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1973-08-29 第71回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十九日(水曜日)     午後一時三十分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 藤本 孝雄君 理事 嶋崎  譲君    理事 原   茂君 理事 瀬崎 博義君       稻葉  修君    稲村 利幸君       梶山 静六君    羽田  孜君       湊  徹郎君    渡辺美智雄君       山原健二郎君    近江巳記夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         科学技術庁原子         力局次長    生田 豊朗君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         参  考  人         (東京大学助手安齋 育郎君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      牛山  積君         参  考  人         (東京大学教授小野  周君         参  考  人         (大阪大学講師久米三四郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子炉設置に  係る公聴会制度に関する問題)      ————◇—————
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  原子炉設置に係る公聴会制度に関する問題等調査のため、本日、東京大学助手安齋育郎君、早稲田大学教授牛山積君、東京大学教授小野周君及び大阪大学講師久米三四郎君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石野久男

    石野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうかそれぞれの立場から、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 石野久男

    石野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 参考人先生方を、私どもの二人、合計四名の先生においでいただきまして、先生方中心公聴会のあり方についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。  本論に入ります前に、少し時間をさきまして、きのうの閣議田中総理発言について、長官ももちろん御出席でしたが、その真意をお聞きしたいと思います。  新聞で見る限りでは、少なくとも三原則の特に民主という点におよそ反した、ファッショ的な暴言を吐いたようにすら私には感じられるわけです。少なくとも、いま現在、原子力発電というものが各地で商業化されたことになっていますけれども、次々に事故多発をしまして、そうでなくてもその安全性については非常に危惧を持っている国民に対して、またかまたかという強烈な印象を与えている。  つい一昨日茨城の東海へ視察に行きましたときも、コールダーホールのいまの一号炉のごときは、これですらとにかくローダウンをしまして、十六万何千キロのはずのものが十四万キロの発電をやっている。これももっと少なくなっているのじゃないかといううわさがあります。あれなんかは非常に用心をしたという機種なんですが、そのほかは美浜にしてもどこにしても、次から次に事故が起きて、現在ではもう商業化するということ自体があやまちなんだ、まだまだ原子炉に関する限りは実験段階だ、そうして実験を通じて安全性というものを確立した上でなければ商業化をしてはいけない、商業化前段の時代だということは、これはもうあらゆる事情から見て、非常に痛切に感ずるところなんです。当然住民反対あるいは非常な危惧を持ちますから、住民以外の日本国民的な立場でのこれに対する環境問題を中心の運動が起きてくるのはあたりまえなわけです。  今日ではもう御存じのように訴訟ざたにまでいまなり始めているわけですが、こういうような、とにかく国際的に見ましても、まだまだほんとう安全性というものが確立されていない。タンブリン博士ではありませんが、この間もたいへんわれわれにとってなるほどなと思うような貴重な意見を吐いて、とにかく総体的にいうなら、原子炉そのものがまだいま実用化段階に入ってはいけない。まだ実験段階なんだ。こういうところに原点を返さなければいけないだろうと思っている状況の中で、訴訟は起きるわ、住民パワーは非常に大きく盛り上がってきているわという当然のことなのを、それを承知の上で、住民反対があっても原発建設は促進せよ、こう総理発言をしたことになっています。新聞ごらんになっているでしょうが、そのとおりであるかどうかということを中心に、御出席長官からその真相をひとつお聞かせいただきたい。
  6. 前田佳都男

    前田国務大臣 ただいまの原先生の御質問に対してお答えを申し上げたいと実は私からも思っていたわけでございまして、実は私、ゆうべの夕刊でございましたが、二、三新聞を見まして、住民反対があっても原発を推進せよというふうな大体趣旨だと思いますが、そういうふうな趣旨総理は全然申しておりません。ただ、先生も御承知のように、総理発言はなかなか勢いがいいものですから、しっかりやれよ、というようなこういう調子でやりまするので、結局、大体総理発言は、時期的に見まして閣議のほとんど終わるときでございまして、いよいよ閣議も大体案件を済ましてお開きにしようかと思うときに、たしか節水か何かの問題について各省庁が協力せよと言うた問題のあとで、総理が、最近原子力についていろいろ問題があるが、科学技術庁長官、しっかりやってくれよと、あの調子で私に顔を見て言われたのです。それで、特に住民反対が少々あってもやれというふうな趣旨は言うておりません。しっかりやれ、ということは、私は安全性というものもよく考えてしっかりやりなさい、地元理解と協力を得つつしっかりやりなさいというふうにとっている。したがって、きょうの閣議記者会見の席上でも、私はこのことを全然触れておりません。特に隠したわけでも何でもないのですけれども。まあ冗談に、科学技術庁長官もなかなかこのごろは繁盛してねえ、というようなことをたしか言うたと思います。その程度でありまして、特に私は、総理から具体的な指示でも何でもないと思って、しっかりやれということは、私は安全性ということを十分確認して、その点は力を入れつつしっかりやれというふうに思っている、そういう御趣旨であったと思っている。  といいますのは、ちょうど前の閣議あとか前でございますが、総理に、大体原子力について安全性のために特に軽水炉安全性について、総理相当力を入れなくちゃいけません。といいますのは、軽水炉というのは、御承知のように元来外国からきたものでありまして、FBRとATRと違いますので、この点については、予算的にも相当力を入れなくてはいけないのですということを総理に、実は前の閣議のたしか前だと思います、閣議の始まる前に私十分ほど話しまして、また忘れられちゃいかぬと思って私は紙に大きく書きまして渡したことがあります。  そのことに関連して総理が言われたのだと思いまして、私はそういうふうにとっているのです。それで私の顔を見て、しっかりやれよ、あの調子で元気よく言うたものですから、それで節水の問題いろいろな問題があったので、私はそのときの印象が一般のほかの閣僚にそういうような印象を与えたのではないかなと思って、実はこの新聞が出たときも、私はすぐに官房長官なんかにも話しまして、私はこんなことを言うた覚えはないと言いました。ただ、私は原子力船の話をそのときちょっといたしました。原子力船については、実はこれまでの経過をちょっと簡単に、それも一分程度でありますが話しました。そうしたら、その問題は地元の竹内君にも一ぺんよく相談せねばいかぬねというふうに、ぼくも意見を聞いてもいいよということはおっしゃったのです。それははっきり言っております。だけれどもあと住民反対があってもやれというようなことは全然申しておりませんので、この点は、田中総理もそんなことを、非常識なことを言うとは私は考えておりません。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、総理発言した内容をそのままちょっとここで聞かしていただきたい。どういう発言をしたか。
  8. 前田佳都男

    前田国務大臣 ちょっとその内容を私そのまま、実は私もたいした発言じゃないと思いまして、科学技術庁長官、と私の顔を見て、原子力の問題、いろいろあるようだけれども、しっかりやってくれよというふうに、きわめて簡単だったわけでございます。しっかりやってくれということは、私はそういう十分安全性というものを認めて、それは閣議の席上ではないので、その前にも私は公聴会の問題でも総理にも話しておりますし、そういうようなものが全部頭の中にあって御発言になったものだというふうに私は受けとめておるわけでございまして、特に何も新しいことでも何でもないと思って、実は帰ってきてからも、よく閣議あと関係局長を呼んでいろいろなことを言うのですけれども、何にも言わずにおったわけでございますが、これが非常にビッグニュースになって、私も実は驚いておるようなかっこうでございます。
  9. 原茂

    ○原(茂)委員 立場がおありで多少粉飾しようとなさるのかどうか知りませんが、少なくともいま原発が全日本的な問題になっている、こういう状況の中で、総理原発のげの字の一字でも発言したら、担当長官としては、たいしたことじゃないと思ったなんというのは、そんなばかげた感覚でこれが受け取れるような状況ではない。何か思惑があって、隠してそういう言い方をしているんじゃないかとすら私には思えるのです。もし本気でたいしたことじゃないと思ったとすれば、いま原発のげの字でも出たらこれは大問題だということが、寝ても寝られないほどに真剣に、いわゆる昔でいう宸襟を悩ましている状況でなければ、担当長官としては私は失格だと思うんですよ。ですからいまのような、たいした問題じゃないだろうと思っていたから軽く聞いちゃって、内容がよくわからないというのでは、これはとても納得いきませんし、長官閣僚として閣議出席をなさった——新聞がうそ、でたらめを書いているなら別ですよ。そうだとおっしゃるならそう言い切っていただいていいのですが、とにかく総理がこれに触れた発言のあったことは間違いないわけです。その内容があまりにも重大だ。であるからその総理発言のこまかい内容をお聞かせいただかないと、これはもうとんでもない問題だということになりっぱなしになっちゃうわけです。  明日またあらためてこの問題別論議をしていきたいと思うのですが、長官のその受け取り方、感じ方が、いまおっしゃったようだったらこれは重大問題です。いま科学技術庁としたら原発問題というのはもう全庁員が、神経がぴりぴりするほどになっていなければいけないはずなんです。それをまるで居眠りでもしていたように、たいしたことなかろうなんと感じたなんと言ったら、これは一体何の長官なんだろうということになっちゃうのです。いかがですか。
  10. 前田佳都男

    前田国務大臣 たいしたことないというふうな私の発言がたいへん先生の誤解を招いたようでございますけれども、とにかく総理がしっかりやってくれということに対して、科学技術庁長官としてしっかりやるということは、これはもう当然でありまして、私のこれが仕事でありますから、それで特に新しい御指示とは私は思わないので、その問題は特に役所へ帰ってまたさらに集めてどうするという問題じゃないという意味でたいしたことがないと言うたわけございまして、あるいは表現が妥当でないという場合はその真意をひとつ御理解いただきたいと思います。
  11. 原茂

    ○原(茂)委員 それはそれでわかりましたと言うわけにいきませんので、まだまだこの問題の究明はしていきたいと思います。  そこで、新聞が全部でたらめでないとするなら、ここに問題があったら補償をしていくようにしながら工事は促進しろ。問題が出たらとにかく補償すればいいじゃないかという言い方がはっきり書かれているわけです、どの新聞も。問題がどんどん起きているらしいし、裁判も起きたりいろいろなことをしている。事故が起きている。事故が起きたら、これは補償をして、とにかく補償というと金が中心の感じになりますがね。露骨に言うと、金でどんどん補償していけ、そして解決して促進しろ、こういった考え方になっているわけですよね。こんなことも聞いていませんか。
  12. 前田佳都男

    前田国務大臣 特にそういう補償がどうだというようなことは、私は聞いておりません。その点は、たしかどこかの新聞ですか、何か補償をというようなことを考えてということを、官房長官が何か補足的に言うたということをちょっと私どこかで見たのでありますが、特にその席では、おそらく官房長官総理大臣の意向をそんたくしておっしゃったのじゃないかと思うのでありまして、特にその席では補償とかそういうことの具体的な御指示はございませんでした。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 実はさっき官房長官に会ってきたのです、こちらに入る前に。官房長官はもちろん補足的にも何もこういうことは言ってないわけです。総理発言そのものがそれに類した発言をしていることを官房長官は認めているわけです。補償ということばとかそういう具体的なことではなくて、結果的にはやはり問題があるなら国家的な責任を明らかにして、工事をとにかく必要な電力確保のために促進しろ、こういう意味だ、こういうふうに官房長官からいま聞いてきました。この新聞のこまかい問題のやりとりは別にしたわけであります。ただし、そういった官房長官も別に補足的に何か補償ということばを出したとかということはないようです。こういうような問題を通じまして、閣議でこういう問題が出たときに長官としておっしゃっていただきたかったと思うのは、おそらく総理も、現在の原発がどんな状況にあるかということをこまかく知らないのじゃないかと思うのです。知っていれば、総理はまたそれを知ったなりの違った発言があったのじゃないかと好意的に私は思っている。どうも長官総理に対する報告の急所が常時抜けている。いま日本原発の問題に関しては、これは日本の国全体がどうなるかという問題ですから、地域全体が汚染されるし、国民がどこでどんな被害を受けるかわからないという問題に発展していくわけですから、現在の事故状況から言いますと。したがって、もうちょっと各原発状況というものを閣議などで正式に総理に知らせるということをおやりにならないと、どうも私はこんな発言がぽこっと出てくる要素の一つになっているのじゃないかと思うのですが、いままでもあまり詳細には論議をしてないし、閣議でも報告がしてないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  14. 前田佳都男

    前田国務大臣 閣議には私こういうことを、具体的に美浜がどうでありますとかどこがどうでありますという報告はいたしておりません。原子力全般の問題とかそういう問題の場合はいたしますが、いたしておりませんけれども、特に予算編成とかいろいろな関係もこれあり、最近のいろいろな問題は総理に私、単独でよく御報告をいたしております。そうして、こういう問題があるのです、ああいう問題があるのです、ということはよく御報告をいたしておりまして、それで、問題がなかなかあってたいへんだね、その問題、科学技術庁長官、しっかりやってくれよというように、それでそういう話があったというふうに私としては受け取っておるわけでございます。ほかの閣僚が実は電気が足らぬ、いろいろなものが足らぬという話のあとだったものですから、水が足らぬというあとだったものですから、それで特にそういうふうにそれをベトーネンというか、大きく思ってお受け取りになったのじゃないかと私は思っている。  私は実は先生、先ほども言いましたように、閣議の始まる前にも、いまの原先生指摘のような問題を実は紙にメモをして、そうして総理に見せて、こういう問題がいまありますとまで言うて、もし忘れるといかぬと思って話をした。安全性ということについては相当馬力をかけなくちゃいかぬのですというふうな話をして、一週間前のときは別に発電をぽんぽん好きにせいなんて御指摘も得ませんし、私からも申しておりません。特に安全性の話だけして、それは予算編成とかそういうものもあるものですから、実は少しでもわれわれ、閣内においても総理だとか、みな関係の方面にもよく理解をしていただきたい、協力するという姿勢を持っていただきたいと思って実は話をしたわけでございまして、私は、それを受けてきのうはばつとその話があったというふうに解釈しておるのです。どうぞ御理解を願いたいと思います。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 これだけに時間をとるわけにいきませんが、締めくくり的に長官に対してもう一言だけお聞きをしておきたいのです。  前段に私申し上げたように、いまのように事故多発状況を見まして、公聴会の問題がきょう中心なんですが、実用化前提にした公聴会なんていうのを持つのは時期尚早なんです。また、実験段階においてこうしたいろんな問題が起きて、とにかく国民的な危惧を起こしているという状況を見ますと、とらわれなくてお考えになったときに、実用化は早かった。いままた百十万、百十七万なんというのをどんどん建設する。安全性はよろしい、建設してよろしいという認可をおろしちゃって、これから建設が始まろうとしているわけですが、現在とにかく三十だ、十五だ、二十だというやつが、この状況原因不明で、どうしていいかその処置すら的確にまだわからない。国際的に見ても、アメリカですらGE中心ローダウンをして、一応とにかく危険を少しでも減らそうというようなあんな大きな措置を講じている。日本はもちろん、ごたぶんに漏れず現在あっちもこっちも全部ダウンをしてはようやく出していく。したがって原価計算なんかとてもペイするはずはありませんから、というような状況は、これは民間の企業で普通考えたってこんなものは実験段階です。だからいまわが国の原発も、ほんとうに冷静に考えたときには、まだ実用化段階ではない、実験段階だ、そういう考え方がいまもう一。へん原点に返ってとられなければいけないんじゃないか。  これは、国の政治的な立場からいって、いわゆる原子力中心考えたときには、そのことを真剣にいま問い直す時期が来ている。次から次に、まだ問題が解決しないのに、また三倍も四倍ものやつをどんどん建設を許可して、そうして六千万キロワットまではやっちゃうんだ、期間はこれだけだ、こういっていまどんどん突っ走っているのです。これは危険と危惧をどんどん拡大していくだけだ。こういうばかなことを、いままるで馬車馬が目隠しをやって突っ走るようなことをやっているように私には思えるのです。いまは原発に関する限り、もう一度いま言った考え方に返って、実用段階は早い、実験段階だ、商業化は早い、こういうように思うときじゃないですかね。  もしそのことをお考えになられれば、総理なんかにも、そういうことの進言が閣議なんかであってしかるべきであろうという前提で先ほどお伺いしたのですが、どうでしょうね長官、いま私が申し上げたように、私の考えが間違いなのか。もう商業化に入っていいんだ、実用化段階に来ているんだ、したがってそういう前提公聴会を開くんだというようなことでいいとお思いになりますか。私は実用化段階は早い、商業化は早い、まだ実験段階だ。実験段階における住民の意思というものを聞くために公聴会を開く。公聴会も、内容はもちろん不満だし、あれじゃ全然問題になりませんが、公聴会を持つように主張してきた私どもとしては、持つということは一歩前進だと思うのですが、現段階事故多発状況からいうなら、これは商業化前提にした公聴会ではいけない。そんな公聴会は全然意味がない。全然危険で話にならないということになれば、やはり実験段階における公聴会というものが当然あってしかるべきだ。そういう意味公聴会にもならなければいけない。その前段としては、現在の、次から次に安全審査会でよろしいということになって建設を許可している状況はあやまちで、一度原点に戻して、全部ストップして、実験段階だ、こういう前提に立って安全性確立全力をあげる、その確立が証左があがって、安全性というものが完全に確立されたときに初めていよいよ商業化段階に入っていくんだ、こういうふうに見直しをやる時期じゃないかと思うのですが、あやまちでしょうか。
  16. 前田佳都男

    前田国務大臣 原先生の、原子力発電実用段階じゃない、実験段階じゃないかという御意見でございますが、まことに重大な御指摘でありまして、私は傾聴すべき御意見だと思いますが、実験段階とは考えておりません。実用段階というふうに考えておりまして、その点は先生意見を異にしておることは遺憾でございます。しかしその間、先生の御指摘の点、実用段階にあるとはいえ、その安全性確保のためにとにかく全力を傾倒しなければいけないという考え方をもちまして、先ほど申しましたように、総理にも実は私、この話をしたわけでございます。きのうじゃございません、一週間ほど前にしたわけでございまして、今後もその点には精力的に取り組んでいきたいというふうに考えております。  AECGE発電アメリカでストップしたという問題でございますが、それにつきましても、実は原子力安全審査会にその問題をすぐに調査をいたしなさいということを命令をいたしました。まだ結論は出ておりません。結果は来ておりません。アンサーは来ておりませんけれども、すぐ命令をいたしました。そしてまた、米国に私のほうの専門家をこの問題について派遣することを決定いたしました。それから、今後AECがこういうふうな問題でやる場合は、わがほうの日本原子力委員会にもよく連絡をしてくれということを、突然こういうことをやってわけわからぬじゃないかというふうなことで、今後十分な連絡をとるようにということも、あわせてそういうことを要望することもきのうの原子力委員会で決定したわけでございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 GEなんかに派遣してやるというのは、どうしてやるのか知りませんけれども福島でもって日本実験しているのと同じことを、GEはそれが原因だと言っているんですよ。いまさら見に行ったって、そんなことは、いかにも外国にまで調査に行ったというような、いいことをやったようにお思いになるかしれぬが、それは長官、むだですよ。いまのGEローダウンしたやつを真相究明に行くなんということは実にむだですね。たとえば、それに対する対策をどうしているのかという先のことを見に行くならいいですよ。ここのところをよく仕分けしないと、原因なんて同じですよ、福島でわかっているのですから。  きょうは長官とだけやるのじゃなくて、あしたまた長官あるいはその他の方にこの問題を中心にお伺いいたしますが、きょうおいでいただきました先生方に、いま私が長官にいろいろとお伺いをいたしました内容の中で第一にお聞かせいただきたいのは、一体、福島美浜などの現状をごらんになって、現在長官実用化段階に入ったと確言をされているのですが、私は、実用化段階どころではない、実験ほんとうの初歩的な段階であって、この実験段階を通じて十二分に安全性確立をしなければいけないそういうときなんだ。したがって、原発に関しては商用化は一切ストップすべきだ。そういうことを中心公聴会を持つなら公聴会意味がありますが、そうでなくて、もう実験段階に入っていいんだという前提に立った公聴会なんか持つべきではないとすら思っているのです。公聴会の持ち方、内容については次にお伺いをいたしますが、参考人先生方は、またいろいろ専門的にこのほうのお考えがあると思いますので、その点を小野先生、久米先生、それからあとおいでいただきました安齋先生なり牛山先生も御意見がありましたら、いまの二つの問題についてお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 小野周

