運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-09-19 第69回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十九日(火曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員異動  九月一日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     峯山 昭範君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高田 浩運君     理 事                 中山 太郎君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 源田  実君                 長屋  茂君                 柳田桃太郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 山崎  昇君                 岩間 正男君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君        運 輸 大 臣  佐々木秀世君        自 治 大 臣  福田  一君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  濱野 清吾君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        内閣法制次長   真田 秀夫君        総理府総務副長        官       小宮山重四郎君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        外務省アメリカ        局外務参事官   橘  正忠君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  高島 益郎君        農林省農政局長  荒勝  巖君        運輸省航空局長  内村 信行君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        自治大臣官房情        報管理官     馬場 行雄君     —————————————   本日の会議に付した案件派遣委員報告国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (行政機関における情報処理問題に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一日、塩出啓典君が委員を辞任され、その補欠として峯山昭範君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、先般行なわれました国の地方出先機関公務員制度及び自衛隊実情調査等につきまして、派遣委員から報告を聴取することにいたします。  まず、第一班の報告を願います。足鹿君。
  4. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは九州班派遣報告を便宜私から申し上げたいと存じます。  高田委員長峯山委員並びに私の三名は、去る九月四日から八日まで五日間の日程をもちまして、鹿児島熊本大分の三県に出張し、国の出先機関公務員制度及び自衛隊実情調査いたして参りました。今回は特に、現在当委員会において農林省設置法の一部改正法案継続審査中なることにもかんがみまして、農業関係生産流通部門施設視察対象に加えた次第であります。  日程第一日は、航空自衛隊入間基地より自衛隊機YS11機にて海上自衛隊鹿屋基地に直行し、海上自衛隊第一航空群鹿屋教育航空群鹿屋航空工作所視察し、次いで大隅半島笠野原台地畑作かんがい事業進行状況現地調査いたしました。  日程第二日は、朝、鹿児島中央卸売り市場視察し、次いで鹿児島県庁を訪れ、知事より県勢概要開発計画等について説明を聴取し、さらに鹿児島空港に参り、運輸省鹿児島空港事務所長より業務説明を聴取いたしました。午後は、同空港より陸上自衛隊ヘリコプターHU1Bにて熊本北駐とん地に飛び、陸上自衛隊西部方面総監部、第八師団司令部臨時第一混成群陸上自衛隊熊本地区病院視察いたしました。  日程第三日は、まず熊本県庁を訪れ、知事より県勢概要開発計画等について説明を聴取し、次いで熊本行政監察局において、熊本地方法務局南九州財務局熊本国税局九州郵政局熊本労働基準局九州管区行政監察局及び熊本行政監察局よりそれぞれ概況説明を聴取いたしました。なお、熊本県庁においては恩給関係団体より陳情を聴取いたしました。午後は、九州農政局において、同局並びに熊本営林局熊本食糧事務所より説明を受けるとともに、植木町所在熊本県経済連の野菜集送センター並びに熊本郊外所在熊本果実連果汁工場視察いたしました。  日程第四日は、阿蘇に参り、阿蘇草地改良事業進捗状況視察し、現地において、木落酪農組合長等より、肉牛、乳牛経営実情を聴取いたしました。午後、久住飯里高原において高原野菜生産状況視察し、玖珠営林署長阿蘇国立公園管理事務所長からも説明を聴取いたしました。また、大分県の温泉熱利用農業研究所も訪れました。  第五日は、まず大分県を訪れ、知事より県勢概要開発計画等について説明を聴取した後、臼杵町に参り、大分特産カボス生産状況視察し、次いで国頭半島奈狩江地区柑橘パイロット団地実情調査し、全日程を終えた次第であります。  次に、視察先において述べられました要望事項等のうち二、三の点につき簡単に触れたいと存じます。  自衛隊関係においては公務災害補償費等給付金の増額について特に要望されましたが、何らかの改善措置が必要なるものと見受けました。  県庁関係においては、県庁職員給与改定に伴う財源措置について配慮方要望されましたが、熊本県においては、本年七月の豪雨による天草上島地区の被害について、ぜひとも同地域特別被災地域に指定し、災害復興に関する特別措置を講じられるよう要望されました。  農業関係では阿蘇及び久住飯田地区を大規模肉用牛基地とするため、高原地帯農業開発のための特別措置を講じていただきたい旨の要望がなされましたが、私たちも現地においてその必要性を感じた次第でした。その他農業関係施設視察いたしまして、価格安定のための積極的施策資金的援助措置必要性を痛感いたしました。  以上、簡単でありますが、一応報告をいたし、細部については別途文書による報告書を提出いたしますので、委員長において会議録に掲載されるようお願いいたします。  以上であります。
  5. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、第二班の報告を願います。鈴木力君。
  6. 鈴木力

    鈴木力君 北海道班について御報告申し上げます。  中山理事山崎委員中村委員並びに私の四名は、去る九月四日から八日までの五日間の日程をもちまして北海道に出張し、国の地方支分部局公務員制度並びに自衛隊実情調査いたして参りました。  日程第一日は、千歳地区に駐とんいたしております航空自衛隊第二航空団航空自衛隊第三高射群、これはナイキ部隊であります。陸上自衛隊第七師団、第一高射特科団、これはホーク部隊であります。これらの各部隊並びに札幌防衛施設局及び千歳防衛施設事務所より、それぞれ業務説明を聴取するとともに、千歳航空基地及び千歳地区に展開をいたしておりますナイキ及びホーク部隊実地視察をいたし、さらに現在建設が進められております長沼のナイキ基地並びにその周辺で行なわれている周辺整備事業視察いたしました。  日程第二日は、旭川に参り、旭川市役所陸上自衛隊第二師団及び旭川営林局より、それぞれ業務説明を聴取するとともに、四十八年度に開校を予定しております国立旭川医大建設予定地並び旭川営林局が管内に自生する野草を収集し、地元市民への観賞及び自然科学の学習の場として建設した北邦野草園視察いたしました。  日程第三日は、稚内に参り、自衛隊稚内分とん地において、当地に駐とんしている陸海空の各部隊及び稚内防衛施設事務所より、それぞれ業務説明を聴取し、レーダーサイト沿岸監視隊実地視察するとともに、従来米空軍長距離受信施設として使用し、本年六月使用転換となり、地位協定第二条四項(b)により米軍に一時使用を認めることとした旧稚内米軍通信施設実地視察し、防衛庁当局より、その施設概要について詳細に説明を聴取して参りました。稚内では、さらに稚内開発建設部海上保安部地方気象台より業務説明を聴取いたしました。  日程第四日は、札幌に戻り、北海道庁及び北海道開発局より、それぞれ業務説明を聴取いたしました。なお、北海道開発局においては、職員組合代表者からも陳情を聴取いたしました。  日程第五日は 北海道管区行政監察局及び人事院北海道事務局より、それぞれ業務説明を聴取いたしたのであります。  以上が今回の視察日程概要でありますが、この視察におきまして、私どもが特に感じた点のうちの二、三について申し上げますと、  その第一は、自衛隊における生活環境整備の点であります。今回視察いたしました各部隊装備等が比較的充実している反面、隊員隊内生活をささえる諸施設がきわめて貧弱であることを痛感し、今後隊員生活環境整備について十分配意する必要があることを感じたのであります。  その第二は、辺境の地に勤務する公務員処遇改善の点であります。今回視察いたしました稚内などの地域は、辺境の上に、きわめてきびしい気象条件並びに高物価等の悪環境のもとにあります。このような地に勤務する職員勤務状態考えるとき、これら職員に対する給与、宿舎その他厚生面において一段と改善を要する点が種々あることを感じたのであります。  その第三は、非常勤職員処遇の問題であります。今回視察いたしました旭川営林局北海道開発局などにおいては、非常勤職員がきわめて多く雇用されておりますが、これら非常勤職員については、その任用、勤務条件等について十分検討を加え、その改善をはかる必要があることを感じたのであります。  以上、簡単でございますが、視察概要報告し、細部については別途文書をもって報告いたしますので、委員長においてこれを会議録に掲載されるよう取り計らいをお願いいたします。  以上であります。
  7. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 以上をもって報告は終わりました。  別に御発言もないようですから、派遣委員報告はこれをもって終了いたします。  なお、ただいま派遣委員から御報告がございましたが、別途詳細にわたる報告書が提出されることになっておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  9. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 中山太郎

    中山太郎君 きょうは、先日の私の行政における情報処理案件に続いて、番号制度の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  日本の行政の中で、いろいろと番号がすでに明治初頭以来振られている。そういう振られている中で、現在政府関係コードは一体どうなっているかということについて、まずお伺いをいたしたいと思うのです。従来は各省庁ばらばら全国番号を振っておった。それが、二年ほど前ですか、行政機関市町村に至るまで全部コード化ができたと私どもは聞いておりますが、その点について、ひとつお答えを願いたい。
  11. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) ただいまの御質問の趣旨、私ども誤解しているといけないと思いますが、各府県についての府県コードというものは現在でき上がっておりますが、行政機関全体についてのコード化という話は、私どものところでは、まだ伺っておりません。
  12. 中山太郎

    中山太郎君 各市にまでコードがついておりましょう。
  13. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 先ほど申し落としましたが、市の段階までできておるようでございます。
  14. 中山太郎

    中山太郎君 それは一体全国で何カ所にコードが振られていますか。
  15. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) お尋ねの御趣旨につきましては、現在、地方公共団体そのものコードにつきましては、都道府県及び市町村全部につきましてコードを付しております。
  16. 中山太郎

    中山太郎君 行政管理庁のほうは、もう少ししっかり把握しておいてもらわないと困ります。全国市町村コード化が終わっているということが、いま大体常識化しているわけであります。で、このコード化ができるまでは各省庁がばらばらにいわゆる自分出先コードを振っておった、あるいは府県コードを振っておった、しかし、それではいろいろと予算編成のとき等において不便であるということから、おそらくこの動きは起こったものであろうと思う。このコード化が終わって、いわゆる各省がいろいろと連絡をするときに、統一コードでできるようになったために事務処理が非常に楽になったか、あるいは不便になったか、その点をまず伺いたい。
  17. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 御指摘の点でございますが、少なくともいろいろ府県コードを利用しなければならない場合、あるいは市町村コードを利用しなければならない場合におきまして、各種コードがあるよりは、このように統一された、JIS化されたコードがあることによって利便がふえていることは間違いないと思います。
  18. 中山太郎

    中山太郎君 そういうことであれば、全国行政関係組織コード化が一応完了を見たわけであります。あとに残るものは、企業コードをつけるか、いわゆる住民統一コードを実施するか、このあとの残された二つの領域のコード化がうまくいくかいかないかによって行政機能が上がるか上がらないかということが大きく出てくると私は考えているのですが、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  19. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 行政上の便益という点だけを考えますと、先生指摘のとおりであると思います。
  20. 中山太郎

    中山太郎君 もう一つそれに関してお伺いをいたしたいのは、行政管理庁行政全般管理しておられると私どもは確信をしておるわけですが、行政管理庁として、各省コードに関して、もしもこれがおかしいというふうな考え方が出た場合にはどのように処置をされるか、その点について、まずお答えを願いたい。
  21. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) まあ、行政全般管理しているという御指摘でございますが、行政管理庁の権限として、現在、各省コードその他の問題につきまして、いわば権限的な規定に基づいてこれを是正するという形にはなっておらないわけでございまして、実体的に話し合いの形で、できるだけコードの是正その他の問題についても推進をしてまいりたいということでございます。
  22. 中山太郎

    中山太郎君 ここで、企業コード個人コードの問題になるわけですけれども、その企業コードという問題について、いわゆる私ども国民の側でものを考える立場にあるときには、会社の中で、得意先コード、それを営業と総務と管財と、いろいろなところで全部違う番号をつけておった場合に、非常に処理がめんどうである、民間企業の場合は管理システムとしてはそれは劣悪なシステムであるというふうに、われわれは絶えず日常生活において考えているわけであります。ところが、国家行政機構の中での管理システムというものがコード統一がうまくいかないということになると、非常にここに行政上のロスが起きてくるということは火を見るよりも明らかであります。そういう点について私どもは一、二の疑問を持たざるを得ない。それぞれ、町にしても役所にしても過去の長い歴史がありますから、それについては、私は、その縦割りのままでのコードを振られることに、従来の歴史上の流れがあるという理由で片づけられたらそれまでだと私どもは思うわけであります。  しかし、私どもは、ここでどうしても政府に向かってはっきりお尋ねをしておきたい。あるいはこの問題の促進をしないと次の新しい社会には入れない、混乱がまた新しい社会に起こる。今日国民は、役所に行くと、親方日の丸だと、いつ行ってもなかなかサービスがうまくいかない、待たされる、これが今日の国民感情です。そういうことをかまえて、政治をしていく中で、いわゆる住民コードを振った役所、たとえば東京都の都政の中で行なわれている区役所等で、個人コードを振ったために役所機能がたいへんな合理化が進んだというふうな例があると私ども聞いておりますが、それについては自治省でも行政管理庁でも、どちらでもけっこうですから、ひとつお答えを願いたい。
  23. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 先生仰せのごとく、地方公共団体におきまして、特に二十三区なりあるいは大都市なりというようなところにおきましては、住民基本台帳法によるところの、住民基本に関する事項につきまして、これをマスターファイル化いたしまして、住民の一種の管理と申しますか、かようなことを行なっておる団体がかなりございます。団体数で申し上げますと、百六十五地方公共団体であります。これがマスターファイル、すなわち、コンピューターを使いまして住民基本台帳法でいうところの所要事項をファイルしている。その百六十五団体対象としておりますところの住民人口は千八百八十万人程度となるのでございます。かような情報処理をやっております結果、当該市町村の中におきましては事務処理合理化が相当進んでおる、かように認識いたしております。
  24. 中山太郎

    中山太郎君 すでに現状で百六十五団体、千八百八十万人の国民が、好むと好まざるとにかかわらず、それぞれの行政の中でいわゆる背番号をつけられておる、これはもう現実であります。これをつけないで取ることができるのか。いわゆるコンピューターが、この間お話しのように、府県導入団体が二十六、本年度導入が五ということになると、三十一団体になるわけでありますが、そのほかに市町村にも相当な数が入っている。そういうふうなコンピューター導入した形で行政が行なわれるという事態になると、このコンピューター住民台帳記憶させるというときには必ずコードを振らなければならないということは間違いないと思うが、そこをひとつ、はっきりお答えを願いたい。
  25. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) まあ、個々の市町村におきまして住民台帳電子計算機の中に入れる場合、その検索のためには当然個人についてのコードが必要であることは言うまでもないところでございます。
  26. 中山太郎

    中山太郎君 そうすれば、いまお答えになったように、電算機がたいへんな勢いで、年率三〇%のアップ率全国地方公共団体にいま導入されつつあるわけであります。この勢いはさらに伸びると考えられる。そうすれば、好むと好まざるとにかかわらず、コンピューター導入した市町村住民に対して住民登録台帳を全部コード化して記憶させるということはいなめない事実です。その点をもう一つ、はっきりお答えを願いたい。
  27. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) そういう事態が生じますれば、当然、先生指摘のようなことになろうかと思います。
  28. 中山太郎

    中山太郎君 それでは、自分市町村の役場にコンピューター導入できないで、業務委託をするような公共団体があるということになれば、ここで五年あるいは六年の間に、全国民地方公共団体によって全部コンピューターに、コード、いわゆる数字、番号によって記憶をされることは間違いないわけですね。そこをもう一回ひとつ、行政管理庁、はっきり答えていただきたい。
  29. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 先ほど自治省からお答えがございましたように、いわば住民台帳電算機に登載しておりますところは百六十五であったと記憶いたしておりますが、その他の市町村につきましては、確かに、コンピューター導入をし、あるいは委託をしておるものが、前回御討議がございましたように、全市町村数の約半数にはなっておりますけれどもコンピューターによる住民台帳管理自体は、いわばスタートの段階にございます。したがいまして、そういった現在の段階考えますと、先生指摘のような事態は、将来の問題としては出てまいると思いますが、なかなか早急な問題としては出てまいらないのではないかというふうに私ども考えております。
  30. 中山太郎

    中山太郎君 あなたは早急の問題として起こらないとおっしゃっていますけれども、現に国民の五分の一が、みな国民個人番号を持っているじゃありませんか。早急には起こらないとおっしゃっても、すでにこの千八百八十万人——ということは一億の約五分の一ですからね、あるいは六分の一になるかもわかりません、五・五分の一ぐらいでしょう。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、三〇%の伸び率でいけば……。地方公共団体は、行政管理庁報告書によれば、毎年三〇%のアップ率情報化が進むということは、この四十五年度の報告書に出ておるわけです。あなたのほうの役所ですよ。あなたの役所の出された報告書に、年間三〇%のアップ率で伸びると明記されておる以上は、五分の一国民コード化したこの現状が、さらに相当な速度でコード化が進むということは否定できないと私は思う。ちょっと、あなたのお考えと私の考えと違う。そこ、どうですか。
  31. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 私ども報告書の表現がまずいために誤解を生じた点があると思いますが、確かに、市町村業務について電算機導入されるスピードは、金額にいたしまして年率で三割のアップになっていることは事実でございますが、ただ、その導入される業務自体の内容を見ますと、先ほど申し上げましたように、住民台帳電算機に登載するという形のものは、必ずしもそのような伸び率を示しているわけではございませんので、そういう点からいたしまして、私ども申し上げましたように、全国民に及ぼす段階というのは、市町村財政力、ことにこれからだんだんと財政力の弱いところにも入っていくわけでございますので、なかなかそう、スピードアップされるわけにいくまいというふうに考えておるわけでございます。
  32. 中山太郎

    中山太郎君 まあ、これから何年かのあとで、もう一度これをごらんになれば、よくわかると思う。おそろしい勢いでこれは伸びていきますよ。そうなっていくと、現在各種地方公共団体のつけておるコードのやり方というものは、どういうコードつけ方をしておるとお考えですか。
  33. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 現在、地方公共団体百六十五団体で付しておりますコード番号は、これはおおむね一連番号によってつけております。したがいまして、A市における甲の番号は、それはB市における乙の番号と一致するというような形にもなるわけでございまして、各市町村それぞれ独自の番号一連方式によってつけております。
  34. 中山太郎

    中山太郎君 その場合に、特にいままでの導入経過に、あるいはコード化において、問題点として、どういう問題が起こっておりますか。たとえばプライバシーの問題とか、いろいろな問題が過去に実際に起こってないかどうか、その点をひとつお答え願いたい。
  35. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 先生仰せの第一点の問題でございますが、一つは、各番号を付しております地方公共団体相互間におけるデータ交換ということは、これは行なわれておりません。住民基本台帳法によりますと、たとえば、Aが甲市から乙市に転入する場合におきましては、本人の届出と同時に、転入を受けました市町村長転出方市町村長のほうに確認行為をする、こういうことになっているわけでございますけれども、それも、電話等確認行為をする、あるいは書類を送って確認行為をすると、こういうことにしておりますので、いわゆるデータ交換はやっておりません。  それから第二の点のプライバシーの問題でございますが、この点につきましては、住民マスターファイルに入れておりますところの、記憶装置に入れておりますところの事項は、これは住民基本台帳法が規定しておりますところの項目にほとんど限られておりまして、しかも、それは公開をはばかるようなものも若干入っておりますので、それぞれの電算管理要員あるいは住民マスターファイル管理する部署で慎重に機密の保持はやっておりますので、プライバシーそのものの侵害ということは起こっておりません。重ねて申しますが、記憶させておりますことの事項は、これは個人プライバシーに関するような事項は本来蓄積しておりませんので、いまだそういう点は生じていないように了承しております。
  36. 中山太郎

    中山太郎君 いまの御答弁の中で、公開をはばかるようなものも幾ぶんは入っておるというような御答弁があったわけです。公開をはばかるというような問題点というのは、どんな問題ですか。
  37. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) たとえば、その情報につきましては、個人的な判断の問題もあると思いますけれども、たとえば生年月日でありますとか、あるいは極端な例を言いますと、社会保険の加入の有無であるとか、あるいは別に追加資料として、失業保険の事項でありますとか、あるいは生活保護の問題でありますとか、そういうもの——住民基本台帳法が要請しておるもの以外につきまして典型的な例は生活保護の状況でありますが、そういうものを、かりに記憶さしているような場合は、これはやはりプライバシーの保護をする必要があろうかと思います。こういう、個人によって差があるわけでございますけれども、生年月日を知られては困るというような、外部に知られては困るというような場合につきましては、やはりそれはプライバシーの保護を行なう、こういうことになろうかと思います。
  38. 中山太郎

    中山太郎君 そういうふうな国民プライバシーを保護しなければならないというような重要な問題にあたって、自治省地方公共団体に対して、そのデータベースの管理に特にきびしい規定を通達しているのですか。その点、はっきりお答えをいただきたい。
  39. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 特に行政的な通達をする段階にはまだ立ち至っていないと存じますので、私どものほうのやり方といたしましては、市町村なり、あるいは——都道府県はそういうケースはまれでございますけれども——都道府県の電算要員に対しまして、教育訓練機関、これは一つは自治大学校、さらに地方自治情報センター、さらに各都道府県におきまして、それぞれ教育訓練コースというようなものを設けまして、特に電算関係要員の教育訓練というような手段を通じまして、電算を扱う場合につきましては個人プライバシーを十分保護するような、そういう精神的な意味での訓練を行なっておる、こういうことでございます。
  40. 中山太郎

    中山太郎君 いわゆる自分のいろいろなデータが、好むと好まざるとにかかわらず、千八百八十万人の国民は全部コード化されてメモに入っているわけです。そういうことを市町村住民に知らせているのか、知らせていないのか。その点、いかがですか。
  41. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 住民に対しましてそれぞれ自分の付されている——付番されております番号を知らせているかというお尋ねかと思いますが、その点は、必らずしも住民に明らかにしておりません。
  42. 中山太郎

    中山太郎君 私は番号自身を申し上げているわけじゃなしに、番号をつけた形でのデータバンクが市町村にはあるということを、その町の住民が知っておるかどうかです。
  43. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) 仰せのとおり、住民は存じております。
  44. 中山太郎

    中山太郎君 存じておりますか。
  45. 馬場行雄

    説明員馬場行雄君) はい。
  46. 中山太郎

    中山太郎君 住民が知っておれば、私は、それである程度いわゆる住民主体の行政が行なわれていると考えますけれども、こういうことで相当な勢いで伸びていけば、やがて日本じゅうの国民がそれぞれの地域コード化されることは、私は、近い将来に間違いないと考えております。そういうことになってくると、いまおっしゃったようにA市で一〇〇〇番の人間がB市の一〇〇〇番とは違う、こういうことが出てきますね。そういうことを引っかまえて、やはり政府はこの住民統一コードという問題についてはかねがね研究をされてきたやに聞いております。そういう研究がどういう過程をたどって、どういう点で問題が起こっておるのか、その点について、ひとつ行政管理庁からお答えを願います。
  47. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) この問題については、先生すでに御承知と存じますが、昭和四十五年の三月から、各省庁の連絡研究会議というものを設けまして、そこにおきましてこの問題の検討を進めてまいったわけでございます。その過程におきましてはいろいろな方法が考えられたわけでございますが、結論的に申しますならば、社会保険コードを中心にしてこの問題の検討を進めていくというのが昨年の七月の結論でございまして、現在その方向に沿って研究が継続されているというところでございます。
  48. 中山太郎

    中山太郎君 このコードつけ方にいろいろあると思うのです。いままでのように野放しにコードをつけさせるのか、あるいは政府が一定の規格をきめて住民に、国民コードをつけていくのか。これ、つけざるを得ないとおっしゃったですね、先ほど。そうすれば、必ずつけなければならないわけです。つけなければならないということになると、どうすれば一番便利であるか、そうして行政コストが安くつくかということを、国民の側に立ったら考えざるを得ないと私は思う。そうすれば、いまのままで経済コストが安くなって、そうして国民が便利になるのかどうか、その点、どうお考えなんですか。
  49. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 確かに行政コストの軽減が国民にとってプラスになることは言うまでもないところでございまして、そういう意味におきまして、私どもも前々から国会でも御答弁申し上げておりますように、長い将来の問題としてはこの問題にはやはり積極的に取り組むべきであるというふうに考えておりますが、ただ、現在の段階におきましては、一つには、心理的に管理社会に対する反発の問題もございますし、一つには、先ほども申し上げましたように、市町村におけるコンピューター導入並びにこれを軸としての住民基本台帳の登載の問題というのも、そう、将来の問題としてはともかく、早急に必ずしも進展する問題でもございませんので、むしろ、私どもといたしましては、研究会の結果として、社会保険コード統一というものを中心にして進めていくという方向で進めてまいるのが日本の現段階に即した方法ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  50. 中山太郎

    中山太郎君 いまのお話で、早急な必要はないのだというお考えのようですけれども、私は全然あなたと考え方が違うわけであります。なぜかというと、どの国に行ったって、御案内のように、五進法でやるか、十進法でやるか、十二進法でやるか、二十四進法でやるか、六十進法でその国のいわゆる数字の計算をやるかということはきまっているじゃありませんか。それじゃ、コンピューター導入した社会、新しいいわゆる情報化社会における行政管理システムとしては、当然、コンピューターの基礎である二進法を基礎にした感覚で行政を解決するという必要が数学上出てくるじゃありませんか。だれが聞いたって当然のことであります。それを、それに対してそういうものは早急に必要はないのだ、将来の問題だというようなことをお考えなら、将来ばく大な国民の経済的な損失が起こるということに対していかに無関心かということをあなたはおっしゃっているわけですよ。そういう点について、ひとつ、お考えをもう少しはっきり述べていただきたい。
  51. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 先ほども申し上げましたように、将来の問題としてはそういう段階というものは想定してかからねばならぬとは存じますが、先ほど来申し上げましたように、プライバシーの保護の問題その他いろいろ解決しなければならない問題がございますので、すべての個人コードを直ちに統一するということは行政の現実の問題として非常に困難がある。もちろん、そういう点についての困難が解決され、早急にそういうことができるような事態が来ることは望ましいことではございますが、たとえば西独の例をとりましても、やはりプライバシー保護の問題から特別立法が問題になっているような経緯もございますし、なかなか日本において直ちにそういった形で国民全体のコンセンサスを得て統一個人コードを設定するということは現実の問題としては困難がございます。したがいまして、私どもといたしましては、社会保険コードを中心にしてそういった問題についての促進をはかってまいりたいというのが先ほど来お答え申し上げている趣旨でございます。
  52. 中山太郎

    中山太郎君 それでは、社会保険コードを使った場合にどうなるかという問題についていひとつお尋ねをしてみたいと思います。  現在、社会保険といわれるものは、政府管掌保険千三百三十五万人、あるいは日雇労働保険五十六万人、船員保険二十七万人、厚生年金二千三百十一万人——組合管掌千三十二万人を含む、国民年金二千四百二十五万人、これでトータル六千万人ほどの国民コード化されているわけです。それで、それぞれの国民は全部自分の保険についての個人コード番号を持っているわけです。これをどういうふうに、それではあなたは処理をしようと考えておられるのか。その点について、ひとつ具体的にお考えを承りたい。
  53. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) これは、現在の段階といたしましては、まず、厚生省におきまして、年金三保険のコード統一という問題を現実のスケジュールとして考えておられるわけでございます。年金三保険のコード統一ができますれば、その上の段階といたしまして、厚生省関係におきましては、医療保険の問題、それからさらには労働省の所管いたしております労災並びに失業保険の全体の社会保険を通じてのコード統一化という問題に取り組んでまいるべきだと考えているわけでございます。
  54. 中山太郎

    中山太郎君 これ、なんですね、厚生年金保険の中に、いわゆる政府管掌保険の被保険者と、それから組合管掌保険の被保険者が含まれていることは御存じですか。
  55. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 御承知のように、厚生保険ということば、ちょっと誤解があるといけないと思いますが、厚生年金と、それから短期の医療保険とは別でございまして、さしあたり考えておりますのは、年金三保険——厚生年金、国民年金並びに船員保険のうちの年金部分、これについてのコードの一元化でございます。
  56. 中山太郎

    中山太郎君 そうすると、社会保険を中心にしてコードの整理をするとすれば、六千万人余りの国民が、これでコードが大体整理を見るということになります、六千万人。そうすると、一億のうちのあとの四千万人はどういうふうなコード処理をされるか、その点についての基本的な構想はどういうふうになっているか、お答えを願いたい。
  57. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 先ほどの連絡会議の結論と申しますか、そういう点を見ましても、まだそれから先のステップをどのようにして踏んでゆくかということについては明確なものができておりません。ただ、何ぶんにも三年金保険の統一、さらには社会保険番号統一と申しましても、それ以前にいろいろ解決しなければならない問題もございますので、現在の段階では、それから先の問題についてはまだ未検討であるというのが実情でございます。
  58. 中山太郎

