運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-10-13 第69回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月十三日(金曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員の異動  九月二十日     辞任         補欠選任      成瀬 幡治君     藤田  進君  九月二十七日     辞任         補欠選任      戸田 菊雄君     佐野 芳雄君      藤田  進君     成瀬 幡治君  九月二十七日   委員佐野芳雄君は逝去された。  九月三十日     補欠選任        戸田 菊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 伊藤 五郎君                 河本嘉久蔵君                 柴田  栄君                 津島 文治君                 船田  譲君                 前田佳都男君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 横川 正市君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        大蔵政務次官   山崎 五郎君        大蔵大臣官房審        議官       田辺 博通君        大蔵大臣官房審        議官       秋吉 良雄君        大蔵省主計局次        長        吉瀬 維哉君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        通商産業省通商        局輸入課長    若杉 和夫君        通商産業省公害        保安局公害防止        企画課長     島田 春樹君        通商産業省重工        業局次長     北村 昌敏君    参考人        日本銀行総裁  河野 通一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  この際、前田委員長から発言を求められておりますので、これを許します。前田君。
  3. 前田佳都男

    前田佳都男君 お許しを得まして、一言お礼のごあいさつを申し上げたいと存じます。  浅学非才、きわめて無能である私が、一年間にわたりまして大蔵委員長の重職を果たすことができましたことは、全く委員各位の皆さんのあたたかい御支援のたまものでございまして、この席から厚く御礼を申し上げる次第でございます。  今後はどのポストにかわりましても、皆さま方の相変わらざる御支援、御指導を切にお願いを申し上げまして、私の御礼のごあいさつにかえたいと存じます。  たいへんありがとうございました。(拍手)     —————————————
  4. 藤田正明

    委員長藤田正明君) まず、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  戸田菊雄君が一時委員を異動したことに伴い、現在理事一名が欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事戸田菊雄君を指名いたします。     —————————————
  6. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、参考人として日本銀行役職員出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 租税及び金融等に関する調査を議題とし、前回に引き続きこれより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 質問に入る前に大蔵大臣に。  まあ前回委員会においての大臣答弁というものは、あらゆるものを洗いざらい出して、その中でかってに選べというような、質問事項とは著しくかけ離れたような御答弁を繰り返しておられたわけですが、きょうはそういうような御答弁をされるということになりますと、前回と同じような事態に私はなるのじゃないかと思います。最初に、そういう前回と同じような形での答弁をなさるつもりなのか、あるいはこれを改めるのか、的確に答えてくれるのか、前回はまるで何を聞いているのかわけがわからぬ。こういうことでは、金融財政事情の非常に困難な現在を迎えて国民は何が何だかわからぬ。いかなる態度で答弁されるのか、まずその点を大蔵大臣にお聞きいたしたいと思います。
  10. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 前回のことにつきまして御注意がございましたが、私としましては、なお一そう心しまして、誠意を持ってお答え申し上げたいと思います。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣答弁を一応了承いたしまして、質疑を続けたいと思います。  まず第一に、臨時国会が二十七日に開かれる、召集されるということで、非常に総選挙機運の中で開かれるわけでありますが、いずれにしても四十七年度補正予算というものは組まざるを得ない、こういうふうに思うわけでありますが、四十七年度補正考え方予算規模、こうしたものをひとつ御説明いただければ幸いでございます。
  12. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 四十七年度補正予算を、来たるべき召集されるだろうところの臨時国会に提案をする見込みで、われわれのほうとしては補正予算編成に取り組んでおります。その目標としますところ、いわゆる補正しなければならないと考えております点は、御承知のような公務員ベースアップ——給与の問題、そのためにある程度予算の中に計上してございますが、それでは不足をいたしますので、その分の補正がまず第一の問題であります。  あるいはまたことしは近年にない大きい災害がございました。その災害対策といたしまして、この際、補正予算お願いしたいというものであります。  さらに、その他の問題といたしましては、御承知のように円対策の問題もございます。非常に喫緊な問題でございまして、われわれといたしましては、この際、その内容の一部についてぜひ緊急に補正をする必要があるという部門を計上をし、そうしてこれを関係各省等いろいろ相談並びに編成事務を進めておるわけであります。その内容等につきましては、なお詳細事務的によく御説明申し上げてけっこうだと思います。わかっております部分だけはもうある程度まとめにかかったものもございますが、そういう部分もございます。いずれにいたしましても、総額は約予算金額で六千億内外というところを目標におさめたいと思っております。しかしながら、投融資の方法によりまして、事業費全体として考えられますのは、大体の目標を一兆数千億、まあなるべく金額が少ないほうがいいのでありますが、しかし、あまり金額を押えますと、かえってその目的を達することが困難な場合も起ころうかと存じますので、十分相手の役所とも相談をいたしまして、そうして適当なところに何とかまとめてみたいというのが目標でございまして、おそらくは大きく考えますというと、一兆三、四千億になるかもしれません。しかし、それはなるべく少ない程度で私は補正お願いしたいという考えでおります。それは物価その他に及ぼす影響等考えていかなければならないと思いますので、なるべく節約を一方において財源としていたしますし、そういう方法でもって今度の補正を御審議をお願いしたい、かように思っております。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 予算規模として大体六千億というのですが、財源のほうはどんなふうにお考えでございますか。自然増収とか、あるいは国債の発行追加とか、いろいろな問題があるのですが、財源的にはどのようにお考えですか。
  14. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 財源としては、現在考えておりますのは、税収はまだ変動要素がございますが、二千億を上回る、ほかに公債を四千億くらいということで六千億を予定しているわけでございます。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもだんだん補正予算規模が、会合をやるたびに大きくなっているような気がするわけです。当初、大蔵省は二、三千億という付近が頭にあったようでございますけれども、それが五千億になり六千億になるということでありますが、景気動向との関連で、大型な補正を組むということは一体どういうものなのか、企画庁経済研究所所長篠原三代平さんなんかも、五つの原因をあげてインフレ必至だ、こういう状態なんですが、大蔵省として一体そういうものをどう考えるか。  企画庁はお見えでございますか——企画庁としても物価対策の面からそういう問題についてどう考えるか、これは両方からひとつお答えいただきたいと思うのですが、いたずらに景気を過度に刺激するおそれというものがあるのではないか、それが一つインフレ一つはいままでのような産業優先的な形にまた舞い戻っていくという心配がこれ非常にあると思うのです。いまお話事業契約ベース等を見ましても、一兆円以上一兆数千億円というお話でありますから、かなりこれはそういう意味景気刺激する。これは日銀総裁のほうからも、その点はひとつ慎重に扱わなければいけないというような意見も記者会見で出されているようでありますけれども、そういうインフレとの関係はどういうふうにお考えですか。
  16. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 大蔵省の、大蔵大臣としての立場から考えますと、大体におきまして、景気刺激のために大きな補正予算を組もうというような意思は持っておらないのでございます。ただ、この際緊急やむを得ないものを、これはまず、たとえば災害復旧の費用でありますとか、公務員給与というようなものはその一例であります。あるいは、その他の事務費の中にも清算的にこの際お願いをしなきゃならぬものがございます。しかしながら、景気に対する刺激が強過ぎるようなことになってはたいへんでありますし、なるべくこれを少額にとどめたいという腹でもって相談を始めておるのでありますが、一方、円対策等の問題から——やはりこれが田中内閣におきまして考えておりまするいわゆる人間尊重、すなわち国民福祉を第一に考えなきゃならぬ。そうして産業構造は、円対策の上からも、基本的にはこれに十分留意して、今後の予算、かりに少額といえども気をつけなきゃなりませんし、いわんや大きな額になりまして、それが物価悪影響を及ぼし、あるいはそれがインフレのきっかけになるというようなことがあっては申しわけがないと考えておりますので、なるべく少額にとどめたい方針ではおりますが、いろいろと事務費その他積み上げを若干いたしてみますと、相手方の御要望の場合もこれあり、また、われわれとしても、円対策の上から、いわゆる福祉尊重のたてまえを新内閣考えておりますものの、これをいわゆる産業構造の改革といいますか、改善といいますか、これによってなるべく円対策に資するような方面の経費を、しかも緊急やむを得ないものを計上するという考え方でおるのでございます。で、この程度でございますと、一兆三、四千程度のものならば、何とか悪影響が特に起こるようなことはないのではあるまいかというふうに私どもとしては観察をしておるものでございます。
  17. 小島英敏

    説明員小島英敏君) 最近、卸売り物価動向にやや変化が見られまして、実はことしの初めごろから少しずつ上昇傾向でございましたけれども、ここ一、二カ月かなり上昇テンポが強まっております。これがいろんな要因考えられまして、品目的には、木材関係、それから繊維製品関係、それから鉄鋼と、この三つだけでことしになりましてから卸売り物価上昇の大体四分の三ぐらいの原因を占めておるわけでございまして、要因的には、やはり海外市況が高くなっているということもございますし、また、一部の商品については、市況対策効果ということもかみ合っていると思いますけれども、やはり基本的に、最近の卸売り物価上昇というものは、景気回復に伴う需要の増大の影響であるというふうに思っております。で、八月、九月——九月はまだ数字が出ておりませんけれども、この上昇テンポは確かにやや異常でございまして、まあ木材なんかは港湾スト影響も入っておりますので、こういう上昇が今後も長く続くというふうには思いません、必ずある程度は落ちつくと思いますけれども、それにしましても、やはり年間平均しますと、景気見通しが、初め考えておりましたような年度横ばいというようなことではなくて、やはりある程度上昇はどうも避けがたいというふうに思います。そういう点から申しますと、現在のところ幸い消費者物価のほうはまだ落ちついておりますけれども、今後長期的に見ますと、篠原先生の言っておられるような、やはりインフレについて相当警戒していかなければいけない情勢であるというふうに思いますので、企画庁は、特に国民生活局といたしましては、極力この予算規模等についても切り詰めていただくことを希望しておる次第でございます。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、緊急やむを得ないものは六千億と、こうおっしゃるんですがね、公務員給与改定について幾ら、それから災害復旧について幾ら、それからその他の公共施設について幾ら円対策について幾らと、大体これは目安で、正確な数字を私は要求するわけじゃありませんけれども、その辺を具体的に述べてください。  いま、企画庁でおっしゃるように、景気回復を主因としての物価動向というものについては、これは先行きたいへん警戒をしなければならないという事態であるということは私どもも大体そういう認識であろうと思います。そういう中で、補正予算中心とする、これはまた四十八年度予算というものはさらに列島改造関係のものが入ってくるということになりますと、さらに一そうそうした物価騰貴をあおっていく、こういうような過熱状態というものを起こさざるを得ないという道ができてしまうように思うんです。ですから、ひとつ、具体的に公務員ベース幾ら災害復旧幾ら、その他の公共施設幾ら、それから円対策幾らと、大体、目の子勘定でけっこうだと思うんですが、その辺の細目をひとつ出していただきたい。
  19. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 変動要因はまだございますが、いま申し上げられますことは、大体、給与関係で千二百億、それから災害で千三百億、それから米関係で約二百億、それから公共投資で四千億というようなのが大きなところでございます。合計いたしますと約六千七百億ほどでございますが、その他事務的経費の清算とかいろいろな問題がございまして、それから不要節約等をたてまえとし、合計して追加需要としては六千億ということでございます。  なお、円対策という御質問でございましたが、特に、たとえば航空機の輸入とか少額の金は含んでおりますが、この全体の、やや公共投資に重点を置きました予算——公共投資といいましても、その中で特に生活環境関連公共投資を伸ばそうとわれわれ配意しておるところでございます。この追加補正規模としてはやや大型という形の内需喚起予算そのもの一つ円対策になるものであると私ども考えておるわけでございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 これから決定されることでありますから一々ここで批判的なことは申し上げませんが、予備費を回すことなどもあるわけですから、私は、一般公共が四千億というのは、おそらく——私まだ調べてございませんが、公共事業支出ベースが一体どのくらいいっているのか、こういうこととも関連して、一般的には労働力不足等々からいって、全体的に見れば、まあ、個々に見ればかなり進んでいるのもあるでしょうが、全体的に見て幾らか鈍化をしている傾向にあるように私は伺っているわけですけれども、そういう点から見ますと、どうも、この四千億という公共投資すべてとは言いませんが、非常に選挙対策のにおいを感じてならないわけです。そういう点で、大蔵省としては——自民党選挙対策ということでいろいろお考えだろうと思うんですが、いま、日本経済転換期、質的転換をはからなくちゃならぬというときに、そういう選挙的な要因でこういうふうに伸ばすということは、物価動向あるいは将来の日本経済構造というものからして私は適当じゃないと思うんです。その辺はもう少しまじめに考えてくれにゃ私は困ると思うんです。大臣どうですか、そういう自民党だけの、一党の圧力あるいは一部の業界の圧力によっていたずらに規模を伸ばすということは、将来の日本にとってたいへん心配なんですが、大臣そう思いませんか。
  21. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私といたしましては、その予算を、これからの各省との折衝の中におきまして、冒頭に申し上げましたような考え方で進めておりますので、一党一派考え方に偏して、それを利するがためにどうこうしようというような考え方は毛頭持っておりません。私としては忠実に、まじめに、この補正予算そのものの性格もしかるべきものでございますから、その意味におきましても、法の命ずるところによって、真に緊急やむを得ないもの、政府施策の点から見ても、これが政府施策に寄与することが十分考えられると言えるものを極力選んで折衝をしてまいりたいと、かように考えております。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは次に、九月三十日で列島改造関係概算要求、こういうものもおそらく打ち切られたと思うのですが、八月末には一般、それ以外のものの概算要求というものが打ち切られたと思うのです。大体両方合わせて一体どのくらいの額になるか。これも変動要因がかなりあるようでありますが、大蔵大臣としては、来年度予算規模というものはどのくらいにしようとしているのか。たとえば田中首相は、十五カ月予算で十五兆円とか、あるいは十四兆五千億とかいろいろ言っているようでありますけれども、一体大蔵大臣は来年度予算規模としてどのくらいが適切であるべきか。これはおそらくいろんな決定はしておられないでしょうから、大蔵大臣個人植木個人の見解でけっこうでございますから、どのくらいの規模が適正だとお考えですか。その点もあわせてお答えいただきたい。
  23. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私としましては、来年度予算規模等につきましては、なおまたおしかりを受けるかもしれませんが、ほんとうに心胆をくだいて考究中でございまして、いろいろなまだ資料も集まってまいりません部分が、整ってまいりません部分がございますし、先行き経済見通し企画庁でもいろいろ御研究になっておりますが、まだそうした数字もさだかになっておりません。われわれはわれわれとしましての、いわゆるある意味においてはしろうとにすぎないかもしれませんが、事務的には研究はいたしておりますけれども、その場合には、ただいまの時点におきまして、ほぼ幾らぐらいを個人的にはおまえはいいかと思うかと仰せくださいましても、私としてはこの時点では金額を申し上げかねることをお許し願いたいと思います。
  24. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ちょっと関連。  前段の竹田議員補正予算関係ですね。若干関連質問したいんですが、大臣説明によりますと、補正内容災害等で千三百億、それから公務員関係千二百億、米価二百億。大体災害公務員給与、それから米価、これの三千億近いものはわれわれとしても了解はするのですけれども、問題は公共投資関係ですね。四千億。これは財源の措置がちょっと主計局次長から答弁なされたようですけれども、聞き取れなかったのですが、この財政法の四条、五条関係が、私は関係してくるんじゃないかと思うのですけれども、その辺の財源の調達をまずどうするのか、これをもう一度明確にお答え願いたい。  それからもう一つは、この公共投資というのですけれども、その内容は一体主たるものは何なのか。この四十六年度から、たとえば住宅の場合にも五カ年計画を設定をしてそれぞれ進めてきておるのですが、非常に公営住宅等は比率にして低いのです。だから、こういうものをもっと上げていくつもりなのか。あるいは公園施設等もありますけれども、そういうものも波及していくのか。しかし、そういうものをやっていっても、私はとどのつまり土地騰貴にぶつかっていくんじゃないか。だから、計画よりもはるかに実施計画というものはダウンしていくんじゃないかという考えを持つわけです。それはイコール景気浮揚その他にどれだけの波及効果というものがもたらされていくのか、その辺の疑問。  それからもう一つは、やはりそういうことでいきますと物価との関係ですね、竹田議員も指摘をされましたけれども、これは年度当初において五・二%物価上昇見通し政府は確定している。これではたしていけるのかどうか、その見通しはどうなのか。  もう一つは、この景気浮揚政策、いわゆる成長を七・七%程度と大体考えておったでしょうけれども、これがはたしてどの程度までいくのか。いまの状況でいきますと、われわれの試算でいくとおおむね九%台にのぼるんじゃないか。そういうことになると、従来高度経済成長政策を進めてきた実質一四%、そういうものにやや年度末へいって近づいていきやしないか。そうすると、一貫して従来あった——経済関係政府福祉型といいますか、産業中心じゃなくて、そういうほうへ大転換をするのだと、こういうふうに言ってはいるけれども、結果的にはやはり高度成長の従来の経済成長パターンを追う、そういう状況になりやしないかというような点が非常に心配されるわけですけれども、それを補正予算等から見て非常に疑問に思うものですから、四点の問題について一体見通しはどうなのか。これをひとつお聞かせいただきたい。
  25. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 先ほどの竹田委員の御質問の来年度要求でございますけれども、現在までに十四兆六千九百四十七億でございますけれども、前年度に対して二八・一%ということになっております。  それからいまの戸田委員の御質問でございますが、私どもといたしましては、財源といたしまして、先ほど御説明いたしましたとおり、税の自然増収が二千億を上回る程度公債発行といたしましては四千億を若干下回る程度ということを予定しているわけでございます。  なおこの経済成長高度成長パターンでございますが、四十七年度の当初予算編成時には、何ぶんにも国際的な通貨調整の直後でございまして、通貨改定後の経済見通しにつきまして、私ども率直に申しましていろいろ見通しがむずかしい点もあったわけでございますが、その後経済成長通貨改定にかかわらず相当なる回復の足どりを示しておりまして、そういう意味景気刺激のために一つ補正予算を組むというような必要は私どもとしましては減少していると、こう考えておるわけでございます。ただ、今後の外貨蓄積の足どり、いままでの経過等を見まして、内需喚起というような形から一つ公共投資の追加をこの際行なうということはなお必要ではなかろうか、こう考えておるわけでございます。  公共投資約四千億の内訳といたしましては、一般公共事業等といたしまして約三千六百億、それから社会福祉関係の施設とか学校関係の施設とか、施設関係として約四百億というふうなことを現在予定しているわけでございます。
  26. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 物価はどうですか。五・二%で押えられる可能性はありますか。
  27. 小島英敏

    説明員小島英敏君) 消費者物価につきましては、現在までのところ比較的安定的でございまして、これはやはり消費者物価と申しますのは、景気の動きに対しまして一年とか一年半とかおくれがございます。そういう関係があったことと、もう一つは、本年度に入りましてから天候に恵まれたものですから、野菜その他の生鮮食料品が比較的落ち着いておりまして、八月の全国の数字と九月の東京の数字は、いずれも〇・八、〇・九と上がっておりますけれども、これは主として季節的な異常でございまして、四月から八月、つまり本年度に入りましてからの四月から八月までの全国の数字を平均いたしますと、前年同期に対して四・八%アップでございます。それから東京は九月が出ておりますので、本年度上半期四−九月を平均いたしますと、前年同期に対して四・九%アップということでございまして、大体現在の私ども見通しでは、本年度に関する限り政府見通し以内におさまるのではないかというふうに考えております。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 公債発行限度額……。
  29. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 財政法第四条……。
  30. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 今回の公債の追加発行、これは財政法第四条の建設公債の原則の中でまかない得ると、こう見ております。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの問題、当初予算で発行限度額は二兆一千五百億でしょう。そうすると、この前の公債の発行は一兆九千二百億だったわけでしょう。その差額は二千三百億だ。それだけはまあ当初予算の形で出せるわけですね。いま四千億出すといいますと、あと一千七百億、これは赤字公債ですか。どうするんですか、これは来年度に持ち越すということなんですか。
  32. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 今回の補正予算公共投資の追加は約四千億ございます。その範囲内の公債発行の追加になりますので、赤字公債ということではないというふうに私ども考えております。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 総体的にどの範囲でやるんですか。先ほど公債発行四千億と、こういうふうにおっしゃられたわけですが、そうすると、四千億にすれば、当初の一兆九千二百億にプラスすれば、二兆三千二百億になるでしょう。四千億というのは一体どうするんですか。公債発行四千億と言ったでしょう、さっき。
  34. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 公共事業関係の追加が約四千億でございますので、その公共事業の追加に必要な公債の発行、これは公共事業関係の追加額の範囲内で公債発行をいたしますので、当初の限度は二兆一千でございますけれども、公共関係の費用が、ただ四千億追加に対しまして四千億の公債発行をするという関係でございますので、それは財政法四条の原則の範囲内の公債発行であると、こう考えておるわけでございます。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 ちょっとよくわからないんですが、そうすると、当初のこれはどういうわけですか。税の自然増収が二千億といわれておるんでしょう、公債発行が四千億といわれておるんでしょう。そうすると、範囲内というのは二兆一千五百億の中に含まれる、こういうことですか。その辺ちょっとよくわからないんですが。
  36. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 当初の二兆一千億と申しますのは、当初の予算の中で公債発行をもってまかない得る経費が二兆一千億だということでございまして、今回は公債発行でまかなえる経費が四千億追加になりますので、当初の二兆一千億が当然それだけ拡大されてしかるべきだと考えておるわけであります。その意味で、公債発行対象経費のワクが拡大した、したがいまして、それをまかない得る財源として公債発行を追加することは可能であると、こう考えております。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、公債発行の対象事業、これは今度はまたふやすわけですか。具体的にどういうふうなものをふやしていくのか——この前でまあ洗いざらい、官庁の営繕までワクを広げたわけですね。今度は一体どういうものを広げていくのですか。
  38. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 先ほど申し上げましたとおり、一般公共事業関係で約三千六百億、その他各省庁の施設等で四百億を若干上回るという形で考えておるわけでございます。
  39. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっと。  質問に具体的に答えてくれないと、何か非常に抽象的な答弁なわけですよ。  まず大臣に文句をつけたいのは、具体的に補正予算を組む場合に、これは今年度予算の帳じり、締めくくりとして必要経費について補正予算を組むわけでしょう。しかし、そのことは、これは予算を組むときに厳重に規定されているのは、景気動向であるとか、円の対策であるとか、それから雇用関係であるとか、いろいろなことを検討されて予算が組まれ、しかも、その歯どめがあるから補正予算を組むと、こういうことになるわけでしょう。それなら次年度予算はどうかと質問されたときに、自民党の意向を承ってまだやっておりませんとか、それからまだ資料がありませんので答えられませんとか、そんな財政見通し予算担当官がつとまるわけないんですよ。だから、たとえば福田さんが大蔵大臣のときには、少なくともこまかな数字を掲げて答弁しましたよ。もう少し、次年度予算の問題と関連させて、今年度補正予算関連性がどうかと質問されているのに、そんな抽象的な答えでなしに、もっと具体的に答えてくれにゃ困るというのが一つですね。  それからもう一つは、公共投資はどうかと戸田委員から問われている。これは個所づけの問題もあるわけですよ。これはさきの質問の中で疑いを持たれて質問を受けているのに、それを晴らそうとしないで、すれ違いの答弁だけじゃだめですよ。もっと公共投資が四千億必要になった具体的な事例をあげて、予算をこうしました、その予算はワクがふえたから公債を発行いたしますと、関連性をもう少し具体的に説明しないとわからぬですよ、私ども聞いていて。疑いを持って聞いているわけですから、疑いを晴らすように答弁してください。
  40. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 四十八年度予算編成に関しましては、今回の補正予算との関連で、やはり公共投資の増進と、それから社会福祉関係の増強というようなことに主眼を置いてこれから作業にかかるわけでございます。いまお話がございました今回の補正予算の中身でございますが、御承知のとおり、ことし公共事業関係の相当繰り上げ支出、施行促進ということをはかってきたわけでございます。そういうようなことで、その目標に対しましては、現在のところ、ほぼ目標どおりの実行が行なわれていると、こう考えておりますが、それと同時に、今回の補正予算編成するにあたりましては、各省庁で考えております工事の施行能力、消化能力、そういうことを勘案いたしまして規模をいまきめているわけでございますが、なお具体的にその中身が、道路に幾らだとか、住宅幾らとか、生活環境に幾らというようなことは、鋭意現在各省庁と詰めているところでございまして、規模といたしましては約四千億ということを予定しているわけであります。  なお、御質問にございました雇用情勢とか物価情勢、そういうような形でどのようにこの予算が機能するかということがございますが、昨年度の当初予算に対しまして、補正公共投資の追加は約一一%、今回公共事業三千六百億の追加でございますので、当初予算の約二兆ということに対しましては一七、八%という規模になるわけでございます。私どもといたしましては、現在の各省庁の工事の消化能力、それから現在の経済規模から考えまして、この程度の追加ならば消化可能でもあり、またそれが経済の諸般の情勢に対しまして必ずしも悪い影響を及ぼすものじゃないと、こう考えておる次第であります。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもよくわからぬですな。まあ、この前の委員会大蔵大臣は、赤字公債の発行もあり得るというような趣旨のことを、どうもそれもはっきりしたわけじゃありませんが、それに近いことを御答弁いただいたわけですけれども、一体建設公債か赤字公債かという問題というのは、まだ私議論が終わっていないと思うんですね。一体赤字公債を発行していいのかどうか、これについてはまだ多くの疑問があるわけです。そういう関連でいまのお話を聞いていますと、どうもよくわからぬ。何かずるずるずるずる発行限度額を伸ばしておいて、それで赤字公債でない、建設公債だ、もう歯どめなしにやっている、そういう感じもあるわけですね。そういう意味で、その辺をはっきりしてくれと私はお願いしているわけですよ。それでなければ、どんどんどんどんこれはふやしていって、将来になったら自衛隊の装備まで建設公債にしてしまうということになりかねないんです。この前の予算委員会では、その点ははっきりと否定しておられましたけれども、しかし、いまのままでいくとそうなっちゃう。その辺をはっきりしてもらわなければ困る。だから、具体的にどの辺まで今度は建設公債のワクに入れるのか、その点をはっきりしてもらわなければわれわれ理解できないですよ。その点をはっきりしてください。
  42. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 当初予算公債発行でまかない得る公共事業、そのほかに出資とかそういうものがございますが、いわゆる資本支出の性格を持っている経費が二兆一千百三十億あったわけでございます。それに対しまして具体的に公債を発行いたしましたのが一兆九千五百億ということで、先刻竹田委員の仰せになりましたその他のいわゆるすき間があったわけでございます。今回公共投資関係を四千億追加する——財政法四条では、いわゆる資本投資的な経費公債発行で国がまかなえる、これが財政の原則であるということがうたってあるわけでございます。そういう意味で二兆一千百三十億の当初の公債発行でまかなえる経費がさらに四千億追加になったと私ども考えているわけでございます。なおそういうような投資的経費以外のものを公債でまかなうということになりますと、これは財政の運営といたしまして、将来果実がかえらない形の経費公債でまかなうことは避けるべきでありまして、竹田委員御指摘の、要するに公債発行のワクが広がって、それが赤字公債的な性格を持っているかというような御質問でございますが……。
  43. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうじゃないですよ。そうは言ってないですよ。公債発行対象の事業は具体的にどういうものがふえたのだということを聞いているわけですよ。
  44. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) それは先ほど申し上げましたとおり、公共事業関係で三千六百億……。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 それを具体的に言ってくださいということです。
  46. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 具体的にはまだ港湾とか住宅とかいろいろ各省と詰めている段階で、相当折衝中でございますので、その点はまだ申し上げる段階になっていないわけでございます。公共事業関係で三千六百億と、こう申し上げておきます。
  47. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ積算根拠をあとで資料として出してくれませんか。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 私そんなばかなことはないと思うんですよ。一定のワクの中でやるというならこれはわかるんですよ。そのワクをオーバーするんですよ。いままできめたワクをオーバーする。それが具体的に、たとえば官庁なら官庁のどういう、建設省なら建設省の地建の建物を建てかえるんだからこの分は公債幾らだとか、こういう道路をつくるからこれは幾らだ、あるいは社会福祉施設を、新しくこういう病院つくるから、それの対象が幾らだとか、もう少し——それはここでワク内なら私は言いませんよ、ワクをはみ出ているんですから。その対象経費になるものは具体的にどういうものだということがわかっているはずですよ。全然わからない。場所をどこにするかはこれはいろいろありますよ。東京につくるのか大阪につくるのかという場所の選定などは問題があるにしても、今度はこういうものを対象にしますというものが当然出ているはずだと思うんです。もう大体ある程度の概算というものが出ているんですから。それがなかったらちょっとわからぬですよ。これがまたすき間がずっとあるんなら私ども言わないんです。すき間がないからこそ言うんですよ。どうもその辺がよくわからない。
  49. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 二兆一千と一兆九千というのが当初すき間であったわけです。ただ再三御説明申し上げますように、今回公共事業として一つ財政追加をしたわけでございます。その中身といたしましては、たとえば治山治水とか道路整備とか農業基盤とか生活環境とか、そういう中身になっているわけです。公債発行をもってまかない得る経費を追加するわけでございまして、すき間議論といいますのは、当初予算におきまして、公債発行対象経費と、現実の公債発行額の差額がすき間になっておるわけでございますが、今回の補正予算におきましても、御指摘にございますけれども、中身につきましてはまだこれからの各省折衝が残っておりますので申し上げられませんが、今後といたしましては、公共事業関係経費を追加するわけでございます。そういう意味で、当初予算のすき間と申しますものが、当初予算公債発行の対象経費の額が増大する、その額が増大した部分は、公債発行をもってまかない得る、こういうことでございます。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると確認しますが、たとえば道路建設費というのはこれは当然公債発行対象事業ですわな。それが当初予算では、たとえばそれが一兆円と、こういうふうに組んであると計算したと、それを今度は一兆二千億にした、中身をふやした、こういうことですか。だから対象事業の名目というのは、これは同じだけれども一つ一つ内容をふくらました、それによって今度は当初と合わして一体どのぐらいになるわけですか。
  51. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 当初が二兆一千百三十億でございます。それに公債発行でもってまかない得る公共事業関係が四千億、そのほかに、先ほど申し上げましたけれども災害関係、これが千三百億ということでございまして、これを合計いたしますと約二兆六千億というようなかっこうになるわけでございます。
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 まだいろいろ聞きたいことがありますけれども、時間がありませんから先に移りたいと思います。  大蔵大臣、九月の末にIMFの総会に出席されたわけですが、IMFの総会で一体どういう御感想を抱かれましたか。
  53. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 昨年のことは私は現場に行っておりませんのでわかりませんが、事務当局から昨年の状況等も承りました。また前大臣からも去年の状況を、雑談でございますが、御参考に承らさしていただきました。そして今度私が臨みまして、どういうかっこうに会議が進行するだろうかということを非常に興味と、そして関心を持って見聞したつもりでございますが、昨年は八月のアメリカの例の経済政策の大変化が起こりました。その直後に、九月でございますか総会がございました。ところがそれがあまりにも青天へきれきの大きな変化でございましたから、各国間の代表の諸君もそれぞれとまどった点が少なくなかったそうであります。それで自然と会議もいろいろと、時には必ずしもしっくりと話がピントが合わないという部分もあったやに承っておりましたが、今回参りまして私の感じましたのは、そういう点は今回は幸いにしてございませんでした。それは私の想像でございますが、推定でございますが、おそらくは去年以来、いわゆる総会の代理の委員が、十カ国委員会、あるいは各国の代理の諸君がかねて——今度恒久的などういう体制をつくることが将来の関係国の間の、何といいますか、お互いに必要な点は言い合い、希望の点は申し出る、主張は主張としますが、しかし、目標一つ固まっておった、それは何かといいますと、どうしても各国ともこの際恒久的なそういう制度をこしらえるのがよかろう、だからそれに賛成していこうという空気が大部分であります。これに対してまっこうからの反対というものはほとんどございませんでした。したがって、会議は非常になごやかに進みまして、十カ国委員会もあるいは二十カ国委員会も、その発足をすることになって開かれましたが、いずれも非常になごやかに話が進んで、そしてとにかくできるだけ早く恒常的な理想的な案をつくろうじゃないかということに話がまとまったのであります。これはその二十カ国の委員会のときも、今度初めての発足でございますが、非常になごやかに発足ができたということは、新しいいわゆる国際通貨体制をつくり上げようということについて意思の合意があったからだろう、一致があったからだろうと私は考えるのであります。これから後は、二十カ国委員会がまず当面の問題として十カ国委員会とも連絡をとりながら、今後の体制をいろいろと研究をされ、そして一つの成案を得る努力をなさるわけであります。その努力が今後実りますれば、これがIMFの総会あるいは十カ国委員会の総会も言うまでもありません。これらのところで十分審議を尽くして、そしてこれが最後に決定に至る、こういうことになると思います。この順序はおおむねきまっておるんですが、これが非常にスムーズに今日妥結を見ておりますことは、この理想的な案をつくろうということについて、お互いが国際的協調を保ちながら、お互いに自分の言うべきことは言い合って、そしてその結論に達しようという努力でありますから、これはおそらくうまくいくのではないか、ぜひいってもらいたいというのが私の気持ちで、そういう感触を得て帰ったわけであります。
  54. 竹田四郎

