゃるように鉄道輸送は、もう新幹線もできるわけで、新幹線は主として旅客輸送ということになっておりますが、これはまだまだ先のことでありますが、やはりフェリー時代ですから、ただ観光客や用のある人をフェリーボートで運ぶということだけでなしに、生乳フェリーということもいわれて久しいものがあるが、実現していない。しかし豊かな日本になってきたのですから、こういうことに着目をし、積極的に計画をして実現させていく、このことは私事務当局とももうすでに打ち合わせをいたしておりまして、また芳賀さんなどのお力添えも得たいものだというふうに考えております。十分このことは留意して今後に処したいと思っております。かりそめにも酪農のためにする乳牛が肉牛に転用されて、本土にどんどん売られていくというようなことのありませんように、これはやはり根本的な解決が望ましいというふうに思います。  それから土地の買い占めは、まさに北海道の場合相当な面積であろうということは想像にかたくありません。調査の結果は、あとう限り正確なものをつかみまして御報告申し上げたいと思いますが、これも考えようによりましては、今後首都を北海道に移してくるよすがにもなるわけであります。適切なものであれば奨励されるべきものですが、ただ、いたずらに買い占め、放置されて値上がりを待つというようなことがあってはなりませんので、十分実情を調査したいと思います。  未墾地をどういうふうに開墾するかという問題は、これはたいへんな問題です。人口が少ない土地だけに、これをどう開墾するなどといいましても、にわかに名案とてもありませんが、開発庁としても新酪農村の建設であるとかいろいろな計画を持っておりますので、そういう総合的な開発とあわせ十分ひとつ検討してまいりたいというふうに考えます。
  118. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 芳賀君、所定の時間が参りました。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後にもう一問お尋ねします。  北海道開発にとっても重大な問題として石炭対策ですね。地下資源対策あるいはエネルギー資源対策から見ても、北海道における石炭産業の重要性は当然言うまでもないわけですが、毎年連続的に相次いで閉山が進んでおるわけですね。今回も御承知の大夕張における三菱炭鉱が閉山すると、関係住民も含めて約一万二千人の地域社会が全く崩壊するという事態にもなってくる。したがって、この際、国際的なエネルギーの事情あるいは国内的なこれからのエネルギー産業や資源確保をどうするかということは、北海道開発計画として重要な点だと思うのです。ですから、この際、当面する大夕張の炭鉱閉山阻止の問題、さらにまた北海道において産出された石炭の消費拡大、開発計画の中でももう石炭専焼の火力発電の設備を建設するということも掲げてあるわけでありますし、この点についてはもちろん通産省等が所管しておる問題ですが、北海道開発庁においても鋭意この問題の打開に取り組む必要があると思うのです。  もう一つは、最近における北海道開発審議会の運営というものはどうなっておるか。私もいまから十五年ほど前には審議会委員をやっておったわけですが、最近またこの委員を担当することになったわけです。はたして最近北海道開発審議会なるものは、北海道開発法に基づいた期持される運営というものをやっておるかどうか、所期の目的をあげておるかどうかという点についてもいささか不明な点があるわけですので、この二点につきお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  120. 江崎真澄

    江崎国務大臣 大夕張の問題につきましては、道知事をはじめ関係者からしばしば陳情を受けております。私も実は三菱関係の実力者に向けて、大夕張の閉山ということを突如として言い出すというだけでは、少なくとも三菱傘下の炭鉱としては能がないではないか、何かこれに見合うしかるべき設備を持ってくることはできないか。ところが地理的位置が悪いとか、道路網の整備では、今後大夕張を突き抜けるような計画もございますが、まだ道路網が完備してないということで難色を示しておるわけです。しかし、できるだけ考えてみます、ぜひ考えてもらいたいということで現在やっておるわけでございます。われわれ北海道開発庁としては、北海道自体に石炭需要を確保するというような意味で、エネルギーの変遷もありまするが、やはり石炭をたく火力発電所を海岸近く等々に設けることも必要ではないかというので、道知事とも話し合いをいたしておるような次第でございます。伊達の火力発電所は重油でありまするが、あの反対運動に見られるように、発電所建設ということも火力発電所の場合非常にむずかしい。特に石炭になりますると経費も高い、合理化にもおくれをとるというようなことで、火力発電所を石炭で経営するという場合は、たとえ地元の協力が得られたとしても、政府がそれに何らかの措置を講じない限り、電力会社のほうとしてもなかなか協調をしてくれないというような、非常にいろいろな問題を含んでおります。したがいまして、これは今後の問題として私どもも全力をあげて努力をしてまいりますが、これは与党、野党ということでなしに、何とかひとつ御理解願って、皆さん方全体の御協力を得て、北海道の石炭問題の解決に少しでも資するような方途を進めてまいりたいというふうに考えております。  第二点については事務当局から……。
  121. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 北海道開発審議会の最近の状況についてお尋ねでございましたけれども、従来どおり総合開発に関する重要事項について調査、審議を願っておるわけでございますが、特に最近は、第三期開発計画が策定されましたので、これを着実に推進する上の重要な諸問題について御審議をお願いしておるわけでございます。特に毎年の開発予算の編成方針というものはこの審議会にかけまして、その御了承を得て予算を編成するということをやっておりますほかに、苫小牧東部等の大規模工業基地の建設をめぐる問題、それから農業の面では、いわゆる根室地域の新酪農村の建設などの先導的な開発事業の構想等につきまして審議会に御審議をお願いしておるような次第でございます。最近は、審議会は総会のほかに特に三つの小委員会を設けまして、活発な御審議をいただいておるわけでございます。その小委員会というのは、先ほど申し上げました予算の編成方針を策定するための小委員会、あるいは大規模工業基地の開発に関する小委員会、あるいは根室等の問題を含めまして寒地農業の開発に関する小委員会というものを設けまして、御審議をいただいておるような次第でございます。
  122. 宇都宮徳馬

  123. 多田光雄

    多田委員 時間が四十分ほどで限られておりますので、一つは、いま北海道で進められている開発庁の開発事務所の統廃合の問題、もう一つは苫小牧東部開発、特に苫東工業港、これは八月着工という予定ですね、この問題について若干伺いたいと思います。  三月一日に私、地方行政委員会で大臣に例の北海道開発について伺ったのですが、そのとき大臣の御答弁の中で、この地域開発というもの地域住民あるいは地方自治体の納得のいくように進めなければいかぬ、こういうようなお話があったわけですが、自治大臣でもある長官立場としては、そういう立場基本姿勢として変わってないもの、私はこういうふうに了解しているわけです。  そこで、開発庁が昨年四十七年度から実施している例の開発事業所の統廃合の問題ですが、これは北海道の道民に非常に関係の深い全道二百二十三の道路、河川それから港湾、農業、こういう開発事業所を、五カ年計画で百一カ所に整理統合していくという内容というふうに伺っておるわけです。これに対して非常に多くの道内の市町村長や議会、それから地域住民から、いろいろな意見あるいは反対決議が上がってきているわけですが、開発庁のほうにはこれが何通ぐらい上がってきておりますか。
  124. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 何通という数字につきましては、しかと把握申し上げておりませんが、相当方面の市町村から要望をいただいております。
  125. 多田光雄

    多田委員 大臣、それはごらんになったんでしょうか。
  126. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私のうちにも参っておりまするし、参っておりますものは役所のほうへ回すということにしておりまするが、相当切実な要望であろうというふうに推測いたしております。ただ、これは御承知のように、まあ役所の合理化等々の問題もありまするし、二百二十三カ所、広い北海道ですから、決して多い数字ということにはなりませんが、百カ所程度に減らすということ、これはどうも時節柄やむを得ぬではないだろうか……。
  127. 多田光雄

    多田委員 まだそこまでは伺っておりませんので……。  これは私が聞いたのでは、四月末で二十四か五の市町村から来ているというように伺いましたが、その後さらにふえていますから、約三十前後の市町村からそういう反対決議が上がっているのではないか、こう推測されるわけです。特に今度の反対決議は、各市町村議会でも与野党一致した決議というのが一つの特徴になっているのです。  それから統合される事務所が、統合というのは普通賛成なんだけれども、そういう統合される町、たとえば十勝の幕別、ここでは統合反対という決議をしているわけです。それから陳情の中でも、もう時間がありませんので、皆さんお読みになってわかると思うのですが、たとえば池田町ではポンプ船の請負化の撤回、こういう具体的な要求から、非常勤職員の首切り反対、あるいはまた出張所が遠距離になって冬期間の除雪がおくれて困る、こういう北海道らしい非常に切迫した要求、それからまたいろいろあるのですが、私のところに来ている芽室町という十勝の町の反対決議の一文をちょっと読んでみたいと思うのです。私のところにこれだけ来ているのです。約三十近いのですが、ここではこういうことばを使っていますよ。「特に河川事業は不確定な要素を対象として行なわれるものであり、不断の態勢の推持こそ最も重要なことであると存じます。このたび貴局が実施されようとしている統合計画は何等私ども住民の意志も聞かれないまま一方的に行政の都合だけで進められており、かつ治水事業を後退させるものであり極めて遺憾なことであります。すべての住民の総意によつて本計画を速かに中止され、芽室治水事業所を存続し更に拡充強化されることを連署をもつて強く要請する」ということなんです。  大臣、いなかへ行きますと、学校の先生、それからおまわりさんは部落で非常に大事にしています。そしてときには米までみつぐ、こうなんです。まさに開発事業所はそうなんです。これは営農にかかわる、それから道路、さまざまそういうことに密着している。住民がそこまで世話しておりながら、いろいろ住民の世話で土地のあっせんその他をやってもらっていて、そして引くときには一方的に行政の都合で撤去する。これは北海道の道民の感情をさかなでするものではないかというように私ども理解しているのですが、こういう不安について大臣どうでしょうか、御理解願えるでしょうか。
  128. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いま多田さんがおっしゃる点は、やはり民主主義の時代としてきわめて大事な問題だと思うのです。私も赴任をしまして事務説明を受けましたときに、こういう整理統合というものはなかなかむずかしいものだ、一体どんなふうにやっておるのかと聞きましたら、まあしばしば、地元には不便をかけませんということで、何べんも接触をして、そうして今日ここに至ったのだという説明を聞いて了解をしたわけでありまするが、いまあなたが指摘されるような問題は、確かにあると思うのです。何だかさびしい、さびしいばかりじゃなくて、たださえいろいろな公的機関の少ない北海道において、そういう機関がなくなるということは、自分たちの住んでおる地域社会のいろいろな公共事業をはじめとする、特に河川管理や道路の補修等々までやってくれておったわけですから、それが手薄になるのではないかという、逆に被害感にもなるわけですね。ですから、私ども常に話し合っておるわけでありまするが、そういう何となく手が抜けたということにならないように、きめこまかくいこうじゃないか。なるほど除雪の問題など、ああいう積雪地帯であるだけに、またはかり知れぬ不安や、一方それに対する強い要望というものがあることもよくわかります。しかしこれも、昭和四十五年十一月の行政機構の簡素合理化推進にかかわる大方針に基づいて行なっておるわけでありまして、まあ道路網も大体幹線道路は開発整備されましたし、そういう形からいって、今日のモータリゼーションの発達等々から見て、地理的、時間的に、半分程度にすることは、そんなに不当ではないのではないか。むしろこれからきめこまかに、従来と同じように地元の要請にこたえて、道路や河川の管理等々が親切に行なわれる、このことが大切ではないか。これが手が抜けたり、なおざりにされたりいたしますと、もっともっと不満が爆発するということを考慮に入れまして万全の措置をとろうということで、お互いに戒め合っておるというのが現状でございます。
  129. 多田光雄

    多田委員 いま大臣から被害感を持たれるということだとか、それから、これからきめこまかにやられるというお話もありました。さらに今度の整理の根っこにある四十五年の閣議決定の合理化といいますか、そういうものがあるということも大臣言っているわけですが、実は四月三日の北海道議会でこういう質問を受けているわけです。道は住民サイドに立って計画を直ちにストップさせるべきだ、こういう議員の意見に対して道理事者側のほうから、事業所の統廃合はあくまでも地元の協力と理解を得た上で進めるべきと思う、道としてもその地域住民の声を聞いて、計画の進め方について開発局と話し合いたい、こういうふうに答えているのです。これは事務当局に聞きたいのですが、知事からそういう話し合いの申し入れがありましたか。
  130. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 北海道知事のほうから北海道開発局のほうに御趣旨のような申し入れがあったことを承知しております。
  131. 多田光雄

    多田委員 その中身もともにあわせて伺いたいと思うのですが、大臣はいまこれからきめこまかくとおっしゃられた。私はそれを期待したいわけですが、実は北海道ではこういうことをたびたび招いているのですよ。たとえば農林省の検査所の統廃合を今度はきめこまかべやると言ったら、さあ十勝あたりで雑穀の値上がりですぐ売りたい、ところが検査所が統廃合で遠くへ行っていますから、そこへ連絡するのには何キロも行かなければならない、電話ということで値上がりの時期を逸してしまう、こういうことが非常に多いんですよ。  それからいま問題になっているのは法務省の登記所の統廃合です。これはいまちょっとここに関係ありませんが、これもたいへんなんです。最近登記が非常にふえてきた。やれおやじが死んだ、土地の売り買いがものすごく多くなった、これが何キロもバスに乗っていく、こういう状況。  それからまた、たとえば北海道で失業保険の受給で、私よく知っておるところなんですが、たとえば八雲というのがあるのですよ、酪農をやっている。ここの職業安定所から、長万部というおもしろい名前のところですが、ここに労働省の職業安定所のほうから係員が行って、いままで千三百人の受給者の世話をしていた。これが切られるわけです。それから学校の統廃合、先ほどもちょっと同僚の芳賀さんからお話がありましたけれども、それから国鉄の赤字線の廃止、こういう問題が相次いでいまして、きめこまかどころか、これらが全体が一体となって北海道の過疎を推し進めていっておる。非常に不便を与えているのですね。こういう点から言いまして、私はいま三十近い市町村が、大臣がいまきめこまかくとおっしゃいましたけれども、しかしながら、現実事態自分たちの生活実感、労働の実感からくるものは、決してそんななまやさしいものではないというふうに感じているわけです。私もそうだろう、そういうふうに思うのです。  そこで一つ伺いたいことは、知事に対してどういうふうな話がされたかということが一つ。それともう一つは、この統廃合の目的、性格、それから三期計画、これについて、時間がありませんから、ひとつ簡潔に事務当局のほうからでよろしいですから、お答え願いたいと思います。
  132. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 知事のほうとの話し合いというお話でございますが、これは知事のほうから、ただいま手元に持っておりませんが、先ほどおっしゃいましたような趣旨の文書を開発局のほうでいただいております。そのために特に開発庁のほうで知事との話し合いということはまだいたしておりません。  そこで、この統合事務所の計画の目的、性格並びに第三期開発計画との関係ということでございますが、これは一つは、先ほど大臣からお話がございましたように、閣議決定の行政機構の簡素合理化というところに根拠があるわけでございますが、北海道の開発事業は、先生御承知のように、開発庁ができましたころに比べますと事業量が非常にふえておりまして、昔は全体で百億ぐらいの規模でやっておりました直轄事業が、いまは十倍以上の規模になっておるというような状況でございますし、第三期北海道開発計画が現在遂行されつつありますので、これはまたさらにどんどん規模は拡大していくであろうということが予見されるわけでございます。そういう中で、これは旧来の形の末端の機構で従来やってきておりますが、形といたしまして、先生御承知のように、主として旭川とか函館というような大きな都会でございますけれども、十一の地区に開発建設部というのがございまして、その下に先ほどお話がありましたように、二百二十三カ所でございますか、事業所とか出張所というものを置いて事業を執行しておりますけれども、この末端の事業所とか出張所というものはいわば事業が行なわれる間の臨時的な監督員の詰め所といったような性格が現在非常に濃厚でございまして、御承知と思いますけれども、主要な職員は開発建設部のあります旭川とか函館というところに住んでおりまして、そこへ出張勤務するという形態でもって仕事をやっておるというような状況でございます。したがいまして、権限もほとんど開発建設部のほうに集中しておりまして、末端の事業所とか出張所というのは非常に権限が弱いということがございます。そこで事業量が非常にふえてまいります。開発建設部でやりますところの工事の契約、発注でございますとか、あるいは河川、道路等の、先ほど先生指摘のように、非常に住民の生活に密接な関係がありますところのそういうもの維持管理の仕事でございますね。最近は水質の保全でございますとか、あるいは交通安全の問題でございますとか、行政はますますそういう面でふえているわけでございますけれども、そういう関係行政上の、たとえば占用許可でございますとか、そういうようないろいろな行政事務が全部十一あります開発建設部のほうでやるということになりますと、これは非常に膨大な事業量でございまして、極端に申しますと一日何千件というような量を責任者が処理しなくちゃならぬというような事態になりまして、これはとうていきめのこまかい処理ができない。これはそういった大事な仕事でございます。特に道路とか河川の維持管理というようなことで住民のサービスをきめこまかく申し上げなくちゃいかぬというようなことについて、むしろ非常に困難であるという事態になりますので、これは思い切って権限を末端の事業所のほうへ委譲いたしまして、たとえば工事の発注があれば、一定の金額以下のもの末端の権限でもって発注できるようにする。それから道路や河川の占用の許可とか、そういったような維持管理上の行政事務につきましても、ある程度末端のほうへ権限をおろして、住民の方々に十分行政サービスをおこたえできるようにしなければ、とてもこれはパンクしてしまうというのが実情でございまして、そういうような観点から二百の現在の事業所を統合しまして百にいたしますけれども、むしろそういうことで地域住民へのサービスに密着した仕事というのはかえってこれによってできるのじゃないかというような考えに立っておるわけでございます。  そこで、そうは申しますけれども、二百のものが約半分になるわけでございますから、先ほど先生からお話ございましたように、やはり地域の住民の方々に私どもの出先が非常にかわいがっていただいておりまして、土地の提供とか、確かにいろいろなお世話も受けております。そういうことで事業所がなくなるというようなことについて非常にさびしいと申しますか、不安感をお持ちになるということもまことにもっともなことでございまして、冒頭申し上げましたように、知事からの申し入れもございますので、これを一応百カ所に五カ年間で進めるという全体構想は持っておりますけれども、なお一そう地域方々と話し合いを進めまして、できるだけ御不安感のないように、話し合いの上でこの統合を慎重に進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。そういうようなわけでございますので、第三期計画が非常に事業量が飛躍的にふえますので、どうしてもこういう方向で、権限を下方におろすということを含めまして、こういった合理化をやっていかなければならぬということで、第三期計画とはもちろん関係がないわけではございませんけれども、第三期計画の中の何か特定の事業をやるためにこういうことが必要だというようなことはございませんので、むしろ違った方面から要請が出てきておるというような次第でございます。
  133. 多田光雄

