運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-08-10 第69回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年八月十日(木曜日)    午前十時十九分開会     —————————————    委員異動  七月十二日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     安田 隆明君      村尾 重雄君     高山 恒雄君  七月二十八日     辞任         補欠選任      上田  稔君     丸茂 重貞君  八月九日     辞任         補欠選任      柏原 ヤス君     塩出 啓典君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢山 有作君     理 事                 丸茂 重貞君                 大橋 和孝君     委 員                 上原 正吉君                 川野辺 静君                 高橋文五郎君                 徳永 正利君                 山下 春江君                 須原 昭二君                 田中寿美子君                 塩出 啓典君                 高山 恒雄君                 小笠原貞子君    国務大臣        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        労 働 大 臣  田村  元君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        警察庁刑事局保        安部長      本庄  務君        警察庁警備局長  山本 鎭彦君        科学技術庁研究        調整局長     千葉  博君        環境政務次官   菅波  茂君        環境庁長官官房        審議官      鷲巣 英策君        法務省民事局参        事官       田邊  明君        法務省刑事局参        事官       亀山 継夫君        大蔵省主計局共        済管理官     鈴木 吉元君        国税庁直税部所        得税課長     系  光家君        文部省大学学術        局医学教育課長  齋藤 諦淳君        厚生政務次官   増岡 博元君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省援護局長  高木  玄君        通商産業省化学        工業局化学第二        課長       小幡 八郎君        労働政務次官   塩谷 一夫君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        自治省行政局公        務員部長     林  忠雄君        自治省財政局公        営企業第一課長  柴田 啓次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○労働問題に関する調査  (労働争議に関する件)  (地方公務員労働問題に関する件)  (沖繩における売春問題に関する件) ○社会保障制度等に関する調査  (大久野島の毒ガス問題に関する件)  (災害援助対策に関する件)  (カネミ油症及びPCB対策に関する件)  (栄養問題等に関する件)  (薬価基準の改定に関する件)  (難病対策に関する件)     —————————————
  2. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る七月十二日、村尾重雄君及び高田浩運君が委員辞任され、その補欠として高山恒雄君及び安田隆明君が選任されました。また、七月二十八日、上田稔君が委員辞任され、その補欠として丸茂重貞君が選任されました。さらに八月九日、柏原ヤス君が委員辞任され、その補欠として塩出啓典君が選任されました。
  3. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 鹿島俊雄君から文書をもって都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  鹿島俊雄君の辞任及び高田浩運君の委員異動に伴い理事が二名欠員となりましたので、この際理事補欠選任を行ないたいと存じます。理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事玉置和郎君及び丸茂重貞君を指名いたします。     —————————————
  6. 矢山有作

    委員長矢山有作君) この際、田村労働大臣及び塩谷政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。田村労働大臣
  7. 田村元

    国務大臣田村元君) このたび労働省を担当することになりました田村でございます。私は、誠意と熱意と愛情をもって労働者福祉を守る労働行政推進につとめてまいる考えでありますので、委員各位の御指導と御鞭撻をお願いいたします。  さて、本日、社会労働委員会が開かれる機会に就任のごあいさつとあわせて当面の労働行政の諸問題につき、私の考え一端を申し上げ、委員各位の御理解と御協力を得たいと存じます。  私は、今後の労働行政推進にあたっては、労働者生活充実と向上を最大の目標に、清新で力強い行政を進めていく考えであります。  このため、次のような事項に重点を置いて今後の行政を進めてまいる所存であります。  まず、第一は、労働者福祉対策充実であります。  働く人々が、職場の内外を通じて、健康で豊かな生活を送れるようにするため、週休二日制の推進労働環境の改善などはもとより、住宅、余暇施設その他の労働者生活問題に広く積極的に取り組んでいく考えであります。  第二に、労働者一人一人がその生涯を通じて働きがいのある職業生活を送れるようにしたいと考えています。  とりわけ、いまや国民的課題となっている老人問題については、定年の延長の普及をはかるとともに、高齢退職予定者に対する職業訓練をはじめとした再就職援助措置充実につとめてまいります。  また、過密・過疎の問題にも労働面から積極的に取り組み、工業再配置の促進などを通じて国土の均衡ある発展の中で、すべての労働者が、より実り多い職業生活を送れるようにしていくつもりであります。  第三は、合理的労使関係の確立であります。  今日、労使関係の動向は、政治、経済、社会の各般に大きな影響を及ぼすようになっております。  政府といたしましては、労使が互いに国民的視野に立って話し合いにより問題を解決できるようその基盤づくりにつとめてまいる考えであります。  私の就任後、田中総理労働四団体とのトップ会談が実現いたしましたが、今後ともこの種の意見交換の場を持ち続けるとともに、労使学識経験者による産業労働懇話会の機能の拡充強化をはかるなど話し合いの機運を一そう醸成し、もって労使相互理解の増進と合理的労使関係の形成に資してまいりたいと考えております。  以上、当面の労働行政重要事項について私の考え一端を申し上げました。  委員各位の一そうの御協力をお願いする次第であります。(拍手
  8. 塩谷一夫

    説明員塩谷一夫君) このたび労働政務次官を拝命いたしました塩谷一夫でございます。もとより浅学非才でございます。しかし、誠心誠意努力いたす覚悟でございます。委員先生方には何とぞ御鞭撻の上、よろしく御指導賜わらんことをお願い申し上げましてごあいさつといたします。(拍手)     —————————————
  9. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 大橋和孝

    大橋和孝君 本日は、暴力ガードマンの問題について少し折り入って質疑をしたいと思います。  最近、労働争議労働組合活動にいわゆるガードマン介入が目立ってきておるのでありまして、これらのガードマンは、警察官やあるいはまた警察機動隊の服装だとかあるいは装備と全く同じようなものを持って、これらガードマン労働基本権を実際上侵害するような、地域社会にも大きな影響を与えるような状態をかもしておるわけであります。このようなガードマン行為を規制するために過ぐる六十八国会警備業法いわゆるガードマン規制法が制定されまして、この十一月から施行ということになると思うのでありますが、こういう状態の中で私はきょうは二カ所の問題を取り上げて質疑の対象にしてみたいと思うのであります。そのほかまだたくさんございますけれども、代表的にその問題を取り上げてみたい。それは一つ宮城県の本山製作所であります。もう一つ京都京都ゴルフ場労働組合に対する介入であります。こういうような形で非常にガードマンが正当な労働組合活動制限を加え、圧力を加えておるというのはまことにゆるがせにできないような状態にあろうと思うのであります。  本山製作所はいわゆる春闘で全金本山製作所支部ということで三月賃上げなどを中心に要求を出したのであります。会社は従来の労使慣行を無視いたしまして団交制限を加えたり団交を拒否したり、あるいはまた四月二十四日には会社は第二組合のみに妥結をして全金本山支部に対してはその第二組合に妥結した以上の内容ではあり得ないというようなことを言いながら団交を拒絶しているわけでありまして、全金本山支部は事態の早期解決のため出入荷拒否闘争なんかを加えてやって、ピケを張ったりしてやっておるわけでありますが、団交拒否をやめさせるために組合員職場交渉なんかを行なってまいったのであります。言うまでもなく団交拒否労働組合法第七条に禁止しておる不当労働行為でもありますし、出入荷拒否闘争は御存じのように争議行為の態様としては認められておるものでありまして、この正当な行為に対しまして会社は五月二十日午前二時四十分に五十名の特別防衛保障株式会社ガードマンを乱入させてピケッティングの組合員に対してなぐる、けるという暴行を働いて全治三日以上あるいはまた一カ月に及ぶような重傷を十数名に負わせたのであります。あるいはまた五月二十三日、おりから支援にかけつけた総評の市川議長らに対しては売国奴というようなばり雑言を浴びせかけまして、しかもその集会妨害したのでありますが、その集会で、市川議長が去ったあとで、またも数名に対して全治三日以上十日に至る負傷をさせておるのであります。それはここにも写真がございますからこれをちょっとお回しいたしたいと思います。また、仙台の地方裁判所は五月二十九日、組合事務所立ち入りと使用しておるビラ配付やあるいは集会デモ行進に対して妨害排除の仮処分の決定もいたしておるわけであります。  大臣、よく聞いておいてください、お願いいたします。  そこで、第一組合は五月の三十一日朝八時二十五分から従来の労使慣行に基づいて男子の更衣所あたり組合集会を行なっておりますが、またガードマンが乱入をしてまいりまして、何もしておらない組合員に対して、暴力はやめろなんていうことを叫びながら、そして木製のいすでなぐりつけたり、あるいは持っているハンドマイクでなぐりつけたりなんかしまして、このときなんかはやはり骨折を起こしたりあるいはまた入院をしなければならぬような被害者組合員の中から出しておるわけであります。  こういう一連の暴行に対しましては、告訴、告発を行なっておりますが、残念ながら警察のほうはこれに対応するのが非常に不十分だと言われなければならない状態になっておるわけであります。特別防衛保障という会社は、警視庁公安三課がマークしておる会社だと聞いております。仙台のこの本山製作所介入したとするならば、当然日常的にその行動を監視しておるところの警察側といたしましては、特別の行動をマークしておられるわけでありますからして、五月三十一日のこの集団暴力があった直後に警察官がかけつけておるにもかかわらず、現行犯の逮捕などとかあるいはまたそういう適当な処置を行なっていない。そういうことで、あとからその場所におきましては流血した血のあともあるし、あるいはまた負傷者も現場におるわけであります。加害者ガードマンたち構内におるわけでありますから、そこへかけつけてこられた警察官はすぐその状態調査すればそこではっきりと出るわけでありますが、これをしておりません。同時にまた、それをしていない、見のがしておるために、今度はガードマンたちがむしろ変にでっち上げて、そして何か告訴をするとかあるいはまたけがをしたとかいう言いがかりをつけておるというわけであります。こういうようなことを起こしてきたのは、私は警察のほうが適当な処置、対応が十分できてないからだと見なければならぬ立場ではないかというふうに考えております。  それから、六月十五日には宮城地方労働委員会では労働委員会規則三十七条の二に基づいてガードマン撤収を趣旨とするところの勧告を行なっております。この後も会社は相変わらずガードマンを入れておりまして、組合事務所への立ち入り威圧を加えたり、ガードマン組合事務所暴力的に入り込んで威圧を加えたり、いろんな不当労働行為をひんぱんとやって、中でもデモだとかビラに対しましても暴力をもって妨害をしたり負傷を与えたりということが続いておるわけでありまして、こういうような裁判所決定やあるいはまた労働委員会のいろんな勧告に対しても非常に耳を傾けないわけであります。そればかりでなく、このガードマンたちはむしろこれから労使慣行を無視するんだ、変えていくんだというようなことを言って、労使慣行としていままで続いてまいりました労働協約と同じような力を持つような労使慣行に対しましてひっくり返すんだというようなことを放言をしておるわけでありますし、また会社側もいろんな場所に出てそういうことを言明しておるような状態であります。また、地方労働委員会のこの勧告は、その後七月の七日、八月の四日、二回にわたって会社に対しましても撤収要求を行なっているのでありますけれども、労働委員会に対しましても職制を動員して一方的な決定だなどと圧力をかけている始末なんであります。  このガードマン暴行は、全金本山支部組合員に対してだけでなくて、支援の外部の組合員に対してもいろんなそういう暴行行為を行なっておるのであります。本山の問題に対しましては、六月二十一日に県の商工労働委員会また総務警察委員会、こういうようなところなんかでも取り上げられまして、七月四日には県議会においても決定をされておりますし、また山本知事以下あるいはまた副知事なんかも相当このガードマン撤収することあるいはまた本山問題の解決のために努力するように議会においても答弁しておりますけれども、また同時に会社側に対して知事、副知事が数回にわたって説得しておるわけでありますが、これに対していささかも耳を傾けるような状態がないわけでございます。そうしたことで今日まできておるわけでありまして、この長い間の裁判所やあるいは労働委員会や、あるいはまた県の知事、あるいはまたその他副知事、あるいはまた労働基準局、あるいはまたそういうようなところの勧告も無視をし、否定をして、相変わらず不当労働行為を続けておるというこういう状態のもとにあるわけでありまして、この問題は非常にこの本山事件というのはゆるがせにならない問題だと考えます。  先ほどちょっと申しましたけれども、この京都のほうにおきましても同じようなことが行なわれておるわけでありまして、これは西日本パトロール警備保障、こういうところのガードマン京都ゴルフ場のキャディの労働組合に対して不当な労働行為をやって、そういう人たちを人のいないところへ引っぱっていって相当の妨害を加えておるわけであります。これもまた相当たいへんなやり方でありまして、非常に被害を受けておるのもたくさんございます。これも写真もございますから、一ぺんよく見ていただきたいと思いますが、まことに治安のないような、力でもって何でもやってのけていくような、こういうようなものが横行しておるようでは全く文化のない、あるいはまたいわゆる日本においては考えられないような状態が押し進められておるというふうに私は考えるわけであります。  そういう背景の中で私はこれから二、三の問題について各省の御意見を伺いたいと思うわけでございます。労働省労働省として、あるいはまた法務省法務省の側、あるいは警察庁としては警察庁立場からひとつお答えを願いたいと思うのでありますが、この本山製作所介入しておるところのガードマン、いま私申し上げましたが、これはいわゆる警備会社社長は一体どういう人であって、それからまたそこのガードマンがどれくらいおるか、そうして、どういうふうなことがやられておるかということをお調べになっておると思うのですが、先ほど私が申し上げましたように、マークされておる会社だということでございますから、十分にお調べになっておると思いますから、その様子を聞かせていただきたい。また同時に、このガードマンがどういうふうにして本山製作所に入っておるか、何人くらい、いつごろからどういうふうになっておるか、どういうふうな条件でこういうのが使われておるかということをひとつお聞かせ願いたいと思います。同時にまた、京都ゴルフ場に行っている西日本パトロールという、これも一体どういうものであるかということをお聞かせ願いたい。
  11. 本庄務

    説明員本庄務君) 最初に本山関係についてお答えいたします。  本山関係につきましては、御案内のように、特別防衛保障会社というのが警備契約をしておるように存知いたしております。これは東京本社がございまして、営業所東京大阪、新潟でございます。社長飯島勇という人でございまして、会社は四十四年の四月にできております。資本金は五百万円でございます。  なお、ちょっと事前に一言お断わりいたしておきますが、御案内のように先般の国会警備業法は成立いたしましたが、施行がいまのところ十一月一日を予定をいたしております。施行になりますと届け出義務がございますので、正確にそれぞれの会社業態内容が把握できるわけでございますが、いまのところまだ施行前でございますので、可能な限り正確な資料を入手するように努力はいたしておりますが、限度がございますので、いま私が申し上げることにつきましてもその点はあらかじめ御了解いただきたいと思います。  この社長はどういう人かということでございますが、これは元陸軍少尉でございまして、会社といたしましてはこれは昭和四十四年に設立をされておりますが、先生がおっしゃいましたような労働争議あるいは学園紛争等の際に契約をいたしまして警備に出ておると、これはあくまで身体財産、そういったものの警備ということを契約内容といたしておるようでございますが、実際には間々いわゆる行き過ぎと申しますか、不当な行為をいままでやってきておるようでございまして、そういったことが先般の立法とも深い関係を持っておるわけでございます。  ガードマンの数はどのくらいかということにつきまして、これも先ほど申しましたように、法律施行前でございますので、正確な数はわかりませんが、大体二百ぐらいというふうに考えております。これは御案内のように、このガードマンにつきましては、レギュラーと、それからいわゆる臨時と申しますか、そういった二種類ございまして、大部分の会社レギュラーは非常に少ない。しかし、時に応じて臨時を雇うということがたいへん多いようでございまして、これは何もこの会社に限らず大手でもそうでございますから、正確な数についてはなかなか把握しがたいという点を御理解いただきたいと思います。  それから何をやっておるかという御質問でございましたが、さきにお答えいたしましたように、一応契約といたしましては、身体財産警備ということでございますが、実際には先ほど先生から御指摘のございましたような、好ましくないこともときどき発生しておるようでございます。  それから本山のほうにいつから入っておるか、何人ぐらい入っておったかということでございますが、これも大体のことでございますが、五月の二十日前後からおおむね五十人が契約に基づいて入っておったということでございます。  以上、簡単でございますが、本山関係を終わりまして、次に、京都ゴルフ場関係西日本パトロール警備保障会社というところがございますが、これは本社大阪でございます。四十四年の十二月に設立されておりまして、二百万円の資本金で、ガードマンの数は大体百七十人ぐらいと、こういうふうに考えております。社長木下和政という人でございます。会社内容といたしまして、特別警備保障会社ほどいろいろ問題は起こしておらないようでございまして、私たちもいままで気にとめていなかった会社でございまして、過去に労働争議に伴う警備を行なって不法、不当な事案を発生さしたということにつきましては、目下のところ私たちのほうでは承知いたしておりません。  簡単でございますが、以上でございます。
  12. 大橋和孝

    大橋和孝君 これは週刊サンケイに出ておったのがクローズアップされているわけでございますが、この本山に入っておるところの飯島という人、これは「人呼んで「スト破り将軍。」あっちの会社、こっちの大学と、部隊をひきいてスト破りをし、常勝をつづけてきた将軍は、日大芸術学部に殴り込んではじめて惨敗を喫した。」けれども、昨年秋のことであるが、「それが原因だったのか、彼はここで覆面をかなぐり捨て、スト破り株式会社警備会社)をつくることを決意した。」、こういったことも書かれているわけですね。これは雑誌に出ているわけです。そうしていままでに肉弾戦を四回経験した。これは昭和三十四年ごろからの中に出ています。そこの中でもこういうことを言っております。警備契約を結んだら、大学構内においては、われわれは警察権を持てるわけですよ。いわゆるリンチですな。リンチもやることができる権利を持つんだ。これをするとすれば、法で裁かれることになりますけれども、向こうが抵抗してくるということにすれば、それを排除するという名前をつければ、頭を割ろうが、けがさせようが、これは自己防衛になるのですよ。必要やむを得ざる処置ということになるわけですね。一つ警備契約という立場をとっただけで、いくさはそれでできるんですよ。こういうことを当人が言明しているのですね。ここで、警備契約を結んでその会社警備を引き受けたら、もうそこで相手をリンチしようとけがをさせようが、正当防衛だということをいえば、それで何もかもやっていいわけですよ。いくさは成り立つわけです。一ヵ所だけは負けたけれども全部勝ちました。こうぬけぬけと新聞、雑誌あたりに発表しているのでありますから、私はこの中でたいへんな状態であろうと思うのでありますから、いまお話を承った中で、これを一体どういうふうに把握しておられるのか。  それからまた、聞くところによりますと、この中に入っている社長が、あるいはまた常務か知りませんが、前科十何犯だという人なんで、これはまだ十一月に——施行されてないからわからぬということになれば、わからぬということが言えるでしょうけれども、そういう人にはこの間の法律では会社をやらしてはいけないのだ。だからそういう会社は解散を命ずるのだということになっているわけでありますが、それが十一月から発効されるのだから、それまでは当然認めていいということにはならぬと思うのですね。六十八国会で通っているわけですから、その趣旨は生かして私は監督すべきじゃないかと思うのです。そういう点で前科十何犯という人がこういう会社を経営しているのだから、私はこういうものに対しては、いけないことを何とか十一月まで野放しにしておいていいということにはならないと思うのですが、その辺のことはどういうふうにお考えになっておりますか。
  13. 本庄務

    説明員本庄務君) 飯島社長につきましては先ほど申しましたように、四十四年に会社を設立いたしておりますが、それ以前、あるいはそれ以後におきまして好ましくないことがございまして、いわゆる犯歴と申しますか、そういうものがあるというのは事実のようでございます。なおこの犯歴証明につきましては、御案内のように市町村長がやることになっております。私どものほうからそういった事実について断定的なことを申し上げかねますが、警察が犯罪捜査その他でいろいろ資料を持っております。そういう面から考えますと、前科何十犯というのはちょっとどうかと思いますが、犯歴者であるということは間違いないと思います。この警備業法施行されますと、御案内のように一定の欠格事由がございまして、その欠格事由に該当する者は営業ができない。あるいは警備業務につくことができないという明文の規定がございますので、もし当該人がその規定に該当している場合には直ちに営業ができなくなるということでございます。法律的にはそういうことでございますが、それじゃ法律が施行になるまで警察としてはもう手が出ないということで知らぬ顔しておっていいのかということになりますと、私はやはり大きな社会問題でございますので、先生が先ほどおっしゃいましたような不当事案、これは中には暴行あるいは傷害として刑事事件に該当するものがあろうかと思います。これにつきましてはこの警備業法施行されている、されておらないにかかわらず、事件として立件送致すべきものであると考えて、地元の警察では現在捜査中であるというふうに承っております。それから犯罪に至らない程度のいわゆる不当な事案につきまして、これも警備業法施行になりますと警備業法の中心規定といわれております第八条の「(警備業務実施の基本原則)」という規定に基づきまして、所要の措置がとれるわけでございますが、現在のところはまだこの法律に基づく所要の措置がとれませんが、事実上の指導と申しますか、警告と申しますか、こういうことはやれるわけでございまして、また、やらなければならないと考えまして、地元の警察におきましては四回にわたって関係者に警告をいたしている、かように承っております。  以上でございます。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 この本山製作所支部に対しまして、労働基準局それから裁判所あるいはまた労働委員会に、この会社の不法行為につきましてどのような申告やら申し立てがなされておりますか。その点を一つ伺いたいと思います。  もう一点は、この本山製作所支部の上級団体の全国金属の労働組合から、五月の二十日付で、この「会社暴力による団結権介入」の申し立てが東京都のほうの労働委員会に出されておりますが、この点は御存じでしょうか。この二点について。
  15. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) この本山製作所に関しまして、基準監督署のほうに出されております申告について申し上げますと、五月の十三日に組合から仙台労働基準監督署に対しまして四点ばかり基準法違反であるという申告が出されております。  一つは、会社労働者に対しまして、第一組合を脱退し、第二組合に加入するよう強要いたしておりますが、基準法三条の違反である。  第二点は、基準法で定められた資格を持っていない者をガス溶接作業につかせ、その結果労働者が災害を受けておる。これが基準法の安全衛生関係の規定の違反であるという点。  第三点は、ストライキを行なっている際に、職場におきまして、会社側が内側、外側から施錠をして、その中で第二組合組合員やパートタイマーたちを就業させておることも、これまた基準法の通路の有効保持の規定に違反しておるという点。  それから第四点といたしまして、会社に皆勤手当制度があるが、ストライキ参加者について皆勤手当を全額カットしたのが基準法の二十四条等の違反である。  以上のような申告がございまして、監督署では、さっそく五月十七日に同製作所の監督を実施いたさせました結果、一つは本年三月以降におきまして、組合の申し立てがありましたように、基準法で定められました資格を持たない者五名をガス溶接の業務につかせておったという事実。これは基準法上の安全衛生関係の規定に違反しておるわけであります。  それから、申し立ての事項にはございませんでしたが、就業規則を変更しておるのに変更の届けを提出していなかったという点。これまた基準法の就業規則にございます八十九条の違反である。これらの事実が認められましたので、それらの点につきましては直ちに是正勧告をいたしまして是正の措置をとらしたわけでございますが、その他の申し立ての事実につきましては違反の事実までは認めておらないのでございます。違反と認めましたものにつきましては、その後も是正させたことについて確認をいたしておるところでございます。
  16. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 宮城県の地労委に対する申し立ては、昨年から始まっておりますが、四十六年十二月に、職制による組合員の全金の本山製作所支部からの脱退慫慂ということについて申し立てがございます。それからことしに入りまして、二月に転勤命令を拒否した元支部役員の懲戒解任についての申し立てがございます。それから三月には元支部役員の配置転換についての支配介入の申し立てがございます。それから六月に入りまして、ガードマン導入に伴う組合事務所の使用の妨害等の支配介入の申し立てがありまして、すべて宮城地労委に出ております。  なお、五月二十日に都労委に出たという御指摘ございましたが、たいへんうっかりしておりまして、私のほうではその事実はまだ把握しておりません。
  17. 田邊明

    説明員(田邊明君) 私どもの所管では民事局でございますので、この刑事関係事件について把握しておりません。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま本山製作所にこのような不当労働行為の数々が起こっているわけですが、この暴力行為の予想があったにもかかわらず、労働基準局だとか、あるいはまた労働省当局は、この申告等についてどういうように対処をしてこられたのか。まあ、前々から何と申しますか、この不当労働行為暴力行為ということに対してのいろんな問題があるわけですね。経過が長いわけですが、こういう問題に力を入れないでなおざりにしておくということは非常に私は問題だと思うのでありますが、こういう申告等についてどのように対処してこられたか、その点についてもう一ぺん伺いたい。
  19. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 労働基準監督署といたしましては、本山製作所につきましても前々から随時監督を実施いたしておりまして、最近の監督の二、三年の実績を申し上げますと、四十四年八月、四十四年九月、それから四十四年十月、昨年は、四十六年の九月、それからことしになりましても一月に定期監督を実施する等しばしば監督を実施いたしまして、そのつど基準法違反の事例等を見つけましたものにつきましては是正の措置をとらせておるわけでございます。争議になりましてからは、一月に定期監督を実施したあとでございまして特に監督は実施いたしておりませんが、先ほど申しましたように、申告が出ましたあとには直ちに監督を実施いたしまして、見つけました違反の事実につきましては是正をさせておる次第でございます。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 是正をさせておるとおっしゃっていますけれども、これはいま、私が先ほど前段に申し上げましたように、全然やられていないわけですね。しかもまだその社長は、これからいままでの労使慣行でいろいろやってきたことは無視して新しいものに変えさせるのだ、そうするためにガードマンを入れてやっておるということだから、いまあなたのほうでやっておることに対しては初めから無視しているということを広く言い回しているわけです。こういうことに対してもう少し労働省としてはもっとぴっちりとした指導をして——大体ほかのほうの話を聞きますと、労働省から勧告が出て、そしていろいろ基準局からおいでくだすったら大体会社のほうはそういう事柄を了として、いささかなりとも改正をしていくわけです。ところがこれはなかなか、改正どころかまだそれを変えていくためにガードマンを入れて暴力でやっていくのだということを公言しているということになりますと、私は労働行政に対しましては一つの反撃だというふうに考えるわけです。こういうことをじっと見ておりますと、労働行政、地に落ちたという感じを受けるのじゃないかという心配をするのです。  労働基準局のほうでは、相当綿密な調査をしながら、こういうふうにしなさいと勧告をしていらっしゃるわけですね。改めさせようとするわけですね。いまはそれを知らぬよ、それを変えさせるためにやるのだということを言っている。これは私は労働省を無視するような、反旗をひるがえすようなやり方だと思うのですけれども、こういうものに対しては一体労働省はどう取り組まれるのか。私はこれはたいへんな問題だと思うのです。あとから暴力の問題いろいろ聞きますけれども、最も最悪のいわゆるスト破り将軍という者を呼んできてやらせるといっている会社そのものは、私は日本の労働行政労働省というものを無視していこうというような、あるいはまたそれに徹底的に挑戦してやっていこうというふうに受け取れるわけですけれども、こういう問題に対してはどういうふうにお受けとめになっているか。ちょうど大臣もおいでになりますから大臣の御意見を——しっかりひとつやっていただかないと労働行政、地に落ちるという非常にたいへんな問題になると思うのですが、その点を一つ含めて御答弁を願いたい。
  21. 田村元

    国務大臣田村元君) ガードマン身体あるいは財産等の管理をするということはこれは否定できませんけれども、労働争議の場において不法あるいは不当の行為をするということはこれは断じて許すことができない問題であります。でありますから、そういう点では、労働省としてはやはりき然たる態度で臨まなければならぬことは当然でございます。  幸いにして新法ができ上がったわけでありますが、まことに残念ながら施行までに期日が、ということでありますが、これは警察当局と十分いまから御相談申し上げ、万全の措置をいたしたいと思いますが、その他の問題でも、かりに監督をする、それに対してこれをないがしろにする、あるいは無視する、あるいはかりにいまおっしゃったようなことがあるとすれば、たとえばスト破りなんかを公言するというような態度が事実であるとすると、これは許しがたいことであります。でありますから、私としてはき然たる態度で臨まなければなりませんが、同時に、部下に対してもきびしい態度で接するように今後も十分に私自身からも督励をしていきたい、こう考えております。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 大臣のお考えはそうでございましょうし、特に私は申し上げたいのは、基準局では正当な監督をしておる、こういうものに対して、やりませんよということを言わしておいたら絶対にいかぬですね、会社に。少なくともそういう事柄を取り締まってもらう総元締めは私は労働省だと思うのですけれども、いわゆる裁判所地方労働委員会、基準局こういうところからいろいろなことを言われていたものを全部無視してやっていくんだと、いままでの慣行でやられてきたことを一切ここでぶち切るためにやるんだというようなことを、会社が、本山製作所でもそういうことを言っているし、あるいはまた、そういうことのためにはスト破り将軍ですか、私はやるんだという。そういうのと結託をしている。先ほど申し上げたところでは、警察がそこに行っても警察が十分取り締まらないでうやむやにして、警察暴力とぐるになっている。そこに警官が行っても何もしなかった。こういうようなことが一緒になりましたら、私は無法地区になるだろうと思う。あるいは不法行為であるし、ことに私は問題に思うのは、最高の権威を持っておられる基準局がそういうことをやらしておくということになると、これがもしないがしろにされましたら今後の労働行政というのはめちゃくちゃになってしまうんじゃないか、こう思うわけです。こういう点から考えると、私はどうしてもこの問題はもう少し相当き然たる態度で労働省もやってもらわなければいかぬというように私は思うわけでございます。特に大臣のほうに決意をいま聞きましたように、十分きびしい態度で向かうということでございますから私は納得いたしますが、ひとつ、これを徹底的に労働省ではやっていただきたいと思います。労働省の権威にかかわることでございますから、どうぞよろしくお願いします。  それからあとで私は警察庁にお話をしますが、暴力ガードマン特別警備保障会社というのが東京にも新潟にも大阪にもあるようですが、こういうのが入りまして、一体いままでほかのこういう労働行政労働の問題に対して介入したのはどのくらいありますか、警備会社がやりましたそういう不当労働行為的な、労働問題に介入した事件はどのくらいあるか、こういうようなことをひとつ一ぺん聞かしていただきたい。  第二点は、先ほど私も触れましたけれども、前科というのはそう何十犯はないけれども、幾らかあると、こういう警備会社をなぜもっと取り締まれないのか、十一月になって法律が出ればもちろんでありましょうけれども、こういう問題に対して暴力をやっているとすれば私は当然取り締まるべきだと思うのですが、これはなぜこれをもっとやられないのかということに対してどうも私は納得できないのですが、その点をひとつお伺いしたい。
  23. 本庄務

    説明員本庄務君) いまこまかい資料が手元にございませんので、正確に何件という数はちょっと記憶いたしておりませんが、一応皆さま方の御記憶にあると思われますのがチッソの株主総会における事案でございますし、それから那珂湊の市役所における事案、これは形が少し異なりまして、市の臨時職員としてガードマン会社の人間を採用しているという、そういう一応別の形においてあらわれておりますが、これは実質的にはガードマンの事案と言ってよかろうかと思います。その他特別警備以外に報知新聞あるいは宮崎県におきましても第一糖業、そういった事案がここ二、三年私の記憶ではやはり十件前後はあったんじゃなかろうかと思いますが、その一々につきましてどの程度の不当性あるいは違法性ということはちょっといまはっきり記憶いたしておりませんが、程度の差こそあれ不法あるいは不当な事案がいずれもあったように考えております。  それから第二の御質問でございますが、こういったけしからぬ会社がすでに存在しているのに法律が施行される前になぜ取り締まらないのかという御質問でございますが、法律的な論議になってたいへん恐縮でございますが、御案内のように日本は法治国家でございますので、警察権力を発動ということになりますと、やはり法律の明文の規定に基づかない限り権限行使はできないということになろうかと思います。しかしその法律的な権限行使以前の問題として、あるいはそれ以外の問題として、事実上の指導——行政指導と申しますか、そういったことは当然やれるわけでございます。またやらなければならないと思います。しかしながら行政指導と申しましてもやはり限界があるわけでございまして、行政指導をやって指導をすればすなおに聞いてくれる場合、なかなか聞かない、聞くと言って帰ってもまた同じようなことをやるという場合もあるわけでございまして、まさに先ほど御説明の本山関係につきましてはその後者の事案であろうかと思います。したがいまして、私たちといたしましては、やはり必ずしも好ましいことではないかもしれませんが、法律をつくりまして最小限度規制をしなければならないと考えまして、先般の国会警備業法を新たにお願いをしたわけでございまして、本来ならばこの種の営業は私は自由営業であって、健全に行なわれることが社会的には望ましいことではないかと考えております。十年前にガードマン会社ができたわけでございますが、その後何ら法律的な規制を行なっておりません。自由営業で健全な発展をすることをこいねがってきたのでございますが、先般来御指摘のような事案がぼつぼつここ数年発生してまいりまして、このままではいけないと、やはり社会の秩序を維持するためには最小限度の規制をする必要があるのじゃなかろうかということで、先ほども申し上げましたように立法をお願いしたわけでございます。この法律ができましたならば、これを根拠としてさらに強力な行政指導をやっていき、聞かれない場合には法律のやはり執行という担保によりまして目的を達成してまいりたいと考えております。したがいまして、法施行前におきましていろいろ努力はいたしておりますが、行政指導には限界があるということを御理解いただきまして、まあここ二、三カ月の間、ともかくくつの上からかくといった手ぬるいような感じもお受けになるかもしれませんが、そういった事情でございますから、ひとつ御理解をいただきたいとお願いをいたしておきます。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 それじゃ商法の会社法の中の五十八条に「裁判所ハ左ノ場合ニ於テ公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキハ法務大臣又ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ会社ノ解散ヲ命ズルコトヲ得一 会社ノ設立が不法ノ目的ヲ以テ為サレタルトキ」こういうようなことで出ているわけですね。これは私は、その商法の五十八条からいいましても、やはり違法性を目的として設立した会社に対して、法務大臣はこれは解散を命ずることができるように法律もちゃんとあるわけですね。ですから、やはり警備法ができる。それまでは行政指導で何にもできないという形じゃなしに、もっとこういうものが何かほかのほうからも私は取り締まる必要があると思うのです。特に私は五月二十四日組合告訴したあと状態ですね。弁護士だとか県会議員、県議会、こういうところにおきましても、この警備会社暴力であっていけないんだと仙台の北警察署に対しても申し入れしておる。しかも地方裁判所の仮処分、あるいは地方労働委員会の三回にわたる勧告無視、こういうようなものが暴力行為、これは不当であるということはよくわかっている。もう一つ、その前に何よりも人命が第一なら、これだけ大ぜいの人が暴力によってあるいは入院しなければならない、骨折も起こしているというような状態が起こっておる。むしろ人命そのものに影響を及ぼすような状態が行なわれておるというわけでありますから、私はこういう状態では、どうしても警察当局としては、行政指導で十分いけない。かゆいところに手が届きませんということであってはならぬと思うのですが、こういう点をどういうふうにお考えになっているのか。もう少しこういう問題は、十一月を待たずとももっとやるという、ほんとうの気持ちになってもらわなければならないのですね。私はこう思うのですが、どうでしょうか。特に暴力行為が行なわれている事件に対しまして、警察官を現場に派遣して、そして傷害が行なわれているということを未然に防ぐくらいがむしろ常識でありまして、これはまた警察法の上から言いましても、第二条の警察の責務にむしろ私は反するのじゃないかというふうに一つ考えられるのですが、その点どうでしょうか。
  25. 本庄務

    説明員本庄務君) 警察のとる措置といたしましては二つの面があろうかと思います。一つ行政的な面、一つは司法的といいますか、正確じゃないかもしれませんが、犯罪捜査という面、この二つの面があるわけでございまして、先ほどの御質問で私が申しましたのはその行政的な、行政警察的な意味において、法施行前までは隔靴掻痒の感があるかもしれませんが、行政指導で十分やってまいりますということを申し上げたわけでございますが、行政的な面につきましては、これはやはり先ほどもお答えいたしましたように、できるだけの手は打ってまいりますが、限度がございますから、こういったようないわゆる札つきといわれている会社につきましては、手ぬるいという感じがするかもしれないと思うのです。しかし、司法的な面におきましては、先ほどからお話がありましたようないわゆる暴行、傷害事案につきましては、警察といたしまして、全力をあげて捜査いたしまして、立件をするというのが仕事でございます。現にこの事件につきましても捜査をいたしました。ところが、いろいろ話がこまかになって恐縮ですが捜査につきましては、関係者の協力といいますか、供述といいますか、そういったことは立証上必要になるわけでございますが、必ずしもその辺が円滑に協力が得られなかったというようなこともあったようでございますが、いずれにいたしましても、かなり苦労をいたしまして、先ほど御指摘のありましたような、たとえば五月三十一日ですか、ああいったような事件につきましては、六月の二十四日にガードマン側の被疑者、これは会社側の者も含んでおりますが、七月十日には第一組合側の被疑者六人、それぞれ送検をいたしております。  それから事前に警察官を入れて調査をすべきではなかろうか、これはまことにごもっともな御意見であろうと思います。ただ一般的に申しますと、労働争議につきましては、警察は不介入ということでございますので、労働争議の場面にいたずらに警察官を配置する、あるいは入れるという場合には、会社側とかあるいは労働者側とかいうことでなくして、とにかく労働争議警察介入するのではないかという疑いを持たれることも考えなければなりませんので、そういった事前の配置については、一般論といたしましては、私は慎重に考えるべきではなかろうかと思っております。まあしかし特定の場合、いわゆる傷害事件等が起こることが確実に予想されるというような場合には、その予想される事態に応じた事前の配置というものも状況によっては私は必要ではなかろうか、かように思っております。
  26. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうおっしゃいますけれども、八月四日の午後一時五分、そのとき宮城県警の警察官の目の前で、約二メートルくらい前でもって、ガードマンの一人に組合員が右の顔面をなぐられたり、あるいはけられたりして非常なけがをした。この際、組合員暴行現行犯でなぜ逮捕しないのかと警官に言ったら、私は交通警官です。だから知らないですと、こう言った。別に交通係の腕章ははめていなかった、こういうわけですね。こういうようなことがされているので、やはり労働組合人たちは、ガードマン警察とがぐるになって、一緒になってやっているんじゃないか、一緒に攻撃してきているんだということで、憤りを持ったということまで言われているのでありますが、こういう問題に対しては言語道断の問題であります。いまの第二の問題に対しては積極的にやって、何人告発してと言われておりますけれども、こういうような問題があるわけですね。実際からいえば、現地で現行犯として逮捕できるものを逮捕していない。そのためにあとからいろいろな抵抗をして、調査を妨げているという事実が起こってきているわけです。あるいはまた逆に虚構の問題をつくって、ガードマンが何かされたようなことを言っている。実際組合員はみなおとなしくて、そんなところまで手が出ない。追い出されたら、そこで集会しておっても逃げ出して運動場に行ったり、あるいは控えの間に行ったりしてやっておる。むしろ右往左往して、労働組合の連中は逃げ回っている。ガードマンは鬼将軍だ、スト破り将軍だと言っていきまいてやっておる。こういうような状態の中で、すぐに警察官に引き取られれば、その現場、けがしたのをちゃんとしたり、加害者がそこにおるわけでありますから、現行犯で逮捕するなら、一ぺんにそういうようなことが権威が保たれるんじゃないか、こういうことを言って労働組合の諸君は不満を持っているわけです。こういう問題についてはどう考えておりますか。
  27. 山本鎭彦

