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1972-11-06 第70回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月六日(月曜日)     午後一時四十分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小澤 太郎君 理事 久野 忠治君    理事 倉成  正君 理事 小平 久雄君    理事 田中 正巳君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       江崎 真澄君    小川 半次君       大坪 保雄君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    瀬戸山三男君       辻  寛一君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤田 義光君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       安宅 常彦君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    有島 重武君       田中 昭二君    正木 良明君       矢野 絢也君    和田 春生君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣 三木 武夫君         法 務 大 臣 郡  祐一君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君         文 部 大 臣 稻葉  修君         厚 生 大 臣 塩見 俊二君         農 林 大 臣 足立 篤郎君         通商産業大臣         科学技術庁長官 中曽根康弘君         運 輸 大 臣 佐々木秀世君         郵 政 大 臣 三池  信君         労 働 大 臣 田村  元君         建 設 大 臣         国家公安委員会         委員長     木村 武雄君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      本名  武君         国 務 大 臣         (行政管理庁長 濱野 清吾君         官)         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      有田 喜一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小山 長規君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         総理府人事局長 宮崎 清文君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局経済部         長      三代川敏三郎君         警察庁長官官房         長       丸山  昂君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 黒部  穣君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         社会保険庁年金         保険部長    八木 哲夫君         農林省農地局長 小沼  勇君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省重工         業局長     山形 栄治君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君         消防庁長官   宮澤  弘君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、本日の国鉄北陸トンネル内における列車火災事故及び日航機乗っ取り事件について、運輸大臣から報告のため発言を求められております。これを許します。佐々木運輸大臣
  3. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 委員長のお許しをいただきまして、この予算委員会国会を通じまして、国民皆さま方運輸大臣として心からおわびを申し上げなければならない二つ事件が起きました。  それは、一つ北陸本線におけるところのトンネル火災事故であり、もう一つ日航機の乗っ取り事件であります。ほんとうに残念なことでありまして、その事件の内容を御報告申し上げ、心からおわびを申し上げたいと存じます。  まず、北陸本線北陸トンネル列車火災事故について御報告を申し上げます。  本日、一時十分ころ、北陸本線北陸トンネル内において、急行旅客列車、十五両編成でありますが、前から十一両目の食堂車から出火し、多数の乗客死傷者を出しましたことはまことに遺憾でございます。  本日十二時現在までの調査によりますと、乗客約七百六十名のうち、警察庁調査によれば、死者二十八名であり、そのほか病院にて加療いたしております方々が五百四十二名でございます。死傷者が発生しておりますことは、ほんとうに何ともおわびの申し上げようがございません。  政府といたしましては、運輸大臣を長といたしまして、関係各省担当局長委員とする事故対策本部を設置するとともに、運輸政務次官現地にとりあえず派遣して調査をさしております。また、国鉄監査委員会に対しましては、特別監査を命じ、原因事故発生後の措置保安管理体制あり方等について監査させることとしております。  また、死傷者方々に対しましては、医療、お見舞いその他について、遺漏のないよう国鉄指導いたしております。  なお、私も可能な限りすみやかに現地におもむきまして、被害者方々おわびを申し上げるとともに、救済措置に万全を期したいと考えております。  次に、日本航空機乗っ取り事件について御報告申し上げます。  本日七時三十六分、日本航空三五一便のボーイング727型機が乗員五名、乗客百二十名を乗せて東京国際空港を離陸し福岡に向かったところ、乗客のうちの一人の外国人がピストルを突きつけ、二百万ドルの現金要求するとともに、航空機をDC8型機にかえ、バンクーバー、メキシコ経由キューバに行くように命じました。  犯人タイマーつきの爆弾を持っているとのことであります。同機は、十時四十六分東京国際空港に着陸して、C8誘導路付近に駐機しておりますが、十一時十五分現在、乗員はいまだ機内にとどめられております。  日本航空では、犯人要求どおり二百万ドルの現金の用意をするとともに、キューバ行きのDC8型機を東京国際空港に用意し、出発できるよう待機中でございます。  運輸省におきましては、とりあえず九時二十分、東京国際空港に、空港事務所空港警察日本航空の三者で構成される対策本部を設置いたし、航空局長が直接指揮をとることといたしましたが、十一時、航空局、警視庁、日本航空によって構成される羽田ハイジャック事故対策合同委員会東京国際空港に設置いたしまして、対策本部をこれに吸収し、乗客乗員人命の安全の確保を最優先に万全の措置を講ずることといたしております。  このような二つの大きな事件が連続して発生いたしましたことはまことに遺憾のきわみでありまして、今後、被害にあわれた方々救済全力をあげることはもちろんでございますが、再びかかる事故の発生することのないよう、万全の措置を講じる所存でございます。  以上、現況を御報告申し上げまして、心からおわびを申し上げます。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 次に、去る二日の石狩炭鉱爆発事故について、通商産業大臣から報告のため発言を求められております。これを許します。中曽根通商産業大臣
  5. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石狩炭鉱災害について御報告を申し上げます。  去る十一月二日、午後五時四十八分ごろ、石狩炭鉱株式会社石狩炭鉱においてガス爆発によると思われる災害が発生し、十一月六日、本日午前六時現在、依然として三十一名が安否不明でございます。まことに遺憾にたえない事態でございまして、関係者に心からお見舞い申し上げる次第でございます。  通商産業省としましては、災害発生後直ちに札幌鉱山保安監督局長をはじめ鉱務監督官現場に急行させ、行くえ不明者安否不明者救出全力をあげております。本省からも安田政務次官及び青木公害保安局長等を直ちに現場に派遣し、救出作業指導及び原因究明に当たらせております。また、労働省からも、担当課長救出のため万全の体制で臨んでおります。  安否不明者救出等につきましては、関係各省の協力を得て、札幌において石狩炭鉱災害対策連絡協議会を十一月四日設け、万全の措置を講ずることといたしておりますが、なお、救出作業につきましては、約百名の救護隊によって行なわれており、けさ午前六時現在、坑内三カ所で作業中でございます。  今後の鉱山保安対策につきましては、災害原因を徹底的に究明した上で、監督あり方自主保安体制確立等について万全の措置を講じ、再びこのような災害を起こさないように、かたい決意をもって一そうの努力をいたしてまいる所存でございます。  なお、全炭鉱に対し、今次災害にかんがみ、保安状況の総点検を実施し、万全の措置をとるよう警告するとともに、各鉱山保安監督局部にすでに指示いたしまして、これを厳に監督しているところでございます。  以上でございます。
  6. 坪川信三

    坪川委員長 ただいま政府から報告のありました件について、辻原弘市君、鈴切康雄君、小平忠君及び谷口善太郎君から質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  理事会の申し合わせの時間内で質疑を願います。辻原弘市君。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 緊急に起きました不幸なできごとに対しまして、ただいま両大臣からそれぞれ御報告がございました。まことにわれわれといたしまして、いずれの事件をとりましても裏人命に関するきわめて遺憾な問題でございまして、石狩炭鉱事件におきましてなくなられた方々あるいは行くえ不明になっておられる方々、また、本日午前一時の北陸線の思わざる列車事故においておなくなりになった方々、けがされた方々が多数おられるようでありまして、心から御遺族の方、また、御本人に対してお悔みとお見舞いを申し上げたいと存じます。  なお、ハイジャックの問題につきましては、いま御報告のありましたように、いまだに確たる見通しがついておらないようでありますが、乗員三名、乗客百二十名という多数の人命が飛行機に閉ざされたままであります。まことにお気の毒と申さなければなりません。  私は、この三つの事件に対しまして、緊急に政府としてなすべきこと、また、国民が疑問に思っておりますること等を簡潔にお尋ねして、政府に強く要請、要望いたしておきたいと思います。  まず、北陸線事故でありまするが、聞きますると、電化されました列車としてもきわめて近代的な列車であるようであります。「きたぐに号」というのは、そういう列車だと私は聞いておったのでありますが、それが一転してこのような阿鼻叫喚の地獄をここに現出したということは、一体国鉄は何をしているか、こう申し上げざるを得ないと思うのであります。しかもまだ、いまの運輸大臣の御報告によりますると、特別監査を命じ、事故原因究明に急遽当たらしているということだけでありまして、具体的なお話はございません。しかし、われわれがこの情報を得ただけでも幾つか疑問に思うこと、こうしたらよかったのではないかと気がつくことがあるのであります。  その一つは、この北陸トンネルは、長さは十三キロ以上に及ぶいわば長大なトンネルであります。このトンネル内において、列車がたまたま通過中十一両目の食堂車から火災を発生した。しかも、新聞、テレビ等で報道されるところによりますると、火災そのものよりも煙によって、煙に取り巻かれて救出が困難であった。おそらく私の察するに窒息せられたのではないか、こういうことが主たる原因ではないか。かつて私は、大阪千日前事件のときにも、直接現地調査におもむきまして痛感いたしたのでありまするが、最近のこの種高層ビルとか、密閉された長大トンネルの中というところにおいては、こうした事故は決して予想にかたくないのであります。それがなぜ一体煙に対する備え列車にもトンネルにも何らなかったのか、これが私の疑問とする一つであります。  それからもう一つは、列車内には確かに消火器があったようであるが、トンネル内には何にもそういうものの備えがないのであるから、ごく短い、前を見ればすぐ入り口のあかりがわかるようなトンネルでありまするならば、これはまた別でありましょう。しかし、一たび中に入れば、十三キロといえばたいへんな長さであります。まっ暗な中でどこにも通気口がない、どこにも消火せんの一つもない、水道せん一つもないというようなことをそのまま放置しておいて、近代的な輸送機関であるということが言えるであろうか、人命尊重を全くしているのだということが言えるであろうか、私は深く疑問に思うのでありまして、まずその二点について、運輸大臣からはっきりしたあなたの御決意と、またお考えを承りたいと思います。
  8. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 辻原委員御指摘のように、ことに鉄道における長いトンネルの場合などにおきましては、消火器の問題とか消火せんの問題とか、そういうものには万全の処置を講じなくてはならぬことはお話しのとおりであります。おそらくこういう点につきましても、できる限りの監督指導はいたしておったことと思いますが、しかし、こういう事故が起きてしまってからでは取り返しのつかない問題でございますので、お話しの点につきましては、今後重々万全の上にも万全を期すようにいたしたいと考えております。ただいま、何せ現場状態すらもわからぬような状態でございますので、お話しの点は十分ひとつ心にとめて今後指導いたしたい、こう考えております。  また、これからのトンネルをつくるにあたりましても、技術的にもどうしたならばこういう長距離トンネルというものに対する安全対策が講ぜられるかというようなことにつきましても、十分技術的に検討いたしたい、こう考えております。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 事故原因究明されて、しかる後に技術的な徹底した研究をおやりなさるということでありますから、本日はそれ以上は申し上げません。  ただ、一つつけ加えますならば、いわゆる蒸気機関車ではなくて電気機関車、完全に電化された列車であります。蒸気機関車でありますならば、蒸気排出口とでも申しますか、そういうものがあって、ある場合においてそれが助けとなっておるというようなことも私は聞くのでありますが、そういったせっかく便利になったものが、人命に対してはむしろこういう危険をもたらすということでは、これはたいへんなことであります。そういうことをなからしめるために、それらの対比研究も、この際十分進めていただきたいと思います。  なお、この件につきましては、どこから考えましても、なくなられた方、傷つかれた方は、全く国鉄、これは国家責任であります。先ほど運輸大臣が、御遺族の処遇なりあるいは御本人治療等には万全を期したい、お見舞いについては万全を期したいということがありましたが、この点は口だけではなくて、ほんとうに十分御遺族が納得されるように、国民が納得されるように私は措置をしてもらいたいと思います。幾ら国鉄がPRをやりましても、幾ら運賃の値上げを強調いたしましても、このような事故を中途はんぱにほうっておいたのでは、これは国鉄に対する不信が高まるばかりであります。このことを申し添えておきたいと思います。  第二の問題は、ハイジャック事件であります。  思い起こしますのは、かつて「よど号事件が起きましたときに、わが国の内外からこの問題に多くの注視を集めまして、国会におきましても、、超党派でこのハイジャック防止ということが取り上げられて、いわゆる防止法がつくられておるはずであります。また、承りますると、昨年十二月には国際条約にも加盟をして、日本のみならず関係各国との連携をとりながらハイジャック防止について、その万全の対策を期していこうと政府決意をされたはずであります。  ところが、本日起きました事件を見ますると、まことに、ことばの表現は適切でないかもしれませんけれども、いとも簡単に事が行なわれておるということ。この事態一体どうなのか。しかも、国際線ではございません。日々何十便、何百便と飛んでおる国内線の、しかも幹線の福岡-羽田間において起きた問題であります。私どもが聞いておりました範囲では、少なくともメーン空港である羽田には、その種凶器探知器備えられており、かなり綿密、厳重にチェックせられておるということを聞き及んでおったのでありまするが、きょうの事態を見ますると、一体何をやっておったのか。一体、そういういい器械というものは、国費をもって、かなりの金をそれに投じてやったところで役に立たぬものであるか。ここらも国民としては不安を感じますと同時に、そういういわゆる保安対策に対して非常に危惧の念を持つのであります。一体羽田におけるこの種の保安対策――これはメーン空港であります。国際空港であります。一体どうであったのか。同時に、この種事件というのは、単に羽田だけ、福岡だけ、大阪だけで起きると即断するのには幾多の危険な要素がございます。けしからぬことであり、残念なことではあるが、しかし、それぞれ地方空港においても、われわれはそういったことを予想しなければ対策にはなりません。したがって、事前チェックという、この保安対策一体どうなっておるのか、自信があるのかないのか、また、現在不備であるのか、まず、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。  それから第二に、私が特に申し上げたいのは、先ほど申し上げましたように、いまなお五名の乗員、百二十名の乗客は、不安のおののきの中に機内に閉じ込められておるのであります。伝えられるところによりますると、犯人は二百万ドルの要求と、それからキューバへの運航を迫っておるようでありまするが、一体今後――これは微妙な対策の問題もございまするから、私は答えられにくいところについてはあえて申しません。あえて申しませんが、この事態の進行は刻々テレビで報道せられて、国民は非常な不安を持っておりまして、ましてや関係御家族、友人の方は、ほんとうに私は、いま不安のどん底におちいられておると思うのであります。やはりこういうときには救いの神、安心してください、政府はかくかくの決意でありますということがあれば、それは大きな救いになると私は思うので、あわせてこの点についても万遺憾のない方針を、確信をもってとられようとしておるのかどうか、ここの点を伺っておきたいと思います。
  10. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 お答えいたします。  空港保安対策につきましては、最も完全にしなければならぬことは当然でありますので、先般、私自身が、これは羽田でありますけれども、警備状況を見せていただいたのでありますが、私のようなしろうとでありますから、もちろん見た程度ではわかりませんが、警備の任に当たっている人たちの話では、これで万全ですというお話でございましたから、安心はしていたのであります。しかし、こういう事件が起きましたならば、万全の上にも万全をしなくてはなりませんので、今後なお一そうの警備を厳重にするようにつとめたいと存じます。  お話し現況でありますが、対策責任者には航空局局長を充てておりますが、その対策の第一といたしましては、いかなることがあっても、まず百二十名の乗客、あとは乗員の生命を安全に守ること、このこと一点にしぼって、いかなる条件が出されても、一応この生命を守るということにポイントを置いて話し合いをし、対策を練るようにという指示をしておりますので、何とかその方向に進むと確信を持っております。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 この際、私は国家公安委員長にも所見のほどを承っておきたいと思います。
  12. 木村武雄

    ○木村国務大臣 銃器、凶器その他に対する探知の問題でありますが、やはり最高のものを使っておったつもりなんであります。しかし、やはり対策というものはこれが万全なものじゃないということだけは、今度の事件で切実に感ぜられたのでありますから、より以上の知恵をしぼりまして、ほんとうに安心のできるような対策をこれから考えてみたいと思っております。  それから、いまの状況でありますが、報告させてもらいます。  本日の午前八時三十分ごろに、福岡行きの日航機351便なんです。それが大島上空に差しかかりましたときに、拳銃のようなものを持った五十歳前後の男が機長室に入りまして、そして飛行機を乗っ取った。そしてそのときには外国人だ、こう思っておったんですね。そして日本人も一人おる、こういうことだったものですから、犯人が二人だ、こういうように思っておりましたところが、時がたつに従いまして犯人は一人になった。しかも、外人ではない、日本人だ、こういうことがはっきりしたのであります。そしてその男は条件を持ち出したのです。一つは、キューバに向かうことと、米ドルで二百万ドルを積んでもらいたい、そのうち三十万ドルは新しい札を持参してもらいたい、こういうような条件を持ち出してきたのであります。そしていろいろと機長を通じて話し合いをしたその内容を伺ってみますと、まともな者ではないのじゃないか、言いかえますと精神異常者じゃないかというようなことがだんだんと出てきたのであります。  それでありますから、その飛行機を乗っ取った者は複数でなくて一人であるということと、それからもう一つは、犯人は異常な精神を持っておる者じゃないかということが一つと、こういう点から判断いたしまして、万全を期することができる、百二十人と五人の乗員と、それに対しては人命を救助するという点においては万全を期することができる、こういうようにいまは考えておりますが、やはりそういう状態でありますから少し時をかけなければならない、即座にこれを逮捕するということにも若干の危険があるものですから、少し時をかしてもらいたいというのがいまの状態でありまして、最初に予想いたしました、あるいは連合赤軍であるとか、それから国際的に関係のあるようないろいろな団体であるとかというようなことは、だんだんと消えてまいりまして、そういうような事件になりましたので、この問題だけは若干時を与えてもらいましたならば、人命救助に関する限りは万全を期することはできるのではないか、こういうように考えております。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 お答えのありました後段のくだり、人命救助については時間をかけて万全を期したい、ぜひ私はそうあってもらいたいと思います。これはかつてのミュンヘンオリンピック事件の当時を私は忌わしく思い起こすのでありまして、そういうことが絶対なきよう、あくまでも人命尊重という立場に徹してこの安全を期してもらいたい。むしろ、できると思いますじゃなくて、何としてもやりたいという大臣決意が私はほしいのであります。しかし、時間がございませんから重ねては申しません。ひとつ、時間をかけてでも、必ず人命については尊重し、安全を期すという態度に終始をしていただきたいと思います。  最後の問題は、通産大臣に伺いますが、石狩炭鉱における災害、すでに、発生は二日の日であったと思いまするから、きょうで数えて五日目であります。なぜいまだにその救出ができないのか、これも疑問とするところであります。なぜ、こんなに日にちがたっておるのに救出ができないのか。もちろん現地におきましては全力をあげられておることには違いないと思うけれども、しかしいかさま、遺族の立場、あるいは心配をして見守っておる国民の立場からいいますると、なぜ五日もかかってまだめどがつかないのか、もう生きておられないのではないか、こういう心配が起こってくるのもあたりまえであります。そのことについて通産大臣はどう督励をされておるのか、ここを明らかにしておいていただきたい。  それからもう一つであります。あなたが先ほどの御報告の中で、保安設備その他については、自今万遺憾なきを期したいと、まことにこう申しては失札であるが、聞きようによれば通り一ぺんの御答弁がありました。炭鉱ガス爆発事件というのはいまに始まった問題じゃございません。ここ数年の間にかなりの件数が続発しておるのであります。そのたびに、今後は起こしませんと、企業者も言います。政府も言います。しかし、同じような形態の事故がまた繰り返されておるじゃありませんか。そのために悲惨にも三十名、四十名というあたら人命、おそらくやこれは一家のつえ、柱であります。そういった方々がなくなられて、遺族はあの雪空の中でほんとうに路頭に迷っておる姿であります。一体保安設備はどうだったのか。あなた方が常に言っておられるように完ぺきを期して、自今なからしめるということが着実に実行されておれば、こんなことはないはずであります。実行されておらなかったのか、現地における保安設備はどうだったのか、この点を私は大臣に明確にしておいていただきたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まことに残念な事態でございますが、意外に落盤が大きいようでございます。ガス爆発の規模はかなり大きかったように見受けられまして、いま百人ばかりの人間で三番手に分かれて、おのおの現場に急行するためにやっておるのでございますが、何せ坑道が狭いので、一カ所に入れる人間も二十人以上は入れられないという情勢でございます。それからメタンガスが中に充満している危険性が非常に多うございまして、悪くすると二次災害を発生する危険性も起こりかねない。そういうことで、心ははやるのでございますけれども、なかなか中へ入りにくいというのが現状でございます。それでも、これは三井系の鉱山でございますので、三井系の救援隊を増派し、それから北炭のほうや住友系のほうにも救援を求めまして、その応援隊もかわり番こに協力していただいて、夜を日に継いで実はやっておるのでございます。  それでこの監督の状況でございますけれども、本鉱山は保安格づけ第一種でございまして、毎月一回巡回検査を実施しております。それで巡回検査の結果、そのつど指示し、重要事項については改善計画等を提出させて、必要に応じてさらに追跡検査も行なっております。本年に入りまして、十月までに巡回検査は延べ十回、十九日間やりました。巡回検査の結果判明した違反件数は五十四件でございます。そのうちガス、炭じん関係が二十六件。ガス、炭じん関係違反に対する措置は、即日改善を確認したもの五件、期限つき改善指示十件、改善計画書の提出指示十件、全労働者への注意指示一件となっております。特に六月ごろからガス、炭じん関係の違反が増加している傾向がありましたので、九月二十六日、二十七日の両日の巡回検査時には二・二%の可燃性ガスが認められ、一部区域については立ち入り禁止の措置を指示しております。引き続きまして十月六日には追跡検査を実施いたしましたが、可燃性ガスが二%をこえる個所もあり、立ち入り検査及び通気改善の指示を行ないました。その後、十月十二日に社長及び生産課長を滝川監督署に召喚いたしまして、今後の改善計画について指示、聴取いたしましたが、改善方法が具体的でないため、再検討するようさらに指示をいたしました。十月二十日には社長、生産課長、保安課長を滝川監督署に再度召喚しまして、具体的な改善計画を聴取し、それにより保安状況の改善を行なうよう指示いたしました。そうして、実施状況については十一月上旬に追跡検査を行なう予定になっていたところでございます。十月二十六日に検査をいたしましたときに、現場でマスクをかけない者があったようでございまして、そういう点もその場で注意をして、マスクをかけさせるようにしたという事例もございます。当局といたしましては、何回か責任者を呼びまして、そのつど注意をしてきたのでございますけれども、ともかく監督不十分のために、こういう事故を起こしましたことはたいへん申しわけなく思う次第でございます。
  15. 坪川信三

    坪川委員長 辻原君に申しますが、お約束の時間が経過いたしておりますので、簡潔に願います。
  16. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんから、ただいまの御報告についても幾多疑問があります。ありますが、それは他日に譲ることにいたしまするが、第一極の格づけの保安設備において発生した事故ということを考えるならば、あなたが最後に言われましたように、監督不十分という責めは免れますまい。同時に、これらの保安対策が、前回のこの種ガスの爆発事件のときにも指摘をされておりましたが、形式化しておるのではなかろうか、こういった危惧を私はいまの御報告を得ても持つのであります。どうかそれらの点についていま一度徹底的に、それぞれの保安対策を再検討せられることを、強く私は要望いたしておきます。  同時にもう一つは、いまだ行くえ不明の方々もいらっしゃいます。もし不幸にしてこれらの方々がなくなられるというような場合におきましては、その責任は企業でありまするけれども、企業だけに放置せず、死者、負傷者の今後の取り扱いの問題、お見舞い、補償等については、政府としても一半の責任を持って、十分な行政指導をやられることを望んでおきます。  最後に、総理に私は一言だけ申し上げておきたい。まことにいやなことを申すようであります。全くこの三つの事件、時を同じくして起きたきわめて不幸なできごとであります。総理は、産業優先から人間優先、人間尊重の政治へと、ついせんだって本会議、ここでたいへんに力こぶを入れて話をされたのでありまするが、その直後にこういう一連の事件が起きたということは、これは一体どうなのか。私は総理に対してもたいへんお気の毒に思うけれども、しかしよく考えてみれば、この国鉄の問題にしても炭鉱の問題にしても、私はやはり政治に責任がないとはいえない。どこかに、時代の進展とともに人命に対する軽視、汽車はスピードだけ上げればよろしい、美しい汽車を速く走らせればよろしいというようなことに偏しはしておらぬか、産業は生産を高めることのみに狂奔しておるのではなかろうか、こういうことを思うのでありまして、端的に言えば人命軽視の一つの世相のあらわれではないか、政治のあらわれではないかとすら思うのでありまして、私は総理の人命尊重に対するかたい決意を、この際ここで承っておきたいと思います。  これで私の質問は終わります。
  17. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 三つの事件のうち、第一に報告をしました北陸線、第三の炭鉱の問題、これは非常に遺憾な問題でございます。本件に徴しても、人命尊重のために万全の措置を講ずべきことは言うをまたないわけでございます。しかし、今度の北陸線事件は十分にひとつ調査をしなければならないと思いますのは、万に一つというようなケースが起こっておるわけでございます。それだけに非常に私は、この事故というものに対しては徹底的に、科学的にも技術的にも調査を進めて、万遺憾なき、将来長きにわたってこのような事件を未然に防止することができるようにしなければならないと思うのです。隧道の中、四キロのところでどうして起きたのか。しかもそのときにどうして隧道の外に出られなかったのか。これは、隧道といえば毎日地下鉄は走っておるわけであります。こういう事故は世界的にも非常に希有な事故でございます。どうして一体こういうことが起こり得たのか。非常に技術的に考えても希有な事故である。それだけに、トンネルに保安員を置くとか、トンネルの中に消火設備を設置するとか、それから通風排気の問題もございますが、これはきっとないと思うのです。だから今回の事故が非常に大きくなったと思います。したがって、原因究明、それから車自体の技術的な問題等も、すべてを解決しなければならない。また解決するためにも、調査を技術的、科学的に進めなければならない問題だと思います。  それで、なくなられた方々には非常に申しわけないことでございますし、これは国も全責任を持たなければならないことだと思います。いままだ五百数十人の方々が治療を受けておられる。ほんとうにお見舞いを申し上げなければならぬと思います。  炭鉱の問題は、これはもう私もこの前まで通産大臣として、二回も三回もこういう例にぶつかったわけでございますが、これは何とかして炭鉱災害というものをなくしたいということで、もう保安設備に対しては非常に強い要求をしておるわけでありますし、関心もあるわけでありますが、だんだん採算が非効率になってくるというようなこともあるのでございましょう。二千万トン以上という決定をしたばかりであって、このようなことが再び起こる。これはもう炭鉱災害防除に対しては徹底的にやって、もうここらでいいんだというわけにいかないと私は思います。人命はあらゆるものよりも重いということで、やはりここらでひとつ日本の炭鉱というものに対するほんとうの結論を出さなければならないんじゃないかと、しみじみたる思いでございます。一日も早く救出されることを望んでおります。  ハイジャックの問題、これはもう時間の問題で、もう少しで内容が明らかになるようでございますので、いずれ万全の処置をいたしたいと存じます。
  18. 坪川信三