    多田委員 ではちょっと具体的に伺いましょう。  今度の統廃合で、いままで江別――大臣、わかりましょうか、地名が。(江崎国務大臣「はい、わかります」と呼ぶ)江別、恵庭、あの自衛隊のたくさんいるところです。それから長沼、これは米どころですね。この三つにいままで河川の事業所があったのですが、今度これを恵庭に統合する。三角形の一つの恵庭に統合するということなんだが、恵庭に統合するという理由とそのメリットというのか、それはどういうふうに理解しておりますか。
  134. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 これは河川の関係の事業所の統合でありまして、いま御指摘のように札幌の近郊で、江別、恵庭、長沼の三つの事業所を恵庭に統合したらどうかという開発局の一つの案でございます。これは江別市のほうから、先生先ほどお話ございましたように、ほとんど市議会各党一致で、江別というところは石狩川の本流が、千歳川とか夕張川とか豊平川というようないろいろな川と合流するところでございますので、非常に大事なところであって、ぜひ江別に事業所を残すべきじゃないかという熾烈な陳情が最近もございます。この恵庭に置くということのメリットはどこにあるかというお尋ねでございますが、これは実は開発局のほうで立てましたので、私から的確にこういうメリットをねらって恵庭がいいということをきめたということはにわかにお答えしにくいわけでございますが、江別のそういうような非常に熾烈な御要請も受けまして、これはまあそれなりに相当な理由があるのじゃないかというふうに考えておりますので、いまの江別、恵庭、長沼に関する開発局の一つの統合の試案というものにつきましては、これはプランとしましても、昭和五十年度以降くらいにこれをどうするかというような順序というように承知しておりますので、もっとこれはひとつ慎重に、はたして恵庭に統合するのがいいのかどうかというような点につきましては、関係の市町村とも慎重にさらに相談し、検討を加えまして決定していきたいというふうに考えておりますので、恵庭にきめたというようなわけではございません。
  135. 多田光雄

    多田委員 いまの答えはあまり責任のない答えだ。というのは、五年間でやるといってもうすでにいろいろ正式文書を出して、そして江別では市長、市議会、農業団体、婦人団体、それから商工団体、文字どおり市をあげて反対運動をやっているのです、全部文書を出して。こういう混乱を実際は与えているのですよ。そういう発想は間違いだと思うし、それからいま一つは、北海道開発庁を持っているのは北海道ですよ。全国であれば、私は小さい事業所の統廃合について一々事務当局の皆さんにお伺いしないけれども、二百幾つのものであって、しかもそれを半数にしていくということは、北海道開発庁にとってはたいへんな仕事だろうと思うのです。そういう場合に、あとで申し上げますけれども、この三つの事業所の統廃合というのは非常に大きな問題なんです。なぜなら北海道総合開発の三期計画にこういうことが書いてあります。河川の重要性を述べてこう書いておるのです。「石狩川など重要河川については、主要区間の堤防をおおむね完成するとともに、河道の改修を促進する。」ここで私が言いたいことは、石狩川というのは、いわば北海道の母なる石狩川と言われているように、農業にとっても非常に大事なところなんです。この江別というところは石狩川を含む七つの一級河川を持っているのです。それから十三の重要な河川を持っているところです。だから、ここの陳情書を見ますと、こういう陳情書です。恵庭に持っていってもよろしい、恵庭につくるならつくりなさい。しかし江別はもっと強化しなさい。当然なんです。しかも工事は暫定、暫々定であって、ほとんど完成したものはない。そういう非常に日本で二番、三番といわれる、しかも北海道を育て、今日の北海道の重要な河川ののど首を握っている江別。しかも、重要河川を持っている。ここから恵庭に持っていく。恵庭には確かに千歳川があります。あと恵庭で有名なところは自衛隊が多いくらいなんです。恵庭につくってもよろしいです。なぜ江別から撤去していくか、これが第一北海道三期計画の趣旨からいってもわからない。  それからいま一つ、皆さんの出しておられる統廃合の全体構想、ここでこういうことを書いてあるのです。設置基準として幾つかあげています。たとえば「半径約五十キロメートル以内の地域において、おおむね次に掲げる事業費に相当する業務量があり、かつ、相当期間の継続が見込まれること。」そこの文化度合い、高等学校があるとか人口だとか、いろいろあげている。これはどう比べても江別のほうが、学校からいっても人口からいっても文化の度合いからいっても、はるかに恵庭よりもまさっている。札幌にも近い。しかも仕事の上からいっても非常に重要で、しかもあなた方の言っている基準から見ても、はるかに恵庭より適格である。この江別から撤去して恵庭に統廃合する。あそこの市長さん、理事者はこう言っているのです。どう考えても私はわかりません、何度説明を聞いてもわかりません、恵庭につくるのはけっこうだ、くどいようだけれども、なぜ江別を強化しないのか、こう言っているのですが、これについてどうお考えでしょうか。これは私は皆さんが出された設置基準に基づいて言っているのです。
  136. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 設置基準につきましては、いま先生おっしゃったとおり、大体そのようなことでありまして、一つはやはり半径五十キロの範囲でもって河川、道路等の各事業につきまして相当量の事業が継続的に見込まれるというところを選ぶことが一つでございます。  それからもう一つは、従来のように職員が開発建設部の所在地から出張勤務につくというのではなくて、家族ともどもそこに住んでもらうということになりますので、御指摘のように、ある程度の医療機関とか学校等の文化水準を持ったところというようなことを念頭に置いてきめておるわけでございます。いまの江別、恵庭等の河川の事業所等の統合の問題につきましては、先ほどの御説明でちょっと足らないところがございましたけれども、これは江別とか恵庭等にわがほうからまだこういう案であるということで御相談をしたものではございません。もちろんこれは職員の勤務条件に非常に大きな関係がございますので、開発局の労働組合のほうともちろん協議をしておりまして、労働組合のほうとしては、開発局は五カ年間全体としてどういう構想を持っているのか、当然組合に案を示して相談をすべきであるという組合の主張でございまして、その全体計画はこうであるということで目下組合と相談をしている案の中に、河川事業所の恵庭の統合案というものが出ておるわけでございまして、これはまだいわば内部でいわゆる当局側と組合側との相談をしておる資料が外部に出まして、非常に御関心を引いておるというのが実態でございます。もちろん江別にしましても恵庭にしましても、いずれも札幌の近郊でございまして、そんなに不便なところではございませんし、江別が河川の維持管理上も重要な場所であるということも確かにさようなことであろうと思いますので、もちろんそういう点を踏まえまして、だいぶ先のことでございますけれども、先ほど申し上げましたように、関係市町村とも寄り寄り協議をして、慎重に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  137. 多田光雄

    多田委員 そうしますと、昨年から始まって何カ所かでやっているのだけれども、こういう統廃合については実情に合わせて再検討の余地があるということですね。
  138. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 先ほども申し上げましたように、組合の要請もございまして、五カ年間で大体こういうふうにするというデザインと申しますか計画、かなりこれは具体的な計画でございまして、そういうものを一応組合員には提示してございます。そういう意味では一つの案を開発局は持っておるわけでございますけれども、もちろんその細部につきましては、地方自治体等の意向も十分に参酌いたしまして、手直しということはあり得るように考えております。
  139. 多田光雄

    多田委員 手直しはあるということを了承しておきます。  それで、この千歳の恵庭のことについてもう一つ伺いたいのですが、北海道開発審議会で私のいただいた文書で、東部工業開発の場合、沙流川と千歳川云々ということばがあります。そうすると、この恵庭に統廃合するということは、この千歳川水系をたとえば苫小牧東部に利用するというようなこと、これは開発庁の中でもかなりいろいろ話が出ているのですよ。そういう意図もあるのじゃありませんか。
  140. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 千歳川の水を苫小牧東部開発に大いに利用しようという考え方はございまして、恵庭の事業所の強化という問題がそれにつながりがないかということになりますと、あるいはつながりがあるかとも考えますけれども、しかし、もちろん先ほどの統廃合の問題とこれは別でございますので、その点は誤解のないように申し上げておきたいと思います。
  141. 多田光雄

    多田委員 地元の人に聞かれると言わないことが一つある、開発庁の言わないことが。三期計画との関係を言わないというのです。公式文書にはない。ところが北海道開発局から出した職員に対する部内の文書がある。「「事業所等の統合」に関する全体構想について(資料)」これを見ると、三期計画の重点施行云々ということを書いてある。だから私は今度の統廃合がただ重点施行だけではないと思いますよ。さっき大臣も言われたけれども、私どもは異論はあるけれども、定員法その他という一つの大きな前提があるでしょう。それとあわせて、一つにはこれだけ事業が多面化し、多くなってくる、ことしも予算が多くふえた、事業費も多くなってきた。当然常識からいえば、きめこまかい仕事をしなければならぬとすれば、人をふやし、事業所をふやしていかなくちゃならないのだけれども、それを少な目にしていくという場合に、その三期の重点施行であるたとえば苫小牧東部工業に対する水を引くとか、あるいはその付近のニュータウンに飲用水を引くということになってきますと、やはり江別の人たちに言わせれば、苫小牧東部工業開発のために石狩川と江別が犠牲になった、こういうふうに考えてしまうのですよ。ここが道民の相互の不信感を生んでいくのですよ。だからはっきり言われたらよろしい。三期計画の重点施行でこうやるのだということをやれば、反対する人もいるだろうが、賛成する人もいるでしょう。だから私はいま時間がないので簡単に聞いただけだけれども、これは当局のかなり一方的な定員法その他に基づく合理化であって、これが地域住民に非常に大きな不安を与えている、道議会でも問題になる、知事がそういう申し入れ書も出すということになってきているわけでしょう。しかもその中身をさらに見てみると、まだきまったものでもない。さらにお伺いすると、千歳川の水系を苫小牧東部のここに利用していくということも考えておられる。こうなってくると、今度の統廃合については、皆さんは五年間で実情によってやるというふうに書いてありますから、大臣、ひとつこれは十分地域住民の意見を聞いていただきたい。こういう錯誤を起こした一番大きな原因は、前回も私指摘いたしましたけれども、冒頭に私お伺いしたように、地域開発は住民の納得地方自治体の納得、そういうものを基盤にしてやらないというと、どんなに金をぶち込みましても、ある程度それは満足されるけれども、やがて矛盾が大きく口を開いてくる、この点をひとつぜひ指摘しておきたいと思います。どうでしょうかね。ひとつこの計画を大臣もう一度練り直してみる、軌道に乗っているから、いままでやったものを全部やめろということは適切かどうかわからないけれども、もう一度再検討してみる、こういうことはどうでしょうかね。
  142. 江崎真澄

    江崎国務大臣 多田さんのおっしゃる意味は私もよくわかります。しかも北海道開発局が現地で果たしておる役割り、特に二百二十三カ所の事務所の役割りというようなことを考えますと、地元住民としては、いまおっしゃるような意見が出てくるだろうと思います。したがって全体計画をくずすということはできませんし、かえっていまごろそういうことを言いますと、一そう混乱を増すばかりですね。しかしやはり地元の協力、それからまた地元の意向というものはおっしゃるとおりだと思っておりますので、いま検討の余地をまだ十分残しておるということも言いますから、問題のある地点等々については調整をしてみたいと思います。ただ、減らすという方向と、その個所数、これなどについては従来の計画を進めさせていただくということにして、なおひとつそういう問題のある地点等については、十分地元側の意向を徴して調整をするということはここでお約束してよろしいかと思います。
  143. 多田光雄

    多田委員 ぜひその調整もやっていただきたいと思うのですが、もう一つ、開発庁の職員がこの間全体構想に反対してストライキまで打っているのですよ。そして年々二百人くらいの人がやめる。私数日前聞いたところによると、四十歳台で退職を勧奨されている人もいるわけです。それで開発庁の職員の場合、私は、開発計画にはいろいろな批判はありますけれども、しかしここ二十年間、北海道をパイオニアにしていくということで、技術者を含めて苦労されてきた。北海道開発に一定の情熱を持っておられるのですよ。東京におられる方はどうかわからないけれども、持っておられる。ところが、開発計画というものは何となく住民から離れていくというこの不安がある。そして今度は外注だというのでしょう。私の皆さんからもらった資料を見ても、昭和四十六年度のこの事業総数は九百七十一億、そのうち請負をしているのが何と九八%ですよ。九百六十一億はもうこれは直轄から請負にいってしまっているのです。請負ということになれば、やはり小さな業者もおりますけれども、道路建設、港湾、こうなりますと、これは何といっても大企業です。こういうふうにして事業はどんどん外注され、最近ではもう管理することまでが外注されてくるようになってきますと、いよいよこれは開発法の第十二条ですか、これにも違反するんじゃないかと私は思うのです。ほんとうにまる裸になってしまう。こうなってきますと、開発庁の職員だって私は情熱を失ってくると思うのですよ。そういう意味では、私がいまこの問題をるるお話ししましたのは、北海道開発の基本姿勢の問題でもありますので、それをお伺いしたわけで、大臣、ぜひひとつこれは地域住民のサイドを十分考えられて善処していただきたいと思うのです。  もう時間がありませんので、次の東部工業開発にちょっと移って終わりたいと思うのですが、大臣御承知のとおり、私は地方行政委員の一人としていろいろお世話になっているわけですが、いつも文部省、厚生省、運輸省あるいは建設省の役人に来てもらっていろいろ話を伺うのですが、文部省の役人に聞きますと、幾つ学校をつくるか、厚生省に言わせると、幾つ保育所をつくるか、建設省に行くと、道路を何キロ延ばすか、こういうことは非常に情熱を持って話されるのだけれども、そのことによって地方自治体にどれだけの超過負担を与えて地方財政を困難にするか、これはまず考えておりません。全く考えてないと申せば語弊があるけれども、さすがに自治省の方はある程度考えておられます。きのうも国鉄の連合審査に私出ましたら、たとえば国鉄の利用債について、明らかに自治省の方の発言と国鉄側の発言は違っている。やはり自治省のほうは何とか地方財政を守ろうという発言であって、それを問い詰めていけば重大な食い違いが起こると思う。そういう食い違いがある。だから私は、開発も、いろいろな壮大なビジョンを持たれるのはけっこうですが、しかしながらそれが大事な地方財政、地方自治にどういうしわ寄せ、影響を与えておるか、この点は、自治省の大臣もしておられる江崎長官にお願いしたことは、絶えず裏表の問題として、この地方自治体、地方財政、地方住民あるいは地場産業がどうなるのかということをひとつ念頭に置いていただきたい。たとえば国と地方自治体との関係についていえば、すべての人が国民であるが、同時に何らかの形で地方自治体の一員であると思うのですよ。ところが、いま今日北海道を見ても、ことし四十幾つの事業所がある市町村のうちの三十から意見書が上がってきているということは、非常に多くの市町村と住民がこれに不安を持っておるということなんです。これにこたえないということはやはり私は間違いだというように思うのです。  そこで、私は三期計画についてちょっと伺いたいのですが、苫小牧東部工業港は八月着工の予定でいま準備が進められておりますが、これは環境庁の意見もあって、何か六月末に港湾審議会で検討される、それを待ってということなんですが、重大なことはこのことです。苫小牧、それから浜厚真、鵡川、ここの漁業問題は片づきましたか。それをちょっと伺います。
  144. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 漁業の問題につきましては、ただいま苫小牧の港湾管理者というのがございますが、それと北海道及び苫小牧市が、昨年来、東部の苫小牧の大規模工業基地の建設に伴いますところの漁業権の消滅あるいは制限によりまして通常生じますところの損失補償の問題、それはもちろんのことでございますけれども、それからその周辺海域での漁業振興をどうするかというような問題につきまして、いま先生お話しございました地元の漁業協同組合ときめこまかい対策につきまして鋭意折衝をやっておる段階でございます。話し合いが現在まだ行なわれている段階にございます。
  145. 多田光雄