    説明員山本鎭彦君) 本山製作所の事件で、先ほど組合員ガードマンの乱闘した事件、これについては一一〇番に通報がありまして、警察官は直ちに現場に行ったのでございますが、一応そのときは事態がおさまっているということで、現場に血痕が認められておるというので、警察官が付近にいた組合員に、これはどうしたのかというように聞いておるのでございますが、組合員はだれも答えなかったと、しかしその後の捜査によりまして、その場所で乱闘があって、双方に多数の負傷者が出た、こういう事実が判明して、その後の捜査によって、ただいま保安部長が報告したように、それぞれ事件を送致しておるわけでございますが、なかなかこういう事件、現場に直行はするんでありますが、その場所の雰囲気その他から直ちに協力が得られないと、こういう特別な事情があるという点、捜査の困難性がある点ということをひとつ御理解願いたいんでございますが、いずれにしろ、警察といたしましてはこういう暴行傷害事件、これはもうきわめて悪質な犯罪行為でございますので、全力を尽くして事前からの情報収集はもとより、事後の捜査においても万全の措置をとって、こういう問題を看過しないで徹底的に追及するという態度でこれからも指導いたしますので、この点ひとつ御了解をいただきたいと思います。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 私がいまお尋ねしているところは、そうして一一〇番で行って血痕があるのにその場でなぜそれを、もっと全部ずっと確かめませんか。暴行が行なわれているということは事実見てわかりますね、血痕があれば。あるいはまたそこでなぐられている組合員は骨折を起こしているわけですね。鼻の形が変わっちゃっている。鼻骨が折れてしまって鼻の位置が変わってしまって、なおってからでもまだ私はそれを見たけれども鼻が折れてしまうほどきつくなぐられておるような状態があるのに、双方あとから調べたら乱闘があったらしいと、こういうことじゃ私はいかぬじゃないか。そんな血痕があったりして、相当そこのところはひどい状態があるわけです。そうしたら、私はそこでもって徹底的に全部の人がおるんだから、加害者被害者。徹底的にそこで調べるべきですよ、健康状態を見て。そしてそのことをあいまいにして帰ってしまって、あとから調査してみましたら両方やりましたと、実際にそこのところの話を聞いてみると、組合員の連中はむしろ右往左往しておるわけですよ、さっき言ったように。むしろ向こうのほうがあれだけ見ていただくと警備隊のような服装をして、そして木のあれを持ち、そこらのものを持ってなぐったりけ飛ばしている。そして、そういうふうな大きなけがをしておるということを見たら一目でわかるわけなんだ。それを私はやらなかったということに対しては納得できぬものがあるんですが、その点どうですか。
  29. 山本鎭彦

    説明員山本鎭彦君) いまの事件について、その場でそういう事実があるということをすぐ認めて、ガードマンについてはすぐ本署へ来いということでいろいろ事情を聞いたわけですが、組合員のほうは一応組合にはかってから、そのあとで出頭するということで若干捜査がおくれたという事情がありますので……。
  30. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから、特にそういうふうなことですから、私はこの問題については相当警察庁としては前向きなきびしい態度でやはりやっていただかないと、警察権もどちらかといえば、何といいますか、権威が落ちるような形になるでしょうし、先ほど私は労働省に言いましたように、同じようなことが警察の側にも言えると思います。やっぱり暴力ということはいけないと思うのですから、ですからそういうふうなことをガードマンがやって、しかもある程度、ちょっと手心次第によってはそういう悪い方向に波及していくわけですから、私は相当きびしい態度でやってもらわなければいかぬと思う。ことにガードマンがこういうふうな労働組合の正当な活動に対して介入するということに対して、私は非常に大きな問題があると思います。こういう問題に対して、私はこれからひとつお尋ねをしていきたいと思いますが、法務省のほうはどういうふうにこれを考えられるか。あるいはまた労働省のほうはどういうふうに考えられるか。あるいは警察庁のほうではどういうふうに考えられるか。こういうような問題をここで相当明確に出しておいていただかないと、私はたいへん困る問題になってくるのじゃないか、ことに私は労働大臣、法務大臣にもきょうは言いたいと思っておったけれども、法務省の方はひとつ法務大臣にもこの事実をよく伝えていただきたいと思います。この現地における実態をひとつ一ぺん警察庁のほうもそうでありますが、責任においてもう少し現地の詳しい状態を一ぺん的確に調査していただきたい。そしてその調査ができた上で、私、もう一ぺんこの問題に対しては重大でありますから質問さしていただきたいと思います。ですから、労働省労働大臣の責任で、法務省のほうでは法務大臣の責任で、警察庁警察庁のほうの責任で一ぺんこの問題、ひとつずっと掘り下げて調査をしてください。そして私はその調査ができたころでまたこの問題に対して徹底的にひとつ調べていきたいと思います。もしそれが十分なことをやっていただけないようなことであれば、私は各委員会に頼みまして、一ぺんこの問題に対して各委員会の立場から徹底的な調査をひとつやってもらおうということを私は考えてお願いをしようと思っておるわけでございますからして、そういうような形でひとつ各省の責任でこれを一ぺん調べていただきたい。調べてもらった上で最後のけりをつけていきたい。そういうようなことで労働省の権威を失墜したり、警察庁の権威を失墜したり、あるいはまた証拠や何か、そういうことでいまでも取り締まれるのに取り締まられていないという、そういう問題に対しては、ひとつ法務省のほうでもこれを掘り下げてもらい、各省の一ぺん詳しいデータが出たところでじっくりと話し合いをしてみたいし、今後こういうことのないようにするためにはどうするかということに対しての最後の詰めをしたいと思いますから、できるだけ早い機会に、ひとつ各省でこの問題に対して調査をしてもらいたい。ことにこのあとのほうの問題につきましては、これは本山のほうを主題において話をしましたけれども、この問題もたいへんな問題です。特にここはひどいやり方でありまして、人の目の見ていないところへ引っぱっていきまして、組合員を。そうして制裁を加えておる。こういうようなこともまたたいへんな、暴力のやり方にしても悪らつなやり方です。先ほど説明を受けたら、何かこの西日本パトロール警備保障株式会社はそう悪くない警備会社だといわれておりますけれども、人の見ていないところへ、陰へ引っぱり込んではなぐりつける、もしおまえもやったらこのようなひどい目にあわせるぞと、こういうようなことをやるわけですから、私は非常に悪らつなやり方だと思います。これは警察庁も同じように暴力事件として調べて不当に見のがしている点がある。これは京都府の警察委員会のほうからも上賀茂署にいろいろ呼んで話もあるようでありますし、委員会でも問題になっておるようでありますけれども、こういう問題についてはやはり同じようなことがあるわけです。先ほどからお話したように、まだ、ほかに調べたら十何件こういう問題があると、ずっと起こっておるガードマン会社がある、警備会社があるということになれば、よけいに今後はこういう状態を見のがしたならば暗黒時代が出てくるというふうに私は思いますから、特にひとつ各省ともこの問題に対しては調査をしていただきたい。それができ上がったところで私、また質問をさしていただくことにして、時間がまいりましたので、これで……。
  31. 田村元

    国務大臣田村元君) 仰せのとおりだと思います。私どものほう、十分しかもきびしく調査をいたしまして御報告を申し上げます。
  32. 山本鎭彦

    説明員山本鎭彦君) 同様でございまして、いまの事件、徹底的に調べあとで御報告いたします。
  33. 田邊明

    説明員(田邊明君) 私のほうも所管の刑事局とよく連絡をとって実態を調べてみます。
  34. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、この際地方公務員争議行為、いわゆる賃金引き上げ、ベースアップ闘争の、要求闘争がございますね。その全国統一行動についての懲戒処分等についてまずお尋ねをいたしたいと思うわけです。  実は最近、私、この懲戒処分について全国的にどういう状態になっているだろうかということに興味を持って調べてみましたところ、特に地方公務員の段階で統計を調べてまいりますと、昨年五月からことしの五月、約一年間におけるいわゆる自治労の関係の懲戒処分は、全国で三千七百六十五人、こういう数字で、実は自治労の統計でございますから、処分を受けた被害団体でありますから、当然正しいものであると認定をいたしますが、三千七百六十五名おるということについて、さらに各県にひとつ振り当てていろいろ検討いたしてまいりますと、実は驚く数が一つ、ある県にあるわけです。というのは、九州の宮崎県、実に全国的な三千七百六十五人の中の九〇%、三千三百七十一という数字が宮崎県、さらに多いのは福岡県の三百七、こういう数字を見ますると、ほとんどこの両県に集中をしておるという現象が特異の現象としてあらわれてくるわけでありまして、この点について実は興味——といいますと非常に恐縮でありますけれども、異様に感じまして、具体的に調べてみたわけであります。特にこうした地方公務員等々におけるところの賃金アップ要求の全国統一行動について懲戒処分を行なう、こういうことについては、この数年たいへん裁判上においても論議がなされておるわけでありまして、特に昭和四十一年十月二十六日、最高裁の全逓中郵判決、昭和四十四年の四月二日の最高裁東京都教組の事件、これの判決等、いわゆる行政処分取り消しを命じておるわけであります。さらにまた、昭和四十六年八月十日佐賀県の教組の事件あるいは昭和四十六年十月十五日の都教組の事件などもあって、最近では極端な行政処分行為、懲戒処分行為というのは少なくなっていることは、これは労働大臣もよく御存じのことだと思うわけです。すなわち、全国の地方自治体では、懲戒処分をもって労働運動を抑圧をしていく、そういう考え方はもはや時代おくれであるというような考えに至っているということも私たちはそういうふうに理解をしておるわけです。しかるに、いま私が数字の上から御指摘をいたしましたように、ひとり宮崎県では一年間に全国の九〇%がここに集中をしているということは、いわゆる大量処分が行なわれているということはまさに私は異常でならないと思うわけでありますが、——自治省お見えになりますか——自治省が特に宮崎県を選んで、まずここから切りくずせというふうな調子でねらい撃ちをされたということはないと思うんですが、その点をまず御指摘をいたしておきたいと思うんです。どうですか。
  35. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 自治省の公務員部長でございます。  お答えいたしますが、宮崎県を特に集中的に指導したという点は全くございません。それに、私の省といたしましては、全国的に常々指導をしておりますのは、公務員の争議行為、特に勤務時間に食い込む職場大会その他、そういうことについては、これは現在国家公務員法、地方公務員であれば地方公務員法で禁止されておることである。そこで、こういう争議行為、勤務時間に食い込むような争議行為には参加をしないようによく職員を指導してほしい。不幸にしてそういう事態が起こったならば、法に照らして厳格な態度をもって臨めということで全地方団体にわたって常々指導しておるところであります。結果が確かに御指摘のように宮崎県に集中的な形で出ましたのは事実でございますが、争議行為に参加した人間はじゃ宮崎県だけであるかというと、そうじゃなくて、実は全国的にも相当分布しておるわけであります。こちらはそういう行為をしないように、さらには、もしすれば厳格な態度をもって臨むようにと全地方公共団体に一律に指導しているというのが現在でございます。
  36. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま指導している、厳格にひとつやれという指導をしておる。そうしたら、まあ私たちも身近で経験をしておるんですが、全国統一行動というのはいわゆる一つの団体行動権として労働組合が全員一斉に職場放棄をする場面もあるわけです。これは宮崎県の人たちが全部集まって、私たちの愛知県は一人も集まらぬというわけはないんです。どうして愛知県はそういうことはなくて、宮崎県だけ全部処分されるのか、この点はどうですか。
  37. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 処分をするのは実はそれぞれの地方団体でございますので、自治省といたしましては、そういった争議行為に参加しないように十分指導をしてほしい、もし不幸にしてそういう事態があれば厳格な態度をもって臨めと言っておるのでございますけれども、それぞれの地方団体にいろいろな御事情がおありかと存じますけれども、処分を全く行なっていないところ、あるいは処分は行なうけれども、機関責任だけを罰しているところ、いろいろな団体の状況に差異があることは事実でございます。  それからもう一つ、宮崎県になぜこんなに集中したのだろうかということ、その理由でございますが、一つの想像でもございますけれども、各市町村ではやはりこういう行為に対する態度をどうするかということについて、自分のところだけやって隣の団体ではやらないということになりますと、あといろいろ問題がありますので、よく御相談をなさるということがございます。おそらくまあ宮崎県の場合、特に各団体における争議行為が相当激しかったということがあるのかもしれませんが、市町村長の間で御相談になって、このままほっておいては困るので、この際厳格な態度をもって臨もうという御相談があるいはできたのではないか、そういうふうに、これは想像でございますけれども、思うわけでございます。こちらのほうは処分をするなとか、しろとかいうことでなくて、こういう違法な行為がないように、あったならば厳格な態度で臨むように、これは全地方団体に同じような形で常々指導しているところでございます。
  38. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、おたくのお話によりますと、自治体の首長の裁量権にあるんだと、こういうふうに理解していいんですね。
  39. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) どちらでもいい、全く自由な裁量権という意味にはとりたくないと存じます。やはり公務員というものは順法精神が大事でございますし、法規に違反した行為に対しては厳格な態度をもって臨むのがたてまえでございます。現実にはどういう事態でどのくらいの違法な状態があったかということを考えて、懲戒にするか、ただしかるだけにとどめるか、同じ懲戒でも停職、減給、戒告と、いろいろな段階がございますが、そういうものはその段階に応じて各首長の方が裁量なさっておきめになる。しかし、こういう違法な行為があったのに対して一切やらぬでいい、何もしなくてもいい、えらい強い罰で臨んでもいいという裁量ではない、そういう意味では覇束裁量と申しますか、一定の限界はあると思います。
  40. 須原昭二

    ○須原昭二君 首長の裁量権の問題について幅がある、どうしてそういう幅が出てきたかということについては後ほどひとつ論議をいたしましょう。  そこで、ただ宮崎県だけをねらい撃ちしたわけではない、こういう御表現がございましたけれども、ないとするならば、現実に懲戒処分が行なわれているこの宮崎県の実態を自治省はどう評価されておりますか。これを最初にお尋ねしておきたいと思いますが、りっぱなことだと思いますか。
  41. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 実態をどう評価されておるかという意味はちょっとはかりかねますけれども、まあ違法な行為をしないように指導をしてほしい、もし不幸にしてそういう事態があったならば、公務員の順法精神ということは大切なものだから厳格な態度をもって臨めということからすれば、この宮崎県の場合はその行なった行為をそれぞれ評価をされて適正な態度をもって臨まれたのだろうと考えておる次第でございます。
  42. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ私たち常識的に考えて、たとえば三千三百七十一人、これだけの大量の処分が行なわれた場合に、少なくとも組合で言うならば、その労働組合委員長とか、あるいは書記長だとか、そういう点が過酷というか、きびしい処分を受けるのが私は常道だと思うんです。あまりそういう大きな処分はしておらずに並列に全部やっていくというやり方、この点について労働運動の範疇に近いわれわれが日常感じておる姿とは全く異様なものなんですよ。したがって、自治体労働運動に対する特異な処分として私は異常だと考えておるわけですが、自治省あるいは労働省はこれはどういうふうにお考えになりますか。
  43. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先生の御指摘のようなある程度指導者については私たちも処分——機関責任を重くするということは、この宮崎県の具体的な場合も相当の市町村でとっておるように聞いております。まあ参加した者に対しては戒告をする、それを指導した組合の幹部に対しては減給をする、あるいは停職というような面もあるように聞いております。
  44. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 地方公務員争議行為に対する処分で、ただいま御指摘のように全国の処分件数の九割が宮崎に集中しておるという点につきましては、私どももいささかふしぎな現象であるというふうに感じております。  しかしながら、争議行為をやった場合に処分を受けるというのはこれはやむを得ないことであると存じておりまして、その処分が公正妥当なものであるかどうかということにつきましては、これは私ども所管外でございますので論評は差し控えさせていただきたいと思います。
  45. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま労働省のほうでは、おかしいというか、異常だというようにお考えになっておると思うんですね、この数字の上で。したがって三千三百七十一人というふうな全国の九割までのこうした戒告が出ておるのに、実は停職だとか免職だとかそういうものはないのですよ。せいぜい減給が三十数名出ておりますけれども。やはりたとえば、これが違反である、違反行為をやったのはきびしく取り扱えというなら、それを指導をした機関責任者を厳罰に処するという方法なら、私は世の中であり得ると思うんですが、なべて参加した者を全部やってしまえというようなことはこれは非常に私は異常だと思うんですが、あえて自治省の見解を尋ねたい。
  46. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 御指摘のように、行なわれた行為の実態によりまして、強力に指導した者と単純に三十分なり一時間だけ参加した者の間に責任の高低があれば、当然その高低に従って、量刑と申しますか、懲戒の内容についても差異をつけるのが公正である、一般的にはまさに私そのとおりであろうと思います。  宮崎の場合、確かに免職、停職というのは去年からことしにかけてはある程度——免職はないようでございます、停職は一部あるようでございますが。それから減給、差異をつけているところもあるようでございますし、まあ、そういう差異がなく、おそらく機関責任をあまり強く問わないで一律に、争議行為を一括して考えて戒告だけで済ませているというところも数字の上から確かに出ておるようでございます。そういう懲戒がはたして公正妥当であったか、その程度の差異をつけなければそれはおかしいじゃないかという御議論はあるかと存じますけれども、そのときの争議行為の実態いかんによっておそらくその理事者がお考えになってこういう態度をとられたのではないかと考えております。
  47. 須原昭二

    ○須原昭二君 処分のしかたの方法だというふうに聞こえるのですけれども、この問題についてはあとでひとつ追ってお尋ねをしてまいりたいと思います。  そこで時間の関係もありますから、まず先ほどの首長の裁量権の問題ですね。憲法二十八条勤労者の団結権、私が読み上げる必要はございませんが、労働者の団結する権利及び団体交渉、その他団体行動に対する権利はこれを保障すると、実は明確にうたっておるわけです。ここでいう勤労者、労働者、もちろん私は地方公務員も勤労者の範疇に入ると理解をし、学説上でもそういわれております。この点をひとつ自治省のほうから、入っているのか入っていないのか明確にお答えをいただきたい。
  48. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) これは、最近の最高裁の判決でも示しておりますように、入ると解するのが現在の通説と考えております。私どものほうも勤労者の中に地方公務員は入ると考えております。
  49. 須原昭二

    ○須原昭二君 入ると自治省はお考えですね。確認をしておきたいと思うんです。  ただ、現行法規上、地方公務員法三十七条、地方公営企業労働関係法十一条の争議行為禁止規定の解釈がここで問題になってくるわけです。  そこで、先ほど私が述べましたように、いまおたくもおっしゃいましたように、数々の裁判の判例があるわけで、これを否定をしているわけですね。そこで実は地方自治体の首長の裁量というのが生まれてくるわけです。自治体の首長の裁量権といっても憲法、法規の外に立つことはできない。といって、一方においては地方公務員法三十七条というものがある、あるいは地方公営企業労働関係法十一条がある。だからどちらを選ぶべきであるか、どちらの力量を考えるかというところにおいて、この懲戒処分の高低が出てくると私は理解をするんです。だから宮崎県以外の多くの自治体の首長さんの処分状況を見ると、これに対するやはり理解の標準をこの問題点が指摘をしておるんじゃないかと私は思うんですが、労働省はどうですか。御見解を承りたい。
  50. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 公務員、公企体等の争議行為につきましては、御指摘の全逓中郵の最高裁の判決で、刑事責任につきましては組合法一条に適用があるということで、相当大幅な刑事責任の免責が最高裁の判例として確定しておるところでございます。しかしながら、同じ最高裁の判決におきまして、民事責任あるいは行政責任等についてはこれが行なわれることが当然あるんだということも申しております。私ども政府の見解といたしましては、現在の地方公務員法あるいは地方公営企業労働関係法といったようなものは、公共の福祉、公益の立場からやむを得ない制約を受けておるものであって、それに違反する争議行為が行なわれた場合には民事責任あるいは行政処分というようなことが行なわれるのはこれまたやむを得ないことであるというふうに考えております。
  51. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういうことになっておるけれども、このように裁判の判決がどんどん出てくる。だから強い処分をするよりも、まあお互いに労使関係にあることだから将来のことも考えてひとつ穏便にはかっていこうというのがいま地方自治体の首長の考え方だと私は思うんです。そういう趨勢を、労働省もそういうふうに見ておられますか。そう感じられておりますか。違いますか、私の言い分。地方自治体の首長の動向ですね。
  52. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 地方自治体の処分の動向でございますが、私どもといたしましては、一般の地方公務員がいかなる争議行為をどの程度やって、それに対してどういう見地からどのような処分をしたかということについては正確な資料を持っておらない、またそういう立場ではございませんので何とも申し上げかねますが、ただこういうふうに非常に片寄った地方に処分が集中しているということから見ますると、どうも処分の御方針というのが各地方公共団体におきまして必ずしも統一した方針でされてはいないんじゃなかろうかという感じを持つわけであります。
  53. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま局長がおっしゃったように、同じ日本の国の政府の中で、ある地方は高くある地方は非常に少ない、また皆無である、このような国内政治の不均衡というものについて私は異様に感じているわけです。こういう問題について修正されるべき点は私は修正されなければならないと思うわけです。そういう点労働大臣どうです。一つの国の中においてある県は高くある県は低く、この不均衡な状態というものは適切ではない、こう思うんです、したがってそういうものは自治省が——自治省の名前を出して恐縮ですが、行政指導をして均衡をとらせるような方向で私は対処していただきたいと思うんですが、労働大臣の御所見を承ります。
  54. 田村元

    国務大臣田村元君) 率直に申しまして、私の所管外でございますので論評を避けなければならないかもしれませんが、この数字を拝見いたしますと、まさに九割であります。それが正常な状態なのか異常な状態なのか、あるいはどのような事情でこのようになったのか。それは現地にはいろいろと言い分もございましょうし、事情もございましょうけれども、少なくとも私自身はきわめて奇異の感を受けたことは事実でございます。ただ、宮崎県でそれ相当の御事情があってこういう結果が出たのなら、それは全国との均衡ということとはちょっと関係がないと思いますけれども、まあ公務員も含めまして、私自身の期待は、労使で合理的にうまく話し合ってやってもらいたいということは事実でございます。しかし、違法行為について処分するとかしないとかということになりますと、当然これは違法行為についての処分は、単に労働運動のみならず、何でもそれはもうあり得ることでございますから、またしなければならぬことでございますから、それについての私は論評を加えたくはありませんが、きわめて奇異の感を抱いたことは事実でございます。
  55. 須原昭二

    ○須原昭二君 労働大臣がおっしゃいましたように、これはどなたが見られても奇異の感じを抱くと思うんです。これはまともだとは思えないわけです。ですから、自治省においてもこれは適正なやはり行政指導、実態というものをよく一ぺん調査を願って、やはり行政指導をされるべきだと私は思います、どうですか、やる気はございますか。
  56. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先生御指摘のとおり、同じ日本の国内において同じような行為に対して、一方が重く、一方が軽いというのは好ましいことじゃないというのは全く同惑でございます。私もそうあるべきものだ。もちろん、それぞれの団体の行為の態様によっていろいろ差異があることは当然ではございますけれども、それにしても、その差異が全国的にある程度バランスのとれたものになるべきことは当然だと思いますし、私どももまたそういう指導をやってまいりたいと思います。  ただ、いま労働大臣がおっしゃいましたとおり、労使間の合理的な話し合いによる正常な労使関係というものの樹立、これについては私たちも常々気を配っておりますし、そういうふうな関係が樹立できるように指導はしてまいっておりますし、今後も続けてまいる次第でございます。それと同時に、いままた労働大臣のおっしゃいました法律にもとる行為、これに対してはやはり厳格な態度をもって臨むということが——公務員としては法を守るというのが最も大切な精神でございますので、この法にもとる行為に対してはやはり厳格な態度をもって指導するように、これも各団体の間に差別なく全国に指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  57. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほどのを蒸し返すようですが、公務員法であろうと、たとえば地方公営企業労働関係法にしても、憲法より優先されるはずはないわけですね。ですから、この点各種の裁判はみんな処分の取り消しを命じているわけです。したがって、こういう点から見ると、現行法規をおたくのほうからやめるというわけにはいまのところ言えないかもしれませんけれども、やはり検討しなければならない段階にきていることは事実だと思います。この点は労働大臣どうお考えですか。
  58. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 公務員あるいは公企業等の労働関係につきましては、御指摘のごとく非常にいろいろ議論がございます。私どもといたしましては、公務員制度審議会というところでここ数年議論をいたしております。私ども労働省といたしましては、この審議会におきまして妥当な結論が出るということを期待しておる次第でございます。
  59. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先生の御指摘の問題に関しましては、最高裁の現在の判例としては、争議行為に関する刑事処分について四・二判決というものがひとつ確定しております。しかし、その判決の中でも公務員法の三十七条、これは合憲であるということをはっきり言っております。合憲ではあるが、争議の態様いかんによって刑事罰をもって臨むか臨まないかといういろいろな段階があるのではないかというのが、最高裁の判決の趣旨だと存じております。  それからこれを受けまして、地裁の段階では確かに佐賀地裁、東京地裁において、御指摘のとおり、行政処分についてはある程度この考え方を援用して行政処分を取り消した判決がございます。しかしこれは地裁の段階でございまして、現在控訴中でございますし、まだ判例として確定しておらない。反面、これと反対の見解を出した地裁の判決もたくさんある。現在のところ、こういう状況のもとにおいて、私たち考え方といたしましては、刑事罰については一応最高裁の判断が出ておりますが、行政罰については、従来考えておりました、公務員の争議行為というものはやってはいけないのだという考えになお立って指導を続けておるわけであります。もちろん、判例の今後の動き、それから世間全体の動きというものはよく勉強していくつもりでありますが、現在の指導としては従来の態度を変えていないということであります。
  60. 矢山有作

    委員長矢山有作君) それでは労働者の権利をじゅうりんするものだ。
  61. 須原昭二

    ○須原昭二君 委員長労働者の権利をじゅうりんするものだと言っているのですけれども、この論議をあまりしていては水かけ論になりますが、ただ労働大臣がいまおっしゃいましたように、処分をやってその一事で終わるわけではない。人間というものは感情がずっと続いていくわけです。したがって、労使間の正常な話し合いの慣行をずっと続けていく。きょう処分してそれですべてが終わるというわけではない。これがずっと尾を引いていくわけです。そういう状態をよく理解をされておらないと思うのです、この宮崎県の首長さんたちは。  そこで、この内容を申し上げますと、戒告処分といっても、ただ、おまえいかぬぞ、といっておこっただけではない。実質的な被害が出ているのです。全員三千何百人もの人を一年間の昇給停止にしてまう。ここまでひどい過酷な処分というものは、私はまさに奇異の上にもう一つ奇異がつくと思うのです。さらに、そういう状態ですから、実は正常な労使関係がいまだに維持されておらない。  したがって、四十四年十一月十三日なんか、統一行動に参加した人たち、通山小学校ですか、そこの集会に参加した教職員に対して、一般民衆、一般住民が、これは市の管理者たち、町の管理者たちが住民をけし立てたのですけれども、教職員を取り囲んで、そうして一時間半ぐらいつるし上げをやっている。十分か十五分時間内に入った公務員ストであるのにもかかわらず、そういうことをやらして午前中全部授業を放棄さしているのですよ。しかも、その住民の皆さんに、その組合員の教職員の追放、配転要求の決議をさして、それで教育委員会が今度はそれをもっともらしく承って、翌年の三月に全員他の町村の学校に転勤をさしている。まさに一方的なやり方です。こんなことは常識的に私は考えられません。  さらに四十六年一月十五日、これまた隣の村ですが、都農南小学校というところで、統一行動に参加した教職員が何人も、これまた住民の皆さんは町のボスにけし立てられたのだと思うのですが、住民が集まってきて、これらの集団によって転勤をさせられるという事件が起きているわけです。そうして、この学校も結局そのために授業がその日はできなかった、こういう現象が出てきているわけです。  こんなことを申し上げますと、宮崎県の皆さんに申しわけないのですけれども、宮崎県あたりは私は日本では後進県だと思う。また労働者のストライキというものがいまだにまだ罪悪視されている部面が非常に多い。そういう多いことをいいことにして、市町村長が意識的にこれを宣伝をし、住民を扇動してこの傾向に拍車をかけ、無用な混乱を各地で起こしていると私は断定せざるを得ないのです。正常な労使関係をつくり上げることが私はまず先決だと思う。ただ処分すればいいということで終わらない。こういう点について自治省並びに労働省はどういう指導をされるのか、どういう見解を持たれるのか、一度ひとつ御意見を承っておきたいと思う。
  62. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) よく話し合いをして意思の通ずる、そういう無用な紛争を起こさない労使関係の樹立というものは、私もぜひそうしてもらいたい、正常な労使関係を樹立するように労使ともども努力してほしいということは、私たちも常に心がけて言っておりますことでございまして、その意味では全く同意見でございます。ただ、公務員であります以上、法にもとらないようにしてほしいというのもあわせて言っておるということが、しばしば、統一行動その他に対して意見の相違となって出てまいります面も確かにございますけれども、でき得べくんば、そういう状態にならないように、常々労使ともお互いに意思を疎通すること、これが大切だというふうな考え方をとっております。
  63. 田村元

    国務大臣田村元君) どういう措置を労働省としてするかということでございますが、実は所管外のことでございまして、措置のしようがないのです。それで、ただ、率直なことを申し上げて、どういう御事情があるか、あるいはまた、どういう御処置があったのか、私もあまりつまびらかにいたしませんけれども、異常な事態にならないように、そういうことだけはこいねがうものでございます。だけれども、処置のしようがないものですから、ちょっと論評は差し控えなければならぬかと思います。
  64. 須原昭二

    ○須原昭二君 自治省、ここで言っておってもしようがないから、ひとつ現地に向かって適切な行政指導を行なってください。  そこで、時間が半分過ぎちゃいましたから、進んでまいりますが、昭和四十年七月十六日、政府が勧告を受けられましたドライヤー報告というのがありますね。これは直接的には日本の政府に向けられたものでありますが、この公務員労働者労使関係がそれぞれ指摘されていることから見て、地方自治体といえども、一定の拘束力といいますか、そういうものがあると思うのですが、その点は労働省はどうお考えになりますか。
  65. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) ドライヤー委員会の報告自体は、これはILO憲章に基づく条約または勧告と異なるものでございますので、それ自体拘束力というものはございません。しかしながら、ILOという見地から、日本の、特に公共部門の労使関係について、いろいろ長期的な見地でサゼストをしておりますので、われわれとしてはやはりこれは重要な参考資料として検討すべきものと考えております。
  66. 須原昭二

    ○須原昭二君 参考資料ということになれば、参考にすることもしないこともあり得るということですか。そういう意味ですか。
  67. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) これは全体として参考といたします。しかしながら、その内容の、個々の内容について全部すぐに実現できるかといえば、そういう実現ができない点もあるということでございます。
  68. 須原昭二

    ○須原昭二君 参考にされる。しかし、まだ現実にはそれを全部やるわけにはまいらない。しかし、理想としては現実からすぐれたものであるということだけは御評価を願えますか。
  69. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 率直に申し上げますと、ドライヤー報告というのは西欧的労働組合労使関係というものを前提としたものであるというふうに考えておりますので、非常に、わが国の労使関係にこれを適用いたします場合に、すべてが理想として全くりっぱなものであると言えるかどうか。わが国の特殊性ということもございますので、慎重にその辺は考えたいと思います。
  70. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも西欧的という評価は、私ちょっと気にかかるわけですが、労働大臣どうですかね、いまのお話。私は西欧よりも日本の労働組合というのはおくれていると思うのです、労使関係というものがね。そういう点から見ると好ましくないという評価には私はならないと思うのですが、その点労働大臣どうですか。
  71. 田村元

    国務大臣田村元君) ただいま労政局長が申しましたのは、西欧先進工業国の実態を基礎にした考え方という、考え方の姿を言ったのではないかと存じます。私、実は以前に労働省の政務次官もいたしておりました。ドライヤー勧告は幾らか承知をいたしておりますけれども、先ほど石黒君が申しましたように、一つの長期的な視野に立った姿であるということは、これは言えると思います。  それと、先ほど石黒君が申しましたので、ちょっと、あるいは誤解が生じたかもしれませんが、ドライヤー委員会が——さっき、そうじゃないかと思うと私が申しましたように、西欧先進工業国の感覚で日本をながめ、扱おうとするときに、日本の現実というものがある。そういう点で、やはり慎重に、それがいいとか、悪いとかという可否を論ずること以前に、慎重に検討しなきゃなるまい。ただ、長期的展望に立った勧告でございますから、これを頭から、よくないとか、わが国に合わないとか言って拒否することはいかがかと思いますが、そういう点で、やはり何といいますか、尊重することは、そのとおりにすることであるという、そういうような尊重ということより、むしろこの精神を尊重して、そうして長期的展望に立って今後慎重に検討していくということであれば、当然のことだと思うのです。私はそういう考えで——ちょっと話が逆で、労政局長の答弁を補足したかっこうになりましたが、私はそういうふうに今日まで受け取っております。
  72. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも労政局長の発言は、私は奇異に感じたわけです。労働大臣、このごろは新聞見ておりますと、非常に先取りをされて、非常に先進的にやっておられますから、なるほどやっぱり労働大臣のほうがいいなと思ったんですが、労政局長だめです。  そこで、ドライヤー報告の中で、なるほど現実に即しない面もありますよ。しかしながら、私がこれから言わんとするものは、まさにこれはいいことなんです。たとえば、ドライヤー報告の中の二一七六号、これは言うまでもなく、「苦情ないし申立の処理の遅延は、そのこと自体で最も有害である。」と、こう認めている。この項目ですがね、こういう項目から見ますると、宮崎県の市町村の公平委員関係のこの係争事件は、驚いたことに公平委員会に提訴してから三年もたっても何ら音さたがない市町村が九つもある。提訴して三年間、ナシのつぶてでほうりっぱなしなんです。この点は、ドライヤー勧告が二一七六号の中で、ここに文案を持っていますが、時間の関係上読み上げませんが、この申し立ての処理のおくれることは「そのこと自体で最も有害である。」、この点はどうですか。現実に即さない問題ですか、労政局長
  73. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 二一七六号の苦情または不服の処理の遅延は非常に好ましくないという点につきましては、私ども全く同感でございます。
  74. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、公平委員会の提訴を三年間ナシのつぶて、この市町村が九つあるそうですが、この点の存在はどうお考えになりますか。
  75. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 地方公務員法に基づく人事委員会、公平委員会等の運営につきまして、労働省といたしましていいとか悪いとか申し上げるのは、できましたらばこの際ごかんべんいただきたいと思います。
  76. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) この点は確かに御指摘のとおりの例があるように存じます。まず、二一七六号の言っておりますことは、石黒労政局長と同じように、私たちも全くこれはそのとおりだというふうに、紛争というものは、できるだけ早く解決することは、当事者当局双方のためにもいいと考えております。したがって、その意味で、常に公平委員会に対しては審理を早くするようにという指導をやっておりますが、実は、これがまだ指導が十分行き届いてまいらないというか、非常に遅延している現状は確かにございます。ただ、これは宮崎県特有ということではございませんで、その意味では、ある程度全国的に公平委員会の審理がおくれているということは、われわれも責められなければならぬと思います。この原因は、公平委員会あるいは制度にあるとも言える、あるいは運営の実態にあるとも言えるのかもしれませんが、市町村、ことに比較的小さい町村になりますと、通常はこういう紛争事件その他も非常に少ないために、まあ制度自体として、公平委員が非常勤の委員であり、地元のりっぱな方といいますか、社会的に名の通った方が公平委員を引き受けておられるんですけれども、最近のこういう件の救済問題や何かについて手続的にあまりなれておられないというか、詳しい知識をお持ちでないという面がある。そこで、こういう労働争議でもありますと、わっとまとめてたくさんの件数が一ぺんに来る。そこで公平委員会の審議手続というのもある程度慎重にならざるを得ないというので、準備書面をつくり、反論書を提出しといういろいろな手続があるので、そのためにそれになれてないという面があっておくれているものが確かにあるようであります。御指摘の宮崎の九市町村、何の音さたもないということで、実は衆議院でも御指摘を受けまして、私どものほうからも、電話で、どういう実情でそんなに長くなっているんだろうかということで調べましたものがございますが、いろいろな事情がございまして、幾つかについては、準備書面は提出されたけれども反論書の提出がどうしてもないとか、あるいは一たん公平委員会に出されたけれども、当局、出したほう、両方の合意でしばらく待ってくれと当事者が言われておるので、そのまま待っておったら三年間たってしまったとか、個別にいろいろ理由もあるようでございますが、それらを合わせて、公平委員会自体がそういうものになれてないという面もあり、確かに遅延している点御指摘のとおりでございます。これにつきましては、宮崎のみならず各県の公平委員会、あるいはその連合会に対して、審議を促進し、できるだけ早く争いは片をつけるように強力な指導を続けてまいりたいと思っております。
  77. 須原昭二

    ○須原昭二君 この点だけ認められましたね、おたくは。それは地方公務員法第五十条第一項できちんと書いてあるわけです。不服申し立てがあった場合は直ちにその事案を審査しなければならないと、こう規定してある。これも法律なんですよ。地方公務員法三十七条も法律なんですよ。あなた自身がこちらの法律を強く施行し、こちらは軽視されていると、こう言ってもいいと思うんですよ。ですから、こうした、自分たちがやらなければならない、首長たちがやらなければならないことは放置しておいて、一方的に自分たちの都合のいいことだけは施行するというやり方はおかしいということだけを私は指摘しているんで、そういう点を自治省は行政指導しなさい。お気持ちありますか。もし、先ほども申し上げますように、委員会の構成の問題があります、事務手続の問題、いろいろあります。その問題については、ドライヤー勧告の中でも、二一八〇号ですか、委員会の構成などの改正の問題についても指摘をいたしておるわけです。したがって、もし直ちに審査活動を開始するように積極的に行政指導を行ない、もしそれで障害があるとするならば、これは改める方策というものを自治省自体が検討すべきだと思うんです。その検討もされておらないというふうに聞いておるわけなんですが、放置のままにあるといっても実は過言ではない。そういう点はどうですか。
  78. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先生の御指摘にありましたように、三十七条のほうは守れ守れと言い、五十条のほうはほったらかしているということでは全くございませんつもりでございます。公平委員会に対しても審議を急げ急げと、それから三十七条のほうについても、それは法規である以上厳格に守れと口をすっぱくして地方公共団体に言っているつもりでございますが、この両方の面にわたって十分に効果を上げておらないことは確かに事実でございます。公平委員会の審議もおくれておりますし、三十七条の違反に対する処置も十分になされていない。まあこちらの指導力の足らないところは反省しなければならないと思いますが、今後とも御指摘のとおり公平委員会の審議促進についてもいままで以上に口をすっぱくして指導をしたいと思います。さらに、制度上欠陥があるならば、その改革についてもこれもいままで研究していないということではございません。常々この審議のおくれは心配して、どうしたらいいかということを内部では研さんを続けておりますが、今後さらに、御指摘の点もありますので、よく研究を続けていきたいと思っております。
  79. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほど申しましたように、宮崎県の市町村で九つあるわけですよ、三年間何の音さたもない公平委員会が。これは直ちに審査を開始するように督促、行政指導措置をとられますか。
  80. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) そのようにいたしたいと思います。
  81. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこでさらにお尋ねをいたしておきたいんですが、宮崎県では市町村長会——村長の市町村長会というものがあるそうです。そこで申し合わせをしたのか、地労委にはただの一度も首長はもちろん出席をしておりません。しかも共通して出席する意思がない、こう断言しているわけです。当事者が出ないと言っているのに、そんなものは公平委員会も人事委員会もないじゃないですか。こういうことは許されますか。
  82. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) そういう審理の場所にだれが出るかということは、その町の問題として最も適切な人間が出るべきであろうと思いますが、町というのは一つの組織体でございますので、たとえばある処分をした、これは町村長の名前で処分いたしますが、この処分をするについては一定の手続がございまして、さらにこの処分に反省を加えるための審理の場では、処分の経過並びに手続を最も詳しい、たとえば人事課長あるいは助役、総務部長といった者が出るのがより実態に即して審理ができるということがございます。さらに審理の手続が、訴訟と同じように、弁護士さんあたりが委任を受けまして出るということがその審理を円滑に進める上に便利であると思うんです。ですから、処分権者の名前が市町村長——市長なり町村長が審理の場に出なければならないということはないので、審理を円滑に進めるのに最も適した人間が出るのが一番いいのではないかと考えているわけです。
  83. 須原昭二