    小野参考人 私、小野でございます。  ただいま原子炉の問題、原子力に関して公聴会をどういう目的で開くべきかというお話でございますけれども、今度福島公聴会が開かれるということに伺っておりますが、なぜ公聴会を開かなければならないかというと、実はこれは原子力委員会公聴会要領にも「原子力の利用に関する国民理解と協力の重要性にかんがみ」というふうに書いてある。そうしますと、「利用に関する国民理解」というのが、福島に置くというだけの問題でなくて、現在の原子炉というもの、あるいは現在の日本原子力というものの利用がどういうことであるかということを本来ならば議論をすべきである。それで、たまたまこれが福島で行なわれるということでありましても、これがただ現在その地域にお住まいになっている方にどういう関係があるかということを並記的に御説明になるというだけではなくて、先ほどお話がございましたように、これが実用化段階であるというふうな過程であるとか、あるいは実験段階であるかというふうなことをかりに抜きにいたしましても、少なくとも第一回にこれが行なわれるわけでありますから、住民に対して現在の日本原子力に関する問題の説明があった後にいろいろな意見が述べられないと、これが実際的な意見にはなり得ないというふうに考えるわけです。  ですから私は、先ほどの原先生のお話にお答えするとすれば、いかなる形でその公聴会がやられるにせよ、それがただ原子力の利用に関する国民理解ということであっても、現在の日本原子力の問題をどう考えるかということから出発をせざるを得ないのではないかというふうに考えるわけです。そのことに関しましては、そういうことでお答えをしておきたいと思います。  それからもう一つ申し上げたいのは、そのことが今度は、現在たとえば美浜原子炉の蒸気発生器の細管漏れであるとか、その他いろいろ事故が起こっているわけですけれども、そういう事故内容についても、たとえば福島住民は御存じないし、それから福島原子力発電所において燃料棒に故障を生じたというふうなことも、はたしてどの程度御存じなのかわからない。そういうふうな状態でもって公聴会がやられるということであれば、これは国民理解と協力のためにやられるというふうにはちょっと考えることができないのではないかというふうに考えるわけです。  それから、公聴会のいろいろなあり方につきましては、いまの御質問の範囲から出ると思いますので、また御質問がございましたらいろいろな意見を申したいと思いますけれども、いまのことに関しましてはそのように答えさせていただきたいと思います。
  19. 久米三四郎

    ○久米参考人 阪大の久米でございます。  一番初めに、私きょうここへ参りまして、実は公聴会のことですから現地の住民の方がもう少しおられるかと思ったのですが、われわれ専門家ばかりのようですので、こういう点は今後やられるときには委員会でぜひ考慮していただきたいと思います。公聴会について一番利害を持っておるのはわれわれ専門家ではないわけですから。実はいままで政府が公聴会を全然やってこられなかったことについての恨みつらみが住民の方の中に蓄積しております。そういう方の御意見を聞いていただければ、いまの日本原子力行政のあり方が非常にはっきりしてくると思いますので、それを一番初めにお願いします。  私が話しますのは、御存じの方もあると思いますけれども、私は伊方の行政訴訟でいろいろ住民の方のお手伝いをしてまいりました。そういうことで、いまの日本原子力行政のあり方についていろいろ疑問を感じておりますので、そういう立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  それで、いま原先生のほうから、むしろ公聴会前提というようなものについての御質問がありました。実は私、この委員会参考人として出るようにという招請を受けたのでございますけれども、一番困ったのはその問題でございまして、これまで各地でいろいろ住民の皆さんと接触してきました私の経験では、もはや公聴会というものでもって今日の事態を救うことはできないのではないかという疑念が非常にございまして、お呼びいただいた先生方にも、私はどうも公聴会についての意見を述べるのには不適格であると辞退したのでございますけれども、そういう意見も一回言ってくれということでございますのであえて出てまいりました。  私の考えでは、原発の危険性というのはますます明らかになってきていると思います。これは世上いわゆる一般の方は、技術は時間とともにだんだん進んでくる、危険なものがだんだんと安全になってくるというふうな常識を持っておられますが、原発の場合は、もうすでに先ほどからいろいろ指摘されておりますように、事態は全くあべこべでございまして、進めば進むほどいままでわからなかったことがどんどんはっきりしてきておるという状態でございます。それで、現地の住民の疑問は一点です。そんなに安全なものであるならば、どうして自分たちのような過疎地に持ってくるのか、どうして大阪や東京の近所に持っていかないのかという、この疑問が各地に共通した疑問であります。日本原発実用化が始まって数年になりますが、いまだに専門家はそれに一言も答えることができないのです。専門家もそうですし、行政当局もこれに対しては一日も答えられないという状況ですし、ますますそれが答えにくくなってきているという現状を議員の皆さんはぜひ察知していただきたいと思います。  たとえば、技術が進んでくると大都市接近は可能である、これは私が数年前から、各地でいわゆる賛成派の学者の皆さんともいろんな講演会なんかをいたしましたが、そのとき異口同音にそういうことを言われた。私のような心配をしておるのは、あれは科学に対する信頼が足らぬのであって、そんなことはないのだ、技術が進めばそのうちに大阪や東京、いまはちょっとぐあい悪いのでここに来ているだけだ、そういうふうに言っておられた専門家がいわゆる賛成派の方には多いのです。現在安全審査会に携わっておられる著名な方方も、おそらくその何人かは私も席を同じくしてそういう意見を聞きましたが、それが現在はどうでしょう。私が各地に参りましても、そういうことを言う専門家は一人もなくなったわけです。それで、住民からそういうことの質問が出ると黙して語らずという状態にほぼ数年の間になったという現実が、それを一番物語っておると思います。  第二に、公聴会について本日も委員会を持たれておりますが、ここに技術庁長官もおられますが、どうして原子力委員会がいまごろになって公聴会を持ち出してきたか。この十年近くの間、国民が一生懸命要求をし、われわれ専門家もはたからそれを要求しておりましたけれども開かれなかったのは、おそらくそういうことは心配しなくてもいい、それは自分たちにまかしておけという、そういうことがあったと思います。それがついに公聴会というのを持ち出さざるを得なくなったということは、これは私から言わすならば、安全審査会を含めて原子力行政の側が自信をなくしてきたということの端的なあらわれでないかと思います。この点も議員の皆さんは、どうしていままでそういうことがやられなかったのに急にこつ然とあらわれたかという点を、ぜひ突っ込んで審議していただきたいと思います。  第三に、具体的にわが国でいろいろな問題が起こっております。特に美浜の一号炉の問題は、私も具体的に調査団に参加いたしましたが、見てりつ然といたしました。こういう状態を許したままで日本原発実用化が進められていくことについて非常に危惧の念を抱きました。それで、詳しいことはこの委員会の皆さんは御存じだと思いますが、あそこで八千本のうちの実に二千本をこえる蒸気発生細管がふたをして現在気息えんえんとして運転しております。これが普通の工場設備でありますと、こんなものはたちまち営業停止であります。それがどうしたことか、原子力発電所という名前だけでそういう特権が与えられておるわけでありまして、欠陥炉であるということはすでに当委員会においても明らかになっておるにかかわらず許されておるという現状でございます。  この事故については、伊方の訴訟にも詳しく述べておりますのでごらんになっていただいたらいいと思いますが、現在の安全審査の段階の重大事故の中には、この細管が一本——一本ですよ、一本が破断するというのは重大事故として扱われているわけです。ところが美浜では、すでに二千本がふたされておりまして、それで関西電力の発表を信じましても、少なくとも三十七本は、この前の三月の定期検査のときにはもはや破断一歩手前という腐食状況であったわけです。ここに地震等が起こりますと、関西電力の控え目の発表を信じましても、一どきに少なくとも数十本が同時破断を起こして、そこから例の非常に放射能を含んだ一次冷却水が吹き出てくるという事態が起こるわけです。にもかかわらず、現在の安全審査では、たった一本が破断するというそれが重大事故というふうになっている。これは原子力委員会あるいは安全審査会がいかに現状を見て見ぬふりをしておるかということの非常に端的なあらわれであると思います。  それから、この間の福島の放射能の漏洩事件、これも実は操作のミスであるとかなんとかというように片づけられておりますが、本質はそういうところにはございませんで、現在、液体廃棄物を処理するのに非常に苦慮しております。それで、できるだけかさを少なくして、長い間一定の貯蔵容量を持たしたいという、そういうことの結果出てきた操作ミスであるという本質を解明することなしに、あれは単なるバルブの操作の誤りであるというふうに、見かけ上の問題にすりかえようとしておるような論がございます。こういう点非常に重大でありまして、これは廃棄物の行くえがきまらないということと関連した非常に本質的な事故なわけです。  それから第四点は、これは主として、残念なことですがアメリカから伝わってまいりまして、いま技術庁長官も言われましたように、日本は全くお手上げであります。向こうがかぜを引けばこっちがくしゃみをするということで、かぜを引いたことを知らせてくれというようなことを、これだけ国威が上がったと言っておられる国の大臣が言っておられるのですが、私はうしろで聞いていて非常に情けない思いであります。そんなに向こうだよりの技術をもって、どうしてそれが実用炉であるといえるのでしょう。たとえばECCSのあれにいたしましても、それの本質は全然理解されておりませんで、安全審査会では、私たちが関係しております伊方の場合も、あれは小さな模型であったので、本物であったらそんなことになるかどうかわからない、だから安全である。そういうばかな論理は、技術のイロハを知っている者にはとても言えないのですが、それがりっぱな公文書には堂々とあらわれてくるというようなこういう現状、そういうことをぜひ議員の皆さんも審査していただきたいと思います。  それから燃料棒については、これは私たちも前から指摘しておりましたが、GEが言ったというので皆さんいろいろ大あわてをしておられるようですけれども、そういうことはとっくにわかっております。あれはBWRで出ておりますけれども、さらにPWR、美浜事故の、いま細管事故で隠れておりますが、あの場合には非常に重大な事故が発生しております。燃料棒の変形、それから破断でありまして、これは新聞を読むときにぜひ注意していただきたいのですが、ピンホールというような表現が出てまいりますが、それはまっかなうそであります。ピンホールというのは目で見て見えないような穴のことをいうのでありまして、実はああいう燃料棒の事故のときのピンホールというのは裂け目、あるいは美浜の場合にはひどいことで、おおいが落ちて原子炉の底に沈んでおったという、そういう非常に重要な事件が起こっております。  燃料棒が変形するとどういうことになるかというのは、時間がございませんからあまり詳しく申しませんが、これは中の一次冷却水の通りを悪くして非常に大きな事故につながる可能性があります。ですから、燃料棒が何万本のうち何十本だからたいしたことないというふうに決して思われませんように。燃料棒の中のたとえ十本でもそういう状況にななると、これは非常に大きな事故の要因になります。そういうふうな一番原子炉の根本にかかわるような装置についての悲報相次いでおるはずです。これは私たちから見ると別に悲報ではありませんが、推進されようとする側から見ると、まさに国のうちそとから悲報が相次いでおるにもかかわらず、一向にそういう状況を少なくとも表向きは考慮しょうとされていないという点でございます。  それを端的に証明するのは、ネーダー氏が欠陥炉であるという告発をこの一月にやっております。現在、手続の問題で裁判は一応却下されて再提出ということになっておりますが、もしもこれが自動車であったらどういうことになるかを皆さんぜひ考えていただきたい。それで、向こうで欠陥車であるということがネーダー氏によって告発されれば、必ず日本はその欠陥車の輸入をとめるでありましょう。もしもとめなければ、それは政治をあずかっている人たちの大きな怠慢であると非難されるのですが、原子力発電所という一般の人たちの少し離れたところにあるものについては、向こうで欠陥炉であるということが有数の消費者運動の代表によって指摘されておっても、相変わらず日本はそれは安全であるとして導入しておるというこの現状は、私たち原発にかかわっておる者にとってはとても信じられないことでありまして、何か原発に対する迷信といいますか神話が、皆さん方も含めてあるのではないか。こういうことが白昼堂々とこの日本で許されておるということについては、私は非常に疑いを持っております。  それで、そういうふうな点を考えまして、私たちは伊方の皆さんと同じように、これでは行政にたよるわけにいかないというので裁判に今度持って出たわけでございますが、行政をチェックするのは司法ばかりではございませんで、三権分立では立法も非常に大きな責任があると思います。私きょう参りましたのは、そのことをぜひ皆さん方にお願いしたいと思いまして、決して原発計画というのは天から天下ってあるわけではございませんで、結局国民の意思できまっていく計画であります。それを計画があるから進めなければしょうがないというようなことでどんどんやっておられるということについては、ぜひもう一度再考慮していただいて、少なくとも当面は、この現状を凍結ないしストップする、それで頭を冷やして、国のエネルギーの資源のあり方というものについてぜひ真剣な討論を、これは超党派的にやっていっていただきたいと思います。これは決して革新がどうの、保守がどうのという問題ではないと思いますので、そういう点を根本的に討議していただく機会が私は来ていると思いますので、いつまでも住民であるとか、私たちこういう問題についての専門家に問題の決定をゆだねるのでなしに、そういう大きな立場から、議員の皆さんが国民の政治をあずかっている立場からぜひ判断をしていただきたい、それが一番言いたいことでございます。  それで現状の、あるいは現在計画されております公聴会についての批判は、また御質問がありましたら後ほどお答えしたいと思います。
  20. 石野久男

  21. 安齋育郎

    安齋参考人 簡単にお答えしたいと思いますが、現在日本で進められている原発設置計画は、技術的な段階としても実験的な段階であるというにとどまらずに、やはり行政上の諸制度等を含めても実験的な段階ではないかと私は思います。住民の安全というものを、日本専門家の能力を結集して、どう科学的に保障していくかということについてもまだ実験的な段階ではないか。もしそういうことが確立しているのであれば、六〇年代の公害といった問題はこれほど深刻には起こらなかったはずだというふうに思うわけです。  したがって、科学技術の応用に伴う危険というものを行政でどう保障し得るのかということについても実験的な段階ではないのか。そういう点から申しまして、公聴会では当然、いま御質問にありましたような、原子力というものにわれわれは現時点でどれだけ依存すべきなのかという、まさにそれも同時に問題にされなければならないわけで、私たち日本科学者会議という立場で申し入れた中にも、総合的なエネルギー開発計画を中心とするような全国民的な計画では、これを別に検討する公聴会をやれということを言っているのは、いまの段階原子力にどれだけ安全の点等を考慮して依存すべきなのかということは、別にこれは専門家意見を十分に反映する形で公聴すべきだという立場でございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。  前段の御意見をお伺いしまして、これから百歩を譲りまして、現に政府が行なおうとしている公聴会の政府側の要綱がありますが、これをざっと批判をして先生方のお考えを実はお伺いする予定でございましたが、あとちょうど時間的に嶋崎委員からこの問題に関してのデテールをお伺いしますので、一応終わります。
  23. 石野久男

    石野委員長 次に、嶋崎譲君。
  24. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 どうも先生方、お忙しいところをありがとうございました。  時間が四十五分という限られた時間でございますので、二点にしぼって私の意見に関連して御意見をお伺いさせていただきたいと思います。  先ほど久米先生もおっしゃっておられましたが、今度の原子炉設置に係る公聴会開催要領というこの原子力委員会公聴会ですね。この公聴会の中に貫いておる考え方は、これから原発設置しようとするそういう設置にあたって、電調審を通過してそして原子力委員会が安全審査をするという際に、住民が不安に思っている問題点を公聴会で吸い上げて、そして安全審査の委員会の資料としてそれにこたえながら住民の安全にこたえていく、こういう考え方が一貫した公聴会考え方だというふうに思います。そして細則の一番最後に、二十三のところには、しかしそれにもかかわらず、新しい原発設置するということだけを頭に置いていても、現実に設置された原子力発電所に事故多発している。それに対しても今後公聴会というものをやることができるということで、現在運転中のものについても公聴会住民の不安にこたえることができるような制度の道を開いてあります。ですから、この要領の中にはそれはありませんが、細則の一番最後に例外規定みたいなかっこうでこれがうたわれているわけであります。  そこで、最初に私は、久米さんがさつき提起された問題に関連して、一つ社会党が先日例の新聞で問題になりました中レベルの放射能が炉外に放出されたということに関連して、福島号炉調査に私たちが入りました。その調査の結果、新しい事態が明らかになっております。これを一つの材料にして、最初の質問は、いまの原子力委員会設置しました公聴会制度というようなものを前提にした場合に、そしてその運営を前提にした場合に、現在運転中のものを取り上げて問題にし得る可能性があるのかどうかということについて、公聴会の制度と現実に起きている事故との関連をちょっとお聞きしたいのです。  私たちがこの調査に入った結果、この福島号炉の場合に、こういう事故についての東電側の回答が出ております。それは燃料棒が三十八本破損しているということに関連して、その破損原因状況について東京電力は次のような回答を寄せております。  自然科学のことが特にわからないものですから専門家の方にお聞きしながら、この事故意味ないしは現実の私の判断では、結論を先に申し上げますと、もしこういうふうな原因だとすると、おそらく既存の原子力発電所というのは年じゅう事故が起きるということを証明しているような原因の回答になっているのじゃなかろうかという気がするわけであります。  この燃料棒三十八本の破損について、その原因はこういう説明であります。「燃料破損の原因は、燃料被覆管中のウランペレットに含まれる水分が、運転中に水素となり被覆管のジルカロイ金属を侵蝕し、ピンホールを作るものと思われる。」こういう説明なんです。  そこで、先ほど久米先生が、ピンホールというようないわば目に見えないような穴の話ですけれども、こういう事態が起きると、これはピンホールじゃなくて裂け目といいますか、もっと大きな性質を持った事故なんじゃないかというような説明があったように思いますが、ここにいま私が説明したのは、私は専門家じゃありませんからわかりにくいのですが、専門家先生方お聞きになると、大体いま私が読んだだけでおわかりになりますか、いま読んだような内容で。  そうすると、こういう破損原因を東電側が回答しているわけですね。ということになると、この福島号炉というのは御承知のようにB型だし、アメリカでも今度問題になった例の出力制限をしているのはB型であります。問題の福島号炉、問題になるのもこのB型であります。そうしますと、アメリカでもこの軽水炉のあり方について非常に技術的な問題が起きてきている。そして福島号炉、二号炉についてそれぞれこういう関係事故が今後起き得るというようなことになってくると、はたして現実すでに動いている五基の原子力発電所そのものが、いままで安全審査会で安全だといった前提の上で動いているのだけれども、現実にスローダウンしている。スローダウンしているということは全然問題にならぬわけですね、実用化しているという観点からすれば。それに関連して、この福島号炉の燃料の破損について東京電力がいっているこの事故意味ですね、これを今日稼働している原子炉の技術的問題、安全性という観点から見てどう評価したらいいのかという点について、最初にちょっとお伺いさせていただきたい。
  25. 小野周