    多田委員 私もせんだって入って漁民の意見を聞きました。第一次の四十億か何かの補償の問題も道と話し合われております。非常に強い不満なんです。浜厚真のごときはいろいろ漁業の沿岸がつぶれてくるということでシシャモ、これは前に一度大臣にお話ししましたけれども、培養をやって、ようやくいまそれがそこの漁協の年生産額の半分を占めるまでになった。ところが、沙流川が今度東部開発に使われるということで、重大な恐慌を来たしておる。戸数にしては二十数戸です。しかし明らかにシシャモは地場産業であり、北海道の名物です。しかも漁民が営々として十数年にわたっていろいろ苦心惨たんして培養してきたものです。ところが、ここではまだ漁業権が解決しないのに八月着工の準備を進められておる。漁業権の消滅がまだ成立していないのです。ここに私はこの開発計画の本質があるんじゃないかと思うのですよ。先ほど言うように、ほんとうに住民に奉仕するものなのかどうか。政治にしても経済にいても、生きている人間に奉仕しなければだめですよ。ところが、実際にはそこにおる漁民の漁業権の放棄さえまだ成立しない状況でございましょう。  次に私質問したいのですが、公害問題についてはどうですか。どうですかということは一般的ですが、どういう問題がいまあの周辺で起きていると思いますか。
  146. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 先ほどの漁業補償の交渉の問題につきましては、先ほど申しましたように、現在折衝が進められておりますので、この漁業補償問題が解決しないで現地で港湾の着工をするということは考えておりません。そういうことはございません。  公害問題につきましては、最近苫小牧のほうで王子製紙でありますとか共同発電、苫小牧共発でございますね、そこの排水の問題で問題が生じているという事件を耳にしております。
  147. 多田光雄

    多田委員 そうすると、漁業権の問題が解決するまで着工しませんな。――実は公害がまた大問題になっているのです。非常に何かあらをさがすように思われるかもしれないけれども、そうじゃないのですよ。まさに公害は重大な問題になっている。いま言った沙流川のシシャモの問題も大問題ですが、共同火力発電がありましょう。ここの温排水で最近あの沿岸の主力のホッキ貝が、これも営々として育ててきたものです。これが、三分の一に減収してしまった。これは地元新聞の六月一日、ついせんだっての新聞に大きく出ているのです。これは研究者も大体火力発電所の温排水の問題だろう、こう言っているのです。しかも共同発電所は脱硫装置をまだしていないのですよ。  それから日軽金の赤どろの問題は、漁民の反対でいま陸上投棄をやっていますが、問題は弗素です。これがまた一酸化炭素よりも大きな被害を与える。これは年間二〇%くらい、海陸風に乗ってあの近辺の特に米作地帯に落ちるのです。いま北大の研究者が一年余にわたってこつこつと研究しているのですが、国においても弗素の基準はまだないのです。この弗素の問題については調べましたか。
  148. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 弗素の問題につきましては、東部苫小牧の計画をこれから進めてまいります上で、苫小牧の現在の日軽金を含めまして、苫小牧全体を含めまして環境基準をどういうふうに持っていくべきであるか、したがって、弗素とか硫黄酸化物、窒素酸化物、もろもろの廃棄物の総量をどういうふうに規制していくかというような問題を、現在北海道庁と環境庁が中心になりまして、もちろん私どもはその御相談にあずかりながら、鋭意検討を進めている段階でございます。御指摘のように弗素についてはまだ国の環境基準もできておりませんが、弗素も含めまして現在検討を進めているところでございます。
  149. 多田光雄

    多田委員 もう時間が来ましたが、環境基準についても、いま道のほうでは国よりも高い環境基準を設けておると自慢しているのだけれども、実際、たとえば一酸化炭素などは、あそこは王子その他がありましてたくさん出ているのだが、昭和四十六年に苫小牧保健所の調べたものが、すでに高いといわれる北海道の基準よりも高いのです。しかも弗素の検査は、私、研究者に聞いてみましたら、一月や二月では調べられない、二年はかかるだろうと言っている。この人はもう一年もやっている。そういう慎重さをいま公害の問題では要求されているのです。今度の水俣を見てもそうです。まさにこれは国際的な大問題になっておる。ですから、日高沿岸全体をいま真剣になって調査しないと、あの世界で有名な日高沿岸全体の漁業にやがて深刻な影響を与えていく、これは水俣を見ればはっきりする。しかも、道にしても通産省にしても、調べた資料もいままで発表しない。隠していた。そして風向きを二日か三日入って調べて、それでだいじょうぶといっても、住民はそれほど公害の問題ではばかにされません。ですから、真剣にこの日高沿岸全体についてやらなくちゃならぬ。しかも今度入ってくる企業は、まだ最終決着を見ておりませんけれども、ほとんどみな油でしょう。目標の百万バーレルの三倍以上なんです。  それから、これも大臣にひとつよく聞いていただきたいのですが、あと二、三分で済みます。東部開発で北海道が先行投資をして用地を買収したわけですが、どれだけの土地を買い、どれだけの金を道が使いましたか。これは石狩湾振興の分も一緒に言ってください。
  150. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 お答え申し上げます。苫小牧東部の大規模工業基地の用地買収のために、北海道一般会計から三十四億円、特別会計から二十億円支出いたしましたほかに、地方債といたしまして百六十四億を充当しております。合計いたしますと二百十八億でございます。  それから石狩湾振興地域の用地買収の財源といたしまして、北海道地方債百三十七億円を充当しております。こちらのほうは道の一般会計及び特別会計からの支出はいたしておりません。
  151. 多田光雄

    多田委員 先行投資で取得した用地の面積は。――それではあとで調べてください。  これは約一万ヘクタール。しかもいまあなたが二百十八億と言ったけれども、その後、最初に買った農民が安かったと文句を言ってまた二十何億の謝礼金を払う、約三百億です。幾ら道が大きいからといっても、これだけのものを先行投資でやっておるのです。しかも、これは志布志湾とかむつ小川原と違います。志布志湾とかむつ小川原の場合は、文字どおりある意味では県が計画を立てる。ところが、北海道総合開発は、幸か不幸か開発庁もあり、一定の行政的な強権も動く、財政も裏づけになる。こうなってきますと、これは大臣、単なる地域開発でなくなってくるのです。そこにうまみもまずさもあるのだろうと思います。だから、道は以前はかなり財政的な余裕があった。時間がないから数字を申し上げられないけれども、やはり財政の硬直化を次第に来たしてきておる。その典型は苫小牧ですが、これも時間がないから申し上げられませんけれども、苫小牧は、あのいまの港がつくられてから十年間どうなっておるかといいますと、一般会計の市税の収入が、昭和三十七年に比べて今日五・四倍です。ところが市債はどうかというと十・四倍、それから年度末の未償還額が七・六倍、ものすごい財政的なふくれ上がりになっております。私調べてみたら、水島もそうでしょう。税金は入ったけれども、出すほうがはるかに大きい。税金では、かえって国のほうがはるかに大きな税金を吸収しておる、こういう状況なんです。しかも、北海道議会に地方自治法第百条に基づいて百条委員会がつくられた。この百条調査委員会、正式には苫小牧東部工業基地土地取得に関する調査特別委員会が三月十六日に設けられた。この詳細なことはかなり正確に六月四日の朝日新聞に出ている。「百条委疑惑の核心に」と書かれておる。ここでは驚くことに、幾つかの疑惑が出されておるけれども、道自体が農地法に違反した買収をやっている。それを発見したのが、農地課かどこかの職員が行ってみたら、もう土地が買収され、買ったのは道だという。こういう法を守るべき道自身が法に違反してまで強行して、この一万ヘクタールの土地の買収を急いでいる。こうなってきている。正しくない政治とか開発というものは必ず重大なひずみを起こして、みずから法を破っていく。これは百条委員会が今後やっていけばもっと重大な問題にも発展していくでしょう。部分的な土地問題で汚職の問題まで出ている、新聞にも発表になっているけれども。  そうして、もう一つあげると、苫小牧東部の用地一万ヘクタール近いものを買った、八千数百ヘクタール。三十万の人間の住むニュータウンは一体どうなりますか。買いましたか。
  152. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 東のほうと西のほうの両方にニュータウンと申しますか住宅用地を計画しております。西のほうはまだ手をつけておりませんが、東のほうにつきまして約七百五十ヘクタールを取得すべく、道庁がすでに買収に入っております。何ヘクタールすでに入手したかという数字はつまびらかにしておりませんが、相当すでに手当てをして、現在着々買収しておるというふうに聞いております。
  153. 多田光雄

    多田委員 私の申し上げたいことは、第三セクターを通じて、いわば差し上げるといってもいいでしょう。金をもらうんだから差し上げるのじゃないけれども北海道東北開発公庫からもねんごろな援助を第三セクターがもらう。私も調べてありますが、そうまでして大企業誘致の土地の先行取得、これは志布志でもやらなかった、むつ小川原でもやらなかった。北海道が模範だというのはここなんです。そうして法無視までやって、地方財政の困難を来たしながら、大工場誘致のための土地八千数百ヘクタールは買っている。ところが、肝心の人間の住むニュータウンの土地はいまだに買ってないじゃありませんか。買ってないどころじゃない。そこにいま不動産会社が入って、どんどん土地を買い占めて、地価がつり上がって、道はもし買うとすればどうするのでしょう。ここにも北海道総合開発の、あるいは三期計画の性格の一端が出ているのじゃないか。繰り返し申し上げますけれども、私はいいものはいいと思いますよ。北海道総合開発というのも、住民サイドの道路の面だとか港湾の面、こういうもので私は効果がなかったというのじゃないのです。あったでしょう。しかしながら、そろそろ北海道総合開発計画というものが洗われなければならないときが来たのじゃないか、こう思う。ところが、四月二十日開かれた北海道の知事の諮問機関である道の総合開発委員会、これは北大の学長の丹羽さんが委員長をしておられるのですが、これも新聞紙上で、私は東京で見たのですが、この委員会のほうとして総点検をしなければいかぬ、場合によっては方針の練り変えだ、こういう意見も出ているし、道の態度としても何か出ておりましたね。それから、丹羽委員長も公害その他のことを述べられて、再検討しなければいかぬ、こういうことも言っておられるのです。しかもこの苫小牧が流れると、鹿児島の志布志湾、むつ小川原、これの大規模工業開発は軒並みストップ、こういう状況なんです。  ですから大臣、最後にお伺いしたいことは、私もほんとうに北海道をりっぱにしたいと思います。これは大臣に劣りません。しかしながら、いま考えなければならないことは、わずか四十分足らずでこういうふうに述べたところを見ても、住民とこれが必ずしも密着してない、むしろだんだん離れていくのじゃないか、こういう一つの問題が私は心配されるわけです。したがって、さしあたり漁業権の問題が解決するまでこれは着工されないと言ったのだけれども、私はほんとうに公害の問題は、真剣に調べていただくまであの港の着工も延期してもらいたい、こう思いますし、それからまた日高沿岸全体の気候なりその他海流、この調査もやらないと、あとで水俣のような問題を起こしたときに、われわれはさか立ちして泣いたってどうしようもない。  それから大臣、第三期計画を、もう一度審議会を開くなり、あるいは地元あるいは市町村も含めて真剣に検討したらいいのじゃないか。いいものはいい、残す、そうしてそういうものは取り払って、ほんとうに北海道をよくし、住民サイドの開発をしていくということについてひとつ御検討願えるかどうか、お伺いしたいと思います。
  154. 江崎真澄

    江崎国務大臣 だんだんの御意見を交えてのお話は傾聴いたしました。したがって今後の問題としては、先ほども芳賀さんに申し上げましたように、第三期計画そのものの根本方針は変える必要はない、ただ個々別々の局部的な問題等につきましては、これはやはり時宜に即して変更もあり得る、これはもうそのとおりでございます。したがって、今度多田さんも審議会の委員になられたわけですから、どうぞひとつ遠慮なく審議会の場でも御意見などを出していただけたらけっこうです。こういう開発の問題というのは、公害の問題、その見方、受け取り方いろいろありましょうが、主として開発はイデオロギーの問題を離れてなされることでありますから、十分御協議をして、円滑に進めるようにしていきたい、こういう方針でひとつ努力してまいりたいと思います。
  155. 多田光雄

    多田委員 終わります。
  156. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司幸助君。
  157. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は昭和四十五年度警察庁決算についてお伺いしたいと思います。  これまでの警察庁予算決算の審議について、会議録を見て痛感するのは、その費用の内容がほとんど明らかにされていないという点であります。たとえば昨年三月九日のわが党の林百郎議員に対する警察庁当局の答弁を見ると明らかなとおり、警察の警備予算というのは全然審議のらち外にある、こういう状況にある。林さんの表現だと、軍隊の機密費よりももっと機密費になる、こういうふうにいえるほどだと言われています。警察予算国費でありますから、財政民主主義立場からも、当然この支出については内容を明らかにして国会の審議を経るべきだ、私はこう思うのです。以上のような観点から、二、三点警察庁決算の問題を伺いたいと思うのです。  これは昭和四十五年度決算書でありますが、この決算書に、活動旅費、これが三十八億七千七百五十九万六千九十七円支出されている。それから捜査費が二十五億六千八百六十五万五千八十九円、これだけ支出されております。  その点で第一点にお伺いしたいのは、活動旅費なりあるいは捜査費、これは一体どういう経路で流れていくのか。もちろん本庁で使う分もおありだろうと思うし、都道府県警に流れていく分もあるだろうと思います。これはどういう経路で流れていくのか。たとえば、本庁で使う分はわかりますが、活動旅費について、本庁の公安一課で何ぼ使った、二課で何ぼ使った、三課で何ぼ使った、それから都道府県警の、これも警備のほうの、公安一課と二課あるいは外事と、こうありますが、そういう方向にどういう経路で流れていくのか。それから手続はどうなのか。それから予算編成の際は一体どういう経路でそういう予算請求が上がってくるのか。きょうは決算でありますからその辺までは聞くのもどうかと思いますけれども、しかしこれは関連がありますからね。これをひとつお伺いしたいと思うのです。
  158. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは事務当局からお答えさせます。
  159. 丸山昴

    丸山政府委員 活動旅費、それから捜査費でございますが、これの地方に流れていく経路というお尋ねでございます。  活動旅費は、ただいま御質問にございましたようにいわゆる警備警察の活動旅費ということではございませんで、これは警察全部の各部門の活動旅費を一本にして使う、こういう形になっております。で、私どもつまり警察庁のほうから府県に流れます経路は、都道府県警察本部長、これが国費に関する支出官になっておりますが、大体約一カ月ぐらいの所要額を予定いたしまして、そしてこれに本庁の支出官、これは会計課長でございますが、これから支出いたします。そこでいわゆる会計法上の部局長である本部長、これに、ただいまの警察庁から流れました予算について各課署長、まあ大体署長が主体になりますが、これがそれぞれの必要な経費について請求をいたすわけでございます。で、課署長は個々の警察官、署員の要求に対しまして、そのつどその必要性を確認いたしましてこれを渡して使うという形になります。この間に、その旅費等につきましてはいわゆる支出の伺いというのが出るわけでございます。その支出伺いに伴いまして、地方の機関においては本部長が支出官になっておりますので、支出官の支出命令によって行なう。実際は補助手段である会計課長がこれを本部長の名において処理をするということになるわけでございます。  捜査費等につきましても、国費の流れるルートというのは同様でございます。  それから予算関係でございますが、これは各府県から来年度の要求についてそれぞれ府県独自の要望が私どものほうに集まってまいりますけれども、この国費関係につきましては、大体在来の実績その他を勘案いたしまして、積算の基礎においてはそれぞれそのときどきの申請を組み入れまして警察庁で一括して要求をする、こういうことになっております。結果的にはできるだけ第一線の要望をいれるように考えておりますけれども、必ずしも手続的にはそういう形にはなっておらないということでございます。
  160. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと、この決算を見ますと、これは捜査費も活動旅費も一本で出ておりますが、警察法施行令の第二条に「国庫が支弁する都道府県警察に要する経費」という項目がありますね。これは一から八までありますが、あなたのほうでは、この決算の際、この一から八まで、それから八の中でイからネまで約二十項目ありますが、この一つ一つについて、一についてはこういうふうに使った、二については何ぼ使った、こういうような決算の書類は整備するのですか。
  161. 丸山昴

