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1972-09-12 第69回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十二日(火曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————    委員異動  八月十四日     辞任         補欠選任      山本茂一郎君     世耕 政隆君  八月二十三日     辞任         補欠選任      野末 和彦君     青島 幸男君  八月三十一日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     鶴園 哲夫君  九月十二日     辞任         補欠選任      石本  茂君     川野辺 静君      小枝 一雄君     梶木 又三君      小林 国司君     橋本 繁蔵君      大橋 和孝君     中村 波男君      佐々木静子君     森中 守義君      藤田  進君     竹田 四郎君      沢田  実君     阿部 憲一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         成瀬 幡治君     理 事                 温水 三郎君     委 員                 梶木 又三君                 片山 正英君                 川野辺 静君                 河口 陽一君                 佐田 一郎君                 竹内 藤男君                 中村 登美君                 橋本 繁蔵君                 竹田 四郎君                 鶴園 哲夫君                 中村 波男君                 阿部 憲一君                 中尾 辰義君                 青島 幸男君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁水質保全        局企画課長    松田豊三郎君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局参事官     三枝 英夫君        通商産業省繊維        雑貨局長     斎藤 英雄君        会計検査院事務        総局第四局長   田中  稔君    参考人        中小企業金融公        庫総裁      吉岡 英一君        日本輸出入銀行        副総裁      前川 春雄君        日本開発銀行総        裁        石原 周夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十五年度特別会計歳入歳出決算昭和四十五年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十五  年度政府関係機関決算書(第六十八回国会内閣  提出) ○昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第六十八回国会内閣提出) ○昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (第六十八回国会内閣提出)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月十四日、山本茂一郎君が委員辞任され、その補欠として世耕政隆君が、八月二十三日、野末和彦君が委員辞任され、その補欠として青島幸男君が、また八月三十一日、宮之原貞光君が委員辞任され、その補欠として鶴園哲夫君がそれぞれ委員に選任されました。  また本日、大橋和孝君、佐々木静子君、藤田進君が委員辞任され、その補欠として中村波男君、森中守義君、竹田四郎君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 次に、理事辞任についておはかりいたします。  河口陽一君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次に、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  ただいまの河口陽一君の理事辞任に伴う欠員一名の理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事世耕政隆君を指名いたします。     —————————————
  6. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 次に、昭和四十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は、通商産業省とそれに関係する中小企業金融公庫並びに日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この十年ぐらいの間の工業立地政策工業政策、この問題についてまずお尋ねをしたいし、また責任を明らかにしてもらいたいと思うわけですが、御承知のように、三十年代の工業立地政策あるいは工業政策というのは太平洋ベルト地帯というふうに言われましたり、あるいは新産都市なり、あるいは整備特別地域なり、さらにまあ、その中で御承知のように、三十七年に旧全総——全国総合開発計画、こういうものができたりしてきたわけですけれども、しかし、そのねらいが言うならば失敗をしたというふうにはっきり言っていいのではないか。つまり旧全総がその一つの代表になるわけですが、過疎過密の問題の解決、さらに地域格差是正という問題を目標に掲げて行なわれたわけですけれども、それらがいずれも失敗をするというだけではなくて、たいへんな公害を巻き起こす、自然破壊を巻き起こすという事態になったわけでありますが、さらに社会資本の立ちおくれが非常に顕著になっているという今日の社会経済情勢というものを現出をしたわけであります。環境白書によりますというと、公害あるいは環境の問題が爆発的に簇生してきたということばが使われておりますが、そのとおりだと思うのです。ですから、七月の二十四日に出ました四日市裁判の問題にいたしましても、イタイイタイ病についての裁判にいたしましても、その面における一つの頂点をなすものだと思うのですけれども、この約十年に及びます工業立地政策あるいは工業政策の今日に至った責任といいますか、そういうものを明確にする必要があるんじゃないか、十分な反省をする必要があるんではないかというふうに思うんですけれども、そういう問題についてどういうふうに考えておられるか。  それから第二番目は、これがそういう旧全総反省ということになるのでしょうが、その上に立って四十四年に新全総というものができました。それで、この新全総というものがいま御承知のように志布志の問題にいたしましても、あるいはむつ小川原の問題にいたしましても、いずれも住民から非常に強い反対を受けている。さらに周防灘のごときにいたっては、政府自身もこの問題については再考慮しなければならないというようなことも言わなければならない事態におちいっている。そういたしますと、旧全総反省の上に立ったというふうに言われている新全総が、いま、言うならば全国において立ち往生している、こういう事態におちいったのではないかと思うのですけれども、いま申し上げました工業政策工業立地についての反省責任という問題について大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事態に対する認識鶴園委員指摘のとおりであると思います。この際、政策当局としても過去の立地政策について大いに反省しなければならぬと思っております。顧みますると、敗戦の焦土の中から一億の人口を食べさせるという、そういう至上命令があったのでしょう。ともかく工業によってこれを復興させようというのでしゃにむに輸出力をつくり、あるいは内需に相応するいろいろな工業立地等をやりまして、ともかく一億を食わせるということ、国際収支を合わせるということに狂奔したきらいがなきにしもあらずであったと思います。ですから一九六〇年代のいわゆる高度成長のときにもう少し反省力を強めて、将来を予見して四日市のような問題が起きないようにやるべきであったと、われわれはいま反省しなければならぬと思います。新全総をやるにあたりましても、その反省基礎にしてやるべきでありまして、そういう意味からも、日本列島改造論というような構想も出てきたものであるだろうと思います。  しかし、日本のさらに将来のことを考えてみますと、重化学工業化にばく進してきたわけでありますけれども、それを知識集約型の付加価値の強いものに産業の主力を転換させるという方向に進めると同時に、一面、重化学工業自体も一億の人口をささえるためにはある程度必要でございますが、公害をまき散らさないようにその中間生産物原料産地でつくるとか、あるいは途中でつくって日本に運ぶとか、そういうさまざまな構想も新しく取り入れられてしかるべきではないかと思います。  そういう諸般の反省を加えた上で、日本工業立地政策を進めていきたいと思う次第でございます。
  10. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは企画庁に、開発局長が見えておりますか——伺いたいのですけれども、旧全総がいろいろな問題を引き起こしている。いま公害あるいは自然環境等の問題で非常に爆発的に全国的な問題になっているのは、言うならば旧全総の問題だと思うのです。その旧全総批判の上にというか、反省の上にいまの新全総が四十四年にできて、それに基づいて工業なり産業立地の問題が進められておると思うのです。ところが、どうも新全総というのは、旧全総の徹底した反省の上にできていないというふうに思うのです。というのは、旧全総批判の上に出たといわれるけれども、しかし新全総そのものがまだ始まらないうちから非常な反対を受けているわけです。案ができる前から反対を受けているわけです。鹿児島志布志の問題もそうです。素案というかなりの段階から反対を受けている。たいへんな問題を生じている。あるいはむつ小川原の問題であってもそうです。まだ始まらないうちから反対を食うという事態に至っているということは、これは旧全総についての徹底した反省の上に行なわれなかったというふうに言っていいのではないかと私は思うのです。その点について開発局長はどう考えているか、まず伺います。
