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1973-03-07 第71回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月七日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 守良君    理事 細田 吉藏君 理事 兒玉 末男君    理事 斉藤 正男君 理事 梅田  勝君       阿部 喜元君    大竹 太郎君       唐沢俊二郎君    國場 幸昌君       關谷 勝利君    渡海元三郎君       徳安 實藏君    西村 英一君       宮崎 茂一君    山村新治郎君       井岡 大治君    太田 一夫君       金瀬 俊雄君    久保 三郎君       神門至馬夫君    紺野与次郎君       三浦  久君    石田幸四郎君       松本 忠助君    河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君  出席政府委員         運輸政務次官  佐藤 文生君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省船員局長 丸居 幹一君         運輸省自動車局         長       小林 正興君         運輸省航空局長 内村 信行君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君         海上保安庁長官 野村 一彦君  委員外出席者         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 中村 四郎君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     宮崎 茂一君   田代 文久君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   宮崎 茂一君    小此木彦三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件(過疎地域バス事業に関する  問題等)  海運に関する件(船員労働時間に関する問  題)  航空に関する件(日航の管理体制に関する問題  等)  海上保安に関する件(海洋汚染に関する問題)      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  陸運海運航空及び海上保安に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保(三)委員 本日は、主として船員法に関係してお尋ねをするわけでありますが、端的に申し上げますならば、船員法第六十七条第一項の解釈についてお尋ねをします。  この解釈については昭和三十七年に、私が当委員会で当時の船員局長との間でこの解釈を議論いたしました。その当時六十七条第一項の臨時の必要のあるときに船長が時間外労働命令できる場合は、船舶航行の安全について関係があるところに限定しているものであるという当局解釈でありました。それ以降これは現在係争中であるそうでありますが、昭和四十四年一月十七日、札幌高裁函館支部労働問題に関係する船員の時間外労働についての裁判がありまして、その判決はいま申し上げたように、船長が時間外労働を命ずる臨時の必要のあるときは、船舶航行安全保持上必要と認められるときと限定して判決を出しておるわけであります。そこで三十七年の当委員会での当局とのやりとりの結果、六十七条第一項の解釈について通達を出すことを約束したわけでありますが、その後今日に至るもその通達なり解釈がオーソライズした形で内外に発表されていないのであります。そのためにいろいろなところで問題が紛糾しておりますので、この際、船員法六十七条第一項の解釈について的確に明確にしておきたい、こういうように思うわけでありますが、まずもってどういうふうにこの措置をとられてきたか、昭和三十七年の当委員会での船員局長解釈について、どういうふうな扱いを今日までやってこられたか、これをお伺いします。
  4. 丸居幹一

    丸居政府委員 久保先生の三十七年の御質問につきまして詳しく議事録で調べたのでございますが、私はこの船員法六十七条一項の解釈につきまして、当時の船員局長答弁説明不足であったというふうに考えます。  六十七条第一項で当時答えておりますところに、六十八条に規定してある規定と同じような意味答弁をされておるというところが第一点でございます。それはすでに六十八条に、船舶が危険にさらされたときのオーバータイムというものは規定されておりますので、これは六十八条で読むべきものであって、六十七条にそれが入っておるというふうに解釈することはできないのじゃないかと思います。船長の航法上の権限というものとそれから管理者的立場にある船長命令というものが二つ考えられると思うのでありますけれども、その前者のほうを重要視するあまり、後者説明を漏らしたのではないだろうかというふうに考えておる次第でございまして、私はこの船員法六十七条の時間外勤務というものは六十八条にも含まれていない、そういったものがやはりこの六十七条でオーバータイム命令船長がすることが許される規定であるというふうに解釈すべきものと思います。  そこで、通達の件でございますが、通達について検討いたしますということを申しておりまして、それから十年ほどもたちますのに、今日までそのままになっておるのはまことに申しわけないと思うのでございますが、ただいまどういう通達を出して、そしてこの六十七条がオーバー解釈されないように、あくまでも船員法船員保護立場に立って規定した法律でございますので、これは船長判断する場合にはあくまでも客観的に是認される判断でなければならぬというふうに考えますので、何かその辺に客観的な判断の材料になるようなものが発見されれば、そういうものを例示いたしまして、そして通達を出したいということで、基準課長をわざわざ訪船させまして、そして船員の皆さんからいろいろ意見を聞いて、何かそういった具体的ないい例はないだろうかということで検討をただいまいろいろいたしております。なるべく早く結論を得て、通達を出すべきものであるという結論になれば、これをなるべく早く出したいというふうに現在考えている次第でございます。
  5. 久保三郎

    久保(三)委員 いまの解釈でありますが、当時の船員局長解釈について、六十八条の規定と混同しているようだという、議事録の中でそういうふうになっているというお話であります。ここに議事録の写しを持ってまいりましたが、なるほど中途で六十八条に含まれるような内容の説明と混同しておることは事実であります。しかし、その後私が、それは六十八条の規定であるということで指摘しておりまして、もとへ戻って解釈をしているわけでありますから、それは問題ではないと思うのです。  ただそこで、一つ問題というか、この解釈でありますが、六十八条は緊急性問題だと思うのです。これは臨時で、しかも船舶並びに航行の安全のための緊急性に基づく時間外労働問題である。これは一つには乗り組み員である海員自身の生命あるいは財産にも関係するものであるから、解釈のしようによってはノーペイである、当然だというふうにもあれかもしれませんね。しかし三十七条は、緊急性はないが、臨時に必要なときというのはあるわけです。緊急性はないとするならば、もう一つ別な形で、この乗り組み海員に対して直ちに時間外労働命令する以外の方法もある、そういう場合が一つあると思うのです。  それはどういうことであるかというと、たとえば航路が二つあるとします。一つは狭水道を通っていく航路がある、もう一つ大洋を通っていく航路がある、こういうようにしますと、急に時間を短縮して行くのには狭水道を通らねばならぬ。それには、船舶航行の安全のためには当直をふやさねばならぬ。だから臨時にやらせるという解釈があるかもしれません。しかしそれはそうではないのですね。そういう航路を指定していくとするならば、当然船の乗り組み定数について、狭水道を通過するに必要な定数を乗り組ませるというのがたてまえだと思うのですよ。だから、そこまで拡大して六十七条第一項を解釈することは誤りである。だから定数が、狭水道を通り得るだけの乗り組み員を乗せていない場合は、当然これは、外洋を回って、時間がかかっても航行せざるを得ないというふうに、極端な例でありますが解釈するのが当然だとわれわれは考えているのです。ただし、六十八条でいうように、船舶遭難あるいは財産、積み荷がおかしくなる、あるいは他の船を救助する、あるいは正午におけるところの位置観測をするというような乗り組みの場合は、これは六十八条で緊急を要するものであるから、他の手段方法をもってしては要員を確保できない、だから六十八条は六十七条と別個に、例外規定として設けている、こういうふうに解釈していいと思うのです。いかがでしょう。
  6. 丸居幹一

    丸居政府委員 狭水道を通る場合にオーバータイムが起こることは先生の御指摘のとおりでございます。ただ、狭水道を通るという、その状況にもよるのじゃないかと私は思います。たとえば何日も大洋航海いたしまして、そしてわずかの狭水道を通る、そこには、全員配置につくということになっておりますから、非番になっている者がオーバータイム命令を受けることは確かでございますけれども、しかしそれは非常に長い航海のその一部分でありますので、これは陸上で考えてもやはり通常オーバータイムが許されるものではないかというふうに思います。しかし、それが狭水道を通るということが——たとえば瀬戸内海を通行する船が、大部分は瀬戸内海を通っておる、そして広い海に出るのがほんのわずかであるという場合でありますと、先生指摘のとおり常にオーバータイムが重なるということでございますので、これは当然六十九条の定員という問題に入ってきて、そういうオーバータイムをさせないような定員を乗せなければいけないという六十九条が当然働いてこなければならぬものだというふうに考えます。そこで狭水道問題につきましては、狭水道が全体の航海の中でどういう比重を占めるのかということが、この六十九条の定員問題に入るかあるいは六十七条のオーバータイムで解決することが許される範囲であるかということの分かれ目になるのではないだろうかというふうに思います。
  7. 久保三郎

    久保(三)委員 いまの局長説明の中で、長い航海の中で短かい時間狭水道を通る、そういう場合に臨時オーダーができるということでありますが、これは計画的なんですね。ところが、六十七条は臨時の必要が出たとき。これは臨時ではないのですね。だから、おあげになりました例から見るならば、私がさっきから申し上げているとおりの解釈でやらないと、これは幾らでもできるのですね。  だから、話を別に展開しますが、陸上におけるものと条件の違うことは、陸上では、求めるならば労働力は、無限大とはいわないが、ある程度外から求められる。ところが、航海中の船舶については求め得らないということが一つありますね。しかも、継続的に航海中は船員労働をしなければならないという条件一つあるわけです。そういう条件の中で閉鎖的に労働をしなければならぬ。だから、無限大にこの労働を延ばすことを規制しなかったならば、船員からだそのものにも危険がくるということでこの船員法はできていると言っていいと思うのですね。  おあげになったような、いわゆる所定のコース最初から計画的なコース航行する場合に、たまたまいままでの長い時間と違った作業が出てきても、これは臨時ではないのですね。臨時ではないのだから、六十七条で臨時に必要ができたときというのは、あなたがおあげになった解釈とは違う。だからこの際はやはりきちっと臨時に必要ができたとき——それ以外はないと思うのですね。臨時に必要ができたということは、一つは、あるいは回避される方法があるかもしれぬということですね。六十八条と違う点はそこだと思うのです。六十八条は、回避できない事態が目の前にできてきた、これをほかの方法手段でだれかにかわってもらうということはできないから、しかも全員でやらなければならぬ仕事でありますから、乗り組み員の多い少ないにかかわらず、船舶航行安全について、あるいは遭難船の救助について、あるいは正午の位置観測について、全員配置につかなければできない仕事でありますから、六十八条は限定して例外規定、有無を言わさず船長命令に従いなさいというやつです。これは当然だと思うのですよ。六十七条は、命令に従うといってもそれとちょっと条件が違う。臨時の場合です。臨時の場合というのは、言うならば、回避される臨時の場合とは、それはどういう状況かというと船舶航行の安全のために臨時に必要な場合です。恒常的なことではないのです。恒常的に必要な場合でないのですよ。あなたがおあげになったのは恒常的に必要な場合ということでこれは解釈が出てきますね。いかがでしょう。
  8. 丸居幹一

    丸居政府委員 臨時の必要の解釈は確かに先生おっしゃるとおりにいろいろあると思うのでございますけれども、私はやはり勤務の形態としての臨時の必要だというふうにこれはとるべきものじゃないだろうかと思います。たとえばわれわれの勤務にいたしましても、毎年何月かになれば必ずこういう仕事が起こってくるというようなものもございますが、しかしわれわれですとポストがかわることもありますし、いろいろいたしますから、そのポストについて毎年一年のうちに何カ月か必ず起こる仕事であってもそのために定員をふやすということはなかなか許されないというふうな問題もございます。船にいたしましても、航路についてその船が必ずしも狭水道を通るとは限らないので、たとえば甲の船は今度は狭水道を通る航路に配船されるかもしれませんが、その次はあるいはBの航路に配船されていくということもありますので、その狭水道を通るということ自身がその船にとってはやはり臨時に発生する事柄である。ただ、そういった狭水道を通るということが常にその船について起こり得るとかりに仮定いたしましても、それは勤務全体から見ればやはり臨時の必要というふうな解釈の中に入るべきものじゃないだろうか。特に臨時の必要という解釈がそういうふうに行なわれてきておりましたために、さっきも申し上げましたように、非常に長い航海をしてちょっとそういうところに入る、あるいは船が港に入るという場合も同じでございますが、まあ船は出ていけば必ず港に入るわけでございますけれども、港に入れば当然に船長配置につくし、みんなも配置につくということでオーバータイムが起こってくるわけでございますけれども、これもやはり船の常識としてそういうものがあり得るのだということで、港に入る場合の定員でもって全部が組まれていない。それは港に入るということが勤務条件としてはやはり臨時に属するからだという解釈で今日まできておるのじゃないだろうか。もしそれが臨時解釈に入らないならば、やはりそういったもののオーバータイムというものを別の条文でもって規定されなければならない。そこで、そういう規定がないということは、やはりそれが臨時の必要という解釈の中に入るのだということで今日までの解釈がきておるのではないか、そういうふうに考えるのでございますが……。
  9. 久保三郎

    久保(三)委員 横文字を出すのはどうかと思うのでありますが、この船員法ができた当時はマッカーサー司令によって英文のものも出ております。私、こんなものあまりよくわかりませんけれども、六十七条については「アージェントネセシティ」な事件が発生したとき、いわゆる緊急に必要な事件が発生したときというふうに書いてあるのですね。だから、おあげになった事例の計画的に狭水道を通るという意味臨時ではないことは事実であります。  それじゃ、緊急性という意味がここにも出てきましたが、緊急というのは六十八条の緊急とどう違うかという問題ですね。六十八条は、これは一つはもはやのっぴきならない緊急の事態であります。それから先ほど来の狭水道外洋を通っていくかというコース問題を例に引きますと、あらしが起こりそうだ、だからこの際は狭水道を無理しても通ってひとつ内海に入ったほうが得だというような場合には、これはなるほど六十七条でオーダーができるかもしれませんね。しかしながら先ほど船員局長がおあげになったように、航路に狭水道があって、その狭水道を通るためには当直を持たなければならぬから、その者を乗せておくわけにいかぬから、臨時の必要があるからということでやるというのは、これは話が違うと思うのですね。そこまで拡大解釈したのでは、これは船員法にいろいろ規定がございますが、もう何もない規定になってしまうわけでありまして、救済の方法がないと思うのです、いかがでしょう。
  10. 丸居幹一

    丸居政府委員 GHQのありますときに、船員法をつくりますときに確かに英文と両方のものを官報に公布するようになっておりまして、それに確かに英文で出ておるものがございますが、「アージェントネセシティ」ということばが出ておることは確かでございます。この「アージェントネセシティ」を「臨時の必要」というふうに訳したのか、「臨時の必要」を英文に「アージェントネセシティ」と訳したのか、どっちだろうかということに非常に疑問を抱きまして、実は当時これをやっておった人に聞きましたところ、こういうことを言っていいかどうかわかりませんが、実は後者である——当時は進駐軍のほうへ一々英文に訳して相談にいかなければならなかった。そこで「臨時の必要」という訳に、どう訳したらいいかということでいろいろ考えたのだけれども、いいことばもないし、やはり「アージェントネセシティ」というのが非常に近いのではないだろうかということで「アージェントネセシティ」という訳を使ったということでございました。そういうことが御回答になるかどうかわかりませんのでございますけれども、そういう話もございまして、必ずしも当時からその六十七条の解釈というものが緊急というものだけに限られていなかったように、やはり私たちは、いろいろ調べてみますと何かそういう感じがしてきたのでございます。
  11. 久保三郎

    久保(三)委員 その書いたものは別として、実態に合わせてものを考えることがいま必要だと思うのですね。いま実態に合わせて考えるというのには二つあると思うのです。船員法の精神に基づいて実態を照らすかどうか、あるいはいまの海運界実態に照らしてものを考えるかという、二つあると思うのですね。船員局長船員を守る立場最高責任者でありますからなんでありますが、先ほどおあげになった例からいくというと、どうも最近の海運界実態に照らして拡大的に解釈しようとするきらいがありはしないかというふうに思うわけであります。いま要員問題はたいへんむずかしい問題になってきております。最近海運界の経営についても問題がありまして、チャーターバックなんというえたいの知れない方法も出てきてやっております。そういうさなかでありますから実情はわからぬわけでありますが、基本的なものはやはり確立しておかないと混乱すると思うのですよ。  そこで私は再三申し上げますが、六十七条の「臨時の必要がある」というのは、日本語そのものを見ても臨時に必要があるということなんです。計画的に必要があるという場合には臨時に必要があるというふうには言えないと思うのです。どこの地点を通るときには当直は五名である、どこの地点を通るときには三名であるというのは、これは計画的なんですよ。ただしそのコースを変更してやむを得ず臨時にやる、だから三名の場合は五名にする、これが臨時ですね。その臨時とはいかなる場合に臨時というのか、これは無限大であっていいはずはないのであります。だからそこで緊急のということばがあるでしょう。それはどこへ持っていったらいいかというと、三十七年の解釈のとおりに、あるいは四十四年の函館札幌高裁支部判決のとおり解釈していくことがやはり正しいと私は思うのですよ。ただ計画的に、長い航海の間にたった二時間ほど狭水道を通るのに人間を乗せることはどうか。なるほどもったいないような不合理のような気持ちもするけれども、長い航海の中でありますから、これはそこだけの問題ではないのでありますから、配乗する要員の設定の場合に考慮させるべき問題であって、そこだけの問題ではないと私は思うのですね。だからそういうふうに解釈して、これはもちろん労使の間で考えればいい話でありますから、船員法で考える筋合いではないと私は思うのですよ。いかがでしょうか。「臨時の必要」というのは、六十八条は限定された臨時の必要である、緊急の場合である、それ以外はどちらも船舶航行の安全のためには必要の場合は船長が時間外労働オーダーできるというふうに持っていくべきだと思うのですね。それ以外に持っていきようがないと思うのですよ。そうだとするならば、船舶所有者の恣意に基づいて時間外労働はどんなにでもできますよ。そこのところはやはり考えていくべきだと思いますね。どうでしょう。
  12. 丸居幹一

    丸居政府委員 法律解釈問題と私たちが担当いたします船員行政問題と二つあろうかと思いますが、法律解釈問題としては、やはり六十七条を緊急の場合だけと解釈することは、私は法律解釈を誤るものであるというふうに思います。  それから、先生たいへん御理解のある、実態的なものを見きわめてというお話でございますが、私は、先生指摘のとおり船員局長でございまして、船員のほうの仕事をするというのがたてまえでございますので、私はたてまえを誤っておるつもりはないのでございますが、ただ、法律解釈を自分のたてまえからひいき目にどうこうするというわけにもまいりませんので、公平な見地で、六十八条に緊急の場合はと明定されている以上、反対解釈で六十七条はそれ以外のものではないだろうか、こういうふうに考えるのであります。それでは六十七条でなら何でもやれるのか。私はそうは思いません。最初にお答えいたしましたように、船員法全体が船員保護法律でございますので、六十七条もこれによってどんなオーバータイムをやってもいいというふうに解釈すべきものではない。船長判断というものは、船員健康状態あるいはオーバータイムの継続の状態その他を十分見まして、仕事緊要性との間の調整をとりながら船長判断を下すべきものだ、こういうふうに考えます。  そこで、解釈を誤られてはいかぬから、実態に即した通達というようなものを出したらどうかというふうなお話だと思いますが、それにつきましては、先ほども申し上げましたように、いろいろ課長みずからも訪船さしたりいたしまして実態を調べておりますので、その実態を踏まえまして、先生指摘のとおりその実態に即したような通達をひとつ出したいというふうに考えて、ただいま検討をしておる最中でございます。
  13. 久保三郎

