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1972-09-14 第69回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十四日(木曜日)    午後一時一分開会     —————————————    委員異動  九月十四日     辞任         補欠選任      石本  茂君     岡本  悟君      佐藤 一郎君     嶋崎  均君      片山 正英君     山本茂一郎君      河本嘉久蔵君     高橋文五郎君      竹内 藤男君     高田 浩運君      竹田 四郎君     藤田  進君      森中 守義君     松本 賢一君      阿部 憲一君     沢田  実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         成瀬 幡治君     理 事                 世耕 政隆君     委 員                 岡本  悟君                 嶋崎  均君                 高田 浩運君                 高橋文五郎君                 中村 登美君                 山本茂一郎君                 鶴園 哲夫君                 藤田  進君                 松本 賢一君                 水口 宏三君                 沢田  実君                 中尾 辰義君                 青島 幸男君    国務大臣        国 務 大 臣  増原 恵吉君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  黒部  穣君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        厚生省公衆衛生        局栄養課長    土井 敏男君        食糧庁次長    森  重弘君        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十五年度特別会計歳入歳出決算昭和四十五年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十五  年度政府関係機関決算書(第六十八回国会内閣  提出) ○昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第六十八回国会内閣提出) ○昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (第六十八回国会内閣提出)     —————————————   〔理事世耕政隆委員長席に着く〕
  2. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、石本茂君、片山正英君、河本嘉久蔵君及び竹内藤男君が委員を辞任され、その補欠として岡本悟君、山本茂一郎君、高橋文五郎君及び高田浩運君が、また、ただいま阿部憲一君が委員を辞任され、その補欠として沢田実君が選任されました。     —————————————
  3. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) 次に、昭和四十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は防衛庁決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、防衛庁決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録の末尾に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 水口宏三

    水口宏三君 先日の実は決算委員会の総括のときに、やはり防衛庁問題を取り上げまして質問を申し上げた次第でございますけれども、その中に幾つか検討をするということで残されておる問題があるわけでございますけれども、そのうちの一つとして、非常食備蓄につきまして当日の委員会防衛庁長官が、以下議事録を読んでみますけれども、非常食の点については「先ほど数量その他について検討の上お答えすると申し上げましたが、質、数量その他について、よく事情を聞きましてお答えをすることにお許しをいただきたいと思います。」と、そういう御答弁をいただいているわけです。当然あれから防衛庁としては検討なさったことと思いますし、特に四十八年度の概算要求を出していらっしゃる。そういう関係で、この前の私の質問に対してどのように御検討なさって、どういう結論をお出しになったか、それをまず最初に伺いたい。
  6. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 前回の委員会で非常用糧食備蓄量が膨大ではないかという問題と、主食の中でめしかん詰めを非常用糧食とすることが不適当ではないか、妥当であるかどうか、備蓄目的、用途は何かという御指摘があったわけでございますね。検討いたしました結果、防衛上の見地から見て、現在の非常用糧食備蓄量はこれはほぼ二十日分でありまするが、膨大に過ぎるものではあるまい、膨大に過ぎるものではない。有事の際を考慮して現状程度備蓄は必要であるということでございます。また、めしかん詰め保存性携行性にすぐれており、日本人の嗜好にもかなったものでありまするので、非常用糧食としては適当なものであろうということでございます。  非常用糧食は、戦闘間、部隊移動のとき、通常の炊飯調理ができない場合に隊員に給食させることを目的とするものであり、糧食内容などについても今後とも検討改善はなおはかっていきたいというふうに考えております。  なお現在、この備蓄から、平常時における訓練、演習等機会——更新ということを考えまして、そういう機会に有効に使用をし、三年ごとに更新しておるというふうにいたしておるのでありまして、国費をむだ使いするということにはならないように配慮をいたしておるということでございます。
  7. 水口宏三

    水口宏三君 いまの長官の御答弁の中で二十日分は膨大でないという御答弁があったわけですが、数量の点はあとでもう少し申し上げますけれども、大体非常食備蓄なさる以上、どういう状態を非常と考え、どういう状況のもとでこれを使うのか、具体的に想定された状況を教えていただきたいと思います。
  8. 黒部穣

    説明員黒部穣君) もちろん有事の場合でございます。有事の場合における戦闘の際に使用するということを想定いたしておるわけでございます。
  9. 水口宏三

    水口宏三君 これはこの間、会計検査院からの御答弁の中にも、防衛庁の問題というのは、有事の際と言われると、どうもわれわれとしては一言もないということを言っておりましたが、有事の際というのをもう少し具体的に伺いたい。具体的にどういうときに——常食というのは非常に具体的なものですから、これを使わなければならないような状況というのはどういう状況であるかということを伺いたい。
  10. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 陸上自衛隊の場合は、もちろん上着陸戦があったという場合に野戦戦闘するということを想定しているわけです。  艦船の場合は、艦船の中に炊飯設備を持っておりますから食糧艦船の中に全部ございますけれども炊飯器具が故障した場合、あるいは戦闘時に調理要員を全部戦闘配置につかせなければならない場合、こういう場合を想定いたしてございます。  航空自衛隊の場合につきましては、主として基地から発進する、あるいはレーダーサイトで勤務して見張りを行なうというのが常態でございますが、これに合わせて若干数量のほうは、二十日分ではございませんけれども、減らしてございますが、さようなことを想定いたしまして非常食を用意いたしたわけでございます。
  11. 水口宏三

    水口宏三君 大体、私から申し上げるのは釈迦に説法かわかりませんけれども近代戦の場合に、そうこの戦闘行動というものが長期にわたって、食糧すら普通に供給できないような状況が広範に日本の本土において展開されるというふうに想定なさっていらっしゃるのですか。
  12. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 陸上自衛隊の場合におきましては、駐とん地から出動いたしまして、野戦で行動するわけでございます。で、もちろん、時間的余裕のある場合におきましては、温食を、あたたかい食事隊員に与えるというのをたてまえにいたしまして、なるべくならば炊飯器具を用いまして炊飯いたして隊員に供給するということになりますけれども状況によりましては隊員が分散展開するという場合もございます。かつまた場所によりましては容易に調理することができないという場合もございます。そういう場合に、非常用食糧を使用するということになるわけでございます。     —————————————
  13. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま竹田四郎君及び森中守義君が委員を辞任され、その補欠として藤田進君及び松本賢一君が選任されました。     —————————————
  14. 水口宏三

    水口宏三君 いまのお話を伺ってみても、たとえばこれは防衛庁からいただいた資料の中に、陸上自衛隊定員、掛ける〇・八、掛ける二十日分となっているわけですね。これは現在陸上自衛隊定員だけまだ満たされていない。これはおそらく八割か九割だと、そうすると、皆さん方想定なさる日本における有事の際というのは、一体全員が二十日間もそういう非常食を食べなければならないような状況想定できるんでございますか。たとえば北海道なら——従来自衛隊北海道を中心にして考えていらっしゃるけれども北海道でもってそういう戦闘行動が起きたからといって、全員年間二十日分も非常食を食べなければならぬような状況想定できますか。私は、だから具体的に教えていただきたいのです。どういう場合にこういう事態が起こるのかということですね。
  15. 久保卓也

    説明員久保卓也君) かん詰めが二十日分、非常用糧食が二十日分あることになっておりますが、その日数計算のほうは装備局長から答弁申し上げることにいたしまして、どういう事態が予想されるか、防衛の運用あるいは構想の面から申し上げますというと、自衛隊が、特に陸上自衛隊の場合に、最小限戦闘を継続しなければならない期間というのは一カ月ないし三カ月というふうに想定をいたしております。これは日米安保条約日米安保体制との関連がありまして、少なくとも米側協力が有効に働く期間まではわがほうの力で維持をしておきたいという発想が根底にあります。で、米側協力の度合いに応じまして、一カ月ないし三カ月ということであります。また、人員の面でありますが、現在員は定員の八六%で、二万九千名の欠員がありまするけれども、これは有事の場合には、その事前に緊急な手段によって補充をするという前提にしております。したがいまして、現在は欠員がありまするけれども有事の場合には一応十八万人体制というものができ上がっているという前提にわれわれは立っております。また、国内の状況想定いたしてみますると、特定地域、たとえば北海道なら北海道というところがかりに主戦場であるとしますると、そこに現在たとえば四個師団おりますけれども、若干の増援部隊を考える。そうすると残りはどうなるかと申しますると、一般の治安問題、それから治安関係以外にやはり散発的な小規模な上陸その他が行なわれるであろうということも想定をいたしております。したがいまして、防衛構想のたてまえから言いますると、主戦場はおそらく特定地域一定地域に限られるであろう。しかし、他の地域については小規模な事態が散発するであろう、そういうものに対して備えなければならないという考え方であります。なお、御承知のように、現在三万九千名の予備自衛官がおりまするけれども、これを若干四次防の中では増員しておりまするが、四、五万程度予備自衛官というものもさらに別途控えておるというようなのが具体的な防衛上の構想ということになります。  その中で、いまの非常用糧食がどういう位置づけであるかということは、装備局長のほうの所管かと思います。
  16. 水口宏三

    水口宏三君 いま久保局長の御答弁でもちょっとその点を伺いたいのですけれども、大体まあ想定される状況というものの中で、これは実際野戦行動に参加をして、普通の炊飯では食事ができないというような状況が、定員から言うと〇・八になっておるが、いまのお話だと戦闘するときには補充するというお話ですけれども、二十日間も継続をすると、先ほどの日米安保条約との関係では一カ月間も日本がもたせるというのは、これは非常に大きな概念的なことばであって、非常食を食べるという具体的な、そういう状況が二十日間も継続するということはどうも私は理解できない。そういう意味で伺っておるわけなんです。だからいまの防衛局長お話一般的な問題であるようなのに、非常食を食べなければならぬような状況が、一つは人数の上から言って、一つ日数の上から言って、定員の八割が二十日間も必要であるのかということがこれは理解できないのですね。一般炊飯ができないという状況でございましょうか、端的に言って。それは具体的にどういうことを想定していらっしゃるのか、それを伺いたい。
  17. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 二十日間連続して非常用糧食だけ食べるということは万々あり得ないと思いますけれども、少なくとも、三食のうち一食ぐらいは非常用糧食を食べざるを得ないということがかなり続くであろうということでございます。でき得れば温食を供給しますけれども戦闘状況によっては炊飯ができないという場合もあり得ますし、かりに炊飯ができても、それはある一定部隊が集結しているという場合に限られるわけでございまして、したがいまして、携行できる非常用糧食を用意しておくというわけでございます。
  18. 水口宏三

    水口宏三君 海上自衛隊の場合になると、先ほどの御説明からみると、もっとこれはわからないのですね。つまり実際上、艦艇乗り組み員というものは炊飯設備があるわけですね。その炊飯設備が故障した場合にそれを使うとおっしゃいますけれども、全乗り組み員の定員の十五日分が非常食になっておる。全乗り組み員というのは全艦艇ということでしょう。全艦艇が十五日間炊飯器が破損して炊飯できないという状況をどういうときに想定なさるのか。
  19. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 戦闘状態になれば、調理を担当する者も全員たま運びに使うとかいうような戦闘配置につくわけでございます。戦闘が十五日間連続して続くということは考えられませんけれども、一たん出陣をいたしたあとに、断続的ではありましょうけれども、少なくとも十五日間は非常用糧食でしのげるということを想定しておるわけでございます。
  20. 水口宏三

    水口宏三君 どうもおそらく久保防衛局長は苦笑いをしていらっしゃると思いますが、では、こういう海上自衛隊戦闘状況というものが二十四時間続くということも非常にこれはまれだと思うのですね、海上戦の場合に。いまの防衛局長お話だと、要するに、戦闘状況の場合には炊飯員まで全部たま運びをやるんだと、これはごくまれな場合だと思うのですよ。だからまれな場合はまれな場合というふうにずっとしぼっていってみると、全定員の十五日分の非常食が必要だということは、これは常識的にちょっと考えられないのですね。どういう積算基礎をお持ちになるのか、何でしたら、私この積算基礎はもっと具体的につくっていただきたいのです。いまみたいなばく然とした考え方であれば、陸上自衛隊の場合にはまあ二十日か一カ月間、日本が何とかささえなければいかぬ、こういうものが野戦に出た場合とおっしゃる。ところが実際にはできるならば非常食ではなしに一般炊飯によるめしを食べさせたほうが、これはもう隊員にとっていいことはあたりまえだと思うのですね。この非常食を食べなければならぬ、そういう状況が二十日間も想定される。まして海上自衛隊の場合になると、これはどうにも理解に苦しむわけですね。これは久保局長に伺いたいのですけれども炊飯要員たま運びをしなければならぬような状況というのはしばしば起こるのですか、炊飯時においてですよ。炊飯時においても炊飯しないでたま運びをしなければならないという状況というのは、ここにあるような状況でしばしば起こるという想定なんですか。
  21. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 私どもは比較的マクロにとらえておりますので、個々の場合にどの程度のものがそちらに振り向けられるかということは、別に私どものほうは計算いたしておりません。ただ、たとえば、上着陸作戦の場合に水上艦艇が出動いたしまするが、そういった場合に水上戦というものが行なわれます。これも当然そう長期間続くわけではございませんが、それから潜水艦作戦潜水艦に攻撃されたときに相手を見つけ捜索するといったような場合で、やはり全員配置をしてやるといった場合には、炊飯員も動員されるということがありますが、その期間計算は特別私どものほうではやっておりません。
  22. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、私再度要求いたしますけれども、この積算基礎というものがいまのお話ではあまりばく然とし過ぎていて一般国民は納得しないと思うんです。しかも、非常食生産量というのは四十五年度をとっても非常用食糧だけで五億一千四百万円つくっているのです。これは相当な額ですよ。一応いまの積算基礎というものは全然積算基礎になっていないんです。大体の状況想定して、それで適当に〇・八を掛けて、二十日間を掛けているだけであって、もう少しそういう点、積算基礎というものは明確であるはずです。これは各幕僚部でおつくりになっているのか何か知りませんけれども、その積算基礎をあらためてひとつ御提出いただきたいと思いますが、これは委員長ひとつ……。
  23. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) ただいま水口君からおっしゃられた積算基礎、後日、防衛庁のほうから御提出願えますでしょうか。
  24. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 承知いたしました。
  25. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) いつごろになりますでしょうか。
  26. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 約一週間ほど時間をいただきたいと思います。
  27. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) よろしゅうございますか。
  28. 水口宏三

    水口宏三君 けっこうです。
  29. 世耕政隆

    理事世耕政隆君) それでは進めます。
  30. 水口宏三

    水口宏三君 これは、実は防衛庁からいただきました資料、三十七年度から四十六年度までの非常食主食並びに副食生産状況をずっと資料でいただいたんですけれども、これを見ますと、問題になりますそのめしかん詰めというのが、実は、四十年に急速にふえているのです。たとえば構成比を見ましても、それまでは六〇%台であったものが、四十年に八八%になっている。それから三十七年を一〇〇としますと、三十九年度は一五〇であったものが、四十年度は二一五になっている。それ以後は多少むしろ減っている傾向があるんですね。そうすると、四十年度を考えますと、これはちょうど例のベトナム戦争が、むしろ例の魚雷問題に端を発して北爆が始まり、それから全面的なアメリカの軍事介入が始まった年、これは三十九年だったと思うんでございますけれども、その時期とあわせて急速にふえているというのは、どうも多少疑問があるんでございますけれども、それは何か必要があったんですか、四十年に特にふえているというのは。
  31. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 非常用糧食のうち主食乾パンめしかん詰めでございまして、当初、出発当初は乾パンのみで出発いたしたわけでございます。で、その後乾パンだけでありますとやはり飽きがくるということで、かつまた、めしかん詰め隊員に食べさせましたところ、非常にまあ評判がよろしいということで、逐次この乾パンからめしかん詰めに切りかえたわけでございます。三十九年度には年間一人三十食見当、三十食分を一年間に調達したわけでございますが、その際は乾パンのほうが約二百万食で、めしかんが二百六十万食でございますが、四十年度は乾パンを九十万食に減らしまして、めしかん詰めのほうを三百万にふやすというふうな組み合わせに変えたわけでございます。
  32. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、ただ食べさせてみたら評判がいいからこれをふやしたということなんですか。
  33. 黒部穣

    説明員黒部穣君) たとえば四十四年度の値段でみますと、乾パンは一食分が四十五円でございます。白めしかん詰めが五十五円九十八銭、約五十六円でございます。とり肉かん詰めのほうは六十二円九十銭ということになっております。まあ値段の高い割りには、何といいますか、隊員がちょうど握りめしを食うような感じで食べられるということで逐次ふやしたわけでございます。
  34. 水口宏三