    ○須原昭二君 これは当事者が出てお話し合いをするのが一番いいわけですね。しかし宮崎県では、最初は市長は出ないという決議をしているそうですから、助役が出てくる。市の場合には人事担当課長になり、ひどいところでは人事係長が補佐人として出席しているそうです。そうして、そのあとずっとは委任された弁護士が代理人として出席しているわけです。弁護人が出られてもいいようなことをおっしゃいましたけれども、こういう専門家が出てくると法規的な問題ばかりして、やはり労働組合のほうも弁護士ということになるわけです。弁護士が弁護士と話し合いながらずっと継続をされる、費用だけでもたいへんなことなんですよ。その点、ドライヤー勧告の二一八二号ですか、この中では苦情処理手続は当事者双方が出席する中で審査を行なうよう修正すべきである、こう一つ勧告をしているわけですが、こういうものの考え方は労働省はどうお考えになっておりますか。
  84. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 人事委員会、公平委員会のことにつきまして直接は存じませんけれども、たとえば地労委の審査というようなものにつきましては、これはその当該処分につきまして最も責任があり、かつ実情をよく知り、それについての裁量権を持った人が出てくることが望ましい。社長みずからが出る場合がどうしても必要な場合もございます。それから社長よりもむしろ労務担当が出たほうがよろしいという場合もございます。それはその場において最も適切な十分責任のある人が出るのがよろしいというふうに考えておりますし、そのように運用されております。なお、そのほかに弁護士の問題につきましては、これは地労委によりまして弁護士が入ったほうがいいという地労委と、弁護士が入ると長くなってややこしくなるという、いろいろ議論がございまして、労働委員会内部でもなかなか意見の一致を見ていないところでございます。
  85. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは客観的なお話であって、労働省はどうお考えになりますかと聞いているんですよ。
  86. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) ただいま地労委の件につきまして社長あるいは労務担当の責任者が出るようになっているという慣行は、私は地労委としては合理的であると考えております。
  87. 須原昭二

    ○須原昭二君 ドライヤー勧告二一八二号というものをどう踏まえられますかということですよ。
  88. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 人事委員会、公平委員会の制度の具体的な運営等につきましては、私つまびらかにしておりませんので、責任あることは申し上げかねますけれども、しかし地労委で申し上げたことは人事委員会、公平委員会の運営につきましても御参考になるのではなかろうかと思います。
  89. 須原昭二

    ○須原昭二君 御参考になるだろうということですが、それにしても当該の地方労働委員会では、ドライヤー勧告というものは政府に対してなされたものである、したがって政府が法制化するまでは現行の労基法なり労働委員会規則に従って運営するのだ、したがって自治体の市長だとかそういう人事関係の幹部が出なくたっていいのだ、こういうしゃくし定木にものを考えて運用しているようなことだというふうに聞いておりますが、   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕 したがってそういう立場に立つから、地方労働委員会というのは出てこいとは言いますけれども、まあ言うだけであって何らすべをしない、それもしかたがない、こういうものの解釈に立っておりますが、その点は自治省の考え方はどうお考えになりますか。
  90. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先ほど自治体について申し上げたところでございますけれども、この懲戒処分なりその他市の行なうところの処分その他は、全部市長の名前でやられますけれども、これは市長個人が全部詳細な資料から判断してやられるということでなく、一つの組織の上に立って行なわれることでございますから、この問題についてはたとえば市長自身が出るよりも助役が出る、人事課長が出るほうがその経過なり争議の実態に詳しいという面があり、審理を促進する面で、いまの地労委の場合と同じように、常に市長が出なければならないものではない、むしろそうでない直接の懲戒なら懲戒の事務に携わった人間が出るほうがいい場合というか、実情に即する場合が多々あろうと考えております。
  91. 須原昭二

    ○須原昭二君 実情にいいとか悪いという問題ではないのです、私が言っているのは。こういうものをカタに取って、自分たちが不当なことをやっておいてそういうことがそういう機関においてばらされるのがいやだから、自分たち立場から不都合だから出席を拒否しているのです。そういうふうにとってもらわなきゃいけないわけです。一般論じゃないのです。その点を私は聞いているわけで、そういう点についてどうお考えになりますかと言っているのです。
  92. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 私はその市長自身が出なくて、助役なり人事部長が出るというのが、先生のおっしゃったような自分のほうに都合が悪いのでという意味ではないと考えるのでございます。むしろ私が申しましたように、その他の手続により詳しい者が出る、相談があったとすればそういう相談をしたのではないかと思います。もし具体的に自分のほうが都合が悪いから出たくないということであればけしからぬと思いますけれども、宮崎でたとえ相談があったとしても、そうでなくて、むしろ手続に詳しい人間を出されたのではないかと、これは推測でございますが、いたすわけでございます。
  93. 須原昭二

    ○須原昭二君 実態をよく掌握されておらない気がするのです。市長は出ないと申し合わせをした、そして助役が出るのも一回ぐらい、悪いところでは人事課長、係長が一回だけ出てくる、あとは弁護士におまかせ、いかに出てきてくださいと言ってその機関の中で要請をしても一回も出てこないというのは、自分たちの不当な行為を暴露されるので、そういうところへ出たくないから、調子が悪いから、だから拒否をしているのです。そういう実態をどうお考えになりますかと言っているのです。
  94. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 実態はさらによく調べるつもりでございますが、しかしどうも都合が悪いからという理由だというふうには私もちょっと受け取れないし、ひどいところは係長とおっしゃいましたけれども、町村のような場合は、おそらく人事係長あたりが一番処分に初めから起案をし、タッチをし、詳しいのではないか、それからある程度手続が進行していろいろ法律問題が議論になりますと、今度は町村の人事係長といえども法規問題に詳しくないというので、あるいは弁護士にまかせるということになるのではないかと思います。必要なのはいずれにせよそういう問題が起きれば早く解決するように、労使ともども努力することが必要でございまして、その点に関する指導は今後とも十分やってまいりたいと存じております。
  95. 須原昭二

    ○須原昭二君 当事者がお互いに対決することによって不当労働行為の存否といいますか、あるなしというものを明らかにするという不当労働行為救済制度ですか、そういうものは厳然として制度としてあるんですね。いまお話のように都合が悪いからということで出席をしなかったり、代理人にまかせてしまっておるような姿をそのまま認めていくとするならば、あるいはまた政府から、自治省が自治体に対する行政指導、そうしたものを厳格にやらないと、せっかくつくった労働者のためにある不当労働行為についての救済制度というものは、まさに私は形骸化してしまう。現に宮崎の場合はみんな形骸化しているのです。この実態をつかまなきゃいけないわけです。形骸化しているんですから、そこでは労働者の権利というものは認められていない、そういう状態に追い込まれているのです。したがって、労働大臣ひとつ先ほどのごあいさつには非常に明文で書かれておりますが、生活福祉というものを、もちろん基本的には労働者の権利を守ることから出発をしなければならないと、そういう点についてこの不当労働行為の救済制度というものはまさにいま形骸化されておる、この実態。とりわけ宮崎県の問題について、これは労働省としても、私は指導機関でございませんから、これは自治省ですからといって逃げるのではなくて、やはりより相まってこれはひとつ軌道に乗せていただくように全力をあげていただきたいと思いますが、労働大臣どう御処置いただけますか。
  96. 田村元

    国務大臣田村元君) 申すまでもなく労働省労働者のしあわせをつくり守っていく役所でございます。でございますから、あくまでも労働者を中心にした考え方で進まなきゃならぬことはこれは当然でございます。イデオロギー、政党政派以前の問題でございます。でございますから、具体的な問題についてとかくここで申し上げようとは思いませんけれども、基本姿勢としてはあくまでも労働者の側に立った労政を展開したい、これは私の一貫した考え方でございます。
  97. 須原昭二

    ○須原昭二君 ですから労働大臣、その意向がいまおあげになったように、自治省もおれのところは隣の部屋だから知らぬということでなくて、いま労働大臣の言われるように、ひとつそういう点を行政の中に明らかにしていただきたいと思うわけです。とりわけ、時間がきてしまいましたけれども、この宮崎県の地方公務員の懲戒処分という問題は、数字から見てもまた実態をつぶさに報告を聞いても奇々怪々のことだと言わなければならぬわけです。東京から非常に遠いところですからあまり目がつかないんですよ。だからひとつ一ぺん現地へ派遣になって実態をよくつかんで、そうして一刻も早く正常な労使関係になるように、ひとつ全力をあげていただきたいと思うのですが、きょうは自治大臣おみえになりませんから、かわっておたくのほうからひとつ明確に御表示をいただきたい。
  98. 林忠雄

    説明員(林忠雄君) 先ほど申し上げましたように正常な労使関係の樹立、あるいは権利救済制度の審理の促進ということについては今後ともさらに力を入れてまいりたい。直接にはこの市町村の指導は県というものもございますので、今後も県を通じてよく実情も聞き、適切な指導をさせるように話を進めてまいりたいと思います。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
  99. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は沖繩の売春対策についてお尋ねしたいと思います。  去る七月の二十七日に沖繩の売春と取り組む会の代表が各省各大臣に申し入れに参りました。私も行く予定でしたけれども、突然北海道に遊説に参りましたために、藤原道子さんが同行されまして各省に申し入れをされました。この問題は私は前の六十八国会からしばしば問題にしてまいりましたことで、そうしてなおこれは婦人の間に大衆運動も起こっておりますが、今月末にはまた沖繩の代表を迎えて集会もし、それでこの売春対策について前の内閣当時各大臣がいろいろと約束をし、各省がそれぞれ決意を述べてきたことについて新しい内閣でどういう考えを持っていられるかということを私はきょうは主として確認したいという意味での質問でございます。で、ちょっと私のほうの手違いで質問時間が短うございますので、詳しいことはできませんから、わりあいに簡単に申し上げ、また簡単な御返事をいただきたいと思うんですが、きょうは労働大臣が主でございますので、私は、この問題は法務、労働、厚生、警察、公安委員会と、全部そろえてその意思を伺いたいと思っておりましたけれども、いまは労働大臣中心ですから、そういう立場でお答えをいただきたいと思います。  で、もちろん労働省労使関係の問題、労働者の権利の問題、たくさんあるんですけれども、同時に婦人少年行政を持っております。婦人の地位を守る、婦人の人権を守る仕事も持っております。そういう意味で大いに張り切っていただきたいと思うんですが、これまでの「沖繩の売春問題と取り組む会」を中心にした沖繩の売春問題に関する経過について、もう御承知だと思いますので省きます。  ただ、念のため、問題点として私どもがこういう点が問題だというふうに要約した点を申し上げますと、沖繩の売春では第一番に、明らかに人身売買に当たるような前借金制度によって婦人の身分を拘束をして売春を強制している実情があったが、前借金を無効にする方法を講じなければならないということ、そしてそれを徹底させることを要求してまいったわけでございます。  それから第二点は、売春業者と暴力団とが婦人を脅迫して売春をさせている、だから暴力団及び売春業者の間の結びつきを断つことや、それから徹底的にそのような暴力団の取り締まりをせよということを警察要求してまいったわけでございます。  それから第三点は、沖繩の婦人の間に本土よりは人権意識が薄い、だから教育宣伝活動が非常に欠除している、特にアメリカの施政権下にありましたので本土政府側も手を出しかねているし、それから沖繩現地の行政機関もたいへん萎縮していたというふうに私は現地で感じました。それが必要であるということ。  それから、第四点は保護施設の欠除です。これはきょう厚生大臣あとで伺いたいと思いますが、沖繩にも売春防止法があったにもかかわらず、これに対する宣伝も少ないし、それから、それじゃそこから飛び出してきた婦人をどこに収容するかという場合に、それの受け入れ体制がほとんどできておりませんでした。保護施設が欠除しているということでそれの整備を急げということや、それからそれを助ける婦人相談員を強化せよと、こういうことを要求してまいりました。  それから第五点は、職業指導機関を整備してほしい、職業を開拓しなければほかに働く場所がないではないかという問題が非常に重要な問題でございます。  それから第六点は、労働基準監督行政をもっと徹底させなければいけない、沖繩の売春をさせられている婦人たちは強制労働や前借金によるかせぎの相殺、それから中間搾取をどんどん受けていたわけです。それから、そのほか婦人労働の保護という点では非常にひどい状況がありました。私どもが参りましたときにも、産後三日目から働いているという女性がおりました。こういうようなことの労働基準監督をもっと徹底させなきゃいけない。  それから最後に、世論の喚起、つまり一般に売春というものがあたりまえのような状況にあの基地のもとではあるということ。それから生産的な職業が少ないためにサービス業に走らざるを得ない状況の中で非常に世論があたりまえのことのように考えている。その世論を喚起する必要がある。人権意識をもっとかき立てる必要がある。大体このような点に私どもは問題を集約して要求してきたわけです。  それで、この間、各大臣への申し入れをいたしましたが、私たちは別に大臣にお願いするというのじゃなくて、これは国会では私たち当然政治の主体ですから自分たちも一緒になってやらなければならない問題でございますし、それから国会の外の大衆もこの運動をしているわけで、沖繩という特定の場所の問題じゃない、全体の問題であるというふうに考えていただきたいと思います。  それで、きょうは法務大臣がいられませんけれども、第一点の前借金の問題について何回か私ども法務大臣、法務政務次官などにお会いして売春を目的とした前借金は無効であるということは、これは昭和三十年の最高裁の判決でも出ている、それから売防法の九条でしたかにも売春前借金は禁止されていますね、それですから、このことは当然前借金なんという前近代的な人間を拘束するようなそういう関係というものは一切断たなければいけない、このことに関して法務大臣に復帰時の時点ではっきりと前借金は無効であるということを宣言してほしいというようなことを私どもも何回か申し入れしました。しかし、そういう宣言には至りませんでしたが、法務省で、いまの法務大臣はこの問題についてどういう扱いをするつもりでいられるか、その決意がわかれば局長からでもお答えをいただきたいと思います。
  100. 亀山継夫

    説明員(亀山継夫君) ただいま担当の局長が参っておりませんので、私、刑事局参事官の亀山でございますが、知る限りの点でただいま御指摘の点につきましてお答え申し上げますと、これまでも申し上げておりましたとおり、前借金、ことに売春を前提とする、あるいは売春に付随する前借金契約が無効であるということ、このことをまず周知徹底させるということが最も肝要なことであるということでございますので、法務省関係機関、主として関係いたしますところは法務局の人権擁護関係のところ、それと事件として出てきました限りにおきまして検察庁がそれに当たるわけでございます。つまり人権擁護関係におきましては復帰前よりも人権擁護委員——これは民間の方に委嘱するわけでございますが、人権擁護委員の数も大幅にふえています。このような方を通じて人権相談あるいはこちらからの宣伝普及ということにつとめるという方針がとられております。それから検察庁におきましては、検察庁自体といたしますと何ぶんにも事件の取り調べということが主になるわけでございますが、ここに更生保護相談室と申しますものを復帰とほとんど同時に設けまして、そこに保護観察所あるいはその他の婦人相談所とか、警察、県の厚生部の関係機関の協力を得まして保護観察官及び保護司等を常駐いたさせまして、事件の関係で検察庁に出てきましたそういう婦人、そういう者に適切な助言、指導を与えるということができる体制をとるようにいたしております。法務省といたしましては、大体そういうふうな方向でこの前借金問題というものに対するまず正しい理解を普及させようというふうにつとめているわけでございます。
  101. 田中寿美子

    田中寿美子君 復帰前に私どもが調査に行ったり、何人かがしばしばあちらに参りました当時の状況からすれば、ほんとを言えば復帰と同時に売防法が完全実施になったら非常にたくさんの事件があるはずなんでございますけれども、ほとんど表に出てこないような非常に重要な状況があります。これは長い間ほったらかされていて憲法のもとにもなかった沖繩の状況として、むしろ本土で売防法が施行されるようになる前の数年間の準備期間があったことを考えますと、いまもむしろ準備期間のような状況にあるという事実なんで、いまおっしゃったことはそういう一例をとっているということで、現実にこれだけのことをやったという御報告はまだできないのじゃないかというふうに思います。  時間を急ぎますから簡単に申しますが、非常に私たちが当たった当時、沖繩警察当局なんかの調べでは前借金を持たない者のほうが少ない。ほとんどサービス関係の女性の八〇%ぐらいが前借金を持っているという報告が出ておったわけなんですけれども、それが最近の情報で業者が保証人になって金融機関から、あるいは銀行から金を女性が借りるという形で契約のやりかえがされているらしいという事実があるのですが、この情報をおそらくまだつかんでいらっしゃらないかもしれませんが、もしそういう事実があるとしたら、このことは売防法十三条の違反にならないかどうか。資金等の提供ということに引っかかるんではないか。法務省の見解いかがですか。もし事実であればという仮定になりますが。
  102. 亀山継夫

    説明員(亀山継夫君) 売春防止法の十三条違反になるかならないかということになりますと非常に抽象論になってしまいまして、事実関係をすべて確かめてみないとわからないわけでございますが、場合によりましては十三条違反、あるいはむしろ直接に前貸し等を禁止する九条違反——前貸行為のような形として九条違反になるということもあり得るだろうと思われます。ただ何ぶんにも事実関係がすべて確定いたしませんと正確なお答えはいたしかねるわけでございます。
  103. 田中寿美子

    田中寿美子君 本土の売防法実施当時に売春を前提とした金を貸した金融機関が罰せられた事実があります。ですからもしこういう事実があったらそうなるだろうと、理論的にそうなるだろうということをいま申し上げたわけなんですが、そういうふうな点についてもっと人権擁護局関係でもいいんですけれども、沖繩の人権擁護課でしたか、局でしたか、非常に貧弱でございました。いまたいへん体制を立て直しているとおっしゃいますが、強力な指導をしてもらわなければならないということを特に私は要望したい。  そこで労働大臣、いまの問題なんですけれども、婦人少年局というのは売春問題を担当しているわけなんで、売防法当時私もそれを担当した一人でございますので、いまのような前借金の問題なんですが、金融機関が肩がわりしているというやり方、非常に巧みなやり方で、前借金というふうにならないようにしていると思うんですが、そのような問題についての実情を把握していらっしゃいますかどうか。婦人少年局は調査したり情報をとったりすることが大きな仕事でございますが、いかがですか。
  104. 高橋展子

    説明員高橋展子君) 私からお答えさしていただきます。沖繩の売春の実態につきましてはかねてから婦人少年室を通じまして実情の把握につとめておるところでございますが、ただいま御質問の銀行が借金の肩がわりという点につきましては、これは目下婦人少年室で調査をいたしております。今日のところではまだその事実につきましての情報がまいっておらない、こういう段階でございます。
  105. 田中寿美子

    田中寿美子君 現地の婦人相談員からの手紙で、こういうふうな手紙がきているわけなんです。「五月十五日以降の——前借金問題は余りないようです。それも債権が銀行に肩代りされているような気がします。業者が保証人になり本人が銀行より一千ドルないし二千ドルの借り主になっているようです。だんだんいろいろな問題が巧妙にもぐり込まれているようです。今私達が打つべき手段をお教え下さい。全面施行に伴い薄幸な婦人が私達の手の届かない所に追いやられてしまいそうで心痛な思いです。」ということが書いてあるんですね。非常に巧みにやっていることは事実だと、ですから売春を理由にした借金という形にしないで、事実はあれだけ持っていた。あの当時七億ドルといいましたかね、前借金総額七億ドルというのが沖繩警察当局の発表でございましたが、それが一体どういうふうになってしまったのかぜひ調べていただきたい。労働大臣沖繩の問題非常に特殊な事情たくさんかかえております。ですから、特別の力を入れて強力にこの問題についての調査、実態を調べていただいて対策を打つという決意をまずはっきりさせていただきたいのですが、いかがですか。
  106. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は私つい先ごろまで党の広報委員長という仕事をいたしておりました。沖繩へそれこそしばしば参っておりまして、とりわけこの問題は頭を痛めておった一人でございます。先般藤原先生、中沢先生お越しになりまして田中先生も御一緒というふうに申し上げておったんですが、婦人の代表の方といろいろ突っ込んだお話し合いを申し上げました。私は法務大臣ではございませんですから、法律上のことよりむしろ私の主観が入ることをお許し願いたいのですが、たいへん悪質でありますし、人権問題は当然これはもう憂慮しなければなりませんし、と同時にまた性病問題、それによってもたらす害悪のおそろしさも考えなければなりません。そこで、その場で婦人代表の方々の前で、高橋局長にもその場で私は指示いたしたのでありましたが、徹底的に実態をまず把握すること、それから労働省としては、婦人少年局としては現実問題がどうというようないわゆる常識を考えないできびしくこれの対策を講ずること、それから職業訓練所とか、いろいろな問題がございますが、これはまたあと局長から具体的にお答え申し上げることになろうかと思いますが、たとえばのお話をいたしますと、毎日宣伝カーを持っていって前借金なんというものは無効だと言って政府の機関で大いに毎日のように売春婦に言ってわめいたらどうだ、それも一つの方法だろうと思うのです。
  107. 田中寿美子

    田中寿美子君 暴力団……
  108. 田村元

    国務大臣田村元君) 暴力団対策もとにかく、そこで大いに啓蒙活動をやる。それから御承知のように沖繩の売春婦、売春婦といいますか、売春婦と目される女の人々は意外にこれはどこでもそうでございましょうけれども、無知でございます。それから沖繩の場合の特色はわりあいに高齢でございます。そういうこともございますので、いままで労働省考えておったであろうということの表現で恐縮でございますが、パンフレットなんかも読みやせぬ、そういうものは。だから目で見るパンフレット、それをばらまけ。そういうことにどれだけのお金が要る、たかの知れたことではないか。これは大臣が責任を持つから婦人少年局長は勇気を持ってやりなさい、こういうことでずいぶんきびしく実は局長以下に指示をいたしました、婦人代表の方みなのおられる前で。  それからもう一つはこういう問題は役所だけでやるあるいは民間だけでやるという問題ではない。役所と民間が手を握らなければならぬ。ですからとりわけこれも率直にみなの前で申し上げたことであります。田中先生やあるいは藤原先生、中沢先生皆さんのところに行きなさい、そうしてどういう知恵がありますか、知恵を大いに拝借しなさい、そうしてこれもあなたの、婦人少年局の最大の仕事だと思ってとにかくやりなさいという実は指示をいたしております。ようやく高橋局長から私のところへももうこのようにいたしたいと思いますという一つの試案が上がってまいりました。それはこれから高橋君が御説明申し上げると思いますが、さようなそれこそ異常なまでの決意でございますので、御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  109. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん異常なまでの決意をしていただいているそうですから……。いまの宣伝カーをもってわめくというのは、私たちの民間の婦人団体で、たとえば前借金無効ですと——アメリカの施政権下でもそうなんですね。それで、そういうポスターをつくって張ったら、一夜にしてはがされてしまうというたいへんきびしい状態でございますから、身の安全をはかりながら、大いにひとつ勇気を持ってやってもらいたいと思うし、われわれもやるつもりです、協力したいと思います。  そこで、労働省に対して幾つか私は要望していたことをもう一ぺん確認してみたいと思いますが、この売春対策は各省が関連しているわけです。今度の売防法のときも婦人少年局は、実は非常な推進力になりました。なかなか男性の官僚はそうまで一生懸命にはならない、これはもう事実。それで、法務省、厚生省、文部省、警察、全部を動かしていく推進力になったわけですが、沖繩の婦人が最近来ての話に、やっぱり何か中心になって強力に推進してくれる機関がないとなかなか進まないということを言っておりました。そのことをぜひやってほしい、その推進力になってほしいということが一点です。  それからその次は、いまのようなことをするのには非常に予算が要るだろう。昨年沖繩国会のときに、売春対策として大体五千万幾ら——私ははっきりした金額をいま覚えておりませんが、くらいを七一年、七二年度予算で日本政府援助という形、総額でしたね、三分の二補助だったと思います。向こうの現地の、沖繩のほうの財力が十分なくて消化し切れないでいたんではないかと思います。そういうこともあって保護施設がちゃんとできなくて、今度それじゃ思いきってやる以上はたいへんな予算が要るだろうと思います。たいへんなといっても、たいしたことはないとおっしゃったけれども、いまは予算編成期でしょう、どのくらい取るつもりでいるのか、それをひとつ大臣の決意を聞かしていただきたい。  それからもう一つは、この前ちょっと手帳のことが話に出ました。米軍人相手のAサインバーのホステスさんに失業のいわゆる手帳を出すという話を藤原先生が現地から聞いていらしたわけです。これは誤りじゃないかしら。駐留軍関係離職者等臨時措置法というのがあります。あれで、軍関係で働いている人が失業したときに手帳を出すという制度であったので、アメリカの兵隊を相手にするAサインバーのホステスさんにそれを適用するということでしたら、そういうわけにいかないのではないかと思うのですが、その辺は一体どういうことなのか。これはメイドさんにすら適用できないものを、しかも米軍人相手の女の人だけに適用するということになるのでしょうか。私はそういうやり方でなくて、すべて売春をやっている人は売春をしないで働けるような方法としてどういうことを講じようとしているのか、それが一つ。  それからもう一つは、最近国際売春組織が入り込んでいると現地の新聞報道で読んでいるのですが、というのは、売防法で禁止されるので、フィリピンとかマレーシアあたりから女の人を仕込んできて米軍人相手に使っているとか、あるいはこれまでの沖繩の売春婦を東南アジアに売り出すとかというような組織の動きがあるというようなことを聞いております。これはあと警察の方からもこの点を伺いたいと思います。  大体このようなことについてどうするかという問題、職業指導、職業開発をも含めてですね。何人かわずか逃げてきた婦人が非常に収入が少ないもんですから、いわゆる正業というものを与えられても逃げていってしまうということがあるのですね。たいへんむずかしい問題を含んでいると思いますけれども、これをはたしてどういうふうにしようと思っていらっしゃいますか。大臣答えられる面と、局長のほうからの面と両方お願いしたいと思います。
  110. 高橋展子

    説明員高橋展子君) まず最初に予算の点でございますが、今年度の沖繩におきます売春対策関係の経費といたしましては、啓発・調査等の経費と、それから補導所による内職のあっせん援助、この経費が合わせて四百万ほど計上されているところでございます。  来年度の予算につきましては、目下省内におきまして検討している段階でございますが、先ほど来の大臣のお話にもございましたように、たいへん力強い御指導をいただいておりますので、この面についても強化していきたいと考えておる次第でございます。  それから職業対策と申しますか、正業につけるようにするということのためには、これも非常にいろいろな手だてが必要であるかと思います。で、職業指導、職業紹介ということにおきましてきめこまかな配慮が要るというばかりではございませず、職業訓練の面におきましても、これらの婦人が少しでもよい職業につけるようにするためにその能力の開発向上をはかる。そのために職業訓練充実、たとえば職業訓練、いまコザが婦人専門と申しますか、婦人を対象とした職業訓練所がございますが、それらを強化する、あるいは一般のその他の公共職業訓練施設におきましても婦人向けの科目を増設していくというようなことで、婦人に職業上の能力をつけていくということの努力も必要ではないかと思っておるところでございます。  さらにまた、一般の婦人の労働条件の向上をはかりまして、転落を防止するといいますか、そのような措置も必要でございますので、特にこれは基準監督機関を通じての監督指導ということも強めていくというように考えておるところでございます。  それで、先生のお話のように、婦人少年局は、かねてからこの売春の問題を何よりも婦人の人権の問題であるということから、省内におきましても窓口的な役割りを果たしているところでございますが、私どもの直接出先でありますところの婦人少年室は主として啓発活動、それから相談業務、これに力を入れてまいりたいと思います。売春防止法の施行は、これは御存じのように労働省の直接所管するところではございませんが、その施行が円滑に行なわれますように、そのバックグラウンドと申しますか、周囲のもろもろの環境改善、条件の向上をはかってまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  111. 田村元

    国務大臣田村元君) まあ、具体的なことにつきましては局長が専門でございますからお答えするとして、予算面でございますが、労働省が担当いたします役割りは、予算よりむしろ行動だと思うのです、率直に申しまして。予算がそうむちゃくちゃに大きな予算を必要とするような仕事とは若干ちょっと性格を異にしております。しかしながら、四十七年度の予算が十分だと私は思っておりません。でありますから、先ほど申し上げましたように、高橋局長にこの際思い切った施策を講じなさい、それは担当大臣として私がその予算の責任を持ちます、こう言って督励をいたしておるところでございます。いずれにいたしましても、決断と実行はきわめて明快にやっていくつもりでございます。
  112. 田中寿美子

    田中寿美子君 手帳のことはどうですか。
  113. 高橋展子

    説明員高橋展子君) 手帳の件につきましては、私ちょっと所管でございませんで正確なお答えをいたしかねるかと思いますが、先生の御指摘のように、非常にむずかしい問題があると思います。で、たとえば保護観察処分に付せられた場合というような特定の場合につきましては、その手当てを支給するというふうなことが考えられるかと思いますが、一般的な場合、そういう前歴であるということのための特別な配慮ということがなかなかいたしにくいのではないか。しかし、そういう前歴であるから差別するということではなくて、あくまでも職業、適職につくための指導、紹介ということに力を尽くすと、このようなことに相なるかと思います。
  114. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  115. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記を起こして。
  116. 高橋展子

    説明員高橋展子君) 所管します部局にお伝えしまして、的確な情報を御報告したいと思います。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 きょうは急いでおりますので、労働基準監督のほうですね、これは前回からも何回も申し上げているところなんですが、基準法の五条に違反する強制労働ですか、六条違反の中間搾取、十七条違反の前借金相殺の問題、それから、さっきのように産後すぐ三日目に使うというようなことは、これは売春でなくても形に出ること自体問題なんです。ああいう業態に対する監督はどういうふうに今後されるか、過去のことは言ってもしようがありませんから、今後どういう決意を持っていらっしゃるかということ。
  118. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 沖繩につきましては、先ほど先生から御指摘もございましたように、復帰前も基準法に相当する立法はあったわけでございますが、それに対する認識と申しますか、周知と申しますか、やはり本土から見まして非常に不十分であるようにわれわれ考えております。したがいまして、復帰後につきましては、まず沖繩の一般の労使の方々に基準法は十分周知徹底することをまず第一に進めるように沖繩の基準局に指示をいたして、それを進めているわけでございますが、特にいま問題になっております売春関係等につきましては、そういう点の認識、理解労働者もあるいは使用者も非常に特に低いように考えますので、私どもいま御指摘の五条の問題、それから基準法十七条の前借金と賃金との相殺の問題、あるいは二十四条の賃金の全額払い違反の問題、あるいは妊娠中等の産前産後の休暇の権利の問題等々につきまして、十分にその周知をはかってまいりたいと、かように考えます。同時に、周知を進めるだけではなしに、私どもこの問題はきわめて重大な問題であると考えておりまして、周知をはかることと並行いたしまして、監督指導についても厳格にこれを進めるように言っているところでございまして、復帰後におきましても、この七月には沖繩におきまして五条の強制労働違反、それから十七条の賃金と前借金の相殺の問題等におきまして、悪質な者につきまして送検をいたした事件も七月に出ております。本土におきましてはもうほとんどこういう事件はレアなケースになっておりますけれども、沖繩におきましてはそういうわれわれ見ましてもきわめて悪質と思われるものが出ております。そういう問題に対しましては、基準法に基づきまして厳格に監督を進めていくようにいたすつもりでおるわけでございます。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 またあらためてゆっくりこの問題は次々と私たち調べたり努力したりしながらお尋ねしていきますので、きょうはこの辺ですけれども、労働大臣に、先ほどから非常に積極的な決意の表明がございましたが、売春防止法が全面施行になったことが、かえってあだになったというふうに女の人たちに思わせる状況というのは非常に残念なことでございますから、ぜひこれについては、もう決意のほどはわかるのですが、各省間で本土の中央で十分強い申し入れをしていただいて、沖繩の問題に関しては強力に推進していくという推進力になっていただきたいということをお願いしたいのですが、いかがですか。
  120. 田村元

    国務大臣田村元君) 実はこの前、婦人代表の方が来られましたときにも先生と同じような御意見がございました。私ども労働省で担当いたします部門は、やはりきわめて小さい部門でございます。各省みんなが力を合わせてこういう問題はうまくいく、たとえば売春取り締まりの問題でも、私個人的にも期待いたしますことは、売春婦に対する取り締まりもさることながら、それ以上に売春婦を使っておる、あるいはそのひもになっておる者に対する取り締まりを強化いたしたい点もございます。いろいろございますが、私ども他の省庁とも十分横の連絡を取り合っていきたいと思いますが、ここではっきり一つ申し上げておきたいことは、私からさっそく官房長官に申し入れをいたしまして、官房長官が各省間のコミュニケーションをうまくまとめてもらうというような方途が一番いいのではなかろうかと思いますので、さっそく、きょうにでも官房長官にそれをお願いしようかといま思いまして、これをお答えにしておきたいと思います。
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 ぜひ、そうしてくださいますように。婦人団体が申し入れをして、そのお答えを私も聞いておりますけれども、あらためて国会の中で私は確認したわけでございますので、ぜひお願いしたいと思います。  最後に、警察の方ですけれどもね、業者の取り締まり状況ですね、復帰後の。管理売春が一応取り締まられたということになっておる。しかし暴力団が依然としてこれはある。暴力団と業者のつながり、あるいは暴力団自身が業を営んでいるというものがあるようでございます。前内閣のときに中村梅吉公安委員長が、復帰と同時に暴力団を徹底的に取り締まるということの決意を表明なさいましたが、どういうふうにその後なっておるか。そして、これは法務大臣警察庁長官も公安委員長もここにおいでになりませんが、その意思をここで伺わしていただきたい。  それからAサインバーについて、はたして手入れをちゃんとしているかどうか。これは非常に黙認された治外法権みたいなところでございますね。これの対策をぜひ考えてほしいということと、それから先ほどの国際売春組織に関して何か情報があるか。手を打っているかどうか。そういうようなことを警察庁の方に伺いたい。
  122. 本庄務

    説明員本庄務君) 売春事犯の取り締まりにつきましては、復帰前と復帰後の状況、これは御案内のように復帰前と復帰後におきまして、若干、法律関係が変わっておりまして、復帰前には日本の売防法の適用がなかったわけです。復帰と同時に全面的に適用になっておるわけでございますが、まあ売春事犯と申しましても、勧誘とか場所提供とか管理売春とか、いろいろあるわけでございますが、復帰後、五月十五日以降のいままでの検挙件数といたしましては十三件、十三名という件数になっております。絶対数といたしましては少ないような印象を与えるのでございますが、これを復帰前の昨年、四十六年一年間の数字と比較いたしてみますと、四十六年一年間で十一件、十二名という数字でございますから、復帰後二ヵ月余りで、復帰前の約一年間の数字に相当する検挙件数をあげておるということになろうかと思いますが、まあ、そういった数字の比較といたしましては五月十五日の復帰以後、沖繩警察が発足いたしまして、県警といたしましてはこの本土の方針に従いまして、売防法違反の摘発について力を注いでおります。しかし、何と申しましても、御案内のように米軍の占領下におきましては、売春というものが一応必要悪と申しますか、表現は悪いんですが、必要悪というような形で県民の間に黙認をされていたというふうに見受けられる面もございまして、捜査の協力を得るということがきわめてむずかしいというふうな状況もございます。あるいは、また、売春業者、これが約五千余り、それから売春婦が七千人余りと、おおむねこういう数字で現状あるようでございますが、こういった業者の転業あるいはいわゆる売春婦の更生、こういう大きな問題がまだ未処理のまま残っておりまして、それと取り締まりとの関連において、どういうふうに国全体として処理していくかという大きな問題がございます。したがいまして、警察といたしましては、いろんな売春事犯の中で悪質なもの、先ほどお話しのございましたような管理売春、あるいは暴力団のからむ売春事犯、こういったようなものに重点を指向してやっておるわけでございます。  しからば、暴力団の関係につきましてはどうかということでございますが、はっきり申しますと、沖繩県の暴力団自体は、これは内地と比べまして非常に暴力団自体がばっこしておるというふうには見受けられないと思いますが、ただ今後、本土から沖繩のほうに渡航が自由になりましたので、沖繩のほうに手を伸ばそうという動きがあるかないか、まあその辺は十分注視してまいらなければならないと思います。  なお、本土のように、売春そのものを資金源として売春でもっぱらめしを食っておるいわゆる売春暴力団というものは、沖繩にはいまのところ存在をしていないというふうに承っております。ただ、前借金の取り立て、あるいは逃走婦女子の連れ戻しに暴力団を業者が金を払って利用する、そういう形で暴力団がかんでおるという事案が一番多いように聞いております。あるいは売春婦のひもになっておる暴力団員が若干おると、そういうことも聞いております。そういった事案につきましては、今後沖繩県警をバックアップいたしまして、徹底的な取り締まりをやってまいりたい。まあ何ぶんにも復帰後日が浅く、体制もいまだにまだ十分整備されておりませんが、至急人員あるいは予算の面も充実いたしまして、また技術的な指導、援助も本土から行ないまして、先生のおっしゃるような方向に向かって推進いたしたいと、かように考えております。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったように、復帰直前から暴力団狩りをだいぶやられたわけですね。で、その暴力団が前借金を肩がわりして取り立てているという実例があったものですから、私ども大いに騒いで、それで暴力団狩りをやっているという情報は入っておったわけなんです。で、本土との縦の系列で暴力団が入っていくということ、それから観光業関係ですね、土地をどんどん買い占めていくと、それとの結びつきがあるということ、これはだれでも——公然の秘密みたいになっておるようです。この辺は十分調べてほしいと思います。  それからAサインバーの問題ですけれども、Aサインバーというのは米軍の基地の軍人相手のバーのことをいうわけで、これは定期的な検診をして、病気がないというしるしでAというのを張っているわけなんですが、これはほとんどかつての吉原なんかの黙認地域と同じことだと思うのですね。実際には十二時ごろまでは普通の飲んだり騒いだりして、十二時以後に契約を一人一人やって、そして契約をさしている家のマダムが半分を取るという、まあ中間搾取というか何というか、そういう形をとっているわけですけれども、これを一体どういうふうに取り扱うのか。基地がある以上、手をこまねいているのかどうか、この辺はどこが担当してくださるんですか。警察だと言われるはずだと思いますけれども、これはもう沖繩は本土に復帰したわけですから、だから、これは地位協定の問題なんでしょう。本土だって、基地では相当大目に見ていると思いますけれども、その辺を、法務省でしょうか、どういう考えを持っておられ、どう対処されるのか。手入れもほとんどやらないという状況だと思うのです。それをお答えいただくような中心のセンターがないわけですね、売春問題に関しては。そういう意味でさっき労働大臣に申し上げたのですが、センターをつくって強力に進めてほしい。お答えできなければこれは宿題にしておきます。  それからもう一点、特殊婦人ということばを現地でも絶えず使っていらっしゃったわけなんです。したがって、琉球政府が出していた文献でも特殊婦人ということばを使っているわけなんですけれども、こういうことばを使うのが正しいかどうか、これは私は検討してほしいと思う。何か特別の婦人、これはサービス関係、接客業をやっている婦人で売春をする、売春婦という職業もないはずだと思うんですが、これを、特殊婦人というようなことばを使うことはやめたらどうかというのが私の提案でございます。これは労働大臣、どうお思いになりますか。特殊というのは何か特別差別して隔離しておる感じがするんですね。これは普通の婦人なんですよ。接客業で働いている、あるいはサービス業の女性なんですね。それが売春ということをするわけで、売春は労働とみなさないということで、手帳はもらえない。これは更生資金その他いろいろあると思います。それで、特殊婦人ということばをやめてはどうかと思いますが、本土では使っていないのです、どうでしょう。
  124. 田村元

