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1972-08-23 第69回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年八月二十三日(水曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員異動  八月二十二日     辞任         補欠選任      中村 利次君     松下 正寿君      岩間 正男君     星野  力君  八月二十三日     辞任         補欠選任      上田  哲君     神沢  浄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高田 浩運君     理 事                 内藤誉三郎君                 中山 太郎君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 源田  実君                 長屋  茂君                 足鹿  覺君                 神沢  浄君                 山崎  昇君                 峯山 昭範君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  稻葉  修君        国 務 大 臣  小山 長規君        国 務 大 臣  本名  武君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        任用局長     渡辺 哲利君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府総務副長        官       小宮山重四郎君        警察庁長官    高橋 幹夫君        警察庁警備局長  山本 鎭彦君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        外務政務次官   青木 正久君        外務省アメリカ        局長事務代理   橘  正忠君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵政務次官   山崎 五郎君        大蔵省主計局次        長        吉瀬 維哉君        農林省農政局参        事官       川田 則雄君        運輸政務次官   加藤 六月君        運輸省航空局技        術部長      金井  洋君        建設省道路局長  高橋国一郎君    参考人        元全日空機接触        事故調査委員会        委員長      山県 昌夫君        元全日空機接触        事故調査委員会        委員       瀬川 貞雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (一般職職員給与についての報告並びにそ  の改定についての勧告に関する件) ○国の防衛に関する調査  (自衛隊機全日空機に対する空中衝突事故に  関する件)  (米軍戦車輸送問題等に関する件)  (北富士演習場問題等に関する件)  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、中村利次君及び岩間正男君が委員辞任され、その補欠として松下正寿君及び星野力君がそれぞれ選任されました。  また、本日、上田哲君が委員辞任され、その補欠として神沢浄君が選任されました。     —————————————
  3. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  国の防衛に関する調査のため、本日、参考人出席を求めることとし、その人選は委員長に御一任願いたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査のうち、一般職職員給与についての報告並びにその改定についての勧告に関する件を議題といたします。  まず、人事院総裁より説明を聴取いたします。佐藤人事院総裁
  6. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 勧告後、日ならずして説明聴取機会をお与えいただきましたことに対しまして厚く感謝をいたします。  人事院は去る十五日に、国会内閣に対しまして、公務員給与改定勧告を提出いたしました。以下、その内容の概略について御説明申し上げます。  人事院は例年のとおり官民給与の正確な比較を行ないますために、一般職職員給与に関する法律適用を受けます国家公務員の全員につきまして国家公務員給与等実態調査実施いたしますとともに、企業規模百人以上、事業所規模五十人以上の全国約七千二百五十の民間事業所を抽出いたしまして、職種別民間給与実態調査実施いたしました。公務に類似する九十一職種に該当する約五十四万人について、本年四月分として支払われた給与月額等調査いたしました。右の調査結果に基づきます官民給与格差は、いわゆる春闘による遡及改定分をも加えまして一〇・六八%であることが明らかになりましたので、この格差を埋めますために給与改定を行なう必要があると認めた次第でございます。本年の給与改善につきましては俸給表重点を置きながら、諸手当についても種々配慮を加えることといたしました。  給与改定内容を申し上げますと次のとおりでございます。  まず、俸給表改善でございます。全俸給表の全等級にわたって改善を加えましたが、特に初任給及び二人世帯形成時から三人世帯形成時にかけての職員給与引き上げを中心といたしまして、中位等級以下の給与改善重点を置きました。職種別に申しますと、もちろん、それぞれの職務実態に応ずる改善を加えておりますが、小中学校教員及び看護婦等については特に配慮をいたしました。なお、准看護婦については別に運用上の優遇措置を講ずるつもりでございます。なお、初任給につきましては、民間初任給額を考慮いたしまして、一般事務技術系の場合、大学卒が五千八百円引き上げ高校卒が五千四百円引き上げということにいたしております。  次に諸手当改善でございます。その(1)といたしまして、扶養手当について民間における支給状況を考慮いたしまして、支給月額を次のとおりに引き上げることにいたしました。配偶者に対しましては現行二千二百円を二千四百円とする。子のうち二人につきましては、現行それぞれ六百円でありましたものを各人八百円といたします。母子家庭世帯主など配偶者のない職員の子のうち一人につきましては、現在千四百円のところを今回千六百円に引き上げております。  (2)として、通勤手当につきましては、民間における支給状況及び職員通勤実態を考慮いたしまして、次のとおり改定することといたしました。まず、交通機関利用者につきましては、運賃等相当額全額支給限度月額四千円といたしました。現在は二千八百円でございます。同時にまた、運賃等相当額が四千円をこえます部分についての二分の一加算限度引き上げまして、月額二千円といたしました。これに相当する額は現在千四百円でございます。次に、自転車等交通用具使用者に対しまする手当について通勤距離による区分を設けました。これはまあ今回の目玉と考えておるわけでございます。支給月額を次のとおりにいたしております。片道十キロメートル未満のものについては千円、片道十キロメートル以上のものについては千五百円。現在は御承知のとおり一律九百円でございます。ただし、交通不便地につきましては現在千四百円特別に支給しておりますが、今回それを引き上げまして千八百円といたしました。もちろん交通機関自転車等を併用する者についても同様でございます。次に、医療職俸給表(一)の適用を受けます医師歯科医師初任給調整手当についてでございますが、これは昨年、官民格差が四五%ございました。今回はまあ幸いにして少し下回りまして三二%の開きにとどまったのでございますけれども、それにしてもこれは相当な格差でございますので、今回さらに初任給調整手当の増額をいたしましてこれに対処することにしたわけでありますが、現在の支給限度額八万円を十万円に——これは最高額でございます——引き上げました。それから支給期間限度を、現在三十年というところを三十五年に延長いたしております。なお、これに伴いまして支給範囲を一部拡大するほか、初年度月額を据え置く期間を延長することを考えております。  以下は、調整額あるいは特殊勤務手当でございますが、これは勧告外措置として私どもの予定しているものでございますが、その一として、社会保険審査医に対する俸給調整額改善するつもりでおります。  次に、高等専門学校のいわゆる学寮当直に対します手当全寮制に準ずる学校教員にも支給するように措置することといたしております。  特殊勤務手当につきましては、次のような改善をすることにいたしております。まず、病棟に夜間勤務する看護婦に対する夜間看護手当、これの勤務一回当たりの額を現在三百円から三百五十円に引き上げます。次に、交代制勤務に服します通信職員税関職員航空管制官気象関係職員などに対する夜間特殊業務手当、この勤務一回当たりの額を、深夜の全部にわたる場合については三百円、現在は二百五十円、深夜の一部にわたる場合は二百円——現在は百七十円でございます——引き上げます。それから次に、航空管制機器の整備・保守業務に従事する航空管制技術官に対しても航空管制手当をこれから新たに支給するということといたしております。  なお、期末勤勉手当年間支給割合につきましては、調査いたしました結果、民間均衡が保たれておることが明らかとなりましたので、これは現行のままといたしております。  かくして、以上のうち、官民給与比較基礎となる給与についての改善は、俸給で九・三五%、諸手当で〇・七四%、その他で〇・五九%、計一〇・六八%、こうなります。一〇・六八%を金額に直しますと、平均八千九百七円ということに相なります。  次は、検討事項等でございますが、国立の高等学校教員等に支給されております産業教育手当及び定時制通信教育手当というのがございますが、これに関しましては、本年一月から実施されました教職調整額との関連もございまして、これらの手当についても、制度上、本院の勧告対象事項として明らかにされることが適当であると考えておりますので、これは別途その旨の意見の申し出を行なうことを子定しております。  次に、俸給調整額につきまして、これは昭和三十二年に現行制度に改められたものでございますが、その算定基礎となる給与の水準、これが近年において著しい上昇を示しておりますし、その他この制度をめぐる諸事情に顕著な変化が生じておりますので、その適正化について根本的に検討する必要があると考えております。  なお、本年、給与調査に関連いたしまして、民間における勤務時間及び週休制度実態調査したのでございますが、これらの勤務条件については官民の間に見るべき差異のないことが明らかとなりました。しかし、本院としては、これらの問題について今後の情勢の推移にも留意しつつ、なお検討を続ける必要があるものと考えております。  以上のほか、説明書等には書いておりませんが、期末勤勉手当について次のように措置することを考えております。  その一つは、昨年行ないました算定基礎額加算措置につきまして、なお民間年間給与との均衡問題等が残っておりますので、その適用範囲を一部拡大するとともに、これに伴って加算割合法律に定める限度内で若干改めたいと思っております。  その二は、勤勉手当期間、率の算定にあたりましては、職員が許可を受けて職員団体業務に短期従事する期間は除算の対象としないように措置したいと考えております。  終わりに、給与改定実施時期につきましては、民間事業所の約七〇%において給与改定が四月から行なわれるに至っている実情もございますし、本院において種々検討を重ねました結果、四月一日とすることといたしました。  なお、人事院としては、昭和三十二年に給与制度の大改正をなされまして以来すでに十五年を経ておることでもございます。今回の四月実施機会に、今後、給与体系その他給与制度の全般にわたって、その基本的検討に取り組んでまいりたい心組みでおります。  以上で御説明を終わりますが、人事院といたしましては、本勧告勧告どおりすみやかに実施されますよう念願する次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  7. 高田浩運

    委員長高田浩運君) これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 山崎昇

    山崎昇君 いま人事院から昭和四十七年の、国家公務員に対する人事院勧告内容について説明がありました。後ほどこまかに聞いてみたいと思いますが、その前に、文部大臣がたいへん忙しいようでありますから、文部大臣に一、二点お伺いをしたいと思います。  その一つは、給与研究調査会というのが文部省にあるようでありますが、この構成の内容と、一体どういうことを検討されているのか、説明を願いたい。なお、その際に、この中に人事院給与局長がどうも委員として入るようでありますが、一体文部省で行なう給与研究人事院関係について、どうこれまた判断されているのかが第一点。  時間の都合で重ねてお聞きしますが、第二点は、教頭職賃金の問題については先般の委員会でもかなり鈴木委員のほうから触れられた点でありますが、これは目下教頭職なんというものは法制的にも何にもない。そういうものについて単なる規則だけで設けて、それに伴う賃金体系を変えようということは少し行き過ぎではないかと思いますが、それについての見解を聞いておきたい。  それから第三点は、先般の委員会で、教員待遇するためには、戦前は兵役免除があったが、いまはなくなった、そこで納税義務免除したいのだ、こういう大臣答弁がありまして、翌日のテレビでも盛んにあなたはこの点を強調しておられました。そこで、それ以来かれこれ三週間近くかかっているわけなんですが、一体この教員所得納税義務免除するということは具体的にどういうことを検討されているのか。  まずこの三点からお聞きしておきたい。
  9. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 第一の御質問は、教員等待遇改善研究調査会文部省に設けたわけは、教育界に優秀な人材を誘致するために、教員資質向上の諸施策と相まって教員給与等の抜本的な改善をはかることが必要であると私は考えました。教員待遇改善のため諸施策について各界有識者意見を徴し、その指針を得るためこれを設けた次第であります。委員は十七名でありますが、教育関係者のほか産業界言論界地方行政関係者及び給与問題専門家などによって構成されております。今後、審議状況において委員を増員したり専門委員を委嘱することもございます。待遇改善の問題の審議は相当長期間を要するとは思われますが、この問題の解決は一日もゆるがせにできないことであり、事柄によっては当面着手すべきものもあると考えられますので、調査会の御意見が特定の問題をとらえて出た場合には随時、文教行政施策に反映さしてまいりたいと考えております。この調査会意見を徴し結論を得たものにつきまして、人事院に対し文部省として要望し、その実現をはかりたいと考えるわけであります。人事院給与局長の参加を願っているのは、人事院中立機関としての立場を考慮し、研究調査会結論に拘束されるというのではありません、給与問題の専門家としていろいろな御意見を徴しておくことはたいへんに参考になると、こう思います観点から調査会に参加していただくこととしたものでありまして、研究調査会委員諸君におかれましてもこの点は了承されておるわけであります。たいへんに都合がいいことだと、こういうふうに了承されていることであります。  第二の御質問は、教頭等のために新等級を設けるよう人事院に申し入れをしているが、これはどういうことかという御質問でありますが、法制上ないと言われますけれども学校教育法施行規則の中にはございまして、二十二条だったと思いますが、お読みになっていただければ、全然、法制上全く皆無であるというふうには考えておりません、私は。「教頭は、校長を助け、校務を整理する。」という学校運営上の重責をになっておりますので、その勤務困難性多様性複雑性ということにかんがみ、それに相応する処遇を与えるため等級を設け、その処遇改善すべきであると考えさき人事院に対し、その趣旨実現方について要望したところであります。教頭のほかに教務主任、それから生徒指導主任等においても、それぞれいろいろな、学級担任職務以外に、教育課程編成であるとか教育指導計画、時間割りの編成その他多数の勤務を余分に持っておりますので、その余分の勤務に対し処遇を、等級上上げて待遇するということを、人事院に対し、その趣旨実現方について要望したところであります。なお、この問題は、さきに発足した教員等待遇改善研究調査会において十分調査研究していただく予定であります。  第三に、優秀な教員を確保するため納税免除というようなことを言うているが、一体どういうことかという御質問でありますが、優秀な教員を確保するためには、教員給与面のみならず、社会がこれに対して一般風潮として尊敬の念を持ち、かつ、これに感謝の意を持つような風潮を私は醸成する必要がある、尊敬する風潮社会に醸成されることは望ましいと私は考えますもんですから、給与面のみならず、その他の処遇改善についてもできるだけ手厚い配慮をすべきであると思いまして、そのためには、税制面においても、他の職種にも所得額算定の特例や、その他所得控除等制度があることでもありますので、義務教育学校教員については、教員給与にかかる所得税免除等、思い切った措置を講じてはどうか。また、その他の学校教員についても、これに準じた特別の措置を講じてはどうかと考えまして、現在検討中でございます。成案を得次第、関係機関との連絡をとって努力をしてまいりたいと、こういうのが目下の私の考えでございまして、具体的にどうするこうするということの、いま明確な具体案を申し上げる段階になっていないことをはなはだ遺憾に思う次第でございます。
  10. 山崎昇

    山崎昇君 いま大臣から答弁ありまして、私はこれはあらためてあなたにお聞きしますが、きょうこれやっておったんでは時間がなくなりますから、重ねてあなたの意見を聞いてやめておきたいと思うのですが、第一点の給与研究会、私は、人事院というのは中立機関であるから専門家をときどき呼んで意見を聞くのはよいと思う。だが、委員に入れては、拘束されないといえども給与研究会結論人事院の方針と違ったときに、これを担当する給与局長はどうしますか。私はまずこれが一つふしぎである。だから、中立機関ならばよけい入れるべきではないと私は思う。それから、もう一つ言うならば、十七名の委員だそうでありますが、それじゃ、この給与を変えられる大衆の代表である日教組一体代表はどうなのか。そういう者は全然顧みられないで、まるっきり違った者だけで委員会を構成して、そうしてこれが給与研究会だと称してやるのは、私はおかしいのではないか。だから、そういう意味で言うならば、各界の中には当然組合代表者委員として入るべきではないのか。こういう見解を持ちますが、どうですか。  それから、第二の、教頭職、いまあなたは施行規則にあるという。しかし、法的には何の根拠もないのに、何で施行規則でやるのか。私は、そこにまず法律的に疑問を持っています。しかし、一歩譲って、あなたの答弁をかりに了承したとしても、それなら、施行規則にあるものを、何でこの間の国会等から、法律改正までやってこれをやろうとするのか、どういうそれじゃ理屈づけがあるのだろうか。一体教頭職というのはそれほどやらなければならぬものかどうか。これが第二の疑問として残るのであります。  第三は、あなたはこの間、明確に、納税義務免除と言った。これは、所得控除引き上げるのだとか、それからたとえば例で申し上げれば医者は必要経費として七二%免除している、そういうこととは違うと思うのですね、あなたの、この間の言われたことは。私は、これね、兵役と並ぶ義務免除をするのですから、たいへんなことだと思うのですよ。もう一度しっかりした答弁を願いたい。  それから、いまあなた、具体案ないことはまことに遺憾だと言う。しかし、もう三週間たって何も具体的に検討されないで、大臣の抱負かアドバルーンかどうか知りませんが、ばっと上げたきりで何も進まないということは一体どういうことなのか。  それから、これに関連して私は大蔵省見解を聞いておきますが、文部省ではいま納税義務免除したいと、こう言う。これを受けて、もしそういうものが出てきた場合に大蔵省はどうしますか。私は、これは税制体系にかなりな影響を及ぼしてくる、ある意味で言うならば、根本的な改正をしなければできないことだ、へたまごつけば憲法の改正すら内容的には含んでくるのじゃないかと思うのですが、一体大蔵省としてはこれに対してどういう見解を持つのか、あわせてこの機会に聞いておきたい。
  11. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 待遇改善研究調査会中立機関である人事院給与局長が入っているとするのはおかしいと、この間からの重ねての御質問ですが、研究調査会結論は決して人事院を拘束するものではありません。人事院勧告参考に供したいというわけでありますから、その参考資料をつくるに専門家の一番詳しいそういう人がそれに入っておって、意見を聞かれてこれに答えるということは、調査会結論を早く出すという意味においても、待遇改善を早くやりたいと思うものですから、そういう点においても非常に便利であるという考えで、決して人事院給与に関する中立性を侵すなどという大それた、そういう野蚕な考えは持っておりません。  日本教職員組合代表者を入れろ、それももっともな話でありますけれども、これを入れるとしますと、いろいろの団体があるものですから、委員の数が非常に多くなりまして——そういうこと。それから具体的には、この前も槇枝委員長の御意見をよく拝聴して、それが書面できておりますから、それは研究調査会に貴重な資料として提出します。十分に日教組給与改善に関する意見調査会に反映するものと思います。  それから教頭職は校長事故ある場合はこれを代理すると、大ざっぱに。それですから管理職である、本来。本来管理職である、こういうふうに思いまして、ILO八十七号条約批准の際にもこれは問題になりました。これは管理職だから、労使一対等、相互不介入の原則というILO条約の規定からいって、当然組合から離脱することになっております。そういう地位にあります者は施行規則にありますけれども、これを法律引き上げて、より明確にしたほうが教育行政秩序学校管理秩序からいって、非常に効果的なことだというふうに私ども考えます。組合のほうからは、そういう管理が強化されると組合が弱体化するという反対もありますけれども管理職は指揮命令のみならず、よくその学校職員の融和をはかったり、それから家庭に病人でもあれば早く帰りなさいと言って、そういう配慮をしたり、世話役でもある。世話役は校長一人よりは、教頭教務主任、そういう中級管理職も世話役はたくさんあったほうが行き届くのではないかというようなことも一面あるわけでありまして、決して不当な政育支配をやるなどという、そういう大それた考えは毛頭ありません。  第三に税制のことでありますが、昭和四十八年度税制改正については、予算編成の際に大蔵省に要望すべき事項を相当省議できめておりますが、全然やっていないわけではありません。これはたいへんなことだと、兵役免除にも匹敵するような税制免除をやるということはえらいことだぜとおっしゃいますが、そのとおりであります。えらいことをやろうというのであります、教員はそこまで大事だから。えらいことをやろうという。それで、いまのところ教育公務員全部について、教員全部についてその所得額の全額について免除をするというのは少し行き過ぎだというような懸念もこれあり、当面、義務教育学校教員については教員給与にかかる所得免除をやりたいと。あなたは、先ほど、所得控除額の何とかだけで考えて、この間鈴木さんに答えたことと違うじゃないかというような御質問でありましたが、違わないんです。義務教育学校教員については所得額について所得免除措置を講じたいと、こう、さっきお答えしたんです。  その他、先ほどいろいろあげましたような、たとえば控除の引き上げとか、そういう点について、いろいろ税制上の優遇措置を講じたい。単に教員のみならず、勤労学生だとか、その他についても、教育上いろいろ税制上改正を要望する事項はたくさんあるのですが、それは質問事項以外ですから、お答え申し上げません。
  12. 山崎五郎

    説明員山崎五郎君) お答えいたします。  ただいま文部大臣からお答えがありましたが、大蔵省といたしましては、私、寡聞にして、まだそのお話、きょうここで初めて聞くわけですが、事務的にも連絡がまだないようであります。先ほど山崎先生御指摘のように、税制の根本的な問題でありますので、非常にこれは重要な問題と思います。控除額の引き上げとは全然違う性格のものと思います。でありますので、教員給与の非課税という問題が、もしこれから文部省から要望があれば、慎重に検討しなければならないと思いますけれども、私、現在のところ、非常に困難な問題ではなかろうかと、こういうふうに思います。  以上でお答えといたします。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 関連ですから端的にお伺いしますが、第一の、人事院給与局長が入るということは、どんなに弁解しても、委員として任命をされてその委員会に入って、ある特定の委員だけが責任を持たないという説明は、これは絶対説明にはならない。こういう点は、私は、今日の給与制度を乱すおそれが相当ある、そういう点から、この点についてはやはり検討を願いたいと思います。これは要望を申し上げておきます、時間がありませんから。  それから第二番目の教頭給与制度の問題ですね。この前八月三日に、私がずいぶん時間をとって、一体いまの学校における教頭なり校長なり管理職の責任とは何かということを申し上げたはずであります。教育責任ということと管理責任ということを、これを混同して給与引き上げようとすることが管理体制の強化ということを言われることなんで、私はこの際文部大臣にお伺いしたいのは、いまの六三制の教育制度、行政制度の中に、管理行政と指導行政とをはっきりと明分してあるはずです。この管理行政と指導行政を明分をしてあるその根本的な思想がどこから来たかということをもう一度考え直していただきたい。そういういまの教育制度の根本の思想を、何か思いつきで、責任が重いとかどうとか言いふらしておいて、給与体系のほうからこれを変えていくということは、きわめて重要な問題を含んでおります。それだけではなしに、この管理行政と指導行政が、いま教育委員会系統のほうでも非常に混乱をしておる。持ち分がめちゃめちゃになっておって、いろいろな問題を起こしております。だから、これはいまの制度がスタートしたときの根本の精神に戻って再検討すべきである。これだけのことを申し上げておきます。時間がありませんから、御答弁をいただかないで、課題にしておいていただきたい。  それから三番目の、納税義務免除は、この一々については申し上げませんが、いま大蔵省の政務次官が申されましたように非常にむずかしい問題で、大臣は、教師を尊敬される地位にしたい、この気持ちは私はよく理解できますし、また、本気であれば、きわめていいことを大臣はおっしゃると、こう思います。ただ、私はその前に、尊敬をされるという立場からも、教育職員の旅費を規定どおり払ったらどうかということを申し上げたはずです。大臣からは払うようにすると御答弁をいただいておるはずです。他の職種が規定どおりの旅費をもらっておるのに、教育職員だけが規定以下の旅費で、そして、他の職種がグリーン車のグリーン券をもらっておるのに、教育職員だけがグリーン券の旅費をもらえないで打ち切られておる、こういう姿にほうっておいて、できそうもないような納税義務免除なんということを言い、尊敬される教員などと言っておるところが私は納得できない。そこで、この前に私は質問申し上げました。旅費を全額払うようにしますと、実行型内閣大臣として大みえを切られた。ことし一体どれだけの予算を計上すれば全額支払いができるかという計算ができておるのかどうか、そして概算要求としてどれだけ出そうとしておるのか、そこもやらないで、納税義務免除なんて言ったってだめなんです。まず、やれることからやれと私は言ったんですが、どうですか、その点。
  14. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 税制の問題はきわめて重要な問題でありますので、これは各政党の政策審議会等でも御検討を願いたいと思いますが、政府与党たる自由民主党政務調査会におきましては、鋭意検討を進めまして、全部というのはあれだから、義務教育教員のほうから所得額免除しようと、税制調査会でも、文教制度調査会でも、ただいまそれを詰めておるという段階でありまして、決して文部大臣が突っ走って、思いつきをぼんぼんアドバルーンみたいなもので花火を上げて、さあやれというような性質のものではありません。まじめにやっておるわけでございます。ですから、それが煮詰まってきたら、当然、文部大臣と大蔵大臣が協議するという時期がやがて近く来るでしょう。  それから旅費の問題につきましてきわめて適切な御指導をこの間ちょうだいいたしまして、さっそく概算要求の省議の際に、四二%アップの要望を大蔵省に出して、これは大臣折衝までもがんばるつもりです。当然全額支給しなければならぬという措置を講じましたが、これから財政当局と折衝の段階でしっかりやらなければいかぬ、あなたのお説はまことにごもっともで、いままでそういう状態にあったのは非常に責任を感じますので、誠意を持って是正していきたい、必ずこれはがんばらなければいかぬという固い決意を持っておる次第でございます。御了承を賜わりたいと思います。
  15. 山崎昇

    山崎昇君 文部大臣、けっこうです。  それでは総務長官にお尋ねいたします。  まず一点は、おとついの次官会議で、何か、二十五日の閣議決定でこの人事院勧告の取り扱いをきめるというような報道がなされておりますが、二十五日の閣議で勧告どおり実施するという閣議決定をなされるのかどうか、まずお聞きしたい。
  16. 本名武

    国務大臣(本名武君) ちょっと経過を申し上げますと、先ほど総裁から御報告、御説明ありましたとおり、私どもとしては、今回の人事院のお出しになった御勧告に対しては、まことに適切な、しかも公正なお立場で、たいへんりっぱな勧告をいただいたと承知いたして、これを前提にいたしまして、十五日に御勧告を受け取りましてから直ちに関係閣僚会議を開きまして、そのときに、いま御指摘の二十五日のお話が出たわけでございます。それは、この勧告を完全実施するという方向で、当面する、たとえば自治省等の関係もございますので、財政当局において事務的な、基礎的な打ち合わせをして、時間を見計らってみますと、大体どんなにおそくとも二十五日には閣議決定に持ち込めるじゃないか、したがって、私としては、閣議におきましては、この関係閣僚会議の意を体して、完全実施の方向で二十五日に閣議決定をいたしたい、まあこういうふうに一応お取りきめをいたしたわけでございます。
  17. 山崎昇

    山崎昇君 その点は了解をしておきたいと思います。  それから第二に長官に聞きたいのは、国務大臣の発言というものはきわめて、何といいますか、不安だといいますか、あまり信用できないといいますか、ということは、八月三日のこの委員会で、あなたは、できれば十月ぐらいには臨時国会を開きたいという答弁をなされた。ところが、今月の十九日に、あなたが帯広へ戻られて、臨時国会の年内召集はない、年内解散もない、そういう記者会見をしたという報道がなされている。一体あなたの本旨というのはどこにあるのか。国会では、やりたいと思う、選挙区に帰れば、そんなことやりませんと言う。私ども一体、新聞報道を信用していいのか、この委員会であなたが答弁されたことを信用していいのか。大臣の発言というものはもう少し重要でないかと私は思っておったんだが、この新聞報道を見て懐疑的にならざるを得ない。したがつて、私はその真意を伺いたのが一つと、それから、きのうの夕刊によりますというと、四党の国対委員長会談で、臨時国会の召集がどうやら意見一致したようですね。そうすれば、あなたが八月三日の委員会答弁されたように、十月にはもう臨時国会は必至だと私は思うんだが、重ねて臨時国会についてのあなたの見解を聞いておきたいと思う。
  18. 本名武

    国務大臣(本名武君) 私、実は十九日の新聞報道を、たいへん申しわけございませんが、拝見しておりませんが、年内に臨時国会は開かないという政府の方針であるということを言ったことは間違いございません。しかし、前回のこの委員会におきまして申し上げましたのも、私は同様のことを前段に申し上げたつもりでおります。政府としては臨時国会は開かない、しかし、給与につきましては、特に勧告を完全実施すると同時に、給与の支給の時期につきましては、やはり年内に支給しなければならないと思うが、もし十二月に通常国会を開催する、その時期を早められるならば通常国会を早めて、この勧告実施措置をいたしたい、こういう意味で申し上げました。ところが、実はそのときに、さらに、それでは間に合わないんではないか、問に合わなかったらどうするんだ、一体おまえの気持ちはどうなんだというお尋ねがありましたので、私としては、政府の方針は臨時国会は開かないということになっているが、私個人としては、この給与支給を完全に年内に実施するためには十月ころに開くことが適切であろうと思いますと、こういうふうに申し上げたんですが、依然として、私は、やはり十二月に完全に支給できるような体制をとるために、十二月支給可能な手続が完了するように国会の開催をお願いいたしたいということは、その後も引き続き総理には申し入れをいたしてあります。そういう意味で、実は十九日の新聞報道は見ておりませんけれども、それと同じ意味のことを申し上げたんですが、たまたま臨時国会を開くという点だけの新聞の御指摘があって、そういう誤解を招いたことは、はなはだ残念に思っております。
  19. 山崎昇

    山崎昇君 ですから、あなたが見てないというなら、見せてもいいですよ。しかし、そんなことをいま私はあれこれ言うんではないけれども、少なくとも、あなたは総務長官として、公務員給与その他を考えたときに、個人の見解であっても、臨時国会が必要だということをあなたは認めた、ここで認めたんです。ただ、内閣全体としては、あなたの言う、そういう方向であったことは私も承知しておる。しかし、あなた自身は認めた。しかし、選挙区へ帰ってのあなたの記者会見の答弁というのは、そうじゃない。いまあなたは遺憾だったと……。そんなら、私個人としてはと、この委員会答弁したようなことをつけ加えて言われるなら、まだ私はいいと思いますよ。それがないんだ、あなたには。ですから、やっぱり大臣というものはもう少しそういう点を慎重にやってもらいませんと、私どもは、当時私も北海道におりましたけれども、新聞報道しか知る由がありません。だから、いまあなたの真意を聞いたわけです。しかし、いずれにしても、きのう、いま申し上げたように、四党の国対委員長会談では臨時国会を開くことに合意したと報道されておる。だから、それを受けてあなたは一体どうされるのかということを重ねて聞いおるわけです。  それから、私は議運委員でもありますから、いろいろ調べておりますが、十二月を早めると言ったって、国会法の二条では早めようがないんです。どんなに早めたって十二月一日より早めることはできない。そうして、いままでの例から言えば、第三十一回の国会では十二月の十日に召集されておる。四十回の通常国会は三十六年の十二月九日に召集されておる。しかし、これはいずれも、その前に臨時国会があって、通常国会が早められて引き継がれておる。ですから、そういう今日までの国会の運営から見ても、臨時国会をやらないということは私はおかしいと思っておったんだが、幸い、きのう四党国対委員長会談できまったようでありますから、当然、これは政府が受けて臨時国会に臨む態度をきめてくると思うんだけれども、あらためてあなたの見解を聞いておきたい。
  20. 本名武

    国務大臣(本名武君) いま御指摘の昨日の四党国対委員長会談におけるお話が、実は新聞で拝見いたしまして、私まだ連絡は受けておりませんが、そのことと関連いたしまして御指摘ありました通常国会はつとめて早く開いていただきたいということを総理に申し入れをすることは、やはり十二月に支給可能である時期を予定して早く開いていただきたいということでありまして もしかりに通念的に十二月末に通常国会が開催ということになりますと、私が申し上げた十二月支給ということが不可能になるおそれが多分にございますので、そのときは、あらためて、その臨時国会を開いてくれという申し入れをいたそうと思っておりますけれども、いまのところ、通常国会を何日に開くということもまだ決定いたしておりませんが、いずれにしても、目的は支給を十二月に完了可能にするということを前提にして国会を召集していただきたいということで、総理大臣にも申し入れをいたしております。ただ問題は、先般、私は十月に臨時国会を開くということを申し上げたのではなく、おまえがもし十二月、間に合わないときには一体いつの時期が適当かというお尋ねがありましたから、できることならば十月が適当であろうと思うというふうに申し上げたわけでありまして、一番のねらいである給与支給が年内に完了するという意味から、私は、十二月冒頭に通常国会、あるいは臨時国会でも、結局支給は可能であるという見通しに立って、ぜひ十二月早々にこの問題が処理される国会を期待して総理大臣に申し入れをいたしておるということであるわけでございます。
  21. 山崎昇

    山崎昇君 この問題はこれ以上私やりませんが、そこで、総務長官に私は一つ要望しておきますが、あなたは盛んに年内支給——なるほど国家公務員はそれで間に合うかもしれない。しかし、地方公務員は約二百六十万もおるが、従来の臨時国会の例でいきましても大半の町村は翌年回しになっておる。ですから、あなたの年内支給という頭の中には地方公務員の分もひとつ含めてこれは配慮してもらいたい。このことを要望しておきます。  重ねて長官に聞いておきますが、およそ二十五日の閣議決定でなるでしょう。そして、きのうの四党国対委員長会談では十月中ぐらいと、こういいますので、いずれ臨時国会に出てくる、そのときには給与法案も私は出されてくると思うんだが、そこで一つ問題になりますことは、定員外職員の諸君の給与改定一体どうなりますか、これについて、総務長官の見解、あわせて大蔵省見解も聞いておきたい。
  22. 本名武

    国務大臣(本名武君) 定員外職員につきましては、私、不敏にして十分なことは承知いたしませんけれども、ただいま承知いたしておりますところでは、法制上に規定された給与関係でない扱いがなされているように思われるわけであります。したがつて、関係各省庁におきまして、それぞれの予算の範囲内において支給されていることでありまして、私のほうからどうする、こうするということをお指図申し上げる内容のものであるかどうかということについて、いささか疑問を持っております。と同時に、もし定員外職員について適正な、しかも制度として支給するかどうかという問題になりますれば、これは人事院のお立場において検討いただいて、その御勧告なり御決定によつて政府は対処していくべきであろうと思いますが、いずれにいたしましても、たいへんむずかしい問題のように思われますので、さらに一そう私自身も検討いたしてまいりたいと考えております。
  23. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 定員外職員につきましては、たとえば非常勤職員、これにつきましては、御承知のとおり、一般職給与表とか特別職の給与表のそれぞれの条文に基づきまして、最高限度額が定められております。現在九千円というところが現行でございまして、これも去年は八千三百円であったのが九千円にしてきておるという形で来ておりまして、今回も人事院勧告趣旨を生かしまして、またその均衡をはかりながらきめてまいりたい。そのほかに相当多数の、たとえばアルバイト職員等がございますが、これは予算で単価をきめておりまして、最近の人件費の高騰等も反映いたしまして、毎年相当の率のベースアップをはかってきております。今年度の予算におきましても、最近の情勢を入れまして、上昇を実施したわけでございますが、来年度もさらにその点につきまして検討を重ねていきたいと、こう考えております。
  24. 山崎昇

    山崎昇君 定員外職員については、常勤的な者もおれば、非常勤もおれば、さまざまですね。しかし、これはいつでも工事雑費等でやられるものだから、翌年回しになっておりまして、同じ働いているわけですから、私はやっぱり最大の配慮をしてもらいたい。  そこで、重ねてお尋ねしますが、農林、運輸、建設の三省で、公共工事設計労務単価表というのが出されている。これは何か秘密でありまして、私ども手に入らないんだが、これによりますと、上下二〇%ぐらいの幅を持っているようですね。ですから、私は、そういうことを聞けば、当然、いまの予算の範囲内でも一般職給与が変わると同時に、あなた方がやろうと思えば改定できるんじゃないかと思うんだが、これはひとつ私は資料でもらいたいと思っておりますが、あらためてまたあとで委員長を通じて資料としてお願いしますが、そういう単価表があることですから、当然、定員外職員の分についてもひとつ配慮してもらいたい、このことは強く要望しておきたいと思うんです。  そこで、重ねて大蔵に二、三聞いておきたいんですが、今度の人事院勧告一体どのくらいの追加財源が要るんだろうか、それから大蔵としては、いまの段階として、この追加財源というのをどういう処置でやっていこうとしているのか、それが一つ。  それから二つ目は、私は前の委員会で、旅費法の改正について、当時福田大蔵大臣であったんですが、四年に一ぺんぐらいしかやられてない。これはおかしいから、私の希望としては二年に一ぺんぐらいやってもらいたい、そういう意見を出しまして、当時の大蔵大臣はできるだけ要望に沿うようにしたいと思うという、必ずしもやるとは言っておりませんでしたが、答弁がありました。そこで、いまの旅費法が改正になりましてから、もう三年ぐらいになるわけですが、一体大蔵省は旅費の改正を行なう用意があるかどうか、これが第二。  第三は、共済年金の実情について一、二点聞いておきたい。第一は、これはいま答えられれば答えてほしいが、答えられなければ後ほど資料としてもらいたいのですが、職種別、それから等級別に普通退職年金でけっこうでありますが、平均の支給率、それからその支給率をきめたときの平均の俸給額、それからさらに平均受給年限、一体やめられてどのくらいの期間年金というものをもらっているのか。その次には、本人が死にますというと遺族年金に変わりますが、一体この遺族年金は何年ぐらい平均支給されているのか。このことについて、いま概略でも答弁できれば答弁願いたいが、もしできなければ、これは資料として後ほどもらいたい。  それからその次にお聞きをしておきたいのは、退職手当について、たしか——私はきょう資料を持ってきておりませんが、去年の三月ごろと記憶しているのですが、大蔵省は、退職手当所得税の控除額を大幅に引き上げたい、こういう発表がありまして、当時サラリーマンとしては、たいへん大蔵省はいいことをやるのじゃないか、こういう希望をつないだことがありますが、一体この退職手当所得税の控除はその後どうなっているのか。これは今度の五千億円減税とも関連するかもしれませんが、それとは一応切り離して、すでに大蔵省から出された問題でありますから、この機会にお尋ねしておきたいと思うのです。  以上です。
  25. 山崎五郎

    説明員山崎五郎君) 今回の勧告に基づきまして、給与改定の所要額は、一般会計で約二千三百億円、特別会計が四百八十億円で、合わせて二千七百八十億円となりますが、この重複分を差し引きますと、純計が約二千四百二十億円となります。一般会計の所要額二千三百億円のうち、すでに予算措置されておる額は九百十八億円でありますので、約千三百八十億円の財源を必要といたします。この所要額をまかなうための財源対策としては、現況では自然増収にのみ期待することもむずかしく、予備費については各般の財政需要が非常に大きいので、これにのみたよるわけにもいきませんので、極力不用不急経費の節減等を行なう必要もあると思いますが、節約にもおのずから限度があるので、この給与改善をまかなう財源は非常に窮屈であるということは言えると思います。が、しかし、大蔵省としては勧告の完全実施のたてまえから鋭意財源の捻出を目下検討中でございます。  次に、旅費その他の問題につきましては担当局長からお答えさせますが、退職手当の控除額の引き上げについてどう考えておるかというお尋ねについてお答えいたします。  退職所得の控除額については、昭和四十二年に税制改正を行なった際に定年退職者の平均的な退職所得の水準程度まで大幅に引き上げたことは御承知のとおりと思いますが、それ以後据え置かれているのも御指摘のとおりでございます。昨年の八月に、税制調査会の長期答申の中に、その後における平均的な退職所得の水準や物価水準の上昇を考慮すれば、これに見合って直すべきだということの答申が出ておるのでございますので、昭和四十八年度の税制改正の一環として、ぜひその答申を実現いたしたく目下検討中でございます。  その他の問題につきましては担当局長から御説明させます。
  26. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 旅費法の改正でございますが、内国旅費につきましては従来四年くらいのサイクルで改正しております。また外国旅費につきましては三年ないし四年というようなところで、最近は四十五年に御承知のように改正が行なわれているわけでございます。内国旅費の改正につきましては、またそういう従来のサイクルから見ますと、まだちょっと時期が早いように思われますけれども、いろいろ御指摘のような点がございまして、現在移転料と宿泊料の実態調査実施しております。九月の中旬ごろにはその結果がわかると思いますが、その結果を待ちまして所要の改正措置をとりたい、こう考えております。  また、外国旅費については、実は円切り上げも実施されまして、実際価値が相当上昇してきているという面もございまして、まだ現在実態的にも改正の時期ではないんじゃないか、こう考えておるのでございます。  次に、共済年金に関することでございますが、全部網羅しておりませんのであとで出したいと思いますが、概要を申し上げますと、職種別には出ておりませんが、現在の平均支給率、これは六〇%程度となっております。それから平均の受給年限でございますが、これは推定が入りますが、新規の受給者の平均年齢は五十八歳、余命等から推定いたしますと、十七年くらいが平均受給年限じゃなかろうか。遺族年金につきましても、遺族年金受給者の受給の開始のときの年齢が五十歳、こういうところから大体二十七年ぐらいじゃなかろうか、こう思っております。  それから、最近の四十六年の新規発生の退職年金新法の基礎俸給月額でございますが、私ども調査をいたしますと、おおむね八万二千円ということになります。なお、職種別等いまそろっていないので、たいへん恐縮でございますが、あとで提出いたします。
  27. 山崎昇

