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1972-07-25 第69回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年七月二十五日(火曜日)    午後一時十分開会     —————————————    委員異動  七月十七日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     鶴園 哲夫君  七月二十五日     辞任         補欠選任     茜ケ久保重光君     小林  武君      占部 秀男君     戸田 菊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大矢  正君     理 事                 金井 元彦君                 矢野  登君                 伊部  真君                 内田 善利君     委 員                 田口長治郎君                 高田 浩運君                 寺本 広作君                 原 文兵衛君                茜ケ久保重光君                 占部 秀男君                 小林  武君                 鶴園 哲夫君                 戸田 菊雄君                 小平 芳平君                 加藤  進君    国務大臣        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        国 務 大 臣  小山 長規君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境政務次官   菅波  茂君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        法務省刑事局刑        事課長      根岸 重治君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        労働省労働基準        局補償課長    山口  全君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (公害及び環境保全対策樹立に関する件)  (公害対策強化に関する決議の件)     —————————————
  2. 大矢正

    委員長大矢正君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、加瀬完君が委員辞任され、鶴園哲夫君がその補欠として選任されました。     —————————————
  3. 大矢正

  4. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 参議院公害対策及び環境保全特別委員会開会にあたりまして、一言ごあいさつを申し上げます。  わが国経済の急速な拡大と都市化過程で生じつつある公害自然破壊は、最も緊急に解決を迫られている政治課題一つであります。このことは、ひとりわが国のみならず、諸外国においても同様でありまして、過日ストックホルムで開かれました国連人間環境会議におきましても、環境問題を全地球的見地から取り上げ、対処していこうとしているのであります。  環境問題解決のため、新たに環境庁が設置されてから一年を経過いたしましたが、この間、環境庁といたしましては、大石長官のもとで、国民立場に立って公害行政及び自然保護行政を進めてまいりました。私もこのような姿勢を堅持し、当面次の事項に重点を置き、所管行政を積極的に推進してまいる所存であります。  その第一は、環境問題におきましては、単にその事後的解決にとどまることなく、広域的な視野に立って未然にこれを防止していくという積極的な姿勢が必要であると考えます。このような観点から、日本列島環境保全についての長期ビジョンの策定を急ぎますとともに、各省庁の行なう公共事業地域開発についても、環境面からの事前チェックを十分行なわせることにより、公害自然破壊防止し、明るく住みよい生活環境確保してまいりたいと考えます。  第二に、環境問題におきましては、自然環境を保護し、その整備をはかることが重要な課題であります。美しい国土、豊かな自然環境確保し、これを長く子孫に伝えていくことは、われわれの重要な責務であると考えます。幸い、皆さま方の御尽力により自然環境保全法が新たに制定されまして、これを受けて今後の自然環境保全基本方針を定め、総合的な自然保護対策を展開していくとともに、国民自然保護思想の普及をはかってまいりたいと考えます。  第三に、光化学スモッグPCB等の新物質による汚染問題などにつきましては、その原因等が必ずしも十分解明されているわけではありませんが、その調査研究をさらに一段と早めますとともに、問題の緊急性にかんがみ、当面必要となる対策を迅速に進めてまいる所存であります。  さらに、不幸にして公害被害を受けられた方々に対しましては、万全の措置を講じますとともに、先般の通常国会において御承認をいただきました無過失賠償責任制度の実効を期するため、公害による損害賠償を保障する制度創設等について検討を進めてまいりたいと考えます。  以上、早急に取り組むべきいくつかの課題について申し述べてまいりましたが、私は、国民の健康で文化的な生活確保するという見地に立ち、環境問題の解決のために全力を傾倒してまいる所存であります。  皆様方におかれましても、環境行政の推進、発展のため、御支援、御鞭撻を賜わりますよう切にお願い申し上げます。
  5. 大矢正

  6. 菅波茂

    説明員菅波茂君) この度、環境庁政務次官を命ぜられました菅波茂であります。諸先生には今後ともよろしく御教導のほど、切にお願いいたします。  ごあいさつといたします。     —————————————
  7. 大矢正

    委員長大矢正君) 小山環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。小山環境庁長官
  8. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 昨日、いわゆる四日市裁判判決が下りました。この四日市裁判につきましては、もう新聞紙上承知のとおりでありまして、硫黄酸化物による排煙によって患者が健康をそこねた、そして、その間には因果関係がある、そして複数の会社が共同して責任を負うべきである、こういう判決の内容でありまして、この点は私どもも高く評価する次第であります。  このことに関しまして申し上げたいことは、昭和三十五、六年頃から四日市は操業を開始したわけでありますが、その当時においては、コンビナート地域的な配置についても、あるいは公害防止についても、まだ十分な対策は講ぜられておりませんで、そのことの結果、このような健康被害が多数に出てきましたことについては、私どもも深く反省をいたしておるのでございます。  この反省の上に立ちまして、したがって今後は、この公害行政を進めるにあたりましては、総量規制というような手法も用いまして、事前に十分な環境調査を行ない、マスタープランをつくり、そして、立地さるべき工場の数であるとかというものを制限してまいる、こういう方法でいかなければならぬと考えるのであります。  同時に、不幸にして被害を受けられた方々に対しましては、これが十全の救済措置を講じなければならぬのでありますが、現在医療給付あるいは介護手当などの制度がありますけれども、まだ十分とは言えません。さらにこれの改善につとめてまいりたいと考えますとともに、もう一つは、四日市裁判はありましたものの、新しい別の被害者がさらに慰謝料の請求などをやろうといたしますと、やはり裁判という手続を経なければなりません。この裁判には、今後はいままでのような長年月は要しないとは思いますけれども、やはり相当な年月が必要でありましょう。その間における患者の苦痛を緩和するためには、これらの損害賠償を保障する新しい制度が必要でありまして、先国会においても衆参両院において論議されたのであります。この制度創設については、いろいろ検討したりする問題があることは承知しておりますが、これができるだけ早く実現できるように全力を傾けてまいりたいと考えます。  また、先ほど申しましたように、これから開発されようという計画のある、むつ小川原にいたしましても、あるいは志布志にいたしましても、これらの開発をやるかやらないかということは、これはこれからの問題でありますが、かりにやるということになりました場合には、地域開発にあたっては、環境アセスメントの実施などによって事前チェックを行ないますことを先ほど申しましたが、それによって汚染未然防止に万全を期すとともに、すでに設定されておる環境基準についても、まだまだ十分のものではありません。したがって、この環境基準についても、最新の科学的な見地から早急に見直しを行ない、排出規制強化をはかって、正常な大気環境確保につとめてまいりたいと考えます。  皆さま方にもどうぞこのようなわれわれの考え方、あるいは今後の行政の進め方につきまして、全面的な御協力をお願い申し上げたい次第であります。     —————————————
  9. 大矢正

    委員長大矢正君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 最初に、ただいま新環境庁長官から所信表明があったわけでございますが、これは何と申しますか、儀礼的なものでございまして、これにとやかく言うことはございません。環境庁というものが設置をされまして一年たちますが、その間、前長官大石君がだいぶはでな動きをしてこられました。かなり不評のどん底に落ちていた佐藤内閣の中で、一服の清涼剤的な存在だったことは、これはだれも認めるところであります。しかし私は、はでな在存だけがいいとは思いません。国民生活と非常に密着をした重大な問題の処理なり対策は、これはむしろじみに堅実な処置が必要であると思います。  この点、小山長官は、私は大石君とはまた違った持ち味を持った長官だと思うのであります。したがいまして、大石長官のあのはでな動きに幻惑されないで、小山君の持ち味を生かして、堅実に、しかもいわゆる公害除去というものは、私はそう簡単ではないと思う。これほど汚染をされ、これほど破壊された自然を守り、よごれた大気を回復し、濁り切った川、海、これをきれいにすることはなかなか容易なことではないと存じます。それだけに私は、じみではあるが飽きることなく、ほんとに持続した努力が必要であると思います。そういった意味においては、私は、新長官小山君を迎えたことは時宜を得た人事と思っております。  そういう意味で、いま幾つかの重点施策を言われましたが、第一に指摘された、事後的でなく未然に防ぎたいということ、これは私は一番大事なことだと思うんです。しかし、これもなかなか言うべくしてむずかしいことであります。しかも、いわゆる財政的な裏づけもこれはかなり要請されましょうし、特に田中内閣の、私は田中総理大臣の「日本列島改造論」を拝見しましたが、なかなか膨大な所信でありますが、しかしそれはなかなか、田中角榮氏の発想でございましょうが、問題でもございます。これなども、ああいうことをおっしゃることはけっこうですが、しかし、やはり私はその陰にひそむ公害がともかくかなり問題だろうと思います。したがって、ああいうことと新大臣公害対策に対する御所信とをかみ合わせていくためには、これはかなりの努力が要るだろうと思うのであります。さらには自然保護問題等もございます。  そこで私が要望したいのは、先ほどから指摘しておりますように、ほんとに、ことばやあるいはマスコミによるというだけでなくて、具体的にその問題の処理と、それから問題の発生する以前のいわゆる対策というものに取り組んでいってもらいたい。これは、だんだんあなたの環境庁長官としての施策が具体的に出る、あるいは出なければならぬ過程において、またお尋ねもしたり要望しますけれども、冒頭にそういったことを要望したいと思うのです。いま所信表明があったのですが、田中内閣における環境庁長官として、しかも田中総理の信任ことのほか厚い小山君でありますから、ひとつあらためてこれに対する新大臣決意のほどをお伺いします。
  11. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いまお話がありましたように、環境行政というものは、国民が現に被害を受けており、非常に悩んでおる問題でありますから、これを早急に解決することが必要であります。  ただ、原因究明がなかなかできない問題があります。そういう問題についても、あらゆる知識を総動員して原因究明を急ぎますが、場合によっては、とりあえずやらなければならぬ問題もあるかもしれません。そういう問題についても勇気を持ってやるつもりでおりますので、御理解をいただき御鞭撻をいただきたいと思います。  また、自然を守る、環境を保全するというのには当然国の計画が必要でありますし、またそれに伴う予算が必要であります。ですから、そういうふうな予算確保にもつとめてまいりますし、あるいは技術的な研究について相当膨大な費用がかかると思いますけれども、そういう面についても全力をあげてまいりたいと思います。これには、また同時に、場合によっては世論喚起ということも必要でありますので、衆参委員方々の御協力を得て、世論喚起のために皆さま方にお願いをすることもあろうかと思いますが、ここの点もひとつ御協力をお願いしたいわけであります。
  12. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 環境保全という問題、これは、ほかの委員会等ではかなり法案なりいろんな問題で与野党対立点も大きくなってまいりますが、少なくともこの公害対策特別委員会においては、全然対立があり得ないとは申しませんが、少なくとも自然を保護し環境を保護し、大気あるいは水質の汚濁を防止するという点においては、これは与党も野党もなかろうと思うのです。どうしても大いにこういうものを推進する、こういうことになろうと思うのです。  したがって、私ども野党でありますけれども、そういった点については協力もできることが多いわけで、いま長官もおっしゃったように、いろいろな難問題もありましょうし、予算、財政の問題もございましょうが、そういった面においては、やはりわれわれ協力して、ぜひ環境保全行政遂行には努力したいと、こう思っております。どうぞ長官勇気を持って、ぜひ所信の具体的な遂行にひとつ邁進していただきたいと思います。  次に、私、きのうの四日市訴訟に対する判決について若干のお尋ねをしたいと思うのでありますが、最初長官のこれに対する所信をと思ったのですが、これは先ほどお述べになりましたが、それで満足とはまいりませんが、一応その点はそれとして、次に具体的な点について若干の質問をしたいと思います。  裁判所の今度の判決は、大かたの人々が予期しておったことと思うのであります。おそらく被告である関係六社の諸君も、大体の見通しはつけておったと思うのであります。しかし最近にない名判決という評があるし、政府当局もすなおにこの判決を受け入れるようであります。この点、われわれとしてもいろいろこまかい点を検討すれば問題もありましょうが、一応全般的にわれわれもこれに好意と共感を持ってるわけです。  そこで、その裁判判決の中に、国と地方公共団体責任をはっきりこれは明示しております。いわゆるこの四日市公害発生した直接原因はもちろん関係六社であるけれども、そこに至るまでの間に、国と地方公共団体責任をはっきり指摘をしている。これに対して政府は、この裁判判決はどういうふうな責任があるということを指摘しているのですか、それを受けてどういうふうな責任をとられる用意があるのか、この点を具体的に答えてください。
  13. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 国に責任があり地方自治体に責任があるかという点についてでありますが、これは先ほど申しましたように、確かに政治的にといいますか、当時、経済成長は善なりという前提もありましたという点も含めて、そういう面については決して責任を回避するのでありませんが、法律上の責任となりますと、これは若干の疑問があろうかと思います。  と申しますのは、この有害物質排出にあたっての環境基準あるいは排出基準といいますものは、画一的、定型的に定めております。個々のケースについて、私人間のたとえば会社会社、あるいは会社住民との間の民事上の責任を規律するものとは考えていないのであります。したがって、企業がこれを守っておって損害発生したというような場合にも、それは基準の設定の精神からいいまして、国がそれに対して法律責任を負うということにはならないのではないかというふうに考えます。ちょうど例を申しますと、自動車スピード制限というものがありまして、自動車はある一定の地域においては何キロ以上で走ってはならないという基準が設定されております。その基準内で走っておったからといって、そこでたとえば人をけがをさせた、あるいは人を死なせたという場合に、その人たち刑事責任を免れることはできませんし、また、それでは法律上その基準を設定したこと自体が間違っておったのではないかというふうに、直ちに法律上の責任、国なり県の法律上の責任というわけにはまいらないのと同じではないかと、こういうふうに考えるわけであります。
  14. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 私の責任と言うことは、決して法律的な責任ではないと思います。裁判所もはっきり責任があると言っておる。これは法律上の責任とはおそらく言っていないと思うのであります。しかし、少なくともいまあなたもおっしゃったように、政府のいわゆる高度経済成長政策一つのあらわれである。そういったものと、それからさらに立地条件その他のことを考えてみて、これはそういった政治的な責任だと思うのです。少なくとも私はこれは免れないと思う。  したがって、その政治的な責任があるなら、その責任をやはり何らかの形で果たすことが必要だと思うのであります。裁判所は、企業に対して八千八百万円余りの賠償を指定した。この額が当か不当か、判定の基準はありませんけれども、かなり思い切った査定ではなかろうかと思うのです。そこで国の責任を果たすためには、ではどうしたらよいか。  いろいろなことがありましょうが、一番いい責任の果たし方は、公害をなくする、この地上から公害をなくすることが一番責任を果たす最大の点であります。しかし、これは言ってみてもいますぐに問題になりませんし、そういったことを果たす姿勢、行動がやはり要求されます。しかしそれはそれとして、当面四日市訴訟から来た責任については、私はそういう規則があるかどうかは別として、たとえば先般の赤軍事件で、浅間山荘攻防戦の際に警官が犠牲になりました。これに対しては政府は過分な補償をしたようであります。まあ、けっこうだと思うのですが、この四日市被害者にも、政治的な責任があるというのなら、いま申しますように、金銭的なことで決して償えるとは思いませんけれども、直ちに公害除去ということが不可能なら、私はやはり、浅間山荘犠牲者と同一とは言わぬけれども、ああいうことができるというならば、この被害者に対しても、これは一番簡単なと申しましょうか、取りやすい補償として見舞い金その他の形で、ある程度のそういった具体的な形にあらわれた責任の、それで責任がとれるとは申しませんけれども責任を感じたことに対する気持ちの表明をしてもいいのじゃないか、こう思うのですがいかがでしょう。
  15. 小山長規

    国務大臣小山長規君) この原因損害、今度のように硫黄酸化物による原因があって、それによって住民被害を受けたというような場合には、これは当然原因者である会社側損害賠償をするということは、これはPPP原則からいってもそれが至当であろうと考えます。  国としては、先ほども申しましたように医療給付であるとか、あるいは介護手当であるというような制度をつくっておりますけれども、これは十分とは言えません。また現に療養中の方々、特にまた、まだ幼い人たちが病気にかかっているような場合に、それの、たとえば休養施設ですね、休養施設というものを地方がいまつくろうとしておりますが、こういったものに対して、PPP原則に反する場合は別でありますけれども、反しない場合には、そういう問題についても国は相当考慮しなければならぬであろう、こう考えます。  やはり、責任最大に果たすということは何かといいますと、日本列島全体から公害をなくするということが、最大責任を果たすゆえんであろうと思いますが、これも茜ヶ久保先生が言われたように、現在の技術あるいは現在の経済社会の状況からいって、絶無ということにはならないと思います。しかし最大限といいますか、最小限といいますか、患者発生防止するためには、ありとあらゆる施策を講じなければなりません。したがって、そういう意味において環境基準というものをもう一度見直さなければなりますまいし、排出基準についても厳重な規制を加える必要があります。  ただ、この排出規制については、これも御承知のとおり、ただ基準をつくりっぱなしということでは行政上の責任を果たすわけにはまいりませんので、防止技術開発、それから低硫黄の重油の獲得、こういうものをあわせてやらなければならぬわけですが、防止技術開発といいましても、世界にまだそれほど日本よりも進んだ技術があるわけじゃありませんので、日本自身として、公害研究所その他を動員して、あるいは通産省関係研究機関を動員して、防止技術開発政府が思い切った予算を計上して、そうして何年かの後にはもうこれ以上の患者発生しない、させないというような決意を持って今後取り組みたいと、こう考えておるわけであります。
  16. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 見舞い金等は、出すような余裕はありませんか。
  17. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 見舞い金の問題は、先ほど申しましたようにPPP原則に縛られておりますので、これはすこぶる困難だと思います。
  18. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 見舞い金として出し得ない、いま長官もおっしゃったとおり。別な形で、できるだけ被害者に対しては行き届いた施策政府としてもぜひとっていただきたい。これは要望したいと思います。  次に、きょうの新聞によると、通産省石油コンビナートを中心に総ざらいをしたいと言っておりますが、これは当然なことであります。しかし石油コンビナートだけじゃなくて、この際政府は、全国のいわゆる公害発生可能性のある工場地帯あるいは工場、そういったものを総点検をして、先ほど長官が新任のごあいさつでおっしゃった、いわゆる事後でなく未然防止するという基本的な立場に立って、全国的なそういった点に対する総ざらい的な調査、そういったものを私はぜひやらなくちゃならぬだろう、こう思うのですが、もちろんこれは人的な要素もありましょうし、いろいろなことありましょうけれども、そういったものを克服して、ぜひこの際いい機会ですから、やるべきじゃないかと思うのですが、いまこういう機会に遭遇して、そういう計画は、ただ単に石油コンビナートだけに限るのか、そうではなくてもっと広範囲な調査をされる意思はないか、お伺いいたします。
  19. 小山長規

