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1972-07-27 第69回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年七月二十七日(木曜日)    午後三時九分開会     —————————————    委員異動  七月二十六日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     平泉  渉君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 善彰君     理 事                 佐藤  隆君                 初村瀧一郎君                 中村 波男君                 前川  旦君                 宮崎 正義君     委 員                 梶木 又三君                 河口 陽一君                 小林 国司君                 鈴木 省吾君                 高橋雄之助君                 鍋島 直紹君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 村田 秀三君                 塩出 啓典君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  足立 篤郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林政務次官   園田 清充君        農林省農政局長  内村 良英君        食糧庁長官    亀長 友義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (米価問題に関する件)     —————————————
  2. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、委員異動について、御報告をいたします。昨二十六日小枝一雄君が委員を辞任され、その補欠として平泉渉君が選任されました。     —————————————
  3. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 米価問題に関する件を議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 工藤良平

    工藤良平君 私は、ただいまから四十七年産米価の問題について大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、昨夜おそくに審議会答申も出されたようでありまして、私もその内容を検討してみましたが、この諮問答申の中で一貫して流れているものについて、私は、当然大きな疑問を持つのでございます。  まず、大臣にお伺いいたしますけれども、この四十七年産諮問にあたって、この諮問主文の中に第一項として書かれておりますが、この主文をまともに読みますと、食管制度そのものの根幹に触れるような諮問になっておると私は考えておるのでありますが、農林省米価諮問をする場合に、食管制度食管法というもののたてまえに基づいて当然正しい諮問というものが行なわれてしかるべきではないかと思うのですが、きわめて抽象的でありますけれども、まず基本的にそのことをお伺いをして、具体的に入りたいと思います。大臣、御答弁をいただきます。
  5. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 工藤さんの御指摘、私よくわかりかねるのですが「米穀需給均衡を図るため米穀生産調整が行なわれている需給事情を勘案するとともに」というこの部分をおさしになっているのじゃないかというふうに想像いたしますが、食管法にはこれは経済事情等と書いてございますが、私どもの認識では、こうした米が過剰基調で、無理な生産調整全国農民にお願いしているという事情は、経済事情の中でも最も大きな事情だというふうに考えておりますので、この文句食管法に違反するというようなことにはならないのじゃないかというように考えております。
  6. 工藤良平

    工藤良平君 そこが農林大臣として、私は、一番大きな問題だと思うのであります。  先日、大臣は、大臣になられましてから、私は自民党の代表として農林大臣になったんだという御発言がございました。確かにそれはそうでありましょうけれども政府機関というものは、自民党から選ばれた大臣という性格をお持ちかもしれませんけれども、行政府としての長でありますから、やはり別の立場から当然私は、行政に当たるべきではないかと思います、まず、基本的な問題として。で、そういうことを考えてみますと、この食糧管理法というのは、いつ改正になりましたか。最終的な改正はいつでございますか。
  7. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 一番最近の改正昭和二十七年でございます。
  8. 工藤良平

    工藤良平君 昭和三十七年でしょうが。二十七年じゃないですよ。三十七年にこの食管法改正になった。で、それ以降は変わっていないのです。変わっていないけれども、あなたたち米価決定についても、あるいは物価統制令廃止につきましても、この食糧管理法の本質というものが、全然曲げられてしまっているわけです。ですから、今度のこの諮問につきましても、いま大臣がおっしゃったように、まず、米穀需給関係生産調整が行なわれておるという、まず、その前提の上に立って、食管法にうたわれている生産者米価決定である生産費及び所得を考慮してということが第二義的になっておる。主語がどこにきているのかということが、私は、根本的な問題だと思うのです。少なくとも農林省の場合には、第一条「目的」には「国民食糧確保及国民経済ノ安定ヲ図ル食糧管理シ其需給及価格調整並二配給ノ統制行フコトヲ目的トス」、これは第一条なんです。全体的な米の調整をやるということが第一条にうたわれているわけでありますけれども、わざわざ別項を設けて、価格の問題については、需給事情とは関係なしに、生産費及び所得を補償すべきものであるということがうたわれているわけであります。もちろん、経済事情ということにこういう需給関係が入るというように解釈を、もちろん解釈はできましょうけれども、しかし、その主語となるものは、そうじゃないわけです。それはもちろん、付随的なものであって、あくまでもやはり生産費というものが当然それを補償し、また、農家の皆さんの所得をも考慮しなければならぬということが主語としてうたわれているわけでありますから、この諮問内容そのものが、私は、食管法を否定をする立場で書かれているというふうに思います。そうでなければ、なぜ、このような説明を書く必要があるのですか、説明がそうなっているのですよ。食管法のところになぜ、そこにそのことをそのまま持ってこないのですか。この点について私は、大臣からひとつその点を明らかにしてもらいたいと思います。基本的な問題ですから。
  9. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 先ほどお答えしたとおりでございまして、私どもは過去三年間米価が据え置きになった。これはまあ、いろいろな算定方式を当時出したわけで、私の前任者あるいは前々任者がやったことでございますけれども、それは何と言いましても、いま過剰基調で、あらゆる面で米が余るということが大きな圧迫になっておる。それに対して全国農民に対しても、たいへん御無理なお願いをして、生産調整ということに御協力をいただいておる。この事情を無視して米価の問題を論ずるわけにまいりません。食管法には、経済事情という文句がありますが、私どもは、その経済事情の中で解釈上許される米の需給問題というのは、今回の米価決定には、もう大前提であると思いましたが故に、諮問案の中にもこれを入れたわけで、私は、これがこの食管法を無視したものだというようなおしかりを受ける筋合いのものではないというふうに考えております。
  10. 工藤良平

    工藤良平君 確かに現実の生産調整が行なわれているということは、私も十分承知しておりますよ。それはあくまでも量の調整であって、政府が買う米の価格については、それは関係のないことではないですか、どうですか。全体的な量としては、千四百五十万トンとれるから余る。したがって、千百五十万トンという目標を立てる。その中で一体政府幾ら需給均衡を見て買い入れをし、自主流通米を含めた買い入れとして見込んだのが七百七十万トンでしょう。その中で政府が幾ら買うという目標を立てているわけでしょう。昨年がわずかに四百八十万トンちょっとこすくらいの米しか買っていないわけでありますけれども、全体的に生産調整というのは、全体の量の問題であって、反当たりからできてくる米の価格とは関係がないものではないのですか。その点明らかにしてください。
  11. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 御承知のとおり、私も昔四年ばかり米審委員をやったことがありますが、当時はいわゆるパリティ方式でございまして、一応その生産に必要な物財費パリティを出してはじくということですが、昭和三十六年から、御承知のとおり生産費所得補償方式ということで、ある程度政治米価といわれるような米価の引き上げをやってまいったわけであります。それはとりもなおさず食糧を増産してもらおう、特に米を増産してもらおうという意欲的な、政策的な配慮があったからでございます。それが昨今はさっきも申し上げたように、情勢が一変してまいっておりますので、いま米価をきめるにあたって増産ドライブをかけるべき時期かどうか、これは政治判断の問題になるわけですが、これは価格決定に非常に大きな要素になるというように、私どもは考えております。いま工藤さんがおっしゃるとおり、法律に書いてあるから、生産費所得を補償すればいいんだ、こうおっしゃるが、それがもし逆の場合に、私がいま工藤さんと同じことを言ったら、それじゃ政策的な配慮は何もないじゃないか。政治的な配慮はないじゃないか、こういうふうにおしかりを受けると思うのでありまして、私は、やはり経済事情等法律にあります範囲内で需給状況というものは、今日の米価決定する一番大きな要素になるというふうに考えておりますので、さっき申し上げたとおりに考えております。
  12. 工藤良平

    工藤良平君 それはたとえば、いま農林省が実施しております自主流通米、これは話が飛びますけれども農林省のほうですでに物価統制令廃止をして米は自由に、その品質に応じて売買をしなさいということが言われておりますよ。で、その価格の場合と、政府が命令をもって定めて、それで買うという価格の形成というものは、おのずから違うわけでしょう。違うからこそ、条項を分けて書いてあるわけでしょう。少なくとも農林省が出す場合に、そういう政治的な判断の上に基づいて、政治的な数字に基づいてここに米審にはかるということが一体正しいのかどうか。私は、もう今回のこの米審諮問については、きわめて遺憾であると思っているんであります。なぜ、まともな数字を出せないのか。いまから私は、その追及をしますけれども、政治的な判断というものは、米審にはかり、その米審答申に基づいて最終的に政府決定をする場合に、あるいはこういう要素が入ってくるかもわからない。それは国民がどう批判をするか、それは争われるべきものであるけれども農林省は、少なくとも諮問として出す以上は、なぜ、まともな生産費調査に基づいた補償できるような数字というのは出てきているはずでありますから、それを出せないのかということ。根本的に私は、ですからここに食管法趣旨そのものが生かされていない根本的な問題があるということをさっきから言っているんです。政治的な判断最初から農林省が入れてやったんじゃあ、まともな数値は出てこないじゃないですか。まともな数字を出して米審にはかった、その結果というものはこうだ、それを受けて最終的に政府がきめる場合に政治的な判断が入るかどうかという、そこが大臣自民党の折衝、与党との折衝なり、最終的に総理大臣の決断に基づいておきめになる政治的な判断じゃございませんか。私は、そのような筋書きというか、筋道というのは当然じゃないかと思うんですよ。
  13. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) この「需給事情を勘案」しということは、確かに工藤さんのおっしゃるとおり、政治的な配慮でございますが、その根源は経済事情なんですから、具体的に起こっている事態に対しての政治的な配慮ですから、私がもしこの諮問案を出すときに、そういったことを一切考えずにやったら、はなはだ不合理だという非難を受けると思うので、私は、食管法はこういうふうに規定されておりますので、経済事情の中で許される範囲需給事情というものは、非常に重大な要素ですから、これは私は、当然だと思っておりますので、おしかりを受ける理由はないように思います。
  14. 工藤良平

    工藤良平君 それは大臣、あなた経済事情とおっしゃる。確かに生産調整に入っているということも、一つの経済事情ではありましょう。しかし、農家生産費が非常に高くなっているということも、これは経済事情じゃないですか。その経済事情を当然計数的に正しいものを私は出しなさい、ゆがめて出しなさいとは言ってないんですよ。下げて出しなさいとは言ってないんですよ。ことさら上げなさいとも言ってないんですよ。まともなものをなぜその経済事情数字として率直に出せないのか。それが当然じゃないですかと。なぜ政治的な判断を当初から入れなきゃならぬのか、私はそれがふしぎでしょうがないんですよ。それを明らかにしていただきたい。ゆがめられて出されたなら、ゆがめられて出されたとはっきり言ってください。
  15. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 諮問案は、いずれ食糧庁長官から積算の基礎を御要求があれば説明いたしますが、削るほうばっかり政治的な配慮をして、ふえた分は全然入れてないというわけではございません。生産費等で上がっている面は、上がっているように計算に入れております。  それから、いま申し上げた需給事情等の政治的な配慮もした、こういうことでございますから、誤解のないように願います。
  16. 工藤良平

    工藤良平君 大臣、私がさっきから再三言うように、なぜ食管法のたてまえというものを最初に出さないんですか。そうすると、この諮問というものは、現在の食管法がいけませんと、だから米価算定方法について別の方法を考えたいと思うが、いかがでございましょうかという諮問じゃないですか。そうじゃないですか。私は、きのう、この答申の出される前の素案というものを途中で聞きましたけれども、それは全くこれを受けた同じような答申でありました。そんなものは受けられないということで、変わってきたのがこの答申の全文なんですよ。私は、そういうことを一連してずっと考えてみると、何か農林省自身が変なものを考えているような気がしてならないんですよ。長官、どうですか、なぜ、まともな数字が出せないんですか。いまからいろいろ聞きますけれども、三・〇三ということがいろいろな事情を考慮して政治的な米価でないという保障があるならば明らかにしてください。説明をしてください。
  17. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私は、この諮問本文について御質問のようでございますから、諮問本文についてお答えをいたしますが、現在の食管法では、御承知のように「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ」というふうになっておりますから、その経済事情の中には、需給事情というものは当然入る。したがって、現在の需給事情のもとで「生産費および所得を考慮して決定することにつき、意見を求める。」という趣旨諮問のしかたは、本年始まったわけではございません。数年、このような諮問のしかたをいたしております。この諮問しかた自体食管法に該当しないということではないと思います。経済事情というファクターもあることから、このような諮問をここ数年来いたしておるわけでございます。
  18. 工藤良平

    工藤良平君 文書がおかしいんですよ。この「諮問についての説明」という文書をあなた見てみなさい。あなた、書いて読みましたか。これにはどういうことが書いてありますか。ちゃんと「食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費および物価その他の経済事情を参酌し、」と、こういうことになっているのですよ。なぜそれが諮問主文に来たときに逆になるのですか。「経済事情を参酌し、」ということもじゃないですよ。逆になっているんですよ。こともというつけたりが前面に出てきて、本来の食管法の第三条二項というものがうしろに忘れ去られているのですよ。だから、私は、問題だと言っている。あなた、説明にちゃんと書いていることを説明のとおりになぜ諮問にそのことを書かないのかということです。これは基本的に食糧庁考え方農林省考え方そのものに誤まりがあるわけですよ。
  19. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 食管法第三条第二項の規定は、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産確保をはかることを旨として定める、これはもう申すまでもないことであります。そこで諮問の際に、おそらく御質問趣旨よくわかりませんが、経済事情を並べる際に「生産費および物価その他の経済事情」と書いてあるから、生産費という字が先に出てくるのに、なぜ諮問の際に生産費あとに出てくるのかという御質問でございますれば、私ども諮問は、勘案するとともにということで、これは並列的に考えておる。法律も並列的に考えておりまして、別に順番の先後という点に私ども特にウエートを置いたわけではございません。
  20. 工藤良平

    工藤良平君 入り口ばかりでどうも非常に残念です。基本的な問題ですからね。長官、あなたそういう考え方が日本の食糧をあずかっている長官考え方ですか。あなた、食管法を何と心得ていますか。法律なんというものは、どこかなおしておけばいいんですか。米価決定のときには、当然、食糧管理法第三条二項に基づいて生産者米価をきめなければいかぬわけでしょう。もう一ぺん、あなた、それじゃ、えげつないようでありますけれども、この食管法の第三条の二項を読んでくださいよ。どういうことが書いてありますか。経済事情というものは、あくまでも主語ではないのですよ。生産費及び所得を補償するということが原則なんですよ。読んでみなさいよ、それじゃ。そんな言い方をされたら、質問がわからないというならとことんまで言いますからね。わかりませんか、あなた。読んでみなさいよ。それじゃ、なぜ、この説明にはそういうことを書いているんですか。説明にそういうことを書いておいて、主文がなぜ変わるんですか。そんなばかな話ないじゃないですか。
  21. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 食管法第三条の二項は、御指摘のように、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と書いてございます。私ども諮問はこの趣旨にのっとりまして「米穀需給均衡を図るため米穀生産調整が行なわれている需給事情を勘案するとともに生産費および所得を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。」このようにございますが、食管法の「生産費及物価其ノ他ノ経済事情」ということばをいろいろ分析してファクターをつくりますと、需給事情ということもございます。それから、生産費ということもございます。所得ということもございます。諮問ではこの「生産費及物価其ノ他ノ経済事情」というものをそのような要素に分解をして、これらをどのように考えるべきかということを諮問をいたしたつもりでございます。
  22. 中村波男

    中村波男君 大臣、関連して質問いたしますが、ことしの計算方法は、生産費所得補償方式であるかどうか、まず答えてください。
  23. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 生産費所得補償方式というのは、別に法律規定はございませんが、さっき申し上げた増産ドライブをかけるという政策的に考慮されて、いわゆる政治米価といわれたときから、そういう方式を慣例的にとっておりますので、私どもも本年の米価算定にあたりましては、前例どおり生産費所得補償方式のワクの中で算定をいたしたのであります。
  24. 中村波男

    中村波男君 ちょっと大臣の答弁了解できないんですがね。政治米価政治米価とおっしゃるが、生産費所得補償方式政治米価という批判があったことはないんです。生産費所得補償方式にもまだまだ不備がありますし、私たちの言う生産費所得補償方式になっていないから安いということを言っている。諮問が出てから自民党あとにいろいろなものを名目でつけますから、それが政治米価というマスコミのことばになって出てきたんです。これはみずからひとつ訂正してもらいたいと思うんでありますがね。  それはそれとして、この「諮問についての説明」によりますと、「昭和三十五年以降生産費および所得補償方式によって行なってきたところであります。」こう書いてありますね。しかし、諮問主文になりますと「生産費および所得を考慮して」と、こういうふうになっておりますね。だから、あれでしょう、昨年までとってきたような、三十五年以来行なってきた生産費所得補償方式であるならば、三・〇三というような諮問案は出てこなかったはずです。農林省みずから認めているでしょう。一一・五%の生産費の上昇はあるんだということを言っているでしょう。だから、従来とってきた生産費所得補償方式で、ことしは計算したのではないんじゃないですか。はっきり言ってください。
  25. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) さっきもお答えしましたように、生産費所得補償方式というものの規定といいますか、法的根拠といいますか、そういうきちっとしたものはございません。また、方程式もきめられているわけではございませんが、いままでの慣例から一定の算定の基準がございますので、それに準拠をしてやってまいりました。ただ、御不満を買ったのは、その中のデータのとり方に多少調整をした面があると、こういうことじゃないかと思いまして、いずれ具体的な御質問もあろうかと思いますが、そういうことじゃないかというふうに私は、理解しております。
  26. 工藤良平

    工藤良平君 大臣、これはひとつ大臣の——私は基本的な問題ですから、入り口だけでこれは申しわけないと思いますけれども、いまさっきから私は、しきりに言っておりますように、これは、「諮問についての説明」は、食管法に基づいたものになっているんですよ。それをなぜ諮問のこの一番大切なところに、そういうことを書かなかったのかということなんですよ。これは主語がいわゆる「経済事情参酌シ」という付随的なものが前面に出てしまっているんですよ。これはおかしいわけですよ、考え方そのもの食糧庁どうかしているんですよ。これは誤りなら誤りと、当然やっぱり食管法三条二項に基づいたものが前面に出てきていくべきじゃないかと、私は、そう思うんですよ。どうも私は、納得できませんよ。
  27. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いまの諮問案の字句についてのお話でございますが、私が大臣に就任しましたとたんに、内容をがらっと変えて諮問したというわけのものではございませんので、まあ前々からやったことが間違っているという御意見ならやむを得ませんが、私は、赤城農政を踏襲するということを声明しまして、大体できておったレールの上に乗っかって今日まできたわけです。なかなか思うようにはいっておりません。全部が全部はいってはおりませんが、とにかくそういう方針でまいりました。四十六年の諮問を読み上げますと、「昭和四十六年産米穀府政買価格については、米穀需給均衡を図るため米穀生産調整が行なわれている本年の需給事情に即応して生産費および所得を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。」と、これは去年の諮問でございます。私も実は、この中で私が改めましたのは、「本年の需給事情に即応して」と、「即ち応じて」と、こういう文句を「勘案しつつ」と私が直さしたんでありまして、別に私がことさら違った諮問をしたというつもりはございませんので、この辺の事情も御了承いただきたいと思います。
  28. 工藤良平

    工藤良平君 だから、そうすると、昨年までさかのぼって農林省諮問が根本的に誤りであったということになるわけですね。私は、そう思いますよ。大臣よくお聞きになってください、いいですか。やはりこれを見ますと、もう最初からことしは政治米価ですよと、生産費及び所得補償方式とかなんとか、そういうものじゃなくて、とにかく政治米価ですよと、これを出しますがいかがでございましょうかという諮問になっているわけです。農林省としては、これは事務当局なんですから、少なくとも食管法のたてまえに基づいて生産費及び所得を補償し、さらに経済事情を参酌をして米価算定をするというたてまえに基づいて諮問をするのがあたりまえのことであって、これは私は当然のことだと思うんですがね。大臣、もし私の考え方が誤まりであるか一あるいは正しいとするならば、ぜひひとつこの点については、率直にお認めをいただきたいと思います。
  29. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 工藤さん、私がちょうど衆議院の農林水産委員長当時いろいろお助けいただきまして、あなたが非常に真摯な勉強家であることはよく承知しております。おせじで申し上げるわけじゃない。それでさっき私、読んだように、四十六年、前年の諮問は「需給事情に即応して」と書いてある、「勘案」という字を「即応」に直していただければ、私の気持ちも多少おわかりいただけるんじゃないか。「即応して」は、少しどぎついんじゃないかと。いかに経済事情といいながら、それじゃ縛ってしまうようになっちゃうから、「勘案して」というふうに直せというので、実は長官に命じて文章を直さしたのであります。だから、私は、その点は前例にのっとってやったわけで、私になってから急に変えたわけではありませんので、どうかひとつこの点は御了承いただきたいと思うのですが。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 関連。  これは確かにあなた、前のときよりも、その「勘案」としただけ「即応」よりは柔軟な態度をとったのは、それは私、認めます。しかし、前のときからもうすでに——赤城農政を踏襲すると言うけれども赤城農政のときからすでにゆがんでいるので、原点に戻れと言うのです。この食管法の原点をくずしてしまって、いま経済事情という名のもとに、生産調整というところにウエートを置いて、生産費及び所得補償方式というものにウエートを置かなくなったということをはっきりさせろということを聞いているんだから、足立さんは血のめぐりはいいほうだから明快な回答をここで——残念ながら生産調整というところに重点を置いて、そういう経済事情から生産費及び所得補償方式というのはちょっとそれをながめる程度で、配慮する程度というふうに本質的に変わったんだということを明快に、あなたの大臣としての表現で明快に回答してもらいたい。
  31. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 工藤さんは、先ほどは農林省は事務当局だから事務的に、そんなものは食管法法律どおりに出せばいいんだとおっしゃったが、私は、政治家でございまして、全部の政治責任を持たなければならぬ人間ですから、やはりこの現在の経済事情、特に無理な生産調整をお願いしているというような、しかも千八百億というようなばく大な国家財政を使ってでも、生産調整やっている過剰基調を解消しようとして努力しているこの事情をいやしくも米価決定に置き去りにするわけにはまいりません。ですから、食管法にあります経済事情範囲内で需給事情を考慮するということは、これはひとつお認めをいただきたいと思っております。
  32. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっと関連。  私は、あと質問がありますので御遠慮しておったんですけれども大臣の言われる「即応」や「勘案」というような、ことばの問題では私は、ないと思うんですよ。問題は、食管法の中に生産費及び所得補償方式を考慮すると、第一にこれはうたわれて生産が進められる、それから消費者のほうは家計に圧迫を与えないように勘案してきめると。だから、これが一番先だからこれを出して、そして、いまいわゆる経済情勢、生産調整が行なわれているんだから、そういうことを考えなくちゃならない、それが第二段になるべきであって、前後が逆になっていると思うんです。それが食管法の本質にもとるんじゃないかと、こういうことを言っているんですから、その点についてはっきりしてもらえば、私は、いいと思うんです。
  33. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) おことばを返すようで恐縮ですが、食管法三条二項はごらんのとおり「生産費及物価其ノ他ノ経済事情」となっておりまして、さっき申し上げたように、所得補償方式というのは、実は法律的に何にもきめられたことじゃないのですが、長年やってきた慣例でございまして、それに準拠して私ども算定をしているということで、したがって、私どもはむしろ諮問案の中に「所得を考慮して」と、食管法にない文句を使っておる、農民立場を考えている。これは一応私どもは良識的にやっておるということは、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  34. 工藤良平

