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1972-11-09 第70回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月九日(木曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 多田 省吾君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 河本嘉久蔵君                 柴田  栄君                 桧垣徳太郎君                 船田  譲君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 横川 正市君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君    政府委員        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        大蔵政務次官   山崎 五郎君        大蔵大臣官房長  竹内 道雄君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省主計局次        長        辻  敬一君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省関税局長        心得       秋吉 良雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        大蔵省国際金融        局次長      松川 道哉君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       田辺 博通君        通商産業省通商        局通商政策課長  森山 信吾君        通商産業省貿易        振興局輸出業務        課長       柴田 益男君        通商産業省公益        事業局原子力発        電課長      武田  康君    参考人        日本銀行総裁  河野 通一君        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○対外経済関係調整するための租税特別措置法  等の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案審査のため、本法案審査中必要がある場合参考人として日本銀行役職員及び日本輸出入銀行役職員出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。山崎大蔵政務次官
  5. 山崎五郎

    政府委員山崎五郎君) ただいま議題となりました対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  わが国経済は、昨年末に行なわれた通貨調整後も、なお相当貿易収支の黒字が続いております。このような国際収支現況にもかかわらず、わが国が依然として輸入の抑制、輸出優遇制度を残していることについて海外からの批判も強まっており、具体的な制度改革を通じてこのような対外経済情勢にすみやかに対処することがわが国経済に課せられた緊要の課題となっております。また、このことは、今後わが国国民生活質的向上を目ざし、経済構造の転換を進めていくためにも必要であると考えます。  政府は、去る十月二十日、輸入拡大輸出適正化経済協力拡充等対外経済調整を主眼とする総合的な諸施策の推進を決定いたしましたが、この総合的な施策一環として、既存の輸出優遇制度を整理する一方、輸入を促進するための関税上及び金融上の措置を講ずるとともに、資本収支面においてもわが国海外投資を容易にするための措置を講ずることが緊急に必要であると認められるため、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部改正について申し述べます。  現在の輸出振興税制のうち資本金十億円超の法人に対する海外市場開拓準備金については、昭和四十九年三月末の期限到来を待たずに、今回これを廃止することとしております。  次に、関税暫定措置法の一部改正について申し述べます。  関税面におきましては、第一に輸入拡大をはかる見地から、鉱工業産品及び農産加工品関税率を一律に現行税率の五分の四に引き下げることといたしております。その対象品目は、総計一千八百六十五品目にのぼり、近年例を見ない大改正となっております。  ただし、関税収入特別会計財源となっている原重油及び非自由化品目等については引き下げ例外といたしております。  なお、国内産業に対する配慮から、この関税率軽減措置により、特定貨物輸入増加し、国内産業相当損害を生ずる場合には、この軽減措置を停止することができることといたしております。  第二に、今回の関税率軽減に伴い、入国者が携帯して輸入する貨物に対する簡易税率につき所要調整を行なうことといたしております。  第三に、現在、加工のため輸出された貨物原材料とする製品輸入される場合にその原材料関税相当額を減税する制度が設けられておりますが、この対象品目として、開発途上国の要望をも考慮し、ラジオ受信機音声再生機等、五品目を追加することとしております。  最後に、日本輸出入銀行法の一部改正につきまして申し述べます。  第一に、輸入金融対象となる重要物資範囲拡大するとともに、前払い金以外の融資も行ない得ることとする等輸入金融を拡充することとしております。  第二に、本邦法人等海外投資のために必要な資金について、設備関係以外の長期事業資金についても融資対象とする等海外投資金融拡大をはかることとしております。  第三に、日本輸出入銀行は、外国政府等または外国銀行その他の金融機関に対し、本邦輸出入と直接結びつかない場合も融資し得ることとしております。  第四に、このような業務範囲拡大に伴い事業量増加すると考えられますので、現在、自己資本の三倍とされている借り入れ金限度額を四倍に引き上げることとしております。  以上、対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、補足説明を聴取いたします。竹内官房長
  7. 竹内道雄

    政府委員竹内道雄君) 対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部改正について申し述べます。  海外市場開拓準備金につきましては、現在、取引の形態及び資本金額に応じ、前年同期の海外取引による収入金額の〇・五%ないし二.三%の積み立てを認めております。この制度適用期限昭和四十九年三月末までとなっておりますが、今回、資本金十億円超の法人に対する海外市場開拓準備金については、期限到来を待たず廃止することとしております。  次に、関税暫定措置法の一部改正について申し述べます。  第一に、今回の関税率の一律引き下げ対象品目には、国民生活に関連の深い多数の消費財のほか、機械類中間製品等産業用物資も、含まれております。  このような措置の結果、わが国工業製品平均関税率は、現在の一〇%台から八%台へと、おおむね欧米諸国の水準になるものと見込まれ、今回の関税率一律引き下げは、わが国関税体系の是正にも資するものと考えられます。  なお、鉱工業産品または農産加工品でありましても、原油等その関税収入特別会計財源となっている品目、非自由化品目等、一律引き下げを行なうことが必ずしも適当でないものは例外といたしており、その品目数は、合計百六十二品目となっております。  また、今回の改正は、このように、広範囲の物品を網羅的に対象としておりますので、予見しがたい事情の変化によって特定貨物輸入増加し、国内産業を脅かすに至る場合には、緊急措置を講じ得るよう措置することが必要と思われます。このため、現行法上設けられている特恵関税の停止に関する規定を参酌し、今回の関税率軽減措置により、特定貨物輸入増加し、国内産業相当損害を生ずる場合には、政令により貨物を指定し、この軽減措置を停止することができることといたしております。  第二に、今回の関税率軽減に伴い、入国者が携帯して輸入する貨物に対して関税内国消費税をあわせて徴収する簡易税率につきまして所要調整を行なうこととし、酒類の簡易税率引き下げることといたしております。  第三に、加工輸入減税制度対象品目拡大につきまして申し述べます。  加工のために輸出された貨物原材料とする製品輸入される場合にその原材料関税相当額を減税する制度が設けられておりますが、その対象品目に、新たに、鋳造製品、イヤホーン、ラジオ受信機テレビジョン受像機用のチューナー及び音声再生機の五品目を追加し、近隣の開発途上国からの輸入促進をはかることといたしております。  最後に、日本輸出入銀行法の一部改正について申し述べます。  第一に、現在の輸入資金貸し付けは、原料、材料その他の物資輸入する場合の前払いに必要な資金対象としており、しかもその前払い資金がこれらの物資本邦輸出するために必要な資源開発に充てられる等の場合に融資できることとされております。今回の改正は、まず輸入金融対象原材料等から、国民経済の健全な発展に必要な設備を含む物資拡大し、また、前払いにかかるものに限らず当該物資輸入に必要な資金融資対象とするとともに、貸し付け資金本邦輸出するために必要な資源開発に充てられる等の場合に限るという条件を除くこととしております。  第二に、現在の海外投資資金貸し付けは、本邦法人、あるいは、本邦法人経営を実質的に支配している外国法人が、本邦外において営む事業に必要な設備資金及び設備新設拡充に伴う資金対象としております。今回の改正は、本邦法人経営を実質的に支配しているという制約を除くとともに、融資内容設備関係資金に限ることなく本邦外において行なう事業に必要な長期資金融資対象とすることとしております。  第三に、現在、日本輸出入銀行外国政府等に対して行なう貸し付けは、わが国輸出入と結びついている場合に限られております。今回の改正は、わが国からの輸出入と直接結びつきがない場合も、日本輸出入銀行外国政府等に対し融資できることとしております。  第四に、現在、借り入れ金限度額は、自己資本の三倍、貸し付け及び保証限度額は、自己資本の額と借り入れ金限度額合計額、すなわち自己資本の四倍となっております。今回の改正は、業務範囲拡大に伴い事業量増加すると考えられますので、借り入れ金限度額を四倍、貸し付け及び保証限度額を五倍に引き上げることとしております。  以上、対外経済関係調整するための特別租税措置法等の一部を改正する法律案提案理由を補足して説明いたした次第であります。
  8. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 以上で説明は終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最初に、まあ新聞紙上等ドル売りと申しますか、日銀で申しますとドル買いになるわけですが、一体最近の情勢がどんなふうになっているのか、そういう点についてお伺いしたい。これは大蔵省の国際金融局も関連してまいりますが、それにからんで新聞のほうは、報道でございますが、為銀、商社等大蔵省調査に入っているというようなことが報ぜられておりますが、まあ時間の関係その他もございますから一そういうことは、調査に入ったということは投機があるという疑いを持っておやりになっておると思います。ですから大蔵省はそういう疑いを持っておられるということが明らかになったわけですが、日銀は、ドル売りと申しますか、ドル買いに対しまして、そういう疑いがあるのにもかかわらず、買っているんだよ、売るものは当然ですから、ということだと思いますが、どんな状況になっているのか。数字をあげながら、特に六日のときやなんかは、逆に言えば相当日銀は売ってもおみえになるということを言われておりますから、その辺にからんで一応の御説明をお願いしたいわけです。
  10. 河野通一

    参考人河野通一君) 私ども為替平衡売買をやっておりますのは、実は政府の代理としてやっておりますので、本来ならば大蔵省のほうからお答え願うのが筋だと思いますけれども、便宜私からお答え申し上げます。  本年の初めから十月までの数字について簡単に申し上げますと、年初からポンドがフロートいたしました六月までの間に買いの結果増した外貨準備が大体六億でございます。それから、六月のポンドフロート後最近まで、つまり十月末までの数字が約二十億ドル弱、こういう数字になっております。これは御案内のように、いまの外貨集中制度のもとにおきましては、売られてくる外貨はいまきまっております相場を中心にしてこれは買うという制度になっておりますから、いろいろな問題はございましょうけれども、受け身の形で私どもはこれを買っております。ただ、相場その他につきましては、御案内のように大体現在では三百一円ちょっとという数字で、まあ安定といいますか、そこでささえておるということに相なっております。この間にいわゆる円の再切り上げの不安等からくる投機的な外貨の売りがあるのではないかというお話でございますけれども、この点はいろいろ私どもとしてはそういったものが流入しないような形で為替管理を十分に強化してまいっております。しかしながら、やはりいわゆるリースあるいは逆に輸入からいえばラッグズというものは、これは実体経済のいわゆる貿易収支の時期的な差異という問題でございますので、その実体が裏づけになっております限りにおきましては、これはなかなか押えるということはむずかしい。したがいまして、私どもとしてはまだ現在その中身については十分な調査はいたしておりませんけれども、この点につきましては大蔵省でいまお話しのようなことが行なわれておるやに聞いておりますので、詳細につきましては大蔵省当局から御聴取を願いたいと思います。
  11. 林大造

    政府委員林大造君) ただいまの御質問のうち検査に関する部分についてお答え申し上げますが、大蔵省為替管理の適正な実行を監視いたしますために随時検査実行いたしております。したがいまして、検査というのは私ども常時行なっているわけでございますが、最近いろいろの方面からの情報を総合いたしますと、やや投機的な動きが出ているかのごとき情報もある。そこで、はたしてそういうような動きがあるとしたらやはりこれはたいへん困ることになると思いまして、そのような観点を含めまして最近検査実行いたしております。このような検査を行ないますことは、最近におきます為替取引の実態を把握すると同時に、その警告的な意味も若干はあると存じますが、まだ私どもそういうような動きがはたしてあるかどうか十分つかみ切れておりませんので、通常の検査業務一環として行なっております。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 もう少し私は、たとえばここ新聞でやかましかったつい最近の十日間ぐらい、いわゆる十月末で打ち切られましたけれども、十月末からつい最近までの毎日のドルの売りと申しましょうか、日銀がどのくらい買っておるのか、特に私が知りたいのは、六日のときにはどのくらい——日銀が売りに回ったときがございますね、それはいつで、どのくらい売っておるか、その前はどのくらい買ってきておるか、そこがちょっとお聞きしたいんです。ですから少しこまかい数字までおっしゃっていただきたい。
  13. 林大造

    政府委員林大造君) 最近の為替取引計数につきましては、新聞その他に直物取引、先物の取引計数が出ております。その直物取引は翌日実行のものと当日実行のものとがございまして、そのうち翌日実行のものにつきまして大蔵省日銀を通じて市場介入に出ております。その翌日もののうち一部は為替銀行間の相対の取引で決済されますので、その残りの部分相場をささえますために当局介入をいたす金額になるわけでございます。  最近の状況を申し上げますと、特に先週の末ごろまでは非常にいろいろルーマー、うわさが流れたそうでございまして、したがいまして、非常に多い日には一日一億ドルをこす介入があった日もございます。したがいまして、一億ドルにならない日もかなりあったわけでございますけれども、先週は十一月三日が休みでございました。五日間だったわけでございます。したがいまして、その週には週間で五億ドル前後の買いがあったわけでございます。それが週末が明けまして六日になりましてから非常に市場が落ち着いてまいりまして、昨日までで三日間でございますが、市場は平静でございます。したがいまして、相場もほとんどドルの下限に落ち着いておる姿のままでございますけれども、若干そこから離れておる取引も行なわれております。ただ、しかしながらまだ大蔵省日銀を通じて売りに回わるというような事態までは至っておりません。介入金額が非常に少なくなって、日によりましてはほとんどないという状況になったという程度でございます。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、あれこれと言わなくて、非常に常識的に実際投機的な動きがあるのではないか。やっぱり前年同月比とか、それでは契約はどうなっておるとか、あれがどうとかいうことを逐一いろいろなことをお聞きしながらやっていくのはめんどうくさいので、まとめて一括して他の委員の方も御質問があると思いますから遠慮しいしい聞いているわけです。ですから、あなたのほうもそういう考え方ではなくて、私はやはり円が投機対象になっておるんだ、そうして為替管理がうまくいってそういうことはやれませんよと、ないんだというようなことをしばしば大蔵省も当委員会で言明しておいでになる。だのにこういう形があるんだということになれば、このくらいの投機的なことはあり得るんだ、大体今度の約十三億何がしのものが売られているわけですよ、ここ一週間かあるいは十日間のうちに。そのうちでいろいろ言われておることは、三、四億は投機的なものではないだろうかというようなことも新聞は報じております。ですから、大蔵省やあるいは日銀関係も、ずっといろいろな過去のデータ、いろいろなものがあるわけです、現況も十分御承知なんです。そこでそれではどのくらいの投機のものがあるか、おれのほうもこういう対策を講じてきたのになお四、五億あるいは三、四億のものがあるんだ、これはどうにもやむを得ない、これはこういうことがある以上は、投機対象になってもこのくらいのことはやむを得ないんだという判断なのか、いやいやそうではなくて、全くそういうものまで防ぎ切れるのだという態度なのか、そこら辺のところ私たちは了解に苦しむわけですよ。やれぬと、こういうことをおっしゃるのに、片方じゃ調査に入らなきゃならぬ。なぜか、疑いがあるからだ、こういうことだと思うのですよ。ですから、このぐらいのリスクというものは当然なんだ、やむを得ないんだと、こういうふうにお考ええになっておるのかどうか、その辺のところが知りたいところなんです。お聞きしたいところなんですよ。
  15. 林大造

    政府委員林大造君) 最近におきます外貨準備増加状況を申し上げますと、十月には、十五億四千七百万ドルふえております。この大部分大蔵省介入によるものでございます。同月中に若干の外貨預託ども行なっておりますので、大蔵省介入がそれをやや上回るというふうに、大蔵省日本銀行を通じての介入がやや上回るというふうにお考えいただいてよろしいかと存じます。で、外貨準備増加の中には、保有しております外貨利息収入その他も加わってまいりますので若干の調整がむずかしいわけでございますが、そのような外貨の売りが、投機によるものが若干あるのではないかという御質問、そうして、それがはたして為替管理で十分に防げるかという御質問だと存じますけれども、まず、十月中の外貨の売りにつきましては、実は、輸出のほうはその月の輸出が直ちに外貨流入になる。輸入のほうはと申しますと、ユーザンスというものの関係で約四ヵ月、三カ月から四カ月前の輸入外貨の払いになるという技術的な問題がございます。で、そのような点から十月中におきます輸出を見ますと約二十六億ドル、まだ正確な計数は出ておりませんが約二十六億ドル輸入のほうはと申しますと、四カ月前の数字をとりますと、六月の輸入が十三億七千四百万ドルでございます。この六月の輸入は、海員スト関係で、特に落ち込んだ月でございまして、その差十二、三億ドルというものが輸出入の差額として外貨の売りになる。しかし、それでははたして投機に基づく資金流入が全くないかというと、実はそれは全くないとは言い切れないと思います。私どもといたしましては、為替管理というのは、やはり民間の自由な取引を阻害するものでございますので、民間が自由な取引が行なえるように、それを不当に阻害しないようにということで、何と申しますか、円の防御という一つの目標と、それから、対外取引が自由に円滑に行なえるというふうにしたいという二つの要請の間で、どこら辺でバランスをとったらいいかということを常に考えているわけでございます。そのようなことで必要な為替管理をやっていく。ところがいろいろくふうをされまして、私どもが大体だいじょうぶだろうと思うところ思っていないようなところで為替管理水漏れが出てくるような場合がございます。その水漏れがだんだんひどくなってまいりますと、私どもやむを得ず、たいへん不本意なのでございますけれども為替管理を強化するという措置をとるわけでございます。しかし、為替管理を強化したからと申しまして、完全に思惑がとまるかと申しますと、やはり思惑が強い場合には、思惑的な外貨流入というのはまた新たなすき間を見出して入ってくるということの繰り返しになっているのが実情でございます。  投機資金流入に大きく二つの種類がございまして、一つ海外のものの投機でございます。それからもう一つは、国内のものの投機資金流入でございます。  海外のものの投機というのは、現在の為替管理ではかなり有効に阻止し得る手段が整っておりまして、その中で私ども特に意識的に自由にしておりましたのは、株式取引でございます。株式取引というのは、何と申しましても内外資本市場の交流という意味で、自由を阻害しないほうがよろしいということで、——もう少し簡単なほうがよろしゅうございますか。
  16. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 けっこうですよ。
  17. 林大造

    政府委員林大造君) そういうことで、意図的に制限を控えていたわけでございますけれども、ついにそれもやむを得ず十月の二十日に非居住者、海外の投資家はその全体として売った範囲内でしか国内市場では日本の株式を買えないわけでございますから、ネットで申しますと新たには買い足せないという仕組みにしたわけでございます。そのほか若干の措置を講じました。そのようなことで、海外資金流入する程度は非常に少ないと思います。  国内のほうの問題につきましては、これはいろいろな思惑がございまして、その一つが、先ほど日銀の副総裁が言われました輸出の繰り上げ、輸入の繰り延べという動きでございます。この輸出自体を繰り上げ、輸入自体を繰り延べるということ、これは船積みをおくらせたり早めたりするということは、これは何とも防ぎようがないわけでございまして、私どもとしては船積みの時期より前に金が入ってまいりますということ、これは輸出前受けということで規制はいたしておりますが、そういうような意味での投機までは完全に防げません。そこまでやろうといたしますと、輸出入取引に対して非常な阻害要因になると思いまして、バランス上やむを得ない。で、私ども二つの要請の間で適宜バランスをとりながらやっているわけでございますが、しかし、私どもが意図しておりますたとえば船積み前に外貨を売ってしまう、銀行の窓口を通して、日銀を通して大蔵省に売ってしまうというようなことがないようにという意味為替管理為替検査その他をいたしている、こういう実情でございます。
  18. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 為替差損というやつですね、この前の円の切り上げまでに日銀はどのくらい損したことになりますか、総トータル。
  19. 河野通一

    参考人河野通一君) 去年の暮れの通貨調整の結果、日本銀行がいわゆる為替差損として計上いたしましたものが四千五百億円でございます。実はそのほかに約千億円ばかり対象になるものがございますけれども、これは御案内のように、企業一般が一年以上の期間の長期の外貨債権については繰り延べ経理措置ができるようにされておりますので、それにならいましてそれだけのものは繰り延べ経理措置をいたしております。したがいまして、まあ広い意味で言えば五千四、五百億ということに相なるかと思います。なお、その千億円の繰り延べ経理をいたしました措置につきましては、その後一年未満の期限にだんだん期間がなるに従ってなってまいりますので、その期間が一年未満になりましたものだけは、逐次差損としてこれを償却する方法をとってまいりました。正確にはちょっといま数字を持っておりませんけれども、大体ことしの九月末の決算で大体三百億円近くのものをそういう形で落としたはずでございます。正確な数字はちょっと手元に持っておりません。
  20. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 国際金融局長が、どんぴしゃり、ぴしゃっと水をとめるようなわけにはいきませんよ、両立の二つを追っているんだから、二兎を追っているんだから——その点は私にもわかります。ですから、どこら辺ぐらいまでいくのか。それがからんできて、たとえば四千億、五千億、六千億というそういう損の問題も出てまいりましょう。ですから、片方じゃ切り上げしたくない。だからこういう法律案も出ておるんだろうと思います。それから二十一日に、二十日と申しましょうか、先月の、いろんな緊急対策などもおやりになったようです。円転規制もあれば、いろいろなことをやって、やっておるんだけれどもどうにもしょうがないものがあるよとおっしゃる、その点はわかります。わかるんだが、しかし、そうは言うけれども、今度立ち入り検査をおやりになるということをきめられております。これは、為銀だけではなくて商社もおやりになるわけですね。
  21. 林大造

    政府委員林大造君) 私ども為替検査官を動員いたしましてやっております検査は、一応主として銀行でございます。商社につきましては通産省と共同して行なうという方針をとっております。それで、商社につきましても、随時検査は行なっておりますので、その一環として行なうということでございます。
  22. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今度そうすると商社に対しても通産省と連絡をしておやりになりますか。
  23. 林大造

    政府委員林大造君) 実はその点につきましてまだ通産省と正式に話はしておりませんので、どういうようなことで検査をするかということを具体的に申し上げられないのでございます。で、その点につきましては、現在のところは主として銀行を通ずる外貨の売りに着目しておりますので、銀行検査いたしておりますけれども、必要があればもちろん通産省の協力を得て商社も検査をいたしたいというふうに存じます。
  24. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 こんなふうであまり押し問答をしたくないんですが、私は。為銀は、銀行に対しては必要があるんだと、だからやるんだと。これだけで、銀行だけ調査したら全部わかるから実態の把握もできるし、警告の意味もこれで十分だとは思っておみえにならぬと思う。だからことばをにごして商社はどうするかということは、これから検討だとおっしゃるのだが、その辺のところ、どうもね、これは投機投機を呼ぶんですからね。これが措置を誤ると、ほんとに投機に今度は大きくダダーッと流れていくと思うのですよ。一番大事なときだと思う。しかも、こういうことは、ゆったりやったらいかぬと思う。それこそ決断と実行というのは、間髪を入れずにやらなければいかぬと思うのですよ。ですから、何かここでぼやぼやっとしてしまって、もやも一やっとしちゃって、そして選挙へずっといってしまうと、どうもチャンスを逸して誤るようなことになりはしないか。片方では法律案を出して、何としてもこれを通してください、これで円対策はやりますよと言っておるのだが、一番問題はやっぱし投機なんですよ。この前、押し込んでいったのも、投機投機を呼んでやったんですよ——と私は判断しておる。ですから、しっかりしてもらわなければいかぬと思うのですよ。  ですから、もう一度重ねて聞きますが、そんな検査をするとかしないとかということを、早急にきめて早急に動かなければいかぬと思う。そうでなければ警告の意味もないですよ。実態の把握できぬじゃないですか。だから、私は今度の円対策なんというものはなまぬるいんだから、もうお返しして、こんなもの役に立ちませんよといってやめたらどうだという意見もなきにしもあらずなんですよ、それはあなたのほうの態度がいま言ったような煮え切らぬ態度ですから。間髪を入れずにやらなければいかぬですよ、そういうことは。減税をどうするとか予算でつけるかどうかということは、いろいろと党内で御議論があってしかるべきなんですよ。ところが、こういう投機投機を呼ぶものは、まさに間髪。実際、速度というものが必要だと思うのです。どうですか。
  25. 林大造