    山崎昇君 旅費については、内国旅費はただいま調査中で九月ごろ結果が出そうだ、それによつては改正のこともあり得るんだと、こういうふうに私は理解をしておきたいと思うんですが、ですから重ねて言えば、ぜひ一般給与法と同じように、今度の臨時国会等改正案が出せるように大蔵省としては努力していただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  それで、だいぶ時間がなくなりましたが、人事院にお尋ねいたします。この勧告一般的な理論めいたものについては、また別な機会に私は質問したいと思うんですが、きょうは少しこまかでありますが、わからぬ点がたくさんありますので、お聞きをしておきたいと思います。  第一に、全くこれは遺憾だと思うのですが、八月の十三日の読売新聞にかなり詳細に出されました。そして十五日に出たこの勧告を見ますと、大体そのとおりである。この委員会で私ども聞いたときには、あなた方何も言わなかった。方向すら示さなかった。こういうことを私は考えますと、これは報道機関は報道機関なりに努力をされていろいろやったと思うんだが、あの内容から見ると、かなり、あなたのほうで言わない限りわからぬような内容がかなりある、こういうことを考えるとき、私はどうしてああいう事態になったのか、一ぺん人事院に私は釈明を聞いておきたいと思う。そうしませんと、幾ら私どもこういうところであなた方にお尋ねしても、全く何も言わぬ、そういう態度について私は納得できませんので、この新聞報道と人事院の態度について、ひとつ総裁から釈明があれば釈明として聞いておきたい。私はまことに遺憾だと思うんですが、どうですか。
  28. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 御承知のように、勧告の前になりますというと、例年、各社競っていろいろな推測記事をお書きになる。パーセンテージのごときは、必ずしも当たらないもありますし、当たったものもこれはあります。あるいは各社一致して一つの線で統一的な予測を述べられることもあります。これは例年の例でございまして、最近では給与関係のエキスパートが相当方々に出てまいりまして、予測というものもなかなかうがった予測をする向きがふえてきた。これは組合関係でもそうです。別に組合を疑って申し上げるわけではありませんけれども、もうみな賃金専門家というのがおられまして、非常に詳しく勉強されているということが事実であります。私どもは予測が予測として出ることは、これは何もわがほうとして何ともいたしかたないことでございますし、それはそれとして見守って、むしろ興味を持って拝見しているというようなことが率直な申し上げ方かと思いますが、今度の場合は、小さいところでちかぢかと当たっているところがある。ところが、幸いにして今度の場合、これも推測の非常にやさしい問題だけであったわけです。一番われわれの目玉としておるような、たとえば通勤手当の問題で言えば距離別段階制というようなものがこれはたいへんな目玉だったわけですが、こういうところはちっとも出ておらない。扶養手当の二百円増しというようなこと、あるいはまた通勤手当一般の扱いは、これ大体民間では免税点そこそこまで毎年上げておられるのが普通でありますから、そういう点では推測が可能であるということで、われわれとしてはそういうふうな考え方で見ておりますけれども、いま山崎委員がおっしゃいますように、それはおかしいじゃないかという疑いを抱かれる向きもこれはあり得るわけです。したがって、われわれも、われわれとしてそういう点については十分に考慮して気をつけていかなければならぬ。例の外務省事件以来、官庁に機密が多過ぎるという声がほうはいと世間に起こりまして、どこの省はまだ機密事項がこれだけ残っているというようなこともありまして、私どものほうも、実は従来の勧告の案文というものは極秘の扱いをしておりましたけれども、これは取り扱い注意というような形にしております。しかしながら、そのときに私は厳重に部内に申し渡したのは、かりに取り扱い注意という形に格下げの形になっても、われわれとしてはこれはもう絶対に秘密を厳守すべきであるということを、今回の場合には特にその点に関連してずっと申してきておるわけでございます。したがいまして、いまのようなおことばは、今後に対する大きな戒めとして、われわれとしてさらにその点十分注意をしたいと考えております。
  29. 山崎昇

    山崎昇君 まあ、私は深くはこれは追いません。追いませんが、少なくとも国会も公務員給与については重大な使命を帯びていますから、当然勧告前にあなた方に方向なり、あるいは発表できるだけの段階でもある程度の質問をしています。そのときには何にも言わぬで、いまあなたいろいろ弁解されたが、この報道を見てごらんなさいよ。詳細なものですよ、あなた。あなたのほうが言わなかったら、こんなことはわかりますか。私は公務員賃金はかなり専門家だと思っていますが、それでもわかりませんわ。だから、それはあえてこれ以上追及しませんが、また役所の秘密をどうせいという意味で言っているわけじゃないけれども、もう少しこの点はきちんとしてもらいたい。そうしませんと、あらぬやはり疑惑が生じてくる。この点だけは、重ねてあなたに苦言を呈しておきたいと思います。  二番目にあなたに聞いておきたいのは、今度の勧告が出て四月実施にしたことは、各方面でも一応の評価として出ている。まあ私もまた、今日まで質問してきた立場からいえば、一つの評価としてあなたに申し上げてもいいと思う。だが、この勧告を受けた世論というものは、必ずしもそうはならない。一体人事院とは何なのだろうか、人事院の自主性というものはどこにあるのだろうか。これは私の知る限り、どの新聞を見ても指摘をされていることです。特に私は北海道出身ですから北海道の社説を見ても、「もし、人事院が政府の内諾をえないうちは、思い切った勧告が出せないとしたら、争議権をもたない公務員の救済機関としての人事院の存在意義をみずから否定することになるだろう。」人事院はあっちこっちの顔色ばっかりうかがって自主性がもう失われてきているではないか、こういう批判や指摘がかなり多い。ですから、今度の四月実施については、踏み切ったことは私も認めていいと思うが、それまでに至るあなた方の態度というのは、あっちこっち見て大体まあこれを出してもいいだろうという、都合がよくなったから出したにすぎないというような印象がぬぐい去れない。そういう意味で言うと、私は、一つ制度として人事院制度があるわけですから、これに対するなくせとかどうせいという意見意見といたしましても、私は人事院の自主性からいって問題を生じているのじゃないかと思うが、その点についての見解と、それからあわせて、これは少し皮肉な質問になりますが、四月実施にした人事院の自主的な判断はどこにあるか、科学的な根拠はどこにあるか。あなた方はいままでは、五月実施は十年もやってきたことで、それはそれなりに根拠があるのだ、四月実施は一理あります、こういうことであなた方は逃げ切ってきた。ですから、私は皮肉なようでありますが、一体四月実施に踏み切った人事院の自主的な判断としての科学性というものをどう説明されるのか、聞いておきたい。
  30. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 最後のところは、答えようによってはまた五月に戻されるような危険性もはらんでおりますけれども、いま前段におっしゃいましたことは、私も一言申し上げたいと思っておったところなんで、非常に適切な御質問だったと思います。  全部の新聞ではありませんけれども二、三の新聞でぴりぴりとわれわれの何かにさわるような表現がございました。たとえば政府主導型というような、と言わぬばかりのことば、これははなはだわれわれとしては心外である。政府主導型というならば、むしろ国会主導型となぜ書かないのだと。昨年の十二月、衆参両院とも全会一致でこの四月一日実施について配慮すべしという非常に強い御決議をいただいておって、それは全然のけられているのですね。そういう点についても、私は国会のためにも、私たち自分自身のためにも非常に残念に思っておったわけです。ただ問題は、これは理屈で攻めていけば、結局昭和三十四年でしたか、来年から完全実施するぞということを政府側でもう前の年から大きな声で叫んでおられた年がございました、それと同じことかもしれぬなあとみずから慰めてはおりましたけれども、私どもの本来の気持ちは、まあいまだからと申し上げるのもなんですが、なぜ踏み切ったかという点に触れますが、これはいみじくも、これは新聞の小さなすみっこのほうの「永田町」とか、「田中番メモ」とかというところに出ておりますが、私が田中総理のところへ勧告をお持ちしました劈頭に、これは四月一日ですか、ああ、あなたも長年の宿望をやっと達したなあと言って握手をしてくれたということが出ておりますね。それが一つの私としては慰めになったわけです。それは結局、いまの田中総理がかつて大蔵大臣であられたころ、盛んに実施期日が引き延ばされて、われわれの五月勧告が十月実施というような事態で、まあやっきになってわれわれ各方面を説得し、お願いして歩いた時期です。そのときに田中大蔵大臣のころに、大体見てごらんなさいよと、郵政省の同じ屋根の下に二種類の公務員がいますよ、公労委の裁定に属する人たちは四月から実施されている、われわれのお預かりしている人たちは十月実施、これはどうしてくれるんだと、ほんとうならば四月実施というのが正しいかもしれないがというようなところまで強く訴えたことをおそらく総理はずっと覚えておられて、宿望が達したなあということでことばになったと私は思いますが、私自身は、これは従来人事院が五月でずっときて、しかもそれが、ことばは悪うございますけれども、値切られ、値切られしておった段階に、これが四月が正しいとか正しくないとかと論ずる余地はなかったわけです。たまたま完全実施になってからそういう声が非常に強くなって、またこちらの附帯決議にもなったわけです。これはもう私は国会でずっと前からその点に対する御質問に対してお答えしておりますように、これは初めから両論立ちますということを言っているわけです。これは確かに両論立つということでずっと一貫してまいって、またそれでこそ先年の附帯決議をいただいたことにもなると思いますけれども、私の個人的の考え方は、これは個人的と申し上げたほうが率直でしょうが、個人的の考え方としては、私は人事院総裁に初めてなりましたときから、当時の瀧本給与局長をつかまえて、四月調査の結果出た格差を埋めるというなら四月にさかのぼるのが筋じゃないかなあというようなことを疑念を表明したことがある。しかしそれはそれにふさわしい、また五月のほうが正しいという説明はありましたけれども、われわれとしては、そういう点から心ひそかに、われわれ、というのは語弊がありますが、私としてはずっと疑念を持ちながら、しかしわれわれとしては五月実施で、そして完全実施をしていただきたいという態勢でずっときておりますが、そういうことで今日まできてしまったということであります。したがいまして、今回の報告書にも出ておりますように、民間調査の結果、ここ近年に至って非常に四月に賃上げをする企業体がふえてきた。こちらの委員会の附帯決議も、民間等が大体四月にみな集中しておるからという附帯決議のおことばだったのです。その点から着目して、これが六八%という圧倒的な数字になっているということもわかりました。かたがた踏み切ったということでございます。
  31. 山崎昇

    山崎昇君 苦しい答弁で、聞いていてもよくわからない。わからないが、まあ四月実施にしたから、私はこの点はこれ以上言わぬけれども、いずれにしても、あなた自分自身で疑問を持ちながら、あたかも五月実施が正しいんだというような言い方をこの国会でやってきたんです。そのときに、ぼくらはおかしいではないかという指摘をしてきたんですよ。民間は、積み残し部分は多少あったといたしましても、ほとんどの民間は全部四月からやっていましたよ。いま何も六八%になったんではないんです。それは、私はあなたの立場もあるからこれ以上言いませんがね。いずれにしても四月実施になったことは一つは評価をするにしても、そういう態度をとるから人事院の自主性というものが疑われてくる。せっかくあなた方いいことをやったって、すきっとした気持ちになっていない。このことだけはもう少し人事院は、私は銘記しておいてもらいたいんですよ。  そこで、今度は少しこまかく聞いていきますが、どういうものか知りませんが、この人事院の出してくる勧告率というのは、公労協の数字と全く大体似ているのですね。公労委はわずか四十名か五十名で、二日か三日で民間調査して、そうしてあの仲裁裁定を出しているんだ。あなたのほうは三月も四月もかかって膨大な調査をやって、出してきて、その結果の数字は〇・一%違うか違わない。これはことしばかりでない。いま私はこれ四十三年からずっと持っていますが、ほとんど同じですね。こういうことを考えていきますと、調査はやっていることはやっているんでしょうけれども、最後の締めになってくるというと、あなた方は仲裁裁定に合わせた勧告率にしているのではないだろうか、そうとさえ私は疑わざるを得なくなる。この点は一体あなた方どういうふうに説明されるのですか、聞いておきたい。
  32. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ちょっとおことばを返しますけれども、五月一日が正しいということは、私は大きな声で言った覚えは全然ございません。両論成り立つということだけで申し上げてきたはずでございますから、その点は弁明をしておきます。  それからいまのお話でございますが、これもたびたび御指摘がございますけれども、われわれはいまのような、おっしゃいますような、非常に大規模な、多額のお金を使って、しかも人海作戦までやって調べたデータというものに忠実に即して勧告を申し上げておるということは、これはもう基本的な姿勢でございますからして、これに疑いを入れられたら、もうこれは全部勧告についての権威というものは私はなくなる、そのくらいに思い詰めているポイントでございますから、その点は、われわれの調査の結果に忠実に即してやっているということだけはもうはっきりと御納得、御理解をいただいておきたいと思います。  ただ問題は、たまたま似ているじゃないか。これは似方ももちろん年によって多少離れたり近づいたり、これはいろいろバラエティーがございますけれども、われわれの調査の結果が、これはあくまでもわれわれが自信を持つ正しい調査の結果である。公労委も、しかし最近は民間の賃上げの動向というものを、昔はそうじゃありませんでしたけれども、最近では動向というものを、一種の予測ではありますけれども、そういう方向に転換されてきたと、われわれのやっている形のほうへ近づいてこられたということは、これはあるわけです。したがいまして、ことに最近のように春闘にずっと賃上げが固まってまいりますと、そういう点の判断もあるいはしやすいということもありましょうし、したがって、かたがたあまり離れた結果にはならない。私どもの立場から言えば、非常に僭越な言い方でございますけれども、私どもの出したこの格差によって、逆に公労委のやられたことに対する一つの批判の尺度になると。まあわれわれから見れば、公労委もなるほどいい線を行っておられたなあという批判の問題になる、そういう筋のものだと考えておるわけであります。
  33. 山崎昇

    山崎昇君 あなたのほうは、まあ一生懸命出したのでしょう。私ども調査機能を持っておりませんから、否定する材料はありません。だが、ずうっとあなたの出す勧告を見ていると、あれだけ膨大に調査したわりには、どうしてこんなに数字が似るんだろうか。これはやっぱりみんな疑問を持つところですよ。それなら、今日までの経過から言うならば、中労委の仲裁裁定の数字でやったってそう違いはない勧告になるのではないか、このことさえ言われてくる。だから、そういう意味で、私は疑う材料を持っておりませんが、なぜこんなに四年も五年も、違いは〇・一です、大体。これはやっぱりもう少し私は別な機会にまたやりますが、納得できない一つであります。  それから、その次にお聞きをしておきますが、時間がまたなくなってきたようですから、飛び飛びになりますが、ことしは遡及率が一・六四だ、去年の半分ですね。これは調査を延ばしたのか、民間が四月にやったのが多いのか、まあいろいろ理由があるかもしれませんが、一・六四の計算の基礎をひとつ教えてもらいたい。  それから、あわせて、ことしは標準昇給率ということばを使っておりますがね。昇給率が三・〇一%、これは四月、七月、十月、一月の年四回の昇給をひっくるめて三・〇一%というのか、この標準昇給率という内容について聞いておきたい。
  34. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 標準昇給率の話は給与局長から御説明をいたさせますが、今度いわゆる積み残しが非常に少なかったということは、われわれ非常に喜んでおります。結局、それはいまおことばにあった、ひとつこれはかねがね当委員会においても御指摘がありましたけれども民間調査についてよほどそのやり方を考えれば、とことんまでつかまえてこれるんじゃないかというおことば、それは忠実に守りました。これは昨年あたりから守っておりますが、やはり一番大きな原因は春闘が早く済んだということ、これはもう疑いのない事実で、その後市川議長にもお会いしましたけれども、ことしはずいぶん早くてこっちが助かりましたぜと、来年もぜひこの調子でもっと早くやってくださいということをお願いしておきましたが、これが一番当面の私は大きな原因じゃなかったかと思います。その意味で、われわれとしては非常に喜んでおるということを申し上げておきます。
  35. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 標準昇給率というお話がございましたが、われわれとしましてはそういうことばを使っておりません。昇給率と申しますのは、俸給表を使いまして一年間職員が在職した場合に何%上がるかという推定を一般にやりまして、これが大体今回の俸給表において三・〇%であるという関係になっておるわけでございます。
  36. 山崎昇

    山崎昇君 重ねて聞きますがね。あなた方の調査というのは、一月十五日現在の公務員で、四月については四月にこれぐらいのものは昇給するであろう、そういうものも想定されて、そして四月一日で民間比較をして勧告を出されると思う。そこで、この三・〇一%という昇給率とまあ平均で言うんでしょうが、それは四月一日で行なわれるであろうと推定した昇給も入って三・〇一になるのか、それは別にして、七月、十月、翌年の一月の三回の昇給分が三・〇一%平均になるという意味なのか、明確にしてくれと言うのです。
  37. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 調査の際には、四月に昇給する人が何人おり、七月に昇給する人が何人おるということで、年間の昇給時期について調査をいたしておるわけでございます。そして比較といたしましては、四月現在において比較をするということになるわけでございますが、そうしてつくりました俸給表を用いまして、四月から一年間昇給をしていくといった場合に何%上がるかというのが昇給率というふうにして推定をいたしておるわけでございます。
  38. 山崎昇

    山崎昇君 的確に答えてくださいよ。四月も入って四回分の昇給率を三・〇一というのか、そうでなくて、七月、十月、一月の三回分を平均したら三・〇一になるのか、どっちですかと聞いているんです。
  39. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 一年間の昇給でございますから、四回の昇給でございます。
  40. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、私は疑問があります。去年までは遡及分の計算のときには、五月実施でもありましたけれども、私は五月実施、四月実施関係ない、昇給には。そうすると四%を基礎にしまして、四分の三という数字でやっているんですね、去年までの計算方法は。ことしはそういう方法がなくていきなり三・〇一という数字が出てくる。もしあなたの、四月一日まで入っておりますという数字になってきますというと、去年は少なくともこの一%に関連して、勧告率が低くなったという結果になる。だから、私は、この昇給率の計算のしかたというのは、去年とことしが違っておりますから納得できないんですよ。ずうっとあなた方は昇給率四%としてやってきた。去年は実績見たら三・一四だと、ことしは三・〇一だと、計算は四分の三でやったと、この点が私はわからないんですがね。もし、去年年間の昇給率が三%しかないと言うなら、三%の四分の三で計算しなければ合いませんよ。そうすると、勧告率は一%までいかないにしても、かなり上昇してこなければなりません、結果として。これは、きょうこればっかり論争してたらどうにもなりませんが、私はどうにも納得いかないんだ。前々から四分の三計算というのは納得いきませんでしたが、ことしの昇給率のやり方が違うから、いろいろ調べてみると、どうも私の疑問のほうが当たってきているんじゃないかと思いますが、どうですか。
  41. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 私は四分の三ということを一度も申し上げたことはないわけであります。問題は何であるかと申しますと、民間における定昇込みの昇給率を一応求めまして、その中から、民間における純ベースアップ分と申しますか、定昇分を除きました残りの純ベースアップ分だけ求めまして、その分を、いわば積み残し分で、べースアップの積み残し分としまして加えるというのがポイントでございます。つまり、民間において定昇込みのアップ分の中から定昇分を除く、民間における定昇分を除くというのがポイントでございます。そういう関係で、従来から三%を引いてきておりますのは、それは民間における定昇率ということを求めるべきだというふうに私は考えておりまして、そういう点で申しますと、大体三%というふうに従来からやってきておりますのは適当であろうというふうに私は考えております。
  42. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、またあなた、疑問がありますね。民間の場合には定昇分を除いてあなた方は基礎数字を出している。公務員のほうは四月一日定期昇給分だけ入れて比較をする、いまあなたの説明を聞くと。だから、私はあらためてこれは聞きますが、数字的に去年とことしのやり方が違うようですから、どうも私は納得できない。それなら民間の定期昇給率というのをもっと正確に出してもらいたい。あなた方が去年まで出した資料は、全部年間四%、そうして四分の三かけて、三%だけ見て計算されているのですよ、遡及分の計算のときには。あなた方が出した数字をあとで持ってきますよ。あなたが首を振るなら。だからそれはあらためて聞きますが、この点はどうも私は割り切れないし、納得できない。これがことしの問題点の一つです。  その次にあなたにお聞きしたいのは、十種類の俸給表の総平均してやったら九・〇四%だと、ところが一〇・六八%をどう配分するかということを割ったら、本俸系統に九・三五だと、そこでこの九・三五あるいはその他の諸手当と振り分けたときのあなた方の基準といいますか、考え方だけ聞いておきたい。
  43. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 四月で比較いたしました格差が一〇・六八%だということでございますが、その関係をどのように本俸、諸手当に配分するかという問題でございます。で、その場合に原則として本俸に回すということがたてまえであるわけでございますけれども、やはり諸手当につきましては、必要なものはそちらのほうに回さなければならないということがございます。そういう関係で、本年はどういう諸手当改正が必要であるかという点がまず問題でございまして、本年の場合には通勤手当扶養手当及び医者関係初任給調整手当、こういったものを調査をいたしまして、そういう関係のほうにどれだけ回さなければならないかという点をまず確定をしまして、残ったものについては原則としてすべて本俸に回すということになるわけであります。そういう点で、ただ本俸を上げますと、いろんなはね返りがございますので、諸手当で取ってしまった残りのものを本俸とはね返りに分ける、そういう関係になるわけでございまして、そうして本俸に回されました分が九・三五%ということになると思います。
  44. 山崎昇

    山崎昇君 その次にお聞きをしておきたいのは、定期昇給分も入れて、おそらくこれは来年の三月三十一日にはこういう給与になるであろうというのが、全部足しますと九万四千八百五十一円という数字になる。ところが、あなたのほうからもらった資料の全職員の平均、これが八万二千四十五円、これにアップ分と定期昇給分を足しますというと九万円ぐらいにしかなりません。それからいま申し上げた九万四千八百五十一円は、これは来年の三月三十一日でしょうから、定期昇給分を除きますと九万二千二百七十六円という数字になる。そこで私どもこの数字をずっと見ておりまして、どっちの数字を基礎にしてこれを判断したらいいのかわかりませんので、一体人事院の出した全職種の総平均に足していった数字と、それから官民給与格差を中心にして、これにアップ分と定期昇給を足したものとの数字との間に約千三百二十円くらいの差がありますが、これはどっちをとったらほんとうの公務員の平均給与になるのか、説明を願っておきたい。
  45. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 九万四千八百五十一円というのは、どういう数字であるのか、私ちょっとよくわかりかねておるわけでございますが、私どもの発表しておる報告書に書いてあります数字の中には、四月現在の給与といたしまして、職員全体の平均につきまして書いてあるものがございます。それは本俸、扶養手当、調整手当、合わせまして八万二千四十五円というのがございます。それからもう一つは、官民比較をいたしました場合には、いわゆる比較俸給表と申しますか、たとえば税務、公安、教育——教育の中、小学校及び高等専門学校関係及び指定職、そういう六つの俸給表を除きました十の俸給表のいわゆる比較俸給表についての平均といたしまして、別表第一に八万三千三百六十九円というものをお示ししてございますけれども、これは比較俸給表の金額でございます。かつ、本俸、扶養手当、調整手当以外に、その他の諸手当も含んだものでございますが、そういう関係で二つの種類を出しておるわけでございますが、いまお話しの関係は、昇給を加えましてどうなるかといったようなお話でございますが、その関係は別途御説明をいたしたいというふうに思っております。
  46. 山崎昇

    山崎昇君 私は、後日またずっと聞きたいからいま数字的なことだけを聞いているんですがね。あなた方の出されてくるものは、あの俸給表、十種類の平均で官民格差を出されて、そのときの公務員の基礎数字というのは、八万三千三百六十九円というのが出されている。これを基礎にしていろいろ計算をされているわけでしょう。ですから、これを基礎にして定昇分だけ除けば九万二千二百七十六円という数字になるというのです。これは公務員の平均給与になると思うのですね。たとえば四月実施ですから、四月一日の。ところがもう一方、あなた方は、この説明資料を見ますと、全職種の平均という形で八万二千四十五円という数字を出してくる。そこで、これにアップ分を足しますというと九万九百五十二円にしかならない。だから、公務員全体の総平均でいうと、新聞報道されますように、九万四千八百五十一円なんかにならぬじゃないか。一体、私ども理解をするのに、どっちの数字で理解するのが公務員全体の給与水準としては正しいのだろうか、このことだけを聞いているんです。
  47. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 一つの問題点は、全職員につきましての平均額というのと、いわゆる官民比較俸給表、十の俸給表の場合の違いというのが一つございます。それからもう一つは、本俸、扶養手当、調整手当のいわゆる三者の計と、それにその他の諸手当——特地手当とか、その他の手当を加えました給与のそういった点のカバレージの違いという二種類の問題がございます。  そこで、御指摘の場合には、そういう全体を含んだ俸給表比較給与ということで八万三千三百六十九円ということでございますが、これに対しまして、勧告後の推計をいたしますと、九万二千二百七十六円ということになるということでございます。それは比較俸給表の話でございます。それから今度は全職員——税務、公安等を含めました関係で、同じように全給与、通常の月給全体を比較いたしますと、四月現在におきましては八万五千三百八十三円ということになっておるわけでございますが、これがベースアップ後におきましては九万四千四百五十円になるであろうというように推定をしておるということでございます。
  48. 山崎昇

    山崎昇君 だから十種類の俸給表でいえば高くなってくるし、全職種を平均したら安くなるでしょう。安い数字になりますよ。全職種の平均を見てごらんなさい。行(一)、行(二)の平均と全職種の平均というのをあなた方出しておりますですね。これにアップ分の八千九百七円足したとしても、全職種の平均だったら安くなるわけですね。だから私が聞いているのは、新聞ではもう公務員は九万四千円台でものすごいと、こう言う。実際に全職種平均したら、そんなところまでいっていないじゃないか。だから人事院が、もし正確に公務員全体の一般職の平均を言うならば、私は別な数字が正しいのじゃないかと思うから、いま聞いているのです。だから、どっちですかということを聞いているのです。
  49. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 問題は、いま山崎委員がおっしゃいました点としましては、いわゆる行政職の(一)、(二)の関係などにつきましては、本俸、扶養手当、調整手当という、いわゆる基準内給与、それだけについて問題になさっていらっしゃいますけれども、いわゆる民間比較をする月給の総額という形で考えました場合には、その三者だけではなくて、いろいろな手当が入ってくるという点がございます。中には寒冷地手当の月割り額も入っておるという点もございますし、いわゆる隔遠地手当的なものも入っておるといったような関係もございます。そういう関係で、いわゆる三者ベースに比べまして、さらに若干高くなっておるわけです。そういうものを全部含めますと、アップ後におきましては九万四千円程度にはなるということは確かでございます。
  50. 山崎昇

    山崎昇君 それならあえて言いますが、説明資料も私はそういう資料を出してもらいたいと思うのですよ。あなたのほうで出してくる資料はそうでないものだから、私どもあなた方のほうの資料で計算すると、いま言うような計算しかできない。ですから、それはあとで、全部出したらどうなるのかということを一ぺんくださいよ。そうしませんと、片一方は実収の俸給表の平均だけ出してきて、そうしてその中で行(一)と行(二)にだけ平均を出して、そうしてそれを全職種に直して一方出してきますね。一方では官民格差の数字を土台にして、いろいなものを足して、公務員の平均給与はこれだけでございますと、こう言う。いま聞けば違うと言う。これはやはり私は説明資料の出し方が——あなた方それで都合のいいように思っているのでしょうけれども、私ども真剣に見たら、どれがほんとうで、どれを基礎にしてものを言ったらいいかわからなくなってくる。それはあらためてじゃ出してもらいたい。  その次に、あなたにお聞きをしたいのは、ずいぶん飛ばして質問しますが、中堅層、俗にいう二人形成世帯、三人世帯、こういうところに、あなた方、かなり力点を置いたと言う。ところが、詳細にこの俸給表を見ますと、たとえば行(一)の六の三でも去年より三百円くらい低い、金額にして。それから行(二)の二の四でいっても去年よりは四百円くらい低い。いずれもここら辺は二人ないし三人くらいの世帯形成になっている。金額でも低い、率でもかなり低い、どこに力点が置かれたんだろうか。あるいは標準生計費と比較してみても、三人世帯、四人世帯になってくるというと、もう標準生計費よりかなり下回ってくる。私は、これは、あらためて標準生計費というあなた方のものの考え方をまだ聞いたことはありませんが、一体何のために人事院は標準生計費方式というものをとるのか。私は、ある意味でいえば、これは年齢別の最低保障みたいな考え方になるだろうと思う。もしそうだとすれば、特に行政(二)表のように単純労務関係の諸君の場合には、総裁の答弁でありませんが、職務給的立場をとっているけれども職務給ではありません。生活給的要素が強いというならば、当然標準生計費に合わせてこなければならぬ、最低の線というならば。しかし、それはそうなってこない。ですから、この俸給表を詳細に見るというと、どうも私は、あなた方が勧告している表題と中身と違うんではないだろうか、こういう気がします。ですから、それをひとつ説明を願いたいということ。  それから、ことしもまた学校の先生、小・中学校教員、それから医療(三)表、看護婦等にかなり手厚いもてなしをしたと言う。しかし、実際調べてみたら、何も手厚くはない。何もよくなっていない。それから運営上で何か優遇措置をするということになっているんですが、どういう運営上で優遇措置をするのか、これを説明を願いたい。  時間がありませんから、たいへん恐縮ですが、立て続けに言いますが、もう一つ医者の問題を調べますというと、私はふしぎだ。民間と公務員で三二・四%も開きがある。ところが、今度出されたやつは八万円の初任給調整手当を十万円にして、三十年を三十五年に直した。ところが、あなたからもらったこの資料を見ますというと、本俸より調整手当のほうが大きいのがある。一体こういうのは、あなたは恥も外聞もなくこういうことをやっているんだろうけれども給与体系と言えますかね。私は、人事院一体何をしているんだろうかと思いますよ。それで、われわれが何かというと、体系はくずされませんとか、体系はこうなっておりますとか言う。しかし、医者については、本俸より初任給調整手当のほうがでっかい。そういう資料をあなた方は堂々と出してくる。これは一体体系から見てどういうふうに私ども理解したらいいんでしょうかね。それから、おそらく私は医者になってくる人は三十近いと思うのですね、実際独立して医者になってくると、インターン等も終えて。三十五年間あなた初任給調整手当でやったら六十五歳ですよ、もう。それでなおかつ初任給調整手当なんという手当をもらって、あなたどうしますか。そうして民間との開きでいえば三二・四%あるという。私は少なくとももっと本俸に力点を置いて直されて、なおかついまの現状で調整手当というものをある程度考えるというなら、まだ私は一歩譲歩してもいいと思う。本俸より手当がでっかいような体系をどうして人事院がつくるのですか。これは説明願いたいと思う、私は。これはあなた方から出された資料ですから。私がつくったのじゃない。この辺の説明を求めておきたいと思う。
  51. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) さわりのところだけ私からお答えさしていただきます。  これはもうおっしゃるとおりなんで、なりふりかまわずということは、つとに私どものほうから申し上げてきたわけです。なぜ、なりふりかまわぬ措置をとるかということは、これは結局、民間の場合との格差はこれだけありますよ、これを完全に俸給で埋めるのが正しいのではないかという、おそらくそこがポイントだと思いますけれども、われわれは、お医者さんの場合は出入りが非常に激しいということが一つありますとともに、民間の場合のお医者さんの大体の待遇を見てまいりますというと、たとえば退職手当とか退職の年金とか、やめたあとのそれらの点は、公務員に比べるとよほど違うわけで、違うというよりもむしろ不利な形になっている。本俸を上げますと、そこまで今度ははね返って影響いたしますからして、国立のお医者さんの場合は、そこまで考えるよりも、当面在職中の処遇だけは、これは何としてでもなりふりかまわずでも形を整えにゃいかぬということで、たびたび率直に申し上げておりますが、いま御指摘のとおりのようなありさまになっておる。これはまたこれとして御了解願いたい。ただ初任給調整手当というのは、永年勤続の表彰を受ける人が初任給調整手当をもらっているというようなことは、われわれも仲間の冗談では口に出しておりますけれども実態はそういう実態であり、それに対処するための算段でございますということでございます。
  52. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 二人、三人世帯の関係についてお話がございましたが、行政職(一)で申しますと六等級、行政職(二)で申しますと二等級の四号俸、御指摘になりました四号俸周辺のところは大体同じところでございますけれども、この関係は、官民格差もかなりございますので、毎年重点的に改善をしておるというところでございます。昨年の場合には、行政職(一)の八等級につきまして学歴差を一号詰めまして、したがってそれに続いていっている七等級、六等級につきましては一号俸を有利にするというわけにまいりませんので、約三カ月短縮的な優遇をそこに加えたということでございまして、一般に比べて三百円か四百円特に上積みをしたということを去年やったわけでございます。それに対しまして、ことしはその水準を維持するということでございますと、この三百円ないし四百円去年特に積んだところは、ことしは積む必要がないということに相なるわけでございますけれども、しかしながら、さらに重点的にやるという意味合いで、ことしは、他に比べてやはりそこは二百円ほどよけい積んでおるという関係になっているわけでございまして、去年特に積んだところがことしは若干積み方が少なくなるということは、それはもう当然の話でございますけれども、その少なくなり方が比較的少ないという点は、ことしもよけい積んだんだという意味合いとして御理解をいただきたいというふうに思います。  それから看護婦給与につきましては、看護婦の場合に、普通のいわゆる正看護婦につきまして、若いところがかなり官民格差もございますので、そこを一般より特に厚く積んで引き上げております。そして准看護婦につきましての優遇措置というのは、今後の運用上の話でございまして、昇格あるいは昇格に伴う調整の問題、そういった問題として今後関係当局とよく話し合つてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  53. 山崎昇

    山崎昇君 去年少しやったから、ことしは下げてもいいんだなんという理屈にはなりませんよ、あなた。看板に偽りがあります。あなた方は民間調査をして、麗々しく勧告の中に二人ないし三人世帯形成時のところを重点にやります、配分しますと、または標準生計費をとりながらやっております。しかし、それが去年より下げていいということになりませんよ。現実的に金額は下がっているのだから。だからそういう点は、重点にしたなんということになるのですけれども、去年やり過ぎたからことしは調整したというのですか、それじゃ。それでは私は違うのじゃないか。ですから、もう少し看板が二人、三人形成時のところにあるというのなら、それにふさわしいようにしなければ、数字を洗ってくると違う結果になる。こういうことは私はやっぱり納得できない。これはまたあらためて時間があるときにやります。  それから、いま総裁から、医者のやつについてはなりふりかまわぬということは、前からあなたに言っておった。しかし、なりふりかまわぬにも限度があります、あなた方から出されてくる資料を見ても。そして、わざとこういう例をとったのか知りませんよ、それは。しかし、本俸が七万二千四百円が今度八万百円になります。一〇・六%の値上げですと。初任給調整手当を十万円払いますと。十万円は十一年間払う。それからは少しずつ下がってくる。だれが考えたって、十万円が本俸で八万円が手当というなら、まだ私はいろんな実態はあるでしょう、わかる。そうならば医者の一体職務というものをどういうものをどういうふうにあなた方は考えるか。ただ諸手当で適当にして、総収入だけ得たらそれでいいではないかというものの考え方にも通じてきますよ。それではあくまでも人事院として科学的でもなければ何でもないんじゃないですか。一体職務とこの賃金とはどういう関係になってくるんですか、それでは。こういう私はなりふりかまわないにしても、まことにこれはおかしな現象だと思う。これは総務長官が、出されたものをそのまま実施するんだけれども、総務長官、議論聞いておってどうですか、医者の点。私はとても理解できませんわ、これ。総務長官の見解一ぺん聞いておきたい。どうです。
  54. 本名武

    国務大臣(本名武君) お話を承っておりますと、ごもっともな御所説であることも理解できないわけではございませんが、人事院といたしましても、いろいろな従来の弊害等を是正しながらだんだんと改善の道を進めていくという御方針でもあろうと思いますが、かなり専門的なことでもございますが、私も十分意にとめまして今後検討いたしてまいりたいと考えております。
  55. 山崎昇

