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1973-03-29 第71回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十九日(木曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 木野 晴夫君 理事 藤波 孝生君    理事 藤本 孝雄君 理事 前田 正男君    理事 島崎  譲君 理事 原   茂君    理事 瀬崎 博義君       稻葉  修君    梶山 静六君       羽田  孜君    井上 普方君       堂森 芳夫君    近江巳記夫君       北側 義一君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     進   淳君         科学技術庁計画         局長      長澤 榮一君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁振興         局長      田宮 茂文君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君  委員外出席者         国土地理院測地         部長      井上 英二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  3. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣に初めて正式に、科学技術問題全般に関してお伺いしてみたいという立場ですから、平板に質問もしますが、お答えも淡々と、あまりひねくって考えないで、時間があまりないようですから、ひとつ簡潔にお答えをいただきたい。そのつもりで私も質問します。  最初基本的な問題、考え方について、二、三お伺いしてみたいのです。  科学技術政策というものを科学技術庁全体としては常に考えるわけですが、その政策基本になるものを一体どういうふうに考えておられるか。あまりばく然と質問するとまた時間がかかりますが、たとえば科学技術というものを一番中心に動かすのはやはり人間ですから、科学技術政策上におけるエンジニア、このマンパワー政策といいますか、そういうものに関して、ある程度国として方針を持っていませんと、どうも技術屋さんが右往左往する、これに対する的確な国としての目標設定をしてあげないと、いたずらにむだな努力が積み重ねられていく。あるいは、ある意味ではエンジニア養成そのものに非常に大きなむだが起こるというようなことが、基本的にはいまの段階で相当真剣に考えなければいけない問題じゃないかというように、たとえばですが、人間の問題も、教育そのものに関してまで、科学技術政策の上から考えていく必要があるのではないか、こういう点も一つ問題点として考えなければいけないだろう、こういうふうに思う。  それからもう一つは、科学技術政策というものを考えますと、この政策なしには今後の社会開発も、あるいは経済も、ある意味では外交そのものも論ずることができないほどに、科学技術政策というものは国にとって重要な位置を占めてきた。そういう考えからいうと、科学技術庁あり方科学技術庁そのもの力関係が、わが国の各役所の中において非常に不満足だとは思います。この問題は、あとで少しく論議しますが、いずれにしても科学技術政策というものを国の立場考えるという、その思想が、各政治分野に行き渡っていかないと、実際には統制のとれた、斉合された、近代的な政治というものは行ない得ない、こういうふうに考えて、前提してまいりますと、一体いま科学技術政策というものをその観点から考えたときに、何を重点考えなければいけないか。ある意味では科学技術政策というものが、国の立場で、近代国家として何を必要とされているのだろうかということも、二つ目考えていく重大な問題ではないかというふうに実は考えるわけです。  これにつれて、当然今日の科学技術というものが一国だけで考えられ、開発をされ、処理される性質のものではなくなったという意味では、国際科学技術交流というものが非常に重要になってくる。国際交流というものに関しても、いわゆる科学技術政策上相当のウエートを置かなければいけないのではないかというふうに考えます。  大体まあ例を三つあげましたが、そんなふうな考え方科学技術政策そのものに関する長官としてのお考えをまずお聞きをしたい。
  4. 前田正男

    前田国務大臣 ただいまの御質問に対しまして、私が現在考えております科学技術政策あり方ということについて申し上げたいと思います。  いろいろございますけれども、科学技術政策あり方という点につきましては、科学技術会議という会議がございまして、その科学技術会議で何回か答申をいたしております。その答申のうちで、五号答申という答申がございます。その答申は「一九七〇年代における総合的科学技術政策基本について」という、そういう諮問に対する答申でございますが、その答申にはいろいろ書いてございます。簡単に私、四つぐらいに要約できると思うのでございます。  その一つは、科学技術を真に人間福祉のために役立てることということだと考えます。その意味におきまして、科学技術政策は、ただ経済の発展に寄与するだけじゃないのです。生産向上に寄与するだけじゃないのです。やはり公害の発生を防止するとか、環境を守るとか、そういうことに力を尽くすべきであるという意味だというふうに考えております。  次に、目的指向的な研究開発の進め方を大幅に取り入れることということでございまして、これはいろいろございましょうけれども、まず科学技術あり、しこうして社会があるんだという考え方じゃなくて、社会のニードがあり、しこうして科学があるんだという、そういう原点に立って科学技術行政を進めていかなければならないということだと私は考えております。  次に、異なった科学技術分野間の協力推進することということでありまして、すべての科学技術というものは、相関連しておる研究協力推進協力することが必要である。科学技術を用いまして解決すべき問題が非常に複雑化しておりまして、それぞれの専門分野間の協力がなければ成功しないんじゃないか。その例は、ライフサイエンスなんかはそうだと思います。あるいはガンの研究にいたしましても、あるいは老化現象研究にいたしましても、医学だけではいけません、これは物理学、工学、すべての科学が総合して初めてできるんじゃないかということを意味しておるものだと私は考えております。したがいまして、具体的にはライフサイエンスソフトサイエンス環境科学技術というものを振興していきたいという考え方でございます。  それから、科学技術につきましては、日本一国だけでこれを研究開発すべきものではない。非常にインターナショナルといいましょうか、国際的な問題があると思います。ことに資源問題を考えましても、あるいは公害問題を考えましても、日本だけの公害というものは考えられません。もう全地球的に及んでおる。資源の場合もそうでございます。その意味におきまして、科学技術国際協力ということがぜひ必要であると思いまして、これを進めるべきであるということも答申のうちに入れておるようでございまして、この方針でいきたいというふうに考えております。  それから、人材養成ということも、ただいま先生指摘のとおり、これは非常に必要だと私は考えておりまして、一人当たりの研究費をふやすとか、あるいはいろいろな研究員を海外に派遣するとか、そういうことも必要だというふうに考えて、その政策に取り組んでおります。  それから、簡単に申し上げますけれども、科学技術庁あり方でございますけれども、科学技術庁というのは十七年前に発足をいたしまして、私はまだほんとうにしろうとというか、たいして経験もございませんけれども、科学技術行政というものが、十七年ではあるにせよ、十七年前に一つの庁として発足したというところに大きな意味があるのではないか。別に私、行政機構を拡大する意思はございませんけれども、実際、現在の科学技術庁として、科学技術振興をはかろう、そして総合調整をはかる、総合推進をはかる、そして国民福祉のために貢献するんだというためには、率直に言うて、いまの科学技術庁だけでは少し陣容としても足らぬのじゃないか、もっとこれを拡充すべきではないかということを、私も、あるいは閣議の席上におきましてもいろいろな会合におきましても一生懸命に言うておりますけれども、なかなか力及ばず、いまだほんとうにスローモーションで徐々に前進をしておるわけでございます。甘えるようでございますけれども、ぜひひとつ原先生からもその点御支援、御推進を賜わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 複雑化してまいりました社会全体の中の科学技術の占める位置からいいますと、いまの人材の問題が第一の問題ですね。非常に大事だと思うのは、やはり国家的な科学技術政策上の目標を与えるということが勉強する諸君に必要だということ、この点が、見のがされてはいないのでしょうが、国の総合的な教育立場で真剣に取り上げられているのだろうかということを考える。一つ技術考える、その技術は確かに人間福祉に役立ちます。それが環境の破壊その他の問題を起こしてくる。その問題を予見して——一つアセスメントのことにもなるのでしょうが、予見して、それに対する対策技術というものをまた生み出すような目的を与えていくという、そういう教育あり方方針というものが、国の科学技術政策上の立場でいまもうはっきりとテーマが与えられていくようにならないと、これは官庁もそうですが、学校の講座を見ても、縦割り行政、みんなそのまま縦割りですよ。そのために、むだというのか、気の毒に、自分で何かつばして振り回されてしまうのか知りませんが、総合的に国の立場で、教育方針に関しても、先ほど言ったように、政治全般科学技術を抜いて考えられないという時代ですから、その意味から言うなら、教育そのものも、いわゆる科学技術政策というものをぴちっとまん中に据えて、研究者、学生、あるいは官庁なり、また会社の養成所ですか、こういう民間機関に至るまで、そこに目的を持って、エンジニアが勉強するときには、必ず科学技術政策上の見地からある程度二段三段先を予見して、そのことをある程度の目標なりとして与えてやるというような考え方思想が国にないといけないのじゃないだろうかということを言っているわけなんですが、その点おそらく同感だろうと思うので、私は、こういう点で長官がやはり閣議——本来きょう私が質問してみたいなと思いましたことも、予算委員会分科会でやろうと思って、ちょっと時間がダブってしまいまして、第五分科会へ行ったものだからできなかったわけです。で、ある部分は、ちょっとここでは長官が取り上げにくいという問題にも触れるかもしれません。  それにしても、私は、やはり責任ある閣僚の一人としては、閣議を通じてでもやはりこうしたことを真剣に、これはもう百年の大計ではない、現実におけるいわゆる国家的な課題として考えておく必要があると思いますので、そういう点を、強く科学技術政策の視点から教育考える、すべての政治がそこから発足するのですから、そういう意味では、教育方針に関してもそうした目標設定が必要だということで、テクノロジーアセスメントの視野からいっても、やはり二段三段の予見できるいろいろな問題を設定して、それに対する目標を与えてスタディさせる、研究させる、勉強させるということを、国の方針として教育の中にひとつ突っ込んでいくように、一閣僚としても閣議で強力に発言をし、国の方針にそれがなるまでがんばっていただいたほうがいいのじゃないかという念願を込めて言っておるわけですが、この問題についてひとつ……。
  6. 前田正男