    中山太郎君 まあ、いま全国民コードを付しておるのは自治省住民台帳コード、それから法務省の戸籍コードだと。この七省庁の連絡会議のときに、自治省と法務省のこのコードのどちらを使うかということは論議にならなかったのですか。
  59. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 当時私はこの仕事をやっておりませんでしたが、仄聞するところによりますと、両者のコードのいずれをまず使うべきかという議論は、かなり行なわれたようでございます。ただ、結論的に申しますと、先ほど申し上げましたように、いずれも採択されなかったということでございます。
  60. 中山太郎

    中山太郎君 その採択されなかった理由は一体どういうところにあるのですか。
  61. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 当時の記録を私どもも十分把握いたしておりませんが、一つには、戸籍の問題につきましても、なお基本的に、プライバシーの問題、その他いろんな問題に関連しての議論もございますし、住民台帳につきましては、先ほど御指摘申し上げましたような問題点がございまして、そういう方向で問題を進めることは無理である、むしろ社会保険コード統一自体は、単に行政実務上の問題、便益のみならず、利用者であります被保険者たる国民の立場から見ても徴収の一元化等にもつながりまして、非常に利便となる問題であるという観点から、そういう方向に進めたいということになったと伺っております。
  62. 中山太郎

    中山太郎君 まあ、世の中に学者がいろいろおられて、この国民個人コードを、あるいはこういうふうなコンピューター制度を導入して地方自治体が動き出すと徴兵検査に利用されるということを堂々と言っておる学者がおられる。この問題について、私どもは、そういうばかげたことはあり得ない、徴兵制度がないのに徴兵に利用されるはずがないという観点に立って一笑に付しておりますが、こういうふうないわゆるコンピューターが日本の社会導入されて新しい情報化社会に入っていくのに避けがたい一つの、この二進法を基本にしたいわゆるコードの整理というものは、国民のどうしても踏み越えていかなければならない次の社会への道程であるという考えに私どもは立っておりますけれども、一般の国民の中には、それが徴兵制度に、検査に利用されるのだというふうに言って若い国民を惑わしている、ばかげた学者もたいへんおりますけれども、それについて政府は一向に声明を発しない。こういう点について、一体、この次の社会管理される行政管理庁と、住民管理されている自治省、どういうお考えを持っておられるか。もうそういうことは絶対ないのだということを、はっきりこの機会に所信を明らかにしていただきたい。たいへん重大な問題であると私は考えております。どうぞひとつ大臣からお答えを願いたい。
  63. 濱野清吾

    ○国務大臣(濱野清吾君) ただいまの御意見でございますが、非常に大きな問題であり、また将来の問題と思います。お説のとおり、ただいま行政管理庁で協議をし、合議をしております社会福祉関係の事務をコンピューターに乗せる、そのために背番号をつける、こういうようなものの標準化ということをいま相談をしておるのでありまして、やがては、お説のとおり、全国民が背番号をつけるという、そういう時代が来るのではないかと、私ども専門家でありませんけれども、強く感じております。その場合に、いろいろと社会の御意見や批判や、あるいはまた学者等のきつい意見もございますけれども、しかし、かりにそういう意見があったとすれば、国民的な合意を取りつけて後でなければ、この問題はまことにまとまった意見とは言えないであろう。したがって、そういうようなことを、いますみやかにそういうことがあるかどうかというようなことをお答えすることはできませんけれども、かりにそういう事態があったとすれば、あらゆる機会に、これが徴兵制度に関連する、そこに移行するのじゃないか、それに活用されるのじゃないかというような誤解を解く努力をし、やはり大きく私ども国民に承知してもらわなければならぬであろう、こういうふうに日ごろ考えております。
  64. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) ただいまの御質問でございますが、われわれとしては徴兵制度などというものをやろうとは毛頭考えておりません。
  65. 中山太郎

    中山太郎君 これで初めて政府として国民に向かって、一切このコンピューター利用と徴兵制度とは関係がないということを、ただいま明確にされたと思う。まことにけっこうなことだと私は思う。こういうことから考えて、二十歳の青年が何人おるか、あるいは百歳の老人がことしは何人おるかということをはじき出すのだということを、もう少し明確に政府としては国民に今後ともPRを続けられる必要があろうと私ども考えております。  もう一つ私は続いてお尋ねをしたいのは、外国でこのコードが相当すでに利用をされておる。たとえばアメリカにおいては、就職する際にしても何をするにしても、社会保険番号を使わないとつとめられない、こういうふうに現実に個人コードはアメリカの社会で活用されている。あるいはスカンジナビアの三国においてもすでに使われておりますし、ドイツでも使われている。こういう国の現状で一番大きな問題点になったのは何か、その点をひとつ御答弁していただきたい。これは行政管理庁からひとつお答えをいただきたい。
  66. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) ただいまの先生指摘のような諸国におきまして問題になっている点、具体的に申しますと、ドイツにおきまして昨年統一個人コードの設定が議論されました際、プライバシーの保護の特別立法が必要であるという観点から実施が延期されたということがございまして、最大の問題はやはりそういう点にあろうかと思っております。
  67. 中山太郎

    中山太郎君 プライバシーの保護の問題が一番大きな問題となってあがってこようと思うのです。それじゃ、プライバシーの保護の問題を基本的に最重点的に考えていかなければならぬのですが、個人コードは、好むと好まざるとにかかわらず、地方自治体にはどんどんいま入ってきているわけですね。少なくとも二千万人近い国民コード化されて、ファイルされているわけです。こういう問題について、いつでしたか、これは行政管理庁が発表されたのではありませんけれども、新聞の紙上に載った記事を引用して、きょうはお尋ねをしていきたいと思います。  「各省庁間に通信網」ということが見出しで、これは八月十一日の新聞で、「五年で整備」「システム開発公社も」、こう書いてあるわけです。「初の情報処理長期計画」「データバンクも設立」、こう書いてある記事が出ておったわけであります。そういう記事を見て、私ども考えなければならないことは、まあこれは新聞報道として行政管理庁は責任を持たないとおっしゃればそれまでだと思うのです。しかし、現実の問題として、オンラインはもう進みつつある。労働省にしても、全国にオンライン・ネットワークを張って職業の安定につとめている、こういう現状でありますから、あの世界一のシステムにまねたシステムがそれぞれの役所に出てまいろう、こういうときに、住民プライバシーというものがどうなってくるのか、このコードが好むと好まざるとにかかわらずすでに付置され、それが自治省といわゆるコンバージョンで互換が行なわれる、いろんなことが出てまいると思いますけれども、そういうオンラインの限度というものが私はこれからの民主社会においては非常に重大な問題になってこようと日ごろ考えているわけであります。そういう点について、きょうは郵政省からもお越しでありますけれども、郵政省は専門家というよりも、むしろラインを貸す立場ですね、回線を貸す立場、そういう立場で長年この問題を研究されてきておられると思いますけれども、ひとつその立場で、このラインというものがどうなるか、ひとつお答えをいただきたい。
  68. 牧野康夫

    説明員(牧野康夫君) お答え申し上げます。  郵政省は、ただいま先生の御指摘になりましたように、電気通信回線をコンピューターの利用のために提供するための秩序づけということを任務の一つにしているわけでございます。で、電気通信回線と申しますのは、これはいわゆるいろいろ私設のものもございますし、公衆に提供するものもございます。基本的な立場と申しますものは、電気通信回線というものは自由に設置ができるということが有線電気通信法第三条にうたってあるわけでございますが、しかしながら、他人の通信の用に供するあるいは他人の通信を媒介し、その他他人の通信の用に供するということはやっては相ならぬということが第十条にうたってあるわけでございます。この点から考えますと、この通信というものが、これが他人の通信を媒介する場合においては、これは公衆通信業者、すなわち日本におきましては日本電信電話及び国際電信電話株式会社以外においてはこれをやってはならないということに相なる次第でございます。  昨今、コンピューターと電気通信回線とを結合いたしまして、いわゆる先生指摘のオンラインという処理のしかたというものがだんだんふえてまいりました。現在おおむね三百システムが稼動しております。これは電電公社からの線を賃貸いたしまして使っておるシステムでございますが、そのうち企業内で、一つ組織内と申しますか、そういうものだけで使っておりますものが大部分でございまして、共同して利用する、つまり二者以上のものが、二人以上のものが共同してそのコンピューターを利用する結果といたしまして電気通信回線を利用するというような形態のものは、現在のところ十二システムになっているわけでございます。まだまだその面におきまして、ただいま先生指摘の、いわゆる二つの異なったコンピュータシステムがインターフェイスにおいてどういう状態が起きるのかという問題につきましては、まだこれからが検討を要すべき問題かと存じますが、第一番に、技術的にこれらのインターフェイスがよく合わなければそれらはできませんが、その中における情報のうち何が交換すべきであるか、何を交換しないのかということはそのプログラムによって決定されるわけでございます。そのプログラムを決定することは、それは利用者が決定されることでございまして、われわれのほうから申し上げますと、電気通信設備を提供する立場からはそのところを規定しているわけではございません。ただ、規定すべき点につきましては、他人の通信の用に供しているかいないか、いわゆる別なこのごろのはやりのことばで申しますと、メッセージ交換をやっているかどうかという点を主体にしてわれわれは秩序体系を秩序立てているわけでございます。
  69. 中山太郎

    中山太郎君 これから、政府は電電公社にいろいろな問題を発注されると思いますね、政府各省庁がオンラインをやるときに。たとえば先ほど申し上げた各省庁間のオンライン・ネットワークをつくる、これも電電公社がやらなければできないわけです。そうするとここでもう一つ、これは七月の新聞ですが、「内閣調査室→首相官邸」という見出しで「大型電算機で直結へ」、こういうことが書いてあります。「情報収集機構を強化」、これもあるいは一つの総理府の中での、内閣の中でのオンラインの私は小さなミニ・オンラインだと思うんですね。いろいろな形でオンラインが進んでまいる。そういう形にしていくときに、一番私どもがやはり民主主義の基本に立って考えなければならないことは、そのオンラインのテリトリーの問題が非常に重大な問題になってくる。次の社会においてはこの問題がたいへん大きな問題になってこようと私は考えているのであります。  つまり、司法、立法、行政のテリトリーはどこではっきりと切るべきか、いわゆるトータルシステムとしてどこでそれをコントロールしなければならないか、法律はどこの省庁とのいわゆるデータ交換を禁じなければならないか、そういう問題が将来の大きな課題となって私は登場してくると思う。これは五年先、十年先というような問題ではありません。ここ一、二年の間に登場してくる問題であります。その問題についてここに非常に興味のある記録があります。その記録は、もうなくなられましたからお名前を出しますけれども、久保田義麿国立国会図書館長の意見が記録として載っています。政府諸官庁でコンピューターが続続導入されてオンラインが行なわれる、あるいは国立国会図書館も立法府の情報処理のためにすでにコンピューター化を急いでいる、そうして全国地方公共団体の持つ、あるいは大学の持つ図書館とオンラインで結んでいわゆる検索をやろう。もう一つは、最高裁判所が四十九年に新しく庁舎ができます。そこでコンピューター室を入れて全国の地方裁判所にオンライン・ネットワークを張ろうといま計画しております。こういうふうになってくるときに、この記録をひとつお聞きをいただきたい。「国会会議録総索引のオンライン化は結構なことであり、是非推進しなければならないが、国会内部諸機関間のネットワークのほか、行政、司法機関とも直結することについては問題がある。わが館には、各省庁の図書館を支部図書館として組織化するという、世界にも例のないユニークな制度があるので、これを活用し、支部図書館に端末を置くという方法で政府機関とのネットワーク化を実現することを考慮すべき」ではなかろうかという記録があるわけであります。つまり司法、立法、行政のいわゆる境界線をある意味では越えている、これは民主主義の基本に関する問題にひっかかってくるわけであります。そういう点について、内閣法制局からお越しをいただいているようでありますが、将来のこういう問題について——将来ではなしに、もうほんとうにここ一、二年の間に起こってくる大問題について、法制局としてはどういう考えを持っておられるか、この機会にひとつ明らかにしていただきたい。
  70. 真田秀夫

    説明員(真田秀夫君) お答え申し上げます。  ただいま突然の御質問でございますので、御答弁申し上げる筋道も的確に自信を持ってお答えできるかどうか不安でございますけれども、おっしゃったような問題は、確かに憲法下における政治形態のあり方としてはたいへんな問題を含んでいることだと思います。ただ、私、いまお聞きしまして感じましたことは、憲法が定める三権の分立は、立法府と行政府と司法府との間においてそれぞれ分担をしているわけでございますけれども、それは立法作用そのもの、それから裁判機能そのものという点に非常に重みがあるのでございまして、ただいまおっしゃいましたような問題は、むしろ立法行政といいますか、あるいは司法行政にかかわるものではなかろうかと思いますので、本来の機能の三権分立に比べればやや気が楽ではなかろうかと思います。まだ具体的にどういうことになりますか、私、専門的な知識を持ち合わせませんので、的確なことは申し上げかねますけれども、具体的な問題としてあがってきましたときに、一体どこにそういうことを処理させるのが一番国民のために便利であるか、あるいはコストの上でも一番安上がりはどうしたらいいかというようなことも踏まえまして、十分慎重に検討してみたいと思います。
  71. 中山太郎

    中山太郎君 いま申し上げた話は、私はこれはたいへん重大なわれわれのいわゆる国の基本に関する問題、防衛も大事でしょうけれども防衛問題よりももっと大事な憲法の基本に関する問題であろうと思います。そういうことを考えていくと、ひとつこの問題については政府としても十分に早急にこのラインの引き方というものを考える必要があるのではないか。私は、行政管理庁もいらして、いま現行の行政機関の官庁の中だけでも大きな問題があると思います。つまり厚生省と警察庁と、あるいは法務省と、こういうものをネットしていいのかどうか、私はここには大きな問題があると思う。それはやっぱりプライバシーに関与するからである。それから、プライバシーといっても、婚姻の秘密、出生の秘密、犯罪の秘密、いろんな秘密があるわけであります。その秘密がそれぞれのデータ・バンクに、先ほどから御答弁にあったように、好むと好まざるとにかかわらずデータに入力されているわけですから、それがオンラインで流れることを防ぐことがこれからのわれわれの民主主義の社会においては必要である。そうなればラインを引く規制をしなければならぬ。政府としては早急にこれに対する法律規制を行なう必要が私はあろうと思いますけれども、そういう問題については行政管理庁の長官としてどういうふうにお考えでしょうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  72. 濱野清吾

    ○国務大臣(濱野清吾君) この前の御質疑のときにお答え申し上げましたが、プライバシーの問題は、情報化時代、そしてまた電子計算機、あるいは背番号、だんだんとプライバシーの問題が外部に漏れないとは私どもは限らないと思います。したがいまして、この問題は近い将来の問題として前向きに私のほうで検討するというお答えを申し上げておきましたが、そのとおりやっていきたいと思います。
  73. 中山太郎

    中山太郎君 自治大臣ちょうどお越しでございますので、いま行政管理庁長官からお答えいただいたいわゆる総合的なシステムの規制ということとあわせて、自治省はその間に、いまもすでに二千万人コード化されておるわけでありますけれども、いまの先ほどのおたくの役所の方の御答弁を聞いておっても、それはすでに百六十五団体ですか、そこでプライバシーに関することも一部入っておるというような御答弁がありましたが、これに対して、やはり電算機要員に、自治省自治省として、全国の地方自治体のコンピューター導入しておる役所に対して、これの取り扱いに対しては特に規制をする、管理上のいわゆる義務をつけるというふうなことは、これは非常に私は必要なことだと思う。アメリカはもう相当やっております。そういうことについて、ヨーロッパの役所でもやっておる。これが野放しになっておるということは国民にとって好ましいことではありません。そういうことについて、これからどういうふうな方向でいかれるか、ひとつ御方針をお伺いいたします。
  74. 福田一

    ○国務大臣(福田一君) 電算機要員の問題でございますが、仰せのとおりプライバシーを侵すというようなことがあってはいけません。しかし、それを法律の何らかの法制的な根拠なしに厳重に取り締まれるかどうかということは、私はやはり問題があると思います。しかし、いま仰せのように、プライバシーは尊重しなければなりませんから、その取り扱いについては慎重にやるように、先ほど私のほうの馬場管理官から申し上げたように、電算機使用については十分注意をするようにということは今後も強く指示をするようにしてまいりたいと思っております。
  75. 中山太郎

    中山太郎君 大体私がお尋ねをいたしたいと思っておったことはほとんどお答えをいただいたようでありますけれども、最後に私は、私ども国民の側から見て幾つか矛盾があるわけです。それは、郵政省からもお越しでありますけれどもコード化を最後に締めくくる意味で申し上げると、コードつけ方縦割りシステムがまだまだ残っている。それは郵政省の管轄で、電話のローカルエリアのいわゆるコードが私どもの調べでは四千八百ですか、全国のいわゆる地域番号が出ておるわけですね。郵便配達番号は同じ地域を指定するのに違う番号体系で五千七百八十五ついておる。たとえば私の住宅、住居のある、大阪の私の住居は、電話番号の局番は地域指定で〇六八、それから郵便番号は五六五、どっちも地域を指定して、同じに指定になるのですが、郵政省と電電公社ではその番号つけ方が違う。こういうところに私は今日の日本的行政があったのではないか。その番号の発生については、私はそれぞれ郵政省の中でも郵便業務と電話業務歴史がしからしめたものであろうと考えておりますけれども、こういうふうなことを一つとらえてみても、国民の側からすれば、電話の局番だけ覚えておけば、郵便の番号の上へそれを書けば郵便もやってくるということになれば非常に便利じゃないか。どうして郵政省が管轄しておる郵便業務と電電公社と番号の指定にこれだけのいわゆる差があるのかということを私は数字に強い国民なら考えるのじゃなかろうか。そういうことから考えていくと、次の社会に入っていく際には、政府ができるだけエリアコードというものを郵便でも電話の局番でもひとつ全部一緒にしていく、こういうことを考えてやらないと、覚えるだけで私はたいへんだと思う。それで、この間労働省でも失業保険と労災保険のいわゆる金を支払うのを一本化した。だんだん、だんだんこの社会保険とかいろんな問題のコードが整理されていく私は過程にある。これから五年ぐらいこの整理にかかっていくと思うのですけれども、私は全国民で、資本家とか労働者とかということを抜きにして、ほとんどこのごろはもうおそらく働いている者はみんな勤労者という名前でつけられていいのじゃないか。そういう中で、一人の個人自分が持っているばらばらの番号というのは五十数種類あるわけですけれども、これを整理してもらうことは私は働く人たちに非常に便利ではないか、国民に便利ではないかということを私はいつも考えておるのですが、こういう点について、行政管理をする立場で一体平素どういうことを考えていられるのか。国民はどうしたら便利なんだということを私は基本行政をやっていただきたい。それが私ども国民の大きな願いではなかろうかと思うのですが、その点について最後に御答弁をお願いして、質問を終わらしていただきたいと思います。
  76. 濱野清吾

    ○国務大臣(濱野清吾君) ただいま自治大臣と私話をしておって正確に覚えておりませんが、私はやはりお説のとおり電話番号の局番、それから郵便物の局指定の番号、これは別に同じにしても支障がないと考えますし、また市民生活にとってそのほうが非常に合理的だ、便宜である、しかし、これはもっぱら郵政のほうの仕事でありますから、私のほうでも十分行政監察あるいは管理の当局と合議をしてもらうことにいたします。最近局の一一五とか、いろいろ地域指定のことが再三変わりますが、あれだけでも私どもは非常に迷惑だと考えておりますから、お説のようになれば私ども大きな便宜になるであろう、さっそく合議をさせることにいたします。
  77. 牧野康夫

    説明員(牧野康夫君) 大臣からお答えいただいて非常に恐縮に存じます。  先生指摘のように、国民の御利用になる皆さま方、大いに郵便をお出しになるとき、あるいは電話をおかけになるとき、それぞれ番号が違って手帳を一々出してこうメモしておかなくちゃ覚え切れないということはまことに不便な生活であるということは、私ら感情としてはよくわかっておるのでございます。ところが電気通信を専業としてまいりましたこの私どもといたしましては、実は先生御主張のコード化というのを最初にやったのは実は電話なのであります。いまから八十年前にこのコード化をやったわけでございます。したがってこれに見習っていただくとまことに都合がいいという結果になろうかと存ずるのでございます。それぞれの社会におきます先生指摘のような縦割りの問題、あるいは歴史的バック・グラウンドの問題、そういうものがございまして、一様にはまいりません。しかしながら、少なくとも郵政省が管理、監督し、かつこれを実施いたしておりますところの郵便と電信電話ぐらいは一緒にならないかという御所論もわからないではございませんが、電話につきましては、近い将来に世界じゅうの電話が自動電話でつながるという考え方で世界的に協議が成り立っておるわけでございます。そうして番号のけた数もそれからまたそれのやり方も、全部国際的に取りきめられたわけでございます。したがって、日本の国内におきます番号もそれに従ってきめておきませんと、世界じゅうの方々との電話の交流がむずかしくなるという事情も伴っておる次第でございます。ひとつよろしく今後もできるだけそういうところの協調をただいまの大臣の御趣旨に沿いましてやってまいりたいと存じますが、事情を弁明させていただきまして、御了承いただきたいと存じます。
  78. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本調査についての本日の質疑はこの程度にいたします。   午後零時三十分再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後零時三十四分開会
  79. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国の防衛に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 山崎昇

    山崎昇君 先般、内閣委員会から、北海道防衛関係の視察の一員で行ってまいりました。現地の司令官あるいは実際に訓練を行なっている方々にも接しました。たいへん現地では命令に従って忠実な訓練をやっておられるようですし、また私どもに対する説明あるいは案内につきましても、きわめててきぱきやってもらいまして、そういう意味ではたいへん参考になりましたし、まず冒頭に、長官を通じて、先般の視察に対する第一線の皆さんの御苦労に対して謝意を表しておきたいと思います。  そこで、私は、たいへん防衛についてはしろうとでございまして、高度な防衛論というのは後ほどまたわが党の委員から行なわれると思うんですが、きわめて常識的に二、三防衛庁の見解を聞いておきたいと思います。  実は、きのうは日本の歴史にとりましてもたいへん重要な日であったと思うのですが、自民党の代表団と周恩来総理との会見もあったようであります。そうして周総理が言っておりますように、歴史的な日である。だが、過去の日中間の歴史というものは忘れられない。これを参考にして今後の日中間の問題を進めていきたい。——言うならば、日本にとりましては、たいへん明るいといいますか、そういう意味では歴史的な日であったと思うのです。しかし、一方では、けさ方、相模原で、戦車の輸送問題にからんで日本人同士が血を流すというような状態も出てきている。私ども防衛問題を考えるときに、たいへんちぐはぐな感じを受けるわけであります。また、そういう一方では、国際的に緊張緩和の方向に進んでおるのですが、防衛庁で今回考えております第四次防を見ますというと、従来とは違って、かなり攻撃的な兵器が主力になるともいわれておる。ある学者に言わせれば、こういうことばを使っておりますが、GNPの番付が上がったことを軍事力の増強に結びつける発想は、小金をためた成金がへいや門がまえをいかめしくするのによく似ている、こういう痛烈な批判も、またこの第四次防をめぐって行なわれております。こういうさなかに、私ども政治家としては、この日本の防衛というものをほんとうにどうしたらいいのか、言うならば高度の理論問題から始まって、現実的な問題についてもやはり議論せねばならぬ重要な段階じゃないだろうか、こう私も考えます。  そういう意味で二、三お聞きをするんですが、第一に、最近ずいぶん第二次世界大戦に関する本が出されてます。言うならば、ガダルカナルから始まって、レイテの作戦やら、あるいはその他の戦記物が多く出されております。また軍事専門家といわれる方々も、防衛庁におられる方々をはじめとして、ここには二、三冊持っておりますが、ずいぶん本を書かれておる。そこでまず長官に私はお聞きしたいんだが、この第二次大戦の教訓というものを防衛庁としてはどういうふうに考えられておるのか。どういう点を教訓としていま皆さんは取り入れようとしておるのか。あるいは、あれはもう過ぎ去ったことだから全然教訓というのはないんだ、こういうお考えの上にいまの防衛整備計画というものをお考えになっておるのか。まず、最近盛んに戦記物やら、第二次大戦についての記録等が出されるものですから、過去の戦争に対する言うならば反省も込めまして、まず長官にお尋ねをしたいと思います。
  81. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 先般は北方の部隊を御視察をいただきましてありがとうございました。また御懇篤なおことばをいただきまして恐縮に存じます。第一線部隊にその旨を伝えたいと思います。  第二次大戦というものをどういうふうに教訓として受け取っておるかというお尋ねでございます。およそ過去の戦史というものはやはり私どもが将来の防衛考えまする場合に十分もって範とすべきものでございます。第二次大戦のいろいろな事態というものが、われわれの将来の防衛の装備をつくる上におきましても、国民的な合意の上で防衛力を整備をしていくという上におきましても、これを運用していく上におきましても、あるいは、私どもが常々申しておりまするように、わが国の防衛力はいわゆる必要最小限の自衛のための防衛力であります。しかしそれは基本的に戦争の起こらないように——戦争を抑止して戦争が起こらないようにする。もとよりそのためには、戦闘が起こりました際にきわめてしっかりした防衛の武力が発揮できるという体制、訓練された体制ができておらなければできないわけであります。訓練ということに力を入れまするが、基本は戦争というものを抑止する、起こらないようにするということが基本でありまするが、そういうことを考えまする上におきましても、第二次大戦というものの戦争の種々相を十分に教訓としてまいりたい、こういうことでございます。
  82. 山崎昇

    山崎昇君 理念的にはそうだと思うのです。しかし具体的には、それではどういう点をあなた方参考にされるか、どういう点を教訓にされているのか、もう少し具体的に私は述べてもらいたい。
  83. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 第二次大戦だけではありませんで、それ以前の戦争あるいはそれ以後の戦争様相などについても各幕僚監部及び幹部学校等において戦史の研究を十分にやっております。その成果が各幕僚監部の研究——防衛部の中に研究班がございますけれども、そういう中で、今日の、特に日本の防衛のあり方あるいは装備のあり方との関連で検討しております。そしてその成果がわれわれのほうへ上がってくるわけで、具体的な結びつきというのをどういうふうにやっているかということは申し上げにくいのですけれども、いま私が思いつくところで申し上げてみますると、たとえば海上自衛隊で申しますると、第二次大戦において補給の面が非常に軽視をされたということが非常に大きな戦訓となっております。これは海上自衛隊発足以来の反省でありまして、したがいまして海上交通の保護をいかにしてやるかということに非常に重点を置いております。  それから航空関係で申しますると、抗堪性と申しますか、一挙にやられてしまう、たとえば中東六日戦争の場合にアラブの飛行機がすぐやられた、ああいったような場合に抗堪性というものが現在のヨーロッパでもあるいは朝鮮半島の両国におきましてもやはり反省されております。この点につきましては、ただ平時からそういったことを構築することが適当であるかどうか、たとえばシェルターのような問題でありますが、そういう問題を平時から手当てをすることが適当であるかどうか、これは問題があると思いますので、私どものほうとしてはそういった場合の材料の研究、そうしてまた具体的にやる場合にはどういうふうな方法でやるかといったようなことを研究しております。  それから全般的にいえば、御承知のように、電子機器関係、これが第二次大戦の敗戦の非常に大きな原因であったろうと思いますけれども、これについてはわれわれのほうとしては可能な限りのことをやっております。  また航空機の中で申し落としましたけれども、御承知のように、日本の航空機というものは旋回性を重んじまして、運動性というものを重んじまして、強さといいますか、強靭さ、飛行機自身の強靭さというものが犠牲にされました。この点がアメリカの飛行機と非常に大きな差でありましたけれども、今日ではアメリカのものを導入しておるというような関係で、その点はもちろん問題はございません。  それから全般的に後方関係、これは国内での防衛戦でありますから、外征——当時の第二次大戦とは違っておりまするけれども、それにしても後方関係というものは非常に重要である。その中での弾薬の問題がございます。これもわが国が現在緊張時にあるわけではございませんので、平時のあり方としてはどの程度持つのが適当であるかということも検討しておりますが、有事に至ってどういうふうな持ち方をすべきであるか、こういうことも検討しております。  若干の例を申し上げましたが、いろんな具体的な事例について幕僚監部のほうで相当研究を積んだ成果が今日あらわれておると思います。もちろん十分ではありませんでしょうが、われわれとしましては日本の戦史あるいは外国の戦史も踏まえた上で検討を進めておるということは申せようと思います。
  84. 山崎昇

