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1972-09-29 第69回国会 参議院 文教委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月二十九日(金曜日)    午前十一時八分開会     —————————————    委員の異動  七月二十七日     辞任         補欠選任       内藤誉三郎君    塩見 俊二君  七月二十八日     辞任         補欠選任       塩見 俊二君    内藤誉三郎君   出席者は左のとおり。     委員長         永野 鎮雄君     理 事                 楠  正俊君                 宮之原貞光君                 安永 英雄君     委 員                 金井 元彦君                 志村 愛子君                 大松 博文君                 濱田 幸雄君                 二木 謙吾君                 宮崎 正雄君                 片岡 勝治君                 鈴木美枝子君                 内田 善利君                 矢追 秀彦君                 加藤  進君    国務大臣        文 部 大 臣  稻葉  修君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        人  事  官  佐藤 正典君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        文部政務次官   内海 英男君        文部大臣官房人        事課長      望月哲太郎君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省体育局長  渋谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁文化財保        護部長      高橋 恒三君        建設省河川局開        発課長      宮内  章君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (派遣委員報告)  (学校統廃合に関する件)  (文化財の保護に関する件)  (学校における公害問題に関する件)  (教育職員給与に関する件)  (日中国交回復に伴う文教行政上の諸問題に関   する件)  (特殊教育に関する件)  (文部大臣の松山市における発言に関する件)  (学習指導要領に関する件)  (学習成績評価方式に関する件)     —————————————
  2. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) ただいまから文教委員会開会いたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  前国会最終日に、はからずも文教委員長に選任されまして、その職責の重大さを痛感している次第でございます。はなはだ微力ではございますが、皆さまの御協力をいただきまして、誠意をもって委員会運営に当たる所存でございます。何とぞ皆さまの方格段の御指導、御協力を賜わりますようお願い申し上げまして、就任のごあいさつにかえる次第でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  3. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) 続いて、大松文教委員長から御発言がございます。
  4. 大松博文

    大松博文君 私は、前国会におきまして文教委員長辞任いたしました。  在職中は、委員皆さま、それ以外の皆さま方から絶大な御協力をいただきましたことを厚く感謝いたします。在職中、私は、誠意をもって一意専心努力はいたしましたが、私の不徳のいたすところで多々皆さま方に御迷惑をかけましたことを深くおわび申し上げます。  そして、このたびも、文教委員といたしまして、皆さま方とまた文教振興発展努力をいたすつもりでございますので、いままで以上のまた御協力をよろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  5. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) 次に、内海文部政務次官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。内海文部政務次官
  6. 内海英男

    説明員内海英男君) 七月の田中内閣発足にあたりまして文部政務次官を拝命いたしました内海でございます。  はなはだ微力でありますが、幸い、文教行政に御造詣の深い稻葉文部大臣のもとで、練達たんのう文教委員皆さま方の御指導を得まして、最善の努力をいたす考えでございます。何ぶんともよろしくお願いを申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) 教育文化及び学術に関する調査議題といたします。  まず、先般実施いたしました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。内田君。
  8. 内田善利

    内田善利君 私たち永野委員長二木内田の三名は、九月十八日から二十二日まで四泊五日の日程で、広島及び山口両県の教育学術及び文化財実情について、現地調査を行ないました。以下、その概況を事項別に御報告いたしたいと存じます。  第一初等中等教育実情についてであります。  まず、広島県は、人口密集瀬戸内海沿岸部に比べ、山間部が広く、過疎地域対策緊急措置法により一市、四十六町が過疎市町村に公示され、全国でも北海道に次ぐ過疎地域であります。  これらの地域は、過疎現象に伴う諸種の障害に悩むとともに、不幸にもことし七月の集中豪雨により大水害を受けたのであります。  私たちは、被害の最もひどかった三次市及び作木村を訪れました。三次市は、広島市から六十七・三キロの北部にあり、標高百五十ないし二百五十メートルの盆地、島根県を通り、日本海に注ぐ江の川の二支流の合流点となっております。七月豪雨により、これらの河川はんらんし、実に全市二メートルの床上浸水を受けたのであります。被害総額約百億円といわれています。市内の十日市小・中学校実情を見ましたが、校舎の床及び壁に浸水あとが残っていました。特に被害の大きかったのは、教材、教具等設備がほとんど全滅したことであります。この設備緊急整備のため、国の特段助成について要望がありました。  作木村は、三次市からさらに北二十六キロメートル、島根県境江の川沿いの山村であります。この作木村も、七月豪雨による江の川はんらんにより大水害を受け、河畔にある作木中学校は鉄筋コンクリートの校舎であるが、床上二メートルの浸水を受け、床、壁、設備に大被害をこうむり、特に給食室の一部が流出し、全壊状況でありました。  これらの学校施設設備については、鋭意復旧工事が進められておりますが、公立学校施設災害復旧国庫負担法による国の査定がすでに完了し、特に作木中の学校給食室改良復旧については、特段配慮がなされるとのことであります。  また、被災校として山口県川上村立中学校状況を見ましたが、本村は萩市に注ぐ阿武川の上流にあり、本村も七月豪雨による阿武はんらんのため、水害を受け、河畔にある中学校の完成したばかりのプールが埋没したのであります。しかし、再びプールを新築することになり、その工事費査定済みとのことでありました。  これらの過疎地域については、中学校統合が行なわれておりますが、統合に伴い生徒通学距離が遠くなるため、スクールバス運営したり、寄宿舎設置したり、その対策に苦慮しております。スクールバス運営費補助寄宿舎の舎監、寮母等人件費について、特段に国の補助をしてもらいたいと強い要望があったのであります。この点については、山口県の熊毛中学校の場合も同様であります。  なお、作木中学校僻地一級校でありますが、最近の再調査国鉄三江南線の開通により、総点数の二分の一が減算され、等級落ち及び指定外となることも考えられると憂慮しておりました。この点、萩市の僻地校木間小・中学校の場合も同様でありますが、僻地校指定について、道路事情、鉄道などの交通条件緩和を重視する考え方は、再検討の要ありと思いました。  特殊教育学校として、山口県立防府養護学校を見ましたが、この学校昭和四十三年に開校された肢体不自由児の小・中・高の学校で、環境もよく、施設も整った学校であります。山口県では特殊教育振興十年計画を策定し、さらに精薄学校県東部に建設し、県下特殊教育対象児童生徒の六、七〇%を収容したいとのことでありますが、その努力あとがうかがわれます。  第二、大学及び高専実情についてであります。  広島大学におきましては、学長、学部長事務局長と懇談を行ないました。  本学は、八学部、一教養部、六修士課程、四博士課程大学院、二附置研究所、十一附属学校を持つ総合大学であります。また、本学は、広島文理科大学広島高師の伝統を受け継ぎ、本学教育学部学問研究の場としての教育学科と各種の教員養成課程とが併存し、その間に有機的な連携のある全国でもユニークな在存であります。  目下、本学最大の問題は、現キャンパスが分散し、かつそれぞれの校地が狭隘であって、総合大学としての機能に支障を生じているので、県下に広大なキャンパスを求め、各学部を移転統合し、理想的な学園を建設することであります。学内においても、検討が進められ、すでに候補地も物色中とのことでありました。私たちも、できるかぎり広大なキャンパスを求められるよう要望したのであります。  なお、本学は、本年度東京工業大学とともに大学改革総合調査のため調査費がつけられました。そのため、学内委員会を設け、学部解消等教育研究体制の刷新について検討しております。また、本学学生運動は、現在のところ平穏であるとのことでありました。  宇部工業高等専門学校は、昭和三十七年の創設にかかり、機械工学電気工学及び工業化学の三学科あります。最近、工業高専共通現象として、入学率は低下しているが、就職率は一〇〇%とのことであります。校長から来年度の概算要求に関連し、種々陳情を受けましたが、特に本校は低学年全寮制をとっているが、寮の炊婦の給与学生負担となっているので、学生負担の軽減をはかる意味からも、その定員化について強く要請されました。  なお、山口周南地区は、昭和三十九年工業整備特別地域指定を受け、工業発展が著しく、有為な中堅技術者養成が強く望まれ、昭和四十九年度開校を目ざして徳山市に国立工業高専設置することとなり、本年度予算調査費が計上されたことを申し添えます。  第三、私学振興実情についてであります。  広島県には、数多くの私学があり、県としても積極的に振興方策を講じているが、特に私学に対する財政援助として生徒一人当たり一万五千円程度の助成をしております。しかし、その財源確保に苦慮しているところであります。県当局から、その財源について、地方交付税による国の財政援助拡充強化はもとより、国と地方公共団体との分担による公費負担制度化を表現するため必要な立法措置をすみやかに講ぜられるよう要望がありました。  山口県も私学振興について積極的な方策をとり、きめこまかな施策を講じております。すなわち、公立高校私立高校入学者の調整について七対三の線を堅持するとともに、十億円の基金として県独自の私学への融資を行なっております。  私たちは、二木委員経営宇部学園の小郡市にある山口芸術短大及び宇部市の宇部学園高校を訪れ、敬意を表しました。短大は生活芸術科音楽科の二学科高校普通科商業科事務科情報処理科経理科の五科、ともに独得の校風を持ち、充実した経営ぶりと拝見いたしました。理事長でもある二木委員は、山口県の私学振興施策に大いに感謝していると話しておられました。  第四、文化財実情についてであります。  まず、草戸千軒遺跡について申し上げます。この遺跡は、広島県福山市の芦田川河口近くの中州上にあります。その広さは、六万八千平方メートルであります。  この遺跡は、鎌倉時代につくられた明王院の門前町、市場町、港町として栄えた町の跡であることが判明いたしました。庶民町屋遺跡としてきわめて貴重な文化財であるといわれております。発掘調査の結果、町屋の石敷の土間、堀り立て柱の跡などの遺構が発見されました。中国宋時代陶磁器、有田焼などの陶磁器、古銭などの出土品があり、当時の庶民生活の跡を物語っております。ところが、芦田川河口に利水、治水のため河口堰建設省の手により昭和五十一年までに設置されることとなりました。そうなると、中州上にある遺跡は水の底に埋没するのであります。そこで、市教育委員会は、昭和五十一年までに発掘調査を完了し、完全な記録保存をしようと考え、これに要する経費約四億円を原因者負担として建設省に要求することとし、広島地建と協議中でありますが、まだ話はついておりません。文化庁も、従来発掘調査費助成をしておりますが、微々たるものであります。原因者負担もけっこうであるが、文化庁ももっと積極的に助成すべきであると考えます。  三次市周辺には、古墳、廃寺跡などの埋蔵文化財が多く存在し、広島県はここに四億九千万円かけて風土記の丘を建設する構想を持ち、これに国の助成要望しております。  山口防府市の周防国衙跡は、奈良朝時代周防国府政庁の跡で、この政庁を中心とし方八町の条坊の街があったと推定されております。昭和十二年史跡指定され、地方国衙跡としてはきわめて珍しいものであります。方二町の政庁及び附属施設の跡の買い上げが進められ、来年度で土地買い上げが完了し、史跡公有化が実現する予定であります。県市ともに、将来ここに史跡公園を建設する考えで、史跡環境整備をすることとなり、整備費について国の助成を得たいと望んでおります。  萩市におきましては、重要文化財東光寺史跡松下村塾萩城下町跡、旧厚狭毛利家萩屋敷長屋萩城址など、数々の文化財を見る機会に恵まれました。市当局も、国の助成を得て、よくこれらの文化財維持管理につとめております。これら多くの文化財及び自然環境のよさが萩市の生命であると思いました。  昭和三十九年特別天然記念物指定され、カルスト台地として有名な秋吉台におきましては、干然記念物についても、史跡と同様、土地買い上げに国の助成を望む陳情を受けたのであります。  第五、広島及び山口両県の陳情についてであります。  私たちは、広島及び山口の両県において、それぞれ知事、教育長総務部長等から県の教育事情について説明を聞くとともに、陳情を受けたのであります。両県の陳情につきましては、皆さまのお許しを得てこれを本委員会会議録に掲載していただきたいと存じます。  最後に、私たちは、広島市平和公園の原爆慰霊碑に参拝し、花輪をささげて、原爆犠牲者の御冥福を祈りましたことを御報告申し上げます。
  9. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) ただいまの御報告に対し、質疑はございませんか。別に御発言もなければ、派遣委員報告はこれをもって終了いたします。  なお、御報告中に述べられておりました資料につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  暫時休憩いたします。    午前十一時二十三分休憩     —————————————    午後零時三十七分開会
  11. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  教育文化及び学術に関する調査議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  12. 片岡勝治

    片岡勝治君 田中内閣発足をいたしまして初めての文教委員会であり、文部大臣とも初めて相まみえるわけでありますけれども、そういう立場から、教育全般についていろいろとお伺いをしたいとも思っておりましたが、政府のほうの施政方針等もまだ公式には私ども聞いておらぬわけであります。いままで問題になっておりましたきわめて具体的な問題についてきょうは大臣並びに文部省当局にお伺いをしたいと思うわけであります。おもな問題は、小中学校統廃合の問題に限って質問をしていきたいと思うわけであります。  茨城県の例によりますと、昭和四十一年度から小中学校統廃合が進められまして、四十六年までに、七十一あった小学校が三十校に減った、九十二校あった中学校が三十八校に減っているということが発表されたわけであります。実に五年間に小中学校とも半数になったということでありまして、これは猛烈な統廃合が行なわれたという結果を物語っていると思うわけであります。私たちは、町村合併等が行なわれたときにも非常に心配をしておりましたが、そのことによって行政水準なり住民生活条件というものが向上するのではなくて、逆に低下するのではないかということをたいへん心配をいたしました。私は、小中学校統廃合はその一つのあらわれではないかとそういう点をたいへん残念に思うわけであります。小中学校統廃合について、文部当局は、基本的にどういう考えを持っておられたのか、そして今後どういう方針でこの問題に対処されるのか、最初にその点を明らかにしていただきたいと思います。
  13. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 文部省におきましては、小中学校設置というものが市町村の非常に大事な仕事であるということにかんがみまして、市町村の御意思によって設置、廃止あるいは統合という問題を扱っていただくことを第一義に考えてきたわけでございます。学校統合の促進の傾向と申しますのは、一つ交通事情緩和ということもございましょうし、あるいはだんだん生活圏が広がってきているというふうな面もあろうかと思います。私どもとしましては、従来の経験にかんがみますと、学校統合によりましてプラスになる面とマイナスになる面がもちろんあるわけでございますけれども、どちらかと申しますと、教員配当とか、あるいは生徒の広域的な交友関係でございますとか、あるいは学校校舎施設設備の充実でございますとか、そういう点から考えまして、むしろいい面が多いのではないかということで、従来から各市町村がそういうふうな方向で行きたいというふうに考えておられます場合には、できるだけそれを援助するという方向でまいっております。
  14. 片岡勝治

    片岡勝治君 過疎地域において、事実上、生徒児童数がいなくなったとか、あるいは学校教育を遂行する上で問題にならぬほど少数になったというような場合に、これは物理的に統廃合ということが行なわれることはある程度やむを得ないと思うわけであります。その場合でも、地域住民の意見や教育的な条件を十分配慮した上で慎重に対処していかなければならぬと思うわけであります。いま局長お答えによると、むしろ統廃合がいい面があるということで、市町村がそういう意向であれば援助してきたと、こういうことでありますが、これはいままで行なわれてきた統廃合がはたしてそういう見方でいいのかどうか。実際統廃合を推進してきた力というものは、そういうものじゃないんです。つまり、市町村にしてみれば、A校B校を一緒にすれば、運動場一つで済む、特別教室も、大きな規模ならいざ知らず、十二学級ないし十八学級あたり学級ですと、特別教室基準によればほとんど一つずつで済むわけですね。あるいは、今度は、そういう点で市町村立場からすれば、財政的な理由によって何とかして統合していきたい、そういう作用がいままで働いてきた。一方、県のほうにしてみれば、Aという学校とBという学校統合すれば、いままで十八学級あったものが十二学級で済む、つまり生徒数が三十人とか三十五人の学級を合わせるわけですから、統合したことによって学級数が減る、教職員の配当が少なくて済む。つまり、県自体も、財政関係から統廃合というものを積極的に進めてきた、これが実態です。ほんとうに教育的な立場に立って教育条件をより高めていくという考えで、たとえば茨城県の約半数に減らしたということが、そういう教育的見地に立っての統廃合であったかどうかといえば、きわめて疑問であるし、いま私が申し上げましたように、むしろ財政的な関係から教育的見地はむしろ疎外されて進められてきた、こういうふうに見るのが私は正しい見方だと思います。こういう点についてはどうですか。
  15. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 先生の仰せになりますようなことも確かにあるというふうに聞いておりますし、また、具体的にあるのじゃないかというふうにも推察されるわけでありますけれども、しかし、私どもは、やはりあくまでも市町村の善意と申しますか、そういうものを信じてまいりたい。それからまた、学校統合と申しますか、学校設置等につきましても、これはその市町村にとりましてはたいへん大事なことではございますし、また、教育の面ばかりではなくて、いろいろな事情があるということは、御案内のとおりでございます。たとえば、小学校にいたしましても、校舎を整備いたしますということは、災害の場合に全村民の非常に助けになるという場合もございましょうし、あるいは、学校というものが、親子そろってその学校を出たというふうなことが、一つ一つ市町村住民の方々の心のよりどころと申しますか、共通経験と申しますか、そういう意味で、単に教育以外のいろいろな価値もあるわけでございまして、そういう点を勘案しながら具体的に市町村のほうでこれは御判断をいただくということが一番よろしいのじゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。
  16. 片岡勝治

    片岡勝治君 私も統廃合によって教育効果をあげ得た例も知っておるわけでありまして、そういうことが全然ないとは申し上げませんけれども、しかし、現実にいままで行なわれてきた、しかも住民反対やあるいは教育関係者反対を押し切ってなおかつ進めてきたということは、これはやっぱり財政的な問題が唯一最大の要因であったということを私は断ぜざるを得ないのです、例を出せば幾らでもあると思うのですけれども。そこで、政府では、統廃合についてのいわゆる適正規模というものについてどのように考えておるのか。もちろんこれは国庫負担法あるいはそれに基づく政令等によって一応の基準は出ておりますけれども、この基準をそのまま適正規模というふうに考えてよろしいのかどうか、文部省の確たるお答えをお願いしたいと思います。
  17. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 小中学校適正規模でございますが、これは、御承知のとおり、学校教育法施行規則の十七条でございますが、「小学校学級数は、十二学級以上十八学級以下を標準とする。ただし、土地状況その他により特別の事情のあるときは、この限りでない。」という規定がございます。それからこの条文は中学校につきましても準用されておるわけでございます。  それからただいま御指摘の義務教育学校施設費国庫負担法施行令におきましても、学校統合の際のめどといたしまして、ただいま申し上げましたと同様の十二学級ないし十八学級というものか標準的な学校規模というふうに定められておりまして、文部省事務もそうした方向に従って処理されておるわけでございます。
  18. 片岡勝治

    片岡勝治君 一応法令的にはそういう一定の基準が出ておりますけれども、いま申し上げましたように、この基準に合っておりながらなおかつ統廃合が行なわれようとしているわけですね。そういう事例がたくさんあるわけです。ですから、私は、教育的な見地教育的な配慮がのけものにされて、財政的な理由、主としてそういう理由によって統廃合が行なわれているということについてたいへん心配をするわけです。したがって、そういう場合においては、もっと文部省は強い指導力といいますか、そういうものを持って対処していかなければ、事実上十二学級から十八学級標準規模ということが全体としては巨大化する傾向も出てきておるわけなんです。これもいま茨城県で問題になっておるある統廃合学校では、現在でも千七十八人の生徒数がいる。これが、五十五年の推計によりますと、二千四十人のマンモス学校になる。しかも、なおかつ、ここで統廃合が行なわれようとしておる。まあもちろん地域住民反対をしておるようでありますけれども、全体としてつまり財政的な見地から統廃合が行なわれるとするならば、せっかく文部省がつくっておる基準は次第にマンモス化するという方向に行かざるを得ないと思う。そういう点では、もっと文部省は強い指導力を発揮してもらいたいと思う。そこで、全体的に財政的な理由、つまり、市町村校舎施設関係からできるだけ統廃合していきたい、県は県で教職員の人件費を一人でも節約したいということですから、統廃合をやっていったほうが財政的に助かるという、つまり行政機関が積極的に統廃合というものをやっていくという仕組みになっておるわけですよね、残念ながら。それに対して、教育委員会が、それじゃほんとうに教育的な見地に立って抵抗できるかというと、御承知のように、任命制の教育委員会で、市長や知事に対してその力を十分発揮できない。  また、市町村のそういう財政的な配慮の中に繰り込まれて、なかなか教育的な見地に立った抵抗というものができない。いま何によってこれがささやかにささえられてきているかというと、それはやっぱり住民なんです。住民の運動がむしろ教育的な見地に立った行政というものを持っていこうと。行政機関からすれば、私はたいへん情けない事態だと思うのです。本来ならば、教育委員会なり市町村なり県がほんとうに教育的な見地に立って、こうした無謀な統廃合というものはストップをかけていくという機能を果たしていかなければならないのが、教育委員会や町市村や県が卒先して統廃合を推し進めて、それに対して住民が抵抗していくというようなことは、私は、民主的な、しかもほんとうに教育効果を高めていくという、そういう立場からすれば、たいへん情けない事態ではないかと思うのです。そこで、一つ具体的な例を申し上げますと、茨城県の黒子小学校というところで統廃合問題が長い間行なわれておりまして、今日なおかつ、紛争といいますか、これを推し進めようとする町当局に対して、住民側が強い抵抗を示しておるわけであります。私は、こういう姿というものは、住民各位のほんとうに教育的な見地に立った抵抗というものについて高く評価をしていきたい。もしこういう運動がなければ、どんどん統廃合が行なわれ、教育的な立場教育的なものの考え方が押しつぶされていってしまうのではないかと、こう思うわけであります。そこで、この黒子小学校については、すでにいま申し上げましたように長い紛争が行なわれておって、現地では、文部省指導あるいは通達もあるので統廃合をやっていくんだというようなことを町当局が言っておるわけでありますけれども文部省は、この問題について、いままでそういった事実があるのかどうか、どういうふうにこの問題に対処してきたのか、これを伺いたいと思います。
  19. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 学校統合に関する文部省の一般的な考え方、方針につきましては、先ほど初中局長から御答弁を申し上げたわけでございますが、また、印刷物で、指導方針といたしましても、昭和三十二年でございますが、「学校統合実施の手びき」というものを発行いたしまして、これに従って指導をいたしておるわけでございます。  御指摘の茨城県の関城町の黒子小学校とそれから河内小学校統合の問題につきましては、住民の方々から反対の御陳情等もあったものでございますから、私どもといたしましては、やはりこうした学校統合というものは住民の理解と協力を得て進められるということがあるべき姿であるというふうに考えまして、茨城教育委員会を通じまして、この統合につきましてはさらに住民の御理解をいただくように努力をしてもらいたいというふうに指導をいたしております。今日の段階といたしまして、補助金を支出するかしないかということにつきましては、私どもはまだ態度を決定いたしておりません。もう少しその辺の事態の推移を見た上で態度を決定いたしたいというふうに考えております。
  20. 片岡勝治

