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1972-11-08 第70回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月八日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 谷川 和穗君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 高橋 英吉君    理事 羽田野忠文君 理事 中谷 鉄也君    理事 沖本 泰幸君       奥田 敬和君    石井  桂君       大坪 保雄君    鍛冶 良作君       島村 一郎君    羽田  孜君       葉梨 信行君    福永 健司君       河野  密君    高田 富之君       林  孝矩君    寒川 喜一君       青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         法務大臣官房司         法法制調査部長 味村  治君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務政務次官  青木 正久君         厚生省援護局長 高木  玄君  委員外出席者         法務大臣官房人         事課長     藤島  昭君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         法務省人権擁護         局調査課長   加藤 泰也君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局経理局長  大内 恒夫君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   千葉 三郎君     奥田 敬和君   中村 梅吉君     羽田  孜君   山手 滿男君     葉梨 信行君   麻生 良方君     寒川 喜一君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     千葉 三郎君   羽田  孜君     中村 梅吉君   葉梨 信行君     山手 滿男君   寒川 喜一君     麻生 良方君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号)  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 谷川和穗

    谷川委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所吉田事務総長長井総務局長矢口人事局長牧刑事局長大内経理局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 谷川和穗

    谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 谷川和穗

    谷川委員長 法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高田富之君。
  5. 高田富之

    高田委員 私は一、二点検察行政並びに法務関係の事項について質疑をいたします。  まず最初にお伺いいたしたいことは、これからお伺いしますことは、やや時間的には古いことなんですけれども、最近の月刊誌、ごく最近の週刊誌等でもあらためて取り上げられておりますので、また衆議院、参議院ともにかつて論議されたことのある問題でもあるだけに今日にやはり問題を残しているというふうに考えますので、必ずしも過去の問題ではなく、アップ・ツー・デートの問題であるという見地から、疑問点を解明しておいていただく必要があると思いますので、あえて御質問をするわけであります。  第一点は、去る昭和四十年十月二十九日起訴されました収賄事件に関する件でございます。被告人永田国善日本住宅公団大阪支所宅地開発部用地課長でございます。収賄容疑で逮捕され、四十年十月二十九日に起訴されております。この起訴状によりますと、被告人永田国善は、昭和三十七年十月三十一日、大阪市東区今橋二丁目三十番地三和銀行高麗橋支店付近において、被告人柴山英二パーチャス・ガイド・オブ・ジャパン代表取締役)等から、同人らが東洋棉花株式会社ほか一社所有にかかる和泉三林町八百四十三番地の三十二所在山林百三町一反四畝二十六歩等の山林原野等合計約三十四万坪、通称光明池地区土地日本住宅公団で買収してもらいたい趣旨で供与するものであることの情を知りながら二十万円を受け取った、こういうことで起訴されておるわけでございます。  この事件は、その後、いつごろ、どういうふうな結末をつけたか、判決等につきまして最初にお伺いしておきたいのです。
  6. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 ただいま御指摘永田国善にかかる収賄被告事件につきましては、ただいま御指摘のとおり昭和四十年十月二十九日に大阪地方裁判所起訴されまして、さらにその永田につきましては同様事実で同年の十一月二十日に追起訴がされておるわけでございます。いずれも収賄でございますが、この事案につきましては大阪地方裁判所におきまして昭和四十四年七月十二日判決の言い渡しがございました。永田につきましては懲役十カ月、二年間執行猶予という判決でございまして、この判決は四十四年七月二十七日に確定いたしております。
  7. 高田富之

    高田委員 この起訴状には、土地所有者東洋棉花株式会社ほか一社所有にかかる、こうなってございまして、その三十四万坪を住宅公団で買ってもらいたいということで公団支所用地課長永田が金を受け取っておる、こういうことなんですが、このときの土地所有者が、東洋棉花株式会社ほか一社所有ということは事実と相違しておらないでしょうか、事実のとおりでございましょうか。
  8. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 この永田にかかります起訴は二つあるということを申し上げたわけでございますが、一つは、最初起訴は、ただいま御指摘の四十年十月二十九日の起訴でございます。そしてやはり同じ関係収賄起訴いたしましたのがこの十一月二十日に一件、先ほど二十万円とおっしゃいましたけれども、十月二十九日は十万円の収賄という訴因起訴いたしまして、十一月二十日の追起訴におきましてさらに五万円と五万円という収賄事実を起訴いたしております。合計で二十万円の収賄という事案でございます。  そこで、この十月二十九日の最初起訴状におきましては、ただいま御指摘のとおり、問題になっております、買い上げの対象になっております土地、いわゆる光明池地区用地所有者名義は、起訴状は「東洋棉花株式会社ほか一社所有にかかる」というふうに表示をいたしておりまして、この第一回の起訴におきましては「東洋棉花株式会社ほか一社所有」ということになっておりますが、この約一月後に行なわれました追起訴におきましては、この土地所有名義は「日本電建株式会社所有」という表示がいたしております。これはその後調べました結果、当時の、収賄の犯罪事実は三十七年の十月、十一月ごろでございますので、この当時は客観的にはこの土地日本電建株式会社所有のものであったと思われるわけでございます。そういたしますと、最初の、十月二十九日の起訴状におきまして東洋棉花ほか一社という表示がいたしておりますのは、いまとなって考えますと、これは誤りであったと思われます。現に一月後の追起訴においても日本電建という表示をいたしておるわけでございますので、客観的には誤りであったと思われるのでございますが、何ぶんこれは想像にすぎないのでございますけれども、この問題の土地転々所有者をかえておりました関係で、何か検事最初起訴をいたします場合に、これを東洋棉花ほか一社というふうに表示をいたしたのじゃないかと思うわけでございます。そういたしまして、その後公判廷におきまして、検察側におきまして、この十月二十九日の起訴状指摘いたしております東洋棉花ほか一社という所有名義は、これは日本電建誤りであるという趣旨冒頭陳述をいたしております。
  9. 高田富之

    高田委員 そうしますと、その追起訴は十一月二十日ですか、二十日後に追起訴になっているのですね。そのときの起訴状のこれに関する部分はどんなふうになっておりますか。
  10. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 十一月二十日の追起訴におきましては、関係部分を読み上げますと、柴山が「東洋棉花株式会社からの委任を受けて日本住宅公団買収方申出をしていた当時日本電建株式会社所有に係る和泉三林町八四三番地の三二所在山林一〇三町一反四畝一六歩等の山林原野等合計約三四万坪通称光明池地区用地を」云々というふうに表示をいたしております。
  11. 高田富之

    高田委員 そうしますと、これは二十万円、こうなっておりますが、このときが十万円であと五万円ずつ二回、そうすると三回になっているのですね、そういうことですね。
  12. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 お説のとおりでございまして、十月二十九日の起訴におきましては、三十七年の十月三十一日に三和銀行高麗橋支店尾崎国雄名義金額十万円の普通預金通帳尾崎印鑑を渡した、これが一つ収賄容疑でありまして、そして十一月二十日の追起訴におきましては、三十七年の十一月二十四日ごろいまの口座に五万円を預け入れて収賄したという関係になっております。それから最後は三十八年の二月九日ごろ現金五万円をまた渡したということになりまして、訴因としてはこの三つになっているわけであります。
  13. 高田富之

    高田委員 私は、それにしましても起訴状というのはきわめてずさんの感じを免れないですね。いまのお話を聞きましてもどういうのでございましょうか。このときすでに総額二十万円という金は書かれておるわけです、最初起訴総額二十万円と。これは私の間違いですか。「供与するものであることの情を知りながら二十万円を受け取った」とこうなっております。そうすると全然事実と違うわけですね。これはこの起訴状によると、三十七年十月三十一日に永田何とかがどこそこの付近において何のたれがしから二十万円を受け取った、こうなっております。そうなりますと、最初起訴状というのはきわめてずさんきわまるもので、事実と違うのじゃないですか。
  14. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 十月二十九日の起訴状におきましては、私どもの持っております起訴状写しによれば、先ほど申し上げましたように、高麗橋支店口座を設定した尾崎国雄名義金額十万円の普通預金通帳一冊及び尾崎と刻した印鑑一個をもらい受けたということで、十月二十九日には十万円の収賄起訴いたしておるわけでございます。
  15. 高田富之

    高田委員 そうすると、私が手に入れたのは正確な起訴状とは違う、こういうことになりますね。そうですね。
  16. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 私ども起訴状はただいま申し上げたものでございまして、高田委員起訴状は事実に反するのじゃないかというふうに思います。
  17. 高田富之

    高田委員 それはまあいいです。それにしましても、「東洋棉花株式会社ほか一社所有」というのは間違いないですね。そのとおりでしょう。ですから私は、いやしくも起訴状ですよ、これは逮捕してから相当の期間があるはずですね。十分調査をし、そして当該問題の土地所有者なんというものはきわめて明白なものですから、登記はここに写しがございますけれどもね。たくさん動いたようにあなたはおっしゃいますけれども、この当時ちっとも動いてないのですよ。日本電建が買ってからずっと日本電建のものであるわけです。ずっと前は東洋棉花のもので、それを日本電建が買ってからずっと日本電建が持っております。この事件の当時はずっと日本電建が持っておるのですね。それから日本電建から東洋棉花へ売るのですが、それはずっとあとですから。これは日時を追ってお話ししてもわかりますけれども、ずっとあとの話なんです。そのときにこういうふうに——私は何としてもこれはふに落ちないのです。いやしくも検察官が長時日をかけて十分調査をして起訴状を書くのに、所有者が全然違うなんというようなことはおかしいのでございます。あと訂正されているというお話ですけれども、そういういいかげんなものであっていいとはどうも考えられないんですね。あとで口頭で違うということを言ったからいいというものじゃないと私は思うのです。それで、これは日本電建が買いましたのは三十六年八月二十二日、贈収賄があったのは三十七年十月。それから日本電建東洋棉花に売ったのは三十八年四月ですから、きわめて明瞭なんです。これはここに登記写しもございますからね。このようにきわめて明白であるのに東洋棉花というような名前が出てくる。これは東洋棉花は前には持っていたんですがね。ですから、前に持っててまたそのあとで前の所有者に売り戻したようなかっこうになるのですが、いずれにしましても、その間持っておりましたのは日本電建であることは、これはきわめて明々白々でございまして、調べるまでもないくらい明白なんですが、これはどうして間違ったのか、どうもふしぎでしょうがない。単なる間違いなんだろうか、どうなんだろうかというふうな感じがするわけなんです。こういうことはそんな扱いでいいものなんですか。
  18. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 ただいま申し上げましたように、十月二十九日の起訴状におきましては、東洋棉花ほか一社所有といたしまして、その一月足らずのあとの追起訴においては日本電建所有という表示をいたしておりまして、この短期間所有面が変わっているというような起訴をいたしました点は、最初の十月二十九日の起訴状が客観的に誤りであろうと思われますので、この点については、検事の処理はいまから考えればずさんであったというふうに思わざるを得ないのでございます。こういうような客観的事実に反した表示をしたと現在思われるこの表示につきまして、私どもできる限りの調査をいたしてみたわけでございますけれども、確たるあれは出てこないわけでございます。想像のことを申し上げて答弁しては申しわけございませんので、私自身想像というものは一応申し上げることができるのでございますが、それは差し控えさせていただきたいと存じます。
  19. 高田富之