    小野参考人 実は私は、福島の一号炉につきまして燃料の破損が起こっているということを、はなはだ不勉強でございまして、最近知ったわけでございますけれども、それで、いま燃料の破損が起こっている、それは事実でありますけれども、その破損の原因が、東電が説明しておるようにウランペレットの中に、これはわずかな水分が入っているという意味でありましょうけれども、そういうものが水素になってジルカロイの被覆と反応してそれを侵食してピンホールをつくるという説明が、いまここでそのとおりに受け取れるかどうかということはこれは私にはまだちょっとわかりません。というのは、ほかにもいろいろ起こり得る原因があると思いますが、かりにこういうふうな種類の事故でありますと、これは非常に一般的なので、これはほかの同系のものについては十分起こり得るとは思うわけです。ですから、こういうふうな説明、二つ考え方がございまして、一つは、原因がよくわからないからこういう説明をしているということであれば、やはり原因が明らかになるまではむしろ運転をやめるべきである。こういう理由であるならば、これはほかの原子炉においても十分起こり得ることであるというふうに考えます。
  26. 久米三四郎

    ○久米参考人 ちょっといま、お尋ねお聞きしましたので、正確に答えられるかどうかわかりませんが、燃料棒の事故というのはわりあい大事でございますからちょっとこの機会にお話ししておきたいと思いますが、燃料棒の事故というのは、しょっちゅう新聞にも出たりいたしますが、ぜひ知っておいていただきたいことは、一つは燃料棒の事故を見る検出法が非常に不確かであるということです。これは、東電の場合はどういう方法でやられたのかわかりませんが、検出法には二つございまして、一つは引き出してその状況を見るということです。しかし燃料棒というのは、使った燃料棒というのは、見るといいましても、人間が直接見るととたんに死んでしまいますから、そんなことはできません。これは普通の工業と全然違うので、見るといいましてもそれは水中カメラで間接にテレビでそれを見るしかできない。ただでさえ原子炉の水というのは、行ってごらんになったらおわかりですが、非常に濁っておりますが、そういう中の水中カメラですから、ただでさえ見にくいのが見れませんから、これで見つかったといえばよほどひどい事故であります。私がさっきピンホールというのはうそだと言ったのは、ピンホールというのは目でも見えないのをピンホールというわけですから、水中カメラで見えるわけがないので、その点はぜひだまされないようにしていただきたい。それは検出法自身によるからであります。  それからもう一つの方法は、それを下げてまいりまして、原子炉の中は放射能がどろどろでございますから危険でどうにもなりませんから、それを別のふろおけのようなところへ連れてまいりまして、初めに何も放射能のない水の中へ燃料棒をつけます。そうするとクラックが、ひび割れがしておりますと、中から死の灰が流れ出してきて、しばらくおりますと、そのふろおけの水がよごれてくるということで検出をしておる。この方法、これも今度は目で見るわけではありませんから、どの程度穴があいているかはわからない。大きな穴なのか小さな穴なのか何かわからない。とにかくそこで放射能が出てくるということがわかれば、どうやら日本ではそれをピンホールと呼ぶことに統一しておられるようでありますので、その検出方法自身が非常に問題である。  それからもう一つは、そういうふうに定期検査のとき見つかったという発表でございますが、それ自身が非常に問題なんで、運転中に実はそういうことがわからないといけないのですが、これがわからないということは、想像でございますが、日ごろ一次冷却水が非常によごれておって、検出しょうにもできないという状況に置かれておるのではないかと思います。これは未然に事故を察知することができないという意味で、二重に非常に重大な問題であろうと思います。  それで、いまの東電の説明でございますが、おそらく。ピンホールの説明を日本でこれだけやったのはたぶん初めてだろうと思います。この間、敦賀なり美浜にも参りましたが、原因がはっきりしないで何か工作のときのできが悪かったんであろうというようなことで、のんきなことを言っておられましたが、いまの東電の、嶋崎先生の言われたのがほんとうといたしますと、これは化学的な原因であって、水素とジルコニウムが反応をして劣化をしたというふうにはっきり書いてございます。これは、いま小野先生もおっしゃいましたように、単なる想像でございましてわかりませんが、もしもこれがほんとうだといたしますと、非常にこれは本質的でございまして、それにもありますように、ウランペレットから出てくる水、これは完全に除去することはほとんど不可能でございますから、これは必ず起こる、そういうことになっております。  あと問題は時間の問題と、それからどの程度激しく原子の火を燃してエネルギーを取り出したかということに関係してくるわけでございます。一番大事なのは、こういう燃料棒の事故というのは、一方では、先ほど申しましたように小さな漏れのように思いますが、それがだんだん拡大して最後には変形なんか起こします。それで水の通りを悪くして大事故を誘発するということになるので、アメリカあたりは特にこれは慎重に配慮しておるわけでございますが、日本では、私がいままで公開されておる資料を見る限り、燃料棒の安全審査はやっておられないようであります。  これは、もしも間違いであれば、やっておるというしかるべき審査結果を出していただきたいと思いますが、審査のしょうがないと思います。これは全部ゼネラルエレクトリックないしはウエスチングハウス社製でありまして、それについては向こうのおそらくカタログを信ずるしか手はないのではないかと思います。ですから、アメリカで何か起こったら、それをわざわざ向こうのAECに伺いをたてないとわからないという事態が発生する根本の原因がそこにあるのであって、いかに安全審査というものが上っつらでずさんなものであるかということを、私は燃料棒の事故があるたびに感じておりますが、そういう点もぜひお含みおき願いたいと思います。  これなんかは公聴会にかかってもたぶん答えが出ないのではないかと思うので、公聴会のことに関連いたしますが、今度の福島のような場合、いま原案に出ておるのはおそらく一〇〇%出力でありましょうけれども、すでにGEから五%ないしは二五%切り下げるように——いま日本には言うて来ておりません。日本に輸出した分はそっちで責任をとれと、ここにおられる前田科学技術庁長官の責任ということでアメリカは何も言うてこないんだろうと思いますけれども、そういう状況になっておって、公聴会を開く直前に、アメリカでそういうパワーダウンという話が出てくると、これはどういうことなのか、日本原子力委員会はどういうことをするのか。一体、公聴会の対象になっておるのは、いまの一〇〇%のほうなのかあるいは二五%出力ダウンしたほうなのか、こんなことは科学の問題ではなしに、情報を聞いてどっちをとるかというあてものでありまして、いかに安全審査がずさんであってたよりないものであるかというふうに私達は考えておりますので、そういう条件のもとで一体公聴会というものはどういうことをやっていったらいいのかを、むしろ皆さん方のほうから教えていただきたいと思います。
  27. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いまの両先生のお話を聞いて、現在運転中のいわば原発において、この間十人の参考人をこの委員会でもお呼びしました。そのときでも、科学者の内部でたいへんな意見の相違がある。そういう場合に、かりにこの実施要領の例外規定で、昭和四十八年七月二十四日において、それ以前に原子炉設置許可が行なわれたものについて公聴会を開催するといった場合に、いまここできめられているような公聴会の仕組みでそういう問題を審議するということが可能であるかどうかということを考えざるを得ないわけであります。つまり私の判断を結論的に申し上げますと、現在の政府が出した公聴会の制度並びにその運営のしかたでは、これからの原発についての安全審査の参考に資するという考え方できているけれども、もうすでに現実に動いているものに対して住民が批判をしているわけですね。不安を持っているわけです。それについて、現実に使われている原子炉そのものが科学者の中で実験段階だと言っている。片方では実用段階だというような意見の相違があるということになりますと、そういう問題を、まつ正面に科学者の論争そのものを政府もくみ取り、同時に住民の不安に対しても対処できるような意味での公聴会というものを考えますと、現在原子力委員会が出したこの要領では、とてもそれにこたえるものにはならないのではないかというふうに私は判断するわけであります。  現在の公聴会の制度の問題というのは、時間もありませんからこまかに申し上げませんけれども、たとえば今度の要領には、まず原子炉そのものがたいへん一方で問題になっている。それだけじゃなくて、原子エネルギーというようなものを平和的に利用していく場合の一つのサイクルがある。全体のシステムがある。再処理の問題、それから廃棄物の処理の問題、そういうもの一切にわたってそれを対象にしたいわば公聴会というものになっていない。ここにまず一ついま住民のいろいろ不安の問題がありますから、こういう公聴会原子炉に限っているということ自身に一つ大問題がぼくはあると思うのです。  そこへもってきて、開催の時期については、この二番目にいっているように、原子力委員会が一方的にきめるといいますか、住民の側の要求というものは、これには意思は反映しない仕組みになっていますから、知事がもしくは原子力委員会が判断した場合にのみ開くのですね。しかもその開く時期というのは、電調審を通っていよいよ原子力委員会にかかって安全審査というものが行なわれる段階に聞くという程度ですね。そして、それにどう対処したかを後に資料公開しましょうですから、そういう対応のしかたの、いわば公聴会を開く時期についても非常に問題があると思う。たとえばいま問題になっている既存の原発の動いているものについて住民は不安であり、それに事故多発している、こういう状態ですから、そうしますと、つまりそういう住民の意向やそれに対する科学者のいろいろな批判というものですか、そういうようなものを勘案しますと、もうすでに電調審にかかる前に、今度計画されるであろう原発というものについて、電力会社側がいろいろなデータを出しているわけですからね。そして地元でそれをオーケーといって電調審に持っていくわけですね。ですから公聴会を開く時期についても、こういう一つの時期にだけ限って開くというような考え方がいいのかどうかということについて非常に疑問であります。ある意味では二段階、三段階くらいに公聴会を開かなければならぬくらいに住民は不安なんじゃないでしょうか、現実に動いているものがこれだけ事故を起こしているのですから。ですから公聴会を開く時期について問題がある。ところが、今度開いた公聴会については意見陳述者というものは地元の利害者に限ってしまう。そうしますと、先ほど久米先生もおっしゃっている、小野先生もおっしゃっておられるのだと思いますけれども、たとえば美浜で起きた事故ですね。蒸気発生器の八千八百本のうちの二割ぐらいが稼働していないというような事故とか、美浜の例の燃料棒がまるいものがひし形みたいになって、第一次冷却水に関連してたいへんな破損事故が起きるかもしれないというような事故が片一方に起きる。片一方、福島のほうでは、いま言ったような新たな原因不明の事故が起きるということになりますと、一つの地域の住民の利害だけの問題じゃなくて、日本全体にある原子力発電所に起きている問題をトータルにながめながら、原子力発電所の持っている安全性というものを議論しなければならない場面が要る。そうしますと、単に地元の利害という人たちだけが意見陳述をしていたのでは、福島について、第一号炉事故についていろいろ問題があったとしますね。それでいま二号炉について公聴会をやっている。ところが、美浜についての場合や、伊方の場合についてや、浜岡の場合とか、いろいろな全体の問題について問題にしながら、当面設置されるものについていろいろな意見を述べるということは不可能になってくる。ですから、ここで代理人として、地元の人たちと運動を一緒にやってきた科学者とか弁護士とかそういう人たちに当然公聴会における発言権というものが与えられなければ、これはとても公聴会にはならぬじゃないかというのが、いわば意見陳述者というものの範囲の問題として問題があると私は思うのです。  そこへもってきて、四番目には、意見陳述者を指定するわけですね、原子力委員会が特定の人間を。事前に届け出させて、同じような意見が二つあると、こっちだというふうにして、原子力委員会が指定していくわけですね。そして、細則によりますと、時間は十五分間で、十五分でできないときには書面であとから出せと、こういうわけでしょう。それは一方的に、自分たちの意見をある程度述べることができても、それについての質疑は全然行なわれないし、また同時に発言そのものが制限されちゃうという危惧がある。  五番目に至っては、意見陳述時間の、ここに書いてある順守の中身を見ると、これは治安対策ですよ。どのように会場の秩序を守るかという観点でそもそも問題が提起されておる。つまり、討論の場というのじゃなくて、いかに形だけ形式的に公聴会を成立させるかという観点での治安対策的な観点が貫かれている。そして最後には、安全審査会公聴会で聞いた意見をどう受けとめたかの資料をあとで公表する、こういう内容のものですね。  ですから、こういういわば政府、原子力委員会がいった公聴会の開催要領によれば、いま小野先生や久米先生がおっしゃられたように、現実に起きている原子炉そのもの安全性が問われていて、それ自身についての科学的な真理について科学者が論争する場すらないわけでしょう。そこへもってきて、いまから設置するものは——過去のものは別なんで、これから全部安全なんですといって急に切り離すわけにはいかぬわけですから、それでその公聴会のつくり方については、ばあっといま言った問題点なりワクをはめているのですね。だとすると、公聴会というのは、事実上は住民の批判をすりかえていくための形式的な対応なんだというふうに断定せざるを得ないように私は思うのです。したがって、こういう公聴会は、いま全国的に原発設置される地域、計画中の地域にたくさんの住民の不安がある、同時に、いま動いているものについて、科学者たちに意見の相違があるというようなことを含めて考えると、開くことは今日の段階ではかえって住民の内部に不安を残していくだけであって、今日のエネルギー政策を推進していくために住民意見を聞くんだという趣旨に反するんじゃないか、こんなふうに私は思う。この点についての先生方の御意見をお伺いしたい。そのことが一つ。  もう一つは、先ほどから出ているように、現在稼働しているもの自身に次から次と——いまのところは周辺の事故だからいいですけれども、こういう事故が積み重なって、ときには大きな災害、事故に発展しかねない、そういう実験段階的なものが現実に行なわれていることに対して、いまここでいっている公聴会の細則の最後の規定みたいなもので対処していても対処することができないと私は思う。そういう意味で、公聴会のあり方とでもいいましょうか、いままで伊方でいろいろなことをなさってきた久米先生なんかが、住民の側から見たといいますか、国民の側から見たとでもいいましょうか、そういう意味住民主権による公聴会とでもいいましょうか、そういうような観点からすると、いまの公聴会制度というようなものに問題はありはしないか。この二つについてお聞かせいただきたい。
  28. 小野周

    小野参考人 お答えいたします。  先ほど私が申し上げたとおりなんですが、ただいまの嶋崎先生のお話の中で、原子炉だけに限るかということについて、原子力に関する問題としては、原子炉の問題よりも、地元にとっては再処理工場などのほうが、あるいは廃棄物の貯蔵などにしてもそうでございますが、そういうものが非常に大きな意味を持つわけで、原子炉だけに限るということは私はもちろんないと思います。  それから、説明の時期その他のお話がございましたけれども、これは一応嶋崎先生のおっしゃったとおりの問題であると思うのですが、先ほど私が申しました意見の陳述者というものがどうであるかという問題よりも、やはり公聴会は、はんとうに国民理解と協力の重要性ということを考えるならば、一番大事なことは、住民がその原子炉について十分な判断を持って、それをどう考えるかということに関する知識なり判断の基準を得るということが、国民の側からいえば非常に重要なんではないかと私は思うのです。単に反対、賛成の方の意見を聞いて、それを安全専門審査会で資料にしたというふうな形で形式的に使われるということでは、実質的にほとんど意味がないんじゃないかと思うのです。むしろ住民が、自分たちとしてそこに置かれる——やはり原子炉ということについては、いろいろ私伺いますと、原子力の場合には、ほかの産業と違って、安全を第一に考えているということがよくいわれますけれども、実は、安全を第一に考えるということは、裏返すと、危険が起こったときには非常に大きな危険が起こるということで、危険の度合いは、たとえば火力発電所なんかよりはるかに違うということがあるわけです。その場合に、健康とか生命について一番被害を受けるのは住民でありますから、住民を無視した形で行なわれることは、本来あまり意味がないのではないか。住民を無視したということは、住民意見というだけではなくて、住民が正しい判断を得るための材料を提供されることが必要なわけです。  一つには、たびたび問題になっておりますように、現在原子炉安全専門審査会の速記録が公開されていない。そういうことで、実際にどういう審議が行なわれているかということが——これはその原子炉というわけじゃございませんけれども、一般的にいって現在そういうふうなことがほとんど公開されていない。だからわからない。それから資料につきましても、まだこれが完全に公開されているというわけではない。そういうことで非常に不確かな知識である。また一方、この問題に関する科学的な問題について、たとえば原子炉について危険であると考える科学者、あるいはこれでだいじょうぶだということを考える人、そういうふうな者の意見をそれぞれ聞くなりして、あるいは原子炉設置するという側に対する質問をして、それでかなりのことが明らかにされた一それはされたからよろしいというわけではないのですが、された上でなければ、住民ほんとうに最終的に自分の意思で原子炉を置くべきであるかどうかという判断も下せないと私は思うのです。そういう意味で、今回行なわれる公聴会の要領を見ますと、そういうことはまずほとんど何ら目的は達せられないのではないかというふうに考えるわけです。それが一つ。  それから、現在稼働しているものにつきましても、先ほど嶋崎先生は細則の一番最後についております部分についておっしゃったわけですが、これはやはり先ほどのお話にかかわりますけれども、現在実験段階のものであるかどうかというところにかかわってくると思うのです。それで、たとえば美浜の一号炉にいたしましても、美浜の一号炉は、燃料棒の破損の問題と蒸気発生器の細管の問題と両方ございますけれども、たとえば蒸気発生器の細管の問題などにいたしましても、こういうことが初めからあるということは住民は何ら聞かされていない。あるいは周辺機器の問題でございますけれども、やはりあれはかなりの部分が、約二千本の部分が減肉をしていまして、たまたまそのときに地震があって一度に全部こわれたりしますと、これはもうたいへんなことになるわけですが、そういうことがあるということは全然聞かされていない。だから、実験段階にあるということから考えますと、あの程度事故が起こった場合には、このまま原子炉を運転していいかどうかということまで含めまして、やはり公聴会というべきものが開催されてしかるべきではないかというふうに考えます。  あまり時間をとりましては申しわけございませんから、それだけ意見を述べさせていただきます。
  29. 久米三四郎