    竹田四郎君 その点は確かにそう感じられたと思うんですが、私ども一番聞きたいのは、日本の外貨準備が百六十億ドル以上になってきておる、しかも、ことしの貿易収支から見ると、大蔵省の意見でも大体貿易黒字が九十億ドルぐらいになる、こういうふうにさえいわれておる、そういう中で、アメリカの財務長官のシュルツ氏の演説もあったわけですね、その辺を聞きたいんですよ。日本の円というものに対してIMFの総会の各国は一体どう見ているのか。いまのはおそらく国際的な通貨の今後の改革案の話のほうだと思います。どうしていくかということなんです。当面の円の問題についてあなたどう考えるか、そのポイントを答えてください。いいほうばかり話して、悪いほうは知らさないというのは、これは困るんで。
  55. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 別に私は悪いとかいいとかのつもりで申し上げているんじゃないんですが、目標が、今度の二十カ国委員会にしましても、十カ国委員会、総会にしましても、将来にわたる国際通貨制度を改革してこしらえ上げようじゃないかということで合意を見たわけなんです。当面の日本の円がどうとか、あるいはマルクがどうとかいうような問題は今回の議題にはないのであります。そこをひとつ御理解を仰ぎたいと思うのであります。私の申しますのは、これらの委員会が、それぞれ将来の国際通貨制度を改革してどういうふうに進めようかということの相談の段取りができたわけであります。
  56. 竹田四郎

    竹田四郎君 その点はわかったとさっき冒頭に言ったわけですよ。その点はそうだろうと言ったわけですよ。ところが、現実にハワイ会談以降、円の再切り上げの問題というのは、いまや経済関係の雑誌というのは載らない雑誌はないくらいでしょう。それに業界は再切り上げを前提として契約も結び対処しているわけでしょう。だから、大蔵大臣ね、IMFの総会へ行って、それは確かに表面の議題はそうだから、それだけに関心を持って答弁していくというのはそれはそうかもしれぬけれども国民が一番聞きたいところは、各国が国についてどう考えているかということを大臣がはだで感じてきてほしい、こういう要望があったはずですよ。一々要望書は出なかったかもしれませんけれども、世論的にそういうものがあったはずです。そういうものについて国民は一番聞きたいわけです。それをどうお感じになったかというところが私はポイントだと思うんですよ、いまの。その点を答えてくれなければ困る。
  57. 林大造

    説明員(林大造君) 先に若干事実関係を御報告申し上げまして、後ほど大臣の御見解をお述べいただくと存じますが、今回のIMF総会におきましては、大臣が申されましたとおり、制度改革の問題についての前向きの討議でございまして、当面日本に対して円の切り上げをしろというような空気は全く感じられなかったわけでございます。議論はすべて前向きの、来年ケニアのナイロビで次の年次総会が開かれ、そこで国際通貨制度の新しい姿についての大綱の輪郭を得る。それから細目について合意していくというようなことで、いわゆる二十カ国委員会も発足したわけでございます。問題は、当面の国際通貨情勢についてどう考えるかということにつきまして二つの点で見解が述べられたわけでございます。  一つは、昨年の十二月のいわゆるスミソニアン体制の確立によりまして、各国のレートの調整が行なわれました。その効果が出るのに時間がかかるという一般的な認識でございます。この点につきましては、IMFの専務理事のシュバイツァー氏の演説にも明らかにされておりますが、平価調整というものは、その直後におきましては、価格に及ぼす影響のほうが先に出まして、本来の目的とする国際収支の調整とは逆の方向の姿が出てくる、その期間が過ぎますと、今度は数量効果というものが出てまいります。それによって当初の目的が次第に達成されていく、その当初の目的が正式にと申しますか、本格的にあらわれてくるのは、おそらく来年くらいにはあらわれてくるだろうということが言われております。  それから第二の点は、景気の問題でございまして、景気上昇はアメリカが先に出てきて、そうしてそのほかの国が若干おくれておる。その景気上昇のラグが、国際収支調整の本来の意図するところが早目にあらわれることを妨げておる。しかし、ヨーロッパも日本景気回復してきておるから、したがって、昨年のスミソニアン体制の意図するところは今後次第にあらわれてくるだろうということが言われております。私どもはだで感じましたところでも、やはり現在世界的に景気がよいということは、各国のいらだちを少なくしている面がございまして、したがいまして、各国相互の演説あるいは舞台裏におけるいろいろの話し合いにおきましても、日本に対しましてこの際円の切り上げを求めるという空気は全く感じられなかったわけでございます。で、ただ問題は、御指摘のとおり現在の日本の貿易収支、経常収支の黒字が依然として大きい、あるいは外貨準備の増勢が早い様相でございます。しかし、これをこのまま放置しておいて各国が黙っていてくれるかといいますと、やはりその点につきましては、各国は非常に関心があるわけでございます。それがどういう方向にあらわれていくかといいますと、円の切り上げを求めるという空気ではなく、現在の日本の、どちらかというとやや閉鎖的な経済体制と申しますか、これだけ日本も黒字が大きくなり、世界の大国になったのだから、もう少し門戸を開放して、ほかの国並みに自由化を進めてもらっていいのではないかという空気をひしひしと感じてまいったわけであります。そのことがまたひいては、日本の国際収支の黒字縮小につながるということで、戻りまして私ども——時間をかけてスミソニアン体制の効果が出る、あるいはその景気回復効果が出るのを促進するという体制を整えていくと同時に、日本輸入の自由化であるとか、あるいは輸入のスムーズな流れを妨げている体制があるとすれば、それを改めなくてはいけないというので極力努力をしておるという状況でございます。
  58. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの林局長の話である程度わかったんですが、あなたはIMFの演説の中で、第三番目に、「国際収支の調整手段について触れたい。」ということで述べておりますね。「国際収支が均衡するか否かは、まず各国の国内経済政策の運営いかんに依存しており、したがって、国際収支不均衡の是正は、まず国内経済政策によって図られるべきであろう。」このようにあなたは述べました。具体的にはこれはいま林局長がある程度言われたわけです。輸入の自由化とか、あるいは開放的経済にしろということは、具体的に大蔵省はどのようにはじいておるのか、この点を具体的にひとつ聞かせてください。たとえば輸入の自由化によってどのくらい、あるいは対外経済協力によってどのくらい、あるいは何によってどのくらい、これは数字の問題ですから、概念の問題ではないのですから、具体的にそれをひとつお知らせいただきたい。
  59. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま御指摘の点は、現在政府部内で進めております各種の対策、たとえば輸入の関税の引き下げであるとか、輸入割り当ての増大であるとか、あるいは輸入の自由化であるとか、その他の措置が具体的に数字として外貨準備に幾らぐらい響くか、あるいは国際収支に幾らぐらい響くかという御質問かと存じます。  本件につきましては、今週の月曜日に各省間の会議が行なわれまして、経済企画庁中心になりまして、来週の金曜日、二十日を目途として内容を固めるという作業を進めている段階でございます。したがいまして、いかなる措置を具体的にどういうふうにとるかということがきまりませんと、先生御指摘の数字というものもはじきがたいわけでございます。私どもといたしましては、その国際収支調整政策というのは、現在行なっております為替管理体制そのものも、すでに資本流入阻止という点では、外貨準備の増勢を抑制する方向に働いているわけでございます。そういう問題の上に今回の措置が、どれだけ余分の効果をもたらすかということにつきまして、計算方法は非常にむずかしいわけでございます。関税局その他でいろいろの数字をはじいておりますが、申しわけございませんが、この段階では措置の中身が固まっておりませんので、具体的な計数を申し上げることができない。おわび申し上げたいと存じます。
  60. 竹田四郎

    竹田四郎君 おわびされたってしようがないと思うんですね、これは幾ら大蔵省の幹部が頭を下げてきたって、具体的に黒字がたまっているのですからね。昨年の円対策の八項目、ことしの七項目、こういうのも現実には、一部は行なわれた形跡もあるのですが、大部分一つの文章で終わってしまう、実行は伴わなかったということなわけです。しかも、円の再切り上げ問題というのは、もう年内か来年当初かというきわめて緊急な問題です。数字がはじき出されないなんというようなことを言っている時代じゃないと思う。ある程度私ははじいていると思う。たとえば日経の十月の九日ですか、出された数字というのは、これは私は全然うその数字じゃないと思う。発表はできないけれども、スクープされたのだろうと思うんですけれども、大体このぐらいのことは考えているという数字だろうと思うんですが、どうなんですか、全然こんなこと考えていない、このぐらいの程度までは内部で検討はしているけれども、発表する段階ではまだないということなんですか、どっちなんですか。
  61. 林大造

    説明員(林大造君) 実は私ども、各種の措置につきまして、具体案を詰める段階では、当然この措置をとったらば幾らぐらいの国際収支の黒字縮小の効果があるかということははじいているわけでございます。ただ、あるいはその中の一部が新聞に漏れたということもあり得るのではないかと存じますけれども、ただ問題は、このような措置は、私ども限りの措置でございまして、やはり関係各省で合意に到達いたしますまでは、その措置及びそれによる効果というのを公式に申し上げられないというわけでございます。
  62. 竹田四郎

    竹田四郎君 ある意味ではわかりますよ。しかし、いまそういう意味では、平常な時代ではないと思うのです。もっと緊急にやらなくちゃならぬ問題だろうと思うのです。むしろそういう点では、たとえば農林省に悪いところがあるかもしれない、通産省に悪い点があるかもしれない、そういう点は、国民の批判の前にさらして、悪い点は農林省でも一つ改めてもらう、そういう形をとらなければ、大事大事をとっていたのでは、この問題は緊急に解決できないと思うのです。もしそれでなく、いまのような形で、各省の意見を内部のあちらこちらで突き合わせて、賛成だ反対だといって、議論を十分しているということならば、円の再切り上げということはあるし、大蔵省も円の再切り上げあってよろしいという態度だというふうに私はとらざるを得ないのです。私それくらい緊急な問題であろうと思うのですが、これは大蔵のおそらくはじいている一つの資料だと思うのですね、日経に出ている点は。その中に自由化の促進によって三億三千万ドル、これはおそらく大部分は農林省と通産省関係だろうと思うのです。それについて大蔵省が検討している理由、輸入自由化品目の中に八つばかりありますね。これ一々時間ありませんから名前を申しませんけれども、これは一つ大蔵省の試案の試案だろうと思うのです。これについての自由化ということは、農林省としてはどの程度自由化をするのか、あるいは自由化を全然しないのか、この辺について農林省の考え方をひとつお聞きしたいし、輸入割り当てワクの拡大というものは、農産物関係のものはかなりあると思うのです。そういうものについて一体農林省はどう考えているか。これは通産省も同じです。農林、通産からひとつこれに対する一つの試案の試案ですよ、ある一つの案ですよ。大蔵省から出たか、どこから出たか知らぬが、新聞に出た一つの案ですが、これに対してどう考えているか、ひとつその辺をお答えいただきたいと思うのです。
  63. 内村良英

    説明員(内村良英君) 現在農水産物の残存輸入制限品目は二十四品目でございます。この二十四品目は、たとえばフランスの農産物三十九品目、あるいはイギリス、ドイツの残存制限品目十九品目に比べまして、他の先進国に比べ必ずしも多いほうではございません。  一方これらの残存輸入制限品目を輸入自由化することによって、それによる貿易収支への貢献度というものを、農林省の計算によりますと、全部自由化すると、——ただし牛乳等はこれは当然国内でやることになりますが、全部自由化すると、約五億ドルの貿易収支の上で改善というか、それだけ輸入がふえるわけでございます。それに対しまして、それでは一体国内農業のほうはどういう影響を受けるかと申しますと、それによって約七十万人の農業従事者が影響を受けるということになっております。このような状態にございますので、農林水産物の輸入自由化につきましては、私ども慎重に検討しなければならぬというふうに考えております。
  64. 若杉和夫

    説明員(若杉和夫君) 通産省関係の残存輸入制限品目は石炭、皮革関係、それから電算機関係、三つのグループになっております。これをいま直ちに自由化することは困難であると、こういう判断でございます。  それから輸入割り当ての拡大という問題が出ましたけれども、これについてはできるだけ前向きにワクを拡げるように努力したい、こういうふうに考えております。
  65. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの通産省の方のお話ですが、輸入割り当てについてはどのくらいワクの拡大で、どのくらい外貨減らしになりますか。
  66. 若杉和夫

    説明員(若杉和夫君) お答えいたします。  これも仮定がございます。いろいろむずかしい次第でございますが、四十六年度の割り当ての通関実績というのが十五億ドル強くらいでございます。したがいまして、いまわれわれとして考えているのは、約三割程度ワクを広げたらどうか、こういう議論をしております。固まっているわけではございません。そういたしますと、単純計算しますと、四億五千万ドルということになりますが、自然増その他ありますので、どういうふうに計算するか非常にむずかしゅうございます。まあ大ざっぱに見て二億ドル前後ではなかろうかと、非常に大ざっぱな概念ですけれども考えております。
  67. 竹田四郎

    竹田四郎君 関税関係いらっしゃいますか。  関税関係で、税率の一律二〇%引き下げで大体どのくらいの外貨減らしになるか。
  68. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 関税負担率を幾ら下げますと、それが輸入にどの程度響くかということで、私どもいつもそれの試算について頭を悩ましているわけですが、過去のデータ等から判断しましてもですね、これは非常に技術的な問題ですが、大きな品目をたくさんやった場合の輸入の拡大がどうなるかという問題とか、それから嗜好の増、需要の増の影響がどの程度実際あったかというようなことをいろいろ組み合わして、関税負担率だけでふえたか、その他の要因のほうがむしろあったじゃないかとか、いろいろのデータの吟味というのがございまして、確たる試算がなかなかできにくい状況でございますが、しかしながら、私ども大蔵省の立場といたしましては、関税負担率を引き下げることは、かなり輸入の促進に影響があるという私どもなりの自信を持って、各省に対しまして関税の引き下げについて強力な折衝をいまやっているような段階でございます。
  69. 竹田四郎

    竹田四郎君 具体的にそれじゃ数字をはじいていないということでございますね。
  70. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) そうでございます。
  71. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしても、この辺がかなり大きなところだろうと思うんです。  その他、外貨貸しでは大蔵省はどのぐらい減らしたいと思っておりますか。
  72. 林大造

    説明員(林大造君) 外貨貸しは過日の八月に決定を見まして、今日までに七件許可を出しております。合わせまして一千万ドルをちょっとこえる程度でございますが、私ども目標といたしましては、年度内に十五億ドル程度というのを目標に掲げておりましたが、しかし、この十五億ドルの根拠とお尋ねになりますと、私どもも初めてのことでございますので、どの程度出ますものか確たる自信はございません。しかし、この種のことは緒につきますと、その後次第にふえていくものでございますから、まあ当初の目標に向かってできるだけ接近していきたいというふうに考えております。
  73. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは、田中総理が就任してからあっちこっちで吹きまくった一つの問題ですね。ですから、いまになってわずか一千万ドルしか実績がないと、まあ申請はもっと出ているでしょうけれどもね、テンポとしてはあまり速いテンポじゃない。吹きまくった割りにはテンポがおそいというふうにしか感ぜられないわけですが、こういう形で大蔵大臣に聞きたいのです。  円の再切り上げということを避けるということは、大蔵省も同じような見解だろうと私は思うんですけれども、避けられる自信ありますか、また、もっと何か非常にいい手というものが一体あるのかないのか、大蔵大臣に聞きたいですね。
  74. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) やはり所管事務関係がございますから、われわれとしてはあくまでも十分お互いに理解をし合って、そしてこちらが考え、向こうさんも譲り得るところは譲っていただいて、そうしてまとめるよりほかにない、こう思うんです。われわれが所管の大臣に対して、こうしなければなりませんと言って命令をする力はございません。これは、やはり官庁間の協力によって、やはりあるしかるべきところをまとめ上げていくということよりほかには私どもできないものである、こう思います。しかし、それは必ずやお国のために最後の場面においてはやはり協力していただけると、こう私は信じておるのであります。したがって、私は、これはお国のために必ずや妥結すべきところで妥結ができるんじゃあるまいか、こう思いますので、問題は解決し得るのであると、こう信じておるのであります。
  75. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは一応大臣としては、そういうふうに答えざるを得ないだろうと思うのですけれども、選挙含みの現状で、予定していた税金問題を、全部税金をかけるところを引っ込めちゃうというような状態ですよね。それで、なるべく票を減らしたくないということで、あっちこっちで、いまの補正予算でもお話があったように、予算のワクは広げる。ぐあいの悪いやつはとにかく引っ込める。だから農林、通産にしたって、これはもう私のほうはこれだけ外貨減らしをいたしますと進んだことは言えないと思うのですよ。そうなってくると、いまの点で、私はどうも円の再切り上げは必至だと、もう近いうちにあると、どのくらいあるか、その率はわかりませんけれども、あるというふうに言わざるを得ないわけですよね。もっとぴしっとした対策が出ているなら、われわれもそれをやってもらえば、円の再切り上げはないというふうに言えるわけですけれども、どうも再切り上げがある。  で、これは過去のことですが、去年の十二月円の切り上げがあった。しかし、円の切り上げがあったけれども、その切り上げによるところのメリットというものは国民に何ら還元していないんです。私は数回にわたってかつてこう言ったことがあります。アメリカから輸入している小麦、これは一番円の切り上げによるメリットというのが非常にあった部面だろうと思うんです。ところが、その後見ておりますと、パンは一斤当たり十円値上げされているわけです。この前大蔵大臣——これはあなたじゃなくて前の水田さんですが——木村前長官も、一斤当たりのパンの値段にそれを還元するとすると一円弱だ、だからどうにもならない。だから、これは学校給食用のパンという特定のものを対象にして値段を引き下げますと、こういうように約束しているわけです。具体的にその問題はどうなりましたか。過去のものですよ。これからの再切り上げの問題じゃない、過去の問題、それを一体どのように処置されたのか。もういろいろなものが上がっちゃって、そんな細部のことはできないというんじゃこれは済まないと思うんです。消費者は何ら切り上げをしたって関係はないわけです。具体的にそれをどうしたか。ひとつこれは、前の大蔵大臣がそれを話したんだし、前の企画庁長官がそういう答弁をしたのですから、どなたでもけっこうですが、あとの処置がどうなったか、はっきり御答弁いただきたい。
  76. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 三月二十三日の本委員会で、竹田委員質問に答えまして、水田大蔵大臣答弁しているわけでございます。その際の答弁趣旨といたしましては、円の切り上げによります差益というものは、何らかの形で還元されてしかるべきであろう。ただし、パン等につきましては、いろいろなその他の経費等の増高もあって、政府払い下げ価格の引き下げが末端にはね返る場合に、相当端数のついているものであるというようなことを御答弁しているわけであります。私ども通貨調整に伴います小麦の価格の低下、これをいろいろ勘案いたしまして、小麦の払い下げ価格は、御承知のとおり米との値段の関係から、小麦の国際価格の上下とそう関係なく実はきめているわけでございますが、ふすま等の値下がり等のことを織り込みまして、七月一日から約二・八%政府の払い下げ価格を下げているわけでございます。ただ、それが学校給食用等のパンの値段にどれくらいはね返るかということになるわけでありますが、この払い下げによりまして、パンの一斤で三十六銭というような計算もできております。ただ、パンの加工過程におけるコストアップ等によりまして、このような程度の値下げの響きというものが末端価格に反映されていない、結局それによりまして、学校給食のパンの引き下げに至っていないというのが実情でございます。
  77. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう情勢というのは、ふすまというのは小麦の関係があるでしょうけれども、その他のほかの問題だってあるんですよ。それは業界の市況の問題なわけですよ。市況の問題と、円の切り上げによるところの国民への利益の還元の問題とは私は別だと思うのです。ですから、毎食毎食下げるというのができるかどうか、これはいろいろ問題があるでしょう、技術的に。しかし、半年間何もやってないというのはずいぶんひどいじゃないですか。ここの席で答弁しているわけですよ。何もやってないというのは私も承知できないですよ。二人の有力大臣がそういう答弁をしているわけです。そういう状態でありますれば、たったそれだけのことすらできないということならば、今度円の再切り上げがあったら、これは何らまた国民には還元できない、こういう事態に私は出ると思うんですね。大臣、どうしますか。前大臣が、二人の大臣が約束したこと、このことはそのまま放置しますか。どうしますか。
  78. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 私、さっき申しました学校給食には端数が非常に小さいので、売り渡し価格の改定でございますけれども、これにつきましては、たとえば外為につきましては、ウエスタンホワイトでございますと、トン当たり九百八十円であります。ウエスタンバーレーでございますと七百九十八円ということで、政府の売り渡し価格を下げておりますので、その点が結局利益が国民に還元されている、こう考えているわけでございます。なお一六・八八%の、要するに円の切り上げに伴います外国の小麦の輸入、これも価格が下がりますということを予定いたしまして、食管会計の繰り入れを減らしております。食管会計繰り入れば御承知のとおり国民一般租税でまかなっておりますので、その関係だけは租税負担まで間接的に軽減される、こう考えております。
  79. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは理屈ですよ。そんなことを言えば何をしたって国民に利益は還元されているということになる。そういういいかげんな答弁国民に説得しようとしたって説得できないですよ、そんなもの。冗談じゃないですよ。大臣は言ったんですよ。もう一回読んでください、議事録を。一般のパンの販売についてはそれは一円弱、六十何銭と言いました。だからこれはどうしても還元できないから、給食用の特殊なものについてひとつ還元するようにすると言ったんだ。あなたの答弁とは違うんだ。そういうことであっては困るんですよ。これは大臣、どうしてくれますか。前大臣からの、大蔵大臣答弁したんで、水田さんが答弁したんじゃないんですからな。今度の円の再切り上げやられて、そういうことをやられたんではこれは国民たまらぬですよ。大臣、どうしてくれますか。
  80. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) その問題は私としてはきょうが初耳でございます、まことに残念でございますが。つきましては、どうするかという仰せでございますが、よく前後の模様等もさらにもう一度確認いたしまして、そうしてしかるべき機会になるべく早くお答えできるようにいたしたい、かように存じます。
  81. 竹田四郎