  11. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) 旧全総と新全総との関係でございますが、旧全総におきましては企業大都市もしくはその周辺に集中立地することが企業にとって利益があるという時代でございました。開発政策としてはそういう形を継続いたしますと、大都市周辺が非常に過密状態になり、一方で地方過疎状態になることをおそれまして、企業大都市またはその周辺に集中立地することが利益であったにしても、減税あるいは政策金融などによりまして企業過疎を起こしかねない地域へ分散立地することを期待して、開発のおくれた地域におきます工業開発政策にしたものというふうに考えられるのではないかと思います。しかし実際の結果を見ますと、やはり企業としては多少の政策減税やあるいは金融程度では地方へ分散するだけの行為には至らなかったということがございました。むしろ、大都市に集中立地してしまったという経過がございまして、旧全総というものが議論になってきたのではないかというふうに考えておりまして、やはり企業利益中心にして立地することを追いかけるだけでは、日本国土開発を進めていく上で問題がある。それに対して私どもが十分なる考え方あるいは進め方をすることについて不十分であったということを旧全総に対して反省もし、新しいテーマを持ってきたというのが実情だろうと思います。  新全総につきましては、そういったことを考えながら、しかも、新しい事態であるという認識に立っておると思います。新しい事態と申しますのは、企業にとっても、実は大都市もしくはその周辺に集中立地することが必ずしもメリットではないということでありまして、いろいろ交通の渋滞でありますとか、あるいは船舶の錯綜状態でありますとか、あるいは水資源の問題等々におきまして、企業がこれ以上集中立地することはデメリットが非常に大きくなるという事態でもありますから、そういう事態の中で、はたして工業の再配置をどのように進めたらよいかということが議論になりまして、旧全総のように格差是正ということで企業の再配置をするという旧全総時代から、むしろ、全国的に工業の再配置をいかにして適正なものにするかという時代へと変わってきたのではないかというふうに考えております。そしてしかも、新全総におきましては、単に生産の需給であるとか、あるいは企業利益ということで立地を論ずるのではなくて、やはり環境問題であるとか、あるいは住民意向というものが反映されて立地が決定されていくといあことから、新全総におきましては計画としてきめることが不適切であるということで、構想として述べることにいたしたのが新全総でございまして、御指摘のような志布志その他の地域につきまして新全総構想としてきまりましたあと、その構想がはたしてその地域に適合するものであるかどうか、環境問題の観点から調査を進め、そしてまた、地域住民方々の御意向を伺うという形で、目下地域レベルといいますか、県のレベルで新全総構想の実現について検討しているというのが現在であるというふうに考えておりまして、その検討の過程で再び四日市というような形にならないようにいかなる施策が必要であるのか、目下私どもとしても四日市裁判を踏まえて、新たな気持ちで現在関係各省意見の調整をはかっておるところでございます。
  12. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、やはり旧全総格差是正にならなかった、あるいは過疎過密の問題の解決に役立たなかっただけではなくて、ますます過密を促進した、そういう中で、また公害というたいへん大きな問題を全国的に促進をさせるという事態になったんだと思うんです。これがいまこの四、五年の工業立地工業政策をめぐっての国民の率直な考えだと思うんです。ですから、そういうものを根本的に是正をさせる、あるいはそれを克服していくんだという形で、新しい新全総施策が進められているんだというふうに思うんですけれども、どうもそうじゃないんじゃないかというふうに思うんですがね。たとえば公害の問題について、それじゃ具体的に志布志の問題なら志布志の問題について、どういう何といいますか、めどを持ってやっておられるのかというと、私はそれは少なくとも昨年の十二月七日ですか、鹿児島県が出しました素案段階にあっては、これは何もないというふうに言い切って差しつかえないと思う。あるいはできるだけ地域発展のためだ、あるいは地域発展一つの大きな目標になっているんだ、だから地域住民考え方もいろいろ聞いて、その意見が反映されるように開発をやっていくというのが新全総だとおっしゃるけれども、しかし、具体的に進められている志布志開発については、これは住民の見解を聞くどころの騒ぎではない。素案ができるまでは何ら知らさないで、突如として素案を出してしまう。住民意見が反映するどころの騒ぎではなくて、知らない間にそういう開発構想というのが出てくる。そういう重要な二つの問題を考えたって、新全総というものが、旧全総反省の上に立っているというふうには考えられないと私は思うわけなんです。もう一ぺんその点について局長のお考えを聞いておきたい。
  13. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) ただいまの点でございますが、開発進め方について、旧全総とは違って、新全総の場合、新しい方式をとり始めているために、いま鶴園委員の御指摘のような混乱が多少あったことは事実でございます。私どもがいまとりたいと思います方法といたしましては、やはり県事務当局一つたたき台をつくって、それを公表して、大いに意見を交換していただいて、修正を加えながら一つ地域としての構想を持ち、そしてそれを政府と相談して、政府との間で了解が成り立って、その新しい開発行政を進めていくという、そういう新しいルールがやはりここでどうしても重要であるというふうに考えております。  で、いま例にあげられました志布志につきましても、新大隅開発構想というものが一回目発表になっておりますが、私どももこれが十分な案であるとは決して思っておらないわけでございまして、むしろ国といたしましても、さらに環境問題に関連いたしましても、まだ基礎的な調査が必要であるという考え方をとっております。しかし、すべての調査が終わって、そして計画が着実に練られた上で住民方々に公表するというやり方ではなくて、思いついた段階から、そして構想段階から、調査報告書ができる段階ごとに、すべてできるだけ公開して、意見を交換しながら議論を詰めていきたいというやり方をしました関係で、どうも一回目のたたき台の案がそのまま強行されるのではないかという御懸念から、反対もあったように私ども十分伺っておりますが、決してそういう進め方ではうまくいかないということを考えておりまして、これからの開発行政進め方について新しいルールを確立したいと考えております。もちろん、新全総がそれに十分こたえているとは実は思っておらないわけでございまして、現在私どもといたしましては、新全総の総点検作業を始めておりまして、その総点検作業は幾項目にもわたっておりますが、その中で、鶴園委員が御指摘になりましたこれからの開発進め方についてのルールについても、やはりこの時代に合うように、そして過去の反省の上に立った形で一度検討をしたいということを考えております。
  14. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、旧全総格差是正がどうだとか、あるいは過密問題を解決できないでますます過密を促進したとか、あるいは社会資本関係を立ちおくれが顕著に目立ってきたとか、さらには公害が、あるいは環境との関係が爆発的に発生してきたとかいう問題は、これは私は基本に企業利潤中心になっているというふうに思うのです。あくまでそれが中心になっている。先ほど通産大臣から、まあ食わせるために、あるいは食うためにという話があった。私はやはりこの企業利益というもの、これがあくまで中心になっているというふうに思うのですけれどもね。そうでなければ、少なくとも行政をやるものは、たとえば四日市の問題について、この程度公害が起こる、この程度大気汚染がある、あるいは水が汚染されるということがわかっているはずに違いないと思うのです。そういうものが、住民が非常に長い間反対をして、そして裁判に持ち込んで、長年かかってこうしなければ、これが解決できないという状態まで実際放置されてきた。それは何かといえば、私はやはり企業利潤というものが中心になって工業政策なり産業立地というものが行なわれてきたというふうに思うのです。それじゃ、今度の新全総というものが——いま進められつつあるところの新全総というものがその反省の上に立っているのかというと、私は反省の上に立っていないと思うのです。それで私は、むつ小川原において、あるいは志布志において住民の非常な反対を食っていると思う。まだ計画も何もないうちから反対を食っているということになっているんじゃないかというふうに思います。たとえば、旧全総で進められたようなコンビナートよりもっと巨大な、世界にない全くたいへん巨大なものをむつ小川原につくろうという、あるいは志布志湾につくろうというんですね。それは工業効率性といいますか、そういう面だけから考えておられるんじゃないか。住民意向を反映してとおっしゃるが、たとえば志布志湾も、あの十七キロの海を二キロにわたって埋めるなんというようなことは地域住民には考えも及ばないことです。さらにまた、四日市の三倍も四倍もというような、世界に例のないような巨大な石油コンビナートをつくろうなんということは考えられないと思うんです。私も、これは、日本工業というものが、石油、製鉄というような資源型工業基礎に置いて発展させようという、その路線の上にだけ、それを中心にして新全総も動いておるし、工業政策工業立地政策も動いておるというふうに言っていいのではないかと思うんですが、通産大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。私は、いままで進めてこられた旧全総昭和三十六年——昭和四十五年ごろまでの間における工業政策工業立地政策についてもっと根本的な反省が要るのではないかというふうに考えるんですが、どうも私の聞いている限りでは、また、政府の出しておられるいろいろなものを見ている限りにおいては、形だけのものにしかすぎないのではないかというふうに考えられてしようがないんですが、大臣のお考え方を承りたいと思います。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、新全総の内容をまだよく勉強しておりませんので批判することはできませんが、感じとして、むつ小川原とか、あるいは志布志湾開発というような構想はどうも昔のパターンできておるような感じがいたしております。初めああいう発想を持ったこと自体が旧全総からきておったからかもしれません。そういう意味から、むつ小川原あたりでは土地の買いあさりがどんどん進んでおったり、あるいは住民との協調関係がともすれば薄れておる状態で進められておる。こういうことでは非常にまずいことであると私は思うのです。何といっても地元の住民の完全な協力と理解なくして工業開発はもはや進められない時代になってきておるのであります。この点について、われわれのほうでもいろいろそのやり方について、あるいは発想の出し方について反省するところがあるのではないか。じゃ、具体的にそれは何であるかと御指摘なさいますと、いま、どういうことであるということは申し上げかねますが、いままでのパターンを反省しなければならぬ、そういうふうに考えております。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、私は、旧全総にいたしましても、新全総にいたしましても、その一番中心をなすのは、最も大きな柱をなしますのは工業政策であり工業立地だと思うんです。ですから大臣お話のように、新全総について通産省のほうでどうだこうだという、そういう問題じゃないんじゃないか。旧全総にしろ、新全総にしろ、その大黒柱をなしているのは、これは工業立地論だ、通産省のこれは基本的な問題だと私は考えております。その意味で言いますと、私は大臣お話は非常に形式的過ぎる、もっとこれは徹底的に考えていただかなければならないものだと思います。この点についてもう少し大臣としての……。これは大きな問題だと思います。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が思いますのに、おそらく旧全総あるいは新全総をつくる場合に、全国を見渡してみて、そうして物のフローとかストックとか、そういう将来計画も含め、それから立地条件、港湾の深さ、あるいはその周辺における人間社会情勢、そういうものを見て、まあ大ざっぱにこの辺が次の時代の適地であろう、そういう選択を抽象的にしたんだろうと思うんです。それに何を持ってくるかというところまではそれほど深く考えもしないし、また住民との関係という面についても、政府側は政府側の見地から選択した候補地としてあげたんではないかと思うんです。しかし、そういうやり方が次の時代に通用するかどうか、それを反省すべき時点にきているのではないかと思うんです。なるほどそういういままでの工業立地、特に地形とか、地勢とか、そういうような面から見て非常に適地である場合には、候補地としてあげられることは当然であると思います。そうでないところよりも、そういう条件の伴っているほうが工業立地としては適当なところであると、これは技術的にも考えられることでありますけれども、それだけをすべてに優先させてものごとが進むと考えることは間違いな時代になってきたんではないか、そういう反省を私はしなければならぬと思います。具体的な問題は企業局長から答弁させますが、そういう反省をしておるということをここで申し上げたいと思います。