    ○久米参考人 私の公聴会に対する基本的な考えといいますか迷いといいますのは、一番初めにお話ししましたので、そういうことを前提にいたしまして、現在の原案、原子力委員会から出されております実施案について、私が問題だと思う点を四点あげたいと思います。  まず第一は開催の時期でございますが、これは設置許可申請書が出てからあとということになっております。しかし現状は、先ほど嶋崎先生がちょっと触れられましたように、各地の場合はどうなっておるかといいますと、地方自治体の誘致決議というものが実際上は設置許可申請書を出すときの前提条件になっております。これは法的には全然表に出ていないで、もっばら行政指導と称するものでやられておるそうでございますが、関連地方自治体の決議が必要であるということになっております。  たとえば伊方の場合ですと、これが何と安全審査が始まる二年前にこの誘致決議がされておりまして、そのときに地元で非常に悲劇的なことがいろいろ起こっておるわけです。なぜかというと、住民にとってはどんな原子炉がどっち向いて建つのかわからぬのに、賛成せい、賛成せいというてくるわけです。それで安全である、安全であるというようなことをいうわけですから、これはおかしいと思った人も感覚的に抵抗することになりますから、勢い、そこに設置者側のほうからいろいろ金品による買収行為その他が重なりますので、非常に暗いできごとが起こります。これは各地共通であります。その段階こそ、非常に明確に現在の原子力発電所の現状についての知識が住民に必要なわけでございますが、そのときはもっぱら強引なやり方でありまして、何かわけのわからぬ間に、伊方なんかの場合には、いまになりますと町長自身が、実は自分は、やったときは何のことかよくわからなかった。もしも危険だということがわかったらいまからでもやめるようにしたいというようなことを言うようなていたらくで、地方自治体の誘致決議というものがされておるわけです。  それを引き継いで、先ほどから御指摘があっておりますように、電調審が、これはやはり同じ内閣総理大臣原子力発電所を置こうということを先に決定してしまうわけですから、それでおもむろに設置許可申請書が出てくる。すなわち、既成事実はもうすでにでき上がっておるわけですから、そこへその設置許可申請が出てきて、それに追い打ちをかけるように公聴会がやられますから、事態はどういうことになっておるか、これは政治家の皆さんは考えていただいたらすぐわかると思うのです。  一番大事なところでそういうことが行なわれずに、もうすでに地元における感情的な対立なり、いろいろな不測の事態が起こったあとで初めてそういう問題が持ち出されることは、一そう住民の不安、不信をかき立てるだけであります。それで、結局としては、原子力委員会が下々の意見を聞きおくということにだけ公聴会が利用されるに違いないというふうに私は思います。  第二点、種々の制限がついておるようでございます。この要綱にははっきりございませんが、何か資料で私が見ましたのでは、新しくできるところであるとか、それから同じ型のやつはやめて集中するときにやるとかなんとか、いろいろな条件がついてございますが、これは全くナンセンスであります。  先ほどから嶋崎先生も御指摘のように、同じ一つの炉につきましても、設置許可申請のところ、あるいは工事にかかるところ、あるいは試運転に入る段階、あらゆる段階でチェックが必要であります。現在アメリカでもすでに公聴会は六カ月ずつ二段階にわたって義務づけられておることは、この原発の技術というのはまだごくその端緒についたばかりであります。特に百十七万キロワットという、日本でいま最もスタンダードの形になっておりますようなやつは、世界でまだ全然経験がないわけでございますから、半年の間にいろいろな重大な事態が発生してまいります。それは、個々のことは言いませんが、皆さん御存じのとおりであります。ですからもう半年もたちますと、そのときやった公聴会というのは古くさくなってしまいまして、必ずもう一ぺん機会を新たにして開き直す必要があるということは、これは世界の常識であります。  それをどういうときだけに限る、あるいはこういうときに限る、なるべくそれをやらないようにやるというのは、全くこれは官僚的なやり方でありまして、現在の原発の技術状況と全く対応しておりません。一回置いたやつについてはどうかというのは、これはもちろん例外ではございませんで、たとえば蒸気発生管の事故というような問題は、これはまさに出発した美浜の一号炉で起こったわけでございます。それが私は非常にふしぎなんですけれども、先ほども申しましたように、現状では気息えんえんの、もうほんとうに欠陥炉の、息も絶え絶えで、しかも原因がわからないのです、あれはどうして穴があいたのか。そういうものが白昼堂々と公衆の面前で運転されておるという状況理解に苦しむわけでございます。ああいう場合は、すぐ運転を中止して事故原因を徹底的に究明すると同時に、その周辺の住民に対して、こういう欠陥炉を動かしていいかどうかという公聴会は不可欠であります。そういうことをやらずに、行政レベルでそういうことの許可をやっておるという現状については、私は議員の皆さんにもかなり責任があるのではないかとあえて言わしていただきます。  それから第三番目、これは意見の具申が全く一方的であります。これはお読みになったら明らかでありまして、そういうことについての結果は、原子力委員会が安全審査のときに、安全審査会からの報告に基づいてそれにコメントをつけるという、それだけであります。これの経験は、私たち伊方にかかわってきております者は、痛いほど味わっておりまして、異議申し立てをかなり長文なものを出しましたけれども、それに対する答えが決定書という形で出ておりまして、皆さんのお目に触れておるかと思いますが、これは非常に通り一ぺんのものであります。私たちが提起しました問題について全く答えていないか、あるいはその問題点をすりかえるか、あるいは全然資料を示さないで結論だけを示すという、そういうことでございまして、これは、出てからかえって伊方の住民の間に非常に不信感を譲成しております。  これは現地を調べていただければ非常に明らかになると思いますが、少なくとも、もしも公聴会をやられるとしますときには、そういうことを防ぐ対策として、まず第一は往復運動が必要です。意見を出す、それに対して原子力委員会が回答する、それに対して納得いかなければまた質問する、それに対して答える、これはアメリカで現在やっておる往復運動でございますが、アメリカの場合も、これは六カ月というような制限で切られて、タンブリンがいっているように、実態は非常に形骸化したものになっておるそうでございますけれども、少なくともそういう住民との間の対話形式の公聴会というものでなければ全く意味がありません。  それから住民意見をどういうふうに審査をやったかという審査過程の公開、これは、当委員会の議事録等によりましても、何かわけのわからないことで、審査における発言の自由を確保するとかいう審査委員長の答弁がございますが、全くそれは科学者としてふさわしくない発言であると私は思います。審査過程を国民の前に明らかにしていく、このことと公聴会における問答を続けるということとは表裏一体であります。そのどちらが欠けてもこれは形骸化することは明らかであります。で、かえって先ほど申しましたように、住民の間に一方的な押しつけをやるという不安感を増すだけであります。  それから第四点、これは代理人の制限でございまして、この点についてはもう各方面からいわれておりますので言いませんが、これは民法で定められた代理人の自由という大原則に対するじゅうりんであります。こんなことに制限をつけるというのは、全くこれは法の何であるか、国民の基本的権利がどこにあるかということを御存じないのであります。それで、しばしば科学者を入れてやれとか弁護士を入れてやれというようなことがありますが、そういう制限自身全くナンセンスであります。それを選択する自由は全く住民にまかされております。だれを呼んでこようが、そんなことは関係がないじゃないか。科学者というのは、単なるそれは一つの代弁者にすぎないわけでありまして、ほかの地区でやっておって非常に苦労しておる住民意見、そういうものの開陳というものが大事なときもあります。そういうことの選択権は、一切これは当該地区の住民の選択にゆだねらるべきでありまして、そういうことを上から拘束するというのは、これは明らかな法律違反であります。もしもこれを強行される場合には、当然どこかで訴訟が必ず起こると私は思います。  以上の四点が、私にとって、あまり深く研究したわけでございませんが、いまの原子力委員会が出された原案の許しがたい点であろうと思います。  結論といたしましては、こういう形のままでもしも強行されたといたしましたら、それは、先ほど嶋崎先生がおっしゃったと思いますが、住民の不信を一そうかき立てる結果に終わるだけであろうというふうに私は思います。
  30. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 与えられている時間があれなものですから、ほかの諸先生方意見を聞く時間を失してしまいましたが、あとまたほかの質問者で補っていただきたいと思います。  それで、長官にお伺いしますけれども、こういう、先ほど私も述べましたし、いまのお二人の研究者の立場からも、この公聴会というのは、どうも現実に動いているもの自身が問題になっているときですから、ましてや今後設置するものについての公聴会ということで事が運ぶことが前提になっていると思います。ところで、いまのような先生方の御意見をお聞きになってみて、この公聴会開催要領をこの際もう一ぺん再検討してみる意思があるかどうか、これをまず最初にお伺いしたい。
  31. 前田佳都男

    前田国務大臣 ただいま嶋崎先生と諸先生方との問答を拝聴いたしておりました。私たちが考えております公聴会なるものは、具体的な原子炉安全性などにつきましては、安全審査会等におきまして十分現在でも反映をいたしておりますけれども、具体的な原子炉設置にあたりましては、地元の不安もあり、また懸念もございまするので、地元のなまの声を聞いて、そうしてそのなまの声をわれわれの判断に反映をせしめたい、そして地元理解と協力を得たいという趣旨から実は今度の公聴会なるものをきめたわけでございます。きめたことについて、いろいろ不十分じゃないか、一方通行じゃないかとか、あるいは見せかけの公聴会じゃないかといろいろ御指摘も聞きましたけれども、私は私なりに、これはとにかく半歩でも一歩でも、非常に前進したものだと私は思っております。  先ほども参考人先生からおっしゃったように、何でいまごろまでぐずぐずしておったのか、私は長官に就任以来、皆さんから不十分だという御指摘は受けておりますけれども、とにかくこれに踏み切ったわけでございまして、その点もひとつよく御理解をいただきたい。決して私、これをもって自慢しておるわけでも何でもございません。けれども、そういう気持ちもどうぞお察しいただきたい。  ただ、参考人先生からもいろいろ御指摘をいただきまして、私、実はこれを一つ一つ、いま詳しくは申し上げませんけれども、とにかく公聴会ほんとうに能率よくといいましょうか、秩序正しくといいましょうか、そうしてできるだけ多くの意見を代表するような意見も聞きたいという趣旨から、こういうふうないろいろ制限的なと申しますか、ということをしたわけでございまして、治安的な考え方というふうなものは毛頭持っておりません。  それから、先ほど嶋崎先生指摘の、既存の原子炉についての公聴会云々の御質問があったように思うのでありますが、私、それは何か先生がこの公聴会開催要領なるものを間違って御理解いただいておるのじゃないかと思いますので、この点その他につきまして原子力局長からもう少し補足をさせていただきたいと思います。
  32. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 嶋崎先生、七月二十四日、原子力委員会の「原子炉設置に係る公聴会開催要領の実施細則」の二十三項を引用されまして、「昭和四十八年七月二十四日において、すでに原子炉設置許可申請が行なわれている原子炉について公聴会を開催する場合にあっては、第四項の規定にかかわらず別に委員会がその開催日を決定するものとする。」というところでございますが、第四項は、一ページにございますように「公聴会は、原子炉安全専門審査会が当該原子炉の安全審査を開始した後三月以内に開催する」こうございますので、この二十三項は、この三カ月という期間をはずれたものについて申しましたので、まことにあれでございますが、これはやはり既存のものではないという趣旨でございます。
  33. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それで、なおさら悪いということがわかりました。  そこで、もう一度最後に長官にお聞きしますが、来たる九月の何日でしたか、福島公聴会開催予定は九月十八日ですか、いまのような参考人の方々の御意見があって、そしてこの二十三項、私誤っていたのですけれども、既存のものについては、これからはもう全然ノータッチということになりますと、なおさらもっていまから行なわれる公聴会なるものが、そういうたくさんの制限条項を持っておりますから、住民不信をかり立てる以外の何ものでもないと判断をいたします。これで住民意見を聞けると長官おっしゃったが、これの公聴会開催の意見陳述者の意見要旨の届け出、そして意見陳述者の指定、ここの部分だけで読んでみて、住民の意思が反映されるというふうにほんとう考えていらっしゃるのですか。それをまずお聞きしたい。
  34. 前田佳都男

    前田国務大臣 意見陳述者の意見の要旨の申し出、指定等をほんとう考えておるか、私ほんとう考えております。
  35. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これがほんとうだったら、やってごらんになったらいいと思う。  そこで、もう一度長官、やっぱり参考人を呼んで、私たちがこれだけ懸念をしているのは、エネルギー政策というものがあっちこっちで行き詰まっている今日の段階で、いろいろ再検討しなければならぬというのは与野党越えての課題でしょう。ですから、参考人先生方がおっしゃっているようなことをよく考え、われわれが判断しているこの公聴会に対する批判を受けとめてみて、それをもう一ぺん再検討するということがあっても、ぼくはひとつもおかしくないと思うのですよ。  そういう意味で、もう少し再検討するという時間の余裕がないとして、福島で行なわれるこの第二号炉公聴会をしばらく延期するというようなことについては判断ありませんか。どう考えておりますか。強行されるのですか。
  36. 前田佳都男

    前田国務大臣 延期する考えは持っていないわけでございます。
  37. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうすると、現地の住民が、今度出されたような公聴会住民の意思を反映しないという意味でこの公聴会に対する批判があっても、強行されるということですね。
  38. 前田佳都男

    前田国務大臣 強行ということは、まことに権力をもって無理に推し進めるようでありまして、私非常にいやなことばでございますけれども、実施をいたしたい。そういう強行という気持ちじゃなくて実施をいたしたい。
  39. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 おそらく、これだけ問題のある公聴会の制度ですから、初めてのテストケースですよね。それだけに、いまから予言をしておきますけれども、こういう公聴会が行なわれることは、政府が意図している原子力行政をスムーズにやるのにはマイナスにしか作用しないというふうに私は断定いたします、われわれの判断として。ですから、それをあえてなさるのをわれわれは強行と言うので、与野党越えて、科学技術の問題というのは国民的な課題でしょう。ですから、原子力委員会の側からそういう提案があっても、立法府の中で意見があった場合には、もっとほんとうにこの状態をよくするにはどうしたらいいかということについて、相互の交流の場や討論の場がなければ一そのために参考人先生方をお呼びしているわけでしょう。参考人先生方に聞いてみたって、いや、あれは一つの意見なんだといって、依然として原子力委員会が判断するやり方をやっていくことがいまの道だ、そういうのがはしなくも、きのう総理が、実際にはどういう発言かわかりませんけれども新聞であれだけ大きな記事になるような、いわば発言内容の片りんが出ているのじゃないでしょうかね。  ですから、そういう意味で私は、できれば来月に開かれる公聴会は、初めてでありテストケースであるだけに、きょうの参考人先生方意見をしんしゃくし、われわれ野党の側の意見も聞いていただいて、そして延期をするということを要望しておきます。
  40. 石野久男

    石野委員長 次に、瀬崎博義君。
  41. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私ども日本科学者会議が提案をされました公聴会に対する申し入れをテーマに、科学者会議を代表して来ていただいております参考人の諸先生に御意見を承りたいと思うのです。  二十八日に、すでにいわれております関電美浜号炉事故が起こって、こうなってまいりますと、全国で建設済み百八十二万キロワットですか、この建設を終わった原発の中でフル出力で動いているものがないことはもちろんのこと、とまっているか、全部出力制限というふうな事態に直面していることは事実で、いかに長官はじめ政府がカッコつきの安全性を強調されましても、事実は雄弁にその危険性を物語っているように思うのです。  私どもは自主的な、民主的な原子力の平和利用を進めていきたいと考えているし、現にそう考えている人はこの政治の舞台の中にもたくさんいらっしゃるが、反面、電力資本や大企業の利益に奉仕し、自主的、民主的な道を踏みはずしている政治的なグループの方々のあることも事実なんです。  こういう複雑な政治を背景にして、公聴会問題も民主の一構成部分として正しい位置づけにおいてわれわれは検討したいと考えているわけなんです。だから、事態は複雑であるということをよく認識してわれわれはこの問題の検討を考えておるということですから、まず原子力発電所の立地にあたりまして、地域住民との関係をどう考えるべきかという最も根本的な問題について、民主主義の理念やよりどころとなる憲法その他法律との関係も含めまして、まず法律家である牛山先生の御意見を承りたいと思います。  時間の関係がありますので、恐縮なお願いですけれども、極力要を得ていただきたいと思います。
  42. 牛山積

