○久米
参考人 阪大の久米でございます。
一番初めに、私きょうここへ参りまして、実は
公聴会のことですから現地の
住民の方がもう少しおられるかと思ったのですが、われわれ
専門家ばかりのようですので、こういう点は今後やられるときには
委員会でぜひ考慮していただきたいと
思います。
公聴会について一番利害を持っておるのはわれわれ
専門家ではないわけですから。実はいままで政府が
公聴会を全然やってこられなかったことについての恨みつらみが
住民の方の中に蓄積しております。そういう方の御
意見を聞いていただければ、いまの
日本の
原子力行政のあり方が非常にはっきりしてくると
思いますので、それを一番初めにお願いします。
私が話しますのは、御存じの方もあると
思いますけれ
ども、私は伊方の行政訴訟でいろいろ
住民の方のお手伝いをしてまいりました。そういうことで、いまの
日本の
原子力行政のあり方についていろいろ疑問を感じておりますので、そういう
立場から
意見を述べさせていただきたいと
思います。
それで、いま
原先生のほうから、むしろ
公聴会の
前提というようなものについての御質問がありました。実は私、この
委員会に
参考人として出るようにという招請を受けたのでございますけれ
ども、一番困ったのはその問題でございまして、これまで各地でいろいろ
住民の皆さんと接触してきました私の経験では、もはや
公聴会というものでもって今日の事態を救うことはできないのではないかという疑念が非常にございまして、お呼びいただいた
先生方にも、私はどうも
公聴会についての
意見を述べるのには不適格であると辞退したのでございますけれ
ども、そういう
意見も一回言ってくれということでございますのであえて出てまいりました。
私の
考えでは、
原発の危険性というのはますます明らかになってきていると
思います。これは世上いわゆる一般の方は、技術は時間とともにだんだん進んでくる、危険なものがだんだんと安全になってくるというふうな常識を持っておられますが、
原発の場合は、もうすでに先ほどからいろいろ
指摘されておりますように、事態は全くあべこべでございまして、進めば進むほどいままでわからなかったことがどんどんはっきりしてきておるという状態でございます。それで、現地の
住民の疑問は一点です。そんなに安全なものであるならば、どうして自分たちのような過疎地に持ってくるのか、どうして大阪や東京の近所に持っていかないのかという、この疑問が各地に共通した疑問であります。
日本の
原発の
実用化が始まって数年になりますが、いまだに
専門家はそれに
一言も答えることができないのです。
専門家もそうですし、行政当局もこれに対しては一日も答えられないという
状況ですし、ますますそれが答えにくくなってきているという現状を議員の皆さんはぜひ察知していただきたいと
思います。
たとえば、技術が進んでくると大都市接近は可能である、これは私が数年前から、各地でいわゆる賛成派の学者の皆さんともいろんな講演会なんかをいたしましたが、そのとき異口同音にそういうことを言われた。私のような心配をしておるのは、あれは科学に対する信頼が足らぬのであって、そんなことはないのだ、技術が進めばそのうちに大阪や東京、いまはちょっとぐあい悪いのでここに来ているだけだ、そういうふうに言っておられた
専門家がいわゆる賛成派の方には多いのです。現在
安全審査会に携わっておられる著名な方方も、おそらくその何人かは私も席を同じくしてそういう
意見を聞きましたが、それが現在はどうでしょう。私が各地に参りましても、そういうことを言う
専門家は一人もなくなったわけです。それで、
住民からそういうことの質問が出ると黙して語らずという状態にほぼ数年の間になったという現実が、それを一番物語っておると
思います。
第二に、
公聴会について本日も
委員会を持たれておりますが、ここに技術庁
長官もおられますが、どうして
原子力委員会がいまごろになって
公聴会を持ち出してきたか。この十年近くの間、
国民が一生懸命要求をし、われわれ
専門家もはたからそれを要求しておりましたけれ
ども開かれなかったのは、おそらくそういうことは心配しなくてもいい、それは自分たちにまかしておけという、そういうことがあったと