    前田国務大臣 原先生からたいへん激励を賜わりまして、私ほんとうに感銘をいたしております。確かに科学技術にははっきりした目的といいましょうか、目的指向的研究といいましょうか、目標がなければいけない。しかも先見性を持たなければいけない。全くそのとおりでございます。そうして、政治のうちに科学技術というものを大きな柱として考えなければいけない、私、全く同感でございまして、現在の政治が、ほんとうにいろいろな政策をつくるにあたりましても、科学技術というものをわりあい重く見ないで考えておる面があるのではないか。いろいろな厚生問題にしても、国土の建設の問題にしても、産業政策にしても、私はどうもそういう気がするのでありまして、その点、私、微力でありますけれども、相当思い切って心臓強く閣議でも発言をいたしておりますけれども、さらに先生激励を賜わりまして、一そう科学技術というものを、そういう観点からすべての政策を見ていく、アセスメントしていく、そういう姿勢をぜひとつていきたいというふうに考えております。  それに関連をして、甘えるようでありますけれども、私は現在の科学技術庁あり方自体、現在のあの機構全体も、よけいなことを言いますけれども、実は少し、十七年前の姿とだいぶ違っておりますので、ひとつそういうふうに先生の御指摘のような点、やはり目的を果たすためには、少しそこら辺検討し直す必要があるんじゃないかということも考えまして、実はそういうことも、ちょっと一ぺんか二へん話したことがあるんです、まあ放談として取り扱われましたけれども。その点も実は真剣に考えておりまして——ただ、こういうことを言うと、すぐに役人の数をふやしたいとか官庁機構をふやしたい、そういう意味ではございません。ぜひひとつその点、私は取り組んでいきたい。  特にエネルギー問題とか資源問題、それから公害の問題、当面、こういう先生指摘の大きな問題がありまして、これは科学技術行政を抜きにしてできません。科学技術委員会自体中心委員会にならなくちゃいかぬと私は思って、ほんとうにここが中心になって、すべての政治の淵源にならなければいかぬというくらいに考え——そういうことを言うと、すぐにのぼせ上がっておるとか言われますけれども、私はそのつもりでおります。特に、また、今後ともいろいろなそういう資源問題とかあるいは公害問題で、ぜひ私の意見も申し上げ、先生からもいろいろ御指導をいただきたいというふうな問題もございますので、今後ともよろしく。私もその姿勢で一生懸命取り組みたいと考えております。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 けっこうです。ぜひお願いしたいです。  それと、いまお話しのように、これはあとで触れていくかと思うのですが、積極的な姿勢科学技術庁にないと、科学技術庁そのものが置き去りにされるようなわが国行政になりかねない。たとえば、先ほども委員長からちょっと、前から言われているんですけれども、例の電源地帯整備ですか、これは通産省の所管にして、すべてをそちらのほうで委員会審議をしていこうというようなことがあるようですけれども、しかし、あの問題を考えても、いまの電源考えて、原子力そのものをつかさどるためには、科学技術行政をつかさどる科学技術庁所管にならないで、それは全部は無理にしてもですよ、少なくとも原子力に関係するものに関しては科学技術行政の中から、長官のいまの姿勢からいったらもう冗談じゃないというので、当然長官の積極的な前向きの姿勢で御自分で担当する部分がここにあるというものをきめて、当然この委員会にもそのことが付託されるような手順というものが、いまのお述べになられたような姿勢が、やはり現実の問題としてはそういうところにあらわれてこなければいけないと思うのですね。これはあと、各党もまた国対あたりでいろいろ問題にするようですけれども、しかし長官姿勢からいったら、そこらもうんと積極的に、ああいうものを黙って——中曽根さんがどう考えているか知りませんが、あの理解のいい人が、前にこの長官をやっておるときには、委員長も言っておられたけれども、もうほんとうに、御自分でもぴしっとセパレートしてこの審議をするような考えを持っていたくせに、いまはどうもそうじゃないらしい。これはわかりませんよ。らしいと聞いているんですが、ここらもやはりいまの姿勢からいったら、積極的にひとつ長官としての態度を表明していただき、ぜひわれわれが専門的に審議ができるような、そういう場を設けられるよう御努力をお願いしたい。これはお願いですから……。  いまのお話のように、確かに複雑して多面化してきて、いろいろな問題が起きてきている現在の科学技術メリットもあり、デメリットもあるような、しかもそのデメリットに関する限り、右往左往して、これからいつも後手後手対策をつくっていくわけですね。そういう問題を一口につづめて言うと、いまや科学技術の問題というのは、量から質に転換している時代が来た。量から質への時代が来たということが言えると思うのです。  いままでのように何でも産業あるいは経済本位科学技術が芽をふいていくんじゃなくて、新しくその質というものをとらえて、質的に思い切って転換をしながら、その質とは何かというなら、人間福祉であり、社会開発であるというところに、もうおのずから世界的にもこれはひとつのワールドワイドの問題ですよね。世界的にそういうほうに指向されているわけですから、そういう点からいうなら、科学技術政策二つ目にとらえていかなければならない問題は、やはりいままでのように、量ではなくて、質への転換というものに重点を置いていくんだということを、相当きびしく追及していく姿勢がないと、側面から行政的な力の、いわゆるつえが添っていかないと思うわけですね。  この点、考え方をそういうふうに持っていきますと、科学技術そのものに対する整理——ある意味ではもう整理段階にきている。技術そのもの整理する段階にきている。整理というのはやめてしまうという意味ではなくて、どれとどれとつき合わせる、どれとどれと組み合わせるのかという、学問上からいっても、実際上からいっても、技術の再編成というものを通じての質への転換が必要になってくると思うので、科学技術政策の第二の柱としては、やはり量から質へ、すなわち技術的な再編成ということをここで一ぺん見直しをやる。あとで地震の問題にちょっと触れるのですけれども、この問題だって私はそれに非常に関連があると思うわけですね。そういう点をひとつお考えをいただいたらどうかと思いますので、御意見をお聞きしたいのです。同時に、科学技術会議のことについて先ほどの答弁でお触れになりました。科学技術会議の問題に関しては、このあと少しくまた私の意見も申し上げて、あらためて御答弁をいただきたい、こう思っています。
  8. 前田正男

    前田国務大臣 ただいま御指摘の、科学技術が量から質への転換期じゃないかという御趣旨だと思いますが、全くそのとおりでございまして、ただ生産向上とかそういう点に重点を置いておった従来の科学技術から、それがほんとう人間福祉に害があるのじゃないかということを一つずつ点検していかなければならない。メリットデメリットをよく見きわめていかなければいけない。専門的なことばですかどうか知りませんが、テクノロジーアセスメントといいましょうか、これの考え方をこれからの科学技術行政中心にしなければいけないというふうに私は考えております。  ところが、実際テクノロジーアセスメントというものは、実施の手順並びにその手法でございますね、これは必ずしもまだ確立はされておりません。これからの問題でございまして、目下これに一生懸命には取り組んでおるわけでございます。そうして科学技術庁といたしましても、そのテクノロジーアセスメント手法やり方等、いま研究をしておりまして、研究成果を取りまとめて手引き書というようなものをまず最初につくりたいと思って、今年度の予算でもそういうものを実は計上しておりますけれども、また一月二十六日でございましたか、国の試験研究所長——各省試験研究所というものがございます。厚生省にもある、農林省にもある、その試験研究所の所長を全部会同いたしまして、ことしはテクノロジーアセスメントというものを議題といたしまして、みんなの意見を聞いたのでございます。そういうふうに、何としてもテクノロジーアセスメントという考え方を、まず国のそういう機関から民間機関までずっと——国機関がそういう姿勢を示すということは、民間もその線に沿ってついてまいりますので、そういう姿勢で進んでおるということを申し上げたいと思います。米国でも、テクノロジーアセスメントというものを——米国以外でも非常に大きく取り上げているのでございまして、これは米国に別に教えてもらわなくても、日本としてもこれは負けぬようにやらなくちゃいかぬというふうに考えております。
  9. 原茂

    ○原(茂)委員 いまおことばがあったのでついでにお伺いするのですが、科学技術庁でいまのテクノロジーアセスメント事例研究をここ一年か二年の間にやったのじゃないですか。それはどんなことをやってどんな成果があったのかちょっとお伺いいたします。  それから、いまアメリカ、イギリス、フランスのお話が出ましたが、アメリカではおそらくアセスメント局みたいなものをつくろうとしていますね。日本ではどうでしょう。科学技術庁でそういう専門の部局みたいなものをつくろうとなさるのがどうか。その二、三の事例があったはずですから、事例を報告いただいた上でその考えをお聞かせください。
  10. 前田正男

    前田国務大臣 いまの事例の点は政府委員から御答弁させていただきますが、アメリカでは、私の知るところでは、去年の十月テクノロジーアセスメント法という法律が成立をいたしております。そして議会下部組織でそういうテクノロジーアセスメント局、どういうように訳していいのか、つくっております。これはそういうアセスメントの仕事を行なう議会下部機構でございますけれども、私は、いま先生指摘の、日本でそういうことをやる考えがあるかという問題でございますけれども、これはまだ別に政府答弁でも何でもない、ほんとうに私個人の考え方なんですが、科学技術庁機構というものを考えた場合に、もう十七年たって、この際少し時代の要請に応じて一ぺん考え直す必要があるのじゃないかということを先ほど申し上げましたが、日本流に言えば安全局といいますか、そういうようなことを考えたらどうかということを考えて、実はそういうことを一時放談というか、したことがあります。それに対して、いや、そんなことを考えるのはまだ早いとかという意見もあるし、何か思い上がっておるんじゃないかという意見もございます。しかも科学技術庁がよその省の安全まで点検する力があるかとか、いろいろな非難もございましたけれども、私は別に間違っていないと思うのです。私はやはり安全というものに重点を置いて、安全点検というような姿勢、そういうものを何か機構のうちにも入れるべきではないか。いや、それは局になるかどうかは知りませんけれども、そういう姿勢でいきたいというふうに、これはまだ正式の政府答弁として答弁するのはちょっと先走っておるのかもしれませんけれども、そういう意味において私の考え方を申し上げておきます。
  11. 長澤榮一

    長澤政府委員 事例研究につきまして御説明申し上げます。  科学技術庁では、先ほど長官から説明がございましたとおり科学技術会議の五号答申テクノロジーアセスメントを今後研究開発のあらゆる段階で適用すべきであるということを申しておりますので、四十六年から事例研究を始めております。事例研究といたしましては、農薬、それから住宅用高層建築、それからコンピューター利用教育システム、この三つを四十六年度に実施しております。それから四十七年度は垂直離着陸機、VSTOLにつきまして、それからニュータウンの技術システム、これは総合情報通信システムであるとか都市交通システム、エネルギーの供給システム、こういうふうなものを含んだものでございますが、こういうものを四十七年にやっております。それから四十八年は、ニュータウンの技術システムをさらに続けて行なうと同時に、先ほどからお話が出ておりますが、テクノロジーアセスメント考え方を普及するということがまず第一かと思いますので、手引き書をつくるということでマニュアルの作成をやろう、こういうふうに考えておるところでございます。  また、関係各省におきましても、私どもが音頭をとりまして通産省、それから経済企画庁、環境庁等でもいろいろ勉強が行なわれておる、こういう状況でございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの四十六年、四十七年、それから四十八年、事例研究をするのに予算はどのくらいですか。
  13. 長澤榮一

    長澤政府委員 予算といたしましては、まだたいへんわずかでございまして、一千万円以下の数字でございますが、われわれといたしましては、経常費等をやり繰りいたしましてもやろうということでやっておる次第でございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 いま言ったように、アセスメント局をつくるつくらないは別なんですが、安全局がいいかどうか知りませんけれども、近い将来の課題としてこれは真剣に考えなければならないわけですよ。さっきの教育の問題であろうと何であろうと、こういうものを総合的に考えてくると、この事前評価というか、こういうことは、非常に重要になりますからやっていかなければならない。  それにしても、四十六年、四十七年事例研究をやったと言いながら、これだけのテーマがあってわずかに一千万円以下でやっているのですからね。これはまあ予算のぶんどり合戦で長官の腕が悪いのかどうか知りませんがね。だいぶいいところもあったそうですから、いいところは言わないで、少ないところだけいま目についちゃったわけですけれどもね。どうもこんな状態では、とてもとてもいまのテクノロジーアセスメントをやるなんということにはならないわけですね。  したがって、それにつれて考えていくのは、やはり縦割り官庁の弊害ということになるんでしょうけれども、これは科学技術庁が一般科学技術をやって、あと建設省は建設省で何とか技術をやる。それから各省にみんないろいろあるんでしょう。文部省にもある、なにもある、みんなあるんですね、研究機関が。みんなばらばらになっているものですから、そのばらばらになっているところでも、いまお話のあった事例研究みたいなものをやっているでしょう。御存じないですか。
  15. 長澤榮一

    長澤政府委員 去年の暮れでございますが、各研究機関の所長を集めまして、テクノロジーアセスメントについての意見討論会を科学技術庁長官主催でやっております。で、私のほうからもテクノロジーアセスメントについての考え方を示し、各研究機関からもいろいろ意見の開陳がございました。全部の各研究機関が取り入れているというわけではございませんが、研究の評価あるいは研究計画の設定等におきましては、テクノロジーアセスメント考え方を取り入れてやっておるところが多々あるようでございました。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 たとえば四十七年度に農薬をやりましたよね。農林省にも何とか研究所があるんでしょう。農林省にも研究機関があるんですね。各省でやっているかもしれないというんですが、長官科学技術庁が一手に集めてこの問題を小規模であろうと事例研究をやったことは非常にいいと思うのですよ。そうでなくても、縦割りの弊害がじわじわあるときですから、科学技術庁がせっかくここで事例研究をおやりになるということが、しかもお聞きすると、各官庁における研究機関なりが、このテーマで正式に取り上げていないんだったら、まず隗より始めよで、ここらから科学技術庁が新しいテクノロジーアセスメントに関して各省庁にまたがるものまで——またがるんじゃない、本来科学技術のあるべきものなんですから、これを全部やるというようなことをこの際おやりになったらどうでしょうかね。もしあまりはっきりほかの研究機関でやってないんなら、この分野に関してだけは科学技術庁が全部おやりになる。幸いに四十六、四十七、四十八年、これからも事例研究をやるわけですから、それを一緒におやりになったらどうですか。今度は初めて科学技術庁がその点だけはすぱっとやっていく、そうして、やがては科学技術政策の一元化というものが必要なわけですから、こんなばかな、日本みたいな、科学技術政策そのものが各官庁に分かれて研究開発まで行なわれているという、ばかげたむだをやっていてはいけないわけですから、非常にいいと思うので、この点だけは、各官庁機関その他で、現在こういうものを専門にテーマに取り上げてやっていないんなら、科学技術庁がもっと積極的におやりになることが必要だと思うのですが、どうでしょうか。
  17. 前田正男

