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1972-10-17 第69回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月十七日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  九月二十二日     辞任         補欠選任      田口長治郎君     星野 重次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高田 浩運君     理 事                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 源田  実君                 世耕 政隆君                 長屋  茂君                 町村 金五君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 沢田  実君                 峯山 昭範君                 中村 利次君                 岩間 正男君    国務大臣        建 設 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        内閣官房長官  山下 元利君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        防衛政務次官   箕輪  登君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        法務省民事局長  川島 一郎君        外務政務次官   青木 正久君        外務省アメリカ        局長事務代理   角谷  清君        外務省アメリカ        局安全保障課長  松田 慶文君        外務省条約局長  高島 益郎君        建設省道路局長  高橋国一郎君    参考人        茨城大学教授   小林 三衛君        早稲田大学教授  畑   穣君        東京都立大学講        師        田山 輝明君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○国の防衛に関する調査  (北富士演習場問題等に関する件)  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る九月二十二日、田口長治郎君が委員を辞任され、その補欠として星野重次君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  北富士演習場問題等に関する件について、本日、当委員会茨城大学教授小林三衛君、早稲田大学教授畑穣君及び東京都立大学講師田山輝明君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、国の防衛に関する調査議題といたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところを北富士演習場問題について本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、本問題について、数回にわたって委員会を開き、種々検討を加えるとともに現地視察を行なうなど鋭意調査を進めてきた問題でありまするので、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  それでは、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっと恐縮ですが、例によりまして、健康上の都合ですわったまま質問いたします。参考人なり政府委員皆さんにも、たいへん失礼でありますが、すわったまま御質問いたしますので、皆さんもそのままでけっこうでありますので、よろしくお願いいたします。  当委員会におきましては、北富士演習場問題が基地問題として提起された行政協定発効当初から、すなわち調達庁福島慎太郎長官時代からこの問題を取り上げ、その後も絶えず動きの変化に応じて委員会において調査案件として議題としてきたのであります。この間、幾たびか委員派遣も行ない、また林野雑産物補償問題について、学者先生、地元の人々を参考人として意見聴取を行なってきたのであります。このような歴史を持っておるのでありますが、わが党の、すでに故人となられた山本伊三郎議員も、献身的にこの問題と取り組まれたことも御承知のとおりであります。  今回も、政府が、私たち野党の追及によりまして、本年四月、民法六百四条についての統一見解の発表を余儀なくされ、これに端を発して、北富士において集中的に再契約拒否にあい、結局、去る八月、官房長官田辺山梨県知事との間に覚え書きの交換をして、一時的に事態の収拾をはかるという一連の動きとなったことは御承知のとおりであります。当委員会では、去る通常国会において二回、閉会後に一回と、この問題を取り上げ、また現地調査も行ない、そして北富士演習場問題の根幹をなす入り会い権の問題、今回の暫定使用協定の問題を中心にして、いろいろの角度から政府見解をただしてまいりました。  本日は、先ほど委員長から御紹介のあったごとく、小林、畑、田山の三先生をわずらわして、この入り会い権及び暫定使用協定に関連しての法律的諸問題について、それぞれ御専門立場からの理論的な、しかも忌憚のない御意見を承りたいと考えておるのであります。  御意見を承りたい事柄につきましてまず私から質問をさしていただきますが、入り会い権については、政府は、この八月三十一日、当委員会に、政府統一見解として、「北富士演習場内国有地入会について」という文書を提出されました。これに対して何らの注釈もなければ説明もないまま、当日は時間の関係上、私はこれに対する質問を留保し、今日に至っておるのであります。すでにお手元にもあり、御承知のことと思います。また、政府は従来から、民法上の入り会い権存在しないが入り会い慣行は尊重するとの立場をとってきている。そういう政府立場についてお伺いしたいのであります。  まず第一点は、国有地入り会いについて大正四年の判例だけを根拠にしていることの是非の問題。第二点は、大正四年の判決理由入り会い権存在しないとする根拠とされた地租改正処分にかかわる関係法令の吟味の問題。三番目には、民法上の入り会い権は認めないが入り会い慣行は尊重するという政府の矛盾した方針をめぐる問題。以上の一般論を踏まえて北富士演習場についての入り会いの問題をどう理解すべきかの問題についてでございます。  さらに、大きな問題点一つとして、暫定使用協定をめぐる法律問題でございます。先ほども申し上げましたように、八月三十一日、当委員会におきまして、暫定使用協定は政治的なものであって、厳密な意味において法的な効果は疑わしい、これによって民法六百四条に基づく本年七月二十八日以降のいわゆる無権原状態が解消したかどうか疑問であるとの立場から政府を追及いたしたのでありますが、その際、二階堂官房長官も、率直に、「この覚え書き」すなわち暫定使用協定は「法律的な効果といいますか、そういうものはない、」——これは速記録に基づいたものを私は申し上げておるのであります。「紳士協定みたいなもので、まあ」「当面する問題を一応おさめて、」「この三カ月間のうちに両方とも」「誠心誠意、根本的な解決をやろうじゃないか、」という趣旨のものであると、私の質問答弁をされておるのであります。この答弁でもわかりますように、暫定使用協定は、その内容、その手続の両面において、法律的にも多くの問題をはらんでおると思うのであります。  そこでお伺いいたしたい第一点は、北富士演習場暫定使用に関する覚え書き法的性格をどうとらえてよいか、またこの覚え書きに基づいてかわされた県有地にかかわる土地賃貸契約書及び恩賜県有財産にかかわる使用許可書契約内容、三カ月という契約期間、また将来の本契約との関係等についての御意見であります。  第二点は、この土地賃貸契約書使用許可書をかわす手続面の不備について、すなわち恩賜県有財産保護組合長から県知事あて同意書が添付されているのみで、転借人同意、さらに県有地内の入り会い権者同意を得ていない問題、これはきわめて重要であります。この問題についての御見解を承りたい。  第三点は、県有地入り会い権に関連して政府が従来の立場を変えて県の行政財産使用許可という形に応じた問題、これであります。  最後に、相模原基地からの戦車輸送問題を契機として、地位協定にある米軍国内法尊重義務規定があらためて見直されている昨今ではございます。一面また日中国交正常化がすでになった現時点、安保条約地位協定の再検討、あるいは少なくともその運用上の配慮が当然視されている情勢において、現行の安保条約地位協定下における米軍に対する特権などを規定した国内諸法制についても御意見をお述べ願いたいと考えておる次第でございます。  以上でありますが、参考人先生の御公述を拝聴いたしました上、さらにお尋ねを申し上げたいと思っておりまするので、よろしくお願いをいたします。
  7. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 小林参考人から逐次御発言を願いたいと思います。
  8. 小林三衛

    参考人小林三衛君) 私は、国有地入り会い権の問題、特に大正四年の判決について参考意見を申し上げたいと思います。  この大正四年の大審院判決事件二つありまして、一つは、茨城県西茨城郡大池田——現在の笠間市でありますが、大池田村池野辺の事件と、それからもう一つは、長野県小県郡東内村・西内村の事件、この二つがあります。  それで、茨城県のほうの事件は、地租改正のときに地所官民有区分によって官有地に編入されまして、それを明治三十一年の国有土地森林原野下戻法に基づいて行政訴訟をまずやった結果、下げ戻しを受けた林野について他部落との間の訴訟になった事件であります。それから長野県のほうの事件は、やはり国有地に編入されまして、その後、国有土地森林原野下戻法に基づいて行政訴訟を行ないましたけれども、不許可になりまして下げ戻しを受けられなかった事件で、下げ戻しを受けたほうと受けられないほうの違いがありますけれども、最終的には同じ結果の内容となっております。長野事件下げ戻しを受けられなかったものですから、さらに国を相手にしまして入り会い権の確認を求めた事件であります。これは一々詳しいことは時間の関係で申し上げられませんが、この第一審の水戸地方裁判所長野地方裁判所はいずれも国有地入り会い権存在を是認しております。  その内容をごく簡単に紹介したいと思います。  水戸地方裁判所判決明治四十四年十二月二十六日とそれから四十五年一月二十九日、これは二件にわたっておりますので二つ判決が出されておりますが、内容は同じであります。「被告大字ハ国有地ニシテハ入会権ノ成立ヲ許スヘキモノニスト論スルモ其論旨モ理由ナキモノトナストナレハ国家カ土地所有スルニ付公行政ノ為ニスル場合ハ国家ハ土地ヲ公権ノ下ニ置キ私人カ之ニ対シ私法上ノ権利主張スルコトヲ許サ、ルハ勿論ナレトモ国家カ土地公行政ノ為ニスルコトナク専ラ私法上ノ財産トシテ所有スル場合ハ国家ト雖モ一般私人ト同様ニ其他ニ関スル一般私法ノ支配ヲ承認スル結果私人カ同地ニシテ私法上ノ権利享有スル場合ハ相当理由ナキ限りハ之カ行使抗弁セサルコトハ一般法治国通貫スル原則ニシテ被告論旨ハク理ナキ故ナリ故之本件ニ於テ論地カ国有タリシ間ニ於テ公行政目的ニ供セラレタル事績ハ毫モ存セス……政府当局ハ論地入会権消滅セシメタル事ナキコトヲ知ルニ於テハ国家ハ論地以テ単純ナル私法上ノ財産トナシタルコトヲ推知シ得ルニ付原告大字論地ニスル入会権ハ理論上ニ於テモ消滅スヘキモノニストナス」、こういうふうに言っております。  それから大正二年一月二十八日の長野地方裁判所判決は、「国有林野ナルモノハ直接ニ行政目的トシテ公用ニ供セラルモノニアラスシテ専ラ国家ノ収入ヲ目的トスル財政的資産ニ属スルコト敢テ疑ヲ容レス已ニ国有林野ハ収益財産ニシテ原則トシテ民法適用スヘキ財産ニ属シ入会権我邦古来認メタル民法上ノ権利ナリトセハ国有林野上ニ入会権存在認許セサルヘカラサルコト復タ論俟タス左レハ被告カ」、被告は国でありますが、「被告カニ国有林野カ国有財産タルノ故ヲ以テ当然民法適用除斥セサルヘカラスト云フカ如キハ其当ヲ得タルモノニアラス」、こういうふうに述べております。  そして、この事件はいずれも東京控訴院に控訴されまして、控訴院では逆の結果が出ております。そして、さらに両事件とも大審院に上告されまして、同じ日に、つまり大正四年三月十六日にこの大審院判決が出されたのであります。そして、この大審院判決の要旨につきましては、政府の、当委員会に出された資料の中にも一部引用されておるところでありますので、これは私がここで申し上げるまでもないと思いますが、この判決で、政府のほうで引用されている、このうちの「(中略)」として省略しているところがありますけれども、この中略しているところに重要な点があると私は考えられるのであります。と申しますのは、根拠がここに示されているからであります。判決地租改正関係幾つかの法令を引用しまして、そして、その次のところでありますが、ちょうどこの「(中略)」の「故二」というところに続くその直前のところでありますが、「其法意ノ」、法律の意ですね、「其法意存スル所推尋スレハ」、推し尋ねればという意味ですね、「其法意存スル所推尋スレハ」というのがあるんです。これは推尋するというのは、明確な法律的な根拠はないけれども、それを推し尋ねればということだろうと思います。そのことは東京控訴院判決でも言っておりますが、東京控訴院判決では、明文規定はないが法の精神では入り会い権がなくなるのだということを言っております。ですから、おそらくこれは大審院のほうでは、それほど明確ではないのですけれども、そういった明文規定はないけれども法の精神からして、「(中略)」以下のところに続いて、入り会い権だけでなくて私権関係を含めてそれは消滅するんだと、こういう趣旨であります。  この点について私の見解を申し上げますと、この基準になっております、たとえば「明治七年乃至九年ノ地租改正処分ニ関スル諸法令」で、特に八年の「地租改正事務局達乙第三号」、それから九年の「昨八年当局第三号第一一号達ニ付山林原野等官民所有区別処分派出官員心得書」、こういうものを根拠にいたしておりまして、これらによれば入り会い権は消滅したんだというふうにこの判決では言っておりますが、これをしさいに検討してみますと、これらの法令はいずれも土地官有民有に区別するための基準を定めたものでありまして、入り会い権については何も触れてないのであります。これらの中で多少とも関連があると思われますのは、先ほども申しました「山林原野等官民所有区別処分派出官員心得書」、その第三条ただし書きであります。第三条といいますのは、官民有区分基準を示したもので、「従前秣永山永下草銭冥加永等納メリタルト雖トモ曾テ培栽労費ナクク自然生草木ヲ採伐仕来タルモノハ其地盤所有セシモノニ非ス故ニ右等ハ官有地ト定ムルモノトス」、こう第三条にありまして、そのただし書きに、「其伐採ヲ止ムルトキハ忽チ差支ヲ生ス可キ分払下或ハ拝借地等ニナスハ内務省処分ニ付地方官見込ニ任スヘシ」と、こういう規定入り会い権にかかわるとすればこのただし書きだけであります。  これを見ましても、官有地に編入され、草木の伐採などができなくなったために、古くからその土地を利用していた人民が生活などで困る場合には、払い下げをしたりあるいは借地をするなどの方法がとられているので、従来その土地存在していた入り会い権は消滅したものと見なければならない。こういうふうに大審院のほうでは解釈をしていると思いますし、これが唯一のよりどころであります。しかし、このただし書きといいますのは、要するに権限を分けたものでありまして、つまり地租改正事務局内務省との権限を分けたものであると考えられます。それは明治八年の地租改正事務局議定地所処分仮規則」第一章第七条に、「渾テ官有地治定セル地所払下又ハ渡等儀ハ内務省処分ニ帰シ本局権限外ト心得ヘキコト」と、こういうふうにありますので、この払い下げをしたり、借地にするなどは内務省処分に属するのであって、地租改正事務局権限外であるから、これは地方官の裁量にまかせるべきであって、特に派出官員はその点に関係しなくてもよいという意味のものであろうと解釈しております。そうしますと、この点からはどうも入り会い権を消滅させるという根拠を見出すことは非常に困難ではないかと思われます。そして、この「山林原野等官民所有区別処分派出官員心得書」というのは心得書でありまして、派出官員山林原野などの官民有区分を実施するにあたってその基準とすべき手引きのようなもの、あるいは事務必携というようなものに属する性質のものであろうと思われます。そして、これは一般に公表されておりませんので、一般国民がこれを知ることができないわけであります。現在の法令であれば官報その他に載りますので知れるわけですけれども、そういうので、一般事務のために書かれたものは官報その他に出ないので、一般の人が知れないと同様であるというふうに解釈いたしております。ですから、法的拘束力がない。この心得書は法的の拘束力がないので、一般国民の持っている権利というものをこの心得書根拠にして消滅させるということはできないものであるというふうに解釈いたします。このことは明治憲法下におきましても、国民権利ということは現在の憲法ほどではないにしても保障をされておりまして、そういう中におきまして、法的な根拠がなくてこの国民権利を消滅させるということは明治憲法のもとにおいても許されるべきものではないというふうに私は考えております。  以上の点から申しますと、この大正四年三月十六日の大審院判決は誤っているものである、法律的な根拠がないにかかわらずこういう結果を出したものであって、明治憲法に対する違憲の疑いもあると思われるわけであります。まあしかし、こういう判決が出ましたので、そのあとは、下級裁判所はこれに拘束されまして、ずっと国有地入り会い権はないという判決が続いて出されております。幾つかの例を申し上げてみますと、これは山梨県の恩賜県有財産に関するものとして大正四年一月二十一日の甲府地方裁判所判決、それから大正三年九月二十九日の新潟地方裁判所判決、これは大審院判決よりは前でありますけれども、東京控訴院判決よりはあとであります。ですから、新潟地方裁判所も同じ東京控訴院の管轄でありますので、その影響があったと思われます。それからやはり同じ東京控訴院大正四年五月十三日、それから同じように大審院判決大正四年十一月三日に出ております。それから岩手県の事件につきましては、盛岡地裁昭和六年十月二十一日、それから宮城控訴院昭和八年四月八日、大審院昭和八年十一月二十日、いずれもこれは入り会い権を否定をしております。それから、かつて名判決といわれる国有地入り会い権があるという判決をした、先ほど引用いたしました水戸地方裁判所でも、昭和十一年十一月三十日には国有地入り会い権を否認している判決も出ております。  これはいずれも戦前判決でありますが、戦後になりますと様相は全く違ってきております。戦後の判決を見ますと、昭和三十二年一月十八日の青森地方裁判所鰺ケ澤支部判決、それから青森地方裁判所昭和三十三年二月二十五日の判決、それから千葉地方裁判所昭和三十五年八月十八日の判決、それから仙台高等裁判所秋田支部昭和四十一年十月十二日の判決、これはいずれも国有地入り会い権を肯定しております。したがって、戦後においては、戦前裁判所としては非常に違って国有地入り会い権を、下級裁判所ではありますけれども、ことごとく認めております。特に仙台高等裁判所秋田支部判決は、大正四年三月十六日の判決を正面から批判をして、それに従うことはできないということを言っております。  これは次のように引用してみたいと思います。「控訴人らは、本件土地明治初期地租改正の際国有地になったものであるから、右入会権は消滅した旨主張している。なるほど、本件土地右主張のように国有地となったことは当事者間に争いがなく、また明治初年の地租改正の際の官民有区分により国有地に編入された土地については、従来の入会権は存続しえないものとの判例大判大正四年三月一六日)や、これに賛する見解もあるが、右地租改正当時において国有地となった土地につき従来の入会権を消滅せしめる旨の法規は存在せず、また民法自体一般慣習による入会権の存続を承認しており、特に民有地国有地とを差別していないので、国が極力国有地上入会権を排除しようとしてきたことは認めるとしても、それはあくまで事実上の問題であり、国有地上には入会権法律存在しえないとの右判例——これは大正四年三月十六日の大審院判例でございますが、「及びそれに賛する見解には従うことはできない」、こういうふうに仙台高等裁判所秋田支部は言っております。この事件は現在最高裁判所に係属中でありまして、まだ最高裁判所判決は出ておらないようでありますが、私たち研究者としては、最高裁判所でどういう判決が出るかということは大いに期待をしているところであります。  それから、これに関する学説といたしましては、戦前におきましては大正四年三月十六日の判決に賛成する学説もありましたけれども、戦後——戦前からでありますけれども、戦後においては大正四年三月十六日の判決を支持する学説は皆無に近いと思われます。それから現実のところから見ましても、消滅したといいますけれども、地租改正官有地に編入した以後も、当該の住民はその林野をずっと利用してきたという事実もいろいろな調査からいわれております。こういう点からいたしますと、国有地入り会い権はないということは、現段階におきましては、学説、それから戦後の判例においてはひとしく国有地入り会い権存在を認めているわけで、その見解が私は正当なものであるというふうに考えております。  それから民法上の入り会い権は認めないが入り会い慣行は尊重するという考えでありますけれども、この点につきましては戦後、北富士につきましては何度か政府のほうで発言をされておるように承っておりますし、それから北富士問題について第三十八回国会参議院内閣委員会、この委員会でありますが、三十六年九月十一日に開かれて、社会党の山本伊一郎さんの質問に対して当時の防衛庁長官、それから調達庁長官が答えている中にもあります。たとえば、そのときの防衛庁長官は、「一つ国有地であるという面、そうして国有地であるがゆえに、慣習慣行として認めている。」「当然、国としても、その長年の慣行というものは尊重していかなければならぬものだと思うのでありますが、そういう国有地の中でそういうものがあったから、それは即入会権だとまでは断定できないのではないかというふうに考えるわけなんです。」というふうに、調達庁長官も同じような趣旨のことを言っております。それから東富士についても同じようなことがあって、東富士の入り会い協定がありまして、その中でも同様のことを言っておりますが、この慣習権利との関係でありますが、これは私たちは、入り会い慣行とか、あるいは入り会い慣習権利そのものであるというふうに解釈しております。入り会い権とは、民法規定にありますように、地方の慣習に従うということを民法自体が認めておりまして、その慣習すなわち権利であるというふうに私たちは解釈しておりますし、常に学生諸君たちにもそういうふうに説明をしておりますので、学生諸君がもしかりに、入り会い慣行はあるけれども、それは権利ではないという答案を書いたならば、これはゼロになるだろうと思います。
  9. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 小林参考人に申し上げますが、たいへん懇切なのはありがたいんですけれども、時間の制約がございますので、簡にして要を得るように願いたいと思います。引き続き参考人の方々もそういうふうにお願いしたいと思います。
  10. 小林三衛

    参考人小林三衛君) じゃあ一分ぐらいで。  以上のところからいたしますと、学説、戦後の判例から見ましても、国有地入り会い権存在をし得るということは現在においてはかなり定着をしているのではないかということと、それから入り会い慣行はそのまま入り会い権であるということになると思います。以上であります。
  11. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に畑参考人
  12. 畑穣

    参考人(畑穣君) 私に意見の陳述を求められました事項のうち第一点の一、二及び三につきましてはただいま小林参考人から意見の陳述がございまして、私も大体それについて同意見でございますので、その点は省略いたしまして、第四、つまり以上の一般論を踏まえて、北富士演習場における入り会い問題をどのように評価すべきかという問題と、それから最後の安保条約並びに地位協定と国内法の関係の問題、これにしぼりまして若干意見を述べさしていただきたいと思います。したがいまして、私の論点は次のようになります。  第一点は、北富士演習場に含まれている土地について、地元関係入り会い団体は入り会い権を持っているかどうかという問題であります。  第二は、もし持っているのだとすれば、現実に行なわれている提供手続というものがはたして適切であるかどうかという問題であります。  まず、第一の問題から触れていくことにいたします。この演習場に含まれております土地は、旧幕時代、地元十一カ村——これは現在では富士吉田市忍野村忍草部落、山中湖村に含まれている諸部落でありますが、地元十一カ村の入り会い地であったということは、これはきわめて明瞭であります。明治六年から始まります地租改正に伴う官民有区分に際しまして、この地域は官有となり、後、明治二十二年に御料林に編入、御料局静岡支庁の管理下に置かれてまいります。しかし、旧来の入り会い慣行はこのような地盤の変更にもかかわらず、依然として変わることなく続けられていたのが事実のようであります。確かに御料局は「御料地草木拂下規則」等を制定いたしまして、形式的な規制を加えはいたしますが、人民の入り会い収益の事実は、これは変わることなく継続したというようにいわれているわけであります。この点は戒能通孝、福島正夫、川島武宜並びに最近では北条浩等が明らかにされている点であります。ところが、宮内省はこの御料を解除いたしまして、山梨県へ下賜するわけであります。その理由は、通常水害による全県的な被害というのがあげられておりますが、その水害の原因をなした一つは、旧来の慣行を、いま言いましたいろいろの規則によって形式的に縛る、そのことに反抗と申しますか、抵抗する農民によるいわば乱伐であります。この点は資料の上では、宮内省の資料では、最強固の入り会い慣行が存していたのは山梨県云々というふうな記事が見えておりまして、そのことを明らかに物語っているわけでありますが、このような乱伐及び執拗に続けられていた入り会い地の下げ戻し習慣、こういった理由によって宮内省もこれを県に下賜するという方向に踏み切らざるを得なかったのではないかというように考えられます。明治四十四年に県有地に編入いたしますが、その際、県は、帝室林野管理局の、入り会い地上の権利関係は引き渡し当時の現況により継承せらるべきことという、そういう要求に対しまして、異議なしと回答しているわけであります。この点は山梨県が編集した林政資料においても明らかになっている点でありまして、この点から見ますと、御料地から県有地への編入については入り会い権というものが受け継がれていくのだというふうに理解するほかはないわけであります。  ところが県は、県有地への編入に伴いまして「恩賜県有財産管理規則」、こういうものを制定いたします。そうして旧来からの入り会い地に入り会い慣習を持っていた町村をして町村組合を組織させまして、一方では、いわゆる国土保全と申しますか、治山治水を目的とする入り会い林野保護の責任を負わせると同時に、他方では、旧慣に基づく入り会い収益を、これをそのまま認めたわけであります。さらには部分林の設定に関する規定を設けております。この規則は後に地方自治法の制定に伴いまして、昭和二十四年九月ですか、現在の「山梨恩賜県有財産管理条例」になるわけであります。ところで、この規則ないしはその条例の制定によりましても、入り会い慣習に関する部分というものは基本的には変質はありません。小林参考人もお述べになりましたとおり、入り会い慣習すなわち入り会い権であるということ、それから入り会い権は地盤所有名義の帰属とは関係のない権利であるということ、こういう入り会い権に関する現在の通説的な理解というものを前提にして申しますと、民法上の私権である入り会い権を規則ないしは条例によって一方的に消滅させることはできないわけであります。かりにできるとしても補償措置が必要であります。補償措置が講ぜられていない以上は、規則ないしは条例によって入り会い権が消滅したとみなすことはできないのではないかと思われます。したがって、旧来の入り会い慣行、つまり入り会い権は、これは規則並びに条例の制定によっても何ら影響なく存在しているというふうに解釈せざるを得ないわけであります。  ところが、旧来の入り会い慣行入り会い権というものを消滅させまして新たに条例上の権利に変えたんだという見解があるかと思われます。しかし、この見解は私は承認できないわけであります。それはいま言った点からです。しかしながら、この規則並びに条例、現に存在するわけでありますが、この規則並びに条例を入り会い権に関する関係で位置づけた場合に、規則並びに条例というものをどういうふうに理解することができるかという問題でありますが、私はこの規則並びに条例というのは入り会い権の行使を——下賜に際して目的とされました治山治水という、いわば国土保全目的、これを果たすために入り会い権の行使を制約したにすぎないのではないか、入り会い権はあくまで本来の入り会い団体というものが依然として持っていて、その自由な行使が、いま言いました治山治水ないしは国土保全という公共的な目的を達成するために制約されているにすぎないのではないか、そういうふうに解釈するのが、これが自然ではないかと思われるわけであります。  こういう考え方を前提にいたしまして、いま問題になっております四十七年八月二十二日付の政府統一見解というものを見てまいりますと、たとえば陸軍への県有地の売買契約ないしは組合有地の売買契約において、県知事または組合長が買い上げ物件については完全なる所有権を移転するというふうなことを言っておるようでありますが、これは全くその意味では無意味規定、無意味——かりに覚え書きその他によって合意がなされたとしても、それは入り会権の消滅に対しては何らの効力も持たないものだと思うわけであります。なぜならば、入り会い団体、つまり旧十一カ村の入り会い団体の同意を得ていないからです。しかも、その入り会い団体の意思は、慣習上、一定の方式ないしは手続、つまり入り会い権者全体の同意に基づいて決定するのが、これが入り会い慣習でありますから、それにもかかわらず、こういう手続をとったという、そういう事実は皆無な以上、全然ない以上、やはり入り会い権というものはなおかつ存在するというふうに理解するほかはないのだと思います。したがって、私はこういう契約によっても入り会い権は消滅していないというふうに考えております。  この点は、同じく政府統一見解の理由の大きな「二」の小さな「(2)」についても同様でありまして、富士山麓電気鉄道株式会社との契約についても同様でありまして、さらにこの契約につきましては、これは後になってでありますが、昭和二十二年十一月二十二日、富士山麓電気鉄道株式会社社長堀内一雄の名義で、その入り会い団体の一つである忍野村忍草部落に対して、次のような確認書が出されております。それは、「「当社が山番を置き且立入禁止の標示をなしたるは、もとより同地に入会関係ある忍野村忍草部落民の収益権を制限又は禁止をなすの目的に非ずして、右は一に無関係者の侵害を防止するための措置」である」という確認であります。しかも、この陸軍との契約が締結されるに至る過程と申しますのは、軍の態度はきわめて高圧的であったようでありまして、恩賜林組合に残っております資料によりますと、「協議会ニ於テモ昨日ノ如ク纏マラザル場合ニ於テハ「陸軍ニ譲渡セズ」ト云ウ決議ヲ求メ」というふうなことを言っております。これは軍の川上主計正。それから「本案ニ賛成シ難シトスル論ハ議員ノ面子問題ニシテ公正純理ナル陸軍ノ関スル所ニアラズ他ハ知ラズ陸軍ニ対シテハ効力ナキモノト御説得願度」云々というふうになっております。さらにそういう議員に対しては「住所氏名年令家族の状況など地元調査を行なうなど軍の圧迫愈々強くなった。」という記録が残っております。こういう状態において結ばれていたわけであります。したがって、入り会い権についての法的な適正な判断というものがゆるがせになっていたのではないかというふうに推測されるわけであります。したがって、こういう状態での締結であり、いま言った内容契約でありますから、直ちに陸軍に対して入り会い収益というものを認めろという要求が出——これは請書の形でありますが——そして現実に入り会い慣習入り会い収益上の行為が行なわれているという状況にあったわけであります。  次に、二十年八月、いわゆる敗戦——陸軍の解体以降の問題について若干触れていくことにいたします。  敗戦——陸軍の解体によって占領軍が北富士演習場に対しては進駐するわけであります。それは後にPD接収にかえられます。そうして旧安保、旧行政協定上の施設・区域になり、それが新安保、現在の地位協定上の施設として現在に至っているわけでありますが、占領状態というものは一種の真空状態と申しますか、そういうわからない状況であります。したがって、占領権力に対して入り会い権をもって対抗するということは、これは不可能な状況であったことは言うまでもないだろうと思います。しかし、引き続きPDによる間接接収、間接調達方式というものがとられるといたしましても、あくまでもそれは占領軍の調達命令によるわけで、占領状態を法的にあとからいわば形式を整えるといいますか、そういう意味で合法化するという手続をとったにすぎないわけであります。したがって問題は、昭和二十七年四月二十八日に発効のいわゆる旧安保条約・行政協定に基づく施設・区域としての新たな提供という問題になるわけであります。しかし、これに際しても、また再び岡崎・ラスク交換公文による継続使用に入れられ、しかも、なしくずし的に条約、協定上の施設・区域に入れられてしまったわけであります。本来、地位協定上の施設・区域に関する合意はあくまでも両政府間を拘束する問題でありまして、直接国民権利義務には何らの消長を来たさないことは当然のことであります。したがって、入り会い地を新たに施設・区域として——主権の回復した安保条約並びに行政協定上の施設・区域として使用する場合には、やはり入り会い権者同意を求めた上で、入り会い権に関する消滅ないしはその制限に関する法的手続というものをとるべきではなかったかというふうに思うわけであります。この点の処理というものがやはり適切でなかったために、その後、演習場問題に関する混乱というものがあとを断たないのではないかというふうに私には推測されるわけであります。  しかも、この点の事情というものを物語るのは、これは直接入り会い問題とは関係ありませんけれども、県との間に締結せられました賃貸借地契約であります。その中にその性格というものは顕著にあらわれているというふうに思われるわけであります。この契約は旧安保、旧行政協定を実施するための賃貸借契約であります。で、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定を実施するために駐留するアメリカ合衆国軍隊の用に供する目的をもって締結される契約でありまして、その契約内容は、使用態様、使用方法については何ら触れないで、ただ賃貸し人つまり土地所有権者が損害をこうむった場合の移転料であるとか、残余財産の補償であるとか、通常受ける損失の補償であるとか、返還時の補償並びに中間補償に関する条項が置かれているわけであります。使用内容もしくはその方法をあげて相手方に一任いたしまして、ただ損害を受けたときだけ補償を受けるという考え方は、これは民法上の賃貸借契約の考え方ではなくて、むしろ強制使用に類する考え方ではないかというふうに思われるわけであります。しかも、その契約条項の中には、土地所有者、賃貸し人について賃借人たる国の同意なくしてその土地を他人に譲渡できないという条項が置かれております。この条項の法的効果は一応別といたしまして、ここにあらわれている考え方は、言うまでもなく、不可抗力的に事実としてすでにつくられている、そういう米軍の使用関係を、賃貸借契約という法形式を使って合法化していく、そういう性格を持っていたのではないかというふうに思われるわけです。なぜならば、この賃貸借契約の原形となっているのは、一九四九年十月二十日、スキャップのサーキュラー二七、対日不動産方針の中にあらわれておりまして、この方針によって政府がまとめました賃貸借契約のひな形は大体これと同じようになっております。したがって占領下の、いわば不可抗力的な占領接収としての使用、これを賃貸借契約という形でただあとから合法化している、そういう性格があったことがきわめて明瞭になるのではないかというふうに思われるわけであります。もちろん契約は自由であります。したがって、どのような契約を結ぶことも許されるとしても、その契約の性格そのものは大体以上に述べたようなものではなかったかというふうに思われるわけであります。この点が現在の暫定使用協定にどのように引き継がれ、どのように引き継がれていないかということは問題でありますけれども、大体時間が参りましたので、私の意見はこの程度にさせていただきます。
  13. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に田山参考人
  14. 田山輝明