思います。それがついに
公聴会というのを持ち出さざるを得なくなったということは、これは私から言わすならば、
安全審査会を含めて
原子力行政の側が自信をなくしてきたということの端的なあらわれでないかと
思います。この点も議員の皆さんは、どうしていままでそういうことがやられなかったのに急にこつ然とあらわれたかという点を、ぜひ突っ込んで審議していただきたいと
思います。
第三に、具体的にわが国でいろいろな問題が起こっております。特に
美浜の一
号炉の問題は、私も具体的に
調査団に参加いたしましたが、見てりつ然といたしました。こういう状態を許したままで
日本の
原発の
実用化が進められていくことについて非常に
危惧の念を抱きました。それで、詳しいことはこの
委員会の皆さんは御存じだと
思いますが、あそこで八千本のうちの実に二千本をこえる蒸気発生細管がふたをして現在気息えんえんとして運転しております。これが普通の工場設備でありますと、こんなものはたちまち営業停止であります。それがどうしたことか、
原子力発電所という名前だけでそういう特権が与えられておるわけでありまして、欠陥炉であるということはすでに当
委員会においても明らかになっておるにかかわらず許されておるという現状でございます。
この
事故については、伊方の訴訟にも詳しく述べておりますので
ごらんになっていただいたらいいと
思いますが、現在の安全審査の
段階の重大
事故の中には、この細管が一本——一本ですよ、一本が破断するというのは重大
事故として扱われているわけです。ところが
美浜では、すでに二千本がふたされておりまして、それで関西電力の発表を信じましても、少なくとも三十七本は、この前の三月の定期検査のときにはもはや破断一歩手前という腐食
状況であったわけです。ここに地震等が起こりますと、関西電力の控え目の発表を信じましても、一どきに少なくとも数十本が同時破断を起こして、そこから例の非常に放射能を含んだ一次冷却水が吹き出てくるという事態が起こるわけです。にもかかわらず、現在の安全審査では、たった一本が破断するというそれが重大
事故というふうになっている。これは
原子力委員会あるいは
安全審査会がいかに現状を見て見ぬふりをしておるかということの非常に端的なあらわれであると
思います。
それから、この間の
福島の放射能の漏洩事件、これも実は操作のミスであるとかなんとかというように片づけられておりますが、本質はそういうところにはございませんで、現在、液体廃棄物を処理するのに非常に苦慮しております。それで、できるだけかさを少なくして、長い間一定の貯蔵容量を持たしたいという、そういうことの結果出てきた操作ミスであるという本質を解明することなしに、あれは単なるバルブの操作の誤りであるというふうに、見かけ上の問題にすりかえようとしておるような論がございます。こういう点非常に重大でありまして、これは廃棄物の行くえがきまらないということと関連した非常に本質的な
事故なわけです。
それから第四点は、これは主として、残念なことですが
アメリカから伝わってまいりまして、いま技術庁
長官も言われましたように、
日本は全くお手上げであります。向こうがかぜを引けばこっちがくしゃみをするということで、かぜを引いたことを知らせてくれというようなことを、これだけ国威が上がったと言っておられる国の大臣が言っておられるのですが、私はうしろで聞いていて非常に情けない
思いであります。そんなに向こうだよりの技術をもって、どうしてそれが実用炉であるといえるのでしょう。たとえばECCSのあれにいたしましても、それの本質は全然
理解されておりませんで、
安全審査会では、私たちが
関係しております伊方の場合も、あれは小さな模型であったので、本物であったらそんなことになるかどうかわからない、だから安全である。そういうばかな論理は、技術のイロハを知っている者にはとても言えないのですが、それがりっぱな公文書には堂々とあらわれてくるというようなこういう現状、そういうことをぜひ議員の皆さんも審査していただきたいと
思います。
それから燃料棒については、これは私たちも前から
指摘しておりましたが、