    丸山政府委員 決算の整備のしかたは、お手元にお配りしてございます歳出決算報告書のとおりでございます。  この二条に書いてございます各項目は、負担区分の明確を期する意味においてここに規定されておるわけでございまして、私ども決算の段階でこの二条の各項目に沿ったような決算のしかたということはやっておりません。
  162. 庄司幸助

    ○庄司委員 なぜこういうことを伺うかというと、たとえば施行令の二条ではこういう項目になっておりますね。それから組織令では、組織令によりますと、たとえば十四条では今度警備局であるとか、いろいろありますね。それは警察のいわゆる活動の内容上の区分だろうと思うのですね。  私どもよく警察の問題で耳にするわけですが、最近の警察はどうも、すり、どろぼう、かっぱらい、火つけ、強盗、こういった問題については検挙率が悪くなった、警察に対して使われている金というのは一体どういうふうに配分されて、力点が置かれているのだろう、こういう話をよく耳にするわけですね。そういう点からいって私は、やはり決算ですから、当然に警察が使った金の行政的な効率を見る必要があると思うのですね。そうしますと、これは一応の勘、直感でありますけれども、どうも刑事警察とかあるいは交通警察にはあまり金が使われないのですね。どうも警備のほうに重点が置かれている、こういう感じがするのですよ。だからその辺、やはりこの警察庁の組織令に基づいた各部門別の金が何ぼずつ使われたかということを明らかにしないと、行政効率がどのようであったかという点の判断がつかないだろうと思うのですよ。その辺で、施行令の二条ではやっていないとなると、組織令の関係で各部門別の数字を、まあ統計数字でもいいですが、これは出ておりますか。
  163. 丸山昴

    丸山政府委員 いずれにいたしましても、決算はいま申し上げましたようにこういう形で整理をしておりますので、部門別にということになりますと計算のし直しをしなければなりませんので、手元ではちょっとそういう計算はしておりません。
  164. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと、計算をやり直して整理し直せば出るわけですね。これは私は警察庁決算のいわゆる行政的な効果を見るために、ひとつ資料として、警察庁のほうの組織令に基づく部門別の数字に直して御提出願いたいと思うのですが、その辺どうですか。
  165. 丸山昴

    丸山政府委員 これもお手元にお届けしてありますので、ごらんをいただいておるかと思いますが、四十八年度予算のときの明細表がございます。これには警察庁の項目と、それぞれここで出ておりますのは、警察機動力の整備に必要な経費それから教養に必要な経費というようなことで、いま先生のおっしゃる各部門別ということになりますと、刑事警察に必要な経費、保安警察に必要な経費、交通警察、警備警察という分け方になっております。予算上はそういう分け方をしております。それでこの分類に該当するような決算のしかた、これも非常に困難なようでございます。予算の組み方としては、いま申し上げましたような予算の組み方をしておりますし、これは予算のときに御審議をいただいたとおりでございます。ただしその場合といえども、いまおっしゃいましたように活動経費ということになりますと、これは一本で計上されておりますので、先生のおっしゃるように各部門別にこれを分割をして計上するということは事実上不可能でございます。
  166. 庄司幸助

    ○庄司委員 ですけれども、私は、四十五年度国費都道府県別決算額調べというのをちょうだいしましたが、これで見ると、活動経費、警備経費、教養経費、その他と、こうなっておるのですね。これでは組織令に基づく――一条から、ずっとありますが、一条から何条までありますか、二十一条までありますね。各課ごとあるいは各局ごとの決算は、ここで何ぼ金を使ったというのはこれではほとんどわからないのです、これを出してもらわないと。交通部門で幾ら使った、それから刑事部門でどれくらい使った、あるいは警備の部門でどれだけ使った、それでどれだけの効率があった、この判断がつかないのですよ。これはむずかしいなどとおっしゃらないで、ぜひ出していただきたい、こう思うのです。
  167. 丸山昴

    丸山政府委員 この組織令に出ています各局、各課ずっとございますが、これはただいま先生の御指摘のようにやるとなるとまず不可能であると申し上げなければなりません。と申しますのは、まず一つば職員の俸給等でございます。こういうものは全部一括して処理をしております。それから職員の、たとえば警察庁でございますと、警察庁の各課の職員が出張するわけでございますが、そういう旅費は会計課において一括処理しております。そういたしますと、そういうものをそれぞれ分離をしなければいけないということになるかと思います。その他非常にこまかい話でございますが、印刷に使います紙であるとかインクであるとか、それをどこの課の分にどれだけというふうに分割をしなければいけないということでございます。それと、今度は第一線になりますと、ただいまここにあげておりますような課がどの府県にもそろっておるわけではございません。県の特殊事情によりまして組織はみなそれぞれ別々でございます。したがいまして、かりにここで交通企画課という課がありまして、それが各県にあるかというとそういうわけではございませんし、交通企画課の関連の縦割りの予算予算計上をやれというふうにおっしゃいましても、現実にはそれは不可能だと申し上げざるを得ないと思います。
  168. 庄司幸助

    ○庄司委員 それならば少なくとも捜査費について、これは配分されるだろうと思いますから、これがどういうふうに配分されたのか。たとえば警備関係が幾ら、それから刑事関係が幾ら、あるいは交通関係が幾ら、この三つだけでもいいですから、これなら出るでしょう。
  169. 丸山昴

    丸山政府委員 先ほど申し上げましたように、捜査費は各部門別に分割をして処理するということはしておりませんで、支出官である都道府県の本部長に一括してこの予算を流しておるわけでございます。本部長は、自分の管内の発生をいたします事案に対応いたしまして、そのときどきの事案を処理するために有効にその予算を使う、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、当初からどの系統に幾らということで配賦することも実際にやっておらないわけでございますが、かりに、そういうことをいたしましても、第一線の本部長が運用いたします場合には意味がないことになる。できるだけ実態に即した運用をしてもらわなければならないわけでございまして、そこで私ども予算としては活動旅費それから捜査費というものは一括して本部長に予算を流す、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  170. 庄司幸助

    ○庄司委員 それではこれはどういうことになりますかね。これは昨年の三月九日の地行委員会で、林委員に対してあなたのほうで答えられた会議録ですがね。たとえば活動費、これは活動旅費と捜査費であるという御説明で七十三億円だ。そのうち警備費は四十八億円だ、こう言っておりますよ。それから刑事は二十三億円で交通は一億五千万円だ、こういうのができておるじゃないですか。
  171. 丸山昴

    丸山政府委員 ただいまその説明をいたしましたのは予算段階でのお話でございます。予算で積算をいたす場合には、大体この部門にこのくらいという見積もりをしておるわけでございまして、それは先ほど私が申し上げました本年度の明細につきましても一応の各部門別の区分けというものはしております。ただ、その場合におきましても、活動経費、捜査費というのは一本でございまして、しいてその区分けをすればそのくらいの比率になるという前提で御説明申し上げておるはずでございます。
  172. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは予算では大体こう分けて出せて、決算で分けられない話はないじゃないですか。予算では分けられる、決算では分けられない。私、決算というのはもう確定したものですから、これは分けられるはずだと思うわけですよ。そういうものがなければ、ぼくは警察庁決算の審議はできないと思うのですよ。これは出してもらえませんか。
  173. 丸山昴

    丸山政府委員 そこで決算の段階、要するに捜査費を使います実態をちょっと御説明申し上げませんと御納得いただけないと思うのでございますが、第一線の実際に捜査費なりあるいは活動旅費を使います実態というのは、一つ事件中心にして行なわれる場合が非常に多いわけでございます。かりに、例として有名な連合赤軍事件を申し上げたいと思いますが、あの場合の捜査本部の設置、それから捜査員のための活動旅費あるいは捜査費の使い方を考えてみますと、どれがいわゆる警備部門であり、どれが刑事部門であり、どれが保安部門であるかということの区分けはできないわけでございまして、私どもでもなかなかむずかしいところでございます。これが大体普通行なわれます事件捜査の実態でございまして、明確にこれが警備だけだ、あるいはこれが完全に刑事だけだというような事案はむしろ少ないほうに属するわけでございます。したがいまして、実際の使いました中身をどちらの色分けをしてやるかということは、そのより分けをする人間の主観的な判断ということでやらざるを得ないわけでございまして、実態から申し上げますと、いま申し上げましたように警備、刑事というような形で分類をいたしますことは、第一線の実態から見ますとそぐわないことである。私ども中央で予算を立てますときにはそういった考え方で、それぞれまたその分野の専門家がおりますし、またその専務の部局もあるわけでございますが、第一線に参りますと、極端に言いますと一人の駐在さんが全部の仕事を一人でやるということが実態でございます。署はややそれに準じた形で行なわれる。県の場合には、大体が大きな事件にぶつかりますと、全県本部員が一体になって動く、こういうのが実態でございます。
  174. 庄司幸助

    ○庄司委員 私はおかしいと思うのです。ぼくらは決算委員会ですが、予算がどういうふうに実効的に使われたか、これを見なくてはならないでしょう。それが予算の段階では区分けされていて、決算の段階では区分けされていないとなれば、これは決算の審議にならないのじゃないですか。だからむずかしいとかなんとか言わないで、やはり予算に即した区分けのしかたはやってもらわないと決算審議にならないと思うのですよ。その点おやりになるつもりあるかどうか。これはもし会計課長むずかしいんだったら、公安委員長ひとつ聞かしてもらいたいと思うのですよ。
  175. 丸山昴

    丸山政府委員 いずれにいたしましても、決算のやり方ということはいま申し上げましたようなことでずっとやっておりますし、先生指摘のような各部門別に分けるということも事実上不可能である事情も、いま申し上げたわけでございます。また、かりにこれを分けるということにいたしましても、これは実際不可能でございます。分けた場合も、効率測定という面でただいま御指摘があったわけでございますが、必ずしも本来の効率測定の意味にそぐうものであるかどうかという点も疑問があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  176. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは時間ばかり食うわけですが、予算がきまって、その予算予算に即してどう使われたか見ていくのが決算なのですよ。だから、あなたのようなことをおっしゃられると、決算の審査はできないということになるのですよ。その点どうお考えになりますか、公安委員長
  177. 丸山昴

    丸山政府委員 これはもう繰り返して申し上げる以外にないと思います。ただいま申し上げましたように、決算は従前からこういった方式で決算をしておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、各部門別の積算の場合には各部門別の積算をいたしますけれども、これは全部にわたってやっておるのではございませんで、それぞれ分けられる部門についてその部門別に分けてやっている、こういうことでございます。
  178. 庄司幸助

    ○庄司委員 これでは何ぼあなた方とお話ししてもらちがあきません。これでは警察庁決算、審議できません。  それでもう一点伺いたいのは、今度は効率の面ではなくて、われわれ決算審議をやる場合、予算の使い方で不正があるかないか、この点を見るのが重要なんです。国民の血税がいやしくも着服されたりなんかしたのではかないませんから、その点で私は捜査費の問題で少し伺ってみたいと思うのです。  一つ事例を申し上げます。たいへん古い資料で申しわけありませんが、有名な島根県警の文書がございます。これで見ますと、昭和三十年の四月一日から六月十一日までの七十二日間、約二カ月半ですが、この間に捜査費がこういうふうに使われている。何だかわかりませんが、マル協懇談会、それから謝礼金などが十五件、八万二千八十円。それから協力者への謝礼、懇談会が三件、九千二百円。それから警部渡しというのがある。松阪警部であるとか西川警部であるとかいうものもあれば課員への分配、これが十九件、三十六万三千二百円あります。それからほかの署に分配したというのが二件。それから会議費が三件。それから多いのが会食費とか酒代、ビール代、昼食代で、こういうのが十件ほどあります。それから今度は、驚くべきことには、せんべつというのがあるのです。だれにやったのかと思って調べてみると、同僚の警部が転任すると、そういうせんべつが捜査費から払われている。それからおみやげ代、おえら方が来たのでおみやげをやる、これが捜査費から払われている。それから入学祝いや見舞い金まで払われている。これが六件ほどありますよ。あとの表彰金であるとか備品購入費、これはいいでしょう。日教組大会経費、その他旅費とかありますが、いま言ったようなえたいのわからないもの捜査費の中に相当入っているということは、これは昭和三十年の資料ですが、いまだってあり得る問題なんですね。  こういった点で私が第一番目にお伺いしたいのは、マル協というのは何です。協力者の協の字にマルをつけたもの、これは何ですか。
  179. 丸山昴

    丸山政府委員 ただいま先生がお示しになっておられるのは、かなり昔、島根県警から出たといわれる会計関係の書類のことをおっしゃっていると思うのでございますが、私どもはそういった書類については存在をいままで認めたこともございません。したがって、その中にございますマル協というのがどういう意味をなすのか、私どもとしてはお答えをする限りでないというふうに存ずるわけでございます。
  180. 庄司幸助

    ○庄司委員 たぶんそういうふうにしらばくれるだろうとは思いましたが、しかしこれは島根県の警察から出た文書であることは明確なんですよ。天下周知の事実ですよ。これは資料が古いとおっしゃいますから、それじゃ新しいのを出します。  これもちょっと古いのですが、四十六年十二月十五日の日経新聞に載ったものです。奈良県警の刑事部長の浦野さんという人、この人が旅費の項目から部下に寸志として払った、旅費から寸志が出ている、こういう問題があるのです。これに対して前の官房長は、これは出張旅費から一〇%ずつレクリエーションの積み立てをしているんだ、それを配分しただけなんだ、こう言っているのですよ。ところが、レクリエーションの積み立てに回るくらいの余裕を持った出張旅費を警察庁は国に請求している。これはおかしい話ですね。こういうおかしいものもある。  それからもう一つは、有名になった仙台のやぐら荘事件ですよ。これはあなた方御存じだと思いますけれども、あのやぐら荘事件では、岩崎という巡査部長が犯人の筆跡を入手したい、そのためにそのにいさんにお会いして、警察署で会えばいいものを、あるいは県庁職員ですから県庁の中のどこかで会えばいいものを、わざわざ車に乗せて、連れ込み旅館に連れ込んで、そうして岩崎という巡査は、五時半から十時半まで、おにいさんの話だと監禁されたと言っておりますけれども、十時半まで引っ張り込んで、そうしていろいろ情報提供を迫まったわけですね、監禁までして。このために、警察捜査費を二千五百円ほど使っております。八時半ごろになると、岩崎巡査部長みずからが飲みすぎて吐きけをもよおしてきた、こう言っておりますよ。筆跡を入手するために、自分がヘドを吐くぐらい酒を飲むなんてばかな話はないでしょう。こういう不明朗な捜査費の使い方をやっているのですよ。こういう点を公安委員長、どう思いますか。
  181. 丸山昴

    丸山政府委員 ただいま先生のほうのいろいろ御指摘になったような点について、捜査費の使い方が不明朗であるというお話でございますけれども、私ども国費の面につきましては会計検査院の検査を十分受けております。ただいままでその点については適正に執行が行なわれておるということでございます。また、県費のほうにつきましては、県の監査員の厳重な監査を受けております。この点についても、それぞれはっきりした監査結果が出ておりますので、適正に実行されておるというふうに私どもは信じております。
  182. 庄司幸助

    ○庄司委員 それならば、捜査費について、そういったつかみ金的な性格でどんどん支出され、これはあとから支出官の承認が要るのだろうとは思いますけれども、こういった支出された捜査費について、会計検査院から何の文句もなかった、こういうふうにおっしゃっておりますが、一体昭和四十五年度だけでこの捜査費についてどういう会計検査を受けておられるのか、証拠書類一切を会計検査院に対して、このマル協に対する謝礼金であるとか協力者に対する謝礼金ははたして実在する本人に渡ったのか、こういう証拠書類まで出して会計検査を受けられておるのかどうか。またもう一つは、捜査費のうち、どれだけの額がいわゆるあなたのほうの用語でいう簡易証明でやられているのか、これをひとつお答え願いたいと思います。
  183. 丸山昴