    坪川委員長 次に、鈴切康雄君。
  19. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど各大臣から概況説明がありました石狩炭鉱ガス爆発事故、それから北陸本線列車火災事故日本航空ハイジャック事件、いずれも人命に関する問題だけに、私は瞬時もおろそかにできない問題であると思うのであります。私は、公明党を代表いたしまして、それらの諸点について質問を申し上げる前に、これらの事故によって犠牲になられました方々に対して衷心より哀悼の意を表すると同時に、負傷者に対しましては一日も早く健康を回復されることを祈ってやまない次第であります。また救助にあたっては、一刻も早くその遂行に当たられんことを要望する次第でございます。  私は、いま辻原さんからいろいろお話がありましたので、さらに重複することはなるべく避けて御質問を申し上げたいと思うわけでありますが、具体的にお話をお伺いいたします。  まず第一に、石狩炭鉱ガス爆発事故の問題でございますけれども、わが党は、この事故がありましたあとすぐに現場に直行いたしまして、なおその場所においての対策本部を設置いたしました。多くの犠牲者に対して、この救助が一日も早からんことを願って行動を起こしているわけでありますけれども、実は先ほど通産大臣が、札幌の鉱山保安監督局から会社に対して改善命令が出されておった、こういうお話でございましたけれども、その内容についてあえてお触れにならなかったわけであります。しかしその改善命令というのは、何と今度の事故を起こしている主要の、いわゆる同採炭場におけるメタンガスの多量に発生をする事実について改善命令は出されたということを聞いております。それであるならば、これをなぜ未然に防げなかったかということは、私は大きな行政の怠慢ではないかと思うのであります。  そこで私が考えるには、監督局はいわゆる通産省の所属になっております。通産行政はどちらかというと生産第一主義の姿勢が常に一貫をしているわけであります。そこに私は大きな問題があろうかと思うのであります。私は、今後の通産行政に対して少なくとも、こういう事故が相次いで起こるということになれば、発想の転換をしていかなければならないのではないかということはまず言えるのではないかと思います。  その御所見と、それからもう一つは、保安についての命令はございますが、罰則規定がないので言いっぱなしになり、官庁としては責任を言いのがれることはできるが、ほんとう人命尊重を貫くことができないでいるのが現状であります。監督行政は通産省から労働省に移管をすべき問題ではないか、この点を私お伺いしたいのであります。少なくとも、警告とかあるいは命令に対し、これを実施できなければ停止させるとか、あるいは命令を実行できるよう援助をするとか、どちらかがなければ人命尊重は有名無実になってしまうのではないかと思うのでありますが、この点についてまずお伺いをする次第でございます。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 炭鉱のような場合は人命が一番大事でございますが、生産と保安というものが表裏をなしておるわけでございます。坑道の掘さくをどんどん進めていくという生産面には、必ず保安ということが先行していかなければならぬわけでございます。そういう意味において、むしろ通産省がこれを引き受けて、生産と同時にこれを監視する。そしてもしそれが十分に行なわれなかった場合には、生産の面からいろいろな作業を禁止するとか制限するとか、そういうほうが私は実効があがるのではないかと考えます。  しかし、いまのお話の御指摘のように、生産に偏した考え方はいけません。そういう意味において、省内におきましても保安監督ばかりを専門に担当する部局を置きまして巡回さしておるわけでございますが、それらの監督のしかたあるいは罰則の適用、罰則をどういうふうに設けていくかという問題、そういう諸般の点につきましては、御指摘のように検討を要するところもあると思いますので、この点は至急取り上げてみたいと思います。
  21. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 通産行政ということになりますと、生産第一主義ということはおのずとまず表に出てくるわけでありまして、そこに、保安というものが実際にあっても、まず生産の上に立った保安という考え方になってしまうのであります。しょせんは、やはり人命を尊重するという立場であるならば、通産行政からこの際労働行政のほうに移管をすべき筋合いのものであると私は思うのであります。その点について、あとでけっこうでありますが、総理大臣、やはりそういうところに今日の大きな炭鉱爆発の問題が相次いで起こっている大きな原因があろうかというふうに思うのであります。あとでお聞かせ願いたいと思います。  事業主が保安に力を注ごうという気持ちは実際にあっても、財政的にできない場合も非常に多いわけであります。で、金融は採算がとれるかどうかだけに着目するから、出血的な保安措置をする場合、政府としては何らかの補償をしてあげなければ人命尊重は事実上できない、私はそのように思うわけでありますが、その点についてお伺いをいたします。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 従来ともに保安関係につきましては、炭鉱が斜陽化している現状にかんがみまして、ガスの防除、あるいは送風関係、あるいはガスの検知等につきまして、国が補助金を出して促進しているわけでございます。大体三分の二は国が金を出すということでやっておるところでございますが、今回の災害もガスが原因のようでございますので、これらの扱いにつきましても、もう一回しかと再検討してみたいと思います。
  23. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第二点の北陸本線列車火災事故に対しては、国鉄並びに運輸省においては、避難体制に万全を期したとは私は思えないのであります。先ほど総理大臣が、万が一の事故というふうにおっしゃっておったわけでありますけれども、その万が一が今日大きな人命を奪ったということを考えたときに、その万が一でも私はあってはならない、そう思うわけであります。で、たとえて言うならば、飛行機とかあるいは船とか、そういうときには必ず私は避難訓練ということについて、乗客に対して克明にいろいろの話もするし、また乗客はその避難訓練ということによって、常に緊張しながら乗っておると思うのです。ところが、今日この列車の問題については、全く避難訓練ということに対して、何ら乗客に対しての話がしていないということに、私は今度の大きな事故原因もあったのではないかと思うのでありますが、その点についてお伺いいたします。
  24. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 今度のこの事故原因は、よく究明してみなければまだわからないことは、先ほど申し上げたとおりでありますが、いかなる事故が起きましても、列車などというたくさんの人に利用していただく場合におきましては、お話しのような避難訓練ということは、当然これはふだんからやらなくてはならぬ問題だと思います。しかし、現在のような状況で、何百人と乗っている場合でも、車掌が一人か二人というようなことでございますから、今後十分この避難訓練について、私自体も検討してみたいと思います。  また、ここで申し上げたいのは、今回のは火災ということでございますので、この火の取り扱いがどうなっていたかという点につきまして、食堂車あり方という点についても、あわせて十分検討しなくてはならないのじゃないか、こう考えております。
  25. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結局、私は、避難体制に対する運輸省並びに国鉄指導が行き届いていなかったところに、今日の大きな原因があると思うのです、ある程度は。それで、今後やはり新幹線、先ほど総理が言われたように地下鉄、これは万が一に火災になった場合に、再びこういう事故が起きないとも限らない要素を含んでいるわけであります。ですから、そういう点から考えて、私は、安全かつ迅速な避難体制に対して、あらゆる事故を想定して、その想定をした事故の中において万が一の問題をも想定をして、これに検討を加えるべきではないか、こう思うのでありますが、もう一度お聞かせ願いたい。
  26. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 お話しのとおりであります。
  27. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三点でございますが、ハイジャックの問題であります。  乗客並びに乗務員の人命を救助することがまず先決であるということは、先ほど政府のほうからお話がありました。私はそういう観点から考えるならば、この対策について軽々な処置をとるべきではない、慎重にやるべきであるというふうに、まず要望を申し上げておきたいと思うのであります。  国際線と国内線におけるところの危険物の監視体制でございますが、国内線においては、いわゆるエアバスというような安直な考えのもとに、監視体制が、どちらかというと国際線から比べると軽視されている、こういうふうに私は思うのであります。それは、私も実は八丈島に飛行機で行ったときに、その監視体制の中をくぐったことがございます。そのとき私はあえて、どれだけの効果があるかということで、バッジをはずして入ったわけでありますけれども、そのとき確かに金属性のものを持っておりましたので、赤いランプがついたわけであります。しかし、それに対して非常に監視体制に弛緩があるというような状態でありましょうか、そのことに気づかずして私は難なくその中を通った、そういう経験がございます。こう考えたときに、これは危険だなというふうに実は私そのときに思ったことがあるわけでございますので、そういう弛緩の問題からこういうふうな重大な問題が起きたというふうに、私はいま感ずるわけであります。  そういうことから考えますと、いままで監視体制によってどれだけこういう問題が発見されたか。もっと私は国内線においても厳重な監視体制というものが必要じゃないか、そのように思うわけであります。その点についてまず運輸大臣の御答弁を願って、それからさらに、先ほど私が申し上げました問題を含めて、今度の問題はまことに人命軽視という立場からこういうふうに大きな問題が起きたと私は思うわけでありますが、総理大臣はこの問題等を通じて、今後総理大臣人命尊重という立場に立ってどのようにお考えになっているか、最後にお聞かせ願いたいのであります。
  28. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 「よど号」のハイジャック事件以来、ただいまお話しのような予防処置につきましては万全の対策を講ずるということで、官民関係機関からなる空港保安委員会の設置をいたしておりまして、空港警備の強化、旅客の氏名、連絡先等の確認、凶器類の機内への持ち込み禁止、また旅客の手荷物の点検及び必要な場合の点検、凶器発見器の設置、繰縦室のドアのかぎの扱い方、機長の権限強化等の八項目にわたるところの条項を決定いたしまして、それぞれ処置を講じておったのであります。もちろん、こういう八項目にわたる項目によって今日までこれらのことを実施してまいりまして、相当な効果をあげております。ことに、羽田などにおきましては凶器類の発見等は、ここに数字はございませんけれども、先般私が参りましたときにも、こんなにたくさんの凶器が発見されたのかなというほどに効果をあげていることは事実であります。  しかしながら、こういう事件が起きたのでありますから、なお一そう厳重な処置をすることを指示いたしたいと考えております。ただ、国内線であるからこれをおざなりにするというようなことは、決していたさないつもりでございます。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 人命尊重は、あらゆるものに優先すべきであることはもう申すまでもないことでございます。今度の炭鉱の問題北陸線の問題はひとつ徹底的に原因究明する、そして再びこういうことが起こらないように措置をするということが、一番必要だと思います。  特に炭鉱災害というものは、これは毎年、何回も何回も起きておりまして、それでそのたびにこれでいいということでは私は済まされない問題だと思う。ですから、炭鉱というものがもうだめであるならば、これをやめてしまうということに踏み切るべきだと私は思います。そうでないと、これは非常にきわどい、これでだいじょうぶであると言いながら、何年かのうちに何回も起こるようなところでもなお採炭をやっておるというようなことは、これは私はもう終止符を打つべきであろうということを、ほんとうに今度の石狩炭鉱の問題でしみじみとそう感じたわけでございます。私自身が通産大臣の職にあって、その間住友の問題もございましたし、三菱の問題もございましたので、今度はこの炭鉱の問題をもう最後にして、ほんとうに再びいかなることでもかかる事態を起こしてはならない、そういう状態まで覚悟しなければならない、こう考えております。
  30. 坪川信三

    坪川委員長 次に、小平忠君。
  31. 小平忠

    小平(忠)委員 このたびの突発的な三つの事故事件に関しましては、まことに遺憾でございます。先ほど両大臣から御説明を受けたのでありますが、私は民社党を代表いたしまして、簡潔に若干の質問を申し上げますが、その前に、このたびのこの不慮の災害、突発的なこの事件事故によりまして犠牲を受けられた方々に、心からなる御冥福と、そしてまたその被害者、遺家族に対しまして、心からなるお見舞いを申し上げる次第であります。  第一は、石狩炭鉱ガス爆発事故でございますが、二日の夕刻発生いたしましてからやがて四昼夜になろうといたしております。九十時間をこえたのであります。にもかかわらず、現在その坑内で作業をいたしておりまする作業員が、いまだに救出できないということは一体どういうことか。通常炭鉱災害の場合にはいろいろな悪条件が伴います。ガスの蔓延、さらに崩壊による水の流出によっていかんともできない問題等があるのでありますが、すでにガスの排出、水の撤去を完了いたしております。ただ崩壊のみであります。五日目を迎えた四昼夜になんなんといたしておりますが、何でこの救出ができないか。すでにもう四昼夜でありますから、人命はおそらく絶望でないかとさえいわれておるのでありますが、通産大臣、所管大臣といたしましてどのような救出処置をとっておられるのか、この際明確に承りたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 実際この実情を調べてみますと、ガス爆発の規模が予想外に大きかったのではないかと思うのでございます。現在までに千七百三十五メートルのところまで掘進していっているわけでございますが、ここに行く間にも多くの崩落がございまして、それを取り取り入っているわけでございます。ところが、坑内が非常に狭いものでございますことと、もう一つは、ガスがまだ相当中に充満しておるわけでございます。でありますから、中で作業する時間もきわめて短い時間で交代要員を入れなければならない。そういうことで、中が狭いという点とガスがあるという点において、思うままに活動が発揮できない、そういうことであるのでございます。そしてもう一つは、よほど保安を注意してやりませんと、メタンガスがかなりあると予想されますので、二次災害を起こしてまた引火爆発する危険性があるわけでございます。千七百メートルぐらいまで行きましたけれども、この先にまだかなりの崩落があるのではないかと予想もされております。  しかし、だいぶ前進してまいりまして、もう一息というところまで参りましたから、全力を傾倒して、ほかの炭鉱の御協力も得ましてやっておりますし、通産省といたしましても、約二十名の監督員が現場へ行きまして、かわり番こに坑内に入りまして、一緒にやっておるというのが実情でございます。
  33. 小平忠

    小平(忠)委員 通産省として最善の努力をいたしておることは理解できるのです。私もあの発生直後、党を代表して現場にかけつけてお見舞いと、そして調査をいたしてきたのでありますが、ちょうどその際通産政務次官とも一緒になりまして、ともあれ人命救助が先決だ、いっときも早く救出しなさい、やりましょう、また政府全力投球をしよう。それからすでにもう三昼夜たっておる。私は、ただいま総理大臣も御指摘されましたが、毎年毎年この炭鉱災害についてこのような災害、そしてとうとい人命が失われていく。やはり根本的に問題がありはしないか。すでにさっきの質問者にもありましたように、事業主に保安の責任を負わせる、鉱業権者にその責任を負わせる、監督官庁は別な立場で監督する、この二元行政がやはり問題がありはしないか。私はこの機会にこれを徹底的に究明いたしまして、単に、もう二度とこのような災害の起こらないように注意します、では済まされないと思います。したがって、根本的にこのような炭鉱災害をなくするために、特に石狩炭鉱は中小炭鉱として過日表彰を受けたばかりの優良炭鉱です。にもかかわらず、このような災害を受ける。そして明年からは二千万トンに減産をするという、そういうやさき、ただでさえ保安施設が大手から見ると微弱です。ですから、このような災害を受けると同時にもう閉山の声が飛んでおる。私は、石炭産業のいまの危機を打開する上からもまことに遺憾なことでありまして、通産大臣、この機会に根本的にこのような災害を未然に防止するためにはどうするか、早急にその具体策を決定してもらいたい。  同時に、いま四昼夜、しかし人命はとうとい、したがって、奇跡があるかもわからないので、いっときも早く救出するために万全の処置をとってもらいたいと同時に、私は、その遺家族に対しましても、脆弱なる中小企業ですから、立ち上がるために政府は最善の処置をとってもらいたい、こう思います。いかがでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく全力をふるいまして坑道を啓開して、そして現場にたどりついて、安否不明の人たちの安否を確かめ、救出してくるということは、もう焦眉の急でございます。そのことに目下全力を注がせてやっておるわけでございます。いずれこれらの問題が片づいて、事故原因あるいはその他をよく究明いたしましたならば、その経験にかんがみまして、さらにきびしい万全な措置をとらなければならぬと考えております。
  35. 小平忠

    小平(忠)委員 次は、運輸大臣にお伺いします。  北陸トンネルの今朝の夜間における事故は、まことに残念なことでございます。すでに二十八名の犠牲、一時は報道では四十名という報道がされたのですが、二十八名の犠牲。しかし、いま病院に収容されて手当てをされている方にも、これから何人の犠牲が出るかわかりません。先ほど理事会をやっているときに資料をもらいました。この中を見ますと、また大臣の説明によりますと、火災発生直後に、十一両目の火災で、切り離してトンネル内から出す考えをしたのが、その後停電によってだめになったという報道でありますが、一体、現在隧道の中で火災が起きた、切り離して火災が起きていない車両を出すという場合に、停電が起きたら手の施しようがないことになっているのですか。
  36. 秋富公正

    秋富政府委員 お答えいたします。  そのとおり、引き揚げの途中で停電のために引き揚げられなかったわけでございますが、その後さらに救援列車を敦賀側から五回、金沢側のほうから三回出しまして全部出しましたけれども……(「質問に答えろ」と呼ぶ者あり)質問に対しましては、そのとおりでございます。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、火災が起きたら、おまえは死んでしまえということを言っても過言でないのです。停電したら、もう方法ないんだ。結局、だんだん火災が蔓延したら死んでしまうんだ。そんなところにお客さんを送るような国鉄当局の対策ですか。やはり停電があっても、予備的な処置を講じておくのが事前の保安対策です。それはどうなんですか。
  38. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 ただいまのような局長のお答えでは、御納得がいかないことは当然だと思います。ちょうどきのう、おととい、私は休みを利用いたしまして、青函トンネルの状況を視察してまいりました。たまたま青函トンネルの中には数多くの蓄電器を用意している状態を見まして、この姿であると停電などがあった場合にも安全だなあという一つの示唆を得ることができましたので、今後こういうことについて、私のようなしろうとではありますが、幸い私は学校は電気のほうでございますから、お話しのような点について、専門家を通じて研究さしてみたいと存じます。  ただ、救出する場合には、そのまま見ておくということでなくて、いまお話を聞きますと、ディーゼルカーなどの応急処置によって、次々と列車を坑外に出しているようでございます。こういうことで、列車は現在のところは切り離しができている、こういうことでございます。  ただ、いまの報告一つ申し上げますが、幸いなことに列車を出してみますと、残された車内の中には乗客がいなかったという報告をただいま受けましたので、ほっとした状況でございます。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 まさに不慮の災害というものは、いつどこで起きるかわからない。まことに遺憾なことであって、国鉄当局も常に万全の処置を講じておると私は思うけれども、このたびの北陸トンネル内における火災事故については、国鉄当局もこれに対する事前の、そういう場合の一般乗客に対する訓練とかPR、あるいは今度の事故が起きた場合の緊急措置、これに手抜かりがなかったとは私は言えないと思うのです。まことに遺憾でございます。  時間の関係で、運輸大臣ハイジャックの問題ですが、これはまさに国際的な最悪犯罪です。私はこういう者に対しては極刑に処してもいいとすら考えている。これに対して運輸省当局は、各国に優先して万全の措置をとっておられるようであるけれども、それならばなぜ事前に――現在乗客の身体検査、荷物検査を行なっているのでしょう。探知器も使ってやっているのでしょう。なぜ拳銃などの発見ができなかったのですか。
  40. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 小平委員に答える前に、現在の状況をちょっと御報告申し上げます。  現在、乗客が727の飛行機からおりられている途中であるそうでございまして、これでほっといたしました。これだけを御報告いたします。  ただいまの御質問でありますが、ほんとうにこういうことは万全の上にも万全を期さなくてはなりませんので、ただ今後ともに厳重な検査を実施すると、口先だけではいけないと思います。ほんとうにお答え以上の決意をもって、これから当たるということで御了承願いたいと思います。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 時間の関係で終わりたいと思いますが、私は通産、運輸両大臣に、まことに所管大臣の立場から責められる、それは国民全体の生命の安全、そしてあくまでもこういう事故災害を未然に防ぐための不断の努力、こういうことが必要であるからこそ、率直に指摘申し上げておるのでありまして、端的に申し上げますならば、戦争でも、戻ってこれるという安全を確認して出かけるのです。かつての太平洋戦争における特攻隊、決死隊、これは例外でございましょう。通常、戦闘の場合でも、戻ってこれる見通しを立てて進撃するのです。炭鉱の場合も、隧道の場合も、作業に出かけていく、国民は用のために旅をする。出かけていったら帰ってこれるかどうかわからぬというような、そんな不安な作業や旅行がありますか。私はこれについて、政府はこの際、心を新たにいたしまして対策を講ずるべきだと思うのであります。  総理大臣、この点について私はほんとうにこのような事故災害を未然に防止するために、ないように、あなたの決意のほどを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 炭鉱災害につきましては、先ほども申し上げましたとおり、今度の災害を最後にして、ほんとう炭鉱災害というものをなくするためには、どうするのだというぐらいなことをきめなければならないぐらいな深刻な気持ちでございます。しかも報道によりますと、終閉山を行なった炭鉱から再就職をした四十以上の方々が今度犠牲になっておるということを報道されておりますが、この一事をもってしても、この問題に対しては、災害を未然に防止するということもさることながら、ほんとうに決断をしなければならぬときだろうというふうに感じております。  それから、私も長いこと私鉄に関係をしてまいりましたし、私は私なりの知識を持っているつもりでございますが、今度の北陸線事故というのは、どうにも納得のできないような事故でございます。これならば、もう地下鉄などというものは、ほんとうにおそるべきことでございます。だから、こういう問題に対してほんとうに、私はさっき万に一つと言いましたが、運行上から言うとあり得べからざる事故が最悪の事態において起こっておるということは、やはり原因を徹底的に究明しなければならないと思いますし、究明してしかる後、こういう問題がいかなる場合でも起きないようにということが前提でなければいけません。起きても人命は確保できるという対策があわせて講じられなければならぬ問題でございます。  これはほんとうにむずかしい問題でございまして、私自身もどうしてこういうようなことが、一体あり得るのかとほんとうにあ然としておるような問題でございますが、現に大きな犠牲が払われておるという事態に徴して、徹底的に原因究明の上、万全の対策を立てるということでなければならない、こう考えております。
  43. 坪川信三

    坪川委員長 次に、谷口善太郎君。
  44. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、まず最初に、日本共産党を代表しまして、今回の事件に遭難されました方々並びに御家族に対して心から哀悼の意を表し、また御同情申し上げたいと思います。  すぐ質問に入りますが、最初に北陸トンネルの問題。さっき運輸大臣は排煙施設はなかった、それから消火器など万全を期していたと思うがという、そういう御答弁でした。われわれの調べたところによりますと、排煙施設はなかったようであります。したがって設備が、事故が起きた場合にどうにもできないような非常に不完全なものであるということが言えると思うのです。さっき総理はあり得べからざる事故、万に一つ事故とこうおっしゃった。こんなことが万に万起こったら事故じゃないので、事故というものは万に一つのものにきまっている。それに備えておくことが大事なんですけれども、先ほどからの御答弁を伺いましても、十分であったとは思われぬ。その上に運輸大臣まことに正直で、車掌が一人か二人しかいない、そういう状態だということをおっしゃったが、今後絶対にこういうことを起こさぬために十分に対処したいとおっしゃるとしますと、いまの国鉄の労働方針ですが、人間をうんと減らして一人か二人でやらせる、しかも設備は不十分なままでおく、こういうやり方を根本的に変えなければ、万に一つ事故はしょっちゅう起こるということになるが、それについての御決意といいますか、方針ですね、これは根本問題だと思うのです。そこを伺っておきたい。
  45. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 お話しのように、今回のこの事故にかんがみまして、もちろん将来客車などの設計にあたりましても、火災には十分配慮したところの設計、あるいは技術的な方面もあわせて検討しなくてはならぬと思います。  ただ、今回の火災原因がどこにあったのか、これから調べてみなければわかりませんが、聞くところによると、食堂のあるいはたばこの不始末ではないかとか、あるいは扱った火のあと始末がよくなかったのじゃないかなどということもちらほら聞かされます。いろいろな施設を万全にいたしましても、それを取り扱う人間のやはり仕事に対する態度というものも必要でございますから、その立場にある責任者の私をはじめとして、食堂の一助手に至るまで、こういう人命を預かる仕事に携わるわれわれは、まずあらゆる点に十分な注意と決意と態度がほんとうに大事だということを考えます。もちろん施設と、それから心がまえと両面において万全を期することが必要じゃなかろうか、こう考えております。
  46. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣は問題をすりかえておられる。もちろん仕事に携わる者が事故の起きないように注意するのは当然であります。それで起きた場合にどうするかという点で、いまの国鉄のやり方は人間を首切って、そして機械にだけたよるというやり方でやっておるという基本方針がある。いわゆる合理化です。こういうことをやっていますから、事故が起きた場合に対処ができぬという、まざまざとそのことを示したと思う。これだけじゃありません。いままでみんなそうでしょう。ここのところが一番大きな問題である。当然施設も万全を期すべきだし、実は期していなかったということが今度わかったわけですが、その反省の上に立ってきちんとやるべきだ。同時に人間をもっと使いなさい、万一の場合に備えて。労働強化をやってむちゃくちゃやるというやり方をやめなさい。この点を私は言っているのであります。  それで、この点はそれで次に行きますが、石狩の問題ですね。これは通産大臣、十月の五日に鉱山保安監督署が点検しておりますね。そしてガスが許容量以上になっておるということを認めておる。一・九%とかあるいは二%をこえるというようなことになっている。これはもう明らかに危険だということで、監督署は警告を発しておるわけですね。そのあと何したか。あなた、先ほどずいぶん読みましたけれども、あれは全部会社から、会社の計画の書類を出させて、書類の点検をやっただけじゃないですか。実際に現場に行って監督署が言ったことをやっておるかやってないかを点検しなかったでしょう。書類だけ見て、やれやれと何回か書き直させておるということでしょう。あなたの報告にも、十一月に入ってから追跡調査をすると言っておる。人が行ってないのです。やってないのです。いつでもそうだ。炭鉱の場合は常にそうだ。警告まで言うのです。そして警告は言うけれども、やっているかやってないかをやってないのです。調べてない。やらしてないのです。書類をもらって、会社がこういうふうにいたしますという書類が出てきたら、それがいいか悪いかをあなた方は点検して判こを押しておるだけです。そうでしょう。こういう爆発事故が起きるのは当然でしょう。政府責任ですよ。その点どうです。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 九月以来しばしば参りまして、指示し、注意を与え、そして追跡調査にも行っておるのでございます。それで指示どおりやったかやってないか確認をしておるのです。最後には十一月に行って追跡調査を行なうというやさきに、こういう事故が起きたのでございまして、書面だけでやっているということではございません。
  48. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それなら聞きますが、さっきあなたもおっしゃったが、ガスマスクをつけていっている人は今度の場合は三十一名中十七人だ。あとの人、半数近い者はつけていっていないのです。そのマスクを置いてある置き場に、人の名前が書いてあるのがちゃんと残っている。このことは監督署はちゃんと前に見ているのでしょう。それで注意したのでしょう。やってない。この場合は、準備が不十分な装備の人は入坑させない、入坑してはいけないということで会社は注意しなければならぬ責任があるわけです。あなた方は、それに立ち会ってやりましたか。やってないでしょう。だから現に災害者は半分ほどガスマスクをつけていない。行ってやった、行ってやったと言ってもだめです。だからこんな被害を受けるのです。どうです。
  49. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 九月二十六日に監督者が点検に参りまして、行った際に、ガスマスクを携帯しないで入坑していた者がいたので、本人には直接注意するとともに、会社側に対しても監督指示書を交付し、携帯しない者は入坑させないように厳重に注意しております。そういう注意にもかかわらず、やはり今回携帯しないで入った者がいたということは、まことに遺憾でございます。
  50. 坪川信三

    坪川委員長 谷口君に申しますが、お約束の時間が経過いたしておりますので、簡潔に願います。
  51. 谷口善太郎

    ○谷口委員 わかりました。もう一問でやめます。  注意されたかと思う。また、注意する必要があるし、企業側もそういう装備の不十分な者は入れちゃならぬということになっているんだな。それが入っている。ということは、彼らは、マスクをして労働したらたいへんな苦しい労働になるので、なるべくつけないという、そういう習慣になっているのですね。あなた方のあれを見ましても、労働者の数が二百名でしょう。月の出炭量が約一万トンという。これを一日三交代でやりますと、大体月に一人六十トンの出炭になります。これはどれくらいの労働強化か、わかりますか。通産省は、この山は炭がいいから、すべてのところを閉鎖してもここだけ残せというやり方で、この三井に対してそういう労働政策をとっている、営業政策をとらしている。このために現場では、マスクをかけたいけれども、危険をおかしてでもそれをやめて労働せざるを得ないところに追い込まれているというひどい労働強化があること、これが大きな問題だということを、あなた方は考えたことが一度でもありますか。ここのところを私は指摘したいと思うのであります。ですから保安の問題は、厳重な監督と、現場に行っての断固としてそれを実行させるというような監督が必要である。そのためには、現在の保安要員では少ないでしょう、あなた方のほうは。監督署の保安要員は。実際に点検に行く要員は少ないでしょう。これをふやす必要がある。それと同時に、こんなひどい労働強化へ追い込んでいるというこの鉱山側のやり方に対して、相当のきびしい、これこそ監督をする必要があると私は思うのであります。この点を指摘しておきたいと思います。  私は最後に、時間がないそうでありますから、この幾つかの事件、これについて政府責任を感じられて、政府は当然政府としてなすべき犠牲者の救済、あるいはそれに対するいろいろな見舞いその他の対策、それから今後完全な防止施設をされるということ、その他幾つかの労働者側の要求があります。これを完全に実行されるようにしてもらいたいと思います。  最後に、労働者のこういう問題に対する点検といいますか、前でしたら炭労が入り口に立って、入坑する場合の装備を点検して、不十分な人は入れぬ、そういう労働組合の自主的な活動があった。いまはそれができてないのです。できないようにしているのです。ここらを指摘して、この問題の質問を終わります。
  52. 坪川信三

    坪川委員長 佐々木運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。佐々木運輸大臣
  53. 佐々木秀世

    佐々木国務大臣 ハイジャックの現状を御報告申し上げます。  乗客は次々とおりまして、ただいまバス三台に分乗いたしまして、B727付近から発車いたしましたという報告でございます。
  54. 坪川信三

    坪川委員長 以上で政府報告に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  55. 坪川信三

    坪川委員長 引き続き、通告に基づき質疑を許します。小林進君。
  56. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、内政問題について政府に御質問を申し上げますが、いま国民政府に何を一番要望をしているかといいますと、第一には物価の問題であります。第二番目は公害であり、第三番目は税金であります。第四番目は社会保障の充実。これを称して国民の四つの請願、あるいは四大請願とも申しておるのでございますが、私は、この四つの国民の祈るような願いの中の、特に物価問題と、そうして社会保障の問題にしぼって御質問をいたしたいと存じます。  まず物価問題でございますが、この物価がなぜ上がりっぱなしで下がらないのかという問題でございますが、これに対して政府は、数年前までは、米価と労働賃金が物価値上げの犯人である、農民が生産米価の要求をするから物価が上がるのだという主張をなされておりましたが、生産米価を三年間据え置きにいたしましても物価は限りなく上がってまいりまして、生産米価が物価値上げの犯人でないということは、事実の前に証明をされました。  次に、賃金の問題でございますが、賃金もまた、数年前から政府は所得政策などというものを言い出して、賃金を一つのワクの中におきめようとすることでいろいろ牽強付会な言を弄してみましたけれども、決して賃金、俸給が物価値上げの真の犯人でないということがその理論の中に明らかにせられて、これも理論的に敗れてしまった。  しからば、一体この物価をつり上げている実際の犯人はだれなのかということになるのでありますが、これはわれわれをして、いな国民をして言わしむるならば、その物価値上げの犯人の第一は土地であります。地価であります。地価の値上げ、地価の騰貴、土地の騰貴、これが物価値上げの第一の犯人でありますし、第二番目は、これは寡占価格であります。独占価格であります。特殊の大企業がつくり上げているこの独占価格が物価をつり上げておる第二の犯人であります。第三番目は、これは公共料金であります。いわゆる管理価格であります。この三つを称して物価値上げの三大元凶とも言い、三つの極悪非道なる犯人とも言うのでありますが、この物価値上げの三つの元凶が、これことごとく政府の手にあって牛耳られておる、政府の手の中にある、これをひとつ私は申し上げなければならぬのであります。  土地の問題は、これは総理大臣が意識せられたか意識せられないかは別といたしまして、日本列島改造論をお出しになって、二十五万都市の具体的な方向を指示されたことなどから、特に土地の買いあさりが全国的に広がりまして、これが二割、三割、物価値上げの直接の原因になったということは、ほかにも原因がございましょうけれども、これは私は否定できないと思いますが、この問題については私どもの仲間がさらにこまかく御質問を申し上げることになっておりますので、私はこの第一の問題は省略いたしまして、次の第二のいわゆる寡占価格の問題であります、独占価格の問題であります。これがいかに物価を値上げさせておるか、これは私は具体的にひとつ申し上げて、政府の御答弁を承りたいと思うのでございます。  この寡占価格について、政府は昨年の十二月末に、いわゆるドル・ショック、円の切り上げ等を理由にいたしまして、鉄鋼、粗鋼の不況カルテルを許可されたはずでありますが、その不況カルテルを許可されたその後の経過が一体どうなっているのか。ことしの七月にはさらに再度の粗鋼の不況カルテルを認可をされているはずでありますが、それもこの十二月には期限が参ります。さらにこれを延長される気があるのかどうか、政府のお考えをまず承っておきたいと思うのであります。
  57. 有田喜一