    国務大臣田村元君) 実はいまお話を承ったばかりの印象でございますが、なるほど承ればそういうような気もいたしまするし、とにかく高橋君とよく検討いたしまして、なるほど特殊といえば特殊であるし、特殊でないといえば特殊でない。あとで一度よく検討させてください。いずれにしてもちょっといま私、ここで確信を持っての答弁を差し控えたい。ただ御趣旨はよくわかりました。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 法務省もよく検討してください。
  126. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  127. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記起こして。
  128. 本庄務

    説明員本庄務君) ちょっと先ほどの御質問、答弁落としておりましたので補足いたします。  一つはフィリピンとかそういった外地のいわゆる国際売春という表現で御質問いただいた点でございますが、そういったうわさも聞かないこともなかったのでありますが、いろいろ調べましたところ、まあ個々の、一、二の者が行ったり来たりということはちょっと把握できないのでありますが、計画的な大量なものを外国にやったり、あるいは外国から持ってくるという場合には、海外渡航あるいは入国についてのいろいろな手続がございますので、そういった面でかなりチェックできるわけでございますが、そういう点から見ますと、そういう不法な目的でのまあ集団での渡航あいるは入国ということにつきましては、いまのところ入管のほうも警察のほうも把握しておりませんので、事実はいまのところはっきりいたしませんが、まずないのではなかろうかというふうに考えております。  それからもう一つ、Aサインの話が出まして、これはまあ法務省のほうなのか警察庁のほうなのかはっきりしない面があるということでございましたが、事実またはっきりしないのでございますが、私たち立場といたしましては……
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 風俗営業でしょう。
  130. 本庄務

    説明員本庄務君) ええ、風俗営業でございますが、いわゆるAサインという制度につきましては、これはもう全くそういうものは認めておらない。実は四十——ちょっとはっきりした数字は忘れましたが、四十一、二年ごろであったかと思いますが、横須賀、佐世保、岩国等の基地におきまして、いま先生が御指摘いただきましたようなAサインに類するようなことが行なわれておるということを聞きまして、その点は十分取り締まりをいたしまして、まあなくしたというふうな事実がございます。これは先生が先ほど御指摘になりましたようなものと全く同じであるかどうか、その辺、少しあるいは違うかもしれませんが、まあ米軍人が入っていい飲み屋を指定をして、それにAマークといいますか、を交付して店の前に張らせて、そこは米軍人は堂々と入ってよろしい、日本人は入っちゃいけないというふうなことを、これは業者の間できめたのか、米軍と業者とが協定をしたのか、その辺もどうもはっきりしないんでありますが、事実上そういうものが行なわれておりましたので、日本の国内におきましては風俗営業等取締法といった法律があると、その法律に従ってもらいたいという線で取り締まりをいたしまして、その状態を解消せしめたということがございます。沖繩におきましてもいわゆるそのAサインの実態につきましてよく調べましてもしそういうことがあればこれはやはり日本の法律を厳格に適用していくということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  131. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  132. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記を起こして。  本調査に対する質疑は本日はこの程度にとどめまして、午後は二時から再開することとし、休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  133. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  塩見厚生大臣及び増岡厚生政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。塩見厚生大臣
  134. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ただいま委員長からお許しをいただきましたので、一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  私は先般厚生大臣就任いたしました塩見俊二でございます。  戦後の日本経済は、驚異的な発展を遂げ、GNPは自由主義諸国家におきましては、アメリカに次いで第二位となったのでありますが、従来とかく経済成長に施策の重点が置かれ、経済発展の成果が必ずしも国民福祉の向上に適正に配分せられているとはいえないと思うのであります。  一九七〇年代は、福祉優先の時代といわれ、あるいは福祉なくして成長なしといわれる時代であり、福祉行政の積極的な推進をはからなければならないと考えておるのであります。  まず、今後ますます重要となる老人対策についてでありまするが、さきの通常国会におきまして懸案の老人医療費の無料化、老齢福祉年金の引き上げがはかられたのでありますが、老人対策は、生活保障、健康の確保、さらには生きがいを高めるための施策を総合的に推進する必要があると考えます。特に、老後保障の中心となる年金制度につきましては、国民の期待に沿う年金とするよう年金額の大幅な引き上げ等制度の充実をはかってまいりたいと考えておるのであります。  次に、医療保険制度の問題でありますが、国民の医療を確保する上におきまして政府管掌健康保険の財政再建をはじめとする医療保険制度の改善は緊急の課題と考え、私といたしましては、できるだけ早い機会に関連の法案を議会に提出いたしたい考えでありますが、いずれにいたしましても、この問題につきましては、今後とも委員各位の御理解をいただきながら、その早期解決に努力をいたしてまいりたいと考えておる次第であります。  国民の健康に関する対策につきましても、がん、脳卒中などの成人病対策やいわゆる難病についての対策を推進するとともに、積極的に健康を増進するための施策につきましても力を入れていかなければならないと考えております。  次に、社会福祉対策についてでありますが、次代をになう児童の健全育成や社会的にハンディキャップを負っている身体障害者、心身障害児に対する施策、さらにこれら施策の推進の基礎となる社会福祉施設の整備及びその職員の確保について一段の施策の推進をはかっていく必要があると考えるのであります。  このほか、厚生省が解決すべき課題は、山積をいたしております。そのいずれをとりましても、国民一人一人の日々の生活に深くかかわり合いのあることでありますので、一件一件迅速に、かつ、確実に処理していく所存でございます。  私は皆さまの御指導、御支援を得つつ、全力をあげて厚生行政に取り組み、国民福祉の向上に努力する覚悟でございます。何とぞ、よろしくお願い申し上げます。(拍手
  135. 矢山有作

  136. 増岡博之

    説明員(増岡博之君) このたび厚生政務次官を命ぜられました増岡でございます。  ただいま大臣からお話がございましたように、特に昨今は厚生行政が非常に大事な役目を持っておるわけでございます。顧みまして、私、非常に微力ではございますけれども、全力を尽くすつもりでございますので、諸先生方からよろしく御指導のほどをお願い申し上げたいと思います。まことに簡単で失礼千万でございますが、ごあいさつにかえさせていただきます。(拍手)     —————————————
  137. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  138. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、きょうは広島県大久野島で昭和二年から第二次大戦の終了まで、旧陸軍東京第二造兵廠忠海製造所、これがここにありまして、旧陸軍唯一の化学兵器工場であり、一般に毒ガス工場と呼ばれていることは御存じのとおりでございますが、本日はこの問題について厚生大臣あるいは環境庁、大蔵省等のお考えをお聞きしたいと思う次第でございます。  そこで、まず最初に伺っておきたいことは、御存じのように公害は大きく言えば国の責任ではありますが、身近く言えば企業が責任でございます。また原子爆弾の場合もこれは大きく言えば国の責任でありますけれども、やはり身近に考えれば、直接はアメリカが責任である。そういうのに引きかえて大久野島の毒ガス問題は、国がつくっておったわけでございますので、そういう点でその責任は私は非常に重いのではないか、そのように思います。そういう点でこの毒ガスによって生じたところの被害その他については、国が責任を持ってこれを処置していかなければならない、そういう責任が国にあるということを、これをもう一回確認しておきたいのでございますが、これはことしの四月二十四日の予算委員会の第四分科会におきまして、国務大臣斎藤昇、当時の厚生大臣は、「それは全く御意見のとおり、それから来た被害は、国が責任を持って処理すべきだと思います。」、こう答えておりますし、また五月二十四日の決算委員会におきまして、公明党の中尾委員の質問に対しても、総理大臣が答えているわけでございますが、「ただいまの諸点について、私は実情を明らかにしておいませんが、本来国、政府が責任を持って処理すべき問題だと、かように考えますし、またPRをもっと徹底さして、かような気の毒な方々に何ら救いの手を差し伸べられない、そのまま放任されないように政府は努力すべきである、かように考えますが、私からも、厚生省が所管だと思いますが、よく話をしておきます。」、こういうように、厚生大臣も、総理もやはりそれは国が責任を持つべきである、そういう点ははっきり明確にしているわけでございますが、この考えは現在の厚生大臣においても変わりがないのかどうか、また総理は来ておりませんけれども、この問題については前佐藤総理の時代に環境庁が中心でやるということになったわけですから、環境庁のお考えを簡単明瞭でいいと思うのですけれども、イエスかノーか、ひとつ……。
  139. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 大久野島の工場が陸軍の施設であったということにつきましては、これは争えない事実であるわけでありまして、その陸軍といえば、これは国の機関でございますし、国の施設から毒ガスが出る、そういうふうな、結果としてこの被害者があらわれてきたということになれば、これはやはり私は国の責任だと考えます。まあ具体的な救済の方法等につきましては、それぞれ各機関がございましょうが、原則的にはただいまの塩出委員のお話に同感でございます。
  140. 増岡博之

    説明員(増岡博之君) いま先生がおっしゃったとおりで、全く私も同感でございます。異議の差しはさむ余地はないと思っております。
  141. 塩出啓典

    塩出啓典君 きょうは、いろいろな問題もありますが、特に毒ガスによる被害者の救済の問題にしぼって、——ここは社労委員会でございますので……。  そこで、まあ先般、佐藤内閣総理大臣の時代に、環境庁が中心となって、今日まで何回かの会合を重ねて前進をしてきていると思うのでございますが、被害者のいわゆる救済処置については、その後一応どういうように前進しているのかですね。その点をひとつ簡単に環境庁からお願いいたします。
  142. 鷲巣英策

    説明員(鷲巣英策君) 大久野島の元従業員の被害者関係でございますが、これにつきましては、大蔵省のほうで指定病院の数をふやすというようなことを検討している段階でございまして、それ以外の点につきましては今後の課題として考えているわけでございます。
  143. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあそうすると、あまりあれですね、全然前進はしてないと、まだ検討段階だと、そういうことですね。
  144. 鷲巣英策

    説明員(鷲巣英策君) 現在具体的に大蔵省で指定病院をふやすということを詰めておるわけでございまして、具体的にどこまで進んでおるのか存じませんので、大蔵省のほうからお答え願います。
  145. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) ただいま指定病院のお話がございましたが、現在広島県内に八カ所指定をいたしまして、ガス障害者に対する救済のための措置といたしまして手当てをしているわけでございますが、広島県の県下に八カ所指定いたしておりますものには、大久野島の元従業員でございまして、旧陸軍の共済組合員であった方々で、ガス障害を受けられた方々に対する救済措置を私どものほうでいま考えているわけでございますが、その方々のほとんど全部といっていいぐらいの、大部分の方が広島県下におられるという実情から考えまして、しかも県内に集中している。主として便利になるような場所を選びまして八カ所指定されているわけでございますが、なおそのほかにもいろいろと御要望等も過去においてございますので、指定病院の増加ということにつきまして、なるべく御不便のないようにいたしたいという方向で検討をいたしておる段階でございます。
  146. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、これは、大蔵省はあくまでも元従業員で、いわゆる共済組合に入っておった人ですね、そういうのが対象になっておるわけでありますが、ところが毒ガスによる被害者は、御存じのように国家総動員法によりまして、学徒動員とか女子挺身隊の人もつとめておりましたし、また御存じのように、戦後いわゆる毒ガスの処理を、瀬戸内海に捨てたために、漁民の人が、網にひっかかって、そういうわけでなくなったり、そういうような事例もある。あとで詳しくお話しいたしますが……。それからまた、海へ米軍の指示で捨てるときには、あそこに、三原にある帝人の人も参加しておりますし、あるいは大久野島に国民休暇村をつくるときに、建設工事中にいろいろ沈殿物とか廃棄物を捨てているところを掘り起こしてそういう障害を受けたとか、そういうように毒ガスに関係した人は非常に多いわけですが、そういう人がどの程度おって、そうしてまたそういう人たちの健康に対する影響はどういう状況なのか。そういう点は環境庁としてはつかんでいるのかどうか。あるいは現在つかんでなくても、つかもうと努力をしているのかどうか、そのあたりはどうですか。
  147. 鷲巣英策

    説明員(鷲巣英策君) ただいま御指摘の点につきましては、現在は数字はつかんでおりませんが、ただ現在各都道府県にお願い申し上げまして、戦後の毒ガスのいろんな、どこに捨てたとか、あるいは戦後どういう被害があったのかという点の資料の提出を求めている段階でございますので、それがまとまれば一応の資料として完結するのではないかと考えているわけでございます。
  148. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、対策を立てるには実態をつかまなければやっぱりできないと思うのですよ。それは私もいろいろ個人で調べましたけれども、私は一人ですし、それに比べれば環境庁は人数は少ないといってもやっぱりそれだけの組織はあるわけですから、そういう点で、これが問題になってからだいぶたつわけですからね。やはりそういう点が非常に私は何となく、新聞等で毒ガスが問題になるとうまいことを言っているけれども、時代とともに忘れられていく。そういうことで不満であると、そういうことを言わざるを得ないと思うのですけれども、そこで私、厚生省にお聞きしたいと思うのですけれどもね、健康に対して責任を持つのはやはり厚生省ではないかと思うのです。これは先般の予算委員会の分科会におきましても、厚生大臣は、厚生省としては、全然——毒ガスを吸った人にどういうような被害を及ぼしているのか、これは広島大学の西本先生の発表によりますと、非常にガンで死ぬ人が多い。普通のガン発生率、しかもガンは呼吸器系統のガンが多いわけですが、普通の人の四十倍もガンの発生率が多いのだ。そういうことをいろいろ分析した結果発表されておるわけですね。そういうような点も、厚生省は全然つかもうとしていないのですね。また実際に漁民の人が被害を受けてたびたびこういう陳情書が来る。厚生省のほうにも出しているわけですよ。去年また出しているわけですよ。そういうものがどんどん出されておりながら、依然として漁民の人が被害を受けた実態もつかまれておらない。そういうのは私は非常に怠慢だと思うのですが、厚生省としてはその点はどうですか。そういう毒ガスと健康との因果関係等についてもう少しやはり、調査ぐらいしていただいているのですか。
  149. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 私のほうもまあ健康の問題という立場から、先生ただいま御指摘の、毒ガスのその後のいわゆる従業員への影響の中で、広島大学の教授の御発表になっております気管気道——吸入したためによるカンの問題については、文献的には承知はいたしております。イペリット、ルイサイトというようなものが最も影響を当時与えたというような文献もあるわけでございます。ただこの場合は、従業員として比較的長期に、かなりの注意を払った工場管理の中で行なわれたであろうと想像されますけれども、就業した時間が長いということによる従業員への影響と、それからその後漁民等がいろいろな障害を受けた場合の医学的な観点からいきますと、イペリット、ルイサイト等については短期間の接触、吸入等では従業員と同じような障害という問題は医学的にはまあ考えなくてもよかろうというふうに判断しておるわけでございます。私の立場からは、調査その他の問題というよりも、医学的な面からそういうような毒ガスの障害問題については一つの判断が文献的にも医学的にもできるのではないか、こういう点を私のほうから申し上げたいと思います。
  150. 塩出啓典

    塩出啓典君 あなた二人死んでいるのですよ。一人は漁民ですけれども、一人は漁民の人が拾ったガスボンベを金属商に売りまして、その金属商がそれを処理するときにガスの影響で、二人なくなっているのですよ。これはこういう請願書が、これは去年の請願書ですから厚生省にも、環境庁はまあできなかったかもしれないけれども、これはあちこちに出しているわけですけれども、そういう事実は知っていますか、つかんでいますか。
  151. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) ただいま私の立場から申し上げましたのは、一般的な影響の原理を、考えを申し上げたわけでありますが、いまの個々のケースにつきましては、私承知いたしておりませんでした。
  152. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは大体、環境庁にお伺いしますが、どこがこういうのは掌握すべきなんですか、掌握するところがないんですか。こういうものが全部泣き寝入りになっていいんですか。
  153. 鷲巣英策

    説明員(鷲巣英策君) 制度的にどこが掌握すべきかということはきまっておりません。ただ、今後はそういう事故が起こり次第各省連絡会議でまとめまして、私のほうとしましても新聞、ニュースその他でわかれば整理をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  154. 塩出啓典

    塩出啓典君 非常にそういうのんきなことを言われるからみんなおこるんですよ。これは私は五月二十四日にちゃんと佐藤総理にこういう陳情書も出したんですから……、こういうのは単なる形式的に扱われるのですか。その中に毒ガス海洋投棄に従事した人とか、あるいはボンベを網にひっかけて漁民が毒ガス被害を受けたとか、そういうことはちゃんと私もこういうように要望してありますし、また実際に漁業組合の人が陳情書でちゃんと出しているんですから、まあここでいままで何もやってないということは、これはいろいろ理由もあるかもしれませんが、せめて、これは時間がもったいないですからやめますけれども、四十三年の夏、福本兼一という人がこれは一人乗りで操業中行くえ不明になりまして、そしてなくなったわけですよ。そのときに網をひっかけたまま、——だから網を取る途中ですから、これは船はとまっているらしいですね。そのときになくなっているわけなんです。そこでそのときに船の上にいろいろ金属のボンベのような、そういう金属片が散らばっておったために、これはどうも毒ガスでなくなったに違いない。普通の漁民が海に落ちて死ぬなんということはいまだかつて考えられないわけなんですね。だけれども、その当時は毒ガスなんということをあまり口に出すような時代ではなかったらしいですね。それで結局泣き寝入りになっております。  もう一つは、それよりもずっと前に、これは終戦直後でございますが、引き揚げたボンベを古物商人に売って、これが三原でなくなっているわけですよ。そういうような事例もあります。まあそのほか竹原市に住んでいる樋口さんなんという人なんかは、昭和二十六年にやはりこれも大久野島の近辺でそういう被害を受けまして、これはちゃんと医者の診断書もついてきているんですけれども、これはイペリット傷という、そういうちゃんとイペリットによる障害に間違いないということをちゃんと忠海病院がこういう証明書も書いているわけなんです。そのときには両足を切断しなければならないというのを、何とか両足を切断しなくてもきているわけですけれどもね、現在までは。それから十九年、仕事もできず今日に至って苦しんでいる。そういうことで、そういうような人もおりますし、そのほかこれは新聞等にもたびたび出た問題ですが、山本通三さん、この人もやはり竹原市の漁民の方ですけれども、それから福本石松さんという、この人もやはり漁民ですけれども、そういう方なんか二回にわたってガスボンベを引き揚げまして、それでまあそのときに、これは最初の場合は十二月二十二日から約一週間ぐらい入院して、診断書では急性口頭炎症とか急性気管支炎とか、そういうことでそういう被害は死ぬのに比べればたいした——たいしたと言ったら申しわけないけれども、何日かやはり入院はするわけですよ。そういう入院費なんかは全部まあ自分で出して、何にも手当てがされていない。これは非常に、原爆等に比べれば数の少ない何人かの漁民ではございますけれども、いまさっき、環境庁政務次官も厚生大臣も言われましたように、こういう問題は全部毒ガスによって生じた被害であるならばやはり国が何らかの措置をすべきなのは当然じゃないかと思うのですけれども、そういう点で私の要望したいことは、こういう陳情書がすでに去年も出されているわけですから、それに対して何ら手が打たれていないということを責めても、まあいまさらしかたありませんし、今後の問題といたしまして、陳情書がなければこれを環境庁にお渡ししてもいいのですけれども、そういう実態を調べて何らかのやはり措置をすべきではないか、そのように思うのですが、環境庁どうでしょうか。
  155. 菅波茂

    説明員(菅波茂君) いま先生のおっしゃったとおり、その実態を早急に、各省庁にまたがる問題でありますから、各省庁の協力を得まして、その実態を一日も早くとりまして、そうして対策をまた積極的に早期に考えていきたいと考えております。
  156. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから旧令共済でございますが、これは大蔵省にお聞きいたしますけれども、旧令共済というのが、広島県内にしか病院がないわけですね。そういうわけで、竹原の市役所なんかは、長崎とかあちらこちら問い合わせがあるわけですよ。実際、長崎から広島の指定病院まで来ることはできないわけですね。ほんとうにやはりそういう従業員を救済するならば、指定病院というものをもっと全国各地にふやして、どこにいても受けられるように、そういうようにすべきじゃないかと思うのですけれども、先ほど、指定病院をふやすというのは、県内にふやすのか県外にもふやすのか、その点どうなんですか。
  157. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) ただいま八カ所指定してございますのは広島県内でございますが、先生お話のとおり、全国的にという点につきまして、まあ広島に比べますとずいぶんと数は少のうございますが、いずれにしましても各県にまたがっておるということは事実でございますので、なるべくその辺実情を——医療機関の関係も十分これは考慮しなければならない問題もございますが、実情を十分考慮しながら考えてまいりたいというふうに存じております。
  158. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでPRを全くやっていないのですね。共済組合の旧令共済による救済につきましては、これはこういうのがどんどん出てくれば共済組合も赤字がますます赤字になるから無理もないと思うのですけれども、原爆関係は各市町村を通してやっているわけですね。これは全然市町村は関係がないわけですよ。竹原の市役所でも資料がないわけですね。ただ、忠海病院にこちらから問い合わせて、みんな何かあると市役所に連絡がありますから、そういう点でもって共済病院だけでやるというやり方は全くそのPRがなされていない。こういう問題はどうなんですかね。これは大蔵省としてはどうなんですか、PRをやらないのですか。
  159. 鈴木吉之

    説明員(鈴木吉之君) 実は旧令関係のガス障害者の救済につきましては、共済組合の連合会がその仕事に当たることになっているわけでございますが、連合会の担当の者が広島県の担当部課と十分連絡をとりながら、県を通じ各市町村へのPRは従来もやってまいっておるわけでございますが、お話のございますように、全国にという点になりますと必ずしも満足であったかという点については、反省しなければならない部面もあろうかと思いますが、この点につきましては十分PRについても配意してまいりたいというふうに考えております。
  160. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで次に、援護法の問題でございますが、いわゆる従業員の人は共済組合に入っておりますから、これはいわゆる旧令共済で何らかの救済はされているわけでございますが、大久野島につとめておりましたいわゆる学徒動員あるいは女子挺身隊員あるいは試工員といいまして、工員になっても一カ月間は正式な工員になれないために、試みの工員ですね、そういうような人もあまり作業がひどいから途中でやめていく人もいたわけですね。そういうような人は全くその旧令共済では救済されない。それに対して私が承っている範囲では、いわゆる戦傷病者戦没者遺族等援護法ですか、これでやはり救済をしていくのだと、そのように聞いているわけでございますが、その点はどうなのかですね。
  161. 高木玄

    説明員(高木玄君) 大久野島に昭和十九年に入りまして、動員学徒の方々が三回にわたって大久野島で働いておられますが、この動員学徒の方方、あるいはいまお話しした試工員の方々、こういう方々は戦傷病者戦没者遺族等援護法なり戦傷病者特別援護法で準軍属として扱われますので、したがいまして、そうした方々が大久野島での動員学徒としての作業等によりまして傷病にかかった、あるいは傷病がもとになって障害が起きたというふうな場合には、援護法なりあるいは特別援護法によって救済する道が開かれておる。ただ元動員学徒であった方々からの具体的な申請は現在までのところ来ておりません。
  162. 塩出啓典

    塩出啓典君 それは、現在までのところは結局そういう申請が全くなされてないと、そういうことですね。
  163. 高木玄

    説明員(高木玄君) そのとおりでございますが、最近、七月十九日付で広島県に対しまして二件の障害年金の申請があったというふうに県から聞いておりますが、そのうちの一件は元の動員学徒の方からでございまして、傷病が視力障害ということで出ておるそうでございます。  それから残りのもう一件は、書類不備のために県のほうで差し戻しておるそうでございますが、いずれにいたしましても県の段階で調査しまして、この資料が整備でさましたらいずれ厚生省にこの申請があがってくるであろうと、かように考えております。あがってまいりましたならば、その具体的内容につきまして十二分に検討してまいりたいと、かように考えております。
  164. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ援護法というのは、われわれの感じでは非常に、たとえば手がなくなったとか、そういう外部的な欠陥といいますか、そういうのが主体であって、内部障害については非常にきびしい。まあそのようにわれわれは判断しているわけですけれどもね。だから大久野島へつとめておったそういう人たちも、援護法はこれは昭和二十七年ですか、できたわけですからね、だからずっと援護法はそれからあったわけです。けれどやっぱりそういう援護法では救済されないと、そういうことで今日までそういう感じをみな持っているわけですね。今回そういうことのために学徒動員というものといわゆる共済組合人たちとの間に非常に差があるわけですよね。これは端的に申しますと、まあ学徒動員の人も同じように工場へ行っている。もちろん期間は非常に短い場合もあると思うんですけれどもね。ところが、一方学徒動員の人は国家総動員法で月給をもらわないで強制的に働かされて、一方の従業員の人たちは、自分がそこにつとめて給料をもらって働いておったわけですね。そういう同じように働きながら、共済組合に入っておったという人たちは、たとえ事務所にいた人でも、医療手帳の給付も受けて、そうして健康診断を受けることができる。ところが一方、学徒動員の方は、学徒動員ということで、共済組合に入っていないということだけで全然オミットされているわけですね。そういう点で非常にこの二つの間にアンバランスがある。しかも、一方広島には原爆という被害者もいるわけですけれども、まあ原爆と毒ガスとを比べた場合には、本来から言えば、私は少なくとも毒ガスについても原爆並みの処置はすべきじゃないかと思うのですけれどもね。そういう点で非常に差があるわけですよ。そういう点を厚生省としてはどう考えておるのか。しかも旧令共済というのは、言うなればこれは国ではなしに共済組合連合会がやっておるわけですから、予算は国からも出ておるわけですけれども、実際は国は何もしてないということも言えるわけですよね。そういう本質的な問題について厚生省としては検討する余地がないのかどうか、そのあたりどうなんですか。
  165. 高木玄

    説明員(高木玄君) 援護法——戦傷病者戦没者遺族等援護法、戦傷病者特別援護法は、いずれも国家補償の精神に基、つきまして戦争犠牲者を援護しようということでございますので、国の責任というものをはっきり出した制度でございます。  そこで、それでは動員学徒の人たちはなぜいままで申請がなかったかという、こういう問題でございますが、これは大久野島で旧陸軍が毒ガスを本格的に製造しておりましたのは昭和十二年から十六年ぐらいの間のことで、十九年の七月にはもう毒ガスは製造していなかった。十九年の八月から動員学徒というものが動員されたわけでございますが、この方々が前後三回にわたりまして三カ月あるいは六カ月というような期間、大久野島で動員学徒として作業に従事しておるのでございますが、この方々は、動員学徒の人たちは、毒ガス工場と離れた島の反対側におきまして風船爆弾の袋張り、それから点火マッチの製造、それから発煙筒の外部仕上げ、こういったような業務に従事しておりまして、直接毒ガスに触れるような作業はしていない。で、元のこの製造所の山中所長の証言によりますと、動員学徒にはガス障害のおそれのある作業は一切やらせないよう配慮した、で、この方々は十五、六歳の方々でございますので、毎月健康診断を実施して、その結果、異常は認められなかった、こういう元の所長さんの証言もございます。そういったことから、期間も短いし、直接毒ガスに触れなかったという実情から、現実に当時の毒ガスに基因する障害というのにかかっていたかどうか。非常にかかっていない可能性のほうが多いのじゃないか、こういうふうに考えております。しかし現実に近く申請が出るそうでございますので、その申請を受け取りまして、その内容を十分に審査していきたい、かように考えております。
  166. 塩出啓典

    塩出啓典君 いまそういうお話がありましたけれども、そういうのは厚生省は調査されたわけですか。実際にその学徒動員の人が戦争末期にどういう仕事をしておったのか。そういういまあなたの発言というのは何を根拠にして言っているのですか。理論的な根拠は何ですか。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
  167. 高木玄

    説明員(高木玄君) この大久野島には東京第二陸軍造兵廠の忠海製造所というのがございますが、この山中という元の製造所長の証言によっていま申し上げた次第でございます。
  168. 塩出啓典

    塩出啓典君 これが非常に問題でございまして、この山中所長はいまも生きていらっしゃるわけですけれども、まあ確かに責任者は所長ですから、所長の発言を厚生省が信ずるのは無理ないかもしれませんけれども、やはり従業員の皆さんにはこのあたりに非常に大きな不満があるわけですよ。というのは、いわゆるその山中所長としては、やはり毒ガスを製造したところの所長なんですから、やはりそういう毒ガスをつくるというのは、当時の国際法上禁止なわけですから、やっぱり従業員の皆さんが言っているのは、山中所長は自分の身をかばってほんとうのことを言っていないというわけですよ。しかも、やはり所長というものは、そんなにこまかい点までわからないのですからね。だから厚生省としては一方的に都合のいい山中発言だけ取り入れずにもう少しやっぱり被害者の皆さんの声とか、そういうものを真剣に聞いたらどうなんですか。実際にその当時現場にたくさんの人がつとめておったわけですから、そういう人たちの記録も出されております。私もいろいろたくさん資料をもらいましたけれども、こういうように「大久野島の秘録」という、四十六年八月にこの稲葉さんという人も実際に出しておりますしね。そういうわけでね、このあたりがこの被害者人たちの、特に学徒動員の人なんかの厚生省の考え方と非常に離れている点がそこにあると思うのですけれどもね。だから、みんなの要望は山中所長を委員会に呼び出して、国会で証言してもらいたいと、両方呼び出して、それでやってもらいたいと、そういうことも言ってるんで、場合によってはそうせざるを得ないんじゃないかと、そのように思うわけなんですけれども、だから厚生省としては、学徒動員はそういう危険な仕事をしてないんだから、毒ガスの影響を受けてないんだから何も心配ないんだと、そういうわけでいままで何もしなかったということなんですね、端的に言えば、山中所長の発言を信じて。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
  169. 高木玄

    説明員(高木玄君) そうでございませんで、現実にもしガスによる障害があれば、それを救済する制度は先ほど申しましたようにあるんですから、ただ現実にいままで申請がなかったと、こういうことでございます。決して私どものほうでほったらかしにしているというのじゃなくて、現実に申請がなかったのでいままで援護法では措置されていないということでございます。  それから、学徒動員の方々の陳情書で抄録したものがここにございますが、この方々の記述によりましても、作業は気球張りというような作業でございまして、当時特に障害はなかったというふうに書いております。ただ、この方々は当時十五、六歳、戦後二十七年たちますので、この方々も四十過ぎてまいっております。最近になりまして呼吸器の障害を訴えているというようなことが書いてございます。これらがはたして当時の毒ガスに基因したものかどうか、これは慎重に私どものほうで調査、検討してみたいと、かように考えております。
  170. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういうわけで、確かにもうその当時つとめておった人たちもいま四十前後だと思いますけれども、広島大学先生方の研究によりますと、やはり毒ガスによる影響というものはだんだん自分の体力が減って、年をとるに従ってそういうものがあらわれてくると、そういう結果が出ているわけですよ。  それともう一つは、やはり島全体が——私も何回か竹原に行きましてそういう従業員の人にお聞きしましたけれども、とにかくいまの公害どころの騒ぎではない。いろいろな仕事をさせられたらしいですね、実際には。たとえば炉の修理をするためにバーナーを使う。そうすると、そういうところがだんだん溶けて、そこから毒ガスが発生するとか、そういうような体験をことしの秋ぐらいに全部それを集めて出すと言っておりますけれども、いずれにしてもそういうやはり島全体が一つの悪い環境の中にあったわけですから、そういうところへ実際に行っておった人が短期間だからといって私は害がなかったとは言えないと思うんですね。断言できないと思うんですよ。だから、彼らは別に金をくれと言っているわけじゃないんですよ。いわゆる医療手帳なりを支給して、それで健康診断ぐらい定期的に受けて、そして将来、気管支とかにそういう病気が出てきたときに無料で見てもらうとか、そのようにやっぱりしてもらいたい、そういう要望なんですよ。だから、いままだ四十代ですから、これからだんだん年もとっていくわけで、そういう将来に非常に不安があるわけですね。一方では大久野島につとめた従業員の人たちは、たとえ同じ期間つとめておった人でもちゃんと医療手帳というものは給付されるわけですね。それは原爆の場合と比較しましても、原爆の場合も一般の人、それもある一定の条件のある人は、これは一般の人であっても全部やはり医療手帳というものを支給されるわけです。そういうところに非常に差があるということが、一方では同じ町村に住んでいて非常に不公平なわけですね。だから、まあこういう学徒動員の人に、いまは——まあすでに悪い人もおりますけれども——元気な人でも将来に対して非常に不安を持っている。それは毒ガスの影響というものはそういうように年とともに出てくるものだということは専門家の人も言っているわけですから、そういう点で非常に将来に不安を持っておるわけですね。だから、そういう点は私はたいして予算のかかる問題じゃないし、ほんとうに先ほど厚生大臣も言ったように国が責任を持ってやるのは、そういう問題についてもほんとうは病気になって悪くなったときでなしに、悪くない人でもいまからやはり健康診断を受けさして常に健康を管理していく、そういう方向でやるべきじゃないかと思うんですけれどもね。まあなかなか非常に回りくどい言い方で、厚生大臣は十分理解していただいたかどうかわかりませんけれども、そういう考えはどうですか、厚生大臣考えとして。
  171. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 私も従来の経過等につきましては十分承知をしていないわけでございます。むしろ今日まで戦後二十七年間そういったような具体的な事例がなかったというふうな意味の実は報告も受けておるような次第でございまして、したがって、この問題については、動員学徒等につきまして非常にそういう懸念がないというようなことでむしろ心の安まるような思いをしてきておったわけでございます。しかしながら、毒ガスの製造ということになりますと、これは日本でもあまり経験のない島の事情でございましょうし、われわれの調査が十分行き届いておったかどうかということについては、まだ私自身も確信が持てないわけでございます。したがって、こういった問題の具体的な対策というよりも、現実が一体どういうことであるかというようなことにつきましてさらに調査検討をさしていただきたいと存じます。
  172. 塩出啓典

    塩出啓典君 厚生省にお願いしたいんですけれども、そういうように山中所長の言うことばっかり聞かないで、実際にもう少し専門家の意見も——健康に関する問題については国はほんとうに何もやっていないんですよ。県がほんとうに独自の予算で健康手帳を給付して、これは実際に共済組合に入っている人、学徒動員、全部含めて広島県はこれは県でやっているんですよ。私はそういう点は県は偉いと思うんですけれどもね。広島大学等においても他の病院等においても、そういうものをいままで専門家は研究しておるわけですから、そういう医者が、やはり大久野島という島に行けば、どこにおろうとも、やはりこれはそういう危険はあると考えなければいけない、そういうように専門家は言っているから、私たちもそれを信ずるわけです。そういうことも全然調べもしないで、ただ山中所長がこう言ったからといって、山中所長は知らなかったんだとみんなおこっているんですから、そういう都合のいいことばっかり聞かないで、もう少し厚生省としては私はやはり国民に関する健康の問題ですから、やはり責任を持って調査をしてやっていただきたいと思うんです。これは四月の二十四日に前厚生大臣がそう言っているんですよね。「ただいま塩出委員のおっしゃいましたことを踏まえまして、厚生省で一ぺんそういう資料を集めて検討をさせるようにいたします。」と、こう言っているわけですよ。何回も何回も同じことをこっちだってほんとうに言うばかりで、そういう点もうあんまり同じことを質問しなくてもいいように、そういう実態についてもよくひとつ調べていただきたいと思うんですけれども、その点ひとつ厚生大臣に要望しておきます。  それから次に、これは軍人さんで桧公明さんという方でございますが、この人は実際に昭和十八年学徒動員で入隊いたしまして、そうしてやはり軍人の中にも「特業」といって特殊な業、——特殊な「特」に業績の「業」と書くんですが、「特業」をやっている人が二〇%くらいいたそうですが、その中にやはりガス兵というのがおりまして、実際に大久野島でつくった毒ガスを使っていろいろやっぱり訓練もやっていたらしいんですが、この人は、毒ガスを訓練するときマスクをかけてやるわけですが、マスクが非常に不完全なために毒ガスを吸っちゃってそれで鼻の感覚がなくなっちゃったわけですね。それでずっと鼻の感覚がないままに過ごしておったのでございますが、だいぶたってからガンになりまして、呼吸器系統の肺ガンになっちゃったわけですよ。それでなくなったわけでございますが、この毒ガスを吸った人には普通の人よりもガンの発生率は四十倍も多い。そういうことで本人は非常に驚いて広大の西本教授のところにそういう連絡があって、残念ながらこの間なくなりまして、その解剖結果等は近く主治医の人が発表する予定になっておりますけれども、まあそういうように、やはり元軍人で、それで毒ガスを非常に吸って鼻の感覚がなくなった。まあ肺ガンで死んでも肺ガンというのはたばこの吸い過ぎとかほかの原因でもなるわけですから、そういう点、実際知らないで死んでいく場合もあるんじゃないかと思うんですね。こういうような点については私は当然国の軍人恩給法なり援護法なりの対象になると思うんですけれどもね。そういうほんとうに肺ガンというものが毒ガスとの因果関係が究明になれば、これは救済の対象になるのかどうかということと、もう一つはこういうような事例についてはほかにもありますが、厚生省としてはやっぱりもう少し前向きにそういう調査をする意思はないのかどうか。この二点をお伺いいたします。
  173. 高木玄

    説明員(高木玄君) 元軍人であった人がそういう毒ガス訓練によってそういう障害を受けたという場合には、これは軍人としての公務による障害でございますので、恩給法で措置されるはずでございます。
  174. 塩出啓典

    塩出啓典君 それともう一つあとのほう……。
  175. 高木玄

    説明員(高木玄君) ですから、そういう申請がございますれば恩給法で救済されると、制度的にはそういうふうにできております。
  176. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、そういうのをやっぱり元軍人でガス兵をやっておった人というのは、大体厚生省でもいろいろ調べればわかるわけですからね。そういうのをもっと全国的に救済をしていかなければいけないと思うんですけれども、そういうのを積極的にやる意思はあるのかないのか。
  177. 高木玄