    山崎昇君 いま局長から答弁ありましたが、純軍事的な面だけですね。で、私のお聞きをしておるのは、そればかりではなしに、第二次大戦等から得る教訓というのは政治的にもかなり大きいものがあるのではないか。そこで時間の関係もありまして、もとよりもし私の間違いがあれば指摘されてけっこうでありますが、まず私がいろんな本を読んでみてしみじみいま感じておりますのは、第一次大戦は領土問題が、拡張が中心で大戦が起きた。第二次世界大戦は領土という形の戦いよりもむしろ経済分野の支配をめぐって戦いが起きたともいわれておる。言うならば第二次大戦後の状況を見ればほとんど領土関係は動いておらない、多少のものはありますけれども。そこで問題は、むしろいままで植民地であったものが独立をする。言うならばこの独立戦争に対して介入をしていっているというのが現状ではないかという分析が一つ行なわれておる。  二つ目に行なわれるのは、第二次世界大戦の際に、日本に関連をしていえば、軍部が独裁を行なう。言うならばシビリアン・コントロールがきわめて乱れておる。当時統帥権はあったけれども、あってないような状態であった。軍事が優先をされて、軍人がほとんど政治判断も行なったところに悲劇の第二があったと、こう分析されております。  第三は、いまあなたが言われたように、敵を知らず、おのれを知らず、言うならば、白兵戦主義といいますか、肉弾主義といいますか、一発勝負といいますか、言うならば、補給活動というのはゼロであった、こういうことが指摘をされておるわけです。  そういうことを考えてみるときに、いま皆さんが第四次防衛整備計画で日本の防衛を増強しようと、こういうのだが、こういう一つの分析が間違いないとすれば、本年初めの予算委員会でもかなり議論になったシビリアン・コントロールは一体どうなっておるのか。ずいぶんあの際は騒がれました。また防衛庁もずいぶんいろんなことを言いました。しかしその後ほとんどシビリアン・コントロールに関する限り論議が低下をしているのじゃないか、あるいはまた防衛庁におきましても、そういうものの考え方というのは後退をしているのじゃないかと私は思うのだが、この第二次世界大戦でいわれた、軍部の独裁とまではいかないでしょうが、言うならばシビリアン・コントロールというものはその後どうなっておるのか、これもあわせてこの分析とともに聞いておきたい。  そこで、問題はこの補給活動に関連をするわけでありますが、近代戦争は第一線で鉄砲を持って戦うことも重要だが、最大の問題は補給だと、こういわれるのですね。ですからいまアメリカがベトナム戦争で行なっておるやり方を見ても、なるほど航空機は飛んでいく。しかし一番重要なのは補給活動なるがゆえに、いま日本の基地はほとんど補給基地になっておる。そうい意味でいうと、いま相模原で起きておる輸送問題につきましても、きわめて私は重大視しなければならぬのではないか、こう思わざるを得ない。そういう意味で、言うならば、一体防衛庁はいま日本の基地の総点検を何か始めているようでありますが、近代戦にお題として再検討しなければならぬのではないか。もしあの補給がうまくいかなければ、飛んでいる飛行機だってこれは意味がありません。大砲も単なる鉄のかたまりになってしまう。そういう状況でいえば、何か政府は、将来この相模原の補給廠は縮少するという話もあるようであります。あるいはまた、なくするという考え方もあるようでありますが、一体どうされるのか。第二次世界大戦の教訓から、二つ目の問題としてお聞きをしておきたい、こう思うのです。  三番目は、これは仮想敵国の問題とも関連をしてまいるんですけれども、いままでの日本を取り巻く状況からいけば、いずれも戦争は日本が起こしたと言ってもいい状況にある。相手から攻めてきて日本がやむを得ず立って戦争を起こした状況ではない。そういうことから考えると、一体あなた方は脅威があると言う、何か日本に直接侵略があるような言い方をするが、日本から事を起こさない限り、私は日本をめぐる戦争はあり得ないと、こう思うんです。もしそうだとすれば、いま自衛隊の行なっておりますこの演習は一体何なのか。私はあとでお聞きしますが、ナイキあるいはホークの訓練を見てまいりましたが、一体これは何のためにやっているんだろうか。見ながらそういう疑問を生ずる。そういう意味で、私の申し上げたこの第二次大戦からの教訓は、間違いなら間違いでけっこうでありますが、そういう一つの分析もあると私は思っておりますが、これについての長官の見解を聞きたい。
  85. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 第二次大戦からの教訓としておあげになりました項目、項目的にお答えを申し上げればそれに対する私のお答えになるかと思います。  第一番に、軍部独裁その他というものを、何といいまするか、完全になくする、克服するためにシビリアン・コントロールという考え方が出てま言った、具体的な問題としては、ということでございます。具体的にさきの予算委員会における四次防先取り問題に関連をして、予算の削除、凍結が行なわれました。その際に、その解決の一つの重要な問題としてシビリアン・コントロールというものが出てまいったこと、御指摘のとおりでございます。これはもう、シビリアン・コントロールというものはあの際ずいぶん論議をされました。特に申し上げる必要はないと思いますが、これは本来、戦力——軍というものを扱う場合には、やはり時の政治の中枢というものがこれを握っていくということで、これはまあそういう形はいつでもあるわけでございます。それをやはり軍事専門家ということでなしに、政治家が軍事を完全に掌握をしていくということが一つの私は基本——シビリアン・コントロールの基本ではないかというふうに考えるわけであります。したがいまして、せんだって具体的に問題になりまして、シビリアン・コントロールという問題を考えて具体的に取り上げ、解決をしていくと申しておるのでございます。その方向が、具体的には、一つは国防会議の何と申しまするか、拡充、改組と申しますか、国防会議というものが真に政治が軍事を統括すると申しますか、そういう実を一そうよくあげ得るような形に改組、拡充をしようという問題を考えておることが一つございます。  そうして、まあシビリアン・コントロールの一つ一番基本的なものは、国会——国民に選出された議員をもってなる国会がやはり軍事というものを基本的な形においては統括をしていくということであるべきでありまするが、その国会がそういうことをよりよくなし得るような方向、まあ一つ考え方は、防衛に関する常任委員会を設置をするというふうなことも考えられておるわけであります。国会の防衛力統括という機能がよりよく発揮されるような方向を考えていくというふうなことであります。  なお、多少小さい問題ではありましょうが、防衛庁内部におけるいわゆるシビリアンに属する分野が、他の制服分野の拡充に比較しましていささか拡充が不十分と思われるところもありますので、この方面の拡充をやろう、これはまあ具体的な小さい問題ではございますが、そういうことも考えておる。したがいまして、包括的に申してシビリアン・コントロールということが具体的に整備、拡充される方向で、いま、具体策を練りつつある、固めつつあるという状態でございます。御指摘のとおり、第二次大戦の戦訓としてと言うまでもないことでありましょうが、やはり戦訓としてこれを取り上げておるということでございます。  次に、補給活動の方面の大切なこと、これは申すまでもございません。しかし、いま防衛局長からも申し上げましたように、わが日本における自衛隊の補給の面におきましては、これは全体がいま防衛庁の自衛隊というものは整備段階でありまするので、そういう面では全般的に不十分であるわけでありまするが、補給の面も仰せのとおり不十分であるわけでございます。しかし、これは防衛庁、自衛隊というものがどういうふうな一朝有事の際を考えておるかという意味の御質問のおことばがあったわけでございまするが、防衛庁、自衛隊のたてまえは、あくまで自衛、防衛に徹するわけでございます。攻撃的に相手を攻撃をしていくというたてまえをとっておりません。たびたび申し上げておるとおりでございます。したがいまして、たとえば地対空誘導弾、ナイキ、ホーク等をごらんになったということでありますが、これはもとよりわが国へ進攻してきたものを撃墜するためのものでありまして、ナイキ、ホークで遠距離にわたって敵の基地をたたくなどということはとうていできない性質のものであることは申すまでもない、よく御承知のとおりでございます。すべてのものが攻撃的な要素を持ったものとしては装備をしておらないということでございます。四次防においてそろえますもの、これはもう三次防の際に採用を決定したものもあるわけでございまするが、ファントムであるとか、T2改であるとかいうふうなものが相当の航続力のある、相当の積載量を持っておるということはそのとおりでございまするが、これはあくまでもファントムは要撃戦闘機としてのものでありまして、若干の遠距離航続力を持っておりましても、日本の周辺におけるいわゆる相手国の基地をたたくというふうな能力というものは持っておらないわけであります。そういうものを持つようなものとしての装備はいたしておらない。あくまでも攻撃をしてきた場合を、防衛として、りっぱにその防衛力を発揮できるという意味においてそういうものを備えようとしておるわけであります。進んで相手国の基地をたたくというふうな考え方は持っておらないわけであります。  したがいまして、そういう意味における補給の大切なことは仰せのとおりでございます。しかし、これは申し上げましたように、いま整備段階であります。いろいろな方面で未整備であるとともに、この補給の問題もまだ足らないところがある。しかし、補給の問題は、先ほど防衛局長が申し上げましたように、われわれが戦訓にかんがみてきわめて重要な欠陥であり、問題でもあるわけでございます。十分、この点は心して整備につとめていきたいというふうに考えるわけでございます。われわれは、相手がどこから進攻してくるか、そういう相手をどういうふうに考えておるか、脅威というものはないともいうが、あるようにも受け取っておるようにも見えるがという意味のお尋ねであったと思います。私ども考えておりまする備えというものは、やはり第二次大戦後の世界の情勢にかんがみまして、その後におきまする世界の情勢、あるいは、世界的な大戦争は幸いなことに起きておりませんが、地域的な相当の戦乱、戦闘というものは至るところに起きておるという事態を、現実を踏まえて考えまして、理由はいろいろな理由が、情勢の変化、理由というものはいろいろ考えられることでありましょうが、やはり世界の現実の各国の状況を教訓、参考として考えましても、やはりわれわれとしては最小限の自衛の備えをしておくことがわが国を戦争から守る、わが国に対する戦争をなからしめるというために必要であるという意味で私どもは自衛の備えをしておるわけであります。近所のどこにいわゆる脅威がある、潜在的なあるいは顕在的な脅威があるという、そういう考え方での自衛の備えをしておる、あるいは整備の土台をつくっておるということではございません。もとより日本の周辺に、どういう事態になっても、日本に対する侵略、攻撃というものをなし得るような力がどこにもありません場合には、これはもうわれわれとして自衛力を持つ必要はないと思うわけでありまして、そういう意味における周辺の攻撃力、武力というものは、これを頭に置かざるを得ないということでございます。そういう周辺の武力的な能力というものは考えていかざるを得ないということであります。そうしてその能力というものを考えまして、申し上げましたように、どういう状態のもとにか、進攻してくるものがあった場合にこれを十分に防ぎ得る態勢を整えておいて、それによって進攻を思いとどまらせる、戦争をなからしめるというのが私どもの自衛、防衛の力をつくる基本的な考え方、したがってそういう意味における日米安全保障条約というふうなものが一つの日本の防衛、自衛における背景というか、大きい力になっておるというふうなことであるわけでございまして、どこに脅威があるか、どういう脅威があるかということを考えての自衛力、日本のいまの自衛隊、自衛力の装備充実という方向では考えておらないというふうに御了解をいただきたいと思います。
  86. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、自衛隊考え方がかなり変わってまいりましたね。いままであなた方は、国会を通じて、日本の周辺には脅威があるのだ。これが最近になったら、中曽根さんの時代には、顕在的な脅威はない、しかし潜在的にはまだある、こう述べてまいりました。いまあなたの説明を聞くと、脅威はないんだ。脅威はないんだけれども周辺の国に武力があるから、それに見合うように自衛隊というものが必要になる、こうなってきた。私は、そうすると、自衛隊の性格が変わってきたんだ、自衛隊法にいう直接侵略というものはもうあり得ない、自衛隊法を変えなければならない、こうなってきますか。特に、私はなぜ第二次大戦の話をしたかといえば、日本を取り巻いておる戦争状態というものを考えれば、日本から全部しかけておる。いろいろな理由をくっつけてやっています。相手から攻めてきて日本がこれを防衛した戦争なんていうのはほとんどない。ほとんどというよりまるっきりない。そういうことを考えれば、私は、もし日本が戦争状態になるような状況だというならば、日本から何らかの理由でアクションが起きるんではないか。それ以外に日本をめぐる戦争ということは考えられないのではないだろうか。だから直接侵略なんというものは、いまあなたの答弁でも、ない。それならばなぜ自衛隊の第一線機関は、一つの想定のもとに、たとえば赤い軍隊がどこどこに上陸をした——これから北海道でも大演習が行なわれるようであります。網走だとかあのオホーツク海、日本海沿岸に敵の軍隊が上陸をした、さてこれをどう攻めるか、守るかという演習をこれからやるのですよ、あなた。あなたの国会における答弁と違うではないですか。だから私は、直接日本を攻めてくる脅威がないのに何で日本の自衛隊は、いままで守ると言っておったのが、あなたからいえば少しではあるのでしょうが、攻撃的な兵器を持つとほとんどの評論家は言う。軍事専門家は、日本も小粒ながらたてを持つようになった、こう言う。こういうのに対してあなた方は国民を説得できるだけのものがありますか。私はわずか二、三日でありますから、大きな知識はありません。だがこれは防衛庁で出したナイキJの説明書であります。また千歳に私どもが行って現実に見たら、ナイキJは発射台が六つありました。二台で一個分隊を形成して、三個分隊、いまどれくらいの弾薬がありますかと聞いたら六十発、そうして命中率は百発百中だと、こう私ども説明がありました。かりにこの六十発で、全部これを撃ったとします、高高度から飛んでくるものを百発百中いたしたとして六十機までは防ぎ得るでしょう。だが、大挙編隊できた場合に一体どうなりますかと現地の司令官に聞いたら、お手上げです、とても守れるものではありません、意味がありません、こうぼくらに説明するわけであります。これは現実の姿です。しかし、前提となる日本を攻めてくる国がないというのに、なんでこういうものがどんどん増強されなければならぬか、ここに一番私は、国民がやっぱり疑問を感じ、あなた方の内部で議論してさえいろんなことが行なわれると思うのです。このことをもう少し、私はしろうとでありますから高度なことはわかりませんが、明快にひとつ説明をしてもらいたいと思う。  さらに私の知識だけで、七、八冊の本を読んでみれば、あなた方が否定しようとも、大体仮想敵国というのはソ連、中国、北朝鮮だ、こう書いてあります、現実的に。防衛庁のいま国防会議の事務局長である海原さんの本を読んでも、日本は昔のあやまちを再びおかそうとしているということから始まって、これもまたソ連が仮想敵のように書いてあります。そう考えるときに、あなた方は否定をするけれども、実際は防衛庁というのは、ちゃんと仮想敵国を想定をしながら、どれくらいの規模の軍隊がどういう形で攻めたらどう防ぐかということを現実的に、図上演習であろうが、第一線の師団は演習しているではないですか。あなたの言う、聞きようによっては抑止力としての軍隊のようでありますけれども、それとやっていることとは違うのじゃないでしょうか。そこが私はこの防衛問題についての一番のネックであり、問題ではないだろうか、こう思うのですが、重ねてあなたの見解を聞きたい。二、三この仮想敵国の問題にしましても論証せいと言われればまた私も二、三調べてあります。述べてもいいと思うのでありますが、きょうは時間が少ないから省略いたしますが、実際はそういう方向じゃないでしょうか。なぜ一体防衛庁はそういうことをオブラートで包みながら、ないことをあるような、昔の川柳でいえば、ばけものの正体見たり枯れ尾花みたいなもので、何も攻めるものがないのに軍備だけはどんどんあげていく、こういうやり方はやはり改めなければならぬのじゃないかというのが私ども考えなんですが、それについての見解をひとつと、ついでにもう一つお聞きをしたいのは、かりにあなたの言う、攻めてくるから、あるいは回りに軍事力があるから、日本は防衛力を持たなきゃならぬとこうあなたは言う。そうすると、陸、海、空、三つの自衛隊があるわけですが、私はそれぞれ任務が違うんじゃないかという気がいたします。陸上は、まあ海原さんのことばであったと思うんですが、陸上自衛隊は昔の千早城戦法だという。どこかにたてこもって、来たやつを一生懸命防ぐという戦法だ。海上自衛隊は、バルテック艦隊のように出ていって、遊よくしておって、来たらたたくんだとか、航空自衛隊もまたそれに似たような戦法をとっていると、こう述べています。こういうものを私ども読むというと、同じ自衛隊であっても、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊のそれぞれ任務が違うんではないか。なるほど陸上自衛隊は、向こうが上陸して日本の国土が戦場になる。昔のように出ていって戦うということがあり得ない。あるいは占領した地域に陸戦隊を派遣をして占領行政をやるということはできない。しかし海上自衛隊航空自衛隊はそうではないんではないだろうか。どうも第四次防を見るというと、そうではなくて、かなり、あなた方のいろんな答弁を総合するというと、相手の基地もたたく。言うならばこちらから攻めていくという方向に向かっているんではないだろうか、こう私ども思うんですが、これについての見解を聞きたいと思います。
  87. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 先ほど私の申し上げたのがことばが足りなかったのか、たいへん恐縮でありまするが、私は、いま現在日本を攻めてきょうとしておる国、現在の脅威はありませんと、こう言ったんです。そうい島忠味で申し上げたので、それで脅威ということばをいままで使って、たとえば潜在的脅威というふうなことばでたとえば中曽根長官が申されたようなものは、いわゆるそういう能力、武力能力が周辺にあるという私どものことばと大体似たような意味合いでございます。そういうものがあって、世界じゅうの情勢を見回してみまして、いわゆるこの顕在的なものとしての進攻があると思われないでいたものが、実はそういういろんな事情で進攻という形になってあらわれておる事態がある、この世界にあるということを申し上げて、そういう意味で、現在日本に進攻してこようとしておるいわゆる脅威、顕在的脅威というものがあるとは私どもはいま判断しておらないということを申し上げておるのであります。しかしそういう場合に、顕在的、潜在的脅威が全然ない、すなわちそういう武力が周辺に全然ない、どういう意思を持とうとも進攻するような武力がないということになれば、われわれとしては自衛力を持つ必要はないということを申し上げたのであります。そういう意味で申し上げた周辺の武力能力というものが、ことばとしては大体潜在的脅威というようなことで言われたものと似たようなものではないかというふうに考えまして、従来の防衛庁の考え方を変えなければならぬというふうなものの考え方の変化ではありません。  私どもは、やはり日本の防衛というものを長い目で考えてまいりまする場合に、現在日本に進攻してこようとしておる国があるとは判断をしておりません。おりませんけれども、将来にわたってそういうことが決してあり得ないというふうに判断をするわけにはまいらないということで、最小限の自衛力、防衛力を備えていこうということであるわけであります。そうして、そういう場合にやはり一つの要素となりまするものは、周辺における能力、武力というものが一つのめどといいますか、標準といいまするか、考慮の中に入れるべき問題になるということを申し上げたわけでございます。そういう意味で私どもはこの備えをいたしまして、そうして備えを持つことによりまして、何らかの理由、事情によって日本に進攻してこようと思う国がありましても、日本の自衛、防衛の状態を考えてこれをたやすく突破、自分たちの目的を達することができないと判断せしめることによってそういう進攻のことをなからしめる、すなわち戦争を抑止する、あらかじめ抑止できるようなことにしたいという意味で申し上げたわけであります。  しかしそういう抑止力は、ただこの重装備、軽装備を整え、兵員を整え、頭数をそろえておっただけではそういう目的は達し得られないのであります。やはりいざ事があったときに有効にこれを反撃できるという装備、兵員訓練、そういうものが整わなければなりませんから、したがいまして自衛隊におきましても、平素そういう想定のもとに、どういうふうな進攻勢力が来た場合に、これに対してどういう備えをするか、これを反撃するかというための演習をやるわけでございます。これは仮想敵国を想定してやるというようなものではない。当然の防衛力、武力の演練整備をしていく。そうして演練整備をされたものによっていわゆる抑止力が構成されるという意味でやっておるということを、これを十分御了解いただけたということではないかと思うわけでございます。  そうして、日本の陸、海、空自衛隊のやり方、それぞれ違うのではないかというお尋ねであります。陸、海、空とも日本における防衛というものは、毎々歴代長官から申し上げておりまするように、防衛、自衛に徹するわけでございます。外へ出て行くという性質のものではありません。敵の基地をたたくというたてまえで出て行くものではございません。その点は、まあ一番はっきりしておるのはもとより陸でございます。しかし海といえども、これは海には、この日本に接近し、上、着陸をしようとしておる部隊を海上において一これはもう領海だけではございません。公海においても、日本の周辺に明白に日本に進攻してくるというようなものに対しましては、海上自衛隊は公海におきましても日本周辺においてこれを攻撃をして、できればせん滅するというあれを持っております。したがいまして、公海においても十分活動をしなければならぬ。また海上自衛隊には、日本の海上交通路をできるだけ守りまして、日本のいまの経済状態のもとにおける海外との交流、海外からの物資資源の輸入ということはもう緊急欠くべからざるものであります。海上護衛という任務を持っております。したがいまして、これは公海におきまして相当距離までそういうことをいたし得る能力、装備との関係もありまするから、どこどこまでもやれるというものではない。マラッカ海峡を防衛するとかインド洋に出て行って船団護衛をするというふうなことはこれは考えておりませんし、なし得ることでもない。やるとは決して考えておりませんが、日本の近海における公海上の海上護衛というものはこれをやっていかなければならぬ。これはしかしあくまでもやはり日本の防衛、自衛というたてまえに立っての海上の任務における行動でありまして、敵の基地をたたくという意味における何といいますか、防衛の範囲の拡張ではありません。空においては、さらにこれはもう海よりも陸に近いわけでありまして、日本の領海の上空あるいは若干の公海、周辺の公海この上空等に出ていって、明らかに日本に進攻してくるというものに対する防御、攻撃活動をするということがあるわけでございます。もとより陸よりは外に出て行くことはありまするが、基本はあくまでわが自衛隊の空、航空自衛隊というものはそういう意味の自衛、防衛のたてまえにおける行動ということでございます。この点においては従来から申し上げておる点にいささかも変わりはないというふうに御理解を願いたいと思います。
  88. 山崎昇

    山崎昇君 どうもやっぱり私はぴんとこないのです。そうすると、自衛隊というのは、いまの段階でいえば直接侵略はない。あなたのいまの答弁でいえば抑止力として自衛隊を持っているのです、こういうことになりますね。まずそれをひとつ確認を私はしておきたい。  それから、いまはなるほど脅威はないんだが、将来はあるかもしれない。そうすると、防衛庁は、将来といってもまあ時間的な点でいえばいろいろあるでしょうが、一体日本を攻めてくるという国がもしあると仮定をすればその一体原因は何であるか。さっき私は、第二次大戦の教訓として、第一次大戦はほとんど領土が戦争の中心であった。第二次世界大戦は経済の支配権が中心であった。第三次はそういうことにならぬであろう。日本をめぐる戦争を見ても、日清から日露戦争と始まって見ましても、領土の問題、あるいは経済分野の問題等とからみ合っておりますが、大体その性格である。そうすると、もしも三回目に日本が戦争状態になるとすれば、防衛庁はどういう原因で日本が戦争になるとお考えなのか、これはやはり明らかにしておかなければならぬのじゃないだろうかと私は思います。  そこで、たびたび援用して恐縮でありますけれども、この海原さんの本によれば、戦争の意味は何か、それは国内の政治体制であり人間の思想である、いうならば資本主義と共産主義のけんかである、これが現代の戦争の意味だということを書いてあります。そういうことであるとすれば、一体日本の国内における戦争というのはどういうふうに私ども理解をしたらいいのか。もしこのままでいうならば、自衛隊は外から来る敵に対するものではない、敵は日本国民の思想にある、こういうことにこれは結論づけられてくるのですが、自衛隊の性格は一体どうなっていくのか、こう私どもは思います。さらに、いまとにかくどこか攻めてくるであろう、そういう想定のもとに毎日訓練が行なわれている。しかしずっと訓練はしているけれども攻めてくる国がない、そうなった場合の自衛隊の一体行き先というのは、第一線の将兵というのはどうなっていくのか。防衛庁内部に矛盾が生じて私はおかしくなっていくんじゃないかという気がするのです。そういう意味で、この自衛隊の性格論というのは、憲法論ももちろんありますけれども、できて二十年たった今日、私はきわめて重要な段階に差しかかってきているのではないだろうか、こう思うものですから、しろうとながら聞いているわけなんですがね、ひとつわかるように説明してもらいたいと思います。
  89. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 先ほど来、初めのほうのお問いにはお答えをしたように思うんですけれども、直接侵略はないというのは、現在直接侵略をするであろうと思われるような国はないと申したのでありまして、将来にわたってないと判断されるならば自衛隊をつくる必要はありません。私どもは、将来はわからない、必ずあると判断をしておるわけではないが 将来はわからない、世界の大勢をながめてみても——という意味で自衛力を備えなければならぬ、現在直接侵略をしてこようというような国が周辺にあるという判断はしておらないという意味で、将来はわからない、必ずあると申すわけではありませんが、ないとは言い切れないという判断のもとに、自衛力は、やはり世界の情勢、大勢を考えてみて、私どもはつくっておかなければならない、こういうことでございます。  戦争といいまするか、侵略の原因は何か、これは私どももこういうものだということを——いま山崎委員は、従来は領土の問題であり、第二次大戦は経済の支配の問題だ——そういう面が確かに一次大戦、二次大戦について見ると、あるように思います。この次の問題はどういうものか。これは第三次大戦というものはちょっと私どももなかなかいま想定しにくいと思いまするが、なきことを切に念願をしており、いまの米ソの二大核保有国のある意味における対立、ある意味における協調というふうなものを考えまして、私どもは第三次大戦というものは起こらないであろう——起こらないことを希望し、起こらないであろうということを考えております。局地的なといいまするか、部分的な争い、戦いというものは残念ながらないとは言い切れない、あるかもしれないという判断に立っておりまするが、その原因は何か。これはなかなか私どもこういうことが原因で起こるであろうということはいま御説明をいたすことができません。しかし、資本主義か共産主義かという争いになるのだ、それが戦争の原因でほかにはないというふうなことを言っている人があるということ、私はそうとは思いません。そういうことが戦争の原因になり得るとは私も考えまするけれども、それ以外には戦争の原因はない——しからばどういうものかと言われても、私もいま適切な説明を用意いたしませんけれども、私どもはやはり戦争というものが局地的なというか、形のものはあり得る。必ずあるというわけではございませんが、あり得る。あり得るとして備えをなすべきだ、国の安全という意味においては——という意味で考えておりまして、何が原因で起こるかということはなかなか私どもは御説明をいたしかねるということでございます。  そうして、抑止力としてやっておるというもので戦争はないということであればこの自衛隊というものは将来どうなるんだ、どういうふうに考えるんだというお問いでございましたが、私どもは、特に日本の実態というものを考えてみまして、これはもうあくまでも抑止するということに全目的、全精力を集中をしていくべきものである。しかしその抑止力は、現在の周囲の情勢に対応するすぐれた装備を備え、すぐれた兵員を養成をし、しっかりと訓練していくということで成り立つのであります。先ほども申したとおりでございます。そうして、そういうことですぐれた装備と訓練、正当な兵員ができて、抑止力がきいて、そうして戦争がない、平和で長く日本が続くことはもう最も望むところであります。そういうことで自衛隊員が、われわれは自衛隊員になった望みが——望みというか、かいがなかったというふうな考え方をするようには私ども自衛隊員というものの訓練、教育はいたしておらないわけでございます。そういうことになれば、自衛隊員は、これで自分たちの目的を達したんだ、大いに喜ぶというふうに考えさせるように訓練、教育をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  90. 山崎昇