    水口宏三君 どうも装備局長、非常に非科学的なことをおっしゃいますけれども、それはわれわれにしたって、たとえば食事をするときに乾パンを並べられて変なジャムか何かつけられたのと、めしかん詰めで、めしかん詰めを一度あっためて、とりめしだとかシイタケめしだとか、それに肉の煮た副食でもつけてもらえば、それはそっちがうまいというのはあたりまえのことであって、そんなことだけで四十年度から急速にめしかん詰めをふやしたと、もっと科学的な、軍事技術的な状況想定ということをなさらずにやったのですか。
  35. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 実は昭和二十七年でございますが、まあ圧搾米というようなものも買っておりますけれども、どうもこれは全然何といいますか、味が悪くて食べられないということで、まあ乾パンを主体にしてきておりましたのですが、やはり乾パンよりはめしかん詰めのほうがよろしいし、また、技術的に見ましてもかなり二、三年の長期期間保存にも耐える、それから調理がきわめて手軽にできるということで採用しているわけでございます。
  36. 水口宏三

    水口宏三君 どうもお答え、なっていないのですね。調理がきわめて手軽にできる、それは調理したものをかん詰めにしているのですから、かん詰めを開けば調理になっているのはあたりまえのことですよ。それは米からめしをたいておかずをつくるのは時間がかかるのはきまっている。そういうような非常に常識的なことで、いま申し上げたような多額の金額を——あとで技術的な点は質問いたします。それがはたして軍事的な非常食として適当であるかどうかという技術的な問題はあとでまた御質問しますけれども、いまの局長答弁だと全くこれは常識論であって、われわれは納得できないのですよ。四十年からこれが急速にふえていった理由というものが、単に、要するに隊員が喜ぶから、おいしいからと、そういうことですか。
  37. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 一口に言うと、そういうことでございますし、何といっても戦闘時におきます際の体力の消耗に対して補充してやらなければいけませんので、食べやすく、しかも味のいいものということで採用しているわけでございます。
  38. 水口宏三

    水口宏三君 その技術的な点はあとでまた御質問いたしますけれども、それでは、これ以上装備局長を責めてもしかたがないと思うんでございますけれども、毎年、大蔵省でやはり予算査定をなさるわけですね。大蔵省、お見えになっておりますですね。大蔵省査定なさる場合に、いまのような説明をお聞きになって、五億一千四百万円という膨大な非常食をお認めになっているわけですか。大蔵省は納得なさったわけなんですか。
  39. 長岡實

    説明員長岡實君) 非常用糧食めしかん詰めにつきまして、私どもといたしましては、一応防衛庁予算要求内容を聞きまして、非常用糧量備蓄必要性といったようなことを考慮して査定をいたしたわけでございます。で、二十日分が必要であるかどうかといったような御質問を承っておりまして、私どもといたしましても、科学的に算定して二十日分でなければならないかどうかといったような点については、これはまだまだ議論の余地があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、今後ともほかのいろいろの備蓄等必要性等とも関連いたしまして、今後の予算編成の際には引き続き検討いたしてまいりたいと思います。
  40. 水口宏三

    水口宏三君 実は、大蔵省にきょう特に文句を言うわけではございませんけれども戦闘以外に、むしろ日本は非常に災害の多い国でございますね。これは台風もあれば、おそらく地震もあるだろう、あるいは相当な火災もあるだろう。こういう非常災害の備蓄に関しては大蔵省は非常にきびしい査定をなさるのですね。ところがどうも、これ見ますと、防衛庁の非常食査定は、常識的に考えてみても甘いというか、大体、大蔵省がこれを納得なさったことが私にはわからないのでございますけれども、これは要するに、防衛庁の一朝有事の際ということでお認めになったんですか、それとも相当検討なさった上でお認めになったのか、その点だけ伺いたい。もし相当検討されたとすれば、これは一般の民生安定上のそういう災害用の非常備蓄と比べて、全然質的にも違えば、量的にも違うわけですね。
  41. 長岡實

    説明員長岡實君) 率直に申しまして、防衛予算査定にあたりましては、内容も非常に複雑多岐でございます。この点につきましては私どもは一応防衛庁説明を了承いたしまして、防衛庁説明に基づいて予算を計上したということでございます。
  42. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ、きょうのお話をお聞きになって、もう一回この点は再検討を要するというふうにお考えになったんですか。それとも当然このままでいいというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  43. 長岡實

    説明員長岡實君) 来年度の予算編成期も近づいておりますので、非常用糧食を含めまして備蓄必要性等については再検討をいたします。
  44. 水口宏三

    水口宏三君 ぜひひとつ大蔵省も再検討願いたいと思うのです。これはどうも自分の田には水を引きたくなるもので、装備局長とすれば、なるべくおいしいかん詰めをたくさんつくって隊員に食べさせたいのでしょうけれども、なかなかそれは一般の国民感情からして許せないものがあるんじゃないかと私は思う。  これと関連して、農林省、お見えになっていますね。いまお話を伺うと、特定状況炊飯ができない事態というものは、私はこれは非常に短時間であるとか、局所的だと思うのです。この前の委員会で伺ったときには、これはたとえば水が悪くて飲めない、そのままでは炊飯できないような場合でも、水をわかしてこれを突っ込んでおけばそのままめしになるんだと、そういう意味で非常に簡単だというような御説明を伺っておったんでございます。むろん、その状況戦闘状況の中では炊飯はできないでしょう。だけれども一般的には、日本というのは水が非常に豊富である。これは世界的にもまれに見るくらい水が豊富なところです。最近残念なことに公害が多くてうっかり飲むと水銀があったりなんかする場合がございますけれども、しかし、食糧というものの基礎が米である以上、米が全国各地に相当まんべんなく保管されているならば——あえて非常食というものを、軍の行動に伴って、アメリカ式らしいかん詰めというものを持たしていただきましたけれども、あの重たい水の入っためしにしたかん詰めをぞろぞろぞろぞろ引きずって歩くよりは、行った先にもし米があるならば、その米を炊飯し得るような、そのほうをむしろくふうなさることのほうが私普通だと思うんですね、もしほんとうに本土における行動しかとらぬとおっしゃるならば。これはたとえば炊飯器そのものを考慮していろいろ考えれば、むしろ、これはあっためるよりはずっと簡単にめしがたける炊飯器というものが十分技術的に可能だと思う。  そういう意味で農林省に伺いたいのでございますけれども、大体現在の主食でございますね、米を中心とした主食、これは最近はむしろ米が余って減反したり転作させたりしているのですから、日本全土に相当に豊富に各所に保管されていると思うのでございますけれども、保管状況はいかがですか。大体地域的なものでけっこうです。
  45. 森重弘

    説明員(森重弘君) もう先生よく御承知のように、米の需給状態は非常に緩和いたしております。ことしもおかげさまで一〇三%に達してございます。したがいまして、米に関する限りは別にどうということはございません。これも各県にそれぞれ需給操作上過不足なく配置はしてございます。災害時におきましてこれを米飯によってカバーできるということは可能である、かように考えております。
  46. 水口宏三

    水口宏三君 そうしますと、かつてのように米が非常に少ない場合、これは軍隊、自衛隊だけが米のめしを食べて、その周辺の国民は麦なりイモなり食べているというときは違うでしょうけれども、いま国民は米だけは食べられるということになっているわけですね。そうしますと、先ほどからのお話の白めしかん詰めなどというものをつくることを研究するのではなしに、日本中どこに行ってもある米を最も簡単にこれを炊飯できるような炊飯器をお考えになったほうが、これのほうが常識的かと思うのです。それは最初おつくりになった二十八年ごろは特殊な事情があったかもわかりませんが、少なくとも現状においてなおかつめしかん詰めというものが隊員にとって、しかも非常食として適当であるということを固執なさる理由はどうも私にはわからない。農林省から聞いても、大体米というのは各県まんべんなく断るんですから、防衛庁で指摘なさって、どうも戦略上北海道とかあるいは岩手があぶない、そういうところは少し防衛庁要求して備蓄をしてくれと言えば農林省も喜んでやるでしょう、余っているんですから。その点、装備局長いかがでございますか。
  47. 黒部穣

    説明員黒部穣君) おっしゃるとおり確かにめしかん詰めにいたしますと重くなるという点はございます。これにかわるものといたしましてアルファ化した米を利用する、これに水だけ注げば食べられるというようなものも試みに調達いたしまして試験もいたしたわけでございますが、どういたしましても若干の欠陥がございます。かつまた多少重いわけでございますが、実際の激しい戦闘の場合には隊員には乾パン食分を雑のうに入れまして背のうに持たしておきます。携行用のめしかん詰め類は別途近代戦でございますので車両を大量に使いますから、そういうもので弾薬と一緒に運ぶというような形態になっております。そういうことで、重さの点では確かに欠点はありますが、まあ、一応それは克服できるということで採用しているわけでございます。なお、炊飯器をもっと簡便にできるような方法がないかという御指摘でございまして、確かにこの点は私どもの研究もあるいは足りないかと思います。ただいまのところは自動車で、車両で牽引してまいりますところの野外用の炊飯器を使用いたしておりまして、でき得るならばもちろん、これを用いて、あたたかいものを隊員に食べさせるということにしたいわけでございますが、苛烈な戦闘の場合を考慮すれば、とてもそれでは間に合わないという面もございますし、また、近代戦ではしばしば分散展開するという場合がございますので、こういう場合には配食することが、かりに炊飯できても、第一線の隊員まで配食するということが困難になるわけでございます。その点、めしかん詰めは、普通の条件のもとでございますれば、一度お湯であたためますと、少なくとも二、三日は握りめしあるいは弁当のように食べられるという利点もあるわけでございまして、そういう点で、確かに御指摘のように若干ぜいたくではないか、非常食としては水分の入っためしかん詰めまでつくって用意しておくというのはぜいたくではないかという御指摘があろうかと思いますけれども、種々の利便などを考慮いたしまして、これを採用いたしているわけでございます。
  48. 水口宏三

    水口宏三君 いまの装備局長の御答弁はどうも少し的がはずれているんです。というのは、あなたのおっしゃるように苛烈な戦闘状況の中で、個々の隊員が携行しなければならない、これはまさに非常食ですね。こういうものはなるべく軽くて、少量で栄養価が高いものというのが、これが私は要求される条件だと思うんですよ。そうすると、あなたのおっしゃるように、めしかん詰めは確かに重い、したがって、一人一人には携行させないんだ、弾薬と一緒にうしろから運ぶんだ、ずいぶんもったいない話ですね。非常事態において、一朝有事の際に、弾薬のかわりにあの重いめしかん詰めをたくさん自動車で運ぶんですから。しかも一定個所でこれをあたためて、前線に全部配付するんでしょう。そんならそれは炊飯したものを配付するのと同じことじゃないか。だから、私が申し上げるのは、非常食とは一体何なんだということを最初にお伺いしたんだ。ほんとうに戦闘状態一般炊飯できないような状況、しかも個々の隊員がそれを携行していて食べるというものならば、これは非常食と言えるでしょうね。ところが、いまのお話を伺っていると、何のことはない、大砲のたまや何かと同じように、大量に後方から運んでいって、どこかでもってこれを大量にあたためて前線に配付するというんですね。それなら炊飯して配付したって同じことじゃないか。大体非常食とは何なのかという、またもとへ戻ってしまうわけですよ。そこのところはもうちょっと防衛庁としてもお考えになる必要があるんじゃないかと思うんです。この点いかがですか。非常食というのは何か、あなたのおっしゃるのはちっともぴったりこない、何が非常食なのかぴったりこないんです。
  49. 黒部穣

    説明員黒部穣君) ただいまの私の説明はあるいは足りなかったかもしれませんが、通常隊員には作戦時の場合には四食携行させるわけでございます。ただし移動の場合は、隊員も皆トラックに、あるいは装甲車に乗って移動していくわけでございます。個人個人は四食持っております。いよいよ接近戦が始まるというような場合には、乾パン一つぐらいと水筒とえんぴつを持って、それに銃と弾丸を持ちまして戦う。そういう場合に一食は腰にぶら下げておる。こういう意味で申し上げたわけでございます。そういう場合を想定いたしますと、やはり握りめしかん詰めにしたといいましょうか、あるいは弁当をかん詰めにしたというようなものが常に自分の近くにあるということが望ましいわけでございます。もちろん、食べる前には何らかの形であたためなければならぬわけでございます。先ほども申し上げましたように、もう一回あたためなければならぬという不便もございますけれども、少なくとも一度あたためれば、普通の条件のもとでは二、三日は持つという点もあるわけでございます。そういうことで、もちろん後方において炊飯いたしまして、それを第一線のところに逐次配食できるというようなのが一番望ましいわけでございまして、そのほうがあたたかいものを戦闘員に食べさせるという利点はございますが、そういうことが不可能な場合が間々あるであろうということでございます。
  50. 水口宏三

    水口宏三君 いや、間々あるならば、私は別にそう目くじらを立てて言うんじゃないのです。いま申し上げたように、全隊員の〇・八、それに掛ける二十日分というから私は、これは非常に問題があると言うんです。しかも、そのうちの半分はめしかん詰めなんですね、主食の場合には。この点ばかりあまり言っていてもしかたがないんですが、いずれにいたしましても、あの重たいものを四食分ずつ兵隊に持たせるなんというようなばかなことはないじゃないですか。大体戦闘するのが自衛隊の任務ですからね。あれを四つ持ったら、ほかにたいして持てなくなってしまいますよ、普通の力の者だったらば。いずれにしても、私はどうもこの点御答弁が納得できません。これはまた後日あらためて、もうちょっとおたくのほうでも、いま私の申し上げた積算基礎を、あとで申し上げるような技術的な点にも考慮なさって再検討いただきたいと思います。  次に、これも資料で伺いますと、現在貯蔵されているものを大体一年間で三分の一ずつ日常食として消費をしていくというお話なんですね。そうすると、一年間で三分の一ですから、全隊員の一週間はこの非常食でまかなわれるわけですね。そうすると、大体金額的にどのくらいになるのですか、通常食と非常食との差は。
  51. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 実は、めしかん詰めは、めしかん詰めのほかにこれに調理かん詰めを添付いたします。したがいまして、年間に購入いたしますところの乾パンめしかん詰め、それから調理かん詰め類全体を主食の数で割りますと、一食当たりの単価が出るわけでございます。で、かようにいたしまして、一食当たりの単価を四十四年度で調べますと——四十四年度というのは、実は四十七年度に現在隊員が消費いたしておりますのが四十四年度調達の分でございますので、この四十四年度につきまして申し上げますと、一食当たり百三十五円になります。で、一食当たり百三十五円でございますが、先ほども申し上げましたように、その中の白めしかん詰めにつきましてはほぼ五十六円ということになるわけでございます。方、普通の給食は、陸上勤務員の一日の定額でとらえますと、一日の定額が三百二十六円でございます。これは主食の米麦あるいはパン類その他副食の材料、そういうものを一切入れまして出しました定額でございまして、三百二十六円。これを朝昼晩に適当に割り振って食事しているわけでございます。したがいまして、まあ光熱・水道料は入れてございませんが、この材料費だけでございますけれども一応三百二十六円の材料のものを、朝昼晩全く平均だといたしますと、一食当たり百十円程度になるわけでございまして、片や非常用食糧調理かん詰めまで入れまして、一食当たり百三十五円ということで若干高くなっているわけでございます。
  52. 水口宏三

    水口宏三君 いまの計算ですね、一食分でなくてもよかったのですけれども、たとえば四十四年度のものを四十七年度に使っているから安いのだということを強調なさっているようでございますが、四十四年度につくったものは三年間保管しなければならないですね。これは保管料なり金利が相当かかるでしょう。総体的に見ますと、四十四年度におつくりになったものはこのめしかん詰めだけで一億八千四百万円ですよ、総額でいったらば。いまの一食でいくと、一日で百円ですか、違うわけですね。ところが、総額でいった場合、隊員全体に掛けていらっしゃるわけですから、四十四年度でつくったものが一億八千四百万円のめしかん詰めということは、その年にちょうど一億四千八百万円のめしかん詰めが消費されたわけでしょう。だから総額でいった場合に、日常食から比べると、私は相当ばく大な金額というものがこの非常食によって消費されているのではないか。これはちょっと私計算しておりませんけれども、一食だけ比較してもいまお話しのように相当高いわけですね。それを装備局長は、四十四年度のだから安いんだとおっしゃるけれども、いま言ったように、保管料なり金利を加えたら決して安くない。物価が全体上がっているんだから保管料も上がるでしょう。だからそういう意味で、私はむしろそういう点からいっても、たとえば会計検査院なんかがこの前の査定のときにも、どうも防衛庁から一朝有事の際と言われると一言も返すことばがないとおっしゃってきていますけれども、これなんか私は明らかにロスだと思うんですね。現在、およそ二十日間も非常食を必要とするであろうような具体的な想定は、これは防衛庁、どなたも持っていないと思うのでございます。にもかかわらず、常時二十日分持っている。それを三年間でもって一回ずつ回転させることによって相当ばく大な金額がロスされる。しかも、食べるほうの隊員にすれば、乾パンなんか決してうまくないですよ、日常食べたって。こういう点について——会計検査院、おいでになっていますね。そういう点について何か具体的に防衛庁についてお調べになったことがあるのでございますか。
  53. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 結論から申し上げまして、いま先生のお尋ねのような観点から検査をいたしたことは、申しわけありませんがございません。ただ、先ほどから防衛庁のほうでもお答えになっておられますように、一朝有事の際の戦闘のための非常食であるということで、何日分がいいかというような想定——非常の場合の想定の問題でもございますので、これは私どものほうではその説明を一応伺いまして、その量については特に検査上指摘したことはいままでにございません。
  54. 水口宏三