GEが言ったというので皆さんいろいろ大あわてをしておられるようですけれ
ども、そういうことはとっくにわかっております。あれはBWRで出ておりますけれ
ども、さらにPWR、
美浜の
事故の、いま細管
事故で隠れておりますが、あの場合には非常に重大な
事故が発生しております。燃料棒の変形、それから破断でありまして、これは
新聞を読むときにぜひ注意していただきたいのですが、ピンホールというような表現が出てまいりますが、それはまっかなうそであります。ピンホールというのは目で見て見えないような穴のことをいうのでありまして、実はああいう燃料棒の
事故のときのピンホールというのは裂け目、あるいは
美浜の場合にはひどいことで、おおいが落ちて
原子炉の底に沈んでおったという、そういう非常に重要な事件が起こっております。
燃料棒が変形するとどういうことになるかというのは、時間がございませんからあまり詳しく申しませんが、これは中の一次冷却水の通りを悪くして非常に大きな
事故につながる可能性があります。ですから、燃料棒が何万本のうち何十本だからたいしたことないというふうに決して思われませんように。燃料棒の中のたとえ十本でもそういう
状況にななると、これは非常に大きな
事故の要因になります。そういうふうな一番
原子炉の根本にかかわるような装置についての悲報相次いでおるはずです。これは私たちから見ると別に悲報ではありませんが、推進されようとする側から見ると、まさに国のうちそとから悲報が相次いでおるにもかかわらず、一向にそういう
状況を少なくとも表向きは考慮しょうとされていないという点でございます。
それを端的に証明するのは、ネーダー氏が欠陥炉であるという告発をこの一月にやっております。現在、手続の問題で裁判は一応却下されて再提出ということになっておりますが、もしもこれが自動車であったらどういうことになるかを皆さんぜひ
考えていただきたい。それで、向こうで欠陥車であるということがネーダー氏によって告発されれば、必ず
日本はその欠陥車の輸入をとめるでありましょう。もしもとめなければ、それは政治をあずかっている人たちの大きな怠慢であると非難されるのですが、
原子力発電所という一般の人たちの少し離れたところにあるものについては、向こうで欠陥炉であるということが有数の消費者運動の代表によって
指摘されておっても、相変わらず
日本はそれは安全であるとして導入しておるというこの現状は、私たち
原発にかかわっておる者にとってはとても信じられないことでありまして、何か
原発に対する迷信といいますか神話が、皆さん方も含めてあるのではないか。こういうことが白昼堂々とこの
日本で許されておるということについては、私は非常に疑いを持っております。
それで、そういうふうな点を
考えまして、私たちは伊方の皆さんと同じように、これでは行政にたよるわけにいかないというので裁判に今度持って出たわけでございますが、行政をチェックするのは司法ばかりではございませんで、三権分立では立法も非常に大きな責任があると
思います。私きょう参りましたのは、そのことをぜひ皆さん方にお願いしたいと
思いまして、決して
原発計画というのは天から天下ってあるわけではございませんで、結局
国民の意思できまっていく計画であります。それを計画があるから進めなければしょうがないというようなことでどんどんやっておられるということについては、ぜひもう一度再考慮していただいて、少なくとも当面は、この現状を凍結ないしストップする、それで頭を冷やして、国のエネルギーの資源のあり方というものについてぜひ真剣な討論を、これは超党派的にやっていっていただきたいと
思います。これは決して革新がどうの、保守がどうのという問題ではないと
思いますので、そういう点を根本的に討議していただく機会が私は来ていると
思いますので、いつまでも
住民であるとか、私たちこういう問題についての
専門家に問題の決定をゆだねるのでなしに、そういう大きな
立場から、議員の皆さんが
国民の政治をあずかっている
立場からぜひ判断をしていただきたい、それが一番言いたいことでございます。
それで現状の、あるいは現在計画されております
公聴会についての批判は、また御質問がありましたら後ほどお答えしたいと
思います。