    ○有田国務大臣 寡占価格あるいは不況カルテルというものが、物価値上げのささえになっておるということは認められます。しかし、その寡占価格のほうは、御承知のとおり目下いろいろと関係機関におきまして、その現状、実態把握をしながら、いかにこれに対処するかということをいま検討中であります。  なお、不況カルテルの問題は、御承知のとおり、鉄鋼のごときは最近非常に上がってまいりました。したがいまして、期限後、この十二月の末に期限になりますが、おそらくそのときはこれは解消される、かように私どもは考えております。  なお、ついでであるから申しておきますが、わが日本は非常に物価が高い、高い。なるほど高騰しておることは事実です。しかし、いろいろと考えて手を打ったおかげで、また季節野菜の安定していることも事実でございます。いままでは欧米諸国に比しまして、日本は消費者物価が非常に高いといわれておりましたが、最近、ことに本年になりましてからは、アメリカは別といたしまして、他のヨーロッパ諸国と比べまして、日本のほうが比較的安い。これは数字において示しておりますが、日本は一月からこの九月までの消費者物価の値上がりが、四・六%ということになっております。イギリスは六・八%、フランスは五・八%、西ドイツは五・七%、こういうことで、日本よりもヨーロッパ諸国のほうが非常に上がっておる。私は別に四・六%でけっこうだとは申しませんが、世間でいわれておるわりあいには比較的落ちついておる、こういうことでございます。
  58. 小林進

    ○小林(進)委員 ひとつ大臣に御注意いただきまして、質問者の質問にだけ答えるように、質問以外のことを自分のベースでしゃべられたのでは、私に与えられた時間はきまっておるのでありますから、いまの企画庁長官の分なんて、時間をちゃんとその分だけ延長してください。質問以外に答えておられるのでありますから……。  企画庁長官、あなたの答弁の中で、寡占価格の値上げが物価の値上がりの原因をなしているということをお認めになった、これは私はそのとおりだと思います。  それから鉄鋼の不況カルテルをこの十二月の期限までには何とかやめたいと思うというその御答弁も、私はすなおにちょうだいをしましょう。しかし、この鉄鋼のいわゆる不況カルテル――カルテルというのは政府の力によってこれを保護することですから、その不況カルテルによって鉄鋼を保護された。そのことによって一体卸売り価格にそれがどういう影響を来たしたかといえば、ことしの七月、八月、九月、十月の卸売り価格の値上がりというものは、わが日本は終戦後かつてない卸売り物価の値上がりを来たしていますよ。七月が〇・二%、八月が〇・七%、九月が〇・九%、十月に至っても、まだ結論は出ておりませんが、大体〇・九%か一%程度の卸売り物価の値上がりを来たしている。原因は鉄鋼です。政府がカルテル等をもってこういう基本資材を過当に擁護されている、保護をされているからこそ、こういう未曽有の卸売り物価の高騰を来たしておるのでございますが、いいですか、そのカルテルによって一体鉄鋼の値段がいまどれくらい上がっていますか。粗鋼の値段がどれぐらい上がっていますか。あなたがおわかりにならなければ私が言いましょうか。大体鉄鋼の値上がりは、ことしからいまに至るまで、三割とも三割五分ともいわれておるのでございますよ。あなたたちが不況カルテルをおやりになって半年もたたないうちに、鉄鋼の値段が三割も三割五分も上がって、本年の九月末の鉄鋼の業績は、前期に比べて大幅の増益が見込まれるといわれている。たいへんな増益を見込まれる、たいへんな黒字になるといっておる。業界自身が驚くほどの利益をあげておるのであります。そういうふうな利益をあげられていれば、それはすべての物価が値上がりするのはあたりまえじゃありませんか。鉄とセメントというもの、特に鉄はすべての物価の基本をなすのです。家をつくる、道路をつくる、何をしてもこれは鉄鋼が中心だ。その鉄鋼の値段が政府の保護によって、過当な保護によって、二割も三割も三割五分も上がれば、物価が無限に上がっていくのはあたりまえなんだ。これは政府の力じゃありませんか。物価の値上がりの犯人政府であると言っても間違いがないじゃありませんか。  あなたは盛んにさっきからうなずいていらっしゃるから、私の言うことをお認めになったと思うのでありますが、それならば、こういう不当な値段に対して、直ちにそのカルテル行為をおやめになったらどうですか。直ちにおやめになる気があるのかないのか、お聞かせを願いたい。私の質問だけにお答えを願いたいのでありますが……。
  59. 坪川信三

    坪川委員長 有田長官。簡潔に答弁願います。
  60. 有田喜一

    ○有田国務大臣 実は、名の示すごとく、非常に鉄鋼が不況であったことは御承知のとおりです。そういうので不況カルテルができたのですが、最近の値上がりの目ざましいことは私も認めます。かるがゆえに、公取委員会にも折衝しまして、実は公取がそれを扱っておりますので、われわれはもう早く解除すべきじゃないかという折衝を始めている、こういう段階でございます。
  61. 小林進

    ○小林(進)委員 すみやかにそういう値上がりを政府が保護することをおやめになるような行動に出られることを私は期待いたしますが、一体不況カルテル等に対しましても、いわゆる寡占価格に対しましても、一番悪いことは、政府はその中の実態を調査することも検査をすることも、何の力も持っていないということです。相手が、不況ですからカルテルをやってくださいといえば、独占企業の言いなり次第に政府は追い回されて、そしてこういう保護政策をおやりになっている。一体そのもうけた金をどこへ持っていくのですか。きのうあたりの新聞によれば、何ですか、日本鋼管ですか、あの熊沢天皇か何かに五億取られたの八億取られたの、これはみんな皆さん方の保護によって国民大衆を収奪した金だ。それを五億、八億、七億と熊沢天皇さまに上げるなどという、そういうものを一体なぜ不況カルテルで保護しなくちゃいけないのですか。だから、口さがない人たちはまだ言っている。ああ選挙は近いな、何しろ製鉄業者は政府に対する政治献金の親玉だ、うんと不況カルテルを存続して政治献金を三倍、五倍させるのだろう、こういうことを大衆は言っていますよ。まさか政府はそんなことをお考えになっていないでしょうけれども、こういう大衆の声を率直に聞いて、こういうばかな値上げをいつまでも過当、過剰保護するような行為は、やめていただかなければなりません。  同時に、この寡占価格や管理価格に対しましては、社会党を中心にいたしまして、公明、民社と三党で提出いたしております寡占価格規制法というものを一体政府はどうお考えになるか。第三者が寡占的大産業の実態を把握して、その価格にも介入し、それを調査するというところまでいかなければ、卸売り物価の値上がりを防ぐことはできぬのでありますが、こういう当然な要求に対しても、いまの大企業は一切そういう実態に触れさせることを拒否している。政府はそれをやり得ない。こういうことになれば、国民の待望する、物価の値上がりを防ぐということは、いつまでたってもできない。この三党のいわゆる寡占価格を規制しようというこの法案に対して、政府は賛成かどうか、お聞かせを願いたいのであります。
  62. 有田喜一

    ○有田国務大臣 この問題は、目下、公取委員会において、その実態を把握しながら、いかに対処するかということを鋭意検討中なんです。したがいまして、いま私のほうからイエスとかノーと言うことは差し控えたいと思います。
  63. 小林進

    ○小林(進)委員 もはや研究されているというが、これは何年か前からのあなたの答弁です。変わりない。大臣がかわり、人はかわれど、答弁は変わらずです。そんなことでは物価の問題の解決にはなりません。いま少し大衆の祈るような物価、この物価の値上がりのような問題について、これくらいもうけているものを、もうけさしておいて、その内容を検査する力も、実態を把握する力もないなどというばかなことが、この世の中にあっていいわけはないのであります。そして、公取の意見も私は聞いている。公取は、政府が早くきちっとしたそういう態度をきめることを要望しているのであります。おやりになりますか。――おやりになりますか。
  64. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、公取において鋭意いま検討しておる最中です。
  65. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題については、まだ政府に誠意がないと私は判断をいたしまして、まあ、寡占価格の問題はこの程度にして、次に、いわゆる公共料金の問題について一言触れてみたいと思います。  政府は、公共料金におきましても、この四十七年度、今年だけでいっても、主食が三〇%の値上げ、ガスが二〇%、大学の授業料などが五〇%、関連教育費が二五%、医療費が一二%、交通費が二三・四%、家賃、地代が二〇%、電気料が五〇%と値上げをしている。この公共料金に便乗いたしまして、副食、調味料の値上げが一〇%、まさにこれは軒並みに物価が全部上がっているのでありまするが、この公共料金というのは、いわずもがな、これは政府がおきめになるか、政府が関与しておやりになる値段なんです。この公共料金を政府みずからがみんな値上げをされますから、一般の値段も、それに便乗をいたしまして、あとから上げていくというのが物価値上げの実態であります。  こういうことになって、一体、わが日本の消費者物価の値上げの状態はどうかといえば、先ほど私があなたにお聞きしないことまでもぺらぺらしゃべっておられましたが、私の調査によれば、一九六二年から一九七一年にわたる十年間の間に、消費者価格の値上がりは日本が世界一であります。この十年間の消費者価格の値上がりは、日本が五・九%、アメリカは三・一%、イギリスが四・六%、西ドイツが三%でございまして、日本の消費者価格の値上がりは飛び抜けて世界第一であります。飛び切りの一等であります。こういうような値上がりを示しているその元凶は、これはみんな公共料金の値上げを中心にして上がっているのです。公共料金は政府がおやりになる値段なんです。ここにメスを入れなければ、国民の待望する物価の安定というものは望み得ないのであります。これを一体どう処置される気か。まだ、いまでも、いろいろなものが政府に公共料金の値上げを要望いたしておりますが、ことし中にまだこれらの要望に沿って公共料金を値上げされる意思があるのかないのか、まずこれから伺っていきましょう。
  66. 有田喜一

    ○有田国務大臣 実は、公共料金の問題は、一昨年の暮れに一年間ストップという事実がございました。したがいまして、本年に入りましてから、次から次と公共料金の値上げがあったことは事実であります。しかし、私たちの態度としましては、公共料金はこれを抑制するという基本的の態度でありますけれども、やはり、公共事業といえども、従業員をたくさんかかえておる。また、いろんな物資を買わなくてはならぬ。そうすると、いろいろな関係で企業をささえることができないような現状になる。あまりにも企業がひどくなると、また一方、サービスという面において国民に迷惑をかける。そういう見地もありますので、私どもとしては、その企業体の実態は十分把握しながら、合理化できるものは合理化する。それでもやっていけないものは、ここに料金の値上げを認めざるを得ない。しかし、申請したものをそのまま認めるのじゃなくて、たとえば、一割増を申請したものは、それを八%にするとか、七%にするとか、その実態に応じてわれわれはそれを認めていく。こういうことでありまして、公共料金が一般の物価の値上がりを導いておるとばかりは思わない。また、ほかの物価が上がるから公共料金を上げざるを得ないという事実もありますから、その辺のところを勘案しながら善処してみたい。  なお、蛇足のようでございますが、四大市の公共料金の値上げがありましたが、これは、四大市の中にも革新の市長もおられれば、革新の市会議員もおられますが、やはり、その現実に当たられますと、先ほど申しましたように、従業員の賃上げもできないというような状態ではやっていけないというのが、これはもうだれもが言うことでありまして、そういう現実に処してわれわれは対処しておる。これを御了承願います。
  67. 小林進

    ○小林(進)委員 どうも、企画庁長官は少し余分なことをしゃべり過ぎますな。私の質問だけに答えてくれればよろしいのであります。これから、一体、ことし中に値上げをされるのかどうか、私は聞いておるのです。   〔委員長退席、久野委員長代理着席〕  同時に、私は、公共料金については、いまあなたの言われることを全部否定するわけじゃないのです。たとえば、その中でも、都市交通だとか、あるいは私鉄とか、こういう公共企業体はたいへん資本を要します。設備に金がかかる。あるいは地下鉄においてもしかりです。特に、学校、大学、私立学校、たいへんこれは設備資金がかかる。資本を必要とする。しかし、これは単に利益だけで存在するのではなくて、その名のとおり、これは公のために存在する、公共性の多い事業なんであります。それを、いままでのように、政府が、独立採算制だとか、あるいは受益者負担だとかいうふうなキャッチフレーズで、ただめんどうを見ないということになれば、必ず企業は行き詰まる。いま行き詰まっております。だから、最後は、やはり公共料金の値上げを政府に申請してくる。政府は、その原因排除につとめないで、ただ値上げ要求だけをちびちび減らし、許可をしている。こんなことでは問題の本質の解決にならないと思うのです。  私は、公共料金の値上げには反対です。やってもらっては困る。物価の値上がりの元凶です。同時に、その値上げをされないために、そういう私鉄のいわゆる私企業であっても、公共性のあるものには政府みずから資金の援助をする、あるいは利子を補給する、あるいは無期限の公債の発行も許可するというふうな、あらゆる手を打って、公共の企業としての安定した経営ができるように援助をしてやる必要があるのではないか。さもなければ、国民の要望する物価値上げの問題というものはイタチごっこで解決しない。これはたいへん基本的な問題でありますから、総理大臣から、この問題についてひとつ御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  68. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 小林さんの言われるところもよく理解できます。物価抑制ということが国民的課題であるということ、その中に占める公共料金というものを厳に抑制しなければならないということはよくわかりますが、しかし、有田経済企画庁長官が述べられたことも、ひとつ十分御理解を賜わりたい。政府は、上げないで済むような公共料金なら、上げないことにもう全力をあげたいのでございますが、限られた会計の中で、国民負担の中で取捨選択をし、いずれが優先をすべきかという軽重の度合いをきめてやっているわけでございます。でありますので、戦後の物価の上昇が、昭和七年ないし十年、十一年ぐらいまでの七百四、五十倍といわれておるわけで、中には千倍ともいわれておるものもございますが、しかし、鉄道料金やバス料金を三百倍程度に押えておるということ自体が、公共料金をいかに低く押えたか。ガスや電気料金も同じでございます。そういう意味で、公共料金抑制の基本的姿勢、これはあなたと同じことでございますが、しかし、公共料金に一般会計を全部食われることによって、ほんとうに国や地方公共団体がなさなければならない重度心身障害児の収容さえできないということになると、いずれにウエートを置くかということになるわけでございまして、ただ政府が公共料金をむやみに上げていくのだという姿勢ではないということを十分御理解いただきたい。
  69. 小林進

    ○小林(進)委員 総理大臣も、私鉄の経営等も長くおやりになりまして、いかにそれがむずかしいものであるかということは身にしみてお知りになっているはずであります。また、公営の交通事業等も、昭和四十六年度決算で約二千億円も赤字になっておる。あるいは、地下高速鉄道の建設費などもたいへんかさんで、もうこれは経営も困難である。こういうことを政府がやっぱり黙って見ておいて、料金だけを押えようとされたって、それは無理ですから、まあ緩急順序があるとおっしゃればさようでございましょうけれども、やはり、こういうものに対しては、これは国民全般のものでございますから、いま少し援助を加えて、そして賃金、いわゆる料金の安定をひとつはかっていただきたいと思います。  私立大学につきましても、これは時間があれば文部大臣にお伺いしたいところでありますが、これも、もはや、私立大学だけでも赤字が九十億円から百億円。大学などには、これはどうも他に資産を生む力はないのであります。政府のほうでお力をおかしにならなければ、これはもう授業料の値上げ一本でいく以外にはない。これでは安心して子供の教育もできないという状態でございますから、これがみんな公共料金にはね返ってくる。こういう点は、ドルも余って金の始末に困っている状況でございますから、四十八年一度あたりには、こういう点にも十分ひとつ私は御考慮をいただきたい、このようにお願いいたしまして、一応物価問題の質問は終わることにいたしますが、それにいたしましても、先ほど申し上げましたこの寡占価格の値上げでありますが、これは、くどいようでありまするけれども、日銀の総裁自体が、不況カルテルは実情に合わせてもう解消しなくちゃ、これはたいへんなインフレが来ますよと、こういうことも言っておられるのでありまするし、経済人も、あげて、鉄鋼や石油化学などが不況カルテルとしていままだ認められているのは、これはたいへんなインフレのもとだ、これを早く解かなければたいへんなインフレの時代が来るぞと、みんな警告を発しているのに、政府だけが黙ってこういう不当な利益を認めていらっしゃるのでありますか。先ほどのことばを私どもはお待ちします。早くひとつこういうものを解除して、自由競争に投げ出して、そして企業の合理化は合理化をやる、りっぱな安定した価格で消費者がその恩典に浴する、そういう政策に突入をしていただきたいと思います。  次に、私は、年金問題についてお伺いいたしますが、まず、社会保障の中の年金問題でございますが、日本の拠出年金制度が実施をされまして、すでに十年の歳月が経過をいたしたわけでありますが、その実施をされた翌年の昭和三十七年の八月に、社会保障制度審議会が「社会保障制度の推進に関する勧告」をいたしました。その総論を読み上げてみますと、「(1)社会保障は、国民生活を安定させる機能をもつとともに、なおそれが所得再分配の作用をもち、消費需要を喚起し、また景気を調節する等の積極的な経済的効果をもつ。この点からいえば、社会保障は、国の政策として、公共投資および減税の施策とならんで、あるいはそれ以上重要な意義をもつこと。(2)国民所得および国家財政における社会保障費の地位については、今後十年の間に、日本は、この制度が比較的に完備している自由主義の諸国の現在の割合を、少なくとも下廻らない程度にまで引き上げるべきこと。」こういうことが勧告をせられておる。十年のうちにヨーロッパ諸国の主要なる国の社会保障の現在の姿に追いつきなさいよという、こういう勧告をしておられるのでありますが、これに対して、池田内閣、佐藤内閣、歴代内閣ともども、勧告の趣旨は十分理解いたしまして、必ずそれを実現いたしますという公約をされておるのでありますが、十年たった今日、その公約どおり一体これを実施されているかどうか、私はそれを承りたいのであります。それを承る一つの例として、現在在、ヨーロッパ諸国における主要な国のいわゆる年金額が一体幾らになっているか、ひとつ数字でお示しを願いたいと思うのであります。
  70. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま、西欧各国の年金額が幾らになっておるか、数字で示してもらいたいという御意見でございましたので、これを申し上げたいと存じます。  西ドイツにおきましては、労働者年金が三万三千七百二円、職員年金が五万七千九百十二円。スウェーデンにおきましては、単身者三万三千七百十五円、有配偶者五万一千五百十二円。イギリス、単身者一万七千四百三十七円、有配偶者二万八千二百四十七円。アメリカ、単身者三万六千三百七十五円、有配偶者五万六千五百四十六円。大体以上のとおりでございます。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 ただいまお読みになりました数字は、ひとつ資料として各委員に御配付をいただきたいと思いますが、それはいま厚生大臣がお読みになったとおりでございまして、それに比較して、わが日本の今日の年金は一体幾らかというと、これは厚生年金で一万四千円から一万六千円。国民年金では、これは五千円であります。福祉年金に至っては、今年の十月から三千三百円。いま厚生大臣がお読みになりました数字をいま一回言い直すと、スウェーデンに比較すれば、スウェーデンは、単身者、ひとり者で一カ月三万三千七百十五円、御夫婦の場合になりますると、一カ月五万一千五百十二円。わが国は、国民年金で、一人で一カ月五千円、二人で一万円。福祉年金に至っては、一人で三千三百円。これも七十歳以上です。夫婦で六千六百円。スウェーデンが、夫婦で五万一千五百十二円ですから、九分の一です。これで、社会保障制度審議会の、十年たったらヨーロッパの主要国に追いつきなさいよという、その勧告は一体正しく行なわれたといえますか。あまりにも見劣りがするじゃありませんか。これは一体だれが悪いのですか。だれが一体、こういう不当な、貧弱な年金制度をここまで持ってきたのか。厚生大臣、だれが悪いのですか。端的に、一言でいいが、ひとつ答えていただきたい。
  72. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 確かに、御指摘のとおり、現在の日本の国民年金、厚生年金等を通じまして、諸外国に対して相当劣っておることは、事実として認めざるを得ないのでございます。昭和四十四年に相当大幅の改正をいたしましたが、大体ただいま御指摘のような状況でございまして、したがいまして、今日までこれがだれの責任かというお話でございましたが、一つは、やはり年金制度というものが創設をせられましてまだ非常に時間が短い、いわゆる成熟していない状況にあるということ。特に、外国におきましてはすでに百年も前からやっておる。完全に成熟状況にあるわけでございますが、日本は非常に成熟していない。また、日本の老人の人口の増加、いわゆる老齢化現象というものも、実はむしろ今後の問題でございまして、これからだんだんだんだん老人が激増していく、こういうふうな状況等もありまして、したがって、この年金制度に限りまして申し上げますると、やはりそういったような現実の日本の姿というものが、この年金制度の給付水準につきましても、現実に給付する金額につきましても、相当西欧より劣っておる、こういうようなことに相なっておると私は思うのであります。
  73. 小林進

    ○小林(進)委員 経済大国、世界第三番目の工業国としては、これは何といっても世界に顔向けできない恥ずべき現実です。これをどう是正するかということが、私は、これからの政治の中心でなくちゃならないと思う。総理大臣も、大蔵大臣も、臨時国会の所信表明において、四十八年は社会福祉を優先する、年金の年といわれるように大幅にこれを是正するということを公約されました。しからば、一体どういう具体案をお持ちなのか、私は、まずこれを具体的にお示しを願いたいと思う。  第一にお尋ねしたいのは、一つは、年金に見放された高齢者をどうするかという問題であります。わが国には、現在、六十歳以上の高齢者が一千百万人いらっしゃいます。その中で、拠出年金受給者、拠出年金を受けられる人は、たいがい二割であります。あとは、まず見殺しの形に投げ出されているではないか。私は、このでこぼこを一体どうお直しになるのかどうか、これをお尋ねをいたしたいのでございます。
  74. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 まず、先ほどもお答え申し上げましたとおり、日本の年金制度がまだ創立後間がないために、年金の受給者が総体的に非常に少ないということは事実でございます。しかし、これは今後急激な増加を逐年遂げてまいることに相なるわけでございます。  それから、その次に、現在、この厚生年金なり、あるいは国民年金なり、あるいは福祉年金というものを受給しない国民が相当にあるんではないか、これについてという御質問のように承ったのでございまするが、確かに、これは一つの大きな問題点だと考えます。国民年金につきましても、御承知のとおり、制度発足当時五十五歳以上の方々は、どうも保険金の払い込みの期間がないということで、これらの方々は、現在、年金に関係のない存在ということになっておるわけでございます。また、五十五歳以下の方につきましては、五年年金あるいは十年年金ということで、当時入っておられなかった方にも、便法を設けまして、これに入っていただくというような機会をつくって、希望の方を勧誘を申し上げたのでございますが、こういった五年年金、十年年金にも入らずに、年金の恩典に浴しないという方々もおるわけでございます。  したがいまして、こういったような年金制度と縁のないこの年寄りの方々が皆年金の制度の中にあっていいかどうかということにつきましては、十分な検討をしなければならぬと思っておるのでありまして、いまの五年年金、十年年金等に関連いたしまして、やはり、私は、もう一ぺんこの五年年金に加入する機会を与えるとか、あるいは七十歳以下の老人につきましては、何らかの――七十歳になれば福祉年金の支給を受けるわけでございまするが、その年金につきましては何らかの措置を講ずる必要があるということで、ただいま検討をいたしておる最中でございます。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 一千百万人、六十歳以上、その中で、もろもろの年金の中にも含まれないで、さびしく見放された形でいる高齢者のために、再度これを洗い直すという厚生大臣のいまの御答弁は、これは私はちょうだいいたします。これは早急にやって、同じわが日本に生まれて、同じ年寄りになって――これは、あとの年金開始の期間の問題については、いま一回これを繰り返しますが、いまのお答えは、ひとつ、必ず実現をするように御努力をしていただきたいと存じます。  次に私がお伺いいたしたいことは、前々回の総理大臣の御答弁をお聞きいたしますると、年金について必要なのは長期計画だ、長期計画を立てて社会保障を実現していきたいという御答弁があったように聞いておりますが、これは非常にけっこうでございます。ぜひ長期計画は持っていただきたいが、それと同時に、いま必要なのは、現在の年金を一体どうするか、現在食えないままでいるこのお年寄りをどうするかということは、長期計画よりもさらにこれは重大な緊急問題でございます。  その点についてお尋ねするのでありますが、具体的にお尋ねいたしますが、ことし四十七年ももう暮れが参りましたが、四十八年度で厚生年金を一体幾らに底上げをされるか。いま二万円です。これは幾らに底上げされるか。国民年金の拠出年金、しかもこれは二十五年ではなくて、十年制です。去年あたりから開始をせられたこの国民年金の拠出制を、これを一体幾らにされるか。厚生年金の二万円を一体幾らに底上げされるか。国民年金の五千円を四十八年から幾らに底上げをされるか。また、老齢福祉年金を来年度から一体幾らにされるか。具体的に数字をもって政府の案をお示し願いたいと存じます。
  76. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 明年度の各年金の給付水準をどのようにするかというお尋ねでございまするが、政府では、かねがね、明年度は老人の年金の給付水準を大幅に引き上げたいということで、関係の審議会に御意見を求めておったのでございまするが、この関係審議会から意見が出まして、厚生年金につきましては、標準報酬の六割程度が適当ではないかというような答申をいただいておるのでありまして、また、国民年金につきましては、夫婦を合算をして、大体これに見合うような年金水準にすべきではないかというような御意見をいただきましたので、私どもは、これを重大な参考といたしまして、これに沿ったような線で、ひとつ来年は年金の大幅な引き上げを行ないたいということで、ただいま鋭意作業を進めておるような状況でございます。  ただいま五千円年金をまたどうするかということでございましたが、これは当然新しくきめられまする国民年金の水準に比例をいたしまして、これに見合う水準にいたしたいと考えておるわけであります。  なお、老齢福祉年金につきましては、本年、御承知のとおり千円上げたばかりでございまするが、私どもはさらにこれを明年は大幅に引き上げたい、こういうことで、これも目下準備を進めておるところでございます。
  77. 小林進

    ○小林(進)委員 私は厚生年金等に対する審議会の答申、意見書も見ております。見ておりますが、政府の案はまだできていないということでございますから、できないものを質問してもどうも結論が出ませんから、これはやめにしますが、あなたの腹はわかっているのです。これは、高福祉高負担で六割をやろうという陰には、うんと標準報酬を上げて、うんと保険料を値上げして、おそらくいまの保険料の二倍半か三倍くらいひとつふんだくるだけふんだくって、そうしてそれを積み立てておいて年金額を五万円なり、二十年か十五年の先にはそうしようという腹ではないかと思うのでございますが、原案がないのですから討論はいたしませんが、だめですぞ。それは社会保障にはならない。それは保険制度なんだ。たくさんふんだくってたくさんやろうなんというのは社会保障の範疇には入らぬのでありまするから、いまからその問題はひとつ御忠告を申し上げておきますが、やはり、年金を論ずるときには、私は福祉年金が中心にならなくちゃならないと思います。  老齢福祉年金ですが、ことしは千円お上げになって、この十月から三千三百円にするとおっしゃったが、来年は、それじゃ一体これは幾らにしていただけますか。おそらく、五千円といったら清水の舞台から落ちるような気持ちでおっしゃるのでございましょう。そのものずばりでしょうう。来年は五千円ですか。
  78. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 いま、来年は幾らにするかというお話でございまするが、私ども、ここで申し上げるまで政府部内の意見がまだまとまっておるわけではございませんが、やはり今後一万円を目途として明年は相当の額の引き上げを行なうというような方針でまいりたいと考えております。
  79. 小林進

    ○小林(進)委員 やはり私の見通しのとおりでございますが、その五千円という金は、いま行なわれている三千三百円も同じですが、これは一体年金ですか。これはあめ玉代ですか。これは小づかい銭ですか。政府は年金という名称づけをされておりまするけれども、一体これは年金という名に値するものかどうか。  私はここで、ちょっと時間かかりますけれども、いま一回年金の性格について政府からお聞かせ願いたいと思う。年金とは何だ。あわせて、生活扶助というのがございますが、これは人間の最低生活を保障するために国がお上げになる。生活扶助と年金の相違を、私はここでいま一度政府からお聞かせ願いたいと思う。
  80. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 確かに、老齢福祉年金の性格が一体どういう性格のものであるかということにつきましては、いろいろ議論のあるところであろうと思うのであります。すなわちこの老齢福祉年金につきましては、もちろん保険金の払い込みがない、全額国庫でもって負担をする制度でございます。しかし、一般の年金につきましては、それぞれ適当な期間掛け金をいたしまして、そうして保険金をもらえる、こういうような性格でございますので、一般のいわゆる厚生年金や国民年金等とは性格の違ういわば一種の政策的な年金であるというふうに私は考えるのでございまするが、しからばこの福祉年金は、一体その性格とともにどういうあり方に位置づけたらいいのかということも、非常にこれはむずかしい問題で、生活保護との関係等も確かに御指摘のとおりあるわけでございまして、なお、これは非常に重大な問題だと考えまして、老齢福祉年金の位置づけあるいは性格といったようなものにつきましては、いま社会制度審議会におきましても、今後の扱い方について協議をいただきまして、これが御意見をいただくことに相なっておるのでございまして、この点につきましては、さらに検討さしていただきたいと存じます。
  81. 小林進