  18. 山下英明

    説明員(山下英明君) いま大臣の御指示もありましたので、ひとつ具体的な例で申し上げますが、たとえば、現在まで大規模立地開発の場合には、立地に関する事前の調査をする法律がございまして、昨今、公害関係の基準が非常に強化されて、煙突の煙の排出基準、あるいは環境基準として着地濃度等々が環境行政として進んでおりますが、立地調査の場合には、以前から大規模開発地域における総合公害を技術的に計算いたしまして、そこの県当局と打ち合わせて、そこに入ってくる工場は、その総合公害の範囲内ということでやっておったわけでございます。ただ、それは調査でございまして、そこからあとは県、公共事業体の指導——政府のほうでは強制力がなかったわけでございます。今回私どもとしましては、御指摘のとおり、今後の大規模開発も含めまして工場が過疎地帯に行く際、あるいは新しい立地に行く場合、その工場の環境基準というものを法律に基づいて規制していく必要があるであろう、こう考えておりまして、通産省では大臣の指示でただいま工場の環境整備に関する新しい立法を次期国会に御審議をお願いしたいと、こう考えておるような次第でございます。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、どうも通産大臣の旧全総なりあるいは新全総なり、そういうものに対する通産省の側としての考え方はたいへん弱いように思うのです。私の見ますところでは、とても大臣お話しのようなものではないのじゃないか、旧全総にしろ、いま行なわれております新全総にしましても、相当な検討が加えられて、そうしてその地域が閣議できまった形になっておるんですね。ですから、根っからいい加減な着想とか、そんなものでできているようには思わない。そのことが日本工業の大きな方向を決定的に位置づけているというふうに思うんです。これは工業政策といいますか、あるいは立地政策といいますか、そういうものを決定的に位置づけてきているというふうに思うんです。ですから、何か思いつきとか、あるいは単に上のほうからこの辺がよかろう、この辺がよかろうということで、大まかにきめているというふうにはこれは全然受け取れない。ですから、私はその意味では新全総についても、新全総の点検がいま始まっているわけですけれども、これは通産省としてもっと積極的にこの問題についてはひとつ取り組んでもらいたいというふうに思うんですけれども大臣考え方は少し私は納得のいかない点があっていけないというふうに申したいんですけれども局長どうですか。非常にあいまいじゃないですか、大臣のこれは。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鶴園委員指摘されました旧全総に対する批判については、われわれも非常に傾聴すべきところがあるし、私自体もそういう反省をしているということをまず第一段階に申し上げたわけです。そういう見地に立って新全総を再点検をしてみる、そして、そういうポイントがどこにあったのかということを反省してみると、役所側が全国をにらみ回して、港湾の深さであるとか、あるいは周囲の社会条件であるとか、そういう国土的な観点からここが適当であるというふうに考えて、そして知事さんともいろいろ相談をして始めたそのやり方自体住民の反発を非常に起こしたり、了解を得られないようなやり方があった、その点を私は言っておる。だから、役所側がそういう技術的な専門的な観点から志布志湾がいいとか、あるいは宿毛湾がいいとか、あるいはむつ小川原地帯がいいとか、それは全く純技術的な観点に立ってそういう場所を選定することは、これは科学的にある程度うなずけることであると思うし、日本全体の将来の工業縮図というものを見た場合にもうなずけるところは多々あると私は思うんです。しかし問題は、役所側が一方的にそういうものをきめてものが進むという問題ではない。それはすでに四日市その他でそういう事件が起きているという現実の上に立って考えてみた場合に、住民の了解とか、もっと深い幅広い社会的視野や、その措置が必要であると私は考えておるわけです。そういう点について新全総について再検討を要する、そう私は考えておるわけです。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はどうも、旧全総というのは三十七年にできて、そして盛んに格差是正だ、あるいは過疎過密を解消していくんだというようなことで、工業を持ってくれば、あるいは企業を、工場を持ってくればそういうものは片づくんだという雰囲気を非常に強くつくり上げていったと思うんです。さらに問題が起きますと今度は新全総ができまして、さらにまた巨大な工業基地をつくることが、これがその地域における住民の幸福をもたらす道なんだ、あるいは日本の何か幸福をもたらす道なんだということで、私に言わせますと、また幻想を振りまいてきたというふうに言っていいんじゃないかと思うんです。それがいずれも住民の非常な強い反対を食っている。旧全総しかり、いま新全総が立ち往生しているというふうに言っていいんじゃないかと思うんです。そこへ今度は日本列島改造論というようなものが——名前がまた改造というような名前になりまして日本列島改造論というものが出てきて、再びまた——これは新全総を柱にしたものだと私は思うんです——その列島改造論でまたあちこち巨大な工業基地をつくる、大規模な工業基地をつくることが、またその都市を発展させ、あるいは住民の幸福をもたらすということになるんだということを言っている、こう見ていいんじゃないかと思うんです。ですから私はこれが旧全総、新全総、列島改造論、三回もそういうことをやられてはかなわないという考え方が基本にあるわけであります。  そこで、まず私は新全総の点検が始まったわけですが、どういう観点から新全総の点検が行なわれておるのか、国土総合開発審議会が出しましたときには、環境との関連で新全総を総点検せい、こういう形になっておるわけですね。しかし、いま点検が行なわれておるというのは、どういう観点から点検を行なっておられるのか、それをまず伺います。
  22. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) ただいまの新全国総合開発計画について総点検をいたします内容でございますが、ひとつ大きな問題といたしましては、御承知のように、新全国総合開発計画は国土総合開発法に基づく計画でございますので、たくさんあります環境政策その他もろもろの政策との斉合性というものが非常に大きな問題でございまして、法律的に言いますれば、国土総合開発法の中で何でも片づくということではございません。したがって、他の環境行政との調整ということはひとつ大きな問題でございまして、これは別といたしまして、国土総合開発法の中におきましては、現在環境の観点から八項目について作業をいたしております。  第一の点は、現在経済企画庁が経済審議会に諮問しております経済五カ年計画でございますが、この経済五カ年計画を決定するにあたりまして、新全総との調整をはかるということが議論になってまいるかと思います。日本の国土は三十七万平方キロありますが、おのずから開発に限界がございますから、その限界と今後の経済成長なりあるいは産業構造との関係なりを調整する意味での作業をひとつしようと考えております。  それから二つ目は、長期にわたる人間と自然との調和ということを新全総で初めてうたい込んでおりますが、これの実効があがっていないということから現在環境庁で自然環境保全法ができまして、その方針を検討しておられまして、環境庁としてもこの開発の許容限度を研究するという作業をいたしておるのでありますが、その作業と提携いたしまして自然環境をどのように保全したらよいかということの検討をひとつ作業としていたしております。  それから三番目は、巨大都市問題でございますが、巨大都市につきましては、特に水の問題あるいは交通公害の問題あるいは電力の問題など環境問題に関係する巨大都市の諸施設が限界にきたために過密の問題が起きておると思いますが、現在まで私どもとしては必要なものを供給するという形で巨大都市に取り組んでまいりましたが、この段階にきますと、環境問題の観点からむしろ需要のほうを調整しなければならないということで、工場の分散その他中枢管理機能の分散についてもどのような分散が可能であり、そうしてその環境問題と調和することが可能であるかということを巨大都市問題として検討することにいたしております。  四番目の問題は、工業配置の問題でございまして、これはきょう鶴園委員から御指摘いただきました点を含めて検討いたしたいと思っておりますが、これについては通産省工業配置法に基づきます工業配置計画をつくられますので、その作業とあわせて議論を進めたいと思いますが、一方では基礎調査をさらにしなければならない側面を持っておりますし、地域住民との話し合いをまだしなければならないという側面を残しておりますが、そういうものを含めて、環境汚染の立場から一度工業配置について議論をしたいということと、さらには既存の工場でありましても、新増設をするということが出てまいりますと、既存の工業地帯の環境からの限界についてもあわせて作業をしたいと考えております。  それから五番目は農林水産業の問題でございますが、これはいままでやはり食糧の需給問題として議論をしてきておりますが、この段階で食糧の需給問題だけではなくて、緑とか海を保全するという立場、あるいは都市人口がふえますことに伴いますリクリエーションとの関係、あるいは農村の特に過疎村落におきます生活整備の問題等々ございまして、農業というものを国土の環境条件として考えて、どのような考え方があるかということを考えてまいりたいと考えております。  六番目は、地方都市問題でございまして、これはこれからやはり都市化が進む中で巨大都市に都市人口を収容することが困難であり不適当であるという観点から、地方都市の育成問題というのが、日本列島の総合開発にとって非常に重要であるということになりますが、そのときに、新産業都市時代のように、工業誘致から始まるということではなくて、やはりそこの市民が生活の上でどういう豊かな生活環境を持ち得るかということで、特に余暇時間がふえる市民にとって、その余暇時間を消費すべき環境をどのように持ったらよいかというような観点から地方都市問題に取り組んでみたいと考えております。  七番目は、土地問題でありまして、やはりこの新全総をやります場合に、法人などによります土地の流動性などを見ました場合に、やはり土地問題について抜本的な対策を講ずる必要があることは言うまでもございませんが、どのような対策を講じたらよいかという作業をしておるわけでございますし、特に環境を保全するための土地というものがどのような形で確保されるかということも含めて議論を進めたいと考えております。  八つ目は、国土総合開発法の改正問題でございますが、この総点検を進めながら、新しい日本国土開発に関します方向づけが得られますならば、二十五年にできました国土総合開発法を全面的に改正いたしたいということで、国土総合開発法の改正問題を議論しておりまして、以上八項目に分けまして環境の側面から新全総の総点検をいたしたいということで、現在ようやく作業に入りつつあるところでございます。