    山崎昇君 どうも私は委員会でいろいろ聞いてもほんとうに政府にはしっかとしたあれがないんだよね。ただ人事院のいまの医者の問題なんかはもう少し私はきちっとした考え出してもらいたい。そして社会保険審査員だけは行政(一)表でやって、今度また八%を一二%にしてみたり、何かところどころつけ焼き刃でやる。もう少し全体的に私は公務員の中における医者なら医者、どの程度の待遇をすべきだというんなら、総収入が、民間はどうあろうとも、ある程度職務と関連して賃金というのはきちんとしてもらいたい。そうしませんと、こういう矛盾はいつまでも直らない。三十五年間、初任給調整手当なんてだれが考えたって笑い話ですよ、こんなものは。この点は強く指摘をしておきたいと思う。  その次に聞いておきたいのは、ことしは指定職俸給表は従来とやり方が違っておる。三段階に分けて上げておるんですが、なぜそういう方法をとったのかを聞きたいということ。  それからこの調整手当について、これはもう昔の地域給みたいな様相を帯びてきておる。そしていまやかなりアンバランスが出てきておる。たとえば県庁の所在地で五十万の仙台でも、何もない、ゼロである。あるいはそうでない都市でも六%出してみたり三%出してみたりいろいろある。ですから私は、ある程度の基準とするならば、もちろん生活費、物価、いろいろ調べなきゃいかぬでしょう。いかぬでしょうが、一つの基準としては、県庁の所在地のような都市はおおむね二十万から三十万、言うならば都市生活者ですよね、多少の違いはあるにしても。そういうものを基本にして、たとえば三%どうするかとか、あるいは六%どうするかとか、ある程度のことを考えてもらいませんと、これがかつての地域給のようにかなりアンバランスが出ても、問題化されつつある、当然今後全般的な待遇の中で議論されてくると思うんですが、これをあわせて聞いておきたいと思う。  それからその次に聞いておきたいのは、ことしもまた特別給については〇・〇二だというんで打ち切られた。しかし、この打ち切られたものを全部今日まで足すというと〇・五になる。反面、ことしあなた方は民間との調査をやらずに、管理職だけ新たに一〇%のものを設ける。そして上のものは五%上げてやっていく。言うならば、実質的に管理職と称する層についてだけは期末手当勤勉手当が増額されたと同じ結果になる。これは私は一体人事院考え方がなぜそうなるのだろうか。だから私が前から言うように、端数の切られたもの全部足せば〇・五になる。そのうちの半分でも期末手当を増額すれば、特別職、上の者だけやらぬで済む。極端な言い方になりますけれども、下級職員は切っておいて上級職だけ期末手当を出すという結果を招来する。こういうことは一般職員の納得するものではないですよ。そしてこの期末手当は、言うならば、その年その年で変わってくる、ある意味でいうと臨時的ですからね。それを人事院規則でこれからずっと管理職手当みたいなかっこうで増額をしていこうというやり方は私は承服できない。何かこれは一月一日からやるというお話のようでありますけれども、これはぜひやめてもらいたい。そして、そんなことするよりも、端数を打ち切ったやつを計算して、私は半分でも三分の一でもいいですが、全部の職員対象になるような方向をとるべきだと思う、人事院のあり方としては。そういう意味で、これは何かあなた方報告に出しておりませんが、ぜひこれはやめてもらいたいし、そういう方向をぜひ私はとるべきだと思うがどうですか。  それからこの前の委員会で、特殊勤務手当について言ったら、まあ一つ、二つ直した。しかしあらかたのものについては何も検討されていない。これは来年はそうすると報告出されるのか勧告出されるのか知りませんが、ことし一年間かかってこの特殊勤務手当全般について人事院検討される用意があるのかどうか、重ねてこれは聞いておきたいと思います。  私の持ち時間もう過ぎておりますから、立て続けに二、三聞いて終わりにします。  もう一つは、国家公務員に対する給与勧告は八月の十五日にやる。ところが六大都市と都道府県はおおむね十一月上旬でなければ各委員会勧告が出てこない。そこで私は、この間北海道の人事委員会に行っていろいろ実情を聞いてみた。ところが、人事院で行なう調査は各県の人事委員会と共同調査ということになっておる。その資料は全部あなたのほうにくるわけなのだけれども人事院からその資料等があとで示されないものだから、勢い人事委員会勧告が長引いておりますというのが答弁であります。これはうそかほんとうか私はわかりません。そこで、ここは国家公務員勧告が主力ですから、論をするのですが、背景には二百五十万の地方公務員がおるわけですから、当然それは考慮して私ども議論しなければならない。そうすると国家公務員勧告は八月十五日、地方公務員は十一月でなければ勧告が出ないというやり方は、人事院としても私は考える必要があるのじゃないか。これは所管としては自治省でありますけれども、総務長官としても、公務員制度全般を考えるときにこれは配慮すべき私は問題じゃないかと思うのだが、見解を聞いておきたいと思う。  それから最後に人事院にお聞きをしますが、依然として、いま調べてみますというと、任官行為というのがある。しかし公務員には、公務員法を調べてみても、雇いとかあるいは何々官とかこういう区別はもうないのです。ないのに、なぜこの任官行為というのを残されておるのか。そして、それもあなたのほうで出された人事院規則等を見れば、あるいは指令等を見れば、たとえば初級職の試験を受けて入ったならばすぐやりなさいと書いてある。しかし、人事院みずから一年間雇いなんという形で採用している。一年たってからでなければ任官さしていない。一体どういう考え方でそういう区分が必要なのか、なぜこんなことが必要なのだろうか。いま公務員法上ではそういうのはないのです。ですから私は、そういうことは人事管理上からいってもおかしいので、ぜひやめてもらいたいということ。  それからこれに関連しまして、これは行政管理庁の際に私はいろいろ質問したけれども、いま官と職というものがごちゃごちゃになっておる傾向がある。ですから同じ名称であっても、片方は官で、片方は職になっている。一体人事院は、公務員制度全般を見まして、給与表でも、あるいは職階制に関する法律でも官職ということばを使われるのだが、この官と職の混同について人事院としてはどう考えておられるか。これは所管は行政管理庁ではありますけれども、実にいま混同されておる。これは総理府としても私は聞いておきたい。  それからもう一つ、私はいまばく然としておるのですが、併任という制度があるようであります。一体併任と兼任とどう違うか、いま併任されておる者はどのくらいおって、これらに対してどういう給与が支払われておるのか。人事院のかつて総裁をやった浅井さんに言わせれば、本人もわからぬと言う。つまらぬ制度をつくったものだと本人言っているんです。人事院は、こういうものについて法的には根拠がなくて、人事院規則だけで新しいことばを使ってそういうやり方をとっておるようでありますが、一体兼任と併任というのはどう違って、なぜそういう制度が必要なのか。浅井清さんの言うように、本人自身が危惧の念を持っておると、こう解説されておる、こういう制度について人事院見解を聞いておきたいと思います。
  56. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先ほどちょっと申し落としましたが、医者の給与に関しては、われわれとして一番要望したいことは、何がこういう結果をもたらしておるかということになりますというと、これは絶対的な日本における医者の不足がこういう結果をもたらしておるということで、これはむしろ国権の最高機関としての国会におかれて、医者の充実というか充足についてひとつまたお力をかしていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  それから次に、例の管理職関係のあれです。これはまた詳しく御説明する機会もありますし、先年この制度を設けていただいたときにも御説明申し上げたところでありますけれども、いわゆる管理職に当たる人々の年間の所得というものを民間の場合と比べてみますと、これが非常にへこんでおる。給与のいわゆる本俸の面では、これはわれわれバランスをとってきておりますけれども、年間所得において格差があるのはどういうわけだろうかということから問題を把握いたしまして、昨年のようなことで、やはりこれは特別給のほうに問題があるということで、民間においても役職手当のようなものを基本にこれを入れておるということから、お願いをして、最高二五%以内という限界の中で処置することをお許しいただいたわけです。そして昨年の関係では二五%を多少遠慮して二〇%ということで打ちどめをしておるということが一つと、それからもう一つは、底辺の辺で行政職の方々に匹敵する、それに接着するたとえば刑務所長とか、ああいう特殊の、特別の俸給表適用を受けておられる方々、これとのアンバランスがどうしても目立ってきたと、そこで考え方の筋道としては、それらのアンバランス、職種によるアンバランスをひとつ何とか是正しないと全体の調和がとれないということからこれを広めようと、ついてはいままで二段階になっておりましたのを三段階にして、そして法律のお許しを得ておる二五%までこれを持ち上げていこうということでございまして、これは官民比較の結果からくるやむを得ざる措置であるというふうに御了解いただきたいと思います。  それからもう一つは、この措置は、別にそれに該当しない人たちの分け前を取り上げて管理職の連中に持っていくのでは決してありませんと、これは全然別のワクとしてこの措置をとっておるんで、その分は官民格差とは全然別の問題として大蔵省のほうの予算上の措置をお願いしてのことでございますよということを申し上げさしていただきたいと思います。  それから特殊勤務手当関係は、これは毎年気にしておりますが、今後も十分御趣旨を体して勉強を続けていきたいと思います。  それから任官行為という問題につきましては、御承知のように、現在いわゆる公務員法系統では、人事院の定める日まで従前の例によると、いわばこれは職階制が確立されるまでは従前の例によるというたてまえがございます。  それから行政組織法の関係でも、また附則の関係で、当分の間は、職階制ができるまでは従前の例によるというのがありますから、その限りにおいて従前の例的な扱いをすることは、法律的に許されておると。しかし、御指摘の問題は、私ども——どもと、いつも自分個人のことを申し上げて恐縮でありますけれども人事院のお話が出ましたから、これは法律的にはそういうことになっておっても、なるべくそういう区別の扱いというものはだんだん解消すべきだということを非常に強く部内で述べまして、そうしていま御指摘のように、まあ一年というところまでいきました。もっと前は長かったんです。われわれとしてはそういう方向に努力をしております。そういうことだけを申し上げさしていただきたいと思います。
  57. 山崎昇

    山崎昇君 まだ二、三答弁漏れているようですけれどもね。人事院は一年くらいやっている、しかし省によっては二年も三年もやっているところがある、あるいは入ってきてすぐ、あなたののぼされた従前の例で任官さしているところ、まちまちじゃないですか。そういうことが出てくる、そうすると、これは本人にとりましては、あとの昇格から何から全部違ってくるんですよ。だから私は、人事院というのは統一的な人事制度をやるならもう少し現状を調べてきちんとすべきだし、基本的に言うならば、従前の例によるということがあったって、もう公務員法上では特別職と一般職がありませんで、給与法上でいうと八等級制に職務が分かれておって、暫定的にせよ、そういう身分制度そのものはもうなくしてきている、あるいは恩給、年金の上でももうそういうものが必要なくなってきている。そういうことを考えると、もう少しあなた方は積極的にそういう点は直すべきじゃないですか。私どもから指摘をされると、いろんな言いわけする、答弁をする。そんなことでなくて、人事院、さっき言われましたように、何かこのごろは人事院というのは待ちの政治である、昔の。同じ佐藤さんだからそうなのか知らぬけれども。しかし、少なくとももう少し積極的にそういう昔の残滓をなくするならなくするようにしてもらいたいと思うんですよ、これは。  それからいまあなたから特別給の答弁がありました。これは去年、おととしはおととしの現状でありまして、変えるんならことしなぜじゃ調査しないんですか。ことし変わっているかもしれないじゃないですか、特別給というものは。それを永久的に規則で割り増しするなんというやり方はこれは不当である。それから私から言わせるならば、上級職は俸給の調整があり特別調整があり、今度また特別給の割り増しがあり、至れり尽くせりですよ。あわせて八等級制は指定職俸給表というものをつくって二段階上げた。しかし、昇格ということができないものだから、あなた方は、ことばとして、指定外なんということばを使って上級職は至れり尽くせりじゃないですか。一般職はそれに比べて等級別定数で押えられる、昇格基準で押えられる、現実的に運用で押えられる、そしてあなた方が目玉と言われたさっきの中堅職員は去年より低いような俸給表になってくる。どこに一般職にあなた方愛情がある人事行政やっておりますか、言うならば。だから私は、この特別給の割り増しについても、やるなら来年もう一ぺん調べて、ほんとうに足りないのか足りるのか。それからさっき申し上げたように、いままで端数だ端数だといって打ち切ったものを、言うならば、公務員全体としては民間との差は縮まっていないんですから、その限りで言うならば。そういう意味で言うなら、公務員全般に特別給が措置をされるような方向をすべきであって、それをやれば全体の収入変わってくるんですから、何も上級職だけ割り増しせぬで済むんですよ。私は人事院の態度としてどうしても納得できない、そういう点は。そういう意味で、きょうは時間ありませんからこの程度にしますが、最後に寒冷地給が近く勧告出るようでありますが、一体これはどういう方向をとるのか。今度はせめて方向なりでもこの機会に明確にしておいてもらいたい。言うならば、薪炭加給の面を上げるのか、あるいは石炭加給の面を上げるのか、あるいは定額の方法を変えていくというのか、多少級別是正をやっていくというのか、せめて方向くらい、それからいつごろ大体勧告出すのか、これはひとつここで明確にしてもらいたい。その答弁で終えたいと思うんですが、さっき答弁漏れありましたよ。地方人事委員会勧告について総務長官にもお尋ねしているんですから、その点の答弁を重ねて求めます。
  58. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 先に二つほど御答弁申し上げたいと思います。  寒冷地手当につきましては、従前から地域問題を中心にして検討してまいっておりますけれども、昨年の冬はたいへん暖冬でございまして、そういう関係で延び延びとなってまいっておりますが、さらに寒対協議会その他の意見も現在聞いおるところでございまして、勧告関係の仕事が一段落いたしましたあとで、さらに検討をしてまいりたいというふうに思っております。  それから先ほどの御答弁を申し上げる関係で残っております関係は、各県の人事委員会関係がございますが、この関係は、民間調査につきましては一緒にやっておるわけでございますけれども、その場合に、同じ調査表を人事委員会が一枚持ち、私どもが一枚持ちまして分けております。したがって、それぞれの人事委員会におきましても自由に集計ができるという関係になっておりますが、しかし、実際問題といたしましては、私どもが集計を全般的にいたしますので、その際各県別の集計もいたしておりまして、それを勧告が終わり次第各都道府県には直ちにお貸ししておるという状況でございます。したがって、現在すでに各府県においては持っていってもらっているという状況でございます。で、実際には十月に人事委員会勧告しているところが普通でございまして、早いところは九月でやっているところもございますし、十一月でやっているところもあるという状況になっております。
  59. 本名武

    国務大臣(本名武君) 私へのお尋ねの第一点は、地方公務員についてでありますが、地方公務員につきましては、もう申し上げるまでもなく、私どものほうの直接の関係ではなく自治省の関係でございますけれども、さりとて私ども重大な関心を持っております。したがいまして、先刻申し上げましたとおり、関係閣僚会議におきましては財源等を含めまして、同時に政府としては検討するという態度をとっております。なおまた人事委員会勧告につきましては、これはもう御指摘のとおり、やはり早急になされることを期待いたしてそれぞれ処置をとるようにいたしたい、かように考えております。  それから第二点の官職につきましては、私どういう、質問の御趣旨が徹底いたしませんのははなはだ申しわけございませんけれども、なるほど戦前には、つたない私の知識からいたしましても官と職は別に扱っていたように記憶いたしております。しかしその後におきまして、戦後におきましては、別に区分なく官職という一つの一括した用語のようにも記憶いたしておりますので、その点はどうも十分承知いたしませんですが、なお十分検討いたしまして、私自身も明確にいたしたいと考えております。
  60. 渡辺哲利

    説明員(渡辺哲利君) 併任の問題でございますけれども、併任につきましては、国家公務員法百一条で原則的には禁止されておることは事実でございますが、ただ、法律もしくは命令による場合を除いてはという条件がございまして、それを受けまして人事院規則の八の一二で併任ができる場合を規定してございます。法律で禁止しました趣旨につきましては、一応現在のたてまえは、与えられた官職を一人の職員が専念する義務がございまして、それが一応職員一人分が妥当に与えられているというのが原則であろうと思いますので、やたらに併任をするということはやはり基本的にいいことではないというふうに考えられますが、ただそれを徹底いたしますと、いろいろ問題がございますので、八の一二で、そういう特殊な場合にはやってもいいというふうにきめてあるわけでございます。そういうふうにきめてある関係上、浅井先生が書きましたような根本的な支障が必ずしもあるというふうには現在のところ考えていない次第でございます。
  61. 山崎昇

    山崎昇君 あなたがいま言われたけれども、じゃ兼任と併任とどう違うのですか。ほんとうはこれは任用問題はあらためてやります。やりますが、兼任は禁止をしている。兼任された場合には、兼任したほうには給与を払ってはなりませんぞよ、こうなっている。しかし、併任はそういうものがないものだから、そうして法には併任なんてありませんよ、しかし人事院規則に併任があることは承知しておりますよ。だから、どこが違うのか。だから浅井さんに言わせれば、兼任を禁止をしておいて困るもんだから、併任ということばを使って同じことをやっているのだから、制度としてはまことに遺憾だということを本人自身が言っている。自分でつくっておいて、自分でいまごろおかしいということを言っている。だから私は、これはあらためてまた人事行政全般について議論をしなければならぬときがあるでしょうから、やりますが、いずれにせよ、いま併任というのは何人ぐらいおって、その併任に対してどういう給与等が支払われているのか、現状がわかったらひとつ教えてもらいたいし、兼任と併任とは、じゃ、どこが違うか。
  62. 渡辺哲利

    説明員(渡辺哲利君) 百一条には「官職を兼ねてはならない。」というふうな表現でございまして、そこで、兼任という、あるいは兼職ということばを使っているわけではございません。ただ人事院規則の場合も、初めは職を兼ねるという意味から兼任ということばを使っておりましたのですが、現在八の一二を制定いたしましたときに、官職を兼ねるというのを、兼任ということばを使いませんで、併任ということばに統一をしたわけでございます。したがって、現在は兼任、兼職ということばはございませんで、全部併任ということばを使って、併任が官職を兼ねるということをあらわす用語というふうにしてあるわけでございます。
  63. 山崎昇

    山崎昇君 見出しに「兼職禁止」と書いてあるじゃないですか。
  64. 渡辺哲利

    説明員(渡辺哲利君) そういうことでございまして、現在、併任の数がどのくらいあるかというようなことにつきましては、調査数字がございませんので、お許しをいただきたいと思います。
  65. 山崎昇

    山崎昇君 調べてください。
  66. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本件についての午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半再開すること  とし、休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  67. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、一般職職員給与についての報告並びにその改定についての勧告に関する件を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  68. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 すでに午前中に相当突っ込んで同僚議員より質問ございましたので、できるだけダブらないように質問したいと思うのでありますが、先回から給与の問題については相当質問をしてまいりましたので、きょうはまず初めに、先ほど私、総裁の答弁を聞いておりまして、確かに私たち四月実施に踏み切ったということについては、これはやっぱり評価しなければいけないと、こう思うんです。まあしかしいろんな新聞等の社説から、先ほど同僚議員が、四月実施に踏み切ったことについて総裁にその根拠のようなことを聞きました、社説を引いて政治主導型とかいろんな問題。総裁はその答弁の中で、国会主導型と、こう言うべきだと、そこら辺の答弁のときには総裁相当色をなしておっしゃっているような感じでありました。実は私たち、やっぱりこの問題は、かねがねから四月実施ということは相当言ってまいりましたし、総裁は先ほどの答弁によりますと両建てでいく、そういうふうにおっしゃっておりましたけれども、われわれとしてはどうも総裁の——これはやっぱりなぜこんなことを聞くかといいますと、人事院の独立性というような意味から考えてみても、総裁の答弁の中にも最後のほうにありました、国会主導型とかいろいろ言いますけれども、そういうようなものには左右されないというような話もございましたけれども、四月実施に踏み切ったのはなぜか、実はこういうわけなんだということをやっぱりはっきりしておかないといけないと思うんですね。そこで、その四月実施に踏み切ったということについては、先ほども言いましたように私たちは評価はいたしておりますが、人事院がいわゆる四月実施に踏み切った基本的な理由を簡潔でけっこうですから教えてください。
  69. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 一口に申しますというと、これが正しいという結論を得たというわけで、したがいまして私どもも、われわれとしての自主性を貫きながらいいことをしたという気持ちでおります。
  70. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 えらい総裁簡単におっしゃいますけれども、これが正しいという結論に達したと、こう総裁はおっしゃっておりますが、もう少し、それは確かにそうでしょう、いろんな要素が集まって、そしてこれが正しいという結論になったんでしょうね。その要素というのはやっぱりあると思うんですよね、こういうふうな要素。先ほどは国会の決議の話も総裁自身から出てまいりましたけれども、これも一つの要素であろうと思うんですが、それ以外にもいろんな要素があろうと思うんです、私は。ただ端的に、これが正しいという結論ということでございますけれども、それをもう少し詰めて言うとどういうことなんですか。
  71. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先ほどは個人的な心境まで述べてちょっとよけいなことを申し上げ過ぎたなあという反省をしておりますが、ほんとうを言えば、まあそういうことも真相の一端だと申し上げてよろしいと思います。結局、私個人としては最初から両論立つということで考えてきておりました。しかしながら、まあ多年五月ということでやっておりますし、それが完全実施にもまだならないのに、いたずらに四月説についての表立った検討をするということも、これまた世間知らずのやり方でありますから、そこはまあ控えておったわけでありますが、幸いにして、先ほど触れましたように、そういう議論が高まってまいりまして、そして内閣委員会のきわめて強烈なる附帯決議までいただいた。個人的には私は非常にあのときはうれしく思いました。そういう励ましのもとに、たびたび触れましたように、やっぱりわれわれとしては国民大衆、納税大衆の感触というものも、これは一がいに無視できないんだと、十何年も五月できておったものを、もう手のひらを返すように、別段の理由もなしに四月にしましたと言うべき立場にはわれわれはいないということも一方にございまして、その意味からいって、ここの附帯決議が非常に有力なるうしろだてとしてうれしかったということにもなるわけであります。それが結局さらにわれわれの検討を進めさせる結果にもなりましたし、ちょうど今回の勧告に間に合ったということに尽きると思います。
  72. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かに、その附帯決議というものがそれだけ総裁有力なものなら、われわれもこれから法案つくるときは一生懸命附帯決議つくらなければいかぬと思うんですよね。実際はもっといろんな問題も私はあったんだろうと思うんです。先日から私たちが聞いているところによりますと、やっぱり総裁かねがねからおっしゃっているように、民間調査が四月ということだというのが一つと、それから民間事業所の六八%ですか、は四月実施に踏み切っていると。それから、それ以外に国会の決議なんかもあると。そういうようなことを事務当局から説明はいただいております。そういう点からいきましても、私は、実際は民間が四月実施しているという——去年まではこの表はありませんでしたけれども、ことしはこの表が資料としてついておりますね。この資料によりますと、四月実施が六八%ということになっておりますけれども、それじゃ昨年はどうだったかということで実は内々聞いてみますと、昨年もやっぱり六七・一%だったというんですね、四月実施が。それまでは四十何%で、五割をオーバーしていなかったと。しかしながら、そういう点からいくと、やはり昨年の状況とことしと比較すると、違っているところは国会決議ぐらいなもので、国会の中で私たちは、決議はこの前のときはしなかったのじゃないかと思うんですけれども、しかし相当われわれは言っているわけですね、前前からね。四月実施ということは言ってまいりました。そういう点から考えてみますと、ことし四月実施になったということが、私は何となく、こういう点をあんまり議論すると、四月実施になったということはいかぬと言っているような感じがしてきましてね、自分で言っていることと矛盾するような感じになってきますのでこれ以上言いませんけれども、総裁の説明を聞いておりましても、まだ私はこの四月実施になった理由というのがはっきりしないような感じがするんです。やはり人事院が独自に調査をし、かつ独自にどうしても四月実施にしなければならなかったという、何というか、具体的な理由というものがはっきりしないのですがね、そこら辺のところはどうですか。
  73. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) もうここまできてひっくり返るおそれはないという安心感を与えていただきましたことから気をゆるめて申し上げるわけですけれども、ここででしたか、どこかの御審議の席上で私はちょっと触れたことがありますけれども、筋の問題としては、四月調査で発見された格差だから四月にさかのぼって埋めるのが正しいのではないかという論ならばわかるというような言い方で申し上げております。これは速記録にも残っておりますから、ごまかしできないのですけれども。そういうことから言いますと、これは両論立つのです、確かに。そしてもう長年五月ということで踏み切って人事院はそれをずっと守ってきておる立場もございますし、その理論一点ばりについてはまたこれはいろんな議論の余地があると。しかし私はそれは正しいと信じておりましたけれども、そこに先ほどの附帯決議で民間企業等のほとんど大部分が四月から実施しておることに顧みということを非常に強く打ち出されたわけです。そこで、いまのお話にもありましたように、われわれ調査してみると、昔は確かに、おっしゃるように半々ぐらい、秋組の賃上げが相当ございました。ところが、ここ三年ばかりの間にが然これがふえて六八%になった。これは去年とことしじゃまたそこに飛躍をいたしておりますね。そういう意味国会の附帯決議というものは、私個人にとっては非常に大きなうしろだてになって、今回の報告書の中でも、それにも触れながら慎重に検討した結果ここに踏み切ったと、まあよけいなことを申し上げて恐縮でありますけれども、そういうのが本来の、ほんとうの心境でございます。
  74. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、この問題はそのくらいにしまして、次に移りますが、今後の勧告の取り扱い並びにこの財源の措置等について、先ほど答弁ございましたけれども、重ねて二、三お伺いしますが、一つは、財源措置について今後どういうふうな検討が行なわれるのか具体的に教えてもらいたい。  それから、この点についてもちょっと話ございましたけれども、再度お伺いしておきますが、閣議決定の時期ですね、これは大体いつごろになるのか。  それから大蔵省当局お見えになっておりますので再度お伺いしますが、当然、補正予算を組まなければいけないということになると私は思うんですが、その補正予算の規模等についてはどういうぐあいに考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  75. 本名武

    国務大臣(本名武君) 閣議決定の時期につきましては、先般の十五日御勧告をいただきました直後に関係閣僚会議を開きまして、この勧告を完全実施することを目途にして財源その他の関係省の折衝をいたしまして、おそくとも二十五日には、閣議決定をいたしたいというスケジュールで進んでおります。いまのところ、財政当局を中心に作業も進んでいるようでございますので、二十五日には決定できる見通しでございます。  それから財源措置につきましては先ほども大蔵当局から詳しくお話がありましたとおり、一応いま関係省において、特に大蔵省を中心に検討中の結果を待って、予備費その他の財源ともにらみ合わせながら処置をしたい。数字につきましては先ほど大蔵省からお話のあったとおりでございますので、あらためてまた大蔵省からお話があろうと思いますが、いずれにいたしましても二十五日には正式に政府として決定をいたしたいと考えております。
  76. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 先ほど政務次官から御答弁申し上げましたけれども、今回の勧告実施によりまして一般会計だけでも千三百八十億という形の巨額な財源が要るわけでございます。本年度の予算編成にあたりまして千八百億円という相当従来よりは大型な予備費を組んだわけでございますが、御承知のように、本年度は非常に災害が多い、現在まで大体被害報告等から推計いたしますと、災害関係の支出だけでも八百億ぐらいになるのではなかろうかと、こう考えております。ことしの予算では、ことしの災害——現年災と申しておりますが、現年災に対して百七十億ほど計上したわけですけれども、これもはみ出しまして、六百三十億ほどの災害に対する追加が必要である。そのほかにいまの給与改定の千三百八十億、そのほかに通常の年に大体見込まれるような義務的経費の義務的支出、予備費の支出を考えまして、約二百億ぐらいかかるのではないかと考えております。さらに義務的経費の精算ということが毎年行なわれるわけでございますけれども、その精算不足も二百億をこえ三百億近くになるのではないか。こういうことを合計いたしますと、二千四、五百億の費用の追加が必要である。現在予備費千八百億でございますので、今後それにつきまして所要の財源手当てをしなければならない。ただ、まだ現在の段階では一般税収がどのくらい伸びるか、幸い景気は上向きになってまいりましたけれども、見当がつけかねるということで、補正の規模等につきましてはまだ申し上げられないかと思っております。  なお、このほかに項目といたしましては、過日の生産者米価の値上げ、こういうことによりましてどの程度の追加財源ができるかということもいま検討中でございます。
  77. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、私は毎年この給与の問題のときにいつもお伺いしていることの一つに、財源措置にあたりまして行政経費の削減ということがさんざん言われますですね。この問題はことしもやはり同じように既定経費を削減して、それでそれを一部振り当てる、そういうようなことを聞いておるわけでありますけれども、この点はどうなんですか。
  78. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) ただいまのような非常にはみ出した形の追加需要がございますので、ことしも例年どおりの行政経費の節約で財源捻出の一助にしたい、こう考えております。
  79. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その行政経費の削減総額というのは——給与に振り当てるためのですね、これは過去二、三年振り返って毎年どのくらいになるのですか。
  80. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 四十四年度は全体で八十一億でございますね、それから四十五年度が百四十七億、四十六年度、去年でございますが百六十三億というような数字になっております。
  81. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の手元にあります資料によりますとちょっと違うのですが、何でやろ。おたくの橋口主計局次長さんの説明によりますと、昭和四十四年度三百八十二億があるのですね、これは何か間違っていますか。
  82. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) ちょっと説明が不足いたしましたのでございますが、ただいま申し上げました数字は一般経費の、いわゆる行政庁費関係の節約額を申し上げたわけでございます。公共事業の施設費などの節約など合わせますと四十四年度が百十二億、四十五年度が二百三億、四十六年度が百六十三億。いま御質問の三百億というような数字でございますが、そのほかに、補正の場合にはいわゆる節約のほかに既定予算の不用額が当然出てきますから、それを足しましたものがその数字かと思います。
  83. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、こういうふうな既定経費の節減の中で、ことしはもうきまっているのですか、たとえば何%とかいうような、毎年五%、三%と二段にきめたり、また八%、四%であったり、過去いろいろありますが、そこら辺のところは、ことしはどうなのですか。
  84. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 御承知のように、四十五年度、四十六年度八%の節約をやってきているわけでございますが、ことしも大体同率の節約を私ども考えているところでございます。
  85. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、私はやっぱり二点疑問があるのです。  一つは、国の予算が要するに毎年これだけ節約ができるというように、それだけ、言うたら余裕を持ってといいますかね、要するにそれだけだぶついて予算を組んでいるのかどうかということ、これは要するに毎年同じことをやっているわけですから。ということは、毎年同じように、いわゆるいいかげんなと言ったらおかしいけれども、そういうような予算の組み方をしておるのかというふうな疑問が一つ。  それからもう一つは、これは毎年言っていることでありますけれども、これは私たち内閣委員会で行政管理庁を担当し、行政監察の問題について相当真剣に取り組んでいるわけでありますけれども、この行政監察に関する経費も毎年やっぱり同じように八%、その年の最高の額のいわゆる削減が言われるわけですね。これは私はいつも言っていることでありますけれども、これはほんとうに行政監察というのはほとんど旅費が中心なんです。しかも、会計検査院とは多少性質は違うかもしれませんけれども、現在の社会情勢やいろいろな点から考えてみても、私たちは、少なくとも行政監察に関する旅費というのはこれは削減しないでほしいと思うのですけれども、他の官庁との関係もあっていろいろ問題もありましょうから、削減するにしても、二段階に分けたならば少なくとも会計検査院並みの削減の経費といいますか、削減の率にしてもらいたいと思うのです。そこら辺のところはどうですか。
  86. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 確かに御指摘のとおり、毎年成立した予算を補正のときに節約をかけていくというようなやり方、私どもこれがベストの方法だとは思ってないわけでございます。ただ、問題点といたしまして、先ほど御説明いたしましたとおり、ことし災害等の発生が当初予期したより相当大きかった、相当多額の予備費を計上したわけでございますが、これがはみ出してきているような現状にある。それと同時にまた、ことしはいわゆる公債発行対象以外の一般経費でございますが、相当財源事情が窮屈でございまして、そういうような点から節約を行なわざるを得ない。ただ、いつまでもこういうような状態を続けるかというのが御指摘の趣旨かと思いますけれども、私どもといたしましては給与改定に備えまして当初予算に五%相当額を乗せているわけでございますが、こういうような五%相当額というような組み方がいいかどうかというような問題も含めまして今後の検討に資したいと、こう考えているわけでございます。  それから後段の御指摘の行政監察関係の旅費の問題でございますが、現在私ども八%節約をほかにはかけておりますが、特に義務的な検査旅費関係、たとえば検査院の検査旅費とか鉱山保安の監督旅費とか航空機の検査旅費とか、そういうような種類のものにつきましては四%というような特別率を適用するというようなことが従来とられてきております。いま峯山委員の御指摘のような行政監察の実態を、私ども御指摘の趣旨を踏まえまして早急に検討いたしたいと思っております。
  87. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その問題は、多少前向きな答弁でございましたので、その程度で終わりたいと思います。  次に、人事院にお伺いしたいのですが、アップ率の問題について二、三お伺いしたいと思います。  今回の人事院調査にあたって、ここに資料、私の手元に届いておりますけれども、いわゆる調査対象の規模ですね、これは要するに従来からほとんど変わってないわけですけれども、いわゆる変わってないとはいいましても、よく調べてみますと、五百人以上の事業所のパーセントですか、これがことしは減少しておるわけです。これはかねがねから、いろいろなところの要望が人事院にもあったと思うのですけれども、やはり現在の社会情勢から考えてみても、少なくとも調査対象改善というのは相当前々から要望されておったと思うのです。実際に具体的に人事院調査の結果を見ますと、五百人以上が、全体の事業所のパーセントにして、ことしは二千四百八十件で三六・六%、昨年は二千六百五十九件で三九・八%。昨年よりことしのほうが減っているわけですね、三・二%、ほんのわずかでありますが。ということは、これは全体として、わが国のいわゆる民間の企業の形態、あるいはその規模の状況等から考えても、私は、少なくとも全体の賃金のアップ率にやっぱりマイナスの影響を与えたのじゃないか、こういうぐあいに思うのですが、こういう点については、人事院としてはやっぱり慎重にこういう点まで考えていらっしゃるのかどうか。これはどうですか、ここら辺のところは。
  88. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 官民比較の場合の民間調査関係でございますけれども、御指摘のとおり、規模別にいたしますと、五百人以上の関係が三%ほど落ちていることは確かでございます。ただし、われわれといたしましては、民間における会社の規模百人以上、事業所の規模五十人以上の民間の全部を調べるということが原則でございまして、そのために規模別産業別に抽出を行なっておるわけです。したがって、抽出いたしておりますから、その比率で、いわゆる母集団と申しますか、民間における全部のものを調べるという形にいたすということが原則になっておるわけでございます。したがって、実際には民間における状況をそのまま全部把握しておるということになっておるわけでございますが、職種別にいろいろ比較をいたしておるわけでございますけれども、たとえば課長をとってみますと、民間の課長を一応調査してまいっておりますのを、五百人以上と五十人以上というふうに分けてみますと、去年の場合には五百人以上のウエートが、比率が六七・二%でありましたのに、本年の場合には六九・三%というふうにして、ある職種について二%上がってくるとか、たとえば部長につきましては一%上がっておるとか、こういう形が職種によってそれぞれ対象にする事業所が違ってくるわけでございますが、いずれにしても、これは民間における全事業所、全従業員について比較をするということをたてまえにいたしておるわけでございます。
  89. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長のおっしゃることよくわかりますけれども、いま局長はちょっとだけ例をあげた、たとえば課長、これは課長の場合も昨年と比較すると二%多くなっているわけですね。部長のほうもこれは多くなって、そのほかの、課長、部長以外のいわゆる行(一)の、一般職員の方の比較についてはどうなんですか、そこら辺は。
  90. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 例を課長、部長等について申し上げたわけでございますが、たとえば係員について申しますと、昨年の場合には六六%ちょうどでございましたが、今年の場合には六八・四%というふうにして、二・四%ふえているという形に実際にはなっております。
  91. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、昨年の調査と今年の調査比較してみて、全体として五百人以上の事業所が少なくなっているわけですから、この比較の率から申しまして、結論的には少なくなっているわけですから、要するに中身でも、やはり給与のアップ率についてはマイナスの影響を受けるということはありませんか。
  92. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) これは抽出調査でございますので、たとえば五百人以上の事業所については一〇%抽出するというようなことにいたしますと、その一割について調査をするということになります。この一割について調査した結果を十割について広げて比較をするという形になりますので、その関係は、いわば民間における状況をそのまま反映させるようにいたしておるわけでございます。
  93. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこの技術的なことはわからないのですが、五百人以上の事業所の一割を抽出するわけですね。そうしますと、それ以外の、たとえば百人以下の事業所とか、五十人以下の事業所でありますね、そういうようなところは同じように一割なんですか、そこら辺のところはどうなんですか。
  94. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 全体の事業所数が三万七千ほどございまして、そのうち七千二百ほど抽出するということで、平均的には約二割抽出いたしております。そうして規模別に抽出率を変えておりますけれども、大きい事業所につきましては大体全数調査するが、あるいは二分の一という形で非常に抽出率を高くとっております。それから小さい事業所については一割調査をする。そういう形でそれぞれ抽出率を変えておりまして、大きいほど高い抽出率を使うという形にしております。
  95. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長ね、どうも私、局長の答弁を聞くとだんだんわからなくなってくるのですが、先ほど五百人以上というのが一割という話があって、それは間違いということは訂正をしても、要するに三万七千あって、七千二百の抽出をする、そうすると大体二割で、小さい事業所は二割で、大きい事業所はほとんどという話がありましたね。そういう答弁だったのですね。そうすると、全体のこういうような集計が出てこないのではないかと思うのですが、これはどうですか。
  96. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 例示が何でございまして失礼いたしましたが、最初のは、たとえば大きな事業所について一割を抽出した場合ということを申し上げたので何でございますが、抽出のしかたは全体的にいえば約二割抽出しているという結果になっております。しかし、それは各事業所の規模別に抽出率を変えておりまして、大きい事業所はたくさんとる、小さい事業所は数はたくさんございますから、比率は少ない。たとえば小さい事業所については一割ぐらいとる、大きい事業所については半分ぐらいとる、二分の一ぐらいとるというようなことで、全体平均しますと二割ぐらいになるということでございます。
  97. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、私はそういうことを聞いているのじゃなくて、現実の、このあらわれた姿として、要するに五百人以上の事業所の数が昨年より減っておるのですよ。ということは、給与の面でも、皆さん方が出した差額の問題の中でも、少なくとも全体としてアップ率が一%なり二%低くなっていはせぬか、こう言うとるわけです。そうですよ、そうなりますよ、やはりこれは。そこら辺のところはどうだと、こう聞いておるのです。
  98. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) いま申しましたように、抽出調査と申しますのは、一〇〇%のうち何割かを調査をいたしまして全体をつかむというのが抽出調査でございます。したがいまして、いま申しましたように、実際に調査するのは大会社の場合にはかりに二分の一、それから中小企業、小さい会社の場合には十分の一というふうに調査いたしましても、大会社の場合には、それが二分の一の場合にはそれを二倍して全体に直す、小さい会社の場合には、十分の一の場合には十倍して全体に直すということにしまして、全部足しまして現在の民間の全状態を反映させるということが調査の主眼でございます。そうした結果は、さっき申しましたように、民間実態が大会社のほうにウエートがかかってきておりますから、若干ずつ大会社の方向にウエートが二%ぐらいずつ増してきているということでございます。
  99. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもまだ納得できません。わからぬ。もうこれ以上は言いませんけれども、要するに五百人以上の大会社が何%、何事業所、それで小さいところは何事業所とピックアップするわけでしょう。そのときに、やはり少なくとも初めに幾らか人工的に大会社をどのくらいにしようとか、パーセントをきめるときにやはりそこら辺の人工的なあれが入ると思うのですね、やはり初めにどうしても。その全体の数をきめるときに、どうしてもそれをきめるわけですから、大会社のほうが少なくなれば、全体のアップ率が低くなるというのは当然じゃないですか、おかしいかな、私の考えは。そこら辺のところ納得できません、あとでもう一回教えてもらわなければならぬ。いずれにしてもこの問題は、少なくとも昨年から比較してみても、これは相当、三・二%とはいいましても、これは現実にこれだけ少なくなっているのですから、そこら辺のところはもうちょっとわかりやすく、しろうとにちゃんとわかるように説明してもらわなあきませんわ。それはそれくらいにしておきます。あとでこの点についても、ちょっと答弁をしてください。  それから次に、これは毎回私が言うことですが、ことしの春闘の妥結の状態は、もうすでにそちらのほうで調査していらっしゃると思うのですが、どういうふうな状態であったのか。遡及改定率という、これはことしは非常に少ないですね。昨年までは三・五四%ですか、そういうものがありましたね。ところが、ことしは一・六四%ですか、非常に少なくなっているわけです。少なくなっているということは、これで十分カバーしているのかどうかわかりませんけれども、そこら辺の状況はどうなんですか。それからその後、追跡調査で拾えなかった事業所一体どのくらいあるのか、この点あわせて。
  100. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 本年の場合には、いわゆる春闘が非常におくれそうだという感じが最初ございまして、そのために、調査といたしましては、なるべく本格差でとらえるという方向で調査をいたしたわけでございます。したがいまして、調査員が参りまして、四月の月内に支払われていなくても、その後ベースアップがきまりまして、個人別配分がきまって四月分として追い払いをしたというものにつきましては、すべて本格差の中に取り入れるということで、今回は特にそういう調査をいたしたわけでございます。その関係で、本格差のほうが去年よりも多くなり、積み残しの関係が少なくなったという関係一つございます。それからもう一つは、最初のわれわれの予想に反しまして、いわゆる春闘が非常に早く済んだという点が両方ございましたために、いわゆる積み残し関係というところが非常に減りまして、昨年は二六%くらいでございましたのが、ことしは半分になったということでございます。
  101. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますとね、先ほどちょっと言いましたように、少なくなった理由はわかりましたけれども、追跡調査で拾えなかった事業所というのは全体で何%ぐらいあるのですか。
  102. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 追跡と申しますか、調査員が参りまして、いま申しましたように、いわゆる四月分として支払うというものにつきまして、調査員が参りましたときに、個人別配分がありましたものは本格差の中に取り入れる、それから個人別配分がございませんで、ただその会社、事業所におきまして何%いわゆる賃上げをするという率だけきまったというものにつきましては、その率をとってきまして、いわゆる積み残しという形で取り入れるということにいたしたわけでございますが、春闘、いわゆるそういう交渉をしておって、いつから上げるかという点もまだきまってないというものにつきましては、これは調査をいたしておりません。
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもね、調査してないということでありますけれども、私いろいろ聞いたところによりますと、全体の事業所の中に、拾えなかったところが一〇%ぐらいはある、特に食品とか海運関係とか、そういうようなところに多いという話を聞いておるわけですけれども、こういうようなところをいろいろと調べてみますと、いろいろな試算もやってみたんですけれども、そういうようなところを全部含めてみますと、少なくとも一%ないし一・三%か四%ぐらいは、これは全体の昇給のパーセントに加算してもいいんじゃないか、そういうぐあいになると私は思うのですけれども、やはり遡及率の取り扱い、これは今後はどういうぐあいにするのか、基本的にこれははっきりさしていかないといけないんじゃないかと思うのですけれども、四月実施がこれからは定着していくでしょうし、今後の方向としては人事院はどういうように考えていらっしゃるのか、ここらのところ、ちょっとお伺いしたい。
  104. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 毎年そういう積み残しの問題を御追及を受けまして、多過ぎるじゃないかというおしかりを受けて、そのつど、結局これは受身の態勢でいっているわけでございますから、春闘の時期についての勧告権でもお与えいただかないことには根本的な解決にはなりません、などというようなことを申し上げてきたわけです。ことしの場合は、お目にとまりましたように、たいへんその辺はぐあいよくいきまして、おそらくお喜びのことばをいただけるだろうというつもりで出てきたわけですけれども、いずれにせよ、この根本問題は、調査時期を今度はおくらすか、あるいはそうでなければ春闘をうんと早めていただくかということのどっちか一つだろうと思います。調査時期をおくらせて、全部春闘が終わられるまでゆっくりお待ちして、それから調査に出かけるということは考えられますけれども、これもたびたび申し上げましたように、やはり従来の八月勧告という線を守るわけにはいかなくなってまいります。そういう点で、やっぱり公務員諸君のお気持ちその他も考えてみますと、やはり従来の行き方をとりながら、そしていま給与局長からも触れましたように、この調査のやり方についても、とことんまで粘って調べてこいよというお声がしょっちゅうあったわけです、それを忠実に去年あたりから守って、その成果もここにはあらわれておるということを申し上げたいので、あとはやっぱり春闘の時期をもうちょっと早目にやっていただくと——やってくれとは申し上げませんけれども、おやりになるならば早目にやっていただきませんと、結局しわ寄せをわれわれがかぶることになるという論理になるわけでございます。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、その問題はそのくらいにいたしまして、その次に行きます。私に与えられた時間がもう少ししかありませんので急いでいきますが、実は最近の、この人事院勧告並びに公務員給与に関する新聞並びに週刊誌等マスコミの論調を見ておりますと、どうも私たちがここで質問するのに、何というか、鈍るような記事が相当あっちこっちにあるわけです。要するに、たとえば最近の大幅勧告で、公務員の給料は昔に比べて民間相場から見劣りするどころか、だいぶよくなってきたと、そういうようなのがところどころ出てくるわけです。私はそういうのを見ると、確かにわれわれが質問する気魄は鈍るわけですけれども、しかし、それは一面では私は当たっていると思うんです。一面では当たっているというのは、これはやっぱり指定職俸給表とか、そういうような上級公務員に対する人事院のサービスぶりというのはたいへんなものだと私は思うんです。確かにそういうふうな点からは、これはマスコミの皆さんが指摘するようなものだろうと私は思うんです。しかしながら、現実に一般職の公務員の皆さんの給与実態というのは、何回かこの席でも申し上げておりますけれども、いろんな問題が山積みしていると私は思うんですね。特に、たとえば初任給の問題にしてもそうです。今回は初任給の問題について相当引き上げをやり、かつ民間との差を縮めたとはいいましても、それでもやっぱり民間に比べて二千円、三公社に対して五千円以上低いんじゃないか、こういうぐあいにいわれておりますし、さらにそのほか行(二)の問題がありますね。それから行(一)の中でも官民格差が今度は一二・二五%ですか、そうですね、人事院調査で。しかし実際の改善は一〇・六八%、まだまだそこら辺のところは追いついてないんじゃないか、そういうぐあいに思うんですけれども、こういうような問題もまだまだ一般の方々が認識していらっしゃるのとはずいぶん違っている。そのほかまだずいぶんあるんです。たとえば特に問題になっている、先般から私たち——ことしはあれしましたけれども、昨年の給与改定のとき出てまいりました高齢者の昇給延伸の問題ですね、この問題も私は非常にこれは重要な問題だと思うんです。昨年のときにも私たちはずいぶん反対はいたしましたけれども、そのとおり実施されるようになりました。この問題も、これは総理府にも関係ございますけれども、確かに最近は高齢者の定年の問題等がずいぶん取り上げられておりますね。そして五十五歳の定年が六十五歳というような問題も取り上げられておりますし、非常に重要な問題だと私は思うんです。そういうようなときに、現実に昨年の給与のときに、高齢者の人たちがやっぱり二年に一ぺんしか昇級しないとか、一年半に一ぺんしか昇級しないというようなワクがはめられました。こういうような問題も現在から考えてみると、やっぱり時代に相当逆行しているんじゃないか、そういうような感じがするわけです。そのほか給与表を見てみましても、要するに何といいますか、昇級の幅が相当あり過ぎる、そういうような感じがするわけです。もっと端的に言いますと、中だるみといいますか、そういうようなのがずいぶん随所に見られるわけです。こういうふうな問題については、やはりこれから改善をしていかなくてはいけない重要なポイントではないか、私たちはこう思います。  さらにこの問題は、この公務員の給与について総裁どうお考えか、ちょっと私詳細わからないんですが、最近出ました本によりますと、これはそう大きな問題じゃないんですけれども、要するに現在の日本の経済がこういうぐあいに発展してきた根源を、ある学者は全部で三つあげておるわけです。その三つの中の一つは、日本が戦争しなかったことというんです。二つ目が、日本のいわゆる社会保障とか教育とか研究、技術開発に政府が力を入れなかったこととある、二つ目に。三つ目が、ここに関係あるんですけれども、公務員の人件費が民間よりかなり安く押えられたというわけです。こういうことを言っておるわけです。私たちも考えてみると、こういう点はあらゆるところに見られるんじゃないかと思うんですけれども、そういう点も含めて、今後の人事院のこういうような給与に関する勧告のあり方、あるいはそれぞれのこまかい問題等について総裁並びに長官どういうふうにお考えか、ちょっとお伺いしたい。
  106. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 二、三の点を除きますと全く御同感と拝承したわけです。最初におっしゃられました、いまや公務員は安月給ではないというようなことが、ちらちら去年あたりから出始めてわれわれ非常に気にしているんですが、そう思われたらこれはまた困ることなんで、私ども部外の人に対して説明をいたします場合には、たとえば初任給一つとってごらんなさいよと、有力企業の初任給はこうなっている、われわれのほうはこれでがまんしているんだというようなことで、結局企業規模の百人以上というところで押えての水準ですよ、決して有力企業と肩を並べる結果にはなっておりませんよということを口をすっぱくして説明をしてまいっております。その点は私どもとしては、あまり公務員の月給が高い高いと言われるのは困るんです。もっとも公務員の希望者を募るというやつは、あまり安い安いと言われますと、これは希望者がどんどん減ってくるという、きわめて痛しかゆしの立場にわれわれおりますけれども一般的に部外に対しては、いまおっしゃるとおりの気持ちをもって臨んでやっておるわけです。しかしながら今日の給与のあり方というものは、それで完全かどうかということになりますと、われわれとしてはまだまだ力を入れるべきところもございますし調整すべきところもある。そこで先ほど最初に触れましたように、これを機会として根本的な検討にひとつ取り組んでまいりたい、そういう意気込みでおるわけでございます。
  107. 本名武