    丸山政府委員 会計検査を受けておりますのは、これはもう毎年受けております。ただ、同一部局が連続して会計検査を受けるということはございませんが、毎年十数部局が受けております。捜査費の歳出額は、そこに出ておりますように二十五億六千八百六十五万五千八十九円というところでございます。
  184. 庄司幸助

    ○庄司委員 それではお答えにならないのです。捜査費、ここに書いてあるとおりですなんて。ほんとうに、そのうちの簡易証明を受けたものは何ぼなんです。
  185. 丸山昴

    丸山政府委員 捜査費は全額簡易証明を受けております。
  186. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは、会計検査院いらしていますね。警察庁のこの簡易証明で、たとえばこの間、背叛社事件というのがありましたね。これは警視庁の間々田警部補が十一万円余をあの背叛社のいわゆる爆破犯人に渡して、それで爆破練習が失敗してアパートが爆発した、これは公判廷でちゃんと証言しているわけですね。こういう人間に対して、はたして渡した、受け取りましたというような証拠書類、この二十五億六千八百万余の全額について、協力者なり何なりに渡した、受け取ったという明確な証拠書類ははたしてあるのかどうか。それから、ないとすれば何によってこれが間違いなく実在する本人に渡されたかという心証をどこからとってくるのか、その点ひとつ伺いたいと思います。
  187. 立花寛英

    ○立花会計検査院説明員 お答え申し上げます。先にちょっとお断わりいたしますけれども、主管局長がただいま参議院決算委員会に出席しておりまして、こちらへ出られませんものですから、私がかわってお答えをさしていただくことを御了承いただきたいと思います。  ただいま御質問捜査費でございますけれども、私ども検査いたします場合は、御承知のとおり書面検査と実際に受検庁の現場へ出向いて検査いたします、実地検査と称しておりますが、この二つの方法を採用しております。  そこで、まず最初の書面検査のほうでございますが、これはただいま警察庁のほうから御答弁ございましたように、全額を計算証明上の簡易証明という形で私のほうで承認しております。それは昭和三十四年に警察庁のほうから申請の文書が出まして、それに対して私のほうで承認を与えるという形になっております。その件名は「報償費等の計算証明について」ということでございまして、この中でいま御質問関連するところだけ申し上げますと、捜査費につきましては、取り扱い責任者に対する支出決議書、それから取り扱い責任者の領収証書並びに明細書を提出する、そうして実際の労務提供者等の請求書あるいは領収書、つまりほんものの領収書は会計検査院から要求のあったときに提出できるように取り扱い責任者が保管すればよろしいということで承認を与えております。それが現在まで引き続いて生きております。計算証明はその方法で、私どもといたしましては、要するに支出された金額の総額を明細書によって知るということでございまして、実際には受検庁へ出向いて実地検査の際に、ただいま申しました本物の領収書等を拝見さしていただくということにしております。ただし、これはただいま問題になっております捜査費に限りませんけれども、領収書そのものが事の性質上徴取することができないという場合も当然ございます。その場合には、領収書にかえて取り扱い者もしくはその責任者の支払い証明書をもってかえることができるように計算書の規則で規定されておりますので、そういうものも中にはございます。ですから、そのほかに、その支出内容につきましては、受検庁の側の御説明を業務に支障がない範囲内で伺わせております。この方法におきまして、現在まで大体捜査費につきましては、年度によって多少変わりはございますけれども、大体におきまして受検個所で申しますと二割程度は実地検査を施行しております。その結果につきましては、現在まで特に指摘するような事項はございませんでした。
  188. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間ですからやめますけれども捜査費全額二十五億六千八百六十五万円余ですよ。これは全額ですよ。全額が簡易証明なんというばかな話はないだろうと思うのですよ。そのうちのある部分、どうしても情報提供者の名前を出すのはぐあいが悪いというようなものは、これはまあ簡易証明でもやむを得ない場合もあるかもしれません、私はいいとは言いませんが。全額二十五億六千八百万円余、これが全部簡易証明だ。これでは会計検査院の検査官は、現場へ行って、証拠書類はない、その人に聞いてみて心情によって、心情を参酌して、これはまあ間違いないだろうという以外にないわけでしょう。そうしますと、間々田警部補のような問題になると、十一万円、これが爆弾製造犯人に渡って、本来ならば住民の公序良俗、秩序、安全を守るべき警察がそれに反するようなことに金を使ったのに対しても、会計検査院は全然そのまま見過ごす、これじゃ私は警察予算なり決算というものはきわめて乱脈になっていったってやむを得ないだろうと思うのですよ。警察官だって全部が神さまじゃありませんから、中にはでき心を起こして着服する連中だって間々あるわけですから。これは聞いただけでもあったのですから。チェックする何ものもないのでしょう、これでは。だから私は、警察決算というものはわれわれ決算委員会としてなかなかやれないんじゃないか、こういうふうに考えているわけですよ。  その点、最後に江崎長官から、こういう全額、とにかく二十五億の国民の血税が簡易証明でやられている、この問題、私はやはり長官の、これは官房長じゃまずいですよ、公安委員長の明確な答弁をお願いしたいと思うのです。
  189. 江崎真澄

    江崎国務大臣 さっきから丸山官房長が答弁しておりますように、各県段階では県の監査委員会がございます。それから国では会計検査院がございます。ここへも検査院の担当者が出てきて、その妥当性を認める、こう言っておられるわけでございまして、ことさらに秘密にしておるわけでもないわけです。これは正規の手順を踏んでおるわけでございます。  いまの二十五億円云々の問題につきましては、官房長からお答えをさせます。
  190. 丸山昴

    丸山政府委員 その計算証明が非常に雑な取り扱いのように御説明なされておりますけれども、要するに、捜査活動の際に、通常の正規の手続を経ておりましては緊急の事態に間に合わないというケースがたくさんあります。それから関係者の秘密を保護するという必要上、通常の支出手続を経ることが好ましくないというケースもございます。こういうところで捜査費全体を計算規則の十一条の規定によりまして簡易証明方式をとるということについて会計検査院の御了承を得ておるところでございます。それで実際、その場合においてもやはり領収書をとることが原則でございます。かりに領収書がとれません場合、これは往々にしてそういうケースもございます。その場合においては、その取り扱った担当官から所属長に対しまして、その旨の報告書を出して承認を求めるわけでございます。したがいまして、所属長はその中身と渡った相手と、場合によってはその協力によって得られた資料、こういったものを十分しんしゃくをして、その中身について、その結果について承認をする。承認をしないものについては、補足的にまた手続をとる、こういうことでございまして、一つ一つが厳密に処理をされておるわけでございます。したがいまして、先生の御指摘のように、これだけの額が何か非常にずさんな形で浪費をされているというふうなことは絶対にあり得ないというふうに私ども信じておるわけでございます。
  191. 庄司幸助

    ○庄司委員 最後に、絶対にあり得ない、こういう強いことばで言われていますが、これは警察がいつでも使うことばなんですよ。まるで神さまみたいですよ。そういう中でああいう使い込みが発生したりやっているのですから、そういう絶対なんということばは使わないでもらいたいと思うのですよ。  それからもう一つは、資料として、この二十五億六千八百万余の捜査費について、いわゆる情報提供者に幾ら払われたのかですね。情報提供者とよく飲み食いするわけですから、これは現にありますから、これが幾らくらいかかったのか。あるいはもう一つは、いわゆるせんべつであるとか、何々警部渡しなんというわけのわからない金ですね。こういった問題についてここにひとつ資料を出していただくよう強く要請して、私の質問を終わりたいと思います。
  192. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 警察庁委員長から申し上げますが、予算に沿った決算も当然出せるわけですから、出してください。決算に関する精細な報告がなければ決算の審議はできないですから、これは研究して出すように努力してください。予算請求の線に沿った部門別の決算額というものを出してください。これは当然出せるはずである。そういうことをしなければ決算審議というのはできないです。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  193. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 速記を始めて。  坂井弘一君。
  194. 坂井弘一

    坂井委員 去る五月十日の当決算委員会におきまして、私は財団法人日本文化住宅協会に対する国有地の払い下げ事案に関しまして、幾つかのきわめて好ましからざる問題点を指摘しながら質問をいたしました。特にその中で協会の事業状況に触れて収支決算、これに関する質問に対しまして、建設省の大津留官房長は、協会の借り入金の中に個人の借り入れ金と協会の借り入れ金が混淆している疑いなきにしもあらず、こういうことを明らかにされたわけであります。したがって、本日の委員会におきましてこの協会の経理の内容、これをつまびらかにしてまいりたいと思うわけでありますが、その前に、建設省はこの文化住宅協会に対しまして相当なる監査を行なわれたようであります。そこで、その監査の内容等を含めまして質問を進めていきたいと思います。最初にお願いしておきたいことは、御答弁はひとつ簡明、的確にお願いいたしたい。  そこで、最初に確認の意味におきましてお尋ねいたしますが、この文化住宅協会が去る四月二十六日の理事会におきまして、名義を個人から協会に改める、そうして当時担保に入れた土地、建物の抵当権の設定を解除する決議をしたといわれておりますけれども、その決議、これは事実ですか。
  195. 大津留温

    ○大津留政府委員 事実でございます。
  196. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、一体債務者はだれなのかということでございますが、つまり協会が債務者ですか、それとも林文爾専務個人が債務者になりますか。建設省の解釈をお示しいただきたい。
  197. 大津留温

    ○大津留政府委員 林文爾個人の名義になっております。
  198. 坂井弘一

    坂井委員 名義は林文爾氏個人である。しかるに協会においては理事会で、名義を個人から協会に変える、こういう決議がなされた。この決議がなされたことは事実であるという御答弁であります。  では、重ねてお尋ねいたしますが、この金を貸した債権者、三井不動産のほうでは債務者は林文爾氏個人と言っておるのか、それとも文化住宅協会である、こう主張しておるのか、いずれでしょうか。
  199. 大津留温

    ○大津留政府委員 三井不動産のほうでは、協会の費用として林専務理事に貸した、こう称しております。  なお先ほどそのとおりでありますとお答えしました四月二十六日の理事会におきます決定というのは、三井不動産株式会社から林個人に対します貸し金を協会が保証し、また協会の財産である武蔵野市所在の土地を担保に提供しておる、そのことを抹消することを請求するという決議をした、こういうことでございます。
  200. 坂井弘一

    坂井委員 債権者としては、金を貸した相手が協会であるのか個人であるのか、それがはっきりしないというような金の貸し方はあり得るはずがない。いま官房長の御答弁によりますと、確かに登記簿謄本上は林文爾氏個人であります。しかしこの林文爾氏が三井不動産から借入するについては、担保物件として協会の財産の提供を受けておりますね。したがってそういう意味におきましては、いま三井不動産のほうでは官房長の言われるような、そういう答えが返ってくるのであろうと思われますけれども、これは少なくとも事実の上においては、実態の上においては協会に貸した、こういうことではございませんか。
  201. 大津留温

    ○大津留政府委員 これは三井不動産という会社と林文爾さんとの間のことで、この協会を監督いたします建設大臣としての監督の範囲をいささか逸脱した面もございますので、協会からの説明によりますと、この借金は林個人の借金であるという説明でございます。三井不動産から事情を聞きますと、いや、これは協会の専務理事である林さんに貸したのだから、実態は協会に貸したのだ、こういう説明を両者がしておるということで、それ以上の追及は私どもとしてはできません。
  202. 坂井弘一

    坂井委員 ずいぶんおかしな話なんですね。協会は林文爾氏個人である。債務者であります。債権者は、しからず、それは個人ではなくして協会に貸したのである、こういうことであります。このことについては後々の質問において明らかにしてまいりたいと思いますが、さて、いま四月二十六日の理事会の決議、この決議自体でありますが、法律行為としては一体いかなる行為に当たるのでしょうか。一体妥当な行為なんでしょうか。建設省の御見解を……。
  203. 大津留温

    ○大津留政府委員 この決議は、協会の保証と担保に提供していることを抹消することを三井不動産に対して要請するといいますか、抹消の申し出をするという決議でございますので、その決議自体で抹消するわけではありません。
  204. 坂井弘一

    坂井委員 なるほど、わかりました。しかし、そのような要請の決議を協会がなぜしなければならなかったのか。つまりこの名義を林個人から協会に変える、これはなぜそういう決議をしたのか、あるいはせざるを得ない事情があったのか。その辺のところに経理の内容を明らかにしていくまず問題の発想点としまして、これは非常に大事な意味が含まれていると思われるわけであります。具体的には後ほどそのことについても触れていきたいと思います。  さて、いまの決議に基づいて一体名義の書きかえあるいは抵当権設定の解除、これはできておりますか。いかがでしょう。まだその段階に至っておりませんか。
  205. 大津留温

    ○大津留政府委員 文化住宅協会の説明によりますと、五月十八日に三井不動産の社長あてに登記の抹消と保証の抹消を申し出をしております。
  206. 坂井弘一

    坂井委員 申し出をしておる。これは債権者の同意がなければできないことでありまして、このことについてはいかがなことに相なりますか、いずれにしても、その問題については一応とどめまして、具体的な事実関係等についてお尋ねしていきたいと思います。  協会と三井不動産との間において確かに債務者に相違がございます。しかし債務者は三井不動産では協会である、こう言っておる。しかるに登記簿謄本によりますと、四十五年七月の十日抵当権設定の林文爾氏個人という形に確かになっております。そこで林文爾氏は協会の担保提供によりまして三井不動産から借入しておりますけれども、その借り入れた金額、これは幾らになっておりますか。
  207. 大津留温

    ○大津留政府委員 四十四年八月三十一日現在で借り入れ金の総額は一億二千七百三十三万八千三百四十五円になっております。この内訳は、元金が九千百四十三万七千十一円、利息が三千五百九十万一千三百三十四円、こうなっております。
  208. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、その林文爾氏が借り入れました元金九千百四十三万七千十一円、そのうち林文爾専務理事が協会に貸し付けた金額は幾らでございましょうか。
  209. 大津留温

    ○大津留政府委員 元金で申しますと、七千九百五十八万九千二百十八円でございます。
  210. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、林文爾氏の借入金元金九千百四十三万七千十一円のうち、林文爾氏は協会に対して七千九百五十八万九千二百十八円貸し付けた差額がございます。千百八十四万七千七百九十三円。これは林文爾氏個人の支出ということなんでしょうか。
  211. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういうことに相なろうかと思います。
  212. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、個人の支出の使途はどうなっておりますか。
  213. 大津留温

    ○大津留政府委員 林氏並びに協会の説明によりますと、その分は林個人の借り入れ金でございますので、協会とは何ら関係ない、したがいまして監督官庁である建設省からの監査につきましても、その分は答える限りでない、こういうことで、私どもとしては察知できません。
  214. 坂井弘一

    坂井委員 協会の財産を担保に入れて金が出た。一部は協会に入れた。千百万余円、これは自分の金とした。これは個人の金だから関係ない。担保が入っています。公益法人の財産であります。このことについてはまた後ほど触れます。問題点があるということだけは認識にとどめておいてください。  そこで、林氏が協会に貸し付けた元金の七千九百五十八万九千二百十八円、これに対して一体利子はどれくらいになっておりますか。
  215. 大津留温

    ○大津留政府委員 四十五年三月三十一日現在で五千三百三万三千六百六十四円となっております。
  216. 坂井弘一

    坂井委員 元利合わせますと、一億三千二百六十二万二千八百八十八円、こういうことになりますか。
  217. 大津留温

    ○大津留政府委員 ちょっと端数が違いますが、大体そういう数字になります。
  218. 坂井弘一

    坂井委員 そうすると、私のほうからその後の経緯につきまして申し上げますから、確認だけしてください。  林専務理事は協会から千五十九万一千八百円借りておる。その借り入れ金利息二十八万六千五百十九円、これを合わせますと、千八十七万八千三百十九円、こうなっております。したがって、上記のいまの一億三千二百六十二万二千八百八十二円から千八十七万八千三百十九円、これを相殺いたしますと、一億二千百七十四万四千五百六十三円、これを協会は林文爾氏から借りている、こういうことになる。さらに協会は今度は林氏から別口の借り入れ金が三十万ございます。したがって、借り入れ金総額は一億二千二百四万四千五百六十三円林文爾氏から借り入れしておる、こういうことに相なりますか。
  219. 大津留温

    ○大津留政府委員 四十五年四月一日現在の協会と林氏との貸借関係の残高はいまおっしゃったとおりの額になります。
  220. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、その借入金一億二千二百四万四千五百六十三円のうち協会が林文爾氏に返済した金額を年度別にお示しいただきたい。
  221. 大津留温