  23. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま総点検の八項目にわたる説明をいただいたんですが、これは総点検というようなものではなくて、総再検討というようなものですね。これは、検討というようなものじゃないですか、点検というよりも。点検してみるというようなものではなくて、新全総の再検討だと、あらゆる面からの再検討だというふうに言えるんじゃないでしょうか。そういうふうに、私はこれを見まして、点検じゃなくてこれは全面的に再検討が始まったというふうに見ていいんじゃないか。  そこで、これは通産大臣のことになるかどうかわかりませんが、改造論ですね、日本列島改造論。この改造論の懇談会みたいなものを設けられて論議が始まっておるんですが、これがまあ閣議決定なり何なりというものになった場合には、この新全総というものは不要になるという、あるいはこの列島改造論の一つの部面を代表することになるんですか。これは重要な内容になると思うんですが、新全総というのは列島改造論の中の最も柱になるということになるわけですか。その点について伺っておきたいと思います。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは私の主管ではございませんが、おそらく列島改造論の中の大事なところが新全総の中へ盛り込まれて、新全総としてそれが世の中に問われていく、そういうことではないかと思います。     —————————————
  25. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま石本茂君及び小枝一雄君が委員辞任され、その補欠として川野辺静君及び梶木又三君が選任されました。     —————————————
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 列島改造論については、これから盛んな論議が行なわれるものと思いますし、それからいま開発局長からお話がありましたように、新全総についても点検が始まっている。それは、いま私が申しましたように、点検というものではない、もっと根本的な再検討に入っているんじゃないかというふうに思うのですが、また、私はそういう段階にきていると思うのです、新全総というものは。点検というなまやさしいものではないんじゃないか、抜本的にこれは再検討するところにきている。事実この内容にありますように、根本的な再検討というものが始まっているというふうに見なけりゃならぬのじゃないかと思うのです。その点について局長の御見解を聞きます。
  27. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) 総点検の内容も、いろいろと委員の御指摘のように、根本的な問題を含んでいるというふうに考えております。そうして、総点検ということばにとらわれずに、かなり根本的な議論をしたいと考えておりまして、作業が終わりました結果として、その新全総を根本的に廃止して新しいものをつくるか、あるいは手直しで済むか、そこのところはいま私どもとしては予測を立てずに、かなりまっ正面から取り組んだ作業をしたいということでやっております。総点検ということばが是か否かということではなくて、むしろ内容の問題ではないかということで、いま内容を御披露したわけでございまして、その成果によりましてまた御判断をいただきたいと思います。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、新全総によっていま巨大なコンビナート構想があちこちで進められている。それに対してこれは住民の側の非常な反対が起きているわけですね。それは私は当然だと思うのです。それについていえば、いずれもいまの新全総について、あらゆる面から住民が問題にしている問題ですけれども、そういうものを根本的に再検討するという段階がきたことはこれは非常に喜ばしいことだと思う。  しかし、私がそこで一つ申したいのは、その新全総によっていまやはり対立をし、痛めつけられているといいますか——住民は痛めつけられていると思っている。天から降ったみたいにきて、痛めつけられているという考えを持っている。その新全総が天から降ってわいたようにして住民を痛めつけている、それに対して反発をしている。それに対していまの新全総そのものを根本的に再検討するというなら、これは志布志の問題についても、むつ小川原の問題についても、しばらくこれは私はたな上げすべきだというふうに思うのですけれども、どうでしょう。
  29. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) 計画の総点検をいたしますことを、あるいはその内容については先ほど御報告したとおりでございます。で、しかし現実には東京湾あるいは瀬戸内海等におきまして深刻なる環境問題があり、これを一刻も早く改善しなくちゃいけないことは、また一方で私たちに与えられた大きな仕事であるというふうに考えておりまして、日本列島全体の環境問題からいいますと、再配置の問題は、経済成長がかりになくとも、かなり重大な課題であるというふうに考えております。それを考えます際に、新しい工業基地に甚大なる公害があってはならないということでありますとか、あるいは産業構造を変えることによってつくらなくて済むかどうか、あるいは海外立地によってつくらなくて済むかどうかということについては、かなり根本的な議論を伴っているということを考えておりますが、しかし最小限の工業基地を国土内に建設をしておかなければならないという点については、やはりそういう意見が正しいのではないかという気がいたしておりますが、それを具体的に志布志がいいかどうかという議論は、先ほど申しましたように、さらに基礎調査なり、あるいは住民意向を確かめた上で決定すべきが筋であるというふうに考えておるわけでございます。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま局長からも、工業構造というか、産業構造の問題について話があって、そして海外立地といいますか、そういった問題についてもいま話があったのですが、通産省企業局が出しております「今後の工業立地の方向」というのが出ておりますね。あの中で、産業構造の問題について述べているのですが、まあ私は、従来から商工委員会におきましても、公害対策特別委員会におきましても、いまの日本工業は、とにかく原油を持ってくる、さらに鉄鉱石を持ってくる。たいへんな大きな原油と膨大な鉄鉱石を持ってきて、その上に重化学工業を打ち立てる。それが日本工業の基盤をつくっているという形の工業政策といいますか——については問題があるのじゃないかということでいろいろ申し述べてきたところです。また、御承知のように、いろいろな審議会でも、中間報告なり何なりによりまして、そういう基幹資源型構造から知識集約型に推移すべきだ、重点を移行さしていくべきだというような方向等もいわれまして、そしてまあ今度の通産省企業局の出した「立地の方向」を見ますというと、移動をさせる、移行をさせるのだという言い方をしていますね。私は、移行をさせるということについては賛成なんですけれども、そしてこれを見ますと、資源型産業というのが今後産業発展の主導役の地位を占めるべきものではないという言い方をしていますね。そして、重点を知識集約産業へ移行さしていくんだ、しかし、それには、これは資源型を海外に依存せざるを得ない。海外に依存するということを原則にするのだということを言っていますね。しかし端的には、これは海外にすぐこれを依存させるというわけにはいかないから、過渡的には資源型の産業というものをやっていくんだというような言い方ですね。ですから、いま通産省が出しておられる産業の重点というのが知識集約型になってくる。そしてこの資源型の問題については、これは海外が原則だというような考え方を出しておられる。そういうものは新全総の中ではどのように検討されておるのですか。通産省としては、また、新全総の中にどのようにいまのお考え方を生かしていこうとされているのか、その点を伺いたいと思います。
  31. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) 新全総の中におきましては、御承知のように経済成長を八%に押え込むという前提で、その八%の経済を支えるために必要な鉄鉱なり、あるいは石油なり電力なりの需給を一応計算をしてつくったものでございますが、先ほど御説明しましたように、今日の時点に至って、新しい日本の経済の進むべき方向を示すために、現在、経済審議会に諮問中でございますから、経済計画ができまして、その中で示された経済の方向というものをしんしゃくして、もう一度新全国総合開発計画工業配置について検討を進めたいというふうに考えておりますが、中でも電力の需給については、知識集約産業になることによって、重化学工業中心時代よりも電力消費が大きいのではないかというようなあたりの検討なり、作業がまだ十分には行なわれておりませんので、そういった内容を検討しながら、新しい工業配置検討してまいりたいと考えておりますが、ただ、新全総考えましたこの石油、電力等の立地につきましては、むしろこの新全総の規模では新しい産業構造にたえられないのではないかということも、一方では意見として一部出てきておりまして、そのあたり少し御指摘のように総合的に検討してみたいと思います。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 通産省意見はいかがです。
  33. 山下英明

    説明員(山下英明君) 基本的には、ただいま鶴園先生御指摘のとおりでございまして、脱資源産業化ということが一つ産業政策の柱でございます。私どもの部内の検討では、昭和六十年をめどにするもの、昭和五十五年をめどにするもの、五十年をめどにするものでそれぞれ違いますが、大きく申しまして、これから十年——七十年代を通じてということであれば、知識集約産業、それから脱資源産業のほうに重点が移転していく、また政策的にもその方向に進めていく、こういうことでございます。ただ、現在具体的な問題になっております大規模立地、東苫小牧ですとか、むつ小川原ですとか、あるいはいろいろ問題はもちろんございますが、志布志湾計画等、具体的な立地問題に関連して、産業、つまり昭和五十年から五十五年にかけて日本基礎産業立地はどうなるか、特に電力、石油石油化学、鉄鉱でございますが、そういうものがすぐ海外立地なりあるいは脱資源の方向でいくかといいますと、まだそれは経過期間であって、もう一わたり大規模立地が必要であるというのが大体の私ども考えでございます。したがって、それは両面からどこまで立地条件に合い、環境条件に合った受け入れができるか、そしてその範囲内で入るか、入らなかった場合には海外立地その他を考えねばならない。こういう作業を進めているところでございます。  また、つけ加えますと、公害問題そのものから従来石油業法等は消費地精製主義という原則でまいりましたけれども、どうしても当面の問題として、ローサルファの燃料、ナフサ、LNG等を加えて必要であるという要請が高まってまいりますと、これもまた四、五年の中に、国内で立地するよりも、精製所そのものは海外にせざるを得ないかもしれないという課題もございます。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど開発局長お話にもありましたように、成長率八%とか九%とかいう前提に立って、そしていままでの石油、そして製鉄、そういう資源型の産業をそのままそれを延長さしていく、そして巨大なそういう石油あるいは製鉄の工業基地をつくっていこうというのが、いま新全総の柱になっているわけです。しかも、それは昭和六十年を目標にしておるわけですよ。その中身が、これは資源型から重点を知識集約型の産業に移していくというものが一つ大きくあらわれてきておるわけです。昭和六十年を目標にした場合に、当然これはそのものを含まなきゃいけないと思うのです。さらに、いまの資源型の産業というもの、それの原則として、その立地は海外だという方向に進むべきだという形が出てきておるわけです。いまの重化学工業をそのまま昭和六十年に拡大をしたというのがいまの新全総の柱ですよ。全く大きな大黒柱です。それの中身が今度は知識集約型に重点を移行しているんだというものが出て、しかも、さらにもう一つ、この資源型の産業というものは原則として海外だ、海外で立地すべきだ、いま全面的に海外にこれを負わせるというわけにいかないけれども、原則は海外でやるんだという方向を出しておられるわけですよ。そうしますと、これは昭和六十年という目標考えた場合には、当然その具体案を出してもらわなきゃ困ると思うのですよ。私は出すべきだと思うのですよ。あと三年後、四年後のことを言うのじゃないのです。昭和六十年を目標にしたのが新全総であり、いまの日本列島改造論であります。日本列島改造論だってこういうものは全然出ていないでしょう。具体的にはこんなものは出ていないわけですから。そうしますと、これは根本的に私は、日本列島改造論の柱について、あるいは新全総のこの大黒柱について考える、計画考えなきゃならぬのじゃないですか。先のことみたいに教えられては困る。三年あと、四年後みたいなことで教えられて、当面はこれでいくという考え方ではいけないじゃないかと私は思うのですけれども、その点について伺います。