    説明員(高木玄君) 恩給局のほうとよく話し合ってみますけれども、この恩給法の系統にいたしましても、遺族援護法にしましても、いずれにいたしましても申請を待って調査する、あるいは審査するというたてまえをとっております。そういうたてまえをとっておりますので、その点のところをよく相談してみたいと思います。
  178. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃあ最後に一つ厚生大臣に……。  まあ、いずれにしても、前回の委員会等に比べてやはり救済等の問題についてもあまり前進をしておりませんし、まあ厚生省といたしましても、もう少しやはり積極的に、何となく大蔵省所管だからじゃなしに、広くやっぱり国民の健康を守るという立場におきまして、大蔵省で救済されないそういう漁民の問題とか、やはりそういう問題があるわけですから、やはり厚生省といたしましても、ひとつ前向きに検討していただきたい。そして、やはり私は旧令共済というような措置じゃなくて、ほんとうにやっぱり国が責任を持つならば、少なくとも原爆並みのやっぱり立法措置をするのが当然じゃないかと思うんですけれどもね。やっぱりそういう共済組合法でやっているというようなこと自体に非常に大きな根本的な矛盾があるわけで、いまさっき国が責任を持つと言いながら、実際国が責任をとってない。そういう点が私は筋が通らない、そういうことを申し上げておきたいと思います。  最後に災害救助法の問題につきまして、きのうも災害の委員会があっていろいろこまかい問題もあるわけでございますが、今回は非常に中国地方に災害が多くて、私各地を回りまして、ほんとうにこれだけは改めてもらいたいという点だけをお伺いしたいと思うんですが、災害救助法の応急仮設住宅の建設ですね。応急仮設住宅の建設、これがまあ非常に三割という、全壊家屋の三割、それをこえる場合厚生大臣に協議をしなきゃならないというような。——私は応急仮設住宅なんというのはだれも入りたくて入る人はいないと思うんですね。水害地を回ってみると、みんな何かあれば、ちょっとでも住めるところがあれば自分の家へ帰りたい、それがやはり人間の人情じゃないかと思うのです。ですから応急仮設住宅なんていうのは建てる権限を知事にもうまかして、一々厚生大臣に三割をこす場合協議しなければいけない、そういうようなことは非常によくないのじゃないか。これをひとつ改めてもらいたいということ。  続けて言います。それから第二点は、たき出しをやる。一日二百三十円というのはこれは非常にとんでもない問題でありまして、しかも先般、島根県の桜江町あたりは千五百名くらい避難しているのですね。そういうのの握りめしをつくるというのはほんとうに現地の人にとっては非常に大きな負担で、それがしかも一週間以上、二週間も続きますと、握りめしの顔を見るのもいやだということで、だからやはり私はもういまは給食センターなどがあるのですから、松江とかそういう被害を受けていないところから、給食センターで弁当をつくって、さっとヘリコプターで運ぶとか、そういう水害を受けたところなんかはあと片づけでネコの手も借りたいくらいなわけですから、そういうのが一生懸命握りめしに使われるというのは非常によくないと思うのですね。そういう点で私は一日二百三十円というのはあまりにも低いし、少なくともやはり給食センターから弁当を運んでもまあ十分やっていけるように、一食百五十円くらい、それぐらいにはやはり引き上げるべきではないか。これが二点です。  それともう一つは、いわゆる災害救助法の基準というのが、これが御存じのように非常に、たとえば千人未満では三十世帯以上住家が滅失した場合ですね。それから五千人より小さい市町村では三十世帯、それ以上被害を受ければ災害救助法を受けるわけですが、ところがその比率は、三万から五万になると六十になるのですね。だから五千未満のときは三十で、三万から五万のときは六十、そういうようにこの災害救助法の適用になる基準というのが小さい市町村ほど比率が高いわけですね。だから五千のときは三十、三万から五万のときは六十。世帯数が十倍になれば、その比率でいいますと、結局三万から五万の場合はいわゆる三百ということはなるわけですが、実際は六十ですね。大きな都市ほど災害救助法を適用する基準というのが比率からいえば非常に低くて適用になる、こういう状態は非常によくないと思うのですね。それと、実際にこういうわけで災害救助法の適用されていない市町村、同じ川をはさんで両方が被害を受けても、こちらのほうは救済されるけれども、こっちは災害救助法を適用されないためにたき出しもない。応急物資もない。そういうことで、県によっては、災害救助法を受けないような場合は、いわゆる県独自の災害救助法をつくっているところもあるわけでございますが、まあやはり私はそういう家が滅失をしたりあるいは床上浸水があったり、そういうのはその人にとつてはそれはもう百軒の一軒であろうとも一軒の一軒であろうとも同じなんですからね。ですから、たとえどういう水害を受けても、やはりそういう家屋が全壊をしたとかあるいは床上浸水をしたそういうところは、もう災害救助法を適用されないからといって救助されないのではなくして、あらゆる人が同じような救済を受けるように、やはり改正をすべきではないか。  以上、非常に大急ぎで言いましたが、それに対する厚生省の見解を伺っておきたいと思います。
  179. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 第一点の仮設住宅の件でございますが、これは一応運用上、設置戸数の基準は、全壊家屋の三割以内という一応の基準をつくっておりますけれども、しかしこれはその災害の規模その他によりまして相当の弾力的な運用をやっております。で、特別基準ということでこれも先生御指摘のように、一応厚生大臣に協議してもらっておりますが、これは電話一本で連絡してもらう。そしてこれはやはり私どもといたしましては災害救助法相当の交付金を負担いたしますので、やはり一つの基準で全国的な統一をはかる必要がある。地域的に非常にアンバランスがある。不公平になってはいかぬということで、一応そういうことで連絡はしてもらってますが、これも形式にとらわれず電話でもう連絡してもらう、それに対して直ちに返事をするという措置をとっております。特別基準につきましてはできるだけこれを何と申しますか、現地の実情に応じて運用するということで、今度の災害におきましても単に三割ということにこだわらないで、実質的には五割、六割というようなことを特別基準で認めておるということでございます。今後もできるだけ弾力的に運用してまいりたいと考えております。  それから第二点のたき出しの単価その他の問題でございますが、これは先生御指摘のように、私どもも現在の二百三十円というので十分だと思いません。たが、これは毎年改善しておりまして、昨年は二百円と、しかも三日以後は百七十五円という非常に低い単価でございましたのをことし二百三十円ということで、百七十五円に比べますと三〇%以上のアップになっておりますが、しかしこれも大体握りめしその他については一応できるけれども、二日や三日はそれでいいと、しかし一週間、十日になりますと相当これについては批判も出ていますので、今後も単価の引き上げに努力いたしたいと思います。給食センター等に当たって、炊事を引き受けるということについては、値段の折り合い等があろうと思いますけれども、そういうことで値段の折り合いについて協力できるということであれば、こういうのは大いに活用してもらうのが非常にけっこうだというぐあいに考えます。  それから第三点でございますが、災害救助法の基準の問題でございますが、これは確かに、何と申しますか、規模の大きい市町村ほど有利といいますか、戸数が少なくて、たとえば五千人未満で三十尺それから御指摘のように三万から五万人未満というところで六十戸以上が全壊と、そういう地域に災害救助法を適用するということになっておりますが、これはやはり従来の実績から見まして、大体三十戸以上の住宅が全壊あるいは半壊するというような場合に災害救助法というものをやったほうがいいという、これは経験的な何と申しますか、そういうことによってつくった数字でございまして、確かに人員のバランスからいうと先生の御指摘のように必ずしもバランスがとれてないということは事実でございます。しかし、私どもこれにつきましては弾力的な運用——確かにこの数字が非常に科学的に積み上げられた数字ではないということも私どもも認めておりますから、したがって、この数字についてもできるだけ弾力的な活用をしていくと。災害につきましても、たとえばそういう全壊戸数にかかわらないで相当の死傷者が出るとか、あるいは災害が隔絶した地帯に発生したために何らかの援護を要するというような基準も別にございますので、そういうものをだき合わせまして、必ずしも世帯数ばかりじゃなくてそういうようなことを使いまして、できるだけ私どもといたしましては、広くこの適用がされるように努力をしておるところでございます。しかも、それにつきましても一応の基準がございますから、非常に、三戸とか五戸というようなところにつきましては、これは適用ができないわけでございますが、こういう地域につきましては、都道府県あるいは市町村が災害救助法と実質的に同じような対策をするようにということを指導しておるわけでございます。災害救助法については、そういった対策をやったところについて国が国庫負担をする、それで非常に災害の少ないところは、これは県とか市町村の地方公共団体の負担も比較的少なくて済むわけでございますから、そういうところはできるだけ県あるいは市町村の負担で災害救助法と同様の措置をとるようにという指導をしておるわけでございます。
  180. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃ一つ、厚生大臣。  災害救助法は厚生省の所管でもございますし、年間の予算がことしは三億円だそうでございますね。これはことしは災害が多いから少しはふやさなければいかぬということで、いずれにしても三億円ですから、災害を受けた人に握りめしをやっても毛布をやっても、そんなことはとても微々たるもので、せめて国の真心として、災害救助法の内容くらいはもっとはずんで、災害が起きるのも、大きくいえば国の治山治水事業が悪いために起きるわけなんですから、そういう点でせめて災害が起きた場合の災害救助法ぐらいは、もっと内容充実してもらいたい。そのことを、ここに厚生大臣に要望したいと思うのですが、その御返事をいただいて質問を終わります。
  181. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 先般の集中豪雨で、私の郷里の高知県も相当の被害を出しまして、私も実は現場に行ってまいったのであります。ただいまの塩出委員と同じような感じも相当に持ったわけであります。ただいま三億円の予算ではあまりにも国の姿勢としてもおかしいじゃないかというような御意見もございましたが、私も確かに三億円ではそのとおりだと思います。しかしながら、この災害救助法関係はすでに御承知のとおり、三億円という頭は出しておりまするが、しかし、これは具体的な事実が出れば当然的な経費として予備費からでも出してもらえるというようなことで、目下大蔵省とも折衝しておるわけでございまして……。
  182. 塩出啓典

    塩出啓典君 単価を上げてもらいたいということですね。
  183. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) はい。単価の問題につきましては、先ほど局長からお話がございましたとおり、やはり検討してまいりたいと思います。
  184. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はカネミ油症対策について、主として厚生大臣並びに関係者にお尋ねしたいと思います。そのあとPCBの問題に触れたいと思いますが、持ち時間が短いので全部尽くせませんと思います。  それで私は午前中沖繩の売春対策について、関係各省の御意見ですね、前佐藤内閣当時の政策よりさらに一歩進める気があるのかどうかというようなことをお尋ねして、厚生大臣の御意見も伺いたかったのですが、これも私のほうの手違いで、お呼びをしてございませんので、それで要望だけ申し上げておきましたが、また、あらためて申し上げますけれども、つまり沖繩の売春対策に関しては、保護施設が非常におくれていて、ようやく七月の二十日ごろにうるま寮という婦人保護施設ですね、が開設の運びのはずだったんですが、そういう受け入れ体制がなければ幾ら厚生省でもできないという問題と、それから婦人相談員が十一人でございますが、売春の密度が本土の何倍もでとてもやれるような状況でないというようなことで、もっとこれを強化すべきではないかというようなこと。  それから婦人相談員がたいへん苦労しております。身分の保障、それから暴力団が非常におりますので、身分の保障も十分でないし、それから活動費を持っておりませんので、だれかを救い出して、しばらく世話をするのに非常にお金が要るわけです。そういう問題もありますので、この保護施設並びに施策のためにも、もっと腰を入れていただきたいということを要望として申し上げて、また別の機会にこれに関してお尋ねしたいと思います。  カネミ油症の問題も、これも私もたいへんしつつこく何年も何年も問題にしてまいりました。昭和四十三年発生以来、佐藤内閣のもとで、これの対策を何回もただしてまいりましたし、それから各歴代の厚生大臣、特に斎藤厚生大臣第一期目と、それから内田厚生大臣、それから二期目の斎藤厚生大臣とお三人ともたいへん意思表示をはっきりなさったわけでございますね。イタイイタイ病、水俣病、あるいは四日市ぜんそくなど、つまり公害に関しては裁判なんかでも被害者の権利が認められるような裁判が出てきておるわけですけれども、カネミ油症患者に対して、非常に手落ちがあると思います。それで、これまで、厚生大臣は、公害に準じた特別の救済措置をとるということを何回も言明していらっしゃいます。これはもう現に国会の議事録にたくさんございますし、それから、一昨年の公害国会のときには、山中総務長官が、無過失賠償責任制度を対象にするというようなことも言われておる。これは無過失というよりは明らかに過失であるから当然だというようなことも私議論した関係でございます。最近では六十八国会で食品衛生法の一部改正がございました。そのときにたいへんこの問題御議論何回も——三回くらい委員会で議論いたしました。それで食品による被害の救済制度を設けるということについて私たちは主張して、そして斎藤厚生大臣はカネミとかスモンとか、私は森永なんかの場合もそうだと思いますが、そういう食品から被害を受けた者に対しては救済の制度を設けて治療やらそれから生活の保障なんかもしていく、そしてその責任者である企業の因果関係がはっきりした場合に企業から金を取る、それまでの間、国家が救済をしていく、そういう制度をつくれということを要求いたしまして、それでそのとき斎藤厚生大臣はこれは特別の立法措置をしたい、特にカネミに対しては省内にもう事務的な準備を命令している。ただしこれは大蔵省との折衝も必要であるから、だからもう少し時間がほしい、こういうお答えを繰り返しておられます。それから食品衛生法の改正に関して附帯決議がつけられました。その附帯決議の中にも、一両年中にこの食品の被害に対する救済の制度を発足させるということが入れられてあるわけです。  そこで塩見厚生大臣の御決意を伺いたいわけですが、つまりカネミ油症というのはPCBの人体実験みたいなものですね。世界的にも有名になってしまいました。このカネミ油症の患者に対して、あるいは私はこれは森永の砒素ミルクなんかの場合も同じことだと思うんですが、被害者が苦しんでいて救済がいたずらにおくれている、こういうようなことをすべきではないんで、救済をまず急がなければいけない。そして原因——それはもう今度のイタイイタイ病の裁判でもわかりますように、疫学的に立証されたら、因果関係の法理論的な立証を待たずに人間の生命を救うということのほうを先にしてもらわないと困るわけですね。そういう点で非常にカネミ油症患者は苦しんでおりますので、この一両年というのを一体いつごろをめどにこういう救済制度をつくろうとしていられるのかどうか。それからつくるとしたらどんな内容にしようとしているか、その御決意のほどを聞かしていただきたいんです。
  185. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) カネミの問題につきましては田中委員のお話のとおり、非常に重大であり、また相当長い間すでにかかっておりまして、まだ御満足のいくような明確な対策ができていないということについての御懸念につきましては、私も理解のできる節が多いわけであります。まず第一に、治療方法が必ずしもまだ確立をしてないという問題もございますし、あるいは患者の把握の問題、いろいろな問題があるように聞いておるわけであります。もちろん原則的にはこの原因、結果が相当に明確でありまして、加害者に相当する会社のほうもそれぞれ努力をしておるようでございまするが、しかしまだお話のとおり、私は十分であるというふうにも考えることができないと思います。また政府のほうにおきましても例の患者負担の軽減の措置を特別の名目で行なっておるわけでございまするが、こういった措置もまだ不十分ではないかというようなことで検討をただいま続けておるような状況であります。すでに若干は新聞等にも出ましたが、私どものほうといたしましては、こういったような治療方法がどうも確定をしない、あるいは相当長期間にわたって療養を要する、あるいは患者にとって大きな負担がかかってくるというような難病につきましてはもう少し政府が積極的に出ていって、そうして国のほうがめんどうを見さしていただくというような体制をつくっていかなくちゃならぬじゃないか。先ほどお話がございましたような公害病患者と、そうかけへだてないような調和をとらせた救済措置等も考えていかなくちゃならぬのではないかというふうなことも考えまして、ちょうど予算の請求の時期にも当たっておりますし、まだそういった問題は相当に広範にわたる措置を要するという事情等もございまして、私どもとしては、ここで各部局等の知識も総動員いたしまして、そうして、私はプロジェクトチームということを言っておりまするが、そういうもので各方面から検討して、こういう問題の処理を前進さしたいということで、いま検討を続けておるような次第でありまして、明年度の予算の上にもこれをぜひとも反映したいというような努力をいたしておるところでございますので、御了承いただきたいと思います。
  186. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、端的に申しまして、これまで佐藤内閣でやってきたのよりは一歩進めるということでしょうかどうか。いま予算編成期で、予算ももっと取る、それからプロジェクトチームをつくって、その治療方法も進める、いま、これまでの公害における被害者救済措置と同等の公費による救済制度ということを要求しているわけですが、同等以上のものもあるかもしれない。カネミの加藤社長は因果関係が立証されるまでは治療費を支払わないということを絶えず言っております。部分的に少しばかり手当てみたいなものを支払っているわけです。それでこういう態度、これに対してももっと明確な立場をとっていただきたいわけなんです。で、公明党の小平委員がこの前公害病として認定せよというようなことを要求されて、環境庁ではこれは公害病とは認定しがたいと言われた。これは公害対策基本法の中では、公害の定義に相当しないから公害病とは言えないのですということであろうと私は想像いたしますけれども、しかし食品衛生法上の法規に明らかに触れているわけですね。これは環境衛生局長、どうなんですか。食品衛生法の四条ですね、販売を禁止される食品及び添加物というのに相当しますわね。「有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着しているもの。」に当たるので、そうしますと、その罰則は三十条で三年以下の懲役または今度はお金が上がったと思いますが、幾らになったのか、ほんとうは罰を受けるべき対象だったと思うのです、この社長というのは。しかしこれは法律的に因果関係を立証するまでは処罰しないというので、その間、患者のほうはいつまでもいつまでも待たされるというのはたいへん私は問題だと思うのですが、浦田環境衛生局長は小平委員に対して、健康診断をもっと進めるとかあるいは診療の基準をもっと厳密にするとかという程度のことしか答えていられない。一歩前進を、佐藤内閣当時よりも見せていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  187. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) カネミ油症患者に対しまする救済措置、ことに厚生省あるいは政府の立場でどうするかという根本的な考え方、姿勢につきましては、ただいま厚生大臣のほうからお答えしたとおり積極的に取り組んでまいるという所存でございます。その中身でございますが、やはり何と申しましても、そういった救済制度は、前国会に食品衛生法の一部改正の審議のときの附帯決議にもございますように、これをできるだけ早く具体化していきたいということで……。
  188. 田中寿美子

    田中寿美子君 いつですか。何年くらいですか。
  189. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) ただいま私どもは、食品衛生法のこの前の改正の作業の最中からこの問題に実は取り組んでおったわけでございます。したがいまして、これは今後さらに発展させてまいりたい、必要な調査費等も予算措置を講じてまいりたいということでございます。一両年じゅうということでございますので、その期間内にはぜひ実施できるように努力してまいりたいと考えております。  それから、それまでの間いろいろと具体的な施策も講ぜられるのではないかということでございますが、これはやはり何と申しましても二つの面があると思います。一つは、現在会社のほうでやっておりますいろいろな救済措置、その中身の問題並びにそれがよく守られているかという実施上の問題です。それからもう一つは、これが最も根本的な問題ではなかろうかと思いますが、患者さんの把握が十分でなくて、あるいは本来ならば当然医療費の支払いあるいは生活上の保障その他見られるべき方々が実は抜けておるといったような事態、この二つの面があると思います。  第一に述べました点につきましては、これはやはり会社に対しまして十分にその内容が守られているかどうかということの指導監督を今後とも引き続き十分にいたしていきたいと思います。  第二の点でございますが、これにつきましては、やはり現在の診断基準並びにそれに基づきまする検診のあり方のようなところに問題があろうかと思います。診断基準につきましては、これはいままでも毎年油症研究班の報告会を開いておりますが、近く招集する予定でございますので、その際に具体的に診断基準についての検討、改正をお願いするつもりでございます。それから、それに基づきましての患者さんの検診の方法その他、これは現在主として長崎県、福岡県、両県御当局の御要望、御意見も聞きながらより実際に即した、また的確に患者さんが把握できる方式でもって実施するように改めていきたいと考えておるところでございます。
  190. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま診断基準とおっしゃいました。これは油症認定基準と同じでございますか。違いますでしょう。認定基準によって——これは厚生省の認定基準でしょうか、それとも九大の油症班がきめているのか。何かこれでいま一千六十八人を患者の数として数えているわけです。だけれども、未認定の患者が一ぱいいるでしょう。いまおっしゃいました診断基準というのを今後改正していくことによってまだいろんな形の症状を持っている者を把握するということ、これをやっていかなければいけないんですけれども、これはカネミの会社のほうの発行した受療券というんですか、それをもらえるのは油症認定基準に即した者でなきゃならないというようなことがあるようですが。それから、その認可基準というのが非常に部分的な症状に関して認定してしまって、その後ほかに全身的に起こってきた症状に関しては認定基準を当てはめてくれないというような非常におかしなことがあるようですから、たいへん患者たちは不満を持っております。去る六月十九日、まだこの内閣が新しく発足する直前ですが、国連の人間環境会議のあとでカネミの代表の方が私どものほうにお見えになりまして、各省への抗議文を皆さんお持ちだと思いますが、抗議文と申し入れ書を出したということで御報告に見えました。その中でも油症の認定基準というのがたいへん一方的で狭く認定していて実際に未認定の患者がたくさんいる、だから、やり方を変えてほしいということを申し入れしておりますね。そういう点を考慮に入れてほしいということと、この九大の油症班というものだけでは私はだめなんじゃないか、たいへんこれに対して不信感もあるわけなんで、だから、もっと信頼のおける機関を設定する意思がないのかどうか伺いたいと思います。
  191. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 診断基準と申しますのは、事件発生直後に厚生省が主として九大の先生方を中心としてお願いいたしまして油症研究班を発足させたのでございますが、そこによって作成されたものを厚生省が受けまして各関係の都府県に示したものでございます。これを受けまして各都府県はいろいろと専門のお医者さんをお願いいたしまして油症治療研究班を組織しております。そして疑いのある方々の診断及び検診を行なってそれで認定と申しますか、いわゆる患者さんとして認めるという行為をここで各都府県では行なってきておるのでございます。その内容が確かに田中先生が御指摘のように従来必ずしも適正、的確というものでなかった点もある。たとえば内科的な症状についての考慮が不十分であるという点は確かにございます。したがいまして、そのようなことを十分に今回は考慮に入れまして診断の基準というものを実情に合ったように、その後の研究の成果も入れまして実情に合ったように改正してまいりたいと考えております。  それから、確かにいろいろと事情もございまして、いままでは主として九州大学の油症研究班によっていろいろな研究並びに治療、あるいは場合によりましてはさらに各都府県におきまする検診班の構成、組織ということにつきましてもいろいろとお願いを申し上げてきたところでございます。したがいまして現実には国公立の病院あるいは大学の附属病院などが主として患者さん方の診断、発見ということに当たってきたのでございますが、今後はやはりこのような経験の豊富な方々に、お願いすることはやはり引き続きお願い申し上げたほうがよろしいと思いますが、さらにこれに加えまして研究班以外——現在研究班に入っておられないお医者さんでありましても油症の診断について造詣の深いお医者さん、患者さんの日常をよく承知しておられるお医者さん、こういった方々の御協力を得まして患者の把握に遺憾なきを期してまいりたいと考えておるところでございます。
  192. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはぜひやっていただきたいんです。イタイイタイ病のときの医師のような方を全部入れていただきたい。  それから先ほど厚生大臣も予算の時期であるからと言われましたが、カネミ油症に関しては治療の研究というのでもう何年か前に科学技術庁の特調費をとってやりましたね。前国会で私のPCBの廃液処理の問題で伺ったときに通産省の方がPCBの研究調査費五億円を計上した、総額で五億円計上してあると言われたのですが、そういうお金もこの油症の、PCBの犠牲者であるところのカネミ油症患者の治療の研究にも使うようになっているかどうか、それから厚生大臣はどのくらい要求するつもりでいらっしゃるのか、その心がまえをお聞きしたいと思います。
  193. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 予算の計数的なこともございますので、私のほうからお答えしたいと思います。  カネミ油症に関しまする治療研究費は、従来昭和四十三年で二千四百万円余り、四十四年で三千二百万円余りというふうに本年度に至りますまでに約七千二百万円ほど支出してまいりました。一方、新しい問題といたしまして、同じ原因物質であるPCBの問題が昨年から出てまいりました。これは科学技術庁のほうのいわゆる特調費という形で出ておるのは先生の御指摘のとおりでございます。これが四十六年から私どもの関係といたしまして、四十六年では約三千七百万円、主として毒性の研究に使わせていただいております。それから四十七年では、現在これはまだ額は最終的に固まっておりませんが、同じくやはり毒性の研究、それから汚染の状況の調査ということも含めまして、科学技術庁でこれはまだ最終的にきまっておりませんが、厚生省のほうの予算をも含めまして、ほぼ一億円前後の額でもって実施していくというふうな予定でおります。御指摘のように、このPCBの特別の研究費の中で、さらに厚生省のほうで現在進めております食品衛生上の立場からの調査費にもさらにこれを上積みいたしまして、治療研究、人体の健康に対する影響というものを引き続き進めてまいりたいと、できるだけ早い機会に結論を得たいというふうに考えております。
  194. 田中寿美子

    田中寿美子君 ぜひそれは積極的にそういう努力をしてもらいたいと思います。  それでPCB、たとえば草津のコンデンサ工場ですね、環境汚染をして、結局その付近の住民にたくさんPCBが出てきたということで、公害としてもしそこの住民たちがその症状を公害病というふうに認定するとしたら、これに対して長い間たいへんもう死亡者も出したカネミ油症患者というのはまことに浮かばれないというか、片手落ちの感がございますので、両方考え合わせながら、ぜひ積極的に解決に向うような努力をしていただきたいと思います。  そこで、厚生省の食品衛生調査会でPCBの許容基準を決定するということになっておりましたね。それはいつ決定される予定で、どのくらいの許容基準を食品の中で考えていられるのか。
  195. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 当初の予定が若干おくれまして、現在最終の詰めに入っておるのでございますが、ほぼ八月の中旬をめどとして答申がいただけるものというふうに承っております。また、具体的な数値いかんということでございますが、これにつきましては、いまこの場でもって最終的にお答えできる段階でないのは残念でございますが、日本人の特性、特に食生活のいろいろな特徴というものを十分に勘案いたしまして、日本人の健康に影響を与えないということを目標にして進めていくということになっております。  それで、この際、一言私申し上げておきたいのは、今回きめられます予定のいわゆる規制値は、これは現段階において与えられるいろいろなデータ、また学問の結果、そういったものをしんしゃくいたしましてきめるということで、先生方の御意見をお聞きしますというと、さらにこれを裏づけるためのいろいろな広範な調査なり、あるいは動物実験が必要であるというふうに言っております。したがいまして、とりあえずは暫定的な形でもって規制値をきめたい。しかしながら、引き続きこの問題については検討して、しかるべきデータが出た段階でもってその規制値をさらに改定していくというふうな考えでおられるのでございます。
  196. 田中寿美子

    田中寿美子君 だいぶ予防線を張られたと思います。許容基準に関しては、大体磯野教授なんかは一PPM以上ではいけないというふうに言われておるわけですが、どうもうわさに聞くと、食品衛生調査会の答申として出されてくるものは二PPMぐらいじゃないか。これも、いま日本人の食生活を勘案してと言われましたけれども、勘案のしかたもいろいろありますね。漁業で食べている人が多いから、魚があまりPPMがたくさん入っていると売れなくなるので、その業者のほうを考えて数値を高くしようという考え方と、いや日本人は魚をたいへん食べるのだから外国よりは数値を低くしておかないと身体に悪いという考え方と二通りございます。産業優先の考え方に立たないでこの際先どりをしてもらわないと、私は、そういう点では厚生省なんというのは、そういう点でもほんとうに勇敢に主張してほしい。どうしても通産省なんというのは業界サイドに立ちやすいのでございますから、たいへんいま予防線を張られて、最低基準としてはなまぬるいものが出そうな感じがいたします。この辺は私は注意を喚起しておきたいし、厚生大臣、こういう問題は、厚生省はほんとうに人間の生命や健康を守る立場でほんとうにきびしいことを言っていただくのが仕事だと思うのです。ですから、先どりしてください、人間の命を守るという意味で。暫定的にまあたくさん食べさせておいてだんだん減らしていく、これは実は間違いですよ。どうお思いになりますか。
  197. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) この調査会におきましては、それぞれその意味での専門家が長期にわたりまして検討の結果の結論を出されるわけでありまして、私どもはその結論の出ることに期待をいたしておるわけであります。私ども詳しいことはわかりませんが、やはりその基準というものはこれを公表して安心をして国民が食べられるというようなそういう線をここで引かれるものと思うわけであります。そういうふうな意味合いにおきまして、長い間非常に熱心な御討議を経て、最近答申がお渡ししていただけるということでその結果をお待ちしておるような状況でございます。
  198. 田中寿美子

    田中寿美子君 厚生大臣、もう少し意欲を持ってくださいよ。労働大臣は意欲があったですよ。厚生と労働と競争してください、人間を守るためにね。  これ以上追及する時間がありませんから、通産省の方に伺います。それで、PCBの製造禁止をしたわけですね。三菱モンサントと鐘化と二つしか原材料つくるところはないわけです。六月十四日に最終的に禁止をした。これは完全禁止ですか、どうですか。
  199. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 六月十四日で生産を停止いたしまして、自後再開するということはございません。
  200. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ、外国では禁止しておりますか。
  201. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 私どもの知っている範囲でお答えいたします。  アメリカでは、モンサントが一社つくっておりますけれども、これはまだ閉鎖系つまりトランスとかコンデンサー用にはその生産したものを出荷しているというように聞いております。それからヨーロッパの方面では、ドイツにおきましてはバイエルが、フランスにおきましてはユージンクルーマンがまだ製造を続けているというように聞いております。
  202. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、日本でその二社を禁止しましても、外国から輸入はできるわけですね。そして現実に輸入しておりますでしょう。いかがですか。
  203. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 最近まで輸入が行なわれていたことは事実でございますけれども、これは、私どもはPCBの使用につきましては、ことしの三月に通達を出しまして、開放系は一切使用してはならないと、これはまあ昨年じゅうから指導してまいったわけでございますけれども、本年一月にさらにこれを確認しております。  それから閉鎖系につきましては、ことしの三月に通達を出しまして、将来トランスとかコンデンサーに使われておるPCBがそのトランス、コンデンサーそのものを廃棄することによりまして同時にこれが環境に及ぼす廃棄がされるということのないように管理を強化いたしまして、たとえば使用機器に表示を付するというような管理を強化いたしまして、そうして将来それを廃棄するときには必ずPCBは回収すると、こういうことをやる場合に限り例外的に使用を認めておると、それ以外は一切使用を認めないと、こういうまあ通達を出したわけでございます。したがいまして、今後そういう回収を行なう。用途につきましては、PCBを輸入して使うということは禁止しているわけではございませんけれども、現在すでにトランスとかコンデンサーにつきましてPCBを使用しているのは、国鉄新幹線等の車両用トランス等、ごく一部に限られております。そういうものだけがまだ生産が続けられているというだけで、ほとんどのトランス、コンデンサーにつきましては、すでにPCB使用のそういう機器の生産がおそらく今月一ぱいでなくなるというような状況でございますので、輸入につきましても今後はごく例外的なことはあるかもしれませんけれども、一般的に輸入というものは考えられないのじゃないかというふうに考えております。
  204. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまその使用禁止については通達を出して確認したと言われるけれども、これの確認はどういう方法ですか、会社の報告を受けているわけですか。開放系のものは一切もう使っていないということをあなたは証明することができますか。たびたび出てくるじゃないですか方々から。パンの袋だとか、あめの紙だとか……。
  205. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 開放系につきましては、昨年来使用を昨年一ぱいで禁止するというように指導してきたわけであります。で、その点につきましてことしの一月に再度通達によってその状況、つまりいつまで使っていたかとか、あるいは十二月末にPCBがどれだけ在庫として残っていたかというような点の報告を、これは当該企業からでございますけれども、聴取しておるわけでございます。ただ、いま先生御指摘のように、ことしになりましてから、印刷用のインキにPCBが入っていたものが発見されたわけでございます。これははなはだ残念なことでございますけれども、私どもは印刷インキにはPCBは使ってないと、こういう報告を印刷インキの業界団体から受けておりまして、一時それを信用していたわけでございますけれども、しかし、いろいろうわさも出ておりますので、再々これを確認した結果、使っていましたということがわかったわけでございます。そこで直ちに使用を禁止しますと同時に、このPCB入りの使用インキですでに販売していたものを回収するということも同時に命じまして、七月現在でインキ会社三社におきまして約六十一トンの印刷インキが回収されているという報告を受けております。
  206. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ通達と報告の行政で全部もう点検が終わったというふうに考えられるならば、非常にこれは甘いことでございますね。それで問題は監視ができていない。これは現在の人員からしておそらく監視が不可能な状況なんで、結局、業界にそれをまかせるということになりますね。で、何とかこれはもっときびしい監視の方法、回収だって徹底的に回収されているのかどうか、それを見る方法はないかどうか。それから回収も、この前六十八国会のときに私が廃棄物処理施設整備緊急措置法のときにお尋ねいたしました。これにあなただったと思いますが答えておられますね。その回収の指示をしました。しかし、当分、たとえばトランスだとかコンデンサーなんという、いわゆる閉鎖系のものというのは当分長い間使われる。そうして使われた結果廃棄物として出てくる。これを見届ける方法、それから開放系のものをどんどんこれを回収し切ってしまっているか、使わないでいるかどうかを見届ける方法、一体どういうふうにしてやられるのでしょう。何かそれは特別の方法を考え出さない限り、私は、PCBがやたらにやはり出てくるという状況はとめることができないのじゃないかというふうに思うのですね。それは何か考えていらっしゃいますか。
  207. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 監視の問題でございますけれども、先生御指摘のように、現在の陣容でPCBを使用する可能性のある工場を随時検査に行くということは人員的にもむずかしい問題でございますし、またあくまでも現在の段階では行政指導という形で一連の指示を行なっているわけでございますので、また立ち入り検査というようなことになりますと、まあ法律上の裏づけというようなことも場合によっては必要になってくるのではないかというように考えられるわけでございます。まあそういうことで現在のところは国内の生産というものはなくなったわけでございますので、今後PCBを新しく使用するということになりますと輸入ということになるわけでございます。そこでこの輸入がみだりに行なわれないようにということがやはり必要なのではないかと思うわけでございますので、輸入関係の消費者団体というようなものに対しまして、現在までの一連の措置というものをよく徹底いたしまして、PCBをみだりに輸入しないようにということを指示してまいりたいと考えているわけでございます。  それから将来トランス、コンデンサー等、これを廃棄する場合にそれを見届けるという問題でございますが、これは相当まだ先、ずっと長い間続く問題でございますが、これについてのやはり監視という問題があるわけでございます。で、当面といたしましては、やはり開放系に対すると同様に、随時監視を適切に行なっていくという体制は非常にむずかしいわけでございますけれども、実は私ども、このPCB問題にかんがみまして、第二、第三のPCBを出現させないようにということで、化学物質——特定の化学物質でございますが、特定の化学物質につきまして、新規に生産される、開発されるものはもちろんのこと、既存のものにつきましても、問題になりますような物質群に属するものはこれを再点検するということを内容とする法規制を現在検討しておるわけでございます。それで、これは私どもの省の審議会に斯界の権威者に集まっていただきまして、そこでそういった内容の検討をすでに開始したわけでございますが、かりにそういった法規制が今後できるということになりますと、当然PCBもその中に含まれますから、その法律に基づきまして監視体制を強化するということは可能であろうというように考えておる次第でございます。
  208. 田中寿美子

    田中寿美子君 非常に問題がたくさんあって、私はきょうはもう時間がなくなりましたから、あらためてまたゆっくり伺いますけれども、輸入の問題でしょう。それから立ち入り検査をしなきゃほんとうにわからない、監視員の問題。回収がはたしてちゃんとできているかできないか、これから長い間これは見届けなければいけない。それから回収したものを一体どう処理するのか、廃棄物処理の問題がありますね。工場の構内に山積みしておるというような現状であっては、これまた問題があると思いますし、そういう問題全部を含めて、前回、廃棄物処理の問題でお尋ねしたとき、一通り答えていられますけれども、これらを処理していく方法を実際に実現していただかなければ何にもならないじゃないかと思います。それで、きのうでしたかの新聞に民間で特殊会社をつくって産業廃棄物の処理をさせるというような案を——これは厚生大臣の案のようですね——考えていられるようなんですが、つまり、これを処理する場合の焼却の焼却炉の問題もあって、問題だらけだと思うのです。一体、このPCBの対策というものはあるのかしらと思うくらいの状況で、だからこそ母乳にもPCBが出てくる。そして私が心配しますのは、すべてこういう物質は胎児のほうに移っていくわけでございますね。ですから、次代を守る民族資源といったらちょっと国粋的になりますけれども、次の世代を守るという立場から非常に早く手を打たないと取り返しのつかないことになってしまって、わけのわからない病気が次々に起こってくるというような状況にあるように思いますので、この問題については、私は、きょうはこれ以上質問する時間がありませんから、また詳しく通産省の考え方、厚生省の考え方、そして環境庁の考え方なども伺うつもりでおります。少なくとも通達上は、製造も禁止したし、使用も禁止した。しかし完全に使用をやめてしまうつもりなのかどうか、その辺も私は伺いたい点でございます。大型のコンデンサーなんかには代替品がないのかあるのか、どう考えていらっしゃるのか、そういうことも含めてまた次回にでもお尋ねしたいと思っておりますので、もう少し具体的なお答えをいただけますようにお願いをしまして、きょうの私の質問を終わります。
  209. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、きょうは栄養問題につきまして、閉会中の審査でもありますから、一つにしぼって関係各省に対してお話しを承りたいと思います。  まず、基本的な問題からお伺いしたいわけでありますが、言うまでもございませんが、栄養・食事というものは生命の基礎でありまして、栄養を補給することができなくなったならば生命は保つことができなくなるわけでございます。今日の行政の中で栄養の問題が取り扱われておりますのは、学校の給食だとか、病院給食などの関係があるわけでありますが、私はきょうはその病院食についていろいろとお伺いしたいと思うわけであります。  まず厚生大臣にちょっとお伺いしたいと思います。それは栄養問題は、健康増進あるいはまた病気の治療あるいはまたリハビリテーション、アフターケア、いろいろな中で、私は国民の立場に立った経済的な負担のわりあい少ない医療の行為だと思うわけであります。病院なり、そういうふうなところで差し上げている食事というものは、これは日常家で食べているものとは違って、やはりこれは一つの大きな治療、病気をなおすというふうな医療行為の中に入るべきだ。これがもし反対にこの食事が悪ければなおるのがうんとおくれるわけであります。現状でもこの地位とか、場所、名称、食費などの点から考えて最もこういう重大な意味を持つものが軽視をされているわけであります。ことに病院の食事というものが軽視をされていることは、治療の上からいって非常に大きな支障になろうし、なおる病気がなおらなかったり、回復がうんと長びいたりする。これはひとつ十分に重大視をしなければならぬ問題ではないか。ことに食事というものを、病院食というものを軽視してはならないのだ、こういうふうに私は思うわけでありますが、まずこの点で、日本の医療制度の中、あるいはまた保険制度の中でお考えになっておりますことが私はもっと何かの形でこれを充実させなければならぬと思うのでありますが、大臣、まずこの点のお考えをお聞きしておきたい。
  210. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) いまから三、四年ほど前に、私も一カ年間病院生活をしたわけであります。まあ一カ年間の体験と申しまするか、その間に一年間私も病院の食事をし、またお医者さんの治療を受けたわけでありまして、やはり病をなおすにはからだがじょうぶにならなければならないのじゃないかということで、私自身も実は体験したわけでありまして、やはり栄養を重視されるという大橋委員のいまの御説には、私も体験上同感の意を表したいと存じます。
  211. 大橋和孝

