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1973-06-20 第71回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十日(水曜日)     午後一時二十五分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 藤本 孝雄君 理事 粟山 ひで君    理事 嶋崎  譲君 理事 瀬崎 博義君       稲村 利幸君    羽田  孜君       松永  光君    湊  徹郎君       清水 徳松君    細谷 治嘉君       湯山  勇君    近江巳記夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     進   淳君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    杉岡  浩君         環境庁水質保全         局水質規制課長 太田 耕二君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         通商産業省化学         工業局化学第二         課長      小幡 八郎君         通商産業省公益         事業局技術長  和田 文夫君         建設省都市局都         市総務課長   升本 達夫君         建設省都市局都         市再開発課長  野呂田芳成君         建設省河川局砂         防部砂防課長  谷   勲君         国土地理院参事         官       檀原  毅君     ————————————— 委員の異動 六月二十日  辞任         補欠選任   井上 普方君     細谷 治嘉君   堂森 芳夫君     湯山  勇君 同日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     井上 普方君   湯山  勇君     堂森 芳夫君     ————————————— 六月十六日  海洋資源開発振興法案矢追秀彦君外一名提  出、参法第一〇号)(予)  海洋資源開発公団法案矢追秀彦君外一名提  出、参法第一一号)(予)  海洋資源開発技術総合研究所法案矢追秀彦君  外一名提出参法第一二号)(予)  海洋資源開発委員会設置法案矢追秀彦君外一  名提出参法第一三号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力安全性  確保及び環境科学技術に関する問題等)      ————◇—————
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 私はせんだって十七、十八日と若狭湾一帯原子力発電所状況とPCBの汚染状況とを調査してまいりました。短期間でありますし、しろうとでありますけれども、見れば見るほど、聞けば聞くほど問題が多い、こういう感じを深くいたしました。先ほどある省の担当の方が、おいでいただいたのでよくわかって疑問も全部氷解したでしょう、こういう話を私にしたわけでありますけれども、遺憾ながら実態はその逆、こういうことでございました。  そこで、私どもが調査いたしまして問題だというふうに思われる若干の点について関係当局に御質問をいたしたい、こう思います。  まず最初にお尋ねいたしたい点は、美浜発電所の一号機についてでありますけれども、運転開始が四十五年十一月二十八日、そして四十六年十月二十五日から第一回の定期検査に入りました。そうして第二回の定期検査という名のものが三月十五日から行なわれておるわけでありますが、会社資料によりますと、運転実績の統計で、総合利用率が約五七%ということであります。  そこで、私がお尋ねいたしたいことは、まず第一回の定期検査、それからその後の今日までの設備利用率、これを分けて、何%ぐらいになっておるのか、まずお聞きしたいと思います。
  4. 和田文夫

    和田説明員 運転開始後、蒸気発生器細管漏れがありまして、とめたのが四十七年六月十五日でございますが、四十五年十一月の運転開始後から昨年の六月十五日までの利用率七三%でございます。それからその修理を終わりまして、昨年十二月九日から、ことしの三月十五日に定検に入っておりますが、その間の利用率が六九・二%でございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 最初資料によりますと、運転開始累計発電電力量約四十二億キロワットアワー利用率総合で約五七%、こういうことになっております。いまのお答えでありますと、前半が七三%、その後が六九・二、こういうことになりますと数字が合わないのです。「電気学会雑誌」という昨年の五月号でありますけれども、それの、関西電力株式会社原子力室担当支配人浜口俊一という人の美浜発電所一号機の運転開始から運転状況、それから第一回の定期検査に入るまでの美浜一号機の発電実績というその論文の中にございますが、四十五年の十二月から四十七年の一月までのいわゆる総合設備利用率というものは六九・七、こういうことになっておるわけですね。七三というのは、この当事者である浜口さんの論文の六九・七とも違っておりますし、今回の会社報告の五七%というものとも全く数字が合わないわけです。平均いたしますと、これはやはり七一・二になっておらなければならぬというあなたの数字ですね。
  6. 和田文夫

    和田説明員 さっき申し上げた七三、六九・二と申しますのは、定検あるいは修理でとめておる間、すなわち昨年の六月十五日から昨年の十二月九日までを全然勘定の中に入れない数字でございますので、先生おっしゃるように、運転開始後ことしの三月十五日から定検に入っておりますが、それまでのいわゆる総合利用率といたしましては、先生のおっしゃるとおり約五七%でございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 お願いしたいことですけれども、しろうと質問しているわけですから。  大体設備利用率というのはどういうふうにして計算するかといいますと、申し上げるまでもなく、分母に認可出力かける歴日時間数、分子発生電力量、それをパーセントに直した、これが常識的な設備利用率ですね。ですから、いまあなたは、私の質問に、そういうふうになればそうだろうということでありますけれども、この数字はきわめて重要な質問出発点でありますから明らかにしたい、私はこう思っておるわけです。  この浜口さんの論文の四十七年一月まで、言ってみますと、大体十二月二十九日まで第一回の定期検査が行なわれておるわけでありますから、運転開始からほぼ一年した、定期検査したまでの設備利用率が六九・七、こういうことでありますが、その後細管漏れ発生というようなことで、第二回の定期検査というのに三月十五日に入っておるわけでありますから、第一回定期検査後の設備利用率というものは非常に落ちていっている。したがって、その平均会社が示しておる約五七、こういうことになりますと、第一回定期検査後の今日の設備利用率というものは五〇%をかなり大きく割っておる。その平均というのがこの五七、こういう形に出てきていると私は想像しておるわけです。これは常識ですね。どうですか。
  8. 和田文夫

    和田説明員 第一回の定期検査と申し上げました、昨年の細管漏れ修理し直して運転を再開したのは昨年の十二月九日でございます。今度定検でとめましたのはことしの三月十五日でございますが、その間三カ月ちょっとございますが、その間の利用率、そういう意味で申し上げますと六九・二%、冒頭に申し上げた数字でございます。ですから、それほど落ちてはいないと思います。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 どうして六九・二%にもなるのですか。十二月二十九日に終わりまして、それから運転を開始いたしまして、また昨年の十二月九日から運転を開始しているわけですが、三月十五日にまた定期検査に入っておるわけですね。六九%になりっこない。そうしますと、あなたの言うことがほんとうとすれば、会社が五七と書いているのは、これはうそということですね。
  10. 和田文夫

    和田説明員 先ほど申し上げましたが、昨年の六月から十二月まで約六カ月間とまっております。ですから、発電所運転開始以来の総合利用率という場合には、分母のほうにはその間の時間数が入りまして、分子としてはそのときの発電電力は全然ないわけでございますから、利用率は落ちますが、さっき申し上げました六〇何%という数字は、昨年の十二月九日から運転を再開したあとの四カ月間の数字でございます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、会社の言う五七というのは、どういう関係になりますか。最初運転開始から今日まで四十二億キロワットアワーを発電しておる、したがって、総合利用率は約五七%だ、こういうことです。最初のは七三だ、第一回定検後の今日が六九・二だということになりますと、五七という数字は出っこないじゃないですか。
  12. 和田文夫

    和田説明員 先ほど、冒頭先生が何か期間を分けて利用率を述べよとおっしゃいましたので、その期間ごとに申し上げたので、運転を休止している時間は分母のほうに入れてございません数字でございます、その七三と六九は。運転を休止している時間も、先生おっしゃった式の分母のほうに入れますと、先生冒頭おっしゃったような、運転開始後ことしの三月十五日までのいわゆる総合利用率は五七%でございます。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 休んでいるときのあれを除いた数字だ、こういうことがはっきりいたしました。  そこで、お尋ねいたしたいわけでありますけれども、四十七年の十二月九日に修理完了して運転再開をいたしたわけでありますが、三月十五日には第二回の定検に入っておる。言ってみますと十二月、一月、二月、三カ月ちょっとくらいでしょう。こんな短期間定検をしなければならぬのですか。
  14. 和田文夫

    和田説明員 美浜発電所につきましては運転開始が四十五年十一月でございます。第一回の定検が四十六年十月から十二月でございますが、この第一回の定検からいたしまして、当初から四十八年の三月には第二回の定検をする、こういう予定になっておったわけでございまして、その予定定検にことしの三月十五日から入ったわけでございます。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 この第一回の定期検査浜口さんの論文を読みますと、こういうことが書いてあるわけですね。たとえば「海外における蒸気発生器細管漏れ事例から、細管全数の一〇%についてエディオ測定を実施した。」こういうことが第一回の定検のときあります。  お尋ねしたいことは、この「海外における蒸気発生器細管漏れ事例」ということでありますから、第一回の定期検査では、この美浜一号には、この文章から推定いたしますと、細管漏れはなかった、けれども念のために細管全数の一〇%についてエディオ測定を実施した、こういうふうにこの文章は読めます。実態はどうなんでしょうか。
  16. 和田文夫

    和田説明員 第一回の定検、四十六年の十月から十二月でございますが、そのときには細管漏れ測定エディオでやったかどうか、いま私存じておりません。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 非常に重要な点なんですよ、現在の美浜一号機の状況からいきましてね。私は「電気学会雑誌」のこの担当者浜口という人の論文を読みまして「海外における蒸気発生器細管漏れ事例から、」というのですから、海外では細管漏れがあったということですね。  そこで、心配でありますから細管漏れがあるかないか、細管全数の一〇%についてエディオ測定を実施した。実施した結果をこの報告には書いてございません。しかし、四十六年十二月二十九日、第一回の定期検査が済みまして、そうして細管漏れが半年後の六月十三日に発生しておるわけですね。いままで一年間ちょっと運転して第一回の定期検査をやった。その際にはエディオ測定まで一〇%についてやったにかかわらず、定期検査が済みましてから六カ月後には細管漏れ発生確認をされたわけですね。そうして約半年休んだ、四十七年の十二月九日にようやく運転再開をした、こういうことですね。  この会社報告を読みますと、「四十七年六月十三日に蒸気発生器(二台のうち一台)に細管漏洩が二次系の放射線モニタにより判明しました。漏洩量は極めてわずかであり、周辺に対する影響を監視している野外モニタ指示通常運転時と比べ何ら変化は認められませんでした。蒸気発生器細管漏洩状況調査するため、遅滞なく原子炉を停止し、水圧試験を実施するとともに、さらに渦流探傷装置により健全性確認試験を行ないました。」こう書いてあるのですね。  第一回の検査エディオ測定をしたのに、運転を再開いたしまして六カ月ばかりの間に同じようなエディオ測定をやった結果、漏洩のある細管は八千八百本のうち一本でありましたが、損傷疑いのある細管もあることが判明しました。そして損傷疑いのあるものを含めて切り取ったのが百十本あったというのですよ。どうしてこういう突然に、厳密な第一回の定期検査をやって、そうして一年以上の営業運転をやって、運転再開をいたしますと六カ月後にいわゆる定期検査でないのにとめた。それは漏洩があった。それは一本だった。けれども心配があったものを含めますと百十本の細管について盲栓工事をやって、そうして十二月九日に運転した。まさしく突然変異のような、きわめて急速な、第一回検査では気づかなかったようなものが、わずか六カ月の間になぜ一体こういうようなコロージョンなりエロージョンが起こったのか、私はこれが疑問でならないわけです。これはどうなんですか。
  18. 和田文夫

    和田説明員 先ほど申し上げましたように、第一回の定検から、先生のおっしゃいますように約六カ月で細管漏れ事故発生して、修理のためとめたわけでございますが、第一回の定検のときにいわゆる渦流探傷装置によるチェックをしたかどうか、私先ほど申し上げたように、いま現在ここの段階では、ちょっと知りませんので何とも申し上げられませんが、こういう事故につきましては、これはもういろんな熱影響でございますとか、そういうことで徐々に進行するものでございますので、去年といいますか、一年前の十月あるいは十二月にわからなかったことが翌年の六月に出てくるということはあり得ることではないか、こういうふうに考えます。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 お尋ねしたいのですが、おたくのほうが定期検査等をやり、運転再開をする場合には、会社から報告を受けるのでしょう。そうして運転開始については一応オーケーを与えるんでしょう。そうじゃないですか。
  20. 和田文夫

    和田説明員 もちろん定検のときは現地に係官が出向きまして、定検の概要あるいはその結果等につきまして詳細に調べまして、先生おっしゃるようにオーケーを与えるわけでございます。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 私のさっきの質問に対して、全管数の一〇%についてエディオ測定をやったとか、こういうことについてはあまり的確に御存じないようなことをおっしゃっておって、そうしてさっきの御答弁では、六カ月の間に急速にくずれたのでしょう、エロージョンコロージョンが起こったのでしょう、こういう答弁になってしまうと、しろうとでありますけれども、これはしろうとだけに納得できないですね。ますます疑惑が深まるでしょう。これは美浜一号機の一番のポイントなんですよ、どうなんですか。
  22. 和田文夫

    和田説明員 先ほど申し上げたように、第一回の定積のときにそういうテストをやったかどうか、私、現在ここにおります段階ではちょっと的確な御答弁ができません。これは帰って調べてみますれば的確な御答弁ができると思いますが、現在手持ちの資料では的確な御答弁ができませんので、そういうことを申し上げているわけでございますが、一般的にこういう漏れ事故というのは、ある程度事前にわからなくて出てくる場合が従来火力発電所等につきましてもあることでございますので、その六カ月あるいは七カ月前に何かやってわからなかったことが起こったのがおかしいということは必ずしも言えないのじゃないか、こういうことを先ほど申し上げたわけでございます。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 それではお尋ねいたしますが、第一回の定期検査の際に一本がいたんでおったということでありますが、「損傷疑いのある細管もあることが判明しました。」きわめて抽象的に書いてあります。そしてあなた方は、その疑いのあるものも含めて、細管合計百十本について盲栓工事を行なった、これは御存じですか。
  24. 和田文夫

    和田説明員 存じています。ただ細管漏れがあったのは第一回の定検のときではなしに、漏洩が二次側で検知されました、すなわち昨年の六月時点でございます。
  25. 細谷治嘉

    細谷委員 昨年の六月時点で明らかに漏れておったのが一本、損傷疑いのある細管が百九本あったことになりますね。損傷疑いというのはどの程度確認をなさっておりますか。損傷疑いということだけなんですよ。具体的にどういうことなんですか。あなた方のほうはどういう程度のものを損傷疑いと見るのか。
  26. 和田文夫

    和田説明員 先生おっしゃいましたように、明らかに漏れていることが確認できたのが一本でございまして、あとその付近のものを念のため調べまして、渦流探傷装置によりまして、パイプでございますのでその厚さを測定いたします、その厚さがある程度以上薄くなっているものを、さっき先生がおっしゃった損傷疑いがある、そういうことで盲栓工事をやったわけでございます。そのほかに盲栓工事をやったものといたしましては、調査のため切り取った細管もございますので、損傷疑いがある細管は百本程度でございます。あと一本は明らかに漏れておる。あとテストのためにいろいろ切り取った細管でございます。
  27. 細谷治嘉

    細谷委員 その合計が百十本。その百十本について盲栓工事を行なって、いよいよ四十七年の十二月九日に運転を再開いたしたわけです。ところが、三月十五日から定期検査のために原子炉を停止して、現在検査中、こういうことであります。ところが、一年足らず運転した第一回の定検の際に、一本破れておった。損傷疑いのあるものが判明した。合計百十本というものを盲栓工事をした。それから三月の定期検査までというのでありますから、大体正味三カ月ばかりですね。正味三カ月ばかりの間に、定期検査のために検査したところが、蒸気発生器についていま申し上げましたようなエディオ測定をした結果、減肉進行が認められた細管が三十七本あった。「発生箇所は前回と同様一次系入口側ストラップ部の範囲に限定されており、また減肉程度漏洩につながるようなものではありません。」こういうことであります。  ところが、「しかしながら、」と書いてあります。「細管漏洩未然に防止し、運転信頼性を確保するため、減肉進行が認められた細管、渦流探傷装置測定精度の向上にともない、」装置を変えたらしいですね。「わずかながら減肉指示のあった細管および減肉指示のあった細管周辺の健全な細管についても盲栓工事を行ない万全を期することとしています。」そして、現地でお伺いいたしますと、一挙に八千八百本のうち大体千八百本ないし千九百本、約二割の盲栓工事をするというのであります。言ってみますと、わずか半年運転して定期検査のときにやめた、ところが、それから三カ月ばかり運転してみたところが、事態は急激に進んでおるわけですね。明らかにエディオ測定細管が三十七本も——この前はそういう心配で一本のほかに百十本やったわけであります。今度三十七本確認されて、そして心配のある部分ということで、百十本が一気に千八百本ないし千九百本、二割になっておるわけですよ。運転期間は実質的には六カ月と三カ月で九カ月、この事態は一体どういうことなんでしょうか、お尋ねいたします。
  28. 和田文夫

    和田説明員 ことしの三月十五日に第二回の定検に入りまして、おっしゃるようにエディオ検査をいたしまして、前の状態よりは減肉しているというのが三十七本確認されております。その原因はいろいろのことが考えられますが、蒸気発生器細管の曲がっている部分がありまして、ストラップと称して細管の振れどめがありますが、そこの部分がどうも蒸気発生器の二次側の蒸気あるいは水の二相流体の流動が局部的に妨げられまして熱影響を受けやすいというようなことが考えられましたので、それに該当する分を、さっき先生おっしゃったような、今後の運転信頼性を確保するために約二割程度盲栓工事を実施しているのが現状でございます。
  29. 細谷治嘉

    細谷委員 疑いのあるものを含めて百十本が、六カ月運転後には千八百本になったわけですよ。これがはっきりあるのに、わずかながら減肉指示のあった細管及び減肉指示のあった周辺の健全な細管についても盲栓をしたというのです。  はっきりするためにお尋ねしたいのですが、体減肉進行を認めるという場合に、何十分の一ミリメートルの減肉だとこれはペケだというふうにしているのか、これが一つ。  もう一つは、百十本を一気に千八百本にしたという技術的な根拠。ただ周辺の健全な細管についても盲栓をしたというのですが、これもまたきわめて抽象的なことで、こんなことではどうにもならぬわけですから、一体そのけじめはどこでつけているのですか。あなたのほうも見て許可しているのですか、どうなんですか。
  30. 和田文夫

    和田説明員 減肉のほうの問題でございますが、これは強度計算的には七〇%が減肉いたしまして三〇%が残っておればだいじょうぶという強度計算にはなっておりますが、今回はもちろん減肉がちょっとあったものにつきましても盲栓を行なっておりますし、それから減肉指示がありませんでも、どうも原因がそういうことらしいということで、それに該当する部分細管をほとんど全部盲栓を行なう、これは今後の細管漏洩未然に防止いたしまして、あと運転信頼性を確保するためにやっているわけでございます。ですから、おっしゃるように本数が非常に多くなりまして、そんなに漏洩のあるおそれがあるのかとお思いになるかもしれませんが、そういう意味ではありませんで、漏洩のおそれはありませんが、将来減肉とかいろいろな問題が出てきますと、またそのたびに、もしも運転をとめなければいかぬというようなことがありますと、運転信頼性が非常に得られませんので、思い切って約二割程度盲栓をしよう、こういうことでございます。
  31. 細谷治嘉