    前田国務大臣 科学技術庁が全部やるというのは、これは理想でございましょうし、一番手っとり早いと思います。しかし、何ぶん現在の行政機構は、もう縦割りで、実によく縦割りにできておりまして、それをアセスメントの面だけを全部まとめてやるということも、実行においてなかなかむずかしいのでございます。それで、やはりそれぞれの機関が、その開発研究にあたりましては、みずからの責任においてやるようにわれわれが指導していくというやり方を——それでやり方といたしまして研究調整費の見積もりということをやっております。そういうことをやるにあたりましても、見積もり方針テクノロジーアセスメントということをその一つの大きなフィルターにいたしまして、そうして研究調整方針をつくっていく。そうして、それと同時にまた総合研究というか、各省庁にまたがるような問題につきましては当庁がやる、そういうやり方でいきたいというふうに考えております。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどちょっと触れたように、科学技術会議があるわけでしょう。科学技術会議は各省大臣、必要な大臣も出ているのかどうか知りませんが、出ておられるでしょう。そこで科学技術政策全体の調整も行なうわけでしょう。そうして、政策そのものもそこで策定するわけでしょう。そうですね。ということになるなら、いま長官のおっしゃったような各省庁にまたがっているものを、全部科学技術庁でやるのはどうかなんというんじゃなくて、非常にいいチャンスだから、科学技術会議あたりでも長官から主張されて、そうして、せめてこの面だけは科学技術庁でやるというふうにして一元化していくこと、積極的にそういう前向きの姿勢を出すことが必要じゃないかと思っているのですが、どうですか。
  19. 前田正男

    前田国務大臣 ただいまの点は、科学技術会議を実は近いうちに開きたいというふうに考えております。開きたいといいますのは、正式に内閣総理大臣の主宰のもとに開きたいと思っております。そのときに、幾つかの具体的な問題を答申するわけでございますけれども、そのときにも含めてそういう問題を議題にいたしたいというふうには考えております。考えておりまするけれども、先生、しつこいようですけれども、科学技術庁で全部テクノロジーアセスメントの仕事をやるというのは、現在の機構では事実上無理かと思うのです。実のことを言いましたら、実際はやりたいのです。もう待てぬというのが実はわれわれの気持ちなんです。みなやりたいと思うのですけれども、何ぶんこのような試験研究所長を集めただけでも百人以上も集まりまして、そのやっている仕事をみな当庁でやるということはなかなかむずかしい。むしろ研究所長みずからが、そういう会議を年に一回開いておるのですけれども、何べんも開いて、そうしてこういう姿勢でやってくれということを研究所長にも、また閣議においても関係大臣に言いまして、そうしてその方向に引っぱっていく、そうしてまた、各省庁にまたがるものがございますから、それはわがほうでやっていく。そういう姿勢で、結局は先生の御指摘の趣旨に沿うようにしていきたいのですけれども、やり方としましてはそういうやり方でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 会議に出してもこうなるだろう、ああなるだろうと、やはり縦割り行政のいろいろありますから、長官が用心してそうおっしゃるのはわかるのだが、それは必要な資料は全部集めればいいんだからね。ですから強い姿勢で、科学技術会議で近く行なわれるやつでおやりになるならやっていただいて、せめてこの面に関する限り、科学技術庁いっちょう、やってやろうというくらいな気魂と根性を持って強く主張して、必要があれば科学技術庁予算も、それから人員も、来年度とっていくというようなことをここでおやりいただきたいと思うのですね。これは科学技術に関する限り重要な基本になる問題ですから、ここらはチャンスですから、いまやったらどうかなというのが、実はいままでくどくものを申し上げた一つのねらいなんです。やっていただくようなら、われわれも協力を惜しみません。  せめてこの面だけでもそうすべきですよ。ばらばらにやっている手はないのですから。いまチャンスですからおやりになったらどうか。これは私の要望ですから、科学技術会議において強い主張をなさる、通してみる努力をされるというのでけっこうです。  そこで、次いで科学技術会議そのものに触れるのですが、科学技術会議は年に何回開かれるのですか。それから、構成のメンバーを簡単に、こまかいことまで要りませんから。それから議長が、総理だろうと思うのですが、だれかということを。
  21. 長澤榮一

    長澤政府委員 科学技術会議の議長は総理でございまして、関係大臣といたしましては、科学技術庁長官経済企画庁長官、文部大臣がお入りになっております。そのほか日本学術会議の会長もメンバーでございます。それから学識経験者といたしましては、兼重先生、黒川先生、芦原先生、藤井先生、吉田先生、こういうふうな方々がいまメンバーでございます。  開催は年に一回程度でございまして、近々一回開くことになっております。  ちょっと訂正いたします。大蔵大臣が入っておりますので、追加させていただきます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 技術会議が年に一回——二回だって三回だって少な過ぎると思うのですけれども、持たれる。そこで何を論議されるのですか。具体的にどんなことが、たとえば一番最近の科学技術会議では論議されたのか。その論議された提案の原案というものはどこで作成をしたのかというのをひとつ。
  23. 長澤榮一

    長澤政府委員 ただいまお話し申し上げましたのは本会議でございますが、そのほか運営会議というのをこれは月に二回開いております。それから連絡会議という事務的なものにつきましては毎週開いている。こういうことでございます。  科学技術会議で現在やっておりますことは、五号答申をいたしましたあとの追加答申という作業をいまやっておりまして、国際協力に関する研究目標、それから国民生活に密着した研究目標、こういうものをいま作業をしております。これがおのおの部会、分科会、ワーキンググループ等を設けまして、これは頻度高く各専門家の方々にお集まりいただきまして、近々まとまりましてそれを正式に報告する、こういう形になるかと思います。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどのメンバーの問題から先に言いますと、かつてはかくかくたる名声もあり、事実、力量もある先生方がメンバーになっている。だけれども、どうでしょうかね。いまお名前を聞いたような方々、非常にりっぱな先覚者ではあるのですが、現在、これから激動するこういう科学技術政策をつくっていこうとするのに——言い方がむずかしいんであとでおこられちゃいけないんですが、とにかくやる仕事といえば、リサーチベースから手がけていって実際の政策にまで行くのに、能力はあるのでしょうけれども、どうですか、いまのようなスピードに合わせながら新しい技術革新の時代に即応できるかどうか。もうちょっと新しい、若いばりばりした人が——科学技術庁だってずいぶんたくさんりっぱな若い技術者がおいでになるのだけれども、あまり名声だけにとらわれて格だけくっつけないで、もうちょっとつぎ足しといってはおかしいのですが、どうですかね。どうも正直、私もメンバーを見たのですが、これでちょっといいのかなあという感じがするのです。長官どうですか、言いにくいでしょうが、ずばっと言ってみてください。
  25. 前田正男

    前田国務大臣 ずばっと申し上げたいのですが、なかなかそうもいきませんで、法律を読んでみますと、「科学技術に関してすぐれた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する者 五人」、私はその選択をした本人でございませんからわかりませんけれども、おそらくすぐれた識見をお持ちの方だろうと思います。けれども、何と申しましても科学技術行政中心になって、これから躍動する社会情勢に対応していかなければいかぬのですから、やはり生き生きしたというか、そういう要素も必要であろうと考えます。私はただいまこれをすぐどうするというわけにはいきませんけれども、そういう先生の御指摘の点も十分考えて今後私は対処していきたいというふうに考えます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 あと科学技術会議あり方そのものに触れていきたいと思うのですけれども、原案の作成はどこでやるのかをお伺いしたのですが、どうですか。
  27. 長澤榮一

    長澤政府委員 原案の作成は各四つの部会が現在ございます。四つの部会の下に必要に応じまして分科会あるいはワーキンググループというようなものをつくりまして、いま専門委員の方を約六、七十名任命しておりますが、そういうふうな方々の御意見を事務局が取りまとめつつ原案を作成している、こういうことでございます。専門委員の方は、もちろん、はつらつたる若い方がずいぶんたくさん入っておられるわけであります。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 要するに、科学技術庁が主宰して原案を取りまとめるのでしょう。
  29. 長澤榮一

    長澤政府委員 科学技術会議事務局が取りまとめております。事務局は、科学技術庁計画局、それから大学に関するものにつきましては文部省学術局と科学技術庁の計画局が共同で事務局を担当しております。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 こまかいことはいいのですが、大ざっぱに言うと、科学技術庁が原案の作成の責めを負っている、こういうことになるのですよ、実際には。科学技術庁の計画局であろうと、それが科学技術庁でないとはいえないですね。現実の問題としては、科学技術庁が原案の作成の責めを負っている、提案する。  で長官、少なくとも二つここに矛盾があるわけですね。一つは、総理大臣の最高の諮問機関である科学技術会議の議長が総理大臣。その議長が総理大臣に答申するのも総理大臣ですよね。そうでしょう、科学技術会議の議長だから。総理大臣が諮問しておいて総理大臣が答申するのでしょう。一人ごキャッチボールをやっているわけですよね。そうでしょう。こんなばかなことが、日本のどこかほかにこんな機構がありますかね。国防会議ですか、それは。諸外国の例にはあまりない。日本のことはよく知りませんけれども、勉強していないから。そういう例があるにしてもないにしても、そういうばかげたことがあってはいけないという感じがします。それが一つ。  それから、その会議でもって審議する原案の作成は科学技術庁科学技術庁科学技術会議が策定した政策の実施機関、これもまたおかしいですね。実施機関が第三者的な諮問機関に原案の提出をするのですよね。そこで答えが出たものを行政的に実施する機関がまた自分だというのも、大きな矛盾じゃないかと思うのですが、どうでしょうかね。
  31. 前田正男

    前田国務大臣 確かに、先生がおっしゃるような、諮問する本人とそれを答申する本人と同じじゃありませんかというふうな御意見だろうと思いますが、そういう例がほかにもあることはあるのです。それは、貿易会議という会議がございまして、その説明をいたしますと……。(原(茂)委員「説明は要りません、それはおかしくないかどうかということです」と呼ぶ)しかし、まあこれは、諮問しておるのは行政部局の長としての総理大臣である、そうして答申しておるのは科学技術会議の代表者としての総理大臣であると、まあ二重人格ですね。そういう姿でしておるわけですが、それは先生、別におかしくはないと私は思うのですがね。総理大臣も、ほかの場合にもそういう例があるように思います。  ただ、その原案の作成でございますが、原案の作成が実施機関科学技術庁がつくっておいて、そうしてそれをまた自分答申を受けてやるというのはおかしいじゃないかと。確かに、もしそうだとすればおかしいのですが、まあ原案の作成は、科学技術庁の事務官僚がやるというんじゃなくて、手伝いというか、御指名を受けていろいろな材料を集めたりはするのですけれども、やはり大きなテーマとか大きな問題こういう方向に行きましょうということは、やはり科学技術会議のメンバーからの御注文によってそれは集めており、材料をまとめておるようでございまして、その原案をつくるにあたりましては、科学技術庁の役人だけじゃなくて、各省に対しても連絡をとって、こういうものを連絡をとりなさいという技術会議のメンバーからの御指示を受けて、各省にも渡りをつけて、そうして専門委員意見だとかそういうものをみんな取りまとめる、まあそういう事務、そういうワークをやっておるというのが科学技術庁のあれでございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 科学技術庁の計画局が、各省各機関意見を取りまとめようがどうしようが、科学技術庁の一部局であるものが中心で原案をつくるというのは、実施機関としてはやはり避けなければいけないことですよ。これは会社の経営だって、そんなばかなことをやったら、一体どこで監査をやる。そうでなくても、一つ部門ことに、一流れごとにチェックしなければいけないですよね。そんなばかなことが当然だという思想はどうかと思うのですけれども、まあ長官とぼくと意見が違うのだからしようがないですが、私は、総理の議長もおかしい、それから科学技術庁の計画局中心で、各省あるいは各機関意見を求め、調整をして原案をつくることもおかしいと考えていますから、この点はやはり何かの機会に一ぺん真剣に討議をして、そこらから改めていきませんと、日本縦割り行政は直らないですよ。じゃどうしたらいいんだということが別途に出てこなければいけないのですけれども、なかなか出てこない。現在のものをそのままいいとしている。あまりに保守的だ。日に新たに革新せよとは言いませんけれども、まわりはどんどん変化しているのですから、進んでいるのですから、それにつれて科学技術庁のものの考え方も、十年一日ではなくて——ちっとも変わっていないのですから、その点では。やはり変えるという前提で、いいものに変わっていく、いい組織にしていく、よりベターな、社会に対応できる役所のあり方に変えるということを常に検討し、少しずつでもいいから変化を求めていくということが必要だという意味では、研究をしていただく必要があるというふうに思います。  そこで、一つの提案なんですが、いま説明を受けましたけれども、現在、科学技術会議の事務局の構成というのがどのくらいか知りませんけれども、相当のマンパワーを置いて、企画と調整能力というものをきちっと持った、地位的にも力関係の上からも相当力のある人間が企画調整というものを専門にやる部局、この科学技術会議の中の専門にやる事務局というものが、ほんとうに相当の企画調整の能力を持ったもので構成されているようなことが、暫定的でもいいからできていかないと、どうもいまの総理の問題、それから実施機関の問題といい、全体で言うなら癒着の問題ですがね。この癒着を断ち切るわけにいかないのじゃないかというふうに考えますから、これもついでに——いまそういう前提で抽象的にお伺いしてもしようがないですから、ひとつお考えを願って、もし答えが出たら答弁をお願いいたします。それから、少なくとも研究はしていただくということをお願いしておきます。  それから次に、国際交流の問題なんですが、近く西欧連合の宇宙科学委員会か何かの人が日本へおいでになるのですね。二日か三日に来日をしまして、われわれともちょっと会談をしたいというお話があるのです。この西欧連合の性格について、まあ初めは、こういう国際交流をやろうということも、軍事的な科学技術の面の必要から起きたことが、だんだんアメリカから日本なりヨーロッパへ、産業への裨益というものを中心にした科学技術の交流へと転化して今日に至った。いまでは軍事面が全部とは言えないでしょうが、なくなって、そうして社会開発、もっと言うなら、ついこの間ローマクラブが主宰して国際的な会議を持ち、人間環境問題が取り上げられ、相当大きく世界的な警告を発するというところまで進んできた一連の思想が、いまの西欧連合の日本に来る諸君を含めた、いわゆる国際交流というものの前提に最近はなってきているというふうに考えているのですが、この点どうでしょうか。
  33. 前田正男

