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1972-11-10 第70回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月十日(金曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の異動  十一月十日     辞任         補欠選任      初村瀧一郎君     長屋  茂君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 丸茂 重貞君                 山本敬三郎君                 米田 正文君                 杉原 一雄君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 梶木 又三君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 徳永 正利君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 細川 護熙君                 矢野  登君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                茜ケ久保重光君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 小林  武君                 小柳  勇君                 須原 昭二君                 竹田 四郎君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        法 務 大 臣  郡  祐一君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君        文 部 大 臣  稻葉  修君        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        農 林 大 臣  足立 篤郎君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  佐々木秀世君        郵 政 大 臣  三池  信君        労 働 大 臣  田村  元君        建 設 大 臣  木村 武雄君        自 治 大 臣  福田  一君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  小山 長規君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  濱野 清吾君        国 務 大 臣  本名  武君        国 務 大 臣  増原 恵吉君        国 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   亘理  彰君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩開発庁総務        局長       岡田 純夫君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省農政局長  荒勝  巖君        農林省農地局長  小沼  勇君        農林省畜産局長 大河原太一郎君        通商産業省貿易        振興局長     増田  実君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  内村 信行君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省行政局長  皆川 迪夫君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昨日の田中総理大臣発言につきまして、速記録を調査いたし、かつ政府の意向を聴取いたしました結果、不穏当な部分がございましたので、これを取り消すことにいたしました。     —————————————
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 次に、チェコ訪日議員団の報告をいたします。  本日四時十分に、総理並びに外務大臣に表敬のためおいでになりまするので、その間暫時、十二、三分休憩をいたしますから御了承を願います。  それから、会見が終わりますと、一行八名、随行を入れまして約二十名でございますが、本委員会を傍聴したいとの申し出がございまするので、これを許しましたからひとつ御承知を願いたいと思います。  その節、おいでになりましたときにはまた申し上げまするけれども、紹介いたしましたらば、チェコとは、御承知のとおり、特に本院はお世話になっておりまするので、起立をして歓迎の意を表していただきたいと思います。その節、また私から申し上げることにいたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 昭和四十七年度一般会計補正予算  昭和四十七年度特別会計補正予算  昭和四十七年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行ないます。足鹿覺君。
  5. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、四つばかりお尋ねをいたします。第一点は、田中内閣朝鮮問題に対する姿勢政策について、第二点は、車両制限令北富士演習場暫定使用協定について、第三点は、田中首相日本列島改造構想農業政策について、第四点は、社会保障問題、特に五万円年金問題を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  まず、田中内閣朝鮮問題に対する姿勢政策をお示し願いたいと思います。すなわち、外交問題については今国会でも多くの論議が行なわれましたが、私は、朝鮮半島の平和と日本外交のあり方についてお尋ねをしたい。南北朝鮮の間で民族統一機運が盛り上がり、南北共同声明が出されるなど、全朝鮮人民統一への熱意のほどがわかるわけでありますが、まず、首相情勢把握なり認識なりにつきましてお伺いをいたしたい。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) かつてわが国と一緒に長い生活をしてまいった朝鮮南北二つに分かれておるということは、緊張緩和のためにも望ましいことではないと考えておりました。しかし、近年急速に両国の間に、南北朝鮮の間に話し合い機運というものが起こってまいっておることは、半島の平和のためにも、また近隣地帯である日本の立場から考えても、非常に喜ばしいことであると、こう考えております。
  7. 足鹿覺

    足鹿覺君 具体的に伺いますが、その第一点は、朝鮮民族統一問題について、ただいま概括的な御所見首相から述べられました。  外務大臣に伺いますが、われわれは日韓条約に強く反対をしました。反対をした根本理由は、朝鮮人民統一の悲願を妨げることをしてはならないという判断にほかなりません。日韓条約成立六、七年しか過ぎない今日、アジア緊張緩和の流れは朝鮮民族統一方向に好影響を与え、その方向に向かって大きく動き出そうとしていますが、当時、日韓条約を担当した大平外相の今日の感想なり反省を伺いたい。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓の間に国交を開く道を考えたのは、隣り合わせでおりながら交際の道が閉ざされておるということはいかにも不自然でございますので、外交関係を持つ道を開くことが、ごく自然なことであると考えました。足鹿委員も御承知のように、朝鮮海峡は当時たいへん騒然といたしておりまして、漁船の拿捕が続き、多くの船員が先方に抑留されるというような事態が毎日のように続いたわけでございまして、両国の間にそういう緊張した状態を続けてまいることは望ましくありませんので、何とか海峡に平和をもたらさなければならぬのじゃないかというような考え方で、当時、日韓交渉に当たったわけでございます。その結果、日韓の間には国交が開けたわけでございますが、今日、いまあなたが言われましたように、南北朝鮮の間に、自主的に、平和的に統一の直接の対話の道が開けたということは、日本韓国との間の関係、そういう関係がございましても、開けてきたわけでございまして、私は、日韓間の国交を開いたということが今日の緊張緩和を非常に阻害しておるというようには考えていないのでありまして、せっかくこういう状況のもとで開かれました南北間の直接の対話が、南北双方の自主的なお話し合いによりまして進展を見ますことを希求いたしております。日本政府といたしましては、その話し合いの行くえを慎重に見守りながら、それに水をさすというようなことのないように気をつけなければならぬと考えております。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 もちろん、水をさすなどということはもってのほかのことであります。もう少し具体的に、この際、政府朝鮮民主主義人民共和国に対する政策ももちろん固まっておらないことはいまの答弁でわかりますが、もう少し具体性のあるお話を私は求めておるのであります。このアジアにおける分裂国家は、米国のアジア侵略によりつくり出されたものでありまして、その一方の国とのみ条約を結んだ、国交を持ったことがいかに虚構であるかは、さきの日中国交回復台湾政府日本関係でもう証明済みでしょう、外務大臣。同じことは、朝鮮半島の一部の韓国だけを切り離して国交を持ったことが、真の朝鮮人民との友好関係樹立と、そしてこの人々の民族統一にプラスになると考えているとしたら、それは虚構でしかないじゃありませんか。政府の従来のやり方が間違いであったのですから、これを改めるのは私は政府の責任ではないかと思います。日韓条約締結当時の外相だった大平さんの課題であります、これは。まず、そうした反省があるかないか、修正さるべき方向をどう求めようとしておるか。総括的には総理から先ほども聞きましたが、不満であります。引き続き具体的にお尋ねをいたしますが、少なくとも大平さんのもう少し突っ込んだお気持ちを聞かしていただきたい。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 足鹿委員も御承知のように、分裂国家という状況は第二次世界大戦後生まれた現実でございます。この状態に対しまして、どのように対処していくかという国際法もなければ、国際慣行もないわけでございます。で、わが国といたしまして、わが国ばかりでなく、世界全体が一つ世界になりまして、公明な国際関係が開かれることは一番望ましいことでございまして、サンフランシスコ講和条約を結びますときに、全面講和の道を選ぶか、単独講和を選択するか、そういうときにも、国会内外におきまして多くの論議がかわされたわけでございますが、当時の政府といたしましては、全面講和状態がとれる状態になるまで現にある不自然な状態をそのままにしておくべきでなくて、一応わが国国交を結んでいく必要のあるものにつきましては、それとの国交を考えるという道を選択いたしたわけでございます。それの是非をめぐりましては、当時からすでに議論がございましたし、いまなおまだ決着がついていない。どちらが正しいかという判定の基準が実はない状況なんでございます。しかしながら、われわれは一つ世界を目ざしていかなければならぬことは当然でございますし、そういう道標を絶えず追っていかなければならぬと思うのでございまして、国交がない状態におきましても何らかの方法で交流拡大していくという道をたどるべきだと思うんでございます。  いまあなたの問題にされておりまする北朝鮮との関係におきましても、事実交流が逐次拡大を見ておるわけでございます。たとえば、旅券の発給数から見ましても、昭和四十六年に日本から向こうに渡航いたしましたのが二百七十三名でございましたが、四十七年には、九月までですでに六百十名に及んでおるわけでございます。先方からの入国者もふえてきておるわけでございまして、私どもといたしましては、逐次こういう交流の範囲を拡大していくという方針で、いま御案内のように、スポーツだ、文化だ、芸能だ、経済、学術、そういった分野において手がたく拡大をいたしておるわけでございまして、そういう方針を続けてまいりまして、南北対話進展を見合わせながら、究極の道標である全世界一つ世界の中で公明な関係が持てるような状況をつくるべく、一つ一つ地形石をたんねんに築いていくのがわれわれの外交の任務であろうと考えております。
  11. 足鹿覺

    足鹿覺君 今日の時点で、日本政府がとらなければならない、最小限度やらなければならないことは、統一を妨害しない、このことについては先ほど首相も申され、外相も申されましたが、これを一歩進めて、統一を助けるという、そういった方向をまさぐり、そういう方向に向かって努力することこそが、日中の関係が非常に遷延をしたことを反省することになるのでありませんか、いかがですか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南北の直接の対話は、先ほど申しましたように、自主的に、外部の勢力の干渉を排して、自主的に南北話し合いをやろうということが基本でございます。したがいまして、われわれがへたに、先ほど申しましたように、これに水をさすとか、じゃまをするとか、そういうことはいけないことでございますが、同時に、ひとつ進んで手をかそうじゃないかというようなことも、よほど用心してやらないと、南北の自主的な話し合いをやって、話し合い自体非常に尊重していかなければならぬわけでございますから、基本はそこに置いて、われわれはそういう場合に何をなすべきか、何をなすべきでないかにつきましては、よほど注意深くやらなければならぬのではないかと私は考えます。
  13. 足鹿覺

    足鹿覺君 私の言わんとしておるところは、あまりいままで南に片寄り過ぎておった、これを北朝鮮——朝鮮民主主義人民共和国に対しても均衡ある政策をとる、少なくともその程度の方向は、方向としてとられることが、日中の経緯から見ても、私は、当然現時点においてやられる最小限度のことではないかと言っておるんです。この点、いかがですか。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは足鹿さんのおっしゃる、均衡ある政策をとるという、その均衡という意味でございますが、先ほど私が申しましたように、日韓の間に国交があり濃密な関係が持たれておるという、そういう状況の上で南北対話が始まったわけでございます。私どもは、こういう状況の中で、いまバランスのとれた状況対話が始まったわけでございますから、このバランスをにわかにくずしてはいけないと思うのでありまして、そういう状況がないところ、白紙に、いまから朝鮮半島に対する政策がスタートするという場合における均衡という概念のとらえ方と、それから現にそういう過去を持って、今日そういう状況のもとで南北対話が始まっておるという現実を踏まえての均衡ということを考えますと、私どもといたしましては、このいまの均衡をくずすようなことはよほど用心してやらないといけない。したがいまして、日本といたしましては、韓国との親善友好関係というものをこの際一ぺん白紙に返して南北等距離政策をとるというようなことはたいへん危険な道じゃないかと私は考えております。
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 非常に御答弁が抽象的でよくわかりませんが、つまり慎重にやると、妨害はしないと、こういうことでありますが、現に、国連における朝鮮問題の取り扱いにおいて、あなた方はいわゆる顔をさかなでするような態度をおとりになったではありませんか。朝鮮問題の国連における取り扱いが一年延期にきまったようですが、その際の日本政府国連活動は、アメリカに追随して最後まで中国国連加盟阻止に回ったときと同じ軌道をとられたにすぎません。私が言うまでもなく、一九五〇年代の国連アメリカを支持する自由陣営が過半数を占め、朝鮮問題についても韓国優遇やり方がまかり通っていましたが、一九六〇年代以降のアジア、アフリカの新興独立国国連参加に伴い、情勢は大きく変わっておると思うのです。政府が、ことばでなくアジアの平和とそして善隣友好日朝関係を打ち立てるというのであれば、わが国国連の先頭に立って朝鮮問題の解決に努力しないのですか。いかがですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、南北の直接の対話は自主的な話し合いで平和的にやってまいるという基本方針朝鮮半島の皆さんがおきめになったわけでございまして、これは外力の干渉を排するということでございますから、私どもはその方針を尊重すべきであると思うのでございまして、国連がいまの段階朝鮮問題を大っぴらに取り上げていくというようなことは、いまの段階の措置といたしましては適当でないと思うんです。そこで、あなたが言われたような状況の中でことしの朝鮮問題に対する表決が行なわれた結果、足鹿委員も御承知のような姿で、圧倒的に、これは国連がいまの段階干渉すべきでないという方針表決の結果出てきたわけでございまして、私は、その国連判断は間違っていないと考えています。
  17. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間がありませんので、私はあまり深入りを避けて次の機会に譲りますが、朝鮮の問題が国連で取り上げられたときに、国連韓国統一復興委員団の解体だけでも解決してほしいというのが念願だったですね。それすらあなた方は何ら手をつけられなかった。また、朝鮮民主主義人民共和国側お話——私は本年の七月、金日成首相に直接いろいろとお話し合いをしてきましたが、国連軍の撤退についても、すぐ撤退しなくとも米軍国連軍の帽子を脱げばよい、われわれは国連南北朝鮮統一を妨害しないことを既成事実としてつくり上げたいのであるとも述べられたわけでありまして、政府としては、このような慎重にして謙虚な金日成首相態度というものをほんとうに真に理解しておりますか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま足鹿委員が御指摘になりましたように、北鮮側の実際的な弾力的な態度というものを私どもはよく承知いたしておりまするし、また国連関係国も皆よく承知しておったわけでございますが、ことしの決定は、判断は、来年の総会までここ一年間、ともかく南北話し合い進展を見ようじゃないかと、いま国連が取り上げるのは時期尚早じゃないかということがきまったわけでございまして、未来永劫にこれでいくというようなものではないわけでございまして、今後の対話進展ぶりをわれわれ注意深く見ながら——国連もまた来年以降どういう態度をとるかということはまだ白紙なんでございますので、いつまでもこの問題を国連で討議してはならないのだというようにきめてかかっておるわけでは決してないことは、御了解いただきたいと思います。
  19. 足鹿覺

    足鹿覺君 通産大臣にもあわせて伺いますが、去る十月二十一日、朝鮮民主主義人民共和国の初の経済使節団——国貿促委員長金団長をはじめ七名がおいでになりました。日朝両国間の経済交流貿易拡大の促進にとってはきわめて意義のあることだと思います。これまで韓国ロビーとして自認をしていた植村経団連会長使節団金錫鎮団長と握手したことは、日中関係がそうであったように、政府にかわって財界がリードし、日朝関係を改善するその一歩だと評する向きもあると思いますが、財界主導型を脱却して、政府みずからが自主性を持って日朝友好を促進し、国交正常化への姿勢を、少なくとも腹を固めていただく段階がきておると思います。私はいたずらに経済界の動きを非難するものではありません。しかし、日本政府に見識があれば、まず政府間交渉の窓を開いて、そのあとに民間が続くべきでしょう。それが、あなた方にその姿勢がないから、日中復交の長い苦しい苦い経験からも、脱却がないから、こういう姿にならざるを得ないのであります。  そこで伺いますが、各種のプラント類は当然輸銀資金の利用あるいは金利の引き下げ、輸出品目制限撤廃等の問題もあります。政府はこれらに積極的な姿勢態度で臨むべきだと思いますが、いかがですか。特に、中曽根通産大臣は本年八月下旬、正常化進展と並行して弾力を持たせたいと発言をされたと新聞は報じておりますが、その後の状況の急速な進展を踏まえて、これもあわせて通産大臣の御所見を承りたい。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南北和解交流進展を注目しながら、ケース・バイ・ケースで慎重に対処していきたいと思っております。
  21. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういう木で鼻をくくったような答弁じゃ困りますね。あなたは八月に、正常化進展と並行して弾力を持たせたい——正常化進展しつつある、経団連会長と握手しているのです。その情勢を踏まえて、なぜ具体的に御答弁ができないのですか。それを私は聞いているのです。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南北間の交流和解、融和というものが、国際関係安定の非常に重要な要件であると私は思います。で、東ドイツ、西ドイツの間におきましては両独条約の調印、批准が行なわれて、来年の秋には国連に双方加入されると報ぜられております。こういうふうに国際的に安定してくるということは、国際関係の緊張を緩和して、各国が歓迎するところであります。南北間がどういうふうになるか、南北両民族の主体的に決定することでございますけれども、この交渉は赤十字会談から政府間会談に移行しようとしておりますが、その内容自体はまだわれわれ深くよく知りません。これが円満に、そして着実に進行することを私たち期待しておりますけれども、そういう進展状況をよく見詰めながら、ケース・バイ・ケースで慎重に対処していこうと、そういう考え方で、進展を見詰めるというところが従来と変わってきているところだと私は思います。
  23. 足鹿覺

    足鹿覺君 進展を見詰めるのではなくして、進展した事実を認識すると、こういうことに理解してよろしいですか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままで全然話し合いも行なわれなかったというケースから、赤十字会談、それから政府間の話し合いという方向に進められつつあることは、わが国民も歓迎しておるところでございます。われわれも歓迎しておるところでございます。こういう事実は事実としてわれわれは認識して、かつ尊重して、弾力的に慎重にケース・バイ・ケースで考えていこうと、こういう考えであります。
  25. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ詳しいことは後日に譲りましょう。なかなか御慎重のようでありますが、いつもの中曽根さんらしくないですね。  次に、人の自由往来の問題について画期的な転換をはかるべきではないか。なお、在日朝鮮公民の民主・民族的権利の擁護の問題について詳しく触れたいのでありますが、私はこの問題の予定時間をだいぶ突破しておりますので一点だけ伺いますが、日朝貿易の拡大、大型プラントに伴う商談などでは技術者の出入国がたいへん重要な問題でありますが、政府はこれまで、この点でもたいへん腰が重かった。そうした人の往来は自由にすべきだと私は思います。どうですか。  われわれが超党派で昨年十一月発足させました日朝友好促進議員連盟会長代理は、田中さん、久野忠治さんですよ。この久野さんの名において、本年一月、超党派の訪朝団団長として訪朝され、大きな成果があがり、日朝間の貿易交流は画期的な成果をおさめつつあります。これは否定できますまい。その相手方の窓口であった人は、朝鮮民主主義人民共和国の対外文化連絡協会カン・リャンウク委員長であります。これに対して、日朝議員連盟は超党派の団体でありますが、来日を御要請申し上げておるのであります。また他の人々のほうからも出ております。それについていろいろのやり方がありますが、私どもはこれを公開の場で討論するというような、そういう考え方に立っておりません。これはきわめて慎重に私どもとしては礼を尽くし、意を尽くして対処していきたいと思いますが、カン・リャンウク委員長招待につきまして、外務大臣なかんずく法務大臣につきましては、自由往来の一つの大きなかなめ石ともいうべき、そして日朝の今日までの民間交流の大きな役割りを果たされたカン・リャンウク委員長の入国について御所見をこの際承りたい。外務省もかたくなな態度を捨てられまして、よく法務省と相談をし、御善処願いたいと思いますが、いかがでありましょうか。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最初の、技術者の入国の問題でございますが、貿易は足鹿委員も御承知のように逐次順調に拡大の傾向をたどっております。貿易の場合、そしてまた仰せのようにプラントの場合になりますと、技術者の入国というものが必要になってくる場合が十分考えられるわけでございますので、必要な場合につきましては私ども考えてまいりたいと考えております。  それから、いまのカン氏の入国問題でございますが、これは法務大臣のほうから御答弁をお願いします。
  27. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 経済関係につきましては御承知のように順次入国がふえております。また最近もふえ、許可いたす見込みを持っております。このようにいたしまして、人道、スポーツ、文化、学術、経済と積み重ねを経てまいりました。ただ未承認国につきましては——承知のように自由往来の原則というのは承認国間に行なわれまして、未承認国との間には相互主義の立場に立っております。したがいまして個々に審査するということは、これはやむを得ないことだと思います。したがいまして政治的な要人につきましては、これからの事態の推移その他によりまして十分考えるべき問題ではありまするけれども、御指摘のカン・リャンウク氏について現在すぐ入国を認めるということには、ただいまのところ運ばない状態だと御了解を願います。
  28. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの時点で私は明確な御答弁を求めたいのが本旨でありますが、しかし、ある一定の時期が来ればという意味に私は理解したいと思います。この問題については前向きで決断を示していただきたい。このことをあわせて法務大臣並びに外務大臣に強く要請をいたしておきます。御善処を願います。  最後に、総理に一言だけお尋ねをいたしておきます。近くて一番遠い国といわれる朝鮮民主主義人民共和国、片道に五日かかるのであります。一ぺんおいでになってみたらいかがですか。よくわかります。一衣帯水の地理的な関係にあり、歴史的にも民族的にもつながりの深いこの朝鮮民主主義人民共和国との友好親善の促進、進んでは国交正常化のために、問題解決のために何をなすべきかということについて——あなたは日本列島改造構想について百人に近い私的諮問機関をつくられましたね。であるならば、何かこれらの朝鮮問題に対するほんとうに真剣にして虚心な検討をし研究をする、あなたもいろいろと注文を出されて検討をしてもらわれる、たとえば懇談会あるいは研究会、そういったものでもこの際よく真剣にお考えになって、そしてやはり日中の問題の轍を踏まないくらいの姿勢が私はほしいと思います。これはなかなかこの場ではあなたもそう簡単にはおっしゃりにくいと思いますが、少なくともこれに対する前向きのお考え方を承って、朝鮮問題は一区切りつけておきたいと思います。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全く一衣帯水の隣地に起こっておることでございますから人ごととは考えておりません。早く両鮮が融和することが望ましいことは言うまでもありません。いままで外務大臣、法務大臣が述べましたようないろいろな理由が存在することをひとつ御理解をいただきたい。  北鮮との交流につきましては、国際情勢の推移、南北の友好的な話し合い進展ということを見守りながら、逐次拡大せられていくということで御理解をいただきたい。
  30. 足鹿覺

    足鹿覺君 次に、車両制限令北富士演習場暫定使用協定を中心にお尋ねをいたします。  田中総理は、日中の国交回復にあたっては平和五原則を確認する、アジア緊張緩和に努力すると言い、他方、ハワイ会談では、安保条約の円滑かつ効果的な運用に協力すると言われております。この矛盾した姿勢が、国内における国民に対する関係では、いかに強圧的な施策となってあらわれているかを、車両制限令、北富士問題を通じて明らかにいたしたいと思うのです。  まず第一に、憲法と車両制限令改正問題との関係について伺いますが、法制局長官、そもそも政令というのは、法律の細目を定める執行命令か、あるいは法律の特定委任に基づく委任命令かに限られ、白紙委任は絶対に認められないと私は思います。どうですか。私の理解によれば、新憲法のもとでは、旧明治憲法が認めていた勅令のような独立命令を認めないのが基本原則であると思うが、長官、いかがですか。
  31. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) ただいま足鹿委員の仰せられましたように、新憲法のもとにおきましては、旧憲法時代のいわゆる独立命令は全く認められておらない。したがって、政令あるいは政令以下の命令の規定し得る範囲は、法律を実施するための事項、あるいは法律の特別の委任に基づいて、その委任された事項を規定する命令に限られるということでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿覺君 ところで、今回の車両制限令の改正は、国会が唯一の立法機関であることを定めた憲法四十一条、すなわち、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」旨を規定しております。内閣の憲法及び法律の規定を実施するための政令を制定する権限を定めた憲法七十三条一項、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」、「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」とあるのが一号でありますが、これに違反して行なった違憲、無効な行為であると私は思います。かつまた、地方自治法並びに道路法に基づいて地方公共団体が有する固有の権利である道路管理権を、部分的にせよ、一方的に法律でなく政令で奪うという違法、無効な措置です。国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である国会無視の暴挙であって、強く私は抗議をいたしたいと思います。が、しかし、政治論ではなしに、昨日だいぶこの問題で建設大臣も困られたようですから、きょうは純然たる法律論として、法制局長官に、政治論や人情論でなくして、純然たる筋の立った見解を伺いたい。  その一点は、米軍車両について車両制限令の適用を除外した第十四条は、道路法のどの規定に根拠を置く委任立法でありますか、伺いたい。
  33. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 道路法第四十七条でございます。
  34. 足鹿覺

    足鹿覺君 道路法第四十七条一項だということでありますが——一項ですか。いずれか、もし道路法に直接委任の根拠を持たないとすれば、いかなる理由、根拠によるか、明確に示されたい。
  35. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 現在の車両制限令は、道路法第四十七条第一項及び第四項に基づく委任命令でございます。
  36. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは、四十七条は軽微な問題を、たとえば穴ぼこに砂を埋めるとか、こわれたところを、小破を直すとかという軽微な問題なんです。その軽微であるか軽微でないかという判断の基準は、政令、省令、何でありますか。
  37. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほどの御質問は、米軍について車両制限令の適用を除外した先般の車両制限令の一部改正についてのお尋ねであったと思います。したがいまして、第四十七条第一項及び第四項と申し上げたわけでございますが、ただいま、いま直前の御質問は、昨日こここで問題になりました道路法第三十二条、あるいは道路法第二十四条に関する問題かと思います。  やや詳しく申し上げまするならば、先般の車両制限令の改正は、第四十七条第一項及び第四項に基づきまして、車両制限令によって一般的に車両の——道路法に基づきます道路の構造を保全し、または交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両に関する制限を車両制限令が定めておりますが、その車両制限令の定めの、いわば適用除外を政令で定めたわけでございます。ただいま直前の御質問の問題は、昨日の米軍戦闘車両等の通行の問題でございまして、その通行のために道路に一定の維持を加えたと、維持のための作業を加えたという問題でございます。これが、道路法の第三十二条に道路の占用の制度がございますが、その道路の占用の制度であるとして、横浜市はこれを問題にしたわけでございます。ところが、昨日も申し上げましたように、道路の占用と申しますものは、「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設」につきまして、これを占用許可制度によりまして、道路の構造または交通に支障を及ぼす虞があっても、これを設置する必要があると一たとえば電柱でございますとか、水道管でございますとか、あるいは鉄道、軌道その他の工作物でございますとか、そういうものについて占用の許可ということをいたすわけでございます。で、横浜市は、この占用の許可の問題であるとして問題にしたわけでございますが、昨日も申し上げましたように、建設省当局の考え方は、道路法第二十四条の道路の管理の問題である——道路管理者が本来道路を管理するわけでございますけれども、その例外といたしまして、第二十四条で、道路の維持で政令で定める軽易なものについては道路管理者以外の者が道路管理者の承認を得ないで行なうことができると、そういう範疇の問題でございます。
  38. 足鹿覺

    足鹿覺君 いずれにせよ、内閣はなぜ従前の地位協定関係特例法の例にならって、最小限度道路法の特例に関する法律等の形で国会に上程手続をとらなかったのか。私は、それが憲法四十一条に忠実なゆえんであり、七十三条に忠実なゆえんではないかと思うのです。何でも政令によって事を片づける、これは私は間違いだと思う。特に私は、この機会に資料を要求いたしますが、われわれは、米軍に特例を認めた法律については、国会で審議されますから、その存在を知っております。一般は、政令、省令段階で地位協定関係の特例をきめたものについてはわかりません。これらのものは当然国民の前に明らかにさるべきものであると考えるのでありますが、現行のものを各省ごとにまとめて資料として提出されたい。官房長官、ぜひこれを実現していただきたいと思いますが、いかがですか。
  39. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 資料な提出いたします。
  40. 足鹿覺

    足鹿覺君 また、去る十月十七日、本院内閣委員会において、改正車両制限令第十四条の適用については米軍側と日米合同委員会委員会において協議した上で実施する旨答弁しておりますが、この協議事項は去る七日の村雨橋や千鳥橋の補強工事の例に見られるように、道路管理者にとっては道路管理上きわめて重要な問題でありますから、直ちにその内容を公表し、かつ、道路管理者の承認を求めるべきだと思います。外務大臣、建設大臣、いかがですか。  そこで、外務大臣に要求いたします。さきのような例もあることでありますから、国民の財産、権利、義務に関係するすべての日米合同委員会の合意事項を資料として提出していただきたい。これなくしては、私どもは、国民は何ら知る権利が満たされないことになると思いますが、出していただけますね。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日米合同委員会の記録は、両国の申し合わせによりまして、公表しないことにいたしております。しかしながら、その要領——そのままの姿でございませんけれども、その要領につきましては、御要求によりまして提出いたします。
  42. 足鹿覺

    足鹿覺君 次に、今回の改正に伴いまして、車両制限令の第十四条の省令第四条七号の改正で、自衛隊の車両が大幅に制限を免れることになったが、これはいかなる理由によるものか、建設大臣、御所見を承りたい。
  43. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 御承知のように、管理者に対する許可制というものについて緊急車両は除外すると、こういうように改正したものですから、それに基づきまして、やっぱり同じような待遇を自衛隊の車にはするようになったんであります。
  44. 足鹿覺

    足鹿覺君 建設大臣、車両制限令第十四条の改正において、その他公共の利害に重大な関係がある公の用務で建設省令で定める車両と改めた。この省令で自衛隊の車両の大幅免除を行なっておるということは、自衛隊の車両はいかなる点で公共の利害に関係があると判断をされますか。
  45. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そういうことは私にはなかなか答弁がふえてなものですから、事務当局をして答弁いたさせます。
  46. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 自衛隊は法律によりまして日本で認められておる隊でございまして、これが平時の訓練をはじめ、非常時の出動の場合には、これは当然、道路を通行するのに何らの制限なしに通ることが必要でございます。したがいまして、今回そういう制定をしたわけでございます。
  47. 足鹿覺

    足鹿覺君 自衛隊の軍事上の行為に公共性を認めることについては重大な疑義があります。すなわち、昭和三十九年の、公共用地の取得に関する特別措置法第一条の公共の利害に特に重大な関係があるという文言について、当時の政府、すなわち河野建設大臣は、これには軍施設は入らない、しかもそれは社会通念だとしております。この食い違いを明確に答弁されたい。同じく、この問題について防衛庁長官の御見解も承っておきたい。
  48. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 土地収用の場合と道路の通行の場合はおのずから性格が違います。したがいまして、前の昭和三十九年でございますか、土地収用の改正の場合に、自衛隊の施設等の収用については特例を設けておらないわけでございますが、道路につきましては、通行するのが通常の状態でございまして、特に防衛出動であるとか、緊急の用務であるとか、あるいは訓練のための移動につきましては、これは特例を認めたような次第でございます。
  49. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) このたびの車両制限令の場合の公共の用務ということばの中には、防衛庁の職務を遂行するための諸般の行動を含むというふうに解釈をすると、こういうふうに考えております。
  50. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほど道路局長が、土地収用一般というふうに、あるいはおとりいただいたかもしれませんが、昭和三十九年の問題と御指摘になりましたのは、昭和三十六年法律第百五十号の、公共用地の取得に関する特別措置法というのがございます。これは、第一条にございますように、土地等を収用し、または使用することができる事業のうち、公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要する事業に必要な土地等の取得に関して土地収用法の特例を定めるものでございます。その適用されます特定公共事業の範囲は第二条にずっと列挙されておりますが、そのほかに政令できめることになっております。第二条の第八号でございますが、「前各号に掲げるもののほか、」ということで、政令で追加することができるようになっております。その政令の追加を自衛隊関係についてするかという御質問がありまして、これについては、いまのところ考えておりません、ということをお答え申し上げたわけでございます。  で、土地収用一般につきましては、土地収用法の収用事業というものは収用法の三条に列挙してございますが、その第三十一号であったかと思いますが、三十一号で、防衛庁あるいは自衛隊関係が適用があるということは何回もお答え申し上げているところでございますので、ちょっとそれだけ補足して申し上げます。
  51. 足鹿覺

