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1972-11-07 第70回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月七日(火曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 金子 一平君    理事 奥田 敬和君 理事 田中 六助君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 広瀬 秀吉君 理事 竹本 孫一君       宇野 宗佑君    左藤  恵君       齋藤 邦吉君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    登坂重次郎君       中川 一郎君    西村 英一君       藤井 勝志君    坊  秀男君       毛利 松平君    山中 貞則君       吉田 重延君    吉田  実君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    山中 吾郎君       貝沼 次郎君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         大蔵政務次官  大村 襄治君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長         心得      秋吉 良雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         通商産業政務次         官       丹羽 久章君         郵政政務次官  木村武千代君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   斎藤 誠三君         通商産業省通商         局通商参事官  西脇 敏彦君         通商産業省貿易         振興局貿易振興         課長      藤原 一郎君         運輸省海運局次         長       住田 俊一君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         日本電信電話公         社副総裁    秋草 篤二君         日本輸出入銀行         総裁      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月七日  辞任         補欠選任   中川 俊思君     竹内 黎一君   中島源太郎君     左藤  恵君   二見 伸明君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     中島源太郎君   竹内 黎一君     中川 俊思君   正木 良明君     二見 伸明君     ――――――――――――― 十一月六日  バス事業に対する税の減免措置に関する請願(  鈴木善幸紹介)(第五号)  個人企業事業主報酬制度創設に関する請願(  大平正芳紹介)(第六号)  同(坂元親男紹介)(第七号)  同(菅波茂紹介)(第八号)  同外十八件(坪川信三紹介)(第九号)  同(村田敬次郎紹介)(第一〇号)  同(久野忠治紹介)(第二三号)  同外一件(小峯柳多君紹介)(第二四号)  同外二件(田中榮一紹介)(第二五号)  同(中川俊思君紹介)(第二六号)  同外二件(別川悠紀夫君紹介)(第二七号)  同(森喜朗紹介)(第二八号)  同(阿部文男紹介)(第三三号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第三四号)  同外二件(小川平二紹介)(第三五号)  同外六件(小沢一郎紹介)(第三六号)  同(山中貞則紹介)(第三七号)  同外一件(笠岡喬紹介)(第三八号)  同外一件(斉藤滋与史君紹介)(第三九号)  同(笹山茂太郎紹介)(第四〇号)  同外一件(塩谷一夫紹介)(第四一号)  同外一件(根本龍太郎紹介)(第四二号)  同(水田三喜男紹介)(第四三号)  同外一件(宮澤喜一紹介)(第四四号)  同(吉田実紹介)(第四五号)  同(渡部恒三紹介)(第四六号)  同(合沢栄紹介)(第六五号)  同(黒金泰美紹介)(第六六号)  同(佐伯宗義紹介)(第六七号)  同(増岡博之紹介)(第六八号)  同(山中貞則紹介)(第六九号)  同(赤澤正道紹介)(第一二〇号)  同(井出一太郎紹介)(第一二一号)  同外一件(伊藤宗一郎紹介)(第一二二号)  同外一件(木部佳昭紹介)(第一二三号)  同外一件(河野洋平紹介)(第一二四号)  同(西岡武夫紹介)(第一二五号)  公共事業予算適期執行等に関する請願鈴木  善幸紹介)(第二〇号)  支那事変賜金国債受給者に対する特別措置に関  する請願毛利松平紹介)(第四七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月六日  付加価値税創設反対に関する陳情書外三件  (第二八号)  所得税の減税に関する陳情書  (第二九号)  老後の貯蓄に対する税制上の優遇措置に関する  陳情書  (第三〇号)  農家の相続税等軽減に関する陳情書  (第三一  号)  土地収用等譲渡所得に対する特別控除額引上げ  に関する陳情書  (第三二号)  付加価値税創設反対等に関する陳情書  (第四五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  対外経済関係を調整するための租税特別措置法  等の一部を改正する法律案内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 金子一平

    金子委員長 これより会議を開きます。  対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本法律案に関連をいたしまして、最初に、現在行なわれております補正予算、あわせて四十八年度の予算編成について少し論議をいたしておきたいと思います。  実は論議をいたしますのは電電公社要員の問題でありますけれども、今回の補正予算が組まれまして、電話数として二十万個の電話補正増加をする、こういうことに補正予算はなっておるようでありますけれども、これに見合う人員増加は一体どういうことになっておるのか、最初にお答えをいただきたいと思います。
  4. 木村武千代

    木村政府委員 補正予算に計上されました加入電話二十万個の増設につきましては、昭和四十七年度の増加設備稼働期間が非常に短いものでございますから、大体約一カ月かないし二カ月程度でございます。でございますから、四十七年度におきましては、その影響は非常に僅少でございますので、現在の要員で支障のないように業務運営ができると存じております。そして職員労働が過剰になるようなことは現在といたしましては、四十七年度においてはございません。しかし、四十八年度におきましては、公社予算編成に際しましてはこの補正予算の要素を含めまして増員措置を検討することといたしております。御参考までに申しますと、四十七年度末の加入の総数は、現在大体二千八十万でございますが、二十万個ふやしまして二千百万個になります。これが四十七年度の最終のことでございますから、来年度の予算はその四十七年度の最終の数の予定とさらに四十八年度の増加予定数でございます約三百十万個、この二つ合わせましたところの数に見合う要員の手当てを四十八年度で措置いたそう、こういうように考えておりますので、四十七年度におきまして二十万個ふやしましても労働過重にならないという見通しでございます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 いまの政務次官のお話を聞いておりますと、たいへん楽観的でございますけれども、ちょっと最初に伺っておきたいのは、電電公社概算要求で毎年増員要求を出しておりますが、これが予算で決定されるのは著しく少ない数しか決定されておりませんね。大体平均しますと六〇%ちょっとくらいのところしか予算では認められていない。そうすると、皆さんがことしの補正分二十万個分を出したといって、それを四十八年度の中に入れてもらえるといってみたところで、四〇%も削られるものの中に入れて一体どれだけ実際に生きてくると政務次官はお考えですか。その点をちょっと伺いたいと思います。
  6. 木村武千代

    木村政府委員 これにつきましては、いままでの情勢から考えまして、これから増加をしなければならないというような考えをもってこれは四十八年度におきましては検討さしていただきたい、こう思っておるわけでございます。いままではそういうような御不満がございましたけれども、従来の御不満の点を十分考慮いたしまして、四十八年度の概算要求をいたそう、こういうように考えておりおす。
  7. 堀昌雄

    堀委員 公社にお伺いをいたしますが、公社のほうではこの二十万個分というのは四十八年度分の繰り上げ分だ、だから四十八年度は四十九年度からまた二十万個繰り上げてきて、概算要求としては同じ要求だ、こういうふうに考えておられるのかどうか、ちょっと公社のほうに伺いたい。
  8. 秋草篤二

    秋草説明員 繰り上げ要求であるかどうか、この点はいずれにしても長い目で、ただいまのところ五カ年計画の大きな需要を先取りしているという見方で、来年の予算概算要求には影響なく考えていただきたいということを大蔵省に申し上げて、大蔵省の方もまたそういうふうに現認しておるようであります。
  9. 堀昌雄

    堀委員 そうしますと、いま政務次官が来年度三百十万個を予定しておるということでお話しになっておる。しかし、実際にはいまの二十万個分の要員はここに入るわけですからね。来年度四十八年度は三百三十万個に見合う要員要求、こういうことになりますね。
  10. 木村武千代

    木村政府委員 来年度は三百三十万個じゃございません。現在四十七年度で二千八十万個でございますから、二十万個ふやしたら、四十七年度でもうすでに二千百万個でございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 違います。純増分です。
  12. 木村武千代

    木村政府委員 純増分は、三百十万個になりますね。
  13. 堀昌雄

    堀委員 三百十万に二十万ですから、三百三十万ですね。
  14. 木村武千代

    木村政府委員 しかし、その前に、四十八年度の予算は、これは純増分というよりも、むしろ三百十万が、これが四十八年度でございます。二十万個はこれは四十七年度の数でございますから、概算要求をいたしますときには……
  15. 堀昌雄

    堀委員 要するに、あなたがさっき、二十万個分の人間は四十八年度で要求しますと言ったでしょう。四十七年度には一カ月か二カ月しか稼働しないのだから、だからその人員というのは四十八年度分に加えて要求しますと、あなた言ったじゃありませんか。
  16. 木村武千代

    木村政府委員 そのとおりです。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そこでいま私が言っているのは、四十八年度には郵政省としては三百三十万個分の人間要求しますねと、こう聞いているわけです。
  18. 木村武千代

    木村政府委員 ことしの、四十七年度というものを二千八十万個と考えたならば、堀委員が言われたとおり三百三十万個になります。それから四十七年度の二十万個ふやした最終数字を二千百万個といたしましたら、三百十万個になりますと、こういうわけです。
  19. 堀昌雄

    堀委員 電話の数の話をしているんじゃないんですよ。きょうは要するに人間の数のほうを話しているのです。要するに電話架設数に見合って仕事の量がふえるということですよ。だから、それに見合う人間をどうするかということをいま言っているわけですから、前段で、二十万個ふえたその人間補正予算要求していますか、要求していません、それは一カ月か二カ月しか稼働していませんから、四十八年度で合わせて要求しますとあなたいま言ったでしょう。そうすると、いまの予定でいけば四十八年度はほうっておいても三百十万個になります。二十万個合わせて三百三十万個分の人間要求しますねと、こう言っておるわけです。説明は要りません。そうですならそうですと言ってください。
  20. 木村武千代

    木村政府委員 そうです。
  21. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これは郵政省大蔵省両方考えてもらわなければならぬ問題ですが、これは何も郵政省大蔵省、それから電電公社だけの問題ではありません。私は日本予算要求あり方がたいへんおかしいと思っておるのです。  要するに日本人というのは、海外に行っても盛んに品物を値切りますね。ともかく十ドルのものを九ドルにならぬか、八ドルにならぬかといって盛んに値切っている。しかし、そういうものを値切るという日本人を予想して値段を上げてあるところもあるようだけれども、大体外国人というのはそういう値切り方をしないというのが一般的なようですね。かつて私の同僚の大学教授でありました者がアメリカに留学しましてアメリカ教授になって、そうして来年度の必要な予算を出しなさいといわれた。日本流に五〇%ぐらい上積みして出したら全部来てしまった。どうやって使ったらいいかわからなくてたいへん恥をかいたということをその大学教授が言っておりましたけれども、どうも日本予算要求のしかたは、ほんとうにそれだけ必要なのかどうかわからない点があるのですね。特に私はこの電電公社人員状態を見まして、こんなに四〇%も削られるというのは、削っているほうに問題があるのか、出しているほうに問題があるのか、ここらが私はちょっと納得のいかない点があるわけですね。  そこでひとつ、公社予算要求というのは郵政省がするのでしょうが、ちょっと過去の年度を見ますと、昭和四十二年度は六二・五%、四十三年度五六・八%、四十四年度六四・八%、四十五年度六二・六%、四十六年度六一・六%、四十七年度六六%。四十七年度はたいへんいいのですが、こういうことで、それにしても一〇%や二〇%減ったというなら話はわかるけれども、四〇%近くも減るというのは、これは両方に少し問題があるような気がするのです。  そこで、公社に伺いたいのですが、皆さん概算要求で出しておる要員数というのは、科学的に必要な根拠があるのでしょうね。
  22. 秋草篤二

    秋草説明員 科学的に必要な根拠と言われますと非常に答えにくいのですが、私どものほうの予算要求の原則的なたてまえというものはございまして、ただ非常に大きく変わったことは、最近大蔵省見解と私ども要求する道理の立て方の非常に大きな考え方の違いは、骨は各個別の作業量その他を分析しまして積算して要求した、いまはそういうことをやってみても、非常に大きな企業体自動化機械化が促進されているということで、総合能率的な方式をとってその要員の算定をしている。もちろん個々局所の廃合とかあるいは切っていく事業とか、そういうものの要員というものは非常に正確に計上いたしますけれども、大きく見ますと、マクロで総合能率的な考え方、言うなれば単純生産性比率等を非常に大きな柱にして公社要員査定しておるようであります。ここらに、こまかい具体的な科学的な資料に基づくもの、正確な意味のものではございませんけれども、多少見解の相違も出てくると思っております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 主計局のほうでお答えいただきたいのですが、私は要求しておるほうにも少し問題があるような気がするのですが、査定のほうも、四〇%の査定というのは、よそもこんなことあるのでしょうか。私もこまかい個々別予算の中身を知らないけれども事業量等の問題は別ですけれども、これだけの事業量にこれだけの人間がほしいといって出てきたものが四〇%近くも査定をされるというのは、どうも査定のほうにも——双方問題があるような気がするのですが、どうでしょうか。
  24. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 堀委員が御指摘のとおり、定員要求及び予算要求につきまして、それは各省によって若干違いますけれども、相当多目の要求が出てきているというのが現実でございます。これは事業を実施している官庁からしてみますと、やはり所要の要員を確保してできるだけ事業を円滑に実施したいという熱意はわかるわけでございますけれども、私ども定員増加というものが将来の公共企業体なりあるいは国の一般行政財政負担の原因となるというようなことで、これにつきましては相当慎重に行管等と相談いたしまして査定しているつもりでございます。いま四割というのが平均かどうかという御疑問があるかと思いますけれども、私、具体的な数字はあげられませんが、ほかの例でも、たとえば倍とか三倍というような要求が出てきて、落ちつきの結果に対してそのような開きがあるように見受けられます。  なお、先ほど堀委員数字をあげて申されましたけれども、従来は一万四千要求して八千というようなことで、六割というようなことでございましたけれども、最近は電電公社が二万一千要求して七千三百であるとか、要求査定との間が、わずかではございますが接近してきているというのが実情でございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私は資料公社要求して、最近の要員増加状態電話の個数だけが対象になるというのはちょっと荒っぽい話かもしれませんが、さっきのマクロの話になりますと、電話増設数というのが結果的にはそれに付帯して仕事の量もふえてくるわけですから、それと人間との関係を見たのですけれども増員数一人当たり限界値として、電話増加分との比率は、四十三年には二〇五・九加入、四十四年には二五一・三加入、四十五年三〇〇、四十六年四四八、四十七年に至ってようやくその差が——ここのところはずっと五〇加入ぐらい一人当たり差があるのですが、ようやく四十七年になってこの差が二六ぐらいに半減した。四十七年の予算査定というものは、私としてはやや正常な形に推移してきた、こう見ているのですが、ここでさっきの四十八年の場合に、二十万個分というものがいまの中に入ってくる。昨年は十万個入っているわけですね。たしか補正で十万個入ってきて、それを含んだので四七四というように、一人当たり加入数の割合が、これまで五〇加入ずつ一人当たりふえてきたのに少し減ってきたという点があると思うのですが、四十八年度の場合も、少なくともこの新しいトレンドの上でものを考えるということに、これは大蔵省側考えてもらいたいし、郵政省側も話をする際には考えてほしい、こう思っているわけです、これは科学的に出ているわけですから。  そこで、いまの状態は、弾力でふやす、補正でふやすといって、ふえるところは積滞数の多いところへこの分をふやしている、こういうことじゃないでしょうかね。公社、いかがですか。
  26. 秋草篤二

    秋草説明員 要員の現在事情というものは、率直に申しまして、非常に膨張する企業であり、また機械化が非常に進展する事業の中では、現在の現業所要員事情はかなりアンバラ、不公平があるということも私ども反省しておるわけでございます。大きく申しまして、東京、北海道、九州、それぞれの通信局業務量事業発展の姿と要員の数というものは、必ずしも正確にはバランスがとれてない。ましてや大阪付近東京付近の燃えるように成長いたします局所、それから一応需給の関係が安定したような局所、そういうようなところにできるだけバランスをとって、いただいた要員を公平に分配するということにしなければならぬのですが、現実には率直にいって多少そこに、労働組合との話し合いもしなければなりませんし、やはり二人、三人、四人でも少ないところに回すということは現実的にはなかなか困難な問題がある。しかし、いまおっしゃいましたように、積滞の多い、成長の激しいところにたくさん配置するというように極力つとめております。
  27. 堀昌雄

    堀委員 ですから、いまの積滞数の多いところへ集中的に持っていくということになりますと、そこは人員がふえない限りは非常に労働過重になってくるという問題ができてくるわけですね。だから、全体の加入電話が全国一律に平均してふえていくというのならまだいいのでしょうけれども、この積滞数、いまの増加分だけでなく二百八十万個、三百十万個というものもやはり積滞数の多いところへどうしても持っていくということになりますから、補正弾力部分というのはその上へさらに上積みされているものだと理解をしたいと思うのですがね。その点で、いま副総裁もおっしゃったように、そうだといって人員をあっちこっちからどっと寄せ集めてくるといっても、実は居住の関係もありましょうし、たいへんだ。そうすると、これをカバーするのは、新規要員をできるだけそういうところに補充をしていくということが、結果的にはバランスをとる方法になるのじゃないかと思うのです。そうしますと、やはり私は、さっき吉瀬さんが言われた人員増加公社経営関係してくるという問題はもちろん十分わかるのですが、公社経営というのは人員増による人件費負担の問題だけじゃないと思うのですね。要するに、適正な労働条件職員が適正に働けるときに公社効率が上がるわけですし、能率が上がらなければ公社の経常はよくならないわけだから、人件費の問題と能率関係の問題というのは双方見合った問題で処理をしていかなければならない。私はこの間から、本会議を通じてもそうなんですが、日本の政治はここで一つ転換点に立たなければならぬのじゃないかということを強く感じておるわけです。それは、この間本会議で私は田中総理——大都市産業主人公ではなくて、人間と太陽と緑が主人公人権復権の世の中にするんだといって日本列島改造論を書いておるわけですからね。新しく就任した人がそこまで言い切っているのなら、やはり人間が快適に働ける職場をつくることから企業発展考えるということにならないと、人件費が先行して、人件費がかかるのだから人間の数はこれだけでいいんだという発想は、やはり今日的な発想ではないのじゃないか。少なくともこれからはそこで働く人間が最も適した労働条件の中で最も気持ちよく働いて、そのことがその仕事能率を高め、効率を高めることが経営にプラスになるという一つ発想転換がきわめて重大なところへ来ているのじゃないかと思うのですね。  そこで、この問題はそういうことから見て、四十八年度の予算を処理されるときにどうかひとつ——幸いにしてさっき申したように、限界的な人間一人の増加分に対する電話加入数増加分が、これまでの五十個ずつ差があったのが二十五個と半分になってきたことはたいへんけっこうだから、少なくとも来年度においてもそういうものを勘案して、いま私が申し上げたような観点と、さらにいまの増加されたもの等も含んで、要員が適正に確保されて公社職員がその持っておる能力を最もいい状態で発揮できるような予算考えてもらいたい、こういうふうに思うのですが、これについてまず最初大蔵政務次官のほうからひとつ御答弁をいただきたい。
  28. 大村襄治

    大村政府委員 これまでの人員要求なり査定あり方について、必ずしも理想的なやり方が行なわれておらなかったという点は私も同感でございます。特に来年度から発想転換をしていくべきであるという御説でございますので、私のほうにおきましても、そういう時勢の要請に即する査定あり方を探求し、これを実現することにつとめたいと考えております。
  29. 木村武千代

    木村政府委員 いま堀委員の言われましたように、単に予算の金額の増加だけじゃなく、人員も、やはりそれに相当するところの人員を適当なところの配置に持ってまいりまして、しかも適正なる配置になった方々が能率を十分高められるような作業方針をとらしていただきたい、こう思っております。  この問題につきましては郵政省はもっと前から考えておったわけですけれども、なおこの際さらに、日本列島改造論なんかも出ましたものですから、一そうそのことについて力を入れるということは大臣からもよく言われておりますので、この方針に従ってやらしていただきたい、こう思っております。
  30. 堀昌雄

    堀委員 内部的なこまかい問題は公社の側でお考えいただかなければならぬことでありますが、やはり要員の問題というのは、公社の今後の運営について非常に重要な問題になってくると思います。特に公社の中では業種が多岐にわたっておりますから、おそらく電話の個数が急激に増加することによって非常に繁忙になるのは事務をやっている人たちとか保線をやっている人たちとかである。こういう意味で、いわゆる一般的な労働過重の問題がここには出てくる。片方では新しい交換機その他が開発されて、だんだんとそこで保守に従事しておる人たちというのはきわめて単純な監視作業ということになって、また精神的疎外がその職場で起こってくるという合理化の過程で考えなければならぬ問題が出てくるわけですね。非常に多岐にわたるそういう人たちの労働条件を適正な状態に持っていくということを考えませんと、同じ八時間労働であっても、その労働内容は−密度が高ければそれだけ疲労が高いかというと、もちろん密度が高くて疲労が高い部分があります。密度が低いために疲労の高くなる部分もあるわけですね。そこは今後合理化がされた機械が開発されることによって、単に電電公社だけではなく、新しい企業の中で起こってくる重要な問題なんですが、少なくとも公社においては一般の企業と違いますから、その人間の働く状態というものが、私が前段で申し上げたように、好ましい状態、働く人たちが意欲を持って働ける状態にどうやってするかということが、私は今後の電電公社の生産性を上げる道ではないか、こう思いますので、その点ひとつ十分配慮をして公社でもやっていただきたい、こう思いますが、それについての公社の御答弁をいただきたいと思います。
  31. 秋草篤二

    秋草説明員 堀先生のおっしゃったように、私ども公社事業は全体としては成長しておるわけでございますが、中身には非常に激しい技術革新も行なわれておりますし、また斜陽化する業種もございます。それから機械化がなかなかできない分野もございまして、その間で、ただいまおっしゃられたように、一面におきましては機械化が非常に正確無比になって労働条件が単調化する、労働疎外というような非常にわからないことばも使われておるようですが、そういうような一面もまたございます。いずれにいたしましても貴重な要員を十分有効に活用して必要なところに置く、またそういうところでだんだん自動化によって人手を少なくできるものはそこを薄くするというような施策を、職員局としましては年々歳々とっておるわけでございます。幸いにして要員問題に対処する労働組合の姿勢というものは、往年に比べますと非常に大きな労働市場の枯渇ということの是認の上に立って、非常に協力的な姿勢でおりますし、そういう点の理解の上に立っておる組合でございますので、私どものほうはこの要員というものの研究を一そうはかって対処しなければならぬというふうに思って、十分注意いたしておるわけであります。
  32. 堀昌雄

    堀委員 今度皆さんのほうでは第五次五カ年計画というものをお出しになった。その中ではいろいろと合理化の問題等があるだろうと思います。それは公社として合理化を考えることも一つの立場だろうと思いますが、しかし機械だけが合理化されても、やはり機械だけでは動かないのですね。これはやはり人間が動かさなければならない。全部オートマチックに機械だけで動くようにはなっていないわけですから、私が最初に申し上げたように、幾ら機械を合理化しても電電公社というのは人間がいなければ動かないんだ。人間と太陽と緑というけれども電電公社の中は、太陽と緑は別ですけれども、やはり人間主人公になる人権復権電電公社にこの際ひとつ切りかえてもらいたいということを強く要望いたしまして、これに関する質問は終わります。郵政省電電公社関係の人は御退場いただいてけっこうであります。  そこで、今度は法案に入ります。  対外経済関係を調整するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案の第八条の五に、暫定簡易税率となっておりまして、「本邦に入国する者がその入国の際に携帯して輸入する別表第五に掲げる物品に対する関税定率法第三条の二(入国者の携帯貨物に対する簡易税率)の規定の適用については、同条中「別表の附表」とあるのは「関税暫定措置法別表第五」と、「簡易税率表」とあるのは「暫定簡易税率表」とする。」こういうふうに実は規定がされておるわけであります。そうして別表がついております。ちょっとその別表なんですが、別表を見ると「アルコール飲料、(1)ウイスキー(バーボンウイスキーを除く。)、A 一リットルの課税価格が一、二〇〇円をこえるもの、税率、一リットルにつき四、〇〇〇円」こうなっていますね。そして次に「ブランデー(コニャックを含む。)」ここへいきますと、一番うしろのほうですけれども、「一リットルの課税価格が一、五〇〇円をこえ、二、八〇〇円以下のもの」、言うならばウイスキーの「A 一リットルの課税価格が一、二〇〇円をこえるもの」というのに該当する部分が主でありますが、これは一リットルにつき五千六百円課税されることになっておりますね。これを土台としてブランデー類はどんどんどんどんこまかい刻みがあって税率が上へ上がっていって、「一リットルの課税価格が一〇、〇〇〇円をこえるもの」は二万九千六百円課税がされるようになっておる。ウイスキーだって一万円のウイスキーはあるのですね。おそらくあるだろうと思うのですが、一リットルにつき四千円しか課税しない。ウイスキーとブランデーを差別するのはどういう理由ですかね。これをちょっと御説明いただきたい。
  33. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 これは御案内のように、簡易税率は、内国消費税と関税をあわせまして通関の便宜に供するという趣旨から、なるべく簡便な課税方式をとったわけでございます。したがいまして、品目の類似のものにつきましては極力グループアップをいたしまして、標準的な関税と標準的な内国消費税を合わせまして簡便な方法で税率を設定しておるわけでございます。  そこで、御指摘のアルコール飲料の中でも、ウイスキーそれからブランデーといろいろございます。そういうものを銘柄別にグループアップいたしまして、そして関税と酒税を合わせましたものを算定したわけでございまして、御指摘のように、ブランデーとウイスキーがかなり違っておりますのは、それぞれ仕入れ価格等が違っていまして、それに基づく結果でございます。
  34. 堀昌雄

    堀委員 それはだめですね。答弁になっていないな。だってこれは発想が違うじゃないですか。このきめ方の発想は、要するに片方は千二百円を基準にして、ウイスキーは上と下の二つに区別してあるから、千二百円以上と千二百円以下——いいですか、ウイスキーとブランデーというのは同じようなスピリッツでしょう。アルコールの含有量もそんなに変わらないと思うのです。それが片方では千二百円を境にして上と下の二段税率、片  一方では小刻みにずっと税率を書いて、一番下のほうは、「一リットルの課税価格が七〇〇円をこえ、一、五〇〇円以下のもの」が一リットルにつき四千二百円、こんな安いところにまで千二百円以上のウイスキーと比べて高い税率をとっているのは全くこれは解しかねますね。私はどっちかというとブランデー党なので、ウイスキーはあまり飲まない。どうもブランデーが目のかたきにされて高い税率というのは、少なくとも私はフランスに対してたいへんな関税上の問題があると思うのだな、主としてフランスの産品だから。イギリス産品にはたいへんフェーバーを与えて、フランスの産品に差別をするなどということはこれはちょっと納得いたしかねると思うので、もう少し論理的にお答えを願いたい。
  35. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 後ほど主税局からあるいは補足説明があるかと思いますが、ウイスキーにつきましては千二百円をこえるものについて段階的にさして品目別実績がないものでございますから、したがいましてウイスキーについては三段階を設定したわけです。三段階を設定いたしましたのは、御案内のように、内国消費税では酒税につきまして二二〇%課税になる点と、その次が一五〇%課税になる、こういう段階税率になっておりますが、その辺の考慮も払って設定したわけでございます。
  36. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 私も実はウイスキー、ブランデーさほど詳しいわけではございませんが、私の承知しておりますところでは、ここにございます価格は通関価格でございまして、ウイスキー確かに市中の小売りでは一万円で売られている。最近八千円ぐらいでございますが、そういうウイスキーもございますけれども、通関価格では千二百円をそう大きくこえておるものはない。したがって、現実にブランデーのように上のほうまでそう刻んでおく必要はないというふうに理解いたしております。
  37. 堀昌雄

    堀委員 刻みのことはいいのです。いいんだが、同一の価格帯での課税が違うでしょう、刻み方も違うけれども。要するに、千二百円以上、以下としておいて、片方は千二百円以上の一リットルが四千円となっていて、片方は七百円をこえ千五百円以下のものが四千二百円、だから、ブランデーなら七百円のものでも四千二百円の関税がつく。そしてウイスキーなら千二百円をこえて三千円、四千円でも四千円の税率というのは、高いほうが多少高くなるという問題は別ですよ、基準になるところにこれほど格差があるというのはいかにもおかしい。基準税率のところの切り方が千二百円以下とか、下から千二百円以上幾らという形でそこがパーに並んでおるというのなら、私はそんなに取り上げる意思はないんだが、これは発想上そういう点でたいへんおかしいような気がするのです。
  38. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 先ほど来答弁が至っておりませんでしたが、七百円−千五百円以上の段階について、ウイスキーは確かに一段階設定したわけであります。ブランデーは五段階設定しておりますが、ブランデーにつきましては、この五段階の輸入実績がそれぞれかなりあるという実績に着目いたしまして段階別に設定してございます。ウイスキーにつきましては一段階しかないという輸入実績に着目して設定しているわけでございます。
  39. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 若干補足させていただきますと、千二百円より上のものがウイスキーには現実にほとんどない、ブランデーには相当ある。刻み方は、ウイスキーについては七百円から千二百円といった刻みが一つ、千二百円をこえる刻みが一つ、ブランデーは七百円から下という同様の刻みが一つと、七百円から千五百円という刻みが一つ、その上にたくさんの刻みがございます。その際御指摘の七百円のところで比べてみると、ブランデーの簡易税率が高いではないか、これは酒税率ではなくて関税率のほうにございます税率がブランデーのほうがリットル当たり高いわけでございます。
  40. 堀昌雄

    堀委員 なぜウイスキーに比べてブランデーは関税率が高いのですか。
  41. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 ブランデーについては一リットル六百五十円でございます。それからウイスキーについては一リットル四百九十円ということでございまして、ウイスキーについては国産がこのごろかなり力がついてきた。ブランデーについてはなお相当格差があるということに着目して差を設けたわけでございます。
  42. 堀昌雄

    堀委員 国産のブランデーのいいのは外国のものを輸入してブレンドしていますね。中小企業がやっているのなら話は別ですが、たいへん競争力のある企業がやっていることでもあるしするので、この際、これはいま出ているものをいますぐに手直ししろといってもたいへんだから、どうせ通常国会に関税定率法をまた出すのでしょうから、ここらはひとつやはり少なくとも関税率としてはパーにするという考え方を私はとってもらいたいと思うのですね。やはりこれは一つの差別だな。ウイスキーは競争力がある、ブランデーは競争力がないというけれども日本でそんなにブランデーをこれからどんどんつくるからといって、何も日本で何もかにもつくらなきゃならぬということはないじゃないですか、これは日本の酒じゃないのだから。日本酒についての競争力のあるものが出てきたときは考える必要があるけれども、これは本来外国の酒ですからね。輸入を自由化して大いに入れても、そんなものを日本でつくって日本人に飲ませなくたって、フランス製のものを安くして日本人に飲ませてもかまわないと思う。そこらは関税率を考えるという基本問題にもかかわりがあると思うのですが、この点はひとつ政務次官、これはずっと見ていてまことに奇異な感じがいたしましたので、ブランデー党として一言、また国に差別を設けてはならぬという点からもひとつ大蔵省の善処を要望いたしますが、政務次官いかがでしょう。
  43. 大村襄治

    大村政府委員 どうも私、洋酒のほうは弱いのでございますが、確かに比較のしようによってはブランデーのほうが酷に扱われているように見られますし、また下のほうを見ますと、ウイスキーのその他のものが一リットルにつき千八百円で、ブランデーは千九百円、だいぶ近づいておりますが、その上の段階は三千五百円と四千二百円。下のほうは大体似たようなものの上のほうは初めの刻みもあってべらぼうな差があるように見受けるわけです。いずれにいたしましても実情を調査いたしまして、ふぐあいの点があれば次の機会に是正をはからせるようにいたします。
  44. 堀昌雄

    堀委員 いまの最後の点、ふぐあいな点があればというけれども、ふぐあいな点があるから言っているのですから、いまの最後の点だけ訂正してください。
  45. 大村襄治

    大村政府委員 なおよく検討いたしまして、次の機会に必要な措置を講じるようにいたしたいと思います。
  46. 堀昌雄

    堀委員 その次に、実は例外規定が今度の関税定率法の実施に伴ってずいぶんたくさん並べてあるわけですね。時間がありませんから一つ一つ聞いたのではあれですけれども、これをはずしておる考え方というのは何ですか。それをお尋ねいたします。
  47. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 率直に申しまして、大蔵省当局といたしましてはできるだけ例外品目は少なくしたいという考え方のもとにいろいろ作業を進めたわけでございます。しかしながら、内外の競争力の点に着目いたしますと、農産物の一次産品はやはり例外にするのが至当ではないかというような問題、それからまだ自由化されない品目につきましては、これは輸入割り当て制度ですから、関税を引き下げても国際収支に影響はないというような点、それからまた財政関税といたしましての石油重油関税につきましては、やはり石炭対策ということも考えなくてはならない。それからまた、特定地域の零細企業影響するような個別品目についてはその辺の考慮もしなければならぬ。いろいろなことを個別的に洗いまして、そういった柱のもとに個別品目の妥当性を考えまして、農産物の一次産品、そのうちのさらにまた個別品目の例外といたしまして、結果的には百六十二品目の例外品目を設けたわけでございます。
  48. 堀昌雄

    堀委員 この例外ですね、今度二〇%下げるものの例外の、四十六年度でもいいですが、四十六年度における輸入のウエートといいますか、例外というのは一体どのくらいのウエートを占めているのですか。
  49. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 大ざっぱな数字で恐縮でございますが、四十六年ベースでたしか輸入総額が六兆九千億だったと思います。今度千八百六十五品目ありますが、それが約四六%に相当いたしております。大体そんな感じでございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 そうすると輸入の中の五五%は例外で残る、こういうことですね。
  51. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 例外品目ではなく、無税品の輸入が相当ございますから、ちょっとその辺の識別が……。
  52. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。関税はこういう際でもありますから、できるだけ下げられるものは下げるという大蔵省方針は、私はけっこうだと思うんですね。  そこで取り扱いの問題ですけれども、これはあとで輸出税にも関係するんですけれども、関税とか税とかだけですべてやろうという発想には、私はやや無理があると思うんですね。だから、それはまだ補完的にその他の何か代替した政策手段があるのかどうかという問題もあわせて検討しながら、関税はできるだけ下げるということが国内産業保護の問題でも必要ではないだろうか、私はこういう考えでおりますので、そこらも含めて少し今後例外品目を検討し、他の通産省、農林省等にも働きかけて、やはり関税としてはできるだけ例外品目が少ないということが望ましい姿だと思いますので、その辺も含めて検討していただきたいと思います。  その次にちょっと、輸銀のほうに入るのですが、法制局に最初にお伺いいたします。  日本輸出入銀行法第一条「日本輸出入銀行は、金融上の援助を与えることにより本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、」ここまでが一種の形容詞というか副詞というか、主文は「一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」こういうふうに法律は書いてありますね。だからこのことは、輸出入銀行法というものの目的は、一般の金融機関が行なう輸出入及び海外投資に関する金融を補完するというふうに確認をしたいと思うのですが、法制局どうでしょうか。
  53. 茂串俊

    ○茂串政府委員 御指摘の日本輸出入銀行法第一条の目的の規定でございますが、これは先生も御案内のとおり、一般的に目的の規定につきましては、いわゆる大目的と申しますか、それから小目的と申しますか、そういうような区分がございまして、この輸出入銀行法に当てはめてみますと、先生先ほど読まれましたところの最初の部分、すなわち「金融上の援助を与えることにより本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、」というのが、いわゆる大目的でございます。それから次のより具体的な、若干手段も含めた目的でございますか、それがあとにフォローする規定でございまして、「一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励する」ということが、いわば金融の具体的な手段も含めた、それにフォローする目的でございます。
  54. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと法律のほうで大蔵省にお伺いいたしますが、第三章ですね、ずっといきまして「同条第五号ハを次のように改める。」と書いて、ハとしまして「外国政府等又は外国法人に対して貸し付けるために必要な資金で、当該外国政府等又は外国法人が本邦外において行なう事業に必要な長期資金に充てられるもの」という、ハをこういうふうに改める、こうなっておりますね。そこで、実はこの輸銀法をずっと調べてみたんですが、外国政府、こういうことばが出ますところはそんなにたくさんないんですね。そこで十八条の三に、「本邦からの設備等の輸入又は技術の受入を促進するため、外国の政府、政府機関若しくは地方公共団体又は外国法人に対して当該輸入又は受入に必要な資金を貸し付けること。」ということで、これは輸入等の問題に関連してここに出ている。いろいろあるのですが、たいてい輸出入に関連するものがほとんどとなっているのですね。  そこで、この項目は、一般の金融機関が外国政府に金を貸すということが事実行なわれておるのかどうか。これはどうも借款のような感じがするので、外国政府に対しては政府が行なう行為をここに規定しておるんじゃないか。この点はどうですか。一般の金融機関が行なうものを輸銀が補完をするということなら私は法律上問題ないと思うのですが、政府が政府に行なうのに、直接もしそういうことをやるとするならば、この法律の第一条から言うと法律目的にかなわない行為になるので、あとで書かれておる「外国政府等又は」という外国政府等に一般の民間金融機関が貸し付けを行なっておる例があるのかないのか、それから先に伺いたい。
  55. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常にまれなケースだろうと思います。特に一般の金融機関の場合には商業銀行的な形態の金融機関が非常に多いわけでございます。長期信用銀行的な銀行も世界各国の中あるいはわが国にもあるわけでございます。大体行なわれる場合には、協調融資というような形で行なわれることはあり得ると考えられますが、特に外国政府そのものということについては比較的少ないのではないか。ただ地方公共団体あるいは政府機関というようなものについてあるかどうかということについては、いまここにつまびらかにいたしておりません。ただ非常にまれなケースだろうと考えております。
  56. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと問題がありますのは、私がいま申しているのは、借款は入るのですか、入らないのですか。国と国との取り扱いというのが、いまの改めたところのハの中に入るのかどうか。「外国政府等又は外国法人に対して貸し付けるために必要な資金で、当該外国政府等又は外国法人が本邦外において行なう事業に必要な長期資金に充てられるもの」とありますが、これは借款がここに入ってきやしないかと思うのですが、借款が入らないというなら私のいまの議論はいいのです。
  57. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 御指摘の十八条の五号でございますが、これは「本邦の輸出入市場の開拓若しくは確保又は外国との経済交流を促進するため、本邦法人又は本邦人に対して海外投資に充てられるべき資金」云々、こう書いてございます。したがいまして、借款の場合はこの五号には入らないということでございます。
  58. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、これはちょっとよくわからないのですけれども、わざわざハを入れかえるわけでしょう。これまでのハは「当該本邦法人又は本邦人が出資その他の方法により経営を実質的に支配している外国法人に対して貸し付けるために必要な資金で、当該外国法人によりその本邦外において行う事業につき設備の新設若しくは拡充のための資金又は当該設備の新設若しくは拡充に伴い必要とされる長期の資金に充てられるもの」こういうふうにあるわけですから、これを読む限りにはちっとも抵抗はないのですが、今度のはちょっと異質だと思うのですね。同じハであっても非常に異質なものをいきなりここにぽんと「外国政府等又は外国法人に対して貸し付けるために必要な資金」こうくると、私がどうもいまちょっと疑いを持つように、政府借款というものが入ってくるんじゃないかという感じがするんだ。それでなければこの書き方はちょっとおかしいじゃないか。法律の書き方そのものが、これじゃ一体何を目的としておるのか、何を書こうとしたのか、よくわからないのですが、もう少しこれまでのような形で丁寧な書き方ですね、いまの本法のハは非常にはっきりわかるのです。だれが読んでも「当該本邦法人又は本邦人が出資その他の方法により経営を実質的に支配している外国法人に対して貸し付けるために必要な資金で、当該外国法人によりその本邦外において行う事業につき設備の新設若しくは拡充のための資金又は当該設備の新設若しくは拡充に伴い必要とされる長期の資金に充てられるもの」これはきちんと書いてあるのですね。これはよくわかるのです。今度これがばんと「外国政府等又は外国法人に対して貸し付けるために必要な資金で、当該外国政府等又は外国法人が本邦外において行なう事業に必要な長期資金に充てられるもの」となった。なぜ「外国政府等」というのがここへ入ったのですか、この点をちょっとはっきりさせてもらいたい。
  59. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かにここは非常に技術的にむずかしい規定になっておりまして、そういう御意見も十分あろうかと思います。ただ最初、くどいようですが、この五号そのものは本邦法人または本邦人に対してという条項、本邦人に対する投資金融というのを五号で書いておるのがこの規定であるという前提でここのハがまとめられたわけであります。その場合に、前の規定と今度の規定と変わったところは、一つは要綱などに書いてありますように、本邦法人または本邦人が実質的に経営を支配している外国法人という項目をはずしたことと、それから長期資金というものを設備資金に限定しないということのほかに、一つ先生が御指摘になりましたように「外国政府等」というのが入ったことでございます。ここになぜこれを入れたのかという御指摘かと思いますが、実はこれは非常に法律技術的な関係でございまして、非常に恐縮でございますが八号をごらんいただきますと、今度改正しようとする前の法律でございますが、現行法でございますが、八号に「本邦の輸出入市場の開拓若しくは確保又は外国との経済交流を促進するため、外国政府等に対してその本邦外において行う事業に必要な設備資金等を貸し付け」云々、要するに外国政府に対するそういう貸し付けの規定がございます。その場合に、八号と今度の改正法案では、外国政府に直接するものとそれからもう一つ日本の会社が外国政府に貸すケースも起こり得る、本邦法人が外国政府に貸すケースも起こり得るわけでございます。その分を一つ取り出しましてこの五号のハのところに「外国政府等」というのを入れたわけでございます。したがいまして、実質的にこの規定によりまして本邦法人が外国政府に貸せるようにする、その資金を輸銀が融資する、こういうことにしたわけでございます。非常にむずかしく申し上げて恐縮でございますが……。
  60. 堀昌雄