    高田委員 ほんのわずかの期間に、すぐ別の追起訴のときにはもう所有者訂正されているのですね。そうしたら、前のやつも一緒に訂正してしまうことはできないのですか。
  20. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 これは手続上は公判が開かれまして、公判の段階で起訴状訂正をするというのが普通の行なわれておる手続でございます。そこで公判におきまして、本件の場合は起訴状訂正ということではなしに、刑事訴訟法上の手続でございます冒頭陳述という手続がございますが、その冒頭陳述手続におきまして、この四十四年十月二十九日の起訴状表示されておる東洋棉花ほか一社所有というものは、これは当時日本電建所有であったというふうに訂正をいたしておるわけでございます。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 関連。いまの答弁についてお尋ねをしておきたいと思いますけれども最初起訴のときに、当然登記簿謄本等の取り寄せということがあってしかるべきだし、そういうふうなことをしない捜査というものは考えられない。だから、先ほどから高田委員質問しておるのは、これは単なるずさんなものだったとか、とにかく書き間違いだったとかというふうなことでは納得できないのだ、こういうふうに質問されるのは当然だと思うのです。では一体最初の第一回の起訴のときには、捜査に当たった検察官登記簿謄本等の取り寄せをしなかったというようなことであるのか。そういうことは考えられないことです。ですから、先ほど局長が、私想像はありますけれどもと言ってことばを濁されたけれども、これはそういうふうに言われても、質問者も聞いておる者も納得できないので、その点はやはり明確にしていただいて、高田委員質問を私はやはり続行してもらいたい。いまの点についてひとつお答えいただきたい。
  22. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 実は本日の御質疑があるということを昨日の夕方承りまして、急いで当時の事情を大阪地検関係に照会して聞いたわけでございます。当時、これはすでに御承知と思いますが、昭和四十一年四月四日の参議院決算委員会におきましても、この表示のことが一応触れられておるわけでございます。そういう関係もありまして、急ぎこの調査をいたしたわけでございますが、明確にお答えするだけの資料が得られないということでございます。ただ当時の関係者が申しますのは、もちろん捜査の過程におきまして登記簿を見ている。ただ贈賄側でございます柴山という人が東洋棉花のほうから頼まれて動いておったという関係で、しかもこの問題の土地というものが東洋棉花からいろいろな関係のほうに転々所有権が移っております。また、その収賄事実の時期は三十七年でございますが、三十八年にはまた東洋棉花に移っておるというような関係もあり、登記簿上の所有名義はともかくとして、実質がどうなっておるのだろうかというような点について、当時の検事がどう見たかという一つの問題があろうかと思うというのが、一つ関係者の今日の調査の結果でございます。  起訴が四十年でございまして、そして三十七年の事実でございます。三十七年のこの収賄事実のありましたときには、これはもう日本電建という登記簿上の名義は明らかでございますが、三十八年には一時また東洋棉花ほか一社所有になっておる時期があるわけでございます。そういう点を、四十年に起訴いたします際に、あるいは誤ったか、ともかくこの贈賄者側東洋棉花のために動いておったようでございますから、そういう点を考慮して、今日となれば客観的に間違った表示をしたのではなかろうかと思うのでございます。
  23. 高田富之

    高田委員 いろいろ想像すればというようなお話もございますが、東洋棉花に頼まれてやったというようなお話がいまございますが、前は東洋棉花が持っておったわけでございます。東洋棉花が持っておったのを電建が買ったのは三十六年八月二十二日なんですね。それまでは東洋棉花が持っておった。電建が持っておりました間に、翌年の十月ですから、一年とちょっとたっておりますが、この贈賄が行なわれております。そうして東洋棉花に売却しているのは、また翌年の三十八年の四月ですね。ですから、東洋棉花がもと持っていて、また買うわけですが、その次はまたすこぶる早いのでありまして、一カ月半ばかり、三十八年の五月十五日には、東洋棉花が今度は興亜建設に売っておるのですね。興亜建設が買ってからなお早いのでありまして、買うとすぐに、三十八年五月十七日、二日後には公団興亜建設から買収しておるわけです。ここらの問題については、いろいろと関係の他の方面で質問をしておるわけでございますが、超スピードもいいところなんでありまして、大体公団が買うのには一年ぐらいかかるのが普通なんで、早くて三、四カ月、おそければ一年も二年もかかるという御説明公団自身からあるわけです。二日ぐらいでもってぽんぽん公団が買っておるわけなんですが、そういう事件でございますために、いまだにいろいろなところで問題にされる。当委員会でもかつて問題になったこともあると思うのです。そういうようにいまだにいろいろなところで問題にされるわけですが、そういうような経緯から見ますと、少し検事が頭がよ過ぎると思うのですね。将来東洋棉花がまた買い戻すであろうということはわかりっこないはずです。もと持っていた東洋棉花から買って電建が持っているから、一年後にまた東洋棉花が買い戻すということはわからぬはずなんです。それを、東洋棉花から頼まれてというようなことで頭が少し錯乱して、東洋棉花が持っていたように書いちゃったなんということは、何としてもふに落ちない。私はいまの御説明では納得できない。どうも起訴状を書いた時点における検事さんのあり方というものは相当納得できないものがある。事実を御承知で、所有者電建であることを御承知でありながら何かこんなふうに書いたような感じがどうもしてならないのです。いずれにしましても、いまの御説明よりどうにもしようがないということになれば、しようがないのですが、どうもこれは納得できない。  この問題につきましては、さらにあとでもしも追加御説明がいただければと思うのですが、一たんこれはこれでおきまして、この機会にもう一つ、これは刑事問題じゃございませんが、承っておきたいことがございます。それは大体同じころの年代のことではございますが、これまたごく最近の月刊雑誌などで触れられておる問題でございますので、あえてもう一度疑問点を明確にいたしたい、こう思うわけであります。これは刑事問題ではございませんで、登記簿取り扱いの問題でございます。不動産登記法に関する問題でございます。  登記簿というものは、権利関係表示する非常に大事なものでございますことは申し上げるまでもないのですが、不動産登記法の七十六条によりますと、登記簿が枚数が非常に多くなって取り扱いが不便で、しかも現在の権利関係関係のない部分は、便宜上これは閉鎖してしまってしまうことができるというふうになっておるわけなんですが、ただいまここに私が持ってまいりましたのは、昭和三十八年十月十日、大蔵省国有地払い下げをいたしました。この払い下げを受けて、所有名義大蔵省からエンパイヤ興業株式会社に変わっております。そのエンパイヤ株式会社が合併いたしまして、朝日土地興業株式会社にまた変わっております。これだけのものなんですね。たったこれだけのものなんですが、これが閉鎖されております。これがたった一枚。ですから次のほうからは、これが閉鎖されちゃっていますから、払い下げを受けたことはなくなっておりまして、次の所有者のところから写されておるわけです。こういうふうなことは、これは登記法七十六条五項による閉鎖用紙、こうなっておりますが、登記法七十六条五項による閉鎖とは一体何ぞや、こういうことをやることができるのかどうか、これは違法行為じゃないのか、この点について、ひとつ解明していただきたい。
  24. 川島一郎

    川島政府委員 ただいまの問題につきましては、昨日決算委員会高田先生から御質問がございまして、事実関係、ちょっと私はっきりしない点がございましたので、あと東京法務局に照会いたしまして調べたわけでございます。そういたしますと、これははなはだ申しわけないことでございますが、先生のお持ちになっていらっしゃる登記簿謄本、それに、七十六条五項による閉鎖をしたものであるという証明文が記載されてございます。ところが、それは間違いでございまして、東京法務局の原簿に当たってみましたところが、それは不動産登記法の七十六条の五項による閉鎖ではなくして、粗悪用紙移記作業の一貫として書き直したものである、こういうことが登記簿の上から明らかになっておるわけでございます。  そこで、粗悪用紙移記作業というものはどういうものかということを簡単に御説明させていただきたいと思いますが、現在、登記所にはかなり古い用紙もございますし、それから現在はタイプで記入いたしておりますけれども、以前は印版を用いたり、それに鉄筆でもって記入をしていたというようなものがございまして、登記簿謄本をとる場合に、これを複写機にかけましてコピーにとって、それを謄本として使っているわけでございますが、原本のもともとの用紙と、それからその用紙になされております記載がはなはだ不明瞭でありますために、複写機写した場合に写りが悪い。そこで、謄本をもらった人から非常に文句が出るわけでございます。そこで、そういった写りの悪い用紙あるいは紙質の悪い用紙というようなものを新しい用紙タイプで書きかえるという作業をやっているわけでございます。それは全国的に大蔵省から相当額の予算をもらいまして、特に繁忙の登記所を対象として行なっておるわけでございますが、これをわれわれは粗悪用紙移記作業と言っております。  この問題の登記用紙につきましても、その作業の一環として行なったものでございまして、この登記簿を保管しております東京法務局登記課におきましては、昭和三十八年から昭和四十年の一月までの間に相当数の登記用紙の書きかえを行なっておるわけでございます。その際に移記いたしました登記用紙、旧用紙が七万八千枚、それから新しくつくった登記用紙が五万四千枚という報告が来ておりますが、こういった作業の一環としてこの書きかえをしたものでありまして、先ほど指摘のありました七十六条の規定による移記ではない、こういう事実が判明したわけでございます。この点、御報告しておきたいと思います。
  25. 高田富之