    前田国務大臣 ただいまの西欧連合の問題につきましては、政府委員から答弁させていただきたいと思います。ただ、科学技術の交流でございますが、従来は向こうのほうから受け入れるという立場技術交流でございましたけれども、これからの技術交流は、先進国として相互協力という立場基本的な姿勢が変わっていく、そういう基本姿勢でいきたいというふうに考えております。開発途上国はまた別でございますが、その他の点につきましては政府委員から答えさせます。
  34. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 西欧連合の問題正式には西欧連合科学技術委員会でございますが、これにつきましては、外務省に連絡がございまして、外務省が扱っております。ただし、この西欧連合につきましては、外務省の資料によりますと、修正ブリュッセル条約に基づきまして一九五五年五月に設定され、加盟国は、英国、フランス、西独、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグの七カ国でございまして、その性格は、先生がただいまおっしゃいましたとおりでございます。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 長官がくしくも言われたように、今後の科学技術における国際交流というのは、国際間における積極的な協力、それから責任の分担ということが前提にならなければいけないわけですね。そういう意味でいくと、いままで確かに日本国際交流というのは少し受け身だったように思うので、もっと積極的に協力といわゆる分担の姿勢というものが前向きに出てこなければいけないというふうに思うのですが、積極的に協力をする、分担をするということになると、やはり国の立場での人材の配置も必要になるだろう、あるいは予算という面でいっても、相当大きな予算が必要になるということがあるわけですね。そのことがどの程度になっているのか知る一つのきっかけに、ここ二、三年来世界の各国から日本に対して、この種の協定の締結、国際協力科学技術国際交流を前提にしたいわゆる協約の締結等の要求が来ていると思います。それで、諸外国のどんなところからどんな内容の要求が来ていて、それが締結されているのがあるのかというのを、最近の日豪その他を含めてかまいませんから、ここ二、三年でけっこうですから、実績をひとつ……。
  36. 前田正男

    前田国務大臣 その点につきましては、ソビエトあるいはその他の国からも来ておるようでございますが、その詳細につきましては政府委員からお答えさせます。
  37. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御承知のように、科学技術の中でも原子力につきましては、米、英それからオーストリー、フランス等と二国間協定が行なわれております。その他一般科学技術分野につきましては、具体的な協力関係が、たとえば韓国その他に行なわれております。御指摘のございました科学技術協定を結ぼうという申し出は、ソ連が来ておりまして、これは正式に外務省がいま検討中でございます。その他、非公式には二、三の国の非公式な希望はございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 ソ連のは知っているのですが、その非公式なのは言えないのですか。
  39. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御承知のように、協定となりますと、窓口は外務省でございますので、私どもは二、三仄聞はしておりますが、ここで申し上げる立場でないと思います。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、科学技術庁でわかるのかどうか知りませんが、たとえば、ある種の協定によっては、何か明確な条件つきで協定が結ばれる場合があると思うのですが、外務省でないとその条件の内容はわかりませんか。
  41. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 失礼でございますが、一般的なお答えになると思いますが、原子力協定等は、御承知の核物質の移転がございますので、保障措置等の問題がございます。ただ、仄聞するところでございますと、一般科学技術協力協定は、情報の交換とか人材の交流とか、ひいては共同研究というふうなものでございますので、特に条件等はないやに聞いております。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 いまお話のあった人材はいいのですが、予算の面がそこで出てくるのです。一般のものでも、費用に関する条件というのはついているわけですが、それはわかりませんか。
  43. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 正確には存じませんが、御承知のように人材の交換は、派遣費用とか滞在費の問題でございまして、これにつきましては、予算の問題はあるわけでございます。情報の交換につきましては、それは有償、無償——もちろんこういうものは大体アンブレラのようなものでございますから、中の条件はそれとからまるということでございますが、共同研究につきましては、確かに、発展いたしますればそれぞれの国で予算措置をするというふうなことに、一般的にはなると思います。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの答弁の中にありましたように、人材の派遣、交流の費用もあります。それから、共同研究の費用もある。この費用に関する助成というのは、科学技術庁考えないといけない分野が相当あるのですよ。科学技術庁というか、国の立場ですね。そういうところを真剣に取り上げて専門にやろうというところがきまっていないのですよ。これをやらないと実は推進できない。日本の積極的な姿勢というのは出てこないのですね。どうですか、そういう点で。
  45. 前田正男

    前田国務大臣 国際交流人材交流のための経費といたしまして、昭和四十八年度で千二百万円ばかり計上いたしております。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 その千二百万も知っているのですが、それではだめなんですよね。もっと積極的にそういうものを予算化するときに取り上げて、真剣に討議して、これだけは必要だというものがもっと大幅に出てくるようにしていかないと、国際交流日本が積極的にやったという姿勢にならないという点を配慮していただくように、これは今後の問題としてひとつ考えていただきたい。  まだ国際協力の問題で、いろいろ具体的に人間の問題その他言いたいのですが、これはまたあとに譲ります。  時間がなくなりましたので、最後に地震の問題をちょっと……。これもいまの組織、機構の問題に触れるのですが、この間年末にニカラグアかどこかに大きな地震がありましたね。あんなに一万も二万も死んだ理由というのは、何か真下で起きたというのですね。何でもマグニチュード六・二五ぐらいですか、真下で起きたからあんなに被害が起きたというのですが、それでは、いま東京にいますから、東京の真下に起きたらどうなっちゃうんだろうと考えるのですが、真下に起きないのだという保証もないわけですね。明治二十七年、それからその前にも一回、どこかにあったわけでしょう。東京の真下で起きた地震がありましたね。ですから、これから起きないとはいえないと思うのですが、たとえば六・二五ぐらいの地震が東京の真下で起きたら、本所、深川なんかたいへんでしょうけれども、一体、全体の被害をどういうふうに想定しているのか。これは局長にお聞きするほうがいいでしょうね。
  47. 千葉博

    ○千葉政府委員 この真下から起きたらどういうふうになるかというのは、想定は実は私どもまだ聞いていないのでございます。これは総理府の中央防災会議あたりが大体中心になって、いろいろこの被害の想定その他やっておるのでございますが、御案内のとおり、いろいろな地震災害によります、たとえば東京の被害の計算その他やっておりますけれども、いわゆる関東大震災程度のものがいろいろ想定されるんじゃないかというようなことが、これはいろいろ幅はございますけれども、学者先生方の間で議論されておるわけでございます。  それから、つけ加えますけれども、マナグアの件につきましては、なぜあれだけの被害が起きたのかというようなことは、実は調査団をいま派遣しておりまして、まだ戻っておらないのでございます。これは、関係各省集めまして、科学技術庁が費用の一部を分担いたしまして、それでいま出しております。あれが戻ってきまして、そういったようないろいろな想定をする基礎データが明確になるというような期待を持っております。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 東京の真下の地震なんといっても、まだ想定もしていないんだそうですが、いろいろな想定をすれば、地震というものの被害の度合いというものは出てくるように技術的にはなっているのですか。たとえば、関東大震災級のものがいま起こったときにはこの程度の被害が起きるというようなことが、もう想定されているのでしょうか。
  49. 千葉博

    ○千葉政府委員 申し上げましたような関東大震災級のものですと、死者は数十万、損害は約二十兆円ぐらいになりはしないかというような一つの想定が、これは消防庁あたりが中心になっていろいろやっておるということは私どもよく聞いておるのですけれども、これは前提がいろいろございますので、非常にむずかしい問題であるというように私どもは理解しておるわけでございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 地震の予知というものは現在もうずいぶん長くやっておりますね。四十四年ごろから正式に、予知連絡会か何か知りませんが、できて、萩原先生が会長でおやりになっていると聞いていますけれども、その前から地震の予知の問題に関しては相当研究されてきたんですね。  それで、予知連絡会ができて、四十四年から今日に至って、つい最近になって、関東大震災のあとの沈降がだんだん激しくなってきて、ついに三浦半島、房総半島を中心に、これは強化指定をしたほうがいいというので強化指定をされた。南関東と言っているのですかね、強化指定をした。あるいは埼玉の岩槻に、三千五百メートルのあれをやって研究をしておる、こういうのですが、いまの南関東の強化指定をするほど、とにかく関東大震災以後の沈降が激しくなってきて、何ですか、これは危険だというのですか、地震がありそうだというのでそういう指定をしているのですか。地震の巣みたいなものだから、いつあるかわからないので強化指定をしたというのですか。強化指定をしたというのは、これは理論的にどういう——簡単に言いますとね、私のようなことばで言うならば、この南関東に近く大地震の危険があるというので、一号だか二号だか知りませんが、指定をしたのか。それが一つ。  それから、いま南関東の地域の強化指定をされたのですが、ほかには、その強化指定をするような地域はいまはない、日本じゅう、南関東に匹敵するような、強化指定を必要とするような危険のある場所はもうない、こういうことなんでしょうか、ほかの指定がないということは。
  51. 千葉博

    ○千葉政府委員 いまの指定の問題につきましては、所管官庁国土地理院でございますので、そちらのほうが答弁するかと思います。
  52. 井上英二

    井上説明員 いまのお話につきまして簡単に御説明申し上げます。  関東大震災がまた起こるかどうかという問題、これは実は測地測量という測量をやっておりまして、それで、関東震災のあとに測量しまして、それから現在測量をしてきておるわけでございます。マグニチュードで申しますと、大体七程度あるいは七少しこえたぐらいのエネルギーがたまっている。ところが、この地域で言いますと、変動はずっと持続しておりますけれども、それは異常変動ということでもない、しかし地殻というものは非常に複雑なものでございますので、それでどこか一カ所弱いところでもあれば地震を起こす可能性があるということで、厳重な警戒は要りますけれども、現状ではまだすぐ地震が起こるというような徴候は出ていない。しかし警戒だけは十分しなければいかぬ。  それから、これ以外に地震の起こりそうな地域というのは特定地域というのが別に、観測強化地域のもう一段下でございますが、これは全国に八カ所指定してございます。その中でも東海地方につきましては、あるいはこれからの測量のやり直し、あるいは大学あたりの研究を総合いたしますと、東海地方もまた将来強化地域にしなければならぬような事態が生ずるかもしれません。まあ現在では、関東地域だけが観測強化地域になっておりまして、あとの八カ所が一段下の特定地域になっております。  その次の東海地方あたりがあるいは危険になるかもしれないという……(原(茂)委員「八カ所の地名を言ってください」と呼ぶ)地名といいますと、まず北から申しますと、釧路の辺でございます。それから秋田周辺。それから新潟でございます。それから関東がいまの観測強化地域になっております。それから東海地方が特定地域になっております。それから北陸の福井近辺。それから大阪近辺ですが、これは危険というよりも、大阪は非常に大きな都市だということも考慮いたしまして、以前地震が起こっておりますので、ここも特定地域に入っております。それからあとが、島根県から出雲の辺を中心にした地域。それから周防灘の地域でございます。その八カ所がいま特定地域ということで、一応警戒はしているという段階であります。  ただ、関東地方につきましては、やはりある程度の警戒は必要であろうということ、しかしいますぐ起こるという徴候は、現在の技術ではちょっとつかめていないという現状でございます。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 つい、おとといか、さきおとといあたり、ちょっと小さい地震がありましたね。御存じですね。ああいうのはわかっていたのですか。起きそうだという感じがあったのですか。地理院で調べたりなんかやるのでしょう。やった結果、ことによると来るかなと思っていたのですか、どうなんですか。おととい、マグニチュード四だとかなんとかいっていましたがね。どうです。
  54. 井上英二