    水口宏三君 実は、私こういうことを声を大にして申し上げたくないのでございますけれども会計検査院はこの間もおっしゃった。一朝有事の際と言われると、どうもそれをさらに突っ込んで云々できないと言うけれども、このことばほど危険なことばはないのじゃございませんか。戦前のあの軍国主義の問題にしたって、一朝有事の際ということがどのくらい軍費の乱費を認めてきたか。これを突っ込んでいかない限り、会計検査院としての、国民の立場からの、特に平和憲法下におけるそういう審査にならないのではないか。ことに今日、非常食が目立ちますので私非常食でもって申し上げているのであって、これはもう明らかに乱費ですよ。現在、だれが考えたって、二十日間の非常食を必要とするような事態が来年起こるなんてことは考えられない。それにもかかわらず、防衛庁としてここ十年間これをずっと維持してきている。三年でこれを回転させる。そして日常の食糧としてこれを隊員に食べさしている。これはもう普通食から見たらまるで高いわけです。そういうことをぜひ会計検査院として、一朝有事の際という壁を破って、あなた方自身も、また国民自身も納得するような検査をしていただくのでないと、まさに、会計検査院としては何ら問題なしという検査報告が出ちゃうことになるわけですね。そういう意味で、いかがでございますか。この点もう少し突っ込んで検査をなさる——まあ、これは四十五年度はもうお済みになったのでしょうが、四十六年度で突っ込んで検査をなさるというお気持ちはございませんか。
  55. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) この前、一朝有事の際ということが私どもの検査をむずかしくしているということは確かに申し上げました。しかし、やはりそこにはおのずから一つの基準といいますか、ものさしというものがなくてはならないであろうと私どものほうでも考えております。従来もそういう観点で検査はやってきておったわけでございますし、今後もそういう観点から大いに検査を進めていきたい、このように考えております。
  56. 水口宏三

    水口宏三君 きょうは、私特に非常食の点を具体的にお聞かせいただいたと思うんですが、特にこの点だけ突っ込んでいっても、少なくとも私は、相当不必要に経費が乱費されているというふうに言えるんじゃないかと思うんです。この点は私要望として、ぜひ検査院のほうで、この点だけとは申しませんけれども、たまたまこの点が非常に目立っておりますので、次の検査の機会にこれをお調べ願いたい。  その次に、三年間で回転させるというんでございますが、めしかん詰めの場合に——厚生省おいでになっておられますか。——厚生省なんかの栄養上の観点からいって、一応、めしにたくのだからアルファでん粉、ベーターでん粉になるんでしょう、それをあたためるという話ですが、それをあたためる、あたためないは別にして、三年間これを保存するということは、一般的に、かん詰めというものの品質上どうなんですか。
  57. 土井敏男

    説明員(土井敏男君) お答え申し上げます。  五、六年前になるかと思いますが、栄養研究所におきましてめしかん詰めの二年ないしは三年ぐらいたちましたものを検査いたしましたところ、内容の成分変化につきまして異常は認めておりません。
  58. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ一応、三年間たってもこれを一般に使って支障がないということは厚生省がお認めなさったと、私了承いたします。  その次に、これはもとに戻るようでございますが、そういう軍事的な用途に供する非常食というものの技術的、栄養的観点というものは、私のしろうと判断としてさっき申し上げましたが、携帯に便利であること、少量であって、しかも栄養豊かであるということ。これは登山する場合でもそうですね。登山する場合は、もちろん、上に行ってからおいしいものを食べる場合もございましょうけれども、少なくとも、登高過程においてはそういうものが必要である。それが何か基本的な要素であるように私なんか常識的に考えるんですけれども、その点、装備局長いかがですか。あわせて、厚生省、農林省等、専門家がおいでになるんですから、それらと防衛庁は御相談の上でこの非常食をお考えになったのか、あるいは防衛庁の技研単独でこれは非常食として最も適当だとお考えになったのか。その点お伺いしたいと思います。
  59. 黒部穣

    説明員黒部穣君) まことに先生のおっしゃるとおりでございまして、軽くてかつ栄養価が高いということがやはり希望なわけでございます。そのために、私のほうの研究所でも何がしかの研究をいたしてございます。かつまた、先ほど簡単に触れましたが、アルファ米と申しますか、脱水いたしました御飯をアルミ箔に入れましてこれに水分を添加すれば御飯になるというようなものも実際にまた購入いたして実験などいたしたわけでございますが、アルミ箔あるいはポリエチレンの袋での保存性がどうしても十分でございません。それからどうしても御飯の粘りがないということで、まあ、一食程度はそれを食べさせることはできても、幾つか続くと飽きがきてしまうというような問題がございますので、さらに改善について研究をいたしたいと、かように考えております。
  60. 水口宏三

    水口宏三君 いま、私ちょっと伺ったのでございますが、厚生省には伝統的な権威のある栄養研究所がありますね。それから農林省にも食糧全般にわたっての食糧研究所がある。防衛庁としては、こういう研究所と十分御相談になり連絡をとって研究していらっしゃるんですか、単独でやっていらっしゃるんでございますか。
  61. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 防衛庁の技術研究本部の中にあります第二研究所がこれを担当いたしておりますが、現実に農林省や厚生省と十分なる連絡をとりながらしておるかどうかにつきましては、私調べてまいりませんでしたので、どちらともお答えしかねるわけでございます。
  62. 水口宏三

    水口宏三君 これは要望になりますけれども、大体めしをたいて、これをかん詰めにするなんということは、戦前からだってやることができたんですね。ところが、戦前における非常食というもの、軍事食糧の研究というのは、戦前そういうものは、およそ非効率的なものとして否定してきたわけなんですよ。それが戦後になって、自衛隊でむしろ非常食が主流になっているということはどうも私は納得できないんです。これはもしそういう点、連絡をおとりになっていないなら——おそらく当時の研究者というものは農林省の食糧研究所とか、厚生省の栄養研究所にもおいでになったと思うんです。そこら辺と十分連絡をおとりになって、いままでずっと述べてまいりました技術的な観点、ひいては非常というものの状況と合あせて、どういうものが妥当であるかということの研究をさらに他のほうに——何も防衛庁だから厚生省の力を借りるのはいやだというようなセクトはおとりにならないで御相談願いたいと思います。  その次に、この非常食にあまり時間を取りたくないんですけれども生産、保管状況ですね。これを概略でけっこうでございますけれども地域別、メーカー別に一体どういうふうに——生産資料をいただきましたけれども、保管状況ですね。これは一体つくったものを自衛隊がすぐ買い上げて、そして地域的にずっと保管しているんでなくて、どういう保管をしていらっしゃるんですか。
  63. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 陸上自衛隊では各方面総監部ごとに補給処がございます。北海道、東北、東部、中部、西部というふうにございまして、当初購入いたしまして、翌年は、つまり一年間は、そういう補給処で保管いたします。次の年は、部隊に配付いたしまして、部隊で保管をいたします。で、三年目になりまして、それを使用するということにいたしております。
  64. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、この生産についてはあれですか、大体、全国的にバランスがとれたような形で生産をしていらっしゃるんですか、それとも、これはあとで実際の指名競争入札のところでも伺いたいんでございますけれども生産者というのは、これを見ますと、これはあれですね。めしかん詰めの場合は大体五社くらいでやっておりますね。全国的にこれはバランスがとれているんですか、それとも特定地域に相当集中しているんですか。
  65. 黒部穣

    説明員黒部穣君) 登録業者はもっと数が多いわけでございまして、その中から毎年指名競争入札をいたしまして、落札したものから購入するという形をとっております。したがいまして、地域的なバランスということは全然ただいま考慮してございません。
  66. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、地域的にはけっこう輸送しなければならぬ状況が生まれてくるわけですね。
  67. 黒部穣

    説明員黒部穣君) そのとおりでございます。
  68. 水口宏三

    水口宏三君 これは、実はいただいた資料には登録業者が全部出ていないんでございますけれども、これを見ますと、三十七年度が東洋食品ほか四社、それからその次の年度が日本冷蔵ほか四社、その次の年度が日本冷蔵ほか四社、また、その次の年度が日本冷蔵ほか四社、四十一年度が九州食糧品工業ほか六社、四十二年度が日本冷蔵ほか五社、四十三年度が九州食糧ほか三社、四十四年度が滋賀県経済農協連ほか三社、次の年度も滋賀県がまた出ておりますね。その次の年度も滋賀県と、かなり特定メーカーに集中しているような印象を受けるんですけれども、実際問題として、このめしかん詰めなんというものは、そう技術的にむずかしいものでも何でもないですわね。そんなものが何で特定メーカーに相当集中するんですか。
  69. 黒部穣

    説明員黒部穣君) たとえばこのめしかん詰めにつきましては、白めしかん詰め、鳥めしかん詰め、シイタケめしかん詰め、肉めしかん詰め、赤飯かん詰めというふうに、それぞれの種類ごとに登録業者をきめてございます。白めしかん詰めにつきましては九社、鳥めしかん詰めにつきましては十六社、シイタケめしかん詰めにつきましては八社、肉めしかん詰めにつきましては八社、赤飯かん詰めは四社ということになっておりまして、それぞれにつきまして競争入札をいたすわけでございます。で、そのときの落札によりまして業者がきまるわけでございます。したがいまして、まあこの登録業者のほかに、まだ能力と設備のあるところがあろうかと思いますけれども、現在はこれらの登録業者の中だけでやっておりまする関係上、ある年にはもちろん入札のいかんで変動することはございますけれども長期的に見ますと、大体その登録業者の間で落札が行なわれておるというようなかっこうになっておるわけでございます。
  70. 水口宏三

    水口宏三君 まあ形の上からおっしゃればそのとおりだと思いますが、四十五年度をとってみましょうか、四十五年にめしかん詰めが一億七千四百万円生産されておるわけなんですね。それでこれを製造したところは、滋賀県経済農業協同組合連合会外二社、全部で三社になっておるわけですね。三社に集中しておるわけなんです。いまのお話のように、おそらく種類別にとったけれども、同じ種類のものを二社がとったのかもわかりませんけれども、私はむしろこういう、別に高度な技術を要するものでも何でもないものは、むしろその輸送とか、保管の点を考えるなら、むしろ地域的に、もっと広範囲に入札ということを行なうことのほうが、より安くて良質なものを得るという上で有効なんじゃないかと思いますけれども、大体登録業者というのはどういう基準でおきめになるんです。
  71. 黒部穣

    説明員黒部穣君) ちょっと記憶がはっきりしない点がございますが、このめしかん詰め業者の場合は、三年ごとに更新するということにいたしまして、その場合に、まず申請があるもの、つまり意思のあるものの中から設備、能力を見まして登録業者に認定いたします。
  72. 水口宏三

    水口宏三君 その点お話を伺っていると、そのとおりかもわかりませんけれども、私が申し上げましたように、こんなものは非常に何も技術を必要としない簡単なものですよ。シイタケが入っためしをたくなんてのは、どこの家庭でもやっておることですから。そうなれば、私は、むしろこういうごく少数なものに特定して、全国的にいま言ったように、たまたま四十五年度をとってみれば、三社が一億七千四百万円のめしかん詰めをつくるなんというのは、これはどう考えてみてもちょっと不合理ですね、当然、北海道北海道、東北は東北、関東は関東、それぞれの地域で、それぞれ米はあるんですから。それは北海道にしか米がないのなら北海道でおつくりになるのもけっこうです。ところが、米は全国的にあるんですから、そうすれば、もっと私は、公開入札——指名入札なんかにしないで、一般入札でやったっていいくらいだと思いますよ。ただ、衛生上の問題がございましょうから、多少の基準が設けられるのは、それはやむを得ないかもしれない。しかし三社に集中するということは、どうしても納得できないのですがね。
  73. 黒部穣

    説明員黒部穣君) これはまた、常識的な答弁になりまして申しわけございませんですが、なるほど地域的に偏在しないように、分散させるほうが、あるいは輸送費等も勘案いたしまして、よろしいかもしれませんですけれども、一方におきまして、非常に単純な製品でございますので、まああまり実はかん詰め業者が喜んでやるという状態ではないものですから、どうしても登録を申請する者が限られる。で、数量がまとまると、わずかの工銭で若干でも引き受けるというような感じになっているわけでございます。そういう点で比較的わが防衛庁といたしましては、単価といたしましては安く購入いたしているんではないかと私考えるわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、もう少し——現在は全国一本ということでやっておるわけでございますが、まあ確かに輸送費の問題もございますし、技術的にはさほどむずかしくないわけでございます。地域的に分散いたして登録業者をふやしてというようなことが、あるいはトータルとして非常に便利であり、またコスト的にも安いということになる見込みがつくようでございましたら、それも検討いたしたいと思っております。
  74. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ以上で大体非常食の問題は終わりますが、農林省、厚生省の方、もうけっこうでございます。  以上の、私ずっとお伺いした結論として申し上げたいのは、どうもめしかん詰めというのは外征食としては非常に適当なものである、外征食としてですね。これは、大体アメリカの軍隊はかん詰めをよく使います、外征食です。しかも日本の場合には、日本自衛隊というか、日本人は米食ですね。したがって、よそへ行って行動を起こす場合に、めしかん詰めというものは、これは非常に有効である。それからまた、よその地域では水というものが得られない場合も非常に多いわけですね。それで私、勘ぐりかもわかりませんけれども、どうもこれはめしかん詰めというものは外征食じゃないかというような感じを受けるのですが、その点については、そうだとはおっしゃらないと思いますけれども、しかし、総合的にいままでの経過をずっとたどってみると、外征食としては最適であるが、専守防衛、本土における自衛隊の行動の非常食としては不適当であるという、これは私の意見を申し上げて恐縮なんですけれども、そういう感じを受けるのですけれども、万が一にもそういうことはないんでございましょうね。これは長官にひとつお伺いします。
  75. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) これはもう防衛庁の本質、たてまえ、いままでいろいろと御質問をいただき、検討をいただいた上で——防衛庁がいわゆる外征をするとか、海外に出かけていくなんということは決してございません。この非常食の問題についても、そういう考慮の結果やったということは毛頭ございません。
  76. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、これで非常食の問題は打ち切りますけれども、以上申し上げましたように、どうも詰めていくと、外征食じゃないかというような疑いを受けるようなものを、また不経済なものを、また、不必要であるように考えられるものを——幾らも弱点があるわけでございますから、この点はぜひひとつ防衛庁として十分御検討になって、非常食というものの必要な状況を具体的に想定なされ、さっき申し上げた積算基礎も明確にしていただいて、これは会計検査院も十分その点は審査なさるでしょうし、また、大蔵省もそういう査定はなさるでしょうから、そういう意味で十分ひとつ、これは一例でございますが、非常食について特に申し上げておきたいと思います。  そこで、いま長官は絶対に外征などをすることはないという言明をなさったわけなんでございますけれども、これまで国会論議を通じて、海外派兵の問題がしばしば非常に問題になっております。最近、私が直接質問した中でも、これは江崎防衛庁長官のときに、日本は憲法上海外派兵はできませんということを明言なさっておるわけでございますけれども、これは増原防衛庁長官も海外派兵ができないということは、憲法上できないのだというふうにお考えになっていると考えてよろしゅうございましょうか。
  77. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 自衛隊というものは憲法に基づいてできておりまして、自衛、防衛に徹しなければならぬということが憲法上出てくるわけでございます。そういう意味で、憲法上海外派兵はできないというふうに解釈をいたします。
  78. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、憲法上海外派兵ができないということは、増原防衛庁長官もそう考えているというふうに理解いたします。  ただし、こまかく言いますと、海外派兵というのは、いろいろな形態があるわけでございますね。たとえば陸上自衛隊が敵前上陸をして、どこかの国へのぼっていって、そこで戦闘行為をした。これは非常にはっきりした海外派兵だと思うんですけれども、それ以外にこれは海上自衛隊航空自衛隊になってくると、どこまでが、どういう形態が海外派兵であるのか、あるいは防衛庁はどういう形態を海外派兵と考えておいでになるのか、この点もこの前いろいろ論議がありましたけれども、どうも私のいままでずっと国会論議を調べた上では明確でないものがございますね。この点、ひとつ陸海空に分けて、どういう状況、行動を海外派兵というのか、この点ひとつお示しいただきたいと思います。
  79. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 一応、私からお答えをして、この点の基本的なあれは法制局長官に答えていただきたいと思います。  海外派兵というのは、いままで私どもが申し上げておりますのは、客観的に確立された定義というふうにはなかなかなっておらぬかと思いまするけれども、武力行使の目的をもって武装した部隊を海外領域に派遣するということであると思いまするので——これは陸海空とも武装した部隊を海外領域に派遣する、武力行使の目的をもって武装した部隊を海外領域に派遣するということであると解釈をしております。
  80. 水口宏三

