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1972-09-28 第69回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月二十八日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  八月三十日     辞任         補欠選任      土屋 義彦君     上原 正吉君  九月二十七日     辞任         補欠選任      佐野 芳雄君     戸田 菊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢山 有作君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 大橋 和孝君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 鹿島 俊雄君                 川野辺 静君                 高橋文五郎君                 橋本 繁蔵君                 山下 春江君                 須原 昭二君                 田中寿美子君                 戸田 菊雄君                 柏原 ヤス君                 高山 恒雄君    国務大臣        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        労 働 大 臣  田村  元君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁刑事局保        安部長      斉藤 一郎君        行政管理庁行政        監察局監察官   相沢 正文君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務省民事局参        事官       田邊  明君        法務省民事局参        事官       浦野 雄幸君        法務省人権擁護        局調査課長    加藤 泰也君        大蔵省主計局主        計官       渡部 周治君        厚生政務次官   増岡 博之君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省児童家庭        局長       穴山 徳夫君        農林省農政局参        事官       川田 則雄君        通商産業大臣官        房審議官     仲矢  鍜君        郵政大臣官房資        材部需給課長   北野 恒夫君        郵政省人事局保        健課長      坂東 定矩君        労働政務次官   塩谷 一夫君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (株式会社本山製作所における労働争議に関す  る件)  (週休二日制に関する件) ○社会保障制度等に関する調査  (堀木訴訟に対する神戸地裁判決に関する件)  (PCB及びBHCの回収処理対策に関する件)  (難病対策に関する件)  (農薬による人体被害に関する件)     —————————————
  2. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月三十日、土屋義彦君が委員辞任され、その補欠として上原正吉君が、また、昨日、佐野芳雄君が委員辞任され、その補欠として戸田菊雄君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 議事に先立ち御報告いたします。  すでに御承知のことと存じますが、昨日午後五時二十分、佐野芳雄君は神戸大学附属病院におきまして逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  同君におかれましては、本委員会委員として、また六十三国会から六十五国会には本委員会委員長として御活躍されてきました。  この際、同君の長年にわたる御功績をしのび各位とともに黙祷して御冥福をお祈りいたしたいと存じます。御起立願います。  黙祷。   〔総員起立黙祷
  4. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 黙祷を終わります。     —————————————
  5. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、仙台市の本山製作所労使紛争についていろいろ問題が起きておりますので、その関係を主として中心に質問してまいりたいと思うのであります。  本論に入る前に、過日の、四十七年八月十日でありまするけれども、当院の、参議院社会労働委員会の中で大臣所信表明を行なったわけであります。その内容について若干質問してまいりたいと思うんであります。で、八月十日の本院社会労働委員会大臣就任あいさつの中で行政重点施策一つとして、「合理的労使関係確立」を強調しております。この合理的労使関係の形成とは一体労働大臣は具体的にどういうことを考えておるのか、この点が一つであります。  もう一つは、同委員会で同僚の大橋委員質問に答えまして、これは参議院社会労働委員会会議録第一号八月十日木曜日五ページ三段の後段で本山製作所監督に対する大臣見解というものを明確に述べてある。若干引用いたしますと、このガードマンの「労働争議の場において不法あるいは不当の行為をするということはこれは断じて許すことができない」したがって、労働省はき然たる態度で臨む、こういうことを明言いたしておりますね。しかし、その後の、あとから具体的に指摘をしてまいりますが、労働省大臣の意思を継いで、誠意をもってあなたはあいさつの冒頭でもそういうことを所信として言われておるのですが、誠意と熱意と愛情と、こういうことを具体的に指摘をされておるわけであります。そういう内容はまだ現地ではいささかも対策としてとられておらない。そういう点についてどう一体考えておるのか。また、今後具体的に大臣としてはどういう一体方針で対処され、実施していくのか、この二点についてまず、大臣の明快な見解をひとつお伺いいたしたい。
  7. 田村元

    国務大臣田村元君) まず、第一点でございますが、私は先ほど申されたとおり、就任以来労使の合理的な労使関係確立ということを強く訴えてまいりました。これは、労使はあくまでも不信感を払拭して、そうして労使の間のコミュニケーション確立する、人間関係確立してもらうということから、とにかく自主的なよき労使の慣行を確立していってもらうということを願ったにほかなりません。でありますから、私は今後も労使コミュニケーション確立ということについてあっせんの労をとっていきたいと思いますし、まず、そういう発想から総理大臣労働界トップリーダーの会見もごあっせん申し上げたわけです。私のこの考え方は今後も強力に推進をしていきたいと、こう思っております。  それから、先ほどの本山製作所の件でございますが、私が受けました報告は、あれから直ちに地労委や県に対して労働省からいろいろと審議経過等も述べて善処方をお願いしたということを聞いております。それから、その間何をしたかということでありますが、そういうことを踏んまえてでありましょう、宮城当局経営者を呼んで、そうして強く円満妥結を要請しておるようであります。また地労委も大いに働いていただいておるそうであります。ガードマンにつきましては、先ほど私の答弁を要約しておっしゃっていただきましたが、労働争議のときに事故防止その他の理由ガードマンを雇うということについてのわれわれは文句は言えませんけれども、不当な労働争議介入ということは、これは断じて許すことはできないことでございます。これは許されないことなんです。特に地労委からもガードマンの撤収といいますか、それを強く要求したそうでありますが、半分ぐらいにはなったそうでありますけれども、なお完全に撤収されていないことはまことに残念に存じます。それは地労委がそういう勧告をしたのでありますから、地労委の言うことを聞いてもらったらよかったものをと思っておりますが、労働省としては労働省の果たし得る役割り範囲内においてでありますけれども、最大限の努力をしておると私は報告を受けております。
  8. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 具体的な内容について労政局長にまずお伺いするのですが、非常に労政局長誠実なんですけれども、今度の調査内容ですね。私は十日ぐらい前だと思ったんですが、労政局調査内容について相当分厚い報告書をいただきました。残念ながら内容が五点ほどわれわれの現状認識報告内容では違うのですね。この見解についてやはりただしておかなければいけないと思いますから、内容について具体的な面でひとつ質問しておきます。  その第一は、報告書の四ページの(5)でありますけれども、「五月三一日、午前八時すぎから、支部会社構内無届集会を開いていたところ、ガードマン約二〇名がこれを排除にきて、組合員ガードマン双方負傷者組合員八名、ガードマン一名)が出たとして、支部会社双方が告訴を行なった(警察では、ガードマンにつき六月二四日、支部組合員につき、七月一〇日、それぞれ宮城地検書類送検)。(六月一日以降も、ガードマンが常駐しているが、ガードマン支部との間ではその後衝突等トラブルは起きていない。)」こういう報告なのでありますが、その後再々起きているのですね。再々起きている。きょうは全体で一時間の質問時間でありますから、全部詳細に述べておるわけにいきません。その一、二例を具体例として申し上げておきたいと思うのでありますが、これはひとつこの場でお貸しをいたしますから見ていただきたい。   〔資料を手渡す〕  いまおあげしましたように、写真デモ行進暴力弾圧と一九七二年八月二日、これは組合写真をとり、実証ですね、その資料にありますように、写真と、それから傷害を受けた当該員からの陳述書、こういうものを全部添えて、それから組合がいまいろいろと伝単活動をやっておるわけでありますが、それと含めて本山製作所伝単活動全体の資料ですね。収録した内容。これによって明らかなように、「9月1日午前8時半頃菅野課長土屋主任が管理二課内で「昨日の事で二郷部長が話があるそうだから社長室まで来てくれ」と」こういうことを組合熊谷春男君という、この組合員を強引に拉致して、強制的に引き連れてその場で傷害事件をやっておるのですね。内容は読んでいただければ十分詳細にありますのでこれはひとつあとで詳細は読んでいただきたいと思うのです。  それからまた、この八月三十一日午前七時四十五分、これもビラまきに来ておったそういう組合員に対してガードマンが容赦ないこの暴行をふるった。こういうことがございます。あるいは八月四日午後一時等々ですね、そこに掲載しておる内容等について歴然たる傷害暴行事件というのですかね。そういうものが各所でそれ以後も発生をしておる。こういう内容であります。したがって、当該被害を受けた負傷者はそれぞれ市内の阿曽沼整形外科病院であるとかあるいは東北労災病院、そのほか、ここにはありませんけれども清水内科外科医院というのがございまするけれども、そういった医師に行きまして明確な診断書までとってきている。このぐらいの傷害事件というものはその後も大きく発生をしておるわけです。ですから、この四ページの(5)でいわれるようなこういう内容にはなっておらない。これが一つであります。  それからもう一つ報告書の五ページの(7)でありますが、時間がありませんから全部読み上げません。労政局報告書のいわゆる「宮城地労委公労使委員及び事務局職員が、本山製作所において労使双方より事情聴取を行ない、これに基づき、同地労委は、六月一五日、次の内容会社に対する勧告及び支部に対する要望を行なった。」ということでありますが、この報告書会社側に対する勧告組合に対する要望を同列に置いておりますが、内容はそういうことじゃない。この公労使委員勧告というものは会社に対してだけでありまして、組合には要望でありますから、そういうことにはなっておらない。ですから、この点の報告の誤りを第三点として指摘をしたい。  もう一つは(12)であります。七ページでありまするけれども、「九月一二日、支部組合員約八〇名が会社構内デモ行進を行なったが、その際これを制止しようとしたガードマンとの間にトラブルが生じ、組合員二名、ガードマン一名が負傷したといわれる。」、これは明らかにまた内容は違うのであります。これはさっきちょっと指摘をしましたように、職制が強制的に脅迫的に当該組合員を連れていってその途中でガードマン暴行を働いた、こういう内容でありまするから、この構内でのいわばデモ行進中に発生をしたという内容は、これは事実と違います。こういう点について第四に指摘をしておきます。  それからもう一つは、同七ページでありまするけれども、この中でガードマンが一時的に減っていると、こういうことをいわれておりますね。「会社は、引き続き、ガードマン会社構内に常駐させているが、その人数は、当初(約五十名)の半数程度に減少しているようである。」、こういうことですけれども、われわれが現地で明確に調査をいたしましたところ、決して減っておらない。それは一時的に若干減ったことはありますよ。しかしこれは減っておらないんです。五月二十日から六月二十日の一カ月間で五十名、六月二十一日から七月の二十日まで三十五名、ここで十五名ぐらい若干減ります。それから七月二十一日から八月三日まで、二十名。若干減ります。八月五日から十一日まで、ふえて四十名になっている。八月十二日から十七日まで二十名、ここで半数に減ったのでありますが、九月十八日以降は四十名おるわけです。ですから、向こう状況に応じて自由自在にその数を、組合が、たとえば県労評が全体でもってそういう不当な彼らの蛮行行為というものを糾弾をするというようなことになると前日に引き揚げて数を減らす、こういう、いわば向こう向こうなりの作戦でこれに対応していることは明らかです。われわれの調査ではそういうことが明らかになっております。したがって固定的に半数程度減ったという状況ではございません。この点をひとつ御理解をいただきたい。  労政局報告関係では以上五点についてどうも実情と違うようなんでありますが、その辺の見解とその内容についてどう掌握されているか、まず、この点のひとつ見解を伺いたいと思います。
  9. 石黒拓爾

    説明員石黒拓爾君) いろいろ御指摘をいただきまして恐縮に存じます。  最初の四ページのカッコ内の、その後トラブルが起きてないというのは、これは私どもの全くのミスでございまして、この事件の概要をずっと日を追うて書き足し書き足ししてきておりまして、この時点におきましてはその後しばらく起きていないということがありましたのでこれを書いたんでありますが、その後また起きていることは私ども承知しております。このカッコ内は消すのを忘れたということで、まことに恐縮でございます。  それから八月三日、三十一日等の事件につきましては私どもまだ報告に接しておりません。  ガードマン数につきましてもたいへん詳しいことを御承知のようでございまして、私どもさらに一そう念を入れて調査いたしたいと存じます。  御承知のように、労政当局というのは本省の労政課も府県の労政課も、これは調査とか捜索とかいう強制権限を全く持っておりませんので、どうしても若干そういう調査に手落ちの出ることも間間避けがたい点でございますが、御指摘の点をさらに県に照会いたしまして一そう正確な調査をとりたいと思います。
  10. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま指摘をしたような現状と違った内容等については、再度調査をしていただいて正しい現地掌握をやっていただきたいと思うんです。それはひとつ要望しておきたいと思うのであります。  それで、一つだけ問題になりますのは、春闘時の引き上げがまだ第一組合との間には終結を見ておらない。会社は四月の二十四日でありまするけれども第二組合とは一万二千八百円で妥結をしておるわけです。第一組合に対しましては一貫して団体交渉拒否をしている、こういう状況の中で四月の二十九日に団交が初めて開かれたわけでありますが、そのときに会社は一方的に第二組合妥結した内容を押しつけて、そのまま散会という状況です。ですから、これは明らかに私は会社のやり方としては団交拒否、こういう該当事項になるでありましょうし、さらに、第二組合に対しては団交を通じて利益誘導、こういうことになるのではないか。そういうことになるとすれば、これ自体私は不当労働行為立証対象になるのではないかというように考えまするけれども、これは一体どういう見解をとりますか。
  11. 石黒拓爾

    説明員石黒拓爾君) 本山製作所具体的事項について不当労働行為が成立するかどうかという認定はこれは地労委のなすべきことでございますので、具体的行為についての見解は差し控えさしていただきますが、一般的な法律解釈として申しますと、団交拒否はもちろん不当労働行為でございます。ただし正当な理由があればよろしいということになっておりますが、組合員の数が大体半半ぐらいの二つの組合がある、その片っ方と賃金交渉妥結したからという理由で、もう片っ方の賃金交渉拒否するということがありますれば、これは団交拒否不当労働行為で、正常な理由とは認めがたいと私どもは考えております。
  12. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一点お伺いをしておきますけれども日本不当労働行為関係立法というものはアメリカ由来を求めていることは間違いないと思うんですね。そこでそのアメリカの現在不当労働行為等対象事項というものは、スト破りですね、そういうものは一貫して不当労働行為だと認定をしておるようであります。少なくともこの特別防衛保障株式会社ガードマン五十名が入ってきて、いろいろ具体的事例を申し上げましたように、すべて傷害組合弾圧、ぶっつぶし、それから集会あるいは組合旗掲揚伝単活動、それから掲示板の組合掲示書類、こういったものに対していろんな暴行を加えておるわけでありますけれども、そういうことは一貫して組合取りつぶしという、あるいは入出荷拒否闘争というものをやって第一組合が戦っておったわけでありますけれども、そういうときには先頭になって戦っている組合員ゴボウ抜きにして暴行傷害を加える、こういうことは明らかにわれわれから見ればスト破りということになるんじゃないかと思うんですね。そういうことだとすれば、確かに日本不当労働行為関係立法というものは一応アメリカ由来をおいておりまするけれども、国情の相違その他があって必ずしもアメリカどおりにいっているわけではございませんけれども、このスト破りというものに対しては、やはり不当労働行為の最たるものであるというふうに考えるのでありますけれども、この点に対する局長見解はいかがでしょうか。
  13. 石黒拓爾

    説明員石黒拓爾君) スト破り不当労働行為になるかという御質問でございますが、スト破りというのにもいろいろの態様がございまして、ストライキ中にストライキによって就労を拒否された職場に他の労働者を雇い入れるということ自体が、直ちに不当労働行為になるとは現行法ではなっておりません。しかしながら、ただいま御指摘のございましたように、一般に不当労働行為というのは、使用者もしくは使用者指揮監督下にある職制等支配介入をいたしますれば、不当労働行為でございますが、第三者の場合でも、このガードマンのように、使用者の意を受けて第三者支配介入行為をする場合も、不当労働行為は成立し得るというふうに私どもは考えております。
  14. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そこで特別防衛保障株式会社ですね、これの目的や性格について法務省見解をひとつお尋ねしたいんですけれども、きのう法務省担当官のほうに要請をいたしまして、特別防衛保障株式会社、これの法務局登記の写しをとってきていただきました。私の持っておる内容と全く変わりはございません。ただし、時間の関係でありましょうが、定款その他はまだ添付されておりませんから、これはあと資料としてひとつ提示をしていただきたいと思います。  一応これが信憑性があると思うので、それを利用さしていただきますけれども、これによりますと、昭和四十五年の四月二十日、東京法務局日本橋出張所登記官飯塚幸三郎、こういうことになって、明確に特別防衛保障株式会社届け出を受理をいたしております。法律上問題のある登記をされておるわけでありますけれども、これによりますと、取締役飯島勇、同じく取締役稲葉正三原沢澄也佐々木麗吉恩慈宗武飯島勇——飯塚勇代表取締役ですね。監査役横江善輝、こういうことになっております。大橋委員が前に質問いたしましたように、飯島勇という者は、御存じのように、これは警察庁刑事局長だと思うんですが、その答弁によりましても明らかなように、前科十一犯という、まさしくわれわれ常識的には考えられないような社長ですね。かつて陸軍少尉だそうでありますけれども、こういう前科十一犯、そしてそれに雇われている、いま現に五十名現地に行っておる皆さんは、空手や何か、とにかく暴力的には腕力の強い連中が行っている。この恩慈宗武なんという人が大体責任者で行っているようであります。そういう腕力者があらゆる暴力をやるわけでありますからね。それで、私はそれをあとから問題にしますけれども、この特別防衛保障株式会社目的というものは以下十四に分かれている。これは法務省からいただいた資料によっても明らかなんです。この中を見ますると、警備業務云々はありますけれども、そういう労働争議に対して直接介入するとかなんとかというものは全然うたわれておりませんね。これは法務省としてはどういうことをたてにとって、いま現に現地のほうに五十名の暴力ガードマンが行っているのか、この法的根拠なり、あるいは届け出目的内容、あるいは定款、そういうものから、どの条項に該当して行っていると思うんですか、見解をひとつ示してください。
  15. 田邊明

    説明員田邊明君) お尋ねの趣旨が、お手元にございます登記簿謄本に基づく会社営業目的、その営業目的範囲内の仕事と、いま問題になっています本山製作所での行為がどういう関係かという御質問だと思います。ところが、民事的に見てまいりますと、会社営業目的というものはきわめて抽象的に書かれており、この資料では目的の四から十四までのいわゆる警備保障関係仕事としてしか記載がございません。したがって、その範囲内でやっていることかどうか、それが取締役会等の取りきめた営業目的内のことかどうかということは、この資料だけでは明らかにできないと思っております。もちろん法律上は違法行為定款目的とすることはできませんので、この記載そのものからおっしゃる仕事内容が違法かどうかということは直接は出てこないと考えております。
  16. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これを土台にして種々法律解釈をやれば確かに私は出てこないと思うのです、そういう業務を受けますということは載っていないのですから。だから、現にいま本山製作所会社側とこの保障会社との間では、いわば財産、人命、施設、各般の警備ということになって委託契約をやっている。ところが、現に行ってやっている実情というものは、さっき指摘をしたようなまさしく暴力行為一点張りですね。そうして組合基本的人権であるストライキ権、そういったものも妨害をするし、組合の日常活動として許されたものも妨害をするし、おまけに人間に対する傷害を次次と発生をさしておる。こういう状態なんですね。そういうことをするならば、この目的定款に定めた内容からはるかに逸脱をしているのですから、現行法規でもこういう会社の取り消しということはあっていいのではないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  17. 田邊明

    説明員田邊明君) お答えいたします。  御指摘現行法と申しますのは、商法の五十八条の解散命令の条項と考えます。で、この解散命令の働く要件は、御存じのように、株主、債権者等の利害関係人、あるいは法務大臣が請求をいたしまして、裁判所がこれを認めた場合に、裁判所の命令で発せられるものでございます。本件の場合について考えますと、その五十八条で定めています要件のうちの第一号というものがございまして、会社の設立が初めから不法の目的をもってなされているようなとき、あるいは三号にございますように、業務を執行する取締役が法務大臣から書面で警告を受けながら引き続き反復継続して法令違反行為をやっているようなとき、このいずれかが問題になろうかと思います。で、もしこの会社が初めからおっしゃるような違法行為目的として設立されたというものでありますれば、先ほどの一号に該当しましょうし、あるいは三号の問題といたしましては、法務大臣が警告をいたしましたにかかわらず、暴力行為等刑罰法令に触れるような行為を引き続き反復継続するという状態になれば、申請によって裁判所の解散命令が出るということになると考えております。
  18. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの内容については、八月十日の大橋委員質問会議録でも明らかなんですね。大橋委員もその点については見解を問うておるわけです。ですから、いまあなたが指摘をされたような内容はすでに一カ月過ぎているのですから、ほんとうに法務省としてそういう設立目的なり定款に違反している会社であるかどうかということは調べなくちゃいけないのでしょう。その調査をやって一定の見解を持っているのですか。その辺はどうなんですか。
  19. 田邊明

    説明員田邊明君) 実はこの五十八条の条文で申します法務大臣の警告書を出すその前提としての手続というものが、現在の商法には何ら規定されておりません。はっきり申し上げますと、この仕事をだれがやるかということが法律上明確でございません。先ほどお示しの、たとえば登記簿謄本等によって法務省内でその会社営業目的は把握いたしますが、これは登記官がこの仕事をやっているわけでございます。登記官の仕事としましては、一応形式的な審査だけで、届け出に基づいてこれを受理しているという関係だけでございます。で、本間のような場合につきましては、現在、過日の御答弁に出ましたように、警察当局で刑事事件として内容をお調べのようでございます。その結果が私どもの所管局にあらわれてくると、そういう関係しかはっきりいたしません。したがって、法務省といたしましては、五十八条の要件に該当するかいなかを、現在は積極的に調査してまだつかんでおるという段階ではございません。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 関連。この前私はその件に触れていろいろお話を聞きまして、そして労働省のほうに対しても、それから法務省のほうに対しても、こういう問題はすぐ調査をしてほしいということをお願いしておいたはずなんですが、いまだにやってないという、あるいはまただれがやるか、責任がないというような答弁じゃ、ちょっと私は受け取れない。同時にまた、法務省としてはそれを許可しているんですからね、その設立を。そういう立場からいってもどうあるかということは、その条文に書いてあるとおり、いまの読まれたようなものを見たときに、それに違反しているかしてないかを調査せぬでいいということにはならぬと思うんですが、そのことを。
  21. 田邊明