    久保(三)委員 六十八条に関連して、緊急を要する作業というのは、六十八条に限定してもいいかと私は思うのですよ。ただしあなたの解釈からいっても、入出港、狭水道通過の場合、船員配置は、通常の場合本条には該当しない、こういうふうに通達を出しておる。そのとおりだと思うのですね。通常の場合には緊急の必要とはいえない。しかも、さっき英文のほうでは緊急必要な場合と、こう書いてあるようでありますが、日本語のほうでは緊急必要の場合とはいっていない、臨時に必要な——臨時と緊急はずいぶん違うかもしれませんね。六十八条はこれにも緊急とは書いていないでしょう。例示をしておいて、この場合はと書いてあるわけですね。これは緊急、まさに総括的にいえば大半は緊急、ただしこの船の位置調査する場合は、これは緊急とか直接命にかかわることはできないと思いますが、しかし、これはどうしてもはからねばならないということでありましょう。あとは通関手続、検疫、四号というのは、言うならば少しおかしいかもしれませんね。これは見直さなければならぬ条項かもしれません。  それからもう一つは、話は横道にそれて恐縮ですが、ついでですから申し上げます。一の「積荷の安全を図るため」というのがある。その場合にはどうなのかという場合もありますが、これも解釈のしようでは少しはずすことはいいかもしらぬという気持ちもします。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 いずれにしても話をもとに戻しますが、第六十八条というのは、いわゆるのっぴきならないときであって、そのときには有無を言わせず時間外労働でやる。六十七条は有無を言わせずに、のっぴきならないどころじゃなくて、臨時に必要ができたとき、「臨時の必要」というのは計画的でないということですよ、そうでしょう。だから一定の航路をきめて走る場合は計画的、この航路からはずれる場合は、「臨時の必要があるとき」ということだと思うのですね。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、「臨時の必要」の中には、これまでの第六十条以降ずっと見ていって、いかなる場合をいうかというと、これは船舶航行の安全のためというのが裏に隠れている、隠れているというか含んでいる、そういう前提に基づいてのみ「臨時の必要」ということを解釈していいと思うのですね。  もう一ぺんまとめて申し上げますと、六十七条は船舶航行の安全のために計画外に必要が出た場合に、これはいわゆる時間外労働命令できる、こういうふうに解釈したらいいと思うのです。六十八条は緊急に、臨時に必要ができたときにはこれこれである。それともう一つは、どうしてもやらなければならぬ仕事であるから四号、五号はやる、こういうことだと思うのですね。  ところで、具体的な事例その他についての解釈は追ってするにしても、法律の大筋の解釈はいま私が申し上げたような形で、ひとつきちっと整理しないと、なかなか収拾がつかないだろうと私は思っているのです、いかがでしょう。
  14. 丸居幹一

    丸居政府委員 六十八条は緊急を要する作業ということで、これは先生の御指摘のとおりだと思います。六十七条のその狭水道問題でございますけれども、確かに狭水道が非常に多くて、それが勤務形態としての「臨時の必要」だというふうな解釈ができないようなところであるならば、これはもう先生指摘のとおり、やはり六十九条を適用して定員を何人かよけい乗せていかなければならぬという処置をとることだと思いますが、長い航海のあとでどこかちょっと入っていくという狭水道が一カ所あるからといって、それがもう臨時でない、初めからわかっておるということだけで、定員を乗せていかなければならぬということにはならないのじゃないだろうか。といいますのは、「臨時の必要」ということは、確かにここに書いてあるとおりでございますが、時間外労働といった勤務形態の問題でございますから、勤務の形態に対してそれが臨時といえるか、恒久的であるといえるかという問題ではないだろうと思います。たとえば一日のうちにそれが必ずくるならば、そのとおり計画的なものだ、きまったものだというふうにいえると思います。たとえば一週間のうちに一回あるもの、それは確かにきまってはおるのですけれども、しかし勤務の形態としてそれが通常のもの、もう必ずそれにあるものだというので、勤務の形態としてそれが恒常的なものといえるかどうかということは、ちょっと疑問だというふうに考えるのであります。しかしそれがかなり引き続いて起こるものであるならば、やはり先生の御指摘のような解釈を流して、六十九条による定員配置というものを強制しなければならぬのじゃないかというふうには思いますが、あまり遠いときにちょっと通るだけでは、それは勤務の形態としてはやはり臨時の中に入るべきものではないか。しかも船員法は、六十七条ででも読まなければほかにオーバータイム方法が、一応ずっと書いてございますけれども、残念ながらありませんので、さっき申し上げましたように、港に入る場合も、それは常にきまって港に入るのだけれども、出港のときと、それから長い航海を経て帰ってきたときと港に入るのだから、それは確かにいつもきまったコースなんだけれども、しかし、やはり勤務の形態としては臨時であるという解釈でこの六十七条というものがずっと解釈されておったということとよく似ておるのじゃないかという感じがするのでございますが……
  15. 久保三郎

    久保(三)委員 あなたのおっしゃるのは一つの例ですよ。あなたのおっしゃる狭水道を通るというのは、臨時に通る場合をおっしゃっているのか、それともそういう計画で通る場合をおっしゃっているのか、もう一ぺん、そこだけお尋ねしましょう。
  16. 丸居幹一

    丸居政府委員 臨時に通る場合は、先生臨時の中へお入れになっておって是認していただいておると思うのでございますが、それが計画的に通る場合は初めからそれを乗せていくべきじゃないかという御意見だ、私はそれに対するお答えを申し上げているつもりでございます。
  17. 久保三郎

    久保(三)委員 計画的の場合は、そこを通るだけが航海じゃないのですね。ずっと長い一連の航海というのがあるわけです。だから一連の航海の中で、労働時間というかあるいは当直時間というか勤務時間、そういう勤務割りと要員の配乗というものがきまるわけですよ。ところが、あなたがおっしゃった恒常的な、定期的な狭水道を短い時間通るためのあれは、六十七条は必要ないのです。これは六十条以下の条文で勤務割りと配乗の人間をきめればいいのでありまして、これは御心配なさらぬでいいと思うのですね。またそういうものをやっていると、これはもう恒常的なオーバータイムがたくさんできてしまうのですね。これではいけないと思うのです。そこで私が言うとおりに、それは恒常的なものではなくて臨時に通るときには、船舶航行の安全のために必要ができたときには、これはオーバータイムを要求できる。しかしそのときに、緊急じゃなければ、航行の安全その他でなければ、これは外洋を通って、定期航路できめられたコースでおいでください。極端な話になりますが、そういうことになりますよ、という意味ですよ。だから、どうしても狭水道を通るというのは、天候が悪くなってきた、早く行かないと、外洋へ出ては危険だ。狭水道も危険だから、ある短い時間、これはオーバータイムをしてもらうのだということでそこを通過することはあり得るが、これは六十七条でやる、こういうことだと思うのですね。そうでないと、解釈がおかしくなってしまうと思うのですよ。その辺はどうなんですか。  だから、あなたが言う恒常的な、通常の狭水道を通る場合のオーバータイムを六十七条でやるというのは間違いですということです。これは間違いですよ。これは、一連の勤務割りを要員配乗できめてもらうということであります。そうでないと、これはしょっちゅうやられてしまう。  それから、あなたがちょっと間違ったのだろうと思うのですが、この六十七条をあなたがおっしゃるように解釈しないというと、船員法で、どこでもオーバータイムをやらせるようなことがないようなお話をなさったけれども、それはオーバータイムをみんなやるようにできているのです。六十条以下ずっとオーバータイム規定があるのです。オーバータイムの制限があるということだけで、無制限ではないということです。そこにこの船員法の特徴があるのですよ。船員というのはかわりがないのです。あした休みというわけにはいかないのです、船が動いているのですから。だから、そこに制限を置かなければ船員の健康上、今度船の運航がとまるという危険もありますね。そういうことを予想して、船員法船員労働時間というのはきびしく——オーバータイムはさせます、ただし二時間なら二時間以内。だから、六十八条の場合は、その制限を越えても、死ぬか生きるかわからぬときでありますから、オーバータイムをしろということでありますよ。いかがでしょう。だから六十七条は——くどいようでありますが、いま申し上げたように、普通の場合ではありませんよということですよ。
  18. 丸居幹一

    丸居政府委員 ちょっと説明がまずかった点があると思います。確かに、先生のおっしゃるとおりに、それはむしろオーバータイムを制限をしたところがあちこちにあるのでございまして、それはもうおっしゃるとおりだと思います。ただ、狭水道問題でございますけれども、私は同じことをえらいがんこに繰り返すようでございますけれども、長い航海したところで、かなり短い狭水道を通るのに、それが航海をする前からその狭水道を通ることはわかっておるではないか、したがって、それはオーバータイムはおかしい、一名の定員を常に乗せていきなさいという話は、これはなるほど先生のおっしゃるとおりに、臨時ということばに当てはまるかどうかということには問題があろうかと思いますけれども、しかし、ここでいう臨時と、それから恒常的なものというのは、確かにこれは船員法の中で書いておるのでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、時間外労働という勤務問題について書いておる問題でございますから、やはり勤務状態通常であるか臨時であるかということによってその判断はされるべきではないだろうかというふうに思います。ただここで、臨時の必要ということとは別でございますけれども、勤務状態としてこれが恒常でなければ、やはり六十九条にすぐ持っていって、それは一名定員を増加すべき範疇に入るのだという結論を下すのはどうかという感じがするのでございます。
  19. 久保三郎

    久保(三)委員 あなたのほうの通達昭和三十八年の員基百号というのがありますが、これを見ますと、「濃霧の場合の総員配置通常は緊急を要する作業ではない」こういっているのですが、それはどこで救済するかということになる。これは六十七条第一項で救済するのですよ。これこそ六十七条の第一項で救済するのです。そういうことでなければいけない。  それからもう一つは、定員を増すということばかりが私の言おうとすることではないのですよ。さっき言ったように、船の航行に対しての一連の勤務割りと要員の配乗を考える場合に、たまたま狭水道に入る時間が、——そこに入ればこれも勘案しながらやればいいのであって、あなたのおっしゃるのはそういうものは除外しておいて、狭水道を通るという作業は除外しておいて、一定の要員配乗と勤務割りとをきめておいて、さあ狭水道に来たから六十七条一項で臨時でおまえやれ、こういうことでやれとおっしゃっておるのですね。これは違うというのですよ。狭水道というのは、大体船舶航行の安全のためという意味で狭水道を使っているのですよ。いつの場合でも同じですからね。航行の安全のためという具体的な表現で使っているのですが、そうでしょう、さっきから確認しないでやりとりしていますが。そういう意味ですね。だからそういう意味のことを含めて臨時に通るということです。あなたのおっしゃるのは、何かそういう狭水道を除いて大体定員をきめておく、勤務割りもきめておく。そうして関門の狭水道を通るから当直をやれ、これは幾らでも命令ができるのだ、これでは話が違うでしょうということですよ。そういうのをやりたいために最近混乱している向きがあるわけです。もう少しすなおにやったらいい。あなたのほうの通達も、濃霧の場合の総員配置のところは緊急を要する作業ではないというような意味からいけば、どこで救済するのかということです。濃霧の場合の総員配置というのをどこで救済する。それは六十七条の臨時の必要がある場合に命令できるということにしておかないと、これではどうにもならないのじゃないですか。いかがです。
  20. 丸居幹一

    丸居政府委員 よくわかりました。勤務割りをきめるときに狭水道を通るような臨時の必要が起こった場合、臨時の必要でそれを除外して勤務割りをきめるのでなく、勤務割りをきめるということは当然予想されるのだから、勤務割りをきめる場合はそういうものは予想して入れるべきだという御趣旨を、たいへん頭が悪いのでびっくりしましたが、ただいまわかりました。それはそのとおりだと思います。
  21. 久保三郎

    久保(三)委員 こればっかり長いことやっているのもどうかと思うのですが、いまの質問おわかりになっていただければ問題は解決であると思っているのですよ。押しつけがましいことかもしれませんが、そうだと思うのです。具体的な事例を幾つかあげれば混乱するというのなら、これはもう少し船員局の内部で御研究をいただきたいと思うのです。しかし原則はいま申し上げたとおりであるということを御承認いただけるかどうかということですね。そうしてあと具体的にどうするかということをきめていただかないと、いま非常に混乱しているのでしょう。いかがでしょう。原則はいまお答えがあったとおりに解釈すべきだというふうに考えますが、いかがでしょう。
  22. 丸居幹一

    丸居政府委員 最後におっしゃったのは、通達等出してもう少し明確にしたらいいじゃないかという三十七年のときの宿題だと思いますが、それにつきましてはたいへんおそくなって申しわけないのでございますけれども、いま一生懸命にどういうふうな通達を出すべきであるかということを船にまで行って実態を把握して間違いのないのを出したいということでやっておりますので、いましばらく御猶予いただきたいと思うのですが、そういう方向で検討していくつもりでやっております。前向きで出す方向でただいま検討しておることは確かでございますので、いましばらく御猶予をいただきたいと思います。
  23. 久保三郎

    久保(三)委員 それでは船員局長に再度申し上げて、この問題一応けりをつけますが、十年間の宿題でありますから、十年前の解釈をめぐっての議論のときには船員局長は三十八条を混同して説明したようでありますが、あとからこれは訂正しています。そうして私かいま結論的に申し上げたような意味で、緊急な必要ができたら、緊急というか船舶航行の安全のために必要があるときは六十七条第一項によって船長船員に対し時間外労働命令することができる、こういう解釈であって——解釈というか、そういうことでございまして、いわゆる船舶航行の安全というか、そういうものが一つ条件に入っている、だから狭水道を通るという恒常的な、いわゆる計画的な航路に対する場合は六十七条第一項でもって処理するのではなくて、これはそれ以外の条文で処理する。それから臨時に狭水道をどうしても通らなければならぬ、緊急の船舶航行の安全のためにそうするんだというときは、これは当然六十七条第一項で船長命令できるというような原則だというふうに再び解釈をしていくわけでありますが、具体的にはいろいろ問題があろうかと私も思います。航海のことはしろうとでよくわかりませんが、だからこれらについてはなお船員局内部でひとつ取りまとめていただきたいし、そういう場合にはこの委員会に対してもひとつ御披露いただきたい、こういうふうに思います。また必要があれば関係者の意見も聞いてほしいと私は思うのです。もう少し聞いてほしい、そして早急に三十七年の解釈を確立してほしい、こういうように思います。大体十年間も通達を出すといって出さなかった責任を追及するのがまず最初仕事だったのだが、新谷大臣も就任されたばかりでありますから、十年前の話をしてもおわかりにくいかと思うのでやめておきましたが、決して忘れているわけではありません。十年前の約束を忘れて再びあいまいな解釈をされたのでは国会の権威はどこにもありませんよ。われわれがここで質問をすることも、言うなればサル芝居みたいになりますから、ぜひ約束を守ってほしいと思うので、運輸大臣に一言お願いしておきますが、いかがでしょうか。
  24. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 船員法六十七条の解釈及びその適用のしかたについて非常に長い間懸案になっておりまして、いま船員局長との間でいろいろ御議論がございました内容は私も承知いたしました。船員の人たちがもう少し明るい気持ちで働けるようにという趣旨で、私はやはり結論は早く出して一つの基準を示していくのが一番いいかと考えておりますから、船員局長が申しましたような方向でなるべく早くその結論を得るように私も大いに努力をしたいと思います。そういうことで、この点は運輸省が何となく怠慢を責められるようなかっこうで申しわけないと思いますが、努力をいたすということで御容赦をいただきたいと思います。
  25. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 梅田勝君。
  26. 梅田勝

    ○梅田委員 私は安全問題につきまして大臣の考えをお伺いしたいと思います。  昨日の新聞報道でも、フランスにおきまして旅客機の衝突事故が発生をいたしまして犠牲者が多数出たのであります。飛行機は、御承知のように文明が生み出した非常に速い乗りものでありますが、しかし一たん事故を起こしますと、これはかけがえのないとうとい人命が奪われるという重大な問題を含んでおります。昨年六月十四日に日本航空がインドのニューデリーにおきまして八十六人の犠牲者を出す大事故をやりながら、五カ月後の十一月二十八日には、モスクワの空港におきましてやはり大事故を起こしまして、六十二名のとうとい生命を犠牲にいたしております。このことは本委員会におきましても再々問題にされてきたところであります。  私がここで問題にいたしたいのは、これらの事故が起こりました場合に、ともすればパイロットのミスだということで労働者に責任が転嫁される傾向の問題であります。言うまでもなく日本航空は、資本金の四六・一%を政府が出資をして、いわば運輸大臣の指揮下にある経営だというように思うわけであります。したがって、これらの事故の問題について、監督官庁としての運輸大臣の責任は決してあいまいにされない問題だと思います。  そこでまず質問したいことは、こういう一連の事故から何を教訓として政府はつかんでおるのか、運輸大臣はどういう点が一番大事な点としてつかんでおるのか、また日航に対してどのような改善策を指示して、そして最近業務改善の具体策を会社は出したようでありますが、その点についてお伺いしたいと思います。
  27. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 運輸省が、こういう事故がたびたび起こりまして、非常に責任を感じておるということは、当時の運輸大臣も申し上げたことだと思います。私も全く同様の考えを持っておりまして、これは日航の問題であるから運輸省は責任は軽いのだというような気持ちは決して持っておりません。その責任をどうして果たすかということでございますが、とにかくいまああいう相次ぐ事故が起こりましたために、これを利用される国民の方々は航空機に対して非常に不安感を持っていることは事実でございますから、そういう不安感を解消して、そして安心して航空機を利用できるようにするための安全体制の確立ということが先決問題でございまして、そのために運輸省としては最大限の努力を払うべきである、こういう考え方を持ちまして今日まで取り組んできておるのでございます。  もう少し具体的に申しますと、事故原因は個々の事故によりまして非常に違うところがあると思います。これは一がいに申せないと思います。しかし、先般来事故原因のある程度判明しましたものを洗ってみますと、モスクワの問題のごときは、飛行場の設備、それから飛行機そのものというふうなものにつきましても報告書が出ておりますように、何か整備にちょっと欠けるところがあったのじゃないかというようなこともありますけれども、全体として、記録を見てみますと、どうも乗員がミスをやったのだというような疑いが非常に濃いのでありまして、これは調査委員会の報告にもそういった趣旨のことが載っておるのでございます。私は先般も予算委員会等で御質問に応じましてお答えしたのでございますけれども、これはかりに操縦者がそういったミスをおかしたといたしましても、単にそのときの操縦者のやり方がまずかったということではなしに、よって来たる原因というものをもっと深く掘りさげて会社としては究明しなければならぬだろう。それには先般も申し上げましたように、単に運航方面だけを非常に責めて、もっとしっかりやれといったってこれは十分な効果があがらない。整備のほうももちろんでございますし、人事管理の面ももちろんでございますし、そういった全社内が一体になって、非常に縦横の関係があるわけですが、全体が一体になって、そうして安全運航体制というものに非常な努力をし、そうしてそれに必要な措置を各部門で講じていくというような体制をつくることが一番望ましいんだということを指摘をいたしております。航空会社のほうも全くそのとおりでございますということでわれわれの指示に従いまして、一面においては技術訓練とかあるいは乗員の休養とかそういったものもいろいろ考えると同時に、いま申し上げたような、全社内が打って一丸となって安全運航体制に取り組めるように各部の関係をお互いに連絡協調し合いまして、そういうふうな体制がとれるような努力をしようというような決意をし、それについての具体策を講じまして報告書を提出しているような次第でございます。  いま私が見ましたところでは、日航も非常に、全社内一丸になって真剣にこの問題に取り組み、またそれを実効をあげるべくあらゆる努力をしておるというふうに考えております。
  28. 梅田勝

    ○梅田委員 日航がどういう改善の報告を出してきたか、これはあとで資料としていただきたいわけでありますが、その要点を説明してください。
  29. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほど大臣から御説明申し上げましたが、ボンベイ事故以後日航に対しましては立ち入り検査などをいたしますと同時に、勧告を出しております。その際には特に、その責任意識の徹底であるとかあるいは指導管理体制を確立するとか、特に各分野における意思疎通を信頼関係に基づいて確立するということ、それから良質な技術要員を確保すること等について改善をはかり、また今後の事業拡大についても慎重に配慮するようにというような勧告をいたしたわけでございます。それに対しまして日本航空側といたしましては、副操縦士を機長に昇格させる場合の基準を厳格にする、あるいは乗務員が乗務する機種の固定化を行なう、あるいは飛行前後のブリーフィング、これを徹底すること、あるいは乗り組み員、整備要員の訓練を充実してまいる、それから規程類を改善してまいる、あるいは運航管理体制の強化というようなことをやってまいりますということをいろいろ申しております。  これは、ここにありますのが安全運航確保のための業務改善の具体策でございまして、相当大部なものでございますので、要約するのが非常に困難でございますけれども、先生御質問の趣旨からいけば、おそらく社内全体をとらえて、一体労使関係がどうなっておるかというふうなことも一つの眼目かと思いますので、そういう点を若干申し上げてみます。  労使関係の信頼の強化ということを強くやっていこう。これについては労使協議制というものを基本としてやっておるけれども、さらに労使双方が不断の努力をしてお互いにこの関係を円滑に持っていこうというようなことも考えております。それからまた各部門における運航管理部面でございますが、各本部内及び各本部間の会議、討議、そういったようなもので幹部と末端職員との接触というものを常に持ちまして、それによりまして意思疎通をはかりまして相互に信頼関係を醸成し、それによって日常においても全社的に安全については信頼に基づいて配慮していこう。特に乗務員については副主席を単位にしたグループミーティングをやりまして、それを中心にして絶えず上の意見が下に通り、下の意見が上に通るというようなこともやっていきたいということを言っております。それからさらに提案制度というものがございまして、これは一方の見方からしますと生産の合理化というふうなことにのみ用いられやすいというようなことにも一面から見られておったきらいもなきにしもございませんでした。しかしこういうものをもっと活用いたしまして、安全の面においても十分ここではっきりと安全の検討の場にする、そして意見及びアイデアが出れば、それを直ちにそのパイプを通して上に上げるというようなことで、安全の面のパイプとして使っていきたいということを申しております。  なお、いろいろな意味におきまして、要するにコミュニケーションというものをうまくやりまして、それによって上下がしっかりと結びついて全社一体として安全をはかっていこうという思想になっておりますが、これはあまり長くなりますから大体概要を申し上げまして、後ほどまた資料を提出させていただきます。
  30. 梅田勝