    国務大臣小山長規君) きょうの閣議でも、通産大臣から総点検をやろうという発言がありまして、閣議のあとで私も通産大臣に、この総点検には環境庁はぜひ積極的に参加したいということを申し入れたわけであります。  いまおっしゃったように、石油コンビナートだけではなしに、製鉄所もありますし、その他公害の著しいと思われるところについては全部にわたって、われわれの担当の職員も参加しまして、そうして総点検をし、その結果によってさらにどのような措置をとったらいいか早急にきめたい、こう思っております。
  20. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 ぜひそれは直ちに着手をしていただきたい。なるたけ早くその結論を出して、対策を立ててもらいたいと、こう思います。そういったことが、公害発生源をキャッチし、そして発生源の除去にいろいろな対策を立てる根源だと思います。したがって、何と申しますか、日本から公害を追放する第一着手と、こう思うわけであります。  と同時に、いろいろな公害発生に対する規制がございますね。たくさんありますが、この規制も私は弱いのじゃないかと思う。これは私も科学的にこれだけ、これだけというぐあいにちょっと言われませんけれども、現在政府のとっている公害発生源に対する規制基準が弱いのではなかろうかと、こう思うのです。したがってこれをもっと強化して、あるいは産業の発展とある程度食い違う面がありましょうけれども、この際は、ある程度産業の発展が足踏みすることがあっても、やはり人間の生命の尊厳を守るために、生命を守るためにはやむを得ぬかと思うのです。したがって、ひとつ総点検をされて、公害発生源の調査をされることと同時に、基準強化をすることが必要じゃないか、こういうように思うのですが、長官のお考えはいかがでしょう。
  21. 小山長規

    国務大臣小山長規君) この点については先ほど申し上げましたように、近く環境基準の見直しを行なうために準備をいま進めておりますし、排出基準についても同様な処置をとろうとしておりますので、できるだけ早い機会に発表できると思います。
  22. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 ぜひそうしていただきたいと思います。  それから全国で、県もありますが、特に大きな市、町においては、いまだに工場誘致の問題があるわけです。各地に工業団地を造成をしてやっております。まあ過疎地域とか、あるいはあまり工場地帯でないところがそういった企てをすることもやむを得ぬと思いますが、これはよほど指導しませんと、いわゆる公害を伴う石油コンビナートとか製鉄会社とか、ああいう大規模なものでなくても、いわゆる中小規模のものでもかなり公害排出する工場があります。いまのように、工場誘致をただ単に地方公共団体にまかせっぱなしでやっておりますと、工場を早く誘致したいために、公害等に対する対策なりこれに対するいろいろな問題点を解決しないまま、どんどん誘致することがあるわけなんです。  こういう点に対しては、これは通産省の所管かと思いますが、環境庁としても、公害という面からいろいろと指導ができるわけでありましょうから、私はこの際、いわゆる全国のいま進んでいる工場誘致、工業団地の造成についても、公害除去という面から、ある程度のこれは指導なり規制をする必要があるのじゃないかという気持ちがするのです。私どもの市でもかなり工業団地が出てまいりましたが、いわゆる汚染でなくても、騒音その他の問題も起こっております。したがって、これは新全総等との関係もありますが、こういったことに対して環境庁はどういう処置を今日までとってみえたか、また、今後どういうふうな処置をとろうとしておられるか、お伺いしたいと思います。
  23. 小山長規

    国務大臣小山長規君) その点につきましては、実はきょうの閣議で総理から、特に、将来の工場立地計画などについて見直す必要があるので、国土総合開発法を改正する必要があるであろう、あるいは工場法あるいは工場再配置等を改正する必要があるであろう、それで、きょう中に関係省庁の事務次官会議を招集して、次の通常国会には、そのような環境保全あるいは公害防止見地から、工場の配置なり工場の立地なり、あるいは地域における建蔽率ですか、工場等の建蔽率だとか、そういったようなものを見直すために、事務次官会議が設定されることになりました。これによって直ちに立法上の手続をとります。  同時に今後、いま内閣で準備をしておりますが、日本列島改造論と新全総との調整をする必要があるだろうということで、まだ任命されておりませんが多くの学者を動員をして、そしてこれらの調整をはかる際には、工場の立地についても、当然公害防止環境の保全、自然の保護というものを合わせた計画にするために、いま準備を進めておる最中でありまして、おっしゃったような方向で全力をあげていきたいと思っております。
  24. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 長官は、きのうの新聞に対する談話の発表で、無過失賠償責任について触れていらっしゃる。先般の国会で無過失賠償責任についての法律ができましたが、しかし、これはまことに不完全だと思うのです。もっと強力なものでなくちゃならぬと思うのでありますが、こういう判決が出ましたことを機会に、先般の国会におけるあの法律も、ないよりはあったほうがいい法律でありますが、しかし私どもから言うと、もっと突っ込んだ、もっと強いものを要望しておったわけですし、長官もせっかくそういうことに触れていらっしゃるようですが、この際こういうことを機会に、無過失賠償責任について、もっと強いものをやるべきじゃないかと思うのです。いまの問題とあわせて、次の国会あたりにそういった法律をお出しになるような、ひとつ前向きの姿勢で検討されるべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  25. 小山長規

    国務大臣小山長規君) この点につきましては、参議院においても前国会で御決議があったと承知いたしております。ただ、この無過失賠償につきましては、過失なくしても一定の場合には賠償責任があるということは法制化されましたが、因果関係の推定についてはまだやっていないわけであります。この点については、私も事務当局にやるべきじゃないかということでいろいろ聞いてみますと、相当問題を含んでおるようであります。そこで、来国会にというわけにはなかなかいかなような事情もあるようでありますので、なお詳しいことは事務当局から説明させたいと思います。
  26. 船後正道

    説明員(船後正道君) 先国会で、いわゆる無過失損害賠償を定めました大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部改正法律案につきまして、当参議院で六項目の附帯決議があったわけでございます。この六項目、いずれを取りましても、この本法の審議過程で問題になった重要な点でございます。被害の範囲を生業被害にまで広げる点をはじめといたしまして、ただいま長官が申し上げました因果関係の推定規定等々の問題につきましては、なお、その際にも申し上げましたが、かなり法制的にも詰めるべき問題がございますので、法務省等との連絡をしながら、この問題につきましては前向きで検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  27. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 まだ幾つか残っておりますが、時間がまいりましたので先を急ぎますが、この判決の下る前に、何か被告六社の責任者が、共同であったかあるいは別々であったか、ちょっといま記憶しておりませんが、判決が出たならばいさぎよく服するというような談話を発表したかと思うのであります。ところが、きのういよいよ判決が下ってまいりましたら、そういったニュアンスを持った発言をしている責任者もおりますし、判決の原文を見なければ態度は決定できないと言っているところもありますし、また、けさの新聞によりますと、六社のうち四社はこれを受けるというようなことも言われています。  しかしこれは私は、この判決をすなおに被告側は受けるべきだと思うわけです。原告の、すでになくなった方もありますが、いわゆる精神的、肉体的苦痛というものは、これはとても金銭ではあがなえないものだと思うのです。自分の責任でなくて、そういった工場の、端的に申し上げれば利潤追求の犠牲になったと言ってもこれは過言ではありません。したがって、この判決を全国民的な立場で了解をし、非常に名判決といったような感じを持っているものでありますので、したがって私は、当然被告六社はいさぎよくこの判決を受けて、判決の趣旨を生かすべきだと思う。もちろん、環境庁長官が、これを受けなさいとか受けてはいかぬとか、こういったことではありませんけれども、しかしやはり環境庁長官としては、これをひとつそういった——これは内政干渉すべきことではありませんでしょうが、しかし、いま私が申し上げたように、当然被告側はこれを受けて、原告、被害者に対して万全な措置をすべきだと、こういうふうに私は思う。長官に、そういういま申しますように、これを受けて皆服しなさいという指示はできませんでしょうが、そういった何かアドバイスは、これはしてもいいのじゃないかと思う。そういうことに対してどういうようにお考えでございましょうか。
  28. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 心情については茜ケ久保先生と私は全く同じであります。  この問題については、四日市の場合は水俣の場合と違いまして、被告側が数社であるということで、一社だけの見解できめられないという問題がありますこともありますしいたしますので、なかなか簡単にはいかないと思いますが、ただしかし、被害者のために判決の内容が実現することをわれわれは強く希望しておるのでありまして、そういう趣旨で私もあらゆる意味の、行動と言うとちょっとおかしゅうございますけれども、あらゆる意味でそういう趣旨を含んで対処していきたい。この程度でひとつごかんべんを願いたい。
  29. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 まあ、私はやぼなことは申しません。しかし、何かいろいろとニュアンスの違ったことを言っていますから、これはたいへん私ひきょうだと思います。それは会社は、当然被害者だけでなくて、全国民的な意味においてそういったことをする責任があろうと私は思うのです。したがって、いまも私が申し上げましたように、長官からそういった指示はできませんけれども長官がそういう気持ちであるという発言がこの委員会であったこと自体は、かなり私はこれは重要な意味を持つと思うのです。  そこでこれは要望したいことなんですが、いま申しましたように、第一は、控訴するとかそういうことなくして会社側が直ちに判決を受けてもらいたいということ。それから、きのうも早速代表の方がそれぞれの会社にお出向きになって、社長なり責任者にお会いになっているようですが、社長はなかなか陳謝しないようですな。これはやはり私は不見識だと思うのですよ。こういう判定が出たのですから、悪いんだということが出たのですから、それはメンツにこだわらずに、やっぱり社長が、患者というよりもむしろ国民に対して申しわけないということを陳謝をして、そして必ず患者に対して、被害者に対して補償するとともに、今後一切こんなことをしないように努力しますという気持ちを発表すべきだと思うのですよ。これは決してただ単に患者だけではなくて、一般国民に対して私はそういった謙虚な気持ちをこれから持ってもらいたいと、こう思う。  それから、これは第一次の訴訟ですね。おそらくまだほかにもこういった患者があろうし、出てくると思う。そういった場合には、もうこれははっきりしたんですから、これは今度裁判に勝利した原告と同じ状態だということがわかれば、会社訴訟を受けるまでもなく補償すべきだと思うのです。  それから、そういうことが要請されると同時に、これは先ほどもたびたび指摘しましたように、やはり何といっても一番大きな補償は、責任の処置は、公害の根源を除去することでありますから、会社も一日も早く公害発生原因除去する措置をしてもらいたい、こういったことを要望したいのです。  これは会社への要望でありますが、しかし会社への要望であるけれども、やはり公害対策の最高責任者である環境庁長官は、これは当然会社にさせても決して間違いないと思うのですが、いま申しました点について、最後に長官所信を承っておきたい。
  30. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 心情については茜ケ久保さんのおっしゃったことと同じ心情であるということで、あとはごかんべんを願います。
  31. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いま私の言ったことは速記録に載っておりますから、私と同じ気持ちであるわけですから、ひとつできるだけそういう、実現をするような方向で御指導願いたい。  それから通産省公害担当局長は……。
  32. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  33. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記を起こしてください。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 環境庁でいいですがね、この四日市コンビナートは、あれはもちろん脱硫装置はしているんでしょう、この工場は。実は私の県では、日本じゅうの硫黄の需要を満たすだけの鉱山があったわけですが、ところが最近はみんな鉱山がやめました。というのは、このいわゆる石油精製における脱硫装置による硫黄の生産で、これはもう採算が合わなくなってやめたのですが、それほど石油精製における脱硫装置が徹底しておるわけなんですが、四日市コンビナートは脱硫装置はないんですか。——わかっている人ありませんか。
  35. 山形操六

    説明員(山形操六君) 正確ではないかもしれませんが、私どもの知識では、六社のうち、重油脱硫に関しては精製のほうはやっておりますが、いま御質問の排煙脱硫に関しましては、四日市火力発電が、実用化のための小規模のものを実験中だということを聞いております。まだ中規模、大規模の段階になっておりません。
  36. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いまお聞きのように、脱硫装置はやっぱり完全にないのですね。これは問題だと思うのですよ。これは早急に、管轄は通産省のほうかもしれませんが、私は通産省責任者を呼んでいなかったので、ひとつ環境庁長官、これは通産大臣にお話いただいて、これは重大な問題でございます、脱硫装置が完全でないことはこれは大きな責任でございますから、一日も早くこの四日市コンビナートは徹底した脱硫装置をしていただくように、御指導、措置をお願いしたいと、こう思うのですけれども、いかがですか。
  37. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いま、排煙脱硫については技術開発の段階にあるようでありますので、それの予算については十分な配慮をいたしますし、また通産省においてもこの技術について研究がだんだん進んでおるようでございますので、一日も早く実用の段階にくるように、われわれも全努力を傾けてまいります。
  38. 伊部真

    ○伊部真君 私は、この四日市判決が出て、直ちに政府のとるべき態度というのは、今日までの総合開発計画なり新全総、これが確かに誤りであった、共同の不法行為を構成させたのは、明らかにコンビナートという形があの被害を構成をした、それを黙認し、かつまた、いわば助けたという責任は、私は政府として多くあると思うのですよ。これは企業責任と同時に、それを見のがした政府責任というものを明らかにすべきだ。私は、長官四日市問題を議論する場合には、まず第一番に政府としての責任を感じると同時に、それらの施策について不十分であった点は国民の前に反省すべきだと思うのです。  その一言がなくて、私はいまの討議の中で、法律的に責任があるとかないとかという問題は口にすべきことではないと思う。したがって、この問題について基本的な政府としてのひとつ姿勢を明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  39. 大矢正

    委員長大矢正君) 長官、ちょっと待って。  いま伊部君からも御発言がありましたように、あなたのお話を承っておると、すぐ法律論にすりかわってしまって、民事事件における法律の結果がどうであるというふうに話が発展をするわけで、国会はなにも法律論争する場ではない、行政問題について、その行政が正しく行なわれているかどうか、そして、その行政を行なっている基本となるべき方向が正しいかどうかということが問題なんですね。  そこで、いま伊部君が言うとおりに、いままで政府が行なってきた、言うならば政策というものが間違っていたから、四日市においてあのような判決を出されなければならない結果になったのではないか。とすれば、これは法律上の責任政府にはないとしても、行政上の責任は当然政府として負わなきゃならぬという、私はそれは明確じゃないかと思うんです。先ほど来あなたの発言を聞いていると、全く法律論にばかりものを寄せていって、政府法律的には責任はございませんというような、これじゃ話にならんので、その辺もあわせて含めてひとつ御答弁いただきたい。
  40. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 実はその点については、冒頭に、この四日市裁判は高く評価さるべきものである、同時に、この反省の上に立ってこれこれの施策をするんだと、こう申しましたのは、当然、その当時三十五、六年ごろから、日本においては高度成長、そしてまた地方においては企業の誘致というものが、善なりという風潮のもとにおいて行なわれた点の反省を申し上げたわけであります。そして、この環境基準についてもまだ甘いのじゃないかという御指摘があろうかと思いますが、そういう点についてもわれわれは十分反省をしまして今後の施策に盛っていきたい、こう申し上げておるわけでありますので、その点は御了承を願いたいと思います。
  41. 伊部真