    ○大津留政府委員 四十五年度に二千五十五万五百六十円、四十六年度に二千百五十七万円、四十七年度に四千三百四十三万円を返済しております。
  222. 坂井弘一

    坂井委員 トータルいたしますと八千五百五十五万五百六十円、そういうことになりますか。
  223. 大津留温

    ○大津留政府委員 合計そういう数字になります。
  224. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、その金額を差し引きいたしますと、現在協会がなお林氏に返済しなければならぬ金額、残額は三千六百四十九万四千三円、計算上そうなると思いますが、間違いないでしょうか。
  225. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういう数字になります。
  226. 坂井弘一

    坂井委員 では伺いますけれども、林文爾氏ばこの文化住宅協会の財産を担保として、三井不動産から元利合わせて一億二千七百三十三万八千三百四十五円借入しております。これは純金銭消費貸借契約の設定となっております。この抵当権設定は一体いかなる手続によって行なわれたのでしょうか、お伺いしたい。
  227. 大津留温

    ○大津留政府委員 昭和四十五年六月三十日設定の契約に基づきまして、四十五年七月十日に抵当権を設定しております。
  228. 坂井弘一

    坂井委員 理事会における承認はございますか。
  229. 大津留温

    ○大津留政府委員 昭和四十五年六月三十日の理事会におきましてこのことを決定しております。
  230. 坂井弘一

    坂井委員 確かにそのとおりと思います。なお補足的に私のほうから申しますと、四十五年六月三十日の理事会におきまして、林専務理事が長年にわたり個人として借りておった金額、合計一億二千七百三十三万八千三百四十五円に対し、協会として三井不動産に当協会の土地、建物に抵当権を設定する件を認めていただきたいということが議題になりまして、ここで小鍛冶理事が、いささか異議があるわけですけれども、こういう発言がございます。「三井の貸付金につきましては、前々回の理事会で申し上げましたように、借入の名儀人が誰かと云う点で異議があるわけでありますが、林専務の借入金に対し協会で担保を提供し、一応片づけようとなさることは、自分で提案したことでもありますので異議は御座いません。」ということでもって、つまり個人に対しての借入金に対して、協会の財産を担保として提供するということが決定されたわけですね。  前々回の理事会でいかなることが議論されたかといいますと、小鍛冶理事は、この方は実は三井不動産の総務部付の方であります。金を貸す三井不動産の人がこの協会の理事、こういうわけであります。そこで小鍛冶理事は「債権者として言いますが、」つまり三井不動産の立場であります。「三井不動産としては協会に対する貸付けとして処理されて居る。協会の帳簿と喰違いがあると問題になる。」こういう非常に重要な発言があります。しかもここで小鍛冶理事は、「賛成とはいいかねるので意見保留、棄権のようにしたい。」つまり棄権をしております。これがいわゆる前々回の小鍛冶理事の発言であります。しかし、四十五年六月三十日の理事会におきまして、協会の物件を担保として提供するということの議案に対しまして、小鍛冶理事は、私から提案したことでもあるのでよろしかろう、つまり林文爾氏個人の借金を協会の財産を担保として返済することに異議はございませんという決議がなされた。これを受けまして、一億二千七百三十三万八千三百四十五円、三井不動産との間におきまして担保設定がなされた、こういうことであります。  そこで、ここでもう一つ伺っておきたいのでありますが、この種の行為は民法五十七条に関係すると思うわけでありますけれども、五十七条に照らして問題ないか。つまり担保提供者は協会であります。したがいまして、三井不動産と協会で物上保証人の手続がとられていなければならないと思うわけですけれども、いかがなっておるでしょうか。
  231. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういう手続はないようでございます。
  232. 坂井弘一

    坂井委員 そこにも問題があると思います。  そこで、重ねて確認をいたしたいと思いますが、抵当権を設定して一億二千七百三十三万八千三百四十五円、これを借り入れた目的は何ですか。
  233. 大津留温

    ○大津留政府委員 協会側の説明によりますと、協会の事務処理のための費用その他協会の活動に関連して必要となる費用に充てるため、こういう説明でございます。
  234. 坂井弘一

    坂井委員 これは非常に重要な部分であります。これは議事録においても明らかなように、林文爾氏の長年にわたる借金を返済するために、協会は協会の財産を担保として提供した。したがって、この一億二千七百三十三万八千三百四十五円の金は、明らかに林文爾氏個人の長年の借金を返済するために担保設定された、借りられた、こういうことじゃございませんか。
  235. 大津留温

    ○大津留政府委員 おそらく債権者である三井不動産は、名義は林個人でございましても、貸した相手は協会という意識がございます。したがって、その金の一部は林個人が他に費消したといたしましても、これは金額について協会の財産を担保に提供する、こういう要求をしたものと思われます。これに対して協会は、理事会をもって、それを提供することを、多少の議論はあったようですが決定した、こういういきさつでございます。
  236. 坂井弘一

    坂井委員 これは官房長はっきりしてもらいたい。つまり、私はなぜこれを読んだかというと、理事会では、協会は少なくとも林専務理事が長年にわたり個人としてお借りいたしておりました一億二千七百三十三万八千三百四十五円という個人の借金を返済するためにということで、協会の物件を担保とすることに異議はございませんという決議をしたんでしょう。このことに変わりございませんかということを言っておるわけです。
  237. 大津留温

    ○大津留政府委員 理事会の議事録によると、そのとおりでございます。
  238. 坂井弘一

    坂井委員 しからば、林専務理事が、一億二千七百三十三万八千三百四十五円のうち、これは利子は差し引きますから、元金といたしまして受け取りましたのが九千百四十三万七千十一円ですね。ところが、そのうち個人が使ったのが千百八十四万七千七百九十三円ある。それを差し引きますと七千九百五十八万九千二百十八円になるわけですね。この七千九百五十八万九千二百十八円については、当然債権者たる三井不動産に返済されていなければならないはずでありますが、返済されておるでしょうか。
  239. 大津留温

    ○大津留政府委員 協会から林文爾氏に対しましては、先ほどお示しのありましたような金額の返済がございましたが、林さんから三井不動産にそれ相当額を返済したかどうか、これは確かでございません。
  240. 坂井弘一

    坂井委員 これは重要な部分であります。確かでないということで済まされますか。これはちょっと調べればすぐわかることですよ。建設省は厳重に監査されたのです、かなりな期間をかけて。金を貸した三井不動産ははっきりしている。借りたほうもはっきりしている。しかも借りた金を返すこともはっきりしている。返したか返してないか、それがわからぬ、そんなばかな、でたらめな話はないでしょう。つまり返ってないのでしょう。林文爾氏の手元には行っています。三年間にわたり八千五百五十余万円林文爾氏の手元に行った、これは間違いないでしょう。協会はそう言っている。それじゃその金はというと、実は林文爾氏が長年にわたり個人が借金していたものを返済するのだ、そのために林文爾氏に協会の財産を担保として提供したのだというわけでありますから、当然返っていなければならぬはずであります。もしこれが返っていないとするならば、これはまさにこの時点ででも背任あるいは横領ということになりかねませんよ。返っておりますかおりませんか、それぐらいのことは確認できないはずはない。
  241. 大津留温

    ○大津留政府委員 協会に聞きますと、林と三井との関係は協会としては関知しないということでありますから、それは返ったかどうかはわかりませんという説明でございます。三井のほうに聞きますと、受け取っていない、こういうことでございますから、さだかでない、こういうわけでございます。
  242. 坂井弘一

    坂井委員 受け取っていない。三井不動産は少なくとも受け取っていないのです。三井不動産へ返しましょうと協会が理事会において決議をして、協会の財産を林文爾氏個人に提供した、その返済の金が債権者たる三井不動産には返っていない。これはどうなるのでしょうか。  それじゃ伺いますが、協会の言い分によれば、協会は林文爾氏に少なくとも八千五百五十万お返しをいたしております。それならば八千五百五十余万円を林文爾氏は三井不動産に返していますか、いませんか。
  243. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほどお答えしたとおりでございまして、三井不動産のほうに聞きますと、受け取っていないということでございます。
  244. 坂井弘一

    坂井委員 受け取っていない、とするならば、この時点に関して見る限りにおいては、林文爾氏個人の横領ですね。これは明確です。ただ、もっと複雑ですよ。  そこで、整理をして聞いていきますが、林文爾氏は三井不動産から現金で元金九千百四十三万余円を受け取って、そのうち千百八十余万円を個人で使って、残り七千九百五十八万余円は協会に貸し付けたのですか。
  245. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういうことでございます。
  246. 坂井弘一

    坂井委員 ずいぶんおかしなことになりましたですね。協会からも返ってないし、林文爾氏個人からも債権者たる三井不動産には返っていない、返済されていない。これはどうなりますか。少なくとも事実関係において、全く新しい債務として四十五年七月十日の時点で生じた、これは言えると思いますね。それを林文爾氏個人が現金で一応九千百四十三万余円を受け取った。そして協会に対しては七千九百五十八万余円を貸した。借りた協会は今度林文爾氏に対して年々返済をして、そして八千五百五十余万円を返したので、先ほど前段指摘いたしましたように、なお協会の林文爾氏に対する借金が三千六百四十九万四千三円ある、こういうことになりますね。いかがでしょう。
  247. 大津留温

    ○大津留政府委員 本年の四月一日現在の残高はお示しの数字のとおりでございます。ただ、ちょっと説明を加えさしていただきますと、四十四年の四月十日現在で三井不動産から林文爾氏が借りた金が一億二千七百三十三万余ございますが、これは実は昭和二十五、六年ごろからほぼ二十年近い期間にわたって、月々といいますか、何十万円ずつか継続して借りましたものの元利合計でございます。また林氏が協会に貸し付けたという金額も、長年にわたって月々何十万かずつ協会の費用に繰り入れたといいますか、そういう費用の累計でございます。したがいまして、四十四年あるいは四十五年に至ってこれらの多額の金額を一時に借りた、一時に貸したという関係ではございません。
  248. 坂井弘一

    坂井委員 長年にわたる林文爾氏個人の借金を返そうとした、これは先ほどの質疑の中ではっきりしていることですね。協会もそう言っているのだ。しかしそれが返ってないこと、これも事実なんです。これはずいぶんおかしいことではないか、これはだれが考えたって、子供に説明したってわかることですよ。だからいま官房長のおっしゃっていることは、協会と林文爾氏個人との関係の問題、きわめて不可解な動きもございますよ。いろんなやりくりをしようとしていることもわかっております。そういうような経緯の中で、かつまたこの協会がこれから健全な形で、文化住宅協会、公益法人としての本来の使命なり目的なりに従って事業が再開できるようにという希望すらも一面においてはあるでしょう。そういう中での御発言だとは思いますが、ただ、いま申し上げております私の質問の経緯を見ただけでも、公私混同というよりもむしろ協会ぐるみでこの協会、公益法人の財産を食いものにするようなことが平然と行なわれてきたということだけは、これは少なくとも事実であります。同時に、協会から出されました建設省に対する報告、これは建設省が監査なさった。監査なさったことに対して項目をあげて協会に対して正式な回答、報告を求めた。これは協会の建設省に対する報告です。これもおかしいですね。このままお認めになりますか。
  249. 大津留温

    ○大津留政府委員 建設省といたしましては、ただいまお示しのように、裁判の結果、たいへん高額な国の財産を取得するに至った、またさらに、長年にわたる使用料として数七億円のものが協会に支払われる、したがいましてこの団体の経理はいささかも不明朗な点があってはいかぬということで、三月以来監査をやったわけでございますが、その間におきましていろいろ疑問点、不審点を照会いたしまして、協会側の釈明といいますか説明を求めたものでございます。  私ども指摘いたしました不明朗といいますか明確を欠く点の一つが、先ほど来お示しの林個人の借入金に対して協会の財産を担保に入れている、しかも実質的に全額協会の費用に充てられたならまだしも、その一部は使途不明といいますか、林個人が消費したというかっこうになっておることであります。そういうものに対して協会の財産を担保に提供することはいかがかという問題指摘に対して、それは直ちに抹消の申し入れをします、こういうことでございますが、その経理が不明確といいますか、というのは、いまお示しのように、それじゃ協会が林個人に返済した金がそのまま債権者に渡っておれば、まあ問題は比較的ないと思うのです。それが、長年にわたって林個人に返済したにかかわらず、どうも三井のほうには返っていないらしい。その辺が私としてははなはだ不審といいますか、不明朗な一つの問題点であろうというので、なおいろいろな資料を求めて監査をまだ継続中でございまして、最終的な結論はまだ出ていないわけでございます。
  250. 坂井弘一

    坂井委員 官房長、説明されることは一応わかりますよ。わかりますけれども、私の言っていることは、白か黒か、きわめてはっきりした問題についてのみ言っているわけです。つまり返さなければならぬ、返済する金があるんだ。林個人の借金に対して協会もそれを認めて、だから協会の財産を担保として提供して返済いたしましょう。それが返済されてないのです。しかも今度は林個人が協会に金を貸し付けた。貸し付けた金はどこから来たかというと、四十五年当時の新しい債務ですよ。新しい債務の金、これは返済しなければいかぬ。そうじゃなくて、それもしないで、しかも新しく生じた債務をわざわざ協会は林から借りて、借りた協会がまた林に返済しておる。それなら受け取った林が、せめて以前の、最初の個人が借金したその借金を返済したというならまだ話はわかる。それもしていない。これはどうなりますか。こんなばかな、またこんなわかり切った横領、背任的な行為を、林個人を含めて協会ぐるみやっているということですよ。私はそれを言っているわけです。少なくとも二十八年から四十四年に至る十六年間で林個人の債務が、そしてまた別に新しく四十五年七月に生じた債務がある。この二つの債務のいずれか返されたのかといったら、どっちも返されていないということになったら、これは一体どうなりますか。あるいは二十八年から四十四年に至る林個人の債務については、林個人が別に返しておるかおらぬか、そこらのところまで触れる必要はない。それは別に差しおいたとしても、それならば、またこの協会の決議がおかしくなる。かつそれも返されていなければ、四十五年七月に生じた新しい債務に対しても返されていない。こんなばかげたことがまかり通っておるということです。  いささかこの背景を申しましょうか。  この林文爾専務は、協会にとっては大の功労者であります。つまり、長い裁判の過程においてこの協会をささえてきた唯一の功労者です。個人の財産も全部担保に入れています。裁判の費用に充てる金も借りた。一人突っぱってきているわけです。協会にしてみれば功労者であります。この林文爾氏個人が、しかし惜しむらく公私混淆です。金はどこへ使ったかわからぬ。しかし借金はある。この功労に対して何とか報いなければならぬというのは、あるいはこの協会の理事たちの考えでしょう。くれてやったか知りませんよ。いま少なくとも官房長がこの事実関係を、返しているか返していないか、三井不動産に確かめたら、返っていません。だったら横領じゃありませんか。背任じゃありませんか。それならば、そのことを承知の上で協会はあえて林文爾氏にくれてやったといわれてもいたし方ないじゃありませんか。まさにでたらめなことはいま申し上げたようなことでございますが、林文爾氏個人が法人の財産を借り受ける行為、これはまさに、この事件の経緯を追う限りにおいて、法人の財産の私物化ですね。これは許されないと思うのです。個人が金を持って逃げてしまったなら、法人に大なる損害を与え、法人の基盤を危うくする。しかも林文爾氏個人には担保能力、担保財産はすでにない。そのことがわかりながら林文爾氏個人に協会の財産を提供した。そして、出た金は返っていない。何たることでしょう。一方、三井不動産に言わしめれば、私のほうは協会という公益法人に貸したのである、そう言っておる。それが林個人、そういう形になっている。登記簿謄本によれば、明確に杉並区阿佐谷北二丁目九番十号林文爾、つまり個人です。それで協会は個人の借金の返済のために協会の財産を担保として提供した。しかも、少なくとも協会は損害を生じておりますよ。先ほどの千数百万も損害です。まだあります。これは背任行為じゃありませんか。林文爾氏から三井へは金は返されていない。背任行為だと私は思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  251. 大津留温

    ○大津留政府委員 はなはだ明朗を欠く経理でございまして、私どもの監査におきましても、この点が一番問題になったわけでございますが、はたして刑事上の問題になるのかどうか、まだそこまでのところ、ちょっと私どもとしてもわかりません。一応われわれとしましては、協会の財産である武蔵野市にある土地、それとこれから国から支払われるであろう数十億の現金、これらのものがいま御指摘がありましたような不明朗な、個人か協会かわからぬような借金の返済に回されるということのないように最も警戒せねばならぬ、その点は阻止せねばならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  252. 坂井弘一