    ○小林(進)委員 年金の性格も明らかにしないで、一体年金保障は行なわれるわけがないじゃありませんか。そこにいままでの政府のたいへんなごまかしがあったのです。年金とは何ぞやといろ一番大切な問題をごまかしておいて、そしてこの性格を不明にしたままで、さもこじきか何かに物をやるような気持ちで、そして千円か千二百円やって国民をごまかしてきたのです。また、社会保障や年金に未成熟な国民は、月千円の金をもらってもお上からもらった金はありがたいというので、神だなに祭って拝んだ。そういう国民の未成熟な無知に便乗して、さも恩恵的、慈恵的にこの制度を進めてきたところに、日本の社会保障のたいへんな間違いがあった。政府の罪があった。しかし、ようやく厚生省もそのずうずうしいやり方に気がつきましたから、最近はその論調をやめにいたしまして、従来までは福祉年金はいわゆる拠出制老齢年金の補完的役割りを果たすものであるから、だからこれは給付額の半分でもよろしい。先ほどあなたが言われた論調と同じなんだ。いわゆる料金を出さないのだから普通の年金の半分でもよろしいという考え方で来たが、さすがに良心がとがめると思って、最近はこれを改めた。福祉年金は皆年金発足時に拠出制年金に加入できなかった者についての所得を保障すべき公的年金であるというふうに性格を変えてきた。やはり公の年金なんだ。所得を保障するのがいわゆる無拠出の福祉年金なんだというふうに厚生省もその性格を変えてきた。これが正しいのです。年金と銘打つからには、拠出であろうと無拠出であろうと、その人の老後の所得を保障するものでなければ、年金と銘打つわけにはいかないのであります。その性格を明確にすれば、さらば高齢者になれば拠出者であろうと国民年金であろうと厚生年金であろうと、日本人たる老人に変わりはありません。日本人としての高齢者に変わりがありますか。それをあなたは、拠出をしなかったのだから、料金を出さなかったのだからあなたは別格だ、六十五歳になっても一銭も老齢年金はやらない、六十九歳になっても一銭もやらない、七十になったか、それじゃ普通の年金の半分くらい情けでやりましょうか、一体そんな行政がどこにありますか。老齢年金、無拠出の年金者は、しかし好んで料金を出さなかったのじゃないのです。そういう拠出制をやるべくして政府がその行政をやらなかったのだ。やらなかったから出したくとも出す機会がなかったのだ。その出す機会も与えられずして年をとった老人を、あなたは金を出さなかったのだから普通並みの扱いはできない、普通の高齢者や老人の半分か十分の一でよろしいなどという行政が一体日本以外のどこの国にありますか。あなたはいま述べられた。無拠出は金を出さないのだから普通の待遇はできないとおっしゃったが、そういう考え方自体がだめなんです。それを改めなさい。それからひとつ年金の性格というものを、だから正確に位置づけて、定義づけて、一切を洗い直して、ひとしく生活を保障するような年金に切りかえることをやっていただかなければならない。どうですか。私の主張に間違いありますか。ないならばよろしいが、あるならば、ひとつそこへ出て回答をいたしなさい。-ないはずです。そんな矛盾が許されていいはずがない。  ならば次に論陣を移しますが、一体、その年金が生活、いわゆる所得を保障するのが年金であるというならば、今日高齢者は一カ月生活をしていくために一体幾らの費用がかかるか。その生活費はあるでしょう。一カ月幾らかかりますか、それをお示しをいただきたい。
  82. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 老人の一カ月の生活費につきましては、これが正しいというふうな的確な資料はなかなか見つけることが困難でございまするが、各般の資料等総合いたしまして、二人世帯の老人の場合におきましては大体三万円から三万五千円、また単身者の場合は大体二万円程度、こういうふうなのが、多くの統計の集合した一応の数字ではないかと私は思っております。
  83. 小林進

    ○小林(進)委員 これは、総理府の統計から編み出しましても、いまあなたのおっしゃるとおり、いわゆる高齢者が一カ月人間として生きていくためには、単身者で三万円です。三万円かかります。それから老友会等、この年金に対応いたしておりまする人たちでも、自分たちのつまびらかな経過に基づいても、やはり三万三千円をいただかなければ、われわれ一カ月の生活を保つことができないと、科学的な数字を出しております。その問題については、厚生省の福祉課長の山口君ですか、彼も某所の講演でその数字をやはり裏づけしている、三万三千円必要だと。なかなかこれは良心的な発表をしている。もしこの数字に水増しがあるというならば、彼此比較するのは非常に酷でありまするけれども、一体政府が今年お出しになっている生活扶助料は幾らですか。生活扶助料は一カ月四人家族で四万四千三百六十四円。いいですか。その中で一人成人の男子を抜き出してみると、その一人のいわゆる生活扶助料が一万七千二百二十二円で、それに住宅費を加えるとやはり二万円ちょいなんであります。いま政府が人間生きるための最低の生活費として公的にお出しになっている生活扶助費も、男子一人のいわゆるその福祉料が二万円であるとするならば、高齢者になってもはや何らかの潜在的労働力もない人たちが生きていくための三万円というこの生活費の必要度は、ちっとも無理がないです。どの方面から押してもこれはゆるぎない数字であると私は思う。と思うならば、一体この三万円という必要な所得を保障するのが年金じゃありませんか。これをやるのが老齢年金じゃありませんか。この点いかがですか、厚生大臣
  84. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 老人の生活を見てみますると、まあ大体統計によりますると、六〇%程度の老人の方々は主として家族の扶養というふうなごと、あるいは生活保護費等もありまするが、そういうようなものによって生活をしている。また、四割程度につきましては、自分の財産収入でありますとか、あるいは自分の就労のいろんな収入その他で、自前で四割程度の方々はやっておるというふうな統計の数字が出ておるわけでございます。しかも、老齢福祉年金は生活保護の上積みをされるような性格でございますので、いま三万円の生活費がかかるから、年金が直ちに三万円でなければならぬというような結論には、私は相ならぬではないかと思うのであります。   〔久野委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、生活扶助は人間として最低生活を保障する、これでありまするから、二万有余でもいいと思いますが、老齢年金はこれは最低生活の保障ではない。普通の人間として老後を普通並みに暮らしていけることを保障する、これが年金であります。年金と銘打つからには、あなたは、やはりその線において、急激にそこにいかないにしても、年金をきめるときの基準は、私は普通並みの生活を与えるというその線に立って進めていかなければならないと思うのでありまして、あなたのように家族に養ってもらっているからいい、あっちへ依拠しているからいいというふうな考え方で年金を操作していくことに対しては、私は断じて賛成することができません。  しかし、時間が参りましたから、この点はまた後日詰めることにいたしまして、ここで私は、五千円の国民年金、福祉年金ではどうしても生きていけないということをあなたに明確に申し上げておいて、ここでひとつ社会党の案を私はお示ししたいと思う。  わが党は、四十八年度実施されるべき事項といたしまして、厚生年金は最高賃金の六割、あなたも六割とおっしゃったが、この点は一致したが、われわれは最高賃金の六割、平均してこれは六万円であります。ただし、最高賃金が少なくてこの厚生年金が六万円に達しない者については、最低四万円を保障額として支給する、供与する。この最低保障額という線を厚生年金の中にしいていかなければ、われわれの生活は安心していくことはできない。これをまず言っているのであります。  国民年金についても、まず十年年金、去年から開始をせられているこの十年拠出年金の受給者に対しましては、その定額部分を夫婦四万円とする。単身者なら二万円でありまするが、夫婦で四万円、所得比例分を合わせて厚生年金と同じように六万円を支給する。  老齢福祉年金につきましても、厚生年金、国民年金の最低保障額と一緒にする、達成するというこの目的に向かって来年から鋭意努力いたします。しかし、老齢福祉年金は全部一般会計から出ることでありまするから、急激にはいきません。四十八年度は一人一万円、夫婦二万円を提供する、こういうことを決定いたしておるのでございますが、この実施が、理論的にも無理であると厚生大臣一体お考えになりますか、わが社会党の案に対して。  もし一言つけ加えますならば、社会党はこの最高賃金の六割の厚生年金という根拠をどこから出してきたかといいまするならば、私は申し上げまするけれども、その根拠はILOです。ILOの百二号、社会保障の最低基準に関する条約と、いま一つはILO百二十八号、障害、老齢及び遺族給付に関する条約の中にあるその条項を、正しく実施をするというその根拠に立っているのであります。おわかりになりましょうか。老齢については、ILOの百二号は、いわゆる年金受給年齢の妻を有する男子が四〇%、四割、老齢年金については、年金受給年齢の妻を有する男子が四五%、これを年金として支給しなさいとILOで明示をしている。これは諸外国の四〇%というのは総合収入の四〇%、わが日本のこの年金の比率は、いわゆるボーナスとか時間外の手当などを除いたものの中から、いわゆる最低保障費というものをお出しになっているのでありまするから、これを総合収入に加算をすると、ILOのいわゆる四割が六割に該当する。これでわれわれは六割という数字を出したのであります。最高賃金の六割を厚生年金として支給せよ、国民年金はその厚生年金に右ならえせい、福祉年金もまた国民年金に右ならえをして、みんな同一の老齢の年金をもらえるような形にこれを是正をせよということをいっておるのであります。  ここで私は、社会党の案に対する皆さん方のお考えを聞く前に、まず社会党の案の根拠となったILOの百二号と百二十八号を政府は批准をされる一体お考えがあるかどうか、私はこれをお聞きしたい。ILOのこの二つの条約を、社会保障に対するこの条約を批准するためには、社会党の案と同じにならなくちゃならぬ。同じように改正しなくちゃいけないのです。まさかしかし批准をしないというわけにはまいりますまい。わが日本はILOの常任理事国でしょう。常任理事国となれば、よその国に先立ってこの条約を履行し、これを実施して、よその国にもそれを実施するように指導、導くだけの責任ある地位にあるのでありますから、それは日本として批准しないというわけにはまいりますまい。おやりになりますかどうか、そのものずばりでお答えをいただきたいと思うのであります。
  86. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ILOの第百二号、また第百二十八号につきましては、いろいろ批准に至る条件が示されておるのでございます。また、日本の社会保険といたしましては、これら各条件を十分に整備するというところまでは立ち至っていないことは御承知のとおりでございます。  したがって、批准に先立ちまして、わが国としてはできるだけすみやかにこの社会保障の額、施設というものについて、今後充実をはからなければならぬと考えておるのでありまして、そういった上でひとつ批准の決定をいたしたい、かように考えております。
  87. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生大臣は非常に正直でいらっしゃいますから、やはりこの批准ができるためには、まだわが日本の社会保障に対するもろもろの未成熟な点がある、その手入れをしなければならないとおっしゃいましたが、御承知のとおりなんです。それはいま私どもが示しました社会党の案が、そのものずばりでILO百二号に該当しているのであります。社会党は来年から実施すると言っておる。あなたのほうも来年から万難を排してこれを実施していただければ、来年じゅうにもILO百二号の批准はできるのであります。これはもう御答弁は要りませんが、総理大臣、どうかひとつ決断と勇気をもってこのILO百二号を批准されるようにぜひともお願いをいたしたいと存ずるのであります。  次に、私は年金問題について、スライド制の問題でございますが、毎年物価、賃金が一〇%も一三%も上がっていく現状から見まして、年金がこのまま据え置かれたのでは所得保障にはなりません。社会保障制度審議会も、このスライドの問題については毎年、ひとつスライドを講じなさい、同時に五年目ごとにも年金額の改善もいたしなさい、こういう二律方式を、いわゆる意見書を出しているようでございますが、これを一体どう処置されるか。賃金にスライドされるのか物価の上昇にスライドされるのか、その問題までは私はまだ追い詰めてお問いいたしませんけれども、ともかく物価が上がり、賃金が上がれば自動的にスライドをするというその制度をすみやかに実施される御意思があるかどうか、これを承っておきたいのであります。
  88. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 御指摘のとおり、両審議会からは経済変動に対応する措置を講じろ、こういうふうな御意見があったのでございます。年金の価値と申しますか、将来の年金につきまして、やはり経済変動の措置がなければどうも不安である、あるいは年金に対する魅力がないというような点も確かにあるわけでございまして、したがって、経済変動に対応いたしまして、その変動のあった場合にこれに措置をするということは、私は必要ではないかと思うので、目下実現すべく鋭意検討中でございます。  ただ、自動的にスライドするのかどうか、あるいは生活保護基準のように、いろいろな要素を集めて年々これを決定していくというような方法をとるのか、諸外国でも区々の例になっておりますので、その辺のこと等については、今後さらに検討をいたしたいと考えております。
  89. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんので、私は次に財源構想を中心にする制度の改革、積み立て方式か賦課方式か等の問題も御質問したかったのでありますし、また、積み立て金の運用の改革も、現在も七兆のお金が年金で積み立てられている。こういろ運用方面についても、私はもう少しきめのこまかい御質問をしたかったのでありますが、時間がありませんから、これは割愛をいたします。  割愛をして、年金問題では最後にこの一問にとどめますが、その最後の一問は、年金の開始年齢についての問題でございます。いまわが国の年金が実に未成熟であるということは、もはや国民は全部了承しておりますが、その未成熟の中でもさらにどうも了解できないのが年金の開始年齢であります。すなわち、共済年金は五十五歳から支給されておる。厚生年金は六十歳から開始されておる。拠出制の国民年金は六十五歳から支給されておる。福祉年金になりますと七十歳から開始をされていて、全くまちまちであります。五十五歳から七十歳、年は同じとっていってもいわゆる支給する年齢にこれほどのでこぼこがある。特に福祉年金に至っては、先ほどのあなたのお話じゃないけれども、拠出をしない、積み立てもしなかったのだから、普通の樹齢者の扱いはできない、七十歳までがまんせい、七十になったらようやく涙金をやろう、こういう冷たい扱いをされているのでございまして、同じ日本人の同じ高齢者を、何で一体こんなに幾つも差別をつけて区別をしなければならないのか。こういう矛盾を直ちに手直しをしていただかなければならない。社会党は一律六十歳から年金を差し上げる、こういう特に老齢福祉年金を七十までがまんさせるなどという残酷なことは、直ちにこれをやめるということを言っておるのでありますが、この点について政府のひとつ明確な考えを承っておきたいと思うのでございます。年金開始の問題であります。
  90. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 御意見のとおり、わが国の各種の年金につきましては開始の年が異なっておるのであります。ただいま御指摘の共済年金あるいは厚生年金等につきましては、従来から大体職業から離れる、定職から離れるということを条件としてその開始がきまっておるというふうなことから、そういうふうな開始の年齢に相なったと思うのであります。国民年金につきましては、この就業の機会から離れるということがないような保険者でございますので、おおむね外国の例にもございますとおり、六十五歳が適当であろうということで設定をせられておるのでございます。ただ、国民年金につきましては、御承知のとおり、さらに六十歳から希望によりまして減額年金というものを支給するという道が開かれておることは、これはもうすでに御承知のとおりだと思います。老齢福祉年金につきましては、これは私はこういったような厚生年金なりあるいは国民年金、こういうふうな制度のギャップを補てんするということで、七十歳からときめられたと考えるのでございまして、そういうふうなことであり、各制度につきましてはそれぞれ相当の期間を経過いたしまして、いわば保険加入者が一つの既得権として期待をしておる点等も考慮しなければならぬと考えますので、これの直ちに統一という問題は、検討はいたしたいと思いまするが、なかなかむずかしい困難な問題ではないかと思います。
  91. 小林進

    ○小林(進)委員 これで福祉年金に関する私の質問は終わりたいと思いますが、この議論を通じてもおわかりになりまするように、政府はことばとしては、いわゆる福祉を優先する、あるいは年金の年にするということを言われておりまするが、いまお尋ねいたしますると、案は何にもない、何にもおやりにならないということが明らかになったわけであります。これではまことに国民に対する公約違反でございまするから、最後にひとつ総理大臣から、あらためて年金制度に対する決意を承っておきたいと思うのであります。
  92. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本の年金制度は、まだ未成熟な状態でございまして、理想に遠いというおしかりはございましたが、理想の実現に邁進をしてまいるつもりでございます。四十八年度には、御指摘がございましたように、年金の年とすべく、これは理想的なものでないにしても、年金の年とするような予算を組んでまいりたい、こう考えます。  もう一つは、いままでなかった経済長期見通し、計画を立てますときには、社会保障の位置づけもやりたい。しかも、その中で四十八年度年金をどういうふうに位置して、将来の展望図はどうであるかということは、ぜひ明らかにいたしたいという立場を申し上げます。
  93. 小林進

    ○小林(進)委員 総理の御決意も承りましたから、年金はこれにとどめまして、次に社会福祉の問題についてかけ足で質問いたしたいと思います。  首相の施政方針演説にはいろいろの特質がありました。しかし、その中でも国民福祉の面に相当紙数をさかれたこと、特に、「心身障害者をはじめ社会的に困難な立場にある人々のため施設等の整備、充実をはかり、難病に悩む人々に対しては原因究明、治療方法の研究、医療施設の整備など総合的な施策を推進いたします。」と述べられたのであります。ここまできめこまかく論旨を進められたのは、歴代首相としては私は初めてであると思います。この点はまことにけっこうであったと私は存じます。  ついては、これが一片の口頭禅に終わってはならないと思いますので、重度心身障害者、重度心身薄弱者、寝たきり老人などの施設の充実、勤務者の養成、その待遇改善などについて、具体案があればお示しをいただきたいと思うのでございます。  時間もありませんからなおつけ加えて申し上げますが、「社会福祉施設収容者数の現況」という資料を私はいまここに持っておりまするけれども、まだ寝たきり老人の施設については、八万人をもこれを収容するだけの施設がない、不足いたしております。それと重度心身障害者の施設については、まだ七万七千有余の子供たちを施設の中に入れることができない。家族ともに暗い生活を送っておるという現況でございまするし、保育所におきましても、まだ二十万有余の子供たちがどうも保育所に入れないという、こういう状態に放置をせられておるのでございます。それに対して厚生省は、五十年の末までにこの不足分を全部完備したいという一応の計画をお持ちになっておりますが、一体これが完全に実施できるのか。せっかく総理大臣の施政方針の中にもあるのですから、少しこれを早めて、特に重度心身障害者や寝たきり老人等の施設は早急に完備すべきものと思うが、具体的な御所見、御決意のほどを承っておきたいと思うのであります。
  94. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま御指摘のとおり、寝たきり老人、身障者等につきましては、その施設を急速に整備したいということで、五年計画、三千億円の計画でただいま実行中でございます。  ただいま、さらにこれを早めてやるべきではないかという御意見でございましたが、実は今回の補正予算におきましても、こういった施設につきまして、従来あまり例がございませんが、整備をすることにいたしておりまして、さらに十分に、私は御意見を貴重な御意見として承りまして、これが整備の推進に向かって努力をいたしたいと存じます。
  95. 小林進

    ○小林(進)委員 特に総理の発言の中に、難病についての所信表明がございまして、これは難病に悩む人たちにはたいへん明るい希望を与えたと思います。現在厚生省が知っておられるだけでも、難病はベーチェットその他スモン病、二十近くを数える原因不明の疾患があるはずでございますが、これについて、その総理の所信をどう具体的に一体進めていかれるのか、私はこれをお尋ねをしておきたいのであります。  第一には難病の範囲であります。難病とは、一つ原因不明、治療方法未確立の病名、たとえていえばスモン病などであります。第二番目は経過が慢性である、重症で介護等に著しく人手を要し、患者、家族の経済的、精神的負担の大きい疾病ということに大別ができると思うのでございます。  そこで、医学的にはいろいろの見地があると思いますが、政治的には治療困難な患者、家族の困難を解決することにあることを考えなくてはならない。そこで、いわゆる老人医療であります。卒中の後遺症、リハビリテーション医療、量的にも内容的にも難病中の難病と私は考えるのであります。この政府の難病対策の中には、老人のリハビリ医療をも含めて行なうべきだと私は考えるのでありますが、これに対して一体厚生省はどういうふうにお考えになっているかどうか。難病の範囲であります。  第二番目は、難病の治療を進めていく医療機関の問題であります。いまこの機関が完備しておらない。でありまするから治療は非常に困難であります。そこで、本質的には医療全体が採算医療であってはならない。難病なんというものは採算が絶対にとれません。そこで、難病の治療は採算ベースでは実行不可能でありますので、この医療機関は民間医療機関にたよることがなく、国立の医療機関が採算を抜きにして積極的に行なうべきであると考えるが、一体いかがなものか。さらにこの際、既設の空床であります。結核病棟があいているからなどといって、そんなこそく的な手段でそれを利用するなどというようなことはやめて、これは大幅に本格的な取り組みをなして、ベッドや施設なども確保して治療に万全をはかるべきだと考えるがどうか。これが第二であります。  第三点といたしましては、いわゆる難病の研究の問題であります。難病は施設に入院させて治療するということだけではなくて、その医療機関において研究機能を持ち、治療方法を解明することがきわめて大切であります。医療機関には当然研究施設をあわせて持つべき必要があると考えるが、一体この研究問題はどうか。総理の演説にもありますよ。この研究機関を持つと言われているのです。これをお持ちになるかどうか。  特に第四番目です。これからが一番重点なんです。これは人員確保の問題であります。難病の治療に当たる医師と看護婦と技術者の増員の問題です。これが難病の治療に当たり、金があって医療機関を備えることができても、治療に当たる人員を整えなくては、これは絵にかいたぼたもちになってしまうのでありますが、今日この問題が少しも解決されていないのであります。定員の増が必要なんです。ところが政府は、総定員法によって病院の医師や看護婦までもみんな削減率をかけているという一律一体の方式を行なっているものでありますから、難病対策の推進にあたっては、医師も看護婦も技術者の定員も大幅にふやしてこれに当たらせるということはできない。これが一番隘路なんです。この隘路をどういうふうに打開される考えであるか。その際、定員法を改正いたしまして、それは総理の決意にわたると思いまするけれども、難病対策ほんとうに進めるという立場でこの問題に取り組んでいただきたいと思うのでございますが、以上の点につきまして、ひとつ簡単明快にお答えをいただきたいと思うのでございます。
  96. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お尋ねの第一の老人の脳卒中の後遺症について、これを難病に取り入れてはどうかと、こういう御趣旨であったと思うのでございまするが、これにつきましては、確かにこういった老人の、特にリハビリテーション関係の治療と申しまするか、そういったものの整備というものが非常に必要であり、またそういう方面で国としても援助をして、そういうふうな対策を強化してまいらなければならぬと考えておるのでございます。したがって、ただいま計画をしておる難病の中に入れるか、あるいはガンやその他のそれぞれの体系を持った対策というものとあわせてやるかという技術的な問題は別個の問題といたしまして、そういった対策は強化をしてまいりたいと思うのであります。  それから、研究の施設なり能力を持った医療機関というものが必要ではないか、また国立の医療機関がこういう難病対策に積極的に乗り出すべきではないかという御意見につきましては、私は全く同感でございまして、やはり研究施設を持ち、また先ほどの御指摘のとおり、治療方法も十分発見ができていないというような実情でございますので、研究施設を持ち、そうして国立の医療機関等が積極的にこの難病対策に乗り出していかなくてはならぬということで、私どももそういう計画をいたしておるのであります。  最後の要員の確保の問題でございまするが、私どもの計画でも、五年間に六千人の要員を確保しなくてはならぬ、そうしなければやっていけないという状況でございまして、全く御意見と同感でございまして、何とかこの要員の確保ということには、政府全体としても御理解をいただいて、ぜひともこれを実行したい、かように考えておる次第でございます。
  97. 小林進

    ○小林(進)委員 次に私は、スト権の問題について政府の所信をお尋ねいたしたいと思うのでございます。  日本は新憲法の実施とともに、いわゆる警察官その他少数の勤労者を除いて、広く労働基本権たる三権を全労働者に与えたのであります。ところが、昭和二十三年になって、政府は官公労からこの三権の一つのストライキ権を奪還をした、奪い取ってしまったのであります。それ以来、ストに関する懲戒処分たる解雇一千二百五十名を含め、実に百七十万人をこえる労働者は処分を受けているのであります。しかも、ストに名をかりた当局管理者の不当労働行為、不当介入、マル生運動などは、まさに国際水準では常識では考えられないほどの、気違いざたとしか思われないような弾圧を行なっておるのであります。これあるがゆえに、十月二十九日から十一月一日に行なわれた第二回のアジア公務員労組会議において、各国の代表が、日本のようなひどい権利侵害をアジアに輸出してもらっては困る、日本の世界一は公害と物価高だと思っていたら、政府権力者による権利侵害はまさに世界第一ではないか、おそろしい国であると言って、みんなが驚いておるのであります。  そこでこの問題を、どうしてもこの際政府の所信を承っておかなければならない。四十六年十一月十五日、国労、動労、総評は、マル生スト処分に関しましてILOに提訴をいたしました。ILO結社の自由委員会はスト処分に関しまして、一、硬直した処分は誤りである、このことは従来ドライヤー委員会が政府に指示したはずである、こういっておりまするし、第二は、日本政府が提訴に対する見解を委員会に提出するまで審議を延期する、こういうことを四十七年五月三十日、三十一日満場一致で採択をいたしておるのであります。すなわち、四十七年八月、公企体では大量の春闘処分を行なっているが、これはILOにおける結論とまっこうから衝突することを承知の上でやったのかどうか。五月三十日、三十一日にこういう自由委員会が決定をしておるにもかかわらず、その八月、公企体では大量の処分をしておるのであるが、これは完全にILOに対する挑戦です。そういうことを承知をして一体おやりになっておるのかどうか。  第二番目は、ILOは審議を延期して日本政府の見解表明を待っているが、これに対して政府一体応ずる意思があるのかないのか、これが第二番目であります。それだけひとつ承っておきましょう。
  98. 田村元

    田村国務大臣 公務員あるいは公企体の労働者のストライキ権ということになりますと、これはその及ぼす影響が非常に大きゅうございますから、はたして国民が納得するかどうか、非常にむずかしい問題だと思います。  しかしながら、それはそれとして、いま公制審に公務員等の基本的な労働権について、基本権について諮問をいたしております。ここでどういう結論が出ますか、政府としてはそれを冷静に見守っていかなければならぬと思います。いま政府が特に、こうという見解を表明する時期ではないと思います。ただ先般、政府の統一見解として、実情に沿った答申を出してもらいたいということの姿勢を明確にいたしておりますから、いずれ答申が出るものと思います。  なお、ILOの問題でありますが、八十七号条約、九十八号条約ともに公務員等のストライキ権を云々するものではないとわれわれは理解しておりますから、これは完全な国内法の問題でありますから、その線ははっきりしておきたいと思います。  なお、国内法で、公務員法あるいは公労法等でいろいろのことを規制しておるわけでありますが、いやしくも法治国家で国内法に違反した労働行為があるとすれば、それは処分を受けてもやむを得ない、法治国家としての処分が行なわれるということはやむを得ないと思います。しかもその処分も、私どもが受け取っております報告によりますれば、適正を欠いたものではないというふうに考えておる次第であります。  ILOに対する、中間報告に対するその後の連絡はいたしております。
  99. 小林進

    ○小林(進)委員 もう時間もありませんから簡単に終わりますが、世界的水準の中において、日本のように公共企業体からそれぞれスト権を奪還をしておるような国は世界にはない。それを法律という名のもとにおいて、労働者固有の権利を、憲法で与えたそれを剥奪しておきながら、今度は法律に違反するからといってばっさばっさと百七十万も百八十万も手当たり次第に処分するなんということは、野蛮国のやり方です。けれども、これは議論したってしょうがありませんから後日に譲ります。  いま一つ、いま言われた公務員制度審議会でこの問題の、いわゆる統一見解を求めていると言われるけれども、これは結論は出ません。なぜ出ないかというならば、政府は、政府の見解というものを載せて審議会に提案しているのではないのでありまするから。どこだって審議会には政府の案というものを出して、これを審議してくれというのがあたりまえにもかかわらず、あなた方は何も出していない。白紙委任だ。白紙委任で、政府の腹はどこにあるかわからないような、そんな諮問のしかたをしているのでありますから、これは結論が出ない。実にこれは意地の悪いやり方です。こういうやり方で日本の国内をおさめても、一体国際場裏でその勝負ができるかできないか。  私は、もう時間もありませんから結論として申し上げるが、今朝の新聞によると、総評が国際労働機関、ILOに持ち込んだいわゆる大量処分に対する提訴について、ジェンクスILO事務局長が、まず政府、総評の両者の最高レベルで直接協議をすることを提案した。これに対して、総評も政府側もこれを受諾することを承知されたというのでありますが、この点において間違いがないか、その点が一つであります。  それからいま一つは、これは私は総理大臣にひとつお尋ねをしておきたいのでありまするけれども、このILOの問題については、いまも労働大臣が言われたILO八十七号、九十八号の問題をILOに提訴して十年間、日本の労使関係で国際場裏において恥をかいた。それで政府が結局において敗北をした。それでこの問題は、かつてのILO八十七号、九十八号にまさる、これは国際場裏における日本の恥をさらす大きな問題になると私は思う。そうして、必ず政府の側は敗北すると思う。そこへいくと総理はなかなか見通しが早いのでありまするし、頭の回転も早いのでありまするから、ここでひとつ、総理の頭のいいいところで見通していただいて、こういうスト権の問題はさっと切りかえたほうが、国際場裏に恥をかかないで事を円満に処理することになるのではないか。私は総理の善処を特にお願いしたいと思うのでございますが、これに対する御所見を、簡単に承っておきたいと思うのであります。
  100. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ILO事務局長の勧告は、双方で受諾をしたということでございますが、これは受諾するほうがいいわけでございます。あなたがいまいみじくも述べられたとおり、日本の問題をよそまで持ち出して、あなたの御指摘の表現そのままを使えば、恥をかくこともない、それはそのとおりだと思います。そういう意味で向こうもさすが、これは私たちの判断を求める前に御自身たちでおやりなったらどうですかと、こう大岡さばきをやったわけでございますから、これは提案者が承諾をすれば、政府が当然前向きでこの問題に対処しなければならぬことは言うをまちません。そういう意味で、双方がこれを受け取ったということでございます。まあしかし、これは外へ持ち出すまでもなくと言われましたが、ほんとうに日本の公務員制度がどうあるべきか、また公共企業体がどうあるべきかという日本人全体の問題でありますので、お互いに人ごとではなく、ほんとうに将来も理想的であるべき制度をつくるために検討し、努力をし、話し合うべきだと思います。  私は、組閣後すぐ要請に応じて総評の首脳部にも会っておりますから、お互いにいつでも会える間でありますので、他人行儀に外国まで持ち出すというようなことよりも、まずお互いが勉強するということで結末を得たい、こう思います。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、まだ医療の根本改正の問題や農村問題、特に外交問題では中国問題、台湾問題で質問を用意したのでありますが、常にどうも時間が来て質問ができない。特に建設大臣をお相手に質問できないのは残念しごくでありますが、以上はこれを後日に問題を残しまして、私の質問は一応これで終わることにいたします。
  102. 坪川信三