    ○伊部真君 私は、関連ですからそう長く時間をとるわけにまいりませんけれども、「高く評価する」というのは、明らかに第三者的な見方でありまして、やはりこの共同不法行為を構成するような大工業基地というやり方は、そういう開発計画なりそういう産業の立地というものは、明らかに誤りであった。国民の健康をそこなうという意味でですね。したがって、この判決が出た以上、政府も謙虚にその点は反省をするということがなければいかぬと思う。完全な第三者じゃありません。私はやっぱり通産行政を含めた政府責任として、その一言がなければならぬということです。そういう意味で私は、長官がさきに評価と言われたことが、反省ということばに十分とれませんので、その点は政府としても責任をとるべきだと思うんです。  それからもう一つの点は、私は見のがしてならぬと思いますのは、いわゆる見舞い金の解釈についてであります。見舞い金を出すべき問題かどうかという問題について、内部で議論をされ検討をされるということは必要だと思うんです。しかし、少なくとも見舞い金の問題について、PPP原則からいって見舞い金を出せないというのは、私は議論がおかしいと思うんです。補償ができない、PPP原則からいって補償については議論がある、が、しかし見舞い金は、と言うならわかるんですよ。PPP原則から見舞い金すら出せないというのは、私はどうもPPPで出せないというのは間違いじゃないかと思います。そういう点は、ぜひひとつ長官もその辺は考え直していただかぬといかんのではないか。そうでないと、たてまえから言って見舞い金ですら出せないとなると、ほかの問題にも関係してまいりますから、その点は修正すべきだと思うのですけれども、そういうふうにその点についてお考えをいただきたいと思います。  それから、この判決によって、因果関係の問題その他、公害問題について非常に基本的な問題について多くの示唆を与えていると思います。これは、今日までの公害委員会のずっと経過から見ても、諸法案に非常に影響があると思いますので、公害行政全般について、ひとつこれを基礎にして検討していただくということが必要ではなかろうかと思うのであります。  それから、後ほどほかの委員からも質問の予定が出されておりますので、私はそれに譲りますけれども、この判決が出た以上は、少なくともこれからの総合開発計画、新全総については修正すべきではないか。前の大石長官は、少なくとも国定公園、国立公園というのは、志布志あるいは周防灘、こういう問題については明らかに、環境庁として国定あるいは国立の指定を解くわけにはいかぬ、したがってこの点は、環境庁としては認めるつもりはないということを言明されたのであります。私は、そういう意味政府としての見解は明らかだと思うのでありますが、新長官がこの点についてどうお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  42. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 先ほどことばが足りなくて、政府反省が足りないじゃないかというおしかりの点については、謙虚にこれを受けとめます。  それから見舞い金の件につきましては先ほど申し上げたとおりでありますが、見舞い金と申します場合には、政府国民一般から取り立てた税金、これで支払うということなのでありまして、こういう原因者がはっきりしておるような場合に、見舞い金という問題になるのかどうか、これは相当慎重な検討を要することと思いますので、これまた御了承を願います。  それから総合開発計画は修正をすべきではないかというお話につきましては、いま先ほど申しましたように、内閣に有識者を集めた懇談会をつくろうとしておりますが、環境問題を重視し公害防止を重視していきますと、予定された高度成長というものはむずかしくなるということは当然のことだと受けとめております。つまり環境保全立場から工場の再配置あるいは工場の立地を考えた場合に、予定されたと言いますか、新全総計画その他において計算された目的が達成されないことがあっても、これは国民のためにやむを得ないことである、こういう考え方でおるわけであります。  それから国定公園の解除につきましては、私どもはわれわれの立場からものを考えてまいります、ということを申し上げておきます。
  43. 伊部真

    ○伊部真君 一つだけ、いまの見舞い金の問題ですけれども、いまのお答えで私は了解をいたします。いわゆるPPPによってこれは出せないのだという見解は、私は今後に影響すると思いますので、そのように長官の御発言を理解をして私の質問を終わります。
  44. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 長官のほうから、当面している、あるいは早急に取り組むべきことについての考え方が表明されまして、さらにまた四日市判決をめぐりましても、長官としての考え方の御説明がありました。いままた茜ケ久保委員はじめ同僚議員のいろいろの質疑があったのですが、私もまず第一番目に、四日市判決について若干補足的な意味でお伺いをいたしたいと思います。  この四日市裁判判決が、公害の歴史と言いますか、環境を守る歴史と言いますか、そういうものに対して非常に大きな一ページを築いたと言いますか、刻み込んだ、こう言って私は差しつかえないと思うのでありますが、先ほど委員長のほうからも発言がありましたのですが、いままで政府としまして、四日市工場の立地について、あるいはその公害防止について、国民の健康なり住民の健康なりあるいは生命に支障があるということは、考えていなかった。それが、全くそうじゃなかったということが明らかになったということは、これは私は政府が徹底的な反省をすべきだと思うんですよ。国民の健康の上についても生命の上についても間違いない、害はないんだと、こう言っておった。それが全くそうじゃないということが明らかになったのですから、これは私は根本的に、政府公害防止行政にいたしましても、あるいは工場の立地の問題につきましても、根本的にあるいは深刻に反省しなければどうにもならぬと思うんですよ。  先ほどからそれぞれみなが言っておりますことはそのことだと思うのですけれども、私どもはそういう意味で、どうもそういったような反省が少し少ないのじゃないかという気がしてしようがないのです。われわれ、いまこの判決があったようなことをいままで一生懸命言ってきたわけで、地域住民も一生懸命それを言ってきた。それを、そうじゃない、そうじゃないという立場だったのですから、これは私はもっと根本的に深刻に反省しなければだめだ、こう思うのですけれども大臣のお考えを聞きたいと思います。
  45. 小山長規

    国務大臣小山長規君) たびたび申し上げますように、この点は深刻に反省しているわけであります。  当時の状況等についてはもう繰り返し申しませんが、あのような集団的なコンビナートをつくった場合に、こういう被害が起こるであろうということは、おそらく学者も想定しておったのではないかと思いますけれども、当時は、むしろそういうことが善であるというふうに考えられた時代があったということもまた申し上げていいのではないかと思います。その点、おしかりがあるかもしれませんが、そこで、しかしながら現在では、もはやこういうことは許されないということの前提に立って、今後の立地計画あるいは工場の再配置計画というものを立てていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  46. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど長官もお話しになったのですけれども、これは通産大臣の問題もありましょうし、経済企画庁の長官の問題もありましょうし、いろいろありましょうけれども、どうも公害防止施策にいたしましても、あるいは環境基準の問題にいたしましても、ここで問題といたしますのは環境基準の問題でありますけれども、これはすみやかに抜本的に法改正をする必要がある。そのために、環境庁としては総力をあげてもらいたいということを重ねて要望いたしておきます。最初からこういう論議でありますから、私としてはそういう要望を申し上げておきます。  それからもう一つは、今度の判決で、これはわれわれいままでも主張してきたのですけれどもコンビナートという考え方ですね、これは非常に問題があるということがはっきりとしたのではないかと思うんですね。そうしますと、いま新全総で考えております、これまた巨大なコンビナート、これはいま四日市どころの問題じゃない、もっとでっかい、この巨大なコンビナート方式というものは、非常に大きな問題があるということを示しておるのじゃないかと思うんですよ。  たとえば、鹿児島の志布志に石油コンビナートができるということで話が進められている。それは四日市の三倍以上の大きなものですね。むつ小川原のは、おそらく七倍も八倍もでかいのじゃないか。ですから私は、コンビナート方式、それからいま新全総が進めようとしますこういう巨大な資源開発公害産業というものは、根本的に再検討を迫られておるというふうに言っていいのじゃないかと思うのですけれども、その点について、これは長官のところではないかもしれませんが、国務大臣としてのお考えがございましたら伺いたいと思います。  それから企画庁の開発局長には、局長としての立場から御見解を聞きたいと思います。
  47. 小山長規

    国務大臣小山長規君) コンビナートそのものが今後つくれないかどうか、そういう点については、私は専門家ではありませんから、はっきりした御返事はできませんが、いずれにしましても、今後の工業の立地を考えます場合には、まず最初に、その地域地域模型などをつくりまして、風の方向とかあるいは水の状況、あるいはその辺に現在住んでいる人たちの場所、こういうものを勘案をしてつくらなければならないであろうことは私も申し上げていいと思うのであります。  したがって私ども立場は、現在住んでおる人はもとより、そこに今度新しくかりにコンビナートができました場合には、その人たちの住むべき場所について、当然健康が保持され、そして環境が良好な状態にあるという前提でないと、われわれとしても承認しがたい。こういう立場で、今後の開発計画の調整にあたってはそういう考え方で臨む決心なのであります。
  48. 下河辺淳

    説明員(下河辺淳君) 御指摘ございましたように、新全総につきましては徹底的に総点検をいたしたいということで、総点検の方針その他につきまして目下早急に取りまとめをいたしまして、できるだけ近いうちに総点検の方針を明らかにしました上で総点検作業に取り組みたいと思います。総点検につきましては経済企画庁を中心にして作業を進めるつもりでおりますが、関係するところは非常に多いわけでございますから、きょういらっしゃる関係庁を初め、おおよそ十省庁程度の関係の作業グループをつくりまして、しかも関係県ともに総点検作業を始めたいということを考えております。  お尋ねがございましたコンビナートにつきましては、原料から製品までの生産工程の中で、どういう組み合せのしかたが一つの工業基地として適当であるかという意味でのコンビナート化については、やはり、ある一つコンビナートが必要であると考えておりますが、しかし、そのコンビナートがその地域に立地いたしますときに、その地域環境問題なり、あるいは地域住民の利害との関係につきましては、十二分に調整が必要であるということを考えておりまして、いまお尋ねのございました志布志、むつにおきましても目下基礎調査をいたしておりますし、あるいは県におきまして地域方々との話し合いを進めているという状況でございますから、一面では基礎調査をさらに強化すると同時に、一面では地域方々との話し合いを積極的に進めてまいり、その結果として、どのような形の基地をつくったらよいのかということの結論を出してまいりたいと考えております。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの問題は、またあらためて論議しなければならないと思うのですが、ただ、四日市裁判を終わりまして、とたんに患者側の、あるいはそれを取り巻いている住民の考え方というものが、健康を返せ、命を返せ、青空を返せ、こういう形で叫ばれているわけですね。そのことは、これは公害紛争なんか乗っ越してしまって、それを返せということから、私はほんとにこれは四日市工場を追い出すという運動になってくると思うのです。これは各県でも、ところによっては公害を出す工場についての追い出し運動というのは進んでおるんですから、いま志布志でもどこでも、そういう公害を出すような産業については絶対反対だという、たいへんな住民運動が起こっておるわけですから、そういう意味からいいますと、この裁判というのは決定的な、住民運動に対して、あるいは自然を守るあるいは環境を守るという非常に大きな問題を提示したと思うんですね。ですから、これはそういう意味で非常に反省をしなければならぬ、考えなければならぬところにきているのじゃないかと私は思うのですけれども、これはまたあとで若干伺いたいと思います。  そこで、この問題は一応これで終わりまして、次に簡単に言いまして、私は、池田内閣は高度経済成長という路線を突っ走って、たいへんひずみ問題で問題を起こして、佐藤さんが社会開発人間尊重だということで七年七カ月。残ったものは、これは爆発的な環境問題ということになったわけですね。  かわって田中さんが出られて日本列島改造論日本列島改造論といいますのは、ほこりっぽい、土建屋的な、おまけにコンピューターつきブルドーザーなんでしょう一ほこりっぽくて、日本列島全体が何か土木工事がまき起こるのじゃないかというような感じがしてしょうがないんです。何かアクセルだけきいておって、ブレーキがさっぱりきかないようなブルドーザーが出てきたような感じがしまして、非常に問題だと思うんですけれどもね。しかし私は、幸いというと妙な話になりますけれども田中内閣ができましてから、六月から七月にかけてたいへんな集中豪雨で、日本列島が押し流されるのじゃないかというぐらいの事態になったのですね。改造どころじゃないです、これは。どう国土を保全するのかということを最も考えなければならないということを証明したのじゃないでしょうか。  これは災害の委員会でやってみますというと、道路の金はふんだんにある、あるいは開発のための金というのはふんだんに出ている。それじゃ、災害を防ぐといいますか、川とかそういった問題と言うと、肩身の狭い小さな地位を占めている。国土の保全というのは、そういう意味でほんとうに十年という間、何か非常に狭いところに追い込まれている。そういうことが今度のたいへんな巨大な災害を及ぼした。だから、改造どころじゃないんじゃないか。災害をどうするか、国土をどうするかというのが問題じゃないかということ。  もう一つは、日本は、御承知のように公害列島、公害列島と言われてもう三年たって、ますます深刻化しておる。そこへ四日市判決が出て、日本解決すべき最大の問題というのは、これは公害じゃないかという意味四日市裁判が出たということは、公害、災害、国土保全、環境保全ということで、どうもブレーキのきかないブルドーザーに非常な反省を与える意味で意義があると私は思っています。その意味では幸いだったという感じすらいたしておるわけです。  そこで環境庁長官お尋ねをしたいのですけれども、国土を守るあるいは環境を保全するということは、何といいましてもいまの政治課題最大の大きな問題だと思うんです。七〇年代の課題だと思うんです。それについて環境庁長官がどういう決意と、どういう手段で考え方を実行に移していかれようとするのか。さしあたっていま新全総の総点検が問題になっている、あるいは田中さんの改造論が、これまた総合調整ということで問題になっているのだが、環境保全という立場から、環境庁長官としてどういうふうにこの中に発言されていこうとするのか、その姿勢、考え方をお尋ねをいたしたいと思います。
  50. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 日本列島改造論の詳細については、私もまだ全部知っているというわけじゃありませんが、その趣旨は、日本全土の国土をどういうふうに利用していこうかというところに基本があるのであると思います。そのためにどのような工場の再配置をするかということも含めて、国土の利用という面から、それから、過密を解消し過疎を解消するという、その二つの命題から出発しているのだと、こう思っております。  しかしながら、私ども立場は、自然を保護し公害防止するということの責任をわれわれは負っておるわけですから、当然計画の立案にあたっても、実施の段階においても、この公害防止自然環境の保全というものについては、最大発言力を駆使して、計画の段階から実施の段階まで臨む決心でおるわけであります。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は長官のいまの発言のたびごとに感じますことは、私の立場は、私ども立場は、環境保全であり自然を守ることだ、こういうお話をされるのですよ。私はそうじゃないと思うのですよ。これは小山さんの、国務大臣のどうだという、環境庁がどうだという問題ではなくて、政府がどうだという私は問題でなければならないと思う。どうも、環境庁長官立場は、環境庁の私ども立場は自然を守るあるいは環境を守るのだ、こういうふうに私は聞こえてしようないわけなんです。できたばっかりの、よちよち歩きのと言っちゃ語弊があるかもしれませんですが、生まれて一年の赤ん坊の環境庁でもありますし、ちょっと足らない感じがするところにもってきて、どうも政府の中では、わしは、わしの立場はというようなふうに受けとれるような発言に聞こえてしょうがないですね。これは私の誤解かもしれないのですけれども、そういうふうにうかがえてしょうがない。  ですから、そこのところをもうひとつ伺いたいのと、それと関連いたしまして、どうもこの一年間、私は環境庁開発との関係でいろいろ聞いたり見たりいたしておりますと、何か環境庁発言するけれども——いいことを発言するわけですね、これはいままでもそうですよ、いい話をする、けっこうな話をするのだが、しかし、どうも経済省とかあるいは産業省とか、そういうところは何かおかまいなしにどんどん進んでおる、こういうような印象を非常に強く受けておるわけなんですよ。計画ができ上がってからは、これは経済各省庁あるいは産業各省庁が乗っかっておりますし、それから財界なり大企業が乗っかっておりますし、自治体も乗っかっているという段階でいいことを言ってみたって、文句をつけてみたって、これはいいことを言っただけの話で、何にもならないのじゃないかというような印象を受けるわけなんです。ですから、私がそういうような危惧の念を持っておるということについては、そのことが長官発言の中にどうもうかがえてしょうがないのだが、どうかという点について、ひとつ大臣の話を承っておきたい。
  52. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 申し上げましたことは、国務大臣としての立場で申し上げておるわけであります。したがって、いま申し上げましたように、計画の段階及び実施の段階においてわれわれが介入するということは、これは環境庁が介入するという意味であります。計画そのものは内閣全体でつくるわけでありまして、その段階で私どもは、私は、閣議の席で発言もいたしますし、実施できるようあらゆる行動もとります。また、先ほどちょっと申し上げました国土開発法というものが改正されるという段階には、当然われわれの発言が入ってまいります。そういう意味で、政府全体として環境を保全し、国土を守り、そして公害防止するという、その姿勢の上で今後の計画が策定されるように全努力を傾けてまいる、こういうことを申し上げたわけであります。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 環境白書によりますと、環境問題が爆発的な様相を呈してきた、その原因は何かというと、従来の経済発展のあり方にあるんだという断定をしているわけなんですよ。ですから、GNP主義なり、いまの開発一点ばりといいますか、開発主義なり、そういうものに対して、環境保全といいますか、自然保全といいますか、人間尊重といいますか、その立場でこれは迫っていく、あるいはそれが優先するんだという考え方で少なくとも環境庁は臨むべきであるし、政府は臨むべきだと私は思うのです。つまり、人間尊重というのが、経済尊重あるいは開発が第一だというのではなくて、人間尊重が第一なんだという、その立場が貫かれていかねばならぬと、こういうふうに思いますが、環境白書を見ますと、そういうようなふうに私には受け取れる。ただ、若干新聞にも書いてあるように、マッチポンプみたいなところがありまして、ぱっと火をつけてみたり、また消してみたり、マッチポンプみたいなところも非常にありますけれども、しかし筋道は、私はそういう立場に立っていると思うのです。しかしいまの段階では、もっとこの立場をはっきりさせて、環境庁長官としても政府としても前進をしていくべきだ、こう思うのですけれども長官のお考えを聞きたいと思います。
  54. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いまおっしゃったような趣旨で、ただ発言をするだけでなく、行政の場において、あるいは法律施行の場において、それを実現できるように、また同時に予算の裏づけがあるようにすることが一番肝要であると思いますので、環境庁長官としても、あるいは内閣全体としても、その決心で臨みます。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣がこういう発言をしていらっしゃるんですが、環境庁長官としては、環境庁が持っている権限を最大限に行使していきたい、この最大限に行使していきたいというところに私も共鳴をしますと同時に、長官のまた心情もわかるような気がするわけです。最大限にひとつ行使してもらいたい。  ですから、設置法の六条の三項にありますように、これは環境上特に必要がある場合には省庁に対して勧告をするという権限、あるいはまた閣議に持ち出して、そうして総理の、指揮権といいますかね、いわゆる指揮権というものに対する意見を具申するとか、設置法ができますときに、この六条五項の指揮権というもの、これは環境庁設置法のミソだというような説明もたびたびあったのですが、そういう環境庁が持っておる権限というものを最大限に発揮するという立場をとっていただかないというと、どうも環境庁というのは、従来も、何か見ておりますというと弱いような感じがする。経済各省庁に対して、あるいは産業各省庁に対して弱いという感じがする。ですから、いま私が申し上げました環境庁が持っている権限を最大限に活用する、発揮していくという中で、ひとつ努力をしてもらいたいと要望するわけですが、長官のお考えを聞きたいと思います。
  56. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 環境庁が持っております権限は、おっしゃったとおりであります。具体的な事例に対しましては、当然われわれの環境保全立場からもの申さなければなりませんので、これもおっしゃるような方向で全力をあげてまいりたいと思っております。
  57. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは念のために私申し上げたいのですけれども大石環境庁長官が、五月でしたか、奈良で開かれました自然を守る全国のつどいがあって、その席上で、自然を守るあるいは環境を守るということは、政府の力よりも住民の力なんだ、遺憾ながらそれが現実なんだという発言をされた。あるいは、新全総が公害を分散する元凶だというような発言をされた。新聞でこれを見まして、もっともだとわれわれは思ったのですけれども、しかしながら、その後の新聞の報道によりますというと、閣議でいろいろ出まして、口が少しよけいだったということで、長官があやまったというのかな、よけいだったというようなことを言ったということがまた新聞に報道された。  これはどうも私は、いまの内閣でもそうじゃないか。自然を守るあるいは環境を守るということ、人間第一主義という考え方というものは、何か弱いような感じをこのときに持ったわけなんです。いまも私はそうです。そこで先ほど来、長官にもいろいろ申し上げているのですけれども、何か弱い。そうして今度の四日市裁判判決が出て、通産大臣はこう言う、政府はこう言う、環境庁長官はこうおっしゃると、いろいろ出る。どうもこれはやっぱり公害を防ぎ、そうして自然を守っていくということは、住民運動の力なのかな、そうなんだなという感じすら与えるようなことなんですね。  ですから私は、これは政府としてはもっと、政治というのは国民の健康、生命を守っていくということが最大だと思うものですから、その意味でやっていかなきゃならぬのじゃないかと思うのですが、どうも弱いという感じを持っておりますが、先ほど長官がお話しのように、長官のその考え方で、そうして環境庁が持っておる権限を最大限に発揮して努力をしてもらいたいと思うし、また、これは公害の問題にいたしましても自然を守る問題にしても、これはやっぱり国民の問題だし、自分らの問題だから、一生懸命やっていかなければならぬと思うのですが、重ねてこの問題については申し上げておきたいと思います。  それから次に私は、先ほど四日市判決が出て、われわれが前から言っているように、新全総がその目玉商品にしている、隔遠地に、非常に離れたところに巨大な公害型産業、資源型産業というものを、鉄鋼であるとかあるいは石油であるとか、そういう巨大な基地をつくっていく、その上に日本の工業を構築していく、この考え方は、私は決定的にここで、人間の生命なり自然を守る、健康を守るという立場から、考えなきゃならぬのじゃないかというふうに思う。そういう、決定的な打撃を与えているのじゃないかというふうに思います。  昨年の十二月の末でありますが、これは経済審議会の中間報告といたしましても、環境立場から新全総を総点検せよということになっておって、総点検に入りつつある。そこでまた四日市のこの問題があって、根本的に考えなければならぬのじゃないか。特にその中で、自然を守る、あるいは健康を守っていく、環境を守るという立場の、その前の、産業構造を考え直すべきところにきているのじゃないか。すでに御承知のように、資源型、公害型の産業の上に工業を考えるのじゃなくて、もっとそうでない、知識集約型の産業へ逐次移行していくべきなんだという意見も至るところから出ておるわけなんです。そういう立場から考えますと、私はいままでの新全総がその目玉商品にしている、巨大な公害型、資源型産業を日本の産業の基盤に据えるという、そういう考え方は徹底的に反省をする、そういう段階ではないか、こう思うわけです。長官の考え方を伺い、開発局のお考えを聞きたい。
  58. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 確かに、この四日市というふうな狭い地域にあれだけの巨大なコンビナートを置いて、そして住民被害が生じたということは、非常な反省を要する点であります。したがって、今後の開発について、いま新全総見直し、あるいは日本列島改造論を見直そうという議が起こりますのも、そういう面があったからだと思います。  そういう意味では、一体資源型産業が今後日本に成り立つのかどうか、あるいはもっと違った形の産業にしなければならぬのじゃないかというところまで発展するであろうことを、私もしろうとながら考えるわけであります。ただ行政のベースというものは、国民感情、国民のその希望よりも若干ずつおくれてまいりますので、その点を早急に煮詰めるように努力をしながら、早急な結論を政府全体として出していく時期にきておりますし、それをまた急がなければならない、こう考えます。
  59. 下河辺淳