    細谷委員 先回りしてお尋ねいたしますが、千八百本盲栓した、二割盲栓したら、これ以上はもう絶対ありませんか。保証できますか。思い切ってやったというんですからね。八千八百本のうち、百十本から、疑いのあるものを、その周辺も含めて二割の千八百本か千九百本おやりになったというのですから、もうこれ以上はないのですか、エロージョンコロージョンも。はっきりしてください。
  32. 和田文夫

    和田説明員 こういう発達段階技術に関するものでございますから、絶対ないということはもちろん言えないと思いますが、少なくともピンホールがあいて外に漏れるようなことはないというふうに確信をしております。
  33. 細谷治嘉

    細谷委員 絶対ないということは言えないけれども、漏れるようなことは絶対ない、どういうことですか、それは。私も技術屋の端くれですがね、しろうとでありますから、そんなことはわかりませんよ。あなたも技術屋でしょう。この問題は技術的に私は聞いているのですから、政治的な答弁だと困るんですよ。だから大臣に聞いてないわけだ。この問題について、もう思い切って百十本を千八百本盲栓したのだから、今後はもう絶対そういうことはありません、そういうことを保証できるかできないか、それを聞いているんですよ。なかなかお答えできないでしょう、これは。
  34. 和田文夫

    和田説明員 こちらといたしましては、今後そういう放射能が漏れるような事故が絶対起きないようにというようなつもりで思い切って千八百本の盲栓を行なっているわけであります。
  35. 細谷治嘉

    細谷委員 はっきりしませんが、それでは一体コロージョンエロージョンか知りませんけれども、こういうふうないわゆるピンホールあるいは管肉損傷減肉が起こった原因は何ですか、お答え願います。
  36. 和田文夫

    和田説明員 お尋ねの漏洩事故原因でございますが、これは切り出した蒸気発生器細管状況でございますとか、あるいはその細管減肉の位置でございますとか、あるいは事故後いろいろ実施した試験等から、現在では、さっきちょっと申し上げましたが、蒸気発生器細管の曲がっている部分がございますが、そこにいわゆる細管の振れどめ、ストラップというのがございますが、その中にあるものについて、蒸気発生器の二次側の蒸気と水の二相流体の流動が、局部的にストラップがあるために妨げられまして、熱影響を受けやすい、そういうことが主たる原因ではなかろうかというふうに考えております。
  37. 細谷治嘉

    細谷委員 それはエロージョンですね、そうですか。
  38. 和田文夫

    和田説明員 エロージョンのほうでございます。
  39. 細谷治嘉

    細谷委員 千八百本以上は絶対蒸気漏れは起こりません、エロージョン原因なら、あなた保障できないでしょう。これからも絶対起こらないということはどうして保証いたしますか。会社があげた原因一つにもエロージョンがある。保証できますか、技術的に。
  40. 和田文夫

    和田説明員 今回、先ほど申し上げたような思い切った本数を盲栓をやりまして、今後につきましても、ことしで第二回の定検をやっているように、第三回、第四回と定検を繰り返すわけでございますので、そういうときに随時チェックをしていく、そういうことによって蒸気漏れといいますか、そういう事故がほとんど起きる可能性は絶無だろう、そういうふうに考えております。
  41. 細谷治嘉

    細谷委員 そういうお答えをいただくと、逆にあとに戻っちゃう。百十本から千八百本の盲栓をするというので一年ごとに定期検査をやるというのですが、漏れが起こらないように、危険がないように、そのつどやるというなら、もっと技術的に、百十本が四百本か五百本になり、五百本が八百本になり、千本になり、そして最後に千八百本になったというならわかるんですよ。減肉等の起こったものを、その周辺も含めて安全のために百十本が一ぺんに二割の千八百本も盲栓をしてしまって、今後も定期検査で起こったら、また盲栓をするのだ、こういうことは——これは常識ですよ。技術的にはそういうことですよ。私もそうだと思うのです。漸次進むわけですから、 エロージョンでも、コロージョンでも。半年間においてそれを一ぺんに千八百本もいま盲栓をしてしまうわけですからね。こうなってくると、もうこれ以上絶対にエロージョンコロージョンも起こらぬのか、こういうふうに私が質問をするのは必然の道ですよ。それを、あなたはまたそういうお答えをした。話がまたもとに戻っちゃった。今後また定期検査心配なことが起こったら、その心配部分減肉の起こった部分、そういうものと、それからその周辺のものをまた切るというのだから、そうだと千八百本が、この次には三千本になる、そういうことになるでしょう。それがはっきり聞きたいわけだ。
  42. 和田文夫

    和田説明員 原因がさっき申し上げたような原因と推定されますので、その原因関係するような部分、現在全然減肉の徴候があらわれていないものが大部分でございますが、それを思い切って今度は千八百本盲栓をするわけでございまして、そういうことからいえば、われわれとしては今後はまあ、絶対ということばが使えるかどうか知りませんが、まずだいじょうぶだろう、こういうふうに確信しております。ただ、今後においても定期検査が一年に一回程度あるわけでございますから、そのつどチェックをいたしまして、もし万一悪いものがあればそれに対応する手段を考える、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  43. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、ことばというのはたいへん便利なもので、だろうと確信する、ということだけなんです。確信しなければオーケーは与えられぬでしょう。しかし、どう見てもあなた、いまの説明では私は納得できないんですよ。私も技術屋の端くれで、それで二十二年めしを食ってきたんだから……。どだい、あなたのほうからいただいた資料を見ましても、こういうかっこうになっておるんでしょう、ストラップは。そうして、そのベンドのところというのは、こういうところに減肉の著しい細管が外観として出てきておる。これはあなたのほうから石野委員長に出した資料です。そうしますと、あなたが言った千八百本か九百本だけじゃないんですよ。八千八百本全部そういうエロージョンを起こす可能性があるわけですよ。そうでしょう。全部ストラップに接触しておるのですから。でありますから、メカニカルか知りません、フィジカルにか知りません、いずれにいたしましても、これはどう心配のないものをやったって、現にピンホールも起こったし、減肉も起こっておる。ですから安全の部分周辺のものを切ったからといったって、みんな同じ物理的なできのストラップに接しておるわけですから、八千八百本全部あぶない。これは常識でしょう。そうじゃないですか。
  44. 和田文夫

    和田説明員 先生のおしゃいますように、八千八百本全部ストラップには関係があるわけでございますが、先ほど申し上げたような、特に内側のチューブが非常に曲率半径が小さい半径で曲がっておりまして、その曲がっておる部分ストラップ内にある部分、これがいろいろな水の流れやいろいろな温度変化等でエロージョンを起こしておる原因だろう、こういうふうに推察されますので、そういう部分につきまして、ただいまでは全然指示のない細管も含めて思い切って約千八百本盲栓を行なうわけでございまして、そういう意味から申し上げまして、今後は漏れるような事故になることはないと確信しておるわけでございます。
  45. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの御答弁でありますと、曲率半径とエロージョンがダイレクトに関係しておるようにお答えですね。  それじゃお尋ねいたします。どの程度の曲率半径ならエロージョンを起こさぬですか、お答えいただきたい。曲率半径ということばだけで片づけるなら、そういう質問をせざるを得ないです。内部のほう、曲率半径が小さいところ、そういうところにエロージョンが起こっておるのですから、それじゃこういう曲率半径の場合は、これ以上のところでは起こりません、こういう限界がなければならぬでしょう、あなた方監督官庁の責任者として。いかがですか。
  46. 和田文夫

    和田説明員 曲がっておる部分が、特にストラップ関係しておる部分盲栓をした、こういうことでございます。
  47. 細谷治嘉

    細谷委員 それは材料力学からいって、曲がりのひどいところは無理が起こっておるのですから、エロージョンを起こしやすいというのは常識ですよ。しかし、曲がっておることは、いずれにしてもどこかにストレスがあるわけですから、曲率半径だけで、この曲率半径以下がエロージョンを起こすんだ、これから以上のところでは起こさないんだ、だから外側はだいじょうぶなんだと言えないでしょう。これは時間の問題でしょう。そうでしょう。常識は。そうじゃないですか。
  48. 和田文夫

    和田説明員 こういう蒸気でございますとか、わりに高温の蒸気あるいは水の二相流体の流動の問題でございますから、先生おっしゃるように、非常に時間の経過とともにだんだんいろんな現象が進行していくわけでございますが、現在の段階においては万々だいじょうぶだと思われるものも含めまして、先ほどから申し上げておるように、千八百本思い切って盲栓工事をするわけでございまして、今後につきましても、毎年一回やる定検時に随時厳格なる検査をいたしまして、万遺漏なきを期していきたい、こういうふうに考えております。
  49. 細谷治嘉

    細谷委員 それでは、まあ耐用年数三十年といたしますと、六カ月の間にずいぶん心配なものが急速にふえたわけだ。一年で百十本、二年目には千八百本、二割。まだ起こるんですよ、これから間違いなく。どんなに安全といったって、心配そうなもの、その周辺のものをやったからといっても、物理的にこれは起こるわけですよ。ですから、あなたはいみじくも絶対起こらないとお答えになったのは、これは技術者の常識です。それは良心的に答えた。しかしそれ以上のことをおっしゃると、これはあなた、ごまかしになりますよ。そういう姿勢では質問を進めることはできないですよ。ですから、お答えしたことは、いまはとにかく安全なだけの、もう十分な安全性を見ながら千八百本盲栓したのだけれども、今後も起こります、しかしその際は定期検査の際に厳重にやっていきます、こういうお答えならいいですよ。そういうふうになりますか、そういうお答えができますか、どうですか。
  50. 和田文夫

    和田説明員 いま思い切って千八百本やったことは、もう先生おっしゃるとおりでございまして、今後定期検査のときに厳重にやっていくことも先生のおっしゃるとおりでございますが、今後絶対ふえるかどうか、ちょっと私にもいまこの席で即答いたしかねます。私どもとしては、今後できればふえないようないろんな使用条件、たとえば温度でございますとかそういうものもある程度制限して使うとか、そういうことも考えておりますので、今後絶対ふえていくんだということのお答えはできかねると思います。
  51. 細谷治嘉

    細谷委員 あなたはいま温度と言ったね。このパイプの材料は何ですか。
  52. 和田文夫

    和田説明員 ジルコンでございます。
  53. 細谷治嘉

    細谷委員 インコネルでしょう。
  54. 和田文夫

    和田説明員 間違いました。インコネルでございます。
  55. 細谷治嘉

    細谷委員 何度下げるのですか、心配になったときには。インコネルというものは材料ですよ。これは材料を若干でも取り扱った人なら、三百二十度を三百五度にしたとかなんとかということで、千八百本盲栓しちゃったのだからこれから絶対に起こらない措置になりますよなんということは、あなた言えませんよ、インコネルは。これは高温に強いんです。ニッケルが七五の特殊合金ですね。ですから、温度の調節なんということで防げないですよ。そんな問題じゃないですよ。それだけひとつ確認してください。温度を下げるということになると、ああそうかということで、みんな場合によっては国会ではそうかということになるかもしれませんけれども、私は残念ながらその答弁ではいよいよ疑問が深まるだけだ。温度でやりますなんというそのことばは撤回してくださいよ。
  56. 和田文夫

    和田説明員 温度の問題は一例として申し上げたわけでございまして、いろんな方法が考えられると思いますが、今回の蒸気発生器盲栓工事を含む使用前検査の結果等を総合的に判断いたしまして、われわれのほうに原子力発電技術顧問会等もありますので、そういう権威ある諸先生方の御意見も伺いまして、そういういろんな使用条件をもし要すれば定めるということであと運転に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 一番最初のこれはやはりエロージョンです。でありますから、エロージョンはいろいろな条件があります。あなたが言うように、曲率半径の関係もありましょう。というのは、流れは曲率半径が小さいほどタビュレットになるんですから、それはもう腐食の速度が若干早まる、エロージョンが起こってくる、こういうことも私は否定いたしません。しかし、温度を調節するとか、あるいは曲率半径だというような、それに全部責めを帰しちゃって、今後絶対起こらないなんというようなことでは、これはどうにもならないですよ、科学技術庁ともあろうものが。しかも技術の最高峰ともあろうものが。  この問題はちょっとおいて、次に会社があげているもう一つ原因をあげておきます。こういうことをいっているのです。「ストラップ部では蒸気発生器の器内水に混在する微量の物質および水質管理のために注入した薬品が濃縮されやすく、蒸気発生器細管の表面が化学的腐食を受けやすいこと。」今度はコロージョンをあげている。これはほんとうですか。
  58. 和田文夫

    和田説明員 それも一つ原因ではなかろうかという推定はされておりますが、むしろさっき申し上げたようなエロージョンのほうが主原因じゃなかろうかというふうに現在の段階では考えております。
  59. 細谷治嘉

    細谷委員 会社の説明は、エロージョンコロージョンの複合現象であるとここに説明しておるわけだ。いまのお答えではエロージョンのほうが大きいということでした。これはなかなかわからぬでしょう、複合現象ということですから。複合的な侵食が起こっているということであります。大体この種のものはエロージョンコロージョンと比べるとエロージョンが大きいというのですが、どれくらいの割合だと推定されますか。
  60. 和田文夫

    和田説明員 割合については、いま判明いたしません。
  61. 細谷治嘉

    細谷委員 割合が判明しないのに、大きいとか小さいとかなぜ言うのですか。私は技術的に聞いているのです。これのほうが大きいと言うなら、ぴしゃっと言えぬでも、大かたの割合は御存じなければいかぬでしょう。新しい原子炉の施設だからわからぬ、こういうことなんですか。その前にいろいろなテストもなさっているでしょう、どうですか。
  62. 和田文夫

    和田説明員 さっき申し上げたうちの原子力発電技術顧問会の諸先生方の意見をいろいろ伺っておりますが、大部分先生は、どうもエロージョンのほうが主原因じゃないかということをおっしゃっておりますが、その割合等につきましては、まだこれからいろんな実験等もいたしませんとわからない、こういうことで、私、さっきちょっとはっきりしない言い方をして申しわけありませんでしたが、一応先生おっしゃるような複合現象だということでお答えさしていただきます。
  63. 細谷治嘉

    細谷委員 これはかなめですね。蒸気発生器は、一次系と二次系の接触部分で、かなめですよ。エロージョンが主因なのか、コロージョンが主因なのか、どういう複合的な状況になっているか、これをやらなければ、今後の原子力発電所を具体的に自信をもって進めることはできないでしょう。お調べになるつもりはありますか。いや、こっちのほうがちょっと大きいでしょう、科学的根拠はない、単なる推定の域、こんなことでは——これは原子力発電所一つの心臓部ですよ。言ってみれば原子力発電所の副都心だ。銀座に対する新宿ですわ。それについて具体的に解明ができないで、やれやれと言うことだけでできますか。  念のために申し上げておきますと、会社の説明では、あなたが言うように、いやコロージョンがウエートが少なくてエロージョンが大きいなんと言いませんでした。私どもが質問いたしますと、こう答えました。こういう蒸気発生器細管の表面が化学的腐食を受けるその原因は、微量の物質、水質管理のために注入した薬品だ、こういうことです。微量の物質は何ものか、これは私も確実にいたしませんけれども、水質管理のために注入した薬品というのは第二燐酸ソーダですよ。そこで、こういうコロージョンが起こりますから第二燐酸ソーダの濃度を濃くしましたと会社は答えている。ところが、何のことはない頭隠してしり隠さず、その第二燐酸ソーダが局部的にいわゆる管の表面で濃縮されるので、だからコロージョンが促進されているのだ、こういう説明ですよ。どなたもどきっとしたんです。コロージョンがふえる、そのコロージョン原因が、第二燐酸ソーダの濃度が局部的に高まったためだ、一方では第二燐酸ソーダの濃度を濃くしておるという説明をしておる。私はこの一事だけを聞いて、世紀の原子力発電、それについてのあまりにも不用意さということにどぎもを抜かれたのです。どうですか。
  64. 和田文夫

    和田説明員 私がいままでに聞いておりますことは、いろんな薬品注入を間欠的にやっておりましたのを連続的にやりますと、そうすると一次的な濃度がむしろ濃くならない、それで濃度の平均化をはかることによってこういうものが防止できるのではないか、そういう観点に立ちましてそういう措置をしたということを聞いておりますが、濃度を濃くしたということは、ちょっと聞いておりません。
  65. 細谷治嘉

    細谷委員 これは、私が聞いたばかりではなくて、十数人行った人が聞いてみんな驚いているわけです。これも向こうの説明で聞いたのではなくて、質疑のやりとりの中でそういう確認がされたわけです。私はこれを見て、こういう技術的な矛盾すること、頭隠してしり隠さずのような形で原子力発電をトライアル・アンド・エラーでやられたのではたいへんなことだ、試行錯誤などということで許されぬ、こういう感じを持ちました。  そこで、あなたに聞いているわけですけれども、残念ながらあなたも的確なる答弁ができない。そして、聞いてみますと、アメリカのほうもオーケーであります、科学技術庁や通産省はオーケー与えたかと言ったらオーケーです、それでやっております、こういうことです。そして、原子炉の中へ入ってみますと、いまの原子炉修理をしている人たちというのは、六割か六割五分がアメリカ人です。日本人は使い走りです。そういう状態で、自主開発、そんな気配一つもありませんよ。自主、民主、公開、これが三原則といわれているのですが、そのかけらも遺憾ながらあの中で私は印象を得ることができませんでした。いまあなたの答弁を聞きますと、科学技術庁のほうもそういう姿勢で、そしてどこが原因なんだという詳しい究明も何らなされないで、三十四万キロがどういう事態に達しているかというと、そのそばでは五十万キロ、その横では百十七万キロがどんどんどんどんとスケールアップされて建設されているのです。私の経験では、三十四万キロというのを二倍のスケールアップしたら、状況が全く変わってくるのです。しかも物理的なエロージョンなりあるいはコロージョンなどというものの状況は全く変わってくるのです。そういう三十四万キロについての問題点というものが何ら究明されないで、どんどんどんどんスケールアップが進んでおる。こういう姿は許せない姿勢だと、こういうふうに申し上げざるを得ないですが、どうですか。
  66. 成田壽治