    山崎昇君 きょうはきわめて時間が少ないから、私はもう一、二問でやめなければなりませんが、いまの長官の話をかりにそのまま認めたとしても、あなたがほんとうに平和を望んで自衛隊を抑止力みたいに考えるなら、最大の重点が外交でなければなりませんね。たとえば中東戦争一つ見ても、軍事的でものごとは解決していませんね。最後はやっぱり政治論議になってきますし外交論議になってきますね。  そういうことを考えるときに、いまや日本の国内は世論が二分されるぐらいこの自衛隊については違憲論もある。さまざまなことが渦巻いているときに、こぞっていまの専門家は、自衛隊はもはや専守防衛ではないんだ、たとえ弱い力であったとしても攻撃力を持つところまできているんだ、いまのうちにこれをつみ取らなければたいへんなことになると叫び、私のところにある本だけでもほとんどそういう論調になっている。また日本国内でも、きのうの朝日の世論調査を見れば、田中さんに対する支持率は高いようであります。しかしその中でも、いまの自衛隊を増強していくことには反対の声のほうが強い。そういうときに、なぜ第四次防はこれだけの装備が必要になるんだ。やはりここが私は一番国民の知りたいところであり、問題ではないだろうか、こう考えますが、これはあらためてまたあなたにお聞きをしたいと私は思うわけです。  そこで、最後に、この四次防でいろんな兵器が更新をされる、あるいは性能のいいものがつくられるようですし、買われるようであります。だが、私は先般、北海道の一部でありますが、視察をしてみて、むしろそんなことよりも、この四次防では、いまあります国内の問題を一体どうするか。まあ一つ、二つだけ申し上げれば、たとえば稚内に行ってみますというと、ある地位の隊員が入っている宿舎が七坪だ。あるいは冬雪が降ったら、除雪車がこわれて使えないので新しいものを買いたいけれども、なかなかそうなっていない。あるいは上の監視所まで行くのに、囚人みたいにロープで一列にじゅずつなぎで行かなければあの稚内では雪と風でどうにもなりませんという、そういうようなことを考えるときに、この第四次防では、一体いままでの国内装備という、まあ兵器もそうでありますが、そういう点についての更新といいますか、整備といいますか、そういうものは一体どの程度まで考えられておるのか、きょうは聞いておきたいと思うのです。  さらに私は、自衛隊は私どもは否定する立場でありますけれども、現実に存在するあの隊員の生活を見るというと、たいへんだと思います、正直に申し上げまして。一室に十六人も十七人も詰め込まれて、最近できた刑務所よりもっと悪い。あれではいざというとき、とても使えるようなしろものになりませんね。ですから、私は、あらゆる批判を食ってまで攻撃的な兵器をつくる前に、もっと防衛庁としてはやることがあるんじゃないか、こういう気がしますが、一体四次防におけるそういうものの整備というのはどの程度まで行なわれるのか聞いておきたいし、この中で、人件費を入れれば五兆八千億とも、こういわれるのですが、一体人件費の計算というのはどういう方法でどれくらいの計算になっているのか、あわせてお聞きをして、一応きょうの質問は終わっておきたい。
  91. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) いま最初に仰せられた、国の防衛というものは外交などに特に重点を置くべきものではないか、まさにそのとおりでございます。シビリアン・コントロールというようなことを具体的にやかましく言っておりまするその一つの主眼は、国防会議が、いわゆる防衛庁が原案をつくりまする防衛計画などの審議、策定を中心に動いておるということではいけないではないか、本来。これは外交その他——近ごろは外交も経済外交というものもきわめて重要なものである——外交その他の問題を広く考えて国の安全、防衛というものを考えるべきだ、国防会議を動かしていくべきだという考え方でシビリアン・コントロールという問題も起こっておるわけでございます。われわれ、何といいまするか、いわゆる防衛、武力を主たるものとして考えておりまするものにとりましても、やはりこの際非常に大事なことは軍縮ということでございまして、世界的な軍縮の問題をわが日本としては精力的に取り上げまして、ジュネーブの軍縮会議にも参加をしたことでもあります。しっかりやっていかなければならない。そしてさらには、核の基本的な制限、いまの核不拡散条約というふうな方向のものでなくて、基本的に核を凍結をする、進んで核の軍縮を行なうというふうな軍縮の問題と私どもは取り組むべきものである。そうして、一方ではやはり国連というものが創設の当初に返りまして、国連の警察軍というものを整備をして、これによって国際的な武力紛争というものを適切に警察行為として処理していくというふうな方向をとるべきものである、そういうことを考えるわけでございます。外交が国の安全防衛の中心になるべきではないかというお考えはまことにそのとおり私も賛成でございます。  そうして四次防の、今度御視察をいただいて御指摘をいただいたことはまことに私ども痛いところをつかれたと申しまするか、ある意味ではたいへんありがたい御指摘でございます。何しろ完全な武装解除をしました無から昭和二十九年に発足をしましたことでありまするので、十分な後方の設備、自衛隊員の居住、給養その他の設備が行なわれておらぬこと、これはまことに申しわけなく、私ども残念に思っております。この点は、四次防におきましてはできるだけの配慮をこの方面にいたしておりまして、たとえば居室なども、大ぜい入っておりまするものを、現在ありまするものの二分の一あるいは三分の一程度になりまするか、一単位を通常七名の一段ベッドにするという方向を、これは五十二年度までかかりまするが、大体四次防の期間内にこれを整備する。隊舎その他の整備もこれに準じて行なう。古い——当初まだ保安隊時分に建てましたものなどもすでに大修理を要するものがあるわけでございます。こういうものの修理もこれは全部四次防期間内に修理を完了する。宿舎の問題も、申し上げたように五十二年度までには十分行き渡るように配慮をする、その一戸一戸の規格もできるだけいまよりはスペースの広いものにしていくというふうなことは十分に四次防内に考えておるわけでございます。  装備の充実の点は、ちょっと比較を申し上げるものがないのでありますが、まあ、たとえば第一次原案でつくりました四次防五兆二千億、ベースアップを入れると五兆八千億といわれましたものをいま縮減をしたわけでございます。四兆八千億、これにベースアップをたとえば六千億入れますると五兆四千億というふうなことになりまするが、この縮減、これはしかし新たに三千億ばかりの増加の要素があったことを考えまして、そういう程度に縮減をいたしました。装備はことに重装備とも称せられるものがおおむね七割程度に圧縮をいたしてあるわけでありまするが、その中で、いま御指摘をいただいた後方関係は圧縮をいたしません。最初の原案のとおりに盛っております。これはまあ比較的なものとして御説明をしたわけですが、十分その点には意を入れまして四次防というものを策定をしております。  なお、詳細防衛局長から補足をさせます。
  92. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 今回の案の中では、後方関係は私どもできるだけ重視をいたしました。そして防衛庁の原案の場合には正面兵力は相当量ありましたが、たとえば三次防に比べて三・一倍でありましたものをこの案では二・四倍にしております。しかし、どうして正面兵力はまだ多いかと申しますると、特に航空自衛隊の航空機が三次防当時減耗というものがほとんどなかったものが、四次防におきまして集中的に出てまいる、この手当をせねばならなかった、減耗の更新分が非常に大きかった、しかも新しい航空機によるものであったということであります。そこで、航空自衛隊の航空機をとりますると、大体後方関係と正面兵力はバランスがとれております。三次防に比べまして大体一・八倍、ただし国防会議及び閣議で決定されまする四次防の主要項目というものの中には正面兵力が中心でありまして後方関係は入っておりません。したがって、これは毎年毎年度の予算の中で勝負することになりますので、一応の総体的な、つまり四次防の総体的な経費ワクというものはおそらく設定されると思いまするけれども、具体的にどういうふうにやっていくかということは、計画なり積算の中なりでは私ども重視して詳細な計画を持っておりまするけれども、それが実行されるかどうかというのはやはり予算の中で勝負されると思いますので、せっかく努力をしてまいりたいと思います。
  93. 上田哲

    ○上田哲君 運輸大臣が、非常に困難な時間配分の中で御出席をいただいたようでありますが、私も端的に御質問をしたいと思いますので、そのようにお答えいただくようにお願いします。  まず冒頭申し上げておきたいのは、ただいま苛烈さを加えております国鉄労働組合、動力車労働組合のいわゆる順法闘争、たいへんまああらゆる点からいま議論を呼ぶわけであります。その中で、運輸大臣が先般、公労法の改正を、スト権を与えるというような方向に含みを持たせて示唆をされた。これは私どもたいへん歓迎をしているところでありまして、いわばそうした方向がこういう大きな戦いの争議の収拾に役立つところが多かろうと思っていたわけでありますけれども政府部内の方向というものは、たいへんそのような方向をたどらない形になっているように感じております。運輸大臣のこの問題についての発言の真意をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 九月十四日だと思いますが、運輸省の新聞記者会見におきまして、記者諸君からのいろいろな質問がありまして、国鉄の処分発表、またその処分発表に基づいての順法闘争、こういうことが常に繰り返されることは、一番迷惑するのは国民である、こういうイタチごっこを繰り返すことを例年そのまま見ているような状態というものは、あまりにも知恵のないことであり、何とかこれは総体的に、全面的にこういう状態をなくするように考える必要があると、こういう発言をいたしました。そうしますと、新聞記者のほうから、公労法の改正などを考えているかと、こういう御質問がございましたから、それは労働大臣の担当だから、田村労働大臣と話し合う機会をつくろうと、こういう発言、私の発言はその範囲であります。どういうふうに受け取ったかは存じませんが、だいぶ話題を呼んでいるようでありますが、私の発言いたしましたのはそれ以上のものではございません。
  95. 上田哲

    ○上田哲君 争議の最中でありますから、もう一言お尋ねをいたしますが、担当は労働大臣だという政府部内の区分はありましょうけれども、国鉄というものを見るのは運輸大臣というところで私どもは見ております。当然強い関心をお持ちになり、事態収拾のために御努力なさるのは政治責任の一端だろうと思うのですよ。そういう立場では、この御発言の波紋が、われわれから見ればたいへん好ましい形であったというふうに受け取るように広がったと思うのですが、今日労働大臣からは否定をされる。あるいは労使のトップの交渉の中で、なるかに見えた話が今日では逆転をしたというふうに受け取れる形になっている。この形はたいへん好ましくないと思います。また、そのことが理由になって順法闘争なるものが強化されざるを得ない状態に追い込まれた。これはやはり非常に重視しなければならぬ問題だと思います。そこで、運輸大臣とされては、やはりこの問題の争議に深くかかわりのある担当大臣として、ぜひ収拾の努力をされると思うのでありますが、その収拾の方途としては、真意の所在はともかくといたしまして、伝えられるように公労法の改正という方向が望ましいと今日もなおお考えになりますかどうか。
  96. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 公労法という労働省の専門的なものになりますと、とんと私はまだよく勉強しておりませんので、よく労働大臣と連絡をして、勉強させていただきます。
  97. 上田哲

    ○上田哲君 その勉強するということが、もうちょっと進んでなかったというようなことがはしなくも出てまいりました。同じ日に労働大臣が、運輸大臣とはまるっきり話をしていなかったのだというようなことが、われわれは報道されて聞いておりますけれども、これははなはだ困るのです。そんな形で、国民がいまいろいろとその渦の中に入っておりますこの大きな争議というものをあしらわれては困る。ひとつ労働大臣と、もう一言お伺いするけれども、公労法で、スト権を付与するという方向で前向きに進めてみるというお考えはありませんか。そしてまたそのことがどういう真意であったにもせよ、今日、この争議をさらに大きくしているということについての政治的、道義的責任というのをどのようにお考えになっておるか、この点あわせて承りたい。
  98. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) もともとこの発展は、私の発言したことが起点となってこういう結果になったのかどうかは私よくわかりません。私が発言したのは先ほど申し上げたとおりでありますから、イタチごっこを繰り返しているこの現状を何とかしなくちゃならぬ、こう申し上げたのであって、具体的に公労法をどうするとか、何をどうするとかという労働省の所管まで私は立ち入って発言はしておりませんから、いま御心配の点については、内閣としてどうするかということであれば、やはりこういう状態というものは解決しなくちゃならぬという気持ちは十分持っております。
  99. 上田哲

    ○上田哲君 それでは事態が解決の方向に向かわないので、仮定の問題として一言お伺いをいたしますが、こういうふうなあなたのおっしゃるようなイタチごっこの繰り返しを避けるためには、公労法をスト権付与の方向でもって改正をしていくということが効果的であるとお考えになりますかどうか。
  100. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 私の担当であればはっきりお答えいたしますけれども、担当でないものに対して仮定についてのお答えはよほど慎重でなければならないと思いますから、十分勉強させていただきたいと思います。
  101. 上田哲

    ○上田哲君 大臣、就任早々そうその答弁を逃げ回るような形では、目の前にあなたの所管されておる国鉄が、鉄道がたいへん渋滞をしておるんですよ。この問題を政府部内の責任のたらい回しのような形で、御答弁が国会の場でも出てこないということは、はなはだまあ佐々木大臣らしくないと私は思うのでありまして、ひとつ腹をきめて、どの方向が望ましいとお考えになるか、しからずんば最大限に譲っても、その方向で労働大臣と早急に議論をするというふうにお答えになりませんか。
  102. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 腹をきめてこのイタチごっこを繰り返しているような状態を何とかしなくちゃならぬと懸命に努力もし、考えております。
  103. 上田哲

    ○上田哲君 時間がもったいないからこのことはもう触れられませんが、もう一言言いましょう。あなたは実際に運輸大臣として、国鉄に対する所管の大臣として、このような争議をぜひ早期収拾をしたいとお考えになるのかどうか。なるのであれば、これは公労法の改正という一たん火のついた——どこから火が点じられたかは別にいたしましても、この方向が非常に有効であるという御認識をお持ちにならないはずはない。政治家としてそういう認識をお持ちになっておられるかどうかということを、所管の問題とは別に、政治家としてそのような認識をお持ちになっておられるかどうかということを一言承らしていただきたい。
  104. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 政治家としての答えはまた別な機会に上田さんにお答え申し上げたいと思います。きょうは運輸大臣として参りましたから、そのストの状態につきましては非常に心配しております。
  105. 上田哲

    ○上田哲君 こういうイタチごっこを繰り返すようなことでは、この争議はさらに泥沼に入るだろう。やっぱり五回も六回も大臣になるチャンスはないのですから。六二%も支持率が最高に高まっておるときに、やっぱりひとつりっぱな政治姿勢をお示しになることが、これは従来からたいへん名だたる政治家であられた佐々木さんの非常に私は見せ場だろうと思うのですよ。短い時間がわかっていて質問している中で、こんなにぐるぐるたらい回しの御答弁しか出ないとは、私も実はびっくりいたしましたりがっかりいたしました。政治家としてということがいけないのであれば、運輸大臣としては、せめてこの事態収拾のために全精力を注いで、政府部内、とりわけ労働大臣との調整をはかるということを御決意になりますか。
  106. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 運輸大臣として全精力を傾けてこの心配な状態を解決したいと、こう考えております。方法については私の考えでやりたいと思っております。
  107. 上田哲

    ○上田哲君 せっかく御努力をいただくことにいたしましょう。  きょう私が問題にいたしたいのは、最近非常に需要の増大している空の問題、この需要にどう応じていくのかという問題と、まあ防衛庁長官もおられるけれども航空自衛隊の問題もからんで起きる事故をどのように防いでいくかという問題、この点からひとつエアバスにしぼってお伺いいたしたい。七月三日に運輸大臣通達が——四十九年度から国内幹線に大型ジェット機を輸入するという方針を出されたように承っております。この通達を中心に、今後の日本の国内幹線旅客機の大型ジェット化の方向をどういうふうにお考えになっておられるのか、かいつまんで承りたい。
  108. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) くわしくは後ほど局長からお答えさせることといたしまして、私の考えだけを申し上げます。  エアバスは先般試験飛行をやりましたが、御承知のとおり騒音が727などよりも一〇ホンぐらいの低さを持っているそうであります。その試験の結果もそういう数字が出ているそうでありまして、われわれは最近大阪の空港といわず、各地の空港でいろいろ陳情を受けたり、御意見等を賜わっているのは、その騒音の公害を何とかしなさいということでございますから、騒音の低い飛行機であるということであれば、その陳情や地元住民要望にこたえるには、やはり騒音公害というものをなくさなくてはならぬと、こういう考え方からエアバスという考えも出ているのであります。その他いろいろな航空行政の問題についての、いわばその問題は後ほど局長から説明させますが、私たちはそういう考えでエアバスというものに対して最近関心を持ってきたと、こういうことでございます。
  109. 上田哲

    ○上田哲君 エアバス時代に入るということですね。
  110. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) あらゆる条件が地先住民の理解を得られるならば、そういうことになる可能性がございます。
  111. 上田哲

    ○上田哲君 どうも何かこう——今度はストライキの話じゃないですからね。奥歯に物が詰まり過ぎててこれは答弁にならないですよ。あなたのほうが通達を出されているんだから、可能性がありますなんということで通達を出されては困るんですよ。これははっきりしてください。エアバス時代を具体的にいえば二年後に目ざしていま進めているということなんでしょう。
  112. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) それは私のいま申し上げたのは、その個所個所についてエアバスを実際に実用化するかというふうにとりましたもんですから、地域住民のということばが入ったろうと思います。何せこちらが考えても地域住民が絶対飛ばしちゃいかぬという反対があれば、これはとうていできるものじゃございませんから、民主主義の今日、もう上田さん御承知のとおり、いかに役所といえども、反対のあるものを強行するというわけにいきませんから、私は先に地域住民の御理解のもとにということを強く申し上げたのはそこにあるのであります。
  113. 上田哲

    ○上田哲君 やるということですね。
  114. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 方針としてはその方針でやる方針でいきますが、実行、実現ということになれば、地域住民の御理解を得てからということでございます。
  115. 上田哲

    ○上田哲君 あの、地域住民の話はひとつまたじっくり伺いますがね。これは重大であるという御認識はたいへんけっこうです。で、まあ運輸省の方針をひとつ中心にまず伺っておきたいんです。これはその方針なんだなということにならなければ、次の段取りが合いませんから。
  116. 内村信行

    説明員(内村信行君) それでは若干補足して御説明申し上げます。  まず第一に、今後の機材の大型化、これをどう考えるかという、こういう問題でございますけれども、御承知のように航空需要というのは年々非常に伸びております。と同時に、空の交通というものは密度が非常に高くなっているというのが実情でございます。したがいまして、こういった今後増大する航空需要というものをまかない、なおかつ安全に秩序正しく運航する。そこで管制官のロードも負担をさせたくないという方向をとろうといたしますと、どうしてもやはり機材の大型化ということをはかっていかざるを得ないというふうに考えております。そこで航空会社等ともいろいろ相談をし、需要等を詰めました結果、まあ御承知のように四十五年度ぐらいまでは非常に需要の増が大きかったわけでございますが、四十六、四十七年若干需要の伸びが鈍化してきております。そういうふうなこともかみ合わせて考えまして、慎重に研究、検討いたしました結果、四十九年度から大型機を入れていいだろうというような結論に到達いたしました。もちろんどこに入れるかということは、先ほど大臣の申し上げましたとおりでございまして、大勢としてはそういうふうに考えております。
  117. 上田哲

    ○上田哲君 その四十九年度からやるんだということになると、当然に大体そのための準備期間十八カ月というのが常識であるという逆算の中から、承るところでは、大体今月、おそくも来月早々にはこの機種の決定、機材の決定ということの段取りにならなきゃならぬというふうに承っておりますが、それでよろしいですか。
  118. 内村信行

    説明員(内村信行君) 大体そうでございます。四月から入れるといたしますと十月前後、大体そういうようなことに相なるかもしれません。
  119. 上田哲

    ○上田哲君 ほんとうにそのまつげに火のついたという、焦眉の段階に入ってきているわけですね。そこでお伺いをするんだが、このエアバス、まあエアバスと一口で言っちゃうと、たいへんいろんな機種が入ってくるんだが、とにかくその大型ジェット機の機種を決定するのがもう早ければ二週間以内に迫っているこの段階で、総ワクはどこできまったかというと、先般の田中・ニクソンハワイ会談で、緊急輸入というワクの中でこの三億二千万ドルというのがきまっておる。そこでこの三億二千万ドルの中身は一体どういうことになっているのか、ここがまだよくわかっていないので、そこを御説明いただきたい。
  120. 内村信行

    説明員(内村信行君) 三億二千万ドルでございますが、これは先般のハワイ会談及びその前の鶴見・インガソル会談におきまして、日本の民間航空会社が四十七年度及び四十八年度において約三億二千万ドル相当の大型機を含む民間航空機の購入計画中であるという旨を表明したわけでございます。そこで、この三億二千万ドルでございますが、これはいま申し上げましたように、四十七年度及び四十八年度の発注ベースでございます。そこでこの機材の機種でございますが、これは先刻からもお話がございますように、まだどういう機種にするか、具体的なことは決定しておりません。したがいましてどういう機材を何機ということまではいっておりませんで、概算といたしまして大体総需要の伸び、それから会社の機材代替計画等、そういうふうなものを勘案いたしまして、大体この程度の機数でよかろうということで、四十七年度と四十八年度の発注、両方合わせまして大体十数機程度の輸入機数が要るだろうというふうなことで、この大ワク三億二千万ドルというものをきめたわけでございます。
  121. 上田哲

    ○上田哲君 その十数機というのは、DC10とL一〇一一ですか。
  122. 内村信行

    説明員(内村信行君) これにつきましてはまだ機材がきまっておりません。対象として一応大型機材と申しますのは先生御承知のとおりロッキードの一〇一一、DC10、それからジャンボSRというのが大体大型機材でございます。その中のどれかはまだきまっておりません。大体概算は出しております。
  123. 上田哲

    ○上田哲君 確認しますが、747SRも入っているわけですね。三機種に限定しておると考えていいんですか。
  124. 内村信行

    説明員(内村信行君) 大型機材はそのように考えております。
  125. 上田哲

    ○上田哲君 そこでたいへんなことが起きているわけですね。運輸大臣はこんなことを御存じですか。七月九日の朝にですね、羽田の周辺が二十万枚、伊丹の周辺は六十万枚、新聞折り込みを含めて広告のビラがぱっと配られた。あなたにほんとうの隣人が来ますと、こういう文章ですね、ビラが配られた、これを御存じですか。
  126. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 承知しておりません。
  127. 上田哲

    ○上田哲君 これはロッキード一〇一一が——一〇一一が配ったわけじゃないが、ロッキードが配ったわけですね。まさしく——こまかいことは省きましょうか。あなたのほんとうの隣人が来る、いままで騒音の心配をなすっておられたろうけれども、ささやくような音の飛行機がやってまいりますという、たいへんなビラがこれだけ配られているんですよ。ぜひ大阪、東京のデモンストレーション飛行をやりたいという申し込みが六月の二十二日。これが、先にダグラスの10が来たわけですね。それから四日おくれて、負けちゃならじというのでロッキードが乗り込んできて、そこであとから追い抜かなきゃならぬというので、こういうたいへんなビラ合戦になった。実際にはささやくような音どころじゃなくて、えらい大きな音を残したということになるんですがね。こういう実態で、いまたいへんな売り込み競争というのが行なわれているわけです。こういう事実を御存じないと言われたが、御存じないというのも困るのでありまして、運輸省の方針はその方向に進んでいこうということが打ち出されている、通達で。その中で、さっそくこういう住民をとさっきおっしゃったけれども、びっくりするような大きな音をたてる飛行機がこんなにたくさん、驚いたことにアメリカの航空局の局次長の証言まで中に印刷されている。たいした音ではありませんよという証言が印刷されているビラがいっぱい配られている。こんな事態をこのままで放置しておいてはいかぬではないかと思いますが。
  128. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 好ましいことじゃございませんが、自由主義経済のもとで、やはり商売人行為だろうと、私は、いまそれが事実だとすれば考えられますが、私なんかも商人上がりでございますから、ものを売ろうとするときにいろんな努力をしますが、これを了承するわけじゃございませんが、あまり日本国民に事実を曲げたような過大のPRをされることは迷惑だと考えております。
  129. 上田哲

    ○上田哲君 これはもうたいへん迷惑なことでありまして、地元には十一市協というのができ上がって、特に伊丹空港周辺の十一の市がこれについていろいろ問題を提起しているわけですよ。これは商売だからしかたがないというお答えがあったけれども、運輸省のほうが何をしているのかという問題を私は追及をしたいんですよ。これはたとえば運輸省がいま出しておられる騒音調査によりますと、運輸省はこのときのデモンストレーション飛行の調査の結果を平均値で出された。平均値なんということはないんでありまして、どの飛行機の機種を選ぼうかというときに、三つ合わして——この場合は二つですけれども、二つ合わせた飛行機の騒音の平均値を出してみたって意味がないわけですよ、どっちかを選ぶんですから。そういう形が出ているということは、これは何とかエアバス時代ということを招来しようという基本方針の上で住民の感情をと、さっきおっしゃったけれども、実は運輸省としてはこのエアバスを音の問題も含めて理解をさせようと、こういう意図があるからではありませんか。
  130. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) そのやり方とか平均とか、私は専門家じゃございませんで、そういうことはよくわかりませんので、そういう意図はないと思いますが、局長のほうから答えさせます。
  131. 内村信行

    説明員(内村信行君) エアバスの大阪における騒音測定あるいは東京における騒音測定をいたしましたが、これはDC10、ロッキード、両方いたしました、御承知のとおり。そこで、これを平均でお説のように出しております。結果を。それはなぜかと申しますと、両機種とも、測定の際の気象条件でありますとか、あるいは重量でございますとか、飛行の方法とか、必ずしもこれはひとしくございません。ところが騒音はそういったようないろんな条件によって若干なりとも違ってまいりますので、おんなじ条件において比較いたしませんと、どちらがはたして高いか低いかというようなことはなかなかむずかしい問題でございます。したがいまして、そういうふうなことも考慮いたしまして平均で出したわけでございますが、それとは別に、アメリカのFAAのほうで騒音証明というのを与えております。そこでエアバスの、いわゆるロッキードにしましてもDC10にしましても、それぞれ騒音証明に、一定の条件下における、同一の条件下における騒音というものをはっきり出しておりますので、それをごらんいただけるとその差というものがわかるんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  132. 上田哲

    ○上田哲君 その御答弁があったので、ついでにお伺いしますがね、747SRの場合はありませんね、実際にはわが国の上空を飛んでいるということが。これも中に含めるんだとおっしゃると、この辺はどういうことになりますか。
  133. 内村信行

    説明員(内村信行君) 現在747のSRというのはございませんけれども、現在の747、これをSRだけに改造いたしまして、それによって一つの騒音の試験をしたというふうなことは聞いておりません。アメリカにおきましてもすでにこの騒音の面におきましては、いまの747の中で、すでに騒音証明に合格したものがございますので、そういったものが参考になるかと考えております。
  134. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、さっきおっしゃった三機種、747SRがいまのところそのデータを日本上空では得ていないけれども、これは支障なく三機種を並列してこれから考えるという姿勢ですか。
  135. 内村信行

    説明員(内村信行君) SRと申しますのは、国内線用で短距離用に足を強くしているというふうなものでございますので、そのほかの点につきましては現在のジャンボとあまり大きな隔たりはございません。そこで、現在のジャンボにいたしましても、初めにつくりましたものは相当騒音が高いものでございましたが、すでに改良されまして騒音証明に合格したものでございます。したがいまして、その騒音証明に合格している部分につきまして考えますと、国内用のジャンボSRと大体騒音は同じくらいであろうと考えております。それが比較対象になると思います。
  136. 上田哲

    ○上田哲君 ところが、さっき平均値をお出しになったと言うんだけれども、実はまあこまかいデータを見ますと——運輸省にはこまかいデータはあるんですから、機種別の、平均値ではなくて——それを見ると、ロッキード一〇一一というのは第一回八十四、第二回八十八、DC10というのは第一回七十八、第二回七十八、あるいはまあ747のSRでないのはありますね、別に。かりにその二つだけをとらえましても、これはロッキードのほうが高いわけですよ。ロッキードのほうが高いということは、平均値を出されれば高いほうが得をするということですよ。どうもここのところは平均値をとるということにももうすでに何らかの意図があるんじゃないか。妙な商売人が入ってきて売り込みをされるのは迷惑であるとおっしゃるけれども、実は迷惑をするのは国民だけれども行政当局も何らかの政治的意図があるんじゃないかということを私ども考えざるを得ないんですよ。たとえばこのロッキードというのは、御存じのとおり一ぺん破産をしかけた、これを救ったのはアメリカ政府であります。今日ニクソン政権選挙を秋に控えている。この緊急輸入というのは私たちは根本的に納得をしないところなんでありますけれども、この緊急輸入というものの財源として、無理やりにとにかく二年後というものを設定するエアバスの期間、そしてそれから逆算をして、急いでこの九月、十月、逆に言うならば、少し度のきつい言い方かもしれないけれども、アメリカ大統領選挙に間に合うような時期に機種を設定し、それも平均値まで出してロッキードに金を落としニクソンを勝たせようということになるんだという推定があったら、これをノーだと言えますか。少なくともそういう誤解が生ずるような論理の中でしかこのデータの開示が行なわれていないということを私はやっぱりたいへんふしぎに思うんですがいかがですか、大臣。
  137. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 私はものごとをなるべくすなおにとって考えたいと思いますが、そこまでは考えておりません。
  138. 上田哲