    政府委員林大造君) 実は私ども為替管理の強化ないしは検査をいたしますときに常に考えておりますのは、そのような措置をとると、ついに当局はまた去年の八月のような状態に追い込まれたと。いよいよ末期的症状だというようなことでかえって投機をあおる面があるという点と、それからやはり為替管理を強化し、かつ非違が行なわれないような検査をしなければいけないという両面の要請がございまして、実は十月の二十日に非居住者の証券投資についての規制をいたしましたときにも、いよいよ当局は追い込まれたというようなうわさが立ったわけでございます。  したがいまして、検査を実施するにいたしましても、私どもといたしましては、今回は昨年の八月のように検査をするということを大々的に掲げないで、比較的まあじみに大蔵省限りで行なえる、しかも、通常の業務のルーティンの範囲内で行なえる銀行検査からやろうという気持ちで行なったわけでございます。しかしながら、その両面の要請をからみ合わせまして、いつでも検査をする体制は整えているわけでございまして、御趣旨はある意味では御激励かというふうに存じますので、できるだけ両面の要請をうまく調和させながら実施してまいりたいというふうに存じます。
  26. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も大蔵省の立場の趣旨はそれでわかりました。ああ言やこう言うというそういう議論とせずに、もう少しまじめに受け取っております。ですから、そういう刺激をしちゃいかぬのじゃないかと、しかし、ああだこうだと言っておるうちに、実際そうなっちまったらどうにもならぬわけなんです。ですから私は、判断は全くあなたの責任にかかっておると思う。ですから、判断を誤らずにやっていただくということが言いたいわけです。しかし、いま私の判断では、どうも少し、通産省とはまだ相談はしておみえにならぬという話なんだから、それじゃテンポが合わぬじゃないかという点を実は指摘したいわけです。まあそういうことでございますならそれでけっこうでございます。それが誤らなくて、非常にあなたの心配されておるような点で当たっていったら、非常に私は幸いだと思っております。  次に、副総裁のほうへお尋ねしたいのですが、これはちょっとドルとは関係ないですけれどもね、今度の予算とも関連して、そんなような意味で副総裁のほうにも何か予算委員会に御出席で、これはダブっちまって遠慮してもよかったかなと思っておるわけですが、実は老人問題が出ております。老人問題というのは御案内のとおりインフレだからいわゆる貯蓄したものが価値がなくなるから、ここに老人問題が、インフレ政策、インフレの問題で出てくると思うのです。ただ単に、数が三十年後に何倍になるからというようなことを言っておるわけではなくて、いま現に出てきておるのはそういうことだと思うのです。貨幣価値の下落というところが問題なんです。そこで、日銀は貨幣の価値を維持していくという私は重大な責任があると思います。しかし、いまの日銀関係でいえばどうにもならぬよと、あるいは財政のほうでしり抜けになっていてどうにもならぬと、いろいろなことがあると思いますが、この貨幣の価値維持の問題について、日銀はどんなふうに考えておみえになるのか、政府のほうが上で、総裁の任免権すら政府にあることだから、政府の下請といっちゃたいへん失礼でございますけれども政府の意のままに動かなければならないのだと、どうにも努力してみてもしようがないぞよということなのか、あるいはこうやったらいいと。日銀法の改正の問題も答申が出てからかれこれ七、八年ぐらいでしょうか、そのままたなざらしになっちゃってる。あるいは財政法五条でいえば、国債が出ると、あれをはずせというような意見もございます。いま一年ものですが、一年でいいものなのかどうか実際、財政をチェックするなら私はいま日銀が国債をどのくらい持ってみえるかしりませんが、民間にも少々あるだろうが、大体日銀へ一年たったらみんな戻っているだろうと思っておるのです。ですから、そこら辺のところを財政法五条のあの一年で防ぎきれるのだというふうにお考えになっていたとしたら、現状はこうなんですから、これじゃ私はいかぬと思うんですよ。だから、ここで日銀の対策は何をお考えになっておるかということが伺いたいわけです。
  27. 河野通一

    参考人河野通一君) なかなか広範な問題にわたる御質問ですが、私どもは通貨価値、しかも、それは対内的にも対外的にも円の価値を安定させる、維持するということが、私どもの最大の使命だと思っております。ただ、現在の状況は、それで満足すべき状況であるのかという点につきましては、もちろんいろいろな意見がございましょうけれども、決して一〇〇%満足すべき状況ではないと思います。しかしながら、何もこう言いわけを申し上げるわけじゃございませんけれども、確かに物価も上がってまいっております。ことに過去四、五カ月前までは非常に安定しておりました卸売り物価も、ちょっとここのところこの二、三カ月というものは相当な月率で上がってまいっております。消費者物価も相変わらず、やっぱり年率で五%以上の上昇ということに相なっておるわけでございますから、決して満足すべき状況ではない。ことにいまお話のように福祉国家ということを目ざしてまいります以上は、物価の安定ということが非常に大切なことであり、そのことのためにわれわれとしては第一義的な努力をしなきゃならぬというふうに考えております。ただ、いまのようにいろいろな意味で国際化してまいる、そうして経済関係というものが内外の流通、交通が非常にひんぱんになってまいりますと、国外からの、まあ俗なことばで申し上げましてインフレーションというものの影響がこれは当然あるわけでございます。国際的に見ますとあまり自慢にはもちろんなりませんけれども、卸売り物価に関する限りは、この二、三ヵ月は相当上がっておりますけれども、先進国の中では卸売り物価は著しく安定をしておる状況にあると思うのであります。だからいいじゃないかと申し上げるわけじゃございませんけれども、まあそういう意味で、いまの世界経済の中における日本の物価というものは、まあ相対的ではありますけれども、比較的安定をしておるのではないか。満足をすべき状況ではもちろんありませんけれども、そう言って差しつかえないのではないかと思っております。しかしながら、今後やはりいまお話のありましたように、今後の動きというものにつきましては、ことに卸売り物価はこの八月以来、ことに十月は最近の数字で、私どもの調べたところでは、月中一%の上昇ということになっております。去年の同月に比べましてやはり三%以上の上昇になっておるわけでございます。そういうわけで、いま直ちに非常に心配すべき卸売り物価の上昇とは思いませんけれども、今後の推移については十分に注意をしてまいらなきやならぬ点がある。物価がこれ以上非常に急激に上がるということは、私は少なくとも卸売り物価に関する限りそんなに急激にどんどん上がっていくとは思いませんけれども、今後の推移につきましては十分に注意をしていかなきゃならぬと、かように考えておる次第でございます。まあ中央銀行として金融の面からこういう問題に取り組んでいく方法としては、やはり総需要をどうしていくかということを調節していくという立場からしかわれわれは入っていけません。ことに消費者につきましては、結局卸売り物価の安定を通して、これに影響を与えていくということが、われわれの仕事だと思っております。したがいまして、今後そういった問題の推移は十分に注意しながら遺憾のないようにしてまいりたいと、かように考えております。  それから、通貨価値の問題で第二の対外的な問題につきましては、先ほど来いろいろお話も出ております。いまの日本の円の対外価値の問題につきましては、これまた別の観点から中央銀行としてこの問題を十分に慎重に考慮いたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  28. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ河野さん国会には慣れておみえになるし、大先輩だし、大蔵省の。てがたい話ですが、私はほんとうに、政治から独立すると申しますか、中立になるというんですかね、なかなかいまの機構その他では容易なことではないと思いますが、あなたは福祉国家を目ざすと言って、何か将来の問題のようにすりかえられておるがね、いま起きておる問題はそうじゃなくて、もうすでにインフレに入ってきている。まあインフレということばを使わなければ、貨幣価値というものが非常に下がってきた。ベース改定をやっておるということは、とりもなおさずこれはインフレの証拠なんですよ。それからまあインフレというものをある程度のものはやむを得ないと、世界の趨勢じゃないかと、そのほうがいいですよと、ずっとこういっておるよりも、ある程度こうなったほうが、国民みんながそれを期待しているんだと、世界中もそうなっておるじゃないかとおっしゃるなら、そのこともわからぬわけじゃないわけです。しかし、このままいったら、今度まあ予算が巷間伝えられておるものよりも、約半分に縮まっておったと思います。まあ一兆五千億円ぐらいと言われたのが、大体半分に補正予算がおさまっておりますが、さて、来年度予算編成の規模がどうなるかというようなことは、非常に日銀としては関心をお持ちのことだろうと思う。それがやはりお金の値打ちだと思うのです。ですから、お金の値打ちを守っていくためには、日銀の責務があるわけですから、日銀がそれに対して積極的に、たとえば金融だけじゃ私はだめだということはわかってまいります。だから、財政のほうをどうするかということ。財政をどうするかということになると、それは国債の問題にからんでくる。ですから、国債を私は日銀買い上げるというところでチェックができるものなら、ひとつ日銀のそのやり方があるじゃないか。だから対策は、いまの現行法から見てそこら辺のところなのか。いや、まだこういうほかにもありますよと、考えておりますよと。とにかく、このままでいっちゃたいへんですよ、これは。どうにもならぬところにこやせんかと思っておる。ですから、日銀としては何を考えて、私のほうが答弁を求めるのが無理かもしれません、無理かもしれませんけれども、どういうことを考えておみえになるのか。いや、このままでけっこうなんだと、いうことなのか。卸売りは先ほどお聞きしました筆法のようなことになっていますよ。どこら辺にその焦点を合わせておみえになるのか。なかなか言いにくい、また軽々に言うべきことじゃないかもしれませんけれども、少なくとも現状じゃ私たちは不満足なんです。日銀に文句が言いたい。どうしてくれるのだと。汗水たらしてためた金が、十年たったらただになっちゃっているじゃないか。これじゃ老後はたまらぬじゃないかと。先の話じゃないですよ。いまの話のことなんですよ。こうなったのは、日銀が職責を十分に果たしていない結果じゃありませんか。政治がみな悪いということだけじゃない。日銀もたいへんな責任があるんじゃないか。そういう立場に立って、あなたの御意見を承ると申しましょうか、対策を伺っておきたいと思う。
  29. 河野通一

    参考人河野通一君) あるいは御質問の点にまともにお答えすることになってないかもしれませんけれども、いまの国債の問題につきましては、これは私どもといたしましては、基本的にはやはりいわゆる赤字国債といったようなものは、これはぜひ出していただきたくない。それから市中消化の原則ということは、これもぜひ、つまり市中で調達できる範囲のものに国債の発行は制約していただきたい。この二点については強く政府にお願いをいたしておるような次第でございます。  来年度予算にかけて、政府の財政の規模はどのくらいになりますのか私は全然存じませんが、少なくとも福祉国家ということを目ざしていき、社会資本の充実ということをはかってまいります以上は、ある程度の規模の増大ということは私は免れないのではないか。現在の状況は、これは成瀬先生と見解を相違するかもしれませんが、私は、定義のしかたにもよりますけれども、いまの状態がいわゆるインフレーションという状態におちいっているとは私は考えておりません。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、卸売り物価はいまの時点において相当急カーブの上昇をしておる。経済全体の景気の立ち直りも、私どもが数ヵ月前に予想をいたしておりましたところよりもはるかといいますか、相当高いテンポで上昇に転じてまいっておることも事実でございますから、こういった点も十分に配慮されて来年度予算というものは編成されるものと私はいま現在の時点においては考えておる次第でございます。  国債の問題につきましては、いまお話のように、ほとんど市中で消化された国債は日本銀行が全部買っているんじゃないかというお話でございますけれども、これはやや事実に反するわけでございます。ことに四十六年におきましては、これは御案内のように外為会計の非常に大きな払い超ということが一つの原因でもありましたけれども、そういった関係で流動性が非常にふえた。その関係でむしろ私どもは国債を買う立場でなくて、むしろ国債を売る立場になったわけでございます。おそらく、ちょっとはっきりした数字持っておりませんが、千数百億の売り超になっておるはずでございます。ことしに入りましてもその状態は相変わらず続いておる。したがいまして、いまお話しのように、市中で引き受けられた国債がほとんど全部日本銀行に一年たつと、一年を切ると返ってきておるようにおっしゃいましたけれども、これは事実に反しておる。少なくとも過去二年の数字からいいましたら、むしろマイナスになっておるような状況でございます。もっともこれはいまの金融情勢がしからしめたところでありますから、これがずっと続くということを申し上げるわけじゃございませんけれども、少なくともあの流動性が非常に過少であった数年前のように、機械的にほとんどすべての国債が一年未満になるに応じて日銀の窓口に入ってきた、その形に、よって成長通貨というものがいわゆる供給されたという、そういうパターンは、この二年以来さま変わりの状況にあるということだけは申し上げられると思います。
  30. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 十分わかりきった話ですから、私は金融のタイトになったときにどうなるかということが一番心配なんですよ。ゆるんでおるときのことなんか問題外です。ですから、やっぱし私はそこがひとつ——国会ではいろんなことを議論しますが、私は日銀が財政法第五条で歯どめをかけていく、あるいはもっとこれを強化していくという、これを守ってもらわぬと、政治は選挙がありまして、もうそういうほうになっていくという歯どめが私は日銀の大きな役割りだと思っているんです。これはひとつ日銀にがんばってもらわぬと、わしらは力足らず、国会はそういうほうに走っちゃう。ですから、ぜひひとつ日銀にがんばってもらわなくちゃならぬという、そういう立場でお願いと申しましょうか、日銀にがんばってもらう以外にないじゃないかという立場で申し上げたという点をひとつ御了承願っておきたいと思います。  ありがとうございました、どうも。
  31. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀総裁にお尋ねしたいと思います。  最近のわが国外貨保有高が非常に急増しております。十月三十一日現在で、大蔵省の発表では百七十七億九千六百万ドル、このように発表されておりまして、また、政府の円対策が非常に骨抜きになったことで、さらにこの増加傾向は顕著でございまして、総理大臣も、日銀総裁も年内には二百億ドルを突破するだろうと、こういう見通しを述べられているようでございます。現在のきょう時点の外貨保有高はどの程度になっているのか、また年内二百億ドルは必至だという見方は日銀総裁どう思われるのか、また円切り上げ以外に打つ手はないんじゃないかという声も非常に強くなっておりますけれども、それに対してどういう対策と見通しを持っておられるのか、まず、そのことをお尋ねします。
  32. 河野通一

    参考人河野通一君) 年内に外貨準備がどの程度になりますか、二百億をこえるか、こえないかという点につきましては、いま私どもははっきりした見通しを申し上げるわけにはまいりません。総裁の佐々木が新聞記者会見で、何かそういったふうなことを言ったようでございますけれども、これはそういうこともあり得るといった程度で、必ずなると言ったわけじゃないと思います。問題は、いまこの委員会でも御審議されることになっておりますような、各般のいわゆる円対策と申しますか、これが量、質ともに強力に実施される、単に輸入を自由化し、輸入関税引き下げ、あるいは輸入のワクをふやすといったようなことだけでなく、輸出関係調整につきましても、相当協力な措置がとられますことを私どもは期待いたしておるわけでございますけれども、そういうことがすみやかに行なわれ、それが実績としてあらわれてまいりますならば、外貨準備というものの今後の推移というものは相当変わってくるかと思います。したがいまして、私どもは、現在政府でとられております円対策といわれるものについての一連の措置がさらに強力に強化された形で実施され、その効果がなるべく早くあらわれてくることを心から期待をいたしておるような次第でございます。したがいまして、先ほどお話のありましたような外貨準備の残が年内にどのくらいになるかということについてのお答えは、私としてははなはだ残念でございますけれども、はっきりしたことを申し上げるわけにはまいりません。  なお、円の再切り上げの問題が世上いろいろ言われておりますことは御案内のとおりでございますけれども、私どもの立場といたしましては、去年のスミソニアンの合意に基づきましてできた多角的な通貨調整一環としての円の切り上げが行なわれてから、まだ一年もたっておりません。あの当時、私どももそういうことを申しましたし、諸外国の人々も通貨調整の効果が完全に出てくるまでには二年やそこらかかるのだということは、みんな一様に言っておったことでもございます。私どもはいま申し上げたような円対策というものが、輸出輸入両面について強力に進められることによって、今後傾向として貿易上の黒字あるいはもっと広く言えば経常の収支の黒字がだんだん縮まっていくと、傾向として縮まるということが如実にあらわれてくることを期待しながら、それができますならば、円の再切り上げということは行なわないでやっていけるというふうな考えで現在おるわけでございます。
  33. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨日の衆議院の予算委員会でも、田中総理ははっきりと一年前に、このままいけば年内に外貨準備高が二百億ドルを突破するかもしれないと、こういったことが先見の明であったというような答弁もしておりますし、またいま副総裁がおっしゃったように、日銀総裁も記者会見で二百億ドルをこえるかもしれない、このようにもはっきりおっしゃっているようでございます。それでこの外貨急増に対する対策、いまおっしゃったように輸入関税引き下げとか、思い切った輸入自由化の促進とか、いろいろおっしゃっておりますけれども、実効が非常に伴っていないわけでございます。そのほかにアメリカの長期、中期の債券の大量購入、こういうものも考えがあるようでございますけれども、それはどう思っていらっしゃるのか。  またもう一つは、これも日銀総裁が、もし貿易管理令の発動後の模様を見ながら、それでも輸出が減らないようだったら、今回保留されたいわゆる輸出税の創設も検討に値するのだというようなこともおっしゃっているようでございますけれども、副総裁はどうお考えでございますか。
  34. 河野通一

    参考人河野通一君) 第一点の、アメリカの中・長期の債券を購入するという問題は、私どもはこれは政策的にたいした意味のある問題じゃないと思っております。日本の立場からいたしますれば、やはり相当長期にわたって安定した外貨があるわけですから、少しでも利回りのいいものに変えていくということをしていったらいい。この問題につきましては、私どもはごく事務的な問題として考えております。そう政策的に大きな問題ではないと思っております。現に御案内のように百数十億のドル債券というものは何も日銀の金庫の中にあるわけじゃございませんで、みなそれはアメリカによって運用されておるわけでございますから、その運用の一形態としてお考えいただければいい。しかも、国債でありますアメリカの長期債につきましては、これは外貨準備に計上してございますから、外貨準備を減らす、何といいますか、操作をするためにそういうものをやっておるということでは毛頭ございません。現にこれは外貨準備の中に計上してございます。私どもといたしましては、少しでも、せっかくある外貨を有利に運用したい、確実なものである限りは有利に運用したいという配慮からこの問題をやっておりますし、現にもうすでに相当額の中・長期債は持っております。今後も——もっともこれは御案内のように、アメリカの市場自体の問題もございますから、そう無制限にできるわけではございませんけれども、今後もそういうチャンスがございますればこの中・長期債はふやしてまいりたい、かように考えております。  第二の、輸出税の問題でございますが、これは政府のおやりになることで、私どもがかれこれ申し上げることはいかがと思いますけれども、私どもといたしましては、できるだけ輸出調整のために有効な措置をとっていただきたい。そのためには、かりに輸出税ということをやらなければ、輸出調整するために有効な措置でないということであれば、私ども輸出税も拒まないでやっていただきたい、かように考えております。
  35. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵省の発表された外貨保有高のほかに、いわゆる外貨隠しといわれるような内容のものがあるわけでございます。一つ政府外貨預託、それから日銀輸入資金貸し付け金、それから日銀によるアメリカの輸出入銀行借り入れ金の先払い、こういったものですね。それからいまお話がありました中・長期債券と、それぞれどの程度あるのか、ちょっとお聞かせ願います。
  36. 林大造

    政府委員林大造君) ただいまお触れになりました諸点、まず外貨預託でございます。外貨預託はことしになりましてから十月の末までに約二十億ドル出しております。昨年以前の分を含めますと約三十二億ドルになっております。これは大蔵省が日本国内為替銀行に対して保有しております外貨建ての債券でございます。その意味におきまして海外に対する流動性のある外貨資金としての外貨準備には計上いたしておりません。  それから次に、日銀による輸入資金貸しでございますが、これは現在日本の輸入業者に供与されております輸入ユーザンスの半分でございます。残高といたしましては、輸入ユーザンスが五十億ドル若干上回っております。その月により、状況により、変わってまいりますが、十月現在で約二十八億ドルございます。しかし、これは国内輸入業者に対します——為替銀行を通じるわけでございますけれども日本銀行から為銀に対する円資金貸し付けでございます。日銀は、外貨を直接に国内銀行には貸し付けておりません。したがいまして、これも当然のことながら外貨準備には計上されておりません。この趣旨は、海外から日本の銀行輸入ユーザンス資金を借り入れることを少しでも減らすという趣旨で行なわれているものでございます。  それから輸出入銀行に対する先払いというような御趣旨がございましたが、輸出入銀行に対します分は、これはおそらく輸出入銀行の保有している債券を若干こちらが肩がわりいたしましたり、あるいは輸銀の発行しております債券を購入するというものかと存じますが、これは当然のことながら流動性に欠けておりますので、したがって、外貨準備には計上いたしておりません。これはかねてから行なわれておりますもので、他のももとは若干色彩を異にしているのでございます。
  37. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前、アメリカのシュルツ財務長官がIMF総会におきまして平価変更など国際収支調整をする指標には外貨準備の目立った増減を使うというような通貨改革案を発表しておりますけれども、いま局長から御答弁がありましたように、外貨準備高に入っていないところの外貨預託とかあるいは輸入資金貸し付け金とか こういったものがいまおっしゃったものだけでも三十二億ドル、二十八億ドルと、六十億ドル以上もあるのですね。そうしますと実質的なわが国外貨保有は二百四十億ドルを上回るんじゃないか、このようにも各国から言われるんじゃないかと、こういう気もするのでございますけれども、副総裁はこの点はどのようにお考えになっておられますか。
  38. 河野通一

    参考人河野通一君) 外貨準備というものの定義がいろいろ実はございまして、そういうものが日本の外貨準備の中に計上されていないということは、外国の専門家は大体承知をしております。正確な一銭一厘違わないところまでは存じておりませんでしょうけれども、大体承知をいたしております。したがいまして、この数字はどっちが正しいのかということは、これを計上のしかたの問題でございますから、それは大きく言う人は実質的にはもっとあるんじゃないかという説が出てくるかもしれませんけれども、私どもはそれは別にそうたいして大きな問題とは考えておりませ  なお、シュルツさんがあの際言われたことは、もちろん平価調整の問題を判断する場合の基準の一つとして外貨準備というものも考えるべきではないかということを言われておったことは確かでございますけれども、これは見方によってはやはり国際収支、したがって、その結果であるところの外貨準備というものの多寡というものが通貨調整の場合の一つの基準、唯一ではございません、唯一ではございませんけれども、幾つかの基準のうちの一つであることは、これは間違いないと私は思っております。ただそれだけで機械的に通貨調整というものをはじき出して、こういう外貨準備が幾らになったらこうするのだといったような機械的な通貨調整というやり方については私どもは絶対に賛成するわけにはまいりませんけれども、それが一つの基準である、幾つかの基準のうちの一つの基準であるということは間違いないことだと私は思っております。
  39. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども質問があったのでございますけれども、去年のいわゆるドル投機にこりまして、大蔵省日銀当局は、主要な投機の道はほとんど封じた、それで為替管理の効果を非常に宣伝していたのでありますけれども、なるほど輸出前受け金等は相当監視されているようでございますけれども、先ほど副総裁がおっしゃったリーズ・アンド・ラッグズですか、いわゆる輸出代金の決済を急ぐと、輸入代金の決済をおくらせる、こういうような姿で相当日銀ドル買いささえを行なっているわけでございますが、まあ十月中に大体十五億ドル買いささえたんじゃないかと、このようにいわれておりますけれども、これは、損をしないための防衛的ないわゆるヘッジなのか、それとも積極的にこの際もうけようとする投機なのか、その辺の判断はどう感じておられるのか、それとも全然そういった区分けをなさっておられないのか、その辺のことをひとつはっきりおっしゃってください。
  40. 河野通一

    参考人河野通一君) 先ほどもちょっと成瀬委員の御質問にお答えしたのでありますけれども投機というのは、積極的投機であるのか、損を防ぐための投機であるのかということは、これは遺憾ながらわかりません。自衛上の問題でもありましょうし、その自衛上の問題が少し度を過ぎれば積極的に益を得ようとすることになるかもしれませんし、その辺のことは正確に仕分けは私はできないと思っております。ただ世上伝えられておるような円の再切り上げということの不安みたいなものが、どういうわけですか盛んに出ておりますので、そういうことから、自分を損から守ろうというふうな趣旨のものがいまお話しのリーズ・アンド・ラッグズの中には量としては多いのではないかと私は推定はいたしますけれども、正確にここから先が積極的な投機で、ここから先は消極的な防衛だということは、個々の取引の帳簿を見ればあるいは想像がつくかもしれませんけれども、ちょっと抽象的には申し上げることは非常にむずかしいと、かように考えております。
  41. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、こういう正常な姿で行なわれている取引に対してはもう阻止できないということになりますと、まあ大蔵省の稲村財務官なんかも、来春までこういう状態が続くんじゃないかということもおっしゃったようでございますけれども、すなわち来年の春までこういった状態がぐんぐん続くならば、外貨保有高はますます急増すると、これはとめられないと、そう考える以外にはないじゃないですか。どうですか。
  42. 河野通一

    参考人河野通一君) これは 先ほど申し上げましたように、私はこれから行なわれるいわゆる円対策といいますか、輸出入自体の調整措置がどの程度のテンポで、どの程度の効果をもって実行されるかということの点にかかっていると思います。実態的な輸出入、ことに貿易収支でございますけれども、その貿易収支の先行きというものが相当安定的に動いてくるということでありますならば、私はそういった投機もおのずから減ってくる、かように考えますから、いまここで、今年中は続くとか、今年度中はそういった外貨増加が、急増が続くということをにわかにここで判定することは困難ではないかと、かように考えております。
  43. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ副総裁としてはそのように答弁する以外にはないと思いますけれども、これは非常に大きな問題であるし、対策が全然ない、また政府の円対策も非常に骨抜きであって実効が望めないとするならば、これは円切り上げの方向に向かって非常にまた内外の圧力が強まるんじゃないかと非常に心配しているわけです。  で、この際もう一つお尋ねしたいのですけれども、造船プラント類の延べ払い債権というものが総額六十億ドルに及んでいる。非常に不気味な存在でありますけれども、このうち三分の二が円建ての輸出契約といわれております。これが円の再切り上げが近いというような見通しのもとに、一挙に利益となって三十億ドル以上の造船代金が流入してくるおそれがあると、このように外為の市場筋では見ておりますけれども、このようなおそれが絶対ないものかどうか、またその対策を日銀当局はどのように考えていらっしゃるのかお聞かせ願いたい。
  44. 河野通一

    参考人河野通一君) 造船関係及びプラントの関係の延べ払いの債権が五、六十億ドルにのぼるということは事実でございます。これに対する対策は、先般の一連の為替管理の強化の際にも大蔵省措置をとられたわけでございます。とられたわけでございますけれども、完全に、さっき成瀬委員と林局長との間のお話のときにも出ておりましたように、完全にこれを押えるということはなかなかむずかしいわけです。ことに円の債権であります場合には、債務者のほうが早く払う。それからドルの債権であります場合には、ドル建てであります場合には、債権者のほうが早く、つまり輸出者のほうが早くとろうとする。どちらにしても、円であろうとドルであろうと、その意欲を持つ者は違いますけれども、債務者なり債権者なり、どちらかが早くそれをかえていこうと。少なくとも円の不安のある限りはしようということはあるわけでありまして、通産省と大蔵省と御相談になってこの延べ払いのリーズをなるべく規制するようにしていただいておりますけれども、その効果はだんだんあがってくると思いますけれども、完全にこれがとまるということはおそらくあり得ない。やっぱり円の不安がある限りはちびちびと入ってくるということは免れないのではないかと、かように考えております。
  45. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま、大統領選挙も済んで、ベトナム和平が問題になっておりますけれども、もしベトナム和平が実現したあとにおいて、ドルの強化というものが成り立つとすれば、今後のわが国の円再切り上げの問題にどういう影響を与えると思っていらっしゃいますか。
  46. 河野通一

