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1972-11-10 第70回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月十日(金曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————    委員異動  十一月十日     辞任         補欠選任      青木 一男君     古賀雷四郎君      河本嘉久蔵君     中村 禎二君      伊藤 五郎君     高橋 邦雄君      栗原 祐幸君     林田悠紀夫君      渡辺  武君     星野  力君   委員松井誠君は逝去された。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 古賀雷四郎君                 柴田  栄君                 高橋 邦雄君                 津島 文治君                 中村 禎二君                 西田 信一君                 林田悠紀夫君                 桧垣徳太郎君                 船田  譲君                 前田佳都男君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 横川 正市君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 星野  力君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君    政府委員        外務省経済局長  宮崎 弘道君        大蔵政務次官   山崎 五郎君        大蔵大臣官房長  竹内 道雄君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省関税局長        心得       秋吉 良雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        経済企画庁長官        官房参事官    結城  茂君        経済企画庁長官        官房参事官    斎藤 誠三君        経済企画庁長官        官房参事官    大石 敏朗君        大蔵大臣官房審        議官       田辺 博通君        通商産業省通商        局通商参事官   西脇 敏彦君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○対外経済関係を調整するための租税特別措置法  等の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。     —————————————
  3. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続きこれより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最初に、政務次官に二、三の点について質問してまいりたいと思います、きょうは、本論の質問の大綱といたしましては、前回円切り上げの評価について、一つは、IMFの動向について、第三は、第三次円対策具体的内容等について質問してまいりますが、その前段として、いま、長期経済計画策定作業総理諮問機関である経済審議会の中で種々作業が進められておると聞いておるわけであります。この作業進行は現在どうなっておりますか。この辺の見解についてまず第一にお伺いしたい。
  5. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 新長期経済計画は、現在、経済審議会審議中でございます、大体の見通しといたしましては、この十二月半ばごろまでに答申を得たいということで、いま鋭意審議をお願いしているわけでございます。
  6. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その具体的な内容は、おもな骨格ですね、それはどういう内容になっていましょうか。
  7. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 内容は、大きな柱といたしまして、福祉社会実現ということと、国際経済社会国際協調の推進というものが二つの柱になっております。福祉社会実現ということは、まあ従来の経済運営がどちらかといえば生産優先輸出優先というようなことであったという反省にかんがみまして、社会資本の拡大であるとか、社会福祉の、社会保障の増大であるとか、そういった福祉政策を進めるということが主眼点ということでございます。そういう福祉政策を進めることによりまして、同時に、国際競争力も適度なところにまあ落ちつくと。それからいろいろな波打ちぎわの政策も立てまして、わが国貿易収支中心といたしまする国際経済関係が安定いたしまして、諸国間との間の関係もスムーズにいくと、まあこういったことを大きな柱にしております。それに伴いましてこまかな問題、いろいろあるわけでございますけれども、大きな仕組みといたしましては、その二本の項目を柱にしていろいろ御審議を願っております。
  8. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私の知り得た範囲では、この作業指針としては、まあ八月末から九月初めまで大体計画フレームを一次案として審議をする。それから二番目としては、九月から十月に分科会審議をやって、十月には一応の作業完了、年末に計画発表、こういう日程作業指針というものを決定をして作業を開始したと、こういうように聞いておる。  それからこの内容でございまするけれども、いま、確かにおっしゃられましたように、骨格二つでありまして、一つは、国民福祉の充実と、国際協調促進と、この二つを大きな表題にして答案作成というものをやっていく、こういう状況のようであります。内容をさらに具体的に申し上げますと、一つは、生活分科会というものがつくられているのですね。それから公共・金融分科会、あるいは環境・地域分科会産業分科会国際経済分科会等々に分かれまして、それぞれ分科会審議を経て総体的な答案作成をやっていこう、こういうことでありますが、国際経済分科会の中には今後の対外政策のあり方、方向ですね、あるいは国際収支見通し輸出政策及び産業構造、あるいは国際通貨体制と今後の為替政策経済協力海外援助の問題等々に大体項目が分かれておって、それらの柱に基づいて鋭意ひとつ検討し、作業というものを進めて、最終的に一定政策を出していこうじゃないかということになっているようでありますが、現行、どういう状況でこれは進んでおりますか、その内容について具体的にもう少しお知らせを願いたい。前段の問題はいいですよ、ことに国際経済分科会関係について十分伺いたい。
  9. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 現在、分科会作業進行中でございます。分科会におきましては、いま御指摘になりましたようないろんな項目議論しておるわけでございますが、大体、各分科会とも五回程度いろんな問題につきましてディスカッションをいたしまして、その分科会意見の取りまとめにそろそろ移りつつあるという段階でございます。で、各分科会作業と並行いたしまして、答申の、新計画基本となるべき項目につきまして、いわゆるわれわれ、スケルトンといっておりますが、大きな骨組みでございますが、そういったものの作業も進んでおりますので、各分科会におきましては、各分科会独自の問題と、その全体の骨組みの問題について、現在、議論を進めておる段階でございます。で、各分科会ごとに取りまとめた意見と、その全体の構想とをいろいろ調整いたしまして、まあ十二月中旬までに結論を得たいと、こういうスケジュールで進んでおるわけでございます。  いま、御指摘になりましたいろんな項目につきましては、まあいろんな議論もございまして、現在の段階で、この問題については、こういうふうに考えるというような最終的な結論が必ずしも出ておりませんので、以上の各項目につきまして、その結論はどうだということをいますぐ一言で申し上げにくいわけでございます。
  10. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは、本題の分科会作業終了は、前に私が言ったような日程で変わりはないですか。変更あるんですか。
  11. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 当初のわれわれが立てました予定が若干おくれておることは事実でございます。現在の進行状態によりますと、大体この十一月中に各分科会の討議を終了したいと、かように考えております。当初の予定からは若干おくれております。
  12. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 問題は今回の、あとで触れてまいりますけれども、第三次円対策の、でき得ればこういう基本に基づいた、長期展望に基づいた誤りのない対策をとるということが一番私は大事じゃないかと思います。そういう事態にきているんじゃないかと思うのですね。しかし、いまだにこの審議会進行状況も、たたき台をまだあれこれと審議しているような状況であって、一歩も作業が進んでおらない、こういう状況だと聞いているんですが、そういう状況でしょうか。
  13. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 作業がいろいろな関係でおくれておることは事実でございますけれども、われわれが当初に目標といたしました、まあ十二月中旬までには結論が出るというつもりで現在鋭意作業中あるいは審議促進をお願いしている、こういうことでございますので、まあ大体予定の日時には間に合うかと、かように考えております。
  14. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そこで、いま経企庁自体としても、こういう審議会審議と並行して、独自のひとつ試案作成のために検討すると聞いておるのですが、そういう事実はございますか。
  15. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 経企庁自体で何か別のことをやっているということではございませんので、事務局といたしましては、従来からも勉強しておりましたし、まあいろんな数字は持っておりますので、そういうものを審議会のいろんな分科会その他にお出しして、それをたたき台といたしましていろんな御議論をいただき、関係各省とも御相談しながらやっているということでございまして、審議会とは別にわれわれ事務局が独自の案をやっておるということではございません。まあその辺は一体となって作業している、あるいは議論していただいておる、そういう感じでございます。
  16. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 今後の長期経済策定計画にあたって、さっき言ったように、社会福祉国際協調、それからもう一つは、やっぱり従来もいろんな経済策定をやったんでありまするけれども、長期のですね、しかし、いずれもそれが実行されずに今日まで来ているというふうにわれわれは理解をする。そういう点においては、今回の長期経済策定計画というものは空文ではいけないと思うのですね。やっぱり実行可能なもの、こういうことになっていかなければいけないと思うのです。そういう意味合いにおいて、経企庁としてもみずから、いま言われたような長期経済策定計画というものを、間違いのない、そういう見通しの上に立った策定をやるためにいろいろ検討している。その検討の土台となるものは、これはやっぱり今後の経済政策の大転換、こういうことが主目標だろうと思うのですね。そういうことで、一つは、長期的な情勢展望誤りがないかどうかということをひとつ検討される、それから、いまあなたが指摘されたように、政策スケルトンですね、骨子をどうきめる、あるいはこの計画フレーム、こういう三つ骨格に基づいて、いま経企庁が具体的に策定の準備に入ったと、こう言うのですけれども、どの辺までそれは進んでおるわけですか。
  17. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) いまわれわれの議論しております内容でございますが、一つは、いまわれわれの考えております計画というのは、五年間のやや中期と申しましょうか、そういったものでございますが、いろいろな情勢が非常に変わっておりますので、そういった中期なり短期の見通しだけの問題では全部を律し切れないという面がございます。したがって、なかなか数字的には捕捉しがたい問題もあるわけでございますけれども、相当長期にわたる見通しを一応立てまして、十年とか十五年とかそういった長期の問題につきましても一応の考え方を想定いたしまして、その流れの一部といたしまして、この五年間というものがどういうことになるか、そういった考え方で、考え方としては二本建てというような考え方に立っていろいろ御議論をお願いしているわけでございます。そういうものを想定して議論いたしますときも、計量経済学ないろんな手法もございますので、そういったものを使いまして、いわゆるフレームと称せられるものについていろいろ試算をいたしまして、それをもとに議論をしておる段階でございます。
  18. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ことに私が聞きたいことはいまこの第三次円対策も出ているわけでありますが、これとかね合いの関係で、国際収支経常黒字、これは田中内閣総理大臣も衆参の予算委員会等答弁をなされておるのでありますが、GNPの一%以内に押える方法、あるいは円再切り上げ問題等々の問題が難航問題として、いま経企庁としてもどう取り扱うかということで前途迷っておるということを聞いておるんですが、その辺の見解はどういう見解を持っておられますか。
  19. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 両三年間に経常収支GNPの一%以内の黒字でおさめるという目的がございますので、われわれの計画の五年間には当然それは達成されなければならないわけでございます。したがって、少なくともこの両三年間にそういうことが達成されたあと国際収支関係がどうなるかということになるわけでございますが、そういったほぼ望ましい状態が引き続きそのあとにも続くようにということで、いろいろ試算をしておるわけでございます。経常収支黒字GNPの一%でおさまるということはなかなか長期にわたりましてもいろいろむずかしい問題もございますけれども、長期にわたってそういう状態を続けるためにはどうしたらいいかというようなことがいろいろあるわけでございますが、やはり長期の問題で考えますと日本経済構造自体が相当変わりまして、そういう望ましい体質になるんだということが、やはり長期的な目で見ますと一番大事なことではないかということになると思います。そのためには、従来の産業構造経済構造自体が相当変わりまして内需中心型、福祉中心型にならなくちゃならぬのだ、そう考えております。したがって、現在考えられております円対策というようなものももちろん重要でございますし、将来も引き続きやっていくべきだと思いますけれども、それと並行いたしまして、基本的な経済構造産業構造自体が、先ほど申し上げましたような二つ目標に沿うように変わっていくということが一番大事なことではないか、かように考えております。
  20. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この案が、最終答案ができるというのは時期的にいつごろですか。  それからもう一つは、いまあなたがおっしゃられましたように、主として今後の経済というものを、福祉内需優先型、こういうところへ指向するというんですが、その構想なり見通しというものを、いまもしあなたが考えてこういう方向ということを言い切れるならひとつ教えていただきたいと思います。  それからもう一つは、第三次円対策を十月二十日に閣僚懇で決定されておるわけでありますが、そういういまの経済審議会あるいは企画庁で具体的に検討されているものを踏まえて第三次円対策というものは決定されたんですか。  その辺の見解三つについてひとつお答えを願いたい。
  21. 大石敏朗

    説明員大石敏朗君) 第一のお尋ねでございますけれども、案の原案というようなものはいつできるかということでございますが、これは若干まだはっきりしたことはさまっておりませんけれども、大体今月の終わりないし十二月の初めごろまでには、大体大まかな案といいますか、そういったものができ上がるのではないかというふうに思っております。  それから第二のお尋ねでございますけれども、そういったいま私がさきに申し上げましたような経済構造なり、産業構造にどういうふうな順序で変わっていくかということでございますが、これは非常にむずかしいわけでございますが、それをどういうことで、どういう基準でとらえていくかという問題でございますが、一つは、これは通産省でいっておりますような産業知識集約度というようなものも、経済構造の変化をつかまえる一つの問題、一つ手がかりであろうかと思われます。これは非常にむずかしいわけでございますけれども、いろいろ通産省等と相談いたしまして、そういった全体の経済運営が変わることによりまして、それが産業構造にどう変わっていくかというようなものを、いろんな数字で捕捉したいということで、現在いろいろ作業をしております。ただ、内需型に変わっていくというようなことにいたしましても、なかなかそれが外形的基準といたしまして、それをどういうように捕捉するか非常にむずかしいわけでございます。したがって、そういった経済運営の方式が変わったから、それをどういう基準で、どういう手がかりでつかまえていくかという点につきましては、いろいろ努力をしておりますけれども、この段階で、こういう見通しで、こういう手順でこういうことをやっていくということは、ちょっといまの段階では時期的に申し上げられないのが非常に残念でございます。  それから、第三次の円対策等がこの計画とどういう関係にあるかということでございますけれども、現在長期計画そのものがお話し申し上げましたように議論中でございますので、正確に言うと、その辺の関係は必ずしもはっきりしておらない。しかし、いずれにしても、円対策というものも両三年間のやや中期的な見通しでございますので、われわれの考えております長期計画とは、相当程度期間的にもダブっているわけでございますし、われわれもその辺につきましては、関係各省と常に意見の交換をいたしておりますので、その内容の重要な部分につきましては、ほぼ同じ基盤の上に立って議論をしておるんだと、私としてはさように考えております。
  22. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それでは、前回のこの円切り上げは、昨年末、四十六年末に一六・八八%の円切り上げ実施をされたわけでありますが、当時は政府も、経済人も、あるいは学者、われわれもそうだったかもしれませんが、非常に打撃論をそれぞれ述べたと思うんですね。しかし、結果的には、その打撃というものは、わが国経済には大きな波状なくて切り抜けたという状況である、結果的にいって。そのことは、平価調整による国際収支改善効果、こういうものがわが国にはあらわれないで、円切り上げ後も国際収支大幅黒字がずっと続いてきた、こういう点を私たちがどう判断をするか、正確に理解していかないと、私は、円対策も今回出されたけれども、また同じようなケースを繰り返しはしないかということが非常に心配なんでありますが、こういう点についてどう一体大蔵省当局としては理解をされておるのか、その辺の見解をまずお伺いをしたい。
  23. 林大造

    政府委員林大造君) 昨年の円切り上げ効果わが国輸出入面にどういうふうな姿になってあらわれているかということでございますが、月によっていろいろ動きがございますので、四半期別に申し上げますと、輸出は昨年のニクソン・ショックのございました八月を含む七−九月には対前年同期比二六・三%と見ております。十−十二月が二三・四%、それからことしの一−三月が二二・二%、四−六月一二・八%、七−九月が一七・八%でございます。したがいまして、輸出は昨年の七−九月には非常な伸びを示しておりましたが、その後次第に沈静化しつつある。で、ことしの四−六月が非常に落ち込んでおりますのは、六月を中心として海員ストが行なわれまして、輸出船積みが非常に減ったせいでございます。輸出船積みのおくれが七−九月にずれ込んでおりますので、七−九月のほうが若干伸びがまた大きくなっております。  で、輸入のほうを申し上げますと、輸入のほうは、昨年の七−九月が対前年同期比マイナス二・三%でございます。十−十二月が五・一%、一−三月が一一・九%、ことしの四−六月が、一二・三%、七−九月が二六・二%でございます。  で、輸出入の差額の貿易収支の金額、これの前年同期比を便宜申し上げますと、昨年の七−九月……。
  24. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それはあとで触れます。
  25. 林大造

    政府委員林大造君) で、こういうような次第でございまして、これは全部ドル建てでございますけれども、通貨調整効果と、それから景気回復効果とが重なりまして、現在国際収支、主として輸出入中心になりますが、顕著に回復に向かいつつあるというふうに判断してよろしいかと存じております。
  26. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ、いままでの円切り上げに伴って、水田大蔵大臣は、当時の大臣でありますが、この経済効果が発揮されるのにはやや時期がかかる、大体一年ないし二年はかかる、こういう答弁だったのですね。あるいはまた不況下円切り上げ、そういうものが行なわれた場合には輸出圧力が強まる、これは当然のことなんでありますが、そういうお答えで今日まできておるわけです。しかし、いま林局長答弁されましたように、確かに輸出の割合から見れば昨年の七−九月が三六・三%であったものが、ことしの七−九月、前年同期の比較でいきますと、一二・八%ですから、約半分以下ということになっておりますね。  そこで、ちょっと数字的な問題を教えていただきたいのですが、一九七一年の経済分析で、これは経済白書にもちょっと出ておると思うのでありますが、輸出入動向についてドルベース一体ふえているのかどうか、その内容、あるいは円ベースでは一体どうなっているのか、あるいは数量ベースでは一体どうなっているのか、この辺の内容についてちょっと数字的に教えていただきたい。
  27. 結城茂

    説明員結城茂君) ただいまのお尋ねに対してお答えいたします。  ドルベース先ほど国金局長からお話しございましたので、円ベースについて申し上げたいと思います。四十六年度全体としては、円ベースで〇・九%の増でございまして、それが数量ベースにいたしますと一五・五%の増になっております。四十七年度になりまして、円ベースの価格、通関円ベースで申しますと、これは四十七年度の見通しを含めた計数でございますが、〇・三%の増、数量ベースにいたしますと二・八%の増ということになっております。なお四十七年度の上期、下期の前期比の増で申しますと、四十七年度の上期につきましては三角の〇・二%、下期の見通しを前提にしますとプラス三・九%ということで、数量ベースで申し上げますと、四十七年度に入りましてからほとんど横ばいという状況になっております。
  28. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは四十六年度の輸出入動きをそれぞれドル、円、数量でいま発表してもらったわけでありますが、大蔵省外国貿易概況日本貿易月表、それから内国調査統計課等々で一定の資料を出しておられますね。それによりますると、私の見た範囲では、四十六年度のいわゆるドルベースというものは増加をしている。非常にこれが多い。それからもう一つは、円ベースの場合は低下をしておりますね。それから数量で頭打ちという状況じゃないかと思うんですが、これはそのようになっておりますね。
  29. 結城茂

    説明員結城茂君) そのとおりでございます。
  30. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それが私は非常にふしぎに思うんでありますが、外貨が一貫して累積をされて、おそらく二百億ドルをこすだろうという状況になっている。そういう状況の原因というものは一体どういうところにあるのか、この辺の見解はどうですか。
  31. 林大造

    政府委員林大造君) 外貨準備の増加ということでございますが、御案内のとおり外貨準備というのは毎年の流れのたまった残高でございます。したがいまして、輸出入の金額が毎年プラスである限りにおきましては、その分だけ外貨準備がふえてくるということになるわけでございます。で、国際収支の中身は、大きく二つに分けまして、経常収支と資本取引に分かれるわけでございますが、その経常収支の大宗は輸出入でございます。輸出入の差額がただいま申し上げましたように、輸出は次第に伸びが鈍化しつつある、輸入は次第に伸び回復して大きい伸びを示しつつあるような状況でございますけれども、依然として輸出入の差額はかなりの黒字になっております。その黒字が毎年たまってくる。したがって、毎年外貨準備が増加するのはやむを得ないと存じております。そのほかに資本取引面がございます。資本取引面につきましては、長期の資本の動きと、短期の資本の動きとがございまして、短期の資本の動きにつきましても、長期の資本の動きにつきましても、現在のところは民間の気持ちとしては、先行き円高を予想いたしまして、資本は流入の圧力が強い、それを極力防止する措置をとっております。ときによりまして、季節的な要素もありまして、資本取引動いておりますけれども、外貨準備がふえる基本的な圧力は経常収支黒字にあるというふうに存じております。
  32. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 われわれの考えとしては、これは誤っておれば指摘をしていただきたいんですが、円切り上げが行なわれたわけですから、切り上げと同率だけの輸出価格の引き上げというものが本来ならば上がっていくのが当然だろうと思う。さらに利潤率が、輸出業界として利潤率を維持することはできないという結果になるので、それが一貫してドル大幅黒字でもって累積をされ、今日の事態を招来をしたということについては、何かこの輸出企業の体質上非常に私は問題はないだろうか。こういうふうに考えるんですけれども、その辺の見解はどう一体お考えになっていらっしゃるでしょうね。
  33. 林大造

    政府委員林大造君) 輸出企業の問題でございますけれども、円の切り上げが行なわれますれば、当然この切り上げ率に近いドル建ての価格の引き上げが行なわれるわけでございます。ドル建ての価格の引き上げが完全に行なわれます場合には、円とドルとのレート調整の効果は結局海外の輸入業者に転嫁されることになります。しかし、完全に転嫁できるのは、これは租税の転嫁論でも同様なことが言えるわけでございますが、非常に輸出者の力が強い場合でございまして、輸出者の力が必ずしも十分に強くない場合には、一部は輸出者が負担しなければならないという場合もあり得るわけでございます。その場合にどれだけの割合が転嫁されたかということになりますと、これはトレンドとして従来輸出価格がどの程度上昇してきているかという判断が加わりますのでいろいろと作業はむずかしいわけでございますが、現在のところトレンド調整をいたしませんと、円切り上げ効果は、九月で大体八割くらい輸入者のほうに転嫁されている、八割三分ぐらい転嫁されているという計数を私どもははじいております。このような姿で依然として輸出伸びているということでございますが、しかし、金額的にはドル建ての金額では、ドル建ての価格が上がりました関係で依然として輸出伸びておりますけれども、数量でとってみれば伸びは非常に鈍化してほとんど横ばいになっているということでございますから、やはり価格面を通じましてのレート調整の効果は顕著にあらわれてきている、日本輸出企業はそれなりの調整を受けているというふうに判断してよろしいのではないかというふうに考えております。
  34. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまのような説明があると思うんですが、私はやっぱり円切り上げて、その結果は先ほど申し上げましたように経済効果というものに多分に期待をする、その経済効果方向としてはいわゆる輸出に向けていたものを国内需要、こういうものに転換をしていく、あるいは先ほど経企庁の方もおっしゃられたように社会福祉優先ということで、社会資本の投下というようなことも広範には含まれるだろうと思うのでありますが、いずれにいたしましても、そういうことをやったのにかかわらず、日本輸出産業としては一貫して黒字を続けると、こういう現実だけはこれは免れられないのでありまして、だから悪く見れば、円切り上げあとにおいても、それらを利潤でもって吸収でき得るだけの産業の強さというんですか、先ほど局長輸出力の力ということを標榜されておりますが、そういうものがあったんじゃないかと思うんですね、その点はどうですか。
  35. 林大造