    参考人田山輝明君) 私は民法の中で、とりわけ土地法を研究している者といたしまして、民法六百四条の問題と山梨県有地に関するいわゆる暫定使用協定の問題につきまして、法律的な見解を申し上げることにいたします。  北富士演習場の沿革等につきましては、足鹿先生が御指摘になりました点でもありますし、その御指摘になった問題点につきまして小林先生、畑先生から御見解がすでに述べられましたので、重複を避けまして、私は第二点のほうに限定いたしまして申し上げます。第一点のほうにつきましては両先生の御見解にほぼ賛成でございますので、それを前提にしていただいてけっこうでございます。  民法六百四条の問題ですが、この点につきましては、ことしの四月二十六日に政府統一見解が発表されております。内容の要点は、米軍の用地契約にも民法六百四条が適用される、したがって引き続き必要な場合には契約の更新をする必要があるのだという内容のものであります。  そこで、この民法六百四条の立法趣旨というものが、ないしは制度趣旨というものがどういうところにあるのかということがたいへん重要な問題なんではないかと思うわけなんです。これは大きく分けまして二つの点があると思うんです。第一点は、この本来の立法趣旨を制定過程から調べてみますと、賃貸借の期間というものをあまり長くいたしますと、所有権の一部がはがれてしまうようなことになるので、相当な制限を加えなければならなかったということが当時の立法過程で明らかにされているわけであります。このことは一体何を意味しているかといいますと、さらに二つ意味に分けて考えることができるように思います。その一つは、法思想的といいますか、法イデオロギー的といったらいいでしょうか、そういった意味合いのものであります。つまり所有権は、とりわけ土地所有権は、いつかは絶対的な全面的な支配権に復し得るんだということが観念上必要とされる。これは近代法の原則からいって観念上必要とされるんだということであります。これは近代法が市民革命特に土地革命、封建的な土地所有権を崩壊するという過程における市民革命の最大の課題であったわけでありますから、近代社会が誕生する過程においてこうした法イデオロギーが確立してきたということは歴史的にもよくわかることであります。それからこまかい二番目の意味といたしましては、経済的な意味があったということです。つまり、あまり長い期間にわたりますと、土地所有者もまた賃借り人も両方ともその土地に関する改良を怠って、そのことが一般経済上の不利益を招来するんだということを立法者が心配した結果であります。  それからこの趣旨の大きな二番目といたしましては、立法者が賃借権の期間を二十年に限定いたしましたのは、居住用つまり宅地などにつきましては二十年をこえて必要とする場合もあるということは考えていたわけでありますが、その場合には別な制度、つまり物権としての地上権というものが利用されるということを想定していたわけであります。ところが立法者の意図に反しまして、現実には地上権の設定ということはほとんど行なわれなかったわけであります。その意味においては、この六百四条という規定を補うために、宅地の賃貸借については多かれ少なかれ、また、おそかれ早かれ特別法の制定というものが必要とされていたわけであります。これが大正十年の借地法の制定という形であらわれておるということは周知のところであります。  こうした立法過程ないしは立法趣旨より見まして、当事者が二十年以上の期間を契約によって合意しましても、これは二十年に短縮されるわけであります。これは法律明文にもそう書いてございますし、規定のしかたからしてそういうことになる。つまり民法六百四条に違反する契約というものば同条によって修正されるわけであります。内容が修正されるわけであります。一般的に申しますと、民法契約法の分野におきましては契約自由の原則が支配いたしますので、それに関連する法規も原則として当事者の意思を補充するためのもの、つまりいわゆる任意法規というふうに解される場合が多いわけでありますが、この民法六百四条だけは当事者の意思を修正するという内容を持った規定でありますので、いわゆる強行規定であります。つまり一般規定と違いまして特に強い効力を認められているという、そういう規定であるというふうに理解しなければならないものであります。ことしの四月二十六日の政府統一見解は、このような趣旨民法六百四条を米軍用地契約適用したわけであります。これにつきましては一つの前提があります。つまり政府は、従来の土地建物等賃貸借契約書の第五条において、契約期間は一年というふうにはっきり書かれておりましたけれども、この規定は財政法、会計法等との関連における便宜的な規定であって、期間をきめたものではない。で、期間は、先ほど先生がお読みになった契約書の目的とか、そういったものとの関係から考えて、米駐留軍の必要性がなくなるときを期限とする不確定期限だといういわゆる不確定期限説をとってきたわけであります。ただ、不確定期限説につきましては、少なくとも契約書の解釈、法律解釈といたしましては私はたいへん無理な、もっとひどいことばを使えばむちゃな解釈だったというふうに考えておりますが、今回の政府統一見解は、従来のそういうかなり無理な見解を前提にしたものではありますけれども、従来のそういう無理な見解を出していた態度に比べまして法律的にもたいへんすっきりしておりまして、その意味において今回の政府統一見解を出された良識といいますか、そういうものに対しては私は敬意を表してまいったわけであります。  その敬意を表してきたということの内容は、政府統一見解が次のような三点にわたる意義を持っていたからであります。  その第一点は、米軍用地契約に国内法をはっきりと適用したということであります。すなわち条約上の義務履行のために国民権利義務を制限する場合には、国内法上の手続が必要なんだという原則を確認し、それに従って国内法を明確に適用したという、そういう先例といいますか、そういう意味がはっきりあらわれておりましたことが第一点であります。それからこの政府統一見解が発表されましたころの情勢から考えてみますと、いわゆる日米安保体制の再検討ないしは解消もしくは破棄といいますか、そういった見解が各方面から主張され、それがかなり世論の支持を受けていた。そういう状況において軍用地の法律的な再検討、再整備といったことが問題になった。そういうものを受けた形で、そういう客観的な意味内容を持ったものとして政府統一見解が位置づけられ得たという点が第二点であります。こうした世論等につきましては、五月四日付のたとえば朝日新聞の社説などが一つの代表例としてあげられるのではないかと思います。それから第三番目には、これは地主のほうの権利意識といいますか、受けとめ方の問題でもありますが、昭和二十七年以来もう二十年もの長きにわたって土地を、先ほど先生のお話にもありましたように、半強制的に賃貸させられてきた。そういう地主について考えてみますと、たとえば昭和二十七年当時五十歳程度の方であった場合には、すでに現在七十歳をこえるという、そういう高齢になるわけであります。現在二十年目で自分の土地を自分の手に返してもらえない場合には、もう自分の命のある間に自分の土地が自分のものにはならないんだという、そういうたいへん素朴なといいますか、正直な感情というものにも政府統一見解がぴったりしていたという点もあげられるのではなかろうかと思うわけです。  こうした趣旨から考えますと、政府といたしましては、在日米軍基地を少なくとも思い切って縮小するという方針のもとにアメリカと交渉をし、そして従来の軍用地は原則として地主に返すべく努力をすべきであったというふうに思われるわけですけれども、遺憾ながらそうした努力は少なくとも外から見ている者にとっては見られなかったと言わざるを得ないわけであります。そうした一般的な再契約問題がありまして、その中で最後まで問題になってまいりましたのが、次に申し上げます山梨県の北富士演習場内の県有地であったと思います。  そこで論点を次に移したいと思います。山梨県有地につきましては、いわゆる暫定使用協定というものが八月二十八日付で結ばれておりますが、暫定使用協定という名前の協定は実はないわけでありまして、政府山梨県との間の覚え書きと、それから使用許可処分を与えた文書と、それから賃貸借契約書と、この三つを総称していわゆる暫定使用協定というふうに呼んでいるわけであります。そこで、御質問の中にもありましたが、覚え書き法律的な性質についてということでしたけれども、この点につきましては、覚え書きを取りかわしました両当事者ともが、つまり政府見解国会で、県側の見解は県議会で発表されておりまして、両方とも紳士協定的なものであると主張しております以上、法律的な効果というものはないというふうに考えざるを得ないわけであります。したがって、かりに政府が違反した場合でありましても、県側がこの覚え書きをたてにとって法律的な効果云々ということは言えない。そういう意味効果はないというふうに考えざるを得ません。これは覚え書きについてであります。  次に、具体的に土地の使用に関する問題でありますが、この点について民法六百四条の適用を前提とした処理がなされておりますので、新旧契約ですね、つまり六百四条が適用されていた場合に、古い契約とそれから新しく結ばれる契約との間の新旧契約について法律的同一性があるかどうかという問題があります。学説上は、六百四条が適用された場合に、かつ更新された場合に同一性があるかにつきましては、肯定説、否定説両方がございます。しかし、民法六百四条の趣旨先ほど申し上げましたような形で理解いたします限りにおいては、法律的同一性というものは否定するという見解が正しいものと考えております。で、山梨県有地の場合につきましては、こうした学説上の問題とは一応別個に考えなければならない要素があります。と申しますのは、旧契約は、かりに政府見解に立つといたしましても、ことしの七月二十七日で失効しております。そして再契約、これは使用許可処分と賃貸借という二つの法形式をとっておりますが、いずれとも八月二十八日付でなされておりますので、右の学説上の差異に関係なく、その間に空白もございますので、同一性というものははっきりと明確に否定されてしかるべきだと思います。  以上、述べたところからほぼ明らかになると思われますが、今回のいわゆる暫定使用協定というものは、実質的にもまた形式的にも従来の契約とは法律的同一性を持たない全く新しいものだというふうに考えざるを得ません。したがって政府及び山梨県といたしましては、北富士演習場について正式な、かつ完全な国内法的手続を踏むべき地位にあったものというように考えるのが当然かと思います。昭和二十七年の旧契約によります提供手続につきましても、先ほど先生のほうから御指摘になりましたような欠陥がたくさんあったわけでありますが、かりに、これらの欠陥は、占領終了直後であった、そういうような事情を考えまして、ある程度やむを得ない要素はあったといたしましても、現在の時点で全く新たな手続をとるということが今回の暫定使用協定の場合の前提でありますから、そういうことを考えますと、前回、つまり昭和二十七年当時と同じような違法な手続というものは絶対許されてはならなかったと考えるのが正論であろうと思います。  そこで再契約をする場合に政府山梨県がどういう法的手続をとるべきであったかという一つの例として、次のような考え方が成り立つと思います。土地所有者である山梨県と政府との間におきましては、当然契約もしくは——かりに行政財産であることを前提とすれば、要するに土地所有者を一方の当事者とする、もう一つ入り会い権者を一方の当事者として政府は何らかの法的関係を持つべきであった、少なくとも契約関係を持つべきであったというように思います。これは入り会い権といいますのは、土地所有者との間で契約的な媒介によって設定されるようなものではございませんで、沿革的に見まして、民法上の法定では他物権ではございますが、契約的媒介を持たない独立した他物権でありますので、当事者としても特別な扱いをなさるべきであったと思います。借地権とか転借権につきましては、所有者との間の、つまり山梨県との間の契約の締結にあたって、同意書を添付するというような方式をとるべきであったと思われます。で、借地権についてはとったようでございますが、転借権についてとられていない。しかし、北富士演習場内の転借権につきましては、県有地となる前、つまり御料地であったころから転借権を持っていたというような場合も含まれておりますので、通常の転借権以上にたいへん重みのある権利だというように考えざるを得ませんので、特にこの点の瑕疵は大きなものだと考えます。  それから次に、北富士演習場内の特に梨ケ原の入り会い慣習につきましては、小林先生、畑先生が言われましたとおり、民法上は入り会い権であると考えざるを得ないのでありますけれども、かりに、政府の言われますように入り会い権ではなく入り会い慣行であるというような見解に立ったといたしましても、戦後二十数年間の入り会い闘争といいますか、そういうものとか、それから補償交渉の実態などの事情を総合してみただけでも、少なくとも法律的保護に値する生活上の利益であるというふうに考えざるを得ないわけであります。この生活上の利益というものが法律的な保護に値するという点につきましては、学説をはじめ大審院、最高裁とも認めているところであります。一番新しい例では日照権に関する最高裁の判決なども、これも一種の法的保護に値する生活上の利益という考え方を基礎に持っておるわけであります。そこで、かりに入り会い権に関して政府統一見解が立つといたしましても、入り会い慣行というものは、入り会い権に準じた物権的内容を持った生活上の利益として処理すべきであったと考えられるわけであります。要するに入り会い権、転借権等につきまして、法的手続を終了しない限りは国内法上の提供手続はまだ終了していないというように考えざるを得ません。  次に、今後政府山梨県及び関係権利者との間で右のような完全な正式な手続が追加的に行なわれると仮定いたしましても、今回の暫定使用協定につきましては、さらに重大な欠陥が存在しているのではないかと思います。政府山梨県との間の覚え書きの第四に「行政財産」という表示がございますが、この行政財産は地方自治法二百三十八条に定められている行政財産、すなわち公用財産、公共用財産及び、そういう目的に供されることが決定された財産には該当しないと考えざるを得ないからであります。山梨恩賜県有財産管理条例第三条によりますと、国土保全または林業経営のために必要なものは行政財産とするという趣旨規定がございますが、国土保全のために必要とする県有林というのは、もしそうするために何らかの規定が必要であるならば、森林法に基づく保安林指定をやるべきでありまして、この保安森指定をされるようなものの法律的な性質は、いわゆる保存公物でありまして、公用財産もしくは公共用財産には該当しないのであります。第二に、林業経営のために必要なものはいわゆる営林財産でございまして、これは地方自治法上行政財産から明文でもって除外されております。この点は、国有財産法第三条と地方自治法二百三十八条を比較してお読みになれば一見して明らかなところであります。で、このように地方自治法のワクを越えて、条例によって行政財産の概念を拡張するということは、法律と条例との関係、特にその効力関係というものから考えまして許されないことでありますから、右条例第三条の効力について有効、無効というのは、この際、言及は避けるといたしましても、同条にいう行政財産は、少なくとも地方自治法二百三十八条にいう行政財産ではないと言わざるを得ないわけです。  この見解は私どもの思いつき的な見解ということではございませんで、すでに昭和三十九年当時、その直前まで内閣法制局に勤務しておりました、現在も学習院大学教授であらせられます山内一夫先生も明確に同様な趣旨を述べられております。また政府につきましても、甲府地裁に係属しております北富士演習場山梨県有地に関する監査請求に基づく行政訴訟において、これと同様な結論を主張しておられたのであります。もっとも、暫定使用協定が締結されました後に、にわかに右見解を将来に向かって撤回されたと聞いておりますけれども、これは暫定使用協定という高度に政治的な協定が、いわゆるトップ会談において成立したために、事務レベルでの見解をこれに合わせたというふうに考えざるを得ないだろうと思います。そういうわけでありますから、私としましては、法律論としては少なくとも政府が主張しておられた旧見解でありますところの、先ほど申し上げた見解が正しいと考えておるわけであります。したがって、地方自治法上の行政財産でないものについて、地方自治法に基づいて使用許可を与えたということになるんでありますから、これは法律的に重大な瑕疵があると考えざるを得ないわけであります。  以上述べましたところを整理いたしますと、まず北富士演習場内の国有地につきましては入り会い権の処理がなされていないということ、それから県有地のうち行政財産と称されている部分につきましては、いま申し上げましたように、手続上重大な法律的瑕疵があります。そのため、使用許可処分が無効と解し得ること。かりに行政行為の公定力等により無効ではないという考え方が成り立つにしましても、違法な手続であるということには変わりはありません。また、許可にあたって関係権利者の同意がいまだ得られていないということも厳然たる違法な事実であります。それから普通財産についての賃貸借契約につきましても、関係権利者の権利が処理されていないということになるわけであります。で、これらの点を総合いたしますと、現在の北富士演習場は、いわゆる暫定使用協定によっては国内法上正式かつ完全な手続が完了しているとは言えないのでありまして、法律的に見る限り、一種の欠陥演習場であるというふうに評価をせざるを得ないわけであります。以上であります。
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 歴史的な長い経過をたどった北富士の演習場に関連する問題でもありますし、また、判例戦前戦後をめぐった事実関係を明らかにされるためにもきわめて時間が短かったと思います。したがって、若干の時間が延びましたが、私はただいまの三参考人の御公述に対しましてお尋ねをいたしたいと思います。  で、今度は順序を逆に田山参考人からお伺いいたしますが、それはただいまお述べになりました民法六百四条問題についてであります。私が三参考人に冒頭申し上げましたように、一番最後の、国内法尊重義務規定があらためて見直されている昨今の情勢に、政府のとらんとしておる措置、また、とった措置は、最近、逆行しつつあると思うからであります。つまり、本日の閣議で決定されると伝えられております、国内法である車両制限令をフリー・パスにしてアメリカ軍の車両を通す、自衛隊も同様にするというような問題もすでに起きておるのであります。これに関連いたしました問題が、八月三十一日の当委員会で私が指摘をいたしました、すなわち、山中湖村道一号線、二号線の問題についてであります。これは建設省が調査をし、報告をすると申しておりましたが、きょう、あとで建設省にその結果は調査報告を求めたいと思いますが、十月十四日、建設省路政課の梅原課長補佐が現地に調査に行かれたようであります。その際、この山中湖村道について質問をされたのに対して、山中湖村議会においては、あるいは村長においては、梨ケ原中道が村道であるということを証言をいたしておると聞いております。しかるに、私が先般も指摘いたしましたように、自衛隊の有刺鉄線による構築物が——参考人は現地をごらんになったかどうか知りませんが、こういうふうに構築されておるのであります。これはいまだに撤去されておらないのであります。建設省の態度はどういう態度かは存じませんが、昭和四十六年三月十八日付文書をもって、横浜防衛施設局長は、梨ケ原中道を村道山中二号線と表示して門扉の所設について村長に協力を要請しておる事実がありますが、村長はこれに許諾を与えた事実はないのであります。とするならば、これは不法の占拠であり、私どももきわめて遺憾なことだと思います。つきましては、七月の二十八日付、山梨県南都留郡忍野村忍草入会組合組合長渡辺勇名をもって二つの通告書が防衛庁長官、施設庁長官に提出をされております。それを申し上げますと、   〔委員長退席、理事鈴木力君着席〕 簡単な文書でありますから申し上げますが、「貴職は、山梨県南都留郡山中湖村字梨ケ原村道山中二号線の一部を占拠し、自衛隊の廠舎敷地として排他的に利用し、地元忍草部落民等の通行を妨害している。これは、道路法(昭和二十七年法律第一八〇号)に違反するだけでなく、忍草部落民の通行権を侵害し、不法行為を構成するので、直ちに違法占拠を解き、地元民の自由通行を認めるよう、通告する。昭和四十七年七月二十八日 南都留郡忍野村忍草入会組合組合長渡辺勇」名をもって防衛庁長官増原恵吉さんに出した。いま一通の通告書は、「通告書 貴職は、山梨県南都留郡山中湖村字梨ケ原村道山中二号線の入口より約十二メートルのところに、有刺鉄線をはりめぐらせた木柵と門扉を設置しているが、当該施設は、道路法(昭和二十七年法律第一八〇号)に明らかに違反し、かつ忍草部落民の通行権を侵害しているので、直ちに撤去するよう通告する。昭和四十七年七月二十八日 南都留郡忍野村忍草入会組合組合長渡辺勇 防衛施設庁長官高松敬治殿」、以上、二通の通告書が提出をされておるのであります。私はこれに基づいて先般調査を命じたのであります。  建設省は、本日の参考人意見の公述後に建設省の調査報告を求めますが、以上のような事実がございまして、これは本日の、閣議決定されようとしておりまする米軍の車両制限の適用除外と同様の国内法無視の性格を持った不当不法なものであると私は断ぜざるを得ません。したがいまして、まず田山参考人に伺いたいのは、民法六百四条の問題について国内法は優先すべきである、特に暫定協定の問題については地方自治法の上からもあるいは法そのものの性格の上からもきわめて重いものであり、この契約には瑕疵があると断言をされました。したがいまして、そういう見地から、道路法、車両制限令の違反問題との間の相違点と類似点について、車両制限令改正問題との関連において御所見を承りたいと思います。  第二点に、畑参考人に伺いたいと思います。畑参考人に対する私の特にお尋ねいたしたい点は法社会学的な立場からの御見解を承りたいのであります。つまり冒頭に述べました、米軍国内法尊重義務規定があらためて見直されている昨今、また、日中国交正常化がすでになった現時点、安保条約地位協定の再検討、あるいは少なくともその運用上の配慮が当然視されている情勢において、現行安保条約地位協定下における米軍に対する特権などを規定した国内諸法制についても意見を承りたいと述べたのでありますが、御遠慮になりまして、時間の関係を気にされましてこれを留保しておられます。したがって本日この問題、このような見解を踏まえて、車両制限令の抜き打ち改正問題が、本日の朝刊には各紙とも一斉に大きく報道されております。すなわち米軍戦闘車両の通行をあすから制限令からはずす、抜き打ち政令改正との関係もあります。もしそういうふうになったといたしますならば、特権などを制限をし、あるいはあらためて国内諸法制を中心に独立国家としての体面を整備していかなければならないのに、これに逆行するような措置を政府はとらんとしておるのであります。また、とっておるのであります。この梨ケ原廠舎をめぐる問題についてもやっておるのであります。したがって米軍と自衛隊がこのようなフリー・パスで通行し、かってに構築物を山中湖村道二号線に構築することの当否、その違法性、そういった問題及び、ただいままで私が指摘いたしましたアメリカ軍の、あるいはアメリカの日本への内政干渉とも勘案さるべき、また日本政府がその内政干渉に屈したかのごとき強い印象を持つ車両制限令の抜き打ち改正問題については、日中正常化後の日本の安保条約運用によっては独立国として国内法がさらに制限を受けるという重大な段階を迎えていると思うのであります。すなわち、安保への従属性が強化されるという、時代の流れと国民の期待に逆行する事態が起きようとしておるのでありまして、国民をペテンにかけるものではないかと朝刊各紙もこれを報道いたしておるのであります。もしそうだといたしますならば、あえてペテンにかけると言っても過言ではないと私は断ぜざるを得ません。そういう点から、法社会学的な立場から畑先生のこれに対する御見解を承りたい。  以上、田山先生は六百四条との関係において、また畑先生は同様の立場から山中湖村道の問題等をめぐる関連において両先生の御所見を忌憚なくお述べいただきたいと思います。  それと小林参考人には、先ほど戦前判決等の事実関係を詳細に公述され、戦後の判例についてもわれわれの全く知らない事実をお述べいただきました。たいへん私どもも感謝をいたしております。北富士演習場内の国有地入り会い権については御遠慮をなさって所見としての御意見が乏しかったやに思いまするので、政府としては司法の最高機関の下したこの判例に従うのが妥当であると考えておる、その政府統一見解に対する御所見をこの際、明らかにしていただければ幸いだと思います。  以上、三参考人に対してお尋ねをいたしますので、時間の関係もございますが、端的に忌憚なく御所見を御開陳願いたいと思います。
  16. 田山輝明

    参考人田山輝明君) 先ほど民法六百四条問題に関する政府統一見解について、従来のあまりはっきりしておりませんでした国内法を尊重するという点がはっきりしたという見解を申し上げたわけです。そうした点から、ただいま御質問になりました北富士演習場内の梨ケ原中道の問題で、写真でお見せいただきましたので、そういうものが設置されていることは事実なんだろうと思います。その点につきましての法律的な問題点に限って申し上げます。  その障害物を設置されたのが防衛施設庁であるのか、防衛庁であるのか存じませんが、そういうもので公道である村道を閉鎖する権限といいますか、法的な根拠は、道路法とか、そういった法令にはない。したがって、もしあり得るとすれば、施設・区域として提供する過程における提供手続として、そういう適当な、たとえば供用廃止というような手続をとったかどうかという問題が問題になるだろうと思います。したがって、もしそういう手続をとっていないとすれば、その点において国内法無視というふうな結論にならざるを得ない。それから村道を閉鎖している場合につきまして、かりに道路管理者がその閉鎖除去を要求しない場合でも、民法上のといいますか、私法上の通行権、つまり通行の自由権を村民ないしは通行人が有するのだというのが昭和三十九年の最高裁判決趣旨でもございますので、道路管理者でなくても、その通行の自由権を侵害された者は妨害の排除要求ができるというのが最高裁判所判決趣旨もしくは傾向だと考えております。それから、この点について最高裁判決にこだわらず、私の個人的な見解といたしましては、そういう村道につきましても、つまり公道であっても慣習的にずっとそこを通行している人がいた場合には、その点について、公法上の反射的利益とは別に、私法上の慣習法による通行地役権というようなものが成立する可能性があるというふうに考えております。   〔理事鈴木力君退席、委員長着席〕 それから事実問題として一番重要な論点になってくるかと思いますが、村道であるかどうかというそもそもの問題ですが、この点につきましては、やはり村道の最高責任者であります道路管理者、つまり山中湖村の村長が最高責任者でありますから、その人の判断が法的には優先するのではないかというふうに思います。  以上の点から考えまして、ただいままでに出されました資料から考えます限り、どうも違法な状態になるのではないかという気がいたします。  それから車両制限令と民法六百四条問題との関連でございますが、民法六百四条問題というのは先ほど申しましたように、土地所有の基本的な性格から出てくる問題でございます。それで法律的な問題としましては、契約関係に媒介されたもの同士の間の問題、そこで国内法を守らなければならないという問題が出てきている。それから車両制限令違反の問題は首都圏などにつきまして、非常に都市化、過密化が進行いたしまして、また、それと同時に、道路保護とか人命尊重とかいった趣旨から車両制限令等がぜひとも守られなければならないという要求が基地周辺の一般住民の間で起きてきたという点において、これは契約関係等に限定された間の問題ではない。つまり、周辺の一般的な住民の間で国内法を守ってほしいという要求が出てきた。そういう二つの差があるんじゃないかと思います。両問題とも法律的現象の形をとってあらわれた社会現象でありますから、この社会現象の本質が何であったかということを正しく認識した上で対処しないと、たいへん間違いをおかすことになるのではないかと思います。この問題を単に法律的な問題として考え、つまり民法六百四条問題との関係でいいますと、単に再契約をしさえすればいいんだというような、いわば安易な考え方、また車両制限令問題については、これは特例を設けさえすれば合法化するんだというような一見して安易な考え方、こういうような考え方だけで対処いたしますと、法律解釈論的には、そういった解釈が合法であり、可能ではありますけれども、もっと本質的に法社会学的にといいますか、事柄の本質を見抜く学問といいますか、そういう立場からいいますと、たいへん重大な誤りをおかすことになるんじゃないかというふうに思うわけです。もしそういう措置に出られるという場合には、これは後々は歴史的に評価ということになりますけれども、私は重大な誤りをおかすことになるんだという感じを持っております。以上です。
  17. 畑穣

    参考人(畑穣君) 法社会学的立場からという御指定をいただいたわけですが、お求めの答えになるかわかりませんが、まず第一の山中湖村道でございますか、村道につきましては、これはその村道となっている部分が施設・区域に提供されている場合ですが、その場合は、なるほどアメリカ合衆国は政府に対しまして、敷地部分を施設区域として使わせろということを要求する権利政府に対しては持ちます。しかしながら、これはあくまでもさきに触れましたように、両政府間の間を拘束するわけでございますから、政府においてその地位協定上の義務を履行するためには、国内法上の手続によらなければならないわけだと思います。それにもかかわらず、現にその道路部分が道路法上の道路であるといたしますと、一般公衆の通行を妨害するということはできないわけでございますから、地位協定上の施設・区域に含まれているということを前提にしてですけれども、その場合には道路法上の所定の手続を踏んで、供用の廃止等道路法上の道路でなくするための手続をとる以外にはないのではないか。あくまでも道路法上の道路である場合には、その限度において米軍の施設・区域としての使用権というものがその部分について及ばないわけでありますから、その部分については施設・区域の使用権というものを行使することが国内法上できない、そういう問題になるのではないかと思います。もし道路法上の道路であれば、その部分については国内法を守るという立場から、やはり一定のはっきりした態度というものが望まれるのではないかと思います。  第二番目の車両制限令でございますが、この点については私は全く答える能力がありません。いまの道路法の問題と全く同じでございます。ただ一般的な感想を述べさせていただきますと、この問題は結局行政法のいう委任命令の範囲、あるいはその委任命令のいわば妥当性という問題になるのではないかと思われるわけであります。たしか道路法の四十七条でございますか、あれによって車両制限令が制定されている。その車両制限令において、御指摘のとおり、その適用を米合衆国軍隊の車両について除くということがはたして適切かどうかという問題になるのではないかと思います。地位協定上の義務を履行するために、いままで政府は非常に多くの特別法、特例法を制定しているわけでございます。正確かどうか私の見たところでは二十五、六ぐらいあるのではないかと思われますが、それにさらに附則という形で、その法律適用を除いているものもございます。たとえば水道法などの場合には、米軍が基地内において水道またはその水道施設等を設置する場合には、水道法の適用を除外しておりますが、そういうふうにいたしまして、現在までのところは、米軍に対して地位協定上負っている義務の履行が特例法、特別法またはその附則というような形で実施されていたのではないかというふうに思われるわけであります。また自衛隊につきましては火薬類取締法については、これはすでに自衛隊法の中に適用除外の規定を置いているわけでありまして、こういうもの全体との関連で問題を考えてまいりますと、委任命令によって適用除外ということを特に米軍についてはかることが一体適切なのかという問題になろうかというふうに考えるわけであります。  法社会学的な見地からという点についてお答えは全くできないわけでございますが、以上でございます。
  18. 小林三衛

    参考人小林三衛君) 先ほどの御質問は、北富士演習場内国有地入り会いについていう政府統一見解のうちの「一」で、「この見解は、大正四年三月十六日の大審院判決によつて示されているところであり、政府としては、司法の最高機関の下したこの判例に従うのが妥当であると考える。」、これについての私の意見をということでございますので、それを申し上げたいと思います。  この統一見解について私は批判的立場に立っております。それは次のような点からであります。  第一は、先ほども申し上げましたように、この大正四年三月十六日の大審院判決は、法律上明確な規定がないにもかかわらず人民の権利を消滅させたという点において、大日本帝国憲法についてすら違憲の疑いがあるのでありまして、それが日本国憲法のもとにおきましては失効している、あるいは少くとも存在意義は完全に失っているというふうに考えられます。  それから第二点は、先ほども申しましたように戦後の裁判所、いずれも下級裁判所でありますけれども、いずれもこの大正四年三月十六日の大審院判決とは違った見解に立っておりますし、その中でも、先ほどもちょっと申し上げました昭和四十一年十月十二日の仙台高等裁判所秋田支部判決では、この大正四年三月十六日の判決に従うことはできないと、こういうふうに明言しております。司法機関ですらこの大正四年三月十六日の判決には従うことができないと言っております。司法機関は最高裁と上級、下級の関係にありますので、下級の裁判所は上級の裁判所見解に従うということになっておりますけれども、その下級裁判所ですら、これには従うことができないということを明言しております。  それから第三点には、政府としましては、常に、最高裁判所といいますか、前は大審院ですけれども、そういう見解にすべて従っておられるのかどうかということになりますと、たいへん疑問でありまして、たとえば、入り会いの問題ですから入り会いの例で申し上げますと、公有地ですね、市町村有地における住民が利用している点につきまして、これは入り会い権であるということが裁判所の伝統的な考えであります。明治三十九年二月五日の大審院判決以来、これは戦前戦後を問わず、入り会い権であると、そして市制、町村制にいう使用権ではないという見解を伝統的にとってきておりますけれども、これに対して政府である、自治省では、入り会い権ではなくて、これは市制、町村制のもとにおける、あるいはそれを戦後受け継いだ地方自治法における慣行使用権であるという、そういう見解をおとりになっていると思いますし、このことは、入会林野近代化法の制定のときにも明確に出されているし、その法律の中でも、入り会い林野近代化のほうの処理として入り会い権慣行使用権を分けておりますが、この点からいっても、政府が、司法の最高機関であるその裁判所見解に常に従っているということは言えないのではないか。そうしますと、都合のいいときには従い、都合が悪いときには従わないということになるんではないか、統一性がないのではないかというふうに思われます。  以上の三点から、私はこの統一見解については全く批判的でありまして、したがって、北富士につきましては、先ほども申しましたように、政府自身が入り会い慣行あるいは入り会い慣習ということをお認めになっておりますので、これは、とりもなおさず、北富士には入り会い権が、国有地の上の入り会い権存在しているというふうに解されます。以上です。
  19. 足鹿覺

    足鹿覺君 一応、参考人に対する質問は、私に関する限りはこの程度にとどめたいと思います。
  20. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。本日は、お忙しいところを本委員会に御出席いただきまして貴重な御意見を拝聴さしていただき、まことにありがとうございます。ここに厚くお礼を申し上げます。  それでは、引き続き本調査について質疑を行ないます。
  21. 足鹿覺

    足鹿覺君 だいぶん時間がずれてまいりましたが、ひときりつけるために質疑を続行さしていただきます。  本日の参考人の陳述内容は、政府側も聞いておられたとおりであります。私はこれらを踏まえまして、まず、北富士における入り会い権の存否の問題を質問いたします。防衛庁長官官房長官、法制局長官林野長官、大蔵省当局、以上はそれぞれのお立場から御答弁願いたいと思います。北富士における入り会い権の問題は、いわゆる国有地入り会いの問題であります。したがって、その関係省庁は、林業基本法及び入会権近代化法並びに国有林を所管する林野庁であることは言うまでもありません。民法を所管する法務省、並びに法令の改廃及び解釈問題を所管する内閣法制局であろうと思れます。で、北富士についていえば、防衛庁が一枚これに直接加わる、こういうことになるのであります。で、増原防衛庁長官は他の用務のためにただいまの参考人の御意見はお聞きになる時間がなかったと思いますが、官房長官はお聞きになったと思います。高松施設庁長官も当初からお聞きになったと思います。  そこで、国有地入り会い一般について、ただいま述べましたように、官房長官、法制局長官防衛庁長官に伺いますが、他の省庁の答弁と違った意見なり補足すべき点があればそのつど発言していただいてけっこうでございます。  初めに問題にいたしたいのは、去る八月二十二日付で提出されました政府統一見解内容であります。私は、通常国会の末期にこの問題を取り上げて、さだめし時代の流れに沿うた前向きの統一見解が提出されるものであるという期待感を持って八月三十一日のこの委員会に臨んだのでありますが、味もそっけもないものであります。ただいま参考人からも、判例の上からも学問的見地の上からも、あるいは法社会学的な立場からも、あらゆる面から批判的な御意見が述べられました。これは、四月に提出されたものが事務当局統一見解で、内閣の統一見解でないということで、あらためて再提出を求めたものであります。しかるに、私が最も不満といたしますのは、その内容が前回のものとほとんど変わっていないということであります。事務当局統一見解を問題にしたのは、政府統一見解でないという形式的な問題と同時に、その内容事務的過ぎて、今日の学問研究の水準、入り会い権に関する裁判の動向、入り会い利用の実態等から見て、何ら説得力を持っていないという内容的な問題をも問題視したからでございます。つまり、もっと高い次元から内閣としては再検討をされるべき立場に立たれておるのが現時点だろうと思います。にもかかわらず、このような形式的な事務統一見解を出されたということに対しまして、私はきわめて遺憾に存ずるものであります。多少の字句の修正はありますが、実質的には全く同じ趣旨であり、われわれのとうてい納得できるものではございません。  国民の重要な権利である入り会い権の問題をかくも軽々しく取り扱う政府に対し、私は初めに、きわめて遺憾であり、その責任は重大であることを警告をして、このような立場を踏まえて、次に統一見解に即して質問をいたしますが、以上の一般論的な私の見解に対して、官房長官は、あるいは防衛庁長官はどのような御所見をお持ちでございますか。いや、これでたくさんなんだと、かようなお考えでありますか、もう一度考え直して十分に検討をさらに続けていくお考えでありますかどうか、いわゆる概論的にひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  22. 山下元利

    説明員(山下元利君) ただいま御指摘の点につきましては、本委員会におきまして四月の御審議の際、正式に政府統一見解の提出を求められましたので、政府といたしましても事柄の性質にかんがみ再度関係省庁と検討を行ないまして、成文を得ましたので政府統一見解といたしたものでございまして、その点につきましては、ただいまにおいても変わるものではございません。
  23. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 先ほど来、出席をいたしかねておりましたので、施設庁長官から申し上げさしたいと思います。
  24. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 先ほど来、参考人の御意見を終始拝聴いたしました。   〔委員長退席、理事鈴木力君着席〕 ただ、この入り会いの問題につきましては、先ほど御指摘がありましたように、国有地入り会いについては、あるいは民法上の問題について、あるいは法制上の問題についてそれぞれ主務の官庁がございますので、私どものほうから直接にこれにお答えするのもちょっといかがかとも思うのでございますけれども、いろいろ伺いましての私の感じとしては、まあいろいろ御議論はありますけれども、やはり私どもとしては、従来の判例の態度に従っていくということが一つの問題であろう。それから入り会いにつきましても、各地、各場所でいろいろの事情が変わってきている形があろうと思うのです。これを一般的に全部同じようには言えないところがあるんではなかろうか。北富士についても、たとえば、先ほどもちょっと御指摘がありましたけれども、その演習場の問題、あるいは別荘地に分譲したときの問題の入り会い権というのはどうなっていたんだろうかというふうな点については、多少違った感じ方もあるんじゃなかろうか、かように考えた次第であります。
  25. 足鹿覺

    足鹿覺君 法制局長官が御病気だそうでありますので、かわるべき人から、ただいままでの参考人意見等を踏まえて御所見を承っておきたい。
  26. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 先ほど来の参考人の方の御意見は逐一この席で聞いておりましたが、結局、問題は大正四年三月十六日の大審院判決をいかに評価するかという問題であろうかと思います。そのほかのいろいろな事実関係の問題はございますけれども、それは私からお答えすべきことでもないと思いますので、結局、法律的には、いま申し上げた大審院判決の評価の問題であろうかと思います。で、参考人の方のお話の中にもありましたように、確かに学説の多くはこれに反対の考え方を示していることば事実であろうと思います。また、戦後の下級審の判例幾つか、大審院判例に反対の見解を示しているものがあることも事実であります。ただ判例の中でもいろいろ差はあると思いますが、参考人の方が御指摘になりました、特に仙台高裁の秋田支部のいわゆる屏風山事件ですか、この事件についての秋田支部の判決はまっ正面から違背していることも事実かと思います。結局、そういういろいろな反対の考え方があることは私どもも十分承知しておりますが、現在までこの大正四年の大審院判決以来、大審院、最高裁を通じて、このいわゆる官有地編入処分法律的性格については、これを否定した司法的見解というものは今日まで表明されていないこともまた事実であります。現に、先ほど申し上げました屏風山事件は、先ほど参考人の方のお話の中にもあったように思いますが、最高裁に係属中でございます。したがいまして現在の時点におきましては、やはりわれわれ政府といたしましては、この大正四年の大審院判決が一応判例としての効力を持っている、そういうふうに解せざるを得ないのでありまして、この統一見解に示されております政府の考え方の基本的立場はやはりそういうところにあるように思います。
  27. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間が迫ってまいりましたので、参考人意見と私の考え方と大体一致したような点も相当ありますが、若干の重複はなるべく整理をいたしましてお尋ねをいたしたいと思います。  ただいままでの政府首脳の御見解は私きわめて納得しがたい。したがってこの問題については、さらに当委員会においてあらためて次元の高い立場から問題を究明したい、かように考えております。しかし、一応本日の入り会い権問題についての具体的な質問を続行いたしますが、つまり要するに政府としては、大正四年三月十六日の大審院判決というものに示されておるから、「司法の最高機関の下したこの判例に従うのが妥当である」、こういう一点ばりですね。この文章がきわめて私は問題だと思うのです。伺いたいのは、大審院判例を論拠とした理由は、行政府はその内容のいかんにかかわらず司法府の判例に従うという、民主的法治国家の原則に従うという形式的な点にありますのか、あるいは、この判例内容が実質的にきわめて妥当という実質的な点に重きを置かれるのか、その点を明らかにしていただきたい。法制局長官がおいでになることを私は期待いたしますが、御病気だということでありますが、これは法務省関係にもひとつあわせて御答弁願います。
  28. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 法務省民事局長でございます。  ただいまの御質問は、大正四年の判例に従った見解政府がとるという根拠は何かという点のように伺ったわけでございますが、御指摘の二点、両方からであるというふうに私は考えるわけでございます。申し上げるまでもなく、法律の判断というものは最終的には裁判所が行なうものでございまして、司法権の最高機関である当時の大審院が示した判決、これが現在に至るまでまだ変更を受けていないという状況にございますので、行政府といたしましては、やはり司法府の最高機関の下した判決に従わざるを得ない、まあこれが行政府として当然踏むべき道であろうというふうに思うわけでございます。  それから内容の点につきましては、これはいろいろ先ほど来、参考人のお話もございましたように、反対の見解がございます。しかしながら、非常にこれは古い、判定のむずかしい問題でございまして、当時の裁判所におきましても、それらの問題につきましては十分検討をされたことと思います。それからまた、少なくとも戦前におきましてはその見解がかなり支持されておりまして、戦後に至りまして学説はだいぶ変わってまいりましたけれども、戦後におきましてもなお大審院大正四年の判例を支持する、そういう立場も若干ございまして、これは本年の四月に足鹿委員が御質問になりましたときに、当時の訟務部長の香川部長からお答えした中に、最近の判例を申し上げておると思いますけれども、まあそういった趣旨判例もございますので、それらの点を考えまして、いまなおこの判例に従うと、こういう見解でございます。
  29. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ形式的な面も内容的な面も両方だという御答弁でありますが、私のいまの御答弁を聞いた印象は、結局それ以外の最高の判例がないんだから、形式的にこれに従わざるを得ない、このような論拠だと受けとめました。きわめてこれは遺憾千万なことであります。先ほど小林参考人が述べられたように、青森地裁の鰺ケ澤支部が昭和三十二年一月十八日の判決で、これは大審院判例に全く逆な判決を下しておる。また仙台高裁秋田支部においても同様です。で、これは上告中であり、最高裁において四十二年(オ)五三一号、五三二号をもって現在係争中の問題でございます。といたしますと、伺っておきますが、これは大正四年といえばいまからおよそ何年前ですか。しかも、先ほど参考人の御見解の中にもあり、私どもも現地を調べましたが、当時の軍がむちゃくちゃな戦時のあの権力をふるって取り上げたものです。   〔理事鈴木力君退席、理事水口宏三君着席〕 反当二十一銭という話も聞きました。まあ数えれば数え切れないぐらいの強権下において収奪されたものであり、そういう大正四年の大審院判例があるからやむを得ないんだ、こういうことであればいま私が述べたように、仙台高裁の秋田支部の問題、青森地裁の鰺ケ澤支部の問題等が最高裁において係争中でありますが、これらの問題があらためて判決が下ったなら、あなた方はどういう態度をお示しになるんですか。要するに、形式だけではなしに、こういう時代的な変遷、古い日本は滅んだのだ、新しい日本がいま生まれ、しかも安保条約が国内法に優先するという考え方は次第に影を薄めて国内法優先に移っていかなければならないときに、政府は、本日も、アメリカ軍戦闘車両の国内通行の車両制限令——政令の改廃に踏み切っている。全く大審院判例を論拠にした理由というものは、行政府はその内容のいかんにかかわらず司法府の判例に従うという、民主的法治国家の原則に従うという形式であるならば、最も新しい時点において出された、たとえ支部といえども、たとえば高裁といえども、新しい、同じ司法権の発動によって裁判が下されておる、それらの勘案も何もしないということであるならば、時代的な背景、学問的な裏づけ、一切そういうものには耳をかさない、こういう政治姿勢をもって田中内閣は今後対処するのだ、かように考えざるを得ません。そのようなむちゃな、筋の通らない、反時代的な一方的な判断で今後対処されていくということになりますならば、私は今後相当の時間もかけてこの問題についてさらにこまかく追及をしていきたいと思います。  先ほども話がありましたように、公有地の入り会いに対する判例を見ると、戦前戦後、裁判所は一貫して入り会い権私権論の立場に立っておる。これは先ほど参考人意見の中にもありました。公有地上の入り会い権存在するという判決を下しておるのです、いま申したとおり。しかるに行政府は、戦前戦後を通じて一貫して、公有地上に民法上の入り会い権はないという公権論的な立場をとって、入り会い権より弱い公法上の権利である慣行使用権として認める行政を続けてまいられました。つまり入り会い権については、政府は公権論的な判例だけをつまみ食いして、都合のいいところだけをつまみ食いをして今日まで来たのである。   〔理事水口宏三君退席、委員長着席〕 これでは、法治国家のたてまえから司法府の判例に従うというきれいごとを言える資格はないはずだと私は思います。官房長官なり法制局長官に、これはとくと御検討願って御答弁願いたいと思う。いかがですか。
  30. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御指摘の点につきましては、司法権の意思というものが最終的には最高裁の判決によって示されている場合におきまして、それに従うことは当然であるかと考えておるわけでございますが、ただいまの御意見につきましては十分拝聴いたしました。
  31. 足鹿覺

    足鹿覺君 一番大事なところです。もう一ぺんどうですか、副長官、大事なところですから。
  32. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御意見は十分承りましたが、政府といたしましては、司法権の意思というものが最終的に最高裁の判決で示されている限りは、それに従うことであると考えておるわけでございます。
  33. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは重大な御発言を聞いたわけですが、まだ最高裁の判決は出ておりません。近く出るでしょう。そのときにはそれに従うという御意思と私は受けとめます。注目いたして今後に対処したいと思いますが、それはそれとして、戦後の判決には、副長官、下級審の判決ながら、国有地上民法上の入り会い権存在を認めるものがあるということは、先ほど来、参考人も具体的に指摘されておる。これは戦後の入り会い権に関する学問研究の成果が反映してきた証拠だと私は思うのです。その上、最高裁は訴訟が持ち込まれなければ新しい判決を出せない。こういう事情があるから、大正四年の古証文みたいなものを出して、これをいい気になってつまみ食いをしていらっしゃるにすぎない。いいですか。われわれは、最高裁に訴訟を持ち込まれなければ、古いものがいつまでも国民権利を束縛し、侵害をして差しつかえないという、そういう考え方は納得できません。したがって、大正四年当時と今日とでは時代的な背景並びに学問研究の水準というものは全く違ってきておるのであります。政府は、下級審の判決といえども従来とは逆の判決が出たことに対して十分反省して検討を加えるべきであったと私は考えます。この点についても、いや、反省はしないのだと、下級審なんだから大正四年一点ばりでいくんだと、こういう法務省はお考えでありますか、あらためてひとつ承っておきたい。大臣にもこれは御出席願いたいのです、ほんとうは。
  34. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 判例の傾向は、戦前におきましては大正四年の判例を支持する幾つかの判例が出ております。これは大審院のみならず、下級審においてもそうであります。ところが、戦後に至りましてだいぶ、先ほど参考人の指摘されたような判例もあるようでありますが、また必ずしもそうでない、大正四年の判例趣旨に沿ったと認められるような判例もあるわけでございまして、いわば判例は確たる方向がまだきまっていないという段階ではなかろうかと思います。
  35. 足鹿覺

    足鹿覺君 いずれこれは大臣の御出席を求めましてじっくり取り組みたいと思いますが、この大審院判例の実質的な妥当性の問題について少しお尋ねをしておきたいと思うのです。  この統一見解によりますと、「官有に編入された土地については、従前かりに入会権存在していたとしても、」云々という文句があります。これですね。八月二十二日の統一見解にある。これがそもそも私はおかしいと思うのです。入り会い権明治三十一年の民法の施行により生じた物権であることは自明であります。それ以前に存在していたのは、国、公、私有地を問わず、わが国の林野存在していた入り会い利用という事実関係だけであった。まことにずさんな表現と思うが、政府見解はどうでありますか、伺っておきたい。これはどういう意味ですか。
  36. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) この大審院判例の中に示されていることばがやや不明確な点が確かにあるわけでございますが、地租改正処分による官有地編入処分がされる前の、実際に地元の住民が入り会い利用していた関係というものは慣行上のものであるというのが実は基本的立場でございます。ただ、その慣行の中にも二つございまして、実質上、村の所有地と同視するに足るもの、あるいは村民が土地の所有者と異ならないような、いわゆる重い関係ということを申しておりますが、そういう重い関係を有するものと、それからもう一つは、村民が天生草木等の伐採のみをするだけのいわゆる軽い関係を有するものと、こういう二つのものがあるということを前提にいたしまして、後者につきましては、いわゆる官有地に編入をしたのであると、そうして従前の慣行上村民が入り会い利用していた関係は編入と同時に廃止されたのであると、これが大正四年の大審院判決の基本的な立場だろうと思います。ただ、その際の表現としまして、いま申し上げた入り会い使用した関係につきまして、ある見方からいえば、それは入り会い権であるといい、あるいは、ある見方からいえば、それは単なるいわゆる軽い関係にすぎないのであるという二つの見方があるわけでございます。で、大審院判決の中にもその二つの見方を反映いたしまして、かりに入り会い権があったとしても、それは消滅をするということばが使われているわけでございます。そこで政府見解では、正確に書けばいま私が申し上げたようなことをるる申し上げることになるわけでございますけれども、一応、大審院判決の中にあることばを引きまして、「従前かりに入会権存在していたとしても、」「一切消滅した」と、したがって、いわんや今日の目から見ての入り会い権と見られないようなものであるならば、それはなおさらそうであろう、こういう気持ちで書いた次第でございます。
  37. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間がありませんからだいぶ飛ばします。あとでまた詳しくやりますが、大正四年の大審院判例において、その判決理由とした論拠は、明治九年一月二十九日の「山林原野等官民所有区別処分派出官員心得書」第三条ただし書き規定等からして、これを含めた地租改正処分法令は、官有に編入した土地に一切私権関係存在を認めないたてまえになっていると当時の大審院が判断したことにある。原文を読み上げます。これは先ほど田山先生の御意見の中にありましたが、「心得書」なんでしょう、その論拠は。「山林原野等官民所有区別処分派出官員心得書」第三条ただし書き規定、これは何ら国民権限等を制約したり拘束するものではないと先ほど参考人も申されました。その三条には、「従前秣永山永下草銭冥加永等納メ来リタルト雖トモ」云々、こういう一項がありまして、「其ノ法意ノ存スル所推尋スレハ官有地ニ編入シタル土地ニ対シ従前慣行ニ依リ村民ノ入会利用シ来リタル関係入会権ナルト否トヲ問ハス改租処分ニ依リ編入ト同時ニ当然消滅セシメ一切斯ノ如キ私権関係ノ存続ヲ認メサルモノト解セサルヲ得ス」というものでありまして、この論拠そのものが大審院の判断は事実を誤認しておる。それは私がいま引用し、田山先生からも御指摘になった「官員心得書」第三条を論拠としておるのであります。しかし、そのただし書きには、官有に編入されて草木の伐採をやめることにより差しつかえを生じたときは、内務省において払い下げまたは貸し付け等をするから、その点は地方官にゆだねよと言っているだけであって、官有地に編入したら直ちに入り会い利用を禁ずると言っているのではありません。事実関係としても、栃木県には「秣刈取リハ従前ノ通ト心得ヘシ」と通達をし、秋田県には「秣刈取規則」を制定したことなどが日本林業発達史という書物の中には書いてあります。したがって大審院判決理由というものは、事実誤認とわれわれは断ぜざるを得ない。  第三に、大正四年の判例が出た時代的背景を考える必要があるということは前述のとおりでありますが、入り会い権に関する数多い判決を通読すると、その時代時代の学説の影響が色濃く出てきていることはあなた方もお認めにならざるを得ないでしょう。当時存在した学説は、林政学者の川瀬善太郎博士の入り会い権公権論しかなかった。ところが今日においては、入り会い権私権論が全盛の段階を迎えておることは御承知のとおりであります。川島学説というものもありますことは言うまでもなく御検討になっていると思います。公権論は論理でないとされておることを私は非常に重視しておりますが、戦後の下級審に国有地上の入り合い権の存在を認めた判決が出るゆえんはここにある。したがって、この大正四年の判例は時代的背景からいっても根本的に再検討すべきであると、私はかように思うんです。これは与野党の立場を越えて私どもは、法の厳正な運用は、時代的な背景と隔絶した、断絶した時点において法の運用がなされるということは、たとえ現時点で最高裁の判決がなしといえども改めてしかるべきだと思うんです。  特に官房長官に申し上げますが、東大の民法学者川島博士らは膨大な実態調査を重ねた末、最近になって入り会い権について新しい学説を発表なさいました。私の手元にもリコピーしたものがございます。これはあとでひとつお読みをいただきたい。私はそれを省略いたしますが、その内容政府の担当者も当然承知しておられるはずだと思います。よく御検討願いたい。要約して、この学説によると、過去の経緯のいかんを問わず、現に一定の要件に適合する入り合い関係が成立しておれば、そこには入り合い権は存在することになるというのであり、この学説に対する反論は私はまだ見たことがありません。これは最新にして最有力な学説であり、そして、この学説からすれば、北富士のごときは疑いもなく入り会い権存在することになると私は考えるのであります。政府を代表する官房長官——法制局の長官がおいでになりませんから、きょうは法制局長官の御答弁を聞くことを留保しておきますが、少なくとも政府がもしこの立場を譲らぬとするならば、いやそうではないという説ならば、主張であるならば、川島説のどの部分に矛盾があり、あるいは北富士入り会い利用のどこに入り会い権たり得ない性質があるのか、これは重要な点でありますから、文書をもってその理由をお示し願いたいと思います。官房長官いかがでありますか。きょうでなくてもよろしい。
  38. 山下元利