    足鹿覺君 建設大臣ね、私は、昭和三十九年における当時の河野建設大臣のことばを引用いたしまして、あなたの政治家としての御所信を聞いておる。先ほどの道路局長答弁は全くの事務答弁であって、そういうものは通用いたしません。お互い政治を志す者としては、情勢の変化、いろいろな問題はありましょうが、基本原則に大きな食い違いがあるということは許せないのであります。あなたの大臣としての、政治家としての、しかも内閣の御意見番としての、あなたの御意見をお聞かせいただきたい。
  52. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そういうことは言いたいことなんですけれども。言うと、いろいろな失敗をやるものですから、やはり政治家として失敗したくないんですよ。それですからね、政治家としての意見はどうだと、こう言われまするけれども、やっぱり、ここの議論はなるべく控えめにしたほうがいいと思いますので、許さしてもらいます。(「答弁にならぬよ」「それでは審議できない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)道路局長と、それから法制局長官が述べたとおりでありまして、それより以上は出ておりませんです。そうでありまするから、そのとおりお答えしたのであります。(「そんなの答弁にならぬよ」と呼ぶ者あり)答弁でないとおっしゃいまするけれども答弁なんですよ、それが。そのとおりなんです。(「大臣としての答弁じゃないよ」「休憩、休憩」と呼ぶ者あり)
  53. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 委員長より、木村建設大臣に御注意申し上げます。  あなたの答弁には遺憾の点がきわめて多いようでございまするので、今後御注意を願いたいと思います。
  54. 足鹿覺

    足鹿覺君 次に、北富士演習場内の県有地暫定使用協定を中心にお尋ねをいたしますが、非常に時間がないのです飛ばしますが、御承知のとおり、本年八月二十八日締結されました北富士演習場内山梨県有地の暫定使用協定は、来たる二十七日をもって暫定期間を満了することになります。この協定に公約された事項は解決しましたか。富士保全法の制定について環境庁長官、国有地の開放について大蔵大臣、民生安定事業並びに林雑補償については防衛庁長官、防衛施設庁長官、それぞれについて二十八日までに解決し得る見通しをも含めて具体的に御答弁願いたい。
  55. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) いまの具体的な問題について所管大臣に御質問でございましたが、この具体的なことにつきましては、それぞれお答えがあると思いますが、御承知のとおり、今月の二十七日までで期限の三カ月間を経過するわけでございます。したがいまして、そのときにいろいろ取りきめをいたしました国有地の開放の問題、民生安定事業の問題、さらにまた、静岡県側からも要望されておりました富士保全法の制定の問題については、防衛施設庁と山梨県側との間において交渉いたしてもらっておりますし、また二、三日前、私も山梨県知事ともお会いいたしました。が、まだ具体的に数字の問題、金額の問題等もありますが、煮詰まったところまでいっていないようでございますが、しかし、一応の期限が二十七日にまいりますので、それまでの間においては、政府と山梨県側との間に鋭意煮詰めて結論を出したいと、こういうことで、いま作業を進めておる段階でございます。
  56. 足鹿覺

    足鹿覺君 長官ね、本協定締結の条件の一つとして、山梨県が約三百八十七億円の助成金を要求しておると聞いておりますが、事実ですか。これはまた自衛隊演習場への使用転換とは全くかかわりのないものと解するが、それでよろしゅうございますか。
  57. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 具体的な数字でもございますから、防衛施設庁長官から答弁をさせます。
  58. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 山梨県側から当初二百八十七億、その次に百億の追加がございまして、いまお示しのような数字の要望が出ていることは事実でございます。それにつきましては、現在、私どものほう、それから内閣審議室と山梨県側で現在鋭意話し合いを進めていると、こういうところでございます。使用転換の問題につきましても両者の意見が必ずしも一致している段階ではございません。この点についても今後話し合いを進めてまいりたいと、かように思っておるところでございます。
  59. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) この北富士演習地の返還問題につきましては、まだ現実には返っておりませんので、当面、正式に地元から云々という問題はございませんが、しかし、そういう問題も当然起こるものと考えまして、われわれといたしましては、いずれ陳情の内容で、返ってきたらぜひ返してもらいたいというような陳情が出ております。したがって、これについて、われわれは、返ってきました上で十分、きょうまでも研究しておりますし、今後もこの問題についての善処をいたしたいと、かように考えております。
  60. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 富士保全法につきましては、山梨県側からそういう趣旨の法律をつくってほしいという希望がありまして、いま私どものほうでは、この富士山というものは日本における象徴的な、国際的にも象徴的な国立公園でもありますので、その自然を守るという観点から、われわれのほうで原案をつくり、それを関係県であります山梨県、静岡県に示しまして、その内容を詰めておる最中でありますが、まだ具体案というところまではまいっておりません。
  61. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの私の申し上げました答弁に補足をさしていただきます。  私は、いまほどお話しの、御質問の件につきましては、関係省庁間で相談が進んでおりますので、その相談に係員を派遣いたしまして、御一緒に研究をいたしております。
  62. 足鹿覺

    足鹿覺君 その問題ですが、はっきりしませんが、官房長官ね、この林雑補償を含めまして、本協定の締結の条件の一つとしまして、基地周辺整備法、民生安定事業並びに林雑補償についてただいま御答弁がありましたが、山梨県側は三百八十七億円を助成金として要求しておると聞いておりますが、事実かどうか。これは自衛隊演習場への使用転換とは全くかかわり合いのないものと解してよろしいかということについては明らかでないのです。その点を官房長官から総括してひとつ、あなたが一番折衝の衝に当たっておられます。お願いします。
  63. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) この周辺整備の事業計画につきましては、おっしゃるとおり、二百八十七億プラスアルファということで三百八十七億円ぐらいの金額を要求されておるわけでございます。この事業の内容等につきまして、防衛施設庁と私どものほうと大蔵省を交えて、いろいろ話をしておりますが、問題は、東富士のこの静岡県側のほうとのバランスもあるものですから、バランスといえば、いままでその北富士のほうがあまり重く見られていなかったからこういうことになったんだというような御意見もございますが、静岡県側の、東富士の側の周辺整備事業というものは、いろいろ話し合いをいたしました結果、総額におきまして百三十一億という事業内容で仕事を進めておるわけでございます。こういう際に、山梨県側のほうからの要望は、まあ、ざっくばらんに申し上げまして、少し多過ぎるのじゃないかということで、この金額についていま煮詰めをいたしておる段階でございまして、どうしても期限内にはお互い話を詰めて結論を得ようということでございまして、事務的にばかり話を進めておっては、なかなか詰まるものも詰まりませんから、したがって、私もそういうものを離れて、政治的にもこの問題は何とかひとつ解決を見たいということでございますので、山梨県知事と二、三日前に会いましたときにも、山梨県のほうも少しこの内容については防衛施設庁の意見も十分聞いていただきたいし、また、私どもも、従来の経緯もございますから、山梨県側の要求につきましても、いろいろ検討を加えて、ぜひともひとつ二十七日に妥結を見たいと、こういうことで仕事をいま進めておる段階でございます。
  64. 足鹿覺

    足鹿覺君 総理ね、先ほどの問題も、理事の打ち合わせでお話があるということを聞いておりましたが、そこで、政府は、千鳥橋の補強は軽微なものであって、道路法二十四条ただし書き及び施行令三条に該当し、何ら違法でないと居直っておりますが、二十四条の立法趣旨は、道路を利用する者が自発的に軽微な補修をはかること、つまり、通行者が砂利または土砂を局部的に入れるということで、少なくとも請負人に請け負わしめてやるような工事を含むものでないと解釈すべきだと私は思っております。あなたもそのぐらいのことはおわかりだろうと思うんです。そう解釈するのが当然です。にもかかわらず、政府は、米軍の自由な通行を保障するために、あえて不当な解釈を法制局長官をしてつじつまを合わせようとしておりますが、特に田中総理は、違法でも不当でもないと、きのう居直っていらっしゃいますが、これは法による行政の大原則をくずすものであって、私どもは断じて了承できません。この点について、しかと御答弁を願いたい。
  65. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほども申し上げましたように、道路法の第二十四条という規定がございまして、いま御指摘のように、道路管理者以外の者が、自分が通行いたすためにやむを得ない合理的な必要な範囲内において、「道路に関する工事又は道路の維持を行うことができる。」ということになっております。通常の場合は、工事に関する設計及び実施計画につきまして道路管理者の承認を受けることを要するということでございます。ただ、同条のただし書きで、「道路の維持で政令で定める軽易なものについては、道路管理者の承認を受けることを要しない。」ということになっております。ただいま御指摘の、道路法の施行令の第三条によりまして、政令で定める軽易なものといたしまして、基本的には道路の構造に影響を及ぼさないものということになっております。そこで、建設省といたしましては、道路の維持で、この政令で定める軽易なものに該当するということで本件を処理したわけでございます。  先ほど御指摘の、みずから通行する場合に限るのではないかと。もちろん、みずから通行するために必要な場合に限ることは当然であろうと思いますが、その場合に、みずからその維持をしなければならないということまでは法の所期するところではないと思います。自分が通行するために自分の力ではその維持が行なわれない場合に、その維持のための作業を他人をして行なわしめることは、民法の委託の規定から申しましても法律上はできることであると思います。
  66. 足鹿覺

    足鹿覺君 総理、あなたは昨日、同僚竹田委員の質問に答えて、法律家として論議するなら幾らでもできると。違法性もないし、妥当性も欠くものではない、戦車が運び込まれたときにはどこからも文句は出なかったではないか、ところが、道路管理上以外の理由で許可しなかったことから問題が起きたのだ、と居直っておられます。ただいまも申し上げたとおりであります。われわれは、法律論をやりましても、ただそれのみで判断しようとはしておりません。ただ、やはり、守るべき法律は守らなければならないと、この大原則を踏まえなさいと私は冒頭に申し上げておるのです。憲法の四十一条と七十三条を忠実に守ることが、私は、内閣の責任であり、国会の形骸化をわれわれがみずから守ることに通じるから申し上げておるのでありまして、その点について首相の決意を、いま一度確かめたい。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 違法性があっては、もちろんなりませんし、妥当性のないことをやってもならないことは、もう御指摘のとおりでございます。しかし、日米安全保障条約、地位協定ということは、もう私が申し述べるまでもなく、日本政府が行なわなければならないこと、また、相手側に許容しておる特例ということも、もう十分論議もされ、御承知のことでございます。今度、相模原の補給廠から米軍が戦車及び兵員輸送車等を出したいと一こういう要請を受けておりますので、日本政府としては、この米軍の要請というものにこたえなければならないということは当然でございます。で、こたえるという状態の中で、しかし、違法なことをしてこたえてはなりません。でございますので、適法な処置をとって、そして相模原市及び横浜市に対しては申請をし、相模原市は、道路構造令その他の上で必要な処置を要求して、そして来年の二月までのことは許可をしたわけでございます。これは、すなおに道路運送のために、安全のために必要なということで条件をつけられるのは、これは当然であるし、この条件は履行しなければならぬと思います。しかし、横浜市は許可をしなかったわけでございます。これは在来の経緯を見ればわかるとおり、橋が構造上耐えないので、いますぐ許可はできないということでございました。そういう事情で何カ月もかかって今日に至っておるわけでございまして、そういう場合、政府も考えまして、そして、違法ではなく、そして現行法令のままででき得る道というものがあるのかと考えたら、これは、法制局長官が述べておるとおり、道路法及び道路法によって委任されておる政令の範囲内でできるという判断をしてやったわけでございます。でございますから、政府がやった行為は適法であるということだけは、これは政府が述べておるとおりでございます。  だから、あと残る問題は、竹田さんがきのうお述べになって、ちょっと私も感じたわけでありますが、これは、やるとすれば、少しでも意見があるならば法律を改正してやったらどうかと、こういう議論が一つ残ります、確かに。これは、道路管理者というものは、条件をつけ、その条件が満たされれば自動的に、道路構造、交通の安全以外の理由でこれを拒否したりはできないはずであります。それこそ妥当性を欠くわけであります。ですから、これはもう、条件をつけるなら、橋の補強をしなければいけませんということでなければならぬわけです。それにもかかわらず、なかなか許可がもらえなかったわけですから、だから、申請を出して何日以内に許可ない場合は、建設大臣は道路管理者にかわってやることができるというように法律を改正すれば、それは非常に明確になると思います。明確になると思いますが、そういう法律条文の改正をしなくとも、現行の道路法及びそれに基づく政令の範囲内で十分できるというふうな解釈のもとに行なわれたということでございますから、これは、これから将来の問題としまして、政府は違法では全くありません、こういう信念のもとにやっているわけですが、国会のおおよその議論が、しかし、いろんな議論の存在するものは将来法律的に明文を置くべしということであるなら、これはまた国会の御意見も尊重して、政府もいろいろ立法手段に訴える、御審議をいただくということも考えられるわけですが、現在までに行なわれた村雨橋と、もう一つの何でありますか、その問題は、法制局長官が言うとおりだと私も信じております。
  68. 上田哲

    ○上田哲君 関連。
  69. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、関連、よろしいですか。——上田君。
  70. 上田哲

    ○上田哲君 適法であると強弁をされたり、あるいは法の解釈を曲げられるわけでありますけれども、ごり押しが惹起するさまざまな問題がございます。  木村国家公安委員長にお伺いをいたしますが、昨日の朝、その相模原で、新聞社の記者一人、放送局のカメラマン一人が、神奈川県警本部長指揮下の私服警官と機動隊員に取材妨害を受けた上、それぞれ一週間ないし二週間の負傷を負っております。この問題について見のがすことができないのは、すでに同じ場所で、同じ区域で、九月の十七日にも日本ニュース映画協会加盟社の報道関係者数名が、神奈川県警機動隊員から暴行を受けて、その抗議を受けた神奈川県警本部長が、この抗議に対して、今後このようなことが行なわれないように徹底する旨の回答を寄せておるのであります。にもかかわらず、今回このような事件が起こりました。また、この実情を調査してみますと、暴行を受けた記者、カメラマンは、それぞれ公に発行されている黄色のいわゆるマルK腕章というものを着用しておりまして、しかも、現実にカメラをかざして取材中に突き飛ばされ、あるいはカメラをこわされ、しかも、具体的に複数以上の機動隊員の中で負傷せしめられている。明らかにこれは識別不可能の部分は全くない中で、ついに報道記者、カメラマンに向かってまでこのような暴行が加えられるに至っている。こういうこと自体が、これはもう過剰警備というような問題だけではないと思うんです。根本的には、先ほど来指摘されている、法を無理やりに強引に推し進めようとする無理がここに顔を出しているのでありましょうけれども、少なくともこの問題、一回だけではなく、再三にわたってこの種のことが惹起され、しかも、県警本部長が二度とこのようなことがないようにというような回答を行なっていながら、なお起こるというような事態についてどのようにお考えになるか、経過とともに御報告をいただき、十分に調査を済ませておられるならば、その点に関して陳謝をされるのが正しいと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そのことにつきましては、詳細の報告にまだ接しておりませんが、鋭意真相について調査さしております。しかし、そういう事態があったといたしますれば、それは、仰せのとおりに、厳重に戒告しなきゃならないことでありまして、今後十二分に注意するつもりであります。
  72. 足鹿覺

    足鹿覺君 田中総理に伺いますが、ただいまの御発言で、法的手続をとる必要があれば国会の意向をくんでやることもやぶさかでない——私は、事の、法律の内容はともかくとして、たてまえ論としては、それを貫かれることは正しいと思います。善悪は国会判断すべきことだと思います。適正な法的諸手続を踏んだ上で慎重に対処されることが、国会の形骸化をみずから守り、国民の信頼にこたえ、そして憲法を尊重する。のみならず、憲法の内容を実行に移すというたてまえから、私どもはそういうことを大きく取り上げておるのであります。  いま国際世論の前にさらされておりますわが国の軍国主義論、軍国主義化の実体は、軍事的な、飛行機が幾らだ、艦船がどうだ、陸上自衛隊の装備その他がどうだというような機能的な点について非常に論議が集中し、はなやかになっておりますが、まさに、それゆえに国民の財産や権利や自由を、一方的に権力的に剥奪し、制約することを必然化しているところに私は非常に問題の危機があると。これはお互いが、あの大東亜戦争の直前の日本の姿を回顧してみたときに、思い当たることがたくさんあろうと思います。それなるがゆえに、私は、本日この問題をあえて憲法の立場と国会の形骸化をみずから正す意味において、そして内閣の姿勢を正すという意味においてこれを取り上げた。この意図を十分総理もくまれまして、今後対処されたいと思います。かりに、私が千歩譲って政府の言う安保必要論に立つとしても、現状はあまりにも従属的ではありませんか。その従属的な安保ゆえに生じた政府と国民との悲しむべき確執、相克の地、それを代表的に象徴しておるのが占領以来二十有七年にわたる北富士であり、沖繩であり、また今回の相模原であります。そういう角度から私は本日の質問を申し上げたのであります。  ここに北富士の農民が私に一編の詩を寄せました。田中さん、百姓の声を虚心にお聞きください。     むしろ法律の罪人となるも亡村の民となる能わず東京を離れること三十里、ここ富士山麓に七〇〇〇町歩の林野あり。北は河口湖・御坂峠をもって甲府盆地をくぎり、南は山中湖・籠坂峠をもって駿河に境す。  名づけて米軍北富士演習場という。  そもそも事の始まりは、米軍の銃剣による梨ケ原強奪、それを受けつぐ政府の無権原提供、無断使用にあり。これに対し忍草梨ケ原死守せんとすれば、権力はお決りの懐柔、弾圧、分裂支配、さらには堅白同異の弁をもって非を理となす。  いわく、入会慣習あるも入会権なしと。  いわく、自衛隊の使用は米軍基地管理権をもって合法なりと。  いわく、山中湖村道は村道にあらずと。  いわく、土地の契約期限は不確定なりと。  いわく、正当防衛も刑特法の対象なりと。  いわく、自衛隊に土地収用権ありと。  しかも、自治体は国の走狗となり、警察は人民の酷吏となり、司法またその独立を侵され  んとす。  かくして懐柔は傀儡を仕立て、弾圧は日和見を生み、岳麓の静穏これによっていよいよ乱る。  みよ  基地ある限り 人権なく  安保ある限り 法理なく  憲法ことごとく この原に死す  されど  われら忍草  圧政に抗して二十有六年  孤高を持して二十有六年  断断固として  入会小屋を守る  いま  戦陣ますます厳しく  戦意ますます昂し  ああ われら忍草  むしろ法律の罪人となるも  亡村の民となる能わず    一九七一年十二月七日                忍草母の会という一文が私に届けられました。よくお聞き取りをいただきたい。  次に、北富士演習場の問題について一言ただしておきたいと思います。  政府が田辺山梨県知事との間でかわされた北富士演習場の暫定使用に関する覚え書き、いわゆる暫定使用の協定は、今月二十八日限りで期限切れとなります。政府は、これについてどうされる御所存でありますか。  去る十一月一日、二階堂官房長官はこの件で知事と会見されているが、政府はそれまでに本協定を結びたいという考えであるか。先ほど具体的には御答弁になりませんでした。最初に、今月二十  日というのはどういう時期であるかということをお考えになっておりますか。いまだ断定的なことは申せませんが、天下の常識として、衆議院の解散され、その期限の日は総選挙中だと私は思うんです。その戦争のさなか、解散中にかかる問題を処理するということは憲法違反の疑いがあるということを私はここで指摘しておきたい。  日本国憲法は、フランス憲法のような選挙管理内閣の規定を設けていないので、明文上違憲とまでは私は申し上げかねますが、憲法六十九条以下七十一条までの規定の精神より見るとき、内閣に信任を与えた衆議院が解散により、なくなってしまうのである。ただ、行政に空白が生じてはならないから、内閣は引き続きその機能を果たさしめているにすぎない。その意味で、解散期間中における内閣の機能は、行政事務管理的なものに限らるべきであって、いやしくも政治的な問題、本件のごとき安保条約の履行と国民の権利義務との接点にあるような問題、今回の暫定協定を本協定に切りかえることはまさしくこのような問題である。あるいはまた、戦後二十余年間北富士の現地住民が入り会い権行使のため闘争を続けてきた、国会においても絶えずこれを取り上げてきた、この政治的問題を、かかる解散中に処理することは、議院内閣制度の本旨より見まして慎重でなければならないと考えますが、これは総理から——私は、もちろん御答弁いただけると思いますが、いかがでしょう。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、十一月二十八日以降も円満に使用できるような協定ができるかどうかということをきめるには、その前日までにきめなければならぬわけでございますが、官房長官が述べましたとおり、いま山梨県知事との間に協議を続けておりますので、引き続いて使用ができるように協議がととのうものと考えております。この協議をすること、引き続いて十一月二十八日以降も北富士演習場を使えるような協定をするという交渉を山梨県と政府との間で行なうことは、どうも少し——もしも解散等があった場合、総選挙運動期間中にぶつかった場合には、少し行き過ぎになるんじゃないかということでございますが、そういうことはございません。これは国内の問題でございますし、当然処理しなきゃならぬ問題でありますし、これ以上に大きな問題でも処理しなければならない問題があります。外国でもっていろんな、国外の問題が起こった場合等のことを考えると、緊急集会の招集さえできる、しなければならないと、こういうことでありますので、これは、内閣の機能、権能というものがその間制約をされるということはないわけでございます。
  74. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの御答弁は了承することができません。ただ、もう時間がありませんから、これ以上は後日に譲りたいと思います。  最後に、時間がなくなりまして、二つ問題が残っております。  一つは、田中首相の列島改造構想と農業政策について、一つは、田中内閣の社会保障政策について、特に総理の社会保障への基本認識と、いわゆる五万円年金についてただしかったんでありますが、私の持ち時間が残念ながら切れます。そこで、かけ足で、おもなる点を拾って、総理御自身がお書きになった構想に伴う農業政策を承りたい。  列島改造論を読みましても、本会議の答弁を聞いても、総理の農業に対する理解は、まことに失礼でありますが、おそまつの一言に尽きるものがあると思うのです。現在、農民は、減反と不況と自由化によって三重苦を負わされております。農業基本法以来、自民党農政の失敗の重荷を、もろにかぶされておるのであります。昔、百姓出身といわれる太閤は、権力を握って何をしたか。太閤検地であり、太閤ますの設定であった。農民の土地をすみずみまで検査し、一升ますを大きなものにして税金を取り立てた一年貢米を取り立てた。今太閤といわれる田中さんは、何をせんとし、何を考えていらっしゃるのでありますか。まず、水利権を調べるという。農地法を廃止するという。食管に手をつけるという。高度成長のゆがみを受けて苦しんでいる農業を、さらに自由競争で苦しめ、水、土地、労働力を、農民から取り上げようとしているのではないですか。この点を伺います。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も農村の生まれでございますし、やがては農村に帰らなければならない農家の長男でございます。特に豪雪、単作の中に、長い苦しみの中に生きておる新潟県の生まれでございますし、育ちでございます。日本の農政をどうしなければならないかということに対し−て、個人的には人後に落ちるつもりはないわけでございます。農政というものに対して、やはり足鹿さんも私と同じような——鳥取でございますから、まあ新潟や東北と比べては非常に状況はいいにしても、日本海岸に生まれておるわけでありますから、考えは同じはずであります。そういう意味では、私は、やはり真実に目をおおわず、そして作文だけを書いて、それで逃げるような農政じゃだめだと思うんです。やっぱり農政というものに対しては、全くここではもう待ったなしでもって、事実を踏まえて、そうしてその上に、可能な限り最大の農政を展開する、こういうことでなければだめだと思うのです。  そういう意味では、日本は、一次産業というものと二次産業や三次産業というものが一体どのように位置しているかというと、これは、世界的な情勢として、一次産業というのは、なかなか二次産業や三次産業のように収益の高い事業ではない。これはもう、南北問題を例に出さなくとも、当然のことでございます。しかし、そうかといって、一次産品、一次産業を絶滅させては生きていけないわけであります。そういう意味で、一次産品業者というもの、いわゆる農業や水産や林業というものを育てなけりゃいかぬ、保護しなけりゃいかぬ、これはもう当然のことなんです。しかし、米を見ても、果樹を見てもおわかりになるとおり、やっぱり南回帰線から北回帰線までに南北に長い日本であるとはいいながら、必ずしも南方で育った米を中心に大農というものをやれぬような地形、地勢上の制約がございまして、なかなかできません。これは、アメリカなどでは、農業やすべての一次産業は飛行機を使っているというような大規模のものでありますから、二次産業や三次産業に従事する人たちよりも大きな収穫をあげることもまた可能でありますが、日本においては、地形、地勢、気候上の制約があって、なかなかそうはいかないんです。ですから、これからの純農政を考える場合には、可能な限り経営規模は大きくしましょうということになっているのです。しかし、また、適地適作ということで、南は肉や果樹に、北はあわせて酪農も行なえるようにと、こういうふうに、やっぱり適地適作ということを考えていかなければいかぬ。これはもう、だれが考えても同じことなんです。あなたの農政も、自民党の農政も、比べてみればそんなに違うわけはないんです。これは、日本という、制約のある日本でもって行なわれるものですから、これはもう、ないんです。そうするとどうなるかというと、結局、これから農業というものを世界的に見ますと、アメリカは一次産業人口が四%、拡大EC十カ国の平均は六%です。日本はようやく今度一六%割ったわけです。一五・九%。そうすると、まだ拡大EC並みになるには一〇%ぐらい多い。確かに減反政策をやっておりますが。そういう面から見ますと、やはり明治から百年続いてきたように、一次産業人口が二次、三次に流れる。いまのままにしておくと、東京や大阪に、また、県庁の所在地、地方都市にというふうに出ていった場合、これは農村というものは大へんになるんです。ですから、いま農村でもって——あなたの選挙区でも、私の選挙区でも、農村の中で一番裕福な農家とは何かというと、まあ、たんぼは一町歩ぐらいやっておる——新潟は、果樹とか、ほかのことは申し上げませんが、たんぼの農家で申し上げますと、たんぼ一町歩ぐらいやっておる、そして家族の中で一人はとにかくどこかへつとめておる、二十五日には月給をもらってくる。それは二次産業で安定的な、一割ずつ上がるものが一番いい。しかし、それでなくても、役場につとめればいい、森林組合につとめればいい、農協につとめなきゃならぬ。そういう、日銭がどうしても出ますから、一年に盆と節季だけに払えばいいというような農家じゃないんです、毎日でも金が出る。そうすると、どうしても月に月給を取るものということでないとだめだ。まあ、そういう家庭は比較的に安定した家庭といわれております。ですから、純農家だけでもって全部やれるようにやるならば、五町歩、十町歩ということになりますが、新潟県は、もう二十年前から蒲原は四町歩平均以上やっておるわけですが、それでも子供を全部大学には出せないんです。それはもう、一人大学出したら、とにかくあと出せません。ですから、長男は大学出さないんです。ですから、次男を出す。次男はとにかく教育費は出してやるかわりに、財産は分けませんよと。それは全部そうなんです。ですから、そういう実態を無視をして日本の将来的な農業政策というものはできないと私は思うんです。  それで、いま考えてみれば、日本の米は国際価格のちょうど倍であるということになると、これは無制限に、三倍だ、四倍だ、五倍でもいいんだということにはならないと思うんです。ですから、価格というものを、大体消費者の利便に供し得るような限界の中で、しかも、農家や一次産業が他の二次産業や三次産業とバランスのとれた収入を得なければならないということですから、これはなかなかたいへんな仕事ではありますが、しかし、やはり取り組まなきゃならないんです。そういう意味で、六十年展望に対してはこういうふうな施策をしなければならない。しかし、ほんとうにこの中でまだ抜けておりますのは、あなたの御見解にあったものも、各党でも自民党でも政府でも同じことですが、専業農家だけで、これから一〇%ずつ十五年間も給与が上がっていく二次産業と同じ一次産業の国民所得を確保してやる農政というものが確立しなきゃならぬわけでありますが、それがほんとうにできるにはどうすればいいのか。これも農地から税金を取ってやるとか、そんなことでは全然できません、実際は。それは農地を無税にするとか、いろんな問題を考えてみても、なかなかむずかしい問題でありますので、だから、純農政は理想に向かって進めながら、列島改造の中で、二次産業と三次産業、農工一体と。これは、人がどんどん出ておったあなたの県の鳥取県が、このごろは珍しく日本海岸では人口のふえる県になっております。県民収入は上がっておる。それは何か。それは、工場が定着をして、県民が外に出ていかないということになっているわけでして、そういう意味で、私は、これからの農政というものに対しては、やはり純農政を進める、適地適作を進める、制度上完備させることもさることながら、やはり二次と三次産業との調整ということを考えないと、いままでのままの政策をしておると、余剰労働人口は全部都会に出かせぎに出てしまって、都会に定着をし、農村は過疎現象というような状態になるおそれがありますので、まあそういう意味で、正面から取り組んでおるわけであります。
  76. 工藤良平