    説明員(下河辺淳君) いまお話がございました日本経済のこれからの成長のあり方、あるいは産業構造のあり方というものにつきましては、現在企画庁といたしまして、年内に従来の新経済社会発展計画を改定いたしまして新しい方向をつくるということにきめておりまして、その中で十分いまお話のございました点を加味しながら検討した上で、年内にきめたいという方針で臨んでおります。  その考え方といたしましては、いままで経済審議会その他の研究会でも報告書をいただいておりますように、いままでのような重化学工業に偏重した産業構造であってはならないのではないかという方向づけは、できてきているのではないかと思いますが、その具体性ということになりますと、まだその具体的な内容について検討すべき事柄も残っているかと思います。しかし、その産業構造が変化いたしましたにせよ、やはり人間生活の基本になります電力であるとか、あるいは石油エネルギーであるとか、あるいは鉄鋼について、必要最小限の基地を日本で持つべきであるということについては、やはりそのとおりではなかろうかというふうに考えております。  しかも、むずかしい問題となりますのは、これからの経済成長、産業構造というあり方について根本的検討が必要であると同時に、実は四日市でもございますように、川崎あるいは阪神地域でもありますように、既成の工業地帯が狭小過密で公害発生しているということが実情でございます。こういう形になったことについてのわれわれの反省が大いに必要でありますと同時に、これをどのように改善するかということにつきましては、環境庁はじめ、いろいろ排出規制環境規制が行なわれますけれども、根本的には新全総でも一言触れているところでありますが、やはり一部の企業を移転せざるを得ないだろうというところまで実は考えておるわけでございまして、その移転した先において、また再び四日市と同じことになっては意味がないわけでございますから、一体どのように新しい基地をつくったらよいのかということについて、基礎的な調査も要るし、あるいは公害防止技術開発も必要であるというふうに考えておるわけでございまして、成長なり産業構造ということを考えると同時に、私は、わが国の場合はこの重化学工業基地の再配置ということについて、環境問題の観点から再検討を必要とするのではないかというふうに考えております。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に鹿児島の志布志の国定公園の問題について、簡単に長官お尋ねをしたいと思っておりましたのですけれども、今度当委員会で志布志、宮崎、大分の環境、自然そして公害、そういう調査に出かけるそうであります。でありますから当然志布志もその中に入っておりますし、それを終わったところであらためて長官にお伺いするということでよろしいかと思いますので、これでお尋ねを終わりたいと思います。
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 四日市判決について最初に二、三伺いたいと思います。  この判決では「亜硫酸ガスは、ばいじん等の他物質と共存することによって、人体への影響力が相乗的に強められる。また硫酸ミストは、亜硫酸ガスに比べて人体への影響力がずっと大きい。」と、このように指摘をしております。ところで、企業責任、国の責任についての質疑がありましたが、この亜硫酸ガスが人体に与える影響というものは、政府としても判決どおりに受けとめておられるかどうか、これが第一点。  もし、そのように亜硫酸ガスが健康に有害であるならば、現実問題、なおかつきのうもきょうもあしたも、依然として亜硫酸ガスが排出されているという事実、これに対してどのような手を打たれるのか。以上二点について。
  62. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 亜硫酸ガスが人体に被害を及ぼすということは、政府としてそのとおり考えております。したがって、そのための規制をやっておるのであります。ですから、全国で大気基準をつくりましたが、その基準はどういうふうにつくったかは、もう小平先生は私よりも専門家でありますから申し上げませんけれども、全体の基準をつくり、その基準を守るために排出規制を行なっておるわけであります。  そして、この前提には、日本で必要とする全体の重油全部をまかなうだけの低硫黄の重油を入手することが、きわめて困難であるという前提に立っておるわけですね。そういう前提のもとに立っておりますが、硫黄の重油からの排除装置だとか、これはすでに実施しておるようでありますが、排煙についてまだ十分な技術開発が行なわれていないということで、これの技術開発を急いでおる。そして、これも実施段階に早く持つでこれるように、政府も一体となって開発を進めている、こういうことでございます。
  63. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう程度の答弁は、もう何回もここで繰り返されてきているのですが、環境基準を国がきめ、そしてその基準企業に課しておりながら、なおかつ健康被害者が発生し、そして民事責任を問われているわけです。したがって、いまのままでは依然として次から次へ新しい患者発生する、いまのままでは。ですから通産省は、いかがでしょうか、どうしたら亜硫酸ガスをもっと減らすことができるのか。こうした亜硫酸ガスあるいは硫酸ミスト、こういうものを減らさないことには、新しい患者がどんどん発生して・いるんです。去年もことしもどんどん発生している。このままでは、いつまでたっても追いつかないわけでしょう。
  64. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 産業活動において、現在では亜硫酸ガスの排出ということが防ぎ得ない事情もございますので、いかにしてこの量を減らすかという問題になるわけでございます。これには二つの方法が考えられるわけでございます。一つは、重油の中の硫黄分を極力減らすという方法、それからもう一つ排煙脱硫装置をつけるという、この二つでございます。  重油の低硫黄化で申し上げますと、四十四年に硫黄に関します環境基準がきまりましたときに、やはり制約条件として重油の低硫黄化というのが問題になったわけでございます。当時の低硫黄計画によりますと、昭和四十八年までに過密地域を除いては環境基準に適合するまでにSO2の量を下げよう、それから過密地域におきましては、昭和五十三年を目標にする十年計画をつくったわけでございますが、その後、私どものほうでも、五十三年というのはあまりにも長期を要する問題でもありますので、特にこれは昨年、七〇年代の通産政策の基本はいかにあるべきかという作業をし、結論を出したわけでございますが、その中で、七〇年代の前半におきまして環境基準というものは達成をし、後半においてさらにそれを下回る環境を目ざそうということにいたしました。五十三年のLS計画の目標というものを極力、前に繰り上げられないかということで努力をいたしました。五十年を一応めどにいたしまして、過密地域においても現在の環境基準を達成できるのではないかという一応のめどをつけつつあるわけでございます。なお、今回の四日市その他の状況から考えまして、若干でもさらに繰り上げ得る手段はないかということを鋭意研究をいたしておるわけでございます。  それから排煙脱硫につきましては、これは御承知のように大型プロジェクトその他、政府技術開発の手段を使いまして、解明に努力をしてまいったわけでございます。現在、ほぼ技術的にも完成の域に達しつつあるわけでございますが、現在のところ、たとえば電力に使いましたときに、負荷の変動と申しますか、発電所の運転によりまして処理しなければならない煙の量というのがかなり変動をいたすわけでございます。そういう際の安定性、それから追従性と申しますか、そういう点に問題があるわけでございますが、これについても非常な努力をいたしておりまして、現在稼働中のものが約二十七基、それから建設中のものが十三基、それから建設予定のものが六基、合計四十六基のものが一応、実働ないし計画にのぼっておるわけでございます。この一両年中には、技術的にも完成をいたしまして、普及に努力をしていきたいと考えております。
  65. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、排煙脱硫をやれば減るわけでしょう。ところが、この四日市裁判の被告六社で排煙脱硫をやっていないわけでしょう、全然。いかがですか。それをそのままにしておいて、国の責任も認めますなんて言ったって、何の役にも立たないじゃないですか。どうなんですか。
  66. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) この四日市問題と申しますか、コンビナート六社の中の中部電力は、先ほど申し上げました大型プロジェクトの一環といたしまして、乾式の排煙脱硫装置の研究をしたわけでございますが、その一つの担当企業といたしまして大いに排煙脱硫に努力をいたしました。この六社の中の実際の工場としては、三重火力が入っておるわけでございます。その四日市火力発電所に排煙脱硫をつけておるわけでございます。それから昭和四日市石油は、現在排煙脱硫をやる準備をいたしておりまして、四十八年度中に排煙脱硫装置が稼働をする予定になっております。
  67. 小平芳平

    ○小平芳平君 現在はどこもやっていない。ですからそこを、いついつまでに排煙脱硫装置を必ずつけろ、こういうふうにすれば、確実に亜硫酸ガスを減らすことができるわけでしょう。いかがですか。それをやらないことには、何にもならないでしょう。
  68. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 排煙脱硫装置につきましては、若干技術的にも問題のあることを申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、LS計画排煙脱硫装置というのは亜硫酸ガス対策に対する唯一の手段でございますので、各企業に、なるべく排煙脱硫を早く広範囲につけさせるということで真剣に指導してまいりたいと思います。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 小山長官、あとで排煙脱硫についての基本的なお考えをお尋ねしますからね。  法務省おられますか——。
  70. 大矢正

    委員長大矢正君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  71. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記を起こして。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは環境庁から答弁してください。亜硫酸ガスは健康に害があるということがはっきりした、政府もそれを認めたというならば、これは今後、公害罪法で言う故意犯になるんじゃないですか。今後とも依然として健康に有害な亜硫酸ガスをそのまま排出していて、健康に被害発生したら、もう過失じゃなくて、故意になるじゃないですか。いかがです。
  73. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  74. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記を起こして。
  75. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) 御存じのように、いわゆる公害罪法の規定は、他の刑罰規定と同様に、基本的には一人の行為によりまして危険を生じた場合に適用されるということになっておりますので、問題は、これらの企業が共犯関係にあるかどうかということが非常に大きな問題になると思うのでございます。で、もし共犯関係にないという前提に立ちますと、先生御存じのとおり、ただ一人でそれらの危険を生じしめたというところまでまいりませんと公害罪は成立しないということになりますので、問題はその点のいかんにかかると思うのでございます。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済活動はほとんど法人でしょう。特に、こうしたコンビナートにおける経済活動は法人ですよ。それが公害罪法に適用なければ、公害罪はまるっきり意味のないことですね。どうですか。
  77. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) 私が申し上げておりますのは、いわゆる企業公害罪法の適用がないということを申し上げているのではございませんで、問題は公害罪法をつくりました際に、参議院のほうでも附帯決議がございましたように、複合公害につきましては、刑法の共犯の条件が満たされる場合には本罪の適用があるということになっておりますので、その要件が満たされるようでございますれば適用があるわけでございます。問題は、附帯決議にもありましたように、刑法の共犯の条件が満たされるかどうかという点にあると思うのでございます。  さらにつけ加えますと、刑法の共犯の規定が適用になりますには、いわゆる主観的要件と客観的要件がございまして、いろいろ行為者が相互の協力によって犯罪構成事実を実現する意思があることを要するとか、あるいは二人以上の行為が、犯罪の実行の段階におきまして協力して構成要件を実現することを要するとかいう、共同実行の意思と共同実行の事実がなければいけませんので、問題は具体的な今回の各企業の行為がこれらの共犯に当たるかどうかということは、民事とは違いまして、また刑事独特の問題がある、具体的事案によって決せられるべきであるということを申し上げているわけでございます。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そういうことをお尋ねしているのではなくて、この亜硫酸ガスが有害だ、その有害のものを依然として出し続けるというのは、故意なんですか、過失なんですか。
  79. 根岸重治

    説明員(根岸重治君) それは場合によりまして、故意犯になる場合、過失犯になる場合があると思うのでございますが、私が申し上げておりますのは、公害罪法に言う故意犯あるいは過失犯になりますには、その企業なら企業単独でこれらの危険を生ぜしめたということまで立証しなければなりませんので、問題は、共犯関係理論がとれない以上は、自分がそういうものを排出することによって、自分だけでそういうような危険が生ずるというようなことを認識しておれば放意犯になりましょうし、過失によって認識しなければ過失犯になろうと、こういうことでございます。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、もう一度あとからお尋ねしますから……。  この排煙脱硫を早く義務化すべきだ、これはいかがですか、環境庁
  81. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 排煙脱硫は義務化すべきなのであります。ただ、排煙脱硫をする技術はおそらく開発されておると思うのでありますが、それを応用する技術まで開発されているのかどうか、これは私はよく承知しておりません。応用する技術開発されている以上、当然義務化すべきであろうと考えます。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 排煙脱硫を義務化するとともに、次には窒素酸化物あるいはオキシダント、こういうものの規制研究をすべきだ。それから炉ですね、炉の構造を規制して、それで二段燃焼、三段燃焼というような、そこまでしていかなければ公害が減るわけがないんです。新全総とか日本列島改造論なんて、もってのほか。そんなことを言っているよりも、現実に脱硫装置を、窒素酸化物やオキシダントの研究を、そして炉の改造まで、そこまですぐ取りかからなければ公害は減らないわけです。いかがですか。
  83. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 私も技術的なことは知りませんが、窒素酸化物については除去方法というものがなかなか開発されないというふうに聞いておるのでありまして、詳細は事務当局から申し上げます。
  84. 山形操六

    説明員(山形操六君) 窒素酸化物とオキシダントにつきましては、目下、環境基準作成にあたりまして中央公害対策審議会に諮問中でございますが、専門委員会においてはその報告がすでにできまして、いま小委員会で検討しております。近く環境基準をお示しすることができる段階になっております。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、その近くという、近くとか、そのうちにと言っていたのじゃ、いつまでたっても進まないのですよ。ですから、排煙脱硫はいつまでときめて義務化する、窒素酸化物についてはいつまでにきめる、そういう目標を立てなくちゃならないでしょう。いかがですか。
  86. 山形操六

    説明員(山形操六君) 窒素酸化物につきましては、本年度中に施策を含めてお示しすることができると思います。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、先ほども御答弁がちょっとあったようでしたが、総量規制ですね、総量規制はいつやりますか。それから、地方公共団体の窒素酸化物に対する上乗せ規制ができるようにすべきなんですが、これはいつやりますか。
  88. 山形操六