    工藤良平君 大臣、いろいろな申しわけもありましょうけれども、私は、やっぱりものの考え方として政治的な配慮というもの、いわゆる政治米価というものが前面にきていいのかどうかということを言っているわけなんです。正しい数字が出たならば、数字数字として明らかにして最終決定までの間に、そこに政治的な配慮というものがあって、私は、決定をされたということであれば、それは政治的ないろいろな勢力分野もありますから、私どもやむを得ないという判断も出るかもわかりませんけれども最初から、頭からもう政治米価というものを諮問をするということ、そういう形式そのものが私は、ものの考え方としていまの農村というものをどう考えていくのか。口先では農村を、農村をというけれども、現実の米価決定においては、農民が全く無視された形の中で諮問が出されているのじゃないかということを、私は主張したいわけなんですよ。ものの考え方として、根本的に私は、出発点そのものが非常に誤っているような気がします。ですから、いま私は、諮問が終わった段階で、これを文章を変えろとか、もちろん言っても始まらないことですけれども大臣のものの考え方として、当然私の言うことが理解できるかどうか、私はどんなに考えてみても、これは政治的な配慮のほうが優先をして、残念ながら食管法に基づいた生産費あるいは所得を補償するような計算にはなっていない、こういうように理解をいたしますから、そのように大臣の御回答をいただきたい。
  35. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 工藤さんがその点を非常に強く御主張になり、いまのような御意見、あなたのお立場で御意見を吐かれることは、よく理解できます。しかし、私の立場になりますと、私は、政治的な責任を持つ人間ですから、いま二百十五万トンというばく大な数量の生産調整をお願いしておるという需給事情を全然考えずに、すらっと答えだけ出して、それを諮問すればいいじゃないかといわれても、それは私は、政治的な立場からはできませんということを申し上げているわけでありまして、その前提になるいまの生産費および所得補償というその考え方は、よくわかります。
  36. 前川旦

    ○前川旦君 一つだけお伺いしておきますが、ことしのこの案は生産費所得補償方式でおやりになったのかどうか、そのことを私は言い切れるのかどうか、あるいは先ほどのあなたの答弁を聞いておりますと、あなたの考え方の原則論では、所得まで考えなくてもいいんだけれども法律にないから考えなくてもいいんだけれども、慣例としてやってきたのだと、こういうふうに聞こえました。そうなると原則論としては、所得は考えないのだとおっしゃるのか、それともそうじゃないのだとはっきりおっしゃるのか、つまり、ことしの算定は、所得を考えて生産費所得補償方式でやったのか、そうじゃないのか、その点をお聞きいたします。
  37. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 先ほども、実はその点についてお答えを申し上げたんですが、お手元にあると思いますが、今度の諮問案説明の「政府買入価格について」ということで、一番末尾に「本年産米穀政府買入価格算定に当たっては、生産費および所得補償方式により、以上申し述べました事態に即応して算定することとしてはどうかということであります。」という説明をはっきり文字にして加えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  38. 工藤良平

    工藤良平君 この点が先ほどから大臣と私の間には、それぞれ立場の違いがあるということでございますが、私は少なくともあなたが農林大臣としてものを考える場合に、生産者米価決定においては、当然食管法趣旨に基づいた決定というのがしかるべきだ、このように思いますし、今後のいろいろな農政の問題については、私は、またさらに大臣とやりとりをしていきたいと思いますけれども、ものの考え方というものをぜひ私は、改めていただきたい、このように思います。  それでは時間が過ぎましたので、内容にごく一、二触れますが、諮問の背景にあるものとして、先ほどこの算式が説明になったわけでありますけれども、この中で平均生産費の評価がえをいたしているわけでありますけれども、その中で問題を一つ一つさぐっていきますと、たいへんあり過ぎますから、私は、二、三の問題点だけについて質問をしますから、これは衆議院でも明らかにされたと思いますけれども、まず、平均生産費の評価がえの中で生産費を低いものからだんだん累積をしていって、いわゆるバルクラインが四十四年については八〇%、それから四十五年度が九〇%、四十六年が一〇〇%、このように出しているわけでありますが、これは全体的に生産費というものを平均的に引き下げる、こういうような役目を果たしているというふうに私は、理解をするのでありますが、その点についてはいかがですか。
  39. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 私も着任早々で、この数字的な事実の問題について全部つまびらかにいたしておりませんので、間違いがあってまた押し問答いたしますと、時間を空費いたしますから、食糧庁長官から答弁させていただくことをお許しいただきたいと思います。
  40. 亀長友義

    説明員亀長友義君) これは私ども配給に必要な量までの生産費を高低順に並べて、低いものからの販売量がその数量まで達するということで計算をいたしておりますので、全体の平均よりは高くなります。
  41. 工藤良平

    工藤良平君 従来のとり方からすると、高くなりますか、低くなりますか。
  42. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 従来と申しましても、昨年からこの方式をとっておりますので、昨年との比較は配給量が七百六十万トンから七百七十万トンに変わったこと、それから三年間の生産費が昨年は四十三年から四十五年でございますが、ことしは四十四年から四十六年というふうに変わっておりますので、そういう数字の移動はございます。ただ、反収について比較をいたしますと、昨年よりもことしのほうが反収は低くなっております。これは四十六年が入ってきたためでございまして、昨年は五百何キロがことしは四百キロ台に落ちておると思いますが、だが全体的な全農家の平均から比べれば高い反収に相なっております。
  43. 工藤良平

    工藤良平君 私が言っているのは、結局こういうことですよ。平均生産費算定の際に、米の生産調査の各年産の米の販売農家百五十キログラム当たりの生産費の高低順に並べて、生産費の低いものから順次累積をしていって、そのパーセントを四十四年は八〇%、次の年は九〇%、四十六年は一〇〇%とったということは、従来の計算のしかたからすると、これは生産費そのものを若干引き下げるという要素になっているのではないか、こう言っているわけですが、端的に答えていただきたいと思うのです。
  44. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 従来の計算のしかたというのは、いろいろございましたけれども、一般的にいって御指摘のようなことが大まかにいって言えると思います。
  45. 工藤良平

    工藤良平君 それではもう一つ、災害減収農家の除外というのは、これは昨年からくっついたわけですね。昨年は二割以上の災害農家を除外するということでありましたけれども、本年は一割以上の災害農家も除外をするということでありますから、これを災害農家をなるべくパーセントの少ないものまでも除外をするということになると、これまた生産費が安くなる、こういうことに私は、なると思うのですが、そのとおりですか。
  46. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 二割以上の災害農家を除外いたしますのは、ずっと前からやっておりまして、一〇%にしたのは本年でございます。したがって、災害率の除外基準を変更したことによりまして、生産費もこれは低くなるという傾向が出ることはいなめないと思います。
  47. 工藤良平

    工藤良平君 それじゃもう一つ大きな問題。  この計算の終わりのほうに「一〇アール当たり平均収量の算定」というのがございます。これは米価決定をする場合に、生産費を出しまして、最後に反当収量で割るわけでありますから、ここで大きな違いが出てくるわけでありますけれども、これを見ますと、四十四年産が五百九キロですね、十アール当たり。四十五年産が五百四キロ、四十六年産が四百七十九キロ、平均が四百九十七キロということで出ておるのでありますけれども、この数字はどういう統計をとってお出しになったか、お伺いいたします。
  48. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 統計調査部の生産費調査数字でございます。
  49. 工藤良平

    工藤良平君 統計調査部の調査では、米の販売農家調査というものを一つの項目を設けて実施をいたしておりますか。
  50. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私どもがこれを採用いたしましたのは、統計調査部の米の販売農家の統計もございますが、米生産費調査というのがございます。その農家から先ほどの災害除外基準に該当する農家を除き、そうしてその中から四十四年を八〇%、四十五年は九〇%、四十六年は一〇〇%という農家をとりまして、その反収の平均でございます。
  51. 工藤良平

    工藤良平君 農林省食糧庁の提出をいたしましたこの資料の二十二ページ、ここにわざわざ「米生産費関係」「米生産費の動向」「一〇アール当たり生産費」、こういうことでここに表が出されておりますが、その一番末尾に「一〇アール当たり収量」といたしまして、各年次別の金額が出ておりますが、これには「農林省「米生産費調査」による一俵以上販売農家についてのものである。」と注書きをして出されておりますが、この反収を見ますと、四十四年産が四百八十四キロ、四十五年産が四百八十七キロ、こういうことになっております。そういたしますと、ここにわざわざ出してあるわけですね、統計を。なぜ、これを使わないんですか。
  52. 亀長友義

    説明員亀長友義君) これは統計調査部で一応生産費調査から出ました販売農家調査表を出しておるわけでございます。もちろん、これは米価ということでなくて、販売農家生産費調査されておるものでございます。私ども米価で試算をいたしましたのは、配給に必要なる量までの生産費を高低順に並べるという点と、この表では災害二割の——全農家でなくて、これは二割除外の表だと思いますが、私どもはそれを一〇%除外でいたしておりますが、その二点が相違をいたしておるわけであります。
  53. 工藤良平

    工藤良平君 私は、正直に申し上げまして、もう議論をする熱意を失うんですよ、あなた、そんな説明のしかたをするとですね。そうでしょう。ここにわざわざ出しているわけでしょう。こんなりっぱな資料つくって、これ幾らしたか知りませんけれども、これはばく大なお金をかけていますよ。こんな資料わざわざ出して、一方では四十四年五百九キロ、四十五年五百四キロ、これと、この四百八十四キロ、四百八十七キロというこの数字を比較をしてみなさいよ。生産費は、百五十キロ当たりの米価どうなりますか。三・〇三%どころの話じゃありませんよ。相当上がるはずなんですよ。私は、もう熱意を失いますよ。結局、生産費のほうはなるべく下げる、下げる、低いデータをとりながら。今度一番肝心の分母の——分子はいま一生懸命できるだけ下げるものをどこかないかということで洗いざらい引っぱり出してきて、下げる方向で一生懸命努力をしています。今度、分母のほうはどうですか、分母のほうは。なるべく高いものを、五百九キロなんというどこから出てきたかわからないようなものを、これもやっぱり米販売農家の十アール当たりの平均収量と、こうなっているわけですから、おそらく全販売農家の収量だと思いますよ。いままでの統計は、全部これは販売するほうの一俵以上の販売農家ですから、これは全部配給に回る、消費に回るお米なんでしょう。同じもんですよ。なぜ、この統計が違うんですか。なぜ、それじゃこの四百八十四キロ、四百八十七キロというものを使わないのですか。これを使った場合に、それじゃどういう積算が出てきますか。一〇%ぐらいになるのじゃないですか。
  54. 亀長友義

    説明員亀長友義君) これは統計調査部のほうで調査をいたしましたもので、現在の事情のもとでどういう農家米価のコスト計算の基礎にするかという問題は、現在の需給事情のもとにおける米の原価性の採択の問題でございますから、私どもは必ずしもこの表と一致をしなければならぬということはないと考えております。
  55. 工藤良平

    工藤良平君 大臣、ぼくはほんとうに腹が立ちますよ。まともにひとつあなた考えてくださいよ。ある統計は、都合の悪いときにはこっちの統計をとりますと、都合のいいときには、こっちの統計をとりますということで、そんなことで米価計算なんていうのはできるのですか。それじゃ、この二つはどっちが正しいのですか。どっちが正しいのですか。
  56. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 統計調査部のほうは、米販売農家を代表する生産費調査を行なったものであります。私どものほうは、米価としてどれだけを考えるべきかということでございまして、この点は従来とも各この生産費要素につきまして米価算定においては異なった考えをとっておる部分は相当ございます。資本利子の見方にしても、また、このサンプルの、サンプルと申しますか、生産農家のとり方につきましても、統計調査部とは異なった考えで従来とも米価にどの程度見るべきかという観点から別個の措置をとっております。
  57. 工藤良平

    工藤良平君 私は説明がわからないんです。私は、二つ資料をもらいましたからね。同じこれは農林省からもらったのですよ。米審にこれは二つとも出されたわけですよ。米価審議会の人がこれ、気がつかなかったのか、私、ふしぎでしょうがないのだけれどもね。だから、資料を出すのに、こんな資料の出し方がありますか。大臣、どうですか、大臣、おかしいじゃないですか。まさに政治米価をつくるために反当収量を上げたようなかっこうで、逆算したような数しか出てきませんよ。じゃ、これで計算してみなさいよ、幾らになりますか。すぐ出るのですよ。
  58. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 私もさっき正直におわびしたように、どうも数字のことはまだよくわかっておりませんので、お答えしにくいのですが、いま隣で確めてみますと、先ほど長官からもお答えあったと思いますが、やはり来年度配給のために、政府食糧管理のために絶対必要とする数量までのまあ、いわば限界生産費というものと、その販売農家の全部の生産費というものとの違いであると、こういうことですから、それなら、私、聞いてみて、なるほどこれは違うのがあたりまえだなあと、こう思っているんですが、私自身がおなかの中まですっきりわかっておりませんから、この点はひとつお許しいただきたいと思います。
  59. 工藤良平

    工藤良平君 それじゃもう少し私、聞きますよ。それじゃ四十四年、四十五年、四十六年の平均反収は幾らですか。平均反収と、いま言う一俵以上の販売農家と、あなたがこれ米価審議会に出したこの数字。こんな開きが出ますか、こんな開きが出ますか。
  60. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 統計調査部のほうは、一俵以上の販売農家を代表せしむる意味で、この調査を発表されておるわけでございます。先ほど大臣からお話しがありましたように、食糧庁計算国民配給に必要なる数量を確保する、そういう観点から生産費の安い順に並べて必要量の七百七十万トンまでの数量を確保するような農家を選択をして、その計算によって米価算定いたしておるということでございます。したがって、反収もそういうものの平均の反収が出る。十アール当たり生産費のほうもその生産費を使うと、こういう関係になるわけでございます。
  61. 工藤良平

    工藤良平君 私は、どうもわからなくなりました。これは統計調査部から出ているわけでしょう。これも調査部から出ているわけでしょう。あなたが諮問計算をして出した、これも統計調査部、これは違うんですか。——そうすると、これは違うということになりますとね、米の生産費調査をどこがやるんですか。食糧庁がやるんですか。統計調査部がやるんですか。
  62. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 統計調査部で調査をいたしました原表を、私のほうで米価算定の基準に従って拾い上げて集計計算をしたものでございます。そこで、繰り返すようでございますが、私どもは必要量までの生産費調査を、必要量までの数量を確保すると、かような観点から生産費の高低順に並べて、四十四年ならば八〇%の農家が該当する。一〇〇%まで見れば、その場合には過剰生産の数量まで、生産農家までカバーをする。数量的にはそういうことになるわけでございますから、七百七十万トンまでの生産費の安い順に並べた農家だけの平均をとっております。統計調査部の場合には、それが全部の、四十四年の例でございますれば、九百五十四万トンまでの平均をとる、こういう点が考え方の相違になってくるわけでございます。
  63. 工藤良平

    工藤良平君 そんなとり方ってないですよ、あなた。だから私はさっき言ったように、根本的には頭が、政治的に三%というものを描いて出したから、こういうことになったわけでしょう。それじゃ根拠を、じゃ資料を全部出しますか。原表を出しますか、それじゃ。計算しますか。また日を改めて、これは何日かかってもいいから、原表出しますか。計算仕上げますよ、これが正しいかどうか。結局逆算をして出しているわけでしょう。そういうことしか考えられないですよ。どうでもなるわけですよ、これは。そうでしょう。分母を変えさえすれば、分子はそのままにしておいて、分母を適当に変えていきさえすれば、三%にしようと、何%にしようとできるんですよ、そんなものは。なぜ、私は、ですから最初から言っているように、まともな数字を出さないのか。まともな数字を出さなきゃ、どっかでぼろが出るんですよ。そうでしょう。ここへぼろが出るんですよ。私は、だからこういう点については、これは日にちを改めて原表を自分で計算をします、何千人あろうと原表を。だから、その集計表を資料として出してください。来年の米価までには間に合いましょう。極端に言うと、そういうことになるんですよ、あなた。資料を出すんなら出すで、なぜ一つのものを出さないんですか。迷うじゃないですか。
  64. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いま長官からも説明がありましたように、七百七十万トンまで政府食管法によって配給に必要とする数量までのいわば限界生産費、限界反収、そういう、その平均を出しておるということでございますから。
  65. 工藤良平

    工藤良平君 わかるんですよ。もう書いてあるからわかるんです。同じことを書いてあるのに、出てきた型が二つあるんですよ。
  66. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 工藤さん、ちょっと待ってください。結局あなたが最初指摘された、われわれがこの諮問案のトップに「需給事情」と書いた、これがけしからぬという、やっぱりそこへくるんです。
  67. 工藤良平

    工藤良平君 そうですよ。それが一貫してうそをつくっていうことになるじゃないですか。そういうことになるんじゃないですか。
  68. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) だから、話を聞くと、計算はコンピューターを使ってやるらしいが、あなたが幾ら達人でも、それはたいへんなことらしいんで、コンピューターを信じていただく以外にないと思うんですがね。それで、あれですよ。その根本が、私どもはやっぱり需給事情を考慮してということは、これは当然だと思っているが、あなた方違うとおっしゃるんで、そこへ戻ってくると、こういうふうに御理解いただけませんか。それ以上突っ込んでいただいても、ちょっと並行線になると思います。
  69. 工藤良平

    工藤良平君 どうも、これはもうはっきり言ってですね、私は逆算をしたと理解をいたします。こんな数字を出すということは、逆算をしたという以外にないと、このように理解をいたします。大臣がどう、あなたが考えようと、コンピューターに入れる——コンピューター、コンピューターと言いますけれども、コンピューターに入れる数字が間違って入れたら一これは間違ったものが出るの、あたりまえじゃないですか。こんなこと理屈になりませんよ。コンピューターに入れるときに間違った考え方のものを打ち込んでいけば、間違った数字が出るでしょう、こういうことになるのだから。私は、これは逆算をした政治米価の逆算の方式でしたのが、ことしの生産者米価だと、このように理解をいたします。私なりに理解をいたします。いいですか。私は、そういうように理解をいたします。大臣、どうですか、もう一ぺん言います。あなたの政治的な配慮というものが当初から入れられて出されたものだと、このように私は理解いたしますが、こういう言い方でどうですか。
  70. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 政治的配慮というのは、初めから三%ときめてかかってコンピューターを駆使したというわけではございません。先ほどから御指示のあった従前二〇%以上を災害農家としてコスト計算からはずしておったのを一〇%に下げたというのは、それ相応の理由があるのでございますが、そういう調整はやりました。たとえば通勤費の問題は、あるいはまた御質問あるかもしれませんが、そういう調整はやりました。その計算は、私は正しいと思う。この出た結果が三・〇三%、それほんとうにじょうずに合わせるなら三%に合わせますよ、これは。〇三%というのはコンピューターが出した数字でございますから御了承いただきます。
  71. 工藤良平

    工藤良平君 それはね、まさに議論の余地ない、全くね。もうほんとうにナンセンスで、いま若い人の言うナンセンスですよ。全くね、もう私は、ほんとうにもうこれはおかしな話でね。こんなこと議論するの、ほんとうにあほらしくてしょうがないですよ。(「やめちゃおうか」と呼ぶ者あり)ほんとうですよ。これはもうやめたほうがいいくらいですけれども、これは農家の人は真剣なんですから、やっぱりやらなきゃならないわけです。大臣、これはぜひあなたの考え方を、あなたおそらく農業関係知っているから、もう頭にきていると思う。ぴんと胸にこたえていると思うのだけれども、まあ食糧庁長官出したことですからね。こんなもの、それは部下を思うて言わないんでしょうけれどもね。そこ、長官もどうですか。私は、これはたいへん大きな問題があると思いますから、これ以上責めてもこれは何か、しょうがありませんから言いません。ばからしくなったですよ。だから、これは大臣生産者米価については、あなたの重大なこの政治的な決意をもって大幅な値上げをしなければこの罪の償いはできない。ぜせひとつその点について生産者米価の最終的なあなたの意見を聞かしてください。
  72. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 答えるんですか。
  73. 工藤良平

    工藤良平君 はい。大幅なひとつ値上げを、その責任においてやる……。
  74. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) どうも、罪とまで言われると私もどうもいささか困るのですがね。私も農民の代表として二十年間政治生活やってまいりましたから、三年間据え置きになった生産者米価、一方において生産調整やっているという非常に無理な事情はあるとは言いながら、どうせ上げるならもうちっと上げてあげたいという気持ちはあります、個人としては。しかし、先ほど来、こだわっているようですが、やはり食管法にもあります経済事情、いわば私どもとしては、今日の段階ではこの需給事情が一番大きな前提だと思いますから、これを無視してやはり私の立場でこの諮問案を出すわけにはまいらぬと、この私の苦しい立場も御了承いただきたいと思います。
  75. 工藤良平