    政府委員林大造君) 輸出価格の上昇を、円切り上げ率一六・九%のうち、九月現在で一四・一%だけのドル建て価格上昇を達成したいということは、やはり日本輸出競争力は強かった、逆に言えば、レート切り上げの効果をそのままに受け取っているというふうに解釈して差しつかえないかと存じます。
  36. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それでこれは具体的な内容でひとつお伺いしたいんですけれども、円切り上げ以後、輸出産業の中で、輸出価格を引き上げたという会社はございますか。これは資料に——ちょっといま資料見当たらないんですが、輸出産業の業種別、その数が資料にあったと思うのでありますが、そういう中で、ことに機械産業ですね、これはややそれに近い価格引き上げをやっておるわけですけれども、あるいは鉄鋼とか繊維もこれはアメリカのいわゆる自主規制、こういうものに基づいて一応値上げをして、もちろん国内までその対象としてやられておるわけでありますが、こういう特定産業はございまするけれども、そのほかの各産業で、もし輸出単価を引き上げた会社があれば、ひとつ教えていただきたい。教は総数どれくらいあって、単価引き上げの会社がどのくらい、これをひとつ詳細に教えていただきたい。それから説明は受けますけれども、あとで資料をひとつ御提示願いたいと思うんです。これはあったと思ったんですが、いまちょっと見当たりません。
  37. 林大造

    政府委員林大造君) 実は私通関統計の詳しい中身までは、私からよりも、むしろ関税局なりあるいは通産省からお聞き取りいただいたほうがよろしいかと存じますが、私が手元に持っておりますドル建ての通関価格の上昇率、これを四十六年の七月を一〇〇といたしまして、ことしの九月がどうなっているかということを申し上げますと、テレビは三七・一%アップになっております。ラジオが三三・〇、それからテープレコーダーが三四・五、自動車が一九・三というような数字になっております。船舶は残念ながら八月しかわかりませんが、二二・九、精密機械が一四・八、手元にある資料はそういうことになっております。  で、会社別の計数になりますと、私どもではとりにくいので、通産省のほうからお答えいただきたいと思います。
  38. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) ただいま通産省のほうも、各企業別の資料はまだとっておりませんので、なかなかただいま局長から申されました以上の数字はないわけでございますけれども、たとえば自動車にいたしますれば、円切り上げ後値上げいたしまして、日本の自動車はアメリカの三大企業の小型車よりもはるかに高い値段で売っておる。またテレビにつきましては、アメリカの大メーカーのテレビよりも高い小売り価格になっておる。したがいまして、いろいろとその販売について問題が生じてきておる、そういうふうに承知をいたしております。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは資料はあるわけでしょう。輸出単価について品目別輸出単価を三ヵ月移動平均をして輸出額にウエートを置いて加重平均を算出した採用品目が百三十二品目、こういうことで明確に資料を出しているやつがあるんじゃないですか。それはありませんか、大蔵省通産省
  40. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 詳細な点についてなお私ども事務的に検討してみますが、品目別のものでございましたならば、通関統計上資料はございます。ただ、会社別になりますと、私どもとしては資料としては不可能かと思いますが……。
  41. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私が持っている資料には、大蔵省外国貿易概況日本貿易月表、それから内国調査統計課、ここで大体扱った資料が、対象品目百三十二品目を対象にして、いま言ったような輸出額にウエートを置いた平均加重方式でもって計算をした内容が出ておると、こういうことを知っているわけなんですけれども、それは資料としてございませんか。
  42. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 御指摘のような品目別の資料でございましたならば調製できます。ただ、会社別になりますと、いかがかと思います。
  43. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 企業別というと、大体どういう種類に分かれておりますか、ちょっと教えてください。
  44. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 私ども、外国貿易概況ということで毎月統計資料を公表いたしておりますが、それは輸出価格につきましては、食料品、魚介、繊維、織物、衣類、金属、金属製品、機械、雑品、そういったぐあいに、また通産関係でございますと、個々の品目ごとに統計的な数字は公表させていただいておりますが、企業別の数字につきましてはただいままで公表はいたしておりません。
  45. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあでき得れば午後の審議に間に合うようにその関係資料をひとつお願いしたいと思うんですけれども、それは可能でしょうか。
  46. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 私どもは、各税関の通関統計、輸出輸入から集計したのがいまの品目別でございまして、末端からの数値といたしまして企業別、会社別の数値はとっておりません。したがって、私どもといたしましては御要望の点には沿いかねると思います。
  47. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 通産省はどうですか。
  48. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) ただいまいかなる資料がございますか、取り調べておるところでございまして、ただいま本省と連絡をいたしまして、いかなる資料がございますか連絡をいたしておるところでございます。
  49. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは必ずあるはずですから、両省どちらでもけっこうですから、ひとつ資料として提示を願いたいと思います、これは委員長にお願い申し上げたいと思います。  それでいま局長が一部発表されたテレビやラジオあるいはテープレコーダー、これは確かに上がっているんです。これは機械産業の中に入っているんですから、こういうものだけが上がっていることは私も理解をしている。それから、さっきも指摘したように、鉄鋼とか繊維、こういったものも上がっていることは了承している。しかし、その他の輸出産業の各製品品目というものは、私の理解する範囲では輸送単価は上がっておらない。こういうことで理解をしておるんですが、それはいずれ、しかし、午後に明確に資料見たところでやっていきたいと思いますが、それで、そういうぐあいに、一応これは推測になりますから当たっておるかどうかわかりませんけれども、そういうぐあいに円切り上げがあって、輸送単価を上げずにして、なおかつ黒字体制がとり得るということは、どうも私はいまの日本輸出産業のゆがみといいますか、そこにわれわれが理解のできない一つのからくりというものが存在をするのではないかと思うんですが、この辺については一体どう考えておられましょうね。
  50. 林大造

    政府委員林大造君) 御指摘の御趣旨が必ずしも正確に私理解できたかどうか、したがいまして、お答えとして十分であるかどうか、若干疑問でございますが、実はかねてしばしば指摘されます点は、日本輸出産業は国内向けの販売価格と、輸出向けの販売価格とを差別しておるのではないか、輸出に対しては特に低い価格で輸出しているのではないか、で、輸出につきましては、たとえば固定費と比例費といった場合に固定費の分は割りかけないで、比例費だけのコストで計算して輸出しているので、いわゆるダンピングになるのではないかというような御指摘がときどきなされたのを伺っております。で、そのような点につきましては、その担当の品目ごとに状況を調べませんと判断がつきかねるわけでございますが、私が聞いた範囲内ではいろいろな事情がある。たとえばアフターサービスが国内向けの場合には、生産会社が負うことになっているが、輸出品については輸出先の企業が受け持つことになっているとか、あるいは嗜好が違いまして、たとえばテレビで申しますと、日本の国内で販売されますのは、そのキャビネットが非常に落ちついた上等なものでないと売れ行きが悪いのに、海外では実用的であればよいので、したがって、キャビネットに金が要らないのであるとか、あるいは輸出は大量でしかも、資金化が比較的短期に行なえるので、したがって、安い値段でも引き合うのであるとか、いろいろな御説明があったのを記憶いたしております。で、そのような諸般の点を考慮いたしまして、なお依然として二重価格が行なわれているということであれば、それは通産省のほうがしかるべく御指導になっておられると存ずる次第でございます。私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような、ドル建て輸出価格の単価が円切り上げ幅に近いところまで上がっているということは、レート調整の効果が着実に波及する基礎ができ上がっているという意味で、非常にまあ歓迎すべき事態であるというふうに解釈している次第でございます。
  51. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まああとで、ひとつ資料いただきましてから、また再質問してまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、いまの林局長の御答弁を聞きますと、一貫して産業優先というか、弁護方式の答弁なんですね。それでは私はさっき経済企画庁の参事官がおっしゃられたように、ほんとうの意味で、日本輸出産業を含めたこの産業構造というものを、あるいはこの経済の成長パターンというものを大転換をして、いうところの総理福祉優先あるいは内需指向型、こういうものに持っていくという転換の発想というものは、その中に全然浮かび出てこないんじゃないかと思うのですね。だから、その辺に対して、企業に対するわれわれはとても理解のできない何らかの存在するものをやはり徹底的に今回追及する必要があるのじゃないかと思うのですね。端的に言えば、私は輸出産業がいままで単価を上げずして、やはり一定の利潤を獲得できるということは、きわめて——まあ一定の利潤どころではない、高利潤ですね。そういうものが獲得できるということは、一つは何と言ってもあれじゃないでしょうか。労働者に対する労働強化なりあるいは低賃金、これをそのままに放置をしてやっているところにそういう事態というものが一つあらわれているのじゃないかという気がするのですね。あるいはまたもう一つは、そういうものをさらにてこにして、そしていわば不況悪循環を唱えて正当化していく。そういうものに一貫して政府の態度というものがつながっていく。これでは私は幾ら口で実際問題として輸出抑制をして、そして外貨減らしをやっていこうと言っても、これはもうできない相談じゃないか。そういう点をほんとうの意味でどう一体考えられるか。これはまあきょう大臣おりませんから、政策上の問題多分に入りますから、政治判断も入りまするから、局長にあるいは無理かもしれません。一応事務当局として、そういう点は率直に一体どう判断をされているのか。見解が発表できるならひとつ聞かせていただきたいと思うのです。
  52. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) ちょっと抽象論になるかもしれませんが、おっしゃるように一部の商品につきましては、その円の平価の調整分を一〇〇%転嫁してないというものがある、その場合に、それは当然円建ての価格では、従来よりは低い手取りの収入しかないわけでございますから、その分だけは利益が削減されているはずでございます。ただその削減を可能ならしめる過程というのは何だ、こういうことになるかと思いますが、これは経済白書でも一部その時点での調査が発表されておりますけれども、ある特定の商品をトレースいたしまして、これはその原材料から中間製品、製品、それから販売、つまり貿易、そういう段階ごとに、それぞれの段階ごとにマージンがございます。このマージン部分を少しずつ切り詰めていく、そういう調査もございます。おっしゃるような賃金を圧縮してコストを低減しているのではないかということにつきましては、さだかでございませんけれども、一般的な指標から見ますると、賃金のベース、賃金指数から申しましても、前年に対しまして一五%オーバーするような毎月の指標でございますから、特にまたその特定の企業だけが賃金を圧縮するということは当然に許されないといいますか、労働市場との関係からできないことではないかと思いますので、おっしゃるとおり今後の日本経済のあり方と申しますのは、従来の輸出中心、企業優先主義というものから福祉型に転換しなければならない、こういう問題意識で、そういう意味合いから輸入促進し、それから輸出振興のためのいろいろな特別措置、補助的なもの、これを切っていこう、こういう基本的な考え方から、今回のいわゆる円対策というものを決定したわけでございますから、どうぞその辺を御了解願いたいと思います。
  53. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあなかなか理解できないのですよ。これは具体的な品目であとで質問していきたいと思います。  かつてカラーテレビの場合に、いわゆる外国向けと国内販売と、これが大問題になったときございますね。まさしくアメリカあたりではダンピング、いわゆる投げ売りじゃないかというようなことで盛んに攻撃を受けた事例がある。そのときに松下さんあたりどう一体国内販売対策をとったかというと、確かにそれは従来十九万のテレビを、十六万円と三万円見当引き下げました。しかしこれは流通体制のもとでやったので、松下本業の入ってくるふところの利潤というものはいささかも減ってないんですよ、実際調べて。これあとまた消費連盟から問題になって、再度会社がいろいろ抗議を申し込まれた事例は最近あったわけですから、具体的な事例としてそういうことがある。いま自動車関係でもそうですね。私こまかくいま持っておりませんが、理解するところでは、普通中型乗用車というものは三十万で行くというんですね、向こうに。原価三十万。そのわずか六割掛けくらいで外国には行って、いわば収支とんとんというか、中型でもうけているらしいけれども、これは栗林先生専門でここにおられますが、いずれにいたしましても、国内で販売すると百万以上ですよ、これ。もちろん税の態様その他も違います。いまみたいに乗用車について税からいけば九つも税金がかかるという状況ですから、そういう税制の仕組み違うでしょうけれども、いずれにしても国内と国外の販売体制の値段というものは非常に違ってくるんです。こういうことを行政上から見て放置をしていることが一体いいのかという。国外からダンピング論で盛んに攻撃をされる、国内的には物価上昇その他でもって盛んに攻撃をされる、両面からやられているわけですからね。そして政府はほんとうに物価抑制策をとっていくというようなことは口では言っているけれども、ますます物価は口で言えば言うほどはたから上がっていく現状でしょう、いま。これで一体国民が納得するはずがないと思うんですね。だから、これはもう具体的にもしできれば、そのメーカーごとの、輸出品目ごとの輸出単価あるいは生産コストあるいはその販売価格、流通段階がどの程度あって、マージンがどの程度一体落とされておる、こういうことについて大蔵省としての所管外かもしれませんけれども、これは経企庁あるいは通産省、こういう関係になるかもしれませんけれども、そういうひとつ具体的な事例で資料出していただきたいと思うんですがいかがでしょうか、通産省。まずさしあたってカラーテレビと、それから自動車です。これは大型、中型、小型というぐあいにそれぞれございましょう。トラック、おおむね大綱、品目を区別をして出してもらえばいいと思いますが、その点はどうですか。
  54. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 先ほど国際金融局長から非常に一般的に御説明がございましたように、輸出に出します場合と、国内に回します場合とでは、いろいろと関係のコストが違いまして、国内販売価格、輸出FOB価格は違いますけれども、これは当然に正当に説明がつく価格政策が行なわれているというふうに私ども承知をいたしております。ただいま価格問題につきましての資料の御請求がございましたが、個々の企業にわたる資料というのは私ども持っておりません。私、通商局のものでございますので、本日重工業局のほうにそういう資料が一体あるかどうか聞いてまいりたいと思います。
  55. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 通産省きわめて不誠意だと私思うのです。私すら一応資料は持っているのですよ。それはないはずはないのですよ。それがなかったら、円切り上げとかなんとかの場合に、影響力について政府として一体方針出せますか。そういうことは了承できません、そういう答弁は。
  56. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) ただいま関係の部局に連絡をとりました。非常に非公式に勉強したような資料はないわけではございませんけれども、きわめて非公式なものでございまして、ここで御審議のため御提出できるかどうかちょっと自信がないという見解でございます。
  57. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは自信のある人を出してもらわなくちゃ困るね、それはないはずがないのですよ。それは私、資料の関係は、四十七年度年次経済報告の中にも相当数の資料が包含されておりますが、そういうものを若干引用しつついま質問しているのですから、それがもしないというならば審議できませんから一応打ち切りますが、それはよく調べていただかなくちゃいけないと思うのですね。そういう答弁じゃ、私審議できませんよ、
  58. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) きわめて個々の商品にわたります問題でございますので、午後重工業局の担当の詳しい者を出席せしめるように連絡を申し上げます。
  59. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま言った資料は正式に資料で出してください。
  60. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ちょっと速記とめてください、   〔速記中止〕
  61. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記を起こして。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時再開とし、暫時休憩をいたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後二時十九分開会
  62. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし休憩前に引き続きこれより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  63. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 実際のところが、午前中に通産省に各企業別資料の提出を要求したんですけれども、いま説明ですと、それは各会社ごとの、企業別ごとの資料は提出しかねると、こういうことなんですが、その理由をちょっと明らかにしていただきたい。
  64. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 輸出価格、その他価格の問題につきましては、企業といたしましては、その企業の行動に関します最高の秘密というふうな態度で事態を処しておりまして、私どももいろんな事件が起こりましたとき、たとえばいろんなカルテルの調査とか、そういったときには、ときたま調査をいたすことがございますけれども、自由経済でございますので、その企業の秘密にまでは行政としては当然には立ち入っていない、そういうふうに御了承をいただきたいと思います。
  65. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そういう答弁では私はどうも理解ができないんです。なぜかといえば、やっぱり為替そのものについては、これはまあ政府自体が介在することがたてまえになっているわけですからね、取り扱い上は。もちろんこれは商取引として企業相互間の自主取り扱いというものは、これは国内同様あることは当然です。しかし、そういう為替介入原則の上に立って、いままで国際協調、あるいは国際の信頼、各般の商取引に政府が一々政策の立案、その他でもって介入をしてやってきておるわけですから、そういう意味合いからいけば、今後やはり、たとえばテレビの場合ですね。聞くところによると、現在アメリカにおいて独禁法違反だということで告発をされておる、こういう事態もあるわけですね。そういうものを商社同士間の取引にしておけば、ひいては国際信頼の問題にまで発展をするということになるわけですね。だから当然そういうものに対しては一定の行政介入の上にこれを善導していくという立場を取らざるを得ないと思います。だから、まあきょうは参事官ですから、そういう政治判断を含めた総合取り扱いについては御回答無理だと思いますから、一応、了承はしませんけれども、答弁で、議事は進めます。いずれ機会を見まして、委員長のほうにもお願いをいたしまして、理事会等に通産大臣の出席要請の上に、そういう部面での取り扱いを明確にしていきたい。こういうことだけ要望として申し上げておきたいと思います。  それでいま相対的な資料はいただきました。非常に急がせて申しわけないんですけれども。これを見ますと、これは「七月の輸出価格指数、対前年同月比上昇率」ということになっているわけですが、たとえば、前回円切り上げ割合というものは一六・八八%ですね、そうしますと、食料品は一六・五%、ややそれに近いということ、それから繊維原料、これは四・七%、あるいは織物用糸一・四%、非常に相対的に見まして、この欄でいくと驚くなかれ円切り上げ率よりも上昇している部分が多いですね。これはちょっと私の調査資料と合わないんですが、論理がちょっとおかしくなるのですけれども、これは高いやつばかり持ってきたわけじゃないですよね。百三十二品目に対して調査した内部をぼくはさっき指摘したんだけれども、これは幾つありますかな、百三十二品目はないですね、いずれにしても。だからその一部分ということになるんだろうと思うんですが、これは高いものだけを拾いあげてきたんじゃないでしょうか。そうじゃないですか、どうですか。
  66. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 大蔵省で発行されております外国貿易概況の中に輸出価格指数が出ております品目を全部集計いたしたものでございます。そういう人為的な操作は加えておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  67. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあいずれちょっと私の資料調査と違いますから信憑性の問題で疑義がありますから、これはいずれ機会を見てまた再審議することにいたします。  で、大蔵省のほうにちょっとお伺いをいたしますけれども、先ほど経企庁の参事官から回答があったわけですが、まあ今後はできるだけ社会福祉ないし内需喚起ということで産業優先からそういう部面に経済全般の転換方式というものをはかっていきたい、こういう意向があったわけでありますが、大蔵省としてはその面に対する今後の経済政策についてどういう考えを持っていましょうか。
  68. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 先ほども御質問がありましたが、今回の円対策、それから現在企画庁でもって作業を進めておられます長期経済計画長期経済計画考え方、その基礎は国際協調促進、それから福祉社会の建設、この二つが大きな柱になっていると存じております。その点におきましては、今回のいわゆる円対策、まあ私どもの大蔵省考え方といたしましても、先ほど来申し上げておりますように輸入の拡大、関税の引き下げ、あるいは輸出振興のいろいろな措置の撤廃、そういった一連の対外政策が結局国内的には福祉社会の建設、産業構造経済構造の転換につながる、そういう意味で基本的な姿勢、その二つの柱、これは共通と認識しております。
  69. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは「エコノミスト」ですが、十月三十一日号ですが、これはおもしろいと思ってちょっと一読をさせていただいたのですが、その三八ページなんですが、「円再切上げをどうみる」ということで、「インタビュー構成」ということでやっているのですね。各界の人が意見を言っている。その筆頭に細見卓さんが、大蔵省の顧問ですね。IMF総会等にも行っていろいろと活躍をされたつわものなんですけれども、こういうことを言っているのですよね。「円再切上げについてのアンケート」ということで、三項目の設題をいたしまして、一つは、「こんどの第三次円対策効果があると思いますか、その理由」、二番目は、「いまの時点で再切上げは避けられると思いますか、その理由」、それから三番目は、「A 再切上げが避けられないとすれば単独切り上げか、否か」「その時期、幅、影響は」、それから「B 再切上げが避けられるとすれば、どんな方法がありますか」、こういう設題のもとに大蔵省顧問の細見さん、あるいは桑野仁という中央大学教授、あるいは竹内一郎東京銀行調査部長、あるいは神野正雄さん、これはBIAC日本委員会の副会長さん、それから櫓山廣さん、これは丸紅社長ですね。あるいは富塚文太郎という東京経済大学教授、それから私たちの大先輩である木村先生が入っております。それから天野明弘さんで神戸大助教授、それから自民党の桜内政調会長、こういうことです。この自民党の桜内会長と、それから細見さんのちょっとアンケートに対する回答を引用させていただきたいと思うのですが、「政府の新しい円対策は、そのまま放っておいても国際収支黒字問題の解決をもたらすものとはいえないだろう。」とはっきり断言しているのですね、冒頭で。それから「これまでの生産力増強第一主義、輸出第一主義が反省され、日本経済方向を転換する時期に来ているわけで、円対策はその転換のテコになるものと考えている。国民生活、福祉優先の経済に変えることが目下の急務であり、それが実現できれば、円問題も解決されるはずだ。」、というのはこの今回政府経済閣僚懇談会で決定をした、いわば第三次円対策の第五項に該当する条項を私はさしておると思うんですが、質問はあとでやっていきますが、そしてさらにこういうことを言っておられる。「そのためには政府はもちろん、産業界、消費者など広い国民各層にわたる発想の転換がなくてはならない。魔法の杖のように、円対策を出せばそれで片づくというものではない、政府円対策を有効にするかしないかは、ひとえにこれからの日本全体の努力にかかっている。」、これはちょっと私逃げ道だと思うんですが、いずれにしても表現どおりである。「円を切り上げることによって不均衡を解決するよりも、経済を国民生活優先、社会資本充実の方向に変えることによって解決する方がベターであろう、ということで努力している。このことは、国民のコンセンサスでもあろうと思う。」「企業が二八〇円の自主レートでやっているから、公的レートも二八〇円にというような主張には何の根拠もない。これでは仮に二八〇円にレートを下げれば、企業はさらにそれを上回る自主レートで輸出することに、相も変らぬ努力をすることになり、いわば悪循環に陥ってしまう。要は各国との協調のもとで、世界貿易を拡大させながら、日本も均衡させるためには何が必要かということである。このためには日本経済構造をいわゆる〃柔構造〃に変えることが大切なので、対外援助政策輸出入政策など全般にわたり自分だけよければといった態度は許されないだろう。」こう明確に実は言っている。私は一面賛成するところがだいぶあるんです、正直申し上げて。で、こういうことの上に立って、今回の政府の第三次円対策というものがつくられているわけですが、この細見さん、大蔵省顧問としてじかに大蔵大臣等に同行して、IMF総会その他国際各一級機関に出席して主役を果たしてきた人がそういうことを言っているんだけれども、いざ政府から出てくる内容というものは全く骨抜きにされたようなかっこうになっているんですね。これは一体どういうところに原因があるか。内容としてはいろいろ聞いております。たとえば通産省案がある、あるいは経企庁意見があり、あるいは大蔵省案があるということをいろいろ言われておりますけれども、だから妥協の産物として現行、政府内部としてはこの程度のことしか意思統一ができなかったのか、この辺の実態について、これはちょっとむずかしいんだけれども、政務次官、いかがですか。
  70. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) ただいま細見顧問の書いたのを読まれまして、これは細見顧問の考え方には違いないと思います。また戸田委員指摘されるように、IMFの総会に行かれて活躍されたことも事実だと思います。大蔵省といたしましては、やはり政府一体となって成案を得なければならないし、でき得ること、またでき得ないこと、ここをよく判断をし、最終的には十月二十日に決せられた成案によって円対策を進めるということ、またそれによって円の切り上げに対する対策としては現在やっていけると、こういう判断のもとに今回御審議願っておる法案、またその他の施策とあわせて進めていくという決意のもとにやっておるのでございます。でありますので、いろいろな、党内においても、あるいは政府部内においても、成案を得るまでの間には、それぞれの立場からいろいろ強い意見あるいは妥協的意見ということも経過的にはあったと思います。でありますが、現在御審議願っておる法案並びに諸施策によって円の切り上げはやらなくてよいという考え方、またそういうふうに確信を持っておる次第でございます。
  71. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 実際具体的な三次案というものを検討いたしますと、三次円対策の十月二十日の閣議決定とは相当隔たりがあるんですね。いま指摘をいたしましたように、細見さんの意向はこういうことがあって——ちょっとお伺いをしますが、顧問というものはどういう関連を持つんですか、大蔵省では。その実務作業について、たとえば指導、監督とか、そういういわば政策介入とか、あるいはそういう内容まで包括をされる立場なんですか、その辺の見解をひとつ示していただきたい。
  72. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) 顧問の職務につきましては、大蔵省の設置法等において明確に規定されておらないと、こう私は承知しておりますが、顧問制を置かれておる、私の常識では、各省に置いておるのは、大臣の訓令かによって、その仕事、あるいは大臣の特に諮問するような事項について置かれておるように承知しておりますが、その経過は私実はよく承知しておりませんので、官房の担当の方からお答えしていただきます。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 制度上どうなっているかということを説明願えればいい。当然そうすれば待遇も入るでしょうが、待遇は要りません、きょうは。制度上どうなっているか。
  74. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) ちょっと資料を持っておりませんので、後ほど明確にいままでの経過並びにその根拠規定を申し上げることにしますが、私承知しておる範囲では、いま待遇等は説明不要ということですが、別に俸給その他はないように聞いております。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 今回、田中内閣が発足いたしまして、アメリカ大統領のいわば顧問制度、キッシンジャー補佐官とか、報道部長の補佐官とか、そういう体制を、たとえば総理自体としては諮問という形で設定をされましたね。だから、あるいは大蔵省もそういう立場で、大臣の諮問ということかわかりませんけれども、そういうことで理解をするなら、私はもっと政策的な影響というものは当然持つべきだと思うんです。だから、細見さんが言われているように——どだい細見さんも長年大蔵省におられて、数年前までは財務官をやり、主税局長をやり、そういう意味では最高幹部だったんですね。だから、そういう方がいまの制度で顧問ということで置かれるとすれば、当然やはり大蔵省の企画立案については参画するものという、われわれはそういう意味合いを含めて理解をしておるわけなんですが、それがどういうことかですね。たとえば関係職員に影響をしていくのか、大臣だけにとどまっていくか、参考意見として諮問程度で終わるのか、これはわかりませんけれども、あとでひとつ説明願いたいと思うんですが、いずれにしても細見さんが具体的に提案をし、回答をしておることは、今次、第三次円対策の五項に該当する事項を私はさしていると思うんですが、で、三次対策の五項というものはどういうものかというと、「福祉対策の充実」ということをいっているんですね。しかし、今回の対外経済調整に関する法案の作成にあたっては、この点は一言も触れられていないですね。それは確かに、関税定率二〇%何品目か下げるということになれば、イコール輸入体制の単価というものは下がってくるから、当然物価ダウンの方向に行くだろうという想定はいろいろと立ちます、関連のものですから。しかし、ずばり社会福祉充実に対するいま指摘するような内容について、こう、こういう施策を講じましたよというものは何もない。ところが、三次対策でどういうことをいっているかというと、「相対的に立ち遅れている社会資本の整備を一段と促進するとともに、わが国が当面する緊急の課題である国際収支の均衡回復に資するため、公共事業等の追加を含む予算補正および財政投融資計画追加の措置を講ずる。」、これは補正予算にやってあることを単に合法化した。後段はそうだと思うんですが、これは私は反対でありますけれども……。次に、「引き続き、今後とも社会、資本の整備、社会保障の充実、環境保全対策の拡充、週休二日制」ようやくここで初めて具体的な内容が出てはきた。こういうものを「強化し、福祉指向型経済への転換を促進する。」と、こうなっている。しかし、今回の補正予算の内容を一べつしてみると、これは予算委員会でいろいろ審議しておりますから私は割愛をいたしますが、そういうわれわれが期待する、ここでうたわれているような具体的施策は補正予算の中にも残念ながらないんですね。ない。じゃ、四十八年度で一つの目玉商品といわれる年金関係はどうかといえば、いま四十八年の厚生省の主として老人対策である年金対策や、あるいは四歳未満の児童の医療費無料化の問題あるいは重症身体障害、いろんな底辺に苦しんでおるそういった国民大衆が相当おるわけであります。こういう問題について、この間うちの成瀬委員が、植木大臣に目玉商品は何かと、こう言ったら、老人対策だ、これだけは大臣も答えている。その老人対策にしても、じゃ年金はどういうことをやられているかというと、わずかにこれは、いま数字持っていませんが、私の記憶するところでは、老齢福祉年金について三千三百円を五千円に引き上げる。母子福祉年金についてこれは四千八百円を六千五百円に引き上げる。それから障害福祉年金について七千五百円にする、現行五千円を。これだけなんですよ、予算要求の額、厚生省は。こんな状況でいって、まあ、これは予算委員会の審議条項だから私はくどくは言いませんよ。言いませんけれども、厚生省の、大蔵大臣や内閣総理大臣が言っているような目玉商品はそういうところに置くんだと、こう言っているけれども、結果的に予算要求に入ってきているのはその程度しかない、やってないんですね。しかし、一方、自民党政調会にいきますと、国民年金は五万円にいたしますとラッパを吹いているわけでありますが、これは全然中身がないんですよ。だから、そういうことで、何か産業優先化するような方向だけでの今回の円切り上げというものをやられていることは、どうも私は、いままで総理施政方針演説なり植木財政演説なり、あるいは各委員会での答弁内容がきわめて空虚に感ずるんですね。こういう点、私は、ほんとうの意味で、いま細見さんが——文面として残るんですね、これは少なくとも部内広報や何かじゃないですから、一般社会人にすべて読まれているわけですから。そういう公約すらも破っていくようないまのこの政府の姿勢についてどうも私は納得いかないんですね。こういう点をどう一体診断し、ほんとうに実行に移していくわけですか。さっき私は質問いたしましたけれども、社会福祉あるいは国際協調、あるいはそうしていままで空文で通過してきたやつを今度は実行しなくちゃならぬという、これが田中総理が言っている決断と実行だろうと思う。ところが、全然これは四十八年の予算編成にあたってもそういうものが反省をされておらぬ。国民は一体どこを信用していいかということになるんですね。こういう問題についてどう一体ほんとうの意味で理解をしているのか。そうでないと、委員会の審議幾ら進めて、その場においてはいい答弁もらっても、全然中身がないということになれば、国会の審議というものは一体どういうことでいったらいいのかということを、これは全く基本的に考えなくちゃいかぬですね。だから、そういう問題について納得のいくような説明をひとつ政務次官にお願いしたいと思います。
  76. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) 戸田委員の御質問の中の、先ほど細見顧問のことにつきましては後ほどお答えいたしますが、大統領補佐官との比較がありましたが、これはアメリカの最近「大統領と補佐官」という本も出ておりますが、ああいうような内容のものの顧問とか、あるいは補佐官というようなことでないことは、これは戸田委員も御承知だと思いますが、後ほど明確にいままでの経過並びに規定などがあれば申し上げますが、しかし、これははっきり申し上げて大統領補佐官などとは違う。ある特定の問題について大臣の諮問的なものだと思います。  それから、御指摘の今回の法案審議に際していろいろ福祉重点ということを言われるが、内容的なものないと、こういうお話がありました。十月の二十日に決定されましたいわゆる円対策内容の中の五項目には福祉の問題に触れておりますが、法律そのものに直接には書いておらないことは事実であります。が、それによって社会資本の充実あるいは物価の安定、こういうような点からどういうふうに響いてくるかという問題は、私は福祉問題に大きな一つのつながりは持っておると思います。今回、この法案とあわせて出されておる補正予算につきましては、先ほど御指摘のように、予算委員会において御審議を願っておるわけですが、全然福祉を顧みておらないということではございません。社会資本の充実はやはり公共事業の充実にもつながることでありますし、その面から私はやはり一つ方向であると思いますし、具体的には公共投資の公共の追加の中で、やはり文教施設等が四百六十億円も計上されております。そういう点もありますが、額その他から見れば十分なものでないという御指摘はよくわかるのでございますが、しかし、先ほど田辺審議官が申し上げましたように、社会資本の立ちおくれ、これをやはり直していこうということが、従来の産業投資中心からだんだんそれを変えつつある、また今後思い切って変えていかなければならぬということにつきましては、総理大臣、大蔵大臣が言明しておるように、四十八年度予算等においては具体的にそれがあらわれることを信じておりますし、やらなければならないというふうに考えております。  いろいろ具体的な例をあげてお尋ねがございましたが、老人対策においても、あるいは年金の方向におきましても、従来とは変わった前進、ぐっと前向きの予算を編成しようということで現にそういうような非常な、従来の比を見ないような要求額でもあります。で、その要求を中心として現在、事務当局の範囲内において検討中でございますが、予算編成につきましては、予算編成の方針もまだ決定を見ておらないことも事実でありますし、経済成長の四十八年度の見通し経済企画庁からまだ出されておらないというような状態でありますので、明確な方向は示しておりませんが、しかし、責任ある立場にある総理あるいは大蔵大臣からすでに国会の場において話をされておりますので、いずれ四十八年度予算においては、福祉中心の予算、あるいは生活環境整備の予算編成ということになると、こういうふうに思います。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 で、関税局にちょっとお尋ねをしたいのですけれども、これは経済白書の九〇ページだろうと思いましたが、そこにも、ちょっと、一九七一年八月以降輸出需要は一転して伸び悩みになったということですね。ドルベース円ベース、それから数量ベース、こういう形でいろいろ通関統計で資料があるだろうと思うのですが、これはございますか。
  78. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) ただいま私ども手元にございますのはドルベース数字でございますが、もちろん円ベースの御指摘ございますならば、いま持ち合わせておりませんが、あとで早速お答えできるかと思います。
  79. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それからさっき通産省の回答を聞きましたけれども、ちょっと、何品目かの産業別のあれをいただきました。これはちょっと数えるひまがないからあれですけれども、主として円切り上げ以上の割合の値上げ調整になっている。しかし、通関統計ベースでは決してそうはなっておらない。ですから、これはあとで資料でけっこうです、出していただきたいと思うのですが、まあいずれにしても、こういった円相場に伴って本来なら輸出がものすごく上がる、ドル相場でいけば。そういうかっこうになるやつのものが、どうもそうじゃない。一定の価格水準というものをそのまま見通した形で、それでなおかつ黒字というものが出ている。だからさっき私が指摘したように、どうしてもそういう意味合いでの企業に対するメスを徹底的に入れるべきではないかと思うのですが、今回の円対策は必ずしもそうなっていない。やはり一貫して産業優先方式をとっている。さっき林局長答弁を聞いてみても、残念ながらそこまで踏み切った——いろんな形では発想の転換をするとは言っているけれども、そういうのが全くうかがえない。これではたして円切り上げが阻止できるのかということなんですね。これはもう学者や経済人やおそらく大蔵省当事者だって私はこの対策じゃ円切り上げ阻止というのはむずかしいし、むしろ不可能だと思っているのじゃないかと思うのですね。その腹づもりの実際のところはどうですか、国際局長。これは何も、総理が言ったように政治責任をとってもらうとか、そんなけちくさいことは言いません。正直なことを言ってください。
  80. 林大造