    竹田四郎君 おそらくできないだろうと私はいま思いますよ。答弁はきまっている。できないということです。その当時下げて、その後の物価情勢とか何かでまた上げたというならまだ一応わかりますよ。そのことだって、私はいいと思いませんけれども、やらずにおいて、いまふすまが下がったからそれはできません、こんなものは国民に対して答弁にはなりませんよ。今後円の再切り上げは私は必至だと思うんですが、そういう問題はぴしぴしと解決をして、なるほどこれだけの、片方の経済的に被害も受けたけれども国民としてこれだけはプラスになったというものを見せなければ、困れば円の再切り上げだ、こういうことあるいは農民をいじめて、輸入の自由化だということであっては私はどうにもならぬと思うんですよ。その辺はひとつ明らかにしていただきたいと思います。  それから時間がありませんからもう一問だけひとつお許しいただきたいと思うんですが、金利が非常に下がってきたということ、これは長期金利も非常に下がってきた。われわれが銀行に預金する金利も従って下がった。下がらないのは、住宅金融公庫あたりから前から借りている金の金利というのはおそらく下がっていないと思うんです。過去のやつ。これからのやつはおそらく下がるでしょう。ほかのものは下がったけれども国民が営々として働いてつくった、それも全部借りたわけじゃない、ごく一部分の一部分ですよ、その金利はもとのままというのは、私はちょっと理解できないのですが、その辺は大蔵大臣どう考えますか。過去のものにもさかのぼってある程度金利の引き下げをやるのかやらないのか。
  82. 吉田太郎一

    説明員吉田太郎一君) 住宅金融公庫の金利につきましては、もう先生御承知だと思いますが、これは法定されておるという事情がございまして、一般住宅金融公庫に限らず、今後政府関係金融機関の金利を、特別金利と言われておるいろいろな政策的な金利を検討していかなければならない時期にいまきておろうかと思います。その中で、特に住宅金融公庫の個人向けの貸し出し金利五・五%になっておりますが、一般の基準金利は低いわけであります。しかしながら、同時に一般に、いまお話しのように金利全般が低下しておる、あるいは運用部の預託金利が下がっておるという背景もございますので、今後ここら辺はいずれ法律問題にもなる、あるいは予算にもからむわけであります。検討しておく予定でございます。ただ単に、金利だけではなくて、一般のいろいろな住宅関係の貸し出し条件という問題もあろうかと思います。その辺も含みまして、たとえば償還の態様あるいは貸し出しの場合の基準になるべき建設費用というような問題も含めまして、今後早急に検討していきたい、かように考えております。
  83. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、これは要するに引き下げるということを含んでいる、こういうふうに私は理解するのであります。  それから銀行局長いらっしゃいますからついでで悪いですが、もう一つお願いしたいのですが、この間の国民生活審議会で、銀行の一般庶民に対する消費者ローン、それの金利について非常に不明確だ、もう少しはっきりと、利率はどうなのかというような表示をはっきりしろというような、審議会から意見が出ました。これは私もっともだと思うのです。安いようだけれども、総計して計算してみると高くなる。これもやはり問題があろうと思うのです。特にいままで銀行関係というのは、たいへん産業優先的な形で、消費者ローンというのはやっと始めたばかりです。こういう点もあろうと思いますけれども、これはひとつ早急に改善をしてもらわなければいけないと思いますし、いままでの金融のいろいろな審議会とか日銀政策委員会でも同じだと思うのですが、もうほとんど産業優先の形でいろいろ政策決定あるいは制度に対する答弁というようなものがあったわけです。こういう面は、いまの時期においては、銀行自体も産業優先から消費者ローンを始めるということに見られるように、一般消費者に対するサービス機関としての銀行というようなものに脱皮をせざるを得ない時期だと思うのです。そういう時期にあるだけに、そういう制度審議会あるいは政策委員会というようなものには、業界関係だけでなしに、一般消費者関係の意見というものも積極的に取り入れるという意味で、私は消費者代表というのを加えていく、そういうものを加えていけば、消費者ローンについての表示等についても私は意見が出てくると思う。またいままでの産業優先の金融のやり方から、やはり国民全体の金融サービスをするという形に転化をしていくであろう、そういう意見が当然出てくるであろう。そういう意味では、ひとつその国民生活審議会の答申も、当然それは改善しなくちゃならない点であると同時に、そういう制度審議会、政策委員会なんかの人的構成というものも、一般国民的に人選を変えていく、割り当てを変えていく、あるいはそういう人たちを入れるために人数をふやすという点もあるだろう、そういうふうに変えていくべきだと思うのですが、この点はどう考えているのですか。これはむしろ大臣に私はお聞きしたいのですが、さきの生活審議会のほうは局長でけっこうです。そういう制度関係の問題での審議会、そういうものに消費者代表を入れていくということについては、大臣からお伺いしたいと思います。
  84. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) その問題につきましては、かねて事務的に一応承ったことでございます。それで、これについてはどうすべきかという問題がございますので、いろいろ事務当局でも案を練り、そしていまこれをいかに何らかの方法で具現するかという、その御趣旨のほどはごもっともの点がございますから、何らかの方法でこれを実現しようではないかという前向きの研究をいたしております。
  85. 吉田太郎一

    説明員吉田太郎一君) 消費者代表の話につきましては、大臣から御答弁のとおり、もう少し具体的に申しますと、たとえば金融制度調査会については、まあ消費者代表というのが非常に具体的にはなかなかむずかしいわけでございます。できるだけ消費者行政なりについて御意見のある方、あるいは家政学というような点について詳しい方というような角度から、ぜひ参加していただきたいということで、目下交渉中でございます。  なお、そのほか、端的に消費者代表というような名前はとっておりませんが、たとえば金利調整審議会に労働界にお詳しい方も入っていただいておるとか、あるいは日銀政策委員会に消費者行政を代表する企画庁の政策委員が入っておるというようなこともございます。  しかし、いずれにしても、これからの金融の方向が、産業中心から、やはり国民生活あるいは消費者中心にウエートを置く方向に変わるわけでございます。その辺の問題については、できるだけ前向きに考えていきたい、かように考えております。  それから、消費者金融の金利の表示でございますが、これにつきましては、かねてからの例のアドオンと称する一律の金利表示方式については問題がございますので、実質金利というものを必ず併記させております。現在すでにもうそれが徹底しております。消費者金利については、必ず併記されておるわけでございます。で、これをいずれは実質金利一本にやっていくという時期がこようかと思いますが、しかしある意味では不便であるという声もあるようでございます。両方併記の形で現在様子を見ておる。いずれは実質金利一本にしていくのがいいではないか。前からの継続性というようなこともございまして、ある程度の暫定期間は併記という形でいまやっておるのが現状でございます。
  86. 竹田四郎

    竹田四郎君 終わります。
  87. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 資料を三点ほどお願いしておきたい。  一つは、先ほど吉瀬次長のほうからありました公共投資のこれに対する項目別の積算内容をひとつ出していただきたい。  それからもう一つは、日本住宅公団の土地騰貴、一平米どの程度、これは割合でなくて額で資料として出していただきたい。  もう一つは、吉田銀行局長お願いしておくのですが、佐賀銀行の不正事件の内容について資料として提示をしていただきたい。以上三点。
  88. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと関連して。  いま戸田君の日本住宅公団のことですが、これはこういうふうにできませんか。たとえば昭和四十年ごろからでけっこうですが、一平米について取得した単価の実績ですね、そこで土地をどれだけ日本住宅公団が取得したかという実績があるわけですから、上昇しているわけですね。その実績と、それから昭和四十七年なら四十七年の見込みはどれくらいに押えて予算計上したかと、こういうふうに整理して資料を出していただきたい。
  89. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 戸田委員の御要求の第一点でございますが、実は各省庁のセットするのが予算概算閣議の直前になると思いますので、公共投資の内訳等に関しましては、出しにくい事情にあるということを申し上げたいと思います。
  90. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それはどうしてですか。
  91. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) いろんな各省庁の要求で、バランス等につきましては、最後までいろいろな折衝が行なわれておりますので、概算閣議の結果を見ましてからすぐお届けするという形になります。
  92. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 補正予算は二十日程度までに大綱決定するというさっきの答弁ですから、少なくとも十四、五日には最終案を大蔵省としてはまとめるわけでしょう。だからその段階でその説明ができないのですか。
  93. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) これは最後に閣議において、各省大臣内閣としての御了承を得るという形になると思います。なるほど御質問のとおり作業は進みますが、各公共投資のバランス等につきましては、相当各省間の意見調整が必要でございますので、その前に大蔵が単独に中身を出すということはいかがかと思います。
  94. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そんなに固苦しく考えなくてもいいと思うのです。いままでだって、年度予算だってそうでしょう。各省庁の予算要求書を出せといえば出すのですから、それは確定でなくても、その程度で軽く考えてもらってぜひ出してもらいたいと思います。
  95. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 実は相手の各省庁はそう軽く考えませんので……。
  96. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そんなことないよ、国会の審議にかかってくるんだから。
  97. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記を入れて。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  99. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  租税及び金融等に関する調査を議題とし、午前に引き続きこれより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 最初に、日銀のほうに伺いたいと思いますが、当初私は日銀総裁お願いしたはずです。きょう来ているのは副総裁ですね。副総裁は仕事の上でかわってやるわけですから、政策的なことでは意味がないんです。総裁を呼んだというのは、日銀総裁記者会見でいろいろ談話を発表していますね、みずから。そのことで尋ねようとしているわけですが、これは、肝心なところへいきましたら、私は総裁じゃありません、副総裁ですから、私は言っていませんということになったら、これは話がかみ合わないと思いますよ。これは、どういうことでこうなったのですか。私はきのう、おとといから日銀総裁を呼んでいただくようにお願いしているのですがね、委員長
  101. 河野通一

    参考人(河野通一君) 昨日、吉田委員からこの委員会で佐々木総裁質問があるから出てくるようにというお話がございましたことは承知いたしております。いろいろ内部で相談をいたしましたが、急なことでもございましたので、どうも予定の計画がずっとございまして、佐々木総裁、どうも時間の繰り合わせがつかないということで、きょうはいまも外国の銀行家と食事をいたしております。そういう関係で、はなはだ残念ではございましたけれども、私がかわって出席をさせていただくことにいたした次第でございます。お許しを願いたいと思います。
  102. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、副総裁、これは記者会見で明らかになったことですから、ですから、ことばの使い方というのは私は違うのかもしれませんが、政策的なことをあなたがここで答えることは、つまり日銀として相違がない、総裁が言っていることと、あなたの言っていることとは相違がない、こういうことの理解でこれから尋ねていいですか。
  103. 河野通一

    参考人(河野通一君) 記者会見総裁からいろいろお話し申し上げていることは、私、事前によく相談した発言でございますから、私がきょうかわってお答えをすることは、日本銀行全体としての考えだとお考えいただいてけっこうでございます。ただ、私の個人的な見解を申し上げる場合には、これは私の個人的見解だがということをお断わりして申し上げます。
  104. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 じゃ、最初に、日銀として国内景気回復の問題をどうとらえてどう判断しているか、これをひとつ……。
  105. 河野通一

    参考人(河野通一君) 日本経済の現在の状況は、いまから振り返ってみますと、大体去年の十二月が不況の底であったように思います。生産にいたしましても、出荷にいたしましても、大体去年の十二月を底にして回復に向かっております。  生産について申し上げますと、一−三が年率で大体一五%、四−六が大体年率にして一一%近く、その後の四半期の数字はまだわかっておりませんが、いま見られるところでは、大体それと同じようなベースで、年率で進んでおるのではないか、生産は大体年率で一〇%前後の伸びではないかと思います。  GNPにつきましても、これは政府で発表いたされておりますが、大体やはり一〇%から一〇%ちょっと上——瞬間風速ということばを使っておりますが、大体そういう形で現在動いておると思います。  そのほか、いろんな指標について申し上げますと、たとえば日本銀行券の発行高の推移等から見ましても、大体この六、七月ごろから相当残高の増加が大きくなってまいっております。  それから物価につきましても、卸売り物価は、ことしの二月まではむしろ低下いたしてまいっておりましたものが、二月ごろからだんだん強くなってまいりまして、六月からはこれが大体前年同月比に対しましてプラスに転じておる。八月からはさらにその傾向が強くなりまして、前月比〇・七%という非常に高い伸びになっております。九月はまだはっきりした数字がわかりませんが、大体やはりそれ以上の対前月の伸び率になっておるかと思います。  そういうわけで、あらゆる指標がプラスに転じており、当初政府でお立てになった四十七年度経済見通しにおける成長率、これは七・七という数字を発表しておりますが、おそらく経済のいまの様子から延ばしていきますならば、年度といたしましては相当——七・七を大幅にこえる成長率になるのではないか。もちろんいろいろな点で問題はございますけれども景気の現状はいま申し上げましたように私どもは認識いたしております。
  106. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま経済成長率に触れまして答えられているのですが、答えられたように年度で七・七%をこえる見通しだ。一説にはもう一〇%をこえておるという説もありますわな。ですから、一つの説ですから、私はそれをどうこう言うわけじゃありませんが、いまの答えでは七・七%をこえている。そうしますと、かなり——いまの答えにもありましたように、不況の底は去年の十二月ですから、まだ満一年たっていませんね、十カ月ぐらいのものでしょう、この間に急テンポに景気回復上昇に向かっている、こういう理解でいいですか。
  107. 河野通一

    参考人(河野通一君) 当初私どもが、ことしの初めぐらいに、ことしの景気回復の度合いというものを考えておりましたよりも、ややスピードといいますか、テンポといいますか、ペースは速いように思っております。
  108. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 速い……。そうしますと、副総裁景気がいま仰せのように考えておったよりもやや速いテンポで動いている、いい傾向だと思います。景気不況よりいい傾向だと思いますよ。そこで問題なのは、そうしたときに、最近の新聞報道その他を見てまいりますと、補正予算並びに四十八年度予算編成のことについて——これは大蔵大臣に私まだ伺っておりません、あとで伺いますが、報道関係の報道される面だけで感じた点を申し上げますと、かなり大型な予算編成の方向になるということが報道されています。そこで、この大型予算というものと、いま景気上昇のムードになっている。このこと、いま言われる大型予算と称されるものと、これからの景気動向、特に最近国際的にも問題になっています国際収支の問題とあわせて、つまり国際競争力の関係ですね。どういうふうに日銀は把握してとらまえているかということをお聞かせ願いたいと思います。
  109. 河野通一

    参考人(河野通一君) 非常に広範な問題でございますので、あるいは御質問に対して的確なお答えになるかどうかわかりませんが、現在補正予算の問題が新聞等に出ておりますが、隣に大蔵大臣おられますけれども、私、実は新聞等ではいろいろなことを拝見いたしておりますけれども、実際に今回の補正予算がどの程度規模になりますか、あるいはさらに補正予算ではなくして、予算というものは来年度予算関連をつけていろいろ考えなきゃならぬと思いますから、いまその問題で私、具体的な意見を申し上げる材料を持っておりませんが、少なくとも現在の国際収支の状況あるいは国内のいろんな状況から見まして、国民福祉の向上とか、あるいは社会資本の充実ということが緊急の要事であるという観点に立ちますならば、補正予算あるいは来年度予算を通じまして、ある程度規模は当然考えられてしかるべきものではないかと思います。ただ、先ほど来申し上げましたように、景気上昇がわりあい早くなっておりまして、ことにこの一、二カ月の間の卸売り物価上昇率は、瞬間的なカーブといたしましては相当高いカーブを描いておりますので、これらの点を考えますと、今回の補正予算にいたしましても、来年度予算にいたしましても、私、これはあまり抽象的なことで申しわけないのでありますけれども、大きければ大きいほどいいというわけにはまいらないのじゃないか。やはりおのずからそこには節度というものが考えられてしかるべきではないか。ということは、私どもはやはりいまのような景気上昇から考えますと、いま現在そういう状態にあるとは思いませんけれども、今後の推移いかんによりますればインフレーションに対する心配ということが出てくるおそれもありますので、そういう点とのかね合いで補正予算等規模あるいは内容について編成されることが望ましい、そういうふうにしていただきたいと願っておる次第でございます。
  110. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 副総裁、いま答えられた考え方については、私は同感なんです。つまり財政におのずから節度があるという点ではね。ただどの程度規模予算になるかどうかということはわかっていません、こういうことですが、これはあなたも新聞をごらんになっていると思うのです。新聞には補正予算は一兆五千億程度規模、中身も若干新聞に出ておりますが、まだ私は大蔵当局から聞いておりませんからその限りではわかりませんが、新聞面ではそうです。それから十月五日あなたのところの総裁が、新聞記者会見をして、やはりこの補正予算並びに四十八年度予算の大体規模を想定いたしまして、大型化になる、そのことと景気動向、それから国際競争力の問題、さらには国際収支の改善の問題について、いろいろ記者会見で明らかにしておりました、見解を。その見解はいいとか悪いとかということは私は言いません。当然のことを言っている、ある意味においては歓迎しているくらいですから言いませんが、そこでいろいろ幾つかのことを示唆した発言していますよ。だからいま聞いているので、この新聞の限りでは大型になることは間違いないように私感じるのですがね。ですから、それを前提として聞いている。一方においては景気上昇している、つまり不況から脱したとね、しかもあなた方が当初想定したものよりか速いテンポになってきている、こういうことですね。そういうときに、いま申し上げるような、新聞報道されているような予算が大型化された場合に、今後の景気との関連はどうなるか、物価との関係はどうなるのか、国際収支との関係はどうなるのか、あるいは国際競争力との関係はどうなるのか、この辺を私は聞きたいわけですよ。総裁幾らか言っています。ここで言っていますが、もうちょっと具体的に聞かしていただきたい。
  111. 河野通一

    参考人(河野通一君) 補正予算規模につきましては、先ほど来申し上げましたように、新聞ではいろいろな数字が出ておりますことは私も承知いたしております。まだ政府御当局がその問題について方針をきめられたという話は聞いておりません。したがいまして、その新聞に出ておるたしか一兆五千億というような数字も、私見たかと思うのですけれども、そういう具体的な数字を前提にして、いまここで私の意見を申し上げることは差し控えさせていただかなければならないと思います。佐々木が新聞記者会見でいろいろ予算の問題について申しておりますけれども、その場合にも具体的な数字で申し上げる材料はその当時も持っておらぬはずですから、具体的数字についてかれこれ申したはずはないと私は思います。もう少しそういった数字が具体的に固まってまいりまして、またただ規模だけでなくて、その内容等につきましても、大体私ども政府の方針を承ることができるような段階になりましたなら、ある程度具体的なことを申し上げられるかと思いますけれども、いまの段階では勢い抽象的なことを申し上げることでお許しをいただかざるを得ないかと考えます。
  112. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もうそろそろかみ合わなくなってきたのですね。これは写真入りで、あなたの顔じゃないのだけれども、佐々木君の顔だけれども、写真入りでここに幾つか言っているのです。一つ例をあげてみますと、つまり補正、さらには来年度予算編成の方向というのは大型化である、ある意味においてはこれは予算編成についての考え方を、いい意味ですよ。私はいい意味に解釈しているのですが、批判していると思う。わが国の景気動向物価動向ですね、等々を批判していると思うのです。つまり慎重な態度でやらなければならぬという意味にとれるのですよ。その中で一つ卸売り物価の高騰が目立つ、九月は季節的に上昇する月であり、このまま急速に上がるとは見ていない。だが今後の経済政策の運営にあたって物価上昇を十分に配慮することが必要だ、特に景気上昇段階で物価上昇させるような、新しい需要を喚起するということは、財政政策には最も慎重であらなければならない、また慎重にしてほしいという希望ですね、こういう希望も出ている、あるいは国際収支についてもいろいろな政策的なことを触れていますよ。ここの中では、短い記事ですから、抽象的な面もあるものですから、具体的にちょっと明らかにしてくれぬか、こう聞いている。御本人でなければわからぬといえばそれまでだけれども
  113. 河野通一

    参考人(河野通一君) いまお読みになりました限りにおいては、私が先ほど御答弁申し上げたことと一〇〇%同じだと申すわけにはまいりませんけれども、大体同じ趣旨だと、私お答え申し上げたつもりでございます。  なお国際収支の問題につきましては、現在の状況の中で一番問題は、やはり日本の貿易収支がきわめて大きな黒字を出しておるという現在の状況が最大の問題だと思います。昭和四十六暦年では、貿易収支は黒字が御案内のように七十八、九億ドルだったかと思うんでございますが、去年の十二月のスミソニアンの多角的通貨調整の結果、そういった傾向がどのように変わってくるかということをわれわれは非常に関心を持って見てまいりましたが、一−九月までに関する限りにおきましては、去年の同期間における貿易収支の黒字のペースよりもやや高いようでございます。したがいまして、いま現在で申し上げますと、貿易収支の黒字が減る方向に進んでおるということはちょっと申し上げられないと思います。しかしながら、去年の暮れのスミソニアンにおける多角的通貨調整のときにも、これはわれわれだけではなく、各国ともそういう考えを持っておったのでありますけれども通貨調整というものの効果が、半年や一年で出るものじゃないんで、これはやはり二年やそこらは、効果が完全に出るまでにはかかるものだということはわれわれもそう申しましただけでなく、世界各国もそれを認めておるわけでございます。問題は、いま直ちにそういう効果が一〇〇%出るということじゃなくして、必要なことは、だんだんそういう黒字が調整されていくという傾向があらわれることが大切であるというふうに考えます。その意味におきましては、残念ながらいまのところはまだそういう傾向があらわれてない。したがって、今後こういった問題について、われわれの役割りの中で努力をいたすべきことは当然でありますけれども、各関係の方々の御努力によって、この貿易収支の黒字を調整していく強力な対策を進めていただくことがぜひとも必要だと考えております。
  114. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこで、お説はようわかりましたが、強力な対策が必要だと、しからば、国際収支の改善策としておたくさまは日銀ですから金融面を担当しておりますわね。それと政府財政面とは無関係ではないと思うんです。そこで強力な対策が必要だと、しからば強力な対策とは何ぞやということになるんですが、日銀として考えられていることはございますか。
  115. 河野通一

    参考人(河野通一君) 具体的に申し上げますと、金融面からは、この黒字をできるだけ調整していくための措置はおおむねいままでとってまいったつもりでございます。ことにいろいろな意見が出されておりますが、いまのような貿易黒字の非常に大きい場合におきましては、国内の金融を非常に強い形で引き締めるということは適当でない、そういう意味で、私どもといたしましては、現在の中立的な金融政策というものを今後も続けていくべきだと考えております。問題は、結局貿易の実態面におけるいろいろな施策にかかってくると思いますが、そのほか先ほど来申し上げましたように、国内の景気を押し上げることによって、貿易の調整をはかるということももちろん今後進めていかなければならない。それと同時に、それだけでは私は十分でないと思います。したがいまして、輸出及び輸入のそれぞれ強力な調整の措置を講じていただきたい。これはもっとも私どもの受け持つ役割りの範囲が実は狭いのでございますけれども、たとえば輸入の促進のために自由化、その他の措置をさらに強力に進めていただくとか、あるいは関税の引き下げを思い切って実施していただくとか、本来なら輸出を押えるのではなくして、輸入を伸ばすという形において均衡がとれることが一番いいと思います。それが一番いいと思いますけれども、それだけではなかなか均衡に達することができない場合におきましては、やはり輸出そのものに対する調整措置も強力に行なっていただかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  116. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、ここで総裁物価上昇についてもたいへん大きく触れられていますよね。いまの日銀の見通しとすれば、景気回復した、国際収支は端的なことばで申し上げますと、いまの答えの中ではそう効果は出ていません、改善策として。ですから、国際収支の黒字は減っていく見通しもなければ、あるいは通貨調整をやったけれども、それは半年やそんなもので効果が出るものじゃない、二年ないし三年の経過を見なければいかぬ。そうして経過を見てきたけれども、ただいま現在ではその効果があらわれているとは言い切れないという意味のことです。ですから、そこで大型予算というものとの関連から物価問題に触れたと思うのです、日銀総裁は。非常に憂慮していますよ。この日銀総裁の談話では、どの程度物価影響すると思いますか。
  117. 河野通一

    参考人(河野通一君) これは先ほど来私からも申し上げましたように、この一、二カ月の卸売り物価上昇のペースというものはわりあい高いと思います。しかし、これを少し長い中期的な期間で見ますると、去年一年は卸売り物価はずっと下がってきている。世界じゅうのどこの先進国にもないほど日本卸売り物価は下がってきている。そのことを考えますと、ことしの九月の水準は、去年の九月、つまり一年前の水準に比較いたしまして約一・八か九%ぐらいの上昇ではないかと思います。したがいまして、世界各国の卸売り物価というものが非常に高いペースで上がっておる中におきましては、日本の少なくとも卸売り物価に関する限りは、いまの時点においてはそう心配しなければならぬ状態では私はないと思う。ただ今後の趨勢は十分に注意していかなければならぬ。そういう意味からいいましても、予算編成に当たられましては、先ほど来申し上げましたように、やはりインフレーションというものを押えていくという立場からの配慮をぜひとも加えていただきたい、こういうことが私の願いでございます。
  118. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 おっしゃっていることようわかるのですよ。わかるのですが、具体的に答えていただきたいのです。抽象的です。たとえば卸売り物価上昇程度はかくかくしかじかだ。国際的に見ると、諸外国から見てその上昇率は少ないほうである。だけれども、このわが国の景気動向予算関係インフレ関係等々では、やはり注意をしていかなければならない。注意をしなければならないというのは、消費者物価に対してどういう程度のはね返りを予測できるのかということ、私はそこを聞きたい。
  119. 河野通一

    参考人(河野通一君) これは私だけじゃなくて、日本銀行全体といたしましても、大体どの程度まで消費者物価が年率で上がっても耐えられるかということを具体的に申し上げるだけの才量を持っておりません。いわんや、卸売り物価につきましては、これは卸売り物価がいままで非常に安定しておったからこそ、消費者物価もあの程度上昇でおさまっておったということも言えるわけでございますから、卸売り物価が今後非常な急ペースで上がっては困るということは言えるのですけれども、それじゃ年率でどのくらいの卸売り物価上昇は許されるかということにつきましては、私からいまここで的確にお答えを申し上げるだけの自信がございません。
  120. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 的確には副総裁、自分で言っているわけじゃないからそうなんですが、総裁は、明らかにこの卸売り物価はたいへんな勢いで上昇しているということですよ、ずっとね。とりわけ、年間を通して九月は普通の月よりは上昇するものだと、だけれども、従来から見ると、卸売り物価というのはずうっと上昇を続けてきているということです。ですから、そのことが、つまり国際収支の問題であるとか、あるいは景気回復の問題、特に大型予算が組まれると、だからこの場合、消費者物価についても押えなさい、押えなければならぬということです。だから、消費者物価を押えなければならないということは、消費者物価に対してどのくらい、いまの日銀総裁が御心配になっているようなことは影響があるのか、ここのところがはっきりしないものですから、それを聞かしていただきたい。  それから外貨の対策についても、思い切って自由化をしなさいということを言っているのです、ここで、具体的に。そこで、その思い切った自由化というやつは、これは輸入をさして言っているわけです。外貨対策というのが、いまの問題になっている円対策の問題ですね。こうおっしゃっているわけですが、どれとどれとどれが思い切ってやらなければならぬということですか。
  121. 河野通一

    参考人(河野通一君) 佐々木も、政府でやっていただくことでありますから、具体的に何と何を自由化したらどうだということは申しておりません。また、考えてもおりません。私自身もそこまでは考えておりません。それは政府お願いして、できるだけ、いろいろ国内的な利害の問題があるでしょうけれども輸入の自由化、関税、これは関税の引き下げも同じ効果を持つわけですけれども輸入の自由化なり、自由化できない場合においては、輸入のワクを大幅に拡大するなり、関税を大幅に引き下げるなり、そういうことについて、これは大蔵省の御担当の面もあるかと思いますけれども、そういう政府各部局におかれまして、そういったことをできるだけ大幅に進めていただきたい。同時にそれだけでは貿易黒字の適当な調整ということがなかなかむずかしいと思いますから、私は輸出についても何らかの調整措置を強力に進めてもらいたい、こういう希望を政府御当局にも申し上げておるわけで、そこから先は、やはり政府の方々、何をやるべきかということは、具体的にやはり政府でお考え願いたい、こういうのが、私だけでなくして、佐々木の気持ちでもございます。
  122. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 政府でやることですから、要望も入れたことですわ、言ってみれば。だけれども、何らかの形でやってもらいたい。形に幾つか出ていますよ、いわゆる円対策八項目とか、あるいは七項目とか出てくるわけです。そこで、そのほかには輸入の自由化の問題もありますわね。とりわけ十月の五日に、いまあなたの答えられたような考え方総裁記者会見したのじゃないと思いますよ。具体的にやっぱり物価というものは上昇を押えなきゃいかぬ。これは予算編成との関連で言っておる。同時に国際収支の改善については、外貨対策として思い切って自由化をやりなさい、こう言っている。思い切ってやるということは、何らかの形を持たなければ、思い切ってやれないのじゃないですか、論議としてそうなりませんか。それを聞くと、それは何らかの形ということで、その形は何らかの形ですから、そういう形がさっぱりつかみ得ないんですがね。
  123. 河野通一