    ○工藤良平君 関連。  私は二つの問題について、農業の問題と水の問題でお聞きをいたしたいと思いますが、いま総理から農業の問題について御答弁がありましたけれども、私は先日の本会議の総理答弁の中で、自給率をどうするのかという春日委員の質問に対しまして、主要な農産物については、八〇%以上、ある場合には一〇〇%完全自給をするんだという御答弁がありました。しかし、この列島改造論の一七三ページに、冒頭に、非常に主要な問題でありますけれども総理は、「国民経済全体からみても、主要な食糧については、八〇%程度の自給率を維持することが必要である。」、こう書かれているわけであります。今日まで佐藤総理におきましても、あるいは先般の赤城農林大臣におきましても、総合自給率において八〇%を何とかして達成をしたいという念願で今日までの農業を進めてきたと私は理解をいたしております。そういたしますと、この本に書かれておる田中総理の真意というものは、相当後退をした農政だと理解をせざるを得ない。先般本会議で質問をした内容は、確かに農林省が先般出しました「農産物需給の展望と生産目標の試案」の概要というものを見ますと、そう書かれております。しかし、総合自給率においては、七七から七三%の間で維持したいというのがこの新しい方針でありまして、私はまことに遺憾だと思うわけでありまして、この列島改造論に書かれておる真意は違うのかどうか、その点をまずひとつただしたいということ。  それからもう一つは、ダムの問題でありますが、これはすでに御承知と思いますけれども、大分県と熊本県にまたがるあの有名な下筌・松原ダム。すでに室原さんはなくなりましたけれども、このダムの建設におきましては、筑後川の上流地域のマスタープランができていないということと、地質が非常に悪いから、ここにダムをつくれば危険だという指摘がなされたわけです。すでに御承知と思いますけれども、三十七年にこのダムに対する鑑定人の鑑定書が建設省に提出をされているわけでありますが、その内容を見てみましても、その津江川流域の温泉変質帯はかなり大きいものである。そして南北三・五キロ、東西は、広いところで一・五からないし二キロの楕円形の地域がこの変質帯に入る。その南北は小野田部落から川畑付近まで、東西は室原部落から古室原部落を結ぶ範囲でそれが展開をしているという指摘がなされて、地すべりの起こる地帯と指摘をされてきたわけであります。すでにこのダムが完成をして湛水試験が昨年行なわれました。その結果、ことしの雨季に入る前に減水をした過程の中で、家屋にひずみが生じたり、あるいはダムサイト二キロにわたって、奥行き四百メートルにわたって非常に大きなクラックが至るところに生じているわけであります。これは地域の住民にいたしますと、非常に不安な状態が毎日続いているし、しかも住居の座敷の下に、二十センチ幅の相当大きなクラックが生じているという現象が起こっておるわけでありまして、これはこのダム建設における非常に重要な私は問題点として今日まで委員会でも指摘をしてまいったところであります。この列島改造論を見ますと、千個以上のダムをつくるという御指摘がなされておるようでありますけれども、今後の水の開発等を考慮いたしますと、私はこの下筌・松原ダムの問題については、いま直ちに十分な対策を講ずる必要があるのではないか、このように思うわけでありまして、したがって私は、これから具体的に二、三の問題について簡単に申し上げますが、建設省は、湛水試験を去年一年やってこういう現象が起こった、ことしやはりもう少し試験期間としての期間をおくべきではないかと言っておりますけれども、すでに通常ダムの運行に入るということをいたしておるわけでありますが、この点について、ぜひ私は、試験期間をもう少し長く持っていただきたいということが一つ。  それからもう一つは、このクラックの生じた調査において、熊本大学の吉村先生が実は現地調査をなさっているわけでありますけれども、これについては、三十七年に小出博先生あるいは郷原先生が指摘をした現実のとおりになっているわけでありますから、この指摘をした先生を私は建設省としては当然この現地に入れて、その意見を聞くということが必要ではないか、このように思うのでありますけれども、これらについて、すでに建設大臣については、建設省のこの調査は当てにならぬから、別の調査をさせようということも熊本で発言をしておるようでありますから、ぜひひとつこれは総理大臣の決断において調査をしていただきたい。  それと、該当農家が二十六戸でありますけれども、来年の雨季までに私は非常に重大な問題が提起をされるような気もいたしますので、でき得るならばこの二十六戸の該当家屋につきましても、十分な早急な対策を講ずるように、この三つの点を具体的に私は指摘をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農産物の自給度を六十年ごろどのように考えるかという、それは私が間々申し述べておりますとおり、日本列島改造論なるものは一つ政策ビジョンとして、国民のたたき台として提供したものでございまして、これが七三ないし七七でいいか悪いか、これは八〇%でいいのか、八五%まで上げられるのかということは、これはこれから具体的な政策を積み重ねるという段階においてきめなければならない問題でございまして、佐藤内閣時代、総合的な指数として八〇をとっておったのに、今度は七三ないし七七と言えば後退じゃないか、数字の上ではそのとおりでございます。ただ、四十五年の数字をちょっと申し上げますと、米が一〇六、野菜が九九、鶏卵が九七、肉類が八八、果実が八四、牛乳や酪農品が八九、これらを入れてとっておるわけですな。それで見ますと、米を一〇六にしてみて七六であります。ですから、米を一〇〇にすると七五です。そういう意味で、米を一〇〇、野菜を一〇〇、鶏卵を一〇〇とやって、ぐうっと九九、九七を全部一〇〇に上げてみて、そして米を一〇〇にしてとってみますと、酪農品等も相当高くとっておりますが、七三ないし七七になりますというただ一つの試算数字でございまして、私が前内閣よりも後退をしておるということではないわけであります。自由民主党内閣でありまして、自由民主党の政策もちゃんときまっておるわけでありまして、私がただ本で、こういう一つの見方もございますと、こういう試算数字でございますので、政府は八〇%という在来どおりの指数を堅持するために努力をしておるということでございます。  それからダムの問題でありますが、ほんとうにわずか十二、三年の問題でありまして、中には十二、三年ですから、まだ国会議員としておられる方がたくさんあると思うんです。お互い自身がまだ十年ぐらいですから、政治の中でもって責任を持たなきゃならないというときのことでありますので、やはりあんまり事実と違うことでもってやっていけるん、だということではだめだと思うんです。ですから、やっぱり計算をしますと、列島改造論の一〇%成長ということでもってやっていきますと、千百カ所くらいのダムが必要であるということで、しかもそのダムをつくることによって年間二千億ないし四千億にも及ぶ年々の災害がなくなるということもありますので、そうあるべきだと。水は必要なところへ引くべきものではなく、水辺に集落を営んで今日に至っておるという人類の歴史から見ても、水をためて、水が簡易に引けるところに人類は集落を営むべきであろうと。それは過去も現在も将来も変わらないと。こういうふうなタッチで書いているだけでございまして、それがよければ、それを今度は土台にして具体的な政策を積み重ねていただくということであります。  ただ、いま御指摘になった中の下筌ダム、クラックがいっておるというような問題、それは非常に重要な問題であります。  特にいままではダムサイトは非常に厳密な調査が行なわれておりましたし、これからも調査を行なわなければなりませんが、数が多くなるとダムの構造そのものも変わってまいります。重力式のものがアーチ式のものになったり、いまロックフィルダムがどんどんとつくられておる。こういうもので、その意味ではやっぱり周辺に災害が起こったらこれはたいへんなことであります。まさに人災だと言わざるを得ません。ダムの災害はおそるべき災害を起こすわけでございますから、これはそういう意味で、ダムの災害というものは未然防止のためにあらゆる処置をすべきでございます。だから、計画事項の段階において安全率は十分見てございます。見てはございますが、いま御指摘のようなクラックがいってると、地盤が不等沈下をしているというような事実が存在する限り、これに対して最大の調査をし、あらゆる状態において防御の工事をしなければならぬことは言うをまちません。御指摘の案件に対しては、建設省、まあ私も事実を聞いてみて、遺憾なき方策をとりたいと思います。
  78. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 御指摘の下筌・松原ダムは、この前熊本に参りましたときにいろいろお話をお聞きいたしまして、すぐ対策を立てまして、そして漏水とクラックは十分な手当をいたしましたが、なお建設省の調査には若干粗漏があると、こういうわけで、熊本大学の先生にも依頼いたしまして、住民に対しましては一切不安のないような対策を立てようと、こういうわけで最初に手当てをいたしましたけれども、調査は厳重にやらしております。その調査に基づきまして万全を期したいと考えております。  それからダム全体の問題でありまするけれども、やっぱりこういうようなものは無理するものではないと、こういう考えで私いままでのダムなんかも見てまいりまして、やめるものはやめると、こういう方針をとっております。ダム建設に関する限りは万全を期して進めたいと、こう考えております。
  79. 足鹿覺

    足鹿覺君 政策について伺いますが、日本列島改造構想農業政策について。  永久農地指定構想と農地法の改廃についてでありますが、土地価格が高いから、土地購入による経営規模拡大をあきらめて、借地によって経営拡大をしようというのが改造論の新しい借地農家構想でありますが、その前提として、全国的土地利用計画を立て、永久農地を策定する、農地法を廃止し、農地の流動化を高めることが必要であるとしておりますが、これをやるのでありますか。これがまず一問。  まだ、一ばいありますが、しぼりますから、御答弁のほうで十分趣旨を踏んで御答弁願いたいと思います。  第二問は、農工一体で農村はよみがえると思うか。総理は、工場分散、農村に工業を持ってくることで都市と農村がともに繁栄する条件をつくり出すということが先ほどの御答弁だったと思う。私はそうは思わない。いままで工場が誘致された地域、たとえば旧全総の岡山・水島、新全総の鹿島を見ても、農業は破壊こそされ、ともに繁栄するなどということはないのであります。このような農工一体論は、自然を破壊するピランでしかあり得ないと私は申し上げざるを得ない。あなたはコンピューターがトラクターに乗ったような頭のいい人だと新聞は評しておりますが、コンピューターというものは過去の延長しか計算ができないものです。コンピューターつきブルドーザーのつくったプランは、農民を犠牲にし、財界をもうけさせ、土地騰貴による政治資金のパイプを太くする以外の何ものでもあり得ないと批判する者があれば、総理はこれに対していかに反論をされますか。これが第二問。  第三問は、輸入飼料の輸入先の多様化をはかれということであります。現在の輸入飼料の依存先はアメリカ一辺倒、その価格はアメリカの生産・需給状況において大きく変動し、安定的な畜産経営は望めない状態であります。こうした状態を打開するためには、飼料輸入先を多様化する必要があります。幸い中国朝鮮民主主義人民共和国等では、計画的に日本が輸入するなら生産計画に入れましょうと言っております。プラント輸出に一生懸命になるだけではなく、こうした面で中国朝鮮民主主義人民共和国等との間に——特に中国とは復交したのでありまするから、十分にこの点を勘案されて今後施策を進められる御用意がありますか。これが第四問。  最後に、農業犠牲の円対策に私は反対です。御所見を承りたい。なぜ円対策に農産物自由化が登場しなければならないのか。円対策が第一次、第二次、第三次と立てられたのが、そのたびに農業が犠牲にされてまいりました。円対策は、急増する黒字対策としてどういう役目を果たし得るかという点からいろいろ意見も出されておりますが、農民の立場からすれば、なぜ円対策に農産物自由化が登場しなくてはならないのか、どうしても納得できない。農産物は、日本は完全に輸入超過の国であって、外貨のたまったことに何の責任もないのであります。農産物の輸入は昨年三十七億ドル、輸出は四億ドルに足りない。差し引きずると、三十三億ドルの輸入超過であります。国際収支をバランスさせるなら、工業の責任でやるべきではありませんか。この点をしかと御答弁を願いまして、あとは、五万円年金の問題について特に申し上げておきたいと思います……。
  80. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、時間がまいりましたから、時間がだいぶ超過しておりますから……。
  81. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは、社会保障問題は、残念ですが次の機会に譲りまして、これで私の質疑を終わります。
  82. 足立篤郎

    国務大臣(足立篤郎君) 最初の御質問は、永久農地の問題にからんで農地法を廃止するかどうかという御質問でございますが、私は、日本列島改造論の中に示されている基本的な構想は土地利用計画をはっきりさせる、これを、場合によれば法律によって規定をして、優良農地はどこまでもこれを温存する、維持する、こういう考え方が基本になっていると思っております。それでなければ、いま自給率八〇%というお話がございましたが、そういう高い自給率を維持することは不可能だと思っております。したがいまして、現在のままで、野放しに農地法を撤廃するということは、農林大臣としては考えられません。  御承知のとおり、いま農業振興地域を逐次指定をいたしておりまして、目標の約半分近くまでいっておりますが、この農業振興地域指定によりまして、優良農地というものを確立していきたいというふうに思っております。ただ、私の気持ちを率直に申し上げると、いままでの農地法が自作農を創設し、維持してきた効果はまことに大きゅうございますが、その反面、農地の流動化を非常に阻止してまいりました。で、そのかわり、いわゆる不動産屋の投機の対象になるとか、スプロール現象が起こるとかいうことは防いでまいりましたので、非常に大きな役割りを果たしておりますが、今度は、農業の中で規模拡大をやろうとしてもなかなか農地の流動化ができないというような問題がございましたので、今後協業化等を進めるにあたりまして、やはり農地法の一部手直しが必要だというふうに考えておりますので、そうした面で、いませっかく検討をいたしておる次第でございます。  それから二番目の御質問の、農工一体では農村が滅びるだけじゃないかというようなお話でございますが、私は全く逆の考え方をいたしております。やはり工業を農村に導入して、そこに働き口を見つけることによって農外所得もふやしながら、農業問題を解決していくということでないと、他産業並みの所得の増大ということは、これは絶対にはかれないというふうに思っております。  もちろん、地理的に非常に恵まれたところでございまして、たとえば農業基本法に示されているいわゆる選択的拡大の面で目ざましい効果をあげてきているところ、たとえば宮崎県でいまSAP運動というのをやっておりまして、先般、総理大臣の表彰をしていただいたわけでございますが、こうした地域におきましては、酪農とか、あるいは養豚とか、あるいは果樹とか、施設園芸とか、そういう方面に目ざましく拡大をいたしております。そういうところでは、そういう専業方面に農家の若い人たちがどんどん進んでいく。そうすると、いままでずいぶん手間ひまを食った水田地帯は、基盤整備をやることによって機械を導入しまして協業化をやっていくというようなことが実現できるわけでありますが、そうでない、そういう恵まれた地域でないところにおきましては——実は、私は静岡県でございまして、私の地元なんかもそうでございますが、工場が入ってくる。近ごろは、町村が窓口になりまして、工場側と事前に十分折衝をして、男性雇用型であるかどうか——もちろん、公害を発生しないかどうかというだめ押しは十分やった上で、たとえば男性を百人雇用するという形の工業を導入するといたしますと、それを今度は土地改良の中にも織り込めるような法律改正ができましたので、初めから計画的にその工場を設置する場所をきめて、その周辺を土地改良をやり、基盤整備をやりまして、そこに働く人々はそこで所得を得ながら、自分の農地は協業のほうに出すことによって飯米その他が保証される。こういう仕組みを将来実現したならば——これは農地法の改正を一部やりませんとすっきりは実現できませんが、そういう形が実現してくれば、これはきわめて安定をするというふうに考えております。私の県のように米の自給度三分の一しかないというような県は、逆にそういう方面が進めやすいんですね。  一番困るのは、いわゆる米どころといわれた東北、北陸方面あたりが、なかなか気候風土が恵まれない関係もあり、交通の不便もありまして、工場などが計画的にきてくれない。そこに私は日本列島改造のねらいがあるというふうに理解をいたしておりますので、私としては、やはり工業を計画的に導入する。これがただかってに農村をスプロールするような形で工業にどんどん進出されたら、これは農業というものは立っていけません。あるいはコンビナートというような大がかりなものがどかっとくるというような考え方でなくて、その地域に合った規模の工場を導入していく、こういう行き方によって農業問題も解決の見通しがついてくるというふうに信じております。  それから輸入飼料の問題でございますが、御指摘のとおり、いまおもな濃厚飼料は、申すまでもなくトウモロコシとかマイロでございますが、ほとんどアメリカに依存いたしております。最近は、小麦がソ連あたりの買い付けがありまして、非常に値上がりして困っておるわけでありますが、これが不作のときなどは、当然こういう一辺倒に片寄っておりますと問題が起きますので、私どもも意を配りまして、最近は、タイあたりからの輸入のシェアもたいへん増加をいたしておりますし、なおインドネシア方面でも、場合によれば——この間も、インドネシアのマリク外相その他が見えまして、私いろいろ懇談いたしましたが、日本から農場の経営に進出してくれないかというような話があります。これはオイルパームの問題でございましたが、同時に、飼料作物なんかも向こうへ民間ベースで、政府の助成等によって進出して、向こうで多角的にこうしたものをつくって日本に導入するというような行き方もありますし、御指摘の中国とも国交回復の暁は、当然こうしたものが入ってくると思っておりますので、私どもも多角的にこれを入れることによりまして安定をはかっていきたいという考え方を基本的には持っておるわけであります。  最後の……
  83. 足鹿覺

    足鹿覺君 中国朝鮮
  84. 足立篤郎

    国務大臣(足立篤郎君) 北朝鮮の問題は私よく事情がわかりませんので、いまそれを談ずることはできませんが、中国からはこうした——私もかって十二年ばかり満州に住んだことがありますが、豆類、コウリャン等は名産地でございますから、当然に輸出をしようという話もございましょうし、これを拒否するというような考え方はございませんので、コマーシャルベースで当然輸入をして、いまおっしゃるような多角的な需給をはかっていくという方向で進みたいというふうに思っています。  最後の円対策の問題は、足鹿さんと私の考え方は基本的に一致をいたしておりますので、いま残っている二十四品目については慎重に検討いたしておりますし、長期的な観点に立って、自由化できるものがあるかどうかということで、いま検討いたしておりますが、残っているものはよりすぐられた選手だけが残っているわけでございまして、どれ一つつかまえてみましても、やはり日本農業全体に相当大きなダメージを与える、あるいは地域農業に大きな影響があるというものばかりでございますので、もし将来自由化を考えるとするならば、それ相応の国内の価格安定対策等、万全の措置をとらなければできないと思っております。  たとえば北海道に関係の深い雑豆ですね、大豆は相当輸入しておりますが、雑豆もいま足らぬ分は割り当てをして輸入いたしておりますが、去年あたりの実績が三千数百万ドルでありますから、約百億円ぐらいな輸入をいたしておるわけですが、この価格安定をやるのに幾ら金がかかるかという試算をしてみると、大体百億円かかるわけでありまして、しかも、それによって、じゃ輸入が非常にふえて円対策に貢献するかというと、残念ながらあまり貢献をいたしません。  そういう実態をいろいろ検討いたしておりますので、いま農産物につきましては、それによって非常に効果てきめんな円対策になるような処置は当面は考えられない。しかし、長期的な観点に立って、まあ国際的な動向もございますので、私ども十分今後検討してまいりたいというふうに思っております。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的な問題に対しては農林大臣から述べたとおりでございますが、しかし、農業の問題、これは、私の日本列島改造は一つのテーマとして試算数字を述べたものでございますと、こう述べておるんですから、ですから、これから皆さんの御理解を得ながら一つずつ各論をまとめてまいりたいと、こう思うわけでございます。  最後の問題だけ一つ申し上げますと、いま農林大臣は農林大臣の立場で述べましたが、私もそういうことを理解いたしております。ただ、自由化をしないでいいのかという問題に対しては、これはまあ御承知のことでありますが、念のため申し上げておきますと、これが南北問題、国際協調、国際分業、そういう意味でケネディラウンドの推進、来年から御承知のニューラウンドの推進ということになりますと、生産性の低いものは南の国々にまかしなさいと、そして生産性の高いもの、付加価値の高いものを主要工業国でやるべきだと、そうでなければ南北間の格差はますます開いて、地球上の平和維持ができないじゃないかという問題があるわけです。あるわけですが、それは世界の平和維持も大切でございますし、平和のために貢献もし、努力もいたしますが、日本人が食っていけなくなっては困りますから、そういうところのバランスをどうするかというのが一次産品の自由化に対して一番めんどうな問題でございます。ですから、やはり国内政策というものをやらないで、あとに残った品物の自由化ということは非常にむずかしいということは農林大臣も述べておるとおりでございますので、まあ、彼此、こうバランスをとりながら国内的に大きな影響を与えないようにしなければならないと、こう基本的に考えております。
  86. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて足鹿君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  87. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、補正予算三案に対し質疑を行ないます。三木忠雄君。
  88. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、まず最初に、安保、沖繩問題について、総理並びに各大臣に質問いたします。  特に、過日の日米首脳会談におきまして、日米安保条約を堅持するという合意をされたわけでありますけれども、私は、その立場には反対であります。しかしながら、きょうは安保の堅持、あるいは解消等の論議は、時間の関係で省くことにいたしまして、特に何といっても、日米安保条約、あるいはまた、地位協定の運用によって日本の国民の生活に非常な不利益をこうむっている問題が数多くあります。こういう問題について、私はきょうは焦点をしぼりまして、具体的な、総理並びに各大臣の明快な答弁をいただきたいと思うわけであります。  そこで、まず最初に、総理は日米安保のこの存在が日本の国民に与えるデメリットというものをどういうふうに考えていらっしゃるのか、どのように認識をされているのか、まず最初にお伺いをいたします。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) メリットのほうは、これはもう、安全が保障されておるということがメリットでございますが、デメリットというのは、安全保障のためには幾ばくかの基地提供ということがあります。この基地というものは多く整理をしてまいりましたし、合理化もしてまいったわけでございますが、二十年近いこの間には、社会の態様が変わってまいりました。都市化現象等によりまして、全く野っ原のまん中であった基地が住宅街と近接をするようになったり、また、基地と港をつなぐ道路が都市のメーン道路になったりということで、基地に対する社会とのトラブル、摩擦というものが出てまいりましたので、そういう意味では、まずデメリットの面だと思います。それから基地公害というのがございます。これもデメリットである。基地の問題に対して多少混乱が起こるというのもデメリットであると、こう考えます。
  90. 三木忠雄

    三木忠雄君 あとで質問しようと思ったんですが、基地公害だけ、あるいは基地の問題だけではなしに、もっと、外交上の問題から、あるいはまた防衛上の問題から、いろいろな点、角度から、このデメリットは指摘されると思うんです。総理は、この安保条約に対する認識があまりにも簡単過ぎるんではないかと、こう思うんですが、もう一度お願いします。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、あなたの言わんとすることはよくわかりますが、私の立場から言うと、国民の生命財産を守り、それから最も合理的な国民負担で安全を守る、独立を守るというためには、日本だけではとても防衛ができないので、安全保障条約というものとあわせてやっておる。これは日本だけではなく、どこでもやっておることです。どこでもやっておることで、全く東西を問わず、お互いが複数以上の安全保障体制、防衛体制ということで負担を軽くしておるのでありますから、そういう意味で、それはどうしてもメリットのほうに数えられるのでございます。しかし、そのためには、というあなたの言わんとすることもわかりますが、それはもう、デメリットではなく、メリットのほうが大きいと、こう考えます。
  92. 三木忠雄

    三木忠雄君 外務大臣並びに防衛庁長官に伺いますが、この問題についてはどういう認識をされておりますか。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約の評価の問題は、メリットの面、デメリットの面、有形無形のものがございまして、とりわけメリットの面は、いま総理から概括的な説明がありましたけれども、これは目に見えない、じかに、はだで触れることのできないものでございまするから、主観的な評価によりましていろいろ考え方があろうと思いますけれども政府は、総理が述べたような意味で大きなメリットを感じておるわけでございますが、安保条約は、いま三木さんの言われる、そういう安全保障の面ばかりでなく、経済協力を両国の間で厳粛に約束をいたしておるわけでございまして、その条項に従いまして、戦後の荒廃から今日の日本経済が立ち直るに至りましたという過程におきまして、日米経済協力というものは、はかり知れないメリットがあったのでございます。  しかし、いま御指摘のデメリットでございますが、これは、日米安保体制を背負ったわが国といたしまして、一つには、外交上の選択あるいは行動の自由がはばまれやしないかという点が一つ考えられるのでございますけれども、日米安保条約がございましても、昭和三十一年には、その安保条約の存在とはかかわりなく日ソの間の国交を樹立することに成功いたしたわけでございまするし、ついこの間、日中の間におきましても、安保条約の存在ということにかかわりなく日中の和解が成功いたしたわけでございまして、私ども、この安保条約の存在がわが国外交政策を、くびすにくくりつけて自由を非常にはばんでおるというようには考えておりません。それから、いま総理が述べられました基地の問題でございますけれどもわが国が安保条約上プラスのサービスの提供を受ける代償といたしまして、基地を提供いたしておるわけでございます。好きこのんで基地を提供しておるわけではないわけでございます。その後の社会・経済事情の変遷から、たいへん目立った基地をめぐるデメリットが続出してまいっておることは、私どもよく承知いたしておるわけでございますので、そういう面につきましては、精力的に、かつきめこまかく対処いたしまして、住民の、国民の生活感情あるいは生活の実態との調整を極力はかってまいるわけでございます。デメリットの面が目に触れるものであるし耳に感ずるものでございまするし、これが非常にきわ立って見えるわけでございますけれども、メリットは、遺憾ながら目に見えないものでございます。目に見えないものというのをよく洞察することこそが政治の任務ではないかと思います。
  94. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛庁といたしましては、日米安保条約のメリットは、申すまでもないことでございまするが、わが国の防衛を……。
  95. 三木忠雄

    三木忠雄君 デメリットだけで——メリットはもうよくわかっているんですから。
  96. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 一応やっぱりメリットを申し上げませんと、デメリットも……。  わが国を防衛しまするのは、憲法のたてまえもございまして、必要最小限度の自衛に徹するというたてまえでいくべきものでございます。そういう意味の日本の防衛を考えまする場合には、世界の大勢もあることでございまするが、どうしても友好親和の国との間に防衛条約をつくって、その力をかりるという必要があるわけでございまして、防衛庁としては、安保条約に大きいメリットがあると思います。その場合に、基地があるということがデメリットであると言われまするが、デメリットということばを使って悪いとは考えませんが、安保条約というものに基地というものは、何というか、当然含まれる性質のものでございます。したがいまして、基地が最小限必要なものに縮小されるということは必要でございまして、そういう意味では、防衛庁としても、基地の総合調整、調査を、いまいたしておるところでございます。必要なものを限度に基地を縮小していくということには十分努力をいたすつもりでございまするが、これは、申しましたように、安保条約の当然の内容というふうなことであると考えます。
  97. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは外務大臣に伺いますが、外交権の問題で選択あるいは行動の自由が制限されてくる、あるいは、はばまれてくるという、こういう問題に対する具体的な答弁をお願いしたいと思います。  もう一つは、在日米軍基地の縮小計画ですね、この問題は具体的にどのように展開されておるのか。この二点についてお伺いします。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約を米国との間に結ぶということも、一つの大きな選択なんでございまして、そういう選択をすることが、日本の安全保障の面にとりましても、また国民の福祉から申しましても、是なりと信じて大きな選択をやったわけでございます。そういう選択をやった以上は、これと背反する行動に出られないのは、またこれ、理の当然でございまして、私どもは、そういう中におきましても安保条約体制の存在にかかわりなく展開される外交活動の自由は可能な限り確保してまいりましたし、今後も確保してまいらなければならぬと思うのであります。もっと申しますならば、日米安保体制を堅持しておる日本ということが、逆に、われわれが外交を展開する場合の一つの力になっておるという評価も、またなされ得ようかと思うのであります。  それから第二の御質問でございますが、基地の縮小整理の問題でございます。これは、安保条約締結以来、今日二十年に余るわけでございますが、その間に、三木委員も御承知のように、大幅な整理縮小が現に行なわれたのでございますけれども総理が指摘されましたように、都市化の現象が非常に顕著に出てまいりました関係上、基地をめぐる緊張がたいへん増してきたという事態を踏まえて、そしてまた、政府自体といたしましても、国土全体の総合開発計画の推進という別の政策目的があるわけでございますので、そういう観点から米国側とお話をいたしまして、いま鋭意詰めておる段階でございまして、遠からず具体的に御提示できることになると思います。
  99. 三木忠雄

    三木忠雄君 あと具体的な問題を聞きますが、一昨日のグリーン米国務次官補の記者会見によりますと、ニクソン政権の第二期スタートにあたって、在日米軍基地は必要であると——いろんな記者会見の内容から拝しましても、基地は縮小しないと、こういうように私たちは受け取れるわけです。この問題については外務大臣はどういうふうに判断されておられますか。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは米国の考え方でございますから、私どもがいい悪いのコメントを申し上げるのは失礼かと思うのでございますけれども、米国の根本的な考え方は、私は二つあると思うんです。一つは、緊張緩和状況をつくり出し、あるいは平和の条件を創造していく場合におきまして、力の存在というものが必要であるという考え方、これは、いい悪いは別といたしまして、そういう考え方に一つの基礎を置いておると思うのでございます。それから第二は、日本はじめ、多くの国々と米国は約束を持っております。安保条約に象徴されるようなものを、あるいはNATO条約に象徴されるような約束を持っておりますけれども、この条約上の約束はあくまでも遂行していくのである、そのことがアメリカ世界政治におけるプレステイジを維持してまいり、世界全体の平和と秩序を守ることにアメリカが貢献するゆえんであるという考え方、これにはいろいろな御批判があろうと思いますけれども、現にアメリカ政府がとっておる政策は、そういう考え方に基づいて展開しているように思えるのでございまして、グリーン次官補が述べたといわれる考え方は、そういう思想の流れから申しまして、当然考えられる道行きであろうと私は判断いたしております。で、これに対しまして日本がどのように対応するかは日本の問題であると思います。
  101. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、この二日に外務大臣が記者会見をされた、あるいは日米合同委員会において基地縮小のいろんな方向を示された、相模原の補給廠の問題とあわせて基地縮小計画を、たとえば関東周辺に基地を合理化していくとか、あるいは縮小計画をやるとか、いろんな合意事項が成立したと、こういうふうに聞いているわけでありますけれども、この点の詳細についてはいかがですか。
  102. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約上の米国の責任を果たすにおきまして、どれだけの基地を必要とするかということは、アメリカが他国との間の約束を守るということと、おのずからこれは別な問題でございまして、私どもといたしましては、できるだけ合理的な、そして整理縮小をやり遂げて、しかもなお、その約束された機能が維持できるという状態が一番望ましいわけでございまして、そういう方向でいま日米間で協議を続けておるわけでございます。とりわけ関東地区のように都市化が急進展を見ておるというようなところにおきましては、たいへんこれは急がなければならぬ性格のものでございますので、とり急いでやっているわけでございますので、その一部一部につきましては、年内にもはっきりさせたいと考えております。
  103. 三木忠雄