    説明員(山下元利君) まずおわびを申し上げなければなりませんのは、先ほど私の答弁中、最高裁判決と申しましたのは大審院判決の誤りでございます。  ただいまの学説につきましての先生の御見解は承りましたのですが、この問題につきましては大審院判決が現在におきましても判例としての価値を失っておりませんので、政府といたしましても、この司法の最高機関の下した判決を尊重し、それに従っているものでございます。その点につきましては先ほど来申し上げているとおりでございます。なお、いま御指摘の点につきましては、いずれ部内で相談いたしまして措置させていただきたいと思います。
  39. 足鹿覺

    足鹿覺君 じゃ、きょうは官房長官もおいでになっておりませんし、それから法制局長官もおいでになっておりません。まだたくさん準備をした事項がありますが、時間も大体予定の範囲内に一応とどめなければならない事情もあるようでありますから、きょうはこの程度で、打ち切らないであと質問を留保いたします。
  40. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本調査についての午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  41. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  この際、古内前防衛政務次官の後任として就任されました箕輪防衛政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。箕輪防衛政務次官
  42. 箕輪登

    説明員(箕輪登君) 本日はからずも防衛政務次官を拝命いたしました。諸先生方には何かとお世話になることが多いと思いますが、今後ともよろしくお願いを申し上げます。     —————————————
  43. 高田浩運

    委員長高田浩運君) これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  44. 鈴木力

    ○鈴木力君 けさの新聞をだいぶ大きくにぎわしております例の車両制限令の改正について、まずお伺いしたいと思いますが、建設大臣が時間の都合がつかないそうでありますから、まず建設大臣に伺うだけ伺いまして、そのあと関係政府に伺いたいと思います。  まず最初に、木村建設大臣にお伺いいたしますが、私は、たとえば相模補給廠の戦車の輸送問題とか、この種の問題がずっと続いておりますときに、再三木村建設大臣の談話を拝見しておりまして、その大臣の談話に関する限りは、車両制限令とかそういう向きの法令、あるいは省令改正というような国内法に手をつけない、そういう態度を表明されておったと私は信じておったんですが、その木村建設大臣が、昨日になって、これはまあ次官会議ということですけれども、大臣が知らないはずはないわけであります。ある日突然に心境の変化をもって省令を改正したと、こういうことになるわけであります。その大臣の、従来までとり続けてきた態度が急に変わらなければならなかったその事情といいますか、理由をまずお伺いいたしたいと思います。
  45. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私といたしましては、何回も繰り返して申し述べておりますとおりに、車両制限令の改正までやって、そうしていろいろな便宜をはかるということよりも、そういうようなことは話し合いで解決して、そしてそういうような道行はしないほうがよろしい、さしたくないものであるという気持ちは、私は今日まで持ってきておったのであります。しかし、この種の問題になってまいりますると、なるほど車両制限令は建設省だけでやり得られるように考えまするけれども、必ずしもそうではないと、いろいろな関係省があるものですから、そういうような省との協議の中において行なわれるようにもなっておるのであります。そういうような協議の中において、私のほうに一番関係のありまする問題は、沖繩の道路の問題であります。今度まあ海洋博覧会が沖繩で行なわれる、そうして、そこには高速道路を通さなきゃならない。その高速道路を通すにあたりまして、米軍基地を二カ所通らなきゃならないわけであります。それからもう一つは、沖繩が日本に返還されたことによりまして、日本の国道になった道路があるんです。その道路がいまだに日本側で使えるような状態になっていない。そういうようなことをいろいろ促進する立場になってみますると、やっぱり自分だけの一存でいかないものがあったのであります。そして種々協議の結果、こういうようにならざるを得なかったのでありまして、私といたしましては不本意でしたがやむを得ないことであると、こういうように実はいま考えております。
  46. 鈴木力

    ○鈴木力君 不本意でしたがやむを得ない、その不本意でしたがという気持ちはよくわかります。ただ私は、この問題を明らかにしていくために大臣にもう少し伺わないといけないのは、自分一人だけでは処理できない問題である、関係省と協議しなければいけない、そういう立場から改正することに踏み切った。種々協議したと言いますがね、ここでは、種々協議したでは私はちょっと御答弁としては納得できないんです。関係した省はどの省とどの省で、たとえば沖繩のように、是非は別としまして、沖繩にはこういう問題があったから踏み切った。と同じように、関係各省が、どの省がどういう要求が建設省にあって踏み切らざるを得なかったのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  47. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 主としての関係省は外務省であります。そして米側との交渉は全部外務省を通してやらなきゃならないような状態になっておりまして、私が直接外務省を通さないで話をしようといたしましても、それは歓迎されないような状態になっておるのであります。そういう過程において、日米合同委員会という委員会を通して建設省側の意向を即言わなきゃならないと、そういう形において、やっぱり沖繩の問題にいたしましても、日米合同委員会を通して目的を貫徹するようになりますると、そういうようなこととのかみ合わせにおきまして、やっぱり道路法のこの改正に踏み切らざるを得なかったのであります。
  48. 鈴木力

    ○鈴木力君 関係省は外務省だけですか。その他の省には、この政令改正に関係した省はありませんか。
  49. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 防衛庁も関係しておると思いまするけれども、私のほうとして必要な交渉相手になった関係省は外務省であります。
  50. 鈴木力

    ○鈴木力君 防衛庁が関係しているけれども、建設省とは関係しなかったと、こういうことですか。
  51. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私のほうにどうしてもやらなきゃならない、果たさなきゃならない仕事を持っておったのは、外務省を通して米側に交渉すると、こういうことでありましたから、私はそれとのかね合いにおいてそう申し上げたんであります。
  52. 鈴木力

    ○鈴木力君 そうすれば、こうお伺いしていいですか。だいぶはっきりしてきましたけれども、防衛庁も関係している。が、防衛庁は直接建設省に持ち込まないで外務省に持ち込んで、外務省から防衛庁の意向もくんだものが建設省に入り込んできた、こういう筋道だと伺ってよろしいんですか。
  53. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 防衛庁が外務省に申し込んで、外務省のほうから私のほうにそういう交渉があったと、こういうことじゃないです。私のほうが外務省を通して求めておるものがあるのですよ。その求めておるものがおくれまするとたいへんなことになりまするから、その形において外務省を通して向こう側に交渉しておってもらったと、こういうことなんであります。
  54. 鈴木力

    ○鈴木力君 そこの点はわかったのです。賛成だという意味じゃありませんけれども、筋道としてはわかりました。ただ私がいま重ねてお伺いしていますのは、何といっても建設大臣が所管大臣でありますから、建設省の省令改正になるわけでありますね。そうしますと、いま大臣から、防衛庁も関係官庁でありますと、こう答えられた。防衛庁がどういう関係で、建設省のこの改正に具体的にどういうかかわりがあったのかということを伺っておるのです。これは防衛大臣にはあとで伺います。
  55. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 建設省と防衛庁との道路の関係というものはあまりないと思っております。
  56. 鈴木力

    ○鈴木力君 じゃ、さっきの関係省の中には入っておらなかったのですか。
  57. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) そういう私のほうで求めたものの中には防衛庁というものは対象になかったと、こういうことなんでありまして、道路法を改正するにあたって、防衛庁のほうから、たとえば事務当局のほうに何か申し込みがあったかどうかと、こういうことは、私にはそこまで話がありませんでしたから、道路局長から説明させます。
  58. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) ただいまの関係省の中に防衛庁が入っておるかという御質問に対しましてですが、建設、外務、防衛だけでなくて、各省寄り集まりましていろいろ協議いたしておりますので、そういう面におきましては防衛庁も入っておるということでございます。
  59. 鈴木力

    ○鈴木力君 私がこういうことを伺っておりますのは、大臣がきのう、これは毎日新聞でありますけれども、新聞記者に、「オレの方で言うことはなにもないよ。」から始まって、結局、「官房長官のとこでやっているんじゃないか。オレは好きじゃないんだよ。こういうことは……」と、こうおっしゃっていますね。私は、率直な建設大臣の心情の表現だと思います。だからこの談話を聞いてけしからぬなどと一言も申し上げない。しかし、そういう各省が入り組んでといいますか、関係して、そして建設省の省令が改正をされた。私はこの点は一つの大きな問題意識を非常に持つのですね。その点についてはあとで伺いますけれども、いま出ました、建設大臣から御答弁をいただきました沖繩の問題ですね。これは建設省から持ち込んだというその気持ちは十分理解できますが、たとえば海洋博覧会をやるための道路をつくるために軍事基地を通らなければいけない。あるいは国道が基地を通っているから、そこの国道が国道としての機能を果たせるように早く解決したいのだ、この気持ちはわかる。そうすると、いまの建設大臣の御答弁に関する限りは、この沖繩の道路二つの問題を解決するために車両制限令の改正に踏み切ったと、こう伺うのですけれども、そこ間違いありませんか。
  60. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私の主としての目的はそこにあったんですよ。沖繩に参りまして、そして沖繩の県民から、国道にしてもらったにもかかわらず、いまだ国道として使用できない状態にあることは非常に遺憾だ、何とかこれを早く解決してもらいたい、そういう訴えを聞きますると、やっぱり早く解決してあげなきゃならないと切実な私は気持ちを持ってきたんですよ。それから何としても海洋博覧会は成功させなきゃならない、沖繩の運命がかかっておるのだ、こういう話なんだけれども、その沖繩の運命のかかっておりまする一番大きな要素の中に高速道路があるんですよ。その高速道路というものは二つそのアメリカの基地を通らなきゃならない。その了解を得られませぬと、その道路の建設がおくれてくるんですよ。おくれてくることになりますると、海洋博覧会というものが円満にいかなくなってくると。そうなりますると、県民の期待を大きく裏切るだけでなく、日本の信用も落とす危険があるものですから、私はそこにまあ重点を置いたことはそのとおりなんでありまするが、それだけではありませんです。もっとありますよ。それは私、相模原の補給廠のあのいざこざがありましたときに、アメリカのために日本人同士があんないさかいなんかしたくないものだと、何とかしてやめたいものだと、こういう非常に私には気持ちがあったんです。それで、やめるためにはやっぱり話し合いをして、そしてやめるような方向に出てみたい。こう思いまして、自分は自分なりの努力をしたつもりなんであります。その後の経過を見ておりますると、なかなかそういうことが思うようにいかないような状態になっておると。それに関連いたしまして、やっぱり相模原の補給廠の基地の縮小であるとか、それから廃止であるとか、それから神奈川県からいたしますると、米軍が持っておるものの中で使わないものが五つもあると、そういうようなことを考えまして、県民感情というものをほんとうにすなおに受け取って、そういうような県民感情を生かす方法を政府としてとらなきゃならないと、こういうようなことを考えまして、それも政府にはしつこく話をしておったんであります。そういうときに、やっぱりそういうようなものを実現するためには、一つの方法として道路法の改正というものが必要であると、アメリカ側は昔と同じような気持ちに考えておるんだと、改正されない以前と同じような気持ちにアメリカ側は考えておるんだと、それが行なわれないといろいろなことが出る危険もあるから、そういうようなものをなくすためには、やっぱり私はやむを得ないんじゃないだろうかと、こういうように考えたのでありまして、内容から申し上げますると二つありまするが、重点を置いたのは沖繩の問題であります。
  61. 鈴木力

    ○鈴木力君 それでいまの沖繩の問題ですが、さっき伺いましたところ、外務省を通じてこれをやるんだと、こういうことですが、何か率直に申し上げますと、沖繩の国道を日本人である沖繩の県民が通るために、取引にこの本土内の道路の車両制限令を出したと、車両制限令を出せば、アメリカ側のほうは国道は沖繩県民に通させるようになるんだと、こういうふうにうかがえるんですけれども、大体そういう筋なんですか。
  62. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 取引のためにこういうものを出したという単純なものじゃないと思います。私は、やっぱり全体のために必要になってきたと、こういうように考えまして、ただ、私として沖繩に参りました関係上、沖繩の問題というものについては、抽象的でなく、具体的に非常な関心を持っておると、何としてもこれは早く実現さしてあげたいものであるという非常な関心と熱意を持っておる。ただ、そのための取引としてこれを出したというものではありません。
  63. 鈴木力

    ○鈴木力君 それは私は重大なことだと思いますよ。外務省を通じて、建設大臣として国道を国道としての機能を果たさせるようなことをこいねがうということはもっともだと思う。私はそのとおりだと思います。  それからもう一つは、たとえば海洋博をやるのに高速道路を通したいんだと、軍事基地があるんだと、しかしこれを国民の側が聞いたらどうとる。かりに相模補給廠がどういう状況にあろうとも、相模補給廠の戦車が重量制限をされているか、解除されているかということと、基地を通っておる国道が国道としての機能を果たせるかどうかということは関係がない話です。もしもアメリカが基地の態様を変えるということであれば沖繩の問題です。そして当然国道でありますから、これは通すのが義務なわけです。これを外務省を通じてという、関係省の外務省ということが先ほど大臣から御答弁がありました。そうだろうと思います。そうすると、外務省がそういうサゼスチョンをしたと受け取らざるを得ないわけです。これはまあ建設大臣とあまり議論をしません。あとでこれは外務省にさらにこの点は追及したいと思います。しかし、いずれにいたしましても車両制限令を改正して戦車が通りやすくしておれば、チェックもしないで通しますよということによって沖繩の国道の国道としての機能を果たしたかったのだ、これではちょっと国民は納得できない。取引をしたんだと、私は一つはそう思う。時間がありませんから、あまりまた大臣とこの辺でやりとりをしておりますと、大臣の次の日程に差しさわりがありますから、私の率直な気持ちを申し上げておきます。  それからもう一つは、あとの段なんですけれども、大臣がしょっちゅう相模補給廠なら相模補給廠について話し合い解決をしたいという気持ちを持っておる。そしてたとえば補給廠の機能縮小についても、政府部内でも発言をしておられる。このことは私も承知しております。もっともな大臣の態度だったと思います。特に道路の担当大臣といいますか、そういう立場からしても、そういうことをこいねがうということは非常にごりっぱだったと思う。しかし、そういう態度をとってこられた大臣が、なぜ、きのう次官会議できめなければいけなかったのかということなんです。たとえばきょう、だいぶ前から話がついておったのは、横浜の飛鳥田市長と二階堂官房長官とがきょう午後三時にお会いすることになっておる。それはただ会うんじゃなしに、前に官房長官からの飛鳥田質問に対しての答弁書が出ておる。その答弁書によって自後の扱い方について協議をするということになっておる。これからその最終の詰めをやろうという段階のその前日に、ぽかっと次官会議でまとめてやっちゃった。そしてきょう、飛鳥田市長がこられるというのに、朝の閣議できめちゃった。これじゃ政府のほうが話し合いを断ち切ったということになりはしないか。まあこの点についてもおそらく担当は官房長官でありましょうから、詳しくは官房長官にお伺いいたしますけれども、建設大臣がそういうルートで今日までやってこられたことと、やったこととは、意図と全く違う。逆に言ったら、日本人同士が相争うのを心配なさる大臣が、日本人同士が相争う種をつくったことになりはせぬか。私はそういう意味できわめて遺憾だということで、時間がありませんから、しかし、この点については私の見解を申し上げておきます。あと官房長官や、あるいは外務省にさらに詳しくお伺いしたいと思います。  建設大臣にもう一つお伺いしておきたいのは、政令を改正をしてしまった。どだい、この政令というのは日本の道路保全を目的とした政令ですね。道路法に基づく政令です。そういう趣旨の政令を、いまのようなたとえば自衛隊、私は自衛隊が便乗して改正をしたということも納得ができませんけれども、これはあとでお伺いいたしますが、いずれにしても改正してしまったわけです。そうすると、たとえば横浜の村雨橋なり、千鳥橋なり、具体的にそういう橋が全国に幾らあるかわからぬ。自衛隊の演習用までフリー・パスで通すんだということになりますと、一体日本のそういう道路法に基づく重量制限によるさまざまな施設、そういうもののチェックをどうしてやるのか、どうして日本の道路保全が守られますか、その点だけお伺いしておきたい。
  64. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) その道路法で重量の制限をしたり、それから幅の制限をしたりやっておりまして、そういうようなものが通る場合に、非常に危険な橋もあります。それから道路もあります。そしてそういうようなものが、現在まあ市町村が持っておると仮定いたしますると、それを無理やりに通るというような気持ちは毛頭持っておりませんです。了解を得て重量のあるものでも通れるような修理をまずやらなければならない。そして修理をやらしてもらうような話し合いもしなければならない。こういう考えでありまして、無制限にこういう法律が改正になったから何もかにも通すというような気持ちは毛頭持っておりませんです。それでありまするから、橋の修理はもちろんやらしてもらいたい、こう考えております。
  65. 鈴木力

    ○鈴木力君 橋の修理をして重量制限を越えないような、そういう条件をつくって通すなら何も制限令要らないのです。いまの政令のままで通そうと思う橋をつくって、そして許可をとったらそれでいいじゃありませんか。許可しないというのは条件に合わないから許可をしない。条件に合わないものを通そうとするから例外として認めると、こういうことでしょう。いま大臣がおっしゃるような、そういうことなら政令の改正の必要はないはずです。いたずらに、ただ国民を刺激するのだということしかありません。もしそうだとすれば、いま大臣のおっしゃったこと、私は決して疑うとか何とかしません。大臣が真意でそうお答えになられるなら、これはもう一度やっぱり再検討して撤回の方向に政府部内をまとめるべきです。そうして敷設条件に合わない橋は、これはちゃんと修理をして、あるいは建てかえて通せばいいんです。そういうことなんです。特に私は先ほどの沖繩の道路とアメリカとの関係が、これはどうも、これは外務省の問題ですが、私が伺った限りにおいては納得ができない。  それからもうひとつは、いままでのたとえば美濃部さんなり、飛鳥田さんなり、あるいは相模原市の市長さんなり、さまざまな交渉の経緯がある。それを途中で断ち切ってこういうことをやられたということにも納得がいきません。時間もありませんから、建設大臣にこれだけお伺いいたします。あとは他の関係大臣にあとでお尋ねいたします。
  66. 上田哲

    ○上田哲君 私も官房長官の御出席がありませんので、あらためてまとめてお伺いいたしたいと思いますが、建設大臣が御出席中にきわめて二、三の点だけについて御見解を承っておきます。  結論的に伺いたいことは、建設大臣の所管される道路行政の問題が安保体制を優先させるということのために屈服をしてしまったというふうに見てよろしいですか。
  67. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 安保はやっぱり尊重しなければなりませんけれども、それに屈服して、そして道路法の改正をやったんじゃありません。こういうものをいままでやってみまして、やっぱり改正したほうがいいのじゃないか、たとえば米軍戦車なんということを全然考えないで、別なものを考えてみても、やっぱり改正したほうがいいのじゃないかと、こういうような判断でやったのであります。
  68. 上田哲

    ○上田哲君 過日のホノルル会談で、日米安保条約の円滑かつ効果的な実施を行なうという合意が成り立っているわけです。この合意ということを前提にすれば、安保条約の尊重というものが道路行政を上回ったと、安保体制の優先をここに認めたと、道路行政がここに屈服をしたと、こういうことにならざるを得ないわけであります。建設大臣が言われるように、そういうものとかかわりなく、道路行政上この許可の特例の意味があると言われるのは具体的にどこでありますか。
  69. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) この米軍の戦車だけでなく、いろいろなものがあるのですよ。郵便の車とか、何かそういうものがいろいろあるものですから、そういうようなものの中に戦車が一つ含まれておると、こういうことでありまして、全体を含めて道路法の改正をしなければならない、こういうことでありまして、安保のためにそれが全部付随して行なわれたと、こういうことじゃないのです。
  70. 上田哲

    ○上田哲君 建設大臣のおことばをそのまま解釈すると、アメリカの戦車を政令を変えても通すことのほうが国民にとってプラスになる、道路行政上そういうことが立証されなければならない、具体的に何をさしますか。
  71. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私は、戦車は早く帰っていったほうがいいと思う。そしてそういうものが今度は交渉においてなるべく入ってこないほうがいいと思っております。それでありまするから、戦車が向こうにいくということに対しては私は非常にいいことだ、こういうふうに考えております。
  72. 上田哲

    ○上田哲君 今回私が特に申し上げるのは、明らかにそのタンクを通せば、戦闘車両を通せば橋が落ちる危険がある、少なくとも壊れる心配がある、こういう問題をそのままオーケーをしてしまう、フリー・パスになってしまうという危険を具体的に表明をされたということになると思います。具体的に申し上げますと、M48というのは、重量四十七・六トンであって、トレーラーに載せれば六十八トンになる。村雨橋も千鳥橋も四十六・九トンというのは、重量制限のリミットです。そうしますと、この車両を通せば橋は壊れる、落ちるかもしれない。おっしゃるように、明らかに国民生活、市民生活、それを優先させるのだということであるならば、これはいまの御発言のように、戦車を通さないということにならざるを得ません。いかがですか。
  73. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私も、村雨橋も両方見てきましたけれども、やっぱり修理して、ほんとうに一時的でなくて、りっぱな修理をやるには時間がかかるかもしれませんけれども、一時的な修理であったならば、そういうふうなものを通すことが可能なんじゃないだろうか、こういうふうに私見てきましたが、ただ私から言いますると、道路を直して、そういう戦車はなるべくいなくなったほうがいいのじゃないか、こういうふうな気持ちがしておるのです。
  74. 上田哲

    ○上田哲君 たいへん論旨が不徹底でありますが、かつ、矛盾をしておると思うのですが、具体的に申し上げるならば、重量制限が四十六・九トンであるという橋、しかしながら、今回の政令の措置によれば、にもかかわらず、その橋の上も通すということを御決定になったことになります。一体トレーラーに載せれば六十八トンの戦闘車両を、重両制限四十六・九トンの橋を、具体的に村雨橋、千鳥橋等を通すのですか、通さないのですか。
  75. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 修理したならば通しますよ。通してもらいたいと思います。それから修理ができなかったならば、とても通せるものじゃありませんよ。通してみたからといって、あなたの御心配のように、かりにその橋が落ちて、そうして人にでも影響を与えたならばたいへんですから、そんなことはとてもできないことであります。通すということは、橋を修理をして後通すということでありまして、その修理するためには、やっぱりその橋の持ち主でありまする市長の了解も得なければならないことでありまするから、決して無制限に云々ということはありませんです。
  76. 上田哲

    ○上田哲君 市長の了解を得るというようなおことばでありますけれども、現時点、本日ただいま地元との話し合いをしなければならない約束をほごにして、閣議決定で強行されたという問題は、橋が落ちてもこの車両を通すことの政治姿勢を示さなければならないという日本政府の方向というものが出たという点で、私非常に不安を持っています。道路行政だけにしぼって伺いますけれども、今回の相模補給廠を中心とする戦闘車両の阻止の問題が出てきたのは、基本的に情勢が変化をした安保問題に対する反対の問題というものも根底にありますけれども、しかし、こういうでたらめな車を通すことによって橋がこわれる、市民生活が妨害をされるという市民感情が大きくあります。にもかかわらず、いま大臣が言われるような方針というのは、部分的なびほう策を講ずることによって政府の横暴な原則を通そうという方針を出したことになります。根本的な政治姿勢というものは、基本的に市民の迷惑を排除する、硝煙のにおいのする戦車を無理やりに市民の反対を押し切って通すことをしないようにする。いま大臣の言われたことばを使うならば、一刻も早くこの戦車は帰ってもらうようにしなければならぬということになると思うのです。根本的には、大臣の方針、政府の方針というものはその方向とまっさかさまの方向を走っている、こういうふうに断ぜざるを得ないと思うのです。少なくとも一方的に——いささか市民感情なり、あるいは住民の声を聞くように、その方向において問題を処理するかのように見せていた政府幾つかの見解というものが、きわめて唐突に、きわめて裏切りだと思われるぐらいの突如とした形で本日出てきた。このことは、政治姿勢の基本において間違っていると思うのです。そういうふうにお考えになりませんか。
  77. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 飛鳥田市長があそこで戦車阻止の先端に立たれたときには、純然たる道路法の立場に立って立たれまして、政治的な意味というものは少しもなかったと私は思うのであります。そうでありまするから、私は飛鳥田さんがああいう立場をとられましたときには、飛鳥田さんのとられた態度というものに敬意を表しまして、自分の責任においていろいろなことをしたつもりであります。そのあとに道路法の問題とはあんまり関係なしに、非常に政治問題が加味されてきたのであります。たとえばベトナム行きの戦車であったならばそこを通さないとかという、非常に政治的な問題があとから加味されてきたと。それで政治的な問題が加味されたがためにいろいろな問題が出てきたものですから、それも県民感情や国民感情としてごもっともなことだと、私はこう思いまして、その感情をそのまま生かすためには、やっぱり政府としての姿勢も、ベトナムのほうに戦車はやらないようにすることと、それから基地の縮小もさせることと、それから基地の返還も求めることと、そういうようなこともその中にはその後加味さしてきたと思います。  それから、事ここに至らざるを得なかった理由は、やっぱり当の担当者でありまする官房長官からお聞きになると私はよくわかると思います。私は何も担当者じゃありませんからその話は申し上げませんけれども、やっぱりいろいろないきさつがあったんじゃないだろうかと、私はこういうふうに考えております。たとえば、決して抜き打ち的にそういうようなことをやったんじゃない、いろいろないきさつがあったんじゃないかと、私はこう思っておりまするが、それは私の申し上げることじゃありません。
  78. 上田哲

    ○上田哲君 簡単に二つだけお伺いをいたします。  第一に、私の存ずるところではないという御答弁がありましたけれども、これは建設大臣、所管大臣としてはなはだ当を得ない御答弁だと思います。少なくとも私の関知するところではないという権限の行使によって、当該地の市民生活というものはたいへんな不安と危機感にとらわれているわけです。大臣としては、大臣自身が十分に理解をされていなかった経緯と理由に基づいてこのような方針をとられたことを、やはり妥当ではなかったとお考えになっているだろうと思います。そうであるならば、このことを明快にひとつお答えをいただきたいし、その立場に立って直ちにこれを撤回するという方針を市民生活尊重の立場から明らかにされるべきだと思いますが、いかがですか。
  79. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 村雨橋ともう一つの橋につきましては、ああいうような古くなった、しかも危険な橋でありまするから、これは修理しなければならない。そうして市民感情にはこたえたいと考えております。修理しなければならないと、そうして道路や橋をそこなわないようにしなければならないものだと思っております。そういう際には、やっぱり飛鳥田市長にお話を申し上げまして、どうか市道ではありまするけれども修理さしてもらいたいということをお願いしなければならない。ただ、あなたのお話によりますると、抜き打ち的に、出し抜けにこういうような態度をとったならばそんな話はもうできないんじゃないだろうかと、こういうような非常に御心配であるようでありまするが、事ここに至らねばならなくなったいきさつについては私は関係してない。そのいきさつは二階堂官房長官がよく知っておると思いまするから、二階堂官房長官からお聞きになってください、こう申し上げたんであり、私は決して無責任なことばを使ったんじゃありませんのです。市民感情をそこなわないようにするためには、危険な橋は全部直さしてもらいたい、こう考えております。そうでありまするから、そういう話し合いは飛鳥田市長にもこれから話すつもりでおりまするし、飛鳥田市長の了解を得まして、市民感情が納得するような橋にしていきたい、こう思っております。
  80. 上田哲

    ○上田哲君 政令措置を撤回する御意思がないということでありますから、当面の三点だけひとつ御確認をさしていただきたい。  あくまでも基本的な考えとしては、戦車の通行ということは好ましくない、戦車は帰ってもらいたいという先ほどおことばがありましたけれども、戦車が通らないように、戦車がいないように、そういう方向をとっていくんだということが基本において一つ。もう一つは。当面この重量制限にひっかかっている幾つかの橋、具体的には村雨、千鳥というような橋は通さない。そして、今後通すような事態を強行される場合にも、地方自治体の長と十分に協議をした上でなければしない。この三点を御確認いただけますか。
  81. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 村雨橋、千鳥橋に関する限りは、飛鳥田市長と十分に話し合いをして、そして修理さしてもらいまして、戦車を通すのであったならば通す。決して、一方的にそんなものを力で通すなんという気持ちは毛頭持っておりませんです。  それからもう一つ、私も日本人ですから、日本人ですからね、やっぱり独立国としてのていさいは一日も早く堅持したいと考えております。そういう点では、立場立場ですけれども、やっぱり自分なりの力を注ぐつもりでおります。
  82. 上田哲

    ○上田哲君 地方自治体と話をしますね。
  83. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 地方自治体ともちろん話をいたします。
  84. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、先ほどから答弁を聞いておりまして、大臣はいま最後にも、私は日本人だからとおっしゃっておりましたけれども、ほんとうにわれわれ国民のための建設大臣として、やはり責任ある答弁をしてもらいたいと思うし、またきょうも、本来ならば大臣は三時から都合があってよそに行かなければいけないそうですが、きょうのこの問題については、少なくとも大臣は主管大臣なんです。初めから終わりまですわってもらわないと、きょうの問題の解決はつかないぐらい重要な問題であると私たちはとっているわけです。それを、先ほどから聞いておりますと、どうも何というか、責任ある答弁が全然ないように私は思うんです。それじゃやっぱりいかぬと思うんですよね。  そこで私は、非常に短い時間でありますので、二、三お伺いしたいと思うんですが、まず、大臣のゆうべの記者会見のことでちょっと確認をしたいんですが、大臣はこういうぐあいに話をしたというのが出ております。大体先ほどの話にもありましたので、多少ダブっている点もあると思いますが、「米軍の戦車輸送問題については、私としてはあくまでも地方自治体との話し合いで解決したかったが、外務省、防衛庁などからの要求が強く、車両制限令の改正に踏みきらざるを得なかった。」、これが一つ。もう一つは、「改正を急いだ理由は何かという質問」に対して、「日米合同委員会では相模補給廠の縮小廃止や神奈川県の五つの不使用基地の返還問題、さらに沖繩の米軍基地を通過する道路の使用などの懸案があり、これらを解決するためにはある程度米軍の要求も聞く必要があると外務省などが考えているためだと思う。」。それからもう一つは、「今回の改正で米軍の届け出義務はなくなったが、車両制限令の基準を越えた戦車などを輸送する場合には、道路構造の保全のために必要な措置をとることや、地方自治体とも協議することなどを日米合同委員会を通じて米側に求めていく考えだ。」と、こういうふうに記事が載っておりますが、これはこのとおりですか。
  85. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) そのとおりであります。
  86. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しからば大臣、大臣は、これは大臣だけじゃなくて、今回のこの問題については私の手元に入っているだけでも八月の八日、八月の十日、八月の二十二日、十月の十一日と、大臣並びに大臣の関係者は、外務大臣もあるんですが、外務大臣は八日、二十二日ですが、一番新しいのでいきましても、十月の十一日には大臣はいまのところ車両制限令を改正する考えはない、こういうぐあいに委員会発言をしているわけです。これは衆議院の内閣委員会です。それから参議院の地方行政委員会でも、これは建設省当局の方が、重量制限など一切の国の、国内法の基準に適合しない限り国内の使用は許可しない、国道の使用は許可はしない、こういうぐあいに答弁をしているわけです、国会で。結局われわれはそれを信用していた、いままで。大臣は、ある日突然にやったんじゃないと言っておりますけれども、そうじゃなくて、われわれの感覚からすれば、ゆうべのテレビ、けさの新聞等で初めて知ったわけですよ。そして、それはきのうの、確かに大臣が先ほどおっしゃっておりましたように、きのうは、大臣はこの委員会に出てもらいたいなんて思ってなかったんですよ、私は。これやらなかったら出てもらわなくてよかったのです。大臣はきょう日程どおりやればよかったのです。しかしながら、大臣のほうでこういうことをやったので、きょうはストップしてもらって、出てこなければ困るわけです。この問題を解決しないといけないわけです。大臣は先ほどもおっしゃったように、車両制限令の改正はやらないほうがいいと思っておったと、いろいろきょうもおっしゃっておりますけれども、そういうふうな意図から考えても、いままで国民に対して、こういうぐあいに発言してきておったところの責任というものがあると思うのです、大臣は。少なくともいいかげんなことを国民にぱっぱ言えばいいというものじゃないと私は思うのです。ここら辺のことについて大臣はどうお考えですか。
  87. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 私は、たびごと申し上げまするけれども、道路法の改正をやらないで、話し合いですべての問題は解決したいものであるという気持ちは、最後の最後まで持っておったんであります。そうでありますから、道路法の改正などはしたくないということはたびごと意思表示をしておったと思う。しかし、いろいろな事情が出てまいりまして、改正せざるを得なくなってしまった。もうやむを得ずそういうような状態になってしまったと、こういうことなんでありまして、それでもなおかつ私は、こういうような道路法の改正をやったからといって、話し合いの姿勢というものは捨てないつもりなんであります。こういうものがあったといたしましても、なるべくこういうものは使わないで、話し合いでものごとを処理していきたいという気持ちはいまでも持っております。
  88. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、そういうぐあいに言いましても、この法律はもう改正されてしまえばですよ——、まあ改正といいますか、あえて私はいま、ほんとうは改悪と言いたいところですが、この法律はできてしまえば、米軍としては何も届け出たり、どうこうする必要何もないわけですよね、実際問題としては。確かに橋の補強とか、そういう面では物理的にはしなければいけないかもしれませんけれども、もうほとんどフリー・パスですよ、これは。これじゃ私は、あなたが先ほど、私も日本の国民としてとおっしゃいましたけれども、われわれはこういうような面を考えた場合、ほんとうに現在の日本の国民が戦車の輸送やああいう問題についてどういうぐあいに考えているかということを冷静に考えれば、私はあくまでも大臣がおっしゃっておりますように、この話し合いという問題は、もっとこういうふうな改正をやらないで続けていくべきだったと思うのです。  こういうことを押し問答したってしかたがありませんので、私はさらにあらためてもう一つ問題を提起しますけれども、先ほどもありましたけれども、これは大臣はやむにやまれずどうしてもやらなきゃならない理由をこの記者会見の中でもおっしゃっていますね。これは全部で三項目か四項目あります。こういうふうな問題をやらなくちゃならないから、たとえば相模補給廠の縮小廃止や、また神奈川県の五つの不使用基地の返還問題、沖繩の米軍基地を通過する道路の使用の問題、これらがあるからこういうふうな車両制限令の改正をやらなくちゃならなかったというのは、私はおかしいと思うのですよ。不使用になった基地というものは、米軍は当然に日本に返すということになっている、もともとこんなことは。そうでしょう。大臣、この沖繩の道路の問題、あなたは一番先にさっきおっしゃいました。あなたの立場から言えば、沖繩の道路の問題は、高速道路をつくるにあたってどうしても基地の中を二カ所通らなくちゃならないから、それを了解してもらわなくちゃどうしようもないから、建設大臣としてはこれをもうやったのだ、——こんなばかなことは私はないと思うのですよ、大臣。沖繩の海洋博覧会というのは、大臣どうなんですか、これは要するに国民の福祉のために日本の国としてどうしてもやらなくちゃならない問題でしょう、そうじゃないですか。その車両のいわゆる制限令の改正とかそのほかの問題は全部別にしても、国民の福祉、沖繩県民のこと、また日本の国としても将来のことも考えて、どうしてもやらなくちゃいけない問題でしょう、この問題は。たとえ何があろうとも、米軍に対してはばっちり要求してやらなくちゃいけない問題じゃないかと思うのです。大臣、どうですか、この問題のポイントは。
  89. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) あなたのおっしゃるとおり、沖繩の海洋博覧会はどうしてもやらなければならない問題なんであります。それから建設省としても、日米合同委員会出席して、そしてほんとうに建設省のほうからも堂々と発言できる立場がほしかったのです。今度日米合同委員会の中に小委員会ができるのです。その小委員会に、建設省もそこに参加するようになっております。そうでありまするから、その小委員会で、たとえばアメリカからいろいろな問題が出た場合においては、やっぱりこういうことはこうだああだということは、小委員会委員として堂々と今度は主張できるようになったことは、私といたしましては非常に幸いなことだと思っております。そうでありまするから、あなたの御心配になっておりますることや、それからいままで各委員の方の御心配から御質問なさったようなことは、小委員会で私のほうで堂々と主張いたしまして、そうしてそういうように結びつけたいと、こういうふうに考えております。
  90. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、日米合同委員会のいま正式のメンバーでなかった、しかし小委員会ができて発言する機会ができた。確かにそれは、今度はそういう意図でどんどん言いたい、大臣そうおっしゃっているのだろうと私は思うのですけれども、大臣、この車両制限令の改正というこういうふうなものをやらないで——これはやる必要ないわけです、実際問題。これをやらないで、合同委員会委員会に出て日本の主張をばちっとあなたがやっているなら、これはもう建設大臣として私は堂々たるものだと思うのですよ。ところが片方でこんなことをやってしまって、もうちゃんと建設省としては少なくとも屈服しているわけです、言うたら。その上で幾らどんなことを言ったって、どうしようもないと私は思うのです、実際問題として。  そこで大臣、もう一つあなたにお伺いしておきたいのですが、こういうふうな、あなたにこういうことは聞いていいかどうかまだわかりませんけれども、いずれにしても、ちょっと安保条約の問題とやっぱり関係ありますからお伺いしたいのですが、要するに、こういうふうな条約ですね、あるいは地位協定というものがありますね、こういうふうなものに基づいて今回のいろいろな問題も起きてきているわけでありますけれども、この地位協定と、こういうふうな条約も含めてです、そういうふうなものと国内法とはどちらが優先するとあなたはお考えですか。
  91. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) どっちが優先するかと言えば、やっぱりどっちを重要視するかと、こういうことになりますよ。そうでありますが、私は国内法を重視したいと思っておりまするが、そのために安保のような国際協定というものを全然無視するというわけにはいかないだろうと思います。いろいろな問題がありますると、国内的に見ますると何でもないようでありまするけれども、国際的に見ますると、やっぱり日本の信用に関することや、いろいろなことがあるものですから、一がいにどっちを先にするか、どっちをあとにするかということは、私は言い切れないような気がいたします。やっぱり安保条約といえども、結んで日本のものになったならば、日本人はそれを尊重しなければなりません。ただ、そういうものの中で、その段階その段階で変更してもらいたいものはたくさん出ると思っております。
  92. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣も国内法が優先するとおっしゃっていますけれども、確かに政府は国内法が優先すると言っているのです。国内法が優先するとは言いながら、実際は国内法が無視されておるのです、現実には。要するに、どこで無視されておるかといいますと、いまの車両制限令の改正です、これによってもう完全に……。実際は国内法が優先されるようになっているのです。安保条約そのものを見ても、三条や四条には、憲法のほうが優先するようになっているのです。憲法規定に基づいて、憲法の条件の許す範囲内でいろいろなことが行なわれるようになっているのです。また、かねてからのいろいろな答弁の中にもそうなっていますし、地位協定の中にだって、当然日本の国内法を尊重するということが出ているわけですね。にもかかわらず、その条約の上で、全部で十幾つかにわたってこういうふうな特例法ができているわけですね。だから、この特例法が何のためにできているかというと、結局は私は国内法を無視するためにできた特例法だと思うのです。その特例法の仲間入りをしたのが今回の建設省の車両の制限令じゃないか。そういうふうな意味では、私はこういうふうな改正は反対ですし、これはもうすぐほんとうに撤回してもらいたいと思うのです。これは撤回というのはそんなにむずかしいことじゃないでしょう、大臣どうなんですか。これはだいぶむずかしいことなんですか。一たん出た政令でしょうからね、なかなかそういうわけにはいかないかもしれませんけれども、現在の国民感情を考えた場合には、大臣ね、やはり大臣が先ほどから何回もおっしゃっております、アメリカのために日本人同士が争うことはいかぬとか、大臣はいろいろなことをおっしゃいました。そういうふうなためにも、また、話し合いで努力をしたいとも大臣おっしゃいました。そのことを実現するためには、大臣のところでとったこの車両制限令というのを一たん取り消して、そうして話し合いで再度やる以外に、私は、大臣の希望しているような方向にはいかない、大臣がお考えの方向と全く逆の方向の作用がこれから起きてくる。これは国会の中だけじゃないですよ。やはり内外で起きてきます。そのためには、やはり大臣の非常に大きな決断が私は必要だと思うのです。これはどうですか。
  93. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) なるべくそういうような悪い方面に進まないように、これから高度の配慮をしてやりたいと思いまするが、やっぱりきょうつくって、またあすやめるなんというようなことは、昔から朝令暮改といってあまり尊重されないのでありまするから、これからこれをやりまして、そしてまた欠陥があったならば、そのときまた考えさしてもらいまするけれども、きょう決定したこの政令をいまやめるというわけにはまいりませんです。
  94. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣の時間の都合がありますからこれで終わりますけれども、いずれにしても、大臣、いいことは、私は朝令暮改でも国民は認めてくれると思うのですよ。そういうふうな意味では、やはり私たちはこの問題については、大臣に対して強く要望いたしておきます。以上です。
  95. 中村利次

    ○中村利次君 大臣答弁の中で、たいへんにどうも納得のできないようなものがありますから、それからお伺いをしてみたいと思います。  まず第一点ですけれども、皆さんから指摘されたように、国内法を変えられた。そして米軍及び自衛隊も含めてフリーパスになった。いままでの車両制限令で禁止されていたのをフリーパスにした。先ほどから御答弁を聞いておりますと、とにかく変えたけれども、たとえば村雨、千鳥みたいな危険な橋は、これは通さないのだ。そして道路管理者の市長と十分話し合いをして、修理補強をやって、その上でだいじょうぶになったら通すのだ、こういう御答弁でしたけれども、これは私は再確認の意味で伺うのですが、とにかく国内法を米軍の意思によって改正をせざるを得なかった——改正をしたのですよね、国民世論に反してでも、とにかく改められた。改められてフリーになれば、届け出なく自由に通れるのですから、それを通さないとか、あるいは話し合いで修理するというのは、これは運用です。大臣の願望であり、意思なんです。それ以前に法は変えていらっしゃる、政令の改正をおやりになって。そうしますと、私がここでだめ押しをしたいのは、これは外務省を通じて交渉をしたとおっしゃったが、しからばその交渉の中で、車両制限令は変えるけれども、たとえば村雨、千鳥等については、これは修理補強をするまでは通らないという相互確認ができているんですか。
  96. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 今度の改正によりまして、建設省が直接的に発言できる小委員会のメンバーになりましたから、その小委員会において協議のときに、無制限な、たとえばアメリカがそこをしゃにむに通るなどと言ってみたって通さないようなやり方は幾らでもできると思います。そういうような非常に市民感情をそこなうようなやり方は、こんりんざいさせないつもりであります。今度は直接的に発言できるようになりましたから、できると思っております。
  97. 中村利次