    水口宏三君 そこで、ちょっと問題があるのは、海外領域というのはどういうことなんですか。他国の領海、領空、領土ということでございますか、それとも公海、公空も含むのですか。
  81. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 仰せのとおり、他国の領空、領海、領域ということでございます。
  82. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、公海上で海上自衛隊が武力行動をとること、あるいは公海上から航空自衛隊がミサイルを発射すること、これは含まないわけなんですか。
  83. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 何といいますか、公海の上の領空にあらざるところから外国に向かって、たとえばミサイルを発射する、そういうことは、そういう意味でこの公海、その上空に行くということは、ちょっとそういうことは、海外派兵という、いま申したことばでは入りませんが、そういうことをも私どもはやってはならない、やらないというたてまえの中に入っておるというふうに考えます。
  84. 水口宏三

    水口宏三君 これからの論議は、もうぜひこれをひとつ前提にしていただきたいのでありますけれども防衛庁長官は、海外派兵は憲法上できないのだという前提に立って御答弁いただきたいのであります。政策論としてこれが入ってくると、政策論と憲法論がまじりますと非常に——これまでの国会論議が非常に紛糾するのはいつでも憲法論と政策論が混同するところにあると思うんですね。憲法上できない海外派兵というものは、どういうものであるのかということをここではっきりしたい。
  85. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) その点はひとつ法制局長官にお答えをしてもらいたいと思います。
  86. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 先ほどの水口委員の御質問の中で、公海からミサイルを発射することはどうかと、海外派兵になるかという御趣旨の御質問だったと思いますが、公海から発射いたしまするにしても、あるいはこれを日本の領域から発射するにいたしましても、その行為自体が、憲法第九条が許容しております自衛行動の範囲内になるかどうかということで検討しなければならないと思います。したがいまして、この点は前々から申しておると思いますけれども、そのミサイルの性能いかんでございますとか、そのミサイルが発射されますときの状況とかというものによって判断しなければならないと思います。いずれにいたしましても、ミサイルを発射する行為自体が、自衛行動の範囲内として観念せられるかどうかということによって判断すべきものだと思います。
  87. 水口宏三

    水口宏三君 いや、そこで自衛行動というものをある程度明確にしたいので伺っているわけなんですけれども、それじゃ事例を出しますと、これは明治の例の日露戦争による日本海海戦、これは私ども子供のときには非常によく聞かされたものですね。これはまさにバルチック艦隊がずっと曳行してウラジオストックに入ろうとした途中に、これを日本の連合艦隊が迎撃をして全滅をさせた。これはまさに公海上における戦闘行為でございますね。こういう場合はどうなんですか。これは海外派兵と言えるんでございますか。
  88. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 戦前の、たとえば日露戦争のころにおきまする日本の国権の作用として説明をいたしましたような状況と、最近の憲法第九条の説明として自衛という観念を用いております現在の観念、特に国民一般にございます法意識に基づいて自衛行動を説明いたします場合とは、全く状況が違いますので、一がいには申せませんが、あの当時の状況を考えてみまするに、ロジェストヴェンスキー中将の率いるバルチック艦隊は、いわばリバウの軍港から回航いたしまして、ウラジオに入るという目的で来たものだと思います。ウラジオから先にまたどういう行動に出るか、その当時いろいろ憶測があったと思いますけれども、少なくともああいう状況を考えてみまするに、これをわが国に対する急迫不正の侵害が現に発生したといって自衛行動に移るというには、まだその段階に達していなかったと言うべきではないかと思います。また、その当時の軍事的な状況を私も知悉いたしておりません。まさに子供のころ聞いたような話をもとにして判断いたしますので、その状況判断は的確を欠くかとは思いますけれども、まだ日本に現実に侵略があったという状況では少なくともなかった。したがって、現在の憲法において考えられるような自衛行動に移れるような状況ではなかったということであろうと思います。
  89. 水口宏三

    水口宏三君 それは非常に微妙な問題であって、そのときの状況判断をする、これは最高の状況判断はむしろ指揮官である——指揮官と申しますか、総理大臣が行なうべきでございましょうね。だけれども、一々総理大臣に相談していたんじゃ間に合わないような状況もあり得るし、当然これは幕僚監部が判断する場合もございましょう。そういうようなものを含めて公海上の、私は特にこれは海上自衛隊の問題になると思うんでございますよ。公海上における行動というものに、自衛のための行動、つまり憲法の許容する行動というものの限界というものは何らか基準がないんですか。防衛庁はお考えになっていないんですか。   〔理事世耕政隆君退席、鶴園哲夫君着席〕
  90. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 自衛の中でも必要最小限度の自衛が、憲法で許された自衛行動であるというふうに言われておりますけれども、具体的な基準というのはなかなかむずかしいのでありまして、私ども十分に持っておりませんが、おそらくその時点その時点においてデリケートな問題については、政府部内で協議されるであろう。と申しますのは、突発的なことは格別といたしまして、全般的な部隊の行動というものはわれわれの情報あるいは予告、日米安保体制のもとにおいてはそういった行動というものが予見できると思います。
  91. 水口宏三

    水口宏三君 だから陸上自衛隊の場合ならこれははっきりしておりますね。海上自衛隊の場合も、お話のように何か状況が起きたら、それを国会の中で審議してもらって内閣総理大臣が判断してなんと言っているうちには、これはもうとっくにそういう状況は変わっちゃうわけなんです、実際の戦闘状況のもとにあっては。そうすれば、あらかじめ、もし憲法上禁止されている海外派兵ということの限界を、何らかの形でつくっておかなければ、現地の司令官こそがいい迷惑——迷惑どころじゃなくて行動がとれないですね。そういうことが何でいままで防衛庁内部で論議されなかったのか。
  92. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 戦争というものが起こり得る態様というのは千変万化であります。しかもどういう事態が起こるかということは——具体的な事実ということはなかなか予想しにくいわけであります。たとえば通常の刑法犯において、それが過剰防衛であるかどうかでも、どういった基準があるかということはなかなかむずかしいので、そういったものは判例の積み重ねということで、国内法の場合には一応のめどというものが立ちまするけれども、国際関係で、しかも他国と違いましてわが国独自の憲法というものを持っています以上は、なかなかそういった基準というものはむずかしかろう。したがいまして、おおよそのことはわれわれも見当がつきまするけれども、ボーダーラインになりまするとなかなかわからない。こういった問題は、あるいは具体例を想定しまして政府部内で研究すべき問題であるかと思います。
  93. 水口宏三

    水口宏三君 どうも、もう自衛隊ができて十数年になるのに、これから研究するというのでは、私どうも非常に危険だと思うんでありますけれども、たとえば航空自衛隊の場合ですね。これは、かつて高辻法制局長官ですか、座して死を待つような状況の場合には、相手のミサイル基地をたたくことも、これは自衛行動の範囲である。航空自衛隊の場合には、まさにその限界までは憲法上許容される行動として国会ではっきり答弁したわけですね。そういう意味で、どうしても私は、憲法上の問題としてどこまでが許容できるかということは、いまだに研究課題であって、片方でどんどん自衛隊が強化されていくということは、これはもう本末転倒ではないか、これは当然、法制局としても、憲法上の問題である以上、憲法上の限界というものは明確になさる必要があるんじゃないか。   〔委員長代理鶴園哲夫君退席、委員長着席〕
  94. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 憲法第九条が許容しております自衛行動の範囲というものは、抽象的にはもう十数年来、国会で何べんもお答えをいたしておりますが、その具体的適用が個別の場合にどうであるかということを、あらかじめ確定しておけという御趣旨かと思いますが、事はいろいろ広範にわたりますので、この抽象的な範囲をもって憲法論としてはやむを得ないとしなければならないと思います。特に自衛隊の行動につきましては、自衛隊がいきなり自衛行動をとるわけではございませんで、必ず自衛隊法の定めるところによりまして一定の要件のもとに防衛出動待機命令なり、あるいは防衛出動命令が出るわけでございます。その出るにつきましては、国会においても御審議を願うという手段が用意されておるわけでございまして、その場合に、さらにそういう出動がなされました後において、具体的な自衛のための処置をとるわけでございまして、その場合につきましてはおのずからそのときの状況——特定の武力集団がどの辺に近づいてどうこうという状況が判定されると思います。それに応じて部隊としては行動が十分にとれるものと思いますので、いまの段階におきましては、やはり憲法論としては抽象的な原理、基準をもって十分足りるものではないかと私どもは考えております。
  95. 水口宏三

    水口宏三君 いや私は、憲法論としても、いままで出てきていることばというのは、専守防衛であるとか、不正な侵略が起きた場合、これに対応するのだという程度のことですね。ところが、憲法というのは、もっとそういう意味では、この問題に関しては第九条はかなり厳密な規定をしているわけです。それでさっき伺うと、防衛庁長官は憲法上の問題である。したがって、武力行使を目的にした武装した部隊を海外領域に派遣することを海外派兵と言うと、ただし公海上の行動についてはあいまいなわけですね。特に公海上の行動であいまいなのは海上自衛隊航空自衛隊。さっき私はバルチック艦隊の例を申し上げたんですが、その艦隊なりその航空部隊がはたして直接日本を攻撃目的として来たのかどうかわからなくても、公海上でそれを迎撃するのか、あるいは日本の領海へ入ったときに、日本の領空へ入ったときに、これを迎撃するのか。これは、つまり私は原則的な問題だと思う。そういう点についてはいかがですか。
  96. 久保卓也

    説明員久保卓也君) バルチック艦隊の場合に、ある地点から他の地点に移動する、その後の行動が明確でないという場合に自衛の範囲にはならない。そういう前提のもとには、そう言い得ようと思いますが、われわれのほうの防衛構想前提といたしておりますのは、公海上でありましても、その艦隊なら艦隊が日本を目ざして、日本の侵略のために行動を起こしているということが、四囲の状況で明白であるという場合には、領海に入らなくても、公海におきましても攻撃を加えるであろう。それは自衛の範囲に入る、こういう考え方であります。
  97. 水口宏三

    水口宏三君 どうもバルチック艦隊ばかり例に出して恐縮でございますけれども、バルチック艦隊が単なる移動であるなんというのは、久保さんらしくない御答弁だと思うんです。あのときには、アジア地域において当時の帝政ロシアは全く艦隊を失ってしまった。同時に、もう使えなくなった。日本を攻撃するためにバルチック艦隊が来たのは、これは明らかなわけです。長途の航路であったから、一応ウラジオストックへ行って補給しようというだけのことであって、これは日本攻撃のために来たということは明瞭でございますね。じゃ、バルチック艦隊を迎撃することも、いまのお話からいえば、当然、自衛行動に入るんじゃないですか。
  98. 久保卓也

    説明員久保卓也君) ウラジオに入った後、日本を攻撃するであろうということが明白な場合に、それが自衛の範囲に入るか入らないか、まさにデリケートな問題でありまして、法制局にお伺いしなければいけないわけでありますが、私ども想定をしております事態は、公海の上であっても、日本を目ざして進んできておる、そういう事態から防衛構想が実は始まっておる。したがって、バルチック艦隊のような事例はわれわれの防衛構想の中では出ておりません。しかし、現実にそういった事態があった場合に、つまりウラジオに入る——まあウラジオと申してはよくないわけでありますが、特定の港に入ってそれからわが国を攻撃するであろうということが予想されるときに、途中を要して攻撃するのが自衛の範囲であるかどうか非常にむずかしい問題であろうと思います。
  99. 水口宏三

    水口宏三君 要するに、この点については、今後、研究課題であるということですか。これはしかし私は、憲法上の問題である以上、これがいつまでも研究の課題として国民に不明のまま自衛隊が強化されるということは、非常に大きな矛盾だと思うんです。早急にこれは研究して、研究結果を法制局とも御相談になり、国会で明確に御答弁いただきたいと思うのでございますが、長官いかがでございましょうか、どのくらいの時日を要しますか。
  100. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 一週間ぐらいで協議をしてお答えできるようにいたします。
  101. 水口宏三

    水口宏三君 一週間でこの重大なことが決定できれば非常にわれわれ好都合でございますから、次の機会に御質問させていただきます。  それでは次に、国連憲章五十一条の個別的並びに集団的自衛権のことでございますけれども、このうちの集団的自衛権というのはどういう意味合いのものか、これを法制局長官にぜひ御見解を伺っておきたいと思います。
  102. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 御承知のように、この国連憲章第五十一条の個別的及び集団的の固有の自衛の権利と申しますことばは、第二次大戦前には、集団的自衛権という概念は、国際法上あまり明確にとらえられておりませんで、いわば戦後の、戦後と申しますか、戦時中、戦争中からの集団安全保障体制というような形を頭に入れまして、国際連合憲章で集団的ということばが、言わばつけ加えられて、従来の自衛権の観念に付加されたということが学者の通説になっております。自衛権と申しますのは、もちろん国際法上、昔から唱えられておる一つの観念でございまして、自国なり自国民に対する急迫不正の侵害があった場合、これを防衛するという、端的に申せば、そういうことであろうと思いますが、いまでは個別的自衛の権利ということで説明されておりますが、旧来の自衛権は、まさに自国が攻められた場合、これに対応して武力を行使するということに限られておったわけでございます。その後づけ加えられた集団的という形容詞によって、含まれることになりましたいわば集団的自衛権というものは、Aという国とBという国が非常に緊密な関係がある。どの程度、緊密な関係かはいろいろ国際法上、議論があると思いますが、Bという国にとって、Aという国の存立が危うくなるということは、自分の国の存立が危うくなるにひとしいと申しますか、非常に利害関係として強い関心を持っておるという場合に、Aという国が攻められた場合に、Bという国がこれを援助して、兵力を行使するということを集団的自衛ということで説明しております。この集団的自衛という観念は、ことばとしては戦後できたものでございますけれども、一九二〇年代から集団的安全保障という観念は、ある程度地域的に認められた観念であると思います。
  103. 水口宏三

    水口宏三君 どうも専門家に対してこういうことを申し上げるのは失礼かもわかりませんけれども、私は、集団的自衛権と集団的安全保障体制というものとは、これは異なると思うんです。むしろ本来の集団的安全保障体制こそ国連憲章であり国連である、たまたま五十一条が特別に異物的に入れられたから論議が紛糾するのであって、むしろこの五十一条の集団的自衛権については、憲法調査会の中でも相当論議しておることは、私から申し上げるまでもないと思いますけれども、この中でも、いま長官のおっしゃったような見解もあれば、あるいは特定国が侵略を侵した場合に、むしろ懲罰的な意味でやるのだということもございますが、むしろおおかたの意見としては、むしろこれは、正当防衛の自然権のうちの一つとしてこれを認めるという立場をとっておるのが一般的だと思うんです。そうなりますと、いまのお話のように、Aという国とBという国が非常に密接な関係にある、C国からA国が攻撃をされた、その場合に3国がA国を援助するというのは、私は非常に危険だと思う。むしろA国に対する攻撃は即自国に対する攻撃である、自国の安全を脅かされることであるといって、ここでA国と一緒に軍事行動をとる。このことがむしろ集団的自衛権の基本的概念だと思うんです。それを援助するということになってくると、これはもうすでに自然権的なものではなしに、援助には当然相手方の意思もあるだろうし、取りきめもあるだろうし、あるいは地球を半回りしても援助は援助ですからね。それで実はこれがむしろ拡大解釈をされて、アメリカが地球の裏側にあるベトナムを攻撃しておるのか——これはまあ余談になりますけれども、いずれにしても、法的概念としての五十一条の集団的自衛権というのは、正当防衛権的な自然権である。したがって、Aが攻撃された場合にBが軍事行動を起こすのは、まさにB自国の安全を守るためであるというふうに解釈するのが、むしろ集団的自衛権の本来の概念ではないかと思いますけれども、その点法制局長官は、半分そのような御答弁をなされておると同時に、半分は何か旧集団共同防衛——何といいますか、条約のような御答弁をなさっておるんですが、どちらでございますか。
  104. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 外務省から……。
  105. 水口宏三