    説明員(山形操六君) 総量規制の問題に関しましては、現在私どもがやっておりますK値規制排出基準のやり方、これも全体的には総量規制的な考えでございますが、先生の御指摘のは、一つ一つの施設あるいは煙突等についての量を全部きめてしまうという御指摘の総量規制と思いますが、これらについては私ども先ほど通産当局からお話がございました低硫黄政策全般とのからみもございまして、一応検討には入っておりますが、今日の段階で、いつやるとまだ申せないことでございます。  それから硫黄酸化物につきましては、上乗せを現在認めておりませんが、これらも低硫黄計画の進展に伴いまして、なるべく早い時期に、これもできる段階から着手していこうと考えております。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことを言って、この判決では「企業は、経済性を度外視して、世界最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずべきである。」と、こう言っているわけでしょう。その判決は評価しますと言っているでしょう、長官は。にもかかわらず、その政府の低硫黄政策云々ということを言ってたのでは、いつまでたっても亜硫酸ガスが減らないということを指摘しているんです。どうですか。
  90. 山形操六

    説明員(山形操六君) 排出規制につきまして昨年十二月に強くいたしましたが、さらに四十八年についても、排出規制をさらに強化する計画で目下進んでおりますので、環境基準の達成が当初の目標よりも非常に短縮できることでいま進んでおります。それに加えて、さらに御指摘の環境基準そのものの見直しをいま着手する、こういう段階で進んでおる最中でございます。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、硫黄酸化物の上乗せ規定をある県がやった場合に、それは認めますか。
  92. 山形操六

    説明員(山形操六君) 硫黄酸化物については、私どものほうは現在認めておりませんが、いま御指摘の、地方自治体のほうでそういうことを計画し、あるいは実施しているところがあるかと思います。ただし、法的問題につきましてはいろいろ議論があるかと思いますが、私どもは、地方自治体において公害防止のために非常に努力していくその姿に対して、可能な限りやっておられるその努力に対して、いまこれを直ちに認めるとか認めないとかいう形はとっておりません。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ長官公害防止に熱心な県があって、そして硫黄酸化物によって健康被害が次々発生する、認定患者がふえる一方、また死亡なさる方もいらっしゃる、そういう現実の公害にさらされている県が、これはどうしようもない、もっと規制をきびしくしなければならないという規定をした場合に、それは大気汚染防止法違反だと、こう言われるんですよ。ですから、そういうことを言われないように、政府がそれを認めますかというんです。
  94. 小山長規

    国務大臣小山長規君) おっしゃることは私もよくわかります。いま問題は、排煙技術の問題と低硫黄の問題がありますので、たとえばいま問題になっている府県全部にそれが適用された場合に、それに相応する低硫黄あるいは排煙技術がなし得るかどうかという判断があって、いま事務当局はそう申したのだと思います。ですからこの問題は、当然つくった以上は守らせる。しかしまた、そのために他の地域損害をこうむるということがあっては困りますので、したがって、十分な準備をしてかかる必要があるのじゃないかと思っております。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう準備なんかとっくに終わって、とにかくもう実施しようとしているんです、はっきり言って、三重県でも。それを政府がいつまでたってもぼやぼやしていたのでは困るわけです。現に被害発生しているんですから。ですからそういう点、長官、もう準備なんかの段階じゃない、早く実施すべき段階だと思いますが、いかがですか。
  96. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いや、私が申し上げたのは、四日市もそうでありますが、尼崎にしましても、その他、硫黄酸化物がどんどん出ているところがあるわけですね。そして一地方に低硫黄が集中すれば、今度はそれ以外のところには硫黄の多い重油が回る、こうなりますね。その辺の調整をどうするかということが前提にありますので、低硫黄のものが十分入手できる、あるいは排煙についての技術の応用がもう直ちにできるんだと、こういう前提でいま事務当局はそういうお答えをしたのであろうと。私は、地域立場から言えば、自分のところだけでも基準をきびしくして、そうして損害を少なくしたいという、その地域地域の希望があることは十分理解できるわけであります。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、私ちょっとほかの質問をしなければなりませんので、まとめて長官に伺います。  一つは、先ほど来申しますように、脱硫装置をつけるんですよ。自分の地域だけは低硫黄で、ほかの地域は高硫黄でということを私は指摘しているのじゃなくて、脱硫装置を義務づける。これは当然でしょう。これを私は環境庁長官に強く推進していただきたいんです。それが一つ。  それから第二点としては、なおかつ環境全体として健康被害発生するような場合には、工場をほかへ移転するよりほか手がなくなるわけです。それについてどう考えられるか。  それから、あるいは操業差しとめ請求、これについても判決でもそういう指摘をしております。地域住民の生命・身体を害するようなことが絶対あってはならないということ、操業にあたってもあってはならないということが指摘されております。したがって操業差しとめ請求権、これを制度化するべきだと思いますが、以上三点についてお尋ねしたい。
  98. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 排煙脱硫装置を義務づけることが前提になりますね、いまの上乗せ基準のためには。その点については、小平先生がおっしゃっている趣旨は私もよくわかります。ただ、それを行政ベースでやれるかどうかについては、まだ多少検討の余地があると思いますので、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それから工場移転については、工業再配置法ですか、あれでもそういっておりますし、それから今度見直しをしようという計画の中に、それが入ってくるのは当然ではないか、こう思っております。  操業の差しとめについては、排出基準に違反しておれば当然その処置をとります。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 その排出基準ですが、国が定めた排出基準を守っていても、なおかつ健康被害発生する。ですから、排出基準というのは何のためにあるわけですか。排出基準をオーバーしたら直罰ですね、直接罰せられる。守っていても、なおかつ健康被害発生して損害賠償の責めを負わされるということになったら、何のための排出基準ですか、それは。
  100. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 排出基準というのは、もうたびたびお話があったと思いますが、現在の低硫黄の入手可能量、それから防止技術開発あるいはそれの応用の開発というか、防止技術の応用の現状、それによって排出基準がきめられており、それからまた、すでに汚染されておる地域については年次計画でやっておるという、この状況から、たとえば先ほど通産省が申しましたように、四日市の場合は五十三年までに環境基準に達するわけですね。それを、それではまどろっこいではないか、もっともっと積極的にやるべきじゃないかということで従来も努力してまいりまして、五十年には基準に達するように、いま行政的な指導もいたしますし、また技術開発の面もやっておる、こういう状況なんでありますから、現状では、したがって四日市においてはまだ基準には達成していないということだけは申し上げられると思います。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、この問題でなおおいでいただいたのですが、時間がありませんので恐縮ですが、厚生大臣がおいでになっておりますので、次の問題に移りたいと思います。  厚生大臣お尋ねしたいのは、カネミ油症ですね、このカネミ油症患者に対して、過去においては大石環境庁長官は、やはりこれはもう少し慎重に考えまして、公害で扱ってもいいような気がいたしますので、もう少し時間をかしていただいて検討さしていただきたいと思いますと、こういうような答弁を公害対策特別委員会でやっている。それから社会労働委員会では、前の斎藤厚生大臣は、公害に準ずる制度をつくって救済をしますと、こう言っている。それから、厚生大臣の指示を受けて事務当局では、人の健康にかかる公害被害者の救済と同じように、人の健康にかかる食品の被害者を救済するというような制度を早く立てるようにと、こういうことを大臣が指示をして事務当局が検討に入っておりますという答弁をしているわけです。  ところが、田中内閣が成立した段階で、私はカネミ油症の実態調査をしまして、とにかくこの委員会の始まるのを待てないので、質問主意書を提出いたしました。ところが、政府の御答弁は、この七月十八日に政府の答弁がありましたが、カネミ油症は公害にはならない、あるいはそのほかの答弁も、生活困窮者に対しても特別の措置を講ずることはできないという、まるで味もそっけもない答弁書を出されたものですから、きわめて被害者の方はがっかりしているわけです。ですから、いかがですか、厚生省としては。
  102. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) カネミ油症患者に対する救済措置につきましては、前国会の公害特別委員会における先生の御質疑、あるいは社労の田中寿美子先生の御質疑等で、政府といたしましても積極的に検討するという旨の答弁でございましたが、その後、私どもは引き続きこの問題について事務的な検討を進めておるところでございます。  確かに、政府のほうから先日提出いたしました小平先生の質問主意書に対する答弁書におきましては、公害にかかる健康被害の救済に関する特別措置法を適用することについての困難性を述べておりますけれども、これは、すなわちこのような制度を考えるのではないという趣旨ではございませんで、むしろ、前向きの姿勢で、食品あるいは薬品等の事故が起こりました場合に、これは一般的な問題といたしまして、加害者が特定されるまでの間における、いわばつなぎの措置としての被害者に対する救済措置、このような制度を立てることについては引き続き検討いたしておるわけでございますし、明年度の予算要求におきましても、このようなことを積極的に進めるための調査費というものを要求いたすことにいたしております。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣調査調査といいますけれども昭和四十三年以来の問題なんですね。それは確かに食品による健康被害には違いませんが、この悲惨な実情をもう少し私は厚生省にわかってもらわなくちゃいけないと思うんですね。  ついこの二十二日の土曜日にも、油症の認定患者がお産をしております。その油症の認定患者、二十二日に生まれた赤ちゃんは、私は直接助産婦の方にお聞きしましたが、肌は鉛色がかっでいて、どうですか、きのうになったらもう歯が二本はえちゃった。二十二日に生まれた赤ちゃんが、三日目にはもう歯が二本はえている。これはどういう影響ですか。厚生省どうですか。
  104. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 私も詳しく専門家の御説明を聞いたことはございませんが、いままでの研究の結論から申しますと、体内におけるカルシウムの代謝異常ということがやはり起こされるようでございまして、その結果、早く歯がはえるというようなことも起こったのではないかと思います。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 この方はOさんという方ですが、カネミの被害を受けてから二回目のお産です。第一回のお産のときも、生まれた直後にもうすでに歯が生えている。その歯は成長するに従って腐って、その後は全然そこへは歯がはえてこないとか、歯ぐきが黒ずんでいるとか。あまりにもこのPCBによる健康被害研究というものが行なわれていない。  この点については私の質問時間がありませんので、内田委員から引き続いてやっていただくことになっておりますが、そういう実態を踏まえた上で、これは政府からカネミ油症は公害認定しません、公害による健康被害者救済法にはなりませんという答弁書が出たとき、その直後の朝日新聞の社説ですが、「公害被害者に準じて、行政上の救済措置をとるとか、被害者発生企業の話合いをあっせんするなど、打つ手はあるはずだ。政治的には、被害者にもっと暖かい配慮をし、積極的な対策をとることが、〃正解〃だと思う」。つまり、現在の法律解釈で公害に入らないという答弁ですが、それは現在の法律はそういう解釈が正解でしょうが、政治の場においては、もっと被害者にあたたかい措置をとるべきが正しい解釈ではないかという社説、これは厚生大臣、どういうふうに考えられますか。
  106. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ちょっと委員長、お許しをいただいて、最初でございますのでごあいさつをさせていただきます。  今回厚生大臣に就任をいたしまして、いまさらながら責任の重大なことを痛感をいたしておる次第でございます。委員長はじめ皆さん方の御指導、御協力をいただきまして、何とか重責にこたえたい気持ちでおりますので、よろしくお願いを申し上げます。  ただいま小平先生からのお話、私はここで承っておりまして、非常に私自身十分に理解ができるところでございます。  カネミの患者につきましては、私もまだつまびらかに状況を承知はいたしておりませんが、非常に不幸な方々がたくさん現実に存在をしておるのであります。したがって、政府と申しまするか、われわれ厚生省といたしましても、やはりこれのいろんな対策、あるいは患者の把握でございますとか、病状の進行状況の把握でございますとか、あるいはこの救済の対策というものにつきましては、積極的に考えていかなければならぬと思うわけでございまして、確かに現状が十分であるというふうには考えていないわけでありまして、先ほど局長からもお話がございましたが、明年度の予算編成の時期も控えておりますし、私はこういったような難病対策につきましては、前の厚生大臣公害に関する救済に準ずるというような答弁も私は見ておるわけでございまするが、やはりこの救済措置が、いろんなこういうふうな難病につきまして、区々であるということは、これはおもしろくないわけでございまして、こういった対策につきましては、積極的に前向きに検討させていただきたいと思います。
  107. 内田善利

    ○内田善利君 私も四日市のことをいままでお聞きしておりまして、環境庁長官の答弁を聞いておりまして、ほんとうに国民の健康を守る立場環境庁なのか、政府側の環境庁なのか、非常に不審に思いながら聞いておったわけですが、きのうの判決でも、工業立地ですね、これが不適正であったと、こう言っているわけですね。災害対策も十分でなかった、また公害対策も十分でなかった、このように言っているわけですけれども、これをどのように企業が受けとめておるのか。きのうの状態、あるいはきょうの企業の状況をお聞きしまして、私は、ぜひ次の本公害対策委員会に、委員長にお願いしまして企業責任者を呼んでいただきたい、どういう考えでおられるのか、この委員会でお聞きしたい、そのような気持ちでいますわっておったわけですが、立地上の責任が問われておるということは、これはもう地方自治体は当然、国の大きな責任じゃないか、当然これは反省すべきじゃないかと、このように思うのです。  きのう、あのような五年余りの間かかった裁判判決が出たにもかかわらず、九人の方々が救われるわけですが、まだもくもくと煙はそのまま出ているのです。そして、きょうもあしたも何人かの方が死んでいっている。いままで六十八名ぐらいの方が四日市病でなくなっておられる。先ほども小平委員の質問に答えて、五十三年までに環境基準を整えるというような、そういうことでは、まだ五十三年まではたくさんの方が死んでいかれるなど、このように当然私は思うし、環境庁長官もお思いになるのがほんとうじゃないか。一体、この患者方々をどうやってだれが救っていくのか。非常に感情論的な質問になりますけれども、強くそう感ずるわけです。   〔委員長退席、理事矢野登君着席〕  いまの油症の患者の実態をつぶさに見てきて感じ、また土呂久に行って、土呂久の患者方々、二月の三、四日と参りまして、また次に参りましたが、また今回行ってまいりまして、一体この方々をだれが救うのか。同県の小山長官環境庁長官になられたから今度は助かるぞと、そのような気持ちで私も帰ってきたわけですが、こういった患者方々を、まずどうやって救うかということが環境庁としての任務じゃないかと、そのように思うわけです。  ところが、いままで答弁をお聞きしておりまして、どうしても国民の健康を守る立場の答弁がなかったことに対して、私もふんまんやるせないものを感じながら答弁を聞いておったわけですが、政府の、立地が不適当だったということに対しての政府責任、それと五十三年までかかって環境基準を守るような、そういうことじゃなくて、環境庁長官であるならば、その五十三年を五十年に引き寄せるとか、あるいは四十八年に引き寄せるとか、そういう対策を前向きに患者救済の立場からとっていただきたいと、このように思うのですが、この点いかがでしょうか。
  108. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 四日市の場合について申しますならば、先ほどたびたび申しますように、当時、立地の計画についてもあるいは公害対策についても十分でなかったという点は、強く反省しておりますと申し上げておるのでありますが、その後これをどうするかという問題であります。   〔理事矢野登君退席、委員長着席〕  そして環境基準につきましても、四日市のようなすでに汚染されておる地域について、いきなり環境基準を守らせるということについてはその当時非常な議論がありまして、そしてこのような地域については、十年で環境基準に達するという方針がとられたようであります。そのことの結果、患者が出てきたわけでありまして、この点は、その立地そのもの、それから立地そのものからコンビナートをつくったこと自体、大いに反省を要する点なのであります。  この環境基準どおりにすることについては、先ほど言いましたように五十三年までということで最初つくられたわけでありますが、それは一つには、これも申しましたように、低硫黄の入手が日本全部の重油の入手量の、パーセントは知りませんけれども、相当低いパーセントであるということ、もう一つは、脱硫装置についてまだ十分な応用手段がないというようなことから、そういうふうな措置をとったことも申し上げました。そこで、しかしながらこの環境基準の繰り上げということについては、先ほど局長から答弁いたしましたように、五十年には環境基準を守れるようにしますとともに、排出基準について逐次、四十八年にもう一度排出基準をつくりますが、そういうふうにして逐次きびしくやっていく、こういう態度でおるわけであります。  おそらく内田先生のおっしゃることは、もうこんなに健康被害があるのだから、全部操業をやめたらどうかというところまで議論が発展するのではないかと思いますけれども、この操業をやめたらというところまで発展させていいのかどうかという点については、まだ私自身も判断に迷っておるところであります。
  109. 内田善利

    ○内田善利君 このような判決が下ったわけですから、そういった点についても検討していただきたいと、そのように思うわけです。  質問時間がありませんので先へ進みますけれども四日市の問題を契機として、工業立地ということについては深刻な反省をして、今後のたとえば新全総に基づくむつ小川原、あるいは志布志あるいは周防灘等の開発が進められるとすれば、十分この点は考慮に入れて政府責任を持っていただきたいと、このように思います。  それと、志布志の問題が先ほど出ましたわけですが、また前委員会におきましても私は質問したわけですが、志布志開発問題は、新全総あるいは日本列島改造論でも名指しで志布志を大規模工業基地の候補としてあげられておるわけですが、このまま推移すれば、小山長官としては国定公園を指定解除するか、しないかの決断を迫られることになると思いますが、いままでの大石長官の言明等、また新長官新聞等での言明等を聞いておりますけれども、この点もう一度、本委員会ではっきりとお答ええ願いたいと思います。
  110. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 志布志の開発については、いろいろな問題があります。日本列島全体の国土利用のあり方をどうするかという問題もありますし、当該地域の、つまり鹿児島県、特に肝属郡、囎唹郡の地域生活水準をどうするかという問題もあります。それから、自然環境をいかにして保全していくかという問題もあります。特に判断材料としては、環境に関する基礎的データが現在十分でありません。むしろ不足しているといったほうがいいかと思います。したがって、直ちに結論を出す段階にないと申し上げていいかと思うのであります。  その関係でもまだいまそういう状態にあるわけでありますが、それに関連して、国定公園の解除をするかどうかということを聞かれますが、私は今日まで、国定公園の解除については軽々にやるべきものではないというお答えを今日までいたしておりまして、この委員会でもそういうことを申し上げたいと思います。
  111. 内田善利