    井上説明員 現在、残念ながら、地震予知でやっておりますのはマグニチュード八程度の関東地震程度の大きな地震に対していまやっと緒についたというところでございます。それ以外の、先ほどお話のありましたニカラグアの地震だとか、日本でいいますと福井の地震だとかいろいろございますが、こういう地震につきましては、現状の測量程度の荒い測量ではやはり十分につかめない、もう少しこまかい測量をやらないとだめだろうと思います。それ以外の、これは地理院でやっております、私どもの担当しておりますのは地殻変動、非常に長期的な、エネルギーがどれぐらいたまっているか、どの地域があぶないか、それから非常に長い期間でこの辺があぶないという予報しかできないわけでございます。  これもただ、現在研究段階でございますが、それ以外に、大学関係で連続的な地殻変動の観測もしておられますし、それから気象庁で地震の観測をしておられます。あるいは地質調査所あたりで地震波の速度とか、防災センターで岩槻の穴だとか、いろいろやっておられますので、そういう情報を全部総合しませんと、ほんとう意味の地震の予知はできないわけでございます。それも現在はまだ、実はいままでありました断片的な知識の集積でございまして、これをほんとうに実際の予知ができるようにするには、やはり相当のデータの集積をしなければいかぬ、そういうふうに考えております。  実は最近、エネルギーの蓄積ということは、いまのわれわれの測量の結果からある程度わかってきましたのですけれども、やはり本番の予知ということになりますと、これは試運転からそのまま本番に入るような感覚でございまして、なかなかすぐに予知ができるというのはちょっと言いにくいのじゃなかろうか。しかし、将来こういうデータを集積いたしますと、ある条件の上で予知が可能になる。予知といいましても、何時何分ということはとてもいかないと思いますけれども、いつごろどの地域でどの程度の地震が起きるという大ざっぱな予知が、そういうデータが集積しますとやれるようになるのじゃなかろうか、このように考えております。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 端的に伺いますが、ある程度というのですが、いまの研究の進め方で行くと、八前後じゃないと、という目標ですか、四とか五なんというのはとてもいますぐにはわからない。八前後だ、それが一つ。それから四であろうと八であろうと、地震の予知というものはこの時期ならわかります、できます、というのはいつごろですか。
  56. 井上英二

    井上説明員 実は、マグニチュード八とか七とかいう数字は、一しか違わないのでございますが、実際八と七というのは三十倍ぐらい規模が違う。そうしますと、四というと非常に小さな地震になりますし、非常に範囲も狭うございますので、とてもこれまでの予知は不可能であろうと思います。また、現に四ぐらいの地震ではそう大きな被害は起こらないであろう。やはり、差しあたり考えなきゃいけないのは、関東震災級の八の地震、これは大体太平洋沿岸に起こります。  それから、もう一つこわいのが、先ほどの東京の下で起こるような七程度の地震。この予知だけは何とかしなければならぬと思うのですけれども、残念ながら現状では、たとえば東京近辺の測地測量をやろうといたしましても、非常にきめのこまかい測量をしなければいけませんし、現在、東京の状況を見ますと、なかなか建物もこんでおりますし、測量もしにくうございます。相当都民の方の協力でも得まして、そういう測量に対して非常に理解が得られるようになって、ある程度の予算がつくようになりましたら、われわれ、実はちょっとこれは違いますけれども、もともとわれわれの測地測量というのは、地震予知ということで出発したのではなくて、国土開発保全のため全国の正確な位置と高さをきめよう、それをたまたま繰り返してやったために、われわれの本質的な測地測量を遂行した結果として、そういう地殻変動がわかり、地震予知につながっているということでございますが、それをもっときめこまかくやりますと、そういう点がもう少し突き詰められると思います。現在、いつ予知ができるかということになりますと、現状ではまだちょっと無理じゃなかろうか、もう少しデータの集積が必要じゃないかと思います。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 長官、いまお聞きのように、地震の予知連絡会というのかできていて、もう数年たっているのですけれども、実際には予知ができる段階にいまもきていないし、いつということも言えない状況にあるわけですね。しかも連絡会なんというのは、予知というものを目的にしたんじゃないというような感じすら出てきましたね。私は、地震予知というものは必要かどうかということについては、絶対必要だと思うのです。これは学問上からいっても何としてでも究明しなければいけない重要な課題でしょう。ただ東京の七、あるいはいま言った一般的には八とおっしゃるのですが、私は地震というのは四でも五でもおつかなくてしようがないのですがね。だから、精神的なショックなんかを考えたら、病気の人なんかまいってしまうかもしれませんし、だから七でなければいけない、八ならあぶない、幾つならということよりは、予知そのものがもっと完全にできるようにしていく必要があるだろうという意味で、地震予知連絡会というもののあり方なんですが、これはせっかくあればわれわれも期待しますよ、予知連絡会で何か地震の予知ができるのではないかと思って。ところが、予知連絡会というものは一体法制上の何か籍があるのでしょうか、これが一つですね。それから予知連絡会というのは一体どのくらい会議を持たれているのか。そのメンバーはどういうメンバーか。実際に常任、常勤といいますか、この予知専門にやる事務局というのが予知連絡会にはないのではないかと思いますが、この四つをひとつ御答弁をお願いします。第  一の問題は長官からね。
  58. 前田正男

    前田国務大臣 ただいま原先生の御指摘の、地震国日本でありまして、何としてもこの予知を精力的に研究を早くしなければいかぬ、私ども全く同感でございます。一体、予知連絡会は何をしているのだというふうな御指摘があるのはあたりまえだと思います。これは一生懸命やらなければいけません。  私も、実は役所で答弁材料をつくってくれまして、これをずっと読んでみても、この予知連絡会なるものの構成ですが、この構成は大学も入っておりまして、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、高知大学、それから国立研究機関はうちの防災センター、それから文部省の緯度観測所、通産省の地質調査所、運輸省の気象庁、海上保安庁水路部、建設省の国土地理院と、まあそうそうたる官庁、試験研究機関がみな入っているわけであります。しかし、あまり能率があがっていないじゃないかというふうな御指摘でありますが、まあこれは、おそらく一カ所の研究所だけではなかなかいかぬ問題ではないかと思う。長年かかって相当一生懸命やりましても、能率があがらぬところを見ますと、なかなかむずかしい。オールスタッフ・キャストといいますか、全員が総合してやらなくちゃいかぬ問題じゃないかと思います。  しかし、ただこのままその問題が終わっては、いつまでたっても予知の能率があがりませんから、何かそこに少しビタミン注射でもやって、早くやるように取っ組まなければいかぬというのは私も同感です。どういうふうにこれをやるべきであるか、いまにわかに私も名案はございませんけれども、何とかそういう姿勢で、当庁、私どもとしては、防災科学技術センターだけでございますけれども、これはぜひひとつ、従来の決定は閣議の了解事項になっておるようでありますので、これは閣議で了解しても決定しても同じことでありまして、形式は同じことなんです。したがって、現実にどういうふうに推進していくかということを、ひとつ関係の閣僚あたりとも一ぺんよく相談いたしまして、別に何とか会議というのではなくて、事実問題としてそういうふうに何とかしようではないかということで、一ぺん御相談してみたいと思います。
  59. 千葉博

    ○千葉政府委員 大臣が御答弁のとおりでございまして、実は現在は、どっちかといいますと、まだ学問的な段階でございまして、これを何といいますか、技術的に実際の予知に持っていくという段階までまだなっておりません。したがいまして、この四十三年の閣議了解のあとも、一体どういう組織でいこうかということだったのだそうでございますが、まだまだ学問的にいったら一体どうなんだろうというところの段階で、学者先生方が集まって、そこでいろいろな基礎的なところを御研究になるというような段階なので、それでこういうように各方面の、これから構成を申し上げますけれども、人が集まって、お互いに連絡をし合いながら、その持ち分のところを進めていこうというような趣旨だと聞いておりますので、それ以降少しでもこれはいけそうだということが出てくれば、これはもう行政のベースに上げまして組織的にぐっと押し出すことができるのでございますけれども、そういったような段階にまだなっていないという現状でございます。  したがいまして、この構成につきましては、事務局は国土地理院で、それで国土地理院のほうからあとでまた詳しくそのメンバーの名前は出るかと思います。また、主としてやっておりますのは気象庁、これは地震のいろいろな問題につきまして、気象庁が中心になりましていろいろ国民にお知らせするということになっておりますので、気象庁、それから地震研究所、緯度観測所、水路部、地質調査所、大学も六つの大学が関係しています。私のほうはどっちかと申しますと、その立場と申しますのは、これの足らないところを補って推進していこうというふうな立場で、大がかりな、たとえば先ほど御指摘の三千五百メートルの井戸みたいなものは五億もかかりますので、私のほうの防災センターでお引き受けをして、こういったものの学問的な分野が進むようにお手伝いをしていく、こういうことでございます。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わりますが、長官、いまお聞きのように、地震というものは重要な問題なんですけれども、この予知に関してもうちょっときちっと責任あるポストをきめまして、いまのように、ただ学者の集まった仲よしクラブなんだ、あるいは研究交流機関だと言っているのでは全く心もとないのです。したがって、地震予知連絡会が法的にもきちっと基礎を持ち、そして、各研究機関に対するにらみもきくというようなものに仕上げて、そこに予算を思い切ってつけてやるということをやらなければ、縦割りの弊害が一番この地震に出てきているわけです。これを大至急に変えていかなければいけないと思うので、長官もそこのところを真剣にお考え願いたい。地震はあんまりないがしろにしてはいけないと思うのです。何か周期でいうと、そろそろ来るのではないかといわれておりまして、こちらはびくびくしているのです。少なくとも地震予知連絡会がせっかくあるのですから、これを中心にか、あるいはそれをモデルにしながら、もっと予知に関して専門的に取り組んでいく機関というものを思い切ってつくる。その機関は各研究機関ににらみがきくようなものにするということで一元化しませんと、井上さん、木村さん、どなたにと聞くと、皆さんは、私どもの分野はこうでございます、私の調べたのではこうでございます。しろうとのこっちが三つ聞いて判断しなければ地震がわからないというようなばかなことを、日本政治がやっているというのはおかしいので、そういう点をひとつ十分に検討していただいて、地震の問題をお願いしたいと思います。  それから、委員長にお願いしたいのですが、地震の問題に関しては、正式に参考人その他を呼びながら、各研究機関の責任者にも来ていただいて、この現状をそれ専門に一度お聞かせをいただき、しかも役所のいろんな縦割りの弊害があります、この弊害に関しては、どこにどういうものがあるのか、われわれが知って対処できるように、参考人を広く呼んで、専門に一度この委員会で討議していただくようにお願いしたいと思います。終わります。
  61. 石野久男

    石野委員長 ただいま原委員からのお話がありました、地震に関しての参考人を呼んでいろいろと討議する件については、他日理事会にはかって善処したいと思います。  次に、瀬崎博義君。
  62. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現地からの要請を受けまして、私、三月二十六日、原石川県会議員と一緒に、直接関係住民代表や向こうの町長さんにお会いをしてまいったわけなんですが、そのなまなましい、具体的で緊急を要する問題について質問をしたいと思います。いままでの御質問とは違って、きわめて具体的でございますので、お答えも具体的にできるはずの問題だと思います。  昭和四十二年の七月に、石川県知事と北陸電力の社長との間で決定された石川県羽咋郡志賀町に建設予定の能登原子力発電所問題については、今日までの経過の概略は、長官、御存じですね。
  63. 前田正男

    前田国務大臣 その計画につきましては、まだ電源開発調整審議会にも提出されておりません段階でございまして、計画及び地元問題の詳細については聞いておりません。
  64. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかし、これは昨年五月の本委員会でも、ほんの端々だけですけれども、堂森議員さんだったか出しておられるのです。ですから、科学技術庁の関係が全然御存じないというのは、ちょっと当を得ないと思うのですが、いかがですか。
  65. 成田壽治