    坂井委員 ずいぶん手ぬるいですね、官房長。そんなことで済むのですか。あなたのほうは少なくとも監督官庁ですよ。林文爾氏個人は千百万というのをポケットしていますよ、協会の言い分が事実であるとすれば。一方、協会においては、協会の財産を担保として林に提供して、返さなければならぬ金が返っていませんよ。こんな明らかな事実を前にして、明朗とかどうとかという問題じゃないでしょう。私は横領か背任かということを言っておるわけです。あなた方がお調べになった範囲でもそのくらいのことはわかるはずなんです。何をおっしゃいますか。こんなことが、今後明朗に、それで済まされますか、済ましていいことですか。公益法人の財産です。それを担保にして個人が金を借りるのです。まあそこまできちっと手続が踏まれておれば、それは民法上の行為としては許されるかもしれない。しかし一方、その金が返されないとすれば、刑事上の事件でしょう、明確に。いままでの事実関係においてもそのことは少なくともはっきりしているわけなんです。それに対しては、私の、背任行為であろう、横領であるといわれてもしかたないんじゃないかという質問に対して、明朗に処理されたら、そんな答弁でいいですか。いかがです。
  253. 大津留温

    ○大津留政府委員 この協会はたいへんいわくのある協会でございまして、私どもとしても監督の立場からたいへん苦心しておるところでございます。お示しのように協会のためという認識のもとに借りた金の一部、一部と申しましても天金でございますが、これが協会のために使われていない、これはたいへんな問題でございます。また同様に、多額の金が林個人に渡されたけれども、それが理事者の手に渡っていない、これもたいへん問題であります。しかし、私どもといたしましては、はなはだ監督権が微力でございまして、協会の業務の範囲外だ、それは個人の貸借関係だというふうに弁明されますと、それ以上は法人の監督権としての手は及ばない。まあたいへん不明朗、何かいわくがあるじゃないかという気はいたしますけれども、それはひとつまた別の方面のお力をかりなければ、監督官庁としての監督力ではそこまでは手が及ばないというのが、はなはだ残念かつ申しわけないのですが、実情でございます。
  254. 坂井弘一

    坂井委員 では、私は建設省の立場に立ってあえて了解いたしましょう。つまり、建設省としては、この問題の解明をやりたいけれども、それだけの権限を持たない、捜査権も持たない。向こうが個人と言っている限りにおいては、その個人の金も、協会の財産を担保にしているわけでありますし、法人の金であるか個人の金であるか、それすらもわからない。しかしながら、個人と言っているんだから、それまで踏み入るわけにいかないという建設省の権限のない立場からして、他の権限のあるところに協力をというならば、これはそれなりに私は了解したいと思う。ただ、しかし、建設省にここで申し上げたいのは、このような協会のための金であるならば、理事会において決議をして協会が借りるのが通常これは当然なんですね。それがなされていない。ここから問題があるわけです。なぜそういうことをしなければならなかったのかというところに問題がある。そこから横領なり背任的行為あるいは背任行為が起こってきているということであります。個人の借金返済のために協会の財産を担保として提供することを協会自体が認めるという、こういう協会、公益法人のでたらめさ、資格のなさ、能力のなさ、こういう行為は法人の目的以外の行為でもありますし、あるいは設立の目的にも反する。あるいは広義な解釈になるかもしれませんけれども、これは公益を害する行為にも該当するのではないか。したがって、民法七十一条の規定によって、監督官庁の建設省は許可の取り消しをしたらどうですか。
  255. 大津留温

    ○大津留政府委員 ただいま監査の結果をいろいろまとめ中、かつ不足分はさらに監査を続けますが、その結論に基づきましてしかるべき措置をとりたいというふうに考えております。
  256. 坂井弘一

    坂井委員 後段の部分をもう一回おっしゃってください。
  257. 大津留温

    ○大津留政府委員 監査の結果が明確になりました段階で建設大臣の監督権に基づいたしかるべき措置をとりたいと考えております。
  258. 坂井弘一

    坂井委員 建設省は主務監督官庁として、どうか判官びいきの裁定などをしないように。これは国民の意思に反します。私は、いまのような経緯、内容からいたしましても、当然これは解散に値する、こう判断いたしております。建設省が今日まで、長い期間になりますけれども、監査もあまりやっていらっしゃらなかった。今日においてようやく監査を始めた。そしていまは厳重にかつきわめて慎重に監査をされておる。そのことに対しては何もとやかく難くせをつけるつもりは毛頭ありません。ありませんが、しかしながら、これは一建設省にとどまらず、大蔵省も関係するでしょう、あるいは国自体の問題かもしれません。少なくとも私は前回の委員会において、この国有地がいかなる方法あるいはいかなる目的――目的というよりもいかなる意図によって文化住宅協会の手に帰したか。そしてこの文化住宅協会の手に帰した元国有財産が、今日時価にいたしまして五十五億とも六十億ともいわれる。取得した価格はわずかに四百八十万。これは裁判の経緯もあることですからやむを得ないといたしましても、この時点においてでも国民感情としては許せません。しかも、いまにしてこの公益法人の財産を食いものにしたような形で一部の連中が利得をほしいままにしているような行為、しかもその利得たるや、まさに背任的行為あるいは背任行為あるいは横領、そういう形があらわれておる。これはまことにもって嘆かわしい限りです。大臣、一ぺんごらんいただきたい。これは協会の収支元帳なんです。金額と書いてあるけれども、何にも書いてない。摘要、何にもないのです。ただこれだけ。全部そうです。でたらめきわまりますね。驚きました。これがはたして公益法人でしょうか。建設省は一体何を監査し、何を監督してきたのか、そう言いたくなりますよ。少なくとも小さいものじゃないのです。二万三千坪からあるのです。それが元国有地なんです。しかも国有地は長年の裁判によって今日まで係争を続けてきた。ようやく結審は得たけれども、さらに借料の問題でもって国に百五十億という要求が来ておる。八王子地裁においては百五十億の要求を認めるという裁判を下しておりますね。大蔵省は頭をかかえ込んでおる。にっちもさっちもいかぬ。武蔵野市ではどういうことが起こっておるか。八十六団体もの団体が、この国有地は一体何事か、どういうことになっているのだ。日本一の過密都市である武蔵野市議会等におきましても、市をあげて何とかこれを武蔵野市に払い下げしてほしいというような声も起こっておるのです。いまさらここに住宅を建てられたのではたまったものではない。緑地がほしい、公園がほしい、あるいは一部周辺の住民の中には、間もなくこれが武蔵野市に自然の形で返ってくるだろう、そう思って期待しておる。そういう中でこういうようなでたらめが行なわれてきたということは、断じて許しがたい行為だといわざるを得ないわけであります。経理の内容にいたしましても、このとおり何にもない。  そこで、警察庁に具体的にお尋ねいたしますけれども、私は、少なくとも官房長の答弁にもありましたこれは、警察庁としては当然捜査に乗り出すべきであると思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  259. 小林朴

    小林説明員 警察のほうといたしましては、いままでそういう経理の内容等把握しておりませんので、役員のそういう行為につきまして、犯罪の容疑があれば当然捜査をするということになろうかと思います。
  260. 坂井弘一

    坂井委員 容疑があれば捜査をすることになろうかと思うということは、いま私が官房長との間で明らかにしてまいりましたそういう具体的な事実、内容等をもって捜査に踏み切るという御判断になりますか。
  261. 小林朴

    小林説明員 いまのお話を聞いておる限りにおきましては、私のほうもそういう背任とか横領の容疑があるいはあるのではないかと思いますけれども犯罪捜査というのは、事実を明らかにした上で何罪に該当するのだろうかというような逆の考え方になるものですから、そういう答え方をしたわけでございますけれども、当然状況というものを調べた上で、それが犯罪になるのかならぬのかという形の判断をする、こういうことでございます。
  262. 坂井弘一

    坂井委員 それでは少なくとも調査はする、こういうことに解してよろしゅうございますか。
  263. 小林朴

    小林説明員 一応そういうことになろうかと思います。
  264. 坂井弘一

    坂井委員 大臣、最後にお尋ねして質問を終わりたいと思いますけれども、つまりいま申し上げましたような経緯あるいは内容であります。かなり具体的に数字をあげて申し上げました。そこでやはり結論的には建設省といたしましては捜査権を持ちません。事実の解明をしたいということでもって、いま盛んに監査をやっていらっしゃるようであります。悲しいかな、その内部あるいはなお具体的な事実関係等については調査できがたい、調査することができない、監査することができない、そういう状況に置かれているということでありますね。したがって、建設省としてはそれは他の機関、つまり警察庁でありましょう、協力していただけるならば協力を求めたい、こういう趣旨の発言があったわけでありまして、それを受けまして、ただいま警察庁は、一応捜査に踏み切れるかどうか、その前段として調査をいたすということでありますから、私は願わくは、これほど内容等においてもきわめて好ましからざる問題を具体的に含んでおる、しかもこれは公益法人である、であるならば国がみずからこうした問題に対しては徹底したメスを入れる、内容を具体的に調査し、あるいは捜査をして、捜査の面でも協力をいたしまして、そうして疑惑を晴らす、そこにおいて初めて明朗なものが生まれると思う。いまの段階で、明朗な形、くさいものにはふたをしてこのままやっていくのが明朗である、決してそうではないと私は思うわけです。問題を具体的につまびらかにした上で、はたしてこれが横領であるか、背任であるか、それは一にかかって警察捜査に待たなければこれは解明できがたいことである。したがって、そういう意味におきまして、どうか公安委員長、大臣は全く前向きの姿勢でもって、きびしく厳正にこの問題に対する解明に乗り出していただきたい。公安委員長のひとつ御決意なり御見解を承りたいと思います。
  265. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私もこの事件につきましては先ごろの新聞で実は承知した範囲でございまして、具体的には、きょう坂井さんの御質問で、世の中にふしぎなことがあるものだといささか奇異の感に打たれております。公益法人、しかもその基本財産が国有財産であったということ、しかもまた長年の係争があって、国がすでに賠償を払うという付録までついているわけですね。しかしこれは建設省が厳正公平に監査をしておるわけであります。したがって警察側がいま直ちにどうするかということについては、よくよく、これは同じ政府ですから、建設省と十分連絡をとりまして、いま参事官が申し上げましたように、かりそめにも背任、横領の疑いあり、また監査の結果そういう事態があるという場合においては、これは厳正な捜査をして決着をつけなければならぬというふうに考えます。建設省と十分打ち合わせの上対処いたしたいと思います。
  266. 坂井弘一

    坂井委員 時間が経過いたしましたので終わりますが、最後に建設省にひとつ資料の要求をいたしたい。今日までの監査の具体的な詳細な、おつかみになった範囲でもちろんけっこうでございますが、資料を要求いたして、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  267. 宇都宮徳馬

  268. 折小野良一

    ○折小野委員 私は道路交通法の問題に関連をして御質問を申し上げたい、こういうふうに考えておったのでございますが、たまたま私が御質問をしようと思っておりました点に関連をいたしまして、けさの新聞にちょっと事件が起こっております。これはろうあ者に対する運転免許証を偽造いたしまして、これを十万円で売りつける、こういうような詐欺グループが京都にあるということがわかって、そうして一部関係者を全国に指名手配をした、こういうことでございます。今日までも関西を中心にいたしまして、ろうあ者がその偽造の運転免許証を持って運転をしておった、こういうのが幾つかあがっておるようであります。こういう問題を見まして感じますことは、身障者を種にした詐欺というのはまことに悪質であるというふうに感じますし、また、ろうあ者には現在道路交通法によって運転免許は与えられない、こういうことになっているわけでございます。案外こういうような詐欺に簡単にだまされて、それによって運転をする者があるのだなということを知ったわけであります。それから次には、こういうふうにろうあ者が偽造の運転免許証でございますが、これを持ってあっちこっち運転をしておるという事実があるということ、すなわちろうあ者といえどもスピード違反で検挙されるというような運転がわりあい容易にできるのだな、こういうようなことを感じたわけでございます。この問題につきまして、京都の府警のほうで指名手配したというのは昨日のことのようでございますが、警察庁としての御見解をまず承っておきたいと存じます。
  269. 片岡誠

    ○片岡政府委員 ろうあ者のいまの当該事件につきましては、現在捜査を続けておりますし、捜査を厳正にやりまして、その事実の解明をやり、ろうあ者を食いものにするような人に対する追及はきびしくやってまいりたいと思っております。おそらく先生のおっしゃっておりますのは、ろうあ者に対する運転免許の交付の問題についての警察庁としての基本的な考え方を尋ねておられることだと思いますので、それについてお答えをいたしたいと思います。  道交法では、一般的にはろうあ者、耳が聞こえない者、または口がきけない者に対しては運転免許の欠格条項になっておるのは御承知のとおりでございます。しかしながら広い意味でろうあ者といわれている方に難聴の方も含めていわれておる場合があろうかと思います。そういう意味で私どもとしましては、完全に耳が聞こえない方に対しては免許証を与えるわけにいかないというたてまえをとっておりますけれども、しかし道路交通法の施行規則の第二十三条に規定しております聴力の検査方法、これは御承知のように、十メートル離れたところで九〇ホンの警音器の音が聞こえるという検査でございますが、その検査をして、それに合格すれば、たとえ日常の会話にやや不自由な者でございましても、運転免許証の適格者として取り扱うという前向きの姿勢に昨年から踏み切りまして、現在そのような方針でやっておるわけでございます。
  270. 折小野良一

    ○折小野委員 この事件の取り扱いにつきましては、警察庁のお考えで十分な対策が講ぜられると思いますが、この裏にありますいま御説明になったろうあ者の問題でございます。これは道路交通法の第八十八条に免許の欠格事由ということで掲げられております。この第一項の第二号に精神病者その他ございますが、その一番下に「口がきけない者」というふうにありますが、「口がきけない者」というのはどういうことで運転免許を交付するのに欠格の原因になるのか、御説明願いたいと思います。
  271. 片岡誠

    ○片岡政府委員 通常の場合にろうあ者と申しました場合に、耳が聞こえないために口もきけないという類型でこういうことになったのではないかと私ども思っておりますけれども、この規定について私自身も若干疑問を持っております。立案の当初からのいきさつを聞いておりますと、口がきけない者を欠格条項としている理由としては、警察官が指示をしたり何かするときに応答ができないという以外に理由が発見できないのでございます。そういう点で耳の聞こえない人と口のきけない人との場合には相当事情の相違があるのではないかという疑問を私自身も持っております。これは今後の問題としていろいろ検討をすべき問題だというふうに考えております。
  272. 折小野良一

    ○折小野委員 実は私もろうあ者の問題についていろいろ調べておりましたところが、この規定で、いまおっしゃったように「耳がきこえない者又は口がきけない者」こういうふうに並列してあるわけであります。私も医学的な知識もございませんからよくわかりませんが、口がきけないだけで耳は聞こえるという者もあるはずであると思います。そういう人もこの規定によりまして絶対的に免許が受けられない。これはやはり不合理じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  それから、その上の「耳がきこえない者」、これも先ほど来お話がございましたが、いろいろと程度もあることでございます。ですから、こういう面については法制上ももう少し考える必要があるのじゃなかろうかというふうに考えますが、そういう点につきましては、警察庁としてはいままでいろいろと御検討なさったことはございませんのでしょうか。
  273. 片岡誠

    ○片岡政府委員 先ほども申しましたように、昨年くらいまでは相当きびしく厳格に法律を解釈しておったようでございます。私自身も、先生いま御指摘のように、この法律そのものに若干疑問を感じております。したがいまして、とりあえずの措置として、先ほど申しましたように、絶対的な欠格要件だけではなくして、相対的な問題として、十メートル離れたところで九〇ホンの警音器の音が聞こえるというテストをやりまして、それで実は県によって、その結果相当数の人、たとえば福岡県の例でございますけれども一般の難聴者といわれている方のうちの約六五%くらいがこの試験の結果合格したという事例も出始めております。先般、この四日に全国交通部長会議もやったわけでございますが、まだそこまで進んでいない県もございますので、早く難聴者に対する対策をもっとやれという指示をしたばかりでございます。
  274. 折小野良一