    堀委員 意味はわかるのですけれども、こういう規定がいまの八号にもありますね。これは事実こういうことはあるのですか。私人が政府に金を貸すとか、ここらが過去には事実どういう例があるのか、例があればそれをちょっとお答えいただきたい。
  61. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 昭和三十九年及び昭和四十二年に、ある日本の商社がペルーの共和国の道路建設の開発事業資金に貸し付けを行なっておるというケースがございます。
  62. 堀昌雄

    堀委員 それはだからある意味では貸し付けをして、しかしその事業を自分のほうが何かやるということだったのでしょうね、当時の話では。今後の場合には、おそらく発想がアンタイドにしようという発想でしょうから、そうすると、アンタイドにやるということになると、これは国ではなくても、一種の借款の供与というようなかっこうになってくるでしょうね、このこと自身は。私は、一体そういうことを外国政府や何かの事業をするときに、輸銀を通してそういう民間のものが金を貸し、それを輸銀が補完をするというような形がはたして望ましいのか、当然国がそういう借款に応じてアンタイドでやろうというなら、借款に応じてやるということのほうがすっきりするのじゃないか、こういう感じがしておるので、私はここへ、輸銀法でそれを書くことが絶対いけないということではないけれども、ものごとの筋道としては、私はそれはやはりアンタイドにしようというのなら、政府間における借款の処理をする、そういうことのほうが筋道で、民間資金を活用しようということはわからぬではありませんが、どうしても民間がやるときには何らかの要するに反対給付がなければ——国がやる場合ならば、まさに経済交流を促進するためという大目的でいけるでしょうけれども、一般企業が経済交流を促進するために、自分の企業にメリットもないことに金を貸したりするはずはない。こう考えますと、どうもこういう規定を置いてはならぬということではないけれども、実施面においてはやはりそういう国と国との借款で処理をするというのが、アンタイドで処理をするという考え方に立つならば筋道ではないか、こう思うのですけれども政務次官どうですかな、そこらは。
  63. 大村襄治

    大村政府委員 確かにすっきりするためには分担を明らかにするほうがいいという御説もごもっとものように拝聴したのでございますが、これまでのいろいろ経緯もございますし、今後のあり方につきましてはさらに御意見をもとに検討さしてもらいたいと思う次第でございます。
  64. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 多少技術的と申しますか、実際の問題にわたりますので、私から補足させていただきますが、確かに仰せのように今後のアンタイングの問題というものの基本的な方向としては、政府借款というのは一つの大筋になろうかと思います。その場合に、当然輸銀と基金両方という問題がございまして、この業務分野の調整という問題について、今後政府部内でも鋭意調整を努力していくということは当然だろうと思います。ただ開発途上国の実情から見ますと、いわゆる開発事業金融、プロジェクトに基づく開発事業を行なっております場合に、わが国の企業がそれに参加していくというケースはかなり多いように思います。その場合に、必ずしも日本からの製品、設備の輸入ということでなくてもその事業に参加していくという必要性は、非常に開発途上国からの要請も強いわけでございまして、この辺のところを考えますと、輸銀といたしましてもそういう形での投資金融を行なっていくという分野は、今後ますます開けてくるんじゃないかと考えております。
  65. 堀昌雄

    堀委員 おっしゃるとおり、私は相手国が希望する範囲においてはいいと思いますよ。いいと思うのですけれども、やはり民間企業というのは利益がないことはやらないというのがいまの資本主義のメカニズムだと私は思っているんですね。大いに日本の国際的な経済交流に資してやろうなんて、そんな高邁な理想で商社がやっていてくれれば、日本のいまの輸出入問題なんというのはまことにうまくいくんだろうと思うのですがね。要するに日本のそういう国としての立場はさておき、自分たちがもうけるために手段を選ばないで大量に輸出をするというところに、今日円対策が必要な問題があるわけでありますから、ここらは何かチェックができるのでしょうか。これは当然民間がやることは、一般金融機関がやることに介入する必要はもちろんありませんけれども、輸銀がそれに参加をするについてはおのずからそういう節度があってしかるべきだと思うのですね。ひとつ澄田さん、総裁におなりでもございますから、澄田さんのほうから、輸銀としてのものの考え方を承りたいと思います。
  66. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、いままでの過去の例等も若干ございますようでございますし、開発途上国等の開発プロジェクトに民間企業が参加をする、そういう場合にそれに伴うローカルなコストとかあるいは現地のいわゆるインフラストラクチュア、ああいったものに当たる部分も本邦の法人が関与をする、それに参加していく、こういう例があるようでございます。したがいまして、そういう場合に備えての改正案と存じますが、なおいま御指摘のように、そういう場合に営利主義に走るということによって、開発に協力するという目的に逸脱するということのないように、その点については輸出入銀行の業務方法書においても、政府の貿易、海外投資及び金融に関する基本政策に適合するように遺憾なきを期するものとする、こういうようなことを掲げておりまして、そういう趣旨に従って今後努力をいたしてまいりたい、かように存じます。
  67. 堀昌雄

    堀委員 法律案そのものはまあ大体以上で終わりなんですが、そこでちょっとお伺いをしたいんです。  いまここで三点出ておりますね。海外市場開拓準備金の租税特別措置と関税定率と輸銀法の改正というのが、対外経済関係を調整するための法律案ですね。そこで海外市場開拓準備金というのを十億円以下のところで切った場合には、これがいまの輸出入関係ですね、要するに対外経済調整に一体どのぐらい金額的に役立つと考えておられるのか。まあことし、四十七年度はもう問題になりませんが、四十八年度から、この法律が成立をしたら、どういう調整効果が出てくるのか。関税定率をここでこういうふうに実施をしたら四十八年度には一体どういう調整効果が出てくるのか。輸銀法の改正でどういうふうに出てくるのか。この三点を関係部局から、現在皆さんが見通しておられるところの調整効果ですね、経常収支——資本収支も多少あるかもしれませんが、等に及ぼす調整効果は一体幾らなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  68. 大村襄治

    大村政府委員 まず私から大づかみのところを申し上げたいと思います。今回の措置によりましてどの程度効果が期待できるかという点について申し上げますると、全体で平年度ベースで十億ドル程度の国際収支の黒字幅の減少、縮小が見込まれるように考えている次第でございます。  内訳でございますが、関税率の引き下げによりまして二ないし三億ドル、ちょっと大ざっぱで恐縮でございますが、それから輸入割り当ての拡大で二億ドル、特恵制度の改善によりまして〇・五ないし一億ドル、その他の措置によりまして四ないし五億ドル、合計いたしまして、先ほど申し上げましたような十億ドル程度と、そのように見込んでいる次第でございます。
  69. 堀昌雄

    堀委員 いや、第三次円対策全体の十億ドルはいいんですが、ちょっとせっかく政務次官がお答えになりましたから……。十億ドルというのは経常収支としての差額ですね。だから経常収支というのは輸入と輸出とあるわけですね。だからこの十億ドルというのは、結果はどうなんですか。何億ドルの輸出が減って何億ドルの輸入がふえるという話で十億ドルでしょう。十億ドルの中身の輸出減と輸入増というのはどうなっておるわけですか。
  70. 大村襄治

    大村政府委員 大部分輸入増の関係で生ずる黒字幅の減少見込み額でございます。
  71. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、第三次円対策というのはやや積極面が十分でなくて、消極面の拡大という感じになりますね。しかし、いま経常収支の中で問題になっているのは、輸入を拡大することも確かに相手国側に非常に影響する問題だろうと思うのですが、向こう側が受けているのは、輸出の増加に対する脅威の問題だと思っているのですね。輸出が増加することがその国の市場を荒らして、要するにその国の企業影響を与えるというのがいまの海外経済調整のための一番大きな課題じゃないかと私は思うのだが、そうすると、そういう向こう側が最も希望しておることにはあまり効果はない、こういうことになるわけですね。
  72. 林大造

    ○林(大)政府委員 今回十月二十日に決定いたしました政府の方針に基づきましていろいろの対策がとられておりますが、大きく分けまして大体三つの方面で効果が出ると存じております。一つは、ただいま政務次官から御説明いたしました本法案を中心とする主として輸入増加の効果でございます。これは先ほど御説明いたしましたように、いろいろその前提の置き方がむずかしゅうございますが、大ざっぱで恐縮でございますが、大体平年度ペースで十億ドル程度というふうに見込んでおります。それから第二は、現在予算委員会で御審議いただいております補正予算系統、これはやはり当然のことながら有効需要増発効果を生むわけでございまして、したがって、その結果かなりの輸入増あるいは輸出減、これはそのモデルの置き方でいろいろむずかしいそうでございますけれども、この系統でやはりかなりの経常収支幅の圧縮が期待できる。それから第三は、これは通産省が主として御所管になっておられます貿管令の系統でございまして、この系統はもっぱら輸出減という姿になってくるわけでございます。この貿管令の効果は、まだ具体案ができておりませんので、これは通産省のほうで御検討中と存じますが、はっきり金額を申し上げられる段階ではございません。
  73. 堀昌雄

    堀委員 通産省入っていますね。——いまの話で貿管令の話が出てくるわけですが、この間も私本会議でもちょっとお話をしましたが、どれだけどういうふうにやるかということがわからないからおそらく通産省もどれだけ輸出が押えられるのかがさだかではないんじゃないかと思うのですが、一体いま通産省がやろうとしておる輸出の削減減といいますか、これは目標があるのでしょうね。何となくやってみようでは、相手のある話ですから相手が納得しないと思うので、ことしはたしか輸出が二百五十億ドルでしたか、見通しが大体そのくらいになっておるわけですが、四十八年度の輸出をどのくらいにするという目的で貿管令を発動するのか、それはどうなっていますか。
  74. 藤原一郎

    ○藤原説明員 ちょっと御説明申し上げます。  最初に輸出の考え方についてでございますが、私ども一応輸出と輸入、貿易収支につきましては基本的には拡大均衡という考え方に立っておりまして、国内需要とも考え合わせますと輸出をやたらに押える、ことに人為的に押えるというのは非常に経済全体にひずみをもたらすんじゃないかという考え方を基本的に持っておるわけでございます。したがいまして、輸出を押えるにつきましては、少なくとも時間を切りまして、緊急避難的に当面貿管令を発動して押えよう、こういう考え方でございます。したがいまして、現在考えておりますのは、昨年に比べましてことし、最近でとりまして二〇%以上の伸びがある品目とか、それから輸出の寄与率が非常に大きいものというふうな一定の基準で品目を選びまして、そういうふうに輸出が急増いたしまして、それが若干フリクションを起こし、はね返りがあるというふうな品目につきましてこれを当面一年を限って抑制をしたらどうか、こういう考え方でございます。したがいまして、数字といたしましては目標の数字を現在のところまだきっちりはじいておりません。
  75. 堀昌雄

    堀委員 円対策というのはしかし、そんなにゆっくりやっていいものでしょうか。いまここのところ、国際金融局長にちょっと伺いますけれども、この間からのドル売りですね、きのうあたりまでで一体幾らになりますか。この間始まった、一億ドルベースのドル売りが始まってからきのうあたりまでで幾らになりますか、日銀が買いささえたのは。
  76. 林大造

    ○林(大)政府委員 いつごろの時点が出発点になるか……
  77. 堀昌雄

    堀委員 一億ドル台に上がってからです。
  78. 林大造

    ○林(大)政府委員 一億ドル台に上がりましたのが、新聞によりますと先週一ぱいだと存じます。先週一ぱいで一億ドルと申しますのは、あれは直物の売りと買いでございまして、そのうちには当日物と翌日物がございます。当日物については大蔵省は介入をいたしておりません。したがいまして大蔵省が介入をいたしますのは翌日物でございますが、翌日物の中にも、当事者、銀行間の出合いがつくものがございまして、出合いがつかない部分が当局の買いになるわけでございます。それで買いの状況は、毎日の状況、もちろん私どもの手元には報告が来ておりますが、慣習上発表しないことにはなっておりますが、いずれにいたしましても、新聞その他で報道されておりますとおり、一億ドルのうち相当部分は毎日、当局の買いになっているわけでございますから、したがいまして、先週はたしか三日が休みでございますが、それで週によりまして大きいときには四、五億ドルになっていたわけでございます。
  79. 堀昌雄

    堀委員 だからあれでしょう、円対策というのは急がなければならない問題じゃないでしょうかね。いまから二、三カ月かけてゆっくりやればいいという問題だとわれわれは認識していないのです。十月二十日の懇談会で決定したのも、おそらく早く対策を講じて切り上げを回避したいというのがその意思だと思うのですが、通産省じゃ、まだいろいろと作業をおやりになっているのだろうけれども、一体これが動きだして効果が出始めるのはいつからですか、皆さんがもしいまの作業ベースでやっておられてですね。
  80. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答えします。  貿管令の発動につきましては、法律と違いましてすぐにでも発動できるわけでございます、仕組みといたしましては。それで現在の、先般二十三日でございましたか、大体十八品目について調整対象を公表の形にしたわけでございます。その品目につきまして目下作業をしておりまして、最近のうちに軌道に乗るかと思います。その際、本年度調整いたします実績を九月一日の実績からとりますので、すでに相当九月からかけ込んだと思われるものは実績の中に入れて計算することになりますから、効果としては非常に早く出てくると思います。
  81. 堀昌雄

    堀委員 だから、いつから出るのですか。私が聞いているのは、その効果は出るでしょう、やる以上は。しかし、いま言うように時間を急がれていることですからね。だから、通産省が考えておる効果で出始めるのは、十二月の上旬とか−何日というわけにはいきませんが、一体どこでですか、そういう上旬、中旬、下旬のめどでいいですが、どこから出てきてどのくらいの効果が、たとえば第一クォーターの中で四十八年の一−三月ではどのくらいの効果が実際出るのか、そこらを伺わないと、私は政府というのはまことにゆうちょうなところだなという感じがしてならないのですが、どこで出るのですか。
  82. 藤原一郎

    ○藤原説明員 正確にいつから幾らという、数字的にちょっといままだ申し上げかねるわけでございますが、結局十一月、十二月といいますのは、例年輸出の非常に多くなる月でございます。したがいまして……
  83. 堀昌雄

    堀委員 いまから早くやらなければだめだ。輸出の多くなるときに押えなければ、輸出が減るときになってから貿管令で押えるのじゃ何のためにやるのかわからない。
  84. 藤原一郎

    ○藤原説明員 したがいまして、前月比というふうな形で急に出るということはないかと思いますが、対前年比というので見れば、おそらく十二月末ごろには効果が出てくるような形にもなろうかと思います。
  85. 堀昌雄

    堀委員 どうもたいへんゆうちょうな話で、これではちょっと切り上げ回避は困難なような感じがするのですがね。  そこで、あとで大臣にも伺うのですが、前段で時間を節約する意味で事務当局にちょっと伺っておきたいのですが、私、この間本会議で輸出税をやったらどうかという問題提起をしておるわけなんです。いまの貿管令は一年という期間だということですが、私は、貿管令の性格は、一年もやるというのは法律なりその他の趣旨ではないように思うのです。まあせいぜい半年くらいでやめるべき性格のもので、一年やってもし改善できなければまたやるということになるのですか。ならぬでしょう、それは。だから私は、いまの一年というのは、必ず一年以内には切り上げもあるだろうという前提で考えるなら話は別ですが、切り上げをほんとうに回避しようというなら輸出税だと思っている。  そこで、主税局に伺いたいのは、通産省はこういう言い方をしている。それが総理の言い方になっているわけですが、西ドイツがかつて、これは国境税といいましたか、表現はちょっと忘れましたが、やったときに、それがその次の切り上げの幅と同じになった。言うならば切り上げをそういう形で誘引したという話ですが、私が承知している範囲では、これは切り上げというものを予測をして、その上での国境税だったというふうに私は理解をしておるのです。これは国際金融局でも主税局でもどちらでもけっこうなんですが、西ドイツでそれをやったときの事情をちょっと説明していただきたいと思うのです。
  86. 林大造

    ○林(大)政府委員 西独の国境税と申しますか、あれはたしか取引高税の輸出還付の規定と、それから取引高税が海外から輸入いたします分につきましては海外で課税されておりませんので、国内におきます税負担と均衡をとるために、輸入のときに調整の意味で税を取る、それを一時廃止したことをさしているのかと存じます。それが国境税調整と俗にいわれているわけでございますが、その後取引高税は付加価値税に変わっている。それは主税局のほうからいずれ必要があれば御説明するかと思いますが、当時の輸出の還付、あるいは輸入調整税の付加の両方の取りやめということが直ちに後の切り上げ幅に直接に結びついたわけではございません。当時はやはりかなり投機が激しかったものですから、したがいまして、西独当局は元来為替管理を非常にきらう体質がございます。それでとりあえずの措置といたしまして、将来その姿が変わり、すなわち再びマルクが弱くなることもあり得るという意味で、臨時に撤回可能という意味も含めましてそのような措置をとったのだ、こういうふうに理解いたしております。
  87. 堀昌雄

    堀委員 そこで私は、いま通産省が言っておられ、あるいは総理がこの間お答えになったように、輸出税をたとえば一〇%取っているとすると、それが先では通貨の切り上げにはねかえるという話ですが、私はそうじゃないと思っているのです。輸出税をぴしっとやって、もちろんこれはそこでも提案したように、中小企業なり雑貨なり繊維については戻し税を考えるなり何らかの措置を、フェーバーを与えなければならぬと思いますけれども、そうやって、これは輸出税ですから長期にわたってやれるわけですけれども、一年も二年もやろうと思えばやれるわけです。かなり長期にわたってやるということがきまれば、その輸出税によって輸出効果が減ってくるとするならば、向こうの側として何も切り上げを求めなければならぬ理由は私はないと思う。切り上げを彼らが求めているのは、さっき言ったように、主として日本の輸出が急激に伸びて向こうの市場が荒らされる。同時に日本の輸入が不十分で、向こう側の経常収支の赤字が日本の経常収支の黒字に見合うというところに問題があるわけです。その経常収支の赤字、黒字のバランスがとれるような策を長期的にわたってとられなければ、私は円対策にならぬ、こう考えるわけです。  私はこの前のときは、政策手段として通貨問題を考えろと言っている。いまでもそうだと思うのです。私は通貨問題というのは政策手段として考えるべきだ。しかし回避できるなら回避したほうが、国内産業に与える影響がこちらの側の判断で処理できるから、そうすれば輸出税でやっておいて、こちら側で判断できるものについては戻し税でこれをカバーする、あるいは輸出税を一〇%くらいやっても、それを乗り越えるものがあれば、それについては貿管令で頭をたたく、頭から出た分については貿管令でひとつそれ以上出たものはそれで処理をする、二本立てで押していけば、アメリカといえども日本も本気でアメリカの国際収支対策を考えてくれておるな、こうなるのじゃないかと思うのであって、私はこの輸出税の問題というのは、総理も私の質問に目下検討中ということで、あとは佐々木さんの予算委員会の質問でも、かなりそういう前向きの発言をしておられるようですが、大蔵省は過去の経緯から見たら輸出税を主張しておった立場にあるのですから、大蔵省側として輸出税を主張しておった見解というのは、いま私が言っておるような見解と大体同様なのかどうか、そこらについてひとつ大蔵省側見解を聞きたいと思うのです。
  88. 林大造

    ○林(大)政府委員 過日、十月二十日の対外経済政策推進関係閣僚懇談会決定の対策の中に、「輸出貿易管理令の機動的運用」という項目がございまして、そこには「特定地域に対する輸出急増品目に対し、機動的かつ積極的に輸出貿易管理令を発動する。」とまずございまして、それから「なお、輸出税または輸出課徴金の創設については、引き続き慎重に検討する。」ということになっております。この輸出税または輸出課徴金についてももちろんいろいろな議論が行なわれたわけでございまして、これを恒久的な措置ということで私ども考えていたわけではない。それは恒久的な措置ではなくて、やはり現在の異常な黒字幅を圧縮する措置として考えていたわけでございます。私どもといたしましては、堀先生先ほど御指摘のとおり、現在円に対する海外の圧力は全くないといってもいい状況かと思いますけれども、国内におきましていろいろな思惑も出ている。しかもこのような措置をとりましてから現実に効果が出ますまでにはかなりの時間がどうしてもかかるわけでございますので、何としても早急にこの対策を立てることが必要であるというので、取り急ぎましてその対策を立てたわけでございます。その中では輸出貿易管理令がただいま通産省からも御発言がございましたとおりかなりの程度に規制指貫ができるということで、これをとにかくやるということにその閣僚懇談会で決定いたしたわけでございます。しかし、そうかといって輸出税または輸出課徴金が全く見送られた、あるいは全く考えの中に入れられなくなったわけではございません。依然として私どもその必要であるかどうかということは検討していかなければいけない、御趣旨を体しまして今後研究を続けていきたいというふうに考えております。
  89. 堀昌雄

    堀委員 まあ検討されるのでしょうが、やはり何らかの一つの具体案ですね、もしかりにやるとすれば何らかの具体案を準備しなければ検討の対象にならないと思うのです。ですから、こういう輸出税で、この税率で、こういう処置をとったときは輸出が大体どういうふうになるかということの試算がなければ、軽々になかなか輸出税というものは私は行なえない問題だと思うのです。私が言ったのも恒久的にやる意思はないのですよ。しかし、要するにそういう経常収支の状態が正常化するまではやらなければだめだと思っている、やる以上は。中途はんぱでもってやったのでは、また元に戻って何のためにやったのかわかりませんからね。だからそういう手段として、私は貿易管理令よりは輸出税のほうがややタームが長く処理できるという点で、円対策としては有効ではないか、こう考えておるわけでありまして、まあひとつ皆さんのほうで十分これから検討されて、何にしても、あまりゆうちょうなことを言っていたら私は追い込まれると思うのです。やはりこういう問題はこちらが先手をとるか後手に回るかでたいへん国益に関係があることだと私は思っていますので、何をやるにしても、こちらが先手であるということ、要するに、それは貿管をやってもどうもはっきりしなければ、すぐに輸出税をやるとか、もうあらゆる政策手段で有効、適切、緊急に処理されて、こちら側に主導性があって処理をされておる限りにおいては、私は、問題は非常にスムーズにいくと思うのです。そうではなくて、向こう側がイニシアチブをとってこちらが追い込まれるようなことにかりになったとしたならば、これはたいへん、二回目でもあり、前回はかなりまだ日本の各業種にも競争力があったために、まあ一応ここへきておりますけれども、その点は、今度はそう簡単にはいかないという問題だと考えておりますから、事の重大性を認識すれば、特に緊急かつ適切な処理が望まれておるのだと思いますので、すみやかな対策を講じてもらいたい。  それから、まあさっき林さんの言われた補正予算の需要効果というものが、もうあなた、ここまで成長が上がってきて、これ以上に補正予算でそういう需要効果を期待するなんというのは、経済論としてはどうも納得がいかないので、対外的な宣伝効果は別として、大蔵委員会で通用する話ではない、私はこう感じておりますので、それを申し添えておきたいと思います。
  90. 大村襄治

    大村政府委員 この円対策につきましては、御説のように、輸出、輸入その他の面にわたり周到な準備をすみやかに発動しなければならない。御説全く同感でございます。今国会におきましては、大蔵省といたしましては特に必要な法律の改正案をその中から選び出して出したわけでございますが、この輸出に対する輸出税もしくはこれにかわる課徴金につきましては、何ぶん新しい制度でもあり、海外の例につきましても、西独の評価等につきましてはいろいろ見方もあるところでございますが、先手必勝という御説もございます。たまには後の先ということばもあるのでございますが、この問題はやはり先々と準備をする。特に法律事項につきましては国会の御承認もあらかじめ必要でございますので、そういった点につきましては、なお御説を体して、引き続き検討することを申し上げておきます。
  91. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  92. 金子一平

    金子委員長 午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  93. 金子一平

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  94. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 対外経済関係を調整するための法案について若干質問をしたいと思いますが、午前中堀委員からも質問がございました。最初に、審議に必要な、今日における日本の外貨事情数字を正しく教えていただきたいと思うのです。  新聞で報ずるところによれば、もうすでに十月末現在で百七十七億九千万ドル、大体百七十八億ドル、こういう数字が報道されておるわけでありますが、これはもちろん公的準備で公表された部分であります。実質的に、それ以外に、政府からの外貨預託あるいは日銀からの融資など、いわゆるマスコミ界では外貨隠し、こういうようなことをいわれている部分があるわけでありますが、これらで、すでに実質ではもう二百四十二億ドルになっておるはずであるというような推算をして、堂々と朝日新聞あたりでもこれを書いており、二百四十億ドルをもうこえたんだ、西ドイツを上回ったという記事まで出ておるわけであります。この辺のところの数字は一体どういうことになっておるのか。この数字の高、これは九月のIMF総会におけるシュルツ財務長官の演説の中にも、将来通貨調整の際には一つの目安に外貨準備高の増減というものを使うというようなことは非常に効果的な方法であるというような発言もなされておるというようなことにかんがみても、非常に問題の数字であろうと思いますので、その点をひとつ事務当局から明らかにしていただきたい。
  95. 林大造

    ○林(大)政府委員 十月末の外貨準備の高は百七十七億九千六百万ドルでございます。この金額は公表されております数字でございまして、世上いろいろなことが言われておりますが、新聞報道その他で報じられておりますものには、二、三年前からいろいろな形でいわゆる円シフト対策その他の対策を講じておりますが、その金額を単純に合計したものがあるのではないか。そのような数字は外貨準備高という概念では表現できないものでございます。と申しますのはどういうことかと申しますと、この外貨準備の高と申しますのは、その中にIMFに対しますいわゆるゴールドトランシュでございますとかあるいはSDR、金、それからそのほかに外貨の形で外国に対して持っております流動性のある各種の資産を計上いたしております。その最も代表的なものはアメリカ政府の発行しております短期のTB、財務省証券でございまして、そのほかにどういうものがあるかということでございますと、それはことしに入りましてからいろいろな外貨預託であるとかあるいは中長期債の購入をいたしております。その以前からもいろいろなことはいたしておりますが、ことしに入りましてから九月までの金額を申し上げますと、ことしの外貨預託の金額が十八億五千万ドルでございます。それからそのほかに当局が購入いたしました中長期債等が約九億ドルございます。これらのものは外貨準備の中に計上いたしておりません。この計上いたしておりませんゆえんのものは、外貨預託というものは国内の為替銀行に対する外貨建ての預金である。したがいまして対外的な資産として計上することができない。また中長期債は、これは流動性において欠けるものがあるということで計上いたしておらないわけでございます。したがいまして、その流動性のある対外的な外貨建ての資産という意味で、これにSDRその他の金とかを加えました金額は百七十七億九千六百万ドル、公表の数字に違いないわけでございます。  ちなみに、西ドイツの十月末の外貨準備は二百四十一億九千万ドルになっているというふうに承知いたしております。
  96. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十一月一日付の朝日新聞の記事を引用するわけなんですが、政府の外貨預託約三十億ドル、日銀の輸入資金貸し付け約二十五億ドル、日銀による米国輸出入銀行借り入れ金の先払いなど九億ドル余りがある、こういうことが出ておるわけでありますが、これは私どもの読み違いなのか。そういうものも、公表した部分が名目的ないわゆる外貨準備高とすれば、これを加えたものがむしろ実質的には外貨準備高というようになるのではないか。そうすればこれを全部足し合わせますと、確かに先ほどの数字に六十四億ドルプラスされまして二百四十二億ドルになる。そうすると、いま二百四十二億ドルになるわけですから、西ドイツの二百四十一億数千万ドルを上回るという数字になってくるわけなんですね。こういうものが一体どういう状況になっておるのか、外貨預託が一体幾らあるのか、さらに日銀からの輸入資金の貸し付けとしての二十五億ドル、それから米国の輸出入銀行借り入れ金の先払いというようなもので九億ドルというようなことを新聞がちゃんと書いておる。こういうように整理してみたら、その数字はやはりこういうことになるのですか、ならないのですか、その辺のところはどうなっておりますか。
  97. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいまあげられました数字は、まず外貨預託三十億ドルとおっしゃいましたのは、ことしに入る前にすでに行なっております外貨預託の金額を加算したものだと存じますが、これは先ほど申し上げました十八億ドルの外貨預託と同様に、国内の為替銀行に対する債権でございます。それから二十五億ドル云々といわれました日銀の輸入金融措置でございますが、これは日本銀行が海外からのユーザンスという形での外貨借り入れを国内の金融にシフトさせるために円建てで融資をしているものでございまして、したがいましてこれは全く外貨準備の金額には関係のない数字でございます。それから九億ドルは、先ほど申し上げました数字ではないかと存じます。  いずれにいたしましても、これらの金額は、私が先ほど申し上げましたように、国内の銀行に対する債権である、あるいは流動性に欠けるところがあるという意味で、外貨準備の金額として算入するには不適当なものでございます。したがいまして、対外的な流動性のある当局の外貨資産という意味での外貨準備は、金その他を加えまして、公表されております百七十七億九千六百万ドル、これは十月末の数字でございますが、これに間違いないわけでございます。
  98. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常にややこしいので質問を変えます。いわゆる外貨準備高というと語弊があるかもしれないから、日本全体の外貨保有高といいますか、公的な外貨準備高として公表されるものとそれ以外の保有しているもの、こういうものでどのくらいの外貨保有があるのか、こういうことで質問をしたらどのくらいとお答えになりますか。
  99. 林大造

    ○林(大)政府委員 日本全体の持っております外貨の金額と申しますと、民間保有の分と公的保有のものとに分かれるわけでございますが、民間保有のものにつきましては証券形態のもの、あるいは延べ払い金融の形態のもの、あるいは民間の銀行が持っております短期の各種の債権など、いろいろのものがございます。それにつきましてはときどきに計数は集めておりますが、現在その総計というのはとっておりません。対外資産の状況というのは、国々によって違いがございますが、必ずしも完全に把握できないものでございます。その典型的な例は株式系統でございまして、この系統は常に値上がり値下がりをしておりましてつかめない。  で、問題は公的な外貨保有かと存じます。公的な外貨保有のうち、先ほど申し上げましたように、約九億ドルは流動性に欠けるものであり、それから国内の為銀に対する資産というのは外貨準備としてあるいは対外的な外貨保有として計上するのは不適当かと思います。したがいまして、もし公的な対外的な外貨保有ということになりますれば、外貨系統のものは、百七十七億九千六百万ドルの外貨準備のほかには、約九億ドルの中長期債であるということに御理解いただいてよろしいと存じます。しいて申し上げますれば、そのほかに円建てで輸銀あるいは基金が中長期の円クレジットを供与しております。しかしそれはいわゆる公的な外貨保有とは関係のない数字でございます。
  100. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それにしましても、もう九億ドルだけとしましても百八十七億ドルになる、こういうことでございます。いずれにしても十月中に十三億ドル増加をしたということが報道されておりますし、すでに午前中にも質問がありましたように、十月十九日ごろからずっと、ときには四億ドル台というようなことも、あるいはそれ以上の場合もあったようでありますが、平均をいたしまして一億ドルをこすドル売りが続いておる、日銀が必死にこれを買っている、こういうようなことをやっているにいたしましても、これはやはり国内の金融政策などからいいましても、予定した政策といいますか、そういうものの展開と違う、いわゆる予想されざる金融緩和要件というものが、そういうものの中から出てくるのは当然であります。ふえたドル見合いのドルを買いささえた分は、やはり日銀券となって国内市場に一万円札が放出されていくわけでありますから、そういうような経済撹乱要因というようなものも国内経済上も無視し得ないことになるだろうし、そしてまた公的外貨準備がどんどん急増するというようなことによって円切り上げをやはり迫られてくる。まあアメリカの大統領選挙もあるというようなことで今日まで来たし、またここ日本の場合におきましても近く解散であるというようなことから、経済界に非常に大きなショックを与える。円切り上げということは政治的要因でむしろ延ばされてきている。そういうようなことで、解散、総選挙が終わったならばおそらく年内にも、あるいは来年の二月までの間には必ず行なわれるであろうというような観測が強まっておるわけなんですが、そういうところから今度の十月二十日のいわゆる閣僚懇談会決定の五項目も出たのだろうし、そしてその中からとりあえず今回の法案も出されてきた、こういうように考えられるわけであります。この対外経済政策が先ほども議論になりましたけれども、十月二十日に対外経済政策推進関係閣僚懇談会、こういうところで決定をされておるわけでありますが、その中で大きく分ければ五つの項目——輸入の拡大、輸出の適正化、資本の自由化、経済協力の拡充、福祉政策の充実、こういう五つの大きな柱が立てられたわけでありますが、その中から選ばれて今度の法案になってまいりましたものが、本気で一体円切り上げ対策としてやるかまえを示した法案であるのかどうかということが、非常にわれわれとしては疑問なんであります。われわれはやはり円切り上げは反対であるという、政府もそのことは強く言っておりますが、円切り上げをほんとうに回避し、防止をしたいのだというならば、こういうことをきめておきながら、その中からつまみ食いのようにわずかばかりのものを取り出してやるということで、はたしてこういうような外貨急増というようなこと、しかも貿易収支もきわめて堅調だし、その上にドル売りが一億ドルベースで八日間も続いたというような、あるいはきょう、これからどれだけ続くかわからぬというようなことで、十月十九日以降十四日間で十六億ドルもふえているというようなドル売りを浴びせられている。こういう状況の中で、これは政治的要因はあるにしても、近く円切り上げというものは必至であろう、そういうようなことにならざるを得ない、そういうほうにどんどんどんどん事態は進んでいる。  それにもかかわらず、今度の法案は三つの内容を盛っておるわけでありますが、その程度のもので、せっかく十月二十日にきめた中身が全面的には今度の法案の中にも盛られていない。政府は円切り上げ反対、こうは言っているけれども、これは必ずもう追い込まれて後手後手に回る。しかも去年と同じように、不手ぎわな政策の結果大幅な切り上げがされ、国民が非常に大きな衝撃を受けたわけですけれども、今回もまた同じような轍を、このような中途はんぱな、いいかげんな円対策では、そういう事態をまた再び繰り返すことになりはしないかということを私どもはおそれるわけなんですけれども、この十月二十日にきめた五つの項目について全面的にやる、早急にやるというような姿勢が見られなかったのは一体どういうところに——事態は、さっき言ったように、この円切り上げを迫られる方向に向かってもう急進展しておるにもかかわらず、それを防止するんだ、徹底的に円切り上げは反対をするんだと言いながらこういうことをきめた。そうして、それを実行する段階でまことに優柔不断であり憶病である。そういうようなことは、一体どういう見通しと判断のもとにこういう結果になったのか、このことを私まず伺いたいと思うのです。
  101. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま御指摘がございましたとおり、現在の貿易収支、経常収支、いずれも非常に大きいわけでございます。それで昨年の十二月に行なわれましたスミソニアン体制に基づく各国の為替レート調整というものが、その後各国いずれも思ったほどは効果をあらわしていないということは、国際的にもいろいろ検討をされております。  で、日本の経常収支は、暦年で申し上げますと、ことしはあるいは若干昨年を上回るかと存じますけれども、そのほかにEC諸国では、ことにベルギー、オランダ、イタリアなどを中心といたしまして、非常に経常収支の黒字幅は拡大しておる。その意味におきまして、どうも少しレート調整の効果の出方がおそい。GNPに対する比率で申しますと、日本はGNPに対する比率では昨年よりも経常収支の黒字幅は落ちておりますし、またヨーロッパのベルギー、オランダ、イタリアあたりはかえって割合がふえている。もっとも対照的でございますから、これは日本の円レートが高く切り上げられた関係もあるかと思いますが、そういうことで諸外国いずれもいろいろと検討をしておる。ただ、いかんせん日本はそれらの国に比べまして国の大きさが大きいわけでございまして、したがいまして経常収支の黒字幅も非常に大きい。この黒字幅の大きいのを極力小さくしなければならない。で、かねがねいろいろな施策を進めておりまして、景気も次第に回復しつつあります。それでこの景気調整の効果、あるいはおくれて今後出てくると期待されます——現在までもかなり出てはおりますが、今後さらに出てくると期待されますレート調整の効果、それに加えて、ただいま御指摘の十月二十日の閣僚懇談会の五項目の決定を至急に講ずる必要がある。で、いずれの施策も完全に効果をあらわすまでにはかなりのタイムラグを伴う性格のものでございます。  その意味で、できるだけ早くこれらの措置を実施したいということで、これらの措置のうち法律上の措置を要しますものにつきまして、今回主要なものを取り上げているわけでございます。法律上の措置を要しないものにつきましては、現在当局の事務的な手続を極力進めている段階でございます。たとえて申し上げますと、輸入手続の簡素化の中で、輸入担保金制度の廃止、輸入承認制度の整理あるいは携帯品の免税限度の引き上げ等等、各種の輸入手続の簡素化措置を講ずることがうたわれております。それから為替管理制度の緩和というところで、渡航外貨の持ち出し、著作権の対価の支払い、出国時の外貨への再交換、個人の少額送金等について制限を大幅に緩和するということがうたわれております。これも必要な法的措置、法的と申しますか手続を進めまして、近日中に実施に移す予定でございます。  これらの措置は着々と行政部内で処理をいたしておりますが、法律上の措置を要します事柄につきまして今回法案の形で御審議をいただいておるということでございまして、これらの措置を極力実施に移すよう急がなければいけないという広瀬委員のおことばは、そのとおり私どもも体しまして努力いたしている次第でございます。
  102. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 対外経済政策の推進についての十月二十日の懇談会の決定事項、これをいただいておるわけですけれども、輸入の拡大の中でも輸入の自由化、残存制限品目はいま三十三品目だ、うち二十四品目は農産物だ、こういうことになっているわけです。引き続き自由化を進めるといっておるけれども、これはやはり国内の農業等にとってたいへんな影響があるということで、おそらくこれも見送られているわけですけれども、そういうものに対しては、徹底的に被害を受ける農家等に対する政策というものも別途きめこまかく講じながらこういうものを進めるというようなことは、一体どうなっているのか。  それから、関税問題は、今度かかっておるわけですが、特恵関税制度の改善の問題につきましても運用の改善をはかるんだというようなことがいわれているのは、これは次の国会だと言われておる。輸入割り当てワクの拡大、この点については一体どうなっておるのか。七%相当まで拡大するというようなことを言っているわけですけれども、これは一体どうなっているのか。それから輸入手続の簡素化の問題で「輸入担保金制度の廃止、輸入承認制度の整理、事前許可品目の縮小、携帯品の免税限度の引上げ等輸入手続の簡素化を行なう。」この最後の部分のところは今度の法案の中にも関係あるわけでありますが、こういう問題点、これはもうすでに政府レベルだけで、法律事項でなしに実施したもの、これからどういう日程でするのか、あるいはまた法律事項だからこれは次の国会に回すんだということをきちっと整理して説明してください。
  103. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 輸入自由化の問題は先生御指摘のように、現在三十三品目残存輸入制限の品目が残っておりますが、これらはいずれもいわばハードコアの品物ばかりでございます。先般、二十日の閣僚懇談会においては引き続きその自由化を進めることとし、その計画的推進をはかるということで、今後鋭意政府部内において具体的に計画的な推進を進めてまいるということでございまして、御指摘の関税上の措置につきましては、具体的品目に即応しまして国内産業、需要の面を考えまして適切な関税上の措置あるいは関税割り当て制度、そういった面の活用をはかって、できれば通常国会において御審議を願いたい、こういうように考えておるわけでございます。  次に特恵関税の問題でございますが、これにつきましては、私ども政府部内においては、できるだけ早くということでございますけれども、特恵国からの輸入の動向とかあるいは国内産業の面の配慮ということもなお慎重に煮詰める必要がございますが、特恵制度の問題についてはいろいろな問題がございまして、できるだけすみやかに制度の改正、運用の改善をはかるべく、できれば私どもは次の通常国会において御提案をし、御審議を願うという段取りで進めておる段階でございます。  それから、輸入ワクの拡大でございますが、これは閣僚懇談会においてかなり具体的に数字がセットされておりますから御理解いただけると思いますが、原則といたしまして三割以上の拡大をはかり、三割に満たないような、あるいは国内消費量の七%に満たないものは七%にアップするというようなことで、かなり具体的にこの問題はセットされているわけでございます。それから輸入手続の簡素化の問題がございますが、たとえて申しますと、私どもが所管しております携帯品の免税点の問題でございますが、これにつきましては、現在金額制限といたしまして五万円という金額制限がございます。これは私ども関税局といたしましては、十万円に引き上げるということで現在そういう体制のもとに作業を進めておるというような状況でございます。
  104. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、輸出の適正化というところに「海外市場開拓準備金制度」、これは今度の法律に出ておりますが、そのほかに、2、3、4とありまして「輸出貨物用材料戻税制度」これは対象品目を縮小する。輸出入銀行輸出金利、これは今度の法案と関係しておりますからけっこうですが「輸出貿易管理令の機動的運用、特定地域に対する輸出急増品目に対し機動的かつ積極的に輸出貿易管理令を発動する。なお、輸出税または輸出課徴金の創設については、引き続き慎重に検討する。」私は、総理の最大の政治信条は決断と実行だ、こういうことなんだが、慎重に検討、慎重に検討で、この輸出急増を押えるということで最も端的に見られるのは、やはり今度見送りになった、慎重に検討ということにされたこの問題ではないかと思うわけでありますが、それも検討だということで残されてしまっている。  そこで貿管令の発動の現況について、十八品目選定をしました、こういうことだけなんですが、その十八品目を選定した基準と申しますか、考え方というものをひとつお示しいただきたいと思います。
  105. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答えいたします。  輸出貿易管理令を発動するといいますか、輸出規制をいたします対象の品目の選定につきまして、先般来作業を続けておりますが、現在基準として三つばかり基準をとりまして品目を選ぶ、こういうことにいたしております。基準のとり方は、現在利用できますところの統計、一番近いもので四十六年の一月−七月に対しまして、四十七年の一月−七月の輸出実績をとりまして、それが二〇%以上伸びている、これが第一の条件でございます。それからその比率をとりまして、輸出増加寄与率といいますものが一%以上のもの、それから非常にわずかのもの、大きな手間をかけてやりましてもなにでございますので、年間の輸出額一億ドル以上のものということで関税上の問題を拾いまして、一応機械的に操作いたしますと十九品目が上がるわけでございます。現在その十九品目につきましては検討を続けておる、こういう状況でございます。
  106. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 こういうことで基準はきめた。それでいつこれは発動するのですか。これはおくれればおくれるほど、十月の輸出認証が三八%以上三九%くらい伸びているというようなこともあるわけですけれども、これは輸出急増に、いわゆる増加寄与率が非常に高い十九品目が選ばれている。そういうものを野放しにしておいて、品目を選定しただけで、それがそのままストレートに効果が出るわけじゃないですね、正式に発動するという段階を迎えなければ。そうでなければ輸出カルテルを認めさせて、言うならば自主規制のような形でカルテルを結ばせるというようなことをまず前段階としてやるのだというようなことも言われておりますけれども、その辺はどういうようになって、効果はいつから出させていくか。輸出を抑制する効果というものは早ければ早いほどいいという気持ちはないのか。業界の顔色ばかり見て——よく通産省は業界の代表だなんていわれる悪口のそのままのような形で、業界の動きばかり見ておって、こういうところの発動というようなものも機動的に機を失せずやれるような状況というもの、その辺のところはどうお考えになっているか。
  107. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答えいたします。  輸出貿易管理令につきましては、これは政令でございますので直ちに発動がいつでもできる体制にございます。したがいまして、その辺輸出課徴金とか輸出税が、法案を提出しまして非常に長期の時間がかかりますのとは様子が違うわけでございます。現在、先ほど申し上げましたようなことで十九品目を一応選びまして、それにつきまして十一月一ぱいくらいに調整計画というものを出させまして、それが大体基準に合っておればカルテルその他で調整をする。それでうまくいかない場合には直ちに貿管令の発動をして貿管令でやるべきだ、そういうことにいたしたいと思います。  なお、いま緊急というふうなお話がございましたが、調整をするにつきまして、先ほども説明申し上げましたが、本年の九月一日からの実績をとりまして、それを内ワクとして調整をいたしますので、現在かけ込んでおりますものは調整ワクに入ります。そういう意味合いからいいまして心理的に相当強い圧力がかかるかと思います。現実には輸出問題につきましては、輸出実績の数字よりは心理的な問題のほうが強く響いているように考えられますので、この措置で相当効果をあげると私ども考えております。
  108. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 発動しないで心理的効果だけねらうわけですか。そういうことですか。
  109. 藤原一郎

