○源田実君 いまのは、まあ
委員長いろいろお
考えになったと思うんですが、
〔
委員長退席、理事中山太郎君着席〕
事実は、ちょっとどうもおかしいですよね、普通
考えて。私いろいろなパイロットにも当たってみまして、こういうこと、おまえ七秒あったらどうやるかと、やっぱりぶつかるまで緊張したまま、こうやってヘビににらまれたカエルみたいになってしまうのかと。いや私はすぐとりますと、みんなそうですよ。このパイロットはとれなかったかもしれないということになるんです。この断定ではないけれ
ども、推定がはなはだどうも納得しにいく推定である。
その次に、同じくやっぱりこの推定がはなはだどうもあれですよね、これは。五四ページのちょうど中ほどのところで、(2)のところの上から四行目のまん中から「
全日空機機長が機体の異常を知ったのは負の垂直加速度の増大と機体の姿勢の変化とによってであろう。」と、こう書いてある。そういうことです。それから今度は
——さっきのところで負の加速度で異常を知ったというようになるけれ
ども、今度は、五九ページは一番上の行の終わりのほうから、「この直後、
全日空機機長は接触による衝撃を感じ、」と、こう書いてある。
〔理事中山太郎君退席、
委員長着席〕
片っ方は、接触したときはまだだいじょうぶだと思っておって、あとになって「接触による衝撃を感じ、ついで自己機が異常な飛行状態になったため、」という、こういうぐあいになっている。初めのほうは負の加速度、マイナスの加速度によってこの飛行機が異常であるということを知った。片っ方は、衝撃のときに
——あれほどのスピードで飛んでおる飛行機ですよ、衝突したと思ったら必ずもうだめだということをだれでも感ずる。自動車でも、衝突してだいじょうぶだと思う者はおらぬでしょう。あの低速の、まるでカタツムリぐらいのスピードで走るのでもね。いわんや音速の〇・八五とかなんとか、〇・九近くのスピードで走るものが接触した場合に無事であることは絶対にないんです。そのくらいのことは、パイロットは全部そういう感覚はみんな持っています。それが負の加速度で操縦できなくなって感じた。ところが、そうすると、この時間が合わないんですよ、またね。これフライト・レコーダーを見ますと、負の加速度が操縦不可能と思われるマイナス三G、からだの重さが逆に三倍になる。それは二十二秒ぐらいです、大体。そうすると、これに書いてある時間でいきますと、三十九秒でぶつかって五十三・六秒ギブ・アップしたという、この時間は十四・六秒なんです。十四・六秒のところのマイナスのGをこのフライト・レコーダーの記録で見ますと、マイナス一Gなんですよ。マイナス一Gということは、背面で飛行機飛びますね、背面飛行、背面のときにはだれでも受けるGなんです。われわれさか立ちやったときの、あれはもっときついんですよ、さか立ちのほうがほんとはね。頭がこんなことしておるから。ぶら下がった場合、足を上にして、それから綱でさか張りつけみたいにされたときのGがマイナス一Gです。これなら操縦輪を握ったりなんかできる。私は逆宙返りやって、マイナス三Gまでやってまだ操作ができるんです。マイナス一Gで操作ができないということは、私はないと思うんです。
そういうところからずっと推していきますと、どうしても、どこに落ちつくかというと、はなはだ失礼な言い分ですがね、この三十九秒、十四時二分三十九秒ですか、この前後にぶつかったという、この時間の判定に誤りがあるんじゃないか。ここは私は断定できない、まだ言いませんがね。ここに誤りがあるんではないか。これに誤りがあるとして、私に言わせたならば、七秒前にぶつかったと。そうすると、何にも見ていなかった、七秒前にぶつかって、そうしたら、あとのこのボイスがすっかり乱れてくるのが解釈つくし、また、この雑音が途中で切れるのも、衝突とともにばらばらっとくる
——それがちょうど三沢のあのアンテナの方向になるわけですよ。
全日空機のほうが速いんだから、うしろでぶつかったんだから、ばらばらというやつがばらっと落ちると、自分だけはこう行く、だからあそこの間隔もそれで
説明がつく。それから、何といいますか、三十二秒からもう
一つ、ちょっとの間ね、何のためにこの雑音がなくなったかわからぬのがありますね。まあこれは私も
説明できない。これにも
説明がありません。ありませんけれ
ども、これはマイクボタンをパイロットがはずしたとしか
考えられない。しかし、この三十二秒、この雑音の出たちょっと前に衝突したという
考えを持つならば、あとのことがずっと私は
説明がつくのじゃないかと思っておる。私はもう少し
研究しないと、そこのところは断定的には言えません。しかし、もし私のようなこういう
考え方があるとすればですよ。
全日空機はぶつかるまで見ていなかったし、ぶつかったのが何にぶつかったかさっぱりわからなかった。だからあとのボイスがすっかり乱れてしまった。もしぶつかったのが何にぶつかったということがわかったら「エマージェンシー」の前後に「衝突」ということばがぱっと入りそうなものだと思うのです。全然出ていない。「エマージェンシーエマージェンシー、ア、ア、ア」と、こうなんです。ここらのところがどうしても
説明が私はできない。
そうすると
——まあ時間が私はあまりありませんからね、ここでちょっと申し上げるのは、おたくでおつくりになったこれでいえば、パイロットが二人もおって、しかも一人は八千時間、一人は二千時間という、自衛隊でいえば相当ベテランですよ、二千時間というのはね。それが目の前に戦闘機がやってきてまさにぶつからんとしておるのに二人ともぼう然として処置ができなかった。何がそんなことしたのか。それは