    三木忠雄君 総理外務大臣に伺いたいのですが、昨年の沖繩返還国会におきまして、衆議院において国会決議として、沖繩米軍基地を縮小する、こういうふうな国会決議がなされているわけです。この問題に対して、具体的に本年、この一年間——約一年間になると思うんですが、この沖縄米軍基地の縮小のために、外務省あるいは総理としてどのような手を打ってこられたか、具体的に返還になった事例があれば教えていただきたいと思うんです。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘のように、衆議院の議決がございましたことは事実でございます。また、政府といたしまして、沖繩振興開発特別措置法をお願いいたしまして、沖繩の振興開発計画の作成が進んでおるわけでございまして、基地経済から脱却いたしまして、バランスのとれた活力のある沖繩開発をやろうといたす場合におきまして、基地のあと地を利用するということは、もう当然考えなければならぬことだと思います。御案内のように、基地の比重があまりにもおおいかぶさってきておる沖繩でございますので、米軍施設の整理縮小ということが内地以上に緊迫した課題であることはよく承知いたしておるわけでございまして、政府の別途の計画と勘案しながら、目下鋭意検討を続けておる段階でございます。
  105. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは外務大臣よりもむしろ総理ですね。沖繩の基地縮小計画で、絶えず、聞くたびに鋭意努力中、鋭意努力中ですよ。実行と決断力を誇る総理ですから、私は早い見解が出るんではないかと思って待っているんですけれども現実に沖繩の振興開発をやると——あとで経企庁長官あるいは沖繩開発庁長官に伺いますけれども、基地が非常に困難な問題になってきているわけです。この点について、現に私の承知しているところでは、総理は沖繩にはまだ行っていないんじゃないかと、こう思っているんですが、そういう点で、沖繩の実態というものを考えた場合には、基地縮小計画、これを具体的に進めなければ沖繩振興開発はできない、こういう点に基地の重大さがあるということを私たちは認識しているわけです。この点について、総理はこの沖繩の基地縮小、あるいは国会決議までしたこの沖繩米軍基地の縮小の問題を、いつまでをめどにして振興計画と合わせての解決をしていくのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩振興開発計画を進める上において、十月三十一日に閣議で沖繩の基地の縮小に関する決定をいたしたわけでございます。那覇市周辺の整備を行なうためにも、基地の縮小がぜひ必要であると、こう政府全体としても認めたわけでございまして、これから米軍との折衝を十分行ないながら、沖繩の開発を進めてまいりたい、こう存じます。
  107. 三木忠雄

    三木忠雄君 どうも、なかなか具体性がないものですから……。閣議でいろいろ決意をされたのはけっこうなんですけれども、経企庁長官に伺いますけれども、沖繩開発の構想をいろいろお立てになっているそうですけれども現実にこの基地の問題をどういうふうに把握されているのか、沖縄振興開発をやる上において、基地をどのように位置づけているのか、この点についてお伺いします。
  108. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) この五月に日本に復帰いたしまして、そこで私のほうで全国総合開発計画というものがあるのですが、沖繩の部門を新しく入れまして、第四部門といたしまして、沖繩開発の基本構想というものを立てております。その基本構想は、まず沖繩を本土並みに、格差を是正するということが一つの大きなねらいであります。また同時に、沖繩それ自体の持てる特性を生かす。すなわち、東南アジア日本との約中間にあるわけですから、そのいろいろ海外との交流の拠点として沖繩を開発する。また同時に、御承知のとおり、沖繩は亜熱帯海洋がありますし、その他自然の恵まれた条件があります。また、たくさんの観光資源がありますが、そういう沖繩の特性を生かしながら沖繩開発をやりたい、こういうねらいのもとに基本構想を打ち立てておるわけです。御承知のとおり、その最後に、これらのことをなしとげるためにかような文書を書いております。「このような開発を進めるうえで、沖繩の米軍施設、区域は、できるだけ早期に整理縮小されるべきであり、とくに、那覇市およびその周辺に広がる米軍施設、区域については、那覇圏の形成の見地から、その整理縮小を図る必要がある。」と、こういう構想を打ち立てておるわけですが、われわれとしましても、沖繩の開発のためには、できるだけ基地を縮小整理したい、こういう考えです。しかし、相手のあることですからなかなかむずかしい。けれども、まあ安保条約も、最初できたときに日本にどれだけの基地があったか、それがこの二十年間の間にどんなに縮小されたか、公明党さんも数年前に日本の全体の基地の総点検をやられて非常な貢献をされたと思うんですが、私、あの当時防衛庁長官をやっておりましたが、あの当時から比べましても相当基地が縮小されました。御承知のとおりですね。でありますから、絶えず努力して、安全保障会議あるいは日米合同会議と、いろんな会議がありますから、そういうのを通じながら縮小整理して、そして、さっき申しましたような沖繩の開発をやりたいというのが、われわれ企画庁で立てた沖繩開発の基本構想であります。
  109. 本名武

    国務大臣(本名武君) ただいま企画庁長官から、全総の立場から沖繩の開発についての御意見がありました。私は、直接措置法による沖繩振興開発計画を担当いたすものといたしまして、全総を受けつつも、やはり沖繩の特性を生かした開発を促進しなければならない。その第一の特性は、やはり二十数年にわたるアメリカ施政権下にあったこの事実を踏まえながら、先ほど来お話の基地の問題をはじめ、あるいは県民の感情、あるいはまた行政機構、機能等についても十分理解をしつつ、この振興計画の実施をはかっていきたいと考えているわけであります。それにつきましても、やはり現況は、もう申すまでもなく、生活環境の格差であるとか、あるいは社会福祉施設の状態であるとか、あるいはまた、産業その他生産基盤の実態というものを考えてみますと、やはりこの格差を一日も早く是正して、豊かな平和な沖繩をつくりたいということに焦点を置きまして、いま振興開発計画を審議願っているわけでございます。幸いに、県からは、ほんとうに短時間でありましたが、県みずからの振興開発計画をお出しいただきまして、政府では先月二十五日から審議会を開きまして、この審議を進めているわけでございます。そのようにいたしてまいりますけれども、先ほど来お話しございました沖繩の基地の問題につきましては、やはり外務大臣総理等からお話しございましたとおり、わが国の置かれている、日米安保条約とこの開発の目的、この両目的を達成するために、その両者の調和をとりながら沖繩の開発をはかっていきたい。しかしながら、特に本島におきましては、本島面積の二十数%を占める基地というものが、いかに沖繩開発に大きな問題を提起しているかという事実もまたわれわれは考えますときに、一日も早くその縮小整理を願ってやまないものでございます。そのようにいたしまして、振興計画樹立とともに、この沖繩開発を徹底的に促進してまいりたいと考えております。
  110. 三木忠雄

    三木忠雄君 外務大臣に伺いますけれども、具体的にこの米軍基地の縮小ですね、政治日程として日米合同委員会はいつ開催する予定ですか。これはいつごろにこういう沖繩基地問題の縮小計画の方途の話し合いといいますか、縮小計画の論議をされるのかどうか。日米合同委員会の日程等についてきまっていらっしゃれば説明願いたいと思うんです。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは絶えずやっておるわけでございまして、常設の機関でございますから、現に取り組んでおるわけでございます。しかし、いつごろまでにでき上がるかということでございますが、そこで合意を見たものから漸次発表し、実施に移したいということでございます。
  112. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  安保条約で問題になるのは、いまの基地の問題と、それから事前協議の問題でありますが、いま日米合同委員会の問題が出ましたのでここで関連してお伺いをしたいのですが、前国会で、政府のほうから、事前協議を洗い直すと、このことがはっきり言われました。で、時期につきましても、私も参議院の予算委員会で質問いたしましたときに、前外務大臣は、この秋までにはその洗い直しをきちんとやって、そしてアメリカと交渉すると、こういうお話であったわけであります。もう秋もだいぶ深まったわけでありますが、全然その話が出てこないわけです。で、内閣がかわったから洗い直しをやめたのかどうかわかりませんが、先日のハワイ会談でははっきりこの話がどの程度まで出たのか。また、洗い直しはこの際きちんとおやりになる意思があるのかどうか。やるとすれば、その時期はいつまでか。また、その内容については、装備の重要な変更あるいは配置の変更、直接戦闘行動等がございますが、こういった中身まできちんと、交換公文を変えるような、そういう形にまで持っていかれるのか。戦車輸送問題等もございましたので、この際きちんとしていかなければならぬと、こう思うわけですが、その点について外務大臣総理にお伺いします。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約の運営の最高の機関は日米協議委員会でございまして、防衛庁長官と外務大臣、それからアメリカの大使と太平洋軍司令官の四者で構成されておるものがございます。これは前の大臣が言われたように、この秋やる予定であったのでございますけれども、私のほうの政治日程が詰まっておりましたこと、それから太平洋軍司令官が更迭いたしましたような事情がございまして延びておりますが、この臨時国会と通常国会との間で東京で開催いたしたいと思っております。  それから第二の事前協議の洗い直しの問題でございますが、安保条約が改定されて十二年になるわけでございまして、この間のいろいろな事例をもう一度レビューいたしまして、日米双方で事前協議制をめぐった理解をさらに確認いたしたいということを考えて、いまその準備をいたしております。しかし、その場合に、事前協議制そのものに手を触れるかということにつきましては、私ども消極的でございまして、この十二年間の洗い直しというのは、双方の事前協議に対する、運用に対する理解をもう一度確認しておく必要があると、その改善というところまではまだ考えておりません。
  114. 三木忠雄

    三木忠雄君 沖繩の基地縮小の問題と関連しまして、安保条約あるいは地位協定の運用の問題で、やはりこの安保条約の存在によって沖繩あるいは日本国民に相当な不利益を与えている問題が数多くございます。  その中で私は、特にきょうは何点か取り上げてみたいと思うんですが、ベトナム戦争の後方基地といわれているこの嘉手納空軍基地、沖繩の空の状態についてはすでに御存じのとおりでありますが、来年から自衛隊が相当進駐してくる。あるいは米軍、自衛隊、民間航空と、こう三者一緒になってくる沖繩の空でありますけれども、この管制権の問題が現在非常に問題になっております。特に私は、航空路管制の問題について、憲法から考えても非常に不思議な問題が嘉手納に存在している問題について論を進めてみたいと思います。特に、現在沖繩における航空交通管制はどのような実態で行なわれているのか、まず最初に説明願いたいと思うんです。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは昭和四十七年の五月十五日に日米合同委員会において合意されておりまして、国会にも御提出申し上げてあるわけでございます。  一、沖繩における航空交通管制組織を運用管理する権限は、日本政府に帰属する。  沖繩飛行情報区は東京飛行情報区と分離して存置させる。  日本政府は、沖繩返還と同時に、那覇空港の航空交通管制業務、及び沖繩飛行情報区における航空通信業務の運用並びに離島空港の航空施設の運用管理を行なう。これに必要な航空施設は、米国政府から日本に移転される。  四、日本政府は、施政権返還後、二年以内に所要の航空管制及び保安施設の整備運用を行なうことにより、沖繩飛行情報区における航空交通管制業務の運用を行なう。それまでの間は暫定的に米国政府がICAO基準に準拠した方式により、航空交通管制業務を実施する。  但し一部の航空保安施設については、施政権返還後、一年以内に日本政府が運用管理する。  なお、米国政府は、必要な日本政府職員の訓練について、協力する。  五、米国政府は、地位協定の規定により使用を認められた飛行場に関する航空交通管制業務を実施する。なお、那覇空港に近接して嘉手納飛行場が位置していることから、これら区域における航空交通の安全を確保するためには、単一の施設によって進入管制を行なう必要があるので日本政府がこれら飛行場のレーダー進入管制業務を行なうまで暫定的に米国政府が那覇空港の進入管制業務を実施するものとする。  右の合意事項の他、昭和二十七年六月及び昭和三十四年六月の合意が適用されるという付言がございますが、いま申し上げましたような段階になっております。
  116. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、この航空管制路の権限は日本政府に帰属をしているわけです。しかしながら、現実に二年後を目途にしてその航空管制を米軍にゆだねておくという、そういう何か理由、根拠づけはいかがなものですか。
  117. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 米軍日本との協定につきましていま外務大臣お話しのとおりでありますが、行政権はすでに日本に返っておりますから、当然日本で飛行場の管制とかあるいは先ほど外務大臣お話のありましたように、航空路の管制あるいはまた誘導路の管制その他当然やらなくちゃならないのでありますが、すべての受け入れ体制がまだできておりませんもんですから、要するに、管制官の訓練、教育その他二年間はどうしても必要だ、こういうことで実務をやっている次第であります。一日も早く、行政権が返っているのでありますから、わが国の手で管制をやりたいと、こういう考えでおります。
  118. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、わが国に返っておりながら、現実に二年間は人が間に合わないとかいろんな理由は皆さん方おっしゃるわけでありますけれども現実に航空管制を日本の手にゆだねられてしまうと、嘉手納空港あるいは沖繩の空からSR71あるいはB52あるいは戦略爆撃機等のコントロールができないと、こういう観点が私たちは考えられるわけなんです。こういう意味から考えますと、わが国における航空交通管制が航空法によって運輸大臣に帰属しておるにもかかわらず、あるいはまた憲法第六十五条によりますと「行政権は、内閣に属する。」、こうはっきりと明確になっているわけです。これにもかかわらず米軍に二年間ゆだねてしまっているということは、これは憲法上おかしいのじゃないですか。この点についてどうお考えになりますか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いままでアメリカの施政権下にあったものでございますし、しかもこれが返還した直後にはレーダー施設も完成しておりませんし、完備しておりませんし、それから要員等の訓練もできておりませんしということで、これは沖繩が返還になったという特別事情があるということで御理解をいただきたい。だから、二年間たちますと、航空路監視レーダー等の必要施設の設置ということでいま考えておりますし、職員の訓練や配置ということはやはり二年間かかるということでありますので、返還に伴う経過措置であると、このように理解を願いたい。
  120. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸大臣に伺いますが、そうしますと、嘉手納を米軍にゆだねなくても福岡の航空管制部でできるはずなんです。日本には三つの管制部があるわけですね。久留米それから福岡、それからもう一つ千歳、その三つが航空管制部に入るわけです。福岡の航空管制部で嘉手納を全部包含することができるはずなんです。もし人材が足りないあるいは人が足りないのであれば、福岡で解決すればいいわけです。裏を勘ぐってみれば、嘉手納を自由に航空管制を握らしているということは、ベトナムにどういう飛行機が飛んでいこうと何しようと、米軍の権限にゆだねられてしまっているということは、何の歯どめもないわけですね。どういう飛行機が飛んでいるかということ自体も日本人が関知できないわけです。いわんや、将来一年後、二年後には海洋博を控えて民間航空が相当入ってくる。あるいは自衛隊の飛行機が相当演習で使う。こうなりますと、空の安全という問題から考えても、あとで詰めたいと思いますけれども、非常に問題になってくる。それを二年間米軍にゆだねるということは、私はこれは行政法からいってもいろんな点から考えても不自然じゃないかと思うのです。
  121. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 決して、ゆだねているということばによってはっきり了解できないと思いますが、こちらの体制が十分に整っていないものでございますからむしろアメリカさんにお願いしているというような状態でございます。申し上げるまでもなく、航空行政は安全ということが第一でございます。ただいま御質問の点につきましては、いろいろ技術的な部面もございましょうから、専門的なことは航空局長からお答えさせます。管制をどこでやればどうなるとか、福岡の管制範囲がどこまで届くか、こういう問題になってくると技術的な問題がございますので、局長から一応お聞き願いたいと思います、安全性の問題でございますから。
  122. 内村信行

    政府委員内村信行君) ただいまの、なぜ福岡で沖繩の管制もできないかという問題でございますが、福岡でやるといたしますと、やはり施設及び人員が不足でございます。場所的には福岡でもできるということは言えますけれども、やはり多くの飛行機を多くの違った場所で管制を行ないますために、セクターをつくりまして、それぞれに人を配置する。また、レーダー等につきましても、沖繩の上層部、それをおおいますレーダーがございませんとこの管制ができないというふうなことから、やはり沖繩で管制することが適当というふうに考えているわけでございます。
  123. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、人だとかそういう問題は解決すべき問題だ、簡単にできるはずなんです、やる気があれば。やる気がなかったわけなんですね。二年間、そういうふうにゆだねたということは、やはり嘉手納基地が米軍のベトナム戦争の後方基地として非常に戦略部隊だとかあるいはいろんな問題点があって、管制権が握られては非常にまずいと、こういう観点から二年間という私は契約が出たと思うのです。そうしますと、それは簡単に陣容は整うんであれば、できるんであれば、この二年間の地位協定の改定を行なうことはできますか。外務大臣どうですか。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはいままさに御指摘の地位協定との関係が出てまいるわけでございまして、地位協定によりまして、米軍は基地を管理使用する権限を持っておるわけでございます。したがいまして、そこから、それが飛行場でございますれば、飛行機の発着ということについて米軍のコントロールのもとに行ない得る権限を持っておるわけでございまして、しかし、そのことは同時に、いま御指摘の民間航空との航空管制上いろいろ問題が出てくるわけでございますので、こういう問題を調整いたすために日米合同委員会というものは設けられて常時協議を遂げておるわけでございまして、先ほど私が、二年間「沖繩における航空交通管制組織を運用管理する権限は、日本政府に帰属する」。以下、沖繩における航空交通管制について御説明申し上げたのも、これは日米合同委員会の合意の細目であるわけでございます。したがって、地位協定の改正という問題は合同委員会の権限を越える問題でございまして、これは両政府の間の問題で、国会のお許しを得なければできないことでございますが、現行の地位協定のもとで合同委員会が設けられて、そこで協議を常時遂げて調整をいたしておるということでございます。
  125. 三木忠雄

    三木忠雄君 協議はけっこうなんですがね。現実に管理権が日本に所属しているんであれば、運輸大臣に権限があるんであれば、しからば、私たちが要求すれば、沖繩から飛んでいるSR71あるいはB52あるいはその他の飛行機のチェック、あるいは航空法からいきますと、管制権が日本にあれば、航空法第九十六条から九十八条を順守しなければならない。そうすると、飛行計画あるいは離発着、こういうものを全部運輸大臣に報告しなければならない義務があるわけなんですね、米軍たりといえども。この点についての資料を私は要求したいと思いますが、出せますか。
  126. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) アメリカ当局によって管制を実行しておりますので、資料はアメリカのほうで持っているようでありますから、当方で持っておりませんものですから、直ちに資料を提出するというお答えはできません。
  127. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、いますぐ言って出せとは私は言いませんけれども現実にその資料が米軍から提出できますか、運輸大臣。
  128. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) いまのところ約束するわけにはまいりません。
  129. 三木忠雄

    三木忠雄君 ここは私はおかしいと思うんですね。管理権は運輸大臣が持っておる。航空交通安全の問題に対して、交通管理権が憲法から照らし合わせても日本にありながら、米軍の言うままに、あるいは米軍から資料も要求できない。どうなっているかという空の交通実態までつかめないというような状態になって地位協定が結ばれているというところに私は問題があると思うんです。この問題について法制局長官はどういうふうに解釈されますか。
  130. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 航空管制の内容の技術的な知識が全くございませんので、いま問答を聞いておりましていろいろ考えておったところでございますが、少なくとも申せますことは、沖繩を除く以外のわが国の本土でございますね、この本土は、占領から解放せられまして、講和条約ができまして占領から解放せられましたが、本土について運輸大臣が全部管制を把握いたしましたのは昭和三十年代の初めだったと記憶いたしております。それは何も米軍に管理してもらおうということではなくて、わが国がみずから航空管制を行なおうにも、その人員と技能、施設が伴わなかったということから、その施設なり人員なり技術なりが整備されるに伴いまして順次移管をいたしまして、その移管をする際にも、たしか、その飛行場ごとというばかりではなくて、飛行場の中のどういう管制ということで分離して移管を受けたと思いますが、順次移管を受けまして、昭和三十二年か三年かに全部わが国の側によって管制を行なうようになったような実態がございます。沖繩についても、おそらくそういう実態がございまして、いま直ちにわが国が航空管制を全面的に引き受けて行なうということはできないというやむを得ない事情によって、航空管制のいわば実務的な行為を米軍に委託して行なってもらっておるというのが実情であろうと思います。これが実態的に行なうための施設なり人員なりの整備ができない以上、まことにやむを得ない措置であろうと思います。
  131. 三木忠雄

    三木忠雄君 ちょっとこれ、そういう問題ではなしに、法制局長官ね、航空法によって運輸大臣に権限が、管制権があるのですね。憲法第六十五条には「行政権は、内閣に属する」と、こういうふうにはっきりと規定されているわけです。これを米軍に委任をするということについては法律上疑義があるのじゃないですか。現実の問題じゃなくて、法律的解釈を私は聞いている。
  132. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) これは先ほど答弁がありましたように、いわゆる地位協定第六条第一項及びこれに基づく日米の合同委員会の合意によって米側に事実行為として委任したものでございますので、そのような根拠によってゆだねられたものとして、合理的なものと考えます。
  133. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、ゆだねられたわけですね、いまの法制局長官からいきますと。ゆだねたのですから、管制権、権限は運輸大臣にあるわけです。そうしますと、米軍のチェック、あるいは沖繩の空の状態というものは全面的に運輸大臣が掌握をしなければならない責任があるのではないですか、この点はいかがですか。
  134. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 責任はございますけれども、委任条項があります以上は、安全性の確認ができない以上は、ただ単に理論上で管制上の権限があるからといって、実務の点につきましては委任をお願いして、そうして完全な航空運用をやるということは私は当然だと思うのであります。
  135. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、米軍の管制官が返還後に沖繩で管制業務を行なっている。これは私は公務の執行であるのか、あるいは万が一、こういうことがあっちゃ困りますけれども現実に沖縄の空において事故が発生した場合の法的な責任はどこにあるのか、民事法、刑事法からいってどうなりますか。
  136. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 米側の管制官の行為はこれは公務であろうと思います。
  137. 三木忠雄

    三木忠雄君 したがって、事故があった場合にはどういうふうな責任がとられるのか。
  138. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 米側の管制業務を行なう者の民事責任につきましては、いわゆる地位協定の十八条に基づく問題として民事責任が問われると思います。また、刑事責任につきましては、同地位協定の第十七条の問題として責任が問われるということに相なると思います。
  139. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、現実に沖繩の空が米軍の公務として交通管制業務が行なわれていると、こうなりますと、私たちは、現実にSR71が飛んでいる、あるいはKC135が毎日給油にベトナムのほうに向かっている、こういうような問題のチェックを、公務をゆだねてあるとは言うけれども現実に運輸大臣が管制権を持っていれば、その実態の把握あるいは掌握ということは当然運輸大臣がしなければならぬ問題だと思うのです。したがって、そういうことができないのであれば、いや、米軍にもうゆだねてあるからだめだと、そういう資料要求あるいはそういう実態を掌握できないというのか、あるいは、できるのであれば、そういうふうな問題の実態を私たちに資料として提供できるかどうか、もう一度確認をしておきたいのです。
  140. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 資料の点につきましては、先ほどお答え申し上げたとおり、当方にはございませんので、お約束はできません。  ただ、お話しのような点につきましては、われわれのほうで米軍に対しまして米軍の管制その他の問題について御協力を賜りまして、二年間ということを区切ってありますが、一日も早く当方において管制業務を、行政権が返ってきたのでありますから、それに基づいてわがほうでやりたいという精神は変わりないのであります。
  141. 三木忠雄

    三木忠雄君 二年間待つ必要は私はないのじゃないかと思うのです。もっと政府はこの交通管制業務に真剣に取り組み、あるいは二年後ではもう海洋博で相当那覇空港は——きょうはP3の問題なんかは時間がありませんからやりませんけれども現実に那覇空港すら返ってきていない、こういう状態の中で、嘉手納あるいは沖繩全体の空の権限というものが米軍に委任されておれば、これはもう沖繩の空というものは非常に危険きわまりないような実態になってくるのじゃないかと思うのですね。この問題について、私は、二年というような問題じゃなしに、あるいは米軍の言われっぱなしという形ではなしに、こちら側も積極的な管制権を持って空を管理するという、あるいは航空交通管制の一元化の問題から考えても、この問題は私は不自然じゃないかと思うのです。こういう米軍従属の姿勢というものをもっと私は改めるべきじゃないかと思うのですけれども、運輸大臣並びに総理が、この問題を、二年間と限らずに、もっと早く、沖繩県民がどのような実態で飛行機が飛んでいるかということで不安をしている、こういう問題が掌握できるような実態というものを一日も早く管制業務を日本に取り戻すと、こういう姿勢はいかがお考えでございますか、総理並びに運輸大臣にお伺いしたいと思います。
  142. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 取り戻すというような考え方、それから従属しておるというような考え方というよりも、沖繩が返還をされた、返還をされて日なお浅い、その間において沖繩の航空管制を日本政府の責任で完全にやれるだけの能力と設備がない、それで二カ年間の期限を付してアメリカ日本のやらなければならない航空管制を行なっておる。その間に、可及的すみやかに、二年間をこえることのないように、要員の養成、レーダー施設等の整備を行なっておるというのでありますから、そんなに無理なことではないと思うのです。日米間は、戦後の状態を見ても、十分理解のできる、安全が保たれておるという状態であるわけでありますから、そのような事情を御理解いただきたい。まあしいて言うとすれば、二年と言っておるけれども、人の世話になっていないで早く自前になれということで、半年でも三カ月でもこれを短くして、沖繩の空は日本政府の責任でやれるようにしなさいというお気持ちはわかります。ですから、予算の上、技術的な問題等もございますので、十分検討をいたしてみます。
  143. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 総理からのお答えで尽きていると思いますが、御承知のとおり、国内におきましても、航空機の利用は急増しております。各地におきましても飛行場の拡充の要請が非常に多うございまして、それに伴って管制官の養成等も非常に急いではおりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、十分な確信のある要員の養成をしなければなりませんものですから、三木先生の御要請はよくわかりますが、あらゆる努力をいたしまして一日も早く当方において管制するように努力いたしたいと、こう考えております。
  144. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、次に、漁業問題等に関する質問をしたいと思います。  特に在日米軍の海上爆撃演習ですね、これは非常に数多く行なわれております。日本本土に比べまして非常に大きな海上爆撃演習が行なわれていると、こういう問題について、現在日本の周辺は四十数カ所行なわれているそうでありますけれども現実に沖繩において三十九カ所までがこの海上爆撃演習が行なわれておる。これは、基地の関係等もにらみ合わせますと、いろいろな点は考えられますけれども、このような沖繩の漁民にとって、海上爆撃演習が三十九カ所も沖繩周辺にあるということは、日本の本土から比べても、これは沖繩県民に対する侮辱だと思うのですね。あまりにも安保条約があって沖繩にしわ寄せが寄せられておるのじゃないかと、こういう問題を考えたときに、この特例法を廃止する、あるいは整理縮小して、もっとこの海上演習の問題を政府は積極的に撤去縮小の方向にはかっていってはどうかと、こう私は思うのですけれども外務大臣、いかがお考えですか。
  145. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 沖繩における制限水域につきましては、復帰後におきましても、復帰時において可能な限り整理縮小をいたしましたが、今後とも関係者が漁場を最大限に利用し得るようにその整理縮小につきましてはいま検討を続けておるところでございます。  具体的なことは、施設庁長官からお願いいたしたいと思います。
  146. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 沖繩復帰時に、海上水域が三つばかり水域の解除を行ないました。その他も、水域の縮小も若干行なわれております。その後現在三十一カ所の漁業の制限水域を設けておりますが、これにつきましては、ただいま外務大臣からもお話がございましたように、今後とも、これを、関係者からも強い要望もございますし、できるだけこれの縮小につとめてまいる、あるいは沖繩の基地の整理の問題ともからめてこれらの縮小につとめてまいるというのが私どもの考え方でございます。
  147. 三木忠雄

    三木忠雄君 沖繩の返還後、米軍の演習等によって——これは施設庁長官の関係だと思いますが、米軍演習によって漁場が相当荒らされた。相当制限区域がきめられて、現実に漁業活動ができない。日本の国内の漁業業者と比べてみて非常に零細な漁業業者です。こういう点から考えまして、この五月十五日以後の復帰後の漁業制限あるいは演習等によっての漁業損害補償ですね、この問題については施設庁としてどういうようにお考えになっておりますか。
  148. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 本年五月十五日から九月三十日までの間における損失につきましては、沖繩県の関係水産団体からも、早期に支払ってほしいと、こういう強い要望もございました。約二千名を対象にいたしまして本年の八月下旬に四千九百万円を概算払いとして一応支払いをしてございます。それからなお、引き続き実態について調査を実施すると、こういうことで、漁業操業制限に関する法律というのがございまして、この法律による算定手続に従って補償額を確定すると、こういう作業を現在さらに進めているところでございます。
  149. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、復帰後の問題はいろいろ算定されているそうでありますけれども、講和後返還以前までの漁業の損害補償については、これは前回の沖繩返還協定の特別委員会においても福田外務大臣は支払うという方向で検討していると、こう私たちは受けとめているわけでありますが、この問題についてはどう処理されておりますか。
  150. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) この問題につきましては、前回の沖繩国会の記録もいろいろ見てみましたが、前回の沖繩国会でもいろいろ御議論があったようでございます。それで、御承知のように、これにつきましては、復帰前の問題につきましては、これは米国側が処理をすると。それについては訴訟により係属されているものもかなりあるわけでございまして、私どもといたしましては、まず米国側が処理すると、こういうものについてその迅速かつ公正な処理を米国側がやるであろうということを期待しているわけでございます。
  151. 三木忠雄

    三木忠雄君 これはいまごろそういう答弁をされているんじゃ困る。期待する、米軍は処理するであろうというような考えでは。米軍はやらないとはっきり言っているわけです。この問題について、もっと積極的に防衛施設庁として考えなきゃいけない問題じゃないかと思うのです。私、聞くところによると、いろいろ検討を加えられていると、こういうふうに承っているんですけれども、そういう逆戻りの答弁ですか。
  152. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 沖繩復帰前におきます漁業補償の問題につきましては、沖繩返還協定四条第二項におきまして米側が取り扱うということになっておりますので、現在懸案になっております十七件、そのうち一件につきましては、米側は処理済みという考え方をとっておりますけれども、先ほど施設庁長官から答弁がございましたように、米側としましてはこれを取り扱うことを返還協定で約束いたしておりますし、政府といたしましては、公正かつ迅速な決定を行なわれることを期待していると、こういう状況でございます。
  153. 三木忠雄