    ○藤原説明員 いま申し上げましたのはそういうことではございませんで、発動をもちろん予定にして進めておるわけでございます。
  110. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体その時期をいつに設定をするという目安はないのですか。
  111. 藤原一郎

    ○藤原説明員 これもいま御説明いたしましたところでございますが、九月一日からの実績を内ワクといたしまして十一月末までに様子を見て調整いたしまして、十二月以降実施に移す、こういうことになろうかと思います。
  112. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、この基準のとり方も、対前年比一月から七月までことしの同期の比較が二〇%以上伸びた、この心理的影響がある程度出て、前年のたとえば八月——八月は基準になっていないわけですから、その八月とことしの八月、あるいはことしの九月と前年の同月を比較して、一−七月からのちの部分でそれをやるぞということで、これがたとえば増加比率が八月以降十月までに一〇%に減ってきた、あるいは十一月末までに一〇%くらいまで減った、そういうようなものは十九品目からどんどん落としていく、そうすれば発動しない、こういうことになるわけですね。そういうお考えですか。
  113. 藤原一郎

    ○藤原委員 そうではございませんで、一−七月の実績でとりました実績で、いま申し上げました三条件を満たした品目について対象にするということでございまして、本年八月以降の実績につきましては、これは品目選定にあたっては考慮いたしておりません。というのは、実績がまだとれないということもございます。
  114. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 じゃ、すでに四十六年の一月から七月、ことしの一月から七月、これはもうちゃんと数字が出て比較できる、そういう中で大量に輸出されている、輸出額の大きいもの、あるいは二〇%以上増加寄与率のあったもの、輸出額が一億ドル以上のものであるとか、こういうような基準でこの十九品目を検討した、こういうことになるわけですか。それならばもう九月の段階でもあるいは十月の段階でも、中曽根通産相が九月の初めごろにはもうそういう決意をされておったはずでありますから、そういうものはできるだけ早く実行に移していくということならばいいんですが、様子を見てというのは、先ほど私が言ったようなことになるのじゃないかと当然考えられるわけなんですけれども、そこを質問すれば、いやそうではない、十九品目はやはりやるのだと言う。しかし、なぜそれじゃ様子を見るのですか。何のために様子を見るのですか。発動の要件ではないわけですか。その様子を見る必要があるというのは、どういうところを見るのですか。
  115. 藤原一郎

    ○藤原説明員 いま申し上げました点は、品目を選びまして、それについて第一段階として、いきなり貿管令をかけるのではなくて、自主調整なりカルテルなりでできるものはそれでいかせたいということで調整計画というものを——業界もいろいろございまして、大企業だけで成り立っているところもございます。中小企業が非常にたくさんあるところもございます。その辺業界別に実態が違うものでございますから、それにふさわしいような調整計画をつくることが好ましいということで、十一月一ぱいくらいまでにその計画を出すということにさせたい、こういうふうに思っております。
  116. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それはまあ前段階で自主的に規制をする、通産省が期待をするような規制をやるという体制ができればそれでいいという、そういう意味で様子を見る、こうおっしゃったことは理解いたしましたが、この貿管令、これはやはり一種の非常措置であり、あるいは緊急避難的なものであるということは前々から論ぜられてきたところなんですが、この中にもいろいろ問題があるだろうと思うのです。単にこれだけの基準ではたしていいのか。これは言うなればいかにも機械的なものだ。全国際経済交流というか、そういうもので、相手の国が現段階において国内の経済を発展させる優先順位の中で、たとえば農業機械を導入したいのだ、そういう計画があるところに急増している。そのことが寄与率も大きくなっているし、一億ドル以上にもそれがのぼっている。しかし相手の国にとっては経済建設をやっているので非常に必要なのだというような場合に、たとえば農業機械を入れて機械化農業に持っていきたいというようなことを向こうで政策目標を立てておられる、そのことは相手国の経済が発展するために非常に必要なのだ、優先度の荷いものなのだ、そういうようなことで急増しているというようなことなんかも、こういう基準に合えばそういうものもがさりと押えなければならぬというようなことで、やはりこれは日本の言うなればてまえがってな面が出てき、しかも、これがほんとうに相手国に喜ばれながら貿易量も、日本からの輸出も拡大をしているの、だということでも、もう全部みそもくそも一緒にして規制を受けてしまうということにもなりかねない。あるいはまた中小企業等でこの基準に初めて合ったというようなところが、ようやく今日まで投資をしておって業績を認められて本格的に品物を売り出した、そのところでばちんと頭打ちをさせられるというような、そういう点についての配慮というものは、この中に非常に問題点として残るのではないかと思うのですが、その辺のところはどういうような配慮をされるつもりですか。
  117. 藤原一郎

    ○藤原説明員 いま御指摘のような点は確かに問題点としてあるわけでございます。これは輸出規制とか輸出税とか輸出課徴金というものは一律、機械的にやります際にはどうしても起こってくる問題でございます。ただ私ども今回やりました際には、特にその点は考慮いたしまして、年間輸出額一億ドル以下のものは条件からはずしたわけでございます。それから輸出寄与率というものはやはり輸出額とからむ数字でございますので、中小企業的なものは、大体基準を適用いたしますと落ちることになっておると思います。なお、発展途上国等との問題点も御指摘ございましたが、その辺につきましては、私ども現在品目について当たりましたところでは、あまり問題はないように考えております。
  118. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうような点で、これは中小企業までいかなくても、中企業あたりのところでも相当問題があるというようなことも聞いておるわけで、これの発動についてはやはり、やるべきところは断固としてやらなければならぬけれども、いろいろな面でこまかい配慮というものが私は当然必要になってくるだろう。そういうような点で角をためて牛を殺すあやまちをおかしてはならないだろうというふうに考えるわけで、その点慎重にやっていただきたいと思うわけであります。  それから、午前中も議論が出ましたけれども、輸出税または輸出課徴金、こういうようなものはいまの論議と若干矛盾するような点もありまするけれども、ほうとうに円対策を講じて成果を得ていく、円再切り上げを防止していくというようなことで一番大きい原因をなしているものは、やはり何といっても輸出の急増、輸入がそれほどふえない、国際収支のまさにアンバランスというものを是正しようというところにあるのだとするならば、やはり思い切った輸出税というようなものを構想をして一時期断行をしていくというようなことが一番効果的な方法ではないのか。こういうことをためらっている限りにおいて、やはり政府の立場というものは、どうも去年と同じように後手後手に回ってしまって、大幅切り上げに追い込まれざるを得ないという、そういう道筋をたどるのじゃないか、こういうように懸念するわけなんですけれども、特に西ドイツの場合に、この種の国境税のようなものを設けた、それがちょうど西ドイツの切り上げ幅に落ちついたというようなことで、むしろ円再切り上げの前提を整備するようなことになるのじゃないか、これを予定した措置だと国際的にも受け取られるのじゃないかという議論もあるようですけれども、これはやはり西ドイツの場合と日本の場合とでは違うと思うのです。そして根本的に、日本の輸出が伸びるということは、要するに国際競争力というものが強いということなんですから、そのことを改めるためには、やはり国内における福祉優先への政治の転換、経済運営の転換というようなものをはかっていかなければならない。一方においてそういう強い、しかもこの円対策の基本ともいうべき問題意識というものがある。そうだとすれば、思い切って輸出税をかけて、そういうところに税金を回していくということが当然考えられてしかるべきだ、こう思うのですが、これについて次官、どういうようにお考えですか。
  119. 大村襄治

    大村政府委員 輸出税の問題につきましては、午前中の委員会におきましても申し上げましたとおり、今回は提案できませんでしたが、なお今後引き続き慎重な検討を加えてまいりたいと考えている次第でございます。
  120. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これを慎重に検討するというだけですから、かりにやった場合に、われわれは、その税を課した場合に、その税の使い道というものまでセットにして考えなければいけないということを言っているわけなんですよ。そのことについては、慎重検討の中に、われわれが主張するような方向にその税を使っていくのだというような関連というものは当然含めて考えられる、そういうことですか。
  121. 大村襄治

    大村政府委員 その使い道の点につきましても、御意見を参考にしながら検討を進めてまいりたいと考えております。ただ、この税の性格がそれほど長期の性格を持つものかどうか、そういった点もございますので、使途の点につきましても、それらとの点を考慮に入れてなお検討する必要があるのではないか、かように考えている次第でございます。
  122. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 当然そういうように考えてもらわなければならない。そのことにむしろ重点を置いて、輸出税もそれはそれなりのいわゆる外貨減らしというか、円対策というか、そういうものの効果も端的に出てくる問題であるし、しかも輸出競争力が日本は強いというその根源は、やはり何といっても日本国民がまだまだ所得が低い、特に低賃金であるということが一つ。それからもう一つは、社会保障なり社会福祉なりというようなものが、非常に資源配分がまずい状況にあること、経営者もそういう方面に金を出していないということ。あるいはまた、公害のたれ流しというようなことで、公害防止にも費用をさいてないというようなこと。そういうようなものが全部集まって輸出競争力に転化をしている。そういうものが日本の国際競争力を強めてきた最大の原因なんだということですから、その結果生まれた国際収支のアンバランス、特に輸出の急増というようなものを押えたものは、やはりそういう面に当然流していくということが考えられなければならぬという、非常に基本的な問題意識であろうと私は思うわけなんですが、次官はいかがですか。
  123. 大村襄治

    大村政府委員 この税が創設せられた場合の規模、程度、期間、そういった点等を念頭に置きまして、なお御説の点も財政需要として今後重視しなければならない面でございますので、考慮に入れて対処してまいらなければならない、さように考える次第でございます。
  124. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私どもの先輩で参議院におられた木村禧八郎先生が、国際収支の大幅な黒字が、景気がよくなっても——かなり景気は好転しましたね。それにもかかわらず、昨年大幅の円切り上げが行なわれたにもかかわらず、そしてことし景気がよくなったにもかかわらず、依然としてこの黒字が続いている。この根本原因に手を打たなければなるまいということを指摘をされているわけですが、その根本原因として、アメリカのベトナムインフレをまず押えねばなるまいということなんです。二つ目には、日本の二重価格。これはかつて国会でもずいぶん論議をされ、世間を騒がした例のカラーテレビの問題、六万九千円で外国には売っていて、同じ品物を日本国内では大体十九万、十八万というような値段で売っておったという、こういう輸出価格と国内価格、同じものでありながら輸出に向けるものと国内向けのものとの間にある二重価格の問題、こういうものを解決しなければなるまい。それから、日本の国際的低賃金の解消をはからなければならない。同時に、日本企業の公害防止負担を回避している現状というものを改めさせなければならぬ。それからもう一つは、租税特別措置などを中心にして、大企業に対する国税、地方税の大幅減免税というものがあるということ。そして社会資本が決定的な立ちおくれを示しているということ。こういうものに対して思い切った根源に向かっての対策を講じないで、小手先の対策ばかりやっている。しかも、今回、冒頭から指摘をいたしておりまするように、この五項目の中でも、ほんのつまみ食い程度に、その中のたいした効果があるとも思われないものだけを拾い上げてやっているというようなこと。貿管令の発動も、だいぶ遅疑逡巡をして、おそらく機を失しておるのではないかと私どもは思うわけだけれども、こういうことを続けていれば、やはり円の再切り上げというものはもはや必至であるということにならざるを得ないだろう、こういうように思うのですが、そういう点で、いま指摘をしたような根本の原因の解決をはかっていかなければ小手先ではだめだという、こういう問題点について、大蔵省としてこれからどのように対処をされるお気持ちがあるのか、この点をひとつ聞いておきたいと思うわけです。
  125. 大村襄治

    大村政府委員 ただいまの御指摘のいろいろな原因でございますが、わが国の経済構造がこれまで輸出指向型であった点は確かにございますので、それを改めるためいろいろな施策を講じているわけでございます。今回の措置におきましても、租税特別措置、輸出振興税制を改めるという点は、ことしの通常国会に引き続いて今国会も実施をはかっているわけでございます。また、社会資本の立ちおくれにつきましては、補正予算におきまして、社会資本あるいは環境施設等の予算の増額を特に重視して計上している次第でございまして、理想に比べますれば確かに不十分のそしりは免れないと思うのでありますが、なすべきことのうちやれるものはどしどし実行に移す、またその前提として立法措置を講じなければいけないものは国会の御審議を願う、そういう姿勢で進めているのでございますので、御了承を賜わりたいと思うわけでございます。
  126. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 どうも大村次官の御答弁は当たりさわりがなくて、ちっとも胸にこたえるような答弁をしてくれないので、不満の意を表します。もっと本気になった答弁をひとつしてもらいたいと思うのですよ。あなたも副大臣なんですからね。大臣のかわりに来ているのですから、大臣と同じくらいの権威を持った答弁をやはりしてもらいたいと思うのです。一とおりの、優等生がちょいちょいと作文を書いたようなことで言われたのでは、私ども質問をするかいがなくなりますし、意気も上がらないことになりますので、もっと気合いを入れた、魂を入れた答弁というのをしてもらわぬと論議がかみ合っていいものが出てこないような気がするので、その点あえて苦言を呈しておきます。  今回、三つの法案の改正が一括して提案されているわけです。租税特別措置法の一部改正が一つ、それから関税暫定措置法の一部改正が一つ、それから輸出入銀行法の一部改正。そして輸入機運を拡大する、あるいは海外投資金融をさらに拡充強化をする、こういうような内容になっておるわけでありますが、これによって対外経済関係を調整する、要するに円切り上げ防止に向かう、またいわゆる国際収支のアンバランスというものを直すための効果というものは、この法案一つ一つについてどれくらいのものが予定を見込まれているのか。対外経済を調整するという立場から、円対策のためにどれだけ貢献をするのか。輸出が——輸出がというよりも、輸出入のバランスをはかる上でどういうような数字的な、たとえばこの租税特別措置法で海外市場開拓準備金をはずすということによってどれくらいドル減らしができるのか、こういうようなことで見込みの数字、見通しというようなものがあれば説明をしていただきたいと思うわけです。
  127. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま御質問いただきました今回の諾措置の国際収支に及ぼす数量的効果ということでございますが、実はこの数量的効果というのを計算するのは非常にむずかしいわけでございます。と申しますのは、各種のモデルの計算にいたしましても、ここに書いてあるような諸措置をうまくモデルに組み込むような変数の体系になっていないわけでございます。したがいまして計算は非常にむずかしいわけでございますが、一応補正予算関係と貿管令関係を別にいたしまして、関税関係その他の今回の諸措置の数字を非常に大胆にはじきましたところでは、平年度、と申しますのは四十八年度のベースになりますが、それにおいて大体十億ドル程度というふうに見込んでおります。その大宗は、関税の引き下げと輸入割り当ての拡大、これで約その半分ぐらい。残りが先ほど御指摘がありました税制の関係、海外市場開拓準備金でございますとかの関係、あるいは携帯品免税限度の引き上げ、輸銀関係の輸入金融の拡充その他諸般のものを見込みまして残り半分程度というふうに見込んでおります。  税の関係につきましては、主税局のほうから御答弁申し上げます。
  128. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 補足させていただきますが、御質問の第一にございました海外市場開拓準備金制度、この際、資本金十億円超の法人につきまして、期限前にこれを廃止するという措置、これで直接に輸出の減がどの程度出るかということは、実はきわめてむずかしゅうございます。と申しますのは、そもそもこの措置が直接輸出を幾らふやすということにつながっておりませんので、輸出をした企業に準備金の積み立てを通じて、法人税の軽減を通じて体質を強化させる、それが輸出の増強につながるという考え方ででき上がっておりますので、この積み立て金を積まなくなったから急に輸出をやめようとか、そういうふうには必ずしもつながらないのではないか。そういう意味で、この措置によりまして直ちに輸出が幾ら減るかということは、測定がほとんど不可能に近いのじゃないか。しかし全体のものの考え方といたしまして、よく御指摘になります輸出優先、生産第一から福祉向上へ切りかえる、特に輸出にひっかけてと申しますか、輸出振興を基本としてやっておる特別措置というものはこの際廃止すべきだという考え方で租税緊急措置として取り上げた、さように御了承いただきたいと思います。
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 通産省に伺いますが、通産省では貿管令を発動する。これは通産省としてもかなりの決断を要した問題だと思うのですが、これでどの程度ドル減らしに貢献するか、その効果を数量的にどういうように見通して考えをまとめられておるのか、この点やはりお答えをいただきたいと思います。
  130. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答えいたします。  私どもいま考えております十九品目でございますが、スキームで考えまして、一年間で約十億ドルという感じでおります。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その十億ドルというのはどういう計算でそういうように考えられておるのか、大体のことを明らかにしていただきたい。
  132. 藤原一郎

    ○藤原説明員 十九品目につきまして、昨年度の伸び率に対しまして、円ベースに直しまして、横ばいの点から伸びました部分の二分の一をカットするという計算をいたしますと、一応年間十億ドル弱の輸出カットになる計算であります。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 たまり過ぎたドル、私どもはそう言っているのですが、これは次官のお考えはどうなんですか。公的外貨準備高、これは百七十八億ドルになった。そのほかに実質的に外貨保有というのが九億ドルと国際金融局長が言われたような数字を加えれば百八十七億ドルある。新聞では二百四十二億ドルといっている。ドイツをむしろ抜いたといわれるような状況にある。これはやはり外貨が多過ぎる、こういうことにはお考えは同じでございますか。
  134. 大村襄治

    大村政府委員 大体ことしに入ってからの外貨の保有高の推移を見ておりますと、おおむね横ばいで来ておったのでありますが、十月末で十三億ドルくらいふえてきております。その原因が那辺にあるか、いろいろ調査もし、検討もしておるのでありますが、一つには六月の輸入のあれが十月に反映している、そういったようなどちらかというと技術的な点も多少あるわけでございますので、そういった点も評価しながら、今後はたして大幅に外貨がふえていくのか、その点をさらに検討してまいりたいと思うのであります。大ざっぱにいいまして、これだけ日本の経済が大きくなってきておるのでありますから、百六十五億ドル台のものが大体横ばいで推移するということであれば、それ自体必ずしも多過ぎるということにはならないと思うのでありますが、これが急に毎月十億ドルずつふえていって二百億ドルをこし、なんとかいうことになると、これは少しぼっておけない事態になるというふうな感じを持っております。
  135. 林大造

    ○林(大)政府委員 若干補足して御説明を申し上げたいと存じます。  現在の外貨準備高が少な過ぎるとは思っておりませんが、しかし、何ごともタイムラグというのがあるわけでありまして、ただいま政務次官が御指摘になりましたように、輸出のほうは現金化するのが比較的早いのに対しまして、輸入のほうは、現実に外貨資金として海外に流出してまいりますのは大体三カ月から四カ月くらいおくれて出ていくという傾向がございます。その関係で最近非常に輸入がふえてきておりますのが、現在の高い水準になっております輸入が、直ちに外貨準備の増減に反映いたしませんで、現在の外貨準備の増減には輸入サイドでは七月あるいは六月あたりの輸入の数字が響いているという技術的な関係があるわけでございます。今後の外貨準備高の推移につきまして、ある程度ふえていくのはやむを得ないという政務次官のお話もございましたが、私どもといたしましても、今回の円対策が効果をあらわすまで、あるいは平価調整の効果が現実に効果をあらわすまで、さらには景気上昇の結果が現実に外貨準備高に響いてまいりますまでには若干の時間のズレがあるのはやむを得ないというふうに存じております。したがいまして、外貨準備の高をそれほど私どもとしては問題とするつもりはございません。私どもが特に努力をいたしますのは国際収支の経常収支、特に貿易収支の動向につきまして、先ほど来種々御指摘がありますような努力を至急続けていく。さらに対外的な開放体制をとって、世界の重要な一員として責任ある日本の立場をしっかりと守っていく、そのために日本の経済構造を変えていく。御指摘のように福祉重点型に切りかえていくというような諸般の措置をとってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  136. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次官の御答弁だと、そう多いとは思わない。いまくらいの、経済規模がどんどん大きくなるのだから、そのくらい、百六十億ドル台くらいのところはそう驚くにあたらぬというニュアンスの答弁でした。それならばやはり、こういう対外経済関係を調整するというようなことがそれほど緊急性を持たないということになる。あわててわれわれがここで議論を必死に展開するというようなこともなさそうな気がするのですね。それと国際金融局長の答弁ですと、多寡を問題にするということにウエートはむしろないのだという御答弁である。私どもはやはり、外貨が急増しながら外貨準備高も非常な額にのぼっている。これはやはり、かつてはどれくらいが外貨準備高として適正なのかというような議論があり、輸入の三分の一くらいあればいいのではないか、まあその辺のところが適正ではないかというような議論すらかつていわれたこともあるわけなんですね。そういうようなところから見れば、輸入がそれほどふえないにもかかわらず輸出が急増して、経済白書でも国際収支のバランスの問題が当面の問題だということが強く指摘されているし、そのほか需給バランスの問題もある、あるいは福祉ギャップというようなものもあるのだというようなことがいわれておるわけでありますが、そういう点では国際収支の動向をにらんで、絶対的にも外貨準備高というものは多過ぎてきている、こういうような認識で、われわれもそのことがやはり直接的に円切り上げにも結びつかざるを得ないような、先ほども引用しましたようにシュルツの発言というようなこともあるというようなことも含めて問題を重視をしておるわけなんですけれども、そのことについては、はたして経済規模はもうGNPが八十兆をこえたのだからこの程度はどうということはないのだというような感覚でやられるのかどうか、その点をもう一ぺん確かめておきたいと思うことがひとつ。  それから、通産省にお尋ねしたいのは、前からやはり外貨がある程度たまり過ぎたとわれわれ思っておるわけだから、それを活用して物価の安定なりあるいは福祉の充実なりというようなところに振り向ける手はないかというようなことを言っておった。そういう中である程度公的機関が、政府みずからやってもいいし、そういうものが海外から輸入を増大させるというような一つの意味も含めて、せっかくのドルを、外貨を国民福祉のために活用するというようなことで資源を買う。これはたとえば今日日本の畜産あるいは家禽などにおいても飼料はどんどん値上がりして非常に農民が苦しんでいる。そういうような資源、飼料などを政府なり公的機関なりで買っておいて、安く国内に配給をするというようなことなどが全く考えられないことなのかどうか、もうそういうことは全然構想として入ってないのかどうか、そういう点について通産省の御見解を聞きたいと思う。
  137. 大村襄治

    大村政府委員 外貨の準備高についての重ねての御質問でございますので、お答え申し上げます。  外貨準備高はどの程度の基準で判断したらいいか、その点にはいろいろ御説のあるところでございます。しかしながら、この外貨の準備がわが国において最近急増しましたためにいろいろな施策が講ぜられておるのでございますが、その効果が生ずるにはやはり数カ月の期間を要する場合が少なくないのでございまして、そういった点につきましては早目に手を打って、今後急増することのないように万全の手当てをしていく必要がある、そのように考えておる次第でございます。先ほど最近の数字を申し上げました際にやや違った御印象を与えるような発言を申し上げましたかもしれませんが、その点はこの際訂正させていただきたいと思う次第でございます。
  138. 藤原一郎

    ○藤原説明員 外貨活用策についての御質問かと思うわけでございますが、外貨活用策につきましては、先般、六月ごろ外貨の状態というものを考えまして、その際、第二外為会計を創設するとか、いろいろな議論があったわけでございますが、その後一応現行制度でやれる範囲で外貨を活用するということで、大蔵省、その他関係各省と話し合いをいたしまして現在進めておるわけでございます。  お話しのような公的機関でいろいろ実施をするという点につきましては、それぞれ各担当機関及び大蔵省との間で協議をしながら進めていく、こういうことになっていると思います。
  139. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 われわれもことし国会の審議の過程でずいぶんそれらの問題に触れてきたわけですが、何となくその問題が完全に立ち消えになったような形になっておる。資源の乏しい日本だし、また飼料の輸入というようなものも急増し、しかもそれが値上がりをして、国内の末端農家が非常にひどい目にあっているというような問題などもあるし、そのほかの金属鉱山資源というようなものなどについても、これは公的機関なり政府なりが直接買いつけて、それの責任において貯蔵をしておって、そのときそのときの国際市況というようなものを勘案しながら払い下げをしていくというようなことなど、外貨活用ということを国民の福祉に直接結びつけるような、そういう基本的視点というものを忘れないでそういうことを考えるということは、やはりそういう考えがあってしかるべきだし、そういうことこそ決断と実行をさるべきだ、こういうように思うわけで、これは引き続き十分検討をしてもらいたいと思うわけです。  最後に、銀行局長にお聞きをいたしますが、外貨が急増する、ドル売りを浴びせられて日銀も一生懸命買いささえをしておる。こういうことで十四日間で十六億ドルもふえるというようなドル売りがあってそれを日銀が買った、こういうようなことも新聞に報道されている。そうしますと、それはそのまま円にかわる、それだけ日銀券が増発をされる。国内の金融はそういう点で、歳末を迎えてさらに一そう、こういう状況が続けば、やはり金融がゆるむ方向に行くのではないか。外為会計の散布超過ということとも関連をするわけですけれども、そういう状態になるのだろう、こういうように思うわけですが、この問題とからんで年末の金融情勢の見通しというものを伺っておきたいと思います。
  140. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに外為会計からの散布というのは昨年の秋非常に大きなものがございました。これがいわゆる金融の超緩和という状況をもたらしたわけでございますが、しかし、景気が上昇してまいりまして、資金需要も圧盛になってまいりましたし、その後の経済の環境も変わってまいりました過程におきましては、いわゆるその超緩和という状況は漸次緩和しつつあるわけでございます。もちろん輸出が大幅に伸びますと外為会計からの散布超過は起こるわけでございますし、そこは日本銀行が政策を働かせます場合に、いわゆるオペレーションでございますとか、あるいはその他の手形の売買でございますとか、そういうことで全体の国内の資金需給関係を見ながら調節しておるというのが実情でございます。そういう意味からいたしますと、日本銀行といたしましては、今日の段階におきましては、特に意図的に金融を引き締めるあるいは意図的に金融をゆるめるということではなくて、いましばらくは中立的な姿勢で金融調節を続けていくということを述べておりますが、大体そういう考え方で今後しばらくは推移していいのではないかと私は考えております。  その場合に、いわゆる季節的な繁閑の問題といたしまして、年末に特に中小企業の問題なども起こります。この辺のところにつきましては、市中金融機関が例年どおり年末のいわゆる金融についてのいろいろの努力をいたします。あるいは政府機関といたしましても、年末金融につきましては特別の配慮をしていくということでやってまいることにしております。したがいまして、特に外為からの資金の放出というものは、その分がプラスとして市中に残留することのないように、それに見合う分はやはり日本銀行が適当にコントロールしていくということが適切ではないか、かように考えております。
  141. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 輸出関連部門とそれ以外の部門とで、やはり金融面での引き締まりというようなものが景気の回復とともにやや出てきている。超緩慢の時代からやや小締まりというような情勢を迎えておる。そこへ持ってきて、今度外貨急増、ドル売りというようなことで、日銀が買いささえて、それが円資金にどんどん転換して札がよけい出る。こういうことになって、歳末、この金融多忙の中でもう一ぺん金融超緩慢のような事態が出るのではないかというようなことについては、それほどの問題ではないというようにいまの話で受け取ったわけでありますが、輸出関連部門以外の小締まりぎみになってきているというようなことで、小締まりであってもまっ先に被害を受けるのはやはり中小企業でありますから、そういう面に対する歳末における、金融繁忙の時期における対策というものは、例年以上にやはりきめこまかく措置をされるようにこの際要望をしておきたいと思います。  それから最後に一つだけ、法案の中で関税の一律引き下げを二〇%やる、五分の四にするということでありますが、そこで、その結果、「特定の貨物の輸入が増加し、国内産業が相当な損害を受け、又は受けるおそれがある場合には、政令で貨物を指定し、この軽減措置を停止することができる」ということでありますが、この「相当な損害」というようなことはどのようにして判断をされるのか。そういう「相当な損害」という判断の基準はどういうところにお考えになっておられるのか、その点だけお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  142. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 これにつきましては、特恵関税制度においてやはり同じようなエスケープクローズの規定がございまして、今度も同じような趣旨で同じ条文の規定を置いたわけでございますが、従来「重大な損害」の場合には、企業あるいは当該産業の存立が危うい、そういったような重大な損害というものに一応考えておりましたけれども、それでは今回のような措置についてはやはり中小企業対策、いろいろな対策において非常に問題があるということからいたしまして、私どもといたしましては、損害の要件を軽くいたしまして、なるべく弾力的に、機を失せず、そういった事態に即応いたしまして、要は国内産業が輸入急増によって脅かされる、こういった事態がございましたならば、ケース・バイ・ケースで、しかも公正な判断をする必要がございますから、したがいまして、関税率審議会の中に特殊関税部会を設置いたしまして、公正な判断のもとに運用してまいりたい、かように考えております。
  143. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  144. 金子一平

    金子委員長 貝沼次郎君。
  145. 貝沼次郎

    貝沼委員 午前中からずっと質疑を聞いて勉強しておったわけでありますけれども、やはりこの問題、つまり円切りの非常に危険性があるという問題の根本ですね、この根本問題は一体どこからくるのか、こういうことが私はやっぱり大事であろうと思います。ただ、ドルがたまったからというのは結果であって、これはたまるべくしてたまったのであって、ただ集まったわけではないわけです。したがって、その根本的な要因というか、その分析というものは事務当局としてはどのように考えておられるのか、この点についてお伺いいたします。
  146. 林大造

    ○林(大)政府委員 現在いろいろいわれておりますものの一つの目安といたしまして、外貨準備という問題と経常収支ないしは貿易収支という問題とがあるわけでございます。このうち外貨準備につきましては、貿易収支ないしは経常収支の結果に資本取引が加わっているわけでございますが、しかし、通貨の力を最終的に判断するものといたしましては、やはり外貨準備のそのときどきの動きではなくて、経常収支ないしは貿易収支をとるほうが正しいつかみ方ではなかろうか。と申しますのは、外貨準備に響いてまいります資本取引の中には、かなり思惑的な要素に基づく短期資本の流出入が響いてくるわけでございます。その意味におきまして、各種の国際収支の調整策の基本としては、大蔵大臣もIMFの総会で言われましたけれども、長期のトレンドを見る。その長期のトレンドを見るときには、思惑的な要素で大きく動くことの多い外貨準備をとるのはやや不適当でございまして、それは結果としてむしろ見る。基本は経常収支を見る。経常収支と貿易収支の関係につきましては、その国その国に特殊の事情がございまして、たとえば西独のように、貿易収支が大幅な黒字でも、貿易外収支ないしは移転収支という経常収支の他の項目でかなり赤字が出て、結果的には大体経常収支とんとんになる国もございます。いろいろございますけれども日本の場合には、大体貿易収支、経常収支のトレンドで見ていけばいいのではないかというふうに感じているわけでございます。その意味におきまして、今回十月二十日に決定を見ました閣僚懇談会の対策も、主としてこの経常収支、貿易収支に的をしぼっているわけでございます。
  147. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういう経済状態に追い込まれた原因というのは、どういうふうにお考えですか。
  148. 林大造

    ○林(大)政府委員 追い込まれたと申しますか、現在かなりの黒字が依然として続き、また外貨準備もかなりふえているわけでございますけれども、これは基本的には、日本の国際的な経済の競争力がかなり強くなった、その結果を反映いたしまして、昨年の末にスミソニアン体制ができ上がりまして、レート調整が行なわれたわけでございますが、現在まだその効果が十分にあらわれていない。さらには景気関係のズレが内外であった。さらに根本的には、日本の経済構造が従来輸出あるいは民間設備投資重点型であった。そういうような事柄が総括されて今日のような姿になっているのであるというふうに理解をいたしております。
  149. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう経済構造の問題で、ただ、いまの経済状況で円の再切り上げが心配である。したがって、今回出ておるような法案等が出されて、そして調整をしようというような問題の場合、やはり根本的な問題を解決しないと、これは何回も何回もまた繰り返していくのではないか。したがって、いま国民の側から見ると、はたしてこれで再切り上げというものを回避することができるのだろうかどうか、この点が非常に心配であります。私もはっきり言って、いまの対策ではどうもこれは回避できないのではないか、こういう不安がつのっております。先般の総理大臣、それから大蔵大臣の財政演説等を聞きましても、それによって回避ができるという確信ができたのではなくて、むしろますます不安になってきたという感じがいたしました。こういうようなところから、今回のこの円の再切り上げ問題について、ほんとうに事務当局が、あるいは政府が、この回避を絶対やっていけるのだという確信があるのかどうか、まずこの辺を聞いておきたい。
  150. 林大造

    ○林(大)政府委員 最初にはっきり申し上げておきたいと存じますが、私どもは円の切り上げは回避できると信じております。回避できるというのは、そもそもそういう危険があるということでございますが、私どもは海外その他から見ます限りは、円切り上げの圧力というのはほとんどないというふうに申し上げてよろしいかと存じます。  午前中にも御説明申し上げましたけれども、昨年のスミソニアン会議におきますレート調整の効果というのが、現在までのところ必ずしも十分にあらわれていないというのは世界的な現象でございまして、これはいろいろな原因があるかと存じます。その一つの有力な原因は、景気回復のズレというものもあるかと存じますが、経常収支の黒字、ことにGNPに対する割合は、日本では下がっておりますが、ヨーロッパの諸国ではかなりふえているところもあるほどでございます。したがいまして、海外では昨年のレート調整の効果をもっとはっきりあらわすようにもう少し時間をかけて待つ、そして各国がそれぞれにその結果がよくあらわれるような調整措置をとるということを期待しているというのが、海外における現在の空気でございます。その意味におきまして、日本がことしの初めからずっととり続けております景気回復のための財政措置あるいは金融措置は非常に多とされているわけでございますし、さらに加えまして昨年の六月以来とられております各種の円対策、一番最近のは十月二十日の関係閣僚懇談会の決定でございますが、これが正しい方向であると存じます。  何もしないでいいというわけでは決してございませんで、確かに現在の日本の貿易収支、経常収支は非常に黒字幅が大きいわけでございますから、これを適度のところに圧縮するよう努力する、またそのために福祉充実のための国内の構造転換、さらには開放体制をとると申しますか、貿易、資本の自由化ということに努力していかなければいけないわけでございますが、またこれらの措置が効果をあらわすまでには若干の時間がかかることはやむを得ないかと存じますが、これらの措置を総合的に努力してまいりますことによりまして、現在国内で不安が持たれております円の切り上げというものは十分に回避できる。われわれがこれを回避しなければいけないという気持ちで行なっております努力が実を結んで回避ができるというふうに信じております。
  151. 貝沼次郎