    高田委員 粗悪用紙で、書きかえるというのですが、そうしますとそれは閉鎖じゃないわけですね。
  26. 川島一郎

    川島政府委員 それは閉鎖ではございません。書きかえでございます。
  27. 高田富之

    高田委員 そうしますと、私はしろうとだからよくお伺いしたいのですが、閉鎖した場合は別にしまっちゃうのでしょう。書きかえの場合は、書きかえしたらすぐまたとじるのでしょう。しまってしまうものじゃないのでしょう。だから、閉鎖されたものと書きかえのものと保管する場所が違うわけですね。どうなんですか。
  28. 川島一郎

    川島政府委員 登記簿の上から申しますと、閉鎖した場合には御指摘のとおりそこから抜きまして、閉鎖登記簿というものの中へ入れるわけでございます。そして閉鎖をしたときから二十年間保存をする。一般に閲覧もいたしますし、それから謄本も出すという取り扱いにしております。それに対して、粗悪の書きかえの場合におきましては、その後の用紙をどうしろという規定はございません。実際には、書きかえますと新しいものが登記簿になり、そして古いものはもう登記簿でなくなるわけでございますけれども、実際の運用といたしましては閉鎖をした場合と同じように考えまして、閉鎖登記簿ではございませんけれども、別の場所にそれだけ保管して、一般の閲覧にも供しておる、こういう取り扱いをいたしております。
  29. 高田富之

    高田委員 そうしますと、これはもうとっくに書きかえが済んでいるはずですから、新しい登記簿のほうへ書き直されて、くっついて、新しい登記簿でもって請求さえすればそのときの権利関係はわかるようになっているはずですね。これはどうなんですか。
  30. 川島一郎

    川島政府委員 粗悪用紙の移記の場合も、それから先ほどの枚数過多による移記の場合も、同じく現在の権利関係だけを移すということにいたしております。したがって、前の用紙にはいろいろな古い権利関係が書いてございます。それは移記の場合には新用紙に書きかえいたしませんで、現在の権利関係だけを移す、そうして前のいろいろな経過の書いてあるその用紙はその登記簿からはずしまして、これは書きかえ前の登記用紙ということがわかるようにして別のところに保存しておく、こういう扱いでございます。
  31. 高田富之

    高田委員 実際にその一枚だけが、たった一枚だけが、しかもそんなに古いのでも何でもないのでありまして、次の権利移転までの間は幾日もたっちゃいないのですから。朝日土地興業になって、いずれにしましても、閉鎖といいますか、書きかえというのは一枚だけなんですね。その後のものだってたったこれしかないのですから。ですからどうもこれ一つだけを、粗悪でわからないというけれどもわかりますからね。ちゃんと写しを見ましても、ちっとも不便はないのですよ、はっきり出ていますから。年月日も、払い下げも、受けた人もわかりますし、元大蔵省であることもわかりますし、どうしてこの一枚の紙が、悪いからとか古いとかいってちゃんとあるのですよ。しかも、法務局では登記官が「不動産登記法第七十六条第五項による閉鎖用紙謄本である」といって、ぽんと判こを押して移してあるのだから、閉鎖されたものと同じところにこれを置いてあったのだろうと思うのですがね、おそらく。
  32. 川島一郎

    川島政府委員 御質問の点はごもっともでございます。実は、私もきのう決算委員会登記簿謄本を拝見いたしましたときに、ちょっとそのような疑問を持ちまして、東京法務局にもその点はどうなんだということを聞いたわけでございます。東京法務局からの報告によりますと、この用紙は折り目のところが裂けておるということが第一点でございます。それから謄本の中の一番、二番あたりの部分がかなりよごれているということがあるというふうに聞いております。それからさらに謄本を作製いたします場合に、大体一枚五秒程度の速度でもって運転をしておるわけでございますが、その程度の処理でございますと、ここに私、持っておりますけれども、非常に写りが悪い、ちょっと何が書いてあるかわからぬような部分が幾つかございます。そういうことで、この程度よごれておりますと、やはりこの際そういったものにつきましても一括して新しい用紙に書き直しておくという取り扱いを実際にやっておるようでございまして、この程度の用紙を書きかえた例というのはほかにもいろいろあるようでございます。
  33. 高田富之

    高田委員 私はいろいろなのをずいぶん取り寄せて見ているのですが、これよりはるかにきたない、よごれたのが一ぱいあります。こんなにあるのですがね。これなんかきれいなほうですよ。たった一枚のものをこれを閉鎖するというのは何としてもこれはおかしいと感ぜざるを得ないのですね。概して登記簿謄本というのはわかりにくいものです、どれを見たって。本体、判読に骨の折れるものばかりですね、ほかのものを見ましても。どうもこれは、かりにそういうことを口実にしたかどうかわかりませんけれども、これは閉鎖謄本だという判こまで押して読ましているのです。ですから取り扱いとしては閉鎖謄本と同じ取り扱いをしている。書き直しならすぐこれは現在の権利関係だけでほかのものは要らないというわけにも、書き直したものをくっつけたってちっとも厚くも何にもないのですから、だからそれをわざわざとっちゃってしまってしまうという必要は全然ないですよね。
  34. 川島一郎

    川島政府委員 ほかにもまだ読みにくい登記用紙がいろいろあるじゃないかということ、仰せのとおりでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように移記作業というのは非常に大がかりにやっておりまして、さしあたってはまず登記事件の非常に多い登記所を優先的に選定いたしまして、そこに予算を投入してやっていく、漸次ほかの登記所にも拡大していく、こういうやり方でいっておりますので、東京法務局登記課ではかなりこの作業が終わったわけですから、登記簿は全部整備されていると思いますけれども、ほかの登記所ではまだこの作業をやっていないところもたくさんございますので、そういうところではかなり見にくい用紙がそのまま残っているということは幾らも例があるわけでございます。そういうことでございます。
  35. 高田富之

    高田委員 それは法律の何条によってそういう処分をするのですか。
  36. 川島一郎

    川島政府委員 不動産登記法の二十四条の規定を根拠といたしております。
  37. 高田富之

    高田委員 どういうのですか。
  38. 川島一郎

    川島政府委員 その二十四条の規定は、ちょっと読み上げますと、「登記簿若クハ其附属書類又ハ地図若クハ建物所在図ノ滅失スル虞アルトキハ法務大臣ハ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得」、この規定でございます。ここに滅失するおそれがあるというのが要件となっておるわけでございますが、実際の粗悪移記作業におきましては、先ほど申し上げましたように謄本写りが悪いというようなものにつきましても、この規定をある程度広く解釈いたしまして実施しているわけでございまして、ことにこの登記用紙につきましては、問題の部分が破れておるというようなこともございまして、一応この程度のものは滅失のおそれがあるということの範囲に入れて考えておるわけでございます。
  39. 高田富之

    高田委員 その条文では、そういうものは処分を命ずるということは、結局古くて要らなくなったものは閉鎖してしまってもいいかもわからぬですが、しかし大体はこれは閉鎖のような扱いをしてはいけないので、「処分ヲ命スル」と、書き直して新しいものにしてちゃんと閲覧に供するようにしろという意味なのでしょう。閉鎖の処置と違うのじゃないですか。
  40. 川島一郎

    川島政府委員 これはもともとは、たとえばその登記簿が水につかって非常に読みにくくなっておる、あるいはシロアリが出てきて登記用紙がかなり蚕食されておる、こういった事例が間々ございまして、そういう場合に多く使っておったわけでございますが、戦後におきまして登記事件が非常に急激に増加してまいりまして、ことに戦時中に紙の悪い用紙を使って登記簿をこしらえておった、そういうようなことから、戦後複写機にかけて謄本を作製するようになったわけでありますが、従来の用紙を新しく書きかえないことには登記事務の迅速な処理がはかれない、こういう事情にございましたので、この規定を若干拡大解釈と申しますか、そういう意味合いをもちまして、この規定によりまして登記簿の書きかえということをやっておるわけでございます。この場合に、これは法務大臣が必要な処分を命ずるということでございますが、法務大臣は、新しい用紙に書きかえよ、そういう命令を下すわけでございます。粗悪用紙移記作業の場合には、一括的に、これこれの登記所にある粗悪な用紙については新用紙に書きかえるようにと、こういう命令を出すわけでございまして、この命令が出ますとそれによって新用紙登記を移します。その新用紙が新しい登記簿となりまして、移されたもとの登記用紙というのは、これは登記簿でなくなるわけであります。解釈上は登記簿でなくなるというふうに考えておるわけでございますが、しかし先ほど申し上げましたように、現在事項だけを移記するという扱いになっておりますので、その過去にさかのぼって権利関係を知りたいという必要がありますことを考えまして、移記する前の登記用紙につきましてもこれを先ほど閉鎖の場合と同じように保存しておるというのが現在の取り扱いでございます。
  41. 高田富之

    高田委員 しかし、いずれにしましても取り扱いはおかしいので、ちゃんと判までぴしっと押しまして、「右は不動産登記法第七十六条第五項による閉鎖用紙謄本である」と書いてあるのです。いいですか、そんなでたらめな、これは閉鎖したものじゃない、紙が悪いから書き直した。書き直したのなら新しいほうについているはずですね。そうでしょう。これは何としてもおかしいですよ。新しいほうに書き直してくっついているなら問題はないですけれどもね。しかもこれはちゃんと閉鎖用紙謄本だとして判を押してよこしているのですから、閉鎖をされているのですよ。閉鎖されている扱いになっておるのですよ。一枚ばかりで閉鎖すればこれは違法ですから、枚数過多になったときしか許されない取り扱いですよ。紙が悪いから直した。紙が悪いなら、こんな判こを押してよこす必要はない。新しいものにつけてよこせばよろしい。いずれにしましても、これは私はおかしいと思う。こんな行政のあり方というものはこれは認められますか。
  42. 川島一郎

    川島政府委員 先ほどから申し上げておりますように、登記所粗悪用紙移記作業というのは、もうだいぶ前から実施しておるわけでございまして、これはわれわれといたしましては、登記法上適法な作業であるというふうに考えておるわけでございます。  それから、不動産登記法の七十六条による閉鎖用紙であるという認証文がついているとおっしゃいますが、それは最初にお断わり申し上げましたように、その謄本をつくって交付する際にその認証文の書き方を間違えたものであるということでございまして、実際は七十六条の規定によって閉鎖した用紙ではないのであります。その証拠と申しましてはあれでございますが、この登記用紙の甲区欄のほうを見ていただきますと、事項欄に壱番、弐番、参番、四番と登記がございます。そのあとに二行別ワクになって移記事項がありますが、ここには「法務大臣の命により移記昭和参九年九月参日」と書いてございます。これは先ほど申し上げました不動産登記法二十四条の規定によって書きかえる際に、こういう記載をしておるわけでございまして、この記載から判断をいたしましても、この用紙は七十六条の規定によって閉鎖されたものではないということがわかるわけでございます。
  43. 高田富之