    工藤良平君 あとは辻さんがやりますから、私は生産者米価の問題については、たいへん大きな問題は残りますし、まことに不満ですけれども、一応あと辻さんに譲りたいと思いますが、もう一、二点、実は消費者米価の問題について今度諮問がなされたわけでありますけれども、これについては、あまり多くを触れておりません。しかし、現在四月から物価統制令廃止されまして、米の流通が新しい方法で行なわれております。しかし、その米の流通というものがきわめてスムーズに行なわれておるということを農林省は言っておりますけれども、それは一体どういう形で行なわれているのか。千五百二十円という東京の場合に、標準価格米に比較をいたしまして一般に出回っているお米が一体どういう程度でスムーズに流れていると言っているのか。その点について私は、先日もお伺いしましたけれども、その点、現在、どうなっているかお伺いいたしたいと思います。
  76. 亀長友義

    説明員亀長友義君) まず、最初価格の面でございますが、私どもは物統令撤廃前の三月十四日、四月の撤廃後になりまして、四月第一週、五月第一週、六月、七月までずっと調査をいたしておりますが、現在のところこの値段にほとんど変化はない。月によっては若干上がることもあれば、また若干下がることもある。全体としての米価水準は安定をしておるというふうに考えております。もちろん、価格統制がなくなりましたので、たまにとっぴな価格というものがなきにしもあらずという感じもいたしますけれども、全体としては私は、米価水準は撤廃前とほとんど変わっておらない、かように考えておるわけでございます。  標準価格米の状況でございますが、標準価格米の販売数量は、私ども食糧庁米穀の消費動態調査、総理府の家計調査等から類推をいたしまして、現在、全国平均で見れば、家計調査で見ますと四二・六%、これは七月でございますが、大体その程度が標準価格米として買われておるようでございます。もちろん、都市と農村、また、同じ都市でも地域によってかなりこの四二・六を前後に変動があることも事実でありますが、その程度でございまして、これはちょうど物統令撤廃前の配給米の家計調査にあらわれた消費量とほとんど同様の傾向をたどっておるというふうに考えております。  なお、御承知のように小売り販売業者等の新規算入を四月一日から認めることにいたしまして、各都道府県知事の権限でございますので、大都市あるいは人口増加等指定区域における販売業者をふやして競争条件も整備するということでやっておりますが、七月二十日現在で大都市指定区域では千六百十四、人口増加指定区域では千二百六十四の新規に開店をいたしたものがございますが、大都市では、大体従来の米穀商に比しまして一割五分程度の新規算入があったというふうに考えております。現在、米価が安定しておりますが、新規算入で競争ということもあり、このような面からの価格の抑制という効果は非常にあったというふうに考えております。  なお、各都道府県に米穀流通適正化協議会というのを設けまして、消費者の方も入っていただいて、今後の流通の適正を期するという協議会の設置を各県に奨励をいたしておりますが、七月十日現在で北海道外二十四県ですでに設置をされておりますので、七月中には全部の県に設置されるよう目下各県を督励をいたしておるような状況でございます。  以上でございます。
  77. 工藤良平

    工藤良平君 物価統制令廃止後の状況、確かに千五百二十円の標準米——先般私がお聞きをしましたときからすると、あのときは五一%と言っておりましたから、四二・六%というと、標準価格米を食べる人がまた減った、こういうことになるわけですね。なぜかというと、結論はおいしくないということ、だれに聞いてもおいしくないと、こう言うのですね。私は、一等から四等米までの混米までつくって、なぜ、そんなにおいしくないのだろうかということをいろいろ調べてみました。  いなかのほうに行きましても、この自主流通米が十キロ当たり千九百五十円で売られているし、東京——私、昨日ずっと神田のほうから、九段のほうから米屋を四、五軒回りましたが、大体十キロ当たり二千円から二千三百円で売られておるようであります。で、いろいろ私、中に入って調べてみましたところが——ほんとうに抜き打ちに私はポロシャツを着て米屋さんの中に入ったわけですからわからないわけですね。聞きましたところが、ここへ持ってきておりますけれども、宮城県のササニシキには「自由米」の判こを打ってある。検査してありますね。あるのです。これは四等で、大体一俵九千三百二十円、福島、秋田のお米は、大体、福島の三等が九千四百五十円で、秋田の三等が九千三百二十円、こういうことで入ってきております。ところが、この自由米というのは、これは私が大臣に見せるまでもなく御承知と思いますけれども、こういう袋に検査して入っているわけですね。それで、これに「自由米」とちゃんと判を打ってあるのですね。私これを見ましたのです。これに「ササニシキ」という判をもちろんついてある。これはどこでついたか知りませんが、検査のときには、ここに品種名を生産者が書くことになっている。ここには「ササミノリ」となっている。これは出回り量からいたしますと、一・何%の出回り量しかない。あまりいい——比較的いいですけれども、ササニシキほどはないのですね。ササニシキは八%以上出回っておりますから、かなりの量なんですけれども、これは生産者は、同じマジックで書いてありますから、「ササミノリ」と、こう書いてあるのですけれども、これを線を引いて「ササニシキ」と書いて、ここに判がついてある。これがササニシキで、東京に出てきていわゆる自由米として売られているんですね。同じ店に入りますと、大体三分の二は自由米の判を押してないいわゆる政府米の米が玄米でそのまま積まれているんですね。これを結局は精米をいたしまして、いわゆる自由米ということで二千円なり二千三百円で売っていくわけなんですね。  私は、きょう、市場のずっとこれをとっておりますが見ておりますと、たとえば北海道産のものあたりは、四等で一俵当たり五千五百円から五千八百円なんですね。これを買ってくるわけですね。じゃないかと思うんです。あるいは、政府米の中で北海道産というものわかりますから、政府が七千五百六十円で売却をする。売却をしますけれども、北海道産については、いま言うように安い値段で出さなければ買い手がないということで、おそらくそういうものが標準米の千五百二十円のほうに回って、政府米のいいお米が二千円や二千三百円で売られるというかっこうができていると思いますね。しかし、それもいまの物統令廃止後においては二千三百円で売られようと二千五百円で売られようと問題はないわけですね。そういうことになっているわけですね。そうすると、七千五百円ないし七千六百円で政府が売却したものが、いま言う二千二百円とか二千三百円ということになりますと、一俵当たりに直すと一万三千円をこすわけであります。きょう消費者の方も見えていると思いますけれども、一万三千円をこすのであります。七千五百円で売却されたものが一万三千円で消費者に渡っている。たいへんな格差なんです。  ですから、物統令廃止後消費段階がきわめて複雑になっております。いろいろな米が出回っております、複雑になっております。この整理を一体どうするのか。私たちは、物価統制令廃止したからもう小売りが自由だ、こういうことで腕を組んで見ているかもわかりませんけれども、現実に消費者はそういうものをやはり買って食べている。それじゃ標準米を食べればいいじゃないかと言っても、これはまずいというレッテルを張られているわけでありますから、やはりそっちのほうにいくということで、根本的に大きな私は、メスを入れなければならぬ状態がきているのではないか、このように思うんですが、この点についてこれからの対策として——あまり時間がありませんから、私は、このことを一言ぜひ……。消費流通部門について確かに業者の新規開店というものは認められますけれども、それだけでこれらの問題が調整できるかどうか。これは亀井先生おりまして申しわけないと思いますけれども、ぜひ卸、小売りの関係とさらに消費者との関係、十分に私は、パイプを通じて万全の対策をとる必要があるんじゃないか。たいへんな事態になっているということをあなたは承知か。あるいは、大臣としてこの点に対するやはり検討なり十分にやらせるという必要があるんじゃないかと思います。そうしなければ、いかに私ども生産者米価あるいは需給の問題とか言ってみても、そういうような大きな格差が出ているということですね、この問題についてはだまっているわけにはいかないと思いますけれども、その点についての御見解をひとつ伺いたいと思います。
  78. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 私は、米の取り扱いは全くしろうとでございまして、専門家の工藤さんにお答えするのは釈迦に説法といいますか、逆に教えていただきたいと思っているわけなんです。  先ほど来、話があるように、最初標準米をつくるときに一等から四等まで合して縦に割ってやるんだというようなことで指導したようですが、私は、しろうとながらこれは無理だと思うんですね、実際。だから、いっそのことそんなら割り切っちゃって、五等米は、例の徳用上米でございますが、四等米でよろしいと、そのかわり安く売れ、こういうことにでも割り切ってしまえば安定するんじゃないか。だから、ある店へ行けば非常にいいものにありつくが、ある店へ行けば同じ標準米でありながら非常に品質が悪い、値段は同じだと。どうもおかしいように思いますんで、これは私ももう少し真剣に研究してみます。また、ひとつお知恵があったら教えていただきたいと思います。
  79. 工藤良平