    説明員田邊明君) 現在の法令の解釈を申し上げましたわけで、すでに、御指摘のように、刑事関係事件としては所管局で刑事事件として調査をいたしております。ただ、この五十八条の商法の関係での調査ということになりますと、この条項に基づく調査権というふうなものを発動する根拠が現在はございません。つまり、直接の担当者としては法務局がなるのかもしれませんけれども法務局登記官の調査権というものは制約されたものでございまして、外に出てその会社を調べるというふうな権限を持たされていないと、こういう趣旨にお答えしたわけでございます。
  22. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私の聞いているのは、法律解釈を聞いているんじゃなくて、もうすでに八月十日に大橋委員もこれを指摘している。商法五十八条の解散の権限等が法務大臣にあるではないかと。そういうことに対してあなたのほうは、十分調査をして検討いたします、こういうことなんだから、もうすでに一カ月近く経過をしているんですから、そういう具体的な措置をやられたかどうかということが私の質問の趣旨なんです。その点をひとつ明確にお答えを願いたい。  それから、大臣、検察庁の調査によっても、もうすでに現地では暴力行為をふるったガードマンに対して暴力事件として送検をしているんですね。そういう事実があったということはもう明らかなんです。これは五月二十日の事件、五月二十三日の事件、五月三十日の事件、七月五日の事件、九月十二日の事件、これは検察庁の調査によって、現地においてかくかくこういうことがありましたということをちゃんと報告になっておる。だから、いまの特別防衛保障会社ガードマン現地において違法行為をやっているということはこの一つでもって歴然たる事実ですね。そしてなおかつ定款等には法務省は非常に積極的な姿勢でないと思うんですが、その定款第四条によって当会社の公告は官報に掲載しておりますと、こういうことなんですから、政府の皆さん、関係者がわからないとは私は言わせない、定款に明確になっている——株主についてはどのくらい、株価についてはどのくらいと一部始終全部登記内容として定款に提示しているんですから。そういうものの各般の措置からいって、この特別防衛保障会社なるものがいかに不当行為をやっているか。これは大橋委員も週刊サンケイのいろいろな文章を引用して一部を紹介しているようでありますが、私は、いま申し上げましたように、そちらに参考としてやったその陳述書、その写真、そういう内容によってもいかに不当な暴力行為をやっているかということは明らかなんです。警察も送検をしている。こういうことでありますし、大臣も、この前の大橋委員質問に答えていわくには、関係当局と十分連絡をとって適切な措置をとりますと、こう言っているんですが、そういう具体的な措置をやったんですか、大臣。具体的にひとつ説明してください。どうなんですか。
  23. 石黒拓爾

    説明員石黒拓爾君) 八月十日の当委員会で御審議がありました後に直ちに宮城県に連絡をいたしまして、宮城当局より従来以上に強力な指導をして事態の円満解決に努力するようにという要請をいたしました。その後、宮城県とはしばしば連絡をとりまして、宮城当局の手により円満解決がはかられるように要請をいたしておるところでございます。
  24. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣、どうなんですか、見解を聞かしてください。大臣の諸方針からいま私が指摘をしたような具体的な内容について、一体どう対処していくのか、方針を出してください。
  25. 田村元

    国務大臣田村元君) 私が一番最初の答弁のときに申し上げたので、私がそういうことを言ったか言わないかちょっとさだかでないんですが、一つ訂正をしておきたいことがあります。それは、八月十日のこの委員会の直後に、委員会審議経過等を添えて宮城当局に、いま労政局長が申しましたように非常に強く要請をいたしました。先ほどの答弁に、私がひょっとしたらなんですが地労委ということばを使ったかもしれません。使わなかったかもしれませんが、正確にものを申せば宮城当局というふうに御理解を願いたいと思います。  で、私は、石黒労政局長に対して、その後もしばしば国会であすこまでお話しが出て、こちらも答弁をした以上は責任をもって対処をするようにということできびしく申し渡しております。そして私自身も二、三度報告を受けております。それを先ほどちょっと申し上げたわけでありますが、知事からも、経営者を呼んで強くガードマンの撤収を求めたと。それから地労委もそういうようなことであったと私は記憶しております。そういうように、石黒君から宮城当局に相当きびしい措置を講ずるように要請をしており、かつ、宮城当局が、あるいは地労委がいま申し上げたような行動をとっておるという報告を聞いて、まあ、民間のことであるから、とりわけ宮城県の問題であるから、なおも県当局と十分連絡をとりながら万遺憾なきを期するように、こういう指示を、しばしばといいますか数回にわたって労政局長に指示をいたしております。
  26. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 部内行政の指導監督けっこうだと思うんですが、現地ではそういうことで毎日のように傷害者を出してたいへんな流血を見ている状態です。全く基本的人権そのものが、人命そのものが非常に急迫した状況に追いやられているんですから、こういう事態を早急に解決をする方途を大臣は持ち合わせて、それで労使双方に対して一定の解決策を示す、そういうものを具体的に出さなければいけないんだと思うんですね。もちろん、それは直接労働大臣が行ってということもあるかもしれませんが、それ以前の問題として、労働省所管の各基準監督署なり、あるいは県労政課とか、いろんなものがあるわけですから、もちろん、いままで一定のあれはやっておるようでありますけれども、しかし、そのことによって何ら解決の道がまだ見出されておらないのですから、そういう面について大臣はこの前の大橋委員の回答に対しまして、「警察当局と十分いまから御相談申し上げ、万全の措置をいたしたいと思いますが、その他の問題でも、かりに監督をする、それに対してこれをないがしろにする、あるいは無視する、あるいはかりにいまおっしゃったようなことがあるとすれば、たとえばスト破りなんかを公言するというような態度が事実であるとすると、これは許しがたいことであります。でありますから、私としてはき然たる態度で臨まなければなりませんが、同時に、部下に対してもきびしい態度で接するように今後も十分に私自身からも督励をしていきたい、」、はっきり言っているんですね。だから、大臣の考えを現地に反映するのにはどうしてもやっぱり一定の解決方策を示して、そうして労使それぞれに対して適切な解決案というものをやっぱり私は示すべきじゃないかというふうに考えるのでありまするけれども、そういう内容については行政部内における指導監督だけにとどまっておって、それを一歩もまだ出ていないようであります、いまの見解を聞いていると。だから、そういう面についての御意思ありやいなやということを私は質問したいわけです。
  27. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、この前御答弁申し上げましたことを私なりには忠実に履行したつもりであります。先ほど申し上げたように、労政局長にもまた基準局長にも、国会において私がああいう答弁をした以上は私は責任を持たなければならぬから、十分の対処をするように、これは一回や二回ではありません。その後、私は両局長に対して中間の報告も求めております。ただ、具体的にどういうことをするかということにつきましては、これは局長行政のプロでございまして、私どもそこまで詳しいことは率直に言ってわかりかねますから、局長に対して適切な措置をとるようにと、こういうことを申してまいったのであります。しかも、宮城当局においても、地労委においても、経営者に対して相当きびしい、ガードマンにつきましても相当きびしい態度を出してくれておるということも報告を受けております。ただ、残念ながら、そういう勧告がなされたにもかかわらず、企業においてそれを忠実に受けとめてくれていないということはまことに残念でありますけれども、私なりにはなすべきことは誠意をもってなしてきたつもりでございます。
  28. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんから、詳細現地におけるガードマンのその後の発生状況について紹介するわけにはまいりませんけれども、おも立ったものを数えてみても十指に及ぶのですね。結局、口の下などをたたかれて歯を折ったとか、あるいは十日間くらい医者に通院をしたとか、そういうものが絶えないのですね。具体的な実証は時間がありませんから紹介やめます。やめますけれども警察庁としては、この前、大橋委員答弁で、一つ行政的な面、一つは司法的といいますか、いわゆる犯罪捜査、こういう二つの角度から本問題に対処するということを言われた。だから、いま警備業法案について、通過したものは十一月一日以降でないと適用できないから、それまではガードマンがいかに暴力行為をふるってもできないといったような印象を与えておりますね。確かに調査内容については五件ほどについて送検をした事実はございます。だから、それなりに捜査をやっているということは私は否定いたしません。やっております。しかし非常に作業が緩慢であり、その一面ガートマン自身が——私も一回行って見ました。行って見ましたけれども、行進とかなんとかやる前に来て——みずから来るのですよ。そうして自分自身が打撲を負ったというようなにせ行為をやっておるんですね、盛んに。ものすごく挑発もしますよ。彼らはそういういわばベテランなんですから。そういうものをあえて取り上げて、二件ほど、これも組合員がやったというようなことを、調査内容にありまするけれども、これも現実と私は報告が違うと思う、その点は。そういうことでいくとするなら、どうも私たちの印象としては、けんか両成敗で、正邪をきめずにものごとを糊塗しようという以外何でもないじゃないかというふうな考えを持ちます、そういう事実があるわけですから。現に伝単をまく、ビラ張りに行く、これをける、なぐるのそういう状況でやる。警察官はその目前一メートルにおって、組合員が現行犯で逮捕したらいかがかと、こういうようなことを言えば、私は交通係だからそういうことには関与しませんといったような態度で逃げちまう。あるいは、ガードマンを全部連れてくれば組合員としては証人を出しますから、この人間はこういうことをやったということを対決をしましょう、こういうことで捜査に来た警察官と一緒に行けば、ガードマンの近くに行ったらば、もうすでにその捜査官はいなくなってしまっている。こういうような捜査の態度というものは、私は許されないと思うのですね。だから、そういうことをやっておるから、現地といたしましては、どうも警察官とガードマンというものはぐるになっている、こういう印象と憤激があるのです。こういうものを払拭をして、いわば捜査の正当性、正義感というものをやはり国民に知らしめていくためには、もう少しやっぱりき然たる態度で臨んでもらう必要があるのじゃないかというふうに私は考えるのでありまするけれども、この八月十日の回答要旨によるその後の具体的なそういう犯罪捜査、私はいまの刑事訴訟法でもそういう現行犯というものはどんどんやれると思うんですね。これが遅々としてやられている。そういう実況からいくと全く緩慢です。こういう点について警察としてはどう一体判断をしておりますか。これは刑事局長おりませんが、参事官来ておりますね、ちょっと見解を聞かしてください。
  29. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) ただいまこの本山事件に関連をして、この種の事件に対する警察の基本的な態度をお尋ねでございましたが、御説明申し上げるまでもなく、この種労働運動に関連する事案に対しては、警察は労使のいずれの側にも加担するつもりはなくて、ただ警察法に定められておる警察の責務、犯罪が起きた場合にこれを捜査する、あるいはまた、犯罪を予防する、そういう観点から御指摘のように厳正な態度でもって臨んで、治安的に警察が責務を果たしていくということを警察の基本的な任務だと心得ておるのであります。  この本山製作所事件につきましては、先ほど来お尋ねのようにガードマンが介入して、しかも暴力的な手段、方法でもってこの労働運動に介在しておるということ、御指摘のとおりでございますので、警察としてもただいま申し上げた観点から、そういうものに対しては厳正な態度で、そして真相を明らかにして、刑事手続で処罰すべきものは処罰しなきゃならぬというふうに考えて対処しておるのでありますが、何ぶん混乱の中で瞬時に起きることが多いのでございまして、それを明らかにして、責任者を明確にして、そして刑事手続に乗せるという事柄がなかなか思うように進行しておらない。ぐずぐずして何をしておるかというおしかりもございましたが、その点については、なお一そうわれわれは努力をしてこれをすみやかに明らかにする。いままで明らかになったものは一部送致しておりますが、まだ捜査中のものもございますので、この点については御指摘仕事の迅速な処理ということを念願して処理をしてまいりたい。  もう一つは、こういう事案が起きないように阻止をする。いろんな手段、方法を尽くして阻止をする。事が起きてから処罰するだけが何も能じゃございませんので、こういうことにならないように警察の立場から努力をするということ、また大いに必要なことでございますが、先ほど申し上げたように、原則として、この種の労働運動に警察がいかにも介入しておるというかっこうにもなりたくない。たとえばあらかじめ何か交渉が行なわれる場合に会社の中へ機動隊が入っているというようなことをやると、何かどっちかに加担して威圧を加えたというようなことになってもいかがかという配慮もありまして、事が非常に差し迫った緊迫性を帯びてきたという事態になって、適切に現地へ臨んで処理をするということを基本に配慮しております。そういう心配のない場合、たとえば交番の入り口から少し離れたところにそれとなく警察の者を配置するといったようなこと、そういうことはこの前八月十日、委員会の席で御指摘があった後、現場でも大いにつとめまして、警察官の数を増して、そして現場付近にそれとなく配置をしておりますが、現場に接着していかにも交渉の場所に警察権が裸で臨んでおるというようなかっこうになるのもどうかという配慮のために、若干、連絡があって行ってみたらもう現場がなくなっておったというような件等もございます。そういった点についてはなお一生懸命検討して、技術的に可能な限り警察の予防的責務が果たせるようにやってまいりたい。  なお、この警備業法が施行され、これが適用されるようになりますれば、この種の事案に対して警察が一つのまたより新しい手段方法ができることになりますので、それを加えて有力な手段方法として適正な処置をしていくというふうにやってまいりたいと思っております。
  30. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これはきょう時間がありませんから警察庁関係この程度で終わりたいと思うんですが、いずれにしても公正にひとつやっていただきたい。これは警察の責務については、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、」云々ということで明確に規定されておるわけですね。われわれの経験からいけば、どうも組合員がやったような場合は徹底して捜査してすぐ逮捕その他やってきますよね。しかし、こういうガードマンとか会社側になると非常に緩慢ですね。これはいなめない事実だと思うんです、私自身そういう立場で何回も警察に呼ばれたことがあるものですから。そういうように組合員がやったら容赦せずに捜査も急速に展開をして逮捕まで持っていくけれども会社とかそういうガードマンというものに対しては非常に温情味のある態度をとる、これでは私はいけないと思うんです。やはり法律に従って、法律に示された内容において厳格に処理をすべきだと私は思うんです。ですから、そういう意味においてもう少し現地を督励していただきたいと思うんです。これは要望としてひとつ申し上げておきます。  それから、法務省のさっきの回答をまだ聞いていないんですけれども、その見解をひとつ明確にお答えいただきたい。
  31. 田邊明

    説明員田邊明君) 私どものほうでもさきに御説明しましたような現在の登記官の調べ得る範囲内でできる限り資料を集めてみたいとは思っております。その結果、この会社が解散命令に該当するかどうかというふうなことも慎重に検討してみたいと思います。
  32. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 法務省にちょっとお聞きしたいんですが、この本山製作所事件というものは、私が聞いておるのではもうこの春ごろから問題になっておったと思うんです。特に、特別防衛保障KKの問題等もそのころから出ておった問題ですね。そうすると、先ほどあなたが解釈をいろいろ述べられた商法五十八条、これは実際の運用については法務大臣に責任があるわけですから、それに対していままで法務省はどういう態度をとってきておったのか、それを知らせてほしいんです。何にもせずに聞きっぱなしで済ましておったのかどうか、その辺はどうなっているんですか。
  33. 田邊明

    説明員田邊明君) この問題につきましては、商法の関係は私どもの省の民事局で所管いたします。その関係でこの事件があるということは聞いておりましたけれども、五十八条の発動云々についてはまだ検討をやったことはございません。刑事関係につきましては、もちろん刑事事件の所管のほうでそれぞれ処理しておることでございます。
  34. 矢山有作

    委員長矢山有作君) もう一つ。五十八条の運用の場合、本山製作所で、当面私は問題になるのはおそらく五十八条の一項三号等がさしずめ問題になってくるだろうと思います。あなたのほうでその本山製作所をめぐる特別防衛保障KKの問題で具体的事実を知っておったとするなら、その時点でもう調査にかかるべきではないですか。聞いておったのを、聞きっぱなしにして何もしておらなかったとするならば、この法の運用について責任のある法務大臣としてはすこぶる怠慢なんじゃないですか。実際には、法務大臣となっているが民事局が担当するんだろうと思いますがね、民事局のあなた方としてはすこぶる怠慢ではないですか、その辺の責任の所在はどうなんですか。法律があっても、あるだけでこれを運用しないでは意味がないんですから……。あなた方はしょっちゅう法治国といわれるのだから。その辺で運用をサボっておったのか、運用をサボらずに、実際において捜査に手をつけてやったのか、いまの口ぶりでみると全然捜査に手をつけずに話だけ聞きっぱなしにしておったような印象を受けますが、それではあなた方怠慢ですよ、どうなんです、その辺は。
  35. 田邊明

    説明員田邊明君) おっしゃるとおりでございますが、私どものほうで商法を所管するという意味が、その商法関係の立法事項とか登記関係のことでございまして、この事件について私ども民事局の所管では直接調査をする権限を持たないというのが現状でございます。したがって、間接的に刑事事件等の捜査を介してどういう事件であるかということを知るにすぎないわけでございます。もう少しはっきり申し上げますと、この五十八条を動かすについて、法務大臣の権限を動かすについて、現行の法制が十分できていない、こういうことになろうかと思います。
  36. 矢山有作

    委員長矢山有作君) くどいようですが、五十八条という法律を読んでみると、法務大臣のなすべきことがはっきり明記してあるわけですよ。法務大臣のなすべきことが明記してあるなら、それを実際に生かして発動することを考えなければいけないんじゃないですか。この法制がはっきりしないから、どうしていいかわからないから手をこまねいて見ているのでは五十八条は何のために存在しているんですか、そんな形式論理ではなしに、現実に五十八条があるなら、そうしてそれに対して法務大臣が一定の権限が明記されておるんだから、その責任を果たさなければいけないじゃないですか。ただ、ここで責任を追及されるのを逃げさえすればいいということでは困るんですよ。あなた方苦労して法律をつくっているんだから。どうなんですか。あまり逃げるような答弁ではなしに、いままでやらなかったのが怠慢であるなら怠慢であることを認めて、今後はこの法律を運用する上にどうやりますということをはっきり言ってください、それがあなた方の責任でしょう。
  37. 田邊明

    説明員田邊明君) この法律の運用についてはさきに申しましたように、法務大臣の権限行使に伴う各種の作業がこの現行法制では十分でないということに私どもは気がついておりまして、これを検討はいたしております。  この機会に申し上げますと、過去にこの解散命令を発動した事件が一回もございません、法務大臣の権限として。それが実情でございます。内容についてはおっしゃるように法制上の検討はやっておりますが、あるいは法律改正を要する事柄になるかもしれません。
  38. 矢山有作

    委員長矢山有作君) あなた何を言っているんですか、具体的に発動する方法がわからないからほっておくのだという印象を受ける答弁ですが、法務大臣として、この五十八条運用の責任があるなら、どうしていいかわからないから法制の整備をこれから検討してみますということでは困るんです。法務大臣の責任を果たす範囲で法制に不備があるなら、やはり実態の運用でどうするかということを考えなければいけないんです。それができるまでほったらかしにしておくということでは五十八条は死んでしまうんじゃないですか。それが問題が起こったときに全然そっぽを向いて逃げ腰になっている証拠じゃないですか。そんなことをやっているから、この防衛保障のような、こういう暴力行為をやる団体と政府が密着しているなんということを言われるんですよ。もう答弁要りませんがね、いまのあなた方の答弁を聞いておってきわめて無責任だということはわかりますよ、はっきり。これは法務省として今後どう対処するのか、上司と、特に法務大臣とよく相談してはっきりさしてください。いつまでも具体的に発動する手続がはっきりしないからというんで知らぬ顔して見ていたんでは困りますから、五十八条自体の存在にかかわってくる問題ですから、これはこの委員会でどうするのかということをよく御相談していただいてはっきりした答弁をしてください。要求しておきます。
  39. 田邊明