    参考人河野通一君) どうもなかなかむずかしい問題で、私が問題かれこれ申し上げることははなはだ資格がないのでございますけれども、最近、日本以外のところではドル相当強くなっております。ことにヨーロッパではドルは非常に強くなりまして、フランスあたりの自由市場でも大体基準相場に近いところまできております。これは一つには、やはりアメリカの国内の金利が相当上がったということで、ドルがアメリカに還流したということも影響いたしておるようでありますけれども、やはり何といってもベトナムの和平が近いという心理的な影響が非常に作用しておるということは確かなようでございます。  さてそれでは、そのベトナム和平が実現した場合に、一体ドルはどうなるかということでございますが、私はやはりドルは強いほうにこれは影響するであろうことは間違いない、かように考えます。しかし、それがどの程度の影響を持つかということは、遺憾ながら私としてはその問題について申し上げるわけにまいりません。  それから、それが一体それじゃあ円の再切り上げにどういう影響があるかという点につきましては、私どもは円の再切り上げなんていま考えておりませんから、そういう問題についていまここでどういう影響があるかということは、いま申し上げる段階にございません。
  47. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀としては、この金融政策というものが、引き締めもしないし、ゆるめもしないという方向でいっているらしいのでございますけれども、最近、金融機関の貸し出しの伸び率が急激に増加しております。それでこの前の、いわゆる新全総とか日本列島改造案の発表によって、いわゆる金融筋あるいは大資本の土地の買い占めというものは非常に激化しているわけです。このままでいくならばますます土地の買い占め、買いあさりが行なわれるのではないかということもございましょう。いままで年間二〇%ぐらいの土地の値上がりが四〇%、五〇%の土地の値上がりとなってあらわれておりますし、買い占めも激化しております。こういうことから日銀はどういう金融政策をそれに対して考えていらっしゃるのですか。
  48. 河野通一

    参考人河野通一君) 建設とか不動産関係向けの金融機関の貸し出しがこのところ相当急激な増加をいたしておりますことは御指摘のとおりであります。私どもといたしましては、金融機関に対しては、機会のありますごとに、投機的な、値上がり差益をねらったような土地の取得に対する金融は自粛するようにということを、あらゆる機会をとらまえてまあスエージョンといいますか、お願いをしてまいっておるわけでございますけれども、現在制度的にそういう土地に対する貸し出しを量的に規制するということは、いまの日本経済の体制の中では非常にむずかしい。で、結局それは、総需要全体を押えるという形の一環としてでなければ、いわゆる融資規制、融資統制——戦争直後にありましたような融資基準みたいなもので個別的な統制をやっていくということは、私どもとしてはいまの経済体制のもとではできないと考えております。いわんや土地の融資の中にはほんとうの意味で必要な土地を取得するための融資もございますから、その辺はやはりそういう機械的な統制によって押えるのではなくして、金融機関がその良識を働かして、必要なものには金を出すけれども投機的な不必要なものと思われるものに対してはその貸し出しを押えるといったような、そういう良識のある判断と行動とをお願いしていくよりしかたない、かように現段階では考えております。
  49. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に副総裁にお尋ねしたいんですけれども、先ほどからの御答弁聞いておりますと、円切り上げは全然考えてないと、こういう御答弁で、これは副総裁の立場上やむを得ない答弁だとは思いますけれども、差し迫った状態においての答弁としては私は非常に納得がいかないし、その対策にしましてもほんとうに実効があるのかないのかわからないような御答弁に終始しておられます。で、田中総理なんかも衆議院の予算委員会の席上では、まあ円問題はわが国が当面してる最大の課題だと、で、もし再び円切り上げが行なわれれば中小企業のみならず国民が困るんだと。しかし、そう言っている反面、一方では、どうにもならないときには中小企業対策を考えるというようなことも言っているわけですね。また失言だとは言われておりましたけれども、大蔵大臣は——通貨当局の責任者として円再切り上げはどうにもならないのかと、こう質問したのに対して、非常に困難な問題だというような答弁をして、これは失言だということになってるわけでありますけれども、失言じゃなくて本音だったのではないかというような観測も行なわれております。で、まあ政府の円対策というのは、輸出税の創設なんかも見送ったし、今度審議される法案にしましても非常に骨抜きが目立っております。そういう関係から言えば、私はこの円切り上げ回避に対して真剣に政府がやっていこうという姿勢が見られないし、一方においては総選挙後一ドル二百八十円程度まで円切り上げが行なわれるんじゃないかというような観測もあるわけであります。ですから、副総裁として、先ほども貿易管理令の実施後もあまり効果がないならば、輸出税の創設も考えなきゃならないだろうということもはっきりおっしゃったわけでございますけれども、そのほかの対策を、政府、大蔵当局にきちんと要求すべきところは要求し、また国民に訴えるべきことは訴えなければならない立場にあられるんじゃないかと、このように思います。ですから、いまの対策でほんとうに円切り上げが回避されると本気になって思っていらっしゃるのか、それにはまたこういう対策が必要なんだ、ぎりぎりの対策もお考えになっておられるんじゃないかと思うんです。その辺のお考えをひとつお聞きしておきたい。
  50. 河野通一

    参考人河野通一君) 繰り返しのお答えになるかと思いますが、私どもは、いま政府がとられようとしておる、あるいはすでにとられたいろいろな対策を、効果が十分に出ることを期待しながら、それでもなお足りなかった場合には、さらにそれに追加して、輸出税ということがいまたとえば言われておりますけれども、そういったことも行なっていただく。いま、これからだんだんそういういわゆる円対策というものが行なわれてくるわけでございますから、その効果に期待しながら、万一十分な効果が出ない場合には、さらに対策を強化していくということをお願いせざるを得ない、かように存じます。
  51. 船田譲

    ○船田譲君 私は、いま審議中の本法案を含めまして、その他の第三次円対策について、巷間ではこれでは少し弱過ぎるという説もあります。私自身も交通渋滞の自動車の中でかけ足しているような感じがするのでありますけれども、しかし、それでも対外的には姿勢を示すということが必要でございますから、これはぜひともやっていきたいと、こう考えるわけでございます。  さて、副総裁と国金局長さんに二点だけまとめてお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  第一番目は、最近の卸売り物価の上がりの足早なことでございますが、その原因に、たとえば不況カルテルをあげる方もおられ、コスト・プッシュだと言う方もおられ、また海外の原素材の最近の値上がりが寄与しておるという説もございますが、そのほかにも原因があると思いますけれども、この三つにしぼった場合に、一番寄与率の高いものはどれだとお考えになるかお聞きしたい。  それと同時にもう一つ、かつて、日本の消費者物価というものは、卸売り物価と連動しておると、たとえば卸売り物価が一ポイント上がれば、三ないし五ポイント消費者物価が上がるのだというような説がございましたけれども、現在の産業構造なり経済情勢において、なお連動すると考えるのがいいのか、いや、そうじゃないと、極端に言えば連動はしないのだと考えるのがいいか、この二点をお伺いします。  それからもう一点、前回の円の切り上げのときに、私もちょうど政務次官やっておりまして非常に感じたのでありますけれども、大部分の差損を日銀政府がしょった形になっておりますけれども、当然為銀も応分の負担をすべきだと思います。その意味において、今後為銀のポジションにおいて、外貨のポジションを強めるという指導をなさる必要があるのではないかと思いますが、この点についての御意見を承わりたいと思います。
  52. 河野通一

    参考人河野通一君) 卸売り物価が最近二、三ヵ月急激に上がっておりますが、その原因をどういうふうに考えるかということは、実は私のほうの内部もいろいろ試算はございます。何の原因で何%くらい響いているという計算はございますが、どうもこれは皆さま方に公にはお話しするところまでまだいかないし、試算みたいなものでございます。で、正確な数字は申し上げられませんが、大体大局的に申し上げますと、卸売り物価がこの二月から上がってきておるわけですが、二、三カ月前ごろまでは大体やはり供給面の規制——つまりさっきおっしゃいました不況カルテルもその一つでしょう、それから、いろいろの形において販売を規制しておるということもございましょうが、そういう供給面からの規制に基づくウエートが非常に高かったと思います。ところがこの三、四ヵ月ぐらい前から、——その影響はまだございますけれども、むしろつまりいまお話しのようにデマンドプルと申しますか、そういう需要面からの強さというもののウエートがどうも少し増してきておるんじゃないか、かように考えます。ことにこの二、三カ月ではやはり御案内のように、これはほかの原因なんですけれども輸入の価格が相当上がってまいっております。これらもやはり従来、四、五カ月前に比べまして、輸入物価の値上がりということが相当卸売り物価に影響しておる、こう申し上げられると思いますけれども、やはりおしなべて需要が強くなってきたということが相当ウエートが高くなってきているというふうに考えられます。
  53. 船田譲

    ○船田譲君 コストプッシュのほうは……。
  54. 河野通一

    参考人河野通一君) コストプッシュ、これはなかなか——主として卸売り物価よりもやっぱり消費者物価のほうに大きく影響していると思いますけれども、もちろん賃金が高騰するということが企業の利益にはね返って、それが価格に影響しているということももちろんあると思います。ただこれはやはり需給関係がタイトにならなければこれはやっぱり上げられないわけですから、結局やはりそれは需給関係の影響と考えていいと、つまりそれだけやれる需給関係になってきたということだと考えていいんじゃないか、かように考えます。  それからもう一点は、消費者物価と卸売り物価の連動といいますか、これは関係が従来はあったわけでございます。大体卸売り物価から、半年なり三、四半期ぐらいおくれて消費者物価にはね返ってきている。ただ、いま御指摘のようにだいぶ経済の構造が変わってまいっております。国際的なウエートというものがだんだん変わってまいっておりますので、従来のような形で、パターンでそのまま影響してくるかどうかわかりませんが、少なくとも卸売り物価が上がるということが消費者物価に影響を及ぼす、あるタイムラグを経て影響を及ぼしてくるということは、これは避けられない。その影響は、従来言われておりますところでは、私どもの試算では卸売り物価が一上がると消費者物価が半年ばかりの時差のもとにおいて二上がるとか、いろんな試算はございますけれども、そういった上がり方になるかどうか、そういう機械的な計算はいまだいぶ事情が変わっておりますから、ストレートにそのまま適用することができるとは私ども考えておりませんけれども、影響があることは間違いない。しかも、時差を経て影響を及ぼしてくることは間違いないところだと思います。  為替の為銀のほうの問題は大蔵省のほうからお答えいただきたいと思います。
  55. 林大造

    政府委員林大造君) 卸売り物価ないしは消費者物価の問題は、必要あれば官房の田辺審議官のほうからお話し申し上げますが、先ほどの第三点、最後に御質問のありました為替差損と、銀行のポジションの問題でございます。で、為替差益、差損と申します場合には、先ほど副総裁からもお話がございましたとおり、どこまでが平時でどこまでが投機であるかというのが非常にむずかしい面がございます。で、銀行対外取引の大体ほとんど大部分銀行を通して決済されるわけでございまして、したがいまして、その投機民間で行なわれます場合に、銀行チャンネルを通して行なわれる場合が非常に多い。そこで為替管理法の体系でも銀行には外国為替公認銀行という制度を設けまして、銀行というのをその一つの重大な関門として、そこを通じて為替管理を実施するというたてまえをとっております。で、一面におきまして銀行は、国内から広く預金を集めているわけでございまして、したがいまして、預金者の保護のためにリスクのある仕事はなるべく控えるという意味で、為替リスクというのは非常に危険な思惑対象でございますから、したがいまして、そのような思惑にはできるだけ関係のないような仕事のしかたをする、すなわちスクエアにするというのが銀行為替ポジションの処理のしかたの一つの原則になっているわけでございます。で、したがいまして、どこまでが投機で、どこまでが平時であるか、またそれが銀行のメカニズムを通しまして国全体、それは公的部門である政府日銀、それから民間部門である為銀、それからその他の顧客というものの間でどういうふうに配分されるかというのは、非常にむずかしい問題でございます。そこで、私ども銀行のポジションは常に把握しておりまして、銀行のポジションが、その投機的な利益を取得するようなことにならないようには常に留意をいたしております。ただ、銀行にこれだけは為替差損のリスクをかぶれということを言うのはなかなかむずかしい問題でございまして、やはりそのところは国際金融取引の常識に基つきながら、しかも、為替投機が行なわれないように配意をして運営をしているという実情でございます。
  56. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 物価の問題につきまして簡単に数字だけからお答えしてみたいと思いますが、まず卸売り物価の年初来の上昇率の中で、寄与率の大きいものからとってまいりますと、まず繊維品でございます。繊維品が全体の二七・一というような数字になっております。それからその次が、木材及び同製品でございまして、これが二二%になっております。それからその次が、鉄鋼でございまして、これが二〇・五%、これが、何と申しますか、卸売り物価を押し上げている三傑といいますか、三大品目であろうかと思います。これを合わせますと大体七割の寄与率になります。  そこで、鉄鋼は不況カルテルというものの要因がかなりあるであろうと思われます。  繊維品は毛糸等で代表されますような羊毛——海外の需給の逼迫、それから価格の急上昇、こういうものが、この繊維品の中でどの程度占めているかというのは非常にむずかしゅうございますが、そういう要因がかなりある。  それから木材につきましては、大きな要因はやはり最近の建築ブームと申しますか、そういうものがあるでありましょうけれども、同時に外材、特に米材の値上がりもある、こういうぐあいに考えられております。  それからいま一つ、これは企画庁のほうの試算がございますが、これは全体の年初来の卸売り物価の上昇のうち、海外高による上昇分、それから生産調整、不況カルテルによる上昇分というような試算がございます。これは先ほどちょっと申しましたように、羊毛が上がっているとか、原皮が上がっているとか、それのためにまた毛糸や毛織物が上がっている、あるいはくつとかハンドバッグ類が上がっているとか、あるいはまた鉄鋼で申しますと、鋼材が上がっているのでその製品が上がっているとか、そういう直接間接の関係をどこまでトレースするかということは非常にむずかしゅうございますが、一つの試算としてお受け取りいただきますならば、海外高による上昇分が二八、寄与率が二八、それから生産調整による上昇分が三〇、そういうような数字もございます。
  57. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たいへん失礼ですが、前にしばしば聞いたことは、ドルがたまってくる、これは利子が利子を生むのでたいへんけっこうなことであって、金など、金塊を持っていると、これは冷えるだけで利子は生まぬよという考え方があの二十億ドル前後にあったと思うのです。いまどんなふうにお考えになっておるか。
  58. 河野通一

    参考人河野通一君) これはむしろ大蔵省からお答え願ったほうがいいのかと思いますけれども、二十億ドル前後の外貨準備の時代には、それは金どころでなくて、実際ワークする流動資産としての外貨というものがどうしても要りますから、金ということの考えはあまりウエートがなかったということが言えると思います。その意味におきましては、現在はもちろん外貨準備は非常にたっぷりあるわけですから、金を持つことによって別に困るわけではございません。ただ問題は、金というものが一体今後どういう、少なくとも貨幣用の金の今後の趨勢というものは一体どうなるのかということにつきまして、いろんな考え方が行なわれております。御案内のようにヨーロッパあたりではやはり金に一部匹敵するような考え方もございますけれども、私どもはまだ的確なことは申し上げられないにしても、そういう一つの特殊の鉱物というものが、鉱物つまり自然産物、生産量も非常に制限されておる、そういったものに非常に大きなウェートを置いたような通貨制度というものは今後はやはり維持できない。どうしてもやはり人間が考え出したそういったものを中心にした通貨制度というものに指向するであろう。しかしそれじゃすぐ金というものの機能はなくなるかというと、私はそうではないと思います。そういった今後の国際通貨制度のあり方といったようなものも考えながら、貨幣用金というものは考えていかなければならぬ。現在は御案内のように、みんなが自粛しようということで、中央銀行なり政府の持っておる貨幣用金の問題については、ある程度自粛をお互いにしている。そういう状態でございますから、いま貨幣用金をどうしようということは、チャンスがあればいまでも日本は、たとえば南アからIMFが買い取りました金をときどき分配される際には日本も、正確な数字大蔵省にお聞き取り願いたいのですけれども相当買っておりますけれども、基本的に非常に多額の金を貨幣用として積み増していくということはおそらく考えられない。ただ、貨幣用以外の工業用の金につきましては、これはまた別問題ですから、大蔵省はいろいろお考えかと思いますが、私個人の意向を申し上げれば、できるだけ早く自由化をしていったほうがいいと思いますけれども、貨幣用金については、いまそう積極的に金をふやしていくという必要はないのではないか、かように考えております。
  59. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時再開とし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      —————・—————    午後二時九分開会
  60. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案議題とし、休憩前に引き続きこれより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  61. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最初にですね、何というのですか、対外経済政策推進関係閣僚懇談会というのがあって、そしていろんな政策推進に当たっておみえになるようですが、これは総理、外務、大蔵、企画、通産、農林、運輸、まあそのほかに官房長官、副官房長官がお入りのようですが、これは総まとめ役というのですか、はどこがやっておみえになるわけでございますか。
  62. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは企画庁が調整、取りまとめの任に当たりまして、その懇談会におきましても企画庁長官がそういう形でやられたわけでございます。
  63. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、今度の提案されておる、この関係法律案は、第三次と申しましょうか、対外経済政策推進のまとめと申しましょうか、その一環として御提出になっておると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  64. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 去る十月二十日に決定いたしました対外経済政策の推進についてという、そのいろんな項目につきまして政策が決定されておりますが、そのうち法的措置を要するもの、特に大蔵省関係の立法措置を要するものについて取りまとめたのが今回の法律案でございます。
  65. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、大蔵関係ではなくて、他に関係する法律はどことどこになりますか。
  66. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは経済協力基金の援助のアンタイイングに向かって、その項目につきまして基金法の一部改正が商工委員会にかかっていると思います。
  67. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ八項目、七項目、今度五項目と、こういうふうに推移しておるわけですが、そうするとこの対外経済政策推進関係閣僚懇談会というのは、二次のときはどういうふうになっておったのか。それから一次は、これは一次、二次、三次ということがあまり好きじゃないようですが、あまり効果を発揮しておらぬのかどうか、気がひけるということで好きじゃないようですが、一次のときはどういうふうで、二次のときはどうなってということについて、どこでこれは御答弁願えるのかわかりませんが、御説明願いたいと思います。
  68. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 昨年のいわゆる八項目を決定いたしました。それからことしの五月でございましたか、いわゆる七項目を決定いたしました。その何といいますか、やり方、取りまとめ、やはり企画庁がやったわけでございます。
  69. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 円の切り上げは絶対に阻止するべきなんだと、絶対に阻止するんだという考え方なのか。対米関係は、これは非常に大きな問題ですので、政治経済から見て、ドルが対米関係でいえば、どうしたって日本がふえてくるという中で、外貨減らし、輸入増、いろんな点で減らしていきたいんだけれども、それだけじゃとてもいかぬと、ある程度円の切り上げというものはやむを得ないんだという、そういう是認の気持ちを持って進めておみえになるものなのか、絶対に水ぎわで阻止するんだという、そういうかまえでやっておみえになるのか、本心を承りたい。
  70. 林大造

    政府委員林大造君) 昨年は、御指摘のとおり八月の十五日にニクソンのいわゆる経済新政策が発表になりまして、その後八月の末にフロートをするのやむなきに至り、さらに十二月の十八日のスミソニアン会議におきまして多国間為替レート調整一環として、円の対米ドルレートが切り上げになったことは御承知のとおりでございます。で、昨年と比べましてことしが本質的に違いますことは、海外で円の切り上げを求める声がまずほとんどないと申してよろしいかと存ずる、この点がまず違う点でございます。最近におきましては、海外景気も非常によろしゅうございますし、それから昨年末の為替レートの調整がその効果を発揮するまでには、なおしばらくの時間がかかる。しかも、思っていたよりもその効果の発現のしかたがおそいというのが一般的な感じとして世界的に受け入れられております。で、昨年以来、米国の国際収支、改善はいたしておりません。むしろ赤字がかなりふえております。ただ赤字がふえております相手は日本ではございません。日本はやはり大幅なレート調整をいたしました結果と、それから景気がかなり急速に回復しておりますことと、それからやはり一次、二次ということばがよろしいかどうかの、円対策がそれなりの効果を発揮しているということでございまして、今暦年の経常収支の黒字は、昨暦年の経常収支の黒字よりも若干上回るかと存じますが、それほど大きい増加はいたさないはずでございます。で、それに対しまして、アメリカの経常収支の赤字は、五十億ドル前後悪化すると存じますけれども、その大部分はECの黒字の増加、それからOECDに属しないその他の諸国の黒字の増加と見合っているわけでございまして、したがいまして、海外におきましては、現在の景気の状況と、それから多国間為替レート調整の効果がまだ十分に出ていない。おそらく来年にはかなりの効果が期待できるだろうということで、その結果を待つという零囲気になっていることでございます。しかし、そうかといって、現在のような日本の経常収支の黒字をそのままに続けていていいわけではございません。黒字の点のみならず、海外からは日本がこれだけの経済大国になった以上は、それにふさわしいような責任のある経済運営をやってもらいたい。そのためには日本の門戸を広く世界に向かって開いて、輸入も自由化し、資本も自由化してもらいたいという声、これが非常に強いものになっております。そこで私どもは、現在の円レートを変える必要はないし、変えなければならないような事態には絶対に追い込まれないという確信のもとに経済運営をやっているわけでございます。で今回、諸般の措置をお願いいたしておりますゆえんのものは、今回の措置がまた効果を発揮するまでにはかなりのタイムラグが要るわけでございます。あるいは半年あるいは一年というようなタイムラグが要る。で、その経常収支の黒字が十分妥当な範囲内におさまるようにするには、早急に現在のこの時点で対策に着手する必要がある、対策を実行する必要があるという点で御審議を求めておりますと同時に、門戸を広く開放すべしという海外の要請にもこたえたいという気持ちで今回の法案をお願いしている次第でございます。
  71. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 御趣旨はわからぬわけじゃないですよ。わからぬわけじゃないですけれども、そうすると、主としてヨーロッパ関係には円の切り上げの声はないよと、ただ対米、日本とアメリカとの関係で、アメリカが赤字が日本に対して非常に多いというのですか、日本が黒字になっておる。したがって、通商関係だけ整えておれば通貨問題には発展せないと、だから通商関係だけひとつやろうという考え方でおれば、大体円の切り上げ等のそういうような問題は起きてこないのだという、まあ自信に満ちたことばですから、非常にけっこうなんですが、それじゃいままで一次、二次ときて三次までですが、一次の八項目であれでやれなかった問題何かあるんですか。あるいは二次のときに方針はきめたんだけれどもやらなかったというようなことはございますか。
  72. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 御質問にありました第一次、昨年行ないました八項目につきましては、それぞれにそれなりの実施、実行は行なわれております。ことしの五月に行なわれましたいわゆる七項目につきましては、どちらかと申しますと、財政金融政策あるいは外貨活用策というほうにウエートがございました。その中で金融政策、金利の引き下げあるいは政府の支出、公共事業に関する契約の促進といったようなことは実効があがっているわけでございますが、特にそのときにも提案をされました、今回また本法律案の中に入っておりますが、輸出入銀行、それから海外経済協力基金の業務の拡大、また援助のひもつきでなくするというようなことにつきましては、前国会に関係法律案提案されましたけれども審議未了となったわけでございます。
  73. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはどういうことをそれじゃ期待してみえますか、今度のこの法律案が通れば。これで日本の黒字は、いわゆる外貨はもう急速な増はないんだと、若干ふえるかもしれぬけれども。どのくらいのベースを、黒字の年間のたまりと申しましょうか、どのぐらいのものを想定してこれを大体立案してみえますか。それを一次のときはどうだったと、二次のときはどうだったと、で、どれがどうして食い違ってきたか、そして今度の三次はどのくらいの総トータルの黒字を予測してみえておるのかですね。
  74. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 今回のこの十月二十日に決定いたしました対外経済政策の推進に関する各種の項目、その中で立法措置を要するものだけを法律案にまとめてありますので、この法律案自体の効果と、それからそれが一環となっております閣僚懇できめました政府施策、これとはカバレージが違うわけでございますが、いわゆる第一次といわれておりますようなもので決定されました中にも、たとえば関税引き下げというものはございましたが、その規模、程度は今回のほうが非常に拡大をしておるわけでございます。それで、どれだけの経常収支の黒字を減らす効果があるかと、こういうことでございますが、これはなかなか計算そのものがむずかしいわけでございまして、たとえば、提案しておりますような中身でもって関税引き下げられますと事実上輸入拡大をするはずでございます。そういった、何といいますか、弾性値といいますか、過去における傾向値からの一応の推算がございます。それからまた輸入金融拡大する、あるいは輸出振興税制を改組すると、その場合に輸出がどれだけ減るのか、あるいは輸入金融拡大した場合に輸入はどれだけふえるか、その効果があるはずでございますが、これを計数的にはじき出すのはなかなか困難でございます。しかし、できる限りのことをいたしまして、現段階で一応十月二十日に決定いたしました諸政策を計算可能な範囲内においてやりましたところでは、平年度ベース、言うならば四十八年度と申しましょうか、平年度ベースではこれは約十億ドルという計算が出ております。約十億ドルの黒字の減少効果をもたらすであろう、この中にはいま問題になっております輸出貿易管理令の発動によるところの輸出調整措置、これによってどれだけ減るかといったようなことは計算はしておりません。また輸入の自由化、これは何品目をどの程度自由化するかということは目下検討中でございますので、そのことも一応計算には入れておりません。それを入れないで大体約十億ドルの効果がある、こういうぐあいに考えております。
  75. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 十億ドル減少すると、こういうわけですね。そうすると差し引いてまあ輸出がどのくらいになって、輸入がどうかということはなかなか数字はおっしゃらずに、ただ十億は少なくなるだろうと、輸入がふえるだろうと、こういうようなお話のようですが、そうじゃなくて、やはり見積もりは、正確なことはできないかもしれないが、概算として、ドルがたまり過ぎるからいろんなことがいわれるわけですから、そうすると日本の最終的な外貨保有高はこれぐらいになってくるだろうと、だから、国内の景気なりアメリカの景気、世界の景気動向等いろいろと計算しにくいということは私もわかりますよ。なかなか当たらないかもしれない、しかし、そういうわけで見積もりを放棄しておみえになるとは思っておりません。やっておみえになると思います。ですから、一次のときはこういう計画だったと、それが実は狂ってしまった、二次でやってみたらこれも予測ではなかった。三次はこうなんだと、それは一次、二次の反省の上に立ってやっておみえになるというふうに私たちは受け取っておるわけです。だから、その数字を聞かしてもらわないと、そうでなくて全くのもうこれだけしか減るということしか考えていないんだと、そういういいかげんなと言っては非常に失礼かもしれませんけれども、たよりない算定しかやっておみえにならないのか、もう少し大蔵省は、せっかくこんな七人も大臣が集まっていろいろとやっておみえになるわけですから、突っ込んだ話がされておるのがあたりまえだと、こう考えております。常識的に私は聞いておるわけです。いかがですか。
  76. 林大造