考えられない。そうすると、二人が何にもできなかったということに何か原因があっただろうか。ディコンプレッションなんということがあるいはあったのか。そうでなければ操縦席で何かほかのことがあったのか。それで二人ともまたぶつかるまで見つからなかったということになると、見つけ得なかったとなると
——得なかったならともかく、見張りをしなかったということになると、これははなはだもってぐあいが悪い。この回避操作をやらなかったと同じぐらいにぐあいが悪い。
断わっておきますが、私は
自衛隊機がぶつかったのをいま弁護しておるのじゃないですよ。しかしながら、これははっきりしていただきたい。それはなぜかというと、こういうものはどちらも真相はあかさなきゃいけない、ほんとうは。そうせぬと事故防止にならない。そうすると、何で二人もパイロットがおって回避操作ができなかったか。一人はできないかもしれない。そのとき急に心臓麻痺やったと、それでできなかったと。しかし二人が同時にやることはないです。必ず一人はできるはずである。これが
一つ。もう
一つは、二人とも、四つの目で見ることができなかった、何が原因で見ることができなかったか、三十秒前から。二人で見るのだから、これは一分間見なかったことになる。なぜこれを見ることができなかったか。こういうところがこの
報告では私は全然はっきりしない。
もう外務
大臣もおいでになっておりまして、私は実は二十五分までもらっておるのですが、まあこういうところで
結論に入りまして、私はここでお願いしたいことは、この事故
調査というのは責任を追及するのじゃない。事故
調査で責任を追及するということになると、ほんとうの事故の
調査はできない。責任を追及するのじゃなくて真相を明らかにすべきである。こういう
結論を出せばどこかに影響するのじゃないかというようなことは、そんなことは
考えちゃいけない。とにかく真相をはっきりする。真相がはっきりすれば、それによって正しい対策ができるのです。しかし、真相がはっきりしない場合においては間違った対策がここにとられる。説教するようですがね。まあ私はこの四十数年の飛行機の経験からなんて言うとえらそうになるから、もうあまり言いませんけれ
ども、しかし真相を究明して、責任は別である、こういうのでなければ事故
調査はほんとうはいけないのですよ。したがって、これは、政府では、よく、事故が起きるたびに、やれ保安施設、保安施設というので、レーダー
——これ、いいですよ。レーダーをふやしたり何をやったり、こうしますよ。やれ飛行場が短いとかなんとかかんとか、けっこうですよ。しかし、これは事故防止にはそれほど大きな影響はない。能率がよくなる。いままでこの天気では飛べなかったというのが、そういうものができれば飛べるのです。事故防止はそうじゃない。エアマンシップなんです。これはわれわれの技量の上であるというときには飛ばなければいいんですから。へたしてお客さんを殺しちゃいかぬから、幾らひきょう者だとかなんとか言われても飛ばなければいい。安全な方法は幾らでもとる方法がある。それをやれば事故にはならない。したがって、能率をよくすることが事故防止に全然
関係がないとは言いません。しかし、事故を防止するために一番大事なことは、これは政府にこれからお願いしたいのですが、ということは、搭乗員のパイロットなり乗員の教育である。この前も私ここで言ったように、乗員が、法規がどうだから私には責任がないとか、こういうことを言う乗員は乗員たる資格はない。これは各航空会社の、いろいろ航空局にお願いして調べてみますと、なかなかいいことをいっておる。日航なんかも、全日空もいっておりますよ。全日空も、見張りをしなければいけない、ちゃんと自分でいっているのです。計器飛行計画による飛行中といえ
ども他機を視認できるような気象状態であれば常に周囲を警戒しなければならない、こういうことをちゃんと全日空も指令も出しております。日航はあらゆるものにどういうぐあいにやっておるかというと、これはなかなか名文でね、やっておるのです。あらゆる日航のチェックリストに全部載っておるのは「Pay attention alwaysto prevent collision regardless of flight rules orflight phaswe」なかなかよくできておる。フライトルールがどうであろうが、とにかく空中衝突を避けるためにはあらゆることをやれ、こういうことをちゃんと日航は指令を出しておる。ICAOのアネックスにもそのことははっきり出ております。いかなる規定も、それが法規に従ったとかなんとかいう理由をもって空中衝突の責めを免れることはできない、はっきり出ております。というのは、そういうようにパイロットというものは、自分でどんな責任を負おうとも、お客さんなりあるいは乗員、自衛隊なら自分の命を含めて他機の命、そういう飛行機及び人間の生命を助けるためにはあらゆるものを犠牲にして、一番安全な方法をとるべしということになる。これはエアマンシップであります。したがって私はここで最後に
——きょうは御苦労さんでございました。ところが政府
——これは総理府ですね、
調査せられたのは。政府にちょっとお願いしたいことは、この
報告書そのものを再
検討していただきたい。それで、もし政府でこれを了承されるということになるならば、私は今度は
調査団じゃなくて政府の当局者と、これが正しいかどうかということについて、これから
内閣委員会なり
——運輸
委員会でもいいんですが、あっちになかなか入れてくれぬから。これは徹度してやる必要がある。これは再
検討していただきたい。これについては適当に処理をお願いしますじゃなくて、とにかくやるかやらないかを、この場では長官がおいでにならぬからどうかわかりませんが、とにかくなるべく早く
内閣委員長を通じて私まで知らしたいただきたい。
これで私は
質問終わります。