    貝沼委員 回避できると言わなければなりませんでしょうけれども、しかし、現実に出ておるいろいろな情報あるいは状況、こういうものを判断してみますると、どうもおぼつかない点がたくさんあります。そこで、先ほどもたしか質問があったと思いますけれども、今回のこの法案によってどれだけの効果というものが見込まれるのか、もう一ぺんお願いします。
  152. 林大造

    ○林(大)政府委員 今回の措置の中で、補正予算関係及び貿易管理令の発動関係を別にいたしまして、計算は非常に技術的にむずかしい点が多々ございますけれども、非常に大胆な推計を試みまして、平年度、すなわち四十八年度におきまして約十億ドル、そのうち大体半ばが関税関係の措置により、その他が輸入関係の簡素化とかあるいは輸出入金利の調整とか、その他の措置によって達成できるというふうに見込んでおります。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほどたしか数字では、十億ドルの内容というものが、関税率の引き下げによって二ないし三億ドル、それから輸入の関係が二億ドルぐらい、特恵が一億ドルぐらい、その他四ないし五億ドル、合計十億ドルぐらい、こういうような話だったと思いますが、この数字は間違いありませんか。
  154. 林大造

    ○林(大)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  155. 貝沼次郎

    貝沼委員 この場合、特恵というのはどこでやっているのですか。
  156. 林大造

    ○林(大)政府委員 関税局で所管しております。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 今回の第三次には特恵は入っているわけですか。
  158. 林大造

    ○林(大)政府委員 現在の措置には入っておりません。今回提案いたしました法案の中には入っておりません。
  159. 貝沼次郎

    貝沼委員 法案の中に入っていないと、これはどこでされるわけですか。
  160. 林大造

    ○林(大)政府委員 先ほど関税局長のほうから御説明いたしましたとおり、関税局といたしましては、できれば次の国会に御提案申し上げて、四十八年度には実施の運びで、四十八年度のいつになりますか詳しいことは関税局のほうからお聞き取りいただきたいと存じますが、そのような予定で準備を進めているというふうに聞いております。
  161. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 去る十月二十日の対外経済政策推進関係閣僚懇談会の中で「特恵関税制度の改正およびその運用の改善をはかる」ということがきまったわけでございます。それにつきましては、私ども関係各省の間でただいまいろいろ話を進めておりますが、国内産業への配慮ということもこれあり、したがいまして、今度の臨時国会には残念ながら間に合いませんでしたが、次期通常国会を目途に私ども提案すべく現在検討中でございます。
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 通常国会ということですけれども、実際出てないわけですよね。実際は出ておりません。ただ検討している段階であって、出ておらない。ところが、それならば、計算するときに、特恵関税の部門だけでなく、ほかのものも通常国会にかけるというような意味の答弁がだいぶあったと思いますけれども、それらはなぜ計算されていないのですか。
  163. 林大造

    ○林(大)政府委員 実は非常に大胆な推計でございます関係上、海外市場開拓準備金のところで主税局からも御説明申し上げましたとおり、非常にその推計が困難な要素があるわけでございます。大項目について概略の推計を立てたわけでございまして、したがいまして、こまかにこの措置は幾ら、この措置は幾らということになりますと、残念ながらそこまで詳細はお答えできかねるという程度の正確さの数字であるということ、たいへん申しわけない次第でありますが、そういうことでございます。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 私もそういうこまかいことはほんとうは言いたくなかったのですけれども、先ほどから対外経済政策推進関係閣僚懇談会のこの資料によって説明されたのを聞いておりますと、たとえば輸入の自由化の問題とかあるいは特恵関税制度の改善とか、いろいろ出ておりましたけれども一この中で、次期通常国会に提出を考えておるというようなニュアンスのものがあった。ところが、今度十億ドルというのは、何となく数字を合わせるような感じに聞こえてくるものですから、私はこういう質問をしたわけであります。  それならば、この十億ドルというものは、今度、たとえば総理大臣がたしか三年後においてGNPの一%ぐらいをめどにするというような発言があったと思いますけれども、そういうものとかみ合わした場合、一体どういうスケジュールになってそれがなされていくわけですか、その点についての答弁をお願いします。
  165. 林大造

    ○林(大)政府委員 GNPの一%程度と申しますと、今後二、三年たちましたところでは、日本の成長率とのかみ合わせになるわけでございます。その場合の成長率は当然名目成長率になるわけでございますが、かりにこれを非常にラフに四千億ドルといたしますと、一%というのは約四十億ドルになるわけでございます。  御承知のとおり、今年度の改定の国際収支見通しは、これは経済企画庁が担当して作成したものでございますが、五十五億ドルということになっております。今後これがどういうふうに動くかということにつきましては、その基調的な動きと、それに対します今回の調整措置の影響とかみ合わせていかないといけないわけでございますが、この五十五億ドルがそのまま横ばいでは、先ほどの四十億ドルの数字にはならないと思うわけでございます。  ただ、その四十億ドルの数字と申し上げましても、これは内外の景気のすれ違いその他で上下に振れる性格のものでございますから、非常に大ざっぱな話でありまして、ただいま申し上げましたような措置を講ずることによりまして目標の方向に接近していくという感じの、非常に雑だという御指摘を受けるかもしれませんが、なかなか詳細な数字の見通しというものがむずかしゅうございますので、そういう方向で考えていくということを申し上げたいと存じます。
  166. 貝沼次郎

    貝沼委員 林さんは、雑だと言うだろうということですから、私はそのとおり、そう思います。  それで、そういうものははっきりと何ぼ何ぼというところまでは出ないことはわかりますけれども、やはりある程度のスケジュールというものはなければならないし、おそらくあるんだとは思いますけれども、そういう点の説明というものが国民になされないために非常に心配しておる、こういうことだと思うのです。  それから、たとえば私が非常に不安な点がたくさんあるというふうに申し上げたのは、一つは、十月の三十一日に駐米大使がワシントンで記者会見をしたときに、日米貿易の不均衡を是正するためには貿易管理令の発動だけでは効果が期待できない、こういうような発言をしたようであります。それから、佐々木日銀総裁は十月の二十六日の記者会見におきまして、第三次円対策はやや不十分である。それからさらに総理大臣は、十月の二十六日、内閣記者会との懇談におきまして、輸出貿易管理令の実施だけで効果があるかどうか疑問、したがって輸出税の検討を続ける用意があると、こう述べたと伝えられておりますけれども、こういうようなことを聞きますと、国民は、やはりこれは円の再切り上げをやるんじゃないか、やらないやらないと言いながらやるんじゃないか、こういう疑惑を持つのは私は当然ではないかと思いますが、この点について国民が理解できるように説明願いたい。
  167. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま牛場駐米大使、それから佐々木日銀総裁でございますか、それから田中内閣総理大臣の御発言についてお話がございましたが、実は新聞報道その他では必ずしもそのままのニュアンスが届いていない場合があるやに聞いております。私どもが具体的に聞いておりますのは、牛場大使の場合でございますが、牛場大使の発言として伝えられたところによりますと、場合によっては対米輸出の全面ストップも何か考えなければいけないと言われたとかあるいは言われないとか、いろいろな話があったようでございますが、外務省が現地に問い合わせたところによりますと、決してそのようなニュアンスの発言はしておられないようでございます。したがいまして、新聞その他の報道そのままにどなたがどういうふうに言われたかと申しますのはなかなか確認困難でございますけれども、しかし、今回の諸措置が、現段階で政府としてできるだけのことをやったのは事実でございます。そしてその中には当然のことながら、輸出税または輸出課徴金の創設については引き続き慎重に検討するということも含まれているわけでございまして、したがって、当然慎重に検討はされているわけでございます。  私どもといたしましては、これらの諸措置を鋭意推進することによりまして、時間は若干かかるかと存じますけれども、十分効果は出るというふうに存じている次第でございます。
  168. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらにもう一つ、ついでですから……。  ある報道によりますと、政府、日銀首脳は、十二月に行なわれると見られる総選挙終了後、円の再切り上げについて決断せざるを得ないという意向を二十日表明したというような報道があるのですが、この点についてはいかがでしょう。
  169. 林大造

    ○林(大)政府委員 私はそのような報道は一切存じておりません。私が知る限りではそういう動きは一切ございません。
  170. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういう発言があったらたいへんだと思います。  さらに今度は、こういう報道だけでなく実態のほうからいろいろと考えてみると、どうも不可避ではないかという色合いが非常に濃いわけです。たとえば、九月の貿易収支は再切り上げを見越した輸出急増で九億ドルをこして、このままいくと今年の貿易黒字が九十億ドルに達するのは確実と見られておるようでありますが、この点は間違いないでしょうか。
  171. 林大造

    ○林(大)政府委員 九月の輸出がかなりふえたのは事実でございます。今年度の貿易収支が幾らになるかということにつきましては、政府の公式見通しは、年度は八十二億ドルになっております。暦年については格別の計数はないわけでございますが、暦年で申しますと、一月から九月までに貿易収支が六十三億ドルになっております。いずれにしましても、かけ込み輸出と申しますか、あるいは繰り上げ輸出代金の回収と申しますか、いわゆるリーズというのは決して長続きするものではございませんし、また時が来れば逆戻りするものでございますから、私どもといたしましては、かりにそのようなものがありましてもそれはそれなりに受け取っておけばよろしいので、特にどうということには考えておりません。
  172. 貝沼次郎

    貝沼委員 民間経済界では、円の再切り上げはもう時間の問題である、年内か一月ごろであろう、こういうふうな判断をして、そしてもうすでに自主的に対策を立てていろいろと取引をやっているようであります。また、再切り上げを見越したリーズ・アンド・ラグズ、これに対する内圧も出始めているというようなことから、どうも安心できない、こういうような空気が多いわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  173. 林大造

    ○林(大)政府委員 民間のほうに若干そういう動きがあるという報道その他の話は私どもの耳にも伝わっております。しかし、私どもといたしましては円の切り上げをする意図はございませんし、またそれを回避できると信じております。したがいまして、そのことが次第にわかってくれば、おのずとそういう事態も解消されることを期待いたしております。
  174. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、まっ先に私は申し上げたいのでありますけれども、要するに、こういう問題は日本経済の体質からきておる。したがって、その体質を改善しなければいつになってもまた同じことを繰り返すであろう。これではどうしようもないのでありまして、やはりこれをほんとうに回避しようと思うならば、なるほど根本的に変わったなというところが見えなければならないと思うのです。  その点から考えてみますと、たとえば前の円対策八項目、それから新・円対策七項目、これは金利の引き下げとか外貨減らしでありましたけれども、こういう円対策ですら、急増するわが国の貿易収支黒字幅を縮小させることは非常にむずかしかったわけでありますけれども、こういうような過去の経験をもとにして考えた場合、いまのはまだそれよりも少ないわけでありますけれども、それではたしてほんとうにいけるのかどうかという心配があるわけです。この点についてはどのように説明されますか。
  175. 林大造

    ○林(大)政府委員 御指摘のとおり、日本の経済構造を変えていかなければいけないということは、私どももそのとおりに考えております。したがいまして、従来から政府といたしましては、公害関係その他各種の福祉増進のために日本の経済の構造を切りかえていく。一朝一夕にしてこれを行なうことはなかなかむずかしいかと存じますけれども、政府の大方針として、これは総理及び大蔵大臣の演説にもそのようなことははっきりとうたわれているわけでございます。  それから、最近の貿易収支の黒字あるいは経常収支の黒字が思ったように減ってこないということにつきましては、やはり時間をかけて待っていただきたい面もあるわけでございます。諸外国におきましても似たような事態は国により起こっているわけでございますから、景気のズレが次第に解消する、それから昨年末のレート調整の結果が効果を発揮する、さらには昨年以来今回の十月二十日の決定を含めまして鋭意進めております各般の措置が効果をあらわすまで若干の時間をかしてまいっていただければ、その所期の目的が表面にあらわれてくるというふうに存じております。
  176. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、その構造を改善するということでありますけれども、それならばまだまだやるべきところがたくさんあったではないか、こういうふうに私は思うのです。  それは、先ほども指摘があったかと思いますけれども、たとえばこの法案の第一番目に租税特別措置の問題が出ておるわけでありますが、この租税特別措置の問題にしても、単にここに出てきております海外市場開拓準備金のみではないはずですね。いままで輸出振興をしてきた税制というものは、決してこれだけではありません。  そこで、そういう輸出振興に関する税制を洗い直すということはこの際特に必要であったと思います。もっともその名前だけではなく、その根底に影響しておるものといたしましては、これはたくさんあると思います。賃金の問題、公害の問題、あるいはまた現在の租税体系そのものがおそらく輸出振興あるいは大企業優先というかっこうに考えられる面がたくさんあります。こういうような点についてほんとうに政府が手をつけて、このようにやりましたというようなところは見えないと私は思うのですけれども、この点はどのように一生懸命やったということを説明されるわけですか。
  177. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御質問でございますが、御承知のとおり、輸出振興のためあるいは輸出関連企業の体質強化のためとられておりました租税特別措置というものは、ある時期かなりの大きさに達しておりました。しかし私どもは、近来の事情の変化に即応いたしますために、できる限り努力いたしてまいったつもりでございまして、いわゆる輸出振興税制の中で最も金額的にもまた範囲としても大きかった輸出割り増し償却は、国会の御審議を経まして、すでに廃止させていただいております。なお残っておりますいわゆる輸出振興税制と申しますのは、二項目ございます。その一つにつきましては、今回、適用期限前に廃止するよう御審議をお願い申し上げております。ただ、ごらんのとおり、中小企業、中堅企業につきましては、適用期限前にあえて廃止に踏み切るというのはショックが強過ぎるから、適用期限まではいままでどおり置いておいたらどうかという御意見もございましたけれども、両者彼此勘案いたしました上で、現在のような姿で御提案申し上げております。  もう一つ残っておりますのは、技術等輸出に関連いたします所得控除制度でございます。これにつきましては、御承知のとおり、内容的にかなりの整理を進めてまいりました。現在残っておりますのは、簡単に申し上げまして、三種類の取引でございます。  その一つは、工業所有権等を輸出する、あるいはロイアルティーをもらうという場合でございます。これは知恵の輸出でございます。二番目は、著作権の輸出でございまして、これはいわば文化の輸出でございます。三番目は、コンサルティングフィーの問題でございまして、これまた知恵の輸出であり、また実態は開発途上国に対する技術援助という実態を備えているものでございます。  これにつきましては、両様の考え方がございまして、いま御説明申し上げましたとおり、物の輸出、貿易収支というものに直接からんでいないものでございます。このような知恵の輸出あるいは文化の輸出というものはなおしばらく残したらいいのではないかという御意見と、いやその角度からの意見もさることながら、やはり輸出というものを基礎にした減税措置であるのだから、これは輸出額、輸出取引というものを基礎にして減税を行なうというものは、それぞれの理由はあるにしても一切やめるのだ、そういうことは政策としてやめるのだという体制のほうを重視すべきであるという考え方両方ございます。  これにつきましては、あえて適用期限前に廃止するということは現在御提案申し上げておりませんけれども、周囲の情勢が変化しない限り、私どもといたしましては、適用期限到来の際には廃止の方向で検討させていただきたい、かように考えております。
  178. 貝沼次郎

    貝沼委員 廃止の方向でということですが、本日の新聞によりますと、大蔵省は、輸出振興税制として海外から批判の強い海外市場開拓準備金制度と技術輸出所得控除制度を四十八年度末までに全廃する方針を六日決めた、こういうふうにありますが、この情報は確かですか。
  179. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 率直に申し上げまして、この時期に大蔵省が税制改正の具体的内容をいろいろきめたという報道は、本件に限りませず、すべて観測記事でございます。私どもといたしましては、いまだ結論は出しておりません。   〔委員長退席、村山委員長代理着席〕
  180. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういうものは私は当然今回の法案に盛り込まれるほうがよかったと思うのですね。ところが、それが抜けておる。まあいろいろないきさつはあったようでありますけれども、いずれにしても抜けておる。こういう点で私は対策としてはちょっと不備ではないか、こういう感じがいたします。先ほど政務次官がくしくも、今回のこの対策は理想に比べれば確かに不十分な措置であるという発言がありましたけれども、その辺のところが私はあるのではないかという感じがいたします。したがって、そういう発言もあり、国民から見ればやはりこれは完全なものではないなという感じはいたします。  そこで、たとえば先ほどから話になっておりました輸出税、それから輸出課徴金、輸出抑制のきめ手とされているものでありますけれども、こういうものが見送られて、そして貿易管理令の発動、こういうことになったようでありますけれども、なぜこういうものを見送ってしまったのか、そしてなぜこれを併用しなかったのか、この辺のところについて説明を願います。
  181. 林大造

    ○林(大)政府委員 御指摘のとおり、輸出を規制する方法といたしましていろいろな案が検討されたわけでございまして、その大きい項目として貿管令の発動と輸出税ないしは輸出課徴金の賦課という二つの方法が検討されたわけでございます。このうち貿管令の発動は、現行法令に基づきまして即座に実施できる、かつ数量規制でございますから直接的に直ちにきく。これに対しまして輸出税と輸出課徴金のほうは、価格効果を通じまして輸出の数量が減ることをねらっている措置であります上に、本件につきましてはやはりしさいな準備と法令上の諸般の手続を経る必要があるということで、現在緊急に発動するのは輸出貿易管理令であるという結論が得られたわけでございます。しかしそれで、輸出税または輸出課徴金が全くやめになったわけではございませんで、引き続き慎重に検討するというふうに決定を見た次第でございます。私どもといたしましては、現在通産省が極力貿管令の発動につきまして努力をされておりますので、それの効果発揮を期待している段階でございます。
  182. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあ引き続き検討という——今回の内閣は非常に検討ということばが多いわけですが、この引き続き検討する——するのはいいのですけれども、ちょっと時間的に何となくのんびりしているのじゃないかという感じがしないでもないのですね。ほんとうに、いま答弁がありましたように、これは大事なことなんだ。大事なことなら早くすればいいと思うのですね。それが大事なことなんだ、そこで引き続き検討するんだ。いま円の問題をみんな心配しておるのは、そう二年とか三年先の話をしておるわけじゃないのですね。もう目の先に迫った危機というものを感じながらみな話をしておるわけでありますから、それを政府当局がこれから検討いたしますというようなことでは、一体これ、やる気があるのだろうかないのだろうか。通常国会といっても、もうこれは一月になるわけでありますから、やはりこの辺のところが、私はその取り組む姿勢という点についてちょっとなまぬるいのじゃないかという感じがいたします。  さらに、先ほどこの管理令の基準ということにつきまして通産省の答弁を聞いておりますと、三つの基準があり、そして四十七年一月−七月の輸出実績の二〇%、それから輸出の寄与率の大きなもの、それから年間輸出額一億ドル以上、こういうようにたしか聞いたと思いますが、間違いありませんか。——ところが、そういうような管理令の効果というものがはたしてどれだけあるのか、また四十八年度の目標はどうかという堀委員の質問に対しましては、輸出を押えるためには時間を切って管理令で押えるという答弁もありましたけれども、結論としては現在きちっと数字ははじいていない、こういうような答弁であったと思います。   〔村山委員長代理退席、委員長着席〕  こういうことも、ただ名前は出てくる、確かにね。あれはやる、これはやるという名前は出てくるけれども、いつまでにどうするか、こういうような具体的な目標というか、スケジュールというか、そういうものが全然示されない。その辺について私どもは非常にわからない点が多いわけでありますけれども、こういうような姿勢であっては国民に疑惑を持たれても私はしかたがないと思います。この点についてはどう答弁されますか。
  183. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答えいたします。  先ほど御答弁申し上げたわけでありますが、輸出調整の期間といたしましては、本年九月一日から来年の八月末までの期間について緊急に輸出調整をする、こういうことで、期間は一年間一応きめておるわけでございます。その間に調整いたします額は、これも計算はなかなかむずかしいわけでございますが、一応ラフな計算といたしましては、現在年間約十億ドル程度を、調整をいたしません場合に比べて、輸出をカットするということになろうかと思います。
  184. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、さらに租税特別措置のほうも、先ほど申し上げましたように、いろいろな法律がある、その法律を早く洗い直しをやって、そして日本のこの特別措置を洗い直しをして、もう一度きちっとしたものにしなければならないという質問は前回行なわれているわけであります。何回も何回も行なわれている。ところが、何だかんだ言いながら、結局いままでそれをやらないで、そしてこういうような事態に入ってあわてて何となく調子を合わせているような感じにとれるわけでありますけれども、やはりそういう特別措置の問題点というのは事務当局が一番よく知っているわけでありますから、国民の声として私たちが訴えた場合にもっと積極的な前向きな姿勢でそれに取り組むという姿勢が私は必要ではないかと思います。今後そういうふうに取り計らっていただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  185. 大村襄治

    大村政府委員 租税特別措置につきましては、その目的の趣旨に照らしまして、使命を達したものはすみやかにその改廃を行なうということを方針にいたしまして、毎年のように洗い直して、必要なものから改正をいたしているのでございます。特にこの円対策の関連におきましてわが国の経済構造を変えて、輸出指向型の経済から福祉指向型の経済へと流れを大きく変えなければいけない時代でございますので、御指摘の輸出関係の税制で、今回の改正になお残されております問題につきましては、文字どおり引き続き検討を続けまして、成案を得れば次の国会に提案する、そういう姿勢で臨むことにいたしたいと考えております。
  186. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、特別措置だけではなく、法人税の場合もやはり大企業が非常に優遇されておる、こういうことはもう周知の事実でございますけれども、世界的に比べましても、たとえば昭和二十七年には四二%であったわけですけれども、年々引き下げられまして、現在、たとえば四十年不況当時よりも低い三六・七五%という水準に据え置かれておる。したがって、先進諸国に比べてみると、これは著しく低いわけであります。そればかりか、資本蓄積促進という名目のもとに多種多様な減免措置が導入されて、法人税負担が実質的には軽減されておるということは明らかなことであります。そういうような法人税の問題についてもやはり手を加えないと、これはほんとうの円対策にはならないのではないかという感じがするわけでありますけれども、この点はいかがですか。
  187. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御指摘の点、従来の政府の税制調査会の考え方に即して申し上げますと、従来からの政府の税制調査会の御承知の長期答申というものにおきましては、今後法人税の負担は長期的に見て上昇するという傾向で考えていいのではないかということが示唆されているように思います。非常にはっきりとそういう表現を使っている部分は必ずしもありませんけれども、いろいろな場所での指摘を総合的に読み取りますと、そういう指摘がなされておるというふうに私ども考えております。  なお、年内にはおそらく政府全体といたしましての新社会経済発展計画の大体の考え方も整理いたされましょうし、そういうものの中で今後の日本経済における法人所得、法人企業の活動のウエートがどう位置づけられるか、そういう問題を十分根本から考えながらこの法人税の問題には対処いたしてまいりたい、かように考えております。
  188. 貝沼次郎

    貝沼委員 法人税の問題はまた議論するときがあるかとは思いますけれども、とにかく私は、日本経済の構造の中でこの税制というのは非常に大きな関係があるのではないか、こういうふうに思います。  さらにもう一つの問題は、減税という問題であろうと思います。どのクラスを減税するかによって、その減税された部分が貯蓄に回るかあるいは消費に回るか。それによってまた財投に響き、そしてそれが企業側に回っていくというようなルートその他を考えてみますと、やはり減税問題というものも、ここでこの問題を考える限りにおいても、議論をしておかなければならないのではないか。  そこで、昨年来のたとえば年内減税という名前のもとに、ついに私どもの主張する減税は見送られてしまったわけであります。しかし、その後物価の上昇等が激しく、そしてことしは自然増収もかなり見込まれておるようでありますから、この際思い切って所得税の減税を、年内減税が一番望ましいわけでありますけれども、それがどうしてもだめならば、いよいよ四十八年度には大幅の減税をする、そういう姿勢がなければならないのではないかと思いますが、この点についていかがでしょう。
  189. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 この点について、今国会の会期に入りましてからも御質問が出ておりまして、大蔵大臣が御答弁申し上げておるわけであります。その答弁の要旨を繰り返させていただきますと、四十七年、ことしの年内に所得税を減税するということについては消極的に考えておる、四十八年度の税制改正においては減税の要望が非常に強いことを承知いたしておるので、それにこたえて何とかある程度の規模の減税ができないものか検討してみたいというふうに答えておられます。それでお答えにかえさせていただきます。
  190. 貝沼次郎

    貝沼委員 ある程度の規模というのは、どのくらいの規模を一応考えておられるわけですか。
  191. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その点につきましては、これまた大臣答弁を繰り返させていただきますが、やはり減税政策は、予算編成の一環といたしまして、歳出規模の総体、国債発行額の規模とあわせて総合的に判断すべきものと考えておる、したがって、減税だけを先に切り離して、この段階で幾らの規模ということをお答えするまでに至っておりませんということを申しております。
  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 いまの減税問題は強力に申し入れておきます。  それから二番目に、関税の問題でございますが、関税の一律引き下げによりまして云々ということでありますが、この関税が引き下げられることによって輸入が促進される、こういう見通しですね。当然安くなる、そして安くなる以上は、消費者に渡るときに安く手に入る、こういう前提があるのだろうと思いますけれども、こういうことを前提にしてよろしいでしょうか。
  193. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、関税が引き下げられてどのように輸入効果があるかという点でございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、平年度ベースで大体二ないし三億ドルということを申し上げたわけでございますが、これの積算根拠はなかなか定量的に把握することば非常に至難でございますけれども、私どもの過去のモデル計算の輸入函数というものが一応ございまして、それで試算をいたしますと二ないし三億ドル、約三億ドル程度の輸入増進が平年度ベースで期待できるということでございます。
  194. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、輸入によって消費者物価が幾らか下がるという前提は、これはよろしいですね。
  195. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 今回の関税率の引き下げはかなり大幅な、ある意味では画期的な引き下げかと思っております。千八百六十五品目にわたりまして、なおかつその内容は製品関税を中心に二割の引き下げを行なっておるわけでございます。そこで、私どものこれまた試算でございますけれども、一体これによって消費者物価指数がどの程度下がるかということもなかなか定量的に把握することは困難でございますが、一応CPI、消費者物価指数に占める二割カットの対象範囲のウエート計算をいたしますと、約三割に該当するわけでございます。したがいまして、この三割がどの程度末端価格まで影響するかということでございますけれども、これが私どもの試算によりますと、平年度ベースですが、大体〇・八%でございますけれども、輸入依存率の非常に少ない分野もございます。したがって、そういった点をいろいろ考慮いたしまして、約三分の一程度は効果が期待できるのじゃないか。そういたしますと、平年度で〇・二ないし〇・三%程度の消費者物価への引き下げ効果は期待できるのではないか、かような一応の推算をいたしておるわけでございます。
  196. 貝沼次郎

    貝沼委員 〇・二ないし〇・三%、これだけの影響があれば私は相当なものだと思いますが、しかし、残念ながら過去の経験によりますと、円の切り上げを行なったときですら物価は下がってないわけですね。それは計算では確かに下がるのですけれども現実に消費者が買う場合に下がっておらない。まあ下がるものもありますけれども、下がらないもの、が多い。  そこで、なぜこういうようなことが起こるのかということでいろいろと調べてみるわけでありますが、やはり第一に大きな問題となってくるのは流通機構の問題、これが弊害になっておる。輸入品によっては、たとえば総代理店制度があるとかあるいは寡占のものがあるとか、いろいろとあるわけでありますけれども、こういうような流通機構というものに手を加えない、ただ関税を引き下げたから安くいくだろう、安くいくから買うだろう、そうすればまた輸入もふえるだろうというような単なる考え方だけでは私はいかないと思うのです。したがって、そういうような流通機構に対して何らかの手を打ったのか打たないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  197. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 たびたびただいまの問題はおしかりを受けておるわけでございますが、政府部内におきましても、あるいは物価対策閣僚懇談会もしくは物価担当官会議を中心にいたしまして、いろいろ鋭意末端価格に反映するよういろいろな手を打ってきているわけでございます。なお、本年から生活関連物資を中心にいたしまして関税を引き下げたわけでございますが、もちろん円の切り上げと相まちまして、腕時計とかあるいは冷蔵庫、カメラ、ウイスキー、乗用車等についてはかなりの程度の末端価格の引き下げが見られておるようでございます。いずれにいたしましても、この流通機構の問題はたいへん大きな問題でございまして、経済企画庁を中心にいろいろな手は打たれておりまして、輸入品の追跡調査、それの公表とか、あるいは所管物資を監督いたしておりますそれぞれの省庁の、それぞれの業界に対する行政指導を強化するとか、いろいろな手を打って今日までまいっております。  なお、関税局の所管といたしましては、御承知のように、真正商品の並行輸入、先ほど御指摘ございました総代理店制度との関連におきまして、十月から真正商品の並行輸入の措置を講じたわけでございまして、最近の新聞紙上によりますれば、かなりの程度の輸入品がバーゲンされているという広告も出されているようでございます。こういった面の期待もある程度できるのではないか、かように考えております。
  198. 貝沼次郎

    貝沼委員 経企庁としてはどういうふうにやっていらっしゃいますか。
  199. 斎藤誠三

    ○斎藤説明員 お答えいたします。  ただいま大蔵省のほうからお答えがありましたように、われわれ関係各省の協力を得まして、ただいま先生御指摘の輸入総代理店の問題あるいは並行輸入の問題等につきまして、本年三月三日に物閣僚で決定いたしました通貨調整に伴う物価対策の強化についてという方針にのっとりまして、諸般の調査なり行政指導なりあるいは一連の行政措置を推進してまいっておるわけでございます。そういうことで、本年は暦年で一−九月の物価指数が四・五程度の上昇でございまして、昨年度六・一に比べますと、やや物価の上昇が鈍化しておるわけでございます。そういう意味で、輸入政策の諸活用——物価上昇がやや鈍化してまいりましたのは嫌気停滞あるいは農産物の価格下落等の影響もございますが、やはり輸入政策の活用によりまして次第に輸入の効果が物価対策の面に反映しているのではないかと考えております。
  200. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間があまりないようでありますから、先ほどの(2)のところ、「国内産業が相当な損害を受け、又は受けるおそれがある場合には、政令で貨物を指定し、」云々というところがあります。この政令の内容でありますけれども、先ほどの答弁では、特恵関税のときのような内容のもので弾力的にやってまいりたいというような話であったと思いますが、ただこの場合、私が心配なのは、ドル・ショックのときとか、中小企業は、特に雑賀などは何回もあおりを受けておるわけですね。たとえば特恵関税であおりを受ける、そしてドル・ショックで受けました、そしてストライキで受けました、そして円切りで受けた。何回もあおりを受けた。そしてそのたびに、私もいろいろな業者と話し合ったりそしてまた陳情も受けたりしたのですけれども、確かに救済の政令というものはでき上がっておるけれども、具体的にやる段になりますと、なかなか適用されない、時間がかかる、こういうことが非常にたくさんいわれておるわけであります。したがって、今後そういうような大事な救うための措置であるならば、迅速にそれを適用してもらいたい、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  201. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 御指摘のとおり、迅速に機を失せず公正に運用してまいりたいと思っております。したがいまして、本来ですと、法律で一々規定をしてやるのが筋かと思いますが、特に政令で貨物を指定して迅速にやるようにいたしたい。  なお、この運用につきましては、特殊関税部会を設けまして、公正な運用をはかってまいりたいと考えております。
  202. 貝沼次郎

    貝沼委員 輸出入銀行の問題で一問だけ聞いておきたいと思います。あとは輸出入銀行関係それから経済協力の関係につきましては、明日松尾委員のほうから特に質問していただくようにいたします。  輸出入銀行の輸出金利と輸入金利——輸出入銀行といいますけれども、実際これは輸出銀行みたいなもので、輸入のほうはいままで非常に少ないわけでありますけれども、この嫡出金利と輸入金利が違うわけですね。たしか現在のところでは輸出金利よりも輸入金利のほうが高いかと思います。したがって、こういう金利に対してやはり何らかの手を加えるのが当然であると思いますけれども、これに対してどう手を加えたのか、今後どういう考え方でいくのか、その点についてお願いいたします。
  203. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 もう貝沼委員御承知のように、この間のこの対策の中に、輸出金利については原則として一%引き上げ、輸入金利については原則として一%引き下げるという方針が明示されたわけでございます。輸出入銀行の場合は、基本的に銀行としての自主性というものを尊重するという趣旨から、具体的に品目を法律で金利を特定するというやり方はやっておりません。したがいまして、業務方法書につきましては、輸出は原則として四・五%から七・五%、輸入は四%から七%という範囲内で輸銀総裁がケース・バイ・ケースできめていっておるというのが実情でございます。したがいまして、この前の一%を引き下げ、あるいは原則として一%の金利を引き上げるという方針がきまりましてから、本月の十一月一日からそれに基づいて融資を実行しておるわけでございます。その結果、業務方法書の輸入金利が四%から七%、輸出金利が四・五%から七・五%という、こういう斜めになっておる形がむしろ逆転することになったわけでございます。
  204. 貝沼次郎

    貝沼委員 質問のほうは以上で終わりたいと思いますけれども、ずっといままで私は個別の質問をしてまいりまして、そして国民は、ほんとうに政府は回避するだけの対策を持ち、絶対に回避できるかどうか、こういう不安を持っているわけでありますので、私はその不安がはたして解消できるかどうか、不安を解消するに足るそれだけの対策を講じておるのかどうかということについて、いま議論をさしていただいたわけでありますが、どうもいままでの答弁の範囲内では、まだ検討の部分もあるし、あるいは何となく時間的にたよりない、もうちょっとスピーディーにやらなければならぬような感じのものも多々あると思います。こういう面から、やはり政府の態度というものはもっと明確に、しかも内閣も新しくかわったわけでありますから、その内閣の体面にかけても私はしっかりと国民が納得のいくような説明をすべきであると思います。  以上で終わります。
  205. 金子一平

    金子委員長 阿部助哉君。
  206. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは政務次官にまずお伺いしたいのでございますけれども、これは政府のほうではこの臨時国会では重要法案、こうみなしておるわけですか。
  207. 大村襄治

    大村政府委員 ちょっとよく聞き取れなかったのですが、政府で重要法案とみなしておるかということでございますれば、そのとおりでございます。
  208. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう一つお伺いしたいのですが、この円対策というのは、昨年の政府の円対策が出、それから通常国会でもずっと審議をしてきたわけでありますが、まあ佐藤内閣から田中内閣にかわった、だけれども、やはり自民党政府ということで私は引き続きその関連において質問したいと思うのでありますが、やはり政府、自民党の責任でお答え願えるでしょうな。
  209. 大村襄治

    大村政府委員 そのとおりでございます。
  210. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ただいまの広瀬委員の質問あるいはまた貝沼委員の質問を聞いておりますと、円の問題、総選挙の問題は、選挙をやりますと総理大臣なかなか言えないだろうし、皆さん円の切り上げがすぐ行なわれますとは、これ言えない問題でありましょう。その点は私も皆さんの立場を認めないわけじゃないのであります。しかし、だからといって全くでたらめなうそをついてもいいというものではなかろう、こう思うのでありまして、もっと真摯な態度で臨んでいただかないとこれは困る問題だ。そうでなかったら、ここで論議をするのは全くナンセンスだということになるのでして、私、この辺で先ほど来の御答弁にたいへん不満があるわけです。あんな答弁だけを聞いておったのでは何のために質問し、国民のために質問するという気がしなくなるわけでありますが、その点で私そんなに確約してくれなんということを言いませんけれども、問題の重要さというものを、もう少しかみ合うような論議をしてもらいたいというまず前提を置きたいと思うのであります。  実はこの問題は、私は昨年来幾たびか質問いたしました。この委員会でも予算委員会でも質問いたしましたけれども、全くこの円対策くらい人を食った答弁はなかったと思うのであります。例をあげれば切りがない問題でありますが、まず円の切り上げをやれば、二年間たたないと実際の効果は出てこないのだからという一点ばりで大体逃げられたという印象を私は受けておるわけであります。しかし、円切り上げてからもう二年たったのですか。
  211. 大村襄治

    大村政府委員 円切り上げは昨年末でありますから、ようやく一年に近づいてきたと思います。
  212. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかも私は、一番最初の昨年六月の円対策八項目のときにも、当然輸出関連の特別措置三本は皆さんのほうでもはずすという計画であったようでありますし、私も幾たびかここで、少なくとも輸出関連の特別措置くらいはこれは撤廃すべきだということを申し上げた。しかしそのときも、いやこれで十分だとか、二年たたないとこれは実際の切り上げの効果が見れないのでという答弁で終始しておいでになった。ところが、私の質問から半年もたつかたたないかのうちにまた円対策だ。一体こんなことを繰り返しておって——まあ円の切り上げ圧力はない、円の切り上げはないなんと林局長おっしゃるけれども、もう世論、この世の中はそう見てないのですよ、ほんとうは。だからこそ皆さんも非常に不十分ながらこのような措置をとられたと思うのです。そういう点で、私は国会のたびごとに何か過去の反省とか——私は人間のやることだから多少の間違いがあったっていいと思うのです。ここでベストを尽くして論議をした上で何がしかのあれがあったって、あげ足をとろうとは思いませんよ。そうみんなしらを切って逃げられたら、全然過去の反省なしにここへ来て白々しい答弁をされるということになれば、こっちもそれはしようがない、あげ足とりもせねばいかぬということになりますので、私はまず今日までのこの政府の対策が適切であったのかどうかという反省があるのかないのか、私、その点からまずお伺いしたいと思うのです。
  213. 大村襄治

    大村政府委員 かねてから国会においてもいろいろ御論議願っておった問題につきまして、なかなか思うような早い時期に成案を得て御提案することができなかった点はきわめて残念に存ずる次第でございます。しかしながら、いまからでもおそくない、法律改正を要するものは法律改正をお願いし、また現行法のもとで実行できるものは実行に移す。過去の努力の足りなかった点を深く反省するとともに、なすべきことを実行に移すという考え方に基づいて今回の改正案を御提案したものであると考えておりますので、その点は御了承賜わりたいと存じます。
  214. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、この租税特別措置の撤廃なんというものは、ほんとうはこの前すでにやるべきだったという点、強く言ったわけです。皆さん、そう思わないですかね。
  215. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 先ほど貝沼委員にお答えいたしましたとおりでございますが、いわゆる輸出振興税制といわれておりましたもののうち最も大きな輸出割り増し償却制度は、御審議を経まして四十七年度改正において廃止させていただいたわけでございます。ただいまの阿部委員の御指摘は、そのときに、なお残る二つのものも一緒にやるべきではなかったかという御指摘だろうと思います。そのときにできなかったその辺の理由はあったのであろうと思いますけれども、いまこの時期にあらためて輸出市場開拓準備金を適用期限前に廃止をお願いいたしておりますので、それによりまして私どもの気持ちをおくみ取りいただきたいと思います。
  216. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、あったんだろうと思うなんというのでは反省にならないですよ。そんな答弁で反省したことにならないじゃないですか。私はこの円問題が出てからたびたび御質問をいたしましたけれども、国際通貨不安の根本的な原因は、やはり何といったってアメリカ自身に一番大きな責任があると思うのであります。国際通貨の不安という点では、アメリカに一番大きな責任がある。それに追随しておるようなやり方をしておったんでは、私はどうしようもない。だから、アメリカにも強く反省を求めるべきだ。しかしまた、このIMF体制の崩壊の大きな犯人といえば犯人、構成メンバーの中で極端な高度成長政策、これをとってきた日本にまたこの大きな責任がある。だからこそ、この前もあれだけ大幅な円の切り上げをやらされ、またいま円の切り上げが行なわれるんじゃないかという不安を国民が持つというところへきているんだと思うのであります。そうして私はその一番もとは、皆さんのほうでは入ってきたドルを何とかしようなんということだけれども、入ってくるもとの原因を一体どうされるのかという点で、私は対策が非常に不十分だと思うのであります。私はやはり日本にこうやってドルが集まる一番もとは、低賃金、合理化、国内の物価高、社会福祉の低さ、そういうのが根底にある。その上にいろいろな資本蓄積のための特別措置、金融政策、こういうものがあって、日本の資本の皆さんはいままで、ごく最近まで企業の国際競争力の強化という点だけを強調しておいでになった。私はここにこの問題があると思う。  いままで対策を立てておいでになったというけれども、その対策の効果というものはどのようにあがったのか。その反省と同時に、いままでの円対策の効果というものをひとつあげてもらいたいと思います。どんな効果がありましたか。
  217. 林大造