    ○成田政府委員 北陸電力の能登原子力発電所の問題は、まだ正式に電調審にかかっておりませんので、正式な話としては聞いておりませんが、いろいろ社会的な問題もありますので、われわれも新聞あるいは関係者からいろいろ聞いております。四十二年の七月から調査の申し入れをして、四十七年の八月には赤住原発対策問題協議会が発足し、そしてことしの三月には、赤住区民総会においていろいろな決をとったというような情報も聞いておりますが、これは調査するという意味で当事者からいろいろ聞いておるところでございます。
  66. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 電調審に持ち出されたり、あるいは原子炉の設置に対する許可申請が出されたりしてから、具体的に用地の買収とかいろいろ行なわれるならいいのです。しかし、全然こういうことなしに用地買収だけは現地で先進むのです。ここに問題があるのです。そういう意味で、こういう問題は、やはり具体的に現地で問題が起こった時点から、責任の衝にある長官としては、詳細にその事実をつかんでいただきたいと思うのです。  当初この建設予定地は、志賀町の赤住地区とその隣の富来町の福浦地区にまたがっている計画であったのが、昭和四十五年六月の段階で、北陸電力側は、赤住地区の用地の百四十二万平米は買収したものの、あと福浦地区での用地買収が事実上困難になってきて、赤住地区だけで用地を全部確保するということに方針を変えたわけですね。ですから、そのぐらいの理由は、当初から計画変更が起こっているのですから御存じあるはずだと思うのですが、そういう計画変更されたいきさつ、理由等についてお聞き及びでしょうか。
  67. 成田壽治

    ○成田政府委員 われわれ、関係者から聞いている限りの話でございますが、当初赤住と福浦両地点を考えておりましたが、福浦のほうの反対が非常に強いので、赤住だけの立地を考えて福浦地区の買収を断念した。これは昭和四十五年の十月ごろの話だったと思います。そして赤住地区の二十六万平米の土地の追加買収を申し入れたというふうに聞いております。
  68. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのときの福浦地区住民の方々の反対の理由は何であったのですか。そこまで調べていられるんだから、おわかりでしょう。
  69. 成田壽治

    ○成田政府委員 反対の理由は、これは県が中心にやっておりまして、われわれは具体的には聞いておらないのであります。いろんな問題があったと思いますが、具体的に何が福浦地区の直接の決定的な理由になっておるかということは、聞いておらないところでございます。
  70. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当然これは、原子炉の設置の申請段階になってくれば、こういう当初からのいろんな住民の意見というものをしんしゃくなしには考えられない話なんですね。にもかかわらず、いまの局長お話を聞いていたら、お寒い限りでしょう。これではたして法的にいって、長官、責任持てると思いますか。ひとつ、おたくの中の問題として、とりあえずここで御意見を承りたいと思うのです。
  71. 前田正男

    前田国務大臣 瀬崎先生の御指摘に対しまして、私の答弁はまことに官僚的な答弁になるかもわかりませんけれども、北陸電力が土地を確保したとかせぬとか、そういう実は発電所立地の前段階でありまして、その段階でどういうことをやっておるかということは、事実は正式にそういうことを言ってくるまではわからぬわけです。事実上そういうことを聞いたり、いろいろな新聞とかあるいは地元のそういう声で聞くことがありますけれども、やはり正式にそういう申請があって、初めて役所として発動するのが従来の考え方でありますので、実際、局長答弁を私も聞いておりまして、どうもあんまり詳しいことを知ってないように思いますが、瀬崎先生、いまのやり方でやむを得ないんじゃないか。やっぱりある程度正式にそういう文書が出て、電調審にかかってどうのということになってからじゃないと、事実上発電所を一応つくりますというわけでやっておるかどうか、それはやっておるそうだという程度で、別に当庁には連絡も何もございませんし、どうもまことに役人型の答弁になって恐縮ですが、そういうことじゃないかと思います。
  72. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これが火力とか水力であるならいざ知らず、事は原子力であるだけに、そういうことでは私はいけないんじゃないかと思うのです。それは追ってかわって私が事実関係をずっと申し上げていきますから、そういうものをそのつどお聞きになっていろいろと御判断を承りたいと思います。  結局、福浦地区の人たちの反対理由の最大なるものは、やはり原子炉の安全性に関する危惧の念が強かったわけなんですね。その結果、いま局長から説明のあったように、赤住だけでやっていこうということで二十六万平米の追加買収を志賀町の赤住地区に押しつけてきたわけなんです。この時点で、普通だったら、そういう理由のもとに福浦の住民の人たちが反対したんだから、まずその住民の反対している問題に対して解明するのが筋なのに、それをしないで、一次買収で成功した赤住なら比較的楽にやれるんじゃないかという程度のことでおっかぶせてきた、こういう北陸電力の態度についてはどういうふうにお考えですか。
  73. 成田壽治

    ○成田政府委員 電力会社の土地買収の問題、これはまあ当事者の問題でありまして、われわれは役所として相談も受けておりませんし、これは地元、県あるいは関係市町村と当事者の問題だというふうに考えております。それで、北陸電力が昭和四十五年の十月ごろから計画変更をして、そして問題の少ないといいますか、福浦ほど根強い反対のない赤住地区だけで立地をするように計画変更をしたということは、これは当事者の問題としてはまあいたしかたない問題ではないだろうかと考えております。
  74. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当事者の問題にしろ、住民の反対の理由が、主としていまこれは政治的にも科学的にも問題になっている原子炉の安全性の問題でしょう。そのことについて、全然住民側に対する釈明の努力を行なおうとしないで、用地の確保だけを最も安易な方法に見出していこうとしたそういう電力会社の態度がもし許されるとしたら、原子力問題というのは全部突き当たると思うのですがね。そういう点では、これはやはりそういうことがあれば、電力会社にそういう時点での報告を求めるなり、そういう話を聞けば積極的に出かけていって調査をするなり、こういうことが政府としては必要なんじゃないですか。
  75. 前田正男

    前田国務大臣 原子力発電の大前提は、確かに先生おっしゃるように、安全性ということをいかにして確保するかということでございます。ただ土地だけ先に買うてこれで押しつけてしまうというふうなやり方は、もしそういう考え方だとすれば私はあんまり芳しくない、非常におかしいと思いますけれども、どうも土地取得ということは、なかなか一朝一夕に簡単にはいかぬ場合があるという立場から、おそらくは、あらゆる場合を考えて準備しておくという意味じゃないか——私は知りませんけれども、全然これは聞いたわけでもございませんし、ただ、いかに用地を電力会社が確保したにしても、それは安全性の点から審査するのがわれわれの仕事でございますから、いかに土地を確保して持ってきていただいても、安全性の点から落第すればこれはアウトでございます。その点は別に確保しようがしまいが、われわれの審査は厳正公平にやりたいというふうに考えております。
  76. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 長官は、たとえ電力会社が土地を確保してしまっておろうとも、後ほど問題があるということになれば、そういうものにこだわらない、そういういまのお答えだというふうに私は受け取りますから、そういうことで次に進みます。  こうした事情に対処して赤住の地元の住民の方々は、地主や区の委員会、船員の会、婦人会、赤住を愛する会など八団体の代表者二十四人による原発問題対策議会を結成されまして、赤住の住民のほうは民主的に住民間意見の調整をはかりながら、北電側との交渉を進めてこられたわけなんです。そして昨年四十七年五月二十日、対策議会は、住民の意思決定をするために赤住地区全体の住民投票を実施したわけです。この住民投票は、一カ月の猶予期間を置き、かつ記名投票という方法で行なわれたそうです。ところが、この投票が行なわれた時点で県、町当局が調停に入った。どういう調停かはちょっと私わかりませんが、調停だとおっしゃるのです。調停に入って、その投票を開票させなかったのです。だから、現在でも投票結果は不明なんです。この事実ぐらいは御承知と思うし、実はこの前後の問題が昨年五月の本委員会に若干出されているわけです。ですからこれは、知らないと言ってもらっちゃ困る問題なんですが、こういう事態については、大臣ちょっと異常な問題だとお思いになりませんか。
  77. 前田正男

    前田国務大臣 決して言いのがれする意味じゃございませんけれども、瀬崎先生、私その事実をいま初めて承ったわけでございまして、あるいは局長は聞いておるかもしれませんけれども……。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ局長
  79. 成田壽治

    ○成田政府委員 われわれとしては直接に電力会社から聞いたわけではありませんが、いろいろ情報として五月二十日に住民投票を行なったが、県の調停によって開票が保留され、これを受諾するかどうかというのが赤住区の臨時総会において非常にもめまして、そして流会になってそのまま保留になっているという状態については聞いておるところであります。
  80. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこにやはり一つ問題があると思うのです。確かに去年の五月のここの委員会でこういう詳しい話は出ていないのです。しかも五月二十日の投票後の話ではなくて前の話で出ているのですが、しかし私も、その議事録で見る限りでは、こういう混乱が予想されるような内容については言って前ぶれされているわけなんですから、少なくともそういうことが国会に出された以上、これは積極的に担当の科学技術庁のほうが県なり電力会社なり地元の赤住区なりに対して、結果に対して関心を持ち調査をするぐらいの誠意がなければならぬと私は思うんですがね。その点は長官どうです。
  81. 前田正男

    前田国務大臣 いやしくも委員会において議題になった事項につきましては、役所といたしまして極力調査とか乗り出すべきだと思います。しかし、これは一般論でありますが、こういう発電所の問題につきましては、とにかく電調審にかかりまして発電立地というものをきめて、申請がありまして、それからわれわれは審査にかかるという手順をとっておりますので、これは役所としてもっと前段階からこれに関係してはどうかというふうな御意見だろうと思いますけれども、どうも先生、いまのやり方では、その前段階のところまでタッチしていない、またそこまではタッチしないという方針で実はいまいっております。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、タッチしないという方針がはたして妥当かどうかということは、これはいずれ最後までお話していけば結論は出てくると思うのです。  こうした異常な事態が起こってきたために、民主的に意思決定をはかろうと努力していた住民の間の賛成、反対のグループの関係が一ぺんに悪化したわけなんです。つまり、反対派、賛成派というはっきりとした対立がこの区、地元の中に生まれてしまったわけなんです。そのためしばらく話し合いは行なわれなかった模様でありますが、ようやく昨年の八月になってもう一回審議しようじゃないかということで区の総会が開かれたそうです。この段階で一致した結論というのは、四十八年、つまりことしの三月末までに合意に達しない場合は、原発用地買収問題は凍結しよう、こういうことであったわけなんです。  こういう赤住住民代表が一応区の総意をきめられた経過等については、私はこれは非常にもっともなやり方だと思うのですが、長官はどうお考えですか。事実を直接私聞いてないとおっしゃるかもしれませんが、私も国会での発言ですから、いろいろ聞き及んだ中で、少なくとも事実関係にまず間違いないということだけしか報告しておりません。住民はこういう手順を踏んだわけなんです。こういう点については、住民内部の問題として私は妥当なきめ方だろうと思うのです。こういうものは尊重しなければならぬと思うのですが、長官はどうお考えですか。
  83. 前田正男

    前田国務大臣 どうも、ちょっと私その事実関係をはっきりしませんので、政府委員から答弁させます。
  84. 成田壽治

    ○成田政府委員 県の調停によりまして住民投票が開票できない状態で、そして五月の二十一日に臨時総会をやっても、非常に混乱して決がとれなかったという状態、そういう部落の平和を乱すような混乱した状態を何らか打開しようというので、八月十八日に臨時総会を開きまして、そして五月二十日の住民投票は破棄する、そしてこの問題は慎重に継続審議しよう、これは四十八年三月末をタイムリミットとするという期限がついておったようでありますが、慎重に継続審議して、地区の意思を決定するにさらに身長を期そうという、方針としては妥当なことだったのじゃないかというように考えております。
  85. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 詰めれば、大体あなたのところも一定のことは知っているわけじゃないですか。だからそういうことをちゃんと長官にも伝えて、責任ある回答がもらえるように当然やってください。  ところが、こういうふうなきわめて妥当な住民の意思決定の方法を地元の方々がとられるのに閉口いたしまして、今度北陸電力のほうからは札束攻勢という形で猛烈な圧力が住民にかかってきたわけなんですね。まず十月三十一日北陸電力は、赤住区に対しまして協力費として四億四千万円出そう、こう言ってきたわけなんです。しかし、これでもなかなか住民の同意が得られないと見出しまして、さらに一月後には、北電側は一億円上積みしてまいりまして、都合五億四千万円の協力費を出そう、こう提示してきたわけであります。  北陸電力側が示している五億四千万円の内訳は、区の基本財産に対する迷惑料として一億円、区の道路事業等の協力費として三千万円、区の基本財産協力費として二千万円、松戸港の建設協力費として二億二千万円、これは住民の方のお話によれば、核燃料廃棄物の積み出し港に将来なるんであろうと推定される、こういう話です。それから北電施工事業協力費として一千万円、これはおもに上水道事業等だそうです。それから保育所建設等の福祉協力費及び奨学資金として一億円、その他の協力費五千万円であるわけです。用地買収が北電側の思うように事が運んでいる間は、徹底して単価を買いたたいて金を出し渋っていたらしいんですが、その電力会社がこの段階に来てこういう条件を提示してきたこと自体、全くこれは筋の通らない話だと思うのですね。単にさっきおっしゃっている、あらかじめ用地を買収しておかなければというようななまやさしいものではないわけなんですが、この点は長官、ひとつ一定のお考えを示していただけるでしょう。
  86. 前田正男