    片岡勝治君 このお話を私も聞きまして、まあ私が想像したのは、おそらく相当過疎化が激しい現象があって、生徒数がどんどん減って統廃合が行なわれるのではないかと。まあ、しかし、ぜひ来て実情を見てくれないかという知人からの要請がありましたので、現地に行ってまいりました。私はびっくりしたことは、決して生徒数がどんどん減っちゃって一学級をも構成できないというそういうところではなくて、学級数も十二学級ある、両方ともですね。つまり、文部省基準によれば、適正規模、十二学級以上十八学級にぴったり当てはまる学校だ。うわさにはそういう学校統廃合させられるというようなことを聞いておりましたが、現実にこの姿を見て、なるほどこれはひどいじゃないか、一体こんなことを教育委員会が承知するはずがないじゃないかというとこで地域の人にいろいろお尋ねしたのですが、教育委員会も町議会も町長もそれに賛成というか、むしろ推進役になってきておる。先ほど申し上げましたように、ささやかに住民がこれに抵抗しておるということでありまして、私はたいへん意外に思ったわけであります。これは十二学級ある学校統合するわけでありまして、その結果どういうことになるかといえば、先ほども申し上げましたように、おそらく十八学級ぐらいになってしまう。つまり、二十四学級現在あるのが、十八学級に圧縮される。生徒児童数が一学級当たりの現在生徒数が少ない関係からそういうことになってくる。これは、教育条件という立場からすれば、四十人の生徒数よりも三十五人の一学級教育のほうが効果があがるということは明らかです。こういう点から言っても、教育効果が低下するということは明らかである。あるいはまた、通学距離にいたしましても、聞くところによりますと、最高四・七キロになる。小学生に四・七キロ歩かせるということは、これは並みたいていのことではないだろう。そして、私は、何よりもおそれることは、いま局長のほうからの答弁にもありましたとおり、単に形式的な条件が整うということだけではなくして、教育を推進する上で、いわゆるコミュニティーといいますか、地域社会の住民の気持ちというものがやはり教育というものをささえる大きな力だろうと思うのですね。そういうつまり住民の意思に反して統廃合を強行することが、はたして教育的な効果をあげ得ることになるのかどうか。この点は、目に見えない問題ではありますけれども教育をささえるのに非常に重要な要素があるだろう。そういうもろもろの点を考えると、この場合の統廃合にはたいへん無理があるということを私は痛感をしたわけです。具体的にいま申し上げましたような点で文部省としてこの具体的な例をどのようにお考えになっておるか、端的にひとつお伺いしたいと思います。
  21. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) ただいま片岡先生がおっしゃいましたような点が争点でございます。  まず、学校規模でございますが、お話しのとおり、現在ある河内小学校、黒子小学校、これはいずれも、特殊学級を入れますと十三学級でございますが、普通学級は十二学級で、適正規模ということが言えるわけでございますが、ただ、この二つの小学校統合されてでき上がる新しい小学校でございますが、これも、ただいまお話がございましたように、学級数が十八学級で、特殊学級が一学級ほかにあるということでございます。これまたつまり適正規模学校でございます。ですから、現状は適正規模学校でございますが、でき上がる学校適正規模学校である。したがって、統合という観点から見ますと、そのことが直ちに過大学級であるからその統合はよろしくないという議論もしにくい点があると思います。  それから十八学級になりまして、かつまた、児童生徒数が両方合算されますと、養護教諭でございますとかあるいは事務職員の配置が容易になるということが一つ利点としてございます。  それから一学級の児童の数の問題でございますが、確かに、一つ考え方といたしましては、一学級の児童数は少ないほうがいいという考え方もこれは教育論としては私はあり得るかと思いますが、しかし、一方、義務教育学校学級編制に関する標準法におきましては四十五人を標準とするということを法定いたしておるわけでございますから、少なければ少ないほどいいということも現行の法制下では多少言いにくいのではないかというふうに考えます。  それから今度は実質的な点でございますが、統合になりますれば、これは確かに一学級の児童の数は従前よりふえることはそのとおりでございますが、四十人をこえるという学級は、町側の説明によりますと二学級でございまして、その他の学級はいずれも四十名あるいはそれ以下ということでございます。したがいまして、現行の標準法の定める学級編制の基準からいたしましてこの数が多過ぎるという議論はちょっと無理があるのではないかというふうに考えます。  それから第二点でございますが、統合によってどういうプラスがあるかという点、これはただいま申し上げました養護教諭や事務職員の配置がより容易になるということのほかに、たとえば屋内運動場にいたしましても、学級数が多くなればその学級数に対応した広い面積の屋内運動場が確保できるといったような問題もあるわけでございます。  ほかに、町側が申しておる内容といたしましては、新しい校地のほうが教育的な環境がいいとか、あるいは交通の安全上も問題がより少なくなるとか——もっともこの点については争いがあるようでございますが、町側の主張によりますると、交通安全上の条件が改善されるとか、あるいは通学距離も従来とさして変わらないというようなことも町側といたしましては主張をいたしておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、こうした統合の問題は、やはり、住民の理解と協力が何よりも必要でございますし、かつまた、教育的な条件の向上ということが目標になるべきであるという点につきましては、私はそのとおり考えるわけでありますが、一方、この関城町の町議会、町長、教育委員会等はあげて成規の手続を経ました上でこの統合を推進したいという態勢をとっておるわけでございます。したがいまして、正規の機関におきまして成規の手続を経てそうした決定が行なわれておるというような事態も一方にありますので、私どもといたしましては、この取り扱いに苦慮をいたしておるということが実際でございます。そこで、先ほど申し上げましたように、茨城県の教育委員会に対しましては、さらに住民の理解御協力を得るようにさらに努力をしてもらいたいということを申しておるわけでございまして、私どもは、いましばらくこの推移を見た上で文部省としての態度を決定いたしたいというふうに考えております。
  22. 片岡勝治

    片岡勝治君 どうも、文部省のほうも、いわゆる財政効率といいますか、そういうところにやはり——まあこれは役所という立場からすれば、私はそういうことは全然考慮しなくていいとは申しませんけれども、どうもそういうことが非常に色濃く見えるわけです。適正規模学校を合わせたのがまた適正規模だからいいじゃないかという、なるほどそういう理屈も成り立つでしょう。しかし、適正規模なんだから何もあえて合併しなくてもいいじゃないかという、その前にそういう考えが出なければいけないと思うのですよ。ところが、いまのお話ですと、合わせたやつだって適正の十八学級以内だからいいじゃないかというのは、私は飛躍があると思います。  それから私はいまの答弁でたいへん残念なことは、養護職員とか事務職員の配当がやりやすくなると。一体、そういうことで養護職員なり事務職員の配当考えているのかどうか。戦後、今日まで、学校教育法によれば、養護職員も事務職員も置くようになっているけれども、置かなくていいというような一文があったためにほとんど完全にまだ置かれていないと思うのですけれども、日本の経済がGNPが世界で二番だ三番だといばっておるなら、小さな学校には養護職員も事務職員もまだ置かれていないとするならば、だから統合をやりなさいということはこれは逆だと思うのです。統合をやらなくったって、養護職員とか事務職員というのはどうしても必要な職員ですよ、かりに十二学級であってもね。そういう点を、まあさぼっているということばはおかしいですけれども、そういうことはやらずに、統合すれば事務職員は配当しますよと。これはもう教育的な考慮というものは全然ないのじゃないですか。だから、ぼくは言うんです。そういう教育的な配慮がなしに統合が推し進められているところが非常に危険な、いわゆる教育をほんとうに考えていない行政の典型だろうと私は思うわけなんです。そういう点は、ひとつ文部省自身も頭を切りかえていただき、府県や市町村に対する指導というものをやっていただきたいと思うのです。  本年度から、小学校に対する校舎建築の負担法は、中学校並みの二分の一になりました。これは文部省当局の御努力で、私どもあるいは市町村でもたいへん喜んでおるわけです。しかし、統廃合の場合には、いままで三分の一であったものが二分の一にしておったわけですね、公立の小学校は。
  23. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 統合は二分の一です。
  24. 片岡勝治

    片岡勝治君 統合の場合、二分の一ですね。従前は、今度改正以前は、小学校は普通の場合、通常の場合三分の一で、ことしから二分の一になったんですか。
  25. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 学校統合は、小中学校とも従来から二分の一でございまして、それから一般の統合ではない、校舎の新増築、これは中学校は従来から二分の一、それから小学校校舎につきましては本年度から三分の一が二分の一になっておりまして、屋体は三分の一のまま据え置かれておるということでございます。
  26. 片岡勝治

    片岡勝治君 いいんです、それで。この条文も、いま言ったように、統合しなさいということになっているわけですよ。普通の場合には三分の一しかやりませんよ、しかしAとBを一緒にすれば半分補助しましょう、そういう法律ですよ。だから、ここにも、法令上、財政的な措置の上からも、統合したほうが町が助かるというようなことになっているわけですからね。まあ、しかし、今度は二分の一になりましたから、これをテコにして統合をやりなさいということは事実上できなくなった。そういう意味でもたいへん私はけっこうだったと思います。  それから成規の手続を経て行なわれつつあるという御返事であります。なるほど、教育委員会あるいは町議会も議決をしたようであります。しかし、この種の問題は非常に特定の地域でありますから、絶えず少数なんです、これは。たとえば黒子小学校の場合の地域住民というのは、町全体からすれば少数派になるんですよ。つまり、学校統廃合の場合に、これは僻地の場合でもそうですが、私のほうでも、神奈川県の津久井で機動隊まで入って町議会が荒れたという、いま紛争中の統廃合であります。これも非常に小さな地域で、住民がどんなにがんばっても、町全体からすれば十分の一くらいの人数しかない。ですから、議会だって何だってどんどん多数決で押されてしまう。こういう少数意見というものが通じない。まあ民主的に議会できめたからいいじゃないかということだけではこの統廃合のような問題はなかなか処理できないと思う。私はこの場合も同じだと思うですね。廃止される学校地域住民の人数は少数である。町全体からすれば少数であるが、まああそことあそこの学校統合すれば、多少町の財政だって助かるのだ、そのおこぼれがおれのほうの道路に回ってくるのだから賛成しておけ、こういう空気なんです。ですから、これは、単に形式的に手続が済んだということだけで、あるいは町や教育委員会が形式的に手続を推し進めるということだけで処理をするということは、これまた教育的な配慮にきわめて欠けているという点をこの際文部省のほうに私はしかと申し上げておきたいと思うわけであります。  ちなみに、私は現場に行ってこういうことを聞いた。このときの議事録を見せないというのですね、住民に対して。教育委員会で何をきめたか、どういう理由統廃合をしたのか、住民として聞きたい。教育委員会としては、一切そういうものは見せない。町会できめたその議事録を見せてくれということを要求したけれども、それも見せられないというのです。それじゃ、もう昔の江戸時代の徳川幕府みたいなものですよ。議会というものはすべて公開で民主的に運ばれていかなければならない。しかも、町議会の議事録は見せない。それに対して、異議を申し立てるとか、法律的な手続をして知事に対して行政上の措置つまり知事の権限で見せるような措置をひとつやってくれという、そういう申し立てが出ている。つい二、三日前にそれを見せてもいいというような回答があったのでありますが、そういうつまり成規の手続とはいえ、秘密のうちに運ばれてきた。議事録も見せない。こういうことで、はたして実質的に正しい民主的な手続を踏んだかということについて私はたいへん疑問である。なかんずく議事録も見せないということになれば、これは明らかに何かがそこにあるということを疑わざるを得ないと思うわけであります。  時間がありませんので、最後に、局長地域住民の理解がなければこの種の問題の解決には基本的にはならないというお答えがありました。私も、まことにそのとおりであろうと思う。単なる建築物ということだけじゃなくして、教育というのは、人と人の接触であり、交わりである。そういうものが教育をささえるわけでありますから、地域住民のほんとうに教育を愛するというか教育を守っていく、そういう地域社会というものの形成がなければ教育というものは発展しないだろう。そういう意味で、地域住民とこの種の問題については十分話し合いの上、その理解納得がなければ強行すべきではないだろう。そういうことを私も痛切に感ずるわけでありますが、文部省としてもそういう立場でこの問題について積極的に府県あるいは市町村指導をお願いたい。つまり、地域住民の賛成がなければ強行すべきではない、そういう基本的な考え方でこの種の問題の対処をしてもらいたいということをお願いするわけであります。  最後に、文部大臣も、いままでの私の質問、そして文部省お答えをお聞きだと思いますので、この学校統廃合の問題について文部大臣としての所見を伺いたいと思います。
  27. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 学校統合につきましては、一般的抽象的にはいろいろのことが言えると思いますね。やはり、教育には非常に金のかかるものであるということをまず関係者は認識しなければなりません。財政にも限りがありますから、その中から教育を一生懸命によくするというためには、それを効率的に適用するということも、人間の聡明さは金の使い方だとさえ言うくらいですから、そういうことも一つはあるでしょう、抽象的に言えばですよ。教育は一対一、マン・ツー・マンでやれば一番いいかもしれないけれども財政上そういうことも不可能なことでございますから、一学級何人と一応の目安をきめて、このくらいなら適正規模だという標準をきめてやってきました。それが教育科学的に絶対間違いのないことかどうかということは、争えば限りのないことだと思います。文部省としては、事務を遂行する上に一つの目安を置いて、先ほど局長説明したような基準でやってきたわけでございます。統合の場合は、えてして統合される場所とか通学距離の延長とかいろいろな問題がからんで、それから父兄がおって、自分たちの出た学校がなくなるというのはこれは残念だというような感情、悪い感情じゃありませんが、そういう感情も入ってきますし、種々雑多ないろいろな条件がからんできますので、これはなかなかむずかしい。したがって、具体的にその場合によく適合したことをやらなければいかぬということでございますから、いま先生御指摘のこの両学校の具体的な統合につきましては、両局長が答弁をして、慎重に考える、できるだけ地元において意思の統一をはかってきていただきたい。訴訟まで提起されておることでありますから、訴訟の段階において右左というきめ方はしない。したがって、補助金を出すかどうかは留保しているという局長の答弁は、それで首肯さるべきものだと、大臣はそう考えます。
  28. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 関連をして申し上げると同時に、また、文部省にももう一回いわゆる無理な統合の面については再調査をし指導していくという方針ははっきりしておいていただきたいと思います。  私は前の通常国会でも統合問題についてだいぶ具体的に指摘をしたわけなんですけれども、確かに、統合の場合には、教育効果の面では、学校規模が大きくなる、あるいは教員の構成なり施設設備の面で非常にプラスになる面があるということは否定できない。しかしながら、また反面、子供の通学距離の問題等々から非常に無理な状況というものも全国的には少なくない。このことで町政なり村政が非常に混乱が続いているという例は幾多あるわけです。いま同僚の片岡議員から言われた問題以外のところでもあるわけですね。したがって、私は、この問題については、あくまでも文部省としては教育的な見地ということを財政効率の面よりも優先させた立場に立って検討していただきたいと思うのです。これは私の出身県で鹿児島の例でございますけれども、この間も申し上げたのですが、囎唹郡の末吉町では五つの中学校一つ中学校統合した。大部分のところはそれでいいんですけれども、たとえば町の一番端しっこにある南之郷という中学校は、通学距離が十キロ以上あるわけですね。私は具体的に数字も持っていますけれども、十キロから十六キロまでの生徒が百三十人おるんです。それを無理にこの町は一つ中学校だということで統合されたために、その部落でいろいろな問題が起きているわけです。議会の中では、常にその部落出身の町会議員というのは少数ですから、なかなか民意が反映しない。そのためにこれが無理に押し切られた。そこでは現に補助を受けながら五つのものが一つにされておる。こういうことで問題が非常に混乱をする中で、町としても、それほど混乱があるならば、五つのうちの四つは統合して、一つはそのまま独立して認めたらどうだろうか、こういうような意見さえある。しかし、もうすでに文部省から統合のための補助金をもらってしまっている。それを返せと言われると、いまさらどうにもならない。さらばといって、こういう大きな問題で子供たち統合した学校にも行かさぬというような形になってきているという状況ですね。実はまいっているところもあるわけなんですね。したがって、それはせっかく統合のために補助をやったんだから、統合しないところの学校は返せというのは筋なんです。それはわかりながらも、現実の問題としてそうした教育紛争というのがこの統合問題で起きているところの実例もあるわけです。したがって、私は、この問題は、先ほども申し上げたように、教育的な見地ということを重点に置きながらこの種の具体的な学校の問題については十分ひとつ考慮していただいて、何か便法はないものかというふうな立場文部省としても考えていただきたいと思うのですが、そこらあたりはどうなんですか。ここではっきり補助金やいろいろな問題についてどうだこうだと言えば、それはできないということだと思うので、私はそれは言わない。しかしながら、具体的に、最初のものが、いま申し上げたように、ずっとこじれこじれて、その方針を再検討せざるを得ないところに差しかかっておる状況ですね。そうした場合に、いままで進んでおるものを、あくまでも一たんきめたものだから、何が何でもやるという方向に行くのか。そういう問題については、私は、文部省が県の教育委員会指導して、もう少し教育的に処置すべきだと、こう思うのですが、そこらあたりのお考えはどうなんですか。
  29. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 御質問の御趣旨は私も全く同感でございますが、ただ、具体的な問題について便法というお話でございますが、これは……
  30. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 具体的な中身は要りません。
  31. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) でございますから、どういう実際に即した方法があるかどうか、その辺につきましては、あらためて実情調査し、検討いたしたいと思います。
  32. 片岡勝治

    片岡勝治君 それじゃ、長い間どうもありがとうございました。  最後に、いま宮之原さんからもお話がありましたけれども地域住民との理解、そういうものがあくまでも基本であると、そういうものが得られない限りこういうものは強行すべきでないという、そういう立場文部省のほうの強い指導をぜひお願いをしたいと思います。そして、文部省のほうでは、補助金という制度があって金を握っておるわけですから、これをあまり悪用しちゃよくないけれども、しかし、教育的見地という立場で、そういう無理なことをするなら補助金は文部省としても考えざるを得ないというふうな、やっぱり握っている金で県なり市町村に対して教育的な見地を基本に教育行政というのが推し進められるようにこの補助金というものをそれこそ効率的に使っていただきたいと、このことを最後にお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 内田善利

    内田善利君 私は、最初に、午前中に報告いたしました委員派遣報告の内容から、陳情山口県、広島県から出ておりますので、これは先ほど申し上げたとおりでございますが、その中で緊急を要する問題として二点だけ本委員会の席上で御質問したいと思います。それは、文化財の件なんでございますが、広島県の福山市の芦田川、この中州にある草戸千軒町の遺跡についてお聞きしたいわけでありますが、聞くところによりますと、昭和五十年度、昭和五十一年三月までに河口ぜきができるということで、それではこの遺跡が水没してしまうという問題がありまして、県としては対策に苦慮し、国に何とかしていただきたいという要望が来ておるわけですが、この点についてまず文化庁はどのように評価なすっておるのか、お聞きしたいと思います。
  34. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 先生が最近ごらんになりました草戸千軒町の遺跡の問題でございますが、これは御案内のように福山市にございまして、ただいま御指摘のような中州になっておるわけでございますが、この遺跡は、門前町として、また港町あるいは市場町として、平安時代の末から鎌倉時代、室町時代に栄えた中世の集落遺跡というふうにわれわれは考えております。しかし、この集落遺跡が、江戸時代に、ただいまお話がございましたような芦田川の洪水によりまして埋没したものと考えられます。この遺跡の広さは約十六万平米にわたっておりまして、昭和四十年と、それから飛びまして四十三年から現在に至るまで、その一部の発掘調査が行なわれてまいりました。その結果によりますと、中世の瀬戸内地方の社会経済的な様子を考える遺構とかあるいは遺物などの史料が発掘されまして、学術上では私どもとしては貴重なものであると考えておりますが、ただいま申しましたように河川敷でございますので、その保存がきわめてむずかしい、こういうふうに考えられるわけでございます。
  35. 内田善利

    内田善利君 文化庁としてはこれを国に指定する考えはございませんか。
  36. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) ただいま申し上げましたように、十六万平米全部が河川敷でないわけでございまして、先ほどお話がございました建設省の河口ぜきの工事によりまして水没すると考えられますものが約六万八千平米ほどございますが、いずれにいたしましても、河川敷でございますので、非常に保存がむずかしいという悪条件がございますので、指定をいたすということははなはだ困難であろうと、こういうふうに考えております。
  37. 内田善利

    内田善利君 私も、そういうことであれば、保存は困難と思いますが、全面発掘をして記録保存するとか、あるいは類例のない遺跡ですから、これを模型をつくってどこか資料館等で保存するとか、そういった計画はございませんか。
  38. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 現在のところ、ただいま先生が申されましたほどのことは考えておりませんが、いずれにいたしましても、学術上貴重なものでございますので、水没いたすとすれば、もう再調査することは不可能になりますので、早急に事前調査をいたしまして記録保存だけはせめてしなければならないものと考えております。
  39. 内田善利

    内田善利君 記録保存するためには、昭和五十年度には河口ぜきが完成するわけですから、それまでにやらなければいけないと思うのですが、四十三年からの発掘調査費は微々たるものだし、何とかここで国の財政措置をして、私は、原因者負担ということで建設省がこれに費用を負担するのかどうか、この辺は建設省にお聞きしなければわかりませんが、それはそれとして、私は、かねがね、原因者負担ということよりも、破壊する側が人件費から何から負担することよりも、やはり文化庁として、国でこういったことは負担すべきじゃないかと主張しているわけですが、この点の調整ですね、そして、文部省として、文化庁として、五十一年三月までにこれを記録保存する、全面発掘調査をしていただきたいと県のほうでも要望があっておりますし、この点はいかがでしょう。
  40. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 先生のお尋ねの中心は、結局は、発掘調査に要する経費その他の問題であろうかと思いますけれども、私どもも常々原因者負担ということで原則的には進めておるわけでございまして、この件についても建設省中国地方建設局と広島県とがかねてから話し合っておるわけでございます。非常に話し合いもむずかしいやに聞いておる面もございますので、道路等の建設につきましては建設省でも発掘につきまして負担をいたしておりますので、この点についても私どもとしては建設省に十分申し入れをいたしまして発掘調査ができるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  41. 内田善利

    内田善利君 建設省にお聞きしますが、芦田川の河口ぜきをつくる段階で遺跡のあることを承知の上で決定になったのか。それと、河口ぜきをつくることによって遺跡に与える影響はどのようにお考えか。それと、いまお話がありました原因者負担についてはどのように考えておられるか。この三点をお聞きしたいと思います。
  42. 宮内章