    水口宏三君 いや、憲法概念としてひとつ法制局長官に念を押しておきたいと思う、安保条約を言っているわけではないですから。
  106. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) これは国際法上の概念でございますから、外務省条約局長から御説明申し上げたほうがいいと思いまして、いま条約局長を指定したわけでございますが、いまの水口委員のおっしゃるように、集団的自衛権の説明のしかたにはいろいろあると思います。先ほど私も、AとBが一定関係にあって、A国に対して攻撃があった場合に、B国がこの攻撃に対して兵力を行使するということを申しまして——武力を行使すると申しましたが、そういうことで自国に対する攻撃と同じように、その国を防衛するということであろうと思います。  それからもう一つ、国際法上の固有の権利だということについては、まさに国連憲章に書いてございますように、固有の権利であると思います。その説明のしかたは、まあ刑事法の説明の場合の正当防衛で、これは、自己やまたは他人に対する危害を予防するため、やむを得ざるに出たる行為というようなことで説明をしておりますが、そのような観念を国際法学に取り入れまして、正当防衛権の説明をしておると思いますので、いま仰せられましたような説明でよろしいんじゃないかと思います。
  107. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、五十一条の集団的自衛権ということを、これをそのとおりに再確認いたしたいと思います。  そこで、この集団的自衛権とわが国とのかかわり合いにつきましては、まず最初に出てまいりますのは、いろいろございますけれども、サンフランシスコ講和条約の中に、この集団的自衛権に触れた部分があるわけなんですね。これは私から申し上げるまでもなく、平和条約のこれは五条のC項ですね、五条のC項に「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」と、これが一つございますね。それから日ソ共同宣言の中にも、相互にこれを持っていることを相互に確認をいたしましたね。それから私は、一番これが明確になったのは、現在の日米安保条約だと思うんです。日米安保条約の中では、私からこれも申し上げるまでもないんでございますけれども、その前文に「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し」、そして「よって、次のとおり協定する。」、つまり、集団的自衛権をわが国が持っているということをお互いに確認し合って、そして安保条約をつくったんだということを明確にしておるわけですね。少なくとも国連憲章でいう集団的自衛権というものは、サンフランシスコ講和条約、日ソ共同宣言、特に日米安保条約の基礎をなしていると、こう考えてよろしゅうございますか。
  108. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ただいま先生が御指摘のとおり、集団的自衛権というのは、国連憲章で初めて各主権国に認められた権利というふうになっておりますが、この点につきまして、先ほど先生御指摘のとおり、平和条約第五条C項に、日本が初めて独立を認められたときに、主権国としてこのような権利を持つということを確認をされております。安保条約も、したがいまして、日本が主権国として、当然そのような権利を持つということを前提にしまして結ばれたということでございます。  ただ、一つだけ指摘しておきたいと思いまするのは、日本には集団的自衛権はもちろん主権国としてございまするけれども、これは憲法第九条の解釈からいたしまして、そのような権利を行使することはできない、これははっきりいたしております。したがって、この日米安保条約そのものも、第五条をごらんになればおわかりのとおり、つまり相互防衛条約ではなくて、日本が米国の力によって安全を守る、日本は米国の領土防衛をしないというたてまえになっております。この点はつまり、日本が集団的自衛権を行使できないということの実は裏側の証明になろうかと思います。
  109. 水口宏三

    水口宏三君 その点は、私は納得できないんです。  それじゃ防衛庁長官にお伺いしますけれども防衛庁長官は、憲法上の問題として海外派兵はできないとおっしゃいましたね。しかし現在の憲法のどこにそういうことが書いてあるんですか。
  110. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) この問題はひとつ法制局長官からお答えいたしたいと思います。
  111. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) これは、憲法九条でなぜ日本が自衛権を認められているか、また、その自衛権を行使して自衛のために必要最小限度の行動をとることを許されているかということの説明として、これは前々から、私の三代前の佐藤長官時代から、佐藤、林、高辻と三代の長官時代ずうっと同じような説明をいたしておりますが、わが国の憲法第九条で、まさに国際紛争解決の手段として武力を行使することを放棄をいたしております。しかし、その規定があるということは、国家の固有の権利としての自衛権を否定したものでないということは、これは先般五月十日なり五月十八日の本院の委員会においても、水口委員もお認めいただいた概念だと思います。その自衛権があるということから、さらに進んで自衛のため必要な行動をとれるかどうかということになりますが、憲法の前文においてもそうでございますし、また、憲法の第十三条の規定を見ましても、日本国が、この国土が他国に侵略をせられまして国民が非常な苦しみにおちいるということを放置するというところまで憲法が命じておるものではない。第十二条からいたしましても、生命、自由及び幸福追求に関する国民の権利は立法、行政、司法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると書いてございますので、いよいよぎりぎりの最後のところでは、この国土がじゅうりんをせられて国民が苦しむ状態を容認するものではない。したがって、この国土が他国の武力によって侵されて国民が塗炭の苦しみにあえがなければならない。その直前の段階においては、自衛のため必要な行動はとれるんだというのが私どもの前々からの考え方でございます。その考え方から申しまして、憲法が容認するものは、その国土を守るための最小限度の行為だ。したがって、国土を守るというためには、集団的自衛の行動というふうなものは当然許しておるところではない。また、非常に緊密な関係にありましても、その他国が侵されている状態は、わが国の国民が苦しんでいるというところまではいかない。その非常に緊密な関係に、かりにある国があるといたしましても、その国の侵略が行なわれて、さらにわが国が侵されようという段階になって、侵略が発生いたしましたならば、やむを得ず自衛の行動をとるということが、憲法の容認するぎりぎりのところだという説明をいたしておるわけでございます。そういう意味で、集団的自衛の固有の権利はございましても、これは憲法上行使することは許されないということに相なると思います。
  112. 水口宏三

    水口宏三君 いまの法制局長官の答弁、私最初に申し上げた憲法論と政策論がどうもごっちゃになっていると思うんですね。と申しますことは、憲法では何らその点については触れていないわけですよ。憲法第九条は戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認ですね。しかしこれに対して、従来の自民党だけでなしに、前の自由党もそうですけれども、自衛権を否定しているものではない。これは私たちもそう思います。自衛権の行使の形態としての武力の行使は、これを禁止しているというのが、われわれの解釈であり、それから政府なり、これまでの政府の解釈は、いや自衛権の行使の形態としての武力の行使は認めているんだと。ところがいまの外務省の条約局長の話を聞くと、集団的自衛権の行使は認めていないとおっしゃるけれども、いまの法制局長官の御説明の中で、憲法のどこにそれがあるか全然明確になっていませんよ。自衛権そのものすら不明確なんですね。自衛権そのものすら憲法では規定をしていない。自然権として認めているというあなた方の解釈です。また、われわれもそう解釈しております。むしろ自然権である自衛権そのものの行使の形態を否定したのが九条だと、そう解釈する以外に、法制局長官のおっしゃるように、集団的自衛権は行使できないんだというようなことは憲法上どこから出てくるんですか。
  113. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) お答え申し上げる前に申し上げなきゃいけませんことは、自衛権というものは、確かに国際法上固有の権利として国連憲章第五十一条においても認めておるところでございます。自衛権というのはいわば一つの権利でございまして、その自衛権に、国連憲章で認められる前は個別的——インディビデュアルというような形容詞をつけないでザ・ライト・オブ・セルフディフェンス——自衛権ということで、いわば個別的自衛権と申しますか、最近、学者の用いますことばでは個別的自衛権というものを表現していたんだと思いますが、国連憲章になりまして、このインディビデュアルのあとにオアだったと思いますが、インディビデュアル・オア・コレクティブという形容詞がつきまして、個別的及び集団的の固有の自衛の権利というふうなことばづかいになったわけでございます。したがって——したがってと申しますか、自衛権というものはいわば一つの権利、所有権というような権利がございまして、その自衛権の発動の形態としてインディビデュアルに発動する場合とコレクティブに発動する場合とあるという観念じゃないかと思います。憲法第九条の説明のしかたとして自衛権、自衛権と言っておりましたのは、いわば狭い意味のインディビルデュアル・セルフディフェンス・ライトというようなものを頭に置いて説明をしてきたわけでございまして、広い意味の自衛権という形になりましても、自衛権というものは一つで、その発動の形態がインディビデュアルかコレクティブだという説明をいたしますと、先ほど申し上げましたように、日本の憲法第九条では、先ほどおっしゃいましたように、国際紛争解決の手段としては武力の行使を放棄しております、自衛権があるかどうかということも問題だと仰せられましたが、その件につきましては、少なくとも最高裁の砂川判決において自衛権が承認をされております。その自衛権を持っているというところまでは最高裁の判決において支持をされておりますが、これから先が政府の見解と水口委員やなんかの仰せられますような考え方との分かれ道になると思います。先ほど私が申し上げましたのは、憲法前文なり、憲法第十二条の規定から考えまして、日本は自衛のため必要な最小限度の措置をとることは許されている。その最小限度の措置と申しますのは、説明のしかたとしては、わが国が他国の武力に侵されて、国民がその武力に圧倒されて苦しまなければならないというところまで命じておるものではない。国が、国土が侵略された場合には国土を守るため、国土、国民を防衛するために必要な措置をとることまでは認められるのだという説明のしかたをしております。その意味で、いわばインディビデュアル・セルフディフェンスの作用しか認められてないという説明のしかたでございます。仰せのとおり、憲法第九条に自衛権があるとも、あるいは集団的自衛権がないとも書いてございませんけれども、憲法第九条のよって来たるゆえんのところを考えまして、そういう説明をいたしますと、おのずからこの論理の帰結として、いわゆる集団的自衛の権利は行使できないということになるというのが私ども考え方でございます。
  114. 水口宏三

    水口宏三君 いまの長官お答え、何かちょっと……、十二条、十三条とおっしゃいますが、十二条、十三条というのは関係ないんじゃないですか。——それはまあいいです。憲法をごらんになっていただくと十二条は自由及び権利の保持、濫用禁止、利用責任の問題である。十三条は個人の尊重の問題ですね。別に九条とは直接関係がないと思います。  それはさておきまして、私はいままで、だからそういうことがあろうかと思ってずっと詰めてまいったのであって、まず第一に海外派兵の問題から入り、海外派兵はできないんだということは、これはまあ早急に具体的な態様を御検討願う、五十一条の集団的自衛権というものがまさに正当防衛の自然権であるということについて、これは法制局長官はお認めになったわけですね。正当防衛のこれは特殊な、つまり自衛権というものを個別的自衛権と集団的自衛権に分けたのは行使の形態を分けたにすぎないのであって、本質は自衛権というものにあると思うんです。それは当然自然権として持っているものである、だからこそサンフランシスコ条約にも日ソ共同宣言にも、また日米安保条約の基本としてこれは据えられておるわけですね。その行使しないというのは、これは憲法論ではなくて政策論なんです。憲法にそんなことは全然書いてない。それはむしろ前文の思想をもし強調なさるならば、これはまさに、第九条というものは自衛権の行使の形態としての武力の行使を禁止したと見るのが常識ですよ。憲法前文に引っかけて、個別的自衛権は武力でもって行使できるが、集団的自衛権は武力で行使できない、自然権を制約するような、そういう規定がどこにあるのですか、前文に……。まして十二条、十三条は全然関係ないです。
  115. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 先ほど憲法第十三条と申し上げましたが、その前に、前文の中に一つ、その前文の第二文と申しますか、第二段目でございますが、「日本国民は、恒久の平和を念願し、」云々ということがございます。それからその第一段に、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」ということで、この憲法を制定いたしまして、さらに憲法第九条の規定を設けたわけでございます。その平和主義の精神というものが憲法の第一原理だということは、これはもうあらゆる学者のみんな一致して主張することでございます。そして「日本国民は、恒久の平和を念願し、」のあとのほうに、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」ということで、平和主義をうたっておりますけれども、平和主義をうたいまして、武力による侵略のおそれのないような平和社会、平和的な国際社会ということを念願しておりますけれども、現実の姿においては、残念ながら全くの平和が実現しているということは言えないわけでございます。で、その場合に、外国による侵略に対して、日本は全く国を守る権利を憲法が放棄したものであるかどうかということが問題になると思います。そこで国を守る権利と申しますか、自衛権は、砂川事件に関する最高裁判決でも、自衛権のあることについては承認をされた。さらに進んで憲法は——十三条を引用いたしましたのは、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」ということで、個人の生命、自由及び幸福追求の権利を非常に重大な価値のあるものとして、第十三条は保障しようとしているわけでございます。そういうことから申しますと、外国の侵略に対して平和的手段、と申せば外交の手段によると思いますが、外交の手段で外国の侵略を防ぐということについて万全の努力をいたすべきことは当然でございます。しかし、それによっても外国の侵略が防げないこともあるかもしれない。これは現実の国際社会の姿ではないかということになるかと思いますが、その防げなかった侵略が現実に起こった場合に、これは平和的手段では防げない、その場合に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が根底からくつがえされるおそれがある。その場合に、自衛のため必要な措置をとることを憲法が禁じているものではない、というのが憲法第九条に対する私どものいままでの解釈の論理の根底でございます。その論理から申しまして、集団的自衛の権利ということばを用いるまでもなく、他国が——日本とは別なほかの国が侵略されているということは、まだわが国民が、わが国民のその幸福追求の権利なり生命なり自由なりが侵されている状態ではないということで、まだ日本が自衛の措置をとる段階ではない。日本が侵略をされて、侵略行為が発生して、そこで初めてその自衛の措置が発動するのだ、という説明からそうなったわけでございます。
  116. 水口宏三

    水口宏三君 それは後半は政策論ではないですか。憲法上ですね、そういうことを明確に規定している条文はどこかということを私は伺っているのです。むしろこれには二つの根拠があって、国連憲章五十一条から出てくる自然権、正当防衛の自然権としての集団的自衛権という概念と、それから日本国憲法第九条から出てくる、あなた方のおっしゃる自衛権という概念と、その概念があいまいだから、常に政策論でもってそこをつながなければならなくなるわけですね。たとえば先ほどのお話の、明らかに日本に向かって艦隊が攻めてくる場合には当然これを迎撃する。だからこれはもう集団的自衛権というものとまさに密接な関係——その国が侵されることは日本の安全が脅かされるという、つまり日本の安全が脅かされるというのは、まさに日本国民の生命、財産が脅かされるということですよ。そうでしょう、長官日本の安全が脅かされるということは。そういう場合にのみ正当防衛権的な自然権として集団的自衛権を認めているのであって、それを何か個別的自衛権と集団的自衛権とは全く別な概念であって、それを何か政策的につないで十三条を間に入れるなんというのはこっけいですよ、それは。法律論じゃないですよ、それは。明確にしてください、そこのところ。
  117. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 政策論として申し上げているわけではなくて、第九条の解釈として自衛のため必要な措置をとり得るという説明のしかた——先ほど何回も申し上げましたが、その論理では、わが国の国土が侵されて、その結果国民の生命、自由及び幸福追求に関する権利が侵されるということがないようにする、そのないようにするというのは非常に手前の段階で、昔の自衛権なり生命線なんていう説明は、そういう説明でございましたけれども、いまの憲法で考えられておりますような自衛というのは最小限度の問題でございまして、いよいよ日本が侵されるという段階になって初めて自衛のための自衛権が発動できるという、自衛のための措置がとり得るということでございますので、かりにわが国と緊密な関係にある国があったとして、その国が侵略をされたとしても、まだわが国に対する侵略は生じていない、わが国に対する侵略が発生して初めて自衛のための措置をとり得るのだということからいたしまして、集団的自衛のための行動はとれないと、これは私ども政治論として申し上げているわけでなくて、憲法第九条の法律的な憲法的な解釈として考えておるわけでございます。
  118. 水口宏三

    水口宏三君 納得できませんね。わが国と密接な関係にあるということは、たとえばアメリカと非常に密接な関係がありますね。じゃアメリカがどこかの国から攻撃されたからといって、直ちにわが国の安全は脅かされません。そうでしょう。だから最初に、私はむしろ集団的自衛権というのは正当防衛権的な自然権であるということを長官お認めになっているわけですよ。だから密接であるということは、単なる政治的な密接さとか、あるいは経済的な密接さではなしに、まさにその国が脅かされるということが、わが国の安全、すなわちわが国民の生命、財産を脅かされるということであって、そのときに初めて集団的自衛権というものが発動できるからこそ、正当防衛権的な自然権ということが言えるんじゃないですか。そこを何かあいまいに密接な密接なとおっしゃるけれども、わが国の国民の生命、財産が脅かされるまではと言うけれども、一方、久保防衛局長に聞けば、明らかにわが国を攻撃するという艦隊に対しては、その艦隊に向かって攻撃することは当然の防衛行動であると、こういうお話があるから、どうしてそこが結びつくのですか。だから法制局長官は密接なということばでごまかしている。密接なというのは政治的に密接である、経済的に密接であるという意味じゃないですよ。まさにわが国民の生命、財産に影響を与えるか与えないかということは、これは正当防衛権的な自然権として成立するかしないかのけじめじゃないですか。
  119. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 私が密接と申し上げました、密接ということばを使って申し上げたつもりでございますのは、たとえわが国と非常に密接な関係がある国があったとしても、その国に対する攻撃があったからといって、日本の自衛権を発動することはできないという意味で、密接のことばを使ったわけでございまして、いま水口委員の仰せられますように、わが国と安全保障上と申しますか、国家の防衛上緊密な関係にあるその国が攻められることは、日本の国が攻められると同じだというような意味の考え方はしておりません。
  120. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、集団的自衛権というのは拡大されるわけですか。私はむしろ、先ほど申し上げた憲法調査会の論議を見ても、正当防衛の自然権として、これを一応国際的にも、また憲法調査会の中での論議でもそれを大体認めているわけですね。正当防衛の自然権というものは集団的自衛権に該当し得るということは、これは明らかにわが国民の生命、財産、こういうものが脅かされるという前提でなければ、これは私は発動できないだろうと思うのです。ただ密接さということばにはいろいろな密接さがあると思う。そうでなくて、この場合は、まさにAという国が攻撃されることがわが国の国民の生命、財産を脅かされるというところにあるのじゃないですか。それを、あなたさらに拡大して、そういう意味で言ったのじゃないのだというふうになってきたら、どことでも軍事同盟を結んで戦争できるじゃないですか。
  121. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 国際法上の観念としての集団的自衛権、集団的自衛のための行動というようなものの説明として、A国とB国との関係一定の緊密な関係にあって、そのA国とB国が共同防衛のための取りきめをして、そうしてA国なりB国なりが攻められた場合に、今度は逆にB国なりA国なりが自国が攻撃されたと同様として武力を行使する、その侵略に対して。そういう説明は、国際法上の問題としてはいま水口委員の仰せられましたとおりだろうと思います。ただ日本は、わが国は憲法第九条の戦争放棄の規定によって、他国の防衛までをやるということは、どうしても憲法九条をいかに読んでも読み切れないということ、平たく申せばそういうことだろうと思います。憲法九条は戦争放棄の規定ではございますけれども、その規定から言って、先ほど来何回も同じような答弁を繰り返して恐縮でございますけれども、わが国が侵略をされてわが国民の生命、自由及び幸福追求の権利が侵されるというときに、この自国を防衛するために必要な措置をとるというのは、憲法九条でかろうじて認められる自衛のための行動だということでございまして、他国の侵略を自国に対する侵略と同じように考えて、それに対して、その他国が侵略されたのに対して、その侵略を排除するための措置をとるというところは、憲法第九条では容認してはおらないという考え方でございます。
  122. 水口宏三