    高田委員 そうすると、これは判こを押したのが間違いなのだということですね。間違ってここに判こを押して交付したという御説明になるわけですが、どうも納得いかない。ということは、払い下げを受けたということだけが消えるわけなんですね。別に枚数過多でも何でもないので、大蔵省払い下げをしたというところだけがしまい込まれてしまったわけなんです。ちゃんと写っていますからね。ちっとも不便でも何でもありはしないですよ。それだけしまってしまったのです。第一、この閉鎖用紙謄本であると書いた判を押して、ようやく倉の中からさがしてきた人が、どうして一枚ばかり閉鎖したのかわかりません、わかりません、ふしぎですなと言って渡しているのです。ふしぎなんですよ。こんなふしぎなことはないのですよ。払い下げを受けたということだけがわからないようになっている。あなた方がわかるとうまくないということでこうしたにきまっている。ですから、こんなことはさっきも言いましたように、これは本年八月十五日号「財界」という雑誌の中に、小佐野さんが書いているのですが、これはもう衆参両院でいろいろ問題になって、大問題になったことですから、われわれも記憶に新たなのですが、これを小佐野さんがあらためて、田中さんが総理になられました間もないころに、思い出話として小佐野賢治の署名入りで一文を寄せておられるのです。非常におもしろい文章です。こういうことを書いていらっしゃる。「私についていえば虎ノ門の土地問題にしても噴飯もので、元国有地であったあの土地をニューエンパイアという会社が払い下げを受けたのは昭和二十二、三年ごろ、角さんが一年生代議士になりたてで、払い下げにはまったく関係がない。」こういうふうになっているのですね。平気でこういうことを書いてお出しになるのですが、ところが払い下げを受けましたのは、ちゃんとここの登記にございますように、昭和二十二、三年ごろで角さんの一年生代議士ころの話ではないのでありまして、払い下げは「昭和参八年壱〇月壱日払下 取得者  エンパイヤ興業株式会社」こうなっておりまして、大蔵大臣田中角榮さんのときのことなんです。払い下げを受けて、合併して転売したのです。実質的に転売と同じようなことをして国会で問題になった小佐野さん、当の御本人がこういうことを書くのですからね。実質的な払い下げを受けたのはこの人なんです。いろいろ会社の合併だの社名変更といううまいことをやって、転売という形をとらないで、会社を売ったようなことになっておる。あれこれ見ますと、こういうふうに一枚だけ閉鎖したということは、登記の係官が見ても首をひねっておかしいな、おかしいなと言いながら出してくるというようなことでありまして、いかように御説明なさろうとも、こういうことはやはりどうもいろいろとうわさされるようなことじゃないかと私は疑わざるを得ないのですね。どうでしょうか。もういいですか。これ以上答えられないですか。どういうことですか。
  44. 川島一郎

    川島政府委員 先ほどから申し上げておりますとおり登記所取り扱いといたしましては、これは従来からやっておることでありますし、この程度のことはほかの登記簿についても行なわれておるというのが実際の取り扱いだろうと思います。
  45. 高田富之

    高田委員 とにかくちゃんと写っておりますし、枚数過多でも何でもありません。たった一つ払い下げたという事実だけしか書いてないのです。そういうことでありまして非常に不可解なことである。御答弁でもこれは満足できない。こんなようなことがたくさんあるわけですね。これと関連してさっきの起訴状のこと、起訴するときまでそういう配慮をしたのだな、配慮させられたのかなという感じを持ったから御質問した。まだそのほかにあるのですよ。ついでだから申し上げるのですが、住宅公団があの土地を買ったでしょう。この公団の監査報告書というものを見ますと、この土地は適地じゃなかった。住宅政策上不適当だ。不適地ときまったものがわずかの期間に適地と変わった。たいへん問題のある土地、こういう土地は今後は買ってはいけない。ほかに買う土地がなければしようがないが、十分注意しなければならぬ。今後建設するのに各方面と連絡をとってうまくやらないと、公団だけではとてもやれないものだというようなことが指摘されておるのですね。その最後のほうには、これはもうやることがずさんだ、とんでもないことをやったというようなことがあるわけですが、印刷して国会に配付した報告書を半分削除したのです。これはきのう決算で質問しましたが、国会にまで報告された、公にされた監査報告書を、ぐあいが悪いからといって半分から下、特にぐあいが悪い部分だけをあとから消してしまったのです。そういうことまでやるのですから、何としましてもわれわれが疑い、またほかの雑誌なんかでもいろいろなことをいまごろになって問題にされますのも、過去のことだからじゃなくて、現在でも明白にすべきことは明白にしなければ現在の政治が疑われますからね。そういう意味で私はその中の司法に関係のあることを二つ、いま申し上げたにすぎない。ほかにまだうんとあるのです。似たような、いともふかしぎな、どこかの強力な圧力がなければとてもやれないと思われるようなことがたくさんありますので、あえて法務の専門家の皆さんに二つだけお伺いしたのです。それで押し問答してもしようがありませんから、私が疑惑を持ったという事情を申し上げたわけです。  それからこの機会ですから、これは全然別のことなんでございますが、伺いたいことがございます。それはただいま解散総選挙の前というようなことになっておりまして、各地でいろいろ事前運動めいたこともあるわけですが、私自身関係し、私の選挙区におります荒舩清十郎君、鴨田宗一君も関係して非常に困っておる問題でございます。これは三年前の衆議院総選挙のときに、その衆議院総選挙の事前六カ月くらいの間並びに告示後選挙の終了するまでの間——これは三年前のことですよ、いまもあるのですが、その前回の選挙の際に、こういう新聞をつくりまして、新聞といってもふだん出ているのではないのですが、新聞に折り込むわけです。こういう新聞大の印刷物を刷りまして、これを日刊紙に折り込むわけです。何十万枚というものを全選挙区に折り込むわけです。これを月に一、二回くらいずつ事前にまき、選挙期間中も折り込んでまくわけです。前回は主として私に関することが多かったのです。鴨田氏、荒舩氏のこともございました。これはでたらめしごくなんですから連続これを折り込まれた日には何とも処置なしなんです。これはこの間まかれたものです。「荒舩国会議員自派のため見福汚職をもみ消す」「被害は全市民にかかる」こういう見出しです。こういう見出しをたくさんつけまして、なかなか文章もうまいのです。これは相当なものですよ。この式のものを三年前の選挙のときにはたしか十一回やっております。もう朝、目がさめると、きょうは何か入っていやしないかと思って新聞をあけるのがこわかったですよ。あけてみますと、高田富之何々を侮辱すとか、高田富之近日中に自民党にくらがえを決定なんてとんでもないやつを出すのです。それでどうしようもないので、私は出るたびに名誉棄損で告訴に行ったのですが、出るたびにまた出たといって警察に行って調書をとってもらうのでたいへんなんです。それをやったのですが、検事さんも、犯罪事実は十分あります、起訴する事実は十分ありますが、起訴すると選挙が終わって半年もたってから事実じゃなかった事実じゃなかったという反証をあなたはこれから二年も三年もあげながら決着つくまでそんなことばかりやっていなければならぬ。これじゃ起訴したほうが有利なのか取り下げたほうが有利なのか問題だから、この際、今度やったらやっつけるぞというようなことにしておどかしておいて取り下げたほうがいいだろうということになってしまった。話にならない。ところが、幸か不幸か、彼が三年前に選挙中、これを投票日の四日くらい前に何万枚か何十万枚か印刷したという情報が入ったのです。立ち会い演説のとき、ほかの候補者からどうも君のがたくさん印刷されたらしいぞ、それでたいへんだというので、すぐ県警本部に電話をかけまして、すぐ所轄の本庄署から行ったら、自分のうちに一括して積んであった。高田富之当選後二年以内に自民党入党を決定すというような、三区選挙民をあざむく破廉恥漢とか何とかというものです。選挙中ですから選挙法違反で逮捕してくれた。二週間入れておいたので選挙が終わりましたから無事助かりましたけれども、不起訴で釈放された。名誉棄損のほうは半年くらいたってあとで示談ということになった、こういうわけなんです。今度うんとおどかしてあるからだいじょうぶだということだったんですが、最近また始まりました。最近になりましてからたしか四回くらいだと思います。荒舩氏中心のやつが出たものですから、荒舩氏が名誉棄損でこれを告訴しております。ゆうべ表が鴨田で裏が高田というやつを熊谷周辺に折り込んで新聞の販売店に一ぱい持ち込んだ。すぐ鴨田さんが警察に電話をかけてくれというので、ゆうべ私は関係警察署に電話をかけたんですが、鴨田さんももちろん電話をかけた。表が荒舩で裏が高田というのもある。三代議士をやっつけるというようなのもあるのです。私生活に関すること、それからちょっとしたうわさがあるくらいのやつを、実に文章をうまくつづり合わせまして大悪人のように、たいていいやになるように書いてある。これが出るたびに毎回調書を取りに行って、半年も先にいってまた示談にしなさいでは話にならぬでしょう。こういうものは選挙法上告示後は何か違法文書というので、現行犯ということで逮捕ができるらしいのですが、それでもかまわないでやるのですからどうにもしようがない。これを出しているのは某候補者がふんだんに金を出してくれてやらせているわけなんです。その某候補者にも、呼び出して注意をするからといっておりましたが、その某候補者はまた今度も出ておりまして、盛んにこれをやっている。昨晩も、これが新しいものでまだよく見ていませんけれども、鴨田さんが押えてゆうべ大騒ぎをやったわけですが、こういうのはどうしたらいいものでしょうか。何かうまい方法はないものでしょうか。前にもあったのですが、起訴事実は十分だといっておったのを取り下げたんですけれども、こういうようなものは何とか考えてもらわなければ困ると思うのです。きょうは関係の方々がお見えでございますので、皆さんの御見解をぜひ承りたい。
  46. 根岸重治