    ○梅田委員 いまいろいろ御説明があったわけですが、私は一番大事な問題は日航がいままで労働者に対してどういう態度をとっておったか。その労働組合あるいは労働者に対する態度、その中に重大な事故を起こすような要因を含んではおらなかったか。そういう点でどういう反省をしたかということが一番大事な点だと思うのです。ところがいまお話を聞いておりますと、どうもそういうことにはなっていない。新聞報道によりますと、日航が改善策として具体的に出してきたものは、運航の安全を保障する体制を確立する、こう言ってはおりますけれども、実際は精神主義的に人間性の教育を重視していく、こういうようなことが中心になっておるように受け取るわけです。そこで私は具体的に日航が労働組合に対してどういう態度をとってきたかという点で、大臣のおられる間に、事故問題はもう少しあとでやりたいと思いますが、突っ込んで聞きたいのです。つまり労務管理に対してどういう姿勢をとっておったか。一体日航の労働組合は現在どのようになっておりますか。組合は幾つありますか。——大臣に知っておられるかと聞いておるのです。
  31. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 政府委員から答弁させます。
  32. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 御答弁申し上げます。  いわゆる労働問題、これにつきましては、私どもは運輸担当の行政官庁でございましてしたがいまして、労働問題にあまり介入するということは望ましくないということで、たてまえといたしましてはこれに対してはどちらにも干渉しないということが基本的なたてまえであります。そういった問題につきましては労働省その他においてやっていただけるというのが、まず基本的なたてまえであろうと思います。しかし私どもといたしましても実情を知らないわけではございませんで、現在日航の中は、御指摘のように非常に複雑な組合になっております。現在合わせて五つの組合がございます。職種別に応じましてパイロットの関係が二つの組合、それから地上職が二つ、それから客室乗務員関係が一つ、合わせて五つの組合がございます。これが組合の現状でございます。
  33. 梅田勝

    ○梅田委員 労働組合が五つに分かれておる、こういう事情は大臣も、労働問題労働大臣がやればいいんだということではなくて、運航の安全、これを保障するためには主人公はやはり飛行機に乗っている乗務員ですから、飛行機が幾ら機械だといっても、これがかってに飛ぶわけじゃない。やはり整備員が整備をし、そしてパイロットが正確に操縦をして初めてその安全性というものは期待できるわけでありますから、はたしてそういう航空に従事をしている人たちが安心して働けるような労働条件を確保しているかということは、当然運輸省におきましても重大な関心を持って見ていくことが必要であります。先ほど干渉ということばがありましたけれども、労働組合に干渉するというようなことばやってはいけませんよ。そういうことではなくて、現実に五つにも労働組合が分裂をしている。これは何も自然に起こったわけではなくて、しかるべくして起こってきたわけでありますから、なぜそうなったかということを追及をしていけば、これはやはり会社側が悪質な労務対策をして、先ほど言いましたような提案制度というような名目で、いわゆる生産性向上運動ですね、日航のマル生版といわれるようなやり方で労働者を攻撃をし、ばらばらにし、そして分裂をつくってきたというのが実態だと思うわけです。  そこで、今回会社側が紛争より安全が先だということで、日航乗員組合で八年越しに争われてまいりましたスト処分上告事件を取り消したということが報道されておりますが、この内容についてはよく御存じですか。
  34. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 大体において承知しておるつもりでございます。ただ、これは、先生も御承知のように、昭和三十九年以来非常に長い歴史がございまして、その間に何回も労働委員会に提訴をし、何回も裁判に出しということで、その件数から申しますと、相当な数にのぼっておりますので、その詳細につきまして一々私、記憶しておりませんが、相当複雑かつ長い関係を持っていたということは事実でございます。
  35. 梅田勝

    ○梅田委員 この事件は、労働組合が組合員に対して掲示をする、これは当然、社会通念的にやってしかるべき行為だと思うのですけれども、それをめぐって紛争が起こっているんですね。だから、日航というのは一体何を考えているのか。少なくとも労働組合、労働者の憲法で認められた基本的な権利である労働基本権というものをどのように理解をしておったのかということがきわめて問題になるわけであります。そして、それは当然、裁判で争われまして、会社側が負けているんです。だから、最高裁で幾ら争ってもこれは勝利する保証というものは全然ないわけです。相次いで事故も起こるということで、今回ようやく紛争よりも安全が先だということで上告を取り下げたということであります。そういう事件が起こって、会社側も再々紛争が起こっておると安全運航について支障を来たす、このように考えて取り下げたんだと思いますが、そこまで至っている。この長い間に運輸省はどのような行政的な指導をされたんですか。
  36. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほども申し上げましたように、本件につきましては実は組合の方々ともお会いしてお話を伺いましたし、それから会社側のほうからも一応事情は聴取しております。ただ、先ほど申し上げましたように、私どもの所掌といたしましては、どちらにも片寄れないという立場にございます。特に本件につきましては、先ほど先生指摘のようにいろいろな労働委員会その他に出して会社側が負けておるわけです。負けておるわけですが、その法律上の手続ないし定められた権利を行使するということは、これは憲法上認められたことであって、これをやめなさいということは私どもとしてはできません。しかし、私どもとして、やはり労使関係と申しますか、会社全体が一体となって気持ちを合わせていくということが航空会社としては必要であるというふうな見地から、会社に対しましても、また組合のほうに対しましても、いろいろ誤解その他もあるかもしれぬけれども、要するによく話をし合って相互理解に立って円満に解決をされるように期待するということは常々話しておったわけでございます。
  37. 梅田勝

    ○梅田委員 何か運輸省は日航とはもう全然関係がない、やはりそこは会社であるから憲法上の権利に従って最高裁までどんどんとやったらよろしいのだということで、運輸省は全く関係がないかのような御発言でありますけれども、日本航空というのは法律に基づいて設置をされている会社でしょう。政府は何ぼ出資しているのですか。
  38. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 大体四六%ぐらいでございます。
  39. 梅田勝

    ○梅田委員 代表取締役の認可はどうなっておりますか。
  40. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 代表取締役は株主総会できめられますけれども、その決議を認可をするということにいたしております。
  41. 梅田勝

    ○梅田委員 運輸大臣が結局重要な役職は認可するわけでしょう。それではいわば国が大幅な出資をして、しかも法律に基づいて設立されている特殊法人ですね。そういう性格の日本航空が、労働者の基本的な人権をじゅうりんするようなそういうことをやって、下級裁判所ではもう負けている。それをどんどん上告までやらして、八年間も放置してきたということについては、これは日航だけの責任じゃありませんよ。運輸省としてどう責任を感じているか、私はそれを聞きたいのです。大臣どうですか。
  42. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 局長から申し上げましたように、運輸大臣といたしましては、この労使の関係にはいずれにも加担するような印象を与えてはまずいものですから、具体的な介入はしておりません。今後もしないつもりでおります。  ただ、そういう労使紛争が非常に激化いたします結果、日航の本来の使命が忘れられましたりあるいはいま一番国民の要望しております安全運航体制がこわれるというようなことがありますとたいへんでありますから、これに対しましては非常に大きな関心を持ちまして、そういうことのないように、さっきも申し上げましたように、この安全運航体制の確立のためには、紛争はかりにありましても、その点については日航の重役陣もそれから従業員も国民に対してはある意味においては同じような方向に向かっての責任を持っているはずでございますから、そういう体制をさらに強化いたしまして、関係者が一体になって安全運航体制の確立に向かって努力をするようにということは希望を常に言っておる次第でございまして、この点はわれわれの接触する範囲では、いろいろな方もお見えになりますけれども、そのつどそういうことを私は意思表示をしております。
  43. 梅田勝

    ○梅田委員 それでは運輸省は日航に対してどういう責任があるのですか。
  44. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 法律に基づいてきめられました範囲において権限と責任を持っております。その具体的内容につきましては、これはいろいろの規定がございますから、その規定に基づきまして判断をしなければなりませんが、私はしかし、この日航の法律を読みまして、これは他にも法律に基づいた株式会社あるいはそれに類似するいろいろな法人ができておりますけれども、こういう企業を行なっておりますものに対しましては、政府があまりこの企業経営方面につきまして深い干渉をいたしますことは考えものだと考えておるのでありまして、もっと強い公共企業体なんかにつきましては、これはもっと主管大臣としましては大きな権限を与えられておりますけれども、企業活動を自由濶達にして、そうして国民の福祉につながるようなサービスをするというのが主眼でございますから、ただ監督官庁ということで、あまりに深く企業経営の内容についてまで干渉をしていくということは、これはかえって企業の濶達な活動というものを阻害することになりますから、そういったものはなるべく慎んだほうがいいという、これは一般論でございますけれども、そういう考え方を持っておるのでありまして、日航につきましても、これは認可権が多い、この認可にひっかけて、こういったこともやったらどうだという意見もないわけではありません。しかし、私どもも、いま申し上げたようなことで、企業活動が自由濶達にやられるように——ただ政府といたしましては、それだけの大きな出資をしておりますということは、これはその当時の国際航空業界との関連においても、問題があったと思いますけれども、しかし、これはやはりほかの国でもありますように、非常に大きな安全運航ということについての責任を感ぜざるを得ないものでありますから、それを確保するという意味においては、政府も大いに出資をする。これはそういったことができるようにということの出資だと思いますから、その点についてはさっきも申し上げておりますように、最大限の関心を持ちまして、それについては運輸省も責任を持って対処しているというふうに御了解いただきたい。
  45. 梅田勝

    ○梅田委員 このモスクワでなくなった原さんのおとうさんが、陳情なさっているのは、この間ここでも問題になりましたけれども、私のところにも来ているのです。その中に、日航の朝田体制——日航の朝田社長を先頭とする体制というものが、きわめて責任を持たないけしからぬ状況になっている、彼は一体責任を感じているのかどうかということについて、痛烈な御批判を寄せられておるわけです。日航法によりますと、第四条の三では、「会社の代表取締役の決定の決議及び前条第六項の規定による決議は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」きわめて運輸大臣の権限というものは大きいわけです。だから、労務管理で失敗をし、そして事故をどんどん起こして、国民の皆さんに重大な不安、損害を与えている現朝田体制、こういうものに対して、大臣は絶大な御権限をお持ちでありますから、ここはやはりもっときびしい追及というもの、監督指導というものが必要じゃないかと思うのです。その点で、いまの大臣の答弁では、私は不満でございますので、もう一度御発言願いたいと思います。
  46. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 先般もこの委員会で、他の委員の方の御質問に対しましてお答えをしたのでございますが、簡単に繰り返して申し上げますと、もちろんああいう事故が起こったのでありますから、運輸省も責任がございます。日航はもちろん責任があると思います。ただ、その責任というのをどうして果たすかということでございますが、当面国民が望んでおられますのは何かといいますと、早くああいう事故のないように安全運航体制を確立するということであろうと思います。一人や二人の人を取りかえることは簡単でございましょう。しかし、そのためにかえって安全運航体制の確立ということに支障を生じ、それがおくれるというようなことがありましては、国民の期待に反するものではないかと思いまして、私は、今日まで、人事についてはいろいろの、両方からのお考えがあり、要望もあることは事実でございますけれども、これはいまのところは白紙でございます。それよりもわれわれが急いでやらなければならぬことは何かというと、安全運航体制を早く確立してほしいということなんです。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕 それをいまの朝田社長のもとにおいて、少なくともこの事故に対して責任を感じているということであれば、その責任を果たすのに何が一番先決要件かというと、安全運航体制の問題ではないか、これはどんなことがあっても、安全運航体制を確立するようにしてもらいたいということを申してきたのでありまして、これは決して運輸省の責任あるいは日航の責任というものをこれでおしまいだという意味ではございません。安全運航体制をほんとうに確立いたしまして、その場合において人事の問題をどうするかということは、また別の見地からあらためてこれは考えなければならぬと思っておるのでありますが、いま安全運航体制の確立に向かって進んでおりまして、それが中道でございますから、今日お尋ねになるような問題につきましては、なお、いまその問題につきましては、白紙の態度で臨んでおる。いま幸いにして、私から見れば——先生から見れば、そうじゃないとおっしゃるかもしれませんが、私から見れば、安全運航体制がだんだんに実を結んできておる、定着してきておるというふうに考えるものでありますから、この体制で安全運航の確保についての最大限の努力を続けてもらいたい、こう思っておる次第であります。
  47. 梅田勝

    ○梅田委員 いま人事体制も含めて検討ということばがございましたけれども、これは朝田社長以下の責任を、運輸省は今後追及をして、人事の更迭もあり得るということでございますね。そのように理解していいですね。
  48. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 あり得るという表現よりも、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まだいま白紙の状態でございます。安全運航体制の確立をこそ一日も早くしてもらいたいということを強く指示をしておるという段階であるということを申し上げておきます。
  49. 梅田勝

    ○梅田委員 どうも歯切れの悪い答弁で、今後も引き続き追及をしていきたいと思います。  ところで、上告を取り下げた後、どのように、うまくいっていますか。
  50. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほど御報告申し上げましたように、日航側といたしましては、上告を取り下げたということでございますが、その後、いま問題になっておる点を大体概略申し上げます。  これは先ほど指摘のように、組合関係がたくさんございまして、日本航空乗員組合関係、これはいわゆる新しくできたほうの組合でございます。安全に関する組合の要望事項につきまして両者が協議中でございまして、これにつきましては、訓練時間の延長とか、そういった問題について目下協議を続けております。  それから昭和四十七年度の賃金協定、これは成立いたしましたけれども、これを今後長期協定にするかどうかという問題がございまして、これらについても引き続いて交渉中でございます。  それから一番大きな問題でございました解雇問題の取り下げ、これは日本航空乗員組合と申します、これはむしろ旧組合と称しておりますが、この解雇問題が非常に大きな問題でございまして、これが先ほど先生のおっしゃいましたように、非常に大きな問題となったわけでございます。これにつきましては、会社側がすでに取り下げを行なっております。現在、取り下げた後の取り扱いにつきまして、組合側と会社側が協議中でございます。これは主としましてパイロットの問題でございます。パイロットの機長昇格の訓練をどうするか、あるいはいわゆるコーパイロットの慣熟訓練をどうするかというふうなことについて具体的な方法について現在話し合いを続けております。それからさらに四十七年度の賃金協定、これはやはり成立しておりますが、これを長期協定とするかどうかということについてもなお交渉中でございます。  それから日本航空労働組合関係、これは地上職の方でございます。これは四十七年度の賃金協定は成立しましたが、これにつきましても同様にこれを長期協定とするかどうか交渉中でございます。それから昇給に関する差別的取り扱い、つまり組合が二つございまして、一方に対してと他方に対してと差別的な取り扱いをしておるのではないかというふうな問題がございまして、これは都の労働委員会に組合側が申し立てておりまして現在審理係続中でございます。  それからその次に過去の賃金協定におきまして全日本航空労働組合、これが新しくできた組合でございますが、これとの長期協定についての手当について差があるというふうなことから、これらにつきましても都労委のほうへ申し立てて現在審理中でございます。  そのほか日本航空客室乗務員組合関係につきましては、乗務員手当の改定を交渉中でございまして、これは間もなく妥結するであろうというふうに考えております。  以上のごとく、現在懸案はございますけれども、基本的な姿勢としましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、少しでも会社全体一体となって円滑に進めていこうという姿勢で組合のほうと話しておりますので、遠からず円満に解決するとは思いますし、それを私どもとしては期待しておる次第でございます。
  51. 梅田勝

    ○梅田委員 日航労働組合の賃金あるいは臨時手当の差別というのは全くひどいのですね。六年の間に実に一億二千八百三十七万円に達する差別的な取り扱いをしておるわけですね。そして紛争が絶え間ないという状況でありますから、やはり紛争よりも安全だという以上は、いま出ているこういう案件についてはすみやかに解決できるように厳重な指導をやるべきじゃないかと思うのです。  解雇の問題につきましても取り下げをやっておるわけでありますから、これは当然原職に復吊するということで労働者の基本的な権利を認めるように厳重な監督をやっていただきたいと思います。  そこでまた事故の問題に戻りますが、モスクワの事故が起こりまして日ソ合同事故調査委員会というものがつくられて、この報告書というのはきわめて早い期間に発表をされております。そこで、日本からこの委員会に対して、何人、どういう資格で参加をされておったのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  52. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先般の日航機のモスクワ事故の調査でございますが、これはソ連当局が民間航空省内に同省のブイコフという次官を委員長といたしまして、委員十七名からなる事故調査委員会を設けて調査したわけでございます。日本側からは国際民間航空条約の第十三附属書に基づいて、当属国の権利といたしまして般空局から三名の事故調査官、それから日本航空から五名の技術者が前記委員会に協力するために代表として参加しております。なお、ほかに日本航空からは十二名の専門家がこれに参加しておるという実情でございます。
  53. 梅田勝

    ○梅田委員 報告書に日本側の意見はどの程度反映しておりますか。
  54. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほど申し上げましたとおりに、日本側からはICAO条約に基づく権利といたしまして立会の権利が当然ございますからそれに入っております。それに対しましては当然こちらといたしましても言うべき意見は申し上げておるということでございます。  そこで、結論から申し上げますと、ソ連側といたしましては日本側の意見を十分に取り入れてくれたと私どもは考えております。すなわち、やや詳細に申し上げますと、日本側といたしましては当該事故が離陸直後に発生した、滑走路の周辺に部品の飛散が相当考えられたというふうなことから、滑走路周辺の約六キロメートルの間を調査しようじゃありませんかというふうな提案をいたしました。また同型機——DC−8の同型機でありますが——による試験飛行を実際にやってみるというふうなことを提案いたしました。これは両方ともわれわれの提案はいれられまして、その結果、飛行姿勢とかフライトレコーダー及びボイスレコーダー関係の作動の状況、乗員その他の連携動作というようなことが解明、解析され、こういった調査の結果は報告書の中にも掲載されております。  なお、形式的に申しますと、ICAO条約から申しますと、本事故の調査実施について責任を持つのはソ連側でございますが、実際問題といたしましては報告書につきましても十分に日本側の意見等も聞かれまして、それを十分に反映しており相互に完全に合意をしておるものでございます。
  55. 梅田勝

    ○梅田委員 ボイスレコーダーの記録によりますと、誘導路から滑走路に行く過程の問答が記録されておる。そうしてスポイラーがうまく入らないということで何回かガチャガチャやっているという報道がなされておりますが、この点は事実ですか。
  56. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 一応その事故調査報告書を読んでみまして、その上でもし詳細な御説明が必要ならば技術部長のほうから御答弁申し上げたいと思います。  日航のモスクワの事故調査につきましては、日本航空株式会社所属のDC−8−62型JA804〇は日航446便、コペンハーゲン−モスクワ−東京として昭和四十七年十一月二十八日十九時五十分——これは現地時間でございますけれども、モスクワ・シエレメチエボ空港を離陸いたしましたが、その直後墜落し、機体は大破炎上したということが事実でございます。  それで、あとどういうふうな方々というのは省略しまして、その事故の原因についてちょっと申し上げますと、本事故の原因につきましては離陸安全速度、つまりV2に到達後、離陸上昇中乗員が飛行機を臨界迎角以上に至らしめ、その結果、高度と速度を喪失して墜落したものであるというのが委員会結論でございまして、臨界迎角以上に至った理由としては次のいずれかであるというふうに推定されました。一つは、飛行中スポイラーを誤って出し、それにより揚力が低下し、かつ抗力が増大したということ、二番目には第二または第一エンジンが何らかの原因で異常となり、操縦者が不適切な操作をした、つまり機首上げ操作をしたということであります。なお、エンジンが異常であったというボイスレコーダーの録音及び乗客、地上目撃者の証言があったが、これはスポイラーを誤って上げ操作をしたために臨界迎角を越え、さらに大きな迎角に操作され、エンジンのコンプレッサーストール、バックファイア等の異常が発生したかもしれないというふうに推定されておるわけでございます。  なお、さらに詳細な点につきまして御質問がございますれば技術部長のほうから答弁いたします。
  57. 梅田勝