    説明員田邊明君) はい。
  40. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの矢山委員長質問に対しては適切にあとで回答していただきたいし、対処策をとってもらいたいと思います。私からも要望しておきたいと思います。  時間もありませんから、基準局長、来ておられると思うんですが、局長に三点ほど質問してまいりたいと思いますが、その第一は皆勤手当でありますが、これは基準局の報告書にも載っておるわけです。現地の基準監督署の見解は、労使協約で無欠勤、無遅刻、こういう者以外に対しては皆勤手当支給せず、こういう内容になっておるから、その会社見解というものは正しいでしょう、こういうような態度なんです。私はどうも見解は違うんですけれども、この見解が違うというのは、したがってストライキ、不就労ですね、これに対して払わなくてもよろしいという見解なんですが、少なくともストライキ権というのは労働者の基本権利ですから、当然やっていいわけですね。そういうものの是認の上に立って労使協約が結ばれて、皆勤手当をどうするかというのが現地で結ばれる労使協約なんです。それには無遅刻、無欠勤以外の者には支給をしない、明確にされております。非常にこの内容を見ますると、現地では皆勤手当のウエートというのは賃金に占める割合が非常に大きい。これは具体的に計算方式はありますけれども、そういうウエートの大きい、生活に影響を与える賃金態様がかってに資本側の一方的解釈によって賃金カットされるというようなことについては私はどうも解せない。だからこの点についてどういう一体基準局長見解を持っておるか、これが第一点。  それからもう一つは、職制自体がある労働者を三日も職場から力ずくで追い出して、そして就労させなかった、その結果賃金カットをやっておるんですね。こういった内容についてはまさしく私は不当なものだと思うんですね。ですからこれはおそらく局長答弁現地状況は知らないからこれから調査をしてということになると思うんですが、それは十分調査をして厳格にひとつ対処策をおろしてもらいたい、それが第二であります。  もう一つは、現在相当数、ガードマン傷害によって通院をしておる労働者が多いんです。そうしますと、これは自己休暇でもってすべて通院している。補償がないんですね。これは私は不当だと思う。全部その会社で私は原則的に負担をすべき性格のものだと思うんですね。もし、かりに現段階でそこまでいかない場合は、この警察庁報告による該当事件に該当するものだけでも私は会社負担に持っていくべきじゃないかと思う。この考えについてはどうでしょうか。三点について明確にお答えをいただきたい。
  41. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 第一点の皆勤手当の問題でございますが、私どもの出先機関で調べたところによりますと、本山製作所では就業規則におきまして一カ月間、欠勤、早退、私用外出、遅刻一回のみの場合には能力給の二十五分の四の皆勤手当を支給することと定められておるわけでございます。で、従来の運用を見てみますると、従前は争議行為による不就労につきましては、これを欠勤として取り扱っていたようでございますが、昨年の年末闘争の際は労使の協定によりましてこれは欠勤扱いとしなかったというふうに承知をいたしております。で、争議行為のために就労しなかった時間を皆勤手当の計算においてどう取り扱うかということにつきましては、これは一番本来望ましいのは、協定等でそういう場合についても労使で明確に協定をしておくということでございますし、あるいは協定で書いてない場合においても、その取り扱いをどうするかということを労使で協議してきめればそれが一番望ましいわけでございます。で、基準監督署でこの問題を今回取り上げましたのは、労働者の側からその皆勤手当をカットされたことについて、これが基準法二十四条違反ではないかということで御申告がございましたので、それについて監督し、調査をしたのでございますが、その場合におきましては、やはりこれが法の二十四条違反になるかどうか、基準法違反になるかどうかということになりますと、やはり就業規則の文言なりあるいはそれについての従来の適用等を考慮して法律的な判断をすべきことになると考えるのでありますが、先ほど申し上げましたような就業規則の文言並びに従来の適用の経緯等を考えますと、直ちにこれが基準法二十四条違反とまでは言えないのではないかというふうに判断をいたしたものでございまして、それが正当であるとか、そういうようなことを言ったわけではございません。まして、労使でこれを協議して処理することを否定しておるわけではないわけでございます。法律判断としては現在までの就業規則の文言並びに従来の運用の経緯等から見て、基準法二十四条違反とまでは言えないのではないか、かように法律解釈としては考えるわけでございます。  それからお尋ねの第二点の使用者側で就労させなかった、そのために不就労だったことに対してカットされたもの云々ということにつきましては、私どものほうで、そういう使用者側のほうで就労をさせなかったという点についてはただいま初めて伺いましたことでございますので、さっそく正確に調査をさせてみたいと、かように考えるわけでございます。  それからガードマン等のトラブルでけがをした人が業務上になるかどうかという問題でございますが、基準法上あるいは労災保険法上、業務上の災害ということになりますためには、労働者業務に起因して負傷または疾病にかかった場合、こういうことでございます。したがいまして、そのけがをされたのが会社側業務に起因をしておったかどうか、労働者会社業務をしていたことについて起因をしておったかどうかという問題になるかと存じます。したがいまして、これはガードマンがやったから一がいになるとか、一がいにならないとかということでなしに、それぞれの場合について会社仕事に、業務に従事することに起因しておったかどうかと、こういう問題でございますので、やはりケース・バイ・ケースで判断をすべきである、かように考えるのでございます。そういう判断をいたしますのは、労働者の方から、基準法では使用者でございますが、役所に対しましては労災保険上、業務上だという請求がございましたときに、それについてケース・バイ・ケースで判断するわけでございますが、現在までのところ監督署のほうに、業務上の災害による労災保険の支給の請求は出ていないというふうに私ども聞いておるわけでございます。提出されましたならば、ケース・バイ・ケースで、就業しておられる会社業務に起因したものであったかどうかを判断をして決定いたしたい、かように考えるわけでございます。
  42. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 第二点の点については私も了承いたします。しかし、第一点の見解は、確かに組合の賃金カットとしての見解は二十四条、十六条、これに違反しておるではないか、と法律解釈見解を問うておりますね。しかし実際は、この皆勤手当というものは局長指摘をされたように、その計算方式は三つほどから成り立っておりまして、賃金に占めるウエートは比較的大きい、この皆勤手当は。そういう内容ですから直接生活に響いてくるわけですね。組合ストライキをやれば、いま局長答弁をなされたように、労使双方で交渉をやって、ケース・バイ・ケースでそのときに賃金カットしない場合もありました。しかし、原則的にはストライキに入るのですから、賃金は支払わないというのがたてまえである。労使でしかしまとまった場合は別でありましょう。しかしそういうことになってもし労使でもって賃金は支払わない、この原則で一貫して押し通された場合には、これは二重処分になるのですよ、結局内容としては。ストライキ権による賃金支払いはなされない、おまけに皆勤手当まで支給されない、こういうことになってきます。だから当然、このストライキ権というものは是認した上に立って労使協約を結び、皆勤手当の内容というものは無遅刻、無欠勤、この二つの条件以外にないのですね。明確に表現されている。だからここはあくまでも厳格解釈をして、その二つによらない場合については私は当然支給すべきである、こういうたてまえをとっておるわけでありまするけれども、いま局長の最終答弁によりますると、あまり明快な決意のある答弁ではなかったと思うのですね。両者にとれるような解釈だったと思うのであります。これはもう少し検討していただきたいと思うのですね。  それから第三点の通院問題でありますが、ケース・バイ・ケースでやれということは、原則的に労使双方で話し合ってきまるならばそれでいいけれども、いままさしく異常事態ですから向こうは一貫して拒否してやっているのですから、交渉の場というものはとうてい考えられない。そういう中でのできごとですね。だからいま基準局長が言うように、狭義の基準法そのものの解釈からくれば一つの解釈であるかもしれません。しかし、少なくとも労働法の関係諸立法というものは憲法二十七条、二十八条から始まっていろいろ関係がある。そして、こういう救済措置法に対しては民事、そういう部面まで波及して救済措置法を発展させることができるわけですから、そういうやはり広義の立場から本問題の災害補償、こういうものをやるべきだと思うのです。基準法だけの狭義解釈でいけば確かに業務上疾病もしくは負傷した場合に限定されている。しかし民事訴訟法そのままでいけば、これはやっぱり私は拡大解釈で当然一つの立論としては成り立つのではないか、こういうふうに考えるのですけれども、そういう意味合いにおいて、この通院、ことに会社が委託しているガードマンによって、あるいは職制によって意識的に組合ぶっつぶしのために意識のある組合員暴行を加え、そして傷をつけている。これは言ってみれば刑事事件にも問われる、現行犯の逮捕条項にも該当する、そういう悪らつな行為ですね。そういうことだとするならば、当然私はこの通院等の問題については休暇もしくは正当な賃金を支払った上に立って会社が責任を持つべきだ、こういうふうに考えるのですけれども、もう一回ひとつこの二点について見解を示していただきたい。
  43. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 第一点の皆勤手当の点につきましては、私、先ほども申し上げましたように、そういうトラブルがこういう争議のような労使が非常に関係がノーマルでない状態の中で起きないようにするためには、就業規則等について明確にそういう場合の措置も協定をしておかれることが非常に望ましいし、また協定の文言に書いてない場合には、あらかじめそういうものの運用について労使で協議をして解決しておかれることが一番そういう問題が起きた場合にトラブルを起こさないために好ましい措置だと考えておりますので、今後とも、そういう争議に入る以前の場合におきまして、そういう問題が生じないよう就業規則の制定等については指導をしてまいりたいとかように考えております。  それからガードマン行為に基づく負傷等の問題でございますが、会社に責任があるという場合でも二つ考え方があると思うのであります。いわゆる会社の側の不当な行為によって損害を受けたということになりますと、一般的には民法のいわゆる不法行為に基づく損害賠償という形で、もし会社が責任をとるといたしましても損害賠償はそういう形になるわけでございます。で労災保険法上の業務上になりますためには、先ほど申し上げましたように、やはり一般にその会社のやった行為が不当かどうかということだけではなしに、その負傷を受けられたことが会社業務労働者が従事するそのことに起因しておったかどうかという問題になるわけでございますので、もし、会社に責任があるといたしましても不法行為上の責任、そういう民法上の損害賠償責任なのか、労災保険法上の業務上の問題なのか、こういう問題があるわけでございまして、業務上かどうかという点については先ほど申しましたように、その労働者の方が会社業務に就業することに起因した負傷であったかどうか、こういう点をやはりケースによって判断していくべきものと、かように考えておるわけでございます。
  44. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは警察庁はどういう見解を持っておりますか。
  45. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) ただいまの問題、警察庁としては労働基準の行政の問題でございますから、もし不法行為が刑事罰の構成要件を満たすということでございますれば別でございますが、あるいはその民法上の不法行為と、それから刑事罰の処分とが競合すると申しますか、両方が成立するということになりますれば、したがって、一つ行為に対して一方は私どもが刑事処罰的な観点から手続を進めて、そうして処罰規定の適用をはかるということでございます。そのことが一方において民法上の不法行為を成立さすかどうかということは別な判断になると思います。事実は同じでございますが、法律適用の判断は別になります。あるいはまた労働基準行政の判断が別になされるということはあり得ると思います。そういう私どもの観点から刑事処罰の実現を、刑事犯法令の具体的な実現をはかるということは刑事事件の構成要件を充足するかどうか、そうしてその証拠があるかどうかという問題になると思います。
  46. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 法務省どうですか。
  47. 田邊明

    説明員田邊明君) 私のほうの考えも全く警察のお考えと同じでございます。民法上の問題として損害賠償請求権が発生するのであれば民事的に賠償でまかなう、当該行為が刑罰法令に触れるものであればもちろん刑事犯罪として処罰されることになる、こう考えております。
  48. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう少し具体的にお聞きしたがったのですけれども、私の言っているのは一般に三十数名いるわけですからね、傷害を受けていま通院している者が。あるいはまた終わった人もおりますが、そういう中で具体的に発生した事実行為等について民事・刑事上それぞれ罰する方法もあるでしょうけれども、そういうものに対して具体的にどういう適用措置をとっていくか、あるいはまさか一般全体がというわけにいかなければ、いま警察庁調査によるところの刑事事件に送検をされた該当犯罪があったということを明確に実証した、こういう問題についてはさしあたってそういうものが適用該当になっていくのじゃないか、こういうように考えるのですが、それが民事であれ刑事であれ、いずれにしても会社側負担という形でその辺の見解を明確にお聞きしたい、どうなんですか。
  49. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 警察のほうのお答えは刑事事件に限った立場からお答えするわけでございますが、刑事事件の責任というのはやはり日本のただいまの刑事立法のたてまえでは個人の何の太郎兵衛が個人の何の太郎兵衛に対してどういう加害行為をしたかというたてまえでございまして、原則としまして行政法規は別でございますが、法人が人を殺したということはあり得ないようなたてまえになっております、原則として。したがって、あくまでいまお尋ねの事件については共同で会社が加害をして責任を問われるという刑法的なたてまえになっておりません。あくまで、某月某日、甲が乙に対して暴行傷害を加えたということの立証、責任。それから甲と乙と丙、二人、三人が共同謀議してそうしてだれだれか別な人に加害を加えたということになりましても、その共同謀議を前提として甲が責任を持ち、乙が責任を持ち、丙が責任を持つということになって、あくまで一人一人の責任だと。一人一人が罰金を科せられ、一人一人が懲役を受けるということになります。それを、今度は別な行政法規あるいは民法上のたてまえに直して、それの使用者の責任を問うかどうかというようなことは、別な問題ではないかというふうに理解しております。
  50. 田邊明

    説明員田邊明君) 私のほうで民事的な点について申し上げますと、いわゆる民法の共同不法行為の要件に当てはまるかどうかの問題でございます。その要件に当てはまれば、数人が共同して不法行為をやったということになりますから、各自が連帯してその損害賠償の責任を負う、こういう関係になるわけでございます。
  51. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんから、法務省に、前後して申しわけありませんが、三点最後にお伺いしたい。  その第一点は、地裁の仮処分決定あるいは地労委勧告、こういったものがいろいろ出されておるわけです。いわゆる組合の地位保全、組合活動妨害排除、こういう内容でありまするけれども、これが守られていないんですね。出されてもうすでに三カ月。これらの仮処分の順守義務、これは一体どうなっているのか。現に守られていないんですから、国は一体どういう対策をとるのか、この点が第一点であります。  それからもう一つは、傷害暴行事件等に対して人権擁護委員会に提訴しているんでありますけれども、人権擁護委員会が全然発動されておらない。これは一体どういう見解をとるかですね。  それからもう一つ労使慣行ということについてですけれど、従来、構内デモとか、あるいは更衣室での集会、あるいは組合の掲示、伝単活動、各般の組合行動については全く自由だと。そういうものをやればガードマンが出、職制が出、力ずくで、いま言ったように押しつぶそうという考えであるわけですが、労使慣行とのかね合いにおいて、法律上どういう一体見解をとっておるのか。  この三点について、時間ありませんから簡単に聞きますけれども、明快にひとつお答えを願いたい。
  52. 浦野雄幸

    説明員(浦野雄幸君) 第一点の仮処分の問題についてだけ私のほうから申し上げます。  労働仮処分の効力の問題と執行の問題をお尋ねだと思いますけれども、仮処分の具体的な内容、特に主文がどういう形で提示されているのか明らかでございませんので、確定的な見解を申し上げられませんけれども、一般論として申し上げます。  債務者である本山製作所に対して、ガードマン排除を命ずる仮処分が発せられた場合には、当然、その仮処分の内容に従った、ガードマンを排除する義務を会社が負わされることは当然でございます。ただ、この仮処分は裁判でございますから、それを執行する手続があとに残っているわけでございます。したがいまして、仮処分命令をもらっただけでは、会社が任意にそれを履行するなら格別、そうでない場合には、その仮処分に基づいて強制執行していくことになるわけでございます。  その強制執行のしかたに、仮処分の内容に応じて若干差異がございまして、特にガードマン会社であるこの特別防衛保障株式会社を相手にしてガードマン会社内から退去させろという仮処分命令をもらった場合には、まさに代替的な作為義務を課している仮処分命令でございますから、これは裁判所に授権決定という形で別に決定をもらうことができます。その場合には、その決定をもらいまして、執行官に、その決定の執行の申し立てをいたしますと、執行官が具体的にガードマンを排除することはできるわけでございます。ただ、この仮処分命令の執行というのは、仮処分命令が発せられてから十四日以内でないと執行できないというワクが民事訴訟法上はまっております。なお、執行官が具体的にガードマンを排除する際に、ガードマンが抵抗いたす場合には、警察の援助を執行官が請求することができるわけでございます。  もう一点、もう一つの仮処分でございますが、組合員の地位保全の仮処分の効力に関しましては、これは、地位保全の仮処分といたしまして、形成的な、地位を仮に定めるという、そういう裁判でございますので、それだけを求めた場合には、会社側がその者を組合員として扱うという義務を負わされる。したがって、組合員は労働を提供し、それに対して賃金を請求することができるという地位だけが与えられるわけでございます。したがいまして、それを具体的に執行する、先ほどの、執行官に申し立て執行するというような、そういう執行方法は、かような仮処分命令にはございません。通常は、それにプラスして、賃金の仮払いを命ずるような仮処分というように、そういう具体的な作為を命ずる仮処分がございますと、それは金銭執行として別に裁判所に申し立てをして執行ができるということになりまして、仮処分の内容に応じてその執行方法が異なることになるわけでございます。  私の所管のほうでは、第一点だけ御説明申し上げました。
  53. 加藤泰也

    説明員(加藤泰也君) 人権擁護の問題についてお答えいたします。  本山製作所の本年五月二十日から二十二日までの暴力事件につきましては、本年五月二十四日、仙台法務局において人権侵犯事件として受理いたしまして、六月十日に正式に人権侵犯事件として立件して調査を始めました。  六月十三日に、まず申し立て書に添付してあります診断書を作製した関係の医師二名を調査いたしました。その後、事件調査の方法としまして、申し立てしたほうから聞くのが順序でありますので、それにつきまして、局のほうへおいで願うように再三連絡したのでありますが、現場へ来いという要求が被害者側からありました。しかしながら、法務局といたしましては、担当の人権擁護委員と協議しまして、労働争議の現場にいきなり行くということは、かえって争議に介入するという誤解を受けるのでよろしくないから、局のほうへぜひおいで願いたいということで、再三お願いしまして、日時等も被害者側の都合がいい日時を指定してもらいたいということを申し入れたのでありますが、それについては適切な回答がなされていない状況であります。八月二十五日に、最後に被害者の代表の方が局に来られた際も、同様の申し入れをしております。したがって、法務省の人権擁護の立場といたしましては、さらに被害者の協力を願って事案の真相を突きとめて適切な措置をとりたいと、こう考えております。
  54. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最後に大臣に——その前に、いま、人権擁護等について六月十日から調査を開始して作業が始まっていると、こういうことですが、その調査内容について資料あとでひとつ御提示願いたい。これを委員長お願いしておきたいと思います。  それで大臣、やはりこういう不幸な事態というものをいつまでも私は遷延することはできないと思う。ですから、機会があれば、大臣のほうから積極的に労使双方を呼んでいただいて、何らかの具体策を、解決策を暗示していただきたいというふうに考えるのですが、いままでいろいろな質問内容について現地実情をおおむね掌握できたのじゃないかと思うんですが、そういう考えはございませんか。この際ひとつ労働大臣見解を伺いたいと思います。国務大臣田村元君) 私も、宮城県のことでございますから、何と申しますか、土地鑑と申しますか、それもございませんでしたが、ただ、再度にわたる委員会の御審議で、この問題、概略わかってきたつもりでございます。と同時にまた、先ほど申し上げたように、私の部下を督励いたしております。また、労働省なりになし得る範囲内では相当厳正にやってまいったと思っております。宮城県御当局労働省から正式にお願いもしております。宮城当局は非常によくやってくだすっておる。また、地労委は非常にこれで御苦心願っております。でありますから、私としては、私が経営者を呼ぶとか呼ばないとかいう前に、なおも宮城県御当局あるいは地労委報告も聞き、また宮城県に対してなおも要請、督励等もいたして、こういうふしあわせな事件が一日も早く片づくように努力いたしたい、こういうように思っております。繰り返し恐縮でございますが、私が直接いま直ちに経営者を呼ぶとか呼ばないとかいうこと以前になさなければならないことがまだあろうかと、このように考えております。
  55. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ではきょう要求のありました資料は、それぞれなるべく早い時期に御提出を願います。
  56. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣に週休二日制の問題についてお尋ねしたいと思いますけれども、田中総理としていろいろ報道機関に発表しておられるように、生産第一主義から生活の第一主義へ発想の転換の宣言を行なっておられます。労働福祉政策に力を入れられるその姿勢としては、一応われわれも理解ができるわけです。ところが、先般これは報道で私も聞いておるのでありますから、直接総理に聞いたわけじゃありませんけれども労働界の代表との会談で、この週休二日制の問題に賛成であるという意思表示をされております。ところが、いよいよ具体的な推進策になると、まあ過渡的な処置しかないのではないか。一日当たりの労働時間を延長して週休二日制をやる方式もあるではないかというような報道がされております。私はこれを見て、労働者は受けて立たれるわけですが、労働省はそれは以前から、田村労働大臣以前からもうこの問題は発表されておりますので、あまり目新しいものとは私は考えておりませんけれども、総理がそういう考えであり、また総理がそういうことを発言されるということは、少なくとも労働省の感覚は、やっぱりそうお考えになっておるのじゃないかというような心配をしておるわけです。一体労働省としては、この週休二日制は実施はするけれども、その減産になるいわゆる時間を延長して、二日制だけを実施するんだ、こういう見解なのか、これでは私はたいへんではないかという考え方を持つものですから、あらためて大臣の基本的なひとつ姿勢をお聞きしておきたいんです。
  57. 田村元

    国務大臣田村元君) 総理と労働界代表とのお話のときに、いまおっしゃったようなお話が出ました。しかし、それは私が現実に前に立ち会っておったんでございますから、私から正確に申し上げますならば、週休二日制はいいことだからぜひやろうではないか、ただし、どのようにやっていくか、あくまでもそのときの空気は懇談の空気でございました。それで総理が申しましたのは、まあ、いろいろむずかしい問題もあろうということから、たとえばということで、総理の考えております意見という意味の表現ではなかったと私は理解しております。たとえばという、プロセスの話でありまして、総理は別にこういうふうにあるべきであるという意見ではございませんでした。これはもう私も事務次官も労政局長も立ち合っておりました。でございますから、平日の労働時間をより多くして週休二日制の穴埋めをするんだ、週休二日の穴埋めをするんだという意味に私は受け取りませんでした、率直なことを申し上げて。まあ労働界との話し合いといいましても、速記をとって、そうして政府答弁というわけじゃございません。ああいう非常にざっくばらんな人でございますから、また組合側も非常にざっくばらんにものを申しておられたようであります。でありますから、その点はどうぞ誤解のないようにお願いをいたしたい。  それから私どもの考え方としましては、実はそこまでまだ煮詰めておりません。と申しますのは、すでにもう釈迦に説法でございまして、私から専門家の先生に申し上げるのもおかしいのでありますけれども、定年延長にいたしましても、週休二日にいたしましても、たいへんむずかしいネックがたくさんございます。いい機会でございますから簡単に申し上げますならば、定年延長でも、これは労使双方の悩みとでも申しましょうか、給与体系、新しくどうすべきであるか、あるいは退職金の算定方法はどうすべきであるか、あるいは管理職問題等どうすべきであるか、これにまだ答えが出されておりません。週休二日の場合でも中小企業の経営者に及ぼす影響、それから中小企業の労働者に及ぼす影響、いろいろございます。賃金カットになってはたいへんでございます。そういういろいろな問題がございますので、目下賃金研究会とか労働者生活ビジョン懇談会とかというような、労働大臣の私的諮問機関ではございますが、そういう機関におはかりをいたして、中山伊知郎先生とか、大来佐武郎さんに中心になっていただいて御検討願っておる。そういうわけでございますので、問題は週休二日を実現するのに、いきなり法律でばさっときめてしまうということによって混乱も起こるでございましょう。でございますからなるべく行政指導で、ある程度の期間を持ってその間にならしていく、一つの慣行としてならしていく、そのために労働省が中心になって行脚もする。地区別懇談会あるいは産業別懇談会労使との話し合い、いろいろなことをやってその機運を醸成していく、いまそういう段階でございますが、ただそれにはプロセスが一番必要でございます。そのプロセスをどのように持っていくかということでございまして、いま先生がおっしゃったような考え方で私どもが煮詰めておるという段階ではございません。むしろ私どもとしては、でき得る限りこれはもう労使の話し合いでございますから、私どもがとかく権力的に申すことは避けなければなりませんが、何とかほんとうの意味における労働福祉としてのメリットとして労働者に与えたいというのが私どもの偽らざる気持ちでございます。
  58. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つ突っ込んでお聞きしたいんですが、まあ概略はわかりました。行政指導の基本的な考え方ですね、大臣もおっしゃるように、勤労者に優秀な生活ということで大きくスローガンも掲げておられるわけでありますから、したがってこの週休二日制の問題については、大臣指摘されましたように、賃金体系の問題も定年制ということになるといろいろ問題が出てきましょう。あるいは嘱託というような問題がないとも限りません。なおまた今度は時間の問題になりますと、先ほど、たとえばという例で総理が言われたというお話でございますが、実働八時間を九時間にして、そうして週休二日制をやればいいんじゃないかというようなことも、たとえばの話でも実際そういう方式がないとは限りません。あることはございます。したがってこれは非常に複雑でございます。ところで労働省としての行政指導的な役割りをされるのに基本的なその考え方は、現行八時間の中でこの週休二日制をやるのか、賃金はしたがって保障すべきだという見解に立つのか、あるいは定年制の問題は少なくとも六十歳まではこれは雇用関係は変えない、そして現行賃金をやはり保障するという立場に立つのか、あるいは六十歳から六十五歳になればまあ多少問題がないとも限らぬと私も考えぬではございません、現段階では五十五歳から六十歳までという労働省見解を示しておられるのでありますから。したがって、雇用関係も変わらずに現行生活を保障するという立場で行政指導をされようとするのか、この点は非常にむずかしい問題だと思うのですよ。それとも大臣がおっしゃるように、非常にむずかしいから、内容が、あるいは個々にまた企業においても変わってくるから、少なくとも労使関係にゆだねてしまうのだという姿勢で臨まれるのか。私はそれならもう行政指導要らぬと思うのですよ、そういうことなら。だから行政指導の一つのプログラムとして、これだけは国際的にやはり堅持しなくてはならぬという労働省の指導の方針として具体的なものがもっと出るべきではないかという感を深くし、かつまた出してもらうべきだと思うのですが、この点どうですか。
  59. 田村元