    三木忠雄君 その問題ばかり詰めておくわけにいきませんので、別な問題に移ります。  次に、基地公害の問題について環境庁長官に伺います。  米軍基地による公害の実態について、わが党もいろいろ総点検をしたわけでありますけれども現実に環境庁としてどのようにこの基地公害を掌握されておるか、あるいはまた、その損害補償等についてはどのように解決されておるか、この点についてお伺いします。
  154. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 基地の公害についてでございますが、実態の調査をまずやらなきゃなりません。そこで、先般来、政府部内において、そのやり方、それから実態調査のアイテム、そういうものをきめまして、外務省を通じて、米軍施設に立ち入り調査をしなければなりませんので、それのいま折衝をしておる段階でございます。  そこで、いまどの程度の把握をしているのかということでございますが、沖繩関係についてでございますけれども、何しろ復帰後まだ時間が十分でございませんので、十分な調査というわけにはまいりませんが、以下、調査できたところだけ申し上げてみたいと思います。  比謝川という川がございますが、これは上流部にキャンプヘーグというのがあります。最上流部については、一〇ないし一五PPM——これは米軍施設は関係ないのでありますが、ここは一〇ないし一五PPMであるに対して、キャンプヘーグ付近では四五PPM前後、それからその下流になりますと、また一〇ないし二〇PPM、それから中流部から下流部になりますと、また支流の流入によって希釈されまして五ないし一〇PPMと、こういうふうにだんだん下がっております。  それから天願川につきましては、天願キャンプの排水口では、BODで——先ほどのもBODでございますが、BODで五五・四PPM、それからここには上水道の取り入れ口がありますが、これは湧水をとっております関係もありまして、ぐっと下がって〇・六PPM、こうなっております。  それからもう一つは、鉛、四エチル鉛の問題でありますが、川崎橋下、これが総鉛で〇・〇一ないし〇・〇二PPM、四エチル鉛については検出がされていない。それから天願川の揚水場付近では、総鉛で〇・〇一PPM、四エチル鉛については検出されていない。天願川の上水場の原水では〇・〇二PPM、四エチル鉛についてはやはり検出されておりません。それから天願川の上水場の浄化水の場合は〇・〇四PPMになっておる。これは、御承知でありましょうが、鉛の環境基準は〇・一PPM以下となっておりますので、基準以下になっておる、こういうことでございます。  それから土壌について申し上げますと、土壌については、四エチル鉛埋め立て場所においては非常に高くて、二四八・〇PPM、こうなっておりますが、埋め立て場所付近、少し離れたところに行きますと九・六に減っており、恩納村と比較してみますと、ここでは五・七である。したがって、埋めた場所についてははなはだ危険である、その付近へ行きますと若干危険度が下がっておる、こういうことでございます。
  155. 三木忠雄

    三木忠雄君 これも、基地公害等の被害については十分な補償あるいは調査を徹底していただきたいと思うのです。  私はここで問題にしたいのは、基地の定期的な立ち入り検査ですね、こういう問題についてもっと地位協定を洗い直すべきじゃないか、検討し直すべきじゃないかと、こう外務大臣に私は申し上げたい。現実に在独NATO軍の地位に関する協定の合意議事録によりますと、その施設等に対しての立ち入り権まで含めたこういうふうな協定ができ上がっているわけです。しかし、日本については基地の立ち入り調査権が認められていない。こういう点が非常に弱い姿勢ではないかと思うのです。特にいま環境庁長官からいろいろ説明のあったように、基地公害が県民あるいは国民の生活に相当大きな影響を及ぼしてきている時代において、もっと基地が具体的に調査をできるような、あるいは立ち入りができるような権限を日本政府はしっかり持つべきじゃないかと、こう思うわけでありますけれども、この点についてはどうお考えになりますか。
  156. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 立ち入りができないわけではないわけでございまして、先方の同意が必要である、その同意を得て立ち入りができるわけでございます。御指摘の西独に駐留する外国軍隊の地位協定いわゆるボン協定も、これは無条件に立ち入り検査ができるわけではないわけでございまして、軍事上の安全を考慮することを条件とするということでございまして、実体的にそんなに私は差異があるとは思わないのでありまして、必要に応じて先方の同意を得まして立ち入りの必要がある場合には交渉するにやぶさかではございません。
  157. 三木忠雄

    三木忠雄君 ちょっと外務大臣答弁と違うわけですね。たとえば、射撃場、あるいは弾薬貯蔵庫、燃料貯蔵庫、あるいは危険な設備、あるいは排水下水処理等の問題についても、具体的に公共の福祉を守る意味から立ち入りを具体的にやれるようになっているわけですね。しかし、先般の立川等におけるあの基地のたれ流しの問題に対しても、なかなか基地の中にはいれない、あるいは立ち入り調査ができない、こういう実態を私は改めるべきじゃないかと、こう申し上げたわけですが、どうですか。
  158. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 現実の必要上どうしても立ち入り調査をする必要があるということでございますならば、交渉することにやぶさかではございません。
  159. 三木忠雄

    三木忠雄君 建設大臣にちょっと国道の問題を聞こうと思ったんですけれども、どこへ行ったか……。
  160. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 三木君に申し上げます。もう間もなくこっちへ来ると思います、三時までに来ることを要求していますから。
  161. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、その前に、VOAの問題について外務大臣に伺います。  VOAの放送については、沖繩返還協定及び同合意議事録において、五年以内に撤去されると、こういうふうに合意議事録にはきめられているそうでありますけれども現実にこの点は間違いございませんか。
  162. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。
  163. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、沖繩の北谷村にあるVOAの沖繩中継基地と地主との間の土地賃貸契約はどういうふうな姿になってあらわれているか、御存じでございますか。
  164. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 返還前の賃貸契約であろうと思うのでございます。いま地主との間に新しい交渉が行なわれておるやに伺っています。
  165. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 三木君に申し上げます。建設大臣が見えましたから。
  166. 三木忠雄

    三木忠雄君 このVOAの当局から土地の契約書の提示がいろいろ地主にされたんですが、その契約文書を私も持っておりますし、あるいは地主のいろんな意見がありますけれども現実に、VOAは、沖繩の施政権が正式に日本に返還される期日一九七二年五月十五日より継続して五年間当該地を保有し、さらにそれぞれ五カ年ずつの二期問本賃貸借の契約の期間を更新する権利を有すると、こういうふうな契約文書を地主に突きつけられているわけです。この問題を考えますと、これは当初から返還協定の精神から踏みにじられているのではないか。当初から、このVOAの契約は、五年というけれども、五年ではなしに、十年、二十年という、こういうふうな精神が生かされておったのではないかと、こういうふうに私たちは考えるわけでありますけれども、この問題に対してはどう外務大臣はお考えになりますか。
  167. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまあなたが御指摘のものは、地主との間の私法上の賃貸契約でございまして、政府の沖繩返還に伴う公法上の立場は御指摘のとおり不変でございますので、そういう私法上の契約には拘束されません。
  168. 三木忠雄

    三木忠雄君 政府はそういう冷たい答弁ですけれども現実に沖繩の地主との契約はこういうふうな契約書が突きつけられているわけですね。これはもう当初復帰前からそういうふうな話の契約書は突きつけられている。その裏には、やはりVOAを五年ではなしにそれ以後も延長するという含みがあったればこそ、こういうふうな米軍の契約書が地主に突きつけられているのではないかと思うのです。こういう問題に対して具体的に外務省が折衝して、この賃貸契約書を私法上の問題ではありながら外務省はもっと積極的にこの問題と取り組んでいかなきゃいけないんじゃないかと思うのですけれども、いかがでございますか。
  169. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 返還協定にうたわれたとおりの実行を確保するようにいたします。
  170. 三木忠雄

    三木忠雄君 ちょっといま聞き取れなかったんですけれども、どういうことですか。
  171. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 返還協定にうたわれておるとおりの措置を政府として講じますから、御心配いただかないようにお願いします。
  172. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、建設大臣が見えましたので、簡単に水道と国道の問題だけ端的な解決方法を答弁としてお願いしたいと思います。  沖繩の国道三百三十一号線が、沖繩県民の通行のできるような国道にはなっていないという現実です。これは建設大臣も知っているとおりです。この問題をいつ解決する予定なのか。  もう一つは、水道問題として、これは外務省の関係になると思いますけれども米軍との間に地方自治体と米軍との間の水道料金の問題がまだ解決されておりません。この問題をやはり至急解決しなければ、地方自治体に本年度相当な赤字を生ずるのではないか、こういう問題が起こっております。この解決策だけ答弁でお願いしたいと思うのです。
  173. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当事者間で解決していただくのが一番いいと思っていましたけれども、御解決にならぬようでございまして、いま合同委員会の場に持ち上がってまいりましたので、いま話し合いを始めているところでございます。取り急ぎ解決いたしたいと思っています。
  174. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 小禄の米軍基地内に、返還された国道があります。その一般的な使用は、五月の十三日の閣議決定事項と、それから十五日の日米合同委員会で、その所要の施設が行なわれた後に一般に開放すると、こういう約束ができ上がっておるのであります。それで、所要の施設を早くやりたいと思いまして、米側に建設省としては再三にわたって要望しておったのであります。八月の三十日にこういうような施設をやってもらいたいという要望事項が来たのであります。それに基づきまして話をいたしまして、そして目下その基地内に入りまして調査をやっております。そして、施設の内容について合意が得られた場合には、それを早くやりまして、そして早く一般人が使用できるようにして県民の要望にこたえたいと、こういうように考えております。
  175. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは二十億も何か要求をされていると、こういう話を私は聞いているのですけれども、それを受ける建設省の予定ですか。
  176. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) こちらのほうでおおよそ想定しておった施設があるのです。ところが向こう側の要望はその施設よりもはるかに多いものですから、それで基地に入りまして約二十億程度の金をかけなくともいいのじゃないかという結論を出して、そしてアメリカ側と交渉をいたしまして、安くするものは安くしてもらって施設を早くやりたいと、こういう考えであります。目下調査しております。
  177. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題は、沖繩県民の生活に非常に関係のある一番重要な道路です。この問題を、米軍から要求されたままに二十億もかけて工事をしてまで国道を返してもらうという、こういうような弱い姿勢ではなしに、場合によったら基地の撤去をお願いしてこの問題を早く沖繩県民が利用できるような国道にすべきであると私は思うのです。そういう弱い姿勢では私は困ると思うのです。建設大臣、どうですか。
  178. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そのことは、外務大臣に一生懸命にがんばってもらいたいと思います。(笑声)
  179. 三木忠雄

    三木忠雄君 外務大臣にがんばってもらいたいと何か他人ごとみたいに——二十億も突きつけられて、ほんとうに国民が通れる道路として建設省が管理できないという、非常に弱さがあるわけですね。この姿勢をしっかりしてもらいたいということです。
  180. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 基地内の施設につきまして二十億の金は多過ぎるからもっと少なくして交渉しろと、こういうことは建設省の仕事でありまするから、これは一生懸命になってがんばって安くしようと思っておりまするが、基地返還という問題になりますると、これは外務大臣の仕事ですから、外務大臣にがんばってもらいたいと、こう申し上げたのであります。
  181. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう時間がなくなりましたので、私は防衛問題に移りたいと思います。  特に時間の関係で問題をしぼって質問したいと思いますが、総理にまず最初に伺いたいのですけれども、ハワイにおける日米首脳会談において兵器の輸入の問題が非常に取りざたされたと、非常に兵器問題の輸入についての討議が行なわれたと、あるいは日米の箱根の会議において兵器輸入の問題がいろいろ論議されたそうでありますが、この問題に対して総理はどのようにお考えになっておりますか。
  182. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どの会議でも兵器の輸入の要請ということは、全くありませんでした。
  183. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、このF5Eの輸入問題の提案は、私は総理と、こういうふうに聞いているのですけれども、F5Eのこの飛行機の輸入問題は、総理はどのように考えていらっしゃいましたか。
  184. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私もよく理解をしない問題でございましたが、例のT2改、国産に切りかえるか輸入をするかという問題のものだそうで−ございますが、私たちは、そういう具体的な問題を承知いたしておるわけではございませんが、日−米間の貿易バランスを幾らかでもよくしたいと。よくしなければアメリカ側の非常に強い日本に対する自由化、関税の引き下げ要請等がございますので、そういう意味で、十億ドルでも五億ドルでも何とかしてアメリカから買えるものは買おう。こちらからアメリカへ輸出するものが制御できないという状態であるならば、どうしても向こうから買って幾らかでもバランスをとらなきゃならぬ。アメリカ側が申しましたのは、とにかく去年三十八億ドル、まあアメリカベースでございますが、年間、日米間の貿易は三十八億ドルも日本からアメリカに出超になっておりますから、少なくとも今度このままにほうっておくと四十億ドルになるかもしらぬ。それでは黙っておれませんよ、これは国民が言うことを聞きませんよと、そういう意味で三十億ドル以下にしてくれ——三十億ドル以下にしてくれというのは、来年三月三十一日までの四十七年度年度間において二十九億ドル台にしてほしいと、こういうことでございまして、それなら何か買うものはないかということで、政府部内で検討いたしたことはございます。その中で防衛庁の問題として飛行機が検討されたということでございます。
  185. 三木忠雄

    三木忠雄君 この飛行機のF5Eの輸入の問題が一晩で国産T2に踏み切ったと、こういうふうないろんなうわさをされているわけです。その陰で、いろいろすべての兵器の選択、特に輸入の問題については、民間人を含めた常設機関を置くと、こういうふうなことを総理は考えていらっしゃる。あるいは九日の国防会議においては、閣議の了解事項で国防会議に専門家会議を置くと、こういうふうに了解をされておるそうでありますけれども、この国防会議の専門家会議というこういう問題については、どのように総理はお考えになっていますか。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国産にするかアメリカから買うか、私は、アメリカから買いたかったわけであります、ざっくばらんに言いまして。私は、この前は通産大臣でございまして、昨年の九月の日米閣僚合同委員会でもってさんざん繊維の問題でもって議論をし、その後、繊維の日米間交渉を行なわなければならなかったという苦い経験者でございますし、実情をよく知っておりますから、何とか日米間の現状打開をしなければならないということで、買えるものは買いなさいということだったのですが、練習機のT2というのを二十機ももう今年の予算に組んであって、そして国産をしておると。練習機を国産でやっておるのだから、飛行機も同じ系統のものがいい、同じシステムのものがいいと、使う者がそうがんばるわけでありますから、これはやっぱりそうせざるを得ない。しかも、そう簡単に私たちも聞いたわけじゃありません。いろいろしろうとはしろうとなりで質問もし、議論もし、討議もしたわけでございますが、しかし、アメリカのものは安いけれども、よその国に援助対象というようなものでつくったいわば規格品であると。日本日本に合うようないろんなものに使えるといういわゆる——いろんなものにということじゃありませんが、そう言うとまた問題を起こすかもしれませんので、これはちょっと訂正いたしますが、とにかく日本流に操縦するのに非常にいいと、こういうことでございましたので、そうして輸入するとすれば、これは年度間でもって輸入するのであって、四十七年度の国際収支にはあまり影響ありませんと、四十八年度、九年度、五十年度ぐらい、こうなるのですと。そうなればまた別に哨戒機のようなものもあるんですというようなことで、国産に一応踏み切ったわけであります。ところが、使用する人、操縦する人が、それがいいのだとただ言うだけで国産に全部踏み切らなければならぬということになると、いろいろ問題もありますし、シビリアン・コントロールという問題も出てまいりますので、そういう意味ではどうするかといういろいろな知恵をしぼった結果、国会からのシビリアン・コントロールの実をあげよという問題もありましたので、それらに合わせて国防会議の下に専門家会議というか、懇談会というか、そういうものを置いて、そして最終決定を首脳部がする前に、別な角度からもいろいろ検討する機会や組織があっていいじゃないかと、こういうことでございまして、こういうものを設けることにしようということ、だけをきめておるわけでございます。
  187. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、この国防会議に専門家会議を置くという法的な根拠ですね、これは何かおありなんですか。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは法律を改正してどうしようというのではなく、これは各省にもいろいろな人がおるわけでありますし、幹事会もあるわけでございますが、とにかくいま今度の決定に徴しても何か必要であり、法律をその後、改正するような状態であり、しかも、そのメンバーが非常に多くなり、事務局もスタッフも必要であるということになれば、また法律改正の問題が起こるかもしれませんが、いままだ、そこまで考えておりません。
  189. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、私は、なぜこれを聞くかといいますと、PXLあるいはAEWが国産から白紙に返ったという問題からこの専門家会議が出てきたと。この専門家会議が出てきた裏には、いろいろ私もうわさは聞くわけでありますけれども、兵器の輸入の権限がおそらくこの専門家会議に集中されるのではないか、この専門家会議の構成あるいは権限を総理はどのように考えていらっしゃるのですか。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこまでは、まだ私も結論を出しておらぬわけです。ですから、いずれにしても、とにかく防衛庁長官、各省の局長連中が話をしてもきまらず、次官会議をやってもきまらず、そして国防会議に上げられる、そしてきめなければいかぬということだけではどうも合理性がないじゃないか。だから、それにはわれわれを補佐できるような——われわれだけが判断をするよりももっと、皆さんから見ても閣僚だけでもってやるよりも、それは合理性があるなと。大体飛行機の構造を知らない閣僚だけじゃないかと、こういうこともそれは実際そうなんです。ですから、そういうことでは私はほんとうの責任は果たせない。だから、そういう意味で技術を理解する者というものはどうしても必要だろうと、こういうことでありまして、まだ内容をきめておりませんが、これはこれからやっぱり内閣の中でも検討しなければならぬ問題だと思います。
  191. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは非常に含みのある問題なんですがね。総理は考えていない、そこまでいろいろこまかくは検討されていないのかもしれませんけれども、もしこれを民間人を入れたり、あるいはいろいろ拡大をしていくと——拡大をしないのですか。現実にこれがいろいろ民間人も入ってきますと、行政組織法とのいろいろな関係が出てくると思うのです。あるいは、いままで兵器輸入の権限が防衛庁長官にあったわけですね。その権限が総理、官房長官のほうに移ったと。現実に兵器の輸入業者が官房長官にお百度を踏んでいるといううわさすら聞こえるわけですな。こういう実態が、現実に国防会議の専門家会議の設置ということで非常に話題になっているということなんです。それほど深く考えていないのですか、これは。
  192. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは全く、全く政府の意図せざる方向のお考えでございますから、それはひとつお考え直しいただきたいと思います。それは国防会議の中に専門家委員会というようなことをやることによって誤りなからしめようと思っておるのですが、それが防衛庁長官から官房に権限が移るためだなどというのならやめます。明確にやめます。そんな意思じゃないんです。それならもうそんなもの要りません。そうじゃないんです。これは政府自体がきめる問題でありますが、大蔵大臣は国際収支の問題で頭を痛めております。そうすれば通産大臣にとにかく自由化をしてくれ、大蔵省は関税の引き下げをいたします、それでもなおバランスがとれないから、何か買うものはないかということで、防衛庁でもって、国産でつくれば何倍もするというもので、安いアメリカからの輸入で間に合わぬのか検討してくださいと。これは内閣は全体でそういう立場にあることは事実でございまして、これは兵器というものを防衛庁長官の権限からどこかへ移そうなどというようなものじゃないのです。より合理的なものであり、皆さんが、国民が納得するものでなければならないということで考えたことでございまして、これは別な考え、いまあなたが端的に述べられたような考えをお持ちならやめます。これは明確に申し上げます。
  193. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 私のところに業者がお百度参りをしておるというようなお話でございますが、全くそれは誤解を招く御質問でございますから、そういう事実は全くございませんことを明白にいたしておきます。
  194. 三木忠雄

    三木忠雄君 総理の明快な答弁があったので、私これ以上言いませんけれども現実に民間をふやし、いろいろな拡大をし、兵器輸入の隠れみのをつくらないように、これだけを私は強く要望しておきたいと思うのです。  次に、四次防で防衛庁長官に伺いますが、四次防で採用予定の装備品の発注の問題についていろいろお伺いしたいと思うのです。特にT2あるいは新型戦車の開発当時の見積もりと現時点における購入金額に相当な開きができているわけです。たとえばT2が当初五億円といわれておったのが現実に十五億円、あるいは新型戦車が一億三千万といわれておったのが二億三千万という、こういうふうな値上がり、あるいは見積もり違いというようなものは、どこから出てきたのか、この点について説明願いたいと思います。
  195. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 詳細なあれについて、政府委員のほうから答弁をいたさせたいと思います。
  196. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) お尋ねの、まずT2の件から申し上げたいと思いますが、T2は、四十七年度の予算単価では、十一億七千八百万円という一ふうに計算いたしてございます。四十二年度の開発着手当時に、およそこういうものをつくる場合、どのくらいであろうかという推算を四十二年度価格でいたしたものがございますが、それは六億二千万円でございます。  で、その前に、あるいは五億とか四億とかいうようなお話がよく国会で出るわけでございますが、そういう計算はいたしたことはございません。その六億二千万円のものが約十一億七千八百万円になるわけでございますが、これは一つは、六億のほうの数字が四十二年度価格であるということ、十一億のほうの数字は四十七年度予算単価でございますけれども、実際に製作いたし取得するのは、主として五十年度になるわけでございます。で、その間におきまして、やはり航空機産業における人件費、工賃の値上がりがございます。ざっと大体まあ平均して一五%以上、最近は二〇%ぐらいの人件費の増がございます。これをすべて見るわけにはまいらぬわけでございますが、一応そういうものや、あるいはその他の材料費の値上がり、こういうものを加味いたしますと大体十一億になるわけでございます。で、このほかに、なおエンジンはアドーアというエンジン、これはイギリスから輸入するわけでございますが、御承知かと思いますが、ロールス・ロイスの倒産という問題を契機といたしまして、ロールス・ロイス側は経理の計算が非常にずさんであったということで、値上げ要求が激しくございまして、これについてもある程度見込まざるを得なかったということで十一億七千八百万円を計上したわけでございます。
  197. 三木忠雄

    三木忠雄君 戦車——戦車を聞きたいのだ。
  198. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 失礼いたしました。  新戦車のほうでございますが、これは一億三千万円というのは、ちょっと私の手元にございませんですが、新型戦車のほうは現在、試作品が完了いたしまして実用実験中でございます。四次防で購入を一応主要項目の中に計上しているわけでございますが、これはおそらくは採用するのが四十九年度以降ということになろうかと思います。したがいまして、実際の予算価格というものは四十九年度以降に決定されるわけでございますが、試作品の単価等から推しまして約二億円ぐらいでできるのではなかろうかというふうに推定いたしております。
  199. 三木忠雄

    三木忠雄君 この装備の調達方式について、具体的に防衛庁として、たとえば戦車の設計等の問題についても、いろいろ検討は加えられていると思うのです。これだけの値段が——いろんな点で、物価の値上がりとかいろんな点は考えられますけれども、これほどの見込み違いをするということは何の原因によっているのか、どういう審議会を通して、どういう経路を通してこの装備調達が行なわれておるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  200. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 装備の開発、それから設計に至りますためには、庁内に次官を長とする装備審議会、各幕僚長等を委員とする装備審議会をつくりまして、装備の品目決定をやっておるわけでございます。詳細は装備局長から御説明をさしたいと思います。
  201. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 重要な装備品につきましては、各幕僚長から運用上こういうような性能のものがほしいという要求がまいりまして、その要求性能を満たすためにどの程度のものが必要か、どういうような性能にすべきかということで基本要目というものを定めますが、この基本要目を定める際に装備審議会において検討いたします。で、この基本要目を定めたあと、技術研究本部に基本設計を命じます。で、基本設計が上がりましたら、さらに審議会でこれを検討いたしまして、よろしいということになれば、さらに技術研究本部に対して細部設計を命じ、その細部設計ができますと、これに基づいて今度はしかるべき企業に試作させるという段取りになります。で、試作が完了いたし、これを受け取りましたあと、技術試験というものを行ないます。   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕 技術試験のあとは、さらに現地の部隊に持って行きまして実用試験というものを行ないます。技術試験、実用試験が終わりましてから、制式に採用するかどうかということになるわけでございます。で、技術試験、実用試験というのはおおよそ二カ年ぐらいかかるのが普通でございまして、大体まあ技術試験の当初、すでにこの開発が成功であるか成功でないかという見当がつきます。その段階におきまして予算の要求を行ないまして、予算要求がちょうど通るような段階において制式の採用が決定される、こういう段取りになっております。航空機の場合だけは制式という形式をとらずに、やはりこれは制式化に関する訓令に基づきますが、長官承認という形式をとっております。
  202. 三木忠雄

    三木忠雄君 この装備審議会の構成メンバー。これと、特に私は戦車の問題でお伺いしておきますが、四十五年度試作品の基本要目の審議、あるいは現在の基本設計の審議等を具体的にどのように行なわれたか、あるいは戦車が、いまの答弁によりますと、約二億円と言われているわけです。それでも約八千万、私どもは二億三千万と聞いているわけでありますけれども、それだけの値上がりをする、世界一の高い戦車と言われているわけです。この問題の積算の根拠ですね。これについて御説明願いたいと思います。
  203. 岡太直

    政府委員岡太直君) 最初に、装備審議会のメンバーにつきまして御説明申し上げます。装備審議会は、専門部会と総合部会と装備審議会と、こう三つになっておりまして、最初専門的事項を専門部会において審議いたします。それから総合部会におきまして、それを調整する。そうして装備審議会にかける。
  204. 三木忠雄

    三木忠雄君 簡単でいいんです。
  205. 岡太直

    政府委員岡太直君) それでは、メンバーだけを申し上げますと、装備審議会そのもののメンバーは、次官が会長でございまして、委員としましては官房長、各局長、統合幕僚会議議長、各幕僚長、技術研究本部長、調達実施本部長と、こうなっております。それから総合部会といたしましては、会長は装備局長でございまして、委員といたしましては、内局関係各課長、統合幕僚会議の各室長、関係幕僚幹部の冬部長、技術研究本部企画室長、技術研究本部総務部長、そういうふうになっております。それから専門部会につきましては、会長は、それに該当する装備品を所管する装備局の各課長、委員としましては、装備局、各幕の各課長、それから技術研究本部の部長、以上がメンバーでございます。  それから、第二の点といたしまして、それでは新型戦車の、どういうふうに装備審議会において審議されたかという御質問でございますが、先ほどありました基本要目につきましては、昭和四十五年の七月十日、これが専門部会でございます。それから総合部会は昭和四十五年七月十七日、それから装備審議会は八月十一日と、こうなっております。そうしてその間において討議されました主要な技術的問題点としては、たとえば非常にこまかい問題になりますけれども、十二・七の重機関銃の連動機構の検討であるとか、信頼性、耐久性、走行中の射撃性能の検討であるとか、潜水する性能だとか、あるいは姿勢制御、重量軽減、それから列国戦車との性能の対比の問題であるとか、間接射撃であるとかいうような技術的事項について慎重に検討しております。そうしてこれで基本要目がきまりまして、あと基本設計でございますが、基本設計につきましては、同年の九月二十八日に専門部会を開いてやはり技術的内容について審議いたしております。その結果技術研究本部に試作の命令が出たというのがいきさつでございます。  以上、技術的な面だけ御説明申し上げました。
  206. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 将来の見通し価格についての御質疑がありましたから私から申し上げますが、約二億円というのの算定のしかたは、四十五年度に試作をいたしてございます。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕 これが四両分、四両いたしましたのですが、総計で十二億五千四百四十三万五千円でございます。
  207. 三木忠雄

    三木忠雄君 一台分の戦車二億円の積算……。
  208. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) したがいまして、一両当たりは三億一千万円となるわけでございます。これからこの試作のためだけに要しました費用をのきまして、将来の数量、一応の想定をおきまして、その場合にある程度のコストダウンがはかり得るということを想定いたしまして、二億という数字を出したわけでございます。なお、この新戦車は、現用の61戦車に比べますと、いろんな面での装置の画期的な改善があるわけでございます。一つは、砲身が九十ミリから百五ミリということに変わっておりますし、車体がいかなる方向に動いても砲の射撃の位置が変わらないというスタビライザーという装置、あるいは車体を傾斜地において後進する場合においても、ひっくり返らないように、懸架装置という、姿勢が少し変わるような装置、こういうようなものがつけてございます。こういう面での値上がり分——値上がり分といいますか、コスト増分が見込まれるわけでございます。
  209. 三木忠雄

    三木忠雄君 きょう私は戦車のこの値上がり分だけの問題で論議する時間はありませんから、やれませんけれども、この具体的な積算根拠の資料は出していただけますか。
  210. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 二億円というのは、先ほども申し上げましたように、四次防の積算の際に一応使いました推定値でございまして、内部資料でございますので差し控えさせていただきたい、こう思います。
  211. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、これ幾ら要求しても、実は総理に伺いたいのですけれども、伺うというよりも意見ですけれども現実にこういう資料を要求しても、確かに機密事項もいろいろあるでしょう。しかしながら、一億円当初しておったのが二億三千万と。これでは、これを一台や二台購入するのであればけっこうですけれども、五百億、六百億のむだ金を使うような形になってくるわけですね。こういう点を考えますと、やはりこういう実態の究明をもう少し行なわなきゃならないと思うのです。私も、この戦車については、M61式戦車からいろいろ問題があったということは聞いております。また、今回の新型戦車についての積算根拠についてもいろいろな問題点がある。私はその点についていろいろ検討を加えたいと思う。通常国会でいろいろこの問題を私は論議したいと思っておりますけれども現実に資料としてこの積算根拠のこの問題を提出していただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  212. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 間もなくこの発注をするという段階にあるものですから、こまかい積算根拠を外に出しますることは、調達の面において都合が悪いという意味で、いま装備局長が控えさせていただきたいということを申したわけであります。これは、したがいまして、たとえば秘密委員会等において御審議を願うというふうなことであれば、内容を申し上げるということは差しつかえないと、こういうふうに考えております。
  213. 三木忠雄

    三木忠雄君 私、秘密委員会でもけっこうですから、これは委員長にお願いしておきますが、この戦車の積算根拠の資料を予算委員会の理事会に提出していただきたいと思うのですけれども委員長、取り計らっていただけるでしょうか。
  214. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 理事会で相談いたします。
  215. 三木忠雄

    三木忠雄君 まだ、私はこういう問題を一つ一つ検討しますと、あまりにも、戦車、あるいはT2、あるいは新型のこの四次防で購入するいろいろな問題点に、むだ使いが非常に多いということなんですね。国民の税金といいますか、たとえば、もう一つあげてみますと、F4EJのファントムですね。ファントムは四次防にことしから八機購入しますけれども、それに積む空対空、ミサイルのファルコンあるいはスパローという、こういうものは全然来年度には購入できないわけですね。装備計画からいきますと。そうしますと、ファントムは買ったけれども、戦闘力としてのこの上の乗っける装備力は何ものもないと、ただおもちゃのもて遊びをやっていると、この程度にしかすぎないような装備調達計画になっておる。あまりにも文民統制というか、あるいは無策ぶりというものが出ているのではないかと思うのです。ファントムの問題についても私はこのことを言えると思うのですけれども、いかがでございますか。
  216. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) ファントムは昨年度二機、今年度から逐次国産ができてまいるわけでございます。それで、スパローは当初のうちは輸入いたしまして、その後ノックダウンで国内で生産いたします。それ以後はさらにライセンス生産というものを考えておりまして、それで全部積む予定になっております。ファルコンは米国から全部輸入することで装備いたしますので、おもちゃの飛行機にはなりませんです。
  217. 三木忠雄