    工藤良平君 その点は、ぜひ私は、実態を十分に把握をしていただいて、消費者に対する万全の対策を講じていただきたい。そうしなければ、政府が七千五百円で売ったものがその先にいったらもう野放しということで天井上がり。おそらくことしの秋はお米が足らないような状況になりましょうから、たいへんな事態が起こるんじゃないかと思いますが、ぜひひとつこれは大臣のほうで検討を命じていただきたいと思います。  長くなりましたが、最後に、これは話が違いますけれども、日米通商協議の段階で非常に大きな、農産物の輸入自由化の問題について問題が出ております。これは米価とは別の問題でありますけれども大臣としてこれは赤城農林大臣が非常に強力に自由化については反対してまいりましたから、簡単でよろしゅうございますから、大臣の決意のほどをお伺いいたしまして、私は質問を打ち切りたいと思います。
  80. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 私も実は選挙区が静岡県でございまして、果樹産地、特に温州ミカンの産地で、重大な関心を持っておりますし、かねて自民党の果樹振興議員連盟の世話役の一人でございます。赤城農政を踏襲するまでもなく、その気持ちでがんばっております。ただ、アメリカさんのほうもなかなかどうも強いようで、私ここにすわっておっても、箱根山から電話がきやせぬかと思って、実は内心心配しているんですが、農林省から出ております経済局長には、大臣の指示事項として、自由化などは絶対に認めてはならぬと、こう言ってありますから、何か危うくなればこっちに電話がかかってくると思っていますが、いまのところ朝からかかってきませんから、まあ、いまどうなっているのかよくわかりませんが、これは何としてもひとつ、特に総合農政——私どもは転作を定着させるためにもその行き先をふさいでしまうようなやり方は断じてこれは避けたいと、こう思っておりますので、今後ともひとつ御援助をいただきたいと思っております。
  81. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 私は、三十分しか時間を与えられておりませんので、簡潔に質問をしますので、答弁のほうも簡潔に、しかも、わかりやすくどうぞ答弁を願いたいと思います。  まず、二十四日から開かれておりました米価審議会から昨夜、農林大臣答申が出たようでございます。われわれもただいま配付になっておりますが、これを見ますと、生産者米価はある程度上げざるを得ないという大勢であったと書いてあります。ただ、その値上げ幅につきましては、諮問の試算程度で押えるべきだという意見と、こんなことではだめだからもっと大幅に上げろという意見があったというふうに書いてあります。また、消費者米価につきましては、抽象的でございますが、この答申案を見ますと、上げることもやむを得ないんではないかというふうに受け取れるような答申に書いておりますが、まあ消費者米価のことはまた時期が、何かもう一回諮問でもされますかどうか、差し迫ったことでもないように聞いておりますけれども生産者米価のほうは二、三日中に政府決定するのでありましょうから、こういう答申を受けて大臣はおそらく先ほど来、工藤委員からいろいろと質問等もありまして、こんな諮問のしかたはどうもおかしいと、正当に計算するならば、もっと大幅な値上がりの諮問が出るべきじゃなかったかというような質問等もございます。どうも私どもそんなような気がいたしますんですが、大臣は今後この答申を受けて、ここ二、三日中にどう決断されるつもりですか。まず、その点から伺ってまいりたいと思います。
  82. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) この答申を昨夜おそくちょうだいいたしましたので、けさ与党である自民党の総合農政調査会及び農林部会の合同部会に私も出席いたしまして、答申内容をつぶさに報告いたしまして、これで了承を求めたわけであります。党としては、小委員会をつくりまして、すでに審議に入っておると思いますが、小委員会で審議されたあと、まああすあたりその結論といいますか、どうこうせよという内容がきまるんじゃないかと思います。私どもは、米審答申もいただいておりますので、その方向で米審の御答申を尊重しながら最終的に政府部内で協議、決定いたしたいと、かように思っております。
  83. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 まあ、この点について議論すればこれだけで三十分過ぎてしまいますから、後ほどいろいろ具体的なことも質問いたします。その過程においても、それに触れてまいりたいと思いますけれども、これまた先ほど工藤委員からいろいろ質問があったようでございますが、食管法の三条二項の解釈のしかた「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と、こういうことになっておりますが、これは、具体的に今度は算出方法ということになりますと、三十五年以来、生産費所得補償方式というものをとってまいったわけでございますが、今日でもそのことをおとりになったというふうに先ほど来、答弁があるわけでございますけれども、実は四十年ごろからの諮問を見ますると、前の四十年から四十四年までですか、これははっきり「生産費および所得補償方式を基本とし米穀需給事情を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。」と、こういうふうに「生産費および所得補償方式を基本とし」と、こういうふうに諮問されておりますが、去年からは先ほど来、議論のあったように、本年度の需給事情に即応しとか、あるいは勘案しということになって、そのうしろのほうに生産費及び所得補償方式ということがつけ加わっておるようなかっこうでございますが、これはやっぱりいろんな事情で、先ほど来、大臣がいろんな事情を考慮した上、こういうことになったということでありますが、そうなりますと、去年からことしのこの算定方式というものは、すでに生産費所得補償方式ではないんじゃないかと、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)ないんならないように、もうはっきり(「賛成」と呼ぶ者あり)こういう事情になったんだから改めましょうと、あるいはそういう改められないんなら、その方式でやったらこうなりますけれども、政治的な情勢でこのぐらいしか上げられないんだからどうですかと、こういうことをはっきりしたほうが政府に対する信頼を得られるんです。政治的な信頼を得られるんじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  84. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 生産費所得補償方式の問題でございますが、生産費は先ほど来、工藤さんからもいろんな議論がございました。必要数量をとっておりますので、統計調査部のなまの平均数字とは違うというような問題がありますが、私どもは、ものの考え方のこれは相違になってくると思うのでありまして、政府食糧管理の責任を全うするために、必要な数量、その限界までの生産費及び反収等によってやっておりますので、その生産費という面はくずれてないと思います。  それから、所得補償方式でございますが、これは御承知のとおり、その土地、土地における農村の労賃をとらずに、米をつくるのに必要とした労働力を五人以上規模の製造業の平均賃金、これに置きかえているわけでありますから、それが所得補償方式でございます。ですから、これはやっておるわけです。ただ、通勤費だとかなんとかこまかい点で調整はいたしておりますが、これはいささかうしろめたい点もありますが、しかし、通勤費などは、正直に申し上げて私どもはこれはとるべきものだと思っております。むしろ今度のほうが正しいと私は、信じております。なぜかと言えば、これはなるほど勤労者が会社等から通勤手当をもらうことは確かですが、一応所得のように見えるが、実はこれは交通費でございますから、その勤労者の財布はトンネルで通ってっちゃうだけで、正式の所得とは私は言えないと思う。しかし、農業の場合は、自分の田畑に通うのは、これは作業時間に含んで計算されていますから、別段それ以外に通勤費をもらわなければならぬという理由はないんで、この所得補償方式は、通勤費はむしろはずすほうが正しいと私は思っていますから、まあ、いろいろな御批判はありましょうが、それは多少調整はいたしておりますが、その原因は需給事情でございます。その根本の認識は、これは見解の相違になりますが、ともかく生産費所得補償方式の原則は絶対にくずれていないというふうに私は考えております。
  85. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 この点、議論すればこれは果てしないことでございますから、これ以上追及はいたしませんけれども、しかし、常識的に考えて、ほかの統計調査部ですか、そこで調査したところによりましても、一〇何%か生産費は上がっておるということでございます。あるいはまた、後ほどまた質問いたしますけれども、去年の方式等でやれば一二・何%、これ以上上がるだろうと、こう言われておるわけでございますから、そういうあまり小細工をしたようなことをしないで、はっきりやはり常識的な——政治はやはり常識でなければならぬと思う、あまりわけのわからぬことをやると信頼を失いますから、常識的なものを出して、その上で相談をしましょうと言ったほうが私はいいと思うのです。どうぞひとつ、今後そのために法律がじゃまになるのなら、やはり法律改正すればいいのです。われわれ十分審議して、それに応ずるだけの用意はあります。どうぞひとつそういうふうにしていただいたほうがいかがだろうと思いますけれども、これは答弁要りません。  そこで、今回の諮問内容につきまして、ただいま通勤費のことがございましたが、この災害農家の減収率というものを二〇%去年までとっておったのを、ことしから一〇%以下のものは除外するという計算をしました。あるいはまた地代等は、これは統制地代、これは実際の地代をとるのが常識でないかと思いますけれども、これなども低いほうの統制の地代をとっておる。あるいはまた良質米の奨励金、これは去年出しました。今後もおそらくいい米をつくってもらおう、食味のいい米をつくれというようなことを宣伝し、奨励しておりますから、今後とも私はやはりこういうものをつけておくべきだろうと思いますが、こういうものもことしは、はずして計算をいたしておる。あるいはまた、去年いろいろな計算で少し下がり過ぎてしまったから、補正額ということで八百七十七円というものを加えたわけですが、こういうものも計算からはずしてしまった。そういう結果三・〇三%になったということですが、去年どおりの計算にしましたら幾らになりますか、三・〇三%でなくて何%上がりになりますか。
  86. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 去年どおりの計算に、私ども計算では五・二九%という計算をいたしております。しかし、補正額、これは私どもの考えでは、去年は計算価格が据え置きにするために八・百七十七円というものを足したわけでございますから、計算額が去年の据え置き額より上がった以上、この補正額というものは消えてしかるべきものだという考え方でございましたが、農業団体等はこれは依然として補正額というのを残すべきであるという御主張を持っておられます。  また、昨年六百十六円と申しますのは、良質米奨励金でございまして、昨年はこれを米価に組み入れるということでございますから、米価の中で支払っておるわけでございます。私どもは今度の米価でもその中で六百十六円は支払うことにいたしております。しかし、それを度外視して去年六百十六円と八百七十七円があったのだから、それは特別に積むべきだという計算をなされば農業団体等は二万三千八百九九十八円になる、これは一二・一七%になる、こういう計算をしていらっしゃるわけであります。
  87. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そうしますると、良質米奨励金、米品質改良奨励金を除き、あるいは補正を除いても五・二九%去年どおりの試算の方法ならばアップすると、こういうことですね。  それから、さらに良質米奨励金と米品質改良奨励金、さらに去年の補正額を入れれば一二・二%ですか、それだけアップするということですね。これらを除かなければならない理由はありますか、ことしは。
  88. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 去年の八百七十七円という補正額は、据え置き米価にするために、計算上出てきた価格に足して補正額にしたわけであります。その前の年にもやはり十五円と五円という補正額がありました。計算が変わった場合に、それによって前の年と米価が上がる場合には、補正額というものは、いわば調整額でございましたから、当然それは新しい高い米価のほうに吸収されるというふうに私どもは考えておるわけでございます。それを残すと言いましても、八百七十何円は去年の計算上出た米価と据え置きにするための差額でございますから、根拠としては何もないわけでございます。あくまで調整額であったということでございます。  それから、六百十六円の奨励金のほうは、昨年米価の中に繰り入れるということで昨年の米価の中に入れて一等、二等、三等にそれぞれ払っておるわけでございますから、私どもの今度の諮問米価におきましても、それは二万一千九百五十一円の中で支払うという計算をいたしております。でありますから、その上にまた六百十六円積むというのは、どうも筋道としては私はよくわからないのでございますが、それぐらいの金は金額として何かあげなければいかぬと、こういうふうなお考えでそういう計算をなさっておられるのだろうと思います。
  89. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そうすると、良質米奨励金ですか、米価についてお払いしたというのは。そうすると、ことしもそれを払ってくれるのですね。
  90. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 現在の諮問案米価におきましても、昨年どおり支払うという計算にいたしております。
  91. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 まあ、そういうものを支払い、それから補正額というもの、これは据え置きになるためにマイナスになるからそれだけ払ったのだと言われるのですが、もうそういうものは、農家としては去年の米価のうちだったと、既得権だったと、こういうふうに理解しているわけですね。ですから、これをはずすということになると、それだけやっぱり差し引かれることになりますから、やはりこれは去年の米価だというふうな考えのもとに、その上にいろいろやっぱり物価事情なりあるいは労賃の動向というものを考えてことしの米価というものは、私は、きめなければならないでないかと思います。  まあ、私、事務屋でないからあんまりこまかい計算を言われるとわからなくなるし、ごまかされる危険もありますが、大臣、ひとつどうですか、やっぱり一般の世論としては三年も据え置かれた、まあ去年少し上がったかっこうになっておるのだが、三年も据え置かれたから、ことしあたりはどうしても二けたの値上げはしてもらわないとおさまらないぞと、こういうような意見ですが、いろいろこの試算内容等を検討いたしますと、やっぱりそういう理屈も一方では立つようです。ですから、そこでひとつ、大臣は政治家ですから、ここらで三年も据え置いたのだからひとつ一〇%以上、二けたぐらいは上げてやるぞというような気持ちにはなりませんか、どうですか。
  92. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 去年は、形の上では三%上がったことになっていましても、実際はどうも〇・七%ぐらいなもので上がったとは言えないわけで、したがって、私どもは三年据え置き、据え置きと言っておるのです、ちびちびした話をしてもいたしかたありませんから。おっしゃるとおり三年事実上据え置きになった、諸物価も上がっておる、ベースアップ等で生活の向上した人たちもおる。一方米作農民だけは指をくわえて見ておるというわけにいきません。赤城農林大臣は、昔、村長なすった方で、農民に対する深い愛情から、おれはもうからだ張っても今度上げるんだとおっしゃって、ああいう線を出していただいたおかげで、私も、わずか三・〇三%でございますが、引き上げの方向で諮問案を出し得たことは、自分としてもうれしく思っております。結末はどうなりますか、これは、私、微力ですべての決定権がございませんから、最終的には田中内閣の責任において協議、決定すべきことでございますから、この点はひとつ、いまここで言明できませんが、お気持ちはよくわかります。
  93. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 農村の事情をよく理解しておる大臣でありますから信頼をいたしておりますけれども、赤城農林大臣農民から信頼されて、その赤城農林大臣が、衆議院なり参議院の公式の場で、ことしは値上げせざるを得まいというようなことをたびたび言明をされております。したがって、農民はおそらく希望に近い値上げをしてもらえるだろうというふうな期待を持っていたと思うんですが、三%なんというようなことでは、これは値上げでなくて、ごまかしだというふうにとられます。したがって、赤城農林大臣の方針を踏襲されるという足立大臣も、ぜひひとつそういう一般農民の世論をおくみ取りいただきまして、先般、佐藤内閣退陣のときなどは、東京瓦斯の値上げ三二%からの申請に対して二〇%ぐらいばたばたっと値上げ認可した例もありますから、まあ一〇%ぐらいのことは、農民にぜひひとつあたたかい気持ちで御配慮を願いたいと、お願いだけ申し上げておきます。  次に、消費者米価についてお尋ねしますけれども、この答申におきましても、若干の値上げはやむを得ないようなにおいのする答申でございます。しかも、また、逆ざやになっておるために、財政負担、三千何百億かまあ繰り入れなきゃならぬと。そのために、生産者米価の値上げの一つの障害といいますか、そういうことになっているようにも見られます。そういう点から考えますると、消費者米価がかりに一%上がった場合にどうなるかというような試算を実はしてもらったのでありますけれども、一世帯にして一カ月——三・八八人だそうです、家族員が。一カ月で三十二円八十九銭ということだそうでございます。それから、一人一カ月にしますと八円四十八銭、一人一日当たりにすると二十八銭——二十八銭という金はいまありませんけれども、こういうようなあれだそうです。  それから、三十年以来の実は家計費、あるいは消費者物価、消費者米価等を私、調べてみたのでありますけれども、家計費においては、三十五年を基準として四十六年、まあ十一年ですかになりますと、三三一・五%になっております。消費者物価は、その間一八七・六です。それに対して、消費者米価は、御承知のように、一七七・六。一般の消費者物価のほどは上がっておりませんし、家計費の膨張のように上がってはおりません。したがって、家計費の中に占める米支出の比重というものは、三十年において一二%であったのが、今日ではもう三・六%だということでございますから、これは農家がそうして苦労しているんだから、まあ一日一人当たりにすれば、わずかに二十八銭、一カ月にしましても八円四十八銭、あるいは一世帯にしても一カ月三十二円ばかりで、これはほんとうのごくわずかなものですから、こういうものは、かりにこれ一〇%上げたって三百二十八円です。一カ月一世帯で三百二十八円、これはたいしたもんでないと思います。ぜひひとつ消費者の理解をいただくようにして、これが生産者米価の値上げの障害にならないような配慮をしていただいたほうがいいんじゃないかと思いますが、御意見はいかがでしょうか。
  94. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 鈴木委員からたいへんありがたいおことばをいただきまして、私個人としてはうれしく思いますが、なかなかやはり消費者米価というのを手をつけるには、これは相当な勇気が要るわけでございまして、おっしゃるとおり、四年間消費者米価は据え置きになりましたが、その間、公共料金その他ずいぶん上がっています。昔は、米価を動かすと、それが波及効果を及ぼして、ほかのものがどんどん上がるので米価は絶対動かせないと、こういうので、消費者米価に手をつけることは、一種のタブーのようになっていましたが、実態は非常に違ってきたということ、いまおっしゃるとおり、家計費に占める地位といいますか、率が非常に低くなってきたということは事実だと思います。  ところが、正直に申し上げると、三・〇三%の諮問案を最後にまとめる段階で、政府部内では両様の意見がございまして、私ども農林省としては非常に苦しんだわけであります。まあ、どこがどう言ったということは避けますが、ある省では、逆ざやを解消するという決心が農林大臣にあるのならば、生産者米価を少々引き上げることは認めましょうと。財政負担、ともかくこの際あの重荷をしょったんでは、農政のみならず国政全般に及ぼす影響もあるんで、ひとつこれを解消してくれと、こういう注文がつく。一方、ある庁では、消費者米価は絶対上げてもらっちゃ困ると。消費者米価を上げないという約束ができるんならば、生産者米価を少々上げることは目をつぶりましょうというんで、それじゃ私もやりようがないと、こういうことで、開き直っていろいろ談判をして、ようやく三・〇三%を認めさしたという経過があるわけでございまして、なかなかこれむずかしい問題でございますが、いま鈴木委員のおっしゃること、実は米審の各委員意見開陳、その中にも、いまあなたと同じような意見が相当多数ございました。だれがどういうことを言ったということは私、申し上げられません、これは非公開でございますから。ですが、私ずっとメモして聞いていましたが、もうこの辺で少なくとも末端逆ざやは解消しないと、農政も何にも進まぬじゃないかと、こういうずいぶんハッパをかけられるような意見もございました。  まことにありがとうございました。御趣旨はよくわかりますから。——まあしかし、そうかといって、消費者米価をすぐ上げるとかどうとかいうことは私、申し上げませんし、また腹をきめたわけでもありませんし、そう簡単なものでないということは、いま申し上げた政府部内の空気でもおわかりいただけると思うんで、私も非常に苦慮しておりますので、今後ともひとつ激励をいただきたいと思います。
  95. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 次の問題に移りますが、総合農政をやっておるから米価は上げられないんだと、これはやっぱり考えなければいかぬというような意見がかなりあります。しかしながら、現在の総合農政というものを悪口を言うわけではありませんけれども、これからやっぱり、米が過剰であるならば、必要な肉とか、あるいはその他の畜産物、あるいは園芸作物等を伸ばさなければならぬと思います。この点については、予算的に見ますと、まだ、私の調べたところによりますと、依然として畜産関係では、農林予算の一兆三千億に近い予算の中で、畜産物はわずか三%ぐらいじゃないか。あるいはまた、野菜等は四%ぐらいじゃないか。大部分やっぱり米、しかも食管繰り入れとか、あるいはまた生産調整とか、うしろ向きみたいのことに金を使われております。ただ、農業生産基盤の整備、これにはかなりの金を使っておりますけれども、しかし、これにしましても、大部分が、米の増産のためのような土地改良をやっているんじゃないかと思います。こんなことでは、やっぱり総合農政といっても、依然として米に片寄った農政になり、補助を打ち切った場合には、また米に戻っていくというようなことになって、決して転作というものは定着しないというふうに私、考えます。  それで、時間もありませんから、結論だけ大ざっぱに申し上げますけれども、たいへん使っておりますこの基盤整備、土地改良の仕事の内容をひとつ農林省で思い切って検討してもらいたい。日本の五百万町歩ですかの土地のうち、三百万ちょっとが水田ですか、これをいままでのような、依然として稲をつくるための土地改良だけやっていたのでは、やはりこれはいまのような農業状態が変わっていかない。日本の農業をこの際、思い切ってほんとうに総合農政をやるならば、米と畜産と園芸作物、三本立になるような農業にする。それにはたんぼの基盤整備というものを、いまのような単に稲を植える基盤整備でなくて、これを一メートルぐらい排水を下げて、いつでも畑に使えるような基盤整備をやってもらわなければならぬと思います。そしてそこに私は具体的に提案いたしますけれども、牧草をつくらせる。牧草だって西南暖地に行けば、二十トンぐらい取れます。乾燥にして四トン、現在買っておるのが大体キロ三十円、三十五円ぐらいです。そうすると反当十万、十二、三万になります。まあ、そんなに取れないと農林省の技術者で言う人もいるかもしれませんけれども、取っている人もあります。稲のように草も研究していけば必ず取れますから、そうして三年ぐらいは五十万町歩とか、あるいは六十万町歩とかというものは、常に牧草を植えさして、そうして稲作との輪換、ローテーションをやらせる、こういう農業をやらなければ、私はいつまでたっても、これはいまの農政はだめだと思う。そういうことをひとつ、総合農政、総合農政と言っても、ただ上っつらのことをやらないで、そういった掘り下げた総合農政を検討していただきたい、かように考えます。そうしなければ、五十年になって補助をなくした段階で、また、みんな米に戻って、同じような騒ぎを毎年しなければならぬと思います。これは時間もありませんから、提案だけにしておきます。どうぞひとつ大臣、在任中に部下を督励して、そのくらいのひとつレールを敷くぐらいのことはやっていただきたいと思います。  それから、最後にひとつお伺いしたいことがありますが、これは大臣が就任直後各新聞社からインタビューを求められて抱負を述べられたようでございますが、その中に各新聞にも出ておったと思いますけれども、朝日新聞を持ってまいりましたが、食管制度というものをある程度メスを入れるという談話が出ております。朝日を見ましても、食管制度に手をつけるお考えのようだが、それに対して、「ともかく、今の米の制度はウソだらけというといい過ぎだが、形がい化している。食糧管理法のうえでは、米は配給制度になっているが、だれが配給通帳で買っていますか。制度と実態が、こんなにかけ離れているのはおかしい。こんな統制を続けているなんて世間が納得しませんよ。米の統制はやめて、価格保証制度に切替えます。」「食糧管理法廃止するんですね。」「廃止というか、実態にあった制度をつくるんだね、食糧庁長官から」云々と言っておりますが、とにかく新聞の記事、あるいはインタビューですから、意を尽くしていない点もあろうと思います。しかし、これを見た農民というのは、非常にショックを受けたのではないかと思います。この米の過剰時代にいろいろと食管制度の根幹を守ると、前内閣、あるいは前々内閣がたびたび言明されたにもかかわらず、なしくずしにいろいろ自主流通米であるとか、あるいは買い入れの制限であるとか、物統令の適用の廃止であるとかやってきて、外堀を埋められたという感じを持っている人もある。いよいよ今度は本丸に火がつくかと、こういう何かの新聞に出ていたような記憶もございますので、まさか大臣そういうお考えではない、まあ悪いところだけ直して農民に心配のないようにするというお考えのようでありますけれども、この際、ひとつ農民にあまり心配、動揺をさせない意味でも、真意のほどを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  96. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いま鈴木さんから最初にお話のあった田畑輪換対策といいますか、これはすでに農地局でも取り上げておりまして、四十六年度に圃場整備事業の中で五千三百ヘクタール、要求に従って田畑輪換ができるような土地改良、圃場整備事業を認めております。四十七年度の予算では五千九百ヘクタール、若干ふやしまして、おっしゃるような目的を達するように——したがって、この輪作の種目としては野菜、飼料作物、豆類、そうしたものを対象にして計画を練ったものを認めているわけでございます。  それから、最後のお話の食管の問題は、私、就任早々当日、認証式を終えた当日の夜、農林省で合同記者会見をやりまして、これは一般記者等と団体紙と二回、二時間余にわたりまして記者会見をいたしました。そのときに質問が出ましたので、私の日ごろの感じを率直に申し上げたのでありまして、それは食管制度というのは三十年の歴史を持っておる。で、これが歴代大臣も、ことばで触れることさえもタブーになってきておる、私は、これはとんでもない話だと、こう思っておるんです。つまり現在、食管制度において農民も安心している、消費者も安心しておる。その事実は私もそのとおり認めますが、すでに形骸化しておる、法律はりっぱな法律があるが、形骸化している部分も相当あることは、国民周知の事実である。これは法治国家としていかがなものであろうかという考え方を率直に訴えたわけであります。これは法治国家でありますから、法を守らなければ処罰されるわけですが、みんながほおかぶりしていたんでは、これは順法精神にも影響する問題だと私は思っているから、皆さんでひとつ知恵を出していただいて、すっきりと守れる制度に直りませんでしょうかと提言をしたわけであります。ですから私はこうしたい、ああしたい、食管をぶつつぶしてしまう、あるいはこうするんだというようなことを言ったわけではございません。新聞によっていろいろな扱い方をいたしておりますが、やれ間接統制だ、やれ統制撤廃だ、いろいろなことを言っておりますが、私は、もっとみんなが守れる制度、法律に書いてあるとおり守って、農民も消費者も安心できるような制度に切りかえることはできぬだろうかという提言をしたのでありまして、これは幾らでもひとつ御意見があれば教えていただきたいと、こういうオープンで話をいたしました。  それから、このことについて皆さんに御理解願いたいと思っておるのは、従前でございますと、いやしくも大臣と名がつく人間が、何か政策上の問題で口を切ると、これは非常に影響するところが大きいというので、みんな慎重を期しまして、何か新しいことをやろうとすれば十分根回しをし、十分準備をし、いわば陰にこもったようなやり方をして、ときには横のほうへちょろっとアドバルーンを上げてみて、気流の動きを見るというような手の込んだことをやってきたのが従来の例でございますが、田中内閣は今後政策上で是なりと信じたことは、ひとつ大胆に国民に提言をしよう、そうしてなるべく国民のコンセンサスを得るように努力しよう。しかし、最善の策がとれない場合には、やはりタイミングを失したんでは政策は死んでしまうので次善の策をとります。私は、そのときには決断と実行でやりますというのが田中総理の公約でございますので、私も田中内閣の一員として、長年にわたっていまの食管制度の中で非常に目に立つ守られていない面、こういう面はすっきり法治国家としてあるべき姿に直していきたいという気持ちがありましたから、そういう提言をいたしたのでありまして、自分でレールをしっかり敷いちゃって、もうてこでも動きませんよと、これでいきますよと、そんな腹黒いことを考えたわけではありませんので、どうか従前の例と違うということを御理解いただきたいと思うのであります。
  97. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま食管の問題が出ましたから、これひとつ先にお尋ねいたしたいと思います。  前に、赤城農林大臣生産者米価を上げる、消費者米価はできるだけ据え置きたい、そのために逆ざやで赤字が出ても、その赤字は社会保障費として考えるべきである、こういう考え方を記者会見、新聞等にも出しておりましたが、まず私、足立農相に、この赤城農相の食管制度に対する考え方ですね、これをどうお考えになるか、お伺いしたい。
  98. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) その点は、私は、いささか考え方が違います。現状におきまして二重米価になり、末端においてさえも逆ざやが出ておる。その事実は、食生活安定という一種の社会保障的な役割りを果たしておるということは認めます。しかし、本来そういうやり方で社会保障をやるというものではない、現状は社会保障的な役割りを果たしているが、それが本来の社会保障の目的手段の一つではないというふうに私は考えておりますので、でき得べくんば、少なくとも末端逆ざや程度は、さっき申し上げたように、米審でもそういう強い御意見がたくさんございましたが、でき得べくんば、末端逆ざや程度は解消したいという気持ちは私の気持ちの中にあります。しかし、すぐこれはできるかといわれると、なかなかこれは消費者米価というのは波及するところが多うございますから、そう軽率にはできませんが、私の気持ちは率直に申し上げて、以上のとおりであります。
  99. 辻一彦

    ○辻一彦君 日本の経済がいままでこれだけ大きくなって安定してきた要因、これは幾つかあると思う。しかし、一つは、農民の暮らしが曲がりなりにもこの食管制度によって米価がささえられて、何とかやってこられたと、こういう農村のある意味の不十分ではあるが安定性と、それから多数の消費者がこの二重米価によって、安んじて安心して主食が確保できたという、この社会的な安定性、この二つが戦後の日本の経済を私は、大きくささえてきたと、こういうふうに思いますが、そういう役割りを食管制度は果たしてきた。言うならば広い意味の、これは米審においても桑原委員も言われておりましたが、広い意味の民生安定費というか、社会保障費というか、そういう考え方で私は、この食管制度の根幹というものは、これははずしてはならぬと思いますが、重ねて大臣の見解を伺いたいと思います。
  100. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) よく以前から政府の管理費その他役人の月給などは、政府で持てばよろしいということを、私はずうっと以前に米審委員を四年ばかりやったんでありますが、ということは言われました。しかし、コスト逆ざやという面からすると、いまばく大な逆ざやが出ているわけでございまして、現在は末端逆ざやさえも出ているんですから、府政の管理費どころの騒ぎじゃないんであります。それが食管法規定をそのまま読めば、二重米価を是認しているんだから、どこまでも幾ら逆ざや出てもかまわないとおっしゃる議論は、議論としては承りますが、実際問題はどういう結果をもたらしているかといえば、やはり政府の中で、私ども農政費、いま幾らでも金がほしいときで、新しい政策もどんどんやりたいのですが、なかなかこの食管の赤字が重圧になりまして、思うようによかないという問題と、一つは皆さん方は生産者米価を上げろ、上げろとおっしゃるが、それは理論は二重米価でけっこうでございましょう、御主張は。しかし、実際は生産者米価のほうにおもしがかかって、なかなか生産者が期待するような生産者米価が実現できないというのは、やはりこの末端逆ざやにあると私は、思っておりますので、まあある程度の逆ざやは私どももいままで是認をしてきたわけですから、それが同時に食生活の安定、国民生活の安定に役立ったという効果も認めますけれども、これは極端になることは避けるべきだと、こういう考え方を持っております。
  101. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、私もどんなことがあったって上げるべきじゃない、そういう無理なことは言ってない。しかし、先ほど鈴木委員からもお話がありましたが、大臣の記者会見におけるこれを見ますと、新制度のほうは生産者側ですか、このほうは食管制度の面は残したいと、あなたのおっしゃる内容にありますね。しかし、流通の面では、もう非常に違っているのだからこれははずしたいと、こういうことがここに出ておりますが、これは違えば別ですが、食管の根幹というものは、片方では生産費が補償され、農家の暮らしの安定と再生産確保できるような米価をきめるということと、もう一つは、片方で消費者の家計に圧力を加えない、そういう米価をきめるという二つが大事な点と思うのでありますが、もしこの新聞に——これは日経の九日のでありますが、ここに出ているとおりであるとすれば、片方をはずしてしまう、自由にすれば、これは食管の根幹は、私はくずれてしまうと思いますが、大臣のお考えになっている食管制度の根幹というものは一体何か、この点ひとつお伺いしたい。
  102. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いままでずいぶん歴代大臣が国会で根幹とは何ぞやというので質問を受けて困っておったのでありますが、私は、その根幹とか何とかいうことを前提にして記者会見でものを申したのではないのでございまして、現在の制度で農民もこれを頼りにしておると、それは実態は何かといえば、時代の変遷によってこれは生産者米価価格保証、これがどこから見ても安心できるようなしっかりとしたささえがあって価格保証が行なわれるということならば、現在の食管法があると同じような安心感が与えられるならば、農民はその新しい制度を、私どもが考えたとかりにしました場合に、それに賛成してくれるであろう、農民が賛成しないような制度を押しつける気はないということであります。  それから、流通のほうは、いまほとんど事業上自由化されておりますが、ただ考えなきゃならぬのは、いま標準米で一つの消費者に安心惑を与えてますが、あの日は何せ農林水産全般についての矢つぎばやの質問でございまして、そんなに落ち着いて説明をしているひまもございませんし、私もモーニングを着たまま答弁をしたのですから、まあ、ある程度農政には経験持っていますが、そう一から十まで的確な答えはできませんので、舌足らずの点もございました。つまり消費者のほうは、ほったらかしだというふうな印象を受けるような記事があるとすれば、私の本意ではございません。また、新聞社によってもずいぶん内容の伝え方が違っております。その点は、ひとつ私がさっき申し上げたように、鈴木さんに申し上げたとおり提言をしたのだと、皆さんのお知恵をお借りしたい。まあ農林省でも米穀管理研究会というのがございまして、中間報告も出ておりますから、これはりっぱな日本で一流の学者あるいは学識経験者、そういう方々が熱心に御検討くだすっておりますから、今後そういう方々の御意見も伺って、どうすれば、いま私が申し上げたように、食管法の中で事実上守られてない——はっきり申し上げれば形骸化した点を取り去っても、農民も消費者も心配はないというような制度ができるか、これを一つ検討してみたい、かように思っておるわけで、こうするという具体的な案がきまって申し上げているのではない。決してこれは弁解じゃありませんから、御理解をいただきたいと思います。
  103. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、ほかに米価の問題がありますので、深くはこれ入りませんが、要するに根幹は、この再生産確保生産者の価格の安定と、それから消費者価格の安定のその二つだけは、しっかり守っていくということと理解していいですか。
  104. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) けっこうです。
  105. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、先ほど工藤委員からも意見が出て論議がされましたので、私はこれに長く触れる考えはありませんが、食管制度の一番大事な点がこの再生産確保と、それを補償すると、こういう点であればやはりこの諮問案の一にも出されている順序というのが私はやはり逆じゃないか、そしてそれは私、夕べも米審の会場におりましたが、廊下で聞いた話では、ほぼこれと似たような答申の前文が、前書きがあった。これは非常に問題があるということでいろいろ論議をされて削除されたと、こういうことですが、私は、どうも大臣の考えの中に需給ということですね、生産調整、このことが頭にあって、そしてこの食管法の一番大事なポイントが先にこなくてはならぬのがあとになっている、こういうように思うのですよ。  そこで、まず伺っておると需給関係生産調整をやる、そういう場合ですね。農家に休耕費や転作奨励金が出される、これを何か恩恵のようにお考えになっているのじゃないか、農民にとっては二町歩たんぼをやっておれば三反歩休まなければならぬ、草をはやさなければいかぬということは、休耕するにしてもたいへんな私は、犠牲なんです。そういう中で、何か片方で恩恵を与えておるのだから米価のほうはいいではないか、こういう考え方がどうも私は、ちらちらするように思うのですが、その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  106. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いまのお話は、実はとんでもないお話でございまして、生産調整、特に休耕なんていうばかげたことは、私はやりたくないのです。ただ、はっきり申し上げれば背に腹は変えられない、当座の対策として来年までは御無理だけれども農家に御協力願って、何とかこれをやり遂げて需給の調節をはかろう、一日も早くいままでの過剰生産の分であったものは、これは五十四万ヘクタール転作していただければ、一応つじつまが合うという計算がいま政策を進めているわけですから、その転作を定着さしたい、かように思っております。  私は、実はきょう農地局長にも指示したのでありますが、私のいなかなんかにもよく見かけるのです、つまり村へある程度休耕の割り当てがきますと、それぞれ部落へ割り当てる、協議の結果。山の間の冷や水の出る反収の低いたんぼを人身御供にあげるわけですね。皆さん御承知のとおり、これ二年休耕してごらんなさい、もう手がつけられませんよ。豊葦原の瑞穂の国になってしまいまして、私よりもせいの高いようなアシの木が一ぱいはえてしまいまして、これは二度と耕地になりません。ですから、これはひとつ国として罪滅ぼしというと語弊があるが、せっかくいままでの美田とは言えないが、ともかく国民食糧をささえてきた水田をこんなにしてしまったのは、これは国も責任があるので何とか周囲の山をくずして、新しい畜産団地をつくるなり果樹園をつくるなり、あるいは花をつくるなり茶園をつくるなり、そうした小規模な、たとえそれが三町歩ぐらいな狭い地域であっても、きめこまかなひとつ補助対象にしてそのあと始末をつけようじゃないか、こういう話をきょうも農地局長に指示したのでありますが、私は、それくらいに考えておりますので、生産調整をやったからこれを恩に着せるなんていうのはとんでもない、全く逆でございますから、どうか御理解をいただきたいと思います。
  107. 辻一彦