  35. 下河辺淳

    説明員下河辺淳君) 原則について私どもはまさにそのとおりでありますし、企業局長も答弁しておられるとおりだと思うのです。ただ問題は、絶対量としてどれだけ要るかというふうなことを、私どもとしては即知的に議論することが開発政策論であるというふうに思っておりまして、産業構造が変わるというようなことであるとか、あるいは原則として資源型工業が海外立地であるというものを否定いたしませんけれども、必要最小限どれだけ国内へ資源型工業立地をつくっておかなければならないのかということについては、やはりいま御指摘のように、六十年時点でどの程度の必要があるかは明らかにすべきであるというふうに考えます。できるだけ早い機会に総点検を了して通産省その他とも相談しながら明らかにしたいと思いますが、やはりある基本的な基地というものは必要であるというふうに思いますし、それからもう一つ申し上げたいと思いますのは、生産の量と基地の大きさとの関係でありますが、いままで私どもいろいろとコンビナートの点検をして思いますことの一つでございますが、やはり器が小さい中に非常に巨大な生産量があるということにそのバランスの悪さが——周辺環境を悪化させている側面がやはりあるのじゃないかということから、生産量を制限するにいたしましても、基地の大きさそのものはかなり巨大なものを用意いたしませんと、環境に対してやはり問題が残るのではないかということで、基地がある程度の相当大きなものになるということも多少避けがたいものというふうに考えたりしておりますが、六十年の目標につきましては、あらためて作業をした上で御報告申し上げたいと思います。
  36. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは通産大臣にお尋ねしたいのですけれども、いま通産省企業局長のほうから話がありましたように、この立地論の中では、たとえば「立地政策の方向」というものが出ておりますが、これは従来から言われておりましたように、資源型産業というものは、これは日本工業の主導役になるべきじゃない。知識集約型に重点を移行させていくべきだというのが一つと、それからもう一つは、資源型の産業というものは、これはできるなら原則として海外に立地すべきなんだと、いま全面的にこれを海外に依存するというわけにいかないけれども、原則としてこれは海外にやるべきだという方向を出す以上は、これは六十年を目標にした列島改造論にしましても、新全総にいたしましても、これは数字を明らかに出してもらわなければ困ると思うのですよ。すみやかに私はこの点をはっきりさすべきだというふうに思いますがね、大臣の見解をお聞きいたしたい。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 数字を出すのには時間がかかるだろうと思います。私は次のように思っておるのです。  しばらくは混合形態でいくだろう、知識集約型といっても、一体何が知識集約産業であるかというのは、兆候がほのかに見えた程度であって、全貌がまだ露呈しておるわけではありません、わずかにコンピューター、あるいは情報産業、そういう程度のものがちらちら見え始めたという程度であって、それが日本産業のメインパワーにはっきりなるかということまで、まだわれわれは完全な見通しを持っておる状態ではないわけであります。しかし方向は、その方向であるという方向の指示だけはわれわれははっきり明定しておるわけであります。しかしやはり一億の人口を養っていくためには、重化学工業も必要なのであって、そういう重化学工業的基磯のない知識集約産業というのは切り花のごときものであって、根がないものになるであろう、私そう思います。それで、いま一九六〇年代の重化学工業のあと始末を実はやっているようなものだろうと私は思っておるのです。そこでしばらくは混合型で進んでいく、次第に重化学工業のほうが重点をおろしてきて、知識集約型が次第に強くなってきて、そして入れかわっていく、そういう形に段階を追って進んでいく。その過程で、重化学工業といえども四日市のようなものを繰り返すのではなくして、たとえばインダストリアル・パークという考え方、新しい考え方に基づく工業立地計画を実行して、公害のない、そして緑と水にあふれた工業立地というものを実際実践していく、そしてその過程に、でき得べくんば、そういう重化学工業型の資源については、海外で中間工場をつくるなり、あるいは鉱石の所在地において中間製錬をして、そして日本に持ってくる。できるだけそういう方向に持ってくることが好ましい。そういう青写真めいたものがわれわれの頭にすでにできてきておる。それをいま追跡しておるわけであります。ですから、いま、じゃ何ぼ海外へ出すかというような数量を提示するまでには至っていないのであります。
  38. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 じゃ通産大臣、七〇年代の通商産業政策の基本方向というもので答申、中間報告が出ておるわけですね。つまり資源型から知識集約型のものへ重点を移行さしていくのだと出ているわけでしょう。それ以外の経済審議会の中間報告の中でも同じようなことが出てきておるわけですね。その中でいま企業局長の話のような立地政策の基本方向が出ていると思うのですよ。ここまで出てくる——これはもう当然だと思うのですね。その中で五年後のことを言っているのじゃないのです。昭和六十年を目標にした長期の改造論ですよ。あるいは新全総ですよ。その場合に、その具体的なものというのをやはりすみやかにできるような、そういう作業が進められていかなければならないと私は思うのですけれどもね。そうでなければ長期の、六十年目標にならないのですよ。そのあとの話だというのはおかしな話ですよ。もちろん混合型で当分いくことはわかりますよ。わかりますけれども、私はいま言ったように、六十年を目標として、列島改造論にしろ、あるいは新全総にいたしましても、これははっきり具体的にやはり出していくべきだというふうに思いますですね。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 方向は明示されておる、私申し上げましたように知識集約型の方向にいく。そして重化学工業型から脱却していく。そういうことはもう明示されておると申し上げたとおりであります。ただ、その過程において、混合型の段階がしばらくは続いていくだろう。その過程において、いま申し上げましたような海外における中間工場その他の構想も実現していく、そういう青写真は大体できておりますけれども、じゃ何ぼ、どこで、その数量を消化するかという具体的な計画までは作業が進んでいないのです。しかしいずれ、六十年を目標とした、そういう計画の全体計画ができるときまでには、われわれも早くつくらなければならぬと、そう思っております。     —————————————
  40. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま小林国司君及び沢田実君が委員辞任され、その補欠として橋本繁蔵君及び阿部憲一君が選任されました。     —————————————
  41. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最初に、この未登録織機の問題につきましてお伺いしたいと思います。  先般の商工委員会で、特定繊維工業構造改善の法改正の審議の際に一番問題になったのが無籍織機、いわゆる未登録の織機、これが最近非常にふえておりますので、これをどうするのかということが、これはまあ衆参の附帯決議まで付きまして問題になったわけです。そのときに、当時の田中通産大臣は、無籍織機対策につきましては十分検討し措置をすると、こういうような答弁がありまして、今日に至ったわけでありますけれども、私どもが新聞等を見てみますというと、大体、調査の結果は十二万六千台の無籍織機が明らかになったと、こういうことが出ておるんであります。  なお、本年六月末に通産政務次官談話として、政府側の基本的な態度が、そして、それを受けた業界の考え方も今日ある程度明らかになっておると思うのでありますが、それによりますと、十二万六千台のこの無籍織機の一部を自主的に解消させ、残余の分については凍結織機として一定の制約と、五万円ないし七万円の経済的負担を課す。課すことによって生産活動のみはこれを認めると、そういうような方向であるらしいですが、その辺のところはどうなっているのか、まあ大臣にお伺いしたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま中尾委員が御指摘されたとおりの措置を現在やりつつあります。具体的な措置につきましては局長から御報告させます。
  43. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) ただいま中尾先生からお話がございましたように、本年の五月十一日から六月十日まで、無籍の織機の実態調査をいたしました。その結果、無籍の織機として出ましたのがおおむね十二万六千台でございます。それで、この調査の結果、私どもといたしましては、先ほど御指摘もございましたように、政務次官談話等で私どもの基本的な方針を声明をいたしたわけでございますが、この十二万六千台の無籍織機の保有者に対しまして通産局長から戒告をする、あるいは公表を行なう、あわせて無籍織機の一部につきまして自主的にこれを解消させる等、いろいろな制約条件を課しまして稼働だけを認める。こういう方針でこれを凍結する。事後、計画的にこれを減少さしていくという方針でございます。そういう基本的な方針に基づきまして、現在綿・スフ、あるいは絹・人繊、毛の三つの工業組合連合会におきまして、いろいろ産地等の意見も徴しながら、工業組合としての意見を取りまとめておりましたところ、八月の末に、次のようなことを一応三つの工連、三工連としては意見を取りまとめたわけでございます。  第一には、今後五年間に凍結織機の数を二五%減少させるというのが第一点でございます。  それから第二番目には、既登録織機保有者、既存の登録の織機保有者との間の公平を確保するという見地から、一台につきまして五万円ないし七万円の経済的負担を課するというふうな大綱を一応決定をいたしております。  私どものほうは、これらの工業組合の意見を聞きながら、今後、政府部内でいろいろ意見の調整をはかりまして、具体的に本無籍織機の対策を策定をいたしたい。私どもは非常に急いでおりますが、各方面との意見調整もございますので、本年中にはこれをはっきりさせたい。こういうふうに考えておるわけでございます。
  44. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、大体十二万六千台のうち、毎年五%ずつ減らしていく。そうすると、五年間で二五%。そうしましても大体まあ残りはまだ九万五千台ということになるわけですが、これは将来どうなるのか。要するに、あのときの委員会で問題になったのは、日米間における繊維の問題がやかましくなりまして、そして業界のほうは自主規制ということで進められておった。その際にまあ五万台はスクラップにするということで、そのときに平均二十五万円で買い上げよう。そのときに使った金が百十一億円ですかな。それから繊維協定後これを十万台さらに買い上げる。これが三百七十七億円。大体五百億円の金を使って、そうして登録織機を整理をしておる。ところが、片方はどんどんどんどんやみで織機がふえておる。国民の税金を使って非常に不経済ではないか。こういうことから、これがやかましくなっておる。そういう趣旨から考えてみて、まあいろいろなそれは生活上の問題もありましょうけれども、その辺、勘案をされて検討されておると私も思いますが、結局、あとの残りはどうなるのか、この辺のところ、ひとつお伺いしたいのですがね。