    ○梅田委員 そんなこと聞いているんじゃないですよ。スポイラーがうまく入らぬ、そういう問答の事実があったかどうかということを聞いておるんだから……。
  58. 金井洋

    ○金井政府委員 ただいま局長からもお話がありましたように、事故調査はソ連政府がやったわけですけれども、モスクワでの調査の段階ではそういうことはありませんで、日本へ帰ってきてから調査をしたところ、日本航空がやっておるようですけれども、そういうことがあるということになっております。ただし、ソ連における間はそのスポイラーはがちゃんと入って、入ったという証拠を示すライトが消えておる、これはソ連政府が確認しております。
  59. 梅田勝

    ○梅田委員 だから私は言っているのだ。この事故調査委員会で日本側が独自の調査をして、そしてこの真相を明らかにすることをどれだけやったのか。日本へ持って帰ってから、その事故の報告を全部発表されてからそういう事実があったというような議論は、私はきちっとした責任を果たしていないと思うのです。国民の側からみますと、スポイラーがうまく入らぬ、言うてみたら非常に危険な状態だ。あるところでは乗客が窓から見ておって、どうもあそこの部品がおかしいのじゃないかということを指摘をして、そして直させたというようなことも聞いておるわけですけれども、そういう整備の上で十分であるかどうかということが、国民の側から見て安心して乗れる飛行機だということになるわけでありますから、私はこういう重大な事故についてはもっと責任を持った点検調査の体制というものが必要ではないかと思うのです。飛行機というものは、私は戦争中にずっと飛行機の整備をやっていたからよく知っているのですが、設計が十分なものであればそう簡単に落ちるものじゃないです。天候が悪いとか急に激変した状況が発生したとか、しかし、それだけでも簡単に落ちるものではないですよ。エンジンがしっかりしておれば落ちない。操縦士がミスをやるとか、こういう幾つもの条件が重なったときに飛行機事故というものは発生をするわけです。やはりささえのないところに飛んでいくわけでありますから、これを落ちないようにするためには幾つものチェックで万全の体制をとる、それが責任ある航空機関によってやられているということを国民が見ませんと、やはり不安は解消しないというように思うのです。  そういう点で、かかる事故が発生したとき、労働者の声、それを一番代表しているのは労働組合だと思いますけれども、そういうものをどのように反映するかということが非常に重要だと思いますが、今後現場の労働者の声を組織を通して反映させるという点で運輸省のほうはどういうお考えを持っておられるか。
  60. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほど来大臣からも御答弁申し上げておりますように、何としても、航空の安全というものは使用者とか被使用者という問題ではなく、全体が一本になってやらねばいかぬということは当然でございます。したがいまして、そういった問題につきましては労働組合とか組合でないとか、そういう立場を離れまして協力していくことが必要でございます。そのためには口頭禅を言っていただけでは絶滅しません。したがいまして、どうしてもその中間のパイプが詰まるといけない。したがいまして、下の現場に働いている方々の貴重な御意見はすべて上のほうに吸い上げる、その判断においてやるときめたことは下にまで徹底する、上下左右というものが信頼関係でつながって、これが一本に結ばれていかなければならない、そういうことをやらなければならないことは当然でございまして、そういった意味におきましては、先生の御指摘のように実際に働いている方々の意見というものが十分くみ上げられて、それが消化されていかなければならぬことは私もそのとおりだと思います。
  61. 梅田勝

    ○梅田委員 大体そのようになっていないんだ。労働組合を敵視して、五つにも分裂させておるのだから、そういう労務管理政策をやめるということがやはり安全につながるということを運輸省はとくと認識してもらいたいと思うのです。そこで、さらに労務管理問題で追及をしたいわけでありますが、昨年の六月にわが党の田代議員が航空局を通しまして日航の労務管理の問題につきまして重大な指摘をいたしております。それはここに持ってまいりましたが、日本航空株式会社が従業員を採用する場合の志願書というのがあります。これを見ますといろいろ記入する欄がございますが、その中に主義、信条、支持する政党、加入団体、これを明らかにするような志願書が出ております。これは明らかに思想、信条の自由を保障している憲法に違反するものだということで指摘をいたしましたが、これは現在もこのまま採用しておるのですか。
  62. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいまの御質問につきまして、私現状がどうなっておるかよく存じませんけれども、こういった問題につきましては労働省その他によりまして、もしそういうことが違法であればいけないし、適法であれば適法ということだと思います。私ちょっと判断いたしかねます。
  63. 梅田勝

    ○梅田委員 これは昨年六月十九日に航空局の監督課長に来ていただいて、るる調査した状況説明してもらっておるのです。だから航空局が知らないということはないわけです。  もともとこの問題がなぜ起こったかを少し御説明申し上げますと、昨年の五月二十九日に日航運航乗員組合との間で団体交渉があった。団体交渉の席上、小塚委員長の身上調査問題になっておるのです。そしてその内容について従前記載したものが虚偽だということで、つまり労働組合の委員長の思想、信条の内容にわたって団交の席上追及しておる。これはきちっとした文書がございますから、そういう事件があったことは事実だ。それで志願書なるものにけしからぬ内容の調査をしておった。これは現在通用しておるものでありますが、その小塚さんが採用された昭和三十七年十月当時の内容は、すでに用紙がないそうです。ところが日航の勤労部長の説明では、現在及び過去の支持政党、加入政党及びその理由を記載する欄が設けられておりましたということを述べておる。これは日航の公式の文書として出しておるわけです。先ほどいろいろ説明いたしましたように、政府側の答弁もありましたように、日航というのは政府が大幅な出資をして運輸大臣が絶大な監督権限を持っている、いわば半官半民の会社だ。それが憲法に違反するこういうことをやっているというのはどういうことですか。こういうことをやって、労働者に対する思想的な統制をやって、労働者が安心して仕事ができますか。どうですか。
  64. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 先ほど大臣からも申し上げましたように、日本航空株式会社に対する監督は、日本航空株式会社法という特別法に基づくものと一般航空法に基づく監督とございます。ただいま先生のおっしゃいました点は日本航空株式会社法、いわゆる日航法による監督としてそういうことをやったのかどうか、こういう御意見かと思いますが、これは先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、日航法の監督と申しますのは、これは政府が出資しております株式会社でございまして、それに対する監督権というものも、事業計画の認可とか資金計画の認可とか、そういう一定の限られたものでございまして、そこまでの統制というふうなことまでは、法律上の問題としては含まれていないというふうに私は考えております。ただそのことが適当かどうかということはまた別の問題でございます。
  65. 梅田勝

    ○梅田委員 とにかくあなたの答弁では、こういう憲法違反になるような記入をさせておるというごとはまずいということですね。先ほど答弁された趣旨をもう一度確認しますけれども……。
  66. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 その辺はよく労働当局とも、関係の省でございますから、打ち合わせてみたいと思います。
  67. 梅田勝

    ○梅田委員 これははっきりいたしませんから、この問題につきましては質問を留保して、また別の機会に委員長において発言の許可をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、これは憲法の第三章に示された基本的人権の明白な侵害であります。第十一条の基本的人権をすべての国民は享受する権利を持っている。第十二条の自由及び権利の保持責任、第十三条の個人の尊重、第十四条の法の下の平等、第十九条の思想及び良心の自由、第二十条の信教の自由、第二十一条の集会、結社、表現の自由、第二十二条の職業選択の自由、これだけの憲法の条項に対して重大な違反をしている。これはもうはっきりしてもらわなければ困ると思うのです。さらにこれは労働基準法の第三条、職業安定法第二条、同三条、これにも違反するものであります。  さらに、日航の場合には国家公務員法の第二十七条「平等取扱の原則」につきましても明白に反するという点で、私はこのような思想調査をやる、わけても共産党を敵視してスパイ活動をやるようなやり方を厳重にやめるということを要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  68. 井原岸高

    井原委員長 この際、午後二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後二時五十五分開議
  69. 井原岸高

    井原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  陸運海運航空及び海上保安に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。神門至馬夫君
  70. 神門至馬夫

    ○神門委員 短時間に三点の問題について質問いたしますが、最初に昨年の九月四日に発表になりました地方バス路線運行維持対策要綱、これについてまず最初に質問をいたします。  実はこの問題が過疎バスを守るという国の助成措置を前提にしてのいろいろと考えられた要綱という態様になっておりますが、実際にこれを適用する段階になりますと、実はこれは過疎バスの打ち切り対策になるのではないか、そして過疎を激化させるもとになるのではないか、こういう点におきまして、いま補正予算の編成期における過疎地、島根県内等におきましては、町におきましても県におきましてもたいへんな問題になっておるわけであります。この内容等についてはもちろんすでに御承知のとおりであって、五カ年という長い期間の期限つきであって、そして一種、二種、三種の区分けが一往復当たりの乗車人数によって指定され、そして一往復当たりの乗客が五人から十五人までの赤字路線は二種路線として赤字分の二分の一を国が、そして関係県、自治体が助成をしようというこういう内容になっておるわけなんです。こういう要綱に基づいてそれらの過疎バスのあります町村では、あらかじめいろいろと検討して予算を組みました。たとえば島根県に木次町という小さい町がありますが、あの要綱に基づくものとして予定では大体九路線がその補助対象になるだろう、こういうように考えていたところが、実際にその助成対象になってたのは二路線しかないわけであります。町としては七十七万円ばかり見込んでおりましたが、会社のほうからこの要綱に基づいて請求されたものが二百二十万、三対一、三倍もの多くの要求がなされております。これは四月から九月までの半期でありますから、一年分ということになりますと、年間で約四百三十万円というたいへんな財政の圧迫をこれのみで、二種、三種でしなければならない。人口が一万一千で、たいへん小さい財政力の中でこのようなことはとてもまかない切れないということで、いま町をあげて対県交渉をやって、知事自身も、その内容というものがあの要綱全体の文章の表現とはうらはらに、さかさに、実はこれが過疎バスを廃止する方向への口実を与えることになるのじゃないか、こういうことになって、改正をひとつ申請しようということで関係町と県とが意見の一致を見ているというような状況が生まれております。これは監督局である自動車局のほうですでに把握されているか、あるいは大切な問題ですから、されてなかったらひとつ実態問題を聞いていただきたいと思いますが、この町なり県が一つの維持要綱のからくりだ、こういう判断をする要件というものは、御承知のように過疎地でありますから、必ず三回以上は往復するという前提はないわけであります。一番必要な病院とか学校とかあるいは通勤とかという時期に、朝、奥から客を搬出して、また退庁、下校のときに帰るという一往復あるいは昼間での需要度を見て二往復にするというような問題がある。これは当然常識としてお考えになっておる点だと思います。こういうふうにして、そういう一往復、二往復という回数で乗客を割った場合には維持要綱そのものの数字に当てはまるけれども、これがすべて分母を三にして割らなければならぬということになりますと国からの助成対象にならない、除外されるということになります。そういうようなものが全部会社からつけが回ってきておるわけですね。会社のほうはそれが国の示す基準であるから、もしおたくのほうで金がないからというので金を出さなかったらこれはもうはずします、こういうような問題が出ておるわけであります。ですから、過疎バスの維持ということでなしに、三往復以下のところは実質的に財政力の負担能力のない過疎地域自治体においてはこれを切り捨てなければならない、こういう口実に会社が使ってしまう。いままでは公益性をもってそれを廃止すべきではない、過疎地域住民の足を守れという住民の要求にこたえて、その路線は赤字であっても会社全体では黒字であるがゆえにその足を守らせていた歯どめがなくなってしまうというような問題があるわけです。  それからもう一つこのからくりとしては、一路線という定義でありますが、たとえばA町からB町に行く、部落というのは点在しておりますから、必ずしも一つコースを進むということにはなりません。やはりAからBに、中核的な町から町の間に行く段階で部落を通っていくコースがそれぞれ違う、あるいは中間で一緒になる。それらのものが陸運局に届け出をしたものは全部便数が違っていわゆる別路線になります。実際は五つの路線であるけれども、それが一路線、二路線として数えられるがゆえに、これがまた基準に当てはまらない。全く実態に適応しないというような問題が出ておるわけです。  それから三点目としては、そういう過疎地はたくさんの雪が降ります。これは山陰、日本海の島根県から以北は全部そういう状態でありますが、雪の多いときには必然的にバスが動きませんから、動かないときの実数も、いわゆる乗客のなかったことそのものもこれが計算の対象にならない、工事があってお客が乗ってなかったことも配慮されてない、あるいは災害等において、去年のような大災害があったときにも、これが交通どめになってもこれが配慮されてない、こういうようなことになってしまいますと、実際問題としてこの要綱、目的が、なされた意思というものが逆の現象が出るということ自体を御承知だろうと思います。こういうような矛盾点がおわかりになっているかどうか、まずお尋ねをします。
  71. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 四十七年度から始めました過疎地域におきますバスの維持対策でございますが、従来各地の、民間あるいは公営を問わず、過疎地域においては経営が非常に苦しいというようなことで、路線の休止または廃止という問題が提起されまして、地元との間に非常な摩擦を生じてきておったわけでございます。こういった状態に対処いたしまして、今年度からとりました特別対策というものにつきましてただいまその制度の中に矛盾があるのではないかという御指摘でございますが、その個々の問題の前に、基本的な考え方といたしましては、過疎地域におけるバスをどういう方法で国の助成を加えて維持すべきかという場合に、やはり地元におきます市町村のある程度の御援助というようなもの、あるいはその上に立って県と国とでどういうふうに負担するかというようなことについて、いわば国または県の助成と、それから地元における御負担というようなもの、あるいは会社も中身を合理化いたしまして経営維持につとめるというような三本立てで考えたわけでございます。その際に、やはりいままであります路線というものをすべてそのままの形を前提として補助を出すのだというわけには、需要構造等が変わってまいります場合にはできないかと思います。今後ふやさなければならない回数のところもあるわけでございますし、また二本同じような方向にあるようなものについて路線を整理いたしまして、そうしてより太い線にして、それに重点的に助成をしていくというような問題も考えなければいかぬじゃないかというようなことから、まず第一次的に整備地域というようなものを府県知事が考えまして、その中において路線の振り分けをする、その際に、ただいま御指摘がありましたような乗車密度で十五人の線を一応考えたわけでございます。これは最近の運賃の率がキロ当たりおおむね十円をややこすような状況にあると考えておるわけでございます。一方、キロ当たり経費が百五十円をこすような状況になってきておりますので、乗車密度十五人以上のところにつきましてはおおむね企業の採算はこういったもので維持できるのではないかというようなことから、問題は十五人以下の乗客の非常に少ない路線をどうするかということで対象を考えたわけでございます。  そういった路線につきまして、ただいま申し上げましたような路線を地元において実態に即するように再編成をいたしまして、生活路線として残さなければならないものというようなものをはっきりさせる、その際にどうしても廃止をせざるを得ないというような路線も出てくるであろうというようなことも考えまして、そういった路線については、廃止代替バスというようなものを市町村が運営したいということも従来からしばしばあったのでございますから、こういうものについてはその市町村に廃止代替バスの購入費補助を考えるということにいたしましたわけでございます。その際の一つの基準といたしまして、先ほど先生おっしゃいました三回以下の路線について問題だ、これは三回なければならぬという意味じゃございませんで、乗車密度を考えます場合に、一応基準として三回に換算して何人乗っているか、六回走っている路線もありますし、先生おっしゃいます一回ないし二回という路線もあるわけでございます。そういったものについて、乗車密度を公平に考えなければならないというようなことから、三回に換算して一体何人乗っているかというようなことを基準に入れたわけでございます。もちろんこの三回の基準がいいかどうかこういうような問題は今後の問題としてあろうかと思いますが、そういった基準をつくるということについてはぜひ御理解願いたいと思うわけであります。そういったことから五人ないし十五人の路線というようなものについては、逆に申し上げますと絶対に維持させる、こういう考え方から目一ぱいの補助をして事業者には赤字がないような対策を考えたわけでございます。  先ほど、ある町村で金額が思いようにいかないという問題につきましては具体的に調べてみなければわかりませんが、全体の予算というようなものが限られておりますので、あるいは予算の額として若干足らないかというような問題もあろうかと思いますが、私どもといたしましては四十七年度、初年度につきまして、ただいま申し上げました生活路線の維持費補助としては二億二千万円、全体として四億七千万円の予算を組んだわけでございますが、これを四十八年度においては生活路線維持費補助として二億二千万を九億三千万、四・二倍にふやしたわけでございますし、また全体としては四億七千万を十二億二千万にふやしたわけでございまして、先ほど申し上げました予算額が足らないかというような問題については大幅に改善されるのではないかと思っております。
  72. 神門至馬夫

    ○神門委員 私も四十二年から三年おりましたときにいわゆる過疎交通の問題については集中的に取り組んできまして、過疎バスの助成措置が四十一年、四十二年から始まったものでありまして、その経過は十分承知しております。いまの生活路線等あるいはその他の全体の予算が四倍近く増加された、それは経過的に見て私はむしろおそきに失すると思いますけれども、そのような措置をとられたことに敬意を表します。ただ、いまの局長の御説明になりました趣旨からいうならば、それを三往復という基準を設けることは過疎地域実態に合わないのじゃないか。たとえば会社といたしましても、乗車人員等の配置によってそれが一往復で五ないし十五という基準に適合すれば一応国からの対象にしてもらえば、一往復内におけるところの密度は一緒のことでありますから、三往復を必要とすることには理屈があってないようなもので、一応目勘定でやられたものと思う。ところがやってみてそれが実態に合わない。むしろそのようなものがたくさんあって、それが困る、こういうことになる。逆にいまおっしゃいますように九億三千万という予算のワクから逆算して三回以上の基準を設けないとその予算ではまかなえないから、そこで線を引いたのだ、こういう論理も一つはあるわけです。その点は当然考えられます。しかし考えられますが、過疎地域の今日の状態を考えるとすれば、せめて一往復だけでも足を残しておく、それのみが生命路線である、生活路線であるということになりますれば、それはやはりいまのような機械的なやり方じゃなしに、それはそれなりに措置をして、そして中間においても補正等においてこれを見ていくという配慮が当然なされてしかるべきだと思いますし、また学校、病院等があるものについては特にそれらを、要綱であります以上、いわゆる大臣の行政ベースにおいて、行政の幅においてなすべき措置が可能だとも考えられるので、この点について大臣の御答弁を賜わりたいと思います。
  73. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 この予算の使用のしかたについては弾力性があると思います。したがいましてその点については非常に地方によって実情が違うと思いますから、そういう実情を見まして予算の使用のしかたをきめていこうかと思います。ただ、先ほど局長が申しましたように、この点については運輸省が相当努力しているわけなんです。全体の予算の額が少ないから、つまり各地の計画がもっと進んでおって、予算と対照いたしますと全体のワクが少ないということでございますれば、これは四十八年度予算についてはどうもしょうがありませんが、後年度予算におきましてそれに応じるような対策はもちろんとっていかなければならぬと思っております。とにかく四十八年度予算はああいうふうに財務当局のほうとも交渉いたしまして一応の額がきまっておりますので、いかにして有効にそういう地方の要望に沿い得るようにこれを使っていくかという問題が残されておるわけでございます。でございますから、必ずしもこれを数が多いから引き延ばしたほうがいいのだということじゃないと思いますが、これは実際に各地の状況を具体的に見まして、そこで使用計画をきめていくのが一番いいのじゃないか、私はいまのところそういうふうに考えておる次第でございます。
  74. 神門至馬夫