    ○辻一彦君 それじゃ、やはり先ほどの問題に戻りますが、出された諮問案にしても、まだ私は「生産費及び所得を考慮して決定することにつき、」という、これを少なくも先に出して、そして計算どおりやれば、合理的に計算すればこうなるが、しかし、生産調整中であるからこれぐらいでがまんしてほしいとか、こういうことであれば私は、わかりますよ。しかし、大臣の言われることが本意であるならば、少なくともこの順序のとらえ方というのは私は、違っていると思いますが、その点どうですか、重ねて。
  108. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) また最初工藤さんの質問に戻って私も困るのですが、これは私がにわかに大臣になったからこういう文書諮問したというのではない。前からの諮問案を私は、むしろ若干やわらかくしたつもりなんで、私の気持ちは、御理解をいただきたいと思うのです。ただ、さっきも申し上げたように、それほど無理をして生産調整までやって需給の調節をとらなければいかぬほど過剰基調になっておる、その経済事情というものは、米価算定にはどうしても無視できない、こういろ私の立場もひとつ御理解をいただきたいと思います。
  109. 辻一彦

    ○辻一彦君 では、いま過剰基調という大体御発言があったのですが、実際に四十七年、四十八米穀年度を見て、現実に米の需給関係がどういうふうになっておるように見通しを持っておられるか、これをひとつお伺いいたしたい。
  110. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 需給数字的な問題、ひとつ長官から答えさしていただきます。
  111. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 四十七米穀年度の需給事情について申し上げますと、御承知のように四十六年産米は、作況指数九三という異例の不作でございましたので、私ども当初の古米百万トンを持ち越して、毎年度は必要な数量をつくる、それ以上は生産調整をする、こういう原則的な考え方は、持ち越し数量が二十五万トンに減ることに相なりました。もちろん、これは何ら配給上支障があるというわけではございません。百万トンの余裕をもって年度を繰り越すという方針が、今年度のは四十六年産米の不作で在庫数量が減ったということでございます。この十月、十一月の端境期の操作としましては、新米が大体十一月の一日には例年最低二百万トンから三百万トン、その辺の問の新米が入ってくるわけでございます。従来は、新米は十一月一日以降において配給をいたしておりました。したがって、新米を全然食わないで十月の末まではなお二十五万トン残ると、こういう一応の計画でございます。さらに四十八米穀年度は、御承知のように四十七年産米は七百七十万トンのほかに、在庫造成用として二十五万トンの増加買い付けを予定しておりますので、これがそのとおり達成をされれば四十八米穀年度の終わりには、四十九米穀年度へ繰り越す四十七年産米、前年産米は五十万トン減にと復元をする予定であります。もちろん、これは百万トンに一挙に修正をするということは、本年度の作柄が非常にかりに豊作であったという場合には、過剰という懸念もございますし、生産調整を大幅に変更するということも、これは考えるべきでありますから、若干の調整をしながら百万トンに持っていきたいという考えでございます。  そこで、私が申し上げましたのは、一応平年作という前提でございますから、生産調整の数量あるいは天候等によっていま申し上げました計画に若干の変更が生ずるということは、これはやむを得ないことでございます。天候の程度等については、非常に予測しがたい面もございます。また、生産調整につきましても、いま出ております数字がそのとおり、結果的になるかどうかというような問題もございますが、いずれにいたしましても、この端境期の操作というのは、前年産米の在庫と新米というものによって十分私どもは対処できるというふうに考えておるわけでございます。もちろん、古々米はございますけれども、一応これは古々米は配給の用にいまのところ供する必要がないという前提で考えております。そのような操作で私どもは十分対処していけると、かように考えております。
  112. 辻一彦

    ○辻一彦君 いまの御説明では、四十六年産米は今米穀年度の終わりに二十五万トン、来年度は七百九十五万トンが確保されれば、四十七年産米五十万トン在庫で確保できる、こういう見通しですね。  そこで、生産調整のいま状況を見ると一一二%というのが達成されておる、あるのです。二百十五万トンに対して一一二%ということは、大体、数量で計算すれば二百四十万トンになる。いわゆる二十五万トンが予定したよりも多く生産調整が行なわれて、いわゆる減産に、減収になっているわけですね。そうすれば、年度の、来年度の米穀年度の終わりに五十万トン予定される在庫が二十五万トンふえれば、この見通しは成り立たないと思いますが、この点どうですか。
  113. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 生産調整のほうがいま報告されているような数字のとおり達成されたと仮定をいたしますと、御指摘のようなことになります。もちろん、それが直ちにこの端境期の操作にどの程度の影響があるかということは、別問題でございます。私どもは新米の集荷等によって、もちろんこれは非常に過剰の事態とは、食糧庁の操作はかなり忙しくなりますけれども、消費者に迷惑をかけるというようなことはあり得ないと考えております。
  114. 辻一彦

    ○辻一彦君 生産調整がそのとおり行なわれたとすればと言われますが、農林省はこの十四日に六月三十日現在の調整実施計画によると、生産調整数量二百四十一万トンが一一二%上回っておると、こういう発表しておりますが、行なわれたならではなくて、六月三十日現在で行なわれているという事実があるじゃないですか。その点どうですか。
  115. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私は、それは農政局が各都道府県から生産調整の実施報告を聴取したものでございまして、もちろんその中には、一例を申しますと、いわゆる青刈り飼料に向けるのか米を収穫するのかどうかというような例もあり、そういう判断のところもあるわけでございまして、昨年の例を見ましても、昨年の現時点における報告と実際の金を払ったものとの間には若干変動がございますし、多少の異同はあるのじゃないかというふうに思っております。
  116. 辻一彦

    ○辻一彦君 青刈りなんて、これは青刈り刈ったって減反分に入るわけでしょう。青刈りで刈ったって、減反の場合は同じでしょう。  そこで、この十四日の報告によれば、それは農政局が発表したのだから別だとおっしゃるけれども、同じ農林省のかさの下だから、これは農政局が発表すれば食糧庁数字なんですよ、少なくも。この調整の問題については違うのですか。
  117. 亀長友義

    説明員亀長友義君) もちろん、農林省数字でございますけれども、それは昨年の例を見ましても、いま現時点における報告と実際の金を払う場合とでは、若干異同が昨年もございましたし、実際問題としてあり得るかもしらぬということを申し上げているわけでございます。青刈りの例を申しますと、青刈りする予定のものがそのまま米を収穫するというようなことに切りかえた場合には、奨励の対象にならないというようなものもあるわけでございます。
  118. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、若干の、数字はそれはぴしゃっといかぬから、天候もあるしいろいろあるのだから、それはわかりますよ。しかし、大筋として一一二%、一二%オーバーすれば、生産調整が大体二十五万トンに面積等から計算してなる。そうすれば、大まかな目の子算でいけば、あなた五十万トン来年の米穀年度の終わりに残るといいますけれども、二十五万トンが生産調整のオーバーによって明確に足りないということになれば、これは五十万トンじゃない、二十五万トンになるのじゃないか、その点はどうなんですか。
  119. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 生産調整が、大体いま数字が出ておるようなことで終われば、御指摘のようなことになります。これはいろいろ一般の作柄とも関連をいたしますので、結局、私どものほうから申しますれば、生産調整の達成率、天候の豊凶というようなものがいろいろ両方の要因で出てくるわけでございますけれども、いま先生のおっしゃるようなことで、それを前提に試算をすれば、おっしゃるとおりの数字になります。
  120. 辻一彦

    ○辻一彦君 それは天候は、豊作になる場合もあるし、凶作になる場合もあるし、凶作になったらたいへんなことになるのですよ。少なくともいま平年作を前提にしての論議ですね。そこでランニングストックといいますか、やはり米穀年度の端境期において調整をするというか、操作をするために、大体米は日本の場合、ストックは幾ら要るんですか。
  121. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 御承知のように、昔と違いまして、非常に米の出荷が米穀年度の当初よりも早くなっております。いまの十一月一日という米穀年度がはたして現在も正しいかどうか、われわれ伝統的に継承してそういたしているのでございますけれども、十一月一日には約二百五、六十万トンの米がもうすでに政府の手元にあるわけでございますから、それを十月なりに従来は配給いたしておりませんけれども、配給すれば、それは端境期の操作というものは可能になってまいるわけでございますから、従来のやり方を多少変えれば、決して消費者に迷惑をかけるということはあり得ないと考えております。
  122. 辻一彦

    ○辻一彦君 しかし、それは早場米を先食いするというか、早く新米を食べることでしょう。たとえば、ことしこれは食糧庁が本省から出されているのかどうか知らないが、北陸四県——石川、福井、富山、新潟に対して、九月に三万六千トンの米を出してくれ、それから十月に四万五千トン、十一月と、ずっとありますが、九、十月にこういう米を早く出してくれ、たとえば、ある県の場合は、とてもそんな無理なことを言っても、もう早場米奨励金も出なくなったのだから、そんな急に早く出せと言っても出ない、だからちょっとこの数字は無理だというので、この数字をある程度押えるということも、この間四県のいろいろの会合でちょっと聞きましたが、そういうふうにして早場米といいますか、早くできる北陸地区の米をある程度集めて先に食ってしまえば心配ないけれども、しかし、それを毎年繰り返せば、結局は、どっかで米穀年度を切るとすれば、操作米というか、ランニングストックというものはものすごく足りなくなるのですよ。だから、そういうものを別にして、少なくとも米穀年度をそれはいま十一月一日というものを場合によれば十月一日に上げるということはあり得るとしても、米穀年度の端境期に幾ら米を持たなければ消費者に対して安定した食糧供給ができないのか、そのめどというのはどこにあるのか、その数字を一ぺん聞かしてください。
  123. 亀長友義

    説明員亀長友義君) これはいろいろな考え方がございます。実際の操作として、現在程度の米穀年度開始期前の出荷量であれば、私どもは支障ないと考えています。ただ、一応、五十万トンというのが大体一カ月分でございます。でありますから、生産調整の本来の計画では、二カ月分という、これはもう古米も全然なくなるという前提で百万トンを本来の計画にしておるわけでございますけれども、実際の操作からいけば、二十五万ないし五十万トン程度があれば実際の操作は可能であるというふうに考えております。
  124. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、あなた、さっき、来年の年度の終わりに順調にいけば五十万トン在庫ができる、倉庫に復元ができるということですね。百万トンという目標には一ぺんにいかないが、やはり百万トンに達するようにするというのですから、やはり百万トンというものが端境期というか、年度の切りかえ目における一応の操作米というか、必要な手持ち米としてこういうふうにしなくちゃならぬというめどですか。
  125. 亀長友義

    説明員亀長友義君) もちろん、これは経済的なことを考えれば、食糧庁だけの立場からいえば、多きにこしたことはないわけでございますけれども、かなり余裕を持って見るとすれば、百万トンあれば十分であるということでございます。ただ、そこまでなければ絶対操作できないかというと、そういうことではございませんので、従来は米がやや過剰であった関係上、新米穀年度以前には新米は食わせないという、配給しないということできましたから、従来そういうことでやっておるだけのことでございまして、十月なり十一月——十月になれば全国的にも二百五十万トン近くの米が出るわけでございますから、そういうものを配給すれば、端境期というのは実際には支障ないわけでございます。そういう限度から考えますと、二十五万ないし五十万トンでも十分操作できる、そういうふうに考えています。
  126. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、非常に私はこじつけに聞こえるけれども、なるほど、ことしは新米を先食いすればそれはまとまるでしょう。やれますね。しかし、来年になれば、先に食ってしまえばだんだんなくなっていくのだから、同じことですよ。たとえば、いままで十一月一日が米穀年度の切りかわりだけれども、かりに十月にしたって、あるいは九月にしたって、どこに線を引いたって、一年に大体必要な米はわかっているのだから、そういうものが、一年、年度をこすときにどれだけの保有米が必要だということになれば、一応百万トンというのがめどなんでしょう。
  127. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私は、端境期の操作をつなぐという意味であれば、先ほど申し上げたような数字であります。生産調整の当初計画で百万トンとしておりますのは、豊凶の変動あるいは備蓄という意味も多分にこめてこれは百万トンということでございますから、端境期操作よりはるかに上回った量を私どもは頭に入れながら、百万トンということをきめておったわけでございます。  それから、だんだん早くしていけばしまいにどっかで帳じりが合わなくなるじゃないか。御指摘のとおりだと思います。そこで、私どもは、現在生産調整の計画というものを立てておりますけれども、やはりその中に平年作——自然相手の生産でございますから平年作でないときもある、そうかといって大幅に動かすというわけにはいかない。しかしながら、かりに、去年四十六年も不作であった、四十七年もかりにあまり作がよくなかったというような事態であれば、その場合には、やはり生産調整の数量を四十八年産米については、若干の調節をまた試みるというふうな弾力的な態度をもって臨みたいと思っております。現に四十六年産が不作でございましたから、四十七年産については二十五万トンの在庫造成、予約による在庫用の買いつけをいたしておるのでございまして、それだけ生産調整もそれに見合って減じておるわけでございますから、そういう調整は、生産調整という大筋を害しない範囲で、そういう調整は今後やはり四十八年産米について考えよう、そういう事態であれば。そのような対処のしかたで臨むべきであろうと思っております。
  128. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いまの問題について、ちょっと発言を許してください。  辻さん、私は、生産調整のやり方は、この間の米審でも御質問がありまして率直にお答えしたのですが、来年は少し改めてみたいと思っておるのです。というのは、機械的に、まあ多少地域指標というものを考えていわゆる米どころ、転作の余地の少ない、あるいは工場誘致なども見込みのないそういうところは、若干割りつけを減らしておりますが、どうも私は、天下り的な生産調整の割りつけというやつは不合理だと思っておる。まあ、最初はやむを得んでしょう、これだけ無理なことをやったんですから。そして大体御協力いただける各県の様子もよくわかってまいりましたし、これは私、先ほどから申し上げているようにやはり転作を定着させると、これにもう農政の力を、あらゆる力を注ぎ込んで地域農民の御理解もいただいて、そして転作ではっきり需給のバランスをとると、こういう効果をあげなければならぬと思っておりますんで、ただ、机の上で各県の実績や各県の事情だけで指標をつくってぴしゃっと割り当てて、さあこれを守れというような天下り的なやり方は改めて、何とかもう少し合理的な方法をとりたい。まあ私かつて、終戦直後農業会長から農業協同組合長をやったんですが、当時食糧調整委員というのを仰せつかりまして静岡県の代表で、アイオン台風、あれは二十二年でしたか、あの時分供出が進駐軍からひどくきまして三日三晩がんばったことがありますが、ずいぶん血の出るような交渉を続けまして、交渉、供出割り当てを話をつけたんですが、あの当時で、進駐軍がおって何でもかんでも天下り命令でやった時分でも、そういういわゆる談合に応じてくれたんですから、私は、生産調整もいま申し上げたような転作を定着させるためのいろいろ今後総合的な農政をやる。それを含めまして各県と十分話し合って理解を得れば、ある県は率からいうと相当高い生産調整に応じていただける。しかし、北陸や東北方面のいわゆる米どころ、国民全部が喜んで飛びつくようなおいしい米がせっかくできるのに、たんぼにぺんぺん草はやしておきや国民の税金から補助金を払うというようなばかげたことはなるべく避けたいと、何かこれうまい方法はないだろうかと考えておりますがね、また、ひとつ御協力をいただき、お知恵もお借りしたいと、こう思っております。
  129. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの大臣から、生産調整の問題につきまして、まあ、明年度にかけての御抱負というものが、高邁なる理想というものがここで開陳されたわけでありますが、実は私は、北海道出身の議員として、きのう夕刊を読みました。けさまた朝刊を読みまして非常にショックを受けたんですが、田中総理がきのう何か団体の会議に出て、大臣もただいままでの間にあなたはばかげたというおことばを二回使われましたが、きのうの新聞にも田中総理が、全国一律の生産調整なんというものはやめたい。どだい北海道のようなところに米をつくらせるなんというばかげたことをやっているから、こういうことになっておるんだというようなことをおっしゃっている。新聞に出ております。ばかげたこと、北海道で米をつくることがばかげたこと、これはとってもいただけないおことばであるわけなんです。ただいまのその大臣のお話も、承ればやはりあなたも田中内閣の農林大臣として、田中さんと同じようなお考えを持っていらっしゃるんじゃないかという感じを私は、受けたわけですが、そこで、まことに数字だけ並べてみるならば、北海道の米を全部つくることをやめれば、そうすると大体ほかの県は現在の生産調整の半分くらいで済むんではないか、全然やらなくても済むかもしれない、こういうふうに考えるわけです。ですから、まことに都合のいいことになるかもしれませんが、そういうことになれば一体北海道の農業は、どういうことになるのか。それは三年に一回、四年に一回大冷害を受けて、非常な痛手を受けておって、それでもあえて米をつくらなければならない北海道の農業の実態、農民の気持ちというものを一体田中総理大臣農林大臣はどう御認識されておるのかということに疑いを持たざるを得ないのです。ですから、北海道の米づくりをみなやめて、麦なら麦をつくれ。喜んでつくるでしょう。ただし、その麦をつくることによって米をつくると同じだけの所得を得られて、農民が暮らしができるならばけっこうでしょう。現に、私どもは北海道の畑作についてこの委員会においても何度も議論しておる。ビートをつくる、イモをつくる、豆をつくる、そして酪農、酪農と言うから酪農もやっておる。多額の借金をしてやっておる。しかしながら、酪農でもなかなかやっていけない。まして畑作のイモやビートや豆では、とても生活できない。一番いいのは米だと。こうして北海道の米はまずい、まずいと言われて、大体あんた、三番町のあそこに全国農民の方々が集まって、あの人たちの気持ちの中に、大体北海道の米をやめてくれれば、おれたちは、こんなことをやらなくてもいいんだというような気持ちがあるんではないかとさえ思っている。まことに北海道の農民は肩身の狭い思いをしてやっておるのです。大臣は笑っていらっしゃるけれども、実際、北海道の農民の気持ちはそうですよ。田中総理大臣がそういうばかげた、北海道に米をつくるようなばかげたことをやっているからこうだ。そしてあなたはまた、それと似たようなことをいま言われたのですよ。こういうことなんです。田中内閣の農林大臣として、やはりあなたもそういうことを考えていらっしゃるのかどうか、ここをはっきりさしてください。私は、そういうふうに思っていらっしゃるなら、北海道に行って盛んに言って歩く。
  130. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) きのう田中総理が北海道で米をつくることはばかげたことだと言ったかどうか私は、知りません。新聞でも読んでおりませんが、私がいまばかげたと申し上げたのは全然違いますので、誤解のないように願います。というのは、美田を、いわゆるペンペン草をはやしておけば国民の税金から補助金を払うというような減反政策、これを、ばかげたという表現が言い過ぎなら改めますが、ほんとうに申しわけないという気持ちを含めて申し上げたのでございます。  北海道の農業の問題は、先般、ここにいらっしゃる高橋さんも地元の方をお連れになって私の部屋にお見えになりました。それから、衆議院議員の社会党の美濃政市君も、私も非常に懇意なものですから、先般地元の方を大ぜい連れて大臣室にお見えになりましていろいろとお話しをいたしました。私の考えをようく御理解をいただきました。あの北限地帯、特に北見あたり、私も農林水産委員会から冷害の視察に何回か行きました。それはほんとうに涙が出るんです。というのは、冷害で、稲の穂は背たけが短く、全部天を向いて立っちゃっている。にもかかわらず、農民の気持ちとしては、カラスの死骸をぶら下げたり、かかしを立てたり、ほんとうに涙ぐましい情景でございました。しかし、農災制度によって保障されていますので、稲作農家はそうした北限で、俗に三年に一ぺんはまる坊主になると言われていながらも、まあまあ一応安心して水田農業をやっていらっしゃる。一方、畑作地帯に入りますと、私ども農民からほんいうに血の出るような訴えを受けまして、この豆をどうしてくれるのだ、このトウモロコシをどうしてくれるのだ、政府は金は貸してくれるというけれども、それは返さなければいかぬじゃないか、借金はふえるばかりだ、一方、水田地帯のほうは、いままで共済金が規模の大きな農家ですと二百万、三百万ももらえる。こんな片手落ちの農政があるかと言いまして私ども責められまして、ほんとうに身の細るような思いがいたしたのであります。ですから、私は就任以来、総理にも申し上げているんですが、北海道の農業というのは、やっぱり交通整理をする必要があるという、それには政府が、やはり農政が私は貧困だと思っているんでありまして、誘導政策をとらなければうそなんだ。少なくとも畑作について、稲作と同じような農業災害補償制度、これを設ける必要がある。私は、さっそく経済局長を呼んで指示いたしましたところが、経済局長もはたと困ったようです。というのは、北海道の畑作はロトテーションをやりますから、四種目、五種目の種目を年次割りにしてつくりますから、じゃアズキだけ、あるいは大豆だけ、あるいはトウモロコシだけ受けましても、全部農家は救われない。ですから、私はこういう指示をいたしたのです。ひとつこれは農家単位の多種目包括引き受け制度、畑作については。これを考えろと、来年の通常国会には、何とか試験実施の法案を出せと言って指示をしたんですが、経済局長、たいへんあわてておりますが、私は、これくらい思い切った農災制度をまず北海道には適用するということが前提だと思います。  それから、畑作に転換した場合に、ひでりの被害を受けないようにスプリンクラー等の設備をしてやる。いわゆる畑かんですね、これを考えてやる。あるいはいま大豆だけ不足金制度がありますが、その他の畑作についても価格安定制度をしいてやる。そうして畑に転作をしても、いままでのようにばかを見ることがないということがわかってくれば、北限地帯で、だれだって自分の植えたものがよけい取れればうれしいんです。ですから、農民も理解してくれるであろう、こういうふうに考えております。  先ほど来、話が出ましたように、北海道で二一九%生産調整に御協力いただいたというのは、生産調整奨励金がほしくて休耕なすったんじゃないと思う。やはりそうした無理な環境において、無理な稲作をやっておるということは自覚していらっしゃるんだから、その気持ちをうまく農林省がキャッチして、誘導政策がとれないのでは、農政の貧困と言われても弁解の余地はないよと、私は部内で言っているわけでありまして、そういう気持ちで今後対策を講じていきたいと思いますので、どうかひとつ御理解を願いたいと思っております。
  131. 工藤良平