    ○中村利次君 それはまことにどうも非常に大臣はお人がよろしいようですけれども、そしてやはり道路行政については非常に願望をお持ちのようです。それは国民的には支持されると思いますよ。思いますけれども、しかしおやりになって出た答えは、建設大臣がどうお考えになろうとも、制限令を変えたということは、政府全体の姿勢として、その決着として出ているんですよ。そうなりますと、市民感情に反するようなことはやりたくないとおっしゃった、それも私は決してうそだと思いませんよ。しかし車両制限令を変えたということは、市民感情、国民感情に反することを政府はやっているんですよ。ですからその上で、いや、もうこうしたい、ああしたいという願望が伴っても、これはあくまでも大臣のお気持ちであり、願望だけであって、そういうことをおっしゃるから、抜き打ちだ、やれ肩すかしだ、だまされたという答えがまた出る、また出るというぐあいに積み重なっていきかねない。そこでこれはくどいようですけれども、もう一回私は、ほんとうに通さないのかどうか、政治生命をかけて、だれが何と言おうと通さないという、もしまかり間違って通るようなことがあったら、政治生命をかけるというぐらいの強い御発言ができるのかどうか伺います。
  98. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 問題になっております村雨橋と千鳥橋、これは市長の了解を得まして、そういうようなものが通れるような橋にしていきたい。しかし、そういうような橋にならない前に、現状のままでアメリカの戦車を通すなんということは、それはこんりんざいやりません。
  99. 中村利次

    ○中村利次君 わかりました。これはひとつ大臣を信頼しておきます。しかし、また別の面からいいますと、それほどの、大臣の政治生命をかけた道路行政の最高責任者としての決断があるならば、私はあと先が逆になっていると思う。ちゃんと危険な橋は、いまの重量制限にひっかかるような橋は、まずやはり修理補強をする。その上で、国民感情を刺激して、どうも納得ができないというような、そういう国内法を変えるという手段をとらないで、これはやはり最高の私は政府の責任であったし、また、道路行政の責任であったと思いますけれども、これはそんなことをここで言ってみたってしょうがありませんから。  それからもう一つは、やはりこれは姿勢の問題ですけれども、沖繩の問題が出ました、海洋博、これはたいへんなことです。やはり国道が通れない。しかし少なくともわが国の国土の中で当然こうでなければならないというのが、かりに安保条約があり、地位協定があっても、米軍の強い意志によってそいつがゆがめられるということを強制できない日本国政府であっては、私はこれは国民の信頼を得る道には絶対につながらないと思うんです。そういうものをずっと一貫して考えてみますと、まことにそれは今度のこの措置は遺憾千万と言わざるを得ないんですけれども、何らかこれを前向きに、ほかはいろいろ申し上げていてもしようがないんです、時間はもう尽きちゃいましたから。前向きに運用で何とかしてみるとかなんとかというのじゃなくて、やはり建設大臣の責任として前向きにこういうことをやってみたい、こういうことを検討してみたいという、道路行政について国民の不信を買わないような、そういうお気持ちがおありかどうかお伺いをしておしまいにします。
  100. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) あなたのお話のとおりに、ほんとうに道路法の改正なんかやらないで、話し合いで万事進めたかった。私はいまでもそういう気持ちは持っております。今日それを、今度道路法の改正をやったからといって、そいつを捨てておるわけではありませんから。そうでありまするから、私はまあそういう具体的な問題ができました場合においては、その小委員会において、今度新しくできたんでありまするから、小委員会において、その運用について力説してみたいと思います。ただ、私の考えといたしまして、道路を間にはさんでいろいろないざこざが起きると、特に国際的に見てあんまり芳しくないようなものは、道路に関する限り私の立場なんですから、そういうものはなくしてみたい、こういう気持ちで取り組んでいくつもりであります。
  101. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも建設大臣は事の重大にあまり気づいていられないんじゃないかと。先ほどから伺いますというと、沖繩の海洋博ですね、これが今度の車両制限令を改悪した一番大きな原因だと言われた。しかし、そんなもんじゃないと思うんです。これはたいへんですよ。先ほどから話がありますように、国民のこれは感情をさかなでしていますよ。それからこれでもって、どうなんです、これはもう米軍の戦車、それから自衛隊の戦車、こういうものは自由に通れるんでしょう、フリーパスで。そこで、この一台の戦車がこれは通る。これはベトナムに送られることは明らかです。そうしたらどういう事態が起こるというふうにあなたは考えているんですか。一台の戦車が送られるたんびに、どういうことが起こるんだというふうに考えていられますか。あなたはどういうふうな認識を持っておられるか、まず伺いたい。
  102. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 戦車が、この車両制限令がなくなったがために、アメリカの戦車が自由自在に通れるなんというものじゃありません。そいつは全部チェックするものはチェックいたしまするから、そういうものではない。  それから、アメリカの戦車がアメリカの戦車がベトナムに行った場合とおっしゃいましたけれども、私だけじゃない、政府といたしましては、そういうようなものはベトナムにやらないように、一生懸命になって向こう側と折衝いたしておるのでありまして、大体私は日本側の意見が通るんじゃないか、こういうように自分は判断いたしております。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 チェックするといってもどういう方法でチェックするんです。こういう制限令を改正しておいて、実際は自由に通行できるそういう権限を与えておいて、いままでよりははるかにこの制限のしかた、チェックのしかたがないわけでしょう。具体的にどういうことなんですか。
  104. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) アメリカのそういう車両が通るような場合には、すべて日米合同委員会の小委員会において協議することにしておりまするから、えてかってに通るなんということはありませんです、そういうことは。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 実際はアメリカ側の圧力があったということがこれはもうはっきりしていると思います。これはあとでもう外務省にただしますけれども。そういう形で、いまの情勢の中でどうしてもこれは戦車は通さなきゃならぬ、こういうことにとるんですよ。そこで、一台の戦車が通れば、そのたんびにこれはベトナム人が何十人、何百人殺されるんですよ。そういう形でのこういうふうな制限令の改悪ということについては、一体あんた考えたことがありますか。あなたがほんとうに平和を求めるとか、国民の生活の安全だとか、こういうことを言われても、実際はベトナムのそういういわば皆殺し戦略だ。その中で協力する、そうしてそのためにいままでの制限を取っ払うと、そういう性格を持ったものだという、事の重大には少しも気づいていられないようですね。この点はどうなんですか。あなたのいままでのなにを聞いていると、少しもそういう反省がないわけですが、この点について、国民はこのような非人道的な、もう許すことのできないジェノサイドについては、もう全世界の非難が高まっているのです。そういう中で、いま、平和憲法持っている日本が、自分の、日本の基地をもとにして、そうしてそれで実際はアメリカのこのような許すことのできないこの侵略体制の中にはっきり加担しているのです。いわばこれは力をかしているのだ。一方のこれは荷をしょっているんでしょう、こういうことは、これは木村さんらしくないと思うんですね。私は日本人だと、それから筋は通すんだと、こういうことを言っていたあなたのいままでの言い方としてはおかしい。ことに、田中内閣の御意見番というのがあなたの評判じゃなかったのじゃないですか、大久保彦左衛門。これは株がだんだん下がっていますからね——こういうことになっています。これは全くあんたに対するひとつのイメージダウンです。国民はみなそう思っている、いま。しかも、この道路問題をほんとうに直接担当するところの国務大臣なんですから、期待が大きかったはずだ。これじゃ全面的にあなたはだめだ。そうしてまた、きょうはもうこんな肝心な日を旅行先に行こうとしている。この点についてどういうふうに考えていますか。
  106. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) いままでは、相模補給廠で修理した戦車がベトナムに送られておったかもしれませんけれども、これからはそういうようにさせないように政府が力こぶを入れると、努力すると、そうでありまするから、私はそういう方向に必ずいくと思っております。  それから私の立場からいいますると、日米合同委員会の中にできた小委員会におきまして、私の主張というものは、今度は間接的じゃありませんよ、直接的に述べることができまするから、私はその主張は通すことができると、こういうように自分は考えております。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことをあなたはずいぶんいままでから言ってこられましたよね。合同委員会に参加するなんて、合同委員会のこれは正式メンバーではないはずだ。小委員会のメンバーだ。そうして最後的にはこれは決定される。今度も、あくまでも——これは制限令ですよ、いまのところ考えていない——これはつい最近、もう一週間前、そうでしょう、衆議院でそういう答弁されているでしょう。ところが、実際はもうだめになるとその権力に屈してしまう。この前も、九月の初めでしょう、これは相模補給廠はもうなくしたいのだと、そういうふうに言った。これは木村さんというのは骨があるのだなと国民は考えた。ところがその次の日どうなったですか。あんたはもうあそこの道路の使用というものを許可してしまった。全くイメージダウンです。ですから、いまそういうような決意を述べられたのだが、ほんとうにこれを果たす気があるのかどうかということは、これは私は今後のやり方ですね、これにかかってくる。  次にお聞きしたいんですが、これはやっぱり国民の生命、これに非常に深い関係があるわけですよ。そこで、昨年この道路法が改正された。その結果、御承知のように車両制限令がつくられた。そうしてその車両制限令はことしの四月一日から実施されたはずです。朝令暮改はぐあいが悪いと言ったら朝令暮改じゃないですか、これは。それが今日ではすっかり変わっている。しかもそのときの道路法の提案理由を私は調べてみたのです。こう言っておるのですね、道路法改正の提案理由の説明の中で、「交通の安全と円滑をはかるためには、道路管理について一そうの強化をはかる必要があります。」、そのために「道路の構造を保全し、また交通の危険を防止するため、幅、重量、高さ、長さ等について一定の限度をこえる車両を通行させてはならないものとし、」「限度外の車両であっても当該通行がやむを得ないものについては、道路管理者の許可制を設け、」たと、このように法律案の説明をしておるのです。ところが、今度のこの車両制限令の特例によって、米軍と自衛隊には全くフリーパスのような特権を与えたというようなことになりますというと、これは道路法の精神、ここの提案理由で説明されている精神というのは完全にじゅうりんされている。この結果はどこにいくかといったら、国民のやはり交通の非常に困難だ、あるいは場合によっては生命の危険だ、こういうものにつながってくるわけですね。いわば上位法の精神に全く反したところのこのような政令の改正が今度行なわれた。この点についてのあなたの認識はどうなんでしょうか。担当相としてこれに対して明確な答弁をすべきだと思います。
  108. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 自衛隊の戦車とかそれから米軍の戦車が日本じゅうやたらに通っているものではないですよ、これは。通る場所というものは一定されておりまするから、そんなにむやみやたらなことはないと思います、その点は杞憂だと私は思いますな。  それからね、先ほども申し上げましたとおりに、どこをどう通って、そして海外にいきたいというようなことは、みんな今度は日米合同委員会の小委員会にかけて決定するようになりまするから、やたらな動きというものはありませんですよ。そうでありまするから、その点は、あちこち戦車や何かが飛び回って、歩いて人に危害を加えたら云々とおっしゃいましたけれども、そういうような御心配は私はないと思っております。そしていろいろな具体的な問題はすべて日米合同委員会の小委員会できめるようになりまするから、私はそういう点で、あらゆる角度からそういうようなものは抑制することができまするし、その自信も持っております。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことをあなた言われるのだけれども、先には非常に強いことを言うのだけれども、事実の前にはいつでも屈服してきたのがいままでのあなたの、大臣就任以来のやり方だ。一応そう言うのです。それを最初にきめて、それからこの改正をやったのならわかると思うのです。ところが、実際はのど元過ぎれば熱さを忘れるでしょう。今度の兵員輸送車の相模補給廠からの輸送の状況を見てもそうですよ。最初はあそこのところを縮小する、ベトナムにはやらないのだ、こういうことを言っておいて、さて、十九日に五千人の警官を出して通した。そうしてあと、車が通りますというと、どうやったですか、全然これは百八十度違った政府統一見解というのを出してきたじゃないですか。そうして米軍の兵器であれば、これはどんなところで修理してもかまわない。それから米軍の兵器であればどこで使ってもかまわない。まるでこんなような統一見解を出してきたじゃないですか。これは全くしりまくりというやつですよ。苦しいときはもう頭はどんどん下げます。しかし苦しい時代が過ぎるというと、これはもうほんとうに実際は屈服してしまうというのがいままでの姿です。だから、これはどうなんです、あなたいま言うけれども、ほんとうに米軍とそういう約束したのですか、合同委員会ではっきりそうやるのだという、そういうなにはあるのですか。いまそんな希望的観測では国民は絶対にこれは了承することはできないのです。どういう根拠があるのですか、いまのは。
  110. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) この前の相模原の問題は、決して無理押ししたのじゃありません。それば両市の許可を得て、そうしてああいう兵員輸送車は通したのでありまして、ただ警察官を多数動員したということは、あなたのほうや社会党のほうとの話はつきましたけれども、つかない特殊な団体があったと。そういうようなものがあばれ回って万一のことがあるといけない、こういうように考えまして万全を期したがために、たくさんの警察官を動員したのでありまして、決してたくさんの警察官を出して無理押ししたのじゃありませんです。そうでありまするから、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。  それから日米合同委員会の中に小委員会をつくるということは、今度のこの政令改正にあたりまして相談してできたことなんでありまして、私がそのことについてうそを言っているわけじゃありません。それから、その小委員会の中においてアメリカの車が通る通らないの問題、通るときにはどこを通る、通す場合にはどういうことをするのだということはみなそこで協議してきめようと、こういうことになっておるのでありまするから、私の独断で言っておるのじゃありません。ただあの問題を通しまして、でたらめだったじゃないかとおっしゃいまするけれども、私は、ああいうような相模原の問題なんかがあったがために、政府としてもほんとうに前向きになって、基地の縮小の問題、それから使用していない基地を日本に返してもらいたいという問題、それからベトナムに車は送らないようにしてもらいたいという要望事項を掲げて交渉するようになっただけでも、私は決してマイナスじゃなかったと、こういうように思っております。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではいま木村建設相の言われた、ちゃんとアメリカと相談してできているというのは、あとでこれはちゃんと外務省から示してもらえますね。示してもらえるかもらえないか、ちょっと答えてください。外務省、ありますね。ここだけの言いのがれじゃだめなんです。あるかないか言ってください。
  112. 青木正久

    説明員(青木正久君) あります。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 ありますね、あとで示してください。  それからもう一つ、そういうことをあなた、建設大臣言われておりますけれども、ほんとうに私はやっぱり政治責任というものは明確にすべきだと思うのです。あなたはとにかくこの改正はしないと、こう言ったわけです。だから相模原の縮小のそういう問題もこれはやるのだと。しかし、そういうことは実際もう破れていっているのですね。そうしていまさらながら日中国交回復後の、実は、田中内閣の暗い陰の顔、夜の顔といった、こういうものの姿がはっきりしてきたのだ、この戦車の問題で。そういう中で、御意見番としてあなた何も言わぬのですか。大久保彦左衛門だといっておる、それから筋を通すのだ、硬骨だ、こういうふうに考えておったのですが、これはもう砕けたのですか。全く今度のやり方を見ますというと、担当者の建設相がまことに硬骨でなかった、こういうことが最も印象的です。私はこういう点から考えますと、今度の車両制限令の改悪などということは、これは国民了承しませんよ。この結果が、全く日本の政治の性格というものが、はっきり半面の性格が浮き上がってきた、こういう点からいっても、ここではっきりやはりこのような政令の改悪は撤回して、そうしてそういうことのないことをまず最初に示すべきだと思うのですが、どうなんですか。最後にこれをお聞きします。
  114. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) これも誤解ないようにしてくださいよ。私は車両制限令の改正はしたくない、ほんとうにしたくなかったのですよ、したくないということは言いまして、それで非常に苦慮いたしました。けれども車両制限令の改正はしないとは委員会で言ったことはありませんです。そうでありまするから、どうかそれはもう一ぺんお調べください。  それからもう一つ、田中内閣云々とおっしゃいましたけれども、車両制限令を改正して、いまは非常な御非難をこうむっておりまするけれども、やっぱり改正したがために、これこれ、これこれの点でやっぱりいいものが生まれてあったのだということは必ず私はあるだろうと、このように私は思っております。
  115. 鈴木力

    ○鈴木力君 外務省にお伺いしますが、私はいまの建設大臣の御答弁は非常に重要な問題を含んでいると思いますから、お尋ねをいたしますが、時間がありませんから端的にお答えをいただきたい。  その一つは、いま木村建設大臣がおっしゃいました道路制限令を改正をしなければならなかった主たる理由に、沖繩の道路の問題がありますね。二つあげられた。この問題については、いままで日本政府からアメリカにどういう交渉をしてきたのか、いのつ幾日にどういう申し入れをしたか、はっきりお答えをいただきたい。
  116. 青木正久

    説明員(青木正久君) 沖繩関係について建設省のほうから外務省に交渉依頼しているのは二件ございまして、一つは那覇空軍並びに海軍の施設内の国道三百三十一号線の供用開始、これでございますが、この点につきましては、目下日米合同委員会で協議中でございます。それからもう一つの、大臣の言われました海洋博のための高速道路の建設、この問題につきましては、まだ路線がきまっておりませんので、正式に米側と交渉を始めておりません。
  117. 鈴木力

    ○鈴木力君 そうすると、この道路使用制限令ですね、これとの関係はまだ交渉していないのに、これを通さなければいけないから道路使用制限を改正するのだ、こういう建設大臣の説明はどうなりますか。所管の外務省としてお答えいただきたい。
  118. 青木正久

    説明員(青木正久君) 建設省のほうからいま言ったようなお話もございましたので、大臣の言われたとおりだと思います。
  119. 鈴木力

    ○鈴木力君 大臣の言われたとおりではわからぬのですよ。大臣は、外務省と協議してこうなったと、主たる関係官庁は外務省だと、こう言っている。そこで協議した場合の中身はどうなんですか。
  120. 青木正久

    説明員(青木正久君) 中身のこまかいことは私存じませんので、事務当局から答弁させます。
  121. 鈴木力

    ○鈴木力君 外務省に知っている人おりますか。
  122. 角谷清

    説明員(角谷清君) 先ほど大臣から沖繩の二つの件と、それから今般の車両制限令の改正の関係につきまして、お考えのお示しがあったと思うわけでございます。大臣におかれましては、おそらく日米の全体の話の何と申しますか、全体の姿からそのようにおとらえになったと了解しておるわけでございます。他方、外務省といたしまして、特に事務当局といたしまして、那覇の二つの件につきましては、ただいま政務次官から御説明がありましたとおりでございますが、沖繩の二つの件につきましては、先ほどの御答弁のようなかっこうでアメリカ側と話しておりますが、車両制限令につきまして、特に何と申しますか、それと直結してやりとりをやっているというようなことは必ずしも言えない、このように思っております。
  123. 鈴木力

    ○鈴木力君 これじゃ審議にならぬのでしてね。外務省の政務次官と建設大臣と並んでおるところでの建設大臣の答弁ですよ。私は両方一緒に確かめればよかったのですけれども、大臣の時間の都合上、大臣だけにしぼって、あとで外務省に聞くからと、わざわざ何べんも断わっている。皆さんの前で、建設大臣は、車両制限令を改正しなければならなかった理由は、この一番先に飛び出したのは、沖繩の二つの道路をものにしたかったんだと、こう言うのですね。そうしてこれをやるためには、関係官庁はどこだと聞いたら、外務省、防衛庁だ。だんだんに聞いてみたら、防衛庁は主たるものじゃなしに外務省と、こうなってきた。それで今度は外務省に尋ねると、そんなことは知らぬ、存ぜぬ、これはどういうことなんですか。それでもってこれほど世論を騒がしたり、国民を心配さしたりすることをやるのですか。これは政務次官にお答えいただきたい。
  124. 青木正久

    説明員(青木正久君) 大臣が海洋博などについてたいへん御熱心な態度を日ごろからとっておられますので、また建設大臣でいらっしゃいますので、これに力点を置いていま説明をされたんだろうと思います。外務省としましては、これももちろんそうでございますけれども、いま説明のありましたとおり、そのほかにもいろいろなことがございますので、全般的なことを考えると、いまの御答弁になるわけでございまして、必ずしも私は食い違っていると思いません。
  125. 鈴木力

    ○鈴木力君 私はそのほかのことはあとで聞きますよね。建設省と外務省と協議をして、建設省が所管である建設省の省令を改正する、政令を改正に踏み切ったのはこれがあったのだ、そういうことです。そうすると、だれが聞いても、この沖繩の二つの道路を本当に機能させるためには、目的を達するためには制限令を改正しなければいけなかったんだ。いわば沖繩の国道をほんとうの国道にするためには、米軍戦車に対するチェックをはずさなければいけなかったんだ、これが建設大臣の答弁。そうして外務省と協議してやったと、こういうことです。  そうすると、外務省としてはっきり言えることは、こういうことですか。いまの建設大臣の言ったことは、この道路制限令とは全然関係がない、はっきりこう言うのですか。
  126. 青木正久

    説明員(青木正久君) 私も木村大臣の答弁聞いておりましたけれども、この沖繩の二つのことだけのためにやるとはおっしゃらなかったように思います。
  127. 鈴木力

    ○鈴木力君 だけのためになんてぼくは言っていない。
  128. 青木正久

    説明員(青木正久君) そのほかにもいろいろあるということで、したがいまして、この二つのためだけに道路を、今回の改正をやったとは思っておりません。
  129. 鈴木力

    ○鈴木力君 私はこれだけのためにという確認を求めてやっておりませんよ。これも入っている。所管である建設省は主たるものはこれだと、こう答えている、あなたの前で。それ以外にもあるから、これはどうでもいい、そういうことになりますか。これでは委員長、私は質問やめます。すぐに官房長官に来てもらって、でなければ総理大臣に来てもらって、政府の統一的な答弁をいただかないと時間をむだにしますから、やめます。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど木村建設相の発言に関連して、米側といろいろ相談して、実は道路とかその他の問題について協議をすることを、体制をつくったと、こう言うのだね。それをね、何月何日にだれとだれが会ってどうしたか。この書類をいまから、これは時間ありますからね、つくってすぐ出してください。委員会に。そろえてこれは出してもらわなければ困る。ああいうのは、全く逃げ口上では困るわけですよ。それについて次官はありますと言う。そういうものはありますかと聞いたらありますと、はっきり答えているのです。いいでしょう。いまから一時間、時間があれば出るわけですから、それを文書で、これなら簡単です。こういう条項はこれこれだ、だれとだれが会った、そうして何日の日米合同委員会で会ったのか、あるいは外交折衝でやったのか。これは根拠を明確にしなければ、われわれの委員会の審議などというものは全く空中楼閣じゃ困るのですね、国民の信頼を失うだろう。だから当然これは、いまあると言ったから、それを出してもらいたい。これは委員長からも要求していただきたい。当然それはやらなければならない。その場のがれじゃだめなんですよ。やってください、いいですね、あなたはあると言ったから。
  131. 青木正久

    説明員(青木正久君) 先生先ほどの御質問は、日米合同委員会を通じまして、重量車両の通行をチェックするようなことについて具体的な話がございますかという、そういう御質問だと私了解いたしました。それに対しまして、まあ実際の問題として、米軍車両は適用除外になりますけれども、実際問題として道路構造の保全措置ですね、それを米側にとらせるに当たりまして、米側だけでこれを実施するということは困難な場合が当然あろうと思います。そこで合同委員会を通じまして、日米間で協議をする仕組みを設けることが必要になってくるわけでございまして、随時やっておりますけれども、具体的な段取りは、これからも早急にアメリカ側と相談をいたしまして、どういうふうにやるかということをきめると、こういう意味でございます。
  132. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記とめてください。   〔速記中止〕
  133. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。
  134. 青木正久

    説明員(青木正久君) いまの問題につきまして、直接折衝に当たりました外務省の松田課長から御説明申し上げます。
  135. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 別の委員会に呼ばれましたので失礼いたしましたが、承りますところでは、木村建設大臣が先ほど答弁になりました木村大臣としての今回の改正を御決意になった際の御心情と申しますか、そういったものが二点あるということを私も承っておりました。私どもといたしましては、所管大臣であられる木村大臣が、最近特に御熱意を持っていらっしゃる沖繩の二点について、御自身でも、たとえばアメリカの在京米公使と交渉されるなど熱意のほどを披瀝されていることは十分承知しておりますし、今回の御決定の際にその点を心情的に十分お持ちであったことは承知しております。しかしながら、外務省の立場から今回の車両制限令の改正にあたりまして最も根幹的な事項といたしましたのは、地位協定第五条、これは国会で御承認を得た条約におきまして、米軍に対し基地間その他の移動の権利を認めていることが、現行国内法の運用上担保されていないということを指摘いたしまして、その他の関係省庁の懸案とともに、建設省に御検討を願った次第でございます。したがいまして、建設大臣の御心情は御心情といたし、外務省の立場からはそれらも含めて、基本的には地位協定五条の実施ということとの関連におきまして御検討をいただいた次第でございます。
  136. 鈴木力

    ○鈴木力君 交渉した課長に答弁させますというが、あなたはだれと交渉したのですか。
  137. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 交渉という御質問でございますが、いろいろな側面がございますから、分けて申し上げてよろしゅうございましょうか。
  138. 鈴木力

    ○鈴木力君 いや、ちょっと待って。いま政務次官から直接その交渉の任に当たった課長から答弁させますと、私がいま聞いているのは、建設省との間にこの政令を改正する間の協議ということですから、あなたとだれとが交渉してこの政令ができたのか。
  139. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 私どもが建設省といろいろやりとりをいたしました相手方は、道路局長、次長及び道路交通管理室長でございます。
  140. 鈴木力

    ○鈴木力君 これをあなた一人でやったのですか。
  141. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 一人ではございません。
  142. 鈴木力

    ○鈴木力君 だれとだれとやったか。
  143. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) たまたま外務省の人事異動がございまして、アメリカ局長及びアメリカ局参事官がともに八月から九月にかけまして人事異動がございまして、したがいまして、前段の交渉に参与しておりましたのは、当時のアメリカ局長代理と小生であります。人事異動後は現アメリカ局長及び参事官並びに小生でありますが、一貫して事件と申しますか、八月当初から現在時点に至りますまで一貫して事務折衝の当事者といたしましては私でございました。
  144. 鈴木力

    ○鈴木力君 それはね、事務折衝じゃわからぬのです。最終的に決定をする段階で政治的な判断を加えなきゃいけない問題ですから。多分に建設大臣の言っておるのは政治的な判断からものを言っておる。決断をしている、そうでしょう。しかしそれなら道路局長さんに伺います。道路局長さん見えていますか——いないですか。やっぱりだめです。  私はただごねているんじゃないですよ。これは非常に重要な問題、特に私はさっき言いましたように、沖繩があれだけ大騒ぎをして日本に、本土に返還をされておる。まだ国道が使えない。いまの政府の看板である海洋博も、この道路もどこに通せるやらわからぬ。それを道路制限令を改正をする。そんなことを日本の政府が考えているということに国民は重大な関心を持たざるを得ないし、政府を信頼することができないんです。しかもこういう重大な決定をしたのが、課長が責任を持ってやったということになれば、政府の責任体制なんていうものはゼロだ。そういう意味で私はそのまま聞くことはできない、こう言っているんです。
  145. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 補足して御説明申し上げます。  私はお尋ねに従いまして、事務折衝の相手方及び当事者を御報告申し上げました。しかしながら、御指摘のとおり、本件は八月以来きわめて大きな政治上あるいは外交上の問題でございましたので、内閣官房におきまして関係する多くの各省庁との相互調整等も取りはかられたことは申し上げるまでもございません。私は外務省と建設省との間の連絡ぶりについて御報告いたしましたが、政府全体といたしましては、内閣官房の調整があったことは私ども参与をして存じております。
  146. 鈴木力

    ○鈴木力君 聞かないことを答えてもらわなくていいんです。あなたに政府全体のことをだれが聞いている。私が政務次官に聞いたのは、建設大臣が言ったように、外務省と建設省が主たる関係官庁としてこれをやりましたと答えておる。そこでその折衝の状況を聞いたわけです。そうしたら、折衝の任に当たっているあなたに答えさせる、あなたが責任者ということになる。あなたがまさか政府全体の責任者と私も思いません。そんなつまらないことは答えんでよろしい。もう一つ、あなたが事務折衝しかやっていないとすれば、政務次官に指名されても、答弁する資格がありませんというのがほんとうの答弁、私は事務折衝のことを聞いているのじゃない。最終的な決定の段階を聞いている。
  147. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 暫時休憩いたします。    午後三時三十五分休憩      —————・—————    午後四時五十四分開会
  148. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国の防衛に関する調査議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行ないます。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど木村建設相の答弁の中で、米軍がかって気ままなそのような通行はしないんだ、それはチェックできるんだ、そういうことについてももう話ができておる、さらに小委員会を設けてそういうことを推進するんだ、こういう答弁がありました。それに対して青木外務次官に対しまして、そういうものはありますかと、こう聞いたんです。青木外務次官は、ありますと、こういう答弁だったので、そこでこれについて、外務省ははっきり、それなら私はそのものを出してもらいたい、何月何日、どういう話し合いでそういうものがちゃんときまっているかということを要求したわけです。それに対する青木外務次官の答弁は、なかなか私の要求のようではなかったので、あらためてもう一回外務省の見解を伺いたい。
  150. 角谷清

    説明員(角谷清君) お答え申し上げます。  今般の車限令の改正につきましては、依然といたしまして、依然と申しますか、やはり道路の構造の保全のため必要な措置を講じた上でということが明白に書いてございまして、単に改正いたしましたから、アメリカが何でもやれるというわけでもございませんで、この条文、趣旨を踏まえまして、アメリカ側と日本側関係者と十分協議の上実際の措置に当たるということにしたいということはかねがね思っておりまして、そのラインでアメリカ側とも随時話しておったわけでございます。それで、それではその仕組みをどうするかということになりまして、それはやはり合同委員会の場を使いまして、ここに、そのためのいわば小委員会的なものをつくりまして、その席でやるのがよいではないかということを考えまして、わがほうといたしましてこれをアメリカ側に、実質上は、あるいはまあ非公式にと申しますか、それにつきましては大体その話はもうできておるわけでございますけれども、いわば正式の手続といたしましては、何と申しましても車限令の閣議決定が本日ございまして、実施は明日ということになりますので、それの設置につきましては、正式にはいま申し入れておるところでございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、実質的な話というものはアメリカ側と通じておりますから、その意味におきまして、先ほど建設大臣がそういうような形でやるのだということを仰せられましたけれども、大臣はそのようなことを踏まえておられる、こういうことであります。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 長々やられましたけれども、私聞きたいのは、肝心なのは、アメリカがはっきり、とにかくかってなそういう行動はしないのだということのちゃんと確認された、そこのところが必要なんです。すでにそれはもうちゃんと確認されているのかどうかという点について非常に不明朗なんです、あなたのいまの説明では。どうなんですか。
  152. 角谷清

    説明員(角谷清君) お答えいたします。  その点につきましては、ただいまも申し上げましたとおり、実質的な話はいまアメリカ側としておるわけでございます。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう時間ないから、官房長官見えているからなにですけれども、実質的にと言ったって、あなた、そんなものはきめているわけではないのだ。ことばではっきりこうなっている、確認事項というものを明確にしろと言っているのだが、全然そこに触れない。先に行って小委員会をつくるからどうだ——先のことを聞いているのじゃないのだ。いつでも食い逃げで、その場限りの確認をして逃げてきている。そして実際は既成事実が出てしまって、どんどん進むとあとで全然だめになってしりまくられたのが苦い経験だ、国会のいままでの戦いで。それを繰り返してはいけないからというので私は念を押しているのに、全然それについて——だから、外務省でそういうものをちゃんと合同委員会で話し合っていますからと言うので、そういうものがありますかと言ったら、ありますと言った。これはない。ただ、これからつくって、いまからやるのだ。実質的な話し合いというもの、それを確認したものは何もないじゃないか。だからそういう答弁では、さっきの外務次官の答弁は食言です。木村建設相の食言。時間がないからこれ以上やりませんから、これはあとでまた、時間の関係で追及するかもわかりません。いまの答弁じゃ絶対了承できません。
  154. 鈴木力

    ○鈴木力君 官房長官にお伺いいたしますが、実は、お聞き及びと思いますけれども、長官がまだお見えにならないうちに、例の道路車両制限令の質問をしておったのですけれども、話がもう、全然答弁者によって食い違いどころの騒ぎじゃない、関係のないような話ばかり出てくる。そこで、官房長官においでをいただかなければと、こういうことになって、まず第一に内閣の運営のかなめのところにいらっしゃる官房長官に私が伺いたいのは、この車両制限令を改正をするについての順序といいますか、手続ですね、これは建設省所管だと私は思っておりますけれども、その所管の建設省と、それからどの省と、どういう順序に、どういう理由で、省令を、政令を出すことに踏み切ったのですか、その辺をはっきりしていただきたい。  と申しますのは、もう時間がありませんから、端的にはっきりお答えいただきたい。なぜ政令を出したかという私の質問に対して建設大臣の御答弁は、沖繩の海洋博覧会の会場に高速道路を持っていかなければいけないけれども、それが軍事基地があってうまくいかない。それからもう一つは、現在の国道が米軍の基地にかかっておるために、国道としての機能が不十分である、こういうことから、どうしてもこの二つの機能を果たすために、建設省限りではどうにもならないこともこれあり、車両制限令なんかは出したくはなかったけれども出さざるを得なかったと、こういう筋の御答弁があった。そして、主として協議をした所管はどこかといいますと、外務省。そこで外務省にこの点についての質問をしたら、それもあると思うけれども別だ。外務省としては、大体、いわば安保条約六条に基づく地位協定、これによる責任というところが主だ、そういう答弁です。そして、所管である建設大臣のその理由というのはどこにいったのかさっぱりわからぬ、こういうような形で、これほど重要な問題が、政令が改正されるということはどうしても私は承知できないわけです。したがって、まずほんとうの理由をお聞かせいただきたいし、それほど食い違った二つ関係省の答弁というものは、内閣の運営のかなめにある長官としてどう始末をされるのか、この二点をまず先に伺いたい。
  155. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 建設大臣が御答弁したことにつきまして、私、直接には聞いておらないわけでありますが、あとからまたよく伺いたいと思いますけれども、どこの省が中心になってやったのかということの具体的な、事務的な折衝は、各省の事務次官段階でいろいろ協議をして、その次官会議にかけられてきまったことを閣議にきょうはかって、正式には本日の閣議で制限令の改正、省令の改正が決定した、こういうことであろうかと思いますが、これは車両等に関するこの制限の省令でございますから、建設省が中心になって、そして関係する役所と申しますと、外務省もあればあるいは防衛庁もあるということではないか、こういうふうに私は考えるのでございます。  なぜこういうことになったかといういきさつにつきましては、まあ御承知のとおりことしの八月の初めごろから、米軍戦車輸送の問題をめぐって、相模原市及び横浜市、道路管理者である市長さんとか、あるいは関係の団体、あるいはまあ党の方々もいろいろ憂慮なさって、何とかこれ円満に解決をしたらどうかというようなこと等もあったことは御承知のとおりでございます。したがって、私どももこの問題につきましては、まあ重大なこれは問題でありますから、今日までいろんな方面の方々ともお話をいたしましたし、社会党の方あるいは組合の方々あるいは民社党の方々、公明党の方々あるいは共産党の方々もいろんな意味で、私のところにも来られました。そのつどいろんな話を申してまいりましたが、それぞれ立場が違うとは申しましても、あんまり市民の間に好ましからざる事態が起こったりすることはよくない、こういうことでは意見の一致を見ておりましたが、政府立場から申しますと、政府として果たさなければならない責任というものがあると、こういうことで、対立した形でも話し合いは続けてまいっておりましたことは御承知のとおりであります。  と同時に、また昨年度の建設省におかれまして道路関係の車両制限令等の改正をやられて、本年の四月一日からこれが施行されておったわけでございますが、その以後この国内法——道路交通法の関係から考えてみましても、今度の省令の改正をいたしました直後、緊急なものに限るという制限を規定をいたしたわけでございますけれども、ここに一つの国内の輸送関係の車をとってみましても、いろんな穴があった、穴があったことは事実であります。と申しますのは、私道は別といたしまして、一般の県道とか町村道にいたしましても非常に狭い道がある。この狭い道を、死者の運搬車であるとか、郵便物の車であるとか、あるいはバキューム車であるとか、こういう車が無許可のままに動いているというような事態もあったわけであります。また消防車とか、自衛隊の教育訓練用の車とか、あるいは警察の訓練用の車とかいうようなものも、それは緊急なものに限ると規定されますというと、一体これが緊急であるのかどうか、こういうような問題もあったわけでございますし、またこういう車が非常に狭い道を自由に走っておると、こういうこともあったわけでございまして、こういう穴を埋めなきゃならぬということも当然私ども考えてまいりました。  もう一つは、具体的にはいま米軍の戦車輸送の問題が現実に起こっておったわけであります。この問題につきましても、いろんな立場から議論がなされたことは先ほど申し上げたとおりでございますが、政府といたしましては、安保条約に関連する地位協定についての政府が果たさなければならない責任、義務というものが明確になされておるわけであります。この責任を一体どう果たすのか。現実に戦車がいま日本の国内に来ている、これを国外に持っていく、あるいはベトナムに持っていくのはけしからぬ、いろんな議論がありましたけれども、そういう事態がある。この事態を解決しなくちゃならぬということで、いろんな問題が起こってきたわけでありますが、政府立場から申しますというと、安保条約地位協定に明記された政府の責任というものを一体どう果たすのか。私は、この戦車問題の輸送につきましては、しばしば申し上げておりますとおり、外務省を通じて米国当局にも、軍の当局にも、相模原の修理部門の縮小、停止をやるべきである、あるいはまた戦車がベトナム等に行くことはぜひひとつやめていただきたいということをしばしば申し入れておりましたが、その申し入れに対しましても何ら実証がないじゃないかという苦情や抗議や文句をずいぶん聞かされてまいりました。このことを聞くためにも、私は外務省を通じて、あるいは次官を呼んだりあるいは外務大臣に直接話をして、いろんな抗議にひとしいようなことを申しますというと、日本の政府安保条約上、地位協定上つくられた責任を果たしていないじゃないか、なぜ果たさないんだ、こういう政府に対する、果たすべき義務というものを果たしておらないじゃないかということをしばしば私も聞かされました。そこで、やはりこういう問題は、私ば政府の責任においてもう少し明確にすることはできないものかということが私の真意でもありましたし、そういうこともあわせて考えますと、今回いろんな事態を予測して抗議を申し込まれたり、国民から悪い感じを持たれたりすることはあろうとも、この際、やはりこのままに事態をしておいても、いつまでたってもこの問題は解決しない。  ここで私は政府に責任を果たしてもらおうということについて、それじゃ私どもは、今回、いろんな問題があるにしましても、政府安保条約にきめられたこの責任、移送の確保に関するこの責任というものを果たす意味において、この政令の改正もひとつ踏み切る、そしてあわせて国内法の不備であったこういう問題につきましても、ひとつ省令の改正をいたしたいということで、今回踏み切ったわけでございます。そうしないというと、どうも実際のこの直面している戦車あるいは兵員車の移送の問題についてもしょっちゅう議論が絶えないわけでありますから、私は今回はその政令の改正をして、そして日本が、政府が果たすべき責任というものは省令の改正を行なって発表いたしました。ついては、今度私はアメリカ軍に対しても、あるいは外務省を通じても、直接なり何なり、今度は私は米軍に対しましても——責任を果たしておらないじゃないかということは今度明確にいたしました。今度は私は米軍に対しましても、日本の国民政府の言うことも聞いてくれと。ということは、相模補給廠修理の停止、機能の縮小についてもいろいろ話をしておりますから、もう少し具体的に何かあかしを出してくれ、あるいは戦車の修理をしたものについても、これはとやかく日本の政府が言う立場はないと言われても、やっぱり国民感情からして、市民感情からして、それは戦車が現在戦争が行なわれているベトナムに行くことは、国民感情として、やはりいいことではない。わかっておるんですから、わかり切ったことですから、そういうことを今度は私はこういう責任を果たしましたということをたてにとって米軍にもひとつ強く言えると、その根拠をひとつつくってみたいと、つくるべきだと。いつも私どもは文句を言うと、責任を果たしておらないじゃないかと、こういうことですから、今度は省令の改正もいたしまして、ちゃんと根拠を明らかにしまして、その上で今度は米軍に対してこういうことを言いますということを明確にすべきだということを私ども考えまして、いろいろな問題がありましたが、いきさつはいろいろありましたが、申し上げませんが、私どもはそういう心がまえで今回の政令の改正というものに踏み切ったわけでございます。
  156. 鈴木力