    前田国務大臣 それが札束の攻勢といえるかどうか、それは知りません。けれども、当事者間の契約条件というものは、お互いに、契約する場合はいろいろな条件を出し合ったり、ケース・バイ・ケースといいますか、ケースによっていろいろ違う場合があろうと思いますので、このやり方が全部いけませんとか、この行き方が全部よろしいとか、そういう結論はちょっと私としては申し上げかねるわけでございます。
  87. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が言っているのは、協力費を出しちゃいかぬというのじゃないです。初めはずいぶん土地代をけちっていたそうですよ。それがいよいよ困難となってくると、矢つぎばやにこういうふうに新しい条件を、しかもお金という形で出してきた。こういうやり方がはたしていいかどうかというふうに私はお聞きしているわけなんです。  つまり住民は、主として原発の安全性にいろんな危惧を持っているわけなんです。これについて正当な解明を行なうことなしに、世にいわれていることばでいうなら、金で横つらを張るといいますか、こういうふうな形で、しかも本来は出せない出せないといっていたものを出してきたわけなんでしょう。こういうことではたして住民が納得するとお考えになりますか。ますますもって、原子力発電問題について住民側の理解を得にくくするもとだと私は考えるので、一電力会社の問題としてほうっておけるような問題じゃないと思うのです。政府も見解を示さなければいかぬと思いますが、いかがです。
  88. 成田壽治

    ○成田政府委員 用地の買収の問題あるいは補償額の問題、これは電力会社としてその間いろいろ交渉をしておったようでございます。また、原子力の安全性等についても、対策議会として東京の学者等も呼んで研修会等も十一月ころやっておるというふうに聞いております。
  89. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、そういうことを住民の方々がいろいろやって、電力会社側が誠意を示さないから、自主的に検討されているのです。そういう段階で、片っ方から、これでもかこれでもかと札束攻勢をかけてくるようなことをすること自体が、私は妥当かどうかと言っているのです。そういうふうな経過があるのでしょう。だからその間は、私は電力会社としてはしばらく静観するぐらいの立場が必要だろうと思うのです。ですから、これは長官に、こういうふうなことを電力会社に許しておっては、決して原子力問題についての正しい政治的解決というものは生まれてこないと思うのです。一言お願いいたします。
  90. 前田正男

    前田国務大臣 ただそのお金でできるだけ横つらを張ると申しましょうか、俗なことばで。そういう姿勢ではいけません。補償したら何でも解決するのだというのじゃいけません。ことに原子力の場合は、先生指摘のとおり、放射能に対する安全というものはみな非常に危惧いたしておりますので、その点が十分安心ができるようにしなければいけないということも大きな要素であろうと思います。しかし、そういう発電所に関連してやはり地帯整備といいましょうか、道をよくするとか、あるいは水道をよくするとかそういうふうなことも、そういう機会にやろうというその申し出があれば、これを受けてもいいんじゃないかと思うわけでございますが、ただそれによって問題をすりかえちゃいけない。それも必要である。しかしまた、安全性の確保ということにも十分努力をし、ただ金だけで解決するという姿勢はいけないと思います。
  91. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま申し上げましたのは、区全体に対して出してきた北電側の新しい条件なんですね。ところが、個々の住民に対しても同じような一種の札束攻勢と見られるようなことをやっているわけなんです。つまり、個々の地主には一方的に、追加買収土地代金等の明細書を送りつけてきているわけなんです。これは私も見せていただきました。内容は、田は坪一万一千四百円、畑は坪六千円、山林は坪二千八百円、原野は坪一千六百円、ため池は坪一千六百円、これらはいずれも一次買収をはるかに上回る価格だそうであります。一方的に、あなたの公簿面積はこれこれだと記入して、金額まで計算して通告をしてきている、こういう内容になっております。加えまして、第二次買収に応じたら、すでに買収を終わっている第一次分の土地についても七〇%の価格上のせをするというような強引な提案を、個々の地主に出してきているわけであります。ですから、どうでしょうか、こんなやり方ではたして住民の協力が得られるのでしょうかね。万事金の力でけりをつけようとする北電側の強引なやり方に、住民は反発することはあっても、これで従うと考えることは、さっきの長官お話ではないが、ますますもって問題のすりかえだという印象を与えることにしかならないと私は思うのです。こういう事実なんですよ。ですから、もう少し明確に、こういう北陸電力のやり方に対しては、長官としてもはっきり批判的見解をここで、国会の場で、明らかにしてもらいたい、こう私は思うのです。
  92. 前田正男

    前田国務大臣 北陸電力がもし、ただ金ですべてを解決していこうという姿勢なりとすれば、われわれもそれは問題だと思います。現実にどういうふうにアプローチをしていったのか、それは私も知りませんけれども、その点はそういう札束だけでいくという考え方ではいけない。ただし、必要な補償とかそういうものは必要だろうと思いますので、その点がなかなかむずかしい問題であろうと思います。しかし、何べんも申しますように、原子力発電の安全性というもの、それがやはり一番基本的な問題であろうと思います。
  93. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 こういうふうに片方では民主的に何とか住民の意見をまとめていこうとする努力、片方からは札束攻勢で住民の努力を破壊していこうとする努力、こういうものが入りまじってたいへん混乱した状態の中で、ことしに入って二月、再び対策議会が開かれまして、北陸電力側のいま申し上げましたような提案を受け入れるのか、それとも拒否するのかということについて投票が行なわれました結果、十二対十二という賛否同数の結果になったそうです。  これは対策議会においてです。同数ですから、これはやはり区の総会で住民投票できめようじゃないかという話になりまして、三月二十四日に再度住民投票が行なわれた、そういうことになりました。ところが、この総会は不在者に投票の権利を認めない。というのは、赤住というところは船員さんの非常に多いところで、そういう方はみな遠洋航海に出ていらっしゃる。そういう不在者に投票の権利を認めない。それから、出席者百五十八人に対して、何と委任状で出席にみなしてくれというのが八十六人もあったそうですね。これも異常だ。さらには、再度住民投票に訴えるわけだから、当然、前回県が調停して破棄になっております五月二十日の投票結果なるものも一応明らかにしないと、あれを没にしておいて今度のやつだけを生かすということもおかしいではないかというふうな、いろいろな意見が出たそうですが、結局、そういう意見を無視して議事を強行されようとしたために、反対派の人々は七十三人退場してしまったそうです。結局、残った八十五人で強引に総会が行なわれまして、一方的な投票になり、そのうち七十九人賛成、これに委任状分八十六票を加えまして賛成百六十五票という結果を、言うならでっち上げたわけですね。そして、その賛成派の人々の中からのみ十人の交渉委員を出しまして、今後北電側との交渉を進めようといましているわけなんです。ですから、常識的に考えますと、こんなむちゃな意思決定の方法はないと思うのです。  こういうところへ住民を追い込んで行ったのには、先ほど申し上げました、お金でこれでもかこれでもかと条件をつり上げてきた北電側の態度や、住民の方々は、暗に裏で一部の区の有力者に対して北電側あるいは県側が策動を行なっているとまでおっしゃっているわけなんです。そういうふうに見られてもしようがない事実じゃないかと思うのですが、いま申し上げました経過を長官お聞きになりまして、これはいかにもむちゃだなとお思いになりませんか。
  94. 前田正男

    前田国務大臣 はたしてその投票が具体的にどういう状況であったかということは、いま先生お話を聞いたような様子では私として判断いたしかねますけれども、現実に私もその場におったわけじゃありませんし、どうだということは申し上げかねますけれども、しかし、いずれにしましても、とにかく投票というものの根拠が札束攻勢によってゆがめられたものであるということだとすれば、ちょうど選挙と同じことでありまして、われわれの選挙の場合でもそういうようなことはいかぬわけでありますから、それと同じことで、やはりそういう金によってすべてを解決するという姿勢はいけない。それがすべてのそういう意思決定にも影響するとすれば、かんばしくないことだと考えます。
  95. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当然のこととして、退場されました反対派の人々は、いままでかつて委任状を含めて賛否をつけたようなことはなかったし、また、原発問題のようなとりわけ重要問題は、出席者の三分の二以上の賛成で決するというこれまでの区の運営の慣例を全く無視した暴挙だから、総会としては無効だという声明を出していらっしゃるわけなんです。もちろん、そういう方々と私はお会いしているわけなんですね。それも大ぜいの方とお会いしていますから、一、二の片寄った意見ではないと思います。私が二十六日直接会いました約十人ほどの住民代表の方々も、口々に専門科学者の間ですら意見の一致していない安全性のいろいろ問題のある段階で、後に憂いを残すようなことはしたくない。それから、大企業や、政府も含めておっしゃっていましたね、あるいは県は、あの悲惨な水俣の場合から推定しても明らかなように、決して住民の命を大事に考えてくれておらぬ。これは事実関係は御存じだと思いますね。いろいろなネコが発狂したような問題を押えておったというようなこともおっしゃっていました。そういう点では信じられない。大体こういう美しい自然を金とは引きかえにできないというふうな切実な訴えをしておられたわけなんです。大臣は、こうした切実な訴えを直接お聞きになったわけではないけれども、私はその事実を申し上げているわけなんですが、住民は、電力会社側の出方によって反応のしかたの強弱の度はありますけれども、原発問題に対して大体これと似たり寄ったりの感情をお持ちなんですが、こういう住民感情についてどうお思いになりますか。
  96. 前田正男

    前田国務大臣 ただいまの御指摘で、政府も企業者も地元も知事もみな一緒になって、住民の命を軽視するというふうな姿勢というふうにちょっと承りましたけれども、そういう考え方は毛頭ございませんから、どうぞひとつ誤解のないようにお願いをいたしたい。
  97. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 長官はそうではないということですが、しかし実際過去やってきた電力会社やら政府や一部の自治体の態度には、確かに住民がそういう危惧するようなことがあったと私は思いますね。しかも、新聞に発表されました中西石川県知事の談話によりますと、こういう不正常な赤住地区の総会の結果に対しても、こう言っているのです。審議の結果は受け入れることに決定されたと聞いたが、この結果は地元の自主的な努力による解決として敬意を表する。さらにつけ加えて、建設推進の意向も示しておられます。大体がこの話というのは、住民の中から起こった話ではなくて、上から、つまり知事と電力会社の社長とがかってにきめた非民主的な原発建設計画なんですが、これを赤住の住民に押しつけて、実に混乱が起こってきたわけなんです。そして地元がいろいろと解決のために努力している分については、調停と称して、かえって介入と見られるようなことをやっておきながら、住民に自主的解決の責任を持たして、よく解決してくれたなどと事実に反するような発表をしている。  こういうことで、現地の住民は、全然知事は当てにならぬ、こういうふうな気持ちを持っていらっしゃるわけなんですね。そこから、地元の住民の方々は、これはもう政治の問題だ——さっきいろいろ手続上の問題をおっしゃいましたが、そんなものはもう待っていられないし、また地元の県などのあっせんで解決するような問題でもなさそうだし、ましてや電力会社は全然問題にならぬということで、ぜひ政府に対して要望してほしい、こういうことになってきたわけなんですね。  つまり、第一に、北陸電力に対して第二次の用地買収をとりあえず中止させてほしい。第二の問題としては、これは一般的な問題になるのですが、原子炉の安全性や環境保全の問題が科学的に完全に確立されるまでは、原子力発電所の建設を待ってもらえないか。三番目の問題としては、基本法には自主、民主、公開の原則がはっきりうたわれているのだけれども、現実にはちっともそれが守られない。さっきちょっとお話しのように、政府にしてからが、いまの段階ではちょっと手を出しにくいというようなお話ですね、現実には。ですから、実際その法の趣旨が守られるように政府が責任を持ってほしい、こういう点を要望していらっしゃるわけなんです。ひとつ大臣、この三つの要望について具体的に一つずつお答えをいただきたいと思うのです。
  98. 前田正男