    ○上田哲君 すなおにとるとこうなってしまうんですよ。じゃ何のためにロッキード——私はダグラスだとかボーイングのほうに義理はありませんからそんなことを言っているんではありませんよ。しかし何を好んでロッキードのほうにそういうウエートをかけていくのかというのが私にはよくわからない。もっと言えば、ロッキードとかダグラスの場合は、これは足まわりというのがありますね、航空用語で。これは発着の強さですよ。これはたとえば一日に平均して大体四回から五回というのに適しているのがDとかLとかというやつですね。SRというのは少なくとも八、九回ということになっていますね。足まわりはそのほうが有利です。あるいは航空安全ということを考えるならば、地元を重視するとおっしゃったけれども、地元を重視するということを考えるのであるならば、一体この飛行機はどれぐらい安全な航空をこれまでやってきたことがあるかということを実証しなきゃならぬでしょう。たった一回しか大阪−東京間を飛んだことはないんでしょう。ところが実際には二十七日にロサンゼルスの国際空港を飛んだ直後にこのDC10というのはエンジンを落っことしている事故が発生していますよ。こんな危険な事故があって、アメリカの高級住宅街に落っこちて、落ち方がうまかったから大きな事故にはならなかったけれども肝を冷やしたという報道があるわけですよ。こういう危険なものを一生懸命になって安全であるような話をされるというのは、何でそんなに急がれるのかがよくわからない。そういう問題がここにたくさんあるんですよ。  ロッキードの社長は去年の正月わざわざPRに日本に乗り込んできた。もっと言いましょうか。もっと言えば、もし緊急輸入というのがアメリカとの黒字の問題を解決するために必要なんだという立場だけに立つんなら、この貢献度というのが問題になるわけですよ。ところが実際にはロッキードのL一〇一一というのは一機千七百万ドル、ダグラスは同じように千七百万ドル、ボーイングは二千二百万ドルですから、どうしても黒字を決済するために云々ということであれば、ことさらにロッキードをとらなきゃならない理由はないんです。こういう問題を全部乗り越えてロッキード、ロッキードと言っているようなふうに見えるのは、これはどう考えたって、大臣の言われるようにすなおにとるんなら、これは大臣がそういう言い方をしながら、あげて日本の政府もニクソン大統領再選のためにがんばっているんだということにならざるを得ない。これが一番すなおではありませんか。
  139. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) ニクソンの選挙のことまで言われますと、どうも答えようがございませんで、私が先ほど答えたように、そういうものに対しては全然考えておりません。
  140. 上田哲

    ○上田哲君 局長、どうですか。
  141. 内村信行

    説明員(内村信行君) どうもその辺になりますと、難問でございますけれども、先ほどのつまり平均の問題、これは私どもそういうふうな意図をしておりませんでしたが、先生に御指摘を受けますと、そういう見方もあり得るかというふうな気もいたします。  そこで、あえて弁明をさしていただきますと、先ほど申し上げましたように、平均をとりましたのは、やはりそのときの機材の飛行のしかた、たとえば早く上昇するとか、あるいは降下角度を大きくするとか、あるいは重量を減らすとか、あるいは気象条件がどうであるとか、そういうことによって違ってくるわけでございます。ほんとうはその条件というものをひとしくしてやってくれということを申したわけでございますが、必ずしもそれが実現できませんでした。そういたしますと、条件が違った場合に同じような条件というふうに予想いたしまして比較いたしますと、必ずしもその判断は公正ではないということを考えまして、そういうふうに平均をとるというふうなことをやったわけでございます。ただ、念のために、FAAで公表いたしておりまする騒音証明の試験のときの数字、これを申し上げますと、……。
  142. 上田哲

    ○上田哲君 それはいいです。  大臣、御存じないところで申し上げてもしようがないんですが、そういうふうな論理になるんです。そういう見方というものがあり得るわけですよ、ここまで無理が重ねられていると。たとえば、もっとわかりやすく言えば、実は日本のGNP、これはやっぱり日本列島改造論らしいですね、根本的には。新全総から日本列島改造論に変わって、その日本列島改造論の中のGNPから考えると、飛行機にこれくらい乗るだろう、それから逆算をすると大型でなければいかぬだろうというような話になっている。そういうことの中で実は順番に、四十九年度にはもう大型ジェット機にするんだ、そのためには十八カ月かかるからこの秋にはやるんだというふうになっているように見えるけれども、実際にはアメリカとの緊急輸入の中にあらわされているような黒字決済ということが先にあって、その三億二千万ドルということが先にあって中身がきまってなかったことは事実でしょう。積算された三億二千万ドル、足し算になったというのはわかるけれども、足し算が全然内訳がないままに三億二千万ドルが先に出ちゃって、その三億二千万ドルのつじつまを合わせるために実はずっと向こうまで行って、最後は日本列島改造論に結びつくような話になっちゃうというような形になっている。これはたいへんすなおに考えるのなら、結局そういう形に政治的に協力をしたんではないかということになるだろう。だから、そういうことの疑惑を起こさないように——ああいうたくさんの、八十万枚の広告が配られたことすら御存じないとおっしゃるし、それを遺憾だとおっしゃるのだから、そういうことの疑惑が起きないように、この機種選定にあたっては根本的に航空行政と安全と騒音と地元対策、その立場に立って、しかも公平に考えるということをひとつ確認をしておきたいんですが、いかがですか。
  143. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 貴重な御意見として十分、私のこの問題に対しての善処といいますか、対処といいますか、いろいろ勉強になりました。
  144. 上田哲

    ○上田哲君 じゃあ、振り出しに戻ったというふうに理解していいんですね。  そこで、一つだけ申し上げておきたいけれども、日本の全体の運輸行政、航空行政の将来のためには、これはやっぱり同一機種の使用ということがあると思うんですよ。日本航空と全日空と全然別な飛行機で飛んでいるとか、こういう形ではやっぱり全体的な発展は望めない、あるいは運賃プールなんという問題も出てくるでありましょう。現にいま飛んでいるDC8−61機というのは、これ二百三十四人乗りですから広げなきゃならないという前提に立つんなら、もうたかだかあと二十人、三十人ふやせばいいということにはならない根本的な問題が一つあるでありましょう。そういうことであれば、いっそのことこれは同一機種、同一機材という方向でいくのが航空行政としては当然な、今後大型化に向かっての原則でなきやならぬと思うんですが、そういうお考えでよろしいですか。
  145. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 私もエンジニアの端くれですけれども、そういうこと、同一機種でなんということには必ずしも同意できませんね。いつも進歩発展があってしかるべきだと思いますから、同一機種で向かっていくということに、それでよろしゅうございますという返事をするにはまだ私が十分検討してみなければいかぬと思います。
  146. 上田哲

    ○上田哲君 何か取り違えていらっしゃると思う。そうすると、たとえば将来大型ジェット機化するときに、日本航空と全日空というのは同じじゃなくて違った機種のほうがよろしいという考え方ですか。
  147. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) そうじゃないんです。私がそういう判断をするにはまだ私の知識が乏しいということを申し上げているんです。
  148. 上田哲

    ○上田哲君 航空局長、ひとつそれじゃ知識のあるところをお伺いしておきたい。常識としてそういう方向をたどるというのが望ましいのではないか。いかがですか。
  149. 内村信行

    説明員(内村信行君) これは実は二通り見方があると思うのです。かつて国内線に727を導入いたしました。あのころは、やはり日航と全日空がよく協議をいたしてきめたのでございますが、その際は同一機材に決定したわけでございます。それはなぜかと申しますと、エンジンとか部品の交換、そういうふうなものを一緒にメンテナンスを続けていくというふうなことから考えたわけであります。それからただ今度の場合には、日航あるいは全日空というものは確かに同一機材という一つ考え方がございましょう。しかし一方から見ますと、やはり日航というものは国際線というものをやっておる、それから全日空というものは国内線の国内ローカルをやっておる。そういたしますと、おのおのの考えといたしまして国際線ないし国内ローカルそれぞれの事業体との関連というふうなものもまた考えなければならないというふうなこともございますので、直ちにどちらがいいかというふうなことは考えられませんが、いずれにしましても両者よく話をし合って、客観的に公正にきめるようにしてもらいたい、こういうふうに考えております。
  150. 上田哲

    ○上田哲君 運輸大臣のお時間が非常に迫っているようでありますから最大限の協力をいたしまして、ほかの問題にひとつ入って、そこで御意見を承って、できれば御退席をいただいてもいいと思うのですが、もう一つの問題は、一年前の雫石町の事故に関する事故調査の問題ですね。これは先般七月二十七日ですか報告書が出たわけです。報告書が出て、この内容についてはもう少しあとからゆっくり議論をしたいと思うのですが、この報告書についていろいろとまだ疑問もある。ところが、その疑問を明らかにし、あるいはその明らかにされた問題点に従って今後の政治的な責任とか問題を考えていこうとすると、その内容の分析を引き受けてくれる事故調査委員会というのがどうなるのかということでありますが、事故調査委員会というものは総理府に置かれていたわけですけれども、その報告書を出した段階で事故調査委員会はなくなったごとくで、そうすると、われわれあるいは現場の諸君はどこへ問題追及をしたらいいのかということになってしまうのですね。これをどうしていただくのか。私の考えを先に申し上げれば、やはりここまできたことだから、運輸とか防衛とか、そこに両大臣そろっておられるけれども、どちらかに片寄るのではなくて、いろいろな法的な根拠もあるようでありますけれども、なるべくその立場で、総理府というようなところでおやりになったらどうだろうかと思うのです。そういうことをひとつお考えになるかどうか。  それからもう一つ、航空安全推進連絡会議というのがありまして、これはパイロットとか管制官とか、そういう諸君がみんなでつくっている、現場の諸君が航空安全のために実務を生かしてやっているという非常に大事な会議でありますけれども、これが今度の報告書に対して、わからない点がたくさんあるからというので質問をしたい——これは事故調査委員会が生きていたころ、前総務長官の段階では、何べんかそのことが調査委員会と安全連絡会議の諸君との間でも話し合いが行なわれたということがあったのでありますけれども、今回それがなくなったので受け取ることができぬということになっているわけです。これは受け取っていただかなければならぬ、検討していただかなければならぬ。それを受け取っていただかないということになると、どこで受け取ってくれるのか。事故は報告書一本出したらおしまいだということになるとたいへん困るわけです。その辺、大臣のおられる間に政府としての見解をひとつしっかりお出しいただきたい。
  151. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 事故調査委員会報告書を提出して解散ですか解体ですか、なくなったということは聞いております。しかし、やはり委員長のもとで事務を担当されたのが総理府ですか、総理府でやられたようでございますから、その後におきましていろいろなお尋ねしたいことがあるというならば、当然そのお世話をしたり、また、われわれのほうでもあらゆる協力をして、事人命に関することでございますから、各省が協力してやるべきだと考えておりますし、ただ、いまどこが窓口かということだろうと思います、担当してその後の問題を処理するのかということでございましたら、総理府とよく協議いたしまして政府としての取り扱い方を決定したいと、こう考えております。
  152. 上田哲

    ○上田哲君 たいへんけっこうです。  そこで、そこに運輸大臣、防衛庁長官、総理府副長官がおられるわけでして、ちょっと相談してくれませんか。これ後刻相談ということを言われても、現在法的には総理府になっているわけですね。これがばらばらになっちゃうと、またこれが話がおくれてしまうものだから、私は総理府でいいんじゃないかと思うのだけれども、その点いかがですか。
  153. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) いま先生の御指摘の、航空安全推進会議の公開質問状については、元の委員長でございます山県先生にお届けいたしまして……。
  154. 上田哲

    ○上田哲君 公開質問状どうでもいいのですよ。どこで引き受けるか……。
  155. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) この点について、事故調査委員会の内容については総理府としては答えにくい点でございます。これについては先生の御指摘のとおり三省で話を進めさしていただきたいと思います。
  156. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) やはり御疑問があったり、便宜をはかるということは当然でありますから、ただ、ここですぐなんていうことは、そういう簡単なことではあれですから、そう時間かけませんですから、やはり三省で相談すると——私はいま総理府と申し上げたのですが、副長官から三省ということばが出たから、これはもうどちらでも、しかし関係者がみんなで協力するという形はよろしいですから、早急に答えを出しますから、もうしばらくお待ち願いたいと思います。
  157. 上田哲

    ○上田哲君 これから短い時間だけれども、だれが答弁をしてくれるかということになるのですよ。
  158. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) あとのですか。あとは、私帰りましたら局長もおりますし……。
  159. 上田哲

    ○上田哲君 運輸省は局長おられるだろうけれども、運輸省なのか、総理府なのかあるいは防衛庁なのか、それがないときょうの質疑意味がない。
  160. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) 解散をしたものだからお困りだろうと思いますので、協議をいたしまして早くはっきりしたものをきめますと、こうお答え申し上げておるのです。
  161. 上田哲

    ○上田哲君 いまですよ。いまどこが答弁してくれるのですか。
  162. 佐々木秀世

    ○国務大臣(佐々木秀世君) いまは総理府副長官と局長で答弁をいたします。
  163. 上田哲

    ○上田哲君 それじゃそういうふうにお伺いしますが、じゃあ根本的には、この事故調査委員会についての報告書に関連する質問というのは総理府のほうでこれから窓口になって引き取ってくれるわけですね。
  164. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) 先生のおっしゃるとおり総理府が取り扱います。
  165. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、具体的には、この航空安全推進連絡会議の質問状というのは受け取っていただけるわけですか。
  166. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) お受け取りして山県委員長のほうにお届けいたす予定でございます。
  167. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、時間も迫ってきましたし、こまかいことをお聞きすることはできぬのですが、ぜひひとつ、あなたのほうでやっていただけるということになるのだから、わかるところは答えていただいて、わからないところは責任を持っていただきたい。たとえば、今度の報告書を見ますと、たいへんわからぬことが多いのは、原因の推定に至るプロセスとして出されているものが管制交信テープの雑音分析とか航跡図ということになるわけです。ところが、推定接触時間というのは大体これでよかろうというふうに見られるわけだけれども、実際には接触の約七秒前から視認されていたはずである、見えていたはずであるというようなことまでがどうして言えるのかということはどうしても納得ができない。あるいは、それから出てくる視界図だとか視界の大きさなどというものも、どうもこのデータからは十分に言えないわけですよ。たとえば航跡図は、フライト・データ・レコーダの記録の解析値とか、航空機の損壊状態の調査結果とか、管制交信テープの分析結果、あるいはぶつかった教官及び訓練生の口述だとか、F86Fの飛行性能あるいは機動隊形の飛行要領、こういうものをまとめて一つの航跡図というものができているわけですね。このうちのこうなっているやつですね。ところが、この報告書の中では採用されていないデータがある。採用するに当たらないものとして放置されてしまっているデータに、たとえば高度計だとか目撃者の証言であるとか、あるいは防衛庁のバッジシステムによる航跡記録であるとか、そういうものが残っているわけです。どうしても納得できないのは、どう言ってみたって、たとえばF86Fの飛行性能であるとか機動隊形の飛行要領なんというものはきわめて一般的なものでありまして、この事故について特有なものでは何らないわけです。それほど必然的なデータの意味を持たないわけです。にもかかわらずこういうものは採用されて、たとえば、少なくとも隈一等空尉とかあるいは市川二曹という人の口述よりは高度計などのほうが客観的なウエートを持っているはずだと思うのです、そういうものが実はオミットされてしまっている、これはおかしいと思いますね。
  168. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) 私専門家ではございませんけれども報告書については読みましたけれども、そういう専門的な質問については、ここにも源田先生がいらしゃいますけれども、参議院でもお呼びいただいて、元委員の方からいろいろ事情を聴取いたしまして、私が専門的にお答えできないのは申しわけございませんけれども、この点については公開質問状を山県先生に届けて、その後に先生のほうからお答えいただけるように取りはからいたいと思っております。
  169. 上田哲

    ○上田哲君 だから運輸大臣と防衛庁長官がいていただかなければならぬというのはそこなんですよ。副長官がわからないと言うのはまあいいです、無理なんです。しかし無理でいいのかといえば、これだけの事故の結果が明らかにされないで、明らかにさるべきデータがそのまま放置されてうやむやになっているということじゃありませんか。イギリスでこの間あの雫石の事故に次ぐ史上二番目の大事故があった。いまわしいことだけれども、これだけの事故は二度と世界の航空史上にそう簡単に出ないものでしょう。それだけの事故をどのように分析し、また、どのように起こらないように生かすのかということからすれば、もっと大切にこのことをかまえて分析し生かしていくというシステムがなければならぬじゃないですか。あなたがおわかりにならぬまではいいけれども、事故調査委員会を解体してしまった人を呼んできて、何なら委員会で答えてくれというのは答弁になりますか。私はそれは政治姿勢じゃないと思うのですよ。  防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、一年前にあの事故のときの長官であられて、残念ながらあの事件については御答弁の機会もなかったと思うのですが、いままた新内閣のもとで防衛庁長官になられた。私はそのときのことをいま言うのではありません。今日こういう経過をたどった事故調査活動というものがこの程度で終わってしまっている。幾つかの疑問点というものが専門家だけが知っていればいいというのでは断じてないのであって、国民がこの世界最大の事故に対してもっともっと質問をしたい立場は留保されるべきだと思います。またいやしくも実際には航空業務に携わっているパイロットや管制官の諸君が、このことについて疑問があれば当然に政治が答えなければ、次の事故を防止することはできないだろうと思います。そういう意味では、政府全般にこれを受けとめるべきシステムが何もなくて、あとは、解体してしまった元事故調査委員長委員会に呼んでくれればお答えもできないことはないだろうということでこれは政治姿勢として全うされると言えるでありましょうか。
  170. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) この事故については私も実は上田さんみたいなことを言いたい立場にあるわけです。全日空事故につきましては防衛庁が重大な関与者といいますか、あれであったために、事故調査委員会でも防衛庁は防衛庁の専門的係官としてこれには参加をしていない、具体的な事実の提供者みたいなことになりまして、運輸大臣のところでそういう意味のさいはいを振ってあの委員会ができた、委員会の性質上総理府の所管にしてもらった、こういうことでございます。おっしゃるように、あの事故の調査については防衛庁としてもあなたのおっしゃるような意味におけるもう少ししっかりしたものをやってもらいたいというむしろ感想を持っております。こういうことでございます。
  171. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁が何を考えるか自由ですけれども、私が伺っているのは田中内閣の政治姿勢ですよ。田中内閣の政治姿勢としては一体この事故のあとをこのまま放置しておいていいはずはなかろうと私は思います。あの事故について防衛庁側が、あるいはあのときの担当大臣であられた増原さんがどのようなお考えをお持ちになるかは、これはまた当然御自由であると思うんです。御主張なさればいいだろうし、それは事故調査委員会に対して、まさにあなたの言われるように、私が言うと同じように御主張なさるのもよかろうけれども、問題は、たった一つであった真実、事実あるいはその関係、これをもっと明らかにしなきゃならないという努力があるかどうかということでしょう。そのことの第一次的な責任者はだれかといえば、政府部内の管掌の部分はどこに帰するかは別として、政府全体としての政治責任ではありませんかと私は言うのです。そうですね。したがって防衛庁長官は、運輸省には、総理府には何が言いたいかということはおありでしょうが、それはそれとして、田中内閣の責任としてこの世界初めての大事故の責任が、いま具体的な科学的なデータの追求の方法論としても消滅をしてしまっているということ、そのことをあなた自身の御不満を含めて政治姿勢としてはどのように回復をされるべきかという方途を明らかにしていただきたい。具体的に申し上げれば、これをはっきり私は総理府と申し上げているんだ、総理府となっていますからこれでけっこうだから、いろんな人々の意見をもっと中に入れて、一体この事故の明らかになっていない部分をどのようにして解決をするかという努力をもっと強く厚く進めるという態勢に責任を持っていただきたい。いかがですか。
  172. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) その点はやはり政府の責任分担というのがありまして、おっしゃるような意味の責任分担としてはやはり運輸省で基本的な中心の責任を負ってもらうべきもので、事実負ってあの事故調査委員会というものをつくったということでございます。調査を終わった段階で事故調査委員会は解散をした。したがいまして、そのあとの処分をどうするかということはちょっといま私もしかとは承知をしておらない。これはまあ総務副長官にお聞きをいただきたいということでございます。
  173. 上田哲

    ○上田哲君 何という無責任な答弁だということになりませんか。これは時間が切れましたから私は具体的には申し上げないけれども、運輸省じゃないんですよ長官。これは総理府に置かれることになった。これは自衛隊の飛行機と民間の飛行機がぶつかったおもな事件というのはいままで二回あるんです。小牧の場合は、これは三十五年の三月でしたか、この場合は運輸省でやったわけです。今回世界有数、最大の事故であったということもこれあって、特に、たとえば航空法百三十二条や自衛隊法百七条の適用除外例なんというものを勘案されたんだろうと私は思うけれども、そういう手続の中で運輸でもない防衛でもない総理府に置かれたんですよ。総理府がしろうとであることはわかり切っているのですよ。しかしながら、それが両省でないところで、それを踏まえて総理府に事故調査委員会というものが置かれたのだというところにこの事故の一つの反省の意義はあったと私は見ているのです。それが、実は運輸省でやることだから知らぬことだ、内閣にはいろいろ分担業務があるのだということになれば、あなたは四次防だけやればいいのですか。こういう話になっちゃ新内閣の政治姿勢の問題は私は全うしておらぬと思う。だから、三省並べて、この問題がうやむやになってしまうからこれをどうすればいいのか、具体的にあしたからまた羽田で飛行機に乗る人が持っている不安ではないか、このことを聞きたいのではないか、そのときに政府は責任を持たないのか、防衛庁長官ならばそれは知らぬと言っていいのだということになりますか、ならぬではありませんか。だから、そこのところをしっかり私は予備的に総理府には申し上げて、その答えをしっかり出してもらいたいというので来てもらったらそういう答弁しか出てこない。これではいかぬじゃないですか。
  174. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 私の申し上げたことばが足りなかったかもしれませんけれども、少し正しい御理解をいただいていないと思います。この事件は、防衛庁の飛行機というものが、戦闘機というものが事故の一つの原因であるということであったものですから、特に本来こういう航空安全の事項というものは運輸省で所管をしておるというたてまえもあり、運輸省所管として、そうしてまた、あなたの言われたようなたいへん重大な事故であるということにかんがみて総理府に調査委員会を置いたということであるわけで、そういう段階で運ばれてきたものでございまするから、このあと処理についても総理府あるいは運輸省、私のほうもいろいろ事実調査段階で諮問を受けて防衛庁も参加をしておる面ももちろんございます。そういうものは防衛庁で追跡的な問題についてもまた申し上げる、こういうことであると、そういう意味で申し上げたので、私責任はないと、そういう意味で言うたわけではないわけであります。
  175. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) その後、昨年でございますけれども、事故が起きた当初に対策委員会を設けたほかに、総理府では外務省と運輸省とそれから防衛庁を含め幸して航空交通管制連絡協議会というものを設けております。そこで航空交通安全緊急対策要綱というものを設定して、ジェット・ルートの空域とか自衛隊の訓練空域をきめたのでございますけれども、いまその後の問題については航空の安全ということで進めていく予定でございます。
  176. 上田哲

    ○上田哲君 関係ないです、それは。そんな不勉強じゃ困ります。時間がありませんからひとつ結論をしっかり出していただきたいのだが、これは防衛庁であるか総理府であるか運輸省であるか、これは皆さん方の内部の問題ですから、早急にひとつ御検討いただいてこの問題の窓口をしっかりきめてもらいたい。この問題のデータの今後の追求、それを受けて政治はどうするのか、政府はどうするのかという態度がなければならぬのですから、そういう立場を明確に御回答いただくということをまず一つ。これは防衛庁長官からでもけっこうです、あるいは総理府がその所管であるというなら副長官からでもけっこうです、きちっと政府を代表してお答えをいただきたいと思います。
  177. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) その後については連絡協議会もございますので、あとの航空安全推進連絡会議等々の問題については総理府が取り扱うことにいたします。
  178. 上田哲

    ○上田哲君 それでは、次回に譲りますから、お引き受けいただくならばこういう点をしっかり出していただきたい。少なくとも三つにしぼっておきます、根本的に。先に申し上げておくと、たとえばあのぶつかる直前の〇・三秒というようなところでハンドルをぐっと握ったのじゃないかということが書いてあるわけです。〇・三秒なんというものはこれはもう百メートルのオリンピックなら別だけれども、ほとんどこれは意味がない数字なんです。一方でそういう〇・三秒なんというのがありながら、あるいはそれぐらいのデータから出発して七秒前の視認可能なんということはとうてい言えなかろうというのが客観的な判断でなければなりません。その辺のところが非常にあいまいであるし、あるいは、この図を見ましても、皆さんのお出しになったこの図を見ましても、これですね、これを見ましても、大体その隈機が二万八千フィートあたりのところを飛んできたのではないか、市川機がさらにその上にいたのではないかという推定も立たないではないのです。その疑問が解けない、いまもって。そういうようないろいろな問題がありまして、これは御回答いただいてしかるべきものです。したがって、三つにいたします。  訓練用の周波数というものを出してもらいたい。これは報告書では録音がされていなかったというふうになっているのですけれども、これは松島ではわからなかったであろうけれども、三沢ではわかっていなかったはずはない。管制用周波数ではなくて訓練用周波数というのをひとつしっかり出していただきたい。  それから、もう一つは、航空機の損壊状態の調査結果というものが全然出てない。これは写真で出せるはずですから、この写真はやはり国民全体の問題として出していただきたい。  もう一つは、防衛庁のバッジ・システムですけれども、このバッジ・システムであんなに何秒も前からハレーションを起こしてしまったというのはどうしてもよくわからない。この場合のバッジ・システムによる航跡記録というものがあるはずだと思うので、これについてひとつはっきり出していただくようにお願いしたい。これがやはり従前どおりであるならば、それについての説明をもう一歩突っ込んで伺わなければならない。  いま、しぼっておりますから、こまかい問題についてはこの次また時間を求めてゆっくりひとつやらせていただくとして、当面窓口がきまったのだから、そのきまった窓口でひとつこういうものを出していただくということをお約束いただければ、私、きょうこれで終わります。
  179. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) 〇・三秒のハンドルの問題とか七秒、それから三沢の問題、航空機の破損状況、これについては総理府のほうから提出いたします。  バッジ・システムの点については、私のほうより防衛庁のほうが適当かと思います。
  180. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 防衛庁でなければわからぬものは、これはやはり防衛庁から総理府のほうに差し上げて、総理府からまとめて出すようにいたします。
  181. 上田哲

    ○上田哲君 バッジは出るわけですね。
  182. 増原恵吉

    ○国務大臣(増原恵吉君) 出ます。
  183. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  184. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。
  185. 岩間正男

    ○岩間正男君 農政局長見えていますな。——この前の戦車の土の問題ですが、八月三十一日の当委員会で、私は、米軍によって戦車等に付着して相模補給廠に持ち込まれているベトナムの土を農林省にお渡しして、農林省としても独自にこれを分析して、その結果を当委員会報告するようお願いしたわけです。その結果がどのようになったか、ここで御報告を願いたい。
  186. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 先般の八月三十一日の当委員会におきまして提出されました、ベトナムからわが国に搬入される米軍戦車に付着していたと言われます土について、さっそく農林省におきまして、農業技術研究所におきまして分析さしていただいた次第でございます。その結果につきましては、こまかいことにつきましてなお御質問があれば専門家から答弁さしていただきますけれども、結論的に申し上げますと、総合的にわれわれのほうで判断いたしました結果、この土につきましては、この本土壌につきましては、わが国の土壌であるという確率はきわめて低いという判断に至っておる次第でございます。
  187. 岩間正男