    ○根岸説明員 ただいまの御質問でございますが、おっしゃるような事実がありますと、公職選挙法違反になることも考えられますので、告訴、告発等がありました場合には、検察庁といたしましては、厳正公正な立場で事件捜査処理に当たるものと考えております。
  47. 中谷鉄也

    中谷委員 関連して。  こういうことをこの機会にひとつ検討されたらいかがでしょうか。新聞販売店がとにかく一見して名誉棄損であることが明らかなようなもの、それをただ折り込みまして配るのだからそれはいいのだというわけには私はいかないだろうと思うのです。だから結局そういうようなものは、ある場合には名誉棄損の共犯になり得る場合があると私は考えます。まず法律論として、一見してこれは名誉棄損だというものを、ただ頼まれたからうちは折り込みしただけですというわけにいかないだろうと私は思うのです。というふうなことについては、私は検察庁あるいは警察等において明確にしておくということであれば、これは私はあえて倫理綱領を販売店の場合に持ち出すつもりはございませんけれども、そういう点の法律見解だけはひとつ承っておきたい。要するに、こういうものを折り込むことについては、当然共犯のおそれがあるのだからなり得ると私は思う。そういうものは当然断わるべきなんだね。その点、課長いかがですか。
  48. 根岸重治

    ○根岸説明員 新聞販売店が共犯になるかどうかという問題でございますが、事案によると思いますが、なる場合もあり得るというふうに私は思います。ただし、それはいろいろな条件が重なった場合でございますけれども、新聞販売店であるからならないということには、きめつけるわけにはいかないと思います。
  49. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにしても、これは議会民主主義、選挙の公正という問題の立場から高田委員質問された。とにかく与党の先生、それから野党の議員ともにたいへん迷惑をいたしておる。選挙の公正を害することはなはだしいというようなことで、そういう問題として問題を提起しているわけです。これは民事局長にあえて答弁していただいてもいただかなくてもけっこうだけれども、こういうものについては、裁判所に対して当然仮処分等の方法等も活用する方法があるだろうし、いずれにしてもこういうものが反復して配布されるというようなことを放置しておられる検察庁や県警の姿勢について、私は非常な不満を感じます。これは議会民主主義という立場から言うて許すことはできない。だから私は条件があり、事情があり、一がいにそういうことについてそれを断定しようとは思わないけれども、新聞販売店の諸君に対しても、こういうようなものを不用意に折り込みをするというようなことは、場合によっては名誉棄損になり得る場合がありますよと言うことは、何ら検察の中立を害することでも何でもない、こういうふうに私は考えるわけです。警察の公正中立をそこなう、あるいは疑われることでもないと思う。この点についてあらためて見解を求めておきたい。
  50. 根岸重治

    ○根岸説明員 私は、検察官が故意に取り締まりをしていないというふうには決して思いません。しかしながら、先生のおっしゃいました趣旨は、機会がありました際によく検察庁に伝えたいというふうに考えております。
  51. 高橋英吉

    ○高橋委員 関連して。いまの名誉棄損の問題ですが、特に選挙関係の場合における名誉棄損というのは重大なことですが、しかしそれでも、刊行物なんかで一応著名な刊行物とか信用のある刊行物とか、そういうふうなものに対しては相当慎重にやっていかなければいけないと思いますが、そうでなく、いま問題になっておりますようなわけのわからないようなものについて名誉棄損の告訴をするという場合に、非常に慎重な取り扱いになっておるようですが、私どもの見解によると、その名誉棄損の事実関係について名誉を棄損した者が証明ができなければ、それでもう十分犯罪は成立しているというふうに思うわけです。そういう事実があるかないかということをほかの方面に積極的に捜査して時間をかける、慎重を期し過ぎるというふうなことは、いまの検察陣や警察なんか人手も足りないし、労力、時間、そういうふうなものもむだになるわけですから、わけのわからぬ、ほんとうに悪いやつだということがはっきりわかっておる、名誉棄損、選挙妨害だというふうなことがわかっておる場合には、本人のほうでそれが事実だという証明ができない場合においては、推定とかみなすとか民事規定にあるような意味で、それだけでも十分起訴してもいいと思うのですが、そういう点について少し慎重過ぎやしないか。その点についてひとつ御考慮をいただきたいと思います。要するに、名誉棄損の事実を名誉棄損した者が証明ができなければそれは犯罪が成立するというふうな前提でも、ひとつ迅速に処分してもらいたいというふうなことをわれわれは希望しておるのです。
  52. 高田富之

    高田委員 これは前回の衆議院選挙で、解散になりましたときに当時すでに数回あるいはそれ以上こういうのが配布されたものですから、ほとんど大部分私に関するものだったのですが、一号だったかに荒舩氏や鴨田氏のこともありまして、荒舩、鴨田両氏も、これは党派を越えてこういうことは徹底的に押えてもらわなければ民主的な選挙はできない、ぜひひとつ共同で何とかこれをさせようということで、三人で当時の警察庁長官にお目にかかりまして、こういうものをお見せしながら十分説明をいたしました。もちろん、いわゆる名誉棄損というのは、一般の場合なら事実でなくても成り立つが、公務員や何かの場合には事実であるかどうかというのが争点になる、もし事実でないものをやっておるなら、当然これはやらなければならぬ、しかし、いずれにしても、選挙の前にこういうものは悪質だから、十分手配をして処置はするからというようなことばはあったのですが、やはり何ともしようもなかったと見まして、全然手がつけられていなかったわけであります。今日も、検事から相当のことを言われておるにもかかわらず、相変わらず現在すでにやっておるわけですから、これはよほど強力に思い切った指令を出して、ただいま皆さんからお話がありましたように、たとえば販売店等に厳重に注意の通達を出してやるとか、それから警察庁に対しても厳重な指示をして、こういうものをやらせないようにしなければ、やっちゃってから半年も先になって争ってみたってしようがないのですから、やらせないようにするということをぜひ強力にやってもらわなければいかぬ。少なくともいままでお願いした範囲では、実際問題強力なことをやられていないのです。何か言論機関に対しては非常にはれものにさわるような——これは言論機関じゃない。高橋さんのことばじゃないが、こんなものは固定読者もないので新聞じゃない。一種のビラなんですから、そういう種類のものについて、これは事前であっても、名誉棄損になるならないは争いになりますけれども、少なくともこれが選挙妨害になることだけは明らかです。最も悪質な事前の選挙運動です、現在やっておることは。これをどうして押えられないのか。直ちにこれを捜査されて逮捕してやっつけるくらいのことをしなかったら、こんなことを毎日毎日やられた日には、選挙法で許された合法文書の範囲内でやられたのでは太刀打ちできないですよ。これは毎号やりますと、たいていの人はこんなにやられたんじゃほんとうかなということになる。私のところに支持者たちがみんな来ておるのですから。みんなほんとうだと思いますよ、何とかしなさいと言うのです。何とかしなさいといったってどうしようもないですから、これはひとつ本委員会において、ぜひ委員長も皆さんの御意向を承って強く当局にも要請し、当局からは即刻手を打ってもらう。ゆうべもこの事件で大騒ぎしたのですから、即刻手を打っていただかなければいけないと思いますので、ひとつそういうお計らいを願いたいと思うのです。
  53. 谷川和穗

    谷川委員長 委員長から発言いたします。  ただいまの高田委員の御発言は、この種のものが反復、明らかに一つの意図をもって行なわれているということで、まことに大きな問題であると存じます。特にそれが選挙というような問題にからんでおるだけに、法務当局においても至急事態をさらに一そう検討して善処をされるように要望いたします。
  54. 高田富之

    高田委員 委員長からたいへん力強いお話がありました。ぜひ当局におかれましては、専門家の方々ですからいろいろ方法は考えておられると思うのですが、たとえばいまお話の出ましたような、販売店に対して何らかの強力な通達をするとか、とにかく販売店が折り込んでこれをまくわけでございますから、それがもう具体的に現に反復されているわけですから、すぐに——これは住所はここに書かれておりますように本庄市でございますから、当該警察に対しては特別に強い指令をお出しいただいて、同時にこの配布されます範囲は埼玉三区一円であります。したがいまして、埼玉三区一円の販売店に対する強力な指示、指導、それから警察庁に対する強力な指令、これをすぐに出していただきたい、こう思いますが、これをやっていただけますかどうですか。
  55. 根岸重治

    ○根岸説明員 ただいまの件につきましては、警察庁とも相談いたしまして、私どもで至急に何らかの措置をとるつもりでおります。
  56. 高田富之

    高田委員 それじゃ、以上をもって私の質問を終わります。
  57. 谷川和穗

    谷川委員長 中谷鉄也君。
  58. 中谷鉄也

    中谷委員 法務委員会における最後の質問をいたしたいと思います。  人の生命は地球よりも重いということがいわれておりまするけれども、私は、本日外務省と厚生省の出席を求めて、ルバング島における小野田元少尉の救出問題について、要望を兼ねてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  言うまでもなしに、昭和三十四年衆議院本会議において決議がございます。さらにまた、小野田元少尉発見の報告がありまして、十月二十八日衆議院社会学働委員会において、同じく全力をあげて救出をする旨についての委員会決議がございます。それに従いまして国の方針、政府の考え方というものはきまっているというふうに申し上げていいかとも思うのであります。しかしながら、地元和歌山県海南市においては、小野田元少尉が生存しているということの喜びと、いまなお救出されないということについての憂い、まさに渦を巻いているわけであります。  そこで、私は外務政務次官にお尋ねをいたしたいと思います。重ねて申し上げたいと思いますけれども、人の命は地球よりも重い、どんなことがあっても私は、小野田元少尉を救出をしてもらいたい、救出しなければならない、その点についての外務省、政府の決意、御見解を最初に承りたいと思います。
  59. 青木正久

    ○青木(正)政府委員 ルバング島における小野田さんの問題でございますけれども、いま中谷先生のおっしゃったこと、そのとおりでございまして、人間の命というものはほんとうに何ものにもかえがたく貴重である、私もそう思います。そこで、いまのところまだ捜索活動が続いておりまして、発見されないのはたいへん残念でございますけれども、あの小さな島なので、風向きその他のいろいろな科学的な調査によりますと、政府としては、いまなお小野田さんは健全であるという確信を持っておるわけでございます。したがいまして、特に小野田さんの場合は、終戦後から長い間ジャングルの中で苦労されてきた、われわれと同じ日本人でありながら、なお非常に苦労されてきたといういきさつもありますので、いま政府としては、小野田さんの救出につきまして、発見されるまであくまでもさがし出すという方針でございます。そのためにどんなにお金がかかっても、これは国民の皆さんにわかっていただける、革の根を分けましてもあくまでも小野田さんを発見するまで、規模その他はいろいろ変わると思いますけれども、最後まで、さがし出すまで捜索を続ける、こういうかたい方針でございます。
  60. 中谷鉄也