    政府委員林大造君) 経常収支の数字は昨暦年は五十七億九千七百万ドル、約五十八億ドルだったわけでございます。で、今暦年がどのくらいの経常収支の黒字になるかということでございますが、これは年度間の見通しといたしましては、修正されました昭和四十七年度の経済見通しによりますと約五十五億ドルというふうに、年度の数字をとってみますと、前暦年よりやや減るような計数になっておりますが、しかし、おそらく暦年をとってみれば五十五億ドルまではまいりませんで、まあ前年の五十八億ドルに比べて若干、わずかの増加くらいでとどまるのではないかというのが内外ともに一致した見方でございます。で、問題は来年でございまして、来年につきましては、海外の専門家も日本の経常収支の黒字は減るであろうということを言っておりますが、それに加えまして今回の諸措置、それは補正予算の関係でも国際収支の黒字圧縮には効果があると存じますし、また、今回御審議をお願いしております三法案の改定を含めその他の諸措置によりまして、貿管令の発動以外で平年度約十億ドル、貿管令の発動も加えれば五十億ドルぐらいに近いところまで下がっていくことを私どもは期待しているわけでございます。で、両三年のうちに経常収支の黒字幅をGNPの一%ぐらいに持っていきたいというのが、私どもの基本的な方向でございますが、この両三年後の日本のGNPを約四千億ドル前後というふうに想定いたしますと、目標数字は四十億ドル前後ということになるわけでございます。その方向に持っていきたい。  で、経常収支のほうはそのようにまいるといたしましても、外貨準備のほうがいかになるかということになりますと、外貨準備につきましては、資本取引の要素が入ってまいります。それともう一つは、タイムラグの関係がございまして、輸出は今月分が外貨流入になる、輸入は四カ月前の輸入外貨の流出になるというような関係で、今後もある程度外貨の準備の増加…は避けられないというのが、私どもの率直な見通しでございます。  ただ、それがどのくらいの増加速度になるかということになりますと、きょうの午前中もいろいろ御質問がございました。二百億ドルになるということを言われたとかどうとか、いろいろございましたが、これは思惑関係もございますので、外貨準備のほうでは的確な見通しは立てにくいというのが偽らざる私どもの気持ちでございます。
  77. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あのね、こういう席上じゃ、あんたのほうはなかなかこうだということが出しにくいかもしれぬが、資料としては、私は、閣僚懇談会なんかの席上では相当なたたき台の資料を出して、だからこうなんだと、こうだというようなことを議論しておいでになるんじゃないかと思うんですよ。だから、こういう席で、その骨子となっておる数字はお出し願ったほうがいいじゃないかと、こう思うわけですよ。  ですから、いまの国際金融局長からのお話だけでは、ちょっと、われわれだけじゃ、それじゃ何をしておるんだという、ああそうですか、わかりましただけじゃ、これではちょっとどうにもしようがない。そんなに秘密に保っておらにゃいかぬものなのか。たたき台としての、あるいはわれわれが議論をする資料ということになりましょうか、判断をするときの材料をもう少しお出し願うわけにはまいりませんか。
  78. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 数字を申し上げますと、どうも数字が固定して一人歩きをいたしますと、なかなか、先ほど成瀬先生おっしゃいました、当たらないかもしれないという点が心配でございますが、ただいま約十億ドル程度の黒字の減少である、こう申し上げましたものの計算の基礎といたしましては、今回の関税引き下げによりまして二億ドルから三億ドル、三億ドル近辺ではないか、こういうぐあいに考えております。  それから、これは法律事項ではございませんが、輸入割り当ての拡大をうたっております。これによります効果、これは約二億ドル近辺ではないか。  それから、今回の提案に入っておりませんが、今度の通常国会で御審議を願いたいと存じております特恵関税制度の改善、これによります効果が一億ドル足らず、まあ五千万ドルから一億ドルぐらい、こういう考え方でございます。  それからその他のいろんな措置がございます。たとえば金地金等の民間輸入の禁止の解除とか、あるいは携帯品の免税限度の引き上げであるとか、それから輸銀の輸入金融の拡充と、こういうものをひっくるめまして四、五億ドル、こう考えております。この中間値をとりまして約十億ドル、こういうことを考えておるわけでございます。
  79. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も、こういう、何といいますか、ドル対策全体をこれだけで解決するんじゃなくて、日本経済全体の問題ということはわかるわけですよ。ですから、日本経済の体質そのものにいろいろと議論もしてこなければ、この根本的な問題は解決せないかもしれませんが、一応それはそれとして、あなたのほうが、まあこのぐらいに大体輸出入関係はなっていくんじゃないかと。貿易の、輸出はこのぐらい伸びていく、輸入はこうなってくると。そういう中で、これだけの手当てをするから経常収支なら経常収支の黒字がこのぐらい出てくると。そして、それで外貨準備高のほうへどのぐらい持っていくのかどうかと。そうすれば、もうヨーロッパのほうからは円の切り上げの問題は出ておらぬとこうおっしゃるがね、私はそう甘くは実は考えていなくて、ニクソンが再選されれば何をやってくるかといえば、私は、日米の貿易調整が大きな課題になってくると。それはいわゆる貿易の自由化につながってくるわけです。公平論者ですからね。だから、そういうことだけで、それじゃ公平に日本の国内ができるかというと、なかなかそういうわけにはいかないだろうということになれば、当然円の切り上げの声が起きてくるというのが大体順序であろうと思っておるわけです。  ですから、政府は、いやいやありませんよと言って——と言うのは私はいいことだと思うんですよ。これだけの準備をし、こういうことをやっていく、それでこれだけで防ぎ切れますからけっこうですと、こういうことをやらないとどうにもなりませんと片方では言いながらやっていくことはいいことなんですが、どうも一どう言ったらいいですか、少し考えが甘いと申しましょうか、あるいは本気でやれないじゃないかと。それは、国内問題等があって、なかなか、特に輸入の問題になれば、日本の国の置かれておる中小企業なりあるいは農業関係等があって容易じゃないだろうということもわかりますが、何かこう、聞いておると、うわのそらのような話になっちまって、そうして、これでやってみてもまたいかなんだわいということがこやしないか。だから、結局大蔵省の本音は、ある程度は努力してみるけれども、いつかはやられてもやむを得ぬと、まあ二百八十円というのが通り相場になっているんだから、これがむしろ二百八十円になったほうがいいんじゃないかということを期待しつつ提案をしておられるんじゃないかというふうに思うわけなんですよ。もう現に二百八十円で実勢レートなり取引が行なわれておることはあなたのほうも御承知なんですから、織り込み済みと言っちゃたいへん悪いですけれどもね、だから、そこの辺のところをどう判断してみえるやら、私のほうの、こういううがったことを言うほうが間違っておるということなのかどうなのか。ちょっとこう、大蔵省の私は真意というんですかね、あるいは閣僚懇談会の真意がつかみかねているわけなんです。だから、そこのところについて非常に疑いを持って見ておるんだから、何かこう、あんたのほうも、説得力のある説明がしてもらいたいと思うんです。いまのようなことじゃ、ちょっと納得しかねるんですがね。ただ、これだけやったらこれだけできそうだと、これだけやったらこうなりそうだと言われても、しばしば食い違ってきておるわけです。ですから、たとえばそれじゃ、対アメリカとの関係の貿易調整ではこうなって、アメリカからのもう絶対に圧力はなくなるんだという確信が持てましょうか。まあヨーロッパは巻き込まれてくるほうですよ。アメリカとの関係がうまくいかなければヨーロッパへ伸びていくわけですよ。  それからもう一つは、確かに輸銀のほうでいろいろとワクを広げておやりになるということは非常にいいことだと思っています。で、そちらのほうのこともこれからも援助等、いろんな意味でひもつき援助等はやめられて、この意味改正されていくだろうということは思っております。思っておりますが、そこへ逃げ道を求められるのか、そうじゃなくて、こういう制度のほうで大体輸銀以外のものにウエートを置いておられるのか、その辺のところがちょっと理解に苦しむわけですよ。私の理解が悪いのかな。どうもかみ合わないから、よくどうもふに落ちないわけです。重ねてひとつ御説明願いたいと思います。
  80. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) ちょっとお答えになるかどうかわかりませんが、今回のこの法律案に盛られましたものは、先ほどから申しましたように、法的措置を要する一部のものでございます。対外経済政策全体の、この前閣僚懇できめましたものの考え方は、まさに先生のおっしゃるとおり、わが国経済構造と申しますか、そういうものの転換、これを目ざす姿勢のものでございまして、これはある程度長期的なものではございます。しかし、その発端と申しますか、いま緊急にとらなければならない措置、これはこういうものである、こういう考え方で輸入の自由化なりあるいは関税引き下げなり、それから輸銀の業務の拡大なり、いろんな措置をきめたわけでございますが、それは一口に申しますと、やはり従来からわが国の国是ともなっておりましたような輸出促進、輸入はできるだけ抑制する、で、国内の産業を保護していく、こういった基本的な考え方、これはいまや払拭しなければならないのではないか。したがいまして、輸出振興のためにとられておりますような特別の税制、あるいは輸出入銀行の業務におきましても、輸出のほうにウエートがかかっているこの体制、これを改めるべきではないか。そのどこに重点があるかと、何といいますか、今度の対策の重点の順位といいますか、そういうものは、しいて申しますと、順位そのものはないわけでございまして、輸出振興、輸入抑制型の従来の政策の転換をはからなければならない、こういうことできめられたものでございます。これは法律案とは関係ございませんけれども、閣僚懇できめられました第五の項目、いわゆる「福祉対策の充実」、こういうものにつきましても、これは今回の補正予算にもその前駆といいますか、があるわけでございますが、今後の政策姿勢をきめているわけでございます。
  81. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、まあ今回の五項目を読んでみましても、あなたがおっしゃっているとおり国内の問題も出ております。それは四十八年度予算編成とからんでくる。ですから、一つの円を描いて、その一部は法律としてこれで動き出すわけです。あとは法律じゃないわけですね。行政の問題もあり、政治の問題もある。そうすると、どこかが欠ければこのものは一つの描いておった構想は欠けたことになってしまって目的を達成しない、そういうことだというふうに理解していいわけですか。合わせて一本のものになるので、これは合わせて出てくると、これは三割ぐらいのものだ、あるいは四割ぐらいの比重しかないんだという理解でいいですか。いま御答弁を聞きながらおるとそういうふうに受け取れるわけです。また私も全体があるということもわかるわけですよ。しかし、片方でいえば、いま言ったようにウエートが二割か三割か四割か知りませんが、それだけのウエートのものしかなくて、今後いろいろなことが出てくるわけです。行政上あるいは予算編成とからんでくるわけです。合わせて一本のものでいま言ったように十億ということになるなら、それと一括してお出しになってやられたらどうだと、一緒にしてそのときに審議しましょうという意見も出てくると思うのです。
  82. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 合わせて約十億ドル程度と申し上げましたのには、財政措置、補正予算、そういうものによりますところのいわゆる輸入誘発効果と申しますか、それは入れておりません。それを除きましたいろいろな制度の改変を、先ほど御説明しましたものを足し合わせまして、大体中間値で約十億ドル程度と申し上げたわけでございます。それからもちろんこの法律案に盛られていることが、法律が幸いにして成立をいたしまして、それが実施されればそれでいいのか、こういうことでありまするならば、それだけでは足りない。この前も閣僚懇できめましたいろいろな施策をまさに実行に移さなければならない、こう考えておるわけでございます。そういう意味では、この法律案はその一環でございますけれども、それならばそれらが行なわれるのと一緒に一括してやったらいいではないか、こういう御質問のようでございましたけれども、法的措置を要するものをここに集めているわけでございまして、法的措置を要しないもの、あるいは政令以下の段階で措置できるものは、早急にやるべき仕事は進んでおります。
  83. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いや、進んでおるというのは非常にけっこうな話で、そうしたら、ここに書いてあるたとえば輸入拡大なり、そういうふうなこと、あるいは大きい項目でいくと輸出適正化資本の自由化、経済協力の拡充これは商工でおやりになると、五番目の「福祉対策の充実」、これは国内で今後やっていくことだと思う。そうすると、この中に出ておるものは、たとえば、「週休二日制の推進等」ということが書いてございます。福祉といえばそういうようなことは、これでどういうふうにこれをじゃ実現していこうというような議論になっておるのか、問題は、労働分配率なんていうことも大きな問題になってくると思うのです。これは一つの中のこの問題だと思った。そうなると、じゃあ閣僚懇としてどんな議論になっているのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  84. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) この第五の項目の二番目の問題、今後の福祉政策と申しますか、政策の姿勢を書いておるものは、具体的な段取りをその閣僚懇できめたものではございません。今後の政策姿勢を示しているわけでございます。でありますから、先ほど来緊急に措置を要するものであると御説明いたしましたけれども、具体的にきまりましたのはその第五の第二番目のものを除いたものだ、こうお考えになってけっこうだと思います。
  85. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 前に、午前中におそらく多田委員から御指摘になったと思うのですが、先ほども話がちょっと出ました貿管令の例の問題出ております。あるいは輸出税、あるいは課徴金等、そういう問題が出ておりますが、それを経団連と相談をしてやるということが新聞に出ておりますが、そういう姿勢ですか、通産省がおらぬでわかりませんか、通産のほうは森山さんか、あるいは藤原あんお見えになっているでしょう。
  86. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 貿管令の発動の件でございますが、貿管令につきましては、お話しのように、経団連のほうで輸出課徴金よりもむしろ貿管令の発動をこの際行なって輸出の適性化をはかるべきであるという意見が出されまして、田中総理にその意見を具申したという経緯もございますので、われわれが貿管令の発動を検討する段階におきまして経団連の意向も参酌しつつやったほうが、貿管令発動対象の業界の協力も得やすいであろうという観点からその意向を二度ほど確かめつつ準備を進めておる段階でございます。
  87. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 その裏づけは、そういう適用を受ける業界は被害者になるわけだね、被害者に。そういうものに対する救済措置というようなものは当然頭に描いて貿管令のことをお考えになっておるのか、救済措置なんということは全然考えておみえにならないのか、そこが非常に問題なんです。これだけいろんなことがあるですよ。片方じゃ投機の問題いろんな問題がありますよ。先ほどもリーズだとか、あるいはラッグズという問題も出ておるわけだ。それで片方じゃまた、おまえさんのところはそれやったんだから補償しますといったらね、何か全く政治がおかしいところにいっちまうわけなんですよ。どういうことなのかですね。だから、そういう裏づけを片方は期待しておると、通産省のほうは出すつもりだということで話が進んでおったら、ぼくは貿管令なんということは結局、そう言っちゃことばは悪いですけれども、ここにも繊維関係のことが見えますけれども、破棄したやつがあるな、織機の、あれ幾らでもやみで動いておるわね。金だけもらって動いておるという、全く醜いところがあるわけなんですよ。そういうことになりはしないかということを指摘しながらお答えを願いたいと思います。
  88. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 今度の貿管令の対象になります品目あるいは業種の選定にあたりましては、御指摘のような中小企業に対する影響ということを十分考慮いたしまして、具体的に申しますと、年間輸出額が一億ドル未満の業種は対象外にいたしております。それから円切り上げ後、特に輸出増加の著しいということで一−七月の実績で対前年度比二〇%以上のものに限定しております。そういうわけで今後貿管令を発動した場合にある程度の今後の輸出の伸びを押さえるわけでございますけれども、本来的に輸出金額の大きい業種であって、しかも、伸びの著しいものについて、その伸びをある程度鈍下させるという措置でございますので、大きな影響は、それほど救済措置を要するような影響は出てこないだろうというふうに見ております。ただ、この実行にあたりましては、経団連にも相談いたしましたような経緯もございますように、調整の中身につきましては、対象業界、その中で話し合って、無理のない基準をつくっていってほしいということで、業界の自主性を尊重する。その場合に、たとえばいま検討されています業種の中には自動車がございます、あるいは内燃機関等のものがございますが、その中で、業界の中で中小企業に、下請企業に対して影響を及ぼさないような方向での業界の中での取りまとめというのを期待しているわけでございます。かりにこの貿管令の発動によりまして、中小企業等に影響があるとすれば、昨年末成立いたしましたいわゆるドル対策法による認定業種に指定いたしまして、金融の償還期限の延長とか、あるいは税制上の特例措置とか信用保険法上の特例とか等々の適用を受けるようになることと思っております。
  89. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体通産省の考え方はわかりました。そうすると輸出税、いわゆる課徴金の問題は全然議題——議官のほうに伺いますが、爼上にはのぼっていませんですか。いわゆる貿管令でいくと、輸出税じゃなくて。
  90. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) この前の閣僚懇談会できまりましたとおり、貿管令を発動するということはきまりました。それから引き続き輸出税ないし課徴金につきましては慎重に検討するんだ、こういうことになっております。われわれはその輸出税の必要性あるいはその内容やり方等について引き続き検討をしているわけでございます。
  91. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それはやるやらぬではなくて、貿管令はもう限界がきたらこれはやりますよと、それでそれに対するまだ業種は、いまお聞きしますといま経団連等とせっかく打ち合わせ中のようであります。しかし、これはやってみないとどういうことになるか、私はなかなか容易じゃないと思っております。それから効果がほんとうに期待ができるかどうかという問題もあるんだが、この効果のほうを優先させるのか、それとも国内のほうが優先してくるかでたいへんなウエートが違ってくるわけですよ。そういうときに順序として貿管令を発動させるということをきめたということは、国際収支のほうが中心なんだよというふうに理解していいわけですか。そうすると、片方じゃこれが中小企業にしわ寄っていってこうだと、無理ですよという意見がばっと出てくるだろうと思うんですよ。そうするとそこでどうするかということになると、いろんな救済措置が講ぜられる、これに対して何十億というような国家支出というんですか、お金を出さなくちゃならぬというふうになりゃしないかということなんですがね。そこまでは考えていないんだと、だから、これを推し進めてもなおかつたまってくると貿管令はやると、それはきめたんだと、しかし、片方じゃ通産省のほうはまだこうですわね。全くそういう体制が、まあそのぎりぎりのところまでこなけりゃなかなか結論は出ないと思いますですけれども、貿管令というものはもう最優先的な措置だというふうに理解していいわけですか。業界の協力が得られるという前提があると、こうおっしゃるだろうと思うんですがね、そうなってくると、何というのですか、歯どめというものがなくなってくるだろうと思う。これはもう必ずやるんだと、発動させるんだということなんですか。
  92. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 貿管令につきましてはその発動はきめております。ただその発動にあたりましては、これは国家権力の強制による輸出の抑制でございますので、いたずらな業界との摩擦はできるだけ避けるべき運用を行なう必要があると考えておりますので、業界が、われわれがかねて考えております貿管令発動の基準に対応いたしまして、自主的に調整していくということでありますれば、この業界の自主的な調整を尊重していくということで、現在話し合いを進めておる段階でございまして、業界が輸出入取引法その他で自主的に貿管令の発動の基準に合うような形での輸出調整をみずからやっていくということであれば、その業種に対しては貿管令を発動しない、どうしてもそういうことで業界がまとまらないという場合にのみ貿管令を発動していくという態度で検討を進めている段階でございます。
  93. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いままで——輸銀が来ておみえになるから輸銀総裁に伺いたいんですが、GNPの一%ということは方々でいろいろと日本が対外援助いたしますよということを盛んに言ってきたわけです。輸銀はいままでいろいろと国策に御協力願ってきたわけですが、輸銀側から見て、日本の対外援助と申しましょうか、輸出振興のほうのことはいいとして、対外援助、これは外務省にも関係があると思いますが、輸銀側と見ていろんな御意見等が銀行間と申しましょうか、そういうもので、日本の対外援助のしかたなり、あるいは対外援助に対する評価というものはどういうふうにお考えになっておるのか。
  94. 澄田智

    参考人(澄田智君) 私、輸銀のほうに参りましてまだ日が浅いために、輸銀の従来の経験から申して、いま御質問のようなことについて的確にお答えをすることが必ずしもできないと思うわけでございますが、従来輸出入銀行は、やはり発足の経緯、それからいままでの情勢というようなものからいたしまして輸出中心である、これは争えないところでございます。残高におきましても七割は輸出金融である、こういうことであるわけであります。対外援助あるいは民間海外投資というような、そういった領域、これを合わせまして残りの三割ということになるわけでございますが、それにつきましては、御承知のように海外経済協力基金と輸銀とのおのずから業務分野を分けていままでやってきている、こういう次第でございます。従来の経験から申しますと、やはり日本の従来の援助あるいは海外円借款というようなものは、あるいは資源開発関係でありますとか、あるいは輸出と非常に密接に結びついているというようなことで、そういうものの推進という意味が非常に強かったということで、それは必ずしも開発途上国の要望するところと合わないというような場合が相当あった。ことに、開発途上国経済社会の発展のために援助を期待するということ、そういう意識が非常に高まってきておりますので、そういう点からそういうふうなことがとりわけ指摘されるようになってきている、かように承知いたしております。そういう意味から今回のひもつき援助を、タイドの援助をアンタイドにするということはそういう意味にこたえるゆえんである、かように思っております。そのほか援助の条件につきましてやはり日本の場合、いままでいろいろ制約もございまして、ソフトに努力をしていながら、条件がきびしいということがよく指摘されてきている、こういう点につきましては、これは輸銀だけでなくて、むしろ海外経済協力基金のほうの業務に大いに関係するわけでございますが、事情の許す限りいまの開発途上国の現在の要望というものにこたえるべく援助条件を緩和していくということがやはり必要なことではないか、まあたいへん抽象的でございますが、さようなことを感じております。
  95. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 基金と輸銀と二つあって、これを一本化したらどうだというような意見もあったことがあると思うんです。そういうようなことについては閣僚懇談会で議論をされておるのかどうか。
  96. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 今次の閣僚懇でそれが特に議論になったということは聞いておりません。
  97. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ということは、現状どおりでいいということを意味しておるのか。全く当面の対策を議論しておる、しかし、見るとなかなか長期的な全体の問題をやっておみえになるわけですから、それどういうことなんですか、現状でいいのだという大体認識でいいわけですか。
  98. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは私ども関係省庁ともいろいろ検討をしておるわけでございまして、現状のとおりでいいというぐあいには考えておりません。
  99. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、この基金と、それから輸銀との何かの競合と申しましょうか、いろいろな問題が出ておるわけですが、それは、今後も閣僚懇談会で検討をされていって、そして結論を出されるものと考えておっていいわけですか。それとも大蔵、外務だけでおやりになるものなのか、どうなんですか。
  100. 林大造

    政府委員林大造君) 実は昨年の八項目の閣僚協議会の決定の中には第六に、「経済協力の推進」についてという項目がございまして、そのハに、「援助の効率化」という項目に、「日本輸出入銀行および海外経済協力基金の業務分野の調整を図るとともに、関係省庁の連絡体制の強化を図り、援助の効率化に資する。」という項目があったわけでございます。今回の項目にはこのようなことはうたわれておりませんが、それは今回の五項目の内容は、緊急に措置するものを果断に実行に移すというところに重点を置きました趣旨でございまして、決してその経済協力の推進のために援助の効率化の必要がないという判断ではございません。これは引き続き私ども関係各省及び関係銀行、基金と御相談しながら、できるだけ早く進めていかなければならないという問題意識でございます。ただ関係いたします省庁が大蔵省、外務省のほかに経済企画庁、通産省がございますし、また日本輸出入銀行海外経済協力基金とあわせて御相談しなければいけない。しかも、これはかなり前々から検討が行なわれておりまして、結論のつかないむずかしい問題でございますので、今回の措置とは切り離して別途に至急検討を進めようという趣旨でございます。
  101. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たまってまいりますと、とかく援助という問題は大きな問題になってくるわけですから、縄ばりがとりたいというのですかな、自分のほうの傘下に持っておきたいということはこれは当然なことだと思っておりますから、なかなか容易な問題ではないと思いますが、大体経過を了承し、そして引き続き検討されるということですから、それはそれとして理解をすることにいたします。  海外投資ですが、日本人はいろいろなことがあるけれども外国に家を持ったり土地を持ったりするということは非常に少ないということなんですが、今後そういうような土地なりを収得すると申しましょうか、それは資源の問題としての、資源開発で云々ということはありますが、個人がと言っちゃおかしいかもしれませんが、将来はそういうことになると思いますが、そういうところまで考えておみえになるのかどうか。ぼくらは外国で土地を買って別荘建てるなんということは夢にも考えておりませんが、日本ではなかなかそういうようなことまで考えておる人が多いだろうと思う。たとえばハワイとかグアムだとか、あるいは沖繩の土地があれだけ高い値で売れていくということになれば、もう少し東南アジアにいろいろな問題を伸ばそうじゃないかということが出てくると思いますが、そういうようなところまで想定をしておみえになるかどうか、期待をしておみえになるのかどうか、そういうものに対しては今後認めていく方針なのかどうか。
  102. 林大造