    参考人(河野通一君) 輸入の自由化を大いに進めてもらいたい、だから輸入の自由化ができないものについては、いろいろな事情でできないものがありましょうから、輸入のワクを広げてもらいたい、関税も大いに引き下げてもらいたいと、やっぱり輸出についても調整について強力な手を打ってもらいたいということは私どもお願いしておるのでありまして、個々の物資について、これを自由化したらどうかということを私どもには申し上げる資格がございません。能力もございません。したがいまして、そこはつかさですから、やはり政府の各御当局がそういう気持ちで具体的な策を、品目なら品目というものについて検討してくださって、私どもはマクロでいえばそういったことが結局日本の国際収支の調整にどうしても必要なんだという見地からお願いしておるわけですから、具体的な策はぜひ政府御当局からお聞き取りを願いたいと思います。
  124. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大体わかりました。そうしますと、日銀の見方というのは、去年のつまり円の切り上げをやったときに、外貨対策として打ち出した七項目でございましたね。それが今日までなされていないと、いないからこういう結果を生じているから、さらに今度の大型予算等、景気上昇動向、国際収支の改善を、あなたがいま答えられたように、それほど効果があがっていない。そこで円の再切り上げの問題が、国際的に問題になっているから、この際思い切って現在まで政府が打ち出した方針をやりなさいと、こういう言い方ですか、そういう理解でいいですか。——じゃよろしいです。日銀さん、それでけっこうです。  公正取引委員会の方、来ていますか。——公正取引委員会にちょっと一、二お伺いしますが、いま日銀さんに伺ってみましたら、わが国の景気は当初考えておったより以上に急テンポに景気上昇して、それが傾向を見ますと、着実になっている。パーセンテージをあげて申されましたけれども、そういう認識です。  そこで、いまもいろいろお聞き及びのとおり、それを裏づけているものは、卸売り物価を見ればややわかるというのですよ。わかりますね。で、消費者物価に対する影響というところは出てきませんでしたが、いずれにしても日銀はインフレの進展については懸念されているということは、注意してもらいたいということばで尽きていると思うのですがね。  さて、公取は不況対策の一環として、不況カルテルを実施いたしましたね。いま何件認可されていますか。
  125. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私、今度公正取引委員会委員長を命ぜられました高橋でございます。この席をかりて一言ごあいさついたします。  ただいまのお尋ねの件数は八件でございます。
  126. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 八件ですね。これは、専門家にこんなことを言うのは釈迦に説法ですが、特定鋼材ほか外装用の段ボール等々、当時は確か九件、私の記憶では。それから最盛期のときには十二件あったはずです。で、いま伺ってみますと八件になっていますから、最盛期から見ますと四件、当初の、認可したときから見ると一件減っていますが、依然として不況カルテルというものが存在していますね。一面、今度は一年足らずで——これはたいへんいい傾向なんですが、景気がもう上昇している。しかも、早いテンポで上昇している。日銀あたりの見方だと、しかも伸び率は着実だと。こういうときに、この不況カルテルというものははたして存在意義があるかどうかという問題ですね。当時は、これは一つの政策目的を持ってやったわけですから——これも公取さんに釈迦に説法ですけれども、その中にはもともと結成要件なんか満たされないものだってあったはずですよ。しかし、政策目的があったから、公取のいわゆる弾力条項といいますか、等々に救われて認可されたという経緯があるわけですよ。つまり、独禁法の弾力条項を適用してこれが認可された、そういう経緯がある。ですから、そのときから、もう当初から私はこの卸売り物価というものの上昇というものは公取などは見通しできたんじゃないか、こう思うのだけれども、いま聞いてみると、まだ八件が残っているということになれば、その中でも期限を延長したこともあるはずです。で、私は当時不況のときですから、再三申し上げますように、一つの政策目的を持って当時はやったわけですから、必ずしもそれは間違いだということは私は言いませんけれども、しかし、現にもう一年足らずでどんどん景気上昇してきた。こういうときに、特にこれは円対策の問題もありますが、なおかつ公取委員会が不況カルテルというものを存続させる意味があるのかどうか。私はないような気がするんですよ、これは。で、日銀総裁も先ほどの新聞でもちょっと触れているようでありますが、卸売り物価との関連で不況カルテルというのはもう要らなくなったのではないか、こういう発言をしていますよ、記者会見で。十月五日の記者会見ですよ。それから財政当局あたりの意見を聞いてみますと、やはり今日になってみますると、不況カルテルというものはもはや撤廃しても、それぞれの産業経済は自立できる段階になってきている、ある意味においては二次製品のメーカーの生産活動さえ阻害している面もないわけではない、財政当局がこういう見解を明らかにしていますね。こういう状況下の中で、公取はこれに対してどういう考え方を持っていますか。
  127. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) ただいまのお話の中で、当初から不況カルテルの要件に満たないようなものを認めたぐらいであるから、今日になってはなおさらその存在理由はないのではないかというお話もあったようでございますが、公取が不況カルテルを認める場合には、相当綿密に内容を審査いたしまして、要件に合致するかどうかを十分見きわめた上で認可をしておるわけであります。ですから、決していいかげんにやっているわけではない。そのような事実はなかったものと私も確信しております。  で、マクロ的に、先ほどのお話で、景気は急テンポで上昇している。まあそういう点は物価の面等にもあらわれていることでありましょうし、これは日銀だけではなく、政府経済企画庁の月例報告等におきましても、マクロ的にいえば確かにお説のとおりであります。ただ不況カルテルを何ゆえに認めるかというふうな根本論になりますとややこしくなりますが、現在私どもが持っておりますところの独禁法によりますれば、一定の理由が存在する限り不況カルテルというものは認められるのだ、つまり独禁法の精神の、競争を維持するということの例外として、適用除外として認めるのだということになっております。マクロ的に見て景気が相当立ち直っておりましても、その中で現在続けられておりますところの不況カルテルの中に、その要件をもうすでに欠くようになったものがあればこれはやめるのが当然でございますが、部分的に見ますと、業種によりましてはいまだに不況の域を脱しておらないというふうに認められるものがございます。現在続いておるものはいずれもそれに該当すると私どもは思っております。ただし、お話の中にもありましたように、事業者側において、つまり二次製品の加工等の段階、あるいはこれを使う需要者側において、あるいは品不足から高い値のものを買わなければならぬというふうなきらいがすでに起こっているという、こういう御指摘がありましたが、これにつきましては、私どもはそういうことのないように、必要とあらばそのカルテルを結成している事業者の団体に対しまして、事業者たちに対しまして増量を命ずる、増量を義務づける、つまり生産をふやすことを義務づけるというふうなこともやることになっております。まあこれから先の推移をごらんになっていただければ、決して不況カルテルが価格のつり上げに役立つ、役立っていると、そっちのほうにばかり走っているというふうにはならないということを、まあ私どもはなるべくそういうふうにいたしたいと思っております。絶対に御迷惑をかけるというふうにはさせないつもりです。つまり不況カルテルを悪用したのじゃないかというふうにとられることは、われわれの委員会といたしましてもまことに不名誉なことでありますから、その辺は十分注意してまいりたいと思っております。
  128. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 公取委員長ね、独禁法との関係といいますると、これは不況カルテルの問題は、独禁法の弾力的な運用としてのみ扱われるものでしょう。それで、その意味は、去年の十二月を契機とした不況対策、それがもう一年待たずして、いま日銀の副総裁申されておるように、景気が当初予測した以上に急テンポで上昇した、その裏づけはもう卸売り物価等々の上昇を見れば明らかであると言っていますがね。それだから、いまお答えになっております、何といいますか職種といいますか、画一的では私はないと思いますよ、ないと思いますけれども一般論としてはもうその不況カルテルをつくりながら、一つの政策目的、保護政策でしょうから、そういう政策をとる、そういう段階ではないんではないかと考えることが一つです。したがって、日銀の総裁も、もはや不況カルテルというものはなくてもいいんじゃないかという記者会見で発表いたしましたな。それとあわせて、私が言うのじゃなくて、大蔵省の地方の財務局長会議のときに、それぞれ地方財務局長の報告書が出ていますね。それを見ますと、やっぱり財務当局の人々も、かえって二次製品メーカーの生産活動さえ阻害している面があると、こういう表現で見解を明らかにして、同時に、この不況カルテルが撤廃されても、もうすでに自立できる態勢になっている、そういう段階にきていると、こうはっきりと言い切っているわけでしょう。これは私どもが言うのじゃなくて、そういう関係の人々が言っておりますね。そのときに、それを扱う公取としては、まあどういう見解を持っているかということについて、それぞれの見解を述べられましたけれども、何か私は迫力がないような気がする。これは一面、通産省の中では、いまこれをはずすことについては時期尚早だと、これをいまはずした場合に、やみカルテルに走る傾向がないとはしない、こういう意見を私は知らぬわけではないんです。まあ全部が全部ということじゃないけれども、最盛期にカルテルを十二件、これだけきめたということですが、いまどのくらいあるのかと聞いてみたら九件ある。その九件すべていまの時点でなおかつ不況カルテルを存続しなければならないというものは何かというと、私はあまりないような気がするんです。そこなんです。
  129. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) いま最初に、まあ独禁法の運用として不況カルテルをやっているんだろうというお話でしたけれども、運用には相違ございませんが、ただ、法律に不況カルテルの明文がございまして、まあ、二十四条の三というのがございまして、明らかにこれは、独禁法自体に不況カルテルを認める規定がございます。ですから、ただいいかげんにやっているわけじゃないということで、幅があるとか、非常に大幅なわれわれの判断の余地があるとかいうものではなくて、比較的その範囲は小さいものと考えていただきたい。  それから、一般的に、たとえば、新聞等で、景気がよくなったんだから、いまごろ不況カルテルを続けるのはおかしいじゃないかという、これはまあいろいろな意見としては私どもも、まったくそういうことを知らぬわけではありません。あるいは日銀総裁が場合によってそういうことを述べられたのか、真相は何ら確かめておりませんが、まあこれだけ景気上昇して、物価も高くなった際に、不況カルテルを続けるのはおかしいじゃないかという感覚はわかります。これはしかし、あくまで感覚の問題じゃないか。マクロ的に見て、景気上昇期にきたならば、その一つ一つを個別に見て、不況がはっきりと認められるものについては——不況とは不採算のことなんですよ、採算がとれない、そういうものが多い業種のものについては、不況カルテルをまあ依然として認めていくと。しかしながら、私どもは、必要がなくなれば、あるいは必要がないといいますか、あるいはその要件を欠くようになれば、いつでもこれを打ち切らなくちゃいかぬと思う。大体その意味で、あまり長い期限をつけた不況カルテルはいまのところございません。ほとんど例外でございます。長いと申しましても、まあ、通例一年ぐらいの限度で認めておればいいんですけれども、そうではなくて、半年期限で、期限を切って出しておりまして、途中で打ち切るというのはなかなかやっかいなんです。期限をまあ半年程度に押えておりますから、今年の十二月ぐらいに期限切れとなってしまうものがまあ大部分で、例外はございますが、例外で来年にまたがって四十八年の三月末を周期としているものもございますが、おおむね今年の終わりで切れるようになっている。ですから、まあ個別に一々吟味いたしますと、全般の景気回復の中で、いまだにこういう生産費と市況と比べて、依然として販売価格のほうが平均すると下回っているというふうなものがありますし、また中には、おそらく期限が切れた——来年期限が切れたとか、今年切れた場合に、なおかつ事実は不況が続くという例外の業種もございます。ただし、私どもは、そういう例外的な業種につきましても、ほかの何らかの手段を講じて——あまりに長く不況カルテルそのものを維持するということは、一般的にいいまして御説のように世間的な批判が強いわけです。世間的な批判というものもなかなかばかになりませんので、ほかの方法で、設備そのものを凍結するなり、何らかの方法で対処いたしまして、カルテルの延長という形は、延々と続けるということは好ましくない、そういうふうに判断いたしておりますので、これはあくまで個別の業種、品種の問題でありますから、全体の中にもそういう例外扱いをしなければならないものがまだ残っておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  130. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこで、まだ残っているということなんですが、御理解賜わりたいということですが、八件でしょう、そんなにたくさんあるわけじゃないんですね、御承知のとおりに。そこで、あなたは、十二月で期限切れになる、途中で切るということはなかなか制度として困難だ、それはわからぬわけではない。ところで、十二月に期限切れるのは何件ですか。
  131. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 品種を申し上げますか。それとも件数でよろしゅうございますか。
  132. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 件数でけっこうです。
  133. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 十月末で期限切れになるのが二件、十二月末に期限切れになるのが五件でございます。来年の三月に切れるのが一件。
  134. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうすると、十二月までに七件ですね。  そこで、いまあなたのお答えの中にもありましたが、世間の声もばかにならないと、それは世論ということになりますね。ばかにするとかばかにしないとかという、そんな議論ではなくて、現実に不況のときに設定したものを、景気回復したわけですから、なおかつこれを長く——いま委員長が申されたように特殊な問題でしょう、例外は。それは別として、一般論としてなおかつ残すということは、世論の声があろうとなかろうと、一つには中小企業との関係一つには消費者の利益といいますか、こういう面から見て、やはり私は政策的にたいへん大きな問題だと思うのですよ、そういう声をばかにするとかしないということじゃなくて、現実問題として。ですから、私は、そういうことを経済的に見たり、あるいは国際収支の改善の問題を横でながめてみたりなんかして、日銀総裁は、今日的な段階、もはや今日の段階では不況カルテルというものは要らないのじゃないかと。同時に、具体的にこれを扱っている大蔵省の地方の財務局などでも、もはや不況カルテルというものは、一面においては二次製品のメーカーの生産活動に弊害を来たすという面もないわけではないが、いま撤廃しても自立していける段階にきていると、こういうことになっているので、これは一般的な消費者とか国民の世論ではなくて、その衝に当たっている関係省庁の人々が言っているのですから、やはり私は十月なら十月、十二月なら十二月、その期限がきた場合に、従来のようにその期限を延長するようなことは必要ないんじゃないかという感じがするんですがね。
  135. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) いまその世間のいろいろな、世間と言っちゃ悪いですが、需要者のサイドから見れば確かにある程度、たとえば鉄鋼なら鉄鋼というものを見ますと、相当値が上がってきてるじゃないか、回復したじゃないか、それをなおかつ不況業種と言うのはおかしいと、こういう声があることはわかります。しかし、これが不況カルテル要件に合致するかどうかということは、そう言ってはなんですけど、かなり会社別に厳格な資料をとりまして、そして全体を通じてカルテルに該当するかどうかを調べてやるわけでございまして、はたからただながめてばく然と、ばく然と言ってはなんですけど、感覚的な意味でもう要らないんじゃないかと、こうおっしゃられますと、まあ公取は要らないということになるわけでして、世論によって見りゃあいいということになる。私はそれでは困るんで、不況要件に該当……。
  136. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこまで議論を飛躍する必要なんだよ。そこまで言っているんじゃないんだよ。はたでということは——私の言ってるのは、不見識なものの言い方をしているんじゃないんだよ、君。日銀の総裁というものは、そんな無責任なことで記者会見でものを言っているわけじゃない。大蔵省の財務局の局長が、いまあなたが言ったような冗談か推理でものを言っているということじゃないんです。黙って聞いていると、あまりふざけた答弁しちゃいかぬよ。
  137. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 私の言い過ぎた点はおわびしますけれども、この問題についてできるだけ……。
  138. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 はたで見ていて簡単にという声じゃないんです。日銀総裁が言っているんだ、再三私が言っているように。日銀総裁が何かいわゆるやじ馬的にものを言っているということじゃないでしょう。
  139. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) もちろん私はやじ馬的と思いませんが。
  140. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  141. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記起こして。
  142. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) まあ簡単に申しまして、公取としても十分審査した上で不況カルテルに該当するかしないかということをきめているわけでございますので、まあその辺につきましては、外からの批判はありましょうけれども、私どもとしては、できるだけ忠実に仕事を処理しておるつもりでございますので、まあいろいろな批判に対しては耳を傾けないわけじゃございませんけれども公正取引委員会としては、業種別にはなお不況カルテルの要件に該当するものがあるということを申し上げたわけでございます。
  143. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 次に、大蔵大臣に伺います。この前の委員会でも補正予算規模等々同僚議員からも伺いまして、その当時は大臣もまだ明らかになりません、こう言っていますが、最近の新聞では、これはもう一兆五千億という予算規模で、かなり中身も書かれて、連日新聞に出ていますね。そこで、午前中おそらく同僚の竹田議員からも質問あったと思うのですが、大蔵省はどの程度補正予算規模で組むつもりなんですか。
  144. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今回補正予算の作成に忙殺されておりますが、ただいまのところ考えておりますのは、予算金額におきまして六千億内外、それに財投等の関係予算外の国庫負担等の関係等も若干融資の都合上所要額残ると思いますが、これらのものを合わせまして総額一兆三、四千億というものになろうかという目標でもって各省折衝を始めております。おおむねの決定見込みは二十日を目標として折衝を取り急いでおります。それがただいまの実情でございます。
  145. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 財投、その他入れて一兆三千億ないし四千億、こう言っていますがね、その方針にあたって財政目標というのは何ですか、簡単に聞きますが。
  146. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今度補正目標金額をただいま申し上げたように、大体見込んでやっておりますが、その内容につきましては、いわゆることしの災害が相当大きゅうございましたから、災害対策の所要額、それからさらに大事な問題として考えておりますのは、米の銘柄指定に伴いまする奨励金、それから自主流通米の奨励金等も入っております。こういうものを加えまして、さらにそのほかにいわゆるわれわれといたしましては、先般来の円対策のためにアメリカへ行ってまいりましたが、その円対策一つのこの際の施策の材料に資し得ると考えまして所要の経費、義務的経費もございますし、それから公共事業費もそのうちに一部含んでございます。こうしたものを目標にして、そうして一つ大きな目標としましては、やはり当面必要なる緊急やむを得ない経費補正をいたしますのと、さらに加えて大きな一つ考え方といたしましては、わが党におきまして考えておりまするいわゆる国民福祉の増強という旗じるしでございます。この旗じるしのうちで、この際計上して、そうしてそれがどうにかこうにか差しつかえなくやっていけるという見込みのはっきりついたものを何とか計上して、そうして、これが間接には円対策に資し得るように活用したいというのが大きな目標になっておるのでございます。こういう点を考えまして、大体いま申し上げましたような数字をいろいろとくふうして立案してみております。詳細の決定は、いずれまだ相手のあることでございますから十分話し合いをして進めたいと、かように思っております。
  147. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 数字のくふうをしてあれやこれやと、こうおっしゃっていますが、ぴんとこない、この間の委員会から、私は。いまあなたが答えられたのは二十日というのでしょう。臨時国会は二十七日かそこらくらいに召集するわけでしょう。二十日で予算編成終わるというのでしょう、いまの御答弁は。そうしますと、こまかなラウンドナンバーなんかは別にして、財政的に目標というものをいまあなた答えられましたよ。災害、米の関係若干、あるいは円対策、それから公共事業投資をやはりやるわけでしょう。新聞に書いていますよ。全部もう補正予算の解説までついて、円対策についてのナンバー一とナンバー二、ナンバー三なんてずっと新聞に出ている。かなり細部にわたった数字が。そうしますと、きょうは少なくとも二十日の前の十三日ですから、一週間前でしょう。一週間前で予算規模はどのくらいと聞いたら、一兆三千億ないし四千億になるでしょう、総額で。そうしますと、あと目標がきまっているのですから、災害にどのくらいかかる——災害予備費というのは千三百億くらいですか、いまあるのは。われわれだってそのくらいのことは知っているんですよ。だから災害費はどのくらい、米の対策にはどのくらい、公共投資はどのくらい、あるいは円対策にはどのくらい、その合計で一兆三千億ないし四千億になるのですと言うならわかるけれども、あれやこれやで種々研究して検討していますというのは、大臣、はいそうですかというわけにはまいらぬでしょう。こんな大蔵委員会はいままでなかったですよ。あなた、大蔵委員会というのを軽視しているんですか。新聞社はちゃんと書いている。あなたが発表したかしないかは別として、これがほんとうのものかどうかわかりませんよ、わかりませんけれども、かなりこれに近いものじゃないですか。新聞で一兆五千億と書いてある。あなたの答えでは総額で一兆三千億から四千億になっている。総体金額でもやや近いものでしょう。いまの段階で大蔵省では、各項目ごとに政策目標があるのですから、財政目標があるのですから、その目標金額をどのくらいに考えているというようなことくらいわからぬということはないでしょう。答えてくださいよ。答えられなければ私はこの質問をもうやる気はありませんよ。
  148. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 主計局の次長をして正確な、一応考えている目標数字を御説明いたさせます。
  149. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 次長でけっこうですが、あなた大臣でしょう。これをきめたら、閣議できめるわけでしょう。各省庁から出ているでしょう、補正予算に対して。その場合にあなた調整するわけでしょう。この一兆二千億から三千億、あなたが総額はそれだけしか考えていないということであるならば、このワクの中にはめるわけでしょう。各省庁から出ているのはこんなものじゃないですよ、各省庁から出ているものは。先ほど戸田委員からそのことについて要求しました。資料が出せるとか出せないとかという話がありましたが、あらかじめわれわれだってそのくらい知っていますよ。その場合に各大臣ともあなた、調整するわけでしょう、その金額、そのワクに。そうすると大臣として当然、これについてはこのくらい、これについてはこのくらいというふうに、かちっとコンクリート化したものじゃなくても、あなたの頭の中に描かれているのじゃないですか。それはどうなんですか。
  150. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私が申し上げようとしておりますのは、私は私の頭で、やはり部下の諸君に、話し合いをしてこういう方針で折衝してもらいたい、こういうふうにして臨んでいるのであります。したがいまして、相手の役所で、その所管の仕事についていろいろ御要望がございます。またわれわれのほうでも、御要望のうちで認め得るものと認めがたいものとがございます。こうした問題を彼此勘案いたしまして、そして最終の決定に及ぶのでございますから、ただいまの段階で何は幾らときまっているものもございます。たとえば災害関係が千三百億、それから給与関係、これが千二百億、そういう見当で大きなものがまず二つありますが、この二つだけでも二千五百億近くになるのであります。こういうものもございますが、ほかの公共関係経費になりますと、その所管、所管の仕事でみな内容が非常にこまかく分かれておるのであります。したがって私は、全体を、いま言ったように、おおむねこういう見当に持っていこうじゃないか、それをひとつお願いしてみい、こういうかっこうで話を進めてまいるのでございますから、何は幾ら、何は幾らとはいまの段階で私は、部下の諸君がどういう折衝の段階を経ているかも実は一々は聞いておりません。したがって、私が申し上げましたのは、私はなるべくならあまり大きな補正予算は希望しないという気持ちも一面では持っております。それだけに、一兆三、四千億を目標にして、そうしてできるだけの折衝を試みてくれ、そうして最終の場面では、話し合いのつかない場合に、微力でございますが私が出て、そうして話し合いをつけてもらおう、こういうふうに考えているから、はっきりと何が幾ら、何が幾らと新聞では御報道になっているかもしれませんが、一応の目標をそこに置いて、折衝していることを御説明申し上げたのであります。
  151. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、あなたにはものを言う気が私はなくなった。新聞ではどう書こうと、などといったって、午前中の同僚竹田議員質問を聞いてみても、あなたは赤字があるとかないとかいう議論は別に、国債を発行するというのでしょう。これは財源関係になりますよ。その額が大体四千億、こう言っているのですね。そうしてその財源四千億を国債に求めて、その金をどこに使うかということは、あなたの頭の中にあるでしょう。私だって想像つきますよ。おそらくは公務員給与災害対策に二千五百億。一兆三千億から四千億という数ならば、円対策にどのくらい使うかは別として、かなり公共事業費は補正するのだと思うのですよ。そのために財源がないから国債発行をと、こういうことだと思うのですよ。だから国債発行をすることがいいとか悪いとかという議論は午前中に竹田委員がしましたから……。いわゆる発行限度額というのは一兆九千億程度でしょう。あるいは二兆ちょっとこえるくらいですか、そのくらいでございますが、あなたの前任者の大蔵大臣がこの委員会答弁して、聞いたことをわれわれは思い起こしてみますと、大体二兆をこえる程度くらいの発行限度額です。それを午前中にあなた、四千億発行するということですから、すでにもう一兆九千億をこえているのです。だからその限度額をこえているから、いつそういうふうに変わったのですかという質問竹田議員はされたと私は思うのですよ。だからそれは私はいま聞こうとしない、重複するから。だけれども、すでにあなたは財源を求めるために国債を発行する、こう言っているのですから、それではその国債を、何に使うために発行するかを伺っている。これは国債だって国の借金だから、国民の借金ということになる。しょせんは国民の負担になるわけですから、だからそれをどこに使うのか、こう聞いている。それが、新聞にはかなり出ていますよ。しかし、新聞にはどう書いていますか、それをまだ私はつかんでいません。部下と相談してそうしてやるようにします——二十日に予算編成をするというのに、そんなのんびりしたことはないと思うのですよ。これ以上私は聞きません。どうなんですか。
  152. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) ただいま御質問の、国債四千億、そのほかに租税収入が約二千億を上回る程度規模を予想しております。大臣がいま答弁申し上げました点、全体で一兆三、四千億ということでございますが、いわゆる補正予算として追加になる金額は約六千億でございます。そのほかに事業費ベースで国の予算にかかるのが一兆、そのほかに財投の追加があるということで事業費規模で申し上げているわけです。いまの御質問公債発行四千億でございますが、午前中竹田委員にお答えしましたように、公共投資の追加が四千億でございます。
  153. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それで公債内容はわかりました。これは財源内容ですね。そこで、公共投資内容はわかりますか。大ざっぱでいいですよ。
  154. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 公共投資四千億でございますが、一般公共事業が三千六百億、その他いろいろな官庁関係の施設とか社会投資関係の施設とか、施設関係が四百億ということを予定しております。なお三千六百億の内訳につきましては、戸田委員からいろいろ御要求がございましたが、まだこれは私ども総ワクの段階の議論でございまして、これから各省折衝を開始いたしましてきめるという段階でございますので、内訳につきましては、この際内容説明を控えさせていただきます。
  155. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 わかりました。  そこで、公共投資四千億、これと地方財政との関係はどうなりますか。
  156. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 地方財政につきましては、公共投資の増加に必要な財源措置を講ずる予、定にしております。
  157. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ですから次長、必要な財源措置ということなんですけれども、具体的に公共投資をやりますと、地方財政で負担割合はきまっているでしょう。だからその場合に、つまり交付金でやるのか、交付税でやるのか、必要な財源措置といってもどういう措置のしかたをするかということを答えなければだめだ。
  158. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 今回の租税の増収、これの大部分がやはりいわゆる三税——所得、法人、酒税、こういうふうな関係になっております。三税の増収にかかる一定分を交付税といたしまして予算に計上するということになっております。なお、いま御指摘のありました公共投資の裏負担、こういうものにつきまして必要に応じまして所要の措置をとりたい、こう考えております。
  159. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうなりますと、もう一回聞きますが、この四千億の公共投資についての、つまり地方財政財源措置というのは三税の見返りですね、交付金ですね、地方財政はそれでまかない得る、こういう見方ですか。
  160. 長岡實