  45. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) 問題は、いまの御質問で二つあるように思います。第一点は、私ども六月の十日現在で一応調べましたものでございます。今後、無籍の発生を防止するにはどういうふうにしたらいいかという今後の問題が一つあると思います。この問題につきましては、取り締まりの徹底をはかることは、いまお話のございましたように当然でございます。したがいまして、この無籍織機の今後の所有者と申しますか、発生した事件に関しましては、通産局長の戒告、公表はもちろんのこと、あるいは中小企業団体法の規定に基づきまして、事業停止命令をかける、あるいは告発を行なう、あるいは、いわゆる産元あるいは親機というのがございますが、こういう取引先に関しましては、この無籍の根絶の認識の徹底をはかるほか、そういう無籍織機の設置に関する関係事業者、織機のメーカー等がありますが、そういう方に対しましては、取引停止の勧告あるいは公表等を行ないまして、今後の無籍の発生を絶対阻止するようなことでいきたいと思うわけでございます。  第二番目は、いま御指摘がございました残りの七五%の問題でございます。私どもはこの七五%の問題につきましては、現在第一段階として二五%、これも現在、各方面といろいろ数字等につきましては調整をはかっておるわけでございます。これがはっきりした段階において、さらにその次の段階として逐次やはりこれを減少するような方向で進めたい。こういうふうに考えておりますが、現在のところは、第一段階の調整をはかっております。これの結論を一刻も早く出そうということに重点を置いて作業をし、関係方面と調整をはかっているところでございます。
  46. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 この政務次官の談話を見ますと、実行可能な次善の策と、こういうふうにおっしゃっている。ところが、よく考えてみますと、これは大体中小企業団体法違反なんでしょう。違反なものが次善の策であるという、このことばの表現も、これもちょっとおかしな話なんです。  それから、いままでは未登録織機あるいは無籍織機であったけれども、今度は凍結織機と、こういうふうになる。つまり名前が変わっただけであって、実態は依然として五年後でも九万五、六千台が残る。そういうふうなことで、はたしてこれが解決の策になるのか、私も非常に疑わしく思うわけであります。それでお伺いしておるわけですがね。それで、具体的に少しお伺いしてみますけれども、この凍結織機についての五万円ないし七万円の経済負担が課せられておる。そうしますと、やりたい者は五万か七万の金を払えば大手を振って稼働を認められる、こういうことになるのか。それが一つと、五万円、七万円の資金はどのように使われていくのか。それと、いわゆる凍結織機と登録織機、これは両方とも稼働はできることになるわけですが、どの辺のところが異なってくるのか。いわゆる登録織機としてのいろいろな待遇もありましょう、あるいはそのほか金融、税制、いろいろな面もあるでしょうがね、そういう点がどう違っていくのか。この辺のところをちょっとお伺いしたい。
  47. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) いま御指摘がございましたように、これらの無籍織機は一挙にこれを絶滅するということが確かに望ましいことではございます。しかしながら、調査の結果十二万六千台というかなりの数が実は出てまいります。その相当部分の人がやはり零細企業あるいは生業的にやっておるということでございますので、直ちに生産活動をやめさせるということは、各それぞれの産地に集中しておる場合もございますので、これら零細業者の生業を奪うというふうな問題も考えられます。したがいまして、私どもとしましては、まあ場合によっては、社会問題にもなりかねないということ等も考えまして、実際問題としての解決策ということを一応考えたわけでございます。  それから、第二番目に御質問がございました——それでは、こういう金を集めたのは、一体どういうふうにこれを使うのかという御質問でございますけれども、これは私どもは、この金を、第一には、無籍の多い産地と少ない産地との間の公平を確保するという使途を第一に考えております。それから第二番目には、一応、産地における監視体制の強化の金に使おうということでございます。それから第三番目に、凍結した時期及び凍結後の織機の買い上げの資金に使おうというふうに考えております。なお、これ以外にも、私どものほうとしましては、さらにほかにいろいろ有用な使い道があればそれに充当したいということで現在検討を進めておるところでございます。  なお、この問題は業界内部の問題でもございますので、業界の内部ではこういうことを頭の中に置きながら検討を進めておるわけでございます。  それから、三番目の御質問の登録と凍結とはどう違うか、こういう御質問でございます。私どもは、この凍結をいたしましたものにつきましては、一応稼働だけを認めるということを申し上げたわけでございますが、その稼働だけと申しますのは、移動、賃貸その他、そういういわゆる移動と申しますか、あるいは使用者が違うと申しますか、そういうふうな一種の権利の得喪のようなことになるわけでございますが、そういうものは一切認めない。それから、今後こういう措置の対象になりました織機の保有者、無籍織機の保有者でございますが、それは国によりますいろいろな助成措置がございますが——たとえば買い上げ措置とかいろいろございますが、そういうものの対象には一切しないということでございます。それから、先ほど申し上げましたように、これにつきましては、当然自主的に解消させるような手段等をとらす、あるいは公表、戒告をするというふうなことで、既登録の方々と一応差別をつけておるつもりでございます。
  48. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、この無籍織機の中で、いわゆるあとで五万円ないし七万円のお金をかけて凍結され、稼働権を認められたいわゆる凍結織機というものもまた、まあ正式に登録というわけではありませんがね、何らかの方法でこれは組合なりが掌握しておらなければならない、つまりこれも登録の一種と、そういうことになるわけですか。
  49. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) これは、今後法律的な一応措置をとる必要があろうかと思いますが、いわば非常に限定をつけた意味の一種の登録ということになろうかと思います。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、今日まで無籍織機を取り締まる、監視をする、その体制というものはどうなっておったのか、組合まかせになっておったのか。政府は何らかの処置をしたのか。また、組合のほうにまかしてあるとすれば、これは組合がやる気がなければまた、やみ織機がふえていく、こういうことになろうと思うのです。ですから、今後の産地組合に対するいわゆる未登録織機の監視体制そのものをどういうふうに指導なさっていかれるのか。  これは結論的に言いますと、まあことばは悪いかもしれませんが、通産省として組合にまかしたから責任を回避するというわけにはいかぬのでありまして、法律をつくっておって、十二万六千台も今日やみ織機がふえた、それをほとんど黙認しておったのはあなたのほうなんです。そのあげくが国民に約五千億という金を使わしている、そういうことになっているんですからね。これは生活の問題もあり社会問題にもなろうかと思いますけれども、私もきびしく追及するわけじゃありませんが、やはり一応の筋を通していかなければならぬと思うし、今後の監視体制等をどうやっていくのか、お伺いしたいと思います。
  51. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) 従来、監視の体制につきましては、通産局に監視委員会がございまして、その下に、産地別に工業組合なりあるいは県等も入った産地の監視委員会がございまして、今後、私どもは無籍の根絶につきましては、先ほど申し上げましたように、通産局長の戒告、公表とか、あるいは関係の親機さんに対する認識の徹底とか、あるいは関係メーカー等の取引停止の勧告等いろいろ絶対に無籍が発生しないような措置を考えておりますが、監視につきましては、あらためて各産地がもう一ぺん確立すべき監視体制の基準をはっきりつくり直しまして、そこで私どものほうで、主要産地については、ヒヤリングを行なって、この監視体制が基準に達していないようなものにつきましては、さらに基準まで引き上げるように強力に指導したいと考えております。  それからなお、従来、産地にありました登録台帳、これは通産局に登録台帳の写しを保管させまして、取り締まりの徹底の強化をはかりたいというふうに考えております。なお、そのためには、来年度の予算も要求いたしてございます。
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ最後にこまかい点につきましては、これからさらに業界といろいろ話し合いの結果、検討ということになるのでしょうけれども、いずれにしても年内にスタートする、こういうふうに思うわけですが、その今後のスケジュールというのですか、その点一つお伺いしたいと思います。
  53. 斎藤英雄

    説明員(斎藤英雄君) 現在、先ほど申し上げましたように業界のほう、すなわち三工連で具体的な措置についてほぼ合意に達しまして、これを各産地の工業組合に徹底をはかりつつある段階でございます。この徹底をするのを待ちまして、私どもとしましては、関係各方面とも調整をはかりつつ具体策を、できますならば九月、場合によりましては、十月中には、具体的な措置をはっきりとりまして、業界の皆さまに徹底をはかりたいというふうに考えております。なお、これにつきましては、中小企業関係の法律の施行規則の関係の改正を要するような事態にもなるかと思いますので、その辺も年内に私どもは改正をいたしたいというふうに考えております。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃその問題はそれで終わりまして、次に、日中貿易、経済問題につきまして若干通産、大蔵当局に聞きたいと思います。  日中国交回復も目前に迫っておるわけでして、政府側として若干答えにくい点もあろうかと思いますけれども、お伺いしたいと思いますが、まず最初に、この円・元決済の合意に対する評価につきまして、これは八月十八日、東京銀行が中国銀行との間に円・元決済について合意書に調印し、三和銀行も円・元決済についての施行細則を公表したわけであります。   〔委員長退席、理事温水三郎君着席〕  また、他の為替銀行もこれらに追随するかまえを見せており、東京銀行との合意点のこまかいところは、これは省略することといたしまして、そのおもな点は、これは第一に、日中間の決済には日本円と人民元を用いる。第二が、日中間の貿易は円元いずれを使うかは貿易業者の選択による。第三は、円・元の為替レートは一元百三十五円八十四銭の固定相場とする。第四点は、元の残高はいつでも中国人民銀行の決定する相場で英ポンドに交換できる、こういうことです。  この合意については、日本銀行筋では一応異論がないようなことを言っておりますけれども、貿易の当事者である通産大臣、大蔵省も見えておりますから、これに対する見解——どういうふうに評価なさるか、その辺のところを一つお伺いしたい。
  55. 林大造