    ○神門委員 四十五年に過疎法が議員立法として成立いたしました。そのときにもこの過疎バスの助成を過疎債の中に入れるかどうかということがずいぶん議論になりました。あれは島根県から全国に呼びかけてつくった法案でございますから、私もその中心になってやったときに、それではなかなかむずかしかろう、これは何とか別の方法でやっていくべきだということで、あれは直接の対象には入れなかったというように、私いま記憶しておるわけなんです。そのようにずっと経過的にある問題ですから、ここでひとつお願いをしておきたいことは、その赤字そのものも一方的に会社が示すその金額を絶対として見なければならないという問題、それからいまのように絶対の負担額が、他の町負担の仕事ができなくなる可能性があるということ、こういうような問題も出ておるわけですから、要綱の線を一つの四十八年度予算算出積算基礎にはするけれども、実態に合わして四十八年度予算の中からそれらのような財政規模については適切な措置をするということを、大臣の口からひとつここでお約束をお願いしたい。
  75. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 いま私申し上げましたのは、お尋ねのような線に沿って予算の使用方をきめましょうということを申し上げたつもりでございますから、そういう方向で計画をしてみます。
  76. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうしますと、私のここでの要求としては、あるいは地元なり県の要求としては、その要綱を改正すべきではないか、そこに基本的な問題がありますが、要綱を改正しなくてもいい程度に行政によって現状に合わした適切なる措置をする、こういうふうにここで約束をされたと考えてよろしいか。
  77. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 要綱を一つ一つ詳しく読んだわけではございませんが、この要綱そのものは、これは財務当局等との交渉におきましても一つの基礎的なものになっておりますから、これをまた根本的に変えまして新しく出発するのだということではなく、要綱の上に乗っけて——結局それでもいまのお話のような点は実行されないことはないのですから、要は実効をあげればよろしいと思いますから、さっき申し上げたように、予算の使用計画上そういう点を十分配慮して計画を立てますということで御了承いただきたいと思います。
  78. 神門至馬夫

    ○神門委員 それではいまの大臣の言明を、現地に応じた、決して過疎化を進めるようなことにこの要綱は運用しません、こういうことが確認をされたものとして進んでよろしゅうございますね。——承知されましたので、それでは次に進みます。  実はここで、去年の何月でしたか、民社党の河村委員も御質問になりました島根県にあります一畑電鉄における問題であります。しかもこれが三月十五日というタイムリミットで貨物の車扱いが廃止されることをめぐっていま大きく問題化いたしております。これにつきましては、実は私も運輸省のほうにいろいろと話し、現地局長ともお会いして、積極的に御努力をされていることに一つは敬意を表します。が、ここまで問題が来ておりますので、一、二点を尋ねまして、さらに運輸省としてのこれに対する積極的な対策なり考え方というものを確かめてみたい、このような立場での質問を申し上げます。  実は、すでにこの一畑電鉄という概要は申し上げなくともおわかりいただいていますね。この一畑電鉄における貨物を廃止する、車扱いを廃止する。車扱いを廃止いたしますと、取り扱っておりました全貨物の九九・五%程度を実際問題としてはやめることになります。それをめぐっての法律論がいろいろといわれております。地方鉄道法の第二十七条における、営業の中の一部または全部を休廃止する場合には主務大臣の許可を受くるにあらざればそのようなことをしてはならぬ、こういう条項がございます。そういう条項がございますが、実体的に実体論としては、九九・五%のものを廃止をしてもそれが直ちに一部または全体ということにはならない、一部にもならない、こういうような法律解釈がなされておるのでありますが、この点についての運輸省の解釈はどうなっておりますか。
  79. 中村四郎

    ○中村説明員 ただいま先生から御指摘のように、地方鉄道法におきましては、地方鉄道の運輸営業の全部または一部につきまして廃止する場合は許可を受けなさい、こういう規定がございます。この場合におきまして一部廃止ということは、地方鉄道の営業の中の旅客営業、貨物営業、これらにつきましてそのいずれか、旅客なり貨物なりをやめるという場合と、営業区間につきましてその一部区間についてその旅客なり貨物なりの全部分をやめる、こういう場合につきまして運輸営業の一部廃止という考え方に立ちましてこの規定を運用いたしておるのが現状でございます。ただいま先生の御指摘のありました、貨物営業の中におきまして、車扱い貨物あるいは小口扱い貨物あるいは小荷物の扱い、こういった貨物営業の中の取り扱い範囲の変更、取り扱い種別の変更ということにつきましては、従来から運輸営業の一部廃止という事項に当たらないものとして運用いたしてまいっております。
  80. 神門至馬夫

    ○神門委員 取り扱い種別の中の旅客と貨物に大別して、この片一方全部をやめるという場合には、いまの答弁ではどうなりますか。
  81. 中村四郎

    ○中村説明員 ある事業者が旅客営業及び貨物営業をやっておりまして、その際におきまして旅客営業なり貨物営業のいずれか一方を全部廃止するという場合には、この二十七条の一部廃止の許可という事項として処理いたしております。
  82. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうしますと、この九九・五%という実体論、いわゆる自社線内短区間におけるところの小口的なものしか扱わない、小口扱いが主で、あとは車扱いを全部やめたので、これは連絡業務がおもでありますから実際問題としてほとんどやめたとひとしい状態になる、これは許可対象にはならない、こういうふうにおっしゃっておるわけですか。
  83. 中村四郎

    ○中村説明員 ただいま申し上げましたのは、貨物営業の中の営業種別の変更につきましては一部廃止の許可として取り扱っておりませんということを申し上げたわけでございまして、実体論の面におきまして、ただいま先生指摘のように、その中のある種別をやめるという場合におきまして、それが全体の貨物営業の中に占めますシェアが非常に大きい、あるいは大部分である、こういうことにつきましては、その量の多寡によりまして取り扱い方を区分するということは非常に実体を反映するわけでありまして、その区分によって処理することはむずかしかろうと思います。しかしながら、実体がそういう実体の場合に、これをやめます場合は荷主等利用者の動向なり意向というものを実体に合わせてよくしんしゃくいたしまして取り扱ってまいる、こういう考え方でございます。
  84. 神門至馬夫

    ○神門委員 法律論と実体論という、その法律自体が実体に合わないという代表的な条文だろう、こういうふうに思いますし、その立法時におけるところには今日のこのような状況をおそらく想定してこの法律が生まれていなかったところに、いま民鉄部長のほうからお話しになったようなものが出たのじゃないかとも思います。しかし問題はそのような法律論と実体論の大きなギャップ、まるっきりなくするにひとしいものを、一部とも解釈できないような法律問題が論議をされるということについて、いろいろ問題もありましょうけれども、それはさておいて、そのようなときには運輸省として当然、先ほど申されるようにこれを使っている荷主の意向等を配慮して、企業主に対してあるいは届け出事務に対して何らかの対策をとられると考えてよろしいか。
  85. 中村四郎

    ○中村説明員 ただいま先生指摘の一畑電鉄の具体的事案につきましては、われわれの考え方は、この車扱い貨物の連絡及び自社線内の取り扱い等を廃止することにつきましては、県あるいは沿線の出雲市、平田市、それから連絡にかかわるものにつきましては国鉄の米子管理局、また荷主の十七業者ほどが主たる事業者になっておりますが、これらの方の動向、意向をよく反映させまして取り扱いをきめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 神門至馬夫

    ○神門委員 特にこの場合、いまおっしゃいました自治体、荷主、連絡運輸をやっている関係の国鉄、この三者等の意向、条件を配慮したい、こういうようにおっしゃっておりますが、監督官庁であります運輸省が、三月十五日というのは諸条件が整わないからもう少し待てという意向に反して、これを一方的に届け出によってその休止権利ができるというふうに会社が考えたときには、この制裁規定というのが三十七条にありますが、しかしこの三十七条というものを直ちに適用されるかどうか、そこまでいまここで明確に御答弁願うのは、十分配慮しようという運輸省の配慮がございますから、ここまでは私は質問の結論を求めようと思いませんが、荷主、自治体等への配慮を十分考えて、この問題については処置してもらいたいことと、特に具体的な問題としては連絡運輸の問題であります。  昨日、一昨日私は現地関係の国鉄の担当部長とも連絡してずっと打ち合わせをしたのでありますが、実は三月の末まで一年契約の連絡運輸の協定があるわけであります。こういう両者の約束事がある。ただ業者間の約束でなしに、こういう公益事業でありますから、一般への契約であると私たち解釈をいたしております。さらには一畑が取り扱いませんと、予想される駅に貨物がどっと押し寄せますと、倍にもなって、その需要に対する受け入れ施設が国鉄側にない。そこにはこういうような具体的な問題が起こるわけであります。でありますから、そのように三月末まである契約を一方的に破棄して、三月十五日を法律論を振りかざしての廃止というようなことの絶対ないように、これは運輸省として特に責任を持って措置していただかなければならぬ。私も今度おなりになりました運輸大臣がものわかりのよく、理解ができておることに非常に感謝しておるわけでありますが、この点についても運輸省として十分なる責任を持って措置する、こういうような御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  87. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 法律法律でございますが、長い間運輸省の指導を受けて経営しておる会社でございますから、われわれとしても実態に合うように、やはり行政的な指導もし、いろいろアドバイスもするというのが当然でございましょうから、先ほど部長が申しましたように、これは非常に事実を混乱させて、そして地方に迷惑をかけるような方法では終結させないように、運輸省といたしましてはこの法律問題を離れましても、行政措置として最善を尽くすように努力をいたします。
  88. 神門至馬夫

    ○神門委員 大臣のほうからはっきりと約束をしていただきましてありがとうございました。ここで確認をいたしておきます。  三点目でありますが、実はすでに大臣等もあるいは御承知と思いますが、日本海の島根半島一帯のあの膨大な油の汚染の事件でございます。これは島根県というまさに美しい緑の空と青い海を持っております県としては、青天のへきれきのような大事件でありまして、現在もってこの問題についての精神的あるいは経済的後遺症は深刻なものでございます。この内容等、概況等につきましては、大臣すでに陳情等をお受けになって御承知でございますか。
  89. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 この油の流出事件が発生いたしまして直後に報告を受けまして、それ以後非常にこれは困った問題であると思いましたものですから、至急に原因の調査を命じまして、なかなか原因がつかめないということでございましたが、海上保安庁におきましてはあらゆる手段を持ちまして、航空機あるいは船、それから地元の御協力を求めて、漁船等の出動を求めまして、原因の探求に努力すると同時に、被害を最小限度にするように努力をいたした次第でございまして、その間の事情は一応承知しておるつもりでございます。
  90. 神門至馬夫

    ○神門委員 概況については御承知になっておるので、それならば内容には触れません。しかし問題は、いまごろになってわかることは、あの油が十二日に半島に押し寄せてきてその排出された油は一千トンとかあるいは三百トンとかあるいは五十トンとかいろいろいわれておりますが、とにかく相当膨大な油が出され、しかもその油が一番たちの悪いC重油であったというその点まではわかっておるわけであります。そういう中で問題になってきますのは損害に対する補償なり措置、この辺のものは島根県として今年度で一億二千万、来年も一億二千万、それぞれ補正と一般予算で手厚く見ておるようでありますが、問題は国の措置であります。これに対してどのような財政的な措置をお考えになっておるのか、またなされたのか、この辺をまず大臣からお聞きしたいと思います。
  91. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 原因者がはっきりわかっております場合はこれは問題ありません。原因不明の場合は、実は法の不備と申しますか、制度の不備と申しますか、今日なおこの問題についてのはっきりした法的根拠を持っていないのが現状でございます。したがいましてこういう問題に対しましては今後関係各省におきまして協議をいたしまして、何らかそれについての結論を得るように努力をしなければならぬとは考えておりますが、今日までこういった問題があちらこちらにあったと思いますが、法的な根拠は現在のところはないというのが実情でございます。
  92. 神門至馬夫

    ○神門委員 そこでいまおっしゃいましたようなことは、この海洋汚染防止法の立法過程においてはずいぶん議論になった模様であります。議事録を見ますと、そういうことに基づいて四十七年五月十一日の交通安全特別委員会においてこの法案が上がりますときにこういうような附帯決議がなされております。海上交通安全法案に対する附帯決議、その三「加害者不明の漁船に対するあて逃げ、あるいは油害等による漁業の損害については、これを救済するための有効なる制度の確立をはかること。」こういう附帯決議がなされております。そして丹羽運輸大臣は、「ただいまは、海上交通安全法案について、慎重御審議の結果、御採決をいただき、まことにありがとうございました。また、決議されました附帯決議の内容につきましては、その趣旨を十分に尊重し、誠意をもって実施に当たる所存でございます。まことにありがとうございました。」と繰り返して御丁重にもその内容についての実行を約束しておいでになりますが、いまの大臣の御答弁によると、制度上助成すべきよりどころの法律がない、こういうことでございますが、この点はいかがでございますか。私は運輸省、国にも補償すべき責任がある。この附帯決議からいって当然なさるべきだと考えますが、いかがでございますか。
  93. 原田昇左右

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のこの問題につきましては、現在補償制度がございません。したがいまして、私どもとしては昭和四十八年度におきまして十分被害の実態あるいは損害額等を調査いたしますために予算を計上いたしまして調査を進めますとともに、関係各省と協議いたしまして、新たな補償制度の創設について検討をいたしたいと考えております。
  94. 神門至馬夫

    ○神門委員 大臣、国務大臣としてお尋ねいたします。  このようなものには附帯決議がありますから、ことしあるいは来年にそのような直接被害あるいは後遺症に対する損害に対して特交等について十分配慮をする、このようなお約束をいただけますか。
  95. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 努力はいたしますが、結論につきましては関係各省もっと具体的にあらゆるケースを予想いたしまして協議をする必要があると思いますので、いま仰せのような非常に明確に国が責任を持つべきだということにつきましては回答を留保させていただきます。
  96. 神門至馬夫

    ○神門委員 そのような加害者なき油公害のときに、国が経済的、財政的に助成をしないとするならば、いわゆる犯人を見つける平素の監視体制がなされていたかどうか、それならここに問題があろう。その辺にミスがあるから国は財政的に見ようということならよろしいのですが、このときの実態からいって、各新聞を見ると、そこの管轄であるところの境港の海上保安部の部長坪山さんが、監視艇が漁船に追い抜かれるほどの古いものであって、違法行為の監視体制は十分とれないのだ、こう言っておるのであります。監視ができないと言っておるのであります。平素監視を十分なさねばならないそのものが、どろぼうがいつでもどろぼうできるようにしておいて、そしてどろぼうをしたそのことについて私は責任がございませんと言えないと思うのであります。そしてその事件において、オイルフェンス等が全然境の海上保安部にもない、中和剤もない、それが来たのが十二日に問題になってから三日目に来ております。それで、海上保安庁と県との間における——この汚染防止法が成立をして、その責任はやはり海上保安庁のほうがリードしてやるべきではないかというと、いわゆる被害自治体である島根県のほうで先頭に立たなければいけないという協議が重なって四日目にようやくむしろとわらでこれを除去しろというような指令が出ておる。予防体制も監視体制も十分なされないし、除去体制も対応するような準備が全然なかった。ここに実はこの問題があるわけです。海上保安庁と話をしてみますと、これは私的な話ですが、あの辺にはああいう事件がなかったので盲点をつかれたようでまことに申しわけないと率直に言っておいでになりますが、これはやはりそのような平素の監視体制、予防体制というもの、あるいは事件が発生したときにおける対応体制がないような場合には、いまのような一般論でこの問題については後刻立法措置をとってその措置をしたい、こういうふうなことというのは責任のがれだと私は思いますが、いかがでございますか。
  97. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  島根半島沖におきます油の流出事件につきまして、先生指摘のように、私ども従来の行政に加えまして、最近は公害の防除、監視ということが一番重要でございますので、交通安全と並んでこれを重視しておるわけでございますが、従来の統計から見まして、たとえば日本海沿岸における油汚染状況を見ますと、四十七年度中の油汚染の発生件数は、全国で千九百八十三件ございますが、この中で日本海、これは秋田から仙崎までの私どもの管轄を含んでおるわけでございますが、四十八件、二・四%というふうに非常に低いわけでございます。したがいまして、私どもも船及び飛行機の配備、それから監視、取り締まりについても東京湾とか伊勢湾、瀬戸内海、そこに重点を置きましてやってきた。そういう意味先生おっしゃいましたように、私ども率直に申し上げまして監視体制の手薄なところに虚をつかれたというのが私どもの偽らざる気持ちでございます。しかし、そうは言いましても、私どもとしてはこういう海上公害監視取り締まりの任務を持っておりますので、船が足りないとか貧弱であるとか、そういうことは理由になりませんので、今後は十分この教訓をくんでやりたいと思っておりますが、そのために私どもは島根県、鳥取県、この一帯を管轄しております第八管区に対しましてさらに今後この海上監視の強化を指示いたしております。  なお原因不明といいますか、現在までの捜査状況でございますが、私どもは、二月八日から十二日までこの付近を通りました通過船舶、約九十隻ございますが、この通過船舶につきまして、どこからどこに行ってどういう積み荷を積んだのか、あるいはどこで積み荷をおろしたのか、あるいはどこかの造船所に入ったのか、全部これを洗いまして、消去法によりましていろいろと的をしぼっておりますが、現在まで残念ながら、相当容疑の濃いと思われる船もございますけれども、まだ突きとめるに至っておりません。この点につきましては私どももいろいろとこれを貴重な教訓として今後そういうくふうをしてさらに監視を強化していきたい、かように思っております。
  98. 神門至馬夫

    ○神門委員 その辺をとやかく責任を深く追及しようとば思いませんが、しかしこれは陸上において六十キロで逃げる自動車を五十キロしか速度が出ないパトカーでよう追いつかない、みすみす逃がすという事件と全く一緒なんですよ。海上においてはこのような犯罪が一番多いから、及ぼす公害が大きいからということでのわざわざの立法措置である以上は、漁船にも追い越されるうちの監視艇だ、うちのはそんな十分な監視体制はとれませんというようなことを新聞記者会見で発表してもらっちゃ、漁民は一体何をたよりにするのか、一体海上保安庁というのは何のために存在するのかという疑問が出ておるのです。そういうような腹立たしさからいろいろな問題があります。それによってもう生活、かやれないというような状況まで来ておる中で、これはそのような状況ならなおさら運輸大臣、これは特交等で何かの措置をするということをひとつ閣議等で積極的にあなたが音頭をとって、わがほうにこういう欠陥があったらしい、私が努力するということをここで約束されるのはしごくあたりまえのことだと思いますが、いかがでございますか。
  99. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 お尋ねの中にいろいろな問題を含んでおると思いますが、第一にこの監視体制、いわゆるコーストガードをもっと強化しろということは賛成でございまして、毎年努力をいたしておりますがまだ十分じゃございません。したがって、保安庁長官が申しますように、時によりましてあまり事件が起こらない場所では少し監視の目が届かないところが出てきておる、まだそういう実情でございますので、このコーストガードを強化するということにつきましては今後とも私も最大限努力をしていかなければならぬと思います。ことに海上交通安全法というようなものができまして、運輸省がそれだけの法律上の責任と義務を負わされておるわけですから、その意味におきましてもこれはどうしても強化していかなければならぬと思います。  それから補償問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように法制的にはなかなかむずかしい問題だと思います。ことに瀬戸内海とか大阪湾とか伊勢湾とか東京湾とかいうような内海における問題は国内的な問題として処理できますが、潮の流れがありますし、公海においてどこの船がどうしたかわからぬというようなものから思わざる被害が出てくることがございますから、それについて原因を探究するのも、これはもちろん必要でございましょうが、これにはやはり国際的な協力がなければならぬと思います。その意味で御承知のようにいろいろの条約もでき、各国とも条約に基づいて国内法を持っているわけです。今後ともこういった問題につきましては、世界の海をきれいにしようという意味で各国の協力がどうしても必要になってくると思う次第でございまして、この点については努力をいたします。  それから被害を受けた——これは主として沿岸の漁民の方だろうと思いますが、この点につきましては先ほど申し上げましたように、根本的に法律に基づいて補償とか損害賠償とかいうような問題につきましてはいろいろ議論があると思います。これについては先ほど申し上げたような態度で関係各省とよく具体的に相談してみましょうということを申し上げたわけですが、いまできてしまった被害に対しましては、どこかで何らかの救済措置を講ずる必要があると考えます。これにつきましては他省の所管に属することですから、ここでお約束するわけにはまいりませんが、そういう点につきまして関係各省、たとえば水産庁とか自治省とか、そういう方面に御意向を伝えまして、善処をしてくれるように私からそういう意見を申し出ることは少しも差しつかえないことだと思っております。
  100. 神門至馬夫