    説明員(長岡實君) お答え申し上げます。  補正予算で織り込まれます地方財政対策といたしましては、ただいま吉瀬次長から申し上げましたように、三税がふえますと、その三二%は交付税の増額になります。それが国の補正予算に反映されるわけでございますが、いま吉田委員の御指摘の公共投資の地方負担はどうしてまかなうかという点につきましては、私ども補正予算によりまして大体地方財政にどの程度影響があるかということを総合的に勘案いたしまして、ただいま申し上げました交付税の追加計上分と、それから地方税が一体どの程度増収が見込まれるかという問題、それから主として公共投資の地方負担につきましては、地方債でどの程度カバーするのか、この三つを大きな要素といたしまして自治省と話を詰めてまいりたいと、かように考えております。
  161. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、それは二十日までに作業は間に合うわけですか。
  162. 長岡實

    説明員(長岡實君) 二十日までに間に合わせます。
  163. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 三二%に該当する金額、大体どのくらいに見ておりますか。
  164. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在補正予算に伴います国のほうの歳入計上作業は主税局のほうでやっておりますが、その中で三税分をどのくらい見れるか、どのくらい見込み得るかという見当でございますが、大体いまのところ二千億前後のものが三税関係で見れるのではないかと思いますから、二千億に三二%を掛けていただくと、——それがあるいは千九百億になりますか二千百億になりますかというようなフレはあると思いますが、それに三二%の率を掛けていただいた六百何億かが交付税になるということでございます。
  165. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 これで大体補正予算もやや外貌がわかってきたのですが、先ほど来質問に出ておりましたが、これは大臣景気動向がよい方向に向いておりますね、この一兆三千億ないし四千億というものが、大型であるか大型でないかということは別問題として、来年度、つまり予算編成についてももうすでに田中総理大臣みずからが方々で発言していますわね。その限りでは大型であるということだけは言えるのじゃないかと思うのですが、そういうものとあわせて物価は一体どうなっておるのか。  それからもう一つは、この間の続きになりますけれども、これも新聞にはいろいろな新税創設の問題であるとか、あるいは自動車重量税を引き上げるとか、ガソリン税を引き上げるとか等々出ていますよ、出ていますが、財源をどういうふうに考えていますか。財源といまの補正についてはざっとわかりましたよ。国債四千億円というもの——税の自然増以外の財源で求めるということはわかりましたがね。
  166. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 来年度の、すなわち四十八年度予算のいわゆる見込み額といいますか、ワクというものについては、なお私といたしましては苦慮しておる最中でございまして、まだどれくらいのワクに考えるべきか、そのワクの中をなるべく守ってもらうようにして、各省と話を進めてもらおうかということのいろいろ試算をしてみたり、くふうをいたしておる最中でございまして、遺憾ながら幾らぐらいという数字を私はこの時点で申し上げかねる次第でございますから、御了承を願いたいと思います。
  167. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 たくさんあるけれども、もうこれ以上大臣に聞いてもしようがない。
  168. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 終わりますか。
  169. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 たくさんあるけれども、聞いたって何かこうぴんとこない。
  170. 横川正市

    ○横川正市君 大蔵大臣、選挙の準備はどうですか。うまく進んでいますか、あなたの選挙は。
  171. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 特別にどうこうということは用意しておりません。
  172. 横川正市

    ○横川正市君 私は海外におりましたので、この前の委員会は欠席をいたしましたが、日経とそれからその他の新聞記事を総合してみますと、九月十八日かの与党とそれから政府との連絡会議の内容が明らかにされております。その内容によりますと、大体補正予算規模は緊急やむを得ざる支出三本にしぼって約三千億、これを補正する必要があるということについて自由民主党も了承した、こういう報道があるわけですね。その会合には大蔵大臣出席しておったのですか。
  173. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私は出席しておりません。
  174. 横川正市

    ○横川正市君 これは大蔵省からだれが出席されましたか。そのときのいわゆる政府と与党との連絡会議で、ほぼその規模補正予算をということを党は了承した、こういう記事になっておるのですが、大蔵省からはだれが出席しましたか。
  175. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 何回か私ども、歳入担当という意味で私、それから歳出担当という意味で主計局長、それから財投関係で理財局長というようなことで、何回かいわゆる党の関係機関とお打ち合わせはいたしておりますが、いま十八日という分がどの分であったか覚えておりませんので、ちょっと私自身が出ておったときのことか、ほかの会合か、ちょっといま手帳をあけてみましたが何にも書いてありません。すみませんが、はっきりいたしません。
  176. 横川正市

    ○横川正市君 この与党と、それから政府との連絡会議というのはどうですか。話し合いの過程というものはありますけれども、ある意味で一致した点は、そのことがほぼ、それが法律になったり、あるいは予算化されたりするという、そういう傾向で、おおよそ著しい変化というものは、急激な、たとえば大災害があったとかなんとか、そういった事情で予算規模が変わるということがあっても、おおよそあまりこの数字に変化がないのが通常じゃないのですか。大蔵省としては、いままでの与党との連絡会議の常識的な考え方でどういうふうな運び方をしておりますか。
  177. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 九月十八日という段階は、まだ大臣がIMF総会にお出かけになる前でございます。それで、連絡会議というのは少しオーバーな表現でございまして、党の機関の方と私どもと同じテーブルでいろいろ意見交換といいますか、御質問にお答えするというような会合であったと思っております。で、そのころと現在とでは若干いろいろ私どものほうも、先ほど大臣が触れておられます円対策等関係もあり、若干考え方が変わってきておるということではないかと思います。
  178. 横川正市

    ○横川正市君 さらに政府・与党の連絡会議が九月の二十二日前後に、さらに予算規模について煮詰まってきていますね。これは田中総理が相澤、橋口両幹部を呼ばれていろいろ話をした段階での予算規模というのは、これは記事によりますと、公務員給与、それから災害復旧米価、地方交付税等いろいろ入れまして規模を大体四千億というふうに、これは十八日の段階から一千億ぐらいふえておるわけですが、四千億、こういうふうに予算規模の話が一応やられたことになっておりますが、これは十八日の段階では意見が一致をしたと報道され、さらに二十二、三日のころでは規模一千億程度ふやして、連絡会議が双幹部間で分かれた。そういうお話し合いの状態であったと思うんですけれども、この新聞記事は間違いですか。
  179. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御質問応答によりまして、私もややわかったのでありますが、ただいま主税局長申し上げましたとおり、別に正式にいわゆる政府、与党の連絡会議というようなものではなしに、政調会であるとか、あるいは党の三役、六役とかいうのがございます。その一部の人たちがいろいろ党として、今回の補正予算を、あるいは来年度一般予算をどうきめるかという、頭をおこしらえになる勉強の材料に、ぜひ来て君らの意見も何かあったら教えてくれ、あるいは説明してくれと、私はこういう機会であったのじゃないかと思うんであります。そういう機会ですと、時にございますから、それがたまたまそのときに党の三役あるいは政府の一部も入っておられたとしますと、政府・与党連絡会議へそこの事務系統の人たちが入っていって、そして何か相談に応ずるとか、相談したとかということに言われるのかもしれませんが、私はそれは少し筋が違っている性質の会合であったのではないかと思っておるのであります。その点御参考に供していただければ幸いであります。
  180. 横川正市

    ○横川正市君 大蔵省のものの考え方というのが、私どもはあなたたちと会って話をしておりませんからあまりわかりませんが、要約しますと、大体四点にまとめられておるようです。これはまあたいへん新聞社の皆さん御苦労されて、皆さんと接触してまとめたものだと思います。その要約したものによれば、これは読み上げると時間がかかりますから、皆さん自身が御案内でしょうが、九月の二十八日の新聞報道で四つにまとめられております。それによりますと、概略が、第一は、大体この景気動向の問題から刺激する必要がなくなったので、赤字国債を発行してかまわないというようなことにならない、そういうことが必要だ。第二は、福祉財源その他は、もう一回出したらこれは減少しないんだから、これはもう締めていこう、いわゆるちゃんと名目の立つ財源でこれは充てていこう。それから第三番目では、国債の発行率というのは、日本がアメリカや西独その他の国と比べてみても、きわめて高い率を示し始めた、このことは、財政法がただ単に認めておるからということだけでは、これは異常な発行高になるので警戒を要する。それから第四番目には、赤字国債を出すようなことは、原則として大蔵省としては反対である。こういうことが大体四つにまとめられて、その大型化することについての歯どめをかけようと、こういう考え方であったようです。そのことは、いまも大蔵省予算当局としては考え方に変わりはありませんか。
  181. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) そうした歯どめと申しますのか、あるいは決定と仰せになるのかしれませんが、そういうものを私自身は何ら受け取っておらないんであります。党からも正式に、こういうことをきめたからこうしてくれというようなことはございません。ただ、時に、いま申したように、事務当局が——何らかの必要があって、おまえたちの知恵をかしてくれというわけで出かけまして、そうしていろいろ御相談といいますか、御相談というより質疑応答なさる、そしていろいろ頭をおこしらえになる、その場合に、あるいは特定のお方がお取りまとめになって、こんなことでひとつ、大体お互いの意思疎通をやろうじゃないか、そのお互いと申しますのは、政府・与党連絡の会議の方々ならばその会議における頭をつくろうじゃないかということでありまして、事務当局がそういう場所に出ていって、それに参画するとかなんとかということとは違うんでございます。したがって、事務当局は、それは帰ってまいりますと、きょうたまたま呼ばれましてこういうような質疑を受けました、だから私はこういう説明をしておきました、という報告は私に参りますが、時にはその日には来ないこともありますが、とにかくそういう式で行なわれておるのでございますから、私のところに、おまえはこれをぜひ党の命令でやれとか、あるいは三役の決定、政府・与党の連絡会議の決定だからこれに服従しろと、そういうお話はないんであります。これは、そこのところはひとつぜひその間の事情は御理解を仰ぎたいと思うのであります。
  182. 横川正市

    ○横川正市君 聞かないことで答えてぼろを出さないほうがいいと思うんですね。私の聞いているのは、与党のおえら方とお役人とが会って話したときに、お役人としては、大蔵省の所管事務の立場から、見通し、それから現状分析等を十分やって、それでこの与党のあまり勉強しない人たちに、実はこうですからこういうふうにということをおそらく説明するだろうと思うんですね。その説明した資料としては、この四点は大蔵省考え方としていまも変わっていませんかと聞いているわけなんです。
  183. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま四点と仰せられまするが、その四点が、大蔵省は、おまえたちこの考え方でなるべくやってくれという御依頼を受けてもおりませんし、ただ口頭で、帰っていって報告をせいと、こういうようなことわれわれは希望していたというようなことを報告をせいというくらいな報告を受けることはございます。そういう程度のことでございまして、そしてそれは、やはり予算編成の大事な仕事は、一応微力でございますけれども、私がその責任に当たっておるのでございまして、そして、正式に党から御依頼があるならば、ともかく党から正式の御依頼は私にお話をくださる、そうすると、それを事務当局と一緒に話し合って、われわれはいろいろと研究、検討をいたして、そして私の考えがどうしても党の希望に合わない場合には、自分の希望を申していますし、わからぬときにはお尋ねにいく、こういうようなことで連絡を密にしているのであります。
  184. 横川正市

    ○横川正市君 今度の補正予算の中の公共事業関係から、それじゃちょっとお聞きをいたしておきたいと思うのでありますが、すでに執行されております予算の執行状況を、これは景気刺激策が入りましたのでだいぶん繰り上げして使用いたしましたね。大体その現段階の進捗率、これはどの程度でしょうか、パーセンテージでひとつ説明していただきたい。
  185. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) いまのお話のとおり、本年度上期において公共事業費の施行促進をやりまして、上半期の目標九月末で七二・四というめどをつけておりますが、八月末現在で契約率が六二・三となっております。大体七二・四の目標率は達成ができるんじゃないかと、こう考えております。
  186. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、本年度のいわば予算を残さないで大体所期の目的を達するということと、それから今度は追加予算を組まれるわけですね、公共事業の、それの消化についてはどういう見込みを立てておりますか。
  187. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 本年度の当初予算はおそらく相当進捗率、現在の現況からいきますと第一四半期ごろには多少事業としてはすいてくると、こう思っております。現在お尋ねのとおり補正予算を組むにあたりましては、各省庁の工事消化能力あるいは工事の余力等を勘案いたしましてこれから案分していくつもりでございますが、大体考え方といたしましては、新規というものはできるだけ拾わない、従来の継続事業の促進ということを主眼としてやっております。それの消化は見込んだとおりにいくのではないかという考えでございます。
  188. 横川正市

    ○横川正市君 景気が大体立ち直りまして、これからあまりこれが過密化すると景気が過熱化するんじゃないかという心配があるんだと、こういう報道その他識者の意見があるわけですけれども公共事業費を追加しなければならなかった理由というのは何ですか、何が原因ですか。
  189. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) これは大臣も先ほど御答弁申し上げましたとおり、私どもといたしましては、現在の景気状況からいきまして、景気刺激のために公共投資を追加する、それだけのために追加する必要ということは必ずしも必要でないと考えているわけでございます。ただ私ども当初予算編成期から状況が違いましたことを申し上げますと、やはりスミソニアンの国際通貨の調整のあと、国際収支の足取り、これは私どもの予想以上になかなか正常化しない。それと同時に、そういうような面からここのところで内需喚起をしようと、内需喚起をすると同時に、従来の社会資本の蓄積のおくれを、これをここで何らかの形でリカバーしようと、こういう二つの要請があるわけでございます。  御質問景気刺激関係でございますが、現在公共事業関連関係の企業、いわゆる設備余力といいますか、こういう関係が相当余力があるというような面から十分これは消化可能だと、こう考えているわけでございます。それと同時に、最近の景気回復の足取り、これを見てみますと、個人消費の増と、それから財政支出の関係景気回復してきた民間設備投資の足取りといいますものは、まだそれほど変則的な状況を示していない。こういうようなことから、このような公共投資の追加が物価なり景気悪影響を及ぼすというようには私ども判断していないわけでございます。
  190. 横川正市

    ○横川正市君 私は、さきに言いましたように、大体大蔵省財政運用の立場からの考え方と、それから与党のそれに伴ういろいろな施策の入った財政運用、その点に実はきょうの論議がどうしてもかみ合わないのはそこが問題点だと思うのです。私は大蔵当局、いわゆる能吏でかたまった大蔵省は、あとからひんしゅくを買うような結果を出して、あれは何だ自民党の選挙目当てかというふうに言われて、せっかくの大蔵省の立場が誤解をされることにならないように老婆心ながら質問をしているわけですから、その点で的確に答えてもらいたいと思うのですが、たとえば本年度の施行が、かりに景気刺激政策として予算の先食いをずっと始めましたけれども、その段階で土地の問題、取得費がそのことによって刺激を受けているのかいないのか。さらに四千億公共事業費を追加すれば、これは庁費ですね、これも加味して、大体一兆円くらいになるわけですが、その一兆円をいま年内消化ということでこの問題に無関係だと考えておられるのかどうか、これが一つの問題点。  それからもう一つは、私ども設計事務所その他の状態を見ておりますと、もう徹夜、徹夜で実際上設計が間に合わないということで、工事のおくれというのが目立ってきている。もう大体設計関係では限界だというように言われている点もあるわけですね。それで一番問題なのは、いまのこの状態からくるいわゆる重労働に従事する労務者の不足ですよ。いま市場における労務者の賃金がどのくらいか検討してみましたでしょうか。一、二年の間に——これは千七、八百円くらいの労賃だったのが二年くらい前でしょう、いまそれの大体三倍以上の労賃を出さなければ労務者というものが集まらないわけです。それでもなおかつ労務者不足で工事が思うにまかせない、こういう状態ですね。私はこれと同時に、きょう労働省がいればそういう季節労務者を当て込まなければならない状態をどんどん都市につくっておいて、季節労務者に対する福祉関係災害に対する手当てというものを全然しないという、こんなばかげた国家というものはないわけですから、もしそういうことをやるなら、早く手当てをして、季節労務者が、いわゆる常用と同じような、そういう施策をすべきだと思うのですけれども、その点はいまのところ全然ありません。全く、何人きょうは人が要るからきてくれ、賃金は幾ら出す、こういう結果になっておるわけですよ。  それともう一つ機具ですね、建築機具、これが生産が間に合わないから、その点でのいわゆる投資刺激、投資刺激しても実際上はおそらくそう急場には間に合わないので機具不足、これが工事にある程度影響が出るんじゃないか、こういうふうに見られているわけです。私どもは、きれいごとで言う日本のいわば公共事業その他の立ちおくれですが、それを一足にやりたいといっても拙速主義でこれをやって、結果的に手直しやら、やり直しやら出てくるようなことで予算がむだ使いされるということは絶対やってはならぬと思う。やはり相当の計画を立てて確実な実施をしてもらいたいわけです。そういう一連としたものとあわせて、これは先ほどから皆さんが言っておりますけれども、大体最近二DK、二LDKの建築されたマンションの価格がどのくらい値上がりしておりますか。かって五百万円台で買えたものが、いま八百万円出さなければ買えないでしょう。  大体日本円対策というのは、いわゆる外貨がたまり過ぎるからという円対策だ。もう一つは、その海外における円の価値は高まっているのに、国内の円の価値がどんどん下落していっているこの現実をどうやって政治の責任ある処置をするか、この問題にぶつかっているわけですね、どうするのですか。これはいまの円が、がたがた国内で値下がりするのに、これを全然無視して大蔵当局が財政運用をやるとすれば問題ですよ。大蔵省はないほうがいい、実際に。こういうことに対して的確に答えてもういたいというのがけさからの質問なんです。どうですか、この点。  たとえば重労働、土を掘ったり穴を掘ったりする労働力、あなたのほうでは予算さえつくればすぐつくれると思っているのですか、しかも、その行なわれた工事の結果というものが、どんなずさんなものかということについて、どう見ているわけですか。  たとえば東京都内の上下水道がつくられる。しかし、その上下水道がもうまことに他の国から比べてみると全くちゃちな状態で、拙速主義で行なわれているわけです。なぜか、これは重労働に従事する労務者がいないからです。しかも日雇いや季節労務者、これに依存しているからですよ。この拙速主義で、これに依存して国内のいわば不足している分を急速に補おう補おうとするから、結果的には日本の国内円の価値が下落するわけです。そんなことを考えないで、大蔵省財政運用をされたんではたまったもんじゃないです。たいへんなことになりますよ。以上にひとつお答えいただきたい。
  191. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 御指摘がございましたとおり、確かに現在設計能力等においては相当問題がございます。  建設省におきましても、また公共事業実施の諸官庁におきましても、従来の自分の設計を外注にできるだけ出すというような方向にずっと二、三年切りかえております。その外注も、現在のような公共投資の実施状況からいきますと相当のむずかしさが出てくるんじゃないか。ただ、その辺のバランスをとりながら行政をやっていきたいと思っております。  なお、用地費関係の値上がりですが、たとえば従来公共事業費に占める用地費の割合、大体二割と実績から出てきているわけでございます。特に今回用地関係のウエートが増したという理由はまだ聞いておらないわけでございます。ただ、いま横川委員御指摘のとおり、公共投資を相当規模継続して伸ばしていく限りは、やはり適切な地価対策、土地政策というものが併用されてしかるべきではないか、これにつきましては主税局長がおられますけれども関係各省で鋭意有効な案をつくっている段階でございます。  なお、建設労務者の確保等につきましては、相当最近建設関係で機械化が進んできておるので、機械の手当ての問題もございますが、その建設関係に従事する労務者につきましてもよく実情を見て検討していきたいと思います。
  192. 横川正市

    ○横川正市君 それは善処します、検討の段階じゃないんですよ。だから私どもはいまの時点における、まだ規模四千億程度のもので、公共事業費その他について加味された点についてはどうもおかしいじゃないかという……、しかも、それに大蔵省はねじ伏せられちゃったんじゃないかと、ねじ伏せられちゃったんじゃないんだったら、この点の説明がもっと明確にできるはずです。善処じゃなくて、いやこうやりますということが、大蔵省でちゃんと説明ができるんだったらやってもらいたいですね。説明ができないということになったら、あなたのほうは理屈が通らないが、しかたがないということになっちゃうんです。だからあなたのほうは、財政運用のための四つのまとめられた原則はちゃんと当局として守っておるんですかとお聞きしたのはその点なんです。ですから、この説明がわからぬ。  それから、国内の流通している円ですね、円価値ですね、これは物価上昇に伴って管理通貨の価値の下落の状態、こんなに下落する円を、ただドルに換算してみて、これは二百八十九円だとか、二百九十円だとかいうことで非常に高くなった、高くなったということで幻惑されて、国内で実際に円を通貨にしている国民の立場で、これほど円価値が希薄になってくるということに、これにもう全然手当てをしないという政治もないし、財政当局もないと思うんですよ。それで福祉福祉だと言って、慈善でもやるように言っているけれども、これだけ円が下落すれば、それによって起こるひずみを早い機会に直せなかったらどうなりますか、これはたいへんなことになりますよ。それをやれない財政当局なら、これは大蔵省当局要らないということになりますね、どうですか。もっと的確に、これはこうしますということをやってくださいよ、答弁していただきたいと思うんです。
  193. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 先ほどマンションの事例で円価値の問題が出ましたけれども、私どもやはり現在卸売り物価指数とか、消費者物価指数で見る限りにおいては、諸外国のテンポより、むしろ卸売り物価については諸外国より低いという感じで受け取っております。  ただ一点、先ほど申し上げましたように、土地対策、土地問題がやはり一番大きな問題になるんじゃないかと思います。これにつきましてはいま成案を急いでおりまして、各省で鋭意検討中でございまして、もちろんそれは検討して早い機会に実行に移すという点から進めておるわけでございまして、土地対策がやはり公共投資を行なう場合の一番大きな問題ではなかろうかと思います。  それから先ほどの財政関係の四原則と先生がおっしゃいましたけれども、それに対しましては、まとまった形で私どもとして外へ出した記憶はないと思いますけれども、ただ一つ言いたいことは、社会福祉関係、これを相当進めていくという段階で、その財源をどこに求めるか、これは公債発行なり赤字公債という形でなく、一般財源を充実してそれに充てていくということが必要ではなかろうかと、こう考えておるわけでございます。赤字国債を出すということにつきましては、私ども否定的であるという点につきましては従来と全然変わりございません。
  194. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣、いまのやつは政策上の問題ですよね、横川委員質問は。大臣の見解を示しなさいよ、こういう大方針、政策に対して大臣黙っている手ないじゃないですか。
  195. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) われわれといたしましては、先ほど来いろいろとお話がございましたが、大蔵省を率いて立つわれわれといたしましては、やはり大蔵省としての、たとえば今度の問題、補正予算の問題につきましても、節約はうんとやってもらうというやり方で財源の捻出を頼んでおります。あるいはまた公債発行の問題にいたしましても、本来の財政法の四条に定めるこの順序はあくまでも守っていこうということで、何と要求されても固くその方針を守って動きません。  われわれまたその他の各諸般の会計経理規定の励行につきましても、十分にやはり相手方とも相談をし、お互いに戒しめ合って、そうして予算の正当な執行を得られるように努力をいたしておるのであります。だからこういう問題等を考えてみますと、われわれとしても、決してただ一部の勢力なり、一部の人たちの意のままに動くというようなことはどうしてもできない、やはり公務員としての当然の責務がございますから、これに従ってわれわれは言うべきことは言う、あるいは意見を申し述べることは意見を申し述べて、反省を求めて、そうしてお考えのあるところを変えていただく場合もございます。だからできるだけのことはわれわれ公務員としての仕事を守って、そうしてただついていくのだ、どうだというようなことではないことをひとつ御容認願いたいと思うのであります。ぜひお認め願いたいと思うのであります。  われわれはそういう意味におきまして、微力ではございますけれども、一生懸命に誠意を尽くして勉強しておるのであります。その点はひとつ大ぜいの者の励みのためにもひとつお励まし、御激励をお願いいたしたいと思うのであります。
  196. 横川正市

    ○横川正市君 大蔵大臣はそういう、何といいますか、辞令かな、実がないんですよ。答弁に実がないということは、実はお年も召しているから私どもあまりきびしいことは言いたくありませんけれども、ただ大蔵委員会がこの問題を取り上げているのは、これはやはり当面非常に重要な問題なのでみんなが取り上げていま質問しておるわけですね。  いま次長は、卸売り物価についての動向はどうと言いますけれども、たとえば日本の労務者の賃金とか、公務員賃金はどうかと言われたときに、あなたたちの答弁はこういうふうに出てきますよ。これは欧米と日本は違う体制を持っているから低きに失していると言いますよ。卸売り物価はどうかといったら、欧米と日本は同じぐらいだからいいんだというのでは、答弁関連性がないわけだね、私ども聞いていて。その点から見れば、四十七年の一月から三月までは〇・三%、四月が〇・三%、七月が〇・二%、八月が〇・七%と卸売り物価は移動している。池田総理大臣がもし存命ならば、卸売り物価は少しも変わっておりませんから幾ら物価上昇しても、という観点もまことに違いが出てきているということになるわけです。そういう違いを頭の中に入れておる者に答弁するときは、もう少し懇切丁寧に、わかるように答弁してくださいよ。卸売り物価が〇・七%も上昇してそれがあたりまえだという答弁なんていうのは、本来大蔵省はいままでしなかったのですよ、実際には。だから、もっと実のある答弁をしてもらいたいというのが、これが私どもの期待するところなんですね。その点を付言してきょうは終わります。
  197. 藤田正明