    国務大臣田村元君) 定年延長におきましても週休二日におきましても労働者にとっていささかのデメリットも与えてはならないと思います。あくまでもメリットでなければならない。これはもう当然のことでございます。で、いま先ほど申し上げましたように賃金研究会とかビジョン懇にお願いをして御検討を願っておりますと同時に、私どももそれなりにいま勉強をしておる最中でございます。たとえば、定年延長からまず申し上げますならば、率直に言って賃金体系は非常にむずかしい問題でございます。で、もちろん研究会において中山先生を中心に御検討を願っておるわけでありますが、私どももいろいろなきわ立った体系を持っておる企業の賃金体系を取り寄せていま勉強しております。たとえば松下電産の賃金体系というのは非常に興味ある賃金体系でございます。賛否は別として、私が賛成か反対かは別として、興味ある一つの賃金体系でございます。それから同じ企業でありましても東芝のは全然異ったまた形の一つの体系でございます。そういうものをいま取り寄せまして、あらゆる業種のを取り寄せて勉強しておる最中でございます。でありますから、いまどうあるべきであるということを申す段階ではございません。それはかりに申せばせっかく御依頼を申し上げておる研究会や懇談会のベテランの先生方に非礼に当たります。でありますから、私ども申せませんが、率直なことを申しまして行政指導をするのに私どもはでき得べくんば幾つかのひな形を示したいというふうに私は思っております。それでなければ、やれやれと言ってラッパだけ吹いておるようなことじゃこれはもう価値がございませんから、やはり具体的に物事を進めなければなりませんから、まず行脚をする、そして懇談する。しかも、中間報告が出てまいりましたならば、それを尊重し、かつ労働省の意見等も添えてひな形をお示しする、それは画一的なひな形であってはならぬと思います、企業は種々雑多でございますから。でございますから、いろいろなひな形をお示しすることも方法でございましょう。このようにして従来ややともすればこういう問題はかけ声ばかりという酷評も受けておっただけに私は具体的に現実的にこれを進めたい。でございますから、週休二日につきましても同様でございまして、週休問題につきましても、特に雰細企業におきましては日給の労働者が多うございます、それから、時間外労働というものが、私ども労働省から見れば好ましいことではございませんけれども、現実には時間外労働という、残業というのが非常に多いし、それが零細企業の労働者を潤わしておる一つのメリットに金銭的にはなっておるということも事実でございます。でありますから、そういう点についてあくまでもその基本的、——従来受けておった賃金的にも、福祉といいますか、メリットというものはこれを一切削らないで、そして労働福祉としての上積みをしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  60. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大体考え方はわかりましたが、大臣の説明ですと、中小零細企業が今日労働条件については非常に劣悪な状態にある、したがって週休二日制をやるにしてもなかなか受けて立つ力がないのではないか、それに対しては改善のための助成も考えておられるのかどうかですね、そういう点ちょっとお伺いしておきたいのです。おっしゃるとおりです。もう御説明がありましたとおりですから、私も十分なる検討をされなくちゃならぬと思いますが、一番問題なのは、現状を見ましても、この四十六年度の労働省調査でも全体に週休二日制の採用企業が増加しつつあることはもういなめません。したがって事業員千人以上の大企業ではこれは約三八%といっておりましたけれども報告では四〇%になっておりますね、それから、中小企業ではわずか一〇%前後、九十九人以下の企業では三・三%。すでに週休二日制を採用しておる企業でも多くが月に一回か二回で、完全週休二日制というようなことは、これはとうてい望めぬような現状になっております。したがって、これも〇・四%、そういうふうに見てまいりますと、この週休二日制を採用しておる中でも六・八%が、完全な現行を保障して、そして完全な、労働者にも犠牲を出さないでやっておるというのはわずか六・八%。そこで、私は心配いたしますのは、中小企業の間では、この取引関係ですね、親会社との取引関係、むろん日本の中小企業の場合は親企業が投資もしておりますからいろいろな関連性がございます。したがって、それより先にやるというわけにもいかない点も出ております。したがって、この週休二日制に対しては相当抵抗が強いということも私も伺っております。なお、この労働時間の短縮と週休二日制の実施が人件費と生産の減産、こういう問題からくる配慮をするために先ほど大臣もおっしゃったように零細企業をどうするかという問題には、少なくとも私はこの改善の指導のための処置が重要だと思うのです。ところが、ことしの、この四十八年度の要求予算の資料を、概算で出しておられるでしょうが、私、いろいろ見てみましてもそういう財政的なものの裏づけになるようなものはあまり出てないのじゃないかという感がするのですが、これも単なる指導で終わるのか、その点はどうお考えになっておるのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  61. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、予算のことにつきましては、事務経費を主といたしますから、労働基準局長から私のあとで御説明をいたさしたいと思います。  そこで、私から申し上げたいことは、これは非常にいい機会でございますのでお聞きを願いたいのでありますが、率直なことを申して、私は、法律で縛るべきか縛らざるべきか、ずいぶん迷いました。けれども法律で縛った場合には相当な混乱が生じるであろうということをおそれました、とりわけ中小企業においては。ただ、今度は、それと裏面の問題になりますが、先生おっしゃったように、たいへん率は低いのでありますけれども、品川の監督署の管内におきましての三十人以上九十九人未満という、言うなれば中小企業、これの調査をいたしますと、一八・六%、約二〇%近い企業が多かれ少なかれ、内容はとにかくとして、週休二日制というものに移りつつある。ということになりますと、やりようによっては、大きな混乱なくしてやれるんではなかろうかというような、自信というとおかしゅうございますけれども、私も非常に目の前が明るくなったような感じでこのデータを見ました。でございますので、とりわけ中小企業に対しては、労使ともに私ども双方に対して緻密に検討し、俗に言ういきな計らいをいたしながら進めてまいりたい、きめこまかく進めてまいりたい、このように考えております。くどいようでございますが、やはり行政指導でいかなければ混乱が起こるんではないかということも考えました。しかも、ある程度のプロセスとしては、日時は、ある程度の年数は定着させるためには必要であろうというふうにも思っておりますので、御理解を願いたいのでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、予算面につきましては、事務経費が主たるものでございますので、局長から御説明いたさしたいと思います。
  62. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 中小企業に対しまする週休二日制の普及につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、いろいろ困難な面がございまして、これをどういうようなやり方で進めたらいいかという点は、非常にむずかしい問題があるわけでございます。ただ、それにつきまして、週休二日制をもし中小企業でも採用した場合に、経営的等にどういう影響が起きるかということになりますと、これは企業によりまして千差万別でございまして、一つ一つの企業についてなかなかそれを算定することもむずかしい問題でございます。非常にまあ数も多いこともございまして、直接的に個々の企業に対する助成というようなものは、来年度予算要求においても要求はいたしておりません。しかしながら、何とか中小企業にもこのむずかしい中で進めてまいりたいということを考えまして、その一つの方法といたしまして、中小企業の団地をなしておる一つの中小企業の集団であるとか、あるいは地域の協同組合であるとか等々、中小企業が集団で従来も自主的に労務管理改善の事業をやっているものがございまして、それに対しまして国からその集団に対する労務管理改善事業の助成金を出しておる。まあ同額を府県も出して、そうして自主的な改善を進めておりますが、こういうような中小企業集団で労務管理の改善事業を行なうものに、週休二日制の普及導入ということもやらせることが、こういう中小企業に自主的に週休二日制を普及させる一つの方法ではないか、かように考えまして、この中小企業集団の労務管理改善事業に対する助成につきまして、週休二日制の問題もテーマとして取り上げさせるということで、この集団に対する助成金を来年は増額を要求いたしておるというような方向を、四十八年度予算要求においてはとっておるわけでございます。その額は、一応予算要求額は二億五千六百万円になっております。
  63. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いま局長言われるように、それはそうでありましょうけれども、つまり、周囲が週休二日制になって、非常に危険、劣悪な現在、条件の中で、さらに週休二日制を適用するということについては、困難性がある。これはできるとかできないとかいう問題よりも、周囲が進行すれば、やらないところは、今度は人的にまいっちゃうんです。だからやらざるを得ないんです。やるためにはどうするかというと、私は週休二日制の問題は急速に進むと、こういうふうに考えるのです。したがって、それに対する助成措置とかいうふうなものが、新しい四十八年度の予算に組まれてないから、これは通産省とでもいま話し合いをして何かお考えになっているのかと思ったのですが、先ほどおっしゃった二億六千万円ほどですか、そんなものじゃ中小企業の場合は問題にならないのであって、だからやはりそれは私は要望として申し上げておきますが、いずれにしても周囲が進めば中小企業はやって倒産になるのか、やらなければ人が来ないで倒産になるのかという、この過当的な状態がないとはだれも言明ができないですよ。そういう面まで考えておられるのか。それが基本的な行政指導のものが出てこなくてはいかぬ、これを私は申し上げておきたいのです。今後、そういう点をひとつ考慮しておいてもらいたいと思います。  それから基準法の問題ですが、労働時間の短縮による週休二日制と労働基準法の関係の問題になる点が非常に多いと思うのです。したがって、現行の労働時間、四十八時間ですね、これを短縮するか、しなくちゃいかぬと思うのですね。したがって、これを改正する用意があるのかないのか。これはもう週休二日制をやる限りにおいては、基準法の改正をやらなくてはならぬことはもう当然のことでありますが、その点お考えをお聞きしたい。  それから、これは国際局ですか、ILOの第一号条約ですね、一日八時間制で一週四十八時間労働というこの規定をしたままで、日本は批准をいたしておりません。この批准をする用意があるのかないのか。これはもう一番ずるいやり方です、日本のは。そうしてその日本の基準法は非常に国際的にも優位にあるのだといって大きく肩を怒らしておりますけれども、実際問題としてはそうじゃないのです。いままでやらないところに問題が私はあると思いますが、この点をどうお考えになっておるのか。これは担当のほうからでけっこうですから、お聞きしておきたいと思います。基準法の問題とILOの批准の問題、これをどうお考えになるか。
  64. 田村元

    国務大臣田村元君) この問題は、労政の基本をなすものでございますから、私からお答えをいたしたいと思います。  まず、話の順序として、ILOからお話を申し上げたいと思います。  私は、就任早々、ILO条約の批准促進を言明してまいりました。そうしていま久野木審議官の手元でこれを整理さしております。できれば先進国並みにといいますか、と言いますより、むしろ平均の少なくとも四十本ぐらいの批准はしたいというふうに考えまして、いま一つずつ検討しております。ところが、いざ検討してみますと、非常にむずかしい問題がたくさんございまして、頭の痛いところもございます。たとえば、さっきおっしゃいました一号、それから三〇号というような問題は、これを批准いたしますと国内法との間に大きな矛盾が生じてまいります。たとえば時間外勤務をどうするかとか、いろいろな問題が出てまいります。でございますので、早急にこれを批准するということが実際問題としてむずかしいというところに当面をいたします。しからば、今度は国内法を改正したらどうかという問題になるわけで、先ほどの先生のおっしゃった基準法の改正問題になる。基準法の改正問題を、私はこれをもう率直に申し上げますが、いま基準局長に対して、労働基準法ができてからもう四半世紀だから、とにかくいろいろな点で再検討に値する部分もあるであろう。だからこれを一ぺん抽出してみなさい、こういって抽出をさせております。ただ、それは改正を前提とするというふうに御理解願っちゃいささかちょっと困るんでございますが、と申しますのは、基準法というのは労働法規の憲法でございます。言うなれば憲法でございます。これを改正するということがいかにむずかしい問題であるかということは御理解願えると思います。非常にむずかしい問題。しかも基準法が平均的な、たとえば時間一つとりましても、平均的な条件を明示しておるものと違いまして、最低基準を明示しておるという特殊な法律でございます。それだけにいざこれを改正するということになりますと、いろいろな障害が起こるでございましょう、これは政治的にも障害が起こるでございましょう。非常にむずかしい問題でございます。でございますので、いま率直に言って検討はさしておりますし、私も基準法はいま猛勉強中でございますけれども、改正をするという前向きの姿勢にまでまだ至らないというのが偽わらざるところでございます。でございますから、ここで基準法の改正ということを申せば、それこそお喜びいただけるんでございましょうけれども、それほどむずかしい問題でございますので、慎重に検討しておると。もうきょうはざっくばらんに率直に私の気持ちを申し述べた次第でございます。
  65. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃ何にもやらぬのと一緒やね、勉強だけやって。それじゃ困るんでね。大臣それは努力をしていただいていることは私、理解はしますが、そうじゃなくて、ILOの問題お触れになりましたが、実際問題として、たとえば私一つの例を申し上げます。これは担当の方、見えておるはずですね、きょうは。——日本の残業の二割五分増しの問題、国際的に問題になっておるんですよ。そうでしょう。しかも他の外国では五割増しというような状態ですよ。最低だ最低だといって、最低を直すのが法律の改正であって、あるいはまた批准に持ち込むべきであって、最低を、どう日本の条件をやはり改善してやるかという、その観点に立っていただかねば、検討だけでは私は困ると思いますね。したがって、これから問題になりますのは、大臣ね、どうしてもやっぱり日本の企業全体をながめてみますと、七〇が国内消費、三〇%が貿易製品、こういう見方をしてもいいじゃありませんか、私、そう見ていますがね。それで、契約できない、生産がそれだけできなかったという場合はどうしても労働強化の状態に追い込まざるを得ないんですよ。したがって、日本の二割五分というのは安いから、その二割五分の残業手当がついて初めて八時間労働の賃金に該当するような生活につながっておるんですよ。ここに日本には一つのみそがあるわけですよ。だから八時間労働で食える賃金、これをまず前提に置いていただく。そして残業の割り増しというものは安いから、結局経営者は二割五分出しても損はいかないと、こういうことを考えて残業やるわけですね。したがって、生産に追われてくるというような状態、週休二日制のために追われてくるという状態が続けば、私は残業はますます拡大していくと。したがってここでやはり外国並みの、もし残業については五割増しの残業手当というものを出すような規制をしていく必要があると。で、この六日間の生産につながるその現状を五日間で生産をしようという考え方の中には、相当の近代化が必要になってくるんです、これは。あるいは場合によってはできない部門があるかもしれません、労働集約的の産業においては。けれどもそれを気にしておったんでは、労働者から見れば何の改善もないということにつながるわけです、先ほど大臣おっしゃるように、最低の基準だとおっしゃるけれども。最低を上げるという立場に立って労働省は指導をしていただかなければ、これは意味をなさないと私は思うのですね。だから、そういう点をひとつ検討をしていただいて、ILOの批准にしましてもあるいはこの基準法の改正にしましても、少なくとも割り増しなんかも検討する時代が来ておる。国際的には非常に笑われていますよ、日本の場合は、そういう抜け道をつくっておるもんですから。この点をひとつ基準局長なりILOの担当の方、国際的にどうお考えになっておるのか、まあ大臣の意見はわかりましたから御答弁願いたいと思います。
  66. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 先生御指摘の、時間外労働についての割り増し制については、現行の労働基準法ではおっしゃいましたように二割五分増しになっているわけでございますが、国際労働条約上はこの時間外手当の割り増し率二割五分増しということで、条約違反ということではないわけでございます。ただ、先進国におきましてはこれよりも高い割り増し率を慣行としては行なっているところもございますし、アメリカのごとく法律で五割増しといったような規定を設けている国もあるわけでございます。現在の基準法につきまして、いろいろ各方面からすでに制定以来二十五年もたっておるじゃないかということで改正の御意見もございまして、その中にはこの時間外労働についての割り増し率等についてもいろいろな御意見が私どものほうに出されておるわけでございます。私どもも先ほど大臣からお答え申し上げましたように、基準法につきましての問題点等についてはこれを検討し、これをともかくピックアップしてみろということでいまいろいろ検討をいたしておりますし、また先生もすでに御承知と思いますが、基準法の実行並びに運用上の問題点につきましては数年前から労働基準法研究会というものを設けまして、学識経験者の方に御検討を願っているわけでございまして、それらの御検討の項目の中にはこの時間外労働につきましての割り増し金等も一つの検討事項に相なっておりますので、十分今後それらの点については私どもも研究をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  67. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いま研究しておられるんですがね、辻村江太郎さんですか、慶応大学の教授の。労働基準法の研究委員会としてやっておられるんですが、結局生産性はその労働時間を一%短縮した場合は二・五%の上昇を見ることも間違いないと、こういうことも言っておられるんですよ。したがって、生産性をふやすためには、従来の産業通説をやっぱりここで打破していく必要があるということ、一説にはもうそういう説が出ておるんですよ、これは委員の方ですわね。だから皆さんのほうでも御承知でしょうから、なおまた週休二日制の実施で、いままでの欠勤率が非常に多かったものが、八八しか出勤率がなかったというのが九八%に増大してきたと、こういう実例もあるわけですよね。だから、これも比較検討された結果、そういう結論が出ておるのであって、私はこういう説を一つの基準にして、そうして労働省としてはいわゆる指導の基本的なものを確立して指導しないと、必ず週休二日制の問題における内容的なものをあやふやにしておくと非常に労使紛争の種になる問題だと思うんですよ。現に、そうじゃありませんか、週休二日制と時間短縮のとらえ方をめぐってもう紛争が起こっております。今年の春闘で、池貝鉄工では二千百人おりますが、週休二日制にするために現行一日七時間労働を三十分延長する、こういう会社案が出ました。組合はこれを拒否しておりますがね。したがって、これは一つの例ですけれども日本の化学産業というのはみな七時間労働ですよ。これはもう御承知ですよね、私が言うまでもなく。三交代制あるいは四交代制という状態で実働七時間ですよ。それで、週休二日制をやろうといたしますと、それを八時間に返してそしてやるなんというようなことになれば、これは既得権の侵害ですわ。だから、そういう点を考えてみますと、いまこれは一つの池貝のそういう組合拒否しておりますが、この拒否と同時に、最後にどうなるかわかりませんけれども、私は少なくとも週休二日制を政府が言う限りにおいては最低の基準法なりILOの批准に伴って国際水準のどの位置に日本はあるべきだという一つの観点にも立っていただいて、もっと基本的なものを出すべきだ、そうして指導しなければ、これは非常に複雑な状態の中で紛争が継続すると、こういうふうに考えるわけです。この点をひとつ、大臣、いろいろ検討なされている熱意に対しては私も敬意を表しますけれども、大事なときですから、思い切って国際水準も考えながらもっと労働条件の向上を日本としては一段高めていくと、こういう観点に立ってもらいたいと思うんですよ。と申しますのは、いま日本は御承知のように国際収支もああいう状態で、世界先進国、後進国に限らず日本の黒字に対して大きな問題が出ておるのも、やっぱりこういう問題も、日本人は働き過ぎると一がいに言いますけれども日本が働かなかったらどうなるんですか。原料のない、材料のない日本の国が産業立国として立つ上にはやっぱり働くことは働かなきゃいけません。それから週休二日制もやらなくちゃなりません。そして国際ラインにそろえて、これで日本はさらに構造的ないわゆる産業の改革もやり、そうして労働者にも無理のいかないようにやるということがこれは産業人としてのとるべき道だと私は思うんですよ。そういう面から考えても、いま最低だ最低だというこの日本の労働条件の国際水準を私はもっと優位に持っていく必要があると、こう思うんです。この点ひとつ、大臣からもう一ぺん考え方をお聞きして、今後私の希望もいれてもらいたいと思いますが、どうですかね。
  68. 田村元