    説明員(林大造君) お答え申し上げます。  日中間の貿易の決済にいかなる通貨を使うかということにつきましては、貿易業者の間の取りきめと、それからそれに関係いたします銀行の間の取りきめとがございます。そのうち貿易業者の間の取りきめにつきましては、これは現在の為替管理法上全く自由になっておりまして、自由でございます。したがいまして、いかなる取りきめをしても政府としてはさしつかえないわけでございます。  銀行間の取りきめにつきまして、ただいま中尾先生が御指摘のようなコルレス契約が締結されたわけでございますが、本件につきましては、現在私ども従来の取りきめを一歩前進させたものとして積極的に評価いたしております。コルレス契約につきましては全く自由ではございませんで、外国為替管理法の規定によりまして大蔵大臣の承認を受けなければならないことになっておりますが、私どもはこれでけっこうであるということですでに承認を与えております。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民間同士でこういう決済条件がきめられたことは、貿易を促進する一つの有力な手段にもなるので歓迎しております。
  57. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 東京銀行の案と三和銀行の案は、これは若干違うわけです。その点につきましてお伺いしますけれども、   〔理事温水三郎君退席、委員長着席〕  円・元決済問題を解決するにあたって、まず覚書貿易事務所を通ずる試案作成から始まって住友銀行、三和銀行、東京銀行からそれぞれ中国側の意向の打診が行なわれたが、結局のところ、東京銀行案と三和銀行の案がいまのところ日の目を見たかっこうになった。もともと円・元決済は、いまのところ政府間協定でないので、日本の各為替銀行と中国との個別契約にならざるを得ないから、契約条件に相違があってもかまわないわけであると思われる。あまりに大きな差異があると、これは中国のほうも、わが国の貿易業界も、産業界も、多少また迷惑な点もあるかもしれない。  そこで、東銀案と三和銀行案の相違のおもな点は、一つは東銀案では、円・元の使用は貿易業者の選択による、こうあるわけですね。ところが、三和銀行の案は、当分の間日本の輸出は元、輸入は円と元の使用ということになっておるわけです。  第二番目の相違点は、円元交換レートの変更について、東銀案は、円切り上げなど相場が変更した場合は新しい固定相場を協議できる。それから三和銀行の案は、中国人民銀行の公示するレートを使用し、変更するときは中国銀行は直ちに連絡する、レート変更権が中国側にあるということになっておりますね。この点、この為替銀行案の相違についてどのような見解を持っていらっしゃるのか。また、これらの異なった案は、これは調整をするのか、あるいは調整する必要がないのか、それから国交回復後はどういうふうになるのか、その辺のところを両当局にお伺いしたい。
  58. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま御指摘のございました東銀案と三和銀行案ということでございますが、御指摘のとおり、中国側との接触は住友銀行、三和銀行、東京銀行、それぞれ個別に接触をしてまいりました。その段階で、そのおのおのが時点が違っているわけでございまして、最初に住友銀行が訪中をいたしました。それから三和銀行が訪中をいたしまして、最後に東京銀行が訪中をいたしたわけでございます。したがいまして、その時点時点でいろいろ作業の過程が違ってまいりまして、結局、最終的に落ちつきましたのが東京銀行の接触した内容でございます。で、私ども、コルレス契約の承認をいたします場合には、その契約の大きな骨組みについて承認をいたしますので、その細目につきましては格別特にどうということはないわけでございますけれども、ただいま御指摘のような点は、大体において、三和銀行もその後中国側と接触をした結果、東京銀行の案に沿った姿になるというふうに私ども連絡を受けております。したがいまして、最終的には現在の東京銀行の案で差しつかえない。ただ、御指摘がございましたレート変更をする場合に云々ということにつきましては、別段合意は行なわれていないというふうに聞いております。  ちょっと漏らしましたので、恐縮でございますが、もう一点、国交回復後どうなるかという御質問がございました。その点につきましては、日中間の貿易決済に関するいろいろな話し合いは、銀行間のコルレス契約についての話し合いを含めましてすべて民間ベースの話し合いでございます。それは、現在、国交がすでに正式に結ばれている他の諸国の銀行とわがほうの銀行との話し合いと全く同様でございます。したがいまして、国交回復の前後、その有無にかかわりませず現在の契約はそのまま続いていくというふうに存じております。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵省と同じ見解であります。
  60. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それからもう一つ。まあこれも為替リスクの負担が日本側にあると、こういうふうにいわれているのですよ。このことについて、まあ通産大臣が聞いていらっしゃいますから、東銀案と三和銀行案の両者とも多少の相違点があっても、この案を実施する段になると実質的には元建て元決済になる、そういうのが定説のようであります。そのため、円の再切り上げなどによる為替リスクは全面的に日本側が負担する形になるわけですが、しかし、この点も、いままで国際通貨として使われておった英ポンドやフランスフランに比べると円のほうが強いので、通貨不安によるデメリットが少ない、こういうふうにいろいろな点からも評価されているようですが、この点どういう感触を持っていらっしゃるのか。
  61. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま御指摘のとおり、元建て元決済の場合に、元と、たとえばドルあるいはフラン、マルクとの関係が変わらずに、円とそれら通貨との関係が変わりますれば、当然、そこに為替レートの変更の可能性はあるわけでございます。この場合に、為替リスクを背負い込むのは、これは為替リスクと同時に、為替による利益も可能性としてはあり得るわけでございますが、将来のあり得べき為替損失なり為替利益は、当然日本側の業者が背負い込む、あるいは取得することになります。それはちょうど、ただいま民間の銀行が非常に数多くかかえておりますドル建てのコルレス契約、あるいはマルク建てのコルレス契約、フラン建てのコルレス契約の場合と同様でございまして、これは国際間の為替取引である以上、どちらかの業者が為替リスクを背負い込むのはやむを得ないことである。しかし、いずれにいたしましても、現在まで行なわれておりますような、フロートしておるポンドを取引の通貨に使いたくないという業者ないし銀行があります場合に、そのようなフロートに伴うリスクを回避できるという点で積極的な意義を認めているわけでございます。
  62. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 今度は第二輸銀の創設というようなことを財界のほうは要望しておるのですが、これは通産大臣にお伺いしますが、これをいま読みますよ、大体新聞に報道されておることですけれども、整理の意味で。  八月の末に、稲山新日鉄社長を団長とする日本経済人訪中団と中国要人との会談で、日中貿易について次のような基本線が確認された、そういう報道があったわけです。  それは第一番目に、中国は、日本の技術のほか鉄鋼、機械設備、肥料を受け入れ、鉱工業生産の鉱大につとめる。第二は、その結果、石油などの鉱物資源に供給余力を生ずれば、日本に輸出し、これにより貿易の長期的均衡をはかる。第三番目が、その間の一時的な貿易不均衡は、農水産物や軽工業品の対日輸出を増加する。第四に、支払い方法についても国際的な常識の線に沿った延べ払いを活用する等のことが話し合われ、明るい期待が持たれたようであります。これらの点も踏まえまして、財界筋では五カ年間で五十億ドル程度の対中貿易を見込んでいるようでありますが、これには長期低利の延べ払いを必要としておるわけであります。その条件も金利年三%以下、据え置き十年を含む返済期間三十年程度のものということであります。現在の延べ払い金融は輸銀と海外経済協力基金で行なっておりますが、輸銀の輸出金融が金利平均五・五%程度、海外経済協力基金で最低三・五%程度で、返済期間は輸銀十年、基金二十年程度ということであります。政府は輸銀法を改正して制度も変えるとともに、金利を変更する予定のようでありますが、対中延べ払い条件の緩和を実施する意思があるのかどうか、この点が一つ。その場合に財界の要望する対中向けの第二輸銀あるいは第二基金のようなものを創設することを検討するのかどうか、その辺のところですね、お伺いをしたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済協力、経済交易の問題は、田中訪中によりまして日本と中国との国交情勢がどういうふうになるかということを見定めた上でわれわれはゆっくり考えていきたいと思います。ただ、中国との経済交流、経済協力の問題については、私は、積極的な熱意を持っております。ただいまはこれ以上のことを申し上げる段階でないと思います。
  64. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、この日中貿易の問題ですね、これは今日まで友好貿易あるいは覚え書き貿易と、こういうふうにあるわけですが、きょうの新聞によりますと古井さん、田川さんが行かれて劉希文氏と会っている。そうして覚え書き貿易一年間延長というようなことも了解を取りつけたようでありますけれども、国交回復後は友好貿易、覚え書き貿易、政府間貿易、こういうようなことが考えられるわけですが、どういうふうなことになるのか、これも中国側と話をしてみなければ結論が出ないかもしれませんが、一応お伺いしてみたいと思います。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 対中国との貿易交渉の問題は、先方がどういう意思を持っておられるか、どういう要望を持っておられるか、それをまず見きわめた上でわがほうの対応措置をきめたいと思っておりまして、われわれのほうから押しつけがましくこれこれというような考えは出さないほうが賢明であると、そう思っております。  まあしかし、いままでの国交回復をした国の例等から考えてみますと、政府間協定のもとにそういう貿易関係というものは一元化していくことが望ましい、覚え書き貿易あるいは友好貿易、そういうようなものは、政府間協定のもとにこれを統合していくと、そういうことが望ましいと考えています。
  66. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最後に、これは一般の問題ですが、両角通産次官が七日の記者会見でこういうことをおっしゃっています。「両三年で対米貿易収支を均衡させるというハワイ会談での米側に対する約束を実行するため」、輸出面での手を打ちたいと、こういうようなことが言われているわけです。これは新聞にも出ているわけですね。これを見ますというと、今後輸出調整の具体的な方法について、まあ輸出課徴金の創設あるいは貿易管理令の発動による輸出急増防止対策などが盛り込まれる見通しと、こういうふうに出ているわけです。この辺の見解をちょっと大臣にお伺いしたいと思います。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 対米貿易のバランスを両三年にかけて回復していくということは、われわれも考えておるところでございます。本年の分につきましては、いま円切り上げの効果がようやく出てまいりまして、輸入が非常に増大をして輸出は停滞ぎみであります。その情勢をもう少し見守りながら、それらの点に対する措置を検討してまいりたいと思っております。まあ、けさの新聞に発表されましたような輸入の激増の傾向が続いていけば、バランスの回復ということはそれほどむずかしくないと、こう考えております。