    ○林(大)政府委員 いろいろ御指摘いただきました点、私どもまさにそのとおりと思っております点が多々あるわけでございます。  まず第一に、最近ベトナムの和平近しという報道が流れております。私どもその正確な真偽のほど、どの程度の進みぐあいか正確に知ることはできませんが、いずれにいたしましても、最近ヨーロッパでドルの堅調が目立っております。ドルの堅調はすなわち国際通貨体制の安定につながるわけでございまして、したがいましてアメリカにおけるインフレ気分が次第に鎮静をし、ドルが次第に強くなってきたということが国際通貨体制の安定のために非常に大きい寄与をするという点は、まさにそのとおりと思います。  また第二に、従来日本は非常に外貨の不足に悩んでまいりまして、国際収支の天井の低さが成長のボトルネックというふうに感じられていたわけでございます。そのために従来輸出優先、また国際収支の天井を上げることに非常な政策上の重点が置かれてきたわけでございますが、ここ数年来その状況が非常に変わってきた。それに応じまして、日本経済の構造を改革していかなければいけないという意識が次第に定着してまいりました。それが十分早く効果的に行なわれなかったではないかという御指摘かと存じますけれども、その点は私どもも十分——これは私直接の所管ではない部分のほうが多いわけでございますが、努力が払われているわけでございます。  第三に、幾ら外貨準備を減らすことを考えても、もとのせんを開きっぱなしではしかたがないではないかというような御指摘があったかと存じます。おっしゃるとおりでございまして、今回講じました措置も、したがいまして外貨準備の活用というよりも、むしろ経常収支、貿易収支の黒字幅を圧縮するというほうに政策の重点が置かれているわけでございます。従来いろいろな措置をとってまいりました、十分早く果断に行なわれなかったではないかという御指摘を受けるのは、私どもたいへん申しわけなく存じているわけでございますが、できるだけ今後は努力をしてまいりたいというふうに存じている次第でございます。
  218. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう一つ非常に素朴な質問をしますけれども、円対策というのは何のためにやるのですか。
  219. 林大造

    ○林(大)政府委員 円対策には二つの意味がございまして、一つは、日本がこれだけ世界でも重要なメンバーになってきた、しかも国際収支の面で不安がなくなってきたという際でございますから、当然世界に対して門戸を開く、貿易、資本の自由化を進めるべきであるという、世界の有力な一員としての責任を十分に果たしていくという点で重要かと存じます。もう一つは、あまりに日本の国際収支の黒字が大き過ぎますと、日本の国際収支の黒字というのはどこかの国の赤字でございますから、そのほかの国がたいへん苦労をする面があるかと存じます。したがいまして、あまり大きい黒字は圧縮することが国際協調のゆえんであるということでございまして、また国内的に申しましても、これが物価その他に思わしくない効果を生むようなことがあったり、あるいは金融面でいろいろな調整措置を要するようなことがあればやはり困るわけでございますから、そのような点、海外との協力、国内の福祉向上という点からも対策を進めていく必要があるというふうに存じております。
  220. 阿部助哉

    阿部(助)委員 国際的な重要メンバーとして云云という問題もありますが、当面円対策といえば、後段の、黒字幅の圧縮というものだと思うのであります。しかし、その一番大きな問題、原因というものは、さっき述べましたように日本の国内問題、ここにあるのじゃないか。皆さん福祉国家とかなんとかいいますけれども、福祉国家という場合、いま皆さん大蔵省予算査定をしたりする段階で、まず福祉予算をとって、それからいろいろな公共事業、いろいろな防衛関係費を組むというのが、これが福祉なんですよ。ところが、皆さんのほうは、四次防だ何だで防衛関係はもう五年間ずっとやってしまう、公共事業は先にとってしまう、そうして残りでやろうとすれば、福祉国家なんかになりっこないです。GNPがいまの千倍になったところで、いまのような政策をとっておる限り、福祉国家になりっこないです。問題は、そのやり方を変えなければいかぬ、考え方を変えなければいかぬのでして、福祉国家、福祉国家といって、口先ではいろいろお話が出ますけれども、福祉国家らしいやり方をひとつもいままでとっていない。今度だってとっていない。あまり簡単に、福祉国家なんだ、みんな豊かになったみたいなお話をされても、ちょっとこれは困るのでして、それならば、ほんとうにお年寄りの問題だとか、そういう福祉予算をまず先にきめて、それから残ったので防衛関係なんかやればいいんです。それでない限りは、福祉国家なんておっしゃったところでだれも信用する者はないですよ。  それではもう一つ聞きますけれども、具体的に八項目、新・円対策七項目という対策でいままで努力しておいでになったというけれども、もう少しこれは数字をあげてその効果を御説明願いたいのでございますが、いかがですか。
  221. 林大造

    ○林(大)政府委員 昨年以来、八項目、七項目、五項目と次第にやってまいりましたが、しかし、その後の国際収支あるいは外貨準備の推移をこれらの措置が講じられなかった場合と比べて具体的にどの部分がこの措置によるものかということになりますと、なかなかその推計がむずかしいわけでございます。したがいまして、たいへん恐縮でございますが、現在具体的に計数を詰めたものはございません。ただ、八項目、七項目、数字でなく、どういうことをやったかということをもしお尋ねいただけますれば、項目別に御返答はできる・と存じます。
  222. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この対策を講じなかった場合と比べたらこれはむずかしいのじゃないかと思うのです。しかし、皆さんがこれを講じてどの程度のものにしようという目標等はあったはずなんですね。大蔵省たいへん数字が好きじゃないですか。そのくらいのもの出ないですか。
  223. 林大造

    ○林(大)政府委員 やや断片的になりますが、午前中にお答え申し上げました、たとえば為銀に対する外貨預託あるいは中長期の運用というのが、形式的に外貨準備を圧縮する。これは海外から借金をして当然ふえていたような外貨がふえないようにするとか、あるいは短期の低い金利でしか運用できないものを高い金利に運用したとかいうような数字は断片的に御報告申し上げましたが、それでは具体的に財政金融措置、たとえば金利もずいぶん下げてまいりました。その金利が下がってきたことによってどれだけ国際収支、経常収支並びに資本収支に影響があったかというのは、どうもたいへん恐縮でございますが、計数的に詰めてございません。
  224. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はあんまり効果なかったと思うのですね。効果がなかっただけではなくて、むしろドルがたまるような政策をほんとうは続けてきた。昨年の暮れに二八・八八%の切り上げをやった。それからまだ一年、もうまた切り上げねばならぬみたいなところへ来ておるわけであります。まあこれはどの程度あれかわかりませんけれども、新聞の報ずるところによりますと、田中首相は、ハワイでホノルルの会談のとき、日本の総選挙が終わるまで円の切り上げは差し控えてほしいとニクソンにお願いをした。総選挙が終わったら円の切り上げが行なわれるであろう。まあこの法案はそれまでのほんのゼスチュアなんだと。私はさらに申し上げたいのは、どうせ切り上げするんだろう、中小企業はつぶれるだろう、そうしたら大企業のほうだけまためんどう見ようというのが皆さんの本心ではないのですか。大村次官、どうなんです。
  225. 大村襄治

    大村政府委員 外紙の報道の件はわかりかねるわけでございますが、私どもは最善を尽くして再切り上げを回避しなければならない、そういう観点でこの法案の御審議をお願い申し上げているのでございます。したがって、回避できなかった場合に大企業を助けるつもりではないかという御質問に対しましては、遺憾ながら、肯定する御返事を申し上げるわけにはいかない次第でございます。むしろ、万一そういうことが生じた場合におきましては、一番影響を受ける中小企業の対策を最重視しなければいけないという気持ちを持っている次第でございます。
  226. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今度輸銀法を改正しまして、ひもつきでない融資をするということになるようでありますけれども、しかし考えてみますと、前はひもつきで日本の品物を売った。だけれども、今度はひもを取っ払っても、どうせ外貨を援助してやれば、援助をしてもらった国は、一番品物の安い国からものを買うというのが大体あたりまえなんですね。そうすればまた日本からものを買っていくということで、何のことはない、また日本の品物が売れる、大資本の品物が売れる、こういうことをお見通しの上でこのひもを切ったというふうに考えれば考えられないことはないんじゃないですか。いかがなんです。
  227. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに、自由にたとえば低開発国が外国からものを買う場合、その場合に基本的にきまるのは、それぞれの国の国際競争力だろうと思います。しかし、ひもつき融資をやめるという話は、もう先生も御承知のように、開発途上国からの強い要望に基づきまして、たとえばDACの会議でございますとか、あるいはUNCTADの会議において、むしろ今後の国際的な風潮になっておる問題だろうと思います。七〇年にわが国といたしましてもいち早くその原則的な支持を表明いたしたわけでございまして、むしろこの円対策の基本にございます国際協調という立場から、第一歩をこの輸銀の融資のあり方についてもその方向を示していこう、かような趣旨で入れたわけでございます。
  228. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ほんとうに援助するという場合に——私も昨年東南アジアを見てまいりましたけれども、私は、どうも援助というものはあまり現地の住民の足しにはならないものだ、こう思って見てまいりました。ほんとうにあたたかい援助を差し上げるという場合、やはり国内のこれだけアンバランス、お年寄りの問題、農業の問題、このアンバランスをいまのようにしておきながら、援助をやりますなんという情け深い顔をしてみたって、そんなものはあまり実現はしないんじゃないか。ほんとうに外国へこれだけ大きな金を援助するというなら、やはり国内に対してもあたたかい政治が行なわれておる国でなければ、実際言うて、これはその国の人民の足しになるような援助にはなりにくいのではないか。むしろ、場合によれば資本輸出という形でいく危険性を持つのではないかと思うのであります。ほんとうの援助ならば、初めからひもをつけないでいくのがほんとうだ。ごく最近まで、日本の国際競争力がつくまでは、日本の援助ぐらい強いひもがついておった援助はないじゃないですか。今度はずしたというのは、諸外国の要求はもちろんありましょうけれども皆さん自体、日本企業の国際競争力は強くなった、どうせ金をやったって日本から買うだろうというお見通しの上でやったというふうに私が考えるのは、私、東南アジアを見てきてなおさらそういう感を強くしておるわけでありますが、私の邪推でありましょうか。私はもっともっと早くから、援助という名前なら——資本の輸出というのなら別だけれども、援助というものならば、私は初めからひもなんてつけるべきではなかったのではないかという感じを受けておるわけであります。そういう点でどうも、この輸銀法の改正をして、援助というけれども、それをする場合にも、やはり外国の人たちにあたたかい手を差し伸べてやる、けっこうであります。しかし、それがほんとうにあたたかい手になるためには、繰り返し言うように、私は日本の国内の政治のアンバランスに手を差し伸べるという政治が必要だと思いますが、次官、どうです。
  229. 大村襄治

    大村政府委員 確かに、初めからひもつきでないほううがいいにはきまっておったと思うのでありますが、実際問題としていそのころはやはり日本の経済もまだ定着してないわけでございますので、その辺では踏み切りがおくれたということは、その意味でやむを得なかったのではないかと思うわけでございます。  なお、海外に援助のあたたかい手を伸ばす場合には、国内において、より以上のあたたかい政治が行なわれなければいけない、この点は全く御同感でございます。そういった方面に今後は重点を指向してやらなければならないと考える次第でございます。
  230. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今度貿易管理令ですか、これによって何か十億ドルぐらいですかチェックをする、こういうことでありますけれども、先ほども質問がありましたけれども、こういう政令、またお役人さんの、政府の恣意によって手かげんをするというようなことをなぜなさるのですか。やはり輸出課徴金であるとか輸出税であるとかいう形で法律できちんとされるのがほんとうだと思うのであります。また、これをやろうとしても、結局は業界の強い圧力がかかればみんなしり抜けになってしまうというのがいままでの例でありまして、私は大きな期待はしないし、これが強くなれば官僚統制というまた別の形のゆがみも出てくるのではないだろうか、そういう点を考えると、これはやはり法律によって輸出課徴金等のワクをすべきだ、こう思うのでありますが、次官、どうです。
  231. 大村襄治

    大村政府委員 輸出税なり、それにかわるべき課徴金を設ける場合には法律によらなければならない、これはまさに御指摘のとおりだと思います。ただ、今回はそういうものを提案するまでの準備が整っておりませんので、今回の法案にはその関係の規定は織り込まれていない、そういうことだと考えておりますが、お答えになりますかどうか……。
  232. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、いまそれでは、この臨時国会で間に合わないからとりあえずこれでやるのだ、しかし、準備を整えて通常国会には課徴金の制度をつくるとか輸出税をやるのだというお話ならばわかりますよ。だけれども、間に合わないからこれでやったんだ、このままずらっといくのかどうか。法律でやるべきだということになれば、この次の通常国会でその法案を準備をして出されるのかどうかということになると思うのですが、いかがですか。
  233. 大村襄治

    大村政府委員 今回の法律案は、さきにも申し上げましたとおり、十月二十日の閣議決定の事項のうち、法律措置を要するものを織り込んだものでございます。その二十日の決定におきましては、輸出税または輸出課徴金につきましては今後引き続き慎重に検討するというふうにせられておりますので、今後の検討の結果、法律の必要が出てまいりますれば、その時期に間に合うように提案する、こういうことに相なると考えております。
  234. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもその辺もやっとするのですね。検討の結果やるというよりも、やるんだということで準備を進めるのか、あるいは、管理令をやったからそのままずるずるといく。おそらくは、私の見通しからいいますと、さっき言ったように、選挙が終わってしまえば円の切り上げを迫られて、これはもやもやになってしまう、それまでのゼスチュアだというふうに私は想像するわけです。そうすると、そんなものでいいかげんな案をこの国会に出されたんだかどうかということになるわけです。だから私は、輸出課徴金、輸出税をやるのだ、そのためにいま準備をするのだということならわかります。しかし、やるかやらぬかわからないけれども、とりあえずこれでずるずるやっていくのだということになりますと、これは実際の効果は出さないですよ。あまりそれで効果が出過ぎるようなことになれば、これは官僚統制ですよ。政府の一存でそんなに国民の権利義務を拘束するなんというのは、これは間違いだと思うのです。そういう点で、私は少ししつこいようだけれども、もう少しちゃんとした御答弁を願いたいのです。
  235. 林大造

    ○林(大)政府委員 若干補足して御説明申し上げますが、政務次官がお答え申し上げましたとおり、時間的な要素もあったわけでございまして、そのほかに、やはりいろいろ民間の空気を勘案いたしまして、この際政府としては断固とした現行レートを堅持する決意を表明することが必要である。そのためには貿易管理令、確かにおっしゃるとおりのいろいろな弊害もございます。で、その点からいけば、税のようなもののほうがいろいろ当局による判断の入る余地がはるかに少ないという長所があるわけでございますが、いかんせん、その税ないし課徴金と申しますのは、価格効果を通じます間接効果になるわけでございます。したがいまして、短期間に直ちに効果を発揮させる措置をとるにはやはり貿易管理令のほうが直截になるわけでございまして、おっしゃるような弊害はあるとは存じますけれども、しかしこの際通産省が断固として本措置をとるということを明らかにすることによって、民間に高まっております投機の思惑を断ち切るという効果があるのではなかろうかということで、このような決定になったものだと存じております。そうかと申しまして、貿易管理令が長期にわたり、かついろいろな問題もあるこの制度をどこまでこのままでいってよろしいかという問題についてはいろいろ問題もあり得るわけで、したがいまして、輸出税ないしは輸出課徴金の問題もあわせて、今回は間に合いませんでしたが、次の議会までには慎重に検討をするという御決定を見たものだというふうに承知をいたしております。
  236. 阿部助哉

    阿部(助)委員 結局は次官の答弁と同じことなんでありまして、補足してもらってだんだんわからなくなってくるというだけであります。  私は、結局しり抜けになるだろう、こう言ったのでありますが、一つその例としてお伺いをしたいのであります。  いろいろのことで問題をお伺いしたいけれども、時間の関係もありますので、船についてひとつお伺いしたいのだけれども、大体皆さんの立てられる案そのものがしり抜けになっているのじゃないか。船は、御承知のように、わが国の国策として、大企業の高度成長の推進を前提としてきましたし、また、いままで船については歴代の政府が非常に手厚く保護をしてきました。私の計算によりますと、四十一年から四十七年度までの海運の助成、これが五十九億二千六百万円、利子補給金八百四十六億円、合計約九百億円、こういう大きな金を使ってきた。ところが、この海運界において、売船というのが最近たいへん盛んに行なわれておる。これも私の調査でありますが、もし数字に狂い、があったら御指摘してくだすってけっこうでありますが、今年の一月から八月までに外国に売り払われた船は、九十五隻、百二十九万トン、三百二十七億円というふうにこれが売られておるわけであります。そして大蔵省のほうでも、さすがに、こういう形でどんどん売船をやられたのではドル対策上困るということなんでありましょう、そこで貿易外取引の管理に関する省令の一部を改正する省令というものを出されましたね。しかし、それはまた中身はしり抜けだ、こう批判を受けておるようであります。  そこで、先ほど来運輸省の方にもお願いをし、大蔵省の政府委員室の人たちにもお願いしたのですけれども、何か局長の許可がないから出せないのだ、こういうことでありますが、海運局と大蔵省と取りかわした覚え書きといいますか、チャーターバック許可制の措置で取りかわした文書があるわけですね。局長、ありますね、それをひとつお見せを願いたいのであります。いかがです。
  237. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいまお話のございました海外売船につきましての運用につきまして、大蔵省と運輸省の事務当局の間で一応運用についての方針をメモにしたものがございますが、またそれは特別秘密のものではございません、したがいまして、その内容をお知らせするにはやぶさかでございません。
  238. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、それを質問のときに要るから出せと言ったのですが、一向持ってこないのですよ。こんなもの秘密なんかないですよ。日本の憲法の規定からいって、民主国家で、国会に出せないような書類をあなたたちかってにとにかくやっておるなんというのは、これは許されないことです。それはちょっとまずい。出してください。朝から要求しておるのだから。
  239. 金子一平

    金子委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  240. 金子一平

    金子委員長 速記を始めて。
  241. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この省令の改正は、これはやはり売船が盛んに行なわれる、そこで、いまのドル対策上これじゃ困るということで皆さんこれを改正なさったと思うのですが、いかがですか。
  242. 林大造

    ○林(大)政府委員 御指摘のとおりでありまして、海運業には、これは運輸省のほうからお答えいただいたほうがあるいはよろしいかと存じますが、それなりの特殊の事情がございまして、合理化その他のために海外に対する売船がかなり行なわれております。ただ私どもの観点からいたしますと、中古船の売船契約が為替関係の投機に利用されるおそれが全くないわけではない。で、非常にその典型的な例を申し上げますと、海外に中古船を売船いたしまして、そして一千万ドルなら一千万ドルを受け取る、いままでと同じような形で自分の船隊に組み入れておきまして、そして実態は全く変わらないのでございますが、たとえば十年間に百万ドルずつ用船料を払う、これは単純化のために非常に抽象化して申し上げましたが、そういうようなことになりますと、為替リスク回遊ないしは為替投機のために用いられるということになるわけでございます。最近非常に中古船の売却が進んでまいりましたのは七月以降目立っておりまして、これはそれなりに実態面でもいろいろな理由があると存じますが、これが最近高まってまいりました為替思惑に利用されては困るというふうに判断いたしまして、正常な海運政策は妨げないという範囲内において為替投機を防止する措置をとりたいということで、今回の措置をとった次第でございます。
  243. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だけれども、結局中身が、運用にあたっては海運業の合理化を阻害することのないよう運輸省の意見を十分に尊重するとか、いろいろいってまいりますと、これは結局、皆さんの省令の改正はしり抜けになってしまうということだと思うのですよ。それならそれの例をあげれば幾らでもあるわけですけれども日本郵船が取引銀行のバンク・オブ・アメリカ、これと契約を結んで、ペーパー会社と思われる会社をリベリアにつくった。そこへ十三万トンの多度津丸というタンカーを売却をした。しかしそれはチャーターバックをしてまたやっておる。そうすると、幾つかの問題があるわけですね。船を売った。そこですぐドルを受け取った。そうして差益の問題が出る。そうして今度はドル建てのチャーターをするわけですね。そうすると、そこにまた差益の問題が出てくるというようなことで、政府が今日まで開銀の金を毎年一千億ばかりずつぶち込んで、利子補給までして海運業界を育成してきた。それがみんなそういう形のようにやられる。そうしてドルはますますたまる。皆さんこういうことをやっておれば、ドルがたまるようにたまるように仕組んでおる。そして業界はもうかってけっこうだろうけれども、このドルをなるたけためないようになんて皆さんやっておることと全くうらはらのことを船会社はやっておるんじゃないか。そういうことを何とかちゃんと規制をしないようなことで、どうして皆さんのこんな円対策が実効をあげるなんということが言えるか。私は、言えないんじゃないかという不安を持つわけですが、いかがですか。
  244. 林大造

    ○林(大)政府委員 おっしゃいますとおり、中古船の輸出は、国際収支統計上は輸出に立つわけでございます。一方、チャーターの支払いは貿易外支払いに立つわけでございますが、当然のことながら輸出の金額のほうが大きいわけでございますから、したがって日本の貿易収支の黒字が通常の実態よりも誇張して大きく出る。経常の収支の面でも当然のことながら売り上げのほうが大きいので、実態、実際の勢いよりも大き目に黒字が出てくるわけでございます。また外貨準備から申しましても、そのようなことが行なわれない場合に比べまして外貨準備が押し上げられてしまうわけでございます。したがいまして、私どもの現在の国際通貨あるいは国際収支という観点から申しますと、私どもとしては、そのような取引は望ましくない。しかし、正常な取引までも阻害するのは、これはやはり、その輸出がぐあいが悪いからといって、経常収支の黒字を圧縮するために無理無体に全部とめるということがいけないと同じような意味で、正常な理由に基づくそのような取引は阻害しないほうがいいではないかということで、運輸省と御相談いたしまして、実態がいかにももっともである、海運政策上も十分理由があってそれが合理的と判断されるという場合には、それまでもとめることはよそうという気持ちの運用をすることにいたしたわけでございます。ただいま阿部委員御指摘のケースが具体的にどういうものであるかということにつきましては私つまびらかにいたしませんので、運輸省のほうから御説明いただきたいと存じます。
  245. 住田俊一

    ○住田説明員 海運局次長の住田でございます。  お答え申し上げます。  本件につきましては、ただいま林局長からその御趣旨を御説明されたわけでございまして、まさにそのとおりでございます。もともとこの問題につきましては、去る十月二十三日から、この円対策の一環といたしまして、運輸省の関係ある輸出船にかかわりまする用船契約を日本銀行の許可にかかわらしめた、こういう措置がとられたことは周知のとおりでございます。ところで運輸省といたしましては、もちろん国の円対策の一環として協力するということではございますが、反面、いまお話のございました用船契約なりあるいはこういったチャーターバックというものは、最近に行なわれたのではなくて、従来から行なわれておったのでございます。その原因の一つは、船員費が非常に高騰しているということが第一点でございます。たとえば日本の船員費は現在世界でおおむね三位ぐらいにありますが、これを他国の船員費、すなわち、フィリピンなりあるいは台湾あるいはほかの国と比べますると、約六割あるいは五割、こういうような差がございます。かてて加えて、最近の海運の不況あるいは物件費その他の値上がりによりまして、海運企業といたしましては、何としても合理化の一環といたしましてこのようなチャーターバックあるいは売船システムによりまして国際競争力をつけなくてはならない、こういうことで、やむを得ず外国の船員を乗っけておる、そういうようなチャーターバックという方式をとったのでございます。そういうことで、ただいま林局長が申されましたように、従来のような海運の合理化に支障のないという限りにおいては、これはぜひ認めていただきたい、こういうことで、ただいま阿部先生にお見せしましたように、大蔵省との間におきまして協議いたしまして、そして通常の海運企業というものに対して何らの支障のないようにしていただきたい。とはいえ、われわれといたしましても円対策に対しては十分に協力する、そういう意味におきまして、その懸案につきましてケース・バイ・ケースで私どものほうで慎重に検討し、かつまた日銀なり大蔵省におきましても十分慎重にそれぞれ検討いたしましてその結果を出す、こういうことになった次第でございます。
  246. 阿部助哉

    阿部(助)委員 幾つかの疑問をいま感じたわけでありますが、正常な取引、こうおっしゃるけれども、一体何が正常で、だれがそれを判断するのですか。もう一つは、海運界は不況だ、こう言うけれども日本の大手六社、特にその中の四社は世界の一、二、三、四番目を占めるというのは、皆さんの海運白書にちゃんと出ておる。そして、それならば、私、この郵船の有価証券報告書、これもずっと見てまいりました。見てまいると、郵船の場合をとってみると、たいへん内部蓄積が多いのですよね。ある意味で、あれだけのストをやられてみたってびくともしないという表現をして間違いないところなんです。私、一々申し上げれば、積み立て金の内容を全部調べてきましたけれども、任意の積み立て金の増加、これが四十六年の上期から四十七年の上期までに二億八千三百万円だとか、特定引き当て金、これは特別措置でありますが、百五十四億三千五百万円。あるいは資産の増加、土地が二十九億円。船会社はたいへん土地を新しく買っておりますね。それから投資、これは海外だろうと思いますが、五十四億。利潤の平準化によるものが約十四億円というふうで、結局これは、配当が多過ぎますと、たしか八%をこえると利子補給をしてもらえなくなるから、八%に押えるために帳簿上の操作をしてきただけであって、内部蓄積はたいへん持っておるじゃないですか。それが、賃金が少し高くなったからといって、フィリピンだ、あるいは韓国の船乗りだとか、そういうものを使うためにチャーターバックするわけでしょう。そして日本の船員の職場はだんだんなくなってくる。それは確かに台湾だ、韓国だ、フィリピンの船員を使えば、労働賃金は、皆さんのほうの説明によれば、半分あるいはときには四分の一だというような、私に言わせればこれは奴隷船みたいなもので、そういう低賃金で搾取をする、そうしてやれば会社はもうかる、ますますドルはたまるということになってくる。こういうやり方をしておりますと、ドル対策じゃなしに、反対の対策を一生懸命に運輸省は進めておる。覚え書きをかわしたけれども、結局しり抜けで何にもならない。私は、大体大蔵省のいまの円対策は大半がしり抜けだ、こう思っておるのですが、次官、どうです。この辺もう少しきちんとこういうものをやるために——だから私は、この管理令なんというものじゃなしに、法律できちんとしなさい、こう要求するわけですが、どうです、このやり方は。私はこんなことで円対策になるなんということには思えないのですよ。皆さんがせっかく省令の改正をやってみたところで、役に立たない円対策。そうして最終的には、切り上げはしません、切り上げはしませんと言うけれども、円の切り上げに迫られて中小企業が参ってしまうということになってしまう、こう思うのですが、どうですか。
  247. 大村襄治

    大村政府委員 私もその問題の詳しい事情はまだ把握しておらないのでございますが、大蔵省だけでは徹底が期せられないのでございますので、運輸省の協力を得て趣旨が達成できるようにさせなければいけない、またそのことはできるものと考えておるのでございます。
  248. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、大蔵省だけではそれはもちろんだめでしょうけれども、あなたはとにかく大蔵省の、官僚ではなしに政務次官大臣のかわりでございますから、そこで、私はほんとうは大臣が出席しない委員会はきらいなんでありますけれども、この委員会はさっぱり大臣は出てこない。出てくると、十五分とか二十分という立ち話みたいな時間しか割り当てないというのでは困るのでありまして、やはり大臣のかわりなんで、もう少し私は政治判断をした御答弁を願わないと、もうこの委員会は、大臣の出てこないときにはやらないということにしてもらわなければ、委員長、困ると思うのですがね。どうなんですかね。もう少しちゃんとした御答弁を願わないと、どうもこの委員会はさっぱり、ナンセンスということばがよくあるけれども、ナンセンスですよ。
  249. 大村襄治

    大村政府委員 円対策の趣旨が貫けるように、大蔵省事務当局、運輸省協力してその趣旨が達成できるようにいたします。
  250. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは運輸省のほうについでにちょっと聞いておきたいのですけれども、最近日本の船会社は大体こういう傾向のようですが、運輸省もそれに賛成なんですかね。これは、「日本の船主が海外に労働力を求めるのは時代の趨勢だ。そこで、政府の海外技術援助ベースで関係国に船員養成施設を設け、海員育成に協力しながら外国船員を日本船に配乗する配慮が必要だ。」というようなことをおっしゃっておる重役さんがおるわけですね。幾つかの場所でそういう発言があるわけでありますけれども日本の船員の賃金が上がってきた、それを抜け道として、日本船になかなか乗せるわけにいかないから、結局新しい船をつくって外国に売ったことにして、チャーターバックする、それでいわゆる外国の船乗りを安い賃金でこき使っていく、そしてもうけるという方向を運輸省も推進をする気持ちでおるのですか。
  251. 住田俊一

    ○住田説明員 お答え申し上げます。  ただいま私から、なぜチャーターバックがふえるか、なぜ売船がふえたかということの一つの原因といたしまして、船員費の高騰ということを申し上げました。と同時に、かてて加えて、いわゆる税金面から見ますると、リベリアあるいはパナマ籍に移しますと非常に安い、こういったような利点もあると思います。  さて、ではしからば今後こういったシステムがふえていくかということについては、私どもとしてもいろいろと問題点があるというふうに考えております。その一つは、必ずしも外国船員のソースというものが無限にはないということが一つと、それから第二点は、いわゆるマンニング、つまり一つの運航管理の面において日本船員のほうがきわめて優秀である、こういったことから、最近、まだ非公式ではございますが、損保の、いわゆる損害保険会社のほうでは、外国船員を乗っけた場合においては保険料が高くなる、こういったような動きも出ております。また、ちなみに、最近の大型タンカーにおきましては日本の船員を乗っけたほうが保険料は安い、こういった点も出ております。それからいま大蔵省さんがいろいろと規制されておりますこういった円対策というようなことから、必ずしも、今後急速にふえていくということについては相当問題があるというふうに考えております。したがいまして、私どもとしていかに今後の海運政策を持っていくかということにつきましては、いろいろと大蔵当局とも検討し、かつまた、現在海運造船審議会というのがございまして、これは金融機関あるいは官庁機関その他マスコミ関係すべて代表の方が集まりまして、今後の海運と造船の政策をどう持っていくかということについて現在検討をしております。そういった検討課題の中に一つ入っておりますので、その過程において今後の方針をきめていきたい、かように考えている次第でございます。
  252. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは運輸委員会じゃありませんからあまり詳しく申し上げないで、幸いに当選してきたらゆっくりやりますけれども、ひどいのは、新造船を外国へ売る、それをチャーターバックする、それに日本船員を乗っけて、それをまた郵船はジャパンラインに貸し付けるなんということをやる。あるいはまた、イギリスのエッソですか、そこに船を貸して三光さんがやっておるということになると、今度海員法の適用を受けない、あるいは海員には海員に対するいろんな社会保障の面があるわけだけれども、それの適用すらまた受けられないことになってしまうというような、ある意味で先ほど来お話しの福祉国家とはおおよそ逆行した形の中で労働者がこき使われているというふうな問題が多々あるわけです。電波法の違反の問題であるとかというのを私は聞いておる。ここでは詳しく申し上げませんけれども、そういう問題もある。そういう問題も私はもう少し真剣に一ただ会社の利益追求だけやっていれば、労働者がどうなろうと一それは会社としては利益追求をやりたいでしょう。この決算書を見ましても、役員報酬はふえておるけれども職員の支払いのほうは絶対額で減っておるなんということになっておる。それで蓄積はちゃんとある。ストをやってたいへん困ったみたいなことを言っておるけれども、内部蓄積はびくともしないくらいお持ちになっておる。そうしてなおかつ国の保護でこれからコンテナ船だ、いや、なんでございますということで、開銀融資だ、利子補給だというものを際限もなく国に要求しておる。これが船会社の実態だ、私はこう思うのであります。  そういう点で円対策の面でも全くしり抜けだという点をもう少し大蔵省のほうもきちんとしないと、私はいままでの円対策にも冒頭申し上げましたようにたいへん大きな不満があります。そして林さんがここで幾ら声を大にして円の切り上げは絶対に避けてみせるといって宣言をされてみたところで、間もなく切り上げになるだろう、私はこう想像するわけですし、もう迫られておると私は思うのであります。しかし、そういう場合が来るかもわからぬ、やむを得ないかもわからぬ、だけれども、それなりのベストを尽くして対策を立てた上でやむを得ないなら別だけれども、何かいまのようなしり抜けの話ばかりしておいて、それでまた切り上げましたでは、ちょっと今度はほんとうに皆さん大蔵省に責任をとってもらわなければいかぬと私は思うのです。そういう点でもう少しきちんとした円対策を立てる。特にその場合に一番要望したいのは、日本労働賃金の低さというもの、国内の労働賃金の低さというものを考える。その問題をなくさない限りどうしようもない。  もう一つは、先ほど広瀬委員からお話しのように、輸出価格と国内価格との格差の大きなものは是正するというお考えにならないのか、これだけひとつお伺いしておきたいと思うのであります。  この二重価格、これが私は一番問題だと思うのであります。いろいろな理屈をつければつけられる。理屈も私は何べんか聞いております。しかし、日本の農民の米は高い高いというけれども、中国へ硫安を輸出するときは一かます五百円じゃないですか。大体五百円でしょう。日本の農民には、農協利潤は少しあるけれども、大体八百円ですよ。そんな日本の国内の農民に高い硫安を使わせておいて、日本のおまえたちの米は高いなんていったって、これどうしようもないですよ。物価が上がる、物価が上がるというが、上がったら、生産性が高まってコストの下がったものを下げればいいじゃないですか。それを下げないで国内で高くやっておけば、物価は上がりますよ。労働賃金のかかるものは物価は上がればいい。そのかわり、生産性の高まったものは下げればいいじゃないですか。そこで物価の安定があると思うのですが、いまのようなことを何とか是正する方針をとるのかとらないのか。企画庁の方、おいでになっていないですか。——政務次官からお答えを願って私の質問をやめます。
  253. 大村襄治

    大村政府委員 円対策に関連しまして用船契約の点がしり抜けにならぬようにと厳重な御注意を賜わりましたが、その点は厚く御礼を申し上げます。御注意を守って、せっかく円対策のために発動しました許可制度でありますから、趣旨の徹底をはかってまいりたいと思います。  なお、労働賃金の低さを考慮し、また輸出価格と輸入価格の差を解消するように努力せよという御指摘の点につきましても、積極的に対処してまいる決意でございます。
  254. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連して。時間もあれですから一間だけ質問します。  これはさっき経済企画庁にやる予定だったのですが、企画庁が帰ってしまったところで大蔵省に質問するのもたいへんどうかと思うのだけれども、これだけやはり言っておかないといかぬと思うのは、今度関税を二〇%引き下げる、これを一体物価にどういうようにはね返らせるか。これは関税を引き下げることによって輸入を促進するというだけであってはならないと思うのですね。これは前々から関税引き下げのたびに私どもはこの委員会でもずいぶん力を入れて主張してきたことなんだけれども、なかなかその実効が上がっていない。逆に、その関税は下がったけれども、上がったというような品目が出る。最近円の切り上げあるいは関税引き下げ、その両面で一部輸入洋酒、ジョニ黒が七千円の相場がついに出たとかいうようなことで、あるいは総代理店の問題などもからんで若干の効果はあったようだけれども、この問題も、物価対策という見地からこの輸入量が増大するだろう、そしてまた関税も下がる、それだけ安く入るわけでありますから、これを物価対策としても十二分に利用し、それを実現さしてもらう、そのためにこの追跡調査をずっと綿密にやって実効が上がるようにするという約束は、経済企画庁長官も前々からしておったわけです。宮澤さんのころでありますが、この委員会で約束したわけであります。そういう事情もありますし、また大蔵省もそういう点には十分配慮をする、こういうことになっておった。今回の場合にまだその議論が出ていないのだけれども、その点についてどのようにこれを有効に物価値下げの方向に反映させる方途を考えておられるか、この点を次官からお伺いして関連質問としたい。
  255. 大村襄治

    大村政府委員 今回の関税税率一律二〇%引き下げによる効果につきましては、先ほどの御質問に対しまして政府委員より〇・三ないし〇・四%程度の物価引き下げの効果があるのではないかというお答えがあったわけでございます。しかし、これをほっておいたのでは実現できないわけでございますので、追跡調査なり行政指導なりあるいは流通機構に不備のある点は改善をする等の措置を講じたい、その趣旨が達成できるようにいたしたいと考えております。
  256. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 計算上のあれだけではいかぬです。
  257. 大村襄治

    大村政府委員 計算上だけではいきませんで、関係官庁と密接な協力体制をとりながら趣旨の実現をはかりたいと考えております。
  258. 金子一平

    金子委員長 竹本孫一君。
  259. 竹本孫一

    ○竹本委員 円の問題をめぐる二、三の問題について御質問いたします。  最初にドルの問題ですが、円が切り上げになるという問題につきましては、ならざるを得ないであろうといういろいろの議論が出ておりますが、一つは、国内対策が十分でないか、不徹底であるか、時期おくれであるか、そういうような問題がいろいろ論議されたと思います。しかし、同時に、われわれの頭の中には、円はそうであるが、ドルのほうもどんどん下がっていくのだ、ドルが下がれば必然的に円は上がっていくのだ、そのドルがなぜ下がるかといえば、いわく、ベトナムインフレである、いわく、海外投資であるというように、いろいろとわれわれはドルが弱くなるマイナスの条件を幾つか数えてきたと思うのですね。しかし、最近それに対して、まず第一に、アメリカは近くベトナム戦争を終わるであろう、そうすれば、いままで大ざっぱに四十五兆円くらいになると思いますが、アメリカ経済を重圧しておった負担が、アメリカはそれだけ軽くなる、そういう点もあるだろうし、あるいはアメリカの海外投資七百八億ドルですか、これがだんだんに実を結んできて、アメリカに逆に金を送るような情勢に入ってくるというような条件をいろいろ考えてみると、円は弱くなるというか、強くなるというか。円が強くなると逆にドルは弱くなるといった従来の考え方ではいかないので、あるいは円の再切り上げを回避する一つの力に——へたをすると、日本の円対策、ここに掲げてある円対策も、より以上のドルの内部的な事情から、円の再切り上げが避けられるような条件が出てくるかもしれない。まあ若干の期待を持つわけですが、そういう点について、ドルはこれから強くなるか弱くなるか、強くなるとすれば、どの程度強くなるというお見通しであるか、その辺をちょっと伺いたい。
  260. 林大造