    牛山参考人 私たちがこの問題を考える場合に、やはり過去の事例を考えてみる必要があるだろうと思います。  御承知の方も多いかと思いますけれども、昭和三十九年に三島、沼津のコンビナート反対闘争があったわけですが、結論としては、コンビナート誘致が阻止されまして地域の安全性確保されたわけです。  その場合に、何が一番大きな力になったかといいますと、一つだけあげておきますと、政府の派遣した調査団が、コンビナートを誘致しても安全だという調査報告書をつくったわけですが、これに対して、地元の科学者を中心とする調査団は、安全でないという結論を出して対立したわけです。この両者について討論会が行なわれ、相互に検討が行なわれまして、政府の調査団がみずからの欠陥を認めざるを得なくなったということが大きな理由としてあげることができるわけです。これに対して、従来のコンビナートの中で政府やあるいは自治体が行なった安全調査報告が、安全だという宣伝の材料として使われたわけですけれども地元の人たちに対してこの調査報告書が示されないで、そのために検討の機会を奪われたために、後になって公害が激化してきたという例があるわけです。この事実からもわかりますように、安全の問題について住民の側の疑いと、そして一方の立地を進めようとする側の論理と、つけ合わせて徹底的に検討していくことが必要だということがわかるわけであります。  こういう歴史的な事実を前提として考えますと、発電所の立地というような問題については十分にその安全性を検討して、そして、それについて住民意見を表明していく、その意見を行政の中に反映させていくということがどうしても必要なことになってくるわけであります。  憲法上の問題について考えてみますと、まさにいま申し上げた安全性の問題というのは、伊方の訴訟の中にも主張されておりますように、憲法の中で規定している生存権やあるいは幸福追求権を、まさにみずからが保障しようとすることでありまして、これは非常に高く評価し、保障をしていかなければならない問題だろうと思うわけであります。そういう意味で、発電所の立地等の場合におきましては、住民意見を十分吸い上げていく、そして、その前提として具体的な事実を住民の中に明らかにしていくということが必要になってくるわけであります。  いま申し上げたような方向というのは、先ほど嶋崎先生でしたか、お話の中にありましたように、まさに住民主権あるいは国民主権、住民自治、その問題と全く結びついてくる問題であります。  ところで、もう少し裁判の例を御紹介しておきたいと思うのですが、最近裁判所の判決の中で、住民の同意ということを積極的に評価いたしまして、そして環境を破壊するような施設を設置するものが、住民の同意を得るための努力をしなかった場合について、差しとめを認める理由として取り上げている判決例が出てまいりました。  具体的に判決例を御紹介しておきますと、一つは昭和四十六年の五月、広島地方裁判所の判決であります。これは広島県の吉田町とその隣接の町で、屎尿処理施設それから廃棄物の焼却場をつくろうという計画を立てたわけですが、これに対して地元の人たちが差しとめを求めたわけです。幾つかの理由がありますが、その中でやはり決定的に重視されている一つの理由は、町当局は、反対をしている人たちに対して数回説明会を開いた、しかしそれだけであって、住民の同意を得るために積極的な努力をしなかった、ということを理由としているわけです。  この判決と全く同じ考え方を引き継ぎまして、昨年の四月に、大阪地方裁判所の岸和田支部というところで決定が下されている事件があります。これは和泉市というところで火葬処理場を建設いたしまして操業しようとしたわけです。その操業をやはり健康被害等が生ずるということを理由として差しとめた事件でありますが、裁判所はやはりこの事件におきましても、住民反対をなぜ押し切って同意を得ないで操業をしようとするのか、その点を理由の一つとして強く評価いたしまして、差しとめ請求を認めているわけであります。  そういうふうに、裁判所の判決の中では、先ほど申し上げましたような住民自治、それはまさに憲法上の規定であります。そのことによって生存権、幸福追求権を守っていくということになるわけですが、その考え方が定着してきているということを注目していただきたいと思います。  こういった裁判所の判決を通じていま新しい動きが生じてきているわけでありますけれども、裁判所によってしか救済されないという現状は、とりもなおさず立法及び行政の怠慢をあらわしているわけであります。とりわけ裁判によらないで、行政あるいは立法によって先行してこれらの問題を解決する方向がとられなければならない。そういう点をわれわれはこの判決の中から学びとるべきだと思います。  そういう趣旨から考えまして、やはり住民の同意を得るための積極的な努力を続けていく必要がある。そのために私たち科学者会議の申し入れの中で、単に一方的に意見を聞くだけでなくて、その意見について十分な討論を尽くせということを強調しているわけですが、その考え方に結びついていっているわけであります。  また何か質問がありましたら続けてやります。
  43. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 長官、いま牛山先生のほうから、憲法が保障する生存権、幸福追求権にも触れて、住民の同意が基本的には原発立地などの場合に必要なんだという御説明がありました。特にこれを裁判の判決を引用して説明されたわけでありますが、裁判が行なわれる前に、先行して行政、立法の段階住民の同意が保障されなければならない、こういう御趣旨について長官はどうですか、御同意なさいますか、否定されますか。
  44. 前田佳都男

    前田国務大臣 ただいまの参考人先生の大阪府の和泉市の火葬処理場の設置に関連いたしまして、住民の同意を要するというふうな趣旨の、大阪地方裁判所ですけれども、判決はまことに注目すべき判決だと私も思います。ただいま先生から御指摘のように、行政、立法がしっかりしろというふうな御趣旨だったように思うのでありますが、私も実は先生趣旨と同じでありまして、しっかりしろと実は思っております。しっかりしかたがもうひとつぬるいじゃないかというふうなお考えであろうと思いますけれども、われわれは同意を得るという、同意というのじゃなくて、公聴会というふうなものに踏み切ったのも、実はそういう趣旨から踏み切ったわけでございまして、その考え方においては私、否定するものではございません。
  45. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは、あすわれわれのほうからも山原議員が追及されますけれども、だったら伊方の問題に関連して田中総理の、長官ががわざわざ弁解をしなければならないようなきわめて間違った方向の発言があったなどということは、これは本来長官が批判せねばいかぬと思うんですよ。いまの牛山先生立場を認めておられるならば。つまり住民が根本的に問題にしている点について、総理大臣が答えようとしたならばこれまたわかるけれども、どういうふうな言い回し方にしろ、全く反対立場を表明した。とにかく建設をやるんだということになったわけなんでしょう。だから、そういう点でしっかりしたかたが足らぬという単純な問題じゃなくて、あまりいまの方向で長官にしっかりしてもらったら困るのじゃないかなとすら思うわけですね。ですから、そういう点でわれわれがわざわざこういう基本的な問題まで引き出したのは、住民の同意という問題は、今日の日本の政治のもとでは憲法上の保障もある最も基本に属する問題だという認識が必要なんだ。そういう点をひとつここで明らかにしておきたかったからなんであります。時間が限られますからこれ以上論議を避けますけれども……。  さて、そういうことを土台にして、原子力発電所問題に限らず広く公聴会制度考える場合、制度内容において共通の核心になるべき要素は一体どういう問題なのかという点につきまして、これはやはり牛山先生のほうからお答えいただきたいと思います。
  46. 牛山積

    牛山参考人 先ほどのことでちょっとつけ加えさしていただきたいのですけれども、先ほど申し上げましたように、住民の同意をできるだけ取りつけるということになりますと、これは当然その前提として公開の原則ということが要求されてくるわけです。これは意見を表明するということになりますと、その前提として意見を表明する対象についての理解がないと意見の表明のしょうがない。これは先ほどから小野先生が強調されていられることでございます。  そして、その公開の原則を前提として、これは憲法上、最近のことばでいうと知る権利といっていいわけですけれども、それを前提として意見を表明し、それを取り入れるシステムを確立していくことがやはり必要になってくると思います。  もう一言つけ加えさせていただきたいのですけれども、この原子炉の問題につきましては、いま申し上げたことがさらに原子力基本法の考え方からより強く強調されなければならないということです。三原則、自主、民主、公開、それから目的として平和利用がありますが、現在の時点でいいますと、公開が単に平和利用の確保というためだけでなくて、やはり安全性の問題とからんで強調されなければならない。  それから、自主ということも、単に外国との依存を断ち切るということだけでなくして、企業に従属し、企業が提出する資料だけで判断するというようなこともやはり断ち切らなければならないというようなことになってくるだろうと思います。  民主ということにつきましても、単に原子力関係の機関に携わっている人たちの間の民主の問題だけでありませんで、やはり地域住民の問題も考えた上での民主ということを新しい内容として強調していかなければならない。そういう問題がつけ加わってきまして、特に住民の同意という問題を強く強調する必要があるだろうと思います。  それで、住民の意思を行政の中に反映させていくという場合に、現在幾つかの動きが出ているわけですけれども、一つは、直接原子炉の問題につきましては存在していないかもしれませんが、たとえば電源開発調整審議会等々のいわゆる審議会を民主化するという問題が、現在大きな課題として検討され始めているわけです。  それからもう一つは、これは日本弁護士連合会の提案として出されているわけですけれども、こういった立地を進める計画の立案等については、徹底的に司法的な場で争うということまで含めて、公聴会における住民の意思の反映を制度的に確保しろという立法論が出ております。  もう一つは、公聴会を、きょう問題になっているような例ですけれども、できるだけ住民の意思を反映させる方向に持っていけということであろうと思います。具体的に私たちが考えていることにつきましては、あとでこまかく御紹介する機会があるかと思いますけれども、やはり基本は住民の正しい知識を得るということ、それに対して意見を述べること、その意見に対して説明があり、そしてまた意見を述べるという、先ほど往復ということばを久米先生でしたか使われましたけれども、それを確保していくことが非常に重要だというふうに考えます。  先ほど和泉市の例をあげましたけれども、その判決が出たために、和泉市と地域住民との間におきまして、この問題についての協定が成立して稼働するようになったという事実があるわけでありまして、同意を得るということは、両方の誠意があって理路を詰めていけば、決して不可能な問題ではないというふうに私は考えているわけです。  従来の公聴会の制度につきましては、戦後非常にたくさんの制度がつくられているということについては御承知のとおりだと思います。その中にはあまりたいした形のものに制度としてはなっていないものもあります。しかし、今度原子力委員会で出しました実施要領と比較してみますと、はるかに進んだ内容を持っている制度も散見されるわけであります。  たとえば利害関係人以外に広く意見を述べる場所を保障するとか、あるいは常に義務として公聴会を開かなければならない、そういった幾つか参考にすべき点もあります。たとえば、科学者を住民の代表として陳述人になるように認めるべきであるというのが私たちの申し入れの一つの内容になっているわけですけれども、そういうことを当然のこととして認めている制度もあるわけであります。たとえば土地収用法における事業の認定という場合であります。  そういうふうに、従来の制度で参考になるところもありますし、原子炉の問題について現在要求されていることと比較しますと、おくれている側面もあるわけでありまして、原子炉の問題については原子炉の問題を検討するにふさわしい公聴会というものをわれわれは追求していかなければならないのだというふうに考えております。
  47. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、そういうふうな基本的な立場を踏まえて科学者会議のほうから御提案があったものと思います。  すべての項目について御説明いただく時間がないかもしれませんけれども、一応順序に従ってひとつ提案された趣旨あるいは政府案に対する批判等もお伺いしたいのであります。  まず第一として、原発立地にあたって開催される公聴会において論議されるべき事案の性格と範囲について、科学者会議のほうではどういうふうにお考えになったのか、ひとつ御意見を賜わりたいのです。
  48. 安齋育郎

    安齋参考人 すでに五月二十二日に発表されている開催要領では、公聴会の場で一体どういうことが議論の対象になるのかということについて非常にばく然たる規定しかないわけです。それで、もしかすると狭い意味での原子炉の安全の問題に限局されるおそれがないではないということで、私たちは、原発問題というものは非常に総合的な本質を持った問題であるということに照らしてみると、もしそういうことであればきわめて不当であるということで、当然のことながら再処理施設の設置を含む原子力発電の全システム、これが周辺の自然あるいは社会環境にどういう影響を与えるかということについても、当然その公聴の場での討論の対象にならなければいけないだろうというふうに思うわけです。  この問題に関しましては、今回の具体的な事実経過の中で、私たち若干科学技術庁にも確かめたこともあるのですが、それについては地域開発の問題等も当然含まれるのだというふうなことを言い出しておられます。そうであれば、もう少し公聴会開催要領についてその辺が明確にあらわれるような書き方をなぜしていないのか、これは確認をぜひしていただきたい。  しかしながら、もう一つの問題として、そういう地域開発の問題その他を含めて、非常に広いものを意見を聞きましょうということは、それでいいかもしれませんけれども、はたして原子力委員会が主宰するこの公聴会で、広く聞いたけれども委員会の権限外のことについては答えないのではないか。責任ある科学的なあるいは行政的な措置がとられないのではないかという懸念は、やはりどうしても残っているので、この点も広く聞きましょうということを言い出したことはけっこうだと思いますけれども、そういうものに対して住民が最終的に納得のいくまで、そういうことについてきちっと現実の手だてが講ぜられる、そのために原子力委員会主宰の公聴会というものがどういう権限を背景にして開かれているのか、その点もぜひ確認していただきたい。  もう一つつけ加えますと、この第一項目で私たちが要求していることは、総合的なエネルギー開発計画を中心とするような全国民的な計画については、全国的な視野から検討する、そういう公聴の場を別に設けるべきだ。これは先ほど議論になりました、現在の原発をめぐる科学技術上の水準あるいは行政的なさまざまな段階において、原子力発電というものにわれわれがどれだけ安全に依拠し得るのかということも含めて、科学者を含めたこの公聴会が別に保障されていかなければならないだろうというふうに考えているわけです。
  49. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、いまの点について政府のほうにひとつお尋ねしたいのです。  いま安齋先生が引用されました政府見解は、日本科学者会議福島支部が県知事あて出した要請に対する科学技術庁見解なるものを中心にした回答によっていると思うのです。そうですね。確かに、それを拝見させていただきますと、いまの意見陳述の事案の範囲として「地元利害関係者が当該原発基地群全体の安全性問題について総合的な意見陳述をすること、また環境問題全般にわたる包括的総合的な意見陳述をすること、地域開発政策の可否を陳述することを妨げるものでない。」つまり、これを述べてもよい、こういうふうになっているのですね。これは政府が出している開催要領や細則ではもう一つはっきりしなかったけれども、中身としては、いま私が読んでみました内容理解してよいということなんですか、まずそれから確認をしたいと思うのです。
  50. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 いまの問題につきまして、ちょっと簡単にお答えいたします。  今回設けられました公聴会制度は、当該の原子炉につきましての安全性についての地元のなまの声を聞くことが主でございますが、その当該原子炉にかかわる原子力発電システム、すなわち固体廃棄物の貯蔵とか、それが輸送される場合とか、再処理工場に廃棄物が出荷されるというふうな点につきましての原子力発電システムについて地元の御意見があることは当然と考えておる次第でございます。それから、環境問題につきましても、地元の御意見があることは当然と考えております。
  51. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、それは当然なんだから、そういうことは意見陳述は当然されてあたりまえなんだという理解なんですね。はっきりとイエスなのかノーなのか、それだけ言ってもらえばいいのですよ。
  52. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生のおっしゃるとおりです。
  53. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ第二点として、陳述は差しつかえないんだから、言うことは大いに言ってください。しかし、それに対して政府が答えなかったら、住民にとっては何にもならない。そういう出された問題に対する政府側が答える責任といいますか、義務といいますか、こういうものをはっきりさせていただきたいと思うのです。これは長官にお答えいただいたほうがいいと思いますね。
  54. 前田佳都男

    前田国務大臣 確かに瀬崎先生のような御質疑があると私も思っておりました。実は公聴会というもののあり方ですが、私は公聴会というのは、国会でも公聴会というのはよく開かれております。これも別に討論したり、そういうことをするんじゃなくて、それはむしろ回答もいたしておりません。けれども、われわれが考えておりまするいまの公聴会は、現在いろいろ日本の行政のやり方の一環としてございます公聴会というものを十分に参考にいたしまして、そしてこういう公聴会という制度を考えたわけでございますが、今度の公聴会で述べられました意見につきましては、検討報告書というものをつくりまして、その報告書において、回答といいましょうか、意見にお答えするというふうな考え方を持っておるわけでございます。
  55. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、その検討報告書はどの範囲に配付されるかということを、それから、検討報告書が出されるだけで、実際の審査のほうに反映しなかったら何もならないと思うのです。そこの点はどうなるんですか。
  56. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 検討報告書は、安全性に関するものにつきましては、陳述のありました御意見について安全審査会に検討をしていただきます。そして、その検討の結果が検討報告書になるわけでございます。  それから、先ほど御質問のございました安全性に関しない環境問題につきましては、関係省庁に調査を依頼いたしまして、その結果をもちまして検討報告書の内容といたす所存でございます。
  57. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それはまたあとで事後の処置の問題と含めてもう一ぺん時間があればお尋ねするとして、もう一つ、じゃ、原子力委員会がこの公聴会を開催するにあたって、法的な準拠等は示されておりますけれども、いま安齋先生のほうから、どういう権限のもとに開かれるんだというお尋ねが逆にありました。これはひとつこの場で一ぺん答えておいていただきたいと思います。
  58. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生承知のように、原子力委員会の決定をもってこの公聴会を開くわけでございます。したがいまして、御疑念は、その原子力委員会の権限に属さない、環境問題等についてどうだという御指摘だと思いますが、この点につきましては、委員会設置法第五条によりまして、関係省庁に調査を依頼し報告を求める権限を持っております。
  59. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、第二点目といたしまして、公聴会の開催の要否決定の判断基準をどう考えたらいいのか、ひとつ科学者会議の御見解と、政府がとっている見解に対する御批判等を伺いたいと思います。
  60. 安齋育郎

    安齋参考人 その前に、いまの問題ですけれども原子力委員会が、公聴会の場で出された見解に対して、よほどきちっと具体的な対応策を責任をもって示す、そうして出てきた要望に対しては、きちっと答えるということが十分やられるのでないと、やはりこの公聴会を開いたことイコール住民の了解が得られたこととは決してならないということでありますので、この点はさらに御議論を別の機会にいただきたいと思います。  それから、いまの第二点として私たちが申し入れております点は、この公聴会を開くか開かないかという開催の要否が、現在の発表されている要領によりますと、原子力委員会が必要と認めた場合ということになっておりまして、これにも一定の限定がついていて、たとえば大型炉であるとか、あるいは集中化しているとか、あるいは新型の炉であるとかというような一定の条件を満たさないと開かない。それで、いま福島について百十万キロというような炉が計画にのぼっていて、これについて公聴会が開かれようとしていますが、それじゃ今後百十万キロという炉がまた出てきたときに、これについて必ず開くかというと、そういう保障はないんだそうであります。そういうことでは全く当を得ていないわけでありまして、私たちの申し入れば、設置予定地区における自治体の決議があった場合には当然開く、それから地域住民の一定の要請があった場合にも必ず開く、それから、当然この安全の問題というのは、日本の科学技術の専門家が総能力を結集していま議論しなければいけない段階であるということからして、それにふさわしい日本学術会議が必要と認めて要請した場合にも、当然開かれる道が開かれていなければならないだろうというふうに考えているわけです。
  61. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま科学者会議から提案のありました、原子力委員会が開催権を持つだけではなしに、設置予定地域の自治体の決議、それから一定の割合の地域住民の要請、学術会議の要請、この三点をとりあえず出しておられます。こういう点をひとつ受けていかれる考えはありませんか。
  62. 前田佳都男

    前田国務大臣 ただいまの瀬崎先生のお尋ねは、原子力委員会がその公聴会を開催するかどうかの決定権を持っているということで、原子力委員会の意思でどうにもなるじゃないかというふうな、そういうふうな趣旨のお尋ねだと思いまするが、原子力委員会はなるほどきめます。しかし、原子力委員会が自由裁量で、自分の恣意によって、これを開いたり開かなんだりするということはできないように、そういう規制をつくってあるわけでございまして、それは大型、新型、集中化、それ以外にも地元の知事の要請があればということでそれをカバーして、そういう要請がある場合にも開きますということで、原子力委員会がかってに今度やめた、今度開くというふうなことができないように、自由裁量というものを許さないような、そういう規制をみずからとっているわけであります。
  63. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それが不十分だから、いま三点、さらにこういう場合も要請を受けるべきだ、こういうふうになっているわけなんです。ですから、科学者会議が提案されているこの三つの要請についてどうこたえるのか、それを聞いているわけなんです。
  64. 前田佳都男