    国務大臣田村元君) 御発言の御趣旨痛いほどよくわかります。率直なこと、よくわかります。私は、日本労働者の労働福祉というものをいろんな点で西欧先進国並みにまで持っていきたいと思います。先ほど申し上げましたし、またおっしゃったような中小企業の問題もございます。けれども、裏返せば中小企業の労働者にも大企業の労働者や公務員並みの労働福祉の恩典に浴せしめたいという気持ちもございます。と同時に、単なる労働福祉の恩典というとらえ方のみならず、もう時代の要請、ニードといいますか、そういうものであるというふうにもまたとらえていかなきゃならぬと思うんです。でありますから、いま私がたいへん基準法の問題で歯切れの悪い答弁をいたしましたが、今日の段階では私としてはそれ以上に言いようがございません。けれども、私の頭の中には、とにかくあらゆる面で労働条件をよくしていきたい、西欧先進国並みにまで持っていきたいということで私の頭の中は一ぱいでございます。  それから、たいへんいいことを言っていただいたんですが、いわゆる週休二日をやりますと、はたしてそれだけ企業に不利であるか、実は週休二日を断行した会社の方々に聞いてみました。これは経営者に聞いてみた。その多くはといいますより、ほとんどはそれによって影響がない、時間を延ばすとかなんとかということは別問題として、むしろよく働いてくれる、それから、かえって欠勤が少なくなる、極端に言えば生理休暇まで少なくなるというようなことでございます。でありますから、決して大きなマイナスにはならないだろう、むしろある意味においてはプラスじゃないか。たとえば松下電産が週休二日に踏み切ろうとしたときに、労働組合のごく一部ではありましたけれども、一部から週休二日をすれば生産性向上のために妙なことになるから、われわれはそんなものは反対だという声が出たそうです。これは十年も前のことでございます。ところが、いまになってみれば、組合もといいますか、労働者経営者もやってよかったという感情だそうでございます。でございますので、いまおっしゃいましたことを十分私受けとめて、先生のおことばを受けとめてこれからいろんな面で前向きに進んでまいりたいと、こう思っております。ただ、くどいようでございますが、法律の改正とかなんとかということについて私がいま明言できる時期ではないということは、ひとつ賢者の御賢察をよろしくお願いする次第でございます。
  69. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 終わります。
  70. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  午後は一時三十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  71. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、最初に、例の堀木訴訟の問題のほうでお尋ねしたいと思います。実はこの問題を、皆さん御承知のことですし、それから私もこれが報道されましたときに、厚生省がショックだったというような記事も見えまして、それでその後判決文もようやく見せていただきましたけれども、私自身も党務が非常に忙しかったものですから準備は十分ではございません。ですけれども、ことしこれから年金の問題が非常に重要な問題になるときでもございますので、この問題黙っていられなかったものですから、厚生省がはたしてどういう態度をおとりになるのかということも聞きたかったので、きょうは、まだ不十分ですから、続いて次々やらしていただきたいという意味で最初にこの問題をお尋ねしたいと思います。  で、これは昭和四十五年の二月にこの堀木文子さんという全盲の心身障害者、第一級の身障者ですね、この方が自分の子供に対する児童扶養手当の支給をしてほしいということを兵庫県の知事にあててその資格の認定請求をしたわけなんですが、御本人は身障者手当を受けていたわけです。ところが四十五年の二月に申請して三月にすぐ却下された。それでまた異議の申し立てをしたけれども、これも棄却されてしまった。そこで、その年の七月に県知事を相手どって訴訟を起こしたわけです。その児童扶養手当の却下処分を取り消してほしい、それからそれの受給資格を認めてほしいという訴訟を起こしたわけです。これに対して神戸地方裁判所の判決が九月の二十日に出たわけなんですが、この判決は児童扶養手当と、それからこの障害福祉年金とを両方併給すべきである、その併給を禁止しているのは憲法違反であるという判決でございました。で、その当時障害福祉年金として二千九百円をそのおかあさんは受け取っていた。それで児童扶養手当二千百円をほしい——その当時が二千百円だったんですね。それが申請が却下されてしまって、そこでこれは憲法違反ではないかということで訴訟を起こしたわけなんです。その判決も憲法違反という判決をしているわけです。つまり問題は公的年金の併給ができないということに対して、それは憲法違反であるという判決が出たわけで、たいへんこれは重大な意味があることは私もよくわかりますが、しかし厚生省はこれがショックだったということなんですね。  そこで報道されているところによりますと、穴山児童家庭局長は公的年金とそれから児童扶養手当の併給を認めないというこの自分たちの態度に対して違憲だと、憲法違反だといわれることに対して控訴するつもりである、上級審の判決を仰ぐつもりである、で、そのことについては法務省とも相談して控訴するつもりである、上訴するつもりである、もしかりにこの二つの併給を認めるとなると、各種公的年金相互間の併給問題に発展することでこれはたいへんなことになる、年金制度そのものも再検討しなければならなくなるというようなことを談話としてきっと新聞記者に答えていらっしゃったんだと思うんですが、で、この態度は厚生省はやはけ変わらないわけでしょうか。たいへんショックだったというのは、これはたいへんだ、併給しなければならなくなるのはたいへんだというお考えなんでしょうか。初めにそれを伺いたい。あと大臣から……。
  73. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 私が判決が出ました日に話しました気持ちは控訴するであろうと、あの時点ではもちろん決定をできません問題でございますので、従来のたとえば朝日訴訟あるいは老齢年金の夫婦受給の関係の訴訟、そういったようなことの違憲判決が出た過去の例から見ますと、高裁のほうに控訴いたしまして、一応まあ上級審の判断を仰ぐというような態度をとってきたわけでございますので、今回の場合もそうなるのではなかろうかというような感じもしたわけでございます。もちろんこれはまだそうきめたわけではございませんで、一昨日大阪の法務局のほうに判決文が正式に送達いたされまして、法務省のほうでも判決文についての検討を開始いたしているようでございますし、私どものほうもただいま検討している段階でございます。したがって、控訴するかどうかということについては、法務省と両方が検討して協議をした上できめるということで、いまの時点で控訴するというようにきめたわけではまだございません。  それからショックであったというのは、これはどういうような私の発言をそういうふうに表現されたか、よくわかりませんけれども、いやしくも国会で制定されました法律が違憲性があるという判決がございましたので、これは非常に重大な問題であるというようにお話はしたわけでございまして、そういったような気持ちで判決がありました日に話したわけでございます。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 障害福祉年金二千九百円、それにもし児童福祉手当二千百円もらったとしても、合計五千円でございますね。しかも全盲のおかあさんですから、これを事実の上から見ますと、これに児童扶養手当を与えていないということのほうが私どもショックなんですが、そういうことが一ぱいあるわけなんですが、それで、上訴するともしきめるならば、いつまでに決定なさいますわけですか。
  75. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) たしかおととい正式に送達があったと思いますので、それから二週間以内というようなきまりでございます。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はそれは政府の行政機関が憲法違反のことをやっていたというふうなことになると、それはショックだと思うのです。ですから、法的に言えば、どうしてもそこのところでは憲法違反ではありませんというふうにしたいという気持ちはよくわかります。ですけれども、厚生行政というのは私は非常にその点を今後考えていっていただきたいと思うわけなんで、福祉行政に対する態度に私たちもすでにたいへん疑問を持っているわけです。これまで厚生省は先ほどもあげられましたけれども、朝日訴訟では三十五年に一審で原告のほうが勝って、そうしたらそれをまた控訴して、三十八年の二審では今度は原告が負けましたですね。あれは生活保護では食べていけないというたいへん有名な訴訟だったわけですが、それで原告がなくなられて、その遺族の人が最高裁に持っていった、しかしもう本人が死んでいるんだからということでこれは却下されてしまったわけですね。それから例の牧野老人の訴訟の問題ですけれども、あれは老齢福祉年金を夫がもらっている場合には妻は減給してしまうのだ、だからそれぞれの個人として尊重される権利、これが守られないというようなこと、それから法のもとの平等を差別をしているというふうなことで憲法違反であるという一審の判決があって、それで、それを厚生省のほうは第一審にかけて争っていたわけですけれども、途中で和解をして取り下げて、その後反省されて、いま夫婦で老齢福祉年金をもらうときにはそれぞれちゃんともらえるのだというふうにお変えになりましたですよね、そうでしょう。だから、厚生行政、福祉行政自身がその法的なたてまえをとってそれを主張していても、実際にはほんとうに国民の福祉がはかられないという実態があれば、変更していくのがほんとうだと思うわけなんです。だから、憲法違反であるか、違反でないかという法理論とか、それから児童扶養手当法というものと国民年金法との間に法的なそごがないかどうかというふうなことで法律のことばっかりを考えて福祉行政を私はやるべきではない。法律のために人間の福祉がはかられるんじゃないんで、私どもの生活全体が憲法があるから守られるんじゃなくて、人間の権利のほうがもっと重大だというふうに思いますものですから、そういう点で違憲訴訟をされたから顔がつぶれるというようなことでない、切りかえをしなければならない時期じゃないかなと私思っているわけなんです。それで厚生大臣にそういう非常に基本的な態度についてどうお思いになっていらっしゃるか伺いたい。
  77. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) まあ今回の判決の問題につきましては、私はまず問題が二つの面から理解がされなければならぬかと思っております。  まず第一点としては、あの判決がいまの併給禁止は違憲であると、憲法違反であるという判決でございます。私ども行政機関としてはまあ国会で成立をしたその法律を執行するということで、その法の執行を行なっておるわけでありまして、したがってこれが違憲であるということになりますと、これは相当に重大な問題でございます。したがって、この取り扱いにつきましては、これは先ほどお答えを申し上げましたとおり、法務省とも連絡をして、協議をして態度を決定したいと思っておるのでございます。  それから、いまのお話の中にもございましたが、いま申し上げましたとおり、成規にでき上がった法律を執行するというたてまえでわれわれはこの行政をやっておるわけでありまして、ただ実際問題としてお話のように福祉が非常に重大な時期になってきたと、そういったような時代におきまして、こういう要するに法律ができておるわけでございますが、そういったような法律を今後、状況の推移に従って、あるいは福祉を重視するという状況の中ではたしていまの併給問題等についてそういったたてまえがいいかどうかという併給制の問題、あるいは所得制限の問題等もいろいろの方面で論議をせられておるわけでありまして、まあ、そういった問題につきましては、このいまの控訴とかなんとかいうことは別個に社会福祉という立場からこういったような問題についてはさらにひとつ検討を進めてまいりたいと思っております。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいまのお答えを聞いておりますと、違憲であるときめつけられることは非常にたいへんだという点からすれば、やはり牧野老人のケースのように上訴はするんじゃないか。しかし実態はもうそれに合わなくなりつつあるんだから、何らかの方法でそれは改めていきたいというようなお考えのように伺いましたけれども、そういうことでしょうか。
  79. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) そこまで明確に申し上げておるわけではないわけでございまして、まあこういったような時代の推移、あるいは福祉重点の世の中でもございますし、またこういったような問題につきましては今日まで各方面でいろいろの論議も行なわれておるわけでございまして、そういったものを含めましてひとつ福祉向上という立場から単にこの制度のみならず、これに類似の諸般の制限等についてもあわせて検討してまいりたいと、こういうことでございます。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ、わかったようなわからないような、たぶん私が想像したようなことだろうと思うのですけれども、いままでも厚生省は違憲判決をされるのは非常に困るけれども、しかし時には憲法を使って福祉に関してですね、まあ福祉を妨げるようなことすら私はあったように思うのですよ。たとえば保育所の場合なんかは、未認可保育所に東京都で補助を出そうとしたら、これは憲法八十何条でしたかね、あれに違反するから出しちゃいけないというようなことを、——まあしかし別途これにはやり方を変えて、いまじゃ未認可保育所にも幾らかずつの補助を出すというようなことを地方自治体でやられてもこれはまあ黙認していらっしゃるわけですね。そのほか、老人の医療の無料化というようなことでも、健康保険の自己負担分ですね、自己負担分を地方自治体があとで負担をしようとしたときにも文句をつけていられたわけです。だけれども、もうすでにいまや厚生省自身がそれもやられるように踏み切っておられるわけでしょう。ですから、私はこの判決文の中で被告側の主張の中に、ニードに応じる必要がないというようなことばがあるのですがね。私はいまここでほんとうに福祉を考えたら国民のニードに応じるようなやり方に変えていかなきゃならない、こういうふうに考えるわけなんですね。これはもう念を押しましても同じことですし、私、厚生省の福祉行政全般に対する態度をほんとうに地方のほうから、あるいは自治体のほうから、あるいは国民の声のほうから押されていくというのでなくて、もう、もっともっと先取りするぐらいの福祉行政をやっていただきたいということを要望をしておきたいと思います。  そこで、その児童扶養手当の目的なんですがね。この目的はどういうことになりますでしょうか。
  81. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) これは成立の経過から見ましても、実は死別の母子世帯につきましては、国民年金法ができましたときに、母子福祉年金の制度が取り入れられました。ところが、生別の母子世帯につきましては、保険事故になじみにくいということで国民年金法の中に取り入れませんでしたので、いわゆる死別に対応する生別の母子世帯に対して母子福祉年金的ないわゆるまあ保障をする必要があるのではないかというようなことからこの法律をつくりまして、まあいわばそういったようなものの補完的な意味でできたわけでございまして、したがって、そういう生別の母子世帯の福祉をはかるということのためにできたものであるというように理解をしております。
  82. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったようなふうに厚生省の説明はそうですけれども、この児童扶養手当法の目的のところでは、「この法律は、国が、父と生計を同じくしていない児童について児童扶養手当を支給することにより、児童の福祉の増進を図ることを目的とする。」と、こう書いてありますね。ですから、父親のいない、死離別、あるいは何かの事情で母子で暮らしている家庭の子供に対してその子供の福祉の増進をはかるということが目的になっているわけですね。で、いま国民年金法の中に、そういう死離別母子世帯の子供の年金が入っていかなかったから補完的なものであるという御説明でしたね。つまり、局長のほうの御理解ではこれは年金であると、こういうことですか。
  83. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 年金であるというものではございませんで、結局、その年金の中に入らなかったという理由は、いわゆる事故と申しますか、生別、母子世帯になりました原因になります生別ということがいわゆる年金とはなじみにくいということで、死亡事故であります死別ということの原因の母子についてのみ母子福祉年金というものが国民年金の中に取り入れられたわけであります。したがって、生別の母子世帯も同じような状態にあるということから、いわば何と申しますか、そういった年金制度を補完する、まあ年金に類する一つの制度として児童扶養手当法というものを制定したということじゃないかと思います。
  84. 田中寿美子

    田中寿美子君 年金局長にお伺いしますけれどもね。——年金局の方どなたかいらっしゃいますね、きのうお願いしておきましたが。いらっしゃいませんか。——そうしたらあとに回しますが……。
  85. 矢山有作

    委員長矢山有作君) じゃあ、呼びますね。
  86. 田中寿美子

    田中寿美子君 はい。  それで、国民年金法によりますと、二つ以上の年金の給付の受給権者には、その者の選択によってどっちか一方にするというのが年金法第二十条にあるわけですね。それで、もし今度のこれを憲法違反だと、このおかあさんが全盲で身障者の福祉年金を受け取っている。子供は子供でそういうおかあさんの子供ですから、扶養手当は私は当然必要だと思うんですが、その子供に扶養手当を与えなかった。そういう方針が憲法違反であるというふうにきまれば、年金法の中の併給を禁止する国民年金法二十条にもかかわる問題だと、だから厚生省の年金制度全体をゆさぶるような大きな問題だというふうに考えているというように私は思いましたけれども、そうでしょうか。
  87. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) まあ私どもの立場から申しますと、そういうことではないわけでございまして、年金の原理原則というのは私ども所管外でございますので、とかく申せませんけれども、この問題、私どもが限定しております、いわゆる児童扶養手当法につきましてどう考えるかという問題につきましては、いま申しましたような成立の経過から、いわゆるこの児童扶養手当法というものを考えましたときに、年金的な手法を用いて制度を組み立てたということになっているわけでございまして、したがって、そういった年金的手法を用いるというようなことから、いわゆる二つの併給を避けるという方法をとったわけでございます。まあ、したがって年金のサイドにおきましての原理原則というのは別にいろいろあると思いますけれども、私どもの考えておりますのは、年金のサイドの問題ではございませんで、いわゆる児童扶養手当法という、私どものサイドの問題としてどう組み立てて考えていくかという場合に、いわゆる母子福祉年金を補完するというような立法のいきさつからいたしまして、年金的な手法によってこの法律の制度の骨格を組み立てておいたということでございます。
  88. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、その年金的な手法によって補完するということばね、児童扶養手当法の中に、やはり公的年金を受けているときは児童扶養手当はそのおかあさんはもらえないという項目が四条の三項にありますね。それで、つまり児童扶養手当の目的は児童の福祉の増進をはかるんだということを掲げているにもかかわらず、公的年金給付を受けるときにはもらえないということ自体、私はこれはそもそも問題があると思いますけれども、さらにこのケースの場合はおかあさん自身がひどい身障者ですよね。全盲でしょう。それなのに、子供のほうの福祉をはかるのに年金の補完的な性格であるから併給できないというふうに考えること自体、これはこの法律にもこれは私は矛盾があるような気がいたします。そうお考えにならないでしょうか。つまり年金そのものであれば二つの年金を併給しちゃいけないという、これは私は世界的に見ればこれも直していかなければいけない問題だと、しかも日本の場合の年金制度はもうたいへんばらばらなんですが、特にこの福祉年金というのはたいへん金額が少ないものですね。先般も山下先生が、老齢福祉年金はいま五千円であるべきだとおっしゃったぐらい少ないものですよ。それでそういうものしかもらっていない人に、その子供というのはそのおかあさんと違うのであって、子供の福祉を願うのなら併給することのほうが当然なんで——併給というよりももう全然別個の問題として考えるのが当然じゃないかなと思うのですがね。この原告のほうの主張しているのは、身体障害者でない場合に児童扶養手当をもらえる子供がたくさんあるわけでしょう。ところが、おかあさんが身障者で、わずかの身障者福祉年金をもらっているために子供のほうはもらえないということは、それは子供を差別することになりはしないか。身障者の母親を持つ子供と身障者の母親を持たない子供とを差別することになるというような主張をしておりますけれども、これは児童福祉の観点から考えられたらおかしいとお思いにならないですか。
  89. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) いまの手当の制度からまいりますと、ただいま御説明いたしましたような経緯からいわゆる年金的手法に基づいて制度を組み立てましたので四条の三項のような規定たなっているわけでございますが、まあ先ほど大臣もおっしゃいましたように、福祉の観点に立ってこういった制度をもう一ぺんながめ直してみたいという御指示はいま先生がおっしゃったようないろいろな意味も含んでというようなことだと私ども理解しておりますので、これからの検討する中にはそういったようなことも含めて制度の検討を進めてまいりたいというように考えております。
  90. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのとおりにしていただきたいと思いますね。そして、児童扶養手当法の中でその扶養手当を受けられる本来は母子世帯の子供ですね、あるいは母子世帯に準ずるようなところの子供なんですが、その中に、父親が廃疾者の場合は扶養手当を受けられるのですね。これはまたたいへんな矛盾だと思うのですよ。父親が不具廃疾者で母親のほうは普通であって、そしてそこに子供がいるという場合には、その父親に対しては何らかの手当が与えられていると思う。これは生活保護の場合もあるかもしれないし、あるいは福祉年金かもしれませんですね。で、父親がおっておかあさんがいて、父親のほうは不具廃疾者だけれども子供はもらえる。不具廃疾者としてその手当を受けていたとしてももらえるのでしょう。ところがおかあさんと子供だけであって、母親が身障者で身障者の福祉年金をもらっていたらその子供はもらえない。これはたいへんな矛盾だと思うのですけれども、いかがですか。
  91. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 父親の廃疾の場合のこの規定が入りましたのは、いわゆるこの児童扶養手当と申しますのは、受給権者は母親またはそれにかわる養育者でございます。いわゆる母子世帯としてとらえました場合に、通常は母がいて子がいるわけでございますけれども、この児童扶養手当法を考えましたときに、父親が廃疾というような状態にあると、いわゆる生別あるいは父親に母親が遺棄されたというような場合と同様の状態と見られるんじゃないかと。したがって、父親が廃疾した場合には、その妻である母に対して、母という受給権者に対してはこの児童扶養手当を支給してもいいんじゃないかという観点からこの支給の規定があるわけでございまして、したがって、私どもはむしろ児童扶養手当法というものが、通常の母子世帯よりも母子世帯という概念をより広く厚く解釈と申しますか、厚く対象者を考えているというものだと理解しています。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこはわかるんですよ。  私の言っているのはそのポイントじゃなくて、父親が廃疾者で何らかの手当を受けている場合に、母親がいて子供がいたら、この子供は児童扶養手当をもらえるのでしょう。そして、おかあさんと子供だけだったら、母親が身障者で身障者手当を受けているのだったらもらえないというのはおかしくありませんかということです。三人と二人の場合ですよ。
  93. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 私どもは、いまの制度から申しますと、いわゆる廃疾の父親をかかえている母というのは、まあ廃疾の父親の問題と、それから自分の子供の看護という問題とをあわせ持っておりまして、したがって、ちょうどその母親は父に遺棄されたような状態と同じ状態にありますので、母親に対しては児童扶養手当を支給すると。ただし、その母自身が障害者である場合には、その母に障害福祉年金が支給されるという場合があるわけでございまして、その場合には、先ほどから申しておりますような制度の考え方から、これに対して支給を避けるということにしたわけでございます。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん矛盾が出てきている。だから、この辺は直していかなければならないところですね。もうたいへん苦しいと思います、いままであった法律、制度を擁護していかなければならない立場にいらっしゃるから。でも、実態のほうをね、子供の福祉と母親の福祉と家庭の福祉を考えるという立場から、これはおかしいところはこれからどんどん直していかなければならないと思うのです。  で、もう一つお尋ねしたいのですがね、受給権者が母親になっているけれども子供が未成年だから、その受給権者は母親だという考え方なんですが、扶養手当そのものは子供の福祉増進のためですね。ですから、子供にそれを受ける権利があるわけです。子供の権利というものは認めない。子供がもらうべきものをその扶養義務者が受け取っているという形でしょう。私は、そこのところをね、児童家庭局なんだからおかあさんも大事だけれども、子供も子供として、子供の権利も、まあ児童福祉法があるわけですから、考えていらっしゃるべきじゃないかと思うのですね。だから、そこに母親に与えるという感じがあるものだから、おかあさんは身障者で手当をもらっていると、子供の手当までおかあさんにやるのは併給になってしまうと、こういう考えになるのじゃないですか、
  95. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) この手当は子供にいく、母親にいくということではなくて、いわゆる母子世帯というその世帯をとらえての支給ということでございまして、法律上だれが、じゃそれを受けるかという、受給権というものは、母親なり養育者にあるということでございます。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ、いつまで言ってても同じことになっちまうんですけれども、身障者で子供をかかえていたらなおさらたいへんですよね。それですから、その実態を十分考えに入れていただかなければいけないと思います。  で、判決文の中からの問題点を次にお尋ねしますけれども、判決文では憲法十四条の違反ということになっているのですね。それから法のもとの平等、それから差別されないというあれに対して違反していると。法のもとの平等というのは身障者の母親を持とうと持っていまいと、児童はみんな同じに扱われなければならないと。それから児童の福祉がはかられなければならないということと、それから身障者の母を持っている者と身障者の母でない者とを差別していると、こういう考え方だと思うのですがね、それはどうお考えですか。
  97. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 判決はいまおっしゃいましたように十四条の違反であって、まあ身障者ではない母と、身障者である母との間に対して支給する、あるいは支給しないということは、合理的なものではないんじゃないかというような立論から判決されているように思っております。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 判決の解釈なら私もそのとおりわかるので、それをどうお思いになるかということですが、これは全部あわせてあとで厚生大臣に御意見を伺います。  判決文では、原告のほうは、ほかに憲法十三条ですね、個人の尊重。だから児童は個人個人が守られなければならないというその個人の尊重という点と、それから憲法二十五条の違反であるということを主張しておりますね。二十五条は生存権と国の社会保障の義務と、これに違反していると。これはもう私、確かにそうだと思うけれども、まあ裁判のほうではそこのところはちょっと遠慮しているようです。そうまではきめつけていないのですがね。私はやはり厚生省のする社会保障とか、社会福祉とか、厚生行政全体が憲法二十五条というのは非常に大事な基礎になっていると思うのですがね。そういう点からもこの問題は、ほんとに五千円程度のものも併給できないと。合わせて五千円程度のものもやらないでおいて福祉をはかっていく。これはほかのいろいろな例から考えて非常にひどいと思うのですがね、それはいかがですか。まあ厚生大臣、その憲法違反といわれている十三条、十四条、二十五条に関しては御意見はいかがでしょう。
  99. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 私、ここでいま判決に対して批判がましいことは差し控えさせていただきたいと思います。  先ほど御答弁申し上げましたとおり、約二週間あとには控訴するかどうかということを決定をしなければならぬわけでございますが、最終判決が出て憲法違反だということになれば、これはそこで法律が変わってまいるわけでございます。法律がなくなってまいるわけでございますが、しかし、その裁判が最終判決が確定するまでは、やはり依然としてこれは法律であるわけでございまして、したがってわれわれはそれに引き続き従わざるを得ない。したがって、ただいまお話のような問題は、一体立法論的にこういう制度がいいかどうか、それに対する御意見がいろいろ出てまいったと思うのです。そういう問題についてはこれはほかの併給の問題、あるいは所得制限の問題、こういったような福祉行政にからまるいろいろな併給の問題等とあわせて今後検討さしていただきたいと、こういうことを申し上げてお答えとしたいのであります。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 あんまり納得できません。ほんとうに厚生大臣ね、厚生大臣は一番こういう点では先頭に立っていただきたいのですね。それは行政機関が憲法違反していたなんていうことはたいへん不名誉なことになりますけれども、これは実態そのものが、いまの憲法のものさしとかあるいはそのほかの法律のものさしに合わないようになりつつあるわけですから、私は不名誉というふうにお考えにならないで、どんどんこれは直していかなければならない。私はやっぱり法改正が必要だと思います。このことはここのところだけではないと思います。福祉に関するあらゆる法律、制度、年金に関してもアンバランスだらけでございますね。ですから、今後こういうことは私はまだ問題にしていきたいと思いますが、ぜひ法改正が必要だと思います。これは厚生省当局もお考えになるべきだと思いますし、われわれ議員のほうでもほんとうにこれは超党派でもって改正すべき問題というふうに思っているんです。ですから研究してください、私たちのほうも研究してまいりますから。  それで年金局関係の方おいででしょうか。——じゃ、もうちょっと……、次に進まなくちゃなりませんのでですね。結局、私がお聞きしたがったことは、児童扶養手当が年金なのかどうか、年金ということができるかどうかというようなことなんですが、時間がなくなりますので、この問題を今後もっと掘り下げていきたいと思います。それから年金に関しては今後ずっとやっていきたいと思います。  くれぐれも申し上げたいことは、実態のほうをよく見てくださいということ。それから、国民のほうがどんなニードを持っているか、法律に違反さえしなければニードに従う必要はないというようなものの言い方は、たいへん私は残酷な、冷酷なものの見方だと思うんです。  それからアンバランスがいっぱいあるわけですからね。これはもう老齢福祉年金なんかでも、年金そのものが拠出制の年金は、けさ方私はテレビで見たけれども、自民党が五万円にしようと考えておるというようなことまで発表されているときに、福祉年金はようやく来年度で五千円になろうとしている、こういうふうな格差の問題がありますね。ですから、全体にわたって制度そのものが直されていかなければならないというふうに思いますし、もしこの際ですね、福祉年金と児童扶養手当とを併給したら一体どのくらいよけいの費用が要るのか、あるいは今年度をとってもいいんですけれども、今年度は一体どのくらいの人が併給を申請して併給してもらえなかったのか、そのことをちょっとついでにお聞かせください。
  101. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 費用の問題はちょっとまだ計算いたしておりませんからわかりませんが、四十六年度におきまして児童扶養手当を受けております者が公的年金を受給、——これは公的年金の中には障害福祉年金その他も入っております。公的年金を受給したために受給しなくなったという人が四十六年度が八百十六件でございます。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは厚生省の方、全体はおわかりにならないでしょうか。この問題だけではなくて、ほかに併給に関係があるということなんでしょう。これ一つ併給を許したら、年金そのものでも併給ということが起こり得るわけですね、今後も。そうじゃないでしょうか。それから、生活保護と福祉年金というのは併給しているわけでしょう、加算してきているわけでしょう、その辺どうですか、全部に。児童家庭局関係はいま八百十六件で、それをみんな支払ったとしても、私は金額はたいした金額にはならないと思います。だけれども、年金制度全体をゆすぶる、あるいは保障制度全体をゆさぶるという心配が出ているというのは、そのほかに併給になったらたいへんな財源が要るんだということになるかと思いますが、そういうものはどういうものがありますか。
  103. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 私どものサイドから申しますと、いわゆる児童扶養手当と他の制度との併給がどうなるかということでございまして、その場合はいまお話いたしましたように、約八百件でございます。しかし、ほかの問題はちょっと私のとこの所管ではございませんし、私から御説明するわけにはまいりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  104. 田中寿美子