    工藤良平君 関連。  生産調整需給関係で、ちょっと私、いまの質問の中でふに落ちませんので知らしていだたきたいと思いますが、長官、来年の四十八年の米穀年度の末で、五十万トンという目標を置いているということですけれども、すでにことしの生産調整で、いま辻君が質問をしたように、二百十五万トンの目標に二百四十万トン出ているわけですね。だから、生産調整のほうが目標を上回っていることは一体どういうことなのか。この実態を調べていただきたい。大臣のいまのお話がありましたけれども、私のところで、昨年までは生産調整を拒否した町村がありましたよ。これは大分県でも米どころなんです。七〇数%しか目標を達成することができなかった。ところが、本年度自主的におろした所が、すでにこの希望を達しただけで、一二〇%をこえているのです。これは大分県の最も生産量の高い所なんですよ。緒方という所です。大分県の一番米のできる所、ここにこういう実態が生まれているということは、大臣のような甘い考え方ではないということなんです。米の生産地で、もう野ばなしにしておいても、生産調整目標をはるかにオーバーしてきた。去年が七〇数%なんです、自主的にやった場合。県のほうも、ことしはちょっとそれじゃ困るということで逆に言ってきているという状態があるということ、これは私は、一体何を意味するかということですね。それだけ生産意欲は落ちているのです。米なんかつくってもばからしい、出て行けというような圧倒的な意見があるということを踏まえないと、長官、それは五十万トンが二十五万トンになったからだいじょうぶですと言っても、四十五年産米の古々米を食わせればいいという頭が、ここでちょっと私は、まだ残っているんじゃないかという気がするのです。鶏、豚にえさとして食わさなければならないやつを、低温倉庫に入れているやつなら、もう一年くらいやってもだいじょうぶじゃないかという頭が私はあるとするなら、たいへん大きな問題だと思うのです。大きな誤算が辻さんが指摘するように起こるのじゃないか。これは相当、生産調整目標をオーバーした内容を私は、調査をしてもらわないと、たいへんな事態が起こりますよ。長官としては、まさに綱渡りの状態で、来年の米穀年度の末ということを私は心配しているのじゃないかと思う。災害対策の問題だけではなくて、全体に生産意欲及び反収が落ちているという、この傾向を、さっきの反収の問題なんか、私はゆっくりあなたと議論をしますけれども、いままた資料を見てみると、さっきの数字は全くおかしなことを言っているのですが、これはいま触れませんけれども、そういうことで、私は、たいへん食糧庁としては甘い、薄氷の上を歩いているという状態じゃないか、率直に私は、そういうことはこの際、委員会に出していただいて、やはり米の対策というものはきちんとやる、そうしなければ来年の秋あたりはもう消費者米価はたいへんなことになるということを私は、指摘をしておきたい。
  132. 内村良英

    説明員(内村良英君) 生産調整の点でございますが、ただいま先生から御指摘ございましたように、なぜそんなにいったのかということについて調査せよということにつきましては、私どももそういった調査をしてみたいと思っております。  そこで、御承知のとおり、一一二%の生産調整の実施計画になっているわけでございますが、地域別に見ますと、北海道を除く都道府県の実施見込み率は一〇〇%でございます。すなわち北海道が二一九%という非常に高い実施率になっておりまして、その次が青森の一七五%でございます。ブロック別に見ますと九州が一四一%、中・四国が一〇九%、東北が九九%、東海九八%とほぼ目標を達成しておりまして、関東九〇%、近畿八八%となっております。一番低いのは北陸でございまして、これは七六%ということになっております。  そこで、北海道と青森が非常に生産調整が進んでいる、実施見込み率が高いということの原因でございますが、私どもが道庁あるいは青森県等から聞いておりますところによりますと、まず北海道の場合でございますが、ことしの春の気象庁の長期予報が非常に悪かったわけでございます。また、冷害がくるぞというような、非常に七−八月に低温があるというような予報がございまして、農家が二年続きの冷害というようなものを警戒したということが、まず第一の原因かと思います。それから、米どころの上川、空知も案外高いわけでございます。これは昨年黒色病米というのが出まして、非常にその米を売るのに困ったというようなことがあるわけでございます。これはやはり冷害と関係があるんじゃないかというようなことで、そういったこともからんでいること、それから土地改良の通年施行、これが北海道では約八千ヘクタールございます。そういうところが生産調整に入っているわけでございます。  それから、青森につきましては……。
  133. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 農政局長、簡単にひとつ……。
  134. 内村良英

    説明員(内村良英君) はい。青森につきましては、実際の数字は昨年よりもちょっとよくなっている——と申しますのは目標数字が下がったものでございますから——というようなこともございます。しかし、いずれにいたしましても、私どもといたしましても、各地の生産調整の実態につきましては、もう一ぺん調べてみなけりゃならぬというふうに考えております。
  135. 辻一彦

    ○辻一彦君 時間がだいぶたってしまったんですが、いま工藤委員からも関連で御質問ありましたように、ことしの米穀年度末で二十五万、もしことし天候が悪かったらもっと悪くなるわけですね。そして生産調整の分が二十五万減収すれば、結局来年度における二十五万もこれは確保はむずかしいという状況も出かねない。そうすれば、大体百万トンのストックというものが一応必要であるとすれば、それは端境期だけじゃない。百万トンというのは、当然に災害があったり、天候不順があったり、いろいろな条件の場合に、安定して食糧庁国民に主食を供給するために必要な量であると思うのです。そうすると、ことしの米穀年度においても、来年においても二十五万トンというような数字が出るということは、私は、かなり不安定さがある。それは長官米審の中で、へいの上を歩くような感じだ、綱渡りのような感じだというような発言があったということを新聞で見ましたが、私はやはり国民の安定した食糧確保していくという点では、早場米を、新米を先食いしてしまえば何とかもつという、こういうような不安定性ではいかないのじゃないか、こういう点はひとつよく考えてもらいたいと思うのです。  そこで、そういう状況に立てば、大臣が先ほど言われたけれども、過剰で、なるほど生産調整によってそういう結果がいろいろ生まれてきたということはわかりますが、しかし、非常に世に宣伝されるように米があり余って、どんどん余って、そうしてそういう過剰を背景にして米価を押えるべきであるというような実態ではないということを私は、この委員会において指摘をいたしておきたいと、こういうふうに思うわけです。  そこで、きょうは古米の問題にも入って、もっと、いざとなったら古米をどうするかというお話しがあるだろうから、それをどのくらいついてどうするかというお話しも聞きたかったのですが、時間がないからこの点はまあ飛ばします。  そこで、最後にひとつ、米価の先ほどの算定の問題について若干残っている問題でお伺いをいたしたい、こういうように思うわけです。  それは先ほども鈴木委員のほうからありましたが、災害の農家を二〇%はずしておるわけです。一〇%以上にことしはして、いままでの二〇%以上というのは変わったわけですね。そこで、この生産費調査をするのに統計局長にお伺いしたいのは、何千戸全国農家調査をしたのか。その中でいわゆる一〇%と二〇%の間にはさまる一体この農家の戸数は何戸になるのか、その点を一点お伺いしたいと思います。
  136. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私ども三カ年間の平均をとっておりますので、各年について申し上げますと、四十四年産の全調査農家は四千百八十戸、これに対しまして一〇%以上災害農家を除く販売農家の数は三千七百六十四戸でございます。四十五年は調査農家が四千百五十七戸、これに対して一〇%以上災害農家を除く販売農家数、これは三千四百三十九尺四十六年は四千百六十八戸の全調査農家数のうち、一〇%以上災害農家を除く販売農家数は三千九十三でございますが、以上が全調査農家と私どもが採択いたしました農家との数の比較でございます。統計調査部では、全調査農家をとる場合と二〇%以上災害農家をとった場合と両方発表されておるようでございます。この際に二〇%以上を除きました場合には、除かれる戸数は百十八戸、四十四年が百十八、四十五年が百九十三、四十六年が三百十三ということになるわけでございます。しかし、食糧庁のように一〇%以上を除外した場合には、一〇%以上から二〇%未満のものがこの上につけ加わることに相なりますので、四十四年産は百十八の上に二百九十八が加わり、四十五年産は百九十三の上に五百二十五が加わり、四十六年産は三百十三の上に七百六十二戸が加わる、このような数字になるわけでございます。
  137. 辻一彦

    ○辻一彦君 こまかい数字は別として、要するに食糧庁から出してもらった資料によれば、四十六年度においては、全調査農家戸数は四千百六十八戸、そのうち販売農家数が三千八百五十五戸と、この中で一〇%から二〇%という農家が七百六十二戸あるのですね。そうすると、いままでならば二〇%以上というので、こういう農家の相当数が災害を受けたとしても、この生産費調査の中に入った、そうすれば当然災害を受ければ、収量は減るから、だから生産費が高くなるという数字が出てくるわけです。今度は三千八百に対して大体七百六十二という、二割ですね。二割の農家を——一〇%から二〇%の間に入りますが、これをはずしたということは、私は、どういう意図があったのか、それはいろいろありますが、やはり数字を押えようという考え方でこの七百六十二戸、二割をはずした、こういうふうにしか私は、考えないのですが、この点はどういうふうに考えておられるのか、その点ひとつお伺いしたいと思う。
  138. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 米価算定の対象農家としてどのような農家をとるかという問題に結局は帰着をするのでございますが、近年稲作の安定度が非常に高まっておりまして、農業共済の被害率等を調査いたしましても、災害の頻度、程度も非常に弱まってきております。米全体としましても、御承知のように作柄変動も一〇%以上というようなこともないような状態になってきております。農業共済の金額被害率の移動平均値を見ますと、昭和三十年以前が六ないし七%程度であったという資料がございますが、最近では主ないし四%というふうな、大体半分の数字を示しておるわけでございまして、米価算定の基礎としては、やはり従来の二割というのでは、極端な減収農家を除外するだけであって、私どもとしては、この際、一割以上を除外しても妥当な結果を得られるというふうに考えております。もちろん、四十六年は御承知のような異常気象でございましたので、比較的除外される戸数が多かったということも言えるわけでございますが、今般二割を一割にしたことによりまして、私どもは昔から見れば決して、極端な減収農家を除くという趣旨から見ますと、決して不当なものではないというふうに考えて、この数字を採用いたしたわけでございます。
  139. 辻一彦

    ○辻一彦君 三〇%以上の災害農家になれば共済の対象になりますね。で、この一〇%から二〇%の農家は、その点からいうと、生産費でもこの点が考慮されていないし、十分されないし、共済の対象にもならない。しかも、全調査農家の二割、これは全部が私は、かりに農家に拡大したら相当な数に計算すればなると思いますね。そういうところをことしはずすことによって、かなりパーセントに上がらなくちゃならないのが、これは私は、二%というところに落ち着いたというか、押えられた大きな原因になっておるんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点どうですか。
  140. 亀長友義

    説明員亀長友義君) もちろん数字的な計算をすれば、御指摘のとおりであります。結局、災害二割除外を一割にしたことによって計数的にはかなり影響がございます。ただ、従来の被害の被害率の変化というふうなことを考えれば、私が先ほど述べましたようなことでございますし、共済制度のほうは、やはり農業保険でございますので、一筆単位共済では三割被害、単位共済では二割被害というような線がございますけれども、これはやはり保険設計、農家としても保険料を支払うわけでございますので、その保険設計の問題との関係でおきめになっておるのだと考えておりますので、災害農家という特定の定義というものが私どもは、あるわけではないというふうに考えております。
  141. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ計数として、数字としては、そういう影響があるということを認められるということですから、次に参ります。  それから、通勤手当をはずした。先ほど大臣も答弁ありましたが、なるほどまあ、それは所得をこうしなさいとか、いろいろあるでしょう。じゃあ、いままで農家の中でこういう都合の悪いというか、こういうものをはずすとすれば、たとえば扶養家族という問題がありますね。特に、扶養家族でも都市は、これは核家族で子供の数が少ない、大体一・八人。農村になれば二・八とか三になるんですね。そうすれば、明らかに農村の場合は、そういう点でいえば扶養家族がふえるという——扶養家族は所得でもないと思うのですが、そういう点で、たとえば片方のほうで通勤手当をはずすとすれば、片方のほうで扶養家族ということを考慮してこれを聞き入れるとか、やっぱり片手落ちな、数字を小さく見るために都合の悪いところはどんどんどんどん削っていくという、そういう点が私は、算定のもとにあるように思うのですが、この点はどうですか。
  142. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 扶養手当との関連でお話がございましたが、扶養手当はもちろん農村と都市では人数が違いましょうが、やはりこれは所得ということでございますから、当然これは所得ということで課税の対象にもなっておるものであります。通勤手当は、全くの実費支弁でございまして、課税の対象にもなっていない。都市の通勤者が自分のうちから工場へ、あるいは会社へ来るものでございまして。実費支弁という形でございますので、これは私は、これを含めて都市の時間当たり賃金というのを計算する方法は適当でないというふうに考えて除外をしたわけでございます。先ほど申し上げましたように、圃場への通勤は、これは農家の作業時間に入っておりますので、これは都市並みの価格で評価がえをいたしておるわけでございます。
  143. 辻一彦

    ○辻一彦君 所得の点は、ちょっと思い違いをしておりましたがね。片方で私は、この通勤手当をはずすなら、片方でそれにかわるものを見るとかね、そういうことをやらないと、やっぱり数字だけをだんだん下げていくために、あらゆる知恵が私は、しぼられているような感じがするんです。大体農林省は農地改革以来農民の側に立つ気概があり、そういう気持ちをかなり農民は持っておった。いまその米価算定の最近における方式、やり方を見ると、せっかくの農林省の役人の知恵が何か低い米価をいかにしてたたき出すかというほうに使われているような私は、感じがどうもするんですね。そういう点を十分ひとつ考えてもらいたいと、こう思うんですよ。  そこで、時間がきましたので大臣伺いますが、そういうまあ先ほども何人かの委員からこの数字をある程度押えていくためにいろんな知恵がしぼられた算定方式がつくり出されてきた。私もその一、二を指摘をしてみたわけなんですね。そこで、こういうことを私は、ある程度初めからお考えになってやっておられるんじゃないか。たとえば大臣が七月二十四日の午後米審諮問をされた直後に、あそこの会場で皆さんとお会いになったときに、これは新聞に出ておりますが、こういう御発言になっておりますね。これは、諮問案政府の試案でありますね、最終的なものではない、確かにそうでしょう。与党と相談をして政治的判断を十分すると、こういうような発言がされておりますね。なるほど私は、先ほどから言われていましたが、何か大臣の本音がこういうときに出ておるんでないかと、ことしも従来と同じように大体上げ幅このくらいと見当つけて与党と政府との交渉による余裕を残して、そしてその線に、三%なら三%に押えようと、その三%をはじき出すためにどのような計算方法があるかということで、非常な私は、そういう意味の努力がいろいろされておるんじゃないか、こういう数字がいわゆる合理性という点から十分な確信が持てないという点で、たとえば大臣諮問された直後にああいう発言をされたんじゃないか。自信があったら、大臣として諮問を出された直後にこのような発言があるべきでないと、私は、そういうように思いますが、この点ひとつどういうようにお考えか伺いたいと思います。
  144. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 先ほどのお話についてすでに長官も答えていますから、くどいようでございますが、その災害農家二〇%か一〇%かということは、私は、実は農業保険のほうの専門家でございますが、農業保険のほうとは性質が違いますんで、別に農業保険で農家単位二割以上の被害、一筆単位三割以上の被害、また果樹は三割ないし五割という二段になっていますが、そういうことは農林省が統一的にこれが災害農家であるといってきめたものではなくて、掛け金を納めておる保険制度でございますので、どの辺が経済的にその保険金を払うのに一番適当かという保険設計の問題でございますから、わけが違うと思いますが、これは御議論があると思います、正直言って。ただ、長官も言っているとおり、最近の災害の率がずっと低下して数年前とは半分ぐらいになっていますので、そういう事実からすれば、何といいますか、災害農家として非常にコストが上がってきたものは、平均米価計算に入れるのはぐあいが悪いということではずしたわけでございます。  それから、通勤手当のほうは、私は、むしろ今度の処置のほうが合理的だと腹の中でもそう思っております。  それから、三番町で対話のときに、これは何せ三千人の方の激しいやじと怒号の中で私は、その対話をしたわけでありまして、二十分間、それでまあ数多くの質問も出るし私の意見も言ったのですが、ことばが足らぬ点は、これはお許しください。私は、そのときに——米審でもある委員からいまのお話と同じようなお話がありましたので、いや、実は誤解を受けたかもしらぬが、私の真意ではないということをはっきり申し上げました。決して弁解ではないのでありまして、私は、米価審議会答申を尊重して、なお私は、自民党員ですから与党と協議をして最終的には政府部内で意見調整してきめますということは申し上げましたが、決して米審を軽視するような発言をいたしたつもりはありません。同時に、私は、こういうことも申し加えておきました。私は、独裁者ではございませんと、したがって、農林省が是なりと信ずる数字は出しました、これを米審諮問いたしました、米審の御答申をいただいた上で慎重に検討いたしますということも、実は加えたのでございまして、ああいうエキサイトした場面の話でございますから、一字一句だけをとって批判されると、あるいは誤解を受けるような面があったかもしれませんが、それは真意ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  145. 戸叶武