    前田国務大臣 科学者会議の御提案は……(瀬崎委員「自治体の決議がある場合」と呼ぶ)自治体の決議または一定の割合の地元住民の要請、これはわれわれのほうでは、考え方がいつもその点はどうも古いんじゃないかというような御指摘を受ける考え方でございますが、知事というものは選挙によって選ばれた知事である。民意といいますか、県民の意思というか、地域住民の意思を代表して、十分それをくみ取って知事というものは行政に反映するんだという意味におきまして、知事のそういう要望があった場合ということでこの点はカバーができるというふうに私は考えております。そうしてまた、科学者会議の要請というものは、これは全般的な原子力の開発計画とか、あるいはそういうふうな問題等につきましては、これは具体的な原子炉について、それに関連する意味において地元の方々の団体の代表として承るという場合はございますけれども、科学者会議に——学術会議との関連におきましては、現在原子力委員会と学術会議のこの特別委員会の間におきまして年に四回程度会合をしておるわけでございまして、その点においてもいろいろその御意見を反映をしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  65. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 長官はよく地元住民の意思を知事で置きかえようとされるんですよ。前にもそういう答弁があった。その点では、しかし、むしろ伊藤政務次官の答えているほうが、ぼくはやはり先ほどからの牛山先生あたりの考え方が妥当だと思うんです。つまり地元住民という場合には、町議会だとか、その他公共団体の御意思、こういうものを十二分に体する必要があるとか、地元民の完全なる理解や協力——完全なるということばまで使って、その理解の必要性を述べているでしょう。第一、知事がすべて選挙のときに、私はここへ原子力発電所を誘致するんだというような公約でもして選挙に臨んでいるんならいざ知らず、そんなことをしている人はまずないんですよ。だから、そういう知事をもって特定の地域につくられようとする原子力発電所について、民意を代表しているなんていえますか。もう一ぺんはっきり答えてください。
  66. 前田佳都男

    前田国務大臣 その点は瀬崎先生からいつも御指摘を受けておる点でございますが、私はやはり民意を代表するものというふうに信じておるわけでございます。
  67. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まあ民主主義の考え方に根本的な違いがあることだけははっきりしますね、これで。田中総理の代理にふさわしい長官です。  では、特にこの福島の場合に限定してもう一つ聞きます。さっきの県が科学技術庁の見解に基づいて出した回答書で見れば、「今後申請がなされた場合にそれが原子炉の集中化にあたると判断されれば公聴会が開催されることとなろう。」つまり、今回福島で第一回目の公聴会が開かれる予定だ。しかし、今後さらにこの集中化に当たると判断されればまた開くことになるだろう、こういう回答書になっているんです。この文書、これでいいんですね。
  68. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生の御引用の文書は、たぶん県の御照会によりまして原子力局の者が口頭でお答えした結果だと思いますので、その文書自体についてはあまりはっきりいたしませんが、そういう趣旨の返事はしているわけでございます。
  69. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だとしますと、やめましたけれども、成田前局長が七月十八日、本委員会で「あの地区」——つまり福島県の浜通りといわれている地区です。「あの地区は今後かなり原子力発電所の集中化というのは避けられない傾向だと思います。」もうすでに集中化の傾向にあることを認めているんですから、今後当然二回、三回目と集中化が進むにつれて——われわれはそんなことを望んでいるんじゃないし、反対ですよ。だけれども、あなたたちが無理やりそういうふうにしてきた場合には、必ず公聴会は続いて開いていきますね、その点はっきりしておいてください。
  70. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 集中化ということに該当する場合には公聴会を開くことになると思います。
  71. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 安齋先生にお伺いしたいのですが、日本学術会議との関連については、いまちょっと長官のほうから、年に四回ほど原子力委員会との間で会合のようなものを持っている、これで代行できるんじゃないかというお話だったのですが、その点についての御見解はどうです。
  72. 安齋育郎

    安齋参考人 原子炉設置するというのは、先ほど申し上げましたように、きわめて総合的でかつ科学技術的にも非常に高度な内容を含んでいる議論なわけです。それが学術会議原子力委員会との間の懇談程度の席でとても解決されるとは思わない。そういう意味日本学術会議は、その設立の趣旨からしても、当然日本の科学技術の応用については、日本における専門家の、社会科学、自然科学両方面にわたる知恵を結集すべきものとして、当然別に要請がある場合には開いていくということが絶対に必要ではないかと思います。
  73. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ひとついまの学者の意見は尊重していただきたいと思いますね。  じゃ次に、三つ目の問題として、意見陳述者の範囲の問題なんです。  これは先ほどからも若干出ておりますけれども、あらためて科学者会議の基本的なお考えを承っておきたいと思います。
  74. 安齋育郎

    安齋参考人 その前に、申しわけないのですが、先ほど知事の同意があればという話がありましたので、若干言っておきたいのですが、たとえば北海道の岩内の場合には、予定にのぼっている炉の出力というのは、福島の場合より小さいわけです。しかも何基置かれるかという基数の予定でも少ないわけですね。しかしながら、岩内ではきわめて強い反対の運動がある。じゃ知事が要請することがあり得るかというと、北海道の知事は、これを積極的に誘致するという側には立っておりますけれども、決して反対立場でこれを考えるというような現状にない以上、具体的に岩内ではたぶん開かれないということになってしまうと思うのですね。そういう点で非常に問題だというふうに感じました。  それから第三点で、私たちはやはり意見陳述希望者が地元の利害関係者というきわめてばく然たる者に限局されているということで、これも福島の場合について私たち若干調べましたところが、あそこの富岡町あるいは楢葉町というようなところに住んでいる人あるいは勤務している人、あるいはそういうところに不動産を持っている人、そういった人のほかに、福島県下で福島県民として税金を払っているだけでは不十分で、それにプラスアルファがある人といったようなことになっているようです。基本的には。こういうことでは全くいけないことだと私は思います。当然のことながら、地元民が推薦する科学者を含めて討論していくということが、どうしてもこの原発問題を総合的に明らかにしていく上で欠かせないことではないかというふうに思っているわけです。
  75. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま相当具体的にお話がありましたが、どうですか、政府のほうでもこれは民主的な内容にしていこうと思えば、当然検討しなければならぬ問題だと思うのです。ひとつ長官局長の御意見を伺いたい。
  76. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この公聴会制度地元利害関係者のなまの声を聞くことをその趣旨としておりますけれども地元利害関係者によって構成されております団体の意見を代表する、こういうふうに考えられる人につきましては、地元利害関係者として取り扱うことにしております。
  77. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ただ、地元民を含んで利害をともにして構成している団体というその判断なんかが、どういう基準で行なわれるのか、だれがやるのか、住民の側が、この人は私たちと利害があるんだというふうに言ってくれば、それを受け入れるんならいいんですよ。そこのところを少しはっきりしてくれませんか。
  78. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 具体的に申し上げますと、たとえば、そういうものがあるかどうか存じませんけれども福島原発反対する会というふうな会がございまして、その会に常に意見専門家として言っておられるような方、そういう方が推薦されれば代表として認めるつもりでおります。
  79. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、現地の住民と密接な関係日本科学者会議が持っておられる。よく聞いてくださいよ。その日本科学者会議の会員であるならば、地元民が要請されたらどなたでも申請者としては認める、こういうことですか。
  80. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 どなたでもというわけではございませんでしょうが、従来から、地元反対団体でも賛成団体でも、意見をコンサルタントとして言っておられる方、そういう方については認めるつもりでおります。
  81. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その意見を述べている方、コンサルタントになっている方個人じゃなしに、その方が所属している学者の団体の所属員であれば、これは当然利害関係を持っていると見れるのじゃないかと私たちは思うのだけれども、そこの点はどうなんですか。
  82. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 その辺非常にデリケートなところでございますが、まあ具体的に申しまして、同じ方がどこの公聴会へでもあらわれるというようなことは避けたいと思っております。しかし、地元についてその方が常に専門家としてコンサルトしておられるというような方は認めたい、こう考えております。
  83. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 どこへでも顔を出している人は困るのだというような話なんですけれども、しかし、そういうことが排除される基準にはならないと思うんですね。一番最初の前提からいくならば、たとえAならAという同じ方であっても、各地の原発立地地域の反対団体あるいは賛成団体、あるいはその他の団体につながりを持っていらっしゃったら、先ほどの局長の御答弁からいくならば、認められてしかるべきじゃないですか。
  84. 生田豊朗

    ○生田説明員 こまかい点でございますので、かわりまして御説明申し上げます。  ただいま先生指摘の点でございますが、検討いたします点といたしまして、たとえば陳述の申し込みの中に架空の団体があったと仮定いたします。これが地元の利害関係者でまさしく構成された団体であるかどうかというのは、私どもの審査検討の対象になるわけでございます。  それからもう一つは、ある専門家なり特定の方が、ある利害関係者で構成された団体の意見を代弁する者としてお申し込みになりました場合に、それがほんとうにそうであるかどうか、あるいは万一地元の利害関係者の団体は全然知らなかった、しかし、その陳述をお申し込みになった方が  一方的にそういうことをお申し込みになったということは、やはり手続上チェックする必要がございますので、そういう点をチェックするという趣旨でございます。
  85. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 念を押すようですけれども、もっと具体的に、ある団体でいきましょう、架空の反対団体だとか賛成団体でなしに。日本科学者会議福島支部というのは厳然としてあるわけですね。この支部の会員さん、これは当然福島県内の人でしょう。そういうふうな方並びにそういう支部が、福島県外に住んでいるけれどもしょっちゅう福島県へおいでになっていろいろコンサルトしていらっしゃる科学者会議の会員を推薦されている、こういう場合は当然認められるのですね。
  86. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生のおっしゃった科学者会議福島支部は、当然地元利害関係人でございます。  それから、第二におっしゃった点、科学者会議の方であって地元の利害についてコンサルトしている方は代弁人として認めるつもりでおります。
  87. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃこの問題の最後に……。ですから一言で言えば、先ほど安齋先生の御意見もあったように、要は福島県に住んでいる、つまり正味の地元の人が、確かにこの人は私たちの代理人として意見を述べていただきたいのだと推薦されたら、それは認めるのだということになれば万事解決するのじゃないですか。そういうふうにもうすかっとされたらいかがかと思うのですがね。
  88. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 そのとおりでございます。
  89. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次に、四点目といたしまして、これは先ほどから運営問題はいろいろ論議されておりますから、簡単でけっこうです。意見陳述者の選択の問題も含めまして、公聴会そのものの運営方法について特に留意すべき点、こういう点が必要だということがありましたら、科学者会議の方、お願いいたします。
  90. 安齋育郎

    安齋参考人 またその前にちょっと触れておきたいと思うのです。  いま言われました、たとえば科学者会議原発問題研究委員会の仕事をしている人ならあるいは採用されるかもしらぬというようなことがいまになってこの議論で明らかになってきたという事態は、福島原発についての公聴会の公示というのは八月一日に行なわれているのですね。それからもう住民の人たちは、それに対してどういう態度をとるかということを含めて具体的な検討に入っているわけです。そういう段階では、はたして県外に住んでいる科学者の人がいいかどうかなんということについては、だめなものと思っていろいろ議論しているわけですから、こういうことがいまになって明らかになるようでは、やはり福島公聴会をもっと延期していただかないと話がおかしくなるのじゃないかと私は思います。  第四点ですけれども意見陳述希望者が多数の場合には、原子力委員会が、この意見とこの意見は同じだからしぼるとかいうことをやってくることになっていますけれども、私たちはやはり、出されている意見というのは、極力これを全部、公聴会の場に反映するということが基本的に重要な点だと思いますので、この意見陳述希望者間の自主的な調整というものに非常に配慮してもらわないといけない。そういう点でこの自主的調整の機会を十分に保障すべきであるということを申し入れているわけです。
  91. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 科学者会議のほうでは、この意見陳述者の数が非常に多い場合、基本的にはやはり日数をかけて、できるだけ希望される方全員の意見を述べる機会を与えることが、長官のよく言う、なまの声を聞くことになるのだろうと思うのだけれども、それがかなわない場合に自主的調整が必要だというお話、これは当然だと思いますね。一方的に原子力委員会段階で判断するのは間違いだと思います。そういうふうな点で配慮される点はありませんか。
  92. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 賛成、反対ともに同一意見の方が多数おられました場合には、その同じグループの方で自主的に調整していただくつもりでおります。というのは、自主的に調整して代表者を選んでいただく、こういうつもりでございます。
  93. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その同じグループに属するというのは、どういうことで判断をしようとされておるのですか。
  94. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 陳述人の申し出に際しましては、その意見を記入していただいております。それから判断いたしまして、同じ理由で賛成、反対というグループ分けができるわけでございますが、そのグループの中で代表者を自主的に選んでいただきたい、こういうことでございます。
  95. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 つまり、同じ科学者会議のメンバーだからということで調整するんじゃなくて、意見が大体同じような場合に、同じような意見の人に連絡をして、お互いに調整してください、そういうふうにやるということですか。
  96. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 そのとおりでございます。
  97. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 実は、先ほどの安齋先生のお話じゃないけれども、第一回目の公聴会の開催にあたって、いままで非常にベールに包まれて、一般住民に実際理解されていない面が若干明らかになってきた面があるんです。ですから、そうなってくると、もうせっぱ詰まって、ああ、そうだったのかということでは、実際いまの規定からいっていまからでは間に合わない、こういうことになっているので、これはやはり延期しないと話はおかしくなる、これは当然の御意見だと思うのです。これはやはりひとつ、それこそ長官しっかりして、賢明なる判断をしていただきたいと思うのです。もう一ぺんひとつ、これは社会党のほうからも御提案があったのですが、延期の問題、考えていただけませんか。
  98. 前田佳都男

    前田国務大臣 その説明のわれわれの意図する趣旨が徹底しなかったということは、まことに遺憾でございます。けれども、相当われわれも、あるいは新聞等にも発表し、いろいろな意見もそういう説明の機会もあったと思うのでありまして、公聴会を、現在考えておる十八日を延期する意思はございません。
  99. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、たとえば、きめたことだから政府のメンツもあるのでやれぬかもしれませんが、しかし、いまここで明らかになったような問題について十分、住民やあるいは住民と利害関係を一にする人々が知り得なかったために参加の機会がなかった、また、あるいは実際やってみて、いまいろいろと出されているような意見でくまなければならない点が見つかったというふうな場合は、もう一ぺん、この同じ福島原発についてやってみる必要があると思うのですが、そのぐらいの柔軟なお考えはありませんか。
  100. 前田佳都男

    前田国務大臣 ちょっと私も先生の御意図がどういう意図かわからぬのですが、二回やれというふうな御趣旨でございますか。
  101. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまこの場で、政府が意図している内容について若干新しくわかった事実もあるということを、地元の利害関係を持つ人がいまおっしゃっているわけです、安齋先生などはね。そういうことを知っていたら参加したかったのだけれどもという人があるかもしれぬ。あるいは住民が推薦したかったんだという人があったかもしれない。そういう人は今回参加の機会を奪われていることになります。ですから、そういう人にも参加の機会を与えるということ。さらに、実際やる上ですでに指摘されているような問題点がやはりあるし、積極的な提案も科学者会議はされている。社会党も出している。われわれも、公聴会問題がすべてではないと思うけれども、やはり考えていることもある。それでこういう意見を出しているわけです。ですから、そういうものを聞いてもうちょっと内容を充実さしてやらなければいかぬなということになるかもしれない。だから、そういうふうなことになった場合には、当然一回で十八、十九で終わりだということにしないで、そういう点を補充してもう一ぺんやっていくのが民主的な手法ではないかと思うので、そういうくらいの柔軟なお考えはありませんか、こういうことなんです。
  102. 前田佳都男

    前田国務大臣 公聴会はできるだけ現地のなまの声を聞きたいと思いますので、その場において述べていただいて、もしその時間内に述べきれないような場合は、それを補足して述べていただくというふうな、文書をもって提出していただくというふうなことも考えておりますし、今回の公聴会は、とにもかくにも第一回の公聴会でありますので、これでやりまして、そうして将来また公聴会の場合はそういうふうな点を十分参考にして考えたいと思います。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 われわれは延期するのが一番妥当な方法と思うけれども、どうしてもやるというなら、将来検討するというその将来の問題が、他の場所で検討するのじゃなしに、いま対象になっている福島の問題について、もう一ぺんも二へんもやってみる必要があるのじゃないか。欠陥に気づき、またそういうふうに政府の説明不十分とか説明が徹底する機会がなかったために、意図が伝わっていないという面もあるのだから、そういう点がここではっきりした以上は、考えるべきですよ。
  104. 前田佳都男

    前田国務大臣 徹底していないというふうな先生の御指摘でございますけれども、私たちは、趣旨は相当徹底しているように実は思っております。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いよいよもって時間がありませんので、最後に行けないかもしれませんけれども、これは大事な点だと思います。  安齋先生などは科学者会議で非常に関心を持っていらっしゃった方だと思うのですが、そういう方でも十分知り得なかった事実がここに出ているのじゃないかと思うのです。いまの長官の答弁等について御意見があれば承っておきたいと思います。
  106. 安齋育郎

    安齋参考人 私、先ほど申しましたように、やはり八月一日に公示されてからこういう地元の団体の推す科学者が採用される見通しもあるかもしれないというふうなことが明らかになったのは、つい、おそらくこの一週間とたっていないと思うのですね。こういうことでは非常に困るので、これはぜひとも、具体的に福島の場合について、はたして延期するのかどうかを含めて、もう一度検討していただきたいと思いますし、いま御質問にありましたような決着がつかない場合について、二回、三回と新たにやはり公述人の申請などを、募集する形でやっていく機会を必ず保障しなければ、きわめて重大な混乱を引き起こしかねないと思います。
  107. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまの御指摘は、公聴会に臨むほうの側の御意見ですから、そういう意見を聞いてこそほんとう公聴会内容が民主的になるわけです。これは検討してください。われわれもまた、きょうは時間がないから追及はなんですけれども、今後また、ひとつ論議したいと思います。  公聴会が行なわれた事後の処置の問題で、一つは、科学者会議のほうでは、専門家レベルでの検討会を日本学術会議で行なうよう提案されているわけなんですが、この趣旨は一体どういうところから出されているのか、ちょっと説明いただきたいのです。
  108. 安齋育郎