    大橋和孝君 そのように食事というのは私はほんとうに大事だと思うのでありますが、健康保険の中を見ましても、食事に対する取り扱いが非常に低い、こういうふうに私は思うわけであります。  ここでもう少し具体的な問題についてちょっと伺っていきたいと思いますが、たとえば国の医療機関ですね。これは国立の病院であればこれは優秀な病院としての代表的なものだ。これは国民が一般にそう思っております。ですからして、国立の医療機関や大学病院でやっておられることは最高の医療内容であり、またそうしたものが行なわれておると信用があるわけでありますが、こういうところの機関では栄養問題についてどうなっておるかということを考えてみますと、私はむしろこういうところが、どういうふうに行政指導をされているかは知りませんけれども、病院給食は直営で病院そのものでやっておらなくて、むしろこれを下請に出しておる。これは東大でも、京大でも、阪大でも、大部分がこういうふうに下請に出しておられるわけであります。この下請を国でむしろ推奨しているようなふうに感じられるわけでありまして、言うならば代表的な医療機関がこうした病院給食を下請に出しておる、こういうことになりますと、何だかこれはむしろ国の政策としてやはり病院の給食というものを下請にしようというふうな考え方があるのではないか、こうなったら私はたいへんだと思うのでありますが、厚生省や文部省はこれをどう考えておられますか。ちょっと両方からの御意見を伺いたいと思います。
  212. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この問題につきましては、厚生省といたしましても、先生のおっしゃるように、できるだけ直接的な管理のもとに行なう、いわゆる職員をそのまま使う方法でやるのを一応原則とし、大部分はそうでございますが、先生御指摘のような病院外のものに請負わせまして、そして病院の施設の中で病院の管理者が自分のところの給食と同様に献立てその他内容、それから定期的な検査、こういうものも行ないまして、やっておる実態は確かにあるわけでございます。こういうような点につきましては十分管理のもとに行なわれる点につきましては一応認めておるわけでございまして、患者の療養には直接的には支障がないと考えておりますが、原則としては大部分の病院が持っておるように、直接的にやるということが現状では大部分でございますので、その点につきましては請負であり、なお外部からの導入でないという点だけは一応認めておる、こういうことでございます。
  213. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 文部省の医学教育課長の齋藤でありますが、文部省といたしましても大学の付属病院の給食は、先生おっしゃるとおり治療の一環として行なわれておるものでございまするから、原則として国が直営で行なうことが望ましい、こういうふうに考えております。しかし、大学病院の一部にはまさに御指摘のようにあるいは沿革的な事情もあるわけでございますけれども、財団法人にこの業務を委託しておるものがあるわけでございます。もちろんいま厚生省からも御説明のありましたように、病院内に給食施設を持っておりますし、あるいは病院の管理者が直接その責任を持って委託を行なわせておるわけでございまして、そういう意味では必ずしも趣旨に沿わないという、そういうものでもないわけでありますけれども、ただ、文部省といたしましても、原則として国が直営で行なうことが望ましい、そういうふうな考え方で近時直営にできる限り切りかえておるわけでございます。ただ、国家公務員の定員なりあるいは賃金・職員という非常にむずかしい問題がありまして遅々としておるわけでありますけれども、昭和四十一年から四十七年までに、たとえばいま御指摘のありました阪大病院においても特別食については直営で行なうという、こういうふうに切りかえたりしておりまして、六件ほど直営に切りかえたり、こういう実態になっておるわけでございます。
  214. 大橋和孝

    大橋和孝君 これ院内で云々という話が出ておりますが、これはもう前この委員会で私質問をいたしました北九州市が合併をしたときに、あそこに七病院があるわけですが、これは七病院とも一つの下請機関で食事をやっておるわけです。院内でつくっておるというようなことにもならないわけなんですね。こういうようなことがあって、私は、その中にあのカネミ油症の問題が起こって大騒動になったわけであります。こんなふうなことを一つ考えてみますと、私はこの給食の下請のあり方は非常に私は疑義があると思います。ところがまたこういうようなことに私は気づいて非常に驚いておるんでありますが、たとえば東大病院の下請をしておるのは財団法人東大好仁会といいますか、これが下請をしておるのであります。財団の下請単価が四百四十九円、給食単価が平均をして五百八十九円であります。その差額百四十円、これは文部省が管理しておると聞いておりますけれども、文部省がピンはね返してこの百四十円を管理していると、これはどういうことなんですか。こういうようなことを聞きますと、私はもう奇々怪々、文部省直営の大学病院が百四十円をピンはねして文部省でこれを管理しているというようななこと、これであればこれは私はたいへんなことではないかというふうに思うわけであります。また下請のこの弊害は、先ほどからもお話が出ておりますけれども、患者と栄養士との間に厚い壁ができてしまって、栄養士はただ献立てを作成して調理をし、給食するにすぎないのがいまの現状でありますけれども、病院栄養士というものの使命はやはり栄養指導をする、これをしなきゃならぬ任務が全く行なわれないことになっちゃうわけであります。この解決の道はやっぱり直営化であり、病院内に栄養相談とか指導、こういうことができるような窓口を設けて患者と直接に話し合いをし、患者の衛生を管理していくという体制をつくるべきではないかと、こういうふうに思うわけであります。いまの二点について厚生省及び文部省の御見解を聞きたいと思います。
  215. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 御指摘のように保険の点数よりも患者給食のこの費用が若干下回っております。この点についてはまさに仰せの、御指摘のとおりでありますけれども、このように特に大きく下回った理由は、この二月一日に保険点数の改定がございました。そのために予算とその点数との開きができたと、これが一つの大きな理由になっておるわけであります。ただ買い上げとは申しましてもすべての費用を買い上げに充当しているわけではありませんでして、国家公務員である栄養士なりあるいは給食係というふうな者が各大学におるわけでありまして、これも患者の栄養の管理に当たっておるわけでございます。そういうふうな人件費はこれは買い上げの経費ではなしにいわゆる国庫から出ておるわけでありまして、しかもこういうふうな経費につきましてはほかの予算に流用することの絶対ないようにという、特にこの栄養士の経費についてはほかの予算に流用することのないようにという、そういうふうなことで、文部省がほかに流用してカットしておるという、そういうわけでは決してございません。ひとつ御了解願いたい、こういうふうに思うわけでありますけれども、東京大学におきましても、本院では二人の栄養士さんを置いておりますし、分院では三人の国家公務員である栄養士を置いておるわけでございまして、これがやはり食事の、栄養の管理に当たっておるわけでございます。
  216. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 病院の給食の大事なことは基本的にございますが、病院栄養士の活動につきましては、まあ医療法で病院の栄養士の一名設置というような規定があること自体がむしろじゃまになるのじゃないか、もっとたくさん置けるようにしろという御質問も過去に国会等で受けております。この実態につきましては確かな数字を私記憶しておりませんが、少なくとも二以上の栄養士の設置に現状は病院関係はなっておりますけれども、確かに給食その他に追われまして、先生もおっしゃるような相談業務あるいは患者の給食、栄養指導というようなことに十分手が回っていないという実態でございまして、この点は今後の病院運営の上ではきわめて重要な問題だというふうに認識いたしております。
  217. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの説明では私どうも十分納得ができないのでございますけれども、いま私が数字を示したように、これは一人分の食べる、この百四十円というものを文部省が管理しておるわけであります。それはどこにそれを管理して使っておられるのか、それをもっと具体的に説明してもらわないと百四十円、これは一人一人をあれするとかなりの金額でございますね。こういうものがどういうふうにされているのか。いまお話を聞きますと、栄養士なんかちゃんと別なルートで賃金を受けて国家公務員として置いてあると、こういうわけです。そうしたら百四十円は一体どこへいったか、それがまだあなたの御説明では、やはりこれは給食関係のもの以外には使わないように制限されていると言うが、給食関係の何に使うんですか。このおびただしい金をどこに使っておるんですか。そこをはっきりしてもらわないと困るわけです。
  218. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) そこのところは予算の積算におきまして患者給食費というものが積算されております。これがその予算の積算自体が保険点数を下回っておるために、若干先生御指摘のような事情が起っておるわけでございます。別途病院収入は保険点数で入るわけでありますけれども、それはすべて病院収入ということで国庫収支になってしまう、こういうふうなことになっておりまして、文部省がそのお金を管理しておるというのではなしに、国庫の歳出の予算と歳入の予算がこの給食の経費については若干ズレがあると、こういうことでございます。
  219. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうなると患者の側に立って——私が病院に入ったときに、実際私が病気をしてからだをなおすためにもらう金はいま言われている四百何ぼで百四十円の分は向こうへ持っていかれてしまったら、これは実際当然受けるべきものを国庫へ納めてしまって知らぬ顔をしているということですから、これはまた政府はえげつないことをやって、そして人の命を、それが与えられなければならぬその計算されているものをピンはねしておいて、そうしてもっと健康状態を悪くして病気をなおすというんですから、これは病気はなおりっこない、こういうような罪悪をやっているんですから、これはもしそれがあったとしたら即刻改めて、いまのところはやっぱりこの病院の給食が低コストのために十分なものを与えられていない、やはり治療の目的だからいまの値段をもっと上げなきゃならぬということをぼくは議論しようと思っているのに、この貧しい経済の中からまたこの百四十円をピンはねしておいて、そうしてこれは国庫収入にあがっちゃいますといって病院をやらしておいて、そうしてそれが国の病院であり、あるいはまた大学の模範な病院であるということであってはこれはやっぱり医道がだんだん地に落ちていく一つの原因を私はつくるんじゃないかと思うんです。だからこれは命に関係する栄養の問題ですからね、非常に大事な問題だ、こんなことをあなたがいま涼しい顔をして、それはもう文部省知りませんよと、国に納めていますと言ったら、これは国が総がかりで弱い者いじめで、病気したやつからみんなピンはねして、百四十円ずつ毎日かっさらっておるというんですから、いまこんなことをもしやったら、町でちょっと百四十円ぐらいのものを盗んだらうしろに手が回るんですよ。これは当然戻すべきものをピンはねしているんだから、大どろぼうしているわけですよ、ということになるんじゃないかと、どういうふうにお感じになります。
  220. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 御指摘のように、給食費は非常に点数よりも下回っておる。この点については私どももぜひ給食費を来年度予算においても上げるように努力したいと、まさに御指摘のように考えております。ただ現在のこの給食費に基づきます経費におきましても健康保険法に基づく給食の基準のカロリーなりあるいはたん白質なり、脂肪の所要の量には下回っておるわけではございませんで、そういう意味では材料費については十分この給食の基準に合うように努力はいたしておるわけでございます。ただその点については、先ほども申しましたように、二月一日に保険点数が上げられた。そのためにこの差が非常に大きくなって、御指摘の、おしかりの原因があらわになったわけでございますが、この点にぜひ来年度予算においても努力をして上げたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  221. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 委員長からちょっと発言しますが、齋藤教育課長ね、あなたは大学で給食をやるときに、それを財団法人組織にして下請に出しておる。その財団法人の経理がどうなっているか、それを調べてきてから答弁しているの。これは実は昨年の初めに、私は全国の各大学の財団法人のその関係のものを調べてみた。そうしたら、そういうふうな給食のピンはねをやって、それが財団法人の収入になっておる。それがどういうふうに使われておるかということをしさいに検討した結果、文部省の教育課長、その当時だれだったか知らぬが、その方にはきびしく注意しておいたはずです。そしてこの点については是正するということを言っておった。これは私とその教育課長との話であった。しかしながらいまの答弁を聞いておると、その当時あなたのほうから、文部省のほうから私のところへ提出した資料とあなたの答弁は全然食い違っている。そうしてピンはねをした金を財団法人の会計に入れて、それで学術研究費だとか何だとか、いろんな名目をつけて出しているじゃありませんか。だから、あなたがもしその財団のピンはねをして、その収入として入れた金の使途をきちっと調査をしてきておらぬのであるならば、そういう不確実な答弁をしてはいけないということです。あらためて調査をし直してきて、きちっとした答弁をせぬと、いまのようないいかげんな答弁をしたんでは委員会侮辱になるんだよ。委員をばかにしちゃいかぬです。
  222. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 御指摘のように、東京大学の好仁会の財団の経理は非常に赤字になっておりまして、たとえば昭和四十五年度の決算額について申しますと、収入額が九億三千八百万、これに対して支出額が九億五千九百万という、こういうふうなことになっているわけでございます。したがいまして、二千百万という、こういう赤字になっております。なお、給食の経理のほうにおきましても、この中身といたしまして赤字の一つの大きな原因になっておるわけでございます。そういうふうな意味におきましては、確かに買い上げの経費が少ないと、こういうふうなことのために非常に大きな問題になっております。その意味では、私どもといたしましても、できるだけ患者給食費の引き上げについて努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  223. 大橋和孝

    大橋和孝君 私もいま委員長のような考え方のもとに質問しているわけでありまして、普通の——これは大臣もよく聞いておいてもらいたいんですが——普通の病院どこでも給食をやってみな赤字なんです。出血をしながらやっているわけですね、いまの点数のもとでは。ですからおそらくこのいまお話になっているように、この財団法人もいま赤字だとおっしゃっています。当然赤字になるような価格なんですね。それに百四十円ずつピンはねができるという状態に、私は非常に不可解に思ってこの質問をしているわけでありますから、そういう関係から申しましても、これは入院費の中に含まれておる給食代というものが、やはりこの健康保険の点数でも、もっといま言ったような重大な問題だから、少なくともいまの物価にスライドしたものにしていかなければ、それはどこかにしわ寄せになっていくものですから、かわいそうな目にあうのは患者さんなんですよ。そういうようなことがやられておるようなことでは私はこれはたいへん問題だということを初めに認識をして質問しておる。いまちょっとお話を聞きますと赤字だとおっしゃっていますが、少なくとも東大の——きょうは東大にしぼりますから、東大全部の、一つの経理の状態を資料としていただきたい。材料を何を使って、それからどういうようなことに月々に要って、一日にどれだけ要ってという詳しいデータを私は出していただきたいと思います。これによっていま一ぺんよく御質問を申し上げて、そうして私は、たとえばこの病院の食事というものだけに対してはどうすべきかということがここへ出てくると思うのですよ。大学の法人の中で、下請をやられて、まあ大学の命令だからそれを聞かなきゃならぬというので赤字を出してやっているわけですね。そうして、また先ほど委員長も言われました百四十円というピンはね額をどこに使っているかということがまだこれは明白じゃないわけです。それについては一ぺん国に持っていってしまっているから知らぬという状態なのかどうなのか。一体これは、また還元しているわけですよ。これはまだほかでもそうだろうと思います。また京大でもそうであります。東大でもそうだろうと思いますが、こういう下請機関、これは年々研究費なりあるいはまた調査費なりということで外国へ行かれる人の、先生方の費用になったりあるいはまた研究名目で研究費に出たりしているわけです。この中から、赤字であるのにまだそういう金を出さされておるわけですから、そういうピンはねをしているから収支が償わなくなっておる、こういうふうに私は理解しているわけですが、ひとつそういうような意味でそういうところまで含めた一目瞭然たる資料を私はいただきたいと思うのです。
  224. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 資料を整えまして御説明いたしたいと思います。
  225. 大橋和孝

    大橋和孝君 次に、この病院食が非常に先ほど申したように低コストでありますために患者に満足のいく食事がなかなか望めないのが現状であります。ですから、病院給食は治療する行為の一環であるというふうに考えるならば、現在基準給食を行なっていれば、一般食で一日に五十五点、特別治療食で、これはじん臓病食だとか糖尿病食などでありますけれども、六十六点これは支払われることになっておるはずであります。これが全部食材料費として使用されないで、一番よいと思われる都立病院ですら材料費については六〇%しか使っていない。それからまた、私の調査では国立のある大学の病院などでは、何とひどいことに、その食費の材料には三二%から五〇%使っているのだ。そうしたら、この物価の高くなっているのに、食費の材料にはいまきめられておるところの食費の中の三二%や五〇%が材料になっておったら、これはおそらく腐る前のものを集めてこなかったら手には入らないわけです。カロリーのあるものをまともに買ってくれば、これはいまの低い価格の三〇%や五〇%の材料費では私はとても健康な人がその体位を保つだけの食事そのものにはならぬ。特に病人に必要な高カロリーの、あるいはまた食べやすいものを計算をしまして、先ほどちょっと課長おっしゃいましたが、カロリーはありますと、カロリーは油やなんかをよけい入れておいたらカロリーはふえるんですよ。これは病人はてんぷらや油でいためたものばかり食えないわけですね。こういうようなことで、カロリーを無理やりに合わせようということでは病院食にはならないわけです。こういうようなことを考えてみますと、何か基準給食の食費全部を材料費に回すべきだと私は考えるわけでありますが、これは厚生大臣どうお考えでございますか。
  226. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この点につきましてはいろいろ問題点がございますけれども、基準給食の単価がいわゆる保険の点数設定でございますので、中医協等の御意見等もございましておきめになっておるというふうに理解するわけでございますが、われわれとしては、たとえば私のほうの所管の国立につきましては、従来点数改定のあるなしにかかわらず原則として物価スライド、その上に内容の改善等を加味しながら、あるいは米価の改定等に即しまして、従来診療点数と必ずしも並行しないで、点数改定のないときでも社会情勢に合わせてアップしてまいっておるわけです。しかしながら、先生がことしの、たとえば本年度の国立病院等の基準給食の材料費と申しますか、予算を見た場合、保険の上がったわりあいには上がってない。したがって、率は先ほどの都立で六〇、国立の悪いところでは三二というふうな数字をお示しになりましたが、国立は一番いいときで五七という年がございましたが、ことしは四五でございまして、その点確かに文部省からもお答えございましたように、今回の病院経営を考慮した中医協の配慮による給食費の点数の設定と、われわれの準備しました給食費との関係に本年度のところは確かに大きな従来にない目立った差があるという点は御指摘のとおりでございますので、今後はこの給食費の改善については、特に単なる物価だけじゃなく、内容の改善等に努力いたしたい、こういうように考えております。
  227. 大橋和孝

    大橋和孝君 食事をおいしくいただくためには、やはり適温ということが必要なわけです。冷えてしまって冷たくなってしまったものではやはり食欲が減ってしまうわけであります。ところが病院給食の設備を見ますと、どこでも病院の片すみに追いやられた給食室、そしてそれに対しては適温を保つための方法が考えられておりません。てんぷらとかフライというようなものがあげられても、これはおいしく食べるためにはやっぱりあったかいときに食べるのがおいしいわけでありますが、これが味の最も悪い条件になったときに患者に給食されております。また食餌療法という治療効果をあげるためにも、私は病院に対しまして改善のための指導をする、あるいはまた新設の病院に対しては一定の条件をつける行政指導が当然なされるべきじゃないかと思います。あるいはまたそういう条件をつけることが必要だろう。食事の時間でも、これはごらんになりますと、七時半から八時に朝めし、十一時半に昼食、四時半には夕食、そうなりますと九時間の間に三食詰め込まされて、あとの十五時間はほうりっぱなし、こういうことになっている。これは事実ですね。私も東一にごやっかいになりまして御飯をいただきましたけれども、まだ朝めし食べて、昼めし食べて腹一ぱいのときに、四時半になると夕めしが出る。それを食べないともうお下げいたしますと言って持って行かれちゃうから無理やり食べなければ、そのあと十五時間ほっておかれるということで、これじゃもう食餌療法ということにはならぬように思うんですけれども、そういうような意味で私は非常に病院の給食というものを根本的に考え直すべき時期ではないか。それからまた、金と人との問題がこの給食に対してはあるわけでありまして、患者本位あるいは医療従事者本位の病院給食にするために厚生省でも抜本改正をやられるときにひとつこれは徹底的にこういう点を考えてもらうことが最低底辺の条件になるんではないかと思いますが、これに対しましてどうかひとつ大臣の決意のほどを聞きたいところでありますけれども、まあひとつ当局の局長の……。
  228. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) もう全く実態は先生の御指摘のとおりでございます。この点につきまして、別にまあ理由なり言いわけなりを申し上げるわけじゃございませんが、食事時間については職員の勤務との関係でわれわれも国立関係の課におりまして、この点を最大限努力して、中には二食主義というものがくふうとして生まれた例がございます。かなりこれは定着しそうだったんですけれども、やはり患者に不満が出まして、二食でなおかつ内容をよくするという仕組みでございますけれども、これはやはり常識からやや逸脱しておるという感じで、やはり三食主義に戻っております。こういうような点につきましては、改善した病院はパートタイムの職員を——これは国立などではそういうことが予算上、職員の処遇上なかなかそれができません。しかしそれに重点を置こうとすると職員のパートタイム採用というような非常に弾力のある運営管理が必要になってまいります。したがいまして、どこの病院も今後食堂を設定して、あるいは自由にある程度時間に幅を持たして、自由に食堂で食べられる患者は食べるというような仕組みも考慮した病院の設計等が最近非常に多くなっております。いずれにしても長期患者と短期の患者と非常に給食に対する関心と必要性が違う。短期患者には特別食のようなものが必要である。長期患者には非常に変化に富んだ、恒常的にやはり栄養のバランスのとれたものが必要である、こういう病院機能全体をにらむ必要がございます。で、結論としては、病院の運営にとりまして給食は非常に頭の痛い問題であると同時に、患者にとりましても関心の深い問題でございますので、今後このような問題の改善には国立も十分配慮いたしますが、まあわれわれの局といたしましても、病院運営の観点から特に配慮してまいりたいと思っております。特に適温の食事につきましてはかなり配慮されまして、電子レンジ等の活用が最近見られてまいっておりますので、若干金はかかりますけれども、施設の改善にはそれぞれ努力して、要するにサービスのいい給食をしたいという意図は持っておりますけれども、各方面にからみ合った問題がございまして、先生の御指摘のような理想の姿にはなかなかまだ遠い感じでございます。率直に申し上げた次第でございます。
  229. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから厚生行政でもそうでありますし、文部行政でもそうだと思いますが、栄養に関係するところの専門官が非常に少ないということですね。そして国立病院課でもあるいは療養所課におかれましても、みな兼任で一人くらいしかいらっしゃらない。そして栄養課に一人いるだけというように私は聞いているわけでありますが、このようなことでは国民の栄養問題は重要であるのにかかわらず、処理できないわけですね。ですからやはり健康増進、疾病予防あるいは治療の基礎ということで食事を考えるならば、栄養をもっと重視して、各部署にそういう部署を拡大をして、そしてその専門的な職制の人を置いてもらう。また病院におきましても、これはもうほんとうに根本からいまの基準給食というものの考え方を変えぬといかぬわけですね。とにかくかっこうなものだけ出しておこうという考え方ではいかぬので、いまのような適温の問題だとか健康の問題だとか、あるいはまた病気をなおす上にどういうふうな配慮をしなければならないか、栄養というものをどう考えなければならないか、栄養士の役割りをどういうものにしていくかということをぴしっと割り出して、一ぺん計算してみたらどうですか。実際にこれだけかかるということで基準給食の考え方を変えぬと、いままでのやり方で、これだけ物価が上がったから何%上げるというだけでは根本的に解決しない問題なんですね。ですからやはりほんとうに患者の病気をなおすために必要なものは、実際にこういうものとこういうものと考えたら基本的にこれだけ要るのだ、またこういう役職の人が、栄養士なら栄養士の人が何十人くらいのベッドの中に何人要るのだ、こういうようなことをして人の割合をしなければ、先ほど私は金と人の問題だと、こういう病院の食事をよくするためにはそれが問題だと申し上げましたのはそれでありまして、その基準給食を上げて、そしてまた人を配備するということの計算をぴしっと立てて基準給食を割り出さないと、少なくともそういうことをしない限りこういうものになっていかざるを得ない。個人病院を考えてごらんなさい。先ほど東大病院は九億何ぼで赤字になっているというのですが、個人病院がこれだけの赤字を出したらみんなつぶれてしまう。つぶれないでおこうとすれば、悪いことばであるかもしれませんけれども、何らかつじつまを合わせなければ病院経営が成り立っていかない。そうなってくると、結局つじつまを合わしたところはだれがしわ寄せを受けるかといえば、病人です。そういうような弱い者いじめ、病気をしてまたその上なおかつ横っつらを張られるというような病院のシステムをつくっておいて、これは病院が赤字がどうだとかこうだとか言う前の問題が私はそこにあるのじゃないかというふうに感じます。ですから、いま申したように、もっと専門官も配置をし、ほんとうにやるためには、こういう設備が必要だ、このためにはこれだけ必要だということをひとつやってもらって、そして拡充をやってもらわなければならぬと思うのですが、特に厚生大臣、私はひとつここらでこの問題についてのお考えを聞いておいて、最後にまたお話をいろいろ伺いたいと思います。
  230. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ただいままでいろいろの角度から大橋先生より非常に貴重な御意見を拝聴してまいったわけであります。全く専門的な御見解で厚生省の私はじめ責任者は承っておったわけでありまして、私はただいまの御意見の趣旨を体しまして努力をしてまいりたいと思います。
  231. 大橋和孝

    大橋和孝君 それからこれは私前にもこの委員会で問題にして、お尋ねしてそのままにまだなっておるのですが、国立栄養研究所の機能と役割りですね。国立栄養研究所は大正十一年十二月十七日に落成をして、五十年の歴史を持っている、こういうふうに聞いておるわけでありますが、現在、国民の死亡順位を考えると、食事に基因する疾病が非常に多いわけであります。食事療法によってこれを低下させることができるものも相当多いと考えられます。ここに、昭和十六年に栄養研究所が発行いたしました古い本を一冊持ってきているわけでありますが、当時は付属施設の中に臨床ベッドを置いて食事療法や予防食の研究をいたしたということがこれに書いてございます。現在のようにただ動物実験をして、それで終わりであるというようなことではなくて、やはりかなり具体的な研究をしているというふうなデータが出ているわけです。国民のこの立場に立った国立の栄養研究を実施することがいまではできていないわけですね、動物実験でそれでおしまいですから。国立栄研の充実強化が栄養の重視につながると私は思うわけでありますが、こうした点から、私は、この栄養研究所に金と人をやはり配置をする必要があろう、こういうふうに思うのですが、厚生省のお考えを承りたい。
  232. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 国立栄養研究所につきましては、御指摘のように約五十年の歴史を持っておりまして、各時代の変遷とともにその研究内容等につきましていろいろ変化があったことも御指摘のとおりでございます。  ただいま、昭和十六年当時のお話でございましたが、国立栄養研究所に臨床部を持っていたことも確かでございますが、その後やはり臨床部の廃止とともに動物実験を主体とする各種の研究が行なわれておりましたけれども、現在の段階におきましては、隣にございます東京第一病院の病棟を使用いたしまして若干の臨床研究を実施いたしております。ただし、その成果につきまして十分という点が言えないかと存じますので、今後そういう研究方面につきまして緊密な連絡のもとに、研究の成果があがるように努力いたしたいと、かように考えております。
  233. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから、これはひとつどうぞ、栄養研究所の充実はもう大事な問題ですから、ひとつ大きな金を、予算の請求時期でありますから、今度はひとつしっかり予算をつけてもらって、栄研の研究を充実してもらいたい。これはひとつ大臣に特にお願いをいたしておきます。  それから、愛媛県で今月から来年三月までに、県の医師会、それから栄養士会などが協力をいたしまして、そして病態の栄養コンサルタント事業というものを、地域における栄養指導を行なおうとしているわけでありますが、厚生省はこのことを御存じでございますね。この企画は私は非常にすばらしいと思うのです。これはすばらしいニュースだと思うのでありますが、こうした計画を全国で行ない広めていくならば、高血圧症や糖尿病あるいはリウマチなどの予防というものに対して大きな貢献ができるのじゃないかと思うのですが、厚生省はひとつ独自の立場で予算をつけて、こういうようなことをひとつ全国でずっと、各府県でやられる気はありませんですか。予算時期でありますから、ひとつ予算を大きく請求してもらって、そして栄養という面ではひとつ十分な調査をし、そしてコンサルタントをして、そしていろいろなことを治療の面に反映していくという、そういうようなことをひとつ企画してもらったら、私は、この愛媛県と同じようなことが非常に全国に波及して、いいことじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  234. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 御指摘のように、愛媛県は今年度から栄養のコンサルタント事業を開始いたしております。なお、同様のことを横浜市におきましても一部実施いたす計画を聞き及んでございます。  したがいまして、私のほうといたしましては、非常にこれは斬新な新しい仕事と存じますので、今後御指摘のように広く全国的に広めてまいり、在野の栄養士の方々の技能を十分に発揮できるような体制に持ってまいりたいと、かように考えております。
  235. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間が迫ってまいりますので、急いでやります。  また、保健所の問題を見ましても、現在その機能が私は地域住民に十分親しまれているような機能が発揮されていない、機能が非常に低いと思うのです。保健所問題の懇談会の中間答申でも出ましたように、この答申を受けてどういうふうにするのか。厚生省のやり方については、いつも私はおそいような感じがしますので、特にそう申し上げたいと思うのでありますが、保健所にたとえば栄養相談の窓口を開いて、十年くらい病院栄養士の経験を積んだような方を配置して、地域住民のやはり栄養というもののサービスなり懇談なりをして、いま先ほどの問題とくるめてやってもらうべきじゃないかというふうに思うのですが、これについての考え方もあわせて聞いておきたいと思います。
  236. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 保健所におきます栄養士の活動につきましては、先ほどの愛媛県あるいは横浜市等の例も参照いたしまして、さらに十分に各市町村あるいはその他の機関に在勤いたします栄養士の技能も活用できるような体制を一日も早く確立いたしたいと、かように考えております。
  237. 大橋和孝

    大橋和孝君 それじゃこの次は、ひとつ教育の問題についてお伺いしたいのでありますが、栄養士の教育は世界でもわが国が一番最初に高度な教育を行なったのに、現在では教育程度の最も低い国に属するようになったといわれております。その原因は戦後の栄養士教育制度に見られ、昭和二十年から二十二年の養成施設は専門学校となっているが、昭和二十五年の厚生、文部両省の申し合わせの後、短大とか大学において栄養士を養成できることになっており、教員免許証とともに短大、大卒は免許を得ることができるために、それまでの七校から一挙に十七校に増加して、現在では二百九十一校にまで増加をしておるわけであります。免許の取得者も、二十年から二十五年では七千七十名であったのが、昭和四十三年度には一万三千八百八名、こういうふうに交付されております。養成所が増加するとともに、国家試験によるこの合格者は年々減少しまして、四十三年には全国でわずか三十三名というふうな状態になってきておるわけです。そのような中で栄養士の質的向上は望めませんので、だからして、管理栄養士制度も同様のコースをたどっておるわけでありますが、このような状態についてひとつ文部省なりあるいはまた厚生省の御意見を伺いたいわけであります。  それからまた、栄養士教育は、他の医療担当者と同様に、将来はやはり私は医科大学かあるいはまた大学の医学部の中でそして臨床とともに教育を受けて、国家試験を行なう必要があるように考えるわけであります。そのようにして、栄養士の何といいますか、身分もうんと高めるし、教育の程度も高めなければならぬのではないかと思います。また卒業後も、病院なんかでインターンを一年ないし三年やっていく、こういうようなことも必要であろうし、管理栄養士制度はこうした教育の中であらためてまた検討して、権威のある栄養士をつくる。こういうようなことが私は十分考えられるべきであって、そういうことによって、初めて、こういうような管理栄養士というような身分差をつくることなんかももう一つ考えなければならぬように思うわけであります。  ことに、就職希望者が大卒で三〇%あるいはまた専門校で八〇%という状況から、やはり専門技術者としての養成教育について、再考する時期に私はきているように思うのであります。この点についてひとつ御見解をお願いします。
  238. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) いま御指摘のありましたように、栄養士の質の向上というものは非常に必要である。その点につきましては、私どもの、たとえば家政学の視学委員会の一部の方々からも、そういうふうな御意見は聞いておりますし、先生の御指摘のとおりであろう、こういうふうに存じ上げております。  ただ、国立大学では、徳島大学の医学部に栄養学科があるだけで、これはたしか昭和三十九年度であったと記憶しておりますが、それができただけでその後できていない、こういう状況になっております。私どものほうといたしましては、その必要性は十分認めているわけでございますけれども、目下医師養成のための増募の問題であるとかあるいは医科大学の新設の問題であるとか、そういうふうな緊急の要務をかかえておりまして、何ぶん余裕がないのが実情でございます。  それから、いま先生のお話になりましたように、資格を取った者の需給状況がどうなっているかという、そういうふうな問題もあったりいたしますので、そういう点も十分勘案して国立の増設あるいは大学のこの教育内容の強化について十分考えていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  239. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 栄養士の卒業研修といたしましては、公衆衛生院のコース、それから日本栄養士会に委託をいたしておりまする在宅栄養士の研修、それから、日本栄養士会が独自に行なっております講習、このような形で卒業研修が行なわれておりますけれども、今後、御指摘のように必要に応じ、この制度の拡大等につきまして努力をしたいと思っております。
  240. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの問題は大臣、私考えておりますのは、栄養士さんもやはりほかのパラメディカルのいろんな職種の教育、看護婦さんもPT、OTに至るまでこういう方に一貫した教育をして、そして各おのおのの持ち分があるわけです。これは医療を担当するのに、いま私が申し上げたように栄養士のほうでは食餌によって病気をなおしていこうという、看護は看護をする看護婦さんの、またPT、OTにもやはりそれぞれの一つの医療の中の分野を持っているわけですから、そういうふうな立場を十分に認識をされ、そのものを制度の中にはっきりと位置づけませんと、やはりそういうところが一つ一つ押されていくわけです。たとえば、看護婦さんは看護婦さんの看病の職務をやっているのだけれども、看護婦さんが何ぼということは保険の診療費の中には出ていないのです。そういうふうなことから考えますと、そういうものもきちっと割り当てたもので、教育もそうされるし、また卒業後にもそういう教育が続けられるし、そしてまた、それが必ず治療の中に反映をしていく。より高度な、より高い反映をしていくというふうな形になっていきませんと、医療をいかにほかでやろうと思ってもいい効果はあらわれない。こういうことが、私は一つの大きなあらわれであろうと思いますので、きょうは栄養の面をとらえて特に強調しておきたい。それが医療制度の中に、あるいは保険制度の中にきちっと位置づけられなければ、そこに矛盾が出てくると考えます。  最後につけ加えて、特殊用途の食品であります。これは病弱者あるいは乳幼児あるいはまた特殊な病気に使うところの特殊用途の食品でありますが、これが十分に私は検討されていない。ほんとうにされているのかという感じがいたします。このような食品は現在買おうと思うと、市販食品に比較しますと、非常にコスト高であります。そうして、このような患者は、病気というハンディの上に、こういうような高いものを手に入れなければいけないし、その上に医療費がかさむので、使いたくも使えないという現状のように思います。このような食品が許可されている限りにおきましては、政府が何らかの形で財政援助をして、そうして製造会社の、あるいはまた医師、または栄養士の指導で、安く手に入るような形をとらなければ、せっかくできている特殊用途の食品の取り扱いが、十分に行なわれないと思うのであります。このような取り扱い業者を規制する必要はもちろんありましょうが、こういう点なんかについても、どうお考えになっているのか。  それからまた、現在、特別な治療食というものが加算対象となっているものが八つほどあるわけでありますが、高血圧食とか、あるいはまた胃かいよう食とか。これらに対して、またもっと幅を広げて、八品目ぐらいじゃなくて、もっと広げる必要があると思います。これらのところは保険局長どう考えておりますか。保険局長にもちょっと聞いておきたいと思います。
  241. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 御指摘の特殊栄養食品につきましては、従来強化食というものを中心にして行なわれておりましたが、最近に至りまして低ナトリウム食というような問題につきまして、いろいろ検討が重ねられてまいっております。したがいまして、厚生省といたしましても、これらの要望にこたえまして、昭和四十六年の十二月に、栄養審議会に特殊栄養食品小委員会を設けまして、それの表示、許可基準等につきまして検討を重ねてまいっております。したがいまして、その御検討の結果、近く低ナトリウムしょうゆ、みそというようなものの基準が設定をされることになりまして、それに基づきます許可というような段階に移るかと存じております。  なお、御指摘のように、二つの食品に限らず、これらの病人に用います食品につきましては、種類の拡大等につきまして、引き続き審議会の御検討を願ってまいりたいと、かように考えております。  なお、そういう食品の許可に伴います価格の問題につきましても、十分私どもは慎重に取り扱ってまいる所存でございます。
  242. 大橋和孝

    大橋和孝君 この食品問題で、もう一つで終わりたいと思いますが、最後に私は食餌療法について一言、言及したいと思うんですが、厚生省に医療研究助成補助金という制度があるわけであります。前の国会で、じん臓の人工透析を内容とする身体障害者福祉法が成立しましたけれども、この恩恵に浴する人は非常に少ない。あるいはまた、じん不全とネフローゼの研究で、食餌療法である程度この人工透析にかかる回数を減らすことができる、こういうふうになっているわけでありますが、こうした研究に対して本年度厚生省はこれを削ったようでありますけれども、こういうものは、予算が少ないということはわかっているけれども、ひとつこれを十分に予算化してもらいたい。  それから、同時にまた、科学技術庁のほうでは、特別研究費という費目もあるわけでありますが、食餌療法の重要性を考えると、こうした研究費を削ったり、あるいはまた研究をおくらせるようなことは、いかにも情けないことだと思います。いまからでも科学技術庁の特別研究費なり、予備費をつけることはできないか。これは科学技術庁の方に伺っておきたいと思います。  それからまた、病院の食事は治療の一環でありますからして、薬と同様に考えるべきだと思いますので、最後にこの病院食の栄養問題について、どうかひとつ厚生大臣としては、先ほども申しましたが、十分な配慮をしてもらいたい。  ですから、もろもろの段階にわたって私はお話を聞いてまいりましたが、特にこの食事というものが治療の段階で私は非常に大事でございますので、先ほどから申したように、抜本的にこういう問題を考えてもらわなければなりませんので、どうかひとつ科学技術庁のほうにも、こういうような研究費をつけるようなこと、こういうことにひとつ努力をしていただきたいし、あるいはまた厚生省におきましても、そういう費目をできるだけ活用していただいて、この栄養の問題を早く研究してもらうように努力してもらいたいと思いますが、これにつきましての大臣の御所見を伺って、そうして次の問題一問だけで終わりたいと思います。
  243. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 先ほど来、非常に貴重な御意見を拝聴しながら、冒頭にも申し上げましたとおり、私、一年間入院の過程で体験をしましたことから、非常に思い当たるというふうな点も多々あったように感ずるわけであります。確かに栄養は治療の一環であるという御主張には、全くそのとおりだと思う次第でありまして、この治療の一環としての栄養の問題、非常に重大であることを認識をいたしまして、今後これが改善に努力をしてまいりたいと思います。
  244. 千葉博

    説明員(千葉博君) 実は科学技術庁といたしましては、いま御指摘の研究課題も含めまして、いわゆる医療科学技術、これの振興というような点につきましては、それはいわゆる生活に関連したいろいろな科学技術を、いま積極的に振興しようというような立場をとっておりますので、私どもといたしましては、予算の見積り方針の調整とか、それからいま御指摘の特別研究促進調整費、こういったようなものを支出いたしまして、それで積極的に対処しようというようなことにいまなっております。ところが、特別研究促進調整費でございますが、これのちょっと性格がございまして、これはいわゆる二省庁以上にまたがったような研究とか、それからその境界線にあるとか、それから多数の部門にまたがっているような研究、そういったものを促進するための費用だというようなたてまえになっておるわけでございます。それで、御指摘のこの研究につきましては、承りますところ、これは厚生省の専管でございますので、そんな気がいたしますので、厚生省が一義的には推進するというようなたてまえになっているかと思いますが、厚生省から御相談があれば、その内容などにつきましていろいろ協議いたしました上で、必要に応じましてこの費用の配分についても検討したい、かようにいま考えております。
  245. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっと方向が変わりますけれども、一言だけ質問をしておきたいと思います。  去年医者が総辞退いたしました。一カ月間自由診療ということになったわけでありますが、これはあのときに保険局長の通達でやはり知事などにも通達がいって、診療の総辞退をやると非常に患者に迷惑を及ぼす、だからしてできるだけ保険並みに取り扱って、そして大きな迷惑を与えないようにしてほしいという通達が出ておるわけでありまして、こういうものを受けとめて、やはり保険診療の金額で、しかもそれを代行払いといいますか、患者からの委任を受けて、患者から金をもらわないで保険と同じような取り扱いをして、そしてあまり迷惑をかけないような方向でやったというようなところもあるわけでありますが、こういうような問題はやはり実質的に保険と同じような制度でやっているわけでありますが、今度やはり国税庁のほうでは、それは保険医を辞退したから保険診療ではないんだ、税の特別措置は受けられないんだというふうな見解がとられているようでありますけれども、事実上やはりそれと同じような形で行なわれておるわけでありますからして、これはやはり同じような措置をすべきではないかというふうに私は思うわけであります。特にそういう問題に対しましては、あれは昭和三十六年でございましたか、国保の総辞退を三カ月近くやったような場合にもやはりその療養費払いを認めて、そして同じような代行でやった、だからしてそのときにもその税の特別措置はそのまま認められた、こういう例があるわけであります。また、いま現在、ずっと現在の健康保険の進行中でも、たとえば東京の人が鹿児島へ行って保険証がなくて見てもらって、保険と同じようにしてもらうようにして、そしてお金を払うようにして、それがやはり療養費払いとして認められておる。そして東京でそういうように請求をするならば、それも社会保険と同じようなワクでそういうような税措置がとられてきた、こういうようなこともたくさん事実上あるわけでありますから、私はやはりこういう問題に対しては税の特別措置は行なってもらうべきじゃないかというふうに考えるわけでありますが、そういう点はどうなんでありましょうか、ひとつ国税庁のほうにお話を承りたいと思うのであります。  それから、また保険局長のほうもそういう通達を出しておられるわけですから、そういうようなことを受けとめてひとつそういうふうにやるようにお話をしていただいたらどうか、これが第一点でございます。  それから第二点は、やはりこのごろは七月分の診療に対してしんしゃく率を云々と言うて、そして実際の税特別措置の二八%以上に何ぼかを認めなさいというふうなことの指導が行なわれているようでありますけれども、こういう問題はちょっと根拠から考えてもおかしいんじゃないかというふうに思うわけでありますが、その点ひとつ御見解を承りたい。
  246. 系光家