    水口宏三君 どうも法制局長官の御答弁はときどき変わるのですけれども、他国の防衛なんかと私いつ言いました。他国の防衛なんということは、これはもう集団的自衛権に絶対入らないのです、初めから。何回も私申し上げているでしょう。これは憲法調査会でも言っているように、自国にとっての正当防衛の自然権なのです。どういう場合が成立するのですか、自国の国民の生命、財産が脅かされる場合に、これに対して行動起こす、これがまさに正当防衛の自然権じゃないですか、それを他国の防衛のために集団的自衛権を発動するのはおかしい。これは初めから集団的自衛権から逸脱しているのです。私が申し上げているのは、そういう状況において集団的自衛権が発動できないという憲法上の規定がないではないか。あなた方は第九条の解釈、ことに前文についてさっきあなたるるおっしゃいましたけれども、前文は宣言的なものであって、残念ながらこのとおりいっていない、このとおりいっていないから第九条で自衛権の発動もやむを得ないのだ、そういうことをおっしゃっている。自衛権の発動、武力行使の形態もやむを得ないのだということをおっしゃっている。しかも集団的自衛権というのはまさにそれに該当するではないか。何も初めから二つ自衛権があるのではない、自衛権というのは一つです。しかもそれはあくまで自国の国民の生命、財産が脅かされた場合、これを守るための自然権である。これを私はむしろ憲法上の、あるいは国連憲章上の基本的解釈だということは、だからこそ前に念を押した上でこの論議を進めているのです。ときどきお変えになる。わが国は他国の防衛のために出ていかない——そんなことはあたりまえのことですよ、一言もそんなことは言っていない。いかがですか。
  123. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 先ほどの、他国を防衛するということばづかいはけしからぬというお話ですが、集団的自衛権と申しますのは、さっき申しましたように、A国とB国がいわば防衛上の関係として緊密な関係にあって、相互に防衛をするということを取りきめをするという関係にあった場合、A国に対する侵略があった場合にB国がそのA国に対する侵略は自国に対する攻撃と同視して、その侵略に対して武力を行使するということでございますので、まあ簡単に比喩的に、他国を防衛するということばを申したわけでありまして、刑事法上の正当防衛の観念を、正当防衛権申しますか、正当防衛の観念を国際法学上取り入れて、国際法上固有の権利として自衛の権利を説明するのに用いたという説明を、先ほど私申し上げました。その観念を変えたつもりは全くございません。
  124. 水口宏三

    水口宏三君 それは法制局長官、非常に大きなミスを犯していらっしゃるのじゃないですか。大体、集団的自衛権の場合に、あらかじめA国とB国が取りきめを行なう、このことはむしろ一般的には五十一条の集団的自衛権の拡大解釈であるといわれているのですね。これは五十一条は、私が言うまでもなく、急迫不正の侵略が行なわれた場合ですね、その場合に自然権として発動されるものであって、前提として取りきめがあるかないかなんということは、全然関係ないですよ。それを拡張して現在不必要に取りきめを行なっているところに問題があるのじゃないですか。どこに取りきめなんという規定がありますか、五十一条に。だからこそ自然権といわれているのじゃないですか。
  125. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 私が取りきめと申しましたのは、取りきめが絶対なければいけないということではもちろんないと思います。ただ、その取りきめも何もなしに、そのA国とB国がそういう関係にあった場合に、A国が侵略されたというのでB国が当然にそれを助けるというものではなくて、その場合には事前の段階でA国の要請なり、あるいはA国の承認が要るのだろうと思います。そういうものを、一般的には取りきめという形で事前に合法化するといいますか、合理化するということを一般普通の場合にはこうだということで申し上げたつもりです。  もう一つは、取りきめさえあればいいということではございませんで、A国とB国とが防衛上緊密な関係になければならぬ——先ほどおあげになりました、非常に地球の反対側にあるような遠隔の地との間にも、取りきめさえあればいいというようなことになっては困るというようなお話がございましたけれども、そういうものが容認されるということは私は考えておりません。
  126. 水口宏三

    水口宏三君 それでもなおかつこの五十一条の解釈として、取りきめがあるときはもちろん論外です。明示の要請があった場合に限るかどうかということすら、これはいままで確定しておりませんね。むしろこれは自然権である以上、明示の要請を必要としないという解釈のほうが一般解釈だと思うのです。これはなぜかといえば、A国にとってはB国に対する攻撃が自国の国民の生命、財産を脅かすものとみた場合に、これはA国が出ていくということは、まさに自衛権の発動だから、B国からの明示の要請がなくてもいいのだという解釈のほうが、むしろ私は一般的自然権としての解釈だと思います。それをあなたは、明示の要請がなければいかぬとおっしゃるけれども、それはそういう解釈にお立ちになっているのですか。
  127. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) これは国際法の問題で、私それほど専攻したわけではございませんので、あるいは条約局長から補足してもらったほうがいいかと思いますが、大体の大かたの学説では、そういうことであったと、私いまの記憶では考えております。  それから、ついでと申しては恐縮でございますけれども、たとえばケルゼンのような学者は、コレクティブ・セルフディフェンス・ライトというものについて、自衛権の観念に入れることは、もともと無理だというような説明をしている学者さえあることをつけ加えておきます。
  128. 水口宏三

    水口宏三君 いまいいことをおっしゃった。そこで私は、まさに集団的自衛権が乱用されているところに問題がある。大体、集団的自衛権という観念が、本来の国連憲章のサンフランシスコの原案にはございませんですからね。これはダンバートン・オークス会議ですか、あそこで初めてアメリカ側から入れられ、五十三条の旧敵国の文言がソ連側から入れられたというのは、私が申し上げるまでもないことだと思います。そういう意味で、集団的自衛権というものは、初めから非常にあいまいなものであるが、少なくとも法的解釈としては、正当防衛に関する自然権であるというのがいま確立をしている。それを前提にして、日米安保条約が締結されているにもかかわらず、あえて日本は集団的自衛権を行使しないというのは、これはまさに政策論じゃないですか。法律論じゃないですよ。この点、条約局長いかがですか。
  129. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 私の、これはお答えと申し上げるより釈明みたいなものでございますが、平和条約の五条のC項でございますか、と安保条約の前文、日ソ共同宣言で、わが国が自衛権を持っているということは確認をしております。その自衛権には、形容詞がついておりまして、個別的及び集団的自衛の固有の権利があるということで、条約上うたわれておりますが、これは国際法上の問題として、日本が自衛権を持っている、その自衛権というのは個別的及び集団的なものであるということを国際法上うたったわけでございまして、憲法上こういう権利の行使については、また別途措置をしなければならない。憲法ではわが国はいわば集団的自衛の権利の行使について、自己抑制をしていると申しますか、日本国の国内法として憲法第九条の規定が容認しているのは、個別的自衛権の発動としての自衛行動だけだということが私ども考え方で、これは政策論として申し上げているわけではなくて、法律論として、その法律論の由来は先ほど同じような答弁を何回も申し上げましたが、あのような説明で、わが国が侵略された場合に、わが国の国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るためにその侵略を排除するための措置をとるというのが自衛行動だという考え方で、その結果として、集団的自衛のための行動は憲法の認めるところではないという法律論として説明をしているつもりでございます。
  130. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ、まあこの問題はまだ何回か機会がありますから、これ以上論争してもしかたがないと思います。ただ、私が申し上げたいのは、集団的自衛権に対する解釈について法制局長官がしばしばこれをお変えになってきている。さっき申し上げた正当防衛の自然権であるという立場に立って、この場合の解釈は、まさに日本国民の生命、財産が脅かされるような状況というものは、これが正当防衛のための自然権であるとすれば、どこかの国がある艦隊を率いて日本を攻撃する場合と、当然Bという国を通って日本を攻撃する場合とあるでしょう。そういう場合、Bが攻撃されることは即わが国の国民の生命、財産を脅かされると思って、これに対して防衛するのだ、これが集団的自衛権だというふうに解釈するのなら、これは私はどうも妥当なような気がいたしますが、これ以上論争いたしません。  ただし、ここで、もしいま法制局長官がおっしゃるように、憲法上集団的自衛権というものの行使が禁止されているという解釈にお立ちになるなら、何で日米安保条約の前文に、権利を有することを確認し、次のとおり協定するというような条項が入ってくるのですか。これは明らかに放棄しているものなら、日本が集団的自衛権を持っていないということを前文に明記すべきではないですか。
  131. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) これはサンフランシスコ平和条約をはじめ、ほかの文書にもございますけれども日本が主権国としてこういう権利を持っているということを確認しただけのことでございまして、安保条約そのものの中では、そのような意味での集団的自衛権は日本は行使できないということを前提に全体が起草されております。と申しますのは、先ほどもちょっと申しましたけれども日米安保条約というものは、いわゆる安保条約の中では非常に特殊な条約でございまして、相互防衛条約になっておらない。それはまさに日本に集団的自衛権を行使することができない憲法上の制約があるからそうなっているということでございます。前文は、何回も申しますけれども、他の平和条約その他の文書と同じように、日本が主権国家として当然持っていることをここに確認したということだけの意味でございます。
  132. 水口宏三

    水口宏三君 それは条約局長、サンフランシスコ条約をお読みになってごらんなさい。これは日本がみずからの意思でもってやったのじゃないのですよ。つまり講和する相手国が日本にそういうものを認めるという、許容するということにすぎない。日本から何ら積極的にそれについて意思表示をしていないのです。日ソ共同宣言の場合もソ連は日本に、日本はソ連に認めているのですね。ところが安保条約だけは、相互に持っていることを、両国が固有に持っている、これを確認しているんですね。相互に両国が持っていることを確認しているんですよ。だから、サンフランシスコ条約、日ソ共同宣言から見ると、これは明らかに日本が集団的自衛権を持っている、しかもその行使について何ら前文には制限をうたっていないんですね。とすれば、これはまあ当然いままでの自然権としての集団的自衛権の行使というものを安保条約では禁止しているんだということには全然ならないと思います。結局、いままでの条約をずっと羅列してきて安保条約へきて、ついにこれはもう、相互にお互いが持っていることを確認し合ったんですね。それでどうして日本だけが集団的自衛権を放棄するなんということが出てくるんですか。
  133. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) それは、先ほどから吉國長官が御答弁しておられますとおり、憲法の自己抑制というのがございまして、日本には集団的自衛権はあるけれどもこれを行使できない、そういうたてまえで安保条約ができておるということを申しておるわけでございます。
  134. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、私もう一回。あとで統一見解を伺いたいんでございますけれども、どうもいままでの御答弁を伺っていると、少なくとも国連憲章五十一条の集団的自衛権に対する一般的な概念、日本国憲法第九条に対する解釈、これを法制局長官は十三条までお加えになった、あるいは憲法の前文まで引用なさった、それらを含めて、何で憲法第九条というものが集団的自衛権の行使を——を自己抑制とおっしゃっているが、禁止でしょう、禁止していると見ていいんでしょう——禁止しているのか、その点をもう少し文書で明確にしていただきたい。いままでの論議では納得できないんです。いま申し上げたような五十一条における集団的自衛権というものの概念、それから憲法前文、九条、十三条、それから日米安保条約、これらを含めて、日本が集団的自衛権の行使を憲法上禁止されているということをもう少し国民にわかりやすく言っていただきたいんですね。おそらくきょうの論議を聞いて国民は何が何だかわからないわけです、このままでは。自己抑制だなんて——自己抑制というのは、私非常に主観的なものであって、だから当然憲法論議である以上、それは解釈の相違もございましょうが、これは単なる解釈の問題ではないと思うんですね。その点明確にひとつ文書でもって御回答いただきたいんでございますけれども増原防衛庁長官いかがでしょうか。
  135. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) なお、御趣旨をよく承りましたので、検討いたしましてお答えをいたします。  この際申して恐縮ですが、先ほど海外派兵の統一解釈と申しますか、一週間ぐらいと申しましたが、いまもお話を聞いておって、これは両者まことに一体のものでございまして、約一カ月ぐらいの御猶予をいただきたいということで、解釈を申し上げる……。文書をもってやることはよろしゅうございます。文書でお答えをさせることにいたします。
  136. 水口宏三

    水口宏三君 そうすれば、これを伺うのはちょっとあまり意味がなくなるのでございますけれども、日米共同声明の例の韓国条項と台湾条項でございますね、これはまさに日本の自衛とは全く無関係である、自衛権の行使とは無関係であると解釈してよろしいんでございますか。増原防衛庁長官
  137. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 先ほどから申しておりますとおり、日本は集団的自衛権を行使することができないというたてまえでございますので、韓国であろうとどこであろうと、外国との関係におきまして、日本の持ついわゆる個別的な自衛権との関係では何ら関係はございません。
  138. 水口宏三

    水口宏三君 いやいや、個別的な自衛権とは関係がないかもわかりませんけれども、私が申し上げるのは、少なくとも日米共同声明の中では、韓国の安全は日本の安全と非常に緊密な関係にあるということが書いてありますね。韓国に——日本を攻撃する意図を明らかに持ったと思われるどこかの国の軍隊が、韓国を軍事攻撃し、韓国を占領する。それは日本にとっての非常な脅威でございますね。そういう場合であっても、集団的自衛権の行使は行なわない、そう解釈してよろしいんですか。
  139. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 確かに先生の御指摘のような事態は、非常に日本にとっても脅威であろうかと思います。しかし、これに対処する日本の行為としましては、集団的自衛権は行使できないということは、確固たる立場でございます。
  140. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、一応海外派兵の問題につきましてはその程度にいたしたいと思います。  それでは、いまの統一解釈を伺った上でまた論議をいたしたいと思いますけれども、そうすると、日本が集団的自衛権の行使を行なわないということを前提にして、今度の四次防につきまして防衛庁の原案がつくられて、いま国防会議でも関係閣僚会議でも——きょうも何か御審議なさったそうでございますけれども、新聞等を見ますと、増原防衛庁長官は五次防から六次防まで何か考えていらっしゃるらしいんでございますけれども、一言で言って四次防の骨子と今後の見通しでございますね、これをあらためて——これはもう時間がございませんので、要点だけぜひひとつここで御意見を承りたいんです。この場合に、できますならば、これまで非常に論議されました中曽根構想と異なる点あるいはこの前の衆議院の内閣委員会でも問題になった防衛力の限界等も含めて、現在の四次防というものの位置づけ、それから大体基本的な要点、性格、そういうものを、概略でけっこうでございますからお示し願いたいと思います。
  141. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 四次防の性格、位置づけ、これはいま御質問にありました四次防原案、いわゆる中曽根案というものとの関係において申し上げたほうがわかりいいように思うのでありまするが、防衛庁原案は昭和四十七年度を初年度といたしまして五年間の計画でありまするが、これは十年後のいわゆる防衛上の状態想定をしこれに対処をする、これはもちろん背景に日米安保条約というものがあるわけでありまするが、これに対処をするというこの防衛力を一応検討想定をいたし、その防衛力と見合って五年間の第四次防衛力整備計画をつくったという性格のものであります。これが昨年来の原案作成以来の、いろいろの経過に基づきまして一つの大きい経過は、ニクソン大統領の訪中すなわち極東における緊張の緩和、これはさらに訪中だけの問題でなく、極東における緊張の緩和、世界的にもほかの部面においても緊張緩和というような傾向も若干出ていることは御承知のとおりでございますが、そういうことと、いわゆるニクソン・ショック、ドル・ショックといいまするか、これに続く通貨不安、国際通貨不安、これによりまする日本の経済財政の見積もりのダウンというふうなものが一つのあれになったと思うのでございます。それと、手続上四次防策定ということが、いろいろの理由はありましたが順調に進みませんで、四十七年度を初年度として発足するということでございましたが、四十七年度に至る前に国防会議で決定することができないということになりました。したがいまして、二月七日でありましたか、四次防の大綱、これは三次防の場合にも大綱というものをつくりましたが、四次防の大綱をつくるにとどまる、そうしてその大綱をつくりまする際には、原案にありました構想、十年先の一つ防衛力を考えた上で四次防を策定するという考え方は取りやめまして、いままで一次防、二次防、三次防と、三次防までの日本国の持っておりまする国防の基本方針にのっとってまいりました防衛力の整備、この三次防における整備の大綱その他に示しておりまする整備の方向に、それを踏襲をするといいますか、そういう方針で防衛力を整備をしていくという形で四次防の大綱がきめられたということでございます。四次防を正式にきめるというのには、主要項目をいままでのそれによってきめなければならぬのでありますが、これがその後手順よくきまりませんで、二月七日に、夏以降四次防を決定する、策定するということでありましたが、六月三十日に、夏以降なるべくすみやかにということで、六月三十日にも決定できないという形でいまに及んでおるわけでございます。したがいまして、この中曽根構想の際には、十年後の一つ防衛力というものが想定をされておる。したがって、これは見方によりましては、一つの限界というものが、十年後の防衛力という形であった、そういうものはなくなったというふうな見方がされるわけでございまするが、その十年後の防衛力というものが、防衛力の限界という形で原案で示されたというものともちょっと違うと思うのでございます。しかし、それにしても、十年という相当の長期にわたるめどというものがあったが、今度はそういうものがないんではないかという意見があるわけでございます。もともと防衛力の限界ということは、本来理論的に考えまするとなかなかむずかしいものでございまして、私もなかなかそういうものは示しにくい、つくりにくいということを申し上げたことがあるわけでございまするが、しかし、中曽根原案においては、一応この防衛力の限界等も考えられるようなものが出ておるということにもかんがみまして、私どももいろいろ状況前提というものをつくっていくならば、やはり一つ防衛力の限界といいまするか、そういう意味の防衛力を検討できるのではないかと考えまして、いまそういう意味のめどとなる防衛力というものの策定に取りかかったところであります。これは取りかかったばかりでございます。年内にはそういうのをひとつお示しできるようにしたいというつもりで、そういうものを考えておるわけでございまして、そういうものを一つ持って、そして現在の四次防というものは、三次防で考えておりましたような基本方針と同じような基本方針に基づいた防衛力の整備計画、国力、国情に応じて効率的な防衛力をつくっていくという国防の基本方針に基づいたものであるというたてまえでございます。
  142. 水口宏三