    安齋参考人 先ほど申しましたように、原子力発電所の設置というのは、社会科学的にも自然科学的にもきわめて総合的な、またかなり高度な科学的な討論を必要とするものだと思うのですね。したがって、地元住民が参加で開かれるこの公聴会というものがかりに開かれたとした場合に、そこで出てくる要望なりというものは、科学技術的な側面については、非常に萌芽的なと申しますか、素朴なものが多いと思うのです。そういうものを踏まえて、日本の科学の知恵を結集して具体的に対処していかない限り、原発安全性というのは将来にわたって保障されていかないと思うのですね。そういう意味で、先ほど申しましたような、日本学術会議というものが、その設置趣旨からして、自然科学者、社会科学者の知恵を結集すべきところだと思いますので、ここで専門家レベルでの検討会を行なって、その見解がやはり反映されていかなければならないというふうに考えているわけです。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど長官が言われた、日本学術会議原子力委員会の懇談会程度では突っ込んだ討議ができないのだというお話がありました。いまあらためて、少なくとも公聴会に提起された問題については、社会科学的側面、自然科学的側面から相当深く掘り下げた討議が必要になってくるので、日本学術会議で検討会を行なうべきだ、こういう提案なんです。こういうことをひとつ御検討される気はありませんか。
  110. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 公聴会で陳述されました意見の中で安全性に関するものは、わが国の最高の専門家で構成されております原子炉安全専門審査会で調査審議をいたし、その結果を報告書で発表するということにしております。  学術会議は、原子力シンポジウム等をやっておられますし、また、学術会議できめられた御意見につきましては、勧告権も持っておられますので、また別の場所として学術会議は御審議される、自主的に審議される機会はあるのではないか、こう考えております。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、自主的に公聴会の出された問題などを検討されて提起されたら、それはちゃんと審査内容に反映させますか。
  112. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 学術会議が正式のルートで御意見をお出しになれば、当然その内容については参考にいたします。
  113. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たいへん不満足なんだけれども、時間をこえているそうですからやむを得ません。  それから、公聴会における発言記録の問題なんです。科学者会議では、早く公刊し、関係自治体、日本学術会議、国会の関係委員会に配付すべきことを提案されておりますが、その記録のとり方ですね。これも福島県の回答を見ますと、「陳述意見は正確に記録し、地元等において一般の縦覧に供する所存である。」こうなっているのです。この「正確に記録し」というのは、速記録もとってちゃんと残す、こういうことなんでrか。
  114. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 そのとおりでございます。
  115. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 配付先は、少なくともこの科学者会議が提案されているような先へは配付してしかるべきだ、差しつかえないと思うのだが、やりますか。
  116. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 残念ながら、第一回の公聴会でございますので、十分な記録をとりまして関係先に配付するという準備はまだできておりません。したがいまして、一般に縦覧しますとともに、一部はたとえば科学技術情報センター等におきましてコピーサービス等をいたすというふうなつもりでおります。
  117. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 このあとの処置の問題だけではなしに、公聴会開催に関して住民側あるいは学者の方が必要とする必要資料、これは広く公開の問題の一部に入ると思うのですが、いろいろ制限が加えられて、資料を写しにくいとかコピーがとりにくいという問題が実際生じているのです。こういう点について、その方法を検討したいというふうな見解が県の回答に載っているのですけれども、どういうふうな検討をされたのですか。
  118. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御指摘の点は、たとえば公聴会開催前に参考とされますような申請書並びにその付属書類等だと思いますが、現在地元三カ所程度に縦覧をしております。また、科学技術庁に開かれました公開資料室にも縦覧の用意がございます。ただし、御指摘のように、コピーサービス等につきましてまだ十分ではありませんので、その点につきましては、将来は先ほど申し上げましたような県立の図書館に置いてもらうとか、それから東京では科学技術情報センターに置きまして実費でコピーサービスができるような、そのようなことを考慮いたしたい、こう考えております。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もう時間がありませんので、ごく簡単に安齋先生のほうから、いまの資料の問題、それから発言記録の問題について政府答弁があったのですが、御見解をお伺いしたい。
  120. 安齋育郎

    安齋参考人 この発言記録の問題は、先ほど申しましたように、やはり提起された問題を日本の科学者、専門家を含めた人たちが総体となって検討していかなければならない問題だと思いますので、公聴会での発言記録は、少なくとも速記録あるいはそれに若干手を加えた程度のものをすみやかに公刊して検討に付すべきだというのが私たちの意見です。  それから、審査資料等の縦覧のことですが、これは私、八月十四日に現地にも行ってみましたけれども、現地で東電の福島第二発電所の所長と住民との間に討論した場では、夏季休暇中なんだから、資料は書き写せばいいだろうというようなことまで言っているわけです。ところが、数百ページにわたるものなわけですから、そんなことでは地元住民が他県に住む科学者等に検討を依頼するというようなことは絶対にできるはずがないと思いますので、これはどうしても複写を可能にすることを含めて、こういうことを具体的にやっていかなきゃいけないと思います。
  121. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に、公聴会をめぐりましてもいろいろと議論が出てまいりましたし、また現地では、これに対して不信や疑問や、逆に不安さえ持っておられて、政府の意図と逆の結果にもなってきているわけです。  これの根本原因は、やはり住民の意思を無視して、とにかく原子力発電所の建設だけが先行して、もちろん科学者の意見ども無視されている、こういうところからきているので、その責任がやはり政府にあるのだということだけは、はっきり自覚しておいてほしいと思うのです。  その上に立って、当面の公聴会についてすら非常に大きな問題点が明らかになってきたし、また政府自身の説明も、われわれの聞いている範囲でも、最初のうちときようあたりの説明とではだいぶ違っている。これは世論だとか批判に押されて若干態度を変えたのじゃないかなとすら思える部分もあるのですよ。ですから、こういうふうな事柄をいろいろ総合して考えるならば、繰り返しになりますけれども、やはり第一回開かれる公聴会というものは、もっと慎重でなければならない。したがって、そういう公聴会前提にする安全審査も、それぐらいおくれたってどうということはないはずなんです。慎重なほどいいと思うのです。そういうふうな考え方に立って、ひとつこれから国会等その他関係機関で、公聴会のあり方等、それこそ民主的に十分論議する必要があると思うのです。ひとつそういう点について今後、してくれるなといったって論議はされると思いますから、長官としてそういう論議をどのように受けとめていかれるのか、その点だけ御意見を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  122. 前田佳都男

    前田国務大臣 先刻来、瀬崎先生から公聴会のあり方についていろいろ御指摘がございましたが、要するに、われわれが現在考えておる公聴会は不十分じゃないかという御指摘に尽きると思います。私たちが今度公聴会なる制度を発足いたしましたゆえんのものは、現地のなまの声をわれわれの原子力行政の上に反映したいという趣旨で出発をいたしておりまするので、いろいろ御指摘の点等よく考えまして、原子力委員会考えておりまする公聴会が本来の使命を果たしまするように、発揮できまするように、十分今後勉強していきたいというふうに考えております。
  123. 石野久男

  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、この総理発言について大臣にお伺いしたいと思います。  二十八日の閣議で「反対運動は、国民の多数の意思かどうか、疑問である。こうした反対運動の実態を十分見極めたうえ、やらなくてはならないことは、決断すべきだ」こう述べたということが報道されているわけです。これは、原発のこういう危険性を無視した、国民に対する重大な挑戦であると私は思います。この点、科学技術庁長官はどのようにお考えですか。
  125. 前田佳都男

    前田国務大臣 先ほどお答えをいたしましたように、きのうの閣議総理発言でございますが、私どうもあやまって伝えられておるように思うのでございます。総理が私の顔を見て、科学技術庁長官原子力の問題いろいろあるが、しっかりやれよというふうな、そういう趣旨のことを言われたわけでございまして、その前にはちょうど一週間ほど前にも私、総理に、原子力の安全問題等についていろいろ問題が起こっておる問題も話をし、予算の編成等にも関連して総理意見を交換したものでございますので、私は、それを受けてしっかりやれということを言われたというふうに私は解釈をいたしておりまして、そういう住民の声を無視してやれというふうな、そんな暴言といいましょうか、田中総理がそういうことを、住民の声を無視してやれというふうな考え方は、私は毛頭持っていないというふうにかたく信じておる次第でございます。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 だけれども、現実にこのように報道もされておるわけですね。ですから、こういう発言総理が現実にしておるということになりますと、これは、先ほど申し上げましたように、原発が安全であるなんてだれも思ってないわけですよ。御承知のようにこれだけの事故の続発なんです。長官もその点については反省されておると思いますが、だれしもが危険であるということを感じているわけですね。そういう国民の、住民の感情を押しつぶしていくような発言ということは私は許せないと思うのです。従来から国の原子力政策というものは、非常に国民の声を無視した、大企業ペースのものじゃないかという批判が強いわけです。この首相の発言は、明らかに本音が出たものである、こう思います。そういうことできびしい反省を求めたいと思うのです。長官もその場におられたわけですし、少なくともこういうニュアンスの発言があったことは間違いないのでしょう。どうなんです。
  127. 前田佳都男

    前田国務大臣 先ほどお答えいたしておりますように、総理ことばというものは、先生もお知りのように非常に元気がいいといいましょうか、科学技術庁長官、しっかりやれよ、というふうな調子で言われた。ちょうど節水、水が足らぬという問題でいろいろな話があったあとで出たものでありますから、そういうふうに、しっかりやれ、ということは、おそらくはほかの閣僚がそういうふうに解釈をした人がおるのではないかと私は思うのであります。  実は、私の科学技術庁でも、閣議あと記者会見がございました。そのときにも私は、そのことは何にも言うておりません。自分の担当のクラブでございますから当然言わなければいかぬのでございますけれども、言うておりません。私はそれなりに、そういう暴言だったら、そういう安全性を無視するような発言なれば、たとえ総理大臣といえども、私は、それは総理、間違っています、とはっきり言いますし、またちょうど、先ほども言いましたように、一週間前に総理に、安全性の問題で、この紙でありますが、この紙に書いて総理に渡して、こういう問題がありますということを実は言うたばかりでありまして、総理も、わかった、わかった、というふうに言うたような状況でありますので、私は、近江先生も御心配いただいておるような総理のそういう暴言ならば、たとえ総理だろうが何だろうが、原子力委員長としてその閣議の席で、それは総理、困りますということを実は言うわけでありますが、そういうことは全然ございませんで、私は、しっかりやれよと言うたことが、馬力を出してやれということはばんばんとやれというふうに、ずいぶん荒っぽく聞こえたのではないかということを非常に心配して、むしろ何か国会でそういう御質問があれば私申し上げたいと実は思っておったわけでございまして、先ほどからも原先生並びに嶋崎先生、皆さんから、ただいまは近江先生からもお聞きをいただいて、私はほんとうの気持ちを申し上げることができるわけでございまして、その機会をむしろ私は非常に喜んでおるわけでございます。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、その出席しておった閣僚の中で、総理がそう言ったことについて、この新聞報道されておるような受け取り方をした人がおる、こういうわけですね。どうなんですか。
  129. 前田佳都男

    前田国務大臣 近江先生、どの閣僚がどういうふうに受け取ったかということは私知りませんけれども、おそらく閣議あとはそれぞれみんな各省庁へ帰りまして、きょうはどんな話がありましたかということをクラブの記者さんから聞かれるわけでありまして、そのときに、まあこんな話がありましたとつい言う人もあるのじゃないかと思う。われわれでも、たとえば経済企画庁から物価の問題がございましたときのう言いました。そういうような場合に、他省庁のことはそれほど詳しく詰めないものでございまして、大体われわれも、物価問題等は、詳しく小坂経済企画庁長官の御説明、実はきのうの閣議でもございましたけれども、あるいは大蔵大臣から公共投資の繰り延べの問題もありましたが、実は八%、四%ということは覚えておりますけれども、どの業種にどうやるかということを言っておりましたが、そういうことを実はあまり詳しく聞いていなかったのでございまして、おそらくはそういう馬力強いというか、総理の大きな声を聞かれて、そういうふうに言ったのじゃないかと私は思う。そのあと官房長官が何かそんたくして、補償の問題をどうやらこうやら言っておりましたように思います。  どこかの新聞か何かのプレスで私ちょっと見たのでありますが、それも総理はそういうことをおっしゃっていなかったようです。ただ、そのときに私が言ったことは、原子力船「むつ」のことは言いました。それもちょっとであります。それは私、自分も言ってよく覚えておりますけれども、そういう雰囲気だったということを申し上げたいと思います。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 少なくとも政府の最高責任者である閣僚の中でも、そういうしっかりやれと言われたこと、総理ほんとうにこんなことを言っていないと仮定した場合でも、そのようにその人は受け取っておるわけでしょう。少なくとも閣僚の中で、そういう少々の反対があっても押し切ってしまえという、そういう荒っぽい、住民を押しつぶしていくような閣僚がおることは問題ですよ。  あしたは本委員会総理あるいは官房長官に来てもらうということを先ほど理事会でも要求しました。だからこれは、ひとつ委員長におかれましても、できる限り総理並びに官房長官出席させていただきますように、この際お願いしておきたいと思うのです。  そういうことであしたもう一度明らかにしたいと思いますが、いずれにしても閣僚並びに総理がこういう姿勢でおるということは問題であると思います。この問題はあす明らかにしたいと思います。  いずれにしてもそういう閣僚が中におるということについては、日ごろから原子力委員長科学技術庁長官が、原発の進め方についてのそういう閣僚に対する教育といいますか、PRといいますか、そういう点がやはり足らなかったことは間違いないと思うのです。あなたがほんとうにその安全性を重視した行政をしていこうという、その徹底をされておるならば、こういうような発言は出ないはずですね。その点は反省されていますか。
  131. 前田佳都男

    前田国務大臣 先ほども申し上げましたように、そういう住民の声を無視してしっかりやれというふうなことを、どの閣僚も一そういうことを言う閣僚は、私はその場におりませんから知りませんけれども、近江先生、そういうことを言うことはよほど常識がないわけでありまして、私はほんとうに民主政治家としてそういうことはおっしゃるとは実は思わないのです。どういう雰囲気でああいうことになったのかは知りませんけれども、どうもその点まことに私の平素の訓練というか教育が悪いという御指摘でありますが、ほんとうに今後そういうことを言いなさんなというよりも、原子力というものはこんなにむずかしいのだということを、実はきのうの朝も、閣議を開く前に閣僚が、始まるまでみんな集まりましたときもその話が出まして、これは雑談ですから、いわゆる閣議の議事じゃございませんから言うべきではないかと思いますけれども、その場においても私は、たいへんなんですということを言って、そのとき、それは全くたいへんだ、前田さんしっかりやってくれ、安全性考えてやってくださいと言った閣僚もおります。それは小坂企画庁長官でありましたけれども、それはほんとうによけいなことでありますけれども、そういうことを言うて、それはそうだろう、よくわかっているのだ、しっかりやってくださいよと言って、閣議の前でございましたけれども、言うたわけでございます。  今後ともそういう民主政治家としての本来の精神を失ったような、そんな発言はめったに私はしていないと思いますけれども、もしそういうことがあったらたいへんでありますから、今後十分教育というとおこがましいのでありますが、よく原子力行政の重要性というものをさらに強調していきたいというふうに考えております。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう発言をしていないということが、こういうように報道もされておるわけですし、これはほんとうに厳密にいけばむずかしい問題ですよ、正直言いまして。そういう常識以下の閣僚ことばは悪いですけれども、いま長官が言われたわけですから。そういう人がおるということ自体も問題ですし、いずれにしてもこれはあすはっきりさせていきたいと思っています。  それから公聴会の問題でありますが、各委員からもいろいろな角度から質問もあったことと思うわけですが、いずれにしてもこれはやるということについては、一歩前進であることは十分私たちも評価するわけです。しかし、そのやり方でありその中身ですね、非常に多くの問題があるわけです。十分でないということは、これはもう当然言えることであります。  そこで、特にこの点が非常にまずいと思われる点を、きょうは参考人先生方四名来られておりますが、時間の関係もありますので、まず久米先生、それから小野先生お二人にひとつお伺いしたいと思います。
  133. 久米三四郎

    ○久米参考人 先ほど私その点についてはお話ししたのですけれども、ちょっと重複になりますが……。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは特に重点のところでいいですから。
  135. 久米三四郎

    ○久米参考人 重点といいますか四つあげました。一つは開催時期の問題でございまして、これは設置許可申請書が出てからやられるということですが、実態はその以前に、数年前から自治体の誘致決議というものをめぐって住民の間では大論争になっているわけです。その一番大事なときにそういうことがやれないということは、実際上ほとんど意味がないということ。  第二点は、制限がいろいろございまして、どういう場合どういう場合というようなことが、先ほども議論になりましたが、原発の技術というものは、全くこれは未知のものがまだ満ちあふれておりますので、半年なり一年たちますとたちまちいろいろな新しい事態が出てまいりますから、設置の安全審査のときだけやる、あるいは新型のときにやるとか、そういった条件は全くナンセンスである、これが一つであります。したがって、すでに現在動いておる炉、たとえば一番典型的なのは、美浜の一号炉のような場合は即時とめて、その段階公聴会を開くということは必須であろうと思います。  第三は、皆さんからいわれておりますが、一方的な意見具申であるという点、これはもう民主的なあれを欠いております。民主的というよりも、科学上の議論をするときの一番基本的な条件を欠いておりまして、このためには、住民から出た意見に対して答える、それに対してまた不満があれば質問し直すということで、現在アメリカでは一定の時間内にそれをやられておりますが、そういう点と、それから審査にあたって使われた資料であるとか、あるいは審査の過程、そういうものの公開、こういうものがうらはらにありませんと、全くこれは形式的な意見具申になるという点、これが一つであります。  それから、最後は、代理人制限で、これは皆さんからも言っておられるので……。ただ、近江先生にはあれでございますが、私は基本的に、はたして一歩前進かどうかという点について疑義があるという点を一番初めに申しましたが、むしろ原発を開発ということを前提にした公聴会というのは、現段階ではぜひ当委員会あたりで再検討していただく必要があるのではないか、そういうふうに思っています。  以上です。
  136. 小野周

    小野参考人 私、今回の公聴会につきましては、先ほどの意見を聞いているうちに一つの問題点が出ましたのは、趣旨が徹底していなかったということが非常に大きな問題だと思います。先ほど、地元利害関係者というのに地元のコンサルタントの科学者が含まれていたなどということは、必ずしも私はそういうふうに理解していなかった。そういうふうにかなり趣旨が徹底されないという形で今回の公聴会が開かれるということが問題でありますことと、それからもう一つは、公聴会のときにいろいろの発言をされる方のために資料が公開されているということ、それから、いま久米参考人がおっしゃったように、やはり原子力の問題については、ただ地元意見を聞くということでなく、かなり内容的な問題がありますので、十分な関係者からの質疑に対する応答があることということだと思います。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、もう一度ここで大臣に確認しておきたいと思うのですが、この公聴会を開かれるということは、何を期待して政府としては公聴会を開くわけですか。
  138. 前田佳都男

    前田国務大臣 原子炉安全性あるいはその他環境等いろいろな問題につきましては、現在でもすでにわれわれは一生懸命やっております。しかし、なお地元住民の方の懸念、危惧等があるわけでございますが、そういう方々のなまの声を聞いて、そうしてそれをわれわれの審査に反映をせしめたい、その趣旨から今度の公聴会制度考えたわけでございます。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、一つはなまの声を聞くということと、それを審査にまた行政に反映させる、二つですね。そういう点からいきますと、先ほど小野先生なり久米先生、また他の参考人先生がおっしゃっておりましたように、いろいろな問題が多過ぎるわけですね。ですから私は、いま大臣が二点おっしゃったわけですが、現地の声を聞くという点にウエートが置かれておって、それをほんとうに審査にまた行政に生かすという、その辺のウエートというのは非常に低い。しかも原発を進めるという上における形だけの公聴会、何とか無事に形だけ終えたいという、そういう気持ちというものがもういろいろな形で出てきておると思うのです。ですから、あくまでも現地の声を聞き、そして行政に生かす、審査に生かす、これは最も大事な点であります。そうであるならば、どうしてほんとうの声を聞けるような体制をつくらないかということですね。その辺の根本的な御認識の誤りというものが、結局、公聴会のあり方についていま大きな問題を出してきておるわけです。この点は非常に私は問題だと思うのです。ですから、この点が住民の意思と違ったものになっておると思うのです。  それで、この開催要領あるいは細則を通読してみましても、運営の基本的な方向というのが、いかに遅滞なく意見の陳述を進めるか、もうずっとそういう形になっておるように私は思うのです。ですから、その点、長官がおっしゃった二点を実現していく上において、これはもうなってないと私は思うのです。この点、長官はどういう反省をしておりますか。
  140. 前田佳都男