    ○岩間正男君 この分析表を、これは当委員会にやはり科学的なものですから報告してほしいんです、一つは。何かいまのような抽象的な報告だけではまずいですから、これはまず分析表を出す、そうしてもっと明確にやはり科学的にここで討論する必要があるわけですから、そういうものについてこれは要望しておきたい。この点いかがですか。
  188. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 私どものほうで一応分析はいたしておりますが、まだ本日ここに分析したお配りするような表は持ってきておりませんので、これにつきましては後刻検討させていただきたいと思います。
  189. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、さっそくでき次第当委員会報告してもらう、ようございますね。
  190. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) ただいま御意見のありました分析表を出すことにつきましては、農林省におきまして整理いたしました上で提出いたしたいと思います。
  191. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、詳しくはその結果に従うようにしましても、概略お聞きしたいんですが、その土がわが国のものでないという公算が多くなったと、こういうことでありますが、この前私は、あの中に結核というものがある、それは明らかに南方の土、ベトナムの土、そういうところでなければないんだということを指摘しましたが、その結核は出てまいりましたか出てまいりませんか。
  192. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) ただいま御指摘の鉄結核につきましては、農林省の調査結果におきましても出ておりますので、したがいまして、本土壌がわが国の土壌である確率がきわめて少ないということを申し上げた次第でございます。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、わが国の土である確率が少ないということですが、ほとんど、これはあなたのことばのあやでそう言っておられるんだと思いますが、これは日本の土じゃない、こういうことは断定されてもいい問題だと思うわけですね。そうすると、わが国の土でなければこれはどこの土なんです。これは明らかにベトナムの戦場から持ち帰った戦車、そのキャタピラについておった土を取って、そうしてあなたのほうに差し上げた。その分析の結果がわが国の土でないと、もう確率としてもほとんどないという、そういう結果が出たとすれば明らかにこれはベトナムの土であると、こういうふうにこれは断定してもいいんじゃないですか、いかがですか。
  194. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) わが国の土であるという確率はきわめて少ないと申し上げたんでございますが、また逆に、絶対にわが国では発見されないというものではないという感じも一部技術者の間では意見が出ておりまして、しかしながら、おおむねこの土壌は東南アジアから熱帯地方にかけての土壌に多く含まれておるものであるというふうに私は報告を聞いている次第でございます。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ国会答弁というのは非常にあやをつくるわけですけれども国民はそういうことを聞いていないのです。国会論議を注目して聞いているのです。もう少しずはり——いかにも官僚的な答弁、この内閣の姿勢としてもこれはおかしいのですからね。これは官僚内閣でないと言っているのだ。政党内閣だと言っている。もう少しやはりずばりそのものを言って国民の疑問にはっきり答えるような、そういう姿勢を私は特に要望しておきたいのですが、あなたのあやのあるそういうことばをたどっても、これは東南アジアの土である確率は非常に大きい、こういうことです。しかも、どこから出たかといえば、明らかにこれはベトナムの戦場から持ち帰ったそういう戦車のキャタピラからあそこの基地労働者がはっきりこれは取り出したものです。したがって、当然これはベトナムの土であるという、そういうことになると思うのですね。で、これは一体、きょう当委員会にこのような分析を出すべきですよ。当委員会は一カ月一回やっているのです。そして、こういう問題はやはりいま非常に国民が疑問を持っておる、非常に戦車の問題というのは大きないま課題になっている、そういう最中のものですから、当然これは農林省さんの立場としても私はその職責を果たしていただきたい。しかし時間的に、あの土の分析をやられて、そしてその結果がいつ出たのだか、その報告書がきょうなぜまとまっていないのか。こういうところが非常に、これは決断とそれからスピードある実行内閣だというのでしょう、これは反対じゃないか。あれは三十一日でしょう。あれからすでに三週間近くなっている。その間に当委員会にその分析表さえも出されないようじゃこれはまずいですよ。だから、そういう点からいいますと、口頭でこれをやっておるというのは何か他意あるように思われちゃまずいですよ。だから、そういう点でこれははっきり出してほしい。  そこで、これだけの証拠が出たわけですね。あなたのほうはことばだけになって、ものは持っておいでにならなかったのだが、もうこれはものは提出されたと同じだと思います、結論は出ている。そういうことになりますというと、この土がベトナムの土であれば外務省と協議の上米側に厳重に強く申し入れたい、今後こういうことのないように話を進めたいと、先日の当委員会であなたは私に答弁をされた、どうしてくれますか。
  196. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 先般提出されました土につきまして農林省におきまして直ちに分析いたしましたことにつきましては先ほど御報告申し上げたとおりでございますが、それと相並行いたしまして農林省におきましても、現場の植物防疫所というものが横浜にございまして、植物防疫所を通じて米側と接触を行ないまして、引き続きその後も行なっている次第でございますが、米軍戦車に付着しておるといわれます土壌の付着状況につきまして再三にわたりまして折衝をしておる次第でございます。その結果、私たちの判断におきましても、米軍の戦車が日本に持ち込まれる際に、相当出発点において消毒といいますか水洗されてきておる事実は確かにあるわけでございますが、なお水洗いの不足等によりまして若干のやはり土が付着している痕跡が認められておりますので、それにつきまして米側に対しまして厳重に、今後日本に持ち込む際の戦車についている土についてなお徹底的な水洗方につきまして強く要望いたしますとともに、今後さらにまたそういった土が入ってきた場合につきましては、日本側に持ち込むことは一応禁止しておりますことは先般お答え申したとおりでございますが、これにつきましては何らかの形でさらに処分をせざるを得ない。通例、外国からその他の形におきまして土壌が持ち込まれた場合におきましても、禁止はいたしておるものの、やはりたまたま間違って入る場合も相当ありますので、これにつきましては当該土の処分をいたしておる次第でございまして、そういった例に基づきまして、今後米側と接触いたしまして、この土の処分の行ない方につきまして今後早急に検討してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  197. 岩間正男

    ○岩間正男君 土の処分ということを言っているわけですが、大体国内法がいま問題になっているのです。国内法の権威が問われている。それを守る所轄省としての責任も問われている。むろん、国家公安委員長の出席を私求めておりますから、当然これは国家公安委員長としてもこれに対して対処をしなければならぬわけです。法律が守られているかどうか、こういうことなんです。しかも、最初のあなたの話によるというと、向こうで洗っているというような——よく見ていないのでしょう、聞いただけだ。しかも、この前の委員会でこれははっきりしたでしょう。洗っているなどと言っているけれども、実際は土はたいへんついている。そうして実際は、あそこのノースピアでは、これは米軍から命令されて、土を洗えと言われて、あそこで今度は洗っているという事実も起こってきた。それからさらに、それでも土がたくさんついていて、今度は現実に土をたくさん取り出した。その土をあなたに上げたのです。現実的に上げたのです。だから、そういう点からいえば、これは米側の違反というのは明らかでしょう。明確でしょう。これはどうです。違反というのは明確ですが、どうですか。
  198. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 土がついて持ち込まれていることは違反でございます。
  199. 岩間正男

    ○岩間正男君 違反なんです。この違反を、どういうふうに所轄省としてはこれに対処するかということを私はお聞きしたわけですね。そうすると、この場合に、一つは、この法律には罰則がありましょう。御存じだと思いますがね、罰則がありましょう。第七条ですか、ちょっと言ってください、その罰則を。
  200. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 植物防疫法の第七条によりまして土の輸入は禁止ということになっておるわけでございまして、さらに、入った場合におきましては、第九条の第三項によりまして、「第七条の規定に違反して輸入された輸入禁止品があるときは、」、これは土のことでございますが、「植物防疫官は、これを廃棄する。」、こういうことになっておりまして、廃棄処分を今後行なうことになると思いますが、この米軍の場合につきましては、国内法の適用につきましては外務省のほうから御答弁願いたいと思います。
  201. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく、外務省にはあとで聞くのだから、あなたに聞いているのだ。ちゃんと罰則はあるはずだ。これに違反をして無理に入れた場合には、三年以下の懲役でしょう。五万円以下のこれは罰金まであるのだよ。これは刑罰に問われることになっているのだよ。そういうようなものに対してこれは当然日本なら公安委員が執行しなければならないわけです。しかし米軍だからといってこれは容赦すると言うのですか。これはどういうふうな運用なのか。条約局長ですか、お聞きします。簡単にやってくださいよ。
  202. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 岩間先生お尋ねの件は、一般的に米軍が、地位協定第十六条に基づきまして日本国の法令を尊重する義務があるという点に関連して御質問だと思います。この場合、もちろん米軍は、公共の秩序あるいは国民生活に影響がある問題につきまして、日本国の法令を実体的に守る義務があるわけでございまするけれども、国際法上の問題といたしまして、米軍に限らず軍隊というのは国家の機関でございますので、駐留している国の法令がそのまま適用されるということはいかなる場合にもあり得ません。したがいまして、たとえかりに違反の行為が行なわれたといたしましても、軍隊をその法令によって罰するということは国際法上あり得ないということでございます。ただし、先ほど申しましたとおり、公共の秩序あるいは国民生活に非常に関係のある問題につきましては実体的に守る。そのために、日米合同委員会におきまして、ただいま申しました検疫等の問題について、それぞれ日本の法令を守るように取りきめてある次第でございます。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 第一に、国内法に違反した場合には絶対にこれは処罰できないと言うのですか。そういうこれは国際慣例だと、こう言う。そうすると、それに対して外交が非常にそんなら重要な課題になってくるのですが、これは大臣お聞きになったと思いますが、いま戦車に、ベトナム帰りの戦車に付着してきておるこの土、これがこの前相模補給廠で大量にキャタピラから摂取されたわけです。それをわれわれに提示されましたので、われわれは科学的に分析をしました。その結果、これは日本の土ではない、南方の土だ、そうしてベトナムにある結核というので、実は鉄分を含んだそういう分析のもので、この前ここに提示したわけだ。それを農林省のほうに提示しまして、農林省で科学的に分析した。その結果、われわれの分析の結果と同じような、南方の土であるという確率が非常に大きい、こういう形で出たわけです。したがいまして、この問題については、いまのような国内法の罰則の問題では処罰できないという国際慣例があるんだという答弁ですが、しかし、これはかつて日米合同委員会でわざわざ念を押しているところの問題ですね。御承知のように、これは一九五二年——二十七年ですから、旧安保時代になると思いますが、十月三十日、日米合同委員会の合意事項「植物及び植物生産品の検疫」、こういうことで土の輸入、土または病菌がついている植物の輸入を禁止すると、こういうことで、わざわざこれは合同委員会の合意事項になっているわけです。つまり国内法だけじゃなくて、さらに日米間の合意事項によってこれを確認しておるんです。これを侵犯するということは、これはたいへんな私は事態だというふうに考えるわけです。したがって、このような問題からいえば、当然いま戦車の輸送の問題、あるいは北富士における民法六百四条の侵犯の問題、その他国内法、これが実際は米軍基地地位協定との関連、安保と地位協定との関連におきまして、御承知のように、たいへんこれは国民の権利を侵害し、そうして国民のいろいろな民主主義的なそのような諸権利を抑圧しているわけですね。これについてどういうふうに外務大臣としては処理をされるのか、非常にこれは重大な問題です。国内法を優先するのか、あるいは米軍のこのような国内法じゅうりんの、しかも日米合同委員会の合意書さえもじゅうりんするこのようなやり方をこのまま黙認するということは、私は絶対あり得ないと考えるわけです。日本外交の今後の姿勢からいいましても、当然これはお聞きしておかなければならない問題なんですが、外務大臣のこれに対する御見解をお聞きしたい。
  204. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) たびたび国会で私申し上げておるのでございますが、日本政府の立場は、安保条約上の取りきめ、約束を尊重いたしまして、米軍の活動を保障して差し上げる責任があるわけでございます。しかしながら、基地機能を全うしてまいる上におきましては、申すまでもなく基地周辺はもとより、国民全体の理解と協力がなければならないわけでございますので、権利義務というかわいた関係だけでは律し切れない問題であると承知しておりまして、極力、米軍に対しましても、そういう事例があった場合にはその事実を指摘いたしまして注意を促しておりますと同時に、国民に対しましても極力御理解をいただくような手だてを講じて、円滑な運営を保障してまいりたいと考えております。
  205. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあハワイで安保の見地を認められる、そうして安保条約の円滑、効果的な運用というようなことについてこれは合意された、そういう立場からの御答弁のように思うのでありますけれども国民の理解とかなんとか言いましても、明らかにこのような国内法をじゅうりんして、そうして米軍がたび重なるこのような土の持ち込みをやっている、こういうことについて、国内法をそのままとにかくじゅうりんするのを認めると、こういうことですか。そういうことにはならぬでしょう。こうなれば、国民の立場に立って、そうして日本の主権から考えましても当然これについて、このような不当なやり方——それで、しかもこれは昭和二十七年に合同委員会でさらに確認までしている事項なんです。そういうものがこのようにじゅうりんされているということになったのではたいへんなことです。  それで何ですか、今度のハワイの円滑、効果的な運用ということは、いまのような御答弁を意味するのですか。私はそう考えられません。当然これは国の立場に立ち、そうして国の権益をはっきり守る、そういう立場に立たなければならないのでしょう。そうすれば、安保はよこしまでまかり通るということになると思うのですが、これでは大平外交の姿勢が問われるのでありますね。私は、この問題は、はっきりこういう問題と関連していると思うのです。これについては、あくまで米軍に厳重に、このような不当な国内法じゅうりんをやめるべきである、そうしてこれの確約を迫るということ、そうしてさらに、このようなことがほんとうに行なわれているかどうかとチェックする、そこまで私はやるべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  206. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 安保条約の運営の実態は、米軍側もわが国の国内法を尊重していくことについて十分の理解を持っておるわけでございますが、ただ米軍全体に——大きな組織でございますので、たまたま、たとえばことしの四月の道路法令の改正等が徹底しなかったようなケースがございまして、いま指摘されておるような不幸な事態が起こったわけでございます。私は申し上げたいのは、そういうことがしょっちゅうあるというわけではなくて、米軍はよく日本の事情をわきまえて国内法を尊重する態度に終始いたしておるわけでございます。いつもじゅうりんしっぱなしであるなどという御理解を岩間先生がお持ちであるとすれば、それはお改めいただきたいと思うのでございます。  それからハワイ会談におきまして、あとで発表されましたコミュニケで、安保条約を維持して、その効果的な運用をはかってまいるという趣旨のコミュニケが出されたわけでございますが、これは特定のケースをつかまえて特にコミュニケにそういう表現でもって両国政府の態度を出したわけじゃ決してないのでありまして、安保条約を維持して、その効果的な運用をはかってまいるということは、当然のことを首脳会談の席で確認したにすぎないのであります。
  207. 岩間正男

    ○岩間正男君 結局、いま、これはじゅうりんしないように国内法を守るというようなそういう理解に立っているなどと言っていますけれども、侵犯された事実があるのです。ここでね。これをほんとうに改めるというふうな、そういう声明もされていない。したがって、これは当然日本の立場としては、これに対して向こうの注意を喚起する、厳重に国内法を守れということをあらためて申し入れられるのは私は当然だと思うのです。これ、おやりにならないのですか、おやりになるのですか。これが一つです。これをはっきりお答え願いたい、これは実際は新しい外交姿勢というものが問われておるわけですから。これが一つ。  それからもう一つは、こういう形で国内法がじゅうりんされているのはたくさんあると思うのです。地位協定の十六条によりますと、在日米軍の構成員、軍属並びに家族の日本国内法順守を、当然順守すべきだという義務についてこれはわざわざ規定しているわけですね。当然そうなれば私はこの十六条が守られているのかどうか。われわれはむろん安保条約そのものには反対ですけれども、かりに安保の立場に立つとしても、あなたたちの言う安保の立場に立つとしても、国内法が守られているか、十六条が守られているかどうかという点から私はこれらのいろいろな諸問題について検討する。つまり地位協定の各条項、あるいは日米合同委員会の合意書というのはこれはたいへん膨大なものがあります。約二万ページに及ぶものだと思います。こういうものをほんとうは再検討して洗い直す、そういうときがきているのではないか。そしてはっきりやはり正しい運用、安保というものが実際少なくとも条文どおりこれは行なわれているのかどうかというのは、あなたたち自身にとっては国民に対する当然の責任であり、義務ですよ。これをはっきりやる必要がもうきているのではないか。非常に国内法じゅうりんの問題は、きょう時間がないから私は指摘しませんけれども地位協定をずっと洗っただけでもたいへんな侵犯事項があります。ですから、われわれはそれを出します。しかし政府のほうでもそういう実態を明らかにする。その上に立って私はこの安保の問題というものは、あなたたちがやるにしたって、国民に対する義務はそれでなければ果たせないと、こう思うのです。したがって、根本的にこの十六条侵犯の問題について洗い直す、そういう必要があると思いますが、この点はどう考えるか。  それから、そういう侵犯の事実についてわれわれが提起しますが、それについて十分にこれは検討するお考えがありますか。  以上、私は時間が制限されておりますので、第一の、とにかくあくまで厳重に抗議すべきであるということが第一点、それから第二点の再検討の問題、第三点は、われわれが指摘をしたら、それについてはっきりあなたたちはこれを受けて検討するか、十分にそういう準備があるかどうか、この点をお伺いしたい。
  208. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、米軍も、日本の国内法を尊重するというたてまえで、十分の理解を持ってやっておるということでございます。しかし、現実に国内法から見れば違反の事実があるじゃないかということが出ました場合、その事実を究明いたしまして、事実であるとすれば、仰せのように米軍の注意を厳重に喚起していく……。
  209. 岩間正男

    ○岩間正男君 事実なんだ。農林省が裏付けしている、事実だって。その事件は具体的に言ってください。それは抽象的な問題だ。
  210. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そういう事実でございますならば、それを踏まえて米軍側に注意を促してまいりたいと思います。  それから十六条の問題でございますが、国内法にはそれぞれの所管庁がございまして、申すまでもなく、外務省だけが所管いたしておるわけではございません。米軍の駐留を認めている以上、所要の国内法上の措置をとることは当然必要であろうと思います。しかし、いまの段階でこれらの特例法を洗い直すという考えは特に持っておりません。現行法によりまして、それを犯しておるような事実がございますならば、それを踏まえて先方に注意を喚起してまいる措置を講じてまいりたいと考えております。  それから、今後そういう違反事実を国会等で提示された場合どうするかというお話でございますが、第一問にお答え申し上げましたとおり、そういう事実が明らかになってまいりますると、それを踏まえて、米軍に厳重に注意を喚起する処置を講じてまいりたいと、かように考えております。
  211. 水口宏三

    ○水口宏三君 この前の当委員会におきまして、外務大臣が答弁を保留なさった点がございますので、それを伺いたいのでございますけれども、その前に、新聞によりますと、去る十二日の閣議で、戦車、装甲車の輸送に関しまして、たとえば戦車の修理部門の縮小と停止、これを一両年を目的にしてやりたい、あるいはベトナムへの戦車輸送については、送らないという方向で善処したいということを強く米側に配慮を要求するというような閣議了解事項が出たというふうに新聞で報じておりますけれども、その点をあらかじめ確認いたしたいと思います。
  212. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御指摘がございましたように、政府は、今月十二日の閣議で、米軍の輸送問題、相模補給廠問題につきまして協議いたしました結果、相模総合補給廠における戦車修理機能につきましては、その縮小ないし停止を検討するものとするという閣議の了解を行ないました。これは八月初め以来、米軍輸送問題に関連いたしまして、相模補給廠で戦車修理が行なわれることがはたして適当であるかどうかにつきまして内々検討いたしておりましたところ、神奈川県知事、横浜、相模原両市長はじめ社会党等の御要望もあり、政府として真剣に考慮いたしました結果、この方向で検討することに踏み切ったものでございます。これは政府として関係各位の声を虚心に聞いた上で、誠意をもって事に当たろうとする姿勢を示したものでございまして、国民各位の御理解が得られる措置ではないかと考えております。
  213. 水口宏三

    ○水口宏三君 それで、この間から問題になりました国内法との関連の問題、あるいは米軍関係に対する一応政府の一片の誠意がうかがえるわけでございますけれども、この前、当委員会で私が質問いたしましたこと、もう一回外務大臣に注意を喚起した上で御答弁願いたいのですけれども、外務大臣は、「米軍の補給というようなものでないものも、安保条約のルールに従って日本が責任を持たなければならぬというようなものでは私はないと思っております。」、つまり米軍の補給用以外のものを日本で補給する、修理をし輸送する必要はないと考える。これに対して橘説明員は、「その物が米軍のものでございまして、米軍の所有であれば、多少その間に貸与というようなことがありましても、米軍のものである限りは差しつかえない」という、答弁が食い違ったわけですね。これに対して外務大臣が、一度検討した上で答弁をするということで、実はその点の答弁が保留になっておりますので、私の質問申し上げましたのは、単に戦車なり装甲車なりでなくて、一般の武器の修理、補給、輸送につきまして、それは単に米軍の所有であるならば、具体的にいえば相模原の補給廠でもいいと思いますけれども、相模原の補給廠でこれを修理し、それをノースピアを通じて輸送をするというようなことが許されるものであるかどうか。この点について、この前の保留された御答弁を伺いたい。
  214. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘がございましたように、この前の当委員会におきまして私の答弁と事務当局の答弁の食い違いにつきまして御指摘を受けたわけでございます。それで、あらためて検討いたしまして政府統一見解をお示し申し上げますというお約束を申し上げたわけでございます。で、その後政府部内で検討いたしまして、相模補給廠における米軍戦車等の修理活動につき、それがベトナム軍の使用に供せられる場合、及び米本国その他の地域に送られる場合を含めて政府の見解を取りまとめましたので、以下お答え申し上げます。  一つ、ベトナム紛争につきましては、従来から明らかにしておるとおり、わが国はその当事者ではなく、かつ、その話し合いによる解決を希求するものであるが、この紛争が極東の平和と安全と無関係とは言えない以上、米軍がベトナム紛争に対処するための措置との関連で、わが国の施設・区域を修理、補給等のために使用することは、安保条約第六条の施設・区域の使用目的に照らし許容されるところである。  二つ、したがって相模総合補給廠における米軍戦車等の修理活動については、米軍がその所有にかかる戦車等をみずから修理するものである以上、当該戦車が修理後ベトナム軍の使用に供せられることがあっても、かかる修理活動は安保条約上排除されるものではない。  三つ、なおまた、わが国の施設・区域において米軍がその所有する戦車等を修理の後、たとえば米本土またはその他の地域所在する米軍関係部隊に輸送することがあっても、右は、米軍が保有する装備をたまたま米軍内部において転用するという行為にすぎず、したがって安保条約上問題がないと考える。  以上が政府のまとまった見解でございます。
  215. 水口宏三

    ○水口宏三君 これはどうもこの前の外務大臣からの御答弁から見ると、たいへん後退して、残念でございますけれども一つだけちょっとお伺いしたいのでございますけれども地位協定できめられておるのは、これはあくまで安保条約第六条に基づく施設・区域の利用の問題でございますね。そうすると、安保条約第六条は、申し上げるまでもなく、日本の安全、極東の平和または安全を脅かされたということが日米の合意だと思うんでございます。一方的なアメリカの判断ではなしに、まさに第四条に基づいて日米の合意の上に争ういうものが了解されたときに第六条が発動されるのであって、かってにアメリカ側が考えて、極東の安全があぶないから、おれのほうがかってに使うんだということではないと思うんです。そうなりますと、いま外務大臣のおっしゃった特に第三項の問題ですね、米軍内部で転用される分にはこれはしかたがないのだということは、これは私は第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定という地位協定そのものの本質に触れる問題じゃないかと思うのでございます。その点いかがでございましょうか。
  216. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ただいま水口先生のおっしゃったとおり、地位協定は第六条の実施取りきめでございます。また、この第六条は、この条文に書いてございますとおり、わが国が米軍に対しまして施設・区域を一般的に提供する目的を書いてございます。したがいまして、米軍施設・区域を使用するにあたりましては、この目的の範囲内であるということが前提の条件でございます。したがいまして、たとえばいま御指摘の第三項のようなNATO軍に米軍が日本の施設・区域を使いまして、常時その保管します装備品を、装備を転用するということになりますれば、これは第六条の趣旨に反するかと思いまするけれども、原則としまして第六条の趣旨に沿った施設・区域の使用が行なわれておるという前提のもとにおきまして、たまたま一部の部品が極東の範囲外のたとえばNATO地域に転用されるというようなことがありましても、これは必ずしも第六条の趣旨に反するものではなかろうというのが先ほど大臣が御説明になった趣旨ではなかろうかと考えます。
  217. 水口宏三

    ○水口宏三君 常時であるか、それが偶然であるかというようなことは、これは私は条約とか法律上あいまいにされることは非常に遺憾でございます。したがって、常時であれば問題であるが、たまたまであればやむを得ないというようなことは、これは私は、本来のこういう国の基本ですね、国の安全というような基本にかかわる問題について、そういうあいまいな解釈とか国会における答弁では承認できないのでございますが、いかがでございますか。
  218. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 私の申しましたのは、日本の施設・区域を使っての米軍の活動が、すべて一から十まで全部日本の平和及び極東の平和と安全の上に寄与するものでなければならないという厳重な意味のものでは必ずしもなかろう、この第六条は、施設・区域の使用目的一般がその目的に合致するものである限りにおいて、たまたま一部の部品が極東の範囲外に転用されることがあっても、これは六条の趣旨に従って提供した施設・区域の使用目的に反するものではなかろうというのが私が申し上げたことでございます。
  219. 水口宏三

    ○水口宏三君 どういうことですか。六条は、あなたはそれでは日本の安全並びに極東の平和以外に使われてもいいという趣旨なんでございますか。第六条をひとつ読んでいただけませんか。
  220. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 私が申し上げましたのはそういう趣旨でございませんで、つまり米軍の一機一艦ごとの行動が全部極東の範囲外に出てはならないという趣旨のものではなくて、たとえば米本国から日本に寄港しまして、それが地中海に向かうというふうなことももちろん許容されますし、また、飛行機が極東の範囲外から飛んできてまた米国に帰るというふうなことも、第六条の趣旨に従って提供した施設・区域の使用目的の一般から、その行動自体は必ずしも合致するものではございませんけれども、全体がそういう趣旨のもとに運用されておればこれは差しつかえなかろうというのが、従来から政府が答弁しております政府の解釈でございます。
  221. 水口宏三

    ○水口宏三君 それは一体どういうことなんですか。たとえば日本の自衛隊ですらシンガポールを儀礼訪問してだいぶ大問題になったことがございますね。アメリカのたとえば海軍なら海軍が日本に儀礼訪問をする。これは六条によって行なうのじゃないですよ、これは。六条によって行なうというのは、あくまで六条が規定しているとおり、日本の安全並びに極東の平和及び安全を脅かされたときにのみ六条が発動するのではないでしょうか。それ以外のアメリカの軍事行動というものは、別な法律に基づくのか、あるいは儀礼訪問であるのか、当然そう解釈しない限り、六条というものは全くこれは無意味になりますよ。
  222. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 米軍が日本に駐留する根拠はこの六条しかございません。したがいまして、米軍が日本に駐留しましてそこで活動する場合の基礎は、すべてこの第六条に基礎があるというのが政府の態度でございます。
  223. 水口宏三

    ○水口宏三君 だから米軍が日本に駐留するというお話も、先ほど申し上げたように、アメリカの艦隊が日本に儀礼訪問するとか、あるいはアメリカの陸軍が、軍楽隊が来て何かやるとか、これは六条と無関係に来るなら別ですよ。少なくとも六条に基づいてつくられた日本の施設・区域を利用するのは、あくまで六条の範囲でのみ認めるということは、これは私は原則だと思うのです。それに対して例外を認めていけば例外はどこまでも拡大していくというのでは困る。もし例外を認めるなら、どういう場合に例外を認めるかということがあらためて協定さるべきですよ。そういう基本的な問題、ことにこの六条というのは条約本文なんですよ、これは。それにそういう例外を初めから前提にした本文をつくるなんていうことは、これは私はおかしいと思いますね。
  224. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) たとえば米本国からある軍艦が来まして横須賀の施設・区域を利用する。利用したあと地中海に向かうということも、この六条のもとで使用を認められておりまする施設・区域の一つ使用対象であるというふうにわれわれ考えております。そのこと自体を第六条以外のいかなる規定も根拠を求めることはできないというのが私たちの解釈でございまして、すべて米軍の日本における駐留の根拠は、たとえ一時的な寄港にいたしましても、全部この六条に基づいて提供される施設・区域の使用の態様であるというふうに考えております。ただしかし、先ほど私が申し上げたような例は、これはもちろん第六条の一般的な趣旨に必ずしも合致するものではございませんけれども、そういうことも全部排除するというような厳重な規定ではないというのが政府の態度であるということを申し上げておる次第であります。
  225. 水口宏三

    ○水口宏三君 じゃ、極端な例でありますけれども、最近うわさによりますと、天皇がアメリカを訪問し、ニクソンが日本を訪問するといううわさがございますね。当然ニクソンが日本訪問の場合には、飛行機で来るか軍艦で来るか、いずれにしても護衛部隊がつくでしょう。これも六条に基づいて処置するわけですね。
  226. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 施設・区域の使用である限りにおきましては、第六条のワク内でそういうことも認められるというのが従来の政府の態度でございます。
  227. 水口宏三

    ○水口宏三君 一体それでは——まあこの問題はこれ以上お伺いしませんけれども、少なくとも六条という問題のとらえ方を、例外をつくるのにウエートがあるのか。例外をつくるようにつくるように考えているということは、たださえ六条というのはこれまでも非常に問題のあった事項なんだから、六条というものの適用を狭めていく、このことこそむしろ重要なんであって、それをむしろ拡大していくような現在の外務省の態度というのは、少なくとも国民的な感情あるいは国際情勢と全く反するものだとは思いませんか。これは外務大臣にひとつお伺いいたしたいと思います。
  228. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先生のおっしゃること、よくわかるわけでございます。私どもといたしましても、たまたま米軍所有の戦車の場合、その部隊内の転用であるという、たまたまそういうケースであれば、それは深くとがめなくてもいいんじゃないかということでございまして、したがってそういうことが定型化されるというようなことに対しては、明らかにこれは安保条約の趣旨に反するわけでございますので、いま仰せのように、例外をできるだけ整理していく方向で考えておるわけでございまして、これを拡大するというような方向でわれわれは考えておるわけじゃございません。
  229. 水口宏三