    坪川委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  103. 正木良明

    ○正木委員 私は、公明党を代表して、主として外交、防衛問題についてお尋ねをいたしたいと思  います。  日中国交回復が実現いたしまして、日本の戦後外交最大の課題の一つであるといわれたこの問題が解決したことは、非常に喜ばしいことでありますし、この衝に当たられた田中総理以下、関係の皆さん方の御努力をほんとうに感謝するものであります。  去年と本年と二回、私も竹入委員長とともに中国へ参りまして、この問題に関係をいたしました立場から、あのテレビ田中総理と周恩来総理が共同声明に署名なさっておる状況を拝見いたしまして、非常に感慨が深かったわけでありますが、同時にそのときに私の頭をよぎったのは、変な話でありますけれども、先ごろなくなられたノーベル賞作家の川端康成さんの代表作に「雪国」というのがございますが、あの「雪国」の冒頭の文章であります、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という名文で始まるのでありますが、考えてみれば、日清戦争以来、日中間の不幸な状態というのはちょうど長いトンネルのようなものでございまして、日中国交回復が実現したということは、その長いトンネルを抜けたことであり、このことは一度に目の前がぱっと明るくなったような感じがいたします。しかし、そのトンネルを抜けたところは決して百花繚乱と咲き乱れる春ではございませんで、雪が降り積もっているわけであります。  したがって、私は、日中両国が今後この雪を解かしてほんとうの春を迎えるために、相当な努力を重ねていかなければならないし、そういう意味からいえば、日中国交回復がスタートであり、決してゴールではないと思うのです。そういう意味からいって誠意のある日中両国間の今後の真の友好樹立のための努力ということは、非常に重要なことであると私は思います。そういう立場に立って、少しく日中国交回復の残された問題について、御見解をただしたいと思うわけであります。  二日の予算委員会で大平外務大臣は、日中平和友好条約の締結について、その交渉は外交関係といいますか、大使交換が済んで、その正式な外交ルートによってその折衝をしたいというふうにおっしゃいましたが、これはそのとおりであろうと私は思うのですが、そういう意味での両国の大使交換というのはいつごろになるのか、まずお伺いしたいと思います。
  104. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもとしては、できるだけ早く大使館の設置をいたしたいと存じまして、係官をいま中国に派遣して、中国側と折衝を急がせておる次第でございます。いまその調査の結果によりまして準備を急ぎたいと思っておりますが、いつごろまでにという具体的な日取りまで、いま申し上げる段階ではございません。
  105. 正木良明

    ○正木委員 この共同声明では、できるだけ早い時期にということになっておりますが、私は、少なくともこの大使交換のためには、日本の国内法的には、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の改正が必要であろうと考えておりますが、実は、この法律改正案は本国会に提出されておりません。したがって、残された会期のうちにこの法律案をお出しになるのか、それとも選挙後の特別国会にお出しになるおつもりか、その点をお伺いしたいと思います。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 次の通常国会に御提案申し上げたいと考えております。
  107. 正木良明

    ○正木委員 ということは、この法律案が可決されるまでは、大使の交換はあり得ないということになりますか。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の外務省設置法二十四条、それから在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律第九条、これはいずれも政令で、特別の必要がある場合は、在外公館を既定の予算の範囲内でとりあえず増置することができる道が開かれておりますので、とりあえずそうしておきまして、次の通常国会に本格的な法律改正案をお願いいたしたいと思っております。
  109. 正木良明

    ○正木委員 これは少し異なことを承るような感じがいたしますが、おそらくいま大臣が御指摘になったのは、外務省設置法第二十四条の第二項に該当するものであろうと思います。これはあくまでも「増置」ということになっております。増し置くと書きますね、増置。ということは、この在外公館は大使館のみならず総領事館、領事館等も含まれるのでありますから、臨時的にその国に領事館や総領事館をふやすという場合には援用される、適用されるかもしれませんけれども、いわゆる中華民国の台北に置かれておる大使館を廃止して、そうして中華人民共和国の首都である北京に大使館を設置するということになりますれば、この外務省設置法第二十四条第二項は適用ないしは援用は不可能であると思いますが、いかがですか。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 可能であると考えております。
  111. 正木良明

    ○正木委員 可能である理由を承りたいと思います。
  112. 吉國一郎

    吉國政府委員 法律の解釈の問題でございますので、私からお答えいたします。  外務省設置法の二十四条の二項には、「増置する」と書いてございます。これは従来、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律で在外公館はずっときまっておるわけでございます。そのほかに新しく設置する場合、これは大使館でございましても公使館でございましても、あるいはまた総領事館、領事館でありましても、新しく設置するものは、この増置ということで解釈できるということで従来考えております。
  113. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、法制局長官の御解釈によりますと、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律、これは以後在外公館法と言いますよ、長いですからね。在外公館法でいうところの別表第一におけるところの大使館並びに総領事館というのは、中華民国の大使館の場合には台北、総領事館においては台北並びに高雄に総領事館を置いてありますが、その別表に書かれたままでいいですか。法律的には、書かれたままで別途政令をお出しになって、法律的にはこれで可能だとおっしゃるわけですね。そのままで可能だというわけですね。
  114. 吉國一郎

    吉國政府委員 ぎりぎりの法律論といたしまして、法律的には可能だと考えております。
  115. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、中心的なものは中華民国台北におけるところの日本大使館であって、それに対して、北京に新しい日本大使館を増置するという考え方と解釈せざるを得ませんが、それでよろしゅうございますか。
  116. 吉國一郎

    吉國政府委員 いわゆる在外公館法によります中華民国台北に置かれております在中華民国日本国大使館は、いわば空文になるわけでございます。現にほとんど空文に帰しておるわけでございます。その表のほかに新しく中華人民共和国北京に在中華人民共和国日本国大使館というものを増置するわけでございます。
  117. 正木良明

    ○正木委員 こういうことは、改正したって全然問題がないと私は思いますがね。そうすると、空文化したという解釈でそのままずっと、いわゆる在外公館法の別表第一は、中華民国台北のままでいくのですか。
  118. 吉國一郎

    吉國政府委員 これが、先ほどぎりぎりの法律論と申し上げたゆえんでございまして、当然これは法律改正をすることが立法論としては適当でございます。ただ、どうしてもやむを得ない場合に政令でできるかできないかという議論になりました場合に、政令でできないことはないということをいま申し上げたつもりでございます。  したがってそのような形、いま委員が仰せられましたような形でずっといくなんということはとうてい考えられないことでございまして、かりに法律改正が間に合いませんで一ほんとうにこれはかりでございますが、かりに法律改正が間に合わないで、政令で暫定的な措置をとった場合、もちろん追っかけて法律改正案を内閣から提案をいたしまして、国会で改正をしていただくという措置をとるべきことは、これはもう当然のことであろうと思います。
  119. 正木良明

    ○正木委員 この問題はできるだけ善意に解釈するようにいたします。しかし、共同声明第四項に、このことについては、「任務遂行のために必要なすべての措置をとり、」ということがいわれているわけです。私は、法律の問題は別といたしましても、実際現実的な立場から言って、すべての措置をとるということは、おそらく中国側が日本に大使館を持ってくるためには、当然台湾の大使館はなくならなければ、引き揚げなければいけないでしょう。要するに、東京に中華民国の大使館があり――いま中華民国ということばを使うのは適当でないと思いますけれども、その日本大使館があり、そうして同時にまた中華人民共和国の、いわゆる北京の代表の大使館が東京に併置されるということは、おそらく好まないだろうと思いますね。そういう判断のもとからいいますと、いま東京にある台湾の大使館というのは、もう引き揚げたのですか、まだ残っておるわけですか。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 台北にある日本大使館も先方の在日大使館も、いま残務整理中でございます。残務整理というのは、ウイーン条約で、所要の期間は国際法上認められておりますので、その範囲内でいま残務整理を急いでいるわけでございまして、遠からず双方とも引き揚げることになると思います。
  121. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、北京においていま大使館開設の交渉をなさっておるというのは、一つはそういう時期をめどとして、その後は直ちに両国に大使館を開く、設置する、そういうことでの交渉ですか。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まず敷地を確保せなければなりませんし、暫定的に事務所をどういうところに置くか、本格的には建物をお願いせなければいかぬと思っておりますが、どのくらいの人間を配置するか、それからかの地における外交官の在勤手当というものはどういう程度のものを考えなければいけないか、そういったことをいま調査をいたしておりまして、予算をお願いする場合、法律をつくる場合、そういった実態をよく掌握しておかなければいけませんので、そういう事務的な調査を急がせておる段階でございます。
  123. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、いま整理して申しますと、いわゆる中華民国の東京にある大使館、台北にある日本の大使館、これはそれぞれ残務整理が終われば引き揚げる、その後中華人民共和国の大使館が東京に設置せられ、北京に日本の大使館が設置せられる、もしその時期が通常国会の法律改正以後になるならば、この在外公館の法律は改正する、もし非常に時間的に早く進んで間に合わない場合には、いわゆる法制局長官のおっしゃるぎりぎりの法律解釈によって、外務省設置法第二十四条第二項を援用して政令においてその設置をきめる、こういうふうに整理して私がお答えを承ったというふうに考えてよろしいですか。
  124. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのとおりでございます。
  125. 正木良明

    ○正木委員 そこでまた、二日の質問には触れられなかったわけですが、新聞等で見てまいりますと、この平和友好条約以前の問題としていろいろの協定ですね、これは共同声明第九項にいわれるいろいろの協定、こういうものについて交渉を行なうことになっておりますが、これはどの程度進捗しているでしょうか。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 貿易、航海、航空、漁業、その他実務協定の問題でございますが、いま国内的に検討を始めておるわけでございまして、平和友好条約という本格的な交渉は、この前にも申し上げましたように、大使の交換を終えて外交ルートでやりたいと存じておりますけれども、実務協定の場合、急ぐ場合は、大使館の設置を待たずにやる場合もあり得るかと思いまして、せっかく関係各省の間でいま検討をいたしておる段階でございます。
  127. 正木良明

    ○正木委員 それはそれでけっこうです。  それで平和友好条約の問題でございますが、これは私の感触では、平和条約というところよりも友好条約というところにウエートの置かれに条約におそらくなるのではないだろうかと思います。きわめて政治的な弾力的な、そうして現実的な交渉をなさってまとめ上げられたことでございますから、おそらくそうであろうと私は思います。したがって、本来平和条約の場合には、戦争終結宣言、それから領土問題、なおかつ賠償問題等が不可欠の要件でございますが、この平和友好条約の場合、従来のそういう平和条約というようなきわめて原則的な考え方が適当であるかどうかということについても、私は詰めた考え方はできないのじゃないかと思います。  一言だけ聞いておきたいのは、共同声明に出てまいりません領土問題については、この平和友好条約においてお触れになりますか、お触れになりませんか。
  128. 大平正芳

    ○大平国務大臣 平和友好条約につきましては、締結交渉をしようということが合意されていること、そして共同声明に出ておりませんけれども、首脳会談におきまする了解といたしましては、うしろ向きの処理は一切共同声明をもって終わったという了解でございまして、前向きに今後の日中関係を規律してまいる指針をつくり上げようじゃないかという了解でございまして、そういうことから御判断をいただきたいと思います。
  129. 正木良明

    ○正木委員 なかなか質問しにくいのですけれども、結局、平和条約に要するに記述せられなければならない基本的な問題を私はいま三つ申し上げたわけですが、この三つのうち二つははっきりしているわけです。戦争状態ということばを第一項では使っておりませんが、これは戦争状態の終結であるに違いないのでありますし、同時に「賠償の請求」、私たちは「請求権」というべきであっただろうと思いますが、この「権」をわざわざお抜きになったというふうな苦心が存在しているのであろうと思いますが、この賠償問題も片がついた。ところが、領土問題はこの中では触れられておりませんで、ただ解釈が二通りできるのでありまして、この領土問題については平和友好条約に譲ったという考え方が一つ、領土問題については両者に相争うべき何らのものがなかったから日中共同声明には載せなかったけれども、これはもう話は完了済みのものであるという解釈、この二通りございますが、この二通りのうちどちらでしょうか。
  130. 大平正芳

    ○大平国務大臣 共同声明をしさいにお読みいただきますとおわかりのように、日中両国の原則的立場が違ったまま、国交正常化という道標を実現することにおいて一致いたしまして、政治的な態度、政策の表明という姿で共同声明をつくり上げたわけでございまして、その状態はいまなお続いておるわけでございまして、私はこのままの姿で、正木先生おっしゃるような厳格な意味において平和条約がつくれる状態にあるとは思いません。  したがって、平和友好条約というものも、先ほど申しましたように、今後の日中関係の友好関係を増進していく上において、双方の義務を書いていくことになると判断しております。
  131. 正木良明

    ○正木委員 まあこれから交渉なさるわけですから、あまり詰めた話をするとかえって手を縛ってまずいのだろうと思いますので、きわめて抽象的な言い方をなさったわけでありますけれども、それはそれにしておきましょう。交渉のほうでは、国益中心にしっかりやってください、領土問題については。  それで、実は去年私どもが中国に参りましたときにやはり共同声明を出しておるわけですが、世にいう日中復交五項目の原則といわれるものです。これが、アメリカの台湾並びに台湾海峡からの撤退という問題は、ことしの二月、ニクソン訪中がございまして、あの上海コミュニケで一応解決したという形になりました。第五項目めの国連復帰の問題は、去年の秋実現いたしまして、これも問題なくなりました。したがって、いわゆる復交三原則といわれるもので残ったわけであります。この共同声明で中国側は、公明党の五項目の復交原則というものを歓迎すると同時に、不可侵条約を結ぶ可能性について非常に強調するわけなんです。これは総理並びに外務大臣、どういうふうにお考えになっているのかよくわかりませんけれども、私は、少なくともこの第六項の後段の部分、「両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」と、非常にりっぱなことであると思いますし、非常に貴重なものであると思いますが、この共同声明で述べられた精神というものは、いわゆる日中不可侵条約の前駆的なものをここで合意なさったものであろうというふうに考えておるわけです。日中不可侵条約というような別な条約になるのか、それとも平和友好条約の中にこの不可侵条約的な条項というものが再び繰り返されるのかよくわかりませんけれども、でき得れば、これは単に共同声明だけの問題ではなくて、平和友好条約の中に盛り込むか、ないしは別な不可侵条約というものを日中間に結ばれることが、結果的には非常にいいことであるというふうに考えておりますが、その辺のお考えはいかがでございましょうか。
  132. 大平正芳

    ○大平国務大臣 共同声明におきましては、平和友好条約の締結の交渉をしようということが合意されておるわけでございまして、条約の形をとりましたほかのものの締結交渉というような点は話がなかったわけでございまして、私どもは、この平和友好条約という中に、いまあなたが言われた相互不可侵というようなもの、これは当然両国が国連に加盟いたしておる関係もあり、また当然のこととして、平和五原則の原則というものはどこから見ても異存のないところでございまするから、共同声明自体でそういう厳粛な意図が表明されておるわけでございますから、それは十分意味があるわけでございますけれども、さらにそれをより重みのあるものにしようという意味で平和友好条約を考えておるわけでございますから、その中に、あなたの言われる問題が織り込まれていくべき性質のものではなかろうかと考えます。両方でそういうことにしようじゃないかという話し合いをやったわけじゃございませんけれども、事柄の筋道としてそういうように考えております。
  133. 正木良明

    ○正木委員 けっこうです。ぜひお願いしたいと思います。  私は、この公開の席上でこういうことを言っていいのかどうか私自身もちょっと自信がないのですが、正直に申し上げますと、私は公明党の議員という前に一人の人間であり、一人の日本国民として、やはり台湾のことを思いますと心が痛みます。これは失礼かもわかりませんが、自民党のタカ派の皆さん方が考えている痛み方とはちょっと違うかもしれません。これは日本政府の大きな責任であったと私は思うのです。一九五二年に日華平和条約を結びましたが、これはいまから考えると明らかに大きな選択の誤りであったわけです。俗なことばで言えば、完全にボタンをかけ違ったわけでありまして、このかけ違いがどんどん累積をいたしまして、どうしてもやはり全部はずしてもう一度かけ直さなければならない時期が来て、またそれが国民の世論でもあって、そうして結局の話はかけ直されたわけです。ですから、このことについては決して誤りではないと思います。  しかし、日華平和条約によっていわゆる平和を選んだという日本の政治的選択が、実はあの大陸七億、八億の人民に対して実に大きな迷惑をかけたわけです。それでまた今度間違っていたからというのでボタンをかけ直す。そのことで今度は台湾の人たちにずいぶん迷惑をかけるわけです。私は、ここにほんとうの意味で、戦後台湾を中国を代表する唯一の合法政府として選んだ虚構の外交の大きな責任を感じないわけにはまいりません。そういう意味において、私は、絶対二つの中国論というものに立脚してもらっては困りますけれども、台湾に対しての考え方というものについて、やはり暫定的にはある程度のものはいたし方なかろうとも考えているわけなんです。  そこで、実は、現実的に台湾には日本人もおりますし、日本の投資、日本の財産もあるわけだし、また政府の借款もあるわけでありまして、こういうものについて政府はどのようにやっていこうとしておるのか、できるだけのことはというふうな感じでの御答弁は承っておるわけでありますが、もう少し具体的に、たとえば実際、先ほどの話に戻りますと、大使館を引き揚げ、総領事館を引き揚げてしまいますと、その後において在留邦人やまた財産について、どのような保護措置を加えていこうとしているのか、日本が直接やろうとしているのか、どこかの国に頼もうとしているのか、そういう点のお考えがありましたらば、また具体的に言えるならば、答えていただきたいと思うのです。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正木さんと私も認識を同じゅういたしておるわけでございまして、私ども、第二次世界大戦の結果、その後の中国政策がごらんのような経路をたどって、いろいろのジグザグコースを通って、ようやく今日を迎えたわけでございますけれども、この流れの根底に、やはり日本が犯した罪というものをいつも頭に置いて事に当たらねばならぬと考えております。台湾との外交関係が維持できなくなったゆえんのものも、外交関係を中華人民共和国政府に移した結果として起こったものでございますので、そのことを十分配慮して、できるだけという意味は、新しい日中関係間の信頼を失わない、そこねない範囲内におきまして、先方が許すならば、できるだけの措置を講じたいというのが精一ぱいの希望でございます。  このラインに沿いまして、いま現に濃密な関係が日台間にありまするし、至近の距離にありまする関係上、今後も続いていくことでございましょうから、大使館、領事館が引き揚げたあとどうするかにつきまして頭を痛めておったのでありますけれども、いま、台湾の御当局と日本との間で、民間レベルの連絡事務所設置につきまして原則的な了解ができまして、いま通産、大蔵、運輸その他関係省と相談をいたして、細目の詰めに入っておる段階でございます。  この民間レベルの連絡事務所におきまして、日台関係について台湾の当局と折衝が、その資格においてできるような措置をいま講じつつあるわけでございまして、同様の措置は、先方の政府におかれましても、東京に相互主義に基づきまして置くべく準備をされておるようでございまして、これは遠からず発足するだろうと思います。ちょうど、大使館、領事館の撤収と、その新しい事務所が設置されて、機能を、活動を始めるのとできるだけ合わしていきたいという配慮をいたしておるわけでございます。
  135. 正木良明

    ○正木委員 わかりました。ただ、ここで申し上げておきたいことは、やはりけじめをはっきりしてもらわぬといかぬということでありまして、私も個人的にはそういう感情を持っておりますけれども、やはりそれはそれなりにきちんとけじめをつけないと、せっかくのものがぶちこわしになってしまうということがございます。この点は、賢明な皆さん方ですから、十分御配慮をいただけると思いますが、それだけを申し上げておきます。  さて、そういうことで日中国交回復ができたわけですが、総理、日中国交回復をおやりになった理由はいろいろあると思いますが、おやりになるにあたっては、アジアの緊張緩和に貢献するところ大であるという御信念があっただろうと思いますが、どうですか。
  136. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 長いこと不正常であった両国、特に、七億、八億ともいいまして、日本の一億を加えれば地球上の人類の四分の一を算するわけであります。しかも、両国は二千年の歴史を持つ。この両国が話もできないということが、平和に寄与できるはずはないわけであります。そういう意味で、当然のような帰結で日中の正常化が行なわれたということだと思います。私は、機が熟した、時が至ったと、こう述べておるわけでございますが、結果は、両国の平和だけではなくアジアに、アジアだけではなく、世界の平和に寄与するものだと考えます。
  137. 正木良明

    ○正木委員 そういうふうにお聞きいたしますと、いまお答えになったようにおっしゃるわけです。ところが現実に、事実日中国交正常化ができ上がったということは、これは、日中間の平和関係が回復したのは当然のことでありながら、同時にまた、アジアに対する緊張緩和に大きく貢献した。それならばそれなりの、やはり状況変化に対応するというか、むしろそういう非常に好もしい状況というものを前向きに推進していかなければいかぬだろうと思うのですね。そういう意味では、私は、田中総理のおとりになろうとしておる安全保障対策というものは、新しい状況、しかもその新しい、好もしい状況をアジアに推進していこうということについては、むしろ逆行するような感じを持つわけです。  その一つは、やはり何といっても日米安保の堅持ということであるし、その日米安保の堅持という問題が、中国側との間に了解があったとしても、台湾条項の問題、極東の範囲の問題が非常に大きな問題になっているということ、全然変更なさろうとしていないということ、また、四次防の軍事力増強政策、同時にまた、安保に縛られてのアメリカに対する、私から見れば非常に屈従的な措置をおとりになるという、いわゆる国内法の改正の問題があるし、同時にまた、B52の沖繩飛来の問題がございます。  こういう一連の問題を考えてまいりますと、田中総理がおとりになろうとしている、少なくとも田中内閣がおとりになろうとしておる安全保障に対する――安全保障というより、むしろ平和に対する考え方というものは、前とは少しも変わっていない、このようにしか私は考えられないわけですが、そういう点どうでしょうか。基本的なお考え方を……。
  138. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 今日まで至るには長い道のりがあったわけであります。歴史の積み重ねによって今日が得られたわけでありまして、これは、日中両国の正常化ができたということ自体が非常に緊張緩和であるということであります。先ほども述べましたが、八億と一億が話もできないということであったものが、大使を交換して、お互いがこれから意思の疎通をはかりましょう、何でも相談いたしましょう、永久に武力をもって争わない、こういうことを声明しておるのでありますから、これがいままでと違うことは申すまでもないことであります。  しかし、あなたが指摘をされるように、そうならそうでいろいろなことがと言うけれども、それは、日中正常化というものが、長い歴史の上にありながら、なるべくして結論に達した。しかし、その大きな目的達成のためには、あなたが先ほどから述べられておるように、やはり日中正常化という大きなメリットのあるものをまとめるためには、何もかにもすべてのものを法律どおりきれいにはできないのだ。そういう意味で、現状の上に立って、政情も違うし、政体も違うし、向こうも中ソ同盟条約もあるし、こちらも日米安全保障条約もあります。そういうものをそのままにして、それよりも大きな日中の正常化をやりましょう、こういうことでスタートをしたわけでありますから、そういうものにまとめ上げていくという努力が私は必要であると思います。思いますが、何でもかんでもすべてが一ぺんに片づくということではないわけであります。それなりの、いまの情勢は歴史の重さがあるわけであります。そういうものをだんだんと現状に合うように、お互いが前向きで、平和のために両国が意思の疎通をはかって協力してまいりましょうというのでありますから、あまりこまかくすべての問題を性急に片づけようとするとなかなかうまくいかない。二千年の歴史の中で五十年、二分の一世紀というものは、確かに考えようによっては長いし、考えようによってはまばたくがごとき短いものだ。こういうことでございますから、私は、話もできなかった日中が、これからほんとうに永久に武力を使わない、友好関係を保持しようということにメリットを求めるべきだ、また、十分それはメリットである、こう理解しております。
  139. 正木良明

    ○正木委員 それは私は評価しているのです。日中間において、全く緊張状態がなくなってしまった、いわゆる平和が回復したということは、私はそれは評価しているのです。しかし、そういう大きなできごとがアジア全般に対して持っている影響力というものを考えると、やはりアジア諸国がどのように感じておるかということをわからなければいけないだろうと思うのですね。  したがって、この前ちょうど、田中総理が中国へ行かれる前に竹入委員長がアジア諸国を回りましたね。五カ国だけでございますけれども、やはり彼らが一番心配しているということは、日中国交回復ということは非常にいいことだという一応の評価をしながら、日中が今度は手をつないでアジア諸国に圧力をかけてくるんじゃないかということの非常に大きな心配があるというのです。私は、これを心配されたんでは何もできないのであって、これは心配されないように一生懸命こっちが説得するよりほか道がないだろうと思いますが、同時に、それでいてあなたが中国へ行かれて帰ってきたら、すぐ四次防をお始めになりましたね。決定なさいましたね。そうして、ほんとうにおっしゃったのかどうかわかりませんが、ここで確かめてもいいわけですけれども、このことについては周恩来総理も了解しているのだというようなことが新聞に出ましたね。そういうことになってくると、アジア諸国が心配するのは、日中国交回復ということによって、アジア諸国が逆に大きな威圧を受けるということなのです。ですから、日本といたしましては、日中国交回復がアジアの緊張緩和に大きな役割りを果たすのだということをちゃんと説得しなければいけません。事実、この間石橋書記長がおっしゃいましたので繰り返して申し上げませんけれども、愛知特使の現地における記者会見におきますと、やはりそういう心配をそれぞれアジア諸国はしておるということを非常に率直に述べられておる。これは、そんなことはないわとは言い切れぬだろうと思いますよ。そうなってくると、やはりそれは口だけではだめであって、態度で示さなければほんとうに説得はできないのだということですね。  こういうことで、そういうアジアに、日中国交回復という、また米中緩和という、また米ソの非常に親密な関係という、こういうことを考慮に入れて、今後の日本の平和ということ、アジアの平和ということを考えていかなければいかぬ。ところが、実際は、具体的な方策はいままでと全然変わっておりませんね。ここらが私は問題だというのですよ。日中国交回復ができたということは、私は最大限に評価をしているわけですから、これによってもたらされている結果を、どう具体的にわれわれの政策であらわしていくかということでなければ、アジア全体についてそういう説得の力を持たないということ、この辺を考え直してもらいたいというのが私の意見です。どうですか。
  140. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日中の国交の正常化ができたから、何もかにもすべて一挙に片づくのだということではないと思うのです。これからだんだんと時を経ながら、日中国交正常化のメリットというものが、アジアの平和、世界の平和にほんとうに寄与することである、こういうふうにわかっていただかなければならぬと思うのです。東西は雪解けムード、話し合いムードであるということで、だんだん緊張緩和になっております。こういう見方からいうと、いままで話もできなかった日中間が国交の正常化を行なう、その政情のいかんを問わず、お互いは平和に徹し、平和条約を結びましょう、こういっているのだから、これはほんとうに地球上の姿と同じ流れの中にあって、日中国交の正常化が平和の方向にあるととは言うをまちません。そうでなければ、世界のほうは緊張緩和に向いているなんということはみなうそだということになるのでして、そんなことはないのです。これは、話し合いもできなかったものが話し合いをするというのですから、これはもう平和のために前進しておることは言うをまちません。  それで、四次防というのはどういうのかということですが、四次防というのは、これはもう二月にその編成の大綱をきめ、だんだんとやって検討をし、そして政府部内では、長期経済見通し等の関係ともあわせて検討してまいりまして、いつの日にかきめなければならなかった問題でございます。だから政府部内では、日中関係をやるならその前にきめたほうがいい、いや、それはあとからのほうがいい、もっとうんと延ばしたほうがいい。それは、テクニックというものはそれほど必要なものではない、必要なものなら必要なものとしてもっとすなおにきめて、すなおに判断を受くべきであろう、こういうことで四次防はきめたわけでございます。  アジアの諸国が、日中の手を握ったことによって、日中が力を合わせて圧力になってはいかぬ、これは間違いだと思うのです。これはベトナムの南北でさえも話し合いでもって解決をしよう、朝鮮の南北も話し合いで解決をしようという機運でございます。その中で日中が手を握った、日中が平和友好の関係をスタートしたということですから、これは、ヨーロッパに比べて非常に緊張度が高いといわれておったアジアも、ほんとうによくなってきたということをすなおに受け取るべきだと思う。  ただ、一部でもって言う者ありとせば、それは、平和というものは、自由主義、民主主義諸国家はその連帯を強めて、バランス・オブ・パワーの小型版でもっていくことが平和を維持することだと、そう考えておるとすれば、日中で手を握ったのだから、日本は今度覇権を持つことになるのではないかというような考え方をすれば、それは圧力を感ずるかもしれませんが、私は、アジアの諸国でそのような感じを持つものはないと思うのです。ないと思います。ですから、そこはすなおに考えていいのじゃありませんか。これは地球上の一つの流れであり、阻止しがたい流れだ、アジアにもそういう流れがだんだんと起こってきておるのだ、平和に向かいつつあるのだ、その一つの現象が日中の国交の正常化である、私は、こう位置づけし、そう理解すべきだと思います。
  141. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと抽象的な話になってしまいましたので、もっと具体的に聞きましょう。  四次防の「情勢判断」の中で、「しかしながら、アジア地域においては、米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、全体として安定した緊張緩和状態に至っているとはみられず、また、その他の諸国間においても種々の緊張要因が存在している。」こういう状態の中では全面戦争はないけれども、「地域的ないし期間的に限定された武力紛争が起こる可能性」があるといっています。これと同じようなことを、総理は不安定要素が存在するというふうにおっしゃいました。しかも、歴代首相と違うところは、具体的にその個所をおっしゃったことです。これは、議論をするのには非常に前向きでけっこうだと私は思うのですが、実際は、やはり不安定要素は、総理が御指摘なさったような地域にあるというふうにいまでもお考えですか。いまでもと言っても、まだあまり日にちはたっておりませんけれども……。
  142. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 こういう問題は、あまり議論をしないのが私は通常だと思うのです。戦術会議であっていろいろやるなら別でございますが、あまりそういうことを私とあなたが議論しなくとも、大体の認識は同じだと思うのです、実際。ですから、それは先ほど申し上げましたように、ヨーロッパに比べて、アジアはまだほんとうに平和の状態がきておらないじゃありませんか。そう申し上げて、それはうなずかれると思うのです。じゃ、国会でございますからはっきり申し上げるということになれば、宗教上の問題として、バングラデシュの独立を含む問題がこの間あったばかりじゃありませんか。インドとの問題もしかりであります。印パ戦争しかりであります。しかも、話はつくだろうと思いながら、最終的平和の結論をいままだ見出せないのがインドシナ半島の問題であります。しかも朝鮮半島も、南北は接触はいたしておりますが、両方が憲法改正をしなければならないというような状態であります。アメリカと中国との間は非常によくなりました。すべてが話し合いできるような状態だと私は理解いたしております。しかし、アメリカと中国との問題がすべて解決しているとは思いません。アメリカと中国とソ連という三大国の利害は一致しておらぬじゃありませんか。しかも、中国七千キロに及ぶ国境のうち、インドとソ連の国境はいまだ確定に至っちゃおらないじゃありませんか。そこにどのような配備をしておるかということを私は申し上げるのじゃありません。しかし、今日に至る国境線には、半年に一回ぐらいずつトラブルはありました。これからあると言うんじゃありませんが、しかし、いずれの問題にしても、これがすべて裸になってもいいような、また、裸ということを言わなくとも、自分たちが流動する状況として認識しないで済むような状態ではない。地球上のあらゆる地域と比べてみても、やはり理解できるじゃありませんか。私は、それはもっと言えといえば、もっと何でも述べられることはありますが、しかし、私は大体同じだと思うのです。
  143. 正木良明