    前田国務大臣 われわれが考えておりまする公聴会制度については、いろいろ御批判があるということも私よく存じております。しかし、私たちのねらいといたしまするところは、先ほど申しましたような趣旨公聴会というものを実はきめたわけでございまして、今後とも公聴会が、本来のわれわれの考えておりまする目的、趣旨が達し得られますように、いろいろ皆さんの御意見も聞きつつ、だんだんりっぱなものにしていきたいというふうに考えております。  しかし、現在われわれが御指摘をいただいている点は、ただかっこうだけでうまいことやってのがれてしまおうとしているのじゃないかという、そういうようなけちけちした考え方では全然考えていないということだけは、よく御理解をいただきたいのです。時間が短いじゃないか、陳述人はどうだ、要否を言うのはどうだとかいろいろな御指摘があります。ありますけれども、私たちの考えておりますのは、とにかく能率よく、しかも秩序正しく、ほんとうの声を聞いていきたいという趣旨で言っておりますので、どうぞその点、一つ一つについてはお答えはいたしませんけれども、そういうねらいで進めておりますということを御理解をいただきたいと思うのであります。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはちょっと理解できかねますね。何で能率よく秩序よくやらなければいかぬわけですか。ある時間、二日に限らなくとも、これだけの大きい問題をやるのですから、一週間かかったって十日かかったっていいじゃないですか。そうして質疑の時間も与える。それは時間を一人が一日とるというふうなことについては、これはまあ常識の問題ですよ。しかし、一応少なくともその質疑応答ができる時間ぐらいは当然その中に入れて、そうしてまた、そういう討議をする上において、資料の提出であるとか、過程を明らかにする問題であるとか、そういうものを提供する、これはもう当然のことですね。ですから、その点なぜ二日にするのですか。一週間でも十日でもかまわぬでしょう。この点どう思われますか。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕
  142. 前田佳都男

    前田国務大臣 どうも私たちの考えておりまする趣旨が御理解をいただけないようでございまして、その点まことに残念に存じております。なぜ二日にするかというお考えでございますが、これはなぜ二日にするかということのはっきりした根拠というものはございません。それは一日でいいじゃないかという意見もあると思いますし、また、二日でいいじゃないかという意見もあるし、また、十日でいいじゃないかという意見もあると思いますが、われわれは、二日間で陳述というものを一これは意見を述べれば幾らでもあるわけでございますが、二日で意見を要領よくといいましょうか、お述べをいただきたい。そうして時間的に不十分な場合は、さらに書面をもってそれを補足していただくという意味で、二日というふうにきめたわけでございます。  それからもう一つ、先生の御指摘の質問応答をやったらいいじゃないかというふうな考え方でございますが、私も実は公聴会というものを考えますときに、最初にいろいろ考えました。ところが、やはりわが国の公聴会制度というものは、いろいろ国会にも公聴会がございますし、実はいろいろ参考にわれわれも勉強したのでございますけれども、そういう討論会というふうなそういう仕組みの公聴会というのは私はないように実は記憶しております。ただしかし、公聴会とういことで聞きっぱなしということじゃなくて、お述べになりました御意見を、あるいは原子炉安全審査会並びに関係各省庁に調査を命じて、その検討した結果を検討報告書というものもつくりまして、そうしてそれに対してお答えするというふうなことも、今度の公聴会で私は考えたわけでございまして、一般の公聴会じゃ、そういう検討報告書を出していない公聴会というものもあるやに私は思うのであります。その点どうぞ私たちが考えておりまする趣旨を、それは二日じゃ少ないじゃないか、答えはせぬじゃないかというようないろいろな御意見もあるかと思いますけれども、そういう趣旨でございますことを申し上げるわけでございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 私はもっとその中身を充実するためには、二日間という日数はどう考えても短いと思います。  それからその次に、原子炉あるいは放射能に関することは当然として、そのほか建設に伴う環境破壊あるいは自然、社会的影響など、広範な地域性の問題について扱う体制が一体できておるかどうかですね。この際公聴会原子力委員会としてどういった項目について審査できるのか、また、そういった項目については、他の関係省庁に検討願うのかどうか、この点についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 今度の公聴会につきましては、設置されます当該原子炉安全性のみならず、環境問題について地元のなまの声を聞くのが趣旨でございます。したがいまして、先生指摘建設に伴います環境破壊の問題等につきましても、当然御意見の開陳があるものと考えております。これを受けとめる方法といたしましては、安全性につきましては、原子力委員会安全審査会に陳述内容について審査を依頼するわけでございますが、その他の問題につきましては、原子力委員会設置法第五条にかかわることにつきましては、関係省庁に調査を依頼し、意見を求めることができますので、その意見内容をまとめまして原子力委員会が発行いたします報告書の内容といたしたい、こう考えております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点も非常に形式のように感じるわけです。それから、この安全審査自体に対して、非常にみんながいま不信を感じてきているわけですね。二十四日に、米原子力委員会GE社の沸騰水型の原子炉を使っている十カ所の発電所の出力を五%から二五%削減するように命令した、このように報道されておるわけですが、科学技術庁としてはその内容をどの程度つかんでおられるのか、ひとつ報告をお聞きしたいと思います。
  146. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御指摘のように、七月二十四日にアメリカ原子力委員会がプレスリリースをいたしまして、約十の沸騰水型原子炉につきまして五ないし二五%の出力削減を命じました。この点につきましては、直接にアメリカAECから事前連絡はございませんでしたが、燃料の稠密化、デンシフィケーションと申します現象につきましては、従来からわがほうでも気にいたしておりまして、安全審査会の中の燃料問題を研究いたします部会において検討をしておりました。しかしこの問題は、燃料ぺレットが収縮いたしまして、その収縮いたしますのは線出力密度、つまりどのくらいの出力密度であるかということに関係いたしまして、非常に量的な問題でございます。したがいまして、なぜ十の原子炉につきまして五ないし二五%の出力削減を命じたかにつきましては、その詳細な計算結果、計算コード等を調べないとよくわからないわけでございます。それでございますので、とりあえず原子力委員会といたしましては、まずアメリカ調査団を派遣すること、それから安全専門審査会に対しまして、その燃料の稠密化に関する影響についての調査を依頼すること、それからさらに第三といたしまして、アメリカ原子力委員会に対しまして、両国の原子力委員会原子力発電所の建設運転に影響を与えるような措置を講ずる場合には、事前に相互に十分に情報交換を行なう緊密な連絡体制を確立すること、これを申し入れております。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 同じタイプの原子炉が敦賀、福島号炉には使われておるわけですが、今回の公聴会が開かれる福島号炉は同型のものであるわけですね。こういう情勢のもとに、敦賀発電所が自主的に二十七日の午後二時から六・二%削減したということを聞いておるわけですが、この点、福島号炉について通産省としてはどう考えておりますか。
  148. 井上力

    井上(力)説明員 お答えいたします。  東京電力福島原子力発電所一号機につきましては、十七日に定期検査を終わりまして、そのあと低出力運転を現在続けております。およそ今週一ぱい、大体二分の一出力程度の運転を続ける予定でございまして、現在までのところの運転状況あるいはここしばらくの間の運転状況におきましては、いまのような問題はないと考えております。しかしながら、フルパワーに近づきました段階におきましては、それまでに得られました情報をもとにいたしまして、どのような運転に持っていったらいいかということを検討したいというふうに考えております。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 原子力委員会の安全審査というのは、すべてアメリカ追随というか主体性がない、結局アメリカの資料をうのみにするだけである、こういうような状態自体が住民の不信も特に買っておると思うのです。こういう現在の原子力委員会の安易な姿勢をはっきり私は示しておると思うんですね。こういう現状を長官としてはどのようにお感じになっていらっしゃるか。それから久米先生小野先生にひとつ感想をお伺いしたいと思います。
  150. 前田佳都男

    前田国務大臣 とにかく軽水炉というものは、先生も御承知のように、アメリカでこれは開発されて、それを日本に持ってきたものでありますから、その意味において確かに軽水炉安全性ということについては真剣に取り組んでいかなければいけないという問題があることを、私も就任以来強く考えております。したがいまして、少ないというふうに御指摘いただくかと思うのでありますけれども、毎年度の予算においてもその安全性についていろいろ予算を計上しております。しかし、それでもなかなか足りないということを私はいつも反省をいたしておりまして、特に今度のこういう問題が起こったことに関連をいたしましても、特にその感を実は深くいたします。したがいまして、今度この問題が発表されましたとき、すぐに私はその問題についてアメリカの大使館を通じてこの実態を究明したいと思いまして、その手続もとりまするとともに、原子炉安全専門審査会に向かいまして、この点を至急検討しなさいということを命じたわけでございます。また、アメリカにもわれわれの専門家を派遣することも実は決定いたしました。どうもそんなにアメリカばかりに依存するのはけしからぬじゃないかという御指摘はございますけれども、とにもかくにも現在使っておるのは、やはりアメリカのそういう開発された軽水炉を使っておりますししますので、とにかくアメリカにやはり専門家を派遣しなければいけない。日本だけでやるということは、もちろん日本だけで独自の研究も進めたいと思っておりますが、進めますけれども、それだけではいかぬわけでありまして、その意味において決してアメリカへ追随するという意味ではございませんけれども、実は今度派遣することにきめて軽水炉安全性ということに今後、従来以上に取り組んでいきたいというように考えておるわけでございます。
  151. 小野周

    小野参考人 感想といわれましてもなにですが、実は私の感じでは、現在の軽水炉の安全審査そのものが、アメリカが安全であるからといって審査されているのではないかという印象もかなり持っておるわけです。残念ながら原子炉安全専門審査会の速記録は公開されておりません。速記録を公開すると自由な発言がされないということで公開されておりませんが、そのように現在の安全審査そのものが、アメリカが安全であると言っているので安全であると考えているのではないかとむしろ思われるわけです。それで、先刻の緊急炉心冷却装置の話にいたしましても、今回の話にいたしましても、アメリカが問題になるとあわててこちらで問題にされる。それはやはり安全審査のあり方の裏返しではないかと思うわけです。それで、先ほど問題に出ました美浜の一号炉事故にいたしましても、これはもちろんメーカーがウエスチングハウスだからかもしれませんが、問題の個所は切り取ってウエスチングハウスに持っていっている。日本ではどういうことをされているかちっともそれがわからない。こういうふうな問題にすべてアメリカ依存という形で関係しているわけです。こういう日本原子炉を実際に安全であるかどうかを審査をされるという、最高と言われましたけれどもほんとう日本で自主的に審査されているかどうかわからない。こういうふうな問題にすべて関連しているのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  152. 久米三四郎

    ○久米参考人 燃料棒については、先ほどちょっと申しましたけれども、大臣なり局長さんは、安全審査会調査をしているというようなことでございますが、それは調査しようにもできないのです。というのは、自分のところがちゃんとつくっているわけじゃありませんから、調査というものは結局アメリカの資料を見てあれこれ論評するしかないのです。この点はぜひ議員の皆さんもわきまえていただきたいと思う。何か調査というともっともらしい。そんなことができるのだったら、わざわざアメリカへ派遣することはないんです。それができないから、ECCSのときに、いま小野先生もおっしゃったように、ああいうふうに結局は追随して、温度をちょっと向こうより二百度下げるというようなことしかできないのは、これは安全審査会先生方が情けないと言っているのじゃないのです、これはわれわれもひっくるめて、日本原子力の技術というものはそういうことができないのですよ。それにもかかわらず、アメリカ軽水炉は実用になっておるからということで、電力という、電力のユーザーです、決してメーカーではないということをぜひはっきりしていただきたいのです。東京電力なり何電力がやったといったって、こんなものは電気洗たく機を使っているユーザーにすぎないわけですから、そういう人たちが幾ら保証するといったって、そんなことは全然だめです。そういうメーカーがいないのです。  しかし、私どもについ最近入った情報では、現在調べておりますが、アメリカ国内ではウエスチングハウスとゼネラル・エレクトリックとが競争しているわけです。それでゼネラル・エレクトリックの燃料については問題が多いということは、ウエスチングハウス側から攻撃の材料が出ました。これは現在われわれのところで検討中でございますので、詳細はまだ発表できませんが、そういうお互いがつぶし合いをやって、アメリカ原子力委員会はその両者のバランスに乗って原子力行政を進めておるというのが実態なんです。そのいいカモに日本がなっておるというふうに私は思います。そんなところで幾ら衆知を集めて、肩書きのりっばな先生方が集まったって、実際上の審査なんかできっこないのです。だから、必ずこれはあとは追随するだけになります。結果を見ていてください。日本が独自に、絶対だいじょうぶであるからといって、胸を張ってやれるような先生は一人もいないのです。結局はアメリカで五ないし二五下げたら、しぶしぶこっちも下げようかという、その根拠は何にもないままにやっていかざるを得ないというのが実態だと私は思います。これから起こる事態をぜひ見ておいていただきたい。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、十八、十九日に公聴会の場で、この件について意見が出た場合を予想した場合、委員会としては審査するどういう資料を持っておられるのか。AECは年末にGE社が追加資料を提出するまでこの措置を続けると言っておるということを聞いておりますが、そうしますと、少なくともそれ以前は何もできないことになるのじゃないかと思うのですが、この点については局長、どう思われますか。
  154. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 この現象は、先ほど申しましたように、燃料が収縮いたしまして、被覆しておりますジルカロイ管との間にすき間ができる。したがいまして収縮いたしますから、その収縮した体積に比例してその比出力密度がふえる。それからギャップがございますから、コンダクタンスと申しますか、熱伝導度が悪くなって、結果的には燃料の中心温度、被覆管の表面温度が上がってくる、こういう現象同様に理解しております。そして結局は、冷却材喪失事故が起きたときに燃料の最高温度が幾らになるかという点に帰着するわけでございまして、その点につきましては、現象的にはそういうことでございますが、その燃料の最高温度が幾らになるか、ロス・オブ・クーラントの事件のときにどうなるかという計算コードの問題でございます。  それで、現在GEの持っております計算コード自体はわがほうも持っております。しかし、今度USAECがこういう判断をいたしました根拠につきましてのどういう計算をしたか、どういうコンディションを考えたか、また沸騰水型でございますから、この燃料のデンシフィケーションというのは炉心の末期にくるはずでございます。これは全部私ども推察でございますが、そういうようなことを考えまして、そのUSAECが計算をいたしました炉心コード、計算コードというものを調査団を派遣して入手し、それによってわがほうの当該原子炉の計算をしてみるということは可能であると考えております。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから公聴会での対象をなぜ原子炉に限っておるかということです。再処理工場であるとか、今後建設が予想される放射性廃棄物保管所あるいはその他の原子力施設等についても、これは公聴会開催の趣旨からいって、当然その対象にすべきじゃないかと思うのですが、この点につきまして、安齋先生牛山先生にお伺いしたいと思います。
  156. 安齋育郎

    安齋参考人 私先ほど申しましたけれども原子力発電というのは、当然のことながら、原子炉を使って発電するということだけではなくて、そのあとにくるであろう廃棄物の処理処分あるいは核燃料の再処理あるいは先のほうの燃料の供給、そういう発電システム全体を考えなければ意味がないと思うのですね。そういう意味では、わが国の原子力行政は、いまの状態で昭和六十年六千万キロというペースで進めるためには、少なくともいま東海に設置されようとしている一日〇・七トンという処理能力の再処理工場が昭和六十年には少なくとも七基分必要だということはこれはもう避けることのできない事実だと思うのですね。しかし、そういうものについて政府のほうで、どこにどういう規模のものを建てるのだという計画が一切示されていないわけです。その点にまず問題がありましょうし、したがってそういう計画が出たならば、当然それは公聴会の場での議論の対象にされなければいけないだろうというふうに思います。
  157. 牛山積

    牛山参考人 私も原子力の問題につきましては、やはり総合的に考えていかなくちゃいけないだろう、その意味で、総合的に公聴会の制度を確立していくべきであるというふうに考えております。その点について、単に原子炉安全性中心とする公聴会に限るのか限らないのか、これはやはり政府として検討すべき課題だろうと思います。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、最後に長官にお伺いしたいと思うのですが、いま両先生から、当然総合的に、しかもまたこれは公聴会等でやるべきであるというお話があったわけですが、この点については長官はどのようにお考えですか。
  159. 前田佳都男

    前田国務大臣 私たちが現在考えております公聴会は、原子炉安全性だけに考えておりますけれども、今後、あるいは第二再処理施設をつくるとかあるいはそういう場合もあると思うのでありまして、われわれはその点弾力的に前向きに考えていきたいというふうに考えております。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう弾力的に、前向きにということは、それは一歩進むということになるわけですけれども、それではいけないと思うのですね。これはもう当然原子力施設全般にわたって開くのが当然じゃないか、このように思うわけです。  それから失礼ですが、井上さんも、私長官にいま申し上げた点、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  161. 井上五郎

    井上(五)説明員 先刻から、科学技術庁長官、同時に原子力委員長なんでありまして、私から申し上げることは全く重複になると考えますが、せっかくの御指名でございますので申し上げますと、ただいま開催しようとしている公聴会は、東京電力が新たに設置をしようとする原子力設置について、原子力委員会総理大臣から諮問を受けました。これに対しまして、地元の声を直接に聞いて最も妥当なる判断をしたいということにおいて開かれる公聴会でございますから、したがってその公聴会にかかる議案と申しますか、聴問の事項というものがおのずからその問題に限定をされるということはむしろ当然であると私は考えております。  ただ、御指摘のような、また本日の参考人の方々から、いろいろもっと広範な問題についての公聴会を開くべきであるという御発言がるるあったように拝聴いたしましたので、これは原子力委員会設置法によりまして、日本原子力政策を計画的に遂行するということは、原子力委員会そのものの使命でございまして、もちろん私どもはさような職責を持っておるわけでございます。したがいまして、こうした問題が将来起こりましたときに、必要ならばさようなことを考えなければなりませんし、また、必要でないと思えばその時点において考えるべき問題である。今日開かんとする福島に対する公聴会は、長官から再々お話がございましたように、この設置の可否について総理大臣から諮問を受けましたことを判断をする上において、必要な事項を公聴会にかけて、地元の方々のなまの声を聞きたい、かように考えておる次第であります。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 この点は特は長官に要望しておきます。  もう時間ですので終わります。
  163. 石野久男

    石野委員長 この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました一委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次回は、明三十日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三分散会