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政府委員(
佐藤達夫君) 体系の問題は先ほど触れたようなことでございますけれども、いまの
民間水準との均衡の問題は、これは相当根本的な問題を含んでおると思います。したがいまして多少
ことばを費やすことをお許しいただけるならば、結局、これは私の個人的な
考えということでかつて申し上げたこともございますけれども、やはり白紙に立って
考えれば、
公務員は
公務員独自の職務と責任を持っておるということから申しますというと、他の
民間企業の
給与がどうなっておろうと、そういうことにはかかわりなしに、率直に
公務員そのものの実態をとらえて、これにふさわしい
給与を策定するということが理想ではないか。現に戦争前は、
公務員の
給与は内閣の法制局でやっておったわけです。私はそのころから法制局におりまして、そういう仕事をやっておりましたけれども、その当時は
民間の
給与はどうのこうのなんということは一度も
考えたことはない。むしろ、でき上がった形において、どこどこの会社は非常にいいそうなというようなうわさ話をする程度でございまして、非常に伸び伸びと
給与制度をつくっておったという気持ちを持っておるわけです。したがいまして、さらによけいなことになりますけれども、大正十四年か何かに当時の
俸給表ができて、これは戦争に入っても、それの引き上げということもなしに、そのまますべり込んだ。もちろん、いろいろな
手当による調整はございました。それから
昭和六年の減俸騒ぎがございましたけれども、それぐらいのことで、大正十四年当時の
俸給表がずっと戦時中までも続いておったということは、逆に言えば、いかに伸び伸びと
制度ができておったかというような一種の郷愁みたいなものを私は感ずるわけです。
したがいまして本質的に
考えれば、先ほど最初に申しましたように、
公務員は
公務員独自のたてまえで白紙に立って
給与制度を立てるのが理想ではないかという気持ちはいまも持っております。ただし御
承知のように、もとは憲法から申しましても天皇の官吏というようなことで、一種の特権的な地位を官吏
——公務員は持っておったわけであります。ところが、憲法が変わりましてからは、やはり憲法第二十八条の勤労者の中には
公務員も含まれるのだと、普通にいう一般の労働者と
公務員とは特段の違いはない、いわゆる特権的存在ではないという
考え方が根底にならざるを得ないわけです。そうすると、やはり
給与の問題についても、普通の一般の勤労者の方々と常に比べ合わせて特権的な待遇をするんじゃないぞというような面からの、
一つのメルクマールも
考えながらいかなければならない。いわんやまた国民全体の奉仕者ということになりますというと、納税大衆あるいは国民大衆の方々の思惑ということもこれは無視してきめるわけにはいかないという
状況があります。さらには経済情勢、一般の貸金情勢ということからいって、ヨーロッパその他の諸国のようなぐあいに一般の賃金水準は日本の場合はまだまだ追いつかない状態にあるじゃないかという、そういういろいろな環境の中において
公務員給与を
考えます場合には、やはり
民間の納得できる水準というものを厳密にとらえまして、そうして、これと合わしていただくという立場をとることことが、いままでの情勢のもとにおいては一番堅実な方法であり、一番手がたい方法であり、かつ納税大衆にも御納得をいただけますし、あるいは
公務員の方々にも、それではしようがないというような
意味で不承不承ではありましょうけれども、御納得をいただく、あるいは財政当局にも御納得をいただくという点では一番手がたい方法だろうというふうに私どもは
考えておるわけでございます。したがいまして、自慢話を申し上げますけれども、最近の経済情勢の変化もありましょうが、イギリスとか
——ことに英米系統の国々においては、やはりこういった例、慣習とかいうようなものがありながらも、
民間給与の調査ということをだんだんお始めになって、年々、
人事院式にこまかい調査をお始めになって、それを
一つの賃金
改定の大きな指標にしておられるという実態もございまして、それらを
考え合わしてみますというと、どうも理想論は、私、依然として理想として持っておりますけれども、まだそこに踏み切るだけの環境は成熟していないんじゃないかという気持ちで、そういう条件のもとにおいてできるだけ
改善をしてまいりたいというのが、ほんとうに率直な、ただいまの気持ちでございます。