    ○正木委員 総理がそういうふうに御判断なさるというのは、それでけっこうだと私は思いますが、もし百歩譲って、総理の御判断が正しいとして、その問題は、いまおあげになったそのいずれも日本とどんなかかわり合いがありますか。
  144. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 このようなアジアの情勢の中で、日本人が日本の独立を確保し、生命、財産を守る。しかも、憲法で許容された最小限の防衛力として四次防を必要といたします。
  145. 正木良明

    ○正木委員 中ソ国境に両国の大軍が集結されておる。これは緊張だとおっしゃる。両国にとってはきわめて緊張でしょうが、日本にとって緊張であるとは私はどうしても思えません。ベトナムにおいて停戦のきざしはあるといえども、まだそれが本格的にはきまっていない。これは日本と直接どんなかかわり合いがありますか。むしろ日本は、日米安保条約の結果、アメリカの後方基地としてかかわり合いを持たせられているのであって、これは本来、日本がかかわり合いのあるものではないと私は思います。バングラデシュにおいてはなおのことです。中印国境においてはなおのことです。これがどうして日本が軍備を増強しなければならない理由になりますか。朝鮮半島においてもとおっしゃいました。それならば、朝鮮半島におけるところの緊張状態というものは、かりに一〇〇%なくなったのではないという総理のお考えを正しいとしても、日本が積極的にその平和に貢献するために、朝鮮民主主義人民共和国となお友好関係を進めていくということについて政府が決断をすれば、むしろ日本はこれにかかわり合いを持たなくて済むのです。このかかわり合い、いまおっしゃったいずれものかかわり合いは、その大部分は何に存在するかといえば、日米安保条約があるために、その条約上の義務を守らなければならないという名目のもとに、日本がかかわり合いを持たされているという一点にあるのでありまして、本来、いま申された不安定要因がかりにありとしても、これはわが国とは直接関係のあるものではないと思いますが、どうですか。
  146. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今度の、いま問題になっておる国際情勢でございますが、これは外務省のほうへ、いまの国際情勢はどうかということで国防会議からお問い合わせがございまして、それで、私どものほうでそういう判断を出したわけでございます。  私どもは、そういう国際情勢、なるほど緊張緩和は進んでおる。しかし、依然アジアには不安定要因が伏在いたしておる。しかし、どちらかというと、緊張緩和のほうへ歩武を進めておることは間違いございませんが、これは、日米安保条約の存在、あるいはわが国が自衛力をある程度保持しておるというような状態、それからアメリカ軍がアジアに駐留いたしておるというような状態、その中から生まれてきたものでございまして、したがって、平和の問題を考える場合に大事なことは、こういういろいろな状況を軽々に変えないほうが無難である。もし軽々にいじると、かえってまた新しい緊張を生むおそれがありはしないかということから、日本の国防体制も、こういう状況だからここでひとつ大きく改めなければならないというような判断に対して、私どもといたしましては、そう判断すべきではなくて、現在の状況を手がたく守っていくというところに力点を置いた政府の姿勢が望ましいのではないかという考え方で国際情勢を出したわけでございます。これがわが国とのかかわり合いということの概括論でございます。  それから、申すまでもなく、安保条約はわが国の防衛、専守防衛とよく言っておりますが、防衛を主体にしておるわけでございまして、ある特定の国に向けたものであるとか、あるいは特定の脅威を前提にしたという考え方をとっていないことも、正木さんよく御承知のとおりと思います。
  147. 正木良明

    ○正木委員 要するに、いま外務大臣は非常に正直におっしゃったと思います。いわゆる佐藤政治をがらりと変えるんだということで出現なさった田中総理の考え方も同じくそうであるとするなら、これはたいへんなことでありまして、これは完全に待ちの政治の継続ですわ。これはほかのところにも端的にあらわれておりまして、要するに日本が、少なくともアジアにおいて平和を確立するために積極的な貢献をしていこうという意欲が全然どこにも出てきていないわけですね。これがいま大平外務大臣がおっしゃったこととぴたりと合うわけで、したがって、おそらく正直におっしゃったんだろうと思うのです。はたして日本の立場として、そういうことだけでいいのかどうかということです。もちろんそういうことは、平地に波乱を起こすべきではないという考え方なのでしょうが、その奥にあるのは、やはりバランス・オブ・パワーの考え方がどうしても抜け切れないのだろうと思います。バランス・オブ・パワーの考え方というのは、実は冷戦構造ということにも一面通じていく問題でありまして、そういうものを破っていくということ、しかも、そのために日本がアジアにおいて大きな貢献をするということ、これは、私は日本の今後の使命でなければならないと思っているのです。本来、これはもう二、三年も前から予算委員会で、佐藤総理を相手にしてずいぶんやったのですが、佐藤さんも全然はぐらかして答えてくれなかったのですが、私は、日中国交回復だけを抜き出して考えるというのは、本来反対だったのです。やはり日本は日本の使命として、立場として、独自にアジア構想があっていいと思ったのです。それがなければいけないだろうと思っていたのです。いわゆるアジアをどうしていくのか。どうしていくといったって侵略するのでも何でもありませんが、どういう平和で共存共栄のアジアをつくっていくのかというビジョンがあって、その中で日中国交回復をどう位置づけるかということで考えていかないと、結局おかしいなものができ上がってしまうぞということをよく申しておりましたけれども、この議論はなかなかうまくかみ合いませんで、ついに結論が出ておりません。そのうちに日中国交回復がどんどん進みまして、進んだことは不満ではありません。非常に大きく評価しておりますが、いま大事なことは、もとへ返って、アジアというものをどういうふうに考えていけばいいのか、そこで日本はどんな役割りを果たせばいいのかということを、本気で考えなきゃいけないときが来ていると思います。  私は、ある意味において、田中総理が日本列島改造論をお出しになったことは、内容はものすごく不満が多いのですけれども、少なくともそれを提案なさった、少なくとも国民の前に問題提起をなさったという功績は、非常に大きいと認めているのです。あの日本列島改造論は、これからまだまだ議論をしていかなければなりませんけれども、日本列島改造論だけではなくて、いま日本の国民が議論しなきゃならぬ問題、少なくともわれわれが日本の国民の前に提起しなければならない問題は、あの日本列島改造というああいう問題と、もう一つ防衛、外交という問題だと思うのです。これは、やはり国民の議論の前にさらさなきゃいけません。そのために私たちは、この防衛のための安全保障といいますか、そういうための委員会を国会につくるということに積極的に賛成しているわけでありますけれども、こういうことをやらなきゃいかぬのですよ。そうでないと、こういう形で非常に制限された時間の中で、政府を相手にして、しかもあげ足とりでないとどうしても議論がはでにならないという形でやっておったのでは、ほんとうのコンセンサスというものは私は生まれないと思うのです。そういう意味においては、むしろ円卓を囲んで、政府を相手にするのではなくて、政府は説明員で横に置いておいて、与党と野党との間でやり合うというのでなければ、ほんとうのコンセンサスは生まれないと私は思うのです。そういうことをいまやらなければいけないのに、こういう形でやっていると、また変なかっこうになってしまうわけです。これは、やはり虚心に聞いてもらわなければならないし、そのことについて私は十分考えてもらわなければならないし、われわれもわれわれで変な独善的な、自説を固執するということではなくて、その議論に応じていかなければならないと私は思うのです。  それにしても、いまの議論はおかしいのであって、そういうためにやはり議論しながら、少なくとも議論の上では積極的にどう貢献していくかということの方途というものがきめられていかなきゃならぬだろうと私は思うのです。それがいまはないのです。大平外務大臣がくしくも――くしくもというか、実に正直におっしゃったと私は思うのです。ですから、むしろ私たちは、このアジアの諸国の側に入らなきゃならぬだろうと思います。少なくとも核を持っていない日本の国として、また今後将来にわたって核を持たない国としては、経済力からいえば比較にならないかもしれませんが、そういう核非保有国と一緒になって、むしろ核をなくしていくというような方向にいかなければならぬのです。それは総理もお認めになっているのです。もう核戦争の時代ではありません。核を使うなどという戦争をすれば、地球が幾つあっても足りません。人類は全部滅びてしまうのです。こんなばかなことはしないということは明らかに言えると思う。  しからば、そういう中にあって、むしろそういう軍縮していくとか、核をなくしていくとかいうことについて、日本が積極的に働かなければいけないのに、この構想の中では、むしろ核の脅威に備えるために、アメリカの核にたよらなければならぬという、きわめてうしろ向き、消極的な形になっているのですよ。私は、安保条約は直ちにやめてしまう、そういう短絡的なことを言うのではなくて、むしろそういう中で積極的な貢献をしていかなければならないという一例を申し上げたわけなんですが、そういうことになっていないということなんです。  だから、四次防にしても、しかもこれは防衛庁長官、あなたは八月十七日、内閣委員会で、防衛力は緊急事態の際、五、六年で整備できるものではなく、国力、国情に応じてなお整備する必要がある、五次防もやることになるだろうということをおっしゃっていますね。これはどういうことですか。これはいまでもお考えは変わっていませんか。四次防のあと五次防もやる、こうなってくると無制限に軍備がふえていくということになりますが、どういうことでしょう。
  148. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 日本の防衛力、自衛力というものが、いまどういう段階であるかということに関連してのお話でございます。  それで、いま考えております四次防、まだ決定前でございますが、四次防ができても、日本の自衛力として十分な段階ではない。これはその前の説明の段階で、防衛庁原案というものは、去年の四月に発表しましたものは、十年後の一つの状況を想定し、その際の防衛力、自衛力を想定し、相当の綿密な計算をしたものでございます。それの五年間というものを四次防としてきめたという経過のある質問応答の中で、今度の四次防は二月七日にきめられた基本方針に基づくもので、そういうものではございません、三次防の延長としてのものでございます、したがいまして、四次防ができました段階で、まだ十分な日本の自衛力というものではありませんという説明をいたしましたところ、それでは五次防もやるのかというお問いがあったので、おそらく五次防をやることになりましょう、こういうお答えをした、そういう話の筋道でございます。
  149. 正木良明

    ○正木委員 おそらくその前後もそういうことがあったのでしょう。しかし、少なくとも四次防が済めば今度は五次防、五次防が済めば六次防、こういうふうに考えますよ。それを長官が明言された限りにおいては、これはもう果てしなく軍備増強は続いていくものと見なければなりません。おそらく五次防は給与費だけであって、新しい装備は一切いたしません、そういう形の、維持するだけの五次防です、こういうことではないでしょう、おそらく新しい装備をふやしていくということも含まれた五次防だろうと思うのです、長官の頭の中にある、想定される五次防というのは。どうですか、新しい装備も入るのですね。装備の更新はどうですか。
  150. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 まだ五次防というものをある程度具体的に想定する段階には至っておりません。そして、いまの段階では、この場所でもお話が出ておりますが、田中総理から平和時における日本の防衛力、自衛力の限界を考えてみろという指示を受けておりまして、いま防衛庁でその作業をしておるところでございます。年内にはお示しができるだろう。これは平和時の日本の自衛力、防衛力、そしてこれには日米安保条約というものを一つの前提とするというふうな、その他二、三の前提がつくと思いますが、そういうことで自衛力の平和時における限界というものを策定しようと思っております。そして、これを皆さまに御説明申し上げるということを考えております。無制限に日本の自衛力がふえるなどというものではございません。
  151. 正木良明

    ○正木委員 それは当然だと思います。これは時間がなくなってしまいましたので、結論的に言って、私は先ほども申し上げたように、そういう議論をするということで練り上げていかなければならない問題で、何しろ多数を擁する与党政府が自分たちでつくって、それを押しつけてしまうという形は一番よくないと思うのです。したがって、早急にそういう議論の場を別に国会の中に設けると同時に、むしろ四次防をどうするかというような問題について、それを白紙に戻して、われわれと議論した上でつくり上げていくということでなければならぬと、私はそのように思っておるわけであります。  これで四次防の問題は終わりますが、総理、いまの考え方どうですか。
  152. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四次防はもうすでに定めて御審議をいただいておるわけでございますから、これをどうしようということではなく、日本の防衛はまだずっと続くのであります。ですからそういう意味で、将来どうあるべきかということは、国会で特に調整をしていただくことが望ましいことだと思います。その意味で、国防委員会でも安全保障委員会でも、どうしても両院に審議ができるところが望ましい、こう思います。その事務当局は、いまの常任委員会というようなものよりも、もっと専門的なスタッフをお持ちになっておって一向差しつかえないと思うのです。これは、軍事力とかそういうものは、内容を知らせるということは手のうちを見せることだということで、非常に秘密を求められておりますが、日本は専守防衛であります。これは、日本はこれだけの自衛力を持っておるんだという内容を外から知ってもらって、攻撃をしたり侵略をしたりする気持ちなんか何にもないのですから、そんなに隠す必要もないと私は思う。  そういう意味で、日本が周囲の情勢に対してとの程度の防衛という、いわゆるその抑止力に値するものはどう必要であるか。これは、世界百四十幾つもある国の中で、日本だけが全然別な形態をとれということには、どうしても私は納得しません。それは、現に日本の国民の生命、財産を守らなければならない公的な地位にある私として、そういうことはできません。全く新しい行き方を行きなさいというよりも、それは多少負担があっても、万全な体制があってそれが抑止力となるということのほうが、より合理的であるというふうに考えておりますが、ずっと長いこれからの防衛であり、国際情勢も変わってくるわけでありますから、そういう意味では、政府だけの考えよりも、国会ほんとうにシビリアンコントロールの実をあげていただくということが望ましい、私はほんとうにそう思います。  ですからそういう意味で、いまの四次防というものにあまりにこだわられないで、これはずっと続いていく問題でございますし、国民総生産も拡大してまいりますし、またこれからだんだんと平和の情勢をつくらなければならないんだということでございますから、すなおにひとつお考えをいただきたい。  それからもう一つ、すなおということで一言だけ申し上げると、どうも日米安全保障条約があるから緊張がと言うのですが、これは遺憾ながらどうしても納得いたしません。ヨーロッパはなぜあのように強大な先進国があるのにもかかわらず、NATOという機構をちゃんと守っているのか。そのためにヨーロッパの平和というものが守られておる。これは冷戦構造とかバランス・オブ・パワーとかという感じだけの問題じゃないのです。それは歴史の重さなんです。現実がそれを証明しておるということで、私は、アジアに日米安全保障条約というものがあった、日本が日米安全保障条約というもので今日まで平和を維持してきたという考え方は、これはもうどう考えてもそう思っておるのです。ですから、これはひとつそういう意味で少し、自民党を敵というよりも、政府の考え方に寄っていただきたい。
  153. 正木良明

    ○正木委員 あなたがおっしゃっているように、確かにNATOがありワルシャワ条約機構があるわけですけれども、あれだって、ヨーロッパは新しい緊張緩和のための安全保障会議を開こうとしているのです。それだって、結局一〇〇%有益なものだという考え方はないわけなんです。ましてや、日本の置かれている地理的な条件も大きく違いますし、そういう意味では、非常に大きな緊張緩和が進んでいるのですから。  そこで、おしかりに百歩譲って、いままで日米安保があったためにということであったとしても、この新しい状況に備えるためには――いま日米安保は何に備えているのですか。何にも備えていない。アメリカに使われておるのです。しかも、それはベトナム戦争に協力という形で使われておるわけなんですからね。その点はお考えいただきたいと思います。時間がありませんので、これまた別の機会にやりましょう。  実は、この間ソ連へ御芳労さまでございました。結局、日ソ平和条約がどうかということ。この日ソ平和条約については、領土問題の解決ということが前提になるという考え方に変わりはないか。その北方領土の問題については、われわれが主張する領土というのは四つの局なのかどうか。この点、ごく簡単でけっこうですから、お答えになってください。
  154. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ソ連首脳とのお話し合いを通じての印象では、ソ連は明らかに平和を欲しておりますし、日本との間に安定した関係を維持することを希望いたしておると思います。それで、平和条約を締結して日ソ間の安定した恒久的な関係を打ち立てたいという希望を持っておるわけでございます。  ところが、いま御指摘のように、平和条約をつくるとなれば当然領土条項を片づけなければならぬわけでございますが、ソ連のいう平和条約の中身になる領土条項は、一九五六年の線、すなわち歯舞、色丹の線で領土的な始末をつけての平和条約というように考えておると思います。わがほうといたしましてはそうではなくて、固有の領土をお返し願った上で平和条約というところに、依然として双方の立場は距離があるわけでございます。ただしかし、双方とも平和条約をつくろうという熱意においては一致いたしておるわけでございまして、この間は第一回の交渉の口火を切っただけで、明年また続けてやろうということに合意いたしておりますので、こちらといたしましては、しんぼう強くやってまいりたいと考えています。
  155. 正木良明

    ○正木委員 田中新内閣ですから、この問題は議論し尽くされた問題だと思いますけれども、新しい内閣だという意味で、もう一度おさらいという意味で、基本的な問題だけ幾つか申し上げます。簡単にお答えください。  四つの島を要求するという態度は変えないということ、これはよくわかりました。そこで基本的には、ソ連が主張する論拠になるのはやはりヤルタ協定とポツダム宣言、降伏文書だろうと思うのですけれども、従来の経緯からいって、ヤルタ協定は日本の関知するところではないという考え方を持たれていたようでございますが、新内閣もそうですか。  それともう一つは、この点は歴代の内閣でいささか違うわけでありますけれども、ソ連が心配しているのは、北方の島を返したときに、それが日米安保条約の関係で米軍基地が置かれるのではないかということを非常に心配しているらしい。したがって、返還された新しい島は非武装地帯にするという構想が政府側にもあるようでありますが、この点についての田中内閣の考え方、とりあえずこの二つを先に言ってください。
  156. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、ヤルタ協定には拘束される立場にございません。  それから返還後の問題でございますが、まず返還ということに一生懸命になっておるわけでございまして、返還後の問題は、自分の領土でございますから、日本が自主的に措置すべきものと考えておるわけでございます。
  157. 正木良明

    ○正木委員 当然私は自主的に考慮しなければならぬ問題であろうと思いますがね。ただ、返してもらったあとで考えるということではなくて、むしろ大きなからみがあるだろうと思うのです。返してくれればそれはアメリカの基地になんかしませんよ、絶対非武装地域にするのです、こういうことも返すときのための一つの条件になるのではないかというふうに考えるわけです。しかし歴代、だれでしたかね、一人だけ非武装地帯にしてもいいなんていうことを言った外務大臣がいましたけれども、そのほかは全部自主的に自主的にと言っていますから、そういうことでしょうが、しかし私は、非武装地帯にするというのは一つの構想だと思うのですが、これはよく考え方を検討してください。どうでしょうか、よろしいですか。
  158. 大平正芳

    ○大平国務大臣 平和条約交渉が始まったばかりでございますので、当面それに一生懸命に当たりたいと考えておるわけでございますが、いま御指摘のような問題があることはよく心得ておるつもりです。
  159. 正木良明

    ○正木委員 私の見通しでは、四つの島を要求し、その問題が解決しない限り平和条約締結がないということであるならば、おそらく時間的には相当長くかかるのではないかというふうな考え方をいたしております。そのときそのときでまた考え方が変わるかもわかりませんが、もう一度念を押しておきますが、四つの島を要求するという最低線はお変えになりませんね。
  160. 大平正芳

    ○大平国務大臣 変えるつもりはありません。
  161. 正木良明

    ○正木委員 いろいろお聞きしたいことがたくさんございましたが、もう時間が迫ってまいりましたので、もうあと一つ、B52が返還後四回来ているのです。この間なんか、百三機なんというたいへんな数でやってきているわけでございますが、この問題についてひとつ聞きたいと思います。  私、お天気が悪いから沖繩へ来たんだという話でしたので、気象庁からその資料をとってみました。ほんとうにお天気が悪かったのかどうか、気象状況が悪かったのかどうか、とってみましたが、ぼくはちょっと専門家でないので、天気図だとかなんとかというのは見てもなかなかわからないのですが、ただ、問題として、向こうのほうから、アメリカ軍のほうから、気象状況が悪いなんということで緊急避難を求められたときには、それはそのまま今後もお許しになるわけですか、どうですか。
  162. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカ側も気象部隊を持っておるようでございますし、日本の気象台の観測も参考にいたしまして、そういう蓋然性が濃厚でございますならばやむを得ないと考えています。
  163. 正木良明

    ○正木委員 私はどうも、気象庁のいろいろな様子を見ますと、決して避難しなければならないような状況ではないと思いますね。にもかかわらず、嘉手納へ着陸したいなんということを通告してきて、私は、これを何回か重ねて、原子力潜水艦みたいな形で何回か繰り返し繰り返し積み重ねて、ある種の常駐化をしようという考え方なのではないだろうかというふうなことを考えているわけです。もしかりに政府のほうがそうでないというならば、こういう緊急避難のための要請があったときに、許可し、同時にそのときに、その退去ということ、たとえば二十四時間以内に退去しろとかなんとかというような要求はしておるわけですか、どうなんでしょうか。
  164. 大平正芳

    ○大平国務大臣 気象の予測ということと、それから所定の機数、つまり、シェルターのない、雨ざらしの飛行機を所定台数避難させるということに要する時間帯等をいろいろ勘案して考えてみますと、アメリカ側の要求は緊急避難の域を出ていないと私ども考えております。言いかえれば、あなたがおっしゃるように、そこへ何回も何回も反復してやってきて、そういう避難の名にかりて嘉手納に一つの本拠を置くというような意図は、私は全然ないと判断しております。  それから第二に、したがって、気象状況が心配ない状況になりましたならば、即刻退去してもらうということは、そのつど言っておりますし、現実にそのとおり先方も実行しておるわけでございまして、それを格別、別な意図をアメリカ側が持っておるものとは考えておりません。
  165. 正木良明

    ○正木委員 要するに、その場合、緊急避難ということであるならば、たとえばこの前十月のようにグアムに台風が直撃する、その予測のもとに嘉手納へ緊急避難で移ったという場合と、それから、ベトナムの爆撃の帰りに台風にあって、空中給油ができなくて地上給油をまたなければならぬというので嘉手納へ着陸するという場合もあるわけです。こういう場合は明らかに区別をしているわけですか、どうですか。
  166. 大平正芳

    ○大平国務大臣 こういう状況でやむを得ないから緊急避難をするから了解をしてくれというように、そのつど先方から通告があるわけでございます。
  167. 正木良明

    ○正木委員 いやいや、私が言っているのは、ベトナム帰りかどうかということは確認できるのですかというのです。
  168. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども戦闘の当事国でございませんから、どのように飛行機が現実にオペレーションをやっておるのか、軍事的な行動をやっておるのか、そのあたりの詳細な点は承知いたしておりませんけれども、先方側の言ってきたこと、そして気象状況を考えてみますと、別な意図を持って、緊急避難の目的以外の目的であすこに飛来しておるものとは考えていないわけでございます。
  169. 正木良明

    ○正木委員 いや、これは前内閣の福田外務大臣が、ベトナムへ行った帰りに地上給油する場合には、明らかに事前協議の対象になるということを言っているのです。空中給油の場合には事前協議の対象にはならないけれども、要するに、戦闘作戦行動を終えて帰ってきた飛行機が沖繩へおりて、空中給油の場合はかまわないけれども、地上給油の場合には事前協議の対象にしなければならないということを答弁しているのです。したがって、きわめてこの分かれ道というのは重要なんです。どうなんですか。
  170. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事前協議の対象になる場合は配置の転換でございまして、その配置というのは、そこを本拠地として駐留するという目的がないとそうならないと私は判断いたしますので、緊急避難のために、あるいは途中油が不足してというような事態がたまたま嘉手納で給油したといたしましても、それは事前協議にいう配置の転換であるというように私は解釈いたしかねます。
  171. 坪川信三

    坪川委員長 正木君に申しますが、時間が経過いたしておりますので簡潔に願います。
  172. 正木良明

    ○正木委員 わかりました。  配置の転換のことを私は言っているのじゃないです。配置の変更というのは、要するに、百二機だったら陸上の一個師団に該当するかどうかというような質問をぼくがするなら、そのお答えはそれでいいかもわかりません。さっき外務省に問い合わしたから、外務省はそう思っているのです、ぼくの質問を。そうじゃないのです。四十七年の五月二十三日にこう言っているのです。「KC135」――KC135というのは給油機です。これがB52の給油をした。質問は、「ベトナム戦争に爆撃をして帰ってくるB52の給油をしても、それは事前協議の対象とならない。これがもし地上において給油した場合には事前協議の対象となる。今回の場合、あなたが指摘した」云々とありまして、「気象条件が悪くてKC135の給油ができないので、沖繩におりた。そこで地上給油」、これは事前協議の対象。要するにこれは、戦闘作戦行動に直接行った飛行機が帰りに地上へおりたということだから、戦闘作戦行動中なんです。この場合には地上給油は事前協議の対象になると、福田外務大臣は言っているのです。「重ねて申し上げますが、地上において給油する場合、これは事前協議の対象となる、そしてこれが空中において給油を受ける際には事前協議の対象としない、こういうことです」と、じゃまくさそうに言うていますわ。何べん言うたらわかるのやという言い方でおっしゃっていますがね。このくらい繰り返しておっしゃっています、重ねて重ねて。したがってこれは、戦闘作戦行動の帰りなのか、行きならもちろんのことですが、帰りなのか、または要するに戦闘作戦行動中であるのか、純粋な意味のいわゆる緊急避難であるのかということを区別しないと、これはたいへんなことなんです。簡単なものじゃないです。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地上で給油して、それから戦闘行動に発進したら、それは当然、福田さんがおっしゃるように、事前協議の対象になりますが、そういう例はないわけでございまして、いままでの事例は全部悪天候のための緊急避難でございます。
  174. 坪川信三

    坪川委員長 正木君に申しますが、もう時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  175. 正木良明

    ○正木委員 悪天候のために空中給油ができないために地上へおりて給油をするのです。いいですね。だから悪天候が理由になって嘉手納へ来て給油をするわけです。これは、戦闘作戦行動に再び出るのか、またそのままグアムへ帰るのか、それはわかりません。しかし、戦闘作戦行動中であることは事実なんです。そういう場合には事前協議の対象に当然なる。しかもそれは名目は何かといえば、気象状況が悪いから地上へおりてきたんだということになっているのです。だからこれは、要するに事前協議というやつは、向こうを信頼するということだけではどうにもならないので、結局はこっちも査察権がなければならないので、これは水かけ論になるかわかりませんけれども、しかしそういうふうに、ただ何となく、天候が悪いために、気象条件が悪いために緊急避難をさしてもらいたいというような申し入れだけで受けつけるべき問題ではないし、同時にまた、そんなけちなことを言うなというふうに総理ならお考えになるかわかりませんけれども、このB52が大挙して沖繩へやってきたということについて、受けておる沖繩県民の県民感情ということを考えれば、これは極力避けなければならない問題です。しかも、復帰後もうたび重なって四回です。四回もやってきているということを考えてくると、今後もこれはおそらく繰り返されるに違いないというふうに考えるわけです。  したがって、政府はここでき然として、B52の寄港といいますか、一時的にしろ着陸するということを、アメリカに対して強く要請してもらわないといけないと思うのですが、その点どうでしょうか。これで終わりますから……。
  176. 大平正芳

    ○大平国務大臣 真にやむを得ない緊急避難の場合に限りと、こういう行動が定型化されては困るということは、もう再々アメリカ側に申し入れてありますし、アメリカ側もそれをよく理解して行動いたしておるわけでございますが、今後とも厳重にその線を守ってまいるつもりです。
  177. 坪川信三