    国務大臣(本名武君) 御指摘のように経済成長の理由としては、三点おあげになった中で私も同感の点もございます。それはやはり国民全体の協力があったということが第一だと思います。その協力の中身において具体的な御指摘があったわけですが、このことについては、これはそれぞれの立場で判断することでございまして、したがって特に公務員の給与が、人件費が安かったからという御指摘については、これはやはり今日行なわれておりますように、人事院がそれぞれ御検討いただいて適正な勧告を実行に移していくということで解決がされるんではないかと考えております。  それから高齢者の昇級延伸については、この制度、そういうしきたりのあることは承知いたしております。これにつきましては、やはり先ほどちょっと御指摘がございましたが、行政の能率やあるいは若い人に道を開くということ、あるいはことばは悪いですが行政の機能の新陳代謝というようなことも考えながら検討してまいりますと、この制度というものも、しきたりというものも、あるいは今後も持続していくべきではないかとも考えられますが、御指摘の点についてもなおひとつ検討させていただきたいと考えております。
  108. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、高齢者の昇給延伸の問題は、しきたりなんというものじゃなくて去年から始まったところなんですよ。ですから、まだ全然やってない、ほとんど実際には運用されてないんじゃないかと私は思うんですけれども、実際、昨年とことしはいろいろ社会情勢も変わってきたと思うんですよ。そういう点から考えて、ほんとうにこれは大臣、いま最後のほうにおっしゃいましたように本気でこの点は検討していただきたいと思う。要するに昨年は定年の問題等も、五十五歳から六十五歳なんていうような、そういうような話はあまり具体的に出ていないときでありましたし、そういう点から考えてもやっぱり相当慎重に検討すべきじゃないか、こう思います。  それから、その点はあとで答弁いただくとしまして、次に、時間もございませんので、あともう二、三お伺いしておきたいと思います。  もう一つは、いろいろな手当の問題ですけれども、総裁、ことしはいろいろ手当を出しているようになっておりますけれども、たとえば扶養手当の二百円アップ、それから夜間看護手当の五十円アップ、それから航空管制技術官に対する八十円の特殊勤務手当、確かにこういうような点では少しずつばらまいておる感じではありますけれども、まだまだ少ないじゃないか、お粗末すぎるんじゃないか。私たち、航空管制の問題についても、昨年度ずいぶん問題になりました航空機事故が続いた関係もありましたけれども、これはやはりこういうふうな点ももうちょっと分厚くというか、もう少しちゃんとしないといけないんじゃないかと、こういうふうに考えます。  それからもう一点、通勤手当の問題ですけれども、この問題については、一つは、ことしの通勤手当はずいぶん大幅な——大幅と言ってはいかぬかもしれませんが、とにかく従来からすれば大幅な引き上げと言えると思うんですが、全体で八千円ということになりますけれども、要するにこれは四千円までで、あと二千円ですから、これだけになってきますと、少なくともこれはもう全額支給してもいいんじゃないか。全額支給しても、これはどの程度の額になるか、調査したことございますか。この点やっぱり一ぺん、調査したことがあるかどうか教えてもらいたいというのと、それから実際問題、これだけになりますと、大体もう全額支給してもそう変わらないんじゃないかという感じがするのが一つ。  それからもう一点は、何といいますか、通勤手当そのものを給与という概念からはずして、そしていわゆる実費支給、そういうぐあいにしたらどうか。もっと端的に言いますと、通勤手当の問題については免税措置にしたらどうか、そういうふうに私たちは思うんですけれども、これはどうですかね。実際にまた民間では、この通勤手当についてはどういうぐあいになっておるのか、人事院調査のこの報告によりましても、全額支給制をとっている事業所というのは四六・六%というように、もうほとんど半数近くになっているわけですね。そういうふうな観点から考えてみましても、いまいろいろ言いましたけれども、これはそれぞれもろもろの点ありますけれども、少なくとも全額支給にしたらどうかということ、全額支給にするとすればどの程度の費用がかかるのか。また、給与という体系から交通費をはずして、そして実費支給というような感じにはできないものかどうかですね。また、免税措置という、こういう問題については大蔵省はどういうようにお考えか、そういう点あわせて一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  109. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 特殊勤務手当の一回当たりの金額はいかにも低いということはわれわれも十分意識しております。昨年だいぶんその点を整理いたしましたけれども、まだ八十円というのが出てきてたいへんお目ざわりとは思いますが、ただ、これ月に直しますと、まあまあの金額になりますから、別にそれにこだわるわけではございませんけれども、そんなことも申し上げられるんです。しかし、これはやっぱりおっしゃるとおり、せめて百円未満のやつはひとつきれいにさっぱりさしたいものだという気持ちでおりますから、その点は御了承願っておきたいと思います。  それから通勤手当全額支給の問題ですが、先ほど御説明を申し上げましたように、今回の勧告では、もうだいぶん距離段階その他を設けまして全額支給のほうに近づけてまいっております。おそらくそっちの方向へこれは相当踏み出したと申し上げてよろしいと思いますが、ただ、全額支給と申しますと、非常識な遠いところから通勤されている方々にその通勤費を全部差し上げにゃならぬものかということがあります。もう役所に着かれたときはへとへとになってお着きになる、おうちに帰ってお眠りになるひまもないというような人にこれ全部差し上げるかどうかという、非常に素朴な問題でありますけれども、これ簡単な問題ではないと思います。そういう点も考えながら、やはり何か一線を画しませんとしめしがつかないんじゃないか。また、われわれのほうとしては配分の問題として考えておりますからして、そういう非常識な遠距離の方々にまでこれを配分として持っていかれるということになりますというと、そうでない方々に対しても非常なこれはマイナスの面をもたらすことになりますし、配分の面からも考えるべきポイントがあるではないか。実費の関係は、これはいまの免税問題にからまりますから、私どもとしては免税大いにお願いしておる立場におりますけれども、これは大蔵省のほうからお答えがあると思います。
  110. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) 税制に関する担当の主税局来ておりませんので、正確な判断は主税局のほうに待ちたいと思いますが、私一言申し上げさせていただきますと、いわゆる給与所得者の所得分に必要な経費、それが千差万態である、一つ一つの個別事情を積み上げていくとなかなか課税の、かえって逆に公平が保たれないとか、あるいは徴税技術上の問題があるとか、いろいろな問題があるのじゃなかろうかと、こう思っております。事実アメリカなどでは一つ一つ所要の必要経費を差し出して、それによってやっているというような制度をとっておりますが、御承知のようにわが国では給与所得控除というようなことで概算的に一括して必要と思われる経費を控除しております。ただ通勤手当のように個人的に非常に差がある、しかも何かある程度はっきりしているというものをどう扱うかということにつきましては、また主税局のほうで後日御答弁があろうと思います。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう時間もありませんので最後に人事院総裁並びに長官にお伺いしたいのですが、今回の四月実施人事院勧告がありまして後、新聞論調等見ておりますと、先ほども少し話ございましたが、将来の展望を欠く人事院勧告とか、あるいは公務員給与体系の再検討が課題であるとか、あるいはすでに人事院としての一つの使命は終わったとか、こういうような論調が非常に新聞紙上に出ております。これに対して人事院総裁ですね、人事院としての使命についてはどういうぐあいにお考えか、今後の使命、その点まずひとつお伺いしておきたい。  それから、さらにこれは特に総務長官並びに人事院総裁関係あるわけですが、現実の問題として、三百万公務員をめぐる今日的ないろいろな課題として、一つ給与の問題、それからもう一つは行政改革の問題、公務員の定年制の問題、あるいは退職年金制度等の問題、さらに最近盛んにいわれておりますあの週休二日制の問題、それから一週間の労働時間の短縮の問題、こういうふうな問題は、特にこの労使の近代化等の問題から考えても非常にこれから重要であり、かつ具体化されなければいけない問題であり、かつ、それぞれの省庁が真剣に取り組んでいる問題であろうと私は思うのです。これらの問題について基本的に人事院並びに総務長官どういうふうにお考えであるか。この点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  112. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 大体給与勧告のあとの社説等には、ここ数年来おっしゃるようなことが出ておりますし、社説ばかりではございません、この委員会においてもたびたびそういう御指摘を受けておるわけです。これは肝に銘じておりますから、先ほども申しましたように今回を踏み切りの時期として大いにひとつがんばろうという決意を持っているわけです。これはたくさん研究項目がございますけれども、先ほど山崎委員からも御指摘になりましたように、たとえば民間だとか、あるいは官と職の区別だと、これは従前の例によるというのがまだ残っているわけです。これらについてはやはり職階制というものの成立を前提としてそういう制度ができておりますから、やはり一番の根本は職階制の問題ではないか。これは従来ずっと続けて検討はしておりますけれども、そういう点をもかみ合わせてなお検討を続けていきたい。給与問題まだいろいろございますけれども、まあ人事院の使命は終わったという社説は私も確かに読みましたけれども、どういう意味であれをお書きになったのか、どうも読み方によっては、人事院を置いておくと、ますます公務員のほうを有利にする一方だから、もうこの辺で打ちどめと言わんばかりにどうも読めてしようがないのですけれども、それじゃ困るのです、われわれとしては。もう一度お読みいただいてお教えいただきたいと思います。  それからいまのその他の問題で、たとえば定年制の問題がございます。これはわれわれのやはり所管でございますけれども民間でいわれている定年制と、公務員についてその定年制を導入することの問題はちょっと前提が違いますので、公務員の場合、いままで定年がないわけです。永久の勤務ということになっております。ただ問題は、勧奨退職というような形で事実上ある程度のことはやっているだけで、法制的には定年なし、無期限雇用という形になっております。民間のほうでは定年制がわりあいにきびしくなっておりますものでございますから、これを延ばそうという機運となって出ておるわけでございます。公務員の場合にはまだ定年をしいてという切実な感触をわれわれとしては持っておりませんから、これは制度の基本問題として検討を続けていきたいという気持ちでおります。  それから勤務時間と週休二日云々の問題は、これも触れましたように、実は今回の調査で相当精密な調査をやりました。たまたま今回の調査の結果では、管理部門に関する限りは所定の勤務時間の平均が四四・七時間でしたか、というようなことになっておりますし、それから週休について、一日休みと一日半休みというものを合わせますと、やはり圧倒的多数になっておりまして、完全な二日制というものは非常にまだ微々たるものでございます。したがいまして、今日まだそれをどうという踏み切るべき条件とは私は思いませんけれども、しかし——先ほど、しかしということを大きな声で申し上げましたように、われわれとしては週休二日制なり勤務時間の短縮というのは非常に好ましいものであるという根本の考え方を持っておりますから、周囲の情勢等も勘案しながらなお十分検討を続けてまいりたいという気持ちでおります。
  113. 本名武

    国務大臣(本名武君) 人事院の問題につきまして、新聞論調がいろいろおっしゃっていることも聞いております。その論調のことにつきましては御自由でございますが、ただ私どもはあの論調をやはり謙虚に聞く必要がある、反省するところは反省し、また進むべきところは進めなきゃならぬと考えておりますが、特に人事院の存在につきましては、ただいま総裁からお話がありましたとおり、私どももまだ使命は終わったとはもちろん考えておりませんし、特に健全な、ある程度の経済成長を望まなければならない日本としては、当然、給与関係というものは将来とも起きてくることでもありますし、そういうことを考えてみますと、やはりいろいろな格差やその他の是正というものは、つとめて早い時期に適正に処置するということも必要であります。そのためには、政府みずからがその処置をするということよりも、公平、中立的な第三者機関である人事院の御使命はむしろ今後にも期待いたさなければならない点がたくさんあろうと思います。  それから、特に数点についてお話ございましたが、週休二日制につきましては、やはり今日の、まあ何といいますか、世界的な趨勢からいたしましても、また経済や社会の国内における変遷からいたしましても、私どもは、これは真剣に取り上げるべきものであると考えております。したがって、政府においては、部内においてはもちろんでございますが、特に私どものほうでもこれをいま一生懸命検討しているところでございます。ただ、問題は、公務員が率先して週休二日制をとるということについて、いい面と、それからまた非常に慎重を期さなきゃならぬという面もあろうと思いますが、何といっても、やはり国民全体の奉仕者としての使命を考えつつ、適切な時期に、しかも実施できるようにいたすべきであろうと考えて、せっかく慎重に検討をいたしているわけでございます。  それから定年制の問題につきましては、さっきもちょっと触れましたが、やはり高齢者の方々に対して給与の延伸等いろいろな措置をとるということよりも、喜んで退職していただける、ある一定の年齢に達したならば喜んで退職していただく、また若い人には励みを持っていただく、ただしその反面やはり退職手当とかあるいは年金制度等に対して、さらに検討する必要もあるのではないかというふうに考えながら、これもやはり真剣に検討いたしております。特に勧奨退職の制度と、それから何か併用した制度なんかも、公務員の場合にはとれないものかというようなこともあわせて検討しながら、前向きに進めるように努力をいたしているような状態でございます。
  114. 松下正寿

    松下正寿君 人事院勧告の四月の実施について、いろいろ午前中からだいぶきわどい質疑応答があったわけでございます。私もこの問題について、もうちょっと突っ込んでお聞きしたい思っておりましたが、これ以上しつこく突っ込んでも、これ以上のものは何もでてこないのじゃないかと思いますから、ただ一言だけ確認しておきたいのですが、今度の四月実施については、政府からの、何といいましょうか、圧力と言っては語弊があるでしょうが、圧力とか指示とかいうようなものが一切なかったというふうに考えて差しつかえございませんか。
  115. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ここにも証人の一人がおられますけれども、そういうことは絶対にございません。
  116. 松下正寿

    松下正寿君 その御説明を伺って、一応安心いたしました。  それから、これは総理府長官にお伺いしたらいいか、あるいは、ほんとうならこれは総理大臣でしょうが、総理大臣がいらっしゃいませんから適宜にひとつ御答弁願いたいのですが、今度臨時国会をやるかやらないかということは、これは総理府長官にお伺いしても、まして大蔵省にお伺いしてもこれはちょっと見当が違うかもしれませんが、ただ、ちょっと私どもが疑問に思っておりますのは、せっかくできた人事院勧告というものが、実際問題として実施できなくなりはしないかということが非常に気になるわけであります。閣議は、この二十五日に大体少なくとも——二十五日というとあさってですか、決定、これはいいと思いますが、どうなんでしょうか、臨時国会で補正予算でも組まないというとこれは実際実施できないということなのか、あるいはどうしても臨時国会がおそくなった場合に何かほかの財源措置というものは可能であるかどうか、その点をお伺いしたいのですが。
  117. 本名武

    国務大臣(本名武君) まあ御指摘のように、せっかくの御勧告であり、また政府も何とか完全実施したいという意気込みでいることは再々申し上げたとおりでございます。したがって、これが実行不能になるなどということは、実は私ども毛頭考えておりません。ただ、心配のように、この時期がいつになるか、そのためには国会の議決を必要といたしますので、やはり臨時国会を早く開いてやるべきだという御主張も十分承知いたしております。したがいまして私は、やはり従来支給いたしましたときよりも早くても絶対おくれることのないような処置は一体どうしてとったらいいかということで、実は臨時国会か、通常国会の早期開会かということで総理といろいろとお話し合いをしておるわけでございますが、総理は、私がそういうことを申し上げたから、それじゃおまえが言ったから臨時国会はこうしようとか、あるいは通常国会をいつ開こうとかはまだおっしゃっておりません。おっしゃっておりませんが、給与の問題を第一といたしまして、さらにまた、先ほど大蔵省からお話がありましたとおり、災害対策その他の問題がございますから、やはりこれらはいずれも適当な早期に解決すべき問題であろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、前回給与を支給いたしました時期よりもおくれることのないような処置をいたしたいと、最善を尽くすつもりでございます。  それからもう一つは、おっしゃることは、たぶん、せっかくきまったことであるから早くやったらいいではないか、それには仮払いでもしたらどうかということのようでございますが、これにはまず第一に、国会の議決を経ないで、法律の議決を経ないで仮払いを先にやるということが取り扱い上あるいは制度上可能であるかどうかということ。それからまた、そうなりますと、もう直ちに財源をきめてかからないといかぬ、たとえ仮払いにいたしましても財源をきめてかからなければならぬというようなこと等が、いろいろ手続上の問題もありますし、そういうようなことで、いまのところでは仮払いをしようという予定はいたしておりません。で、前段申し上げましたように、つとめて従来よりも支給がおくれることのないように最善を尽くすということで、いま一生懸命努力をいたしているところでございます。
  118. 松下正寿

    松下正寿君 それでは、同じような質問大蔵省の方にしたいのですが、大体そういうものですか。それともまた、何か国会の議決を経ないで、一応の仮払い等のことが幾らかでも考えられる余地があるのでしょうか。
  119. 吉瀬維哉

    説明員(吉瀬維哉君) ただいま総務長官からお答えになったとおりでございまして、仮払いはどうだとか、その方法があろうかとか、あらゆる財源措置は何かないかというような御質問も従来あったわけでございます。御承知のように、国家公務員法の六十三条に、それから給与法の三条に、給与法律に基づいて払うのだ、法律に基づかない給与の支払いは行なわれないという準則の規定がございまして、そういう面からいきまして、私どもとしましては、国会が開かれて給料表が通り、それと同時に財源手当てをするという形にならざるを得ないのじゃないかと考えております。
  120. 松下正寿

    松下正寿君 人事院総裁にお伺いいたしますが、それは今年だけではなくて毎年のことですが、人事院のこの給与体系に関する勧告というものはいつでも民間企業というものを基準にしておる。これはいまのように物価が非常に上昇して、これが急にとまるような情勢でない場合にはやむを得ないことであると思いますが、何か私は少し順序が逆——逆でもないと思いますが、何か民間民間と言って民間のほうに非常に権威があって、公務員の給与のほうがそれに付随しなければならぬというような、こういうようなのが一つ社会常識みたいになっているような感じがするわけです。これは実は、私は私立大学の総長を長い間しておりまして、私はむろん給与を払うほうの立場に立っておったから、要求するほうの立場とは対立しておったわけですが、いつでも組合との交渉などに出てきますものは公務員との間の比率、少なくとも公務員並みにしろ、こういう要求が非常に強かったわけです。したがって、これは非常に個人的な経験で、一般論にはならぬかと思いますが、私自身の頭には、どうも公務員の給与体系のほうがもっと基準になるべきであって、民間のほうがそれに従う、これはどっちがいいかわかりませんが、私の頭にはそういったような観念ができておるわけです。私は、民間が主であって公務員が従であるとか、あるいは公務員が主であって民間が従であるというような、こういうようなどっちを基準にしていいかというような性質のものでなくって、やはり公務員は公務員独自の、いかにあるべきかという一つのフィロソフィといいましょうか、そういう哲学のようなものが必要じゃないかと思うのですが、いままでのところを見ますというと、みんないつでもこまかい問題になって、民間との間の比率ということがいわれておる。これはさっき申し上げたように、物価が上昇しておりますからやむを得ないと思いますが、そういう点についての基本的なお考えというものをひとつ総裁からお伺いしたいと思います。
  121. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ごもっともな御質疑だと思います。実は私は長年内閣法制局におりまして、もとは、人事院のできます前は、公務員の給与というものは内閣法制局で立案しておったわけです。その長い経験から申しますと、そのころの公務員給与は、まさに、いま松下委員おっしゃるとおり、もう民間がどうであろうと、何であろうと、そんなものはわき目も振らずに、公務員としてその体面を保つ、その職務に相応する給与がいかにあるべきかということでやっておりました。私は、終局的にはやはりそれが望ましい姿だとは思いますが、ただ、しかし、今日新憲法になりまして、公務員といえども天皇の官吏から全体の奉仕者になって、過去における特権的存在ではないという意識が強まって、そして憲法二十八条にいう勤労者の一人であるということで、一般民間従業員と同じ立場に立ったということが基本になって出てきておるわけです。そういたしますと、片や、われわれとしてその勧告を申し上げるについても、やはり多くの納税大衆あるいは国民大衆の方々に納得していただける給与というものをここに打ち出さなければならぬということが一つございまして、そういうことから、先ほど来お話に出ておりますように、企業規模百人以上、事業所規模五十人以上という尺度にはまるそれ以上の民間企業をとらえておけば、この従業員が大体全国の全従業員の過半数になるわけです。いわゆる六割ぐらいになります。それらの全従業員の六割ぐらいをとらえてのこれは水準でございます。ぜひせめてここまでは合わせていただかないことにはバランスがとれませんという態度でずっともう十年以上きておるわけでございますが、私は、今日の段階ではそれがまあ一番手がたい、諸方面に御納得いただける方法だろうと思います。したがいまして、また、その給与調査なんかも実に精密をきわめた調査をいたしました。そうして〇・以下二位までも出して、そして勧告を申し上げる、これは一歩も引けませんという線を堅持しております。したがいまして公務員の職員団体の方々も、もちろん不満は常におっしゃいますけれども、まあこの調査の結果ならばというお気持ちでおそらくいらしてくださると思いますし、まあ財政当局においても、こういう線で出した数字ならばまあまあということでおそらく御納得いただけるんだろうと思いますが、そういう意味では一番手がたい、当面は一番手がたい行き方であると思います。  まあ自慢話になりますけれども、御承知のように、英米関係ではだんだんこのわが官民比較方式に追随して近づいてまいっております。初めは非常にラフな行き方でやっておりましたけれども、最近では民間調査というものも相当精密に諸国でもやり始めまして、その意味では私どもは先進国だと言っていばっておりますけれども、その私どもの根拠にしておりますことは、やはり諸国を通じての、たとえばホイットレー慣習で、話し合いできめると申しましても、そこはやっぱりめどというものが必要になってきて、やっぱり民間給与というものを調べようじゃないかという話のほうにだんだん発展して今日に至っているということでございますから、当面は一番手がたい方法だと思います。しかし、遠い将来の私の夢だと申しますけれども、見通しは、やはり復古調ではございませんけれども、昔、私が内閣法制局において立案した官吏の給与というような形であるべきではないかなあという夢は抱いておるということだけを申し上げておきます。
  122. 松下正寿

    松下正寿君 非常にわが意を得るようなお答え、非常に満足しておりますが、むろん民間給与を全面的に調査されることはこれはけっこうだと思うのですが、ただ、現在官公庁は、若干例外があるかもわかりませんが、千人以下のところはほとんどないんじゃないですかということ、あるいは人事院があるかもわかりません、まああっても非常に少ないと思いますが、そこで、民間企業の場合にはぐっと百人以上というものが下がってきています。民間企業との間の比率といいましょうか、比較一つの基準になるとすれば、百人程度をもっと、もうちょっと上くらいのところを無視しろというわけじゃありません、これは一応事実として調査するのはけっこうだと思うのですが、比較する場合にはやはり千人以上というところを比較したほうが、現在の制度をとる以上はそのほうが合理的じゃないかと思いますが、その点いかがでしょう。
  123. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 私はやっぱり国の規模と匹敵するような企業規模の企業体はむしろないと申し上げてよろしいと思います。したがいまして、最初に私が夢として、あるいは過去の思い出として申し上げましたような形こそ、やはり終局的に行き着く先であろう。ただ官民比較という原則をとります以上は、これはやはり規模の大きいところへじわじわと持っていくことが望ましいので、かつては企業規模五十人以上でやっておりましたけれども、これはもうわれわれが民間の、先ほど申しましたような従業員のカバレージを考えていった場合に、これはもう百人以上にしてもだいじょうぶだということで、手がたい形でいっているわけでございますが、そういうたてまえで、今後もだんだんと一般情勢の帰趨をながめながらその基準を上げてまいりたいとは思いますけれども、もう二千人、三千人というところで調べるかどうかという問題になりますというと、やっぱりもう白紙にひとつ勧告案を書くというほうがすっきりしているのじゃないかという気持ちもひそかに持っているわけでございます。
  124. 松下正寿

    松下正寿君 これは私の考えだけを一方的に申し上げて、ただ要望をすることにして私の質問を終わりたいと思いますが、いままでの公務員、つまり官吏が、天皇の官吏である、こういう思想で少しいばりくさったということは、私も若いときからよく記憶しておるわけで、こういうことの復活はこれは絶対に困ると思いますが、ただ、その反動として、なるべく公務員というものを低く見ないと何となく官僚政治の復活であるんじゃないかというような、こういう一種の劣等感みたいなものがまだいままであったんじゃないかと思います。しかし、もう終戦後しばらくたちましたし、民主主義というものも相当に日本に根を張ってきておりますから、もうそろそろこのくらいでもって、こういう劣等感というものは除去して、むしろ逆に、公務員というものは国民の公僕であるがゆえに、かえって権威がある、背後に国民を置いているという、こういう権威を持っていただきたい。そういう点から見まして、私は、いますぐはなかなか実行困難であると思いますが、やはり給与体系というものをどこまでも民間に追いつけ、民間を基準とするというその思想そのものを再検討していただいて、さっき総裁もおっしゃったように、何でもかんでも古いものがいいわけじゃありませんが、やはり公務員の給与はいかにあるべきかということを独自の立場からきめていただく、そういうことを再検討していただきますことを切に希望いたしまして、私の質問を終わります。
  125. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本件に関する質疑はこの程度といたします。     —————————————
  126. 高田浩運

    委員長高田浩運君) この際、増原防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。増原防衛庁長官。
  127. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) このたび防衛庁長官を拝命いたしました増原でございます。不敏の者でございますが、どうぞよろしくお願いをいたします。     —————————————
  128. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 次に、国の防衛に関する調査を議題といたします。  自衛隊機全日空機に対する空中衝突事故問題について、参考人として、元全日空機接触事故調査委員会委員長山県昌夫君、同委員会委員瀬川貞雄君に御出席を願っております。  参考人の方々には、御多忙のところを本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  それでは、これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  129. 源田実

    ○源田実君 参考人の方にはまことに御苦労さんでございました。一年にもわたって調査していただきまして非常に御苦労さまであると申し上げたいのであります。  ところで、この報告書でございますが、これについて私はいろいろ疑問が出ておるわけです。そうして、この疑問がどういう性質のものであるかということを、もしこれが、私が疑っておるような性質のものであるならば、航空事故の防止にはあまり役立たないというような性質のものである。それは、私が納得できるような御説明をいただければ、実は一時間二十五分いただいておるのでありますが、これはもうすぐ済むと思う。しかし、そうでないと、これは何回も何回もやらなきゃならないようなことになろうかと思います。したがいまして、簡単にひとつ私は要点だけ質問いたしますので、お答えのほうもなるたけ、時間の関係で、簡単にお願いしたいと思います。  まず第一にお聞きしたいことは、あの事故が起きて、その事故現場における乗務員と乗客、そういう方々の死体の位置がどこに、どういうぐあいになっておったか。ことに乗務員ですね、乗務員というより、コックピットの内部及び周辺に、どういうぐあいになくなった方々の死体があったか、これをまずひとつお聞きしたいと思います。
  130. 瀬川貞雄

    参考人(瀬川貞雄君) 機長と副操縦士の位置が、ちょうど飛行機がすべり落ちたような形で裏返しになりまして、反対のように、ひっくり返っておった状態を私は写真で見せていただきました。ちょうどこう反対にひっくり返ったような形、そういう態勢で墜落しておりました。こういう写真を見せていただきました。
  131. 源田実

    ○源田実君 そのほかの方の死体はどこにあったかということはわかっていないんですか。
  132. 瀬川貞雄

    参考人(瀬川貞雄君) わかっております。その周辺に、相当広範囲にわたって散らばっておる。これも私が現場に参りましたときは、すでに死体を収容してありました。私が行きましたときは、地方の県警その他救難隊が記録しておった、それを見せていただきました。相当広範囲にわたって散らばっております。
  133. 源田実

    ○源田実君 そうすると、総理府の方見えておりますね、この問題は、ちょっと資料を要求したいのですよ。というのは、あの最初に事故現場で写真をとったはずである。ああいうとき必ず写真をとる。このときは警察であると思いますが、その写真を一切残らず提出していただきたい。これはあとから重要問題に関連があるいは出てくるかもしれないと思うからです。それで、これは委員長ひとつ資料としてお願いしたいと思います。図面で、だれの死体はどこにあったか、それからその写真と二つですね。いいですか、総理府であれつくったんだから。
  134. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) 関係書類については、いま源田先生のおっしゃいましたことについては、調べまして、あるものだけ提出いたします。
  135. 源田実

    ○源田実君 その第一の質問は、この要求で終わります。  次は、どういうことであるかという、この事故調査をおやりになる場合に、航空法九十四条の二に対する解釈は、どういうような解釈をもってこの事故調査をおやりになったか。これは調査団の方に伺います。
  136. 山県昌夫

    参考人(山県昌夫君) ただいまの御質問は航空法第九十四条関係でございますね。九十四条、それから三条十五項、これにつきましては、私ども委員会といたしましてもいろいろ検討いたしました。と同時に運輸省の御意見も承りました。したがいまして、この航空法第九十四条から、やはり直接ではございませんけれども、いわゆる見張りの義務ということが出てくる、こういうふうに考えました。ただし、御質問がございましたように、問題をいわば裏からいっているという感じがわれわれとしてはいたしましたので、すでにお手元に差し上げてあると思いますけれども勧告の中に、カッコの2でございますが、「航空機の操縦者は、航空機の飛行中は航空交通管制に従つている飛行であるとないとにかかわらず、他の航空機等と衝突しないように見張りをしなければならないよう法的に明確化する」と、こういうふうに勧告いたしております。すなわち、明確化ということは、現在の航空法でも直接的には書いてございませんけれども、裏からは見張りということが読める。しかし、一般に、直接的に書いてございませんものですから、いろいろ議論が出るということもあり得るとわれわれも思いましたので、勧告としては、そういうことを制定しろということを言わずに明確化してほしいと、こういうふうに勧告には書いてございます。
  137. 源田実

    ○源田実君 ただいまの御見解、いま私も大体同感でございます。この航空法の九十四条の二、これだけ読むと、ちょっとすぐ見張り義務、これが明確に出てこないようですが、二条の十五項をあわせ読む場合に初めて見張りをしなければならないということが明確に、昔のこの航空法で改正しないでも、昔というか、現行だけれども改正予定の航空法でなくても、これは見張りをしなければならないということがはっきり出てくると思うのです。そういう御見解と承知いたします。それで第二番目終わりました。これまではきわめて簡単なんですがね。  その次に、私はここで、この報告書において初めて——私は医学者じゃないものですから、いままで知らなかった。私はもう四十何年飛行機に乗っておりますけれども、まだ乗っております。しかし、初めてここに注視野というのを——実は無学にして注視野という概念を知らなかった。ところが、この報告で初めて出てきた。しかし、私は注視野というものを知らなくても上等と、えらそうに言うわけにはいかぬと思いますけれども、とにかく飛行機は操縦をやってこれた、音速の二倍の飛行機でも。ところが、この注視野というものは、ここでいろいろなところへ出てきて、最後の「解析」と「結論」のところにもこの問題が若干出てきているのですね。この注視野というのは、ここに説明があります。あるから大体意味はわかるのです。注視野の説明はいいです。しかし、注視野が飛行機の操縦上いかなるウエートを持つものであるのかということについて、ひとつ御見解を承りたい。
  138. 山県昌夫