    ○神門委員 特交等は自治省管轄でございますから、そういう点で積極的に——差しつかえないことだというのはよくわかっているんです。やってもらえるかどうかということを聞きたかったのですが、これはそのように努力してもらえるとして考えてよろしゅうございますか。——それではひとつよろしくお願いします。  それから、特に先ほど申したような事件の発生したときの対策、オイルフェンスとか中和剤とか、あるいはそういうような油の汚染があったときに非常に原始的な、あそこでは何かひしゃくですくって袋に詰めて、そして何百トンというものを四国に送って焼くというような、まことに対策のないままですね。これらについても早く対策を、どういうふうに機械的に科学的になされねばならないかということに対して、有機的な方法、適切な効率のあるものを運輸省として責任もってひとつやっていただきたい。  それから保安庁としても、やれば金が要るから運輸大臣からしかられるというような気持ちで前に出ないような、島根半島的な状況をつくらないようにこの際お願いしておきたい。特に、四十七年の一月二十二日に「海上交通安全法関係政省令について」海上保安庁と水産庁が約束をかわした中に、(8)の4に「海上保安庁は、海域における重油積載船の衝突の予防、その他油類の流出の防止および流出時における漁業被害の防止等について監視の強化、迅速な出動等所要の措置を強化する。」これは四十七年一月二十二日、言うなれば一年前であります。今日の一年は以前の十年に匹敵するという世情の中にあって、島根半島にとられた油汚染に対する海上保安本部の措置というものはまことになきにひとしい。このような約束ごとが、省令そのものが一片のほごにされておるということは、まことに責任は重大だと思うわけであります。  これらにつきましても尋ねていきたいのでありますが、持ち時間がございませんので、問題はここで追及してあげ足をとるということではなしに、そのような約束ごとをきちっと責任をもって国民に果たされること、これが今日最も必要なことであり、田中内閣が国民から信用を失いつつあるゆえんもまたここにあるのであります。田中内閣を継続させるためにも、大臣なり皆さんは積極的にこのような措置をとられる義務があるのじゃないか。島根半島の実態というものは、いまここでは多くは申しませんが、たいへんなことであるということをもう一ぺん再認識をいただきまして、これらの平素の監視、起きましたときの防除措置あるいはそれらに対して機敏に、海上保安庁が率先してこれらの対策に乗り出していって指導する、こういうような姿勢を確立していただくようにここで強く重ねてお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  101. 井原岸高

    井原委員長 松本忠助君。
  102. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣に伺いたいわけでありますが、成田国際空港の開港が延び延びになっておりまして、見通しが立ちませんというように私どもには感じられます。当初の計画ではたぶん四十六年四月開港だったと思いますが、聞くところによりますと、ある新聞には八回も開港の時期が延びたというふうにも書かれております。私ども一日も早く成田が開港され、羽田のあのラッシュが解消されて航空の安全が期せられることを願っておりますので、そういう観点から質問を進めたいと思うわけでございます。  新東京国際空港が話題になり、成田に本ぎまりになり、今日に至るまでに大臣が現職のあなたまでに何代かわったのか。この間空港公団総裁は成田さん、そして現在の今井さんと二人でございますけれども、大臣が非常にたくさんかわっていらっしゃる。こういうことは熱を入れてやっておるのか、その事績があらわれないのか、私どもは非常に遺憾に思っておるわけでございます。総額千六百億円の巨費を投じて、また警察官の何人かが殺害された。その他多くの血を見ましたところの空港の建設が、今日なお開港の日について大臣の確約がされていない、こういう点につきまして私ども非常に遺憾に思います。これは歴代の自民党内閣の大失敗だと思うわけであります。もう少し大きく言うならば世界的の大恥辱ではないか。四十六年四月から開港できると言いながらいまもって開港できない。これは日本の恥辱です。非常に残念なことだと思っておるわけでございます。その点について大臣の反省、またおくれた原因は一体何なのか、こういう点についてまずお尋ねをしたいわけであります。
  103. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 東京国際空港の議が出ましてから大臣は十人かわっておるそうです。お話しのように、これは初めの計画が無理だったのかあるいはやり方が悪かったのか、いまになると一つ一つこれを振り返って反省することはできないことはございませんが、要するに、われわれは初めに国民の方々にも期待を持たれ、また当委員会におきましても関係法律案を通過させていただいて着手することになったわけですから、一日も早くその成果をあげるようにするのが当面のわれわれの責任であるということは痛感しております。  今日までなぜおくれたかということはたびたびこの委員会でも申し上げたかと思いますが、大体御承知のことではございましょうが、一応その点について御報告いたしますと、空港公団ができて、公団が窓口になりまして新空港の開港に至りますまでの間のいろいろ具体的な措置を担当することになったわけでございます。中には運輸省が公団にまかせっきりで何もしなかったじゃないか、こういうことを言われる方がございますが、実はそうじゃございませんで、公団が何か具体的措置をしようと思いますときには必ず運輸省に相談がございました。両者が協議した上で最適と思われるような方法をとってきたことは事実のようでございます。しかし、その後当初の計画に沿って計画を進めてまいろうといたしましたときに一番問題なのは、現地において空港開設についていろいろ血なまぐさい事件が起こったこともございますけれども、われわれ事務的に考えまして一番大きな問題だったのは、今日でもまだ続いておるわけでございますが、航空機の燃料を輸送いたしますパイプラインの問題でございます。これは本格的に申しますと、千葉市を通ってこの空港までパイプラインを引いて必要な航空燃料の供給をしようという案でございましたが、これには、私が報告を聞いたところによりますと、二つの非常な難点が出てまいりまして行き詰まっておるわけでございます。  その一つは、千葉市内を通りますパイプラインというものにつきまして、地元住民から非常な反対が出まして、これはどうしてもここを通しては困るということ、これについても公団もそれから関係の、名前を申し上げるのをはばかりますけれども、地方自治体の方々も非常に説得に努力してくださいましたが、今日までまだ打開の道が開けません。  それからもう一つ、これは絶対的に不可能とは申しませんけれども、工事を施行します上において非常にむずかしい問題が出てまいりました。たとえば、鉄道と交錯するとかあるいは河川と交錯するとかいうような問題が出まして、その工事を予定の路線に従ってやりますのに非常な困難にぶつかったということが一つあるようでございます。しかし、主たる理由は地元の住民のこれに対する拒否反応でございます。一方、空港の設備はだんだんにできてまいりまして、本年度末までには空港のターミナルビルその他設備のほうは大体でき上がるということになってきているようでございます。しかし航空燃料の輸送ができませんと、これは飛行機を飛ばすわけにいきません。でございますから、そういう本格的な航空燃料の輸送計画はなかなか手につきませんので、暫定的な航空燃料の輸送方法を考えざるを得ないということになりまして、昨年来その点について運輸省、空港公団それから関係の地方自治体等と非常な精力的な折衝を続けておるのでございます。だんだん問題点がしぼられてきております。ただこれはお願いしたいのですが、どこにどういう問題があって、それをどうしたんだ、どうするんだということになりますと、一般的にそれが公表されるようなことになりますと非常に刺激する部分が多いのでありまして、現に先月でございましたか、最近も内容的にはある程度まで話が妥結しておったにもかかわらず、そういったことが報道されましたためにしばらくストップをしようというようなことになりまして、思わざる障害が起こってくるのでございまして、この点は具体的に申し上げたいのですけれども、そういうことでございますから、もう少し具体的に申し上げることについては御容赦をいただきたいのでございます。しかし問題点は三つほどございます。そういうような問題につきまして、実は私は国会のほうへこうして毎日毎日出ておるものですから、政務次官に特命をいたしまして——私が出るときはいつでも出ます。しかし政務次官が中心になってこの具体的な推進策をやってもらいたいということにいたしまして、政務次官は非常に真剣にこの計画に取り組んでくれております。その結果、いま申し上げましたように三つ四つの問題が残っておりますけれども、打開の可能性が出てまいっておりまして、実はこういうことは委員会で申し上げていいかどうかわかりませんが、この問題につきまして運輸省といたしましては毎日午後五時には政務次官の部屋に空港公団の総裁から局長、関係者が全部集まりまして、その日の進行状況を報告し合い、翌日お互いにどうすべきかということについて、毎日対策を練りながら推進策を講じておるような次第でございまして、決してこれをなおざりにし、おくれるのをいたずらに放置しているような状態ではございません。何とかしてわれわれの責任を果たしたいということで熱意を込めましてやっておるのでございまして、その点はひとつ御了察をいただきたいと思います。これの結論が出ますのは、私はいまここで何月ということは申し上げにくいのでございますが、そんなに遠くない時期にある程度の結論を得まして御報告を申し上げられるような段階になるのではないかということをひそかに期待をしておるのでございます。
  104. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣から非常に懇切な御答弁がありました。おくれた原因は何かということについて、いま大臣からもいろいろお話がありました。しかし私はその中で、聞いておりまして、要するに地元の方々の拒否反応、こういう一節がございましたが、地元の人たち、特に空港の三里塚一帯に住まわれている農民の方々、土地に執着を持っている人たちに対して、あの荒れ果てたところをともかく作物ができるようにした、その土地を、とにかく国際空港をつくるんだから取り上げるんだというような、そういう考え方といいますか、そういう考え方で最初から臨んでおった。そこに農民の方々が拒否反応を示したのじゃないか。やはりあそこでもっともっと公団総裁なりあるいはまた航空局長なりが現場に行って、毎日のように農民の方々とひざを交えて話し合いをするという時期があったと私は思うのです。それがなかったことが根本の問題だったと私は思うのです。  確かにいま大臣がおっしゃいましたように、パイプラインの問題もありましょう。しかし聞くところによりますと、あの千葉から揚げるパイプラインにいたしましても、どこを通ってどうやるかということは、全く後になってきまったわけですね。最初たちがこの空港公団法案を審議したときにも、燃料はどうするんだ、上水道はどうなるんだ、下水道はどうなんだ、電気はどうなんだということまで私たちはやったわけです。そのときはいかにも成算があるようなお話だったのですけれども、現実には燃料輸送ということについては全く考えていなかったと言っても過言ではなかったと思うのです。  まあそういったことは今言ってもしょうがありません。とにかく私は、おくれた原因は人間の気持ちというものを無視してしまって何でも押しつけてお上の御威光でやってしまうんだというところにあった、それに耐え切れない農民の方々の拒絶反応があったと思うのです。これは今後大阪の新空港、いずれにしてもつくらなければならない問題です。このために大きな教訓じゃないかと私は思っております。  確かに燃料の問題もありましょう。いろいろありましょうけれども、ますそういう問題が、空港を建設するときには一貫して最初から考えなければならない問題です。特に現在、空港と首都東京の間の足がないという問題、これがきまっていない。新幹線は法律の上ではつけることになっているけれども、現実には東京あるいは千葉県の拒絶反応があって、絶対できそうもない。たよるところは京成電車しかない。こういうことであっては、いたずらに空港ができても足の確保ができない。こういうことについては、今後この教訓を生かして、関西空港の場合には最初から徹底的な論議をし、そして十分地元の方々の御理解を得てやられるようにしなければだめだというふうに私は思うわけでございます。  いまいろいろとお話がございましたが、パイプラインにいたしましても千葉の市議会で乱闘事件もありました。私も現に千葉市内の花園町に行ってまいりました。どうして住民の方々が不安な気持ちにかられて、そこを通さないということを町ぐるみで決議しているのか、その状態も見てまいりました。いまの大臣のお話にありましたように、昨年の十月、いわゆる燃料輸送の問題の暫定計画と申しますか、千葉のほうからパイプラインで引く方向でない暫定のパイプライン工事、この問題も昨年ようやく解決がついたというようなことを新聞で承知をしております。いずれにいたしましても、一刻も早く開港をしなければならないというふうに私は思っているわけでございます。まあパイプラインの問題につきましては、国鉄も現に川崎方面から関東の北に向けて線路伝いに延ばすことをやっておりますし、この危険性というものについては相当慎重にやって、危険がないというふうに国鉄の報告はきておりますし、また空港公団としましてもこれについては十分に危険性のないことを確認はしていることと思いますけれども、それをやはり地元の住民の方々に、こういうわけなんだということを一人一人に話していかないところに問題があったのだと思うのです。まあともあれこの問題について、いま大臣のお話のように午後の五時に公団総裁や関係者全部が集まってきょうの成果を話し合い、あしたの方向を確認し合っていく、こういうことをやられたのは、現にそこにいらっしゃる新谷大臣が初めてだ。いままでこういうことが行なわれていたならば、もっともっとこの問題の解決は早かったと思うのです。そういうふうに一日一日けじめをつけて進行していくという大臣のこの姿勢は私は高く評価はするわけでございますが、何にしても、いま羽田の問題があります。もうどうにもならない状態までいっているわけでありますが、羽田の事故などが発生しないように、これもまた羽田から国際線だけは向こうに入れるようにしなければいかぬと私は思うわけであります。  そこで、一応確認をしてみたいわけでありますが、航空局長に一応お伺いするわけでありますが、四千メートルの滑走路はいつごろ完成したのか。聞くところによりますと、これは大体昨年の五月ということを聞いておりますけれども、完全にでき上がっているものかどうか確認をしたい。
  105. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 滑走路自体は完全にでき上がっております。
  106. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ターミナルビルはどうなんですか。そしてターミナルビルは、最盛期には年間どれくらい人間が乗降するのか、出入りするのか、こういうことについてもおよそのところ伺っておきたいわけであります。
  107. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 人数は大体年間七百万人ぐらいを予定しております。そこで、ターミナルビルのほうば内装を残してほぼ完了いたしております。あと内装は大体本年度一ぱいで完了する予定であります。
  108. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 駐機場はどうですか。あるいはまた管制培、各種の無線機、滑走路とレーダー、こういったものについては一つ一つをチェックされておりますか。そしてこれは何年何月までには完成できるというような一つの目安といいますか、そういうものもきめられているとは思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  109. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 駐機場、管制塔あるいは無線施設、これは全部完成しております。管制塔につきましては、もう現に私のほうから人もある程度の配置をしております。
  110. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 格納庫はどうなんですか。格納庫のほうは日航だけなのか、それとも全日空あるいはその他の航空会社も入っているのか、この点はどうでしょうか。
  111. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 日航の格納庫は全部できております。
  112. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 全日空に対しては何ら配慮もされていないというわけでありますか。これから中華人民共和国との航空路も開ける。向こうの考えていることはどうも日航だけではないというふうにも考えられます。そういったことも考え合わせてみますと、やはり一方は国策会社だとはいいながらもいろいろの問題点をかかえている会社でもございますし、この際、全日空にもそういうものを与えるべきではないかというふうに考えるわけですが、この点どうでしょうか。
  113. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 全日空のほうは何と申しましても国内線が主力でございまして、整備工場を羽田に持っております。したがいまして、その整備工場を方々に分散することはできませんので、整備用のハンガーというものは全日空には用意しておりません。しかし、ラインメーンテナンスの場所については考えております。
  114. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私はやはり機会均等といいますか、全日空にもそういう機会を与えるべきではないかというふうにも考えております。  それから貨物の施設でございますが、貨物は大体羽田に残すということを聞いておりますけれども、貨物の取り扱いに対してはどういうふうにお考えでありますか。
  115. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 国際線につきましては、貨物も含めて全部成田に移す考え方でおります。
  116. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうしますと、貨物の施設のほうもでき上がっているというふうに理解してよろしいですか。
  117. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 貨物に関しましては、第一、第二、つまり日航の使う分、あるいは外国会社の使う分ございますが、それは両方ともできております。
  118. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろこまかく聞いたわけでございますけれども、局長、ぜひこれは御自身でも確かめられておいていただきたいと思うのです。御自分の目で見ていただきたい。いまの御答弁を拝見しておりますと、どうも心もとないようにも見受けられます。どこまで御自分の目で確認していらっしゃるのか。やはり私は午後の五時に毎日やられるという大臣のお気持ちを買って、国会も忙しいでしょうが、日曜日にでも飛んでいってぜひひとつその成田の状態を目で確認してくる、こういうことが必要じゃないかと思う。そうすることが、やはり運輸省もここまで気を配ってくれているのだということになれば、公団のほうでもそのように腹がまえも固まるだろうと思う。ただ単に午後五時に集まってやっていればそれでいいというものじゃないと思うのです。いまの局長の御答弁を拝見しておりまして、どうもお隣の次長からいろいろお耳打ちを受けていらっしゃる。そういうことでなくて、ぜひひとつお願いしたいことは御自身で行っていただきたいし、また同時に大臣にもぜひとも足を運んでいただいて、そして見ておいていただくことがこれから大いに空港の開設についていろんなプラスになるのではないか。私たちはこの空港が一日も早く開設されることを望んでいるわけです。それというのも羽田に、あのままの状態で置くと、大事故が起きる、そういうことを考えるがゆえに私たちはそう言うわけでありまして、ぜひともこの点を理解してもらいたいと思うわけでございます。燃料の問題については、先ほど大臣からこまかいお話がございましたので、私それ以上のことは申し上げません。また足の問題につきましても、一刻も早くこれを解決しなければならぬと思うわけでございます。  ところで、その第二期工事の用地買収の進行状況、これはどうでしょうか。
  119. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 第二期工事の用地につきましては、まだ六十ヘクタールの未買収地が残っております。
  120. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 これは私のほうの調査によりますと六十二・九ヘクタールということでありまして、いまの局長の答えと若干違いますが、私のほうで調べた時点よりもさらにお求めになった、買収ができた、二・九進捗したのじゃないかというふうに理解するわけでありますが、この見通しは、このあと大体六二・九ヘクタールという計算をいたしますと八三・八%ぐらい買収済みになるわけであります。そういう点から考えて今後の残された一六・二%というもの、これの見通しは明るいのか暗いのか、この点はどうでしょう。
  121. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 現在も第一期工事に引き続きまして第二期工事のほうも進めたいとは思っておりますが、率直に申し上げまして見通しは必ずしもそう明るくない、なかなか困難であると思います。しかし先ほど先生の御指摘もございましたように、できるだけ農民の方々のお心持ちというものを十分理解いたしまして御相談をいたしまして、御納得の上買わしていただきたい、こういうふうに考えております。
  122. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 その見通しについて、いまのお答えによりますと非常に心配があるわけでございまして、第一期工事のその進捗状況、四六・四が今日に至ってもまだ開設されていないという状態から見てみても、これは非常にたいへんな問題であると思います。どうか全力を尽くして第二期工事のほうもスムーズな進行ができますようにお願いをしておくわけであります。  そこで大臣、重ねてお願いしますが、いまの局長からのいろいろの御答弁を聞いておりまして、またお打ち合わせもあったことと思いますが、成田がまず開港できるというのは一体いつになるか。この点大臣からひとつ責任ある御回答をいただいておきたいわけであります。
  123. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 その点はいまここで何月ごろということはちょっと申し上げにくいのであります。ということは、先ほど申し上げましたような一連の困難な問題それがある程度めどがつきませんと工事にかかれません。工事にかかりましてから大体何カ月くらいかかるということはよくわかっておりますが、そういった問題がございますので、いま何月ごろに開港ができるだろうということをこの公の場で責任を持って申し上げるのにはまだちょっと早いということでございまして、先ほど申し上げましたように、たいへんきょうは積極的に激励のおことばをいただいて感謝しておりますが、おことばのとおりに、われわれもほんとうにこれは、運輸省じゃございません、国としても大問題で、初めにお話しになりましたように国際的にも非常に迷惑をかけているような状態でございますので、一日も早く開港したいということはやまやまでございます。しかしその努力も重ねておりますが、それをいつごろと申し上げるのにはちょっとまだ時間がかかるのでありまして、そういう準備ができましたらさっそく当委員会におきましても経過を御報告し、大体これはいつごろになったら開港できると思いますというような予定も、もう少し具体的に申し上げられるかと存じますが、今日のところは非常にあいまいなことを申し上げて申しわけありませんが、これは事実そのとおりなんでございまして、そのようにきょうのところは御理解いただきたいと思います。
  124. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣が非常に慎重な答弁をされる、そのお気持ちはわかるわけであります。ことしの、四十八年二月二十七日の読売には四六・四から八回も変わったというふうに書かれております。私も実際に計算してみましても、実際八回なのかどうなのか、もっともっと変更があったような気もするし、なかったような気もするし、全くどうも成田の開港延期には驚いておるわけでありまして、大臣が、もうそういう状態の中からいまここで明言できないお気持ちも十分わかります。しかしこれはやはり先ほど大きいことを申し上げましたけれども、いつまでたっても国際空港ができ上がらないという日本の恥辱です。これを何とか大臣の時代において解決をしていただきたいということを重ねて要望しておきます。問題はこれから後の問題でありますが、第二期工事も当然のことでありますが、それよりもっともっと大事なのが、いわゆる関西の新空港の問題であります。  関西のほうの新空港につきましても、航空審議会の関西空港部会によるところの地元の聴聞会も終わって、ことしのうちに候補地がきまるというようなことも聞いております。一方いろいろと反対意見も出ておりまして、先日も、二月二日でございましたか、佐藤政務次官に私も泉南市の方々と御一緒にお会いをいたしました。その反対陳情をいたしたわけでございますけれども、とにかくいまこのような聴聞の結果の答申待ちという状態でございますが、大臣としては関西空港については、陸につくるか海につくるかといえば当然海の中につくるという方向にあるのだと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  125. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 御承知のように、ただいま航空審議会に諮問をしておりまして、これは別に海につくるのを本旨とするというようなことではなく、海と陸と合わせまして、どういう規模の空港をどこにつくったらいいかという非常に広範な諮問をいたしておりまして、各界の一流の方々がお集まりになりまして地元の要望もいれ、あるいはその技術的な研究もされまして、本年度内といいますよりも、そんなに遠くなく答申をいただくことができるんじゃないかと期待しておるわけでございますが、ただいまのところ、この航空審議会のほうも地元の地方団体との関係なども考慮せられたのでございましょう。その場所の選定については非常に慎重に調査をして審議をしておられるということを聞いておるのでございます。したがいまして、いま必ずこれは海につくるんだという方針を、運輸省はもちろんまだきめておりませんし、航空審議会もまだそこまでは最後的にはきめていないんじゃないかと思います。しかし航空審議会の審議の模様を見ますると、候補地はやはり海に多いようでございまして、二、三の候補地についてそれぞれ非常に慎重な研究を進めておられるということを聞いております。
  126. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いずれにしましても、陸上につくるということは現在の伊丹の状態から考えましても、とてもこれは無理じゃないか。大阪に近いところ、神戸に近いところということになりますと、どうしても陸ということはちょっと不可能のように、私どもしろうと考えではございますが、思われます。いずれにつくるにいたしましても、とにかくその一番大事なことは、人命尊重という立場から騒音公害はぜひともなくしたい、こういう点であろうと私は思うのです。航空機の運航上の安全を確保できるいろいろの条件があろうと思います。特に気象の条件等についても海とそれから山がある。山といっても高い山じゃございませんよ。海に臨んでいるわけですね、関西の、いわゆる大阪湾というものを取り巻くものは。そういうことを考えますと、気象条件というものもこれは非常に考えなければいけないのではないかと思う。優秀なパイロットが完全に整備された飛行機を操縦するとしてみても、気流の状態はやはり大きく念頭に置かなければならぬ問題だと思います。そういう点を考えましたときに、位置の選定というものに十分な配慮がなされておることと思いますが、まず何にしてみても飛行場が置かれるその周辺のいわゆる騒音公害というものは絶対なくさなければいけない。これをまず第一番目に考えていただいて、そして地元の人との十分な話し合いというものがなされない限り手をつけるべきでない。十分な話し合いができた上で手をつけるというふうにしていただきたいと思います。この点を特に要望しておくわけでございます。  いずれにしましても、関西新空港の建設ということは、大きな話題になりましてからこれまた日数が相当たっておるわけでございまして、つくるのだというその基本的な方針は、私も、現在のあの伊丹の状態から考えてつくらなければならないということは十分わかっております。それだけにどういうところに置かれるにしましても地元の住民の納得する内容、これを十分徹底さした上で手をつけるということが必要ではないかと思うわけでございます。今国会におきましても航空機騒音の問題についての法案が出てまいります。ただ法律をつくれば騒音がなくなる、法律を改正すれば騒音がなくなるというふうにはいかないと思う。どうしてもこの点は徹底して考えていただかなければ、今後飛行場をつくるということについて問題が多いのじゃないかと思うわけです。  航空機の問題の最後でございますが、ことしの宮崎航空大学校の卒業生、この四十四人のうちで十二人が民間会社の採用試験に不合格になった、こういうことが新聞で伝えられております。新聞によりますと、運輸省のいわゆるパイロット養成に根本的に甘さがあったのではないか、欠陥があったのではないか、こういうふうにいわれております。ひどい新聞になると「飛ぶ前に落ちたパイロットの卵」こういうような見出しで、まことにどうも残念しごくでございまして、国立の、いわゆる運輸省の監督下にあるところの航空大学校の卒業生が採用試験を受けたら受からなかった、通らなかった。落第生は一体どこへ就職したらいいだろう、そういうことで頭を悩ましておる、こういう状態が新聞に出ているわけでございますが、このことしの航空大学校の卒業生について何か特殊な事情があったのかどうか、この辺のことを伺っておきたいわけです。
  127. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいま先生指摘のように、ことしの卒業予定者の中で、日本航空が二月中旬に採用試験をいたしました結果、十九名が日本航空を受けて十一名が採用になった。したがいまして残る八名が採用にならなかったというふうなことになっております。そこで、この原因は何があったかというふうなことでございますけれども、いろいろ考えられますが、一つは、まず今回、非常に残念なことでございますけれども、連続する航空事故がございました。そういうことによりまして、私どもからも、パイロットの資格要件を非常に厳正にして、いいパイロットをつくるということはかねがね申しておりましたし、そういう見地から、まずその入社する以前において、非常に厳密な適性検査等をやって、エリミネーションをやったということが一つ問題かと思います。  もう一つは、やはり航空機乗員の需給関係というものは、相当長期的にこれを考えてやってまいるわけでございますけれども、最近の状況によりますと、あるいは国内の空港事情によって相当運航を押えております。それから国際的にもある程度、そう増勢はない。それから航空機の大型化等もございます。こういった問題は当然初めから予想に入れておくべきではないかという御議論もあるかと思いますが、結果といたしましては、その需給のバランスというものがややくずれているというふうなこともあるかと思います。  そういうふうな点がおもな点かと思いますが、私どもとしては、先生おっしゃいますように、何としても、私どもが国立でやっております民間航空の中核となるべきパイロットが、その採用試験において合格しなかったということについては、私どもといたしましても非常に責任を痛感しておるわけでございまして、この点につきましては、十分私どもも反省いたしまして、よりよいパイロットを養成していきたいというふうに考えております。
  128. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ことしの卒業生だけが特に成績が悪かったのじゃなくて、いままでもずいぶん悪かったのではないか。言うならば航空大学校の卒業生だということで通ってきたのじゃなかろうかということで、変な勘ぐりをするわけです。ことしだけが急に悪かった、こういうことは考えられない。はたして去年の卒業生は完全なパイロットだったかどうか、これについてももう一ぺん、おのおの就職しているところはわかっているわけでありますし、十分な監督指導というものが必要だと思う。ことしの卒業生だけが特に悪かったということは、私は考えられない。何となくいままであたたかいところでふわふわと育てられて、そしてもう卒業すれば必ず就職先もきまっておる、しかもそれも一般のサラリーマンと違って、相当な高額をもってかかえられる。将来は三十万、五十万という相当な給料が取れるわけであります。ここさえ出れば、もうあとは、目の前には日航なり全日空なり、あるいは東亜国内航空なりが採用してくれるのだ、そういう安心感があるいはあったのではなかろうか。それが最近の、いわゆる航空機が大型化してくる、こうなってまいりますと、勢い本質的にパイロットが余ってきたのだ、こういうふうに考える人もあるわけです。そうなると、今回のような航空大学校の卒業生不採用という事態が今後も起きるのではないか。むしろ今回の人は確かに技術的にも落ちていたかもしれないけれども、航空会社そのものが、大型化した航空機によって、本質的にパイロットが余ってきた、こういうことも言えるのではないかというふうにも考えるわけです。  そういったことを考えまして、現在航空大学校あるいは防衛庁の委託あるいは防衛庁から民間への転出、自社養成、こういったいろいろな養成機関についての、いわゆるパイロットの養成計画の手直しをする必要があるのではなかろうかというふうにも考えるわけです。これは私の危惧であれば幸いなのでありますけれども、そういうことはあってはならぬと思います。  そしてまた、この問題の最後に、ことしの不合格者に対しては、一体どういうふうにするのだ、もう一ぺん、もう一年間さらに再教育して、完全なパイロットにするのかどうか。この点について伺っておきたいわけであります。
  129. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ことし卒業予定者の不合格については、たいへん残念であると思います。その中には、あるいは本質的にジェット機に向かない人もあるかと思います。あるいはまだ技量の鍛練が不足であるというような人もいるかもしれません。私どもといたしましては、適性が全くないという人は、これは別でございますが、そうじゃない者につきましては、できるだけ留年をさせまして、もう一回鍛練をする。、本人の心がまえも、もう一回きちっとした心がまえで鍛練してもらう。そこでもって訓練をしまして、その結果、技量も向上し、しっかりした者ができるならば、定期航空会社に再受験をさせたいというふうなことでございます。ただ、どうしても定期航空には向かない。つまりプロペラには向くけれども、ジェットには向かないという人もあるかもしれません。そういう人々につきましては、それなりの、航空機使用事業、その他プロペラを使って飛ぶ飛行会社のほうにあっせんをするとか、あるいはどうしてもそれもむずかしいというふうな場合には、地上職、たとえばディスバッチャーであるとか、そういうふうな航空関係で、いままで修得した知識がむだにならない、そういう職種もございます。またフライトエンジニアというものもございます。そういったようなものも総合的に考えまして、私ども、非常に遺憾ではございましたけれども、これまた私どものかわいい子供たちみたいなものでございますから、何とかして、何らかの方法による就職のあっせんをいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  130. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 何名留年するか、私どもわかりませんけれども、とにかく留年するということになれば、当然それに対する教育費、あるいはその間の予算等もまた変わっていかなければならぬ、わずかな金額ではございましょうけれども。留年したために肩身の狭い思いをさせ、そしてさらに、さらにみがけるべき技術もみがけないというようなことで、また一年間棒に振ってしまう。また将来に対しても非常に大きな不安を抱くというようなことがあってはならないと思いますから、ぜひあたたかい気持ちをもって、この留年する人たちに対しても十分な訓練をして、一人前のパイロットにしていただきたいということを要望しておきまして、以上で航空機関係の質問を終わります。  次に、都市交通の問題でありますが、ちょっと地下鉄の問題お尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  それというのは、帝都高速度交通営団が現在申請をしております東京の地下鉄の七号線でございます。昨年の三月十五日でございましたか、都市交のほうの答申が出まして、七号線が目黒、岩渕、そして埼玉県南部に延びていくということがきまりまして、そうしてその後十二号線の、東京都のほうが免許の申請を取り下げました。したがいまして、自動的に営団地下鉄のほうが七号線をやるというふうに私ども見ているわけでありますが、なかなかこれに本免許がおりていないわけでありますが、この間の事情について一つだけ伺っておきたいわけであります。
  131. 中村四郎