    ○林(大)政府委員 非常にむずかしい御質問をいただきまして、しかし非常に大事なポイントでございます。レートと申します場合には、当然のことながら相対的なレートでございまして、日本の場合にはやはり円とドルとの関係がおもな重点になってまいります。その意味におきまして、ドルが強くなるということは、相対的に円とドルとの関係の安定化には役に立つわけでございまして、したがいまして、ベトナムの停戦は、はたして具体的にどの程度進んでいるか、どのようなタイムスケジュールで今後進むか、その後にアメリカの負担が、従来の軍事負担が軽くなって、それにかわるまたいろいろな負担が出てくるかと存じますが、その差がどのくらいあるか、さらに経済は、竹本委員十分御承知のとおり心理的な要因が非常に強く働きますから、したがいまして、これによりましてアメリカの内部でインフレ心理がどれだけ払拭されてくるかというような問題を含めまして、現在すでにドルが心理的にかなり強さを取り戻しております。ヨーロッパの市場の状況を見ますと、金利差は次第にアメリカサイドに有利に傾いてきているという要因も加わりまして、最近ドルの強調が目立っております。  また一方、円はと申しますと、円対策をいろいろ講じておりますことのほかに、やはり今後の構造政策というものは従来とは違った方向に進むわけでございますから、したがいまして、生産性向上をいままでのとおりに期待するわけにはいかないという面がございます。従来は、民間設備投資があらかじめ一定の懐妊期間を経た後に生産力化いたしまして、それが生産量の拡大につながると同時に生産性の向上にもつながってきたわけでございますけれども、今後は当然のことながら福祉政策に重点が移ってまいります関係上、従来のような勢いで円が強くなるということは期待できないという問題がございます。  したがいまして、今後のやや息の長い見通しをいたします場合には、当然のことながらドルの強調、円の相対的な力の弱さというのを計算の中に入れておかなければいけないと存じますが、現在までの国際収支の状況はと申しますと、レート調整がその効果をあらわします場合には、まず価格効果のほうが先に出て、後ほどおくれて数量効果が出る。したがいまして、切り上げをする場合には黒字を圧縮する方向をねらっているわけなのが、最初は黒字がややかえって大きくなって出て、価格効果がまずあらわれて、それから数量的に輸出が減り、輸入がふえるという姿が次第に表面化して黒字幅圧縮に向かう。赤字の場合には逆である。その効果が、実は昨年の末にスミソニアンの合意が行なわれまして、レートの一律調整が行なわれましてから一年近くたっておりますが、十分にあらわれておりません。これは日本だけのことではございませんで、ヨーロッパでも同様でございまして、日本に関する限りは経常収支の黒字幅はやや依然としてふえてはおりますが、GNPに対する割合でいえば低下しつつあるわけでございます。それに比べまして、ヨーロッパの一部の国では、GNPに対する経常収支が顕著に上昇し、かつ今後の上昇が見込まれている国もあるようであります。しかしながら、現在までの状況はそういうような次第で、そのようなことの背景には、一つは景気のすれ違い、まずアメリカで景気上昇が先行して起こって後に、それにおくれて日本及びヨーロッパの景気上昇が追随したという関係もあったと思いますが、現在までのところは十分効果が出ておりませんが、今後は次第に効果が出てくる。それに、先ほど竹本委員御指摘のようなやや終期の方向とあわせまして円の問題が安定化に向かう、ただそれには若干時間がかかるというふうに判断をいたしております。
  261. 竹本孫一

    ○竹本委員 ドルがむしろ強くなる傾向も持っているという点について、特に心理的効果を強調されましたけれども、何かもう少し具体的なものを見通しとして持っておられるかどうかということをひとつ。  それからついでに、設備投資の生産性効果というものが今後は従来どおり期待できない、したがってそれだけ円も弱くなるという要素も持っているというお話がありましたが、それに関連をして、よく問題になる法人の土地投機ですね、こういうものに対し時価で評価するとか、あるいはそれに対して相当重い税金をかけるとかいうことは、これは結果的には日本の製品に対するコストを上げる、したがってそれだけ日本製品の競争力を弱めるという効果もあると思うのですけれども、その点は大体政府筋はあまり言わない。言わないということは、土地再評価もやらない、あるいは税金もかけないという前提なのか。そういう円の強いほうだけみな言うが、円の弱くなる半面の要素というものを同時にどれだけ評価しておられるかということもちょっと伺いたい。
  262. 林大造

    ○林(大)政府委員 本件はあるいは御専門の方から後ほど補足して御説明があるかと思いますが、ベトナムの影響を数量的に把握しているかということでございます。これは部外で一部試算をしているということを聞いたことはございますが、実は、ベトナム後の数字が、軍事費がどれだけ減って、それにかわる復興その他の負担が新たにどれだけ加わるかというような数字的な前提がまだ十分にありません関係上、私の手元には現在まだ申し上げられるような数字はございません。  それから土地の地価の関係は、確かにおっしゃいますように、地価、これは現実に地代として払います場合と、あるいは帰属地代というような形で地代を計算に入れてコストに入れる方法と、いろいろやり方はあるかと存じますが、競争力に影響ありと言っていいのではないかと存じます。本件はきわめてむずかしい問題でございますので、できれば企画庁の専門家の御意見をお聞きいただければと存じます。
  263. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が指摘したいのは、要するに円がたいへん強くなる、円の再切り上げだ。私は、いまの政府の対策をもってすれば、それこそ、好むと好まざるとにかかわらず、前回も言ったように再切り上げに追い込まれるであろうというふうに見ておるのだけれども、それがいいか悪いかの議論はまた別です。ただ政府としていろいろ対策を考える場合には、政務次官にちょっと伺いたいのだけれども、いろいろなプロバブルケースを全部考えていなければ、対策は常に手おくれになる。そういう意味で、円が上がるとか強くなるとかみんなが言っておるときに、逆にドルのほうがむしろ強くなるとか、あるいは円が弱くなる要因がどの程度あるかということも、政治の責任ある当局としては十分に計算に入れなければならぬ。大体、そのようなことを言ってははなはだ失礼だけれども、私はどうも、憎まれ口になるかもしれぬが、政府の見通しがしょっちゅう狂う。狂うのは、情報が一まず外交政策から説き起こせばたいへんなことになるのだが、アメリカ情報だって、常に自分の都合のいい情報だけ聞いておって、われわれの聞いているのと逆の情報、それすらも政府が知っていない場合が多い。繊維交渉だって全部そうでしょう。私は、木村さんが官房長官だったときに、内密に、コンフィデンシャルにいろいろ話したことがあるが、われわれのほうがよほど情報に詳しい。そういうふうに、一方的な情報ではいかぬということを私は予算委員会でも言ったことがありますが、しかし、外交問題だけではなくて、経済政策を考える場合にも、いま言ったように、円が強くなって再切り上げだといわれるときに、円が弱くなる要因がないか、ドルが強くなる要因がないかということについて、もう少し、経済企画庁か大蔵省かは別として、本格的な分析や検討を加えるべきではないかというふうに思いますが、どうですか。
  264. 大村襄治

    大村政府委員 円対策に関連しまして、ドルが今後強くなるのか弱くなるのか、確かに見通しを立てる必要があると思います。ポストベトナムの影響がすでにあらわれつつあるということでもございますし、その点をさらに科学的に分析、追求する必要があろうかと思うわけであります。  なお、わがほうのサイドにおきましても、当面黒字解消に重点が指向されているのでありますが、いま隠れている日本経済の今後の動向、確かに設備投資の生産性の高揚が今後はいままでのように発揮できないのではないか、むしろダウンするおそれすらあるのではないか、あるいは法人の土地取得による効果がめぐりめぐって物価のコストアップに通じはしないか、まことに傾聴に値する問題の御指摘点であると思うのであります。こういった点を総合して、これは大蔵省だけでは不十分かもしれません、企画庁その他の官庁の協力も得て、そういった点を客観的に把握して今後の施策に反映することに努力したいと思います。
  265. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまのベトナムなんかは、一週間で終わるか、十日かかるか、幾らかかるかは別として、これはやめるにきまっているでしょう。やめれば、アメリカは多いときには二百七、八十億ドルも年間使っておったものが、それだけ負担が軽くなるわけですから、それはたいへんな影響を持つと思うのです。だから、そういう問題について、きょうは時間がないから議論はしませんけれども、もう少し具体的な分析がなければ、予算委員会で粘り強く質問を始めたら困るのじゃありませんか。そういう意味でひとつアドバイスを申し上げておきましょう。  次に、これとはまた向きを変えて質問いたしますが、今回の円対策で、十億ドルか十一億ドルか、いろいろ御説明があったようですけれども、いま貿易収支では日本の黒字が九十億ドル出ようとか、ドルが二百億ドルたまったとか、いろいろ議論があるわけですが、私が心配するのは、一つは、今度は国内のいまの円の問題を中心とした思惑の問題ですけれども、毎日一億ドルずつ入ってくるというような動きが何日も続いたということでございますが、そこで、これで十億ドルくらいの——十億ドルか十一億ドルか、これは説明をいただきますが、そのくらいのものは、へたをすると一週間分の思惑分ではないかと思うのです。その点はどうかということが一つ。  それから、先ほど議論しましたけれども、大体政府の見通しと関連しますけれども、たとえば前回の去年のときのドルの思惑といいますか、これは私の聞いておるところでは、政府は二十五億ドルが精一ぱいだろうと思っておったという説も聞いたことがあるが、これは何も政府の有権的な解釈であったとは思いません。しかし、前回は一体どのくらいと思ったのか。日銀はたしか四千八百億だったか為替差損が出たと思いますが、どの程度になったのか。すなわち、政府の期待した姿とそれから実際に思惑の行なわれたスケールとはどのくらい違ったかということについてひとつ聞いてみたい。したがって、私が言うのは、今回のが幾ら、ドルの節約といいますか、ドル減らしになるのか、そのくらいは一週間でふっ飛んでしまうという思惑が行なわれるのではないかという点についての国民の心配をひとつ解きほぐしてもらいたいということです。
  266. 林大造

    ○林(大)政府委員 一週間とおっしゃいます意味がどういう意味か正確に理解しておりますかどうか、ただ、現在輸出の金額が、月によりまして、たとえば九月は二十五億八千三百万ドル、約二十六億ドルでございます。四週間といたしますれば、四分の一でございますから、週に六、七億ドルというペースになります。したがって、輸出の船積みが一週間早くなれば六、七億ドルは外貨がふえる勘定になります。輸入、輸出その他あるいは資本取引の面でも非常に厳重な為替管理はいたしておりますけれども、しかし若干の漏れというのはあるわけでございます。したがいまして、かなりの——金額がどれだけになるか正確に予測することはむずかしい。事務的にはじかせましたのよりは、悪いときにはそれより多くなるというのが過去の経験でございますが、一週間にかなりのドルの流入があり得てもふしぎではないと存じております。  ただ、たとえばただいま申し上げましたリーズにいたしましても、ある月に七億ドルなり何なりのリーズが行なわれた、次の月にはやはりまた一週間分のリーズが行なわれて、合わせて二週間分のリーズが行なわれないと、同じ金額は維持できないわけでございます。リーズというのはその意味では非常に在庫循環と似たようなところがございまして、あるところまでいくと戻ってこざるを得ない性格のものでございまして、戻ってくる場合には逆に七億ドル減る要因になってくるわけでございます。私ども、リーズというのは、為替投機で投機が投機を呼ぶというような心理的な面もございますので、それなりの警戒はいたしておりますけれども、しかしそのときのリーズで起こったものが比較的はっきりしているならば、切り上げというのは、当局がしっかりした意思を持っていれば十分に避けられるわけでございますから、これは国内に及ぼす若干の金融緩和効果、これにつきましては銀行局長から午前中にも答弁がございましたけれども、現在日本は十分それに対処していけるということでございます。それから外貨準備のほうは、これは切り下げに追い込まれている場合と違いまして、枯渇して困るということはない。それで、海外に及ぼす影響という問題もありますが、現在のところ海外では円切り上げを求める声はほとんどないといってよろしいかと存じます。したがいまして、リーズという問題が若干起こりましても、必ずこれはあとで戻ってくる性格のものであるというふうに考えているわけでございます。ただ、ときによりましてかなりの金額がふえても、それはやむを得ないことであるというふうに存じております。  第二の御質問でございますが、昨年どのくらいの覚悟をしておったかということにつきましては、実は有権的な見通しもございませんでしたし、いろいろな人がいろいろなことを言われただけでございますから、したがいまして、二十五億ドルという数字も、実はどこからお聞きになりましたのか、私存じないわけでございますが、いずれにいたしましても、事務的に積み上げた数字よりは、大体出てくる数字のほうが大きいという判断を私どものほうは常にいたしておりました。
  267. 竹本孫一

    ○竹本委員 昨年は少なくとも政府が考えた倍以上であろうと私思いますが、こまかい議論はやめましょう。  それからいま御答弁のありましたリーズの問題も、私はちょっとやはり楽観的ではないかと思うのです。それは、とにかくそういう思惑的行為が始まりますと、いまお話のあったように投機が投機を呼びますから、もとへ戻るはずだというのだけれども、もとへ戻る前に円の再切り上げに追い込まれる危険があるから私は申し上げているので、経済学的にいえばもとへ戻るはずだというのだけれども、政治の実際としてはタイミングのほうが大事なのだから、いつかは確かにもとへ戻るだろうと思うのですけれども、タイミングがうまくかみ合うかどうかというところに問題があるので、いまの問題はそれほど楽観はできないと私は思います。  時間がありませんから、あと思いつくままに一、二伺いますが、日本の輸出がいま三〇%ふえておるというので、日本の経済構造自体に問題があるのだと一部でよく指摘されるわけですけれども、政府はそれはどういうふうにとらえておられるか。貿易管理令を出すとか何とか、いろいろ議論はあるようですけれども、全体からいえば、日本の経済の構造そのものに輸出体質が強くなり過ぎておるという点があるのだと思うのですけれども、政府はそれをどういうふうにとらえておられるか。これはどなたからでもけっこうですが、ひとつ伺いたい。
  268. 林大造

    ○林(大)政府委員 輸出の実勢を申し上げますと、前年同月比で申し上げますが、昨年の七—九月が二六・三%でございました。十—十二月が二三・四%、一−三月が二二・二%、四—六月が一二・八%、七—九月が一七・八%でございます。比較的順調に輸出の伸びが落ちてまいりましたのが四—六と七—九で逆転しておりますのは、これは六月には海員ストがございまして、六月の落ち込みが少し異常で、その分が七月以降に繰り込んだ分と、九月に若干輸出の急ぎ、船積みの急ぎがあったためではないかというふうにいわれております。いずれにいたしましても、暦年で本年の一月から九月まででは一七・四%のアップでございます。これにつきましては、日本の輸出競争力、確かに強いわけでございまして、このために昨年末の切り上げも行なわれたわけでございますが、その効果が必ずしも思ったほど出ていない。輸入のほうはこれよりもかなり顕著に出ておりまして、昨年の七—九月がマイナス二・三%であったものが十—十二月には五・一%プラスでございます。ことしの一−三月には一一・九%、四—六月一二・三%、七—九月が二六・二%、八月には三七・八、九月には三六・九、これは海員ストでずれ込んでいる傾向がございまして、若干輸入が大きく出過ぎておりますが、いずれにいたしましても非常に顕著に回復いたしております。それで、輸出入総合で見まして、昨年の七—九月あたりには前年同期のほとんど倍に近いような貿易収支の黒字になっておりましたのが、最近ではほとんど前年の同期と似たような数字まで落ちてきております。このような経緯を経まして、日本の輸出競争力、非常に強い強いといわれながらも、やはり円切り上げの効果というのは着実にあらわれておりますし、また景気回復というのが、輸出にも若干響いているとは思いますが、主として輸入の面に確実にあらわれている。もちろんこれだけでは十分なものとは言えませんので、二面におきましていろいろな対策を講じているわけでございます。一つは、国内の構造を、輸出重点、民間設備投資重点から、国民福祉重視、環境改善投資重点のほうに切りかえていくという、国内の経済構造の面。それから対外的に輸入の自由化、資本の自由化、さらには関税の引き下げあるいはその他輸入の円滑化という諸般の措置をとりまして、日本経済を海外に向かって大きく開いていく。当然のことではございます。むしろ、おくれて、おそきに失したきらいがあるわけでございますけれども、その政策を進めていく。この両面の政策を進めていく。それで早急に達成できない部分は、臨時的な意味で貿管令その他によって補っていくという基本的なスタンスをとっているわけでございます。  お答えになりますかどうか存じませんが、一応そういう考えでおります。
  269. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまのはあまり答えにならぬと思うのですよ。私が聞いたのは、日本の経済構造や産業体質の中に、なかなか輸出が減らないような構造があると思うが、それを政府はどうとらえておられますかと聞いたのですから、まあ数字の動きその他いろいろ御答弁はいただいたのですけれども、これはまたあらためていたしましょう。  ただ一つ大蔵省に関する限りにおいていえば、要するに日本の自己資本が二〇%を割っているということからくる、いわゆる日本経済は自転車操業みたいな形になって、どんどん前に進んで生産をしていく以外に手がない、生産をしたものはどこかに売らなければならぬ、そういうことがやはり一つの輸出圧力になっておる。そういう意味で、税の面からも今度輸出奨励の措置をいろいろ改められるわけだけれども、それと同じように、輸出にドライブをする一つの原因に、自転車操業的な、前へ前へと進まなければ維持ができない日本の経済構造があるのだから、その財務構成をこの機会に直させるということも大きな対策の一つだろうと思うのですけれども、そういう点はあまり言われないから私がお伺いするのだが、どうですか。
  270. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御指摘、私どもとしても、何と申しますか、いわばあらためて考えてみる時期ではないかというふうに考えております。従来は、御承知のように自己資本比率がどんどん下がってまいりました時期に、これを何とか税で直せないかという御議論が多年にわたってございました。そのときに、決してコンセンサスがあったとも思われませんけれども、やはり従来のパターンの高度成長のもとでは、多少のことを税でやったにしても何にしても、自己資本比率というものは下がらざるを得ないのではないかという考え方がかなり強かったように思います。それをここから先にどういうパターンのものを考えるか、政策手段として税を用いることが適当か、またそれがきき得るかということにつきましては、御指摘のように私どもあらためて掘り下げて考えてみるべきであろうか、かように思っております。
  271. 竹本孫一

    ○竹本委員 大村次官に伺いますが、いま言った財務構成をひとつ直して、極端にいえば、全部が自己資本であれば——アメリカ人なんかは、御承知のように日本のように損をしてでも輸出をするというようなことは理解できないのでしょう。ところが日本では、会社の存続を維持するためには、どんな無理してでも一応自転車操業をやらなければいかぬ、あるいは損をしてでも輸出をしなければならぬというような財務構成になっておるんですよね。だから、輸出がドライブがかかり過ぎて困るのだというならば、税の面では今度やられたような特別措置とともに、その財務比率といいますか、構成を変えるということは私は緊急の課題だろうと思うのだが、これははたして今度の五項目の中に入っておるのか、あるいはいままで八項目、七項目と項目がたくさんあがったけれども、その中にはあるいはそれが考えられておるのか、あるいは今後は何らかの形において取り上げようとしておられるのか、どうですか、その点は。
  272. 大村襄治

    大村政府委員 自己資本の比率がきわめて低いのを高めるようにすることの問題は、今回の関係閣僚会議の円対策の決定には含まれておりません。しかし、今後の問題としては……
  273. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵省で議論出ましたか。
  274. 大村襄治

    大村政府委員 その点はまた後ほど申し上げますが、今後の問題としては、確かに御指摘のような点がございますので、これは税制だけでできる問題じゃございませんので、あらゆる角度から検討を加えてまいりたい、さように考える次第であります。
  275. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは、その五項目をきめる場合に、あるいは八、項目、七項目をきめる場合に、大蔵省として当然取り上げるべき問題ではないか。私が外国でいろいろ聞いたりしたときに驚くことは、ともかく、英国でもあるいはアメリカでも、損をして輸出をする必要はない、そういうことをするのはどういうわけか、日本人考え方はわからないというのです。それからまた、不景気で値が下がって損をするというのになおかつ会社が増産をするような考え方は、向こうさんというか、合理主義者にはわからない。結局これは、日本では動いていなければ銀行の取りつけが起こるとか、あるいは信用がなくなるとか、いろいろな意味で自己資本の率が低い、二割以下だということにあらゆる矛盾があると思うのですね。でありますから、輸出がドライブがかかり過ぎて困るという問題を論議するならば、少なくとも大蔵省としては当然この問題を取り上げるべきだ。取り上げなかったのは大きな怠慢であると思うが、どうですか。もう一度その点をお聞きしたいのです。
  276. 大村襄治

    大村政府委員 今回の決定を見画してみますると、一番最後の項目に、「引き続き、今後とも社会資本の整備、社会保障の充実、環境保全対策の拡充、週休二日制の推進等の諸施策を強化し、福祉指向型経済の転換を促進する。」という一項がございまして、あるいはこの「等」に入るかもしれませんが、いずれにしても、この際におきましてはまだそれほど表立って議論されておりませんので、今後御趣旨の点に即しまして検討してまいりたいと考えるわけです。
  277. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまおわかりいただいたと思うからこれ以上申しませんが、とにかく私はこれは非常な失態であると思うのですよ。  もう一つ、輸入の問題ですけれども、輸銀の総裁もいらっしゃるから伺ってもいいが、輸入はこれから何をどういうふうにふやそうとしておられるのかという問題が一つと、それから自由化の問題でよく出ますけれども、これはまた政務次官に聞かなきゃならぬ問題かもしれませんが、自由化をやる。残存輸入制限品目三十三のうちの二十四ですか、圧倒的部分は農産品である。その農産品の自由化の問題と、それから田中さんの列島改造論では、おそらくそうだったと思いますが、食糧の自給は将来八〇%をねらっていくということが書いてある。田中さんの書物は支離滅裂だから、ここで論議する価値があるかどうかしらぬけれども、しかし少なくとも輸入を自由化してどんどんやっていくということと、自給率を八〇%に維持する一まあわれわれはそれでも低いと思っておりますが、少なくとも八〇%にするという考え方とはどういうふうに調整をされるつもりであるか。輸入をふやすことは、もちろん私賛成です。しかしながら、輸入の自由化ということもけっこうですけれども、それと食糧の自給なり、いまの農村というものをどうするかということについて、もう少し総合的な観点がなければならぬと思うのです。と申しますのは、たとえば二十五万都市をつくるというようなことを列島改造論では言われるのだけれども、そういうのは一つの中央突破みたいな形で、工場再配置が中央突破するような形になっていくと思うのですよ。そこに集まる労働者というのは、その辺の農村の優秀な青年を集める、土地についても、立地条件のいいところは工場が押えて二十五万都市をつくる、そうして残った土地を、幾ら土地の所有権の流動化をはかるにしても、それではたして大規模経営ができて、それではたして八〇%の食糧自給率が確保できるかということ等の問題について、私は順序がみな逆だと思うのですね。大体日本の食糧自給なら食糧自給をやるというのは一つの大きな国策の柱ですから、それがためにはどれだけの人口とどれだけの土地が必要であるかということを考えて、それとの調和の中で二十五万都市なり工場再配置なりを考えなければいけないのだと思うのですね。それが逆になっておるように私思いますからいまの質問をするわけです。いかがですか。
  278. 大村襄治

    大村政府委員 たいへん視野の広い、大きな御質問でございまして、ちょっとすぐお答えする用意を持っておらないのでございますが、御案内のとおり、食糧の自給率を八〇%にすると申しましても、中にいろいろ品目によって分担があるわけでございまして、主食の米は一〇〇%にするが、小麦は何十%とか、いろいろ品目によって農林省のほうがだんだん準備されておるようであります。その線に沿いながらやはり農産物の自由化を弾力的に運営していかなければならぬというふうな感じがいたすわけでございます。  列島改造論の進め方について、行き方が逆転しているというお説でございますが、そういった面もございますが、またやはり過密の集中排除、受け入れ先の用意という点の配意も必要でございますので、そういった点を両面突き合わせて、狭い国土でございますから、そういった土地利用の利用計画をきめこまかく策定していくことが前提問題になるのではないかと考えておる次第であります。
  279. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから、今度は事務的で小さな問題を一つ伺いますが、加工再輸入減税品目の拡大、これはどの程度のことを考えておられるかということと、それから五品目とかいろいろ書いてありますが、これからの日本産業運営のあり方として、より高い政治的観点からこの問題はそれこそ視野を大きくして取り上げたらどうか。単に項目の中の一つということでなくて、これは日本のこれからの対アジアの政策から考えてみましても、相当大きく考えるべき問題ではないかというふうに思いますから、品目の拡大はどの程度に考えておられるかということとともに、それに政治的なウエートはどの程度置いておられるかという点をひとつ伺いたい。
  280. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 これは御承知のように四十四年度において特に韓国、近隣諸国からの要請に基づいて設けられました制度でございますが、自来品目の追加がなされまして、現在二十五品目になっております。輸入額は、これは昭和四十六年度ベースでございますが、二十二億という数字になっております。今回御審議願っておりますのは、新たに新規五品目を追加する予定にしておりますが、これは鋳造製品、イヤホーン、ラジオ受信機、テレビジョン受像機用のチューナー、それから録音機及び音声再生機、この五品目を御審議願うことにしております。この趣旨は、やはり日本の国内の労働力の需給関係ないし近隣開発途上国の工業化に資する、それから日本と開発途上国間の海外経済交流に資する、いろいろな意味において非常に有益な制度であると私ども考えておるわけでございますが、問題は、この制度が創設されました際に国会の附帯決議がございましたように、国内における中小企業、下請企業等についての配慮を十分されたいという附帯決議がございまして、私どもといたしましては、その附帯決議も十分体しまして、特に通産省当局にそういった面、業界の感触、そういった点をいろいろ慎重に御配慮願いまして、今回五品目のお願いをしておるわけでございますが、私どもといたしましては、この制度は国内産業との調和をはかりつつ今後とも拡充してまいりたい、このように考えております。
  281. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、中国との貿易の輸出、輸入の拡大の期待といいますか、見通しはどういうふうに持っておられるか、それだけお伺いして終わりにしたいと思います。
  282. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 ただいま御案内のように中国との間の貿易は民間貿易になっておりますが、今後これは日中間の通商交渉が持たれまして政府間の貿易協定ができまして、いわば最恵国待遇の条件を盛り込まして自由な通商が開かれるということが一番望ましいと思っております。このことによって日中間の貿易はかなり拡大になるのではないか、また私どもはそう期待をしておるわけであります。
  283. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっと、いまのはあまり抽象的です。もう少し具体的に言わなければ、何にも答弁しないのと同じだ。
  284. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 数字的に申し上げますと、中国との貿易状況でございますが、対前年伸び率で申しますと、輸出額につきましては、四十四年が二割伸びております。四十五年が四五・六%、それから四十六年が一〇一・六%。これに対しまして輸入額でございますが、四十四年が一〇四・六%、四十五年が一〇八・二%、四十六年が一二七・三%でございますが、輸入額につきましては、先生御案内のように、中国産品の関税の格差是正措置というのを私どもやってまいったわけでございます。約四百五十品目になっておるかと思いますが、そういった措置を講じて輸入の拡大措置を講じてきたわけでございます。いまの貿易形態は民間貿易、LT貿易あるいは友好商社の関係の貿易等であるわけでございますが、今後は日中通商交渉が持たれまして政府間の貿易協定ができまして、さらに一段と輸出、輸入において拡充が期待できるのではないか、かように考えております。
  285. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあ時間がないからあれしますけれども、私が聞いたのは、たとえば外務省であったと思いますけれども、日中貿易に非常に大きな期待を持っているけれども、そんなに大きな期待を持つことは無理であるというようなことから試算をして、これこれの数字以上には期待できないだろうし、そこまで達するのには何年ぐらいかかるであろうという案をたしか外務省が発表したことがあると思うんですね。それから最近においては、周恩来さんが四原則を掲げて、へたな消費市場にはならないとか、いろいろなことを言っている。そういう新しい情勢分析の上に立って、一体日中貿易は何年間でどこまで拡大できるのかできないのかということについて、これは機会を改めて論議をしなければいかぬと思うのです。私が伺いたいのはそういうところですから、ひとつ検討しておいてください。  以上で終わります。
  286. 金子一平

    金子委員長 小林政子君。
  287. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、海外経済調整ということで今回の輸出の適正化をはかっていく、そういうことで海外市場の開拓準備金の一部を廃止する、こういうことになっているわけでございますけれども、この点に関連をして、最近の輸出の動向というものをまずお伺いしたいと思います。特に七二年の上期の輸出というものの実態、前年同期と比べまして伸びた品目だとかあるいは減少した品目、あるいはその割合等についてまずお伺いをしたいと思います。
  288. 西脇敏彦

    ○西脇説明員 上期の輸出は、ドルベースで百四十一億ドルでございまして、対前年同期比一五・九%増加いたしております。しかし、各期別の対前年同期比の増加率の推移を見てまいりますと、四十六年の十—十二月がに三・六%、一—三月が二二・一%、四—六月が一二・七%、七—九月が一八・八%、そういうふうに、七—九月につきましてはドックストライキその他の関係で若干ふえておりますが、大勢的にだんだんと鈍化をしておる。その結果が、先ほど申しましたように、本年度前半におきまして輸出が一五・九%増加しておる、そういうふうになっております。
  289. 小林政子

    ○小林(政)委員 輸出の伸びが対前年比で一五・九%ということですけれども、特に私は、その中でも減少した品目とかあるいはまた比較的伸びた品目、こういったものを二、三あげていただきたいと思います。
  290. 西脇敏彦

    ○西脇説明員 主要商品の動向を申し上げますと、プラント類の中間統計を見ますと、円切り上げの影響がなくて、わりあい好調でございます。これは契約が前にできておったというようなこともあるのではないかと思っております。自動車、テレビといった前期非常に伸びました商品につきましては、本年に入りまして、自動車につきまして一九・六%、テレビにつきまして八%というふうに伸び率がかなり鈍化をいたしております。繊維品等の軽工業品につきましては七%前後でございまして、きわめて不振でございます。総じまして、成約から船積みまでの期間が一年未満のもの、こういったものの輸出が悪くなっております。むしろ長いものの輸出が伸びておる、こういうふうに考えております。
  291. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は「通産ジャーナル」という資料で見てみますと、この輸出の伸びというものが、いまいろいろとお話がありましたけれども、大きく分類してみますと、やはり重化学工業、こういったものが比較的伸びているわけですけれども、どちらかというと、いわゆる消費関係の食料品だとか、あるいは軽工業品もいま不振であるというお話でございますけれども、こういったものが落ちているということがやはり一つ数字として出ております。  それで私が非常にお聞きをしたいと思うのは、円が切り上がったその結果、従来国際競争力の上でも非常に強い力を持っていて、貿易収支も黒字を出している最大の原因になっていた重工業品、こういったものが、結局は円の切り上げにもかかわらずさらに輸出を今年度に入っても伸ばしているということは、一体何なのかということなんですね。これは私は、やはりいままでのいろいろな輸出優遇措置といいますか、手厚い優遇措置、そういったものも一つにはあったと思いますし、それからまた高度経済成長の中で相当いろいろな蓄積その他というものもあったと思いますけれども、このことを見のがして、輸出優遇の措置というものに対してこれをどうするのかということは非常に大きな問題になってきていると思うのです。  その措置の一つとして、今回海外市場開拓準備金が一応資本金十億円以上のものに対しては打ち切るというような措置がとられたわけでございます。私はこの点について、資本金十億円以上の法人は開拓準備金を今回取り消しましたけれども、十億円以下の法人を残したということは何か特別の理由がおありになるのか、まずこの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  292. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 今回の措置におきまして、資本金十億円超のいわば大企業につきましての市場開拓準備金積み立てば、適用期限の来るのを待たずに廃止させていただきたいというのが趣旨でございまして、十億円以下であるいわば中堅企業あるいは中小企業考えての提案でございます。中小企業、中堅企業につきましては、適用期限前にあえてこれを廃止するということはショックが強過ぎるという御意見がございまして、それを考えました上でこのように措置いたしたわけでございまして、適用期限でございます四十九年三月末におきましてはこれを廃止する方向でいきたいと私どもは思っておるのでございます。  なお、十億円で線を引きました理由は、いささか技術的でございますが、従来からの制度が実は十億円超と十億円以下一億円まで、それから一億円以下というふうに分かれておりましたので、その中のいわば大企業分の十億円超という部分を取り上げて、非常に大ざっぱでございますが、輸出量のほうから見まして、大企業の十億円超ということでほぼ六五%くらいをカバーするのではないかというふうに考えております。
  293. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、十億円以下の法人に対しても四十九年三月末にはこの制度をなくしていくということを確認してよろしいわけですか。
  294. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 税制当局といたしましては、そのようにいたしたいと考えております。もちろん別の御意見をお持ちの方もございますので、それはなお期限到来までに議論をするということになると思います。
  295. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はこれはなくすべきであるというふうに考えておりますけれども、はたしてどういうことになるかというお話もございましたけれども、その間、四十九年三月末まで、いわゆる資本金十億円以上の輸出企業が、みずから輸出はしないで、輸出専門の子会社をつくったという場合、こういったような場合には、資本金十億円以下、あるいは一億円になりますか、どのくらいの子会社をつくるかわかりませんけれども、そういった場合にはこの子会社に対する適用という問題は一体制度の上でどうなるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  296. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 新たに子会社をつくりました場合には、制度上は、当該子会社が資本金十億円以下でございますと、従来どおりの積み立て率の積み立てば四十九年三月末まではできます。
  297. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは資本金十億円で押えた意義というものはどこにあるんだろうか。これは全く抜け穴といいますか、ざる法にもひとしいような、やろうと思えばそういうこともできるわけです。自分のところでは輸出はしない、しかし子会社をつくってやっていけば、いわゆる海外市場開拓準備金という問題は、当面四十九年の三月末まではこれでもってできるんだということになれば、これは私はやはり重要な問題がここに残されているんじゃないかということが言えると思います。  私はむしろ、いままで政府がわが国の輸出優遇政策というようなものが諸外国にも例を見ないといわれるほどのあらゆる特別措置というものをつくって援護をしてきたわけですけれども、特に企業の大型化を目ざしております大きな企業に対する優遇策というものはやはりこの際はっきりと取りやめていくということが非常に重要だと思うのです。特にその中でも代表的なものは、一つには特別償却という問題もやはり非常に大きなものでございますし、これも通産省が「世界企業経営分析」という中で、いわゆる諸外国に比べて日本と外国との減価償却の割合、こういうものを調べた資料を見ても、アメリカのUSスチールの減価償却が九・五一%に対して新日鉄は二〇・三七%とか、あるいはアメリカのフォードが一二・五九%に対してトヨタが二三・六一%というぐあいに、ほとんどの大きな企業を比較しますと日本がむしろ高くなっている。私はこういうことが一つは今後問題として残されるのじゃないかというふうに思います。わが国の減価償却率が高い。その上特別償却というものも、これもやはり非常に大きい原因になってきている。輸出優遇策の中で、ただ海外市場開拓準備金を取り消すというようなことだけで、はたしてこういういま問題になっている輸出の適正化とかいうようなことがいわれているときに、こういうことについて一体どういうふうにお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  298. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、先ほどの御質問で、新しく子会社をつくれば制度上適用になるではないか、それではしり抜けではないかという御指摘がございまして、ちょっと私の説明が舌足らずで申しわけがございません。制度的には確かに積める形になるのでございますが、この制度は、積み立てをいたします基準が前年度の輸出実績でございます。したがいまして、四十九年三月末までしか期限がないという前提に立ちますと、いまから子会社を新しくつくりましても、実際は積む前年基準がほとんど出てまいりませんから、事業年度をいかにうまく操作いたしましても実効はほとんどないというふうにお受け取りいただいてよろしいと思います。その点、よろしゅうございましょうか、やや技術的でございますが……。  それからただいまの御質問でございますが、お示しになりました「世界企業経営分析」、なお私どものほうでもう一度よく研究いたしてみたいと思います。分母におとりになりましたものが何でございましょうか、その辺見ました上でなお研究いたしてみたいと思いますが、一般的に特別償却を切らなければ円対策としてはおかしいではないかという御質問かと思うのでございますが、実は輸出をベースにいたしました割り増し償却というのは、御承知のように、四十七年度改正で御審議を経て廃止させていただいたわけでございます。したがいまして、いま残っております大企業用の特別償却と申しますのは、一般的に特別償却があるわけではございません。合理化機械がおもでございまして、それは機械の機種を個々に判定いたしまして、これは企業の設備の近代化、合理化に役立つという個別の指定をいたしまして認めている制度でございます。したがいまして、大企業ならば何でもこれが利用できるかと申すと、そうではございません。この制度自身を今後どう考えますか、これにつきましては新しい目で検討いたしてまいりたい。  ただ、制度としてはかなり古い制度で残っておりますが、減収額などでごらんいただくとおわかりいただけるかと思うのでございますが、適用の対象は近年とみに縮小してまいっております。
  299. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はいま一つの例として特別償却の問題をあげましたけれども、私は、むしろ輸出優遇策というものをここでもって根本的に改めていく必要があるのじゃないか。そのことが特別輸出ということではなくて、いわゆる大企業が円の切り上げの中でもさらに強く輸出力を伸ばしておるというこの体質をどうするかという点で、やはり根本的にそれにつながる優遇策というようなものについてはそれを取り除いていくことが必要ではないかということを言っているわけです。  たとえば、私は大蔵省からもこの資料をもらいましたけれども、あらゆる租税特別措置等によって大きな企業ほど大きな優遇策を税制の上で受けているわけです。ほんとうに項目別に見ても、それこそあらゆる特別措置の損金算入額というものは大企業ほど大きくなっておりますし、価格変動準備金から、特別償却からあるいはまた製品保証の引き当て金から、海外市場開拓準備金、これはいま問題になっておりますけれども、あるいは海外投資の損失だとか、為替変動準備金だとか、あらゆる形でこの特別措置がとられているわけです。私は大蔵省から資本金別、階級別の数字をつくってもらいまして、それを見てみましても、これらのさまざまな特別措置によって相当減税というか減免が税金の上でされている。一例をあげれば、これは幾つかの企業について調べてみたわけですけれども、たとえば日立製作所の場合には四十六年の一年間で七十億二千八百万、あるいはトヨタ自動車工業の場合には四十六年の下期だけで二十八億というような、こういう非常に大きな減額がされているわけですし、私はこういうものはすみやかに廃止をすべきであるというふうに考えますけれども、優遇をやめるということは、ただ輸出関係だけではなしに、企業の体質そのものにもメスを入れて優遇措置というものを変えていく必要があるのではないか、こういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  300. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 現在ございます租税特別措置は、それぞれにその設置の際の理由づけがあるわけでございまして、私ども今後御指摘のような御意見を十分踏まえながら、それぞれの設置の目的に照らしてなおそれを存続すべきか、それともこの際廃止すべきか、十分検討を加えてまいりたいと思います。  ただ、これは再々御議論になる点でございますけれども、現在ございます租税特別措置というのがすべて大企業向けであるということではございませんので、その点は再々申し上げておりますので詳しくは申し上げませんけれども数字だけで申し上げますと、約四千七百億円の四十七年度ベースの租税特別措置の中で、いわゆる企業課税以外のその他のものが半分以上でございます。半分以下でございます企業課税の中では、中小企業向けが約六割五分くらいあるわけでございまして、租税特別措置イコール大企業ということではございませんので、その点だけはつけ加えさせていただきたいと思います。
  301. 小林政子

    ○小林(政)委員 租税特別措置のほかに、関税の中でも減免制度、いわゆる重要機械の減免ということが取り入れられているわけですね。あるいは鉄鋼製造用機械の免税も四十二年から四十五年までの四年間で十六億円も免税にしている。あるいは鉄鋼はわが国の輸出の中でも一番比重の大きな製品でございますし、ここのところ伸び率も三年連続で二五%からも輸出を伸ばしているというような、こういう実態の中から考えましても、これらのさまざまな特別措置というものは、あるいは関税の減免制度というようなものについても、これをやはりやめさせていくということが非常に重要だという点を強調しておきたいと思います。  次に、第三次円対策ですね。この問題は経済の福祉型への転換あるいはまた国際協調というものと両立をさせた形で政策的に行なっていくのだ、こういうことがいわれて、その第一の柱に、今度は輸入の拡大ということがいわれているわけでございますけれども、私は輸入政策の基本的な考え方というものをまず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  302. 西脇敏彦

    ○西脇説明員 国際収支をできるだけバランスさせますためにいろいろなやり方があろうかと思いますけれども、現在たまっております外貨を利用いたしまして輸入を増加することが一番問題のない、いい方法であろうかと存じております。したがいまして、私どもといたしましては、輸入をできるだけ奨励する、そういう方針仕事をやっておりまして、今回の関税の引き下げとか、割り当て品目の増加とか、輸入金利の低下その他、輸入の増大のためにはできるだけのことをやってまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  303. 小林政子