    参考人(山県昌夫君) 注視野の問題でございますが、これは医学上のテクニカル・ターム、航空医学の本にも書いてございますが、私どもはこの事故調査をやります場合に、いろいろ順序といたしましては三つの、全日空機それから自衛隊の教官機、訓練機の航跡を出さなければならない。で、全日空機につきましては、すでに御承知のように、フライト・データ・レコーダがございますから、これははっきりしておる。それから教官機、訓練機につきましては、御当人がおられますので、いろいろお話も承りました。ただし、これはいわゆるフライト・レコーダというものを載せておりませんので、教官なりあるいは訓練生なりの記憶によって、われわれは航跡を書く。むろんその口述と申しますか、証言と申しますか、いろいろ私どもとしては不審な点がございまして、お隣の瀬川参考人、直接松島まで参りまして、いろいろお話を承りました。まあわれわれとしては、こうであろうという航跡をまずつくりました。その航跡に従いまして、今度は飛行機のほうから、全日空機でありとすれば教官機、訓練機はどう見えるであろうか、いわゆる視界図をつくりました。その視界図をつくります場合に、ただいま申し上げました航跡をもとにし、さらにいろいろな、たとえばフルイド・フォアのとり方とか、そういったことも一方において調べまして、視界図をお手元に差し上げてございますが、十三図、十四図、十五図、十六図、これをつくったわけでございます。  で、この図面におきまして基準点というのがございます。ちょうどまん中ごろ、おのおのの図のまん中ごろに基準点というのがございます。これはすでに御承知のように、パイロットが通常の状態で操縦席に腰をかけて正面を向いておりますというと、ちょうどこの目が、基準点に視線が合うわけでございます。そこで、先ほどのお話がございました見張りでございますが、この基準点は、あくまでもまっすぐ見ておる場合、当然これは先ほど来のお話のように見張りの義務は一方にございますし、その義務によって操縦者は見張りをしておったと想像されます。特に全日空機につきましては、機長、副機長はなくなられておりますので、この見張りをどういうぐあいにやっていたかということは、実は全日空機についてはわからないわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、この十三図から十六図、これは一つの、われわれとして考えました、こうであろうということでございまして、さらに見張りの問題になりますというと、これから、この基準点から左右にどう頭を振ったか、あるいは上下に振ったかということが問題になるんでございますが、それは実はわかりません。わかりませんから、基準点に合わせまして——ですから、固定点と申しますか、固視点と申しますか、それを基準点に合わした場合にはこうなりますよということを言っただけでございまして、したがいまして、たとえば第十三図をごらんになりますというと、まっすぐ向いておればこの基準点に目がいっているわけです、視線がいっているわけでございますが、左のほう六十度ずっとこう見ますれば、ここにございますように訓練機が見える。したがいまして、その見張りということは全然どういうぐあいにやっておったかということはわかりませんから、まっすぐ前を見ておったときのことだけを書いているわけでございます。
  139. 源田実

    ○源田実君 実は、この「解析」の中に「全日空機操縦者にとつては、訓練機は終始注視野の外にあつた。」また「訓練生にとつては、前方を見ていても、教官機の方を見ていても、全日空機は注視野の外にあつた。」、これが解析の中で相当初めのほうに、二番目にもう出てきているのですね。相当解析する中で大きなウエートを占めている。はたして、しかし、こういうウエートが要るのか。飛行機は、見張りというものは飛行機に乗る瞬間にもう義務づけられておる。法律がどうあろうが、何がどうあろうが、一切のものを乗る瞬間に見張りをやらなければいけない。その見張りはどういう見張りであるかといえば、日本語では見張りということばであまりはっきりしないんですが、英語で言うとルック・アラウンドになるのです、ルック・アラウンド。見える限りのものを見なければならない。第一、まん前なんかあまり見なくても、いつでも、右から左に目をやるときにはほうっておいても見える。一番見にくいところを注意して見なければならぬ。どういうぐあいにして見るかというと、これは、まあ私なんかがやる場合には、一番見にくいところを見る。まず、目——目をまん中に置いた場合にどこまで見える。その次に目を左なら左、右なら右に一ぱいにやったらどこまで見える。それで見えないところは頭をこうやって見る。まだ見えないところはからだを動かして見る。これは操縦者としては第一歩の問題なんですね。注視野なんという概念を引き出してきて、この注視野によって、ここにはあったのなかったの——ここでちょっと見ますと、そういう御意図ではないと思うんですけれども、ちょっと見ますと、注視野になかったから見えなかったとしてもしかたがなかったというふうな感じに受け取れる。そう書いてないですよ。ないですけれども、そんな感じがする、これを見ると。  これは、私はこういう報告ははなはだ困る。これを専門パイロットで、ずっとこの問題を研究してみると、注視野からはずれたものはそれほど見なくてもいいのか——これは、私は、全日空だけ言っているのじゃないですよ。自衛隊機にもある。みな同じ。とにかく、見える限りのものは見る。そうして、戦闘機のごときに至っては、からだを動かし、目を動かして、頭を動かして、なおかつ見えないときに、あぶないと思ったら飛行機の姿勢を変えて見る。そのくらい見張りというものはやらなければならない。今度の事故の、何といったって、だれが何といったって一番の原因は、双方の見張りが悪かったことです。あと自衛隊機が訓練空域からはずれたことはある。しかし、そういうことを一々言えばこれは切りがないですよ。ジェット・ルートというものは一本の線なんです。それからはずれたら、これはまたはずれたことになるのです。問題はそうじゃなくて見張りである。そうすると見張りの概念というものは、あらゆる見え得る限りのものを見るべきであるというようにしないと、この注視野の意味が、私ははなはだもう誤りやすい考え方に出てくる可能性があると思うのですよ。その点についてどうしてこんなに注視野ということを非常に重視されて——見え得る範囲、われわれは視界と言うのですね。視界というのは、頭を振っても、こうやっても、何やってもとにかく見え得る範囲、これを重視する。  もう一つここで申し上げますと、飛行機は鳥なんですよ。鳥も、強いタカとかワシみたいな鳥とは違う。スズメとかツバメみたいな弱い鳥なんですよ。タカなんか空中でやられることはない。したがってタカをごらんなさい、私は飼っておるけれども。タカは見張りをあまりしない。何が来てもだいじょうぶだから。じっと見ている。えさだけ見てればいい。注視野だけ見ていればいい。ところが、スズメとかツバメとか、そういう小鳥をごらんなさい。もう木にとまっているとき、頭を動かさないときは絶対ない。あらゆる面に動かす。鳥の頭は——くちばしでさわれないところは頭のここだけなんです。あとは、からだのどこでもさわれる。それほど首が見張りをやるようにできている。飛行機のパイロットというのは、それほど見張りをしなければいけない。しかも鳥は自分一人だけれども、飛行機のパイロットは、戦闘機でいえば衝突すれば自分も死ぬが人も殺す、旅客機のパイロットになれば何十人、何百人という人を乗せて、その命を預かっておる。見張りということぐらい重要なことはまずないと思うのですよ。ところが、見張りに対して、この報告書で注視野というものが、こんなにたびたびたびたび、至るところに注視野が出てきておる。その中にあったのなかったの、これははなはだどうも私は誤解を起こさせる。その誤解というのは、一般の人が誤解したって何でもないんですよ。パイロットがこれを見て、なるほどこういう考え方であるのかということになって、そういう影響を受けたら、事故防止にはマイナスにこそなれ決してプラスにならない。この注視野の概念を、どうして見え得る範囲がこれだけあった、これだけの範囲は見ていなければならなかったというような報告書になぜできなかったか、この点をお伺いしたいと思います。
  140. 山県昌夫

    参考人(山県昌夫君) 先ほど申し上げましたように、ここで注視野の中にあったとかなかったということは真正面を向いておるときでございまして、したがいまして当然いまお話がございましたように見張りをやっております。そういたしますと、あるときに、六十度左をこう見ておるときには、ここに書いてございますように注視野がそっちへ移ってくるわけでございます。その角度は大体四十度ないし五十度、これが見える、こういうことでございます。これ先ほど来申し上げておりますように、ある一つの標準と申しますか、どれだけ見張りをしていたかということはわかりませんから、そこでいまのような一つの標準、真正面ということを基準にいたしまして注視野ということを言っておる。そこで六十度左へ向けば注視野がこちらにぐっと変わってくるわけでございまして、そこのところ、あるいはことばが足りなかったかもしれませんけれども、われわれの意図するところは、見張りということはこれとは別であるというふうに考えております。
  141. 源田実

    ○源田実君 いまの山県先生のお話はそれでわかるのですよ。わかるのだが、それがこの報告書にはあらわれてない。天下にわかるのはこの報告書なんですな。  それで自衛隊機としては、これは私は自衛隊出身だけれども自衛隊機を弁護したい気持ちはあるけれども弁護する気はない。戦闘機というのは敵より先に敵を見つけて、そうしてこれを撃墜しなきゃならない。あれはおくれたらやられるんですよ、自分がね。それは先にやらなきゃいかぬ。その一番大事なことは、いまは、まあレーダーもあるけれども、レーダーでも最後は目なんですよ。先に見つけなきゃいけない、その戦闘機がたとえうしろであろうが何であろうが。あの大きな飛行機は、直前までそれを見つけ得なかったというところに、これは自衛隊のほうの見張りが悪いことははっきり言える。しかし、同時に全日空機がそれなら悪くなかったということは絶対に私は言えないと思うんです。この図面にあるように、まあこれじゃ三十秒しかないですが、大体その前から見えるはずです。この報告にある何とか分のスクエアでいえば約一分ぐらい前から見えるはずです。これは見ていなきやいけない。三十秒前には相当大きいんですね。これに書いてある。そうすると、これは瀬川さんがパイロットだから御存じだと思うんですが、パイロット見張りをするときに三十秒に一ぺん見るんじゃないです、しょっちゅうですよ、これは。しかもこの場合、自衛隊機のほうも目が四つあった、全日空機は目が四つあった、やっぱり。しかし全日空機は四つの目を、自衛隊機よりもう少しよく見える、見えやすいような立場にある操縦者がもう一人おったんです。一人と言いたいところだが、機械が操縦しておるから操縦しないでいい状態です。そうすると見張りはもっともっとできるはずである。しかも、この操縦経歴を見ると、まあ一人は自衛隊出身だけれども、ファーストパイロットは。しかし、そういうことはどっちでもいい——どっちでもいいかどうかは別問題として大きな問題じゃない。しかしながら八千時間とかいう時間をとっている。もう一人は二千何百時間ですか、相当なベテランなはずである。したがって相当見ていなきゃいけない。さらにもう一つはどういうことかというと、百何十人のお客さんと他の乗員の命を預かっておるんですよ、これは。自分の失策一つで何百人という人が死ぬ。そこのところを考えたら、この三十秒間、衝突三十秒前から衝突二秒前までは左のここの、このウインドグラスの中にあったはずである。そうすると二十八秒間は一番見やすいところにあるはずです、これは。その間に、これで見ると、報告で見ると七秒前に見たということになっておるけれども、見ただろうと。その七秒を引いても二十一秒の間に見ていなきゃならない。二十一秒というと、頭をこう向けて、こうやって、こうやっても二十一秒かかりませんよ。二十一秒というと、まあずいぶん——これはいま時間が惜しいからはかりませんけれども、二十一秒というと相当見れるんです。われわれは十秒の間に、あるいは五秒の間に計器をばらっと見て、右を見て左を見て上を見て下を見る、これぐらいやるんです。こういう心がけのない者は——まああとでエアマンシップということが出てきますが、飛行機乗りとして失格である、やらないのは、幾ら力量がよかろうと。ところが、非常に苦労なさって、一生懸命おやりになった御報告にけちをつけるようでぐあいが悪いけれども、しかし、これは将来の航空事故を考えると、これを見のがすわけにはいかないと思うんです。したがって、この注視野という概念には再考をお願いしたい。  しかし、調査団はもうすでに解散になっているんでしょう。どうですか、解散になっていますか——なっておる。解散になっておったら、これはまた調査団ではどうにもならぬかもしれぬ。解散が少し早過ぎますよ。これは報告でも終わってからやってもらわぬと、さっと解散されたんじゃ調査団でこれを訂正することもできないでしょう。これを政府として、私は総理府は——まあ、あとありますよ、問題がたくさん。それをひとつお考えを願いたい。こういう報告のままで、それで若いパイロットあたりがこのまま受け取ったら、これはたいへんな結果になる。これひとつ、いま総務長官でない副長官ですが、副長官で断定的な回答はできないかもしれません。できないかもしれないが、ひとつ——先ほど総務長官に廊下で会ったとき、私は、具体的なことは言わないけれども、政府として処置してもらわなきゃならぬことがあるから、これはあとからよく副長官に聞いてくれということを長官によく言っておきましたがね。それで、このほかにまだありますから、そういうのとあわせて一緒に御検討を願いたい。それで、注視野の問題は一応ここで終わりましてね、時間が早く済めば済んだほうがいいんですから。  その次に、今度は、ここに私にどうしても理解できない、一番理解できないことがある。それは五七ページにこういうことがあるでしょう、終わりに、下のほうに。訓練機が非定常運動をしているため、全日空機操縦者にとって、この時点で訓練機の飛行経路を的確に予測することは困難であったと考えられる。その後、訓練機は第十二図の一および二で示される相対経路で接近してきたが、その機軸が全日空機の進路に平行に近い姿勢であったことと機影が左後方に移動したため、全日空機操縦者は、回避準備状態にあったものの、接触すると予測しなかったと考えられる。」、これはもう何としても私は理解できない。その理解できない理由は、まず非定常運動。これは図面をごらんになりゃわかるんですがね。とにかくジグザグ運動でこうやっておったわけじゃない。こういう旋回でこんなにきておった、したがって三十秒前からの間は、しばらくの間ちょっと水平飛行に近い姿勢がある、いわゆる非定常運動、それを非定常運動というなら別問題だけれども。そんな特殊飛行をやっているようなわけのわからぬ飛行じゃなかった。  それで、同時にもう一つ言いたいことは、これは理由にならないということは、自衛隊機は左にだけおって右にはいなかった、右は空中があいておったんですよ。よけられないということはいかなる方法をもってもない。右にかじをとればよろしい。ところが、その後どういうぐあいになったか、その後、示された相対経路で接近してきたが、その機軸が全日空機の進路に平行に近い姿勢であったことと機影が後方——これは後方に移動したのはもう衝突直前ですね。これはほとんど問題にならない。全日空機操縦者は、回避準備状態にあったものの、接触すると予測しなかったと考えられる。」、これはもうさっぱりわからないんですよ。なぜわからないか、これは船の操縦をするんでも——自動車はそうでないですね。しかし、飛行機でも衝突の危険性は何で見るかというと方位角が変わらないときです。方位角というと、要するに自分の機首からのある角度、そこにある目標があって、その目標がその角度からほとんど変わらない、ずっと同じような角度でおる場合には、進路が交差しておる場合にはこれは衝突進路なんです。これは一般の常識なんですね。これが飛行機の場合には三次元になる。この場合は衝突進路だ。方位角は、この図面ですよ。私は実際飛んだのではないので、図面で見まして、方位角が二十秒前から十秒前の十秒間においてわずか七度か八度しか変わっていない、方位角は、水平方位角は。高度差はあまりない、ちょっとばかりですね。それからもう一つ、ここで衝突する状態ではなかったように考えられる、接触すると予測しなかったと考えられるのだが、平行の姿勢になった。平行の姿勢にあろうがどうしようが近寄る場合には衝突するのです。進路はこうでも横すべりをやったら飛行機はこうくるのです、衝突する。それは何で見るかというと接近率、ローディングレートといいますか、接近率です。接近率が小さくてわからなかったとは言えない。接近率を計算してみる。計算せぬでも図面見ればすぐわかる。接近率は衝突二十秒前から十秒前の間は百メートルパーセコンドです。百メートルパーセコンドというのは三百六十キロのスピードで近寄っている。三百六十キロですよ、飛行機の速さ、プロペラの。それからうんと近くてだんだん進路が平行に近くなったが、衝突四秒から三秒の前までは百二十二キロのスピードです。一時間百二十二キロというと、あの東名の高速道路を相当むちゃなやつが相当むちゃなスピードで突っ走るスピードでこの二つの飛行機が近寄っておるんです。いよいよ衝突の二秒から一秒前でも、なおかつ八十六キロのスピードで両者は近寄っている。これが接触すると予測しなかったということを、操縦者はそう考えていなかったと思うんですよ、私は。しかし調査団ではそういうぐあいにお考えになっておる。これは納得できない。こういうことが、もしパイロットが三百六十キロから八十六キロというようなスピードでぐうっと近寄ってくる飛行機を、これはぶつからぬだろうというように考える操縦者だったら、こういう操縦者を合格にした——どこの医大か、慈恵医大かどこか知らぬけれども、慈恵ですか、どこかな、身体検査をやるところは。
  142. 金井洋

    説明員(金井洋君) 慈恵医大です。
  143. 源田実

    ○源田実君 そういう医者は失格である、これを採用したもとの陸上自衛隊もこれは非常に検討を要するし、全日空もみな重大問題です、こういう操縦者ならば。私は実は、この操縦者はそんなわけのわからぬへたな操縦者ではなかったと思うのです。原因はほかにあると私は考える。したがって、いまの点についてどうしてもやっぱりこの報告が正しいというようにお考えになるとすれば、その理由を伺いたい。
  144. 山県昌夫

    参考人(山県昌夫君) ただいまの五七ページの件でございますが、いまお読みになったもう少し前に、ちょうどまん中ごろに、「また、全日空機操縦者が訓練機との接触を予測し得たか否かについては、いろいろの要因が考えられ、正確な推定は困難であるが、およそ次のようであると推定される。」、まずこういうことを言っております。「いろいろな要因」、これは全日空操縦者がどういうふうに考えていたのか、そういうことがわかりません。そういったようなことから「正確な推定は困難である」ということをわれわれは一応ここに書いているわけでございます。そこで、推定は困難であるが、一体これはどういうことであったろうと、これは委員会といたしましていろいろなケースを考えてみまして、それでいまお読みくださったようなふうにずっと書いてあるわけでございまして、したがいまして、これが絶対なものであるということをわれわれは言っておるわけではございません。われわれといたしましては、委員会におきまして、ここに書いてございますようなことで接触すると予測しなかったと考えたわけでございます。  ただ、つけ加えておきますが、「しなかったと考えられる」、考えられるそのまた原因は何であるかということにまでは、われわれといたしましては検討して結論を得るまでに至っておらないというのが実情でございます。
  145. 源田実

    ○源田実君 この問題は、実は私はいま団長の言われたことで、断定的にはこれは言っていないのだ、これはそういうぐあいに言えます、これで。言えるけれども、これが一般の人に与える——一般というか、若いパイロット、ベテランのパイロットはごまかされないのですよ、若いパイロットはうっかりすると、なるほどなあというような考えになる。  そこで、次にまた問題があるのは、大きな問題ちょっと言いましょうか。これは五八ページの下から六行目にこう書いてあります。「接触約七秒前の雑音が発せられた時点においては、全日空機機長は自己機の間近に訓練機を視認し、またはそれ以前から視認していた訓練機が予測に反して」、これはかってな予測です。「予測に反して急速に接近してきたため、操縦輪を強く保持したと考えられる。接触約二・五秒前の雑音が発せられた時点においては、全日空機機長は訓練機が自己機のななめ前方に接近してきたため緊張状態になり、操縦輪を再度強く握りしめたと推定される。この直後、全日空機機長は接触による衝撃を感じ、」云云、こういうことになっている。ここで接触から、このパイロットが操縦輪を握って、そうしてついでにマイクボタンまで押えてしまった。押えるべからざるものを押えた。そうしたときに七秒間も何にも回避操作しないで、それからオートパイロットは、これは切ったか切らないかわからないが、たぶん切ってないでしょう。しかし、スポイラーも出してないでしょう、エンジンもしぼってないだろう、かじは一切とった形跡はない、七秒の間に何にもそういうことができないで、ただ緊急通信しただけである、こういうパイロットにお客さんを運行させるということははなはだもってこれは危険千万であると私は思う。七秒という時間をちょっと私——このくらいの時間ですよ。私が手をいまあげておろすまでの時間。この時間何にもできなかった。これは子供じゃないんですよ。ベテランのパイロットである。試みにこういうこと、きようにも私やってみたんですが、東名道路で。あの飛行機乗りほど適正検査受けてないですよ、一般の運転員は、運転している人は。ところが、それが東名道路で百キロで走るときに幾らの距離をあけなきゃならぬか、前続車と。百メーター。キロ数に応じただけに大体距離をとらなきゃならない。そうしないと、前の自動車がそこで転覆とかなんとか急速にとまった場合に、ブレーキをうんと踏んでも百メーターの間とまらない。その百メーターを、百キロでブレーキを踏まないで走ると三・五秒なんです。三・五秒です。その三・五秒の間にブレーキを踏んでぴしゃっと、これとめる。それは警察のほうはだいぶ余裕みておるんです。それで百メーターという距離をちゃんと守らせるように、やかましくあそこをパトカーが通って監督しておるんです。それでも三・五秒なんです。七秒じゃないんですよ。またさらに、ほんとうのところどのくらいで行くかといいますと、これ警察のやっぱり試験で見ますと、実はその時間はほんとは、本気にやれば反射時間と踏みかえの時間とブレーキを踏み込む時間、それから作動の時間、そういうものを全部合わして〇・九八秒から〇・九秒なんです、操作の間に、これは試験の結果。だから、その三秒半でとまるんですよ。そのくらいのことができないのは自動車の操縦の資格はない、ほんとは。ところが、空を飛ぶパイロットが七秒の間——そりゃあ操作しても間に合わなかったということもおかしいんだけれども、あの場合わけないんですよ、ほんとを言うと。自衛隊機も早く見りゃわけない、全日空機もわけない。あのオートパイロットがあろうが何があろうが、とにかくぱっと押せば、もう瞬間にあれは避けることができておった。しかし、この報告書にあるとおり、回避の操作をやった傾向がない。しかし、こういうパイロットは私はいないと思うんです、事実。しかし、これにはこういうパイロットであると考えられる——あると断定はしてないが、あると考えられるとあるんですが、もしこれが、こういうことが通るとなれば、その身体検査というものの、この民間機のパイロット身体検査の規格について、これは厳密に全部やり直す必要がある。これは普通の人間としても失格ですよ、七秒で処置のできない者は。この点はいかがお考えでありますか。
  146. 山県昌夫

    参考人(山県昌夫君) ただいまのお話でございますが、まず五八ページのところでございますが、下のほうから何行目になりますか、「全日空機機長の動作を想定してみると、次のようなことも考えられる。」、こういうことでございまして、これは断定しているわけではございません。そこで、その次の「接触約七秒前の雑音」、これが接触から約七秒前ということを言っておりますが、そこに、あとにございますように、「全日空機機長は自己機の間近に訓練機を視認し、またはそれ以前から視認していた訓練機」とございまして、七秒前に初めて訓練機を発見したかどうか、これは要するに雑音のほうから考えますと、雑音の解釈から七秒前には確かに発見していたと、しかし、いま先ほど来先生いろいろお話がございましたように、その前から、見れば当然見えるわけでございますから、「またはそれ以前から視認していた」と、こういうふうに書いてございます。ただ、七秒からその前のほうになりますというと証拠がございませんから、ここで七秒と、それから七秒以前ということを書き分けてあるわけでございます。  それから、そういう状況で訓練機を発見した、その間、七秒間何をしていたかと、これはまあいま読みましたように決定的な証拠というものはございませんから、われわれとしても確定的なことを言うわけにはいきませんが、先ほど来たびたびお話がございましたように、このフライト・レコーダーから見ますというと、全日空機は衝突直前まで水平にまっすぐ飛んでおったにもかかわらず接触した。ところが、ここに書いてございますように、図からわかりますように非定常運動をやっておるわけでございます、訓練機は、上下幾らか、下へこう小さな毎度ではございますが、降下しつつある。で、かじは左にとっておる。こういうような非定常運動をやっておる。そこで全日空機の機長なり副機長なりがどう判断したかということがまさにいまの問題だと思いますが、われわれといたしましては、ただいま申し上げましたフライト・データ・レコーダーから見まして、接触する直前まで何も動作をしなかったということは、いまここに書いてございますような理由でもってかじをとらなかったんだろうと、こう考えたということが本文章でございます。
  147. 源田実

    ○源田実君 いまのは、まあ委員長いろいろお考えになったと思うんですが、   〔委員長退席、理事中山太郎君着席〕 事実は、ちょっとどうもおかしいですよね、普通考えて。私いろいろなパイロットにも当たってみまして、こういうこと、おまえ七秒あったらどうやるかと、やっぱりぶつかるまで緊張したまま、こうやってヘビににらまれたカエルみたいになってしまうのかと。いや私はすぐとりますと、みんなそうですよ。このパイロットはとれなかったかもしれないということになるんです。この断定ではないけれども、推定がはなはだどうも納得しにいく推定である。  その次に、同じくやっぱりこの推定がはなはだどうもあれですよね、これは。五四ページのちょうど中ほどのところで、(2)のところの上から四行目のまん中から「全日空機機長が機体の異常を知ったのは負の垂直加速度の増大と機体の姿勢の変化とによってであろう。」と、こう書いてある。そういうことです。それから今度は——さっきのところで負の加速度で異常を知ったというようになるけれども、今度は、五九ページは一番上の行の終わりのほうから、「この直後、全日空機機長は接触による衝撃を感じ、」と、こう書いてある。   〔理事中山太郎君退席、委員長着席〕 片っ方は、接触したときはまだだいじょうぶだと思っておって、あとになって「接触による衝撃を感じ、ついで自己機が異常な飛行状態になったため、」という、こういうぐあいになっている。初めのほうは負の加速度、マイナスの加速度によってこの飛行機が異常であるということを知った。片っ方は、衝撃のときに——あれほどのスピードで飛んでおる飛行機ですよ、衝突したと思ったら必ずもうだめだということをだれでも感ずる。自動車でも、衝突してだいじょうぶだと思う者はおらぬでしょう。あの低速の、まるでカタツムリぐらいのスピードで走るのでもね。いわんや音速の〇・八五とかなんとか、〇・九近くのスピードで走るものが接触した場合に無事であることは絶対にないんです。そのくらいのことは、パイロットは全部そういう感覚はみんな持っています。それが負の加速度で操縦できなくなって感じた。ところが、そうすると、この時間が合わないんですよ、またね。これフライト・レコーダーを見ますと、負の加速度が操縦不可能と思われるマイナス三G、からだの重さが逆に三倍になる。それは二十二秒ぐらいです、大体。そうすると、これに書いてある時間でいきますと、三十九秒でぶつかって五十三・六秒ギブ・アップしたという、この時間は十四・六秒なんです。十四・六秒のところのマイナスのGをこのフライト・レコーダーの記録で見ますと、マイナス一Gなんですよ。マイナス一Gということは、背面で飛行機飛びますね、背面飛行、背面のときにはだれでも受けるGなんです。われわれさか立ちやったときの、あれはもっときついんですよ、さか立ちのほうがほんとはね。頭がこんなことしておるから。ぶら下がった場合、足を上にして、それから綱でさか張りつけみたいにされたときのGがマイナス一Gです。これなら操縦輪を握ったりなんかできる。私は逆宙返りやって、マイナス三Gまでやってまだ操作ができるんです。マイナス一Gで操作ができないということは、私はないと思うんです。  そういうところからずっと推していきますと、どうしても、どこに落ちつくかというと、はなはだ失礼な言い分ですがね、この三十九秒、十四時二分三十九秒ですか、この前後にぶつかったという、この時間の判定に誤りがあるんじゃないか。ここは私は断定できない、まだ言いませんがね。ここに誤りがあるんではないか。これに誤りがあるとして、私に言わせたならば、七秒前にぶつかったと。そうすると、何にも見ていなかった、七秒前にぶつかって、そうしたら、あとのこのボイスがすっかり乱れてくるのが解釈つくし、また、この雑音が途中で切れるのも、衝突とともにばらばらっとくる——それがちょうど三沢のあのアンテナの方向になるわけですよ。全日空機のほうが速いんだから、うしろでぶつかったんだから、ばらばらというやつがばらっと落ちると、自分だけはこう行く、だからあそこの間隔もそれで説明がつく。それから、何といいますか、三十二秒からもう一つ、ちょっとの間ね、何のためにこの雑音がなくなったかわからぬのがありますね。まあこれは私も説明できない。これにも説明がありません。ありませんけれども、これはマイクボタンをパイロットがはずしたとしか考えられない。しかし、この三十二秒、この雑音の出たちょっと前に衝突したという考えを持つならば、あとのことがずっと私は説明がつくのじゃないかと思っておる。私はもう少し研究しないと、そこのところは断定的には言えません。しかし、もし私のようなこういう考え方があるとすればですよ。全日空機はぶつかるまで見ていなかったし、ぶつかったのが何にぶつかったかさっぱりわからなかった。だからあとのボイスがすっかり乱れてしまった。もしぶつかったのが何にぶつかったということがわかったら「エマージェンシー」の前後に「衝突」ということばがぱっと入りそうなものだと思うのです。全然出ていない。「エマージェンシーエマージェンシー、ア、ア、ア」と、こうなんです。ここらのところがどうしても説明が私はできない。  そうすると——まあ時間が私はあまりありませんからね、ここでちょっと申し上げるのは、おたくでおつくりになったこれでいえば、パイロットが二人もおって、しかも一人は八千時間、一人は二千時間という、自衛隊でいえば相当ベテランですよ、二千時間というのはね。それが目の前に戦闘機がやってきてまさにぶつからんとしておるのに二人ともぼう然として処置ができなかった。何がそんなことしたのか。それは考えられない。そうすると、二人が何にもできなかったということに何か原因があっただろうか。ディコンプレッションなんということがあるいはあったのか。そうでなければ操縦席で何かほかのことがあったのか。それで二人ともまたぶつかるまで見つからなかったということになると、見つけ得なかったとなると——得なかったならともかく、見張りをしなかったということになると、これははなはだもってぐあいが悪い。この回避操作をやらなかったと同じぐらいにぐあいが悪い。  断わっておきますが、私は自衛隊機がぶつかったのをいま弁護しておるのじゃないですよ。しかしながら、これははっきりしていただきたい。それはなぜかというと、こういうものはどちらも真相はあかさなきゃいけない、ほんとうは。そうせぬと事故防止にならない。そうすると、何で二人もパイロットがおって回避操作ができなかったか。一人はできないかもしれない。そのとき急に心臓麻痺やったと、それでできなかったと。しかし二人が同時にやることはないです。必ず一人はできるはずである。これが一つ。もう一つは、二人とも、四つの目で見ることができなかった、何が原因で見ることができなかったか、三十秒前から。二人で見るのだから、これは一分間見なかったことになる。なぜこれを見ることができなかったか。こういうところがこの報告では私は全然はっきりしない。  もう外務大臣もおいでになっておりまして、私は実は二十五分までもらっておるのですが、まあこういうところで結論に入りまして、私はここでお願いしたいことは、この事故調査というのは責任を追及するのじゃない。事故調査で責任を追及するということになると、ほんとうの事故の調査はできない。責任を追及するのじゃなくて真相を明らかにすべきである。こういう結論を出せばどこかに影響するのじゃないかというようなことは、そんなことは考えちゃいけない。とにかく真相をはっきりする。真相がはっきりすれば、それによって正しい対策ができるのです。しかし、真相がはっきりしない場合においては間違った対策がここにとられる。説教するようですがね。まあ私はこの四十数年の飛行機の経験からなんて言うとえらそうになるから、もうあまり言いませんけれども、しかし真相を究明して、責任は別である、こういうのでなければ事故調査はほんとうはいけないのですよ。したがって、これは、政府では、よく、事故が起きるたびに、やれ保安施設、保安施設というので、レーダー——これ、いいですよ。レーダーをふやしたり何をやったり、こうしますよ。やれ飛行場が短いとかなんとかかんとか、けっこうですよ。しかし、これは事故防止にはそれほど大きな影響はない。能率がよくなる。いままでこの天気では飛べなかったというのが、そういうものができれば飛べるのです。事故防止はそうじゃない。エアマンシップなんです。これはわれわれの技量の上であるというときには飛ばなければいいんですから。へたしてお客さんを殺しちゃいかぬから、幾らひきょう者だとかなんとか言われても飛ばなければいい。安全な方法は幾らでもとる方法がある。それをやれば事故にはならない。したがって、能率をよくすることが事故防止に全然関係がないとは言いません。しかし、事故を防止するために一番大事なことは、これは政府にこれからお願いしたいのですが、ということは、搭乗員のパイロットなり乗員の教育である。この前も私ここで言ったように、乗員が、法規がどうだから私には責任がないとか、こういうことを言う乗員は乗員たる資格はない。これは各航空会社の、いろいろ航空局にお願いして調べてみますと、なかなかいいことをいっておる。日航なんかも、全日空もいっておりますよ。全日空も、見張りをしなければいけない、ちゃんと自分でいっているのです。計器飛行計画による飛行中といえども他機を視認できるような気象状態であれば常に周囲を警戒しなければならない、こういうことをちゃんと全日空も指令も出しております。日航はあらゆるものにどういうぐあいにやっておるかというと、これはなかなか名文でね、やっておるのです。あらゆる日航のチェックリストに全部載っておるのは「Pay attention alwaysto prevent collision regardless of flight rules orflight phaswe」なかなかよくできておる。フライトルールがどうであろうが、とにかく空中衝突を避けるためにはあらゆることをやれ、こういうことをちゃんと日航は指令を出しておる。ICAOのアネックスにもそのことははっきり出ております。いかなる規定も、それが法規に従ったとかなんとかいう理由をもって空中衝突の責めを免れることはできない、はっきり出ております。というのは、そういうようにパイロットというものは、自分でどんな責任を負おうとも、お客さんなりあるいは乗員、自衛隊なら自分の命を含めて他機の命、そういう飛行機及び人間の生命を助けるためにはあらゆるものを犠牲にして、一番安全な方法をとるべしということになる。これはエアマンシップであります。したがって私はここで最後に——きょうは御苦労さんでございました。ところが政府——これは総理府ですね、調査せられたのは。政府にちょっとお願いしたいことは、この報告書そのものを再検討していただきたい。それで、もし政府でこれを了承されるということになるならば、私は今度は調査団じゃなくて政府の当局者と、これが正しいかどうかということについて、これから内閣委員会なり——運輸委員会でもいいんですが、あっちになかなか入れてくれぬから。これは徹度してやる必要がある。これは再検討していただきたい。これについては適当に処理をお願いしますじゃなくて、とにかくやるかやらないかを、この場では長官がおいでにならぬからどうかわかりませんが、とにかくなるべく早く内閣委員長を通じて私まで知らしたいただきたい。  これで私は質問終わります。
  148. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) いま源田先生のおっしゃいましたエアマンシップの問題、たいへん私ども参考になりました。  この報告書は、山県先生が主体となりまして昨年の七月三十一日から一ヵ年科学的にまた実験をやられてつくられた報告書でございます。私は、この報告書に盛られている事項については運輸省、防衛庁にその趣旨を伝えまして、今後航空安全の検討を十分していただく、そういうことでやっていきたいと思いますし、ただ、再調査というようなことはなかなかできない問題でございますので、その意思はございませんけれども、航空安全のことについては十分両省で専門家の間で検討していただきたいと考えております。
  149. 源田実

    ○源田実君 これ再調査はできないと言われるんですが、これそのものが納得できない報告ということになった場合に、そうすると私はそれこそ納得できない、政府の態度は。納得できないものを再調査はしない。私はいまから委員を派遣してもう一ぺんやれ、こう言うんじゃない。しかしこれが出るだけの資料はたぶん前の調査団で、これは総理府かどっかにあると思うんですよ。そうして、もう一ぺん違った面から、この問題については何が正しいのか、ここはわからないならわからない、しかし、この場合はいかにすべきだということは出るはずです。そいつを、調査団をもう一ぺん編成してやれば一番いいんだけれども、しかし、そうもあるいはいかぬかもしれないが、しかし、これを再検討してもらうことは当然航空安全の問題の前に——航空安全といったらこれみたいに簡単にいきませんよ。そうでなくて、これに盛られておるこの項目そのものはやれば幾らでもあるんですよ。きょうはほんとうの大事なところをちょっとしぼっただけで、幾らでもあるんですよ。あるけれども、そいつがそういうかっこうでうやむやにされれば、今後私は日本の航空の飛行安全ということを考える場合に、おおそうかそうかというわけで済ませることは私はできないと思う。同じようなことでもう一ぺん事故をやってごらんなさい、一体どうなるんですか。
  150. 小宮山重四郎

    説明員小宮山重四郎君) 源田委員のおっしゃいますことを、関係各省と緊密な連絡をとりまして、適切な処置をとりたいと考えております。
  151. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 考人の方に一言お礼を申し上げます。  本日お忙しいところ御出席いただき、貴重な御意見を拝聴いたしましてまことにありがとうございました。ここに厚くお礼を申し上げます。  引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  152. 水口宏三

    ○水口宏三君 私からは、いま米軍の戦車、装甲車の輸送をはじめ、日米安保条約に基づきます米軍施設の利用について多くの問題が起きているわけでございます。いわばその根幹をなしているものは安保条約第六条の運用の問題だろうと思いますので、それを中心に現在のさまざまな問題についての質問を申し上げたいと思います。  その前に、これは外務大臣に確認をいたしたいんでございますけれども、この六月の六日の当委員会に外務省が文書で出した答弁資料というものがあるわけです。これはいま申し上げた点についての外務省の当時の見解だったと思うんでございますけれども、その文書による答弁資料、外務大臣御承知のことと思いますが、その点まず伺っておきたいと思います。
  153. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たいへん恐縮でございますが、間もなく担当官が参りますので、それを確かめた上で御答弁申し上げます。
  154. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、これ実はさんざん問題にいたしまして、これは結局前の福田外務大臣から、口頭では誤解を招くから文書で出そうということで出したものでございますから、当然引き継ぎのあったものと思いますし、あらかじめ外務省のほうにこの点についての質問をするからと言ってあるわけでありますから、それについて全然ないということは、外務省内の私は連絡不十分であり、非常に遺憾でございます。  その骨子は、いずれにしても安保条約に基づく米軍施設の利用についてことしに入ってから特にさまざまな問題が起きた。国民の生活的な、あるいは感情的な不安を呼び起こしておる。したがって、これらの問題について条約第四条に基づく随時協議を積極的に行なうということであり、それが六月六日のときに大臣に確認したことでございますので、私、その文書の回答に基づいて、外務省が六月六日から八月六日までこれらの問題について何回随時協議を行なったのか、どのような問題について協議したのか。それと並行的に、そのとき出ました、安保協議会をやはりこの間にお持ちになったのかどうか。持ったとすれば何回持ったのか。その協議内容は何であったのか。これは直ちに御答弁いただけるようにもう連絡してございますので、これらを直ちにひとつお願いしたいと思います。
  155. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 随時の協議はたびたび行なっているわけでございまして、回数を何回ということにつきまして正確に御答弁申し上げる材料は持っておりませんけれども、これは安保条約の運営につきまして日米間でしょっちゅう行なっておるわけであるということを御承知いただきたいと思います。  第二点の安保協議会のほうは、本年はまだ開催するに至っておりませんで、この秋適当な時期に、両国打ち合わせの上開催したい考えでございます。
  156. 水口宏三

    ○水口宏三君 まあ、これどうもまた福田外務大臣のときと同じようになっちゃうんでございますけれども、その随時協議というものを外務省はいろんなルートでもって行なっておると、これはそのとおりでございましょう。ただし、この安保条約の第六条の適用による米軍施設の使用については、ただそのつどそのつど適当にいろんなルートでやっているという外務省の答弁でございました。それは福田外務大臣もそれではおかしいということを認めて、四条に基づく随時協議を明確にするということで話し合いをするということがこの文書の答弁なわけです。したがって私が申し上げているのは、日常年じゅう行なわれている大使館なりあるいはその他との協議ではなしに、条約四条に基づいて米軍施設の使用の態様についての協議、これをまた年じゅう行なっているというようなことばでは納得できないんです。その点、当時の条約局長なりアメリカ局長がおいでになるともっといいんですけれども、だから私も事前にその点ははっきり、回数なり内容をきょう直ちに回答できるようにしておけということを頼んでおいたんでございますけれども、実に心外でございますね、そういうことでは。
  157. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 随時協議ということは、いま私が申しましたようにいろいろなルートを通じましてしょっちゅう行なっておるということでなくて、随時協議という名においてやるようにしよう、すべきであるという国会の御意見もございまして、たしかそういうタイトルのもとで開かれた随時協議の会合は、七月三日に開かれたと記憶いたしております。
  158. 水口宏三