    説明員(宮内章君) 最初のこの計画を立てる時点でこの遺跡について十分つまびらかであったかにつきましては、こういう遺跡が埋蔵されているということは承知していたわけでございます。ただ、どの程度のものか、その規模その他については中国地建等では十分な調査は行き渡っていなかったということでございます。  それから第二点の現在においてこれについての処置をどう考えているかということでございますが、先ほど文化庁からも御説明がございましたように、この中州全体で六万八千平方メートルという非常に大きな面積を占めているわけでございますが、河口ぜきで標高約二メーターまで水をたたえるということになっていますが、この二メーターの範囲にかかるものがそのうち約一万二千平方メートルあると聞いているわけでございます。そうしますと、少なくとも冠水する範囲については河口ぜき完成後は非常に調査がやりにくくなるであろうと、そういう観点から、私ども、県の教育委員会等と従来とも話し合いをしてまいりまして、先ほど文化庁からお話がございましたように、必要な調査については昭和五十一年三月のこのせきが完成するまでにぜひ終えていただきたいということでお願い申し上げているところでございます。  なお、その費用につきましては、先ほど先生御指摘の道路等のお話もございますし、できるだけのことはこの事業をやる建設省側としても配慮していきたいと。それにしても、どの範囲をいつまでに調査を終えるかという計画の決定を当面急いでいただいて、その中でまた費用の問題も中国地建と県と十分話し合いをさせましてできるだけのことはしたいというふうに考えているところでございます。
  43. 内田善利

    内田善利君 この工事をする前に文化庁に届け出をなさったかどうか、この点はどうですか。
  44. 宮内章

    説明員(宮内章君) 工事をする前と申しますか、私どもがこの種の事業を行ないます手続といたしましては、予備的な調査をやりまして、それからある種の計画を立てまして、それを一つの手続で計画決定をいたすわけでございます。この場合、特定多目的ダム法という法律がございまして、これに基づく事業ということに相なっていまして、ダム法によって基本計画というものを決定しているわけでございます。これは、当然、県あるいは市等、関係方面にも意見を聞き、あるいは協議して成立している基本計画でございますが、その手続を終える段階におきましてはこの種の遺跡があるということを十分承知して基本計画の協議を広島県等に行なったわけでございます。
  45. 内田善利

    内田善利君 文化庁には届け出がありましたか。
  46. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) お答え申し上げます。  県のほうから内々計画等の打ち合わせに参っておる段階でございまして、まだ正式に発掘届けは出されておりません。
  47. 内田善利

    内田善利君 ともあれ、昭和五十一年三月には河口ぜきが完成する予定なわけですから、ひとつこれに対しては県の要望もあっておりますように、それまでに全面発掘調査費助成等、あるいは中国地建とも話し合った上きちっと記録保存をしていただきたい、全面保存をしていただきたい、このように希望があっておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから山口県の防府市に奈良朝時代の周防国府の政庁跡がありまして、これは国の指定がなされて買い上げが行なわれ、来年度で完成するわけですね。ところが、太宰府のときにも私は指摘したわけですけれども、その買い上げしたあとが、何といいますか整備管理、こういった面が非常によくない、そう思うわけですね。まあ草ぼうぼうで、あれでは周辺の田畑に対する影響等も相当あるのじゃないか、また、周辺に対するいろいろな虫の問題等も発生しているのじゃないか、蚊の発生等もあっているのじゃないかと思うわけですが、こういった整備の面を早急にやっていただきたいということと、ここは史跡公園を建設する考えがあるようですが、この点について、整備費の増額と、それから管理面の強化と、この史跡公園建設に対する国の助成、この点はどのように考えておられますか。
  48. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 御指摘のように、史跡買い上げあとの整備問題でございますが、先ほど例に引かれました太宰府においても、全部が買い上げに至っておりません、ところどころトラ刈り的に残っておるものですからなかなか整備が進まないという特殊な事情もありますが、この防府市の場合には、御指摘のように、来年度をもちまして中心部の遺跡買い上げが終了するわけでございます。現在のところ、とりあえず遺構の保全と、雑木雑草等の防除をいたしまして、整備をまあとりあえずするということで、本年度約事業費四百十五万のうち半額を国で補助しておるわけでございますが、史跡公園にするというような計画等につきましてまだ市のほうから詳細な計画を聞いておりませんので、今後の保存活用の面につきましてはよく市当局の意向を蹟まえながら検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  49. 内田善利

    内田善利君 国で指定して買い上げはしても、あとの管理が悪いとよくない結果を生んでおりますので、この点はひとつよろしくお願いしたいと思います。それと、史跡公園の建設の望希もあっておりますので、この点もひとつよろしく助成方をお願いしたいと思います。  ここで終わるわけですけれども文化財保護法の改正ですね、これは何回も指摘されておるわけですが、いまも届け出制の問題を私は例をあげてお聞きしたわけですけれども、いま許可制になって——その前に、文化財保護法改正の段取りはどの辺まで進んでいるか、お聞きしたいと思います。
  50. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 保護法の改正の問題でございますが、大臣並びに私どもの長官のほうからも検討するよう命ぜられておりますし、できれば通常国会に提出できればと考えております。現在のところ、いろいろと保護法改正についての案がございまして、ある一つの案になかなかきめかねるという部分が多うございますので、いろいろな案を持ち寄って部内検討をいたしておる段階でございます。
  51. 内田善利

    内田善利君 埋蔵文化財については、この法が制定されたのが昭和二十五年、このときは埋蔵文化財を全然考慮に入れていなかった。そして、二十九年に大改正がありまして埋蔵文化財が一項入ったわけですが、埋蔵文化財というのは、人目にもつかないし、そして破壊される面も非常に多いわけですね。四十七年度の道路建設費予算が四千八百億円に対して、埋蔵文化財買い上げ補助金が二十億円と、こういうことでは破壊されるのは当然だと、このように数字の面からも言えるわけですが、私は法改正の問題で二、三点ここで聞いておきたいと思うのですけれども、先ほど問題にしたわけですが、「埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を発掘しようとする場合」——先ほどの例は周知されておるものとして私はお聞きしたわけですけれども、この場合には届け出るということになっておりますが、まだ届け出ていないようですし、それから周知されておる土地を発掘するという限定ですね、この限定を除く意思があるかどうか、この点をお聞きしたいと思いますが、どうですか、除くことができますか。
  52. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) ちょっと質問の内容が取りかねておりますが、かねがね五十七条のところの周知の遺跡というのは、どうもよくわからないといいますよりは、不明確であるということで、御承知のように、私どものほうでも遺跡分布調査というのをやっておりまして、現在のところ十四万個所の遺跡分布の地図を関係方面に配付し、周知方を徹底させるとともに、そういうことで周知の遺跡というものがはっきりするように努力はいたしておりますが、それでもなおかつはっきりしないというような声もございますので、それをはっきり現場において明示する方法はないものかということで考えておりまして、その周知の遺跡云々のことばを削除するといいますか、取り払うというような考えまではただいまではただいまのところは持っておりません。
  53. 内田善利

    内田善利君 それで、いまも問題になったわけですけれども、周知されておったかされていなかったかということで私はそれを追及はしませんけれども、こういうことをはっきりすべきじゃないかと、こう思うわけですね。それでないと、届け出制になっても、届け出がなくても罰則規定もないし、許可制にして罰則規定を設けるかどうかと、この点はぜひやっていただきたいと、このように思うのですけれども、どうでしょう。
  54. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) いま御指摘のような点を含めまして、工事の停止であるとか、中止であるとか、そういうような所有権との関係その他の調整が非常にむずかしい点がございますが、十分検討しながら進めてまいりたいと、こう思っております。
  55. 内田善利

    内田善利君 もう一つお聞きしたいのは、財政措置ですけれども、やはり、原因者負担ということよりも、私はもう国が指定し、買い上げる。この指定も、計画的な指定をして、そして買い上げ、管理、そういった面まで国が責任を持ってやるような措置を講ずべきじゃないかと、このように思うわけですね。破壊する人が、道路公団とか新幹線の国鉄とか、いま言ったように建設省等、破壊する側が、人件費から何から負担するというやり方が欧米ではあっているようですけれども、これは考えられないものかどうか。国が責任を持って計画的な指定をし、そして、買い上げ、管理、保存、こういったことをもう当然埋蔵文化財についてやるべきでないかと、このように思うのですけれども、この点はいかがですか。
  56. 高橋恒三

    説明員(高橋恒三君) 先生の御指摘のようなお考えもあろうかと思いますが、私どもといたしましては、文化財というものがやはり国民の宝という意味におきまして、まずは、所有者、それから埋蔵文化財でありますればその地方と申しますか土地に密着しているものでございますので、その所在する地方公共団体、それから国といったような、いわゆるそれぞれの立場の者が協力するということがたてまえでなければならないと考えておりますので、国が全面的にやるということについては、私といたしましては、文化財保護の上において、また文化財保護思想を普及していくという面におきましても、いかがかというふうに疑問を私は持っている次第でございます。
  57. 内田善利

    内田善利君 国の責任でやってほしいということです。国がやれというのではなくて、国の責任でやってほしいと。それと、自然公園法あるい化自然環境保全法、あるいは古都保存法、その関連ですね、この点についてもいろいろいままで指摘してきたところですが、その辺も考慮に入れて文化財保護法をひとつ検討していただきたい、早急に検討していただきたいと、そのように要望いたします。  それから次に、いま文化庁といろいろやりとりしたわけですけれども文部大臣はどのようにお考えか、これをお聞きしたい。
  58. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 内田委員の御指摘のとおり、わが国の文化財保護に関する国の姿勢には、今日まで少しく熱意の不足した点を率直に認めざるを得ないのであります。いま、政府委員が、所在地方公共団体の姿勢とか熱意に期待するような話で、国のこれに対する積極的な保護熱意ということについて多少遅疑しているような印象を与える答弁がありましたが、そういう姿勢は改めたほうがよろしいのじゃないかと私個人としては思います。それで、御指摘の文化財保護法の不備欠陥等を私も遺憾に思いますので、なるべくすみやかにこれを検討して、通常国会には間に合わすように法案の作成を急がしているような段階でございます。  秋は、やっぱり、わが国の文教政策として、今後国際化社会の傾向に即応した姿勢をとらにゃいかぬと。それには、芸術、文化学術教育の国際交流にもっと金をかくべきである、異民族間相互理解を深めるべきである。異民族間相互理解を深めることが、迂遠なようでも最も近い平和への近道であるという信念に立って、文部省の従来とってきた、わが国の祖先からこれを受け子孫に伝うべき貴重な埋蔵文化財の保護保存、そういうことについての金を、建設省原因者負担にまかせるなんという姿勢でなく、積極的に文化庁の予算でやったらいいじゃないかという気持ちでございます。ただ、何しろ就任以来日なお浅く、その上石頭ときているものですから、うまい知恵が自分では出ませんで、下僚に保護法の改正の案をつくれなどということを命じている次第ですが、いま内田委員のおっしゃったような諸点につきまして、たいへんいい参考になりました、ありがたく拝聴いたしました。今後そういう方向に積極的に取り組みをいたします。
  59. 内田善利

    内田善利君 よろしくお願いしたいと思います。  これから本論に入りますけれども文部大臣に初めて質問をするわけですけれども、所信表明、また総理の表明等をお聞きしていません関係で、大まかな、またマスコミ等を通しての文部大臣方針について承りたいと思います。  まず、第一点は、先月の衆議院文教委員会におきまして、現在の学習指導要領、これは全人教育を妨げておると、もう少し弾力的な運用をするように改めたいということで、九月末までには何とかして具体策をつくりたいということですけれども、まあきょうは九月二十九日でございますが、この点はどのようになっておるのか、お聞きしておきます。
  60. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 指導要領の弾力的運用についての具体的案が九月末日までにはできると言っておりますから、あと一日ございますから、まだ私のところに提出されておりませんが、あしたの十二時までには提出があるものと私は待ちかまえております。それが来ましたならば、私の責任において検討をいたしまして、よく勉強いたしまして、さらに文部省というのもいろいろな知恵者がおるわけですから、省議を開きまして、局長からこういう案が来たが私の検討ではこうしたほうがいいと思うことがあれば、私も意見を加えて省議を開いて、さらにいろいろな意見を皆さん方からもちょうだいいたしまして、いい案をなるべく早く、まあ期限を切るわけにもまいりませんかもしれませんけれども、地方の教育委員会や何かに通達をできる時期を早めたい、十月の二十日ごろまでには地方へそれが通達できるようにしたいと、こういうことでございます。衆議院文教委員会において私が答弁いたしましたのは、九月末までに初中局の案ができる。ですから、まだもらっておりませんけれども、末日は明日でございますから、あしたは来るものと思います。
  61. 内田善利

    内田善利君 初中局長、いかがですか。
  62. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 明日大臣と御相談することで運んでおります。
  63. 内田善利

    内田善利君 この学習指導要領は私は問題がたくさんあると、このように思いますが、新指導要領の具体策ができたら、また検討さしていただきいたと思います。  それから次に、最近公害が日本の社会問題の中心になっておるわけですが、環境庁としても、もう住民運動に期待するほかないというようなことを告白もしているわけですけれども、この公害に取り組む教育はどうあるべきかと、この問題は教育目標にかかわる重要な課題ではなかろうかと、このように思うわけですけれども、公害の問題は、現在非常に重要な問題にかかわらず、解決がなかなかできないわけですけれども、私は、突き詰めれば、公害問題は人間の意識あるいは価値観の問題になってくると思うのですけれども、公害の問題を教育、特に学校教育という立場から考えた場合に、どのように教育課程の中で実践していくべきであるか、また、いかねばならないか、文部大臣の公害教育観をお聞きしたいと思います。
  64. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) きわめて私どものような未熟な者にはお答えのむずかしい問題でございますが、現在の私の知識なりに申し上げますと、つまり、人間の幸福とは何かということにつながる問題でございまして、私は、やっぱり、いろいろなことを幸福だと考える人々によって違いますが、いい水といい空気、究極的にはそれが一番大事なように思いますね。そこに宗教家が委員長席におられますが、お釈迦様が亡くなられるときに水を飲みたいとおっしゃった。そうしたら、濁り水ばかりなものだから、弟子が山のほうまでいい水をとりに行っている間に亡くなられたというので、死に水ということがそこから始まったというくらいですから、やっぱり究極の人間の幸福はいい水といい空気、そういうことについて、それは自分一人だけのものではないという教育、自分は社会とともにあるのだという教育、戦後は日本の風潮が国や社会が頼りにならないというので自分の身を守ることにきゅうきゅうとして自分さえよければよろしいというような風潮がびまんしたようでございますが、そういうところを学校教育がきちっと直していくということが必要ではないか。つまり、日本の場合は、そういう戦後の道徳の乱れもありますけれども、元来が親子だとかいう関係においては徳律というものが相当厳重でありましたけれども、社会と自分との関係というものについてのそういう公徳律について不足をしておったようでありますね。明治時代には多少そういうことがありましたが、戦後はそういうことについて学校教育上おろそかになっておるのじゃなかろうか。したがって、金さえもうければいいというので、事業家などもだいぶ公害をまき散らしたような、根本において自分の企業と社会との、社会のおかげで自分の企業が成り立っているのだ、したがって、社会の環境は自分の企業によってよごしてはならないとか、そういう意識において欠けるところがあるのじゃないか。学校教育も大事ですけれども、まず現在やっておるおとなを社会教育でもって直していくということが当面の問題として非常に重要ではなかろうか。わが国の明治以来の教育については、非常に見るべきものがあり、先人の功績をたたえるにやぶさかではありませんけれども、どうも、学校教育中心、社会教育軽視という風潮がありましたが、私は社会教育を重視してこれを充実しなければならぬと思いますのは、いま申し上げましたように、公害を平気で社会にまき散らすというようなことを社会教育の充実によってどんどん直していく。将来子供がおとなになった場合にそういうことにならないように、いまの学校教育において自分と社会との連帯関係についてもっとしっかりした教育をせにゃならぬと、アブラプトな話でございますけれども、私はそんなふうに思っております。
  65. 内田善利

    内田善利君 私も大臣の御答弁に全面的に賛成ですが、現在、学校教育の中に——社会教育は当然ですけれども学校の中に公害がもう学校の教室の中に入り込んできた。東京都内の光化学スモッグによる問題、あるいは四日市、あるいはその他の大気汚染による学童のぜんそく疾患等ですね、そういった子供たちに対する教育ということが大事じゃないかと思うのですが、学習指導要領の改定が一九七一年度に行なわれたときに公害問題ということが登場してきたわけですけれども、その前に四日市の公害問題で四日市の教育委員会が前年の五月に指導資料を出しているわけですけれども、これによりますと、学習目標が、積極的に体力づくりをする、よごれた空気を吸わないことと、こういうふうにあるわけですけれども、体力づくりをするといっても、もともと弱い子供もおりますし、当然体力づくりにしなければなりませんが、これには阪界があると思うのですね。また、よごれた空気を吸わないことといっても、これもなかなかむずかしい問題があるわけですが、私はこういったことにも限界があろうかと思うのですね。公害に負けない体力づくりをするという教育活動よりも、なぜ公害が発生するのか、そして公害が発生するその責任はどこにあるのか、それから公害を防除する方法、これをどうやって考えたらいいか、こうした問題をやはり科学的に子供たちがわかるように指導していく必要があるのじゃないかと、こういった教育目標を掲げるべきじゃないかと思うのですが、現実には教科書等にもこれとは反対のことが二、三あって、教科書会社が訂正したりしているわけですけれども、こういった問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  66. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 先生からただいま御指摘がございましたように、従来も公害につきましては学習指導要領に規定があったわけでございますけれども、その中に、産業擁護と申しますか、そういうようなふうにとられるような表現がございましたので、それは全面的に改めまして、新しく学習指導要領の規定をつくったわけでございます。先生に御指摘いただきましたように、子供の場合にはどうしても外からの影響に対しまして受け身になるというようなことでございますけれども、今度の学習指導要領の場合は、むしろ地域の実態に即しまして指導ができるように改めておるわけでございます。ただ、先ほど大臣からもお話がございましたように、これは社会全体としての意識を変えると申しますか、そういう点が非常に大事なわけでございますが、まあこれは私個人の感じでございますけれども、今度の公害問題ほど国民の意識を大きく変えたような事例はないというふうに考えるわけでございまして、そういう意味では、産業教育その他の関係で産業界の方々からいろいろ御意見を承るわけでございますけれども、公害につきましては産業界としてもかなり大きな予算をさいて、その対策を講ずるとか、非常に気をつかっているということは、これは事実であろうと思います。そういうふうにいたしまして、国民全般としてこの問題に取り組む、その中で子供たちに対しましてもそれに対する適切な教育を行なうということで、国民全体としての公害への取り組みというのがございました場合には、これはおのずから問題が解決していくのじゃないかと、そういうふうな気がするのでございます。子供の成長発達の程度によりましてなかなか理解しにくい問題もあると思います。こういう問題につきましては、その心身の発達に応じまして適切な教育を行なうということにつきまして私ども努力してまいりたいというふうに考えております。
  67. 内田善利

    内田善利君 文部省が本年度行なわれた公立小中学校児童生徒特別健康診断ですね、この結果はどのようになっておりますか。
  68. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) ただいま、詳細な報告をいただきまして、鋭意集計中でございます。
  69. 内田善利

    内田善利君 それは、いつから調査を始められたわけですか、そして調査目標は何ですか。
  70. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) いま先生御指摘の児童生徒特別健康診断は、昭和四十六年度から国庫補助金を計上いたしまして始めたわけでございます。それで、それらにつきましての概況の調査はまとめたものがございますが、本年度は、さらに、その特別健康診断及び移動教室といいますか環境のいいところへ一時移動いたしまして授業をやる、その二つをやりました学校につきまして、さらに学校環境緑化の実態につきましても調査をいたしまして、かなり精細な調査になりましたので、いまこれを鋭意集計いたしておるわけでございます。  いままでの環境緑化を除きました関係の概況では、大気汚染地域の児童生徒の健康状態は、結膜炎とかあるいは鼻炎とか、そういうものが普通の学校より多い実態が調査されておるわけでございます。
  71. 内田善利

    内田善利君 私は、児童生徒特別健康診断の結果を聞いておるわけです。緑化の問題は聞いていないわけですが、大気汚染地域における健康診断の結果、これはどうなさったのでしょうか、結果が出ていれば。
  72. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) 大気汚染地域の特別健康診断は、まず児童生徒のアンケート調査をいたしまして、それから特別の専門医師による検診をいたします。それからそこで異常が発見されましたものは、専門の医療機関におきましてさらに精密な検診をいたしまして、それぞれにつきましてその後の事後処置といいますか、その保健管理上の指導をいたすと、そういうふうに、いたしておるわけでございます。
  73. 内田善利

    内田善利君 よくわからないのですが、その結果を学校に通知して、そして学校でどのようにその対策を講じていくのか、いくように指導されるのか、あるいは、大気汚染地区でございますから、通産省あるいは環境庁等とも連絡をとって対策を講ぜられるのか。そういうことはなさらないで、ただ文部省として統計をとられるだけなのか、その点はどうですか。
  74. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) いま申し上げましたのは、特別健康診断を学校でやりました場合に、そこでいろいろ結膜炎その他が出てきた場合は、当該学校設置者におきましていろいろその事後処置を保健管理上やるということを申し上げたわけでございますが、いま、先生のは、そういう特別健康診断を実施した学校についての調査をいま文部省がまとめておるわけであるが、それをどのように利用しようということにしておるのかという御質問のように承りました。それらにつきましては、いま鋭意集計中でございますが、おそらく全国的ないろいろ病気なども多い状況が出てくるのではなかろうかと思いますので、関係各省とももちろん連絡をとりながらその実態を見ましてさらに検討をいたしたいと、こう考えております。
  75. 内田善利

    内田善利君 私は、北九州それから大牟田地域の大気汚染による被害調査をまあ私なりにやっているわけですが、そして、川崎とか四日市とか兵庫とか大阪と同じように、あるいは富士地区と同じように、早く救済措置を講じてほしいということで調査しているわけですが、たまたまこの中で北九州の医師会が行なわれた小中高の学童の疫学調査ですね、それも一昨年、昨年、今年というふうにお聞きをして、これも資料にして大気汚染による健康被害の特別措置法の指定地域にするよう呼びかけているわけですけれども、大牟田の場合も、学童のこういった調査結果が非常にいい参考になるわけですが、この結果を小学校の校長先生にお聞きしても、まだ結果は知りませんというわけですね。いまのすでに指定されました地域等のぜんそく様の疾患の被害調査、これの数倍も大牟田なんかひどいわけですね、文部省調査結果によりますと、そうしますと、こういったデータが非常に大事なデータだと私は思うのですが、これによって環境庁なりに早くこの子供たちを救う措置を講ずるように私は呼びかけているわけですけれども、なかなか大牟田の場合は指定地域に今回はならないで、北九州だけがその指定地域に決定されたようですけれども、大牟田の場合は六小学校とも富士市の場合の例よりも二倍、三倍、四倍とひどい。これなども早く私は連絡をとって早く救済措置を講ずべきじゃないかと、このように思うのですけれども、これが一体どうなっているのだろうという疑問から、学校教育、公害教育、あるいは環境教育と申しますか、そういった面から児童生徒を早く救助する方法を講ずべきではないか。一体、北九州の場合も大牟田の場合も、一番、汚染されているのは、小中学校の児童生徒なんですね。この辺が一番ぜんそくが多いわけですよ。こういったことについてはどのように考えておられるのか、そういうことで質問したわけですけれども、いかがでございますか。
  76. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) 先生の御趣旨は、そういうところは環境庁などに連絡して大気汚染地域に早く指定するようにという、そういう御趣旨でございますか。
  77. 内田善利