    前田国務大臣 知事がどういうふうな発言をしたか、私、いま先生に聞いたわけですが、これはどういう条件下においてどういうお気持ちで御発言になったか知りませんけれども、知事というのは、やはり民主的な選挙によって選ばれた、いわばその地方の民衆の代表者である、県民の代表者であるという意味におきまして、電調審でも地元の知事の意見を徴するということになっておりますから、やはり知事の意見というものは、そういう地元の声を代表するものだというふうにわれわれは解釈をしております。現実にどういうふうに地元の意思と反したことをあるいはおっしゃるかどうか知りませんけれども、一応そういう電調審において地元の関係知事の意見を聞くというのもそういう御趣旨であろうと私は考えます。  それから、土地の買収を中止しろという話でございますが、(瀬崎委員「とりあえず」と呼ぶ)とりあえず中止しろということでございますが、これはほんとうに、瀬崎先生、別に役人的な逃げ口上じゃありませんけれども、これは事実行為でありまして、事実行為だけれども、原発に関係するじゃないかというふうにあるいはお考えであろうと思いますけれども、われわれは、どの地区ですか、赤住地区をどうしておるかという事実は私、非常に不勉強で知りませんけれども、おそらく局長も、これは報告を聞いた程度だろうと思います。従来はそういうやり方をやっておりまして、現実に、正式にそういう申請が出てから審査をする。そうでないと、あるいは何かほかの用途で土地を買う場合もありますしいたしますから、その点は、土地を買ったからすぐにわれわれがそれに取り組んで、どうだこうだという——やはり正式に出てからでないと安全審査もできませんし、その点は、だからいま私がそのことをとめるとかいう問題じゃないというふうに考えております。  それから、安全性の点はもっと改善すべきではないかという点、これも確かに先生のおっしゃるとおりでありまして、安全性は解明しなければいけません。したがって、具体的に原子炉の設置の申請が出ました場合には、規制法によりまして原子炉安全審査会で——審査会にもいろいろございましょう、もっと審査会を拡充したらどうだという、いろいろ意見があると思いますけれども、普通、審査会というと、専門家の人が寄ってこれを技術的に審査をするわけでありまして、その点はまだ学者が不安を持っているじゃないか、きのうも藤本論文はどうのという意見が出ましたけれども、この論文についても、いろいろなそれに対する反対の意見も出るやに聞いておりまして、そういう論争がおそらくここ一、二年出ると思いますということを聞いております。また、どんな意見が出てくるかわかりません。その段階において、原子力委員会としても藤本論文——特にその論文だけを取り上げるわけではありません、いろいろな意見が出てくるのでありまして、一々その答えはしておるわけにいきませんけれども、そういうふうな問題についても非常な不安を与えておりますから、原子力委員会としての考え方も発表したいと思います。けれども、具体的には原子炉についてケース・バイ・ケースにその安全審査に取り組んでいくという点をひとつ御理解をいただきたい。  それから、自主、民主、公開の原則、これはどういうことでございましたか……。
  99. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 法律にうたわれておって、実際にはいまも申し上げましたような経過のように、これが守られていないわけです。踏みにじられているわけですね。住民は自主的に民主的に解決をしようとするのだけれども、これを許さない。そういう事実がありながら、先ほどからの答弁のように、実際に申請が出てこなければ政府も動けないなんておっしゃるでしょう。それでは、法律は国民の側から見れば守られていないと一緒だから、実行の責任を政府は持ってほしい、法律がちゃんと生きるようにしてほしい、こういうことなんです。
  100. 前田正男

    前田国務大臣 自主、民主、公開という原則は、これは何べんも申し上げましたように、原子力行政の憲法でありますから、この点を守っていくという基本姿勢には変わりはございません。  ただ、その具体的な適用の場合、方法として、先生は、発電会社が土地を物色しかけたころからそろそろ原子力委員会がタッチしたらどうかという御意見かと思いますけれども、それは現在はやはり正式に出てきませんと、それがまだ、電調審の会議にもかけなければいかぬし、その会議ではたして一体どうなるかわからぬということでありますので、それからわれわれとしてはこの問題にタッチして、自主、民主、公開という原則によって処理していきたいというふうに考えております。
  101. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 住民の方々の反対が、たとえば土地の値段が安過ぎるとか、もっともっと地元に対して具体的な協力をしてくれなくてはいかぬというふうな条件で反対をしていらっしゃるのなら、それはいまの長官ことばは当たるかもしれませんけれども、現在はもう明らかに、幾ら金を出したって住民の方々は納得されないわけです。問題は、いろいろと科学者同士の間でも意見が食い違っておる、現実にまた日本でも世界でも事故の例があるというふうなこと、それからいろいろなあの地域の立地条件という問題もからんで、主として政府原子力行政の力をかりないと解決できないような問題で反対をしていらっしゃるわけですね、いまは。そうでしょう。県やら一つの町の町長に原子力発電の安全性の問題を確かめろとか、確認せいといったってできっこないですよ。何かあったときに全部補償しろ、これもできない話でしょう。これはもっぱら国の問題にならざるを得ないわけですね。それが、いまの住民が反対し、電力会社側と対立してくる最大の原因なんです。そういう意味で、すでにここの段階まできたら、政府は知らぬ知らぬでは済まない。とりあえず、電力会社はいまの法律には違反しないようにやっているかもしれませんけれども、政治的な問題としては、住民から見れば、明らかに原子力基本法の精神を踏みにじられておる、こういうふうに受け取っておるわけですから、そういう段階で、住民の要望として、とりあえず三月三十一日をもって原子力発電所の用地問題については凍結しようということが大体の一致した意見なんだから、それを守ってもらいたい。町をそういう形で一たん平和にしてほしい。そうして論議は、そういう安全性の問題なども今後いろいろきわめることとして、住民も話し合い、昔のような平和な状態の中でこの問題の意思統一をはかっていきたい、こういう希望なんです。ですから、その点については電力会社に勧告くらいはできるでしょう、私思うのですよ。どうですか。
  102. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電所の安全性について、いろいろ不安があり、これがまた誘致反対の理由になっておるというお話でございますが、実際原子力発電所の安全性については、規制法による申請が出まして、これが原子力委員会にあります原子炉安全審査会——これは三十人くらいの各分野専門家からなる審査会によって各面からの検討をやって、その上でパスしたものは、これは安全である場合に通るわけでありまして、そういう意味ではいまの原子力発電所、一般的には安全でないという見解もありますが、具体的な問題としては、安全審査会が通るかどうかという問題で、その点の解決がなるんではないだろうか。おそらく県知事、あるいは町長等の考えも、安全性については、将来規制法による申請を出して、それが通るならその点についての問題が解消するというふうに、この問題を考えておるんではないだろうかというふうに考えております。  それから三原則、自主、民主、公開の三原則は、われわれはこれは原子力行政原子力開発利用の分野で第一番に守るべき最高の要請でありますが、ただ、今度の事態、北陸電力と民間、地元の関係者との関係が非常に民主あるいは公開の原則に反するかどうかという問題は、これはわれわれはもっと具体的な事実を調べ、また県当局あるいは町当局等とも十分調べた上でないと、一がいに断定できない問題だろうというふうに考えております。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、いまの局長答弁は、いま私が話してきた事実経過について、これは事実に反するかもしれないという前提でお聞きになっているのですか。あるいは具体的な事実でないという気持ちでお聞きになっていたのでしょうか。
  104. 成田壽治

    ○成田政府委員 いままで先生指摘の事実関係は、大体そのとおりだと思いますが、ただ、この実施に対して、県知事の見解あるいは志賀町長の見解等を、新聞の記事でございますが見ますと、自主的に円満な解決でこの問題が解決になったんだという見解も出ておりますので、この解釈についてはわれわれはあまり即断できない、もっと調べないといけない問題だろうというふうに考えております。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしたら、そういう点について調べるということだけはやるのですね。もし調べた結果が、いま私が申し上げましたような内容と一致して、これは現在の電力会社のやり方が、少なくとも原子力問題の基本を定めた三原則に反するやり方であるというふうになったら、長官は当然のこととして一定の勧告はやはりするのでしょうね。
  106. 前田正男

    前田国務大臣 まことに先生の御意思に反した、あるいは役人的な官僚的な答弁とおっしゃるかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、手続的というか、法制的には、あくまでも前段階といいましょうか、そういう段階なんですね。前段階において——その土地を先にいってどうするか知りませんけれども、手の打ち方をしているということだろうと思いまして、われわれのほうでそれを役所の仕事として調査するという、現在法制的に、まだ申請もないそういうものを調査をする権限もありませんし、それは、事実上原子力発電のためにやっておるのじゃないかということになるのかもしれませんけれども、やはりそういうものが正式に出て、関係知事の意見も聞いて、そうして電調審の手続も経て、そういう段階を経てからするということに相ならざるを得ないというように考えております。
  107. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、一応そういうふうな段階、手続が経られた場合には、当然いままでのこういう経過については、十分念頭に置いて判断をなさいますね。
  108. 前田正男

    前田国務大臣 その点は、原子炉安全審査並びに環境との調和、そういうふうな問題を審査するに際しても、やはり地元の理解と協力、そういうものは必要でございますから、どういうふうに、先生のおっしゃったようにどういういきさつになっておるか、そういう点もよくわれわれは参考として行政処分をいたしたいというふうに考えております。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、参考までに言っておきますけれども、知事あたりは、現地の赤住から見れはだいぶ雲の上になりますから、そう痛痒を感じていないようでありますけれども、志賀町そのものの町長さん、尾崎さんという方なんでありますが、その方あたりになりますと、これはやはり直接住民と接触しているので、現地が賛否ほぼ半々ぐらいに分かれているわけですね、ですからそういう状態では苦慮していらっしゃいますよ。だから、新聞発表ではああいう形でありますけれども、私たちのようにつまり革新の立場にある議員が行けば、またそれなりのニュアンスの話になってくるのです。結局、私らにおっしゃっている町長さんの話は、つまり国家的要請ということで、もしも住民が円満に受け入れてくれるならということで、いままで推進努力してきた。この方は大体推進派の方ですよ。しかし、ここまで町の平和が乱されてくると、これから先は、当然国家的要請をいままで押しつけてきた国のほうでやはり考えるべきではないか、こういうふうにおっしゃっておりますね。これに対する回答は求めませんけれども、新聞発表などをごらんになるときには、そういういろいろな意味があるということを含めて解釈を願いたいということを申し上げたいと思います。  最後に、私は、結局そういうことで、現地に呼ばれて行って見て、何度も繰り返されている原子力利用の三原則が踏みにじられているモデルケースのような感じがしたのです。ですから、先ほどからの長官お答えによれば、いまの法律では手続上、実際の申請が出てきてからでないと、あれこれ行政的な措置はとれないというお話なんでありますが、はっきりと原子力発電だという目的ですべて今日用地買収にかかられてくるのですから、そういうものがあとでしか処置できないという現在の法律の仕組みも、そうなってくると問題じゃないかという気もするのですよ。そういう点についてどうですか、前向きに検討してみようというお考えはありませんか。
  110. 前田正男

    前田国務大臣 前向きと申しましょうか、前向きというのはよく使うことばでございますけれども、どういうふうにこれをとるかの問題でございますけれども、できるだけ早く、そういう原子力発電というものについて、何に使うかわからぬというような土地をあっちこっち買い占めて、それを、さあ原発で使いますというようになっても困るでしょうから、そういう場合も事実問題としてはあると思います。しかし、なかなかそれが、最初から役所がすぐにタッチするのは、どの辺でタッチするかという問題ですね、それが現実の問題としてなかなかむずかしい問題であろうと思います。現実問題としてはですね。しかし、とにかく原子力基本法の自主、民主、公開というこの原則に、あらゆる場合にできるだけこれが実現できるような姿勢というか体制というものはとっていかなければいかぬ。それはいつから具体的に前向きで入っていったらいいのかということになると、よく検討しなければいかぬ問題であろうというふうに思います。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この問題は、いずれにしろこれでいわゆるけりがつく問題ではなくて、ますます問題は大きくなるだろうと思うのです。ですからまた、いずれ継続していろいろと問いただしたいと思います。  終わります。
  112. 石野久男

    石野委員長 次回は、来たる四月四日水曜日午後一時理事会、一時十五分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会