    ○小林(政)委員 関税の一律二〇%の引き下げで一体外貨がどのぐらい減るというふうに見通していらっしゃるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  304. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 関税負担率が下がることによって輸入にどれだけ寄与するかということは、なかなか定量的に把握することは困難ではございますが、あえて私どもは過去における輸入函数ということで試算をいたしますと、今回の引き下げ品目は主として製品関税でございまして、しかも千八百六十五品目にものぼっております。したがいまして、一応の試算の結果、平年ベースで二ないし三億ドルは輸入増加が期待できる、かように考えでおります。
  305. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、一律に二〇%の一応引き下げを行なったわけですけれども、それぞれの産業によって、今後の発展の段階あるいはその企業の体質、業界の体質等、こういったようなものを考えて、やはりただ一律にこれを引き下げるというようなことであってはならないのじゃないだろうか。今回千八百六十五品目というようなかつてない非常に数の多い対象品目に対して一律に二〇%を引き下げたわけですけれども、今後それぞれの当該産業の体質だとかその他について税率問題等についてどう考えているのか、この点をお伺いをしておきたいと思います。
  306. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 今回の一律二割引き下げは、全品目ではなしに、やはり国内産業について十分配慮しつつ対象品目の選定をいたしたわけでございます。まず内外格差の著しい農産物の一次産品、これにつきましては例外といたしました。さらにまた国内産業といたしまして価格支持政策をとつております、たとえて申しますと関税ではスライド関税を採用しておる、そういったものについても例外といたしますし、また特に特定地域の零細企業を保護するために、これにつきましては六十三品目にわたる例外品目を設けまして、以上総トータルいたしますと、農産物一次産品で二百九十五品目、それからいま申しましたいろいろな例外として百六十二品目、こういった品目の例外措置を講じたわけでございます。  なお、今後輸入が急増することによって国内産業が脅威を受けるというような場合には、特恵関税制度の停止の制度にならいまして、またもとの税率を適用するという仕組みの法律措置は別途御審議を願っておる、こういうわけでございます。
  307. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いまのすべて一律にということは、少なくとも千八百六十五品目——すべての関税品目ということではなくて、農産物その他を除いて千八百六十五品目、これを対象にしているということを言ったのであって、しかし、この中にも非常に中小企業等に与える影響あるいは農業関係等に与える影響というものはさらに大きく私は出てくるんじゃないか、こういうふうに考えております。特にその中で、従来はわが国の関税制度というのは、原料品に対しては比較的低い関税で、あるいは半製品だとか製品に対しては国内企業というものを擁護していくという立場というものもあって、比較的高い税率をかけていたわけですけれども、ここで中小企業に与える影響だとかあるいはまたその他の影響というものも若干配慮をしながら、千八百六十五品目を一挙にここでもって税率の引き下げを行なったということは、これは私はいままでのこの関税体系を大きく変えるものである、そしてそういう考え方に立ってこういうことがやられたんじゃないか、こういうふうに思うわけです。その結果、競争力の弱い中小関係の業者、業界あるいは農村というものは非常に大きな打撃を受けていくんではないだろうか。ここらのところの基本的な考え方についてもう一度お伺いをいたしたいと思います。
  308. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、農産物の一次産品は例外品目とし、さらにまた特定地域の零細企業の品目等、それぞれの個別産業に応じまして特別な配慮を加えまして、例外品目といたしまして百六十二品目を設けたわけでございます。  なお、これについて二割もの一律カットはかなり国内産業影響を与えるのではないかという御指摘でございますが、先ほど御指摘がございましたように、日本の関税水準は、特に製品関税につきまして各国に比べて割り高になっておるわけでございます。数字で申し上げますと、本年度ベースの数字で、製品関税の関税水準は一〇%台でございまして、諸外国、アメリカは八・四%、イギリスは八・二%、EECは八・〇%ということでございまして、日本の現在の国際競争力、それから日本の現在の黒字の状況からいたしまして、この一〇%を二割引き下げることになって初めて外国の水準並みになったということでございますから、現在の日本の製品を中心とする関税の国際競争力、そういった点からすると、決して今度の二割の引き下げ措置は過大な引き下げではないというふうに私ども考えておるわけでございます。もちろん今後個別品目によりましては、輸入が急増して国内産業が個別的に脅威を受けるというような事態がありますならば、先ほど申し上げましたように、特恵関税制度にならいまして、エスケープクローズ、つまり引き下げ前の税率を適用するということを政令で指定いたしまして、しかも機を失せず特殊関税部会にはかりまして、公正、弾力的な運用をはかってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  309. 小林政子

    ○小林(政)委員 中小企業に対する影響の問題等について、いろいろセーフガードも取り入れてやるから、そうえらい心配というものもないんだというような御答弁ですけれども、中小企業白書を見てみますと、特に中小メーカーの扱っているものの輸入の伸びというものが、この四十年と四十五年を比較してみると、三・九倍と極端な伸びを見せているということと、それから今後の問題としても、中小企業の業種には、そこでつくっているような完成品が次第に輸入の上でもシェアを非常に広げていくだろうということが書かれておりますし、少なくともこの輸入製品と中小企業は競合するというような業種の場合には、やはり相当大きな打撃を受けるであろうということが政府の中小企業白書にはっきりと書かれております。これらの問題について、一体中小企業対策というものが単なるセーフガードだけであって、具体的にはどのようなことをお考えになっておるのか、中小企業対策というものを持っているのかどうなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  310. 西脇敏彦

    ○西脇説明員 先ほど関税局長から申されましたとおり、今回の関税引き下げ案の作成に当たりましては、特に中小企業の問題の多い身辺細貨とかボタンとか革製品とか、そういったものを六十三品目抜いていただきまして、御審議いただいております法案の中にございますように、特に問題が生じましたときにはもとに戻せる。さらに関税法には緊急関税の制度がございまして、さらにそれも援用できるのではないか。その他、中小企業対策といたしましては、先般からいわゆる対外経済の調整に関しましていろいろな特別措置をとっておりまして、それと同様な措置が、今回の引き下げその他によりまして起きた場合にも当然考えられるものと私ども了解をしております。
  311. 小林政子

    ○小林(政)委員 もう少し具体的に聞きたいんですけれども、国内産業に相当の損害があった場合に発動されるということが書かれておりますけれども、一体その国内産業に相当の損害とは何を判断の基準にしているのか、この点についてお伺いをいたします。それからまた、具体的にどのような産業というようなものがそういう危惧を持つということを政府は想定されるのか、これについてもお伺いをいたしておきたいと思います。
  312. 西脇敏彦

    ○西脇説明員 現在までのところ、そういうふうな緊急関税の発動というふうな措置はございませんでした。したがいまして、単純に損害が生ずるというよりも、損害のおそれがあるという場合にも今回の関税をもとに戻すのはできるものというふうに考えておりまして、特別にそういうふうな事態が起こるかということについてはいまのところ考えておりませんけれども、問題があれば直ちに措置ができる、そういう体制で私ども対処いたしております。
  313. 金子一平

    金子委員長 小林さん時間が来ましたが、いいですか。
  314. 小林政子

    ○小林(政)委員 もうすぐ終わります。
  315. 金子一平

    金子委員長 それではあと一問ぐらいにしていただけますか。
  316. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、やはりそういう問題等についても非常に抽象的であって、具体的に何かの想定というものを持ってこういうことをやられているのだろうというふうに思うのです。その場合に、ここでもって緊急関税の措置をどうするかという基準というものは、政令できめるのか何できめるのか知りませんけれども、何を基準にしてこういう制度をつくられたのかという質問に対して、やはりお答えを明確にしていただくということが重要だと思うのです。  私は、時間がないということでございますので、今後の関税政策の上で、いま私が質問をしたのは、中小業者や農業に対する問題、それと同時に関税制度の体系全体を根本的に変えていく、こういう考え方があるのではないかということと、それからこういうさまざまな措置は、今後産業の保護水準というようなものを見直して、まあ極端にいえば、効率のあまりよくないものは発展途上国等にどんどん譲っていくというような方向を関税政策の上でもあるいはその他の考え方の上でもとっているのではないか。こういう点がそうでないのならば、明確に国民が納得をするような御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  317. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 たいへん視野の広い御質問でございますが、関税政策については、従来は財政関税あるいは保護関税ということでございましたけれども、最近はさらにいろいろな意味でこの関税について多角的な機能が付与されるようになってまいりました。たとえば物価対策あるいは消費者対策あるいは公害対策、いろいろな意味で関税に対する機能の期待がかなり最近強まっておるようでございます。それは一応別といたしまして、したがってそういった問題については、ただいま私どもは関税率審議会の中で企画部会を設けまして、そこでベーシックな御審議を願っておるわけでございます。  将来の関税政策の方向として国際的な問題が一つございます。それは次の国際ラウンドの問題でございまして、今後やはり自由、無差別のガット体制を維持、強化することがやはり世界貿易の拡大、自由化、それがひいては資源の乏しい日本にとっては国益につながるわけでございまして、次期国際ラウンドについても日本は指導的役割りを果たす、こういうようないろいろな問題をかかえておるわけでございます。  今後はこの関税政策は、財政関税、保護関税だけでなしに、いま申しましたように、物価対策、消費者対策の面から見直す必要はないか。さらにまた現在の関税体系が、御指摘ございましたように、タリフエスカレーションになっており、特に製品の関税水準が高い、こういった点を直す必要はないか、こういうような点を検討してまいらなければならないかと思っております。また国際的に見ましても、国際協調、先ほど申しました世界経済、貿易の拡大、自由化、こういった基本線に沿って今後関税政策を見直して、またそういった線に沿って検討しなければならない、かように考えております。
  318. 金子一平

    金子委員長 午後八時再開することといたし、この際、暫時休憩いたします。    午後六時五十二分休憩      ————◇—————    午後八時二十二分開議
  319. 金子一平

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  320. 堀昌雄

    堀委員 午前中に引き続きまして、大蔵大臣御出席になりましたから、この円対策の法律案に関連して少し予算関係の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  最初に、この間三十一日に私、本会議におきまして田中総理大臣に社会党を代表しての質問をいたしました中で、実は寝たきり老人で介護のない方に電話をつけてほしい、こういう問題を提起をいたしました。総理も「堀さんの御指摘は、電話を一台ずつつけたらどうかということでございます。この問題に対しては、まだ十分検討いたしておりませんが、せっかくの御指摘でございますので、検討してみたいと思います。」という御答弁でございました。そこで、これは私の願いとしては、そこでも申し上げましたように、全国に九万五千人という介護の人のいない、ひとりで寝ておる寝たきり老人があるというふうに厚生省が発表いたしておりますので、できれば一年に一万個程度で十年計画ということで、ひとつこの人たちのまくら元に無料の電話を据えつけてあげれば、非常に不安からも解放され、またさびしさもまぎらわせられるのではないのか、こういう気持ちで問題を提起をいたしたわけでございますが、ぜひこれはひとつ昭和四十八年度の予算で政府にお考えをいただきたいということでございます。  私のほうから私なりの提案を申し上げますと、年に一万個電話をつけるといたしますと、架設料が要ると思うのでありますが、一万個の電話架設料というのは幾らになりますか、ちょっと政府のほうでお答えください。
  321. 木村武千代

    木村政府委員 架設料は一個が大体五万円でございますから、五億円ですね。
  322. 堀昌雄

    堀委員 五億円ということになりますと、それをこれに関連をするところでおのおの受け持っていただいたらどうだろうか、私はこう考えておるわけであります。一つの提案でありますが、国のほうで三分の一考えていただけないか、そして三分の一は地方公共団体、県と市で六分の一ずつ持っていただけないか、残りの三分の一は、このような例はこれまでございませんけれども電電公社も、国民のための電電公社でございますから、電電公社として残りの三分の一をひとつ負担をしていただいたらどうだろうか。そういたしますれば、五億円の三分の一ずつというのは一億六千七百万円程度でありますから、そう多額の費用でないので、この程度ひとつぜひ四十八年度予算に組んでいただき、電電公社の問題については郵政省として、いまこういう使途に電電公社の費用が使えるようになっておるかどうか私もつまびらかでございませんので、郵政省の側でひとつ御検討をいただいて、電電公社も年に約一億七千万円程度の架設に対する費用を考えていただくような道を開いていただけないか、これが架設に対する一つの提案でございます。  その次に、電話をつけますれば、当然基本料と通話料というものを負担をしなければなりません。そこで、この基本料につきましては、これは電話架設数によって、多少地域で違いがあるかもわかりませんが、これはその町の自治体で基本料だけは御負担をいただくようにひとつ自治体に協力をしていただけないだろうか。全国十万人ということでありますから、そんなに多数の数が自治体に割り当てられることにはならないと思いますので、基本料は自治体の負担、それから通話料については一定限度を限ってひとつ電電公社で無料の取り扱いにしていただきたい。隣近所の人にそこにあるからといって使われたのでは、これは本来の目的に反する点もありますので、一応常識的な、寝たきり老人が使われる度数料というものを皆さんで御検討いただいて、その範囲内においては電電公社が無料で度数料については負担をしていただきたい。それをこえる分については、これは残念ながらそういうことの起こらないことのためにも本人負担という道を一応残しておいたらどうだろうか、こういう御提案を、いまの本会議の質問でも総理は、検討したい、こうおっしゃっておりますので、私の側から提案をいたしたいと思うのでありますが、これについて大蔵大臣及び郵政政務次官のほうからお答えをいただきたいと思うのであります。
  323. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいま寝たきり老人のお話が出まして、そうして過日の本会議におけるあなたの御意見に対して、総理の賛成的意見とでもいいますか、考慮したいというような御意見であったように私も拝聴しておりました。お年寄りの人で、しかも寝たきりで、ひとりでおらなければならぬ、そういうところへ電話が架設されるということは、おそらく外から慰めてあげる場合も友人なんかの都合がいいでしょうし、また御本人がかつての友人のところへ電話で話しかけるというのがどんなにか慰めになるかと思いまして、たいへんいいお着想だと私ども陰ながら御尊敬申しております。  ところが、いろいろその問題について事務的な話を聞いておりますと、すでに先例的に一部分認められておるそうでございますから、何もこれは堀委員だけのお考えではなく、今回はおそらく多数の委員の諸君も御賛成のことだろうと思いますから、どの程度に認めるかはしばらくおまかせ願いたいと思いますが、関係の役所とも相談の上で、できる限り御希望に沿うようにしたいと思います。この点、そういう意味において御了承願います。
  324. 木村武千代

    木村政府委員 堀委員の御提案の趣旨はまことにけっこうでございます。ところが、現状といたしましては、これは公衆電気通信法によりまして、加入電話の設備料は、加入電話加入申し込みが承諾された場合に、加入申し込み者が支払わなければならないものとして公衆電気通信法上定められているのでありまして、これを免除することは現行法上許されておらないわけでございます。また、電話料金の減免につきましては、やはり同法におきまして、災害等の場合を除きまして同様にできないことになっておるわけでございます。これは公衆電気通信法第七十条でそういうふうになっておりますが、ただいま堀委員からお話しになりました、寝たきり老人を含めたひとり暮らしの老人の自宅に対する電話の設置につきましては、地方公共団体が社会福祉事業の一環といたしまして、その名義で設置しようとする場合、いわゆる社会福祉公共団体の名義で設置しようとする場合には優先設置、それから電信電話債券の引き受け免除、他人方設置の例外等の措置を講じておりまして、その推進を支援いたしております。この場合には設置料または電話料金の負担につきましては、設置料につきましては現在は、これはあとからちょっと申し上げますが、全部じゃございませんが、国が三分の一、都道府県が三分の一、それから自治体の市区が三分の一となっております。堀委員電電公社が三分の一にせよ、こう申されましたので、ここにちょっといま現行法上との問題がございますので、これは将来大蔵省ともよく御相談いたしまして、この現行法を少し変更しなければ堀委員のおっしゃることが通らないというようなことになっておりますので、この点ひとつ御了承願いたいと思うわけでございます……
  325. 堀昌雄

    堀委員 簡単に願います。時間がありませんから簡単にやってください。
  326. 木村武千代

    木村政府委員 わかりました。  そういうわけでございますので、結局現行法上変えるには相当問題がございますが、堀委員の言われたようなことにつきまして関係当局と十分連携をいたしまして、その目的が達成するように今後、将来努力していきたい、こう思っておる次第でございます。
  327. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣からも適切な御答弁をいただきましたし、郵政政務次官からも前向きの御答弁をいただきましたので、それでぜひ進めていただきたいのですが、実は私も、地方自治体と国とがやっておる老人相談電話センターのことは知っておるわけですけれども電電公社も、私はただ電話をつけるだけが電電公社仕事であっていいかどうかという点については、やはり国の大きな機関でありますから多少そういう電話関係することは、国と自治体だけでめんどう見てくれれば、こっちはともかくつければいいんだ、金だけもらえばいいんだという話に私はならないと思いますので、そこらは法律の改正問題もありましょうけれども電電公社も社会的なそういう問題についてはできる範囲の協力をしますということが、私は国民のための電電公社として望ましい姿ではないか、こう考えておりますので、そういう問題を含めてひとつ郵政省で御検討いただきたいと思います。
  328. 木村武千代

    木村政府委員 この問題につきましては、寝たきり老人は社会福祉の一つの大きな事業だと思いますので、社会福祉のことにつきましてはやはり厚生省というものの考えも徴していただきたいと思いますが、電電公社もそういうような、社会福祉的な立場を各庁ごとに別々に考えるのがいいか、それとも社会福祉的なものは厚生省一本にまとめて考えるのがいいかということは将来の問題があると存じますので、この点もひとつお含みの上またひとつ考えさしていただきたい、こう思っております。
  329. 堀昌雄

    堀委員 以上でこの問題は終わりますが、厚生関係の問題がありますので、もう一つ続いて、実は私は四十六年の二月の八日の日の予算委員会で献血の問題についてちょっと質問をいたしました。これは事情がおわかりでないといけませんから、ちょっとこのときのあれを読み上げておきますと、   もう一つちょっとつけ加えておきます。   実はこの二月から、手術をいたしましたり外傷いたしましたときに受ける輸血の保存血液が、これまで二百CC千五百五十円から千八百六十円に三百十円値上がりをいたしました。約二〇%の値上りと、こうなったわけであります。そこで、これは私はぜひ政府に考えていただきたいと思うのは、昭和四十五年の献血の総量は、四十五万六千四百六十八リットルあります。四十六年の献血はおそらく四十六万リットルくらいだろうと思うのですが、これは国民の少なくとも二百三十万人の方が——自分のからだの血液というものは、これは自分のからだの一部分なんであります。この一部分を無償で——ただで善意に基づいて実は献血をしておられるわけですね。これは政府の方針に基づいて、いま売血から献血にたいへん進捗をいたしました。そうして二百三十万人の人が何らの報酬を考慮することなく、からだの一部を、それも血液という貴重なものを、一年間に二百三十万人が献血をしておられる。その血液が実は日赤に委託をされておるために、日赤の人件費の上昇分をもろにはね返して千八百六十円に今度値上がりをするということになるのです。ところが、献血の制度は合理化をしようなんという芸当はできないわけですよ。ですからこれは今後とも人件費が上がれば輸血を受ける側の費用というものはどんどん上がります。おそらく次には三千円になり四千円になってくるでしょう。こうなったときに、国民の側からすればただで自分の貴重な血液を献血しておるのに、受け取るものが三千円も四千円もになって受け取るのはおかしいじゃないかということが起こってくるのは、私は当然だと思うのであります。そこで提案をしたいのは、今度二月から一応引き上げましたけれども、その今度の引き上げ額を一年間に計算すると、わずかに六億五千三百四十八万円にしかすぎないのです。だから、これをただにしろとは言いません。これまでの千五百五十円というものを当分据え置いて、これから出る差額程度は私は国が補助をしてもいいのではないか。それはだれのために補助をするのか。いまの二百三十万人の国民の善意のために、私はこの程度のことは国が責任を持っていいのではないかと考えますけれども、総理大臣いかがでしょう。  ○佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたように、十分考えておきましょう。これが予算委員会の答弁でございます。これに引き続きまして予算分科会でこの質疑をいたしまして、実は政府で約七億の補助をしていただくことになりまして、四月一日に千五百五十円に引き下げられた、こういう経緯が実はあるわけでございます。  そこで、実はこれが昭和四十六年でありますが、四十六年約七億、四十七年十一億という補助をしていただいて四十八年にまいるわけでございますが、四十八年は厚生省のほうでは、いまの日赤の人件費等の値上がり分等もありましょうから、大体どのくらい国から補助を必要とするようになるのか、ちょっと厚生省からお答えをいただきたいと思います。
  330. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 厚生省で一応積算いたしましたところでは、四十八年度の一本当たりの製造原価が二千百九十八円という計算に相なりますので、事業費補助金の総額は約十七億三千万円必要であるということでいまお願いいたしております。
  331. 堀昌雄

    堀委員 そこで大蔵大臣、実は私がここで当分の間ということを最初に問題提起をいたしましたときに申し上げておりますのも、ずっと上がりますものを固定をして、ずっとその差額を国で見るということはなかなかたいへんな費用になりましょうし、その費用をはたしてそこだけに使うのがいいのか、社会保障の全体の中でさらに適切に使うのがいいのかということは当然問題が起きてくるだろうということを予想いたしておりましたので、一応当分の間ということで、時限を限って実は問題を提起させていただいているわけでございますが、この際私は、この当分の間というものの中に四十八年度までを含めていただきたいということでございます。四十九年度はいろいろな問題を勘案して、ひとついまの費用についても、血液を受け取る方たちの負担を三年間据え置いて国で費用を見てきたわけでありますので、そこらは一ぺんまた国民の皆さんにお考えをいただくということはやむを得ないかと思いますが、この際もう一年ひとつ国のほうで、献血者の善意にこたえる意味で、四十八年度予算で御配慮いただきたいというのが二点目の問題でございます。大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  332. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 その問題につきましては、私がちょうど少し値上げをしましたときですね、あれは病院側からたいへん強い陳情を受けまして、私も陰ながらむしろ若干の、人件費の一部をめんどうを見るというほうに実はやっておったのでございます。それがあなたの御尽力並びに当委員会の御尽力でああいったものとなりまして、それもよかろう、目的は日赤としてもあるいは血液センターとしても達し得るのだろう、事人命に関する大事な問題であるからよかろうと思って黙ってたいへん感謝しておったのですが、これまた非常に大事な仕事でございますし、特に四十八年度までもう一年めんどうを見ろというお話ですから、これまた御了承申し上げたいと思います。他の委員諸君も御了承願います。
  333. 堀昌雄

    堀委員 どうもありがとうございました。これは非常に献血者の善意にこたえていただいて非常に有意義に働くことだろうと思います。  その次に、やはりこれはこの間の代表質問の中の一つでありますけれども一つは私、関西新国際空港問題について総理の御見解を承ったわけであります。そこで総理の答弁をちょっとここで申し上げますと、「関西新空港の問題について御指摘がございましたが、地元及び公共団体の意見等も十分尊重して計画を進めなければならないことは、申すまでもないことでございます。慎重に対処いたしてまいります。」こういうふうに実は総理にお答えをいただいておるわけであります。そこで運輸省にちょっと伺いますけれども、運輸審議会ではかねて、この飛行場の位置を十一月ごろには決定をしたいというふうに私ども新聞で承知をしておるわけでありますが、この経過は今日どうなっておりますか。
  334. 隅健三

    ○隅説明員 お答えいたします。  四十六年十月十三日に諮問をいたしまして、現在まで二十二回の航空審議会関西空港部会を開催いたしました。種々検討する問題が次から次と出てまいりまして、部会長といたしましては十一月中の答申を熱望された向きではございましたが、検討にまだ今後時間を要するということで、年内の答申は若干無理かと思います。年を越すのではないかというふうに考えております。
  335. 堀昌雄

    堀委員 そこで、年を越しますと、当然この空港公団の設置の予算の問題は四十八年度当初予算には入らなくなる、こういうふうに私は了解をいたすわけであります。ただ私、これは実は昨年の十二月十四日に水田大蔵大臣との間にこういうやりとりをしておるわけであります。   そこで大臣、きょう私がこの予算編成を前にして特にこの問題をとらえておりますことは、この公共投資というのは、財源は国債によろうと税収によろうと、いずれも何らかのかっこうで国民が負担をするものであることに間違いありませんね。そこで、国民が負担をする費用で公共投資をやる場合には、やはり国民の願う公共投資、国民が希望する公共投資をやるというのが当然私は政府としてのかまえ方だと思いますが、いかがでしょう。  ○水田国務大臣 そのとおりだと思います。 こういう御答弁をいただいておるわけでございます。  そこで、私がこの間総理にも伺ったわけでありますが、周辺の住民が反対をしておるのにはそれなりの理由があるわけであります。いまの伊丹空港の激しい騒音公害。最近乳児、幼児に鼻血がどんどん出るという疾病がかなり広がっておりまして、これがどうも騒音に関係があるのではないかといって、いま医師がいろいろ研究を続けておるわけであります。ですから、こういうことで、この前も申し上げたように、神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市というふうに、ずっと沿線の市が反対決議をいたしておる実情では、やはりこれを予算化するのは、いま申し上げたように住民が払う税金でやることですから、住民が反対するものに公共投資の予算をつけてはならないということは、私は植木大蔵大臣も当然お考えをいただくことだと思うのであります。  そこで、一説によりますと、答申が出たらまたそれを補正でやればいいなどというような話もあるように聞いておりますけれども補正予算の性格はそのように簡単になっていないと思うのであります。財政法第二十九条に補正予算とありまして、「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。一 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合」こうなっておりまして、特に緊要となった場合、こう書いてありますが、空港問題というものは長期の時間を要して建設をしなければならぬ問題でありまして、少なくともつくり始めてから完成までにはまあ四、五年間もかかるようなものを補正予算等で、まだ住民の意思もきまらないときにやるようなことは適切を欠く、こう考えますので、総理もここで、いま私がちょっと読み上げましたように、「地元及び公共団体の意見等も十分尊重して計画を進めなければならないことは、申すまでもないことでございます。慎重に対処いたしてまいります。」こういうふうにおっしゃっておりますので、この点を配慮して四十八年度予算及びその後にもしまた問題が起こるかと思いますので、補正予算の問題を含めて大蔵大臣の御見解をちょっと承っておきたいと思うのであります。
  336. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 関西空港の問題、これまた相当、数年前からの問題であることは私も承知しておりますし、現場で説明も受けたことがあります。したがいまして、これも各方面の意思が、合意が成り立てば、その場合にはなるべく早くに急いでやるほうが一般のためでもあり、しかも関西のためにも非常に大事な空港のことでございますから、ただいま前大臣の言われましたことも体しまして、今回の予算編成に際して十分事務的にもさらに研究をいたした上で善処いたしたいと思っております。
  337. 堀昌雄

    堀委員 どうかひとつ総理の意向も体していただいて、住民が納得した上で問題を処理するということにぜひお願いをいたしたい、このように要望いたしておきます。  次に、税制の問題について伺っておきたいのでありますけれども、この間私、法人税なり交際費課税の問題に触れましたが、これはすでに税制調査会でも、私が質問いたしました二日後でありますか、新聞を拝見いたしましたら法人税問題、交際費課税については議題としてやっておられるようでありますから、本日はこれに触れませんが、四十八年度の減税問題であります。所得税減税の問題は、これはもう実は昨年の年内にやっておりますものですから、一年三カ月くらい実はたっていることでありますし、大体かなり成長のスピードもついてきておるようでありますから、四十八年度には自然増収もかなり期待できるのではないかと思います。かねて私ども新聞で承知しておりますけれども田中内閣は所得税五千億減税というようなことが新聞に出ておったような記憶があるわけでありますけれども、この減税問題についてはまだ今日さだかでない点もあろうかと思いますけれども、大蔵大臣の感触だけをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  338. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 減税問題につきましては、ことに所得税減税の問題につきましては、かねていろいろと配慮をしておったのであります。いろいろ研究を続けておりますが、所得税は何と申しましても御承知のとおり普通財源として非常に大事な税目でございますから、この税を減税するかあるいは据え置きになるかというような問題は非常にむずかしい大事な問題であります。ことにこの際国民の福祉向上のためにでき得る限り力を尽くそうということを考えておるやさきでもございますから、幸いにして幾らか最近の情勢では所得税の税収も大体順調に伸びていくのじゃないかと期待ができかかってまいったように思うのであります。いつぞやの雑談で個人的にお話ししましたときには、私はまだとても所得税の減税がやれるかどうか、ことに所得税減税の問題については各方面からの御要望が非常に強い減税でございますから、やるならば大きくやりたいということを、単なる感情でございますが、申し上げたことがございます。はたしてどのくらいのことができますか、ことに所得税だけでいいのか、あるいはその際に住民税等についても考えるべきじゃないのかというような問題も最近起こりかかってきておりますし、目下税制調査会でいろいろと御研究を願っておりますから、いろいろな資料が集まり次第、しかも各方面からの予算の要望はそれぞれ出尽くしましたから、両々相見合って適切な結論を得たい、かように考えておるのであります。でき得るならばできるだけのことはしたいという私の気持ちだけを申し上げておきます。
  339. 堀昌雄

    堀委員 最後に、円対策であります。けさも少し円対策の議論をさしていただきましたけれども、率直に言って、私はどうも現在の円対策が効果を発揮するかどうかについては非常に大きな疑問を持っておるのであります。そこで、事のいかんは別でありますけれども、どちらにしても問題が起きたときには一番影響を受けますのは中小企業、あるいは低開発国から追い上げられておりますところの雑貨でありますとか繊維でありますとか、こういう関係のものがどちらにしてもきびしい影響を受けることになるわけでありますが、それは通貨の問題を離れても、中小企業なり、いまの繊維なり雑貨なりの問題というのは、やはり政府としては考慮していかなければならない問題ではないか、こう思っておるわけであります。  そこで丹羽政務次官、通産省の立場としてこの問題をどう考えておられるか、ちょっと簡単に一言伺って、あと大蔵大臣に、四十八年度予算において、これらの中小企業に対する対策はどうお考えになっておるかを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  340. 丹羽久章

    ○丹羽政府委員 日ごろ中小企業の問題に対して御熱心な御意見をこの席で承っておりました私は、堀委員の質問に対しましてお答えを申し上げたいと思います。  ちょうど十月の二十日だったと思いますけれども、経済閣僚会議で円の切り上げ対策は慎重に協議をいたしました。あなたの御懸念の問題につきまして、絶対にそういうことのないような方法で進もう、そういう国内体制を整えていく。しかしながら、御指摘のとおりに、最悪の事態で——そんなことはないと申し上げるのでありますけれども、その場合はどうするかということについては、五項目に従って減税をするとか、あるいは償還金の返還期日等を延期するとかいうようなあらゆる考え方をもちまして、そして中小企業にその打撃を与えない、零細企業者を犠牲にしない、そういう方針で進むつもりでありますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  341. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、いまのは切り上げになった場合の話ですが、切り上げになるならないにかかわらず、実はこれはもう対策をやらなければならない、追い上げを受けておる問題でありますから、いろいろな関税上の問題その他もありまして、かなりきびしい情勢にいま立たされておる業種については、四十八年度予算で通貨問題と離れても対策を講じるべきだ、こう思っておりますので、その点についての大蔵大臣のお考えを承って私の質問を終わります。
  342. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 たいへんいい機会ですから、円の再切り上げ問題についての私の最近における考え方を一応申し上げておきたいと思います。  先般の十月二十日の対外経済対策の問題が、今国会の一番大きな、大事な予算になり、あるいは法案になって御審議願っておるのでありますが、最近私は、その後の状況を見ておりますと、ぜひとも円の再切り上げは回避しなければならぬ絶対の命題だというくらいに考えが強くなり、しかも、これをやり得るのじゃないか、必ずやりおおせるのじゃないかというような気持ちが、最近だんだん多くなってまいりました。  その後こまかい計数等も、いろいろな試算をやってもらったり、いろいろ研究をしてみましたが、どうやら何とかなるのじゃないかというふうな自信を十分持てるような気持ちになってきたので、私自身も最近は幾らか自信を持ってこの問題の解決に当たり得るのではないかと思っておるのであります。この点を、一時よりは自分でも自信を非常に強くしかかってきておるということを御報告がてら申し上げておきたいと思います。  なお、その問題の切り上げが起こる起こらぬにかかわらず、中小企業の問題はわが国としては非常に大事な問題でございますから——中小企業について国会で毎年各党とも御研究になり、いろいろと提案をしておられますが、なかなか思わしい救助策といいますか、対策のいい案が見つかっていない。おおむね従来のようなことが毎年行なわれておるのでありますが、しかし、これとても各関係委員会等で、中小企業のためにいろいろくふうをしてくださって、新しい事項がときにあらわれてはまいっておるので、私も専門ではありませんが、非常に心強く思っております。こういう際でございますから、一般的に景気がついてまいりますと、おそらくそういう方面にもだんだんと及ぶこととは思いますけれども、かりに及んでも、一番おくれて及ぶにすぎない非常に恵まれぬ御商売の方々ですから、これまた平素の動向をよく見守っていくことは言うまでもなく、予算編成にあたっても関係省からの御要望がそれぞれ出ておりますから、これについても愛情をもって中身を審査していきたい、そう思って係にも命じておるようなわけであります。でき得る限りの配慮を尽くしたいと思います。
  343. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  344. 金子一平

    金子委員長 広瀬秀吉君。
  345. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 円問題が出たところで、大蔵大臣に、引き続いて円対策の問題について質問をいたします。  十月二十日の閣僚懇談会で対外経済関係の調整対策が決定をいたしたわけでありますが、今度この委員会に法案が提出をされているものを見ますと、その対策の中でほんの一部分をつまみ食い的にピックアップして出してきた。一つは輸出入銀行法の改正によって、輸入金融を充実させることによって輸入をふやそうという問題、あるいはその投資金融等にアンタイドをやっていこうという問題であるとか、あるいは関税の二〇%一律引き下げ、千八百六十五品目を引き下げる、こういうことなど、さらに租税特別措置における輸出振興税制の市場開拓準備金を廃止する、そういうところだけなんですね。しかも、最近になって一億ドル以上のドル売りが浴びせられて、日銀が必死にこれを買いささえているという、しかも、貿易収支はどんどん黒字を累積してきつつある、しかも、当分この勢いはとまりそうもない、こういうような状況にあるわけであります。こういうような状況を続けていって、しかも今度の円対策法案のようなことだけで、はたしてほんとうにその円切り上げという事態に追い込まれることを絶対に避けられるという自信が大蔵大臣はあるのかどうか。その点の確信のほどをぜひ聞かしていただかなければ、私どもこの法案を審議して、政府と同じ連帯の責任を負わされていくというようなことは考えられないわけなんです。だからその辺のところ、大蔵大臣がこういう円対策について一部だけ今度出して、また次の通常国会でという部分もあるし、まだまだなまぬるいものもある。しかも、貿管令等の非常手段も発動するんだと言いながら、これも十一月一ぱいは様子を見てそれからだというような事態をあわせて考えますと、政府がことばでは本気で円切り上げ防止をやるんだということを言っておりまするけれども、その確信のほどがはたしてほんとうにあるのかどうか、この点を大蔵大臣からはっきり伺っておきたいと思うわけであります。
  346. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまもちょっとよけいなことを申し上げましたとおり、私どもとしましては、内容もこまかく、係のほうに無理にいろいろな試算をやってもらったりなんかしているうちに、だんだんと自信が強くなった。それからまた、過去の外国における通貨切り上げの際の景気の立ち直りの早さといいますか、外国においてあったいろいろな例を、数は少のうございますけれども聞いてみました。これらによりますと、やはりこれは一挙に一年なり半年なりでもってすぐ効果があらわれるものじゃないのです。やはりいろいろあらゆる手段を講じて、そうしてやっていくことが——これはつけ足してやっていくのであり、そうして本来の円切り上げの場合に、立ち直りをする場合の状況が、少なくとも二年とか三年くらいはかかる状況にあるというところもだんだん理解ができました。私初めは、どうもそれが単なる希望的観測にすぎないのではないか、希望的判断にすぎないのではないだろうかというような感じを持っておったのであります。  それで、一方わが国の去年以来のいきさつを見ておりますと、幸いにしてそれは国の力といいますか、業者の力といいますか、そこに努力のあとがあるのだろうとは思いますけれども、なかなか思わしく、輸入がふえてそうして輸出のほうは減るというような姿になってこないものですから、貿易収支の状況がなかなか黒字が続いているものですから、非常に何だかいろいろなそういう点についての自信が得たかったのであります。それをいろいろとさらに係と研究してみますと、だんだんこの調子でいけるのではないか。ことに最近における状況等もいろいろこまかい資料を計算してもらいました。それによりますと、ことしの上半期、一月から九月期の実績等々に見ましても、ようやくはっきりと輸出のほうはだんだんと伸びぐあいが減ってまいりました。それから輸入のほうはこれはふえてまいりました。そういうことが徐々にではあるけれども、あらわれかかってきている。この調子でいけば、なるほど二、三年はかかるだろうという一般の世界的な、こういう問題のときの状況に対する一般常識といいますか、その常識が、単なる当てずっぽうじゃないんだなということが、だんだんしろうとの私にもわかってまいりました。最近非常に心強く思っておるのであります。  私は今回の法律改正等々につきましても、対策につきましても、これはいろいろ希望はありました。こうもやってほしい、ああもやってほしいという希望もありましたが、しかし、今回は各方面といろいろ相談の上、そうして今回提案を申し上げているような程度の対策を講ずるにすぎませんが、しかし、われわれあのときの最後の計算の、最後の妥結のときの申し合わせとしましては、たとえばわれわれのほうが、一応一つの大事な問題じゃないかな、あるいはこれが一つの警鐘にもなるのじゃないかな、一般の人たち、業者の方たちにも、よく気をつけていただく非常に大事なよすがにもなるのじゃないかなと思ったのが、非常にいやな仕事ではありますけれども、いわゆる輸出税の問題であります。これは、私は本来なら、理論的にいえばそれもやっておくほうがいいのではないか。しかも、それをいかなる時期にやるかということについては、やはり政府が国会からできればひとつおまかせを願って、そうして施行令によって適当な時期を、政府の見るところによって情勢に応じてやり得るというようなことにしたらいかがなものだろうかというのが私の一つの主張であったのでありますが、これが不幸にして、この際さらに慎重に検討を続けていこう、こういうことになりましたので、あれをやめたということになったのではない。だから、もしも万一の場合には、これは臨時国会でも開いてでもやらなければならぬことが起こるかもしれません。あるいはこれが幸いにして順調にこの勢いでいけば、通常国会中には何とかなるだろう、また何とかしなければならぬ。それには、その効果はなるほど世界的な常識に合って、そしてある時期にくると、だんだんとこれが貿易収支もいいぐあいに調整がとれていって、そうして所期の目的を達成できるのじゃないかということにだんだんと自信を強めてまいったのであります。  かりに最近の四—九月の輸出の実績を見ますと、今度計算してもらったのですが、百三十八億ドルになっております。それが前年同期は百十九億ドルでありますからふえております。ふえてはおりますが、その前の年の百十九億ドルというのは、前年対比をいたしますと二五%前年に対してふえているのであります、それがことしのこの百三十八億ドルを前年の同期に比べますと、一五%の増にとどまっておる。だから二五%が一五%に下がってきた、こういうかっこうになっております。それに引きかえて今度は輸入はどうなっているかといいますと、ことしの四—九月は九十二億ドル、でありますが、それが前年同期は七十七億三千万ドル、こういうことになっておりまして、輸入は二・一%前々年に比べて上がっております。それが今度は、前年同期に対しての増加のしかたがそのわりに実は上がらなかったのですが、一九%前年に対して上がっておる。その前年は二・一%であった。それが一九%ですから、一当改善のあとが見えておると思うのであります。  それをもう少し長期にわたってみますと、輸出につきましては、ことしの一−九月が百九十八億ドルとなっておりまして、前年が百六十八億ドルであります。前年は二四%の増であったものが、ことしは前年に対して一七%の増でおさまっております。それから輸入のほうで見ますと、ことしは百三十五億ドルでありまして、これは前年が百十六億ドルでありますから、前年に対して一六%もふえているのであります。ところが、この同じ百十六億ドルをその前年の同期に比較しますと五%の輸入増にすぎなかった、こういうかっこうになっております。  だから、こういうかっこうから見ますと、前年の一−九月ごろの状況よりは非常に成績が上がりかかってきた。まだ上がりかかったばかりですが、この勢いでぜひとも進んでいってほしいものだなあという強い念願で見守っておるのでありますが、どうやら私はいろいろな説明を詳しく聞き、そうして外国の例をさらに詳しく聞いてみますと、なるほどこれはそう半年や一年ですぐにはあっと変わっていくものじゃないのだなということがわかりましたので、これはひとつ何とかこれから努力をすれば必ずやれる。ことにこちらの主張しました、希望はいたしませんけれども、輸出税なんというものは、しかしこれも慎重に検討することとして、われわれ政府部内で今後も善処するつもりでおりますから、何とかやれるだろうということにだんだん自信を持ちかけてまいったのであります。この点ひとつぜひ御理解を仰ぎたい、御協力を仰ぎたいと思います。
  347. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、いろいろ大臣に懇切丁寧に数字まであげて御説明をいただいたんですが、輸出税あるいは輸出課徴金なんというものは慎重に検討するんだ、こういう閣僚懇談会の決定になっている。これはやはりもうあきらめたものではない。したがって、情勢の推移で円切り上げに追い込まれそうだ、輸入はそれほど伸びない、あるいは輸出が意外に急増をするというような事態であったならば、やはりこういうことは今後とも大蔵省としては十分発動するという場合もあり得る、こういうことをこの慎重に検討するということは意味しておるんだ、こう見てよろしいわけですね。
  348. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 さようでございます。
  349. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点は十分ひとつ配慮をして、絶対に円切り上げを避ける、やらせない、こういう決意をもって、これからもこの国会での議論だけではなくて、次の特別国会ですか、そういうところでも絶対に上げさせないという立場で、円切り上げをやらないという立場で円対策というものを進めていくんだ、こういう御決意である、こういうように了解してよろしゅうございますか。
  350. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ぜひさよう御了承の上、御協力をお願いいたします。
  351. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それはその点で終わりまして、次に前々国会になりますか、六十八通常国会で水田大蔵大臣が私の質問に対して、税制改正の問題で、特に昭和四十一年改正以来ずっと改正されてこなかった退職金課税の問題で、現在は三十五年勤続で五百万円までは所得税をかけないということになっておるわけですが、これを私は少なくとも八百万くらいまで上げたらどうか、こういうような形で質問をいたしたわけであります。  その後、総評と日経連の間でも、同じような申し合わせができまして、一千万円くらいの長期勤続者——私は絶えず長期勤続者ということを言っておるわけですが、少なくともこれは二十年以上の勤続者ととっていただいていいのです。この一千万円くらいまでの退職金というものは非課税にしていこうじゃないかという合意が成立をして、労使双方とも政府に向かって、そういう形で要求をしていこうということにもなったわけでありますが、私の場合にはやや具体的に、三十年勤続のところで六百万、三十五年で八百万くらい、四十年で一千万くらい、こういう具体的な提案もしておるわけです。これは来年度、四十八年度税制改正の際には、数字はともかくとして、お説のとおりに改善を約束をいたします、四十八年度税制改正でそうしますということを言われておるわけなんですが、新大蔵大臣、といってももうだいぶたちましたけれども、水田さんにかわった大蔵大臣として、その点の確認をしていただきたいことが一つです。  さらにもう一つ、共かせぎ夫婦が日本で大体五百万くらいあるわけであります。この共かせぎ夫婦が子女扶養という立場において、そうでない者に比較してかなりの出費をいろんな面でしておるに違いないというようなことから、少なくとも二十万なり、あるいは最低でも十五万くらいなりの子女扶養控除という新しい控除を設けるべきではないか、こういう質問に対しても、前向きで実現の方向で検討をいたしますという約束をいただいているわけなんです。その二つの問題、新大臣として前の水田大蔵大臣と同じようにはっきり御確認をいただけるかどうか、この点を伺いたい。
  352. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 先生のその問題につきましては、私自身の検討がまだ不十分でございますが、しかし、わが尊敬する水田先輩がすでにお約束といいますか、大いに研究しよう、前向きに検討しよう……
  353. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 研究じゃない、実施をするという見解です。後退したらいけません。
  354. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 それは私もこの問題については理解は実は持っているつもりであります。だから、これは例の税制調査会もだんだんと進行しておりますし、その議を経ながら、大蔵省は大体において大事をとって十分研究いたしますから、でき得る限り前向きに、いまの退職金の問題も、ことに金額は問わぬとまでおっしゃるのですから、十分研究してみたいと思います。また夫婦共かせぎの場合の勤労者の立場も考えますと、十分これも同情すべき立場にあると思いますから、研究をさせていただきたいと思います。
  355. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣、あまり慎重に研究、研究だけではいけないのであって、水田大蔵大臣は来年度、四十八年度においては、長期勤続者の退職金課税の問題については、私が示した額をそのものずばりでやるというお約束はできないけれども、来年度税制改正においては必ずやりますと言っておられるのですよ。それを研究と言われたのでは私引っ込むわけにはいかない。もう一度答弁してください。
  356. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 十分好意をもって、また前向きに研究いたします。
  357. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 研究ではいけないんですよ。どうしたってこれは研究ではいかぬのです。それでは大蔵大臣やめそうなときには何を約束してもいいということになっちゃって、われわれが質問をしても、それが次の大蔵大臣になったらまた変わってしまうというのでは、政治の一体性というもの、継続性というものは失われてしまう。政治に対する信頼というものはもうなくなってしまうわけです。それじゃ何のためにわれわれは大臣にわざわざ来ていただいてその質問をするのか、もう意味がなくなってしまう。まさにナンセンスのやりとりになってしまうわけですから、そのあたり、もう少し明快な答弁をいただかなければいけないと思います。
  358. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 高木主税局長の報告によりますと、税制調査会における例の退職金問題につきましても、見込みなきにしもあらずということですから、どちらかというとそれを私は前向きにと申し上げたので、その点御了承願いたいと思います。
  359. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 水田大蔵大臣の発言はそのまま生きておるのだ、そういうように了解をして次に進みたいと思います。  通産政務次官がお見えになっておりますので、足尾銅山の閉山の問題に関連して、しかもこの金風鉱山資源というものが、やはり円対策ともからむ問題だというように考えますので、この問題についてお伺いをしたいのであります。  足尾銅山の歴史をいまさら私は振り返る気持ちはありませんが、四百二十年ほど前から採掘が始まって、幕府直轄になり、あるいはまた古河財閥の手に渡ってから約百年の歴史を持っている。そして日本の経済の発展、あるいはまた今日まであらゆる面で国内の非常に少ない金属資源の開発を通じて、非常に大きな貢献をしてきたわけであります。そういう中で、労働運動発祥の地でもあり、あるいは公害の原点だともいわれるような特異な、非常に有名な足尾銅山が、十一月一日付で会社側から閉山の通告を労働組合に対してされるというような事態になりました。閉山の理由は、いまあらためて申し上げませんが、四つか五つか会社側ではあげておるわけでありますが、一体この足尾の閉山の問題について、通産省としては——そのほかにも別子も来年春早々に閉山をする、あるいは生野銅山においても来春早々閉山だ、そして足尾も来年の二月に閉山をしたいという通告を受けている。こういうものに対してどういうお考えを持っておられるのか、黙ってこれを見のがすおつもりなのかどうか、その辺からもまずお伺いをしたい。
  360. 丹羽久章