    ○水口宏三君 この点は、ぜひ大臣から外務官僚にも厳重に言っていただきたいのです。大体ニクソンが来るとき、これを護衛するのまで第六条を適用するなんということになってくれば第六条はどんどん乱用できるわけです。あくまでこれは日本の安全、極東の平和並びに安全ということを厳重に守るということを、これはぜひ明らかにしていただきたい。と申しますことは、大体こんな問題を外務大臣に申し上げるつもりはなかったのでございますけれども、いまの話が出ましたので申し上げますけれども、今度何で当委員会でこういうことが問題になったのか。これはあなた方は、あるいはアメリカ政府と日本政府との外交関係だけに重点を置いておいでになっているのかもわからないけれども、アジア諸国民はもちろんのこと、世界各国の人が見ているわけですね。また国民も見ている。その中で、ベトナム戦争へのアメリカ自身を含む世界的不信感が増大してきている。このことは民主党大会で直ちにベトナム戦争を停止するというマクガバンが今度の大統領候補に選ばれたこと一つを見ても、いまのアメリカにおけるベトナム戦争の問題というものは、単なる平和運動の対象ではなしに、まさに国の政治の基本的な争点になっているわけです。アメリカですらそうなんです。ましてヨーロッパ諸国あるいはアジア諸国がどう見ているかは私が言うまでもないと思うのです。このようなベトナム戦争に、日本が何で安保条約があるからといって協力しなければならないのかという日本国民の感情、これは非常に不安でもあり、また非常に疑惑を持っておる。このことがはからずも今度の相模原の補給廠を一つの起点にして起きた問題の背景であるということをお忘れないように願いたい。  それから第二には、特に日本の国民にとっては、あなた方自身も平和憲法があるから日本は軍国主義にならぬのだと言っておる。その平和憲法下の日本に、日本の自衛隊のみならず、アメリカ軍の戦車がなまなましい弾痕をつけて、一般の人が住んでいる住宅からあるいは繁華街、こういうものを走り回るということに対する国民の違和感、一体平和憲法はどうなっているのか。政府は、口では平和憲法があるからだいじょうぶと言っているけれども、現実はこんな状況ではないかという国民の違和感。  もう一つは、これは法律的な面から言って、これまで政府が、アメリカが国内法を全く無視して輸送を行ない、あるいは港を利用し、あるいはその他さまざまな国内法無視の行為をとった。このことが今度たまたま相模原の補給廠に集中してあらわれたということ。  以上の見解について、外務大臣、これを御承認いただけますでしょうか。私はそう考えておる。
  230. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私どもは、ベトナム戦争につきましては局外者である、当事者でない。一日も早く平和が回復するようにこいねがっておるものであるということは先ほども申し上げたとおりでございます。で、このベトナム戦争につきまして、国内にいろいろ反戦の運動もあり、見解もあることは承知いたしております。しかしながら私ども政府としては、安保条約というものの当事国といたしまして、それに基づいて約束しておりますことを忠実に履行する責任があるわけでございまして、ベトナムのことが極東の安全と無関係でない以上、安保条約上の約束を持っておる日本政府として、これを排除することはできない立場にあることは御了承いただきたいと思うのであります。  それから日本でベトナム用の兵器が修理されたり、あるいは、その修理ないし搬送によって平穏な市民生活に影響を与えていないと私は考えておりません。御指摘のような状況は私どももよく承知しておるわけでございますが、これは国民に御理解いただきたいのは、われわれがわが国の安全保障の基本的な姿勢といたしまして日米安保条約を選んだ以上、それを遂行していく場合にやむを得ない代償、払わなければならない代償でございまして、そのことだけを切り離して御評価いただかないようにこちらからお願いしたいと思うのであります。
  231. 足鹿覺

    足鹿覺君 関連。  ちょっと伺っておきますが、この米軍の軍用物資の検疫についてはどの省が担当しておりますか。
  232. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) この日米合同委員会の合意議事録に基づきまして、農林省の農政局といたしましては、土につきましては明らかに私のほうで担当している次第でございます。
  233. 足鹿覺

    足鹿覺君 そうしますと、外務省に伺っておきますが、現在、米軍の軍用物資の検疫は、地位協定によってですね、日本側では農林省が担当しておる。こういうはっきりとした御答弁があったにもかかわらず、日本側ではすべてノーチェックで自主検疫で放任をしておる。こういう事実が明らかになっておりますが、これは外務省としては、そのような地位協定の運営でよろしいのでありますか。
  234. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいま農林省のほうからも御答弁ございましたように、日米の合同委員会におきまして検疫に関する合意ができております。したがいまして、先ほど条約局長のほうから答弁いたしましたように、軍隊の地位に伴う法律の問題、それから適用の問題が他方にございます。したがいまして、合同委員会の合意によりまして、事実上わが国の検疫に関する法律そのものの実体を踏まえた合意がルールとしてできておる次第でございます。ただ、その実施につきましては、法律上の問題もございまして、米側でその実施を決定してもらう。それに対して日本側は、先ほど農林省でもお答えありましたように、それぞれ関係の方面において米側とも協力して、その実施を米側に徹底してもらうという態勢になっておる次第でございます。
  235. 足鹿覺

    足鹿覺君 そうしますと、従来アメリカシロヒトリが日本に入ってきましたね。そして日本の樹木をことごとく食い尽くして、たいへんな騒ぎを起こしたことは御承知のとおり。最近また、いまごろちょうど全国の宅地という宅地、あき地というあき地に蔓延しております通称キハナアワダチソウですね。これもアメリカがどこからか持ってきた花ですね。野草です。これは御承知のようにアレルギー体質の者は発しんを起こしてですね、熱が出る。こういうくせ者でありますね。これらについて、あなた方はその当初において、どういう経路で、何にくっついてこれが来たかということの究明もなさっておらない。それが蔓延してから初めて問題にして、その大騒ぎをなさっておる。現にキハナアワダチソウなどはほったらかしてあります。アメリカシロヒトリは、これは植物防疫法の関係もありまして、これは大騒ぎになって政府もやっきになってこれを駆除した、こういうことであります。  今回はまた、相模補給廠に横浜ノースピアを経て運ばれてきましたコネックスの中にベトナム産のゴキブリが入ってきておる。これは報道によりますと、日本のゴキブリは黒いけれども、赤色で、しかも体長は五センチもある。現在、千数百のコネックスが運ばれて、ここにずらりと並んでおる写真が出ておりますが、まだ千個ぐらいは残っておるようですね。あけてないようですね。で、あけた箱の中から、少ないときにはそのコネックスから二、三十匹、多いときには一つのコネックスから百匹以上もうようよと出てくる。こういうことで従業員は大恐慌を起こして、全駐労の執行委員会は、この従業員の不安にこたえるべく厳重抗議をすることをきめたと伝えられておりますが、この実態について農林省と外務省はどのような措置をおとりになっておりますか、これを伺いたい。  先ほど私のところへ、農林省の所管でないから答えられない、こういうなまいき千万な連絡をいたしてきた者がありますが、この植物防疫法、われわれはこれはほとんど議員立法で、わたしが衆議院時代に参議院の議員でありました三橋八次郎先生と一緒になってつくった法律でありますが、これの第一条に、国内にこういう有害な動植物が入ってくることによって農業生産の安全助長を妨げるという、これはあまりにも画一的な解釈だろうと思う。その解釈に基づいて、そういう失敬なことをさっき言ってきたと思う。しかし、第二条の、植物とは何か、動物とは何かという条項の第三項には、「この法律で「有害動物」とは、昆虫、だに等の節足動物、線虫その他の無脊椎動物又は脊椎動物であって、有用な植物を害するものをいう。」、かように規定されております。いわゆるこのダニといい、このゴキブリといい、節足動物なんだ。脊椎はないのです。それが植物に有害でないという保証がどこにありますか。植物よりも大事な人間に、現在体にかゆみを与えたりなんかしておる事実がある。それを農林省の所管でないからといって、質問はやめてくれなどという、農林省は知らぬという答弁がさっきありましたが、いまあなたは農林省の所管であると言ったが、では、現地調査はどのようにやったか。アメリカシロヒトリの例、キハナアワダチソウの例、このたびのこの問題が蔓延をしたときに、まだ千数百個も開いてないコネックスがあるのです。どうしますか。  第一、大平さんに聞いておきますが、アメリカの軍用物資、しかもベトナムから来るものについて、先ほど岩間君からも土の問題でお尋ねがありました。確かに、どういう方法でこの現地へ行って調査をし、これを検査をした結果、どういうもので、実態はどういう実態であるから安全であるとかないとかという報告一つもない。いわんや、このような聞いてもぞっとするようなゴキブリがすでに日本に上陸をしておる。今後も上陸しないという保証はない。しかも、完全に農林省は知っておりながら、所管外だ、関係外だとさっきも言ってきた。一体これはどういうことですか。国内法優先の立場から、当然あなた方はこのような事態があるならば、アメリカ側に外務省は厳重抗議をし、注意を促し、そして今後のものについてはこの植物防疫法を準用して、このようなことの二度と起こらないように厳重な処置をとられてしかるべきである。第一こういうことがありますと、日本の人間はもちろん、植物も非常に今後支障を生ずるでありましょう。米軍物資に限って地位協定の上からノーチェックだ。アメリカ側が完全消毒をしておるという話でありますが、どのような方法で、いつこの相模原のコネックスの中のものを消毒いたしましたか、御調査になった実態をお知らせを願いたい。あわせて今後とられる措置を聞いておきたい。外務大臣と農林省に承っておきたい。
  236. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 事実をよく調査、究明いたしまして、関係各省等の御協力を得まして、もしそういうことがございますならば、厳重な措置を講じてまいらなければならぬと思います。
  237. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 従来から植物防疫法に基づきまして、ゴキブリにつきましては、この当該ゴキブリが有用植物に対しまして悪影響を及ぼすものではないという農林省の考え方を持っておりまして、したがいまして、ゴキブリは植物防疫法の対象には従来取り扱いをいたしていないのでございまして、私たちの判断におきましても、国内におきましても相当ゴキブリはおるわけでございますが、これが栽培されております有用な植物にはほとんど悪影響を及ぼしてないように解釈している次第でございます。
  238. 足鹿覺

    足鹿覺君 だからそれを準用して、現に第二条第三項において、はっきり無脊椎節足動物については駆除の対象になっておるわけなんです。それは荒勝君ね、植物防疫法の対象になっておらぬからやらないというのは官庁のセクショナリズムであります。人体に今後影響を及ぼし、このものの蔓延によってどのような非衛生状態が起きるかわからない。こういう状態について現地調査をなさっておらぬのですか。キハナアワダチソウの場合といい、アメリカシロヒトリの場合といい、あなたたちは気がつかなかった。今度は、はっきりこういう実態が明らかになった以上は、外務省と協力して直ちに現地調査をなさい。現地調査の結果を当委員会報告をし、今後とるべき措置をとっていただきたい。これが一点。また、この事実が調査の結果明らかになったならば、この実態が明らかになったならば、アメリカに対して、物資に対しては、いわゆる自主消毒の有無、どのような薬剤を使い、どのような方法によって完全な消毒をしたかしないか、そういうことを調べて、その結果を当委員会に知らせてもらいたい。やってもらえますね。
  239. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) ただいま御指摘のありましたゴキブリの件でございますが、植物防疫法の第二条でただいま言及されました第三項の解釈でございますが、第三項で「この法律で「有害動物」とは、昆虫、だに等の節足動物、線虫その他の無脊椎動物又は脊椎動物であって、有用な植物を害するものをいう。」ということで、ゴキブリは有用な植物を害するものではないという解釈を農林省はとっている次第でございます。
  240. 足鹿覺

    足鹿覺君 くどいようですけれども、もう一問だけ。  大臣そういうことでいいですか。これは植物防疫法という一つの条文の中に「有用な植物を害するものをいう」ということだけをたてにとってのいまの荒勝君の答弁です。それは役人の解釈であって、少なくともあなたは外務大臣として、政治家として、人体に今後どのような影響を及ぼすかわからない。それでなくても日本産のゴキブリにすら、もう手をあげておる。われわれの会館でも手をあげておる。これが蔓延したら、じゃどうしますか。あなた方は高級の住宅に住んでおられますが、われわれは宿舎でも台所と一緒につながったところで寝ておるのですよ。目と鼻の間に台所があるのです。ゴキブリの発生に困っておりますよ。いわんやこれが横浜を通過をして相模原の補給廠へ入る。そしてうようよとこれが発生する。しかも繁殖率が高い。ただ植物防疫法だけがこれに対する——人間に害毒を与えるということが書いてないからというならば、では政治家としてこれに対する準用する態度で臨まれるか。新しくアメリカと交渉をして、合同委員会にかけて、そして軍用物資についてはノーチェック制をやめる、完全消毒を向こうさんがやらないならばこちらが一々立ち至ってこれをやる、そういう何らかのかわるべき措置をおとりになるのが私は当然だと思う。黙っておっても大臣としての積極的な御見解が私はあってしかるべきだと思う。いままでのアメリカシロヒトリのときのろうばいぶり、キハナアワダチソウのときの現状、あなたはこれを等閑視していいとお考えになりますか。大臣の御所見を承っておきたい。あなたは特にこの田中内閣の最も有力な実質上の副総理であります。その見識においてひとつ御答弁を願いたい。大平さん、そう困ったような顔をしないで、ちゃんとした答弁をなさい。
  241. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 米軍の軍用物質の搬出入に関連いたしまして、いま御指摘のような事態が過去においてあったし、今後あるおそれがあるということについて深い憂慮を持たれておりますことに対して、私も感謝をし、かつ敬意を表します。と同時に、政府といたしまして、いま御指摘のような事実関係を調査さしていただきまして、それでもし御指摘のような事実が明らかになったといたしますならば、それに対しまして国の内外におきまして適切有効な措置をとってまいることは当然の責任であると思います。
  242. 足鹿覺

    足鹿覺君 じゃ報告してもらえますね。  荒勝君、君のところは調査ぐらいせい、調査ぐらい。調査もせずになわ張り争いをしておったらだれがやるのだ。専門官は君のところの専門官の所管じゃないか。検査もしないということがあるか。私のところの所官でありませんなんてふざけている。
  243. 水口宏三

    ○水口宏三君 ただいまの国内法に対する足鹿先生の適用の問題、これはまあ別にいたしまして、最初大平大臣から示されました統一見解、さらにそれに補足して高島条約局長から示された見解について非常に不満なんです。と申しますことは、大体現在の軍事援助というものが、従来は、朝鮮戦争の場合でも、あるいはベトナムの場合でも、アメリカは直接軍隊を送ってこれを援助といいますか、侵略をしたというか、そういう行動をとっております。しかし最近は、国際的に見ても軍事援助が行動を伴わず武器援助という形をとっている。これが典型的なのが私は中東問題だと思う。それからまた、極東におきましても、言うまでもなくニクソン・ドクトリンの、アメリカのアジア政策の転換によって、むしろ韓国からも台湾からもアメリカの軍隊を引き揚げる、そのかわりこれに武器援助をやっていく、そういう形で、いわゆる軍事援助の形態ですね。さらに言うならば、米華相互防衛援助条約てなものがある。すると、この条約の実施にあたっては、主として武器援助という形態がとられるであろうというふうに私考えるのですが、その点外務大臣いかがですか。
  244. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 米軍の南越に対する軍事援助は、従来御指摘のように対外援助法に基づいておったと承っておりますが、一九六六年以降は、国防省の所管で予算的措置で行なわれておるように聞いております。その内容、金額等の詳細につきましては公表されておりませんので、私どもまだ確かめるに至っておりません。
  245. 水口宏三

    ○水口宏三君 むしろ私からお尋ねすることを大臣先におっしゃったんで非常にお尋ねしやすいんですが、従来は、大体まあそういう相互防衛条約というものは、主として軍事行動というものを中心に考えられていた。ところが、武器援助というものに逐次変わってくるに従って、アメリカの国内措置として、対外援助法を使わずに、国防省内の予算的措置でもって適当に行なっていると。したがって、ベトナムであれだけのアメリカの兵器がチュー政権の軍隊に使われているのに、単なるアメリカの国防省内の予算のやり繰り、アメリカのマークをつけたままアメリカの兵器として使われてるのが現状でございますね。こういう形が今後台湾なり韓国なり、アメリカが相互援助条約を結んでる国々と行なわれる可能性は非常に強いというぐあいに判断されるんですが、その点いかがですか。
  246. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは、これからの事態の展開がどうなるかにかかるわけでございますが、御案内のように、ベトナム戦争自体も最終的な段階を迎えておるのではないかとわれわれは判断いたしておりますし、対台湾、対韓国等において新たな御指摘のような事態が軍事援助——対韓等の軍事援助がそういう姿で変わるであろうということにつきましては、いまの段階で予測ができない限りでございますが、私どもとしては、極東全体といたしまして緊張が緩和の方向に向いておるのでないかというように判断いたしております。
  247. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、それは大臣、あれじゃないですか、すでにもう韓国から米軍が引き揚げるということは何回か米軍が決定をし、すでに引き揚げつつあるわけなんですね。そのかわり韓国軍に対して武器を援助すると、そういうことは既定の事実——これは何もこれから起こるのではなくて、すでに進行しつつある事実であることは、これは何回も報道され、おそらく外務省の情報網をもってすれば、もっとわれわれより詳しく御存じのはずなんです。これからの事態を言っているのではない。そういう事態が現在進行しつつあるではないか。既定の事実となり、それがさらに進行するではないかということを申し上げている。
  248. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そういう武器援助の実態につきましては、先ほど申しましたように、私ども詳しく遺憾ながら承知していないわけでございます。
  249. 水口宏三

    ○水口宏三君 そこで私伺いたいのは、これは防衛施設庁にちょっと伺いたいんですけど、現在相模原の補給廠で働いている日本人の職種別の人数を概略御答弁いただきたい。
  250. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 日本人従業員の全数は三千五百九十二名でございます。  職種は非常にたくさん分かれておりまして、数の多いものから申し上げます。戦闘車機械工、これが四百四十六、それから倉庫係三百五十五、それから特殊車両車体修理工二百三十二、それから包装、これが百四十五、自動車装置検査工百四十三、フォークリフト運転手百十一、これが大体百名以上ある職種でございます。
  251. 水口宏三

    ○水口宏三君 いま外務大臣お聞きになったと思います。そうしますと、相模原の補給廠で実際に米軍の戦車なり装甲車を修理しているのは日本人なんです。日本人の技術者、あるいは日本人の労働者が直接修理している。あなた方は、これは安保条約に基づいて施設庁が一応雇用して米軍に提供しているというふうに説明をなさるかもわからない。ところが、これが実際に送られる先ですね、ないしはアジア諸国の目、これはまさに日本人がアメリカの戦車を修理して、そうしてこれを戦場に送り、あるいは台湾なり韓国なりに送っていると、こう見るのは当然だと思う。これはいかに条約上のこまかい説明をしたところで、アジア諸国民がそれを一々研究し、法律的に納得するわけじゃない。現実に相模補給廠ではそういうことが行なわれている。このことは特に私はベトナム問題について重要な問題であるばかりでなくて、いま外務大臣がその政治生命をかけて取り組んでいらっしゃる日中国交回復の場合に、さっき申し上げた米華相互防衛条約というものはいまでも生きているわけですね。さらに、日米安保条約は極東の範囲をそのまま据え置く、日米共同声明における台湾条項も残る、こういう状況の中で、さっき申し上げたように米軍の武器援助ということが現実に行なわれている。それで、向こうでおそらく演習や何かで消耗したものが相模補給廠に送られてきて、日本人の手によってこれは修理されて台湾に送られている。その間にどういう条約上のいろいろなあなた方の解釈があろうが、この現実そのものは中国から見たらどう見えるか。あるいは、ベトナム人民が日本人の修理した戦車によって殺されている。この現実にぶつかっているベトナム人民はどう見るか。そういう私はアジア人の目、アジア人の見る見方ですね、それを間接的にというか、それを知るまた日本の国民の感情、こういうものを無視して法律論だけを振り回して、先ほどのように、安保条約がある以上日本で修理、補給をすることはやむを得ない、それがどこに持っていかれようがしかたがない、転用も自由である、こういうことはどこから考えてみても不当だと思う。これらの点はどうなんですか。
  252. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私が終始御説明申し上げて御理解を得たいとお願いいたしておりますのは、安保条約並びにそれに基づくもろもろの取りきめを私どもは守っていく責任が政府にあるのであるということでございまして、それを包み隠す必要は私らの立場ではないわけでございまして、いま御指摘の点につきまして、そういうことがいいか悪いかという大きな問題点の御指摘に連なってくるのじゃないかと思いますが、私どもといたしましては、諸般の状況を考えまして、いろいろな批判がございますけれども、日本の現状におきまして政府が安保条約を維持するという姿勢でいかざるを得ないと考えるわけでございます。しかしながら、同時に私どもは、それだけで安住しておるわけでは決してないのでございまして、進んでこの地域の緊張緩和のために外交機能を傾けて努力いたしまして、安保条約並びにその関連取りきめが事実上機能しなくても、この地域の安全が保たれるような事態を創造していくことのほうにアクセントを置きまして、努力していく所存でございます。
  253. 水口宏三

    ○水口宏三君 大臣は最初、この安保条約、まあ安保条約がある以上これを守るのだ、守るのだとおっしゃいますけれども、これが円滑に守られるためには国民の支持がなければならぬということでございますけれどもね、なおかつ、安保条約の目的が日本の安全並びに極東の平和にある、これは動かせない事実だと思いますね。こういうふうに、私が申し上げましたように情勢は変わりつつある。これは従来いわれるように、平和的な情勢の中というだけでなしに、アメリカの軍事政策が変わってきている。武器援助に重点が置かれている。しかもその武器の修理にあたって日本の技術者がこれに参加をしているということは、さっきあなたはベトナムは全く日本は当事者でないとおっしゃっていますけれども、間接的当事者ですよ。ベトナムでもって実際ベトナム戦争に参加している戦車を修理しているのは日本人なんですから。そういう事態を放置しておくことは私は非常に危険だと思うんですね。それで、私はぜひ外務大臣に御所見を伺いたいのでございますけれども、第三国の軍事援助に使われる武器の修理、補給、輸送については、その取り扱いを地位協定で新たに定めると、どういう場合に限ると、それでそれが一定の水準以上のものですね、たとえば一定期間に百台の戦車というような非常に一定水準以上のものについては直接の戦闘作戦行動に準ずるものとして事前協議事項に加えるべきだと思うんです。それほど重要な問題である。つまりアメリカ軍が直接戦闘に参加をするか、アメリカ軍が重要な武器を供給してアジア人同士を戦わせるというニクソン・ドクトリン、アメリカの軍事政策をそのまま日本が追随していくのか、その歯どめとなるものこそ私はこれだと思うんですね。そういう意味におきまして、先ほど条約局長は、現在の地位協定からいけば、拡大していけばまるでどんな例外でも認められるようなお話だったので、この点は非常に危惧を感じました。地位協定の中でその点を明確にしていく。一定以上のものについては、たとえば事前協議事項の中にも、在日米軍の装備、編制について、それが一定以上の場合には事前協議にかけるという条項があるわけですね。それと同じような形で事前協議事項に加えるということ。と申しますことは、前内閣の福田外務大臣は、事前協議事項を全部洗い直すと言っているのです。これはいい機会です。したがって、地位協定の中でその点を明確にすることと、事前協議に加えることについて、大平外務大臣は今後御考慮いただけるのかどうか。
  254. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私は、安保条約並びにその関連取りきめを維持するということを全体として申し上げておるわけでございまして、その一部の改廃というようなことは軽々にすべきでないと考えております。いま水口さんも御指摘のように、この運用はしかしながら、国民の理解と協力がなければ十全にまいらないこともよく承知いたしておるわけでございまして、米軍もまた国内の国内法を尊重して、それに違反がないように心がけてまいるという姿勢で取り組んでくれておるわけでございますので、いま申されたような問題を円滑にやってまいる上におきましては、私どもが鋭意運用上気をつけてまいって処理していくべきではないかと思っておるわけでございます。言いかえれば、それあるがゆえに安保条約の一部分の改定あるいは事前協議制を一ぺん根本的に洗い直すというようなことについては慎重でなければならぬと私は考えております。しかしこの秋、ちょうど安保協議会のメンバーも日米ともに全部かわった段階でございますので、安保協議会をこの秋には開催しなければならぬと考えておるわけでございます。で、従来国会でお約束いたしておりましたことにつきましては、協議するにやぶさかではないのでありますが、事前協議制の骨組みにまで触れるというようなことにつきましては、よほど慎重でなければならぬというのが私のいま考えておるところでございます。
  255. 水口宏三

    ○水口宏三君 大平大臣が御慎重であること、これは前々から存じておりますし、また、外交はそうでなければならぬかもわかりませんけれども、慎重に取り組むが、少なくとも私は六〇年に事前協議事項ができましたときには、在日米軍が非常に多かったわけですね。したがって、在日米軍の重要な装備並びに編制の変更、さらに朝鮮戦争の直後、また、ベトナムも風雲急を告げている。したがって、在日基地を発進するそういう戦闘作戦行動ということが入ったわけですけれども、先ほど私が申し上げておりますように、いまの事態というものはそれが変わってきておる。むしろ武器援助というものが中心になっておる以上、そういうことを十分ひとつ御考慮願って、慎重に検討の上、もしそれが必要であるならば安保協議会にこれを持ち出すということを御考慮いただけるかどうか、この点をお伺いいたします。
  256. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まず、いま御指摘の点、安保協議会に上程すべきものかどうか、そこまで固まるかどうか、そのあたりの点を検討さしていただきます。
  257. 水口宏三

    ○水口宏三君 それから、安保協議会の問題はあとで十分御検討いただくこととして、少なくとも、できるならこの地位協定の中にいまの条約局長が言うようなあいまいな解釈を残さないように、明確にしていただきたい。確かに地位協定の中には、基地から基地米軍の戦車なり何なりを輸送することは自由であるという項目がございます。しかし、これは通常の場合であって、それは明らかに軍事援助の目的をもって行なわれる場合は非常に違うと思うのですね。そういう意味におきまして、地位協定についてこれを改定するか、あるいは日米合同委員会において地位協定の解釈をもっと厳密に行なうこと、そのことが第一点です。  第二点として、現在相模原にありますようなあの膨大な補給廠というものは、少なくとも現在の状況においては必要ではないのではないか。だからこの間も縮小というお話がございましたけれども、相模原の補給廠こそ私はむしろ日本に返還して、いま都市化の問題でむしろ田中総理大臣が日本列島改造論を出しているくらいですから、相模補給廠改造論を出すくらいはわけのないことですからね。その点を、少なくとも相模原の補給廠をできるだけ早急に返還を目的に交渉をしていただくこと、つまりいま言った地位協定についての厳密な解釈を、本来なら地位協定の改正ですね、できなければ日米合同委員会において条約局長のようなあいまいな点を残さないように、きちんとした了解事項をつくること。  第三点として、相模原の返還を目的とする早急な交渉を始めていただけるかどうか、以上三点について承りたい。
  258. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) きょうお答えいたしました政府のまとまった見解でございますが、これもずいぶん苦心して、いろいろな場合を考えてお示しいたしたわけでございます。たまたま米軍が転用するというような場合はともかく、そうでなくて、極東と関係のない地域から定型的に受け入れて修理して搬出するというようなことは、これは排除する考え方で申し上げておるわけでございまして、私どもその点はできるだけ制限的に考えていきたいと思うし、米軍側もそれに協力していただけるものと思うんであります。  それから第二の相模原の補給廠の問題でございますが、これはこの間閣議の了解がございましたとおり、縮小ないし整理の方向で一両年の間に処理をいたしたいということでございましたので、仰せのような方向で政府が責任をもって処置したいということでございまするので、さよう御了承いただきたいと思うんであります。
  259. 水口宏三

    ○水口宏三君 ちょっと私いま勘違いしたんでございますけれども、この間の閣議了解事項の中には、相模原の補給廠を、これの返還を一両年中にということは入ってなかったですね。それをあらためて外務大臣の御発言ならば非常に歓迎いたします。ぜひその点を確認いたしたいと思います。
  260. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) あれは戦車修理機能の縮小ないし停止ということでございまして、補給廠全体の縮小ないし停止という趣旨ではございません。
  261. 水口宏三