    ○水口宏三君 七月三日一回でございますか。私が申し上げたのは、六月六日の日に当時の福田外務大臣がそういうことを明確になされた。それから八月六日までの間に行なわれた条約四条に基づく基地の使用態様についての随時協議が七月三日だけ一回行なわれたにすぎないのか。
  159. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私の受けました報告では、七月三日行なわれただけだと承知いたしております。
  160. 水口宏三

    ○水口宏三君 それから、私これは新聞でちょっと見たような記憶がするのですが、八月六日ごろ日米安保協議会を開いたというようにも聞いたのですけれども大臣のお話では、日米安保協議会は六月六日以降開いていないというお話ですけれども、その点間違いございませんでしょうか。
  161. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私が先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  162. 水口宏三

    ○水口宏三君 そこで、この随時協議の問題について、当時の外務省の文書答弁、文書での回答の中では、これはお読みいただければわかるのですけれども、「最近における米軍の施設・区域の使用状況に対する国民の関心が高まっていることに鑑み、この際これらの点について、改めて米側から説明を徴することは、有意義であると認められるので、できるだけ早い機会にこれを行なうとともに、施設・区域の使用にかかる諸問題に関し、日本側の関心を充分米側に伝えることといたしたい。」——「諸問題」というふうに非常にあいまいになっているんですね。そこで、これでは困るので、私は当委員会の中で「諸問題」というものを、具体的に言うならば、当時の、当時から問題になっておりました佐世保、横須賀の軍港の使用の態様、相模原の補給廠あるいは岩国の海兵隊基地あるいは山田弾薬庫、さらに嘉手納空軍基地の問題、これらの問題も当然この「諸問題」に含まれておるんでございましょうねという質問に対し、当時の福田外務大臣は、そのとおりとお答えしているわけですが、大平外務大臣もそうお考えになっていると考えてよろしゅうございますか。
  163. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 事柄の性質上、当然そのように理解すべきものと思います。
  164. 水口宏三

    ○水口宏三君 次に、なぜわれわれが、それじゃ、それまで外務省が適当なルートでさまざまにやっていた随時協議ではなくて、四条に基づいて明確にしてくれということをここで要求もし、外務省もそれを納得したかといえば、第一には、申し上げるまでもなく、先ほど申し上げたようにこの四月以降、米軍の北爆開始あるいは海上封鎖が始まってから、日本における米軍施設の使用というものがひんぱんになり、さまざまな市民への影響が出てきている。特に市民生活上あるいは生活感覚から言って、戦争への不安、そういうものを少なくともなるべくなくなしていくということが一つの前提であり、それからもう一つは、当時国会でもいろいろ論議になりましたように、事前協議事項というものは非常にあいまいになってきておる。だから、福田さんは事前協議事項を全部ここで洗い直したいということも言っていたわけです。したがって、この随時協議あるいは日米安保協議の、われわれが要求もしまた当時外務省も納得した具体的な諸問題がさっき申し上げたような問題であり、その観点というのは、使用にあっては市民の生活ないしは感情的な不安を起こさせないようにすること、あるいは事前協議事項というものについてあいまいな点を明確にしていく、そういうことが主題だったと思うのでありますけれども、その点について大平外務大臣どうお考えになりますか。
  165. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 安保条約の運営にあたりましては、いま御指摘のような点に十全の配慮を加えながらやってまいらなければならぬのは当然私どもの責任であると承知いたしております。  それから事前協議事項の洗い直しということも、私は前任者と国会とのやりとりとの間で出てまいったことも報告を受けておるわけでございまして、疑点のある点につきましては洗い直してまいることに私自身も異存はありません。
  166. 水口宏三

    ○水口宏三君 先ほどの外務大臣の御答弁で、一応外務省が確約した第四条に基づく随時協議が七月三日一回しか行なわれなかった。これは振り返ってみれば、佐藤内閣からいまの内閣に政権の転換といいますが、相当大きな政治問題があったわけですから、そういうことにかまけてできなかったということもあるかもわかりませんけれども、しかし、われわれが言ったことが少なくとも外務省によって忠実に実行されていなかった、その結果として、たとえば七月八日にはもうB52が二十六機、これは台風を回避するという理由で嘉手納基地に飛来しているわけですから、さらに八月五日には御承知の横浜のノースピアからの戦車輸送を、不法に輸送を行なおうとした。これはたまたま横浜市長の不法の指摘でもって村雨橋でとまったわけでありますけれども、そういう事態が起きている。さらに八月十四日には相模原の補給廠から米軍装甲車が、これも不法な形で輸送されている。しかも当時は、これは外務省あるいは警察も不当でないという立場でやっていた。ところが、八月二十一日に、ノースピアからの今度は装甲車を逆に相模原に輸送するにあたって、それを担当した輸送業者が調べてみたところが、現在の道路法に違反するということで、むしろ輸送を断わっている。これは明らかに不法な輸送が行なわれていた。さらに、これはついきのうのサンケイ新聞ですが、見ますと、横須賀から、問題になっております国道一六号線、さらにその他国道を通って横須賀の弾薬庫から富士へ弾薬の輸送が行なわれておった。これらの問題はすべて非常に国民感情を刺激する問題でございますし、たとえばB52の嘉手納の基地の飛来の問題にいたしましても、私、実はあのとき直ちに政府の機関である気象庁に実は当時の気象状況を聞いたのであります。ところが、六日、七日、八日、九日、十日と、これはほとんど台風のグアム島への影響は考えられないというデータが出ておる。これはもう気象庁のデータなんです。それから、なおかつグアム島には毎年確かに相当な台風が来ております。  そこで、ここで二つ問題になるのは、たとえば政府は何を信頼なさって嘉手納へのB52の飛来を台風の避難だと考えるか。これは明らかにアメリカの言うのをうのみにしている。しかし、日本にもちゃんとりっぱな気象庁があるわけです。まあ天気予報も当てにならない場合がありますけれども、少なくともグアム島周辺に台風がいるかいないかくらいは十分わかるわけです。そのデータをおとりになれば、それをそのまま発表なさることもなかったであろうし、さらにグアム島というものが年じゅう台風の被害を受ける、そういう地域にあることはこれはもう天下周知のことなんです。そこで、あれだけの技術なり経済力なりを持っているアメリカがB52とという最新の飛行機を置く、そこで台風に耐えられるだけの施設をつくらずに、かってに置いておいて台風が来たからどこかに行くのだと、そういうことも当然不当なことだと思う。  だから、たとえばB52の問題一つとりましても、私はむしろ政府の態度というものは全くアメリカの言いなりである。その他の問題につきましてあとで個別に詳しく聞きますけれども、いま申し上げた戦車の輸送の問題、横浜市長が指摘をしなければそのまま不法な形でいままでのように行なわれていた。それから相模原補給廠なんかまさにその典型ですね。業者が当たって初めてこれは不当であることがわかった。横須賀の弾薬庫についても、新聞を見ますと地元の警察やなんかはあぶないから何とか夜間にしてくれとか船で運んでくれと言っても、いや、これは政府からちゃんと特例でもって認められているのだ、自分たちで運ぶのだと言って運んでいる。こういうことはどう考えてもどうもわれわれ納得できないわけですね。だからこそこの間の国会でも、これらの点が出てくるから、当然、外務省としてアメリカに対して条約第四条に基づくきちんとした協議を行なってもらいたいということをこの委員会でも申し入れ、外務省もそれを了承した。ところが、実際には七月三日一回しか行なわれない、結果としてはこういう事態が起きているということです。これらについての外務大臣の所信と申しますか、考え方をひとつ伺いたい。
  167. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま、米側の要求をうのみにいたしまして唯々諾々とそれに応諾を与えておるというような趣旨の御指摘があったわけでございますけれども、私どもそうぞんざいに仕事をしているつもりではないのでありまして、いま御指摘のグアム島の台風につきましても、グアム島だけの台風、気象状況だけでは不十分でございまして、非常に速度の速い飛行機の往来があるわけでございますから、何百キロも離れたところを突き破ってグアム島に安全に着陸するというようなことが期待できない場合、グアム島に帰島することなく嘉手納に向かった場合もあるわけでございまして、そういうことにつきまして、私どもは、緊急やむを得ない場合だけに限って嘉手納を利用するということに厳格にアメリカ側に要請をいたしておりますし、私がいままで調べましたところ、その約束を米側が故意に破ってやっておる形跡は発見できないのでございます。そのあたりはもう少し御理解をいただきたいと思うのであります。  それから、戦車搬送の問題につきましてたいへん不幸な事態を招来いたしまして、国会はじめ国民の皆さまに御心配をかけておりますこと、まことに申しわけないと思っております。確かにこの問題につきましては、今日まで日米双方に長い問の惰性から、周到な注意……。
  168. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  169. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。
  170. 水口宏三

    ○水口宏三君 B52の問題が主題でございませんので、一つだけ申し上げておきますけれども、それは、B52というのは非常に高度を飛び得る飛行機ですね。むしろ台風観測に日本がB52を依頼したこともあるわけですね。だから、遠方に台風がある場合に、それを突破できないなんというB52じゃないんです。グアム島に台風が襲った場合に、グアム島の飛行場に野ざらしにしてあるB52の避難という問題、それで私は申し上げたわけです。この点はもう少し具体的にやはりアメリカ側のそういう事情を日本の力で、気象庁もあるわけです、そういうところと十分打ち合わせて、たまたまこれは七月八日というのは外務大臣就任なさってその直後でございますから、これは外務大臣の責任を追及するというのは——まあその後来ていないということは、あるいは外務大臣のそういう主張が米側にも響いてきたのかもわかりませんけれども、いずれにしても、私は、その点については明確に今後アメリカ側に伝えていただきたい。必要があれば随時協議によってアメリカの責任を追及していただきたいということをお願いして、B52の問題はおきまして、いずれにしても、こういう問題が発生をいたしております背景というものは、アメリカのベトナムでの軍事行動に安保条約の第六条を適用して、そうして、在日米軍基地の使用を認めているということに基本的な背景があるわけでございますけれども、大体いまのベトナムにおけるアメリカの軍事行動に安保条約第六条を適用するということが妥当であるのかどうか。これは、新しい外務大臣としての大平外務大臣に伺いたい。
  171. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは問題は二つございまして、一つは、非常に高度の政治問題といたしまして、ベトナム戦争に対しまして日本側がどういう態度をとるかという、それは、安保条約の存廃も含めて問題にすれば問題になり得る大きな問題だと思います。  それからもう一つの立場は、現行の安保条約があるという前提のもとで考えますならば、私ども行政府の任務は、その安保条約によって米軍に与えられている権能の行使を保証しなければならぬ責任を行政府として持っておるわけでございまして、いま私がとっておる立場は、後者のほうの立場で鋭意やっているわけでございます。
  172. 水口宏三

    ○水口宏三君 これは申し上げるまでもなく、外務大臣に申し上げるのは釈迦に説法なんですが、少なくとも第六条では、日本の安全並びに極東の平和となっておるわけですね。ところが、問題は、ベトナムにおける事態というものは極東の平和、特に日本の安全に脅威を与えるという政治判断は、これは私はアメリカが一方的にすべきではないと思います。当然、日本の判断とアメリカの判断の一致点においてそれは認められることであって、実際に極東の範囲といままでいわれていたところで起きたことなら、これは半自動的にということもありましょうが、ベトナムの問題は違うわけですね。特にベトナムの米軍行動につきましては、これは、これが起こされた六十何年ですか、一年ごろからのその傾向を見ても、これは例の、これはみんなが知っていることなんでございますけれども、国防総省の秘密報告書を見ても、当初のベトナムに対するアメリカの軍事介入というものは、われわれの立場からみればジュネーブ協定を否定しております。たまたまSEATOを無理につくりあげて、第四条の指定地域として、むしろアメリカはベトナムに対する軍事干渉を始める。その背後にあったものはドミノ理論である。しかしそのこと自体も、国防総省の秘密報告書の示しているように、その後むしろだんだん、今度はそういう本来最初にアメリカが意図したものから離れて、単にアメリカの威信を傷つけられるとたいへんだということで、逐次介入し、拡大をしていった。そうなってくると、日米安全保障条約とは全く無縁のものになりつつあるんですね。それはさておきましょう。当初の私はベトナム介入の問題をここで論議しても非常に時間がかかりますので、それはさておいて、少なくともジョンソン大統領の後半期から、ベトナムからアメリカが手を抜き始めた。特にニクソンは、ベトナム戦争の終結を自分の大統領の使命として当選をしてきたわけです。そういう形で急速にベトナム情勢というものは変化してきたにもかかわらず、この四月から再びベトナムにおけるアメリカの軍事行動はエスカレートしてきた。これは私はむしろ非常に不可解なんで、これはぜひ外務大臣からも伺いたいわけでございますけれども、少なくともニクソンはベトナムにおけるアメリカの軍事介入は誤りであった、なるべく早く終結したいということを言っている。アメリカのベトナム政策の大きな転換なんですね。そうして、むしろベトナム戦争のベトナム化というものを表に出してきました。さらにそれだけでなしに、ここ一、二年来、昨年の中国の国連加盟ということも象徴的な事件でございますけれども、その後、さらに米中、米ソの会談が行なわれ、いわばアジアにおいて平和的な機運が非常に高まりつつある。なおかつ現内閣になってからは、日中接近、国交回復、すでに新聞等を通じて見ますと、来月の終わりには総理が中国へ直接行って、一挙に解決したいというところにきている。ここに極東情勢が大きく変化をしてきておる。そういう中で、四月以降のあのアメリカの軍事行動について、何で安保条約の適用が必要であるか。当初の、私はむしろ問題は、これは議論が広がりますのでやめて、四月以降アメリカのベトナムにおける軍事行動には、安保条約の第六条が適用されるということはどうにも納得できないですね。少なくともこれは両者の合意によって行なわれているはずです。日本側の考え方を外務大臣に伺いたい。
  173. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御指摘の問題は、すでに日米間の合意に基づきまして提供いたしました施設・区域を、米軍はその合意に基づいて使っている。合意に基づいて提供した施設・区域を使っていることでございまして、新しい合意ができてそれを使っておるという性質のものでないことは水口委員御承知のとおりでございまして、何ら新しい措置をとったわけではないわけでございます。
  174. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、新しい措置とか何かということじゃなしに、いま申し上げましたように、私が申し上げるのは、極東情勢が大きく変わったということはこれは外務大臣もお認めになるのですね。
  175. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは私も同じ認識を持っております。
  176. 水口宏三

    ○水口宏三君 それから、少なくとも、アメリカの本年当初までのベトナムにおける軍事行動というものは、まさにニクソンのベトナム戦争のベトナム化という線に沿って、アメリカの軍事行動は非常に縮小されつつあった、もちろん北爆も行なわれていなかった。ところが、三月末、突如として北爆を始める、海上封鎖を行なう。これは新しい軍事行動です。決して過去の私は軍事行動の延長じゃないと思う。だからこそアメリカは、あらためて、国連憲章五十一条に基づく集団自衛権の発動だといって国連に通告をしているわけですね。もし過去の延長であるなら、毎日毎日通告しなければならない。なおかつ、新しいそういう行動だからこそアメリカはそれを通告しているわけでしょう。そうすれば、単にいままでの延長として何となく惰性で認めているということは、私は、日本の外務省として、少なくとも極東情勢が大きく変わったという前提に立ち、なおかつ四月以降のアメリカの新たなる軍事行動——新たなる軍事行動であるとアメリカ自身も認めているわけです。当然その際に、一体その安保条約第六条の基本的な目的である日本の安全あるいは極東の平和がどう脅かされたかという日本の認識に立ってアメリカとの間で日米協議会が行なわれ、そうして六条に基づく今度アメリカの軍事行動に関連する基地の使用というものが認められてしかるべきだと思うのです。その間少なくとも前内閣——佐藤内閣はこうなっていない。少なくとも現在の内閣あるいは大平外務大臣がそれを行なう気持ちがおありになるのかどうか。私は当然行なうべきだと思うのです。単に惰性ではないわけですね、情勢の変化、アメリカの新たなる軍事行動、この二つがあるわけです。
  177. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) われわれ日本政府として与えられている、考えなければならぬ責任は、すでに提供いたしました施設・区域というもののアメリカ側の使用につきまして、アメリカが違法でない限りは、これを拒む理由はないわけでございます。そこで状況が、いま御指摘のように、変わったから、いままでのやり口を改めて、新しい情勢に合ったように考えたらどうかという御提言でございますけれども、いま私どもは、この事態で安保条約、それに基づく地位協定全体のセットアップについて改定を加えるというところまでは考えていないのであります。
  178. 水口宏三

    ○水口宏三君 外務大臣非常に誤解をしていらっしゃるのじゃないですか。私は何も安保条約の改定とか、地位協定の改定を言っているのじゃないのです。いままで——いままでと申し上げるのは、ことしの三月のアメリカの軍事行動が起こるまでは、これは少なくとも日米安保協議会を通じて第六条で、御承知のように、私から読むのも非常にどうも失礼に当たりますけれども、ちょっと誤解をしていらっしゃるらしいので確認をしたいのですけれども、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」となっておるのですね。しかも極東の範囲については、御承知のような経緯があって、大体フィリピン以北、日本の周辺となっている。だから、いままでの経過からいくならば、その範囲内におけるアメリカの要求については、日本はあるいは安保条約のたてまえ上応じなければならないかもわからない。ただし、少なくともベトナムというのは極東の範囲外であることは、いままでの政府も認めているし、当然大平外務大臣もお認めになっている。ところが、これからのベトナムの問題については、極東周辺におけるああいう事態だから、極東の平和に影響があるのだからということでずるずるとこれを認めているわけですね。ところが、私先ほど申し上げたように、情勢は非常に変わってきている。田中首相自身が中国へ行こうというところまできている。なおかつ、四月以降はアメリカは新たなる軍事行動を起こしている。当然この時点でアメリカがそのままずるずる日本の施設を使うということは、決して合法的でないと思います。当然日米安保協議会を日本が要求して、いまの事態におけるベトナムの状況というものが、はたして第六条を適用できるかどうかということをそこで協議によって決定をする。そこで初めて六条は適用されるのだと思うのです。だから、決して安保条約を改定する必要も何もないわけですよ。そのことを伺っているわけです。
  179. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま進行中のベトナムの事態が新しい事態かどうかという判断の問題のように思うのでございます。確かにこの春以来ベトナムの戦争の態様がたいへん変わったということ、それから、いま御指摘のように、アジアのこの地域における緊張緩和の徴候もいろいろ見え始めたということは確かに言えるのでございますけれども、いまアメリカが遂行いたしておりまするベトナム戦争自体は、ことしの春まで行なわれておりましたベトナム戦争自体と、われわれの安保条約締結国としての立場で見た場合に、本質的に変わりはないという判断でわれわれはおるわけでございまして、いままで従来から継続されておった措置が違法でない限りはこれを許容していくという立場をわれわれはとっておるわけでございます。
  180. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ、なぜアメリカは新たに国連に対して憲章五十一条による行動という通告をせざるを得ないのですか。いままでの継続であるならば、そんなことをする必要はないんじゃないですか。
  181. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国連に対するアメリカの措置は、というより私がいま申しましたのは、日本といたしまして、従来のベトナム戦争と本質的に変わった事態がいま進行中であるというような判断には立っていないということを申し上げたわけです。
  182. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、本質的に変わったというのは政治的にという意味かもわかりませんけれども、安保条約はこれは政治的な問題ではございませんですね。少なくとも軍事行動が、日本の安全を脅かす場合にこれは発動されることであって、何も政治的にアメリカに協力をする、あるいはそういう意味の軍事同盟条約ではないわけです。とすれば、私はやはり新たなる軍事行動が起こった。戦争そのものの政治性は変わらないかもわかりません、変わりませんでしょう、おそらく。アメリカのやり口なんか、軍事行動でこそダウンしているけれども、相変わらずなんですね。だから、問題は軍事行動そのものが新たなる軍事行動である。しかもその背景をなす極東情勢というものは、そういうものを許容しないような情勢になりつつある。この段階で、何で日本は日米安保協議会を開いて、日米安保条約の中には当然としては規定されていないベトナムにおけるアメリカの軍事行動のために日本の米軍基地の使用を許すかどうかということを協議なさらないんですか。
  183. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ベトナム戦争全体の規模は、だんだんと縮小の方向に向かっておるわけでございまして、この春から戦争の態様がたいへん変わってきたというようには判断いたしておりますが、従来のベトナム戦争に対しましてわが国がとっておりました態度をこの際特に改めるべきであるという判断には私ども立っていないわけでございます。
  184. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ日米安保協議会を開いて、いまのアメリカの軍事行動について日本の施設を使用するかどうかについて新たに相談をする気持ちはないと、当然従来どおりの方式でやっていくんだと。これじゃどうも世間は佐藤内閣から田中内閣へ変わって、ずいぶん前向きになるだろうという期待を全く裏切るものですね。一番国民が心配をし、一番国民がいま疑義を持っているアジアの平和の問題、あるいはもっと身近に自分たちの周辺にある軍事基地の使用の問題について、田中内閣佐藤内閣と同じ方針をそのまま継承するというふうにわれわれ理解してよろしゅうございますか。
  185. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私ども改むべきものがございますれば改めるにやぶさかでございませんけれども、いま御指摘の問題につきましてにわかに改めるという気持ちは持っておりません。
  186. 水口宏三

    ○水口宏三君 じゃ、これ以上この点は水かけ論してもしようがないので打ち切りますけれども、それとあわせて防衛庁長官に実は伺いたいんですけれども——それじゃ外務大臣にひとつ伺っておきますけれども、いま外務大臣は従来の方針を継続すると言いましたんですけれども、たとえばアメリカはいま逐次陸上の軍は引き揚げつつありますね。そしてできるなら早い機会にベトナムにおけるアメリカの軍事行動はすべてこれを停止したいという方針を持っているようです。軍事行動は停止したが、チュー政府に対する武器援助はおそらく継続するでしょうね。そうなると、その場合に現在やっているような、ことに相模補給廠でやっているようなああいう形での協力はそのまま継続なさるつもりですか、どうですか。
  187. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いまの安保条約に基づく米軍の補給活動等につきましては、日本でこれを実行してまいるということは便宜をはからなければなりませんけれども、米軍の補給というようなものでないものも、安保条約のルールに従って日本が責任を持たなければならぬというようなものでは私はないと思っております。
  188. 水口宏三

    ○水口宏三君 これはあとで伺いますけれども、いま相模原の補給廠で直して輸送しております戦車、確かに米軍のマークが入っておりますね。ところが米軍は、いま少なくとも陸上戦闘に参加しておりません。あれはチュー政権の軍隊に供給されるということは自明の理でございますね。とすると、あれをやっていることは安保条約違反なんでございますか。アメリカ軍への補給ではありませんよ。チュー政権に貸与するんです。
  189. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいま現実に相模原に来ております戦再、これはすべて米軍のものでございまして、こちらへ修理のために持ってきておるものも全部米軍のものでございます。
  190. 水口宏三

    ○水口宏三君 私は米軍のものでないとはひとつも言っておりません。マークもそうですね。所有権もおそらく米軍にあるんでしょう。ただ、私が言うのは、外務大臣はアメリカのベトナムにおける軍事行動によるそのための補給なり修理なりは安保条約によってやると言っておるけれども、あの米軍の戦車というものは、米軍が使っていないのは自明の理じゃありませんか。そんなものはあなた、チュー政権がアメリカの戦車をもらって、チュー政権の軍隊が使っているのは明らかじゃないですか。物自身はアメリカのもの、だからぼくが言ったのは、アメリカが今後さらにベトナムにおける軍事行動を縮小して、武器援助をやる、アメリカの武器をチュー政権に貸してやると、その場合どうなるんです、アメリカのものであるかどうかは問題じゃないんです。
  191. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 安保条約に基づきます日本政府の立場でございます限りは、基地の提供あるいは基地の利用も米軍に対して行なっておりますので、それが米軍の活動である限りは差しつかえないと存じます。
  192. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、米軍の活動とおっしゃいますけれども、私が申し上げているのは使用者ですよ。アメリカがチュー政権に対して武器援助を行なう場合に、おそらくベトナムまではアメリカが持っていくでしょう。それはやっぱりアメリカの行動ですね。とすれば、その場合でも相模原の補給廠は使わせるわけですね。
  193. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) その物が米軍のものでございまして、米軍の所有であれば、多少その間に貸与というようなことがありましても、米軍のものである限りは差しつかえないと存じます。
  194. 水口宏三

    ○水口宏三君 そうすると、大平外務大臣答弁と全く食い違いますね。米軍の軍事行動に伴って破損したものを、これを修理し補給することは、安保条約六条並びに地位協定によってやむを得ないと。そうではないんだと、あなたのおっしゃるのは。それはアメリカのものでさえあれば、これは先へいってチュー政権への武器援助という形になろうが、日本が安保条約によってこれを修理し、補給し、さらに輸送に協力する責任があるんだと、そういうことですか。そういう全く食い違った答弁では私納得できません。大臣からはっきり御答弁願います。
  195. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 安保条約並びに地位協定というのは日米間で結ばれておる取りきめでございまして、それがいま担当者から御答弁申し上げましたように、米軍のものであり米軍の活動に必要なものであるというような限りにおきましては、当然取りきめの効果が及ぶものだと思います。その範囲が、米軍が第三者に貸与することが明らかなもの、そういうものにまで及ぶかどうか、その点は非常に貴重な御指摘でございますので、私自身もう一度検討さしていただきたいと思います。
  196. 水口宏三

    ○水口宏三君 それはこの現在の相模原におきます米軍の戦車の問題に直接影響あるだけでなしに、いまのアメリカのベトナム戦争のベトナム化あるいはアジアにおけるさまざまな、ことに日本にもそれはひっかかってきます。日本もみずからの力で守るということをアメリカは要求しておる、いわゆるニクソン・ドクトリンですね、その一環だと思うんです。これをだから安保条約とどう結びつけるかなんということは、当然外務省は検討し、その結論を得ていてしかるべきにもかかわらず、まあ大平外務大臣がそうおっしゃる以上、これ以上追及いたしませんが、至急これを明確にしていただいて、次の機会に口頭なりあるいは文書なりで御答弁いただきたいと思います。  それではもとへ戻りますけれども防衛庁長官おいでになったのでちょっと伺いますけれども防衛庁長官も日本の防衛の責任をお持ちになっていらっしゃるので、ベトナムにおける事態、少なくともアメリカがこの四月に北爆なりあるいは海上封鎖を始める以前のベトナムの状況、あの状況というものが日本の安全を脅かしている状況であったのかどうか、あるいは極東の平和に非常な危険をもたらす状況であったのかどうか、防衛庁長官として、防衛的観点から軍事的にひとつ御判断を伺いたい。
  197. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 私どもの所管と少々あれのようでございますが、安保条約の解釈の見地からいいまして、日本の安全に全然関係がないというふうには言えないのではないかというふうに考えます。
  198. 水口宏三

    ○水口宏三君 関係がないとは言えないとおっしゃれば、それは印パ戦争にしてもあるいは中近東戦争にしたって、あるいは中ソの国境紛争の問題にしてもみんな関係ありますよ。ただ防衛庁長官として、何らかわが国が行動を起こさなければならぬような事態であったのかどうかということです、防衛的観点、軍事的観点からいって。しかもそれはアメリカが北爆を始め、海上封鎖を行なう以前のベトナムにおける状況ですね、私は少なくともこれはベトナム内部におけるむしろ民族独立のための統一戦争であった、統一の紛争である、これはベトナム内部の問題だと理解しておるんですけれども、これが極東の平和に大きな危険をもたらす、日本の安全を脅かすというふうに——日本の防衛の責任者のもっと明確な御答弁をいただきたいんですが、関係がないとは言えないとおっしゃる。そんなあいまいなことなら、どこに戦争があったって関係ありますよ。
  199. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 日本の自衛隊が行動を起こすような必要があるように思うかと言われましたが、そういう必要があるような事態とは考えておりません。安保条約の問題としての考え方としては、全然安全に関係がないというふうにはちょっと言い切れないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  200. 水口宏三

    ○水口宏三君 どうも防衛庁長官としての答弁としては私は納得がいかないんですが、自衛隊が出動するなんというのは、ベトナムに初めから自衛隊が出動するはずがないんですからね。そんなことをできるはずがないんです。日本の防衛というものをお考えになった場合に、ベトナムの事態というものは軍事的に見てどうかということを伺ったので、どうも防衛庁長官、その点はっきり検討していらっしゃらないらしいので、これは一応やめましょう。  その次に、事前協議との関連ですけれども、この中で戦闘作戦行動についての統一解釈について、私実はこの前の委員会で、長官の前に久保防衛局長から伺った戦闘作戦行動の解釈と、その後内閣委員会でやっぱりこの問題が論議されて、外務省から出した統一見解とだいぶ食い違いがあるような気がするのですけれども、まず防衛庁長官から、防衛庁で戦闘とか作戦ということばはあまりお使いになっていないと、これは防衛行動とか何かということになっているんでしょうけれども、それはさておき、戦闘行動、防衛作戦行動、さらにそれを一つにした防衛戦闘作戦行動というものについて、三つについてどういう場合にそれを使い分けられるのか、防衛庁長官の考え方を伺いたいんですが。
  201. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 自衛隊で作戦行動あるいは戦闘ということばを使っておりますが、作戦行動というのは、与えられた任務達成のために遂行する武力行動というか、軍事行動といいますか、そういうものに、戦闘とはそうした作戦目的を達成するために衝突をし、戦闘力を行使をする行為というふうに、そういう意味で使用をいたしておるということでございます。
  202. 水口宏三

    ○水口宏三君 戦闘作戦行動は。
  203. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛庁としては戦闘作戦行動ということばは使っておらないようでございます。これはこの安保条約に関連する事前協議の場合に用いられたことばということでございまして、これは戦闘作戦行動ということばの解釈は外務省の解釈のとおりに考えておる、こういうことでございます。
  204. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ逆に伺いますけれども、たとえば航空部隊による日本の基地を利用しての直接的な爆撃ですね。あるいは日本の基地から飛び立った空挺部隊が戦場へ降下をしていく、あるいは地上部隊が上陸作戦を佐世保なら佐世保から韓国へやったと、これはどっちなんです。防衛庁の言う戦闘行動なんですか、作戦行動なんですか。
  205. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 何というか、日本の基地から飛び立っていって相手、いわば敵でございます、敵の基地をたたくというふうな行動は戦闘作戦行動、日本の基地から飛び立っていってパラシュート部隊が敵地に降りていくという、降下をするということもこれは戦闘作戦行動と考えるべきものである、そういうふうに防衛庁としても考えております。
  206. 水口宏三

    ○水口宏三君 どうもうまく合わされちゃったんで、ちょっと困りますけれども、それじゃ戦闘行動というのは、敵前上陸というのは戦闘行動じゃないんですか、戦闘作戦行動ですか。
  207. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) それはいわゆる戦闘行動であり戦闘作戦行動で、敵前上陸などは戦闘作戦行動と思います。
  208. 水口宏三

    ○水口宏三君 戦闘行動じゃないんですか。
  209. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) それは戦闘行動でもあると思います。
  210. 水口宏三

    ○水口宏三君 いやそこが非常に重要なんですよ。戦闘行動であるのか、戦闘作戦行動であるのか、戦闘行動でもあり戦闘作戦行動でもありますなんてあいまいなことでは、非常に私は困るんです。当然そのことば、ことばには一つの概念があるわけですから、同じことが、それはまあ戦闘作戦行動の一部としての戦闘行動ということも言えるかもしれませんが、しかし、それは敵前上陸というのは戦闘行動と言うべきなのか、戦闘作戦行動と言うべきなのかということを伺っている。
  211. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 防衛局長から少しこまかく御説明さしていただきます。
  212. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 戦闘作戦行動ということばでどういう事態を意味するかということは、ただいま長官も申されましたように、防衛庁としてはそういう用語を使っておりませんので、これを政府側のことばとして申しまする場合には、外務省が統一解釈として出しました事柄でお答えを申し上げるほかないと思います。
  213. 水口宏三

    ○水口宏三君 それならもういいですよ。しかし少なくとも先日の委員会で久保防衛局長の答弁の中では、戦闘行動と作戦行動とお分けになって、戦闘作戦行動といった場合にはかなり幅が広くなる、これは補給、修理、輸送、部隊の配置、そういうものを含むものが戦闘作戦行動だという御答弁をなさったはずです。あれは、じゃ、久保防衛局長の単なる個人の意見であって、防衛局長としての意見ではないと理解してよろしゅうございますか。
  214. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 当時も作戦とか戦闘ということばは防衛庁でも使っていると、しかしながら、戦闘作戦行動ということばは使っておらない、したがって、これは条約上の解釈で当たるべきであるけれども、かりに戦闘とあるいは作戦ということばを二つ合わせてあえて解釈するならばこういうことでありましょうかということを申し上げたわけでありますが、防衛局長として答弁したわけでありますけれども、政府の解釈としましては当時は確立されておらない。したがって、政府解釈が出た以上は防衛局長といたしましては政府解釈に従わざるを得ない、こういうことになります。
  215. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ防衛局長の前言の訂正として受け取って、この点はひとつやめましょう。次の機会に三十一日に十分やりたいと思います。  その次に、ぜひこれは外務大臣に伺いたいのですけれども、今回の先ほど申し上げましたB52から始まって戦車の輸送の問題、装甲車の輸送の問題、さらに横須賀からの弾薬の輸送の問題、これらの問題を含めて、一体外務省として今後どういうふうに対処をなさろうとしているのかということを伺いたいのですけれども、時間がございませんので、私のほうから少し具体的に指摘をしたいのですけれども、大体安保条約そのものをそろそろ再検討する時期に来ているのではないかという気がいたします。というのは、先ほど申し上げたように極東情勢が全く変わりつつある。もし日中の国交回復というものが成立したならば、安保条約そのものの基本的な政治的背景というものも変わってくるわけです。第一には安保条約そのものを再検討なさる気持ちがおありになるのかどうか。この点についてはさらに付言するならば、私は砂川判決をたてにとっても私は現行安保条約が憲法に違反しないという何らの保証もないわけです。これは旧安保条約に対する砂川判決ですら最高裁はその判断を逃げているわけですから、まして現安保条約についての違憲性の問題についてはどこもこれはまだ、少なくとも司法裁判所は行なっていない。政府だけがこれを合憲だと言っているわけですが、これらの問題も含め、情勢の変化を含めて、まず第一に安保条約そのものを情勢に合うように再検討なさるお気持ちがあるかということが第一点。  その次に、もし安保条約そのものの再検討は将来あるかもわからぬが、当面やらぬとするならば、少なくとも条約の運用の再検討ですね。これはさっき私が申し上げました今度のベトナムとの関連においては全く日本は自主性はないと思うのです。これだけの状況の変化あるいは新たなる米軍の行動について、当然日本なりの私は見解を持って日米安保協議会を通じてアメリカと話すべきであったにもかかわらず行なっていない。そういうことで、大体安保条約の運用というものは全くアメリカペースによって押し切られていく可能性があるわけです。またこれとの関連の地位協定などにつきましても、少なくとも航空法、電波法、あるいは爆発物取締法もみな特例を認めております。これらを考えて、安保条約そのものの運用について少なくても再検討なさるおつもりはあるかどうかについてまず伺いたい。それすらもしできないとするなら、少なくても極東の範囲ということばをもっと厳格に解釈すべきじゃないか。これはもうすでに外務委員会等で大平外務大臣自身もおっしゃっているように、台湾条項は非常に問題がある条項なことは明らかである。ましてその周辺となったら、ベトナムは周辺だから入るんだということになれば、これは、私は当委員会でも言ったのでありますが、周辺、周辺と言えば、地球上全部周辺ですよ。こんなに高度に兵器の発達した現状で、どこで戦争が起こったって極東の平和に影響ないと言えないわけです。そういうあいまいな解釈をとってきたことに、私は問題があると思うのです。  第三点としては、少なくとも極東の範囲というものを明確にして、それ以外にはもう日米安保条約の適用はしない、第六条の適用はしないということについて再検討なさるおつもりがあるかどうか。以上三点ですね、これらを含めて九月の日米首脳会談でもし話し合いができるならば、非常にいい機会だと思いますので、そのことも含めて外務大臣の御答弁を願いたいと思います。
  216. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 結論から申しますと、いませっかくあげられました三点のいずれにつきましても、慎重にならざるを得ないわけでございます。何となれば、この安保条約の存在ということは、わが国の安全にとりまして非常に重要な事実であると判断しておりますので、これの改廃あるいは再検討というような問題につきましては、非常に神経質にまで慎重でなければならぬのではないかと考えております。ただ、その運営につきましては、ぎりぎり最善を尽しくまして、国内的に摩擦が生じないように配慮してまいらなけりゃならぬことは当然でございまして、基地の存在、米軍の存在というもの自体も、国民の十分な理解と協力がなければ実効をあげ得ないわけでございます関係もあり、私どもといたしましては、その点につきましては、十分運営につきまして細心周到な配慮を加えてまいらなきゃならぬと考えております。
  217. 水口宏三

    ○水口宏三君 どうも何かわかったようなわからないような御答弁で非常に残念なんですが、たとえば、極東の範囲の問題ぐらいについて、これはアメリカと明確にしておく必要がどうしてもありますよ。あるいは、たまたま九月初め、初旬にアメリカ首脳との会談があるから、いまなまじ安保問題についてとやかくここで言うことはかえってアメリカを刺激するということで、あるいはおっしゃれないかもわかりませんが、勘ぐりですよ。私はただ現状をこういうふうに国際情勢、特に極東の情勢の変化しつつある中で、基本的に安保条約そのものについて再検討、その前段として少なくとも運用についての再検討、これは地位協定を含めて、さらにそれを狭めて極東の範囲ぐらいは明確にしなければ、これはアジア諸国に与える日本のむしろ脅威ですよ、まさに。これはもう経済的には大平外務大臣専門家でいらっしゃるので、ただでさえ日本の経済侵略ということはアジア諸国は非常に危惧を持っている。そういう中で自衛隊はどんどんふえ、安保条約は切りかえられていく、極東の範囲をこれはもうどんどん拡大していく、これじゃ私は新しい田中内閣の姿勢、政治的方針というものに非常に疑いを持つだろうと思う。そういう意味におきましても、私は、非常に時期が悪いからいま答えられないというなら、もう少し慎重に検討してそれらについて具体的に御答弁がいただけるかどうか、それだけでもひとつ聞いておきたい。
  218. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしましては、現行の安全保障の基本的な組み立てというものにつきまして、その改定という、あるいは再検討ということにたいへん憶病であると申し上げたのでありますけれども、しかし、これは何もこの地域の緊張緩和へのわが国の内政、外交上の努力ということをはばむものでは決してないのでありまして、むしろより果敢に、そういう積極的な平和創造への努力ということは精力的に進めていかなければならぬと考えております。
  219. 水口宏三