    ○鈴木力君 時間がありませんから端的にお伺いいたしますが、私のお伺いしているのは、いまのこの官房長官の踏み切った理由というのは、長官立場からの理由はまずわかりました、賛成はしませんけれども。私が一番先にお伺いしたのは、所管省、所管大臣である建設大臣が、沖繩の道路問題を解決するにはこの政令をやらなければいけなかったんだ、それが自分だけじゃいけないんで、外務省とも相談をしてやった、そういうことを堂々と言っているんです。ここでもそういう答弁です。もちろん安保条約政府の責任ということも言いました。外務省はそれは否定的な立場です。所管省の大臣がそういうことを言う。あるいは交渉の任に当たる外務省は別のことを言う。こういうことでこれほど国民が関心を持っているような政令をとことこ進めるというのは、私は内閣運営の立場からいっても好ましいことじゃないと思う。そういう意味で、こういう事態は一体どうなんだということを伺ったわけです。  それから、時間がありませんから、もう一つ伺いますが、いまの長官の御答弁安保条約の責任ということをよく言われる。これは外務省もたぶん同じ趣旨先ほど答弁いただいたと思うんです。安保条約に基づく地位協定、これは政府の責任を果たすためにはやらなきゃいけない。しかし、私はこういう御答弁をいまいただいて納得できないのは、いままでそれぞれの話し合いを通じておったわけでしょう。建設大臣も望むべくは話し合いで解決をしたかったと、こう言っておる。私は、たとえば長官が飛鳥田横浜市長に十月十四日付で回答書を出されて、そしてその回答書に基づいて横浜市長ときょうお会いになる日程になっておったということも聞いております。そういう途中で、もう話し合いは政府のほうから打ち切りだと、こう出されて、このことは何とはなしに国民に対する——国民感情とさっき言われましたけれども、国民感情を持っている代表に対する挑戦ではないかという感じがしてならない。これは政府立場もあろうと思います。  それからもう一つは、いまの長官の御説明でわからないのは、自衛隊の観閲式ですね。それに参加するようなものも同じく除外をする。これは安保条約政府の責任とは関係がないはずです。いまの長官にはその説明はなかった。しかもこの問題は、美濃部知事との間に、そういう省令は改正しない、そういう話し合いのもとに美濃部知事も観閲式に出席するものについては認可をするという方針を出した、私はそう聞いておる。そうすると、自衛隊はなぜこれに便乗してこれも制限令をはずさなければいけないのか。私はこういう態度をずっと見ますと、一方この省令というのは道路の保全ということが目的になっている。どだい国民の財産です。それを安保条約、これの解釈にはいろいろ疑義がありますけれども、きょうは時間がありませんからやりませんが、そういう名のもとに、米軍に対してはこれはもう法外だ、自衛隊もそれはよろしいのだ——公共の利益というものはどういうものか知りませんけれども。そうして戦車でも何でもが道路をこわしている。そういうものを特に権力的に認めるという政府の姿勢は、どんなことがあってもどうも私はいまの政府が言っておる姿勢とは違う立場だと、こう思うのですね。もう少し話し合いを続ければどうなったかわからない、話し合いの途中、そういう面もあります。したがって、私は一つの面から言えば交渉中に政府がみずから打ち切った、そうしてこれはもう省令を改正していくのだ、自衛隊はそういう何ら問題がなかった、解決したにもかかわらずこれをさらにそれに乗っける、こういう点についてどうしても納得できない。  なおもう一つは、非常に不安があります。たとえば横浜の村雨橋のように、これが自衛隊の訓練用ということまで範囲が拡大されますと、どれだけその通る道筋に——そういう条件の橋があるかもしれないし、欠陥の道路があるかもしれない。建設大臣はこれを修理して通すのだと、こう言うけれども、それを確認する手だてというものは何にも出ていない。こういうすべてに国民に不安をまき散らすようなことをなぜきのう突然やらなければいけなかったのか。これはどうしても私は納得できない。特に一番先に申し上げました沖繩のくだりから、これは建設大臣、おもてから言えないだろうと思います。しかし私は聞いて、アメリカに何か差し上げないと日本の要求が通らない、国道は日本人が通れる道なのに、何かを差し上げないと通れないという気持ちが政府部内にある。これははっきり言われたと思う。私は取引ということばを使いましたけれども、取引でなしに何ものかを差し上げて何とかすがりついているこの姿というものは納得できない。この点についての御所見を端的にお答えいただきたい。もう時間がありません。
  157. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 時間時間と申されますが、私も時間はそうあるわけじゃございません。けれども、しかしいろいろ今日までのいきさつを話をしないとわからないこともありまして、なかなか私の答弁が長いと申されますけれども、まあ申し上げることは申し上げておかないと誤解を招いても困りますから、鈴木さん、ひとつお許しをいただきたいと思いますが、この建設大臣が沖繩との関連においてものを申したということは私は納得しないのです。どういうわけでそんなことを言われたのか。  これはやっぱり、この米軍の戦車問題の解決についてはまあいろいろなところとの協力を、外務省とか防衛庁とか米軍とかあるいは米国の大使館とかというものの協力をうまく得て話し合いをしていかなければならないという背景の問題として、たとえば沖繩にもこういうことがございます、これについては協力を得なければならないのだというその背景を私はいろいろ話をされたのじゃないかと、こういうふうに一応私はいま理解をいたすわけでございまして、この省令、この車両制限令の改正につきましては、沖繩の問題などというのは一言も、きょうもきのうも出ているわけではございません。したがって、私は木村建設大臣はまあどういう感覚で、どういうことでこの問題に関連して沖繩のことを申されたのか私はわかりません。一ぺん私はまた直接会って真意をただしてみたいと思いますし、また速記録も見たいと思います。私はまあこういう問題は非常に深く関係各省とか関係者団体とかいうところとの協力、理解を求めていかなければならぬからということの、その背景にこういう問題があるんだということを説明をされたものだと、私はいま鈴木先生からお話を聞いて、理解をせざるを得ないわけでございます。  それから、美濃部さんとの話の中で、政令などは改正しないんだという話をしたと、こういうことでございますが、その話はいたしておりません。これは明確に申し上げておきます。お帰りになって美濃部さんが何かそういうことを言われたと記者会見の話も聞きましたから、そういうことを私は申しておりませんということを後藤田副長官を通じて返事をさしております。これは明確に申し上げておきます。これはまあ通るところの道路の状況とか、あるいは地下の埋設物とか橋とかいうものを検討して、今度は通っても間違いございません、したがって私は許可いたしますが、来年からはよくひとつ事前に相談をしていただきたい。これは事前に相談をいたします。こういうことで、この自衛隊の車は許可を願ったということでございます。その際の話の中で、政令などは改正することは考えておりませんなどとは一切申しておらなかったことだけをこの委員会におきまして明確にいたしておきたいと思うのでございます。
  158. 鈴木力

    ○鈴木力君 そういたしますと、これだけははっきり言えると思う。所管大臣が言ったことは政府が責任を持てない。そうして政府の責任で今度の政令を閣議できめておる。まさに無責任内閣のかなめが官房長官だということになってくると、私はたいへんだと思います。これは私の感じを申し上げておきます。  それから、あとの美濃部さんとの関係は、言った言わないというよりも、それよりも、この政令を出さなければ自衛隊がどうにもならないという状態はなかったんじゃないかということ。話し合って、すでにもうそのほうは認可をしよう、許可をしようということになっていますから、それを私は、この際もう便乗さしてということになれば、今日の日本の政府防衛問題に対する姿勢がのぞき見されると、こう思う。もう少し国民立場を配慮した自衛隊というものを考えないと、いよいよ日本が軍国主義化ということに、どうしてもそういう、私は無理が通れば道理が引っ込むというその考え方。戦前を思い出した、今度のこのやり方に。こうなってきたらもうたいへんだと、こう思う。そういう意味で私は申し上げた。いずれにいたしましても、そういう経過からしても、わざわざこういう回答書を出しておいて、そしてその話し合いをしようということになっておった。その話し合いの前日に次官会議できめてしまったという、このやり方。どうしても私は政府の責任をとるという考え方は、立場は別として、賛成、反対は別としても、その言い方は一応わかるんですけれども、この抜き打ち的にやったということは明らかに国民に対しての挑戦、こういうふうにしかとれません。したがいまして、私はいま長官の御答弁を伺いまして、もう時間がありませんからこれ以上申し上げませんけれども、納得はどうしてもできない。ますます政府が高姿勢になって、そして安保体制を強化していく。これはあとでほんとうは御質問するつもりでしたけれども、日中共同声明の趣旨ともだいぶ反するような姿勢がもう出てきた。たいへんなことだという印象を持っている、長官の御答弁を伺いまして。  そういうことだけを申しておいて、時間がありませんけれども、簡単にあと防衛庁長官、に伺っておきます。これは、御答弁はもう要りません。——要りませんというか、今度出された四次防でどうしても私はわからぬことがある。時間がありませんから、これをできれば文書にして、資料としてひとつ答弁がわりに出していただきたい。  その第一は、情勢判断のくだりで、「しかしながら、アジア地域においては、米・ソ・中三大国」云々とありますね。その後段に「また、その他の諸国間においても種々の緊張要因が存在している。」と、こうあります。その「その他の諸国間」というのはどの国をさすのかですね。「種々の緊張要因」とあるのは、具体的に言うと何を言っておるのか。これを御説明いただきたい。しいて言えば、これがいまの日本の専守防衛という立場からの防衛計画と、日本と関係のない地域を、その状況を理由にして防衛力を増強するという考え方が私にはわからない。そういう立場でこれを一つお伺いいたします。  それから第二に、「地域的ないし期間的に限定された武力紛争の生起する可能性を否定することはできない。」、これは前と同じでありますけれども、どの地域かということです。  その次に、政府は四次防を決定するにあたりまして、中国の理解を得たと、こう言っておられるんですね。私の考えでは、中国は内政干渉しないという立場で、けっこうでしょうとは言うだろうと思うんです。しかし、GNPを基礎にした一%とか、経済と結びつけた四次防という説明をして理解を得たのかどうかですね。これは中国のどの会談で、どなたがどういう表現で理解をしたという説明をしたのか、これをお伺いいたします。  それからもう一つは、国際情勢のあれにかかわるんでありますけれども、第三次防衛計画をつくったときの国際情勢と第四次防を決定をする今日の情勢とはどう違うのか、それをひとつ文書で御説明をいただきたいと思います。  それからもう一つは、日中共同声明の七項の後段、要するに七項の後段と言いますのは、「両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」、こうはっきりと書いてあります。このところを具体的に言うとどういうことになるのか、御説明をいただきたい。  私の持ち時間がもうありませんので、あとで文書にして御提出をいただくように御配慮いただきたい。以上で終わります。
  159. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 文書で御回答いたします。
  160. 上田哲

    ○上田哲君 官房長官の時間が非常に限定されておりますから、端的にお伺いいたしますので、端的にひとつお答えをいただきたいと思います。  今回の車両制限令の改定についての政府の態度ですね、これは根底には安保条約に対する考え方というものが当然にありましょうけれども、もう一つ、橋がこわされてはならない、市民生活が脅かされてはならないとする市民生活あるいは市民感情というものが、こういう強行の措置によって大きく踏みにじられたということがあると思うんです。霊柩車までを例外規定に入れながらも、こういう突如とした措置というものを、一体政府の責任者として、官房長官、よかったとお考えになるかどうか。
  161. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 私もきょうは各党の責任者、あるいは組合の方々、あるいは飛鳥田市長、ずうっといままでお会いいたしまして、いろんな抗議を受けたり、態度を究明されました。私も何もかもこういうことをやってよかったと思っておりません。しかし、先ほどから申し上げまするとおり、安保条約を日本の政府が今日守らなければならない立場にあることは御承知のとおりでありまして、将来についてどうとかこうとかいうことは別にいたしまして、現実に安保条約の義務を果たす責任は政府が負わされているわけでございます。そういう意味から申しますと、いま戦車が来て、戦車を輸送する、その輸送路の確保というものは日本の政府において当然なすべきである、そういう主張が一方にあるわけであります。一方にはまた、いま上田さんがおっしゃったとおり、市民感情もあります。先ほど申し上げたとおりのこともございますように、今日、私は今日まで相模原の市長とか、あるいは横浜の飛鳥田市長さん、あるいは社会党、民社党の各党の幹部の方方ともいろいろ話をしてまいりました。それは、この国内法を確かに尊重すべきだと、そして道路をこわしたり、あるいはガス管をこわしたり、橋梁をこわしたりして市民生活に不安を与えることば極力避けていただきたいということで、いろんな話をしてまいりましたが、結局その話をして、一時は兵員輸送車も許可していただきました。相模原の市長のほうは六カ月間一括でございますから、二月までの申請をそのまま許可をしていただきました。最初はそういう話で両市長とも話をしておったのでございますが、裏の話はいろいろ申し上げませんが、いろいろなことがありまして、それで横浜市長のほうは一時許可をしていただきました。許可をしていただきましたが、九月までだ、十月以降はまたそのつどそのつど相談をしてやるのだ、こういうことでございました。  それで、そういうことになりますと、私どもは、先ほどから申し上げておりまするように、アメリカのほうに対しましては、ちゃんと二月までのやつは許可はいただきます、責任を果たします、そのかわり相模原の兵器修理場も縮小してもらいたいのだ、機能も停止してもらいたいのだ、できることなら、私は誠心誠意いろいろな話をしております。戦車もベトナムに送らないでくれという話を繰り返しいたしておるのでありますが、そういうようなことなどをいたして、話を重ねてきても、なおかつ横浜市の場合は許可をしていただけない。しかも八月から——もう九月はなったが、十月になっても許可するのかしないのか、いつまでたてば許可されるのかわからない、こういうことではどうにもなりませんから、この際、私どもがきょう発表したような省令の改正をいたさざるを得なかった。話し合いは話し合いで十分いたしてまいりましたし、きょうもまた市長さんとも、立場は違いますが、いろいろな話をしてまいりました。ですから、そういう話し合いをするという基本的な考え方はこれはもう変わっておりませんし、またきょう出しましたこの省令の改正の中身を見ましても、これを改正したからといって、むちゃくちゃに米軍の車はどこでも走っていいというようなことはいたしておりません。そのことはもう時間もございませんから申し上げませんけれども、あと質問があれば申し上げたいと思います。
  162. 上田哲

    ○上田哲君 いいことではなかったという御意見でありますから、そこのところから意見をまた発表させていただくが、どうしてもわからぬのは、そういうことを、まあ地元との話し合いができないからということを理由におあげになるけれども、先ほど建設大臣は、すべきではなかったけれども見切り発車をしたんだと、こういうことであります。私は、いまの官房長官の御答弁からも、ひとつどうしても受け取っておきたいのは、しからばなぜいまこんなに突如として——もうわれわれは幾つかのお約束があった、絶対にこういう政令の改正などは行なわないというお約束があったと了解をしているわけですが、これは水かけ論になるかもしれないが、いずれにしても、なぜいまこんな突如としてやらなければならなかったか。この背景には、根本的な、先ほどの御答弁の中にもあったようにうかがうのだが、アメリカ側からのやいのやいのというような督促があった。これが大きな圧力となったのだ、こういうことを理解してよろしいですか。
  163. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあアメリカ側がやれのやれのといって、日本政府に対して文句を言ってきたから、これを踏み切ったんだということがすべてでありません。それはアメリカ側としては、私どもがいろいろな文句を言うというと、責任を果たしておらぬじゃないか。責任を果たしなさいよと、それを、責任を果たしてからものを言えというようなかっこうなんですよ。だから私も、今度、責任を果たしますよ、そのかわりと、こういうことを申し上げたんです。だから、アメリカ側がそう言ったからということがすべてでありませんけれども、やっぱし十月になっても、いつ許可になるのか。それまでの間にいろいろな話は続けてきておりましたけれども、突如としてやったと、まあ見切り発車をして、相手がどうあろうと知ったこっちゃないということでこんなことをやったんじゃありません。話し合いはいろいろ続けてまいりましたが、やっぱりもう十月も過ぎて、きょうとなってからも依然として一向返事もくださらない、返事をするとか言いながら、一向にしてくださらないということもありまして、政府立場としては、やっぱりもう明確にすることはしなくちゃならぬ。時期をしばらく待てばとか、一カ月待てばということじゃなくて、もうここまでくればやっぱしいろいろなことを考慮して、考えて検討した結果、まあこういうことに踏み切らざるを得なかったんだ。踏み切ったあとはどうか。御承知のような私どもは事態というものは必ずありそうだと、こういうふうに考えておったわけであります。
  164. 上田哲

    ○上田哲君 御答弁の中で、アメリカ側からの要請もきつかったということは大体推量されました。まあそれとしても、やはり御答弁をたどっていきますと、一定のタイム・リミットがあったということをどうしても推量せざるを得ない。このタイム・リミットは、具体的にはインガソルアメリカ大使のいろいろな要請もあったでありましょう。しかし基本的にはホノルル会談で、日米安保条約の有効な実施に合意をしようということになった。もっと具体的に言えば、いま日中会談のあとを受けて、大平外務大臣がアメリカに行っている、こういう時期に符節を合わせるようにこの問題を明らかにしなければならなかった政府の政治姿勢というものがあるのではないか。いかがですか。
  165. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) いやそう詰めて——そんなことでこうなったんじゃないかとおっしゃいますけれども、ホノルル会談でこうなったから、大平外務大臣がちょうどアメリカへ行っておったから、そのタイミングを見計らってやったんじゃないかという御指摘でございますが、そういうことではございません。きのうきょうすぐ検討してこういうことをやったということじゃございませんから、これはもうずいぶん前からそういうことをやろうという話も持ち上がっておりましたから、これはもうしばらく待て、もう少し検討せいということでやってまいっておりまして、きのうこういうことになったということでございます。
  166. 上田哲

    ○上田哲君 具体的な問題をしっかり御答弁をいただくことはできぬでありましょうが、今日までの傾向を考えてみれば、やはり一定のタイム・リミットはお認めにならざるを得ない。そのタイム・リミットの中でどうしてもこういう政治姿勢を、半分いやいやでも出さなければならなかった、こういうことがあるだろうと思うんです。  まあ私どもはいま非常に奇異に感ずることは、安保条約と国内法規との上下の問題というようなこともわれわれ国民感情からは問題はありますけれども、少なくとも新内閣が発足をされて、官房長官自身も総理とともに北京に行かれて、日中正常化ということをサインをして帰られた。日中正常化ということは私たちにとっては冷戦構造が変わっていくという大きなきざしだとして受け取るものでありますし、その意味ではその分だけ、いわば軍事同盟の一つである日米安保体制というものに柔軟な変化というものが出てき得るであろう、こういう期待を持っていたわけでありますが、今日こういうふうに国内法規の上に優先して安保体制ということががっしり乗ってきた。政府は政令の改定ということでこの方針を明らかにされたということを考えますと、やはり日中国交正常化というものは日米安保体制ということに大きな基本的な変化をもたらさないのであるということを意思表示をされたものと考えてもよろしいですか。
  167. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 安保条約との関係を云云されておりますが、私は日米の協調の基本というものは日米安保体制にある。これは政府もしばしば言っておりますし、またハワイ会談でも確認されたことでもあります。また、日米安保条約というものは中国を対象にしてつくられたものでもありません。したがって、日本と中国が平和友好、国交正常化に踏み切ったということだけで、安保条約そのものが意味を失うというものでもないと私は理解をしております。そういう日本と中国との正常化、国交正常化が実現されてきたから、安保条約というものはもう自然に眠ってしまうか、なくなるか、効力を失うか、そういう方向で政府も考えるべきじゃないか、そういうところそにういう車両制限令を改正した、なお強化したと、こういう議論でございますが、その議論には私は必ずしも賛成しがたいものでございます。
  168. 上田哲

    ○上田哲君 大平外務大臣のアメリカ当局者との話し合いの中に、この車両制限令の改定ということが入りますか。
  169. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 私はこの車両制限令の話はいたしておりません。大平外務大臣が空港に行って、私が大平外務大臣に申し上げたのは、いまの相模原の兵器補給廠の縮小とか、機能停止とか、あるいはベトナムに戦車が送られるということについては、従来から私も、政府立場、政治的な立場からいろいろ申し入れておるのでありますが、そのあかしが一つもないじゃないかと、しばしば飛鳥田市長からも私に伝言がありましたから、そういうことで私はあのことを申し上げて、ことに今度は強調してくださいということを申し上げたのであります。今度は政令をやりますから、改正をしますからという話は一言も申し上げておりません。
  170. 上田哲

    ○上田哲君 根本的に、ホノルル会談、日米会談の合意の中に、今回の政令改定の中にも含まれているように自衛隊の車両までが含まれているということは、日米の安保体制上の合意の基本に四次防の強化ということがあって、その四次防の強化に伴う日米軍事体制というところの中では、この車両問題というのは、政府の姿勢としてどうしてもアメリカ側に明らかにしなければならなかった、そういうふうに理解せざるを得ないわけでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  171. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) それらの立場もありますし、市長の意見もございますから、私もそれは意見として承っておきますが、私どもの考え方は必ずしもそうではございません。
  172. 上田哲

    ○上田哲君 今回の政府の打ち出された車両制限令の趣旨というものは、基本的に日本の向かうべき方向に背馳するものでありますし、また市民感情、あるいは国内法規の尊重という立場から、大綱を誤るものでありますから、この撤回を大きく要求をいたしますし、また少なくともこれを強行される限りにおいても、村雨橋なり千鳥橋なりというところの明らかに重量制限を越える車両の通行に関しては、具体的に、日本政府の責任において、不測の事態が起きないようにされることを強く要望いたしますが、水口委員から一言ありますから……。
  173. 水口宏三

    ○水口宏三君 関連。  一言官房長官に御質問をいたしますけれども、長官先ほどから安保条約上の義務を履行するということをアメリカから迫られていること、したがって一応それを解決した上でアメリカにものを言うのだというふうなことですが、ところが私は、地位協定というのは実際上安保条約そのものではないのであって、これはむしろ政府の責任でつくって、国会で十分審議してつくられたものではないわけです。しかもこの前の外務省の統一見解によりますと、これは政府統一見解かどうか知りませんけれども、アメリカ国籍のものであるならば、それがどこへ向けられるものであっても、相模原の補給廠でこれを修理し、さらにこれを運搬できるのだという外務省の見解が実は文書で出ているわけであります。で、これと、それから地位協定五条二項の基地から基地へ通行するというこの問題をそのまま結びつけて、今度車両制限令がいわばアメリカの言うとおりにされたということ。こうなればアメリカは、どこへ持っていくものであろうと、アメリカの所有物であるならば、相模原でかってにこれを修理し補給し、そしてどこへでも自由に持っていけるのだということになるのじゃないかと思うのです。そうなると、これは安保条約そのものというよりは、地位協定そのものにむしろ欠陥があるのじゃないか。  と申しますことは、これは私は読んでみますけれども、西ドイツ駐留のNATO軍の地位に関する協定の中で、ちょうどこれに近似したものがあるのです。「本協定に別段の定めある場合を除いては、ドイツの交通規則は、軍隊、軍属並びにその家族にも適用されるものとする。」ドイツの道路交通制限規則である「道路交通規制規則からの逸脱は、軍事上の緊急の場合にのみ公共の安全と秩序に充分な考慮を払うことを条件として軍隊に許可されるものとする。」(b)として、「ドイツの交通規則上の制限を超える寸法、軸重、総重量、数の車輌およびトレーラーによる軍事上の交通用道路網の指定および使用に関しては、軍当局とドイツの当局の間で合意が結ばれなければならない。合意された道路網外でのこのような車輌およびトレーラーによる道路使用は、事故、災害、緊急事態の場合のみ、または両当局による合意によってのみ許可されるものとする。」こういう地位協定を補足する協定があるわけです。  しかし日本の地位協定というものは全くの無制限、いまのように車両制限を撤廃したら。国内法によってかろうじていままでは押えていたわけです。その国内法を撤廃しちゃうのだから、この地位協定というのは全く無制限にアメリカ側に許すことになる。ところがドイツの場合には地位協定の中で制限している。官房長官がもし安保条約の義務義務とおっしゃるならば、安保条約そのものをほんとうに円滑に運用するとおっしゃるのも、アメリカのために運用するのじゃなくて、あくまでも日本の安全のために運用するのであるならば、地位協定を当然変えるべきじゃないか。それを地位協定はそのままにしておいて国内法だけを撤廃するというのは、こんな話は独立国日本として全くみっともない話であります。西独の地位協定を見たって、おかしいのです。そういう意味で、国内法に手をつけるのではなしに、地位協定そのものを改変してむしろ国内法がそのまま適用できるような状況をつくるべきだと思いますが、長官どうですか。
  174. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 私は地位協定安保条約との関係はあまりよくまだ勉強しておりませんから、率直に申し上げますが、外務省のほうから御答弁をしていただきたいと思います。まあおっしゃるとおりのことを御意見として承って、私もまた勉強してみたいと思っておりますが……。
  175. 水口宏三

    ○水口宏三君 改正する気持ちはあるのですか。
  176. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) いやいや、私はよく勉強しておりませんから、いまここで私は、あまりよく知らぬのに、そうしますとか、こうしますとか言うわけにもまいりませんから、よく御説は承って、なるほどなあと思いながら聞いておるだけでございますが、ただ私は、先ほどから繰り返して申し上げますが、なぜこの輸送の確保をしないのだ、これは義務じゃないかと、こういうたてまえを安保条約——といえばまたおしかりを受けるかもしれませんが、そういうたてまえなんですよ、国としては。相手もそういうことを言います。だから今度は——私は従来から申し上げておりますとおりに、ベトナムに日本の修理した戦車が行くということは国民感情からいっても好ましいことじゃないじゃないか。だから基地の縮小、修理場の縮小なんというのは早くやりなさいと、こう言っておる。いろんなこちらから言っておっても何らあかしがない、私も実際は少しぐらいあかしをたててくれてもいいなと率直に私は政治家として思っておるんです。今度はこういうものをひとつちゃんと明確に出しましたよと、ちゃんと送れるようにしましたよと、それならこっちの言い分ももう少し聞いたらどうですかと、こういうことも、まあ事務的にはいろんな問題があっても、それは役所に言うと、そういうことを言っちゃけしからぬとか困りますと言うかもわかりませんが、少なくとも政治家としてはそのくらいのことは私は言うだけのものをつくっておく、責任を果たしておいてものを言う、こういう態度が私はこの際も必要だ、だから国民のためにも私はそういうことを言うことが正しいんだと、こういう考え方でございます。
  177. 水口宏三

    ○水口宏三君 もう外務省の答弁、けっこうですから。  いずれにしても、この問題はいずれ外務大臣お帰りになってから、官房長官と外務大臣を含めて、ひとつ地位協定の問題との関連で再質問をいたしたいと思いますので、保留いたしておきます。
  178. 上田哲

    ○上田哲君 時間がありませんので一問だけにいたしますが、問題を変えます。官房長官の御出席がめったにありませんので、御見解を承っておきます。  問題は凍結解除の問題です。三月三十一日の予算委員会で、私は佐藤総理、竹下官房長官とこういう質疑をいたしております。要点だけさっと読みますが、二月二十五日の衆議院議長あっせんというものはやがて解除ということが問題になるであろう。私どもの理解では、衆議院議長の凍結解除というものは、衆議院議長一人の判断というようなものではなくて、当然議運の一致した決定ということになろうかと思う、少なくとも二院制のたてまえからするならば、衆参両院に提案されている四十七年度政府予算案は政府の手によって修正の手続ないし解除のあり方というものになれば、衆議院議長の凍結解除だけということでは足りない、少なくとも参議院の議運なり、また参議院議長の了承というものを、同質、同量にとるべきであると考えるがどうか。総理大臣は、御指摘のとおりでありますと答えているわけです。参議院議長の了承を得られなければ衆議院議長の凍結をもっては足りないということですねと念を押したところが、そのとおりでありますと答えられております。そこで、具体的にはどのような手続で参議院議長の了承をとられるのかと、こういう質問をいたしましたところが、総理大臣は、官房長官をして、参議院議長のもとに、衆議院における段階の取り扱いの状態をお話をしまして御了承を求めることにいたしたい、こういうふうに言われております。少し飛ばしますが、質問が、少なくとも、衆議院での決定というものは参議院議長を拘束しませんねと質問いたしましたところが、そのとおりでございます、これは両院制度そのものが独立した立場でございますから、いわゆる衆議院が参議院を拘束するなどということは絶対にございません、こういうふうに答えられております。また官房長官は、その具体的な方法につきまして、衆議院の議運においての手続がきまりましたら、それを参考にさせていただいて、参議院の議運でその手続について御検討を賜わり、それに従っていくと考えております。最後に、凍結解除というのは参議院議長が了承を与えなければならないということですね、単なる報告をもって足りるということではありませんね、これに対して官房長官は、そのとおりの趣旨であります、こういうふうに答えられております。つまり前内閣の総理、官房長官は、凍結解除については明らかに参議院議長が同質、同量の了承を与えなければ解除できないということを認めておられるわけでありまして、この経過を踏まえて、今日、衆議院段階で解除決定ということにされておるようでありますけれども、政府としての御見解をきちっとお伺いいたしたいと思います。
  179. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) この四次防の問題に関連する凍結の問題は、私は当時予算委員会にも関係しておりまして、頭の痛い文民統制であるとかこの問題はもう聞かされておりますので、私も今度は内閣の官房長官という肩書きをいただきましたので、この問題については慎重の上にも慎重を期してやらなければならぬと、また再びあんなことをやられたらたいへんだと思って、私は非常に念には念を入れてやったつもりでございます。したがって手続は十分踏みまして、国防に関する閣僚懇談会から、正式の国防会議を開いて、それでそのきまったものを閣議で決定をして、そしてその決定したものをば衆議院の議長に一応報告をするということになっておりまして、衆議院の議長のところに、かくかくのものを文書をもちまして政府において決定をいたしましたということを御通告申し上げますということを私が申し上げたのであります。そのあとは、議長と各党の国会対策委員長会談等が開かれて、議長あっせんに持ち込まれて、議長あっせんの段階で、議運の話とか、いろんなことがございましたので、一応私の政府立場としては議長に御報告を申し上げる。そのあとの処置については、議長と国会内の国対関係とか、議運の関係において処置をしていただくものだ。それを受けて私どもにまた議会のほうから、議長のほうから御指名が、御指示があれば、いかようなことでもいたしますというたてまえをとって、一応私は、政府がきめたものを議長のところに御提出を申し上げて、報告を申し上げたのであります。私はそれだけではいかがかと思いましたので、さらに翌日でありましたか、翌々日でありましたか、さらにまた参議院の議長のところにも同じものを持っていって、参議院の議長にもお会いいたしまして、そしてこういうものを政府が決定をいたしましたと御報告を申し上げたのであります。それ以上のことは申し上げておりません。そのあとの処置については、衆議院の議長、あるいは参議院の議長においてしかるべく御処置をくださるものと考えて、ただきまったものを書類にして、それを持って御報告を申し上げたということでございます。
  180. 上田哲

    ○上田哲君 時間がないので残念ですが、いまの御答弁によりますと、大事なこと建前内閣で国会で御答弁になったことはそのとおり踏襲されるということでよろしいですね。
  181. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 前内閣のときに、佐藤総理及び竹下官房長官でございますが、そのときに予算委員会においてあなたに対して答弁をされたことはそれとして承って、今回の処置については、議長に私が、こういうものがきまりましたと、決定いたしましたということを申し上げて、両院の議長のほうからしかるべく御指示をいただければそれに従いますということだけを明確にいたしておきたいと思います。そういうことで申し上げたわけでございます。
  182. 上田哲

    ○上田哲君 ですからね、つまり認められたわけですね、前内閣のあり方というものを。羊国会で、十分に行政府と立法府の間で承認をしたあり方というもの、これを御踏襲になっておられるわけですね。それで参議院議長にも御連絡になった。ここで明らかにしていることは、単にさっき国防会議とおっしゃったけれども、国防会議というのは政府部内の、行政部内の手続ですから、院と行政府との関係というものを全然拘束をしない。そういうことで言うと、院と行政府との話し合いできまっていることは、明らかに答弁されていることは、参議院議長への報告と了承がなければだめだということになっていて、そのことを踏襲されて、参議院議長にも御連絡になった。しかし参議院議長から完全にそういう回答があって、了承ということが出ていなければ、これは議運を通ってということも書いてありますから、時間がないから省きますが、そういう所定の手続をとって参議院議長からはっきりした決定が出てこなければ、これは今日無効でありますね。
  183. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 私は無効であるとか有効であるとかいう議論はいまこの段階でできないと思っております。私は衆議院議長のところに持っていって、衆議院の議長に報告をいたしました。その翌日でありますか、その日でありますか、よく記憶しておりませんが、議長から、私は受け取りました、そうして確認をいたしましたという返事を承ったわけでございます。確認行為によってその凍結は解除されるのだ、こういうふうに、議長の見解はそうであると思いますが、その問題につきましては、さらにこれは衆議院の各党の国対とか議運の関係もございますから、政府がとやかくそれについて意見を言うべきじゃないという立場をとっております。また参議院におきましても、国会の予算委員会で佐藤総理、竹下官房長官との間にいまおっしゃったようなことが取りかわされたということでありましても、これは四次防がきまっていない前の段階でもありますし、また凍結そのものに関することでもあります。今度は四次防という新しい計画の内容を決定したものを私は両院の議長のところに通告する、衆議院の議長からこれによって確認をいたしましたという御返事をいただきましたので、それ以上私どもはとやかく行政府立場から立法府に対して、あるいは立法府の立場から行政府に対していろいろなことを言われることは、どうも介入になるおそれがございますので、それ以上のことは、私は、ここで佐藤総理との話を確認したのだなとおっしゃっても、それはいま新しいものを決定した、それを両院議長に報告したということだけにしておきたいと思います。
  184. 上田哲