    政府委員林大造君) 昨年の末の為替レートの多角的な調整によりまして、当然その効果は出てくるというふうに思われておりましたところが、日本につきましては、世界でも最も高いレートの調整をいたしたわけでございますから、先ほど申し上げましたような効果が目に見えてきつつございますが、ヨーロッパの諸国につきましては、必ずしも思うように効果は出ておりません。で、そのよってきたるところをいろいろと専門家が分析しておりますが、一つは、景気調整、景気回復のズレと申しますか、でございまして、アメリカの景気が非常に早く立ち直りを示した。そのために過去の姿を見ましても、アメリカが景気が回復いたしますときには、その対米輸出が非常にふえるということが経験で知られておりますが、ことしのアメリカの経営収支、昨年に比べてかなり悪化するようでございます。で、これはレート調整の直後には、当初意図したところとは反対に、切り上げをした国は黒字がふえ、切り下げをした国は赤字がふえるという現象がまずあらわれて、それから若干の時日を経過してから後、この意図したような方向へ調整効果があらわれる。すなわち黒字の国、切り上げをした国は黒字が減る方向へ向かう、それから切り下げをした国は赤字が減少する傾向に向かうということは理論的に認められておりますが、どうも効果があらわれるのがおくれているということがいろいろと指摘されております。で、おそらく来年になればアメリカの経常収支回復に向かうであろう、日本経常収支も減少に向かうであろうということが、大体大かたの見るところでございます。  で、これらの措置、すなわちレート調整の効果、それから景気回復ことに日本のかなり顕著な景気回復の経過、さらに加えまして一次、二次、三次ととられてまいりました数次にわたる海外経済政策の推進ということによりまして、いずれも若干のタイムラグを要する事柄ではございますけれども、今後効果が次第にあらわれて、——ほっておいていいということではございません、私ども極力努力しなければいけないと存じますけれども、この努力を積み重ねることによって、確実に円再切り上げは回避できると確信している次第でございます。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いままあそう言わなければ、せっかく三次対策を出したところですから、その行為を疑われますから、それは当然だと思うのです、答弁としては。しかし、これはいま関税局の代行に要請した通関統計の資料がくれば私はずばりわかると思う。確かに平価調整効果があらわれたのは数量においてあらわれている。これはあとでひとつ資料いただけばそのとおり。しかし、黒字幅は依然として減少しておらない。だからここに日本の企業の特徴といいますか、そういうものがあるのです。あえて言えば、日本政府の過保護体制といいますか、輸出産業に対する、こういうものが一貫してやられてきたわけですから、時間もそろそろなくなってきましたからそう詳しいことを申し上げませんが、これは対外経済関係調整の租税特別措置の研究改正等に対する大蔵委員会調査室の資料が全部ありますから、それに対していろいろといままで政府が保護政策をとってきたその内容——税制上の問題、金融上の問題いろいろございます。これを見ただけでも相当な過保護政策をとってきた、こういうことは歴然たる事実なんですね。だからそういう意味からいけば、いま貿易関税の行政措置強化に伴って今後いろいろな調整をやっていこうという一つ政策、これは商工委員会にかかっているわけです。それからこちら側では三つのいわば関税税率の引き下げと租税特別措置法の改廃分、そして金融政策三つから押してはいますけれども、しかし、いずれにしても中途はんぱな内容であることは私間違いないだろうと思う。ですから、これではどうしても、私が前段いろいろ質問してまいりましたように、前回円切り上げの評価についてきびしいやっぱり反省なりそういうものをやっているかというと、やっていないということにもなるのですね。だから、そういう点を綿密にやっぱり調査分析をして、将来に対する情勢見通しをやった上に立って円対策をやらなければ、私はとても円切り上げ阻止なんというものはできない。だから、大かたの人が——これは総理に言わせると、国内からそういう円切り上げが不可能だと言うことはけしからぬとこう言っているようですが、しかし、事実がそうなんですからね、だれが考えても。おそらくやニクソン大統領が就任あいさつに、いまは年頭教書の発表段階にいったら、必ず強硬工作に出られるのではないかということはもうはっきりしているのですね。これはIMFの会議の状況その他を見ましてあとで若干指摘をしますけれども、そういう状況をずっと勘案しても、植木大臣のかつての参議院大蔵委員会での御答弁では、きわめて平穏無事だったというような穏やかな状況報告を、私は横文字は弱いけれども、関係官から聞いた範囲ではそういうことを私はすなおに申し上げたまでですと、こう言っていますけれども、これには私は多分に植木大臣の政治性が入っている。だから、そういう意味合いからいけば、円切り上げは当面必至である、むしろ対策としては再々切り上げの対策にいかざるを得ないという、そういう状態まで急角度で緊迫した情勢が進展をしているんじゃないだろうか、こういうふうに実際の動向というものを洞察をするんですけれども、そういう意味合いにおいてどうでしょう、私の理解というものは間違っておりましょうか。ひとつ具体的にお示しを願いたい。
  82. 林大造

    政府委員林大造君) 計数的に貿易収支黒字幅で申し上げますと、昨年の七−九月には前年同期比で一二五%アップでございました。それが十−十二月には七四%アップ、一−三月には六〇%アップ、四−六月には一二%アップ、七−九月には五%アップというふうに、貿易収支黒字幅も急速に伸び率が落ちております。まだ減少には向かっておりません。これは戸田委員指摘のとおり、日本輸出のほうが金額が大きゅうございますので、伸び率が逆転いたしましても貿易差額はなかなか縮まらないわけでございます。しかしながら、この間、日本経済もかなりの勢いで成長しているわけでございまして、したがいまして、GNPに対する割合ということでいけば、着実に減少しつつある。これはヨーロッパ諸国の一部に、GNPに対する経常収支の割合が非常に上昇を見せている国と顕著な対照でございます。で、一応こういう計数になっておりますので、私、昨年末のレート調整はそれなりに効果をあらわしているというふうに解釈しております。が、しかし、これで決して十分であるというつもりは全くございませんで、御指摘のような福祉国家への構造の転換ということを一方に掲げつつ、他方において国際収支の調整という方向への施策を、今回の措置を含め今後ともさらに一そう推進することによって、事態が好転するというふうに私信じている次第でございます。
  83. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 前に進みますが、まあいずれにしても、今回の円対策について、前回円切り上げの反省というものは十分取り入れたつもりですか、この点が一点。  もう一つは、適正外貨準備はどのくらいだと思いますか、これが一点。  もう一つは、わが国の現在の外貨資産はどれぐらいになっているか。これはいま資料をいただきましたが、ただ、私が持っている資料とはちょっと違うものですから、これでいきますと百七十七億九千六百万、私よく調べたんですが、二百億ドルこしているのではないか。この点はひとつあとで御回答願いたい。  それからもう一つは、現在金の保有高がどのぐらいあるか、これをひとつお願いしたいと思いすす。
  84. 林大造

    政府委員林大造君) お答え申し上げます。昨年の末の円切り上げに至るいろいろの経緯、それからその後のまたいろいろたくさん問題がございました。その間の事情は私ども常に反省していろわけでございまして、その反省の上に立ちまして今回のいろいろな施策も打ち立てられているということでございます。  それから第二に、適正外貨準備でございますが、適正外貨準備の商が幾らであるかということは、私ども経済運営をするにあたりまして、しばしば起こってくる疑問でございまして、同様な疑問は数々の学者によっても持たれて、そうして数々の労作ないしは試算があるわけでございます。考え方といたしましては、季節的あるいは景気循環的あるいは不時の要素に応じたその外貨準備の思わざる減少というのに対処するためには、一体どのくらいあればいいであろうかというような見地から、たとえば何ヵ月分の輸入に相当する外貨準備があればいいかとか、あるいはその国全体の対外債務の中身を流動性債務と固定性債務とに分けまして、流動性債務は比較的多額の外貨準備をもってその手当てをしておかなければいけない、そのような割合をいろいろ計算して試算をしている考え方もあるようでございます。また外貨準備を持っていると、それをもし輸入に充てて、それを成長に使ったらどのくらいの成長が可能であるか。その成長をすべきものをロスしている、失っているというような観点から、いろいろ学者でございますから計算があるようでございます。しかし、全体を総合いたしまして、適正外貨準備が幾らであるかということをはっきりと申し上げることは非常にむずかしい。かつては日本は二十億ドルの外貨準備を十年近く続けて経済運営をやっていた時代もございます。また最近はどちらかというと、ややほかの国に比べましても大き過ぎる外貨準備になっております。しかし、いずれにいたしましても、経済運営指針として適正外貨準備は幾らであるからというような考え方、これは非常にむずかしい。で、このことは、特に海外との間の取引に思惑的な資本の流入があるという観点からも申し上げられることではないかと思います。  それから最後に金の保有高でございますが、わが国が持っております通貨用金の保有高は、実は九月末の数字で、ほとんどこれは変わっていないはずでございますが、八億百万ドルでございます。
  85. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ局長としてだから、適正外貨準備の額がどのくらいが適正かということの答弁は非常にむずかしい問題だと私も思います。しかし、一定のやはり基準というものを持っていなければ、今後外貨減らしやら何かいろいろやっていくにしても、どこに一体この基準を置いてやっていくのかということになると、それはもう困ることじゃないかと思うのですね。ですから、大蔵大臣が水田さんのときに、この問題についていろいろ質問をした際には、当面の外貨減らし、約五、六十億ドル、この見当までというようなことを暗に差し示した時期があるのですけれども、これはあと大臣にひとつお伺いしたいと思いますが、いずれにしてもそういう一定の指標といいますか、そういうものを、いろいろな弊害も一面出てくると思いますから、慎重に扱わなければいけないと思うのですが、私はあってもいいのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  八億百万ドルということで、金の保有高については私の資料と大体変わりないのですが、外貨資産の問題についてはちょっと違うのですが、これは統計は通関——関税ではなくて、百七十七億九千六百万、ちょっと違うのですが、これはいつの何の資料でしょうか。
  86. 林大造