    水口宏三君 まあ四次防の問題そのものは、また別途内閣委員会で十分伺いたいのでございますけれども、問題点を二、三伺っておきたいのでございますが、いまの長官お話ですと、大体年内には防衛力の限界というか、大体日本における防衛力の構想というものが固まる。それに向けて、それが第五次になるのか、第六次になるのか、それに向けてさらに防衛力の拡大をはかっていくというふうに理解してよろしいのですね。第四次防はとりあえず三次防の延長であるということでございますか。
  143. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 四次防をつくって、五次防というものはつくるのか、つくらないのかという御質問がこの前ありましたので、その場合に、私のほうからは、やはりいまの防衛力整備の方針、段階からいえば、やはり五次防というものもおそらくつくるようになりましょう、こう申したのでありますが、しからば五次防というものについて、一応の構想を持っておるかと言われますると、まだその段階ではございませんで、いまの四次防の整備というものを考えますると、おそらく五次防というものをやはり考えなければならない。したがいまして、五次防のあと六次防をやるか、やらないかという問題はいままだお答えできる段階ではないということでございます。
  144. 水口宏三

    水口宏三君 じゃ、こう理解してよろしいわけでございますね。大体年内には、日本におけるいわゆる防衛力というものの限界とまではいかなくても、大体の構想がつくられる、それで四次防は、そのうちの何割までが四次防で達成できるのか、あるいはそれで四次防で完結するかもわからないし、もし残れば、残ったものを五次防あるいは五次防が三年であるのか五年であるのか、さらにそれで足りなければ六次防、そのこと自体が、要するに年内につくられるであろう防衛力の構想に従って今後きめられていく、ただし、それには当然日本の経済力の問題とか、国際情勢の影響もありましょうけれども、大体防衛庁ストレートの考え方としては、そういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  145. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) まだ限界というものが、どういうふうになるかということについて、大ざっぱなめどもついておりませんので、これができました段階で、あとはまあ四次防でその目的を達するか、あるいは五次防、まあ大体五次防というようなものをやるとすれば、いままでのあれからいうと五年ぐらいというふうなことにおそらくなるのではないかと思いまするが、そういうふうなことで限界に達し得るかどうか、それはまだ全然見当も申し上げる段階ではないということでございます。
  146. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、まあこの前の内閣委員会のときでしたけれども防衛白書——この委員会でございますね、防衛白書をおつくりになるという御答弁をいただいておりますし、それとあわせて、将来の防衛力の大体の構想というものを年内につくられるならば、その後の防衛庁としての防衛計画も変わるかもしれませんし、その点はこれで一応やめたいと思いますが、ことばじりをつかまえるわけでございませんけれども防衛庁長官、衆議院の内閣委員会で、戦略守勢ということばをお使いになり、戦略守勢というのは専守防衛と同じ意味だということをおっしゃっておりますが、それはそういうふうに理解してよろしいのですか。
  147. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 私が使いました戦略守勢ということばの意味は、専守防衛と言っている意味と同じような意味で使いました。最初に申し上げた、私が戦略守勢ということばを使ったときの報道というものが、ちょっと私も十分ことばを尽くしてその際、意見を申したのではなかったので、報道されたところがだいぶこう違った、私の申し上げたいと思ったことは違ったようになっておったという意味で、あの際、私が考えておりまする戦略守勢という内容は、専守防衛ということと同じでございますという意味で申し上げたつもりでございます。
  148. 水口宏三

    水口宏三君 私は、むしろ専守防衛ということばは、これは政治用語だと思うのでございますね。専守防衛と言われてもわからないのでございます、どういう意味だか。むしろ長官が端的におっしゃった戦略守勢ということのほうが軍事用語としては非常にわかりやすいわけでございますね。だから私は、むしろ戦略守勢と長官が言われたことは、まあ基本的立場は異なるにしても、用語としては私は戦略守勢のほうが的確ではないか、ということは、この間久保防衛局長からの御答弁にもあったように、具体的に攻撃が行なわれ、それに対して日本が反撃を行なう場合、戦術的にはこちらが攻勢に出る場合も十分あり得るわけですね。したがって、戦略的にはあくまで守勢である。ただし戦術的には攻勢に出る場合もあり得るのだ、専守防衛ということになってくると、何が何でも要するに、カメが甲らに引っ込むみたいに、戦術的に常に守勢なんだというようなことになってくる。そういう意味で、私は、むしろ自衛隊というものを肯定なさる現在の政府、その当の責任者である防衛庁長官としては、むしろ専守防衛などというあいまいな政治用語よりは戦略守勢ということばを堂々とお使いになったほうが、われわれもわかりやすいし、また質疑もしやすい。そういう意味ではどうなんですか、どちらが主体なんですか。
  149. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 何といいますか、文字の問題、解釈の問題としては、水口委員のおっしゃられるとおり、私は、戦略守勢ということばを使うほうがいいと思う。これも私が考えたのではなく、専門家である防衛局長その他に、これは今度でなく去年教わったことばでもある。そして防衛庁としては、大体戦略守勢ということばを使っておったのですが、これはしかし、何といいまするか、戦略守勢ということばは、ややもすると、攻撃は最良の防御なりというようなことばが昔ありまして、また、ばりばりと攻撃をかけていくという姿勢だと受け取られやすいというようなこともありまして、専守防衛ということばが使われるようになった。これは防衛庁でそういうことばを使い出したのは最近のことのように私は思うわけであります。しかし、戦略守勢ということばはたいへん積極的な出撃、ある場合における積極的な出撃ということを思わせるというふうにやはり解釈をされますので、そういうふうに解釈をされることは避けたいという意味で、私も専守防衛ということばを近ごろは使っておる、まあこういうことでございます。
  150. 水口宏三

    水口宏三君 どうもことばの問題でございますけれども、専守防衛であれ戦略守勢であれ、いずれにしても戦術的にはこちらが攻撃に出る可能性というものは、これは十分あり得るわけでございますね。
  151. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) そういうことでございます。
  152. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、先ほどの海外派兵の問題はまさにその点と密接な関係もございますので、その点が誤解されないように、海外派兵の問題についての具体的な文書回答をお願いいたしたいと思います。  それから、きょうはそれが主題でございませんので簡略にいたしますけれども、今度四次防をつくることによって日本防衛力は相当強化されるわけですね。そういう主体的な条件だけでなしに、もうニクソン・ドクトリンが具体的な実施段階に入り、韓国なり台湾なりからもうすでにアメリカ軍が引き揚げていく。で、ニクソン・ドクトリンをアジア地域においても実現するということが、アメリカのかなり基本的なこれはむしろ軍事政略と申すのでしょうか、単に軍事的な問題だけでなしに、むしろドル危機などが大きな原因だったと思うのですが、まさに軍事政略としてニクソン・ドクトリンの実現を今後もますますはかってくるだろう。特に、それとの関連で国防総省が、ことしの二月にレアード長官が上院で証言した問題、あるいは一昨日の新聞などを見ますと、インド洋の艦船防衛まで日本海上自衛隊が分担をすべきだというようなこと等、そういう国防総省の考えているいわゆる全戦力構想というのですか、各地域の通常兵力だとかアメリカの核兵力、あるいは第七艦隊、こういうものを全部結びつけた全戦力構想がニクソン・ドクトリンの線に沿ってますます具体的に推し進められてくるだろう。そういうアメリカの基本的な方向に対して、先日の田中・ニクソンのハワイ会談では、安保体制を堅持するということを確約していらっしゃる。これは、安保体制はまさにニクソン・ドクトリンあるいは国防総省の考えている全戦力構想によって逐次変質をしつつあると私は考えるのです。今後、四次防というものが安保体制の中で果たす役割りなり位置づけなり、そういうものをかいつまんで御説明いただきたいと思います。
  153. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) ニクソン・ドクトリンというものはほかのほうでもそうでしょうが、アジアで考える場合に、主として地上軍を主たる考え方に置いているように思うのですけれども、安保条約みたいなものをつくっておる各地、各国からだんだん兵を引いていく。そして、そういうことはそれぞれの与国が自分でできるだけ自分を守る力を増してもらいたい。そしてまた、集団的な協力によって守るということもしっかりやってもらいたい。なおかつ足りないところは、アメリカがいままでの条約の趣旨をちゃんと守って援助をいたしますということであるようでありますので、これが日本の安保条約に対する問題というのは、何と申しまするか、考え方として私は、基本的に変わるというか、そういうものではあるまいというふうに考えております。日本における四次防、防衛力整備でありまするが、これはそういうニクソン・ドクトリンを受けて、何といいますか、ごく普通のことばでは、米軍のやっておった防衛の仕事の肩がわりをする、そういうのかという質問を受けたことがあるわけでございまするが、そういうものではありませんで、日本は本来できるだけのことは自分で——防衛力のそのときのいろんな条件を考えてでありますが、できるだけのことは自分で自分を守る力を整備をしていくというのが初めからのたてまえであったわけであります。そういう意味で三次防、四次防というふうに整備をしていくことでありまして、米軍の日本を守ってくれる力の肩がわりをするという性格なり考え方のものではない。そうしてまた、アジアにおける安保の問題として考えました場合に、その考え方日本の立場において基本的に変わってくるというものでは——ニクソン・ドクトリンの実施といいますかが、かかわるものではないというふうに考えております。     —————————————
  154. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま佐藤一郎君が委員を辞任され、その補欠として嶋崎均君が選任されました。     —————————————
  155. 水口宏三

    水口宏三君 いまことばじりをつかまえるわけではないのですけれども防衛庁長官、なかなか正直におっしゃったと思うのですけれども、アメリカのニクソン・ドクトリンの一つ構想として、通常兵力における局地的な防衛については局地的な集団防衛ですね、こういうものを構想している面があると思うのです。そういう意味で、私は、四次防の果たす役割りというものをアメリカは非常に高く評価している。まあ二月のレアードの証言は、これはたまたま日本で四次防が問題になっていたので何か訂正したりしておりますけれども、最近もまた国防総省の発言などを見ても、かなり日本の守備範囲を逐次拡大することをアメリカは期待し、また、アメリカの中でそういうことは公然と論議をされておる。そういう前提に立って九月一日のハワイでの田中・ニクソン会談で安保体制の堅持ということが合意されたということは、日本の守備範囲がそれだけ拡大するというふうに一般の国民は印象づけられると思うのでありますけれども、そういうことは絶対にないということを言い切れるわけでございますか。
  156. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) あなたの言うことは、このニクソン・ドクトリンのあれが日本に響いてきますことは、これは安保条約をつくりました初めからある、日本日本の力としてできることはだんだん防衛力を整備をして、自分で自分を守る力を増大していくということで、初めからそのたてまえで安保条約ができておるわけであります。そういう意味で、いままではアメリカにたよっておった部分を日本が自分でできるようになって、防衛力も三次防から四次防ができれば整備される、そういう意味で、自力でやるものはふえていくということはまさにあると思います。それが日本の安保条約における何というか、防衛のたてまえを拡大していくんだ。かりそめにも、これは近隣の諸国に対してアメリカがそれらの国々の防衛について安保みたいなものを持っておるわけでありまするが、そういう場面において日本の整備された自衛力か何か出ていって、さっき言いました地域的集団防衛というようなものをニクソン・ドクトリンでは期待をしておると言いましたが、そういう問題も日本が引き受けていくというふうな方向は、もう絶対にございません。
  157. 水口宏三

    水口宏三君 この点は、いずれもう少し具体的な数字を出して内閣委員会で少し御質問したいと思いますので、それはひとつ保留して……。  大蔵省お帰りになりましたね。それじゃ、大蔵省お帰りになったんでちょっとまずかったんですけれども、四十八年度の概算要求大蔵省に御提出になっておりますね。
  158. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 概算要求は出しております。
  159. 水口宏三

    水口宏三君 この概算要求は、当然、第四次防を前提にしておつくりになった要求ですね。
  160. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 概算要求は、四次防を前提として概算要求を出しております。
  161. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、大蔵省がお見えにならないので困るんですが、現在では折衝をしていらっしゃる段階で、まだ第四次防は決定をしていない。概算要求査定が行なわれるということはちょっとふに落ちないのですけれども、それはどういう形でやっていらっしゃるのか、仮定の問題としてやっていらっしゃるのか。
  162. 小田村四郎

    説明員(小田村四郎君) 概算要求は八月三十一日に大蔵省提出いたしまして、九月一日から大蔵省に対して説明をいたしております。ただいま四次防のほうは、本日も国防会議議員懇談会がございましたが、すでに懇談会を繰り返されまして、国防会議のレベルにおいて御検討いただいておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、四次防の防衛庁案に基づいて大蔵省説明をいたしておるわけでございますけれども大蔵省としては四次防と、それから四十八年度の概算要求を同時に検討しておる段階であろうと考えております。四次防が近いうちに決定されるということになれば、大蔵省としてもその四次防の、政府で決定されました方針に基づいて四十八年度の予算査定する、こういうことになろうかと思いますが、まだ四次防は決定されておりませんので、並行して検討しておる段階であろうと考えております。
  163. 水口宏三

    水口宏三君 じゃ、防衛庁の四次防原案に変更がされた場合、これは当然、四十八年度の現在の概算要求というものも変わってくるし、大蔵省査定というものはきめられた四次防の原案によって行なわれる、それで、現在では非常に流動的だというふうに考えてよろしゅうございますか。
  164. 小田村四郎

    説明員(小田村四郎君) 実は、四次防のただいま御検討をいただいております内容は、本年の二月七日に決定されました四次防の大綱に基づきまして、装備の主要項目を国防会議で御決定いただきたいということで御審議をいただいているわけであります。したがって、そのほかの後方部門につきましては、四次防自体としてこまかい個々のものまですべて国防会議に付議するというものではございません。そういうわけでございますので、主要項目につきましては、四次防の決定がありました段階において決定の内容によりましては多少移動することも考えられます。しかし、後方部門につきましては、性質がそういうものでございますので、これは毎年度の予算で決定される、こういうことになるかと思います。
  165. 水口宏三

    水口宏三君 会計検査院の方、おられますか、お帰りになったのですか。
  166. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) おります。
  167. 水口宏三