    ○成田政府委員 いま美浜一号炉、外人の従業員が非常に多いというお話でございますが、これはPWRは日本におけるPWRの最初の炉であって、その事故等が起きましたので、外人を委嘱していろいろ原因を究明しておるという点が原因だと思います〇二号炉以降につきましては、同じ容量の場合、極力国産化をやっておりますので、美浜一号炉について従業員が外人が多いから自主開発が行なわれておらないということは、われわれはそうは考えておらないのでございます。
  67. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、何も目の色の変わった人が多いから自主開発がどうのこうのという議論を言っているのではない。いまの技術的な観点からいっても、あるいはあの中に入ったもろもろの状態を見ても、頭数の問題ではなくて、主導権が遺憾ながら完全にはない、こういう印象を受けたわけです。ですから、それを申し上げているわけです。  大臣、いまお聞きいただいたわけですけれども、私は、もうこの問題は純技術的に質問申し上げているわけです。そして私が冒頭申し上げたように、聞けば聞くほど、見れば見るほど安全性に疑問が、深まった、こういう感じであります。にもかかわらず、三十四万キロと八十万キロ、同じようなものだ、百十七万キロも同じようなものだという形でどんどんどんどんとスケールアップされていっているこの原子力発電所の政策の基本は、たいへんなことになる憂いがある、こういう印象を深くしてきました。いまおたくのほうの技術屋とやりとりをやってきたのですけれども、大臣どう思いますか。
  68. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 先刻来の細谷先生和田技術長とのやりとり、和田技術長は私のほうの科学技術庁じゃございませんから、その点だけ誤解のないようにひとつお願いいたします。別に責任を回避するわけではありませんが、通産省の公益事業局の方でございまして、科学技術庁ではございませんから……。科学技術庁で定期検査をやっているわけでございます。  私、具体的に先生エロージョンとかコロージョンとかいうお話を聞いておりまして、私、残念ながらそれほど専門家ではありませんので、実はわかりませんでした。非常に熱のあるやりとりを拝聴いたしておりまして、具体的に本数がどうだとかいうお話もございまして、いまのところ、具体的にはっきりしたところは私わかりません。しかし、そのやりとりのうちからも、私の考えの結論が出るわけでございますが、一般論といたしまして、検査というものは慎重でなくちゃいけない、そして自信を持った検査でなくちゃいけないということは言えると思います。ただいまの技術長の答弁も、あるいはとっさの答弁でありましたので、先生の非常に該博な、実にお詳しい御質問に対して、御答弁する材料があるいはなかったのではないか。私も技術のほうは一向詳しくございませんからわかりませんけれども、とにかく通産省の技術面においても、相当自信を持ってやっていただいていると思っているのです。  このやりとりを、おまえどう思うかというお尋ねでございますが、私も実はちょっと自信を持ってどうだという判定もできないのでありますが、とにかく一般論としまして、慎重に検査をしなければいけない、そして自信を持ってほしい。といいますのは、原子力の発電につきましては、まず第一の要件というのは、安全性の確保ということ、これは至上命令だろうと思います。われわれも、とにかく原子力行政の基本というのは、安全性の確保だろうと思いまして、そういう考え方のもとに一生懸命努力をしているつもりでございます。本年度の予算においても、計上している安全性の予算というのは非常に多いわけでございます。それでも一向努力が足らぬじゃないかという先生のお考えかと思いますが、とにかくわれわれも安全性の確保に一生懸命やっているということも御理解いただきたい。そうして青い目の人があまり入ってきていろいろコーチしてもらわぬでもいいように、自主的な開発ということに——もちろん原子力施設につきましても、日本は外国よりおくれて出発したわけでございますから、青い目もしばらくの間はしようがないと思いますけれども、自主的な開発のためにいろいろ努力を払っていきたいと思って、いろいろ予算に計上してある分をごらんいただけばわかるのでございますが、そういう制度で進めておるということを御理解をいただきたいと思います。
  69. 細谷治嘉

    細谷委員 原子力局長、ぼくは通産省も科学技術庁も一体だから、別に区別して質問しないけれども、和田技術長が全部答えてくれた。局長、どう思いますか、やりとりを聞かれて。私が言うのはおかしいと思うのですが、どうなんですか。安全性は一〇〇%、まあ一〇〇%といったって、未来永劫に一〇〇%なんていうことはありませんけれども、しろうとが見ても指摘できる問題点があったわけですよ。それに的確に答えられないわけですが、通産省に対する原子力の面においてはあなたのほうは責任があるわけだ。あなたはやはり技術的な——大臣は行政のほうでありますけれども、責任者だ。どう思いますか、いまの美浜一号の問題だけをとっても。お答えいただきたい。
  70. 成田壽治

    ○成田政府委員 関西電力の美浜第一号炉につきましては、安全審査会も、昭和四十一年の十一月ですか、通りまして、十二月に許可になっておるのでございます。これにつきましても、安全審査においてもいろんな点から検討しまして、一つ蒸気発生器細管の破損の可能性をきわめて少なくするように、先ほど御指摘がありましたような、材料としてはインコネルを使用する。設計、製作も高度の規格に準拠して行なわせている。使用する水の溶存酸素とか塩素の含有量を押さえるための水質の管理をやる。そういう点の配慮もやらせております。また、炉の運転中に何らかの理由で蒸気発生器が破損した場合には、二次系に放射線モニターを設けて、レベルが高くなると警報が発せられて炉を安全に停止するとか、そういう装置等必要な措置も講じておりまして、今度の破断ではありませんが、こういうのもモニターによって発見されたのであります。そういう意味で、昭和四十一年の安全審査においては、いろんないま起きましたような事態、たとえば破損の可能性をきわめて少なくするように配慮するとか、そういうことをやっておりましたが、今度は破損に至る前にモニター等によって発見されて、盲栓をやるとかそういうことになっておりますが、そういう意味で非常に遺憾なことであるというふうに考えております。  その後PWRにつきましても、第一号炉はかなり古い形のタイプ、その後二号炉等、また同じウェスチング系でありましても、私もあまり技術的にどこがどうということはありませんが、改良は着々しておるようでありますが、安全につきましては、さらに慎重に、こういう教訓を生かして配慮していきたいと考えております。
  71. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、私は原子力について、ただ単に従来の発電施設、電力確保という問題としてとらえることに問題があるのであって、せっかく科学技術庁というのがあるわけですから、この原子力の問題については、責任を持って、重要なオーソリティーとして対処していただかなければならぬ、こう思うのです。そういう点でまことに言いにくいことでありますけれども、通産省ともなりますと、電気を発生しさえすれば、そうして使うほうに送ってやりさえすれば行政目的は達成される、こういう形の行政の基本姿勢というのは、私ばかりでなくて一般の人もそう言っておる。通産省は安全性ついての観念が乏しい、安全こそがすべての前提であるということに足らない、こう言っておるわけです。そういう点で私は、科学技術庁がもっと原子力安全性、そして予想されるいろいろな危険性、問題点、そういうもの、そして現に起こっておるインコネルのかなり急速なエロージョンなりコロージョン、そういうものに何らの確信ある研究なりデータをそろえることなしに、いたずらにスケールアップ、スケールアップという形を歩んでおることは、たいへんな問題点である。言ってみますならば、そういう問題が確認されない限りはスケールアップはもちろんのこと、新しい運転はそういう確信を得るまではやめておくべきである、こういうふうに言うのが常識ではないか、こう私は思うのです。この点いかがですか。
  72. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 ただいま細谷先生が、通産省は電気を出すほうの側だから、まあ簡単に言いますと安易に考えておるのじゃないかというふうなお尋ねかと思いますけれども、私はそういうふうには考えません。通産省であろうと同省であろうと、電気を出すというのはもう産業エゴイズムに協力する、エゴイズムに協力すると言うとちょっと言い過ぎでありますが、そういう産業側に立ってものごとを遂行するというような時代ではもうないと私は思っております。ほんとうに国民の理解と協力を得ることが必要であるという意味におきまして、別に役所が電気事業を担当しておる役所だから、そこで技術的に検討して検査をしていただいたのが安易な検査であるとかあるいは判断であるというふうに、私は実は考えないのでございます。その点は別に科学技術庁であろうと通産省であろうと環境庁であろうと、やはり姿勢というものは同じことでなくちゃならぬというふうに考えております。  ただ原子力というものは、先生御指摘のように、その安全性というのは一番大事な要件でありますので、安全性のためには従来も骨を折ってきたと思っております。しかし、まだまだこういう点がいかぬじゃないか、ああいう点がいかぬじゃないか、万一の事故のことを考えてはどうかということで、万一の事故についても重大事故とか仮想事故とかいろんなことを考えて、その場合でも、まだその事故の考え方がもう一つ不十分じゃないかというような御指摘もよく受けております。まだいろいろ学者先生からもいろんな貴重な御意見も拝聴しておりまして、そういう意見を常に拝聴しつつ、そうして安全性を確保しながら、そうして原子力の開発というものを私は進めていきたい。先生の御意思を十分体しつつ原子力の開発に取り組んでいきたいというわけでございます。
  73. 細谷治嘉

    細谷委員 時間もありませんから、この点はこれ以上はきょうはやめておきますけれども、科学技術庁でもよろしいし通産省でもけっこうでありますけれども、千八百本の盲栓をやっておるわけですね。あの原子炉の中にたくさんの人、七十人くらいの人が入っておるわけです。そうして爆着という形で盲栓をやっておるわけですが、お願いしたいのは、その入っておる人たち、私もちょっと入りました。入っていって出てくるときに、私は〇・一ミリレムの被曝を受けているのです。メーターが各人で、出ない人もありますけれども、私は〇・一ミリレムの被曝を受けておる。ですから必ず多かれ少なかれ被曝を受けている。あの中で作業している人、いろんなビニールや何かを張って、放射能のダストが付着しないようないろんな手は講じておりますけれども、あの中で作業をしておる作業員の毎日毎日の被曝量はどのくらいなのか、そして現にどのくらいのトータルの被曝を受けているのか、その資料を出していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  74. 和田文夫

    和田説明員 この前そういう趣旨の御要求がありまして、実は従事している人の数が非常に多いものですから、各人別ではなしに、いろいろな工事別に、たとえば今回のエディオ装置による試験のために何人従事して、平均のレムは幾ら、それから最高の人のレムは幾ら、そういう資料はすでにお出ししていると思いますが、何ぶんにも人数が非常に多いものですから、特に先生おっしゃるような毎日毎日のそういうことになりますと、非常に数量も膨大になりますので、この前お出しした資料ではいかがかと思いますが……。
  75. 細谷治嘉

    細谷委員 この前の資料というのは私は見ておりませんけれども、私が関心を持っておるのは、個々人がどういう作業であってどういう毎日毎日の被曝を受けているか。大体一時間もおりますと三レムとかなんとかいうかなりの被曝を受ける可能性もあるらしいのですから、これは限界量の問題もありますから、わかりにくい。この場所ではこのくらいの被曝だという形ではなくて、全員でなくてもいいですけれども、とにかく代表的な例について、少なくとも十人なり二十人ぐらいの個々人の被曝の量、名前は書かぬでもいいですよ、A、B、C、Dでもいいですわ、二十六人でもいいですわ、それを出していただきたいと思いますが、どうですか。
  76. 和田文夫

    和田説明員 工事別の、たとえば盲栓工事でどれだけの被曝がある個人にあるか、そういう資料なら、ピックアップでよろしければ出せると思います。
  77. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一つ、お願いしたいのですが、先ほど私が申し上げた三十四万なら三十四万という段階で、安全性確認されないで、そこに問題が起こっているにもかかわらず、どんどんとスケールアップされていっております。むろんこれは安全専門審査会の審査によるわけでありますけれども、その安全審査会が許可を与えました具体的な内容、従来の問題点については、こういう研究の結果こういうふうに改善したんだ、こういうようなことが必要なんでありますから、そういうような具体的な内容、審査会が許可を与えた以上は、ぴしゃっとした根拠に基づくものでありましょうから、それについてひとつ安全審査会の具体的な内容をお示しいただけないかどうか。委員長にこれはぜひお願いしたいと思うのですが、どうでしょう。
  78. 成田壽治

    ○成田政府委員 科学技術庁の原子力委員会の安全審査会は規制法によって審査をやっておる。これは基本設計について見ておるわけでございます。美浜一号炉について安全審査会の報告書、これは御提出いたしますが、ただ具体的な詳細設計になりますと、電気事業法による通産省の工事認可ということになっておりますので、両方そろえて御提出できると思います。
  79. 細谷治嘉

    細谷委員 出してくれますか。
  80. 成田壽治

    ○成田政府委員 安全審査会に関してはそのときの審査報告提出いたします。
  81. 細谷治嘉

    細谷委員 これもまた、知らしむべからずという、三原則から違った抽象的なものしか示さないのでは意味ないと思うんですよ。私ども一生懸命皆さんとともに安全性を追及しているわけです。でありますから、私が何を、どういう点を希望しているかということは、いままでの論議でおわかりいただけると思うのですよ。でありますから、内容、必要あればどういう議論が審査会の委員の方でやられたか、そういうような議事録のポイント、論議の問題点、そういう点も同時にお示しいただきたいと思いますが、いかがですか。
  82. 成田壽治

    ○成田政府委員 安全審査会につきましては、従来とも議事録というのはとっておらないのでありまして、安全審査会の報告書という形で取りまとめております。それで、美浜一号炉の蒸気発生器漏洩防止に関する安全審査という資料が、これは蒸気発生器漏洩関係だけでございますが、六月十四日付で委員長あてに出しておりますが、この程度では不十分ということなのか、あるいは、安全審査会報告書しかわれわれにはないのでありまして、しかもそこから蒸気発生器漏洩問題に関しては抜粋して書いたのがこの六月十四日付の提出資料でございます。
  83. 細谷治嘉

    細谷委員 この六月十四日付の委員長あての蒸気発生器事故についての報告がかなり詳細に書いてありますから、この程度の形で安全審査会が美浜二号機、三号機、高浜一、二号機あるいは大飯の一、二号機、こういう形で出ておりますね。そういう問題について、認可を与えるにあたってどういう審査が行なわれたか、その内容について可及的詳細なものをいただきたい、こういうことです。いかがですか。
  84. 成田壽治

    ○成田政府委員 美浜一号炉について六月十四日付で委員長あてに出したような蒸気発生器の問題についての審査内容、美浜二号その他PWRについて、関係のある炉について提出したいと思います。
  85. 細谷治嘉

    細谷委員 それではぜひお願いいたしたいと思います。  私、実は時間がありますと、この会社報告に基づく問題で、美浜一号機の燃料についてもこの報告があります。全部非加圧型の燃料を加圧型に変えてしまった。この辺にも技術的に幾多の掘り下げていかなければならない問題点、安全性を追及するからには問題点があります。しかし時間もありませんから、この問題につきましては、とにかくこれは簡単ですよ、非加圧型の燃料というのは被覆管が楕円形になっている。だから今度は加圧型にするのだ、こう簡単に、いままでは加圧型と非加圧型組み合わしてやっておったんですね、これを全部今度は加圧型にかえていった。これもこれだけの理由では納得できない。加圧型にするということについては、それなりにデメリットがあります。危険性もあります。簡単に、非加圧型のやつが楕円形になったから、今度は加圧型にするんだというわけにはまいらないと思うのです。しかし、時間がありませんからきょうのところはこの点は後日に譲っておきたいと思います。  ただ一点、原子力発電についてお聞きしておきたい点は、放射能の廃棄物について、せんだっての科学技術委員会の参考人の御意見を聞きましても、言ってみますと、原子炉あるいは蒸気発生器、その一連の一次系、二次系については一生懸命やっておりますけれども、きたない話でありますけれども、排出物のほうについてはほとんど手が触れてない。基本的な方針も立ってない。そして、あそこに行きますと丁新型転換炉あるいは高速増殖炉、こういうものが現に建設されておる、こういうことでありますと、私は廃棄物の問題というのが必ず起こってこなければいかぬし、これもたいへんな大問題だと思っております。そういう点もたいへん心配になっておりますが、この対策はどうするつもりなのか、一言承っておきます。
  86. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電所の廃棄物をどうするかという問題、廃棄物の処理処分問題は、これはいま世界各国とも共通の問題として研究開発を行なっておるところであります。アメリカもソ連もあるいはヨーロッパ諸国も、国際会議等でいろいろ専門家が集まっていま検討しております。日本も昨年の六月原子力委員会がつくりました長期計画におきましても、研究開発、海洋処分あるいは陸地保管といういろいろな形の方法が考えられますが、これについては、低レベルの廃棄物、発電所等から出るものはそうでありますが、これは五十年代の初めごろまでに、そういう研究開発の成果を得て結論を出すようにということを委員会の長期計画でうたっておりまして、四十七年度予算等から相当海洋の関係あるいは陸地保管の関係、これはまだ基礎的な研究段階でございますが、そういう予算をとりまして、いま鋭意検討して研究開発をやっておるところであり、また国際会議等においても、各国ともこれは共通の問題として取り組んでいる問題であります。
  87. 細谷治嘉

    細谷委員 時間が来てしまって、あとの人が待っておられるので……。私は、同時にいま敦賀湾、若狭湾一帯で問題になっております、東洋紡から漏出したPCBが海の汚染ということでたいへん問題になっております。そして、現に東洋紡ではそのPCBを他の熱媒体に置きかえております。ところが、いままで使っておりましたPCB何百トンというものの処理についてお開きいたしますと、全く見当がついておりません、そうして、通産省等の指導を待っております、これが答弁であります。これではどうにもなりませんので、この辺の問題についてある程度質問をしておきたかったわけでありますけれども、時間がありませんから、後日に譲りまして、私の質問を終わります。
  88. 石野久男

    石野委員長 次に、湯山勇君。
  89. 湯山勇

    湯山委員 私は、去る五月三十一日付をもって東海村及び伊方の原子力発電所について総理の許可処分に対する異議申し立てが却下されましたが、その異議申し立て却下の文書をいただきましたので、これについてお尋ねいたしたいと思います。  と申しますのは、これで一般大衆といいますか、地元の人たちと政府との接触は切れた形になりまして、中にはこれは行政裁判に持ち込むのだというようなことも言っておるのを新聞で見ました。ここで却下の書類が出っぱなしであって、そういうコミュニケーションがもう行なわれないということは、これは民主的な国会としても、政治のあり方としても、特に三原則を持っている原子力行政の立場から見ても、それはよくないことだと思いますので、なおこれについてのそういう場をひとつ持つという意味でお尋ねいたしたいと思います。  なお、細谷委員のように専門家ではございませんから、非常に常識的なところから伺いたいと思います。  これもきのういただいたので、まだよく読んでおりませんけれども、この異議申し立てに対する決定書は田中総理大臣が出されていますが、責任はだれにあるか、やはりあくまでも田中総理大臣なのか、科学技術庁長官なのか、あるいは通産大臣なのか、だれに一番直接の責任があるか、ここから伺いたいと思います。
  90. 成田壽治