    内田善利君 そうではなくて、文部省がこういう調査をなさったわけですね。それでその結果が出るわけですね。それに対して文部省としてはどのような対策を講ぜられるのかということをお聞きしたわけです。その場合に、環境庁なりにも連絡をなさるのか、そういった点をお聞きしたわけです。
  78. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) もちろん、いま先生のおっしゃったような御趣旨によりまして、その結果を十分利用し対処したいと、そう考えております。
  79. 内田善利

    内田善利君 この結果はいつ出ますか。
  80. 渋谷敬三

    説明員(渋谷敬三君) 実は、私も、前々から催促をしておるのでございますが、かなり詳細な調査をいたしましたもので、夏休みにはアルバイトも雇いまして担当課でいま鋭意いたしておりますが、まだ全体的にまとまりますのがあと一月ぐらいかかるようでございます。
  81. 内田善利

    内田善利君 学園緑化の問題が出たわけですが、文部省で本年の概算要求で公害に関連した学科の新設を打ち出されておるわけですが、その具体的内容、今後の予定等についてお伺いしたい。
  82. 木田宏

    説明員(木田宏君) 公害に関係いたします学科といいましても、公害そのものが非常多岐にわたっておりますので、私どもも公害そのものという学科考えることは必ずしも適正なこととも考えておりません。それぞれの専門分野に関係いたしております生物系、工学系、医学系、あるいは社会科学の諸分野にそれぞれの専門領域を充実いたしまして、総合的な研究・教育の体制を整えていくということが必要でございますし、公害そのものということを考えますならば、主として研究領域で総合的な研究体制をとっていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。そこで、昭和四十七年度に措置いたしましたものは、科学研究費の配分にあたりまして、特別に人間の生存にかかわる自然環境に関する基礎的研究という項目を予定いたしまして、それに一億八千万ほどのワク取りをして、自然環境と人間の生存という問題の基本的な総合研究を育てたいというような措置をとっております。また、環境汚染の制御問題を技術的にどうこなしていけるかという研究領域につきましても、約一億近いワク取りをいたしまして研究体制を進めていくということをいたしております。また、研究施設でございますが、広島大学内海環境研究施設というのを設けまして、これは瀬戸内海の水環境の実態調査とその汚染原因等を学問的に研究する体制を整えて、地域の公害対策のいろいろな諸機関と協力した研究事業ができるようにということで考えて措置をいたしたわけでございます。  四十八年度も、引き続きまして、こうした公害問題ということを考えながら、化学の関係でありますとか、あるいは環境工学でありますとか、あるいは衛生上の問題でありますとか、あるいは草地関係の研究施設でございますとか、そういうものをそれぞれ地域実情に見合いました大学の要求等を組み入れまして予算は要求いたしておりますが、ただ公害ということだけの問題ではなくて、基本的な生物系の学科あるいは医学系の学科というものを充実してこれに対処しなければならぬ、このように考えております。
  83. 内田善利

    内田善利君 本年度の新設学科はどうなっておりますか。
  84. 木田宏

    説明員(木田宏君) 公害という学科は、本年度新設をいたしておりません。しかし、必要な関係の講座等——公害と申しましても、大気から生物あるいは人体、いろいろの領域にわたりますので、学問領域といたしましてはそれぞれの専門分野をその地域の研究体制に必要なものとして充実をしていく。あえていま公害に関係するものという御指摘でございますならば、研究施設として広島大学内海環境の研究施設というものを新設をいたしましたということを申し上げることができますし、また、横浜国立大学に公害に関連いたします計測工学、公害関係のいろいろな計測をいたすための工学の講座を設置したというようなことがございます。そのほかは、おもに研究事業でございまして、研究費の配分ということで総合的な研究体制を必要に応じてとり得るような研究事業を進めておるというのが実情でございます。
  85. 内田善利

    内田善利君 東京農工大学環境保護学科、水産大学に海洋環境学科、九州工業大学環境化学工学科を新設されるのですか。
  86. 木田宏

    説明員(木田宏君) 四十八年度の学科といたしまして、いま御指摘のございましたようなものを一応予定はいたしてございます。
  87. 内田善利

    内田善利君 私は、これを見て、公害学科ではありませんけれども環境保護、あるいは海洋環境、あるいは環境化学といった面で、この三大学に公害に関した学科が新設できるんだなと、こう思ったわけですが、これに関連して、まあ何といいますか、工科系あるいは自然科学系の大学だけであって、むしろ今後は人文社会学関係にもこういったやはり環境に関する学科というようなものが必要ではないかと、このように思うのですけれども、先ほどちょっと社会系にもそういった研究施設をつくるんだというふうにお聞きしたわけですけれども、やはり人文社会関係にもこういった環境あるいは生態学方面の学科が必要ではないかと、このように思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  88. 木田宏

    説明員(木田宏君) いま御意見がございましたように、公害という問題は、自然科学系の専門分野を個別に考えるだけではなくて、人間の生存全体を社会の中で総合的に考えるということが必要でございます。そういう観点から考えますならば、本年度から発足をおきめいただきました大阪大学の人間科学部というような学問領域、教育領域のつかまえ方、人間を社会の中における生活する人間として全体的に教育研究の課題としてつかまえていこうというような発想は、これからの社会を目ざした教育一つ考え方だ、また、大事な考え方だというふうに思っております。いま御意見もございましたように、経済関係の分野におきましても、社会経済を環境問題を含めた総合的な把握ということをしてまいらなければなりませんし、また、そういう面からいろいろな諸要素の計測のみならず、そうした角度で考えていけるような取り組み方ができるような教育経営、経済あるいは社会学の領域で考えていかなければならぬということは御指摘のとおりでございまして、それは教育の課題としてそれぞれの専門分野が取り組んでいただきたいというふうに思っております。その意味で、公害問題を特定の学問分野だけではなくて、総合的に取り組んでいく臨時事業といいますものにつきましていろいろと科学研究費等を用意して対処しているところでございます。
  89. 内田善利

    内田善利君 最後にお聞きいたしますが、文部大臣が出されておる新構想の師範大学の構想ですけれども広島大学に行ってまいりまして、広島大学は専門の教育学専攻の学部教員養成の学部とあるわけですが、有機的な連携ができてうまくいっていると思うのですけれども、こういった関連を見てまいりまして、師範大学構想は一体こういった点からどうなのかということを感ずるわけですが、文部省に行っても、大学学術局のほうに行かなければならない場合とこちらのほうに行かなければならない場合と両方あって困るという話もありましたけれども、まあ国公立と学校法人立とさらに特殊法人立ということも考えられておるようですし、あるいは、師範大学をつくられる場合に、その先生の確保等は一体どうなのか、これらの点についてお聞きしたいと思います。
  90. 木田宏

    説明員(木田宏君) 教員養成制度の改善につきましては、教員養成審議会から昨年中間報告をいただき、今年まとまった御意見をちょうだいいたしまして、小学校教員から中等教育あるいは幼稚園教育特殊教育等各般の教員養成につきまして改善すべき点の御示唆をいただきました。特に、また、小学校教員につきましては、過密地域の都市周辺で教員の養成数が足りないといったようなこともございます。いま養成制度にありますいろいろな問題点を改善していきますために、新しい形で教員養成の大学のあり方そのものも考えてみたらどうかという御指摘もちょうだいをいたしておりまして、現在大学局で教員養成制度の改善並びに従来の教育制度でどう変えたらいいかというような諸問題、いまちょうど内田委員が御指摘ございましたいろいろな観点を検討する体制を整えて、これから具体の検討課題に入ろうと思っているところでございます。  来年度の予算要求におきましても、その意味で、新しい教員養成の学校のあり方も含めまして研究を進めていくような予算の要求もいたしておるところでございまして、御指摘の案件は、個々の地域的な実情その他も勘案して個別に検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  91. 内田善利

    内田善利君 もう一言お聞きしたいと思いますが、そういう師範大学構想で現在の教員養成学部の卒業の先生よりもどういういい先生をつくろうとされておるのか。いわゆるいい先生をつくろうということだろうと思うのですけれども、どういういい先生をつくろうとされておるのかですね。そういう自信があってなされるのだろうと思いますけれども、そういう確信がおありなのかどうか、この点をお聞きして、終わりたいと思います。
  92. 木田宏

    説明員(木田宏君) 教員の養成の大学で勉強を受けました学生たちがほんとうに必要な教員としての資質を充実するために、もう少し在学中に実習を多くするとか、あるいは教職関係の必要な学習をより多くするとか、そうして卒業までの間に小学校教員なら小学校教員としてもう少し内容のまとまった、あるいは専門領域にもう少し力の入った、小学校教員でありましても算数の領域に力点を置いて教育内容を身につけさせるとか、あるいは芸能関係に力点を置いた充実した教員が生まれるように教育指導に力を入れるのか、そうした内容面についての改善策も指摘を受けておりますので、免許状の単位のとり方、今後の大学におきます教育課程の組み方、そういう点につきましても、教員養成審議会から指摘のありました改善策を進めていって、現在の教員養成大学におきます教員養成を充実いたしますとともに、さらに今後新設をしなければならない大学につきましてどういう内容のものにするかということを詰めていきたいと思っております。いろいろな改善策は諸般の事情とからむことでございますから、考えただけですぐできるというふうには軽く考えませんけれども、しかしながら、やはりいま足らない点をいろいろと指摘を受けておりますので、そうした点は今後の教員養成の改善策として充実につとめていかなければならない、これが私どもの感じております責務でございます。
  93. 内田善利

    内田善利君 いまお聞きしておりますと、現存の教員養成大学を充実すべきじゃないかと、このように思うわけですね。私の体験からも、途中確かにマンネリ化したこともあります。私は理科を担当しておりましたから、物理化学でしたので、教えることは大体同じになって、明日硫酸の授業だというと、もう教えることはわかってくるということで、どうやってこれを徹底していくかということについては、そういう中間で教員をさらに教育する大学院とかそういうもので必要じゃないか。私は、途中で、数学の先生に微分積分をもう一度習って生徒に当たっていったということもあるわけですが、ああいう時期に勉強する機関を大学につくっていったほうがいいんじゃないかと私の体験から思うわけですが、現在の教育大学をもっと充実する方向で進んでいくべきじゃないかなと、このように思うのですけれども、ひとつそういった面も考慮に入れてやっていただきたいと、このように思います。
  94. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま、日本の教育を取り巻くところの諸問題は、相当あるようでございます。特に、中教審答申の問題、あるいはいま議論になりかけておりますところの教員養成の改善方策の答申、あるいはまた、去る七月でございましたか与党の自民党の発表したところの文教政策の第一次方針、さらにはまた稻葉文部大臣の随所におきますところのいろいろな談話など、そういうようなところから、私は、本委員会で十分問いただしておかなければならない問題が山積をいたしておると、このように見ておるわけでございますけれども、本日は、時間の関係もございますので、教員給与の問題にかかわる問題につきまして、人事院なり文部省考え方を重点にお尋ねをしてまいりたいと、このように考えております。  教員給与につきましては、教育の重要性、教師の任務の特性からかんがみまして、教員にふさわしい給与制度の確立と大幅な改善が各方面から今日まで強調されておるわけでありまして、このことは私は非常に喜ばしいことだと思っておるわけであります。わが国におきましても、戦前もありましたし、戦後も、新しい公務員給与の制度の中で最初のころは、教員給与についてのその特性にかかわるところのある程度の優遇的な配慮というのがあったのでございます。たとえば昭和二十三年の千八百円ベースから三千九百三十円ベースへの切りかえの際、一週間の拘束時間の配分の中で、教職員は四十四時間から四十七時間の勤務の範疇に入れられて、最高十七割を切りかえるという措置もその当時はあったのであります。また、当時の俸給表適用については、教員は調整号俸として、一号俸から四号俸アップが加味をされておったし、それが昭和二十四年の十二月の政令の四百二号で裏付けにされておったこともあるのでありますが、その後、公務員給与の平等の原則ということは、これは給与改善の中でも非常にウエートを占めてまいりまして、昭和二十六年の六千三百七円ベースから七千九百八十一円ベースへの移行にあたりまして、いま申し上げましたところの調整号俸が半減をされ、さらに二十八年の議員立法にかかわるところの教職員給与の三本立て給与実施の際にその調整号俸がみんな消されたという経緯があるわけであります。そのような経過を見ました場合、先ほど申し上げましたように、いわゆる戦後あるいは戦前を通じてあったところの特典がすべてなくなっておるという中で、今後教育職の特性に見合ったところの給与をどのように改善をしていくかということは私はきわめて重要な課題だと思っておるわけでありますが、そういう立場から、まず八月に出ましたところの人事院勧告を見ました場合、今困の人事院勧告の中におけるところの行政職給与表(一)表の四等級との対応の中で、教職員給与の(三)表の場合のクロス点が一年伸びていったということは、私はやはり若干の改善だと思って歓迎をするわけでございますけれども、これではきわめて不十分だといわなければならない。したがいまして、おそらく、私は、人事院当局も、もうこれで済んだのだとは理解されておらないと思う。おそらくこのような残存格差を今後どのように解消をしていくかという計画がおありだと思いますので、もしありましたら、ひとつ給与局長からこの点をまず明確にしてもらいたいと思います。
  95. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 本年の給与勧告におきまして、御承知のとおり、全体といたしましては一〇・六八%でございますけれども、そのうち本俸自体の引き上げといたしまして、全体の平均では一〇・五%、七千九百七十一円引き上げておるわけでございますが、たとえば、教育(三)の場合には一〇・九%、八千七百二十五円、教育(二)の場合には八千六百四十八円、一〇・一%という形で引き上げておるわけでございます。  それで、その内容でございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、教員給与関係につきましては従来からいろいろ問題がございまして、最近——最近と申しますか、教員の中の構成が現在大学卒がほぼ半分近くになってきておるということで、大学卒をもって教員の実質的な資格という形になってまいっておりますし、これがだんだん充実をしてきているという状況でございますので、そういう資格に応ずる給与に毎年改めていくという必要があるというふうに考えておるわけでございます。そういう点で、教員給与の体系は——体系と申しますか、現行体系の中におきましても、現在の教員の人員構成、学歴構成が毎年進行していっておりますので、それに応ずるように改正をするという必要があろうかというように考えておりまして、本年の場合には、御指摘のように、行(一)四等級との関係で有利な改正を行ないまして、たとえば教育(三)の二等級三十三号俸の場合には、行政の場合には九千円の引き上げでございますけれども教育(三)の場合には一万六百円というように千六百円よけい引き上げまして、従来のクロス点、交差点を一・八号俸程度引き上げるということで、先ほど申しました教員の構成の進行に合わせるというふうに考えて本年の改善を行なったわけでございます。  なお、宮之原委員が、従来の関係をおっしゃいましたけれども、従来、御指摘のように、二十三年以来、教員給与はいわゆる行政職に対して若干の有利性を持ってきておったわけでございますが、昭和二十六年の調整号俸の半減の場合には、一応勤務時間は四十四時間だということで——従来四十八時間以上ということで切りかえておったのを、四十四時間になったということで、半減と申しますか、そういう形のバランス上そうなったというふうに理解をしているわけでございますが、その後、三本立ての改正の際には、その後における教員の有利性というのは特別そこで操作が加えられたということはなかったわけでございまして、あのときには高等学校だけに若干の有利性をさらに積み増したということになっておるわけでございまして、従来の有利性をその後引き継いでおるということではあるわけでございますが、しかしながら、その当時におきましてはまだ大学卒の教員というものが入っていなかったという事情にございまして、それが現在だんだん半分程度になってきておるという状況にかんがみまして、俸給表体系も絶えずやっぱり変えていくという必要があろうかというふうに考えているわけでございます。
  96. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あまり時間もありませんので、端的にお答え願いたいと思うわけです、過去のことはもうわかっておりますから。  問題は、ことばじりをとらえるわけじゃありませんが、今度は一年だけクロス点を伸ばしたから有利になったんだという考え自体、私は間違いだと思います。一年だけ均衡がとれるようになったというだけの話であって、同一学歴同一学年で行政職に行く者と学校に行く者とが勤務したら、十五年から十六年で開きが出てくるというのは厳然たる事実ですよ。いまさら大学卒業がふえたからなどとおっしゃったって、教員の免許状自体が、戦後、大学出でなければもらえぬようになっているんですから、私はこれは納得できません。しかし、私がここで聞きたいことは、ようやく来年一年伸ばしにそのクロス点が一年伸びたと、そのことはいいことにしても、そのあと以降は差がつくわけです、格差というのがあるわけですから、それを人事院としては今後どのように解消していかれるお考えなんですか、そこのところを端的にお聞かせ願いたい。できなければできないと。いや、年次にこれをずっと考えていきますならいきますと。そこをお聞かせ願いたい。
  97. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 行政職との関係でございますけれども、ただいまおっしゃいましたように行政職とのいわゆるクロス点の問題でございますが、現在当面問題になっておりますのは、行政職でいいますと四等級とのクロス点というのが問題になっているわけでございます。ところが、従来から昭和二十三年以来ずっと問題になってきておりましたのは、行政職の五等級——現在のクロス点で問題になっているその下の等級との関係が従来問題になってきておりまして、その下の等級よりも有利性があるということで従来は問題になってきたわけでございます。その後、最近になりまして、その上の等級——従来問題になってきておりましたその等級の上の等級である四等級とのクロス点と、こういう点が最近になって問題になってきておるという点を御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。そういう点で申しますと、いわゆるクロス点というのが大学卒十何年かに出てきておる、十九号俸のところであるわけでございますが、そういう関係は従来よりも教員の資質というものが資格要件というものが高まってきておるという関係で、全体としてやっぱりこれは上げてやらなくてはならないという方向になってきておるという状況を踏まえて、今後改善の方向検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  98. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうも、歯切れが悪いんですがね。大体、同じ学歴で勤務しても、職務体系が違うわけでしょう、申し上げなくても。なるほど、普通の官庁、役所なら、課長とか課長補佐とか係長というランクをつければ、次々に飛んでいけるようになっているわけなんですよ。学校教育の場合は、これはまああとからまた五段階給与の問題にも関連しますけれども、そんな段階をつけて学校教育に適用しようたって、これは間違いなんです、教育のあり方からいって。そのことは人事院が一番おわかりだと思います。たとえば、去年給与の問題について文部省から教頭職とかいろいろなものを言われたときも、人事院総裁は、文部省から申し入れば私どもをして感奮興起せしむるに至らなかったと、こうおっしゃったのは、教育職のあり方という問題を理解されているからと思うのです。そういう点から見れば見るほど、そのクロス点の問題を逐次やはり年次的に高めていくという中でこそ、従来の方針を人事院が踏襲されるとするならば、改善していくことができると思うのです。そういうことについて、今後、どういうようなお考えなんですかということを私は端的にお聞きしているのです。今年は一歩前進だったということは私は評価しておりますけれども、それで十分ですよとはおせじにも申し上げられませんから、今後私は漸進的にこの問題を解決していこうという考えが当局におありだと思うので、その点を私はお聞きしているわけですから、もう一度すみませんがお聞かせください。
  99. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 今後の教員給与の問題といたしまして私ども考えておりますのは、二つの問題がございます。  それは、現行の給与制度、給与体系のもとにおいてどのように考えていくかという点でございますが、その点は、先ほど申し上げましたように、教員の資質が高まってきておるという面と並行いたしまして、今年もやりましたクロス点の問題をさらに進めていくという方向検討をしていく必要があるというふうに考えております。  それから第二点の問題といたしましては、現行給与体系というものがこれでいいかという点が一つあると思います。この関係は、さっき御指摘になりましたように、たとえば教員の現行の給与体系と申しますのは、昭和二十九年に制定されました、いわゆる三本立てという関係を踏まえまして学校差を持ったものとして出てきておるわけでございますけれども教員養成大学を出まして高等学校へ行く者と中小学校に行く者とが現在その給与が非常に違ってきているという関係で、教員養成大学を出ました方が高等学校へ行く人と中小学校に行く人との関係で中小学校に行く方が非常に不利だという感じが最初からあるわけでございますますけれども、そういう関係が今後の教員養成関係とあわせましてやはり問題は問題だろうと思いますが、そういったようないろいろな問題がございますので、今後そういう現在の給与制度、等級制度そのものでいいかどうかという点を今後の問題として十分検討しなくちゃならないと、そういう点で現在そういう関係検討しておるというふうな二本の問題がございます。
  100. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間もありませんので、それじゃ文部省にお聞きしたいのですが、文部省の来年度の予算要求の概算要求を見ますと、重要政策事項として教員給与の抜本的改善を行なうためにとして総額四百七十四億九千五百万円の新規の要求をされておるわけでありますが、その概算要求の中で、昭和四十八年度以降三年計画で給与の改善を行なう、初年度は昭和四十九年の一月を実施期日として二五%を引き上げる、あとの二五%は二カ年間の計画で引き上げるというような説明に私は中身を理解をしておるわけですが、そこでお尋ねをしたいことは、この二五%・二五%という引き上げ方は、すべての教員を対象にして一律に引き上げるということを考えておられるのかどうか、それとも、最初の四十八年度は二五%は一律であるけれどもあとの二五%は何かの条件をつけてアップをするというような一つのものの構想を持っておられるのかどうか、そこらあたりをひとつお聞かせを願いたいと思います。
  101. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) ただいま先生御指摘になりましてように、三年間で五〇%という目標を立てております。来年度は、とりあえずそのうちで二五%と、それから年功加俸の一部を要求をいたしておりまして、総額も先生御指摘のとおりでございます。来年度の予算要求は、これはすべての教員に一律にという考え方でございますけれども、その後の問題につきましては、これは現在文部省給与の問題の調査会がございまして、先般日教組その他の団体からの意見も聞いたといういきさつもございますけれども、そこでいろいろ御審議を願うつもりでございますので、その後のことにつきましては、ただいま私どものほうからはっきりしたことを申し上げることはできないのでございます。
  102. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうしますと、四十八年度の第一年目は一律に二五%であるけれども、次の二五%の引き上げ方はまだ具体的に考え方としてはまとまっておらないと、このように理解してよろしゅうございますね。
  103. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおりでございます。
  104. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 なお、それと関連をしてお尋ねしますが、初年度の改善の二五%となりますと、これは実施期日が四十九年一月ですから、来年また人事院勧告がございますね。そうすると、一律アップというのは、来年の人事院勧告におそらくあるでしょう。いまのようにこれだけインフレ化していけば、さらにその上に二五%積み重ねていくのだと、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますですね。
  105. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのつもりでおります。
  106. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 次に、例の年功加俸のやつですね。これは、一体、初年度分として五十九億六千万ですか要求をされておりますが、それは具体的にはどういうような形で年功加俸をまず初年度実施されようとしておるのか、それをお聞かせ願いたい。
  107. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) これも、三年後の計画では、五年ごとに一号俸というふうな計画でございますけれども、来年はとりあえず勤続五年から十四年までは一号俸、十五年から二十五年までは二号俸、二十五年以上は三号俸、そういうふうな形で要求をいたしております。
  108. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、これはいわゆる勤年に対する年功加俸ですから、勤務年数がそういうふうになっていけば自動的に加俸していくという考えなんですか、それとも、ある一定部分はそうやってあとは何かの条件をつけて年功加俸というものを加味しようという構想なのか、そこらあたりはどうなんですか。
  109. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) これは、年功加俸という名前が示していますように、年限によりまして加俸をしてまいるという考え方でございます。
  110. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それなら、この年功加俸というのは、年限に対してある——ちょうど戦前ありましたね、そういうみたいなものだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  111. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおり御理解いただいてけっこうでございます。
  112. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もう一つお聞きしたいのですが、今年人事院勧告が出る前に、去年と同様に、新聞によりますと、文部省給与改善のあり方について人事院に何か要求されたようなのを拝見したのです。だいぶ時間的にはおくれておりますけれども、その中身をまずお知らせいただきたい。
  113. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 大学関係もございますので、人事課長からお答えさせていただきます。
  114. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) 毎年、文部大臣の名前で、教員等の給与改善につきまして人事院の総裁に要望を出しております。本年四十七年度の人事院の給与改善の勧告に先立ちまして、同様七月三日付をもちまして文部大臣名で人事院総裁に要望をいたしました。  その内容といたしましては、大学関係につきましては、学長の給与の改善、副学長等学長補佐機関の処遇の改善、あるいは教授の指定職のワクの増加、助教授、講師等の中堅層を中心とした俸給の改善、並びに助手の初任給の大幅改善、あるいは大学院担当調整額の率の引き上げ並びに助手についてその支給範囲の拡大、あるいは医学部、歯学部及び同附属病院の教員について国立病院の医師との均衡を考慮し、大幅な給与の改善をはかる、あるいは看護婦、医療技術職員等の給与の改善、准看護婦の看護学校等の進学のための休職制度の創設等につきましての要望をいたしてございます。  それから高等専門学校関係につきましては、校長の処遇の改善、教員の処遇につきまして、大学に準じた給与とすること、特に助手の初任給の引き上げ等につきまして要望をいたしております。  それから高等学校以下の学校関係につきましては、校長の待遇改善の一助といたしまして、校長の最高給は指定職まで到達できる道を講ずること、次に、教頭等につきまして新たな等級を設けるとともに、教務主任等に対し特別な手当を支給すること、三番目に、教諭及び実習助手の初任給を大幅に引き上げるとともに、四十五歳までの昇給間差額を増額すること、特殊教育担当教員の調整額を引き上げること、幼稚図の教員に教職調整額を支給すること等を中心に要望しております。  その他、看護学校、衛生検査技師学校等各種学校教員の処遇の改善、研究職員の処遇の改善等の要望をいたしております。  それからさらに、幼小中高等学校の校長、園長及び教頭の管理職手当の支給率の引き上げ等、諸手当等につきまして若干の要望をいたしております。  以上でございます。
  115. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまので抜かしておるのではなかったですかね。たとえば教頭職に特別の給与をやれというのはありませんでしたかね。
  116. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) 私のほうのいまお答え申しました中で申し上げたつもりでございますが、あるいは私の言い方がちょっとあれでお耳に入らなかったかもしれませんが、申し上げたつもりでございます。
  117. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 管理職手当の増額はあったみたいですけれども、何かそれが落ちておったみたいですけれども、まあいいでしょう。  いま文部省の来年度の予算要求に関しますところのおおよそのものの考え方をお聞きいたしたのですが、この予算要求の初年度の構想はわりに明確になされておって、二年以降のことは非常にぼかしておられるわけですが、大体調査会だというかっこうで、ことばは悪いですけれども何かそこに逃げ込んだような印象を与えるわけですけれども、この皆さんのものの考え方と、中教審答申によりますところの給与改善の構想ですね、これとの関連はどのようにお考えになっておられるのですか、そこを少しお聞かせ願いたいと思います。
  118. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 中教審の御答申をいただまして、これに基づいて調査会を発足さしたというふうにも御理解いただいてけっこうじゃないかと思うわけでございます。したがいまして、来年度要求をいたしましたものは、全体の方向一つ打ち出しておりますけれども、これは一つのワク取りみたいな形で御理解いただいて、その具体的な内容につきましては、中教審答申等もございますので、これは調査会にお願いして具体化をしていく、そういうふうな考え方でございます。
  119. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 答申の参考資料を見ますれば、一般公務員よりも一律高くしようというやっと、上級教員の定数というものを幼稚図からずっと高等学校まで出しておりますですね。大体、その中教審で言われているところの教員給与の構想というのと、まあ政府でありませんけれども与党であるところの自民党から打ち出されているところの一つの待遇改善の構想というのは、大体構想が似ておるのですがね。そういう構想を踏まえてそれを大体認められた上での調査会なんですか、それとも、その調査会なるものは、まあ議論してみなければどういうものが出てくるかわからない、その段階で検討するというものなんですか、どうなんですか、そこらあたりは。
  120. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 中教審の答申につきましては、私どもは、その趣旨をはずさないということが一番大事なことであろうと。しかしながら、具体的に行政的に処理いたします場合には、必ずしもそのとおりになるということとは限らない。特に給与の問題につきましては、新しい学校制度を前提としてお考えになっている面もございますし、また、そういうふうな新しい学校制度というものはできておりません。そういう点から申しまして、現在私ども検討をいたさなければならないのは、現実に即してやはり現状を踏まえた上で検討を進めるということであろうかと存じます。
  121. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、予算要求として出してあるところのいまの段階なるものは、中教審の答申の構想を裏づけるものではないのだと、むしろそれは今後の調査会のいろいろなものの検討にまっていくんだと、こう理解してよろしゅうございますね。
  122. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) まだ現実にできていない制度を前提とした御答申という面もございますので、ただいまおっしゃいましたように御理解いただいてもけっこうだと存じます。
  123. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 角度を変えてもう少しお尋ねしたいと思いますが、あれは、七月七日でしたかね、文部大臣が、ギブ・アンド・テイクだから、言うならば、教員給与を上げるけれども、先生方の身分をある程度拘束してもらわなければ困るということで、何か教員身分法とかというものを、これは仮称ですけれども考えにゃならぬみたいなことを大臣が言われておったですね。そのこととこの給与改正の予算要求と関連があるのですか。
  124. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 七月七日というと、ちょっと……。
  125. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 八月ですか、とにかく日ははっきりしませんが、とにかく大臣が就任して間もないころなんです。
  126. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 私は、教員給与は悪いという判断なんですね。だから、よくせにゃならぬ。ことに、あなたの指摘された十五年以降あるいほ十六年以降、開きを生ずるのはいかぬと、直さなければいかぬと。同時に、学校教育においては、教育は先生次第とさえ思っているものですから、先生の資質が向上されなければならぬ。そういうことがギブ・アンド・テイクなら、あなたのおっしゃるようにギブ・アンド・テイクかもしれませんが、身分法を制定するなんということをそのときは言っていないですよ。教員の資質を向上させることと相まって、いま非常に低い教員給与は大いに上げなきゃいかぬということは申しましたな。
  127. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 教員の資質の向上と相まってと、一応私どもそういうように理解させてもらえばなおけっこうだと思いますが、何か教員は裁判官みたいなものにして、教員の団結権とかなんとかというものはひとつ返上させてもらおう、そういうような内容の一つの身分的なものをつくるという考え方を持っておるんだということを私の記憶違いでなければ私は新聞記事で見たことがあるものですから、それから先ほど冒頭に申し上げたように大臣の場合あちこちで談話を発表されておりますから、私はどの程度信憑性があるかわからないからあらためてお聞きするのですが、そういう考えはないんだと、こういうことだとなれば、非常にけっこうなことだと思います。  そこで、もう一つお尋ねいたしたいのは、現職教職員の研修費として七十一億三千二百万の予算要求をされておりますが、この現職教職員の研修終了者ですね、これと、おたくの出されたところの教員給与の改善というものとは、どういう結びつきをされておるところの構想なんですか、そこらあたり聞かせてください。
  128. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 端的に申し上げますと、関連はございません。しかし、大臣が申し上げましたように、教員の研修ということは非常に大事なことでございますから、これはぜひ研修というものを強化してまいりたいということでございます。
  129. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、研修を否定しておるのじゃないですよ。研修することはなおけっこうなんだけれども、研修したからということの名目のもとに皆さんが出されたところの膨大な教員給与の改革案というものの一つの構想があるのじゃないかと思いますので、そこの結びつきというものをお聞かせ願いたいと、こう申し上げたわけですけれども、初中局長は端的に言えばないんだと、こういうことですから、私もすなおに理解をいたしたいと思います、ないということで。  そこで、お尋ねしますが、八月七日ですか、先ほど局長の言われた調査会ですね、正確にはどういう名前か知りませんが、教員等待遇改善研究調査会ですか、こういうのが発足をいたしておりますですね。このことについて若干お聞きいたしたいと思います。  まず、この調査会の現在の進捗状態と、いつごろまでに結論を出されるお考えなのか、その調査会で、そのことについてまずお聞かせ願いたい。
  130. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) お答え申し上げます。  現在までにこの調査会は三回総会を開催しております。最初は、一応初めの顔合せでもございますし、文部省のほうから……
  131. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そこはもう簡単でいいですよ、中身まで聞きませんから。時間もありませんからね。
  132. 望月哲太郎