    説明員(系光家君) いま先生のお話にも、去年七月に自由診療にしたけれども、そのときの課税措置はどうなっておるかといったようなおことばがあったわけでございますが、私どもはやはり去年の保険医の辞退があった期間につきましては、健康保険法等に基づくところの療養の給付ではなくて療養費払いであるというふうに考えておるわけでございます。この点はもう間違いなくそうなると思うのでございますが、一方、租税特別措置法の二十六条を見ますと、健康保険法等の規定に基づく療養の給付が行なわれた場合その規定を適用するということになっております。したがいまして法律の解釈としてはどうしてもこれは二十六条の適用はできないということになるわけでございます。したがいまして、当然に特別措置法というのは所得税法の特例でございますので、所得税法の原則に戻ってまいりまして、収入金額から必要経費を控除して所得金額を計上するということになってまいります。その場合の必要経費と申しますのは、それぞれほんとうにかかりました実際の額ということでございますので、その点はやはり二十六条の七二%といったようなことではなくて、実際にかかった経費でもって申告をしていただくということになるわけでございます。ところが、そういう申告が出ないということになりますと、こちらはやはりそういうことで修正申告を出していただきたいということで努力をしておるわけでございますけれども、修正申告が出ないというようなことになりますと、こっちとしてはそのままにしておくわけにはまいりません。そこでやはり更正といったような問題も出るわけでございますけれども、そうなってまいりますと、所得税法では実際の額となっておりますので、調査によりまして実際の額を把握しなければならないということになっております。しかし、何ぶんにも先生方の数も多うございますし、また、先生方の中には必ずしも帳簿をちゃんとおつけになっておられないというような方もおられますので、そういう点を考えまして、一定の十年の実績とかあるいは統計数値等を用いまして一定の率を算出いたしましてそういう率、しかもそのときには普通の自由診療と違いまして、去年の七月におきましては単価を社会保険診療並みに押さえておったとか、またそういう総辞退ということが行なわれましたために患者さんの数が減ったとか、したがって収入金額が減るというようなこともございましたので、その辺を勘案しまして、そこで通常の所得率に多少のしんしゃくを加える、これがしんしゃく率といわれておるものでございますけれども、そういったようなもので申告がなされればあえて実際の実額の調査をしなくとも認めていこうではないかという一種の内部の取り扱い基準としてそういうものを定めて実務を行なっておるということでございます。そういうのが去年の保険医辞退期間中につきましての課税の現状であるということでございますが、したがいまして、しんしゃく率の性格はそういうことでございまして……
  247. 大橋和孝

    大橋和孝君 それはもうわかっている、私の言っておるのは保険と同じようにやっておるのだから、もう少しそういうものはそういうふうに取り扱ったらどうか。前には認めているのがあるのだから、平生でも認めておるのだから……。
  248. 系光家

    説明員(系光家君) そこで、先ほど昭和三十六年の話が出ましたけれども、私どものほうはこれはちょっと何でございますけれども、相当古い話でございまして、はっきりした資料は実は残っていないのでございます。したがいまして、そういうことがあったということを当局としては確認するのは非常にむずかしいわけでございますけれども、もし、そういうことがあったとしてもそれは当時国税庁の解釈として、そういうものは租税特別措置法の二十六条を適用するのだということでやったのではなくて、税務署のほうでおそらくは十分に追及しなかったのではなかろうか、事実上しなかったのではなかろうかということでございまして、今回の全国的な中央の解釈をそのために変えるわけにはまいらないというように考えております。
  249. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 昨年七月に保険医の総辞退が行なわれましたことは、いろいろ条件、事情があったにいたしましてもまことに残念なことでございます。で、健康保険法上はただいま先生からもお話がございましたが、療養の給付ができない場合には、いわゆる今度のケースで申しますと、保険医がいないという状態でございますから、そういう場合には療養費の支払い、療養費の支給ということになるわけでございます。療養費の支給の場合には、ただいま国税庁のほうからもお話がございましたが、特別措置法の二十六条におきましては、療養の給付とそれから家族療養費の支給を含むということでございまして、それ以外の場合にはこの特別措置の適用はないということになっております。で、私どももそういう見地からこの問題は当時非常に問題になると思ったんでございますが、しかし、被保険者の便宜とか、あるいは療養取り扱い機関の便宜というようなことを考えまして、各県の出先に対しましてはあるいは代理請求とかあるいは代理受領とか、こういった方式をやれるところはやってくれるようにと、こういうふうなことを申しました。しかしながら、法律の適用から申しますと、やはりそのベースが療養費の支給でございますので、そういう意味合いでは特別措置法の適用はどうもこれはむずかしいのではないか、このように考えておるのが現状でございます。
  250. 大橋和孝

    大橋和孝君 じゃあ大臣にちょっとお願いしておきたいと思います。  いま国税庁なり、あるいはまた保険局長のお話を聞いていろいろ法理論的には問題があると思うんです。あると思うんですが、しかし、やはりあの総辞退のときにはいま局長がおっしゃったように、やはりできるだけ患者とのトラブルを避けるためにそうした療養費払いになるように措置をしてくれということでやってくれるようにというところもあるのだから、こういう問題に対してはやはり実際に収入を得ている、価格は保険単価であるし、あるいはまたそうしたことも患者から一々金を取らないで判こで委任されただけでこれをやはり支払いを国から受け取っておる、言うならば保険の業務と同じことをやっておるんだ、こういうことに対してはやはり保険と同じように取り扱ってもらいたいという気持ちも私はわかると思うんです。これは国民に対する医療のなるべくなら公平性を保つためにやったことでありますから、将来そういうことに対してはある程度の配慮をしてもらうべき必要があるんじゃないか、今後医療というものを円滑に行なうためには、私はそういうことも必要じゃないかと思うので、私は大臣としてもこういう問題に対してひとつ広い意味で御研究なりお考えをいただきたい、こういうようなことを希望して終わるわけでありますので、よろしくお願いいたします。これで終わります。
  251. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  252. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 速記を起こして。
  253. 須原昭二

    ○須原昭二君 実はきょうは三問、大きな課題で三つにしたいと思うんですが、時間の関係があるようでありますから一つ、二つに分けます。  一つは、どうも議会というところは質問をして答弁をする、その日が通ればあとは野となれ山となれ、こういう感じがしてなりません。というのは、全国自治体病院協議会の共済会、いわゆる全自病の薬の販売の問題について予算委員会で指摘をいたしました。御案内のとおり、公立の病院は独立採算制である。きわめて収支のバランスが苦しくなっている。したがって薬の薬価基準と実勢価格の差益で収支のバランスをとろう、この道はいずれも薬の大量投薬につながる、薬害のもとになる、こういう視点からとらえて質問をいたしたことを御記憶だと思いますが、その際、前の厚生大臣は販売業のあり方についていろいろ問題点を指摘しましたところ、許可を取り消すこともあるかもわからない、渡海自治大臣は厳重に取り締まる、こうおっしゃいました。しかしその後、この自治体病院協議会の共済会の株式会社は何ら変わっておらないというような情報がきておるわけです。御案内のとおり、百二十六品目のデータを提出し、薬価基準よりも五二%安い。そしてロット番号なんかを消しておる、現金販売なんかをやっておる。これは地方財政法違反である、こういうことを指摘をいたしたのですが、こうしたことを聞いておりますと、これだけで三十分かかりますから、ひとつ文書をもってこの際御提出願いたいわけです。実態をいつ調査したのか、追跡調査をしたか、こうした五二%というような破格の値引きで購入をしておるわけでありますが、その実態、取引高、それからどこの自治体病院がこの共済会の販売ルートを利用しておるか、その購入価格、仕入れ先、ルート、どこの会社から、たとえば神田の現金問屋から買っておるという情報も入っておりますが、どこから仕入れをしておるか、そのルートを明らかにしていただきたい。それから一週間以内の現金決済、これは地方自治法違反でありまして、いわゆる競争入札をしなければならないにもかかわらず、こうした購入を厳重に取り締まると渡海自治大臣は言ったけれども、その後その当該自治体病院を監査したか、いつ監査をされたのか、調査をされたのか。流通ロット番号を消しておるのでありますが、こうした品質管理がどうなっておるのか、その調査をして、ひとつ文書をもって御提出を願いたい、これで第一問終わり。  第二問は、薬価基準の問題、これだけひとつ克明に御質問を申し上げたいわけです。実は巷間伝えられるところによりますと、薬価調査を来月九月に実施をするというようなことが新聞紙上に出ております。例年この薬価調査というものは大体四月に予告でやられておるわけでありますが、ことしに限って四月から九月になった理由はどこにあるのか、この理由を明らかにしていただきたい、それが一つ。  二つ目は、その薬価調査の方法について、どのような手段で今度はやられるのか、大要について御説明を願いたい、この二つについてまず御質問を申し上げます。
  254. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 第一点についてお答え申し上げます。薬価調査は例年一回行なうことになっておりますことはただいま先生のおっしゃったとおりであります。今年度は四月に行なうということでありました。御承知のとおり、一月の二十二日の中医協の建議書におきましても出ておるわけであります。私どもはそういうつもりで準備をしたのでございますけれども、実は調査内容につきまして、日本医師会等との間で調査の方法について意見調整が手間どりまして、その結果ただいま仰せのとおり、八月分について九月に調査をする、こういう結果になった次第であります。調査のために手間をとったのがそのおくれた理由でございます。
  255. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 調査の方法につきましては、これはおおむね従来行なっております薬価調査の方法を踏襲いたしますが、ただいま保険局長から申し上げました銘柄別の調査ということを、今回は一つの項目といたしまして行なう予定をいたしております。
  256. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 資料提出はできるの……。
  257. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 一応医務局のほうとも相談をして、できるだけ早く調査をし得ました範囲内で御提出申し上げたいと思います。
  258. 須原昭二

    ○須原昭二君 まことに恐縮ですが、自治省からわざわざお見えいただいて実は質問せずにして終わってしまったわけですが、お許しをいただきたいと思います。その資料についてはひとつ文書をもって出していただくように委員長を通じてお願いいたします。
  259. 柴田啓次

    説明員(柴田啓次君) ちょっと調査しかねる部分があるかと存じますので……。
  260. 須原昭二

    ○須原昭二君 それはどこですか。
  261. 柴田啓次

    説明員(柴田啓次君) たとえば私どものほうで、相手の共済部が株式会社でございますから、それの取引の実態等について調査をするという権限がございませんので、その関係非常に困難でございます。
  262. 須原昭二

    ○須原昭二君 その点は自治省の所管のほうは所管とし、薬務局でやれるところはやる、双方の協力のもとにひとつ資料を提出していただきたい。以上お願いしておきます。  そこで、四月から九月になった理由というのは銘柄別収載等々によって日本医師会との話し合いがうまくいかなかった、したがっておくれてきた、こういうことなんですね。その一つの理由ですか。
  263. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 大体その一つの理由でございます。
  264. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういう調査の問題について、当該団体だけを一つ選んで、それだけで問題が延びていくのですか。そういう自主性のない行動、やり方をしていかれるのですか。
  265. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 何ぶんにも今回の調査につきまして、これは先生も御承知のとおり、銘柄別の調査をやるという新しい問題が出てまいりましたので、この問題について新しい問題だけに、調査に手間どりまして、実は四月のものが九月までかかった、こういう実情でございます。
  266. 須原昭二

    ○須原昭二君 少なくとも日本医師会だけじゃなくて、やはり日本歯科医師会も、特に薬の問題については日本薬剤師会があるわけです。そうした各般の情勢を聞いてやるならともかく、一団体の意向においてそういう行動をとるというのはおかしいじゃないか、自主性がない、こう言わざるを得ない。この問題のみをやっておりますと時間がかかってしまいますから次へいきましょう。  調査の方法は従来の方法を大体踏襲しておるということでありますが、これは衆参両院を通じて調査のやり方については過般の予算委員会へさらに各委員会において多く指摘をされてきたところです。たとえば聞くところによりますと、今度は八月の大体の実態を九月に調査をする、しかもその期間は一ヵ月だと言うけれども、内容を見ますると錠剤とかあるいは注射薬だとか、医薬品のグループによって一週間ぐらいだ、実際は一カ月だと言っているけれども一週間ぐらい、短期間である、こういうことではないですか。しかもこの八月を対象として九月に調査をするというような予告制は、やはり当該調査対象者が自分でコントロールをして伝票等々不正なことがわからないように整理をしておく、そういう事前に調査事項を調整しておくおそれがある、こういうことを前々から強く指摘をしてきたにもかかわらず、なおもって依然として従来どおりの予告制とは何事か。さらにこの際自計、他計という問題を私たちは常に言ってまいりました。たとえば自計と称して、まあ抜き取り検査だとか、直接伝票を調査するというような、やはり自主的にこちらの調査官が行って調べてくるのではなくして、相手側に薬を買ったほうのそういう人たちによってみずから書いてもらってそれを受け取ってくる、こういうことであってはほんとうの実態をつかみ得ないんじゃないかということは毎回指摘をしてきたにもかかわらず、従来と同じような方法というのはどういうことなのですか。その点について理由を述べていただきたいと思います。
  267. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま先生御指摘のように、従来の調査方法につきましていろいろと問題点の御指摘がありましたことは、私どもも承知いたしております。ただその際にもいろいろお答え申し上げておりますように、この薬価調査は何ぶん全病院、診療所に対して納入をいたしております全数の調査でございます。その全容をできるだけ正確にかつ迅速に知りたいということを目的にいたしておりまして、しかもこれが事が医薬品の価格というようなことを対象といたしておるものでございますだけに、できるだけ関係各団体あるいは業界の協力を得まして、その自主的な、自立的な協力によりまして行なうということが、一、二の問題点はございましても現段階におきましては、やはり全体的な数値を把握するためには、現時点における最もいい方法であろうという考え方を持ってこの方法を進めておるわけでございます。で、先生がいま御指摘になりました一週間の分があるという点でございますが、この点はこれは事情をお詳しい先生のことで御存じかと思いますけれども、大量の取引をいたします卸業者につきましては、この協力を得るということは相当な労力を要することでございます。しかも大体におきまして荷動きの状況というものは恒常的にきまっておりますので、そういうものを抽出いたしまして、ある部分につきましては一定の期間を調査いたしましたものをもって全体を推計すると、こういったことも推計的な方法といたしまして、こういう大量の調査についてはやむを得ず許されるものではないかという考え方をもって事を進めております。ただ先ほどの保険局長に対する御質疑にもございましたが、一月の期間というような問題、これにつきましてもいろいろ御指摘もあり、私どもといたしましても今後の問題といたしましては、そのほかにできるだけいろいろなデータを使いまして、さらに正確を期するという努力は続けていかなければならないと考えております。  それから予告の問題でございますが、私ども決していつやると、いつの期間についてどういうような形でやるということを予告をして調査をするという形を正式にとっておるわけではございません。ただいま申し上げましたように、全業界の協力を得て行なわなければならない、これは購入サイドの問題もございます。それから各都道府県におきまして実際的に指導を監督してもらう、事業に協力してもらうという要素もあるわけでございまして、そういったような意味からどうしてもかなり前広に準備をいたしまして、体制を整えて行なわなければならない事業でございますために、ある時期におきましては、どうしてもこういうものの時期が明らかにされる、そういうような形になっておるわけでございます。
  268. 須原昭二

    ○須原昭二君 その調査をされる期間というものについて、月、この問題について私はとやかく言っておらないわけです。ただ調査の範囲の月ですね、九月にやるなら八月の伝票の実態を調べる、こういうことであってはならないと思う。たとえば毎年四月にやってきた、四月ですと大体三月、二月その近辺のところを調べる。また九月にやればその前月を調べる、こういうことですから、私は取引をする段階では調査があるからそのときにはきちんとしておく、こういうコントロールをしてしまう、そういう可能性があるからこの予告制はだめだというのです。したがってこの際九月にやるならやられてもけっこうです。その月を予告をしないで実態を調べていく。四月、三月はだめでしょう。だから五月、六月、七月くらいが私は一番いいんじゃないかと思うのですけれども、こうしたものをいまごろ伝票を切りかえるわけにはいきませんからきちんと出てくると思う。それから自計——自分で書いて出してもらうような書類ではほんとうの調査にならないということです。ですから調査官が行ってみずから伝票をひっくり返して見て、そうして記入してくるというような他計に切りかえていかなければいけないということを何度も繰り返しているのですが、実態はやられていない。この点を明確にひとつ改良をしていただきたい。特に昨年の十二月中医協では随時に調査をやるんだ、随時そんな月をきめずにやるんだということをきめておるわけです。その実態が反映されてきていない、その決定が。その点をこの際要望しておきます。ですからこの問題をひとつ前向きで考えていただきたいということ、これが一点です。  それから第二は、銘柄別の収載はどうなっているかということですが、何か調査をされておるけれども、実はするかしないかまだきめておらないというようなお話を聞いておるわけです。そこで、銘柄別収載というもののメリット、デメリットさまざまな問題点があるのですが、大きなところでけっこうですけれども、どういうふうにお考えになっているのですか、そのメリット、デメリットをひとつ御説明願いたいと思います。
  269. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 銘柄別の収載につきましてのいろいろな問題点でございますが、これもなかなかむずかしい問題でございますけれども、また全部を網羅しているかどうかわかりませんが、私ども現在のところ考えておりますことは大体次のような問題点があろうかと思っております。で、個々の銘柄の実勢価格が薬価に反映されるという面におきましては、先生も御承知のとおり、銘柄別に収載をいたしますると、実勢価格そのものはやはり下がる傾向にございますので、そういう意味では一般的には薬価基準の引き下げの傾向が期待できるのではなかろうかと、こういう感じがするわけでございます。それから、細分化されますために何と申しますか、薬剤使用による利幅というものが相対的には少なくなりまするので、そういう関係上、やはり表現上問題はあろうかと思いますけれども、優勝劣敗というようなことで良質銘柄のものがより多く使用されるようなことになるというような結果を招くのではなかろうかというような気がするわけでございます。  以上が銘柄別収載をかりにやった場合における私どもが考えておりまする一つのメリットでございますけれども、半面、医療機関側から実際の診療報酬を請求いたしますためには、レセプトに記載いたします薬価が非常に多様にわたるわけでございまして、そういう面では請求の事務あるいは審査の事務全般につきましてきわめて複雑多岐にわたる、こういうふうな実務上の難点というものもあるのではなかろうかと、こういうふうに考えております。  以上のような点が大ざっぱな問題点として考えられておる点でございますけれども、一番基礎的な問題は、はたして銘柄別に調査をいたしまして現在のような統一銘柄あるいは統一限定銘柄方式というふうな、そういうものではなくて、銘柄別にやった場合にその答えがどのような答えが出てまいりますか、品目によって全くこれは予測を許さない問題でございますので、相対的には、答えを得ました上でどういう銘柄別に収載するほうがいいのか、あるいはそうではなくして現行方式のほうがいいのか、あるいはまたその中間的な実情に合った方法をとるのがいいのか、そういったものをきめてまいる、そういう方法をとるのが最も妥当ではなかろうかと、このように考えておる次第でございます。
  270. 須原昭二

    ○須原昭二君 このメリット、デメリットの問題については、まだ時間もあることですから、後の機会にひとつ議論をしたいと思います。ただ私は、品目の多いところからやったらどうだろうという意見を私は持っておるわけですが、その点について御意見があったらひとつお聞かせを願いたい。要は品目より私は重要なことは、薬価基準の収載品の規格ですね。規格から明確にきめていくべきではないかという考え方を持っておるんです。たとえば前の社労委員会でも指摘をいたしたように、クロフィブレート製剤のように非常に安い単位で非常に内容は不純物をたくさん含んだ粗悪品がたくさん収載をされておった、そういう事実があるわけですから、この収載品の規格をやはり明確に先にきめるべきじゃないのか、そういう感じがするわけですが、その点の御意見を承りたい。  それから、今日の収載品の種類が七千六百か八百くらいあるわけですが、年々改正のたびにふえていくわけです。したがって、メーカーから申請があるものは大体載していくというふうな考え方はこの際決断をもってやめるということ、特に田中内閣は決断と実行の内閣でありますから、この際、画期的にひとつ収載をきちんとする、そういうけじめが私は必要ではないか、こう思うんですが、その点についての御意見を承りたい。  以上三点ですね。
  271. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) ただいまの御質問の中で、薬価基準に収載いたします品目につきまして申請があったものはほとんどすべて収載をしておるのではないかというふうなお話もございましたが、これは先生も御承知のように、たとえば今回、昨年の薬価基準の改定におきましても、このときには二百六十二品目を削除いたしておるわけでございます。したがって、薬価調査の結果に基づきまして販売実績のないものは改定のときに削除をするというふうなことは現にやっております。ただ、たまたま調査の対象期間の中の実績がごく少ないものもあわせて整理をいたしますると、患者数がきわめて少ない疾病に用いられております医薬品もありますから、そういった点を考慮いたしますると少ないものすべてを削除をするということはいかがなものか、このように考えております。  それから品質規格というものを明確にした上で収載をするかどうかというお話がございましたが、確かにそういった御意見もあろうかと思います。しかしながら私どもは、やはりこの薬価基準の改定をいたします場合には、実勢価格一般というものを把握をいたしまして、その結果によって基準の改定をいたすわけでございますので、実はそういった品質規格をこの際あらためて洗い直すというふうなことはなかなかむずかしい問題でございますので、もっぱらこの実勢価格の動向によって収載いかんをきめていく、こういうような形で行なっておるわけでございますので御了承願いたいと思います。
  272. 須原昭二

    ○須原昭二君 御了承できないんですよ。そういうむずかしいとか、従来どおりやっていけば難がないわというところに官僚行政があるわけだ。やはり思い切って、この際大胆にやっぱりこう改良のメスをふるわなければいけない。それが田中総理が言っている決断と実行だと思う。言うだけではいかぬですよ、言うだけでは。この点はひとつ、時間の関係ございますからあまり論議をしておれませんから問題点だけ指摘をしておいて再考を促しておきたいと思います。  それから次は値引き、添付ですね、これはなくなっていますか。
  273. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 添付その他の販売姿勢の混乱の問題につきましては……。
  274. 須原昭二

    ○須原昭二君 なくなっているかなくなっていないか。
  275. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 私どもの指導それから業界の協力によりまして相当自粛されたものと考えておりますが、残念ながらまだ全部なくなっておると申し上げられる状態ではないように感じられます。そういうこともございまして、先日さらに前回の方針を確認いたしましてそれを守ってもらいたいということを薬務局長名をもって地方にも通知をいたし、業界にも呼びかけてさらにこういうものは継続的に地方庁の協力も得まして姿勢を正してまいりたい、そのように考えております。
  276. 須原昭二

    ○須原昭二君 値引きなんかまだ堂々とやられているのだ。あなたたちは掌握していないでしょう。大体一回、たとえば八月のデータを九月に調査をするとするでしょう。そのときには値引きは発見できないんですよ。二カ月か三カ月たって決済のときになって初めて値引きをするんですから、ですから随時調査——少なくとも三百六十五日いつでも調査できるような立ち入り権を設けようというのはそこに原因があるわけです。したがって四十五年の十二月十四日、中医協で決定をしている添付行為のあった医薬品は薬価基準からはずすということを決定をしている。ことしの二月一日の改定のときにこうした添付行為のあった医薬品は一つでもはずしましたか。
  277. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 前回の改定の際にはずしたものはございません。
  278. 須原昭二

    ○須原昭二君 あって、なぜやらぬのですか。しかも四十五年十二月十五日、この中医協の決定を受けて薬務局発千百四十三号の局長通達、保険局のほうにおいては五百十八号、この通達をもって添付行為のあった医薬品は基準収載からはずす、こう堂々ときちんと通達が出されている。しかも一件もないというのはどういうことですか。現実にはやられている。やられていることをそれだけ通達を出しても何もやらない。しかも私の驚くことには、四十七年八月三日——今月、薬務局の七百四十三号の通達が今度出ています。医薬品の販売規制の適正化、添付なんかについては業界の自粛、自覚を要望する。今度は豹変をして、通達が緩和されているじゃないですか。この通達の動きはどうなんですか。薬務局の姿勢を問いたい。
  279. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) おしかりを受けましておそれいりますが、私は決して態度を緩和しておるというようなことは毛頭考えておりません。先生御指摘のように、業界の内容、なかなか複雑でございまして、前回の通知あるいは指導にいたしましても、かなりの自粛はされておると私は見ております。全部が全部そういうふうにはなってないという情報も得ております。ただ、実際にどの医薬品がどのような形で添付等が行なわれておるかという実証を得まして、この薬価基準から、収載からおろすというようなところにいたしますまでには、なかなか技術的に困難な面がございまして、これはやはりきびしい指導を行ないますことと、業界の自粛を得てできるだけ良心的な運用をしてもらうということと、両方の面から仕事を進めていくということが必要であろうという考え方で、そういう表現をとっておるわけでございまして、もしそういうようなことがさらに今後私どもの指導、調査によりまして具体的に明らかになりました場合には、既定方針に従いましてきびしい態度をもって臨む覚悟でございます。
  280. 須原昭二

    ○須原昭二君 この通達の文面からすれば後退なんですよ。少なくとも四十七年八月三日ですよ、今月です。それから四十五年十二月十五日、中医協の決定の翌日です。この基準からはずすと明確にしてあるものを、今度の通達では自粛してくれ、そういうのはぼくは薬務局が後退をした、こう理解をせざるを得ないのです。現実には横行しておるんです。厚生大臣、御見解を承りたいと思います。
  281. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 専門家の須原先生からの御指摘でございますが、まあ私もまだ就任早々で、この事情等についてよく承知をしていないわけであります。先ほど委員長から長い答弁だという御指摘がございましたが、どうも先ほどからも反省をしておりまして、御趣旨に沿って善処するというようなことを繰り返しておったわけでありますが、この場合におきましてもいまの御意見を十分に拝聴して今後に処したいということの答えでひとつお許しをいただきたいと思います。
  282. 須原昭二

    ○須原昭二君 就任早々でございますから、きょうはさらに追及することはやめましょう。ただ、厚生大臣、斎藤厚生大臣はこの調査の問題についても、値引き添付の問題についても非常に明確に御答弁をいただいているわけです。たとえば、定期調査から随時調査に切りかえていく、それから立ち入り権についてもひとつ検討しますと、こういう答弁を受けているわけです。半年たっているわけです。この立ち入り権についてそうした立案の準備はなされていますか。
  283. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 先ほども御説明申し上げましたように、私は現在の薬価調査の全体の形から見まして、やはり現段階におきましては保険の薬価をきめるという目的の薬価調査につきましては、全数をできるだけ広く調査するということが必要であり、したがって、一部のどうしても立ち入り調査という形になりますと人力等の関係がございまして、一部にとどまるというおそれもございます。御指摘はそれを併用してという御趣旨であろうと思いますが、やはり全体の姿といたしましては、できるだけ業界の協力を求め、全体がそういった国の医療行政、薬事行政協力してもらうということを前提といたしまして、良識を信頼して進めるという姿が適当であろうと思います。そういう意味におきまして、立ち入り調査を行なうことが必要であるかどうか、前回も御指摘を得ておりますし、私どもも決して検討を怠っておるわけではございませんが、現段階におきましては具体的にどういう形で立ち入り権を法制化するというところまでの具体案を得るまでには至っておりません。
  284. 須原昭二

    ○須原昭二君 少なくとも厚生大臣は予算委員会の席上で堂々と答弁しているんですよ。そうしたら、おたくたち大臣の意向が表明されたのですから、それに向かって努力するのがあなたたちの責務じゃありませんか。だから、私は言うんですよ。議会で質問を受けたその場だけ通れば、あすは晴れても曇ってもいいと。そういうその場限りの答弁はやめなさいよ。そういうことでは薬務行政は前進をしない。特に業界に協力を求めてと言われるけれども、私から言わしめれば協力じゃなくて迎合していると言わざるを得ない。むずかしいむずかしいと言っておったら、いつまでも従来どおりのやり方しかできないわけです。ここに思い切った決断が必要なんだ。したがって、調査方法については来月やるという話ですけれども、もう一ぺんじっくりほんとうに抜本的な調査方法を見出して、勇断をもって断行されたい。要望しておきます。  時間がありませんから次にいきましょう。今度は薬価です。実勢価格にあまりにも幅があり過ぎる。たとえば、先ほど言いました全自治体病院は薬価基準の半分以下だ。薬価基準の二割くらいの価格のものもある。平均して半分なんだ、五割の安さで支給をされている。保険薬局に参りますと、薬価基準よりも低い、ほぼ五%ぐらい。特殊病院、特殊な条件でありますけれども、保険薬局の中で一〇〇%以上のものもあるのです。いわゆる、相手によって病院だ、あるいはこれも国、公、私立によってまた違います。診療所、保険薬局、相手によって価格が違うんです。これは差別対価というんです。この点について幅をしぼり、行政指導を薬価調査の前に私は前段作業として行なわなければならないと思う。いま薬務局の各課の名前を見ますると、企業課だ、製薬課だとあって、流通の問題をどこで責任を持ってやっておりますか。部門はつくってあるでしょう。つくってあるけれども、ほんとうにそれだけに専念をしている課がありますか。そういう点をこの薬務局の中における課の構成においても問題点があるわけでありまして、これは明らかにこの相手によって価格がばらばらで、しかも大きな格差があるということは差別対価である。これは明らかに独占禁止法の不公正競争に私は該当すると思うのですけれども、その点は公正取引委員会、どういうふうにお考えになりますか。
  285. 吉田文剛

    説明員(吉田文剛君) お答え申し上げます。独占禁止法上の差別対価でございますが、これはおっしゃいますように不公正な取引方法の一つでございます。それで、その内容は「正当な理由がないのに、地域または相手方により差別的な対価をもって、物資、資金その他の経済上の利益を供給し、または供給を受けること。」まあ、こういうふうに条文には書いてございますが、不公正な取引方法と申しますのは、独占禁止法上、合理的な理由がないということと、それから競争阻害のおそれと、これが「正当な理由がないのに、」の内容でございますが、合理的理由がない、それから競争阻害のおそれと、二つの要件が必要であります。競争阻害のおそれと申しまするのは、競争業者、ある特定の事業者がそういう行為をやる場合に、競争事業者を排除するという意図なり効果を持つ場合でないと、独占禁止法上の差別対価というのはむずかしいんじゃないかということに思います。御指摘の医薬品の場合、まだこれは具体的内容調べたわけではございませんが、薬局、病院などで納入価格に差があるというのは、合理的な理由があるかないかという点から考えますと、取引ルートあるいは取引数量、それから包装単位等に差がありまして、したがって供給コストに差があると、そういう場合に納入価格が違うという場合は、合理的な理由がないとは言えないんじゃないかと、こういうふうに一応考えるわけでございます。まあ実際にそのとおりであるかないか、これは調べてみませんとわかりません。まあかりに合理的理由なしとしても、競争業者の排除の意図あるいは効果というものを持つものでないと独占禁止法上の差別対価と言うのはむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  286. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、そうおっしゃいますけれども、もう歴然と違っているのですよ。たとえば大学病院の前にある、もう調剤専門でやっている保健薬局がある。そこで使っている薬は一般の診療所のお医者さんが出す薬よりもずっと多いわけです。多いにもかかわらず、単価は診療所のほうが安いのですよ。これはどういうことかと言えば、お医者さんはその薬を指示する、使う権利がある、処方せんに書く権利がある。だから、薬はお医者さんにたくさん売り込んで、これを使ってください、これを使わないでくださいと言えば、この指示権があることによって、自分の薬がどんどんはける。そういうことによって、相手によって対価が違うのです。この点は明らかに私は不公正競争に該当すると思う。ですから、いま一ぺん調べなければわからないというお話でございますから、ここでは論を避けますけれども、どうぞひとつ公正取引委員会でも直ちにひとつ調査をしていただき、明確なる結論を出していただきたいと、この際お願いしておきたいと思います。  そのように、実は薬価をきめる適正なルールというものが確立をされておらない。たとえば適配懇の中で——この薬は高い、高い、消費者婦人団体から多くの指摘を受けた、したがって適配懇ができた、その適配懇の中で、それはやはり薬局に距離制限があるから、そういう薬局の適正配置をやめようじゃないかという意見が出ておるようであります、緩和しようという意見が出ておるようですが、薬の値段というのは、町の薬局で過当競争をやらせば安くなるという論理のものではない。大メーカーから出てくる蔵出し価格以前のものを、原価計算を追求するところに薬を安くする方法があるわけなんです。見ている目が違っている。そういう薬の業界のことはむずかしい、むずかしいということで逃避しているところに、薬価が適正にならないところに問題があるわけです。この点はひとつ、新任の医務局長も肝に銘じて、強い姿勢で、まさに田中さんのことばを借りて、決断と実行でひとつやっていただきたいと思うのですが、厚生大臣、この点だけは明確にやると言いなさい。
  287. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いろいろと御指導いただきまして、たいへんありがたいと思っております。私も、医薬品の流通形態がいろいろ複雑な要素を持っておりまして、そのために値幅に非常な開きがあるということは、だんだんと承知をいたしております。厚生省といたしまして、これは先生も御承知のように、先ほどお話のありましたメーカーの蔵出し価格、建て値の問題等につきましても、最近の値段の動向からいたしまして、薬価基準の改正とは別途に、メーカーに対する行政指導によりまして、ことしの三月から建て値を引き下げさせておるというようなこともいたしておりまして、なお、御指摘のように、流通形態につきましても十分調査をいたしまして、適正な価格で必要な医薬品が十分に供給されるという、薬事行政本来の目的に合致するような方向で進めてまいりたいと考えております。
  288. 須原昭二