    ○水口宏三君 どうも、何回伺ってもわかったようなわからぬようなことで非常に残念なんでありますけれども、いずれにしても、永久に再検討しないということじゃなしに、適当な時期には再検討すると私は理解してよろしいでしょうか。安保条約そのものでない、いま言った運営の問題なり、あるいは極東の範囲なり、それが現状では少なくともいろいろな摩擦を起こしているわけでありますから、先ほど申し上げたようにこれを再検討するということを何で言えないのか、私どうも理解できないのでございますけれども、その点はいかがでしょうか。
  220. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういったことが大胆に行なわれるような事態を希望しております。
  221. 水口宏三

    ○水口宏三君 非常に名答弁なので私も歓迎いたします。大胆に行ないたいのだけれどもそういう事態がいまない、そういう事態ができれば大胆に行なう、そう理解をしてよろしゅうございますね。よろしゅうございますか。
  222. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう事態の招来を心から希求いたしております。
  223. 水口宏三

    ○水口宏三君 それでは、基本的な問題はその程度にいたしまして、具体的な相模原の補給廠の事件の問題と、戦車輸送、横須賀の弾薬輸送と、三つ問題がありますが、時間がありませんのではしょって質問しなければならぬのは残念なんですけれども、まず第一に戦車輸送につきましては、昨日の外務委員会で、外務大臣が一切特例は認めないということをおっしゃったという新聞報道がございますけれども、これはここで再確認してよろしいかどうかということと、それから某情報によりますと、官房長官が八月一ぱいは戦車輸送を行なわないと言っているという情報があったのでございますが、外務大臣はその点御存じなのかどうか。事実、八月一ぱい行なわないという何らかの政府の意思決定をなさったのかどうか。この二点だけについて、最初に伺います。
  224. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま米軍の基地施設間の移動につきましても国内法を順守していく、国内法上の手続に従っていくということでまいらないといけないと私は考えておるわけでございます。したがって、いまこういう問題が出てきたからというて、国内法令の改正というようなことに手を染めるべきではないと考えております。国内法令の改正というのは、また別な機会に道路当局が考えられる問題でございまして、この問題に関連いたしまして、直ちに改正をお願いするというようなつもりは毛頭ございません。  それから、いま私どもが努力いたしておりますのは、そういう国内法上の条件を満たしてまいること。実体的に満たしてまいるばかりでなく、手続的に、国ばかりでなく地方公共団体等の許可を得なければならぬのでございまして、そういった手続に間然するところなく従いまして、搬送を円滑に行ないたいということでございまして、そういうことがいつまでに完了するかというめどはいまの段階でまだ立っていないわけでございまして、官房長官が八月一ぱいは無理だろうという判断を下されたといま承りましたけれども、官房長官の判断いかんにかかわらず、問題はそういう手続を全部きれいに終えて、それでやりたいということでございますので、その時期をいまいつまでそれを終えるつもりなんだといっても、相手のあることでございますから、ここで申し上げることが自信がないわけであります。
  225. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ、時間がございませんので、まとめて戦車の問題と相模補給廠、横須賀について伺いますが、戦車の輸送問題については、去る十九日の新聞を見ますと、建設省が大体国道十六号全部調べて、あぶない地点も全部、特に橋梁を中心に調べて、そしてこれは非常に無理な走行をやれば何とか通れるという建設省の報告が出ておるわけですね。ということは、逆に言えば、非常に危険であるということだと思うのです。タンクをおろして、しかもその道のまん中を十キロでもって歩かなければいかぬなんというのは、これはまさに非常に危険であるということを建設省自身が認めたことになると思いますけれども、なおかつこういうことをやれば、これには相当時間がかかって、ただでも込んでいる国道十六号というものが、交通渋滞の麻痺というものが起こるのは当然だと思います。そこで、建設省ないしは交通関係の警察関係のほうから見ても、こういう無理をして何で戦車を運ばなければならないのかということについて国民は納得できないと思うのです。だから、もしいま大平大臣のおっしゃったことが、補強してからやるからおくれるというのか、それはそれでもってやるんだということなのか、その点ちょっとはっきりしてもらいたい。
  226. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは私の判断すべきことではなくて、道路管理御当局の判断でございまして、私どもは一日も早くそういった判断が確立いたしまして、輸送が円滑に行なわれることを期待いたしておるわけでございます。
  227. 水口宏三

    ○水口宏三君 いや、それじゃあ一応その建設省が調べたこういう危険な状況というものについて、これは建設省なりあるいは交通渋滞についての警察庁の御判断ですね、これはぎりぎりこうなんだ、なるべくならやってもらいたくないということなのか、これなら十分やれますということなのか、一言ずつ、時間がございませんので、建設省と警察庁から御答弁いただきたい。
  228. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) 横須賀までの橋につきましてすべてのチェックを行なったわけでございますが、これはたとえ、ただいまの場合は米軍の戦車でございましたが、もし国内のある物資を輸送する場合でも、同様なチェックをいたしまして、通れるものは通すことにいたしております。最近でも三百トンクラスのトランスとかその他の機械を運んだ例もございまして、米軍であろうと国内の輸送であろうと、申請が出されたものにつきましてわれわれチェックをしまして、通れるものは通すことにいたしておるわけでございます。
  229. 高橋幹夫

    説明員高橋幹夫君) 本来の交通安全であり円滑であるということに関連いたしましては、まず前提条件としましては、当然建設省の道路関係のものとしてやるべきだと思っております。ただ警察といたしましては、交通安全あるいは円滑というものに関連いたしましては、建設省とも協力をして当然やるべきであるというふうに思っておりますが、やはり合法的に、しかも正確にやるということが、やはり全体の、事態を防止するという意味において警察は必要である、こういうふうに考えております。
  230. 水口宏三

    ○水口宏三君 それじゃ、戦車輸送の問題はそのくらいで打ち切りますけれども、外務大臣はできるだけ補強もして云々という御答弁があったものですから、建設省のほうにしてもあるいは警察庁にしても、私はむしろ無理な形で外務省を通じアメリカに迎合することのないように、くれぐれもお願いしたいと思うのです。  それからもう一つだけ、これは警察庁に伺いたいのは、相模原の補給廠の問題でございますけれども、これは御承知のように、八月の十四日でございますか、十四日に相模原の補給廠で米軍の装甲車がノースピアに行くときに、あそこの門前でトラブルが起きた、このトラブルについて、事実経過は十分御承知だと思います。少なくとも道路管理者である市長がはっきり道路管理員という黄色い腕章を道路課長に渡して、そしてあと部下二人を連れて、パトカーに乗せて現場に行った。そして、少し手前でもって課長と係長はおりた。そしてその指揮者に対して、自分は管理員なのでぜひ米軍装甲車をはからしてくれということを言ったところが、全然問答無用、このこと自体は私は非常に遺憾だと思うのです。ところが、その後係員が逮捕され、パトカーが多少こわされたということもございます。これはもちろん非常に遺憾でございますけれども、特にその事前に、明確に腕章を巻いた者が、みずからの国内法における権限としてはかりたいと言ったにもかかわらず、それを全然無視して、そして、排除をする、巻き添えを食って係員まで逮捕される、そしてノースピアに装甲車が運ばれていった。この事件については、去る十七日の衆議院の内閣委員会で、大臣が遺憾であるという御答弁をなさっているけれども、逮捕が不法であるかどうかは別問題だという補足がついておりますけれども、ところが、その後八月二十一日の、ノースピアから今度は相模原補給廠へ行くあの装甲車を、請け負っておった業者がはかったところが、明らかに道路法違反である、したがって自分はこれを運びませんと言って断わったんですね。そこで初めてそれは不法であるということがわかった。十四日に運んだものが不法であったということが二十一日になって明確になったわけです。したがって、十七日の国会における大臣答弁だけでは私は満足できないわけです。これは明らかに警察が、むしろ自治体の権限を無視して不法な道路交通というものを警察側でもって強引にやったんだという結果になっておるわけですね。それまでにいろいろいきさつはございましょう、少なくても八月二十一日のノースピアにおける測定結果がわかったわけですが、これらを踏まえて、一体十四日の相模原の補給廠での事件、その後の二十一日のノースピアでの問題、これらをからめて警察庁長官見解だけを伺っておきたい。
  231. 高橋幹夫

    説明員高橋幹夫君) 先ほど御指摘のように、確かに現場においていろいろなトラブルのあったことは事実でございます。したがいまして、そういう警察と道路管理者との間の連絡が必ずしも十分でなかった、そういう点については、車両についても十分チェックできなかったということは残念であったと思います。したがいまして、御承知のとおり、今後は、いわゆる三者協議会ということで、特に自治体の市側の意見をよく尊重しながら、あるいは道路管理者としての関係として十分対策を練ったほうがいいじゃないか、こういうことで輸送が行なわれるよう、いわゆる条件づくりをして、その上で警察としても混乱の起きないようにしていくということが、適切に処置をすることが必要かと思っております。したがいまして、いままでいろいろな問題について起こりましたけれども、それぞれの問題につきましても、いま申し上げたように、今後そういうことのないように、しかも混乱のないように、きわめて適正に行なわれるというふうに私は考えております。
  232. 水口宏三

    ○水口宏三君 これで最後にいたしますけれども、いまのノースピアの問題につきましては、少なくても十四日の時点では、外務省から連絡があったのか、米軍から連絡があったのか、道路法に違反しないということを前提にして警察はああいう行動をおとりになった。ところが、市側はどうも道路法に違反するのではないかということで調べに行ったところが、警察官の実力でもって排除されて調べられなかった。そのことについて警察庁の、公安委員長は遺憾であったと言っているわけですね。事実それが二十一日になって立証された。したがって、私は、ここでもってあらためて警察が、単にうのみにしてやっただけではなしに、正当な権利でもってはかろうとしたものをはばんだということは、それが一週間後に明らかに不法であったということが明らかになった以上、この国会を通じて、やはり警察のそのときのやり方についての釈明があってしかるべきだと思うのですが、それが第一点です。  それから第二点は、横須賀からの弾薬輸送の問題について、これも新聞が出しておりますし、事実でございましょう。これはもう結局、これはほんとうに混雑した中を昼間弾薬を運ぶということのいかに危険であるかということは、これは常識の問題なんですね。だから警察庁ですらこれに対しては何とかしてくれと言っているわけですよ。これを今後どうするつもりなのか、これは外務省、防衛施設庁、警察庁の見解をそれぞれ伺って私の質問を終わりたいと思いますが、まず最初に、釈明と申しますか、この間の相模原補給廠の警察の行動についての警察庁長官の現時点における考え方を伺って、それから横須賀からの弾薬輸送についてのとった処置について伺いたい。
  233. 高橋幹夫

    説明員高橋幹夫君) ただいま申し上げたように、確かにそういう点について不十分であったという点はそのとおりだと思います。ただしかし、それ自体についての事件の処理というものについては、さらに正確に明らかにするということが当然である、こういうふうに思っております。したがいまして、今後のいろいろな問題については、そういう不祥なことがあったら平穏にすべてのものが行なわれるように確保しなければならない、こういうふうに長官としても考えておる次第でございます。
  234. 水口宏三

    ○水口宏三君 横須賀の弾薬輸送の問題、大臣防衛施設庁と警察庁。
  235. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 弾薬輸送の件について、外務省としての立場からお答え申し上げます。  在日米軍の火薬類を車両で運搬する場合には、その安全を確保するために、火薬類の取締法の精神にのっとりまして、日米の合同委員会で米軍の火薬類輸送についての運搬上の措置という合意ができております。これは昭和三十五年にできております。今回の件もこの合意に基づいた安全上の措置はとられて輸送がされておるというように了解しておりますので、その点については、一応合意した条件に従って輸送が行なわれたと私どもも承知しております。
  236. 水口宏三

    ○水口宏三君 新たな対策はとらないわけですね。今後の対策を伺っているのです。外務省、そのまま放置しておくわけですね。
  237. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) この米側との合意の作成にあたりましては、国内法上の安全確保という点も考慮されて合意事項ができておりますので、一応そうした見地に立ちましては、ただいまこの合意に従った措置によって行なわれれば、たてまえ上は差しつかえないと考えておりますが、実施上の問題については、実施されるところとの具体的な態様によって考慮される点もあり得るかとも思いますが、たてまえとしては、ただいまの合意に従った措置がとられておったと承知しております。
  238. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 横須賀からの富士演習場に対する弾薬輸送でございますが、これにつきましては、通常佐世保から横須賀に海上輸送をする。それから横須賀から米軍との荷役契約によりまして、日本の民間業者が陸上輸送をやっておるという状態でございます。民間業者の輸送につきましては、日本の国内法令、火薬類取締法、火薬類運搬に関する総理府令等の関係法令、これを守ってやっていることは当然でございます。実情、そのように私どもは承知しております。
  239. 山本鎭彦

    説明員(山本鎭彦君) 弾薬輸送の関係についてお答えを申し上げます。  神奈川県警では、所轄署を通じて米軍から通報あるいは業者からの届け出を受理いたしますと、保安一課から関係各省及び関東管区警察局を通じ、関係の各県警に日時、輸送方法、コース、火薬の種類、出発地、到着地、こういう輸送の概要を連絡し、所要の視察、警戒、警備を指示いたしております。これまでのところ、パトカー等による沿道警戒もいたしております。これまで火薬輸送に伴う違法事案あるいはいろいろな処理事案というものは、いまのところ把握いたしておりません。
  240. 鈴木力

    鈴木力君 私は、主として北富士の演習場の経緯とこれからの問題についてお伺いいたしますが、最初に、環境庁の長官においでいただきましたので、あとの時間がないそうでありますから、環境庁の長官にまずお伺いをして、それから本題に入りたいと思います。  環境庁の長官にお伺いいたしますのは、一つは、富士山を中心とした国立公園がございます。これは富士箱根伊豆国立公園。あの国立公園を調べてみますと、どう見ても、われわれから見ると不自然だ。——不自然だとというのは、まるい富士山のところに東富士、北富士の演習場がずっと入り込んでしまって、そこだけが国立公園から除外をされておるわけです。これはもちろん演習場が先にできまして、国立公園があとからできたものですから、あとで追っかけてその部分を除外したのだろうとは思います。しかし、実際に富士の環境を守る、あるいはいまの自然を守るという大きな日本の国民の声が盛り上がっておるときに、そういう観点から国立公園の現在の状況を見ますと、行政的にいまできるできないは別としても、環境庁長官としての御所見をまず伺っておきたいと、こう思のです。
  241. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) いま御指摘がありましたとおり、富士山の東側の山麓については、国立公園の適用除外といいますか、国立公園の区域外になっております。これは公園指定の当時に、この地域が主として演習場であったということから、公園区域に編入しなかったのであります。現在は、この地域は米軍の演習場として使用されておりますが、この使用目的が変更されるというようなことがあります場合には、環境庁としては、この区域内の自然の状態が国立公園に適するものについては国立公園に拡張したいと、こう考えています。ただ、むろんこのことをやる場合には、当然関係の行政機関や地元等の意向も勘案しなきゃなりませんが、いま申し上げましたように、自然の状況が国立公園に適している地域についてはこれを考えておるわけであります。
  242. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから端的に伺いますが、いまの御答弁で、私もそういう立場でお伺いいたしましたので、環境庁の長官のいまの御答弁私もよくわかります。ただし、そういう環境庁長官の願いにもかかわらず、現実にはいまえぐり取られておる、これはまあいきなりどうこう言うわけにはいかない問題でありますけれども、少なくとも私はいま環境庁長官の御答弁で確認をしておきたいことは、政治的に行政的に、いろいろな手続はともかくとして、少なくともあの富士全域を日本の霊峰とも言えば日本の顔とも言える。そしていま自然を守るという、あるいは環境保全という声が国民的にも盛り上がっておる、政府の施策としても非常に大きな柱になっておる、こういう時期に、富士山麓を、たとえば国立公園にするか、あるいは国立公園に準じたいろいろな扱いにするかは別としても、少なくともああいうえぐり取るというような人為的に障害があるということはきわめて望ましからざることであるし、それが国民の声であるということを確認したいわけです。御答弁がそういう意味だと思います。  そこでもう一つ、これは環境庁長官がまだ御存じかどうかわかりません、このあとから御質問申し上げることでありますが、仄聞するところによりますと——どうも長官に先にお伺いするんで質問の順序ちぐはぐになって恐縮なんですが、この北富士演習場の返還問題をめぐりまして、何かきょう政府と山梨県知事との間に暫定使用協定が結ばれたとか、あるいはその合意に達したとかいう話が聞こえております。これはあとで防衛施設庁あるいは防衛庁にお伺いいたしますが、おそらくまだ環境庁には連絡がないかもしれません。しかし、私はその中に、これもまだ仄聞でありますから、確定のことじゃありませんけれども、政府はいまの暫定使用協定を結ぶ前提として、富士保全法という法案を出すということを言われておるんであります。そういう構想について環境庁長官に協議があったのか、連絡があったのか、あるいは環境庁長官の意見というものは徴されておったのかどうか、それをお伺いいたしたいと思います。
  243. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) いや、いまのその話はまだ全然伺っておりません。
  244. 鈴木力

    鈴木力君 私は、これは長官の立場で申し上げるような気持ちでありますけれども、あとでこれは防衛庁長官なり担当の長官にお伺いいたしたい。どうして環境庁長官に連絡もせずに、事前の相談もせずに、国民的にいま富士の景観なり自然を守ろうという声が盛り上がっているときに、条件が許せば国立公園にもう一度あのえぐり取られたところをしようという気持ちが長官にもあるときに、環境庁長官には全然相談なしに富士保全法をつくるというようなことが暫定協定の条件として政府から持ち出されるものかどうかですね、その辺の経緯を伺いたいと思います。これは防衛庁長官に伺ったほうがいいと思う。
  245. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 鈴木委員よくこの北富士の問題の経緯を御承知かと思うんですが、……。
  246. 鈴木力

    鈴木力君 時間の都合で、環境庁長官の時間の都合もありますから、いま私のお伺いしたそこだけ答えてください。
  247. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 県有地などの賃貸借の期限が法解釈の何といいますか、確立といいますかによって変わってきまして、これを引き続き使わしてもらうための契約をしなければならぬようになりまして、その話の途中で、まあ相当下の部分、まあいわば千百メートル……
  248. 鈴木力

    鈴木力君 その経緯はあとで聞きますから、富士保全法を環境庁長官と連絡しないで示されたその事情を聞きたいと思います。
  249. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) これはその話し合いの過程で官房長官のところへ話を持ち込むようになりまして、官房長官のところで続いて使用の契約を結ぶためのあれとして、周辺整備法の一そう適切な適用とか、富士保全法というふうなものを考えるということでこの引き続きの使用をしたいという構想を打ち出されたということでございます。
  250. 鈴木力

    鈴木力君 どうも、その富士保全法という構想を出したことを私が仄聞をしたから、しかし、そういうものについては環境庁長官とも事前に打ち合わせをするなり、富士保全法の構想なりというものは、政府全体としても、特に環境庁との間の打ち合わせというものがあってしかるべきだったろう、あえて環境庁を除外して、そしてそういうことを外へ持ち出したという意図が私にはわからない。あえて環境庁を除外して、環境庁長官がいま初耳だというような答弁をしなければいけない、その意図は何かということを聞いている。もう一度答えてください。
  251. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) その点は、この問題の解決のいま衝に当たってもらっておる官房長官のところでそういうふうな運びを考えられたのでございます。官房長官としても、あえてしたという、環境庁長官をはずしたということではなかろうと思います。
  252. 鈴木力

    鈴木力君 時間ですし、環境庁長官は御存じないわけですから、六時までという約束ですから、あと環境庁長官にお伺いいたしません。ただ、いま増原長官の御答弁で、私は納得できない。できないといいますのは、官房長官がその交渉の衝に当たっている。そこで官房長官にこの委員会に出てもらって、私は御答弁をいただくという申し入れをしたのであります。ところが二階堂官房長官においでいただいて御質問申し上げるという申し出をいたしましたが、官房長官はきょうは時間的にどうしても忙しいので、防衛庁長官あるいは施設庁長官に十分答弁ができるように連絡をしておくから欠席を許してくれ、こういう話がありました。私も、官房長官の御多忙なことはよく知っていますから、そこで十分に御連絡がいただけたものとして、官房長官に御質問申し上げる分を増原長官にいま御質問しているわけです。ところが、それが官房長官がやったことで、おれは知らぬぞという答弁が出るとすれば、どうも私はこれから質問するのにしようがなくなってしまう。何か意図的にそういう形でこの時期を延ばそうというふうな政府側の意図にしかどうも勘ぐらざるを得ないのです。ほんとうのことはどうなんですか。
  253. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 先ほども申したように、話の進行の過程で山梨側の要望に十分には沿えないという面があり、そういうことを考慮をして、周辺整備法の一そうの適切な適用、あるいは富士保全法という形における環境の保全整備というふうなことを官房長官としてこの話に持ち出したということでございます。
  254. 鈴木力

    鈴木力君 それでは時間がありませんから、どうせまたもう一度か二度か、この問題については、相当この委員会でも繰り返すことになると思いますから、お答えのできない分は保留しておきます。  まず防衛庁長官に、きょう山梨県知事との間に暫定協定についての具体的な取り運びができたのかどうか、これは私は仄聞しただけでありますから、それを確めたいと思います。そうしてその暫定協定に対して知事と政府側との間に合意したとすれば、どういう点で合意したのか、その内容について御説明をいただきたいと思います。
  255. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 私、この委員会に入る直前に内閣官房から連絡を受けました。本日、山梨県知事との間に北富士演習場の使用について暫定協定を結ぶことの同意が行なわれたと、それは三カ月間の暫定協定である。で、三カ月の間にさらにいろんな諸条件を煮詰めて本協定に入る。こういうふうなことで同意が行なわれたと、こういうふうに連絡を受けています。
  256. 鈴木力

    鈴木力君 その諸条件を言ってください。
  257. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 前々から御承知のように、北富士演習場についてはいろいろな問題が残っております。当面、最近の問題でも、国有地の返還の問題あるいは返還面積の問題、あるいは富士周辺の民生安定の諸施策をもっと充実したものをやるというふうな問題、それからこの北富士演習場の使用の問題とはやや別な形になっておりますけれども、いわゆる富士保全法というものがかねてから地元からもいろいろ要望があった。それぞれの要望に対して、富士保全法というふうな特別な措置をこの際とってはいかがかというふうな問題が前から出ておりました。それから、あと国有地のほかのいろんな公有地がございますが、そこの公有地を演習場からはずして返還する、そういうふうな問題。それから前々から残っておる問題では、いわゆる林雑補償というような問題も残っておるわけです。できるだけそういうふうな条件を、この際いろいろ協議の上、条件を整えて、そうしてそこで本格的な協定を結ぶかどうか、こういうことに相なろうかと思うんであります。
  258. 鈴木力

    鈴木力君 どうも抽象的でよくわからぬのですが、私が聞きたいのは、もう少し具体的に伺いたいんです。何か周辺を整備するとか、そんなことは別に軍事基地の返還と関係のない話です。かりに基地があれば基地周辺整備法という法律があるんだから、わざわざ今度の返還の問題とからんで整備しますというのはおかしい話で、あえて、今度の民法六百四条によって貸借関係が切れた、それを継続使用のための契約を結ぼうとしておるわけです。そのときに出てきたものがいまのような御答弁で、いまのような内容でこの協定が結ばれるとはどうしても私は常識で考えられないんです。何か新聞等に伝えられるところによりますと、たとえば民生安定というところに体育館をつくるとか、あるいは国民休暇村をつくるとか、だいぶ具体的な話が出ているという報道も伝わっているじゃありませんか。それらについてもう少し具体的な話を伺わないと、一体今度の暫定使用協定というものの正体が何なのか、さっぱりわからぬ。
  259. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) いろいろな問題がございます。
  260. 鈴木力

    鈴木力君 いろいろな問題があることはわかっている。
  261. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) それで暫定使用協定は、そういう一切の問題をいろいろ具体的に煮詰めてからの問題ではなしに、そういう問題は一切今後の検討の問題として、とりあえず暫定使用協定を結ぶと、こういうことでございます。  それからいま具体的に体育館その他のお話がございましたが、これにつきましては、私ども仄聞するところによりますと、富士保全法の具体的な内容などとともに地元の県においてどういうことを計画し、どういうことの希望があるか、それらについて地元の県当局で至急計画を作成して提出するように内閣のほうから要望があって、現在地元ではそれについての作業を取り進めていると、こういうふうに伺っております。
  262. 鈴木力

    鈴木力君 そうしますと、いまのところはまぼろしの条件であったということですね。いろんなことを言ってきたけれども、中身は何にもないんです、一切これからだと。そういうことで三カ月の暫定協定ということを同意を得た、そう確認してよろしいですか。
  263. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 暫定ということばは、まさにそういう意味で暫定協定をやったと、こういうことであろうと思います。
  264. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つ伺っておきます。そうすると、何かいろいろ前からのいきさつがあって、山梨県知事とも今度初めての折衝じゃないんです。何べんかやっているんですよ。そうして、あげくの果てには、何かわけのわからないまぼろしの条件を出して暫定協定に同意をさした。こうなれば、さしたということですからね。ですから、そこでこれからは民法六百四条によって賃貸関係が切れた。それは七月の二十八日なわけですね。しかし政府が民法六百四条を適用するという統一見解を出したのは四月なんですね。そこで私は、いま御質問申し上げるのは、この民法六百四条の統一見解を出したあとに、政府側とそれから山梨県知事側との間の交渉の経緯を伺いたいんです。これは時間がありませんから、何月何日どうした、どうしたということでなしに、山梨県知事側の当初の要求はどうであって、それから政府と折衝している間に、最終的にきょうの合意に取りつけたその山梨県側の変化と、それから政府がやはり最初はアメリカに返還面積を拡大するというふうな交渉もしているわけですね。したがって、当初の政府の持った考え方から、きょう合意に達したところの政府側の変化というものです。最初はもう全然開いておったわけです。それが合意に達した両者のこの考え方の変化を、状況を承りたいのです。
  265. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 四月以来、山梨県の知事と直接に、あれは六月十二日からでございますが、それまでに演対協、いわゆる北富士演習場対策協議会というものと県側の事務当局との間にはいろいろ接触がございました。それで、当初の県側の話は、とにかく国から案を提示してもらいたい。県からは案を提示しない、国が案を提示すべきだ、こういう御意向が非常に強うございました。それで私、就任しました直後に、国からの一応の案というものを——返還面積を主としたものでございますけれども、そういうものについて一応の案を提示いたしました。それに対して、山梨県側はたいへん不満であって、これはのめないということになりました。そこで、七月の二十五日に知事と防衛庁長官との折衝が行なわれました際に初めて県側の案が出てまいりました。そのときの県側の要求は、標高千百メートル以下の区域の返還、さもなければ県有地の全面返還、こういう条件でございました。そこで、県有地の全面返還についていろいろまた米側と折衝を行なったわけでございます。とかくしておりますうちに、問題は内閣のほうに移ってまいりました。で、内閣のほうといろいろ折衝が、何回でございましたか、二、三回になると思いますが、ございまして、その際に富士保全法というふうな構想が内閣のほうから出されてきた。で、それに対して、今度は県側から国有地の返還面積をさらに多くしてもらいたい、こういう要求が出てまいりました。私どももいろいろまたそういう結果に基づきまして米側と交渉いたしまして、若干増加することができる、こういう見込みでまいりました。それからきょうの段階になったわけでございます。まあ大ざっぱに申しまして、そういうことでございます。
  266. 鈴木力

    鈴木力君 私がこれをあえていま伺いましたのは、何か経緯をずっと見てみますと、これは決して北富士だけじゃない。この種類の問題についての日本の政府がやってきた手といいますか、あるいは姿勢といいますか、いろいろな手練と手管を使いまして、そして持っていくところに持っていったという、どうもそういう疑いが私のほうから見れば見えてならない。特に、公式ではありませんけれども、政府側のほうから特別措置法を適用するということをちらちらちらつかせている。これは直接そういう交渉の場で言ったかどうかわかりませんけれども、少なくとも新聞にもそういう報道がされている。特に私は、これも新聞でありますが、せんだっての新聞の山梨県知事が記者会見で話をされた中に、国が特別措置法を適用するほど折衝をこじらせることができないからである。要するに、合意に達するように知事も踏み切らざるを得ないと、いろいろな経緯を述べております。そして、それは国が特別措置法を適用するほど折衝をこじらせることができないからであるということが結びになっておる。場合によれば、政府はこの安保条約あるいは地位協定ということをたてにとって、いろんな形で直接あるいは間接におどかしをやっておるわけですね。そうしてとうとうこのところに、合意に結びつけた。してやったりと思っているかもしれません。しかし、県を相手にしてさえこういうことをやってきているということになれば、私は、民法六百四条によりましてそれぞれの個人の私有財産を返還をしてくれと要求している人も相当いるだろうと思う。そういう人たちなんかは、ひとたまりもないんじゃなかろうかという感じがしてならない。その辺はどうなんですか。
  267. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 特別措置法の適用の問題につきましては、私どもは、いままでも国会でも数回そういう御質問がございました。それに対しては、防衛庁長官も私も、北富士の現在の問題は、ほかの民有地、公有地の問題よりも県有地の問題だ。県と国との間においてこういう問題について特別措置法の適用ということは極力避けるべきであるし、それから、そういう点については国と県との間でありますから、話し合いで解決がつくものと思う、こういう答弁を繰り返してまいってきておるのであります。もちろん、私が山梨県知事に山梨で会いましたときにも、一体これが決裂したら国はどうするか、こういう御質問がございました。それに対しては私どもは、国と県との間ですから、これはひとつぜひお互いのいろんな条件その他によって満足できる形でいきたい、そういうことは私どもは当面全然考えておりません、こういう答弁を申しておりました。しかし、そういう法律があることも事実でございますし、そういう点はそういうふうにいろいろ憶測されるのかもしれませんけれども、私どもの態度としては、いま申し上げたようなことでまいったつもりでございます。  それから国がいろんな手を使って山梨をあれしている、県をあれしているというお話に対しては、私自身は交渉を内閣の段階に上がるまで直接ずっとやっておりましたけれども、まことに心外でございます。私どものほうがむしろすぐにできるだけ県側の御要望に沿いたい、県側の御要望に沿った処置をとりたいということで米軍に対する交渉も繰り返しやってまいりました。そういう点では私は、自分としては非常に誠心誠意これに当たってきたと、いままあ外からごらんになってそういうふうに見えるかもしれませんけれども、私どもとしては毛頭そういうつもりはないというふうに考えております。
  268. 鈴木力

    鈴木力君 どうも時間がないので、あまりつまらぬやりとりはしたくありませんが誠心誠意やっていらっしゃることは私もそうだろうと思う。ただ私が申し上げたいのは、皆さんが誠心誠意で何ら悪意がない、これはまあそうだろうと思う。しかし、皆さんの誠心誠意というものは、もはや国民あるいは地方自治体と政府側とが対等であるという気持ちがどっかにいってしまっている。そして何かをこう少しでもプラスしてやるというような気持ちが誠心誠意になってあらわれる御答弁だと思うのですね。その辺が私はいまの軍事基地問題の非常に大きな問題があるだろうと思う。たとえば、民法六百四条によってもう期限が切れる。これはもう確認をされたんですね。本来であれば、誠心誠意おやりになるのであれば、もう六百四条によって切れる七月二十八日からは一たん返還の手続をとるべきじゃありませんか、少なくとも。それからまた借りるかどうかということの折衝を始めるかどうかは別としても。ところが、この場合には返還の手続をとろうともしなければ、いきなりまた貸せということを文書で出している。しかもあの文書を読んでみると、まことに一方的みたいに見えます、横浜施設局長から山梨県知事あてに出した依頼書というものを読みますと。それがあたりまえだという意識があるから私は誠心誠意やりましたという答弁になって出てくると思う。それから、さっき山梨県知事に圧力をかけた覚はないとおっしゃる。——だろうと思います。しかし、山梨県知事が現に記者会見で、特別措置法を発動されるようなところに折衝をこじらせることができないからであるという説明をされておる。政府側が圧力を意識しなくても、相手側が圧力を感じておることは事実である。その点だけはお認めにならなければいけないだろうと思いますね。  そこで私は、そういういきさつでもう一度お伺いいたしたいのは、先ほど山梨県と折衝を始めたのは六月十二日だという御答弁をいただいた。何となしに、どうせ期限がくれば再契約するからというような気持ちで、安易な気持ちで見ておったのじゃなかろうか。でなかったら、四月からさっそく折衝を開始されたらどうなのか。それから、期限が現に切れた。切れたら、もうそちらのほうの権利は山梨県知事に移っちゃう、県有地でありますからね。ところが、そこのところはその確認もしない。あるいはまたその間にたとえば山梨県知事から千百メートル以下を返せ。でなければ、県有地全部を返せという要求があった。しかし、それは政府のほうがのまない。法律的に返還という手続が出てくれば、そのとおり施行すればいいじゃないですか。どうもその辺がはっきりしない。その辺の経緯はどうなんですか。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
  269. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 先ほど申し上げましたように、施設庁長官——私の前任者である島田事務次官が、山梨県に正式に文書を持って参りましたのが六月十二日でございます。それまではその下の事務的段階において演対協その他の部局といろいろ交渉をやっております。その結果、それではかばかしくまいりませんし、意見の相違が非常に多いものですから、六月十二日にそういう文書をもって島田長官が山梨県知事に交渉を行なった。それからその後私も三度ばかり、就任しましてから参って、いろいろ交渉をいたしたということでございます。その間、全然放置してあったわけではございません。それから文書も、島田次官の名前のものが一通、私の名前のものが一通出ております。それはいま御指摘のような、そうぶっきらぼうなものではないはずでございます。いろいろかなり丁寧に書いてございます。  それから標高千百メーター以下、県有地の全面返還を国が拒否したと、こうおっしゃいますけれども、これにつきましては、県有地の全面返還の案につきましては、これは実現の可能性があるかもしれない。ただ、保安地区の設定とかそういう問題がございまして、それらの問題の煮詰めをやっているうちに問題が急に変わって内閣のほうにいった。こういうのが交渉の実情でございまして、国が全面的にそれを拒否したということではございません。
  270. 鈴木力

    鈴木力君 そのいきさつは、やりとりはいろいろあったと私は思いますね。県とすれば、平和利用ということと、それから富士環境の保全ということを相当強い念願にしておるようであります。そういう意味からすれば、確かに国有地千百メーター以下ということが、これは知事側として、山梨県側としては相当の将来の条件としてあるだろうと思います。ただ、私がいまそういう意味のことをあえて申し上げましたのは、非常に懇切丁寧な文書を出しましたということなんでありますけれども、政府側からすれば、この文書が非常に懇切丁寧である、受けるほうからいうと、どうも懇切丁寧と言えないのですね。そのギャップというものがいろいろなことで問題を起こしているような気がしてならないわけです。これはまあ見解の相違だといえばそれまでの話。ただ、この間の交渉で、もしほんとうにいま長官がおっしゃるような県側の立場というものを、そういう御理解のもとに県側と交渉をしてくださるとすれば、私はどうも理解できないことがある。それは何かといいますと、山梨県側では県有地についてはあれはたぶん行政財産にしてある。行政財産にしてあるものを普通財産としての契約、賃貸借契約ができないはずでしょう。ところが政府側のほうから、これは五月の二十六日でありますが、契約締結依頼書というのが出ている。どこを見てもこれが行政財産であるという立場からの依頼書じゃない、そうすると山梨県側がどうやろうともこっちはこっちの様式でいくんですということなんでしょう。その辺はどうなんですか、どっちの様式をとっていこうといましているのですか。
  271. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 従来から行政財産——まあ行政財産になっていることにも一つの問題があるようでございますけれども、まあそれはそれとしまして、行政財産について賃貸借契約を行なった、それでずっとやっておりまして、それで今度の再契約の申し入れにつきましてもそういう形をとっておりますが、山梨県側では、従来から使用許可にしてほしいという要求が強かったようであります。これは私のほうといたしましても賃貸借絶対ということでは必ずしもございません。文書に、賃貸借または、というふうな書き方はしておりませんけれども、その辺はまたいろいろお話し合いなり、あるいは双方の検討でいろいろ考える余地はあるはずでございます。かように思います。
  272. 鈴木力

    鈴木力君 しかし、あれでしょう、五月の二十六日時点では、これはもう行政財産であることははっきりしているわけです。そして昭和四十三年に山梨県側から使用許可制にせよという要求があって、しかし政府はこれを受け入れなかったわけです。だから地方自治法から言うと行政財産、しかし実際の国との契約は、知事側のほうの地方自治法にのっとった契約はできなかったわけです。それを繰り返して今日まできたわけです。今度は一定の期限が切れたわけです。それなのに、また前の契約書を文書で送って御協力を願いますと、こういうことです。いまの、長官がおっしゃったように、こだわらないとおっしゃるけれども、やっていることはこだわっている。また、こだわらないかこだわっているか、その心配さえもなさっていらっしゃらないとすればきわめて無神経だ、こう言わざるを得ないのです。
  273. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) その問題につきましては、私は必ずしも賃貸借だけということではなしに、山梨県側でもそういう御意見があるということは承知しております。それはこれから討議していくというのがあの文書を書いたころの気持ちでございます。それから、現実に、山梨県の中でも、あの県有地の全部ではなしに、その一部分については、むしろ普通財産にしたほうがいいという御意見もあるように聞いております。それですから、その辺はいろいろの考えが山梨のほうにもいろいろございますし、私どものほうにもいろいろございまして、その辺はお互いに相談していけば解決のできない問題ではないというふうに考えます。
  274. 鈴木力

    鈴木力君 私が申し上げていますのは、これから相談の可能性があるということはよくわかりますよ。ただ、いままでのやり方として、もう山梨県は行政財産にしてあるでしょう、地方自治法の手続をとって。それを、県民の何人かは、どっちがいいかはこれから相談をしたいとか、こだわらないとかいう、そのことが私がどうも理解できないのですよ。大体アメリカとの関係あることは私も承知しておる。それなのに、国内法で地方自治法や何かにきているものは、都合が悪ければ使用許可にされておって、山梨県知事が選挙の公約に全面返還、平和利用という公約にしてある。いつ返せると言えるか、許可取り消しがいつ出るか心配だからこれは採用できないというような、そんなことが今日まで継続しておったんじゃないんですか。   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕
  275. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 行政財産に編入されたのは昭和三十九年でございます。それから四十二年までは、山梨県も、毎年度の契約の更新に応じて賃貸借契約ということで借料を受けている。それから四十六年三月に、使用許可にしたいと、こういう申し入れがございました。で、あとは供託ということで形が進んでまいっております。そういう状態でございます。それですから、私どもとしては、これは確かに話し合いで出てくる問題でありますし、あるいは使用許可につきましても、たとえば何年間は使用許可をするというふうな話ができれば、安定的な使用もできるわけでございます。そういうことで、必ずしもこれがたいへん根本的な問題ではないというふうに考えております。
  276. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、今度の場合は、山梨県側と話し合いをすると、どちらの側もあり得るということになりますね。したがって、そうすると賃貸借の様式等は従来と同じようにやるのですが、別に様式があるのですか。これは手続上の問題ですから、別に根本的な問題じゃありませんが、ついでに聞いておきます。
  277. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) どういう様式になりますか、これは賃貸借の条件、その賃貸借なり、あるいは使用許可の条件、どういう様式になりますか、これは具体的な案が出て、双方で検討をしてみなければちょっとわかりませんが、流動的に考えてよろしいものだというふうに私は考えております。
  278. 鈴木力