    ○上田哲君 これだけにします。  そうしますと、当然前内閣が行政府と立法府で取りかわした約束というのは、これは生きていなければならないことですから、そのことは議論いたしません。それはおいておきます。  問題は、ここで所定の手続として確定をされているとおりにはまだ事態は完全に進んでいないということだけは明らかであります。それはいいですね。きょうはそれだけにしておきます。
  185. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 私は、その参議院の予算委員会において取りかわされたことは、参議院の議会全体が議長のほうにおいてどういうふうにこれは確認されておるのか、それは議長のほうからおっしゃっていただかなければわからないことではないかと、かように私は理解をいたしております。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどから官房長官答弁を聞いておりまして、今回の車両制限令の改正に踏み切った理由ですけれどもね、結局、官房長官の話を聞いておりますと、日米合同委員会あるいは米側といろいろと交渉をするにあたって、要するに日本側は安保条約に基づいた地位協定の約束を果たしていないじゃないかと、こういうぐあいに言われる。だからそういうぐあいに責任を果たしてないではないかと、こういうぐあいに言われるとどうしようもない。したがって、今回はこの車両制限令のこれも撤廃したのだし、改正に踏み切ったんだし、今度は、これからはたとえば相模原の基地の縮小や廃止あるいはそのほかの問題についても官房長官はどんどん発言をする。言いたいことを、われわれとしてはこういうふうにやったんだから、官房長官としてはこれからも向こう側に対してはどんどん言うと、こういうふうな意味のことを、先ほど答弁からずっと聞いておりまして、結局そういうことだと思うのです。これは合ってますか。
  187. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) それだけじゃない。先ほど国内法のたてまえからいっても、いろいろな穴があいておって、その穴を埋めなきゃいかぬ。制限令の改正を昨年いたしまして四月一日から施行されておる、このことを見ましても、どうも不備な点が多い。これについてもやはり今度はひとつ不備を埋めなきゃならぬということもありましたし、もう一つは、戦車問題が当面の大きな問題でありまして、いざこざが起こっておるのでございますから、それに対して私どもも何とか円満に解決をしていただく方法はないかということで、両市長とも話をし、各党の代表の方々とも知恵を借りて、いろいろなことをやって何とかかんとか努力をいたしてまいりましたが、相模原のほうは二月までの申請は一括して許可していただきましたが、どうも横浜市の場合は、十月になっても、いつおやりになるか、許可されるかどうか、なかなか確たる返事もない。一方からいいますと、私は先ほどから話を申し上げておりますとおり、戦車の輸送につきましても、あるいは修理場の縮小の問題につきましても、私は私の立場において、外務省を通じていろいろな意見を申し上げておるわけでございます。  そうしますというと、やっぱりそこの日本政府として、責任を果たすものはちゃんと果たしなさい——それは私のほうは政府立場ですから、全くそう言われると、そのとおりだと言わざるを得ない。そこで、それは明確にいたしましょう、そのかわり今度は私どもの言い分ももっと真剣に取り上げてあかしをあげていただくように処置をしていただきたいと、こう言うことは、私は国民立場からいっても——どうもこのままじたばた事が運んでいって、そうして常に紛争があるよりも、政府がとにかく申し出て責任をもって事態を明確に解決します、それで今度はアメリカの戦車が自由に動くようになっても——そのためには日米合同委員会の中に特別分科会をつくって、その中に政府当局も、事務レベルで出るか大臣が出るかは別としまして、出て、そうして日本の言い分ももっと政府立場において明確にものを言って、処置するものはしていただいたほうがいいのじゃないか、これが日本の国民のためにもいいんじゃないかという立場でございまして、アメリカのほうから文句を言われたからそれだけでやったということじゃございません。こちらも言い分があるから言わしてもらいますと、こういうたてまえも率直に申し上げてあって、そういうことに踏み切ったということでございます。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、官房長官いろいろ話をされておりますが、結局は、アメリカ側に言われているんじゃないとおっしゃっていますが、しかしながら、官房長官がいまおっしゃっていることを明快に分析してみますと、結局アメリカ側にばんばん言いたいが、日本政府側として、日本政府の責任を果たしていないじゃないかと言われると、どうしようもない。だから、これはどうしてもやらざるを得なかったのだというのが私は官房長官答弁の少なくとも九割九分を占めていると思うんですよ。どうなんですか。やはり国内法の云々ということを多少はおっしゃっていますが、多少はあるでしょう。国内のいろいろな整備しなくちゃいけない問題もあるでしょうけれども、しかしながら、私は長官答弁を聞いておりまして、決してそうじゃないと思うんです。いま長官答弁の中で出てまいりました横浜の問題、相模原の問題、こういうような問題がなかなか解決しない。解決しないということは、解決しないから米側に対してものを言えない。だから踏み切らざるを得なかった、こういうことですよ、結局は。どうですか。
  189. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 先ほどから申し上げておるとおり、この戦車の輸送問題というものは非常に大きな問題でございますから、それが大きな問題になって、今日までいろいろな議論をかもし、また交渉を行ない、国会でもいろいろ質問もされた問題でございますから、これは皆さんのほうから言われますると、このことがあったから踏み切ったんだろう、そのことに対して一応アメリカから言われたからこうなったんだろう、こういうことでございましょうが、私は、戦車がたまたま具体的な現実の問題として起こってきておって、この解決に苦慮しておる政府立場もありますし、また市民のほうからもいろいろ問題を提起されておったから、こういうものが大きくクローズアップされてきたということは、これは事実だろうと思います。しかし、それでなくても、どうも純法律的な考え方から言っても、どうも穴のあいているものを埋めることは、政府法律を整備するたてまえからいっても当然のことだというふうにも、ひとつ受け取っていただきたいと思うのであります。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結局は、これは大臣がどういうぐあいにおっしゃろうとも、大臣がいろいろと答弁されていることを総合して考えてみますと、結局は国内法を安保条約あるいは地位協定に従属させている、そういうぐあいにとらざるを得ないと思うんです、私は。そういうぐあいにわれわれとしてはとらざるを得ないし、また結局はこの国内法を優先するか、あるいは安保条約地位協定を優先するか、こういう議論にも私はなってくると思うんです。結局は安保条約、あるいは地位協定を優先させるために、国内法を改正せざるを得なかった、こういうぐあいになってくると私は思うんですが、大臣は専門家じゃないと私は思うんですけれども、しかしながら、それでも安保条約の三条、あるいは五条ですか、中にちゃんと、これは少なくとも日本の憲法が優先する、憲法に基づいて、憲法規定に従うことを条件として安保条約がある、これは三条ですね。それから五条でも、自国の憲法上の規定及び手続に従ってというような表現をしておるわけですね。そのほか地位協定の中にも、やはり国内法というのが優先するということは私は当然だと思うんです。その国内法に準じてやはり安保条約の運用というものを考えていかなくちゃいけないんじゃないか、こう思うんですが、大臣どうですか。
  191. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 国内法を尊重していくというたてまえは当然だと思います。しかし、一方においては、先ほどから申し上げまするように、条約上の義務というものがありますから、だからその義務を果すとすれば、国内法の不備な点があって、しかも、それをもとにして許可がされないというようなことではどうにもなりませんから、両方ひとつ相まって知恵を出して、そうしてこういう改正をする。あなた方のほうから申されますと、むちゃじゃないかと言われますが、私のほうから申しますというと、それと違った立場で今回の改正を行なった、こういうことでございます。
  192. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、いまちょうど官房長官おっしゃったとおり、要するに条約上のその役目を果すために結局車両制限令を改正をした、そういうことだという、大臣、ことばの中に出てまいりました。結局そういうことです。そのことをわれわれ言っておるわけですよ。結局、この地位協定あるいは安保条約の約束を果すために国内法を整備する、結局このことは、大臣、ほんとうに私は重要なことだと思うんです。なぜかならば、先ほども西ドイツの例をあげて話がございましたけれども、西ドイツの国内法なんか見てみますと、全然日本の国内法と違うわけです。日本の国内法は非常にそういう点では、要するに地位協定の中で全部で十数件にわたって特例法を設けて、結局は安保条約あるいは地位協定の中でうたった日本側の権利ですね、国内法——国内法を十六条で確かに順守するとは言いながら、片一方では特例を全部つくっちゃって、結局空洞化している、こういう現象があるわけです。その中でたった一つだけ空洞化されていないこの車両制限令というのがあったわけです、いままでね。少なくとも私はこの車両制限令、これを改正しないでこのままで何とか運用できる方法というのはやっぱり考えられなかったのか、私はそう思うのですが、ここら辺のところはどうなんですか、大臣。
  193. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあそれでいろいろ苦心惨たんし、苦慮して交渉を何日も何べんも続けたわけなんですよ。そのために皆さま方の党の代表の方々、組合の代表の方々ともお会いしまして何とか話を進めてまいりました。何もかもこれを言うわけにまいりませんから申し上げませんが、何とかなろうなろうということでやってまいったことも事実でございますから、まああんまり一方的に私どものほうばかり責めないで、そのこともひとつ了承していただきたいと思います。私も努力はずいぶんいたしてまいりましたけれども、それがうまくいかなかったから、まあ結局悪口を言われてもいたしかたがないということで今回の改正を行なったわけでございます。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官が努力をされていないと私は言いませんよ。やっぱり努力はいろいろされてきたと思うのです。しかしながら、官房長官はやっぱり政府の中心にいらっしゃって、これは、大臣、御存じですか、この問題が起きましてから、あなた方の内閣の各大臣はいままで各委員会でもう何回にもわたって発言をしているんです。要するに、これはたとえば具体的に申し上げますと、八月の八日に衆議院の内閣委員会で、大平外務大臣は、米国に国内法を守らせる、この問題に関連して、それで、特例法はつくらない、こういうふうに言明しております。それから八月の十日には参議院の地方行政委員会で、やはり建設省当局事務当局ですが、やはり同じような発言をしている。八月二十二日参議院外務委員会で、大平外務大臣が、法律上例外規定を設けるつもりはない、国内法の規定に触れるものについては道路管理者の許可を受けて搬送するようにしたい。またあるいは十月の十一日には、木村建設大臣は、いまのところ車両制限令を改正するつもりはない。これだけじゃないんですよ。とにかくこういうふうな発言をずっとしてきているわけです。これは決してわれわれ国会議員に対するそれだけの発言、では私はないと思うんですよ。こういうふうなあなたの内閣の各大臣の発言というものは、少なくともこれは国民に対する一つの公約だと私は思うんですよ。その一つ国民に対する公約を——結局はわれわれ、これはきのうの夕方まで何にも知らなかったわけです。突然にこの問題が出てきて、そしてきのうの夕方からけさにかけて、マスコミ関係を通じてわれわれも事実を知ったわけです。こういうふうに閣僚の皆さん方が発言してきたことに対する責任というものはやっぱりあると思うんですよ。こういうふうな問題について一体大臣どうお考えですか。  国民はこの問題について非常に不信を持っています。少なくとも田中内閣は国民に対してもっとわかりやすく、もっと何らかの形でわれわれの言いたいことをどんどん言ってくれる。アメリカ側に対しても、こういうふうなかわりのぼたもちをつくって渡さないとちゃんとしたことをやってくれないというんじゃしょうがないと思うんですよ。これは要するに、車両制限令を改正して持っていけば、これやっちゃったんだからおたくのほうではこれやれなんという言い方はほんとうの外交じゃなく、ほんとうはやはり日本の言いたいことを何にもなしでちゃんと言うというのが日本の外交のあり方でなくちゃいけないと私は考えているんです。大臣、こういうふうな各大臣の発言がそれぞれあるわけですけど、こういうようなものを含めて、あなたは国民に対してどういうぐあいに今回の問題を弁明されますか。
  195. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) いままでに大平外務大臣とか木村建設大臣、あるいは事務当局がいろんなことを言っているということをいまお読みになりましたが、私も全然そういうことを承知しないわけではなかったわけであります。しかし、こういう車両制限令といったようなものを全然改正する意思はないんだ、それから、いつまでにやらないんだとかやるんだとかということを私も明確にしているとは思っておりませんが、問題があって、そしてこの問題は何とか解決しなくちゃならないということについては、大平外務大臣も木村建設大臣も当局者でありますからいろいろ苦慮されてきたことであります。ちぐはぐなことを言っておられると申しますが、その責任はかなめにある私の責任じゃないかとおっしゃれば、それは、私のいままでのあれを全然反省しないわけではございません。ございませんが、問題があった、その問題解決のために相当頭を悩ましておった。何とかいい方法はないかということで、いろいろ検討しておったということは事実であろうかと思うのであります。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のそのおっしゃっている答弁を、たとえば国民の一人として聞いても、今回の問題をとても納得できるような状態では私はないと思うんです。いまの答弁を聞きまして、各大臣がそれぞれ苦労されたことは——私は苦労してないとは言ってない。それぞれの担当大臣でございますから、それはやはり、それぞれの立場になれば、ほんとに苦労してやっていらっしゃると思うんですよ。しかしながら、それぞれの委員会で、議事録にもちゃんと残っているわけですね、それぞれのその立場立場発言をしていらっしゃるわけです。それが、ただ単に一朝にしてぽっとひっくり返るというんじゃ、われわれ、委員会で一体何をやっているかということになるわけです。  そういうふうな意味では、まだまだ、いまの長官の弁明では、とてもわれわれ納得いたすところまでいかない、実際のところ。しかしながら、この問題については、私は、そのほかまだいろいろな問題がありますので、次の問題に移りますけれども、この問題について、先ほど建設大臣にこの席に出席していただいたわけです。建設大臣の、結局、初めから終わりまでの、いろんな話がずいぶんありましたけれども、結論として、建設大臣は、この改正には、何といいますか、賛成ではなかったようですね、結局。われわれここで聞いておりましてね、どうもこの改正については賛成ではなかったような感じでありました。それは、いろんな問題が一ぱいあります。大臣はこういうぐあいにおっしゃっていました。車両制限令の改正はやらないほうがいいと思っていた、いまでもそう思っていると言うんです、これね。——あなた笑っていますけれどもね、現実におっしゃっているんです。これは担当者ですよ。それで、これは私の耳に入ってきた建設大臣のつぶやきですがね。建設大臣は、わしと事務次官とどっちがえらいんやろうかと、こう言ったというんですよね。とにかく全然この問題について私は知らんかったと。——まあそれはほんとうのことは知りませんよ、私もこれは確認したわけじゃありません。  そういうふうな調子で、しかもその内容たるや、その改正に踏み切った内容官房長官答弁もそれはそうでしょう、しかしながら、建設大臣の、どうしても踏み切らざるを得なかった理由というのは三つ。先ほどの沖繩の問題が二つありますね。沖繩の海洋博覧会を開くにあたって、基地の中を高速道路が通る。二カ所ある。それがどうしてもこれは許可してもらわないと困る。これが一つ。それからもう一つは、現在沖繩が返還されて国道が日本に返ってきたけれども、その国道が基地の中を何カ所か横切る。そのためにこの国道が使えない。だからそれも早く返してもらいたい。この二つ。そのほか、相模原の補給廠の縮小、廃止、この問題ですね。それから、神奈川県に五つの不使用基地の返還の問題がある。これだけのこういうふうな問題を解決するにあたっては、大臣はどうおっしゃっているかといいますとね、ある程度米軍の要求も聞く必要があると、そういうぐあいに外務省が考えているんだと。だから、われわれとしてはあんまり突っぱるわけにはいかないんだと、結局は。そういう答弁なんです、大臣。そうなってくると、これは一体どういうことなんですか。結局は、日本の外交というものは米軍に対する土下座外交じゃないですか。ひざまずいて道を、海洋博覧会の道にしたって、大臣ね、私たちがこれを——まあそのままじゃないと大臣おっしゃるかもしれません。それはいろいろな言い分あるでしょう、あとから聞きましょう、大臣からね。しかしながら、よくよく考えてみますと、沖繩の海洋博覧会の問題は、先ほど社会党の議員がおっしゃったときにも、ずいぶんこれはもう何回も出てまいりました。私もこの問題は言いました。結局、沖繩の海洋博覧会というのは、そのために、沖繩のために結局高速道路をつくるわけですね。この高速道路というのは国民のためでしょう。国民のためで、どうしても日本の国としてはなくてはならない高速道路なんです。それをやるにあたって、たった小っちゃなこの車両制限令のこんなことをやらなきゃこの道を通してくれないという考え方は、これはもう土下座外交と言われてもしようがないですよ、こういう論法になってくると。大臣、どうですか。
  197. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 先ほどから木村建設大臣のこの本委員会における答弁等についていろいろ意見を伺いましたが、私はどういう真意でそういうことをおっしゃったのか、少なくとも、きょうの閣議にもおりましたが、反対ではないということでありました。ここに来ての発言はいまお聞きしたとおりでありますが、まあどういうことでおっしゃったのか、私は先ほど申し上げましたとおり、いろいろこの背景、こういうことになった背景というものはこういうものがあるんだと——アメリカに土下座外交したんだとおしかりを受けましたが、私どもはアメリカに対して土下座外交する考えは持っておりません。今度は、もっと言いたいことを言いたいと思っております。やはりそういう決意で、考え方で今回の改正に踏み切ったわけでございますが、土下座外交ということは私どもはちっとも考えておりませんし、また、そういうことがあってはならぬというふうにも考えておりますから、そういうふうにひとつおとりくださらないように、私どもお願いを申し上げておきたいと思います。
  198. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、大臣おっしゃるように、そういうふうな外交であってはならないと思うんです。そういうことがあってはならないと思うし、また日本としては、日本としてやはり堂々とやるべきだと思うんですよ。言うべきことを言うべきだと思うのです。しかしながら、これは結局沖繩のこういうふうな高速道路の問題とか、こういうふうな基地の問題とか、こういう問題、これは、実は、先ほど私は具体的に読みました。これは、外務省がこの問題について圧力をかけたんじゃないかと私は考えているのですがね。結局、外務省から強い要求があってこういった改正に踏み切ったというのですよ。きょうは外務大臣来ておりませんから、先ほどから政務次官から同僚議員に答弁もございましたけれども、どうもあんまりたよりないのですよ。外務大臣がこの席にいらっしゃれば答弁していただきたいのですけれども、そういうわけにきょうはいきませんので、官房長官に私は申し上げておきますけれど、実際問題として、これらの問題を解決するためにはこの米軍の要求も聞く必要がある、こういうぐあいに外務省などが考えているために改正に踏み切らざるを得なかったのだと、こういうぐあいにあなたは記者会見でもおっしゃっておりますが間違いないかと、こう念を押したら、建設大臣は間違いないと言ったのです。そばで外務省の役人の皆さんもみんな聞いておりましたが、違うとは言いませんでしたから合っているのでしょう。そうなってくると、私はそういうことばを使いたくないけれども、やはり使いたくなってくる。これは、こういうふうな問題が実際これから具体的に出てくるのか、またはすでに出ているのか、これはどうなんですか。
  199. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあ外交は相手のあることですから、自分の立場だけを言って聞かせるということだけでは、私はいろいろなことがうまくいかないことがあると思いますよ。私は、今回日本と中国との話し合いもいたしましたが、相手側の非常な深い理解があって、田中総理も言うことは言った。その深い理解というものが、今回の話し合いの事実をもたらしたと思う。これは皆さんのほうの積み重ねのいろいろな御協力もあったからにほかなりませんけれども、私は、相手があることですから、その外交交渉の衝に当たっているのは外務省なんですから、だから外務省が一番苦労をし一番難儀をしていると思いますよ。言いたいことも言うが、相手のことも、またなるほどということは聞かなければいかぬ。ただ自主外交だからといって、自分の言うことばかり言って、聞かなければ、何だということだけでは、私は外交——国際協調、円満な外交はできないと思う。そういう立場において、建設大臣が、まあ外交の窓口ではないわけでありますが、実際のこの省令の改正については担当大臣でありますので、それについては米軍という、米軍の戦車問題というのがからんできておりますから、そのことについて、私も外務省を通していろいろなことを文句を言っているわけですけれども、そういうことで、どうも外務省の言うことを聞かなければならなかったのだとか、外務省の役人がおれよりもえらいのかと、そう言うことは、少しまあどうかと思うような発言も耳にいまいたしましたけれども、私はやっぱり外交というものは、先ほどから申し上げますとおり外務省がやっている。窓口でやっているのですから、その人たちは日本の主張もすることはするが、相手の言い分もなるほどというものは聞かなければならぬ、そういうことで外交というものはできると思います。今度の戦車問題も、非常に国内の国民感情、国内法、そしてまた先ほどから申し上げます条約上のこともありますから、そういうことで、政府も、まあおっしゃったようなこともいろいろ意見が出てくると思いますけれども、できるだけの努力をして、言うことも言ったがこうだということで私どもが改正に踏み切ったんだと、外務省もその衝に当たったんだということではなかろうかと思います。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のおっしゃることはよくわかるんですよ。外交もやはり相手のあることですし、一方的にはいかないと思うんです。そのとおりだと私は思うんです。しかし、国民の世論ということを大国は先ほどもおっしゃいました。しかしながら、国民の世論というものを考えてみると、東南アジアをはじめ世界の国々の人たちのベトナム戦争に対する考え方というのは、これはみんな一日も早く終わってもらいたいと思っていると思うんです。これはわが国だけではなくて、戦争当事国でも早く終わってもらたいたという考えはあると思うんです。そういうふうなときに、中でも日本国民は、これは私たちの近くの国でありますし、こういうような戦車の問題が八月以来起きて、これは要するにこういうふうな私たちの国から修理された戦車がベトナムへ送り出されるということは、これはほんとうに国民感情としてもたまらないと思は思うんですよ。こういうようなときに、建設大臣はこうおっしゃいました。日本の国にそういう戦車がないほうがいいじゃないか、一日も早く出せと。これは確かに、その戦車をベトナムに送るんじゃなくて、アメリカへ持って帰るんなら、それは一日も早く出したほうがいいでょう。しかしながら、戦争をやっているベトナムへ持っていくということになると、これはやはり問題でしょう。そうなってきますと、私は今回のこの改正に踏み切ったこの問題は、いろいろな事情がありましょうとも、これはもう国民全体のいまの要望としては、もう制限令の、省令の改正というのは、これは改悪以外の何ものでもない、われわれはそういうぐあいにとらざるを得ないのです。先ほど私は建設大臣に、これはもうとにかくこの改正を、これはもう引っこめて、やめろ、撤回しろ、こういうぐあいに言ったら、大臣は、朝令暮改になるからだめだと、こういう答弁でした。要するに、その法案がいいとか悪いとかいう判断よりも、朝令暮改になるから——ただメンツですね、これは。それだけでは私は納得できないわけです、やっぱりそれだけでは。朝令暮改というなら、大臣が委員会等でこういうことはやらないということを何回も何回も発言した、それをぽっと変えたこと自体が朝令暮改になるのであって、われわれの立場から言えば、こういうふうな法律を結局はわれわれの知らない間にぱっとこう変えるということ自体がほんとうにいかぬと私は思うのです。  そういうふうな意味で、立場はいろいろありましょうけれども、二、三申し上げて私の質問、もう時間的な関係もありますので終わりたいと思うのですが、一つは、これはもう撤回ということは全然できないのかどうか、この問題。  それからもう一つは、国内法とこういうふうな日米安保の運用ですね、それを考えた場合に、やはり国内法というものを優先させるべきじゃないか、そして国内法の範囲内においてその安保条約を運用していくべきではないか、こう私は考えておる。これについては大臣どうお考えか、これもお伺いしたいと思うのです。これはやはり地位協定にしても安保条約にしても、やっぱり国内法の順守ということはちゃんとうたっているわけですからね。その国内法の範囲内でやはり考えるべきじゃないかと私は考えるわけです。  それからその次に、もう一点は、先ほどちょっとお話がございましたけれども、自衛隊の車両の問題ですね。これは防衛庁長官いらっしゃいますから申し上げますが、確かにこれは便乗と言われてもしかたないと思うのです。現実に来たるべき観閲式、あのときの戦車の問題なんかは、都知事と話し合いが進んでほぼ見込みがついているわけですね、そういうときにこれをやるなんというのは、これもほんとうにおかしいと思うのです。ここら辺についてはどうお考えなのか。  さらに、先ほど官房長官の話を聞いておりまして、やはりアメリカ側から強い要求はなかったにしても、要するに日本の外交というのは、結局こういうふうな改正なり、あるいはこういうことをやっていかないと、対等という意味から日本側の思うことを言えないのかどうか、ここら辺のところはどうなっているのか。これもそういうことじゃなくて、やはり日本の実情というものをよくわかっていただきたい。そこら辺のところは政府としてはどういうふうに考えているのか。大体二、三申し上げましたが、以上のことを官房長官並びに防衛庁長官から答弁をいただいて、その上で再度質問しなければいけないことがあればやりますし、なければ、私はこれで終わりたいと思います。
  201. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 最初におっしゃったこと、ちょっと私聞き取れなかったのですが……。(「撤回できないか」と呼ぶ者あり)これは撤回は、いまそれをする考えはございません。一番大事なことを聞き落としまして申しわけありません。  それから、国内法と条約、国際法、これはいろいろ問題があることであろうと思いますけれども、国内法も、私どもは最初の飛鳥田さんの処置に対しまして、私は国内法を順守して正しい行動だと、こう批判を申し上げたことを記憶しておりますが、先ほどからるる申し上げておりますとおり、条約のたてまえから、政府として責任を果たさなければならないこともあるから、こういうことをあわせ考えて、両々相まってこれから十分運用の面においてはあやまちなきを期していきたい、こういうふうに考えております。  なおまた、こういう改正をしなければ安保条約を守れないのか、対等な立場でものを言えないのかというようなことでございますが、そういう省令の改正をすることが安保条約を守る一番大きな問題だというふうには私は解しておりません。
  202. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 自衛隊の車両に関するお尋ねでございましたが、先ほど官房長官も、米軍の車両及び国内の車両の問題についても若干不備というか、穴があるというふうに申されました。ことし四月一日に施行になりました改正に、たとえば「緊急の用務」に供するものという制限令の政令がある、それが改正になってそういうことばになったわけですが、これを受けまする省令は改正にならなくて、自衛隊の教育訓練に供するものはよろしいというふうなことになっておるわけですが、いろいろ米軍の車両などで問題がだんだん出てきました段階で、自衛隊の車両につきましても、たとえば観閲式、これは教育訓練というふうにはいままで言うておるものであるわけですけれども、しかし「緊急」という政令をかぶるとどうなるかというふうなことが実は問題になりました。これは私どもとしては、いろいろ解釈上はどうあろうとも、念のために許可を申請するという手続をとったりしたわけであります。そういうこともありまして、この四月一日施行の改正の面におけるそういうふうな疑義を生ずる問題について、このたび政令についてこれを考えてみようという意向が主管省に出てまいりまして、私どものほうにも自衛隊のそうした問題についての話があるものですから、われわれのほうにも話をしてもらったということで、私どももこの際、そうした疑義がなくなるようにしてもらうことが望ましいということで、政令のそうした文句を、「緊急の用務」のほかに、「公共の利害に重大な関係がある公の用務」というふうなものとしてこの規定を盛り込んだというふうなことに相なったということでございます。
  203. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の持ち時間がもうありませんので、官房長官ですね、どうしてもやはり官房長官は、国防会議の問題とか四次防の凍結の問題等がございますので、やはりこの次の内閣委員会のときには朝からゆっくり来てもらいたいと思うんです。そうでないと、きょうはもうずっと待っていたんですよね。ですからもうそれらの問題についてはきょう時間がございませんので、次回に譲りたいと思います。  それから、いま答弁いただきましたけれども、とてもじゃないけれども納得できるような答弁ではございませんし、いま防衛庁の長官答弁にいただきましたけれども、われわれの立場からすれば、どうしてもまあ便乗したという感覚はもうぬぐえないものがあるわけです。しかしいずれにしましても、国民の感情ということから考えてみましても、この問題は重要な問題でありますので、私たちは今後あらゆる機会をとらえてこの問題を取り上げ、また政府皆さんの御見解をただしていきたい、こういうように考えております。
  204. 中村利次

    ○中村利次君 今回の車両制限令の改正についての官房長官のお答えを聞いてまいりましたが、これは、ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、国内法にはやはり穴があるんだと、穴を埋めて整備しなきゃいかぬというお答えがございます。それはいろんな国内法各般にわたって整備をすべきものがあるかもしれません。しかし、今回、改められたというよりも除外例をつけ加えられた車両制限令は、私はどこに穴があるのか。これはむしろ穴があるというよりも、道路及び地下施設の保全のために整備強化をして——まだこれ幾らも足らないんですよね。これを穴がある、不十分だから、したがって整備をしたんだということですりかえられると、私はこれはえらい問題があるんで、車両制限令の除外例をつけ加えた、そして米軍及び自衛隊の車両をフリー・パスにしたという理由を明確にして、やはりそれがかりに国民から非難されるべき理由であったとしても、明確にしてもらいませんと、何か、不備であった、穴があった、欠陥があったから整備したんだというものが伴いますと、これは重大な問題だと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  205. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 国内法に不備があったということは、これは私どももいろいろ検討してみまして、昨年改正した省令の中に穴があったという事実はいろいろ指摘すればたくさんあるわけでございます。
  206. 中村利次

    ○中村利次君 指摘してください。
  207. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) たとえば、公益上必要な、緊要な用務のための車、これはいま狭い道なんかも自由に通っているわけです。これはほんとうはいまの緊急なという規定からいうと、法律を無視して動いているというわけです。これは霊柩車——死者を運搬する車もそうだ。これは事務当局からお聞きになってくださったほうがもっと明確になると思います。あるいは郵便物の配達の車、それからバキューム車、こういうものもどうもやはり明確にしなくちゃいけないというたてまえになってきたようであります。それから消防車とか、自衛隊の教育訓練用の車とかあるいは警察の訓練用の車とか、こういうものは公共の利害に重大な関係のある公用車、そういうものも、通行するためにはただ一片の、緊急のために使用する車というようなことで片づけられないというようなことであったようでありますが、もう一つは、米軍の戦車の輸送、これは安保条約のたてまえからいうと基地から輸送のところまで輸送の確保をしなきゃならぬという規定、そうして、いまの改正された現行法からいうと——いま改正されておりますが、前の法律からいうと、それにはまらない。だから穴と申しましたが、立法当局としては、私は、この穴というものを埋めるべく検討することは当然だと思っております。たまたま米軍の戦車輸送の問題が大きな問題として今日議論になっておった。そういうことから申しますというと、それじゃこのためにこの政令の改正をやっていく、そして、ほかのものは便乗したんではないかという御議論も先ほどからございますけれども、御批判は御批判として承りますが、実際は、立法する立場にあるものとしては、こういうものはちゃんと整備するということは当然じゃないかというたてまえをとったわけでございます。
  208. 中村利次

    ○中村利次君 これは、日本国の政府ですから、日本国民国民感情なり、あるいは国民の合意を得られるという立場に立っての整備であり、穴があるなら穴埋めをするというなら、これは納得できますよ。たとえば、狭い道であろうと、緊急自動車、火事があったときに消防自動車が行くとか、あるいは霊柩車、これは国民感情からいったって、そういうものは納得できて、合意できることでしょう。しかし、除外例を新たにつけ加えられたのは、えらいこれは問題のあるところなんですよ。国民感情からいって非常に問題のあるところ。特に、建設大臣にも先ほどからいろいろ質問いたしましたけれども、とにかく重量制限をはるかにこえるような、そういうものをフリー・パスで通そうということになる。そうなりますと、これはやはりあんた、車両制限令は何のためにあるのだという基本問題にひっかかってきちゃうんです。建設大臣は、そういうのは整備補強するまでは通しませんという答弁がありましたが、これは官房長官も同じですね、お通しになりませんか。
  209. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) いま、この改正をいたしましたこの中身をよく読んでいただきますと、フリー・パスでも何でもない。何でもめちゃくちゃに、米軍の車だから通っていいというふうにはなっていないんですよ。それから沖繩の戦車にしましても、日本の輸送業者が委託を受けて運搬する場合は従前と同じことなんです。市長にも相談し、認可を受けなければならぬ。それから、アメリカ軍の戦車をアメリカ軍が運ぶ場合にも、日米安保委員会の中に特別分科会をつくって、そこで日本の政府当局も出て、そうしてちゃんとけじめをつけて、道路とか橋とか、あるいは地下埋設物とか、よく検討して、そうして通る場所をちゃんときめて、そこでまた関係の道路管理者にもお話をして通すというふうに、ちゃんとその歯どめはあるんですよ。ただ、法律上不備があったから、それを埋めるためにこういう政令を改正したが、その内容は、おっしゃるとおり、これをもうみんな、改正したから米軍の戦車は、橋が悪かろうが道がどうだろうが、どんどん通っていいということじゃない。これをよく読んでください。そういうことを私どものほうは——いやいやそうですよ。私どもがそういうことを申し置かなければ、何でもむちゃくちゃに車を通すように改正をしたいというふうに誤解を受けても困りますから。そういうことでございます。
  210. 中村利次

    ○中村利次君 これはまた、そこにその矛盾が出てくるんですよ。たとえば、輸送業者に委託する場合は、これは許可を受けなければいけない。もうまことにあべこべでしょう、そうなりますと、やはり地位協定をたてにとって在日米軍の強い要望でこれは改正をされたというぐあいに、自然にそういう結論になるんですよ。いわゆる穴埋めの整備であるという言い分も全くこれは通らなくなっちゃいますよね。ですから、いずれかにはっきりしていただきませんと、やはりいままで、それは皆さんがおっしゃったように、政令の改正はやらないということを言い続けてきて、ある日突然改正されちゃった。やはり政治不信なんというのはそんなところにあるんじゃないですか。私はやはり、賛成であっても反対であっても、大いに議論はあっても、一貫した、うそをつかない、一貫したものがありませんと、何でも国会答弁だけで、国会を乗り切るためには何とか都合のいいことを言って、伏せるものは伏せちゃって、そして何とかごまかして通るということであっては政治不信はますます強まるばかりだと思うんですよ。いかがですか、そういう点は。
  211. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) おっしゃるとおり、国会というところは国民に対して公式のものを言うところですから、その場で責任者の大臣がものを言った、そしてまた急に違ったことを言うということがあってはならぬと思います。これはまあ非常に政治不信になる。おっしゃるとおりのことだろうと思います。まあいろいろ先ほどから各大臣が言ったことをお述べになりまして、私もよくまた速記録を見たり、大臣にきょうまた真意をただしてみたいと思いますけれども、それにいたしましても、この法律をつくる立場になりますと、どうもやっぱり明確にしておくことはいたさなければならぬというたてまえをとったことが一つであります。  もう一つは、国民感情とかいろんなことをおっしゃいます。国民がやっぱり納得するものじゃなければだめなんだ、理解を示すやり方でなければだめなんだとおっしゃる。そのことを、私どもは今日まで、両市の市長とか、あるいは皆さんのほうの党の代表者とか、組合の方々とか、いろいろ何とかうまくいかぬかということで話をして、まあ兵員車のほうは一応移送ができたわけでございます。全部やりました。問題は戦車なんですけれども、もう戦車のことについてはなお大きなものになろうと、私は見たこともなければ、どのくらいのものだか知りませんけれども、相当の大きなものだと思っておりますが、そういうものについては、いまおっしゃるとおり、戦車もどんどん運ばれるのだということにはしていないのであります。ですから、そういうことは、ひとつこれを十分またよく読んでいただきまして、また今後のやり方についてはいろいろ皆さんの御意見もあろうかと思いますから、承っておきたいと思います。
  212. 中村利次

    ○中村利次君 これはとてもまだ質問したいことがいっぱいありますけれども、私はまだどうしても官房長官質問しておかなければならないことがありますから次に移りますけれども、何といっても、これはやはりどうも私は政府の重大な失態であったと思います。  次に移りますが、文民統制強化のための措置について十月の九日に閣議決定をされましたね。これに四大臣を新たに国防会議の議員に増員をされていますけれども、中でも私がお伺いをしたいのは、通産大臣、科学技術庁長官、それから国家公安委員長を議員として増員された、この理由は何か。これは、いやいままでもオブザーバーで出ていたのだというお答えでは困るのです。少なくとも表題は文民統制強化のための措置についてということで、文民統制の強化にいま私が申し上げたような大臣の増員がどうつながるのか、明確なお答えをお願いします。
  213. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 四次防の問題が議論されたときに、文民統制をもう少し強化しろ、これはもっともな考え方であるということで、前内閣のときもいろいろ御意見を拝聴したわけでございますが、そのときのいきさつもありまして、ぜひこの定員をもう少しふやせというようなことでございました。これにつきまして、いまお尋ねの通産大臣、科学技術庁長官、そして国家公安委員長と私、四名を加えたわけでございます。これは、先ほどお話がありましたとおり、従来の国防会議にも御出席をしていただいた方、通産大臣、おられた方でございまして、まあいろいろな方をもっと入れたらどうかとか、あるいは違った角度から検討したらどうかという話もありましたが、結局、今回の定員増につきましては、従来から出ておった大臣、内閣官房長官も従来窓口になって出ておりましたが、正式なメンバーではなかったので、今回この四名を一応必要な構成員として入れたと、こういうことでございます。
  214. 中村利次

    ○中村利次君 このことでは、私は、もうここでは時間がなくって、できませんから、これはいずれ時間を十分にとって質問しなければならないと思っています。  少なくとも文民統制の強化のためという、そのための措置でしたら、さきの国会からいろんな文民統制強化のための議論が行なわれましたね、たとえば国防会議の法的位置づけといいますか、防衛庁設置法の中に位置づけられるというのは、これはおかしな話ではないか、そういう点については国会でも相当前向きな答弁政府はやってきたのですね。こういうものは、どうもただ国会用として取り上げられただけであって、何ら検討されなかったのかどうか、あるいは国防の長期計画を問うについては、これは国会に、はかるということの議論があった、それから、政府答弁でも、文民統制の最終の場は国会であるということをしばしば答弁しているわけです。こういう点についても何ら検討されなかったのか、あるいは民間等から、学識経験者その他、こういうものを入れて、国防会議を国民同意できるようなものにしてはどうかという、いろんな議論がある。ほかにもいろいろございましたけれども、あるいは、これは政府のあれではなくて、国会の問題だということだったんですが、いわゆる国防委員会とはどういうものであるにしても、これは国会の問題であるにしてもですよ、やはり政府与党というものはこれは不可分のものでしょう、与党の中にどういう動きがあるのか、全く何にもありませんですね。そうなりますと、こういう非常に議論のあった、政府もいろいろな答弁をして、文民統制については相当の検討をし決意をして出してくるのじゃないかというのが、こんな、お粗末と言ったら失礼ですが、これ、何ですか、ほんとうにこれ、まことにおざなりの、国会なんというものは会期を終わってしまえばそれでおしまい、あとは行政府のやりたいほうだいというふうな印象があっては、これはやはり重大な、文民統制、国防会議等の問題であるだけに、それでは私は済まぬと思うのですけれども、こういう、私がいま申し上げたようなことをどういう検討をされたのか、あるいは、なぜそういうものを、無視といいますか、非常にいいことばで表現をすれば留保をして、こういうおざなりのものでお茶を濁された結果になったのか、そのことを承りたいと思います。
  215. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあ、おざなりだと、こう一口できめつけられますが、なかなかおざなりとは私ども考えておりません。それは文民統制を強化するという議論は前国会もあったわけで、またそのために国会が、予算委員会がずいぶん延びまして、二カ月も、なったという痛い目にあっておりますから、私は慎重の上にも慎重に考えて事を運んだつもりでおります。また、国防の責任というものは政府にあるわけですから、だから多数の人を入れていろいろな意見を聞くということは必要でありましょう。しかし、やっぱり国防の責任というものは政府が持つのですから、政府が責任を持って、そうして政府部内において議論をして数字をまとめて、これでどうですかということを最終的には国会におはかりするわけであります。まあ、しばしば議論がありましたとおり、文民統制の一番実をあげるところは国会だと、おっしゃるとおりです。ですから、私どもは今回も、党首会談におきまして、総理からも、あるいは橋本幹事長からも、国会の中にぜひ、安全保障に関する特別委員会でもいいし、常任委員会でもいいし、あるいは、各党の考え方が多少違うようでございますが、何らかのそういう委員会を、常任委員会か特別委員会をつくって、そこで十分に議論をしていただきたいと、そのことが文民統制の最高の実をあげるゆえんではないかと、こういうことも御提案を申し上げておるわけであります。何ら、無視したとか、ちっとも考慮しなかったということではないことだけを、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  216. 中村利次

    ○中村利次君 これは、国防の責任が政府にあることは、おっしゃるまでもなく、よく承知しておりますよ。しかし、出されてきたものが、これはここでは十分の質問ができませんから、先ほど申し上げましたように、またいずれの機会に質問いたしますけれども、官房長官もおっしゃったように、いままでもオブザーバーで参加していた大臣を、それを正式の、やはり正規の議員とすることで、それだけが文民統制強化のための措置と言い切れるのかどうか。これは、失礼ですけれども、私がおざなりと申し上げて、大臣は、いやおざなりじゃないぞとおっしゃったけれども、これはどう解釈すればいいのか、まことにもって私は解釈のしようがないと思う。いままでもオブザーバーでいた人を正規の議員にすることだけが文民統制強化のための措置になっているのかどうか。中身は問題はありますけれども、これは後ほどにします。そこで、私がお尋ねをしたのは、幾つか具体的にあげましたよ。国防会議を単独立法で位置づけをはっきりすべきであるという意見もあって、政府のそれに対する答弁もあった。あるいは、その構成等については違った意見もあった。そういういろんなことを申し上げた。それをどのように検討されたのか。検討しなかったとおっしゃるならば、それでもよろしいんですよ。
  217. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 検討しなかったわけじゃございません。幹事会も、かつていままでなかったほど幹事会を開きましたし、また、国防閣僚の懇談会も開きました。議論もいたしました。しかし、最終的には、いま御提案申し上げておるようなことに落ち着いたということでございます。なおまた、特に先ほど申し上げたような安全保障に関する特別委員会であるとか、内容、名前は別といたしまして、そういう提案を来国会には自民党のほうから——これは国会法の改正になろうかと思いますが、御提案を申し上げるということも明確にいたしておるわけでございます。
  218. 中村利次

    ○中村利次君 これは、そういう答弁では納得できません。検討したよと、それじゃどういう検討をされたのです、具体的に。
  219. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあ、文民統制を強化すべきだという議論は繰り返しなされましたから、だから、もう少しどういうメンバーをどの程度ふやすのか、あるいは民間から入れた場合にどうなるかという議論などをいたしたことは事実でございます。その結果、先ほど申し上げたようなことで、こういう結論に到達したということでございまして 何をやったかということについては、いろいろのことを議論し合ったということで御了承願いたいと思います。
  220. 中村利次

    ○中村利次君 どうも、そういう答弁をなさるから、これはいつまでも尾を引いちゃうんですよ。いろんな議論が国会の中であったのです、具体的に。それに対して政府もやはりそれなりの答弁をされた。私たちも前向きの答弁だというふうに受け取ってきたんです。出てくる答えがどういうものが出てくるかということは、これはやはり期待しますよ。それは少なくとも政府が大うそつきだと思わない限りはですよ。やはりいろんな検討をされるであろう、ところが、出てきた答えは何回言っても同じですよ。文民統制強化のための措置というお題目であるにもかかわらず、これは一項にしたって、二項にしたってそうですけれども、強化の措置とは言えない、こういうものでしょう。これは幾ら強弁をされても強化のための措置ということは言えない。時間が参りましたから、きょうはやむを得ないで、これでやめますけれども、まだあとで私は十分に官房長官に御質問を続けていきたいと思います。
  221. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ長官もお疲れのようだから端的にお聞きしますから、端的にお答えを願いたい。  第一にお聞きしたいのは、先ほど長官の話の中ですが、いろいろの裏の話は申し上げにくいから申しません、こういう一句があったわけですね。これはどうも聞き捨てならないような気がしたのですが、これはどういうことなんですか。
  222. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) いろいろむずかしい話をいろいろの方としましたから、それはまあ、いろいろの話があったことは事実であります。それを聞き捨てならぬとおっしゃっても、こういう公開の席上では、裏も表も全部話せと言われても、話せるわけじゃございません。政府政府立場だけを主張する、そして皆さんのおっしゃることは傾聴する、意見があれば申し上げるということだけにいたしたいと思っております。
  223. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、この公開の席上では話せないような、そういうことがあったんだと、こういうことば確認してようございますね。
  224. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) まあ、そういうふうにたたみかけられて議論をあまりしないで、まともにひとつこの問題について質問を、岩間さん、してください。
  225. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、事実はそういうことで、なにしたいと思います。  それから次にお聞きしたいのですが、先ほどからあなたの、今度の政令改正というやつは、その第一の根拠というやつは、これは安保に対する当然の責任を遂行するのだ、こういうことを言っているわけですね。そうすると、私お聞きしたいのですが、第一にお聞きしたいのは、一九六〇年の安保国会当時で、極東の範囲についての政府統一見解というものが出されております。これは今日生きておりますか。
  226. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 条約論になりますと、私もあまり勉強しておりませんから、また岩間さんから何か言われても困りますけれども、やっぱり安保条約というものは日米協調の基本である、ハワイ会談でも、日米安保条約は堅持すると、こういうたてまえを政府はとっておりますから、そのたてまえから申しまして、局長……。
  227. 岩間正男

    ○岩間正男君 いや、局長はいいですよ。これは長官のなにを聞いているので……。
  228. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) あまり知らぬものをお聞きなさっても、またあげ足を取られますから、あまり申し上げたくありませんが、日米安保条約というものは堅持するというたてまえをとっております。こういうことだけにしていただきたいと思います。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 私が聞いているのは、極東の範囲に対する政府統一見解。これはだめだ、こっちのほうは聞きたくない、時間がありませんから。政治判断の基礎になったものを聞いているんです。これは生きているか、生きてないか。
  230. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 日米安保条約は堅持するというたてまえからいたしますというと、変わっていないというふうに私は理解をいたしております。
  231. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、生きていると、こういうことでありますが、そうすると、ベトナムにこれを拡大するという、そういうやり方というのは、これは、らしくはないわけですね。非常にこれは端的な、素朴な質問です。国民はこれは疑問に思っている。極東の範囲というのは、これは言うまでもなく、フィリピンから北、そうして日本の周辺——沿海州、こういうものは入らない、中国沿岸も入らないと、はっきり、これは一カ月かかって、われわれも当時そういう議論に参加したのでありますが、ちゃんと最後の統一見解が出ているわけですね。そうすると、ベトナムにこれを適用するということは、少なくともこの正式な政府統一見解から、はみ出しているということです。こういうことが言えますね。
  232. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 外務省の条約局長から答弁をさせます。
  233. 岩間正男

    ○岩間正男君 いや、条約局長はいいです。もうこれ、なにしても、政治判断だから、これくらいの判断はできるだろう、もう言うことはきまっているから。わかっているんだから。(笑声)
  234. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 条約局長答弁しなさい。
  235. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 先生のおっしゃるとおり、ベトナムが極東の範囲に入っていないことは明らかであります。しかし、米軍の行動の範囲が常に極東の範囲に限られているということではなくて、一定の事態のもとに極東の周辺の地域に行動が及ぶということがあり得るというふうに考えております。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 六条の関係で言っているのですよ、安保の。基地を提供する、これは言うまでもなく、日本とそれから極東の安全、また国際的における日本の平和に対して貢献するかどうか、そこから来ているのだから、ここのところを原則としてはっきり詰めている。そうなってくると、ベトナムというのは、少なくともこれ、苦しいですよ。これの適用というのは苦しいのだ。これに適用するということは苦しい。そういうことからいきますというと、はっきりこの十九日に出されましたあの統一見解というやつは、これはやっぱり無理だ、こういう結論にならざるを得ない。十九日の統一見解、これは先ほども話がありましたが、アメリカの国籍なら、戦車なら、兵器なら、どこにあるものでも修理してよろしい、もう一つは、どこにでも自由にこれは持っていける、どこで使ってもいい、この二点ですね、この統一見解というやつは。これは、少なくともいまの統一見解、極東に対する統一見解から言えば、非常に無理なんだ。そうすると、これは安保の義務を負うのだ、責任を果たすんだというために車両制限令を改定したのだと、こういうことはぴったりしませんね。少なくともこれは、官房長官先ほどからの説明というものは非常に間隙がある、ぴたっとするものではない、非常にこれは無理がある、こういうことは認めざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。
  237. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) それは岩間先生の御意見として承っておきます。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはぼくの意見とかなんとかでなく、事実がそうはっきり語っているんですよ。私をしてそう語らしめている。これは真実がそうですよ。こういう点から考えますと、このような無理の上に立ったところの車両制限令です。この車両制限令を、いま言いました、この安保の統一見解からはみ出したベトナムに適用する、そのための統一見解が出され、この統一見解が成り立つ具体的な措置としての制限令の改正というふうにつながっている。だから、この点の不合理性というのは、これは明確にしておかなければいけないという問題、これが一つ。  もう一つは、安保に対する義務でこれをやらなければいけない、こう言っているわけですね。しかし、どうなんですか、戦車が、これが送られるわけです。この戦車についてはベトナムに持っていかないという保証はない。事実はベトナムに持っていかれるということは明らかです。そうでしょう。港則法まで無視して、あそこまで、行き先を告げないで行ったか、これはベトナムに——先ほども問題にしたんですが、戦車がベトナムに持っていかれる瞬間に何が起こるのかという、こういう事態について政府検討したことがありますか。
  239. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 戦車がベトナムに行くことについては、もうとやかく言わなくてもわかっていることでございます。ですから、私は米軍当局に対しまして、事務当局はもちろんでありますが、外務大臣が事務次官を通じて、送られる戦車というものはベトナムに行かないように善処してもらいたいということを繰り返し申し上げたわけでございます。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは希望だ。事実、これは米車と交渉したということはないわけでしょう。むろん、報告も聞いていない。この前、横浜と、それから相模原の市長に説明するときに、努力するんだという、政治目標だというようなことを言っておりますけれども、しかし、具体的に米軍側と交渉したという、そういうことも聞かない。事実は送られる。この前送られた。その瞬間に、御承知のように、たくさんのベトナム人が殺されているのであります。具体的な問題で論じなければならない。われわれはここで、この委員会で実態から離れた、そういうことで架空の論議をしている余裕がないほど、いま御承知のように、ベトナムにおけるアメリカの侵略戦争、みな殺し戦争、許すことのできない非人道的なこのような殺人が行なわれている。教会を焼き、学校を焼き、病院を焼き、そうしてさらにまた今度は堤防破壊までやっている、乳幼児を、全くこれはひどい目にあわせている。そうして戦車のあの土の中からは血ににじんだ肉片が出てきている。こういう実態というものを見なければならぬ。そうすると、日本の軍事基地というものはまさにベトナムと直結している。そうすると、日本のこのやり方はアメリカの非人道的な、このようなみな殺し、ジェノサイド政策に、はっきり手をかしているんだという結論になると思うんです。制限令はまさにそれを具体化するところのものであるということになる。この点はどうなんですか。
  241. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) だから、日本の政府も、ベトナム戦争が一日も早く終結するようにということで、しばしば意見を申し上げ、また、そのことを努力しているということでございます。
  242. 岩間正男

    ○岩間正男君 ベトナム戦争をやめさせると言うなら、戦争をやらないほうがいい。あなた、輸血しておって、そうして戦争をやめろと言ったって、だれが本気にしますか。一番いいのは戦争をやらないことだ。ベトナムに直結する日本の膨大な基地というものが、はっきり日本のそういう平和を指向する、それから日本の平和憲法精神から守られる、そういう事態が起これば、これはもっと早くやめますよ。ところが、輸血のように武器をどんどん送ることに手をかしている。みな殺し戦争に手をかしている。そうして、一日も早くやめるということを希望しております。こういうことばというのは、これは国民がすなおに受けとめると思いますか。  私はお聞きしたいんだ、次に。一体国民は、この戦車問題に対する態度というのは、単に国内法を守る、これだけじゃないんですよね。実際は、このような非人道的な侵略戦争、それを日本の祖国の基地を使って、そうしてもう非理、全くこのような殺戮の根源として、しかもベトナムと直接結びつけられていることに対する憤りを持ち、当然これに対する、非人道的なやり方に対して正義の立場から反対をしている。これは当然の国民権利だと思います。この権利というものは尊重されなきゃならぬ。そして、これは平和憲法立場から当然の私は行動だと思います。そこでお聞きしますが、二階堂官房長官はこれを尊重しますか、しませんか。
  243. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 戦争行為というものは、この世界からなくすることが当然のことだと思っております。そういう方向で努力をすることは当然だと思っております。
  244. 岩間正男