    委員長藤田正明君) いまのは要望であって、答弁は要りませんね——
  198. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣にお伺いしたいのは、一つは円の問題であります。最近第三次の円対策原案が示されておるようであります。昨年の六月に円対策八項目が出て、第二次の円対策が本年に七項目として出ている。そこへもってきて、今回第三次の円対策が出てきた。しかし、どう見ても、円の再切り上げということは、非常にその圧力が強い。これは大臣もすべて原因あるいは状況というものは御存じだと思います。貿易収支の大幅な黒字、予想以上の大きな黒字、そういうようなことやなんかから見ても、どうしても上げざるを得ないだろうというような外国の要求がある。この点、商社の間では一ドル二百八十円とか、二百九十円とかいうことで、輸出成約というふうなことになってきていることも御承知のとおりだと思うのでありますけれども、そういう点で、一体円の再切り上げというものについては、大蔵省としてというより、大蔵大臣としては、これは避けたいという御希望なんでしょうけれども、はたして避けられるものなのかどうなのか、その点ですね。いままでも絶対やらないと言っておいて、この前はやりましたから、今回は絶対ということはないだろうと私は思っております。まあ避けたいという希望と、避けられるということは全然違いますので、その点一体どうなのか、どういうふうにごらんになっているのか、まず伺いたいと思います。
  199. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) きょう午前にも私のつたない弁をもってお答えしたのでありますが、なかなかに御理解を得ることが骨であったようであります。しかしその際に、国金局長をして説明をしていただいたのでありますが、私としましては、国金局長の言っております現場へ行ってのいろいろ受けた感じ、そしてまた相談をし合った結論というようなものは、全く一致しておるのであります。それは単に局長だけどうこうというのではありませんで、随行いたしました大ぜいの審議官からその他財務官に至るまで、みな御一緒に合同会議をやりまして、そうして現場における空気を受け取り、各国の主張もお互いに勉強してもらったところを披露し合って結論を出しておるのであります。それは午前も申し上げたように、いわゆる国際通貨の理想的な一つの姿をこしらえようじゃないか、多国間でこしらえようじゃないかということで、非常に円満に合意が成立しまして、そうして二十カ国委員会が新たにまた発足し、これがまず第一にさっそくに作業を始めようということに相なっております。これが行く行くはその代理会議が近く開かれることになりまして、ここでその関係の二十カ国でもって案をつくり、そしてその案が今度は二十カ国の委員会の決議となりますと、そうすると今度はそれをIMFの十カ国の会議にかけます。十カ国の会議にかけてこれが今度は本会議にかかる、総会にかかるという順序になるのであります。しかし、なるほど仰せのとおり、またわが国内においてもいろいろの見方がございますとおり、あまりにも円の黒が強過ぎる、だからこれは何とかしなきゃいかぬのじゃないかということを御心配くださっておる向きも、私どもも同感なのであります。われわれもそれがあればこそ何とかこれをうまく——まあ一つの国際ルールができるとは思いますけれども、それがのほほんとしておってはどうにもならぬ。間違いが起きてはたいへんでございますから、最近になりまして、先ほども御指摘のように、われわれとしては、去年の八項目の会議、七項目の会議、それに今度は、また新たに国際通貨に対する対策の会議をやりまして、そうして事がたいへんなことにならぬように、いまから備えをしたいというので、われわれとしましても、強い決意をもって各省にも御相談をし、そうしてこれをまとめていきたいという努力をいましておるのであります。これらの努力が幸いにして実りますれば、私は必ず円の再切り上げなんというものは避けられる、また避けなければならぬと、こう思っておるのでございます。  この点は、私が単に声を大にしてただお訴えするだけでなしに、ほんとうに誠心誠意考えてみんなと一緒になって努力をしておる、各省にもお願いをして努力をいたしておる。この点を御理解仰ぎたいのであります。しかし、こうした問題は、お互いに利害関係が業者間によってもありましょうし、役所と役所の間にもございますし、それだけに、ただわれわれが円切り上げを避けるのに最もふさわしいと思う理想的な政策を幾つか考えてみてみましても、それには幾つかの困難がまた伴ってまいりますから、だから容易に円満な妥結ができないので非常に苦労をしておるのでございますが、われわれの努力は必ずやひとつ実らせなければならない。そうして実らせるためにこそ、われわれも憎まれ口をたたいても、あくまで努力して、そうしてこの大事な目的を達しなければならぬと考えておる次第でございますから、こうした点についても、どうぞあたたかい御理解を仰ぎたい。われわれ微力でございますが、それだけにどうぞ委員の皆さまの御激励を賜わりまして、そうしてわれわれに行くべきところに行けと、叱咤激励していただきたいぐらいの気持ちでおる次第でございます。
  200. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣の先ほどの十カ国、二十カ国のお話はよくわかっておったのでありますが、問題は、新しい第三次の円対策、これが出てきたんですが、それがはたして実行できるかどうかということに私は非常に大きな疑問があるわけなんですね。まあ、はっきり申し上げて、関税を一律二〇%下げる件についても、これは容易でないだろう。輸出税の問題は、はっきり申し上げて、総理から「待った」がかかったような状態である。そういうふうにわれわれは聞いているわけです。それから貿易管理令というようなことをいじるについても、これは輸出についてたいへんな問題になっていくというので、一応これもできない。これら一つ一つを見ても、はっきり申し上げて、円の切り上げを防止する政策はことごとく全部が全部、口では言われましても、あるいはまた構想はあっても、うたかたの夢のように消えていってしまうのです。これは大臣、同情してくれ、理解してくれと言われても、何一つできないくらいじゃ同情のしようがないのですね、はっきり申し上げて。一体関税の一律二〇%引き下げ、これでもそうたいしたドルは減せないと思いますし、また輸出税についてもそう多くないと思いますが、それでも両面相待ちまして効果があるんではないかと考えられるのですけれども、これはどうなんでしょうか、これはおやりになりますか、できないのか、大事な問題ですからはっきりとひとつ。
  201. 林大造

    説明員(林大造君) 現在の進行状況を、恐縮でございますが、御説明申し上げますと、今後国際収支の黒字の減少傾向が次第に出てこないと困る。というのは、大臣が御説明いたしましたとおりでございます。その黒字が減少する要因といたしましては、私どもの期待しておりますのが三つございまして、第一は、昨年のスミソニアン合意に基づく国際間のレート調整、その効果が次第に出てくるという点でございます。この点につきましては、午前中にも若干触れましたけれども、レート調整というものが効果があらわれてくるまでにはやはり若干の時間がかかる。まず価格効果というのが出てまいりまして、円が切り上げられますと、日本の輸出品のドル建ての価格がまず上がるわけでございます。その結果かえって輸出がふえ、輸入が十分にあがらないということで、当初の切り上げに基づく黒字減少効果というのが、かえって逆に最初の数カ月間は黒字を広げるような方向に働く。しかし、それがしばらくたちますと、日本の輸出品が値が高い、輸入品は日本国内で値が低いということが次第に数量に影響してまいりまして数量効果というのが出てくる。で、数量効果というものが価格効果を相殺いたしまして、数量掛ける価格という形での輸出入の金額に響いてまいりますのが、数カ月おくれてから表面化してきて、まあシュバイツァー専務理事の演説の言をかりれば、来年くらいには効果が出てくるだろう。これが第一の要因でございます。  第二の要因は、景気でございまして、景気関係でアメリカの景気が一歩早く回復いたしました。それで、従来の経験に徴しましても、アメリカの景気上昇いたしますと、各国からアメリカへの輸出の上昇拡大はかなり顕著なものがございます。その結果アメリカの赤字が十分に減っていない。ことしの初めにはかえって拡大の傾向すら見せていたわけでございます。しかし、ヨーロッパ及び日本景気もこのところ着実にかなりのスピードで上昇しておりますから、この景気上昇のラグという問題も解決いたしまして、今後国際収支の各国間の均衡化への力が働くであろう。ただ、この二つは、いわば他動的な要因でございまして、それだけにたよっていくわけにはまいらないわけでございます。その点におきまして、鈴木委員御指摘のとおり、私どもといたしましても、できるだけのことをしなければいけないということで、現在各省間で折衝中でございます。何ぶんにも総論と各論いろいろあるわけでございますけれども各省それぞれ御所管の業種につきましてはそれぞれ御事情がある。したがって、最もよい方策いかんということになりますと、やはり意見が分かれるわけでございまして、その意見を調整しながら、恐縮でございますが、来週の金曜日というのを目途にして企画庁にその取りまとめを依頼しているわけでございます。しかし、その間におきましても、私どもといたしましては、鈴木委員御指摘のとおりできるだけのことをしてまいりたい。はたして輸出税という形でその結論が得られるかどうか、あるいは輸入の面で、輸入自由化、関税引き下げ、あるいは輸入割り当ての拡大その他の方策が、どのような形をとるということにつきましては、まだ結論が得られておりませんけれども、できるだけのことをしてまいりたいというふうに存じている次第でございます。
  202. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 はっきり申し上げて、自由化問題にしても、農林省としてはそれは絶対やらぬでしょう。賛成の意向は出ないと思います。それから輸出税の問題にしても、通産あたりから強い反対がある。そうなると、全体を通じて何も効果があがるものがないじゃないかということになる。しかも、貿易収支の問題、これを見ても、秋になれば減ると、もうすでに半年以上もたっているわけです。ところが、これから暮れにかけてはさらに輸出は伸びるだろうし、いまのお話からいけば、答弁からいけば明年にならなければわからないというわけですけれども、その辺は私どもわからない。その点でもあんまり信用できないような気がする。  もう一つは、景気の問題でも、日本だけが景気がよくてほかが悪ければ、それは黒字が減るということもあり得るでしょうが、各国間均衡して景気がよくなったというのでは話にならない。そういうことから見ると、どうしてもこれは回避できないんじゃないかという感じがするのです。いま一つ、ここでこういうことを言うのは非常におかしいのですけれども大蔵省自身、大蔵大臣自身としても、再切り上げはやむを得ないというものが腹の底にあるのじゃないかと私は思う。といって、そうなると円を切り上げてから解散をしたんでは非常にぐあいが悪い、だからその前というようにムードが早まっている、この辺にもあるのじゃないかという私には感じがするのですが、そういうものと全然関係がないですか。
  203. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) さような問題は夢にも考えたことはございませんし、私としてはあくまでも忠実にお国のために円の再切り上げは避けなければならないと固く信じておるのでございます。そうしてそれの努力をそれぞれの相手の権限ある場所に訴えております。そうしてそれが実を結ぶことをいま一生懸命につとめているのが現状でございます。
  204. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 はっきり申し上げて、この間の新聞に出ておりましたが、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルという新聞にはっきりと五%から一〇%の円の再切り上げが日本経済界の大勢である、これは日本にもある研究所のが出ておりました。それと符節するようなので出ておりまして、その中に新しい対策効果があると考えている者はきわめて少ないという、こういう民間経済界の声などが載っているわけです。日本国内の民間の経済界の方々が、円対策効果はきわめて少ないと考えているとすれば、これはもうどうしても再切り上げに追い込まれていくのではないか、そう思わざるを得ないわけです。先ほど大臣は憎まれ口をたたいてでも絶対防止をしたいということを言われたのですけれども、それは私どももそのことを実らせることに非常に期待もしますし、それはいいことだと思いますし、言をよしとするのですが、幾らそうおっしゃっても、一方でこういう空気があればとうていそういかないのじゃないかという感じがする。もしどうしてもやむを得ないという状況になったときは、待っておってぱっとやるのか、もっと小幅に早目に手を打つのか、その辺のスケジュールまでお考えになっているでしょうか。いまは絶対にやらぬとおっしゃっている、それでは次善の策は考えているのか、いまの経済界の空気、こういうものから見ると何だか早目にやったほうがいいみたいな空気が一説にはある、それが避けられれば最大よろしいのでありますけれども、変なふうにがんばっていって、最後に前回以上の大幅な切り上げなんかやられたのではたまったものじゃありません。その辺の判断、その点はどのようにお考えでしょうか。
  205. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま鈴木委員御指摘のとおり、十月十日のウォール・ストリート・ジャーナルには、お話にあったような記事が出ていると聞いております。新聞報道必ずしも常に正確であるとは限らないと存じますが、同じく十月十一日のフィナンシャル・タイムズには、円切り上げはまだ予想するのは時期尚早である、日本当局が円切り上げということよりもほかになすことがあるというのはもっともであるという記事も掲げられているように聞いております。新聞報道はともあれ、私どもといたしましては、現在までの路線を進めていけばよろしいのであって、何ぶんにも昨年の切り上げの効果が十分に出切らないうちに即断をして誤った施策に走るのは最も戒むべきことであるというふうに存じております。したがいまして、この段階で大幅な切り上げとか、あるいは早期小幅な切り上げということは一切考えておりませんで、現行レートのもとでできるだけのことをしてまいりたいというふうに考えております。
  206. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは事務当局のほうの考え方ですが、私は日本の国を操縦していく大蔵大臣として、政治家としての判断があります。そういう点から見て、いまのような空気の中からどうしても万やむを得ず大きなものをやらなければならないのであれば、小さくやったほうが、早いほうがいいのじゃないかという声もあるけれども、どのような判断をしているかということを聞いておるわけでありますから、これは政治家としての大蔵大臣から答弁を聞きたいと思います。事務当局の考えはわかりました。
  207. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 何回も繰り返させていただきますが、私といたしましては、あくまでも円の再切り上げは避けなければならない、避けるあらゆる努力をしてみたいという考えでおります。
  208. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 非常にくどいようで申しわけないんですが、あらゆる努力をしてみたい、それはわかるというんです、私は。だけど、ほんとうにどうにもならなくなったときはどうなんでございましょうかということを申し上げておる。それはどうなんでしょうか。それなら踏み切るかどうかということの二つの問題になってくるんですよ。そのときに、国民への被害ということを最小限に食いとめるということをまず前提条件として大臣考えなきゃならぬでしょう。御自身の我だけを通してということにもいかないようなことにもなるんじゃないかと思う。その点はどうかと聞いているんです。
  209. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私は、あるいはおまえばかだからそういうあほなことを考えているんだろうとおしかりを受けるかもしれませんが、あくまでもそれは避けなければならないのであって、そしてそのためにはあらゆる努力をやっていく。したがって、私はそういう事態にはいかないであろう、いくはずがないと。これだけの努力をやっていけば、おそらくは関係の方々からも御理解を仰げるに違いないし、私は、わが党の諸君がやはりあくまでも私の考え方を支持してくださるものと考えて処していきたいと思っておるのであります。
  210. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあこれ以上になると同じ問答の繰り返しになるようでありますからその点はあれですが、一つここで、じゃ輸出税の構想はどうなりますか。実現しますか、しませんか。これは大臣いかがでしょう。
  211. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 輸出税につきましては、関係各省と目下折衝を進めておるところでございますが、御承知のとおり、関係省からの反対は多いのでございます。もちろん、これは反対が多いことはよくわかっておりますが、要するに、その方法論とか、そういうことではなくて、先ほど来国際金融局長からも御説明しておりますように、いろいろ対策効果がきいてくるのに時間がかかります。その時間のかかる間で、輸出が急増しているとか、そういう状態になってきた場合には、やはり緊急の問題としてその輸出税の構想を真剣に検討すべきではないか、こういう点で目下話をしておるわけでございます。もちろん、輸出税をかけなくても他の手段によりまして輸出を適正な程度に押えるということが成功すればけっこうでございますけれども、それが成功しない場合には、必ずやはり何らかの手を打たなければならないではないか、そういう考え方で目下折衝しております。
  212. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは大臣の先ほどの答弁で、もうどんなことをしてもせっかく努力を続けるという非常に強い決意がありました。そうすると、はっきり申し上げて、貿易収支の九十億ドルにものぼろうという黒字を減少させるには、一つは、やっぱり輸出を押えるというか、輸出についての秩序というものをつくる以外ありません。そうなれば輸出税をつくる。もう一方は、輸入をふやすということになれば、自由化か関税の一率大幅引き下げか、この二つしか道はないわけですね。輸出の場合を考えても、輸入の場合を考えても、輸出税、関税の引き下げということになるわけでございます。先ほどの決意から、そういう方向、たとえば、輸出税とは言いませんけれども、輸出をコントロールしていくという、そういうことの実現、及び輸入を促進する政策を必ずとるということ、この二つは、大臣、お約束できますでしょうか。
  213. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) もちろんそうした問題も、今回われわれが努力をして御相談をかけているうちの大きな大事な項目にそれぞれなっております。
  214. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大事な項目になってそれを推進している、話し合っているというのはわかるわけですが、相手方はいやだと言う。それじゃ一体どうするかということになれば、先ほどの大臣の御答弁からくれば、どんなことをしてもという固い決意があったわけですが、そうすると、いかなることがあっても実現を見なきゃならない——はっきりと輸出税という形にならなくても、何らかのコントロールをする。関税を、一律二〇%といかなくても、やはり効果のあるだけの関税の引き下げというものをはかる、こういうことにならないのかなるのかということなんです、私は。それはいま折衝中でございますと言うんですが、絶対実現するかしないかということを伺いたい。くどいようで申しわけないんですが、政治家としての決断をひとつ。
  215. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 何回お尋ねくださいましても、私としてはあくまでも円の再切り上げは避けるその一路に邁進したいと思っております。
  216. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは私は大蔵省からも通産等に当然要求していることだと思いますが、いま国民の目から見た大きな問題から言いますと、テレビにしても何にしても、国内で買う価格のほうが高くて、輸出価格が大幅に下回っている。各省あるいは地方自治団体の予算が膨大にふえてくるのだって——積算の基礎からやるわけでありますが、その積算基礎自身が輸出価格よりはるかに高いというのでは、はっきり申し上げて税のむだづかいみたいな方向も一つある。いま一つ言えば、そういう輸出価格が、ダンピングではないでしょうが、国内へ製造業者からおろされてくる価格より低い価格で売られるということは国民にとっては非常につらいわけであります。言いかえれば、輸出を伸ばすために国内への締めつけと言いましょうか、国民に、不当というわけじゃないでしょうが価格の高いものを押しつけるという一つの形があるわけですね。しかも、いま一つ効果としては、積算の基礎が高いですから、官公庁や何かでのすべての予算の基礎というものは高くなってくる。これが輸出価格でもって、価格そのとおりではないにしても、国内価格と輸出価格とはそう変わりないということになってくれば、ずいぶん変わってくるわけであります。そういう点も円の対策としてはほんとうに考えなきゃならぬのじゃないか、こういうことを痛切に感じるわけでありますが、その点はいかにお考えでしょうか。
  217. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま御指摘の点は物品ごとにいろいろの事情があるかと存じます。たとえば、輸出品には物品税はかからないが、国内の消費者の手に渡るものには物品税がかかるものもございますし、またアフターケアのやり方にもいろいろ違いがある。その他いろいろ事情があるとは存じますが、しかし、一般的に申しまして輸出品のほうが国内向けの品物よりも値段が低いということでは困るわけでございます。国内向けと申します場合には、一般消費者向けの場合もあるわけでございますし、また国あるいは地方団体が調達する物品の場合もあるわけでございますが、一般的にはそういうことは避けなければいけない。そのためにいろいろ手を尽くしていかなければ、国際的にも批判を受ける事柄であるというふうに存じております。個別の事柄につきましては、また担当の方から詳しくお聞きいただいたほうがいいのではないかと存じております。
  218. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は一つの問題提起をしておいたんですが、これはすべての問題に、はっきり申し上げて予算編成、各地方公共団体からすべてにわたっての積算の問題にも全部なってきているわけです。この点は、一つ一つの業界の事情が、あるいはいまのように物品税のかかるものもかからないものもある。繊維等はかからなくても向こうは安いわけですからね。そういう輸出価格の安いというのもおかしなことでございます。そういう点はほんとうに考え直さないといけないんではないか。その点はひとつ私の提案ですから意見を申し上げておるわけであります。  その次に、明年度予算の問題で伺っておきたいんでありますが、四十八年度予算規模は十四兆になるとか十五兆になるとか十六兆になるとかいろいろ言われております。一体、その性格づけを、いま大蔵大臣はどうお考えになっているか。選挙が年内とか来年早々にあればそれから以後の問題になるので構想は別になるかもわかりませんけれども、いわゆる調整インフレ的なものに持っていこうとしているのか。そういうために大きくしていこうとしているのか。それとも、高福祉高負担という福祉のほうに重点をかけようということなのか、その点ひとつ伺いたいのですが。
  219. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 来年度予算編成につきましては、おおむね八月一ぱいで第一次の締め切りがございました。それに一カ月延びて、その間、新内閣において特に力を尽くしたいと思う事項で、自分の所管のものについてはおくれて概算を追加してもやむを得ないと、こういう閣議了解のもとにまとまっております。これをどういうふうにしてやっていくかにつきましては、いろいろとなお検討不十分なものがそれぞれございます。なるほど列島改造という名のもとに、総理は総理としての個人的なお考えであろうかと思いますけれども、しかし、一面においては内閣としても選挙場裏で堂々とこれは御発表になった印刷物であります。これに対して、国民の一部の方々、あるいは相当数かしりませんが、相当の関心を持っていることも言うまでもありません。そこで、われわれ政府としてはどうなるかと申しますと、やはりこれはわが自由民主党が多年政権の座におらしていただいて、そうしてそこでいろいろと施策をやってきておりますが、途中においていろいろ名前は変わりました。あるいは新農村の問題でありますとか、農村一つとってみても、そこにはたくさんの変更がございますし、あるいはまたその他の諸般の公共事業の問題にいたしましても、いろいろ変遷を内閣とともに、あるいは大臣とともに経過を見ております。こうした中でわれわれ自民党考えておりましたことがおのずから一つの流れをなして、そしてそれが批判を受け、あるいは御称賛も受ける場合もございますが、これをやはり集大成するのが、田中総理の言われます自分は何も変わったことをやろうとしているんじゃないんだ。これらの問題についての基本的な反省をして、そうしていままでのやり方について改むべきことは改めて、そうして新しい方向を見つけて、これに向かって進みたいのだと、こういうことを言っておられるのであります。そうしますというと、われわれとして予算編成に際しての考えることは、言いかえれば、いままでわが党がやってきましたことのうちで反省をしなければならぬと、国民の皆さまから批判を受けている問題については十分これに対しては思いをいたして、そうしてわれわれがそこに新しいわれわれの一つの道を見つけ出していこうと。これをやるのには、いわゆるあの列島改造という考え方からいきますというと、いわゆる新全国総合開発計画、あの中にも十二分にその問題が入っているんだから、だからあれを今度のいわゆるそういう列島改造の考え方でもって新しくひとつ再出発をする気持ちで整理をし直してみようじゃないかということもいま動きが起こっております。そうして、その作業は企画庁においてすでに御準備を始め、どんどん仕事はしておられる。また一方におきましては、内閣に多数の学界の方々のお知恵を拝借する意味でもあり、また指導も受けるつもりで、謙譲な気持ちで国民の皆さんと一緒になって新しいわれわれが申し上げている列島改造に御協力願えませんかと言って、呼びかけもしております。しかし、これらの問題が予算編成をしなきゃならぬその世話役をする私どもとしては容易に熟してこないのです。熟してこないというと、ことばは悪いかもしれませんが、要点の取り上げ方がまだまとまってこない。非常に私自身も悩んでおるのであります。その際において編成の仕事をやらなければなりません。そこで、私の立場としましては、やはり党内の心ある士あるいはそれぞれのつかさつかさにおられる方々あるいは在野の皆さまのいろいろな御指導あるいは御批判、こうしたことも十分ひとつ胸に体して、そうして願わくは誤りなき予算を組みたい、こういう念願で燃えているのであります。私はそういう意味からいいまして、いまワクがどうだとかなんとかということは、午前も申し上げましたように、いまの私としては数字は申し上げかねますとお断り申し上げましたが、誠意においては一生懸命に皆さまのおことばにも耳を傾けて、そして予算編成の衝に当たりたい、こう思っておる次第でございます。
  220. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それは、額を申し上げられないというのは先ほどもありました。ですから、私は額のことは伺わなかったんですが、もうこの段階にきて、もう十月も終わらんというころになってきたわけですね。半ばきております。大体の大きな規模というものは例年からいっても大ワクはわかるわけです。ただこまかくその間に千億とかそういうぐらいの差があったりすることは当然だろうと思いますが、大体もう、言えないにしても、新聞等にいわれているような十四兆とか十五兆と、そういうような規模というものになってくるのではないかと私ども想像しているんですが、その辺の想像は大体当たりそうですが。
  221. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 何とも私からはこの際お答えいたしかねます。
  222. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 来年度の問題を大臣がお考えになるときにやはり一番問題が、一つは歳出の問題であると同時に、歳入の問題であると思います。私どもの歳入の見当をつけますことが、来年度予算の問題でございますが、私どももそう長い経験ではございませんが、本年は非常に経済が動いておりますので、なかなか大臣にこうなりそうだということが申し上げられない現状でございます。歳出についての面は別といたしまして、規模その他にはどうしても歳入が響いてまいると思いますが、ことしは非常に動きが早いといいますか、そういう感じがいたしますので、補足して申し上げます。
  223. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ主税局長がまさか、幾ら動きが早いといっても、いままで動きの早いときでも大体の歳入の規模はわかったわけです、通常でいきますと。それがわからないと、そんなことをよく……。大臣のワクのことはわかりますけれども、あまり感心したことじゃないと思うんです。  私はちょっとそこで伺いたいんですが、明年度財源問題、これは昨日の報道で私も見たのでありますけれども自民党の政調会中心でいろいろ検討中だというような話から、いままで大蔵省等で考えていた新しい税金、いわゆるギャンブル税であるとか、ガソリン税、お医者さんのいわゆる課税上の特例、七二%の必要経費損金算入の特例の廃止、あるいは物品税、こういうものについては見送る、あるいは輸出税制についても見送る、こういうことで、どちらにしても財源的にそうなるとたいへんである。これは選挙を見越して増税策はとりたくないということで見送ったのかもわかりませんが、その中で財政法第四条をどうしても改正して、いわゆる年金あるいはいろいろな福祉関係とかその他にも使えるようにしていこうと、こういうことで財政法の第四条を変えたいと、そうして改正をして赤字国債、赤字公債を発行する、こういうことが言われて、大蔵省との折衝を急ぐとされております。この点は、先ほどは、いまのところでは規模もわからぬと、これが、いま言ったのが、私はおそらく主税局長の言う、経済が非常に本年は流動的でというのは、このことをさしているんだろうと思いますけれども、その財源の手当ての問題で、赤字国債までほんとうに財政法四条を改正してもお考えになるんですか。どうなんですか、そこは。
  224. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 赤字公債の発行の問題につきましても、先刻来円問題について、円の再切り上げは私はあくまでも避ける、避けてまいりますと、こういったのと同じように、赤字公債については私は発行するつもりはございません。その点をはっきり申し上げておきます。
  225. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、いわゆる財源難ということにならざるを得ないようになってきますね。日本列島改造論を含んだ新全国総合開発の改定がなされる、それに基づいた予算ということになると、道路財源だけでも倍も必要になるということになってくる。そうすると財源がなくなるわけですよ。どのようにするんですか。しかもギャンブル税はきまりません、あるいはガソリン税引き上げとかなんとかいう、そういういままでの大蔵省の持っていた税構想は見送る、こうなりますと、一体財源はどこに求めるんでしょうか。その構想といいますか、ガイドラインはないんでしょうかね。いかがですか。
  226. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) それは、いわゆる四十八年度予算をいかなる内容を集めて組んでいくかということに、私はおのずから結論がそこから出てくると思うのであります。  なるほど、列島改造だ、いや高福祉国家建設に邁進するんだといったところで、あれもこれも、これもあれも、全部が全部並べていくようなことでできるんでしょうか。私は微力にしてそれはできないと思っておるんであります。重点的にこういうもの、こういうものだけはひとつあくまでも、いままでの考えられた問題のうちでぜひ大写しに、プロジェクトならプロジェクト、これとこれだけはやる、全国で、一県に一つずつぐらい、こういうことだけはあくまでもやるとか、あるいはいわゆる身体障害者その他老人対策の問題にしましても、これだけはひとつやりたい、ほかは前年よりは若干の手直しでしばらくがまんしてもらえぬかという方法だって私はあると思うんであります。また、それをやらないで、いま日本列島改造だという名前が日本じゅうの、あらゆる地域、島嶼、山間、平野部、みんなにわたってあらゆる公共事業をやろうと思ったって、それはかりに金が許しても、実際問題として、先ほどからお話しのような労力にも欠けるでしょうし、それに必要な資材、機械等も足りない問題も起きましょうし、私はそうあれもこれもできるものじゃないと思うんです。  だから、そこでこれを公平になるべく、われわれの浅い知恵かもしれませんけれども、全国各地にそのよい新しい福祉の仕事を典型的に各地に一つずつこしらえるとか、そうしてそれにみなが、よし来年はわれわれの地域でも今度はこれをやってもらおうと、こういうふうにやっていくんじゃなければ、一億国民を一度にどうこうしようったって、これは私はできるものじゃないと思うんです。だからそこのところが私は、あるいはおまえはのんき過ぎるとお考えになるかもしれませんけれども、そう大きいことを望んでやろうと思っても、どなたがおやりになろうとしてもできないんじゃあるまいかと、私はそういうことで考えております。ついては、その問題についていずれそれぞれ上に立つ方もございますから、そういう方たちに十分意見を申し上げ、そしてまたとどまるべきところは、とどまっていただかにゃなるまいと、私はそう信じております。
  227. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 非常に、だいぶ大臣がずばりと自分の御心境を話されたんで、私は納得してきました。そうなると、はっきり申し上げて、選挙含みということでいろいろな増税が見送られると、こういうことで、しかも、赤字公債は出さぬということになれば、財政規模の拡大はそれほどでないということにならざるを得ない、こういう方向だなあというふうに私は了解せざるを得ないのですけれども、そういうような大体のアウトライン的な考え方、そんなことでよろしゅうございますか。
  228. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御賢察におまかせしたいと思います。
  229. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、これは税の問題で、いろいろ言われております、いままで論議に上がってこないんでありますが、酒の、いわゆる清酒の税金の改正の試案がことしの六月に出ております。これは、いままでの特級、一級、二級というのをやめて、特級と一級だけ売れて、二級があまり売れないということから、それをいろいろ考えて、そういうものをやめて値段に価格分別の、従価税というんですか、価格分別に税金を課していきたい、価格に従う税をかけたい、こういうようなことで言われているのでありますが、この辺のいわゆる酒税改正についてはこれは行なう構想なのか。また、いまやるとすれば、前回発表といいますか、一部漏れたそういう構想でこれは固まっていこうとしていらっしゃるのか、その点ひとつ伺いたいんです。
  230. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 酒税の仕組みの改正の問題は、かねてからの懸案でございますので、何とか切りかえを考えるべきではないかと思っております。ただこれは、別にいわゆる歳入確保といいますか、税収をふやそうということよりは、ただいまお触れになりました級別の制度というのは、どうもいろいろぐあいが悪い点があります。それからもう一つは、米の価格なり人件費なりが上がっていった場合に、どうしても小売り価格が何年かに一ぺんずつ改定があって上がっていく。その間において、税は従量であるということになってまいりますと、小売り価格中の税割合が下がってくる。上げるだけは酒屋さんのほうに全部入っちまうということがありまして、必ずしもいわゆる増税を考えているわけではないんでございますが、どうも制度として現行制度には是正すべき点があるのではないかというふうに考えております。ただこれを直しますことは、実は一般的な問題のほかに、各種のメーカー間の利害の調整が非常に複雑になってまいりますので、これはまずまず関係業界の大多数の、何といいますか納得のできるものでないとできません。で、そこらがまだ業界のほうのいろいろ地域であるとか規模であるとか、そういうことによってそれぞれお考えも違うようでありますので、かなりの時間がかかる。したがって、少なくとも四十八年度にはちょっと間に合わないのではないかというふうに考えております。
  231. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 前の大蔵省の構想の中では、いままでは課税標準から、製造業者からのいわゆる販売価格の中に入っているリベート代であるとか、あるいは運送費、容器の包装費、こういうものを控除されていたのが、今度は控除しないようにしようという構想がある。小さい容器のものが特に安くなるという、逆に言うと小さい容器のものが高い酒の税金がかかる、こういうような構想になっているわけですけれども、その辺の考え方をもそのままずっといかれる予定ですか。
  232. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ただいま御指摘の二点は、筋としてはそういうことではないかということで、一種の試案を関係の方々にお示しをしたわけでございますが、長い伝統があることでございますので、なかなかそれについていけないというのがいまの業界の方々の意見でございます。なおよくその辺は調整をしなければならぬということで、もう少し、もう一ぺん白紙に立ち戻って考えてみたい。いずれその辺のようにいくか、そういう切りかえをやめるか、そこはどちらともまだ申し上げられませんが、もう一ぺんよくそこら辺は話し合いをしていきたいと思っております。
  233. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もう一つは、私どももこの税金の改正は相当慎重にやってもらわないとまずいんじゃないかということがあるわけです。たとえばいままで売っている二級酒などは、どうしてもメーカーものに対しては、地場のお酒というのは売れないわけです、地酒は。したがって、販売店に製造業者から出したときにすでに安くしております。それが今度はそのままいわゆる小売りとして最終お客さんのほうにリベートとして安く売るという考え方をとっているわけですから、それがまた含まれないということになると、これはまた小さいところを圧迫する感じ。その点で慎重な考えをしてもらいたいと思います。  それから例のこの中には税率の問題まで全部出ておりまして、一・八リットルというか、普通の一升びんですか、それで三百六十円以下が四五%、四百五円以下が八五%、四百九十五円以下が一二〇%、四百九十五円をこえるものは一三〇%の税率をかけるという構想案があるんでありますけれども、この辺の税率や何かについても、いまの局長答弁から見て白紙状態になるということなんですか、それとも、この辺は変わらないんだと、こういう感覚なんですか。
  234. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) それはこの案全体が実はごくごく最初の第一次案といいますか、試みの案のまた試みの案ぐらいのところで、いわゆるたたき台という意味で出したわけでございまして、その率も従価にかげながら、かつ税負担を、現在の酒税収入は増もない減もないということであれば、そういう率になるのではないかという議論をしていただくような上での、感覚がわかりやすいように率を示しただけでございまして、そこらは十分考え直さなければ——考え直すというよりは、議論が詰まってまいりましたならば、もっと詰めて議論してみなければならぬというもので、この点についてはあまり率そのものに多くの意味を持っておらない状況でございます。
  235. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がないようでありますから、最後に自動車重量税の問題でありますが、これの増税構想が出ています。お話によれば、いわゆる今度の列島改造論で道路財源が倍も必要だということで、そういうことから自動車重量税を上げると、こういうような話が出ていた。またその構想も検討をされていると思いますけれども、この点はどういうふうにいま考えているのか、大蔵省の検討状況を言ってください。
  236. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 自動車重量税は、昨年の十二月から始まったばかりでございます。でありますので、現在の負担関係からいいまして、それがどういう関係のユーザーの方々に影響があるかというようなことも十分つかめておりません。そこで、いまそれを議論するにはまだややちょっと早いという段階でございます。ただ、ただいま御指摘のように、道路計画改定しようかという話が建設省のほうから出ておりますので、道路計画改定に伴ってその財源措置について何らか対策考えなきゃならないということになりましたならば、やはり重量税の問題も十分検討の対象になる問題だというふうに思います。私どもは、検討の進捗状況ということでございましたが、今日ただいまの状況では、やや道路計画のほうの進行状況待ちということで、こちらは特に詰めて議論するということはいたしておりません。
  237. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣、私は先ほどの、自民党の政調のを取り出して申し上げたんでありますけれども、あの中にガソリン税の値上げを見送る、いいと思うんです。自動車重量税の場合もこれ以上重量税が高くなればもう響いてくるのはトラック運賃です。トラック運賃に響けば間違いなくそれは——中小のほうが七〇%以上ある。二十台以下持っているところがトラック運送の七〇%、八〇%をこえていますから、そのまんま間違いなく価格にくることは間違いない。物価を押し上げる最大の元凶になるんじゃないかと、そういう気がしている。そういう点で、この点は自民党の政調会に同調するわけじゃありませんけれども、はっきりと自動車重量税等についてはこれは上げないというふうにしてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。その点をお伺いして終わりたいと思います。
  238. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 増新税の問題につきましては、ただいま事務当局はもちろん、内閣にありまする税制調査会におきましてもいろいろと御研究を願っております。したがいまして、財源の都合等によってあるいは忍びがたきを忍んで考えなければならぬ場合も起こるかもしれませんが、しかし、なかなかこの問題は大きな問題でございまして、仰せのとおり軽々に決意することは骨が折れる問題だと思っております。
  239. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣、いま忍びがたきを忍びと、そういうところに使わないで、はっきり申し上げて、忍びがたいのは国民のほうになるわけです。そこを一つ大きな、国民生活とか物価影響するものとかということ、そこのところを基準にして考えていただきたい。大蔵省が忍びがたきを忍ぶのはそれは簡単でありますが、国民のほうは忍びがたい以上のものを忍ばなければならない場合が出てくるわけでありますが、そういうところはもっと考えてもらわなければいけない。その点私の要望を申し上げて質問を終わりたいと思います。
  240. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 先ほど来の議論と重ねての御質問で恐縮ですけれども、円の問題を中心に二、三御意見を伺いたいと思います。  まず最初にお尋ねをしたいのは、このいわゆる円の問題について大蔵省としてこれをどの程度差し迫った問題としてとらえておいでになるのか。従来、通貨調整効果は二年ぐらいかかるんだという言い方をそのままうのみにすれば、来年の暮れまでということで、いまから考えて一年少々ということになります。かりにたとえば先ほどのお答えのシュバイツァー専務理事が、来年になればということをしゃくし定木に考えれば、あと二カ月少々ということになります。それやこれや時期の問題をここで云々されることはむずかしいと思いますけれども、どの程度せっぱ詰まった問題としてお考えになっているのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  241. 林大造