    坪川委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  178. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、社会党を代表いたしまして、主として税、財政問題及び公害問題を中心として若干の質問をしてみたいと思います。  最初に自治大臣にお尋ねいたしますが、総理は、政治の流れを変えなければならぬということで総裁になり、そして総理になられたわけです。言ってみますれば、日本のいままでのいわゆる政治、経済の軌道を修正をする、そして福祉重点の政治をやる、こういうことだと思います。そうなってまいりますと、何の事業をやるにいたしましても、たとえば公共事業をやるにいたしましても、それを推進するものは都道府県や市町村という地方公共団体であります。さらに福祉重点ということになってまいりますと、もっともっと住民に密接、直接に関係する問題でありますだけに、いわゆる地方自治体の役割りというものは重要性を加えてくるかと思うのであります。そうなった場合に、今日の地方公共団体のいわゆる行政の実態なりあるいは財政の実態というものがこれでいいのか、こういう疑問が浮かびます。  私がお尋ねしたいことは、自治大臣としてそういう福祉重点の政治の流れをつくっていく場合に、自治体というのは一体どういう役割りをになわなければならぬのか、こういう点について、自治大臣の基本的な考えをまずお尋ねしたいのであります。
  179. 福田一

    福田国務大臣 お答えをいたします。  お説のとおり、福祉政策とか、あるいは立ちおくれた社会資本の充実とかという問題を実現していきます場合には、何といっても市町村がその第一線の任務をはからなければならない非常に重要な位置を占めておるわけでございまして、したがって、いま先生が言われたようないわゆる行政能力、財政能力の問題というものは最も重要視していかなければならない、かように私は考えております。
  180. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大体、自治大臣の考え方、これからは自治体の行政能力、財政能力を重視していかなければならぬ、こういうお答えであります。そこで、具体的にお尋ねをしてまいりますが、時間も制限があることでありますから、イエス、ノーということだけではいかぬにいたしましても、簡潔明瞭にお答えをいただきたい、こう思います。  せんだって自治省では、昭和四十六年度の都道府県の決算状況というものを発表されました。時間の関係がありますから、その自治省が発表いたしました都道府県の四十六年度の決算状況の骨を私が申し上げますから、そのとおりであるかどうかお答えいただきたい。  第一点は、三十年度以来続いていた黒字基調が一転して赤字基調に変わって、実質収支で百五十五億円の赤字を出した。第二点は、単年度収支は五百七十八億円の赤字で、赤字団体も十団体ふえて、全体の八割をこえる三十八団体が赤字になった。第三点は、地方税の伸び率が八・六%で、地方債は前年と比べますと二倍以上の一〇二・五%になった、国庫支出金は二一・八%伸びた、地方交付税はわずかに十三・九%だ、こういうことであります。こういうことで、財政が極度に悪化した。  もっと突っ込んで言いますと、この歳出の面における歳入増中の一般財源は三〇・四%の伸び、特定財源が七〇%伸びた。先ほども申し上げましたように、国庫支出金がどんどん伸びていった。そうしてどうなったかといいますと、普通建設事業の中で補助事業は異常に伸びたけれども、自治体の単独事業というのは前年度よりも逆に伸び率が落ちてきている、こういう具体的な事実が自治省の都道府県の決算状況の中に明確に書かれてあります。しかも、単年度で五百七十八億円ということでありますけれども、従来積み立ててきました基金を取りくずしておりますから、実際は単年度で七百億円近い赤字を四十六年度は都道府県が出しておる、こういうことになります。私が申し上げたことは都道府県の決算の状況から拾いあげたのでありますが、そのとおりであるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  181. 福田一

    福田国務大臣 たいへんよくわれわれの調査いたしましたところを分析していただいておるのでありまして、全くそのとおりでございます。ただし、これ以上申し上げるのはいかがかと思いますが、昨年は景気が非常に鎮静化したときでございまして、あらゆる意味において税収等が非常に落ち込んでおりましたために、いま仰せになったような数字が出てまいったと存じておる次第でございます。
  182. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ただしの項はあとで聞きますから、ただしはよろしいのです。  私が指摘したとおりだ。このことは、四十六年度における都道府県の財政状況は、前年度から比べますと悪化した、こういうふうに理解してよろしいですね。
  183. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおりでございます。
  184. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治省では、これもたしか八月か九月か十月ごろと思いますけれども、四十五年度の行政投資実績というものを発表されましたね。その四十五年度の行政投資実績、こういうのを見てみますと、私は数字を拾ったのでありますけれども、総投資の国と地方の負担割合、これを昭和三十五年と四十五年を比べてみますと、昭和三十五年においては国費は四二%の割合でございましたけれども、四十五年度は三六・五%となっております。このことは、三十五年と四十五年を比べますと、おおよそ六%程度国費の負担割合が減少しておる。逆に都道府県や市町村の負担割合が大きく増大をしておる、こういうことになるわけでございますが、そのとおりかどうか。
  185. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおりでございます。
  186. 細谷治嘉

    ○細谷委員 特に私は、自治体というものを、都道府県と市町村ということでいま一緒にまとめて申し上げてきたわけでありますけれども、この中における市町村の負担率のシェアというものが非常に大きくなっておるのが、数字的にぴしゃっと出ております。これもお認めになりますか。
  187. 福田一

    福田国務大臣 御案内のように、市町村の道路事業とかあるいは下水その他の単独事業等が非常にふえておる結果、そういう結果が出たのだと思っております。
  188. 細谷治嘉

    ○細谷委員 単独事業ということで逃げようとしておりますから、さらに申し上げてみます。  いま私は総投資の負担割合ということで申し上げたわけですけれども、これを産業基盤投資と生活基盤投資に分けて、国と地方公共団体との負担割合、こういうのを拾って申し上げてみたいと思います。  四十五年度の産業基盤投資については、国費は四五・三%、地方団体が五四・七%負担しております。ところが、昭和四十年、四十一年と拾ってみますと、国の産業基盤の整備について、四十年度は五二・四、四十一年度は五五・五。それがずっと四十二年、三年、四年、五年と下がってまいりまして、四五・三%という国の負担割合になったわけですね。四十年ごろは五二から五五%を国費が持っておったわけでありますけれども、今度逆転いたしました。  これは産業基盤投資でありますが、生活基盤投資を見ますと、国費は、四十一年、四十一年ぐらいには三〇%でありましたけれども、四十五年度の投資実績は二六・七です。これも下がっておるのですよ。  言ってみますと、産業基盤の場合は、従来国が五五で地方が四五であった。それが四十五年になりますと、地方が五五持って国は四五だ。生活基盤の問題になりますと、大体、従来は国が三割、市町村が七割、こういう状態であったわけでありますけれども、四十五年になりますと、二六と国費の割合が下がった。そうして地方公共団体の負担が七三と、こう上がってきております。これをお認めになりますか。
  189. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおりだと承知いたしております。
  190. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、あなた、冒頭私が確認したときに、これから産業基盤整備よりもいわゆる生活基盤整備というものに重点を置いていかなければいかぬと、こういうことでありながら、ここ五年なり十年の推移を見てみますと、国の負担割合というのはどんどん下がって、したがって反面、地方公共団体の負担というのはどんどん上がってきておる。これで財政が一体強化されておるのですか、どうなんですか。
  191. 福田一

    福田国務大臣 それが流れを変えるということになるかと存じておるわけでございます。
  192. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私が申し上げているのは、相当いろいろな投資をやっているのに、国の負担はどんどん減って地方の負担をどんどんふやしていっている、それが流れを変えるということですか。
  193. 福田一

    福田国務大臣 ことばが足りませんでまことに失礼をいたしました。従来そのような経過をたどっておりまして、地方自治体の負担が非常にふえておる、そうして国の負担が減っておるということは、お説のとおりでございますが、今後はひとつそういうことを踏まえまして、私たちとしては、自治省としては、どうしてもこの地方自治体の財政力というものをもっと強化いたしまして、そうして仕事ができるようにいたしていかなければならない、かように考えておる現状でございます。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  194. 細谷治嘉

    ○細谷委員 総理、いままで自治大臣と私がやりとりいたしたわけですけれども、総理の得意な数字でありますけれども、私も数字を用いて、国と地方との財政関係というのがどういうふうに推移しているかということを、数字的に決算なり実績をもって示したわけです。これを見ますと、明らかに、国はどんどん自分の負担を下げて、そうして地方のほうの負担を上げさしておる。まぎれもない事実であります。これについて、いままでのやりとりの中でどうお感じになったか。
  195. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 地方財政に対してあなたは御専門でございますし、私はあまり数字をこまかくは見ておりませんが、いま述べられた傾向は理解いたします。私が、四十年、大蔵大臣のときでごさいましたが、御承知の四十年不況というのがありまして、そのときに三税の減収分に見合う二%を暫定税率として引き上げたわけであります。交付税率を引き上げたのは私でございます。そういう意味で、暫定税率ではございましたが、もうすでに恒久税率となってしまいました。そういう意味から言うと、当時の考え方よりも二%定着をしたわけでありますから、それなりに地方財政は拡充されたわけであります。  しかし、結果的な決算数字を見ますと、いま御指摘のような状態になる。それは一体何に基因するのか。大ざっぱな意見だと思いますが、これは超過負担が一つございます。実際の法律上の補助が行なわれておらない、超過負担があるということが一つあります。もう一つは、地方単独事業がふえておるというのが一つございます。そういう意味で、こまかく内容を見てみないと的確な判断はできませんが、流れとしてはあなたがいま御指摘になられたような判断が一つ出ると思いますし、もう一つこまかく内容を見ると、二%の交付税率の引き上げられた分が固定化した財源となっておる。四十五年までは増収がありましたので、その意味で単独事業もふえておるということがいまの数字になっているのじゃないか。大ざっぱな答えでございますが、そう考えます。
  196. 細谷治嘉

    ○細谷委員 総理が大蔵大臣のときに二九・五という交付税率を三二になさった、これは私も承知しております。そういうものを踏まえて今日までの推移を見ますと、私が具体的に数字をお示ししたとおり、地方財政にいわゆる今日までの産業基盤の整備、高度経済成長政策というものが相当犠牲を押しつけておる、こういうことを物語っておるのではないか。  それから、総理も自治大臣も、単独事業をよけいやっているとか、あるいは超過負担になりますと、単価の高いものを、ぜいたくなものを地方公共団体がつくっているという形で逃げておりますけれども、例外としてそういうケースもあるかもしれませんけれども、それは一般論としては私を納得させるようなものじゃありません。すべての人を納得させるようなものじゃないということだけははっきり申し上げておきたいと思います。  そこで、いままで具体的に政治の流れ、地方財政の実態というのはお聞きしたわけでありますけれども、今度の補正予算を拝見いたしますと、合計六千五百十二億の歳出純増ですね。その純増の内訳というのを見ますと、公共投資の補正というのが五千三百六十五億あるわけですよ。これに対して、自治大臣一体、公共投資五千三百六十五億というのは、ずばり言いますと、いわゆる事業費ベース、一般の人にはわからないような事業費ベース一兆五千億なんということを言っておりますけれども、国の予算の補正は六千五百十二億で、一兆五千億でも何でもないのですよ。地方団体の財源をこれに加えることによって、事業をやることによって、公共投資大体一兆五千億になるということでしょう。ですから、予算の説明書も丁寧に書いてございます、事業費ベースを。今度の補正予算を見ますと、地方財政というのは裏負担が起こるわけですね。何でやったのですか、お尋ねいたします。
  197. 福田一

    福田国務大臣 まあ主として起債をもってこれに充当した、こういうことになるかと存じます。
  198. 細谷治嘉

    ○細谷委員 起債でやった、確かにそのとおりですね。起債を大幅にふやしました。自治大臣、さっきも私が申し上げたように、四十六年度の決算というのは、地方債を前年度例のないように一〇二%も増額して、収支を合わしてなおかつたいへんな赤字が出ておるわけですね。今度も借金でしょう。財源措置は何にもないわけですね。こうなってまいりますと、私は、四十七年度の決算を見るまでもなく、まさしく言われるように、国のために地方財政は動かされておる、いわゆる下請機関と、こういうふうにいわれるのも無理はないと思うのです。私が申し上げるまでもなく、昭和四十七年度のいわゆる当初の予算をつくる際に、自治省は四十七年度における地方財政はおおよそ一兆円財源が不足する、その一兆円財源不足した際に、自治大臣が当時がんばって大蔵省と折衝した結果、おおよそ八千億円の財源措置がなされたのですね。八千億円のうち、財源措置をしたものはわずかに交付税で特例として千二百億ばかり、そのほかに沖繩の三百六十億の特例交付金以外は、おおよそ六千五百億円というのは借金ですよ。四十六年度の決算よりも四十七年度の地方財政計画から想定される、そしていまの補正から想定されるものは、たいへんな地方債を背負うことになると思うのです。こういうやり方でよろしいんですか。こんなことで長く続くのですか。どうですか。
  199. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、昨年度は起債といいますか、借金といいますか、地方自治が非常に金が不足いたしましたことはお説のとおりでありまして、地方がそれだけ負担をこうむったことは事実であります。また本年のこの補正予算におきましても、起債を相当程度追加したことはお説のとおりでございますが、しかしこれ以上は、私が申し上げる問題というよりは、大蔵大臣とか、あるいはまた総理からお答えを申し上げたほうがいいんじゃないかと思いますので-失礼、あるいは私の言っていることは間違いかもしれませんが、いまのところその程度の負担をいたしましても、地方財政はこれに耐え得るというわれわれとしては認識を持っておるわけでございます。
  200. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほどの公共事業の裏負担として地方費は、今度の補正予算に伴ってどのくらいの地方費が増加するかというと、自治省は三千四百億見ているわけですね。この三千四百億のうち地方債は二千九百五十四億円を追加した。そういうことによりまして、本年度の地方債計画というのは二兆二千三百五十二億になっているわけですね。前年比一〇五・八%、そうですよ。さっき四十六年度の決算を申し上げた。四十六年度は前年度で一〇二%ふえた、二倍以上ふえた。それに対して今度はまた一〇五%ふえるというのですよ。これで、さっき冒頭言った基本的な、これから福祉重点の政治をやるという、そのにない手である地方公共団体が、財政的にやっていけないことはもう議論の余地ないではないですか。総理、いかがですか。
  201. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 地方財政に対して非常に愛情の深い御発言、ありがたいことだと思っております。しかし、国の財政と地方の財政というものは全く別個に存在するものではないわけでございます。国の財政も国民のものであり、地方の財政も国民のものなのでございます。ですから、今度のいま御指摘のような状態、確かにございます。ございますが、これは長期的にこれで押し通すというのじゃありません。国と地方が両々相まって理想的な状態をつくるべく調整がずっと行なわれて、過去もまいりましたし、将来もそのようになっていくわけでございます。  ですから、今度の二千九百五十四億という大きな起債をやったじゃないか、地方債でもってやったじゃないかと、こういうことでございますが、これはまた将来国と地方との間でもってバランスをとったり調整したりするわけです。二、三年前には国が金がなくて地方から六百億ずつ二回も三回も借りて、またやっと返したというのが現状でございまして、いまの状態で国と地方公共団体、全くたての両面のごときものであって、調整は十分行なわれるべきでございますし、また行なわれるものであって、単年度のことだけでもって見るべきではない、このように御理解いただけばいいのじゃないかと思います。
  202. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、申し上げたいことは、総理言うように、国の財政と地方財政というのは全く別ものだ、こういうことを申しておるわけじゃないのですよ。一連のものである、車の両輪なんだ、こういうことなんです。ところが、車の両輪であるということならば、両輪がうまくいっておらなければ福祉重点の政治もできないわけですね。そうでしょう。ところが、私が申し上げたいことは、国のほうは国債を発行しておりますけれども、公共事業をやるということになりますと、自動的にばく大な負担というのが地方財政の中に起こってくる。そういうものについて措置をしないで、そうしてたいへん無理な状態になってきておって、それは国も借金するのだから地方も借金すればいいじゃないか、こういうのは考え方として誤っているのじゃないか、こういうことを私は申し上げておるわけです。どうなんですか。
  203. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御発言よく理解できます。まあことしは去年とは違いまして税収は上向くであろうという見通しでございます。去年は十六、七年ぶりで年率六%という成長率でございましたから、これは非常に税収困難であったということは御理解いただけるわけでございますが、ことしはいまの状態で七・二%、しかし実際の改定見通しでは九%以上、一〇%になるかもしれないという状態でございますので、税収そのものは多少ふえるであろう、見込みよりも税収は増額するであろうということが考えられます。  その意味で、今度は公共投資等に対して勇断をふるったわけでございますが、一般会計で地方は全部これを負担できないということでありますので、そうすると国の負担率を上げるか、地方は起債をもって充てるかということ以外にないわけでありますので、まあ今度の問題に関しては、内容のあるものでございます、非常に社会資本の不足を補うものでございますし、そういう意味で起債によってもらったということで、ひとつ御理解をいただきたい。これは当然、国と地方は車の両輪のように調整が行なわれてきた問題でございますし、将来も当然行なわれなければならぬ問題です。これは、私は列島改造のようなものが本格的にスケジュールがきまって、国会の御決定を得て地方財政がこれから相当先行投資をしなければならないというようなときになると、いままでのような状態ではとてもいかないだろう、そのときには新しい財源措置をどう考えなければいかぬのかということは考えております。おりますが、四十七年度の補正でございますので、まあここらがいいところかなということで、ひとつ御理解賜わりたい。
  204. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣、今度の補正予算というのは、国会に出されているものはいわゆる事業費ベース一兆五千億といわれる。実質的には予備費の削減等ありますから、六千五百億に大体一千億程度加えますから、七千五百億程度の国の財政のふくらまし、こういうことになるわけですね。私が今度の国の補正予算の経過を見ますと、九月のころは大蔵大臣、給与関係災害関係、こういうもので、補正予算の規模は大体三千億ぐらいで国会に提出すると言っておったでしょう。ところが、いつの間にか今度は一兆五千億という、事業費ベースという名前で、国民には何が何かわからぬような形で、実質上七千五百億というものをふやしてきた。ふやしてきたものは何かといいますと、何のことはない公共投資です。その公共投資については、地方のほうも借金しなさい、こういうことで投げやり。そういう形で、聞けば車の両輪だ、こう言っている。  あなたが九月の十八日に自民党政調会との懇談会で、予算の規模は三千億円程度の補正予算案を提出するのだと新聞に報道されております。その内訳は、公務員給与改定が千三百八十億だ、災害復旧が一千億だ、四千二百億の被害額のうち一千億円を四十七年度で補正する、一般事務的経費の増は六百億だ、合わせて二千九百八十億円、そのほかに地方に交付すべき地方交付税が約五百億円ある、だから三千億円程度の規模だ、こういうふうに言っておったが、いつの間にか七千五百億の純増、事業費ベースで一兆五千億、こういうふうになっております。  こういう予算のふくらまし方については、あなたも反対しておったし、日銀総裁も批判的であったのですよ。ところが、ぽんとこういうふうに大型になった。そして年度末を控えて、北海道などでは公共投資なんという事業ができないような時期になって、言って、みますと、社会資本の整備と、それから、これを議論したいのでありますけれども、時間がありませんから、きょうは申し上げませんけれども、国際収支の均衡回復という、所信表明に述べられた二つの点で予算が大型化した。大蔵大臣一体どういう考えであなたはこういうふうに一ぺんに変わったのですか、一カ月か二カ月の間に。国の財政を預かる重要ないすである大蔵大臣として、お尋ねいたします。
  205. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答え申し上げます。  まず第一に、私が三千億云々の予算の補正額を申したと言われますが、私はその当時におきまして三千億とか三千五百億とか、そういうような数字をあげて、そして確言を申し上げたことはないのであります。どの席で私が申した話を御引用か知りませんが、いまどこか党の云々とちょっと言われたようにも思いますが、私は、その点は初めから補正はできるだけ少なくしていきたい。ことに、私の当時申し上げておりましたのは、もっぱら景気浮揚のために補正予算を組むということは、あくまで避けたいと私は思っておりますということを言っておった最中であります。  したがって、私のその当時の考え方としては、日本の国内情勢等も考え、かつまた貿易収支の状況等も考え、したがって、それに伴っての黒字の外貨準備の増加等も考えておりました際でございますから、景気浮揚になるようなものはなるべく避けていきたいということを考えまして、そこであるいは、私はその場合のことを記憶がございませんが、もし補正予算として必要なものは何かと言われれば、おそらく義務的経費のことを――私はその数字はそのときに係からもらっておりましたから、その義務的経費をあげたのだろうと思います。その数字が三千五百億あるいは三千億内外になっておったのかもしれません。  さようなわけで、私は予算の補正を三千億あるいは三千五百億いたしますとか、いたす見込みでございますとかいうようなことは、まだ言っておりません。その点を御了承願いたいと思います。   〔「いま何人いるのですか」と呼び、その他発言する者あり〕
  206. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 いま呼んでおりますから、しばらくお待ちください。   〔発言する者あり〕
  207. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 細谷君、続けてください。   〔発言する者あり〕   〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 坪川信三

    坪川委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後七時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後七時三十五分開議
  209. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  細谷君。
  210. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほど大蔵大臣から、三千億円なんという数字は言ったことはない、こういうことでありますけれども、諸般の情勢の推移というのは、今度の補正というのは、大体給与改定とそれから災害復旧費とその他の義務的諸経費、そういうものの補正でいこう、こういうような当初の出発点が、最終的にはいわゆる一兆五千億というかつてない大きな補正予算になった、こういう傾向は私は十分確認されますし、ここに今度の補正予算の議論すべき多くの問題点がある、こういうふうに思っております。けれども、時間がございませんから、これ以上この点について触れません。  自治大臣、今度の補正予算には法人税二千五十億というのが国の予算の歳入財源になっております。大ざっぱに二千五十億という法人税が国に入ってくるといたしますと、地方のほうには法人事業税を含めまして、地方公共団体にもおおよそ一千五十億円程度の法人税が入ってくると見込まれます、逆算いたしますと。ところが、この一千五十億のもので、先ほど来税の増収があるということでありますけれども、一千五十億のうち市町村分というのは百八十億円くらいしかないのですよ。二割弱なんです。そしてこの一千五十億の増収のうち三百三十億円はひとつベースアップにしなさい。節減は百六十五億円しなさい、こういうことで、ベースアップ財源等に充当してしまうわけですね。先ほど申し上げましたように、市町村は百八十五億円程度しか増収がないわけでありますから、その分も事実上は借金ですよ、これは。交付税で見ているんだ、こうおっしゃいますけれども、交付税を見た上で足らぬ分は税の増収と節減でやりなさい、こう言っているわけですから、これは明らかに、都道府県は法人税の伸びでやっていけるかもしれませんけれども、税の弾性値がきわめて低い市町村は、あなたのほうで書いたような内容にならないのですよ。この点は時間がありませんからこれ以上議論いたしませんけれども、ひとつとくと御検討をいただきたい、こう思います。  この点に関連して私は、地方に借金ということでありますけれども、総理にひとつ伺っておきたい。  総理は十月六日の日本記者クラブで、十五兆円予算構想を述べた際に、地方債は単独起債を大幅に認めるという考えに立って第二財投ということばを使われたと報道されております。一体、総理が考えている第二財投といわれる地方債というのは、どういう構想をお描きになっているのですか。来年度予算に関連いたしますが、お尋ねいたします。
  211. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで地方債というものは、限られた予算の地方負担分とか地方財政計画が非常にきびしいものでございましたが、これから列島改造等をやっていかなければならない、また都市改造もやらなければならないということになると、国が財政法四条に基づいて公債を発行するように、地方も将来の見込みのもとに、地方債の発行ということに踏み切らないと弾力的な新しい事業ができないと思う、そういう意味で一つの手段として地方債の活用というものが考えられると思いますと、こう仮定における議論として一つの提案をしておるだけでございます。これは東京都内など、いま大きな工場が出ていくというのがあります。工場が出ていったあと、日立の工場あとも同じことでございますが、工場あとに住宅を建ててしまうということでは、都市改造はできないわけでございます。ですから、これをできれば東京都が買収しておって、東京都の改造のときまでは緑地帯としておく、そしてこれを改造のときにあわせて合理的に使うということであれば将来の都市の改造は可能である。そういうことをするとなると、どうしても地方債、単独債というものを認めることが一つの方法ではないか。これは財政当局にもそういう考え方を勉強するようにと言ってあります。ありますが、来年からこれを全面的にどうやろうというふうにきまっておることではございませんが、相当地方の単独事業をやらなければならないということになると、地方債というものを考えなければならない。特に相当な中核都市などをつくる場合とか、それから土地の利用計画をつくって先買いを行ないたいというような場合、いまのような制度の中ではちょっとどうも片づかないという問題があります。農協の系統資金というようなものとタイアップしてどのようにやるのかということを考えると、いままでの考えではなく、新しい意味での地方債の活用ということが考えられるではないかという、一つのテーマとしての提案ということで御理解いただきたい。
  212. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まだその内容よくわかりませんけれども、私どもはやはり地方債というのは、野方図ということではございませんけれども、自治省が「地方債の発行弾力化へ」こういうことを考えているという新聞記事がきのうの新聞にもございましたけれども、私は地方債自体というものについては、これからの福祉政策を進めていく段階においては、ある程度の自由化の方向をとっていくべきではないか、こういうふうに考えております。そういう意味において総理が考えられておるとするならば、これはひとつ大いに進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、いろいろ申し上げたいのでありますけれども、時間がありませんから、いま私が申し上げた点から、総理、一般的に国民が納めている税金は、七割は国に入っていく、大体一七%ぐらいというのが都道府県に入っていく、そして二二%ぐらいというのが市町村の税だ、こういうふうにいわれております。私は、福祉政策といっても市町村が進めるわけでありますから、こういうことではとてもじゃないが、ことばでどう言おうと、財政的に福祉行政重点の政策を進めていく財政的裏づけはない、こういうふうに申し上げてよろしいかと思うのであります。  こういう前提に立って一、二申し上げてみたいのでありますけれども、本会議でも質問がありました、税の不公平を是正してほしいというのは、せんだって新聞に出ておりました一千人コンピューター調査ということでも、六割ぐらいが税の不公平を訴えております。一番端的な例というのは、配当所得者は三百四十三万円までは税がかからない。ところが、サラリーマンでありますと百三万円をこえると税がかかる、これはまさしく不合理じゃないか。一般の人が三百四十三万円の所得があれば、所得税は五十万円以上納めなければならぬ、これはもう明らかな不公平ではないか、こういう税の不公平の議論がされました。この税の不公平の議論というのは、例をあげますと幾つかありますけれども、端的な例がそういう点であります。こういう問題について是正するかどうか、これが第一点。  第二点は、せんだって私は都市の代表の方とお会いしたのでありますけれども、これは日本列島改造ということをいたしましても、都市の過密を防ぐということになりましても、都市改造を進めていくというわけでありますが、都市の財源というのがいままで非常に枯渇しております。その具体的な一つの例は、法人活動というのは都市でなされているわけでありますけれども、その法人税というのは市町村にはわずかに六%しか入っていない。国におおむね六八%ぐらい、残りは都道府県に入っていっておる。こういうことで、かなり市町村の税財源というのが硬直しておる、こういうことがいわれると思うのであります。でありますから、法人活動をやっている都市に対する法人税というのは、せめて一〇%以上市町村に入るようにしていただきたい。特に、日本の法人税の実効税率というのは四五ぐらいであって、アメリカは五一でありますから、そういう点からいって、法人税を上げる場合には、かなりの部分というのは、やはり市町村の法人活動に対応できるような財源充実に活用してほしい、こういうことが強く指摘されました。  もう一つの問題点は、都市において流通が行なわれているわけでありますけれども、その流通関係から入ってくる税収というのは、これも法人税と同じようにほとんど都市に入ってきていない、こういう点が問題であります。こういう点について、もっとやはり、特に地方団体のうちの市町村の税財源というのは考えてやるべきではないか。  さらには、この道路等の問題についての、道路財源というのは、大体口では二割以上市町村にいっているといわれております。数年前はゼロでありましたけれども、だんだん自動車重量税等で二割ぐらいでありますか、実績は大体一八%ぐらいです。国のほうは八五%ぐらいの特定財源を持っているわけです。都道府県は五五%ぐらい持っているわけです。ところが、市町村は大体において一七、八%。いまの道路計画、今後の道路計画というのが、やはり八十万キロ以上ある市町村道、生活道路ということに重点を置くならば、こういうところに財源の措置を十分すべきではないか、こういうことが主張されております。  こういう点について、総理どう考えるのか、時間がありませんので、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  213. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国、地方の税配分の問題、これは非常にむずかしい問題でございまして、時の推移に合わせて、だんだんと合理化されていくわけでございまして、税制調査会等で十分検討願わなければならない問題だと思います。  いまも述べられましたように、いままでは不交付団体と交付団体というのがありまして、やはり国が調整をしなければならなかったという一つの問題がございましたが、これからやはり六十年展望にどのような投資をするのか、どのような財政を地方が行なわなければならないのかというような問題がきまれば、地方の財源配分もおのずからまた別な形のものがつくられなければならないだろうと思います。いずれにしても、実情に合うようにやらなければならないと思います。
  214. 細谷治嘉

    ○細谷委員 残念でありますけれども、時間がありませんので、きょうはこの程度にいたしまして、次に公害問題といわゆる総理の日本列島改造論と、こういうものの関連において質問をしてみたいと思います。  質問に入る前に、木村建設大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、あなたは二十三日に長野市を訪れまして、そして長野市からずいぶん離れております、どういう関係か知りませんけれども、鹿島の開発問題に言及されまして、「鹿島では実際にいわれているほど公害は起きていない。鹿島型の開発を全国に広げて行くのは可能だ」こういうことを言っております。私の手元に鹿島の地元の地域公害対策住民連絡会議から、木村建設大臣の鹿島に公害はないという発言はまさしく暴言である、鹿島の公害で苦しんでいる住民に対する冒涜である、こういう要請書の写しを私はいただきました。一体どういう考えに立ってこういうことをおっしゃったのか、お尋ねいたします。
  215. 木村武雄