    三木忠雄君 答弁が違うからね。時間が……。
  218. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 時間だからね。ちょっと一口ね。
  219. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題については、実際にファントムはできるけれども、上に積むものはないということなんです。そういう装備の調達計画をつくっているということに私は非常に矛盾を感ずるということなんです。これは具体的に時間があれば幾ら論議しても現実の証拠としてあるわけですからお話をしたいと思いますけれども、時間が参りましたので、この問題は次回に譲りますけれども。  最後に、総理に、この研究開発イコール採用という、この兵器の調達方式は検討されてしかるべきではないかと思うのですけれども、この問題についてはいかがお考えですか。  それからもう一つは、装備の国産化の基本方針が、田中総理になってからは姿勢が変わったのかどうか。この点について、特に四十五年の装備の国産化に対する基本方針現実に変わったのかどうか、この二点についてお伺いして私の質問を終わりたいと思うのです。
  220. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 方針が変わってはおりません。  それから、いま御指摘になられたように、国産か、輸入するか、どっちかと、むずかしい問題もございます。それから、一台、いまの戦車の問題でも二億というの、どういうのかというと、実際いま試作品は四億かかっているんです。しかし、これは四台の試作でありますから、量産すれば下がります。この量産というのが、三十台ならば幾ら下がるのか、五十台の場合幾ら下がるのかということが、これはなかなか外から納得できないと思います。そういう意味で秘密な会議でもということを申し述べたわけですが、これはまあ政府でもこういうものに対しては国民の血税を使って防衛をやろうというのでございますから、国民全体の理解が真に得られるように万全な対策をしなければならぬことは言うをまちません。こういう機構が必要であれば機構もつくりますし、いろいろなことをいたしたい、こう思います。国会においても、いつものことでございますが、これはひとつ安全保障委員会か国防委員会か防衛委員会をつくっていただいて、そうしてその中でもって、もうやっぱりシビリアンコントロールというのは国会が一番力があるわけであります。そういう意味で、政府国会一体になって国民の負託にこたえられるようなひとつ御協力もまたお願いをいたしたい。政府がやらなければならぬことはもう当然精力的に取り組んでまいりたいと、こう思っております。
  221. 三木忠雄

    三木忠雄君 いろいろ反論すべき問題はありますけれども、時間がありませんので以上で私の質問終わります。(拍手)
  222. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて三木君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  223. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 上田哲君。
  224. 上田哲

    ○上田哲君 四次防を中心にお伺いをいたしますが、この問題が原則論の投げ合いということですれ違いになることを避けるために、できれば最近具体的に総理発言されたことば等を材料にしながら、一体政府が四次防をどう考えているかというところをできるだけ掘り下げて具体的に伺いたいと思いますので、懇切にお答えをいただきたいと思います。まず最初に、先月末の自衛隊の観閲式で総理の訓辞がございました。「政府は先般四次防計画を決定しました。」「防衛問題に関しては、国民の合意の成立を目指し、明確な態度で臨む決意であります。」と言われております。これは、これまでの総理に比べるとたいへん意欲的な姿勢でありますけれども、一体これまでどういう態度が明確でなかったのでありますか。
  225. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 明確でなかったということを前提にして言ったんじゃなく、これは、これからは防衛の必要性というものは国民の理解を得ながらやってまいりますと、こういうことでございます。これは、これからは姿勢を正してまいります、いままで悪いからということではなく、これからは就任を機会に姿勢を正してまいりますということと同じく理解をしていただきたいと思います。
  226. 上田哲

    ○上田哲君 総理は、しきりに合憲とか合法とかということばをお使いになるのでありますが、争点の基本にあるのは、自衛隊が合憲であるかどうかというところであります。明確というところもおそらくそこのことを目ざされたと思うのでありますが、これまで自衛隊の合憲・違憲の訴訟については、司法裁判所は、これは法廷になじまないと、いわゆる統治行為の論理を用いております。で、いま総理が言われているのは、その意味で高度の政治判断を明らかにされようという意思でありますか。
  227. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛隊が合憲であるというのは砂川判決でも明確に出ておるわけでございますから、そういう意味をこまかく前提として述べたのではありません。基本的な考え方、姿勢ということを述べたわけでございます。
  228. 上田哲

    ○上田哲君 どうもよくわかりません。統治行為の法理とは、どうお考えでございますか。統治行為の法理ですね。砂川判決をおっしゃったけれども、そういうことです。
  229. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 統治行為の理論と申しまするのは、もちろん、憲法のもとにおいて立法、行政、司法三権に分かれております。司法は法の適用について最終的判断をするものであるということでございますけれども、司法権が処理するになじまないような一定の政治的な行為がある。これを統治行為の理論をもって説明する学説が出てまいりましてそれと似たような議論で最高裁の砂川判決において安全保障条約について議論が進められた、その理論であろうと思います。
  230. 上田哲

    ○上田哲君 国民の合意を求めたいというのは、法廷の審査になじまないこうした問題について総理が政治的見識を高度に明らかにされるという意味ですか。
  231. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、あまりそんなめんどうなことを考えて、前提にして言ったわけじゃありません。国を預かる以上、国民の生命と財産を守らなければならない、独立国家は独立を維持しなければならない、そのためには自衛は必要でありますと、そういう、すなおな気持ちで、自衛隊の必要なこと、また日米安全保障条約と、あわせて国の安全が保たれておるという事実を国民に訴え、理解を求め、国民的な課題として議論をしながら理解を求めよう、こういうことであります。
  232. 上田哲

    ○上田哲君 それは呼びかけであって、説得ではないんであります。かつて中曽根防衛庁長官は、最高裁判所に合憲の意思表示をしてもらいたいものだという期待を表明されたことがあります。総理は、そういう期待を述べられたものでありますか。
  233. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、自衛隊は合憲だと自分では考えております。国会の意思がきまって、国会は国権の最高機関である、唯一無二の立法府である、こういうことでありますから、しかも、憲法の発議権を持つ、三分の二以上すれば両院で持つ、持つだけではない、国会の発議がなければ憲法の改正起案はできないというぐらいの強大な権能を持つ唯一無二の立法府、そこできめられたものであり、私自身も議員として賛成いたした立場でございまして、私は合憲だと考えておりますが、現に存在するものです。そうしてそれによって安全は保たれておる。であるならば、学校が必要ですよと子供に十分言ったり、家族全体が学校を修了するために理解を示すように、政治の責任者として自衛隊というものの存在を国民に理解を求める、これは当然の義務だと思っております。
  234. 上田哲

    ○上田哲君 はっきりしておいていただきたいのは、統治行為の論理から発する高度の政治判断の表示というものは、国民の合意を前提として、その象徴としての意思表示でなければならない。政権の側からの合憲であるという解釈によって合意を成立せしめようということは正しくないのだと、このことをひとつはっきりしていただきたい。
  235. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) いわゆる砂川判決、この大法廷の判決で申しておりますことは、その中に、憲法九条の趣旨に即して同条第二項の法意を考えてみるということで、「同条第二項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、」という文言がございます。そこについては判断をしておりませんが、そこで「保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となって」いるものだと、わが国に駐留する外国の軍隊がここにいう戦力には該当しないということをまず言いまして、それからそのあとで、本件安全保障条約——は先ほど申し上げましたように——そこで統治行為の議論をされたわけです。したがって、今後最高裁の判決によって自衛隊の——いままでは最高裁の判決によって自衛隊は合憲であるとも、また違憲であるとも示されておりません。しかし、今後最高裁が自衛隊が合憲であるかいなかということについて、これについてアクト・ド・グーベルヌマンの議論を用いるかどうかということも、これまた予断を許さない、あるいは判定を下すこともあり得るし、あるいは下さないかもしれない、ということであろうかと思います。
  236. 上田哲

    ○上田哲君 よけいなことが一つ飛び出したけれども、中から拾い得るものは、総理、いまのお話のように、砂川判決は自衛隊を合憲とは言っていないということであります。よろしいですね。
  237. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 合憲とも違憲とも言っておらないということで、法制局長官の答弁どおりです。
  238. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、じゃ、これも聞いておきましょう、法制局長官でいい。  戦力とは何ですか。
  239. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 憲法第九条二項にいわゆる戦力と申しますのは、これは文字どおりとりますれば、あるいは戦い得る力ということになるかもしれません。しかし、憲法第九条第二項においてその保持を禁止されている戦力と申しまするのは、わが国の自衛隊のようなものをさしているものではないというのが、従来政府として考えておったところでございます。
  240. 上田哲

    ○上田哲君 戦力というには確定解釈があるんです。五二年十一月二十五日、内閣法制局の見解を示してください。
  241. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 五二年でございますか。
  242. 上田哲

    ○上田哲君 聞いているようじゃだめだよ、法制局長官じゃないか。
  243. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 五二年の統一見解と仰せられますのは、おそらく、当時某新聞に出たものであろうと思います。これは、内閣法制局でそういう見解を示したというような記事であったと思いますけれども、そこで統一見解を内閣法制局として発表したようなことはございません。
  244. 上田哲

    ○上田哲君 事実と異なっていますけれども、五二年ですかと聞くようなことじゃ不勉強で話にならぬけれども、しからば、政府の今日の統一見解における戦力とは何ですか。五二年ならここにありますよ。
  245. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) わが国の自衛のため必要な最小限度を越えるようなものは、憲法第九条第二項において保持を禁止されている戦力であるということでございます。
  246. 上田哲

    ○上田哲君 この議論は少し具体的にあとでやりますけれども総理に伺いたいのは、明らかに戦力というものを保持しない、戦力とは何だという議論の過程の中で、二十年前、二十数年前、今日の解釈とはかなりズレが出てきているということは現実にあると思います。今日、たとえば憲法九条の解釈を、この二十数年の時の流れの中で変えていかなければならぬだろう、そういうことはお考えになりますか。
  247. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律条文というものは時の流れで変わることはありますが、憲法の条章というものはこれはもう不変のものであると、こう考えべきだと思います。
  248. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) この点につきましては、前にも御質問があったことがございます。その点は、昭和四十四年の四月八日に衆議院の松本善明議員から質問主意書の提出がございまして、それに対する答弁書で公式に否定をいたしております。つまり、内閣法制局で戦力に関する統一見解を発表したことはないということで公式に否定をいたしております。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 戦力とは何ですかと聞いているんです。質問の趣旨に答えてくださいよ。戦力を禁止しているかどうかと聞いていないんです。戦力とは何かと見解を求めている。——おわかりにならなければ申し上げたい。戦力とは、近代戦争遂行に役立つ程度の装備、編制を備えるものをいうというのは違いますか。
  250. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) これは、いわゆる戦力論争というものがございまして、わが国の、当時まだ保安隊であった時代だと思いますけれども、保安隊は戦力ではないと、戦力なき軍隊というのは、これは新聞の記事でございますけれども、そういう記事があったような時代に、近代戦争の遂行に役立つ程度の装備、編制を備えるものをいうというような説明をいたしたことはございます。で、私どもが現在言っておりますのは、近代戦争遂行能力とは何であるかということ、これまた具体的にはわかりませんので、憲法第九条第二損では、先ほど申し上げましたように、自衛のため必要な最小限度の実力と申しますか、防衛力を備えるということは、憲法第九条二項で禁じているような戦力ではないという言い方をいたしております。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 まるで同義反復じゃないですか。つまり、そうすると、政府には戦力についての統一見解はないんですか。
  252. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) これは、先ほど私が申し上げましたが、何回も、私ども前の長官あるいは前の前の長官あたりからお答え申し上げているところでございます。たとえば、昭和三十年の六月十一日の第二十二回国会の参議院の予算委員会で、さっき私が申し上げましたように、「最も素朴に考えると、戦力というのは文字通り戦う力ということでございます。」ということを、当時の林長官がお答え申し上げております。しかしということで、それに続きまして、自衛隊というようなあの程度のものを保持することは憲法第九条の第二項で禁止されておる戦力ではないのだ、ああいう自衛隊のような程度のものを持つことは戦力と称せられるものではないという消極的な言い方をいたしております。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 さっき私が聞いたとおりに答えてください。近代戦争遂行に役立つ程度の装備、編制を備えるものというのは違うのか違わないのかということをすっきり答えてください。防衛力のことを聞いているのじゃない。戦力のことを聞いている。
  254. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 近代戦争遂行能力というような言い方を、それは統一見解と称せられる中に入っておるということでございますけれどもも……。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことを聞いていないんですよ。委員長、だめですよ。私は、戦力としての政府の見解として認めるのか認めないのか、正しいかどうかを聞いている。イエスかノーかなんです。そんなでたらめなことで話をぐるぐる変えてもらっては困る。正確に答弁するように言ってください。
  256. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほど申し上げましたように、松本善明議員の質問に対してお答えをしております。
  257. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御着席を願います。  ただいまチェコ代表が見えたようでございまするから、暫時休憩をいたします。    午後四時二十一分休憩      —————・—————    午後四時四十分開会
  258. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  今般、両院議長のお招きにより来日されましたチェッコスロヴァキア連邦議会のアロイス・インドラ議長の御一行が、本委員会傍聴のため、ただいまお見えになりました。  御起立の上、拍手をもって歓迎の意を表したいと存じます。   〔総員起立、拍手〕     —————————————
  259. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 休憩前に引き続き、質疑を行ないます。上田哲君。
  260. 上田哲

    ○上田哲君 議事進行について発言をいたします。  先ほどの問題につきましては、外国使節団もお見えになったことでもありますので、理事会の御決定に従いまして、政府から後日御回答をいただくことを了承いたします。戦力の定義についての確定的な政府統一見解を出すことについて、総理からお約束をいただきたいと思います。
  261. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 戦力に関する政府答弁は、来たる月曜日までにいたしたいと存じますので、御猶予願います。
  262. 上田哲

    ○上田哲君 それでは、その問題をはずしまして具体的な問題に入ってまいりたいと思います。  四次防でありますが、これまでの防衛力整備計画、その伸び率が先進国中格段に高いわけであります。最高であります。これについて、総理、いかにお考えになりますか。
  263. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四次防の金額から見ますと、三次防に比して相当大きくなってはおりますけれども日本のGNPの状態その他から比べてみまして、この程度のものを保持する必要があるというふうに理解しております。まあ、先進工業国と比べれば大きいということではなく、数字の上から見ても小さいというふうに理解をいたしております。
  264. 上田哲

    ○上田哲君 伸び率が最高なんですよ。
  265. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 伸び率の問題は、確かに二兆三千億が四兆六千三百億といえば、倍ということでございますが、しかし、この初年度の四十七年度の予算の総額というと八千億でありますから、これを五年間そのまま引き延ばしても四兆円になるわけでございます。あと六千三百億ということでございます。それには沖繩の返還も入っておりますし、沖繩の基地に対する使用料が相当大きくふえております。そういうものもございまして、まあ大きくはないというのが政府の考え方でございます。この倍というのは、大体予算が相当伸びておりますので、結局、七・五%ずつ十カ年伸びると倍になるわけです。そういうような意味で、一〇%ずつ伸びると五カ年でも相当になる。ですから、予算の総ワクも、五年たつと相当大きく伸びておりますし、この中に位置する社会保障費やいろんな物件費や人件費も比べてみると、みな伸びておりますので、そういう意味で、もう少し平たく比較をしていただきたいと思います。
  266. 上田哲

    ○上田哲君 先進国中最高というのは、成長率が特に高いときにはフローが違うわけですよ。ですから、その点はひとつ得意な経済論で分析をしていただかなきゃならぬと思うんです。総理がしきりに言われるのはGNP比較論ですね。GNP比較論というのは政策ですか。
  267. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) GNP比較論というのではありませんが、まあ妥当かどうかという場合は、国々——まあ世界には百四十何カ国あるわけでありますから、その中で日本のような国ばかりではなく、国情によってみな違うわけであります。国民総生産も国民所得も社会保障の状態も、また周囲の緊張の度合いもみな違うわけでありますから、一律には言えないけれども、まあ、よその国はどうだろうということを比較するのが普通であります。大きいというので、いやほかの国はもっとこうでございますとか、それはもう状態が違います。日本は憲法の制約がありますので、ほかの国とは全然状態は違いますけれども、独立国として必要最小限の自衛力というものは持たなきゃいかぬし、その状態はこのくらいがいいと思いますと、こういう比較をするわけです。社会保障費のときなどですと、御質問を受けるときには常に比較があるわけです。アメリカに比べてはこんなに悪いじゃないかと、西欧諸国に比べてはこんなに悪いじゃないかと、なぜドイツ並みにならぬのかと、こう言うわけですから——それを逆手に取るわけでは全然ありませんよ、そういう気持ちは全然ないわけでありますが、まあいろいろ政府が四兆六千三百億という概算でも、それだけのものをきめるには、相当やはり、各国との比較とか、そういうものをきめる場合には、社会保障費の伸びも一体どうなるんだというような問題もやっぱり相当研究しないで、これだけできめられるはずはありません。そういう意味で各国との比較を申し上げておるわけでございまして、まあ、理論的にどうであるということではないんです。世界の国々みんなこうでございますから、ということを申し上、げておるわけでございます。
  268. 上田哲

    ○上田哲君 増原防衛庁長官は、GNP比較というのは一つ政策であるということを言われたように伺っておりますが、政策であるのですか。
  269. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) やはり、防衛力が御指摘のように日本は相当累年伸びております。たいへん防衛力が高度に整備されるんではないかという御指摘に対しまして、一つの目安として、GNPに対しては一%未満でございますということを言うておるわけでございます。将来も、政府としては、GNPの一%未満というようなところがやはり目安の一つになるという意味のことは申しておるわけでございまして、政策といいまするか、どういうことですか、日本の自衛力、防衛力は、憲法の制約によりまして、防衛、自衛、専守防衛ということでございまするが、そういうたてまえを考えまして、やはり、他の西欧諸国、相当に大きい国のGNPは相当高いもんであるが、わが国は一%未満というところで現在までもおさまっておるし、これからもおさめたいということを申しておるわけで、一つの目安として用いておるというふうにお考えをいただきたいと思います。
  270. 上田哲

    ○上田哲君 防衛力あるいは防衛費の規模の決定について、はっきりしたスタンダードの政策がないわけです。GNP比較論というのはたいへん口にされるわけなので、これが一体今後の、あるいはこれまでも含めた政府政策であるのか。いま目安ということばが出ました。一体政策であるのか目安であるのか、どちらでしょうか、総理
  271. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは五カ年間に防衛力をこの程度にふやそうということでありますから、これは防衛政策一つであるということは事実でございます。
  272. 上田哲

    ○上田哲君 これを政策であるということにいたしますと、政策ビジョンだといわれているベースになっている日本列島改造論、これはいろんな試算があるのだとおっしゃっているけれども、やがて五千億ドルになり、一兆ドルということも見込まれるという試算もあり得るわけでありますし、そこに政策努力もなされているわけですね。しかも、そこにGNP一%ということを政策として考えていくのだということになれば、遠からざる将来に五十億ドルあるいは六十億ドル、七十億ドル的な数字はすぐ出てくるわけです、ということでいいんですか。
  273. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは三百兆円になったときに——三百兆円というのは、昭和六十年度でなくても、六十五年度になるかもわかりません。三百兆円になったときに、その一%でよろしいということではございません。だから、まあ平時における防衛力の限界というものを定めるときには、この問題はどうせ議論しなきゃならぬわけです。これは一〇%ずつ確実にふえていくというようなことで防衛費の位置づけをすることはできないと思うのです。ですから、ある場合においては一%になり、〇・九%になり、〇・八になり〇・五になる場合もあると思います。ただ、一%をこさないという一つの、こさないという面の数字にはなると思いますが、三百兆円が五百兆円になったときには、日本の自衛力はその一%をやっていいのだということを意味しているものでは全くない、ということは御理解いただきたい。
  274. 上田哲

    ○上田哲君 政策であると。しかし、五千億ドルないしは一兆ドルを指向するということをひとつ考えるならば、その段階では、これは政策ではなくなるだろうということがひとつ言われるわけですね。もしその政策をそのままその段階まで延長していくということになりますならば、おっしゃるように五千億ドル、数千億ドルないしは一兆ドルの一%というようなGNP比較論では、これはもう絶対額として比較の議論にならないわけです。この段階では、明らかに経済大国は軍事大国になるということを正当化する論理になってしまうと思うんです。それでよろしいですか。
  275. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 経済大国は政治大国であっても、軍事大国には絶対にならない、なれない。ここが一番私は問題だと思うんです。これはもう憲法の規定によって絶対になれないんだと、こういうことだけは、もうこれは日本国民すべてが、そういう考えをまず前提として胸の中に入れておくということでなけりゃならない。そればかりじゃなく、これから平和維持機構もできるだろうと思いますし、地球上というものがだんだん平和的なものになってくると思います。ですから、武力ということよりも、経済的な問題、いろんなことがあると思います。東西の場合は力と力でございましたが、南北ということになると、これはやっぱり軍事力で解決できる問題じゃないわけであります。あくまでも話し合いで平和的に、経済的に、経済問題ですから、片づかなきゃならないということで、相当変わっていくものだとは思います。
  276. 上田哲

    ○上田哲君 経済大国が軍事大国になってはならないということをはっきりお持ちになる以上は、五千億ドルになったときに五十億ドルじゃぐあい悪いじゃないかというお話もはっきりあったので、そのときには、実は五千億ドルというのは、今四次防が五カ年間かかっている間に、このままの成長率を続ければそうなるわけです。そういう事態がこの四次防内に起きるということになれば、いま四次防のときは目安である一%というものが、五次防というようなものがもし想定されるならば、その段階には政策変更をして、GNP一%論というポリシーはとらないということでよろしいんですね。
  277. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま一%といっているのは、いまの三次防も一%以下でございました。四次防も一%以下でございます。ほかの国との比較で一%を出しておるわけです。これは国内的にも、私は一〇%成長がずっと続いていって、その一%がいいんだという感じではないのです。これはやっぱり五カ年間で、必要であるならば、その時点その時点で十分慎重に配慮すべきだと思うんです。  これは七一年度のやつを、さっきおられたから言わないでよかったんですが、ちょうど第一のソ連から、第十はチェコスロバキアなんです、いまちょうどおられた。十一番目が日本なんです。これは七一年度では、国防費というものが十八億七千五百万ドルがチェコスロバキアであり、こちらは十八億六千四百万ドル。千百万ドルしか少なくないんです。これはGNPに見ますと、チェコスロバキアは五・八%、こちらは〇・八%ということでございまして、これを引用しないでよかったなと、こう思いましたけれど、そういう意味で、世界の国々の中で、日本と同じような状態のいろんな国と見合わして、まあ一%以下でございましてと、こういうことを申し上げておるわけです。  ですから、また四次防が終わって五次防が必要であると。私は、ほんとうに五次防というようなもの、五次防とか六次防、十次防というものがいまのように議論をされるということから考えてみると、これは道路の五カ年計画、治水の十カ年計画とか、いろんな計画がありますが、これは、早く計画をし、発注をしておかなければ間に合わないということでこういう五カ年計画というようなことをやっているのでしょうが、これはもう少し何かはかに考えようがあるのかなあという感じもいたします。  ですから、四次防が済んで、四次防の後に単年度でやれるのか、五次防をということになるのか。まあ五年、五年でやるから問題になるので、三年ずつで今度やるような、そういう——まだいろいろなものが限られたものです、実際。だから問題は中身だと思うんです、中身。ですから、四次防から五次防をすぐやるんだ、五次防はこのままの伸び方でいくんだという考え方は全く持たないで、いろいろな国際情勢の推移、また日本の周辺の変化、また各国の国防費の減らし方、それからもう一つは集団安全保障体制がどうしてできるかというような問題とあわせて、日本の将来、これはずっと続くものですから、かたくなな気持ちではなく、すなおに、また国民の理解を求めなければならぬ問題ですから、考えていくべきだと思います。
  278. 上田哲

    ○上田哲君 私たちは五次防には賛成いたしておりませんし、ただ防衛庁長官が国会で、五次防を想定することもあり得るという御発言もあったのでありますから、その場合、四次防の次に防衛力整備計画というものが策定される場合に、いまここで議論しているのはGNP比較論のことでありますから、GNP比較というような政策とおっしゃったその政策を、その場合は当然変更する、これが経済大国が軍事大国にならないことであるということ、その場合その政策をとらないのだと。これは三年ごとであろうと、ローリング方式をとろうと、一%は変わりませんから、五倍にするか三倍にするかだけのことでありますから。その点では、くどいようでありますけれども、いまは政策であるけれども、このGNP一%論を政策として推し進めていけば、経済大国イコール軍事大国の論理を承認することになる。したがって、その場合には、これから先にはGNP一%比較論という政策はとらないということをひとつ御確認をいただきたいんです。
  279. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、GNPの一%にこだわるということはないと思います。それはその時点において新しく考えればいいことでございます。  特に一%は、一%こしてはいかぬということを前提にしておりましたし、平時における防衛力の限界というものも、私は低いもので出ると思います。これがやっぱり外国比較で、日本よりももっと国民総生産や国民所得がうんと低い国でありながら、しかももう周囲は平和の楽園であるような大洋州というところでも二%だから、日本も二%までいいんだというような議論は、私は出てこないと思うんです。絶対出てこないと思います。
  280. 上田哲

    ○上田哲君 もう少しGNP論にこだわりたいのでありますけれども総理がGNP比較をされるときに、具体的に国々の名前をお出しになる。この国々の名前の特徴は、それぞれの国が憲法において軍備を持っている国であります。軍備を持っている国と比較するということは、憲法上の問題が出てくるはずでありますし、いかがですか。
  281. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはそのとおりでございまして、先ほど申し上げたとおり、私は、日本は軍備を持てないという憲法の制約がございますので、これを一律に比較することには無理がございますと、こうは申し上げておるんです。おるんですが、まあニュージーランドとか大洋州と比べるということになると説得力があるということで申し上げておるわけです。
  282. 上田哲

    ○上田哲君 軍備は持たないというお話でありましたが、衆議院予算委員会総理は、軍備を持たないというような、軍備を捨てるというような考えを持つことはできないということを御発言になっております。このことばはお取り消しになりますか。
  283. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 「軍備」ということばは使っておらないと思います。無防備中立のようなことはとれませんと、こう述べておると思います。それは「軍備」ということばがもしあれば、それは私としてはもう生まれて初めての答弁でございますから、少し上がっておったかもしれませんので、そんなもの取り消すことは一向差しつかえございません。
  284. 上田哲

    ○上田哲君 十一月二日の衆議院予算委員会で、石橋委員の質問に答えまして、すべてのものが全部なくなって、軍備もなくなればいいのだというような、そんな考えではおれませんと、こう言っておられます。このことばは、それじゃ御訂正になるわけですね。
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは日本のことを言っているのじゃなく、「その問題と、そういう状態がもう直ちに来るのであって、全世界のNATOも、それからワルシャワ条約機構も、すべてのものが全部なくなって、軍備も何も全部なくなればいいのだというような状態では、いやしくも国民の生命、財産」……。ここのところ、どうも少し前のほうまで読んでみないと、ちょっと……。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 主語が「政府は」というのですから、ほかの国の政府を代表して言われたわけじゃないでしょう。
  287. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ——いま突然の御指摘でございますので、ちょっと私もその間、前後がはっきりしないのでございますが、日本の防衛力は軍備でないということは、もう間々申し上げておるのでございまして、そのとおりでございます。ですから、「軍備も何も全部なくなれば」というこの「軍備」ということば、これはこの「軍備」という字は削除してもいいような気がします、これ見ておりますと、この文章の中で。そう思います。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 お取り消しになるわけですね。
  289. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 取り消してもけっこうです。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 率直に、「政府は」という主語が入っておりまして、前段のところがほかとの比較で述べられたことはよくわかりますが、そして政府はそういう考えは持てないと、こうおっしゃっておられるので、これはやはり私は、もし軍備を持つべきでないというお考えがあるのなら、これは脈絡からいって正しくない。御訂正になるのであれば、この際もう一ぺん確認しておきますが、わが国は軍備を持つべきでない、こういうお考えでありますね。
  291. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう軍備は憲法で禁止をされておりますし、これは憲法は絶対に守らなければいかぬという気持ちでございます。気持ちじゃなく、守らなければなりません。
  292. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官に伺いますが、平和時の限界というものはどうやってきめますか。
  293. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 総理から指示された、平和時における防衛力の限界を策定しろということであります。一応の受け取り方は、平和時というのは、現在のような世界的に、またアジアにおいての緊張緩和の傾向が持続するという形を前提として考える。もとより、わが国は憲法の制約がありまするから、攻撃的脅威を与えるようなものは持ってはならないという意味の自衛力を持つわけでございます。厳格に専守防衛という形で持っていく。そうして、これはもう従来からありまするいわゆる非核三原則、徴兵などは行なわないというふうな、従来からありまする前提、しかし日米安保条約というものが背景にあるということも一つの前提ということで、この日本の自衛力というものの限界を求める。  もとより、いろいろな機会に申し上げておりまするが、自衛力の限界というものを、いま申し上げました幾つかの前提、これはことばで申し上げた前提ですが、そういう前提を持った上で、やはり数量的な陸海空の自衛力というものを、限界としては示す必要があろうと思いまするので、そういう意味で自衛力を策定をしてみよう、こういうのが平和時の自衛力の限界ということでございます。
  294. 上田哲

    ○上田哲君 何を言っているのか全然わからないのであります。  まさしく、言われたようにそれは前提でありまして、平和時における防衛力の限界を策定すべき前提であって、内容ではない。数量的にとおっしゃるが、小部分数量的でないことはありますけれども、限界ということは、意味している語意は数量的なものでありましょうから、それをどのようにしてきめるのかということを、いま少しくわかるように御説明いただきたい。
  295. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛力、自衛力というものは、一つの重要な側面は、やはり相対的なものでございます。そうして、現在のような国際情勢といいまするか、技術の発達、科学の発達というふうなことのどんどん行なわれている時局でもございまするので、本来自衛力、防衛力の限界を示すということは、私はたいへんむずかしい性格のものであるというふうに考えます。しかしその中でも、やはりいま御議論のありましたように、われわれはGNPの一%というのが一つの目安、それは一%以内という意味の目安ということを申し上げておりまするが、その一%がたいへん大きなものになるぞという御心配があるということでもありまするので、私どもは、その一%以内ということの上に、さらに日米安保条約というものを背景にし、現在の緊張緩和が続くという前提、その他若干の前提を置かなければならぬかとも思いまするが、そういう意味で、数量的な陸海空の自衛力を限界として考えてみたいということでございます。
  296. 上田哲

    ○上田哲君 依然として、前提が発想ないし思想の程度までいっただけでありまして、どのようにしてきめるのかということがどうしてもよくわからないのであります。  伺いますけれども、それはきめることができないものなのですか。できないものではないのですか。
  297. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 困難だと申し上げたので、できないことはないと考えて、総理の指示を受けたということでいま検討をいたしている、こういうことでございます。
  298. 上田哲