    政府委員林大造君) 御案内のとおり二、三年前までは日本は外貨の不足にたいへん悩んでおりました関係上、対外投資に関しましてはかなり厳重な規制をいたしておりました。したがいまして、個人の対外不動産投資につきましてもきびしい規制をしていたわけでございます。ところが、最近非常に外貨事情が、姿が変わってまいりまして、したがって、このような規制をしていて続ける必要はないということから、昨年の七月一日に規制を大幅に緩和いたしました。そうして実需に基づくもの、すなわち海外で現実にその土地を取得して現実に使うもの、実需に基づくものに限りまして原則として自由化したわけでございます。ところが、実施いたしてみますと、実需に基づくかどうかという判定が非常にむずかしゅうございまして、したがいまして、対外投資を積極的に伸ばすという趣旨から、ことしの六月八日にこの制約を撤廃いたしました。したがいまして、日本の居住者が日本国内の土地を取得することができるのと同じように、海外の土地を取得することも自由に認められているわけでございます。ただ、日本の国の者が外貨がたまったからむやみに土地を買いあさられて非常に迷惑であるという国が出てきても実は困ることでございまして、したがいまして、このような国際的に問題を生ずるというような場合には適宜調整することあるべしという制約のもとに現在自由化をいたしております。
  103. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 全く自由というと、銀行からそれは貸してもらえるということなんですか。そういう計画をもって銀行が信用があってAが借りに行ったらそれでけっこうですと、こう言えばそれだけで事は足りると、制限はなしだと、こういうふうに理解していいですか。
  104. 林大造

    政府委員林大造君) 日本の銀行から円で借金をいたしまして、それでドル買いまして——ドルに限りませんが外貨買いまして、それで海外の土地を取得するのは自由でございます。ただ、輸出入銀行とかそういうところはできません。民間の普通の方でございます。
  105. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 前に円の切り上げがあったときに、円の切り上げが全部悪いというわけにもいかないから、円の切り上げをやった場合にでも、一つは、円の切り上げと申しましょうか、そういうことがあったときに、あるいは輸入、いろんなところで消費者物価にうんと関係がありますと、円の切り上げと言っちゃいかぬかもしれぬが、輸入拡大が非常に消費者物価に関係があるというような話を承ったことがございます。この当委員会でも、私も記録を全部調べておるわけじゃございませんけれども、消費者物価と申しますか、あるいは卸売り物価の中の〇・一%ですか、〇・〇一ですか、どのぐらいやら貢献するなんという数字まで聞いたような記憶があるのですが、あるいは間違いかもしれませんけれども輸入拡大と申しますか、あるいは今回の措置の中で、いろいろと措置があるようでございますが、何かそういうようなことについて、それは消費者物価に対してどのぐらい影響があるかというような点について試算をしておみえになりますか。あるいは、そういうようなことまで経済閣僚懇談会で議論があってしかるべきだと思いますが、それはどんなふうになっておりましょうか。
  106. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) おっしゃるように、今回の円対策が消費者物価に影響いたしますルートは、もっぱら輸入の促進ということを通じてでございます。輸入の促進は、いろんなルートで消費者物価に影響するわけでございますけれども、第一は、やはり安いものが入ってくることによる直接的な価格効果がございますし、第二には、安い輸入品が——要するに価格が安い場合には数量がふえるということでございます。そういう意味の需給緩和効果というものがございますし、それからさらに第三には、やや長期的になりますけれども輸入品がふえることによって国内の産業に刺激を与えて一種の合理化効果を生ずるということもございます。これらのルートが考えられるわけでございますけれども、消費者物価というものは非常に、そもそも輸入——日本経済の場合に輸入の依存度というのが一〇%ぐらいということで、それがまたある程度いまのようなルートを通じて価格に対していい効果を与えることは事実でございますけれども、非常にやはり経済全体の、消費者物価全体に対してどれだけかということになりますと、数量的にも非常にこれは計量計算がむずかしゅうございまして、あまりそういう計算が、正確な計算ができないわけでございます。むしろそういうマクロ的に何%——パーセントをはじけばおそらく非常に微々たるものになると思うのでございますけれども、マクロ的な効果ではなくて、物資別にはかなりやはり効果を生ずるというふうに考えておりまして、現在まででも自由化等によってグレープフルーツなんかかなり下がっておりますし、それから関税率引き下げによって腕時計とか電気製品とか、あるいは乗用車とか、その他一部影響するものとしては、いろいろなさらに多くの品目関税率引き下げ等によっていい効果を生じております。それからウイスキーなんかも、最近御承知のように、これは自由化の影響、関税引き下げの影響、さらにイギリスの場合は向こうのポンド関係もございますし、それから最近とられました並行輸入の効果というものもございまして、各種の要素が加わってかなり大幅な値下がりを生じております。
  107. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 一つは、円対策と申しますか、ドル対策ですが、そういう面からも輸入の促進がございますが、企画庁としては、国内産業の保護とはちょっと競合したり相反することになると思いますが、消費者物価がこれだけいろいろとこう上がってまいりましてなかなか容易じゃない、そこで物価対策の面からこの輸入の促進というものは期待していいと思うのです。そこで、たとえば物価対策上輸入のワクを広げるということについて、これにグレープフルーツの例がありましたが、そうじゃなくて、やはり消費者物価を企画庁がことしはたとえば何%、五・三%なら五・三%と計算される、そういう中でこういうものの輸入のワクの拡大と申しますか、どのぐらい期待しておみえになってきたわけですか。
  108. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 先ほど申しましたように、なかなか計量的に消費者物価全体五・三%の中の何%というほど大きくきくものではございません。むしろ個別的にはかなり影響ございますけれども、全体の中の影響としては計量的にはごくわずかなものにしかならないということでございます。ただ、わずかではあっても、物価対策の観点から輸入の増大が非常に重要であるということは、これはもう先生おっしゃるとおりでございますので、従来から企画庁はそういう観点から輸入の増大を極力主張もしお願いもしておるわけでございます。
  109. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと私は三時半からどうにもならぬ用がありますので、そこで、林さんにもう一度念を押しますが、投機があった、疑いがあった、そこで銀行ですね、都市銀行を中心としていままでやっていた銀行検査で、特別に今度のドル対策、投機疑いをもって調査するというわけではなくて、いままでの通常検査をやっておった、そういうものに対して都銀、地銀ずうっとお入りになることなのか。警告の意味があるのだから、一つ二つやったらもうそれでおやめになるのか。いや、そうじゃない、実態を把握するという一つの大目的があるから、とことんまで通産省とも相談しながら商社まで手を伸ばして調べていこうとしておられるのか、どうなんですか。
  110. 林大造

    政府委員林大造君) 現在私どもの行なっております為替検査は、都市銀行のみならず地方銀行、それから信託銀行、それから海運会社、その他の対外取引の多いところ、商社などいろいろございます。そのうち現在特にまず手始めに、日常の検査のワク内ではございますけれども為替投機が行なわれているかどうかというところを特に念入りに調べるように命じて始めましたのはまず都銀からでございます。これは人員の関係もございまして、やはりまず一番きき目のあるところからということでございますので、都銀のうちの大手のものを調べております。しかし、これはもちろん回転しているわけでございますから、その検査が及ぶ範囲内においてできるだけ範囲は広げていきたいというふうに感じております。
  111. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはそうすると、いままでの通常検査と若干一つの目的もあるんだと、こういうもののレポートというんですか、レポートは将来私らの大蔵委員会等で聞かしてもらうことはできますか。
  112. 林大造

    政府委員林大造君) 検査につきましては、私ども法律上は秘密保持の義務でしばられておりますし、また実際問題としても、対外的に公表されるとか、そういうことになりますと、それだけ検査がむずかしくなるという面と両方ございます。それで検査内容は、検査に当たった者及びその直属の上官限りというのが私どもの慣例でございます。
  113. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 この前いろいろと議論したときにこういうことがあった。日銀が損した額はきょうはっきりしました。もっとうんと多かったのですけれども、整理されてあんなふうになっちゃったのだが、利潤があったと、利潤のあったところは税金で取られる、損したところは繰り延べていって粉飾決算を認めますと、こういう形で大体この前過ごしたわけです。あのとき検査されたのは、どのくらい検査されたのですか。銀行で、都銀、地銀でけっこうです、大づかみに言って。
  114. 林大造

    政府委員林大造君) 実は私ども検査官の人数が全部で十数名でございます。もちろん大蔵省にはそのほかにいろいろな検査官がございまして、一番数の多いのはもちろん国税庁の国税関係検査官でございます。私どもは十数名の検査官を回転させまして、ただいま申し上げましたように銀行以外の海運会社とか、あるいは対外的な取引の多いところを検査しているわけでございますが、まあ通常はどんなにはしょりましても三、四日はかけませんと検査ができないわけでございます。そうすると一班組織にいたしますと、どうしても二、三名で組織ということになりますので、したがって、そこのところでおのずと制約が出る。この前の八月のときの検査の結果はこの前若干お示しいたしました。あのときは銀行で特に明示してお示しいたしましたのがA、B、Cという姿だったかと存じますが、たしか五、六行だったかと記憶しております。
  115. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今度も、ですから全部を当たるということだと、大体銀行検査というのは三年に一ぺんぐらい、あるいは五年に一ぺんぐらいですか、何かそんなふうに聞いているわけですが、今度は全部をずっと大体おやりになるのか、やはりくじに当たったところだけやるという、そういう趣旨なのか。
  116. 林大造

    政府委員林大造君) 検査調査は国税系統でも検査官、調査官の人数が少なくて、大きいところは毎年行くが、小さくなるにつれて三年に一ぺん、五年に一ぺん、あるいはもっとランダムということになっているわけでございます。それから銀行局の銀行検査のほうは、これは銀行の数が限られております。私どものように商社とかその他、金融系統以外まで及ぶことはないわけでございます。ところが、私どものほうは、範囲が非常に広いのと、検査官の人数が限られております関係上、三年とか五年とかに一ぺんというわけにいきません。したがいまして、毎四半期ごとに検査計画を立てまして、おもなところは比較的回転するようにいたしておりますが、そのほかのところはややランダムに抽出する。それから特に妙な風評の流れているようなところを拾い上げるというようなことでやっておりますので、御指摘のような対象になる期間は、三年ないし五年に一ぺんは必ず当たるような組織で考えているのかという御質問でございましたらば、そうなってはおらないということでございます。
  117. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 十二、三名だというと、三人ぐらいだというと、四班組織になる。そうすると一ところに三日か四日ということになる、大体の。しかし都銀の数もそうたくさんじゃない。地銀でも全部がやっておるといっても、地銀でこういうことをやっておるのは非常に数が少ない、限られておる。こうやってくれば十か二十に大体しぼられてくるだろう。だから私は、そのくらいのところは当たろうとすれば、全部当たれると思うのですよ。しかし、これに商社でも、それじゃどのくらいかと言ったら、そうたいした数じゃない。ですから、やる気になれば私は一応公平に当たれるんじゃないかと思っております。ですから、あなたのほうがそういううわさのあるようなところ、大きなところだけこうやっておみえになるのか、一通り当たってみる姿勢があるのか、その辺のところがちょっとわかりかねるわけです。
  118. 林大造

    政府委員林大造君) 商社と申しましても、いわゆる大手の商社はあるいは八社とか十社とかいろいろ数で数えられる程度のものでございますが、小さい商社まで入れますと、非常に数が多いわけでございます。中どころまでは私ども計画に組み入れまして検査をしておりますが、中どころになればそれだけ頻度は少なくなるわけでございます。また銀行にいたしましても商社にいたしましても、個々の帳票書類にまで立ち入りまして検査いたそうとなりますと、大きい組織でございますので、全体の支店の中のごく一部しか当たれないというような問題もございます。その意味で、これは行政経済の問題かと存じますが、検査にあまり人手をかけるわけにもいけないということがございますが、私どもといたしましては、検査官を督励いたしまして、できるだけの能率をあげるようにいたしております。回転するというのは、おもな銀行−都銀程度でございますと回転するような仕組みもできるかと存じますが、先ほど申しました中小の小商社のところまでまいりますと、なかなかそういうことにはいきかねるというのが実情でございます。
  119. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今度のドルを売っておりますから、どこがどのくらい売ったということはすぐわかるわけです。支店ならどうだと、それはどこの銀行を通してどうなったと、資金の流れはすぐわかりますよね。ですから私はわかると思うんだ。それがわからないと言われれば、常識的に言ってわかると思う。そこでできたら希望ですが、私は公平にみんな小さいところまで全部当たれということは言いません。大きいところでいいですよ、あるランクのもので。何ドル、何億ドルどうやったとか、大体どうだということはわかるわけなんです。売ったほうのやつを見ればすぐわかるわけです、どの銀行へちょっと、わかりますから、商社は。銀行でもすぐわかるわけですよ。どれだけだということは。ですからそういう色分けをしておやりになることも大切なことでございましょうが、できたらひとつ公平にやっていただく。そして大体うわさに出ておるような、先ほどもここでいろいろと多田君が指摘されたような問題があると思うんですよ。そういうものがあったときに、さてそれではこれは投機疑いが十分あったということになる。それに対して警告の意味であり、何かやったときに罰則と申しましょうか、押えてみたけれども、どうにもしようのないものなのか、それについて行政上小言が言える程度なものか、押えてみたけれども何ともならぬものなのか、どういうものでしょうか。
  120. 林大造

    政府委員林大造君) 検査の実態は御趣旨を体しまして極力努力いたします。で、その結果につきまして私ども為替管理法が正確に守られているかどうかを検査するわけでございますから、したがいまして、為替管理法違反が事実としてあらわれてまいりますれば、当然罰則に触れるわけでございます。したがいまして、必要があれば当然告発して当局の判断を仰ぐという手続きに移り得る性格の検査をしているわけでございます。ただ、これは憲法上の刑法との関係のむずかしい規定があるかと存じますが、そういう刑罰に触れる可能性のある事柄を検査しているわけでございます。
  121. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たとえばですね、五千万ドル以下にばらしてやればわからないというようなことが指摘されておるわけですよ、ここんとこに一つの抜け穴がございますよということになっておる。そういうのは、私は法律に触れないと思うんです。ですから、あなたのほうはそういう実態がわかってきたとするとですね、さてどうにもしようないと、まあおまえのほうが法律をええぐあいにくぐり抜けたんだからやむを得ないと、こういう形になるものなのか。なんかチェックして、二度とそういうことが繰り返されないためには、あなたのほうがだんだん、一億を五千万ドルにしたと、五千万ドルじゃどうにもいかぬので今度は一千万ドルぐらいにせなきゃならぬというように、小刻みにこう追い込まれてくるものなのか、その辺のところのことを思いながら御質問しておるわけですよ。
  122. 林大造

    政府委員林大造君) 外国為替及び外国貿易管理法の第六十八条に、立ち入り検査の規定がございまして、その第三項には「第一項の規定による立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」という、これは刑法特例で非常にむずかしい問題があるかとは存じますが、しかし、ただいま御指摘のありましたような、五千ドル以下に割って送ってきたような場合には、私ども決してその犯罪を見つけることが目的ではないわけでございまして、しかし、そういう為替管理法違反を行なっている者は、まことにほかの者が守っているのに、不当な処置でございますから、それが現実に五千ドルに割ったものなのかどうかというのをできるだけ調査いたしまして、そのようなことがあれば、それは法に触れる行為であるという警告をいたします。そして、そういうことはするなと、そういうことがもし行なわれて、依然としてあとを断たないようであれば、これは当然それに応ずるいろいろな処置ということになると存じます。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 最初に大蔵省にお尋ねしたいと思いますが、個々の問題は後ほど御質問いたします。  まず、大きく御質問したいのは、今回の第三次円対策というものが、ほんとうに真剣に円の再切り上げ回避の至上命令と考えてなさっているのかどうか非常に疑わしいわけでございます。なぜならば、輸出税なり輸出課徴金なりの緊急臨時措置をとらなかったというような問題、あるいは第三次円対策が初めの考え方と相当食い違って骨抜きにされているというような点があるわけでございます。また、先ほどの日銀の副総裁の御答弁の中でも、シュルツ発言の、いわゆる平価調整外貨準備の目立った増減を基準にしたらというような発言に対しても、何も外貨準備高だけが平価調整の要因ではないというような強気の答弁もなさっております。それならば、それじゃ先ほどの質問から見ましても、どうしても、いま投機筋ですか、あるいは防衛のためですか知りませんけれども、とにかくドル売りが殺到している。どんどん外貨準備高が増加しているわけですよ。もし二百億ドルになろうが、二百五十億ドルになろうが、三百億ドルになろうが、円の再切り上げは絶対にしないのだと、それだけの御覚悟があっての上のことなのか、まずそういう切り上げ回避の確然たる確信というものがおありなのかどうか、お尋ねをしておきたい。
  124. 林大造

    政府委員林大造君) 私どもが今回の措置をとりましたのは、切り上げ回避、そういうことだけのためではございません。これはるる申し上げておりますとおり、現在海外で日本の円の切り上げを求めている声はまずほとんどない。むしろ求められているのは、日本の経済の構造を対外的に開かれたものにしていく、また国内的には福祉重点の経済構造に切りかえていくという大目的が一方にあるわけでございます。しかし、他方におきまして、現在のような大幅な経常収支の黒字をこのままにしておきますと、いずれはまたいろいろ円投機思惑対象が強くなっていくかもしれない。そういう意味で、いわゆるおそれられております円の再切り上げを回避するというねらいもまた他方の重要な目的でございます。で、私どもといたしましては、経常収支がまず均衡のほうに向かっていくであろう、それから外貨準備のほうが落ちついていくには若干のタイムラグがあるであろうという見通しを持っておりますが、いずれにいたしましても、円の切り上げは避け得られるという確信に基づきまして、またそのために今回の措置をお願いしている次第でございます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 最初私は円の切り上げ問題を中心に質問いたしますけれども、それでは、あれですか、もし外貨準備高が先ほど申しましたように、二百億ドルになろうが、二百五十億ドルになろうが、幾らふえても円の再切り上げは回避できると、このようにお考えでございますか。
  126. 林大造

    政府委員林大造君) 具体的にそれでは二百五十億ドルがいいというと、二百八十億、三百億というふうにだんだんお話が進んでまいりますと、なかなかむずかしい話になるわけでございますが、私どもといたしましては、外貨準備の高というものは、資本取引、しかも非常に思惑的性格の強い資本取引が響いてくる数字でございます。したがいまして、植木大蔵大臣がIMFでも演説されましたとおり、為替レートの調整というものは、元来基礎的不均衡を是正するためにとられるべき性格のものであって、一時の思惑的な要素に左右されるような手法はとるべきでないという基本的な考え方を持っているわけでございます。したがいまして、外貨準備の高が今後若干ふえましても、それは私どもの決意に何ら影響を及ぼすものではないというふうに考えております。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、それではあまりにもたてまえ論に過ぎて、きれいごと過ぎる御答弁じゃないかと思うのです。実際にシュルツ発言だって、外貨準備の目立った増減を平価調整一つの目安にしたいという発言をしているんですし、まあ、日銀総裁だって、全部の要因ではないけれども、かなりこれは大きい要因だということは認めていらっしゃるわけですよ。また、昨年の切り上げのときの姿を見ましても、やはり投機筋から強力な圧力がかかってささえられなかったような姿もあったわけです。今回は日本だけの問題ではありますけれども、そういう圧力が全然ないとは私は思いません。で、私はこの円の再切り上げを政府が安易に考えているのじゃないか。大企業筋なんかでは、貿易管理令とかあるいは輸出税創設、あるいは輸出課徴金の緊急措置などよりも、むしろ円の切り上げのほうがいいんだという向きもありますし、それでは中小企業等はたまったものではないと私は思うのです。ですから、政府はそういうことをおっしゃっていますけれども、円の切り上げになったとしてもやむを得ないのだという姿で、あまり大ごとに考えていらっしゃらないのじゃないか、こういう気がするわけです。ですから私は、やはり円の再切り上げはしない、回避するという厳然たる態度、それにのっとった第三次円対策の実際の効果をあげるということがなければならないし、また、そうおっしゃるならば、はっきりとやはり投機に対する防衛策、これはやはり財政当局、大蔵当局投機筋の勝負でございますから、絶対に円の切り上げは回避するという厳然たる態度と申しますか、発言と申しますか、そのようなものがあってしかるべきだ、こういう意味でお尋ねしているわけです。
  128. 林大造

    政府委員林大造君) 円の切り上げを回避するように全力をあげるべし、そのために厳然たる態度を示すべしというおことば、たいへん私どもとしてはありがたく感ずるわけでございまして、私ども、円の切り上げは絶対に回避する意向であるということは申し上げられるわけでございます。これは国際金融局長だけが申しているわけではございません。総理ももちろん、また大蔵大臣も申しているわけでございます。  で、外貨準備の高をレート調整一つの目安にすべしというのは、アメリカのシュルツ財務長官が一つの考え方としてIMFの九月末の総会で申しました。しかし、これにつきましては、ほかの諸国からいろいろ反対の意見も述べられているわけでございまして、私どもとしてはそのようないろいろな外貨準備計数とか、そういうものにかかわらず、円の現行レートは断固守っていくという決意でございます。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 先週、両角通産次官が、円の切り上げが行なわれれば貿易管理令の発動はやめるというようなことを記者会見でおっしゃった。そのためにまたドル売りが殺到したというようなことがいわれておりますけれども、これは事実でございましょうか。
  130. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 御指摘の両角次官の記者会見での、円の再切り上げあるならば貿易管理令の発動は直ちに中止する、ということは事実でございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵当局はこの円の再切り上げは絶対回避したいとおっしゃっていますけれども、通産省としてはそういうことをおっしゃって、そしてドル売りが殺到するような姿になっているわけですね。そういうことはどうお考えですか。
  132. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 両角次官の発言の本旨は、円再切り上げを予想して、期待して発言したわけではなくて、円の再切り上げを防止するために貿易管理令を発動するということでございまして、円再切り上げのほうが望ましいという趣旨ではないということでございます。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 私はそうは思わないので、やはりこれは重工業等に対するなだめのことばとしておっしゃったような気がするのです。そのためにドル売りがこの前から殺到したような現実の姿があるわけです。それが何よりの証拠じゃないかと思うのです。私は、そういう軽はずみな発言というものは行なわれてはならない、このように思うわけです。  まあ、時間もありませんので次に進みますけれども大蔵省にお尋ねしますが、第三次円対策が、当初の原案と十月二十日の最終決定とではその中身が非常に大きく後退しておりますけれども、どの点が大きく後退したのか。その理由はなぜなのか、ひとつ要領よくお答え願いたい。
  134. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 十月二十日の閣僚懇できまりましたものが政府の政策決定でございます。それに至るまでには、もうすでに御承知かと思いますけれども大蔵省、われわれでいろいろと検討をいたしております。また、同時に通産省でも同様の目的のためにいろいろ検討なさっていたわけでございまして、原案とその結論というぐあいにおっしゃいますと非常に誤解があるわけでございまして、私どもは私どもなりに事務的にいろんな検討段階の案があった、こう言うべきかと思います。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ具体的にお尋ねしますけれども、円対策の第一の柱といわれる輸入拡大の中で、輸入の自由化というものが、閣僚べースでは十品目の自由化方針が決定したということで、マスコミでも報道されたわけです。ホタテ貝とか雑豆、集積回路——ICこういった十品目が自由化される。そしてその効果は三億三千万ドルであるという試算まで一応報ぜられておりましたけれども、最終決定では「残存輸入制限品目の自由化を計画的に推進する。」という非常に抽象的表現に変わっているわけですけれども、これは原案とは申さないまでも、最初はそういうやはり案があったことはこれは確かだと思う。それが最終決定ではそういう抽象的な表現に変わってしまった。これはどういうわけですか。
  136. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) ただいま御言及がございました輸入自由化の問題でございますが、私も実は新聞を見ましたけれども新聞内容について言及することはいかがかと思いますから、はなはだ失礼でございますが、その点は差し控えさしていただきますが、特に大蔵省としましては個別品目を掲げまして、しかも、数字を対外的に正式に出して議論をしたことはございません。ただ大蔵省といたしましては、先生御案内のように、残存輸入制限品目は三十三品目でございます。これは見方によりますと、ドイツの三十九、あるいはフランスの七十四よりも低いからいいじゃないか、こういう御意見もあろうかと思いますけれども大蔵省といたしましては、イタリアが二十であり、またイギリスが二十五である、こういった点から比較いたしましても、しかも、日本が現在の黒字状況からいたしまして、もっと自由化を大いに推進すべきではないか、こういうことを従来主張し続けてきておりまして、そういったことがにじみ出た新聞記事ではないかと、御了解いただきたいと思います。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 いつもにじみ出ては否定されるから、こちらも困るのですけれども、それでは「残存輸入制限品目の自由化を計画的に推進する。」という中身ですね。これはどうお考えになりますか。
  138. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは全くそのとおり、自由化は、今日きめまして、具体的な品目をあすからやる、こういうわけにはまいりませんものですから、それはいろんな方面の影響等も勘案しながら計画的に推進するといった方針をきめたわけでございます。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、具体的にきまるのはいつごろですか。いっごろをめどに推進なさろうとなさっているのですか。
  140. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 私どもは、できるだけ早く具体的に煮詰めてまいりたいと思っております。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 また今度の法案でも、二〇%の関税一律引き下げにつきましても、最終決定の案文では、鉱工業産品農産加工品関税を原則として一律二〇%引き下げる。このため輸入が急増した場合には適切なる措置をとると、例外もあり得るような含みを残しておりますけれども、通産省や農林省では、全体で二〇%なんだ。個別品目ではそれ以下も当然あり得るのだ、こういう考え方をしているようでございますけれども、大蔵当局の見解はどうなのかお尋ねしたいと思います。
  142. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) これは今回は緊急に、しかも、画一的に関税引き下げをお願いしているわけでございまして、したがいまして、一部の例外品目を除きまして、すべて一律に二割、つまり五分の四に軽減措置をはかるということでございます。ただ御指摘がございましたように、引き下げたことによりまして、輸入が予想以上に急増して国内産業が脅威にさらされるというような場合は、当該産業についてもとの税率に戻すと、こういった措置を同時に法律案としてお願いしている次第でございます。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは最初から一律に二〇%は引き下げると、そして輸入急増した場合にのみ適切な措置をとるということで、初めから二〇%以下のものを認めるということではないんですね。
  144. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 誤解があるといけませんが、そのとおりでございます。ただ例外品目といたしまして、最初から農産物の一次産品、それから原重油関税の財政関税、非自由化品目、その他零細地域の特定産業への配慮、そういったような該当する品目百六十二品目については例外措置を講じております。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 この百六十二品目は別にいたしまして、そのあとで、まあ「関税率軽減措置により、特定貨物輸入が増化し、国内産業相当損害を受け、又は受けるおそれがある場合には、政令で貨物を指定し、この軽減措置を停止することができる」とありますけれども、この考えは、特恵関税の例と同じであると理解していいのかどうか。それから、「相当損害を受け、又は受けるおそれがある場合」この判定は何を基準にして、どこで判定を行なうのか、これはたとえば審議会の決定を経て行なうという意味なのかどうか、その辺のところをひとつおっしゃってください。
  146. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 御指摘のように、今度のエスケープクローズの規定は、前回御審議をいただきました特恵関税の、特恵関税制度適用停止の規定と全く同じ同文でございます。それから、この適用にあたっての基準、考え方の御指摘でございますが、これにつきましては、要は輸入が急増することによって当該企業、当該産業が脅威にさらされるということがないようにするため、そういった事態を予想いたしました規定でございますから、そういう趣旨にかんがみまして、特に従来の緊急関税の規定では、重大な損害あり、かつまた国民経済上緊急に処理する必要がある。非常にリジッドな制約のもとに緊急関税制度が動くことになっておりましたが、特恵関税と同様に、これを当該産業が脅威にさらされるという場合には機を失せず弾力的に発動したいという考え方でございます。ただ個別にケース・バイ・ケースで判断をする場合に、やはり公正な判断を要します。したがいまして、今後関税率審議会の中に特殊関税部会を新たに設けまして、そこで公正な判断を機を失せず弾力的な運用をしてまいりたいと思っております。
  147. 多田省吾