    ○須原昭二君 まことに答弁が納得ができないんですけれども、時間がほんとにないし、小笠原委員が首を長くして待っておられますから、先に進めて、あと一点か二点で終わります。時間がないのは非常に残念です。  薬価のきめ方の中で、たとえば八月、九月調査をされ、何カ月か後に改定がなされるわけですが、実は調査の時期に実勢価格を調査される、そして改定をされる。そうすると、改定から改定の間のまん中で、実は実態調査をされた結果が出てくるわけですが、いま薬はずんずん下がっているわけです。そうすると、先へいって改定する、一年くらい改定まであるとしますと、時差補正を行なわなければほんとうの実勢価格というものは出てこないわけです。こういう問題についてどういうふうにやられておるのか。この点をひとつ明確に計算をしないと、たとえ調査をしてもそれは価格が違ってくるわけです。その点はどうお考えになっているのかということ。  それからもう一つは、先ほども申し上げておることなんですが、実勢価格を基調とするのではなくて、やはりあくまでも原価計算をして、一定の支払い基準に変えていく必要があるのではないかという私は意見を持っておるわけです。これが第二番目。  第三番目には、いまこの薬価の問題、薬価基準の問題は役務行政の中で取り扱っておるわけですけれども、この際、との薬の値段の問題についてだけは——品質の問題は別ですよ、この薬の値段の問題については、私は、この際、立ち入り権を持っておるところの公取にまかすべきではないかというような意見を持っておるわけですが、その点はどういう御意見を持っておられるか。  この三点を最後にして質問を終わりたいと思います。
  289. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 薬価調査の時点と現実に薬価基準を改定いたします間におおむね半年前後のインターバルがあることは事実でございます。そういう意味では、確かに先生おっしゃいましたように、最も好ましいことは、先ほどの御議論にも関連するわけでございますけれども、調査をしたあと、きめこまかくトレースしていく、あるいはまた随時調査をしていく、そういったことをかみ合わせて、常時実勢に合ったような基準をきめておくことが最も適切なものであるかと思います。ただ、実際問題といたしましては、従来からも大体一年に一回程度の基準の改定を行なっております。過去において時差補正を行ないましたのは、御承知かもしれませんが、昭和三十六年のデータによって四十二年の十月に薬価基準を改定いたしました際に、約六年間の時差補正をしたことがございます。しかし、その後は、大体いま申し上げましたように、一年のインターバルでございますから、そういう意味合いにおいて、まあ一年の間における調査、一年一回であれば、実際問題としてまずまず適正なものが得られるのではないか。また、実際時差補正をいたしますといたしますと、どういうふうな補正をするのか、またどういうデータで、そのためにどういう調査を行なうのか、また技術的にそういうものはどういうふうに処理していくのか、そういった非常にむずかしい問題がございますので、検討はさせていただきますけれども、そういったいま申しました現実に一年一回という改定、また技術的な難点、そういうものを考慮いたしますと、相当これはむずかしい問題ではなかろうか、このように考えております。
  290. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 二番目の御質問でございますが、実勢に従うのではなくして、むしろ原価計算をして適正なる利潤を加えて薬価を決定すべきではないか、そういう御質疑だと承りましたのですけれども、ただ、現在医薬品、これは製造販売ともいわゆる自由価格でございます。それに対していまきめております薬価基準は、医療保険の適用のために診療報酬の請求の際の基準価格をきめるという性格のもので、まあ、もちろん皆保険でございますから、実際上はこれが全国民に適用されるという意味で一種の管理的な価格になっていることは御指摘のとおりだと思いますけれども、やはり基本的に申しまして、これからの新医薬品の開発等の要素も含めまして、医薬品の製造、品質の向上、そういったことを中心にして考えてまいりますと、一種の国家統制的な形の原価計算プラス利潤というような形での医薬品の価格の決定ということが適当であるかどうか、またそういうものが自由競争場裏のいまの企業の中で医薬品についてだけどこまで可能であるか、非常に大きな問題であろうと存じますので、この点は御意見いただきまして、さらに私どもも検討させていただきたいと思います。
  291. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこでまあ最後ですが、たとえばペニシリンなんか、非常に安くなってきているわけですよ。一日分大体百九十四円、薬価基準に出ていますね。これでもまだ高い。カナマイシンというやつがありますね。これは抗生物質、結核によくきくという薬なんです。明治でしたかでつくっているわけですが、まあこの薬は梅沢博士の発明で非常にいい薬なんですが、製造方法を見まするとそうも違いはないんですよ。培養基がちょっと高度になっているだけだ。しかし、その価格は、製法特許で、一日分千二百九十六円。絶対下がらない。そのメーカーは、この薬価基準に登載してもらうときにも絶対値を下げない。これはあくまでも原価計算を追求しなければ価格は下がらぬのです。だから、申請をするときに、皆さんがどっと受けて、これは使っているからといってただ言うなりの金額で出していくというようなやり方が往々にしてあるんです。ですから、ほんとうに価格をきめるルールがいま確立をされていない。抜本的にこの流通問題について一つの課で専門的に検討するような薬務局の中に単独課を設立をして、そうしてメーカーの生産から庫出し価格から、そうしてその末端の薬局、そうして病院の診療所等を通じて患者に渡たっていくその手まで、その受け取る手までこの流通ルート、流通の機構というものをきちんと位置づけていくような、そういうぼくは、薬務局の中に薬品流通課といいますか、そういう課を一つつくって、抜本的にやらなければこれはだめだと思うのです。むずかしいむずかしいというだけではいつまでたっても事の解決にはならない、こう言わざるを得ないので、その点、この薬務行政というものは非常におくれている。よほど考えなければ他の局についていくことはできません。だから新任の大臣にひとつ決意の表明を最後にお願いをして質問を終わりたいと思います。
  292. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ただいままで御指摘のありましたとおり、流通過程にはいろいろの問題があることを承知をいたしたのであります。やはりこの流通過程、これは日本でもすべての商品について問題になっておりまするが、やはり医薬品につきましても非常に大きな問題であるというふうに私も御説明を伺いながら受けとめた次第であります。適正な価格を形成するということは、これは非常にむずかしい問題も多々ありましょうが、適正な価格の形成ということにつきましては、今後引き続きまして真剣に検討してまいりたいと存じます。
  293. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それではきょうは私は難病の問題について質問をさせていただきたいと思います。  過去七年八カ月佐藤内閣が続きまして、人間尊重とか愛情のある政治とか美しいことばが長いこと使われてまいりました。しかし、そのことばとはうらはらに、働く人たちはたいへんな苦労を背負いながら今日までやってまいりました。じょうぶな者がそういう美しいことばで惑わされたり、またごまかざれたりというようなことも腹が立ちますけれども、ある程度はがまんしてがんばれるかと思います。しかし、ほんとうに自分が急に発病した、そしてその原因もわからない、治療もわからないというような、いわゆる難病の方々の身にすれば、今度の新しい田中内閣によって自分たちはどういうふうに援助の手を差し伸べられるだろうか、大きな期待を持っていられるのは当然だと思います。  本来ならば、新しい内閣にあたって、田中総理自身が所信表明をされて、そしておっしゃるとおり福祉重点の政策をすると言われるならば、具体的な方針をまず国会でなされるべきところなんですけれども、一向にそれもなされないで、そして私ども国会では聞くことができないで、数々のニュースや新聞報道などで聞くような事態になってきております。この八月の初めに、もう田中総理はいろいろなことをおっしゃっておりましたが、特に難病の問題で言いますれば、難病の問題については、これは全額公費で見たい、そしてあったかい手を差し伸べたいということが、各紙を見ましても大きく取り上げられているわけです。そして二十七日、首相官邸で厚生大臣、坂元事務次官をはじめ厚生省幹部と昼食をしながら厚生行政について懇談されたという記事を見ました。  そこで、まず私が最初にお伺いしたいのは、田中総理が難病という問題をどういうふうにとらえて、そしてその難病というものにどの程度本気になって考えていただいているのか厚生大臣と御懇談の中でどういうふうにおっしゃっていたか。またそれを受けられる厚生大臣としては、この難病というものをどういうふうにとらえ、難病対策全額国庫負担というふうに宣伝されておりますけれども、この問題についてはどういうふうな展望をもって行政を進められるおつもりか。まず最初にそのところからお伺いしたいと思います。
  294. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 御承知のとおり田中内閣におきましては、今後の施策の一つの重点といたしまして福利行政推進をはかりたいという姿勢で臨んでおることは御承知のとおりでございます。その中でさらに難病について特別の措置をとろうではないかということも御指摘のとおりでございます。実は田中総理から具体的の指示が実はあったわけではないわけでございまして、その点もあらかじめ御了承をいただきたいと思うわけであります。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕  それで、この難病につきましても、一体難病というものをどの範囲に考えていくのかというような問題もございますし、まあ私どもといたしましては従来からいわれておりました医学的な専門家の言う特定の難病ということではなくて、もう少し範囲を広げまして治療の方法が明確でない、あるいは相当長期にわたって療養を要する、あるいはまた患者の負担が相当に高いというような、そういったような点等をそれぞれ考慮いたしまして、そうして難病としてわれわれが政策的に取り上げる病気がどういうふうに——まずさしあたりどういうふうなものを取り上げていくかというふうなことも研究をいまいたしておるところでございます。ただいま全額国費負担というお話がございましたが、そこまでの実ははっきりした発言でもないわけでございましてたとえばその病気によりまして、あるいは病状によりまして特別の施設に収容したりあるいは治療方法について特別のさらに積極的な開発をするとか、あるいはまた患者負担につきまして、それぞれその負担の軽減についてできるだけの努力をするといったような問題等でございまして、そういったような問題につきまして、これも御承知のとおり予算の要求の時期が迫ってまいりましたが、幸い重点施策については九月一ぱいでよろしいというようなこともきまっておりますし、私どもはそれに間に合うようにいま厚生省といたしましてもいわゆるプロジェクトチームといいますか、こういうふうなもので、実際行なう場合にどういうような予算額が要るか、またその間にどういう問題を解決していかなくちゃならぬかというようなところを目下研究をいたしておるところでありまして、少なくとも明年はそういった問題につきまして、私どもとしてはぜひとも前進をさしたい、こういう決意でいま臨んでおる次第でございます。
  295. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろ政策をお出しになって、それを具体化するためには予算ということがからんでまいりますが、九月一ぱいでよろしいというふうなことでしたが、もう八月も半ばになりまして、あと一ヵ月ちょっとしかございません。そういう中で、いままでの中でどういうのを、難病というものの範疇をどういうふうにお考えになってきているか、具体的にどういう機関でどういうふうなことが討論されたか。それからまた、いろいろとそのほかに公費負担というような問題についても、どの程度まで考えられたのか。現在までのところ、非常にアドバルーンは高く大きく上がりましたのですから、そのいままでの経過というものを一応御説明いただきたいと思います。
  296. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 今回の調査研究の対象といたしましたのは、医学の専門家からなりますところの特定疾患対策懇談会におきまして選定されたものを一応対象といたしてございます。  それから、その費用等につきましては、現在の段階におきましては、他の医療費の支払い方法等との関係もございまして、今年度におきまして治療研究費の形で医療費を負担して差し上げるという制度を考えておりますが、これも早急には医療費の支払い方法等の検討がなかなか実現困難な状態でございますので、来年度も引き続き治療費を治療研究費の形で差し上げる。こういう方法を現在の段階では検討いたしてございます。  それからなお、特定疾患の範囲につきましては、さらに多くの疾患がございまして、その選定につきましては、引き続き特定疾患対策談懇会の先生方に御依頼申し上げまして、範囲を拡大してまいりたいと、かように考えております。
  297. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それではここではっきりさせますけれども、全額国庫負担というようなことは、あれは間違いであったと、やはり今年度も引き続いての治療研究費というようなことしか考えられないというふうなことでございますね、いまおっしゃった答えは。じゃ、それはそれでアドバルーン、だいぶ小さくなっちゃって残念なんですけれども、そういうことだということを確認いたします。  それから、特定疾患対策懇談会で二度ほどお集まりをいただきまして、そして八つが対象になっておりますですね。その八つ以外にもやはりいろいろと難病というのがたくさん数としては出てくる。私どもがちょっとお伺いしただけでも、いますぐわかるのでも十五、六はあるほど。そのほかいろいろと出してみれば、もう三けたからあるというようなことで、単に八つの病気というものではなくて、これからどんどん難病予備軍というもが押し寄せてくるということが目の前に迫っているわけでございます。そういうことから考えると、この八つに限定されるということは、あくまでこの八つから広げないとおっしゃるのか、それともやはり難病についてはほんとうに真剣にやろうということであれば、この八つはいまのところ八つだと。しかし、次々と今年度中にでもふやしていくというような積極的なおつもりがおありでしょうか、どうでしょうか。
  298. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 本年度はとりあえずこの八つに限定してまいりたいと、かように考えています。  それから先ほどお話しにございますように、このほかにもやはりたくさんの難病と思われるものがございますので、その範囲につきましては、やはり私ども特定疾患対策懇談会の先生方と御相談の上さらに追加してまいりたい、かように考えております。
  299. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 一応八つに限定したいとおっしゃる理由は、予算の上から、せいぜい八つくらいしかめんどう見切れないということから八つをお考えになったのか。それとも、予算というものに心配がなければ、いまわかっている、さっき言いましたように十五、六もあるというようなものも対象として考えることができるのか。問題は予算に関係してくるのか。それとも医学的な問題、そういう問題から関係してくるのか、どっちでしょうか。
  300. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 私どもの立場といたしましては、医学的に特に十分に研究を行なう必要があるというものから選んだということでございます。
  301. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たとえば、それじゃ、膠原病一つ考えてみましても、膠原病にはいろいろな症状もございまして、エリテマトーデスだけが入りましたですね。それはやっぱり医学的に問題が、——どういう点でほかのものが省かれたというふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  302. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) エリテマトーデスのほかに、膠原病は非常に範囲の広い問題がございまして、従来もこの膠原病につきましては、各種の検討がなされておりますけれども、現在の段階におきましては、とりあえず最重点的にエリトマトーデスから一応研究の対象にしていきたい、かような観点から選んだわけでございます。
  303. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この難病につきましては、これからほんとうに究明されなければならない問題でございまして、これだけの症状があればこれはこの病名だというような、たいへん認定するのにもむずかしいところがあろうかと思います。しかし、いろいろなものを総合して、また調べていった結果、こういう病名だと落ちつくまでに何年もかかるわけですね。たとえば私も難病の方々——たくさんきょうもおいでいただいておりますけれども、お話を聞きましたら、いろんな病気、統計が出ておりますけれども、多いときには二十カ所歩いていらっしゃる方がございます。そうしてたとえば膠原病だと診断を受けられるまでに十年かかったというような実際の例がたくさんございますですね。そうしますと、この八つで、この症状だというだけでは、ほんとうの難病対策ということにはならないと思うんですね。そうすると、やっぱりこれはちょっと疑わしいと、非常に問題が大事だというようなものも含めていって、そうしてそこで研究することによって成果があがるということが考えられるわけでございますから、まだ、はっきり予算もおきめにならないうちに、八つに限りますなんということを、ここでそんなに明確におっしゃらないで、もうちょっと考えていただくというようにお考えいただけないものでしょうか。
  304. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) お話しのとおり、やはり難病と称せられる疾患の中には、その症状によりまして非常にいろいろな変化を示してございます。さらに類似の疾患もその周囲にございまして、なかなかその認定につきましては困難を来たす場合もあろうかと存じます。したがいまして早急に認定のための基準、あるいは症状の基準等も作成いたしまして、治療法の検索等に努力いたすとともに、やはりその間におきましても、いろいろ問題が発生してまいりました場合には、弾力的に操作をしてまいりたいと、かように考えております。
  305. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 非常に御本人にとっては真剣な問題でございますので、いまおっしゃったような弾力的な、積極的な立場に立ってお考えいただきたいと要望したいと思います。  それから、いまおっしゃいました認定の基準でございますね。私たちも別に何でもかんでもこれは難病だからやってくれというようなむちゃなことを言っているわけではございませんで、やっぱり一日も早く治療のためには原因究明をしていただきたいということは今後引き続いてやっていただかなければならないと思いますが、さしあたりいまわかっている医学の力で認定というものを早く出していただいて、そしてそこで援助する対象というものを確立していかなければならないと思うわけなんですけれども、その認定の基準というものは大体幾つについていつごろまでにお出しになるというふうに具体的に準備なすっていらっしゃいますでしょうか。
  306. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 認定の基準につきましては、これは対象の患者さん方の症状その他の総合的なやはりデータが必要でございますので、早急にこれを集めるとともに、そのデータに基づきます懇談会の先生方意見はできるだけ早く作成いたしたいと、かように考えております。
  307. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 できるだけ早くというのはいつも私委員会で申し上げておりますけれども、ひどいのになると四年ぐらいかかってしまったりというようなこともございますので、できるだけ早くというめどは大体どれくらいを頭においてお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  308. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) スモンの例を申し上げますと、大体一応の基準を作成いたしますのに一年半から三年を経過いたしてございますので、やはり従来の研究と相まちまして、時期をはっきり言えとおっしゃられてもそう確答はできませんけれども、できるだけ早く作成いたしたいと、かように考えております。
  309. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その辺の御返事しかいただけないかと思いましたけれども、やっぱり完全にこれだということは言えないわけですね、その原因究明の途上でございますから。だからその原因究明がきちっとできて症状はこうだということを待ちますと、いまおっしゃったように今後何年かかるかわからないわけです、そういうことから考えますと、現在患者さんたちの症状をずっと御調査なさいますれば一応の認定基準というものは出てくると思うんです。それがまた研究の結果それを改正しなければならないということになればそのつど改正していっていただいてけっこうだと思いますけれども、一日も早くこういう症状の人たちはこういうふうな病名に該当しそうだというようなことで確実なところに基準を置いて出すというようなことでなくて、一日も早く患者さんたちがどこに行ったらいいだろうというふうに迷わないで、お金と時間をむだにしないで済ませるようなそういう立場に立ってお考えをいただきたい。そうすれば一年なんていわれると、ほんとうにきょう皆さんたくさんいらっしゃっておりますけれども一年といったらそれこそほんとうにちょっと気の遠くなるような話でございますので、ほんとうに早急にやっていただきたいと思うわけです。  その懇談会というのは定期的に行なわれておりますのですか、それとも晴時大臣が招集なさって懇談なさるのですか。
  310. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 認定基準につきましては、御指摘のようにやはり現在研究の段階でございますし、いろいろ個人によりまして症状の違いもございます。したがいまして大体従来の治験例を総合いたしまして一応の基準を作成いたしまして、その研究の結果、さらにそれを確実なものにしていく、御指摘のような段階で進めてまいりたいと思っております。  懇談会につきましては、必要に応じ厚生大臣が招集するという形になっておりますので、これは精力的に実施してまいりたい、かように考えております。
  311. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ暑いでしょうけれどもがんばって秋風の吹かないうちにでもやっていただきたいと思います。それからそういうことをされるためにも調査ということがなければならないと思いますんですけれども、一体このいわゆる難病といわれている問題について国としての調査ということはいままでなされていたのでしょうか。それとも今後どういうふうになさるおつもりなのでしょうか。やはりその調査によって具体的な例の中からの結論というものがやっぱり臨床的にも引き出せると思うんですが、そこの辺のところをお伺いいたしたいと思います。
  312. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 難病につきました実態調査というものは、従来行政的に実施した経験はございません。ただ治療、研究費等の範囲内におきまして疫学調査を実施いたしてございます。したがいまして、四十七年度の予算におきましては年内を一応のめどといたしまして難病の調査を実施いたしたいと、かように考えておりますけれども、やはり先ほど申し上げましたようないろいろの基準等につきまして学問的に検討の段階でございますので、いかなる疾患が出てまいりますか現在のところ私ども承知はいたしておりませんけれども、少なくとも年内をめどに実施をいたしたい、かように考えております。
  313. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうことで調査というものがななければ、やはり具体的な結論というものは引き出せないと思うんですけれども、私が一番残念に思いますのは、これは日本だけじゃないかと思うんです。きょうも私、難病の問題をお伺いしたいと思いまして、ちょっと難病の方々に連絡をいたしましたら、ごらんのように三十何人おいでになりました。そしてだいぶ夕暮れになりましたから視力のお弱い方は残念だけれどもと言ってさっきお帰りになったというふうに、非常に多くの方々が田中内閣においてのこの厚生行政、難病はどういうふうに発展させてもらえるのかと期待しているわけなんですね。そしてやはり一番患者さんとして心配なすっていらっしゃるのは、一体その原因というものが何なのか、一日も早く治療というものの方向を見つけてほしいというのが切実な問題になるわけです。先ほども大臣初めのことばでおっしゃいましたように、このいわゆる私たち難病と言っておりますことが、純粋に生物医学的な問題だけの検討でいいのか、そうではなくて、やはり社会的ないろいろな問題からも検討しなければならないというようなことから考えてみますと、懇談会のメンバーを見ますと、そういう立場先生たちがいらっしゃらないという点、ちょっと残念にも思います。そういう立場先生を懇談会の中にお加えになるというお気持ちがおありかどうかということが第一点です。  それからその懇談会で専門的な方々がいろいろ御懇談なさる、そういうことは患者さんにとってもぜひ聞きたいということだし、また自分たちとしてもぜひ意見を言わせてほしい。自分のからだを実験用に提供していると同じ段階でございますから、そういう立場でぜひ自分たちもそこに参加というのが無理であれば、傍聴させていただくとか、そういう懇談会の結果はこうであったというような情報をお知らせいただくというようなことをお考えいただきたいと思うのですが、第二番目として、その辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  314. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 私どもの懇談会といたしましては、やはりまず第一に医学的な原因の追及を一日も早くするということに主眼を置いてございます。したがいまして、それらの原因がはっきりいたしました段階におきまして、その患者さんの福祉的な措置をどうするかということは第二の段階になろうかと考えております。特に福祉的な処置といたしましても、医療費の問題これは先ほども申し上げましたように、医療費の支払い方法等につきまして、抜本的な問題に触れてまいることがございますので、現在の段階におきましてはどうしてもやはり治療研究費という形で医療費の負担の軽減をして差し上げるという以外にはございません。私どもの医学的な原因の追求が確立し、治療法の確立いたしました次の段階におきましては、やはりいま先生が御指摘のように福祉的な措置をいかにすべきかという問題のための委員会はあるいは必要になってくるかというふうに、私どもは現在の段階では考えております。
  315. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、私が聞いたのは、その懇談会に、医学的なプロパー的な立場でなさる方と、それからやっぱりその病気に付随して起こってくる原因としては社会学的な立場からの問題もあると、そうすると、純粋に生物医学的な立場だけで討論なさるんではなくて、やはりそういう社会学的な立場からの専門のメンバーも加えることが、より難病の原因究明にもいいのではないかと、だから、そういう方たちをお入れになるおつもりはないということでございますか、いまの御答弁では。それを私が一番先に聞いたわけです。  それから二番目に聞いたのは、そういうような懇談会、別に秘密でもなければ、どういうふうな情報のお話し合いがあったとかというようなことを、私たちにもまた患者さんたちにもお知らせいただけると、そういうルートがつくられるのでしょうか、それは患者やしろうとだからそういう者は関係しなくてもよろしいと、専門的にやるんだというふうな、やっぱり壁というものがあるんでしょうかというような二点でございます。簡潔にその二点を。
  316. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 第一点の、懇談会の内容につきまして一般公開するかという御指摘でございますが、やはり医学的な問題につきまして、あるいはいろいろ発表をお聞きいただかないほうがいいような問題もおそらく含まれてくるだろうと思いますので、そういうことにつきましてはやはり公開の原則はとらないほうがいいんじゃないかということでございます。ただし、懇談会の結果につきましては、新聞等を通じまして発表をするという原則を立てております。  それから、社会学的な追求につきまして、これは私ども現在の段階におきましては、まず医学的の問題を第一にするという原則を立てておりまして、いずれそういう問題も研究の段階におきまして生ずることも予想されておりますので、その時点におきまして検討さしていただきたい、かように考えております。
  317. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは、そういう懇談会、まあそういうお考えならそのお考えということで話を進めていきますけれども、その懇談会で各病気についての研究班というようなものをおつくりになっていらっしゃって進められると、こういう構想だと思いますけれども、そうしますと、やはり何といってもそこに非常に研究費というようなものの予算がつかないと、気持ちはあっても実際問題進まないということでございます。で、衆議院で四月十四日でしたか、いろいろと専門の先生方の御意見ございましたけれども、これは東大の白木教授ですけれども、全くこういうような研究をするのに二億や三億や五億ではどうにもなる問題じゃないというような御発言もございましたし、また一般的な研究費というものを見ても、理工学関係の研究費などに比べますと、厚生省の研究予算というのは毎回委員会でも指摘されますように非常に少額でございますね。その辺の研究費というようなものをどういうふうに今年度は考えるというふうに構想をお持ちになっていらっしゃるか、また治療研究費というような形で込みになっているということではなくて、法的にもむずかしいからというので治療研究費の対象補助として患者さんにいままでのような形で出すということと別に、はっきりと研究費というようなことで大きく予算を組むというようなおつもりがおありになるかどうか、その辺の御意見はいかがでございましょうか。
  318. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) ただいまの御意見を踏まえまして、明年度は相当高額の予算要求をいたしてございます。
  319. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 どのくらい、高額というのは。
  320. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 大体二十億近くです。
  321. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうですか。  それから研究治療費としていままで一万円でございましたね。これはほんとうにわずかの金額でございます。私も一体どれくらいの皆さん病気の上に財政的な困難をかかえていらっしゃるか、と思って伺いました。たとえばある方は健康保険本人でございますから、その治療費というようなものはただでございますけれども、御承知のとおり差額ベッドというものがございまして、急にぐあいが悪くなった、差額ベッドでなければ入れないというような場合がほとんど多うございますね。そうしますと、これは領収書も持ってきていただいたので私拝見いたしましたけれども、この方の場合ですと膠原病でしたけれども、膠原病だと診断されるまでに十年間かかって、病院に払ったお金だけで六百万でございます。去年の七月からの一月分の領収書があったからとお持ちいただきましたら、約十万円かかっているわけなんですね。そうすると、医療費の負担という形で調査研究費からお出しになる一万円というのがまことにささいなもので、もうこれはどうしても何としても今年度と同じ一万円というような額ではとても、これだけ田中さん元気に難病に取り組むとおっしゃった手前ちょっとお恥ずかしい結果になりますが、一万円ということは相当のやっぱり大幅に引き上げていただかなければならないんじゃないか。それから一万円お出しになる対象ですね、これもいままでだとこれだけしか出せないということですけれども、やはり今度八つの研究対象を認められたとすれば、少なくともこの八つ全部にはそれをお出しになるというふうにしていただかなければならないと思うのですが、いかがでございますか。
  322. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 明年度につきましては、いまお話のございましたような治療費につきまして治療研究費という形で負担の軽減を実施いたすつもりでございます。ただし入院に際しまして部屋代の差額徴収につきましては、ちょっと私どもの治療研究費の対象外ということになりますので、この措置につきましては一応私どもは計上はしてございません。
  323. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その差額ベッドまで出せということになれば、これはたいへんな問題だと思うのです。そこまでちょっと無理だとすれば、差額ベッドに出さなくても入れるというようなベッドの確保ということで努力していただかないと、結局病人は行き場所がないという結果になるわけでございますね。  それから差額ベッドのこと、さっき申し上げましたけれども、もう一人の方は急に呼吸困難になって救急車でもって運び込まれた。それで一週間酸素吸入をやったり、ここを切開したという治療で、やっぱり三十万をお払いになっていらっしゃるわけなんですね。どうしてもこの一万円というものは、それこそ病気を持っていらっしゃる方たちが実は、人体実験になっていらっしゃると見て私はいいと思うのですよ。苦しみを持ちながら、自分の肉体を提供しながら研究の材料になっていらっしゃるのだから、研究の治療対象としてお出しになるなら一万円なんていうのは、どうしてもこれはひど過ぎるのではないかと、上げていただかなければならないということが一点ですね。その辺しっかりもうちょっと考えていただきたいということが一点と。  それから差額ベッドまで出せないということは、それはそうだろうというふうにも考えられます。とすれば、差額ベッドなしでもこういう人たちのために難病のためにベッドをあける、ベッドを確保するというような努力をしていただかなければほんとうにやり切れないんですがね。その辺のところどういうふうに善処していただけますでしょうか。
  324. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 第一点につきましてお答え申し上げますが、額の拡大につきましては十分検討いたしたいと思います。
  325. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それから第二点……。
  326. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 医療施設の関係のベッドの不足問題は、これは一般論としてもあるわけでございますが、わが国の病院のベッドが非常に長期にわたっていわゆる利用日数が長いという問題は一つございますけれども、いずれにしても入院を要する人が、地域によってはあいておる、地域によっては入れない、こういう一つの問題、医療上の問題がございます。今回、難病対策につきまして特に総理の御検討を——まあ私の受け取り方としては検討すべき中にやっぱり施設の問題を考えるということがどうしてもお考えの中にあるものと受け取っておりますので、そういう意味で国立の施設も従来実績的には子供の療養施設、その他重症心身、筋ジストロフィーあるいは小児ぜんそくというようないわゆる難病、それから特定疾患については一般的にはまだ国立の対処のしかたはこれからやらなければならぬ。こういうことで、きょうの御質問の主題になっております特定疾患については、厚生省では、難病という中に小児ぜんそくとか、いろいろなものを含んでいる特定疾患、スモンその他の奇病、これについて今後国立がまずたよりになる、診断の中心になる施設という意味で、一般国立病院、療養施設という意味で国立療養所等の活用について省内にできましたプロジェクトチームの実質的な検討内容として医務局の対処すべき問題じゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  327. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 滝沢さん声大きいですからすごく頼もしいんですよ。(笑声)がんばってくださいよ。  それで、もう一つ問題があるんですけれども、結局病院に入れた場合にはある程度それで対象になって一万円であろうとももらえますね。たとえばスモンの例から言っても二十日間以上入院してと、こういういろんなことで……。ただ一つ問題なのは在宅の場合ですね。この在宅の場合が意外に多くて、そして非常に財政的にも苦労していらっしゃいます。それから小児ぜんそくだとかネフローゼだとかいうような問題でも、結局病院があって養護施設だから教育と医療というものとが  一緒になっているところは対象になってもらえる。しかし、そこに入れない子供はそれから除外されてしまうわけですね。そうすると、そういう病気を持っている子供は同じなのに、たまたま施設がないためにこっちの子は入れて、そしてそこで保護される、こっちの子供はというふうにそこで非常に大きな差別になります。これは私、ことしの予算委員会でも申し上げましたように、結局これは行政面から見ての差別をされているわけで、子供たち、病人自身にとってはこれはたまらない差別になるわけなんですね。そこで、やはり一万円というようなものを大幅に考えるのだということでございましたが、それと同時に在宅の病人に対して、やはり通院もするでしょうし、治療、研究の対象にもなるでしょうし、そういう在宅の者に対してもやはり御配慮いただかなければ非常に私はたいへんだと思うのですが、その辺までお考えいただけないでしょうか。
  328. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 通院患者につきましての治療の問題でございますが、これはやはり研究方法等も関係いたしますので、その段階におきまして十分検討して、通院治療費につきましても何らかの御援助を申し上げるような方途を考慮いたしたいと、かように考えております。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
  329. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その考慮は期待していい返事だと受け取っていい考慮ですか。
  330. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) これは研究と関連いたしておりますので、その治療内容等につきましていろいろ問題もあろうかと思いますが、研究という趣旨に沿った治療内容でございました場合には、当然この対象に考えるべきじゃないかと考えております。したがって、そこいらと十分検討をいたしまして、これは前向きに実施いたしたいと思っております。
  331. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その前向きがくせものでございまして、前向いているつもりで後向いていたということもあります。そこでお出しになる名前が治療研究費の対象としてお出しになるというところでそういう在宅との差が出てくると思うんですけれども、やっぱり患者さんにすれば、ほんとうに先ほど話が出ましたように、国立療養所なんかベッドがあいている。ここで専門医さんがいて、看護婦さんがいてどんどん入れるのだったら、もちろん安心して入りたいというお気持ちだと思うんですよ。しかしベッドはたまたまあいていた、あいていたけれども、こういう病気についての専門医が十分でない。だから結局ベッドがあいているから入れてあげますよということでベッドに入れてあげるという程度にしかなっていないというのが、残念ながら現状でございます。それから、看護婦さんにしてもかき集めてこなければなりません、全体が足りないから。そうすると、むしろおかあさんのほうが専門家です。もう十年、十五年とお世話をしていらっしゃれば。そうすると、やっぱり在宅でほんとうに心のこもった看護もしたい、一緒に住みたいというお気持ちがございますし、そうしますと病院に入っているから治療の研究対象になるんだ、在宅だから治療の研究対象にならないという区別はほんとうにむずかしいと思うんです。その辺のところがいままでの行政の中で非常にしゃくし定木なところでみんなが苦しめられてまいりましたので、この辺でそういうしゃくし定木なことではなくて、やはり出されているのは当然治療研究対象だけれども、具体的には治療費の一部負担というような役割りが大きく出ております。ただ、一部負担というようなことで出すにはいろいろ法的な問題もあるということで、研究費というような形になっているという内容から考えれば、どうしても在宅に対してもそういうような手を差し伸べていただきたいということを考えるのです。その辺のところは、大臣ひとついいところ答えていただけませんか。
  332. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 在宅で同じような症状で病院にもはいれないというようなことで、実質的には一向に変わりがない。変わりがないが、しかし、不便するのはおかしいじゃないかというお話もあったわけでありますが、私は同感でありまして、やはり、ここではひとつ御指摘のありました行政のワクをはずすように努力してまいりたいと思います。
  333. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ほんとうに努力してください。その辺のところ、ぜひお願いします。  それから、先ほどの問題ともからみますけれども、ベッドは何とかなると思うのです。なると思うから、建物や何かは。しかしそこで専門的なスタッフをどういうふうに適正配置していくかという問題と、それから看護婦さんをどう確保するかということと、医療全般の問題になるわけなんですけれどもね、その辺がたいへんむずかしいと思うのですよ。で、私、いますぐにぱっとお医者さん、看護婦さんができるわけでないとすれば、現状の中でどういうふうないい方向を考えていただけるかというところで、御一緒に考えていかなければならないと思うのですがね。具体的にベッドのほうは療養所のあいたベッドを使うということにしましても、今度は東京だけではなくて、地方がございますですね。そうすると、地方との関係というようなことで、これはことし一ぱいというようなせっかちなことは申しません。これは相当長期にわたる問題でございますが、こういう問題についての長期的な展望というものはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  334. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この問題については、先ほどの答えとも若干関連いたしますが、スモン等の例に見ましても、あるいはべーチェットその他の患者の友の会の御意見によりましても、一番必要なのは正しい診断を早くつけるという、医師の診断力を含めた医療機能の強化、これはほんとうに重要な問題だと思うのです。そういう点についてスモンの例の場合は、大体、公的病院が、国立ももちろんでございますが、かなりタッチしまして、ただ、スモンは発生の地域性が非常に片寄りましたので特定の病院に片寄ったかっこうになりましたけれども、べーチェットとなりますと、全国にもうかなり普遍的でございますし、やはり国立とそれから大学関係、それから公的病院こういうものを中心としたいわゆる教育関連病院と申しますか、機能のいい病院がこういうような難病の一つの診断なり指導のきめ手になるような機能というものを持つことが、ベッドを持つことも大事ですけれども、それがまず当面非常に大事なことじゃないか。したがってこういうように中央の政府の政策がきまってまいりますと、たとえば医学会その他の論文の中にもべーチェットの問題が出てくる。学会の発表の中にもそういうものが出てくるということによって医師の関心が非常に高まりまして、医学雑誌などの診断基準なり考え方が出てくる。こういうことでスモンの問題にしましても、政府が取り上げることによって医師の関心も高まり、そういう機能も充実していける。特に国の直轄の機関については、政策的には私はこの難病の対策について診断機能を高める意味のいろいろな方途を考えたい。  それからベッドの増については、これは総理の御意向の中にもかなり計画的に考えなければならぬ、一ぺんには無理だろうというようなお考えもあるようでございますし、これはもう従事者の養成、医師の確保その他からいって右から左というわけにはまいりませんけれども、やはり計画的にこの問題をやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  335. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その計画的におやりになるという具体的な構想なんですけれども、いまおっしゃるような医学会でも出てくる、方々で発表されるということをごらんになってくださればたいへんありがたいのですけれども、現実はお医者さんはたいへん忙しい。だからさっきもちょっと伺ったのですけれども、北海道に患者さんがいる、そして友の会の方に連絡がある、友の会の方が行く。そこで北海道ではお医者さんが出てきていただけない。そうするとやはりみんなゆっくり研究なさっているようなお医者さんというのは限られておりますよ。そうするとやはり厚生省なら厚生省が国立なり公立なりそして各科をそろえた公的病院なりいろいろその他一応の病院を対象にして、そしてこの難病特定疾患の問題、——難病全体についても会合を持たれて、そしてこういうものだというような——お医者さん教育なんということになると、たいへんおこがましいことですけれども、そういうふうな具体的な問題を提起していただく、そしてまた看護婦さんにもこういう患者さんにはこういう看護でというような、こういう問題についての専門の教育というものは具体的に持っていきませんと、学会で報告された本は出ております、しかしそれは見ませんでしたというお医者さんがやはり多いと思うのですね。そういうところまで具体的に計画的に考えていただかなければならないと思うのですけれども、どうでしょうか。
  336. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 実はスモンの例で、スモンの研究地方協議会というのができまして、そこを通じて研究費その他患者の実態把握等をやりまして、この点についての各県のスモン研究協議会を特定疾患対策協議会に切りかえていただきまして、そして県内でどこの先生ならこの問題についてはかなり突っ込んだ研究をしており、経験もある、こういうようなことは県の衛生部長はわかっている、そういう方を協議会のメンバーにして、中央でやっているような懇談会のようなものごとをきめるだけでなくて、実際の県の段階ではどの病院に行けばどういうふうになる、あるいは県にも相談し、保健所等を通じて患者が相談に来るというようなふうに持っていきたいというのがスモン形式による地方協議会を特定に切りかえて、そしてこちらから、中央からきめて流す。ことしはこういうふうにきめた、だから県のほうではこういうふうにやってくれということによってその問題が浸透してまいるのじゃないか。医師の教育と申しましても、そう特定といっても、常識的な診断なりその考えをそちらに向ければかなり診断がつく問題でございますので、基本的に医者の教育が必要だという問題ではない、こういうふうに考えております。
  337. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうことでございますので、まあ私はしろうとの考えだからそういう先生方が関心を持って研究をされて、そして東京だけでなくてできれば各ブロック別にそういう機関ができて、そしてほんとうならば中央に国立のこういう研究所、センターというものができて、そして病床も持って、そこで臨床と研究を一緒にやっていく。そうして地方に、ブロック別にそういう病院、研究所があって、そうしてそれから保健所なりホームドクターと連絡がつくというような全国的な大きな展望を持って私はやっていただかないと、これからも解決つかないと思うんですね。だから長期的にそういう展望でやっていただきたいけれども、いまそれが無理だとすれば、おっしゃったようにスモン方式でもけっこうでございますが、もうこの場所へ行ってここへかかればある程度の診断をしていただけると……。患者さんが一番悩んでいらっしゃるのは、もうお医者さんによって診断が全然違うということがもうたびたびございますですね。そうすると、もうほんとうにどうしていいかわからないですから、だからそういうことがないようにぜひしていただきたいということです。それがもしできない段階においても、すぐできることといえば、たとえば先ほど北海道なら北海道と言いましたけれども、たとえば北海道でこういうような疾患で悩んでいる人たちの巡回診療みたいな形で、幾日かさいてその地方へ行って患者さんたち調査も含めてやるというような手だても考えていただけるんじゃないか、具体的にいましょうと思えば。そういうようなことも考えられるのですけれども、その点はどういうふうに御判断いただけますでしょうか。
  338. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) いま御指摘のようなことにつきまして、私ども、たとえば筋ジストロフィー症につきましては、特定の病床を国立療養所に設置いたしましてそこに収容する。大体その収容に際しましては、医師の教育あるいは看護婦の教育をまず実施いたしました上で収容するというような方法をとった経験がございます。したがいまして、先ほど医務局長が申し上げましたように、今後の設置する病床につきましても、医学的な面あるいは看護的な面につきまして、十分私どもと医務局当局とともに検討いたしまして、収容につきましては万全を期してまいりたいと考えておりますし、巡回診療等につきましても、中央の懇談会の専門家の方々の地方に対します啓蒙等につきましては、御指摘のようにやはり私どもは積極的に実施しなければならないと考えておりますので、あらゆる利用し得る機会を通じまして実施してまいりたいと思っております。
  339. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 もう時間がなくなったから終わりにしますけどね、やっぱりいまの実態というのは患者さん自身が友の会をつくってらっしゃるわけです。本来それは患者さんたちがお互いに慰め、励まし合っていく会ですね。ここで生活相談はできても医療相談まではできないわけですよ、専門の医師じゃないから。しかしもう地方からはほんとに電話はどんどんかかってくる、手紙は一日に三通も四通も返事書かなければならないというような現状を見ますとね、そういうようなのが地方にないということが、いま非常に御苦労なさっていらっしゃるわけでございますから、だから早急に地方にこういう公共病院とか、こういう国立大学、こういう病院には専門的にはこういう先生がいるんだということを患者さんたちの会にもお知らせいただければ、そしたら手紙が来たら、あなたのところはこの先生のところへ行って御相談なさいませというような解決もできると思いますので、私はほんとにいろいろ伺って、患者が自分で運動して、自分で金を出さなきゃこの医療というのを進めていけないというのは、ほんとに私は残念なんですよね。きょうも、見たところ元気そうにしていらっしゃいますけれどもね、皆さんほんとにいつ倒れるかわからない。もうさっきもお帰りになりましたけれども、そしてまた皆さんもいつおなりになるかわからない、おどかすわけじゃないけれども、というようなことでございますのでね、その辺のところ、ほんとにあったかい、ほんとに前向きで善処するというようないままでのことばはもうやめて、具体的に態度で示そうということで、最後にお願いしたいと思います。で、きょうの委員会だけを見ましてもたいへんなことでございますね、善処します、努力しますというお答えで。まあカネミの問題もありますし、公害の問題もございます。老人医療の問題もございます。そういたしますと、結果的には予算の問題になるわけなんです。それで私は大臣に最後にお伺いしたいんですけれども、厚生省関係の予算というのは、もうほんとうに全部が福祉のための予算だといって差しつえないんだと思うんです、保育所予算にしましても。そうすると、予算編成のときにいつも閣議で一律、今年度もそうですけれども、二五%増で概算出せということで概算出しますね。それで概算出したところが、今度大蔵省のほうで削られてくるということなんです。そうしますと、ここ何年とずっとそうなんですけれども、ひとつことしはこれを、目玉商品といっては悪いですけれども、たとえば難病なら難病、老人なら老人ということで取り上げれば、どっかにしわ寄せがいっているんです。だから、どうしてもこの予算の大ワクというものを何とかしなければ、私は矛盾がますます複雑になって、ますます深刻な矛盾になってくると思うんです。だから結局、あっちこっちあなたのほうで運動したからあなたのほうがついちゃったんだということでは、ほんとうの福祉行政にはならないと思うし、だから、もしもほんとうに田中内閣が心の底から福祉ということをお考えになっていただくならば、今度は大臣、そこで最後にけんかをしてでもがんばってほしいんです。各省が二五%なら、厚生省は全部福祉じゃないか、そうすると、これはもう五〇%ぐらいの概算要求で、全額削らないで通せというぐらいにしなければ——きょうも努力しますなんと言ったのなら、またこの次の委員会でまたつつかれるということになりまして、繰り返しになるわけですよ。だから、そういうふうなお気持ちで大臣にがんばってもらいたいし、そのためならば、きょうは患者さんが委員会でもこれだけ来ていらっしゃるわけですから、元気な者も、年寄りも、病人もみんなそろって大臣のうしろから、旗がきらいならば旗は立てませんで、応援いたしますから、その辺のところでほんとうにがんばって予算というものをしっかり取っていただきたい。その辺のところは、新任で決意は新ただろうと思うので、最後にしっかりした御決意を伺って質問を終わりたいと思います。
  340. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ただいま小笠原委員から、御注文をかねて激励のおことばをいただきまして、非常に心強く存じておる次第でございます。実は、すでに御承知のとおり、明年度の一般予算につきましては、例年どおり二五%増というようなワクが一応はまっておるわけでございまするが、しかしながら重点施策についてはこのワクにとらわれないというのがことしの新しい方針でもあるわけでございます。私は、この福祉の問題、あるいは病院の問題、こういったような問題は当然この重点施策の中に入ると実は解釈しておるわけでありまして、そういった意味合いにおきまして、従来の姿でなく、こういった重点施策につきましては、ほんとうにこのワクをこえて前進するという固い決意でおりますので、どうぞひとつ御支援を賜わりたいと思います。
  341. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四分散会