    ○上田哲君 困難だけれどもできる、そして、これまでの御発言では年内にということを再三おっしゃっている。時間はたくさんございません。どのようにしてきめるのですか。もう少し具体的に承りたい。
  299. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) やればやるほどむずかしくなってまいりますが、ものの考え方といたしましては幾つかあろうと思います。将来結論を出しました場合に、いま申し上げることと違うかもしれませんが、その点は御容赦願いたいと思います。  考え方ということでありますから、たとえば、脅威の対象というものを段階別に、低いものから高次元のものまで段階を幾つか考えます。ちょうどアメリカで、ベトナム戦についてマクナマラ国防長官当時に行なわれたような方式でありますが、その段階のうちでどの程度までをわが国の自衛上は考えるか、これは必要最小限度の自衛という線を引く場合もありましょうし、それよりももっと下でよかろう、つまり、情勢判断からしまして平和な状態が続くであろうということを想定しまして、そういう事態であれば平和なときに想定をする段階はこの程度でいいんじゃないか、それに対応する防衛力ということを考えるのも一つの方法であろうかと思います。  それから、周辺諸国の軍事能力を対象に、背景にしながらも、たとえば物理的な限界、これは経費の面もありまするし、施設の入手、あるいは人員の獲得、そういった物理的な限界から、やろうとしてもこの程度しかやれない、その範囲内において平和な状態を前提にした防衛力ということをあるいは考えるかもしれない。  それからもう一つは、一応、周辺諸国の軍事能力に対応するものではないんですけれども、平和な状態が続くとして、たとえば、教育訓練を中心にする、あるいは将来必要な防衛力を建設するための母体としての防衛力を考えるというような方法もあろうと思います。  以上三つ申しましたが、従来の考え方でありますると、周辺諸国の軍事能力に、ある範囲内において対応するものを考えておった。それも、軍事理論的に言えば私は間違っておらないと思うのですけれども、しかし、平和時における一応の整備の目標をつくれということであれば、以上三つ申し上げたようなもののどれか、あるいはそれのコンビネーションか、もしくは第四の方法があるかもしれません。まあそういうようなことで、いままだ防衛庁の幹部にまでも相談するに至っておりませんが、事務当局で検討しておる段階でございます。
  300. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官、事務当局で検討している段階だそうでありますが、長官は、このような話を聞いて、年内に策定する自信がありますか。
  301. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛局長の意見も徴しまして、あまり先ではいけないので、年内には策定をしようと、こういうつもりでおります。
  302. 上田哲

    ○上田哲君 それは数量的に明示されますか。
  303. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) さっき申し上げましたように、幾つかの前提が立つと思いまするが、その上で数量的にお示しをしたいと、こう考えております。
  304. 上田哲

    ○上田哲君 総理、これはやはり政策判断なんですね。コンピューターにかけたら自然に出てくるというものではない部分があるというのが、いまの論議の中にあると思うんです。したがって、計算をしたけれどもできなかったというようなことは、いろいろ相対論の中にも逃げ口ができてしまうと思うのですが、ここで総理に伺っておきますが、そういうものを政策判断として、しっかり年内にお示しになるということでよろしいですか。
  305. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) できるだけ早く示すことが望ましいと思いますが、これは出ても議論の多い問題であります。見方が違いますから、取り方、見方が違うものですから、非常にめんどうな問題だとは思いますが、しかし、平時における防衛力の限界というものは、議論があっても、やっぱり一案つくるべきだと思います、政府が。これだけ四次防が問題になり、議論がされているときに、防衛の限界というものは、国民的に議論をしてもらうためにも、やっぱりつくるべきだと思います。まあ、めんどうなことだと思いますが、これは私が防衛庁に頼んだことでありますので、防衛庁からできるだけ答案を出してもらいたいと、こう考えております。
  306. 上田哲

    ○上田哲君 計算の問題ではなくて、政策判断としてお出しになるという最高責任者の御発言ですから、そのことを見守ってみたいと思います。  そこで、総理に伺うのですが、総理は、こうした限界論について、必要最小限という表現と、平和時における限界ということばをお使いになる。平和時の限界というものと必要最小限というものは同じものだとお考えになっておられますか。
  307. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、限界ということばと必要最小限という、全く同義語ではないと思います。思いますが、必要にして負担の少ないもの、やはり最も効率的なものといえば、最小限ということばの持つ意味も加味されて限界というものははじき出されなきゃならぬと、こう思います。
  308. 上田哲

    ○上田哲君 平和時の限界と必要最小限とは全く同じ概念ではありません。これは違うものであります。一致する場合もあるでありましょう。防衛庁長官、どちらがどちらを上回ったほうがいいんですか。
  309. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) むずかしいあれでございまするが、ことば、考え方としては、必要最小限度というものよりも、一応平和時の——必要最小限度というのは日本における防衛力のもう命題ですから、平和時の防衛力の限界というのは、観念的にはやはり必要最小限度というよりも下回るという観念であろうと思います。
  310. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと、ことばをもてあそんで悪いですけれどもね、そうすると、必要最小限というのは、たいへん危険なものになるということになりませんか。
  311. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 絶対さようではございません。必要最小限度というのは、わが国の持つ自衛力の、憲法が……。
  312. 上田哲

    ○上田哲君 平和時が上につく。
  313. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 平和時という一つの前提が加わるから、観念的にはと申したんですがね。観念的には、必要最小限度よりも下回るという観念と、まあ考えてもいいのではないか、こういうふうに思います。
  314. 上田哲

    ○上田哲君 先ほど久保防衛局長が、必要最小限より、もっと下のところに平和時の限界ということもあり得るであろうと、こういうことばがありましたね。よく聞いといてください。そういうことからしますとね、総理総理が指示されたことは、平和時の限界、その平和時の限界ということに向かって努力をしていくということが、とりあえずの命題になると思うんですけれども、その平和時の限界ということを追求していくためには、そもそも自衛隊が戦時編制であるか平時編制であるかということが前提になります。そこが抜けていては、平和時の限界ということは全然論拠として成り立たないわけであります。総理、今日の自衛隊が戦時編制であるか平時編制であるか、どのようにお考えになっておられますか。
  315. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) この問題は、さらにこう、何といいますか、具体的に、正確には防衛局長に申させるほうがいいと思いますが、一応私から申し上げます。  戦時編制、平時編制ということばは、防衛庁という、現在の日本の防衛力、自衛力にはちょっとなじまないと申しまするか、そういうことばではないかと思います。戦前といいまするか、従来の日本の軍備におきましては、明確に戦時編制、平時編制というものがあってやっておったわけでございます。近ごろのことばで言いますれば、有事即応であるかないかというふうなことばが、また使われるわけであります。このほうがまだ私は、いまの防衛力、自衛力にはなじむことばであろうというふうに思うわけでございます。いつでも、不測の事態が起こった場合には、持てる自衛力が満度に発揮できるような形を、いわゆる有事即応の形を常に持っておるか、まあ特に平和時というようなことを考えますると、やはり不測の事態というのが起こるのには、若干の先見ができる、リードタイムをとれるということが考えられまするから、その期間にいわゆる有事即応の体制に持ち込むというふうなことを考える整備のしかたというものがあろう、そういう意味で、まあこのたびの四次防の考え方、これは国防会議でも論議になったところでありまするけれども、やはり四次防は一応そうした有事即応ということにはなっていないと。若干のリードタイムを経て、その間に有事即応の整備をなし得るという形のものとしての整備をやったというようなことでございます。  なお、もう少し具体的には防衛局長から説明をさせます。
  316. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと待ってください。有事編制がなじまないと言ったら、総理の見解をあなた否定したことになるじゃないですか。平和時の限界を示せと総理の指示が出ているのに、その考えはなじまないということになるじゃないですか。これはやっぱり、もうちょっと勉強してもらわないと、せっかくそういう話が出てきているんだから、いまの話は全く大本営の話を聞いているような感じで、議論にならないと私は思います。  それらをまとめて言いますと——先へ進めますけれども、従来から議論をされていて、たとえば一、二回前の国会のレベルでも、前江崎防衛庁長官は、われわれが承知しておりました——まあわれわれと言っては少し言い過ぎになるかもしれないが、今日まで防衛庁の防衛力整備の根底となっていた脅威の見積もりという考え方を、この際ひとつ脱脅威とでも言うべき方向に改めていくべきではないか、平和時というのはそういう概念を前提としていくべきではないかということに対して、これを標準政策にしたいというような答弁もなすっておられるわけであります。抽象論だと言ってしまえばそれまでだが、政策努力というのはそういうことだろうと私は思うんです。そういう脱脅威、こういう方向に向かって、ひとつ、潜在的、ポシビリティーなんて、わからないようなことばを使うんではなくて、その方向に向かって安全保障論を考えていくべきではないかというのが平和時の限界策定のポイントになる哲学にならなきゃならぬと思うんです。その辺のところを、ひとつ、わかるそうだから、久保防衛局長からまとめてお答えをいただきたい。
  317. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 私どもがいま考えております四次防というのは、いまあなたのおっしゃったように、いわゆる脅威を前提とするという形のものではございません。ですから、そういう意味では、いわゆる平和時の自衛力とその整備、その限界、こういう意味でございます。
  318. 上田哲

    ○上田哲君 確認しますが、四次防は脅威を前提としないものに変わったんですね。
  319. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 変わったというのはどういう意味か、この四次防は脅威を前提とするという考え方はとっておりません。
  320. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 議論をする場合には定義から入らねばならないと思いますが、いま長官が脅威を前提にしておらないということを申されましたのは、日本に対して具体的な脅威あるいは顕在的な脅威があるという前提で四次防を組んだものではないということであります。そしてまた、四次防の原案、昨年の春までの原案のときに私どもが申しましたそれは、潜在的な脅威はあるということでありました。その潜在的な脅威というのは何かといいますと、外国で通常いわれ、またわれわれもとっておりました従来の考え方は、侵略する意図と、それから周辺諸国の軍事能力が合わさって脅威になる、その場合を顕在的脅威であると、こういうふうに申しました。そういう意味での脅威は四次防原案でもなかった。しかしながら、潜在的な脅威、すなわち、周辺諸国が軍事能力を持っておるということだけは事実であるので、それを基準にして防衛力の整備を考えましたということであります。したがって、脅威の有無という場合には、以上のことばの定義の使い方いかんによって変わってまいります。現長官は、なるべく脅威というような刺激的なことばは使わないほうがよろしいということで、同じことは軍事能力ということで代表しております。実体の意味は同じであります。
  321. 上田哲

    ○上田哲君 顕在的、潜在的——プロバビリティー、ポシビリティーというのは、防衛庁がかってにつくったことばじゃないですか。それを全部合わせて脅威と呼んでいるではないですか。そんないいかげんなことばは許しませんよ。じゃ、脅威の見積もりということばは防衛庁から消えたんですか。
  322. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 私どもも、法律用語ではないものですから、庁内ではいろいろなことばが使われております。やはり脅威ということばを前提にしながら議論する場合もあります。そこで、いまの脅威の見積もりという場合にはどういうことかといいますと、周辺諸国に侵略の意図があるかないか、どういうような方針であるかというような問題、これは意図の面であります。それはまあない。それでは軍事能力としてはどういうものがあるか、それはこれこれのものがある、そういったことを脅威の見積もりというように考えております。いま防衛庁長官が申されましたのは、具体的な脅威、日本が四次防期間中に侵略されるであろうという前提のもとに四次防を組んだのではない、そういう意味であります。
  323. 上田哲

    ○上田哲君 いいかげんな使い分けをしてもらっては困るのですよ。まさに、四兆六千三百億円というのは、財政積算というのは、脅威の見積もりということによってできているのではないですか。それが変わったのか、変わらないのかというのは、一般的な財源とは違うのです。はっきりしてください。長官、そんなでたらめな言い方はだめだ。
  324. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛力を整備する場合、これは最小限というものを考える場合にも、周辺における、何といいますか、そうした力というものは、これは一つの要素になるのは当然であります。これをいわゆる脅威ということばを使いますると、顕在的とか潜在的とか申しましても、そういう、こちらに侵攻してくるという事態を想定をするということになりまするので、そういうことば、概念を使うことは避けたほうがいいという意味で申しておるのでありまして、周辺の軍事能力というものが、やはり自衛力を積み上げていく、あるいは限界をつくるという場合に、一つの目安になるということはあるわけでございます。
  325. 上田哲

    ○上田哲君 しぼって伺いますけれども、そうすると、四次防というのは、脅威の見積もりということによって積算されているものではないのですね。そして、今後こういう表現は使わないわけですね。
  326. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 言われておりまするような潜在的脅威とか顕在的脅威とかいうような概念は持ち込まないで、しかし、申しましたように、周辺の軍事力というものはやはり一つの目安になる、こういうことであります。その点は、さらに防衛局長からふえんして説明をさせます。
  327. 上田哲

    ○上田哲君 これはひとつ、たいへんおかしいことですから、あとでもう少し整理してください。脅威ということばを使わないということであるならば、それはその部分だけはけっこうなことでありますから、ぜひひとつ脱脅威の方向に進むべきステップがあるんだろうと。これはひとつ久保さんにそこを答えてもらいたいのだけれども、脱脅威論というものを今後防衛力整備の考え方の前提に置くのですか。
  328. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 新聞で脱脅威と書かれましたが、従来の防衛力整備の場合の考え方は、周辺諸国の軍事能力を一応前提に置きまして、それに対して、ある範囲内でわれわれが対抗できるものを整備の目標にいたしましょうということでありました。しかしながら、それにいたしましても、相当の防衛力になるかもしれませんので、一応それを計算の基準にしない防衛力整備のしかたはないであろうかというようなことをいろいろ考ておるわけでございます。ただ、その場合に、先ほど一つの例を申し上げましたが、そういったような幾つかの例でもって計算ができるのか、どういうことになるか、なかなかむずかしいことでありまして、いわゆる脱脅威論というのは、必ずしも私だけでなくて、若干そういったことを言う学者もおりますので、私どもは、そういうことを一つの大きな柱と考えながら、従来の理論とも突き合わせて、どういう方向日本の防衛力整備の理論として適当なものであるかということを考えてまいりたい。いま脱脅威の考え方が定着したということには、とてもなっておらないというのが現状であります。
  329. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、当面の四次防でありますけれども、これから私がぜひ政府の見解を問いたいのは、政府の四次防説明の最大のプリンシプルになっております、四次防とは三次防の延長であるという考え方、実体的にこれは違うのだということを、ひとつ御説明をいただくように願いたいと思うのでありますが、その四次防の考え方をべースとして、私は安保の変質ということがあるのだろうと思います。  四次防は、安保の変質、あるいは変化の予測に立って組み上げられているということは、まぎれもないことであるだろうと考えます。先ほど久保防衛局長が限界論を出されるについてあげられた三つの段階というのは、そういうことをそれぞれ含んでいるということを当然考えなければなりません。今後の安保の変質の本質はどういうところにくるかといえば、私の考えでは、第一に、アメリカ側の限定された主要基地の永続的な確保ということが一つの柱、自衛隊は、ほぼこの四次防でその肩がわりのおおよその完了を果たすと、こういうことが出てくるのだろうと思うんです。昨日、グリーン国務次官補が発言をされているようでありますけれども、安保の変質、いま私が申し述べたような観点から、安保の変質を、外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  330. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、安保の変質ということは考えておりません。
  331. 上田哲

    ○上田哲君 私のあげた二つの点からすると、具体的には、自衛隊が自主防衛という方向に向かって強化されていく。アメリカに対しては、ただ乗り論の解消ということになっていくだろうという関係が生じてくると思うんですが、これは後に譲ります。  で、いまグリーン次官補の発言というのは、ニクソン大統領の再選ということを一つ具体的なエベントにしながら、アメリカアジア戦略の根幹基地として、もっと具体的に言えばはっきりするでしょうが、横須賀、厚木を軸として、三沢、横田、岩国、おそらくこれになるでしょうが、この基地の永続的確保、こういうことを軸として意思表示をしてくるであろう。これは、七〇年十二月二十一日の安保協議委員会で決定された基地縮小計画ということを区切りとして、そのシリーズの上に立って、七〇年代、少なくとも前半の最終的な図柄がここに私は描かれるに違いないと思う。こういうものは必ずアメリカ側から近く提案されねばならぬであろうし、あるいはその協議が進んでいるのかもしれないし、そういう形にイメージが到達するに違いないと私は思うんですけれども、どのようにお考えですか。
  332. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) グリーン次官補の発言を新聞を通じて知ったのでございますが、それを拝見した限りにおきましては、日本及び西太平洋地域においてアメリカが依然軍事的プレゼンスを続けるという意図を持っておるということは、あの発言からうかがえるのであります。ただ、四次防の審議にあたりまして、安保がこのように考えられる、向こう五年間におきましてこういう変質を遂げるであろうから、それに対応して四次防計画におきましてはこういう配慮を加えなければならぬと、そういうことはなかったわけでございます。
  333. 上田哲

    ○上田哲君 誤解をおそれずに言うならば、四次防の策定に符節を合わせ、安全保障条約、日米安保というものが——ポストベトナムからになると思いますけれども、それらを合わせて、日米安保というものが軍事的色彩を薄くしていかざるを得ないであろうという考え方はいかがですか。
  334. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは二つに分けて考えなきゃいけないと思うのでございます。日米安保条約は引き続き維持してまいるということを日本政府は申し上げておるわけでございます。しかしながら、国内における基地は合理的な整理縮小を考えていくということを言っておるんでございまして、この基地の整理縮小という問題が、直接、直ちに安保条約の抑止機能というものを変えていくというように私どもは考えていないのであります。
  335. 上田哲

    ○上田哲君 質問の意味を間違って受け取っておられるので、抑止機能がどうなると言っているのではない。日米安保が軍事的色彩を薄めていかざるを得なくなるであろう、私はかなり大胆な仮説を立てて見ているのですが、いかがですか。
  336. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約は引き続き維持してまいるという方針に変わりはないわけでございまして、その条約が示しておる安全保障上の機能、それから経済協力上の機能というものはそこなわないで維持していくというたてまえに立っているわけでございます。
  337. 上田哲

    ○上田哲君 日本政府が安保を堅持していくかどうかの問題ではないのです。客観的にそういうふうな必然にたどりつく可能性がないかと、こういうふうに申し上げているので、その辺、総理いかがですか。
  338. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一方の当事国であるアメリカからは、そういう意図の片りんも示されておりません。そして日本側の意向は、いま私が申し上げたとおりでございますので、現在の時点におきまして安保条約が変質するというようなことは考えていないわけでございます。ずっと先の将来のことということにつきましては、これは何とも私もわかりかねます。
  339. 上田哲

    ○上田哲君 かなり大胆に踏み込んでみたつもりなんですけれども、一向に反応がないと意味がないので、これ以上突っ込みません。総理、御見解ないですか。——じゃ具体的に言いましょう。防衛庁に質問通告をしてありましたが、いわゆるアメリカの主要基地、私が要求した内容に伴って報告してください。
  340. 長坂強

    政府委員(長坂強君) あるいは御質問と違うことになるかもしれませんが、先生御質問のところは、三沢、板付、横須賀、厚木、横田の基地の五基地をいま用意してございます。
  341. 上田哲

    ○上田哲君 半分しか、どうして持ってこない……。
  342. 長坂強

    政府委員(長坂強君) そういう事務連絡であったものですから。ですから、五基地の内容はいま申し上げられますけれども……。
  343. 上田哲

    ○上田哲君 お聞きしていいですわ。
  344. 長坂強

    政府委員(長坂強君) その米軍と自衛隊の状況でございますね。まず、米軍のほうから申し上げますと、横田の基地には、現在、四七五航空基地団、それから第九気象偵察航空団第三分遣隊というものがございまして、約五千名の人員でございます。それから三沢基地は、第六九二一保全団がございまして、約二千七百人の人員でございます。それから板付基地には、第六三四八航空基地隊、約四十名でございます。それから横須賀基地は、在日米海軍司令部、横須賀艦隊基地隊、海軍通信隊、海軍補給廠、それから海軍施設部、艦艇修理廠等、約三千名でございます。それから厚木の基地には、西太平洋艦隊航空部隊司令部の厚木海軍航空施設隊、約六百五十名が所在しております。  それに対しまして航空自衛隊は、三沢につきましては、航空自衛隊の北部航空方面隊司令部、北部航空警戒管制団、第八一航空隊等、約千八百人が所在しております。板付には、同じく航空自衛隊の西部航空方面隊司令部支援飛行隊、約五十人。それから横須賀には、自衛艦隊、横須賀地方隊、練習艦隊、実用実験隊等、約七千人でございます。厚木は航空集団七百六十人。横田には自衛隊ございません。  大体以上でございます。
  345. 上田哲

    ○上田哲君 半分しか持ってきてもらわないのは困りますけれども、現在、地位協定二条4項(a)によって共同使用している米軍基地は、全国で二十七あります。その実態はどうなっていますか。大まかでいいですよ。
  346. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) どなたが答弁されますか。
  347. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 地位協定第二条4項(a)という形で共同使用いたしておりますものが、全部で二十七件ございます。名前をずっと読んでまいりますと……。
  348. 上田哲

    ○上田哲君 名前はいいです。
  349. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) よろしゅうございますか。——二十七件、それから地位協定二条4項(b)という形で提供されておる施設が五件ございます。
  350. 上田哲

    ○上田哲君 (b)はいいんですよ。ちょっと待ってください。ぼくはそう言ったんですよ。米軍の(a)の二十七と申し上げたでしょう。その実態はどうなっているかと言ってるんですよ。
  351. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 二十七件につきましては、いずれもこれは自衛隊と共同使用でございまして、キャンプ千歳、三沢、立川、朝霞、府中、木更津、座間、厚木海軍飛行場、横須賀、北富士演習場、岩国の飛行場、佐世保の海軍施設、それから貯油所、それから沖繩にあります那覇の空軍、海軍の補助施設、那覇の海軍航空施設、那覇の港湾施設、ホワイト・ビーチ、こういうものがございます。
  352. 上田哲

    ○上田哲君 総理、ひとつ決断と実行で、こういう答弁を整理してください。実態を聞いているわけですよ。基地の名前なんか言われたってしょうがないわけです。数字もその他も全部私が申し上げているわけなんですが、簡単にいいますと、先ほど総理、見解がないとおっしゃったので、わかっていただきたかったんだが、簡単に言いますと、たとえば立川基地というのは、三年も前に飛行活動をやめていますし、稚内通信基地なんというのも、この三月、とまりました。それは全面返還が当然であるのに、共同使用になっている、あるいは在日米軍司令部のある座間基地には、地元の反対がある中で、去年の十月に陸上自衛隊第三施設群の三百人が入ったとか、あるいは今度統合される横田基地には、米軍住宅の集中ということで、二百億、日本側の国費をかけて千百戸の住宅が建設されているとか、あるいは、いま問題になっている相模補給廠も、米軍が縮小する意図を持っているのだけれども、そのあと自衛隊が引き継ぐように数年前から調査を進めている、こういう実態があるわけです。中には、アメリカが返そうというのに、自衛隊の引き受けができないから待ってくれということで、引き延ばしたというようなことまであるわけです。こういうふうに、非常に肩がわりを急いでいる傾向というのがあるわけなんですよ。たとえば千歳基地ですね。昔の十のうちの一つであった千歳基地なんかでは、最近、先月の十四日に陸上自衛隊千歳駐とん地の司令と現地のアメリカ軍の司令の間に、アメリカ軍専用区域の警備、消防まで肩がわりする協定が結ばれた。これはあとで凍結されましたけれども、この経過を詳しく説明してください。
  353. 長坂強

    政府委員(長坂強君) お答え申し上げたいと思いますが、現地協定の経過等について詳しく説明しろと、こういう御趣旨だったと思います。
  354. 上田哲

    ○上田哲君 協定の内容なんかいいんですよ。  それは自衛隊法第三条の違反ではありませんか。
  355. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 違反ではないと考えております。
  356. 上田哲

    ○上田哲君 それを説明してください。
  357. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 現在凍結いたしました協定の改定案というものは、これは、当初と申しますか、十月の十六日の米軍の人員整理通告で、自衛隊が消防消火作業をし、それから警備等も自衛隊が引き受けるという解雇理由が米軍から発表されたことがあったわけでございますけれども、それ以前に、従来から米軍の専用区域と、それから自衛隊の二4(a)で使っておりますところの区域との消防と警備とにつきましては、それぞれ協定がございまして、自分のところは——日本の分は日本の自衛隊がやる、それから米軍のことについては米軍がやるという定めになっていまして、ただ、相互に協力し合おうではないかという、その申し合わせがございます。アメリカのほうで火事が起きたときに、自衛隊が消火活動をするということは、これは自衛隊法八十三条第三項の規定で「庁舎、営舎その他の防衛庁の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。」とある。この根拠によりまして米軍に対する協力はできるというふうに考えております。  それから、従来の協定を改定するその協定がせんだって結ばれたのではございますが、それが労務の問題等にも影響があるということを防衛庁のほうから現地に指示をしまして、そうして、その協定は凍結をいたしましたので、これは効力を発しておりません。したがいまして、従来の協定で相互に協力するというだけにとどまっております。  以上でございます。
  358. 上田哲

    ○上田哲君 相互協力ではないんです。自衛隊法には、アメリカ軍の消防や警備の雑役までやれということはどこにも書いてない。これはやっぱり、日本の国費でまかなわれている自衛隊というものが一体なぜそういうことをするのかということは、分限の問題として明らかです。だから凍結をしたんじゃないですか。そういう言いのがれというのは非常に問題です。時間がないからそれ以上追及をしませんけれども、これは、凍結をしたということはそのことを明らかにしているじゃありませんか。現に、問題としたいのは、こういうことまでして懸命に肩がわりをやっておる。二4(a)というのは、いまのところ、安保条約、すなわち地位協定のたった一つのメリットだといってもいいくらいに自衛隊の肩がわりが進んでいるということですよ。  長坂参事官いますか。——立川本隊の移駐の問題ですね、詳しい経過、見通しを述べてください。
  359. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 詳しく経過を述べろというお話でございますが、主要な点ばかりを申し上げますというと、私この施設担当の参事官に着任しまして以来……。
  360. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことはいいですよ、つまりいっ幾日どうなっているのかということです。
  361. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 立川市長と数回お会いをいたしております。それで、十二月の二日に市長のほうから、この本隊の移駐についてさらに話し合いを持ちたい、その際に返還あと地の計画などについても話し合いたいという申し出がございました。それを受けまして、市長さん、それでは今週からでも話し合いを始めましょうということにしております。ただ、いろいろ国会などがありまして延びておりますけれども、その話し合いをして、その話し合いの中で、円滑に移駐ができる条件とか、円滑に移駐ができる期日とか、そういうものを話し合いの中でつかんでいきたいというふうに考えております。
  362. 上田哲

    ○上田哲君 また大事なことをわざわざ落とされた。年内に立川に本隊が移駐するということは、あなたが言っているんじゃないですか。
  363. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 話し合いをしたいというふうに立川市長さんのお申し出がありましたと弐に、冒頭に、私どもとしては立川への本隊移駐は年内に実現できるように念願をいたしておりますというふうに申し上げました。それで、しかし市長さんは、話し合いをやらないで、そして年内移駐というようなことではもちろん困るし、ぜひどうか話し合いをやってもらいたい、それから返還あと地についても、その構想を明らかに、市長さんのほうでは明らかにしたいので、その話も聞いてもらいたいと、こういう経緯になっておるわけでございまして、年内に一応、念願しておるということは、市長さんにもお伝えしてございますけれども話し合いの中でつかんでまいりたいということでございます。
  364. 上田哲

    ○上田哲君 年内といえばすぐです。真珠湾並みの抜き打ち移駐ということで責任者まで出たはずのものが、今度は本隊がそういう形で行く、非常にいま危機感がおおっています。  私が言いたいのは、例をあげればたくさんありますけれども、こういうふうな無理をして、あるいは自衛隊法違反ではないかということまであるようなことまで犯しながら、今日自衛隊の、旧米軍基地を中心にする肩がわりというのは、ここまで進んできた、四次防の性格の一つだということをぜひ強調しておきたいわけです。  もう一つの問題は、配備だけの問題じゃなくて、装備の問題として、四次防は三次防の単なる延長ではないということが明らかだと私は思うんです。  念のために——時間もありませんので、航空自衛隊の中心である主力戦闘機、三次防でいえばF104の性能を述べてください。
  365. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 104の性能は二マッハ、要撃の場合の行動半径か百二十マイル、空対空ミサイル、これはサイドワインダーでありますが、爆弾を積む場合には、五百ポンド爆弾が三発。  以上です。
  366. 上田哲

    ○上田哲君 四次防の主力であるF4EJを言ってください。
  367. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 二マッハ・プラスアルファが最大速度であります。行動半径は約四百マイル、それから爆弾搭載量は最大で五百ポンド八発、それからサイドワインダー及びサイドワインダーではありませんファルコン、赤外線ホーミングのミサイルと、レーダーホーミングのミサイルのスパローを搭載いたします。
  368. 上田哲

    ○上田哲君 総理、主力戦闘機だけ比べてもこれだけ違うんですよ。もっと具体的に申し上げましょう。三次防の偵察機RF86Fを言ってください。
  369. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 速度はやはり二マッハ・プラスアルファであります。上昇限度一万八千、その他航続距離は約四百マイル、それからこれは偵察用でありますから、偵察用といたしましては側方偵察レーダー、それから赤外線の偵察装置、光学カメラ、それから前方監視レーダー、これは航法関係でありますが、航法計算装置、その他。したがって、F86Fの偵察用と比べますると側方偵察レーダー、赤外線偵察装置、それから前方監視レーダー等がRFの場合にはふえております。
  370. 上田哲

    ○上田哲君 ぼくはRF86Fのことを言ったんですよ。並べてそのことを言ってください。
  371. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) はい。RF4Eの場合の最大速度が約二マッハ・プラス、それから86の場合には〇・九マッハであります。それから航続距離は四百マイル、86が約二百マイルであります。それから偵察器材でRFが持っておりますのは、側方偵察レーダー、赤外線偵察装置、光学カメラを持っておりますが、この場合は86も光学カメラは持っております。それから航法器材として航法計算装置、慣性航法装置、電波高度計等を持っておりますが、86の場合は持っておりません。
  372. 上田哲