    中谷委員 非常に誠意のある力強い御答弁をいただきました。和歌山県選出の一人の議員として、政府に対して私は感謝をいたしたいと思います。したがって、いま一度私のほうからも要望しておきます。人の命は地球より重い、したがって、救出にあたっては、いま政務次官が答弁されたように、金に糸目はつけない、救出されるまであくまで捜索は続行する、こういうふうな御答弁であったと思いますが、いま一度同じことを御答弁いただいて恐縮でありまするけれども、お答えをいただきたいと思います。
  61. 青木正久

    ○青木(正)政府委員 そのとおりでございまして、いま政府としてはあくまでもさがし出すまで捜索を続ける、そのためにいかなる費用がかかろうとも、これは国民の皆さんも納得していただけると確信をいたしております。
  62. 中谷鉄也

    中谷委員 小野田元少尉の年とったおとうさんやおかあさんも、政府のこの答弁について、憂いの中にも希望を持ち、また私は希望をもってもらいたいと思います。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕  そこで、具体的な問題についてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、たとえばルバング島における小野田元少尉の救出作業については、新聞の報道によりますと、スピーカーによる呼びかけであるとかヘリコプターによるビラの散布であるとか職員の配置だとか看板を立てる、あるいは本日の報道によりますと、アドバルーンを上げるなどというふうな方法を講じておられるようでありますけれども、これらの方法は三十四年当時の捜索方法とはあまりかわりばえがしないのではないかという批判もあるようであります。要するに、三十四年当時の捜索方法と今回の捜索方法との相違点をひとつ厚生省のほうから伺いたい、これが私の質問でございます。
  63. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ラウドスピーカーによる本人に対する呼びかけ、それからビラその他の印刷物の散布といったようなことは、三十四年当時も行ないましたし、現在も基本的にはそれを行なっているわけであります。三十四年当時と今日のいま行なっております救出の作業との違いは、三十四年当時と違いまして、今日の捜索におきまして、地元フィリピンの軍当局が非常な支援をしていただいておるという点が非常に違っております。警察のほうは現在手を引かれましたけれども、フィリピン空軍が約五十名、いまこの捜索活動に参加していただいておりまして、いわば日比共同の捜索作戦といったようなものがいま展開されておるわけであります。空軍による援助が行なわれておりますために、ヘリコプターその他の機動力、これが三十四年当時はほとんど使えなかったのでありますが、今日そういうヘリコプターとか自動車、そういったような機動力を十分に発揮できるというような状態にあること、これが当時と非常に違っておると思います。
  64. 中谷鉄也

    中谷委員 次のような点についてひとつ厚生省にお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、日本から派遣されている捜索員の方々、たいへん日夜奮闘しておられるわけでありますけれども、高年齢の方がかなり多い、高年齢にかかわらず奮闘しておられる。このことについては、私は非常に敬意を表しますけれども、捜索員の一部を若返らせる、若い人にする、そういう必要があるのではないか、こんな感じもいたすわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  65. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいまの御指摘、たとえば現在出しております団長の柏井課長は六十一歳という相当な年でございますが、いま行っておられる方々は、年はとっておられましても、非常に鍛え込んでおられる方々でございまして、足の強さその他では決してひけをとらぬという方々ばかりでございます。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 これはいずれも過去におきまして何べんも南方の島に遺骨収集等でジャングルの中をかけめぐった経験ある方々でございまして、その点は年齢だけでは一がいに言えないと思います。ただ、何ぶん非常に暑い地域で、しかもジャングルの中をさがし回るということでございますので、やはり体力が必要でございます。したがいまして、今後は、先生ただいまお話がありましたように、できるだけ若い人で、しかもこのために一月以上現地にとどまってがんばれるというような人々を求めて出すということも当然考えていかなければならない、かように考えております。
  66. 中谷鉄也

    中谷委員 捜索について最善の方法をと努力しておられる政府に対して、地元の和歌山県海南市の人たちから、こんな方法をとっていただくこともあり得るのではないかというようなことについて一、二私たちの耳に入っていることをこの機会に申し上げて、御検討をいただきたいと思います。  たとえば、ルバング島の各所に測音器というようなものを配置するということは一体どうなんだろうか。あるいはまた、このルバング島の中において長い間生存をし、そして今日なおこのルバング島に存在をしておられるところの小野田元少尉、この人の心理状態というものを考えてみるときに、捜索隊員の中に心理学あるいは社会心理というものの専門家、こういう人も加える必要があるのじゃなかろうか。こういうようなことも、ほんとうに小野田元少尉を救出したいという多くの国民のいろいろな思いつきかもしれませんけれども、そういうような点についての御検討をされる用意があるかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  67. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 測音器の配置、あるいは特殊な心理状態についての心理学者の専門的な知識をかりる、こういった御提案をいただきましたが、まことに貴重な御意見だと思います。十二分に活用させていただきたいと思います。  ただ、捜索の現状を申しますと、この問題が発生しまして現在の救出工作に入ったのが先月の二十三日からでございます。それで、今月の五日まで二週間、前段の作戦をやったわけでございますが、まだ小野田元少尉の形骸も生存の痕跡も姿も何も見ないという状況でございます。そこで今月の六、七と、きのうまで二日間休養をとりまして、本日八日から二十五日まで第二次の捜索に入るわけでございます。  その第二次の日比共同作戦による救出工作の成果というものに期待しておるのでございますが、もしこれで依然として小野田元少尉の姿もつかめないということでありますれば、この救出工作は相当長期化するということが当然予想されるわけでありまして、そうなりましたら当然いまお話しになりましたような専門家の知識をおかりして、可能なあらゆる方途を講じて捜索活動を継続していかなければならない、かように考えているような次第でございます。
  68. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、私は次のような点をお尋ねいたしたいと思うのであります。  要するに、捜索隊が派遣をされている。しかし内地すなわち本土、この東京にも外務省、厚生省等からなる捜索本部を置いて現地と密接な連絡をとる、そして状況判断をする、ときには現地に捜索方法等について指示をする、そういうようなことがあってしかるべきだろうと私は思うのです。そういうような点についてはすでに処置済みであるというお答えが返ってくるかもしれませんけれども、そういう点についてやはり厚生省のほうからお答えをいただきたいと思います。
  69. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 捜索本部といったようなものは形の上では置いておりませんが、今回の捜索につきましては、私どもと外務省とは常時密接な連絡を保ってほとんど一体関係でやっておりますので、実質的には本部を置いたと全く同じ状態でただいま捜索に当たっているような状態でございます。
  70. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、私は次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。  先ほど、フィリピン政府が全面的な協力をしてくれている、こういう点についての御答弁がありました。私は非常にありがたいことだと思うのであります。特に今度の捜索にあたって、フィリピン政府及び現地の住民の人のほんとうに人間的な気持ちに訴える、そういうふうなことの中でさらに一そう協力をいただく、そういう中で捜索を続行していく、そして何としてでも小野田元少尉を発見し救出する、そういうことが私は大事であろうと思うのです。そういうような点について、これは当然なことでありますけれども、これらの配慮について、あるいはその実情について、外務政務次官のほうから御答弁をいただきたいと思います。
  71. 青木正久

    ○青木(正)政府委員 フィリピン政府は、この問題につきましていままで全面的な協力をしてくれたわけでございます。現在島民の中には、過去にこの二名によって若干の被害をこうむったと伝えられる点もございますけれども、しかしながら小野田さん、小塚さんが二十数年間孤独に耐えてきた、その精神力に対して敬意を表するという声も聞かれております。そういう関係で、フィリピン政府だけではなくて現地島民も積極的に捜索に協力をしている。これからも、フィリピン政府に対しまして全面的な協力をお願いしているわけであります。特にマルコス大統領は、この第二次大戦の生存者が発見され次第日本政府にその身柄を引き渡す、そう言っておりますし、このことを小野田さんの説得に利用してもかまわないということまでマルコス大統領が言っていると伝えられておりますので、大統領はじめ政府あるいはルバング島の島民が一体になりまして、これからも協力をしていただけるものと確信をいたしております。
  72. 中谷鉄也

    中谷委員 和歌山県においては、すでに和歌山県海南市、小野田さんを救う協議会が発足をいたしました。当然のことですが、しかしその熱意というものは、和歌山県民として涙ぐましいものがあるわけであります。あるときには神社に祈願し、あるときは千羽ズルを折る。県をあげて、ありとあらゆる方法で救出が一日も早いことを望んでおるわけであります。衆議院決議にもあるように、国民もそのことを望んでいるわけであります。  そういう中で、私ははなはだ実務的なことをお尋ねいたしたいと思いますけれども、地元和歌山県海南市においては、かなりな数の人たちが捜索隊に加わりたい、自分もルバング島に行って小野田君をさがしたい、こういうふうな意向を持っているわけであります。おそらく捜索隊が派遣されることに相なるだろうと私は思います。そういうようなときに、外務省において旅券の早急な発給、査証取りつけ等について特段の配慮をしていただきたいということを、これらのほんとうに願いを込めてこの問題を見詰めている多くの人たち、しかも捜索に加わろうとする小野田元少尉の同級生、同窓生、同じ地元の人、そういう人たちにかわって外務省の政府委員に答弁を求めたいと思うのであります。
  73. 青木正久

    ○青木(正)政府委員 海南市の皆さま方の御配慮に対しましては、高い敬意を表する次第であります。しかしながら、これは海南市民だけではなくて、私はいまのお話のように日本国民全体が一日も早く救出されることを望んでおると思います。  そこで、その旅券発給のお話でございますけれども、これは旅券といいましても観光旅行と全く違いますので、外務省は海南市の皆さんが発給の申請を出されましたら即時発給をいたします。また査証につきましても、在日フィリピン大使館が特段の配慮をしていただきまして、休みでもあるいは夜間でもあるいは時間外でも、担当官が出勤をいたしましてビザを出してくれております。さらにフィリピンにおきます通関手続その他につきましても、普通の場合と違ったたいへんな配慮をしてくれておりますので、海南市の皆さまがもし行かれる場合には最大限のこういった配慮を考えております。考えておるだけではなくて、これはやるべきだと思いますし、やるつもりでおります。
  74. 中谷鉄也