    ○内田善利君 経企庁にお聞きしますけれども、いろんなことがいわれているわけですけれども、大隅開発計画については、現在の六漁協の方も絶対反対だとは言わないわけですね。やはり無公害であるならば開発けっこうだと言われておるわけですが、鹿島臨工地帯の開発のときも、公害のない開発ということで、そういううたい文句で開発が行なわれて、むしろ公害がひどくなった、こういう状況なんですね。現況では公害をゼロにしろとは言いませんけれども公害が出ないというクローズドシステム等で完全に公害を出さない技術開発されない限り、私はこういった計画はもうする段階ではないと、このように思うのですけれども、経企庁のほうではどのように考えられますか。  聞くところによりますと、一時中止だとかなんとかそういったことまで言われておるようですけれども、私はそういったことじゃなくて、完全中止をすべきじゃないか、現段階においてですね、このように思っているわけですが、特に百万バーレルの石油コンビナートといったような問題は、きのうの判決を見ましても、これはやるべきじゃない、このように思うわけです。そういった点について、経企庁はどのようにお考えになっているのかお聞きしたいと思います。
  112. 下河辺淳

    説明員(下河辺淳君) 志布志問題につきましては、全部総合開発計画の中におきまして、志布志湾周辺が、石油を中心とする工業基地としてかなりの適性を持っているのではないかということから、新全総の中で一つの候補地として提案をしております。  そして現在では、それが候補地として適当なものであるかどうかということを確認するという仕事が必要でありますから、現実には調整費その他によりまして実態調査をしておりまして、実態調査はまだ中間的で完了しておりません。なおかつ、地元におきましては、御承知のように県知事が中心となりまして、地元の方々と新大隅開発をいかにすべきかということについて御議論をしておられる最中でありますので、その御議論の結論を待った上で、企画庁としては関係省庁と相談しながら結論を出してまいりたいと思いますが、今日の時点で早急に結論が出るというふうには判断しておりません。  それからもう一つは、企画庁といたしましては年内に新しい長期経済計画を策定するつもりで改定作業を実施しておりますが、その中で、経済成長のあり方あるいは産業構造のあり方を検討することにしておりまして、その結論と新全総の総点検と調整問題が出てくると思っておりますが、その中で石油その他の基地の必要性についても明らかになってくるのではないかと考えておりまして、全国的なマクロの立場からの必要性と、ミクロの、志布志湾においてどの程度の適性があるかということとの調整問題を、今後われわれとしては各省庁と相談してまいりたいという考え方でございます。
  113. 内田善利

    ○内田善利君 この辺で志布志の問題はまた次の機会に譲りたいと思いますが、ほんとうは石油コンビナートは行く場所がないんですね。鹿児島でも、あの国分の新しい空港の、ちょうど飛行機が離着陸するところには、二十二万平米の造成地域ができておるわけですね、錦江湾に面して。飛行機の上から見れば、非常にいいところに立地すべき土地があるわけですけれども、そのうち実際売れたのは五万平米というような状況で、工場再配置といったって、非常にいいところでありますけれども、なかなか来ない。ただ希望するのは石油コンビナートということなんです。それをあのような美しい志布志に持っていくというのは、私は問題じゃないか、また地元の住民も、そういうことでは開発を望んでいないのではないか、このように思うわけです。御検討をお願いします。  次に土呂久の問題を中心にしまして、亜砒酸鉱山の総決算みたいに八省庁で総点検をやるということですけれども、私は総点検もけっこうですけれども先ほども言いましたように、どうやって早く住民の方を、患者の方を救済するのか、この点をお聞きしたいと思うんですね。県のほうでもし公害病に認定したいという、これは県知事が認定するわけですから、そういう通知があったならば、環境庁はそれを了承されるかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  114. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 土呂久の問題につきましては、宮崎県で御承知のように社会医学的な調査をいたしておりますが、この結果が間もなく、七月の末までには出るからという連絡を受けております。その調査が出ますと、宮崎県としてはどういう処置をとりたいという希望が出てまいりますので、その調査結果及び県知事の見解を聞きまして措置をしたい、こう考えております。
  115. 内田善利

    ○内田善利君 認定すれば了承されますか。
  116. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 認定の問題については私もよく知りませんが、ちょっと事務当局から。
  117. 船後正道

    説明員(船後正道君) 土呂久の健康被害の問題は、長官が申し上げましたように現在のところ結果待ちでございます。この結果によりまして、土呂久地区に砒素による汚染がある、かつその汚染によりまして健康被害があるかどうかということが判明するわけでございます。  その結果を見なければ、現在のところ的確なるお答えは申し上げられないのでございますが、私どもそのような事実がありますれば、この場合には排出源が明らかでございまして、鉱業法の規定によりまして、賠償すべきものは鉱業権者でございますから、まず第一義的には、そのような企業による責任をとるというように指導してまいりたい、かように考えております。
  118. 内田善利

    ○内田善利君 現に患者はおるわけですよ、被害者は。そして県のほうで、熊本に引っぱったり延岡に引っぱったりして、おしりの肉を取ったりしながらひどい目にあい、現在はあのように元気だった人たちが寝込んでしまっておる、そのような実情なんです。こういった亜砒酸による被害が出ておるにもかかわらず、どうして認定をおくらせるのだろう、どうして早くこういった人たちを救済しないのだろうと、私はふしぎでならないのです。ひとつこういった点について、総点検もいいですけれども、もう長い期間がたっておるわけですから、まず早く被害者を救済するという方向へもっていっていただきたい、このように思うわけです。  現に亜砒酸鉱山の中でも、かまの中に残っていた亜砒酸、九九・何%というような亜砒酸が、いまだにかまの中に残っておる砒素鉱山があるわけですね。そういったことに対しても、衆議院でも決議されたように思いますけれども、もう少し石炭臨時特別措置法のように、メタルラインのほうもそういった特別措置法をつくって、早くそういったものを取り除き、これは毒劇物取締法にも触れるわけですからそういったものを早く取り除き、かつズリどめをがっちりやっていただきたい、このように思うのですけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。  われわれが二月にサンプリングしたものは、県の数値よりもはるかに高いわけです。鉱石焼きかすなども、三四万PPMというような大きいものです。それから水田土壌も、県では二二三・一PPMですが、これとても多いのですが、今回私たちの、これは二月から四カ月かかってクロスチェックをした結果出たわけですが、一五〇〇PPMから五一〇〇PPM。大体四〇〇PPMを越すと稲は枯死するといわれるわけですが、こういった大きなデータが出ておる。それから鉱石の焼きかすも、県では五六〇〇PPMと言っておりますが、私たちの調査では一九万PPM、そういった状況です。あるいは河川水、抗内水、土壌、植物、そういったものからも高い砒素とかカドミウムとか鉛などが検出されておるわけですが、早急にズリどめをきちっとして公害防止施策を講ずべきじゃないかと、このように思うのですが、そういった特別立法を考えられておるのかどうか、通産省にお聞きしたいと思います。
  119. 小山長規

    国務大臣小山長規君) ちょっと、先ほど公害病に認定するのかどうかという御質問でありましたから、事務当局に答えさせたわけですが、被害者の救済という点については、何らの措置であれ、十分な措置をとるということには間違いありませんので、その点はつけ加えておきます。  なお、いま御質問の点は通産関係のようでありますから、その点は通産省から答弁すると思います。
  120. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 休廃止鉱山対策について御指摘があったわけでございます。  前の通常国会で衆議院の公害特の、休廃止鉱山の公害対策の確立についての決議等もあったわけでございます。通産省といたしましては、現存抜本的な対策について鋭意検討しておるわけでございますが、一つは、この公害防止義務者が現在いない休廃止鉱山の公害対策につきましては、実態の把握という問題、それから義務者がいないわけでございまするから、これは国と地方自治体との力によって公害防止をする以外にないわけでございます。これを積極的に推進をしようということで検討いたしております。それからさらに、金属鉱業公害基金というものをつくっておるわけでございますが、これを拡充活用いたしまして、休廃止鉱山の公害計画的に一掃していきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、これだけの方法では不十分でございますので、現在稼行中の鉱山を含めまして、国会の決議に相応ずるような、総合的な重金属を中心とする鉱山公害対策というものがあるわけでございますので、これを抜本的にいかに解決をするかということにつきまして、現在事務当局で鋭意検討をいたしております。
  121. 内田善利

    ○内田善利君 労働省お見えですか——。松尾鉱山の現況と、労災適用の方向はどのようになっておるか、お聞きしたい。
  122. 山口全

    説明員山口全君) 松尾鉱山の元労働者につきましては、宮崎労働基準局で検診研を編成しまして、去る四月の二十四、二十五の両日にわたりまして検診を行ないました。さらに血液、尿等の追加検査を要する者が十九名ございましたので、これらの者については六月の五日、六日の両日検診を実施しております。さらに三名の元労務者について追加検診を要する必要がございましたので、本月十八日に検診を行なっております。  以上で大体元労務者についての検診が終わりましたので、現在、結果の取りまとめを急いでおります。結果を取りまとめ次第、業務上の中毒であることが明らかな者で労災保険法の適用のある者については、所要の補償を実施するという考え方で処理をしたいと思っております。
  123. 内田善利

    ○内田善利君 全国的な問題であろうかと思いますけれども、この元従業員に対する救済、これもひとつ早急にやっていただきたいと思います。  要するに、総点検あるいはその他調査が行なわれますけれども、やはり政治的な配慮は、どうやって早くそういった公害に悩んでおる方々を救うかということが問題ではないかと思います。そういったことでひとつ早急にやっていただきたいと思いますが、八省庁で八月から休廃止鉱山の総点検をするといいますけれども、これも、健康調査するころは公害病として認定するかどうかということは、認定するという方向で調査が行なわれる、そのように思います。また土壌の汚染状況の調査も、土壌汚染防止法に基づいて、カドミウム以外に銅あるいは砒素も加えていくという方向で調査がなされる、このように私は了解します。そういった点でひとつ前向きの救済対策を講じていただきたい、このように要望して亜砒酸鉱山の問題は終わります。  次はカネミ油症の問題ですが、先ほど公害病として認定する問題がありましたが、私はこのカネミ油症の問題は、確かに公害対策基本法にはありませんけれども、それ以前の問題ではないかと思います。工場が毒物、異物を大気から出すかあるいは廃液から出すか、そういった大気あるいは廃液の中のものが体内に入って被害を受けたというそれ以前の、直接に害を受けているわけですから、これはいま原罪ということばがありますけれども、原罪に相当するのではないかと思うのです。直接、工場の食品でたくさんの人が被害を受けたという問題ですから、当然私は、先ほどの質問にもありましたが、公害病に準ずる方向で対策を講じていただきたい、救済施策を講じていただきたい、このように厚生大臣にお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
  124. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 先ほども小平委員にお答えをいたしましたとおり、こういった難病と申しますか、治療方法も確定をしていないというような非常に悲惨な状況でございますので、もちろん、この責任者が第一義的には救済措置をとるということは当然でございまするが、やはり全体として、先ほど申し上げましたとおり、こういったような類似の犠牲を受けた方々、そういう方々の間にバランスのくずれないような救済措置を考えていかなくてはならないのではないか。したがって、準ずるということを前の大臣も答弁しておるようでございますが、そういったような意味合いで、要するにさらに前進をした形でこの救済措置を考えていきたいと、かように考えておる次第でございます。
  125. 内田善利

    ○内田善利君 質問主意書に対する答弁の中で、一の「治療の研究」ですけれども、「専門の研究機関を設置し、治療法の研究、病状の実態の究明、胎児に及ぼす影響等を明らかにすること。」という質問に対して、今後「専門の研究機関を新設することは必ずしも効率的でない」と、こういうことですが、これは現状を知らない人の答弁書だと思うんですね。おそらくあの五島の玉之浦が一番患者が多いのですけれども、あそこに行ってほんとうに患者に接した方々の答弁じゃないと思うんです。浦田局長行きましたか——。あそこへ行ってほんとうに患者に会えば、こういう答弁は返ってこない。ほんとうに何とか早くしてあげなくちゃならないと、そういうふうな行政的な考えが出てくるのじゃないかと、このように思うんです。  というのは、同じ家族であっても、認定された人と、見た目ではほんとうにひどいなと思う人が認定されていない。なぜ認定されてないかと聞くと、第一回目の診断に行かなかったので、第二回、第三回に行ってもなかなか許可にならない。二月に長崎県の油症対策協議会の診断班が来たけれども、そのときには全然一人も新認定がなかった。ところが、福岡の北九州市の中原診療所長が行ったら、十何人の新認定すべきだという人たちが出てきた。そういうことからも、これは現地の油症で悩んでいる方々は、診断班に対する疑問が当然起こってくると思うんですね。そういった実情。  それと、もう時間がありませんので説明をしていきますけれども、黒い赤ちゃんの問題です。これも、二十一人も現実に玉之浦町にいるにもかかわらず、たった二名しか認定されていない。この質問主意書の中には、胎児に及ぼす影響等も調査するような研究機関がほしいといってあるけれども、現実に胎児に対する影響等は、どこででもだれも調査しておりませんよ。そういった実情だから、黒い赤ちゃん、七月の二十二日にも第二番目の、長女が黒い赤ちゃんで、次女が生まれました。肌は鉛色で歯が生えている。福岡県の田川の黒い赤ちゃんと同じように、歯がもう出ている。そして歯ぐきが黒い。肌は鉛色。そうった黒い赤ちゃんが出生しているにもかかわらず、この胎児に対する研究、また認定、これがおくれている実情です。そういったことなどを、これは当然権威ある新しい研究班で政府が音頭をとってやっていくべきじゃないかと、このように思うのですけれども、この点はいかがでしょう。
  126. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 研究機関を新設するかどうかという問題でございますが、いま御指摘の、ことに胎児に及ぼす影響についての研究も含めまして、この研究自体を推進するということは私どもは非常に大切なことであると考えております。  政府答弁書の中におきまする「研究機関を新設することは必ずしも効率的でない」という旨の記述、この考え方は、いわゆるハードウエアとしての研究機関、建物を新たにつくって、そこでもって新しく研究者を集め、研究をしていくといったようなことも考える必要があるかもしれませんけれども、要は、りっぱな研究遂行できるようにそれぞれの専門家の方を集め、チームワークがとれるように、一つのりっぱなプロジェクトとしての機能が発揮できるようにするということが肝要な点かと存じますので、私どもは、いま御指摘のような、民間におられまする専門家の御参加も求めるといったようなことで、現在の研究班のさらに強化拡充、場合によってはいろいろと研究班のあり方についても検討してまいるということで、要は一日も早くりっぱな治療方法が解明されるように、政府、厚生省の立場からも十分に援助指導してまいりたいと考えておるわけでございます。  昭和四十七年には、科学技術庁からの特別研究促進調整費、いわゆる特調費でもってこれらの点についても研究がさらに一そう進展するように、現在交渉を進めている段階でございます。  またもう一つの問題といたしましては、現在の診断基準と申しますか、これがだんだん実情に合わなくなってきているということで、被害者の中には、どうも自分はほんとうに油症であるけれども、なかなか認めてもらえないといったような問題もあろうかと思います。これらの点につきましては、その後の研究の成果、あるいはいろいろと調査の結果あらわれましたデータ等に基づきまして、近く診断基準を見直すというふうにお願いしょうと考えております。  やはり問題は、まず第一に、まだ隠れているであろういわゆる潜在患者さんの発見、把握につとめるということが大切であろうかと思います。それに基づきまして今度は、現在行なわれておりますいろいろな救済措置あるいは治療法等についてさらに進めていくというふうな考え方で、この問題をさらに一そう詰めて、不幸な方々の悩みを少しでも軽減するという方向でもって努力してまいりたいと考えております。
  127. 内田善利