    政府委員林大造君) 外貨準備の高が、十月末の外貨準備でございまして、百七十七億九千六百万ドルでございます。で、戸田委員が申されましたのは、あるいは外貨建ての資産ということかと存じますが、外貨建ての資産でございますと、このほかに国内の為替銀行に対する外貨預託金が残高で十月末に約三十二億ドル、それから対外的な外貨資産ではございますが、流動性に欠けるという意味で外貨準備から落として、外貨準備に計上しておりませんこの中・長期外貨債等が約十億ドル、これも同じく十月末でございます。
  87. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 わかりました。  それで、具体的な問題について若干質問してまいりたいと思うのですが、今回のこの租税特別措置法の改正、この問題ですね。総額はどのくらいの減収ということになりましょうか。
  88. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいま御審議をお願いいたしております法案の中での租税特別措置法の改正は、海外市場開拓準備を、資本金十億円をこえる企業につきましては、適用期限の終了を待たずに廃止すると、こういうことをお願いしておるわけでございます。海外市場開拓準備金制度によります減収額は、四十七年度で、平年度ベースで約八十億円と見積もっておりますが、今回十億円をこえる部分だけを即時廃止ということにいたしますので、大体取り引きのウエートで考えまして、約六割五分ぐらいと申しますと、八十億円に掛けますと五十二億円ぐらいが特別措置の廃止によって平年度の増収に相なる、一応このように推計いたしております。
  89. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、おそらくこれは大蔵省の資料によって、大蔵委員会の調査室が収録した内容ですから、この資料を使わずしていただきますが、いまの説明のように、租税特別措置一部改正関係で四十七年度約八十億ですね、海外市場の開拓準備金。そのうちに六十二億円というと、約十八億見当の額ということになるわけですが、残されたものは一体どういうものですか。
  90. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 調査室でおまとめになりましたのは、四十七年度になお残されておる二つ項目の特別措置、一つが技術等海外所得特別控除、それによります減収が平年度四十億円、海外市場開拓準備金の減収が平年度八十億円、合わせて百二十億円、この百二十億円のうち現在御審議をお願いしております法案の成立によりまして、大企業向けの海外市場開拓準備金の積み立てができなくなります。そのことによります減収の減、つまり増収が約五十二億円かと、したがいまして、残りは七十億程度残る。このように御理解いただきたいと思います。
  91. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ちょっと数字間違えました。百二十億のうちの五十二億ですから、いまの説明のとおりだと思うんですが、残るものはどういうものですか。たとえば業種別で。中小企業のこれとこういうものは今後も援助をしていくんだというようなものがあると思うのですが、それは多分に政策的なものですからね。租税特別措置というものは、だからそういうものに限定した形で今後こういうものを残していくのか、それとも将来はやはり全廃の方向で、租税特別措置というものは一切廃止していくというようなかっこうでいくのか、その辺の構想はどうなんですか。
  92. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 二つに分けてお答えいたしたいと思うのでございますが、海外市場開拓準備金制度につきましては、適用期限までなお存続いたしますのは、資本金十億円以下の中堅企業及び中小企業について、この制度が四十九年三月末まで存置される。それから技術等海外所得控除につきましては、これまた適用期限は四十九年三月でございますが、それまで現行制度が存置される。ただ現行制度は、戸田委員よく御承知のとおり、従来はかなり大幅な適用範囲を持っておりましたけれども、四十七年度の税制改正におきまして、適用対象を大幅に整理させていただきまして、現在残っておりますのは、三つの種類の取引による収入でございます。その一つは、工業所有権などを輸出いたしました場合の収入、その二つは、著作権を輸出いたしました場合の収入、第三に、いわゆるコンサルティング・フィーでございます。そういう限られた範囲のものは、なお四十九年の三月の適用期限まで現行法どおり存置するということになっております。
  93. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで税制改正のこういう減収措置によって逆にはね上がっていくものが出てくるわけでありますけれども、そういうことで物価に対する影響及び経済情勢、中でも物価情勢、こういうものに対してはどういう判断をとりますか。
  94. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 今回の海外市場開拓準備金が大企業については、この法律が通りましたら積み立てができなくなると、それは結局それによります法人税の減収がなくなる、逆に申せば法人税負担がふえるということでございます。これが製品価格にどのように反映されるであろうかということは、実は再々議論になりながら必ずしも明確な結論が出ない問題でございまして、やや技術的に申し上げますと、法人税は転嫁するのだろうか、前転するんだろうか、あるいは後転するだろうかという問題で学説もいろいろございまするし、全体としてもなかなか実証的にはどちらというふうに申し上げかねる。ただまあ現在の情勢におきましては、これによりまして輸出品の価格がすぐに上がるというような影響は持たないのではなかろうかというのが大体の観測のようでございますが、しかし、これはやはり企業ごとにかなりの違いがございましょうから、必ずしも一律の答えは出ないものと、かように考えます。
  95. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 金融政策に入る前に、ちょっと前後するわけですけれども、金融局長に。さっき説明受けましたように、日本のいまの外貨が二百億ドルをこえると、そういう状況になっておるわけですけれども、そういう中において、金の保有はわずか八億百万ドル、こういうことですね。大部分保有の形というのはドルですね。ところがこれは、これからIMF等を通じまして、二十ヵ国委員会の会議などを通じまして、いずれにしても早期に平価調整が行なわれなければいけないということが、先日のIMF総会等においてお互い確認し合ってきたということなんですが、ただこの見通しがまだどうなるのかも判断がつきかねるという状況ですね。そういう中で一貫して日本の場合ドルを保有しているという状況、あるいはいま世界的にはドルたれ流しでもってたいへんな信頼が低下をしている。そうしてIMFそのものが崩壊寸前という状況でもって、かろうじていまのところは妥協の産物として保有するというようなことになるわけですけれども、こういう姿がいつまでも続くということは、きわめて国民に対する不安定、こういう印象を相当与えると思うのです。そういうものを払拭する方法としては、今後どうあるべきが至当というふうに考えておるか、その辺の見解をひとつ示していただきたい。
  96. 林大造

    政府委員林大造君) 最初にお断わりいたしておきたいことは、日本の外貨準備の額が、十月末で百七十七億九千六百万ドルあるというふうに申し上げました。これは流動性のある対外外貨準備の額でございまして、その内訳は、金、SDR、ゴールドトランシュ及び外貨でございます。外貨の大部分が米ドルであることは御指摘のとおりでございます。でこのほかのものは国内のもの、国内の居住者である国内銀行に対する外貨建ての預託であるとか、あるいは対外的な資産でありましても、流動性に欠けるという意味で、外貨準備の中には入らないということは、御理解いただけていると存じます。ただ、いずれにいたしましても、外貨建ての資産である場合には、当然のことながら為替リスクというのがあるわけでございまして、したがいまして、為替リスクを回避するために金をふやしたらいいであろうとか、あるいはSDRをふやしたらいいのではないかというようなことを言われる方もございます。で、金の問題につきましては、これが金利を生まないという問題もございますほかに、各国間の国際的な合意がございまして、国際協調という観点から各国通貨当局は新たに通貨用金以外の金を買うことはしない。ほかの国が通貨用金を売る場合はこれを買ってもいいわけでございますけれども、一般からは金を買わないという合意がございますので、したがいまして、なかなかいろいろと金をふやすのが制約があるわけでございます。で、世界的に見ますと、ここ十年ばかりの間、金の準備は横ばいないしは若干減少ぎみだと記憶いたしておりますが、日本はこの間、金はかなりの額を増加いたしております。で、増加しておりますけれども、外貨準備がふえるスピードにはとても及ばない。それからSDRあるいは金約款のついておりますIMFに対するゴールドトランシュというものの金額もおのずから限度があるわけでございます。したがいまして、残りの外貨準備というのはどうしても外貨、それも主として米ドル建てにならざるを得ないというのが現実の姿でございます。で、私どもが海外からの外貨流入をかなりきびしく規制しておりますのも、この海外から流入してくるドル政府当局に売り上げられまして、政府の外貨準備を不当に押し上げないようにという配慮ももちろん働いているわけでございます。そのほかに金融上その他いろいろな配慮もございますけれども、ただいまの為替の問題も一つの問題点でございます。が、しかしながら、普通の輸出入取引から生じてまいります黒字、これは当然のことながら黒字政府に売り上げられてドル資産になるわけでございまして、これはとめるわけにはいかない、国民経済の円滑な運行を確保するという大きい観点から、これをとめるわけにはいかないわけでございまして、そのような価値判断の彼私考量の結果こういうように外貨準備がふえているわけでございます。で、基本は、やはり私どもが考えておりますのは、経常収支黒字を妥当な水準まで圧縮することである。そうすれば、外貨準備のふえ方もおのずからゆるくなってくるということで、今回の対策も含めまして、主として経常収支中心にしながらいろいろな施策をきめているわけでございます。で、このほかに政府が持っている外貨資産をなるべく民間に持たせたらいいではないかという意見もあるわけでございまして、そのような観点から私どもは対外資本流出は極力自由化する方向でいろいろな施策を講じております。昨日、成瀬委員から御質問がありました不動産投資を今日自由化しておりますのもそのような趣旨からでございます。
  97. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そこで、この今後の通貨調整見通しについてですけれども、これは植木大臣が出席をされました九月下旬のIMF総会の状況なんですが、これはファイナンスでは、その状況については次回詳細に発表いたしますというところで終わっている。だから、大蔵省の正式見解まだ私見ていません。ただ植木大臣の演説要綱というものはここで拝見をさしていただきました。それをずっと要約をいたしますと——これは大臣の演説じゃないですよ。会議の模様です。結局この通貨改革の必要性はお互いに認めている、これは各国異議のないところですね。しかし、その合意に至るかというと、なかなかこの点はむずかしい問題です。ことにこの通貨改革の問題ということで、おおむね整理をしますと三つぐらいになるのじゃないかと思うんですが、その一つは、為替レートの制度を変える、もう少し平価を弾力的に変えようという問題、これが一つある。それからもう一つは、第二の問題は、ドルの交換性を回復して通貨制度に交換性のルールをつくり上げると、こういう問題。それから三番目は、今後の通貨制度における基準——スタンダード、これを何にするか、金にするのかSDR等に持っていくのか、等々の問題がいろいろあるわけです。しかし、これは必ずしもECを含め日本、アメリカ、欧米諸国家との間で完全な合意ができたかというと、残念ながら日本は孤立化状況に追いやられている、こういうのが世界的な見方であり、実態ですね。日本ははたして一体どういう対策でこういう問題で今後やっていくのか。おそらく三月に二十ヵ国委員会がまた開かれるというそうでありますが、来年の九月の総会までの間には、いずれにしても通貨調整に対する一定方向というものを出さなければいけない。これは期間にしても、あと九ヵ月しかない。政治的には総選挙その他きますと、その間空白ということになりますから、実質的には来年の一月以降ということになりますね。そういうものが、長期経済計画策定と含めて、はたして明確な方針が出ていくのかどうかということになると、私は非常に疑問視をせざるを得ない。そういうことになると、二月にいってどういくかわかりませんが、日本は三次円対策をやった。三次円対策といっても、実際三次対策は七項目ですか、これは設定したけれども、実際は実行しなかったんですから、第三回目対策にひとしいわけです。しかしいずれにしても、これをやっても、国民や世界各国は、ことにアメリカなんかは、黒字国けしからぬ、自分のほうの失敗をたなに上げて、とにかく強圧的にいまやってきているわけですけれども、それをもう主権として守り通して抗議をするなんという日本政府の強腰も見られない。そういう意味合いにおいて、どういう形で日本はこういう問題について一体対処していくのか、これはやはり円対策を含めて私は非常に大事な問題ではないかと思うんですね。ですから、事務当局でけっこうでございますから、一定構想があったらひとつ発表していただきたいと思います。
  98. 林大造

    政府委員林大造君) 九月の末のIMF総会におきまして、国際通貨制度改革の必要性について意見が一致した。そのために各国協調して譲るべきところは譲って、一つの新しい仕組みを考えていこうという非常に積極的な意欲が見られたことは御指摘のとおりでございます。そのほかに、わが国の植木大蔵大臣が主張されましたことの中の、世界が一つの世界として、ブロック化を排し、保護主義を排していかなければいけないということを主張された点につきましても、おおむね世界の合意が得られたと私どもは見ております。  それからさらに、各国が大体意見が一致したと思われることは、SDRの重要性を認め合っていったということでございます。国際的な準備資産といたしましては、金、SDR、さらには各国通貨、基軸通貨などいろいろなものがありまして、まあ定義のしかたによりましてどこまでが入るかというのはむずかしい問題でございますが、各国いずれもSDRを重要な国際準備手段として育成していかなければいけないということは意見が一致いたしました。で、金につきましては、従来からフランスは金を非常に重要視する態度をとっておりまして、今回のIMF総会における演説におきましても、金に対する立場を根本的に変えたとは言い切れなかったかと存じます。が、しかし、フランスも金の重要性を特に主張して他と対立するという態度は避けておりました。  それからもう一つ、各国がおおむね一致したと思われる点は、国際通貨調整における国内政策手段の重要性、特にインフレ抑制の重要性だったと思います。この点につきましても各国の意見は大体一致いたしました。  で、残されました一番大きい問題は、国際収支調整過程と呼ばれます各国が赤字、黒字をかかえますときに、それをどういうふうに調整していったらいいか。まず、国内政策で処理し、しかも、それでどうしても処理し切れないときに、為替レートの調整という現行のIMF規定でも認められておりますレート調整にたよる、それがどのような姿で、どういう程度早めにどの程度ひんぱんに行なわれるべきか。その場合の目安は何に置かれ、各国の主体性、国際的な協議の、何と申しますか影響力、こういうものについてどういうふうな考え方をとっていくかという点につきましてが、一番意見が分かれたところだと思います。で、この点につきましては、今月の二十七日から、さきに創設されましたいわゆる二十ヵ国会議の代表の代理会議が開かれました。IMF総会のときに、二十ヵ国委員会の閣僚レベルの会議及びその代理レベルの会議、いずれも第一回が開かれたわけでございます。そのとき閣僚レベルの会合は、次の会合を大体年末前後に開こう、それから代理レベルの会議は、十一月から大体二ヵ月に一ぺんくらいの頻度で開いていこうということで、その十一月の会議が二十七日から三日間、ワシントンで開かれるわけでございます。来年のケニアのナイロビ総会までに、何とか一つの見取り図のようなものをつくっていきたいというのが、現在各国の目ざしているところでございます。しかし、この会合までに各国がそれぞれどういう主張をしていくかという問題につきましては、これはいろいろ複雑な問題もございまして、全体がからみ合っております関係上、簡単な処理はなかなかむずかしい。今後私ども各国の出方も見ながら、主張すべきところは主張し、譲るべきところは譲って、早く合意に到達したい。やはり日本は資源は海外に仰いでおりますし、安定した国際通貨体制が確立されませんと、一番困る国の一つでございます。その意味におきまして、できるだけ作業には積極的に協力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  99. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは一応今回のIMF総会の中で、過剰ドルを漸次SDRに切りかえていって供給しようという方向で合意しつつある、合意したのじゃないですけれども、合意しつつある。それは違いますか、違ってればあとで。  もう一つは、アメリカの国際収支を何に求めるかということが非常に問題になって、これが全く空に浮いたままだというようなこと、あるいは過剰ドルをSDRの切りかえていくテンポの基準、これをどこに求めるか、いま私が指摘したような内容で非常にこれは問題になった。しかし、実質的には交換の対象、弾力化するといっても、具体的にこれは何を持っていくかということは非常に問題だ。これは今後の一番焦点になるだろう。ことにフランスの場合、金本位制をやはりとっていこう、こういう問題、アメリカの場合はSDR等のいわゆる引き出し権に持っていこう、こういう考え方がやや並行的なまま、それをオブラートに包んだようなもので、当面IMF総会も、何といいますか、一定の妥協ということも成り立った、こういうことなんですが、日本としては、一体これをどうするのかということなんです。これはどうですか。  さっきもちょっと指摘をしましたように、日本政府ドル保有でやっていけ、しかし、これはいま世界的に、私の理解するところでは、おおむねアメリカのドルが七百億ドルといわれておりますし、世界でばらまかれている。これはアメリカ自体の責任なんだけれども、しかし、そういうものを居直って、実際は黒字国を攻撃してきているわけです。そういう不合理性はありまするけれども、いずれにしても、これを何とか処理をしていかなければ、国民に対する安定、あるいは産業界の中に対する安定というものはなかなか得られない。そして、そういうものを結局ためていくのですから、一面でいうなら、国民の浪費といっても、これは過言じゃないですね。いま非常にドルが世界的にも不信なんですから、言ってみれば不渡り手形と同じです。これは何にもないんです。そういうものを持続をしていく不安定さというものはつきまとっていくわけです。そういうものを一体どうするのかということが、日本としても早急に方向を決定しなければならない緊急課題ではないか、こういうふうに考えるんですけれども、その方向について、いまIMF総会のいろいろ談合の内容は説明されましたが、日本政府自体として一体どう思うのか、どうあるべき姿が一番いいのか。かつて水田大蔵大臣の場合には、SDRの方向でちょっと答弁されたことがあると思う。これは私は必ずしも得策ではないと思いますが、それはどうです。
  100. 林大造

    政府委員林大造君) いま指摘されました問題、非常にむずかしい問題でございまして、実は九月のIMF総会で一つの定まった線が出ているわけではございません。過剰ドルという問題の処理につきましても、その処理のしかたについていろいろ国際的な意見がある。その国際的な意見を見ながら、日本としてどういう方向で主張をしていったらよろしいか、それをどういうような時間割りで、どういうふうに実現するようにやっていったらよろしいか、これは日本一国の考え方で全部処理できる問題ではございません。世界的な合意が要る問題でございますし、したがいまして、今後二十ヵ国委員会、その代興会議、さらにはその周辺を取り巻くOECDの第三作業部会とか、いろいろなところでいろいろな議論が行なわれていくと思いますけれども、全体が非常に込み入りました、相互にからみ合いました問題でありますだけに、現在直ちにこういう方向で進むということを申し上げられないわけでございます。この点につきましては、私ども部内でもいろいろと議論がございます。その議論は各国の意向を次第に探っていくにつれて、わがほうとしても固めていかなければいけないわけでございますが、現在のところこの席で申し上げられるような統一的な意見ができているわけではございません。
  101. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 非常に私はその点で残念なんですよ、各国、フランスでも、ドイツでも、イギリスでも、イタリーでも、アメリカもそうですが、やっぱり自主的な判断で自主的な方向をちゃんと持っていますね、ところが日本の場合そういうものがないですね。結局はアメリカの言うなりになって、追随をするという結果だ。いままでそういう状況なんですが、これではいけないんじゃないか。やっぱり日本は金本位制でいくのか、SDR関係でいくのか、二者択一ということじゃないですけれども、そういうやっぱり一定方向をきちんと持って、これから二十ヵ国委員会なり、あるいは総会に臨むという態度でなければ、これは少なくとも平価調整のその問題については、主権上の重要な問題でしょう。そういうことでフランスもドイツも一貫して主張し、アメリカと抵抗してやっているわけですからね。だから一番その主張をやっているのは、金本位制はいまフランスでしょう。この折り合いがつかない。アメリカはSDR関係方向として向いているわけです。日本一体どっちいくかといったら全然態度不明でしょう。これでは国際調整会議ったって、日本はちゃんとオブザーバーでいって、どっかの国がきめたものにちゃんと追随をする、こう見られてもしようがないですね。なぜ一体そういうものをきめかねているのかふしぎでしようがないんです。その辺一体、いまかりにどっちの方向を向くということは局長無理にしても、きめる意思があるのかないのか、どうなんです。
  102. 林大造

    政府委員林大造君) 植木大蔵大臣も今度のIMF総会ではいろいろな主張をしておられるわけでございます。そのうちの重要な一環が、SDRを今後の国際通貨体制基本として育成強化していかなければいけない。そのためにSDRを魅力あるものとしていかなければいけない、魅力あるものとしてということは、金利とか、あるいはその資産価値についてでございますが、魅力あるものにしていかなければいけない。あるいはそのレート、国際収支調整過程における各国の国内政策の重要性、特にインフレ抑制の重要性を強調されました。で、またレート調整にあたっては、そのときどきの思惑的な一時の姿に幻惑されることなく、基調的なものを判断の材料にしていかなければいけないということも申されているわけでございます。  したがいまして、植木大蔵大臣は、主張すべきところははっきりと主張しておられるわけであります。で、ただ個々の具体的な、たとえば過剰ドルの問題ということになってまいりますと、IMFの理事会の報告にも幾つかの選択の道があるということを示しているだけでございまして、そのうちどれがよろしいということはまだIMF理事会の報告にも盛られておりません。各国ともその点について最終的な態度を示しているところは少ないわけでございます。で、したがいましてこの種のややテクニカルな問題は、今後の交渉の過程において次第に明らかになっていくと、で、私どもは中ではいろいろ方向は持っておりますけれども、それをどの段階で表に出していくかということは、その交渉の進展に応じながら次第にその主張すべきところは主張してまいりたいというふうに感じている次第でございます。
  103. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いずれ決定をするという態度はあるわけですか。
  104. 林大造