    説明員(林大造君) 円の問題午前中にも御説明いたしましたとおり、現在直ちに差し迫っている、そういうような圧力を感じているわけではございません。ただ、円対策として打ち出すいろいろの施策は、いずれも効果をあらわすのに時間がかかる問題でございます。したがって、その差し迫った時期に着手したのではおそいわけでございまして、差し迫る前から十分にその効果があがるように、十分前広に取り組んでいかなければ、いざというときに間に合わない。したがいまして、現在財政面を含めましてその円、いわゆる円対策として八項目、七項目に引き続きまして、現在経済企画庁中心になって取り進めております問題は、決定するのは差し迫って必要である、そして実行に着手するのは差し迫って必要であるというふうに存じております。繰り返しますが、円に対する圧力そのものが海外から差し迫って急に働いているわけではない、ただ私どもがアクションをとらなければいけない時期が差し迫っている、こういうふうに存じております。
  242. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの点についてもう少しお伺いしたいと思うのでありますが、IMFの総会においでになった印象として、たいへん円満であると、それで会議がなごやかでお互いに恒久的な国際通貨体制を築いていくために努力をしていこう、そういう零囲気であったという御報告でございましたし、そういった面確かにあったんだろうと思うんですが、先日私があるアメリカの雑誌を見ていた感じでは、どうも少し別な感じもあったんじゃないか。若干御紹介しながら御所見を承りたいと思うんですが、どういう扱いになっていたかといいますと、ニクソン大統領がこういうあいさつをした、抜き書きをしてありました。読みますと、第二次世界大戦が終わったとき、われわれはかつての敵、エネミー、かつての敵を同盟国と同様に援助し、その結果彼らは世界市場でわれわれと競争するまでの経済力を持つに至った、いまこそわれわれは貿易の相手方に対し、平等な、しかも公正な競争を期待したい。同時に、将来における健全な経済的競争への道を明らかにするために、通貨制度の徹底的な改革が必要だ。これは私が意識的にこのどぎついところを抜き出したのではなくて、この順番で雑誌に抜き書きをしてある。各国代表の見解がそれぞれ簡単にまとめてありましたけれども、失礼ですが、大臣の扱いは非常に冷ややかでありまして、どう書いてあったかといいますと、日本の植木蔵相はこう言った、為替レートの変更に客観的基準を持ち込むことを反対しながら述べたことは、いかなる為替レートが適当であり、現実的かの問題は、基本的に各国政府の判断にゆだねられた問題である。わざわざこれについて解説がついておりました。これはことばを返して言えば、世界市場における競争力をそこなったり、本国に利益をもたらすことを妨げるような力をIMFに与えてもらっては困るという言い分でした。貿易を巨大化し、黒字をため込んでいる日本こそシュルツが提案した輸入課徴金の第一目標である。  その次にシュルツがどう言っているかといいますと、これは御承知のとおりに、効果的、タイムリーな国際収支調整ということを掲げながら、もしやむを得ないんだったら交換請求権停止もしくは課徴金である。しかも、皮肉なことは、その特集の最後に、そういう意味ではかつての敵国イタリアとドイツの代表の印象が付記してありました。どう書いてあったかといいますと、ドイツは、私がここに来たときよりもいささか楽観的な気持ちで帰れた。イタリアがどう言ったかといいますと、交渉の雰囲気はたいへんよろしい。だれもがいまや世界が小さくなりつつあることを認識しつつある。これを見ますと、まことにもって日本だけが異様にかけ離れている。何も日本をねらい打ちにしているつもりはありませんけれども、たいへんすわりずらい総会ではなかったかという印象がするんですが、実際の御所感とあわせていかがでしょうか。
  243. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 人おのおの見るところの違う、あるいは意見の違うところがあることはやむを得ません。しかしながら、私は先刻来、あるいはいろいろな席で御説明いたしておりますとおり、非常に多国間のいわゆる国際通貨改革の問題が各方面の合意のもとに進行を始めておる。そして、それぞれの批判は、それはそれぞれの間で違うところが起き得ると思いますけれども、しかし私は、やはり問題としては、その筋道は正しいのである、お互いに妥協、互譲の精神のもとに国際間の世界は一つだという考え方通貨問題の解決に当たろうじゃないかというこの合意がりっぱに私はできていると感じておるのであります。
  244. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重ねてお伺いするようですけれども、問題は、その合意の内容ではないかと思います。確かに今回のIMF総会を伺っておりまして、従来と一番きわ立った違いというのは、どういう国際通貨体制をつくっていくかについて大まかながら合意の線が出かけてきた、こういうことだと思うんです。じゃその合意というのはどういう線に沿って煮詰めつつあるのかというと、一番目につく一つは、効果的、タイムリーな国際収支の調整、しょっちゅうひんぱんにレートを変えてくれ、これはほとんどの国が賛成をいたしました。その意味で国際合意が育っている。ただし、日本だけがこれに反対をしている。少なくとも反対の意思表示をいたしました。したがって、世界は一つなんだから一緒にやっていこうでなくて、心の中で日本として、じゃ、どうしていいか。先ほど円の再切り上げは絶対にしないと真情をおっしゃいましたけれども、それと全く対象的な合意、すなわち効果的、タイムリーな国際収支の調整ということは、IMFの総会で論議されて、大多数の国はこれに賛成した。それでもなおかつおっしゃるように合意が求められればということになるんでしょうか。
  245. 林大造

    説明員(林大造君) 先ほどのお話にございましたとおり、ニクソン大統領の演説の中で私どもが感じました点は、これは各国によっていろいろの意見がございますが、国際収支の問題に関連いたしまして日本が求められているのは、現在はレートだけではなくて、むしろレートよりも投資、貿易の面でいろいろとなすべきことが多いという点を感じ取ってきたわけでございます。また、植木大臣が話されました演説の中で、レート調整につきまして話された部分があるわけでございますが、このレート調整を国際収支の黒字、赤字の調整過程でいかに役立てるかという点につきましては、各国非常に意見が分かれていたわけでございまして、ヨーロッパとアメリカとの間におきましてもこの点については非常に意見の相違がございました。早目にそのレートを動かせという意見、従来よりも弾力化するほうがいいという意見は比較的多かったように思いますが、しかし、アメリカの主張しておりますような、国際収支に基準を置くような非常な表面的な基準にのっとったレート調整のやり方につきましては、各国どちらかというと留保をし、どちらかというと反対の意見を述べる国も多かったわけでございます。  またシュルツ財務長官の演説の中に、黒字国がどうしても必要な調整措置を講じない場合、その調整措置の中には、国内措置その他いろいろな措置があり得ることをシュルツ長官は認めつつも、最終的に輸入課徴金の問題を示唆された部分も確かにございます。しかし、これは将来の問題として一つ考え方を提起したものでございまして、この制度が現実に動き出します場合、シュルツ長官の意見がどういう形で取り入れられますか、またそのときに日本が依然として黒字国の立場に立ち続けておるかどうかという点もわからないわけでございます。で、いずれにいたしましても前回の、前回と申しますか、九月の末のIMFの総会におきましては、今後の国際通貨制度を建て直していこうという雰囲気が非常に積極的に見られたわけでございます。この安定した国際通貨制度の基礎の上に立たなくては世界の中で生きていけない。日本としては大いに歓迎すべきである。その場合に日本としては主張すべきは主張し、また協調すべき点は協調していくということが大切だと思いますが、いずれにいたしましても、今後いわゆる二十カ国委員会で議論をされていく事柄だと思います。  私どもといたしましては、先ほど、最初に申し上げましたとおり、現在直ちに圧力を強く感じておるわけではないけれども、しかし、効果があらわれるのには時間がかかる種類の措置を早目にする。さらに投資あるいは貿易の面で日本に求められておるところは、世界でこれだけの大国になった以上は、各国の要請にこたえていくのが道であるということで進んでまいっておる次第でございます。
  246. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのレート調整の問題についてどういう基準あるいはどういう談合の仕組みでやるかということについて意見の分かれておることはただいまの御答弁のとおりだと思います。ただ問題は、従来はあまりレートはいじらないというこことが、近々はずっと変わってまいりまして、今度のIMFの総会では、適時な、しかも効果的なレート調整ということに今度レート調整の合意が集まったかに見える雰囲気が強くなってまいりました。それは申し上げるまでもありませんが、今度の理事会に出した報告、これはあくまでもたたき台だと申しておりますけれども、その序文の中に書いてある内容を要約して申し上げれば、いろいろ時間がかかる議論かもしれないけれども、各国の対外不均衡を積極的に是正することなど、実行可能なものについては、制度全体についての結論が出るのを待つまでもなく、逐次実行していく必要がある。こういう認識は確かに育ちつつあると思います。そういう中でお伺いしたいのは、従来フランスはまず第一に交換性の回復であるということを主張してまいりました。今度は従来の主張を変えて、第一にレート調整でよろしいという主張に変わりました。この背景はどう御判断になりますか。
  247. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま栗林委員御指摘のとおり、今回の総会におきまして、ジスカールデスタン・フランス大蔵大臣は、三段階にわけて国際通貨制度の再建の問題の作業を進めていこうではないかという提案をいたしておるわけでございます。また、その段階の順番といたしましては、御指摘のとおりまず国際収支調整の問題、その中にレート調整の問題が入るわけでございますが、それから着手していったらどうかという提案をいたしております。で、この提案を受けまして、いわゆる二十カ国委員会でどういう順番でその話を進めていこうかという議論も実は内々行なわれておるわけでございますが、これがIMFの理事会の国際通貨制度改革に関する報告書の中に述べられておりますとおり、国際通貨再建の問題はおのおのの項目が他とからみ合っておりまして、一つの問題だけを取り上げてその結論を出すのはむずかしいということが書かれておりました。それを受けまして、IMFの理事会の報告書に書かれましたようなアイテムを一つ一つ取り上げてまいりまして、そしてその全体のからみを十分に見きわめて、できるだけ早い時期に改革のアウトラインについて合意に到達しようではないかということで作業が進んでいる段階でございます。その段階の中で、おそらく、早目の弾力化したレート調整がいいという意見も出ているわけでございますが、しかし、この問題と資本取引の撹乱的影響をどういうふうに防ぎとめていくかどうか、あるいは国際準備資産として金とSDRと、それからドルのようなものとの間をどういうふうに位置づけていくかという問題、これも実は非常にからみ合った問題でございます。その問題とあわせて検討が進められていくというふうに存じております。
  248. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 こういう見方が間違っているのかどうかお教えいただきたいと思うんですけれども、いま最後に言われた準備通貨から準備資産へという道へいくかどうかは別にして、とにかくその方向なんだ、いろいろ議論はありますというような見方で、従来アメリカがフランスの主張をしりぞけてきたものが、準備通貨から準備資産へという方向については何らか折れたような印象を感じないか。そこで、どういう段取りで準備資産に変わっていくかというと、それは今後の議論だと思うんですけれども、どちらにしてもはっきりしていることは、今日のようなドルの過剰流動性をごかんべんいただきたい、したがって、各国の国際収支にしても、あらかじめ合意された資本収支目標の達成という新しい計画を、これは報告書の中に出ております。それを踏まえながら、お互いの決済というのはなるべくちびちびやろうというような発想があるのではないか。そうしますと、どういう準備資産を考えていくのかということを詰める前の段階として、いまの異常な黒字修正を含めたレート調整は先決問題として意識されてきている。で、今度のナイロビで九月に開かれる総会までにはということばがたしかフランス代表の提案の中に入っていたと思いますが、その意味で非常に急いでいるのではないか。その点はいかがですか。
  249. 林大造

    説明員(林大造君) 非常に御研究になり含蓄の深い御質問でございますけれども、しかし、そのレート調整を弾力的に行なうということにつきましても、それが切り上げと切り下げとのバランスに、一体金とSDRその他に対しましていかなる方向に向かって行なわれるかという問題、それに伴って起こってまいります資本取引の撹乱的影響をどういうふうに防ぐかという問題を切り離して、一つだけ取り上げて解決することはなかなかむずかしいのではないかというふうに存じております。で、今後の二十カ国委員会の議論の過程において、切り離し可能であるという結論が出ないとあらかじめ断言してしまうわけにはいかないとは存じますけれども、しかし、切り離してそれだけを、何らかの合意の対象にするということは実際問題としてなかなかむずかしいのではなかろうかというふうに存じております。
  250. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その辺は専門家のおっしゃるとおりだと思います。ただ私がこうお伺いする理由というのは、八月の末に用事でアメリカに参りました。両院経済合同委員会のある担当の人に会って、日本の円問題、現状のままだったらどう思うかと聞きました。現状のままだったら円の再切り上げはあるでしょうか、その答えはもちろんそのとおり、アブソルトリー・トルーまさしくそのとおり。一体いつまでか、奇しくもその人が来年九月までだ。この場合頭の中にはナイロビの総会があったのだと思います。これがそうなるかどうかは今後の国際的な議論の過程できまってくることですから、これ以上申し上げませんけれども、ただ私が一つの認識としてお伺いしたいのは、円の再切り上げはいやなのだ、したがって、こうしたいのだと言いながら、実は新しい国際通貨体制をどう組み立てていこうということで逆に日限が切られるのではないか、その意味でからんだ問題としてつかまえていかないといけない。何ぼでも時間かけたらいいというのではないでしょうかということをお伺いしたい。
  251. 林大造

    説明員(林大造君) 実は私どもがIMF総会から帰ってまいりまして、貿易、投資その他の問題について非常に急いで事柄を進める必要がある。大蔵大臣もたびたび閣議その他でおっしゃっておられますが、おっしゃっている背景には、やはりじんぜんと日を過してはいけないという認識があるわけでございます。で、いろいろな方がいろいろな御意見を言われるのは、これはまたそれでよろしいわけでございますけれども、私どもといたしましては、円の再切り上げ回避のために早急に対策を立てるべきである、またそれが日本の国益にも合致するゆえんであるというふうに信じまして、極力努力をしている次第でございます。
  252. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの「早急に」というところをもう一度確認でお伺いしたいのですけれども、とにかく通貨調整効果というのはどのくらい出るか、いろいろきまった意見はないのでしょうけれども、二年前後と言われております。二年間じっと待っていてくれるのだろうかといいますと、日本の打つ対策というのに、海外からのよほど信頼がない限り、二年じっと待ってはくれない、その意味で、道半ばにして議論は出てくるのではないだろうか。この間の箱根における交渉にしてもそうですけれども、やっぱり感じさせられたのは、日米二国間の関係になってしまったのですが、通商問題に対する信頼の欠除ではないか。その意味で二年間の間に方向を出せばというふうな、たまたま二年たったらある日突然じゃなくて、その間にどんどんと様変わりしなければならないし、道半ばでさらに一年すぐ先を読めるようにしなければならない。そう考えて去年の暮れの通貨調整から考えますと、「早急に」とおっしゃった意味は、まことにもってせっぱ詰まった、いますぐにでもやらなければいけない危機感を持ったことばだと思うのですが、そう理解してよろしいですか。
  253. 林大造

    説明員(林大造君) とるべき施策は時間を待たずにできるだけ急いでやるべきであるというふうに考えまして、処理いたしております。
  254. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これ以上は、二十日に御検討になるということですから、こまかくはお伺いいたしませんし、どういうものをやったら、どんな効果があるのだということは、これまでもほかの委員から質問がありました。  ただ最後にしろうとの意見として聞いていただきたい気がするのは、どういう対策を打つにしても、必要な三つくらいのポイントがあるのではないかという気がしてまいります。  一つは何かといいますと、向こうの、シュルツ政策に対する日本の信頼度の低さという面もあります。  もう一つは、そう長い期間かけても、今日の国際通貨対策をほうっておくわけにはいかない、やっぱりこれも急がなければならない、どちらにしたって、いつかはわからないけれども、きわめて近い将来にある日限が切られてくると覚悟しなければならない。そうすると、これから打つ対策というのは、即効性がなければいけないのだ。それからまた、単に努力すればいいだけではなくて、結果として見せてやらないと、何の役にも立たない。その意味で確実に結果に結びつく対策でなければいけないと思います。  もう一つは何かと言いますと、これから国際会議の中で、先ほど大臣も譲るべきはお互いに譲りながらという御発言がありましたけれども、残念ながらこれまでの国際交渉もそうでしたし、ギブ・アンド・ティクの関係で交渉を考えますと、日本としてオファーする材料というのはそう幾らもあるわけではない。むしろないと言ったほうが実体に近いのかもしれない。そこで今後の日本の国際交渉力を高めるように、その強化に結びつくような対策でないといけない。というのは、国際的に見てわかる対策だし、逆に言えば、公正な対策ということかもしれません。  その意味で、いまいろいろ言われている、新聞紙上で伝えられております円対策というものを見ますと、この三つに合致したものというのはあまりないのじゃないか。しかも、数千億の追加財投の問題にしても、これまでも景気がよくなれば、輸入がふえるのかということについて、これもアメリカは期待し、失望してきたわけですから、そのままでかりに日米関係の問題として効果に結びつくかというと疑問な気がいたします。その意味で二十日の御議論は、そういう時間も残っていないことですから、それこそお国のためにということで思い切った対策をぜひ打っていただきたいと思います。  以上申し上げて質問を終わります。
  255. 渡辺武

    ○渡辺武君 初めに補正予算案について一、二点だけ伺いたいと思います。  先ほどの御答弁の中で、補正予算一般会計の規模は約六千億円前後、それでまあ、何といいますか、実行の規模ですね、これが一兆三、四千億円になるだろうというような御答弁がありましたけれども、当初予算で組まれた予備費がまだ残っていると思うのです。それから、既定経費の節減もあるだろうと思うんですね、そういうものを差し引くと、実際の補正規模一般会計の、これはどのくらいになりましょうか。
  256. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 予備費を当然今度の補正では取りくずしまして使う予定でございますが、予備費の取り分を約一千億円と見込んでおります。  渡辺委員の御質問の前に、先ほど交付税の話が出てまいりましたが、今度は、交付税とか、それから既定経費の節減がまだ金額確定しない面もございますが、追加規模といたしましては六千億ということになります。
  257. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは、その予備費の使い残りも引き、既定経費の節減も引いたものが約六千億ということですね。  それでは、もう一つ伺いますが、先ほど税の自然増収約二千億円という御答弁がありましたけれども、それの計算根拠、これを伺いたいと思います。
  258. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 先ほどのを繰り返すことになりますが、二千億をこえる規模でございますが、主税局長こちらに向かっておりますので、そちらのほうから御答弁いたします。
  259. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 主税局長来るんですか。
  260. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 参ります。
  261. 渡辺武

    ○渡辺武君 じゃその前にひとつ、既定経費の節減は大体どれくらい見込んでおりますか。
  262. 吉瀬維哉

    説明員吉瀬維哉君) 約三百七十億と見込んでおります。
  263. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまの自然増収の計算根拠とも関係があるんですが、本年度経済成長率ですね、実質、名目ともにどのくらいに見ていらっしゃいましょうか。
  264. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 今年度成長率につきましては、さきに政府が決定をいたしました公式の見通しは、沖繩を含まないで、対前年度実質七・二%という見通しでございますが、最近の情勢を見ますると、この七・二%の成長率は十分に達成できる。むしろそれを相当上回るのではないかと見られております。しかしながら、まだ具体的に何%になるであろうかということは、企画庁中心といたしまして寄り寄り検討をいたしておるところでございまして、現在具体的に何%になるというようなお答えのできる段階ではございません。
  265. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ごろ、経済企画庁がことしの四−六月期のGNPの計算をしたのを見ますと、実質一一・七%になっておりますね、これを名目で計算してみますと、一八・三%ということになりますけれども、大体この辺を考えていらっしゃいますか。
  266. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは、いわゆるQEと申しますか、速報でもってほかの指標から第一四半期の数値を出しているのは御承知のとおりでございますが、いわゆる、何と申しますか、それを年率に引き直した瞬間風速は、いまおっしゃったような数字でございますが、しかし、そういった瞬間風速が第二四半期、第三四半期、第四四半期といくかどうかということはきわめて疑問が多うございまして、それは、いまの数字、いまの第一四半期の瞬間風速は年率としましては過大である、こういうぐあいに考えております。
  267. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省が当初予算案を編成するときに、このときの見通しですと、実質七・七%で、名目一二・九%という計算で当初予算編成されたと思うんですね、それからだいぶ景気回復のテンポは速くなってきましたがね、いま言った名目一二・九%というものよりも、もっと高くなるというふうに見て差しつかえないじゃないでしょうか、どうでしょうその辺は。
  268. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 政府が当初見通しを立てました数値よりは若干上回るのではないかと考えております。
  269. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは主税局長が来てからまたあらためてこの補正予算に入りたいと思います。  それまで、先ほどからいろいろ論議のありました国際通貨問題ですね、これについて伺いたいと思います。先月の十九日の大蔵委員会で、ちょうど大臣がIMF総会に出席される前でございましたので、私、現在の通貨危機の最も根本的な原因になっているアメリカのドルの危機、それの最大の要因が、アメリカのベトナム侵略を中心とする戦争と侵略の政策からきていることを具体的に数字をあげて大臣に申し上げました。また昨年八月ドルと金との交換性が停止されて以来、特に短期資金を中心として猛烈なドルのたれ流しが行なわれている。これも一つの大きな要因になっているということを申し上げました。そうして、現在の円問題も含めて国際通貨危機を解決する根本問題としてアメリカのベトナム侵略をやめること、またドルと金との交換性を回復することを公式の席で公然と申し入れるべきだということを申し上げました。そのときの大臣の御答弁は、根拠のある御意見なので機会があれば主張したいという御趣旨の御答弁がございました。で、すでにIMF総会も過ぎたわけでございますけれども大臣IMF総会でこの点を主張されたかどうかまず伺いたいと思います。
  270. 林大造