    ○成田政府委員 異議申し立ての決定書は田中総理大臣の名前になっております。これは、申請その他規制法による手続は全部総理大臣ということでありますので、総理大臣になっておりますが、実質的には科学技術庁長官ということに、これは原子力委員会でもいろいろ検討しておりますので、委員長でもあり、科学技術庁長官ということになると思います。
  91. 湯山勇

    湯山委員 科学技術庁長官は、この内容については熟知していらっしゃいますか。
  92. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 存じております。  ただ、熟知といいますと、熟知の解釈によりますけれども、それほど詳細に技術的な点までいろいろいわゆる熟知という、その点で私も少し熟知といえるかどうか知りませんが…。
  93. 湯山勇

    湯山委員 長官のお気持ちはよくわかりました。  そこで、しろうとですから、まず伺いますが、決定書の二ページの下のほうに「審査会の委員が「今回の安全審査は十分でなかった」旨の確認書に署名した」ということが書いてございます。これはだれか存じません。私は名前を存じませんが、具体的な名前はおわかりのことと思います。こういう席上でこう言ったと、これも事実だと思います。ただそのあとに「多数の学生等により、本人の意思に反してなされたものと思われる。」という推定は、だれがなさったのですか。
  94. 成田壽治

    ○成田政府委員 この「本人の意思に反してなされたもの」であるというのは、当人に対してわれわれがいろいろ聞いてそういう考え方をとったのであります。また、京大の学会において学生に囲まれてこういう事件になったのでありますが、その学会に一緒に出ておった人がたの御意見を聞いても、そういう本人の意思に反してなされた——確認したのは、本人の意思に反してなされた、そういう状況であるということを、出ておった方々の意見も聞いて、そういう話でありましたので、われわれあるいは原子力委員会等においてもいろいろ議論したのでありますが、原子力局としてそういう考えをとったわけでございます。
  95. 湯山勇

    湯山委員 私はその場も知らないし、経緯も何も知りませんから、ただ書かれたものを見て、総理大臣が出される文書に、こういうことでいいかどうか、これが通産省とかあるいは厚生省とか他の省庁ならばともかくも、科学技術庁が出される文書にこういうのがあるということは、私はそのこと自体この審査に疑義を持たざるを得ない。おそらくりっぱな方で、科学技術の面ではオーソリティーの人をお選びになったと思います。ほんとうに学問に打ち込んでいる人というのは、多少おどされたからといったって、生命の危険がない、あるいはかりに生命の危険があったにしても、私どもが科学者の態度として学びたいのは、古い話ですけれども、ガリレオが裁判にかけられて、天動説、地動説でずいぶんいじめられた。しかし、どんなにやられても、やはり地球は動いているというのを貫いて処分を受けたのを御存じでしょう。科学者というのはそういう精神があって初めてこういう安全審査をまかされるので、これを一方へ来ては、おどされたのだと言ったのはほんとうだと思うのです。しかし、今度もう一ぺん私たちが呼んで、けしからぬじゃないかと言ったら、実はあれは、言わないと委員をやめさせられる、自分の職にかかわるので言ったんだ、というのだったらどうしますか。こういうことはこれに書くことは不適当だ。しかも推測記事ですよ。何々と思われると、これは私は第三者の立場として、こういうことはむしろ審査に対する不信感を増しこそすれ、信頼感を強めないと思うのですが、長官の御意見を承ります。
  96. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 湯山先生のおっしゃるように、ガリレオですか、とにかく科学者として自信を持って、真理のためには千万人といえどもわれいかんというような気持ちを持つべきがほんとうの科学者だと思います。しかし、実際はなかなかそうはいきませんで、やはりこれも人の子でありましょうか、どうもいろいろそういう心理的な影響というものは——私も科学技術庁に参りまして、みんな科学者が多いのですが、真理のために死んでもいいというふうな気持ちには、やはりいろいろな圧迫とか心理的影響を受けますと、そうはいかぬ場合が多いようであります。私は現実にそういう気がいたします。したがってこの記事も、ほんとうのことを書いてあるのだと思いますし、「である」というふうに書かないで、「思われる」というのは、むしろわりあい正直に書いてあるのだと私も思うのです。
  97. 湯山勇

    湯山委員 これは率直な感じですから、第三者としての。しかし、科学技術庁長官が委嘱するような学者は、千万人といえどもわれいかん、問題は学問ですから、これはやはりそういう人を選んでもらいたい。そうしないと、決定が信頼を失うということをひとつお含みおき願いたいと思うのです。そうしませんと、それはこういうふうな言い方をすれば、われわれの親愛なる中村衆議院議長だって、言い分はずいぶんあります。しかし、やはり責任をとっておやめになっておる。政治家としても、学者としても、とるべきところはきちっと責任をとり、明らかにするという人でなければ信頼できない。ですから、この人はだれか知りませんが、よくないと思います。これが第一。  それから第二の問題。その次には地震の問題でお答えになっておることが決定書にあります。現在活性の地すべりというものはない。それから地震もそう心配ないのだ。それから中央構造線は五キロメートルか幾らですか、とにかく離れたところにあるというようなことが書いてあります。なおその上に、耐震構造でやるのだからということが書いてあるのですけれども、それは一応それとして、すぐ次をあけてみますと、今度は水のところです。いま基礎岩盤が強いというようなことは七ページに書いてありまして、八ページをあけてみますと、今度はそのお隣の村から冷却水をもらうという段になりまして、隣の村のほうは、井戸の水に塩分が混入している現在の状態ではどうも水をあげるわけにいかぬ。で、その井戸の水の濁った原因が書いてあるのです。どう書いてあるかというと「地下水の塩分混入は南海地震以降の地盤沈下によるものである、」こうちゃんと書いてあります。そうすると隣村のことです。一方では活断層というのか、とにかくそういう心配がない。地震の心配はないと書いておきながら、隣村から水をくれない理由には、南海地震以降ですから、南海地震のときにぱっとなったというのでなくて、それ以来ずっとそれに影響されて井戸水に海水が浸入してきている。こういうことをもって、これは都合のいいところだけとって都合の悪いところはのけているというふうに思われます。隣村といったって、あの佐田岬の、四国山脈の骨ばかり残って細い岬です。ここで南海地震による地盤沈下の影響がなお今日も続いているとすれば、簡単に伊方地区でそういう心配は全然ないのだといってはね飛ばすのもおかしいし、また今度は、伊方地区はそういいながらも、水の海水浸入の理由に南海地震による地盤沈下を入れるのもおかしいし、何にしてもこの地帯の地盤がそんなにしっかりしていないことはみずからお認めになっているところです。そして、中央構造線が伊予灘の沖合い幾らといったって、伊予灘というのが当面している海なんですから、この辺しろうとが見ると、いかにもかってなことを、科学技術庁ともあろうものが書いておる。このつながりというのは一体どうなんですか。
  98. 成田壽治

    ○成田政府委員 この水の問題というのは、われわれは反対の方の御意見も聞き、非常に大きな社会問題になっておりましたので、非常に慎重に扱った問題でございます。それで、保内町からの地下水を取るということ、そしてこの需給、過去において何十年間にわたって最大渇水の場合にどのくらいの供給余力があるか、そして水の需要を今後の増大を考えてもどのくらいになるかという検討をやりまして、この四国電力の所要量をパー・デー・千トン、最大で千五百トンという量は、保内町の地下水の需給にほとんど影響を与えるものではない。それから、塩水の混入問題についても、これは先ほど言いましたように、南海地震以降の地盤沈下によるもので、この四国電力が地下水を取るということによってこの問題が悪化するとか、さらに大きくなるということはないというデータを、これは県なり地元のいろいろな技術専門家の研究データ等も使いまして、そういう考え方をとったわけでございます。それで、この辺についても、地元に御迷惑をかけないでパー・デー・千トンくらいの水は十分確保できるという答申を出したわけでございます。  ただ、御承知のようにこの取水計画は、その後知事等の政治的な配慮もありまして、海水の淡水化に変わった点は御承知のことと思います。
  99. 湯山勇

    湯山委員 私がお尋ねしておることとお答えとは違っておるのです。私が申し上げておるのは、建設の場合、伊方地区は、地盤沈下とか地盤に関する心配は全然ないということをこれに書いてありますね。書いておきながら、すぐそばの、水が濁るということには、今度は地盤沈下だと、こうあるのです。それは非常に近い距離である、しかも同じ地帯で、愛媛県の南のほうというのは、リアス式海岸というのは、御存じのように地盤沈下のためにできる海岸です。したがって、同じように沈下している。それを無視して、一方では、水の場合は地盤沈下だ、こっちではそんな心配はない、これでは一般に納得できないじゃないかということを言っておるのですから、要点をぴしゃっと言ってください。
  100. 成田壽治

    ○成田政府委員 地震につきましては、有史以来の地震で最大のものを想定してやっておるという形でありますが、地震につきましては、基礎岩盤をもとにして施設の設置をしておりまして、この飲料水に対して塩水が入った南海の地震等は、岩盤より非常に上のほうの影響で、表面に近いところの影響で塩水が入った現象だと思います。  それで、この伊方の発電所の地震の問題は、基礎岩盤との関連で安全であるというような結論を出しておりますので、そのつながりはそういうことで対処をしたいと思います。
  101. 湯山勇

    湯山委員 地盤沈下というのは基礎岩盤から下がる場合もあるのですね。とにかくいまの四国の南のほうというものは、全体が地盤沈下しておるのです。大阪付近のように水を取ったために部分的にそれが沈んだというのではなくて、だからああいうリアス式の海岸ができるわけなんです。だからそういう点が矛盾しておるのですね。どうですか大臣
  102. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 先生は地元でいらっしゃいますからお詳しいわけでありまして、私実は地元を知りませんし、いま胸のすくようなお答えはできませんけれども、こういう判断をするのには、相当慎重に審議していろいろな先生の意見も聞いておりますので、その点をちょっと御説明をさらにいたします。
  103. 湯山勇

    湯山委員 申し上げておるのは、それがいいとか悪いとかじゃなくて、そういう例を引いてきても納得させられない。決定書がいま申し上げたような書き方をしておるんだから、それでは異議申し立てた人を納得させられないということを指摘しておるのですから、それでけっこうです。  それからその次です。いま水のことが出ましたが、水のことについては慎重に相談したということですけれども、これもはなはだ恐縮ですが、こういうことですね。水についてはお隣の保内町が必ず確保して提供するということを言い切っておったのですか、言い切ってなかったのですか、簡単に。
  104. 成田壽治

    ○成田政府委員 保内町として確保するように言い切っておるというように聞いております。
  105. 湯山勇

    湯山委員 確かにもう約束、確約しておりましたか、もう一度聞きます。
  106. 成田壽治

    ○成田政府委員 保内町長はそういうふうに確約しているというふうに聞いております。
  107. 湯山勇

    湯山委員 確約しておるように聞いておるじゃなくて、長官にかわっては局長がやはり責任者ですから、確かめておるならおる、いないならいない、はっきり言われないと、聞いておるじゃいけません、大事な問題ですから。あなた御自身も、水の問題は大事だといまおっしゃったばかりです。
  108. 成田壽治

    ○成田政府委員 昭和四十五年の九月に開かれた保内町の臨時議会全員協議会においても、この伊方発電所用水の分水が決議になっております。
  109. 湯山勇

    湯山委員 決議の内容を承りたいと思います。
  110. 成田壽治

    ○成田政府委員 いろいろと長いのでありますが、最後のほうを読みますと、「当町住民が有利なる近代的、文化的な生活が営まれる諸条件を具備することを愛媛県と確約して、隣接伊方に建設予定されている四国電力株式会社新規発電事業に対し、当町の地下水を慣行に従い関係団体と協議の上、支障を生じない限度を定めて、供給できるよう最善の努力を尽すものである。」という決議、これは四十五年九月の十日であります。  それから、昭和四十七年の十月に保内町長等が上京の際にも、この点町長に確認しまして、そして十二月二十六日には、そういう趣旨の文書も科学技術庁に提出されているのであります。
  111. 湯山勇

    湯山委員 これも長官にお尋ねします、常識ですから。  長官もこういう御答弁はときどき国会でなさるのじゃないかと思うのです。そこで、無条件で供給するという約束じゃありません、これは。こういうことです。「当町の地下水を慣行に従い関係団体と協議の上、」ですから、協議はまだできていないです。これから協議をして、「支障を生じない限度を定めて、供給できるよう最善の努力を尽すものである。」最善の努力を尽くすということと供給の確約とは違うはずです。これは私がかってに言っておるのではなくて、いまの申立書に対する政府のほうの決定書を読んでおるのですから。これではまだ確定してないですね。大臣どうですか、こういう言い方は。
  112. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 この点につきまして四十七年の十二月二十六日に保内町長の須藤さんという方から「伊方発電所の設置について」という題で、ちょっと前文を書きまして、「地下水の日量おおむね三千トンの取水は、生活及び農業用水等に支障がないものと思考されるので、町内の諸事情を総合的に調整の上、送水できるようにいたしたい。」そういうお手紙を私にちょうだいしておるようでございます。
  113. 湯山勇

    湯山委員 「いたしたい」もありますけれども、それはこれには出ていないのです、残念ながら。だから、これはそういう申し立てがあったの対して、よくわかるように説明した文章ですよね。ところが、いま大臣がおっしゃったようなことは書いてなくて、書かれてあるのは、いまのように最善を尽くす、努力を払う、そのあとは同じような趣旨のことをまた言うてきた、いまおっしゃった四十七年十二月二十六日、同じようなことを言うてきた。ですから、これを読んでわかるのは、何にも町長は確約してないというところまでしかわかりません、この文書では。これはお認めになりますか。
  114. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 ちょっとその間のいきさつを政府委員からお答えいたします。
  115. 成田壽治

    ○成田政府委員 町長の手紙の件は、八ページのまん中に、「さらに、当該取水計画の妥当性については、昭和四十七年十月十一日保内町長等が上京の際にも認めているものであり、昭和四十七年十二月二十六日には、同趣旨の文書が科学技術庁に提出されている。」これはいま大臣お読みになった文書でございます。
  116. 湯山勇

    湯山委員 だからといって、この文書からはいまのようなことは読み取れないのです。もしお書きになるのなら、そういうことがもっとはっきりなるようなものにしないと納得がいかない。このことを指摘します。  それから次に、私が特に疑問に思うのは、もしかりに、いま局長がおっしゃったように、保内町からの冷却水をもらうことが確実だということであれば、なぜ一体その次に、四国電力株式会社は昭和四十八年三月に、もうちゃんとできることが確実なのにもかかわらず、どうして取水計画を海水淡水化装置の設置によってやるというようなことをやらなければならないのか。もう前のほうで、いま大臣や局長おっしゃったように、だいじょうぶだ——表現は別として、だいじょうぶなら、四国電力はあえて海水の淡水化、こんなことをやる必要はないはずです。これはどっちかがどうかなんです。しかも、それを決定書の理由にあげているということは、私はやはりこれは確実じゃないな、あやしいなという印象しか与えない。これはどういうことです。
  117. 成田壽治

    ○成田政府委員 取水につきましては、ここにありますように、当初の計画どおりパー・デー・千トン、さっきの手紙は三千トンまでだいじょうぶであるという町長の見解も出ておりますが、地元に御迷惑をかけなくて取水できるという点は変わりないのでありますが、これは、県知事が三月七日の県会におきまして、保内町からの取水は可能であると確信しておるけれども、長期的な観点から、地下水の取水以外の方法について検討してもらえないかという意向を四国電力に対して示して、そして、これに四国電力がこたえまして、知事の意向を体して海水淡水化に踏み切って、三月二十八日に申請したのでありますが、こういう知事の考えというのは、やはり取水は、保内町の地下水を取っても問題ないのだけれども、いろいろ地元民の不安等社会的な反対運動もまだ非常にありましたし、そういう情勢、それから長期的な観点というのは、まだわれわれは二号炉の計画というのは聞いておりませんが、将来二号炉なんかをつくる場合も、やはり片一方一号炉が保内町からの地下水を取り、二号炉が淡水化ということもかえって合理的でないので、そういう長期的な見地から考えると、やはり淡水化できるならばそっちのほうがいいんじゃないかという知事の配慮から、それを四国電力が受けて申請したものと思います。
  118. 湯山勇

    湯山委員 思いますじゃいかぬので、総理大臣の名前で、しかも全責任を前田長官がお持ちになって出しておる文書ですよ。それが、いまのように必ず水が取れるのだという確証もないような文章をあげて、あとは今度は、それもあるけれども、一方、四国電力のほうは、淡水化装置をやるから、結びは水に関するものは消滅しておる、こう判断しておる。してないですよ、これは。いまのように、長期の場合はなお安心できないという問題もあるし、知事が一体、三千トンが確実なのになぜそういうことをしなければならないか、なぜ四国電力がそういうことを言わなければならないか、こういうのは、推測じゃなくて、これこそ審査の一番大事なところであって、それらについて何らなさっていない。それでは私は、これを読んで、なるほど科学技術庁はよく調べてくれた、それなら安心だ、とは言えないと思います。大臣、いかがですか。
  119. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 確かに、湯山先生おっしゃるように、私も淡水化というものに踏み切るのは、どうも三千トンの取水というものにちょっと自信がないのじゃないかということを実は初め考えまして、そうじゃないのかと言うて、実は担当の局長並びに課長も呼び、そしてまた、局長は地元とも十分連絡をいたしまして、それとは違うのです、三千トンについては取水ができるのですけれども、地元の不安といいましょうか、そういうふうな点もこれあり、それはだいじょうぶなんだけれども、こういう淡水化をやるのですということを、この点は特にちょうど先生と同じように私も初め考えまして、何かちょっと自信がないからそういうことをやるのじゃないかということを一応考えまして、そういうふうに私は特にこの点は念を入れた点でございまして、その点、もうちょっと局長から詳しく地元の連絡を御説明してもいいのじゃないかと思います。
  120. 湯山勇

    湯山委員 いや、かまいません。ただ、いま局長言われたように、長期については自信がないということは、知事のほうもそう言ってきておると言うし、局長も、それはそうだと言うのでこうした。だから、長期というのは、今度許可になっておるのではなくて、二号炉というようなお話がありましたから、それはそのとおり解釈します。それにしても、海水の淡水化というのはそんなに簡単なものですか。これは科学技術庁ですから詳しいでしょうから、ひとつ教えてください。
  121. 成田壽治