    政府委員林大造君) 日本も現在非常に国際通貨社会で重要な一員になってまいりまして、二十ヵ国委員会の代理会議の議長が一人、副議長が四人を予定されておりますが、四人のうちの一人は日本から出すということに大体の合意ができているわけでございます。で、議長がヨーロッパから出ておりますし、副議長のうちの一人が米国、一人が日本、残りの二人が後進国ということでございますから、日本の地位が非常に高まっているということは御理解いただけると思います。で、日本の地位が高まっております以上、日本の発言というのも、非常に重要な影響力を持ってきているわけでございまして、したがいまして、私どもはこの重要な影響力を大切にして、そして主張すべきところは主張してまいりたいというふうに存じております。それだけに意見をきめて発表するタイミングのとり方、その他いろいろ手続問題については慎重な配慮が必要である。で、御指摘のとおり私ども時宜に適した態度の決定、表明をしてまいりたいというふうに存じております。
  105. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 だいぶ待たせて申しわけなかったですが、銀行関係をちょっとお伺いしますが、この一部改正で、金利の移動がどういう状況になるのか、それは輸出入ともにちょっと教えていただきたいと思います。
  106. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 今回の、このいま御審議いただいております法案関係につきましては金利は関係ございません。御承知のようにもう釈迦に説法でございますが、輸銀の金利につきましては、業務方法書においてきめることになっております。で、現在の業務方法書では、御承知のように業務の態様が大ざっぱに分けますと四つに分かれておるわけでございます。輸入金融と輸出金融、それから投資金融と直接借款と、かようになっておるわけでございます。  それで業務方法書は、輸出につきましては従来四%から七%というように規定しております。それから輸入につきましては四・五%から七・五%、投資金融につきましては四・五%以上、それから直接借款につきましてはケース・バイ・ケース、かようになっております。実際のその金利のきまり方は、輸出入銀行総裁の自主性を尊重いたしまして、ケース・バイ・ケースでその業務方法書の中できめられておるというのが実態でございまして、たとえば輸出にいたしますと、大体従来は五・五%前後のものが平均的であった、輸入につきましては六・五%程度であったということが申されようかと思います。今回のいわゆる第三次対策によりまして、それらの金利につきまして、輸出金利につきましては原則として一%これを引き上げる、輸入金利につきましては一%程度これを引き下げていく、かようにきまったわけでございます。これは十一月一日から実施いたしております。
  107. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この借款の借用については特別ケース・バイ・ケースでやるということは、何か政策的なものあるわけですか。
  108. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これはもともと一つは、これが外貨金融と申しますか、外貨事情、いわゆる国際金融の分野でございまして、相手国の中の金融事情、あるいは相手国の外貨事情、それから相手国とわが国との関係というように、いろいろ事情が千差万別でございまして、むしろ御案内のように、いろいろの交渉の結果きまっていく、あるいはその内容にいたしましても、いわゆるプロジェクト援助の場合もございますし、あるいはそうでない、いわゆる商品援助的なものもございますので、これをむしろ一律にきめていくということは実情に合わないというところから、こういう扱いにいたしております。大部分の借款につきましてはむしろ政府べースの交渉が多いわけでございます。もちろんたとえば輸出入銀行、たとえばメキシコとの間の具体的な、たとえばプロジェクトについていろいろ交渉があるというような形できまっていくわけでございます。
  109. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで、この資料によりますと、輸出金融は四十六年度実績で三千五百九十七億、四十七年度当初計画四千五百六十億になっておるわけですね。それに加えて輸入金融というものは非常に少なくて二百二十一億、これは四十六年、四十七年度は投資金融と含めまして九百七十億ということになっておるわけですが、当然一%切り上げるわけですから、増収体制というものが輸入よりもはるかに多いんですから、相当な金利というものがあると思うんですが、その辺の総額が一体どのくらいになっているのか。  それからもう一つはこの主要勘定残高でいう資本金の五千七百四十二億円の倍率、四倍ということで一倍上げたんだろうと思うんですが、その点の理解は間違いございませんか。この積算基礎は一体どういうところに根拠というものを置いてやっているのか。  それから今後、さっきちょっと私資料忘れてきちまったんですけれども、輸出産業の、たとえば税制であれば中小企業十億円以下の各企業に対しては、漸増して、今後も維持政策をとっていくという方式ですが、金融のほうのいわゆる企業別融資体制というようなものがあると思うんですが、これはやっぱりいまの大企業、中小、あるいは零細と、こういう区分けをした場合に、その割合の金融体制というものは一体どうなっているのか、この辺についてもひとつ教えていただきたいと思いますし、相対的には税制、金融、今回の各般の措置によって減収なり増収体制というものは一体どのくらいある、そういうものが全体のこの経済上に及ぼす影響というものはどういう割合で計算をされておるのか、その辺も含めて一括ひとつ質問をしておきたいと思う。
  110. 澄田智

    参考人(澄田智君) まず、ただいま御質問のうちで輸出入銀行関係のことだけ私からお答え申し上げたいと思います。  最初の御質問は、今回の貸し出し金利の調整によって増収あるいは減収ということになる部分もあわせてどうかと、こういうような御質問かと思います。  いま御指摘がありましたように、輸銀は近年、輸入金融とか、あるいは投資金融という面にも重点を移してまいっておりますし、ことに今回の十月二十日の措置によりまして、一そうその方面に重点を指向していくと、こういうことに相なっておりますけれども、量的には輸出が非常に大きな割合を占めているというのは御指摘のとおりでありまして、そういうような関係から、輸出金利の引き上げということになりますと、収支面でその分がふえてくる、こういう問題があるわけでございますが、ただこれは新規の融資承諾分から適用する、しかも十一月一日以降の融資承諾分から適用するということになりますので、現実の金利の収入ということになりますと、その融資承諾から現実に貸し出しが行なわれて、そして利払いが行なわれるまでの期間を見なければならないというので、四十七年度には金利引き上げの効果というのは、まずほとんど考えられないと、こういうふうに思われるわけであります。さらに、四十八年度においても、実は全面的にその効果が出るというわけにはまいらないということになっておりまして、そしてさらに、今後、残高におきましては、確かに輸出が非常に大きな割合を占めておりますが、これから出ていく新規融資の割合ということになりますと、輸入金融や投資金融の比重が高まっていくということになりますので、そちらのほうは金利が下がるということになりますので、かれこれ勘案いたしますと、増収効果というものはかなり限定されたものになると、こういうふうに考えられるわけであります。  それからもう一点、輸出入銀行関係におきましては、今回の法律改正を御審議願っておりますのにも関係する貸し付け金と保証の限度でございますが、これが今回自己資本の四倍ということをお願いをいたしておるわけですが、現在の試算でまいりますと、現状におきましては、限度の余裕額が百二十一億円という一応試算になっておるわけであります。ところが、今回お願いいたしました法律改正によりまして、今後業務の拡大というものが行なわれてまいります場合には、この限度額をこえるということが予想されますので、そこでまあ今回の四倍に引き上げるということをお願いしていると、こういう次第でございます。——ただいま御質問のうちの中小企業関係の問題を落としました。恐縮でございますが追加をさせていただきます。  輸銀の融資の従来のやり方は、企業の規模の大小によって何ら差別を設けないということでやっておりますが、ただ、御承知のように、プラント関係のプロジェクトとか、いろいろ事柄の性質上、非常に規模の大きいものが多いわけであります。したがって、資本金一億円以下の企業向けの貸し付けというものは、貸し付け先において、全体のうちで、件数で——貸し付け先の企業でまいりますと、二百八十二社中五十八社、二一%と、こういうことになりますが、件数となりますと、残高で申しますと、三・一%というようなことで、また金額においても同様でございまして、そういうことで比較的少ないと、こういうことになるわけでありますが、これは事柄の性質上こうなってくる場合でありまして、取り扱いにおいては差別を設けず、むしろ中小企業に対しまして十分これを配慮するという方針でやっております。今後、輸出金融の金利引き上げ等についてもそういう点を十分考えて、実情に即してやってまいりたいと、かように存じております。
  111. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 一面で外貨減らしということを政策として打ち出して、さらに今回の改正の金融政策を見ますと、むしろ自己資本に対する借款の倍率は四倍まで引き上げる、これはどうも金融政策一本で見るなら、従来のパターンをそのまま踏襲するというような印象を受けるんですが、そういうことはございませんでしょうか。  それからいま金利の問題でちょっとお伺いをいたしましたけれども、各企業によってそれぞれ違うんですね。たとえば造船所の場合には六・七八%、プラントの場合には五%ないし五・五%と、それも企業によって五%なり五・五%ということになっている。ですからこういう国内の、たとえば財政投融資金利についてもそうなんですが、基準金利が六・五%といっても、貸し付けるときには七・二%ないし七・八%、それぞれその使用目的によって違っているわけですね。だから、こういう点については、どうも私は国内の一般金利についても一元化方式がとれないか。たとえば開発方式とか、それから一定の自前方式のできない中小企業等に対する設備投資等については、十分めんどうをみてやるというようなことで、金利体制ということで区画整理をして、そういう部面での金融政策、金利対策というものはとれないのか。これは輸出入関係についても私は同じことが言えるのではないか。そういう全体の金利のあり方について検討すべき諸情勢にあるんではないかと、一様にいきませんから、ケース・バイ・ケースで、そのときにやっぱり状況を判断してやっていく、そういうものもあってしかるべきだと思うのですが、あまりにも同じ国から融資する場合の金利については、非常に一方で高くて一方で低い——政策的にあってけっこうなんですけれども、そういうものを明確にひとつやっていく必要があるのではないか。これは前から福田大蔵大臣水田大蔵大臣も、そういう金利政策については、ことに開発資金等の問題、こういう問題については、十分御趣旨に沿うように検討しますということを約束をしているんですが、まだその検討されたためしがないんですね。ただし、私は輸出産業については、会社別に十億円以上の資産等の問題については、これは大幅黒字で高利潤にいっているんですから、こういうものについては、これこそ私はケース・バイ・ケースで金利政策をとったらいい。そうしてコントロールしていくという体制をとっていけば、おのずからこの輸出抑止力になります、そういう政策転換をとっていくべきではないか。そういう点については非常に弾力がないと思うんですね。ですから、それは全部金利の部面からばかりやれというわけではない。これは税制上も同じだと思うんですが、全体の財政運営上についてやはり判断していく必要があるのではないか、こういうように考えるんですけれども、金融部面についての金利体制、ことに輸出産業についてどういうふうに思っていましょうか。
  112. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 先生の御指摘、ごもっともな点が多いわけでございます。特に公的資金を使う金融でございますから、できるだけ公平かつ明瞭というようなことでやっていかないといけないと思うわけです。そういう意味で、一番端的な例といたしましては住宅金融のようなものにつきましては、もう御承知のように非常に細分化されまして、金利がはっきり固定されております。これはやはり住宅金融という特殊性に基づきまして、パターンが一定してしまっておる。で、差別をすることなく一律に扱えるという性質のものでございます。たとえば農業金融についてもいささかそれに近いやり方をやっております。そういうことからいたしますと、基本原則としては、まさに先生のおっしゃるように、税金なり、あるいは公的な資金を使うわけでございますから、明瞭かつ公平という原則で金利をきめていきたいとは思っております。ただ、必ずしもそういうことばかりではいけないのは、もう御説明をあえて申し上げるまでもなく、相手の担保の状況あるいは個々の案件によって償還期間が違うとかというようなことがございますので、これを固定化すると、それなりにやはり弊害も起こってくるということで、弾力的に扱わざるを得ない面があろうかと思います。個々の案件を一つ一つ考えてやっていくということが、同時に非常に大事な面も、一応金融の面にはございます。そこの辺のかみ合わせということは、私どもは常に考えながらやっておるわけでございます。ただ、あまり固定化いたしますと、そのために資金が効率的に使えないという問題もございますので、この辺のところ、今後とも御趣旨はごもっともだと思いますし、さらにできるだけ実情に合うように研究してまいりたい、かように思っております。
  113. 澄田智

    参考人(澄田智君) 先ほどの御質問の最初の点でございますが、輸出入銀行の借り入れ金限度額を引き上げるという、そういう借り入れの能力をふやすということと、外貨減らしとの関係という御質問でございましたが、今回の輸出入銀行法の改正は、輸入金融の拡充、それから投資金融もこれを拡充強化をするということでやっておりまして、そういうことに基づいて貸し出しの業務がふえていくということで、その余裕を見込んで今度の限度額の引き上げということになりまして、こういう限度額の引き上げが行なわれ、そして輸出金融よりもむしろ輸入金融、投資金融というようなものが拡大されるということは、とりもなおさず外貨減らしに貢献をすると、こういうことに相なるわけでございます。  それから、輸銀の立場から申しまして、いま銀行局長から御答弁申し上げたように、個々の案件によりまして、ことに外国を相手とするということでございますので、その国の状態、それからこちらの、たとえば輸出の場合は輸出競争力というようなこともございます。さらには、民間金融と協調して実際には融資が行なわれるということになりますと、そちらの金利との関係によって、実際の海外——水ぎわ金利とよく申しますが、日本から出ていく場合の全体の金利というのがきまるというようなこともありまして、企業別ということではなくして、個々のケース別、企業によってもケース別に違う、こういう性格のものがあるわけで、そういうことによって輸銀の場合にはいまのようなあり方、金利のきめ方ということに相なっている、こういう次第でございます。
  114. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 金融関係はこれでやめますけれども、どうもありがとうございました。  農林省から来ておるんじゃないかと思うんですけれども、今回三十三品目の規制物品があるわけですが、このうち二十四品目が農産物になっておるんですが、これは今後、農林省の方針としてはどういう態度でいくのか。それから関税関係としては、その辺農林省との調整、今後どういう状況になっておるのか、その辺をまずひとつお伺いしたいと思います。
  115. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 農林省当局がいま参ると思いますから、私が最初に関税局の立場から御説明いたしたいと思いますが。   〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕 今回の十月二十日の懇談会におきましても、自由化につきましては今後一そう自由化を促進する、計画的推進をはかるということに相なっておるわけでございます。  御指摘のように、現在、残存輸入制限品目は三十三品目でございまして、そのうち農林物資は二十四品目に相なっております。  いずれも、かなり残存輸入制限品目を最近減らしてまいりまして、残っておるものは御案内のようにハードコアの品物がございますが、大蔵省といたしましては、関係各省ともよく相談をいたしまして、できるだけ輸入の自由化の促進につとめてまいりたいと思います。  なお、まだ個々具体的品目についてはこれから詰める問題でございまして、したがいまして、それに即応いたしまして関税措置をどうするかというところまでまだ熟しておりません。具体的品目がクローズアップいたしまして、それによってどのように関税上の即応措置をとるかは十分関係各省とこれから詰めてまいりたいと思いますが、関税当局といたしましては、できるだけ従来もお願いいたしましたように、あるいは関税の割り当てであるとか、あるいはスライド関税であるとか、いろんな方法があるわけでございますが、それらにつきましては、具体的品目がだんだん熟すに応じまして関係各省と詰めてまいりたい、かように考えております。
  116. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いただいた資料なんですが、関税の一律引き下げ品目数、総品目数が二千七百十九あるんですね。それで今回差し引き引き下げ品目は一千八百六十五、九二%に及んでおる。こういう状況ですが、千八百六十五品目、まあこれは資料に全部ありますから、あとで別に説明いただかなくてもけっこうですが、物価に与える影響というものはどの程度波及効果を考えておりますか。これは相対的にどのくらい、特徴的なものでももしあればこのくらいありますよと、相対的にどのくらい一体影響されるか、その辺の問題がひとつ。  それから、今度の改正の中で、八条の六でございますかね、改正案としては従来「重大な損害」これを「相当な損害」あるいは「国民経済上」とあるのは「当該産業を保護するため」ということで、表現字句を改正しておるわけですがね。どうも受ける印象としては、やはり税制上の企業優先の法制化というようなことを今回具体的な形で私はあらわしたんじゃないかというような印象を受けるんですよ。従来は国民経済としては非常に広範な範囲でいろいろあったんです。その中に一部産業というものも入ったのかもしれません。で、こういう改正が必要であるのかどうか。悪く解釈すれば、私はずばり言って、どうも関税定率改正法というのは、今後国会審議にかけないで、政令条項で持っていくという一段階じゃないかという悪い解釈を持っているんですが、そういう意思ありやいなかですね。非常に危険視するところなんですけれども、そういう問題について明確にひとつ担当局長の説明をお願いをしておきたいと思うのです。   〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕  それから、どうしても定率引き下げはやってみたけれども、各国比較じゃやっぱりアメリカやなんかよりまだ高いですね。あるいはあるものによってはアメリカが高いものもありますよ、しかし総じて諸外国よりかはまだ高い傾向がある。それだけ、言ってみれば日本輸出産業ないしは国民経済がそこまで競争力というものがまだついていないと言うんでしょうかどうかわかりませんけれども、しかし、世界的にはすでに第二位のGNP成長まできているわけですから、一等国だといって最近は経済上においてがんばっているわけですからね。ですから、そういう意味合いでは、なぜ一体思い切って対等、ことに今後資本の自由化まで一挙に進めようという考えがあるでしょう、今度の三次円対策の中にはですね。おいおいこれを具体化していかなくちゃいけないわけですから、そういう事態の中で、円対策の一環としてある関税定率の引き下げが、徐々に何かまだ小刻みにいくような気がしてしようがないんですね。だから、そういう面での思い切りというか、そういうものがあっていいじゃないかという気がするのです。ただ、私は厳重に注意しなければいけないのは、やっぱり保護産業に対してはあくまでもやっていく。たとえば大豆産業ですね、こういったもの、たとえば大豆が数年前まで、輸入を大量にやる前までは、おおむね自給率は八〇%見当あったんです。いまは私の記憶では〇・八%に落ちちゃっている。だから農村の過疎地帯に行きますと、たとえば、そば粉であるとか、大豆であるとか、そういうものが唯一収入の農家経営の主要な柱になっておった農家もあるわけです、そういうものが全部やられてしまって、出かせぎに追い出されるという状況下にあるわけです。これはそういう問題については、やっぱり一貫して日本の弱い産業、これは国内の経済も、産業生産の構造なりそういうものを改善をしていくと同時に、輸出入体制の中においても保護政策というものはやっぱりとっていく必要があろう、そういうふうに考える。そういうものが今回の、資料でいう一千八百六十五品目の中に含まれておるのかどうか、そういう点についてまず三点、ひとつ質問したい。
  117. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) まず、物価に与える影響の御指摘でございますが、これにつきましては、率直に申しまして、末端価格にどの程度反映するかということの計量的把握は非常に困難ではございますが、しかしながら、輸入価格が引き下がることによって、同種の物価の引き下げないし長期的に見ますと、経済の効率化ということによりまして、物価の安定に寄与するものと考えておりますが、お尋ねのように、しいて数字を、そういう推算を私どもいたしております。もし、ほんとうの推算でございますからお許しをいただきますならば、推算ということでございますが、一応の推算はございますが、それはもし輸入価格が下がったことによって、同じような国内価格が同率で引き下がると、こういう仮定の計算をいたしたわけでございます。そういたしますと、今度千八百六十五品目でかなり品目多うございます。しかも、主体は製品関税でございますから、消費者物価指数の約三割はこれに該当いたします。そういたしますと、末端価格の寄与率は、平年度ベースで〇・八という数字が一応出ます。しかしながら、先生御案内のように、非常に輸入依存率の低いもの、たとえば二%未満とか、こういった依存率の低いものがございますから、そういったものははたして国内価格に刺激を与える度合いというものは、かなりこれは低うございます。したがって、そういった点を考えますと、まず三分の一程度は寄与するのではなかろうか、こういう、腰だめもございますけれども、〇・二ないし〇・三という数字が一応出ます。また、先ほど申しましたように、二%未満の輸入依存率をかりに除外しますと、これが〇・二幾らという数字が出ますが、そういったことから考えまして、末端価格では平年度ベースで〇・二ないし〇・三は期待できるのじゃないかと一応の推算ができるわけでございます。御指摘のように、特に下がる物品という御指摘でございますが、これは酒類、ウイスキー類、これはかなり下がるのじゃないかと思います。と申しますのは、酒税が段階税率でございますから、それによってかなり下がることは期待できる、またじゅうたんなんかも物品税でかなり影響がございますから下がるのじゃないかというような、物品につきましてはそういうものがあげられるかと思います。  それから次に、八条の六の御指摘でございますが、「重大な損害」あるいは「国民経済上」という表現を、「相当な損害」、「当該産業を保護するため」と、こういう表現に改めておりますが、これは決して御指摘のような考え方のもとに私ども立案当局としては考えたわけではございませんで、むしろ国内産業でも特に影響の強いものは何といいましても中小企業でございます。したがいまして、昨年の八月から実施しております特恵関税制度においても同じような法律を御審議願ったわけでございまして、今回も特恵の場合のエスケープクローズそのまま引用させていただいたわけでございます。これの運用につきましては、したがって、そういった趣旨から、私どもは輸入急増によって国内産業が脅かされるという、そういった場合には、機を失せず弾力的にこの運用をはかってまいりたいという考え方のもとに、関税率審議会の中に、特殊関税部会を今後設けまして、そこで公正な判断、公正な運用をはかってまいりたい、このように考えております。  それから、諸外国との比較の御指摘でございますが、従来製品関税は日本においてはかなり高うございました。約二割高かったわけでございますが、今度そういったこともございまして、二割の引き下げをお願いしているわけでございます。まだ高いという点は御指摘のとおりでございますが、今後私どもは、今回やりましたが、どうしても一律緊急に画一的にやったものでございますから、やはり二割が現実的な可能な限度の数字じゃないかという判断でいたしたのでございますが、今後個別品目についてはやはりなお高いものも品目ごとにあろうかと思います、そういったものは個別品目に応じまして、それぞれ今後また関係省庁、関税率審議会等においておはかりを願って皆さまにまた御審議を願うということに相なろうかと思います。なお、一挙にもう少しというような御議論の御指摘もございますが、これは次期国際ラウンドという問題が一九七三年から多国間の間で交渉が開始される予定になっておりますが、そういったことも踏まえつつ今後の検討課題ではないかと考えております。  次に、国内産業の調整、配慮をしつつ今回の引き下げを行なったかどうかという御指摘でございますが、私どもといたしましては十分各省と打ち合わせをいたしまして配慮をしたつもりでおります。  なお、その例といたしまして、国内価格で非常に差がございます農産物の一次品はまず例外といたしました。それから、なおこまかに申しますと、特定地域の零細企業の品目、たとえばにかわ、ゼラチン、皮製品、しょう脳、そういった六十二品目については例外措置を講じましたし、その他いろいろな角度から例外措置、合わせまして百六十二品目の例外措置を講じたわけでございます。なお、輸入急増によりまして対象品目になりましたものについても、問題がありましたならば、先ほど御指摘になりました八条の六の公正な活用をはかってまいりたい、このように考えております。
  118. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記やめて。   〔速記中止〕
  119. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記を起こして。
  120. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これで質問やめますけれども、最後に総括的に二、三の点について要望と意見を申し上げて終わりたいと思うんですが、結局、いままで経済見通し一つとらえてみても、こんなに急角度で上昇回復をするとはだれも思っていなかったんですね。政府自身も学識者の皆さんも。全く不況長期低迷という状態で今日まできたわけですけれども、これがみごとに回復をした。こういうのにはやっぱり財政、輸出あるいは消費、こういうものがなんといっても、ささえになっておったと思うんですね。ことにこの財政を補てんしている国債問題、これは本来市中引き受けということがたてまえであったけれども、結果的には日銀買い入れでもって通貨増発、こういう結果になって、若干インフレ上昇というようなことも招来をいたしました。その内容を見ましても、大体市中銀行に一兆五千億ですよ、公債は。しかし、資金運用部には三兆円ありますね。それから四十年以降で総体五兆円、今回のものを全部含めますと十兆に近いんじゃないですか。このぐらいな膨大な国債というものを持っておる。さらに株価等は上昇の一途をたどっておるわけですね。あるいは外為払い超、こういう現象が金融の状況としても顔を出しておるという状況、こういうことになって、今回のこの円対策でもって、単に貿易管理令と、いま出されたこの三つ骨格に基づく対応措置ではたして円が守れるかどうかというと、私がさっき申したようにだれもそんなことは信用していない。こういうふうに理解ができるんであります。ですからこの対策としてほんとうにやるならば、私は輸出輸入関係が全くこの関連なしに今回やられておるわけですが、こういうものの均衡体制ですね、企業が実質的にやり得るような、そういう対策というものが必要じゃないか。ですから、この企業のいわばすべて自前方式ですね、もう税制金融上のそういう保護政策というものを撤回をする、このくらいの思い切ったことをやらなければ、輸出のこの増大を抑制していくということに私はなってこないと思う。そういうことでいくなら、初めて円対策としてこれは本気でかまえてきたわいということがわかるわけですけれども、いまの状況では残念ながらまさしくこの円切り上げの対応措置というふうに私はいかないのじゃないか。こういうふうに考えるわけです。  それからもう一つは、これは日銀の総裁にも実はきょう来ていただいて聞きたかったのでありますが、どうも大蔵当局と日銀というものはやや同一歩調でいっているようですけれども、通産省関係はちょっと違うわけですね。その調整は総理がやったとわれわれは理解している。なぜ一体輸出税制というものを制定できなかったのか、この辺もわれわれとしてはどうもすっきりしない。そういう上に立って貿易管理令というものをやっている。しかし、その貿易管理令もわれわれが理解するところでは、財界ともすでに打ち合わせをして、これは通産省否定するかもしれませんけれども、しかし、結果的にはそれを打ち合わせをして財界賛成の上に立って今回のような行政措置をやっていこうとするのですから、それではうまい運用をするということは私はできないと思う。その辺がやはり明確な立ち切りをやった上に立って、そして明確な財政措置をとっていかなければいけないと思う。ただ最後に私は、そういう対策でいかなければいけないと思いますが、これらはいずれ機会を見まして、再度またいろいろ審議を継続してまいりたいと、こう思うんでありますが、貿易管理令、こういうものからいろいろやって、今後経済情勢の急変等に伴って、輸出産業が損害をこうむった、そういった場合について、政府はこれに対して一定の保護政策をとらないという、この確認を私はやるべきじゃないか、そうでないと、必ずこの貿易管理令の行政措置等によって何らかの変動によって損害をこうむったということになれば、必ず政府に対して税金でまかなえとか、この前の円切り上げ等に伴ってドル買い、その他のドル買いささえ、こういうことによって税金を使ったと同じような二の舞いというものが演出をされる、そこをはっきり、私は最後に、これは政務次官ですね、大臣代行としてひとつ明確な回答をいただいて質問を終わりたいと思います。
  121. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) 戸田先生から御叱責あるいは御激励を賜わりまして、大蔵省当局としては深く考え、また、今後も施策に遺漏なきを期したいと思っております。ただ、先生のおっしゃる中で、円の切り上げは不可避であるのかという断定的なことにつきましては、私たち政府は、今回の法律案並びに他の施策とともに、これをもって今後補うべきものももちろんありますけれども、必ずや円の切り上げを防止したい。御叱正の中にも、その点については同じ方向であろうと思いますので、そういうことでやりたいと、こういうふうに思っております。なお、いろいろ御意見を承っておる中で、私たちまたそれを旨として実施していかなければならない、こういうふうに考えております。
  122. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一つは、いま私が要望として申し上げて回答をいただいた事項については、これは短期対策として、もちろん政府が出している三次対策というものは、私は長期的展望に立ったものではないということは、そのように理解しているわけなんですが、長期展望に立って私たちはいろいろいままでも主張してまいりましたけれども、何と言っても、一つはアメリカのベトナムのインフレ、あるいは日本の二重価格制、あるいは日本の国際的低賃金、日本企業の公害防止負担の回避、あるいは租税特別措置等による大企業の国税、地方税の大幅減税、こういった各般の保障というものが今日のいわば外貨累増の起因をなしていると考えるわけで、だから、政府が出しました今回の第三次対策の中にもまだまだ実行されない部分が数多くあるわけですから、そういうものと並行して、長期経済策定と含めて、国際金融のそういう方法をどうすべきであるのか、これは早期にひとつ、さっき経企長官から、年内おおむね策定という方向でありますから、いずれ出るでありましょう。そういうところでひとつ要望として入れられるものは相当織り込んで善処をしていただきたいということを要望いたしまして終わります。
  123. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  124. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記始めてください。
  125. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 御提案の内容中心にして、幾つか御判断、御意見を承りたいと思います。  まず、国際金融局長にお伺いするわけですけれども、円の再切り上げは必至ではないか、こういうことになりますと、絶対いたしません、こういう答えが返ってまいりますし、お立場から言えばそういう答えになるのだろう、こういうやりとりになってしまいますけれども、少し立ち入って御判断をお伺いしたいと思います。  去年大幅の円の切り上げに直面する前までは、円の切り上げというものはあたかもタブーみたいな感じで言われておりましたし、それは一国の主権に属することであり云々ということを含めて、非常に固いものの見方があった。ところが、昨年の経験を踏まえてということがわかりませんけれども、その後円の切り上げというのは、とり得る政策手段の一つではないか、こういう御議論も各方面で伺うところです。にもかかわらず、政府とすると、円の再切り上げは絶対にしないということは、そういう平価調整という政策手段はこの際とらないのだときめて、今後に臨まれるわけです。ある意味では自分の手を自分でしばって、今後の政策運営をするのかと言われかねない面かもしれません。そこで、するのかしないのかという短兵急な質問ではなくて、政府として理屈から言えばとるべき政策手段の一つである円の切り上げというものを、この際絶対にしないとおっしゃる理由を幾つか具体的にあげて御説明いただきたいと思います。
  126. 林大造