    ○上田哲君 総理は機数も減っているじゃないかというようなことをどこかで言われたようでありますけれども、ひとついまの比較をお聞きいただくとおわかりになると思う。性能が格段に違うのだ。どのくらい違うのかということをひとつ久保さん説明してください、大まかでけっこうです。
  373. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 基本的に違いまするのは、行動距離が違うということが一つ。それから偵察用でありまするので、これはRFの場合には全天候性であります。つまり雲の上からでも、あるいは雨天の場合にでも偵察ができる。それからこの偵察範囲というものがRF4Eの場合には非常にふえているということ、それから正確に偵察する場合の自分の位置を示す航法装置、航法器材というものが、RF4Eの場合には、当然非常に、古いRF86よりも向上しておるということであります。
  374. 上田哲

    ○上田哲君 つまりたいへんな性能の向上があるんです。機数の問題をおっしゃるといけないから念のために聞いておきたいと思う。各国の中でファントムを持っている国の機数がどれだけかを多い順番に言ってください。
  375. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) ファントムを持っておりますのはアメリカ以外ではイギリス、西独、それからトルコ、その他十カ国くらいあると思います。順番のは持っておりませんが、いま手元の資料で数字を申し上げましょうか。
  376. 上田哲

    ○上田哲君 総理に聞かしてください。
  377. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これはミリタリーバランスによるものでありまするが、数字、その機数が出ておりません。これによりますると、部隊数で書いてあります。イギリスの場合に、F4が七個スコードロン、七個飛行隊であります。それとそれから防空用のF4Eが一個スコードロンあります。それは大体一隊は二十機見当でありますから、それに予備を含めますと、大体三十機ぐらいをかければよろしいかと思います。
  378. 上田哲

    ○上田哲君 世界有数だということがわかればいいんですよ。
  379. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) あと持っておりまするのは、私の記憶では四、五十機以内です。イギリス、それから西独が偵察用約八十機と地上攻撃用が約二百機、このイギリスと西独だけが多くて、あとは四、五十機以内であります。
  380. 上田哲

    ○上田哲君 イギリスと西独だけが多くて、あとは四、五十機だと。総理、百三十四機ですよ。これはたいへんな量だということはおわかりになるだろうと思う。これが三次防の延長である四次防などということにはどうしてもならぬのであります。  海のこともちょっと伺っておきましょう。中曽根長官時代に周辺海域、つまり制海権を一千海里と言われておりましたが、五、六百海里と訂正されたようであります。この五、六百海里というのもたいへん長いと思うんだけれども、それでもまあ三千トン級あれば何とかなるという計算がなるでありましょうが、五千トン級の護衛艦、しかも一隻でない、こういう状況というのも非常に大きいと思うんですよ。  総理、いろいろいま短い時間だけれども、できるだけたくさんの数字を出した。先ほど安保の問題について御意見がないということでありましたから、そういう中で、具体的に中側から四次防を策定する日本の意思として、日本政府の意思として出ていっている四次防というものの中身が、決して三次防の延長などという、のどかな言い方では済まないのだという実態になっている、こういうところを、たとえば機数や隻数が減っても、トン数はふえている。性能は飛躍的に数倍上がっている。さっきのことでおわかりになったと思うのだけれども、こういう状態で、軍事力と言いましょうか、防衛力と言いましょうか、そういうものとして、四次防は三次防の延長ではないということがここで明らかに言われなければならぬと思うのです。おわかりになりましたか。
  381. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も就任後、航空機の問題とか、いろんなことを勉強しました。航空機は確かにふえております。そして、ほかのものは減っておるということです。減っておるけれども、トン数はふえておるというようなものもあります。そういう意味で、私は私なりに検討いたしましたが、これはいま使っている練習機が欠落をするので、それを補わなければならない。偵察機もそのとおりでございますということであって、哨戒機や、日本は海国ですから日本の近海を哨戒しなければならないというようなものとか、そういうものはこれからまただんだんよけいになると思いますが、内容的には、これは防衛力とは相対的なものでございます。相手が——相手というのは、世界の、日本以外の国の力が技術的に、科学的にだんだんと上向いてくるということになると、防衛もそれに対応するようにならなければなりませんから、結局、性能はよくなってくると思うのです。だから、そういう意味で、これは二マッハの飛行機が来るのに、戦前、私たちが空を見ておって、B29を撃ち落とすのに、上がったきりおりられないという飛行機があって、やったようでございますが、それは私たちの青少年時代の経験であります。ほんとうに悲しい経験だった、あのときは。しかし、そういうこれは防衛もできなかったという、あのときはそういうことがあるのですが、だから、結局、日本が攻撃を受けないためには、やはり要撃できるような状態でなければなりませんから、そういうことでは性能はよくなると思うのです。  ですが、これがほんとうに衆議院でありましたように、足が長くなる、爆撃装置もついておる、だれが見ても、攻撃用にすぐ転化できるじゃないかというものであれば、これはやっぱり悪いと思うのです。ですから、日本日本の基地から少なくとも、よその国には出ていかないのだと。どうしても帰ってくるには間に合いませんというようなものでなければいかぬということで、この間、石橋さんの質問に対して政府統一見解を出したわけです。で、長さということと、性能ということと両方考えなければいかぬのだということで御了解いただいたわけですが、問題はやっぱり日本の自衛力というものが憲法の規定どおり絶対に進攻はしない。こういうことが絶対的な前提であるということで、大前提でひとつ考えていただくことであって、技術的な問題を議論していくと、それは非常に何マッハという、相手が三マッハの攻撃機を持っているのに、こちらは単葉プロペラじゃ、これは要撃もできるわけじゃないし、どうにもならなくなる。こういうことであって、そこは非常にむずかしい問題であると思います。ですから、衆議院でも、とにかくだれが考えても攻撃ではない、憲法を破ってはおらぬということを前提にひとつ御了解をいただく以外にないじゃないですか。しかも、自衛隊も、政府も、これはもうシビリアン・コントロールということが大前提でございますから、これは憲法をいささかでも破ることは断じていたしませんと、こういうことを述べておるわけでございます。  ですから、いま飛行機の数が非常に多くなったから、三次防と全く違うというふうにお考えいただかないで、まあ三次防と四次防ということを比べてみると、私は四次防が三次防と変わったものではないと、全く前提が違ったもの——違った前提の上に立ってつくられたものではない。そうすれば、在来どおりの考えの上に立って四次防が行なわれている。そうすれば、在来というのは四次防の前は三次防ですから、三次防の欠落部分を補い、しかも科学技術の発達に対応する最小限の装備を行なった、このように理解しております。
  382. 上田哲

    ○上田哲君 違うんですよ、言っていることがですね。絶対に侵略をしないとか、攻撃用の兵器が見つかればいけないとか、シビリアン・コントロールがどうだということはそれでけっこうです。そうではなくて、具体的に三次防の延長ではない、質的な違いが出ることに、戦力と言うべきか自衛力と言うべきか、それは高まっている。それは違うんです。そして、相手の国が伸びるんだから、うちのほうも伸びるんだとおっしゃるが、相手の国と比べていまのお話のように四、五十機が普通のところに、飛躍的に多いところへきている。これは数字的にお認めになるでしょう。
  383. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だから、三次防と四次防がどう違うのかということは、これは単年度予算主義の中でどうしても単年度ではできないでしょう。ですから、五年計画、五年計画でやっているんです。これは防衛力だけじゃありません。治水は十カ年計画であります。それから道路は五カ年計画であります。これはもうすべてのものがそうしなければ、鉄道も五カ年計画、十カ年計画でなければ債務負担や何かでもって隧道にはかかれないんです。そういう意味で、やっぱり長期計画というものはいまの単年度主義の予算の中ではどうしても必要なわけです。閣議の決定とか何らかを必要とします。ただ、それはそれを絶対やるというんじゃなく、その四兆六千三百億という一つのめどであります。そういうことでありまして、それはですから三次防と四次防というものがどう違うのかということは、三次防は絶対専守防衛でございましたが、四次防は多少攻撃でもするんだということになれば、これは違っておりますが、そうじゃないんですよ。絶対専守防衛なんです。ですから、そういう意味で三次防と同じ精神、同じ国家というものをねらってつくられておるものでございます。  そうすると、そこで一つひっかかるものは、中曽根構想というのがありましたですね。中曽根構想、あれは少し違う。まあみずから守ろうという感じがありましたから、そういうものを土台にしてつくったものでないか、だから、精神的にもスタートの、第一気持ちが三次防の延長じゃないんだと、こういうふうなお考えでもって指摘をされるかもしれませんが、中曽根構想というのは、中曽根君そこにおりますが、これはやめたんです、一切もう。一切なしにしまして、そして三次防が切れましたので、中一年間ぐらい置いて、そしてスタートしてもいいじゃないかという野党の皆さんの御忠告もございましたが、三次防が終われば四十七年度から四次防ということにいたしたいと、こういうことでお願いをしたわけで、お願いもし、きめたのでございまして、三次防と四次防が性格が全く違う、性格が違うということはないんです。そういうふうに御理解できませんか。
  384. 上田哲

    ○上田哲君 やっぱり御理解になっていらっしゃらないのでね、もう少し詰めてお話を申し上げたいのは、簡単に言えば、たとえば防衛費も大きくなっている。そして配備もこういう形で在日米軍との関係でも変わってきているし、そして装備もこれだけ飛躍的に変わってきている。専守防衛は変わってないのだというのはそれはいいですよ。その話をしているんじゃないわけです。それはそう最高責任者がおっしゃるのですからぜひそうしていただきたい。攻めてもらっちゃ困るんだということではけっこうですが、その話じゃなくて、つくられた今度の第四次防衛力整備計画全体の中身が、それをどう使うか、専守防衛に使うか攻撃に使うかというところは、それは別問題として、これ自体は変わってきているんだし、それ自身をどう使うかということの国際的な環境からいっても変わってきているところがあるのだと。私に言わしむれば、そういう数字的な積算なり効能の掛け算の中でいえば、一言で言うならば、四次防は三次防と違って自主防衛努力というか、あるいは自立防衛努力というか、そういう方向に向かって量的にも質的にもスタートを切ると、こういう状態になっているんじゃないか。また、それは客観的にそういう方向にきているのではないか、こういうふうに思うんですよ。これは専門家でなきゃわからぬと思う。防衛局長どうですか。
  385. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 三次防の延長ということばがいわば俗なことばでありますので、正確を欠くのかもしれません。そこで御議論のあるところだろうと思いますけれども、私どもが延長と申しておりまするのは、たとえば、防衛構想が三次防を引き継いでおります。四次防の大綱も三次防の大綱をほぼ引き継いでおります。それから四次防の防衛力、装備自身も、三次防におきまして整備しました防衛力というものを維持するために減耗更新を行ない、あるいは三次防で調達するぺースを同じく踏襲してまいるということで、詳しくは申しませんが、そういった体制で三次防の延長だと、こういうふうに申し上げました。  ところで、それでは、三次防の置かれた環境と四次防の置かれた環境とは同じであるかというと、必ずしも私は同じだとは思いません。それは国際環境も違いましょうし、もう一つは、ニクソン・ドクトリンといういわば、特にマンパワーについては地域各国が自主的に自分で負担をしろというような方向が打ち出されている。しかし、それにこたえた四次防であるかどうかということは別でありまするけれども、与えられた環境というものは、そういう意味では、三次防と四次防とでは違っているであろうということは申せようかと思います。
  386. 上田哲

    ○上田哲君 つまり、客観情勢としては三次防と違ったものになっているんだと、それは支出的にも主体的にもこれは私は同じだと思っているんですが、いま防衛局長発言にあったように、三次防と明らかに違う、あるいは安保体制とのつながりの中で——国際情勢といいますと大きくなるでしょうが、安保条約とのつながりの中でそれにフィードバックしていくといいましょうか、はね返っていく意味での日本の自衛隊のあり方、戦力の評価、そういう意味でもこれを主体的と言い得るならば、客観的な条件と主体的な条件とを合わせて、これまでの日米安保、ああいう形で存在していた日米安保の中で存在していた三次防とは、これから先の四次防は質的に違うのであると、こういうことをはっきり言えなければならない。つまり、一口で言えば自主防衛とでも言うんでしょうか。今日までは自主防衛ということばはありました。しかし、それは日本の自衛隊が安保条約の中でそれなりの自主性を持つというぐらいの意味だったと思う。いよいよ自主防衛、自力防衛というような方向に向かってスタートを切ったのだというふうに理解するのが正しいのではないか。防衛局長、もう一ぺんひとつきちっと答えてください。
  387. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 自主防衛というのも普通三つぐらいのことばに使われております。たとえば、自分の国の防衛は全部自分でやるという場合に自主防衛ということばも使われます。これはいまちょっとおっしゃいました自力防衛ということばを使う人もおりますが、これは日本政府としてはとるところではございません。それから、日本の防衛政策については、日本が自分で意思をきめていくんだという意味での自主防衛、これは、昔からそういった意味では自主防衛を踏襲いたしております。そこで、現在の防衛体制というのは日米安保体制を前提にいたしまして、日本がやるべきところは日本がやっていかなきゃならない、そういう意味で、それを目標にしながら現在は防衛力の整備を進めていると、そこでは自主防衛努力を進めているということが言えようかと思います。  そこで、何が違うかと申しますると、従来であれば、日本がやるべきところをやるんですけれども、足らないところは全部アメリカがやってくれるであろうということが一応想定できました、それはニクソン・ドクトリンというものが示めされておりませんでしたから。しかし、六九年以降そういった方針が出されてまいりますると、日本がやるべきところについてアメリカがどこまでやってくれるかというある程度の何といいますか、境目というものがだんだんわかってまいります。そうすると、そういう境目を目ざしてわれわれは防衛努力をしてまいらねばならない、いわば、自主防衛努力をしてまいらねばならないということが言えようかと思います。しかし、四次防でそれじゃそういった自主防衛が十分にできたかというと、そういうことではありませんで、そういう立場で防衛努力をしてまいらねばならないということであろうと思います。
  388. 上田哲

    ○上田哲君 総理、自主防衛という立場でスタートをするという、四次防というのはスタートラインなんだと、こういうところは単に三次防の延長ではないということになると思います。それは御認識になりますね。
  389. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま久保防衛局長が述べましたように、自主防衛というのは、四次防で自主防衛をスタートするというだけではなく、三次防のときも、日本人は日本人で守るんだという自主防衛ということが前提であった。だから、これはそういう意味で、どうして……。
  390. 上田哲

    ○上田哲君 国際環境も主体的な装備も違ってきているんですよ。
  391. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうも、久保君の発言を聞いているとよく理解できるんです。理解できるが、私の立場で見ますと、やはり日本政府がやっておる三次防も四次防も日本の専守防衛……。
  392. 上田哲

    ○上田哲君 そうじゃないんですよ。
  393. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、日本を守るという感じであり、だからそういう感じでは、私の理解では、これは同じ路線にあるものであると、これの区別を、何かこう学問的に区別のしかたがあれば別ですがね。
  394. 上田哲

    ○上田哲君 国際情勢を……。
  395. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうもそういうふうに区別が私にはできないということで御理解いただきたい。
  396. 上田哲

    ○上田哲君 できないじゃ困るんですけどね。つまり、その三次防と四次防の違いを一口で言うならば、それは日本のプライドとか何とかというところでは自主防衛論もあったでしょう。しかし、自分のからだに力がついた、あるいはつけなければならない、あるいは国際情勢——囲繞する国際情勢との連関の中で、言うならば自主防衛というような方向に向かって意思的に立つべき条件はできたと防衛局長は言っているわけですよ。そういう方向へ向かって見るならば、少なくともここまでは妥協してもいい、客観的に見て三次防と四次防とは同じものだということにはならないだろうと。専守防衛はいいですよ、攻めていかない、いいですよ。そういうことは変わってると言っているんではない。そういうものとしては、三次防の単なる延長として四次防があるというのではない、新しい一つのスタートには立っているんだということに客観的になるではないかという認識です。
  397. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう少し勉強してみなければ、とてもいままで私が勉強し、考えてき、答弁をしてきた状態から考えてみて、三次防と四次防というものは、これは別な路線にあるものだとは、私はいま申し上げられません。
  398. 上田哲

    ○上田哲君 これはわからないで四兆六千三百億円きめられても困りますので、これはひとつ早くわかっていただいて、御見解を明らかにしていただきたい。そのための一つの要素としてそれが安保にもう一ぺんはね返るといいましょうか、こちら側からの安保見返し論というものがあっていいだろう、七五年ということもあります。外務大臣いかがですか。
  399. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 四次防と安保との関係の御論議でございます。四次防の策定にあたりまして、われわれが審議したときに、国際情勢をどう見るかということについて外務省側から見解を求められたわけでございます。それで、われわれの国際情勢観は、なるほどアジアの地域におきましても緊張緩和の傾向は出てまいったと、しかし、依然として不安定要因は伏在しておると、こういう微妙な段階でございますので、防衛計画を考える場合に、軽々に防衛力整備を解体するといいますか、防衛力を減らしていくというようなことには、これまた新しい緊張を生むおそれもありますから、そういうことには賛成いたしかねると、しかし、といって防衛力をこの際、それではうんと増強しなけりゃならぬという情勢でないことは、これは常識であろうと思うのであります。そこで、上田さんのおっしゃる三次防の延長というようなものが四次防で考えられるならば、それは一つの考え方ではなかろうかというような判断を、私ども国防会議で申し上げたわけでございます。したがいまして、問題はあなたがついておられるとおり、四次防をもって三次防の延長なのかどうなのかという点に、私は、論議がそこの的に集まるのが当然だと思います。その点につきまして、私ども、不敏にいたしまして軍事知識がございませんから、三次防の延長という性格のものであるという防衛庁の御専門の方々の判断というものを御信頼するよりほかに道がないと思っております。  それから、安保条約との関係につきましては、先ほど私が御説明申し上げましたとおり、安保条約——安保体制が将来このように変わってまいるから、四次防についてこういう配慮を加えるということはなかったのでございますということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  400. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  簡単に、ほんとに簡単に一問だけお伺いします。  総理は、施政——所信表明演説で、自衛力、最小限度の防衛力を整備していくと、このたび政府が第四次防衛力整備計画を決定したのもそのためだったと、こう言っておられるわけです。  そこで、先ほどの上田委員の質問に答えられて、年内に防衛力の限界を数量的に明示すると、こうおっしゃいました。こういう御答弁であります、年内に。それならば、第四次防は、来年度予算を編成する際にあらためて策定をし直さなければいかぬわけです。そうしなければ、限界があって、それに足りないから四次防ともし言うならば、限界にまだ足りないというならば、それじゃ、その限界は何かを示さなければ、足りないかオーバーしているかわからないわけでしょう。したがって、第四次防衛力整備計画を決定いたしますと、最小限度の自衛力を整備するためにこれを決定します、四次防を決定するというなら——しかも、その上に、先ほど申し上げたように、年内に防衛力の限界を数量的に明示すると上田委員に答えられた。それならば、四次防はあらためて策定をしなければ、できておるやつをこれは限界内だというなら、これはおかしな話で、限界というものが先にできておるということになるわけですね。それならば、その限界を示さなければいけないわけです。限界を示さないで限界内と言うことは、これは一体どういうことですか。  それから、もしそれを数量的に明示するというならば、いま申し上げたとおり、四次防は、四十八年度予算の際にあらためて再編成し直さなければいけないわけです。そうでなければ、全然これは矛盾して、先ほどの上田委員に対する答弁と全然矛盾することになります。この点を、これは総理から聞いておきたいと思います。
  401. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 平時における、平和時における防衛力の限界というものを検討してみてくれというのは、これは四次防をつくるときに、四次防というものに対していろいろな議論が起こっておると。また起こってくるから、そういうもので将来の展望を国民各層、国民皆さまに考えていただくためにも、防衛庁は、各国の例やいろいろなめんどうなことであろうが、平和時における防衛力の限界というものを考えてみてはどうかという私は提案をしたのです、指示を。まあこれは指示とはいいますが、これはなかなか早くできるとは思いませんでした、私は。これはなかなかむずかしい問題でありますから、できるとは思わなかったのですが、防衛庁当局は四十八年度予算編成の前には何とか一案をまとめてみたいと思いますと、こういうことを言っておったわけです、私には。国会で、十二月中にはまとめたいと思います、まとめますというに近い答弁がありましたので、防衛庁はそんな研究をしているのかなあ、そこまで進んでおるのかなあという感じを私は持ったわけでございます。これはしかし、なかなか非常にむずかしい問題であり、議論が起こる問題であります。これは非常に議論が起こる問題でありますから、私は防衛庁長官が答えたということで、防衛庁は十二月中には出すものだというふうに、先ほど聞いて理解をしたわけであります。これは私の許可も得ないで、ここで発言したんですから、私は、だからここで答弁をしたことでもって、防衛庁は十二月中にはつくるのだなあという感じで理解をしたわけであります。ですから、そういう意味で、今度きめた四次防と、この限界というものはどう出るか私わかりません。わかりませんが、これは出たときの話でございまして、いまどういうものが出るかということがわからない状態において、限界と、それから四次防との直接の関連を申し上げることはできないと、こう思います。
  402. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一回だけ。
  403. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 簡単に願います。
  404. 羽生三七

    ○羽生三七君 簡単にやります。  それはおかしいですよ。四十八年度予算編成までに間に合わせるというのなら、その編成の際に、限界も出てこなければどうやって編成しますか、これは非常な矛盾ですね。  それからもう一つは、それならば、四次防の途中でも限界が出ればやめるのかどうか。つまり四次防中は限界というものはないという想定に立っておるのか。それじゃ第五次防までいくということなのか。ですからこれは、その点は明確にしないと、数量的に明示するというのでしょう限界を、しかも年内に。それならば、四次防の四十八年度予算であらためてやるか、途中でどこかで打ち切られるか、そうでなかったら一つも合わぬじゃないですか。
  405. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四次防というのは、四兆六千三百億というひとつの想定数字であります、これは。確定数字。これを年次別に分けてどうしてやるというんじゃありません。その初年度は、ことしの予算は八千億であるが、来年以降四カ年の防衛庁の予算は、その五カ年間のトータルは四兆六千三百億程度ということでございますが、年次予算を組むときに……。
  406. 羽生三七

    ○羽生三七君 それじゃ、途中で限界が出るかもしれないですね。
  407. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、年次予算を組むときに、当然、予算の中において防衛の費用をあらためてきめるわけでございます。きめるわけでございますから、四十八年度の予算はもうきまっているんではなく、四十八年度の予算はこれからまた組む問題でございます。四十九年度は、またその四十九年度の状態において組む問題でございまして、いまの四兆六千三百億というのは、四十七年度を初年度として、五カ年間のおおよそのめどであるということで御理解を賜わりたい。
  408. 西村関一

    西村関一君 関連。  ただいまの久保防衛局長答弁と、それから総理外務大臣答弁には若干の食い違いがあったように私は聞いたのです。と申しますのは、三次防と四次防の関係においては、これは、四次防は三次防の延長である、続きであるということではありますが、上田委員の質問に対して、状況も変わってきておる、ニクソン・ドクトリンも出たし、自主的な面も非常にふえてきた、アメリカの駐留軍との関係もいま示されたようにだいぶ変わってきておる。そういう状況のもとに、この四次防が組まれておるということに対して、延長ではあるが、しかし、内容的に自主的な要素がふえてきておる、こういう意味の久保局長答弁であったと思うのでありますが、その点が、総理及び外務大臣の御答弁とは若干の食い違いが出てきておるように私は伺ったのです。そういう点について、私は、明確に政府の見解を示していただきたいと思うのであります。
  409. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 四次防が三次防の延長であるかどうかという問題でございますが、当然、二次防から三次防に移るとき、一次防から二次防に移るとき、それぞれそのときの状況で、あるアローアンスは必ずあったと私は思うのでございます。基地の整理にいたしましても、先ほどから議論になっておりますように、逐年、これは減っていっているわけでございまして、それがまた自衛隊が共同使用しておる、あるいは自衛隊が引き受けるというようなことも実はあり得るわけでございます。問題は、質的に大きな変化があったのかどうかという観点から言われますと、私は防衛庁の意見を信頼しておるわけでございまして、これは三次防の延長であるという御見解に同意いたしておるわけでございます。
  410. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁は単なる延長でないと言っているわけですよ。だったら、そういうことになるわけですね。  それから総理、予算は毎年やるんだと言うんですがね、装備計画はそうはいかないのですよ。だから、そんなお話じゃ振りかえることはできないことになります。  簡単に聞きますけれども、四次防は必要最小限だとお考えになりますか。
  411. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 必要最小限のものだと思っております。
  412. 上田哲

    ○上田哲君 とすると、五次防は要らなくなります。
  413. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 必要最小限内のものでございます。
  414. 上田哲

    ○上田哲君 内ということは、上に伸びるということですね。内ということは、もっと上に伸びる可能性を持っているということですね。
  415. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 必要最小限度というのは、使う場合が、普通、私どもの場合にも二通りあるかと思いますが、必要最小限度のものを整備をしようといういま段階である。したがって、いまやろうとしておる四次防は、もちろん必要最小限度のワク内のものであるという意味で、必要最小限度を、一々ワク内とかなんとかいうことばは使いませんけれども、必要最小限度のものを持つと、日本の防衛力というのは、必要最小限度のまあ一ぱいのところでございます。いまつくろうとして一生懸命やっておりまするというのは、まだその必要最小限度のところまでには到達をしていない、という意味の必要最小限度ということでございます。  防衛力の限界を示せと言われ、総理からもそういう指示がありましたのは、四次防が金額で三次防の倍じゃないか——まあ私は、いろいろ質疑応答の中で、だんだんと、四次防で十分、いわゆる必要最小限度までできるかという御質問に対して、まだ必要最小限度のものが全うされるとは考えられませんと——それじゃ五次防をやるのかと言われたんで、五次防もやるようにおそらくなりましょうと申したわけでございます。そうすると、五次防で、またその四次防の倍になるのかと、六次防もやるか、また倍になるか、とめどがないじゃないかということで、防衛力の限界を示させることはできないかという意味で、防衛力の限界を、これはなかなかむずかしいことであるが、いろいろ前提を設けて策定をいたしましょう、総理からもそういう意味で、私は指示があったというふうに解しておるわけでございまして、これはそういう意味で、いまの段階において、四次防をつくる場合に、限界をまずお示しをしてからやらにゃいかぬという、私はまだそういう段階まで来ておるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  416. 上田哲

    ○上田哲君 残念ながら時間がなくなりましたけれども、わからぬというようなことで四兆六千三百億円が組まれたのでは、国民の合意を求めると言われたって、これはどうやって求めるのかということになってくるでありましょう。これは、ひとつ、後刻また御質問を申し上げますが、いずれにしても、いかに大きい防衛力を組むにせよ、専守防衛であるにせよ、これはしょせん退嬰的なものです。わが国が、進んでアジア世界の平和に寄与する方策というのは、そうした四次防を片目に見ながらどういうふうに考えられていくのか、いかがですか。
  417. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 防衛力というものは、全く日本のためにだけのものでございますが、アジアに位する日本として、また経済力の大きな日本として、アジアの平和に応分の寄与をしなければならないことは、もう言うをまちません。  また、アジアが平和になることは、日本も平和を享受できるわけでございますから、その意味で、あらゆる意味で努力をなすべきであります。まあアジア開発銀行などをつくったり、いろいろな機関に参加をしておることも、平和に寄与することでございますし、これから相当な気持ちで、開発途上国に対する協力を行なっていこうということも、平和に寄与することでございますし、先般行なわれた日中の国交正常化、これもアジアの平和に寄与する一つ姿勢であることは、これはもう言うをまたないわけでございます。  日本は力でどうするというわけにまいりませんから、それでまた、過去にいろいろ非難をされるようなこともあったのですから、こっちから押し出してはなかなかむずかしいのです。ですから盛り上がりを待ちながら、要請にこたえて、いつでも平和のためには日本が寄与できることがあり、貢献できることがあるならば、何でもやりますという姿勢でまいりたいと、こう思います。
  418. 上田哲

    ○上田哲君 ベトナム停戦が間近いですね。私が得ておる情報によると、アメリカは近く国際監視国際会議を計画しているようであります。しかも、この中に日本を除外しようという意見があるということであります。御存じですか。
  419. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 情報として、いろいろなことは聞いております。
  420. 上田哲

    ○上田哲君 具体的に説明してください。
  421. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度、北と南との——アメリカと北越の間で了解ができつつある草案の中には、現状で軍事的な停戦が行なわれる、それを監視する委員会が設けられるということがうたわれておるわけでございます。その会議に日本が参加するかしないかということにつきましては、当事国側にも日本に参加を求める意図もないようでございますし、私どももそれに参加する立場にないだろうと判断いたしております。  第二の、国際会議が開かれるであろうということは、今度の停戦交渉の中に出ているわけでございますけれども、この会議が軍事監視委員会のやりました仕事を単に裏書きする程度のものなのか、問題はそればかりでなくて、さらにポストベトナムの展望に立ちまして、インドシナ半島全体の今後の復興について論議をする場になるのか、そのあたりがまださだかでないようでございます。で、われわれの判断といたしまして、前者でありますならば、あえて私どもが参加を求める必要はないと思いますけれども、後者であるということになりますと、日本の立場といたしましては、この会議の参加あるいは参加するかしないかという問題は、われわれにとって重大な判断の問題になると考えております。
  422. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 上田君、時間ですから。
  423. 上田哲

    ○上田哲君 ポストベトナムは明らかでありますし、国連の安保常任理事国を中心にしてやる、しかも日本を除外するというのがいまの情報であります。これはぜひひとつ積極的な外交方針を立てていただきたい。このことが一つ。  それからもう一つは、総理は日中平和条約の締結に際して、不可侵条約の考えを盛り込むという意向があるというふうに伝えられております。そういうことが現実の問題として御努力の対象になるでありましょうか。この二つ、ひとつ明確にお伺いをして終わります。
  424. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう日中の両国の間は、例の共同声明に大体盛られております。これから平和友好条約をつくらなければならないわけですが、これはまだ全く白紙でございます。これから中国との間に話を詰めてまいらなければならない問題でございまして……。
  425. 上田哲

    ○上田哲君 あなた、衆議院予算委員会で考えがあるとおっしゃった。
  426. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そういう質問ございませんでした。まだ全く白紙でございます。だから、両国で十分忌憚なく意見を交換をし、理想的なものをつくりたいということでございます。
  427. 上田哲

    ○上田哲君 いまの国際会議はどうですか。
  428. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その、言うところの国際会議が、ポストベトナムの問題を論議するという場になるのでございますならば、上田さんのおっしゃるとおりでございまして、日本が参加しない国際会議は十分機能できないおそれがあると思いますので、私ども十分気をつけていきたいと思います。
  429. 上田哲

    ○上田哲君 常任理事国で構成されているという情報は持っていらっしゃるわけですね。
  430. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、まだそのことについて、アメリカ、あるいは北越等をめぐって、うわさがある程度でございまして、確たる青写真があるわけではないと承知しております。
  431. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 補正予算三案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会