    ○丹羽政府委員 広瀬委員の質問に対してお答えを申し上げたいと思います。  ただいまおっしゃったとおりに、足尾銅山の歴史というのは非常に古い歴史でありますし、日本のために大きな貢献をしてきてくれたことは事実であります。しかし、時の流れに従いまして、だんだんこの鉱山自体から出てくる品物なんかも枯渇してまいりました。言いかえれば、少なくなってきたということ、種々の事情から会社側としてもどうしても考慮しなければならないというような立場に立ってきたようであります。  そこで、いま御指摘ありましたように、十一月の一日に組合側に対して一応こういう理由であるから閉山をいたしたいという協議の申し入れをいたしたのでありますが、まだこれは決定いたしたものではありません。ですから、今後どういうふうにこの話し合いを組合側と進めていくかということになるわけでありますが、私どもの知っておる範囲内におきましては、製錬部門のほうだけは、そういう形で通達をいたしたもののうちにおいても維持するという大体の方針のようであります。そういうことでありますので、組合側でも実際に維持していくことができないのかどうだというような点については調査団をつくりまして、それに対する調査をして会社側と折衝するという態勢になって、正式な話し合いは今後進められていくことであろうと思います。  政府としましては、それにつきまして別にこれはという干渉はいたしませんけれども、もしこれを閉山するということについては、あとに残された公害等々の問題については責任をもって処理していくことに指導育成し、そして話し合いを進める上において善処をしていきたいという考え方を持っておりますので、どうぞひとつ御理解いただきたいと思っております。  また、御質問に対しまして、これだけで答弁が足らないということならば、具体的にこういう問題はどうするのだということをお示しいただければ、大体わかっておることについてはお答えいたしますので、どうぞ御理解いただきたいと思います。
  361. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まだ確定したものではないとおっしゃるわけですけれども、会社側が、具体的に現在働いている人たちが千百名ばかりおるわけですが、そのうち製錬部門では大体二百ちょっとということであり、また採掘部門で大体七百五十名程度働いておる。そういう労働——特に製錬部門は残すということでございますので、その七百五十名からの採掘部門の人たちは切り捨てられる、こういうことになるわけであります。  最近鉱脈が枯渇してきておる、こういうことが一番大きな原因だと思うわけでありますが、それにしても、親子三代にわたって足尾の山で一筋に生き抜いてきた人たちが足尾町をつくってきた。そして鉱脈がない、だいぶ枯渇してきたということで、会社側の都合で、一方的にそういう理由のもとにその職を離れなければならない、失職をしなければならない、こういうことになるわけであって、しかも町全体が鉱山を中心にしてつくられてきておるというのが、その鉱山がなくなる、製錬部門だけ残るということで、これは完全なゴーストタウンのようなものになりかねない、こういう状況を迎えて非常に深刻な状態になっておる。すでに足尾銅山の採掘部門で働いておって、けい肺病になって珪肺労災病院に入院しておった者が、このテレビ報道を聞いて散歩に出て、そのまま鬼怒川に身を投げて自殺するという悲劇まで織りまぜて、いま町をあげてたいへん深刻な悩みを訴えておる、こういう状況にあるわけなんです。  通産省が、生野にしても、あるいは別子にしても、なるほど一つの町を単位にそういう鉱山があるということで、なしくずし的に経営者がやめる、鉱脈がもう枯渇したのだからということだけで、そのまま経営者側のそういう態度というものを黙認して、閉山をそのまま見過ごしていく、こういう態度でいいのかどうか、こういう疑問が一つあるわけであります。通産省にも鉱山石炭局がちゃんとある。そういうものが、ほんとうにもうかわるべき鉱脈はないのかというようなことについて調査をして、なるほどこれはどうにもならぬのだということになり、最後まで努力をすべきところは政府としても努力をする、こういうような点があってしかるべきだろうと思うのです。  しかも、鉱脈が尽きたと言われても、現在掘っているところ、それだけでは、労働者はだんだんこれが細くなっていく、層が非常に薄くなっていくということはわかるが、しかしながら、新たなる探鉱によって新たなる鉱脈の発見というようなことについては、労働者は悲しいかなかいもくわからないわけです。会社側から言われれば、それを信ずる以外にない。そういう決定的な調査をしても、労働者が知り得る限界というものはきわめて狭いものがある、こういうようなことを感ずるわけでありまして、そういう点で、まず通産省として、みずからほんとうに国内におけるそういう足尾なら足尾において鉱脈がもはやないのか、何とか採算ベースに乗るような鉱脈というものは発見できないのか、こういうようなことについてやはり権威ある調査をすべきではないか、私は、まずその点お伺いしたいと思います。
  362. 丹羽久章

    ○丹羽政府委員 広瀬委員の御指摘のとおりでありまして、新しい鉱脈をさがし出そうということで、それはもうすでに発足いたしまして、来年度以降十二年間で千三百億かけて、年間約百億ずつこれに対して支出をしていこうという考え方を持っております。  さらに、いま御指摘のようにこの足尾を閉山するということになりますれば、町ぐるみ非常にたいへんなことになることは御指摘のとおりであります。たくさんの人たちが、それがために生活に困るようなことがありましてはたいへんでありますので、今度の指定地域にもなっておりますし、さらに今後の問題として、もしほかに転職しようという考え方の方々に対しましては、そのあっせんの労をとらなければならぬ、親切丁寧にやれというお話でございます。  十分その点は心得ておるつもりでありますが、いまの段階としてはまだ決定いたしたものではありませんし、今後県とも話し合いをし、そして組合側とも折衝をして、あなたのおっしゃるように、ほんとうに枯渇して、もう全然やることができないのかどうかという点については、これから組合と折衝せられる会社側との問題点がありますから、もう少し時期をかしていただいて、そしてどうしても閉山しなければならぬというときにおいては、十分政府としてはこれに対する助力、協力、援助等々を考えていきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思っております。
  363. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間があまりありませんから、いずれこの問題、通産大臣を呼んで、詰めるところを詰めなければならぬと思っておりますが、かりに権威ある調査の結果、どうしてもやはり鉱脈がどうにもならないのだということになれば、これはやむを得ない面があるかもしれない、閉山またやむなしという事態になるかもしれない、そういうように、かりにいまおっしゃったようなことで、どうにも鉱脈がもはや枯れ果てて、尽き果ててないのだということになれば、これはもう採掘をその現地でやるということはできないわけでありますから、それはやむないことになるけれども、かりにそうなった場合、前段においてやはりそういう権威ある調査ということは、しっかりやってもらいたいということ、それを前提にしながら、それがかりにどうにもならない状況に枯渇しておるというようなことが確認をされるようなことになった場合に、そうすれば結局閉山ということが確定をする段階を迎えることになるだろうと思う。そういう場合に、かつて石炭——これはスケールがかなり違いまするけれども、石炭の場合には非常に至れり尽くせりの対策を政府も講じたと私も思っておる。その集約として産炭地振興法というようなものもつくられている。あらゆる助成が行なわれて、離職者等の対策、あるいは転職のための職業訓練の費用、あるいはその間の労賃の補償、いろんな面で不安のない状況というものが政府の力によってつくられたわけであります。こういうような銅山、メタルマイニングの場合におきましても、少なくともあの石炭山の閉山のときと同じような気持ちで、これに準ずる措置というようなものを考えておられるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  364. 丹羽久章

    ○丹羽政府委員 先ほども申しましたように、産炭地地域と同じように、国も積極的に対策に乗り出す考え方を持っておりますので御理解をいただきたいと思います。  それから、先ほどから御心配していただいております、そのあるかないかということに対して、ただ単なる会社側の言い分だけで枯渇しておるのだというようなことは、そういうようなことは考えておりません。それはやはりほんとうに研究をして、組合側もおそらく自分たちの生活に大きな問題点が起きるわけでありますから、十分それはみずからそれぞれの方法を考えて調査せられることであろうと思っております。  それがうまくいかない場合にはどうするかという問題になりますと、いま言ったような、いろいろ政府としては石炭だけの待遇で、ほかのほうの鉱山に対してはほったらかしにするなよという御指摘でありますが、さようなことはしませんから、どうぞ御安心していただきたいと思います。
  365. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、円対策との問題ともこの問題——われわれ邪推かもしれないけれども、もう国内の銅鉱資源というようなものは、これは貧弱であるというようなことだから、しかもなかなか採算ベースに乗りにくい低品位鉱が多いというようなことで、たとえばアフリカあたりで、高品位の二〇%以上の銅の含有量を持つなどというのを露天掘りなどでやるというようなことと、一%あるいは二%くらいの含有量のものを地下産業として、地下何百尺というようなところに入って掘り出すというようなものとでは、なかなか太刀打ちできないような面もある。  だから国内もまだまだ鉱脈もあるけれども、採算ベースを考え、一方において経営者の立場を考えてやる。そして、一方においてはまた円対策というようなこともからんで、鉱物資源をどんどんもう輸入に全面的に依存していこうというようなことに、安易にいく可能性というものが最近あるのではないかと疑う節もなきにしもあらず、こう考えるのでありますが、やはり国内にある貴重な資源というものは、これを活用するという道を一こういうことで、単なる経営至上主義で、そういう道をみずから閉ざしてしまうというような本末転倒をやってはならないと思うのでありますが、そういう脈ではどのようにお考えでしょうか。
  366. 丹羽久章

    ○丹羽政府委員 御指摘のとおりに、海外から仕入れるということになりますると、国内で掘っていただくより安いことは事実なんです。これは事実なんです。しかしそれだけで、安いから何でもかんでも外から買い入れて、そうしてある資源でもないようにして閉山さしてしまうというようなことは考えておりません。だから、それにつきましては十分あなたのお考えどおりに、ほんとうにないところはやむを得ないから、閉山したからといってほったらかしにするわけにいきませんので、あとはいろいろの問題に金がたくさんかかってくることも御承知していただけることだと思っております。だから、あるものはちゃんと掘っていく。外国から仕入れたときに少々値段が安いからといって、それですべての日本の山を全部その方向へ持っていこうというような考えは毛頭ないということを、ひとつ頭に入れておいていただいて、政府も慎重な態度でこれに臨むということをいま一度御認識していただくということと、御理解していただきたい、こう思っておりますから、どうぞよろしく願いたいと思います。
  367. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最後に、それでは大蔵大臣に伺いますが、いま丹羽政務次官から非常に力強い答弁をいただいたわけですが、大蔵省としても産炭地域と全く同じということにいくかどうかは別としても、これに、少なくともあの前後に政府はいろんな助成対策をやりました。そういうものを含め、また町全体がもう町のていさいを維持することもできなくなるような状況にもなりかねない。そういう点に対する特別交付税、特交というようなことも含めての善後策、閉山というような事態にもしなった場合においては、失業者の対策あるいは工場の誘致の問題あるいは新しい町の発展、振興のための助成策あるいは離職者に対するあたたかい至れり尽くせりの措置というものは必要だろうと思うのですが、そういう面については産炭地域の閉山と同じように、準じてというか、そういう気持ちで、通産省から要求があれば、そういうものについて十分考慮をしていく、こういうお考えが当然であろうと思うわけでありますが、最後に大蔵大臣のその点における見解をお聞きして終わりたいと思います。
  368. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの切々たる御発言、御意見のほどよくわかりました。私といたしましても、通産当局の御研究の結果をよく承って、極力善処するようにいたしたいと存じます。
  369. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  370. 金子一平

    金子委員長 貝沼次郎君。
  371. 貝沼次郎

    貝沼委員 二日の予算委員会におきまして大蔵大臣は、私も聞いておったのですけれども、円の再切り上げを避けることにつきまして、残念ながら非常に困難な仕事と思うというような発言をして、私も非常にびっくりしたわけでありますけれども、しかし先ほどからずっと承っておりまして、やはりあのころはあまり自信がなかったんじゃないかなという感じがいたしましたが、最近はほうはいとして自信ができてきたそうでありますので、ひとつその自信をあくまでも持って、ぜひとも回避していっていただきたい、こう思います。  そこで、しかしながらきょう事務当局にいろいろと質問したわけでありますけれども、やはりこういう問題が起こってくるのは、根本的な、いわば日本経済の構造の上から、体質の上から出てきているのではないか、こういうふうな感じが非常に強いわけであります。したがいまして、今回の措置は措置といたしましても、それ以外にまだまだやらなければならない問題がたくさんあるのではないか。そうしてこの円の再切り上げという問題に当たった場合に、いまこういう問題をとりあえずやっているわけでありますけれども、こういうことがそのままになっておりますと、やがてまた同じことを二回、三回と繰り返していかなければならないのではないか。  そういう点から、今後この日本経済のいわば改造というか、あるいは立て直しというか、洗い直しというか、そういうような面からまだまだ手を打っていかなければならぬと思いますけれども、大蔵大臣は、この点についてどのような御見解をお持ちでしょうか。
  372. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 確かにただいまの御発言のとおりでございまして、私としては、まずもって今回はこの程度でやっていっても乗り切れるというふうにだんだん強く信ずるようになってはおりますが、しかし念には念を入れよということがありますから、先ほども申しましたとおり、輸出税等についても慎重にさらに検討することというふうに閣僚懇談会でもきまっておりますから、もしも不幸にして、そんな事態が起こるような際には、十分早くから手をつけて研究をし、実行に移すことを注意を怠ってはならない、こう考えてはおります。その点御理解を賜わりたいと思います。
  373. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでもう少し、この円対策に限らず、日本経済の構造改善という立場から、特にいまこういうことは円対策と関係ないにしても、やっておかなければならないというようなものを、大臣としてお持ちであるならば、お聞かせ願いたいと思います。
  374. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 その点につきましては、実は私、それぞれの関係省からの来年度の予算要求事項について、つまびらかにまだしておりません。それで、いずれは各省も力を合わせてやってくださることに相なっておりますから、来年度の予算要求、それがもうすでに集まっておりますので、係ではしさいに検討しておることと思いますから、それの査定に際しましては、ただいまも仰せのとおり、基本的にはやはり産業構造の改善からやっていかなければならない、それだけにこれは非常に骨の折れる仕事ではありますが、十分そういう点にも気をつけて、そして係と一緒によく研究をしてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  375. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま来年度予算のことにつきまして大臣の発言がありましたので、お尋ねいたしますが、来年度予算は、いろいろ報道等によりますと、十五兆円ぐらいではないかというふうなこともいわれておりますが、大臣がいまお考えになっておる予算規模は大体どれぐらいをお考えでしょうか。
  376. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 その点につきましては、実はまだ私の係との検討を、一応二応はやっておりますけれども、内容の詳細には入っておりませんので、まだ数字的に、具体的に幾らくらいになるだろうとかいうようなことは、もうしばらく差し控えさしていただきたい。お願いを申し上げます。
  377. 貝沼次郎

    貝沼委員 それならば、規模はまだ言う段階でないのならば、来年度予算の特に重点を置きたいという、たとえば福祉重点とかというふうにいまいわれておりますけれども、ただそれだけでは私たち——福祉といってもいろいろありますので、特に大臣としてどういうところに、どの辺の部門に大体重点を置いた予算をつくりたいとお考えになっておるのか。この点はいかがでしょう。
  378. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 実は、これまたあまり熟しておらないのでございますけれども、その上でお聞き願いたいのでありますが、私はやはり老人対策というものが、今回は相当各方面からの世論が盛り上がっておるように思います。そうしてまた、ほんとうに気の毒な老人もございますしするので、老人対策については心したい。それから、総理が非常に考えておられる難病、奇病といいますか、こうした問題についての研究費あるいはこれの施設、たとえば、でき得るならば国で施設をこしらえて、そういうところへだんだんと収容していく。一挙にはできなくても、そういうラインで進んでいくというようなことを試みてみたいなということを強く感じております。  それからさらに、一般問題としましては、近年戦争犠牲者についての措置は相当手厚くなってきているとは思いますが、しかし、実際問題は、やはりよく聞いてみますと、なかなか恵まれぬ家庭もありますし、気の毒な遺族もございますし、傷痍軍人でも非常に気の毒な人もございますから、こういう問題についてはやはり政治の光を当てていきたい、これを私は願っております。ことに最近におきましては、交通事故のために不具になられた方々、こうした問題についても、でき得る限りの措置を講ずべきではないかというふうに考えておる次第であります。
  379. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういうような問題は、確かにこれは重要な問題であり、またいままでも相当議論をされた問題で、残されておる問題だとは私は思います。したがって、勇断をもって、ぜひともこういう問題については解決をしていっていただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほど質問がありましたけれども、減税問題であります。この減税問題も、先ほど答弁を伺いましたので私は重ねて伺いませんが、ただ希望だけ申し上げておきます。勤労所得者その他につきましては、この減税問題を非常に望んでおりますし、また去年以来の経緯、そしてまた今度の物価の上昇、さらに自然増収もかなり見込まれておるようでありますから、ぜひとも大幅な減税をお願いしたい。大臣は、やるならば大きくやりたいというふうなこともおっしゃっておりましたけれども、ぜひともひとつ大幅の減税をお願いしたいと思います。  さらにもう一点でありますけれども、私たちが最近日本の大部分につきまして土地の問題をずっと調べてきました。そして新聞に発表いたしましたので、あるいはごらんになったかと思いますけれども、この土地問題を除いて現在の日本経済を論ずることはできない、こういう重大な問題になっておると思います。したがいまして、土地問題のための対策というものは、またそれであると思いますけれども、それと並行して、この土地に対する税制の問題、こういうものがまた何らかの手直しをしなければならないのではないかと考えますけれども、現在大臣がお考えになっておることがあるならば、お聞かせ願いたいと思います。
  380. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 土地の問題は予算委員会等でも、きょうもずいぶん質疑応答が総理に対してもございました。私はやはり土地問題が、今度の歳入をきめるにあたって何らかの解決を、十二分とはいかなくても何か適切な解決方法を見出さなければいかぬのじゃないか、こう思っているのであります。これにつきましては、税制調査会でもいま各方面から出ておりました御意見その他をそれぞれ俎上に供して、非常に熱心に研究しておってくださるのであります。これがどういうかっこうでその目的を達し得るかという問題でございますが、非常に新しい税制でありますだけに、やはりむずかしいようであります。ことに同じ土地を取得して、それを持っておって値上がりを待っておるというような、単に投機的な意味で土地を持っている人もありますし、そうじゃなしに、自分の会社はいままで東海道のベルト地帯におったけれども、もう少し過疎の地帯へ出かけていってそうしてそこで今度は公害の起きないような程度の施設で工場をこしらえて、そこでひとつ大いに将来の日本産業として、そういうところへ行っても間に合うもの、これについては、そういうところへ移っていくためにいま土地を手に入れていらっしゃる方もあるようであります。それから各地方では、それぞれ土地を手当てをしてそしてその工場誘致をはかっておるところもありますが、はたしてそれぞれその土地の人たちの希望するような産業がそういう方面へうまく移っていくかどうか、それがまたかえって、せっかく用意をしたけれども、その方面は一向来てくれ手もないというようなことになってしまいますと、その地域はまた土地の買い方次第によっては非常な損をみなければならぬ、赤字になって、将来持ちあぐんでしまうというようなことも起きるのでありますから、これに対しての問題は非常にむずかしい。特に土地政策というものをはっきりと各省それぞれの立場から考えていらっしゃるようでありますが、またその政策を実行に移すためにいろいろな新しい税制のくふうも考えていらっしゃるようでありますけれども、いよいよとなりますと、税を新しくこしらえるというほう、あるいは増徴するという方面は、結局大蔵省だけが苦労しなければならぬのでして、その一応の案を出してくださっても、非常にいろいろなむずかしい問題があるのを、そこまではなかなか御協力願えぬという苦しい立場に大蔵省は置かれておるのであります。それだけに、この問題はやはり一番基本的には土地政策をはっきりきめなければいかぬ。どういうふうなものをどういうようにして早くから手をかけておくか、こういう問題が十二分に私は各省でも御研究がまだ至っていないのじゃないかと思えてならないのであります。  そのために、ただ単に思惑でお買いになる方もあるかもしれないですけれども、土地政策そのものにもっともっと早くそれぞれその省その省の立場で基本原則をお立てになって、そしてそれにはこういうふうに県の公社で用意をするのだ、こういう方法をおやりになる、それにはこういう方法を講ずるというようなことができると思うのです。どうもそれがそうじゃなしに、ただ二、三の力のある人たちが、あるいは相当の会社が、自分が現実にそちらに行く見込みもないのだけれども、あそこで評判がある、二十五万都市だから、ここも何とかなるだろうということで、あちらこちらへ、大きな会社になりますと金融の都合もわりあいつきやすいものですから、だからそれを買いだめしておくというようなうわさも多分に耳に入ります。これらに至っては、ある意味からいいますと単に投機のために買っているのじゃないか、こういえるようなものが耳に入るのであります。それらはよほど考えてまいりませんといけませんから、きょうも予算委員会でも、大企業は銀行から金を借りるのが楽だからどんどん買い占めをしているのじゃないか、それらに対しての対策も考えろという御注意がありましたが、私は、やはり銀行局を通じて金融機関に対しても、こういう問題についていたずらに土地の値を上げるだけの、そうした考え方での土地の取得の金を融資することはいかがなものか。これは商売ですから、銀行は銀行として、この会社がいいとなれば、一応貸しておけば何とかなるだろうというようなことを言うかもしれませんが、これはやはり気をつけてもらいませんと、一般的に全国にわたってまで土地の値上がりが起こるもとになりますから、金融機関にも、警告といいますか、注意を発したい、かように思っておる次第であります。
  381. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣は閣僚の中でも重要な立場の大臣でございますから、土地問題は早く解決ができるように御尽力を願いたいと思います。  最後に、日中国交回復が実現をいたしましてそして対中国の貿易が拡大することは、重大な問題だと思いますけれども、こういう場合に、対中貿易を大臣はまずどのようにお考えになっていらっしゃるのか、こういうことが一点でございます。  またその際、輸銀の使用にあたっては、たとえば延べ払い用の特別資金のワクを設けたいというような考えも出ておるようでありますけれども、こういうことに対してはどのような御見解をお持ちなのか、これについてお伺いしたいと思います。
  382. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、やはり中国側の要望もあり、しかもそれについて妥当性もある、しかもわが国としては今後お互いに仲よく手をつないでそうして貿易もふやしていこうという考え方でおるのでありますから、その具体的案件、それにぶつかるに応じてそれぞれ十分研究をして、しかも延べ払い輸出のごときも、条件さえ整い、しかもその金額が、わが国として中国側へも力を伸ばしていく、援助と言うたらおかしいかもしれませんが、そういう条件で貸すことも考えておるのでありますから、それについては十分前向きに研究をしながら進んでいくという必要があろうと思っております。  輸銀使用の問題等につきましても同様であります。やはりこれは最近中国との間の接触がりっぱにでき上がったのでありますから、これに従ってそれぞれの間でお互いに文化の交流あるいは産業の上におきましても十分お互いに行き来をして、そうして実情に応じた仕事をやってもらわなければならぬ、こういうふうに思うのであります。日本といたしましても、わが国は御承知のようないわゆる通貨問題等のためにも、東南アジアその他の従来投融資をやっております部門についてはこれまた要望もますますふえてくるということが予想されますし、これも、それだからといってもうそちらのほうへのルートを断ち切るわけにもまいりません。だからこれも需要が起こりましょう。そうしてそこに中国側から大きな要望もあるかもしれませんし、あるいは向こうから買ってくるものとそれぞれ収支調整がはかれるものもあろうかと思いますから、その辺はよほど範をつけて、しかもお互いの間の今後長く手をつないでいこうということに約束ができたのでありますから、十分好意をもって、先進国といえるのかどうか知りませんが、わが国としてはやはり八方に目をみはっておく、目をつけておくということが必要だろうと思っておるわけであります。
  383. 金子一平

    金子委員長 小林政子君。
  384. 小林政子

    ○小林(政)委員 対外関係調整法のその理由の中で、国民福祉の向上を目ざし、経済構造を転換するというふうにいっていますけれども、いままで、きょうも質疑を続けてきている中で、どこにも福祉への転換ということは見受けられませんでした。逆に私は、中小企業や農業、国民生活犠牲の上でいままでの大企業の優遇を続けていくといわざるを得ない、こういう印象を強く受けたわけでございますが、一体どこが転換になっているのだろうかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  385. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 いまどなたかの御質問にありましたように、やはり基本的には、日本の現在の状況から考えますと、経済の基本的な構造改善がどうしても必要だと思います。そういう場合に、単に大企業だけに対して云々ということはわれわれは考えないで、先ほど中小企業の場合に通産省関係のときにも私の意見を申し上げましたように、これらの恵まれない中小零細の企業も立っていけるように、こういうものを、職業転換といいますか、工場の転換をやる場合でも、これからの日本の貿易にも役立ち、しかもそれがわりあい手っとり早く簡易に業種を転換していけるようなものには、それに必要な所要資金を回すというようなことが非常に必要だと思います。そうしてそれにはまた、従来からやられておりますけれども、中小企業のいわゆる経営指導、この経営指導の面においてはよほど気をつけていかないと、ただ単に、自分はこの商売がうまくいかないからあっちへかわろう、こっちへかわろうというのが、必ずしも国の希望せざる方面への転換になりますと非常にまずうございますから、これの転換の指導ということが非常に大事なんじゃないかと思うのです。中小企業は何しろ数が多いものですから、これに対しての指導はよほど手厚くやってあげる必要があるのじゃないか、指導の面においての必要を私は痛感しております。
  386. 小林政子

    ○小林(政)委員 補正予算の中でも、いわゆる公共投資については、この前私が質問をしたときに、公共投資も今回の補正の場合でも国民福祉の向上ということをはかるんだというふうに大臣はおっしゃったわけですけれども、その公共投資の中身を見てみますと、七五%がいわゆる産業基盤造成の整備、そのための幹線道路を進める、こういう中身になっておりますし、また生活基盤造成の整備というものが、むしろ道路事業費よりも少ない千三十九億しかない、二五%を占めているというにすぎないわけです。私は、やはり福祉を優先するということは、むしろこのような比率をほんとうに考え方のうえで大きく逆にしていく、このくらいの大胆な措置をとっていくことが必要じゃないだろうか、こういうふうに感じておりますけれども、率直な大臣のお考えをひとつお聞かせ、願いたいと思います。
  387. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 今回のこの補正予算の項目別をごらん願いますと、確かに仰せのような感じをお持ちになるかもしれないと思います。しかし、われわれがねらっております一つの問題は、いわゆる日本列島の改造という名のもとにいわれている過密過疎の解消、これをぜひとも直していく必要がある。これはやはりその住民全体にかかわる問題であります。東京、横浜、川崎といったようなこの密集地帯においては、非常にお互いの生活にさえ大きな影響を及ぼすような悪い病気も起こってくるというようなことは御承知のとおりでありますが、こういう問題を考えますと、やはり交通に対しての道路、新幹線——新幹線は今度入っていなかったかと思いますけれども、こうした問題についての努力をしていくことが、おのずから過密過疎の解消になり、公害の防除の対策に役立つもの、これは相当の金を要しますから、しかもこれができるならばその幹線から早く手がついていくことが全体によくなるそのもとになりますから、そういう方面にわりあい金が出ているのであります。こういう問題がありますので、そういう関係からそういうふうな御印象をお持ちになると思う。しかし、いわゆる国民福祉の向上という面から見ますと、恵まれぬ人たちに対しての、たとえば生活扶助の問題をはじめとして、多数の恵まれぬ階層に対しての年金の問題でありますとかその他のいろいろな支出がありますが、これは今回の場合には十分に手を回すことができなかった。  それと申しますのは、その財源としては普通歳入としての所得税等の増収の見込みがぜひはっきりしてほしい、そしてそれでもって将来つないでいける。こういう福祉的な予算というものは、一たん出したものはそれはあと必ず続けていかなければならぬものですから、永久財源を必要とするのであります。それが景気なんかによってすぐだめになるというような金の出し方をいたしますと、すぐ不景気が襲来するというようなことだってなきにしもあらずですが、そういう場合において公債財源でそうした財源をまかなうわけにはまいりませんから、そういう意味から今回はそうした方面の福祉増強という方面にはわりあい金が出ていない。これは今回の補正予算の性質上やむを得ない結果であり、今度いわゆる本予算におきましては、そういう方面に対しても、先ほど申すようないろいろな恵まれぬ階層に対しての支出をできるだけふやしていこうというのが、今度の予算ではある程度御期待願ってもいいのじゃないか、重点をもっともっと開きたいという考えでおるのであります。
  388. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、福祉といっても、特に公共投資の中で生活関連ですね。下水の問題であるとか、あるいは公園の問題であるとか、いわゆる日常生活の上で非常に住民が要望もしているし、事実立ちおくれていたという問題にやはり公共投資の中では重点を置くべきではないのかということを大臣に伺ったわけでございます。  そういう立場から、福祉への転換という点で、こういう姿勢はやはり財源対策についても私は言えると思うのです。いままで、いわゆる企業がほんとうに国民生活というものをある程度押えてでも膨大な利潤を得られるような、こういう体制がとられてきていたわけですけれども、大企業にこれに対する正当な負担をさせていくということが、財源構成の上でも、ただ公債を発行すればいいということではなくて、必要ではないかというふうに考えます。特に特権的な減免税というようなものもこれをやはりやめて、その財源でいわゆる国民生活向上のためにそれを使うということが、むしろ私は経済成長の成果を福祉に回すのだ、こういう考え方の上から見ても、非常に具体的な方法ではないだろうか、こういうふうに考えております。したがって、大法人の税率等についてもいろいろとここでも論議をされましたけれども、この税率等についての引き上げの問題や租税特別措置というようなものもやはり廃止していくという中で財源を生み出していくということが必要だというふうに考えますけれども、この点についていかがでございますか。
  389. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 少し具体的に中に入って御説明申し上げますと、今回の場合でも、たとえば国立病院及び療養所、これは御承知だと思いますが、ほんとうに気の毒な人たちがたくさん入っているところです。これのときは本予算に対して一〇〇%増額してあるのです。これは本予算では六十四億円に入っておりましたが、今回の中で一〇〇%入れてあるのは、この国立病院及び療養所、これなんかにおる人に対しての施策を考えてのことであります。あるいはまた、いまのお話の公園のときも、百二十五億円が本予算でございますが、それに対して四七%、約五割増で五十九億円を今度の追加で入れております。あるいはまた下水道、これがたいへんおくれてもおりまするし、それから要望も強い生活環境に一番密接な手近のことでございますから、これらのときも本予算が九百八十三億円、これに対して今度の追加補正が四百八十九億円でありまして、率にしますと四九・七%、これだけ増額しておるというような状況に相なっております。そのほか一般公共事業については、これはなるほど金額も比較的多くなりますが、これは道路その他が入っておりますのと、そしていわゆる基本的な地域の整備の問題、それから農村問題等につきましても、圃場整備等につきましても、最近の米の生産調整の必要もこれあり、それを考えて相当の額を盛っております。金額はなるほど絶対額も多くなっておりますが、しかし、率的に申しますと、そういうのは一九%しか入っていないのです。そのほかいろいろな問題が今回の予算では新しく御要求がありますから、今度はこういう方面にはうんと力を尽くしていきたい、そうしてただいま御主張のそういうような方面にどんどん金をできるだけたくさん回したい、こういう考え方でおる次第でございます。
  390. 小林政子

    ○小林(政)委員 やはり生活関連のものすごい立ちおくれを回復していくということが、いま緊急を要する問題にもなっておりますし、比率構成等においても、少しずつふやしていくということではなくて、やはり思い切った増額ということがいま必要ではないかというふうに考えます。そのことが私は一つにはやはりいまの円対策、これともつながるということを申し上げたいと思います。特に、いまの円対策も含めてですけれども、円不安の原因というものが、やはり貿易収支の黒字というものが増額し続けてきておる、ここに不安の根本的な原因があると思いますけれども、私は、この問題をほんとうに根本的に掘り下げて解決をしていくという点では、何といってもこれはやはり日本の低賃金制度をどうしても西欧並みに改めていく、こういうことが必要だというふうに考えます。そのほか、また大企業が公害防止の費用の負担を持つとか、あるいは社会保障の負担をもっと義務づけていくとか、こういう措置というのも、ひいては、いわゆる円問題と切っても切り離せない、むしろ根本的な内容の問題になってきているというふうに私は考えております。国内経済を大幅に拡大をするという点では、むしろ消費を高めていかなくてはいけないのではないか。国民消費がアメリカ日本の三倍であるというふうにいわれておりますし、イギリスは日本の一・四倍、西ドイツは一・五倍、フランスは一・八倍。減税や社会保障をほんとうにここでもって根本的な改善をして消費を伸ばしていく、こういう問題等を積極的にやっていくことこそが、根本的な、いまの大きな不安になっている円切り上げを防いでいく、こういうものにつながるものだというふうに考えますけれども大臣の率直な御意見をお伺いをいたしたいと思います。
  391. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 その点全く私も同感なんであります。したがいまして、なるほど金額としては少ないかもしれませんが、いま申しましたように一〇〇%の増額をやるとか、あるいは五〇%、四七%というようなものが、むしろこういう方面に力を尽くしているあらわれだとごらん願いたいのであります。だから来年度の問題としましては、こういう方面にうんと力を尽くしていきたい、かように考えております。
  392. 金子一平

    金子委員長 次回は、明八日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時十七分散会