○安永英雄君 とりあえずということでありますけれ
ども、いままでの日中の特に
中国の外交、こういったものについては、非常にテンポが早い。だから、とりあえずといいましても、やっぱり本質的な問題は真剣に
考えなければならぬ。この点については、まあ矛盾ということばも使われましたけれ
ども、いろいろやっぱりお互いの社会体制の違いというようなものもあるけれ
ども、一番乗り越えやすいのは
文化関係の交流です。これについては
文部省としてはきちっとした態度というものを持たなければならないし、これは早急に迫られると思いますが、次々に来るということですから、この点はいまそういった
検討をされると言いますけれ
ども、急を要すると思います。
そこで、私は、いままでの
教育、この中で
中国を正しく理解するような
教育がはたして行なわれておっただろうかどうか。私は、行なわれていないと思う。そのために、両国民の間に非常にギャップがある。特に日本の侵略といったものについて加害者と
被害者の
関係の中で非常にギャップがある。この点は、やはり今後なくしていかなければならない。そのための
教育というものはどうあるべきかという問題について多少質問をしたいと思うのですけれ
ども、たとえば
指導要領の中で日中の問題を取り扱って、こういうふうにしてやれというふうな示しをされておるのは、「アジアの情勢と日華事変」と、こういったところにやや出ているわけですけれ
ども、「
中国をめぐる国際情勢や日華事変のあらましを理解させるとともに、この事変を中心とする日本と
中国との
関係な
考えさせる。」と、こういう表向きは
一つの項目ではありますけれ
ども、これが実際の
指導の中になってくると、ほとんどこの問題についてはページ数がさかれていない。あるいはまた、「内容の取り扱い」というところを見てみますと、「第二次世界大戦後の歴史に関する事項の取り扱いに当たっては、特に公民的分野における
指導との関連を考慮し、歴史的分野においては、世界の動きを背景に日本の歴史の大きな流れが大観できるように簡潔に取り扱うとともに、日本の歴史における重要な事項の前後
関係を明らかにする必要がある。」と、ここぐらいしか出ていないのです。しかも、この取り扱いというのは、
中国との
関係その他についてはさあっといけ、あまり詳しく取り扱うな、こういった形で、戦争のわれわれの残したつめ
あと、こういった問題についてはあまりペースをさかないようにという
指導が教科書検定等をめぐっても行なわれておるわけです。
したがいまして、教科書あたりを見てみますと、非常に簡単で、全般的な社会科の
教育の中で占める
中国との
関係、こういったものについては、非常に簡潔に行なわれておる。まあ時間がありませんから読み上げませんけれ
ども、たとえば「満州事変」、こういった問題について取り扱いをこうやっておるわけですね。「
中国では国民党をひきいる蒋介石が、アメリカやイギリスのたすけをえて民族運動を背景に国内統一を進め、その勢力は華北から満州にまでおよんできた。それとともに
中国人のあいだに、満州などの日本の権益を取りもどそうとする動きが目だってきた。とこういうふうな記述なんですよ。日本の侵略ということじゃなくて、むしろ日本がいわゆる権益というものを持っておった、それを侵そうとやったから戦争は起きていったんだというふうな記述のしかたをやっている。あるいはまた、
昭和六年のいわゆる南満州鉄道爆破という問題ですが、これあたりは、
中国のほうがやったのか日本のほうがやったのかわけはわからぬと本文には書きながら、わざわざ注を入れて「〔鉄道爆破事件〕のちになって関東軍の一部が実行したものであることがわかった」と。注でわかったならば、ここのところに書けばいい、本文に。そういうふうな記述は、しかもペースとしては、先ほ
ども申しましたように、日中間の歴史的な
関係とかそういったものを十分研究しようと書き出しながら、それが実際の教科書にあらわれておる部面においては非常に簡潔に取り扱われておるということ、これでは、現在の日本の
教育を受けた者が、
中国に対する侵略、それからむしろわれわれが反省しなきゃならぬという気持ちは起こってこないような気がする。国交の回復した今日、行き来がありましょうが、悪うございました、こうあやまって、それを基本にして国交回復された。しかし、依然として、この教科書で
中国を理解しようとしても、理解はできませんよ。私はそう思います。
だから、端的に聞きますけれ
ども、
中国との国交回復が行なわれたということから、
学校教育という問題については、やはり
指導要領等の、あるいは教科書で教えるというのじゃないんですけれ
ども、まあ一応参考になる教科書、こういったもの等については、
文部省としてはやはり
考えなければならぬ点がたくさんあるのじゃないかというふうに私は
考えますが、このとおりでけっこうだと、こう思われるのかどうか、はっきりしていただきたい。この機会にはっきりしておかないと、たいへんなことになると思います。