    ○岩間正男君 これを当然尊重するということになるというと、当然、私は、まるで逆のことが行なわれている。この政令改正というのは、この権利をまさにじゅうりんしているんですよね。そして、まさにこれは国民に対する挑戦です。そうでしょう。あの戦車問題で三カ月、まあこれは国内でこの問題が非常に討論されました。そうして、実際ベトナム戦争を一日も早く終わらしたいというのが、これは国民のほんとうに多くの希望だ。そういうものに対して今度の制限令というのは、全くこれは水をぶっかけた。こういう盛り上がる平和へのそういう意欲というものに対して水をぶっかけた。そうして、ベトナムへの米軍の戦車が自由に通れるようになった。修理もどんどんこれはやられていく。こういうことに対する矛盾というものは、これははっきり私は明らかにしなきゃならぬ。これは国民に対する、このような平和への権利、民主的な権利、正義を守る権利、これに対する挑戦であるということをはっきりこれは申し上げることができる。そういうところに落ちていった原因というのは、これは何なんです。政治的に、これははっきり明らかにしなきゃいかぬ。ここは官房長官、どうお考えになっていますか。
  245. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) そのことにつきましては、まあ先ほど来いろいろ私が、御不満であろうかと思いましたが、申し上げていることで御理解をいただきたいと思います。
  246. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこんところはあんたたち明確にしなけりゃ、今後の日本の少なくとも政治路線というものは明らかにすることはできませんよ。混迷しちゃいますよ。第一に、これは何と言っても先ほどから話がありましたハワイ会談でしょう。安保を堅持する、安保条約の円滑で効果的な運用、これに努力をする、これ約束させられているんだから、どうしたってこれはここに落ちざるを得ない。そこに落ちているのがいまのこの制限令の改正ですよ。そうでしょう。アメリカのみやげというのはこのごろはやっている。少なくとも最近二つあります。官房長官のつくったみやげ、そう言っていいと思う。二つある。ハワイのみやげ、これは当委員会でも論議されました北富士演習場暫定使用協定案、これがみやげでありました。間違いございません。今度のみやげ、大平外相の訪米、このみやげがはっきり今度の車両制限令、これは明確だと思うんですよ。こういうものをつくる、そういう形で当委員会が十七日に開かれていることも御存じだったと思います。あえてそれをも、それからいろいろな条件をなにして、あしたのワシントン大平外相入りにはっきり合わせる、こういう平仄の合ったことが行なわれているということは、これは国民の周知のことですよ。どうですか。
  247. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 大平外務大臣のワシントン入りと平仄を合わしたということではございません。  それから、安保条約というものはわが国の安全と平和に大事なものだ、これが基本だということは、もう岩間先生たちの御議論とは相矛盾することであるかと思いますが、そういうたてまえでございます。なお、私どもは安保条約というものを廃棄するという議論に立っておりませんから、やはり必要であるということで、そういうたてまえをとっておるわけでございます。
  248. 岩間正男

    ○岩間正男君 背景とか、権利とかの議論はここでやる必要はないので、ここではっきり言うのだが、これは別にみやげと関係がなかったと言うが、結果においてはっきりそうなっていますね。事実はそうなんです。この背景にやはりはっきりハワイ会談のそういうものがあるんだということを国民は知っております。  そうして、私はもう一つ申し上げたいのは、田中内閣の二面性というやつが、今日これはずいぶん大きく出てきました。四次防の問題、それからこの車両制限令、この二つが特徴的に出てきました。そうして効果的な運用、この実態は、何か円滑で効果的な運用というのは、これは戦車問題に最も特徴的に出ています。そうでしょう。それからさらに、これはもう横須賀の母港化の問題も起こってくるのだろうし、それからもう北富士演習場の暫定協定、みなこういうものは一連につながっております。そして一方では日中、なるほど日中では、田中内閣は非常に国民のそういう世論の支持を受けているかもしれない。日中だから、昼だから明るいにきまっている。日が当たる。しかし夜の顔が出てきている。どうもまさに問題は夜の顔です。夜の暗い顔。この安保のやり方を見たら、この暗い顔がはっきり出てきているのだということ、これを私は明確にしなければなりませんよ。この問題を明らかにしないで、大体国会解散だというけれども、冒頭解散やったって、国民はわからぬです。これは明確にしなければならない。論点を明確にしなければならない。ですから、昼と夜の区別を明確にして、国民にはいまさらながら安保、基地、戦車、そして四次防、この性格というものを徹底的に明らかにして、ほんとうにこの姿を具体的にして、これは解散に臨むべきだと、こういうふうに思うんです。こういう努力をあなたはされるお考えでありますか、ないですか。
  249. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) この冒頭解散などというものは、田中総理はちっとも考えておりません。またいまおっしゃったような昼だとか夜だとかというその議論はよくわかりませんが、そういう御主張、御議論も、近く国会が開かれますから、十分ひとつ御議論をしていただきまして、政府政府立場において、国民に理解を求めるべくいろんなことを申します。また皆さま方は皆さま方の立場において、十分ひとつ意見をお述べくださって国民の批判を仰ぐということ、これはもう国会政治の常道だと考えております。そういうことで、ひとつ十分議論を尽くしていただきたいと思います。
  250. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に申し上げます。  これは日本の基地の性格というものが今度の車両制限令で変わってくるという問題です。そうでしょう。いままでは少なくとも国内法があり、これをかってに特例でもって米軍が国内を飛び回るというかっこうになるわけです。ところが全くかつての沖繩並みになってきた——いまの沖繩もそうだと思いますけれども。本土の沖繩化と言っておりますが、これは本土の沖繩化のほうにずっと大きな道を開くものです。それから自衛隊と米軍というものが今度は同じような形でやはりフリー・パスになる。これはやはり日米の軍事協力、共同作戦体制、そういう性格というものが非常に大きく出ておるんだということ、これは簡単な小さいようなことにお考えでしょうが、実に重大な一つの転機をなす、そういう突破口になるところの、性格的な変化を大きく与えるところの問題であるということをはっきり指摘せざるを得ない。この制限令の問題を、しかも国会にもかけないで、単なる次官会議ぐらいできめて、そして担当の国務相までがあまり賛成をしないというような、こういう形できめられていくという、こういう問題について、国民は絶対了承することができない。そういう点から、再検討して私は撤回すべきだと思いますが、どうですか。お聞きします。
  251. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 御意見はよく承りましたが、撤回する意思はございません。
  252. 岩間正男

    ○岩間正男君 承って検討するのですか、しないのですか。(笑声)
  253. 二階堂進

    ○国務大臣(二階堂進君) 撤回する意思はございません。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 非常に時間もおそくなってまいりましたので、きょうは何かととぎれとぎれになってしまいましたので、どうもまとまってできないかもしれませんけれども、四次防について伺います。私の持ち時間が約三十分ぐらいらしいので、その範囲内でということですから、またこの次の委員会等が、これはもういつ開かれるかわかりませんので、二、三お伺いしておきたいと思います。  初めに先日、十月の九日でありますが、国防会議、閣議決定した四次防の「第四次防衛力整備五カ年計画の策定に際しての情勢判断および防衛の構想」というふうなのが私たちの手元に回ってきております。四次防の内容そのものもありますが、先ほど同僚議員より文書で出していただきたいという話もございましたが、きょうは質問の初めに二、三お伺いしておきたいと思います。この「情勢判断」でありますが、この前段の、国際情勢が緊張緩和がなされつつあるというのは、これは私たちわかると思うんですが、その後段の問題については、やはりいろんな議論があろうかと思います。そこで私は、昭和四十五年の十月に「日本の防衛」という国防白書が出ているわけでありますが、これによりますと、これの「極東における軍事情勢」というところがあります。この極東の軍事情勢の特にアジアのところを見てみますと、これの一つ一つがもうすでに解決の方向に向かっている。当時の冷戦構造とはずいぶん違ってきているんじゃないかと、こういうぐあいに思います。特に、ベトナム戦争がそのままでありましても、この中で問題になっております中国が国連に加盟をいたしましたし、また韓国、北朝鮮等も、これは話し合いを続けております。こういうような観点から、この中でも特に「中共および北朝鮮は」というような書き方で、「引き続き硬直した対外姿勢を堅持している、「こういうぐあいになっておりますし、中でも中国の問題について、核兵器の問題等もこの情勢判断の中で提起をされております。こういうふうな情勢のもとに三次防が策定をされ、さらにこういうふうな考えで現在まで防衛庁もきたのであろうと思います。それが今回の四次防のこの国際情勢の判断となってあらわれていると私は思うのですが、しかしながら、これは長官にお伺いしたいのですが、この前段の国際情勢は、要するにアジアにおいても、朝鮮半島における対話あるいは日中国交正常化が緊張緩和に役立つものと考える、緊張緩和はされつつある。もっと端的に言いますと、アジアにおいては、すでに緊張の状態はなくなってきたと、こういうぐあいに私たちは判断をいたしております。しかしながら後段で、この「アジア地域においては、米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、」というようなところから、非常にむずかしい表現になっておりますが、後段の点について、もう少し具体的にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。
  255. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 四十五年に出ました「日本の防衛」におけるこの情勢判断と、このたびの情勢判断に大いなる変化があるということは御指摘のとおりであります。このたびの情勢判断は、米中、米ソ関係の進展、欧州における東西間交渉の進捗等は緊張緩和の傾向である。アジアにおいても朝鮮半島における対話に進展があって、日中国交正常化もアジアにおける緊張緩和に役立っておるという情勢を申し述べ、しかしアジアにおいては、米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみあっておるということは、これはそのとおりであるという判断でございます。全体として安定した緊張緩和状態に至っているとは見られないということでございます。その他の諸国間においても種々の緊張要因が存在をしておる。その他のアジアの諸国間におきましても種々の緊張要因ということは、まあいろいろの問題があるわけでございまするが、こまかい点は防衛局長から御説明をさせることが適当と思いまするが、種々の緊張要因が存在をしておる。このような情勢下で、全面戦争ないしそれに発展するおそれのある大規模な武力紛争が発生する公算はさらに少なくなっておる。いままでもこういうものがあるというふうには、前段も見ておらなかったのでありますが、さらにその公算も少ないが、しかし地域的な、期間的に限定をされた武力紛争は、これは生起しないと断定はまだできないということでございます。これはまあ書いてあるとおりでございます。簡潔には書いてありまするが、こういうふうに情勢判断をすべきものというふうに考えたわけでございます。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣ね、もっと端的に、私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、書いてあることは、私、よくもうわかるんですわ。要するにこれはもうちょっと具体的にお願いしたいわけです。  それではもっと具体的に質問します。要するに、たとえば一つずつ、じゃあ詰めていきますが、「日本の防衛——昭和四十五年の十月にできた防衛白書の当時と現在とは、要するに極東における軍事情勢はずいぶん変わってきたのか、これはどうですか。端的に申し上げます。
  257. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 「日本の防衛」に書かれた当時の情勢判断と今日とは相当に違っておるというふうに思います。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 変わってきたという表現がちょっと悪かったと思うんですが、当時の緊張状態からすれば相当に緩和されてきたと、これはどうですか。
  259. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) アジアの情勢という意味においては、緊張が緩和されてきたというふうに考えてよろしかろうと思います。
  260. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでいいです。  そこで、今度はこの四次防の情勢判断に移るわけでありますが、アジアの情勢は、確かにこの当時の内容等からチェックしても緊張は緩和されてきたと、われわれもそう見るわけです。そこで、「アジア地域においては、米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、」こういうふうに文書のとおり長官説明があったわけですが、要するにどういうぐあいに複雑にからみ合っているのか、もうちょっと、われわれしろうとでもちゃんとわかるように御説明をしていただきたいわけです。ここに書いてあることはわかるのです。もう少し具体的に、何が起きているのか。要するにわれわれの目の前には具体的に何もあがってこないわけです。何もないわけです。したがって、われわれ国民がもっと明らかにわかるように説明してほしいわけです。どうですか。
  261. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 友好国のことでありますから、あまり露骨な言い方はできませんが、全般的にいえば、たとえば中ソ対立というのは現在も残っております。国境問題はまだ解決をいたしておりません。それから最近、中国側でも言っておりますように、対ソ非難というものが、アメリカに対する非難よりももっと露骨な言い方で行なわれているといったような状況が今日もなお続いております。それから米ソ間につきましては、六〇年代以来その融和というのは一そう推進されておりまするけれども、また最近では、第一次のSALTの話し合いができ、第二次も近く話し合いが進められるとしておりますけれども、いわゆるコンフロンテーションということばであらわされておる対立といいますか、対峙といいますか、そういった状況が全くなくなったということにはなっておりません。のみならず、東南アジア地域の諸国から見ますると、ニクソン・ドクトリンによりまして米国の勢力が漸次縮小あるいは撤退されつつある。反面、ソ連の勢力が、特に海軍勢力で代表されておりまするように進出してきている。それをどう見るかということは別でありまするけれども、東南アジア諸国の各国については、一つの問題というふうに感じておるようであります。また米中接近は、このほど実現されたわけでありまするけれども、それは接近でありまして、いまだ米国と中国の問題が本格的に解決されたというふうにはなっておりません。そういったような情勢をさして申しておるわけであります。
  262. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この情勢判断の中にあらわれた「米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、」ということは、いま防衛局長から説明ございましたように、中ソの対立、それから中国の対ソ非難、それから三番目に米ソ間の融和の問題と、保留された問題ですね。それからそのほかにニクソン・ドクトリンの問題等もありました。これは東南アジアの問題に入ってくると私は思うんですけれども。  次に、久保局長おっしゃったのは、この中のその次の、「その他の諸国間においても」ということばですね。これについて大臣は先ほど、アジアの諸国間においてと説明をされました。アジアの「諸国間においても種々の緊張要因が存在している。」と、このアジアの、ここには「その他」とありますが、「その他の諸国間においても種々の緊張要因が存在している。」このことが結局はいま久保局長説明されたニクソン・ドクトリンの問題と、それからソ連の勢力が、いわゆる海軍が東南アジアの国々に進出しておる、こういうふうなことなんですか、これは。そこのところちょっと二つ一緒におっしゃいましたので、もうちょっとわかりやすく……。
  263. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) ここのところは、先ほどの問題とちょっとまた別の側面でありまして、たとえば朝鮮半島におきまして両国の話し合いが進んではおりまするけれども、緊張がなくなったということではございません。本日も韓国では戒厳令をしいたそうでありますが、また台湾につきましても、アメリカとの安保条約がありまするように、全く緊張がゼロということではなかろうと思います。それから東南アジア諸国については、たとえばベトナム戦争に関連してカンボジア、ラオスといったような地域、それからタイとかビルマにつきましては、国内におけるいろんな、何といいますか、反政府運動といったようなものもありますし、国境問題がある程度残されておるように思います。それからその他の国におきましてもやはりある程度の国内問題、フィリピンであれ、インドシナであれ、そういった問題もかかえておる。そういうようなことで領土問題、特に国境問題でありますが、そういったようなこと、それから思想的な分野の問題、経済的な問題、そういったものがいろいろ緊張要因として残されておるというようなことをさしていると思います。
  264. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま局長がおっしゃいましたこれはよくわかりましたが、こういうふうな、いまおっしゃいましたような情勢判断のもとに、いわゆるこの二番の防衛構想というものがなされているわけですね。これはどうですか。
  265. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) これは三次防であれ、四次防であれ、わが国の場合には必要最小限度の自衛力に向かって漸進的に整備をする。その場合に、わが国を取り巻く周辺の諸情勢はどうであるかということを一応判断して、わが国に対する侵略の可能性が比較的多いのか、あるいは非常に少ないのかということを判断いたしませんと、三次防、四次防というものができてまいりません。したがって、この情勢判断では、三次防のときもそうでありましたが、アジアの情勢としてはいろいろ問題はあろうけれども、この五年間なら五年間の間に日本に対する侵略の可能性というものはそう高いものではない。むしろ非常に低いものであろうというふうな判断であります。そういう判断のもとに、しかしながら、この防衛構想は日本の防衛力の意味合いというものを一応書く必要がありますので、抑止力である、万一その抑止が破れた場合には最小限度のことはやりましょうということでありまして、必ずしも直接の関係はない。やはりそういった情勢判断を背景にして防衛構想ができるということは言えましょうけれども、直接の関係はないというふうにお考えいただいたほうがよろしかろうと思います。
  266. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 よくわかりました。しかし、直接関係はないにしても、やはりこういうふうな情勢のもとにその脅威のいわゆる尺度といいますか、そういうようなものは、やっぱりこういうような情勢判断によって策定されるものだと私は思うのですね。そこで先ほどもお話ございましたように、この情勢判断というのは、これは私たちはそのとおりであるとは思わない。ちょっとやはり考え方多少違います。しかしながら、政府当局防衛庁自体として考えた場合に、このいわゆる情勢判断あるいは内容等について考えてみた場合、防衛のあり方ということであらわしているところのいわゆる昭和四十五年の防衛白書当時と、また現在のこれとを考えた場合には、これはもう明らかに内容的にも違ってきておると思うのですね。その場合、やはり四次防についてはこういうふうな情勢判断のもとにやったとは思うのですけれども、やっぱり極東における、特にアジアにおける軍事情勢といいますか、情勢がこれだけ変わってきたのですから、やっぱり四次防においてそれだけの、内容的に、中身において、それだけの判断といいますか、それだけの内容的にこういうふうな国際情勢というものを含めたものを内容に含めているのかどうか。要するに、こういうふうに国際情勢が変わってきた。変わってきたそのことについて、この四次防の中身については、そういうような、いわゆるアジアの変わってきた情勢というようなものもその四次防の中身には加味されているのかどうか、そこら辺のところはどうなんですか。
  267. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 一次防、二次防あるいは三次防当時を考えてみますると、今日アジア情勢が緊張の緩和と申すならば、当時は今日より緩和されていなかった情勢にあったと逆に言うことができましょう。さればといって、そういった緊張がある程度あることを前提にして二次防、三次防というものがつくられたわけでは必ずしもありません。これは一般のアジア情勢がそういうことであるということを申したのでありまして、あくまでも二次防であれ三次防であれ、また今回の四次防であれ、必要最小限度の防衛力というたてまえを持ちながら、それに向かって漸進的に進めるということでありまして、いまの緊張緩和がそのまま四次防の内容に反映するという趣旨のものではございません。ただし、たとえば昨年の四月に発表いたしました防衛庁原案のように、ある種の防衛の目標をなるべく早めに達成しようというような必要はない。やはり全般的な緊張の緩和を反映するということは言えましょう。したがいまして、昨年の春に出しましたような、比較的テンポを早めた、あるいは規模の大きな防衛力整備ではありませんで、非常に何といいますか、全般的な情勢を見通して比較的合理的な妥当な線にわれわれとしては押えておるということを考えております。
  268. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではこの問題、あんまり議論しておりますと時間がなくなってきますので、もう一つちょっとお伺いしておきたいんですが、防衛力の限界ということについて先般から種々言われておりますね。総理からも防衛力の限界について明示するようにという指示があったと、こういうようなことを聞いておりますんですが、これのいきさつ等どうなっておりますか。
  269. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 防衛力の限界というものが具体的な問題になりましたのは、いわゆる防衛庁原案で、昨年の四月でしたか、きめましたいわゆる四次防の原案と申しまするか、これが一応十年後の事態を想定し、これに対処する装備その他を整えていくという観点で、そのうちの五年を四次防としてやるということであったわけで、御承知のとおりであります。この十年先の目標というものを一応防衛力の限界といいますか、防衛力整備のめどというふうにも受け取られたわけでございまして、そういう意味の原案には一つのめどがあったが、今度はそのめどがなくなったではないかというふうなことが具体的な御論議の発生であったように思います。この原案における十年先の一応の防衛力のめどというものも、いわゆる限界というふうなものではなかったわけであります。防衛力の限界というものは、本来なかなかこれ、むずかしいものであります。情勢の変化ということがもとよりあるわけであります。周囲の武力というようなものの変化ももとよりあるわけであります。そういうことで、たいへんこの防衛力の限界というものは示しにくい、きめにくいということも、まあ従来防衛庁としては申しておったんですが、しかし、原案に示しました十年先というふうなものも一つのめどというふうに御理解をいただいておるようでもありまするし、そういうことを考え合わせますると、現在はいわゆる緊張緩和の状態であり、これが続いていくと判断できるということでありまして、いわゆる総理の、平和時における、というようなことばも、そういうふうに受け取っておるわけであります。そういう前提で、また一つは、安保条約というものを堅持していくというたてまえ等をもって考えるならば、一つのめど、限界といいまするか、めどをつくることは可能であろうというふうに考えまして、防衛庁としてもいまその作業にかかるようにいたしておる。総理からも、そういう意味で平和時における防衛力の限界というような意味のものをひとつ考えてくれというふうに言われております。そういう意味で作業に取りかかっておる。まあ、年内にはひとつそういうものをつくって皆さまにも申し上げるようにしたい、こういうふうに考えております。
  270. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣が非常にたくさんしゃべりましたので、そのしゃべっておることばの中でだんだんだんだん、ことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、ただしていかなくちゃならない問題が次から次へ出てきてほんとうに困るんですけれどもね。一つは、四次防は五年間ですね。そうすると、十年間の事態を想定してという話がございました。で、原案ではそういうことでめどをつけておる。しかしながら、今回の四次防では五年間であるのでそれができてない。そうすると、この十年間のめどというのは、大臣がおっしゃっているのは何をおっしゃっているのか、原案というのはもともと何をおっしゃっているのか、これをお伺いしておきたいと思います。  それから先ほど久保防衛局長は、情勢判断のところでちょっといろいろお話をお伺いしたときに、こういうふうな国際情勢というのは、これは要するにいろいろまあ変化していく、確かに緊張緩和というのもある、三次防のときと現在とはずいぶん変わってきた、これは認めていらっしゃるわけです。しかしながら、そういうふうな情勢には関係なく、防衛庁としては必要最小限度の、いわゆる自衛力を装備していく、こういうふうな久保局長答弁がありましたが、いまの大臣の答弁は、やっぱり情勢にずいぶん関係があるようなお話が出てます。この点についてもちょっとお伺いしておきたいと思います。  それからこの平和時の防衛力の限界ということについて、年内には示すとおっしゃっておりますが、この点も私は防衛力の限界という、まあこれはいろいろ話のあれもあるでしょうけれども、これはやはりどう考えましても、われわれいままで何回か防衛力の限界ということをこの委員会発言をしてまいりました。そのつど、いろんな答弁が出ておりますけれども、いま大臣おっしゃいましたように、確かにこの安保というものを含めての、いわゆる平和時の防衛力をどこまでしていくべきかということは、これは可能であると大臣がおっしゃったとおりだろうと私は思うわけです。しかしながら、私たちの立場から考えてみたならば、もうすでに四次防そのものが国防会議で決定されているわけですね。そうするともう中身もほとんどきまっちゃっているわけです。本来ならば、こういうふうな平和時におけるところの防衛力の限界というものは、当然私はこういうふうなものが先に決定されて、そしてその基本に基づいて四次防そのものが決定されるべきじゃないか、こういうぐあいに思うんですが、この点はどうですか。  三点申し上げましたが、それからもう一点申し上げておきますが、現在政府は、先ほどのあれにもありましたように、総理が、平和時の防衛力の限界というお話がありましたが、防衛庁としては、現在は平和時と考えていらっしゃるかどうか、これはまあ当然だろうと思うんですけれども、現在は平和時と考えていらっしゃるかどうか、この辺のところもお伺いしておきたい。四点です。
  271. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 防衛局長から御説明申し上げます。
  272. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 十年先の目標と申されましたのは、昨年四月に出しました防衛庁原案の中で、長期目標ということを書いてあります。で、その説明といたしましては、抽象的なことでありましたが、中身については当時中曽根防衛庁長官が、私見ではあるがと言ってことわられまして数字を出されたことがあります。そういったようなものをいうわけであります。  それから情勢との関係は、もちろん情勢と無関係ではありません。ただし、どういう意味かと申しますると、アジア全般において緊張があったから防衛力整備を促進したとか、緊張緩和が非常に顕著になったからそれに応じたものを直ちにつくったというようなものではありませんで、アジアに緊張があったりあるいは緩和されたりというような情勢はありましたけれども、過去二次防なり三次防なりあるいは今回の四次防をつくりまする場合に、日本に対する侵略の度合いがどうであろうということを判断すれば、必ずしもその計画期間中に侵略がありそうだという前提には立たないで防衛力整備を計画いたしました。そういうような意味合いであります。  それから平和時の防衛力の検討が先ではないかというお話でありまするが、現在の四次防の大綱そのものが三次防の大綱に準じてつくられておりまするので、いわば三次防の延長ということで四次防の性格づけが行なわれました。したがってまた、この主要項目の内容につきましても、三次防に準じてつくられておりまするが、そういったものを国防の基本方針にありまするように、国力、国情に応じて漸進的に整備するということをやっておりまする場合に、それではどこまでいくのかということがやはり国民からの疑問として出てまいりますので、そういうことを背景にして総理がおっしゃったというふうに理解いたしまするので、必ずしもこの平和時の防衛力の検討が先でなきゃならないというほどのものではないんではなかろうかというふうに思っております。
  273. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長のおっしゃることはよくわかるわけでありますが、しかしこの防衛力の限界というような、こういうようなものがはっきりしないのに四次防がきめられるということはほんとうはおかしいと私は思うんですよ。われわれしろうとが考えた場合でも。何でかといいますと、四次防そのものが、一体何を基準にして四次防というものが決定されているのかといった場合ですね、国民は非常に不信を抱くわけです、やっぱりね。一体何が基準になっているのか、その基準というものが何にもなくて結局四次防というのが決定されている、そういうぐあいに考えるわけですよ。そういう点から考えますと、やっぱり何らかの基準というものが必要じゃないか、そういうような意味から、やはりこの平和時の防衛力の限界というものが、ここら辺まではというような一つの線なり何なりが出てこないと私は国民には納得しがたいんじゃないか、こういうぐあいに思うわけです。  それから先ほどの中曽根さんの私案ですがね。われわれとしてはこれはどういうぐあいにとりゃいいのか、ほんとうに迷うわけですがね。私案ですがということで発表されたことが、きょうも防衛庁長官の口からぽんと出てくるように、やはり防衛庁の長期目標の一つとして実際的に取り上げていいのかどうかという問題ですね、この問題。あるいは別に防衛庁として今後の防衛の問題について、防衛力の長期構想、あるいは防衛についての長期構想、こういうようなものを考える意図があるのかどうか、そこら辺のところはどうなんですか。
  274. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 昨年四月の防衛庁原案のときに出しましたこの長期目標といいますのは、十年後、つまり大体国際情勢で予想し得るのをほぼ十年後と考えますると、一九八〇年代初期でありますが、そのころであれば、わが国の周辺諸国の軍事能力というものが一応推測できる。したがって、そういった周辺諸国のそのころの軍事能力にある範囲内で対応できるようなものをわがほうが持ちたいという発想に立ったわけであります。  そこで今回の場合には、必ずしもこの十年後とかあるいは五年後ということではありませんで、いま長官が申されましたように、平和な情勢が続く場合に、その間において持つべきおおよそのめどはどうだろうか、したがって、これは五年後、十年後、十五年後といった期間に必ずしも左右されるものではなくて、日本を取り巻く諸情勢という、一定の条件のもとにおいて防御力を整備する一応のめど、目標というものを考えたらどうだろうかということでありまして、そういったことは、したがって長期的な構想といいますか、そういうものは可能であろうというふうに思います。またそういうものがある程度前提にされて四次防があったほうがよろしいのではないかという御意見も御無理ではないと思いまするけれども、そもそも従来われわれが考えておりましたのは、そういったある時点における軍事能力に対応したものをどういうふうに考えていくかということでありまして、いわゆる防衛力の限界というものは、われわれのほうではなかなか具体的に算出できないということを申しておったわけでありますので、従来からの発想からいうと、そういうものはなかなかできない。そこでそういうようなことではなくて、平和な情勢が続くという条件、質的なものを与えてそこで勉強しなさい、こう総理が申されたわけでありますので、あるいはその順序が逆だという御発想もないわけではないと思いまするけれども、従来からの経緯からいけば、新たなる勉強ということになろうかと思います。
  275. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、総理から一応命題がこう与えられたわけですね、一応平和的な条件が続く、その条件のもとに、長期的な構想のもとに今回のこれが考えられるわけですね。そうしますと、防衛庁自身は今後日本を取り囲むいろいろな情勢というものがあると思いますが、平和的ないわゆる日本の情勢が続くであろうと、こういうぐあいに考えていらっしゃるのか、あるいはそう長続きしないのじゃないか、そう考えていらっしゃるのか、そこら辺のところはどうですか。
  276. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 今日予測し得る条件におきましては、私は一九七〇年代においてはおそらく平和的な情勢が続くであろうと思います。ただし、国際情勢というものは流動しやすく、また変化しやすいものでもありまするし、特に、諸外国の指導層の変化ということを踏まえて見ますると、いま申し上げたように、今日の時点では平和な情勢が続くであろうという見通しを持っておりますが、また何年かたったとき、あるいは少なくとも毎年毎年かもしれませんが、そういった時点においてさらにそのときの情勢判断をすればよろしいのではないかというふうに思っております。
  277. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、各国の指導者の交代ということもありましょうから、いろいろこれから条件は変わってくるとは思いますが、現在の時点では平和が続くであろう、こう考えていらっしゃるわけですね。そうしますと、局長、私はこの間の、テレビの討論会を見ていましたが、国民は要するに日本が日中国交回復もやり、それで少なくとも中国という、いわゆるいままで脅威という面から考えておった、こういうふうな日中国交回復によってこういう面の脅威もなくなってきた。それから朝鮮の問題についても、少なくともきょうは、いま戒厳令がしかれたという話もございましたけれども、少なくとも南北朝鮮はそれぞれ話し合いをやろうという意図があらわれてきておる。そのほか東南アジアの諸国を見ましても、アジア安保という問題もありますけれども、それとは別に、ニクソン・ドクトリンによってここ五年以内にいわゆるアメリカ軍が全部撤退すると、そのあとアジアの諸国はやはり中立化構想というようなことをずいぶん考えているようですね。そういうふうないろいろな点、ずっと考えてみましても、日本を取り囲むいわゆる国際情勢というのは、これはわれわれ国民が見た場合に、緊張状態はほんとうになくなってきて、これからほんとうに平和が続くんじゃないか。これはいろんな条件は、突発的な条件はあるかもわかりませんけれどもね。あるかもわかりませんが、しかし平和は続くであろうと国民は考えていると思うんです。そういうふうなときに、いわゆる、漸増とはいえ、四次防で三次防の倍の予算になるような、こういうようなことをすると、どうしても国民はなかなか納得できないわけですよね。要するに防衛力の、どこまでいくであろうかという不信、あるいはその防衛費が三次防の倍であるというこのことに対する不信、あるわけですね、具体的にね。それで、日本のGNPがずっと上がれば上がるほど、それに伴ってやはり同じように防衛費も伸びていく。諸外国とは条件が違うんだと、そういうような点から考えてみても、国民としてはなかなかこの四次防を得心するまでには相当な問題があるのではないか。そういう問題についてやはり説明不足じゃないかと私は思うんです。そういうような点を考えるのですがね。私たちはこういうふうな国際情勢、日中の問題、あるいは日本を取り囲むいろんな国際情勢から考えてみて、四次防はこんなに早く決定すべきでもないと思いますし、もっと検討をすべきであろうと思いますし、また私たちの立場から考えますと、四次防そのものはもうやめちゃってもいいんじゃないか、また安保自体についてもここで再検討すべき時期がきている。こういうふうに判断をしているわけでありますが、立場は違いましょうけれども、国民がほんとうに納得できるというような説明を一ぺん局長にお伺いしたいのです。
  278. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 私も国民に十分納得できるような資料をつくりたいということで、現在作業中でありますが、一般的に申せば、平和的な情勢が続くであろうということは多くのコンセンサスが得られようと思います。ところが、そういった個々人の判断と別に、政府立場に立ちますると、やはり国の安全と平和というものを維持するという責任があります。そこで、そういった責任を遂行するためには、なるべくかけを少なくしなければなりません。国際情勢というものは、過去の歴史を見ましても、情勢判断の誤り、誤謬というものがよくございます。これは当方にもあれば相手方にもあります。そういった情勢判断の誤りというものが過去の歴史にいろいろありました。また国際情勢というのは先ほど流動的でありまた変化しやすいというふうに申し上げました。そういった諸情勢に立って見ると、政府としてはやはり必要な最小限の防衛力が整備されるまでは、テンポの問題についてはそれぞれの情勢に応じて考えなければなりませんでしょう。また国内の情勢についても考えて、均衡をはかりながらやっていかねばなりませんでしょうが、やはり漸進的に整備するという国防の基本方針は、今日もなお生かしてよろしいのではないかというふうに思います。  一つだけ例を申し上げまするが、パールハーバーの事後調査をやりました結果、アメリカの反省といたしまして、日本側のこの脅威の中で、英語ではアビリティということばを使ったそうですが、そういう能力とそれから意図、インテンションという二つをわれわれも脅威の構成要素と思っておりますが、米側もそのときにそういう判断をしておりまして、そこでそのときの反省というのは、日本側のインテンション、意図というものをあまりに多く見て、能力、ケイパビリティ、当時アビリティということばを使ったそうですが、その点についての、つまりアビリティについての評価というものがなかったと、それがパールハーバーを招いた原因であるということをアメリカの反省として伝えられているようでありますが、やはりそういった軍事能力が存在しているということはわれわれは忘れるわけにはいかないということだろうと思います。
  279. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しかし、現実の問題としてヨーロッパの国々は防衛費そのものがスローダウンをしておるわけですね。そういうようなときに、日本の防衛費が、漸増とはいえやっぱり一直線に伸びておるわけですね。これに対して、やはり海外のいろいろな諸国の批判を仰ぐことは、もうこれは当然だと私は思うのです。また東南アジアの国々が日本に対してやっぱり脅威を覚えるのじゃないか。そのことは、これは三次防にはなかったファントムなんか考えてみましても、これはそんなに足は長くないとはいえ、やはり脅威に感じている国もあるわけです、現実に。そういう点から考えて、防衛費が一直線に伸びておるということについては、これはどういうぐあいに御説明されますか。
  280. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 私のところに外国の方もよく見えますし、東南アジアの人も見えますが、私はこういう数字を申します。日本は人口一億で自衛隊は二十六万であります。ところが、北鮮も台湾も人口千四百万でおのおの四十万ぐらいの兵力を持っております。韓国は三千四百万で六十万の兵力を持っております。ヨーロッパ、たとえば英、仏、西独をとってみますると、防衛費が年間二兆円であります。しかし、人口は日本の半分であります。そういったような比較から考えてみましても、日本が非常に強大な軍事力を持っている、あるいは持ちつつあるというふうには言えないのではないかという点が一つであります。  それから、やはり東南アジア諸国の人たちの話を聞いてみますると、今日の自衛力、今日の防衛力を脅威と考えておるのではありませんで、やはり過去第二次大戦までにおいて日本が海外にいわば不当な進出を行なった。そういったことは全く忘れられないということ。しかも彼らの発想によれば、経済権益というものを守るために軍事力が行使されないはずがないであろうということ。しかも軍事力を使おうと思えば、かりにGNPの一%以下しか防衛費に使っていないということは、逆に言うならば、いざというときには何%でも使える余力を持っている、そういった強力な経済力と技術力を持っておる。そういった体制そのものについて脅威を感ずると言えば脅威ということでありまして、防衛力あるいは日本を守るための自衛力というものは、これはしようがないのだというふうに私どもは理解しておりまするし、最近新聞で伝えられておりまする周恩来首相の発想も、どうもそういうふうに思います。したがいまして、この間で欠けているのは何かといいますれば、われわれの実態というものを東南アジア諸国の人たちによく認識させるということ、それから全般的な外交姿勢の中で、平和的な平和愛好国民であるということをよく知らせるといういわばコミュニケーションをもっと太くしていくということではなかろうかというふうに思います。
  281. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の持ち時間がだいぶオーバーしているらしいんで、あまりたくさんできないんですが、しかし局長、ぼくは久保局長のこの間の討論会を聞き、きょうの答弁聞いていまして感ずるんですが、いまの説明を聞いておりましても、日本は確かに一億の人口で二十六万ですか、自衛隊の人数、そういうような比較をしていらっしゃいますが、東南アジアの諸国あるいは世界の各国と比較して、日本とはずいぶん違うと思うんです。どこが違うかといいますと、日本は少なくともやっぱり資源がありませんし、人口は多いし、貿易にたよってやらなきゃいけない国ですね。東南アジアの国々というのは資源も案外豊富です。そういう点から考えますと、もう日本は要するに貿易といいますか、そういう面で相当力を入れていかないと将来成り立っていかない国ですね。そういうふうな国が、よその国と同じように防衛力を持っておったんじゃどうしようもないと私は思うんです。商売するときに、頭に権力をもって商売するというわけにいかないと思うんです、実際問題として。やはりいま局長がおっしゃったように、どこを切ってもやっぱり平和愛好の国民である、そういうようなものが出てこないといけないと思うんです。確かにそのとおりです。ところが、現在日本のあれを切ってみますと、平和愛好の国民であるなんということは、世界の世論調査をやっても全然出てこないですよ。やっぱりほんとうに、私きょう具体的に持ってきておりますが、もう時間ありませんので申し上げるわけにいきませんけれども、そういうような結果が絶対出てこない、現在のあれからいいましても。そこで私は、そういうふうな考え方はやっぱりいけないんじゃないかとそう思うんです。  それから、先ほどのGNPの問題にしましても、討論会のときにはずいぶんイギリス、ドイツ、フランス等を例に出して、そういうような国々が五〇年代六〇年代には相当な緊張状態があった。GNPから考えても七%、八%、多いときは十何%も出しておる。だからスローダウンするのは当然である、緊張がなくなってきたんだから、そういう国々はスローダウンしてくるのは当然である。こういうふうな発言のしかたをしておりました。しかしながら、私たち考えてみますと、そういうふうな国々、イギリスとかドイツとかフランスとか、こういうふうな国々とやっぱり対等に比較するわけにはいかないんじゃないか。やはり日本の国にはそういう国々にはない憲法上の歯どめがあるわけですね。こういうような点から考えてみますと、やはり防衛力全体の防衛増というものを考えた場合、やはりもっと日本の国というのはほんとうに慎重に防衛力の増強というのはやっていかないといけないのじゃないか。もうほんとうに現場の状態でも私たちはオーバーになっているのじゃないかという考えがするわけです。国民全体としても、四次防は相当多いなあと国民一人当たりの負担が四万二千三百円だなんということになってくると、やはりこれはおじいさんからおばあさんまでだという、防衛庁の試算だというんですが、そういう点から考えてみましても、これはとてもじゃないけれども国民全体を納得させるためには相当のPRと相当のあれが要ると思うのです。そういう点から考えてみますと、私は四次防そのものについてはこれから相当議論をやらなくちゃいけない問題だと、こういうように考えております。  まあいずれにしましても、こういうような私は感じを現在持っているわけですが、ほんとうはもっと具体的な問題としてT2の問題、T2改の問題等もずいぶんやりたかったのですけれども、時間がありませんのでやめますけれども、次回にやりたいと思いますが、T2の国産の問題がありましたね。それからT2改ですね。これも国産に切りかえるということについては、新聞の報道が間違っているかどうか私知りませんけれども、私たちが知る範囲で考えてみますと、相当防衛庁が圧力をかけて国産に切りかえた。防衛庁長官に至っては、朝がけをして首相官邸に乗り込んでやったなんということが載っておりますが、まあ事実かどうか知りませんけれども、こういうふうな問題はやはり産軍複合体なんという問題等考えてみましても、これは将来大きな問題になってくることは私は当然だと思うのです。こういうことも含めまして、防衛庁長官並びに局長見解をお伺いして、とりあえずきょうの私の質問は終わっておきたいと思います。
  282. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 日本の国は、他の国と比較をする場合に、日本国憲法というものを持っておるたてまえというものを忘れてはならぬという御指摘はまさにそのとおりで、われわれも決して忘れておりません。日本の防衛力は、必要最小限度ということばを常に頭に冠して、久保局長も申し上げましたように、いわゆる憲法精神にのっとりまして自衛に徹する、専守防衛に徹するという、これはことばは抽象的でありましても、具体的にこれをあらわし得るものとしての自衛に徹し専守防衛に徹するというたてまえで言っておるわけでございまして、そういうたてまえとしての、先ほども平和時における防衛力の限界その他をいま鋭意策定をしよう、皆さまにお示ししようということを考えておるわけでございます。単純な諸外国との経費、人口その他の比較をもって足れりとしておるというようなことでないことは申し上げるまでもございません。日本の立場としても、貿易立国であってその点を十分考えるべきだとおっしゃること、そのとおりでございます。  したがいまして、国防の基本構想も、現在の国際情勢の中において戦争が起こらないように、侵略が起こらないように抑止力としての自衛力、最小限度の自衛力をつくろうということが根本の考え方である。これも御指摘のようなことを前提として考えておるわけでございます。そういう点は、これはやはりいろいろ説明をしまするしかたというものは相当にくふうが要るわけでございまして、防衛局長が申しましたように、今度の四次防というものを三次防に比べて倍じゃないかという、これはまあたいへん端的なことばでありますけれども、どうして倍になっておるか、その場合にどういう意味であるかということは、ひとつ簡潔に私どもも御説明をできるようなことをいま考えておるというふうなところでございます。仰せになりました趣意、憲法のたてまえにのっとりまして、最小限の自衛力、専守防衛というたてまえは固くとってまいるということでございます。  なお、具体的なT2あるいはEST2改の問題でございます。これは御承知と思いまするが、これの研究開発に着手しましたのはもう相当前のことでございます。練習機のT2につきましては、すでに四十七年度の予算に二十機の製作を予算として計上をいたしました。御承知のように、いわゆる凍結になり、最近にいわゆる確認解除ということになったものでございます。そういう状態でございまして、これをその性能その他にかんがみまして、近くF86Fという支援戦闘機が古くなってだめになるという段階で、わが国の国情といいまするか、周辺の状況に対処して適切な機種であるということで、支援戦闘機としてもT2の改を使いたいということで防衛庁はずっときておったわけでございます。途中で何回かチェックをいたしまして、この輸入機を想定をした場合に、金額が非常に高いではないかということで何度かチェックをいたしたようであります。チェックの結果、やはりこれを使うことが適当であるということで進んでおりましたが、このたび問題になりましたのは、現在の日本における円対策と申しまするか、国際通貨対策に貢献をする意味において、何とか防衛庁の装備で輸入ができるものがあれば輸入をするように考えてもらいたい、特にT2あるいはFST2改に関連をして輸入に切りかえることはできないかというきわめて強い要望が大蔵省から出てまいりまして、この点についての検討を私どももいたしたのでございます。いたしまして、一案をつくりましたが、この一案は、大蔵省としては了承できないということで、たいへんもみにもんだといいまするか、時間をかけて両者で検討をし合ったのでありまするが、両者の意見一致を見ず、国防会議において決定をしてもらうという段階になって、T2及びFST2改、両者とも国産でいこう、輸入をすることはやめようということに相成ったわけでございまして、そういう国際通貨対策と申しますか、円対策と申しまするか、そういう特別の必要による要望が出てきて、そういうことになったということでございます。
  283. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これで終わりますけれども、いまのT2の問題も相当いろんな問題を含んでいるわけです。むろんこの問題については後ほどまた時間を改めてやりたいと思うんですが、大臣に私もう一言だけ申し上げて終わりたいと思うんです。  要するに、大臣がいまおっしゃいましたように、憲法を前提にしてというお話がございました。これは、大臣おっしゃったとおり、私はそうだと思うんです。防衛庁の皆さん方がいろんな問題を話をするときに、憲法上の歯どめがあるんだということはやはり絶えず頭に置いてやらなくちゃいけないと私は思うんです。しかしながら、現実の問題として、いろんな説明をするときに、やはり四次防の防衛費がいかに安いんだと、いわゆる防衛費というのは非常に少ないんだということを説明するときに、必ず外国のいろんな国々の説明が出るんですよ、安易に。これはね、現実の問題として。イギリスやフランスやアメリカやね、全部出るんです。こういうのはやめてもらいたいと思うんですがね、大臣どうですか。
  284. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) これは皆さんが、それは不必要ではないか、膨大ではないかということをおっしゃるときに、大体やはり諸外国の例を引いておっしゃるということでございます。抽象的に、われわれは、これで最小限で、たいしたことはございませんという言い方では、何といいますかね、なかなかおわかりをいただけないので、ついそういう比較を申し上げると。GNPの一%というのもそういう意味で申しておるわけでございまして、何というか、えらい小さいぞという額を示すために諸外国の例を持ってくると、そういう意味ではないということをこれは御理解をいただきたいと思います。
  285. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こんな問題で、大臣ね、私が質問したとき、憲法を頭に入れてそういうことは軽々しく言うなと言っているわけです。そうですと言っておけば、それでいいんですよ。こういう問題は、大臣が弁解するとこちらもやっぱり一言言いたくなる、どうしても。やはり日本には憲法があるわけですし、よその国にはないわけです。要するに、憲法上の歯どめがないわけです。歯どめがない国と比較しちゃいかぬのです、安易に。安易にと言っとるんですよ。安易に比較しちゃいかぬと言うのですよ。だからこういうような問題は、やはりわれわれとしては防衛費が多いということを説明するときには、あまり外国の例は引かないですよ。防衛庁が防衛費が少ないということを説明するときに、アメリカやフランスやイギリスや、そのほかのところのことと比較して説明するんですよ。大体そうですよ、いままでずっと見ていますと。大体調べましたらそうです。ですから、やはりそういうような国々は憲法上の歯どめはないですから、大臣がおっしゃったとおり、憲法上の問題については大臣がおっしゃったとおりでいいんです。そういう精神に基づいて防衛の問題を考えなくちゃいけないし、また、こういうふうな防衛の問題を論ずるときに、やっぱり外国のそういうふうな例を軽々しく引いて、いつでも、あっちでも、そういうこと言って説明するというんじゃ、あの人はもう憲法のことは忘れているんじゃないかと思うんです、現実の問題として。あの人は一生懸命アメリカよりもこれだけ少ない、イギリスよりもこうだなんていうことを一生懸命引いているのをわれわれ国民が見ていますと、あの人はほんとうに、日本の国はアメリカと同じように要するに軍事力を増強してもいいと言ってるんじゃないかという、そういう反論があるんです、どうしても。ですから、そういう点から考えてみても、そういう点は自重してもらいたいと、こう言っているわけです。大臣、どうでありますか。
  286. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 御趣旨はわかりました。軽々しくは言わぬことにいたします。
  287. 中村利次