    ○成田政府委員 海水の淡水化は、日本のメーカーが装置をつくって中近東あたりに輸出しておるケースが非常に多いのであります。ただ、これは量もそれほど多くない。日本では火力についてそういう例もあり、また関西電力の大飯発電所において、これは去年許可したのでありますが、パー・デー・二千トン二基の多段フラッシュ型の淡水化の計画が決定になっております。技術的には問題ないと思います。ただ、コストが相当高くつくものでありまして、トン当たり百円をこえるのじゃないかというようにわれわれは聞いておりますが、コスト高になるということが——技術的には問題ないのでありますが、コストの問題は大きな問題だと思います。
  122. 湯山勇

    湯山委員 私はやはりそこに問題があると思うのです。それはコストも、試験的には何か五十円ぐらいになるということも聞きました。しかし、いまおっしゃったように、トン当たり五円かそこいらの水を普通使う。せいぜい十円の水を使うところが、五十円にしても六十円にしても百円にしても、そういう水を使って、そのはね返りがどこへくるかということも考えてみなければいかぬ問題であって、通産省あたりも、こういう問題については、簡単にそれならそれでいいと言える問題じゃないと思うのです。その点はいかがですか、コストは幾らかかっても、それならそれでもいい、そういうことでいいのですか。
  123. 成田壽治

    ○成田政府委員 コストが幾ら高くてもそれを採用すということは適当でないと思います。それはある程度合理的なコストのレベルでなくてはいけないというふうに考えております。  保内町から取水する場合も、相当距離をパイプで運んできますし、それからいろいろな補償問題等もあって、私正確に幾らになるかというのは聞いておりませんが、それほど淡水化よりも非常に安いという理解では——これはあるいは長期的な観点からの計算かもしれませんが、そういう非常に違うレベルではないというふうに聞いております。
  124. 湯山勇

    湯山委員 いま水質源開発で、この地域を含めて、南予地方に野村ダムというずいぶん大きなダムが進められています。そういうことを御存ですか。
  125. 成田壽治

    ○成田政府委員 その点は聞いております。
  126. 湯山勇

    湯山委員 あなたはそういうことも聞いておるし、コストが高いということも知っていて、そういう高いコストのものを使うのは適当でない、いま御答弁になったとおりです。にもかかわらず、四十八年五月二十六日付でこれを許可した。これはなぜ許可したんですか。許可すべきでないんじゃないですか。適当でないのをなぜ許可したのか。
  127. 成田壽治

    ○成田政府委員 コスト的にも、保内町からの取水に比べてそれほど大きく違うものでもない、それから、いろいろな立地条件から見ましても、安定供給という面から見ましても、そういう意味では非常にプラスがあるんじゃないか、しかも、水に関連して保内町あるいはその周辺の人々から、非常に強い不安、反対等もありましたので、そういう意味から、われわれのほうは、淡水化に踏み切るほうがベーターであるというふうに判断したわけでございます。
  128. 湯山勇

    湯山委員 それじゃ結局、ここの水は海水淡水化でやるのか、保内町からとるのか、これはいまのところはっきりしませんね。どちらですか。
  129. 成田壽治

    ○成田政府委員 四十八年五月二十六日付で取水計画の変更を許可しておりますので、淡水化でやる。保内町からの取水をすることは、計画ではやめたわけでございます。
  130. 湯山勇

    湯山委員 じゃ、そのやめたということは、これには書いてありませんね。
  131. 成田壽治

    ○成田政府委員 八ページの(iii)にいろいろ法律的に書いておりますが、そういう意味でございます。  それから最後に「よって、異議申立ての理由のうち用水に関する事実関係は、消滅している。」というのは、保内町からの取水にまつわるいろいろな反対、不安のような問題は消滅しておりますという意味でございます。
  132. 湯山勇

    湯山委員 いやいや、そうじゃなくて、さっき大臣お答えになったし、あなたもお答えになったように、保内町から水はとれるということをこの前半は書いてあるんです。しかし、その上に今度は、四国電力はこうこうこう言ってきて、海水淡水化もやるということを書いてあって、やめたというのは書いてないですよ。あなたは書いてあると言うけれども、どこにもないでしょう。
  133. 成田壽治

    ○成田政府委員 この表現ではその点は出ておりませんが、ただ、四国電力の取水計画の変更内容が、保内町からの地下水の取水をやめて淡水化に踏み切るという内容でありますので、ここには表面に出ていない、変更申請を許可したという形で出ているわけでございます。
  134. 湯山勇

    湯山委員 その点は四国電力へも地元へも通知なさいましたか。
  135. 成田壽治

    ○成田政府委員 地元に関して直接にはやっておりませんが、この変更許可については、県にも連絡しておりますので、県を通してその点は地元でも十分わかっていると思います。
  136. 湯山勇

    湯山委員 非常に不親切だと思うのです。おっしゃったのは、変更の理由は、地元住民に反対もある、不安もあるから、海水の淡水化に踏み切ったんだ。一番頭にあるのは地元の住民でしょう。それでいまだに何にも通知してない。県のほうから言っただろうというようなことで一体いいんですか。そういう不親切なやり方で、一体住民の納得、協力が得られますか。  私は、そこらに今度の問題をこんがらかしている根本があると思うのです。こうやって、会社とは連絡をとる、県とは密接に連絡する、しかし大事な住民は常にこうして放置されている。今度だって、ここでお答えになるのは、住民の反対もあるし、水はとれるんだけれども、まあ心配させちゃいかぬからやめたんだ。それなら、まっ先に住民や町のほうへ、あれをやめたぞと言うのが筋ですよ。それをやっていないというのは怠慢じゃないですか。大臣、言ってください、これは大事な問題だから。
  137. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 これは先生おっしゃるように、みんなに通知するというのも親切な行き方かもしれません。しかし、県に連絡をいたしまして、県は当然町に連絡をしていただく、そういうふうにわれわれは解釈をいたしまして、県に、また県は、地元でありまして、いつも町との連絡も、すぐ近くでありますから行ったり来たりしている、そういう関係で県に連絡をしたということでございます。
  138. 湯山勇

    湯山委員 ただ、いままで何にも事がなければ申さないんです。大臣がごらんになりましても、それは反対の中には感情的なものもあるし、誤解もないとはいえません。すべてがそうだともいえない面があると思いますけれども、そういう誤解や心配をかき立てたという要素は、いまのような姿勢にあるということを申し上げたくて申し上げたのですから、それをひとつよく御理解を願いたいと思うのです。  時間ももうありませんが、やはりよく触れておられるのは温排水の問題です。これは温排水はあまり影響ないというように書いてありますが、温排水でどれくらいのカロリーの熱量が放出されるのですか。ただ何キロとか言っても、どうせ相手は海水ですから、水に直してすぐ計算できますから、どれくらいのカロリーがどれだけの時間に出るといえば、およそ中学生でも計算できるのですから、どれくらいカロリーが出るか。
  139. 成田壽治

    ○成田政府委員 伊方の場合のあれでは、大体八度くらい温度上昇の排水が一秒間に三十トン出るという計算になります。
  140. 湯山勇

    湯山委員 それで何カロリーですか。
  141. 成田壽治

    ○成田政府委員 いまちょっと計算しておりますので後ほど……。
  142. 湯山勇

    湯山委員 けっこうです。やはりかなり大きいと思うのです。  そこで、その温排水の影響について、この決定書は「また、この水温上昇範囲における漁業状況はあじ、かれい、たい等の沿岸魚種が主であり、これらは通常温排水の拡散深さ(約2−3m)より深いところに棲息するとされている魚類である。また、温排水の影響を受けやすいのり等の養殖および定置網漁業は全く行なわれていない。」こう書いてありますが、ノリがあればノリが影響を受けるということはお認めになっておるのですね。
  143. 成田壽治

    ○成田政府委員 ここにも書いておりますように、ノリ等は温排水の影響を受けやすいというふうに考えております。
  144. 湯山勇

    湯山委員 他の海藻はどうですか。
  145. 成田壽治

    ○成田政府委員 そのほかの海藻とどういう深さのところにあるかによって違うと思いますが、温排水は二、三メーターの拡散深さでありまして、大体そういう海藻類はさらに深いところにあるのが通常でありますので、そういう意味影響はあまりないんではないかというふうに考えております。
  146. 湯山勇

    湯山委員 いまの間違いありませんか。
  147. 成田壽治

    ○成田政府委員 私はそういうふうに考えております。
  148. 湯山勇

    湯山委員 考えていますじゃいかぬのです。海藻というものは干潮線、満潮線の間が一番多いんです。浅いところは緑、それからその次褐色、それから赤いのと、やはり日光による同化作用をするのですから、深海のモというものはそうたくさんありません。むしろ浅いところです。だから、ノリだってそうでしょう。ほかのもそうです。ですから、ほかの藻類は、ノリ以外のものは深いところにあるから関係ないというのは、ヒジキだってどうですか。潮が引いたら上へ出るところしかないでしょう。局長、いまのおっしゃったのは間違いですから、直してください。
  149. 成田壽治

    ○成田政府委員 温排水の調査は詳細通産省でやりましたので、通産省からお願いしたいと思います。
  150. 和田文夫

    和田説明員 われわれのほうの調査によりますと、非常に海藻が先生いまおっしゃいましたヒジキ等も多いようでございます。で、干潮、満潮の問題がありまして、ある程度、常時は深いところにあっても、干潮でまた出るということもありますので、温排水の影響は出るかとは思いますが、主力漁業ではありませんし、特にこの前面につきましては、いろいろな漁業組合のほうと円満に補償の交渉が妥結しておりますので、その点から判断いたしまして差しつかえない、こういうふうに判断したわけでございます。
  151. 湯山勇

    湯山委員 やはり非常に研究、調査が足りないと思うのです。海藻というのはいつが一番よく生長するんですか。海藻の生長の時期というのはいつです。ノリはいつつみますか。ノリ取りは。
  152. 和田文夫

    和田説明員 ノリにつきましては、私もちょっと不確かで申しわけありませんが、寒くなりかけのときでございます。
  153. 湯山勇

    湯山委員 大体海藻は寒いときに生長します。海藻の一番少ないのは九月です。だから、ノリにしても、ヒジキにしても、大体寒いときに生長する。それが常識です。夏にテングサなどありますけれども、それはむしろ寒いときにも生長して残っている。それからそのときに、温度が低いからそれに合う藻類ができている。温排水が行きますと、その生態が変わるんです。ノリとか、そこに直接魚がいなくても、そういう自然の環境の中で卵を産み、あるいはプランクトン、小さい動物が発生する、それがだんだん大きく自然に循環していって、あるいはこれにあるような、それより深いところのアジも、カレイも、それからタイ、そういうものはそういう環境で育っていくのであって、それで温度が上がってノリが被害を受けるように海藻が被害を受ければ、海の環境ががらっと変わってしまいます。  そういうことはちっともお触れになってないのです。ノリには被害があるかもしらぬけれども、ノリをつくってないからだいじょうぶだ。こんなことは、ほんとうに漁業をしておる人、それから少し海藻の勉強をしておる人なら、絶対言わぬはずです。これは調べてないでしょう、そういうことまでは。冬季に満干潮線間に育っている海藻がどういう影響を受けるか、それが一体漁業にどういう影響をするか、そういうことは調べてないのですね。
  154. 和田文夫

    和田説明員 われわれのほうの推定によりますと、これは発電所ができる前でございますから、あくまで推定でございますが、一号機のさっき申し上げましたような温排水が拡散する範囲は、これは摂氏二度上昇する範囲を一応計算いたしておりますが、沖合い方向で大体百五十メートルくらい、それから沿岸方向で約千メートルくらいで面積にして〇・二キロということでございまして、この範囲はもちろん、この少し外側までいろいろな漁業補償をしておりまして、そういう意味で直接漁業に従事している方とは円満に話がついている、こういうふうに理解しております。
  155. 湯山勇

    湯山委員 補償で片づく問題じゃないのです。いま申し上げておるのは、これのことを言っておるのですから、ひょっとしたら、大臣もこの間参議院で、浜岡のときに補償で片づいておるとかなんとかおっしゃったとかいうことも新聞で見ましたけれども、これは補償の問題なんかを言う問題じゃないと思うのです。これは、浜岡の場合もそうだし、ここの場合も漁協との補償といったって、それで片づく問題じゃなくて、それによる自然の破壊、それから流れていく範囲などもいまおっしゃったようなことじゃありません。  それから対流する部分もあるのです。この伊方のすぐ西側は真珠湾とよく似た入り江です。これは潮が西へ流れれば、そこは逆に東に流れまして、逆流するところです。そこで真珠湾によく似ておるからというので、ハワイへ行った特殊潜航艇の乗り組み員の訓練をした場所がすぐそばです。そういう複雑な海岸なんで、簡単に縦がどう、横がどうという問題ではありませんし、それから、いまおっしゃった、私はカロリーで言ってもらったら、あとでどのくらいかというのを自分で計算しようと思ったのですが、そんなにおっしゃるような問題ではありません。  それから一度、二度というのは大きいです。真珠貝を伊方でもやっておりますが、一度違えばばうんと違います。養殖ハマチだって冬分の温度が一、二度違うというのはたいへんな違いです。ですから、ここいらも非常に不親切でこれを持っていっても納得しないと思います。でも、時間が参りましたから、そういうのでは話になりませんから、せめて私が納得するくらいなものを出してもらいたいと思うのですが、大臣、補足でもけっこうですがね、田中角栄じゃなくて、科学技術庁長官の補足でもいいですが、いま言ったような問題がはっきりするような資料をお出しになる御用意はありませんか。
  156. 成田壽治

    ○成田政府委員 この異議申し立てば行政不服審査法によって文書で出ておるものでありまして、われわれこれに対して文書でこういう形で返事したわけでございます。したがいまして、この異議申し立てに対する回答としては、われわれはこういう形のもので終わるというか、そういうふうに考えております。
  157. 湯山勇

    湯山委員 これはさっきのように保内町からの取水はしないとか、そのほか不十分なところもあるし、まだ解明されてない点もあるし、これで納得せいと言っても納得しないと思うのです。そのことはよくおわかりだと思います。だからやはりこの異議の申し立てというのは、住民がああやってやってきておるのだから、この人たちに納得できるものでなければ意味はありません。そのことをどうするかということの御検討を願いたい。  それから、最後ですから特に申し上げたいのは、実は前に農林でも申し上げましたが、私自身も原子力基本法のときには、前田長官らと御一緒にいまして、当時海野という工学博士の先生がおりました。二人が出まして、議員提案でしたから、いまの通産大臣が説明にきて、そこで審議して、われわれも賛成したわけです、あの基本法には。それはなぜ賛成したかというと、問題はありました。というのは、公社をつくって燃料は管理する。出たものも管理する。しかし、まん中のほんとうの発電の事業というものは民間の事業にまかす。それは不安ではないか。むしろそこも公社でやったらどうかということを申し述べたし、それからウラニウムもどうせ限度がある。将来は核融合反応をエネルギー化することをすみやかに研究すべきだというような意見を述べたり、討論をしたりして賛成したわけでした。というのは、当時の中曽根氏は、長官じゃなかったですけれども、議員提案でしたから、自主、民主、公開の三原則を守らす、これを守るから御指摘のような御心配はありませんということでしたが、はたして守られているかどうかというと、私はいまのようなのでも民主的じゃないと思うのです、この出し方は。この出し方、このあり方というものは決して民主的ではない。原子力の専門家でない私が、きのういただいて、ぱっと見て、やはり納得できないというところが非常に多い。  それから、自主、公開の問題は、先般この委員会でも内田という先生ですか、御存じだか知りませんが、安全審査会の会議録は公開しないということをはっきり言っておられましたけれども、これは局長、聞いておられましたか。いま細谷さんの質問がありましたが、内田という先生は、会議録は公開しない、はっきりここで言っておられるのです。言われたのは商業上の秘密とかなんとかいうことがありましたが、そう言っております。これも私は公開の原則に反すると思います。  それから、さっきいろいろアメリカの人の話がありましたが、向こうから買い入れておる関係上、そういう点で発表できない部分もあるということは、聞きもいたしましたし、正規に御答弁もありました。そうすると、自主の問題、公開の問題、これはやはり侵されている。そうすると、完全に民主的であるか、完全に公開されているか、完全自主か、いずれもそうなってないのです。ここに非常に大きい問題がある。このどれでも欠けた場合にはこれをとめるというのでなければ、この原則はほんとうに貫けない。このことをあらためてお考え願いたいと思うのです。  ついでにもう一つ申し上げさせていただくと、こういうのはこうばらばらに電力会社がやっておったのでは、あそこにやったんだ、こっちもやらぬとこけんにかかわる。プライドにかかわるというので、無理な競争がありはしないか。もっとこれ、原子力行政というのは一元化して、こういう会社間の競争のような形のものをなくすることもやらなければならないし、それからきょうもお聞きしてみてですが、私はひょっとすると、言い方は詰めておるだろうけれども、科学技術庁や通産省におる役人の皆さんよりもすぐれた、個人じゃなくてスタッフを、むしろ会社のほうが持っているのじゃないか。それでは監督も何もできません。いまの細谷さんの質問のようなことがここで出されても、あなた方は向こうの会社のそういう研究スタッフがやったことについて批判ができない。それはどうだと言うことができないというのは、今日日本の科学技術者の大部分は民間企業へ行っておって、昔のように、学校や役所には、民間へ行っておるのの半分もいないでしょう。そして潤沢な研究費でやっておって、それと皆さんが太刀打ちするということは不可能だと思うのです。科学技術行政というのはそこらをしっかりお考えになって、うんと待遇して、いい人をたくさん科学技術庁へ入れなかったら、絶対にうまくいかぬはずです。危険防止はできません。安全審査はできない。その辺を、ほんとうに大臣、ほかのことをなさらなくていいですから、ここは居眠りしておっていいですから、いい技術者、科学者を、ほんとうに民間企業のそれに対抗しても一歩もひけをとらない人を、うんと待遇をよくして採る、これを大臣に一番やってもらいたいと思うのです。大臣の御所見を伺いたいと思います。
  158. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 かつて先生も参議院においでになって、私いろいろ御指導いただきましたが、また、原子力行政につきましては私よりずっと先達で、原子力基本法をおつくりになったそのいきさつ等も十分精通していらっしゃるその先生の御指摘、ほんとうに胸に迫るものがございます。自主、民主、公開の原則に反していないか、いろいろな項目にいろいろ御指摘をいただきましたが、自主、民主、公開という三つの大きい原則に沿うように、これからの行政を進めていけという御指摘だと思いますが、それをよく胸に体していきたいと思います。  それから、原子力産業というものを全部国営化しろというお話じゃないとは思いますけれども、とにかくもう少し国家的な立場といいましょうか、をもっと導入したらどうかという、全く原子力行政というものは、民間で野放しにしてよろしいという情勢じゃないと思っております。さればといって、その点全部国家管理にするという行政でもございません。けれども、非常に貴重な御提言として、私その点はよく頭に入ったわけでございます。  それから、技術者がどうも民間のほうが研究費も十分だし、しっかりしておるのじゃないかというふうな、まあこれは、先生は別に公務員の技術者がぱっとせぬという意味じゃなくて、むしろ待遇をよくしてしっかり勉強させなさいという激励を含めたりっぱな御提言だと思いますので、その点はたいへん私もありがたく思います。  私も、どういう縁か、科学技術庁長官を拝命いたしましてやっておりますので、とにかくサイエンティストというか技術者を重用する技術国日本というものをつくりたいということを、私はほんとうに考えておりまして、まだ就任して半年そこらでありますけれども、一生懸命にやっておりますけれども、なかなかどうも、いろいろの壁がありまして、いきませんけれども、われわれ人事院のほうにもいろいろ談判に行ったり、一生懸命やっておりますけれども、なお今後いろいろな研究費の要求という場合には大いにがんばりたいと思っております。どうぞ今後とも、質問その他の場合においても一そう激励していただいて、遠慮なく、こういう点どうせい、ああいう点どうせいというふうに御注意いただきたいと思います。心安だてにざっくばらんに申し上げて申しわけありませんが、よろしくお願い申し上げます。
  159. 石野久男