    中谷委員 多くの質問を用意してまいりましたけれども、冒頭における青木政務次官の誠意のある答弁がありました。私は信頼をいたします。そうして何としてでも国民あげて、政府あげて小野田元少尉を救出をする、そのことを私も期待をして、あとの具体的な、事務的な質問については、これ以上お尋ねいたしません。  次の、法案の質問に移りたいと思いますので、外務政務次官たいへんお忙しいところ恐縮でございましたが、御退席をいただいてけっこうです。
  75. 谷川和穗

    谷川委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  76. 谷川和穗

    谷川委員長 速記を起こしてください。      ————◇—————
  77. 谷川和穗

    谷川委員長 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  78. 中谷鉄也

    中谷委員 両法案についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、裁判官の報酬等に関する法案に関しまして最高裁にお尋ねをいたしたいと思います。  冒頭に申しましたように、これで私の質問は議員として最後でありますので、若干の感慨を込めてお尋ねをいたしたいと思います。  猪俣浩三先生あとを受けまして、この法務委員会でずっと先輩、同僚の委員の方々とともに人権擁護、司法の独立、検察の公正、こういうふうな問題に取り組んでまいったつもりであります。そういう中で、私はあらためてこの質問席に立って思い出しますのは、私の友人であり、私が最も将来を期待しておった、法務委員会に長く席を置いておった岡沢完治君、病に倒れて不帰の人となったその岡沢君が、常に私に言っておったことばであります。世の中にやり直しのきかないものが二つある。物価の問題にしろ、公害の問題にしろ、これは軌道修正がきく。しかし裁判の問題と教育の問題はやり直しがきかないんだ。それが持論であった彼は、常にそういう立場でこの法務委員会において質問をし、論陣を張っておりました。ついに彼は不帰の客となったわけでありますけれども、岡沢君のそのような立場、そのような姿勢、そういうものを私は本日の質問のスタンドポイントとして、最高裁にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  こまかい質問はいたしません。たとえば裁判官の宿舎の問題だとか、初任給の問題だとか、あるいはずいぶん最高裁と論争した青法協の問題、再任の問題、思い出すと数限りなく問題がありますけれども、私は率直に言って裁判所という役所、司法というものは国民の信頼をつないでいると思うのです。そうでなければもう日本という国の安危にかかわる問題だと思う。  そこで総長おいでになりませんけれども、私は局長のほうから、いかにして司法の独立を守るか、いま司法が当面している一番むずかしい問題は何か、あるいはまた期待される裁判官像とは一体何か、こういうような問題について所見を承りたい。まさにそういうふうな質問をすることで私の質問を終わりたいと思うのです。その点についての御答弁をいただきたいと思います。
  79. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 事務総長がちょっと到着がおくれておりますので、たいへん小輩で申しわけございませんが、お尋ねにお答え申し上げたいと存じます。  終始日本の制度としての司法への期待にこたえるようにというあたたかい御配慮から御指導、御鞭撻賜わりましたことをまず心から御礼申し上げまして、先生のこれからのなお邦家のための御活躍をお願い申し上げたいと存じております。  司法の根本の問題につきまして、その大きな期待と国家における役割りという観点からの大きな問題に関する御質問でございまして、私から申し上げるのはたいへん僭越でございますけれども、ふだん私どもで検討しております観点から申し上げまして、なお事務総長が到着いたしましたら事務総長からお答えいたすことにさせていただきたいと存じます。  ただいま司法の独立をいかにして守るか、裁判所が当面する重大な問題は何かというお尋ねでございますけれども、これはやはり司法に期待されたところの適正な判断を迅速に行なうという一語に尽きるのではないかと存じます。この適正を実現するために、司法の独立が憲法で要請されておる点であろうかと存じます。この点に独立を守るための方策の焦点が集まるかと存じます。  しからば当面の最大の問題は具体的には何であるかということになりますと、それは訴訟の遅延ということが当面する具体的な最も大きな問題であろうかと存じます。訴訟遅延の解消のために、かつて臨時司法制度調査会で、昭和三十六年に当時の予算といたしまして三千万円をこえる巨費を投じまして審議がなされたわけでございます。委員となって審議をされた方も法曹の一流の方々で、二年という期間をかけまして非常に慎重に、かつ大規模な調査審議がなされまして、その結論が出されたわけでございますが、その結論が不幸にして必ずしも日本の法曹の全体に十分に理解し受け入れられることができなかったというところに今日の司法の当面する最大の問題があるのではないかと思っております。そこに掲げられました個々の項目とその結論とは必ずしも当を欠くものではないと考えられますが、受け入れられないということを、さらに私ども裁判所も、ちろん法曹全体が真剣に取り組んで、その隘路を取り除いていく努力が必要なのではなかろうかと存じております。訴訟の促進のためには裁判官の増員、法曹一元という問題が大問題になっておるわけでございます。その実現がきわめて困難な状態にあるということも御承知のとおりでございます。民主社会ということになりますと、制度の創設ということが、いろいろな御批判のために必ずしも迅速にはまいりませんけれども、国民の皆さまから十分に御納得のいただける制度によりまして、迅速適正な裁判をするという努力、これが今後の大きな使命であろうかと存じております。
  80. 中谷鉄也

    中谷委員 人事の問題ということになってまいりますと、また非常に議論が分かれるところでありますし、その点について長く論議をし、お尋ねをする時間的な余裕がございませんので、具体的な問題についてひとつ、私は在野法曹の一人として、次のような点について御検討を希望をいたしたいと思うのであります。  かつて廷丁という呼び名がありまして、今日廷吏さんというふうに職種職名がきまっておりますけれども、私はこの廷吏さんということばも、感覚的に見て、必ずしもいいことばのようには思えないわけでございます。こういう点について何らかの御検討をされる用意はないのかどうか。この点はいかがでございましょうか、お答えをいただきたいと思います。
  81. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 御指摘のように、廷吏ということばが必ずしも現在この職務に従事しておる職員の諸君、また一般に、快い名称であるというふうに受け取られていないことは、私どもも十分存じているところでございます。申し上げるまでもございませんが、旧裁判所構成法の時代には、廷丁という呼び名で呼ばれておりました。これが新しい戦後の時代に適合するようにという配慮からいろいろ考えられまして、裁判所法の六十三条におきまして、廷吏という名前に改められたわけでございます。吏というのは公務員ということでございまして、字引きを調べますれば、それほど低いと申しますか、尊敬を受けないような内容のことばではないようでございますが、戦後の思想の観点から、これが必ずしも好感を持って受け入れられないというような事情から、廷吏がことばとしてふさわしくないという感情と御批判が生まれてきたかと存じます。この点については十分に今後検討をして、職務の内容にふさわしく、また社会から尊敬の受けられるような名称に改めるという検討を続けたいと存じておるわけでございますが、事は法律の改正にかかわりますので、非常に慎重な検討を要することと、それからやはり名称は大切でございますが、名称のみならず、その職務の内容が名称にふさわしく、社会の尊敬を受けるような実質を備えることも必要であろうかと考えられますが、そのような点もあわせて検討して、ふさわしい名前を見出すことに努力さしていただきたいと存じております。  なお時間をおかしいただきたいと思います。
  82. 中谷鉄也

    中谷委員 総長おいでいただきましたので、先ほど冒頭に局長から、司法のあり方という問題についてお尋ねをし、御答弁をいただいたわけです。重ねて総長から、そのような質問をし、答弁をいただくつもりはありませんが、青法協の問題、修習生の罷免問題、裁判官の再任問題、最高裁ともずいぶん激しい論議を長年にわたってやってまいりましたけれども、考えてみますと、司法の独立、司法権がほんとうに国民の信頼を受けるという一点においては、そのようなものでなければならないという点においては、私はその立場は堅持してまいったつもりであるし、最高裁もそのような立場を堅持し続けられるものと確信をいたしたいと思います。  そういうことで直ちに具体的な問題の中に入っていくわけでありますけれども、裁判官、書記官の実際の勤務時間でありますけれども、私はとにかく裁判官の経験はありませんけれども、既判等に要する非常に血のにじむようなあの努力、これはたいへんなことであることは伺っておるわけであります。同時に、たとえば事件がたいへんふくそういたしまして、検証などについては勤務時間内に行なえないことが非常に多い。こういうことも私自身実際に拝見をいたしております。要するに、法律で定められた時間どおりにはなかなかいかない。ずいぶん超過勤務だというようなことだとするならば、二十四時間中とにかく仕事をしておるといっても私は過言でないだろうと思うのであります。  そういう中におけるところの裁判官に対するところの待遇の問題、まさに法案は報酬を論議をしておるわけでありますけれども、裁判官研究費の問題、十分な手当てができない理由は一体どこにあるんだろうか。むずかしい、そうして高価な本を給料の中からさいて、最高裁は若干の図書費を組んでおられますけれども、みずからの担当した事件のために外国の図書まで購入をして、そして研さんに励んでおられるところの裁判官も数多く私は知っております。こういうふうな現状に対して私は、研究費というふうなものが当然あってしかるべきだと思うのです。このような点についてひとつ——総長からでなくてけっこうです。私、総長に聞けば、そういうふうな私の気持ちをきょうは申し上げたくて総長というふうに申し上げたのですが、答弁はどなたからでもけっこうですから、ひとつ最高裁のほうで御答弁をいただきたい。
  83. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 ただいま中谷委員からお尋ねがございました裁判官の研究費でございます。  仰せのとおり、裁判につきましては、図書でございますとか、そういう研究に必要な経費が必要でございます。また、これは非常に大事なことでございまして、裁判官がこれによって研究を重ね、それによって適正な裁判をいたすわけでございます。私どもも、もちろんそれについては力を入れなければならないと考えております。  若干、従来の経過を簡単に申し上げますと、昭和四十年度の予算から下級裁判所の裁判官の調査研究費というものが認められまして、経費は全国で約一億八千万でございます。これによって逐次全国の裁判所のそうしたものを整備したいと考えまして、現在八年になっております。それによりまして地方裁判所、家庭裁判所、本庁、甲号支部、これが一応整備を完了し、現在乙号支部並びに簡易裁判所について、その整備をいたしているというふうな状況でございます。しかし、これによりましても、もちろん時々刻々生起する新しい問題に対処するようなそうした手当ては十分でないわけでございまして、たとえば特殊損害賠償事件といわれる公害関係でございますとか、租税あるいは工業所有権関係するもの、これらにつきましては、やはり専門的な知識を必要としますので、それらの予算につきましても要求をいたしまして充実を期しておるような次第でございます。もちろん裁判官の図書につきまして、これで完全であると申し上げるまでに必ずしも至っておりませんが、非常に大事な問題でございますので、今後ともその充実に一そうの努力をいたしたい、かように考えております。
  84. 中谷鉄也

