○河田賢治君 大体、最近の大会社と、それから中小企業と零細企業、これはいろいろな差がありまして、特に日本の産業
構造からいいますと、やはり中小企業以下は大資本の下請的な存在が多いわけですね。しかも日本では生計あるいは賃金の給与水準のどこを見るかというのは今後大きな問題だと思うわけですが、またこれを早くきめぬと、日本の産業自体も、また労働者の生活あるいは生計というものも非常に不安があると思うのです。御承知のように、ドルがどんどんたまったといいましても、労働者の賃金水準というのは非常に低いところがあるわけですが、現に初任給にしましても、今度の人事院勧告におきましても、高卒で三万七千円か、それくらいですね。ところが、大企業で、これは「東洋経済」がこの七月の水準で調べたのでは、高卒が十八歳で四万四千何ぼと。そうするとここで六、七千円差ができる、今度の実施する人事院勧告とあわせましても。それから大学卒になりますと、二十二歳でこれは五万五千七百円ということになっている。そうしますと、今度の人事院勧告をいれましても四万ちょっとしかなっておりません。ここでは一万数千円の差が出ている。また今度の平均の三十九歳で約九万五千円ですか、人事院勧告によりますと。これはもう「東洋経済」で、五百人以上の従業員のところで、資本金が五億以上ですけれども、大学卒三十歳で大体九万二千円ですね。相当開きが出ているわけですね。もちろんこの差の低いほうをとれば、これは
国家公務員のほうがいいとか、経団連あたりがしょっちゅうそういうことを言って、人員の削減や給与をできるだけ出さぬようにしろと申しますけれども、日本の社会政策が御承知のように最低賃金制
一つとっていない。形ばかり地方でやっておりますけれども、それなんかもほんの申しわけ
程度であって、零細な
業者あるいは人を使っているところの最低賃金というものは全く体をなしていないです。だから、こういうところの水準を引き上げることが日本の労働省にしましても、どこにしましても、やはり上げていかなければならない。そうしますと、
国家公務員にしろ、
地方公務員にしましても、給与水準をとるというときに、何も下のほうを寄せ集めてこれでがまんをしろという態度はよくないと思うのです。
私は、
国家公務員にしろ、
地方公務員にしましても、これは一定の労力を提供して、そして住民にサービスする機関なんですから、やはり相当の人員を集め、そうしてまた相当の給与を与え、もちろん給与の体系については、何といいますか年功序列賃金というのは非常な矛盾を持っております。そうかといって、能力で、どんどん能力がある者は上へ出すということにもかなり問題があろうと思います。だからその辺の給与の
内容というものは相当
考えなければなりませんけれども、全般としては低い。したがって、こういうところで国あるいは地方の公務員も、一定のその社会における生活水準の給与を出していく。そして、おくれたところを引き上げさせるように行政指導なり、あるいはそれぞれの各官庁あるいは地方でもそういう仕事をやるべきだと思うわけです。ですから、こういう点で私は、
地方公務員の給与を民間と比べましても、特に初任給を、いま労働力が足らぬというので相当上げるところがありますけれども、しかし全体としては四万円にも達しないような、大学を出て四万一千円とか四万二千円くらいしか出さないというような低い水準では、これは
ほんとうに私は人材を集め、また日本の新しい社会を築いていくというためには、これではよくないと、こう思っておるわけです。
さて、そこで、そういう点から今度の報告書の、さっき申しました地方に出されました問題で、報告書は御承知のとおり、わたりの実態、一職一等級、これの原則に反して放置すると給与制度の崩壊を招くというようなことが答申されたり、あるいは、一斉昇給は給与の高位平準化の傾向を助長し、職員の給与水準を、あるべき姿から乖離させるものであり、厳に戒めなければならない、こういうようなことを非常に心配されて報告書の中に盛られております。この通達でも、今度は中のほうで出されましたが、通達によりますと、やはり給与を適正化するための措置として、「
地方公務員の給与を適正化するため、特に、次の事項に留意して所要の措置を講ずることが必要である」というので、わたりもいわゆる「標準的な職務区分によらない等給に格付けを行なうことおよび実質的にわたりと同一の結果となる
構造の給料表を用いることは、職務給の原則に反するものであり、かかる措置を行なっている地方公共団体はすみやかに給与を正常化するための措置を講ずるものとすること。」とあるいはまた「昇給期間の短縮の措置をとるととのないよう厳に留意すること。」というようなことが、今度通達に出されておるわけですね。
私は、このわたりの問題も、これは非常にむちゃくちゃなことをやればそれは大きな弊害がありますけれども、しかしいまの給与体系がいろんなことをして、とにかく新しく入った人がある
程度高額を取りますと、その二、三年前に入った人は非常に低くなっておる、こういうこともあるんですね。一定の年限がたって一級ずつ上がるわけですから、そういう部内の俸給表を持ってやっておりましてもかなり不公平な結果を招く。そこで、わたり等も現にこれまで行なってきたと思うんですが、だからそういうものはある
程度国は地方自治体を少々大目に見てやっていくべきだと、こう思うんですよ。第一、
地方公務員の給与をきめるのは、これは地方の自治体が、人事
委員会がこれを出してそしてやるわけでしょう。
地方公務員法にはちゃんとそういうことが書いてあるんですよ。二十四条ですね。だから、
自治省は上級機関でありましてもこれに対してあまり干渉がましいことを私はなすべきじゃないと思う。これは参考のためだとおっしゃるかもしれません。人事院勧告そのものは参考にしてきめてもらいたいと。けれども、ここにこういうことを書かれますと、非常におくれたところの地方自治体は
——まあ
自治省のことをそう思っていないようなところは、こんなことは無視して実行するでしょうけれども、しかしそうでないところは、やはりこれを重んじて、そうして縛られて仕事をしていく、その結果サービスもあまりよくならぬということになれば、これはとんでもないことだ。だから、地方自治体の自主性というものを
自治省は十分認めて、これは
法律によっているんですから、そして白書も行政的にいいところの例を出していく。人員が少数で、しかも十分住民にサービスしているところは給与も相当出しているんです。そういうところがうまくいっているなら、そういうところを、白書の中であまり一般的なことを書かぬで、できるだけそういういい例を並べて、あるいは悪いところ悪いものを出して、そして白書の中にやはり十分今日の日本の地方自治体のいろいろなあり方を示していく、そしてそのいいところをみんなに学ばしていくような、そういう報告をなさったほうがいいと思うんです。
したがって、そういう点から
考えましても、私はこの今度出されました通達が
——それは参考のためにと、あるいは行政的な指導にすぎないとかおっしゃいますけれども、こういうあまりこまかいことまでどんどん出されると、私はたいへんな
自治省のいわゆる地方自治に対する侵害になりはしないか、こういう疑いを持つわけです。この点ひとつお聞きしたいと思うんです。