    ○多田省吾君 特恵関税の改善について、初め聞いたときには、二分の一頭打ち条項とか五〇%カット品目の廃止というものがあったのでありますけれども、最終的には制度改正と運用の改善をはかるというように、やはり焦点をぼかして抽象的な文章になってしまったように思いますけれども、その理由は何なのか、またこの程度で開発途上国の不満を解消できるのかどうか。それから昨年八月、改正実施後の実績からほとんど改善が役立っていないのでありますけれども、今後どのようにこの制度面を改善しようとなさっているのか、あわせてお答え願いたいと思います。
  148. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) 特恵制度の現実の実績のお尋ねでございますが、これは何せ昨年の八月から発動しておりますから、まだ実績を判断するには時間が短いわけでございますが、私どもの実績の数字、つまり昨年の八月から本年の三月までの実績で申しますと、受益国からの総輸入額の伸びでございますけれども、一一・八%伸びております。ところが特恵対象物品の輸入額の伸び率は一七三・四%、つまり七割三分ふえているわけでございます。それからまた非受益国からの、特恵対象と同じ物品の輸入額はどうかといいますと、これはわずか四・八%しかふえておりません。こういったことから見ますと、マクロの数字では特恵制度はかなり活動しているということが一応言えるわけでございます。しかしながら、個別物品について当たってみますと、たとえて申せば、昨年の八月に特恵制度ができましたけれども、もうすでに八月四日にはエスケープクローズといいますか、シーリングワクが一ぱいになって特恵制度を停止するというような事態もございますし、また本年になりまして、四月四日に特恵制度の適用の停止をする産品があらわれたというようなことで、かなりそういった点で問題があることも事実でございます。したがいまして、私どもは発展途上国への経済協力という趣旨からいたしまして、極力この特恵関税制度の改善、運用の改善をはかるという趣旨で、いろいろ関係各省とも協議をととのえておるわけでございますが、先般のUNCTADの決議等も踏んまえまして、早急にこの特恵関税の改善に取り組んでまいりたいと思っております。ただ、この点について、御指摘のように十月二十日の閣僚懇談会では、表現は抽象的でございますが、しかしながら、内容につきましては関係各省と今後鋭意詰めまして、たとえて申しますと、現在のシーリング方式をどの程度弾力化できるかとか、あるいは御指摘ございましたような二分の一カットの問題あるいは五〇%の税率カットの品目をもっと少なくできないか、そういったいろんな問題があろうかと思いますが、これらについては関係各省と今後十分協議をととのえまして、できれば次期通常国会に御審議を願いたい、こういうつもりでございます。
  149. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、海外市場開拓準備金制度について、初め同制度と技術等海外取引に関する所得の特別控除の廃止、このようにあったのでありますが、最終的には資本金十億円超の法人のみに限ると、このようにした理由は何ですか。また特に資本金十億円の根拠というものをおっしゃっていただきたい。それから所得の特別技術輸出控除を特に温存した理由、こういった問題は、企業優先あるいは税負担の不平等という観点から見て問題はないのかどうかですね。
  150. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 海外市場開拓準備金制度につきまして、今回資本金十億円をこえる企業についてのみ適用期限到来する前にこの法案をもって廃止させていただきたいという提案をいたしておるわけでございますが、これにつきましては、適用期限が四十九年三月までとなっておるので、適用期限前に直ちに全廃されると、中小企業、中堅企業にはショックが強過ぎるではないかという御意見が片方にございまして、双方の御意見をかみ合わせました結果、このような提案をいたしておる次第でございます。  なお、十億円というところで切っておりまするのは、いまの制度が、御承知のとおりに積み立て率につきまして、十億円以上と、資本金一億円から十億円までと、資本金一億円以下という三つのグルーピングをして設定されておりますので、この中の、いわば大企業群について適用を廃止しようというのがその趣旨でございます。  なおもう一つ残っておりますのが、御指摘のとおりの技術等海外所得控除でございますが、この制度につきましても、御案内のとおり四十六年度改正におきまして適用対象を大幅に整理縮小いたしております。したがいまして、現在残っておりまするのは、大ざっぱに申し上げて三つの分類でございまして、一つは工業所有権などを輸出した場合、第二は著作権を輸出した場合、第三はコンサルティングを行なった場合というものだけが残っておるわけでございます。これにつきましても、輸出額なり外貨受け取り額を基礎として与える特別措置である以上、この際適用期限を待たずに廃止すべきであるという意見が一方にございます。反面、工業所有権は知恵の輸出であって、物の輸出ではない。著作権は文化の輸出であって物の輸出ではない。コンサルティング・フィーもまた知恵の輸出であって、また同時にこれによって開発途上国も大いに利益を受けておるのだというような御指摘もございました。これについては適用期限を待たずに廃止するということは、この際提案しない、こういう結論でこの法案の内容ができ上がっております。
  151. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵当局では、今回の円対策で輸入拡大政策に伴う自由化の推進によっていわゆる打撃を受ける国内生産者に対しては、一つは、不足払い制度の導入、二つ目には、研究開発費の補助、三つ目には、関税の一時的な引き上げ等を検討中と、こうおっしゃっているようでございますけれども、その具体的な内容と、効果がどのようにあがるのかということについて御説明いただきたい。
  152. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) これは先ほどから言及されておりますように、これから計画的推進をはかるということで、関係各省庁との間で具体的な品目の話が行なわれるわけでございます。その具体的な品目に応じまして、適宜適切な措置が講ぜられるものと思っております。関税につきましては、御案内のように従来ともショック療法というような観点からいたしまして、   〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕 個別品目によりまして、あるいは関税割り当て制度あるいは季節関税あるいは従価従量選択課税といういろんなものによりまして、適宜適切な措置をとるところでございますが、今後の具体的な品目に応じまして、適切な配慮を加えてまいりたい、このように考えております。
  153. 多田省吾

    ○多田省吾君 これからの折衝とか、適宜適切にとおっしゃいますので、それで答弁はよろしいかとも思いますけれども、具体的な御答弁が全然聞けないというのは、ほんとうに早急にやられようとしておるのかどうか、ほんとうに疑惑を感ずるわけです。為替管理制度の緩和について、最初は渡航外貨の持ち出しなどは制限しない、為銀承認とすると、それから少額送金限度を千ドルから三千ドルに引き上げると、このようにあったんですけれども、最終的には制限を大幅に緩和するとぼかしておるようでございます。これは大幅に緩和するということは、結局三千ドルに引き上げるというような具体的内容を含んでいるのかどうか、限度額を明示しなかった理由は何なのか、これはいかがでしょう。
  154. 林大造

    政府委員林大造君) 表現が抽象的な表現になっておりますのは、他の項目とのバランスでそうなっているわけでございまして、渡航外貨の持ち出しにつきましては、現在通常の場合は三千ドル以内が為銀承認、三千ドル超は日銀の許可、それから留学渡航の場合にはもう少し別の制限が課せられておりますが、この限度額を全面的に撤廃いたしまして、すべて為銀承認とするべく現在手続中でございます。したがいまして、あるいは、できれば今週中に実施の運びにいたしたいと存じますが、延びましてもごく近日中に実施の運びになる予定でございます。  また少額送金につきましても、同様の理由で、表現は抽象的になっておりますが、現在千ドル以内の外国へ向けた支払い、少額送金は自由になっておりますのを、千ドルの限度を三千ドルに引き上げるべく現在手続中でございまして、これも早ければ今週中、おそくも近日中に実施の運びになる予定でございます。
  155. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前問題になった十月三十一日の牛場発言でございますけれども、「米国の大統領選挙と日本の総選挙が終われば、日米経済関係は大きなヤマ場を迎えよう」あるいは「英国のEC加盟にからんで英ポンドが固定相場に復帰する際、円も同時に調整するという声が出てくる懸念もある」、こういう正直に円再切り上げの懸念を述べておるわけでございますけれども、これは同じ政府内でございます。これは大蔵当局はこの発言をどのように考えていらっしゃるのか。
  156. 林大造

    政府委員林大造君) 牛場駐米大使がどのような発言をされたか、私どもが外務省筋から聞いたところによりますと、新聞の報道とは非常に違ったニュアンスの発言をされたようでございます。したがいまして、私どもといたしましては、牛場大使の発言を、むしろ今回の法案に盛られました諸措置を含めまして、十月二十日の経済閣僚協議会の決定を早急にできるだけ強い姿勢で実施すべきである。という御趣旨の発言であるというふうに了解をいたしております。
  157. 多田省吾

    ○多田省吾君 従来の租税特別措置は、だいぶんいままでも問題にされましたけれども昭和四十七年度減収額見込みは、貯蓄の奨励等で二千百九十億円、環境改善や地域開発の促進等で千二十七億円、資源開発の促進で二百五億円、技術振興や設備近代化なんかで千二十九億円、内部留保の充実、企業体質の強化等で六百三十八億円、その他−交際費課税を除けば、その他で九百三十八億円、合計六千二十七億円となっておりますけれども、このうちまた大企業優遇の色彩が非常に濃いと見られるものがだいぶん残っておるわけです。また減税額も非常に多い。この点を税務当局はどのようにごらんになっているのか。
  158. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいま多田委員御指摘の数字は、四十七年度予算ベースで私どもが一応の推計をいたしておる数字でございます。この中でどれを取り上げて企業優遇ということばで整理をいたすのかはなかなかむずかしい問題かと思います。申し上げるまでもなく、特別措置それぞれに固有の目的を持って設けられておりますので、なかなかその解決はむずかしいかと思いまするけれども、かりにこの特別措置をいわゆる企業課税に関連する特別措置と、企業課税と関連のない特別措置というものに分けてみますると、総額がネット四千七百三十億円でございますうちで、いわゆる企業課税に関連いたします部分は一千五百十七億円、四四%ということに相なります。また同時に、この中には御承知のとおり、中小企業に利用していただくことをねらいとしているものが数多く含まれているわけでございまして、これを大企業、中小企業に分けて考えてみますると、ただいま申し上げました数字の中で、中小企業関係が約六割三分、一千三百十九億円、大企業向けが約三割六分あるいは七分、七百六十一億円、こういうことになろうかと思います。
  159. 多田省吾

    ○多田省吾君 租税特別措置の詳しい内容については、何も今回だけでなくて、毎年こちらから指摘しているところです。ですからそのようにどこを質問していらっしゃるのかというようなことは、もうおわかりのことと思ってこちらは申したわけです。特に交際費課税等はだいぶん問題があって、今度も相当課税強化をなされておるようでございますけれども、こういったことは予算委員会等でもやっておりましたので、ここでは申し上げません。  また特恵関税のことで若干お尋ねしたいのですけれども、東南アジアの開発途上国から非常に不満の強い、いわゆる特恵関税のワク拡大について、今回の円対策の中に詳しく触れていないようでありますけれども、その理由は何なのか、まずそれをお尋ねいたします。
  160. 秋吉良雄

    政府委員(秋吉良雄君) これは先ほど申し上げましたように、今回の懇談会では、特恵関税制度改正及び運用の改善をはかるという抽象的な表現ではございますが、中身につきましては先ほど申し上げましたように、一つはシーリングワクの問題、それから五〇%減税カットの品目の縮小の問題それから二分の一条項の問題等々があるわけでございますが、これらについては、問題は、特恵制度の運用については、国内の特に中小企業等いろんな問題に関連する問題がございます。したがって、国内産業との調整も十分配慮しつつこの制度改正、運用の改善をはかる必要がございまして、今回の臨時国会には間に合いませんでしたが、今後関係省庁の間で十分検討いたしまして、次期通常国会を目途に作業を進めている段階でございます。
  161. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども日銀総裁にお尋ねしたんですけれども、これは大蔵当局にお尋ねしたほうがいい問題でありますので、さらにお尋ねいたしますが、ベトナム和平にからんで、もしそれが実現した場合、アメリカ軍のベトナム特需減少は当然ありますから、これは経済影響は、日本の直接的なもの、あるいは東南アジア諸国及び周辺諸国に大きな影響がありますし、間接的にはやはり日本でも大きな影響がある。これがわが国及びアメリカの国際収支にどのような関連を及ぼすと政府は考えておられますか。
  162. 林大造

    政府委員林大造君) 実はベトナムの和平が今後どのような過程を経まして、どのような姿で実現されるか、またその後におきます戦災復興その他の事業のために、日本ないしはアメリカその他各国からいかなる形で援助が行なわれ、それが負担されるかということがまだ十分にわかっておりませんので、したがいまして、この席で申し上げられるような今後の国際収支、日本の国際収支及び米国の国際収支に対します影響を申し述べますことはなかなかむずかしいことでございます。ただ、ベトナム、日本を含めまして、アジア諸国に対するいわゆるベトナム特需というものは約十ないし十五億ドル程度といわれております。それからそのほかにもいろいろな影響があるかと存じます。で、いずれにいたしましても、ベトナム和平が実現いたしますと、特需がまず減少いたしますと同時に、それに伴いまして東南アジア諸国の輸入力というものが、外貨流入が細ることから、当然のことながら起きてくると。で、あわせまして、米国におきましては、インフレ心理が払拭されまして、したがって、そのドルの力が強くなる。ドルの力が強くなるというのは、国際通貨問題は非常に心理的な要因が大きゅうございますから、したがって、現在すでにヨーロッパ諸国でドルが強調を示しておりますのは、大西洋をはさみますヨーロッパとアメリカとの間の金利差が、アメリカ側に有利に展開しているという事柄のほかに、ベトナム和平近しということでドルの先行きに確信が持たれつつあるゆえであるということもいわれております。で、このような諸般の問題を踏まえまして、大体幾らぐらいの影響があるであろうかということはなかなかむずかしい。計数的に申し上げられるのは、もう少し先になりまして全体の姿、タイムスケジュールがはっきりしてからでないとむずかしいと存じますが、いずれにいたしましても、この心理的に、また現実に時間がかかるにいたしましても、アメリカの国際収支が改善をするということは、国際通貨情勢安定のためにもたいへん歓迎すべきことであると存じております。
  163. 多田省吾

    ○多田省吾君 ベトナム和平が実現したら、これは大いに歓迎すべきことであり、たいへん喜ばしいことは当然でありますけれども、それにからんで海外経済協力問題で若干お尋ねしたいんですが、一つは、第三次円対策の柱の一つに「経済協力の拡充」ということがうたわれておりますけれども、その具体的なお考えですね。特にポストベトナムにおけるインドシナ復興につきましては、外務省はベトナム和平後の経済協力といたしまして、インドシナ復興援助基金の設立を促進するとか、あるいはわが国は二億ドル以上を出資し、二国間援助を同基金に移管する方針ということをおっしゃっているようでございます。これも第三次円対策と無関係なのかどうか。それからアメリカなんかでも、もうすでに南ベトナムは何億ドル、北ベトナムは何億ドル援助したいというような方針も報道されているようでございますが、それにからんでわが国は早急にどういう態度をとられるか。可能な限りひとつお答え願いたい。   〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕
  164. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御質問の第一点。今度の円対策の柱の一つとして「経済協力の拡充」がうたわれているが、それの具体策という御指摘でございますが、この円対策の第四項の中には「経済協力の拡充」というのがございまして、その第一点は、「経済協力の質的改善等」と書いてございまして、そこに大体三つのポイントがございます。一つはアンタイイングということでございます。この点につきましては、目下御審議をいただいております法改正ということで、制度上におきましてアンタイイングを可能とするようにお願いをいたしておるわけでございます。  第二の点は、政府開発援助の拡充ということでございまして、これにつきましては、御承知のように本年四月、第三回の国連貿易開発会議におきまして、政府開発援助をGNPの〇・七%までにもたらすということを受諾いたしております。これにつきまして、政府といたしましては、目下鋭意その目標に到達する努力を行なうべく内部で協議をしておる段階でございます。  第三番目には、政府直接借款の条件の緩和に一そうの努力をいたしたいということになっておりまして、この点につきましても、先般のDACの上級会議等におきまして、条件緩和の勧告が出ております。日本もこれに賛成いたしておるわけでございます。この点につきましても今後鋭意努力を続けていきたいというように考えております。  それから御質問の第二点のポストベトナムにおきますインドシナの復興につきまして、外務省が何かいろいろな数字を出したというように新聞の報道がございますが、この点につきましては、まだこの数字をあげてどういうような援助をするかというようなことはきめ得る段階に達しておりませんで、現在まだいかなるかっこうでポストベトナムの復興援助というものを行なうか、全体のこのベトナムの和平の到来のしかたその他との関連もございまして、いろいろの情勢が動いておりますために、現在まだはっきりした数字をもってこの考え方を示すというふうには立ち至っておりません。諸外国におきましては、たとえばアメリカ等におきましては、すでに数年前からポストベトナムのいろいろの援助のしかた、たとえば一九六五年、昭和四十年のジョンソン大統領のボルチモア演説などをはじめといたしまして、いろいろな案が出ておりますが、最近におきましても、アメリカは復興のために七十五億ドルが必要であろうというようなことを概括申しておりますが、これにつきましても、はたして七十五億ドルをアメリカが全部自分で背負うつもりなのか、ほかの国にも助けてほしいというのか、その辺のところがまだ一向にはっきりいたしておりませんで、具体的に考えを詰めますには、まだいささか時間がかかると存じます。そういうような次第でございますので、円対策ということとは直接の関連はないものというように御理解いただきたいと思います。
  165. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですからいまおっしゃったように、アメリカでは七十五億ドル出資して、南ベトナムには五十億ドルとか、北ベトナムには二十五億ドルとか、そういうような具体的な内容まで発表しているようでございますけれども、そしてまた外務省がインドシナ復興援助基金の設立を促進するとか、二億ドル以上の出資をなんていっているわりあいにしては何だかお考えが全然まとまっていないようなふうに受け取れますけれども、これはほんとうに外務省とは全然話を詰めていないのですか。
  166. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 新聞等でいまのような数字があらわれましたということは——あらわれておるわけでございますが、このような大きな問題が外務省だけで決定されるべきものではございませんで、関係省と慎重に協議をした上で日本政府の方策としてきめられるべきものでございますので、外務省が独自でこういう数字を発表したというふうな事実は全くございません。
  167. 多田省吾

    ○多田省吾君 東南アジア諸国に対する政府ベースの援助を一九八〇年までにGNPの〇・七%にしたいと。いまは〇・二%程度でございますか、外務省で発表しておりますけれども、これは前からもう言っていることですから、内容相当詰まっているんじゃないかと、こう思いますけれども、この援助の中身の中に当然インドシナの戦災復興なんかもおもな柱としてあると思いますけれども、それは具体的に中身はどういうものかお聞きしたいです。  また、もう一つは、エコノミックアニマルというような姿で、いままでの日本の経済援助というものがはなはだ好ましくない方向に受け取られている。今度のこの政府ベースの援助というのは、当然無償あるいは長期低利なひもなし援助であるとか、あるいは政治抜きの援助であるとかということが強く要求されると思いますけれども、そういう条件をどのように考えていらっしゃるか。
  168. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御指摘のように、わが国は去る四月の第三回の国連貿易開発会議におきまして、開発途上国に対する政府開発援助をGNPの〇・七%まで高めるという国際的な目標に到達するための努力をするということにつきまして、期限を明示せずにこの目標の達成を受諾したということになっております。で、外務省が一九八〇年までにこの目標を到達するというようなことを発表した事実は、これまたおことばを返すようで申しわけでございませんが、ございませんで、たとえば一九八〇年にこういう目標を到達するとすれば、たとえば毎年この援助のための政府の予算を三〇%以上増加していかなければいけないとか、そういうような仮定の上に立つ推測を口にしたことはございますが、その程度のことでございまして、八〇年ということを到達の目標というふうに発表した事実はございません。ただ、わが国に対します−わが国の実績から見ますと、先生御指摘のように、まだ四十六年度におきまして〇・二三%というような低い状態でございまして、この〇・七%に到達いたしますのは非常にむずかしいことでございます。したがいまして真剣な努力を重ねなければできないことであることは明らかでございます。また、わが国経済力の発展に伴いまして、国際的にわが国がこの目標をなるべくすみやかに達成するであろうということにつきましては、非常に大きな期待が寄せられているということも事実でございますので、できればこの八〇年というような時期を目標として努力を続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  この政府開発援助と申しますものは、中身といたしましては種々ございますが、無償協力であるとか技術協力であるとか、政府の直接借款であるとか、そういったようなもので、そういうものについて一々拠出なり出資なり、国際機関への出資、拠出等も含めまして一々政府の予算の要ることでございますので、この努力もなかなかたいへんなことであると思っております。  それから、そういうことで、まあ各国からその無償協力の増大とか、また今度の法案でお願いしておりますような、日本の生産物に対するひもつきを排除するというようなことの要望もございますので、そういったラインで努力をしていきたい。もちろん、ですから今度のインドシナの復興開発のために使われる援助というものも、そういったようなものにできるだけしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  169. 多田省吾