    田中寿美子君 じゃ、もう年金局の方もまだ間に合わないようですから……。私はさらにこの問題は研究して、私どものほうももっと勉強してきて厚生省の方に要望したいし、厚生省でもこれを違憲じゃない、違憲じゃないと言ってうしろ向きの解決をしていかないことをくれぐれも御要望いたします。大臣よろしゅうございますね。
  105. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) いま先生が年金局に聞きたいと言われました問題は、年金局には私のほうから連絡をいたしておりますので、それでひとつ御了承願いたいと思います。
  106. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはまたあらためて聞きます。  それじゃ、次の別の問題に今度はかわりたいと思います。問題をかえまして、これは農薬の残留の処理、農薬とか殺虫剤、BHCあるいはPCBなんかの処理の問題でお尋ねしたいんですが、私、この夏各地を旅行しておりまして見聞きした事柄から、いろいろと心配なことがありましたので、それでぜひお尋ねしたいと思っております。  一つは、これPCBのほうが質問が少しですから先にさしていただきますが、PCBは製造も使用も、もう全部禁止したということになっておるわけですね。閉鎖系のものはまだ使っておりますね。で、私、各地を歩いていて開放系の、つまりノーカーボンペーパーですね、感圧紙、あれの回収を各地の貯金局、郵便局なんかでやっております。たとえばこれは岩手県だったと思いますけれども、山形県でしたか、ちょっと忘れましたが、九十万枚からの貯金の台帳、この感圧紙を全部取りかえるという作業に入ったわけです。これは全逓の大会で決定して、感圧紙というのは、ノーカーボンペーパーはPCBが空中にも気化するし、それからそれをさわるということ自体もたいへん危険だというようなことで全部回収せよという決定をしたわけですね。それで次々とやっているようなんですが、九十万枚からの感圧紙をマイクロフィルムに写してやりかえていくという作業、何カ月かかかるらしいですわね。こういう作業をすること自体、貯金局というのはたいへん女の人が多いわけです。一体これはだいじょうぶなのかどうかということなんです。郵政省からお見えになっておりますね。それじゃちょっと郵政省と、それから厚生省のほうと両方ですね、この状況は。そしてこうさわるのにはマスクをはめて、そうして手袋をして、指先だけちょっと切った手袋でさわっているわけですね。これを何日も何日もそういう作業をして空気がだいじょうぶなのか、あるいは口から入らないのか、からだに入らないのか、そのことを伺います。
  107. 北野恒夫

    説明員(北野恒夫君) ただいま先生が御指摘になりましたように、現在地方貯金局におきまして回収作業並びに切りかえの作業をやっております。先ほど女子職員が非常に多いということでお話しになりましたのは切りかえ作業に関してだと思いますけれども、この切りかえの作業に、いま九十万とおっしゃいましたけれども、膨大な数にのぼるものですから、職員の手ではとうていできませんので、外部の業者に委託してやらしております。大体いまの見込みでは本年一ぱいに切りかえ作業が全部完了するという見込みでございます。この女子労働者に対する影響等につきましては、十分考えた上で、そういった外部委託という方法をとっておる次第であります。
  108. 田中寿美子

    田中寿美子君 長野の貯金局でノーカーボンペーパーを扱っていた女の人たちの母乳の調査をして発表が、これは佐久病院ですね、相当に出ておりますよね。それで、その中から母乳を赤ちゃんに飲ませることをやめろという勧告をされた人もいるわけなんですが、私が参りました岩手県でしたかな、貯金局の場合、いまおっしゃったように業者に委託をしているんですね。しかし、これまでずっとそれをさわってきた女の人たちですね、こういう人たちの検診がやられていないんですよね。こういうことはこれは検診すべきじゃないかと思うんですがね。それからその検診も産休に入っているような、赤ちゃんにお乳を飲ませているような女性はどうしても母乳を見てもらわなければいけないと思うんですよね。その辺はどうやっていらっしゃるのか。いま今年じゅうに全部もう回収は終わってしまうというふうに言われたけれども、どことどこがもう終わっているのか、それからその回収業者があと始末を一体どういうふうにしているのか、そのことを郵政省の方からお伺いして、それで厚生省の環境衛生局長さんいらっしゃるようですから御意見を伺いたいと思います。
  109. 坂東定矩

    説明員(坂東定矩君) いわゆる定額貯金の原簿事務に従事しておる関係職員は二千四百七十三名でございまして、この検診をことしの七月初旬に一応労働省告示、特定化学物質等障害予防規則、いわゆる特化則に基づきます労働省告示の健康診断規定に基づきました第一次検診をいま申しましたように二千四百七十三名について行ないまして、それからそのうちそのチェックされました中で二百六名の職員につきまして検診を行ないました。その結果、五名の方に軽度の異常——四名の方に軽度の肝機能障害を認めまして、一名の方に慢性の湿しんを認めておるわけでございますが、この四名の方はいずれも肝臓障害の既往症があったような方でございました。それから、私直接そちらのほうは担当しておりませんが、現在聞くところによりますと、大体書きかえが二五%済んでおるように聞いております。そして大体十一月じゅうで大部分が終わって、おそくとも十二月には全部終わるというように聞いております。
  110. 田中寿美子

    田中寿美子君 回収や処分は……。
  111. 北野恒夫

    説明員(北野恒夫君) 回収処分につきましてお答えいたしたいと思います。貯金局におきまして切りかえ作業が現在続行中でございますけれども、切りかえられたほうの、したがいまして、PCBの入っておる古い用紙、これにつきましてはこの春に通産省からも指示がございまして、清掃業者等に流しては困ると、厳重にそれぞれの場所で保管してくれという連絡なども受けておりまして、通産省のほうで確かな有効な処理の方法がきまるのを待ちましてそれまでの間を私どものほうでこれは密閉いたしましてダンボールに入れたりあるいはさらにその上にビニールカバーなどをかけまして非常に念の入った厳重な保管方法をやっております。
  112. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 私の立場からどのようなことを申し上げたらよろしいのか、まず第一の点といたしまして、このようなノーカーボン紙を扱った場合にどのような障害が考えられるかという点が一つあろうかと思いますが、水の中におきます生物が水に入りましたPCBを吸収するという状態につきましては実験が行なわれておりまして、ある程度のデータを得ておりますが、皮膚を通じましてPCBがどの程度吸収されるかと、その辺の作用規定につきましては残念ながら明らかにはまだされておりません。それから気道を通じまして、呼吸によりまして体内に吸入されるという場合の機構、メカニックについても明らかにされておりません。これらにつきましては今後の研究課題として早急に明らかにしていかなくてはならない問題であると思っておりますが、PCBの物理的な特性から考えまして、このような汚染経路ということも考えられることであるというふうに私は考えております。  それから、これらを、ではどのように処分するかということでございますが、これにつきましても先ほど郵政省のほうから訴えがございましたように、政府といたしましては、環境庁を中心とするPCB対策連絡協議会の取りまとめに従いまして、適正な処分ができるまでの間は厳重に保管しておくようにということで現在まで処理したわけでございます。たまたま間違いましてノーカーボン紙が、これは郵政省関係から流れたということではございませんけれども、都市のじんあい焼却場に流れていくといったようなこともあり得るわけでございますが、それらにつきましては、厚生省のほうからもそのようなことのないように厳重に指導通知をするということでもって対処しております。  なお、現実に焼却場からPCBがどの程度大気中に発散しておるかということにつきましても数カ所において試験的に調査をいたしましたが、現在までのところでは痕跡程度で発見されていないということでございます。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 職場の中のことですが、これは郵政省の場合は郵政省が責任を持つと思いますけれども、その職場の作業環境のことは私また労働省のほうに別の機会に聞きたいと思います。さっき検診したと言われたけれども、母乳検診はしていないでしょう。私が行ったところでも全逓全体を通じて母乳の検診という計画はないというふうに聞きましたが、どうですか。
  114. 坂東定矩

    説明員(坂東定矩君) 先ほど先生がおっしゃられましたように、七月の末でございましたか、長野の貯金局で、佐久病院でやっていただいたというような情報が私どものほうに入りまして、さっそく授乳中の職員、約三十名ほどございましたか、そのうちの希望者十五名について検診を行なうことにしておりますが、現在十名が完了しておりますが、結果は二名だけわかっておりまして、一名は〇・〇三PPM、一名は〇・〇七PPM、それぞれPCBを含んでおったというように報告があがっております。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 三十名というのは全国ですか。どこですか。
  116. 坂東定矩

    説明員(坂東定矩君) 三十名というのは全国でございます。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 これはまあ児童家庭局のほうでも全国の母乳の調査をしていらっしゃったんですが、きょうはそういう質問するつもりではなかったので、その点はお願いしてありませんけれども、母乳から体内の赤ちゃんに行くということは、これは有機水銀のあの水俣病でもわかりますように、赤ん坊は外に排せつしないので、赤ん坊の脳にたまったりしてたいへん重大な結果を及ぼすということがいわれておりますので、どうしても母乳の検査というのは、ほんとうにこれは職場でも、女の人で感圧紙をたくさん扱ったような人、それから一般地域のおかあさんたちも、PCBがたくさん出ているような地域ではぜひやらなければならないものだと私は思っているんすが、どうもいま体制が、検査の体制も研究もほんとうに進んでいない、あれほど騒がれたわりに進んでいないような気がします。  それから、保管をしていらっしゃるというけれども、これもこの保管されたものを一体どういうふうに処理しようとしているのか、これは環境衛生局でしょうかね、それとも環境庁ですか——環境庁はどういうふうにお考えですか。
  118. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 先ほど厚生省のほうからお答えがございましたけれども、PCB対策につきましては、環境庁を中心にいたしましてPCB汚染対策の連絡協議会をつくりまして、それぞれ分担をお願いをいたしまして対策をやっておるところでございます。  いまお話しのPCBの処分でございますけれども、これは主として通産省にお願いをいたしまして、PCBそのものといいますか、それの処分の方法、並びにまたPCBを含みました感圧紙等の加工品の処分の方法等につきまして、現在いろいろ技術的な問題の解決の研究をお願いいたしておるという段階でございまして、PCBそのものの処分の方法につきましては、相当高温度で焼却をすればこれは処分が可能であるというようなことがすでに出ておりますけれども、感圧紙のようにPCBを含みました加工品の処分の方法は、まだ適確な手段が発見されておらないというふうに私どもは聞いております。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、対策はなかなか遅々として進まないような気がするんですね。保管して——どこに保管していらっしゃるのか、そこまで立ち入ってお聞きしたいところですけれども、その処理の問題については、さっき通産省にさすということですね、これはメーカーのところへ戻してやらせているのかどうか、ちょっと通産省のほうに……。
  120. 仲矢鍜

    説明員仲矢鍜君) PCBの感圧紙で、使用済みと申し上げますか、先ほどのような原簿というような形での用途を全部終わって、最終的に処分をするものにつきまして、どのように処分をするかにつきましては、先ほど環境庁の局長からお話がございましたように、一般的には焼却処分が一番いいであろうとは言われております。しかし、先ほど答弁にありましたように、感圧紙の場合は紙が大部分でございまして、それにPCBが若干くっついているというような状態でございますので、なかなか、温度を上げて焼却するという点に技術的に若干疑問がないわけではございません。したがいまして、あまり、どういうんですか、配慮をしないで焼きましても、また二次公害を起こしては申しわけないということで、どのようにすれば完全に焼却できるかという具体的な研究をただいま進めております。それから焼くばかりではなくて、たとえば化学処理をしたらどうかとか、あるいは封じ込めといいまして、外に絶対漏れないように外を鉄なりコンクリートなりで囲ってしまいまして投棄するとか、いろいろなアイデアはあって、それぞれ専門家の先生方あるいは技術者、そういう方々、あるいは関係各省の方々にお集まりいただきまして検討を進めております。その辺、私ども、実はもう少し早く結論を出したいと作業を急いではおりますけれども、やはり非常に技術的な問題でございまして、なお若干の時間が必要ではなかろうかと思っております。
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 PCBだけでなくて、次に私BHCのことを伺うつもりでいるんですけれども、製造、使用禁止というところまでようやくいっても、その回収処理の段階でみんなお手上げの状況なんですね。それで、研究しなければならないことも事実だと思うんですが、どうもはかどっていかないんですね。それでPCBの場合は特にそうだと思うんですが、原材料のメーカーにはどんな責任をしょわしていらっしゃるか。それからそれを原料としてつくったメーカーには、その回収や処理についてどんな責任を負わしているのか、その辺はどうですか。
  122. 仲矢鍜

    説明員仲矢鍜君) 先ほどお答えしましたとおり、最終処理——どういう形で処理するのかというところまで実はまだ至っておりませんので、具体的にどういう負担をだれにさせるかというところまで詰めた形にはなっておりません。おりませんけれども、私どもといたしましては、それぞれのメーカーといいますか、そういうものを供給した社に応分の負担はさせまして、言うなれば、需要者のほうに過分の負担がかからないような形で処理したいと思っております。現在さような下話を進めておりまして、おそらくそういう形で処理できるであろうと信じております。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 ほんとうに信じたことを実行していただかなくては困りますんですが、ただ次々とそういう汚染物質をコンクリートに詰めるか何に詰めるか知らないけれども、たくさんだまっちゃったら一体どうするんだろうかというふうにたいへん心配になるわけなんです。通産省の方、これはどの方だったか忘れましたけれども、先月私、このことで説明を求めましたときに、もうこの問題は衆参両方で議論し尽くしているんじゃありませんかというような意味のことばがあったんですけれども、それはPCBに関してはずいぶん議論はしていますよ。だけれども、回収処理に関しては一歩も進んでいないと思うんです。ですから、環境庁が中心になるわけですか、なってこれは進めていく義務があると思うんですがね。よほどこれはスピードを上げていただきたいんですけれども、来年度にかけて具体的にどういう要求をしていらっしゃるんですか。これは、そんなコンクリートの中に詰め込んだPCBがごろごろしていたら、日本列島改造にも困るんじゃないですか。どこが一番イニシアをとるんですか。
  124. 仲矢鍜

    説明員仲矢鍜君) 先生御指摘のとおりで、処理体制がなかなか進まないのは申しわけないことでございますけれども、先ほど申し上げましたように、処理につきましては、まあ大部分をメーカー側に負担させるということを私ども考えておりまして、そのための予算という形ではあまり考えておりません。ただ、研究その他につきましてはこれは全部各省庁、あるいは各省庁関係の研究所、それぞれ知識を集めまして研究しなければなりませんので、その辺の要求はしております。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 メーカーに義務づけるという、一体どこまでやり遂げるかというそれを見届けなければならないわけですね。実はその見届ける業務が非常に怠られているというような事実が、これはほかのもの、BHCなんかにもあるわけです。ですからやっぱり各省庁が評定しているだけじゃなくて、どんどんそれを指導して要求しなければならないと思うんですね。何かどこにもあまり熱意がないみたいな感じがいたしますけれども、どのくらい出るかということはもうわかっていらっしゃるわけでしょう。PCBの最初の量はわかっていますね、その中から……
  126. 仲矢鍜

    説明員仲矢鍜君) 先生お尋ねのPCBの感圧紙につきましては、大体いま各需要者のところにございますものが約七千トンくらいあると私ども考えております。ただ、これは先ほど申し上げましたように原簿等の形になっておりますので、一時にそれが廃棄物といいますか、要処理量として出てくるトンではございませんで、順次出てまいるわけでございます。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 もういいです。その問題は私たちもいろいろな場合に議論をしました。だからもう議論は出尽くしたと、通産省のお役人がはからずも言われるのだろうと思うのですが、問題は処理をどうやっていくか、ほんとうに回収をどうやっていくか、それをだれがどこまで見届けるかの問題だと思います。きょうはとてもそういう決定的な、(「もっとやらなければだめだ」と呼ぶ者あり)いや、私は次のBHCの問題でやりたいんですよ。(「国民の人命に関する重大問題だ」「そんなもので途中でやめちゃだめだ」と呼ぶ者あり)だいぶ外野から声援があるものですからもう少し……。それじゃ、だれが、——厚生大臣もやっぱり環境衛生という立場から責任があるんですよ。それから環境庁ももちろんそうだと思うし、通産省もそうですし、だれかしゃきっとした答えをしていただかないとこれが次に移らないのです。(「だれがどこでやるかということをはっきり言えよ」と呼ぶ者あり)
  128. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) どうもお答えがはっきりしないようではなはだ申しわけございませんけれども、実ははっきりお答えできないように、具体的な処理の方法につきまして、もちろん政府といたしましては一体となりまして推進をいたしておるわけでございますけれども、具体的にどういう処理をすれば環境に影響を及ぼさないで処理ができるかということがはっきり現状ではつかめておらないということをはっきり申し上げます。そこで一日も早くその方法を発見するということがございまして、私どもは政府の対策協議会を中心にいたしまして、一日も早くこれは完成するように推進すること、これはお約束をいたしておきたいと思います。
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 その対策協議会の最高責任者はどなたですか。
  130. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 責任者というのはあれでございますけれども、環境庁が事務当局になりまして、それぞれ関係省庁の局長クラスの方々にお集りをいただきまして運営をいたしておるわけでございます。
  131. 田中寿美子