    石野委員長 次に、近江巳記夫君。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 浜岡原子力発電所の二号炉の問題、本委員会におきましても、審査をめぐりましていろいろわれわれ質疑をしてきたわけです。特に公聴会の問題であるとかいろいろな問題が出てきたわけでありますが、その際、原子力委員会が審査をいたしましたときに、通産省がまとめたそういう現場報告書をそのまま信用しておる、こういうことで非常にミスというものが出てまいりまして、その審査の不十分なことがはっきりとしたわけであります。現在こういう点におきまして、現行法のたてまえからいきまして、温排水については環境庁、規制は通産省、こういう非常に行政の複雑さというものが環境審査の上で一つのネックになっておると思うわけですが、われわれ、環境審査につきましては、原子力委員会においてこれはもう当然やっていくべきであるということを強く主張してきたわけです。こういうミスがはっきりと出た以上は、皆さん方も重大な反省をしておると私は思うわけですが、科学技術庁として、また原子力委員会として、どういうように今後はこの環境審査の点をやっていかれるのか、この点についてまず初めにお伺いしたいと思うわけです。
  161. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 この浜岡の問題につきまして、ミスと申しましょうか、字句の訂正といいましょうか、表現の訂正といいましょうか、その点につきましてはあとで政府委員からお答えをいたしたいと考えます。  確かに近江先生御指摘のとおり、この温排水の問題につきましては、これは、現在並びに今後におきましても、原子力発電についての大きな課題であろうと私考えます。原子力委員会といたしましても、従来原子力委員会の中に環境安全専門部会というものを設けまして、温排水分科会というものをつくりまして、温排水につきまして調査検討すべきアイテムといいましょうか、項目といいましょうか、それについての中間報告というものをまとめたわけでございます。それには一般的なものもございます、また特定的なものもございますが、とにかくそういうアイテム、項目というものをきめたわけでございますが、それを原子力委員会でみんなやったらいいじゃないかという、そういう考え方もあると思うのです。何もかもやっちまったらいいじゃないかという考え方もあると思いますが、やはりそれは担当の各省庁といいましょうか、それぞれの機関へ原子力委員会から調査を依頼する、そして資料提出を求める、そういうことに実はいたしまして、温排水の基準につきましては、先生御承知のとおり環境庁でいまその基準をつくってもらっておるわけでございます。早くせい早くせいということを実は私どもお願いをし、環境庁も早くしましょうというわけで実は張り切ってくれておりますが、まだ実はできておりません。けれども、これも遠からずできると思っております。思っておりますじゃなくて、遠からずつくるようにお願いしております。  また、この温排水の具体的な調査については通産省に調査検討をお願いしておりまして、それらのものに基づきまして原子力委員会が通産省に調査をお願いしましたそういう資料等の上において——というといつも少し原子力委員会が独自な判断だとか、いや上だとか下だとかいうことを言われるわけでありますが、上というのは別に特にえらいというような大それた考え方を持っておるんじゃなくて、そういう各省庁にお願いして、そのデータに基づいて、その上に立って判断する、そういう意味で実は申し上げたのが、あるいは誤解を招く表現になったかと思うのでありますが、その場合に私は、原子力委員会も、通産省から出していただいた資料を読みましても、一生懸命にわれわれも勉強はいたします、一生懸命勉強いたしますけれども、いかに勉強しても、やっぱり温排水の問題というのは相当専門的な問題だと思います。思いますので、今後は原子力委員会がそういう判断をする相談相手といいましょうか、コンサルタントグループといいましょうか、専門家のそういう機構というか機関といいましょうか、そういうもの——実は公聴会制度も今度われわれが踏み切ったわけでございますので、公聴会のときも、原子炉の安全審査というのもこれは大きな課題でございます、と同時に、環境問題、温排水の問題とかいろいろな問題、そういうものが出ると思うのでありまして、それについてももちろん調査は専門の担当の環境庁であるとかあるいは通産省にお願いいたしますけれども、それらの出てきた調書を、またいろんなほかの要件なんかとあわせて判断する場合にも、相談相手があったほうがいいんじゃないかという意味におきまして、コンサルタントグループといいましょうか、そういうふうなものをつくりたいと思って、実はいまその方式というかそのメンバー等を考えておる段階であるということを先生に申し上げる次第でございます。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 日本原子力産業会議におきましても、原子力委員会内部に原子炉環境専門審査会をつくれ、こういう要望が委員長のもとに提出されておると思うわけですが、われわれ国会におきましてもこれは強く主張してきたわけです。大臣も公聴会に踏み切るという背景もありまして、そういう動きを示されたということは一歩前進だと思うのです。非常におそい前進であったと思うのです。  それで、具体的にこれは大体何人ぐらいの構成で、どういうメンバーをお考えになっておるのか、そこのところをもう少し具体的にお伺いしたいと思うわけです。
  163. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 具体的にどういうふうなメンバーでどういうことかというまだコンクリートなものではございませんけれども、少し私の説明を局長から補足させていただきます。
  164. 成田壽治

    ○成田政府委員 去年の秋に原産から環境審査会を原子力委員会につくれという要望が出て、われわれ原子力委員会でも各省と検討したのでありますが、御承知のように環境の一番大きい問題である温排水については、まだ水質汚濁防止法による排出基準ができてない状態でありますので、安全審査会のような審査会という形は適当でないんじゃないかという点が一つわかったわけでございます。したがって、現在はどれだけの温排水が出て、どういう形で拡散され、それがその周辺の魚とか水産物にどういう影響を来たすかという実態調査が主体になるんではないか、そういうふうに考えられるのであります。  それから法律体系の問題としまして、温排水の規制は環境庁で基準をつくり、その実施は電気事業法によって通産省が行なうという法体系に現在はなっておりますので、そういう環境審査じゃない環境調査的な仕事は、やはり環境庁、それから実施面の通産省に一時的にやっていただく。そして通産省では環境調査顧問会というのを、いまは準備段階のようでありますが、十五人ぐらいの考えでいろいろ専門家の人選を考えておるようであります。そういう通産省の顧問会で具体的な発電所の温排水等の環境の報告書をつくり、それで原子力委員会が、公聴会を行なった場合は、地元から温排水等の環境の意見が当然出てまいりますので、その出た意見に対して通産の調査でいろいろ回答をお願いして、その結果を原子力委員会として判断するということになるわけでありますが、その際、いま大臣言いましたように、温排水、ことに魚等の生物との関係、非常にめんどうな分野でありますので、原子力委員会としては、通産がつくった影響調査報告書をチェックするという意味で、数人のコンサルタント的な専門家に委嘱して、そして原子力委員会としてチェックして判断する。これは、公聴会実施後において当然温排水の問題が地元から大きな意見として出ますので、この処理のしかたとして通産に実態調査をお願いし、その結果については、原子力委員会として数人から成るコンサルタント的な専門家に委嘱して、そしてそれをチェックして、意見に対する回答を出す、あるいは総合判断の一つの材料とする、そういうふうに考えておる次第でございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままでに比べますと一歩前進というように評価するわけです。  それで、少しく具体的にお伺いしたいことは、それぞれ専門家で編成されるということでありますが、どういう部門から大体何名ぐらいの構成でお考えになっていらっしゃるのですか。局長に重ねてお伺いしたいと思います。
  166. 成田壽治

    ○成田政府委員 通産の段階の環境調査の顧問会は、十五人から二十人ぐらいの専門家を考えておるようであります。  それから原子力委員会段階でのコンサルタント的な専門委員は四、五人ぐらいをいま具体的に——まだ人選に取りかかっておりませんが、原子力委員会の専門委員等の形で少数の人に委嘱して、そして見ていただく、そういうふうに目下のところ考えております。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 われわれとしても、今回のこの設置については非常に期待をしているわけです。実質的にここで厳重なシビアなチェックができるように、どうか一日も早くそれを設置していただきたいと思うのです。いまや環境問題というものは非常に大きな問題になっておりますし、この点は強くその推進を要請しておきます。  次にお聞きしたいのは、通産省が今回対米通商政策をまとめたわけですが、日米経済会議のときに米国側に提示するようですけれども、この中に、日米両国におけるウラン濃縮共同工場設置が入っておるわけです。この点については御存じですか。通産省もお見えになっておりますから、通産省と原子力局長にお伺いしたいと思います。
  168. 成田壽治

    ○成田政府委員 日米会談のテーマ等については、まだ正式に通産、外務等から聞いておらないところでございます。  ただ、日米の合同の共同濃縮工場をつくる話は、去年の秋のホノルル会談において、外務省の鶴見審議官とインガソル大使との間の覚書において、アメリカに新しい濃縮工場を共同でつくることについてスタディーグループをつくって検討しようではないか、そういう申し合わせがなされております。そして、その後アメリカの原子力委員会と、日本におきましては、濃縮事業調査会が窓口になって、まだスタディーグループ、準備的な会合でございますけれども、二回ほどやっておりますので、この濃縮共同事業の問題もまだ正式な話がありませんが、一つのテーマになるのではないかというふうに考えております。ただ、まだ外務省その他との正式な話し合いをついては全然聞いておらない状態でございます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに、いままでワーキンググループが検討を進めてきたわけでありますが、そういう結果がこういう形で通産省の発表で行なわれておるということです。これだけこの濃縮共同工場の問題については非常に大事な問題である。委員会におきましても、何回も質疑を重ねてきておるわけです。これが通産省の総合政策ということで発表になっておる。原子力委員会からこれが出るなら私はわかります。通産省は原子力委員会ですか。ここまで煮詰まったのですか。通産省、きょうは和田さんが来られているのですが、どういうわけなんですか。原子力委員会というものがわが国にあるのでしょう。本委員会において一回も具体的な構想は出てないのですよ。いきなり通産省の総合政策で出ているのだ。その点についてどう思いますか。
  170. 和田文夫

    和田説明員 通産省の総合政策として発表になったという話は私聞いておりません。ただ、さっき原子力局長から答弁があったように、昨年来方向としてそういう方向の検討を日米間でいろいろやっておりますので、将来大体そんな方向で動いていくのではないかとは思っております。通産省の総合政策として発表になったという話は聞いておりません。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 対米総合通商政策、「これを七月の日米合同委の席上、提案する方針である。」原子力委員会がそこまでの検討をしていないものを、単なる一省の通産省がこういうことを出す、それは煮詰めた上でお出しになったのだったらいいと思うのですよ。原子力委員会はこういうことはあまり関知してない、非常に私はその点を疑問に思うわけです。この点、大臣はどう思われますか。
  172. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 実は私も、いま近江先生のお話を聞きまして、対米総合通商政策、それは閣議の席上でも、通産大臣もみんなすわっておりますけれども、一言も私に話もございませんから、どういうふうなかっこうで発表したのか存じませんけれども、とにかく原子力に関する問題で、濃縮ウランをどうするかというふうな問題について、原子力委員会を無視してそういうことをやるということは、私もそれ自体筋として非常に間違っておると思います。しかし、そういうことはないのであると思っている。何か別の機会に——どうもそれははっきりわかりませんけれども、原子力委員会しっかりしなさいという非常にありがたい御趣旨の御提言かと思うのでありまして、むしろ私からその御注意にお礼を申し上げたいと思います。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 お礼を申し上げたいといって、大臣そんな問題と違うわけです。要するに、こういうきまってないものを、これは「日本経済」の六月十八日月曜日の朝刊にはっきり出ているのですよ。しかも「通産省は今後、この「総合策」について外務、大蔵、農林など関係各省と調整、七月東京で開く日米経済合同委の席上、米側に提案する」、こういうようになっているのです。「そのあと続く田中首相訪米の際、首相自らニクソン大統領に説明してもらう予定」、この中に原子力委員会に相談するとかいうことは何も書いてないわけです。こういうことを少なくとも通産省が発表しているわけですよ。原子力委員会に何の相談もなくこういうことがぽんぽんと出る。原子力委員会は一体何をしているかということですよ。どうですか、成田さん。
  174. 成田壽治

    ○成田政府委員 国際濃縮事業の計画は非常に大きな国家的な問題でありますので、原子力委員会としては、原子力委員会の中に国際濃縮計画懇談会というのを一年くらい前からつくって、そしてここには通産省、外務省それから関係業界あるいは学者等も網羅しまして、国際濃縮計画の問題は全部原子力委員会の場で取りまとめをやっております。毎月一回くらいはやっておりますが、最近の懇談会におきましても、まだ通産の日米会談の話も出ておりませんので、まだ通産においても固まっておらない問題、当然固まる前に原子力委員会に相談あるべき問題でありますので、その発表は、まだあまり具体的な根拠のないアイデアじゃないかと思っております。したがいましで、京子力委員会はこの国際濃縮計画については最も力を入れて、各界そして各省にまたがって懇談会の形で総まとめをやっておりますので、委員会に出た場合には委員会としての判断で処置していきたいと考えております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 私はこういうことを提案するのは悪いとは言っていないのですよ。ただ管轄の原子力委員会と十分な打ち合わせもなく、通産省がこういうことをぼんぼんぶち上げてくる。原子力委員会、一体何しておるんだということを聞いておるわけですよ。そういう点で最近の原子力委員会は、もう非常に無視されているように私は思うのです。大臣もそうお思いになるでしょう、この件について。そう思われませんか。通産省の独断である、そう思われるわけですか。
  176. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 先生の御指摘の発表でございますが、通産省でどういうスタイルでその記事が出たのか私存じませんけれども、そういうことを発表する場合は、通産大臣も閣議では私の二、三人先にすわっておるわけでありますから、お話もしょっちゅうしておるわけでありまして、そういうものを発表する以上は、各省庁に関連しておりますから、閣議の席上でも話があるかと思うのでありますが、いままでのところ全然それはございませんので、一ぺんその点は確認したいと思いますけれども、もしそうであれば、原子力委員会、何をしておるかということになって非常に憤慨しなければいかぬし、ということも実は思いますけれども、非常に御親切な御注意として、その点は一ぺんよく調べてみたいと思います。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 原子力委員会というりっぱな委員会があるわけですから、これは今後の燃料政策からいきまして非常に大きな問題であるわけです。そういう点よく政府間の検討を常にやっていただいて、連携を密にしていただいて、そんなこと知らないという、政府内でそういう不細工なかっこうをこれからとらないようにしてください。  それから、核拡散防止条約の批准の準備が進んでおるということを聞いておるわけですが、そうなってきますと、わが国の査察機構の問題が大きな問題になってくるわけです。わが国の場合は、科学技術庁の認可した民間団体の核物質管理センターが、核関係調査であるとか管理をしておるわけですが、いまのこういう機構だけでこの査察機構が十分にいけるのかどうかという問題なんです。条約の批准の準備を進めておる以上、査寮機構の整備について政府としては相当考えておるのですか、どういう構想があるのですか。
  178. 成田壽治