    戸叶武君 私は、農林大臣はそう言っちゃ悪いけれども、正直で、若干ラフなところがあるから、あげ足をとろうと思うものではないのです。しかし、農林大臣なり食糧庁長官が非常に食糧問題を簡単に考えているけれども、政治の命取りはいつも食糧の問題であるということは、古来からの制度や政治学者の革命研究の対象となっているのです。血盟団のテロリストに影響を与えた権藤成郷氏から、私は朝日新聞におったじぶん、大化改新以来の変革の歴史を列挙して承ったこともありますが、大正八年の米騒動だって二十五万トンのことをまだ大臣はという形で、実はおっかなびっくり食糧庁長官も言っているんでしょうが、これが全体に発表せられ、それから災害でも起きてごらんなさい、必ず私は、売り惜しみ、買いあさりが出てきます。いまのようなくずれかかった統制下においてあの大正八年の米騒動、だれが滑川の一角からあのような米騒動が起きたと予想しましたか、買いあさりをやった鈴木商店がなぜ襲撃を受けたか、全国的にびまんした暴動は、自然発生的ではありませんか。米の問題を一歩誤をと、シベリア出兵をやって、あれほど出兵反対、寺内内閣打倒の国民の声を受けながらも微動だにしなかった官僚、軍閥の政府が米騒動で一挙に戒厳令をしいて、寺内内閣は吹っ飛んじまったじゃないですか。昭和七年二月九日井上準之助が殺されたときに、あの暗い谷間の時代に、東北の農民が娘売りまでしなければならぬという背景を基礎に、茨城の農村の青年がテロに出たじゃありませんか。私は、朝日新聞におって、あの檄ビラを見て、現場を踏んで、あの号外を見てびっくりした。アンダーカレントの底流の流れに触れることのできない政治というものはこわい。そのあと五・一五事件で犬養毅があの総理大臣官邸で農村を背景とした少壮将校に射殺されたでありませんか。話せばわかると言って、話もしないで自民党政府は暗室の中で政治米価をきめるというような不明朗なやり方をやっていれば、おのずから私は、不祥事が起きてくるかもしれないと思うのです。もっとガラス張りでこの問題はやらないと、博労のそでの下の取引みたいな政治米価というふうな形ででたらめをやって、筋の通らない米価決定をやって、この食糧需給生産調整だけの何としてやるというようなことをするならば、必ず私は、悪気流のもとに、田中内閣はどうせ自分でも三年しか持たないというし、私は二年と思うが、一年で吹っ飛ばされると、これはたいへんなことに私は、なると思うので、足立さんも先ほど引用したが、豊葦原の瑞穂の国に生まれて米が食えないとはうそのような話、米騒動のときのうたです。御用心。大臣、よろしく首を洗って、私は、あとで対決しますから、こんな甘っちょろい米価政策をやっていたならば、とにかく食糧需給の体制をくずして、財界が言うようにドイツのまねをして八割から七割、さらに五割くらいまでしていいんだというようなことをやったならば、島国としての日本においては重大な危機が襲ってきますから、その災いはあんたたちの楽観的にして、ルーズ、しまりのない、哲学のない農政がもたらしたという、必ず制肘を受けるから、注意してもらいたいと警告をしておく。警告に対していかなる心がまえであるか、心境を吐露してもらいたい。
  146. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 国民の主食である米をおあずかりしている私どもの責任の重さをお説きいただいた先輩の言を十分拳々服膺しまして、今後最善の努力をいたします。
  147. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、これで終わります。  先ほど大臣もことしの試算米価にいろんな無理な点もあるというようなことばもありましたが、その点がいろいろ指摘されたと思いますが、十分ひとつ検討してもらって、私は、ほかへ相談するんじゃなしに、農林省食糧庁政府の責任ですね、農民の要求にこたえる米価をしっかりときめてもらいたい、このことを要望して終わりたいと思います。
  148. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、いろいろ質問がありましたので、重複しないように簡単にお聞きしたいと思います。  まず最初に、先ほど農林大臣は、生産費及び所得補償方式所得というのは食管法にはないと、そういうことばは。けれどもそれをやってるんだと、そういうような意味の御発言がありましたが、私は、この所得ということばはありませんけれども、当然この食管法においては「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所二依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と、あくまでもやはり「米穀ノ再生産確保スル」ということは、当然やはり再生産をできるだけの所得確保しなければならないと、そういう意味でやはり所得を補償するという方式は、やはり食管法の精神である、そのように私は思いますし、大臣もそういう意向で間違いないと思いますが、確認しておきたいと思います。
  149. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 塩出さんの御意見、私も同じように考えておりますが、理屈を言うようで恐縮ですが、先ほど来申し上げているように、昭和三十六年、生産費所得補償方式というものを編み出したときから、その所得は、その地域の農村の労働費——労働賃ですね——でなくて、都市の労働賃に置きかえているということは、農村の生活向上を目ざすと、こういう意欲的なものが含まれていると思うのでありまして、理屈だけから申し上げれば、再生産確保するのならばその地域の農村労働費というものでいいわけでありますが、それをさらに農村の生活向上、やはり他産業並みの生活ができるように持っていきたいと、こういう意欲的なものがその裏にはあったと、こういうように私は、理解しております。しかし、趣旨はやはり食管法にきめられた趣旨にのっとっておると申し上げてよいと思います。
  150. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ何かいまこの生産費計算する場合の賃金というものは、まあ農村の現地の賃金よりも上の賃金をやっていると、そういうお話でございましたけれども、これはまあ各県の賃金にそこのまあ販売数量のいわゆる加重平均を出しているわけですから、だからまあ、その一方では、それは高いところもありますけれども、都市周辺では低いところもあるわけですからね。だから、もう全部が全部、非常にまあいなかのほうの賃金の安いところですね、そういうところはそれはいいかもしれぬ。しかし、全般的にはこれは加重平均でやっておるわけですからね。そういう点で、大臣のお話ではどこもかしこも全部非常に高い賃金でやっているのだと、そういうのは私、ちょっと訂正すべきじゃないかと思うのですけれどもね。
  151. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) いまおっしゃるような点は、確かにあると思います。地方でいきますと、地方の大都市の周辺農村と、ほんとうの純農村と、これは開きが出てくることはよくわかりますが、この生産費所得補償方式というものを編み出したときのものの考え方は、そういうことであった。だから私は、理屈っぽいことを申し上げて恐縮だがと言って申し上げたわけです。
  152. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、私ちょっと、まあ先ほどからじっと聞いておりまして、経済事情というのは、これがまあいわゆる米の需給状況というものが経済事情だと、こう書いているわけですけれどもね。そう大臣が言われたわけですが、この法律すなおに読みますと、「価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ」ということで、これが一番の、最後の目的であって、この場合の物価というのは、生産費もどんどん上がっていくかもしれない、あるいは物価がどんどん上がれば、農家が生活していくためには生活も苦しい、そういう意味のことがむしろ中心であって、大臣の言われるように、米の需給状況というものも、これは大きく入れれば入らないことはないけれども、いささかこの趣旨からははずれた拡大解釈に近い、私は、そう思うのですけれども大臣は、それを認めますか。
  153. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 実は、私どもは当面需給事情というのが米価決定する一つの条件として、いま食管法にある経済事情の中で、一番大きな問題で、頭の一番痛い問題でございます、正直言って、政治的に言えば。それが政治的配慮だときめつけられれば、それきりでありますが、私は、そうした政治的配慮は絶対に必要だ、こう思っておるわけで、もしこれが逆の場合、どうにも米が足りなくて困る、しかし、物価は案外安い、労働賃金もあまり土がってないというときに、米が足りなくて困るので、何とか増産ドライブをかけたいというときには経済事情、つまり需給事情を考えて、さっき申し上げたように、昭和三十六年には思い切って、生産費所得補償方式に踏み切って、これはさっきある人から批判を受けましたが、当時は確かにあのやり方をマスコミでは、自民党政治米価をやっているという非難を受けたのです。現在は、党のほうで上積みをやるというあの政治米価と違った意味で受けたのです。ですから、そういうふうな需給事情というものは、米価を引き上げる場合でも、ある程度押えにかかる場合でも、非常に大きな要素になるというふうに私どもは、実は考えているわけであります。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その問題は、あまり時間もありませんので、次に進みますが、私は、あまり昔のことはよくわかりません、農林水産委員になったのも昨年ぐらいでございますので。  去年とことしを比較した場合、確かに去年といわゆる同じような算定方式でやれば、去年よりはいろいろ物価も上がっている、賃金も上がっておる、そういうものを去年と同じ条件で、ことしの米価を算出すれば一二・一七%ですか、そのようになるわけですね。ところが、今年はいま言いましたように、通勤費等もこれは除外するとか、あるいは災害の二〇%を一〇%にする、そういうようにやはり非常にきびしくしたわけですね。それについて先ほどから農林大臣はやはり需給状況需給状況だ、そう言われますけれども、先ほどから話を聞いておりますと、昨年といまとで需給状況はどうなのか。昨年も非常に冷害で米の収穫は非常に少なかったわけでございますが、今年もまた減反が予想以上に進んで、しかも先般の台風、四十七年七月の豪雨によって、私の住んでいる中国地方等も、島根県のあの非常にお米のたくさんとれる斐川平野等も、非常に冠水をして農民の人もこれではやっていけない、そういうわけで農民対策もやっているわけですね。去年とことしというものを比較した場合、私は、去年よりもことしのほうが供給のほうが多過ぎて需要のほうが少ない、そういう去年よりことしのほうが需給事情が悪くなったということは、私は、当たらないと思うんですね、むしろ逆だと思うんですよ。それを去年よりことしきびしくしなければならない、そういう理由は何かということを聞いておきたいと思うんですよ。
  155. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 去年は、おっしゃるとおり不作でございまして、政府買い入れ量も減ったわけでございまして、おかげさまというとまたしかられるかもしれませんが、もてあましておった在庫もだんだ減りぐあいになってまいりました。もちろんこれは飼料その他に無理な払い下げをしている効果もあらわれているわけでありますが、なるほどおっしゃるとおり、単年度だけでおっしゃれば、不作のために政府の予定した需給数量よりもやや窮屈になったということは、おっしゃるとおりであります。本年も、先ほど来いろいろ追及されたのですが、端境期で二十五万トンがどうのこうのという御意見がありましたが、また不作が続きますと、その点は確かに心配になりますが、まあまあともかく、私は、古々米を食えなんというやぼなことを言うつもりは毛頭ありませんけれども、まだ前からのストックを相当持っておりますので、いまのところ約三百万トンぐらい持っておりますから、いまのところ米は全くなくなっちゃって困るというような心配は、実はございません。  それから、まあこれはおっしゃるとおり単年度の問題でございますから、それは将来にわたっての計画を練り直さなければいかぬという情勢にきているかもしれませんが、まあまあいまのところは、私は、決して気楽にものを考えているとか軽く考えているとかいうつもりはありませんが、まあまあ心配はないというふうに思っております。
  156. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もちろん、単年度で考えるべきことではないかもしれませんけれども、しかし、米価は、単年度の米価ですからね。で、まあ去年からことしにかけてそういう、米の生産状況は非常に悪いにもかかわらず、それにもかかわらず、先ほどから話を聞いてみると、農林大臣の言う説明は、米が余って困る、そういう状況だからことしはこうしたのだと言う、そこが私は納得がいかないと思うんですよ。
  157. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) ちょっと、いまほかのことをしゃべって肝心なことにお答えするのを忘れちゃって申しわけありません。  おっしゃるとおり、単年度では確かに苦しいように見えますが、その背後に、去年は二百三十万トンの生産調整、本年は二百十五万トンの生産調整、こういう事実がございますんで、これはことしの予算でも御承知のとおり、千八百億も政府の財政支出をしまして、先ほど来申し上げているように、たいへん御無理なお願いを全国農民にいたしまして生産調整をやっていただいている。ですから、この過剰基調というものは、これはもうぬぐうべからざる、おおうべからざる事実でございますので、もし、この生産調整をやらなければどんどんどんどん在庫がふえて一千万トン以上にもなって、それこそたいへんなことになるんですから、それを申し上げているわけであります、需給事情というのは。
  158. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、過剰基調は何もことし始まったわけじゃないわけですからね。去年も過剰基調であり、その前も過剰基調。だから、ずっと四十三年の米価から据え置きできているわけですからね。だから、それをなおかつ今年度に去年よりもきびしくしなければならないという理由は、何もないんじゃないかといろんですよ。去年よりもきびしくしているわけですから。通勤費の手当も減った。それから災害もいままでは二〇%以上の災害を除外しておったのを、ことしから一〇%除外するようにしている。何も今年度重ねてそんなにきびしくするという客観的な理由は、何もないというんですよ。それは去年よりもことしのほうが米が非常にたくさん余って困る、そういうことならばそれはあえてそういうことだったにしても——そのように大臣は言っているわけですけれども大臣の言うとおりだとしても、それは裏づけがないんじゃないか。その点は認めますか。
  159. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 確かにそう言われると、それは試算のデータの取り方の問題でもきびしくする必要はないんじゃないかと言われると、その点は私もうなずけるんです。ただ、一二%余りとおっしゃるが、あれは去年算式を変えましてはじき出してみたら、実はおととしの米価よりも安くなってしまいまして、それを補正して合わせた。その補正を既得権として上積みすれば一二%になるということでありまして、補正をしたのは、これはおととしよりは去年を下げるというわけにいきませんので、米価を据え置いたというための補正でございますから、それが少しでも上向くということになれば、その補正はつけるべきではないと私どもは思っていますから、去年やった補正をはずしますと、五・三%アップになるわけです。それが三・〇三%に縮まってきたというのは、先ほど来、指摘された災害農家の基準を二〇%でとるか一〇%にするか、あるいは通勤費をどうするか。そうしたデータのとり方が変わったと、こういうことでございます。まあ先ほど来申し上げたことを繰り返すようでありますが、まだまだ過剰基調というものは、油断もすきもならぬ。やはり転作が定着するような総合的な農政をやって需給のバランスをとる見通しをつけませんと、それは年に五十万トンやそこらよけいできる、あるいは天候相手の農業でございますから、あるいは減収になるときもある。そうした波動は、これは避けられないと思っておりますが、まあ大体ロングランで見て需給のバランスがとれるというところまで安定をさせませんと、ほかの農政が何にも進まないというがんじがらめの状況になっているものですから、まあ私どもは、涙をのんでそういう処置をとったということでございまして、実は米審委員の中には、率直に意見開陳のときに、ことしは米価は上げるべきでないと、何を農林大臣血迷っているんだというような御意見も相当ございました、これは中立委員、学識経験者の中から。こういう方々も決して農民をいじめようとかいうようなお気持ちで発言しているんじゃないと思うんで、ほんとうに農政を確立するためには、いま過渡期的にこういう状況だから、もう一年ぐらいしんぼうしてもらったらどうかという意見が出たわけです。私は、これには賛成いたしかねますが、まあ結局赤城農林大臣が、もう三年据え置いたんだから、何とかひとつ農民にも少しは報いるところがなけりゃというので、ああいうレールを引いてくだすったんで、私は、そのレールの上を走ってきたわけでありまして、まあそういう事情もひとつおくみ取りいただきたいと、こう思っておるわけです。
  160. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ、もちろん米価は、いろいろそれを上げるという点については、計算どおり上げることもできない。やはり財政の問題も、これは全体的に考えていかなければならない点は、これはわれわれもわかるわけですけれどもね。その昨年の米価がいままでの米価よりも計算したら下がったと。そのなぜ下がったかというと、結局、これは生産性が上がって下がったのじゃないわけですよね。これは結局計算方法、昨年はやはりそういう平均賃金というものの出し方を変えたり、去年もそういう操作をしたから下がっちゃったわけです。実際は、これ、おたくからいただいた生産費は、四十六年度は三十五年に比べて三〇九・二%、そういうふうに上がっているわけですね。それが下がったというのは、結局その計算のしかたを変えたから無理して下がるようにしたわけですよ。その計算方式がことしも踏襲されて、それをさらにこうしているわけですからね。そういう点で、いかにも得々とやっているというのは非常に納得いかないわけです。  だから、去年そういうようにわざわざ計算方式を変えてこの生産費が安くなるように計算をしたから、いままでの米価よりも下になっちゃったわけでしょう。それ自体がおかしいわけですから。それでまあプラスアルファしたんですから、これはやはり当然今年度に受け継いで、それであたりまえじゃないかと思うんですね。まあ、こういうことは、しかし、あまり言ってもなかなかこれは……。  それじゃもう一つお聞きしますがね、昨年に比べていわゆる災害の状況が非常に減ってきて、米作が安定をしてきたために二〇%の分を一〇%に変更したと、そういうお話でございますがね。それで、いま食糧庁長官は、昭和三十年代の話と最近とを比較されましたけれども、それは三十年代といまと比べれば米作も安定したことは事実でしょう。しかし、いまさっきあなたが示された数字を見ましても、昭和四十四年、四十五年、四十六年と見ましても、一〇%を除外した数字が三千七百六十四、三千四百三十九、三千九十三と、そういうようにこれを見ると、年々いわゆる一〇%以上の被害を受けた農家の戸数というものは、ものすごくふえているわけですね。この四十四、四十五、四十六と三年見ましてもふえているわけですよ。ということは、この三カ年間は年々災害を受ける率が高くなってきているわけですね。それでなおかついままで、去年までは二〇%であったのを、そういうどんどん災害がふえている。ことし一〇%まで、そのように拡大をしたと、そういうことは私は、非常に道理が通らないと思うのですけれどもね。長官、どうですか、その点は。なぜ、ことしやられたんですか、そんなことを。
  161. 亀長友義

    説明員亀長友義君) これは私ども先ほども申し上げましたように、長期的な観察を基礎にいたしております。最近三カ年をとりますと、なるほど御指摘のとおりでございます。四十六年に異常気象のような年があったということも、これは当然でございますけれども、異常気象というときは、やはりそれだけに私どもは異常な扱いをするのが妥当だというふうに考えております。当然この三年方式で実施をいたしましても、かりにそういう状況じゃないとして入ってくれば、それはそれなりに修正をされるわけでございまして、扱い、方針、考え方としては、長期的な観察をもとにしてさしつかえないというふうに考えております。
  162. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だからね、それは三十年代に比べれば、最近は被害の受け方は少ないですよ。この数年間は、被害の受け方がひどくなっていることは認めますか。
  163. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 四十四年−四十六年の一〇ないし二〇%に該当する数字は、先ほど申し上げましたようにふえていることは事実でございます。
  164. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから非常に、農林大臣ね、ものごとにはやはりいろいろな、それは長い目から見れば、それはぜひとも多少の反対があってもやっていかなきゃいけない問題はあると思うのですよ。けれどもやはり時期というのがあると思うのですよ。また、やっぱり段階的にやっていかなきゃいけないと思うのですよ。通勤費の問題にしても、それは確かにあなたの言われたように、こういうものが入っているほうがおかしいんだと、そう言えばそうかもしれないけれども、ちゃんと入っておったわけですからね。それをのけるならば、やっぱり段階的に時間をかけてやる。また、それを二〇%を一〇%にするという問題にいたしましても、こういうときにやるというのは、いかにもこれはやり方としてはよくないと思うんですね。去年あたり冷害で、しかも、できるだけ味のいい米をつくろうという、そういう流れの中で、冷害を受ける危険性も非常に多いわけですね。そういうときに、二〇%を一〇%にする、そういうのは私は、はなはだ道理が合わないことであって、それは客観的に見ても、三%をはじき出すための苦心のやり方だと、こう言わざるを得ないのですね。私も人がいいほうですから、人の言うことを信ずるほうですけれども、こればかりは絶対信ずるわけにはいかないと思うんですけれどもね、どうですか。
  165. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 一〇%か二〇%かということ、一〇%に下げたのを二〇に上げますと、米価にはね返りがたしか一・五%ぐらい。それから三・〇三%が四・五三%ぐらいになりますか、そんなことらしいんです。これはおっしゃるとおり、段階的にとおっしゃるが、じゃあ一五%がいいのか、いずれにしても災害率が数年前の半分ぐらいに下がっておりますからね、率が。ですから、これはやはりそういう情勢になれば、何らかの手当を講ずべきだということは、私は、方向としては間違いないと思う。一ぺんにやるのがいかん、こういう御趣旨よくわかりましたが、ただ、通勤手当のほうは、いつかこれはふん切らなければならないない問題だったと思います。だから、さっきから申し上げているように、いわゆる最初のうちは生産費所得補償方式というものをあみ出して、なるべく増産ドライブをかけよう、こういうみんなが一致した気持ちで米価というものを算定しましたから、まあ落ちこぼれか何かわかりませんが、私もその当時のことを詳しいことは覚えておりませんが、そういう不合理な点も含まれておったということは事実だと思います。こうなってきびしくなってくると、理由があるものは、はっきりしようじゃないかというのでやったということでございますので、これはどうもスローダウンというわけになかなかいかぬ問題で、通勤手当は半分みるとかなんとかいかぬ問題で、農村ではいわゆる野ら仕事に出るのに、自分の田畑に通う時間というものは、作業時間の中に含まれて計算されておりますから、それにどうも都市の場合の通勤手当とは、全然合わないということで割り切ったわけでありまして、私は、むしろ今度の処置のほうが正しいのじゃないか、こういうように思っております。
  166. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまいただきました資料を見ますと、ほんとうに米の生産資というのは四十三年から見ましても、もう三〇何%上がっているわけですね、おたくでいただいた資料で。それで計算をして三%ぐらいで計算に合うようなほんとうに私は、どういう計算をしたのかまことによくわからないと思うのですけれども、けれども農林大臣はどうですか、やはりこの昭和四十三年から四十六年を見ましても、三〇何%も生産費は上がっておるわけでありまして、生産費は、それを三%しか今回値上げしないようにする計算にはほんとうにいろいろ無理があると、そういうしわ寄せがやはり農民の皆さんにきているのだということは認めますか。
  167. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 生産費だけでおっしゃいますと、これは私も正確に数字ははじいていませんが、さっきから申し上げているように、それまではずっといわゆるパリティ方式で来まして、最初のうちは昭和九年から十一年、つまり支那事変前の日本経済が一番安定した時期の三年間の平均をつかまえて物価でずっと延ばしていきました。その後二十五、二十六を基準に置きかえましたけれども、ずっと三十五年まで来たわけです。それから、米が足りないというので大いに増産しようということから所得補償方式というものを加えましてやってまいりました。ですから、かりに三十五年の米価物価と、今日の米価物価というものをパリティでこう延ばしてみますと、大体いいところだそうでございます。これは別にそれを私、主張するわけじゃありませんよ。生産費だけで申し上げると、ずっとパリティを延ばしていくと。生産費パリティというのは、御承知のように二百二十品目でしたか、はっきり覚えておりませんが、生産に欠くべからざる、農家がそれにかける加重平均をした、ここに数字がありますが、これ、こまかいことを申し上げてもしようがないでしょうが、現在の米価のほうがパリティ延ばしてきたよりも若干高いそうでございまして、生産費だけからいうと、そういう関係になっている、これは必ずしも御答弁にならぬかもしれませんが。だから、所得補償方式というものが加味されて、相当米価というものは、いわゆる政治的につり上がってきたという事実は、これで証明されると思います。
  168. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、最後に米価審議会のあり方につきまして、これは非常に、まあ今回においても米価審議会にかける前に、事実上の米価というものが決定をして、そうして米価審議会にかける、そうして出てきた答申をまた政治的な米価というものを上乗せをして決定をする。そういうことで、非常に米価審議会といもむのが、まさに形式的に形骸化しておる、そういうような意見もありますし、われわれもやはり年々の米価審議会等を見ても、そう思うわけですが、農林大臣は、今年は大臣になってから間もないからやむを得ないとしても、来年度からそういう米価審議会のあり方について、先ほど、勇気と決断の田中内閣という、そういうPRの話もあったわけですけれども、そういう点、改革する考えがあるのかどうかですね。現在の状態でいいと思っているのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  169. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 米価審議会は、どこまでも農林大臣諮問機関でございまして、行政機関でございませんから、米価審議会自身が最終決定権を持つということは、行政のあり方、責任の所在の問題にもかかわってくると思いますから、そういう意味で塩出委員がおっしゃっているのではないんじゃないかと思いますが、米価審議会に専門部会等を設けて、さらに、常時実態を把握して、自動的にある程度農林大臣意見を具申するような機能を持たせるかどうか、こういうような問題があるんじゃないかと思います。この点は、従来米価審議会というのは、任免は私がやりますが、これは赤城さんが前にやったわけでございまして、私は、それを引き継いだわけでありますが、やはり米価審議会は自主的に、内容について私どもがああのこうの指図しますと自主性が失われますんで、全く自主的にやっていただいておりますから、これは会長になられた小倉さんにも御相談をして、御期待に沿うような自主的な活動が米価審議会でできるかどうか。それは研究問題としてお預かりさしていただきます。
  170. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 やはりぼくたちもこの資料を米価審議会諮問した日にいただいたわけですがね、米価審議会委員の人にも、あの日にこの資料を農林省は渡して、そしてこの期間に審議をしろと、そういうことになるわけですか。
  171. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 米審委員の方にも開催の当初に配付をして、大臣のごあいさつの後に説明をしておりもす。
  172. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、こういう資料をいただいても、これは全部まあ農林省からもらった資料で、先ほども言ったように、米の生産数量、十アール当たりの生産量等においても、非常にいろんな数字があってむずかしいわけですね。そういう点で、こういう資料をぱっともらって、二日や三日の間で、これはほんとうに米価というものが適切であるかどうかということは、私は、短期間にはできないと思うんですね、実際のことを言えば。ただ、両方の言い分を聞いて、そういうようなことで、ほんとうに米価というものは、農民の皆さんの側からいえば、それは高いほうがいいわけだし、しかしまた、まあ、それだけでもいけない、ほかの要素からも検討していかなければいけない、そういうようなものでございますのでね、まあ、そういう点で、ひとつそういう米価審議会の審議のあり方というものを、そういう、もっと、先ほど言いましたように、常時小委員会なり専門委員会をつくって、ほんとうにやはり内容の充実した答申ができるように、そのようにひとつ農林大臣のほうにおいても検討していただきたい、そのことを要望したいと思います。  以上要望いたしまして、質問を終わります。
  173. 塚田大願