    田中寿美子君 じゃ、この問題は次にまたやりますので……。  同じような問題が農薬、BHCを中心にしてあるんですね。やっぱり私もこれはこの夏旅行しているとき、ある東北の都市でBHCが家庭に配付された。それで、BHCというのは禁止になっているはずなのに、こんなものを家庭に配給してきていいのかという疑問を主婦が持ったわけですよ。私はその町の名も主婦の名もあるんですけれども、ちょっといま伏せておきますけれども、そこから調べてみて、たいへんずさんな扱いをされているということがわかったわけです。もちろん薬剤としての防疫用のBHCが許されているということは私は承知しています。だけれども、その限界が防疫用の殺虫剤なのか農薬用のBHC農薬なのかわからないようになっているわけですよね。ちっともきちんとした管理をされていない。そういうことから、あれだけ私、公害の委員会で二年間ぐらいBHCばかりやっていて、BHCがようやく四十五年の五月に禁止になって、もう製造も使用も販売も禁止になっている。ただし、地方公共団体が防疫上必要と認めた場合の用に供するものはいいということになっている。つまり薬として蚊やハエを殺すのに一部分まだ使われているという状態だと思うんですね、そうですか。それに間違いありませんか。
  132. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) おおむねいま先生が御指摘になりましたとおりでございますが、少し詳しく申し上げますと、BHCの中には先生御承知かと思いますけれども、ベータBHCと、それからガンマBHC、通称リンデンといわれておるものの製剤がございます。通常医薬品として家庭用殺虫剤あるいは防疫用殺虫剤として用いられておりますものはリンデンが主剤でございますが、ベータBHCを含んだものもございます。行政的な措置といたしましては、農林省とも御相談し、農薬のほうと軌を一にいたしまして四十六年の五月末日付の通知をもちまして、まず原剤につきましてはベータ、ガンマとも六塩化ベンゼンという形で全部製造、輸入を中止させております。これにつきましては原剤を製造、輸入しておりました業者に全部廃止届けを出させまして、これは完了いたしております。それで、いま御指摘の、地方公共団体が防疫上必要と認めた場合の用に供するほかは販売しないことという規制を同時にかけましたのは危険性の強いベータBHCのほうでございまして、ガンマBHCのほうにつきましては原剤の製造を禁止いたしまして徐々に量を減らしていくという方針をとりまして、直接の販売の禁止はいたしておりません。ただ、実態といたしましては、原剤の使用が禁止され、危険なものであるということも周知されておりますので、現在、もちろんその量も減ってきておりますし、防疫上の薬剤といたしましても使われる量は非常に減少してきておるというのが実情でございます。
  133. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ、BHCが製造、使用、販売禁止になってから七千トンぐらいまだ現在あるということですね。その中でいまおっしゃった薬剤用のガンマBHCを中心にしたもの、それの量は比較的少ない。これは調べていただきまして、ベータBHCが七トン——ことしの八月末ですね——それからリンデン、ガンマBHCを含んだリンデンが二十二トンという数量をいただきました。これは、これまでに使っていた農薬の残りを使っているわけでしょう。新しくつくり出しているわけではないでしょう。
  134. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 御指摘のように現在は両方共通に使えるわけでございますけれども、特にリンデンのほうはベータBHCよりも価格が高うございまして、大体リンデンはいままで医薬品のほうに、つまり家庭用あるいは防疫用の殺虫剤のほうに主として使われておるという状態でございます。ただ、原剤といたしましては、あるいは製造禁止いたしますまでは共通で使われておったかと思いますけれども、その後は製造は全部禁止いたしておりますので、農薬として残ったものを防疫用の医薬品あるいは家庭用の医薬品に流用しておるという状態はございません。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
  135. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、いま薬剤用として使われているものも、いま残っているものを使っているんだというふうに思っていいんですか。それとも、これはやはり製造しているんですか。
  136. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) お尋ねの前者のほうでございます。残ったものだけでございまして、それも防疫用に限るという指導をいたしておりまして、新たな製造はいたしておりません。
  137. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、私がはっきりしないと言うのは、それと、実は農薬の残りがまだ農家なんかにもあるわけです。で、これは、回収した回収したと言われる。これももう全く、農林省はほんとに徹底的に見ていないんですよ。農協の倉庫に、はたして全部回収してあるかというと、そうでなくて、農家がまだ持っているものもあるわけですね。それで薬剤用のは薬剤店で売っているということなんですが、家庭園芸なんかするところでは、薬剤用のものか農薬かわからないような形で売ってくれるんですよね。で、その家庭に配布されたものは私は防疫用のものだと思いますけれども、しかし、新聞紙に包んでそれで配布しているわけです。何にも注意はないわけですね。こういう状態で配布していいものかどうか。  それから、輸出用のBHCはいまでも製造しているんじゃないですか。これはどうですか、いま二点ですが。
  138. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 防疫用、ことに蚊やハエの駆除用に町内会などでBHCを使っておるということはまだあろうかと思います。私どもは、このような場合に、できれば、市町村の担当職員によりまして、個別にちゃんとした注意をする。場合によっては、取り扱い上の注意書きを必ず添えて各家庭に徹底するようにしろというふうに指示し、そのように指導してまいってきているわけでございます。かりに、先生の御指摘のようないいかげんな扱い方をしておるという事実がございましたら、これはまた厳重に私どもとしては注意いたしたいし、今後そのようなことがないようにしてまいりたいと考えております。
  139. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 輸出用のBHCの製造でございますが、これは、御指摘のように、制度の面からいたしますと、環境汚染の主たる弊害といたしましてとめたわけでございますから、別途、輸入国のほうで差しつかえないということであれば輸出してもいいわけでございますが、これは、やはり原剤は一本でつくるわけでございます。御指摘のような混淆されるというような点もございまして、現在のところ、先ほど申し上げましたように、医薬品の製造業者としてBHCの原剤をつくっております業者は全部業務を廃止いたしまして、現在は製造いたしておりません。
  140. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、私またこの処理のことをね、せっかく製造、使用、販売も禁止するというところまでBHC農薬が行ったのに、その処理についてはほんとうにまだ不十分だということについて、きょうもう一ぺん申し上げたいわけなんで、これは行政管理庁が、ちょうどまだ私たちがBHC農薬のことを非常にやかましく言っておりました四十五年の十一月に、農薬の行政に関する行政監察をなすったですね。そうして、いろいろと指摘した。で、このときも、各省とも、その指摘されたのをちゃんと守ってBHCが使われなくなるように努力するというふうに答えていられたのです。ところが、最近BHC農薬が——BHCだけじゃありません、有機塩素系農薬全体ですが、それが、製造も使用も販売も禁止したあと、七千トンもあるものをどういうふうに一体処理をしたかということについて、行管が追跡調査をした。そうしてみたところが、一向にちゃんとなっていないということで、たいへんきびしい勧告が出ておりますですね。  で、時間の都合がございますので、行管が指摘している点を簡単に、つまり農林省と厚生省に対してこういうことを指摘したんだということをお述べいただきたいと思います。
  141. 相沢正文

    説明員(相沢正文君) ただいま先生の御指摘の問題につきましては、農薬の最初の監察のあとでございます。推進で追跡調査いたしまして、その結果、八月の七日付ですか、再度勧告いたしております。  その中で、第六の項目として、いわゆる不用農薬の安全な処理を促進しろということでございます。ただいま、ちょうどいま先生からも御指摘ありましたように、農林省の調査によりますと、大体三月末現在の当時で、有機塩素系農薬約七千トンが、いわゆる農林省が、安全処理について、都道府県を通じて末端に、いわゆる小量ずつに分けて地下に埋めて、その他安全処理しろというようなこまかい通知が出ておりますけれども、いわゆる小量処分ではし切れないと。約一万トン以上のものが大体在庫が推定されますが、そのうちで、どうしても大量処分で——大体これは農林省の考えによりますと、コンクリート詰めにいたしまして大量のものを土中に埋める、そういう大量処分方式でこれを処理させたい、そういうふうなことで国庫補助金を四十七年度予算で約三千万円計上いたしまして、目下それを進めつつありまするが、ただ、補助金を交付して、あと、主として現地の都道府県、市町村あるいは販売業者、製造業者、関係者がそれぞれ連絡協議して、都道府県が大いに指導性を発揮して現地で具体的な処理方針をつくりまして、それで農林省にこの計画を協議してしなさいと。それによって農林省から助成金を出しますと、大体費用の四分の一ということであるわけですけれども、その進捗状況が、まあ従来のわれわれのほうで第一次、第二次の調査結果から類推いたしまして、どうも現地まかせでは安全な処理が非常に危惧されると。はたしてそういう農林省の新しい助成の方針が、現地で具体的にうまく進んでいるのかどうなのか。そこら辺をみずから調査して、そこで必要なところへ必要な実質的な有効な助成——助成といいますか、援助といいますか、あるいはまた国が——大体非常に処理が困難だとする理由は、廃棄する土地がなかなか所有者との了解が得られないということであるようなんで、土中に埋めるということならば、土地のあっせんについても国はもっと積極的に考えるべきではなかろうか。その辺を一そうひとつ御尽力願いたい、こういうような趣旨の勧告をいたしました。  以上でございます。
  142. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま言われましたように、農薬のBHCが七千トン残っているのを一体どう処理するのかということを私、何回かお尋ねしてきて、なくなられました斎藤前厚生大臣なんかはコンクリートカプセルに入れて埋めるということ自体、たいへん危惧の念を抱いていらっしゃったわけですね。一体そういうやり方でだいじょうぶなのかどうか、どんな土地にそれを埋めることができるのか、具体的な何か案があるのかどうかですね。いま行政管理庁の方のお話のように、四十七年度国庫補助金三千万円、それは何の補助でしょうね、これはカプセル代ですか。四分の一として、そしてBHCのメーカーがもういまいなくなっちゃって、これの責任をとるのかどうか。都道府県がどこまでこれをやらなきゃいけないのか。どういうふうに具体的に考えていられるのか。これは農林省の管轄でもあるし、環境衛生なんかの面もありますし、環境庁のほうもお考えを聞かしてほしいんですが、こういうことができるものだろうかどうだろうか。  それからこの前私がお尋ねしたとき、三トンぐらいのカプセルと言われておりました。三トンぐらいというのはものすごく大きなものでしょうね。これを土に埋めてもだいじょうぶなのかどうか、どんなところへ埋める考えでいらっしゃるのか、これも一歩でも進んでいるのかどうかですら私は疑わしいと思うんです。
  143. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) いま農薬の処理につきましては、行政管理庁からお話があったところでございまして、当初小規模な処理をいたそうというようなことで計画いたしておりましたが、時間がかかります。そして、その時間がかかる間に、不正な使用等で環境汚染をすることがあってはならぬ。ですから、やはり早急に処置をしたい、そういうことでこのカプセルの話を考え出したわけでございますが、これにつきましては専門家その他いろいろな方に集まっていただいて意見も聞いてまいりましたけれども、やはり埋没という方法がいいのではないか。それからもう一つは、鳥取県がこの方法で処理をいたしたというようなケースもございまして、それで私たちのほうは、今年度の予算に農薬の安全処理対策費ということで三千万の予算を計上いたしましたが、これは四分の一の補助金でございまして、四分の三はメーカーと、それから農業団体ですね、そういう関係者が全部集まった処理組合をつくってそこで負担をする。で、この場合、県費もできるだけもってやるようにという指導をいたしております。まあ、そういうことで進めておりますが、今年度の予算の成立が若干おくれましたことも関係いたしまして、実施要領を制定いたしましたのは六月の十一日でございました。予算は九月に内示をいたしております。県ではそういう関係から九月の県会にかけてこの事業が進められるように準備いたしておるところもありまして、まあ、ようやく動いてきておるところが現在の実情でございます。それで埋めることにつきましては、これも行政管理庁からお話がありましたけれども、これは一律の方式で全国同じようにということはなかなかいきませんので、それぞれの県の実態に応じてやはりくふうをしていただくより方法はないんじゃないか。そういうことから県とよく打ち合わせてやるということ  それからもう一つ、一番大事なのは、安全なところに埋めるということが非常に大事でございまして、それで場所の選定その他について、現在県で関係者が全部寄り集まっていろいろ検討いたしておるところでございまして、私たちのほうといたしましても、関係機関にいい場所をやはりあっせんするような努力というものも県にいたしたいというようなことで、県と現在折衝を続けているところが現状でございます。
  144. 田中寿美子

    田中寿美子君 七千トンを三トンずつ分けたらずいぶんな数になると思うんですね。私、ほんとうにたいへんなことだと思うし、その場所選定もたいへんだと思うんですが、各県ごとにやってもらわなければいけないんですが、その行管の監察の勧告にもありますとおり、——これはもう時間がなくなりましたから、ほかの点について来ていただいている方もあるかもしれませんが、質問できなくなりましたけれども、すべて未処理、不十分のままで終わってしまって、通達は出しているけれども、見届けていないということが言われているわけですね。残留農薬の調査にしましても、あるいは被害の実態の把握にしても全部そうなんですがね。それでいまのようなこと、その三千万円も今年度はそう進まないと思うんですが、来年度にかけて具体的なプランをお出しになっているんでしょうね、予算要求なんかで。それで、それをちょっと聞かせていただきたいんですがね。それと一体どこでどういうふうにそれは見届けるのか、監視をするのか、そういうことをお聞きしたい。
  145. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 農薬の処理につきましては、今年度じゅうに終わらしたいというように私たちは考えております。  それからもう一つは、保管の場所でございますが、現在保管しておりますのは、先生御指摘ありましたように、メーカーと農業団体の倉庫に保管いたしております。それでメーカーにつきましては、農林省が直接その状況調査をいたしております。それから農業団体については県と農林省が一体になってその状況調査をいたしておりますが、現在まで不都合な事態は起きておりません。  それから予算その他について行管から指摘ありました、たとえば安全対策その他につきましては、農薬においては安全対策が一番重要なことでございますから、そういう指摘も含めて、現在までも安全対策に予算を計上いたしておりましたが、今後ともその予算の充実をはかるように努力いたしたいと考えております。
  146. 田中寿美子

    田中寿美子君 だからほんとうに今年度じゅうというと来年の三月まででしょうけれども、私はおそらくそんなに簡単にはできないと思いますが、それの実行ができるように体制をどうして——すべての問題が行管から二度も指摘されなければならない、また行管はこれの追跡調査をしてもらわなければならないと思うんですがね、処理の状況について。そうしなければならない一体ネックはどこにあるのかという問題。土地の問題ですとか、監視の人間がいない、人員がいない、技術者がいない、予算がない、こういうようなことなんでしょうか。
  147. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 行管から勧告がありましたのは四十六年一月、ちょうどその後法律が四十六年四月一日に施行になりまして、農林省としても法律内容を末端まで伝達する、そうして実行を確保することが非常に大事でございますから、その趣旨の徹底をはかっておるちょうど段階で追跡調査が行なわれたわけでございますが、それ以後行管の指摘のものでもすでに解決しておるものもかなりございますし、今後とも行管の指摘が実行面で確保されるように努力していきたいと思います。
  148. 田中寿美子

    田中寿美子君 最後に要望として、これは行管の勧告を見ても、通達だけを出してあと報告も取っていないとか、実際には全然監督指導をしていないということで、たいへん痛いことが書いてございますが、それで、私はほんとうにそう思ったんですが、一番末端のところまではなかなか手が行かないわけなんですね。それでこれを見届けるのは私は官庁の手だけではだめだろうというふうに思うんですがね。ですから、もちろん業界にもさせなくてはいけないけれども、一般の消費者、市民が監視するとか、そういうことを促進させるための協力体制みたいなものをつくったらどうかなというふうに思っているわけですがね。たいへん長い時間で厚生大臣お疲れだと思いますけれども、農薬の公害というのはずいぶん私たち長いこと問題にしてきたんで、今後だって、在来の農薬からもまたどんなことが起こるかもしれない状況ですね。すでにいままであったPCBとか、それから有機塩素系農薬とか、有害な農薬の処理のほうに人を置かないと、次々あとから汚染物質が出てくるというようなことになりかねないと思いますので、これをひとつ、ちょっと三千万円なんて、農林省としてはずいぶん少ない予算だと思うし、もちろん業界にもっと出させてもいいけれども、薬剤店で現在まだ扱われているBHCがどのくらいの間まであるかということもございますよね。ですから徹底的に末端まで見られる体制というのは一体どうしたらいいかというふうにお思いになるか。それに何か抱負がおありになったら聞かしていただいて、きょうは私、これでやめます。
  149. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 私も厚生大臣になりましてまだ三カ月足らずでございまするが、こういったような新しいPCBその他の問題につきましてはまだまだ日本の技術的な水準から見ましてもあるいは専門家の点から見ましてもいまの体制では不十分で、どうもあとから追っかけておるというふうな感じを私自身も持っておることを率直に申し上げたいと思います。したがってこういった問題につきましては、ほんとうに国民の健康に直接影響のある重大な問題であるということを十分に私どもも認識をいたしまして、そういった問題の整備に全力を注いでまいりたいと存じます。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに私は難病対策について伺います。  この点については前回の委員会でも特定疾患として国が一万円のお金を差し上げるというそのことについて尋ねたわけです。で、結局前回の委員会では入院者に限るという厚生省の意見と、また滝沢前局長の通院や在宅者も入れる方針だ、疾患次第によっては入れる方針だという意見と合わないままで終わってしまったのですが、その後厚生省は入院者に限るという決定をなされた、九月二十一日ですか、その辺のいきさつをお尋ねしたい。といいますことは、スモン、ベーチェット、筋無力症、このような病気の性格からして、入院といっても入る病院がないのですよ、この前も説明しましたようにですね。したがって、滝沢前局長が通院者も考慮すべきだということは難病団体の人も傍聴しておられる前で局長大臣もお約束をなさった。それがどういう事情か、くるっと変わって入院者に限るという決定になったと、これは非常に私は納得ができないのですが、これはいかがですか。
  151. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 本年度の難病対策予算につきましては治療研究費は入院患者を対象といたしまして組み立てられておりまして、そういう予算上の性格からいたしましてやはり入院患者を主体といたしました治療研究を行なうという予算の趣旨にのっとりまして本年度は一応外来患者につきまして対象からはずすということに決定をいたしました。しかしながら今後の難病対策といたしましては医療費の補助という形で予算の編成をいたす予定でございまして、したがいまして、昭和四十八年度の予算編成にあたりましては外来患者も医療費の補助をするという方針のもとに編成してまいる予定でございます。したがいまして、本年度は、先ほど御説明申し上げましたように予算の性格上入院患者に限る、こういう決定をいたした次第でございます。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 その予算の性格はどこできめたのですか。
  153. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 厚生省が昨年編成するにあたりましてそういう性格をきめてございます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 それが、当時の局長は通院者も含めると言って、公開のこの委員会答弁していたことがなぜそういうふうに変わるのですか。
  155. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 四十七年度の予算要求の段階におきましては、われわれがスモンはもちろんのことでございますが、特に筋無力症あるいはベーチェットは外来の患者が医療のかなりの部分を占めているということを承知してはいましたけれども、予算要求の段階では実数の把握ということが困難でございましたので、一応スモンが入院を中心で予算がつくられておりました。したがって、筋無力症、ベーチェット等に予算要求を拡大する段階においても一応根拠のある、比較的説明のできる問題として入院患者というものを中心にした予算の組み立てをいたしまして要求いたしたわけでございます。それによって予算がきめられたわけでございますが、私はこの国会等でもお答えしていますように、外来については治療研究の性格上基本的にはこれを対象にすることは非常にむずかしい、特に入院しておるから患者の把握ができる、あるいは病状の経過観察もできる、生活状態の規制と申しますか、病気にふさわしい生活状態というものを把握できる。しかし、外来となりますと、個人個人にいろいろの家庭事情その他の生活状態というものでなかなか治療研究の対象にするには、基本的に先生の御質問のむしろ前の問題として治療研究の性格の問題として外来というものは治療研究の対象にするのは困難であるという一つお答えをし、また、われわれも考え方として持っておったわけでございます。しかし、予算の編成はそのように行なわれましたが、実態といたしましてベーチェットあるいは筋無力症について患者さんの陳情あるいは実態等がわかるにつれまして、やはり外来患者というものも対象にしないとかなり限られた状態のものに限定される、それと、予算執行の準備その他を要しますと、やはりいただいた予算全体というものを有効に使うには私は、病気によっては外来を対象にしたいということで準備をし、医療費の調査等も詳細にはできませんでしたが、外来患者の医療費の実態等も把握いたしまして、私の責任を持っておった段階にはその方向で準備を進めてまいったわけでございます。したがって、予算の性格はただいま公衆衛生局長からお答えをし、また私が当時責任を持って予算編成に当たりましたように、内容は入院患者を中心の積算による予算の金額になっておりますが、実行の上で私は実態に合うようにできるだけつとめたいということで、国会のお答えの中でも十分その点を承知して検討したいということでまいったわけでございますが、今回の入院患者に限りなおかつ四月にさかのぼってこれが実施されるということは、私は予算の実行等、むしろ事務的にはさかのぼることがきわめて普通一般には困難な問題がさかのぼって実施されるということによって、予算の執行もほぼ計画どおりいくものと考えておりまして、外来患者については、私は検討した内容資料等、そういうものはもちろん公衆衛生局難病対策室に残されておりますけれども、実行の上で予算編成の金額、あるいは今度きまりました、四月にさかのぼって実施するということとを考えますと、当時私の考えました外来まで対象にしたいということはむしろ困難でございまして、いわゆる入院患者を中心にした、しかも治療研究という予算の性格からやむを得ないものと考えております。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、その外来患者を入れるとなると困難だ、困難だと言いながら、すぐもう局長は、四十八年度予算には入れる考えだと、こう言っているわけでしょう。なぜ四十七年からそれを入れないのですか。
  157. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) ただいま医務局長が御答弁申し上げましたように、正確には私どもといたしまして、特定疾患につきましての実数把握ができておりません。現在、実態調査が進行中でございまして、少なくとも十二月末までにはその実態を把握したいと考えております。したがって、その数をきわめました上で、来年度の医療費の補助に対します確実な要求をいたしたい、かように考えておりますので、現在のところ、外来患者等につきましての実態がまだ十分に把握できてないというのも一つ現状でございます。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、四十六年度でスモンを対象に治療研究費を出しましたですね。余ったでしょう。幾ら余りましたか。  それから、四十七年度、四種類の特定疾患は、推定患者数何人のうち何人を対象にして考えておりますか。
  159. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 四十六年度の治療研究費の実績は、残額が約一千二百万円でございます。  それから、四十七年度の推定患者数は、スモンが約九千百三十一名、そのうち一応対象といたしておりますのは四百、ベーチェットが約一万のうち、対象にいたしましたのが七百、それから重症筋無力症が対象約六千と推定しておりますが、それのうち六百、全身性エリテマトーデスが推定患者数六千のうち四百、計二千百名を一応予定いたしております。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうして、四十七年度には対象として考えている人数がいかにわずかなものか、ひとつ私は、委員長にも委員の皆さんにも聞いていただきたいと思うんです。総理は、何か、決断と実行だ、難病は公費で負担するんだと言って、厚生省当局と話し合ったように報道されておりますが、中身はどうか。スモンが約九千人のうち四百人でしょう。ベーチェットが一万人のうち七百人ですよ。それがその決断と実行であり、難病は公費負担と言えるんですか。大臣、これはいかがですか。
  161. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 本年度実行する予算は、まあ昨年度決定した予算を実行するわけでございますが、昨年の予算額の範囲内では、大量の、さきに決定しました、そして本年実行する予算額の範囲内では、こういったような数字がこれ以上に拡大することは困難であるという、最近の、いまの現状はそういうことではないかと思います。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 来年は。
  163. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) まあ、来年につきましては、こういった、先ほど御答弁申し上げましたとおり、入院患者等につきましてもその範囲の拡大をしようということで、いまそういう予算のもとに、今後いろいろと折衝してまいりたいと思っております。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、先ほど局長のあげられたスモン四百人、ベーチェット七百人、筋無力症六百人、全身エリテマトーデス四百人、これだと、また予算が余るんじゃないですか。四十六年度予算は千二百万、余したと、これはなぜ千二百万も余ったかといえば、六百人と予想したものが四百人で切られたから余ったというわけでしょう。ところが今回はまた四百人、七百人というふうに、それで入院患者で、しかも自己負担一万円以上の者となっておりますね、厚生省のこの文書には。そうすると、また二億三千万ですか、治療研究費がごっそり余ったら国庫へまた返すわけですか。
  165. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 先ほど申し上げましたスモン以外の疾病につきましてはこれは推定患者数でございまして、あるいはこれ以上実際に私どもの治療研究費の対象になる患者はふえる可能性もあると思っております。したがいまして、いただきました予算はその患者数の増にも十分備えるだけの予算もあると思いますので、本年度は、昨年度の予算の残を来たすようなことのないように、十分私どもは患者さんに対します医療費の問題につきましては努力をいたしたい、かように考えております。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 大蔵省来ていますか……。  この予算の性格ということを盛んに言うのですよ、厚生省は。しかし、難病対策の中の特定疾患の治療研究費として組まれた予算を、何も、この入院患者とか一万円以上の自己負担とか、それはもう行政がかってにきめた基準ですよ。それでこうして余す必要はないじゃないですか。また、大蔵省は、予算の性格が入院患者に限るというふうな考えですか、四十七年度は。
  167. 渡部周治