    中谷委員 迅速な、そして公正な審理という点について先ほど御答弁がありました。将来の事件展望とその対策についてお尋ねをしておきたいと思いますけれども、将来において増加が予想される事件というのは一体どんな種類のものなんだろうか。公害の問題だとか業過の問題だとかというふうなことがよくいわれるわけでありますけれども、そういう展望と、これに対処するための対策、ことに人的、物的なこれらの対策の中における手当等については一体どういうふうなことをお考えになっておられるか、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  85. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 司法の将来の展望といたしまして係属の予想される事件の種類ということはきわめてむずかしい予測の問題かと存ぜられます。公害の問題もここ数年来非常に大きな問題として取り上げられるに至った現象でございまして、このような形で将来予測されるものは何であるかということは困難なところでございますが、やはり公害の問題、業務上過失傷害等の問題、これはすでに御指摘のあったところでございます。そのほかに、公害の問題がさらに内容を広く、複雑にして今後係属していくことが予想されております。これは司法のみで解決できる問題ではない。いろいろな各般の施策が必要なことと存ぜられますが、司法の分野におきましてどのような対策を講ずるかと申しますれば、人員の増加、必要な予算的手当ということが一応考えられます。そのほかにさらに具体的な方策といたしましては、やはり裁判の担当者である裁判官及びその補助機構の専門化ということあるいは科学的な素養の訓練というようなこと、それに伴いますところのいろいろな科学的な方策、施設を今後対策として考えていく、これが必要であろうかと存ぜられますが、何よりも根本的に考えるべきことは、いろいろな種類の事件が参りましても、その争点を早急に明らかにするということ、そしてその争点に向かって、むだのない証拠調べを迅速、的確に行なうという配慮、ここに問題の焦点があるのではなかろうかと思います。これを具体的にどのような技術的な要素を盛り込んでいくかということは、そのとき、その場所によりまして配慮しなければならないことでございます。いま申し上げました二点に対する配慮がきわめて必要かと存ぜられております。
  86. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣がお見えになってから検察官関係の法案についてお尋ねをいたしたいと思います。  若干の時間があるようでありますので、裁判所に対する質問を続けます。  裁判所職員、たとえば書記官、速記官あるいは事務官、こういう職員の特殊性に応じた特別手当の構想、裁判所職員の職種の中でこんな手当がつけられればよいのだがな、こういうふうに考える付加給、こういう点についての構想というようなものについて、勤務の実態が非常にきびしい、しかも非常に過重であるというその前提に立って私はお答えをいただきたいと思うのであります。  いま一つ自動車の問題ですけれども、これは現場検証にいたしましても何にいたしましても、かなり裁判所に自動車が不足しておるのではないか、こういうふうな点を私は感ずるわけであります。この点も、私はこの機会に最高裁の御答弁を求めておきたい点であります。多くの書記官、事務官そして速記官、ほんとうに裁判所をささえているそれらの諸君のために私は前向きのひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  87. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判所の職員に対しまして非常に御理解あるお尋ねをいただきまして恐縮に存じます。現在のところ二つの手当を柱といたしております。  一つは、これは手当ではございませんが、俸給の調整額を支給しておるということでございます。たとえば書記官、調査官には二八%の調整額を支給しております。警備員等につきましては八八%の調整額を支給しておるということでございます。  そのほか法廷の警備等を一般の職員が担当いたしましたような場合にはいわゆる特別警備手当というものを支給いたしております。これは一時間二十五円というわずかな額でございますが、その特殊性を認められたものと私どもは考えております。  裁判所職員は、確かに三権分立の一翼である司法をになうものとしてその勤務形態、仕事の内容というものに特殊性を持っておるわけであります。私どもは常にそういったものを待遇面で適正にあらわしていくということについて不断の努力を重ねておるつもりでございますが、実際の問題となりますと、それはやはり冒頭に申し上げましたような俸給の調整額といったようなことをその根幹といたしまして、それに盛り切れないものを特殊の手当という形で付加していくという形をとることのほうが場合によっては好ましいのではないか、現段階においてはそれが好ましいのでないかというふうに考えて処置をいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、他に類例を見ない職務内容というものがございますし、その職務はきわめてきびしいものでもございますので、御質問の御趣旨を体しまして、今後ともそれらの点については万全の配慮をいたしていきたいと考えております。
  88. 谷川和穗

    谷川委員長 関連質問を許します。高橋英吉君。
  89. 高橋英吉

    ○高橋委員 最後の法務委員会中谷君の発言だと思うのですが、ほんとうに私ども涙ぐましいような思いをしながら聞きました。ことに裁判官に対する適切なアドバイス、われわれも衷心から賛成いたしております。これは本委員会にはあらわれませんけれども、われわれの自民党の法務部会で常にこの問題はわれわれが強く主張して漸次優遇処置をとっていただいておると思いますけれども、ことしの法務部会でも裁判官その他の関係の優遇問題についてわれわれはさらに強く主張するつもりでございますので、法務委員会でわれわれが主張しなくとも、予算が出るまでにわれわれが力戦奮闘したということだけはひとつ銘記していただいて、四十八年度予算につきましてもわれわれ大いにまた強く主張するつもりでございます。
  90. 中谷鉄也

    中谷委員 私は法務大臣に二問だけお尋ねをいたしたいと思うのであります。  当法務委員会において常に検察のあり方というのが論議されてまいりました。私などが国会に議席を持つ以前からずっとそのことがこの委員会においては大事な問題として論議されてまいったわけであります。  そこで、その問題については同僚議員からも昨日も質問があったようでありまするけれども、やはり基本問題でございますので、私は、二つの質問のうちの最初質問はこの問題、重複するようでありまするけれども、お尋ねをしておきたいと思うのであります。  私たちと同じ世代に属する安倍君がかつて「新検察官論」を善きました。そしてまたそれに対して非常に鋭いレポートでありますけれども、早川さんが「声無き声——検察の現場より法曹に訴う」という非常にすばらしい論文を書いたことを私、記憶いたしております。また大先輩であるところの方が検察の再建についてという、検察はいまや重大関頭に立っているという見出しの文章をお書きになった。このことも大臣十分御承知のとおりであります。  そこで、私は大臣に御所見を承りたいのは、確かに検察の再建というふうなことが論議されてかなり久しいわけでありますが、検察のあり方について法務大臣としてはどのようにお考えになっておられるか、この点についてお尋ねしたい。具体的な問題を数多く準備をし、かかえておりまするけれども質問は二点だけであります。この一点についてお答えいただきたいと思います。
  91. 郡祐一

    ○郡国務大臣 中谷さんのおっしゃること、よくわかります。手短なことばで申し上げまするけれども、そのお気持ちを十分体していたしたいと思いまするが、わが国の検察が非常に厳正な不偏不党な態度で活動しておる。このことは伝統でもあり、またこれは維持したいと思います。と同時に、社会が非常に激動いたしておる、また社会の検察というものに対する見方というのも決してなまやさしく見過ごしてはいけない、こういうときにあると思います。したがいまして、社会の動きにもつと適切に反応できる態度、これは個人的にもまた検察全体としてもです。先般の検察官会同でも検察の現在と将来とについてそれぞれ意見を聞きましたが、法務省自体が将来のあり方というものについて十分考え直してまいる。そうしてそれを形の上で早くあらわしていくということをいたしたいと思っております。
  92. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけの質問で終わります。いわゆる特任検事さんの問題であります。特任検事はどのような試験を受けて、たとえば四十六年何人ぐらい選考されただろうか。私は副検事さんが検事になる道というのはかなり開放していいのではないか、こういう気持ちを持つわけであります。この点についてはいろいろな議論があろうかと思いまするけれども、この点についての御答弁を関係局長からいただきたいと思います。そうしてまた、副検事に対してはその素質に応じてより捜査の処理の困難な事件を担当させる、そういうことがあってしかるべきではないか、こういうような感じも私、いたすわけであります。担当局長からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  93. 藤島昭

    ○藤島説明員 私から特任検事関係について申し上げます。  特任検事は検察庁法の規定によりまして、三年以上副検事の職にある者が検察官特別考試に応募し、その特別考試に合格した場合に検事に任命される、こういう制度になっているわけでございます。  最近の応募状況と合格者の数でございますが、昨年は五十三名応募いたしまして合格者が七名、その前の四十五年は六十一人応募して合格者が九名、四十四年は七十七人応募して七人、こういうことになっておりまして、大体八人から十人くらいに一人、こういう試験となっておるわけでございます。この試験に合格いたしますと、私どもはその検事といわゆる司法試験を経て修習を経た検事と全く同等の取り扱いを部内ではいたしておるわけでございまして、したがいまして、この試験は私ども内部だけでやるわけでございませんで、各科目について大学の先生にお願いして試験を実施していただいておる。たいへん厳格にやっておるわけでございまして、それだけに相当きびしい試験であるということがいえるわけでございます。したがって、この人数をふやしていきたいわけでございますが、しかし、やはり一定の合格水準というものはあくまで守らなければなりませんので、そこがなかなかふえないというところでございますが、副検事は三年たちますと応募できますから、副検事の研修には十分気を使っておりますので、今後応募者がふえてくれば合格者も必然的にふえていくのではないだろうかというふうに私ども期待しておるわけでございます。  特任検事の件について御説明いたしました。
  94. 中谷鉄也

    中谷委員 以上で質問を終わりたいと思います。  法務委員会の中でずっと委員として、あるいは委員ではありませんでしたけれども、法務委員会へはずっと出席をさせていただきました。率直に申しまして先輩、同僚の各委員先生の指導を受けてさわやかな委員会であったということを私は心から感謝を申し上げたいと思います。本日、質問をお許しいただいたことについて心からお礼を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  95. 谷川和穗

    谷川委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  96. 谷川和穗

    谷川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  97. 谷川和穗

    谷川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  98. 谷川和穗

    谷川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 谷川和穗

    谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  100. 谷川和穗

    谷川委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会