    説明員望月哲太郎君) それから二回目は、尾崎給与局長から教員給与につきましていろいろ御説明伺い、三回目は、先ほど初中局長が申し上げましたように、日教組はじめ各教職員団体からの意見を伺ったところでございます。それで、この調査会は、一応、文部省といたしましては、二年間程度御審議をいただきまして結論をいただくようにお願いをいたしておりますけれども調査会の審議の進捗の状況によりまして、結論を得ました事項につきまして緊急を要する場合には、御意見をいただきまして文部省といたしましてもその実現等につきまして十分検討努力をさせていただくと、こういうふうな趣旨でお願いを申し上げてございます。
  133. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまのは二年間ぐらいのめどと申しますと、四十九年の正確に言えば八月ぐらいがちょうど二年になりますね。そうしますと、そこらあたりまで結論を待たなければ私は全体的な教員給与改善の構想というのは出てこないと思うのですが、いまお聞きいたしますと、部分的でちょこちょことそのつどそのつど結論を出さすと、こういうことなんですが、大体、調査会というのは、どういう構想でどういうかっこうに持っていかれようと考えられておるのか。たとえば、教員の一律アップのことは、それはだれにも異議がないものにしても、あとどうするかという問題のほうが大きな問題ですわね、率直に申し上げて。そうすると、それは二年間まで待てないからひとつ来年まで結論をそこは出してもらおうじゃないかということで、非常に拙速主義をとって、来年の予算要求に間に合うように予算の中ではすでに前もってちゃんとワクをつけておいて、そこに間に合うように調査会を追い込むというお考えなのか、それとも、先ほど局長が答えられたように、中教審答申とかいろいろなものに災いされないで、教職員の給与のあり方というものをどうするかという本質的なものをずっと討議してきちんとしたものをつくるというお考えなのか、そこらあたりはどういうお考ええですか。
  134. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) この調査会は、部会が二つに分かれておりまして、私のほうは高等学校以下を担当するわけでございますからお答えするわけでございますけれども、いまのような予算要求をいたしておりまして、一応二年間御検討いただいて全体と形のいうものを整えていただくというつもりでおりますけれども、その中間におきまして、また人事院の御研究あるいはその他の事情がございまして途中で何か結論を出していただくというものがかりにございました場合には、そこでお願いをするという程度のものでございます。
  135. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私が心配するのは、この概算要求を見ますと、年功加俸の問題はいざ知らず、教員給与の改定ベースの問題も、三年実施でやりたいと、初年度はこうだと、第二年以降はこれはまだばく然としてわかりませんということでしょう、皆さんのお考えは。そうしますと、この調査会では、一番根本的なものを二年がかりでやろうとすれば、当然来年の予算要求までには間に合わぬはずなんですよ、理論的に考えても。けれども、ここでは皆さんは四十九年度はどうするかというやつは、今年かりにこの予算が認められたとすれば、来年は第二年目として要求されるはずなんです。そうすると、それも一律だというならば、それは大きな議論はないでしょうけれども、どうもいろいろ私ども聞く筋はそうでもなさそうだ。そうなれば、一番基本に触れる問題なんですね。それを予算の要求問題にとにかく調査会の結論を合わさせていこうということにお考えになるとするならば、私はこれはたいへんなことになると思うのですね。本質的な教員給与のあり方を議論しなきゃならぬ。むしろ、ほんとうに文部大臣教員給与を抜本的に改善して教育をより発展させようというならば、腰を落ちつけたところの議論をさせて、その過程の中で明らかになったものを予算要求していくというならわかりますよ。けれども、端的に申し上げますと、予算要求の政策的なやつが先に先行しちゃって、肝心かなめの調査会なるものがあとからついていってただしりぬぐいだけをしていくというかっこうの調査会になるとするならば、これは私はたいへんなことだと思う。そこで先ほど来尋ねておるんですけれども、そこらあたりの基本的なものの考え方は、これはどうしても大臣からお答え願わなければいけませんので、お聞かせ願いたいと思います。
  136. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) いま御質問になったような点は、初中局長としても人事課長としてもなかなかお答えしにくい点がありますから、私から基本的な考えを申し上げます。  私は、大臣になる前に、自由民主党の文教制度調査会副会長をしておりまして、今年の一月から施行になった調整額支給に関する法律の審議中、教員給与は不公平に低いということで人事院に要望に参りまして、教職のきわめて特殊性にかんがみて、裁判官や弁護士さんやお医者さんのようなそういったような性格に近いものだから、給与についても裁判官報酬法という一個独立な法律があるように別個一本の給与体系があってしかるべきものではないかということを口頭で強く申しましたところ、尾崎給与局長がその場におりまして、人事院総裁はその点はきわめて傾聴首肯される点でございますと。それならば、給与について責任を持っておる中立機関たる人事院はなぜいままでそうしてもらえなかったか。なかなかむずかしい問題だろうけれども、むずかしい問題でもしかしそうせにゃならぬだろうなという総裁の賛成がありまして、給与局長もそういう作業に取りかからなければならないと思っておりますと。大体それじゃ一本給与表を別にするという作業は時間がどれくらいかかるんでしょうと言ったら、ほんとうによくは記憶しておりませんが、四、五年かかるような印象のことを言われました。そこで、大臣になっても、四、五年かかるのを待っちゃいられないから、三年計画でとりあえずこういうものを初中局長、人事課長を中心につくらせたわけです。まあまあのところですから、それを小委員会で承認し、党とも相談をして、不十分だろうけれどもごしんぼう願いたいということで概算要求をしたような次第であります。したがって、何かこっちにとりあえずの案をつくって段階をつけるううなことに合わせるために調査会を発足させてやったというものではありません。むしろ、私は、教員給与についてどうも不満足だから、昭和四十七年度の予算に去年調査費を計上しましたですね。調査費は通って、五月、六月、七月とほうっておいて、費用は使わないで、八月になって八月七日に発足させたんですから、非常におそいと私七は思います。調査費を要求したのは早く教員給与の改定の調査研究委員会をつくれという意味であるのに、まあ暫定予算になった関係で一カ月おくれてもしようがないが、五月くらいには調査会ができていなければならぬのに、この点は文部省としてまことに怠慢と反省をいたしております。しかし、八月七日からとにかく発足いたしましたから、委員の皆さんに懇請をいたしまして、なるべく今日世間にも教職員にも非常に不満と心配をかけている教職員給与の改善の結論を出していただきたいと、こういう念願に燃えておる次で第す。
  137. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣教員の待遇改善の問題についての積極的な意欲は、私も敬意を表します。むろんいま大臣が何も段階給与考えての意図ではないんだという意味でございますので、そのこともすなおに理解をしたいと思います。ただ、すなおに理解をするにしても、たとえば三年計画で充てられるという待遇改善の五〇%が、先ほどお尋ねしますと、初年度の二五%は一律だけれども、二年目、三年目の問題についてはまだ何もありませんと、こういうお答えでしょう、さっきの初中局長の話はね。そういうお答えでなくて、中教審は少なくとも一般の教員は三〇%から四〇%ぐらいまず持っていけと、こういうことがまず一番ばんと出ているんです。それくらいの積極的な意欲を示しているから、私は、大臣がそういう積極的な意欲なら、あの中教審の三〇%とか四〇%は少ないと。まず五〇%ぐらいにみんなの教員にいっちょう三年計画でやってやろう、こういうものを三年計画で立てておいて、その過程の中で中教審からいろいろあるところの問題、さまざまな教員給与のあり方の問題について二年か三年か、人事院ばかりにまかせておいてはあれだから、われわれも検討しよう、そのために調査会があるんだというなら、理解できるんですよ。けれども、どうも先ほどまでの初中局長の答弁は、二年目以降はわかりませんよという話なものですから、私がそう考えたくなるのも無理ないでしょう、大臣。そうさせるというなら、そこだけ聞かせてもらいたい。
  138. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) あなた、私が教員給与の段階制については全然考えていないように思われてはたいへんですからね。あなたのおっしゃるのは、そっちのほうを非常に強く考えていて、そっちに合わせるためにこうやる、委員会をそっちへ持っていくようにやるというように思われたら、それは誤解でございますから、そういうことはありません。この委員会がどういう結論を出されるかは、これからの審議の内容によりますから、それが終局的にやっぱり教員給与については段階があってしかるべきだという結論が出されるかもしれない。それを全然大臣としてはそんなことは考えていないんだというふうには受け取っていただかないようにしていただきたいと思うのです。ですから、初年度分については、結論がまだ出ていないから一律二五%アップ、審議会が進んで一律アップではなくてこうやれという結論が出れば、審議会の意向を尊重しなければなりませんから、その段階において考えるべきであって、いまからきめるべき問題ではない、こういう意味で初中局長お答えしておるわけです。
  139. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、段階給与というものを教育界に持ち込むことについては、大臣と見解を異にしておりますし、相当な議論のある問題だと思う、率直に申し上げて。そうなればなるほど、やはり二年か三年か、最終的には二年ぐらいのめどでやりたいとおっしゃるのですから、二年ぐらいの時間をかけてやるというなら、またそれだけ議論する値打ちがあると思うんです。ただ、私が先ほど指摘したように、第一年目は二五%だけれども、第二年目、第三年目はわからないといえば、たとえば今年四十八年度予算要求が認められたとすれば、来年のいまごろはまた第二年目の予算要求をしなければならぬわけでしょう。そうすると、片一方は結論が出ないということになれば、これはそんな簡単に結論を出されては困る問題ですから、うんと教育界で議論をしてもらわなければならない問題です、どっちに行くにしましても。それだけに、そうなれば、来年度はどうなりますかと伺うと、来年はまたということでは、なかなか——むしろ来年度あたりはそれをそろそろやられて、そのためにいわゆる調査会というものは形だけつけるのじゃないでしょうかという勘ぐりが出てくるんですよ。そうではないんだと、ほんとうに慎重に審議するとおっしゃるなら、その点は明確におっしゃって、何も予算が先に走るのじゃなくて、政策が先に走るのじゃなくて、やはりこの問題は日本の教育界にとっては大事な問題だから、二年がかりなり三年がかりで慎重に議論をして、その結論を待って一つ方向を出したいと、こういう大臣の真意があるならば、それを聞かしてもらいたい。
  140. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 教員給与が現在では非常に低いということ、そしてこれを上げなきゃならぬということについては、別に異論はないんですから、その上げ方をどうするかということについていろいろ世上議論がありますから、文部省だけでそういうことはきめちゃいかぬ、衆知を集めて慎重に検討してもらった上その結論を尊重していかなきゃいかぬなあという文部省としては謙虚な態度でこれに臨んでありますから、あまり御心配にならぬほうがいいんじゃないすでか。
  141. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 心配するなということですが、私も、大臣が初めて大臣になられて非常にすなおにものを言われる方ですから、そのように信じたいと思うんですが、ただ、それにしても、この調査会のメンバーを見れば、教育界のメンバーを網羅したとはおせじにも言えませんね、率直に申し上げて。まあこう十六人ぐらいかの名前があるようでございますけれども、会社や研究所の所長さんとか、大学の学長さんとか、それから校長さんだけで終わりですわね、これは。ほんとうに衆知を集めようとおっしゃるなら、日本にはたくさんの教育団体もあるし、平教員もいるんですから、ただ意見をときどきその調査会で聞くというのじゃなくて、むしろ現場をそこに入れてうんと議論させて大臣のおっしゃるようなほんとうに衆知を集めたよりよいものをつくるという形にやられたほうが日本の教育発展のためにもいいんじゃないだろうかと思いますが、その点、補強するとか、あるいはこの点について再検討してみるという御意思はございませんですか、メンバーのことについて。
  142. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 私の教員給与の点につきましては、これは党やなんかと相談したわけではありませんけれども、それから文部省の役人とも相談したわけじゃありませんけれども昭和二十九年の大学、高等学校小中学校ということについての段階三本立てということは教育の本質に照らしてあまりいい給与体系ではないんだと。ここで、そういうことを申し上げるのは、まだ人と相談しないで個人的な見解を述べてけしからぬというようなあとでおしかりを受けるかもしらぬけれども、個人的にはそう思ってます。そういうようなことなんですが、いまあなたがこのメンバーではまたおかしなことをやるんじゃないかというような御心配もおありのようですけれども、このメンバーで、私は、ときどき出ていって私の教員給与に関する基本的な考え方も御披瀝申し上げまして、おかしなことにならぬようにいたしますから、いろいろな団体も加えろとおっしゃいましたが、いろいろな団体がありまして、またその人数がふえていく。これは衆知を集めるといったって程度がありまして、人数だけふやせばいいというものじゃありませんから、そういうふうに思いますので、人数をふやしたり追加したりする考えはいまは持っておりません。
  143. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 昔話になりますけれども、私も、大臣がその三本立てのあの前後のことで党内でいろいろあの三本立てにはあのときから消極的にどうだこうだという話はよく存じ上げているんです。それ以来この問題には非常に敬意を表しているわけですが、それだけに、今度は、いざ御自分で大臣になられてこれを実施されようとされておるだけに、私はこれだけのメンバーがみんな悪いというのじゃないんですよ。より衆知を集めるためには、やっぱり二、三補強していかれたほうが、より大臣がねらっているところの方向に私はなるのじゃないかと。だって、田中さんの「日本列島改造論」だって、九十人も間口を広げているじゃないですか。もっとも、私は、あんなに広げていいとは申しませんけれどもね。あるいは新しい中教審のメンバーだって、労働界からも入れよう、どうかなあと前の大臣はやられておったですね。それぐらいのやっぱり幅の広さを示されてこそ、私は、稻葉文部大臣が日ごろ言われているところの衆知を集める方式が出てくるのじゃないかと端的に申し上げたいんですけれども、いまのところ意思はないというお話ですけれども、いまのところではわかりました。しかし、ひとつそれは今後の課題として、これは単にお前たち出てこい、意見を聞いてやるわいという方式ではなくて、私はその問題については真剣にひとつ御検討願いたいと、こういうことを申し上げたいのですが、いかがなものでしょうか。
  144. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 私は、文部省に入ってみまして、あまり審議会が多くて驚いちゃった。それは文教のことについては、きわめて専門的ないろいろな問題がありますから、とても役人だけでは国民の要望に応じるようないい結論は出せないからお助けをいただく、これはいいのですけれども、それが高じて、答申はこうでございますのでとわれわれできめたんじゃないような話をして責責任のがれをするような傾向はよろしくない。やはり、できるものは自分で役人の責任においてやるべきものだ。教員給与などについては、私ども調査会を設ける調査費を要求したあの予算に賛成した一人ですから、大きなことも言えませんけれども、まあ役人の責任においてやって、そして参議院の文教委員会とか本会議とか、衆議院の文教委員会とか、国民代表たる諸先生方に御批判を仰ぎ、それで民主政治はいっているものだと、衆知を集めているというふうに思う点があるものですから、いま委員をふやせと言われましても、元来そういう考えで正直な話あるものですから、委員だけふえても困るなと思ってそういうことをさっきお答えしたのです。しかし、ほかならぬ宮之原委員の貴重な御意見でございますから、検討いたします。いまのところふやす意思はありませんけれども検討いたします。
  145. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大臣検討いたしますというところに非常な期待をかけまして、また今後見守っていきたいと思いますが、時間もまいりましたので、最後に、いま一点だけ確かめておきたいと思います、いま人事院の皆さんも、この給与の問題についてのやりとりの中でいろいろまたお考えもあるかと思いますが、いま文部省の進めておるところの給与改善の方策と、人事院の給与をきめるという権限ですね、これは給与の問題については人事院が権限があるんですから、それとの関係ですね、これはどのようにお考えになられておるかこの際、私は、まず、総裁がいらっしゃらないですから、人事官から、基本的な問題でございますから、人事院としてのきちんとした見解をお聞かせ願いたいと思います。
  146. 佐藤正典