    ○塚田大願君 だいぶ長い間審議されたわけですけれども、どうも米——いや豆ならぬ米のほうは煮上がらないという感じです。そこで私、まあ時間があまりございませんので、重点的にお尋ねいたしますので、率直にフランクにひとつ答えていただきたい。大臣もだいぶお疲れだと思うんですけれども、肩を張らないでお答えしていただいたほうがお疲れもしないだろうと思うのです。  まず第一に、先ほどからいろいろ質問が出ましたが、とにかくことし三・〇三%のアップだと。これは、先ほども出ましたように、今日の労賃の値上げあるいは物価の値上げ、こういうことを考えれば、実質的にはこれは値下げではないかと、私どもはそういうふうに考えますし、農民の皆さんもやっぱりそういうふうに言っておられるんじゃないかと思うんです。というのは、赤城農林大臣がことしはもう三年間据え置いたんだから上げますよと、こういうことをたびたびたび言われて、農民の方々はたいへん期待をしておったと思うんですね。ところが、まあこの程度の値上げ、これならば、このぐらいの値上げだったら、まあ値上げしてもらわなくてもいいという声も一部にありますね。大臣の耳に入っているかどうかわかりません。そこで、私は、大臣に率直にお尋ねするんですけれども、この三%ぐらいの米価の値上げで、いまのようなこの物価がどんどん上がっているような情勢で、はたして米作農家の暮らしが去年よりも向上するとお考えなのかどうかですね。まず、その辺を率直にひとつお答え願いたい。
  174. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 先ほど来、各委員から同じような御質問がありまして、私もお答えをしてきたんですが、これは今度の値上げによって、いま塚田さんがおっしゃるように、農家の暮らしが一ぺんに楽になる、あるいは出稼ぎをしなくてもよくなる、それはちょっと私もそういう大きな効果があらわれるとは毛頭考えておりません。ただ、先ほど来申し上げているように、何せ過剰基調政府も困り果て、農家の方にもたいへん御無理なお願いをして生産調整という無理なことをやってまいりました。そうした事情からしますと、なかなか米価を上げるというところにふん切りがつかなかったのを前赤城農林大臣がふん切っていただきました。大体私が着任前に今度の諮問米価その他につきましても、大体の線が引かれておったものですから、私は、それに乗っかってまいったと、こういうことでございまして、おっしゃるような大きな効果が一ぺんにあらわれると思いませんが、何とか生産調整をやりながらも、農家のためを考えれば、少しでも米価を上げてあげたい、こういう私どもの気持ちだけは、おくみ取りいただきたいと思っております。
  175. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうしますと、大臣もこの程度のことでは十分でないということを認められておると思うのです。これはまあ当然ものごとを率直に見るならば、これはもうだれしも同じ意見ではないかと思うのですが、とにかく米というものがわれわれ日本国民の主食で、この米価の問題というのは、突きつめれば日本農業の将来の問題にかかわる問題であることは、もう明らかであります。ところが、最近はどんどん農業所得が減っていく、そして、農業外収入に頼らなければいけない、こういう事態が生まれてきた。したがって、私は、大臣のいまの御答弁は、やはり現状を肯定された答えではなくて、やはり現状を何とか打開しなければならないという立場での御答弁だと思っているのですが、それならば私は、やっぱり農民が農業外収入に頼るのではなくて、農業だけで生きていけるという米価を保証するということが、やはり一番基本ではないか。そういう点で、私は、田中内閣あるいは足立農林大臣は、決断と実行をまず発揮していただく必要があるのじゃないかというふうに考えますが、この点はいかがでしょう。
  176. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) この問題は、私の農政上のビジョンとも関係してくる問題でございまして、お話しするとたいへん長くなるし、貴重な塚田先生の時間をとってしまっちゃ申しわけないのですが、やっぱり日本は土地が狭いという、しかも、農家の経営規模が特に水田地帯においては零細でございまして、なかなか拡大ができない。土地の問題、構造上の問題、これが宿命的にあると思います。ですからいろいろなくふうをし、私どもは総合農政といっているのは皆さん方たいへんおきらいになる方もありますが、やはり総合的に解決しませんと、農村の中だけで農業問題を解決するということは、なかなか困難じゃないか。そこで、高能率、高生産ということを私、言っていますが、これは決して念仏じゃありませんで、私の地元では相当これ効果をあげている。新しい町づくりを基本的に考え直しまして、この地帯は住宅地帯にする、ここは工場誘致地帯、ここは畑作地帯、ここは水田地帯、こういうように分けまして、立地条件はあらためてやり直して、それで協業化をやり、一種の請負耕作までいきまして、それで労働力が浮いてきますから、それを一部工場に働きにいく、あるいは農業でさらに専業的に生きていく人たちは、畑作あるいは施設園芸あるいは果樹、畜産、そういう方面に自分の生きていく道を見出していく。自分がいままで持っておった農地は協業化に預けて、いわば飯米ももらえる、米は要らなきゃお金でもらえる、こういう仕組みで相当解決をみております。決して私でたらめなことを申し上げておるのじゃございません。私どもとしては、そうした団地営農制度、これを何とか打ち立てて農業問題を解決していきたい、こういうように考えておるわけでありまして、米価だけでもし新潟の農民の皆さんが左うちわで暮らせるようにするといえば、これはなかなかいまの構造の容内をそのままにおいておけば、おそらく倍にしても三倍にしても他産業の人たちと肩を並べてゆうゆうと暮らせるということはなかなかむずかしいのじゃないか、相当思い切ったメスを入れて農政を展開しなければ解決しないと、こういうように思っていますので、私は、そういうビジョンを持って今後真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  177. 塚田大願

    ○塚田大願君 大臣のビジョンの一端をお聞きしたのですが、大臣もやはり総合農政というものを礼賛されておるようであります。私は、この間も赤城農林大臣を相手にしまして総合農政について大論争をやりましたけれども、これはいずれまた足立大臣ともやらなければならないと思っておりますが、とにかく高能率、高生産というふうなことで構造改善をどんどんやるのだと、団地の農業を創設するのだと、これは一つの夢みたいなものであって、抽象的にはなるほどたいへんわかったようで、実際は、その中身から見れば私はちっともこれは成功していないと。大臣の地元では成功しているとおっしゃるのですが、私の経験では成功しないところのほうが多いということですから、この点は、あらためてひとつ論議してみたいと思うのです。  米価の問題でなおお聞きしたいのですが、先ほどからたびたび出ましたが、算定方式の問題ですね。やはりこの辺にも田中内閣なり足立大臣なりの思想といいますか考え方が出ているのではないか。大臣は、赤城さんの赤城農政を承継したので、大体その線で乗ってやったのだとおっしゃるのですが、それはとにかくとしまして、先ほども出ました食糧管理法第三条第二項、この精神はいわゆる農業だけで生きていける米価という精神だと思うのですね、私どもの考えでは。いわゆる生産費所得補償方式というのは、そういう思想の上に立って、これが、食管法がきめられたということだと思うのですが、ところが、ことしの米価の試算方式を見ますと、先ほどからたくさん質問が出ましたが、また去年と違っている。毎年毎年変わっている。だれが見ても、これは数字の魔術をたくみに使って農民をごまかすというものだと言って、私は過言ではないのじゃないか。統計というものは、数字というものは、これは使い方によってどうにでもなる性質のもので、そういう点では食糧庁には、こういう数字のベテランがたくさんいるのだと思うのですが、数字をたくみに使ってことしの米価を算出した、こういうことだと思うのです。  そこで、時間ありませんから、これ一々長官にお聞きしなくて、私のほうから言いたいと思うんですが、たとえば昭和四十二年度と同じ方式でことしの米価を算出すれば、大体三万三千八百円になる。四十六年度に比べれば五八・七%アップになるはずです。四十二年度方式計算すればですよ。四十三年度方式でいけば二万六千円、前年度アップ二二%。それから、さらに昨年の四十六年度の方式でいったらどうか。これでいきますと、先ほど大臣のほうから昨年の場合には下がったというお話もありましたが、二万二千四百三十一円、五・三%アップ。しかし、実際には昨年は補正がつき、あるいは良質米の奨励金がつき、品質改良奨励金などがつきまして、そういうものを計算しますと二万三千九百二十四円、一二・二九%のアップになる。この方式で、去年の全部含めてですよ。ところが、ことしは三・〇三%、あまりにもこれはひどすぎやしないかと。要するに、先ほどから論議が出ましたように、ことしの算定方式というものは、明らかにつじつま合わせだけの方式だと。つまり、最初から三・〇三%——まあ大臣は、先ほどわれわれがうまくやれば〇三なんというものを切り捨てて、きれいに三%にしますよと大みえを切られましたけれども、そこがまたそこの味のあるところで、〇三%を加えたというところは、まことに手がこんでいると思うんですよ。とにかく、そういう形で逆算をしましてね、そして理屈をくっつけたと。先ほど長官もいろいろ説明して、だいぶ同じことを説明されて口もくたびれたんじゃないかと思うんだけれども、だれが見たって納得できないんですよね。災害のあれを切り下げてみたり、通勤費を除いてみたり、いろいろ手品をやったんだけれども、やっぱりこれは逆算方式の手品にしかすぎないと、こういうことになると思うんです。  そこで、やっぱり私、大臣に率直にお聞きしたいんだが、この米価は結局財政問題——農民の、いわゆる食管法の精神というんではなくって、やはり大蔵省からの規制を受ける財政問題としてやはり考えたから、こういうことになったんじゃないかと。これは、何ですか、当初そういったことも新聞に出ておりましたね。大蔵省との折衝。大蔵省は二%しか出さないと言っているから、なかなか折衝が難航しているということも農林省のあれとして出ておりましたが、だとすればですね、これは全く科学的に米価を算出したというんじゃなくって、やはり政治的に算出されたものにしかすぎないと。したがって、そうなれば、日本の農業の発展にとってはほんとうにプラスになるいわゆる農政としてですよ、農政と言えるようなしろものではないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺大臣の所見を伺いたい。
  178. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 私も三・〇三%が、これが足立農政だなんて大みえを切る気は毛頭ございません。生産農民には申しわけない気持ちでおります。ただ、さっきもどなたかの質問で、私、率直にちょっとものを申し過ぎたかもしれませんが、政府部内で話をつけるということになりますと、たいへんこれ困難いたしまして、いま大蔵省という話がありましたが、大蔵省のほうは逆ざやを解消してくれと。これは、私どもも農政を進めるという立場ですと、ほんとうの気持ちは逆ざやを解消したいんです。しかし、これはコスト逆ざやまでいくと、たいへんなことで、ちょっとやそっと見通しはつきませんが、少なくとも未端逆ざやですね、これは御承知のとおり、いま七百六十四円の逆ざやが出ておりますが、理屈から言うと、政府から買った米をまた政府へ売ればもうかるという理屈になるわけですね。現実には、そういうことはありませんよ。ありませんが、そういう理屈になる、末端逆ざやというのは。ですから、これはほんとうはせめて末端逆ざやぐらいは解消をして、食管の荷物を軽くして、農政費をよけい取りたいという私どもにも気持ちがあります。しかし、経済企画庁あたりは、やっぱり消費者物価政策ということを中心に考えていますから、この消費者米価を一切動かさぬというならば、あれですね、若干の生産者米価の引き上げは認めてもいいが、そういう約束ができるかというんで、私どもも困り果てたわけでありますけれども、まあ、それは私どもどっちにしても、これはこれからの問題だから、いまここで消費者米価をどうこうするという約束はできないというんで、突っぱねて、とうとう三・〇三%、コンピューターがはじき出した数字はのましたわけでありますが、非常に苦労した、こういうことで出ましたので、いまおっしゃったような、決してこれが農政だなんて言って大みえを切るような気持ちはございませんで、むしろ申しわけない、こういう気持ちでおることを率直に申し上げます。
  179. 塚田大願

    ○塚田大願君 では、次に進みまして、先ほども問題になりましたが、この諮問ですね、いろいろ大臣も答弁されまして、これは何も足立さんになってからつくったんではなくって、まあ従前の諮問をそのまま継承された。ただ、違うところは、需給事情を勘案するというところですね。むしろ手直ししたんだと、こうおっしゃった。確かに需給事情を勘案するということの意味はわからないこともないですが、これは私どもの理解するところによれば、結局このことばは、需給事情を勘案するというのは、生産調整をしているからという意味にとれるんですね。生産調整しているんだからという、そういうことばではないかと思うんですが、もしそうだとするならば、農民が逆にこう言っておりますね。生産調整に協力をしているのだから米価を上げてくれ。ところが、農林省は、生産調整をやっているのだからあまり上げられないのだと、こういう理屈になるのですけれども、私は、これは非常に矛盾ではないかと思うので、やはり生産調整していればこそ、つまり需給事情を勘案をするならば、むしろ米価をもっと上げなければいけないのではないかというふうに私は、考える。その辺はどうでしょうか。
  180. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 農民が非常に無理な注文である生産調整を協力しているのだから、米価のほうでめんどうをみようという気持ちは、農民の率直な声として私もわかります。しかし、根本は過剰基調でございまして、需給のバランスを何とか早くとりたい、そうしてさっきも申し上げたように、五十四万ヘクタールを転作定着させれば需給の見通しはつくという計算で、いまお願いをして、転作を定着させるために努力をしている最中でございます。  まあ御承知のように、生産調整奨励金は三万円、三万五千円、四万円とありますが、永久転作のほうに移っていただいた方は、これは私どもとしてはありがたいわけでございます。これは構造改善やパイロット事業、いろいろな土地改良その他の助成をいたしまして、定着させるように努力をしておるわけでございますが、その三万五千円という中間でございますね、これがいわゆるひより見組でございまして、米価が採算がよくなるといえばまた米に戻ろうかという組でございますので、これは何とか目的の五十四万ヘクタールを転作定着まで持っていくように、しばらくは心を鬼にしてがんばっていかないと、また過剰問題が起こると、これはもうどうにも収拾がつかなくなる、こういう気持ちでおります。こういう私の気持ちもひとつおくみ取りいただきたいと思います。
  181. 塚田大願

    ○塚田大願君 いや、その生産調整ということは、私どもも理解しようと思っておるのですけれども、ただ、その生産調整を、農民の納得のもとに自主的に進めてこそ生産調整というものが意味があると思うのですが、そういう意味では、何ですね、農民のそういう意欲といいますか自主性を引き出すためにも、ただ米価を押えるという方式でなくて、転作すべき他の作物の価格保障ですね、これを積極的におやりになれば米ばかりつくっていてもしようがないんだと、こっちもやろうという農民の意欲というものが出ると思うんですが、そういう点を大臣はどんなふうにお考えでしょうか。
  182. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) おっしゃるとおり私も考えています。さっき北海道農業の問題を例にとって申し上げたんですが、ただ、私は、来年生産調整のやり方を変えてみたいとさっき申し上げましたが、これはまあ別に新潟にお世辞使うわけではありませんが、今度も新潟は五五%しか協力してくれなかった。これは事務当局からいわせれば、新潟の協力する率が低いので困るというようなぐちも出るわけですが、私は、ここに農政局長おりますが、これはまあ、りっぱな美田を持ち、コシヒカリなんていう銘柄ものを生産し、全国農民が飛びついて喜ぶような米ができるところを、せっかくの美田に草をはやしておけば、税金から補助金を出すというようなやり方は、それ自体が根本が無理なんで、これはあまり責められないじゃないかといっておるんです。ですから、まあ来年は私は、やはり転作もなかなか困難、そうかといって工場誘致もむずかしいというようないわゆる米の主産地については、いままで以上に地域指標というものを考えたひとつやり方で談合してみたいと思っているんです、各県と、相談をしてみたい。いまおっしゃるような転作した場合の価格保障その他の制度も考えながら、あるいは土地改良その他の助成も考えながら、そうしたことでひとつ話し合ってみて、それで納得の上で少なくとも知事さんあるいは農業団体の責任者、そういう方々と納得の上で、ひとつ生産調整を進めてみたい。これ、うまくいきますかどうかわかりませんが、誠意を尽くしてやってみたい、こう思っておるわけです。
  183. 塚田大願

    ○塚田大願君 時間がきたようですから、私、最後の質問をしたいんです。  最後の問題としては、やはり先ほど出ました大臣の食管改変の発言の問題なんですが、これは先ほどからも質問が出ましたし、まあ大臣もこれは一般的な改変にすぎないとおっしゃっておられるんだが、しかし、やはりこの問題は、本来非常に一番農政の基本にかかわる問題ですから、私は、もっとここははっきりさせなければいけないと思うんですが、これはもう時間の関係で割愛をしまして、最後にお聞きしたいのは、先ほどから大臣が盛んにおっしゃるんだが、逆ざやの問題ですね。  確かに逆ざや逆ざやということが言われて、そして食管会計の赤字がどんどんふえていくということで、マスコミなどもいろいろなことをいっておりますけれども、しかし、私は、この農業の総産出額における米のウエートですね、を考えますならば、私は、やはり逆ざや逆ざやということは、あまり言うべきではないんじゃないか。というのは、とにかく米のウエートが農業総産出額の約三六%、これだけのものを占めておる。しかも、国民の主食であって、これは消費者の米価を据え置いて、いわゆる食管制の二重価格制をとっているということは、私は、これはいいことなんであって、そのために負担がふえると、農林省の総予算の中における米関係の予算の負担が非常にいま大きくなっているといっても、私は、それにそんなに驚く必要はないんじゃないか。これは要するに国民生活の安定の問題、物価の安定の面からいいまして、やはりこれは政府が責任を持ってやるべき性質のものであって、少々赤字がふえたからといってどたばたして、さあ消費者米価の値上げだ何だかんだというような私は、必要ない。  と申しますのは、私もたびたびここでも言っているんですが、たとえば軍事優先の予算の組み方、あるいは大企業優先の予算の組み方を変えれば私は、もっと農林省の予算なんか、つまり、この米の関係の予算なんかは財源がないわけじゃないと思うのですよ。現に、田中さんが今度一枚看板で掲げられておるあの日本列島改造論、あの日本列島の改造には大体聞くところによると、四百五十兆円の計画だというのですね。これほどの計画を、その財源があるんだったら、なぜ三千万円だ、四千万円だといって、赤字だ、赤字だといって、逆ざやだといって驚く必要があるか。四百五十兆円だというのじゃないですか。じゃあ、その日本列島を改造をして、農業を発展さして食糧の自給ができるか。そうじゃない。やっぱり大企業優先の公害たれ流しの企業を全国に振りまこうという、そのためにこれだけの財源があるんだったら、食管制の会計なんかもっと出したって私は、差しつかえないと思うのです。そのぐらいのことをやられてこそ、初めて私は、田中内閣は決断と実行の内閣だと言えるのじゃないかと思うので、その点ひとつ大臣、どういうふうにお考えなのか、田中内閣の農林大臣としての確信ある御答弁をお伺いしたいと思います。この答弁をお聞きして、私の質問を終わります。
  184. 足立篤郎

    国務大臣足立篤郎君) 日本列島改造論は、角さん——角さんと言っちゃいけません、総理大臣になったんですから、田中総理の独壇場でございまして、私も要綱を読んだぐらいなもので、へたなことを申し上げると、筋を間違えちゃたいへんでございますが、公害たれ流しとかなんとかいろいろな御批判もあるようですが、やはり都市集中の企業を合理的に分散をし、交通路を確保して、地方の全般的な発展をはかる、同時に、公害を防いでいく、こういう理想に立っていらっしゃるようでございますから、まあ、いずれ内閣に日本列島改造問題懇談会というものができまして、国会議員や役人は入りませんが、民間のそれぞれ関係者、農林関係でも、たとえば農協中央会長とか農業会議所、これは鍋島さんは議員ですから、専務が出るようでありますが、その他農林省出身の学者の連中なども参加をするようでありますので、農業問題は、十分その場で御検討いただけると思っておりますので、いまからそう御心配にならぬでもいいのじゃないか、こう思っております。  それから、二重米価ですね、まあ、そういうふうに割り切ってしまえば何でもないようなものでありますが、実際問題とすると農林省がかかえ込んでおりますもので、これが圧迫材料になりまして、私どもは、全く困り果てておるわけでございまして、できればこれは何とか段階的にでも解消したい、こういう気持ちは持っております。これは国民生活の安定、社会保障だから別途やればいいじゃないかとおっしゃるが、どこか内閣のほうでプールをつくってくれて、社会保障費かなんかで出してくれるんなら私どものほうは直接関係ないのですが、そういう仕組みになっておりませんで、にわかに私が言い出したって、これは解決する問題じゃないので、実は困っているわけでございまして、きのうの米審委員意見の開陳でも、この二重米価、特に末端逆ざやは何とか解消せよと、こういう強い意見の方が大学の教授やその他評論家の間にもずいぶんございましたので、私どももこれは今後の問題として検討したいと思っております。
  185. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 本件に対する質疑は、この程度にとどめます。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時十四分散会