    水口宏三君 この間の会計検査院のほうの御答弁の中で、防衛庁の検査をする場合に三つの障害があるということで、そのうちの一つの一朝有事ということが、いろいろな意味で壁になってなかなかわからぬということでございましたが、私は、やはり何もいまの自衛隊を肯定する立場じゃございませんけれども、国費を節約するという観点からいえば、当然、一朝有事の際における問題こそ経済効率との関係で常時これは検討されなければいかぬ問題だと、そういう意味で、会計検査院独自の立場で一朝有事の壁を破って、そういう場合の経済効率についての検討ということをなさるおつもりなのかどうか。また、なさるおつもりならばどういう体制でおやりになるのか、それをちょっと伺いたい。
  168. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 私どもの検査いたします場合には経費の節減、経済性、そういうことが当然非常に大きなポイントになります。従来もそういう観点から検査を続けておるわけでございます。前回の御審議の際に、たまたま防衛庁検査のむずかしさということの感想を、お求めいただきましたので、二、三その実情を申し上げまして、その中に、防衛庁の場合にはただいまお話がありましたように、一朝有事という点が他官庁と違った形でありますために、われわれが常時判断を下す場合にむずかしい点があるということを確かに申し上げたわけでございますけれども、先ほども他の事項に関しまして申し上げましたとおり、一朝有事といたしましても、そこには想定される何らかのものさしなり、基準なりというものが当然なくてはならないはずでございますので、そういう意味合いにおきまして経済性あるいは経費の節減、その点は全く他官庁と同じ観点で今後も検査を続けていきたい、このように考えている次第でございます。
  169. 水口宏三

    水口宏三君 いや、そういう通り一ぺんの御答弁を私伺いたいのじゃなくて、今度四次防で少なくとも五兆三千億ですかが予定されている。今度の概算要求だけでも九千七百八十二億という非常に膨大な防衛予算が出されているわけです。こういうものがどう使われているかということについて、この間のお話のように、技術的に非岸にむずかしい点があるとか、あるいは一朝有事の際ということを言われるということがわからぬということであっては、この膨大な国費の使用について、国民に対して責めを果たすような検査ができないのではないだろうか。したがって、防衛庁というものは他の官庁とは非常に異なった官庁なんです。それで、大蔵省がおいでになるときに伺いたかったのですけれども、他の官庁のようないわゆる行政事務をやっているのじゃなくて、非常に複雑な——自衛隊があって、これはいろいろな構造をとる。しかも、いろいろなさっき申し上げたような非常食までつくっている。これは非常に複雑な防衛庁予算というものをやはり的確に検査をし、これを国民の前に明確にしていくためには、何らかの意味で会計検査院がここで思い切った構想を打ち出して防衛庁予算に対する会計検査というものをやるのじゃなければ、これは結局従来と同じような繰り返しになる。主観的な努力、主観的な熱意は買えるとしても、出た結果はやはり同じになるんじゃないかと思いますけれども、その点について何らか具体的な新しい方策をお持ちになっているのかどうか、伺いたい。
  170. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 私どもは、与えられました職員の範囲内で検査をやっておるわけでありますが、御承知のとおり、防衛庁予算は非常に膨大なものがございますので、なかなか至らぬ点もあろうかと思いますが、なお一そう職員の増員も要求はいたしておりますけれども、これもなかなか実現の運びに至りません。むしろ、現段階におきましては、職員の研修という面で、この前も申し上げました技術的な事項についての判断をなし得るような職員の養成、研修といったようなことにも今後も大いにつとめまして、遺漏のない検査ができるように持っていきたい、このように考えておるわけでございます。
  171. 水口宏三

    水口宏三君 時間がなくなりましたので、一応、私、実はきょうは委託調査研究費の点についてひとつ具体的に伺いたかったのですが、時間がなくなりましたので一括して伺いますが、ちょっと時間がいただけますか——もうちょっと時間をいただきまして、まあ調査費につきまして、これは前にお出しになった資料で、私ども一般的に知っている。知っているというのは、妥当だと思われるような調査対象ですね。委託先ですね、調査の。たとえば日本兵器工業会、あるいは計量計画研究所、それから金融財政事情研究会とかですね、日本強化云々と、いろいろございますけれども、この中で、ちょっと私よくわからなかったのがラジオプレスとか、時事問題研究所とか、アジアビジョンとか、こういうものがどういうものかわからなかったので内容を伺ってみると——あるいはフジミックなんというのもございます。これは、どうもフジグループと言われるものが非常に多いのですけれども、これは何かフジテレビというのは、特に軍事問題について造詣が深いので、このフジテレビの系統のところにこういう軍事的ないろいろな状況、情勢調査を委託させたのですか。——それじゃ、それはあとにしましょうか。  それでは、委託研究費の中にいろいろあるのでございますけれども、委託研究費の中で、特に私、非常に危惧するのは、前々から原子力潜水艦の問題が、これは私の記憶にございますのは、四次防を最初におつくりになった有田防衛庁長官のときに、四次防の後半年度には原子力潜水艦を持ちたいというような御発言があった。それからその後、これは海幕の北村自衛艦隊司令官ですかの話としても、やはり原子力潜水艦を持ちたいというような、そういう発言があって、これは国会でも問題になったわけですね。それからさらに、ことしの新聞を見ましても、これは一月一日とだいぶ古いのでございますけれども、やっぱり四次防の中で、こういう見出しで「浮かび上がる原潜計画」「四次防の二隻(二千百トン級)に疑惑」と。これは疑惑でございますから、必ずしも、現在、防衛庁が原子力潜水艦を計画していらっしゃるとは思いません。ただし、現在行なっていらっしゃる委託研究をしさいに検討いたしますと、いつでも原子力潜水艦が建造できる態勢にあるのではないかという気がするのですけれども、この点についていかがでしょうか。
  172. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) 防衛庁として原子力潜水艦のことにつきましては、いままで歴代長官お答えをしておるところでございますが、これは、まあ原子力を推進力に使うという問題は、いわゆる核兵器ではない、だから核兵器は持たないということの中にこれを入れて考えておるわけではないが、しかし、原子力推進というものが一般的な推進力にならなければ、防衛庁として原子力を推進力とした潜水艦潜水艦でなくてその他のものでも持つ考えはございませんというふうに申しておるわけでございます。この方針は変わっておりません。
  173. 水口宏三

    水口宏三君 これは、もうすでに原子力を推進力とする「むつ」が一応就航近いことは御承知のとおりですね。また自民党の中で、当然、将来、原子力というものはむしろ推進力としてますます開発すべきであるという論者がたくさんおいでになることも御承知のとおりだと思います。  そこで、科学技術庁で一括して取った原子力研究費が各省にそれぞれ全部移しかえされておりますね。移しかえをされておる中で防衛庁へ移しかえされておるものは、これはきのう伺ったのでございますけれども、むしろ直接推進力の問題ではなくて、放射能を発見するとか、あるいは放射能に対して——いずれにしても、直接の原子力潜水艦をつくるのではなしに、原子力潜水艦の乗り組み員の安全をむしろ保障するような研究としかわれわれには受け取れないような項目の研究をしていらっしゃる。それで他の官庁では、すでにもう原子力推進の「むつ」の就航も近いわけです。それから、さらに最近では、三菱原子力工業の臨界実験装置、これはもうすでに「むつ」の中でもって開発されているわけなんですね。さらに、科学技術庁の舶用炉の開発も、これは半潜水用原子炉開発という形でもって行なわれている。そうすると、いま防衛庁自身が直接そういう原子力を推進力とするような潜水艦の建造計画はないということは、これは確かに私も信じます、これは事実予算書にもございませんし。ただし、これはいつでもつくれる態勢にあるということはどうなんですか。その点だけをひとつ。
  174. 岡太直

    説明員岡太直君) ただいまの御質問は、いつでも原子力潜水艦が建造できるような態勢にあるのではないかという御質問だったと思いますが、原子力潜水艦を建造する意図はいまのところございません。たとえ原子力潜水艦を建造するとしましても、原子炉関係、あるいは安全装置、それからそれに使いますタービン、それから環境を整備する操作とか、航法操作とか、いろいろな問題点があります。したがって、潜水艦に現在ある原子力を搭載する、そして潜水艦をつくるというようなことは、技術的に不可能であると、そういうふうに考えます。
  175. 水口宏三

    水口宏三君 技術的に不可能であるというよりは、これはもう原子力を推進力とした「むつ」がすでに開発されているわけですね。これはもうじき就航するのでしょう。それからさっき申し上げましたように、科学技術庁の舶用開発の中では、半潜水用の原子炉すらがむしろ開発されている。それから先ほど、防衛庁では原子力潜水艦の乗り組み員の安全を保障するようないろんな研究が行なわれている——これはそうは言いませんよ。そうは言いませんけれども、研究の結果がどうもむしろそうとしか理解できない。これらを想像すると、原子力の問題というものは非常にいろいろ問題があると思うのですけれども、たとえば幕僚監部あたりが考えている、これは増原さんがそういうことを言ったから当然だと思いますけれども、最も経済効率が高くて有効なる潜水艦というのは、原子力潜水艦ほど有効なものはないと思いますね。それをあえてひた隠しにしていらっしゃるほうがおかしいのであって、当然いいか悪いか公然、論議するような場をつくる意味で、現在の段階で絶対不可能であるとおっしゃるのは言い過ぎではないですか。もうそういうものがつくれるような状況にあるということは、きょうは時間がございませんのでこまかく申し上げられませんけれども、いただいた資料を見ただけでもそういうことが私どもには想像されるわけですがね。
  176. 増原恵吉

    国務大臣増原恵吉君) いまお答えいたしましたのは、ことばがちょっと不十分、不適当だったと私は思います。まだ防衛庁あるいは防衛庁の周辺にある技術は、いま原子力潜水艦をつくるだけのものはないという意味を言うたのでございます。それで、まあ原子力潜水艦というのは、およそ潜水艦としては原子力推進というものはたいへんこれは有効で、ほかの貨物船、客船などに比べてたいへんに適切な推進力であるものですから、潜水艦は原子力潜水艦を持ちたいというのは、これはもう防衛力、その整備に当たっておる者としては当然考えるわけでございます。しかし、やはりこれは日本の原子力についての法制のたてまえもあることでありまするし、やはり一そう二そう原子船ができたということでなしに、原子力推進というものが船について一般的になったと、まあ相当多数の原子力船が動くということでなければ、やはり原子力潜水艦をつくるということはやるべきではない。まあこういう方針をきめているということでございます。
  177. 水口宏三

    水口宏三君 きょうは時間がございませんので、原子力を打ち切りますけれども、もちろん、原子力基本法の中に三つの原則がありますね、平和、民主、公開。この中で、原子力というものはたとえ推進力であっても潜水艦に使われることが平和の問題とどうかという、こういう論議が非常にあると思います。それをもしあいまいにしたまま、ある日突然この原子力潜水艦の建造が行なわれるということは、これは第二、第三、つまり民主、公開の原則を踏みにじることになると思います。そういう意味で私は、防衛庁はもっと端的にいまの研究状況というものを総合的にとらえ、現在の能力からいってそう原子力潜水艦の建造というのは遠い将来でないという気持ちがいたしますので、きょうは時間がございませんから数字をあげては申しませんけれども、次の機会にもう少し数字をあげて伺いたいと思います。ただその場合に、あくまでやはり三つの原則である平和、民主、公開というものがこの国会の場で論議されるような資料を十分提供していただいて、それでさっきの会計検査院じゃございませんけれども、われわれは反対であっても、自衛隊がばく大な経費を使っている現状にいまある以上、これはむだな金を使われるようなことはますます国民にとっては大きなマイナスになるわけです。この点だけはぜひお願いしておきたいと思います。  それから、先ほどちょっと質問しかけたことで、これはもう一言で終わりますけれども、実は、ここにありますさっき申し上げた調査委託の内外事情研究所の問題なんです。これはメンバーを見ますと、どうもあまり専門家がおそろいになっているとは思わないのでございますけれども、これを実は原文をいただいて読んでみると、この内外事情研究所に四十五年に六十五万円の調査委託費が出されていますね。ところが、これを読んでみると、まあなまいき言うようでございますけれども、このくらいの調査だと、これは私、六十五万円いただかなくても、それこそ二十万円もいただけば非常に、むしろ何といいますか、ありがたい話であって、十分できる。これはまあ現物がここにございます。これをいま読むひまもありませんから、もし何でしたら長官、お読みになっていただいたらいいと思います。こういう形で、どうも調査費というものが何か適当に出されているんじゃないだろうか。  しかも、会計検査院お話しによると、委託研究、委託調査というものは、出された先でどう使われるかは、会計検査院の所管ではないから検査できないというお話なんですね。だから、どうもさっき申し上げた、たとえばラジオプレスをはじめフジ系統のこういう団体が多いこととか、それから出された研究結果が、正直に申し上げてどうも金額に見合うものとはわれわれとしてそのまま了解できないのです。こういう点、会計検査院に審査能力がないとすれば、防衛庁自身がよほど厳密にそういう点を審査なさらないと、これは国民の疑惑を招くもとだと思うのです。こういう点について防衛庁ではどの程度、どういう経費が使われていたかということについて審査していらっしゃるのか。
  178. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 防衛局系統で調査委託をやりまする場合には、一般の情報を整理する——ラジオプレスなんかはそうでありますが、そういうものと、それから特定のテーマを提出しまして、こういうふうな方向で調査研究をやってほしいということで調査を委託するわけであります。そして出てきたものに対して、これは事前に契約をする関係上、一応五十万円なら五十万円ということで契約をしてまいりますが、大体、わがほうの見込みに従ったものが出ておるものと思いますけれども、あるいはお手元にありまするようなものが、必ずしも、十分でないというようなものがあるかもしれません。そういうような場合には、この次の委託の場合には当然チェックされるということで、たまたま私、いま御提示のものを読んでおりませんけれども、そういうようなことで次の段階でチェックされるということで従来きておると思います。
  179. 水口宏三

    水口宏三君 この調査の問題は、これは確かに非常に重要だと思うのですね。やはり情勢を把握しなければもちろん防衛構想もできないでしょうし、防衛庁にとってこの調査というのは非常に重要だと思うのです。ただし、たとえば海外情勢ならば、わが国には外務省がございます。外務省からいろいろな情報が入るわけですね。なおかつ、わが国にはそういう軍事的な空白期間があったから軍事専門家が少ないということもございましょう。とすれば、防衛庁の中でそういう調査をする調査マンを育成するということも必要でございましょう。つまり、安易に既存のこういう団体につかみ金で調査を委託するというようなやり方について、私は、非常に疑義を感ずる。それも、先ほど申し上げたフジ系統が非常に多いということなんです。どういうことか知りませんけれども、何かわれわれに対して不明朗なものを感ずる。だから私は、むしろ、そういう特定の団体への委託調査ももちろん必要な場合もございましょう。たとえば医学的な専門的なことをやる場合に、これは医師会に頼むとか、あるいは特定の病院に頼むということも必要でございましょうけれども一般的な情勢ならば外務省がある。軍事的な問題についてならば、これはやはり防衛庁がそういう能力をできるだけ持つようにする。元来、日本の場合、民間でそういう非常に的確な調査機能を持つというような、そういう状況が私はないと思うのです。というのは、日本国憲法があるから、軍事的関心がある研究所をつくったって、防衛庁の御用機関でない限り、あまりそういうものは一般的には成り立たないわけなのですね。  だから、この調査の問題というのは、相当ばく大な金額が毎年委託されているわけですね。たとえばラジオプレスなんか、四十五年で四百十一万六千円、またさらに追加して、軍事ニュースとして百六十八万円、それから時事問題研究所が四十五万円、また同じく三十七万二千円、日本兵器工業会には百四万七千円、合計でいずれにしても一千万円にわたる調査費が出されているわけですね。こういうものはやはり私は、いまの状況からいって必ずしも的確ではないのじゃないか。一例をあげて、この内外事情研究所のこれを拝見すると、さっき申し上げたように、何も六十五万円出さなくても、少し時間さえいただければ、私がこんなこと言っちゃ内外事情研究所に非常に申しわけございませんけれども、しろうとの私でも書けるような内容になっている。そういう気がいたしますので、きょうは時間がございません、これで打ち切りますけれども、調査の問題というのは今後ますます重要になると思いますので、調査体制というものを、これは私は、もう少し防衛庁だけが孤立しないで、外務省なり、あるいは問題によっては通産省も必要でございましょう。それでまず政府機関、さらに民間機関、この場合でもなるべく幅広く選択をすることとか、あるいは軍事的な問題については防衛庁自身がそういう調査マンというものをやはり——どこの官庁でも、大体、行政に伴う調査というものはやっているわけでございますね。そういう形態がとられてこないで、そういうものが十分でなしに、こういうものがぽんぽん出されてくるということは、どうも不明朗な感じがいたします。その点は要望として、委託調査についてもう少し厳密に防衛庁自身がこれは審査をなさらないと、会計検査院には審査能力がないわけですから、これはぜひ要望としてお願いいたしておきたい。  それで、きょう足りなかった点は、いずれまた内閣委員会で、さっきの原子力の問題とか四次防の問題など御質問いたすことにいたしまして、きょうの質問はこれで終わりたいと思います。
  180. 成瀬幡治

    委員長(成瀬幡治君) 他に御発言もないようですから、防衛庁決算につきましてはこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十分散会      —————・—————