    ○内田善利君 行ってご覧になれば、潜在患者じゃなくて認定患者なんですね、もう患者であるんです。そういう方々がいっぱいおるわけですから、ひとつ早急にこういう方々を救済していただきたいと、そのように思うわけです。  それと、診断基準のことまで言われましたが、確かに診断基準があること自体が私はふしぎなんです。というのは、治療法も解明していないのに、また症状もたくさんの症状が出ているにもかかわらず、診断基準があるわけですよ。そういった診断基準が四十三年当時から変えられないであるということは、おかしなことだと私は思うんです。それと同時に、行って患者方々を私は家庭訪問をし、いろいろな方に会ったわけですが、全部診断班に対する不信、いま局長がおっしゃったようにたくさんの不信がある。診断の最中のテープも聞きましたが、聞いておられないような、これが診断かと思うような診断がなされているわけです。  そういったこと等、ひとつ局長さんも行ってつぶさに見てきていただきたい、このようにお願いしたいわけですが、中学校の生徒の認定患者三名のレントゲンがありまして、そのうち二名は足の骨が、骨端症といってこれぐらいの骨が飛び出しているわけです。そのレントゲンを見たわけですが、これが非常に痛いわけですね。ところが、この骨端症も五千人かあるいは六千人に一人というのが、たまたま油症患者二名とも、痛みを訴えてきたのでレントゲンをとったら、骨端症である、それはカルシウムの新陳代謝障害によってなるのだということでしたが、その後、玉之浦中学の生徒をレントゲン撮影をしておられるようですが、もうすでに二十数名の骨端症が出ておる、このように聞いておりますが、この点についてはどのようにお考えですか。
  128. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 内田先生が御指摘のように、現地の患者さん方の、現在の検診班に対するいろいろな御不満ということも、私自身録音も聞かしていただいて承知しておるつもりでございます。なかなか、現状の把握ということを県当局のほうに指導してやらしておるわけでございますけれども、現実の問題として多くの患者さん方がいわば未確認のままに、行政的な未確認のままに放置されておるという段階も承知しておるつもりでございます。そのほか、先生の御指摘のような、たとえば足の骨端症等の問題もあろうかと思います。  これらにつきましては、近く研究班の集まりがございまして、その研究班の集まりにおきまして、十分そのような状態、情勢というものも勘案いたしまして、先ほど申しましたように、診断基準と申しますか、いまの患者さん方を確認するための取り扱いの基準というものについては、検討、見直しをするように事務当局のほうからもお願いしたいと思っております。  また、長崎県あるいは福岡県、ことに長崎県の今回着任されました関係の部長さんは、非常にカネミ油症の件については詳しい方のはずでございまして、現地の衛生部当局とも十分に連絡をとりまして、実態の把握には今後とも一そう努力をしてまいりたいと思っております。
  129. 内田善利

    ○内田善利君 長崎県では油症対策協議会、福岡県では同じく対策協議会が油症の患者であるということを認定しているわけですが、これは法的根拠もないわけです。そういったところで認定しているわけですが、これはいいのですか、これで。
  130. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) これらの問題は、やはりまず第一には診断基準と申しますか、その辺の考え方にあろうかと思います。これにつきましては、厚生省といたしましては、そのもとになりますいろいろな研究、治療費というものについて従来支出をしてまいりまして、その促進につとめてきているところでございます。したがいまして、この限りにおきましては、厚生省はいわば指導的な立場でもって進めておるということが言えると思います。  なお、このような基準に基づきまして認定をするという場合には、先生が御指摘のように、県当局の行政指導によりまして、検診班がそれぞれ設けられておりまして、そこで実際上の問題として患者さんの、いわゆる認定ということをやっているわけでございます。  これらを、さらに制度として考えていくかどうか、つまり厚生省が公的な立場から、あるいは県が法律あるいは規則に基づきます法的な立場からのこれらの取り扱いをきめるということにつきましては、先ほど小平先生の御質問の中で大臣のほうからもお答えがありましたように、一般的な制度として考えていくということでいったほうがよいのではなかろうかということで、現在も具体的な検討を進めるように大臣から御下命もございますし、引き続き来年度予算要求の中では、これらをさらに進めるように、調査費その他の要求もしてまいりたいと考えております。
  131. 内田善利

    ○内田善利君 大体趣旨はわかりますけれども、水俣病のように、検診や診断班の答申を得てそれを行政的な感覚で、感覚といったらおかしいですが、知事が認定する、そういうふうにしたらいいじゃないかと思いますが、この協議会そのものには行政担当官もみんなごっちゃに入っていて、そして医者の意見だけで決定していく、こういう状況です。そうじゃなくて、お医者さんはお医者さんだけで結論を出して、それに基づいて県知事が認定する、こういうやり方が一番いいんじゃないかと思うのです。現在のやり方はお医者さんに、いろいろな方が入っていて、その内容は医学的な討議ばかりなされて、主導権がそっちに行っているから問題じゃないかと思うので、こういったことでやっていただきたい、このように思うわけです。  それと、もう一つお聞きしておきたいことは、公害罪の認定とも関連してくるかもしれませんが、四十三年の二月から四十三年の三月にかけて、ブロイラーのひなが四十万羽も死亡したダークオイル事件ですね、このときに、農林省のほうでもカネミ倉庫まで行きながらシロという判断をしたという、この点がふしぎでならない。ここでPCBのことがわかっておれば、この約一万人の患者方々がいまでも苦しんでおる、そういう方々が出ないで済んだのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、それがなされないでこのように悲惨な事態になったということは、やはり私は行政的な業務上の失態ではなかったか、このように判断するわけです。  そうなりますと、一番最初に申しましたように、公害対策基本法にないから公害とは認めないというようなことは言えないじゃないか。このような政府責任がある以上は、原罪として、私はむしろ政府の業務上の過失致死罪じゃないか、このように思うのですけれども、この点いかに厚生大臣はお考えになるか、また環境庁長官はお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと関連しまして……。先ほどの、予算要求にあたっては十分考慮しますということですが、いま内田委員からもいろいろ指摘のあったように、治療研究一つ問題があるわけです。この辺については、むしろ予算が四十七年度は減っているわけですよね。ですから治療研究費が一つと、それからもう一つは、公害に準ずるとなれば、医療手当その他の、要するに自己負担以外の医療手当その他の手当がつくわけです。それが第二点。それから第三点としては、現実に生活がもうきわめて困っていて、県や市で生活の手当をしているのですが、生活に対する考え、以上三点のうち、予算要求にあたってどの辺に重点を置かれるか。三つとも重点を置いていただきたいと思うのですが、それだけちょっとお答えいただきたいと思います。
  133. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 事務的な点について私のほうからお答えいたします。  まず内田委員から御質問の認定方式について、さらに国として明確にする考えはないかということでございますが、これは県の実情も十分に聞きまして、また一方では、このような事故に対する、いわゆるつなぎの救済制度というものについての検討ともあわせまして、できるだけ患者さん方の不満、不安を解消する方向でもって考えてまいりたいと思います。  第二点の、ダークオイル事件とカネミ倉庫の関連でございますが、確かにあとから考えますと、ダークオイル事件というものを、もう少し科学的に敏感に受けとめて検討をするべきであったと、あとからこのように考えるわけでございます。もしもそのときに、農林省といたしまして十分な問題意識を持っておられたならば、あるいはされたかもしれない、そういった仮定のことも考えられるわけでございますが、一般に申しまして、新しく化学物質が世の中に出てまいりまして、これが大量に生産され販売されるということに関しまして、あとから気がついてみると、その製造販売の当時におきましては気がつかなかったようないろいろな生態系上の問題、あるいはひいては人の健康に及ぼす悪影響といったような問題が出てくることが、いまになってみますと、そういったことがあり得るということが思い当たるのでございますが、しかし、はたしてその時点におきましてそこまで考えるということが、普通の常識といたしましてできたかどうかということになりますと、おそらくは私、農林省の当事者ではございませんけれども、そのようにいまからひるがえって考えればできたかと思いますけれども、その時点においては、やはりそれは一般常識で考えた場合には気がつかなかったということであろうかと思います。したがいまして、直接的な意味での国の過失あるいは責任ということにつきましては、私どもはそこまでおっしゃるのはいささか酷ではなかろうかと考えるわけでございます。  それから、関連いたしまして小平委員のほうから、来年度の厚生省のカネミ油症に関する予算要求の考え方についてのお尋ねでございますが、私ども研究費につきましては、カネミ油症そのものを対象といたしまする厚生省側の研究費は、これは従来の線に沿って引き続き要求するつもりでございますが、現時点におきましては、PCBの研究というものは、いまやカネミ油症の問題にとどまらず、環境全体の汚染、それを通じての人体の健康に及ぼす影響いかんといった広範な問題としてわれわれの前に展開してきておりますので、PCB全体の研究費ということで、これは環境庁のほうで一括いたして要求するという予定になっております。かなり大幅の増額を要求するように私どもは聞いております。また、こちらの立場からも、十分に環境庁を通じまして研究費の要求をいたしたいと考えております。  それから生活費等についてでございますが、これにつきましては、多少私の所掌を離れる問題でございますが、一般的な制度ということとの関連もございまして、むしろわが局といたしまして、私の立場といたしましては、制度研究と実態の把握をさらに進めていくということでもって対処してまいりたい。また、生活費ということにつきましては、現在のところやはり一般生活保護というものとの関連、あるいは世帯更生資金等の特別な運用というふうなことについて考えていくことになろうかと思います。  なお関連いたしまして、長崎県あるいは福岡県におきましては、それぞれ県の段階におきまして、生活のほうの援助について県独自の立場からの予算を本年度から始めるということでもございますし、これを活用するように指導してまいりたいと考えております。
  134. 内田善利

    ○内田善利君 いま生活資金のことが出ましたが、昨日、田川のほうに町役場から、所帯更生資金の償還をしろといって迫ってきているわけですね、患者の方に。誓約書として「私の使用しました所帯更生資金の償還金支払い猶予の期日がまいりましたら、毎月遅滞なく償還することを誓約いたします。」、猶予期間として昭和四十七年四月一日から四十八年三月三十一日まで。来年の三月三十一日になったならば、患者方々が借りた所帯更生資金を返せという、こういうむざんなことを言ってきているわけです。福岡では十三万五千円ですか、長崎では十五万円と聞いておりますが、こういった患者はまだ治っていないんですね。ままだ治癒もしていない。生活に苦しんでいる。働き盛りの御主人が病気になって苦しんでいる。こういうところにこう言ってきているわけですが、この点、どのようにお考えになるのか、お聞きしたいと思うのです。  こういうのは補給金にしてあげるとか、何らかの方法を講じていかなければならないのに、治療法もない、そしていつ治るかわからない、生活も苦しくなった、そういう悲惨な患者方々に対して、またさらにこういった誓約書をつきつけるなんていうことは、全く残酷無道だと思うのですが、この点どのように考えられるか。  それから、時間がありませんからもう一言言っておきますが、患者方々は菜種油でも椿油でも、いままで使ってきたわけです。ところが、安い化学オイルということで買ったわけです。それを許可したのは一体だれなのか。この製造をカネミオイル倉庫に許可したのは、だれなのか。許可したのは政府である以上、やはり私は企業企業だと言わないで、政府が救済対策を講ずべきであると、このように再度申し上げます。  何とか、環境庁長官なり厚生大臣のほうで、先ほど出てまいりましたように、あっせんするとか、あるいは食品中毒の特別措置法によって公害に準ずる救済をするとか、何らかの方法をとっていただきたいと思いますが、この点努力していただけるでしょうか。最後にこの点を質問して終わります。
  135. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 最初の田川の例は、これは事務的な問題でございますので私からお答えいたします。  田川の件につきましては、さっそく県のほうに指示いたしまして、その結果、県のほうとしてはこのようなことはいたさない、さらに実情に合ったような運用をするということで、すぐに返済するというようなことはいたさないというふうに申しております。さらにこれを徹底するように指導してまいりたいと思います。
  136. 内田善利

    ○内田善利君 補給金はどうですか。
  137. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 返済を、そのように実情を無視して迫るというようなことはしないというふうに指導いたしたいと思います。あとの救済についてのいろいろな考え方については、むしろ大臣のほうからお答えいただきたいと思います。
  138. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) 先ほどから申し上げましたことの繰り返しになるかとも考えまするので恐縮でございまするが、先ほど来お話ございましたこういった問題に対する総括的な対処の姿勢といたしまして、やはり現在治療方法も発見をされ七いないというような状況でございますので、これは国のほうでこの治療方法の早期発見ということにつきましては、関係機関も協力いたしまして、これにつきまして全力を注ぎ、また予算的な措置もしてまいらなければならぬと思っておるわけであります。  それからさらに、医療の問題あるいは生活の保障の問題等につきましては、責任者が明確である場合は、私は第一義的にはこの責任者において十分なひとつ措置をするように、これは行政指導をしていかなければならぬと思うわけでありますし、あるいはまたこの原因の明確でない時期等、あるいはその他生活の実際の困窮の状況、そういうようなものにつきましては、これはやはり私はあたたかい目でもってこれを見守りながら、そういう姿勢でもって今後、先ほど来お話がありましたいろんな救済措置がございまするが、そういった各制度の間にそれほどの変化のない、調和のとれたような形でもって、その医療費なりあるいは生活の問題について、むしろ非常に積極的な姿で今後も取り組んでいきたい。重ねて申し上げますが、そういうふうな決意で私はこの問題に対処してまいりたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  139. 加藤進

    ○加藤進君 私は、昨日、現地におきましてあの四日市の歴史的な判決をお聞きしたわけでございます。この判決は、新聞紙上でも高く評価しておりますように、イタイイタイ病、新潟水俣病に続く、公害裁判の上においては画期的な、歴史的な内容を持つ判決だと確信いたしました。小山環境庁長官も、この判決を高く評価する、こういうことを先ほどおっしゃったわけでございますが、政府はこの判決を尊重する、行政指導上、公害行政の今後の指針としてこれを尊重する、こういうふうに私たちが受け取っていいかどうか、まず最初にお聞きしたいと思います。
  140. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 尊重するということばが普通の意味であれば、私は尊重すると申し上げます。
  141. 加藤進

    ○加藤進君 普通とか特殊だとかというふうに区分けされますと、また私たちも再質問しなくてはならぬわけでございますけれども、ともかくこの判決の趣旨を十分に汲み取って、公害行政に今後生かす、こういう点についてはいかがでしょうか、あらためてお聞きしたいと思います。
  142. 小山長規

    国務大臣小山長規君) どうもよけいなことを申し上げまして失礼いたしましたが、たびたび申しますように、この判決というものは画期的な判決でありますし、また公害というものについて警世的な面もあります。われわれはそれを受けとめて、今後の環境行政に反映させていく、こういう決心でございます。
  143. 加藤進

    ○加藤進君 そこで問題が出てくるわけでございますけれども、きょうも、判決を受けて喜び勇んでおられる患者の皆さんが、さらに病苦を押して公害企業の六社を歴訪されておるわけでございます。ところが、この六社の判決を迎える態度はどうかというと、もちろん全部を私は存じませんけれども、一部には、私たちがなにも謝罪する必要がないとか、あるいは一部では控訴の準備さえしておられるように聞いております。  そこで私は、この判決を尊重されるという政府立場に立たれるなら、公害企業としてその犯罪性を審判されておる六社の企業に対して、このような控訴をやるというようなことを取りやめて、判決を率直に認めたらどうかというような説得を、ぜひとも長官、率先してやっていただくべきではないか、このように考えますが、その点はいかがでしょうか。
  144. 小山長規

    国務大臣小山長規君) これは先ほど茜ケ久保委員にお答えいたしましたが、おっしゃるような心情については私も同感なんであります。ですから、それをどのようにするかということについては、いま申し上げる段階ではありませんが、そういう心情でありますことだけ申し上げます。同時に、被害者の救済は一日も早からんことを望むわけでありますので、そういう考え方で進めたいと思います。
  145. 加藤進

    ○加藤進君 その点について重ねて申し上げますけれども、もし万が一、控訴というような事態になった場合に、おそらく裁判は長期化するでありましょうし、裁判が長期化すれば、今日でさえ公害によって月二十名もの死者を出すというような事態が、引き続き今後も起こるという予想をしなくてはならぬと思います。こういうことを私たちは、政府は絶対に許してはならない、これが私は環境庁としての基本的な態度であってしかるべきだと思います。したがいまして、いまの長官の答弁を一応とにかく信頼をいたしますから、ぜひとも単なる口頭の上だけでなしに、積極的な努力を払っていただきまして、六社の企業に対してしかるべく行政指導を強めていただきたい。心からまずお願いを申し上げる次第でございます。その点よろしゅうございますね。
  146. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 先ほど申し上げたとおりであります。
  147. 加藤進

    ○加藤進君 このことははっきり私たちも耳に入れておきますから、ぜひともひとつ今後とも、私たちの監視もまた存在するということをお認めいただいて、善処していただきたいと思います。  さらに、この公害訴訟で原告の皆さんの勝利に終わったといっても、原告の皆さんがほんとうに救われるのはいつの日であるかという、きわめて深刻な重大な問題があります。同時に、こういう被害者の皆さんが、苦しみ苦しみ今日の日を迎えられたにもかかわらず、先ほども他の委員からも指摘されましたように、きのうも四日市の空は、公害汚染によって空は決して明るく晴れ渡ってはおりません。そうして、そのもとでさらに公害による被害は起こってくるわけでございます。  私は、この公害企業がその操業によってもたらす排煙の問題について、判決は次のように言っていることをまず指摘したいと思います。「被告ら主張の最善の防止措置に前記事由を総合しても、原告らの被害が受忍限度内とは解しがたい」。いわば受忍する限度を越えているということを、きわめてはっきりと指摘しておるわけでございまして、今日の状態もなお、被害者にとっては受忍限度を越えた加害行為が続いている。こういう点について、私たちは深刻に事態を見ていかなければならぬと思いますけれども、その点の長官の御見解はいかがでございましょうか。
  148. 小山長規

    国務大臣小山長規君) これも申し上げましたように、四日市環境規準というものは、当初の目標では五十三年までに達成する、こういうふうになっております。それを繰り上げて、五十年度までにということで鋭意努力しておるわけであります。したがって、現にその環境基準というものが、何と言いますか、もっと環境のいい場所と比べて悪いことだけは私ども率直にこれを認めるわけであります。  問題は、それでは新規の患者を出さないために全面的に操業をストップすべきかどうか、極端に言えばそういう議論に発展いたしますが、その点は、政府としても国全体としても、どう判断していいのか軽々に御答弁申し上げる段階でありません。
  149. 加藤進

    ○加藤進君 あらためてお聞きいたしますけれども、今日行なっている企業の操業というものは、これは加害行為であるかどうか。この点について長官はどのようにお考えになるのでしょうか。
  150. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 現に操業を行なっており、そして、それが環境基準というものの段階に達していないわけですから、そのことによって、人体上の損害が若干出ておるのではないだろうかというふうには考えます。
  151. 加藤進