    ○多田省吾君 田中総理も所信表明の中に、GNPの〇・七%の政府ベースの援助ということはおっしゃっていたように思いますし、外務省は当然おそくても一九八〇年ごろまでにはという考えも私にあったものですからそう申し上げたのですけれども、まだそれは確定したものではないということになりますと、ますます失望せざるを得ないわけで、ほんとうはもうすぐにでも〇・七%を実現していただきたいという強い要望があるわけです。  それは別にしまして、今度は通産省にお尋ねしたいのですが、先ほどの残存輸入制限品目の自由化を計画的に推進するということが、輸入拡大の円対策の中でうたってありますけれども、その自由化の品目、自由化の時期は具体的に触れておりませんが、単なる作文では私はないと思うのです。その品目と、時期はいつから実施しようとしておられるのかお尋ねしたい。
  170. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) ただいま御指摘がございました残存輸入制限でございますけれどもわが国はここ数年急速に自由化を進展してまいりまして、現在三十三品目になっております。その三十三品目につきましては、いずれも国内的にいろいろと困難な問題を持っておる状況でございまして、いま直ちにこれを自由化に踏み切ることははなはだ困難であろうかと、かように存じております。ただし、自由化につきましては、私どもといたしましてできるだけ進展をさしたい、こういう考え方がございますので、先ほど大蔵省から御答弁がございましたように、業界体制を強化しながら計画的に推進する。先生御指摘のように、単なる作文に終わらせるのではないかという御指摘がございましたけれども、私どもといたしましては、決してそういうつもりは毛頭ございません。ただいま申し上げましたように、それぞれの業種につきまして、その業界の体質改善、こういうものを固めつつ、計画的にやってまいりたい、こういうふうに存じておるわけでございます。
  171. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、輸入割り当てワクの拡大につきまして、最初私たちの聞いた原案では、割り当て基準が国内消費の五%以下のものは一〇%とするというような内容があったのですが、最終決定では七%相当に満たないものは七%まで拡大する。このように最終決定がなっておりますけれども、どうして前に報道せられたものよりも変わったのか。それから非関税障壁の撤廃は、今回の対策が初めてではなくて、昨年六月の第一次円対策八項目の中の重要な柱の一つであったはずでございますけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  172. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) 御指摘の第一点の輸入ワクの拡大の点でございますが、現在は御指摘のとおり国内消費量の五%を割り当ての基準といたしております。それで今度の円対策におきまして、私どもは極力このパーセンテージを引き上げるべく努力してまいったわけでございまして、最終的には三〇%以上引き上げたい。つまり国内消費量五%に対しまして三〇%以上引き上げてまいりたい、こういうことを考えたわけでございますが、ただ、このほかに、一応七%という基準を設けまして、七%に満たないものは極力七%まで持っていこう、こういう線を出したわけでございまして、御指摘の一〇%という数字は、新聞等で一部報道されたことはございますけれども、私どもとしましては、輸入ワクの拡大を確保する、できるだけたくさんの輸入ワクを拡大させたい、例外品目を少しでも減らしたい、そういう意味で七%に踏み切ったわけでございます。  それから第二点の非関税障壁の問題につきましては、今回の対策だけでなくて、八項目の中でもそういうことをうたっておったではないか、こういう御指摘でございますが、おっしゃるとおりでございまして、当時四十品目ございました非関税残存輸入制限品目をこの期間に三十三まで持っていっております。
  173. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども貿管令のことについて質問がございましたけれども、まあ輸出制度も最初は創設するようなお考えのようでありましたが、最終決定では、輸出税と輸出課徴金の創設は引き続き検討すると、このように変わっておるわけでございます。輸出税創設もあり得るというようなことも総理答弁では言っているようでございますから、これは決してないわけではないと思うのでございますが、この貿管令とか、輸出対象特定地域、あるいは特定品目というのは、これは具体的にきまっているのでございますか。
  174. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 貿管令発動対象特定地域、あるいは特定品目はきまっているかという御質問でございますが、特定地域ということで関係閣僚懇談会の決定には書いてございますが、われわれ事務的にとり進める際には、輸出が急増している地域を対象にして規制していきたいということでございまして、原則としては、全地域が対象になるというふうに考えております。と申しますのは、現在のところ、米州あるいは欧州に輸出が非常に伸びているわけでございますが、米州あるいは欧州だけを押えますと、他の東南アジアとかアフリカとか、その他地域に輸出がまた伸びていくという可能性もございますので、結果的にはほぼ全地域を対象とするということになろうかと思います。  それから特定品目につきましては、対象品目の選定につきまして一応の基準はきめておりまして、ほぼ品目の内定は行なっております。しかしながら、貿管令の発動をいたす前に、対象業界につきまして折衝をしておりまして、その内容が固まり次第、対象品目を確定するという段取りにいたしております。
  175. 多田省吾

    ○多田省吾君 貿管令に関して、先ほどの御答弁では、もう発動の際は、協力してくださる業種に対しては発動しないと、非協力の業種に対しては発動せざるを得ないと、こういうような御答弁でありましたけれども、大体それはいつごろから発動なさるめどがあるんですか。
  176. 柴田益男

    説明員柴田益男君) 現在作業を進めておりますが、貿管令発動に関する発表は、現在のところ、来週半ば過ぎ行ないまして、今月一ぱいで業界の自主的な計画を出させるようにいたしまして、貿管令そのものが発動されるのは十二月一日以降になろうかと思います。
  177. 多田省吾

    ○多田省吾君 輸銀関係についてお尋ねいたします。  輸入金融拡大について、初めはこの対象範囲原材料輸入にとどまらないで、製品輸入を含めまして輸入金利を引き下げると報道をされたのでありますが、最終的には金利を一%程度引き下げることをなさった利下げ幅の根拠はどうなのか。これでは利下げ幅が小さくないのかどうか。一%程度ということは、一%未満ということも含まれるのか、その辺をひとつ御答弁願います。
  178. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 一%程度引き下げるという考え方につきましては、当初来考えておりましたことでございます。その間、折衝の過程において変更したということはございません。むしろ修文の問題であろうかと存じます。ただ、その一%の根拠につきましては、これは現在、輸出入銀行でいままでの輸入金利は大体平均いたしますと六・五%前後になっております。もう先生すでに御承知かと思いますが、一流銀行の場合は、銀行としての自主性を尊重いたしまして、ケース・バイ・ケースで業務方法書の四%から七%の間で輸銀総裁の判断で貸し付けを行なっております。その平均が現在約六・五%になっておるわけでございますが、諸外国でやはり公的資金を使いますいわゆる輸銀類似の機関の金利を見てみますと、大体やや日本のほうが割り高だということでございまして、大体六%ぐらいが、たとえば米国の輸銀の日本に対する輸出金利であるという状況がございます。したがいまして、これを一%程度引き下げるということは、むしろ少ないということは言えないわけでございます。輸出入銀行国内の市中銀行金融の補完であるという性格から考えましても、市中の金利が大体六ないし七%であるというような事情からいたしまして、この際、五・五%ぐらいの平均になることを目途として一%引き下げるということが適当ではなかろうか、かように考えたわけでございます。で、程度という意味は、先ほど御説明いたしましたように、個々の品目幾ら幾らときめておるわけではございませんので、輸銀総裁の判断によってケース・バイ・ケースでやっていくと、その場合に一%を引き下げていくことを原則として考えていく、かような趣旨でございます。
  179. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の補正予算に関連して、財投の追加五千三十億円ある中で、円対策として輸銀に二百億の財投追加融資がありました。また、さらに輸銀は追加事業規模として四百五十億を濃縮ウラン工場の先払いとして事業計画を進めているようでありますけれども、今後の計画とあわせて御説明いただきたいと思います。
  180. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 今後の計画ということを、たとえば一つ輸出入銀行の計画という意味に受け取らせていただきまして私からお答えさしていただきますが、あるいは濃縮ウランの輸入計画ということでございますと、別途、通産から御説明いただいたほうがいいかと思いますが、まず輸銀の計画といいますのは、いま、すでに先生がお話しになりましたように、大体濃縮ウランの加工代に三億二千万ドル——約一千億足らず、九百八十億程度を前払いするということで考えておるわけでございます。これに対しまして四百五十億を追加いたしましたのは、最近の経済情勢から、当初、見込んでおりました貸し付け規模のうち、輸出資金等のワクで五百四十億程度の減少が見込まれましたので、これを差し引いたもの、その差額が四百五十億、かように考えております。したがいまして、これによって大体ウランの緊急輸入ということが実現されるように考えております。
  181. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは通産省に濃縮ウランの計画をあわせてひとつお答えいただきたいんですが、もう一つは、同じく通産省に、まあ濃縮ウランと関連しまして、九月のハワイ会談で田中・ニクソン会談の中で、日本側は、今後十年間に総計一千七百万キロワットを発電する二十六カ所の原子力発電所を建設すると、さらに一九八五年までに五千万キロワットまで拡大する方針である。そのため、アメリカが日本の原子力産業に総計十八億ドルにのぼる濃縮ウランを輸出することが決定したということも伝えられているわけでございますけれども、通産省はこれはどのように理解していらっしゃるのか。また、二十六ヵ所の原子力発電所の計画というのはお考えになっている途中なのかどうか、ひとつ、あわせてお答え願いたい。
  182. 武田康

    説明員(武田康君) 第一点の濃縮ウランの計画でございますけれども、先ほど大蔵省のほうからも御説明ございましたように、約三億二千万ドルの濃縮ウランを購入しようというようなことでございます。それで具体的な細目につきましては、これは購入契約の形になろうかと思いますので、非常な、契約の細目等までいろいろ詰めなければいけない問題でございます。したがいまして、これからあとこれを購入いたします電気事業者がアメリカの原子力委員会と細目の詰めをして、それでセットしていくということになろうかと思っております。  第二点の、ハワイ会談につきましてのアメリカサイドの報道でございますが、先生御指摘になりましたように、今後十年間に二十六カ所の発電所をつくる、あるいはさらに五千万キロワットの設備を追加していく、それからそのための濃縮ウラン代金が十八億ドルになるというようなことが伝えられたようでございます。実は私ども了知しております限りでは、今後十年間、あるいは今後の将来の期間にわたりまして、十何億ドルのものを買うというようなことを約束した事実はございません。また新聞報道でございますのであれでございますが、そういうアメリカサイドでの新聞報道が行なわれました直後に、アメリカの原子力委員会がそれはやや事実に反するといったようなことをいったというようなことを新聞報道によりまして伝え聞きで聞いている次第でございます。  それから、二十数ヵ所というお話がさらにつけ加えてございましたけれども、現在アメリカと日本との間で原子力協定というものがございまして、その協定の中で濃縮ウランをアメリカから日本に供与してくれないかというような約束ができているわけでございます。現在の約束は、ちょっと、たいへんいま不正確でございますが、一年半か二年ぐらい前にセットしたものでございますけれども、そこではすでに動いております四ヵ所の発電所、それからさらに現在建設中の十数ヵ所の発電所、それから現在計画している、あるいは許可申請等が出ております数カ所の発電所等について、濃縮ウランの供与をしてくれるというようなことになっているわけでございます。アメリカの報道の真偽は実は私はよくわかりませんが、二十何カ所という引用は、たぶんそこに載せられております発電所の数を引用したのではなかろうかと、こう推察している次第でございます。
  183. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、輸銀の問題でお尋ねしたいのですけれども、日本アラスカパルプに対して、返済期間がほとんど過ぎている約二百億円にのぼる借金を利子たな上げにした上に、今後二十年以上の超長期間で支払えばいいというような型破りの超サービスを決定したと伝えられておりますけれども、この具体的内容を御説明いただきたい。
  184. 澄田智

    参考人(澄田智君) アラスカパルプにつきましては、近年化繊用のパルプの需給が非常に低迷をしておる。それから米国におきます労務費が高騰しているというようなことが相まちまして、業績不振を続けてきておったわけでございますが、それに加えましてアメリカのアラスカ州の公害規制というものが強化をいたされまして、四十二億円という新たな公害投資をしなければならない。これをやらないということになりますと、操業を落とさなければならないということで、経営の続行が危ぶまれるという事態になったわけでございまして、その結果関係方面で協議の結果、わが国といたしましては、将来とも化繊用パルプの国内生産については、わが国国内の公害問題等から国内の生産が縮小する可能性がある。したがいまして、アラスカパルプからの輸入の重要性というものはむしろ高まっていくということ、それから資源政策上、アラスカパルプが保有しております、権利を持っております木材の伐採権、これを放棄するということになるのは資源対策としてはなはだ得策でないということから、経営を続行することはどうしても必要であるというふうに判断されましたので、その関係の商社、化繊メーカー等が中心になってその公害投資と再建については責任をもって当たる、こういうことになりましたに伴いまして、大口債権者としての輸銀としてもこれに対応した措置をとるということに踏み切ったわけでございます。この点につきましては、関係当局と十分に協議をした上行なったというふうに聞いております。アラスカパルプに対します輸銀の貸し付け金の元本は百三十三億、そのほかに、これは協調融資で興業銀行及び日本長期信用銀行融資をしておりますが、これが二十四億でございますが、この分につきましては、これはこの元本、それからこれに付帯して今後発生する利子につきましては、昭和五十二年まで五年間据え置いたのち、十八年間に元本をまず優先して先に弁済させるということで、分割弁済させるということにしたわけでございます。なお現在経過している、まだ未収になっております利息が輸銀の分が三十一億円、それから興銀及び長期信用銀行の分が十一億円ございますが、これは元本及び今後の利息の弁済が終わったあとに、これを支払わせるということにいたしまして、債務の免除を、たな上げということは行なわない、期限を延長するということによって事態を処理し、そうして今後再建をはかる、かようなことになった次第でございます。
  185. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵当局にお尋ねしたいのですが、いまの御説明で、輸銀の今度の措置によって軽減されるアラスカパルプの負担軽減額というものはどの程度だと大蔵当局では試算なさっているのですか。
  186. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 負担軽減という御趣旨によりますが、たとえばおそらくいまのお話は、利息収入、利子に利息をつけないことによってどれだけの負担が軽減されるかという御質問のように取れますので、これはまあ四十二億という経過未収利息のうち輸銀分三十二億でございますと、たとえば輸銀の金利で計算いたしますと、三十二億前後と考えられます。
  187. 多田省吾

    ○多田省吾君 そのほかに元利の返済期間が延長されたということをおっしゃられましたけれども、その分まで入れればもっと多くなるのじゃないですか。
  188. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これはその据え置き期間を置いて返済期間を延ばしたということでございますので、特にそのときのそれを金額で計算することが適当であるかどうか、ちょっと疑問のように思います。
  189. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは当然インフレがどの程度進むか、それによってきまりますけれども、やっぱりわれわれが思うのには、これは百億円近くまでのこれは負担軽減になるのじゃないか、このように試算できるわけです。いろいろ説明ありましたけれども、借金に追い回されて自転車操業の中で円切り上げにおびえているような中小企業と比べますと、非常なこれは恩典なわけです。この借金というものは大株主である大手化繊業界とか一流商社が全部債務を保証しております。その責任も追及されていない。そういう大企業のみに手厚いサービスが行なわれていいものかどうか。そういう措置は今後の輸銀の貸し付けに対しても不信が出てくるのじゃないかと、こうわれわれは考えるわけでございますけれども、大蔵当局はこういうことは妥当だとお考えですか。
  190. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) このアラスカパルプが昭和二十八年以来、いわば一種のわが国の乏しい山林資源の関係から国策的な意味を持つ事業としてやっておりまして、はなはだ不運にもなかなかいままでのところ経営がうまくいってなかったということは事実でございます。ただその間におきましても、商社なりあるいは化繊メーカーが全く負担を免れておったかといいますと、そうではございませんので、もうこの辺のところは多田委員もすでによく御承知のことだと思いますが、あえて申しますと、たとえば一回減資をいたしまして、さらに増資をして、その負担を分担した。あるいは今度の場合に、公害規制に対しての資金的な協力を自分たちでやり、さらにその会社の今後の再建に協力を誓うというようなことで、まあ最大と申しますか、できる限りの協力をするように話がついたと私どもは考えております。むしろ輸銀がこの場合に、もしも貸し付けを、こういう措置をとらない場合に、はたして、このアラスカパルプを見殺しにしてしまうことが、長期的に見てわが国の木材資源あるいは化繊パルプの需給関係からいって適当であるかどうかという問題もございます。もしもそれを何とか生かしていくためには、むしろ輸銀からさらに追い貸しをしないといけないという事態も予想されないではなかったわけでございます。むしろ、新規の貸し付け資金も出さず、あるいは再建の打ち切りというような最悪の事態にも立ち入らないで、こういう形でいわゆる会社再建に協力することになったということは、少なくとも最善ではないにしても、現段階においてはこれ以外の措置はとれなかったんではないか、かように私は考えております。
  191. 多田省吾

    ○多田省吾君 国策であるからそういう措置は当然だとおっしゃいますけれども、それは若干わからないわけではありませんけれども、それと対比して、それじゃわが国の中小企業なんかに対する措置はどうかということを考えますと、非常に私は疑惑と矛盾を感ずるわけです。ですから私は、今後のいわゆる円対策におきましても、予想される被害に対しては、特に中小企業の被害等に対してはひとつ大蔵当局で万全の体制をとっていただきたい、そのことを最後に申し上げまして私の質問を終わります。
  192. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  193. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記入れて。  午後六時再開とし、暫時休憩いたします。    午後四時五十五分休憩      —————・—————    午後六時十九分開会
  194. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  対外経済関係調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案議題とし、休憩前に引き続きこれより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  195. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣にお尋ねしますが、大蔵省が、先ほどの質疑なり、あるいは新聞等を通してわかったことは、ドル投機疑いがあるというので、為銀関係には、銀行関係には調査に入る、それから商社関係については通産省と打ち合わせをしながら調査に大体入っていくというような答弁がございました。それから調査内容なり結果というものは、まあ公務員関係、秘密があり、国会等に報告はなかなかそういう法律関係上非常に容易ではないということは私たちはわかっております。しかし、ほんとうに投機を防がなければ、投機投機を呼んでせっかくいろんな御努力願って円の切り上げを防ごうとする努力をしておみえになることがむだになる、期待を裏切るというようなことになると思います。そこで、調査に入ったのは、実態を明らかにするということもあるが、警告の意味ということもございました、そういう御答弁がございました。そこで、大臣に特に決意を主として伺っておきたい点は、この際、調査をおやりになる。何日か先にはこれが判明をいたします。そうしますと、国民の前に投機疑いを持った銀行関係はこれこれで、これだけ売ったんだと、商社はこれこれで、こうなんだということを天下に明らかにするということがほんとうに警告になり、投機を防いでいく、そういうことになると思うんですが、大臣は調査結果について公表をされるお気持ちがあるのかないのか、私は、円を、予算委員会等でも、何としても防ぐというようなことは、田中総理なりあるいは大蔵大臣等の御答弁があるやに新聞等で承知をしたわけです、夕刊で。ですから、そういう決意があるのかないのか、このことについてまず御答弁をお願いします。
  196. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。先般金融機関につきまして、全部にわたってですか、あるいは相当部分であるかはまだくわしく聞いておりませんが、私自身もそういうような今日のような状況下において、もしもいいかげんな不当なことが行なわれておってはいけないというような意味も、あるいはわかり得るかというので調べたのだと思いますが、特にその目的で調べたというよりは、かねてそういう場合に、ときどきいろいろの日常の業務を通じて状況を問い合わせたり、あるいは現地に臨んで聞いたりというようなことをしておったということを承知したのであります。その結果がどういうふうになっているかということにつきましては、私はいままでの調査の結果についてもまだ報告を受けておりませんし、のみならずこれがはたして公表し得るものかどうかという問題についても、十分にその間の筋道を承知しておらないのであります。しかしながら、事は重大でございますから、事のいかんによっては警告を発しなければならぬ場合も起こるかもしれません。あるいは天下に公表はしなくっても、もしもそういう疑い、疑わしい点があったなれば、やはり当該執務者、当該責任者に対しての注意警告を発することは当然のことだろうと、かように考えております。
  197. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ぼくは、国際金融局長ときょう昼間いろいろと質疑やりました。その中でも申し上げたのですが、今回十三億ちょっとドル売りがあるわけです。そのうちの大体三、四億は投機であろうと言われておるわけです。だから、それを受けて、私は、普通の業務ということもさることながら、やはり大蔵省が動いておるということなり、あるいは先ほども明らかになったのですが、まだ通産省とも相談をして、商社にもやるということなんですよ。だから、投機疑いがあるという認識に立って動いておられるわけです。ですから、その結果というものを公表をするのが、ほんとうに円の切り上げを防ぐ大きな方途になると思う。ああいう法律案をいろいろと通すということも大事なことなんですよ、しかし、これだけでは投機は防ぎ切れないということは常識でわかっておるのです。われわれも承知しておるのです。幾ら法律でやったって、片方はそうはいかないですよ。ですから、そういう投機をほんとうにやらせないようにしていただくということが、業界の協力というのですか、自粛がなければこれはでき得ないことなんですよ。法律万能じゃないわけなんです。ですから、どんなことがあっても調査結果というものは公表すべきなんです。一銭もなかったというならいいですよ、あれば、たとえ千ドルでもあったとするならば、一億でもあったとするならば、公表するのが私は、政府がなすべき熱意を示したものだと思う。この法律で万々何もかも万全だなんとはだれも考えていないですよ。大臣もそうだと思うのですよ。これは金融局長じゃなくて、大臣の決断にかかる問題なんです。ですから大臣の決意を聞いておる。まだそれは調査に入ったばかりで、報告なんか出ておりませんですよ。ですけれども、その結果というものは公表をするのだという姿勢がなければいけないと、こう思っておるから、重ねて大臣の熱意と申しますか、内閣が円対策に対して閣僚懇談会等、いろいろと懇談会等を持ってやっておみえになるようだが、熱意のほどをお尋ねしておるわけです。重ねてひとつ決意のほどを御答弁願います。あとで検討するとかなんとか言って、選挙があって大臣もかわってしまうので、それはそうかもしれぬということになるかもしれませんが、やはりいまの大臣に約束をしておいてもらわなければいけませんよ。ぜひ大臣の決意を重ねてお尋ねします。
  198. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) ただいまお答え申したとおりの状況でございますので、私自身としましては、ただいまの先生の質問を通じての御警告、並びに国を憂えての御心配はよくわかります。むしろ感謝いたしますが、しかし、私はそういう場合に処すべき方法として、それよりほかに、発表というようなことよりほかに方法がないものか、あるいは警告を発することによって未然にもう防ぎ得たのか、あるいは防ぎ得たとしても、かつてはこういうことがあったのか、そういうところを公表するのがはたしていいのか悪いのか、問題は金融界のデリケートな問題に関係のあることでございますから、私は遺憾ながら、ただいまのところそれを発表いたしますとか、あるいは公表いたしますというようなことをはっきりここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  199. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっと。  こういう行為が事実あるかないかということよりか、通常監査といいますか、通常監査を行なったということに藉口をしてそういう事実があるかどうかを探られた、こういうまあ記事ですね、そういうことが出るということも、デリケートな問題に関連するわけじゃないですか。デリケートな問題だというのはどういうことを言うわけですか。
  200. 林大造

    政府委員林大造君) 若干技術的な点がございますので、先に申し上げさしていただきますが、私ども検査官を派遣いたしまして検査をさせます場合には、常に為替管理法が正確に守られているかどうかということを中心にして調査をしているわけでございます。で、その調査の重点をどこに置くかということは、そのときそのときによっておのずと違ってまいります。外貨が不足しておりましたときには、当然のことながら外貨の不当な流出がないかどうかという点に重点を置いて検査をしてまいったわけでございますし、また最近のようになってくれば、おのずと外貨の不当な流入がないかどうかということを中心にして検査をいたすわけでございます。で、今回特に重点を置きましたのは、巷間いわゆるリーズ・アンド・ラッグズ、本日午前日銀の副総裁からもお話がございましたけれども、リーズ・アンド・ラッグズというのが、これは商取引上やむを得ない、または為替管理法上も禁止はされていない種類のものもございますが、そのほかに、たとえば前受け金の規制でございますとか、為替管理法上許していないものもあるわけでございます。で、重点の置き方を変えて行なったという次第でございます。  先ほどのお話のデリケートな問題というのは、格別にどうということもないという結果が出ましたときでも、検査に入ったということがわかるだけでもいろいろな問題が起こり得るという問題でございますし、まあ大臣のそのようなお含みでの御発言かと存じます。
  201. 横川正市