    ○中村説明員 ただいま地下鉄七号線の問題でございますが、御指摘のとおり、七号線につきましては、従来営団と東京都が競願をいたしておりましたが、昨年の十月の末に東京都が申請を取り下げまして、現在営団の単独申請の形になっております。民鉄部としましては、これについて現在審査中でございまして、今後輸送需要あるいは建設費、経営収支、また車庫の問題等につきましてできるだけ早く煮詰めまして、処理をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  132. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 同僚の石田君から関連の申し出がありますので、私の質問時間の範囲でお許しを願いたいと思います。
  133. 井原岸高

    井原委員長 関連質疑の申し出がありますので、この際これを許します。石田幸四郎君。
  134. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまの地下鉄の問題に関連してお伺いをいたします。  名古屋の三号線におきましては、上前津から八事間、これが本年五月着工の予定でありまして、八事−赤池間、これが開通しないので、全然営業にはならないわけであります。この問題については、八事−赤池間をいわゆる高架方式の予定にしておるわけであります。運輸省としては、基本的に地下鉄についてどう考えているか。高架方式ということになりますれば、その地域、特に八事−赤池間というのは、昭和区天白町地域一帯でございまして、完全な住宅地域であります。名古屋市の中には少ない、緑地を含めた、そういう非常に環境のいい住宅地であるということが言えると思うのでございます。高架方式にいたしますと、一つは、地域が分断されて、交通渋滞の問題がいろいろ起こってくる。現在でもかなり激しい交通渋滞の地域であります。それから二番目に騒音公害の心配も出てくるであろう、このように思われます。さらにまた、そういった住宅地域でありますから、環境破壊、こういった問題も出てくるだろう。このようなことが予測されて、現地でもかなり強い反対運動が起こっておるのであります。私は、地下鉄というものは、本来やはり地下を通るためにその利用価値があるのではないか。こう考えます。現在においては、特に自動車の発達によりまして交通渋滞が激しくて、そのための大量交通機関としての地下鉄が脚光を浴びている、またその建設費用は多額に達してもあえてそれが行なわれている状態ではないかと思うわけでございます。また今回閣議決定をされました経済社会基本計画の中におきましても、「都市および都市周辺緑地の確保についても都市公園面積の大幅な拡大、都市公園以外の緑地保全地区の指定」等、いわゆる都市環境を緑に囲まれたそういう環境に整備しよう、こういう方向が打ち出されているわけです。現在名古屋市では高架方式ということが正式にはきまっておりませんが、かなりこれに固執しているようなきらいがあるわけです。私は、地下鉄というものは今後の都市形成の上におきまして、そういう環境阻害がないような配慮を払った上で建設をさるべきがしかるべきではないかと思いますが、民鉄部長さん並びに運輸大臣の基本的なお考え方だけ伺っておきたいと思います。
  135. 中村四郎

    ○中村説明員 名古屋の地下鉄三号線でございますが、これは上前津から赤池までの線でございまして、八事−赤池間につきましては現在まだ工事施行の申請が出ておりませんで、名古屋市におきましてボーリング等を行ないましてこの地質をよく把握いたしまして、高架案、地下案両案の比較検討を行なっているところと承っております。  一般的に地下鉄の問題といたしまして地下式、高架式——現実的にも東京におきましても名古屋におきましても、郊外部のほうで高架式の構造をとっておるところがございます。しかしながら最近におきます、たとえば御指摘のような騒音あるいは地域が分断されるというような環境上の問題、こういうことが大きく取り上げられておるわけであります。したがいまして一般的には地形、地質、それから工事の技術上の問題、旅客の利用上の便益の問題、これらを勘案しながら一番その地域に適した構造の地下鉄をつくってまいりたい、かような考え方でおる次第でございます。
  136. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 具体的な問題については民鉄部長から御説明したとおりでございますけれども、一般的に申しますと、石田先生おっしゃるように大都市における都市交通というものは、ともすると公害を惹起するようなおそれがございますから、そういう問題に将来ともあまりわずらわされないような方法、そういうふうな計画でもって進まれるのが、一般的にはそのほうがいいということは言うまでもないと思います。ただ名古屋の問題につきましては、私のほうでは、いずれ名古屋市がいろいろな案を検討しておられるようでございますから、手続を経ましてわれわれのほうに持ってこられました場合には、地元の意見も十分聞きまして、またいま申し上げたような将来にわたってあまり公害等の問題を起こさないように配慮しておられるということを前提としまして、私たちも考えていきたい、こう思っておるわけでございます。
  137. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 以上で私の質問は終わります。
  138. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私、あと都市交通の問題で、特にタクシーの問題についていろいろと質問をする予定でございましたけれども、時間の関係もございますので、一問だけでやめておきます。  きのうの六日付の朝刊各紙に、いわゆる東京のタクシーに対して近代化センターが行なったところの法人事業者に対する適正化指導順位表、こういうのが出ました。私、非常に興味深く拝見した次第でございます。  そこで最近個人タクシーの質の低下ということがいわれております。私どもいままで個人タクシーを推進してきた立場からいうと非常に残念なことでありますけれども、そういう話を聞いておりますので、この際、個人タクシーのほうの状態もやはり調べ、そして発表する。これが法人に対しても——法人と個人が最近何となくしっくりいっていない、こういう状態からいって、法人だけ発表するということでなくて、やはり個人のほうもこれは一人一重でございますので、影響するところも大きいと思いますけれども、やはり悪いものは悪いのだというふうにいわないといかぬと思いますので、個人についてもやるべきではないか、こういう考えを持っております。この点についてのお答えだけをいただいてきょうは質問を終わりたいと思います。
  139. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、個人タクシーの数の増加が非常に著しいわけでございますが、これに伴いまして若干質の低下、地理が不案内であるとか、あるいは中には従来からいわれております乗車拒否というような悪質な違反も見受けられるようになったわけでございます。運輸省としましては当然法人、個人の別なく、悪質な違反に対してはきびしい態度で臨むということはもちろんでございます。現在考えておりますのは、個人タクシーの質的水準の維持をはかるために、御承知のように個人タクシーの免許資格要件の再検討もあるいは必要ではないか、また近代化センタしによる研修等による積極的な質の向上に対する施策も考慮する必要があるんではないかと考えておる次第でございます。
  140. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろお伺いしたいことがありますが、次回に譲りまして、きょうの質問をこれで終わります。
  141. 井原岸高

    井原委員長 次に河村勝君。
  142. 河村勝

    ○河村委員 けさほど久保委員から船舶に乗り込む従事員の時間外勤務問題について質問がありました。この問題については、いま海員の労使間の紛争の種になっておる問題でありますから、私も引き続いて若干質問させていただきます。  けさほどの船員局長説明によりますと、問題となった三十七年の質疑応答で、当時の船員局長の若狭君が答弁した内容は説明不足があって、船長の公法上の権限と管理的立場の権限とを混清した説明があったということでありましたね。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 確かに六十七条と六十八条とを若干混清した答弁もあったには相違ないけれども、そうした条文を離れて、当時の船員局長が言いましたことばの中で基本的なことが述べられてある。これについて一体この原則的なことは肯定した上でこれから議論されるのかどうか、その点を最初に確認をいたします。  若狭君の言っておるのは、「現在の船員法は、時間外労働については、個別的に列挙する主義をとっておるわけであります。これは船員は、船内に拘束されておりまして、二十四時間船内拘束という状態にあるわけであります。従いまして、時間外労働を厳に法律によって規定することによって、船員労働の保護をはかっておるわけであります。そういう意味におきまして、労働基準法のごとく、労働協約に基づいて時間外労働を規制するという考え方は、とっておらないわけであります。」時間外を厳に法律によって規定する、それは二十四時間拘束されるという状態であるから特にそれが必要があるんだ、こういう趣旨ですね。それといま一つは、六十七条のことですが、「この規定を置きましたのは、時間外労働船舶航行の安全に必要な場合以外はさせないという規定でございます。」この二つの原則的な発言については、これを肯定してこれからものを考えていくのかどうか、その点を先に確認をしておきたいと思います。
  143. 丸居幹一

    丸居政府委員 船長立場として、ただいま先生がおっしゃいましたように、公法上の立場と管理者的な立場と二つあると思うのでありますが、公法上の立場における船長オーバータイムの権限というものが六十八条に明定してございます。しかし、それで全部済むかというと、そうではなしに、やはり公法上の立場における船長オーバータイムの必要性というものはそれ以外にも出てくる場合があるように思います。その点について当時の若狭船員局長は重点を置いてお答えをいたしまして、それ以外の管理者的立場としての船長オーバータイムについての説明が不足をしておったというふうにけさほど申し上げた次第でございます。それで、私はその発言については、ただいま申し上げましたように、後者の部分が説明不足になっておったというふうに考えております。
  144. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、いま私が述べた、前段の二十四時間拘束という他の一般の労働時間と違う状態にあるから、だから時間外を法律できびしく規定しているのだということについては異存はないが、私が言いました、あとの、船舶航行の安全に必要な場合というのは狭過ぎる、こういう意味ですか。
  145. 丸居幹一