    説明員(渡部周治君) お答え申し上げます。  予算につきましては、これは予算の目的上十分それが使われるということを期待してつけているわけでございまするから、それが不用になることのないよう使われることが望ましいことは言うまでもないところでございます。  それから御指摘の治療研究費の性格につきましては、これは治療研究費は必ずしも入院患者に限定するということは理論的にはないかと思いまするが、これは先ほど来お話がございましたように、われわれが四十七年度予算を作成します段階でお聞きしました段階では、いわゆる治療費の重い負担にあえいでいる入院患者を中心に、特に難病、奇病の原因究明なり治療の方法の発見に役立つという観点から、入院患者を中心にこの治療研究費を出したいという御要求でございまして、わわれはその範囲等につきましていろいろ議論をいたしました結果、四十七年度予算を編成いたしましたわけでございまして、内容といたしましては、先ほど来お話がございましたように、入院患者を中心に積算をしておるということはそのとおりでございます。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、大蔵省としては、四十八年度予算編成は理論的には何も入院患者に限るという理論はないのだから、そういうふうに限る必要はない、厚生省当局が説明されているように、通院者も含めて四十八年度予算は当然検討できると、こういうふうに理解してよろしいですか。
  169. 渡部周治

    説明員(渡部周治君) 外来患者の実態につきましては、私はこの問題につきましての外来患者の実態はまだ十分検討しておりませんので、これが対象になり得るかどうかということの具体的なお答えはできませんけれども、一般的にわれわれが公費で見ます対象としまして、入院患者でなければならないということは理論的にはないということを申し上げたわけでございます。  四十八年度の予算の問題としてどのように対処するかということにつきましては、実は厚生省のほうでいわゆる難病、奇病対策ということにつきまして、現在いろいろプロジェクトチームをつくって御検討しておられまして、追加要求等もこれから出てくるように聞いておりますので、われわれはまだ本格的なそういう意味での検討をいたしておりません。本日のお話等もわれわれは参考にさしていただきまして、四十八年度編成にあたりましてはこの問題を検討さしていただきたいと、かように考えております。
  170. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省のどなたか、スモン病の実態を、これは和歌山県の例としてNHKのテレビで放映していたのをごらんになったですか。これこれしかじかのこういう気の毒な娘さんがいると、目が見えないと。もう家へ帰って寝たままだと。しかし、そうした治療研究費にも入らなければ何にも入る道がないと。同じことを四十六年がそうだったのに四十七年もまた同じことを繰り返す結果になってしまったわけですが、いかがですか局長見ましたか。
  171. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 私は残念ながら見ておりません。
  172. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、予算のワクがせっかくあるのに、国がかってにきめたワクによってはみ出した方々がこれほど不幸な実態にあるということなんですよ。ですからそれをこの特定疾患治療研究費というようなやり方については私も大きな疑問を持っております。こういう方法でいいとは思っておりませんが、せっかく国が予算を、国会で予算がきまったわけですよ。その国会できまっている予算すら行政の怠慢か何かで漏れちゃっている人がいるわけです。そういうことのないようにするための厚生行政でなくてはならないわけでしょう、どうですか。
  173. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 十分検討さしていただきたいと思います。
  174. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは次に、難病、対策は以上で終わりまして、先ほどの農薬についてですが、私は実際にこの農薬で現に農村で健康被害を受けている人についての問題点を公害対策特別委員会指摘したんです。それに対して農林省はとにかく厚生省のほうで農薬は安全基準その他すべてきめると、登録も厚生省のほうできめていると。厚生省できめたものが登録されると。あるいはこの消費地でよく農薬に汚染された野菜などが問題になりますが、現に農村では自分自身が農薬を使っておりますから、現に健康被害を受けちゃっている人がいるんです。そういう点についてお尋ねをしたいのです。  まず第一に、過去の農薬被害ですね。この厚生省からいただいた資料で「昭和四十六年度農薬事故集計表」というのがあるんですが、これでは農薬散布中の事故が三百五人、三百五人のうち三人の方が農薬散布中になくなっているんですね。それから全部の合計だと農薬による事故被害者は千二十六人昭和四十六年度で。ところがこの厚生省からいただいた資料によりますとですね、農薬散布中の中毒事故は秋田県が百三十五人となっておりますが、隣の山形県はゼロなんです。それから耳栃木県が三十四人となっておりますが、隣の茨城県はゼロなんです。こんなはずないでしょう。どういう調査ですかこれは。
  175. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま御質問のございました農薬の中毒事故につきましては、これは私どものほうで各県に依頼して集計しておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、急性中毒の被害者を原因別にとりまして、散布中の事故、それからあやまって使ったための事故、それから自殺他殺等不正な目的に使われた事故と、三つに分けてまとめております。集計の方法といたしましては、衛生部がこの調査を担当しておりまして、衛生部に所管しております保健所の機能を活用いたしまして調査をいたすわけでございますが、なおそれだけで不十分な面もございますので、農政関係の部局、警察、それから農業協同組合、それから医師会、そういったところにも御協力をお願いいたしまして、できるだけ正確な事故数を把握いたしたいというふうにつとめておるわけでございます。  ただいま御指摘の、山形県はゼロというお話でございましたが……
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 散布中の事故……
  177. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 失礼いたしました。散布中はおっしゃるとおりでございます。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで長野県も散布中の事故はゼロになっているんですが、これはとんでもない間違いなんです。私は長野県の農村で実態を調べました。アンケート調査もいたしました。ところが、その長野県のアンケート調査の結果はいまここでちょっと発表できないんですが、ある、たとえば菊を栽培しているという、その菊を栽培している農家はほとんど夏じゅう農薬を使っていますね。散布していますね。ほとんど被害を受けている。そういう実態を農林省はわかっておりますか。
  179. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 農林省は都道府県なり厚生省のほうから事故の報告がないと確認いたしておりません。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、厚生省はどうですか。厚生省は、農薬は逐次有機塩素系とか水銀とか禁止をしてきたと、いまはそういう蓄積性のものはなくなったとか、安全性の安全度が高くなったとか、あるいはゴム手袋をはめろとか、マスクをしろとか、そうすればきわめて安全になったという説明はよくいたします。説明はよくされますが、実際上農村へ行って、そういうある特殊な作業をしている人を調査してみるとほとんど農薬被害を受けている、そういう実態は農林省は全然調べる気もないんですか。厚生省はわかってないんですか。
  181. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 農林省はすでに次官通達その他によりまして都道府県に対して、都道府県は農協その他末端を全部含めて、事故があった場合にはこちらのほうに報告をするようにという指示はいたしておりますが、実際にそういう長野県のような調査の結果が農林省に報告は来ておりません。
  182. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいまの御指摘の点、私どもといたしましてはできるだけ先ほど申し上げましたようないろいろな方法によりまして、実態を把握いたしまして、農薬の危害、これは毒物、劇物に属するもののみならず、全体の農薬の被害につきまして集計をするべく努力をいたしておるわけでございますが、御指摘のように、現在のところ毒性の強いものを漸時農林省のほうでも禁止しておられまして、安全性が高くなっておるというのは事実でございます。ただ反面、やはり使用の段階で少しどうしても気がゆるむというようなおそれもございますので、さらに先ほど申し上げましたようなルートをもう一ぺん再点検いたしまして、できるだけ正確な数をつかむことができるように努力をいたしたいと考えております。
  183. 小平芳平

    ○小平芳平君 正確な数をつかむことが一つと、もう一つ私がいま指摘していることは、ある特殊な作業をやる人、菊栽培なら菊栽培、要するに、背たけの低い植物なら農薬をわりあい下へ向いて使うことになりますね、散布することになりますね。背たけが高い植物だとからだじゅう農薬をかぶっているわけです。ですから、そういう特別な作業をしている人たちに集団検診のようなことは考えられませんか。やるとすれば何省ですか、これは。
  184. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 現段階におきましては、御指摘のような特殊な農作業、たとえば菊であるとか、さらに背の高いホップであるとかいうような特殊な農作業における防護につきましては、それぞれの使用の方法あるいは防護の手段というような段階につきましてできるだけの趣旨を徹底させるということを主にいたしまして、農薬の被害防止月間等を設けまして徹底につとめておるところでございまして、現在までのところそういった手段が漸次功を奏しておるという前提で健康診断というところまでは農林省とも御相談を詰めておりませんが、御指摘のような実態がもしありましたならば、今後考えなければならない問題でもあろうかと思いますので、両省でよく相談さしていただきたいと思います。
  185. 小平芳平

    ○小平芳平君 ある特殊な農作業をやっている方が百軒なら百軒あるとします。その百軒の方々がことしになってから、昭和四十七年になってから農薬被害を受けましたかといえば、確かにいま局長おっしゃるように減ってきてはおります。しかし、過去においてホリドールとかいろんな農薬を使った時代の後遺症といいますか、それを訴えている人が非常にいらっしゃる。したがって、私はいま仮定の上でお話しをしているんですが、そうした百軒なら百軒の方が県なら県を通じ、医師会なら医師会を通じ、あるいは県を通じて厚生省に対し、健康を守る厚生省ですから、厚生省に対し集団的な健康診断をしてほしいという要請があればそれは受けてあげるわけでしょう。受けてやるのが当然でしょう。いかがですか。
  186. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) そういう御要請があれば当然保健所等が中心になりまして計画を立て、そして実施の段階に移すのは私どもの責任であろうかと思います。
  187. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、保健所長が計画を立てるのはいいですけれども、私は政府が乗り出してもらいたいと言っているんです。それは地元ではいろんな思惑があるわけです。たとえばある特定の野菜をつくっている人が特別に農薬被害を受けているとなれば、はたしてその野菜の出荷に影響をしやしないかというようなこともあるわけです。したがって厚生省として、それはそういう集団的な健康被害が発生しているならば、保健所を督励してでも、あるいは県と協力してでも厚生省として実施してほしい。いかがですか。    〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
  188. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 先生御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、そういう事例が起こります場所その他につきまして、県当局あるいは保健所当局を指導いたしまして実施の段階に移すよう私どもは指導いたしたいと、かように考えております。
  189. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、さっそくその要請に参りますから、参りました場合はいま局長答弁のとおりやっていただきたい。さっきの難病の予算のようにひっくり返らないようにお願いしますよ。  それからもう一つは、過去の被害者をどうしますか、過去の被害者を。それは長野県の佐久地方でマラソンとBHCの混合を空中散布した、ときたまたま、その空中散布された農薬をかけられちゃったという人が、いまは見る影もない被害者、手と顔、そこで佐久総合病院で診察を受けた結果、あなたは農薬被害だということを松島博士が診断していらっしゃる。そういう例が何人かあるわけです。これらの方に対する救済は一体どこが考えるべきですか。農林省考えますか。厚生省考えますか。
  190. 川田則雄

    説明員(川田則雄君) 農薬の被害の防止には、先ほどから御説明いたしておりますし、先生から御指摘もございまして、最近は農薬は低毒性になってきておるということ、あるいは農薬の安全を期するような使用のしかたの趣旨の徹底をはかる、そういうようなことをやっております。それから、また登録する場合にもその使用法等厳格に規制するような方法もとっております。そういうようなことでございますから、適正な使用方法による限り農薬の使用に伴う被害の発生はないものと考えますけれども、過去における問題、そういうことになりますと、これは原因との関係その他において非常にむずかしいことはあると思いますけれども、このことにつきましてはその対応、被害の実態等十分調べないといけないということもございますし、今後関係機関と十分協議して遺憾のないようにいたしたいと思います。
  191. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、いま厚生省が説明されたように、現在は減っていると言いますが、新しい被害が出ていることをこれから指摘いたしますが、厚生大臣いかがですか。いま私の申しましたように、過去に非常に毒性の強い農薬を使った時代があった、そのときの被害後遺症がいまあらわれている、特に空中散布したものが降りかかったために被害を受けている、これはちょっとひどくないですか。いかがですか、大臣
  192. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) いまのような事案につきましては、実はただいま先生からお教えをいただいたわけでございまするが、そういったような事案につきましては、これはなかなかいろいろむずかしい問題もあろうかと思います。ただいま農林省からお話がありましたとおり、一体だれの責任であるか、どういうふうな原因であるのかといったような点も究明をしなければならぬことだと思いますし、関係各省で十分にこれは検討さしていただきたいと思います。
  193. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、厚生省が昭和四十六年度で実施したわけですか、この特定地域に多発する視力障害児童の調査というもの、これは四十六年度から始まってつい最近その報告書が出ましたでしょう。診断基準が。この診断基準を厚生省は手に入れてこれからどう処置されますか。要するに、この中では厚生省研究班による特定地域に多発する視力障害児童の調査ということで、初めのうちは長野県の佐久地方、佐久の目の奇病と称してやったのですが、同じような例が長崎県、徳島県、あるいは最近は秋田県にも同じような燐系統の農薬による神経障害が発生しているということを指摘されております。これらを受けてどう対処されますか。
  194. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 便宜、私の担当しておったときに関係ございますので私からお答えいたしますが、佐久の奇病と称しまして、当時農薬の影響であるということで、子供の視野狭窄、目が、視野が狭くなるというようなことを主要症状としました問題が提起されました。その後御指摘のように、秋田県の学者の方もこの問題の論文を発表しておられます。しかしながら農薬によるものであるという主張の学者と農薬によるものではないという主張をする学者とございまして、私の記憶ではこの問題については農薬であるという断定は下っていない。これは学会等においても発表がそれぞれに行なわれ、論議されておるところでございます。したがいまして、今後ももちろん、学問の問題でございますから引き続きそれぞれの立場から御研究が進むと思いますけれども、農村医学研究の研究費の線で、佐久の若月先生を主任研究員とする研究が引き続きその他の目以外の問題についても行なわれておりますけれども、目の問題にしぼってお答えしますと、やはり結論としてはまだ出ていないと私は思っております。
  195. 小平芳平

    ○小平芳平君 前局長で。そうすると現局長はどなたですか。
  196. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 加倉井衛生局長
  197. 小平芳平

    ○小平芳平君 それを知らないのじゃ困るじゃないですか。私が指摘していることは、約三百万円で四十六年度から研究をした研究報告が出ているわけです、診断基準も出ているわけです。それを受けて今後どうされますか。特にいま前局長が述べられたように、これがはっきり農薬であるかないか未確定だというならば、なおさらこの三百万円の研究費を打ち切る理由はないですね。これはさらに研究を続けてもらわなくちゃいけないですね。その二点について。
  198. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 先生の御指摘の三百万円の研究費、四十六年度の研究費につきましては、これは医療研究助成補助金から出た研究費だと思います。実は医療研究助成補助金は……。
  199. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省科学技術審議官室から出ております。
  200. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 医療研究助成補助金でございます。したがいまして、この研究費につきましては公募を一応たてまえにいたしております。ところが四十七年度につきましては、このテーマにつきます公募がございませんでした。したがいまして四十七年度の研究費はございませんが、公衆衛生局所管の農村保健に関する調査研究費というものがございまして、この中にいま御指摘の各種農薬の中毒の治療に関する研究といたしまして約八百七十一万円の予算が充てられております。これは先ほど医務局長が御答弁申し上げましたように、佐久病院の若月先生が中心となりまして、引き続き研究をされるものでございまして、この研究費は四十五年度から引き続き計上され、支給されておりまして、この有機燐中毒によります視野狭窄の発生機序等について研究をされるということを聞いております。
  201. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、その補助も引き続き出すということですね。  それから私も医者でないからよくわからないんですが、コリンエステラーゼという血球及び血清値を測定しないことには、有機燐の中毒か、いなかは判断のつく問題じゃないのだということも、この報告書で診断基準が指摘しておりますが、こうした全国の保健所、病院が測定できるようにして、その上で初めて滝沢局長がおっしゃったように、農薬被害であるかないかが科学的に判断できるというふうに指摘されているわけでしょう。その点はいかがですか。
  202. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) コリンエステラーゼのお話でございますが、この検査はコリンエステラーゼの活性測定法でございまして、これは非常に酵素反応のために厳格に行なわれなければならない検査でございまして、現在の段階におきまして保健所等におきます衛生検査技師にこの技法がはたしてできるかできないかということも考えられます。したがいまして、そういう点の、いま御指摘のような問題もございますので、早急に必要な保健所の職員にこの技法の研修等もいたしまして、必要な場所の検査ができるようにいたしたい、かように考えております。ただし大きな病院等におきます臨床検査技師等におきましてはこの検査は可能かと存じておりますので、それらの病院と保健所との連携等もはかる必要があろうかと思いますので、十分検討させていただきたいと思います。
  203. 小平芳平

    ○小平芳平君 第一、日本の国は農薬を使い過ぎるんですね。そういうことはどこでチェックするのですか。若月先生という、先ほど来お話が出ますが、ここの「「農村医学」夏季大学講座」、ことしの夏やった、このテキストによりますと、西欧の諸国に比べて日本の国が過去十二年間の農薬の蓄積量が百倍あるいはそれ以上。水田一ヘクタールあたり日本が七百三十グラムに対してスウェーデンは四から五グラム、ドイツ六グラム。百何十倍という農薬が過去十二年間に使われたということが発表されております。そういう点は国の農政と関係のある問題ですから、厚生大臣はそういうことに対してどのように感じますか。
  204. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 私はまず、非常にむずかしい問題だと思います。日本の国土の面積が非常に狭い状況でありますし、集約的な面積の収量を多くするということに農政の重点が置かれてきたと思うわけでありまして、そういったような点で、農薬につきまして、その被害等につきまして十分な実績やあるいは認識のない時期もあったわけでありまして、そういったようなことでこういうふうな結果になってきたんではないかと想像をするわけでございますが、しかし将来この農政全体とあわせて、またこの農薬の被害あるいは毒性といったようなもの、こういったものを基本的にはやはり農政とマッチさせて検討して国民の健康を守っていくという方向でいかなければならぬということを、お話を承る間にそういう感じが私はいたしましたことを率直に申し上げたいと思います。
  205. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは時間もおそくなりますので、あと一、二点お尋ねして終わりたいと思いますが、この有機燐による慢性中毒というものは、はたして研究されているかどうかですね。有機燐による慢性中毒は、中枢神経あるいは末梢神経の麻痺というようなこと、そういうことがアメリカではすでに三年ほど前からいろいろな詳しいレポートがたくさん出ているというんですが、日本では一体どういう研究が行なわれているか。あるいはこうした有機燐を製造する工場の労働者の中に、こうした有機燐の被害と見られる人が発見されているということも指摘されております。こういうことは一体どこでおやりになるんですか。
  206. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 御指摘の点、農林省あるいは厚生省といたしましても、衛生関係各局に関連する問題かと思いますが、毒物及び劇物取締法を所管しております立場で、いままで承知いたしました限りの資料では、主として法律目的に照らしまして、急性中毒を主たる対象といたしましての研究をいたしておりまして、まことに申しわけございませんが、現段階で慢性中毒に関する資料をお答えするだけの準備がございませんので、もう少し調べさしていただきたいと思います。
  207. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣ですね、この有機燐、要するに農薬は水銀が禁止され、有機塩素系のものが先ほどの田中委員の御指摘のように回収され、いま、この有機燐というものが非常な勢いで農薬として使われ出しているんですが、慢性中毒についてはいまだに研究もないという局長の御答弁ですね。それで、私は、農薬を取り上げた最初に指摘しましたように、農薬散布中の中毒と死亡が三百五人となっておりますが、この数字は全然信用できない。この何倍発生しているかわかりませんが、それは私がある特定の地域の特定の農作業に従事している人を調査したものがありますから、したがって、この数字は全然問題にならない数字です。問題にならない数字ですが、かりにですね、この問題、この厚生省の集計表によっても、三百五人の人が作業中事故にあっているわけです、作業中。そうすると、ある工場なり事業所において、三百五人も作業中事故にあったということはそれこそ大問題のはずでしょう。実際は、これよりどのくらい多いかわからないけれども……。そういうことが何ら国の対策なしでいままできちゃっているということ、じゃあ、救済の方法は、診断の方法は、有機燐による慢性中毒であるかないか、どこで診断してもらえるか、何もわかってないわけです。何もきまってない。そういう点を最後に大臣からひとつ、厚生省だけで農薬は終わるんじゃないと思いますけれども、とにかく健康を守るという点から厚生大臣の積極的な御意見を伺って終わりたいと思います。
  208. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 確かに御指摘のとおり、農薬と健康の関係につきましては、十分な対策を用意し、これを実行していかなければならぬと思うわけでございます。いま、率直にということでございましたが、具体的な問題につきまして答弁の用意のできてないことは残念でございまするが、御意見を十分に体しまして検討させていただきたいと思います。
  209. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会      —————・—————