    ○水口宏三君 どうせならそこまで踏み切ったらどうですか。きょうちょうど言い間違えたのではなしに、まさに都市化しつつあるあそこの辺のあの膨大な、聞いてみると後楽園の五十倍ですか、五百倍ですか、非常に膨大な土地なんですね。あれをできるだけ早く返還してもらうべく努力するということについて、ぜひ大平外務大臣のお答えをいただきたいと思います。時間がございませんのでいまの点ひとつお答えいただきたいのです、努力するのかしないのかですね。  それから国内法優先——まあ足鹿委員のほうからもそういう御発言がございましたけれども、その問題につきましては、当然——たまたま相模原で起こったからということではなしに、沖繩を含む全国的な問題として、国内法をできるだけ——できるだけではなくて、国内法を優先的に守らせるという政府の方針は変わらないわけですね。それが第二点です。  それから第三点、実は時間がなくなって、せっかく公安委員長においでいただいておきながら御質問する機会がなくて恐縮でございますけれども、第三点は公安委員長にお伺いしたいのでございますけれども、新聞の報道するところによると、五千人の警察機動隊員を動員すると駐とんする場所がないので、淵野辺の基地をたまたまアメリカから借りて、これを使いたいというような報道がありました。ただ昨日は一日だったんで淵野辺は使わなかったというお話でございますけれども、この装甲車の輸送は来年二月まで続くわけでございます。で、今後そういう事態が起こる可能性があるわけでございますけれども政府側は地位協定二条四項(a)号によって当然米軍の了解を得れば使えるのだと言う。これは法律論上はそうでしょう。法律論上はそうかもわかりませんけれども、このことの起きた事態は、つまり相模原の補給廠からああいう戦車なり装甲車が出るということに対する国民感情、それをさかなでするように、すぐそばにあるアメリカの軍事基地に機動隊が宿泊し、駐とんしてそれのいわば鎮圧に当たるということは、一種のこれは挑発行為になるおそれがあると思うのですよ。この辺私は公安委員長として、あるいは外務大臣自身も、国民なりあるいは市民なりの了解、支持を得なければ効果がないのだと言っているのですから、この辺のところ——たまたま昨日は幸いなことに一日で済んで、駐とんしなくてよかったんでございますけれども、今後そういうことのないように、ひとつ淵野辺の基地を利用するなんということは厳に戒めていただきたいのですが、その点いかがですか。
  262. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御質問の第一点、相模原の補給廠自体の処理の問題でございますが、いま申しました戦車修理機能の縮小ないし停止ということ自体でもたいへんこれは大問題でございますので、これにつきましては鋭意政府も責任をもって取り組む覚悟でございますが、これに、相模原の補給廠全体の返還というようなことになりますと、これはきわめて大問題でございます。これは基地一般の統合整理というような課題の中で可能なものかどうか、そのあたりは検討させていただきたいと思います。  それから第二点の米軍が尊重すべき国内法順法問題、これは沖繩も含めてでなければならぬじゃないかという御指摘でございますが、仰せのとおりだと考えております。
  263. 木村武雄

    ○国務大臣(木村武雄君) 相模原のああいう騒ぎ自体が非常に不愉快なことであります。特にそこに住んでおいでになります住民の人々なんかはさぞ不愉快だったろうと思いまして、御同情申し上げておるところでございます。より以上そういう点で住民を刺激をするようなことはさせないようにこれから十分に気をつけたいと思います。
  264. 水口宏三

    ○水口宏三君 それではこれで最後にいたしますけれども、実は大平外務大臣の御答弁非常にうまくて——うまくてというか、あるいは慎重過ぎて私わからない点がありますので、再確認いたしたいのでございますけれども、日米安保協議会に直ちにこの問題を出す考えはない、ただし、最初大平大臣のおっしゃったような、国民の支持協力、あるいはそれがほんとうにアジアの平和のために役に立つものであるという、そういう立場に立って、問題があれば日米安保協議会の中で十分討議をする。まあわれわれの希望としてはそれが事前協議事項にまでいくことを希望したいということ  それからもう一つは、地位協定の改定ということが困難である場合、これは日米合同委員会でこの点を十分話し合って、さっき条約局長の言ったような、拡大すれば何でもできるようなことがないことだけは、これは外務大臣にひとつ確約していただきたいのです。日米合同委員会で日本の施設使用、特に修理、補給について、第六条の目的を達するということ、この第六条の目的というものに限定するようにぜひこれを明確にしていただきたい。  それから第三として、最後に、非常に困難だとおっしゃいますけれども、これは何もここ半年のうちにということではございませんから、できるだけひとつ相模原の補給廠が返還されて、日本の非常に困難な土地事情が少しでも緩和されるべく御努力いただけるのかどうかですね。ここで確約するということではないのですが、以上の点、もう一回簡単に大臣から所信を伺っておきたいと思います。
  265. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 地位協定六条をむやみに拡大するのではなくて、安保条約の趣旨に沿って最善を尽くさなければならぬということは仰せのとおりでございまして、この点につきましては、安保協議会等の席でわがほうの見解として先方にお示しいたします。  それから相模原の補給廠の問題につきましては、先ほど申しましたように、これは大問題でございまして、基地全体の整理統合の一環として考えさせていただきたいと思います。  それからもう一つは何でございましたか。
  266. 水口宏三

    ○水口宏三君 だから、日米安保協議会の中で……。
  267. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 日米安保協議会は、先ほど申しましたように、この秋新メンバーで開く予定でございまして、いま仰せになりました問題、事前協議制の洗い直し等含めて議題にできるかどうか、その点につきましては私ども検討させていただきまして、そのうちで御相談申し上げるまで熟してまいりますものにつきましては相談してみたいと思います。
  268. 水口宏三

    ○水口宏三君 以上でございます。
  269. 山崎昇

    山崎昇君 もう全く時間がありませんから、外務大臣に一、二点だけこの機会にお聞きをしておきたいと思います。  いまいろんなところで戦争が二、三起きています。たとえば中東戦争もそうでありましょう。あるいはその他の国で起きているのもあります。これを議論するために私のほうで少し分けてみますというと、一つは植民地から独立をして国内の政治体制をどうするかという意味で、その国のいわば国内的な戦争が起きているというのが一つの型になる。二つ目の型は、第二次大戦の結果国が分断されて、それをどう統一するかという意味でいろんな問題が起こされておるというのが二つ目の型ではないだろうか。三つ目は、発展途上国のように多くの人種をかかえておる、言うならば人種問題が中心でいろいろ起きておる。大きく分けると私はそんなことになるんじゃないだろうか、こう考えます。  そこで、きょう先ほど、第四次防に関連をしまして、自衛隊が増強されていくわけですが、日本の周囲には脅威がない、現実にはないが、将来あり得るかもしれぬというお話でございましたが、もし日本が戦争状態のようになるとすれば、一体どういうところに原因があってどういう形態でなるんだろうかということはきわめて私は重要な課題ではないだろうか、こう思います。そこで、いまほど外交的に重要な時期はない。また、政治と軍事の関係というのは新しい問題でありますが、古い問題でもある。そういう意味でいえば、この外交交渉がきわめて重大な段階にあるときに、外務省としてはこの自衛隊の増強というものをどういうふうに判断をされ、あるいはいまの世界の状況というものとの関連でどう判断をされるか。  少し余談になりますが、ことしの六月にわが党の佐々木更三さんが中国へ参りまして、周恩来総理と話しされたときに、周総理からこういうことばがあったとぼくら聞いています。それは、一九七〇年代というのは新たな冷戦時代に入った、新たな冷戦時代とは何かといえば、談判ということばを使ったそうでありますが、交渉の時代であるということを言った。そういうこともあって、考えてみますというと、米中の会談あるいは米ソの会談、やがてこれから行なわれるであろう日中の会談等々、私ども考えてみるときに、いまほど外交という問題が重要性を帯びているときはないんじゃないだろうか。そういう意味でいうと、軍事と外交という問題を詳細に考えておく時期に私はきているんじゃないかと、こう考えて、一体、外務省としては自衛隊の増強というものを外交政策上から考えてどう把握し、どう判断されておるのか、これをひとつ聞いておきたいと思うのです。
  270. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 世界の状況をどう診断するかという問題は、各方面から論及されておる課題でございますが、私どもといたしまして、なるほど一面に緊張緩和の動きはありますけれども、なお執拗な地域的な紛争も絶えない。あるいはいま御指摘のように、政治体制、人種問題、その他それぞれの民族国家が置かれた状況は、決して安定した状態ではございません。そういうときに、いわゆる対話、交渉力だけで理解が得られ、平和が維持できると言い切れるかというと、必ずしもそうとも言い切れないわけでございまして、ある程度の力というものを踏まえてかかる必要が、そのよしあしは別にいたしまして、現実の問題としてあるのではないかと思うのであります。わが国といたしましては、戦後安保条約を軸にいたしまして、自衛力の整備をもってこれを補完するという体制をとってまいりましたわけでございまして、これについてもいろいろな批判があることはよく承知いたしておりまするけれども、にわかに、この根本の体制を軽々に改廃すべきものと私ども考えていないわけでございまして、従来のたてまえを用心深く維持しながら、外交的努力を精力的に強めていくべきでないかと考えております。しからば、わが国の自衛力はどの程度のものであるべきかという点につきましては、これまたこの程度のものでは、あらゆる先進国と比較いたしましていかにも少ないじゃないかという議論も、一方において成り立つと思うんでございますけれども、しかし、八千億円の自衛費というものは過大であるという見方も、確かに一面においてあることも承知いたしておるわけでございます。私どもといたしましては、そういった、従来国力と国情に応じて自衛力は整備していこうということを趣旨といたしまして、年々自衛隊整備をはかってまいりましたのでございますが、過去の努力の上に立ちまして、これを飛躍的に増強しなけりゃならないとは、私は考えておりませんけれども、これに大なたをふるわなければならないというような見方に対しましては、にわかに賛同できません。
  271. 山崎昇

    山崎昇君 どうもわかったようで私まだわからぬわけですが、この外交と軍事力の関係というのは、まあいろんな議論がされておるわけですがね。一つの側面からいえば、ある意味でいうと、軍事目的を果たすために政治というものが、あるいは外交というものが手段に使われた時期もある。しかし、いま大臣の答弁では、また私どももさっきから言っているのは、外交、言うならば交渉でものごとをやっていこうというときになれば、軍事というのはそれほど重要視をしなくてもいいのではないだろうか、こう考えます。特に日本の場合には平和憲法があって、すなおにいえば軍隊を持たない、諸国民の公正と信義に依拠してやっていくんだということになると、なおさら日本における外交というものが重要性を帯びてくるんではないか。しかし、いま大臣から、ある程度の力を持たなけりゃ外交できない——そうすると、自衛隊の増強というものは外交を推進する上の力というふうに私ども理解していいのか。そうなってくると、自衛隊法にいう直接侵略及び間接侵略から日本を守るという趣旨のこの自衛隊の目的というのは大きく変えなければ私はならぬのではないか。どうしてもそう思わざるを得ないわけです。そういう意味で、あらためて、あなたはある程度の力がなけりゃ外交できないような言い方であったんだが、その趣旨をもう少し聞きたい。  それから、時間がありませんから、別なことでもう一、二点つけ加えて聞きますが、もう一点は、最近のように軍事力というのはものすごく進んでくる。特に兵器が進んできて、すべては、極端な言い方をしますが、どう情報を先にキャッチするかということで勝負がきまるともいわれる。いうならば、情報活動あるいは情報面からくる軍事力というものが中心だともいわれています。そうなれば、そういう時代にあって、いまの安保条約の事前協議制というものは、いまの形のままで私はいいんだろうか。一体、宣戦布告もなしに、ある情報のもとにあっと戦争やったときに、どういう形でこの事前協議というものがチェックできるか。こういう情報化時代の事前協議というものについて、外務大臣はどういうふうに御判断なさるのか聞いておきたい。  それからもう一点は、最近沖繩が片づいたので北方領土北方領土と、こう言います。しかし今日まで、たとえば小笠原返還、沖繩返還というそのものずばりの名称で呼んでおりましたが、なぜ北のほうだけ北方領土と抽象化するんだろうか。なぜこれは千島列島の返還とか、もう少し明確な形でやれないものだろうかと。そういう意味からいうと、北方領土という言い方は少し抽象的であり、どうもぴんとこないと思っている一人ですが、小笠原あるいは沖繩のいままでの関連から、千島列島の返還を求めるというようなことに外務省としては変える考えがあるかどうかですね。  とりあえず、時間がありませんからこの三点聞いておきたいと思います。
  272. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一点の力は、私は軍事力ばかり申し上げたつもりはないわけでございまして、有形無形のあらゆる力、日本で申しますれば、日本の持っている経済力、行政力、情報力、いろんな力を勘定に入れなきゃならぬと思いますが、同時に自衛隊の持っておる力も一つの力であるという点に間違いはないと思います。  それから第二の、情報時代に入りまして事前協議制というものは機能する状況にあるかどうかという判断についての御質問でございますが、現に事前協議制はございますが、今日まで私が承っておるところによりますと、まだ発動されたケースが皆無のようでございます。しかし、これは発動されたことがないから無益であるという意味では決してないのでありまして、安保条約は在日米軍並びに米軍基地使用についてのルールをきめておるわけでございまして、これこれのことは事前協議制、事前協議にかかるのであるという一つの歯どめを加えておるわけでございまして、それは有効に常時私は働いておるものと考えます。  それから北方領土問題でございますが、私どもの理解では、北千島、樺太は、サンフランシスコ講和条約で日本が放棄した立場におるわけでございまして、その帰属についていまとやかく日本政府としてもの言いをつけるつもりはございません。しかし、歯舞、色丹はもとより、択捉、国後は、サンフランシスコ条約で放棄した千島ではない、われわれの固有の領土であるというたてまえで、この返還を迫っておるわけでございますので、北方領土の返還というタイトルは、そのまま実態を私は示しておると考えております。
  273. 山崎昇

    山崎昇君 もう私の時間がありませんから、あらためてこれはやらなければいかぬ問題だと思いますが、第一点の自衛隊の性格をめぐる点は、大臣の言い方では私どうしても納得できないからあらためてやります。  そこで重ねてお聞きをしておきたいのですが、軍事力がだんだん、だんだん進んでくる。そうすると、外交はこれは話し合いですから、私はある意味ではおくれている面も出てきやせんだろうか、そこでどうしても私は軍事面が最優先されてくるような気がしてなりません。これはシビリアン・コントロールだとか、さまざまなことでまた議論を呼ぶものだと私は思いますが、そういう意味で、私は外交を担当されておるたとえば外務省でありますとか、あるいはお聞きをしますというと、海外旅行をした者、すべて私どもお聞きをしますと、日本の在外公館というものの機能がきわめて小さいといいますか、あまり機能していないのではないかということをよく聞きます。そういう意味でいうならば、外交機能をほんとうに発揮するためには、そういう整備ということも私はかなり急務ではないかと思うのだが、最後にこの外交——在外公館といいますか、そういうものの整備等について、あなたの見解を聞いて、きょうはひとまず質問を終わっておきたいと思います。
  274. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 外交機能整備について、その必要、御指摘いただいてたいへんありがたいのでございます。私どもといたしましては、毎年毎年鋭意この整備に当たっておりまして、漸次理解を得て、在外公館の増設、内容の充実につとめておるわけでございますが、仰せのように、これが現在の段階において十全に機能できておると私は考えていないのでありまして、これから一そう力こぶを入れなければならない課題であると考えております。
  275. 上田哲

    ○上田哲君 縮めて二、三点お伺いいたします。  ハワイ・ホノルル会談で、緊急輸入が大きくクローズアップされたのでありますが、しぼってお伺いをしたいのは、そこで三億二千万ドルの大型ジェット旅客機の輸入のワクがきまったと、この額が大きな総ワクの中で中身なくきまったのか、それともあらかじめ積算の根拠があって、その結果として出てきた数字という裏打ちがあるのか、そのいずれなのでありましょうか、経過をひとつ御説明いただきたい。
  276. 平原毅

    説明員(平原毅君) これは最初、ここに書いてございますとおり、鶴見審議官とインガソル大使との間の箱根会談のフォローアップの過程におきまして、一応、運輸省のほうからわれわれ承知いたしまして、現在——その当時でございますが、日本の航空会社が民間のベースでアメリカと大体この程度の話をしておるということを承知いたしまして、それが三億二千万ドル程度であるということを伺いまして、ここにそのように書いた次第でございます。
  277. 上田哲

    ○上田哲君 運輸大臣を中心にした論議がこの前にありまして、その部分の重複を省くのでありますが、こういう数字が出てきたことの過程の中には、政府側の説明としては、これから増大していく航空旅客需要というものに対応して、大型ジェット輸送ということを考えなきゃならない。それから逆算するとこういうことになっていくんだということになるのですけれども、元来、余り過ぎた黒字を消していかなきゃならないという両国間の政治判断の上にも立ち、特にいまここで問題にしたいと思うのは、三社の、ロッキード、ダグラス、ボーイングのたいへんないま売り込み競争が上空あるいは地上で展開されている。特に、あと二週間もするとこの機種が決定をされるという状態になっているわけです。この問題が国民あるいは住民の利益というところから判断をされるということでなければならぬと思うのですけれども、安全上の問題、それから騒音の問題というのが、大型でありますから、非常にいま結論が出ないでペンディングになっている。ところがこの三機種の中で、私どもが見ていると、どうも政府側の進め方の中に片寄りがある。この片寄りを進めていきますと、たとえば騒音調査というものを平均値で出すとか、これは当然どれかを選ぶのですから、平均値で出されては意味がないわけであります。あるいは運輸省の某課長が、これくらいのものならがまんしろという程度の発言をするとか、いろんな問題が出てきている。そういうことを考えていくと、どうもこれほど膨大な金額、実際には四十九年度ということになっているものがあと二週間後にきまるという時点で、これはアメリカ政府が倒産状態になったロッキードを救済をした、さらにてこ入れをしなきゃならないというところに、そのまま押し込んでいけば、この秋のアメリカの大統領選挙への資金繰りの関係が出てくるんではないかという、いろんな見解も出ておるのであります。ひとつここから先を外務大臣にお答えをいただきたいのだが、かりにもアメリカに黒字をどうにかしろ、赤字を助けてくれと、二年間で二十億ドル何とかしろという話が公になっているべースの上で、いかに国内側の需要の問題があろうとも、そういう目で見られる中で、いやしくも日本の行政がそうした海の向こうの政治情勢に関連をして手助けをしているような印象を受けることのないように、特に大詰めにきているこの二週間の段階で、十分に配慮をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  278. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御承知のように、今日、日米間の貿易収支のアンバランスがたいへん膨大なものになっている、このこと自体決して健全な姿ではないと思うのでありまして、両国の関係から申しましても、世界経済全体のバランスを維持していく上から申しましても、何とかこれを改善しなきゃならないということにつきましては御理解いただけるかと思うのであります。この際、すでに日米首脳がホノルルで会いましたときに、それと時を同じゅういたしまして、七月の末に箱根で行なわれました会談の成果を同時に発表したにすぎないわけでありますが、この趣旨は、日本は計画貿易をやっている国じゃございませんので、政府が食管等で買うものにつきましては政府の意思できめられますけれども、航空機の購入というような問題は、これは民間航空会社の計画と、そのイニシアチブのもとで行なわれるわけでございますので、私どもはそれをやれとかやるなとか言う立場にないわけでございまして、そういう計画があると、それは早晩考えられることであるから、この鶴見・インガソル発表というものに載せてしかるべきだという判断から掲記いたしたにすぎないものであります。しかし、いま上田委員が御指摘のように、これにからみまして、国内的にいろんなからまった問題があるようでございまして、その点は運輸当局もよく承知しているものと思うのでございますが、きょうの論議につきましては、運輸省のほうとよく御連絡をいたしまして、お打ち合わせをいたしたいと思います。
  279. 上田哲

    ○上田哲君 巷間うわさされていること、はなはだ急でありますので、時期が時期とて、ひとつ李下に冠を正さずという姿勢で御指導いただきたいということを強調しておきます。  問題を移しまして、中国に行かれるわけでありますから、これに関連して二、三お尋ねをしたいのでありますが、まあ日中国交回復、ここに二十七年断絶していた橋を渡って、スムーズに交流が行なわれていくということになれば、これは日中問題だけでなくて、いろいろなところの影響が出てくるだろう。そこで今日までそれが一つ大きなネックともなっていた感じもする貿易関係を持たない国ですね、北鮮とかキューバとか、こういうところとの貿易関係というものがどうなっていくのかということが一つ出てくるであろうと思うのです。北鮮はどうかということが一つ。遠い国でありますけれども、キューバを一つ例にとりますと、これはいま、インバランスの国というのはキューバと南アと二つしかないという特殊な関係にある。現にこれは田中総理が通産大臣時代に一ぺんこの問題について見解を表明されて、中国大陸については、ニクソン訪中によってすっかり軟化しているのだと、しかもキューバから日本は一億三千万ドル近い砂糖を買っているし、日本にとってはこれほど外貨がしっかりしている国はないのだから、国際情勢の推移もこれあり、ひとつ内容は全部戦略物資でない交易品なんだから、だんだん拡大していこうと、こういうような答弁もあるわけです。これはしかし通産大臣時代。外務省との関係というのはどうなるのかというのは、その後調整されずに終わっているわけです。しかし、この停止条件はここに解除されたと見るべきでありましようから、日中国交回復を先頭に立って田中総理がおやりになろうということになれば、こうした問題もおのずから解決をしていく時期だというように考えていいと私は思うのです。こまかい点はかまいませんが、基本的な問題として、特にこういうインバランスの国でもありますから、今後貿易関係を十分に正式に持っていない国の貿易関係を延べ払いあるいは輸銀の使用、こういう点で積極的に考えていくというかまえがおありになるかどうか、お伺いしたい。
  280. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 御承知のように、日本の国は貿易で立たなければならぬ国でございますので、資源を海外に求めなければならないし、市場を海外に開拓せなければならぬわけでございます。したがって、日本の貿易政策のあり方といたしましては、できるだけ無差別に、できるだけ平等にコマーシャルベースで貿易の拡大をはかってまいる必要があろうと思うのでございまして、相手方の政治体制のいかんにかかわらず、そうあるべき国柄であろうと私ども考えておるわけでございます。しかしながら、これはあくまで特定の国との間に、そう無理をしてバランスがとれた状態に置くということを必ずしも意味しないのでありまして、先ほど申しましたように、日本の場合は計画貿易をやっているわけではございませんので、二国間におきましては、相当なアンバランスが出る場合も、やむを得ず出てきようかと思うのでございますが、貿易全体の姿勢としては、できるだけ無差別平等でいきたいと考えております。しかしながら、政府がそういうベースでやっていく場合に、政府機関である輸銀、あるいは基金等の使用につきまして、初めて政府が干渉していくわけでございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ政治にかかわりなく、経済の原則で輸銀を活用していくべきが本筋であろうと思うのでございます。しかし、これはあくまでも原則でございまして、現実に当たった場合に、その他のいろいろな要素が働きまして、必ずしもそれが純粋に貫かれない場合が過去においてもありましたし、現に今日もなおあるわけでございます。その点について、いま上田さんの御質問は基本的な態度ということでございますので、基本的な態度といたしましては、そういう全体に無差別平等の態度で臨みたいわけでございますが、状況によりまして、ケース・バイ・ケースで判断しなきゃならぬという場合も起こり得ることは御了解を得ておきたいと思います。
  281. 上田哲

    ○上田哲君 たいへんデリケートな御答弁で、まあ大体私はわかります。わかるんですが、あまり近くのことを言うと問題になると思うので、一番遠くのことを言っているのですが、実際には九千万ドルのインバランスですよね。ですからこれくらいかたい話はないわけです。これはひとつ輸銀の使用というようなところはかなり前向きに進むんだというふうに理解してよろしいですか。
  282. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは、いまおあげになりました国ばかりでなく、ほかもずいぶん顕著なアンバランスがあるところがありまして、当事国からやかましくその是正を迫られておるところもあるわけでございます。そういうところにつきましては、長くおつき合いができるように、可能な限り配慮していくつもりでございます。
  283. 上田哲

    ○上田哲君 いまの御答弁で、非常に微妙なときですから、私はあまりこまかくは具体的に詰めないことにいたします。しかし、非常に前向きに、少なくとも田中総理の通産相時代よりもかなり具体的に前進した御発言であるというように受け取っておきます。  そこで最後に、これは幾つかに分けてお伺いしたいんだが、もう時間の関係がありますから、まとめてお伺いいたしますが、北京に行かれる。そうしてその前に、本来ならば隣にいらっしゃる防衛庁当局がとっくの昔策定することになっていたはずの四次防が、結果的には北京訪問前までには出されずに行くということになっております。これは一体、たとえば新経済社会発展計画というようなものとの関係であるのかどうか。ここで聞くのもあるいはやぼでありましょうけれども、しかし、私どもから見ると、これは、やっぱり今日、中国と国交を回復するという交渉のためには、先ほど来議論が出ております外交優先ということのためには、四次防というものの策定ということは、やはり時宜に適していないだろうという判断ではないかと理解をいたします。そういうふうにもし考えるとすると、考えたいわけですが、その関連をどういうふうにお考えになるのかということ。さらに一歩進んで言えば、日中国交回復が、総理以下北京に行かれてある種のサインも行なわれ、合意がなされた。そのあと、一体その四次防というものの策定スケジュールというものが、内容においても規模においても、このまま進んでいくと考えてしまうのか、あるいは若干の変更もこれあるべしということをお考えになるのか、この点、いろいろな角度からひとつお伺いしたいのですが、たいへんこれは味もそっけもない質問になってしまって残念だけれども、時間の関係もありますから、くみ取っていただいて、そこをひとつ外務大臣、もし付言する必要があれば防衛庁長官からも承りたいと思います。
  284. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 四次防につきましては、所管大臣お見えでございまして、私からとやかく言う性質のものではないかもしれませんけれども、私も、国防会議の一員といたしまして、いま審議に参加いたしております。防衛庁から出されました原案に基づきまして、いま御指摘の経済計画との関連でございますとか、防衛庁が考えられている構想について、いま討議が行なわれておる最中でございまして、これがどのようになっていくかということは、今後の御審議に待たなければならぬわけでございます。ただ、申し上げられることは、いま御指摘の、われわれがいま日中間の交渉に入ろうといたしておるわけでございますが、そのことと四次防の審議とは全然関係がございません。
  285. 鈴木力

    鈴木力君 大臣次の御予定があるそうですから、一言だけ、この文書の扱いについてはっきりしてもらいたいのです。それは、先ほど水口委員の質問に統一見解を出していただきました。ところが、文書が間に合わないから口頭でということで、あと文書を見たらたいへんな文書が出ておる。これはとてもこのままじゃわれわれは承認できない。文書を出しました、これが統一見解だといってこのまま済ますわけにまいらない。どの項目もそうでありますが、特に第三項目を読んでみますと、これはもう米国のものでさえあればどこへ行ってもそれが安保条約第六条ですか、第六条に該当するのだという解釈、西ドイツに持っていって使おうが、中近東に持っていって使おうが、アメリカのものでさえあれば第六条に該当する、だから差しつかえない、こういう解釈になっている。これではもういままでの大臣の御答弁とまるきり全然違うのだ。どう見たって第六条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というこの目的が、西ドイツにある米軍がこれを持っていって使うのもこの項目に該当するという文書を出されたのではたいへんなことになります。したがって、私はきょうの統一見解の扱いについては、時間もありませんからこれからやるわけにもまいりません、大臣の御日程もありますから。相当部分はこれを訂正する必要がある。もし訂正しないということになったらたいへんなことになりますから、したがって、字句等も外務省等でももう少し検討されまして、私がいま言ったように、読めるような文章に直すところは直してもらいたい。その上でこれは質問申し上げたいと思います。そういう扱いをすることを大臣お認めいただきたいと、こう思います。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 一言だけ。念のために確認しておきますけれども、日中交渉ということに向かって四次防の策定は何ら関係がない。それから日中交渉の後も四次防の策定は何ら変更を来たさないということですね。
  287. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) いま四次防につきましては審議の途中でございますので、経済計画その他の角度から検討いたしておりますけれども、日中問題との関連で議論が行なわれたことはございませんし、また、そうすべきものでもないと考えておるという趣旨を申し述べたわけでございます。  それから、いま統一見解についての御見解の御表明があったわけでございますが、これは私どもといたしましては非常に苦心してつくった見解でございまして、よく読んでいただきますと、私ども趣旨も御理解いただけるかと思うのでございますが、先ほど水口委員からも御指摘がありましたように、われわれは六条が安保条約の趣旨、本旨に基づいて運用されなければならない、運営されなければならぬということにつきまして、当然それが本体であると心得ておるし、それから大きくはずれちゃならぬと心得ておるわけでございまして、そういう在来の運営の実績にかんがみまして、それを改善の方向にどうしてもっていくかという趣旨からこういう見解をまとめてまいりました次第でございまして、もし御疑点がございますならば、また解明さしていただきたいと思うのでございますけれども、私の希望といたしましては、誠心誠意苦心して練り上げた統一見解であるということだけはひとつ御了承いただきたいと思います。
  288. 鈴木力

    鈴木力君 大臣、次の御日程があるというので、私もあまり申し上げまいと思うのですが、この第三項を読んでみると、私が言ったように、それならば西ドイツに駐留している米軍に、そこに日本から戦車を送り出したものが極東の安全と日本の安全とにどういう関係があるのか。それもいいと書いてある、ここには。
  289. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それは私は、先ほども御質問でお答え申し上げましたように、米軍内部における装備の転用と観念し得る限りにおいてあえて排除できないという趣旨のことでございまして、頭から極東以外の地域からどんどん運んできて、それが定型化された筋道、過程を通って修理されて搬出されるというようなことを許す趣旨では決してないというように御理解いただきたいと思います。
  290. 鈴木力

    鈴木力君 だから、それならその文章を直さなきゃいかぬということです、「その他の地域」ということは限定されていないのですから。したがって、あとで私も議論しますけれども、訂正の用意があると言っておいてもらえば、きょうはそれでよろしい、保留しておいてあとでやります、こういうことです。
  291. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) きょうのところは御意見を承っておきまして、私のほうでもよく検討してみます。
  292. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  293. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。本調査についての本日の質疑はこの程度といたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会      —————・—————