    丸居政府委員 六十七条を船舶航行の安全のためだけに限られて、その場合に限ってだけでなければ発動できないのだというふうに極言して考えることは、六十七条の解釈としては私は無理があるというふうに思います。
  146. 河村勝

    ○河村委員 それでは重ねて聞きますが、前段についてはそういう精神で運用する、これはいいですね。
  147. 丸居幹一

    丸居政府委員 公法上の立場にある船長については、そういうものだというふうに思います。
  148. 河村勝

    ○河村委員 それはおかしいでしょう。公法上の権限であれあるいは管理者の立場であれ、前段の二十四時間拘束という状態にあるから、だから、時間外は厳に法律規定しているということには変わりはないでしょう。航行の安全といえば、あなたの言うように公法上の立場からくるウエートが高いかもしれない、しかし、前段の他の立法と異なって時間外というものをよりきびしく考えているのだということについては、異存はないはずでしょう。そこまで否定されるのですか。そうだとすると非常に重大な問題だと思うのですが、どうです。
  149. 丸居幹一

    丸居政府委員 厳格に扱っていくということについては別に異存はございません。ただ、六十七条がなぜ設けられたかといえば、陸上と違って海上では臨時に随時他から労働力を供給することができないというために、それに対する処置として六十七条というものが設けられましたので、そういう場合というものは、安全上緊急な場合もあるだろうし、それから管理者的立場としての船長がいろいろな点を判断してオーバータイムをやらなければならぬという場合もあるだろうし、そういうことを配慮してきめられたものだと思います。
  150. 河村勝

    ○河村委員 私は前の質疑をたてにとって言っているのではないのであって、ただ基本的な考えだけは、これはそこからスタートしないと、あなたの言っていることを聞くと何かまるきり全部を否定してしまって、何でもやらせられるのだという考え方にしかとれない。海上だから、人員を求められないからと言うけれども、陸上だって同じことでしょう、その点は。その点は現に働いている場合によそから持ってくることができないことは、それは変わりはないでしょう、臨時の必要ある場合には。そうでしょう。その点は変わりはないのでね。だから、特に特殊な労働条件にあるからきびしくしているのだということを何か否定するような言い方をわざわざするということは、私は非常におかしいと思うのだ。大臣、その点いかがですか。何も私はあげ足をとって言っているつもりはありませんよ。精神を言っているのです。
  151. 丸居幹一

    丸居政府委員 それは、私はどんな場合でも六十七条でやれるということを申し上げるつもりはないのでございまして、けさほどから申し上げておりますように、船員法というのはあくまで船員保護立場に立った法律でございますから、これは船長がそういうことを判断する場合は十分客観的な情勢を見て判断すべきものだというように厳格に考えるべきだということについては異存はございません。
  152. 河村勝

    ○河村委員 それでよろしいでしょう。それはけさほども英文船員法六十七条が問題になりましたね。これはGHQに関係のある時代だから両方正文になっておるわけですね。「アージェント・ネセシティー・アライゼス」、この「アージェント」という訳、これをあなたは適当に翻訳することばがなかったから「臨時の必要」ということを「アージェント」と訳したのだと翻訳者のことばを引用しましたね。だけれども、それは常識に反するでしょう。そんな適当なことば——ぼくは英語に別段強いわけでないから確信はないけれども、しかし「通常の必要」が「オーディナリー」なら「臨時の必要」は「テンポラリー」ですよ。そうでしょう。だから普通の常識からいえば「テンポラリー」に訳すのがほんとうでしょう。それをわざわざ「アージェント」と訳したというのは、「アージェント」ということばが適切であるかどうか、そこまで私はここで言うつもりはありません。しかし、そういう感じがあったからこういうことばを使ったのだというだけは間違いないでしょう。どうですか。
  153. 丸居幹一

    丸居政府委員 まさにそのとおりだと思います。私は「テンポラリー」と訳すのにはあまりにもルーズ過ぎる。あくまでも船員法の中に規定するものでございますから、その点非常に苦労した。そこで「アージェント」ということばを使ったのじゃないかというふうに思うのでございますが、その苦労したという話を聞きましたので御披露申し上げただけでございますので、それは先生のおっしゃるとおりに「テンポラリー」とは書けなかったということじゃないかと思います。
  154. 河村勝

    ○河村委員 その辺でもって一応了としておきましょう。「アージェント」と「テンポラリー」のちょうどまん中くらい、こういうことですね。  それならば、あなたのところで昭和三十八年六月に出された通達に「臨時の必要があるときとは、通常航海を行なうために定められた各船員労働時間割りでは消化し切れないような作業を行なう必要が臨時に生じたすべての場合をいう。」こういう解釈を出しているのです。これはそうすると、とにかく「テンポラリー」ではいけないのだ、「アージェント」に使えるのだという感覚からいけば、この解釈というものは広過ぎる、そう思いませんか。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 丸居幹一

    丸居政府委員 この解釈、こういうことが問題になったとき見てみますと、確かにこの解釈は誤解しやすい解釈でちょっと問題があるように私も思います。ただわれわれはどういうふうなつもりで書いたかということでございますけれども、オーバータイムをしたときに、オーバータイムの手当の出るものと出ないものとがございますね。臨時の必要があるときに、こういう場合は出るのだ、こういう場合は出ないのだということを明確にするために、ここでいう「臨時の必要があるとき」というのはオーバトタィムの出るときでございます。ここに書いてあります場合はすべてオーバータイムをつけるんですよという意味で書いたんじゃないかなと思います。私もまだこれを書いた人によく当たっておりませんのですけれども、ただ問題になっておるような立場から文言を読んでみますと、確かにこれはちょっと行き過ぎのような感じがいたします。
  156. 河村勝

    ○河村委員 だんだんすなおな答弁になってきてけっこうであります。  そこで、先ほどあなたは六十八条は緊急の場合のことをいったんであって、六十七条は緊急じゃないんだという説明をしましたが、そうではないですね。六十八条もこれは緊急の場合というのはわざわざ列挙してある。緊急を要するというのは「人命、船舶若しくは積荷の安全を図るため又は人命若しくは他の船舶を救助するため緊急を要する作業」これだけを緊急といっているわけですね。あと緊急らしく思われるのは三号の「人員が負傷、疾病、死亡その他の予想し難い事故に因り減少した」これも緊急とまでいかないですね。だから、六十八条というのは別段緊急ということではなくて、どんな——普通の船舶が常識的にたいていある事柄、それに基づく作業であって、それで定員を算定する場合にそれを組み込んではあまりにむだが多過ぎる、そういう意味で、エキストラというべきもの、そういうものを六十八条に列挙して、こういうものは時間内でやれるのだ、こういう意味で言っているのでしょう。そうじゃないですか。
  157. 丸居幹一

    丸居政府委員 六十八条はおそらく大きな趣旨というものはそういうものだと思いますけれども、こういうところに列挙してあるものは、船員として船に乗る限りは当然の義務としてやらなければならぬのだという意味で列挙してございまして、したがって、いまだいぶ変わっておりますけれども、こういうものについてはオーバータイムの手当が払われなかった時代がございます。そういう性質のものであるということでここへ列挙したということではないかと思います。いま、この中でも、一号につきましては同じような手当を払わないで、このことをやらなければならぬということになっておりますが、ほかの号につきましてはその後労働協約改定の場合に改定されていって、いまでは手当が払われる部分が多くなっておりますけれども、制定当時はそういう趣旨で、船員として、船に乗る者はこういうものはどうしてもやらなければいけないものなのだから、したがって義務としてやるのだというふうなつもりで、六十八条というのはこういうものが集められたというふうに考えられるのでございます。
  158. 河村勝

    ○河村委員 大体わかりました。  そこで、六十七条を適用する場合で、先ほどから狭水道の通過というようなのが問題になっていますね。私は必ずしも狭水道の通過というのはこの「臨時」に該当しないとは思っていません。いませんが、大体狭水道を通過するような場合は通常六十条二項の二号、「特別の必要に因り甲板部又は無線部の職員の航海当直の員数を増加する場合における増加された者の労働時間については、一日について四時間以内」というのがありますね。大体これでまかなっているのではありませんか。
  159. 丸居幹一

    丸居政府委員 六十条二項二号でございますね。これはおっしゃるとおり狭水道を通過する場合もありましょうし、それから霧の多い場合、霧中航行の場合もこの中に入ってくるのじゃないかというふうに思います。
  160. 河村勝

    ○河村委員 ですから、狭水道をあまり議論してもしかたがないので、狭水道といっても、出入港を除いたその他の狭水道というのは大体四時間以上かかるものはないでしょう。どうですか。
  161. 丸居幹一

    丸居政府委員 あまりよく存じませんが、そんな長いのはないように思います。
  162. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、六十七条は先ほどお話しのようにとにかくアージェシトまではいかないということであるけれども、それに近いような感覚で考えますと、これで考えるのは一体どういうことが予想されるのですか。例をあげるとどういうことがありますか。
  163. 丸居幹一

    丸居政府委員 ちょっと例をいま急には思い出せませんけれども、入出港のときであるとか荷役、それから航海の機器とか機関の修理、それから司厨部員がローテーションを組んでおりませんので、そういうときに起こるのではないかというふうに思います。
  164. 河村勝

    ○河村委員 入出港がもしありとすれば、それは本来六十八条になければいけないわけでしょう。通関手続、検疫その他衛生手続まで六十八条に入っておるのですから、入出港などがもし六十七条でやらなければならないとすると少し常識外ですね。いまそういう扱いになっておりますか、常識的に。そのほかの機関の修理というのはどういうことですか。機関が動かなくなれば船舶の安全でしょう。それから司厨というのは船員かもしれないけれども、いわゆる甲板部員や機関部員と扱いは別な問題ですよ。これは勤務時間も別なものでしょう。これは六十七条と関係ないでしょう。どうなんですか。
  165. 丸居幹一

    丸居政府委員 航海中の機関の手入れというのは必ずしも安全に関係がないといえないこともないかもしれませんが、程度によりまして、この際もう少し手入れしておこうというようなことがいろいろありますので、それがとまってしまうとかなんとかいうことになれば安全に関係のある部分の中に入りましょうし、そうでない部分もありますので、そうでない部分につきましては六十七条に入ってくるだろうと思います。それから六十条の二項のほうは職員だけに限られての規定なものでございますから、したがって、入出港等について職員は六十条のほうで読むとしましても、部員は六十七条で読まざるを得ないというような関係もあってただいま申し上げた次第でございます。
  166. 河村勝

    ○河村委員 狭水道は通る船もあれば通らない船もあるのです。しかし入出港というのは、入出港を伴わない船というのはないのですよ。さまよえるオランダ船か何かなら別ですけれども……。これは一体「臨時の必要」に入るのですか。
  167. 丸居幹一

    丸居政府委員 午前中も申し上げましたように、入出港というのは船が航海につく以上必ずあるわけでございますから、これは常に起こり得る問題なんでございますけれども、しかしこういったものは、もしここで総員配置等につける場合には一体そういうものがオーバータイムとして船長命令し得るのか、こう言われたときの根拠法規はどれかと言われれば六十七条でございますという返事を申し上げておるわけなんでございます。
  168. 河村勝

    ○河村委員 ですけれども、考えてごらんなさい。もしどうしても通常——通常というか、必ずある種類のもので、それで特殊なものは六十八条に列挙してあるのですよ。通関手続、検疫、それから正午の位置測定のための作業まで入っているわけでしょう。そして片方で六十条に航海当直規定があるのですよ。入出港だって甲板部と無線部が入れば、あとあれでしょう、入出港に必要な要員というのは全部それに含まれるでしょう。ほかに何があるのですか。それ以外に入出港に要る人間というのはぼくはわからないけれども、どんなのが要るのですか。(「水や食糧や何かあるだろう。」と呼ぶ者あり)入出港はそれと関係ないんだ、入出港作業というのは……。
  169. 丸居幹一

    丸居政府委員 入出港のときは甲板部は全部職員、部員を問わず総員配置につくわけでございます。六十条については甲板部の職員だけの規定でございますので、甲板部の部員はそれではもうオーバータイムに応じないということを言っていいのか、それはそうでなしに、やはり六十七条で甲板部の部員についても船長命令に従ってついていただかなければならぬ。その根拠法規は一体あるのかと言われればこの六十七条で読むべきだと思います、そういう御回答を午前中に申し上げたということなんでございます。
  170. 河村勝

    ○河村委員 それはおかしいですよ。甲板部の人間は当直に立てというのは六十条でできるのですよ。船長は「左の時間労働時間を延長することができる。」そこに入出港が入っているでしょう。さっき不規則発言で出てきた水とか何かというのは、これは停泊中の仕事ですからいわゆる入出港ではないんだね。そうすると、六十条で十分間に合うはずでしょう。
  171. 丸居幹一

    丸居政府委員 確かに船員法のかけ方は非常にややこしいのでありますけれども、一応六十条は全体をかけておりますけれども、二項の二号は「船長が特別の必要に因り甲板部又は無線部の職員の航海当直の員数を増加する場合における増加された者の労働時間については、」というふうにして職員ということを限っておりますので、職員はこの中に入るというふうに読めるかもしれませんが、部員のほうは六十七条あたりで読むべきじゃないかというふうに思うわけでございます。
  172. 河村勝

    ○河村委員 ちょっとぼくもそれは知らないけれども、職員と部員とは違うのですか。
  173. 丸居幹一

    丸居政府委員 職員といいますのは、船長、一等航海士、二等航海士、三等航海士、これは甲種、乙種がございますが、そういった免状持ちの人のことでございます。それから部員といいますのは免状を持たない人たちのことでございます。初めて船に乗る人たち、免状も何も持たないで乗る人たち、そういう人たちを部員と呼んでおります。
  174. 河村勝

    ○河村委員 それは法律用語ではないでしょう。どうですか。
  175. 丸居幹一

    丸居政府委員 実は船員法の第三条に職員と部員の定義がございますので、法律用語だと思います。
  176. 河村勝

    ○河村委員 わかった。その点はぼくのほうが知識がなかったので、部員があるようですね。よろしい。  そうすると、ずいぶんこじつけみたいであるけれども、入出港の場合に、免許を持たないその他大ぜいの部員を動員するためには六十七条がなければならない、こういうことですか。
  177. 丸居幹一

    丸居政府委員 そのとおりだと思います。
  178. 河村勝

    ○河村委員 その限度においてはわかりました。だけれども、そうするとあなたのほうでさっきあげているのは、そのほか入出港——荷役というのは、これは違うでしょう。これは停泊中でしょう。動きながら荷役することがあるのですか。停泊中は問題は全然別ですね。それから機関の修理は、少しこじつけでもあるかもしれない。司厨の問題は全然別ですね。そうすると残るのは、入出港の職員以外の部員と、それから機関の修理がもしあれば——安全に関係のないようなことで急がなければならぬ、そういうこともあるかどうか、はなはだ疑問だけれども、そのことくらいしか考えられないわけですか。
  179. 丸居幹一

    丸居政府委員 荷役のときも入ると思うのですが……。六十七条の規定というのは停泊中とか航行中という区別はございませんので、荷役のときには六十七条はやはり働く法律だと思います。
  180. 河村勝

    ○河村委員 荷役にしても、貨物船なら荷役は常に伴うものですね。それで、おかにいるのだから、よそからも持ってこれますね。ですからちっともアージェンシーはないですね。こういうものにこの六十七条を適用して総動員してやらせるのですか。
  181. 丸居幹一

    丸居政府委員 時間中の荷役というものは当然時間内の勤務としてそのまま使われるわけですが、これがオーバータイムとなるときの状態なのでございますけれども、それは、あともう三十分なり一時間なり荷役をすれば出航できるとか、あるいは陸上のほうの荷役の都合で——陸上労働者もあるわけですし。そういうものの荷役の都合でここで積み切らなければいけないとか、あるいは揚げ切らなければいけないという場合がございます。全部を動員するわけじゃございませんけれども、その中の何人かを荷役の監督に残すとかあるいは当直をやらしておくとかいうふうな必要ができるわけです。ウインチならウインチを回すということになりますと、当然機関部の当直も要るわけでございます。そういう場合にはやはり時間外労働でもって荷役をやるよりしかたがない。そういうときの時間外労働命令というものが六十七条でございます。
  182. 河村勝

    ○河村委員 わかりました。いずれにしましても、運輸省としてはこの問題についての通達を出すといって準備をして検討されているというお話でしたね。そうして相当検討の結果、いまかろうじて四つばかり出てきたわけですね。そうすると、大体そういうものに限定されるというふうに考えればよろしいわけですね。
  183. 丸居幹一

    丸居政府委員 私のほうは、どういうふうに限って出すかというよりはこの六十七条の運営についてはこういうようにやらなければならぬのだということをまず書きたいのですが、それだけではあまり徹底をいたしませんので、できれば、こういう場合は六十七条は無理ですよということを例をあげて実は通達を出せれば、非常にすっきりした通達が出せるのじゃないだろうかというので、けさほども申しましたように、労働基準課長を船へ派遣いたしましていろいろ船員の皆さんからオーバータイムについての話を聞かしていただきました。そして、何かあるいはからだを損傷するほどの過激なオーバータイムが行なわれておりはしないだろうか、その他いろいろ調べたわけでございます。なかなか的確ないいものがつかめません。たとえば仕事の形態であるとか、あるいは航路であるとか、そういうところでつかめぬだろうかということで派遣したのでありますけれども、なかなかうまくつかめなかった。こんなところでそういうことを言ってはどうかと思うのですけれども、正直言わしていただきますと、一等航海士に会ったときの話なんでございますけれども、私はオーバータイムについては非常に苦労しております、どういう苦労かというので、オーバータイムをさせるのに苦労しておられる話かと思って聞いておりますと、みなからオーバータイムの手当が少ないという不服が非常にある、そこでどうして公平にみんなに割り振ろうかという苦労をしておる、そんな話を聞いて帰るような状態でございますので、どういう場合に、これ以上のオーバータイムは無理なんだ、こういうことは六十七条といえども許されないんだというところをつかもうとして、いまいろいろ検討しておるわけでございますけれども、なかなかいいのがつかめなかった。もっともっと検討いたしまして、ただいま私が申し上げましたようなものをつかんで、そして通達を出したいというふうに考えておる次第でございます。
  184. 河村勝

    ○河村委員 幾ら押し問答していても具体的な問題をここでもって、いずれにしてもきめるわけにいかないでしょう。ですけれども、いままでの質疑を通じまして、とにかくただの臨時ではなくてかなりの緊急性を持つものだ——緊急性と言うとまたこだわるかもしらぬけれども、ただの臨時ではないという感覚で取り扱うということでありますから、ぜひ早急にそういうものをはっきりさしてほしいと思うのです。なぜこれを言うかといいますと、最近オートメーションが非常に進んでいますから、定員的に窮屈になっておりますね、ですから実際は海難なんかあった場合でも、人を出して救いにいくということもなかなか困難だというくらい合理化されているわけです。その上に、二十四時間船に乗っておるから、何かあればちょっと超勤だというのではたまらないということから事は出発しているわけですね。だから、そういう観念でぜひ早急にやっていただきたいと思います。運輸大臣、いかがですか。
  185. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 きょうはこの問題について午前からいろいろ御議論がございまして、三十七年から今日まで、出すべき通達を出さなかったというようなことも承知いたしました。これは運輸省といたしましても早くそういった問題についてある程度の統一した解釈をきめて通達すべきであったと思います。のみならず、先ほどお話しのように船内の労働条件というようなものもだいぶ当時と変わってきておりますから、実情に沿いますような通達を出さなければならぬと思います。少し時間をいただきまして、われわれのほうでも真剣に取り組んでみますから、ごく近いうちにきょうの御議論のあったところをもとにいたしまして、適切な通達を出すことについての措置をいたすつもりでございます。
  186. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  187. 井原岸高

    井原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる九日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、これにて散会いたします。    午後五時二十五分散会