    鈴木力君 きょう合意に達したという暫定契約ですね、これはそれではどういう形式になるのですか。
  279. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 形式はこれから山梨県と相談をしてきめます。
  280. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、きょう自体はすでにもう返還をされてあると確認の上での話ですね。要するに、暫定協定を結ぶ前はすでに県有地は返還されている、そういう認識の上に作業をなさるわけですか。
  281. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 返還ということばでございますが、御承知のように、米軍に対しては演習場その他の施設区域を提供する義務を政府は負っておるわけでございます。それによって現在の北富士演習場も国から米軍に対して提供されておる。ただ、民法六百四条によりまして、いまの状態は県と国との間で無権限使用が行なわれておる、こういう状態は望ましくないので、それをどうするかというのが現在の問題でございます。だから返還ということばが、民法六百四条で自動的にあれが国の提供している演習場でなくなったということには相ならないと思います。正式の返還ということは、やはり安保条約あるいは地位協定に定めている手続に従っていえば、日米合同委員会の両方の合意を得て、そうしてその部分を解除するということになって初めて返還ということになるのだと思います。
  282. 鈴木力

    鈴木力君 いまの解釈は政府の統一解釈ですか。これは重要なことですからね。もしそうだとすると、民法六百四条が適用するという、前の政府の統一見解をくつがえすことになるのですよ。なるほど地位協定によって、日本の政府はアメリカに演習場を提供する義務がある。その義務があることは確認をしても、民有地なり、公有地なりを国が借り上げているわけでしょう。その貸借関係は民法六百四条によって二十年をこえてはならないとある。そうすると、そういう民法があるけれども、これは国との関係であって、その地主側に返すのはアメリカとの了解がつくまで、合同委員会でアメリカから返還をされるまでは借り上げの権利があるという主張をなさるとすれば、前の統一見解がひっくり返る。だってそうでしょう。ちょっと待ってください。もしそういうことになれば、今度暫定協定を結ぶか結ばないかは別として、そのまま合同委員会で同意をしないからといえば、永久にいつまでも県との賃貸借は成立するとしているのですか、賃貸契約は。それは国としてはできないでしょう。民法による国民の権利というものを守ることができないじゃありませんか。だから、この前の政府の統一見解は、六百四条が適用するのだと、二十年をこえてはいけないのだと、こういうことです。そうすると日本の政府としては、アメリカに合同委員会なり何かで返還を求めるか、でなければ、こちらとの契約を結ぶか、どちらかの手続が必要なんですよ。それが手続が必要でないといういまの長官の答弁、私はどうしても納得できない。
  283. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) ちょっとことばが足りなかったと思いますが、国が県の土地を無権限で使用しているという状態になるということでございます。それで、そういう状態になりましたので、いまおっしゃったように、返還の手続をとるか契約を引き続き継続するかと、こういうことになりますので、期限は切れましたけれども、その前からずっと山梨県とは継続的に継続使用について話し合いを進めていたと、こういうことでございます。
  284. 鈴木力

    鈴木力君 話し合いしていることはさっきからわかった。しかし、まだ話し合いがついていないでしょう。暫定協定もきょう合意をしたけれども、これから作業をして協定を結ぶというのです。無協定時代です、いまの時期は。そうでしょう。そのときに、協定を結ばなくとも国側が米国に提供しておる、その使用権限があるという解釈の根拠が私にはわからないという、こう言うのです。一たん返しておいて、また貸せという交渉をしておりますというなら、県側のほうには、そしてアメリカのほうにはしばらくここを使うのは遠慮してもらう、それならまだ話がわかる。どうなんですか、その辺は。
  285. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 米軍としては、日本政府から提供をされているところでありますから、それについて使用する権限はあるということになります。ただ日本政府が無権限で使用している、こういう形になりますので、その形についての右か左かの解決を早くつけなければいかぬ、こういうことになるのだと思います。
  286. 鈴木力

    鈴木力君 その現状はわかったと言うのです。無権限で使用することができると解釈をしておるのか、できないと解釈をしておるのかを聞いておる。
  287. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) それはもちろん決定的にはできないと思います。それができるようにひとつやりたいということで交渉を進めておる、こういうことでございます。
  288. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、少しくどいですが、どうも同じことをやりとりするのですが、そうすると無権限で使用することができないという立場をとるんでしょう。そうすれば、本来であれば一応は山梨側に県有地だけは——国有地はこれは別ですから、県有地は一応は山梨県側に権利を与えておいて、そうして交渉するというのがたてまえでしょう。しかし、防衛施設庁は山梨県ばかりじゃないと思いますよ、これは。どこもそういうところを平気で無契約で、それが政府の権限かのごとくずるずる引っぱっておる。これでは私は民法もヘチマも——国民の権利を守るという姿勢は、日本の防衛施設庁なりあるいは防衛庁なりにはどうしてもあるとは見えない。この辺の見解を聞いておるんです。
  289. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 先ほども説明申し上げましたが、千百メートル以下の返還または県有地の全面返還と、こういう話でございました。私どももその県有地の全面返還という案に沿って対米折衝もやったわけでございます。ただ、演習の実施の上において人命の保護その他のために若干の保安区域がどうしても県有地の中に要るというふうな状態がございまして、その点についての話を進めかかったところを、問題は内閣の段階に上がってしまった、こういうのが実情でございます。決して県有地の全面返還ということを無視しようとしたわけではございません。
  290. 鈴木力

    鈴木力君 その間に内閣に上がってしまったとおっしゃるけれども内閣のほうからはきょうの答弁はよく説明をしておって、代弁できるようにしてあるからという連絡です。まあしつこく言いますけれども、この暫定協定なら暫定協定をきょう合意に達したと、そうするとできるだけ早くやるわけでしょう。そこで、たとえば私はこれはきわめて事務的なことをさっき伺った。どういう契約書でやるんですか、これから検討しますと、こういうことなんです。それから暫定協定の条件と思われるいろいろなことも、いろいろ条件がございましてということで、さっき言った、私はまぼろしのということばを使いましたが、そいう形になっておる。何かすっきりしないんですね。いろいろ落ちるところは落ちるさというような態度がどうも私は見えてならないわけです。こういうことを繰り返しておる限りは、この軍事基地という問題は国民の生活という立場からはいつまでたってもなくならぬのじゃないか。その辺は、もう少し日本の国民の側に立った行政ということが望まれると思うんです。  まあここはどうも時間をあまり費やしても困りますから、またこれからいろいろと推移するでありましょう、そういう時期に、またこの点についてはお伺いいたしたいと思います。  時間がありませんけれども、もう二、三お伺いしておきます。  このいまの山梨県知事との間の折衝をなさっておる場合に、政府側のほうからいろいろな書類が出ておるわけですけれども、高松長官になってから七月十五日ですか、七月十五日に山梨県知事に協力を求めておるんです。この文書はます調で書いてありますから懇切丁寧な文章ですが、ただこの中に「演習場使用の基本方針」というのが出ておる。これは「北富士演習場は、富士演習場とともに自衛隊及び米軍の演習場として引続き使用する方針である。」、こう書いてある。要するに使用転換が前提になっておる。山梨県知事の新聞記者会見における談話を見ますと、この使用転換は認めないということを最後まで言っておるわけです。ただ、防衛庁側のほうは、使用転換のほうがむしろ主目的みたいな言い方をしておる。本音はどこにあるんです。その辺のいきさつを説明してください。
  291. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 昭和三十六年八月の基地問題閣僚懇談会というのの決定がございまして、このときには、北富士演習場は米軍及び自衛隊にとって将来とも必要な施設であるので、これを自衛隊の演習場に使用転換し、米軍に対しては使用を認める、こういう方針でまいるということがきめられております。私どももこの方針が基本であるということで折衝を進めてまいったわけであります。ただ、御指摘のように、使用転換については山梨県側にも相当難色がございます。まあこれからのいろいろ交渉の一つの大きな問題になることは間違いございません。
  292. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、きょう合意に達した点では、この使用転換の問題には触れているのですか、触れていないのですか。
  293. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 私もその、きょうの話のところに立ち合ったわけではございませんので、ただこういうことになったということで、たいへん確実には申し上げられませんけれども、いままで私の承知しておりますところでは、一切たな上げ、暫定使用協定ということでございますから、使用転換の問題も将来の検討事項と申しますか、協議事項、こういうことできょうの話がきまったものだというふうに解しております。
  294. 鈴木力

    鈴木力君 これ、大事なことですから、だめ押しておきますけれども、間違いありませんね。使用転換という問題については、きょうの合意の中には入っていない。
  295. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) その点は、私も片方すぐ国会に参らなければならぬという事情がございまして、直接官房長官にお目にかかって話を伺ったわけではございません。電話で官房副長官から伺ったところでございまして、明確ではございませんけれども、いままでの内閣の話、方針を聞いておりまして、それとあわせて判断いたしますと、全部白紙で暫定使用協定、こういうことに相なったんだと思います。
  296. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃ一応その辺で、たぶん使用転換が中には入っていない、白紙である。そういうことで、——ただこの使用転換について、これまた政府のほうはばかにこれにこだわってやっているんですね。そういう基本方針だと自分のほうできめているけれども、よそさまの土地を使うのに自分がこういう基本方針だと押しつけて、ところがあっちにもこっちにも、要らないところにまでこんなことを使っているわけでしょう。たとえばある民間の方に、これは土地の返還をする通知書ですね、この通知書なんか、むしろ私どもだともう期限が切れた、必要でないからお返ししますという文書でいいと思う。ところが「日米安全保障条約の義務履行のため、貴殿との間の賃貸借契約につき、ご協力を願って参りましたが、今般、自衛隊への使用転換を前提とした縮少計画の一環として貴殿所有の土地は日米間で返還についての合意を見ましたので、」と、こう書いてある。何も民間の人に、あなたから借りた土地をお返ししますという通知書に、わざわざ「自衛隊への使用転換を前提とした縮少計画」で、こういうものをみなそっちにもこっちにもつけて出しておるというこの意図はどういうことなんですか。
  297. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) いまのは、たしか民有地の返還をやったときの書類だろうと思います。まあおっしゃるように、そういう書類に、民有地の返還をするのにそういうことを書く必要はないと私も思います。ただ、使用転換につきましては、従来とも米軍が返還する際の一つの条件であるというふうになっております。米軍が安定的な継続的な使用を随時やるためには自衛隊の管理にまかせたほうがいい、こういうことでいままで現実に使用転換ということで基地の返還が行なわれてきているものが非常に多いわけでございます。そういうことですから、まあそういうときの例文みたいになってそういうことを書いたのだろうと思いますが、確かにおっしゃるとおり、民有地の返還に別にそういうことを書く必要はなかったかもしれません。
  298. 鈴木力

    鈴木力君 私もこれわざわざ出す必要もないみたいなものですが、必要がなかったということであるけれども防衛関係の役所の日常の言動がいつでもこういう方式になっているということです。これは前に立川基地のときにいつかこの委員会で私が申し上げたことがありますが、ある市議会で反対決議をいたましたら、関係職員の方が直ちに電話をかけて、そういう決定をされると周辺整備に影響がありますという電話をかけている。これは前の委員会で認めて、悪うございましたとケリがついておることでござますから、これをわざわざもう一ぺんもむつもりはありませんが、そういうことが常に皆さんの無意識のうちにというか、あたりまえの言動になってしまう。これはよほど、長官かわった——前の長官も注意はしておったと思いますが、よほどこの辺は注意をしないといけないだろうと思います。  時間が経過して恐縮ですが、もう一つだけ私はお伺いしたいと思います。私も実はこの現地に二回ほど行って見てまいりました。朝の風景も見れば、夕方の風景も見ました。だから、さっき環境庁長官に、国立公園から軍事基地だけえぐり取られているというのは不自然だ、いつの日にか国立公園あるいはそれに準ずるものとしての富士全体の環境保全の努力というものは、これは国が維持しなきゃいけない、そういうことを申し上げたのです。ただ私が行ってみまして、今度返される民有地の中に、聞いて見ますと、ほとんどいままでも使われていなかった、今度も使っていないと思うそういう民有地が、どんどんまた契約に調印をしているのですね。この辺の意図も私はよくわからぬのです。ところがそれはそれとして、やや、相当な使用料を払うわけでありますから、むしろ不要になったところは積極的に返したほうがいいだろうと思う。高松長官の談話か、あるいは山梨県側かの話の中にも、民有地は返す方針だといつかおっしゃったことがあるはずです。これは私はきわめて適切な表現だと思った。ところが、実際は返す方針が、ほとんど返されていない。ほとんどと言うことばは悪いですけれども、相当数が、どう見ても返してよさそうな所が返されていない、また契約をしておる。ところが、これはちょっとよそへ飛び火いたしますけれども、例の立川基地ですね、民有地にどなたでしたか青木さんですか、青木さんという人がいま滑走路の所の土地所有地を貸さないと言っているのですよ。そこで青木さんとの交渉はどうなっているのですか、ちょっとついでですから伺っておきます。
  299. 薄田浩

    説明員(薄田浩君) 青木さんとの交渉は、まだ妥結しておりません。
  300. 鈴木力

    鈴木力君 妥結していないというのも、これもおかしいじゃありませんか。期限が切れたやつです。期限が切れて、その土地を使って何かやりたいと本人が言っているわけだから、何かそれを妥結していないと言うけれども、正直言って防衛施設庁もせっせと通って、何か山梨県とやるような、いろいろなことをやっているのでしょう。
  301. 薄田浩

    説明員(薄田浩君) 妥結していないと申し上げますのは、今回の六百四条関係のことで妥結しておらないわけで、ここの青木さんにつきましては、いろいろ御承知の経緯がございまして、三十二年の八月十六日に収用委員会にかけておりますので、これの裁決申請をしておりますので、現在裁決を待っているということで、一方しかし、こういうことは好ましくございませんので、手管を弄するということじゃなくて、いろいろお願いには参らしております。
  302. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、現在も、現在はしかし使用しているわけでしょう。演習場じゃなく、基地として使用しているわけでしょう。そうすると、現在使用しておる、国側が提供して、あそこは共同使用ですから自衛隊が使っているかもしれませんね、その使用しておる法律的な根拠は、何に基づいて使用しているのですか、それだけ伺っておきたい。
  303. 薄田浩

    説明員(薄田浩君) 現在、先ほど申し上げました裁決申請、裁決待ちという形で使用しておるということに法律上はなろうと思います。
  304. 鈴木力

    鈴木力君 あと、もう時間がありませんからこれでやめますけれども、私はさっきもちらと申し上げましたけれども、県を相手にするという場合には、まだそれぞれの県の機関もありますし、いろいろな手だてというものが行なわれている。しかし、数が少ないといえども、個人を相手にする場合に、何となしに、見ていますと、県を相手にするよりも個人を相手にするほうがやや高圧的なようなことがあっちでもこっちにもありはしないか。これは懸念があると私は申し上げておきます。はっきりどこどこへ行って何したということを申し上げるわけじゃありませんが。私の思い過ぎかもしらぬけれども、しかしこの点は私は一番これからの、たとえば六百四条が適用になったところがもう二千件以上もある。まあ大部分は再契約ができたとは聞いておりますが、そのあとのわずかの少ないところといえども、もっともっと民意を尊重するという立場をやっぱりとるべきではないか。その辺だけを申し上げまして、きょうのところはこれで終わっておきます。
  305. 神沢浄

    神沢浄君 北富士の問題、私、地元の問題だから特に重大な関心があるもので、たいへんおそくなって恐縮ですけれども、一、二点だけ質問させていただきたいと思うのですが、さっきの鈴木委員質問の中で、施設庁のほうからの御答弁の中に、きょうのいわゆる暫定使用協定といいますか、どういう形式でもってこれは取りきめが行なわれておるかがわかりませんけれども、しかし政府側がすでに国内法、いわゆる民法六百四条を認めたという統一見解を明らかにしておる以上は、国内法的にはすでに七月二十八日以降というものは、これはもう政府と米軍の間の関係とは別に、当然山梨県有地として復活したものである、こういう認識に立ってよろしいと思いますし、そういう認識に立てば、本日どういうふうな取りきめが行なわれておるかは存じませんけれども、正式には、実は県有地の中には普通財産もあり、それから主たる部分は行政財産。普通財産については、やはり正規な契約の法律上の手続が終わらなければ、使用の権限というものは出てこない。それから行政財産については、これは賃貸借の契約はできないわけですから、国内法が、明らかに自治法が定めておりますように、県が使用許可を出さない限りはやはり国側に使用の権限というものは法律上はこれは出てまいらない、こういうように解釈すべきだと思いますが、その点の御見解はどうですか。
  306. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 先ほどもお答え申し上げましたが、いまの県有地全部についても行政財産を一部普通財産にすべきではないかという御議論があるようでございます。それで、そういう点もございますので、その辺は今後協議をいろいろいたしまして、使用許可という形にいたしますか、あるいは一部普通財産という形に変わるんならば変わって、そこで賃貸借という形になりますか、その辺を協議してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  307. 神沢浄

    神沢浄君 私がお尋ねしておるのは、そういう今後の問題ではなくて、法律上の問題としまして、きょう政府と山梨県知事の間に一応合意はなされたとしましても、法律上からいくと、これは普通財産についてはやっぱり正規の賃貸借の契約というものが終わらなければ政府側の使用の権限というものは生じない。それから行政財産については、県側が使用許可の手続をしなければ、これは国には使用の権限は生じない、こういうふうに私は解釈すべきだと思うけれども、その点の見解を聞いておるわけです。
  308. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 理論的にはそのとおりだと思います。
  309. 神沢浄

    神沢浄君 それから、それに関連して、あの県有地には県の所有権のみでなくて、いろいろな権利関係がからまっております。たとえば恩賜林組合の持っておりますところの、いわゆる部分林にかかわる部分権、さらに、かつて演習場使用以前においては借地でありましたところの、これは一度、六百四条によって県側に返ったわけですから、借地権は復活をいたしております。と、その借地権者あるいは部分権者、あるいはこれは若干問題になるでしょうけれども、いわゆる入り会い権者、こういうそれぞれの権利者の関係というものは、従来は無視されてきていたわけなんです、表面的には。しかし、今度は一度県有地として返った以上は、それは復活をしておるわけです。こういう見地に立てば、所有権者の県との間だけに合意が成り立ったといたしましても、これらの権利者の同意を得ない限りは、私は法律上その効果は生じないと、こう思いますが、その点の見解はどうですか。
  310. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) そういう、あそこはいろいろ権利が複雑しておりますし、それから県有地のほかに恩賜林組合の土地、あるいは山中湖の土地、それから山中浅間神社の土地というようないろんなところがございます。現在、それをばらばらに交渉するのではなしに、演対協で一本にまとめて交渉していこう、こういう話でずっと演対協発足以来やっております。今度の、県がいろいろ意見を取りまとめるにつきましても、新聞その他を見ますと、それぞれの関係者といろいろ協議をなすって、それからきょうの暫定使用の応諾という形になったように見られます。で、県が——県がと申しますか、あるいは演対協が中心になって、そういういろんな権利関係を取りまとめて、本契約その他に入ると、こういう形になってまいるんだろうと思います。御指摘のように、その途中でそういう形になりましたものですから、権利関係というのはまたいろいろ複雑な問題が出るかと思いますけれども、その点はまたこれから県といろいろ相談をしてやってまいる、こういう形になろうかと思います。
  311. 神沢浄

    神沢浄君 時間の関係でもって詰めることはやめますけれども、もう一点、これは非常に重大なところだと思うんですが、先ほど鈴木委員質問に対して、自衛隊への使用転換という問題については今後の話し合いの中での問題だと、こういうふうに言われておりますが、私ども北富士演習場の今日までの経過というものを考えてみまするときに、さよう簡単なことではなかろうと思うんです、国側の立場というものは。なぜかと言うと、もうすでに十年をこえるくらいの長期にわたって、機会あるごとに国側では県に対して自衛隊への使用転換というものの要求を引き続き行なってきておるわけであります。ですから、今回の場合、やはり本協定というものの際には当然国側はこの使用転換というものを、とにかく島田次官の申し入れの中には、それを基本方針とするというように明らかにされておる点から考えましても、先ほどの御答弁を私などはそのままもう容易にうのみに承るような気持ちにはなれないわけでありまして、そこで、これはもう確認の意味にもなりますけれども、あの御答弁をすなおに受け取れば、国側は自衛隊の使用転換に必ずしもこだわっておるものではない、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  312. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 暫定協定におきましては、その問題は全く触れられてないと、こういうことでございます。私どもといたしましては、使用転換ということが今後の基地をいろいろ返還していく際の一つの基本的な方針であるというふうに考えて交渉に当たっております。
  313. 神沢浄

    神沢浄君 ことばをかえますけれども、暫定協定というのは当然本協定を目ざしたものでしょうが、本協定の締結の際に県側が応じなければ自衛隊への使用転換には国側はこだわらないと、こう解釈をいたしてよろしゅうございますか。
  314. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 私どもはいまほど来申し上げておりますように、使用転換ということを一つの基本的な方針として交渉に当っております。県側にはまたいろいろ御議論がありましょうと思いますが、それらをいろいろまた交渉していくと、こういうことになってまいろうと思います。
  315. 足鹿覺

    足鹿覺君 きょうはもう時間がありませんから、資料を要求いたします。私はもう現地で先日いろいろ資料を収集してまいりました。正式なものではありませんから、この際要求をしておきます。  六月十日付、島田次官から田辺知事に出されたもの。同じく施設庁長官から山梨県知事の田辺知事にあてて出された文書、これは五月十五日付。及びこれは五月十五日付、演対協あてにも文書が出されております。それから五月八日付、知事から江崎長官あて出された文書。先ほども鈴木さんから読み上げられましたが、ここにあります、これは横浜防衛施設局長から出しました七月二十六日付渡辺勇、これは地主でありますね。あの自衛隊の庁舎のある近くに土地を持っておる農民あてに出された実に官僚的そのものの標本ともいうべき文書が出ております。その他、本件について渡辺勇ほか何名にこのような文書を出されたか。同文であるならば同文でけっこうです。違ったものがあるならば違った文書と出された氏名、以上要求いたします。委員長において……。
  316. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 後日提出いたします。
  317. 足鹿覺

    足鹿覺君 出してもらえればいい、三十一日までに。
  318. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) はい、承知いたしました。
  319. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 三十一日まで。
  320. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) はい。
  321. 星野力

    星野力君 私は、今回の米軍相模補給廠からの戦車などの搬出に代表されるような在日米軍の問題について、まず、外務省の方にお聞きいたしたいと思います。  最初に、日米安保条約に基づく地位協定第十六条に、「日本国において、日本国の法令を尊重し、」と、こうなっております「尊重し」ということばでありますが、これは、在日米軍は日本国の法令を守り、それに従わなければならないという意味と思いますが、それでよろしいでしょうか。   〔委員長退席、理事中山太郎君着席〕
  322. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 第十六条に書いてございます「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」こう書いてございます。これは外国の軍隊は、ある特定の国に行きます場合に、そこの国の法令を尊重するということは当然の礼儀としての義務であるという観点から書いてあるものでございまして、これによって日本国の法令が、当然に軍隊あるいは軍人、軍属並びに家族にそのまま適用されるということでは必ずしもございません。それは地位協定の個々の規定におきまして、軍隊に日本の法令が適用がある場合、それからまた軍人、軍属、家族に対してそれぞれ適用がある場合、ない場合みんな書いてございます。ただ、一般的に申しますと、軍隊につきましては、国際法上軍隊の特性といたしまして、日本の法令がそのまま適用されるということはございませんけれども、個々の規定におきまして、米軍に日本の法令が適用されるということは書いてございます。現実にこの戦車輸送等に関係いたします規定は第五条でございまけれども、第五条につきましては、第五条の合意議事録というのがあとのほうにございまして、合意議事録の中で五条に定めてある規定以外のことにつきましては、日本の法令が適用されるというふうに書いてございますので、それに基づいて当然こういう車両の輸送につきましては日本の法令がそのまま適用される。これはむしろ例外的に日本の法令が適用されるケースだろうというふうに考えております。なお、軍人、軍属、家族につきましては、この地位協定に特別に免除とか、排除するとか、あるいは特例を認めるということの場合以外は、原則として日本の法令が適用されるというふうに考えております。   〔理事中山太郎君退席、委員長着席〕
  323. 星野力

    星野力君 日本の法令がそのまま適用されるということではないけれども、さらに個々の規定に基づいて、特定のものについては在日米軍といえどもそれを守り、それに従わなきゃならぬ、こういう意味だろうと思います。そういたしますと、今回の戦車などの搬送の問題でも、私はひとつ外務省の姿勢にやはり問題があると思うのでございます。アメリカ軍の行為に違法の疑いがあるなら、事実を確かめ、その違法性が明らかにされたら、米軍にその行為の中止を要求すべきであると思う。それを外務省は、今回の事件については、神奈川県当局に対して、米軍の戦車などの搬出への協力方を依頼しておる。また法眼次官は、今回のような事件を防ぐためには、日本の法令を変えて、米軍が支障なく行動できるようにしなければならないという趣旨の発言をいたしております。ベトナム戦争に使われる兵器、弾薬などの輸送については、日本政府は、米軍に対して適用される日本の法令の順守を厳格にするようにこそ要求すべきであって、わざわざ法令を改めてまで米軍のベトナム戦争に協力すべきではないと考えるわけですが、そこでお聞きしますが、外務省から神奈川県当局に協力方を依頼したあのいきさつを、簡単でよろしゅうございますですから、説明していただきたい。
  324. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいま先生お尋ねの件は、兵員輸送車についてのケースであったかと存じますが、この件につきましては、いろいろ事実関係を、夜間、関係の方面といろいろ確めるという経緯がございまして、その間におきまして、外務省と申しますか、日本側といたしましても、米側に対しては、国内法に従っておるように、これを順守しているように、そういう前提のもとに、そういう前提が成り立っておれば、当然米側としても基地間の移動ということの権利があるので、それを確保する。そういうことについての関係方面の協力ということを求めたという経緯であったと承知しております。
  325. 星野力

    星野力君 いささか逃げ口上に聞こえるのです。適法の行為なら何も問題はないはずであろうと思います。まあ、よろしゅうございます。  先にいきますが、先ほど外務大臣は、いますぐに道路法に基づく車両制限令を変えるべきではないと考えると述べられたように思いますが、外務省としては、車両制限令の特例を米軍に認めるという考えは放棄されたわけだと思いますが、将来にわたってそのことは断念されたものと理解してよろしいかどうか。
  326. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) その点につきましては、先ほど御質問がありました際に、外務大臣より御答弁申し上げたとおりでございます。
  327. 星野力

    星野力君 どういうことでしたか。
  328. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 私の承知しておりますところでは、ただいまの起こっておる問題について、米軍についての特例をつくるということはただいま考えておらないという趣旨を、大臣から御答弁になったと承知しております。
  329. 星野力

    星野力君 今度のこの相模補給廠の問題について特例をつくるという考えはないと、こういうことですね。そうしますと、将来にわたってやっぱり法令を改正していくと、こういう考え方だろうと思うのですが、これはやはり大きな問題だと思うのです。私、大体外務省の姿勢のうしろには、日米安保条約最優先、こういう思想があるように思うんです。それが問題でありますが、さらに先ほどどなたからかも問題にされたわけですが、いま問題になっておるM48戦車にしましても、これはいわゆるサイゴン政府軍が使用したもの、またこれから使用するもの、そのことはもう明らかであります。明らかな事実。それを日本で修理し、送り出すというのは、安保条約に違反することではないかと思うんです。その点、まして法令を無視してまでそれをやろうというのはとんでもないことだと思うんですが、大平外務大臣、何か先ほどその点について言われましたが、私よく聞き取れなかったから、この問題についてあらためて外務省の方にお聞きする次第です。これは安保条約の違反じゃないですか。所有権はなるほどアメリカにあるかもしれぬが、実際にサイゴンの軍隊が使って、こわして、そしてまた修理して彼らに渡す。サイゴン軍のために日本の基地が使われ、日本の施設が使われている。これは安保条約の私は違反だと思うのですが、どうですか。
  330. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先ほど御答弁申し上げましたように、日米安保条約に基づきまして基地を米軍に提供しているわけでございます。したがいまして、米軍のものでございますれば、安保条約の目的の範囲内でございますればさしつかえないものと考えております。
  331. 星野力

    星野力君 大臣そう言われたんでしょうかね。これは安保条約の目的の、安保条約の範囲内ということをおっしゃったけれども、サイゴンの軍隊の使うもの、これを日本の基地施設で扱うというのは、これは範囲に入らないと思う。大平外務大臣、その点もう少し前向きの発言をされたように思いますが、事務当局としてはそうお考えにならぬでしょうか。
  332. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 大臣の御発言いま一度、また後ほど伺ってみますが、私の了解したところでは、ただいま申し上げましたようなところではないかと考えております。
  333. 星野力

    星野力君 じゃ、私もこの問題さらに今後はっきりさせるために保留しておきたいと思います。今回のような問題が起きたのは、これは偶然のことではないわけでありまして、米軍の違法行為、それがまた日本の政府によって見のがされてきたという事例はたくさんあります。  時間がありませんから、一つ二つ申し上げることにしますが、広島県の川上、黄幡の弾薬庫で、アメリカの弾薬船が地位協定で定められた義務を無視して、無通告で弾薬の積み下ろしをやっておった問題、六月八日、九日——八日にはシャイアン号がここで弾薬を積んで南ベトナムのダナン港へ運ぶために出発しておりますし、翌九日にはジェファーソン号が韓国から弾薬を積んできて積みおろしをやっております。こういう例は全国にたくさんあります、幾らでもあげられます。こういうことに対して、全国の米軍基地について、こういう問題について外務省は調査点検しておられるのか、法令を米軍に尊重させる立場で調査点検しておられるかどうか。また、この問題は防衛施設庁としても基地の実態を把握していなければならぬ問題で、当然御承知でありましょうし、措置もとっておられるんじゃないかと思うのでありますが、その点どうなっておるか。いま申しました広島県の川上、黄幡などの問題についてどういうふうに処置されたか、具体的には地位協定第五条三項ですか、あすこにかかっておる問題じゃないかと思いますが、四十八時間前に通告する義務を米軍は負っているわけでありますが、そうじゃないのかどうか、通告義務があるのではないか。それからまた、港則法によりますと、船舶の入港、危険物の積みおろしは、港長の許可が要ることになっております。この問題についても、国内法を尊重するというこの地位協定十六条に関連して、特定の規定があったんじゃないかと思うんですが、米軍はこの港則法を守らなくてよいのかどうか。この二つと、それからどういうふうにこの問題を処置されたか、無通告で作業をやった問題をどう処置されたか、この三点、簡単にお答え願いたいんです。
  334. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先生ただいま御指摘の件につきましては、おそらく法律的な関係の条項は地位協定の五条の三項であろうと私も考えます。したがいまして、そういう米国の船舶が日本の港に入る場合には、通常の場合、日本の当局に適当な通告をするということになっております。したがいまして、この際は日本側の当局は海上保安庁であろうかと思いますが、そちらのほうに通告がいっておったかどうかということになると思いますが、私その事実関係についてただいま承知しておりません。なお、国内法の関係につきましては、特に何らかの形で別途定めがない限り、国内の関係の法令を米側も尊重し守り従うべきであろうと思います。
  335. 星野力

    星野力君 いまの川上、黄幡の問題については、通告の義務を米軍が負っており、あのような危険物の扱いでありますから、それに必要な許可を受けるということになっておるはずと思います。これがやられずに、手続がやられずに積みおろしがやられたということは地元でも大きな問題になりまして、新聞などにも大きく報道されておる。それに対して外務省のほうで事実関係を御存じないというのは、所管がどうなっておるか知りませんが、やっぱり外務省のこれは関係の事項じゃないでしょうか。おかしくないですか、御存じないというのは。
  336. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいまお尋ねの具体的なケースにつきましては、おそらくその件に関係があるケースを施設庁のほうで事実関係を多少把握しておられるそうでございますから、そちらにお伺いしていただきたい。
  337. 星野力

    星野力君 それでは施設庁ほのうから……。
  338. 薄田浩

    説明員(薄田浩君) いま権限的に申し上げますと、実は施設庁はそういう弾薬輸送、それから今回の戦車等でございますが、そういうものを的確に把握する権限と手段を持っておりません。先ほど外務省のお答えのとおり、この場合は私は当然海上保安庁——海上保安部と申しますか、その関係、それから港則法に基づく業者であれば、届け出がなされるので、当然これは海上保安庁のほうに御質問いただきたいと思いますが、ただ当該の場所が川上ではございませんで、きっと広と秋月だろうと思います、海でございますから。その関係につきましては、広につきましては、私のほうで保安水域として漁船の操業をやっております。そういう関係上、漁業補償をするという必要上、ある程度の数字は把握する可能性はございます。ただ、いまのが具体的に、突然の御質問でございますので、当該日がどうであったか私承知しておりません。それからこの広につきましては、最低四十八時間前に米軍から呉の局長と呉の港長に通知が行なわれるようになっておりますが、これは呉の局長も承知しておると思いますが、権限的には呉の港長のほうが主でございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  339. 星野力

    星野力君 所管がどこであるかという問題にかかわらず、いまあげました六月八日、九日の事例におきましては、米軍が、いまおっしゃったその四十八時間前の通告もやらずに作業をやっておる、こういうことがたくさんあるということを私言っておるわけです。これでよろしいかという問題を出しておるわけです。  それでは関連してお聞きしますが、これは農林省のほうになるかと思いますが、米軍との間で植物の防疫についての取りきめはあるのかどうか、たしかあると思いますが、どうでしょうか。
  340. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 植物防疫法につきましては、米軍につきましても別個のものでございませんで、部内と同様に取り扱っております。
  341. 星野力

    星野力君 その問題については、アメリカとの間に合意事項があるわけでございましょう。
  342. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) ございます。
  343. 星野力

    星野力君 いつの、どういう事項ですか。
  344. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) これは旧行政協定第二十六条の規定に基づき設置された日米合同委員会の第二十五回本会議、昭和二十七年十月三十日において成立した取りきめによって実施いたしております。
  345. 星野力

    星野力君 その取りきめによりますと、この取りきめ、すなわち、植物及び植物生産品の検疫に関する取りきめ、その輸入禁止品の中に土または病菌がついている植物という項目があるわけでございますね。そうしますと、これまで南ベトナムから横浜のノースピアを経由して相模原補給廠に運び込まれていた破損戦車、M48などのキャタピラーにはベトナムの戦場の土であることが疑いない土がこびりついておるわけであります。事実であります。全駐労相模原支部の労働者の話を聞いたのでありますが、現在も土のついた戦車が持ち込まれておる。それを洗浄車で洗い落としておるけれども、それでもなお落ちない土は手でかき落としたりしてやっておるということでありますが、こういう事実を政府は知っておられるのかどうか。
  346. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) いま先生の御指摘のありました土につきましては、植物防疫法で輸入が禁止されております。それで御指摘のようなこと、先般そういう情報が入りましたので、横浜植物防疫所長をすぐ米軍の司令部に差し向けて折衝をいたさせました。そうしますと、先方のいろいろな状況をその際聴取いたしたわけでございますが、向こう側の話といたしましては、戦車に類するものは日本にだけ持ってきておるものではなくて、本土の米国のほうにも持っていっております。そういうことになりますと、米国の側でも非常に土壌を入れるということに対してはわが国と同様にきびしく取り締まっておりますので、そういう観点から、ベトナムを出発する前に洗浄し、そして船積みをして発送しておる、そういうようなことを申しております。ところが、この際そういうような指摘があるので、さらに現地のほうにも詳しく連絡して、現地のほうの態勢も整えるようにしたい、そういうような話がございます。ですけれども、私たちといたしましては、外国の土が日本に入るということは非常に好ましくないことでございますから、今後とも米軍と十分連絡をとりまして、そのような事態がまずないようにいたしたい。で、もしそのような事実が——そういたしましても——確認されるというようなことがありました場合には、すぐ米軍に当該土を除去してもらうように厳重に申し入れをしたいと考えております。
  347. 星野力

    星野力君 いまのお話は、米軍側が十分洗浄した戦車を持ち込んでおるので、そういう危険なばい菌であるとかそういうものが入ってくる心配はないからという説明で、それを聞いて別に日本政府としては検査やその他の措置をとっておられないと、こういう意味だろうと思います。私の聞いたところでも、ノースピアでは野菜やくだものの検査をやっておるが、戦車などについてはやっておられないということでありますが、これではやっぱりいけないと思います。現にそれを扱っている労働者は土はついておると、土だけではなしに、戦車の中には、ときには人間の肉と思われる肉片があったり、それから生きたままのアリやガが——ガは死んでおる、生きたままのアリがおったこともあり、専門家に調べてもらったら、これは日本のアリじゃなくてベトナムのアリだと、こういう結論が出ていることもあるんです。だから、これはよほど厳重にやってもらわなくちゃ私いけないと思うんです。やられますか。
  348. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 先ほど申し上げましたように、土は病菌その他の付着物として国内に入ることは非常に適当でないことでございますから、今後とも米軍とよく連絡をとって、厳重にやりたいと思います。
  349. 星野力

    星野力君 この土壌には病源菌とか害虫の卵、細菌、いろいろな危険物が付着しておる、含まれておるというおそれがあるわけです。先年甲子園の高校野球大会で、沖繩のチームが甲子園の土を記念に持ち帰ろうとしたところ、外国扱いである沖繩に対しては、いま申しましたような意味から日本の土を持ち出してはいけないということで、政府はとめられた、高校生たちを泣かした問題がありましたが、まあそのぐらい政府としてもふだん土の輸出入というものは厳格に行なわれておられるんですから、このノースピアにおきましても、アメリカとよく話し合いをするという程度じゃなしに、実際現物について検査してもらわなけりゃ今度だめだと思うんです。そのぐらい厳重にひとつやっていただきたいと思いますが、時間がなくなりますから、これは要望だけ強くいたしておきます。  せっかく防衛庁長官おいでになるので、防衛庁はもちろん在日米軍やその基地とは関係深い間柄でございますから、防衛庁長官にひとつお聞きしたいのであります。  車両などの輸送問題は、車両の幅がどうの、重さが何トン超過するとか、あるいは輸送の道路使用の手続がどうのということだけが問題なのではなしに、問題がこういうふうに大きく発展してきたその根底には、アメリカのベトナム戦争、そのベトナム戦争の基地に日本が使われておることに対する国民の怒りや不安が存在するということ、さらにはそのベトナム侵略戦争に日本の政府が全面的に協力しておることに対する国民のがまんできない気持ち、怒り、そういうものがあると思うんです。そのことを考えないで、手続をとればよろしい、あるいは法令を変えれば済むことだというふうに考えているようでは、この種の問題は今後次々にこれは起きてきます。そこで大臣にお聞きするんですが、大臣はそう思いませんかということです。また、このような問題が起きないようにするにはどうしたらいいとお考えになっておるか、お聞きしたいということです。
  350. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 外務大臣のお答えをすべきことだろうと思いまするが、先ほど外務大臣お答しましたように、いわゆる米軍の戦車としてこの日本にある相模原に持って来て修理をして、米軍のものとしてまた持って行くといういまの形は、現在までのところ安保条約地位協定に基づきまして、これを拒否するというふうにはなかなかまいらぬのではないかという意味のことを外務大臣も言われたと思いますが、私どももそういうふうにいま解釈をいたしておるわけでございまして、その点は、しかしなお外務大臣もその問題について検討をするということを先ほど申されたようでございます。外務大臣ともよく協議をしてみるということにいたしたいと思います。
  351. 星野力

    星野力君 防衛庁長官逃げてしまわれたわけですが、とにかくこういう問題が起きないようにするためには、アメリカに早くベトナム戦争をやめさせなきゃなりませんし、ベトナム戦争やるというなら日本の基地は使ってくれるなということにならなきゃだめだと思うのですが、なかなかそういうふうに御答弁願うわけにもまいらぬようであります。私、防衛庁長官にはめったに対面しませんので、きょういろいろお聞きしたいと思ったのでありますが、時間がどうもきてしまったようでありますから、またの機会にしまして、残念ながらきょうはこれでやめます。
  352. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十二分散会