    説明員(佐藤正典君) お答えいたします。  私から申し上げるまでもなく、今日の経済発展が、いろいろ原因はございましょうけれども、その根本はやはり日本の教育が初等教育から高等教育に至るまで全体的によく行き渡っているということに基本があると思うのです。そういう意味から考えますと、教育公務員に対しての問題はいろいろの点で優遇措置を考えていく必要があると私は考えております。そして、このことによって次の時代のにない手を育てるという非常に大きな責任を持ちます教育公務員に対しては、特に優秀でかつ人間性豊かな人材を迎えることが最も好ましいと常日ごろから考えておるものでございます。  ところで、一方、私、内容をよく存じませんけれども、中教審の答申案の内容のうちに教育者の待遇の点だけをとって考えてみますと、これにつきましてはいろいろの点がございますけれども、しかし、待遇をよくしていこうという点につきましては格段の措置が要求されているようでございます。また、ただいまお話の出ました文部省の発想によりますいろいろの方面の有識者からなります教育職の公務員の待遇改善に関する委員会もすでに発足しているように伺っておるのでございます。  私は、これらの委員会の結果、もしよい意見があればこれも伺いたいと存じておりますが、人事院といたしましては、あくまで独自の立場で教職員の待遇の問題を取り上げ、そのためには、まず、先ほど尾崎局長も触れましたが、非常に古い教育職の給与体系のあり方などについてさしあたり再検討が必要と考えておるのでございまして、これに対しましては、ただいま給与局におきまして詳しく検討に入ってもらっていただいておるのが現在の実情でございます。
  147. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私の質問が悪かったと思うのですが、私がお聞きしたいことは、人事院の権限上の問題といまの文部省調査会との関連性をお聞きしたいのです。私は何もことばじりをとらえるわけではございませんけれども、少なくとも、人事院は、独自の立場というよりも、国家公務員の給与の問題については人事院が責任をもってきめるところの権限があるし、国家公務員法には明確にされていると思うのです。ですから、そういう立場から、文部省でいまやられておるところの調査会との関係というものをどうお考えになっていらっしゃるんですかと、そこを実はお聞きしたいのです。
  148. 佐藤正典

    説明員(佐藤正典君) お答えいたします。  ただいまお話のございました教員給与の改善委員会につきまして、これはただいま文部大臣からもお話がございましたように文部省の発想でございますけれども、人事院に対しましても協力方の申し入れがございまして、これにつきましては、このような場で人事院の給与実情につきましてよく説明をし、また、多くの方々の意見を聞にくことはきわめて有益なことであると考えてりおますので、参考的の立場としてその方面の事情最も詳しい給与局長に出席していただくことになっております。しかしながら、人事院といたしましては、いま申しましたように、研究会における給与局長発言も含めて、研究会の結論等に拘束されるものではないと考えております。また、人事院といたしましては、教員給与の問題については、従来と同様に、独自の立場と主体性を堅持しながら今後とも必要な研究を重ねながら適切な措置を講じていきたいと存じておる次第でございます。
  149. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もっと端的に申し上げますと、文部省調査会の結論が出た、人事院はどうされるかということなんですね。少なくとも法のたてまえでいけば、文部省が最初にどういう結論を出そうとも、人事院は人事院で給与というものをきめてそれを実施するという権限は、これは国家公務員法の三条の中にも明確にあるんですね。ですから、そこの関係を一体どう考えるか。言うならば、具体的に言えば、文部省一つの結論を出したものを人事院は参考資料として最終的にはこれは人事院が教員給与の問題について結論を出すところの場になるのが私は法のたてまえだと思うのですけれども、そういうことを踏まえておられるのかどうか。かりに文部省がどういう結論を出そうと、オーケーという場合もあるだろうし、これは悪いと言われる場合もあるだろうし、常に私は人事院としては給与の問題についてはものを言えるところの権限を持っておるところの官庁だと、こう思っておるんです。したがって、かりに文部省で結論が出ても、文部省が法案としてもちろん独自に出せるところの、あるいはまた都合が悪ければ三本立てみたいに政党から出させて妙なかっこうに給与法を持っていくということでは、これは人事院の存在価値がどこにあるのかと言いたい。そういうような法の一つの仕組みの体系というもの、官庁の、それをこわしたらたいへんになるので、そこは最終的には人事院として明確に踏まえておられるのかどうか、もう一回私は人事官からお聞きしたい。
  150. 佐藤正典

    説明員(佐藤正典君) お答えいたします。  お説のように、ただいまのような研究会で結論が出まして、その資料をいただきますとすれば、それがもしも人事院の意向に取り入れてよい点があればもちろん取り入れますけれども、しかし、人事院は、あくまで人事院の立場において独自の立場において、勧告の範囲に取り入れられるもののみを取り上げて人事院独自で勧告していきたいと存じております。
  151. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これで終わりますが、私は、いま佐藤人事官がおっしゃいました少なくとも国家公務員法に規定をされておるところの人事院の権威と申しますか、それをあくまでも守るようなきちんとした態度を踏まえておいてもらいたい。それに誤解を与えるような行動は、人事官だけじゃなくて、職員の皆さんも私はやっていただきたくないと思います。そういう点から申し上げますならば、たとえオブザーバーの形でも、局長が、のこのこと申してはことばが悪いですけれども文部省調査会のメンバーに加わっておられるということについては、非常なやはり疑心——ほんとうに筋が通るだろうかどうだろうかという疑点を持たざるを得ませんよ、率直に申し上げて。これは、昨年の九月でしたか、そのころに、実は、文部省は、先ほど初中局長が答弁されたように、中教審の答申があった当時に、すぐに発足させますという方向をきめられておったのです、この調査会を。さっき大臣からおしかりを受けたように、発足させなかったのは実は怠慢だったかもしれないということを大臣が言われた。そのころ、あなた、文部省のような調査会には人事院のあり方から見てこれは一体自分としてこれに出るということについては問題があると現にあのときにほかの団体に言われておったんです。それから変身ですね、このごろはやりのことばで言えば。それで急遽でき上がると出られる。一体、これと人事院との関係はどうなるのか。人事院というのは、国家公務員法や給与法にも明確に給与の問題については権限もあるし権威というものもあるのですよ。それを世間様から誤解されるような態度をとってもらっては私は困ると思うのです。そういう意味では、私は、尾崎給与局長が、たとえ資格はオブザーバーであろうとも、あるいは検討されたところの中身はどうあろうとも、先ほどの人事官のことばをお借りすれば、それは何か聞かれたときに答えるだけだと、こうなれば、それはメンバーではなくて、必要に応じて呼ばれていって人事院の立場を話されればいいのであって、それをわざわざ人事院が一つのメンバーに入っておられるということは、どうも、先ほど人事官がお答えになったところのものから考えると、そのお答えのたてまえからさらに一歩突っ込んでおられるのではないか、踏み出しておられるのではないだろうかという疑問さえ起こるのですがね、率直に申し上げて。この点は、私は、人事院のあり方として一つの問題点を提起しておるといわざるを得ませんよ。したがって、私は、いまお答えはあえて求めませんけれども、少しこの問題については人事院のあり方という性格から見てどうなのか、こういうことについて御検討していただきたい。またいずれ日を改めて皆さんにいろいろ御検討いただいてお聞かせ下さい。このことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は、本日、日中国交の正常化と、そして共同声明が出まして、はっきりと国交が回復されたわけで外交問題あるいは経済問題その他がこの機会を契機にいたしまして急速なテンポで進んでまいるというふうに考えますが、また、このことは、どうせ臨時国会なりで直接総理なり衝に当たった方々の報告あるいは詳しい経過、真意、こういったものが出されて、これをめぐってこの問題については十分内容をただしてまいる機会もあろうと思います。しかし、ここで私は広範ないままでの交渉の経過なりあるいは今後の発展の問題についてはその機会に譲りますけれども、少なくとも日中国交が正常化し、これに伴っての両国の学術文化あるいは教育、こういったものとの関係、これについて大臣からお聞きしたいのであります。  そこで、共同声明の内容が詳細に手元にはありませんけれども、少なくとも九月二十五日の周総理のあいさつ、あるいは田中総理のあいさつというものを見た場合に、次のように伝えております。「一八九四年から半世紀にわたる日本軍国主義の中国侵略によって中国人民はきわめてひどい災難をこうむり、日本人民も大きい損害を受けた。前のことを忘れることなくあとの戒めとするというが、われわれはこのような経験と教訓をしっかり銘記しておかなければならない。」と、これが二十五日の周首相のあいさつの一節であります。田中首相のあいさつは、「過去数十年にわたって日中関係は遺憾ながら不幸な経過をたどってきた。この間わが国が中国人民に多大な御迷惑をかけたことについてあらためて深い反省の意を表する。」と、こういうあいさつが双方にあって、いわゆるいまわしいそして日本が中国を侵略して暴虐の限りを尽くしたそのことをあやまるし、そして心から反省をするというところから話は出発をしていって、そして本日の共同声明という輝かしい結果を生んだというふうに私ども考えるわけです。  そこで、この中で、私が先ほど申しましたように、学術文化あるいは教育、こういった面でこの二人の巨頭のあいさつの中で非常に考えなければならない点が多々あるというふうに私は考えるわけです。このことは、詳細な共同声明の内容を見なくても、あるいは報告を詳細に聞かなくても、この問題についてははっきりとした私ども考えなければならぬ点を持っておると思うのです。そして、いままで前段で行なわれた折衝、あるいは私ども自身が中国の方々と接触をした限りにおいても明らかにわかることは、いつの会談でも、あるいはいつのさりげない話の中でも、中国の人民というものは、蘆溝橋事件あるいは満州事変、かつて日本が侵略したそして残虐を尽くした、こういった面については絶対に忘れていない。まあ日本の帝国主義というものが悪いのであっていまの日本人民というものとはっきり区別をするという形はとっておるものの、明らかにそこには絶対に忘れ得ないという実情中国側にはある。  ところが、一方、日本の立場からいけば、これは田中総理がいわゆる迷惑をかけたと、こういう表現で陳謝をされたわけですけれども、実質そのことばをめぐっていろいろ論はありますけれども、そのことは私は申しません。実質日本の国民が特に戦後に生まれた青年あるいは少年がはたしてこの点についての理解を持っておるかどうかという点については、私は現実にないと思う。何で田中総理が迷惑をかけたとこう言っておるのか、その内容はどういうものなのかということについては、私は、この問題については、真相といいますか、事実といったものや、それに対する判断というものは、案外持っていないような気がすると思うのです。私自身も中国に対する侵略戦争の一翼をになって、一将校として行ったわけですが、当時の戦中、戦前派といわれるところはわかるけれども、戦後の教育を受けた者には、この点はほんとうにいまから国交が正常化されていって両国の国民同士のつきあいが始まるというときに、片一方のほうは絶対に忘れていない、片一方のほうはすべて忘れてしまっておるというか、知らない。そういった中で、今後の日中の国交については、私は非常に心配しているわけです。  そこで、私は、長くなりますから、ここで大臣の意見を聞きたいと思うのですけれども、私は、現在の教育、戦後の教育、これはずいぶん変化をしてまいりましたが、ごく最近における特に中学校、高等学校の社会科を中心とした教育、こういった中で非常に誤りをおかしておったのではなかろうか。私はあとで紹介もしますけれども指導要領あるいはそれに基づく教科書、こういったものからでも、少なくとも日本が中国に対する侵略をやった、暴虐を尽くした、こういった点については避けて通っておる。こういう傾向が非常に強い。私は、そういうところに、過去の問題は問いません、いまから古い日中の国交がきょうをもってはっきりと正常化されたという、そういった段階において、教育面で今後の日中関係を進めていく場合に、大臣としてはどういうお考えを基本的にお持ちになるのか。私は、あて少しえ突っ込んで、いままでの教育に足らぬところがありゃしないかという点でありますが、そのあたりを中心にしてのお考えをお聞きしたいと思います。
  153. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) いままでの教科書や持導要領の具体的な内容につきましては初中局長から返答させますが、本日の日中共同声明は、前文と九項目にわたって述べられておりますが、その前文の中間ほどのところに、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と、こうありますから、いかに戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたかについて国民はよく知る必要があると思います。そして、責任を痛感する必要があると思います。そして、深く反省する必要があると思います。そういう点について、今後、初等中等教育その他社会教育においてなすべきものが一ぱいあるということについては、質問者安永委員と合感であります。  安永委員の中華人民共和国との国交回復による文化交流の点につきましては、第九項目に、「日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の関係を一層発展させ、人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、既存の民間取決めをも考慮しつつ、貿易、海運、航空、漁業等」等の中に文化交流、学術交流、教育協力が含まれるのだと思いますが、もう少しこの点については、私個人としては、「文化交流、文化等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行なうことに合意した。」とあってほしかったという感じはいたしますが、「人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、既存の民間取決めをも考慮しつつ、」とありますから、スポーツ交流などにつきましては、ピンポンでも、バレーでも、あるいは演劇でも、いろいろ交流を進めてきた事実にかんがみ、なお一そうその交流をしげくする方向にまいることは当然でございまして、私は、本日、文部省の首脳部に対し、それらの用意を直ちに始めるようにということを指示いたしたような次第であります。
  154. 安永英雄

    ○安永英雄君 いまの前段の分については局長なりがこれを答えると思いますけれども、後段のほうにつきまして、いわゆる新しい国交が門戸を開かれたわけでありますが、いわばよく使われた政府間交渉というもので国と国とのつき合いがはっきり正確に開かれたわけでありますから、今後は、いままでみたいな民間ベースだとかなんとかいうことじゃなくて、この文化の交流といった点については私は具体的に文部省から出なければならぬのではなかろうか。まあ、ピンポンが来ると文部省が後援するとか、あるいはいままで留学生あたりにもやったこともあるし、いろいろありますけれども、これはすべてこういった民間とかあるいは政党あるいは協会あたりで世話をする。こういうことではなくて、私は、その点については、もう少し不安はないのか、あるいは新聞その他でいろいろ言われておりますけれども文部省自身がとりあえず直ちに考えなければならない交流、こういった問題についてもう少しお聞きしたいと思うのです。いまの話では、十把一からげで事務局に検討をまかしたと、きょう言いつけたというふうなお話でありますけれども、私はそのほかにあるような気がするし、とりあえずやっぱりかからなければならぬ問題はたくさんあると思うのですが、もう少し具体的におっしゃってください。
  155. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 中華人民共和国との間の外交関係の樹立に伴いまして、外務省と密接な連絡のもとに、教育学術文化の交流を推進していきたいと考えまして、学術研究面につきましては、中華人民共和国はわが国の学術研究の成果を導入することを欲しており、一方、わが国としましても、近年における同国の考古学上及び科学技術上の研究の成果を高く評価しておりますから、同国との学術主流を推進することには両方とも少なからぬ利益があると信じます。このため、とりあえず、来年度においては、日本学術振興会の政府補助事業として、わが国から数人の研究者を派遣し、研究者レベルの予備的折衝を行なわせたいと考えております。  スポーツについて言えば、スポーツの国際交流は、現在わが国における種目別競技団体の加盟する種目別国際競技連盟それぞれの規約に従って実施されており、中華人民共和国とのスポーツの交流も基本的にはこのルールによって行なわれるものでありますが、今後同国との国交の樹立によりスポーツの交流が一そう活発になるよう積極的に文部省としてはスポーツ団体に助言もし、指導もしてまいりたいと思っております。すでにきまっております来月の五日から日本全国に行なわれる男子女子の中国からのバレーボールの交流がありますが、本日をもって正式な国交が開かれるわけでありますから、計画は国交正常化以前のものでありますけれども、正常化後になりますから、その開会式等には所管大臣としてあいさつに行くとか、そういうことにならなければならぬ筋合いのものであると考えます。  なお、参考のためにつけ加えますと、文化交流の第一歩として、高松塚古墳の発掘に関して、文化庁の依頼した学術調査会が会長名をもって中華人民共和国の学者に招請状を送っております。この学者は具体的にどういう人名であったかは忘れましたけれども、こちらの調査会会長名をもってこういう人においで願いたいといった方々は御多忙のため来日できない旨を回答してまいられましたが、国交正常化の後には、もう一度正式に文化庁文部省、外務省で意見を統一して正式な要望をするか否か、その人が忙しければ別な方でもよろしゅうございますからという招請をするかどうか、よく外務大臣も帰りましたらさっそく協議してきめたいと存じます。  以上のようなことをとりあえずいまのところ考えておる次第であります。
  156. 安永英雄

    ○安永英雄君 とりあえずということでありますけれども、いままでの日中の特に中国の外交、こういったものについては、非常にテンポが早い。だから、とりあえずといいましても、やっぱり本質的な問題は真剣に考えなければならぬ。この点については、まあ矛盾ということばも使われましたけれども、いろいろやっぱりお互いの社会体制の違いというようなものもあるけれども、一番乗り越えやすいのは文化関係の交流です。これについては文部省としてはきちっとした態度というものを持たなければならないし、これは早急に迫られると思いますが、次々に来るということですから、この点はいまそういった検討をされると言いますけれども、急を要すると思います。  そこで、私は、いままでの教育、この中で中国を正しく理解するような教育がはたして行なわれておっただろうかどうか。私は、行なわれていないと思う。そのために、両国民の間に非常にギャップがある。特に日本の侵略といったものについて加害者と被害者の関係の中で非常にギャップがある。この点は、やはり今後なくしていかなければならない。そのための教育というものはどうあるべきかという問題について多少質問をしたいと思うのですけれども、たとえば指導要領の中で日中の問題を取り扱って、こういうふうにしてやれというふうな示しをされておるのは、「アジアの情勢と日華事変」と、こういったところにやや出ているわけですけれども、「中国をめぐる国際情勢や日華事変のあらましを理解させるとともに、この事変を中心とする日本と中国との関係考えさせる。」と、こういう表向きは一つの項目ではありますけれども、これが実際の指導の中になってくると、ほとんどこの問題についてはページ数がさかれていない。あるいはまた、「内容の取り扱い」というところを見てみますと、「第二次世界大戦後の歴史に関する事項の取り扱いに当たっては、特に公民的分野における指導との関連を考慮し、歴史的分野においては、世界の動きを背景に日本の歴史の大きな流れが大観できるように簡潔に取り扱うとともに、日本の歴史における重要な事項の前後関係を明らかにする必要がある。」と、ここぐらいしか出ていないのです。しかも、この取り扱いというのは、中国との関係その他についてはさあっといけ、あまり詳しく取り扱うな、こういった形で、戦争のわれわれの残したつめあと、こういった問題についてはあまりペースをさかないようにという指導が教科書検定等をめぐっても行なわれておるわけです。  したがいまして、教科書あたりを見てみますと、非常に簡単で、全般的な社会科の教育の中で占める中国との関係、こういったものについては、非常に簡潔に行なわれておる。まあ時間がありませんから読み上げませんけれども、たとえば「満州事変」、こういった問題について取り扱いをこうやっておるわけですね。「中国では国民党をひきいる蒋介石が、アメリカやイギリスのたすけをえて民族運動を背景に国内統一を進め、その勢力は華北から満州にまでおよんできた。それとともに中国人のあいだに、満州などの日本の権益を取りもどそうとする動きが目だってきた。とこういうふうな記述なんですよ。日本の侵略ということじゃなくて、むしろ日本がいわゆる権益というものを持っておった、それを侵そうとやったから戦争は起きていったんだというふうな記述のしかたをやっている。あるいはまた、昭和六年のいわゆる南満州鉄道爆破という問題ですが、これあたりは、中国のほうがやったのか日本のほうがやったのかわけはわからぬと本文には書きながら、わざわざ注を入れて「〔鉄道爆破事件〕のちになって関東軍の一部が実行したものであることがわかった」と。注でわかったならば、ここのところに書けばいい、本文に。そういうふうな記述は、しかもペースとしては、先ほども申しましたように、日中間の歴史的な関係とかそういったものを十分研究しようと書き出しながら、それが実際の教科書にあらわれておる部面においては非常に簡潔に取り扱われておるということ、これでは、現在の日本の教育を受けた者が、中国に対する侵略、それからむしろわれわれが反省しなきゃならぬという気持ちは起こってこないような気がする。国交の回復した今日、行き来がありましょうが、悪うございました、こうあやまって、それを基本にして国交回復された。しかし、依然として、この教科書で中国を理解しようとしても、理解はできませんよ。私はそう思います。  だから、端的に聞きますけれども中国との国交回復が行なわれたということから、学校教育という問題については、やはり指導要領等の、あるいは教科書で教えるというのじゃないんですけれども、まあ一応参考になる教科書、こういったもの等については、文部省としてはやはり考えなければならぬ点がたくさんあるのじゃないかというふうに私は考えますが、このとおりでけっこうだと、こう思われるのかどうか、はっきりしていただきたい。この機会にはっきりしておかないと、たいへんなことになると思います。
  157. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 基本的な方針につきましては、先ほど大臣が仰せられた方針で私ども検討したいと思います。ただ、御案内のとおり、いまの教育の内容が非常に過密ダイヤになっているというふうな点もございます。あるいは、歴史の分野では、現代史というのはあまりまだ定着していないという意味で、この問題の取り扱いについて問題があることは確かでございます。それからこの前の戦争で中華人民共和国にたいへん御迷惑をかけたということは事実でございますけれども、そのほかに、東南アジア諸国に対しましても非常に御迷惑をかけております。そういう点で、今後の取り扱いにつきましては、慎重に、大臣が申されました方向検討をしてまいりたいということでございますけれども、ただ、中華人民共和国につきましては、まだ最近の資料が十分でございません、統計その他の。そういう意味で、さらにそういう点が補われました場合には正確に取り扱ってまいれると思いますけれも、その点もなお問題として残っているということを御理解いただきたいと思います。
  158. 安永英雄