    ○木村国務大臣 こういうことですから、細谷さんちょっと聞いてください。  私が建設大臣になった直後、鹿島の農民の代表という人と対談したのですよ。そのときに、鹿島は汚水のたれ流しであるという話をされたものです。たいへんなことだとこう思ったのですよ。それからむつ小川原に行こうと思いまして青森に参りましたとき、そのむつ小川原の代表者の女の人が見えて、自分の子供が鹿島に行ったところが、即座にぜんそくになってしまったと、こういう話をされたものなんですよ。それで、どうしても鹿島に行ってみなければならない、こう思っておったものですから私、出かけていったのです。そして、汚水に関する限りは私の責任なものですから、そのものをこう自分の目で全部確かめてみたのです。活性汚泥の処理をやっております場所を見てみたり、川を見てみたり、それから排水しておる場所を見てみたり、自動車で海をずっと回って見てみたり、それから高いところに登って、海の中に変化がありはしないかと思って見てみたりしたのですよ。そして今度は帰ってまいりまして、知事からいろいろな過去の話を聞いたのですよ。そいつを総合して、鹿島は思ったよりもたいしたことない、こういう話を私はしたのでありまして、鹿島に公害がないなんということを断定したのじゃありません。  それから、公害というものはなくさなければならないということは政治の至上命令です。ですから、私に関する限りは、水質汚濁の公害をなくすということは、どんなことがあっても絶対的に取り組まなければならない問題なんですよ。どんなささいなことでも、これと取り組んで解決しなければならない責任が私にあるのですよ。それですから、私はそういう問題に関する限りは、いろいろな人がおっしゃいますることはほんとうにすなおにお聞きいたします。何でもすなおにお聞きいたします。むしろ反対したり、批判したりしてくださる方は、私の仕事に対しては神さまだと思ってお聞きいたします。そしてすべてを直すことが、なくすことが私の責任でありまするから、どうかいろいろなことがありましたならば、木村に仕事をやらしてやろう、こういうわけで思い切っておっしゃってくださるようにお願い申し上げます。
  216. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあ新聞等によりますと、木村建設大臣は、大臣就任早々から群馬県なりあっちこっちで話題になるような失言を重ねておるようであります。しかし、今日新聞をにぎわしておる騒音で、伊丹の騒音で書き置きして自殺した老人もある。こういう深刻な問題、あるいは鹿島の農民あるいは漁民にいたしましても、工業生産額、そういうものの金額が大きいからおいたちの茶わんをたたき落とすのかと、こういう形で、公害から鹿島を救おうという血の叫びがございます。そういう中において、新聞等に書かれてあるような、鹿島の公害はたいしたものじゃない、こういうことばは、公害問題の重要な役割りをになっておる建設大臣としては適当なことばではないんじゃないか、こう私は思います。失言を繰り返しているからもう無罪放免だなんていうことじゃなくて、これはやはり真剣に、ほんとうに前向きでこの問題に取り組んでいただかなければならぬということを要求しておきたい。  中曽根通産大臣にお聞きしたいのであります。あなたは十月二十四日のホテルオークラでの工業再配置・産炭地域振興公団の設立の披露パーティーで、これもほんとうかどうか知りませんけれども、こう言っているそうです。「この公団は日本列島改造論の主軸をなす工業町配置を推進するバックボーンとなるものだけに、その持つ意義は大きい。社会党などは日本列島改造論は公害をまき散らすと言っているが、私に言わせれば、幸福をまき散らすものであるからこの公団の使命は非常に重要なものである。」こう言ったと新聞は書いてあります。ほんとうですか。ほんとうとするのなら、幸福をまき散らすというのはどういうことですか、お答えいただきます。
  217. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公害をまき散らすといううわさやら批判がございましたので、私らの信念はそれとは違うのでございます。要するに、明治以来百年の間に、東京や大阪や東海道ベルト地帯に集中した人間、日本の富とかあるいは文化の高さ、生活の高さというものを、裏日本、特に日本海沿岸の地域にも均てんさせる、それが日本列島改造の趣旨であります。つまり、それは幸福を平等に全国民が分かち合う体制をつくりたいのです。そういう趣旨のことを申し上げて、それを端的に表現して、幸福をまき散らすと表現したわけであります。
  218. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあこれから具体的に議論をしていきますけれども、幸福をまき散らすなんというそんな甘いものではない、こういうことだけを申し上げておきたいと思うのです。  もう一点、国家公安委員長にお尋ねしておきたい。今度は国家公安委員長です。十月の三十日、御承知のように日本列島改造論の重要な拠点になる志布志の開発に関連して、あそこの住民が激しく反対をしておることは御承知のとおりでありますが、この運動のリーダー、そのほか二人、合計三人の方が、十月三十日の午前七時半私服警官三十人を動員して、そしてこの三人の寝込みを襲って手錠をはめて逮捕いたしましたね。その事件というのは、一カ月前の九月の二十六日にこの東串良の町議会が志布志湾の埋め立てに反対である、石油基地反対である、そういう陳情書を出して、それを六月の二十九日に採択した。ところが、その採択に対して鹿児島県知事が、やはり石油基地というものは何が何でも導入する、こういう形で二次試案を出す、こういうことでありますから、重ねてこの町議会で一度採択した陳情の内容をひとつ確認していただきたい、こういうことで町議会に陳情に行った。その際に警察官がちらちらしているという形で、激高した住民との間に若干のトラブルがあった。そしてこの特別委員会の副委員長をしておる上園という人に対して、全身打撲、全治一カ月半、こういう形で三人を逮捕いたしております。ところが、調べてみますと、この上園という人は、一カ月半という傷だというのでありますけれども、六日後に京都に娘さんの結婚式に出席しておるのですね。  公害問題について、こういうように住民が熱心に自分の生活を守っていこう、あるいは緑を守っていこう、農業を守っていこう、漁業を守っていこうという形で戦っておる。いま、日本の公害問題というのは、これは政府がリーダーシップをとったんじゃありませんよ。これは端的に言うと、住民がリーダーシップをとって、この公害問題というのをここまでレベルをアップしてきた、こういうふうに評価してもいいわけでありますけれども、その住民運動の指導者を逮捕して、そして寝込みを襲って錠をかけたということは、私は、警察当局が権力で、この公害問題に対して、いわゆる反体制という名において、弾圧の意図でやったのではないか、こういうふうに想像するのでありますけれども、どうなんですか、これは。
  219. 木村武雄

    ○木村国務大臣 志布志湾の問題自体に対して、私も非常に興味を持っておったものですから、そういうような事件ができましたときに、早速調査させまして、その調査報告書は詳しく見たのであります。いろいろないきさつ、できごとがあったようでありまするが、事この公害問題に端を発したことでありまするから、きわめて慎重に扱わしております。そして、その法を曲げるようなことは絶対やらせないつもりでおります。それでありますから、そういう方針で臨んでおりましても、細谷さんのおっしゃったように、その人が一週間の後に娘さんの結婚式に出たんじゃないかと、こういうようなお話もありましたから、なお調査をいたしまして、絶対法を曲げないやり方だけは厳正に守らせるつもりでおります。
  220. 細谷治嘉

    ○細谷委員 絶対法を守るなんて言っておりますけれども、この経過は、私は地元の新聞をずっと取り寄せまして調べましたよ。これはむしろ、町議会等の一度採択したものを変更するあれがありましたから、住民が心配して、たくさん、百人か二百人ぐらいが陳情に押しかけたんであって、それを一カ月半の全身打撲という形で傷害罪で逮捕する。これと同じような例で、最近、水俣の川本さんという人もまた、これは逮捕しませんでしたけれども、三べんにわたって取り調べをしておりますね。あの水俣病患者ですよ。その患者を取り調べをした。しかも今度は、志布志のほうではこれを逮捕して、そして手錠をかけてやった。しかも、その志布志じゃなくて、それをつかまえたとたんに鹿児島に持っていってしまった。こういう一連のことを考えますと、公害問題というものを反体制ときめつけて、そして権力でこれを押えようという意図が強く政府に動いておるのではないか、こういうふうに考えざるを得ないのですよ。どうですか。
  221. 木村武雄

    ○木村国務大臣 公害運動に対して、政府が弾圧するなんていう意思はいささかも持っておりません。  報告によりますると、九月の二十六日ですが、鹿児島県の肝属郡の東串良町議会において、同議会の大隅開発対策特別委員会の副委員長に対し、集団でなぐる、けるなどの暴行を加え、同人に全治一カ月半の入院加療を要する打撲傷を与えた、こういうことになっているのですよ。ところが、いま細谷さんのお話によりますると、御本人が、全治一カ月半の入院加療を要する打撲傷というにもかかわらず、一週間の後には娘さんの結婚式に出席した、こういうお話があったものですから、その報告は受けておりませんから、なおそういうようなことは調査してみたい。しかし、その公害問題というものは、国際的な問題になっておりまするそういう際に、弾圧をするなどという気持ちは毛頭持っておりませんから、その点は御安心くださるようにお願いを申し上げます。  それから、水俣病の方は何回も会社においでになりまして、失礼ですけれども、かみついたり何かなさったものだから、会社が告発してしまったのですね。そうすると、やはり調べざるを得なくなってしまったのであります。そして、身柄は拘束しないで調べておるということですけれども、どのようなことがあったにいたしましても、相手が病人ですから、会社は告発などはしなければよかったなと私は思っておるのでありますが、出たことだからしようがありませんが、その点も決して無理させませんからどうぞひとつ……。
  222. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほど申し上げましたように、公害問題というのは、これはやはり住民の声というのが神の声だと思わなければ前進しません。そういう点で、弾圧なんていうのは言語道断でありまして、やはり住民がみずからの生活を守っていく、緑を守っていくという形で問題に取り組んでおるわけでありますから、かりそめにも権力で押しまくるということのないように、ひとつ強く要請しておきたいと思います。(「事実はどうだか聞いておくんだよ」と呼ぶ者あり)  その一週間というやつは、これを新聞にそう書いてありますから、ひとつ、その事実は後ほど御報告をいただきたいと思います。  それから、環境庁長官いらっしゃいますか。――環境庁長官、いまの新大隅開発については、御承知のように、最近といいましても、六月に調査が済んだのでありますけれども、九月に、最近しかその調査書を発表していないわけでありますけれども、政府から、九州地建を経て鹿児島県が委嘱して、地域開発コンサルタンツから、「志布志地域の生態学的基礎の調査」という報告書が出ております。こういうものを読んでみますと、これはやはり生態学的にも、環境を守るという意味においても、この志布志の開発にはたいへん問題点があるということが指摘されております。かつて環境庁長官は、これは国定公園に指定されておるところでありますから、その解除は絶対しない、こういうことをおっしゃっております。こういう点について、こういう調査書が出ておりますから、こういうものを尊重して、この志布志の自然を守っていく、こういう原則はくずさない決意であるかどうか。  私が特に心配したいことは、最近、大石前長官のときに問題になりました自動車道建設の問題で、大雪、妙高は継続審議になりましたけれども、あとの三本はオーケーになった。これは田中総理が環境庁長官に、君、環境を守るばかりじゃだめだよ、生産と調和をとれということをおっしゃったとかおっしゃらぬとかいうことで、もはやいまの環境庁というのは、環境を守っていくというチェックの役割りすらも、発足当時よりも後退しているんじゃないかという世間の強い批判が起こっております。新聞の社説等でも、いまの環境庁長官の姿勢を問うております。こういう点について、一体環境庁長官としてどういうふうにするつもりなのか、お答えをいただきます。
  223. 小山長規

    ○小山国務大臣 最初に、大隅開発に関します生態調査お話でございますが、大隅開発につきましては、これはまだ県が試案を出している、試みの案を出しておる段階でありまして、私どもとしましては、これは、政府に対しましてその要請がありました場合に、いまの植物あるいは動物の関係はむろん、亜硫酸ガスその他によるところの公害の問題、そういったものを当然十分に事前に調査し、チェックした上で、初めていいか悪いかということを言う段階にありますことを申し上げておきたいわけであります。  もう一つの自然環境と道路の問題でありますが、この間、公園審議会に五本の道路を諮問をいたしまして、そのうち、大雪道路と妙高道路が審議保留になりましたことは御承知のとおりであります。  そこで、どういう考え方で自然の問題と道路の問題に取り組んでおるのかということでありますが、私どもは、後代に残すべき自然、かけがえのない自然というものは、絶対にこわしちゃいけないという考えでおりますことをまず申し上げておきたいわけであります。ただ、自然といいます場合に、守るべき自然とは何であるかという点については、人おのおのやはり見解が違います。  そこで、大雪道路の場合で申し上げますと、私どもがどうしても絶対に守らなきゃならぬと考えましたのは、あの特別保護地域であります。ここは高山植物が繁茂しておりますし、類例のないいろいろな生物や植物がおるわけでありますが、最初の案は、この特別保護地域に容易に接近できるような、そういう北海道庁の計画でありましたので、前大石長官のときにも、現在の案では承認することはできない、こういう判断を下したわけであります。私の代になりましてもその判断は同じでありまして、その当時の北海道庁案では特別保護地域を守ることはできない、こう判断いたしましたから、これについてはノーと答えたわけであります。その後、新しい第三次案なるものが出てきましたので、それを見ますると、特別保護地域は全部トンネルで通ります。同時に、そのトンネルの入り口は特別保護地域からさらに二百メートル近く下がっておりますし、そのトンネルの入り口並びにトンネルから下のほうの道路の左右は密林地帯でありますから、したがって、たとえば自動車で来ました観光客が、その自動車からおりて特別保護地域に入ることはまず絶対に不可能である。ですから、そういう意味で特別保護地域は守り切れる、こう判断したわけであります。そして同時に、このトンネルから密林地帯を通りますところの道路については、これはいわゆる計画路線でありますので、実施の段階においては自然を破壊しないような、つまり、急傾斜を避けるとか、あるいは動植物その他に異常なる影響があるというような場合には、いつでもその路線を変えて実施させるという条件をつけてやっておるわけであります。  したがって、私どもの姿勢は、前大石長官以来全然変わっておりません。後代に残すべき自然は守り切るという考え方だけは貫いておるつもりでございますので、御了承を願いたいと思います。
  224. 細谷治嘉

    ○細谷委員 環境庁ができたゆえんは、やはり環境保全をしていこうということでできたわけであります。残念ながら、日本の公害立法というのは大体世界の水準に達したといわれておりますけれども、非常な公害の列島であることは、これは申すまでもございません。たとえば、最近の瀬戸内海における赤潮の発生件数や、あるいは魚に対する被害は幾何級数的にふえていっておる。これはもう私が申し上げるまでもございません。そういうことでありますから、最近農林省でも発表いたしておりますけれども、緑を守っていく、あるいは公害を排除していく、こういうことは非常に重要な環境庁の役割りだと思いますから、国民の期待にこたえるようにひとつがんばっていただかなければならぬと、こういうふうに思います。  そこで、少し具体的にお尋ねいたすわけでありますが、通産大臣にお答え願いたいんでありますけれども、総理の日本列島改造論に描かれておる七億五千万キロリットルという原油は、一体、一九八五年、昭和六十年までに輸入することができるとお思いなんですか、あるいはむずかしいとお思いなんですか、お答えいただきます。
  225. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの数字は、一つの試論としまして、大体三百兆ぐらいのGNPで、それまでには年一〇%の成長率でいくと仮定された数字であると思います。その場合には、いまのように、約七億五千万キロリットル必要とするという数字が出ているようでございます。  しかし、現在の公害に対するわれわれの警戒心あるいは経済の見通し、そのほか立地条件等を考えてみますと、はたしてそのとおりいくかどうか、私は疑問な点があると思っております。
  226. 細谷治嘉

    ○細谷委員 公害の話が出ましたけれども、私は、まず資源の問題として、それが確保できるかできないか、こういう問題にしぼって御質問しているわけであります。  産業計画懇談会が最近出しました「資源と公害-日本の将来を決定するもの」これは、あの松永安左衛門さんの産業計画会議を引き継いで懇談会ができたものでありますが、ここに描かれてある資源問題というものを読んでみますと、中曽根大臣は明確に答えませんけれども、七億五千万キロリットルなんという原油を輸入するということは不可能だといっている。アメリカと戦争をもう一度やって勝てば別ですけれども、かつて、あのゴムと石油がほしくて戦争したでしょう。そういうことを考えてみて、七億五千万キロリットルなんというのは、これはとてもでないのです。そういうことは明確に書いてあります。私もこれを読んで、自分なりに検討をしてみました。そして今日まで、日本が合弁なる形で開発をしてきました。  まずお尋ねいたしましょう。日本が今日まで開発したいわゆる石油資源、これはどのくらいの金をつぎ込んで、どのくらいの原油がいま日本に入ってきているか、お答え願いたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 正確な数字は政府委員から答弁させたいと思いますけれども、いまわれわれの計画数量は、原子力で、六十年に約六千万キロ、それから油において約六百数十万トンの国産であったと記憶しております。
  228. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あなたのほうから出ております「資源問題の展望」という本を見ますと、アラビア石油の開発に、現在までに千三百億円程度を投資して、年間約千九百万キロリットルの原油が日本に入ってきている。そういうようにあなたのほうの「資源問題の展望」に書いてある。こういう実績から見まして、この本を見ますと、毎年毎年八千億円の投資をして、そして、いままでずっとやってきて、たった一つできたこのアラビア石油クラスのものを一年に二つつくっても、これは七億五千万キロリットルじゃないのですよ、二つつくっても、ようやくまあ六億キロリットル、この程度しかいかぬだろうと、これに明確に書いてありますよ。そうなってまいりますと、日本列島改造論が描いておる七億五千万キロリットル、これはまだ固まっておるのじゃありません、一つの試案として、そしてGNP三百四兆円、こういう形で出しているのですから、これから固めると逃げるでしょうけれども、資源的にそんなことはできない、これははっきりしております。ほかのほうの資料を集めても、これはもう世界の輸出可能な石油の半分以上を日本がとってしまうということで、これはできないですよ。そういうことは、私は結論として言わざるを得ないと思うのでありますが、総理、これはどうですか。
  229. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いまあなたも御指摘になったとおり、日本列島改造論は、一〇%コンスタントにいけば三百四兆円という逆算をしておりますから、それはその後の問題として適正なものをはじき出せばいいわけであります。いわゆる試算数字である。  ただ、その数字そのものに根拠がないかというと、根拠はあるのです。これは昭和四十五年、私が通産大臣として答えておりました、その四十五年のわが国の石油の消費量は、もうすでに二億三千万キロリットルでございます。ですから、一〇%ずつ伸びれば、もうすでに二億六、七千万、三億近く使っておるわけでございますから、これから十三年でもって、いままでと同じ様態でいけば倍以上になる、これはもうあたりまえなことなんです。ですから、四十五年二十六億キロリットルの世界の合計のうち、日本は二億三千万キロリットルを使っております。昭和六十年におけるわが国の消費量は、四十五年の七月の総合エネルギー調査会の推定では、六億八千万キロリットルないし七億五千万キロリットルでありまして、この数字をとっているわけです。ですから、これは正確な試算数字をとっておるわけですが、しかし、この場合、昭和六十年における世界の石油需要はおおむね幾らかというと、五十億キロリットルでございまして、八五年、すなわち昭和六十年にアメリカも石油の輸入国になる。私も、通産大臣当時は、昭和五十年に五億キロリットル、昭和六十年には七億をこすと思われる現況でございますので、公害その他に対しては別な角度から検討しなければならないと思いますと、こう答えているのです。ですから、実際そのときの輸入量は、自由世界の動く荷物の三〇%ぐらいに当たりますと、こう述べておりますから、この数字は正確な数字です。ただ、その後公害問題が起きましたのと、どうも現地製油ということを非常に強く求めるということで、これだけの原油を全部持ってきて精製をするという在来の方法をとるほうがいいのかどうかということは、これからOPECの出方その他との問題でございます。今度、イランに対しては、一括精製工場まで現地でつくらなければ石油の輸出をしないということでございますので、だんだんプロジェクトはそういうふうに転化をしております。  しかし、これはいまお述べになりましたように、ただこちらが全部開発をして輸入するのではなく、メージャーからそのほとんどを入れておるわけでありまして、われわれが自力で開発をしておるものはごく少量でございます。だから、それらの問題を全部調整をして、将来の日本の石油工業、石油化学というものがいかにあるべきか。また、公害の問題でもって、石油を使わない自動車そのものを開発しなければならないという公害問題もあるわけですから、このままの数字でもって、七億キロ、七億五千万キロというものが相当なものであるというととはわかりますが、これは架空の数字ではない。ですから、これはそこまでいっては、とても石油の原油国との話し合いがつかぬだろうから、現地でその何分の一を精製したほうがいいというような、新しい問題は当然起こってまいります。  ですから、昭和六十年度に七億キロリットル近い石油を使わなければならないという前提で対策を立てなければならぬことは、これは言うをまたないことでございます。
  230. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあこの「資源と公害」をずっと読んでみますと、これは大体アメリカも輸入国になる。そしてその段階における日本の輸入の大体の割合、全体の世界の輸出量というものから見ますと、四億トンか四億八千万トンぐらいだというのがぎりぎりの線だとこれはいっているんですよ。いっているんです。そうしますと、七億五千万キロリットルなんというあそこに出ている数字は、はっきりと日本列島改造論には四倍と書いてあるのですから、私は結論だけ申し上げますが、この七億五千万キロリットルというのは、現実に世界の原油の生産量の伸び、輸出可能なもの等から見まして、これはもうむずかしい問題である。ここにこの七億五千万キロリットルの架空性がある、こういうことをひとつ指摘しておきたいと思うのです。  そこで、それでは、この石油をたいていった場合に一体どうなるのか。これは、いま私がそう言っているのは、時間の関係で石油だけでありますけれども、ほかの資源においてもそうですよ。鉄鋼原料は別といたしまして、ほかの資源も同様であります。そこで私は、そういう事態になった場合に、一体公害がどうなってくるのか、亜硫酸ガスが一体どうなってくるのか、こういうことをはじき出してみました。はじき出してみる際に、新全総計画が推定しておる「エネルギー需給の見通しと公害問題」というのが「公害研究」という雑誌に、数字を幾つかに分けて検討をしておりますが、これは結論だけ申しますと、この案で、たとえばいまの原油の輸入される量を、大体一九六五年か六六年、そのころの二倍くらいの亜硫酸ガスの量で押えるといたしましても、原油の硫黄の含有量というのは〇・二九くらいにならなければいかぬわけですよ。そんな原油はどこをさがしたってありゃせぬですよ。確かに、ミナス原油あたりは低いのでありますけれども、そんな原油はないわけです。それでは、そういうなるべく低いローサルファの原油と、それからできる重油等を脱硫しよう、こういうことで、これはコンピューターでこの経済審議会がはじいております。この数字を見ましても、時間がありませんから結論を申しますと、これはどう見ても、亜硫酸ガスは現在の二倍くらいになってしまう。そうして、工場等を地方に移すということでありますけれども、これはもう公害をまき散らす可能性が間違いなくある、こういうふうに申さなければなりません。  そういうぎりぎりのところで、一体脱硫の経費はどのくらいかといいますと、この論文も指摘しておりますように、大体電力会社はそういうものを吸収する可能性はあるだろうけれども、電力はやはり亜硫酸ガスの大体四割くらいしか受け持たぬわけでありますから、残りの六割というのはとても持てぬ。石油業界自体は、とてもじゃないが現在の二倍くらいに押えることすらも不可能だ、こういうふうに数字が出ております。時間がありませんから、数字を追うては申し上げませんけれども、こうなってまいりますと、いや、産業構造を変えていくんだとか、あるいは科学技術でそういうものをやっていくんだとか、いろいろおっしゃいますけれども、総理、この日本列島改造論にいわれたような産業構造では、これはもう公害は防げます、技術をどんどん開発すればいいのです、というようなことだけでは、これはとてもじゃないが納得できない。ずばり言って、これは公害をまき散らす以外の何ものでもないという心配は消えない。でありますから、通産大臣が言うように、幸福をまき散らすなんというのは誤りだ、こういうふうに申し上げなければならぬ。いかがですか。
  231. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり、公害の規制というものが現代の政治に最優先することでございますから、そういう公害をまき散らすという危険性がある場合には、工場の増設もできないということになります。しかし、人知も技術も進んでいくことでございます。新聞によりますと、本田とか鈴木が無公害車を発明したという記事も出て、外国も非常に関心を持っておるということでございます。排煙脱硫であるとか、あるいは重油脱硫であるとか、あるいはガス脱硫であるとか、日本人のことでございますから、私は、かなり公害排除の技術は進むであろうと思いますし、その費用を低下させていく技術も進んでいくだろうと思います。  しかし、政治の意思として一番大事なことは、公害規制を厳重にして、そうして緑の日本列島を確保するために日本列島改造という考えが出てきているわけでございます。成長のためにやっているのではない、福祉のためにやっているんだ、福祉のために成長を考えておるんだ、そういうように日本列島改造論にも書いてございます。その本旨をわれわれは貫いていこうと考えておりますので、いやしくも公害をまき散らすということはない、もし公害をまき散らす危険がある場合には成長がとまる、成長のスピードがとまる、そういうふうにお考え願ってけっこうでございます。
  232. 坪川信三

    坪川委員長 細谷君に申しますが、時間も経過いたしましたので、簡潔に願います。
  233. 細谷治嘉

    ○細谷委員 福祉のために成長があるということになりますと、通産大臣、あなたの言うことばは総理の態度と違いますよ。福祉は成長から、成長は福祉から、こうぐるぐる回っているでしょう。あなたは、場合によっては、福祉のためになら成長を犠牲にすると、こう割り切っておりますけれども、総理はそう言っておりませんよ。成長というものと福祉というものの調和だ。言ってみますと、基本法の第一条、いわゆる佐藤総理時代の調和問題というのを、成長とそれから福祉ということで調和させようとしている。これが総理の態度でしょう。日本列島改造論にそう書いてあるのですよ。そういうことでは、資源の面からいっても、公害の面からいっても、この日本列島改造というのは、産業構造を変え、あるいは最終需要を変え、あるいは技術を十分開発しても、とてもじゃないが一九八五年まではできないんだ、結果として公害まき散らしになるんだ、こういうことを強調しておきたいと思う。  それからもう一つ、あなたは原子力で逃げました。私はそうくるだろうと思っておった。この原子力というのがまた、おっしゃるように――現在の、四十六年の発電量は、水力、火力、原子力を入れて幾らかといいますと、六千六百万キロです。それを昭和六十年度には、原子力発電だけで現在の発電能力そのものを持ってこようというわけです。六千万キロワット原子力発電、その原子力発電についても幾多の問題点がある。こうなった場合、一九八五年、昭和六十年度になった場合に、その原子力発電のあらゆる部門から出てくる、廃棄物も含めて出てくる放射能というのはばく大なものになるといわれております。たとえば何万キュリーといわれております。大体百万分の一キュリーあったら人間はもうまいっちゃうといわれているのですよ。そういう中において、原子力発電をスケールアップしてどんどん開発することは、これは誤りだ。イギリス政府の原子力利用に対する特別作業グループが、そういうあらゆる問題が技術的に解決されない限りは、原子力の発電の開発をおくらすべきであるということを勧告しているでしょう。そういう態度をとらなければ、これは容易ならぬことになるということを、私は指摘しておきたいと思うのであります。  そこで、時間も催促されておりますから、最後に環境庁長官に伺います。通産大臣も検討しているようでありますけれども、四日市の判決に基づいて、やはり住民の被害者というもの――判決の内容は前進しておりますけれども、被害者に対する補償額というものは微々たるものであります。でありますから、被害者は報いられない、こういう実態にあることは御承知のとおり。でありますから、損害賠償保障制度を早急に創設すべきではないか。政府は四十九年度あたりから考えておるようでありますけれども、これは早急にこういう制度を創設すべきではないか、こう私は思っております。こういう点について、環境庁長官あるいは総理はどうお考えになっているのか。具体的な内容に入りたいのでありますけれども、時間がありませんから、基本的なお考えだけをお聞きしておきたいと思います。
  234. 小山長規

    ○小山国務大臣 損害賠償を保障する制度につきましては、現在鋭意準備を進めておりますが、次の通常国会に法律案を提出することをめどにいたしまして、中央公害対策審議会にいま諮問中であります。
  235. 細谷治嘉

    ○細谷委員 公害問題でいろいろ申し上げたいのでありますが、最後に、これに関連して厚生大臣に一言承っておきたい。  PCBを、クローズドを除いてオープンの場合については禁止した。製造もとめた。PCBの代用が出回っておる。その代用品は、PCBよりも危険性の内容のものがあると私は思うのです。たとえばPCBというのが、代用品という型でPCTが出てきた、メチルナフタリンが出てきた、こういうことになってまいりますと、これはたいへんな事態であろうと私は思う。代用品もあぶない、こういう事態があると思う。こういう問題に関連して、日本学術会議も指摘しておりますが、こういう問題についての対応できる体制、いわゆる検査機関、こういうものがきわめて弱体であり、手おくれになっておると私は思うのであります。国民の生活を守る、命を守る、こういう点で、抜本的な、国民が安心できるような体制を整えていただきたい。禁止するものは禁止する、国民が安心して、食べるものも食べる、飲むものも飲める、そういうふうにしていただきたいと思うのでありますが、いかがですか。それをお聞きして私の質問を終わります。
  236. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 御指摘のとおり、PCBは製造禁止になったのでございまするが、これの代替物が、確かに御指摘のとおり、いま出ておるわけでございます。この代替物について、このPCBのような危害を一般的に与えないというために、これにつきましては厳格に、これが一般化される前にチェックをしなければならぬということは御指摘のとおりだと思います。  そういうことで、この問題につきましては、ただいま真剣に取り組んでおるところでございまするが、御意見のような、さらに基本的な制度、法令等につきましても検討をさせていただきたいと存じます。
  237. 坪川信三

    坪川委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より委員会、午後一時より理事会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十九分散会