    政府委員林大造君) 現在円の切り上げ、いろいろ話題になっておりますが、政府といたしまして円の再切り上げをやる意図はない、また回避できるであろうという理由でございますけれども、一つは、昨年来の世界の経常収支状況を見てまいりますと、昨年はアメリカの経常収支の赤字は約二十八億五千万ドル、三十億ドル弱でございます。これに対応いたします黒字が、日本が五十八億ドル、それからECが約二十五億ドル、その他赤字の国もございますから、その他で吸収されているわけでございますが、当時日本経常収支黒字は、これは暦年でございますが、アメリカの赤字の約倍であったわけでございます。今年の赤字がアメリカはどのくらいになるか、まだ暦年経過いたしておりませんので、推測の域を出ませんが、大方の見るところでは、昨年の約三倍近くになるのではなかろうか、八十億ドル前後になるのではないかと見られているようであります。これに対しまして、わが国経常収支黒字は本日屡次御説明申し上げましたように、平価調整効果というのが、効果をあらわすまでに時間がかかる。しかも、平価調整直後においては、意図した方向とは逆の効果が出るというようなこともありまして、思ったほどの効果はあらわれておりませんけれども、それでも昨年に比べておそらく微増にとどまるであろう、六十億ドル台に乗せるか乗せないかという程度であろうと存じております。したがいまして、アメリカの赤字の約四分の三程度、昨年倍であったのに比べましてその程度に落ちております。それに対しまして拡大前のEC六ヵ国の経常収支黒字は、おそらく昨年の倍以上になるであろうというのが大方の見るところでございます。これで見てみますと、わが国が最も大幅な切り上げをやったわけでございますから、したがいまして、EC諸国と比べて、わが国のほうが国際収支黒字幅の拡大が少なくとも鈍化ないしは横ばいになる、それに対してEC諸国はそれほどではないということは、ある程度自然なことではございますが、このようなことで、非常にしばしば言われておりますアメリカの赤字と日本黒字が対立しているという状況は様を異にしているわけでございます。で、その理由は、平価調整効果が思ったよりも時間がかかっているということが一つと、それからもう一つは、やはり景気のズレであると思います。アメリカの景気が顕著に回復をしてきている、日本もかなり顕著に回復をしてまいりました。しかし、日本回復が、輸入輸出数字にあらわれてまいりましたのが、ちょうど本年の半ばごろから顕著にあらわれてまいりまして、今後さらに輸入の勢いが強くなるというふうに存じております。  それから、第三に考えられますことは、昨年の六月にいわゆる八項目対策をとりまして、それからことしの五月に七項目対策をとりました。それから十月の二十日にいわゆる第三次の対策をとったわけでございますが、その効果があらわれますのにどうしても時間がかかるわけでございます。その効果がおそらくこれから次第に顕著になってくるであろうというふうに思われるわけでございます。おそらく来年はアメリカの経常収支の赤字幅も縮小に向かうと思いますし、日本経常収支の増加も横ばいにないしは若干微減に転ずるであろう、ということであれば、日本GNP伸びは、毎年かなりの勢いで伸びております実質成長率がかりに一けた、一〇%未満であるにいたしましても、名目の伸び率が一〇%をこえることはまず間違いないと存じます。したがいまして、経常収支黒字GNPに対する比率というのは減少していくであろうという見通しを立てておりまして、その減少のトレンドに、財政上の措置あるいは金融情勢、さらには今回の措置を加えまして均衡化がもたらされるに違いないということを私どもは見通しているわけでございます。
  127. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御判断を伺っておりますと、たとえばこれは予算委員会の質疑も含めて、今国会というのはある意味で円対策のために開いたようなものなんです。円は絶対に切り上げてはいけないんだとたいへん大きな声で言われた情勢判断と少し感覚が違うような気持ちで聞いていたんですけれども、たとえば昨年に比べてこういう経過があった、その理由は日米それぞれの景気のズレ、あるいは一六・八八%の効果がいまだ出ていないんだ、趨勢としての御説明はよくわかるんですけれども、平たくそれを言い直しますと、もうしばらく待っていろやという感じに聞こえてしまうんですけれども、その辺で私がお伺いしているのは、円の切り上げ、通貨調整というのはとり得る政策手段の一つだという理屈は確かにある、政府があえて絶対にそれはとらぬのだ、言い直すと、ほかの政策手段に絶対に訴えていくんだと力説をされている背景というのは、何か具体的に理由がないでしょうかということです。質問をもう少し明確にする意味で申し上げますと、たとえば一六・八八%はまだきいてないんだ、きいてないところに円の再切り上げをやられたら、きき過ぎになってかぜを引いてしまうんだ、したがって、絶対にいまは困るんだということも一つだと思います。そういう意味で、具体的なものがあればお伺いをしたいということです。
  128. 林大造

    政府委員林大造君) お答えになっておりますかどうか、あるいは若干十分理解いたしかねているのかも存じませんけれども、私どもは、現在この段階で、世界じゅうでどこも昨年の平価調整を変えようという動きはない、今度だけは、まことに残念なことではございますけれども、ことしの六月にささえ切れずに調整をしなければいけなくなった、それはもとへ戻る方向への調整でございます。しかし、そのほかの国はいずれもレート調整の効果はまだ十分にあらわれていない、各国いずれもそのようなことを問題にしていないときに、日本の国内でだけそのような気分がかなり出ている、そのようなことは根拠がない、現在円切り上げ云々を言う必要はないということを申しているわけでございます。レートの問題と申しますれば、日本のレートを変えないつもりでも、たとえばポンドが切り下がっただけでも円は若干ながら切り上がっているわけでございます。為替レートというのは絶対のものではないわけで、戦後一ドル三百六十円のレートは二十数年間変えなかったわけでございますけれども、しかし、その間におきましても、他の国のレートがしばしば動き、その結果の影響を日本は受けていたわけでございますから、したがいまして、現在この段階で円の再切り上げを云々するのは当を失しているということを申し上げているわけでございます。
  129. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうすると、たいへんあげ足のようですけれども、こういうお伺いのしかたをしてみたくなるんですけれども、現在世界のどの国からも円の再切り上げは求められていないんだ、またその趣旨の外電も新聞では散見するようですけれども、かりにそうだとすれば、今回あえて対外経済関係を調整する云々という法律案を今臨時国会にお出しになった意味というのは那辺にあるんでしょうか。
  130. 林大造

    政府委員林大造君) 一つ方向一つの一方のおもな目的は、国内の経済体制をこの際福祉重点に切りかえていくということが一方にあるわけでございます。他方におきましては、なるほど現在黒字幅は順調に縮小の方向に向かうということが期待されている。しかし、これは何もしないでいてもそういうことになるとは限らないわけでございまして、それにはそれなりの努力をしなければいけない。海外から求められておりますのは、現在のところはレートの問題ではなくて、日本経済体制をもっと開放体制にするということでございます。現在の経済体制を開放体制にして、そうしてその黒字幅縮小の問題にいたしましても、この措置をとりましてからそれが現実の実績になってあらわれますまでにはかなりのタイムラグが要るわけでございます。現在から直ちに強力にその措置を進めなければ適当な時期に黒字幅が適当な幅まで縮小することがおぼつかない、したがって、極力この際その方向に向かっての政策をとる必要がある、こういう判断で行なうことにされたのだと私どもは存じております。
  131. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのお答えの中で二つありまして、一つはこういう処置をとることによって福祉重点の政策に切りかえていくんだ、もう一つは、黒字幅の減少をはかりたいんだ、黒字幅の減少ならわかるんですけれども、これと福祉政策が具体的でどうつながるんでしょうか。というのは、福祉政策ということはみんな最近言い過ぎていると思う。福祉政策の中身の議論はほとんどされたことがない、何となく福祉という話で。いま御提案のこれが個々に具体的に福祉とどうつながるんですか。おことばだからお伺いします。
  132. 林大造

    政府委員林大造君) これはあるいは官房のほうからお答えしたほうがよろしいのかとも思いますけれども、今回の円対五項目の中の第五項目でございますが、財政金融面のいろいろな施策その他週休二日制とかいろいろなことがうたわれております。今回補正予算を予算委員会で御審議いただいているわけでございますけれども、その補正予算の中には、公共事業系統で各種国民福祉の増進に役立つような施策が盛り込まれているはずでございます。これら公共事業の支出というものは、当然に有効需要誘発効果を生みまして、それが輸入の増進、輸出圧力の減退ということを通じて国際収支の均衡化に向かって進むことも事実だと存じます。その意味におきまして、両々相まって進むものだというふうに私は解釈いたしております。
  133. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのような御答弁確かに多いんですけれども、そうすると、じゃ福祉政策というのはあくまでも内需喚起のための手段なんだ、大企業擁護だ、こういう理屈がついてくることになるんですけれども、そこで、じゃ、外務、通産の方もおいでになっていると思いますので、別にそれぞれから同じことをお伺いすることをたくらんでいるわけではなくて、率直にお伺いしますけれども、いわゆる円対策と俗にいわれます。この法案では対外経済関係を調整する云々ときちんと書いてありますけれども、俗には円対策、これは総理以下それぞれ使っておりますから何がしか中身のあることばのように見えます。問題は、円対策の中身として、どこに重点的な問題意識を置いて取り組んでいかれるのか、それを大蔵、通産、外務、それぞれから、簡単でけっこうですからお伺いしたいと思います。どこに重点ということで私がお伺いしたいと思うのは、たとえば、外貨準備高なんです。日本の外貨準備高がえらいふえてしまったというところに問題意識を置くのか、あるいは対米貿易黒字というところに問題意識を置くのか、あるいは広く通商全般に問題意識を置くのか、もっと言ってみれば、全部そうだと言われればそれまでですけれども、それぞれにやっぱり取り組む角度が違ってくる。そこでこれは、それぞれ御適当な方でけっこうですけれども、いわゆる円対策に、今回の御提案も含めて今後取り組んでいくにあたって、いま申し上げたようなどこに重点的な問題意識を置いてお臨みになるのか、お伺いしたい。
  134. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 今次のおっしゃいますところのいわゆる円対策の重点、これは直接的には経常収支の均衡をはかるための措置である、均衡へ近づくための措置である、こういうぐあいに考えます。外貨準備高を減少せしめるのは、それによるところの間接的な効果であろうと思っております。なお基本的には、わが国経済体制を開放体制にする、これが考え方でございます。それがまたひいては先ほど御質問がございました福祉とどうつながるのだという問題と、私は国民生活を優先する政策にそれが転換をしていく一つの端緒である、そういうぐあいに考えております。
  135. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) ただいまの大蔵省からの御答弁と大体同じでございますが、私どもは外国にいろいろ説明したり、そういう立場から考えまして、今回の対策基本はやはり、たとえば、ホノルルで田中総理が申されましたとおり、結局日本経常収支ないしは基礎収支の大幅な黒字がやはりいろいろ世界経済の均衡を妨げているという認識に基づきまして、一方におきましては経常収支黒字を縮小し、他方におきましては援助とか、あるいは投資とかいう形で長期資本収支の赤をつくりまして、基礎収支を大体数年のうちに均衡に持ってまいりたいというふうに考えております。この点がまた各国からの要望のあるところでございまして、そのための政策手段といたしましては、やはり日本経済を開放経済体制に持っていく、たとえば、貿易につきましてもさらに自由化を進めたい、あるいは資本の自由化も進めるというような形で、やはり国際経済におきます不均衡要因としての日本というものを、そういうイメージをなくなすとともに、世界経済におきまして日本がいわばルールを守っていないのだという批判に対しまして、日本としての姿勢を正す意味におきまして、現在御審議を願っております諸対策はその方向への一つの前進ということになると思います。さらに、私どもといたしましては、今後も長期的にいろんなことを関係省庁とよく話し合いました上で、諸般の施策を進めていくことが望ましいというふうに考えております。
  136. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 大蔵省のほうから御説明がありましたところと異なった意見を持っておるわけではございませんけれども、輸出輸入につきましてはできるだけ適当なバランスにいたしたいというのが中心であろうかと思っております。したがいまして、今回の措置は、輸入につきましても、輸出につきましても、また福祉指向型のいろんな予算によりまして、国内経済が大きくなると、そういったことを通じまして、輸出輸入に適当なバランスをとるということを目標にいたしておると思っております。
  137. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 通産にお伺いするんですけれども、開放経済体制というおことばがいまの答えからはなかったんですけれども、それは特に異論があってということでございますか。
  138. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 特に異論があって申さなかったわけではございません。輸入の開放経済体制ということの中には、輸入の増加ということがその実質になるかと思っておりますが、その点につきましても、国内業界の体制整備とあわせまして積極的に今後検討してまいりたい、そういうふうに考えております。
  139. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 どうも歯切れが悪いので、お気持ちはわかるんですけれども、そこでひとつお伺いしたいのは、経済の開放化、いわゆる自由化というのは、国内産業保護という観点から考えると、大きな環境の変化ですから、所管庁としていろいろ悩める点はよくわかると思うのです。ただアメリカにおける保護貿易主義的な動き、それから昨今のECの動きというものを考えてみると、たいへん困ったことですけれども、何となくブロック化の方向にいきそうな心配が出始めてきておる。そこでブロック化の方向にいくと、一番実は損をするのは先進工業諸国ということで考えれば、これはだれが見ても日本ということになると思う。そこで通商政策ということで考えて、いろいろ国内には問題があるのだけれども、積極的に開放経済方向に旗を大きく振ったほうが、結果として日本の取り分が大きくなるということが言えると思うんですけれども、その点は同感でございますか。
  140. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 大きな方向といたしまして、全く同じ意見通産省も持っております。
  141. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは少し戻って、これは大蔵省のほうにお伺いしますけれども、貿易収支黒字幅を減らすということと、開放経済体制ということと二つおっしゃったんですけれども、問題を具体的にする意味で、対米貿易黒字ということに限って考えてみた場合に、経済の開放化を進めることが、対米貿易黒字を減らすということにつながるとお考えになりますか。お伺いする理由は、日米の貿易構造の面があると思うのです。日本は日米との関係では、一次産品を日本が買って加工したものを含めた二次産品をアメリカに売っている。貿易収支というのはその出入りの差額ですから、基本的に日本は対米貿易では黒字型になる貿易構造を持ってしまっている。そこの中で経済の開放化ということはより拡大均衡を目ざしていくということになるわけですから、それは結果として貿易黒字を減らすことになるのかもしれませんけれども、必ずそうなるという結びつきはどうもないんじゃないかと思いますので、お伺いします。
  142. 林大造