    説明員(林大造君) 総会の演説を準備する過程で仕事をいたしました関係で御説明申し上げますが、IMF総会の各国相互の演説というものは、特定の国を名ざしで批判をするというようなことは通常行なわれないわけでございます。したがいまして、もちろん日本に対しましてもどうこうという批判もなかったし、アメリカ自体を名ざしでどうこうということもない。ただ、現通貨制度の中で、アメリカのドルが特殊な地位を占めている関係上、国際通貨制度のあり方の問題についていろいろの意見も述べられたわけでございますけれども日本の植木大臣の演説の中では、どういうふうに申し述べられたかと申しますと、その点につきましては、国際通貨の安定のために各国が国際収支の節度について国内経済運営にあたって十分配慮すべきであるということを申し述べられているわけでございます。また、ドルの債務の増加をもって国際収支の赤字を決済し、処理するという問題につきましては、IMFの理事会から有益な報告書が出ておりますので、その点につきましてその方向を指示するという方向の発言を行なわれております。  アメリカのほうの演説におきましても、いわゆる資産決済、米国の国際収支の赤字をドル債務の増加によって決済するという方向でない、すなわち資産決済の方向を基本的には受け入れる。また国際収支調整にあたりまして、各国の政策の妥当性が重要な問題であるということを受け入れる演説も行なわれたわけでございます。したがいまして、ベトナム云々ということばはもちろん植木大臣の演説の中には盛り込まれていないわけでございますけれども、そこのあたりの論議は、IMF総会の場においてそれ自体にはないが、そのバックグラウンドと申しますか、国際収支、国際通貨制度の問題として十分実のある議論が行なわれたというふうに存じております。
  271. 渡辺武

    ○渡辺武君 主税局長が見えたんでそれじゃちょっと前の問題に移らしていただきます。  自然増収二千億、補正予算について先ほど御答弁がありました。その計算根拠ですね、これをお示しいただきたいと思います。
  272. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 先ほどもちょっと申しましたが、非常に経済の動きが早いものですから、いろいろ税収見通しも変わってきております。約一カ月前から大体二千億ぐらいは見られるのではないかと思っておりましたんですが、最近のいろいろな数値から見ますと、二千と三千の間くらい、三千にかなり近いところまでは見てもだいじょうぶではないかというような見当に立っております。その根拠はいろんな角度から言えるわけでございますが、一つは、経済見通しそのもの、成長率そのものが上がってきております。それから最近の、八月までの税収の進捗率からいいましても、かなりいい成績になってきております。その中で特に顕著に当初予算の見積もりと狂いが出てきましたのは、法人税と相続税について開きが出てきたわけでございます。もっとも法人税につきましては、今度の予算編成をいたしますときは、ちょうどスミソニアン体制がきまったばかりのときでございまして、何とも見通しの立てようがないというときでありましたものですから、四十六年の下期実績から全く横ばいということで、ほかに立てようがないということで横ばいということでいっておりました。案外ショックが小さかったのか、比較的その後順調にいっております。したがって、法人税が成績がいいわけで、最近までの状況から見ますと、法人税で相当の見込みを立て得るのではないか。それから相続税は評価がえが前に行なわれております関係もあり、近年数年来ずっと思ったよりも見込み額が出ておるわけでありまして、最近の税収見込みを前提としているんではないかと思っております。ほかの税目につきましては、まだまだいろいろ要素がありますので、いまの段階では見通しを立てることはまだ困難という状況でございます。そこで最も顕著なものでありますところの当初の見込み、いわば狂いが出ました法人税と相続税で積み上げ計算をやってみて、大体二千億か三千億の間、それもかなり三千億に近い見込みを立て得るのではないかということで、二十日までに補正予算がきまるということでありますので、私ども鋭意いろんな資料を集めてこまかい詰めをいまやっている最中でございます。なお相続税、法人税等の伸びの大きい一つの理由は、一つは金利が下がりました関係で延納に依存する人が小なくなってきておるものですから、収納率が上がってくるということもその両者に影響しておると思っております。
  273. 渡辺武

    ○渡辺武君 きょうは時間がないのであまり詳しくその点伺えないんですが、私どもも二千億というのはあまり低過ぎるんじゃないかという感じがしておったんです。というのは、景気回復が急テンポで進んでおりますし、先ほど高木さんも言われましたように、大体当初予算で法人税の税収見込みが四十六年度とほとんど同じ、こんなばかな話があるはずがないので、これはもう少し自然増収、余分にとれるはずだろうというふうに思っておったのです。大体成長率をどのくらいに考えて二千億から三千億という数字をはじき出されたのか、また税の弾性値ですね、税収の、これをどのくらいに見て計算されましたか。
  274. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 成長率のほうは、企画庁のほうで作業をしておられますので、その作業の詳しいことは聞いておりませんが、当初の実質七・二%という率がおそらく九%を若干上回るかどうかというようなことになるのではないかというふうに聞いております。
  275. 渡辺武

    ○渡辺武君 名目どのくらいになりますか。
  276. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) それはおそらく一四%台くらいにいくのではないかというふうに聞いておりますが、これまた並行的に作業中でございますので、私どもは実は成長率とは直接には関係がなくて、最近のそういう税収の足取りから、いま言ったような二千億ないし三千億という数字を引きずり出しておるわけでございます。成長率がまだ確定いたしませんので、したがって、そうやって計算しました結果が、弾性値がどういうふうになりますか、ちょっとまだ国民生産のほうの計算が、企画庁のほうの計算が出ておりませんものですから、最終的な弾性値の数字はわかりませんですが、ことしは弾性値を非常に低く見ておりまして、一・一くらいに見ておったと思いますが、弾性値としてはそう大きく動かないということではないかと思っております。それは一つには、やはり税収というのは景気よりもおくれてあらわれますから、成長率の変化ほどには税収は伸びてこない。ただむしろ法人税は一番響きましたのは、ショックが小さくて、ことしの三月期の租税収入が大きくなったということが影響しているわけであります。
  277. 渡辺武

    ○渡辺武君 いろいろ流動的で確定した御答弁をいただけないのですが、今度の補正予算について私ども大臣にひとつぜひ聞いておいていただきたいのですが、建設公債というように名がついておりますけれども、実質上やはり税収不足を補う赤字公債、こういうものが大量に出されて、それでこの予算が組まれる。これは明らかにインフレを激化させるものです。こういうものは絶対にやるべきではないと思う。しかし、いま伺ったところによると、税の自然増収、これは二千億程度じゃとても済まない。もっとたくさん出ることは私は明らかだと思う。したがって、この通常財源の範囲内でも、国民の生活を擁護するための緊急な施策というのは、今度の補正予算でも私はできると思う。高速自動車道路だとか、その他円対策を名目にした大企業本位の公共投資というようなことでなくて、社会保障の充実あるいはまた可能な限りの減税あるいはまた物価安定対策、こういうところに重点を置いた補正予算を組むべきだと思う。その点、どう思われますか。
  278. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 確かに一つの御見解だと思います。私はやはり今回の、来年度予算編成にあたりましても、一般的に所得税のいわゆる低階層といいますか、そういう方面における減税の要望も非常に強いものがございます。ところが所得税の減税をかりにやろうとしますと、やはりこれは恒久財源として大事な所得税でございますから、それにかわるべき適当なる税収を見つけるなり、あるいは普通歳入を見つけるなりということがどうしても必要じゃないかと思うのであります。そういう点を考えますと、かりに所得税減税である程度のことをやろうという決心がわが党におきましてもつきますれば、これに従ってやはり経常的に将来の福祉予算の非常に大事な財源でございますから、これの措置についても、また十二分に考えておかにゃならぬという問題が起きますので、私といたしましては、これはよほど気をつけてかからにゃいかぬ。お話のように、場合によってただ自然増収幾らかふえるだろうという見込みがついたからといって、直ちにそれを、建設公債を減らしていくということが、やり得るほどの仕事で、今度のいわゆる新しい公共事業を処理していけるかどうか、こういうところにもいろいろの彼此軽重を考えていかなければならぬと思うのであります。こういう点は非常に大事な問題でございますから、私としてはまだ容易にこの点について見定めを見るに至っておりません。その点、御了承願いたいと思います。しかし、御意見はまことに一つの御見解でございまして、尊重すべき御意見だと思います。
  279. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは国際通貨問題に戻ります。  どうもちょっとこま切れになっちゃって調子がおかしいのですけれども、先ほど林さんの御答弁で言われました経済政策でという主張の面で、第三の点だろうと思うのですが、ベトナム問題をいわば遠回しに触れたというような御趣旨の答弁をされましたけれども、これを見てみますと、なんでしょう、国際収支が均衡するかいなかは、まずもって各国の国内経済政策の運営いかんに依存している云々というところから大臣は話しておられるわけですね。それはベトナム問題は入っておりませんよ。ベトナム侵略戦争というものは、国内経済政策じゃないです。それは、あからさまに一国を名ざしで言えないというけれども、この問題はもう現在の国際通貨不安の最も根本的な問題です。これは、ドルと金との交換性停止と相並んで最も大きな問題ですよ。形はいろいろ考えなければならぬでしょう、おそらくね。かもしれませんけれども、しかし、この点をまっ正面から国際会議でも日本は主張するということをやらなければ、幾ら国内で、やれ円対策だというようなことでいろいろ努力したって——ほかの国に負担を全部ひっかぶせて、ほかの国の犠牲でもって解決させて、そして自分はベトナム侵略、インドシナ侵略をどんどんドルを使ってやっていると、こういう状態がある限り、国際通貨不安、円再切り上げの圧力を避けることはできませんよ。今後どうなさるおつもりですか。  先ほどのお話ですと、二十カ国蔵相会議、間もなく代理会議が開かれる。九月の総会までに大体今後の国際通貨体制のいわば基本的な点を煮詰めると、こういうことになっているわけでしょう。どういう方針で臨みますか、いまの問題も含めて。
  280. 林大造

    説明員(林大造君) 事務的な御答弁になりますのでおのずと限界がございますけれども、二十カ国委員会におきまして、国際通貨制度の新しいあり方を研究するにあたりまして、ベトナム問題を取り上げるつもりは私どもはございません。  で、やはりこれは、国際収支節度を国内経済政策運営にあたってどういうふうに順守していくかという問題は、これは国際通貨制度全般の長い間、今後十年、二十年の問題として当然議論に上がるべき事柄だと存じますけれども、しかし、御指摘のような点を二十カ国委員会において取り上げることは適当ではないのではないかと、事務的な話ではございますが、考えております。  で、二十カ国委員会においてどういうふうな主張をしていくつもりかということにつきましては、これは国内、国外、いろいろな点をかみ合わせながら考えていかなければいけない。今回のIMF総会におきまして、各国が口をそろえて申しましたことの一つには、新しい制度をつくるにあたっては、やはり国際協調の精神が大切である。各国おのおの主張すべきことは主張すべきであるけれども、しかしあまりにも一つの見解にとらわれていては、国際協調の実は上がらないということを申しております。その意味におきまして、私ども今回の委員会、総会で前向きの立場が示され、そして各国それぞれスタート台についた感じがございます。  で、IMFの国際通貨改革に関する報告書のアイテムを一つ一つ取り上げながら、私どもいつまでも黒字国基調の上にあるという前提で話をしてはいけないわけでございまして、やはり客観的に十年、二十年の立場ということで問題を取り上げてまいりたいというふうに存じている次第でございます。
  281. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは、実務的な問題じゃない。私は、アメリカとの間の国際関係の重要な問題だと思うのです。大臣の責任ある御答弁をいただきたい。
  282. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私は、先ほど林局長がかわって述べてくれましたとおり、私の原案に入っておりますその言外の深い意味を込めて私は言ったつもりであります。そうして、しかも向こうの財務長官も、われわれの考え方をある程度是認をしておりますし、すでに私より前に発言をしておりますが、是認をしております。こういう点から考えましても、そうした席で露骨にベトナム問題そのものを、このIMFの席上で私が口にすることは、これはなかったほうが私としては穏やかである、かように考えましたので、先ほどお答えさしたとおりの内容でもってお話をいたしました。これがすなわち私としてのあらゆる努力をささげての、精一ぱいの努力でございます。
  283. 渡辺武

    ○渡辺武君 精一ぱいの努力と言われますが、私はこの円の切り上げというのは、これは日本経済にとって大きな打撃にもなるし、とりわけ日本の勤労者にとって大きな打撃になることだと思う。そういう切実な問題を、アメリカに対してはまことに東洋の君主国の立場を、伝統を堅持をするというようなことでは、私は解決できないと思うのです。まあこの点は、今後もう少し議論したいと思いますから、次に移りますけれども。  こうして、国際通貨危機の問題を解決するにあたっての対外経済政策について、まあ一言で言えば、アメリカにあまりかどの立たないような態度で、結局のところはアメリカの黒字国責任論に押し切られて、そして日本の外貨の蓄積黒字を何とか解消しようということをやる。これでは結局、アメリカのベトナム侵略戦争に、これは経済の上で協力しているということにならざるを得ないと私は思う。しかし、もう時間もないので、いま政府がとっているいわゆる外貨減らし対策、これについて一、二点伺いたいと思う。  先ほど新しい円対策についてのいろいろ質疑がありました。私はもう時間がないのでその点詳しく質問いたしませんけれども、例の外貨貸し制度など、これをもうすでに実行されておるのをとって見ましても、ほんの一握りの大企業に、蓄積されたドルを利用させて、そして彼らにいろいろ原材料の買い付けを有利に運ばせるというようなことで、結局のところ、いままでと同じような大企業本位の外貨問題の解決政策というのが、いま政府のとっている政策の中心だと私は思う。ところがいまこの日本が、これほど外貨が蓄積されて大きな問題になっている。その根本原因は、先ほど申しましたようにアメリカ側にある、あるけれども、同時にいままでの政府及び大企業にも一半の責任は私はある。どこにあるかといえば、大企業中心高度経済成長政策、輸出第一主義、これで猛烈に生産を増強し、輸出を増強して、そして外貨をかせぎまくった。ここにも私は現在の円問題の非常に大きなまた根源がある。ここのところを根本的に解決しない限り、効果的な円対策、外貨減らしというのは私はできないと思う。大臣のこの間のIMFの総会での演説を読みましたけれども、今後の円対策としてこういうことを言っておりますね。「政府としても、今後は国民生活優先、社会投資主導型の経済転換するという基本線に沿って財政金融政策を運営していきたいと考えている。」こういう演説をされておる。国民福祉優先の経済転換するんだということを国際会議ではっきりと述べておきながら、何で外貨貸し制度なんていう大企業優先になっておるのですか。私はここのところを根本的に変えなければだめだと思う。ところで、いまこれほど外貨を蓄積させておる日本企業の国際競争力、それの一番大きな原因は、日本の労働者の低賃金にある。賃金を大幅に引き上げて、いまの低賃金制度を改める。これが一つ——まだほかにもありますが、一つ国民福祉優先の経済転換への道筋だし、同時にまたむちゃくちゃな外貨の蓄積、輸出増強、これをチェックする一つの道と思う。ここに私は資料を持ってきておりますが、通産省が出しました「世界の企業の経営分析」というのがある、これにこういうことをいっている。「粗付加価値構成をみると、わが国企業は欧米企業に比べて金融費用、減価償却など資本費負担の比率が大きく、これに対して欧米企業は人件費の比率が高いのが目立っている。」つまり賃金の比率が非常に低いということを通産省の公式の文書で出している。たとえば同じ本にこういうあれがあるんです。普通鋼のメーカーをとってみますと、日本は三社平均、アメリカはUSスチール、カナダはスチール・カナダ、西ドイツは四社平均とアウグスト・チッセン、これを比べているんですが、粗付加価値の中での人件費の比率を見てみますと、日本は三九・四%、アメリカは七一・八%、カナダは六二.八%、西ドイツの四社平均が六三・九%、まことに低い。ここに日本企業の国際競争力の根源がある。  もう一つ、この数字によりますと、租税公課の負担率ですね、これが日本の場合は七・四%、一番低いんですよ。アメリカは九・三%、カナダは一三・二%、西ドイツの四社平均が七・八%、アウグスト・チッセンが九・二%、こういう数字になっている。  ですから、一つには、賃金を大幅に引き上げること、もう一つは、租税特別措置などによる大企業に対する減税をやめて、正当に税金を取り立てること。特に法人税率が低いことは、これはもう大蔵省の方ですから、よく御存じだと思うんです。法人税率を適正に引き上げるという措置をとることが必要だと思いますが、どうですか。これは大臣答弁いただきたい。
  284. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま幾つかの例をあげて御所見を承りましたが、その点についてはやはり私もその理論において非常に共鳴するところがあるのであります。しかし、政治はただ共鳴したからといって、直ちにそれについていける場合もありましょうが、しかし、それができない場合がございます。できない場合は、私はやはりそれにかわるべき措置で、できるだけいろいろな考慮をあさってでもこの努力をして、そして円の再切り上げを避けることを努力しなければいかぬ、かような考え方でおるのであります。
  285. 渡辺武

    ○渡辺武君 通産省からお見えになっておられると思うので一、二点伺いたいと思うんですが、日本の鉄鋼とかテレビとか、あるいは自動車とか、これの国内価格と輸出価格、これは相当開いていると思うんですね、いまどのような状態になっているのか。  それからもう一つ日本の企業の公害防止費用の設備投資の中に占める割合、これも外国に比べて低いと思うんですが、その点どうなっておりますか御答弁いただきたい。
  286. 北村昌敏

    説明員(北村昌敏君) それじゃ、まず鉄鋼につきまして御説明申し上げます。  大手の高炉メーカーがつくっております鉄鋼製品の中で、中心的な品目の一つでございます厚中板につきましてまず御説明申し上げます。国内向けと輸出向けの値段でございますけれども、国内向けのほうは、メーカーが買い手でありますユーザーの工場まで持っていって、そこの工場渡しの値段で申し上げます。それから輸出向けのほうは、臨海の鉄鋼メーカーが輸出商社に渡すその値段で申し上げます。  そういたしますと、厚中板では国内向け、輸出向けとも平均三万八千円台という状況でございまして、ほぼ同一水準となってございます。で、一般的に申しますと、輸出向けの場合には、国内向けに比べまして、メーカーからユーザーの工場に持っていく輸送賃、これがなくて済む。それから受け取りの面におきましても、代金の回収時期が非常に早うございますので、この間の金利のメリットがある。それからさらに、その輸出の場合にはかなりロットがまとまっておりますので、それだけ単位当たりのコストがわりあい安い。以上の事情を総合いたしますと、一般的にトン当たりにいたしまして二千円程度輸出のほうが割り安になり得るわけでございます。しかるところ、先ほどの厚中板でございますと、ともに三万八千円台ということでメーカーが売っておりますので、実質的には輸出のほうが国内向けに比べて割り高になっているということが言えると思います。  なお、日本の鉄鋼鋼材の輸出のうち、非常に大きなウエートを占めております品目が、ただいまの厚中板、それから熱間圧延薄板及び冷延薄板、以上三品目でございまして、厚中板につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、熱間圧延薄板では、国内向けが三万三千九百円、輸出向けが三万二千六百円ということで、千三百円輸出向けが割り安になっております。それから冷延薄板の場合には、国内向けが四万三千九百円、輸出向けが四万三千二百円ということで、輸出向けが七百円割り安になっている、こういう実情でございます。  それからその次に自動車でございますが、乗用車につきまして比較的仕様が似通っております車種につきまして、国内の小売り値とアメリカにおきます国内の小売り値及び——これは推定値でございますが、日本のメーカーが国内向けに出します庫出し価格及び輸出FOB価格、これを対比して申し上げます。  日産でございますが、サニーの一二〇〇CCのツー・ドアデラックスという車種について申し上げますと、国内向けの小売り価格は五十五万円、それからアメリカの小売り価格は六十一万円。この車種をメーカーが国内向けに出します出し値は三十六万円、それから輸出向けが三十九万円、こうなっておりまして、若干、むしろ輸出向けのほうが割り高になっておりますのは、仕様の関係で少し排気量の大きい車種とか、あるいは特別仕様とか、こういった関係が伴うためかと思いますが、同水準ないし若干高目、こんな実情でございます。  それから次にカラーテレビにつきまして申し上げます。カラーテレビの場合には、非常に流通販売形態が複雑多岐をきわめておりまして、メーカーの国内向けの出し値は、正確にはとても把握ができないという実情でございますが、いまここに二十インチのカラーテレビにつきまして、国内の小売り価格、これは十三万五千円でございます。それで国内向けの出し値は非常に把握しにくいのでございますが、輸出向けのほうのFOB価格は、若干これは品物も違いますが、二十インチで六万五千円程度というので、非常にその間の差が大きゅうございますが、これは冒頭申し上げましたように、第一には、日本の場合、メーカーから大卸、小卸、小売り店というふうに非常に流通段階が複雑でございまして、そのマージンが非常に大きなものを占めていることが第一点でございます。それから第二点は、国内物には一五%の物品税がかかりますので、当然そこに差を生ずる。それからさらに第三点は、国内向けの場合には、内地におきます広告宣伝のための経費あるいは一年間無数の保証をしておりますので、これらアフターサービスの関係のコスト、こういったメーカー負担の販売経費をすべて含ませざるを得ないところ。片一方輸出向けには、そういったものは含ませる必要はない。向こうのほうの販売社が負担する。こういう実情で、非常に大きな差を生じておる次第でございます。  なお、円の切り上げがありまして、その際日本のカラーテレビの輸出につきましては、円建ての手取りを変更しないということでやっております関係上、ドル建ての輸出価格は、一六・八八%当然に上がっておるわけでございます。その関係から、アメリカ現地におきます日本製のテレビと、アメリカ製のテレビ同種のものを比較いたしますと、若干日本製のテレビのほうが割り高になっておりまして、カラーテレビの十七から十八インチのものをとりますと、日本品が三百ドルから四百八十ドル、米国品が二百八十ドルから三百九十九ドルということで、若干日本品のほうがドル建てでは高くなっております。こんな関係で、今年に入りましてからの輸出ももう一つふるわないというのが実情でございます。以上でございます。
  287. 島田春樹

    説明員(島田春樹君) ただいまの御質問のございました各国の公害防止投資比率の現状を簡単に御説明申し上げます。  各国、外国のデータというものは非常に私どもなかなか取れなくて、非常に不十分でございます。それから、ありますものも各国によりまして、公害防止投資の定義とか業種のとり方その他十分わかりませんので、正確な比較はできないので、その点は申しわけございませんが、まずデータで見ますと、わかっておりますのはアメリカとスウェーデンで、アメリカにつきましては、民間の調査機関の一九七〇年代の数字を申し上げます。それからスウェーデンにつきましては、スウェーデンの財務省の調査した数字というのがやはり一九七〇年代についてでございます。日本の場合は通産省で調査しております。毎年やっております調査の一九七〇年代の数字というのがございますので、それと比較いたしますと、通産省の場合は、製造業及び電気・ガスでございますけれども、これにつきまして資本金五千万円以上のものを対象に調査しておりますが、それのこの値段の対象業種の公害防止投資比率は五・三でございます。アメリカの場合には製造業平均が五・四でございます。それからスウェーデンの場合には五・七ということになっております。  それから、いわゆる公害型業種と言われるものにつきまして若干比較いたしますと、鉄綱の場合は日本が六・二、アメリカが一・三、スウェーデン六・三。それから非鉄金属では日本が七.八、アメリカが八・一、スウェーデンが五・四。それから化学でございますが、日本の場合は石油化学が四・五、その他化学が四・一でございまして、アメリカの場合は化学という一本にしまして四・九、スウェーデンが六・三といったようなところがわかっておる数字でございます。
  288. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣お聞きいただいてよくおわかりだと思いますけれどもね、鉄綱その他で若干は輸出価格と国内価格とほぼ同じというようなものもございますけれども、カラーテレビに典型的にあらわれている、外国に安売りしておいて、その分のもうけの減少を、これを国内に高く売って取り返す。これは経済学の教科書にはっきり出ている独占価格のもう一番典型的な形ですよ。いま通産省から報告があった、この数字の取り方も、私もう少し詳しく伺いたいと思いますけれども、まあ、同じ鉄綱でも冷延厚板や熱延厚板ですね、これなんかも優にこれは輸出価格のほうが下回っておるという状況が出ておる。こういう事態を打開する、そういう指導を政府がやっていく必要があると思う。そして、国内でのこの高物価問題を解決するために、国内の販売価格を安く引き下げさせるということが、私は大事だと思う。  それから、また公害費ですか、まあ、だいぶ最近やかましくなって、企業の公害防止投資も若干ふえ始めたということですけれども、それでも特に公害企業については外国よりも低い。しかも、これは日本の場合ですと、つい最近始まったばかりでしょう。ここに日本産業機械工業会の試算というのがありますけれども、これによりますと、最新の技術水準を採用して、理想的な環境を実現するためには、昭和四十年から昭和四十四年までの五年間に、公害防止装置の設置に投資された金額の四倍近く必要であるということをいっている。これはいままで全くその点日本の大企業はやってこなかったから、少なくとも欧米の水準に到達するにはこれくらい必要だという形での主張なんです。こういうことを負担すべきものを負担しない。しかも、外国には安売りするが、国内には高く売る。これじゃ外貨というものはたまりますよ。国際競争力つきますよ。こういう点を根本的に是正する。そうして初めてこの外貨問題の根本的な解決というものが私は出てくると思う。  もう一つ、最後に私一言だけ、もう時間がないので申し上げますが、日本の大企業は、外国の企業が負担しているいわば社会保障的な費用、これさえもろくに負担してないというのが実情です。たとえば、国会でこの間うちから大問題になっている健康保険について申し上げますと、イタリアの数字ですと、労働者一に対して資本家負担六十、フランスの場合ですと労働者六に対して資本家負担十五と、こういうことになっておる。日本は御承知のように大体において折半、五〇%・五〇%、こういう負担率になっている。これでは企業の肩が軽くて、それは国際場裡で大いに競争をやって勝てるということになるんじゃないでしょうか。まさに大企業にこそ責任があって、かれらの肩を軽くして、出すべきものを出させないようにして、そうして国際競争力をつけて、この外貨をかせぎまくらしておる。この高度成長、輸出第一主義、これを根本的に転換して、国民生活擁護の国民福祉第一の経済転換するんだと、外国の公式の席上で言明されておるわけですから、その点大いに努力する必要があると思う。いまやっている円対策何項目とか、外貨貸し制度とか、こんなものは何の役にも立ちませんよ。大臣としておやりになるおつもりがあるかどうか、この点を伺って終わります。
  289. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御高見として、十分参考にさせていただきます。
  290. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 本日の質疑はこの程度にし、これにて散会をいたします。    午後五時十八分散会