    ○成田政府委員 NPTの問題は、これは非常に高度の政治的な問題もあり、批准の準備を進めておるということは総体的にはいえないと思います。ただ、平和利用の面におきましては、保障措置に関連しまして、去年の六月から予備交渉——これは入るという前提ではない、単なる予備交渉でございますが、始めておったのでありますが、最近ヨーロッパのユーラトムとIAEAとの間で保障措置協定がことしの四月に成立しましたので、それとの関連において、日本は外国と不平等な扱いは絶対受けるべきでない。これは署名の際の政府声明の条件にもありますので、そういう意味で、今度六月ごろから積極的に予備交渉をIAEAと日本側がやるべく、いまやっておるところでございます。そういう意味におきましては、平和利用の面の保障措置という面では、ユーラトムの具体的な協定もできましたので、これとの比較等において慎重に、また非常に前向きに、予備交渉を進めるという段階にあるわけであります。  それで、NPTに入ったと仮定した場合の保障措置でありますが、これは一昨年の六月ですか、保障措置のモデル協定案というのがIAEAの理事会で承認されまして、それによりますと、従来の保障措置に比べて非常に合理化され、簡素化された形のモデル協定になっております。特にその中で一番改善されている点は、その国の相手国の国内の核燃料の管理体制が十分に信頼できるかどうかという有効性にいって、非常に信頼できる有効な国内管理体制がとられている国に対しては、IAEAの査察を、国内の管理を信用して、少なくしていく、そういう考え方が盛られております。したがって、日本でも将来NPTに入った場合の保障措置の問題として、国内管理体制をさらに強化する必要があるのでありまして、去年の初めに財団法人核物質管理センターをつくって、いまいろいろな仕事をやらせておりますが、ただ、管理センターは財団法人、単なる公益法人でありまして、査察とかそういう仕事になりますと、非常に大きな、政府がやるべき仕事が多いのであります。しかしながら日本では、査察の関係の職員をふやすということもなかなかできないし、また、膨大な査察量——発電所その他原子力施設がふえてまいりますと多くなりますので、極力核物質管理センターに、いま政府がやるべきたてまえになっている仕事を委譲できないか、そういう形の検討をやっております。あるいはこれは、規制法等の法律改正によらないとできない部分もあるのじゃないか。あるいは、法律によらないで、どこまで、ぎりぎり、いま科学技術庁がやっておる保障措置の仕事を委譲できるか、あるいは規制法等の法律改正によらないと十分できないものがあったら、その際は法律改正の必要性について検討すると、そういう形で現在検討中でございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま検討中ということであれば、具体的な横想は出ないと思いますが、この問題は、本委員会におきましても、国内のそういう機構の問題であるとか、非常に心配する論議もあったわけでありますし、政府としてはこの点も強力に、よく検討していただきたいと思います。  それから、この間東芝の土光さんを団長としまして、ソ連のほうに原子力問題についての視察を行なってこられたわけですが、その場合、ソ連側が濃縮ウランを供給できる、あるいは高速増殖炉の技術を日本に開放してもよいとか、日ソ協力して核融合炉の研究開発をしたいとか、ソ連側のそういう意向が表明されたわけです。こういう問題は非常に大事な問題であると思いますので、お聞きしたいと思うわけですが、ソ連側としては協定をまず結ぼう、積極的な向こうの姿勢がうかがわれた、こういうことなんです。当然報告も受けておられると思いますが、アメリカといろいろな協定のもとにいま燃料の供給等も受けておるわけでありますが、今度はソ連ということになってくるわけであります。こういう先方の提案に対して、科学技術庁長官としてはどういう姿勢でいかれるのか。それをひとつお伺いしたいと思うわけです。
  180. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 ただいま近江先生御指摘の点でございますが、先般ソビエトに参りました日本原子力産業会議の訪ソ団には、実は私のほうから原子力委員の武田委員も一緒に参りました。この訪ソ団が帰りましてから土光団長が私のところに参りまして、ソ連の姿勢といいましょうか、それが相当積極的でございましたということで、それほど具体的な数字的なものは実は話はございませんでした。私との会談は二十分か三十分くらいだったのですが、おそらくそういう数字的な具体的なものは向こうも別に出さない。しかし相当積極的な姿勢であったというふうなことで、具体的にその協定はどうだということは別に申しませんでしたけれども、とにかく相当積極的である。ところが、どの程度の供給能力があるのでしょうかということもいろいろ聞いたのでありますが、その点も私はその席上ではわりあいにはっきりいたしませんでした。それではソ連から濃縮ウランを買っておる国が現在相当あるのでしょうか、ということもただしたのでありますが、これも東欧とかそういうところで少し買っている国もあるようだという話も聞いております。さらに私は、もう少し具体的に突っ込んで、武田原子力委員も呼びましてもう少し詰めていきたいと考えております。  ただ、そうだからといってすぐに、いまかかっておるこの日米原子力協定がもう用がないのだということにはいかぬわけでございまして、その点は、とにかく濃縮ウランの供給が多角化するということは、濃縮ウランの現状、供給能力がアメリカも五十五年には限界に来るわけでありますから、その意味において非常に明るいニュースであると思って、積極的にいろいろなそういう訪ソ団の連中の意見も聞き、この問題については対処していきたいというふうに考えております。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 明るいニュースであると受け取っておられる、今後さらに意見を聴取していきたい、こういうことでありますが、向こうが積極的にそういう協定を求めてくる場合においては、大臣としては、積極的に前向きに協定締結までいこう、こういうお気持ちなんですか。
  182. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 その点は、まだ具体的にいろいろな条件とかいろいろ問題があろうと思います。また、供給能力の問題であるとかそういう問題もあると思いますので、その点は、ただ訪ソ団が行ってきたというだけでは、こちらの私にとって大きな材料でございますけれども、それらの上に立って、またさらに、今後そういうふうなソ連の意向等も具体的にいろいろな点をよく聞きまして、そうして姿勢といたしましては、積極的と申しましょうか、そういうふうにいたしたい。ただ、実はあっちとりこっちとりということでアブハチとらずということになってもいかぬわけでありまして、まあこれはざっくばらんに申しましたけれども、しかしその点は非常に明るいニュースであるという、その意味において私は積極的に取り組んでいきたいと思います。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一つはっきりしませんがね。政府間協定に通産省は積極的な姿勢ということで、一連の先ほどの濃縮共同工場の問題にしましても、何か原子力委員会をほったらかしにして通産省はすでに積極的な姿勢で臨んでいく。さらに「通産省はこうした情勢を踏まえて、燃料供給の多角化、自主化をはかることが必要と感じており、フランスとの濃縮ウラン共同工場計画を検討しているのをはじめ、ソ連からの濃縮ウラン買付けも歓迎、という態度だ。」ということで、フランスとの濃縮ウラン共同工場の計画を検討しておる、これはちゃんと聞いているのですか。相談があるのですか。
  184. 成田壽治

    ○成田政府委員 フランスと日本とでガス拡散法の濃縮工場をつくるワーキンググループ、六回ほど会合をやりまして、第一段階が終了している段階でございます。これは窓口は濃縮ウラン事業調査会でございますが、そのつど原子力委員会の国際濃縮計画懇談会に報告し、委員会指示によって動いておる状態でございます。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、こういう多角化、自主化という問題は、大体政府の一致した見解じゃないかと私は思うのです。大臣は政治的ないろいろなことを配慮されておられると思うのでありますが、こういう問題、通産省がそういう積極的な姿勢を示しておるわけでありますし、そういう点、何といいましても大臣が最高責任者であるわけですから、その点はよく検討されて、やはり積極的な今後の推進をすべきではないか、このように思うわけです。  それで、通産省はまた核燃料センターというものを考えておる、そして窓口に当たらせる、こういうことなんですが、これは当然あれですか、ちゃんとよく皆さんと相談してできたものですか。これはどういう構想なんですか。これは成田さんにお聞きします。
  186. 成田壽治

    ○成田政府委員 先ほど一部の新聞に通産が核燃料センターの検討をしておるという記事が出ておりますが、これはわれわれも事務的に原子力局の燃料当局と通産と、いろいろ将来の燃料政策をどう考えるかという問題を検討しておりますので、まだ全然固まっていない時期でありますが、その一端があるいは新聞の記事として出たのではないだろうかと考えております。それで現在、将来の燃料問題として大きな問題というのは、これは多少個人的な考えも入りますが、大きく分けますと三つほど考えられるのではないか。一つは濃縮ウランが将来どんどん必要になってまいりますが、最近のアメリカのAECの決定にあるように、引取りの八年前から契約をして金を前払いしておかぬといかぬという方式が世界各国に対してなされておりますが、引取りの八年前というと、まだ具体的な計画もきまっておりません。そういう段階で契約をしないといかぬということで、これが電力会社一つ考えておった計画がだめになったとか、いろいろお互いに融通していかないとせっかく前払い金を払って契約したものが生かされないという次第でありますので、そういう濃縮ウランの融通をする機関、あるいは必要な場合にはストックをする機関も必要ではないだろうかという一つの問題意識があります。  それから第二番目は、ウラン資源はまだ非常に供給過剰傾向でありますが、将来は石油と同じようにだんだん高くなっていくのではないだろうか、そういうことを考えますと、相当早くから手当てをしておく必要があろう。それで現在電力会社は九万トンくらいの契約をやっておりまして、昭和六十年度まで累積で約十万トン必要でありますので、大体昭和六十年ごろまでの天然ウランの手当ては終わっておりますが、その後のことを考えると、やはり日本の企業が海外に出ていって開発輸入ということが望ましいというのが原子力委員会の考え方であります。したがって、その探鉱開発をやらせるためには、やはりだれかが買い取り保証とか引き取り保証あるいはストックをするというような機構があると、海外の開発も非常に促進されるのではないだろうかという考え方が当然あるわけでありまして、そのための機構が必要かどうかという問題であります。  それから第三番目は、石油につきましては石油開発公団という一元的な開発の投融資の機関がありますが、ウラン鉱については動燃事業団が基礎調査をやっております。ただ企業探鉱については、金属鉱物探鉱促進事業団といういわゆる金探というところが企業探鉱に対して成功払いの方式でやっております。それから開発については、これはまた輸銀とか経済協力基金とか、そういう政府機関が金を出すいろいろな機関に分かれておりまして、これがウランについて将来石油開発公団のような一元的な投融資の機関が必要でないだろうかという意見も出ておりまして、こういう三つの点について事務当局で、これはいろいろ長期の問題として原子力委員会でもときどきいろいろな議論はなされておりますが、検討しておるところであります。それで、新聞に出ました通産省の核燃料センターというのは、ウラン濃縮とそれから天然ウラン、この二つが新聞の内容には出ておりましたが、これはまだ固まっておらない。将来の原子力発電に最も必要な核燃料の問題としては、そういう三つの大きな問題があって、これが従来のような電力会社の手によって、あるいは関係業者の手によってどこまで対処できるか。そして、どうしても対処できない場合で、しかも国家的にどうしても必要な場合は、将来何かセンターか事業団かそういう政府的な機構が必要ではないかどうか、そういう問題を両事務当局で検討している最中でございます。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体これは、構想の固まるときというのはいつごろを一応めどとしているわけですか。
  188. 成田壽治

    ○成田政府委員 これは非常に大きな問題でもあり、また原子力委員会としても、結論を出すためには相当な期間をかけて検討すべき問題でありますので、いま四十九年度の予算構想、新政策等の検討をやっておりますが、四十九年度にはとても間に合わない、むしろもうちょっと長期的に慎重に検討して、長期的な燃料対策として今後慎重にまた積極的に検討していくべき問題だというふうに考えております。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、通産省が考えておるのといま成田さんがおっしゃった構想とは、中身はちょっと違うわけですね。
  190. 成田壽治

    ○成田政府委員 燃料問題については、われわれ原子力局と通産省との間ではそれほど——まだ議論の段階ですが、問題意識なり政策の方向の食い違いはないと思っております。ただ、新聞に出ておるのはその一部しか出ておらないのじゃないだろうかというふうに考えております。問題意識としては大体同じ方向で考えておるのであります。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 私はこういう構想が何も悪いとは思わないわけです。そういう点で、いずれにしても通産省、科学技術庁が、原子力委員会はよく相談した上でいろいろ構想を進めていくということが一番大事だと思うのです。その点どうも最近は科学技術庁と通産省と何か競い合いといいますか、何かベースにおいて話し合いがないように私は思うのです。それは表面的なことかもしれませんけれども、そういう点よく政府部内打ち合わせをして検討していただきたいと思うのです。この点は特に大臣に要求しておきます。そうしていただけますか。
  192. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 御親切な御提言をいただきまして、御趣旨を体して、従来とも連絡は決して悪いことはございません。ただ、発表がいろいろな姿で出されますので、これは連絡が悪いのじゃないかということに誤解を受ける場合もあるかと思いますが、連絡は従来ともよくやっておりますけれども、さらに緊密に連絡をしていきたいと考えております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、PCTの問題についてお聞きしたいと思うのですが、東京都の衛生研究所はPCT汚染の進んでおる旨の調査結果を発表したわけですが、この点について厚生省なり環境庁、科学技術庁はどのように受けとめておられるか、まずひとつ感想をお伺いしたいと思うわけです。
  194. 三浦大助

    ○三浦説明員 ただいまの御質問の、東京都がPCTの実態値の発表があったということでございますが、これは東京都におきましてPCB分解の技術開発研究会で新潟県の分を発表したというのではないかと思いますが、東京都に聞きましたところ、東京都では食品についてはやっておらないという話を聞いております。  ただ、私どもこのPCBの類似物質につきましては、なるべく全国からデータを集めるようにしております。現在新潟県、高知県等からPCTの食品等の分析値が参っております。これらを見ますと、一部を除きましては、まだPCTの汚染という問題はそう広がっておらぬように私ども見ております。ただ、昨日新聞に発表されましたのは人体の脂肪組織のPCTの量でございます。食品のほうでは、一部を除いてはまだPCTの汚染という問題、一部にはあるようですが、その数値としては出てきておらぬのが現状でございます。
  195. 千葉博

    ○千葉政府委員 近江先生いま御指摘のPCTでございますが、近江先生からは昨年来PCB並びにPCB類似の化学物質につきましての慢性毒性あるいはその環境汚染、こういった問題につきましていろいろ御指摘ございましたし、さらにたいへん有益なるサゼスチョンをいただきまして、実は当庁といたしましても、PCBに関する研究の推進につきましては、御案内のとおりの政府部内のPCB汚染対策推進会議というものを昨年設けまして、この場でPCBの各省行ないます対策の分担をきめまして推進しているところでございます。  それで、その中でPCBに類似の物質につきまして、これの慢性毒性あるいは汚染の問題については、いろいろと研究を進めようということに相なっておるわけであります。たとえばアルキルナフタリン、それから弗化ビフェニールなどの問題についても研究を進めていたわけでございます。たまたまいま厚生省のほうから話がありましたポリ塩化トリフェニール、PCTでございます。これにつきましても、どうも慢性毒性の問題がある、さらにこれの汚染の問題があるんだということでございます。この点につきましていま厚生省と打ち合わせいたしておるわけでございますが、科学技術庁が担当しております分析、測定の点でございますが、こういった点につきまして専門の連中とも話し合いをしたわけでございます。いろいろこれに類似の、たとえばBHCとかPCB、こういったものが多量にある場合には非常に分析しにくいというような点もございます。それで、これの毒性その他の問題が厚生省あたりで明確に出てきた場合には、分析の問題も一つの大きな問題になるかといま思っております。現状はそういったところでございます。
  196. 太田耕二

    ○太田説明員 環境庁といたしましては、厚生省それから科学技術庁、各省と連絡をとりまして、その取り上げ方につきまして検討いたしたいと考えております。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省の小幡さんもお見えになっておりますのでお聞きしたいと思いますが、いままでどれだけ生産されて、どれだけ回収措置等が進んでおるか、その実態についてお伺いしたいと思うわけです。
  198. 小幡八郎

    ○小幡説明員 PCTは昭和三十年からわが国で生産が開始されまして、昭和四十七年三月生産を中止いたしますまでに二千六百二十トンの生産が行なわれたわけであります。一方、輸入は、昭和四十二年から行なわれておりまして、総量百四十トンでございます。したがいまして、わが国には二千七百六十トンのPCTが生産または輸入されたということになるわけでございます。  この用途は、PCBと違いまして、PCBの場合は電気機器用が非常に数量が多いわけでございますが、PCTの場合は、全体の四分の一程度が電気機器関係でございまして、残りの四分の三は接着剤とか塗料、インキ等の開放系に使用されていたわけでございます。  そこで、昨年六月にPCT問題をつかみまして、販売も一切停止するようにという指示をいたしました。同時に、現在出回っているPCTあるいはPCT使用製品についても回収するようにという指示をいたしたわけでございますが、何ぶんにも開放系に使用されていたものが多い関係で、その時点で回収するということが非常に困難でございまして、PCTそのものとしてメーカーに回収された数量は約五トンでございます。それから、特に食品包装等に問題があると思われます印刷インキにつきましては、印刷インキ工業会を督励いたしまして回収した結果、七十八トンのインクとしての回収が行なわれておるわけでございます。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう数値であればほとんど回収できていないと言っても言い過ぎじゃないと思うのです。非常にこの点心配であるわけです。現在のところ毒性試験であるとか、汚染経路の調査等はほとんど行なわれていないんじゃないか。また、環境基準等についても検討されてない、こういう経過があるんじゃないかと思うのですが、要するに今後の対策ですよ。これだけしか回収されてない、どうするんですか、今後どうするかということをきょうは各省にお伺いしたいと思うのです。順番に答えてください。
  200. 小幡八郎

    ○小幡説明員 全体の供給量の四分の三が接着剤あるいは塗料、インキ等の開放系に出荷されまして、PCBがやはり同様な用途に約三千トンほど出荷されておるわけでございますが、これらの用途にすでに使われてしまったPCBあるいはPCTの回収というものは、現実の問題といたしまして非常に困難であろうかと思われます。と申しますのは、すでにそれらの製品の中に含まれたPCBにしろ、PCTにいたしましても、それらの製品とともにすでに環境に流出してしまっているものがほとんどではなかろうかというように考えております。  ただ、閉鎖系の電気機器用に使われておりますものにつきましては、これは回収が可能でございますので、トランスなりコンデンサーなりが廃棄されます場合には、その廃棄される前にこれを回収するという措置を講じたいと考えております。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 各省お答えになろうかと思うのですが、現在PCTは生産を中止しておるわけですが、結局その四分の三はほぼ環境に流されるんじゃないかといま課長おっしゃったわけです。それはPCBに比べると数字が小さいものですから、何となしに、そんなものは調査したってわからへんのと違うかというような、私はそういう感じがするわけです。ですから、販売されたものが実態にどうなっておるか。たとえばインキ会社から七十八トンでも回収したとおっしゃっているんですから、これは徹底した調査をなさって、徹底した回収をすべきである、私はこのように思うのです。これをなさいますか。
  202. 小幡八郎

    ○小幡説明員 これらの開放系に出荷されましたPCTがどのように使われて、それが現在どのような状態にあるかということにつきましては、できる限り調査をいたしまして、回収が可能なものであればそれは回収させたいというように考えます。
  203. 三浦大助

    ○三浦説明員 PCTに対します厚生省の態度でございますが、まず私ども実態の把握というのが一番大事かと思います。ただいま先生から御質問ありましたように、食品中の汚染濃度としては、現在のところまだ二件でございますが、そう大きな汚染はないようでございます。ただ、新潟と東京で人体の脂肪組織からこれが出たということ、この経路がいろいろございまして、食べものもございましょうし、また空気中からの汚染ということも考えられますが、その辺わかっておりません。ともかく汚染の実態を把握する、これが私どものまず第一にやらなければならぬ仕事だと思います。  それからPCTの毒性の研究についてでございますが、急性毒性はわりあいわかっておるわけでございます。ただ、慢性毒性がまだわかっておりません。これらにつきましては本年度の予算で、亜急性毒性、それから慢性毒性、これらの研究を国立衛生試験所でやることになっておるわけでございます。また、いま御審議いただいております有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、これらにつきましても、もし家庭用品の中にこういうものが含まれているとすれば、これらの規制を今後考えていかなければならないということでございまして、まず実態の把握と毒性の研究を早急に進めてまいりたいと思っております。
  204. 太田耕二