    ○安永英雄君 いま、別に変える必要もない、こうおっしゃったのですか、検討するとおっしゃったのですか。たとえば、私言いますが、中国を中心にした日本の侵略という問題については、それも含めて不十分なんです、いまの学校教育の中の取り扱いは。全般的にいって取り扱うペースがわずかしかない。これじゃとてもそういった点についての理解はできないし、アジア全体に対してのいわゆるつき合いといいますか、外交にとっても、教科書なり指導というのは不十分なんです。それも含めてということでもありましょうし、あるいはデータがない、こういった問題も、私は歴史的な分野と地理的な分野と当然二つが一番中心になってくると思います。地理的な分野についてはやはり資料がないというようなところも確かにあると思います。しかし、国交が開かれる、そうなってくると、いまこういった点の資料なりについては積極的に取りかかる。そういったことで、いままでの歴史的な分野やあるいは地理的な分野で足らなかった部分はたくさんあるので、これはやはり検討しながら私が申し上げているような方向で今後検討していくのかどうか、この点もう少しはっきり言ってください。
  159. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 先ほど大臣が申し上げましたような方向検討したいということを申し上げたわけでございます。
  160. 安永英雄

    ○安永英雄君 大臣が先ほどおっしゃったように、確かに私が申し上げたような点で検討をしなければならぬだろうというふうなことで、その検討を皆さん方がいまからやられるということでありますから、趣旨については十分わかりました。今後早急に検討に直ちに入らなければならぬと思います。現在の教育の中で、現在の日中問題、日中の関係、この問題は、これはいまのような状態の中で避けて通ることはできないのです。必ず教育現場の中でこれはもう明らかな形としてすっきりしたものを出さなければならぬわけです。三年生のときのあすこのところに歴史的分野がある、そのときにきたときに教えるくらいじゃ話にならない。また、いまの状態ではそこではとても理解できるようなペースではないし、時間のとり方ではないわけです。そういった点で、私は急ぐ必要がある、こういうふうに考えますので、この点はひとつそういった方向で明確に出していただきたいというふうに思います。  それから大臣、先ほど質問もあっていましたけれども指導要領全体についての再検討というのも、いわゆる知育偏重の教育を脱するということで出ている。私の言っているのは、むしろ中国問題とかあるいは東南アジア等に日本が迷惑をかけたということで、そういった侵略の実態を入れると教材が多くなるというふうな認識にとってもらっちゃ困るのです。そういうものじゃないのです。それとの関係と、私の言っている関係は、これは質の問題、方向の問題ですから、この点は、つけ加えられましたけれども、多いのに、私が、言ったのでますます教材が多くなって知育偏重の教育になるのではないかというふうに単純に考えてもらっちゃ困るので、そこはひとつ理解していただきたい。  それから時間もありませんから、もう一つ特殊教育の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  現在、いわゆる心身ともに障害を持っておられるいわゆる障害児というのが、大体どれくらいいるとつかんでいらっしゃいますか。あるいはまた、ついでに、その中でそういった教育をやる施設というものの中で教育を受けておるというのが何人ぐらいか、その割合はどうか。
  161. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 昭和四十六年度調査で恐縮でございますが、大体私どもがいろいろ障害を受けてそれに対応する特別な教育を受けるべきであるという推定をいたしておりますのが、約五十三万人ございます。そのうちで、適当なところに就学をしておるというものが十六万三千人でございまして、就学率は約三一%でございます。
  162. 安永英雄

    ○安永英雄君 今年のいま要求されておる予算というものの中で、こういったいわゆる養護学校等の施設についてどれだけ予算を要求されておりますか。
  163. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 四十八年度の予算要求につきましても、やはり特殊教育の振興ということは最重点事項としてお願いをしているわけでございますが、全額は約百二十三億五千三百万でございます。中身といたしましては、特殊学校施設の整備四十三億、それから公立学校教員給与費の引き上げを二分の一から三分の二にということで三十億、特殊教育就学奨励補助十七億、それから国立特殊教育総合研究所の整備九億、国立学校附属学校における特殊教育の充実一億、そういうふうな内容がおもなものでございますが、給与等につきましては、これは増加額を示しております。
  164. 安永英雄

    ○安永英雄君 それを入れまして大体どれくらいになりますか。学校なりこういう施設に収容すると、どれくらい施設は増しますか、いまの予算では。
  165. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) ただいま私ども施設で計画をいたしておりますのは、養護学校のうちで三種類ございますが、設置されておらない県に対しましてこれを全部来年度は設置しでいただくという計画でございます。本年度分を除きまして約三十一枚残っておりますけれども、今年の進捗状況によりまして不足の分はそれにさらに上乗せをして予算のお願いをするというふうな計画でございます。
  166. 安永英雄

    ○安永英雄君 それだけやりまして、先ほどのとあまり変わらない、三割強ですか、これぐらいが大体はいれるということになりますか。
  167. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) つけ加えるのを忘れましたけれども、そのほかに特殊学級千四百学級を計画的に推進するということでございまして、それでもさらに倍ぐらいの養護学校をつくりませんと全部の対象児童生徒が収容できないというふうな現状でございます。
  168. 安永英雄

    ○安永英雄君 もう一ぺん聞きますけれども、養護学校と養護学級というものを合わせてどれぐらい収容し得るか、何%ぐらいですか。
  169. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 先ほど四十六年度で三一%ということでございますから、四十七年度、四十八年度の計画を入れますと、正確な数字じゃございませんけれども、五〇%に近くはなりますけれども、まだ半分までいかないということであろうかと思います。
  170. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は五〇%近くいっていないと思います。これは私データをここに実は持ってこなかったのであれですが、これは調べればすぐにわかることなんです。いま私はそういった行き届いたいわゆる特殊教育をやるような場所というものは三〇%強というふうに見ております。そして、今度、三十一校ですか。この三十一校というのは、これでもってようやく養護学校がない県が解消できるという段階までしかいかないわけですね。そうして、昨年あたりの予算の出し方等を見ましても、去年も出して削除されている。大蔵省で削られちゃっておるんです。  そこで、大臣、私はもう時間がありませんから、大臣に直接あれですけれども、私が調べてみますと、とにかく障害児を持っておるということで、その結果、どの親も死まで考えている。そして、その結果が、結局、心身障害児を持っておるということで、そのことに関連して、心中、自殺、あるいは虐待死、こういったいわゆる死に至った件数は、データをとってみますというと、一九五二年から七一年まででわずかな期間でありますけれども、八日に一件、八百八十四件、こういう数字が出ているわけです。要するに、親が子供を殺している、あるいは親も一緒に心中する、こういう件数が八日に一件ぐらいはこの二十年間に行なわれている。私の福岡あたりでも、入学をいよいよあしたに控えて母親が障害児を殺した。このまま成長してもかえってこの子供が不幸である、こういうことであるわけですね。取り調べでいろいろ聞きますというとやっぱりそういった施設がない。一ぺんそこに入れたいと思ったけれども、そこをはねられた、だから普通の学校に入れなければならない、そうなると子供がかわいそうだということで殺してしまったという事例があるんです。こういうようなのが一ぱいにもう新聞に出てくるのですけれども、私は、大臣に、ひとつここは、予算要求もされておりますけれども、思い切って、それは局長やその衝に当たる者は七年計画とかなんとか言いますけれども大臣考えておられますように、この問題を官僚にまかしておったら、少しずつやって、ようやくいま県に養護学校がないようにようやくするというんですよ。そして、多少データが食い違っていますけれども、少なくとも六割から七割の障害児が教育という場からはねのけられておるわけです。これは、私は、早く急がなければ、テンポがおそいと思うですよ。テンポがおそいです。この点については、思い切った——私は提案しますけれども、少なくとも明年度予算の中で半分までいけるように、五〇%は収容できるように、そしてもう二、三年のうちにこういった五十三万の障害児というものを三年ぐらいの計画で一挙に解決するというぐらいな新しい考え方を予算の中に出していただいて実現してもらいたい。もうここでいろいろなことは説明しません。私は心情的に大臣に訴えて云々というようなことはしません。えてしてこの問題については、心情的に訴えますから、かわいそうにかわいそうにというような形でいつも歴代の大臣は質問すると努力しますと、こう言って、心情的に陳情団やら来ますと、何とかしますと言うけれども、実際の内容は一つも述べていないのですよ。私は稻葉さんならできるというふうに考えます。予算の要求はいまのところ三十何校しかしていないけれども、思い切ってやられたらどうか、基本的にひとつ大臣のお考えをお聞きしたいと思う。それを具体的に取り組んでもらいたい。それはもう行政の失態ですよ。いろいろな新しい構想も出されますけれども、あるいはまた、田中総理大臣も「日本列島改造論」なんというようなあれを出しますけれども、この問題をほっておいて何が一体日本列島改造ですか。この問題はまず一番初めに片づけなければならない問題だと思います。そういった点で大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  171. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) ちょっと大臣がお話しになります前に実情を御説明申し上げますが、私どもとしましては、いまのスピードがこれは最大限だろうと思います。私どもとしましても、先生のおっしゃるように、一挙にやってしまいたいという気持ちは重々持っておりますけれども、たとえば東京周辺でも、養護学校五十校ぐらいつくらないとこれから収容できないということでございまして、これは土地の問題から考えましても、現実問題として私はおそらくそう簡単にはいかない、かなりの時間がかかるというふうな感じがするわけでございます。また、親御さんはたいへんお気の毒な状態にあると思いますけれども、まだ教育の方法が十分開発されていない。最近も、養護学校等の先生とお話をしたのですけれども、もう学校で実際におあずかりしても扱い切れないというふうな、教育方法の未開発の問題がございます。さらに、学校だけつくるのじゃなくて、厚生省の施設をあわせてつくらなければどうにもならないお子さん方が残っているわけでございます。こういう問題をあわせて考えますと、私は、これは事務当局としてお答えするわけでございますけれども、いまのスピードが最大限であろう、そういうふうな感じを持っているわけでございます。
  172. 安永英雄

    ○安永英雄君 それが、今日までこの特殊教育の問題についての進まない発想なんです。毎年そうなんです。ここのところは踏み切らなきゃだめですよ。他の予算との関係、バランス、そんなことを考えていたら、いつまでもできませんよ。ここでばあんとやってやろうと思ったら、できることなんです。それは。そうして、いま話を聞きますと、教育の場でどう教育したらいいかなんということに迷っているというような話を聞きますけれども、そんな問題じゃないですよ。それ以前の問題です。  私はこの前長崎へ行きましたが、これは文教で視察に行ったのです。とにかく、両親は一緒に働きに出ている。そして体の不自由な子供の枕元に朝握り飯一つ置てい出て行って、一日寝たきりになっておる。だれもそこにはおらない。ネズミと遊んでおるというのです。ネズミと一緒に同じ握り飯を仲よく食って遊んでおるというのです。それしかないです、話相手は、そういったところからまず施設をつくってそこに入れるということ、それは厚生省の問題だといわれるけれども文部省の問題でもあるのです。私はあると思う。文部省の問題になりますよ。養護学校なんというのはとにかく教育という関係から私のところの管轄という感覚は、この問題についてはもう厚生省と文部省と一体にならなければだめですよ。あなたがいま言わんとするところはそこだろうと思う。これは寝たきりと、ここは厚生省の問題です。しかし、教育の面からいったら、教育から捨て去られた人間なんです。それを基本的にどうするかという問題は、これは文部省の管轄ですよ。そういったところを思い切らなきゃ、なわ張りを出してみたり、予算を総合的にといってここをやったらここを削られるとか、そういった考えでは進みませんよ。私はそれであえてこれは大臣の問題だと思います。あなたたちはそういう考えしかない。毎日毎日やってこういうことをやったところで、いまのテンポ以外には考えられません。考えられませんというのは、これはものの考え方ですよ。一年でやっていこうということになったらなりますよ。やろうと思えばやれますよ。まず私はやるべきだと思う。大臣のひとつ決意を聞きたい。
  173. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) わが国が非常な経済成長をしてこんなになりましたけれども、いま御指摘になったような点につきましてはまことに野蛮国だと思います。文明国の姿ではこれは断じてない、こう思います。そして、どう教育するかの方法がまだ見当たらないといいますけれども、何も読み書きそろばんを普通に教えるばかりが教育じゃありませんから、ネズミとどういうふうに遊べばいいのかということを教えるのも非常な愛情ある教育だと思います。やりようは幾らもあると思います。したがって、厚生省の問題、文部省の問題、いろいろございますが、障害児の教育に携われておる方々には、たいへんりっぱな愛情のある方々、使命感に燃えておられるような方々も多数見受けられまして、そういう方面の人材養成も画期的にやり、施設も画期的に増大いたしまして、安永先生の御要望にどれだけ応じられるか、やってみます、一生懸命にやります。まことに具体的でありませんで、悲劇をそのまま見過ごしてきたようで、はなはだざんきにたえませんし、申しわけない。こんなことでは申しわけないという気持ちは一ぱいでありますので、申し開きができるような施策をやってみたいと思っております。
  174. 加藤進

    ○加藤進君 新内閣が誕生してからもうかれこれ三カ月を経過するわけですが、その間、国会は依然として今日開かれておりません。したがって、政府国会を通じての正式な見解表明をわれわれは一度も聞いたことはないわけでございますけれども、しかし、国会の外では、政府の重大責任を持つべき大臣の皆さんが、それぞれ発言をしておられるわけであります。特に去る九月の二十七日に滋賀県で行なわれました木村国家公安委員長が公党を誹謗するような発言がございました。これはきわめて内容が重大でございますので、今日わが党もこれに器重な抗議をしております。また、国会においてもこの点は責任を追及する決意でございます。  ところが、わが稻葉文部大臣も、その間数々の発言をしておられるわけでございますが、とりわけ九月の二十四日の日の松山での記者会見で、次のような発言をされたと新聞は報道しています。日教組が総評に加盟しているのは好ましくない。日教組は政治的中立の立場をとり、総評から脱退すべきである。こう言っておられるようでありますけれども、この発言は事実かどうか。事実とすれば、私は事柄はきわめて重大だと思います。政府の閣僚であるべき稻葉文部大臣が労働組合の組織問題にまで介入するような発言をする、これは国民のだれしもが侵すことのできない基本的権利として認められている憲法第二十一条の結社の自由をどう考えておられるのか。また、わが国の政府もその採択に参加したILO・ユネスコの教師の地位に関する勧告、この勧告の内容にきわめて重大な関係を持っておる発言でございますが、この点についてもどう考えられるのか。私は、まず、その発言が事実であったかどうか、これをいまどう考えておられるか、所信をお聞きしたいと思います。
  175. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) その発言は、まさしく事実であります。そして、いまもそう考えております。
  176. 加藤進

    ○加藤進君 そのような発言が事実であり、いまそのように考えておられるとすると、憲法第二十一条の結社の自由と、先ほど申しましたようなILO・ユネスコの教師の地位に関する勧告との関係はどうなるのでしょうか。
  177. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 結社の自由とは関係ございません。
  178. 加藤進

    ○加藤進君 私があえてこの問題を出すのは、結社の自由と関係がないなどというような大臣お答えをいただくつもりではなかったわけであります。そもそも、労働組合がそれぞれ組織を持ち、そしてそれぞれ自分たちの意思に従って特定の労働組合に加盟する等々、これを認めておるのがまさに結社の自由じゃありませんか。この結社の自由の前提があればこそ、こういうことが権利として認められているわけじゃないのか。この点の認識はいかがでしょう。
  179. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 加藤先生は、わが国の法制について一つ見落としておられることがあるのではないかと愚考いたします。それは、本年一月一日から施行されました義務教育学校等の教育職員給与等に関する特別措置法によって、教員は、学問的な意味における、また労働法上の意味における労働者ではなぐなっておる。したがって、労働組合ということばをお使いになるのは教職員団体については今日当を失するのではないかということが一つ。もう一つは、結社の自由があるから、教職員が団体をおつくりになって、日本教職員組合とか、日本教師会であるとか、日本教師連合会であるとか、これは御自由であるべきであります。これを侵すつもりは毛頭ございません。それがいけないと言っているのではありません。ただ、教育は政治的に中立でなけりゃならぬということが常識である。どなたもそうおっしゃいますし、共産党もそう言っておられるわけですから、そして政党支持の自由ということを主張されておられるのでありますから、特定の政治的色彩のある団体に、中立なるべき教育の職に携わる教員の団体が総評に加盟しておられることは、国民が非常に心配するのではないか。むしろ、これを離脱されて、自分たちはティーチャーズ・ユニオンとして独自な中正な立場を歩むという姿勢を示されていただければ、国民は非常に喜んで、日本教職員組合のいろいろな国民に対する要望政府に対する要望が非常に通りやすくなって、教員全体の福祉のためにその団体の発展のためにきわめて望ましいのではないか、そうしていただけないもんかなあという私の考えでありますから、そうすべき性質のものでもあり、こうしていただければありがたいもんだなあという私の希望を端的に表明したものでございまして、どうかひとつその点は私の意のあるところを寛容な気持ちでもって加藤さんは了とせられたいと思います。
  180. 加藤進

    ○加藤進君 日本の教育の最高の責任者であり、同時に、国務大臣としては、憲法の精神を尊重し、かつこれを擁護しなくてはならぬ、こういう立場に立っておられる文部大臣でありますが、その文部大臣がいまのような所見を持っておられるのでは、私は日本の文教行政の担当者としては不適格ではないかという感じを強く持たざるを得ないわけであります。そこで私は、文部大臣がいままで長期にわたった自民党の憲法調査会におけるいわゆる稻葉私案をはじめとするさまざまな発言をしておられるわけでございますけれども、その中で、憲法の第九条の改正の問題、日本は戦力を持つということと、国連の要請と国会の議決があれば海外派兵もあり得るというようなような趣旨の発言があったと思います。また、今日憲法が定めておる国民の権利についても、これに制限を加えるというような発言も出てきておるわけであります。一体、これでは、現在の日本の憲法について根本的に文部大臣がどのような認識を持っておられるのか、真に憲法の趣旨精神に基づいて今後とも文教行政を担当されるのかどうか、この点をとりあえず確かめておきたいと思います。
  181. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 端的に申しまして、私は憲法改正論者であります。これは正直に改正論者なんですから。ただ、どう改正するかについては衆知を集めなければなりませんから、私も憲法調査会長として衆知を集めた結果、改正案大綱なるものを発表してございます。衆知を集めない場合の私の個人的な発言についてそのまま大綱の中に取り入れているわけではありません。  もう一つ、現行憲法を尊重するということと、将来立法論として改正するならばこういう内容のものであってほしいということを申しますのは、矛盾することではありません。現行の憲法が存在するうちは、国務大臣として現行憲法を尊重してこれに従って文教行政をやることは、当然すぎるほど当然である。これに違反した行為をやる、そういう大それた考えは毛頭ありません。しかも、平和主義であるとか、民主主義であるとか、人権尊重主義であるとか、そういう現行憲法の美点とするところ、そういう点については毛頭これを動かすような考えはありません。むしろこれを具体的に実現の実行性をあらしめられるような改正にすべきものだという考えでございまして、現在、国民の間に、民主主義、平和主義、人権尊重主義等、また、議会制民主主義は不完全な形でございますけれども、将来ピッチャー交代だけでなく、チームの交代も可能なそういうほんとうの意味の議会制民主主義をどうやって、いまの憲法のままでは何だかできないような気がするものですから、そういう道も探り求めなければならないなあという改正意見は持っておりますが、根本的な主義については、国民の間に、主義主張については、基本主張については、定着しているものと私も判断しております。大体そういうことです。
  182. 加藤進

    ○加藤進君 これは稻葉文部大臣の多年の考え方であるということでございますけれども、私が危惧するのは、そのような考えを持って日本の民主的な文化国家を建設するその力にならなくてはならぬ教育を担当されるという立場、その教育を担当される文部大臣が当然のことながら国務大臣として憲法を尊重しなくてはならぬということ、同時に、憲法では、尊重するばかりか、擁護する義務を負うていると明言してあります。したがって、その意味から見て、先ほど申し上げましたような憲法の規定に対して、結社の自由に触れるような日教組の組織問題についてこのような発言を公にされるということについては、これは重大な問題だと、このように私は重ねて警告しておきたいと思います。  それからもう一つ文部大臣のさらにもう一つ発言にこういうのがございます。これは教育に直接関係してくる問題でありますけれども、いままでは知育偏重の詰め込み教育だった。今後は、体育、徳育を重視する、こう言っておられるわけでございますけれども、今日まで知育偏重の詰め込みだったなどと大臣に就任されてからこれを反省されるということは、きわめておかしいことだと思います。と申しますのは、大臣は、文部政務次官もやられたことがあるし、自民党の文教政策では中心の一人だと私は確信をしております。こういうことを言われる、批判されるということは、これは態度としてはきわめて無責任だと思います。私は、こういう無責任な態度での発言は戒めなくてはならぬと思います。同時に、これは具体的には一本どういうことをされるというお考えなのか、その点をお聞きしたいと思います。
  183. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) これは大臣になって急に知育偏重の弊を改るめなどというようなことをことさらに申したのではありませんで、前々から、私は、あまり授業時間ばかり多くて、先生と児童生徒がコミュニケートする時間が少ないのではないか、一緒に屋体のぞうきんがけをしたりする間にいろいろな触れ合いが起こったりすることも教育上非常に有意義なことではないかというようなことを考えまして、どうも、やってみるというと、現場の先生、それから私どもの子供の習ったことの告白だとか、そういうものを聞いて、指導要領というものはえらい盛りだくさんのものだなあ。教育課程審議会においてはなるべく制限せいという意見も出るのでございますけれども、実際につくった指導要領に無理がある。あるいは誤解もある点もあるそうでございますが、それじゃ直したらいいじゃないか、弾力的な運用について通達でも出したらどうか。その弾力的な運用の具体策がなかなかむずかしいというので、むずかしいむずかしいと言っていればいつまでたっても改まらないから、なるべく早くつくってくれと言ったら、九月一ぱいまで、あしたつくってくるというので、私も喜んでおります。
  184. 加藤進