    ○横川正市君 大臣のデリケートな問題というのは何ですか。
  202. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私は実は、そういう問題についての知識は不十分なのでございますが、金融問題とかいうようなものは、ことに今日非常に今回円対策関係でいろいろ法案あるいは予算案を御審議願っている大事な際でございます。こうした際に、そういう問題が私はあったということすら実はつまびらかにしておらなかったような状況でございますので、はなはだ申しわけございませんが、どうもこういう問題は、よほど気をつけないというと間違いの種になってはいけない、国のためにならぬような結果になっては申しわけがないと、かような存ずるからでございます。
  203. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣ね、私は不得意だで何も知らぬというのなら、あんたの責任でこの法律案提案されておって、そういうことばじりをとやかく言うわけじゃございませんけれども、そうじゃなくて、円対策で、円の再切り上げは絶対に防ぐんだというのが、私は内閣の至上命令だろうと思うのですよ。そのために、来年度の予算の編成なり、いろんなことを考えておみえになると思うし、閣僚懇談会もお持ちでございましょうし、今度の法律案提案もなされておる、そういうふうに理解をしておるわけです。しかし、法律が、万能で全部防ぎ切れるものじゃないということは、それは林金融局長の答弁でも明らかなんです。たとえばリーズ・アンド・ラッグズでも、これはどうにもならぬ問題もございましょう。もともと経済が統制でないので、押えつけるほうがおかしいわけですから、やれないということは私たちもわかるわけなんです。いろんなことをくぐってやるというのも、片方も営利追求の立場ならわかるわけです。御案内のとおり、私が言わなくても、昭和の初めには大きなドル買いの問題があったということも御案内のとおりなんです。ですから、業界も協力してもらわなくちゃならぬわけです。そういう姿勢が非常に大事なんですよ。ですから、それには監督官庁である大蔵省が強い姿勢で対処せないと、それこそ間違ったことになっちゃうんですよ。あなたの間違いが、大きなほうの目標を失った間違いができることを憂うるから、少々のことはやむを得ないと思うから、私は荒っぽい、この際決意を表明することが何よりの警告になるわけなんです。いまのような答弁では、ぐずぐず何だかわけのわからぬことになっちゃう。政府の熱意を疑うわけですね。決断と実行が今度の内閣のスローガンなんです。大蔵大臣だけは別の人かね。大臣の明確なひとつ御決意の披瀝が、何よりの私は、この場における警告がささえになると思っている。高く評価するわけです。これができ得ないようなことならあとは何をやってもむだなことだと思うのですよ。いかがですか。そういう評価をあなたはおしになりませんか。
  204. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私も先生のいまの御警告といいますか、御注意、お気持ちがわかればこそ調べた結果がどんな程度のことが調べられたのか。法令違反のことでもあったのかなかったのかということも、それすら私はまだつまびらかにしておりませんので、仮定論としてならば法令違反のことがあればこれは当然それに対して処すべきことは当然だろうと私も考えます。しかし、それがちょうどはなはだ恐縮なたとえでございますが、大体人間間違いを起こしたことがある、不正を行なったときがあるときに、嫌疑はあっても、その嫌疑がそうじゃないということの反証も成り立つ場合もあり得るんじゃないかしら。そう思うと、私は直ちにそれがあったという報告を受けておるとかなんとかならば、この際私の態度として何らかのお答えをはっきりさすべきかもしれませんが、その内容について何らまだ報告を受けておりませんので、それだけに私としては、それをどうするこうするということをいま申し上げることを控えさしていただきたい、こうお願いを申し上げている次第であります。
  205. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 重ねて申し上げますが、為替管理法違反なんということはあたりまえの話であって、そんなことを私は問題にしておらぬ。そんなことはあたりまえのことなんです。そうじゃないですよ、投機としてやった疑いのあるものは、この際発表するというのが大切だとこう言っているわけです。あなたと立場が違うわけですよ、大臣。為替管理法違反の問題ならあたりまえの話ですよ、告発をしてもらわなくちゃなりません。あたりまえの話なんですよ。そうじゃないのです。疑いのあるものをこの際私は発表することが警告になると、こう言っているわけです。そのことが大切だとこう言っている。それができ得ませんというなら、何をやってもだめですよ。そうでなかったら何やってもむだな話なんです。もうすでに六日の日に買い戻ししているのですから、それだけでもうわかるんじゃないですか、反証が出ているじゃないですか、どうも煮え切らぬ態度だから。それほど手固くやらなければいかねものが、荒っぽい私は措置をしてもらわなくちゃいかぬと言っている、どうですか。
  206. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私といたしましては、この国会が始まりまして、法律案をはじめ予算対策の御審議を願っておりますころになりましてからは、ますますもって、最初自分でもわからぬ点もたくさんございましたが、やはりだんだん勉強するに従って、この調子でやっていけば何とかなる、必ず再切り上げのような事態に立ち入るようなことは避けられる、こういうふうに、これは間違ってないと信じますが、私は、そういうふうにだんだんと信ずるようになってきておるのであります。それだけに私としましては、ただいま先生のおことばではありますけれども、どうもこれについてどうする、こうするということをいま申し上げることはぜひしばらく差し控えさしていただきたいのでございます。
  207. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体、大臣の考え方はわかりました。  それでは次に、時間の関係上問題を別にしまして、しかし私は、あきらめたわけじゃないですから。次に、ホノルル会談ですね、つい最近の。田中総理あるいは大平外務大臣等お行きになったようですが、一体アメリカの通貨面に対する考え方、それから通商に対する考え方、こんなことが議題になったんじゃなかろうかと思うわけですが、そういうようなことに関連して話があったとするなら、そういうことについて大臣はどういう報告なり、あるいは指示をお受けになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  208. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) そのホノルル会談とおっしゃる問題につきましては、私は遺憾ながら何にも聞いておりません。ただ一応私は尋ねてみました、尋ねてみましたけれども、何ら琴線に触れるようなお話がなかったということが事実でございます。
  209. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それはまあ何もなかったと、経済問題については何もなかったと、すると何が問題になったんですか。
  210. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私は存じません。
  211. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それでは、別途アメリカから日本へいろいろとやっておみえになっておる、あるいはこれは国務長官というよりか、むしろ商務長官のほうですが、そういうような関係から、日本に対しての要請はどんなことが一番きつく要請されておるのか、そうした問題一、二点、ありましたらここでお聞かせ願いたいと思うんです。
  212. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 貿易の品目の自由化の問題等につきましてはいろいろと強い要請があったやに官房長官からも聞きましたし、これは大平さんからも承ったことがあります。  それから、そのほかに、為替の問題とかいうような、レートの問題だとかいうようなものについては何も実は聞いておりません。
  213. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、円対策として今度提案されておるわけですね、それから対外経済政策推進懇談会というんですか、そういうようなものを持たれていろんな対策を立てておみえになりますが、これはあくまでも日本独自の立場で、判断としておやりになっておるというふうに理解していいものなのかどうか、大臣は何も聞いておらぬと、どういうことなんですか。
  214. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) われわれがこの関係の閣僚懇談会でいろいろ勉強して、そうして今回の予算案、あるいは法律案をまとめましたのは、それは私が幸いにして現地に行って、そうして自分でいろいろ体験をしたこと、見聞をしたこと等を参考にして、私はみずからその場合には大蔵省の立場としてこういうことをやるべきじゃないか、ああいうことをやるべきじゃないかという問題について強く主張はいたしました。しかしながら、別にどこからどう言われたからこれをやっているという姿ではないのであります。その点御理解賜わりたいと思っております。
  215. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それじゃ、あなたがIMF総会へ御出席くださいましたですね、そのときに通貨体制の問題について何か特別な議論と申しましょうか、通貨体制の問題について何らか、どういうことがそれじゃ一番大きな議題として、テーマとして、あるいはIMF総会自体の主要テーマは何でございましたか。
  216. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) それは昨年末の多国間の通貨のあの会議の結果きめましたあの問題に関連して、その後必ずしも世界各国の、たとえばこの夏の初めでございますか、ポンドのフロートになった時代もございますし、ああした問題等もありますから、ですから、各国間の合意を得た適当な通貨体制をつくり上げる、改革をしようじゃないかということについての強い合意が成り立ったということであります。それがしかも、去年のときには、初めてのことででありましたから、会議そのものもいろいろと必ずしもスムーズじゃない。各国間の意見がぴったりは合っておらなかったということ等がございましたが、今回はあらかじめ、IMFの理事会で各国の意見を総合した——どの国がどう言ったとは書いてありませんが、報告書があらかじめ送ってこられました。あの報告書に従って、会議が非常に順調に早くやろうじゃないかということになりまして、そうしてその結果は、十カ国蔵相会議のほかに二十カ国のまた委員会が新しくこしらえられて、その二十カ国委員会がその報告書の再検討を行ない、そしてどういうふうな通貨改革をやるか、どういう方法論で案をこしらえるかということを取り急いでやろう、できるだけ急いでやろうということが、これが非常に円満裏に話が進んだのであります。だから、私はその空気から見ますというと、むしろ現場からは何も通貨の改革の問題についてこうやれ、ああやるべきだという強い主張は、私はなかったと思うんです。ただ、みんな仲よくやろうじゃないか、世界は一つになって、そしてその通貨改革に対しては、それぞれがいろいろ国によって立場は違うだろうけれども、この点はお互いに譲り合いをして一つの案をぜひ得ようじゃないかということに、非常に協力が行なわれて円満裏に話が進んできた。そしてそれが近くいよいよ二十カ国委員会が始まることになっていると、かように承知しておるのでございます。そうして会議を通じまして、どこの国が黒字だからどうとかこうとか、あるいは赤字だからどうとかこうとかいうような、そうしたことについての議論とか、あるいは非難めいた話し合いはなかった。それが実情でございます。
  217. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、スミソニアン体制を守り抜くということなのか、案を別途つくろうとするのか、そこのところがあなたの話を聞いておるとちょっとわかりかねる。何か別な案をつくるようなふうにも受け取れるわけですが、二十カ国蔵相会議でどうするのか。
  218. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) それは申すまでもなく、現在は、去年の暮れのあのスミソニアン体制でやっておりますから、それで当分の間はこれでやっていこう、そうして新しく恒久的な制度をこしらえよう、こういう話し合いでございます。
  219. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 スミソニアン体制は全く臨時措置だ。ですから恒久対策は、スミソニアン体制と似ておるかもしれないけれども、別途新しくそういうものがつくられるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  220. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) それはそのとおりだと思います。私はさように了解をしておるのであります。係のほうもそのとおりにみな、あとから寄り合って相談をしましたときも、その気持ちで皆さんの気持ちが一致しておりましたから、間違いないと思います。恒久制度をこしらえよう、そうしてその制度はどういうふうにあるべきか。もしもその制度が円満裏に二十ヵ国委員会で議がまとまり、十ヵ国の蔵相会議でもこれが賛成せられ、かつ総会において、それがいつになりますか、時期はなるべく早くとは言っておりましたが、そんなにそれが、たとえば来年の春にすぐ開かれるだろうとか、すぐきまるだろうというほどに順調にいくかどうかはこれはわかりませんが、大勢はそういう情勢裏に終始したのであります。
  221. 多田省吾

    ○多田省吾君 ただいま成瀬委員質問にもございましたけれども、まあ総理大臣は円の再切り上げを絶対回避したい、もし追い込まれれば相当の責任を感ずるというような答弁をしております。当然大蔵大臣も円切り上げ回避に対しましては相当の決意をお持ちであり、またあらゆる手段を講じて絶対円再切り上げ回避をするという、そういう御決意だと思いますが、いかがでございますか。
  222. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私自身のことは私みずから十二分に心に期するところがございます。
  223. 多田省吾

    ○多田省吾君 九月末のIMF総会におけるアメリカ・シュルツ財務長官の発言でも、平価変更などの国際収支調整をする指標には外貨準備の目立った増、減を使う、こういう発言をしております。ですから、日本の外貨準備高というものがやはり円再切り上げの大きな指標にされているわけです。ところが、十月中に十三億ドル日銀ドル買い入れがあり、十月末で百七十七億九千六百万ドルですか、そういう外貨保有高になっております。これからも相当急増しそうであり、田中総理も年内に二百億ドルを突破するだろうというような見通しを述べておられますが、平価変更などの指標が全部が全部外貨準備の増減にあるとは言えませんけれども相当大きな要因になっていることは否定し得ないところでございまして、またこれは牛場大使の発言なんかにも見られるように、ヨーロッパは別としても、アメリカあたりは相当円の切り上げの圧力をかけてくるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございますけれども、大蔵大臣はこの円再切り上げ問題と、それから日本の外貨保有高に関しましてどのようにお考えでございますか。
  224. 林大造

    政府委員林大造君) 大臣の御指示で、私若干先に補足的なことを申し上げて恐縮でございますが、シュルツ財務長官のIMF総会におきます演説の中に盛られております、黒字国、赤字国双方の国際収支調整一つの目安として、外貨準備の高をとったらどうかという考え方、そうして、外貨準備の高をとりまして、黒字国、赤字国それぞれが、国内措置あるいはレート調整措置によりまして国際収支調整の責任を果たすべきであるという提案は、確かに行なわれたわけでございます。この提案は、当面、ある国——日本の国がどうしろとか、あるいは、ヨーロッパのある国が、国際収支が弱くて外貨準備が減りぎみになっている国がどうしろというような具体的な提案ではございませんで、恒久的な今後の通貨制度のあり方としていかにあるべきかというお話の中身として提案があったわけでございます。で、この提案に対しましては、各国それぞれの意見がございまして、ヨーロッパの有力な幾つかの国は、そのような考え方には賛成できないという趣旨のことを申しております。いずれにいたしましても、このような議論は今後の恒久的な制度をどうするかという議論でございまして、現在わが国外貨準備がかなりのスピードでふえていく——それは若干のタイムラグを伴うこの種の現象におきましては、ある程度やむを得ないことかと存じますけれども、この現在の事態に直ちに当てはまるわけではないというふうに私どもは感じている次第でございます。
  225. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) ただいま局長にふえんしていただきましたが、いま申したようなそういう状況でございまして、その永久の改革された制度ができるまではそのままほっておくかとか、ほっておかぬかとか、そういうような問題等は実は何も話題にならなかったと、私はそう承知しているのであります。だから、いまの説明によって御理解願えると思うのでありますが、だから、とにかく世界は一つという考え方で、私自身も意見の発表の際に、各国が一つになって、そうして、赤字も黒字もあるかもしれないが、それれぞ基本的には自分の国の国内の通貨がインフレになってだめになるような、そういうような国内経済政策、金融政策をとってはいけない。参加国は、みなみずから自分の国の経済体制、通貨体制を健全に育成していくことをやらなきゃいかぬというようなことを主張しておったのでありますが、その一つの考え方としては、たとえばオーストラリアの大蔵大臣が私の考え方に賛成だというようなことを言ってくれました。あるいは私の話が済んだあとで、シュルツさんですか、私のところに参って、「よかった」というようなことを言ってくれましたが、何のことがよかったと言われたのか私はわからずにきょとんとしておったんですが、しかし、あとから様子を察しますと、まあまあ、趣旨としてはそれでいいじゃないかと、こういうことだろうと思います。参考にしていただければ幸いでございます。
  226. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、大臣にお尋ねしたいんですが、ただいまの質問の趣旨は、何も日本の外貨保有高だけによって円の再切り上げの重圧になると申しておるんじゃない、これは大きな要因になるんではないかと、こう申しておるんです。ですから、いまのように毎月三億ドル外貨準備高がふえると。二百億ドルをこえて二百三十億ドル、二百五十億ドル、三百億ドルとなっていけば、大臣だってそんなのんきなことは言っていられない。やはり日本の外貨保有高の猛烈な急増というものは、円再切り上げの大きな重圧の一因になるんじゃないかと、このように質問しているのです。どうですか。
  227. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私はおことば、たいへん御忠告、御警告ありがたく感謝するのでありますが、しかし、やはり日によってどれくらいふえるときもあるかもしれませんが、ふえ方の少ないときもあるかもしれませんが、どうも私のいまの信念としては、確信としては、何とか切り抜けができるに違いないという考え方でおるのであります。それでありますけれども御忠告の次第もこれありのことでございますから、十分いやが上にも留意をして間違いなきを期したいと存じます。
  228. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうすれば、大臣も外貨保有高はなるべく急増しないほうが望ましいし、そういう手段をあらゆる方面からとっていこうと、こういうおつもりなんですね。
  229. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) そのとおりでございます。
  230. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど成瀬委員もおっしゃいましたけれども輸出前受け金のいわゆる規制も強くやっておられるようでありますけれども、大きな何億ドルというような取引を書類の上で一件当たり五千ドル未満の小口にばらしてキャパを切れば問題ないわけですね。そういうやり方もあるでしょうし、されているでしょうし、もう一つはいまお話のあったリーズ・アンド・ラッグズですか、そういうやり方で、これは正常な取引だと称してどんどんドル売りが殺到するわけです。そのほか構造的な問題もあるでしょう。そういうものを全部解決して、そしてドルの急増を防ぐと、そういうお考えありますか。
  231. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) できるだけあらゆる努力を試みたいと思います。
  232. 多田省吾

    ○多田省吾君 午前中も日銀総裁あるいは林局長にも質問したのでありますけれども、十月末でわが国外貨保有高は約百七十八億ドルといわれておりますけれども、その外貨保有高に含まれないもので、いわゆる隠し外貨といわれるものがあるわけです。林局長の午前中の答弁によりますと、外貨預託が三十二億ドル。それから日銀輸入資金貸し付け金が約二十八億ドル。これは林局長はおっしゃらなかったんですが、日銀によるアメリカの輸出入銀行借り入れ金の先払いが約九億ドルあるんじゃないか。合わせて六十九億ドルをプラスしますと二百四十七億ドル。これは数え方によってはそうも言えるわけです。これは河野日銀総裁も、数え方によってはそうもとれると、これははっきり断言しておるわけですね。そうすると、西ドイツの九月末の二百四十億九千七百万ドルを六億ドルも超過して、日本がいわゆる世界最高の外貨保有高を持っているというふうにもとれるわけです。そして、いまのようにどんどん毎月三億ドルずつも外貨がたまっていくならば、年内に二百億ドルは当然こえるでありましょうし、来年またさらに急増するようなことになれば、幾ら大臣があらゆる手段をとってこの円再切り上げを回避するというようなことを言っても、外圧が強まる一方じゃないか。それとも大臣は、二百五十億ドルぐらいなっても、外貨保有高が幾らふえても、日本としてはもう円再切り上げは絶対回避するんだと、こういうふうにいまの心境として大臣は、まあ先行きは大蔵大臣でおられるのかどうかわかりませんけれども、来年のことを言えばまあ大臣も言いたくないでしょうけれども、これはどうなんですか、そういう御決意を持っているんですか。それとも、そんなに外貨保有量はたまらないと、このように思っていらっしゃるんですか。
  233. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私は、隠し外貨などというようなものはないんだと、こう考えているのです。そして、それはあるべからざるものじゃないかということを考えております。しかし、世の中にはあるべからざるものがある場合だってないことはないでしょう。だから、それは私自身の、おまえのそんな間違った信念だと言われればそれ切りでございますが、私は、そういうようなことは忠実な金融機関としてやるべきじゃないというふうに思いますし、あるいは、そういうようなことが行なわれるなんというのは、どうしても私は信じられないのが私のただいまの気持ちであります。
  234. 多田省吾

    ○多田省吾君 何か大臣は誤解されているようですけれども、何も私は悪い意味で隠し外貨と言っているんじゃないんですよ。何も大蔵省が隠そうと思って一そんなことははっきりあらわれているんですよ。ですから、去年あたり、福田元大蔵大臣だって、日本の外貨保有があんまりだまると外聞がよくないから、外貨預託のほうに少し持っていこうとか、ここではっきり答弁しているじゃないですか、この大蔵委員会で。こんなことは外国だってみんな知っていますよ。だから、その意味で私は言っているんですよ——アメリカの中・長期債券を買い入れよ、そうすれば外貨保有高が減るだろう、外貨預託をもっと出せば外貨保有量は名目上減るだろう、外国だってそんなことは知ってますよ。だから、それを入れれば日本の外貨保有量というのは西ドイツを凌駕するような姿になっているんだ。その上にもどんどんふえていけば、やはり円再切り上げの外圧が高まるんじゃないか、それを回避する道は持っていらっしゃるのか、それとも、二百五十億ドルになっても円は再切り上げはしないというように、はっきりここで、決意を持っておられるのかどうか、それをお聞きしているわけです。やはり投機筋は円の再切り上げをさせて、そしてもうけようとしているわけじゃないですか。大蔵当局はそれを回避しようとしているんじゃないですか。そのつばぜり合いじゃないですか。
  235. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) 私は、最近、係のほうから調査して出してまいりました書類で心強く思いましたのは、ことしの一−九月の間における輸出入状況の統計がとれたのであります。これによりますというと、一−九月のことしの輸出額総額は百九十八億三千七百万ドルであります。これが前年同期に対比しますというと一七・四%の増加でありますが、前年はそれが同期にどうなっていたか、その前々年とどうなっていたかと見ますと、これは一−九月でもって百六十八億九千四百万ドルでありまして、これは貿易高——輸出高であります。それが前年は、前々年同期に対比しますと二四・六%という増加になっておりました。その二四・六%がことしは一七・四%というわけで、輸出がずっと減少の傾向をはっきりたどっておるのであります。それに対比しまして、今度は輸入のほうはどうなっているかといいますと、輸入はことしの一−九月の状況では百三十五億三千三百万ドル、これは前年同期に対しまして一六・六%という輸入増加であります。ところが前年同期は百十六億二百万ドルということで、これは前々年同期に対しまして五・二%の増加にとどまっております。この状況から見ましても、輸入のほうは五・二%の増加が一六%、三倍からに歩合いにしては少なくとも輸入がふえている。輸出はそれが今度は逆に去年よりは、二四・六%が一七%に減っている、こういう姿であります。ことしの四−九月だけについても同様なここに統計がございますが非常に、ようやくスミソニアン体制以来のあの状況に対応して、そしてだんだんとその効果が貿易の結果の上にもあらわれかかってきておるんだというふうに私も説明を聞き、なるほどこんなになってきているものかなというふうに痛感いたしております。こういう状況でございますので、私はやはり去年以来約一ヵ年近くになろうとしておりますが、いよいよ体制がだんだんと立ち直ってきており、それに加うるに去年の六月の第一次の円対策、それにその次はことしの五月ですか、五月なら私着任前ですが第二次の円対策、それに今度の第三次の円対策と三回、その上にどんどんあらゆることを苦労をしてやっておるんであります。そうしますと、去年の効果があらわれるのはもうすでにあらわれかかってきている、そこへこれでもかこれでもかというので、日本としてはこの輸出入の貿易調整の問題で非常な苦労をしておるのでありますから、これが必ずやはり若干おくれてではありますけれども効果をあらわしてくるに違いない。そうすればこの問題はいまはあるいは苦しい時期かもしれませんが、これが必ずや効を奏してくるに違いないというふうに私は信じておるのであります。この点私の心境を御理解賜わりたいと思います。
  236. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣はそんな気休めおっしゃってますけれども、私はそういう大臣の心境はさっぱり理解できないわけです。せっかく一六・八八%の切り上げをしたのに国内対策がおくれたために第一次、第二次円対策のいわゆるほんとうにしり抜けの政策のために、またこのような円再切り上げの危機に見舞われているじゃありませんか。ことしの一月から九月までの輸出の伸びが一七%に減ったというようなことをおっしゃっていますけれども、一七%だってたいしたものであり、またことしの前半においてまあ不景気だったからなかなか輸出が伸びなかったという点もありますけれども、もう景気がようやく回復したというようなことで九月、十月とどんどん輸出がふえているじゃありませんか。そして田中総理は輸出の黒字幅をGNPの一%以内に押えたいようなことをおっしゃっていますけれども、もうことしは九十億ドルを突破して百億ドルになりそうな気配で、何とか十億ドル輸出増を押えたいと、こういうわけで四苦八苦しているんじゃないですか、田中総理も。それを大蔵大臣がそんな気休め言ったって通じませんよ。まあいつまで言っても切りがありませんので次の質問最後質問をいたします。  第三次円対策の第五の柱である「福祉対策の充実」についてその具体策を聞きたいわけでございますけれども、その中で、財政演説でも一部触れられておられますけれども、当面する緊急課題である国際収支均衡回復に資するため、公共事業等の追加を含む予算の補正と財投追加により事業規模で約一兆円云々とおっしゃっております。これらの補正予算、財投追加による公共事業投資の追加というものが国際収支の均衡回復に役立つというこの具体的な根拠を数字をあげて御明示していただきたいと思います。
  237. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 御質問は、今回の補正予算及びこれに伴う財政追加等によりますところの公共事業の投資の追加が国際収支の均衡上どのような働きをするのか数字をあげて説明しろと、こういうことかと存じますが、補正や財投によりましていわゆる公共投資を追加いたしますると、これはその公共投資によりますところの需要誘発効果ばかりではございません。民間部門に対する波及的な効果がございますので、その理屈からいいまして輸出プレッシャーが減少し、輸入の誘発が起こる、こういうことになるわけでございますが、これを計量的に計算をいたします点は非常に困難でございます。ただし、従前の傾向値と申しますか、過去におきますところの癖、それを平均して財政によりますところの公共投資を幾らふやしたら幾ら輸入がふえる、輸出が減る、こういうような計算をできなくはございません。それによりまして、一応かりにそのモデルによりまして計算いたしますると、平年度と申しますか、四十八年度に至るまで合わせまして大体十億から十五億ドルの黒字の減少になる、こういうことが言えるかと思います。ただし、これはモデルの癖がございますから、過去におきますところの構造、それから現在におきますところの経済構造輸入のパターン、そういうものが若干違うと思いますから、必ずしもそのとおりだと、こういうわけではございませんけれども、そういう計算ができます。
  238. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、最近金融緩和に伴って金融筋あるいは大資本の土地の買い占めが非常にひどいものがあるわけです。そのために税政策も予算委員会等でいろいろ述べられたのでありますけれども、それも非常に大事でありますが、いわゆる金融引き締め等の金融政策については何か大蔵大臣は考えておられるのですか。
  239. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 大臣がお答えになる前に、多少実際の現在の住宅融資に関する実態調査銀行局でいたしましたので、事前にお話しをいたしまして御参考に供したいと思いますが、確かに金融が昨年の秋以来のいわゆる超緩慢といわれている状況のもとでは、かなりの融資と申しますか、企業の手元が楽になってまいりまして、これがいろいろな方面に運用されるという傾向はあったわけでございます。その結果、不動産関係への金融機関からの融資の比率というのがかなり上昇しておることも事実でございます。  その中を調べてみますと、大体六割程度が分譲宅地用の融資ということになっております。それから残りの一〇%くらいが公共用地の取得、それから七、八%が貸しビルというような傾向になっておるのが、現在私どもが主として都市銀行融資のいわばほとんど全部という形で聞き取り調査した状況でございます。で、ただその中には非常にやはり使途の明確でないと申しますか、融資計画のもとになる相手の企業の事業計画がはっきりしないというようなものもございます。その辺のところについては今後も警告を発し、あるいは今後ともそういう実情調査を続けていきたい、かように考えております。しかし、いずれにしても基本的には金融機関の良識にまつべきことでもあり、今後そういう面での指導を続けていきたいと思いますが、何ぶん前提といたしましては、金融が超緩慢であったということが非常に大きな前提になっておると思いますが、けさほども日銀総裁の話にもございましたように、企業の資金需要がふえてまいりましたということ、あるいは日本銀行のほうでも貸し出しについての計画を聴取するという動きをことしの春から始めております。だいぶ昨年とは環境が異なっておるということが言えると思います。今後さらに資金需要は景気の上昇に伴ってふえてまいると思いますが、それについては、そういう面からの多少の金融のいわば締まり現象ということも起こってくるかとも思います。ただ日本銀行が主体的に引き締めに転ずるという態度は現在はとる段階ではないと考えておるわけでございます。今日の状況のもとでは、私どもは行政的に金融機関に対するそういう土地の投機資金に対する融資の自省を促すという姿勢を堅持してまいりたい、かように考えております。そのためには通達も発したいと思いますし、通達だけではなくて具体的に事情聴取ということを定期的に続けていきたい、かように考えております。
  240. 植木庚子郎

    ○国務大臣(植木庚子郎君) ただいま申し上げましたような態度で進んでおります。そして日銀当局は、御承知のとおりああした御意見も発表しておられますので、これまた非常に深刻に考えて、十分こうした問題が間違わないように注意を払っておってくださることも承知いたしております。
  241. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  なお、次回の委員会は、明十日午前十時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。    午後七時二十分散会      —————・—————