    ○太田説明員 環境庁といたしまして環境基準をきめます場合には、毒性の程度がわかりませんと実はきめかねるわけでございますので、ただいま厚生省のほうから話がございました点、その辺と十分連絡をとりまして、そのデータをいただきながら環境基準設定につきまして検討させていただきたい、かように考えております。
  205. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生がいろいろ御指摘になりましたようなPCTの汚染の問題、さらに慢性毒性の問題、どの程度の慢性毒性か。一説によりますと、これはPCBよりも非常にゆるやかな毒性であるというような説もございますけれども、実は実態がまだ明確になっておりません。  それで先生、PCBの場合、科学技術庁がやりましたような役割りをひとつ思い起こしていただきまして、実は科学技術庁といたしましても、PCBで先ほど申し上げましたような汚染対策会議という場で持ち分をきめて、それに基づきましていわゆる特調費を支出しまして、それでこの毒性の問題あるいは汚染のいろいろな状況の問題、そのための分析の問題、こういった問題の解決に有効な相当な成果をおさめてきたというように考えておりますので、PCTの問題につきましても、科学技術庁といたしましては積極的に取り組むつもりでおるわけでございます。  それで、厚生省、環境庁あるいは通産省とも密接に連絡をとりまして、各省からいま実態を明確にしたいという点が出ておりますので、そういった面で積極的に研究の推進をしていきたい、かようにいま考えておるわけでございます。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 PCBも最初はたいしたことないというような姿勢が政府に見えたわけです。特にこういうPCBというものを基礎にPCTを比較しますと、量も少ないし、毒性もPCBより若干弱いじゃないかという気持ちを私は非常に感じるわけです。量が少なかろうが、毒性がPCBより弱いか強いか、検討しなければわからぬわけです。そういう根本姿勢において、PCBに比べてまだたいしたことないというようなお考えをお持ちであるとすれば、これは一掃してもらわなければ困ると思います。ですから、そういう点におきまして、これはPCB以上に取り組んでもらわなければいかぬ問題であると私は思うのです。  それで、環境庁さん等は基準を定めるのに厚生省と連携をとっていく、なるほどそうでありますけれども、全国的な実態調査であるとかそういうようなことについても、当然PCBと同様におやりになるべきである、このように私は思うのです。いつまでも他省まかせであるというそういう安易なことでは困ると思う。ですから、全国がどのくらい環境汚染されているか、この調査をおやりになられますか。環境庁さん、ひとつお伺いしておきます。
  207. 太田耕二

    ○太田説明員 現在のところ、実はおしかりをいただくかもしれませんが、PCTの全国一斉調査につきましては具体案はきまっておりません。ただし、例のPCBにつきまして水産庁で調べました高汚染地区があったわけでございます。魚の高汚染地区と水銀の問題が非常にやかましくなっておりまして、実は水銀、PCBを中心といたしまして、いろいろな重金属類、毒物の調査を早急にやろうとしておるわけでございます。これは六月中からでも始めようということにしておりますが、そのときこのPCTにつきましても取り組むかどうか、現在、中で検討している段階でございます。いまここではっきり、それを実施するということを私のほうからちょっと申し上げかねますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 課長さんという立場もあろうかと思いますので、いまここで返事はできないかもしれませんけれども、これはひとつ科学技術庁長官に私お願いしておきたいのです。  PCBなり水銀の汚染の顕著であったところを特に何カ所か今後環境庁がなさるわけですけれども、要するにきめていない。やはりPCTというものを軽く見ておるのです。こういう態度は非常によくありませんよ。だから、これは科学技術庁長官から環境庁長官にも話していただいて、調査なさるのだったら一緒に調査すべきである。それを強力に科学技術庁長官は言ってもらいたい。これは言っていただけますか。そうしていただけますか。
  209. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 PCTはPCBに比較して少し軽く見ておるのではないかというような先生の御指摘でありますが、PCBも初めは軽く見ておったという、ほんとうにそういうことだと思います。しかし、PCTについても、この毒性は厚生省でまだ検討しておる最中のようでありますけれども、相当毒性があるのではないか。安易な態度でおってこれがどんどん放出されていってはたいへんでありますので、その点はすみやかにこれに対する対策を考えなくちゃいかぬと思います。そういう点について、関係閣僚といいましょうか、厚生大臣あるいは環境庁長官に、私からも本日のこの空気並びに先生の御発言等もよく伝えて、その毒性というものが蔓延しないように、私も同じ考え方でございます。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、時間もだいぶ過ぎておりますので次にいきたいと思いますが、せっかく来ていただいておりますので、地震の問題をちょっとお聞きしておきたいと思うのです。  最近、地震についての関心が非常に高まっておるわけです。全国的にも、有感地震の発生回数の増加であるとか、あるいは火山活動の活発化であるとか、近く大地震があるのではないかという、ばく然としたそういう大きな不安をだれしもが持っておるわけです。  それで、この間の北海道の地震を見ても、非常に各地で起きるのではないかという心配をしておる。次は遠州灘に大きな地震が起こるのではないかと予測する向きもあるわけですが、その点政府としてはどの辺が心配であるとお考えであるか、お伺いしたいと思うわけです。
  211. 檀原毅

    檀原説明員 お答え申し上げます。  地震というのは何しろまだ未知の分野が非常にたくさんございまして、いつ起こるか、あるいはどのくらいの大きさということはなかなかむずかしいものでございますが、いままでの統計資料から申しますと、過去に大地震が起きまして、その後長い間、百年あるいは二百年同じような地震が繰り返して起こっていない、そういうような場所がございまして、そういう点から考えまして、全国に八カ所特定観測地域というものを設けておりまして、これは特別に、いつ起こるかという、そこまでは言えないのでありますけれども、地震が起こる可能性が高いということでございまして、そこに特別の観測の網を張っております。そういう場所が八つございます。  それから、そういう特定観測地域の中で、あるいはそれ以外の場所で、何か一つの現象に異常な事態発生した、そういう場合には、そこの場所を観測強化地域に昇格いたしまして、そこにいろいろな観測の手段を講ずる、あるいはいままでやっておりました観測とか測量の繰り返し期間を短縮するというようなことを考えております。さしあたってどこに次の地震が起こるかということは、私たち現在のところまだつかまえておりません。そういう状況でございます。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではその八カ所の特定地点と、異常な現象が出ておって特定地点にした、その地点名はどこですか。
  213. 檀原毅

    檀原説明員 北海道の根室、釧路付近につきましては、特定観測地域に昭和四十五年二月に指定したのでありますが、そこで水準測量あるいは三角測量、三辺測量、それから微小地震の観測、そういったものを集中しまして、かなり気をつけて観測してまいったわけでございます。一番はっきりしておりますことは、水準測量による上下変動でありますが、これが明治以来、釧路付近から根室のほうに傾動、傾いている形でございますが、根室の付近で申しますと、ここ六、七十年の間に大体五十センチから六十センチぐらい沈下していた。それからもう一つ、三角測量のほうからわかったわけでありますが、これは三角点の移動が出てまいります。そこではやはり六十年間の動きでありますが、内陸のほうに、大きいところで二メートルをこすぐらい圧縮された形に出ております。これが最近の太平洋側の地震の原因といわれておりますプレートな日本の陸地の地殻の下にもぐり込んでおります。それによって陸の地殻が圧迫を受けまして地震が起こる、そういう形をあらわしているのではないかということで、そういった意味でも気をつけていたわけであります。ただし地震の予知ということは、どれくらいの大きさのものがいつ起こるか、その二つが場所につけ加わりまして、三拍子そろわないとなかなかはっきり世間に発表するというようなわけにはまいらないわけでございます。したがって、いつかということが非常にばく然としておりましたが、場所は大体あのくらいの広さの中で起こるであろうということで、予知ができたと言われる方もおりますけれども、私たちは必ずしもそれで満足しているわけではございません。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 その一つを取り上げて詳しくおっしゃったわけですが、八カ所の特定地点というのは大体どの辺であるか、時間の関係がありますから簡潔におっしゃっていただきたい。最近、異常な現象が発生しておる地点はどこであるか、簡潔にひとつ答えてください。
  215. 檀原毅

    檀原説明員 全国八カ所は、先ほど申し上げました根室、釧路地区、秋田県の日本海側であります。それから高田、長野付近、それから琵琶湖から敦賀湾にかけてでございます。それから島根県の北中部、それから西に参りまして伊予灘、安芸灘を中心とした地域、それから太平洋に戻りまして御前崎を中心としました遠州灘、それに大阪と申しますか阪神地区、これは特に地震の経歴というわけでございませんが、重要地区でございますので、これを特定地域に指定しております。この八カ所でございます。それから観測強化地域は南関東でございます。  こういった八地区、それから観測強化地域、こういったところで相当いろいろな観測を繰り返してまいったわけでありますが、現在わかっておりますのは、南関東におきましては、これは最近のレーザー測距儀による成果でありますが、地震の巨大クラスが直ちに発生するというようにはひずみがたまっていない。ただし七クラスは、いまのところ何とも言えない程度の異常さであります。  それから、滋賀県琵琶湖から敦賀湾にかけてでございますが、ここのところは水準測量で、琵琶湖の西岸でございますが、ここで異常が見つかっております。この異常が本物であるかどうか、あるいはそこのひずみがどうであるか、これは本年から来年にかけて検測したいというふうに考えております。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした地震の予知体制にしても、わが国の場合は非常に不十分である、これは大臣もこの前に見解としておっしゃったわけでございますが、今後大幅に体制を強化し充実していくことが非常に大事であると私は思うのです。そのように予知の問題あるいは防災体制の点におきましても、どちらをとっても不備であるということは、政府はいろいろな場所でおっしゃっているわけであります。それで、連絡会等についても大幅に体制を強化し充実するということをおっしゃっているわけですが、具体的にどういうようになさるわけですか。その具体的な構想、中身をひとつお伺いしたいと思うわけです。
  217. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 地震予知の体制をどうするかという問題でございますが、正確に地震を予知するためには地球の表の皮でございますね、地殻の変動を精密に観測する、そうしてデータを集めるということがまず第一の要件だと思います。  二つ目には、しょっちゅういろいろな地震がございます。小さい地震から大きい地震に至るまで地震を観測して、そのデータを集めるということも必要でございます。とにかく、こういうふうなデータをいずれにしても集めるということがまず第一でありまして、地殻の変動につきましては、大体国土地理院が主となってやっておるわけでございます。また、地震の観測につきましては、気象庁あるいは大学等が担当しておるわけでございます。そうして、現段階で、これらの各関係機関が一生懸命にそのデータを集めておるわけでございますが、この得られましたデータを常時総合的に判断する体制というものについては考えるべきじゃないかというわけで、実は私も関係の閣僚にも話をいたしております。  じゃ具体的にいまどういう観測センターをつくろう、予知機関とか一つの例でありますが、そういう名前をつけてどういうものをつくろうということは、きょう現在はまだきめておりません。けれども、とにかくそういうデータを総合的に判断して、早くそういう体制をつくらなければいかぬじゃないかというような点においては、おおよそ同じような考え方を持っておるわけでございます。ただ、これにつきましては、測地学審議会というものがありまして、ここで予知の体制につきましても審議をしておりまして、これも審議の答申を近く出すようでありますので、その意見も見守りながら、この体制をどういうふうにするかということを詰めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 最後に、きょうは建設省から三名お見えになっておりますので、お伺いして終わりたいと思いますが、四十六年に中央防災会議で大都市震災対策推進要綱が閣議決定されて、対策の基本というものが明らかになったわけですが、要するに問題は、これが具体的にどのように進められておるかということなんです。実態的にはあまり進んでおらないんじゃないかと私は思うわけです。その実態を簡潔に、反省を込めてひとつおっしゃっていただきたいと思うのですが、三名来られている方からお伺いをしたいと思うのです。その答弁によって、あと少しく質問して終わりたいと思います。
  219. 谷勲

    ○谷説明員 実は中央防災会議におきまして、大都市震災対策推進要綱が決定されまして、この事務局を中心としまして関係各省が共同で同要綱の具体化につきまして検討しているところでございますが、建設省としましても、地震対策を早急に実施しまして、被害を最小限に防止する必要があるということで、建設省におきましても、省内に地震対策本部を設けまして、種々検討を重ねたわけでございます。  その結果、第一番に、所管施設の耐震性に関する総点検を行ないまして、補修を要する個所の整備を行なっております。それから、緊急警戒道路の整備、緊急用の河川敷道路の整備、都市地震対策事業の促進、地震対策に関する研究開発の促進、これらを昭和四十七年度以降おおむね三カ年を目標に実施することとしたわけでございます。  これらによりまして、まず東京江東地区の住民の避難地区としての防災拠点についての面積を確保するようにつとめる、あわせまして、また都心部への救援、応急復旧等の早期活動が可能となる等の効果があげられると考えております。政府関係機関との調整をはかりながら、強力に実施できるように処置してまいる考えでございます。
  220. 升本達夫

    升本説明員 ただいま砂防課長から建設省の防災施策全般について概略を御説明申し上げたわけでございますけれども、御質問は都市地震対策関係ということでございましたので、特に、ただいま申し上げました中から、都市局所管事業関係を、若干砕いて申し上げたいと思います。  ただいま御披露いたしました緊急三カ年計画の中の一環といたしまして、都市地震対策緊急事業という事業を実施いたしております。その内容といたしまして、大きく分けて三つございます。  一つは、防災拠点等の避難地を整備するという事業でございまして、具体的には、東京の江東地区、最も地震に対する危険度の高いと考えられております東京の江東地区等に防災拠点を設けまして、白髪・小松川地区におきまして市街地再開発事業を実施いたしております。また、これと並行いたしまして、これらの防災拠点を目途といたしまして、日本住宅公団等の大規模な面開発住宅建設事業、これはコンクリートのしっかりした住宅を、防災の用も兼ねて大規模な団地をつくるという事業でございますが、このような事業を実施いたしております。これとさらに並行いたしまして、避難拠点内におきます、現在工場がございますけれども、この工場を買い取って外へ出てもらうという、工場あと地の買収という事業を実施いたしまして、空地の確保につとめております。これらの事業費といたしまして四十七年度実施いたしましたのが三十二億三千九百万円、本年度さらに四十九億四千二百万円の予算をもって実施する予定でございます。  それから、第二番目の事業といたしまして避難路の整備、これはただいま申し上げました防災拠点等に、そこまで行けば安全になるわけでございますが、そこに達するような避難路を設けるという事業でございまして、具体的には隅田川の左岸沿いに、歩行者、自転車の専用道をつくる。道路をつくりまして、整備をいたして、防災拠点に避難し得るための整備をいたしたいということでございます。この関係の事業が、四十七年度事業四十七億三千四百万円でございまして、本年度はさらに四十四億九千五百万円の予算を計上いたしております。  それから、第三番目の事業といたしまして下水道の整備でございます。江東地区は海べりから川に沿いまして堤防が完成されておりますけれども、これの決壊という状況も万一の場合予想されることもございますので、これに対応すべく現在その地区内のたとえば三之橋下水のポンプ場及び砂町の処理場等につきまして施設の整備を進めております。四十七年度事業といたしまして三十三億二千四百万円、本年度におきましては二十六億六千五百万円の予算を計上いたしております。  大体都市局関係の緊急対策といたしましての防災関係事業は以上でございます。
  221. 野呂田芳成

    ○野呂田説明員 ただいま都市局の総務課長から御答弁申し上げたとおりでございますが、この中で特に防災拠点の問題につきまして、私、再開発課長でございますが、所管をしておりますので、若干ふえんしておきたいと思います。  江東地区の防災拠点の構想は実は六カ所ございまして、白鬚地区と、四つ木地区と、大島・小松川地区、それから木場地区、両国地区、中央地区ということでございますが、これはいずれもこの六カ所から避難路を整備いたしまして、三十分以内にこの拠点に住民が避難できるということで、大体一地区五十から百ヘクタールの規模でやっておるわけでございます。拠点のうち特に白鬚地区につきましては、四十六年度から市街地再開発事業に着手をしておりまして、四十七年の九月に都市計画を決定いたしております。現在真剣に事業を進めているところでございますけれども、端的に申し上げましてなかなか進んでおりません。進んでおらない理由は、この地区は約五百五十ヘクタールに及ぶ膨大な再開発を行なおうとするのですから非常に調査や計画に時間を要する。しかも江東地区は、零細権利者が——表現が適切かどうかわかりませんが、零細権利者が非常に多くて、その過半が借家権者である、しかも住宅と作業所が併用されていまして、なかなかこの切りかえがむずかしいというような問題がございまして、事業主体である東京都も非常に苦慮しているところであります。  そこで、過般東京都の首脳部と建設省の首脳部が会談を行ないまして、これからの進め方につきまして協議をし、覚書を交換しておりますが、特に本年度から改良住宅とか公団住宅の建設に着手する。それから防災センターとか医療センター等につきましては、今年度を目途に早期着工をはかる。それから私設の建築物につきましては、都市再開発に基づく権利返還計画を四十九年度中に決定いたしまして、最終的に五十三年度までに事業を完了したいということを両首脳部会談において確認したところでございます。  なお、特にこの事業の推進の基盤となる土地の確保が一番問題でございますので、三十九年度から四十七年度までに約二百三十四億円をもちまして十九の工場あと合計五十七ヘクタールの買収を完了いたしておりますので、この地区に関する再開発事業がかなりやりやすくなっているというようなことが申し上げられるのじゃないかというふうに思います。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、今後非常に権利者対策が問題でございますので、しかもいまの制度ではなかなか必要かつ十分な対策ができないといううらみがございますので、低家賃の住宅を供給するための再開発住宅制度とか、あるいは防災事業でございますから特に建築工事費がかさみますので、そういったものに対する防災性の強化費の補助とか、そういう国の助成、金融その他の優遇措置を十分やるべきであるという観点から、現在都市計画中央審議会のほうにそれらの方策につきまして大臣から諮問中でございまして、今月末にその答申が得られる予定でございます。答申を得次第、制度化に努力をいたしまして、この事業の円滑な推進をはかってまいりたいというふうに考えております。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 ではこれで終わりますが、江東地区の状況をずっとお話しになったわけですが、これは何も東京だけではなくして、大阪、名古屋をはじめとして、大都市部においては同じ問題であろうかと思います。いまほとんど江東だけじゃないかと思うのですよ。だから、こういう点につきましては、先ほど全国八カ所のお話もありましたし、ああいうこととにらみ合わせまして、全国的にこれは強化してもらわなければいけない問題であると思うのです。そういう点、大臣も最後までおられたわけでありますし、この点は、特に閣議等にも申し入れもしてもらいまして、強化を全国的に、特に大都市を中心にやっていただくように申し入れをしてもらいたいと思うのです。最後に大臣の決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  223. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 地震に対する防災対策の問題でございますが、東京は大密集地域でございますけれども、東京並びに大阪その他大都会において、最近特に地下街なんかが私は非常に問題であると思うのであります。われわれは想像しただけでもどんなことになるのかと思って非常に心配をいたしております。そういうふうな問題、私のほうでも科学技術庁なりに研究費を使っていろいろな研究もいたしましたし、そういう点も踏まえて実は関係閣僚と、いま建設大臣とかあるいは運輸大臣あるいは総務長官等とも、別に会議形式じゃなくて、しょっちゅう、会うごとにこの話をして、実はゆうべも話したわけでございまして、地震はいつやってくるかわからぬ。とにかくぐずぐずしておることはできない。特に、きょうもこうして先生から御指摘をいただいた点も、これまた関係の閣僚には、私会ったときに報告をして、ひとつ早く対策を——もちろん現在でもただ漫然としておるわけではございませんけれども、ほんとうに実のあるような防災対策をつくらなければいかぬという意味におきまして、十分御趣旨を体してよく相談をいたしたいと考えております。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 どうもありがとうございました。
  225. 石野久男

    石野委員長 次回は、明二十一日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十三分散会