    ○中村利次君 私は、この情勢判断は外務省が作成をされたのだろうと思いますので外務省に質問しようと思ったのですけれども、先ほどから防衛庁のほうで大臣及び防衛局長がお答えになっておりますので、これはどちらでもけっこうですがね。私はこの情勢判断の前段と後段、私はこれはどうも納得できないのです。全くつじつま合いません。それともう一つは、少なくとも昭和三十二年の国防の基本方針、これは閣議決定されておりますけれども、資料にもございますけれども、「近隣諸国との友好協力関係を確立し、」云々、これはやはりまっとうなことが書いてあるのです。まっとうなことが閣議決定になっておるのです。ところが、前段はまあ納得できますよ。こういうこと、まあ大同小異でしょう。後段になりますと、「米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、」云々といって、それから、「種々の緊張要因が存在している。」、何だか国防の基本方針でかくあるべきであるというものと比較しますと、いかにも人ごとみたいな、何か第三者的なそういう判断になっているのです、これは。そうなりますと、あるいはまた一面では、地球上のいろいろな緊張なりいろいろな条件というものをこれはやはり分析検討するのはけっこうでありまするし、当然かもしれない。しかし、少なくとも日本の四次防をどうするかという場合には、これは日本を侵略する可能性のある、可能性についてのこれがやはり一番ポイントになるべきでしょう。そういう観点から立ってこの情勢判断を見ますと、全くつじつまが合わないし、あえて私に言わせますと、前段と後段の食い違い、あるいは何か人ごとみたいな、第三者的みたいなそういう判断に立たざるを得ないというのは、一次防、二次防、三次防、四次防という、こう何といいますか、惰性でもってきたあれが、久保防衛局長がおっしゃるような、緊張があるなしにかかわらず、やはり目的意識を持った日本の防衛はいかにあるべきかというそういうものではなくて、そういうものなら議論はかみ合うんです、これは。そうじゃなくて、やはり惰性的に、この四次防を策定するにあたって、当たっていようと当たっていまいと、つじつまが合おうと合うまいと、こういう情勢判断をしないと四次防というものは浮かび上がってこないというところに、無理にこういう情勢判断をしたんではないかという感じが非常に強くする、この点はいかがですか。
  288. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 情勢判断は、この起案をしてもらったのは外務省でございます。われわれもしかし協議に応じまして、こういうふうな情勢判断になったわけでございます。そうして国防会議でこういうふうにきめられたというものでございますので、私どもが御説明をしたわけですが、本来は外務省で情勢判断を起案をしてもらって、外務省で御説明をそういう意味ではしてもらうことがけっこうかと思います。しかし、いまおっしゃったような趣旨で外務省の情勢制断ができたということではないわけでございます。おっしゃるように、何といいますか、脅威があるかないかという周囲の脅威としての判定というものは、これには直接には入っておりません。これは周囲の武力及びその国々の意思、意向といいますか、そういうものであるわけでありまして、なかなかこれは意向なんというものはわかりにくいものであります。この周辺諸国の持っている武力というものは相当程度にはわかるものでございます。しかし、そういうものを出しますということは、いわゆる脅威という形のものと受け取られやすいので、現在の情勢判断として脅威ということばは、定義にもよりますが、脅威があるという私どもは考え方ではない。しかしながら、日本に対して何というか万々一の事態が起こらないとは言えないということでありますので、情勢判断としては外務省で作成になったこういうふうな情勢判断でけっこうであるというふうな考えでおります。
  289. 中村利次

    ○中村利次君 外務省もお見えになっているわけでありますから、外務省にもお伺いをしたいと思うのでありますけれども、これは日中国交の正常化は世論に、何といいますかね、好感を持たれながらこれは実現をしたのです。おそらく日ソ平和条約もそういう路線でおやりになると思うのですけれども、加えて、そういう外交路線で行って、日中あるいは日ソ不可侵と言っても、日本はこれは憲法九条があって、先ほどから議論になっておりますけれども侵略はできないのですね。できませんけれども、日中、日ソ間に、不可侵条約ということは表現上はこれは当たらないと思いますが、とにかくやはり平和裏に共存をしていこうという、そういうものが生まれる可能性があるとお考えかどうかお伺いします。
  290. 角谷清

    説明員(角谷清君) 私、必ずしも国際情勢全般について責任者でございませんので、その限度でお答え申し上げたいと思いますが……。
  291. 中村利次

    ○中村利次君 いまの質問だけ答えてください。
  292. 角谷清

    説明員(角谷清君) 外務省——政府はもちろんのこと外務省といたしましても可能な限り緊張を、いわゆる緊張緩和と申しますか、平和の方向に情勢一般を持っていくということは絶えず心がけておるところでございまして、先般の日中問題の中国との話というものもそういうような観点からなされたものでございます。日ソにつきましても、これは当然さらに現在の友好関係を進めていくというラインで、日ソの話もこれからますます進んでいくということになると考えております。
  293. 中村利次

    ○中村利次君 私の質問に対するお答えは半分でとまっているのです。私が質問していますのは、不可侵条約という表現はまずかろうけれども、便宜的にこの日中、日ソのこういう国交正常化あるいは日ソの平和条約、こういう路線がずっと積み重ねられて、今日以降不可侵条約みたいなものが日中、日ソの間に締結をされる可能性があるかないかを聞いています。
  294. 角谷清

    説明員(角谷清君) 将来のことは、これは現時点では何とも申し上げかねると思います。ただ、可能性があるかというような御質問でございますけれども、これは可能性という仰せでございますれば、これはまた情勢の次第によっては可能性が全然ないというようなことでは私はないと思います。しかし、現時点では何とも申し上げかねるということでございます。
  295. 中村利次

    ○中村利次君 これは外務大臣に質問すべきことでしょうけれども、きょうはいらっしゃらないから……。どうもいまの答弁なんというものは、まことにこれは失礼な話ですが、お粗末千万であって、では、日中国交の正常化がなぜ行なわれたのか、日ソ平和条約をなぜ外交路線として進めようとしておるのか、締結しようとしておるのか。こういうのは、とにかく日中の間においても戦争状態は終結をしたんですよ。親善友好関係をこれから国交正常化して持っていこうということを、これは可能性ということで私は質問をしましたけれども、今後の外交路線としては、やはり日中間においても、日ソ間においても、不可侵条約を結んでいこうという積極姿勢が政府にあるのかないのかということにもつながるわけですから、したがって将来のことだからわからないというのじゃ、これはてんから話にならないことでありまして、日本政府は、それでは国益外交をどう考えておるのか、それはどうですか。皆さんでお答えできなければ、また別の機会にしますがね。
  296. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 先生のお尋ねは、将来日中、日ソ間に相互不可侵条約というようなものを締結する可能性はないかという御質問かと思います。今般できました日中国交正常化交渉におきましては、共同声明に明記しておりますとおり、日中間では紛争はすべて平和的に解決する、そのために武力は相互に使わない、国連憲章に基づいてそういう原則を確認したわけであります。また日ソ間におきましては、共同宣言におきまして、相互に武力は使わないということは、これもやはり国連憲章の原則に基づきましてお互いに約束しております。したがいまして、将来それ以外にまた同じような趣旨のことを不可侵条約という形でもって相互に確認する必要があるかどうかという問題は別個の問題といたしまして、現在すでに日中間あるいは日ソ間には、それぞれ先生のお尋ねのような意味での、武力は相互に使わないということははっきり確認しております。そういう意味で、私たちいま答え得るところは、現在の時点において、すでにそういう相互の国家関係になっておるということを申し上げておる次第であります。
  297. 中村利次

    ○中村利次君 そうなりますとね、これは現時点の問題として、大臣がいらっしゃれば、私は外交路線といいますか、意欲といいますか、政府の姿勢といいますか、そういうものをお伺いしないことには納得できませんけれども、しかし現時点において、相互に武力は使わないということはもう確立されておるということになりますとね、これはやはり情勢判断がますますおかしくなっちゃう。防衛庁長官、そうですよね。「地域的ないし期間的に限定された武力紛争の生起する可能性を否定することはできない。」、これは日本の四次防を策定するにあたっての情勢判断なんです。国際情勢の分析もここに書いていただいているわけでは私はないと思う。そうなりますと、全くこれはつじつまが合わないことになるのですが、どうですか。
  298. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ただいま私が申し上げましたのは、国連加盟国として当然の義務である武力不行使ということを、日本がソ連との間あるいは中国との間に約束している。それをさらにいま申しました共同宣言あるいは共同声明の中で確認しているということでございまして、これは国連加盟国である以上当然の義務であります。そういう義務を各国が持っているにもかかわらず、なおかつ義務に違反して武力が行なわれるということが現在まだ世界のうちにあるということは認めざるを得ないと思います。
  299. 中村利次

    ○中村利次君 いや、よけいな答弁をしてもらっちゃ困るんですよ。世界の中にあるということは、地球上のいろいろな情勢分析はまた別にやってもいいでしょう、けっこうです。私はそのことを否定もしないし、しかしここで行なわれている情勢判断は、わが国の四次防の策定にあたっての情勢判断なんでしょう。わが国の安全に対して脅威があるのかないのか、侵略の可能性があるのかないのか、そういうのが前段として、だから四次防をこういうぐあいにするんだというふうにつながっていくはずですから。したがって、そういう意味からしますと、いまのお答えなんというものは全くこれはよけいなことでございまして、これは私が申し上げているように、日本の四次防の策定にあたって、この情勢判断というものはおかしいではないかということを申し上げているんですから、それについてお答えをいただきたい。
  300. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) この情勢判断については、全般的なアジアの大勢について触れられてあるわけでありますが、日本についてそれではどうかということは必ずしも明確ではございません。しかしながら、日本についていいますると、一般的に申せば、大規模な武力紛争が発生する公算は少ない、おそらくほとんどないものというふうに私どもは考えておりますから、日本についてもそうであろう。しかしながら、地域的あるいは期間的に限定されたような武力紛争というもの、これは第二次大戦後の各種の紛争の特徴としまして、大戦以前と以後の戦争形態を区別するものだと考えまするが、そういった事態は世界各地に起こっているので、将来日本について起こり得るとすればそういうような事態であろう。そういった事態が日本について全く起こり得ないと断定する論拠はないということが、そういう紛争の成立する可能性を否定することはできないという趣旨であります。
  301. 中村利次

    ○中村利次君 それはどんな情勢だってつくろうと思えばつくれるんでしょう、それは作文として。しかし私どもがここでやはり問題にしなきゃならないのは、誇大妄想で現実の四次防を策定しようということではないんでしょう。むしろこれは防衛局長、きわめて不本意な答弁をしていらっしゃるんじゃないかと私は思うのですよ。これは間違っているかもしれないが、私の判断では、あなたの主張というか、防衛計画に対するかくあるべしというものは、こういう情勢判断があろうとなかろうと、独立国としてのやはり専守防衛の自衛力というものはいかにあるべきかということについては、ほんとうはやりたいんじゃないかと思うのですよ。ですから、非常にそういう説明をされてもちょっと空虚になるんです。ですから、防衛局長の構想でいきますと、これは四次防の議論というものがかみ合うんですけれども、私はそれ以前の情勢判断について、これはどうしても納得ができない。ちぐはぐであるからこんなものは削除されたらどうですかと、あるいは別にもっと当を得た情勢判断をお出しになったらどうですかという、そういう前提があってこういう質問をしているんですから、ですからこれは地球上にいろんなことがある、それがアジアにも日本を取り巻く情勢としてそういうことが将来惹起しないとは限らないという、そういう議論はこれは全く無意味であってナンセンスだと思うのですよ。
  302. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 私の考えは先生も言われるようなところにもあります。専守防衛に徹したような防衛力を建設するということではありますが、さてその防衛力が何を対象にするかといいますると、これは四次防期間中にそういった事態が起ころうということを想定するわけではございません。先ほど申し上げたように四次防期間中も、おそらくは七〇年代を通じても平和な情勢が続くだろうと思います。しかしながら、やはり防衛力を持つからには何らかの対象を考えるわけでありますが、その対象というものは、大規模な武力紛争というようなものでは必ずしもありませんで、ここに書いてありますような、起こるとするならば、国際情勢というものは流動的であり変化しやすいものでありまするから、将来起こり得るとするならば、地域的ないし期間的に限定された武力紛争であろう。したがって、そういうような事態に対応して防衛力を漸進的に整備するという程度でよかろうというような考え方であります。
  303. 中村利次

    ○中村利次君 これはどっちかに統一をしてもらわぬと困るんです。こういう情勢判断の上に立って四次防が策定されたというのでは私はあいまいもことしてこれは困ると思うんですよ。ですから、いずれかにこれは明確に、四次防策定の前提としては、こういう前提がこうなんだということを実にすっきりした形でお示し願わないとこれは困ると思うんですよ。  もう時間が非常に少な過ぎて質問なんかろくすっぽできないんですけれども、それから、これは角度が全然違ってきますけれども、さっきの日本の外交路線、政府のあれについて私はこれはたいへんな不満をここで申し上げておきたいと思うんです。日中の国交正常化から日ソ関係、こういうものがやはり昭和三十二年の国防の基本方針、閣議決定をしたその外交施策、外交の意欲に沿って、やはり平和に徹した、完成されたものにならない限りはそういう路線を敷いていると私ども思っているのに、どうも幾ら事務レベルであっても将来のことはわからないというようなそういう何といいますか政府の姿勢であっては、まさにこれは何といっていいのか困ると思うんです。ぜひこれは防衛庁長官、大臣でございますから、ひとつ政府部内でどういうことになるのか、外交路線、政府の意欲というものを統一見解にまとめて、いずれ次の機会に質問するときにははっきりした答弁をお願いしたいと思います。  それから、安保と自主防衛、これはどうもわけがわからぬようなことばかり続いておりますけれどもどうですか、これは。
  304. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 安保と自主防衛ということは、この防衛構想にも書いてありまするように、わが国の事情なり、現下における世界の情勢ともいえるでしょうが、ことに日本のように敗戦のあと完全な武力喪失、武力をなくしたというふうな国が、いま国力、国情に応じて漸進的に整備をしておるというような段階の国においては、自分の力だけでがんばってみましてもとても安全を確保するというわけにまいりません。ことに日本は憲法のたてまえがあり、専守防衛ということでもあります。そういうたてまえで、やはり米国との安全保障体制というものを堅持をするということにならなければならない。安全保障体制というものを前提にするというか、基調にするというか、堅持するというたてまえをとらなければならない。しかし、その場合、国力がだんだんと経済的に伸びてくるに従いまして、やはり自分でできるだけの自衛力の整備、これはもちろん専守防衛という、自衛防衛というたてまえに徹したものでありまするが、自分でできるだけのものはこれを整備をしていかなければならぬ。これを自主防衛を強化するということばであらわしたこともあるということでございまして、その両者の重さのつり合いということはあるわけでございます。現在のわが国の体制は、安全保障体制というものを堅持をして、そうして憲法のたてまえ、自主防衛、自衛というたてまえにおいて、できるだけの防衛力の整備はやっていくということになるということであると思います。
  305. 中村利次

    ○中村利次君 時間もまいりましたから、もうあと一、二点、ぜひただしておきたいことを申し上げたいと思いますが、これは非常に短い時間でとても議論にはならないと思いますけれども、問題提起だけはして、お答えを願いたいと思うんですが、先ほど峯山委員のほうから質問がございまして大臣の答弁がございましたけれども、総理の最終的な決着で、輸入か国産かという、兵器の国産に落着をした。これは実は私はやはりたいへんに重大な問題だと思いますね。そういうことは断じてないとおっしゃるかもしれませんけれども、ときたまたま、先ほど官房長官にお尋ねいたしました、通産大臣や科学技術庁長官などが国防会議のメンバーにお入りになった。これは古今東西を問わず、軍需産業——日本の場合、防衛産業と呼んでおりますけれども、それとやはりこの軍との関連というものはたいへんにこれは重大な歴史的な関係に事実あるんです。これはどんな好不況にかかわらず、この兵器の生産なんというものは四次防においても三次防においても、とにかく装備の充実が行なわれてきた。非常に防衛産業にとっては安易なマーケットなんですよ、これは。ですから、こういうことはきわめて短い時間でとてもとても論議し尽くすことはできませんけれども、たいへんに重大な問題で、政府がやはり今度この国産に踏み切ったということは、これはある意味では私は一つの出発点にならざるを得ないことになるのではないか。特にこの円対策の問題で輸入にしようという相当の強い意見があったのをあえて押し切って国産に踏み切ったということは、非常にこれはスタートとして重大な意義を持っておると思いますし、そこに通産大臣が国防会議のメンバーにお入りになった。それから科学技術庁の長官の問題にしたってそうですよ。これは戦争によって科学というものはたいへんに向上します。第二次大戦で飛行機の性能なんというものはこれは想像もできないほど向上をしました。それから軍需産業というものは非常に技術のレベルアップをすることは間違いありません。その場合、科学技術庁というものが、全く科学技術庁というのは平和的なもの以外は断じてこれは関係がないのだと言って言い切っておれるのかどうか。平和的な技術水準などというものはどんどん置き去りにされて防衛的な技術水準は高度に発展をしていく。こういう非常に大事な問題がからんでおるときに科学技術庁長官が国防会議のメンバーにお入りになった。これは相当政府もこの国会でも議論を尽くさなければならないところじゃないかと思うのですけれども、とてもこれは短い時間ではどうにもなりませんから、ただ黙って問題提起だけではどうも相済まぬわけでありますから御答弁をいただきたい。そういう点どういうお考えを持っているか。
  306. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 何といいますか、私どもの装備を国産するかどうかという問題そのものはおっしゃるとおり重大な問題であると思います。今度のしかしT2の問題はそういうふうな意味で取り上げられるようなものではないのでありまして、経過は、すでにもう長い間の研究開発の時代を過ぎて、そうして性能が一応りっぱなものであるという見通しがつき、試作機が二機二機と四機できて、そうして試験飛行、実験飛行がどんどん進行をしておると、要求項目もほぼ達成できるという見通しがついたという段階で四十七年度予算に二十機というものがもう組み込まれたと、そういう段階のことなんです。そうして問題が起きましたのは、たいへんいま円問題といいまするか国際通貨問題が非常に重大なときになりまして、その意味で何とか円問題に、円対策に貢献できるものがあれば防衛庁としても協力をしてもらいたいし、それにはT2関係はどうだということになったのでございます。そうして、それで私どもも協力する意味で一案をつくりましたが、この一案は大蔵省としても了承をしないということでありました。ずいぶんもんだ末、もともと防衛庁が考えており、ある意味においては、いままでは大蔵省も認めておったというT2もFST2改も国産にするということに落ちついたというのでございます。基本的にお述べになりました問題は、これはもう政府としてもずっと前々から考えておるので、防衛庁の装備というものについて、何といいまするか、これは一つの問題は価格の問題がございます。日本における装備というものは、たとえば航空機にしましてもたくさんの航空機が必要でない。これは量産をし適当な価格に落ちつくような機数が要らないという問題がありまするので、米国などのように基本数がたいへん多い国に比べまして、同じような技術、同じような努力をしましても価格が高くなるという一つ弱点があるわけであります。しかし、その弱点がありましても、やはりできるならば重要な装備というものは、これは技術の問題があるわけでございまするし、経費、財政の問題ももちろんあるわけですけれども、国産をすることのほうが補充、部品整備等の問題、また日本人に適した開発というような面についても、やはり望ましいのは国産のほうが望ましいということがあるわけですから、価格の問題が若干の許容される範囲であるならば、高くなっても国産をやるということで従来まいっておるわけでございます。これがしかしいわゆる産軍癒着といいますか、そういう問題とからんでまいってはならないということは、これはもう当然基本的に考えておるわけでございまして、そういう点については、現在われわれがやっておりまする国産についてそういう問題がからんでおるというようなことはございません。これは明瞭に申し上げておかなければならぬと思うのであります。  そうして、今度通産大臣が入ってくるようになりましたが、まあいままだ案として決定をしたということでございまして、これは従来も通産大臣というものは、正規の何といいまするか議員ということではありませんが、もうずっと国防会議に参加をする議員であったということでございまして、このたび特にT2の国産化なんかということにからんで通産大臣が入ったというようなことはもう毛頭ございません。その点は御理解をいただきたいと思います。
  307. 中村利次

    ○中村利次君 これは毛頭ないとおっしゃいましたが、オブザーバーとして出られるのと議員として出られるのは私は違うから今度ああいう増員をやられたと思います。しかしこの問題は、これはここでもう時間がすでにオーバーしてしまったいま、とてもとてもこれは追っかけられるものじゃありませんから、またいずれ質問をいたします。  最後に、これは全く角度を変えて、今度の四次防の主要項目の中の最後の備考に「自衛隊員の生活環境の整備充実、」、それから「処遇改善」、こういうものを「推進するものとする。」ということが書いてある。私どもは、この間内閣委員会から北海道の自衛隊の、特に注文をしまして隊員の隊舎といいますか、その他の福利厚生関係も見せてもらってきました。これは防衛論争は大いに国会の場において堂々とやるべし、いまある隊員の処遇、福利厚生等について、どうも何だか日陰者だからやりにくいからほうっておけという、そういうことではこれはおさまりはつかないと思うんですよ。視察報告の中にもこのことは指摘をしてあるはずでありますけれども、これを、具体的に備考の中に見えていますから、どういう予算でどういう改善の施策を推進されるのかお伺いをして私の質問を終わります。
  308. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 御指摘の問題は、皆さんの御視察の結果もいただいておるようでございます。おっしゃるとおりのことで、私どももこのたびの四次防において、従来なかなか果たし得なかったことを果たそうということで案をこしらえました。具体的なことは局長から説明をさせます。
  309. 高瀬忠雄

    説明員(高瀬忠雄君) 一般社会における生活水準の向上に対応いたしまして、隊員に対しまして、先ほど先生御指摘のような隊舎の改善とか、それから営外から勤務する宿舎の建設、その他生活環境の改善をはかろうということを考えております。同時に、御承知のように自衛官は一般公務員と異なりまして、二年または三年で退職をする。定年制がございまして、定年がまいりますれば退職するというようなこういった実態を踏まえまして、退職前におきまして、自衛隊においてしかるべき社会に通用する技能訓練を四次防におきましては、従前からやっておりましたけれども、特に拡充発展をいたしまして、そうして隊員の退職後の再就職の円滑化などをはかろうとしております。  で、いま御指摘の具体的な内容でございますけれども、これは毎年今後、年度の予算で確定することになるわけでございますけれども、まず第一に、生活環境の整備充実といたしましては、隊舎の改善を考えております。これは現在、まあ四十七年度の予算から見ましたわけでありますが、二段ベッドなどを一段ベッド化をいたしまして、そうして面積を倍にして、そういう施策を推進する。あるいは公務員宿舎がまだ十分でございませんので、これをできるだけ新築をし、ある場合には建てかえなどをいたしまして、場合によりましては規格を向上いたしまして、そういった住宅対策を推進する。そのほか隊員の生活環境を整備するために、体育館あるいはプールなどを整備し、あるいは食堂、厨房、浴場などの整備をはかる、こういったことを考えております。  それから最後に、先ほどちょっと技能訓練のことを申し上げましたけれども、退職する士・曹に対しましては、社会に適用する技能を習得するために、隊内あるいは隊外におきまして、しかるべく技術指導をいたしまして、就職援護に役立たせようというようなことを計画しております。
  310. 岩間正男

    ○岩間正男君 やっぱり疲れてくると答弁も長くなるし、質問も長くなるし、もっと要領を尽くしてやりたいと思います。まあ時間にも制限があるし、体力にも制限があるわけですから。それで、特に増原長官、少し弁解的なところが多いから、弁解は要らぬです。端的に答えてもらいたい。端的に質問します。時間ないからたくさんのことを言えないので、ほんとうに二、三、要点だけ話します。  第一に、ハワイの日米首脳会談でアメリカ側は、アジアの緊張緩和がもたらされたのは、単にニクソン訪中や田中訪中の結果だけではなく、その根底に日米安保条約などアジアにおける米国の戦争抑止力が働いているからだと、こういうことをこれは力説していますね。抑止力による力の政策というものをここで主張した。こういうふうに聞いておるわけですが、防衛庁長官はこれをどう考えられますか、端的に言ってください。
  311. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 私は、そういうあれを正確には聞いておりませんが、抑止力が貢献をしておるという考え方は、何といいますか、程度の差はありましても認めていいのではないかと思います。
  312. 岩間正男

    ○岩間正男君 それで、防衛庁長官何ですか、あの会談を正確に聞いていないのですかね。この点をこれは力説したわけでしょう。ことに日中国交回復正常化の前だから、日本が非常に中国に傾いているということにこれはいろいろな心配をしたのはアメリカの立場でしょう。そしてそのために、安保がこれは土台がくずれては困る、こういう点からやっぱり力の政策というものをあくまで主張した。何かその点については、こういう立場に基本的に立つのかどうかということを聞いておるのです。そういういまの答弁は非常にあいまいですね。もう一回お聞きします。どうなんですか、これは認めますか。アメリカの立場、認めますか。
  313. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 私が承っておるのは、日米安保体制はこれを堅持するということをわがほうが申し述べ、米国としても日米安保体制を堅持していくということを申し述べたということは承っております。日米安保体制というものが、何というか抑止力というふうな作用があるという意味において、初めに申されたことが、そういう意味ではしかるべきことだと、こういうふうに考えております。
  314. 岩間正男

    ○岩間正男君 日米安保体制というのは、これは力の政策ですよね、具体的にもうやっていることから。先ほども制限令の問題でこれやっていますけれども、これは力の政策ですよ。その上に立っているのですから、これを堅持する、こういう立場で日本の防衛に対する態度というものを、これは基本的にアメリカのほうに訪日前に明らかにしたと、こういうことなんですね。それについて明確な態度を、あなたそんな力の立場でなければもっと共存の立場をとるのですか、どっちなんですか。どうもそこのところが明確でない、どっちなんですか。アメリカの力説しているこういう点に立つのか、それともそうでないのか、これ意見あるのかどうか。ここのところ基本的な問題ですからね、はっきりしてください。そういうあいまいな答弁はだめです。
  315. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 平和共存という立場をとっておることはもうもとよりでございますが、平和共存という立場と日米安保体制というものとは、矛盾をするとかなんとかいう関係ではないというふうに考えております。
  316. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはことばのあやにすぎないので、事実は、平和共存といっても、これはまあ平和共存というのは一つのまくらことばに使われている場合と、実際平和共存を貫くような政策をやっている場合と非常に違うわけですね。平和共存をうたい文句にしているけれども、やっていることはどうか。さっきも夜と昼の話を私はやった、二面外交の二つの顔について、白い顔と黒い顔。実際やっているのは黒い政策をどんどんどんどんしている。これは全部力の政策じゃないですか。そういう立場に立っているなら、平和共存でございますと、こう言ったって、迷いがあるのかも知らぬし、内心での葛藤があるのかないのかわからぬけれども、しかしそれは事実そういう方向をとっている。当委員会で、これは大平外相はこういう答弁をされているんですね、九月の十九日ですね。外交には力が必要であるかどうか、力の外交に立つのか、自衛隊というものはこれは外交に必要であるかどうか。こういう質問に対して、これは外交には力が必要であり、自衛隊もその力の一つに入る。こういうような答弁をされているんですね。こういう点では、これは力の政策というのが背景にはっきりあると思うんです。これがまた同時に、田中内閣の基本的な防衛政策の姿勢になっていると、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  317. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 大平外務大臣が申されたいまのことばは私も聞いておりました。そのとおりでありますが、これがいわゆる力の政策であるというふうには私は考えておりません。力の政策というのは、力を大きく、何というのか、主柱として外交をやっていくというふうな意味であると思います。そういう意味で大平外務大臣が力ということを言われたのではないと私は思います。
  318. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう解釈、ことばの問題ではないんですがね。とにかく力にたよるのか、それで外交をやっていくのか。はっきり自衛隊が必要だと、外交を展開するには必要だと、こう言っているんですね。同じようなことは、これは中国から帰った直後の六日、これは外相はこういうことを言っていますね。米国としては、力が背景にないと実りある会談はむずかしいというふうに考えているようだ。こういうことを言って、さらに、サンフランシスコ条約体制を堅持したままで和解の糸口をつかめないのかというのが日中国交回復交渉の課題だと。事実そういうことが非常にあそこの日中会談の中で実は時間のかかった問題じゃないかというふうに思うわけですね。だからサンフランシスコ体制、安保体制、この体制を堅持しながら、しかもこれくずさないで日中国交の糸口をつかめないか、ここに苦心をしたんだと言われていますけれども、その基本的な姿勢というのはよくこの外相のことばにあらわれている。これは認めますか。
  319. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) サンフランシスコ体制というのは、日本が一つの対象国となった講和条約を結んだというときの体制だろうと思います。これを一つの基本とし、日米安保体制を基本としてやるということは、おっしゃるように力の体制とかなんとかというものとは考える必要はないと私は思います。
  320. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはことばにとらわれる必要はないと思うんです。内容が問題なんですね。ですから、力の政策ということばが好きでなければ別なことばでもいいが、実際やっていることがどうかという問題にこれはなるわけです。そういう中で、これは平和共存の体制をとるんだと言ったが、これはどうですか、いま日本のやっているやり方ですが、一つは四次防の問題がはっきり出てくるわけです。これは世論がはっきりしているじゃないですか。これは平和共存の政策と非常に矛盾するじゃないかと、こういう意見がある。それから、さっきから問題になっているこの政令の改正、こういうようなかっこうで全くアメリカに道を開いている、そうして協力態勢の中にどんどん道を開く。それから戦車の問題なんというものは、アメリカの戦車がベトナムで使える。こういうかっこうで、しかも統一見解によるというと、米国のものであれば全部修理ができる、それをどこででも使える、これは多角的軍事同盟の突破口になるわけです。そういうことは事実もうなっているんです。なっていることを証明している、この戦車問題。背景は強いですよ。そういう点から考えるというと、平和共存のほうにこれはいっていますか、この政策は。車両制限令の問題一つ見てもいい、横須賀の母港化を見てもいい、それから今沢海岸から富士の演習場のあの姿を見てください。そうして、これはへたをするというと、清水港の新しい港がつくられている、これにアメリカがやっぱり目をつけているんじゃないですか、実は。全天候の上陸地点として。これは中曽根防衛庁長官は、一昨年の予算委員会の私の質問に対して、そういうことは考えていない、こういうような実態はアメリカが要請した事実はありますけれども、それについては断わる方向で交渉する。こういうことで、いまこれは具体化されていません。けれども、どんどんこれは進められているというのがいまの姿じゃないですか。ですから、日本の軍国主義化の問題というのは単なるかけ声じゃない。事実をもってはっきりこれは検討していけば、そういう方向にいっているんですね。この矛盾というものがはっきり四次防の中に出てきたし、車両制限令の中に出てきたし、基地は縮小すると言いながら、実質的には全くアメリカの基幹的なこの基地というものは増強されているという姿は至るところで見ることができます。横田を見たってそうです。ミドルマーカーをつける、あの前後の措置というのは行ってみればわかる、そうでしょう。こういう問題を非常にかかえていながら、一方ではうたい文句に平和共存というようなことを言っている。  それから日中国交回復は、実際は日中復交によって逆に日本のこのような武装強化の体制というものが強化されるということになったら重大な問題だと、口実に使われたらたいへんな問題。この前のニクソンのあれに似てますよ。訪中問題、そして日中共同声明出された、それからベトナムの侵略体制が実に激しくなっていった。つまり、各個撃破政策をやった。それでもって話をつけておいて、そうして今度は実際は全力をあそこに集中していくというようなそういうやり方の方向に道を開いた。そこへ日本が乗っかっていくというようなことになると、この四次防の問題というのは非常に重大な問題をはらんでいる。これはアジアの諸国を刺激をしていく、こういうことがあると思うんですが、この点についてはどうですか。
  321. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 四次防というのは毎毎申し上げておりまするように、わが国における防衛力というものは必要最小限度の自衛に徹する、専守防衛に徹する自衛力をつくっていくという三次防の延長としての四次防というものを計画をしておるわけであります。いやしくも近隣の諸国に侵略の脅威を与えるようなものは、量においても質においても持たないというたてまえでやっておるわけであります。四次防の内容は、また時間がありますれば具体的なこまかい説明をいたしまするが、そういうものとして策定をしたわけでございます。平和共存の趣旨と背馳するというふうなものではございません。御承知のように、わが国の防衛の基本方針におきましても、平和主義の国連の考え方を基調としてまいる。そうして、国連の憲章でも認めておると申しまするか、おりまする個別的または集団的な安全保障の措置をとるという意味で、米国との安全保障体制を持っておる。これはそれぞれの諸国、いわゆる平和共存というたてまえをとっておる国が、そうした集団的安全保障体制をそれぞれ多くの国がとっておるということもあるわけでございます。これは決して平和共存のたてまえと相背馳するものではないというたてまえでございます。そういう意味で、私どもは四次防が平和共存という日本のたてまえと背馳をする、近隣の諸国に侵略の脅威を与えるというふうなものではないというふうに考えております。
  322. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ弁解やそれから説明がどうかということ、これは国会でよくはやっているが、こんなことで国民はだれも承知していませんよ。どんどん四次防をやっていながら、四次防一つ見て、平和共存政策のあらわれだと言ったら、全くだれだって矛盾にほんとに笑いを禁じ得ないと思う。だからここでは実際うまいことばでどう言ったかと、そんなことは問題じゃないのです。事実は何をやっているかという問題です。F4Eファントム一つ見たってどういうことなんです。だからこれはここで議論始めると具体的な問題をどんどんあげなくちゃなりませんからやめますけれども、これ一つ見たってどうなんです。あれが一体ほんとうに、何か専守防衛の、そういうことにはならぬでしょう。  そこで、まあ時間がないから次の問題に移りますけれども、四次防の問題に戻って聞きますが、具体的に聞きましょう。三機種二十七億の修正削減や九百五億の国庫債務負担行為の凍結をやって、これをたな上げして、凍結たな上げをやったわけですが、これは兵器国産に何か支障がありましたか。
  323. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) ただいまの御質問は、修正によって頭金の削除並びに凍結によってどのような影響があったかと、こういう御質問のように解します。航空機のような大きな装備品を購入いたしますときは、従来とも契約の段階で頭金を支払うということにいたしておりますが、今回の場合、修正によりまして頭金を支払わないで契約するということになっておりますので、実はわれわれとしてはそういう経験がございませんから、これから実は交渉いたさなければならないわけでございますけれども、頭金を支払うことによりまして、実は業者が材料の手配をするとかあるいは生産設備の準備をするとかいうような資金を国がめんどうを見ることによりまして、逆にまたその分が金利分を安くし得る、安く調達するという利点がございます。したがいまして、頭金の削除によりまして、要素といたしましては、あるいは契約価格につきましてコストアップという面が生じないわけではございませんが、この点は今後の折衝によってなるべく——なるべくじゃなくて、必ず予算金額の範囲内でおさまるように努力いたしたいと思っております。  それから凍結によりまして、従来は何ら調達の準備をいたしてございません。もし凍結がなければ年度当初から調達準備が始まっていたかと思いますが、したがいましてほぼ六カ月ほど準備の作業がおくれております。この関係で生産がやはりほぼ半年おくれたことになりますし、防衛庁といたしましては、契約するものの入手する時期が当初におきましてはやはりそれだけのおくれを来たすということになろうかと思っております。
  324. 岩間正男

    ○岩間正男君 思っておりますでなくて、実質的にこれは支障があったかどうか。しかし、ほとんどこれは実質的には支障がなかったのではないですか。当時、財界、特に兵器工業界なんかでは、半年ぐらい支払いがおくれるだけで実害はない、結局は防衛庁が買ってくれるので生産に着手すると、こういったやり方でこれは進んでおるんじゃないですか。どうなんですか。この凍結で実害があったのですか。
  325. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) もし凍結いたしておりません場合には、わがほうといたしましてもさっそく調達の準備をいたしましたから、業者のほうも直ちに生産の開始準備をいたすというかっこうになったのではないかと思いますけれども、凍結という事態に入りまして、私もしばしば責任者とも話し合ってみましたが、やはり不安のために何ら手をつけ得ないというのが実情でございました。したがいまして、それなりの技術屋あるいは労務者をかかえている企業といたしましては、あるいは若干の設備を自己の負担でいたしました企業といたしましては、それなりの打撃はあったのではないかと思います。
  326. 岩間正男

    ○岩間正男君 全然影響ないということは、これは言えないんだが、ただ大筋からいって、これは実害をあまり与えていない。そういう点から、ちゃんとそれを見込んだから、あの凍結というのはこれは政府のほうでのんだんじゃないですか。むしろもうこの凍結は国会切り抜けのほっかぶりにすぎぬ、単なるゼスチュア、こういうかっこうで、こういう性格が非常に大きかった。こういうことでこれは終わりを告げたように思う、今度のやり方を見ますと。そうでしょう。そして四次防を決定した。これは十分に野党にもはからない。それで形式的に御承知のようにもう凍結解除をやってきた、そういう形でしょう。だから、あそこの半年間というのは、これは凍結をやったんでしょう。しかし、それで実害はそれほどない、国会は重大な段階で、あの問題が継続すればこれは佐藤内閣が倒れるところまでいきかねない問題だったですからな。ところが、ああいうかっこうでこれは収拾をしたということは、今日の時点ではっきりこれに対してやっぱり反省して、これに対する批判をしてみるというのが非常に重要だと思うんです。  こういう点から考えると、私たち共産党はこれは反対した。第一、このような実質的に四次防をどうするかという課題と実際はこれは取り組んでいない。結局は四次防を認めることになる。四次防の案ができればこれによって、これは結局四次防をちゃんと認めるような、そういう形になってきたわけですね。結局はこれで国民を欺くような結果になってしまった。そういう点からわれわれは、この凍結にはこれは非常に欺瞞政策だという点から反対をしたわけであります。そうして問題は、この四次防の本質というものを徹底的にやっぱり明らかにするということ。たとえばこれはニクソン侵略とは一体どういう関係があるのか、日米協同作戦に対して一体どういう関係があるのか、あるいはレアードの総合戦力という中での補完部隊としての役割りをどう果たすか、こういうような点から徹底的にこの本質を追及する、そうして四次防というものについて、ほんとうに国民の前にこれを明らかにする。そここそがほんとうに重大だと思ったのだが、実はこの問題に迫らないで、あのような形でこれは凍結された。そうして事態を収拾した。しかし今日から見るというと、これは四次防を結局はこれで一応承認——何というか認める、その前提に立ったようなかっこうになった。それで実際はほっかぶりでもって今度のような措置がとられた。こうなってきますというと、やっぱりあれに対する反省というものは、これは政党の責任において明らかにするということは非常に重大だと思うわけです。これについて答弁しろと言っても無理でしょうから、私はこのようなやり方で四次防が、今度の措置をとった、それでしかも内容というものはほとんどこれは変えられていない。これはヘリ搭載艦がチェックされたくらいで、実質的には中曽根構想時代のあの白書、そういうものの基本構想というのは全部生きているわけです。ここに基本的な問題がある。だから凍結に対する態度というものが、これは政治的に問われるところにきている。どうですか、われわれの見通しは正しかったんじゃないですかな。実際そういうかっこうでちょろまかされちゃった。四次防はまかり通っている。全くもうこれは部分的な形を変えただけで、それが金額については少し減らしたというかっこうで、もうほんとうに原則的なものは生きている。ここに大きな問題がある。これに対するはっきりしたやはり政治的な責任、これを明らかにしなければならない。どうでしょう。ただいま四次防は非常に国会の論議の中心になっている。あるいは解散の一つの動因になるかもしれません。今度の車両制限令の改悪と並んで、これは非常に大きな国会の論議の的になってくる。こういうところで、やはり政治的な立場を明らかにして、そうしていままでの各党のとってきた政治責任というものを明確にしておくことは非常に私は四次防の論議の中で重要だと思うのですが、これは答弁要りません。私はその点を明確にしておいて、私は時間がないですから質問を終わりましょう。
  327. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本調査についての本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。