    政府委員林大造君) 国際収支考え方に、グローバルにものごとを考えまして、そうして二国間のバランスは、そのグローバルの中でおのずと処理されていくという考え方と、それから二国間のバランスだけを非常に神経質にとりまして、その均衡を求めていく行き方と二つございます。自由体制あるいは一つの世界を求める体制、いわゆるグローバリズムというのは、当然前者の系統の話でございます。したがいまして、御指摘の点は、おそらく、たとえば日本は濠州、その他から鉱物資源あるいは繊維原料その他、輸入超過になる貿易構造になっている。それに対しましてアメリカ、そのほかにもございますが、に対して輸出超過型の貿易構造になる。そのようにその国々の経済体質によりまして、二国間ではいろいろと黒字になり、赤字になりながら、グローバルに一つの均衡ラインを求めていくというのが本来の姿であると思います。しかしながら、そうかと申しまして、全然その二国間のバランスがどうでもいいかと申しますと、それは対米関係のみならず、発展途上国との間でもいろいろ問題が起こってまいりまして、これを全く無視していいわけではない。しかし、その全体の論理というものは、当然のことながら世界の主要国はすべて理解していてくれるというふうに存じております。
  143. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) ただいまの国際金融局長の御答弁のとおりでございますが、もう一つあえてつけ加えますと、御案内のとおり米国の経済は、最近におきまして比較的好調といいますか、一時の不調を脱しつつございまして、かつまた物価の騰貴率も最近では非常に鈍化いたしております。ことにヨーロッパと対比した場合のアメリカの卸売り物価の上昇率は非常に低くなっております。将来いろいろ政治情勢、たとえばベトナムの状況が変わる、ベトナムのたとえば停戦ができるというような事態が生じますと、米国の、これはまあ直ちに経済的な影響はたいしたことはないかと思いますが、心理的、社会的、あるいは政治的にいろいろ影響が出てまいりまして、それが米国経済の自信回復ということにもつながるかもしれませんし、かりにその問題を一応除外いたしましても、現在の物価傾向がしばらく続くならば、米国産業の国際的競争力がある程度回復するということも考えられないわけではございません。その場合に、それが直ちに日米貿易の不均衡是正につながるかどうかは疑問がございますが、アメリカの全世界に対します貿易収支にはいい影響が出てくることが考えられるわけでございます。で、私どもがアメリカ側といろいろ接触をいたしております際に、もちろん日米の貿易の不均衡の問題は日米双方がやはり努力しなくちゃいけないという点と、それから、これはまた日米の二国間の問題としてではなくて、全体の国際収支の問題として考えなくちゃいけないという二点を指摘しておりますが、その前者の点、つまり米側の努力ということも比較的先方としてもやりやすいような環境が生まれつつあるんではなかろうかと考えております。
  144. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの外務省の御見解で伺いたいんですけども、先方の努力が実るような環境が生まれつつあるのではないかという御判断の根拠は一体何なんだろうかということなんです。というのは、米国経済が活況を呈してきた、これはおっしゃるとおりです。活況を呈してきたということになると、本来大体輸出マインドのない国ですから、国内で売ればいい、何もあえてほかの国に新しい製品企画をし、新しい販売チャンネルを起こしてまで何で売らなきゃいかぬのか、というのが総体的なアメリカの企業家の雰囲気だと思います。そういう中で、片方では物価が一応安定しつつある。慶賀すべきこととは言いながら、だから国際競争力がついてくるんだとはつながってこない。で、ニクソン大統領にしてもだれにしても、最近おりあるたびにアメリカの生産性向上を主張してるわけですけれども、なかなかその国際競争力が下に下がっていって、上に上がってこない。この悩みというのは、あえてお伺いしますと、そういう対内投資が年々減ってきたと、投資がどこに行くかというと、みんな外国に出ちまう、というところにほんとうの原因があるんで、この傾向がやまない限りアメリカの国際競争力というのはどんどんやはり低下をしていくんじゃないか、相対的に、と思うんですが、この点はいかがでしょう。
  145. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 確かにアメリカの経済がどうなるかということは御指摘のとおり非常に大きなかつむずかしい問題だと存じますが、先ほど申し上げましたとおり、米国経済が一方におきましては若干拡大傾向を見せるとともに、物価の安定度におきましても、おそらく世界でこの半年ぐらいをとりますと、最も安定している国の一つと見て差しつかえないかと思います。これに対しまして若干ヨーロッパのほうが最近インフレのテンポが加速化されつつあるわけでございます。で、アメリカの物価が比較的安定し、相対的に安定してまいりますことは、一方におきましては、米国の輸入が米国産品との競争関係におきまして、従来のように輸入品のほうが非常に強いということではなくなるということもございましょうし、他方におきましては、米国の輸出、これはもちろんGNPの四%程度のものでございまして、アメリカ全体としてはそれほど輸出指向型ではございませんけれども、個々の商品をとりますと、たとえば米国の伝統的な輸出商品、そういう産業は相当輸出に力を注いでおりますし、そういうものの相対的な競争力の回復ということも米国の国際収支によい影響を与えるのではなかろうかということも考えられます。で、もちろん物価の伸びが比較的安定してまいりましたのは、ここ半年くらいのことでございまして、それが国際収支に実際にあらわれてまいりますためには、若干の時間的な経過があると思います。  もう一つ、いま申し上げましたように、政治的——先ほど申し上げましたように、今回のアメリカの選挙の結果、一応現ニクソン大統領の指導力が強化されるという政治的要素もございますし、かりにベトナムの停戦が行なわれましたならば、これはたとえば投資あるいは消費におきましても、従来から非常に戦争のためにいろいろと目標がさだかでなかったり、あるいは自信がなかったという面が除去されますと、その面でも投資及び消費双方におきましていい影響を及ぼすのではなかろうか。つまり先ほど先生が御指摘のとおり、アメリカから資本が外へ逃げてまいりまして、外国に投資するということも、あるいは少し程度が減ってきて、国内に対します投資も、あるいは従来よりはよくなるのではなかろうか等々、その若干の好材料はあるかと思います。もちろんこの点は非常に大きな国民経済全体をどういうふうに判断するかでございますから、一がいに論ずることはできないと思いますけれども、従来よりも若干の好材料が見えつつあるということは、米国人自身が盛んに言っているところでございまして、そういう面は確かにあるのではなかろうかと考えております。
  146. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大蔵省にお伺いしますけれども、先ほど言われた当面の経常収支対策、背景としては、経済の開放化だということを、かりにアメリカとつなげて考えてみますと、一次製品、二次製品を、日米の間で貿易をしている。で、一次製品の日本に対する輸出が量として今後ふえていくのだろうかといいますと、一次製品の性格からいって、急激な増加というもの、これは期待できないので、あるいはこの一次製品というのは、ある場合には南北問題の解決の一環として、開発途上諸国にやがて買い先も変えていかなければいかぬ。その意味でアメリカと開発途上諸国というのは競合関係にあるということになりますし、二次製品を考えてみますと、軽工業製品と重化学工業製品と分けてみますと、軽工業製品はいまでさえアメリカからはそんなに入っておりませんし、今後さらに速度を増して開発途上諸国からの対日輸入というものはふえてくる。一方日本からは重化学工業製品を中心とした対米輸出はふえてくる。これを何とか経済の開放化を進める努力を背景にして、日米の経常収支を健全な方向に持っていきたいのだということになりますと、残る道は、アメリカが、重化学工業製品の対日輸出をふやすしか道はないのだということになるように思えるのです。ここまでのところは大体同じようにお考えでございましょうか。
  147. 林大造

    政府委員林大造君) 産業分類別にどういう方向になるかということはなかなかむずかしい問題でございますが、今回の製品輸入の関税率を一律二割引き下げるということによりましても、それなりの輸入誘発効果は出ると思います。どことの間で出るかということを国別に見通すことはなかなかむずかしい作業で、関税局でどの程度やっておられるか、私まだ承知いたしておりませんけれども、しかし、今後の日本の行くべき姿は、やはり水平分業の方向ででも、従来よりも一歩を進めなければいけないということであると思います。そのために資本の自由化のほうも進めてまいりますし、それによって海外からの輸入品が現実に消費者の末端まで安く手に入るという意味での流通部面その他での合理化も進むと思います。そういうようなことで、対米貿易の改善が今後は重工業品の輸入だけにしか期待できないということも言えないのではないか。やはり第一次産品それから第二次産品の中の軽工業品につきましても、輸入する機会がふえるわけでございますから、今後期待できるのではないかというふうに、抽象的で恐縮でございますが、考えております。
  148. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お伺いしている意味は、それはいろんな通商関係であっていいと思うんですけれども、これは通産の御判断を伺いたいのは、アメリカの軽工業を含めて、輸出マインドというのは案外高くないのじゃないかという印象が非常に私には強いのです。輸出をするということになると、たとえば日本だったら日本向けの製品開発をし、販売網をつくって売るということになるわけですけれども、そんなに努力をしなくても、アメリカ自体は非常に大きなマーケットですから、何も外に出ていかなくてもという雰囲気がアメリカの企業家には強いのではないか。なぜこう申し上げるかといいますと、先日ニューヨークのジェトロに行ったときでも、ほかのジェトロの代表の人も同じ苦衷をやっぱり訴えておいでになりました。何とか日本で買うものはないかと、最近ジェトロは輸入業になりました、と言って苦笑しておりましたけれども、ないんだそうですね。何でわしらが日本に売らなきゃいけないのだ、五年間くらいちゃんと買ってくれるというギャランティーがあるのだったら行くけれども、という話なんです。そんなうまい商売があるものかと言いますと、じゃおれはやめたと、これはアメリカの非常に巨大な国内マーケットというものを考えますと、わからないではない。ですから、日本としては、おっしゃったように、関税の一律二〇%低減を含めて、はい、門を広げました、来るんだろうか——もちろん来たがっているものはあるわけですよ。これはいわゆる典型的な輸出産業としてIBMとかを含めたものはあるわけですけれども、全般にアメリカの諸産業を見ますと、そう輸出マインドが強いとは思えない。私が申し上げているのは、そうすると対米の黒字幅というものはずっとつながってしまう。おっしゃっているように、グローバルではこうなるんだというのだけれども、やっぱり日米関係という特殊な問題を考えてまいりますと、そうは言っておられない。やっぱりこれも年率十億ドルかどうかわからないけれども、減らしていかなきゃいかぬということになりますと、何らか立ち入った対策日本として考えていかなきゃいかぬのじゃないか。そこで通産省にお伺いしたいのは、何も重化学工業製品だけを分けて取り上げているわけではありませんけれども、なぜアメリカの重化学工業の国際競争力が趨勢的に低下してきたのか。もちろん賃金という問題もあり、何もありだと思いますけれども、よく聞く話は、多国籍企業というものが新しくできてきて、米国に対する対内投資を怠ってきた。したがって、設備更新はおくれてくる、アメリカの重化学工業の国際競争力というのは趨勢的に低下せざるを得なかった、ということをよく聞くのですけれども、それを踏まえて、あけたからといったって、IBMというような特殊な例は別ですよ、向こうの全商品群というのはそうは日本に入ってこないのじゃないか、そういう見通しをいま立てておく必要があるんではないかと思うんですけれども、通産の御判断を伺いたいと思います。
  149. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 先生御指摘のとおりの現象が——現象と申しますか、アメリカの実業人の態度というのがこれまでございまして、われわれいままでジェトロその他を通じ、また業界からも輸入促進ミッションを派遣いたしまして、そういう実情を調査するというふうなことをやっておりますが、先般アメリカ側と会議をいたしましたときも、先方は商務省が大きく新聞公告いたしまして、輸出機会について商務省はあらゆる援助を惜しまないということを米国業界に知らせると申しております。それからあまり日本側としてガットに適合した措置とは思いませんが、DISCという輸出促進策などをとりまして、かなりに輸出マインドが出てきているんじゃないか、そういうふうに考えております。現実にこれは日本側の行動でございますけれども、日本側の各商社はDISCの規定に合いますような対日輸出会社をつくりまして、対日輸出に努力をしておるというふうにもまた聞いております。これはきわめて最近の数字でございますが、十月の輸入承認統計というのを昨日発表をいたしましたが、その中には製品類が前年同月に比べまして四七%、原燃料類が三二%、食品類が二五%というふうな対前年の大幅な増加を示しております。対米の輸入の承認の増加といいますのは、三六%ぐらいでございますが、その中に綿花とか鉄鉱石とか、いわゆる産業原材料の輸入の増加の端緒があらわれてきたということについて、私ども非常に激励されておるというふうな感じでおりますが、私ども全く見込みがないと、つまりアメリカからの輸入の増加の見込みがないというふうな考え方は現在いたしておりません。アメリカの国際企業がいろいろと海外に投資いたしまして、それが米国の輸入増加につながっているという議論は、現在アメリカで問題になっておりますバーク・ハルトケ法案に関連いたしまして、労働組合から強く要求が出、そういう事実が指摘されておるようでございますけれども、各国際企業の側はかえってアメリカ側の生産を増大しているんだというふうなこともいろいろ言っているようでございまして、その点はアメリカの国内でいろいろと争われている点ではないかと思っております。日本に関しましては、そういうふうな影響というのはまずそうたいしてないじゃないかというふうに現在考えております。
  150. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 多国籍企業というか、米国の巨大資本企業というか、そういったものについてのひとつ御意見を伺いたいということを含めてお伺いしておりますが、話を戻して、開放経済体制ということで通産にお伺いしたいのですけれども、とにかく国内産業保護ということはよくわかる。ただし、米国経済もEC経済も含めてブロック化されたんではもうたまったものではない。そうなりますと、どういう矢傷を受けたにしても、自分から開くことが日本にとって一番プラスなんだという立場にこれは立たざるを得ない。そうなりますと、開いたんだけれども中にまたシャツを着せてやるというんでは何の役にも立ちません。その意味でほんとうは開放経済体制は日本にとって一番利益があるんだというなら、今回の御提案の中の八条の六についてあるようなこの種のものは、ほんとうはあっさりと取っ払ってしまったほうがはるかにいいはずです。それは担当業界が困ると、日本としての利益、国民の利益ということで考えたら、傷はどうせ出るということになるし、それも覚悟の上で開放経済体制を進めないと、ECはECなりに、米国経済は米国経済なりに自立できる資源と市場を持っているわけです。当然この八条の六というのは、政治的にそれなりの意味はわかるとしても、本来はこれも含めてとっていくべきじゃないか、それがほんとうに開放経済体制というものを日本が真剣に進めていくという証左になるんじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  151. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 最初の御質問にお答えいたしますが、現在日本の残存輸入制限、これは三十三品目になっております。これは前に御説明を申し上げたことがあるかと思いますが、ヨーロッパ各国と同等もしくはより広い、より徹底した開放体制であると私どもは現在考えております。  で、三十三品目のうち鉱工業製品と申しますのは九品目でございます。九品目に関しましては、それぞれいろいろな問題がございまして、国内の業界の体制を検討しながら検討するというふうなことを先ほど申しましたが、かなりにいわゆるハードコアに近づいておりますので、若干の時日を要するのではないかというふうに現在考えておる次第でございますが、しかし、この九品目があるので非常に日本が開放体制でないというほどの輸入制限をしているというふうなことはない。つまりフランスとか、イタリーとかドイツとか、そういうヨーロッパ各国と大体同じぐらいのところでいま経済を開放体制をとっておるというふうに私ども承知をいたしております。  それから二〇%関税引き下げにつきまして緊急引き上げの規定を設けることについての問題を御指摘になりましたが、何しろ千八百数十にのぼります非常に広範な品目につきまして関税引き下げが行なわれますと、いかなる国内産業に対する影響があるか、いま確実に私どもが予見するというわけにはまいりません。もし非常に大きな問題が起こりましたときには、先生御存じのとおり、日本産業の大部分は中小企業でございます。何らか二〇%をもとに戻す方法というのを制度として設けておきたい。もちろん大蔵省から御説明がありましたように、関税率審議会の中に特別の委員会を設けていただきまして、そこで慎重に御審議は願いますけれども、もしそういう事態が起こったときには、緊急に何らかの有効な措置をとらせていただきたいというのがその規定の趣旨であろうかと存じております。
  152. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 残存輸入制度について工業品九品目含めてEC並み前後であるというお話なんですけれども、ECというのはいま、もう百も御承知のように日本とは立地条件が基本的に違うわけです。EC並みでいいんだろうか。日本だけはずば抜けて自由化しなければ認めてもらえないんだ。同じように関税についても二〇%ここで切ってしまったら中小企業にどんな影響があるかわからぬということをいまおっしゃっているようでは実は困るんじゃないか。ゼロにしろとは言いませんけれども、だれが見たって日本はすごいものだとほんとうは見せていかないと、日本の態度というのは外国で理解できないんじゃないか。EC並みです、国際水準並みですということでは実は不十分なんだと思うんですが、これについて御議論ございますか。
  153. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 各国いろいろとそれぞれの事情がございまして、そういう制限が残されている。つまりEC各国につきましてそういう制限が残されていると存じている次第でございますけれども、一番最初に申し上げましたとおり、大きな方向として開放体制——もっと開放体制をとるべきだということに関しましては私ども異議はございません。今回の十月二十日の決定にもございますように、そういう方向に向かって慎重に進んでいく、そういう方向については私ども全く異論がない次第でございます。ただ現在残っております九品目につきまして、いま直ちにというわけにはちょっとまいらない国内事情がいろいろありますので、いま申し上げているようなことを御説明申し上げておる次第でございます。
  154. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 外務省にお伺いしたいのですけれども、先ほど、円対策の中身として、日本がルールを守ってとおっしゃいました。これは海外に行くとよく聞かれる議論なんです。で、いまの開放経済体制についても、何だか通産にだけ申し上げて恐縮ですけれども、何とか一生懸命にやっていきたいのだというお話がありましたけれども、日本経済の開放化を進めるということをきめたのは、たしか四十年四月のOECDに加盟以降のことでありましたし、外資審議会議論していたよりもっと前だったと思います。それほどにも長い時間をかけ過ぎてしまっている。  そこで外務省にお伺いしたいのは、こういったことを外国はどう受け取るかということなんです。たとえば、自由化をする。国内産業保護で関税割り当て、あるいは自由化をするけれども、関税をくっつけてしまう。一ぺんいいといっておいて、あとでだめだといわれるような感じを外国は持つのじゃないかという心配がしてしかたがないのですけれども、これまで対外折衝されている御経験も含めて、御意見があったらお伺いしたい。
  155. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 確かにいま先生御指摘のような感じを持っている向きがございまして、新聞あるいは先方の経済人からそのような批判を受けることがございます。で、私どもといたしましては、過去におきまして、日本輸入制限が非常に強かったこと、あるいは資本につきましても非常にきびしい規制を行なっておったこと、これらの事情が一部の外国の人々に、日本という国は非常にルールを守らない国であるというイメージと申しますか、そういうものを与えたきらいはございます。で、私どもといたしましては、国内の関係省庁と十分協議の上、さらに開放経済体制に持っていきたいと思っておりますが、それには若干の時間がかかるわけでございまして、そのような国内事情も踏まえまして、外に対しましては、とにかくわれわれはいま前進しつつあるのだ。かつてはちょっと輸入制限もきびしいこともあったかもしれないし、資本についてもいろいろ問題があったけれども、いまそちらの方向で一生懸命やっておるし、かなりの水準に達したし、今後も続けるのだ、もう少し長い目で見てほしいという説明をいたしておるわけでございます。それがはたして十二分に成功しているかということにつきましては、遺憾ながら必ずしもそのようには申し上げられないかと思いますが、せっかく御審議をいただいております諸対策も、これはすでに外国にもいろいろ伝えられておりまして、非常に問い合わせもきておりますが、われわれはこれは前進の一歩でございますし、この前の関係閣僚の御決定にもありましたように、当面の措置としてこれをやるのだということで、いま説明しておるわけでございます。  さらに、この措置に加えまして、先般来お話しのございました福祉経済と申しますか、日本経済の体質を変える、あるいは資源配分を変えるということによって、いわゆる輸出圧力が非常に加わりやすい体質も徐々に変えようと思っておるし、変えつつあるのだということもかねがね外に向かって説明しているところでございます。かつ明年の秋からいわゆる新規の国際ラウンドというものが、この交渉が主要先進国の間で開始される方向に向かって進んでいるわけでございますが、その際に私どもも積極的にこれに参加いたしまして、関税面なり、そのほかの貿易障壁面なり、等々におきまして、さらにこの交渉の過程を通じて前進したいということで、この国際ラウンドにつきましてはわれわれは非常に賛成であるということを表明してまいりましたし、現在ジュネーブで行なわれておりますガットの会合におきましても、そういう方針を宣明しておる次第でございます。
  156. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 たびたび通産恐縮です。貿易の自由化の問題伺ったのですが、資本の自由化についてはどういう展望と判断で臨んでおいでになりますか。お伺いしておる意味は、アメリカの要請は言うまでもなく一〇〇%の自由化である。日本の場合は五〇対五〇が原則なんだということでやってきたわけですけれども、一〇〇%自由化が実はほんとうの自由化なんで、半分なんというのは、これは自由化でも何でもないわけですから、五〇対五〇、今後とも貫いていってしまうのか、一〇〇%、これもまた開放経済体制の推進に最も利益を受ける日本として臨んでいくんだとお考えになるのか、この辺はいかがでしょうか。
  157. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 一般的な方向といたしまして、わが国経済が今後ますます国際化してまいりますためには、内外の経済情勢の進展に合わせまして、資本移動を内外ともに自由にしていくということは必要であるというふうに考えております。ただ、今回の円対策と申しますか、今回の第三次対策の中で、これをどう取り扱っていくかという問題につきましては、今後審議会に付議をして御答申をいただきまして、その過程で今後いろいろと議論をし、検討をしてまいりたい、そういうふうに現在考えております。
  158. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 端的にお伺いします。資本の一〇〇%自由化ができるとお考えになっているのか、お考えになっていないのか、私の意見を申し上げれば、残念ながらできないんだろうと思うんです。全部にわたって一〇〇%という原則はあっても、まれに見る巨大な資本でありますとたとえばIBMなり、GMというものを考えますとしたくたってできない、これが残念ながら実情じゃないかと思います。ですから、内外の環境に合わせて云々というお話ですけれども、片方では開放経済体制の推進に利益を受ける日本という立地条件がありながら、片方では資本の一〇〇%自由化というのはしたくてもできないんじゃないですか、その点の御判断どうですか。
  159. 西脇敏彦