    ○加藤進君 その程度の御認識では困るわけでございまして、私はきょうの新聞の記事を切り抜いてまいりましたけれども、三重県の公害センターが、四十六年度の四日市地区における硫黄酸化物の測定結果を発表しております。  この測定結果によりますと、磯津地区は、一日の平均が〇・〇五PPM以上のところが全日数の四〇%もあります。三〇%以内という国の環境基準をまさに大幅に上回っておるわけでございまして、さらに年平均におきましても、四十二年度の〇・〇八一PPMをピークにして、多少は減少しておりますけれども、四十五年度は、国の環境基準以下の〇・〇PPMまで下がっていたのに、四十六年にはまた〇・〇四七PPMに急上昇している。これがいつわらない現実の事態だと思います。  こういう事態を放任しておいていいのか。これが私は今日、政府の政治姿勢として問われておる一番大きな問題の一つだと考えます。したがって、私たちがこのような企業行為を、まさに被害者に対する加害行為であるという立場に立って、何らかの規制措置をさらに厳重にしなければならぬ。その中には、いま長官もことばの中に出されましたけれども、操業停止を含む措置について考慮しなくてはならぬ段階ではなかろうか。この点を私たちは強く強調したいと思うわけでございますけれども環境庁長官の重ねての御見解をお尋ねしたいと思います。
  152. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 操業停止ということにまで発展すべきかどうか、確かに議論のあるところであります。ただ、政府としてそこまで判断し切れる段階にあるかどうか、私もその点は、これは判断をいたしかねる状況であります。
  153. 加藤進

    ○加藤進君 そういう御答弁ではちょっと納得しかねるわけでございます。  そもそも一体、環境庁というのは何のためにつくられたのか。公害被害者の救済を最高の使命としてつくられたはずだと思います。その先頭に立ってもらわなくちゃならぬ長官が、まあ通産省ならあるいは言いかねないような言明をされるようでは、これは私はまことに残念しごくだと言わざるを得ないし、これでは四日市をはじめとする公害病の方たちはいうまでもなく、公害汚染に悩む国民は承服しかねると思うわけでございますが、何らかの意味環境庁長官、もう少し積極的な公害防止姿勢をはっきりしていただきたい。まずこのことを強く訴えておきます。  次に、この判決は、御承知のように、六社の責任を明らかにしたばかりではございません。先ほども他の委員からも指摘されておりますように、国や自治体の責任がきわめて重大だということを特に指摘しておるわけでございまして、あえて判決文の一部を読み上げさせていただくなら、「被告らが四日市に進出したについては、当時の国や地方公共団体が、経済優先の考え方から公害問題を引き起こす」などの「落ち度があったことはうかがわれる」。落ち度があったわけでございます。この落ち度があったということを、環境庁長官お認めになるでしょうか。
  154. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 立地の当時に、地域の立地計画について、あるいは公害防止基準について、十分な配慮がなかったという点については、先ほども申しましたように率直に認めます。
  155. 加藤進

    ○加藤進君 いや、そればかりじゃございません。経済優先の考え方から公害問題を引き起こしたのだ、こう断定しています。私は、十年間に及ぶ自民党の高度経済成長政策、これは明らかに、ここに指摘されておるような経済優先の政策が推進された、その結果が、四日市に端的にあらわれておるような公害の状態をつくり出したと言わなくてはならぬと思います。  こういう認識の上に立ってこそ、いよいよ今後推進さるべき国の政策、経済政策の基本もまた明確になるのではないかと私は考えますけれども、この際、特に田中内閣の発足にあたるわけでございますから、環境庁長官は、今後の田中内閣の経済政策立案にあたって、どのような決意と、どのような用意を持って、準備を持って、この田中内閣の政策にはっきりとした意見を表示されるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  156. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 新全総やあるいは社会開発計画について、あるいは日本列島改造論について見直しをすべきではないだろうか、再調整をすべきではないだろうかということで、経済企画庁もすでにその準備に入っておりますが、同時に、内閣におきましても新しく有識者を集めまして、各省庁もそれに参加しまして、その新しい計画づくりをいま始めようとしております。これに対しましては当然、自然の保護、それから健康の保持という面から、この計画最初から織り込むために必死の努力をいたしております。その決意であります。同時にまた、その計画ができて実施の段階に入ります場合には、さらに、それがわれわれの希望するような立地計画であり、公害防止計画であるかという点もチェックいたします。
  157. 加藤進

    ○加藤進君 私の申し上げたいのは、単なるチェックでは決して効果は上がらない、こういうことをまず前提にすべきじゃないかと思います。というのは、四日市であのような問題が起こったときに、四日市のような事態は起こしませんと大きな宣伝をして、緑と太陽の町をつくるのだと言われたのは、ほかならぬすぐ近くの鹿島の経済建設、地域開発でございます。現在、その鹿島の計画が四割にも達しないときに、なおかつすでに公害被害が続発している。こういう点を私たちは特に重視しなければならぬと思います。  その意味から、新全総にしろ、あるいは田中内閣日本列島改造策にしろ、もっともっと積極的に、われわれは国民公害をさらに発展させるようなことは絶対に許しがたい、その立場に立って、このような計画の中には必ずこの点を盛り込めというような積極の案を、ぜひとも私は環境庁長官をはじめとして、先頭に立ってひとつ御奮起を願いたいということを、心から期待をしなくてはならぬと思います。  その点で私は具体的にお尋ねいたしますけれども、特に四日市で現在被告側の企業が立地しているすぐ近くに、御承知のように第三コンビナートが建設中です。公害を出して、しかも、公判廷においてあのような判決を受けているこの企業が、さらに第三コンビナートを建設しようとしている。これは許せるでしょうか。私は環境庁長官にお願いしたい。このような第三コンビナートを現状で中止する、今後コンビナートの建設は許さぬ、これくらいの決意を、まずはっきりと示していただきたいということ。  第二に、六つの被告側の企業の中に、三菱油化がございます。三菱油化は、河原田地区というところに新工場を建設するという計画を、必死に今日まで追求してまいっていました。しかし、住民の諸君の反対によって一時この計画を中断する、一時その計画を延期するというような態度に出ておりますけれども環境庁長官、これは直接は通産省関係するであろうと思いますけれども長官としては少なくとも、もう加害企業が河原田地区に新しい工場などを新設するなどということは私としては許しません、こういうはっきりとした、いわば言明がいただけるのでしょうか、どうでしょうか。  私はこの二点、第三コンビナートの建設はとりあえず一時中止させる、こういう措置と、三菱油化における河原田地区での工場新設は許さぬ、この二点について明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  158. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いま実施計画中のものがかりにあるとすれば、私自身としても四日市環境総量はこえておるのじゃないかというふうな感じがいたしますので、これは環境庁長官としてはやらせたくない、こういう態度で臨みます。  第二の問題について、私もまだ実態を知りませんので事務当局から申し上げます。
  159. 加藤進

    ○加藤進君 河原田地区の問題、ぜひ答えてください。
  160. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 先生御指摘のように、新大協和石油化学を中心といたしますコンビナートの建設が一部落成をいたしまして、石油化学だけがいま動いておるわけでございますが、油化を中心といたします計画というものは、現在動いていないわけでございます。
  161. 加藤進

    ○加藤進君 それでは、長官に重ねて確かめますけれども、第三コンビナート計画は、今後さらに建設を進めるということは長官としては認めない、さらに三菱油化については、事情をまだ御存じないようでございますけれども、河原田地区において工場を新設しようという計画があるなら、それは環境庁としては認めがたいと、こう私たちは理解してよろしゅうございますね。
  162. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いまそのように申し上げました。
  163. 加藤進

    ○加藤進君 ついでに通産省お尋ねいたしますが、けさの新聞で、両角通産次官が次のような言明をしております。これまでの産業政策を率直に反省する、そうしてコンビナートの総点検をやるというふうに言われておるわけでございますが、その中に、公害防止施設の拡充指導や操業短縮指導をも含めてやると、こういうふうに言っておられるわけでございますけれども、これは通産省としての正式な見解でしょうか、どうでしょうか。
  164. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) このコンビナートの総点検につきましては、大臣から御指示もあったことでございますし、ただいま事務当局といたしまして、具体的にどういうふうにしてやるか、検討をいたして計画をつくっております。  それから公害防止施設の拡充につきましては、これは私ども一つの大きな仕事でございますので、新政策、それから四十八年度の予算を通じまして、これの実現に最大努力を傾けていきたいと考えております。  それから、操業短縮につきまして通産省としていかなる措置をとるかということはまだ正式にきめたわけではございませんが、短縮そのものにつきましては、これはすでに大気汚染防止法ないしは水質汚濁防止法その他にも関連の規定があるわけでございますので、私どもといたしましては、関係の官庁とも連絡をとりながら、もしその必要があるならば、その方向に指導を進めていきたいと考えております。
  165. 加藤進

    ○加藤進君 判決には次のような明文がございます。「人の生命・身体に危険のあることを知り得る汚染物質排出については、企業は経済性を度外視して世界最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずべきである。」、こうございます。  そこでいまの通産省の見解でございますけれども、少なくともこのようにきびしく言われている判決を受けるなら、今日すべての公害発生企業に対して、先ほど委員からの指摘がございましたけれども排煙脱硫装置をつけるという程度の義務づけを必要とするのではないか。そのような行政指導と措置通産省は率先してやるべきではないか。少なくとも私はこのことを特に通産省に直ちに行なっていただきたいと思うわけですが、その点の御見解はどうでございましょうか。
  166. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 亜硫酸ガスの公害防止いたしますのに、重油中の硫黄を少なくするということと、それから、硫黄の多い燃料を使用する場合に出る煙の中の亜硫酸ガスを除去する、この二つの方法があるわけでございます。  排煙脱硫については、先ほどお答え申し上げましたように、若干、規模の大きいものについてやはり技術的な問題があるわけでございます。ただいま一時間に約二十万立米程度の排煙処理できる装置を三基ほど建設をいたしております。その操業が順調にいけば自信が出るわけでございますが、これにつきましても来年度中には目鼻をつけなければならないと考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、現段階におきましては、指導によりまして排煙脱硫装置の普及ということに努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  167. 加藤進

    ○加藤進君 まことにあいまいと申しますか、ゆうちょうなお話でございますから、あえて最後に私は特に再び強調しておきますけれども、ここで判決がはっきりと、いわば政府に対して強く要求しておるのは、企業に対して、経済性は度外視しても世界最高の技術と知識を動員して防止措置を講ぜよと言っておるわけでございます。講ずるための指導をやるのは、一体どこですか。通産省、これ、やらないんですか。この点については来年、再来年と言っているんですか。私は直ちにやるべきじゃないかと思います。やるのがおそ過ぎると思います。この点については十分に反省して、ぜひとも指導改善していただきたいと思います。
  168. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) この亜硫酸ガスにつきましては、やはり環境基準、それから排出基準というものがきめられておるわけでございます。企業としてはそれを守る義務があるわけでございます。環境基準のレベルをどうするか、早急にある程度引き下げなければならないという事情はあるわけでございますが、そういう線によりまして、はっきりとしたレベルというものがきめられますと、それを達成するために、あるいはLSの使用という場合もありましょうし、それから、ある場合には排煙脱硫をつけなければならないということで、企業に対する義務がそこへ出てくるわけでございますので、そういう線に従って私どもといたしましては規制努力をしていくというふうに申し上げておるわけでございます。
  169. 加藤進

    ○加藤進君 私は、排出基準環境基準については最後に申し述べたいと思っておるわけでございますけれども、今度の判決は、最後に、今日のわが国の公害法体系というものがいかに不備であるかということを天下に指摘したと思います。このような、法体系がつくられておるのにもかかわらず今日、依然として公害患者が続発する、これが今日の私は日本公害の現状ではないかと思います。だとするなら、私たちは今日、あの四日市判決において明らかにされたように、再び公害を起こさない、被害を起こさないという立場に立つなら、法体系についても抜本的な改善を今日行なわなくてはならぬと考えております。  その最も中心になるのは、これもすでに他の委員が触れられましたから、特にこまかく指摘申し上げる時間はございませんけれども、挙証責任の転換という問題でございまして、これはいまの法律では、因果関係を明らかにするのに被害者がやれ、こういう法の内容になっています。今度の判決をはじめとして、イタイイタイ病でも、新潟の水俣病の判決においても、その判例を一貫しておるものは、加害者こそみずから無罪であるということを明確に立証すべきである、こういう挙証の転換を要求しておると思いますが、この点につきまして、今国会における無過失賠償責任制の法案についてさえ挙証責任の転換はなし得ておらないわけでございまして、この点について私はおそきに失することなく、挙証責任の転換についてもこれを明記するような法改正を行なうべきであるということを、まず一点お伺いしたい。  それから第二に、今日の被害者の救済法でございますけれども、この救済法は、救済法と言われて一部の公害認定患者には医療費の手当は多少ありますけれども、これがどれほど不十分であるかということは、公害患者の諸君がもうすでにたびたび政府に対しても要求しておることだと思います。被害者は、本来生きものでございますから、とにかく彼らの公害によって受けたあらゆる被害について、最終的には企業責任でありましょう、この企業責任を、とりあえず立てかえ払いとするような形において行なうのが被害者の救済法だと思いますから、その点については、今回の判決をいわば十分に学び取りながら、医療費は言うまでもなく、精神的、物質的な補償、この点についてまで一歩前進した法改正を行なっていただきたい。これが第二であります。  第三番目には、今日の環境基準の問題でございますけれども環境基準について多少基準をきびしくした、排出基準をきびしくしたとは言っておりますけれども、この排出基準環境基準なるものが今日存在して、なおかつ公害発生しているという事実をわれわれは冷静に受けとめて、今日、命を最優先するという立場に立って、ほんとうに実効のある基準をさらにあらためて築くということ。もしそのような基準が設定される間になすべきことがあるならば、操業停止を含むような措置も講じて、この基準を厳格にしていく、こういう努力が今回必要ではないか。  以上三点について、少なくとも私は今度の判決は、このような点を法改正の面について、公害法体系そのものについてもきびしく指摘していると思いますけれども、その点の環境庁長官の見解をお尋ねいたしまして、私の質問を終了いたしたいと思います。
  170. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 公害患者の救済が手ぬるいという点については、私も率直に認めます。したがって今後の、来年度の予算になりましょうが、その改善についてあらゆる努力をする決心であります。  それから挙証責任の転換につきましては、前国会でも非常に議論をされたところでありまして、私もなぜそういうふうになったのか、私自身も挙証責任の転換をやるということが常識的だと思いまして、事務当局に聞きますと、いろいろな問題点を含んでおるようでありますので、その点は事務当局からお答えをいたさせます。  基準を強くすることにつきましては、先ほど来申し上げておりますが、この基準は、ただ単に現在防止技術ができておるからというようなことでなしに、目標を定めて基準はつくっていきたい、かように考えております。
  171. 加藤進

    ○加藤進君 最後に基準の点についてちょっと一言。これは特定の地域について総排出量を規制して、その総排出量に基づく各企業排出基準をきびしくする、こういうふうな理解でよろしゅうございましょうか。
  172. 小山長規

    国務大臣小山長規君) その点、実は先ほど御質問があったのでありますが、今度の基準自体をつくるに際して、日本が輸入し得る可能な低硫黄の分量、それから公害防止技術、あるいは技術はありましても応用技術、こういうものとの関連できめたといういきさつもあります。したがって、その基準はきびしくしなければなりませんが、ただ単に、先ほど言いましたように、もう低硫黄はこれしか入らぬのだからということではなしに、低硫黄の重油をもっともっと入手し得る方法はないかということも含め、また応用技術も大体この年度にはでき上がるのではないかという予測を含めて基準を設定していけば、相当きびしいものになるだろう、こういうふうに考えております。
  173. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  174. 大矢正

    委員長大矢正君) 速記を起こしてください。     —————————————
  175. 大矢正

    委員長大矢正君) 委員異動について御報告いたします。  本日、茜ケ久保重光君及び占部秀男君が委員辞任せられ、その補欠として小林武君及び戸田菊雄君が選任されました。     —————————————
  176. 大矢正

    委員長大矢正君) この際、便宜私から、各派の共同提案にかかる公害対策強化に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    公害対策強化に関する決議案   四日市公害訴訟判決は、企業責任を断ずるにあたつて、あわせて、国及び地方公共団体公害問題の惹起等に対する調査検討を経ないまま工場の誘致を奨励する等行政の落ち度のあつたことを指摘している。政府大気汚染に係る公害発生についての行政責任反省し、かつまた、被害者の根本的な救済は、事後的な補償によつては解決せず、有害物質排出を抑制することにある点にとくに意を致して、早急に次の諸対策にとりくむべきである。  一、被害者救済制度の一層の充実、強化をはかるため、無過失損害賠償制度因果関係の推定規定の明文化および賠償の支払保障に関する制度創設に努めること。  二、環境基準排出基準を科学的に再検討するとともに、排出規制については、総量規制方式の導入、低いおう燃料の使用、防除施設の整備促進等発生対策を一段と強化すること。  三、政府は総力を結集して、公害防止技術研究開発を促進し、環境保全のための予算の拡充に努めること。  四、既存のコンビナートの全部について、住民の健康と生活環境が害されていないかどうかの見地から再点検を行って、集合公害発生防止するための措置を講ずること。  五、今後の地域開発にあたっては、環境再評価の実施など事前点検を十分に行うとともに、汚染未然防止に万全を期するため、新全総計画の再検討を行うほか、工場の立地についての所要の規制措置を講ずること。   右決議する。  以上であります。  本決議案を本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 大矢正

    委員長大矢正君) 異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に対し、小山環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。小山環境庁長官
  178. 小山長規

    国務大臣小山長規君) ただいまの決議につきましては、十分にその御趣旨を尊重いたしまして、関係各省とも連絡の上、善処いたします。
  179. 大矢正

    委員長大矢正君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会