    ○折小野委員 さらに、この問題につきまして、現実にはやはり耳が聞こえない、したがって口がきけないという世間でいいますいわゆるろうあ者、これが一番この問題の対象になろうかと思っております。しかし、先ほどの新聞にも発表されましたこの事件等を見ましても、案外ろうあ者があっちこっちで運転をいたしまして、つかまったり、あるいはスピード違反でやられたり、こういうような事例があるように見受けられるわけであります。と申しますことは、いわゆるろうあ者といわれる人、これにももちろん特に耳が聞こえない程度というものがいろいろあろうと思いますけれども、そういう人も案外運転はうまくできるのじゃなかろうか。ただ、そういう人たちが実際は運転の試験を受けておりませんので、道路交通法等についての勉強もしていない、あるいはまた正しい運転法についての訓練も受けていない、こういうことのためにいろいろと事故を起こしている面もございますが、本来ろうあ者というものが必ずしも運転免許の欠格条項に当てはまるのだというふうに言ってしまえない面があるのじゃなかろうかというふうに感ずるわけであります。  その点につきましては、従来、自動車の運転に関しましては、これを取り締まるということが重点でございまして、文明の利器としての自動車をもっと有効に使う、こういう面に配慮がなかった、あるいはまたそういう面があまり考えられなかった、そういう時代につくられた法律であるということにも問題があるのじゃなかろうかと考えております。特に最近、身体障害者の関係におきましては、その生活を守るという立場からいたしまして、できるだけ運転免許を与えてやりたい、もちろんそれにはいろいろな問題があるにしましても、その問題は克服して運転免許を与えるべきじゃないか、こういうような意向もだんだん出てまいっておるというようなことでございます。特に普通のいわゆる肢体不自由者、障害者、こういうような方々につきましては、車の運転免許を与えることによってその人が一人前の社会生活ができるというような面もございます。ろうあ者等につきましても、やはりそういう面の考慮というものも今後なすべきじゃなかろうか。もちろん、だからといって、いいかげんな運転でいい、あるいはいいかげんなことで免許を与えていいということでは決してありません。そういう面は厳格にやってまいらなければなりませんが、しかしながら、そういう心身障害者の生活権というものを考えますと、一定の制限のもとにおいてでも何とかそういう利便を与えてやるということは大切なことじゃなかろうかというふうに考えます。そういう点につきましては、特に道路交通法を執行される立場にある警察庁として基本的にどういうふうにお考えになっておるのか、その辺の基本的な考え方をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  275. 片岡誠

    ○片岡政府委員 私のところにもろうあ者の方々がたびたびおいでになります。いろいろお話も承っております。私どもがろうあ者の団体の方々にもお話いたしておりますのは、とりあえず昨年から踏み切ったこの措置で、難聴者といわれておる方々に対して試験をして免許証を与える、そしてその結果の追跡調査をいまやり始めております。そして難聴者の方でも安全に運転ができるという確信が持てれば、またさらにもう一歩進んでいくというやり方で、前向きではございますけれども、漸進的に安全を考えながらやってまいりたいというのが基本的な態度でございます。
  276. 折小野良一

    ○折小野委員 その問題に関しまして、すでに御存じかと思いますが、ろうあ者が運転をいたしました事故が裁判の問題になりまして、昭和四十六年にこれに対する立教大学の豊原教授の鑑定書というのが出ております。この鑑定書等を見てまいりますと、いろいろと問題はございますが、やりようによってはろうあ者に対しましても運転免許を与えてもいいのじゃないか、これに対してはいろいろな対策というものが必要だということはもちろんでございます。その鑑定書の中には、アメリカ等におきましては、十分こういう面について関心も高く、またいろいろな特殊な対策も講じて、そうしてろうあ者に対しましても一定の条件のもとに免許を与える、こういうような制度が確立をされておる、こういうふうに聞いておるわけでございます。したがって、先ほど前向きに検討したいということでございますが、これにつきましてはいろいろと困難な問題もあろうかというふうに考えられるわけでございますが、やる気になるならばその克服も困難でない、こういうこともいわれております。したがって、心身障害者に対する一つの福祉というような立場からもひとつ十分御検討をいただきまして、交通事故による被害というようなものをなくすと同時に、こういう関係者の社会福祉というものにつきましても十分な配慮が願いたいというふうに考えております。  次に、交通問題に関連をいたしまして、各都道府県あるいは市町村に広く交通安全協会というような民間の組織が設置をされまして、そして交通の事故防止、市民ぐるみといいますか、そういうような形でいろいろと活動がされておる、これは非常にけっこうなことだというふうに考えております。今日、モータリゼーション時代にあたりまして、その取り締まり警察だけにまかしておくということはできないことでございますので、お互いの問題として事故をなくしていくというような努力をしていくことは当然かと考えます。  その交通安全協会に関してでございますが、いわゆる民主的な組織ということでございますけれども警察交通取り締まりときわめて密接な関連のある組織でございます。したがって、警察のいろいろな行動と、ある場合におきましては同じような目で見られる、こういうようなこともありまして、その運営よろしきを得ないものにつきまして市民からいろいろと苦情が出る、こういうような面もあるわけでございます。たとえば、運転免許試験を通りまして免許証の交付を受ける、直ちに交通安全協会の会費を同時に払わせられる、そうしてそれが一部の人たちによって使われておるのじゃないか、あるいはまた、その交通安全協会に働いておる人は前に警察に働いておった人である、したがって警察は、結局退職警察官の職あるいは退職警察官の生活のために交通安全協会というものを利用しているのじゃないか、こういうような誤解がなされるというような例も私ども聞くわけでございます。警察庁として、そういう交通安全協会というようなものに対する指導と申しますか、そういう面についてのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  277. 片岡誠

    ○片岡政府委員 先生指摘のように、交通安全協会には大きく分けて三段階があると思います。全日本交通安全協会という全国的な組織、それから各府県単位府県の交通安全協会、それから第一線の警察署中心とした地区の交通安全協会、大体この三種類に分けられると思います。全国の交通安全協会あるいは府県単位の交通安全協会は、主としていろいろな事業をやりますその事業による収入と、それから国または府県からの補助金といったような財政的な基礎で運営されておりますので、比較的問題は少ないと思います。問題があるとすれば、やはり警察署単位にございます地区の安全協会の問題が、地域住民とも一番密接でありますだけに問題が多いのではないか。その地区の安全協会の問題でございますが、これは御指摘がございましたように、多くの協会の場合に、会費、これは地区によって異なると思いますけれども、大体全国平均的に見ますと、ちょうど更新のときに三年分として大体三百円程度の会費をとっている例が多いと思いますが、そういう会費と特定の方々の寄付によって運営されていると思います。そのときに、問題は、会費はとられるけれども反対給付がないと申しますか、あるいは何をしているのかよくわからないという不満が会員の中から出る場合が間々ございます。それに対して私どもは、やっている活動をその会員に十分報告するなり趣旨を徹底していくということによって、あるいはその会計の報告もするということによって経理内容も明確にすると同時に、活動し、あるいはその会員に役立つ反対給付と申しますか、そういうことをすることによって、お互いに交通安全のためにやるのだ、地域住民の組織としての活動を強化していくという方向にやるべきだという指導をいたしておるわけでございます。
  278. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう面で指導がなされておるとは思いますが、しかし、末端に参りますと、必ずしもいまおっしゃったような形で運営されておるとは限らないわけでございます。何といっても民主的な組織でございますから、それぞれ加入は自由でなければならない。ところが、免許証をもらったら即座に会費を取られる。入りますか、入りませんかというようなこともなしに、頭から会費を取られる、こういうようなこと等がやはり不満の原因になっておるわけでございます。やはり民主的な組織であればあるだけに、そういう手続というものは一応やっていただく、会計報告等ももちろんでございます、そういうことがございませんと、活動の内容というものが多くの市民に直ちにわかるわけのものではございませんので、とかくいろいろな批判が出がちである。そうすると、それはただ単に協会に対する批判ということでなくて、その裏にある警察に対する不信というものにつながっていく、こういうことになるわけでございます。全国の協会に対する指導、いろいろとたいへんだとは思いますが、やはりそういう面は、今後の警察行政を正しくそして効果的に運営していくためにはたいへん必要なことじゃなかろうかというふうに考えますので、十分気をつけていただきたいと思います。  それから、ただいま御答弁はございませんでしたが、職員の問題なんです。よく問題になりますのが高級公務員の天下りということであります。しかしながら、高級公務員でなくとも、やはり警察官というのはその在職中に一つの大きな権限を持って仕事を行なう、こういう立場にあるわけでございます。したがって、その警察官警察をやめたあとにいろいろなところに出ていく、専門家を必要に応じて雇用する、これはもう当然なことでございますので、それをとめるということはできません。しかし、それもよほど考えませんと国民の疑惑を招く原因になろうかと思います。交通安全協会の職員というようなものはたいてい警察におった人なんであります。そういうような人が学識経験者であることは間違いないわけでございまして、その限りにおいて問題はないわけでございますが、警察が、ある警察官をやめてもらう、そうした場合のあとの職に交通安全協会に押し込むとか、こういうような形が見られる。それからまた、退職警察官が各地の民間自動車学校等に出ていく、これも当然その道の専門家であったわけでございますから、その能力を買われてということでありますならば、その限りにおいては別に問題はないわけであります。しかし、それぞれの自動車学校というのはやはり警察の監督指導のもとに仕事を運営しておる。といたしますと、警察からこの人を採ってくれと言われると、いやとはなかなか言えない。こういうような面もありますし、また場合によっては警察からの要求によって人を入れておけば、今後自動車学校の運営について何とか配慮してもらえるのじゃないかというような気持ちもなきにしもあらず。またそういうことをはたから見ますと、警察との間のいろいろなつながりがあるのじゃないかというような目で見られる、こういうようなこと等も出てくるわけでございます。したがって、ただ単に高級公務員の天下りということだけでなしに、やはり警察という一つの権限を持ったところにつきましては、そのあと警察官の就職というような面につきましても、慎重な配慮というものがなされなければならぬじゃないかというふうに考えます。そういうような点について、かねてどういうふうに御指導なさっておるか、大体の方針などお聞かせいただけるとありがたいと思います。
  279. 片岡誠

    ○片岡政府委員 御指摘のとおり、交通安全協会あるいは指定自動車教習所の管理者その他の職員として退職警察官が相当数入っておるのは事実でございます。また大部分のそういう退職警察官は、警察一筋に参ったあとで社会公共性のある仕事に従事して生きがいを感じてやっておると思います。しかしときたま、人を得なかったためにトラブルが起こったり、あるいは安全協会の場合に必ずしも地域住民とうまくいかなかったり、あるいは指定教習所で設置者あるいはその他の職員とうまくいかないという事例がございます。しかし、それはごく少ない例であって、大部分のOBの警察官は生きがいを感じて第二の人生として働いているというふうに私は思っております。  問題は、やはり人選を誤らないように各府県の本部長なり交通部長がやっていくということにポイントがあるのじゃないかということで、そういう点十分注意して人を得るようにという指導をいままでもしておりますし、今後もしてまいりたいと思います。
  280. 折小野良一

    ○折小野委員 現在の公務員の処遇からいたしまして、一つの職場をやめたからといって、それから先の生涯を安穏に暮らせる、こういうような状態にはございません。したがって、警察官といえども同様なことでございますので、やめていく警察官に対して就職の世話をするとか、そういうような面にまことに親身になってやっていただく、こういうことは大切なことだと思います。  一方、警察の業務というものは、やはり国民の信頼の上に立っておらなければ十分な効果をあげることができないわけであります。数少ない例であったにいたしましても、そういうような具体的な例がなかったにいたしましても、警察に対して不信感を持つ、あるいは口には出さないがいろいろな不満というものを感ずる、こういうような国民の声が高まってまいりますと、これは警察行政にとってもゆゆしい問題だというふうに考えます。したがって、そういう面には慎重の上にも慎重に対処していただくことが特に必要であるというふうに考えております。当然そういうふうにお考えになっておられると思いますので、そういう面の対策に十分気をつけていただくようにお願いをしたいと思います。  それからさらに、交通事故の問題についてですが、これは直接の原因は、非常に事故が多くなっておる、したがって、そのすべてを裁判にかけるということは非常に繁雑になる、罰金制度の簡素化というような当面の理由もあって、いわゆる反則金制度というものができてまいりました。この反則金の制度ができましてから今日まで、いろいろと注意をして、はたしてこれによって十分な交通安全の効果があがるのかどうか、こういうような面について見てきておられるのだというふうに考えております。反則金の制度につきましては、端的に言って罰金制度の簡素化という面もありますが、しかしまた交通安全のための指導という面もなければならないのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、そういう点について、警察庁当事者といたしまして、指導性ということと、あるいは罰金を簡素化して取るのだということと、大体どういうような比重でお考えになっておるのか、そういう点のお考えをちょっとお聞きしておきたいと思います。
  281. 片岡誠

    ○片岡政府委員 御承知のとおり、交通反則制度といいますのは、当時、交通違反取り締まりによって罰金を取られる人が多くなって、一億総前科になるのじゃないかという問題もありました。そして運転をしておる限り、善意の運転者であっても、ときどきちょっとしたミスで違反をするというような違反もございます。そういうことで、軽微な違反についてはそれなりに罰金ということでなくて軽く、しかし重い違反、悪質な違反についてはきびしくやる、そういうふるい分けをする必要があるのではないかという考え方もございます。そういうことで定型、明白、現認の違反については反則制度にのせるという、軽微で定型、明白、現認というのでああいう制度をつくったわけでございます。その後この制度が相当国民の間に定着をいたしてまいったと思います。ただ私どもは、罰金ではなくても、やはり反則金として一定の金額の納付義務が生ずるわけでございますから、その点ですべてを検挙するというやり方ではなくて、できるだけ軽微な違反については、マイクを使ったりあるいは口頭で、これを見のがすことなく注意、警告をしていくという基本姿勢をとっております。その辺で内部で一定の基準をつくって運営はしておりますけれども、できるだけ注意、警告はしていく、そして悪質な違反についてはきびしく検挙していく、それで多くのドライバーに、罰金を取られて喜ぶドライバーもないと思いますけれども、やはり自分が悪かったのだ、やむを得ないという気持ちを持ってもらえるところまで納得のいく取り締まりをやるという基本的な方針でいまやっております。
  282. 折小野良一

    ○折小野委員 この交通反則金の問題はいまお話しのような経緯からできたわけでございますが、やはり指導性といいますか、これを無視することができないと思うのです。私が現に聞いておりますその担当者あたりの意見によりましても、それぞれの警察署の意見によりまして、反則金制度を厳密に解釈するのがいいのか、あるいはもっと指導性のほうを大きく取り入れて、そして反則金というものは副次的に考えたほうがいいのか、こういうようなことでいろいろと検討しておられるようでございます。それによって成果があがったとか、あるいはまたこういうふうに方針を変えなければいかぬとか、いろいろあろうと思います。それはそれなりでけっこうでございまして、本来の目的は、少なくも交通事故というものをなくしていく、交通安全のためにということでございます。しかし、そういうようなそれぞれの運営によりましてこの制度の運用が不公平なものになる、あるいは恣意的なものになるということにつきましては、やはり注意をしていくべきではなかろうかというふうに考えます。決算あたりでも、それぞれこまかに分析されますと、どこについては反則金の上がりがどうだ、どこがどうだ、これを比較してみると、それぞれの指導のしかたというものがある程度判断されるとか、こういうような検討のしかたもいろいろあろうかと思います。  時間も参りましたので、その辺ひとつ十分やっていただきますようにお願いして、私は質問を終わります。
  283. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 先ほど芳賀委員から食管法違反に関する質問がございましたが、本日午後三時、食管法違反のかどで丸紅が起訴されたとのことであります。  この際、食糧庁森総務部長から丸紅に対する措置について発言を求めます。森総務部長。
  284. 森整治

    ○森説明員 本日三時に水戸の地検から株式会社丸紅、それから茨城県の茨城県主要食糧集荷指定商業協同組合の二法人と、丸紅本社の春日副部長外六人の起訴が発表されました。  かねてから私どももいろいろあわせて行政上の措置につきまして検討をいたしてまいりましたが、司法当局の捜査が終結する段階になってきておる事態にかんがみまして、食糧庁といたしましても、本日先刻、丸紅株式会社に対しまして、次のような行政上の措置をとることを決定しまして、通知をいたした次第でございます。  一つは、米穀の輸出入業務につきましてでございますが、外国産の米穀の売り渡しの申し込みと輸出用米穀の代行及び買い受けの申し込みにつきまして、来年の三月末までの間はその受付を停止する。その結果、すでに四月十八日以降自発的にといいますか、同社が受付を辞退している期間を通算いたしますと、おおむね一年間受付の停止ということに相なるわけでございます。  それから二番目に、麦の輸入の業務につきましては、外国産の麦、飼料用の麦を含みますが、これの売り渡しの申し込みは七月末までの間受付を停止させる。その結果、同社が辞退しております従来の期間と通算いたしますと、三カ月余の停止となるわけでございます。  以上の措置を丸紅の本社に対しまして通知いたしましたことを御報告を申し上げます。
  285. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会