    説明員(西脇敏彦君) 先生、ただいま御指摘のような事情もいろいろございまして、したがいまして、現在審議会に御議論をいただきまして、その過程で検討してまいりたいというふうに申し上げた次第でございますが、一〇〇%を一挙に全産業についてということはもう先生の御指摘のとおりなかなかむずかしいことであろうかと思っております。
  160. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 なかなかむずかしいと、そのとおりなんですけれども、どうもそれぞれ各省にいいように使い分けて質問して恐縮なんですけれども、私の意見を含めて外務省にお伺いしますと、いま通産省と私が言ったのは家庭の事情なんです。それは資本の自由化、開放経済体制という原則的な理解からすると、他国の理解は求められないのじゃないか。依然として日本はぶつぶつ言いながら一〇〇%ようやらぬのだ、こういう印象をいたずらに相手に植えつけるだけなんじゃないかという気がするんですけれども、それはECも含めて理解者を求めることができる理屈なんでしょうか。
  161. 宮崎弘道

    政府委員(宮崎弘道君) 資本の自由化につきましては、御案内のとおりOECDでコードがございまして、わが国はそれに対しまして留保しているわけでございますが、五〇%の原則ということは、それ自体はなかなか国際的には説明がむずかしいわけでございます。現実問題として、政府が関与して五〇%に押える、五〇%以上の資本をチェックするということは非常にむずかしいわけでございますが、先般来、政府委員のほうから御答弁申し上げておりますとおり、外資審議会におきまして、この点も含めて御審議があるように存じております。かつまた私どもといたしましては、できる限り一〇〇%の自由化の分野が広がっていくことが対外関係からは非常に望ましいと存じます。いきなり全部を一〇〇%自由化することは、あるいはいろいろな事情で困難の場合でも、その範囲、原則は一〇〇%、例外としてはこれを押えるということのほうが外に向かっては非常に説明しやすいというように感じております。
  162. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大蔵省のほうにお伺いしたいんですけれども、まあ米国における巨大資本イコール多国籍企業のような形になっているわけですけれども、それが米国外に投資をして、ある意味ではその企業の生産高たるやたいへんなものだという数字が出ておりますし、それが片方ではアメリカの重化学工業の国際競争力というものを伸ばし切れない結果になっている。結果として日米の経常収支黒字というのは、あたかもグローバルということばを持ってこないと、何とも説明ができないくらいの一つのパターンになってしまっている。そこで、日本がルール違反と言われるのはいやですから、一〇〇%自由化といったって、農業製品の場合は各国それぞれに同じ悩みをかかえておりますから、農業製品についてこれをガードするといっても、ある程度国際的な理解を求めやすい。ところが、資本の自由化ということになりますと、理屈として一〇〇なんです。それができるかというと、残念ながらコンピューターにおけるIBMであり、あるいはジェネラル・モーターズなんという、あの巨大な資本力を考えてみますと、とても開くわけにもいかない。そこで、米国内ではIBMの分割論ということまで、大勢は占めておりませんけれども、議論がされているわけです。片方では多国籍企業が本来米国内に投資すべきものを海外に投資している結果、アメリカも困っている。その結果資本として巨大になったものに対して日本も門戸をあけるわけにいかない。しかも、そういう多国籍企業というものが国際世界経済の中で大きな影響力を持ってくると、一国の国際収支と言われてみても、かつてのようにそれがどれほどの実態的な意味があるのかということになると、もうすでに一議論の対象ではないのだ。そういったことも含めてこれから国際通貨問題の交渉に乗り込んでいかなければいかぬのじゃないか。多国籍企業にどうやって対応するかということが、日本としても重要な問題になってきたのじゃないかと思うのですが、その点の御見解と今後の取り組みを伺いたいと思います。
  163. 林大造

    政府委員林大造君) 栗林委員指摘の米国を主とするいわゆる多国籍企業の功罪、これは非常に広い深い問題点があると存じます。現在御出席の澄田輸銀総裁がかつて多国籍企業調査団という調査団の団長をして海外事情を調査してこられましたから、実は私知識非常に不十分でございますが、このプラスマイナスというのは、私どもも今後十分学び取りまして、それのまあ轍を踏まないように、日本もこれからいろいろ考えていかなければいけない。と申しますのは、かつては日本はどちらかというと、常にこの種の問題は受け身であったわけでございます。これは日本の外貨事情が非常に窮屈でございまして、日本経済の発展のその天井として国際収支天井あるいは外貨準備の天井ということが言われておりましたから、したがって、日本から海外に出ていくということは、あまり考えられない。どちらかというと、海外から入ってくるのに対してどう防御するかというような問題感覚で取り組んでいたのが実情だったと思います。しかし、本日もたびたび御指摘いただきましたように、日本の外貨準備もこれだけふえてまいりましたし、また日本経常収支黒字もこれだけ強くなってまいりました。したがいまして、日本はこれから海外に向かって資本進出し得る力はできてきているわけでございます。今後世界的に経済の網の中に組み込まれていくにあたって、日本としてどういうふうに処置すべきかということでございますが、そのような場合にもやはり日本としては、先ほどから栗林委員指摘のとおり、日本経済を外に向かって開いていくという基本的な心がまえが必要である。日本の資本自由化は、四回にわたって自由化を進めてまいりましたが、昨年の八月までの段階では五〇%までの自由化はほぼ終わりまして、例外業種は七業種でございます。それから一〇〇%自由化は全業種の約三〇%、二百二十八業種についてすでに一〇〇%自由化を終わっております。今後外資審議会の議を経、関係各省とも御協議を進めながら自由化の作業を進めていくわけでございますけれども、私どもとしては、原則としてはできるだけその一〇〇%自由化の方向に向かって進んでまいりたい。ただそのタイミングのとり方、それからその実情に応じてどういうような、セーフガードと申しますか、どういうような国内の家庭の事情をそれぞれに配慮していくかという問題がございますから、直截にいきなり一〇〇%全事業種自由化ということにはあるいはまいらないかという感じもいたしておりますが、気持ちといたしましては、そのような家庭の事情、それから多国籍企業のメリット、デメリットも十分に踏まえながら、しかし、基本日本経済を海外に向かって開いていくという態度で臨んでまいりたいと、こういうふうに思っております。
  164. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの基本はおっしゃるとおりだと思うんですけれども、世界経済に向かって開く相手の世界経済はどの部分なんだという議論なんだと思うんです。  そこで、ここまでくれば、日本としては、外貨準備もたまったことだから外に出ていけるんだというのは、貯金の議論としてはそうなんですけれども、資本を外に出すということは、それだけの拮抗し得る経営力を日本の企業が持っているんだと、そこのところだと思う。で、持っていると自信がないから、先進工業諸国、その筆頭のアメリカに対してどれだけ資本が入っているかという話になると、ちょっと待ってくれと、日本の経営力で自信があるところというと、東南アジアを中心にした開発途上諸国、そこに向かっていたずらに資本が流れていく。肝心の対米関係では、向こうが幾ら来いと言ったって、ちょっと待ってくれという状況じゃないか。  そこで、御判断として、ここまでくれば資本進出ができるんだとおっしゃるんですけれども、米国と同様に拮抗できるだけの経営力を日本が持っているとお考えになっているのかどうか、その点はいかがですか。
  165. 林大造

    政府委員林大造君) 実はこれだけ日本国際収支の力が強くなりましたのはこの両三年来のことでございます。したがいまして、何事にもその状況の変化には時間が必要でございますが、ことに直接投資をする力というのは、海外における事情を調査し、それからその国における労務管理あるいは賃金水準、その他法制、税制その他の調査も必要かと存じます。このような点を全部調査し、かつ経営力、これが一番基本だと存じますが、経営力についても自信があるというところまでいかないと、なかなか海外進出はむずかしい。そういうようなこともありまして、日本は、国際収支の力が強くなったのに、外貨がほとんど政府の手に集中して、民間の力で外に出ていかないというのが実情でございます。これが一朝一夕にして改まるとは存じておりません。やはりこれには時間をかさなければいけない。しかし、方向としてはやはり、外に向かっても出ていく、外からも入ってきてもらう、そしてその合理化を進めていくというのが基本的な姿勢であると存じております。
  166. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 おっしゃるとおりだと思います。そこで、そういう国際社会で通用できるような経営力をどうやって育てるかということになると、国内でもそれがいえるような環境をどうやってつくっていくか。おっしゃったように、賃金水準の問題も入れば、昨今の公害諸対策の問題も入れば、いろんなものがそこに入ってくるのだろうと思います。  そこで、これだけたまった外貨準備高を世界経済のために役に立てようということで、日本が開いて外に出ていく。出ていく相手先は当然EC、アメリカも含むんだということになると、端的に言えば、かりに賃金ということになれば、アメリカの賃金と同じような賃金水準が日本の中で確保される。しかも相互の競争力が保障されるというような環境を日本の中でどうつくっていくかということになりますし、これは貿易収支の面での国際競争力ということを考えても同じことだと思うんです。その意味で——これは困りました。  結局、政務次官にお伺いすることになるのかもしれませんけれども、そういう賃金水準とか公害諸対策とかというものは、資本の自由化という観点からいっても、あるいは貿易通商面という観点からいっても、急いで国際水準に合わせていかなくちゃいかぬ。そうじゃないと、外貨はたまる一方なんだ、しかも、かりにたとえば、対米貿易黒字ということを考えてみても、なかなかこれは減ってこないという現状が解決できないということになると思うんです。  これまでは、賃金水準の問題とか、諸労使慣行の問題なり云々ということは、こういう通商問題を議論する重点課題ではなくて、やっぱりわきの課題だと思うんですけれども、これからは真正面の重点課題になってきたんじゃないか。まあそんなことで週休二日ということがちらちら顔を見せていますけれども、これはごく一部なんであって、したがって、今後はそういう観点でいわゆる円対策、国際的な対外経済関係を調整するための方策を進めていかなくちゃいかぬと思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。
  167. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) 先ほど来から、本法律案福祉政策とどういうふうな関連があるか、あるいは補正予算がどういうふうに具体的に関連があるかと、こういうようなお尋ねもありました。いま栗林委員から、日本の労働者の賃金が今後この問題にどういうふうに関連づけられるかというお尋ねでございました。  従来から、日本の賃金水準は非常に諸外国より低い。その時点を見ますなれば、日本経済情勢がそれ相応の原因があったことは御承知のとおりだと思います。御指摘のように、外貨あるいは国際収支関係、この面から見て、現状では一体どういうことかと、こういうことがまず問題になると思います。私は、率直に申して、いまのような経済構造日本の資源の状況そのもの、また非常に工業化され、そうしてその工業化がまあ十分といえないという面もあろうかと思いますが、アメリカ、対米比較においては、私は、決して日本が非常に十分だと、非常に従来の比がうんと縮まったと、こういうふうにはいえないと思います。が、しかし、EC諸国などと比べますというと、これは栗林委員が御承知のように、ほぼ同水準になったと、こういうことだと思います。  そこで、先ほど局長から説明があったように、日本の対外経済情勢が、あるいは国内の経済情勢も急速に——と申しますのはその基盤はまあ早い点もありますけれども、ここ三、四年来からだと思います。そこで、いまの勤労者の賃金水準も、御承知のように年率大体一〇%、私はこれはそれ自体に対して政府は別にこれを押えようとするとかですね、これは自然な成り行きで経営者、労使関係において妥結したものと見てよいと思います。調整機関とか、あるいは労働争議そのものもあります。しかし、これ自体がやはり日本経済の推移とともに進んできたと思います。  今後の見通しといたしましても、やはり私は、国全般の今後のあり方は、産業投資型から福祉政策へと、その福祉政策の中身はやはり生活中心と。こういう点から見ると、社会通念の上から見ても、あるいは労使関係のいまのような状況から見ても、押えられるというようなことそれ自体も、企業や産業によってはそれはそれ相応の相違があると思います。が、今後は、日本のいまの経済成長あるいは経済政策そのものに沿うたような賃金の上昇、充実がされると思います。ただ、賃金だけではなく、諸外国との比較においては、賃金そのものだけの比較でなく、それは国自体の福祉政策、また日本の労使関係一つの特異な面——御承知のように、企業自体が賃金の面にあらわれてない面における負担、こういうようなものなどとあわせると、決して悪くなっていくということじゃなくて、やはり今後の政策と、その推移に沿うたように労働者の生活の経済的地位の向上、こういうふうに進んでいくと思います。またそうでなければならない、こういうふうに考えております。  週休二日制等の問題についても、今回の円対策の五項目の中に書かれておりますが、なぜ法文化しないかという論議もあるやに聞いておるわけです。しかし、これらは、労使間で自主的にきめていくことが私は労使間の正しい道でもあると思うし、同時に行政官庁も、それは行政指導によってやるべきだし、法律によってそれを推し進めるというととが必ずしも福祉政策重点だ、こういうようなことがはたして言えるかどうか。やはりそれ相応の自然にそういうふうに到達し得るような環境をつくっていく、また指導面においてやるということが正しいし、見通しとしては必ずやそれは遠からず達成されると、こういうふうに思います。
  168. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 週休二日の問題もそうですけれども、法律に書くか、書かないかというのは、たいへんどうでもいいような話で、問題はそれができるような前提条件をいかに政府政策、あるいは各産業界の産業政策を通じてつくっていくかということでしょうから、幾ら書いても絵にかいたもちになってはしかたがないと思います。で、そのための対策として何をやるかということは、時間がありませんから触れませんけれども、ただ一つ、いまおっしゃったように、賃金水準を含めて国際水準——この場合の国際、水準というのは、対米貿易黒字がかくも深刻に問題になってまいりますと、比べてみりゃ、ECに比べてというのは、だんだん説得力を持たなくなっている。ほんとうはECが低いから、アメリカから多国籍企業が、資本が逃げていってヨーロッパに立地したんですね。それを早く帰ってこいと言ったって、この差があるんじゃということから、アメリカに言わせれば、ヨーロッパの賃金水準を高めてくれということにもおそらくなってくるでしょうし、いわんやこれだけの緊密な経済関係にある日米関係で、年率にして何十億ドルという黒字になりますと、日本も早く米国の水準に近づけろということが、相当国際的に説得力を持ってくることになる。  それやこれやあわせて、福祉政策もあるし、上げていくんだということを前提にとらえて、ひとつお伺いしたいのは、いろいろくるいきさつがあったとしても、結果として卸売り物価の上昇につながってくるだろう。卸売り物価はびくともしないということになれば、それは結局国際的競争力が以前に変わらず多々ますます弁ずるということですから、結局卸売り物価が上がってくることになる。上がってまいりますと、これは経済企画庁にお伺いしたいのですけれども、日本の場合は、卸売り物価と消費者物価との間に、ある相関関係があるといわれております。その意味で、円対策も含めて、円対策ということで、賃金水準も含めた諸対策を講じていくということになりますと、消費者物価対策、より具体的に言いますと、従来一%卸売り物価が上がったら消費者物価は三・三%上がる、この間は半年から大体一年ぐらいのタイムラグはあるものの、そんな関係にある。これをそのまんまにしておいて、片一方では卸売り物価が上がっても国際関係ではやむを得ないということにしてまいりますと、消費者物価は驚くべき数字になってくるのかもしれない。そこで従来三・三倍といわれていたこの乗数をどうやって減らすかということは、真剣にこれからあわせて取り組んでいかないと、何の福祉政策かということになると思うんですが、この点経企庁の御見解と御判断を伺いたいと思います。
  169. 斎藤誠三

    説明員(斎藤誠三君) お答えいたします。  卸売り物価と消費者物価の関係につきましては、連動するという見方と、それからこれとやや異なって、卸売り物価と消費者物価のメカニズムが同様ではないという見解があります。日本は、欧米型の併進する型ではなくて、むしろ乖離していく型が日本の現状ではないかと思います。しかし、いずれにしましても、卸売り物価が上がれば、程度の差はございますけれども、消費者物価へ反映することは、先生御指摘のとおり、多少のタイムラグをもって反映することは御指摘のとおりであります。  そこで、輸出との関係でございますが、輸出需要が減退すれば総需要の一部が欠落するわけでございますので、そういう意味では短期的にはデフレ的な効果を持つわけでございますが、長期的には需要増大に伴う生産性の上昇によるコストの低落が現象するわけでございまして、そういう意味ではコストの低落がはばまれ、コストプッシュの傾向にあるのでございます。  それから最近におきましては、不況からの回復、不況産業回復等によりまして、相当卸売り物価が上昇しておりまして、われわれとしても、一年前後に必ずや消費者物価に波及する可能性が非常に濃いわけでございますので、基本的には卸売り物価の上昇幅を適度な幅にするということと、それから従来乖離がありました卸売り物価と消費者物価を、特に農産物関係、あるいは流通合理化等によりまして、できるだけ乖離幅を縮めるということが基本ではないかと思っております。
  170. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの乗数的な関連の幅、乖離幅と言われましたが、縮めることが必要だというお答えなんですけれども、間違っていたらお許しいただきたいのですが、そういう乗数的な関連が、どういう実態的な原因に伴ってそうなったのかという分析は、経企庁でもこれまで行なったことがなかったと理解しておりますが、そのとおりですか。
  171. 斎藤誠三

    説明員(斎藤誠三君) 乗数的な乖離につきましては、経企庁では過去三十五年から四十五年までの前期と後期に分けまして、そういう乖離の要因が何であるかという計算をした資料は、学者先生等にお願いしたものがございます。それで、その基本的な原因はその生産性の向上でございまして、卸売り物価等は大企業製品が非常に多いわけでございますから、生産性上昇による利益が卸売り物価の安定に反映し、逆に農業あるいは中小企業の製品あるいはサービス部門等の低生産性部門が、生産性の上昇が相対的におくれておりますので、それが消費者物価の大部分を占めておる現状から、消費者物価の値上げ幅が相対的に大きいということで乖離が出てきたという、いわゆる生産性の格差理論でございますが、大体われわれもそういうことであろうと考えております。
  172. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 全般的な解説はそのとおりだと思うのです。ただ問題は、どういう具体的な政策で、たとえば流通機構の生産性向上の問題にしても、取り組んでいくかということになりますと、そういう学者先生の言われるような目の荒い常識論ではだめなんですね。といって、三・三倍の乗数効果のうち、この原因によるものがたとえば〇・七というぐあいに具体的につかむことはむずかしいとしても、実際にはいろいろな分野があるんだから、ここの寄与率は大体どんなことだから、ここに資金を投入すればこういう成果があがるというものを、ほんとうは持っていないと政策にならない。で、十年一日のごとく、実は失礼ですけれども、いまのお話で消費者物価は延々と上がってきました。伺いますと対策を打ちますと、こういうことなんですけれども、とどのつまりは、どうもやっぱり中小企業は生産性が低い。じゃ中小企業に生産性向上の対策をどうやって打ってきたかといいますと、失礼ですけれども、生産性向上といったって、これまでは量が拡大してきたから単位当たりが減ってきたということだったし、ある意味では技術革新の波に恵まれてまいりましたから、外国からの技術導入で主として大企業中心にして、そのメリットが出てきたというだけの話であって、それじゃ、流通機構を含めてどんな政策を打っていくかということになると、ほんとうはもっと立ち入った分析が必要なんではないんだろうか——これはたいへんむずかしい仕事だと思いますから、これまでそこまで立ち入ったことはなかったとしてもやむを得ないとは思いますけれども——時間がありませんからもうこれ以上申し上げないでやめますけれども、たいへん関連が広い問題をこれから取り上げていこうということだと思うんです。それぞれの分担されているつかさつかさはあるとしても、それぞれが総合的に動いて、まさに文字どおりグローバルに広がっていくわけですから、従来これはやらなくても済んだということも必死に取り組みながら、実は円対策の重要な一環が消費者物価対策なのだと言っても、私はそんなに無理な議論をしているとは思いませんし、じゃ消費者物価対策に今回の補正予算を含めて、いかばかりの資金と計画を持っているのか。あるいは来年の通常国会で出されるであろう予算の中で、どういう計画と対応策——予算があるのかということになると、従来の例ではまことに寒心にたえない気もいたしますし、その辺、今回御提案の内容ではもちろんのこと事足りないわけですから、お取り組みを願いたいと思います。  最後に一つだけ、一番最初の質問に戻って、これは国際金融局長でよければお答えをいただきたいんですけれども、円の再切り上げをするのかと言いますと、絶対にしない、それはもう政府に許された特権であるという話じゃなくて、再切り上げに耐えられるんだろうか、このままほうっておいたら再切り上げ必至なんだという議論はあります。私もその実感が非常に強くするんですけれども、かりに、おっしゃるように一六・八八%がきいてくるのがおそいんだ——これからきいてくるわけですから、そのことも含めて、ほんとうに日本は耐え得るんだろうか、もし耐えられないとするんなら、よほど思い切った対策を講じていかないと、結局日本は困ったことになる。その意味で、円を切り上げますか、切り上げないかという質問ではなくて、この上の再切り上げに耐えられるとお思いかどうか、どなたからでもけっこうです、御判断を伺って質問を終わります。
  173. 山崎五郎

    政府委員(山崎五郎君) 円の再切り上げを防げるかどうかということについては、もう先ほどから、たくさん答弁があったから、上げた場合に耐えられるかと、こういうお尋ねと思いますが、政府としては、円を切り上げた場合に対してどうするかということ、率直に言うと、仮定の問題には答えられないと、こういうようなことではございませんが、そういうことを言うと栗林さんにおこられると思いますので、絶対にそういうことはあり得ないし、またそれに、かりにあった場合に対する対策というようなことは考えておらないと、非常に不満足でございましょうが、そういう答弁でお許しいただきたいと思います。
  174. 藤田正明

    委員長藤田正明君) それでは午後六時三十分再開とし、暫時休憩をいたします。    午後六時四分休憩      —————・—————    午後六時五十分開会
  175. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  議事を再開するに先立ち一言申し上げます。  同僚委員松井誠君にはかねて病気療養中のところ、本日午後二時五十分国立第一病院において逝去せられました。まことに哀悼痛惜にたえません。同君は一貫して本委員会の委員として活躍された人であり、温厚冷静な人柄、すぐれた緻密な頭脳は、真に国のためにも、参議院のためにも大きな損失であります。  ここに委員諸君とともにつつしんで黙祷をささげて哀悼の意を表しまして、御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。どうぞ御起立をお願いいたします。黙祷をお願いいたします。   〔総員起立、黙祷〕
  176. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ありがとうございました。     —————————————
  177. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 委員異動について御報告いたします。  本日、青木一男君、伊藤五郎君、河本嘉久蔵君及び栗原祐幸君が委員を辞任され、その補欠として古賀雷四郎君、高橋邦雄君、中村禎二君及び林田悠紀夫君が選任されました。     —————————————
  178. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続きこれより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。——御発言もないようなので、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  180. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会をいたします。    午後六時五十三分散会