    ○加藤進君 知育偏重とか、あるいは体育徳育を重視すると、この発言そのものについて、これが個人的な見解であるならば、これは決して私たちはとがめもいたしません。しかし、文部大臣として事教育行政に責任を持つというあなたの立場から言うなら、軽々しくこのようなことを発言されては困るというのです。本来、このような教育の内容そのものにかかわる問題については、十分に慎重な検討を経た上での結論として出されるのが私は当然のあなたの仕事ではないかと思います。御承知のように、教育基本法の第十条にはどういうことを書いてあるか。教育は不当な支配を許してはならぬと。したがって、大臣がかわった、それから政府の政策が急に変わったということから、教育内容をそのことに従って変えるなどというようなこと、つまり、政府行政当局が教育内容に直接介入するようなことは戒めている。このことを私たちは真剣に見なくてはならぬと思うのです。したがって、これは大臣の私見としての構想その他はけっこうでございます。これを具体的な行政に移していくためには、十分慎重な配慮検討が必要だと、このことを私はまず注意し、申し上げたいと思います。  同時に、いま私たちの側から見ましても、たとえば受験地獄の状態、子供が学業についていけないような問題、さまざまな学業上の問題がありますけれども、これは知育偏重だから起こっておるというよりも、むしろ日々行なわれてきている学校教育そのもののやり方に問題があるのではないか。私は、その点で、あなたが指導要領の問題に思いをいたされたという点は、一歩前進だと思います。この指導要領に基づく詰め込みの教育にまさに今日起こっているさまざまな問題の教育上の根源がある、こういうふうに私は見なくてはならぬと思います。私は、具体的に事実を申し上げます。ここにこういうパンフレットが出ておりますけれども、これは中津川市の教育研究所の昨年九月に出したパンフレットであります。これはいまの学校教育の現状がどうなっているかということについての反省をしているわけでありますが、表題は「勉強のわからない子がふえている」ということであります。これによりますと、小学校の五、六年の子供の約五七%は、学校での勉強全体が「わからない」と答えています。半分以上がわからないと答えています。この数字は決してこれだけの問題だけではなしに、昭和四十五年に発表された全国教育研究所連盟の調査においても、ほぼこれは一致しております。私はこの小中学校半数以上の子供が日々の授業にはついていけないで、置いてきぼりにされておるという事柄について、これはきわめて重大な問題だと、こう思いますけれども、このような事実について、大臣、どうお考えになるでしょうか。
  185. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) そういうことはきわめて重大なことでございますので、その原因の一つ指導要領の盛りだくさん性があるとか、こういうことになれば、単に個人的な意思の表明でなく、責任者たる文部大臣として直していかなければならぬという発言をすることが適当なんです。黙っておっちゃいつまでたっても直らない。黙っておっちゃ責任を負えない。こういう私の心配から、大臣として指導要領を改定したいということを公にした次第でございますので、どうかその点は……。
  186. 加藤進

    ○加藤進君 そうすると、この指導要領のどこが正しくないのか、どこを変えなくてはならぬか、いまどういうお考えでございましょうか。
  187. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) それについては、私は、文盲ですから、二十年も研究しておった責任の担当局長に、ただ盛りだくさんだということはわかるけれども、たくさんな余分な点はここだ、これは残しておかなければならぬという具体案はひとつ君がつくってくれと。よし、つくりましょう、こういうことで、いまつくって、あしたはわしのところに持ってくると言いますから……。
  188. 加藤進

    ○加藤進君 大臣ね、指導要領が盛りだくさんだ、これは私もそのとおりだと思います。しかし、盛りだくさんでも、もし現場の先生がその中の一番大事な問題、一番重要な点これを選んで、そうして子供にしっかり教えるという自由があるなら、これは指導要領が幾ら盛りだくさんでもけっこうなんです。ところが、そこに法的拘束力があるということを強調されて、これを全部やれというふうに押しつけられるところに問題があるのじゃないですか。この点は、大臣、どうお考えになりますか。
  189. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 学校教育は公教育でありますから、拘束性がなけりゃ、全部が全部現場の教員個々人が六十万人別々なことをやられたのでは、公教育の普遍性という点に障害を及ぼしますから、それで、あまり盛りだくさんな点はあなたもお認めになっていますから、その盛りだくさの点、余分な点、これは現場に拘束性を持たせない判断でおやりになってけっこうでしょうと、ここからここまでは最低限のものとして拘束性を持たせますということは私も考えたんですね。そして、その検討を命じて、九月一ぱいまでつくるという約束どおり、あした持ってくるということで、どんなものを持ってきなさるか、これによって勉強したい、こう考えておるわけであります。
  190. 加藤進

    ○加藤進君 もう少し教育の現場の問題を認識していただきたいから、次のようなことを申し上げます。  これも、やはりこのパンフレットに出ておりますけれども、いま中学一年生の習う学習の内容と同じ程度のものを小学校六年生で、しかも中学校よりもずっと少ないページと時間で学ばさせろ、教えろと、こういうことです。これが学習指導要領です。たとえば比例という問題があります。中学一年生は教科書を二十五ページ使って学習するんです。これは比例を勉強するためには二十五ページぐらいは必要なんです。これはもう教科の内容によるんですから。小学校六年生は、ずっと大きな字で、これがどういうふうにあらわされているかというと、十八ページです。大きな字で十八ページ、ほとんど半分です。半分の内容で、しかもこれを中学一年生並みの内容として習得させろと、こういうことが要求されるんです。そこで、どういう結果が起こりますかというと、数学の勉強はほんとうにおもしろくない。わかりますか、数学の勉強がと問うた質問に対して、全体の中で四八%は教科書の半分がわからないと答えています。数学の教科書の半分がわからなくて、どうしてついていけますか。どうして進学できますか。こういうことが現在の学習指導要領によって、先生に全部教えろとして押しつけられているんです。ここに根本問題があるということを大臣はよく知ってもらわなくちゃならぬと思うのです。その点、初中局長、どう思いますか。
  191. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 最近の国際比較によりますと、日本の初等中等教育では、数学及び理科は世界で最高のクラスでございます。でございますから、こういう高い水準を維持してまいりますと、ただいま先生が御指摘になったような欠陥も出てまいるわけでございます。まあ、そういう意味大臣からも御指示を受けまして、そういうふうな中の脱落というものをどうしたら防げるかということもあわせて考えてまいりたいというふうに考えております。
  192. 加藤進

    ○加藤進君 そこで、私は、教育そのものの本質ということに触れなくてはならぬと思いますけれども教育基本法の精神にもし沿うて教育が行なわれるとするなら、これは平和と民主主義の国にふさわしい未来の主権者をつくることですね。日本の国民の代表をつくることです。国民自身をつくることです。そのために何をやらなくちゃならぬかというと、どうしても小国民として必要な、しかも将来国の主権者となり得るような基礎的な知識、基礎的な学力をきちっきちっと教えていくということが組まれなければ、これはどうして成長していきますか。そうでしょう。また、情操の面についてもそうです。せっかちにあせってはなりません。自主的な判断力が必要です、小国民として。そうして健全な体力も必要です。これを満たしていくというところにまさに義務教育があるのじゃありませんか。義務としての教育がある。この教育の結果がどうあらわれているかというと、今日、半数以上の生徒がついていけないという現状があるのですから、抜本的に改めるということを決意しなければこの教育の現状は改まらないし、また、これをほうっておいたなら日本の将来はどうなりますか。憂うべきことになってくる。この点を大臣が十分に注意して、学習指導要領というようなものに法的な拘束力で全部が全部——これは全部が全部ですよ、全部をやれというような押しつけを現場の教師に行なうことを改めなくてはならない、このことを私は強調するわけです。
  193. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) だから、私は、責任の地位に立った者が、黙っておっちゃいかぬと思って、個人的な思想だとか見解だとかしまっておかないで、そういう改め方をしてもらいたいという発言をしたのでございますから、とんでもないことだ、大臣としては不穏当だなどとおっしゃらないで、みなが考えていることをよく言ってくれたなといって、ほめてもらいたいと私は思います。(笑声)
  194. 加藤進

    ○加藤進君 それで、私も先ほど一部ほめたんです。(笑声)学習指導要領に注意を払われたということはけっこうだと。しかし、事務当局の出してくれる案をあした待っている、あした受け取るんだからというようなことではなしに、鋭い眼光によって、学習指導要領に基づく改定というものが一体どういう案として出されるのかこれで真に次代を担うべき子供たち教育できるのか、こういう観点でしっかり私はやってもらいたい、このことをまずお願いしておきます。
  195. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) はい。
  196. 加藤進

    ○加藤進君 そこで、続いてお尋ねしたいのは、いわゆる評価の問題でございます。これは学習指導要領にもちゃんとその評価をどういうふうに行なうかという手続や内容まで明記されておりますね。この問題について、実は、一部の学校やしかも広範な父兄の間でも大きな問題になっています。あるところでは3だけをつけたというようなことが現実の問題になっていることは、御存じのとおりです。私たちは、すべての生徒に全部5をつけるとか、あるいは3をつけてよろしいなぞというようなこういう一律の評価は絶対にすべきではないと、こう考えています。しかし、この評価が一体どうして問題になるのかということで、私は結論から言うなら、文部省が昨年二月二十七日付で出された「小学校児童指導要録および中学校生徒指導要録の改訂について」という通知です。この通知が、先ほど申し上げましたような本来の義務教育を進めるにあたって、これにふさわしくない、障害になっているということを私は結論的に申し上げたいと思います。  そこで、具体的に質問申し上げますけれども、この小学校児童指導要録によれば、評定というのは五段階の評価になっておりますけれども、これはなぜ五段階にしなくてはならぬのか、その理由にどこにあるのか、これをお聞したいと思います。
  197. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 五段階でも十段階でも百段階でもよろしいわけでございますけれども、そういうのを最も簡単に要約しましたのが五段階でございます。これはまあ数学的にと申しますか、そういう評価を、百点満点のもございましょうし、十点満点もございましょうが、五段階というのが一番簡明なしかも公正な評価の方法であるということで五段階を採用しているわけでございます。
  198. 加藤進

    ○加藤進君 いま、ふと、初中局長は、その段階は何も五段階に限らない、十段階でも百段階でもいいとおっしゃいましたけれども、ほんとうに百段階でもやっていいですか。
  199. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 指導要録は五段階でやることになっておりますから、五段階でやっていただくことになっております。
  200. 加藤進

    ○加藤進君 その指導要録というのは、これを守れということが義務づけられておるのじゃないでしょうか、その点はどうですか。
  201. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおりでございますが、指導要録といわゆる通信簿とは、これは別でございます。
  202. 加藤進

    ○加藤進君 私は通信簿などということを申し上げているわけではございません。これはかつて学籍簿と言われ、今日指導要録として二十年間も保存されるという重要な文書、そしてこれが就職の場合でも入学試験の内申書の原簿にもなるという重要な文書のことについて言っているわけで、その文書について、五段階でやらなくてはならぬということが文部省の通知ではっきり出されておるのではないかと聞くんですけれども、その点、どうですか。
  203. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおりでございます。
  204. 加藤進

    ○加藤進君 そうすると、十段階や百段階でやっちゃいかぬということですね。
  205. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) さっき申し上げましたのは、それと同じだという意味で申し上げたわけで、実際にやる場合には五段階でやるべきだと、こういうことでございます。
  206. 加藤進

    ○加藤進君 まことにあいまいな御返事でございますけれども、結局、五段階でやるべしということでございますが、そこで、この五段階の中のというのは一体どういう意味なんでしょうか。まっ先に3が出てくるわけですけれども、このはどういう意味を持っているのでしょうか。
  207. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 平均的という意味でございます。
  208. 加藤進

    ○加藤進君 その平均的というのは、これはある学年に例をとってみると、その学年の中の生徒のいわば平均的な成績を持ったということを意味するのですか。
  209. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 成績には一つの曲線がございまして、5から1までの間に評価をすれば、3という中位のものが一番多いわけでございます。その平均的なところが3でございます。
  210. 加藤進

    ○加藤進君 ですから、学級のうちの大体中くらいの成績のもの、これを3と、こうつけるわけですね。そうですね。
  211. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおりでございます。
  212. 加藤進

    ○加藤進君 そうすると、学級生徒の間に、ともかくその学習内容は別として、この生徒たちに、中くらいのものは3にする、そして5をつける、1をつける、そのまん中に4と2をつける、こういういわば生徒の順位づけ、いわば相対評価ということになりますね。
  213. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのとおりでございます。
  214. 加藤進

    ○加藤進君 はたして、生徒に順位をつける、これでほんとうの教育効果が達成できたかどうかの評定になるのでしょうか。私はこれに重大な疑問を持ちます。第一、教育というものが、そもそも憲法や教育基本法にのっとって未来の国民として必要な基礎的な知識を身につけさせなくてはならぬ、これが大前提だと思います。基礎的な知識を身につけるためにわれわれは教育をやり、そうしてその教育に基づく評定をやるわけでしょう。ところが、いま言われた相対評価ですと、その教育の水準や内容がどこまで達しておるかどうかではなしに、その学級の中の生徒のうちの中くらいかげんのものを3として、そして1から5までの順位をつけるということになりますと、先ほどの中津川の先生たちの出されましたような、小学校六年生の数学はほとんど半分以上はついていけぬ。ついていけぬ生徒というのは、一体、どういうことになりますか、どういう順位になりますか。
  215. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そのついていけないということについても程度があるということでございます。
  216. 加藤進

    ○加藤進君 そういう程度をお互いにつけて、それに5から1までの順位をつければそれで評定になると、そういうことでしょう。もし極端な例から言うなら、全部が全部これはすばらしい成績だったということになった場合においても、指導要録によると、これは3をつけ、5をつけ、1をつけ、4をつけ、2をつけなくてはならぬ。しかも、そのパーセンテージについては、多少弥力的なことは認めるとは言うけれども、実際上はこの1から5までの中に全部を組み込む、こういうことになるでしょう。よくできた生徒もそういう形で順位がつけられる。一体、私のところは音楽については非常に能力があると思っているけれども、見てみると3だ。また、もう一つ極端に言うなら、全然学科についていけない生徒ばっかりだ、ほとんでできないといった生徒に対してその相対評価はどういうふうににつけるかというと、これも1から5までつけるのじゃないですか。また、学校学校学級学級との間に非常な格差がある。これは当然です。これは現にあります。にもかかわらず、つけた数字は、1から5までです。これで、一体、義務教育が真にどの程度子供たちのものになって、どの程度子供たちに基礎学力がついたのかどうか、これは先生がはかりようもない。もう5から1までの順位をつければいい。したがって、こういうことに反発する一部の先生方は何をつけるか、全部3をつける。これは、私は、文部省のこういう相対的評価の形での順位づけ、学級内における順位づけ、ここに一番根本問題があるのであって、教育はそんなふうにはかるべきではない。教育にはもちろん学科についても学科目標がある。ありますね、これは。また、学年の目標もあります。この目標に向かって先生たち教育しておるわけです。数少ない先生たちが苦労して、重労働をして、教育しています。教育した結果、子供たちがどの程度の水準までたどりついてきたか、こういうことがはかられなくてはならぬ。中ぐらい、普通の学力ということになれば、大体目標に向かってほとんどの力を持ってきたというのが普通だということであって、決してそのまん中どころであって五割程度しかできないものが3ではあり得ないと思う。普通というなら、義務教育ですから、これは大体のところ目標に向かって十分の学力を身につけたものだ、こうはかられなくてはならぬ。ところが、これではできぬじゃないですか、このはかり方では。これはもう文部当局も十分にこの矛盾は御存じだと思います、不合理さは。全然直されておらない。このような状態をほうっておくなら、日本の義務教育は根底からくずれていく、くずれつつある。この現状が先ほどいった中津川の学校の牛生の訴えになってきておる、こういうふうに私は見なくてはならぬと思いますけれども、その点文部大臣、所見はいかがでしょうか。
  217. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 人間の評価というのはたいへんむずかしいことでございますが、学力の評価というものも非常にむずかしいものでございます。いろいろな評価がございますうちでどれが一番合理的か、あるいはたとえば入学試験に内申書を使うという場合にどういう評価が全部の学校が使う場合に一番使いやすいか、そういう問題を考えまして現在の制度ができているわけでございまして、決して先生御指摘のように、これがもう絶対に合理的であやまちがないというものではございません。これは人間が考えることでございますから、もっといいものがございましたら、そういうものを開発していくという努力は必要でございます。現在のところ、こういう方法が最も一般的に申しまして合理的である、そういうことでございます。
  218. 加藤進

    ○加藤進君 その考えが続く限り、義務教育を受けておるはずの生徒が塾通いをしなくてはならぬ、こういう現状が起こっています。それからまた、よくできる生徒が病気にならぬかな、転校しないかなと願っているような子供たちができるのです。こういう非人間的な状態が学級の中に起こっていることは、皆さん御承知のとおりです。そのもとは何ですか。幾らおれが一生懸命勉強したって、あれがおるから5はつけられない、こういう非人間的な評価で事教育の内容をはかるなどということを私はおやめなさいというのです。これは、いまの方法が最善だとおっしゃいますけれども検討すべき問題は幾らでもあります。いま、先生たち、あるいは専門家、父母の方たちは、通信簿という問題と真剣に取り組んでいます。先ほど通信簿といまの指導要録とは違うとおっしゃいました。その原簿はどうなんですか。通信簿よりも原簿が問題なんです。この原簿についても、こういう父母や専門家や、そして真剣に子供たちのことを考えられる方たちの意向に十分に耳を傾けて、そしてこのような評価をもっと正しく変更していかなくてはならない、私はそう思います。したがって、このような五段階の相対的な評価——人間の格づけですよ、これは。五つの類別をすればそれでいい、こういうことで学力をはかるなどということをやめなければ、文部大臣、あなたのおっしゃったような真の教育はできませんよ。この点までしっかりと反省していただかないと、今日の日本の教育はきわめて危険な状態になっておる。中はどのような状態か、ついていけぬ子供たちが半分、こういう状態を私たちは絶対に許してはならぬ、こういう考えを持っておりますけれども、最後に、もう一度、文部大臣、その点についての所見をお聞きしたい。
  219. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) なかなかむずかしい問題でありますけれどもお答え申し上げなければ相ならぬですから申し上げます。  加藤委員のおっしゃる、ついていけないと、その原因はあんまり多くのことに拘束性がぴしっといってついていけないということ、1から5まで差をつけた点数をつけることがいけないということとは、完全には合致しない問題じゃないでし二うかね。指導要領の盛りだくさん性の拘束性については、弾力的な運用で是正していく。その是正していった暁、なおやっぱり人間の特殊な科目についての能力については、体操はできるけれども数学はできなかったり、あるいは音楽はだめだったり、いろいろありますから、それは5をつけたからあらゆる点ですぐれているとも言えないし、こっちは3だけれどもこっちのほうは5も4もあると、そういうふうなことで、それはやっぱりその点は指導要領の全体的束束性の盛りだくさん性という点の改め方をすれば、その範囲内におけるやっぱり能力差というものについては、先生が非常に骨は折れますけれども、非常にお骨折りになりますけれども、やっぱり昔も甲乙丙丁戊とありましたが、ちょうど五段階ですね、そういう……
  220. 加藤進

    ○加藤進君 甲上がありましたし、優がありましたよ。
  221. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) プラスアルファですよ。それはありますが、大体において五段階というようなことでやっておりましたので、それはつけられた者にとっては不満はありますし、おれより数学ができないくせに5であったり、おれは3であったりということはありますけれども、今度5をとってみせるといった奮発力になりますし、いろいろいいこともございますから、一がいに5から1までつけることを全廃せよというふうなことをお考えになっているのだとすれば、そうはまいりませんな。
  222. 加藤進

    ○加藤進君 これは、まだ文部大臣はよく五段階相対評価なるものの意味をつかんでおられないことだと思う。というのは、この指導要録によりますと、五段階評価でとにかく3のクラスのパーセンテージはこれだけ、5のパーセンテージ、1のパーセンテージはこれだけ、4、2のパーセンテージはこれだけ、ほとんど規格と比率がきめられている。そのワクの中へ生徒をはめ込むのです。はめ込んでおいて、たとえば3というところへ入った生徒が、はたして学力としてどれだけの力を身につけておるかわからねじゃないですか。全然ついていけないような生徒だって、数の上から言うと3がつきますよ。場合によったら5がつくのです。そして内申書が出てくるのです。これをどうしますか。
  223. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) それはあかんな。(笑声)
  224. 加藤進

    ○加藤進君 こういう不合理なものであるという点を認識して、こういう機械的なものを強制的に持ち込んでこれでやれというようなことは教育にはならぬ、この点を私は重ねて強調したい。どうですか。そうでしょう。
  225. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) いま先生が御指摘になった点については、そのように思いますね、私も。
  226. 加藤進

    ○加藤進君 その点でひとつ五段階の相対評価については、指導要領についての検討もさりながら、同時にしっかりやってもらいたい。これをやられたら、稻葉文部大臣、日本の教育はほんとうによくなってきますよ。
  227. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) おだてましてもだめですよ。(笑声)
  228. 加藤進

    ○加藤進君 そんなことでなくて、ぜひ手がけてほしいとこういう要望をもって私は言っておるわけですから、どうぞひとつよろしく……。  最後に、もう時間がございませんから、一言だけ申し上げますと、指導要領の中で教科目標、学年目標がきめられておりますね。ところが、実際現場の先生たちが痛感しておられるように、その目標がきわめてあいまいもことしていてつかみどころがない目標になっておる。つかみどころがないような目標がつくっておいて、これに到達するのに一体どこまでいっておるのかというようなことをはかることは、これはとうてい不可能です。そのこともまた、子供たちの学力が基礎的にしっかり身についてそして一歩一歩とにかく進んでいくということをはばんでおる一つの原因になっています。この点につきましては、たとえば音楽の教育の場合でも、専門の先生がございますけれども、ドレミファがしっかり音符で読めるという、これはもう基礎的でどうしてもやらなくちゃならぬ問題です。こういうことを抜きにして、いい声をしているなというようなことでこういう五段階の順位がつけられるというようなことがえて起こっておるのです。したがって、私は、その意味におきましても、学習指導要領の中のこういう教科のあるいは学年の目標、この目標についても、もっと具体的でそして科学的な目標を明確にして、これにどれだけ到達できるかという点で十分に評定が客観的にできる、そうして子供が学力を身につけていく、身につけ得ない子供たちについては、よしおれもそうやって一つ一つ積んでそしてその目標に達しようという励みを与えると、こういう評定をどうしても取り入れなくちゃならぬ。このことを最後に希望いたしますが、その点で、岩間初中局長いかがでしょうか。
  229. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 確かに、先生御指摘のような点はございますけれども、教科によりましてはなかなかむずかしい場合がございます。たとえば国語で、話す、あるいは読むという場合には、これは幾ら指導要領でどういう読み方をするかというようなことを書いても、実際のことはなかなかむずかしいわけです。そういった限界はございますけれども、先ほど大臣が申されましたように、拘束性という点を考えますと、これは中身について検討を要する問題であろうというふうには考えております。
  230. 加藤進

    ○加藤進君 最後に、もちろんこれは学校の先生が絶対的に足らなくて十分行き届いた教育ができていないというような問題も直接からまります。しかし、同時に、にもかかわらず、学校で、義務教育の中で、ついていけないような子供が存在するということは、これは教育者としては私は恥ずべきことだと思う。わけても、日本の文教を担当しておる文部省としては、まことに恥ずかしくてしようがない、文化国家の名に恥ずるわけでございますから、子供たちが一人一人励みを持って目標に向かってとにかく一歩一歩着実に前進していく、こういう教育の姿を実現していくということがわれわれの念願でございますので、その点をひとつ文部省も十分に努力をしてその方向に向かって前進していっていただきたい、このことを希望いたしまして、私の質問題を終わります。
  231. 永野鎮雄

    委員長永野鎮雄君) ほかに御発言がなければ、本日はこれに散会いたします。    午後五時三十分散会      —————・—————