  68. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、いろいろな対策を講じて今後対米輸出が依然として変わらないと、こういうような場合は、貿易管理令あるいは輸出課徴金等を課するようなことも考えられるわけですか。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) なるたけ強権的措置はとらないことが、私は賢明だろうと思っております。しかし、このアンバランスが非常にひどくなるという情勢である場合には、なるたけ自主的措置で、あるいは組合あるいは輸出カルテル、そういうような方向でこれを抑制していくと、そういう民間自体の力をかりてそういうことをやることを独禁法の範囲内においてやってもらおうと、これが私たちの基本的な考え方であります。
  70. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がありませんので、この問題はそのくらいにしておきまして、次に地盤沈下対策、それと工業用水の問題につきましてお伺いしたいと思います。  こういった地盤沈下の問題は非常にじみな問題でありまして、対策を講じてすぐ効果があらわれるというようなことでもありませんけれども、非常に最近また地盤沈下がひどくなっております。この際に——大臣がおかわりになりました。田中通産大臣は、こういう点には非常に熱心であったわけですが、中曽根大臣もひとつこういうあまり目立たないような問題も取り上げていかないと、やはりただ産業第一で進め進めだけでは、これはうまくない。国民福祉優先という立場に立ってこれからやっていただかなければならない、そういう点から少しお伺いしたいと思うのですが、まず、公害基本法によりますと、いわゆる地盤沈下は典型的な公害一つである、こうなっておるわけです。しかも、これは一ぺん沈下したら幾ら地下水規制をしてももとどおりにならない、非常にやっかいなことであります。  そこで、地盤沈下の防止対策というものは徹底してやらなければならないじゃないかと、こう思うわけですが、そういう観点から一番最初にお伺いしたいのは、最近における沈下の状況、あるいは傾向はどうなっておるのか。全国的な動向と、特に東京都並びにその周辺地域に分けてお伺いしたいと思います。
  71. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 地盤沈下につきましての最近の状況でございますが、まず東京都につきましては、この観測結果は四十六年から四十七年の一月にかけてでございますけれども、城北地区の沈下量、これは年間大体二センチから十センチと、地域によっていろいろ違いますが、大体この見当になっております。それから、江東地区のほうの沈下量は二センチから十八センチ、特に、荒川河口付近と葛西海岸付近の沈下量が大きくなっておるという現状でございます。  それから、東京周辺で千葉県でございますが、葛南と東葛地域の沈下量、この辺もやはり県の観測結果でございますが、船橋市について申し上げますと、年間二センチから十七センチ、それから市川市では二センチから二十センチ、松戸市は二センチから八センチ、それから習志野市で二センチから六センチ。浦安、これはちょっとひどいですが、十センチから十五センチ、こういうような数字になっております。  それから大阪でございますが、大阪の沈下量につきまして、四十五年−四十六年十月の観察結果によりますと、東大阪寄りのごく一部の地域につきまして二ないし四センチ、これは比較的少ないほうでございますが、沈下量ということになっておりまして、大阪につきましては、地盤沈下は現状においてはほぼ鎮静しているというふうな見方ができるのではないかと考えられます。  それから名古屋でございますが、四十六年−四十七年にかけての観測結果によりますと、工業用水の指定地域でございますが、南区、それから港区の一部、この辺の沈下量、これは南区の一部地域で年間四センチ程度となっていることが観察されておりますが、そのほかはほとんど沈下は見られてないという現状でございます。
  72. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで、私のほうも少し調べてみたんですが、東京都内の場合ですが、四十六年中の沈下ペースはやや鈍化している。そういうことを言いましても、海抜ゼロメートル地帯は三十平方キロメートルをこえ、沈下面積も広がって区部面積の半分以上となっておるわけです。  また、千葉県下でも船橋地区を除いて全域で悪化をし、埼玉でも鈍化したものの、沈下した面積は倍増しておる。これを長期的に見ますというと、特に、都内ではこの十年間に一メートル以上沈下をした個所は三カ所もある。このうち江戸川区堀江町は百五十三センチにも達しておるが、これら長期にわたる沈下の進行は用排水の困難化を来たし、生活環境の悪化だけでなく公共施設をこわし、防災施設を弱体化する等、いろんな面に悪影響が出ておるわけです。  それで、具体的な例をちょっと私は調べてみたんですが、たとえば最近でも建設後三年しかたたない鉄筋の浦安小学校が危険校舎として取りこわされた、地盤沈下のためにですね。あるいは皇居のお堀の石垣が三十カ所もくずれた。また地下鉄東陽町のトンネルが一年半の間に十センチ以上も沈下をしておる。それから、沈下防止のためにつくられた千葉県の葛南工業用水道に、河床が沈下したため海水が逆流した等、沈下による被害は新聞記事等にもたくさん出ておるわけですね。  そこで、東京都の公害研究所の調査報告によりますというと、江東デルタ地帯だけで三十六年から十年間、地盤の沈下に伴って不要な支出を余儀なくされた公共部門における損害額は、総計七百四十億にのぼっている。三十六年から十年間にですね。こういうことが報告されておるわけですが、この損害というのは、全国的にはこれは膨大なものと思うわけですが、あなたのほうで調査していらっしゃればこの点もお伺いをしたい。  それから特に、沈下地帯における内部河川の護岸堤防、水門等は沈下によるかさ上げの繰り返しのため、地震やあるいは高潮と集中豪雨の同時の襲来には著しく弱体化をしているのではないか、このように思われるわけですが、東京と、その周辺中心に実態はどうなっているのか、この点まずお伺いしたい。
  73. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) ただいまの公共事業関係全般、それから地震、高潮に伴います影響、この辺は私どものほうでは実態は部分的以外には、全般的なことは公害直接の所管官庁として環境庁のほうで調査いただくということになっておりますので、私どものほうでは公共事業関連、あるいは地震、高潮等に伴います危険性等につきましての被害と実額、それは現在のところ把握してございません。
  74. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 環境庁の水質保全局企画課長でございます。  全国的な地盤沈下の被害につきましては、残念ながらまだ数量的な把握はいたしておりませんけれども全国におきます地盤沈下地域が約四十四地域ございます。その中で、軽微な被害を含めまして何らかの被害が出ております地域全国四十四の地域のうちの約半数程度、われわれの調べたところではございます。そのうち特に被害の著しい地域は、先生御指摘のように首都圏の南部、それからさらに阪神地域もかなりひどかったのでございますけれども、あとは新潟の平野地域等でございます。東京とその周辺地域におきましては、長期的にわたりまして激しい沈下が続いたために大きな被害が生じておるわけでございまするが、現在、平均海面下の地域は東京都では六十五平方キロになっておる状態でございます。千葉県では六平方キロメートル、満潮面下の地域は東京都では百二十四平方キロに及んでおりまして、千葉県では十五平方キロメートルに及んでおります。  被害の程度は先ほど御指摘のありましたように、調査報告の結果といたしまして、江東地区で八百億円の被害が出ているという報告を承知いたしておりますけれども全国的にはまだ数字的には把握いたしておりません。
  75. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 政府は、今日まで非常にたくさんの金を使って沈下対策を講じてきたわけですけれども、依然として被害が出ておる、そういう点はどうやらこの対策に不備な点がある、こういう実証をしておられるわけですが、そこでこの地盤沈下対策、沈下の防止対策のために過去十年間でどのぐらい予算措置をされたのか、その辺おわかりですか。当委員会は決算委員会ですから、やっぱりこういうことを聞かなきゃならぬ。
  76. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 過去十年間の数字はまだ調査しておりませんけれども、四十六年及び四十七年の数字を申し上げますと、四十六年度につきましては、地盤沈下防止のための調査研究等も含めまして地盤沈下対策事業は約八十五億円でございます。  それから、四十七年度につきましては、まだ実施計画段階で確定してない金額もございますけれども、それを大体推計いたしまして、おおむね百億程度になろうと考えられます。
  77. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 地盤沈下につきまして、通産省として代替工業用水道の設置ということでとりました対策と、それから地下水の利用の適正化調査という形での対策費、これは三十七年度から四十七年度に至ります十年間を通じまして総事業費で八百九億、そのうち国庫補助が百九十億ということになっております。それから、調査等に要しました経費では、二十二地域につきまして約四億円、こういうことになっております。
  78. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、そういうような膨大な金をお使いになっていまなお沈下がとまらないというようなむずかしい点もあります。それはよくわかっておるわけですが、そういってこれをこのままの状態ではたしていいとは言えぬわけです。だんだん沈下していくわけですからね。それで、まあその防止対策に不可欠な地下水のくみ上げの規制ですね。この問題につきまして少しお伺いしたいんですが、この規制の方法がやはり甘いんじゃないか、甘いということは当局も御存じでしょうけれども、それはいろんな点から考慮の上、あるいはまたいろんな点からの横やりも入ったかもしれない。その辺は私もわからぬでもないんですが、そういってこのままほうっておくわけにはいかぬじゃないか、そういう観点から私はお伺いしますが、まず、四十六年三月における都の報告、これによりますと、都内全域で毎日百七十万トンの地下水がくみ上げられておると、工業用水道の布設などによってそれまでくみ上げられていた地下水はどの程度削減をされたのか。つまり、工業用水道を布設した結果、この程度の地下水のくみ上げを規制することができたとか、それを聞きたい。
  79. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 東京都におきまして、これまでの工業用水道の布設によりましての効果としましての地下水くみ上げの削減量でございますが、三十五年に地域指定を行ないました東京都の中の江東地区でございますが、指定当時の工業用水としての地下水のくみ上げ量、これは一日当たり二十二万トンでございました。それで、その後の江東地区工業用水道給水能力が一日三十二万六千トンでございますが、一部給水を開始して以後、四十年一月以降このくみ上げ量は漸次減少してございます。四十六年末におきまして一日当たりくみ上げ量は、六千五百トンというところまで大幅に減少してございまして、差し引き一日当たり約二十一万トンのくみ上げ量減少ということが江東地区については申し上げられるかと存じます。  それから、城北地区でございますが、この地域につきましての指定は三十八年に行なわれておりまして、当時、一日当たり三十一万七千トンのくみ上げが行なわれておったわけでございます。以後、城北地区工業用水道給水能力が一日当たり四十万トンでございますが、この一部給水が開始された四十五年以降、強制転換が進みまして、同じく四十六年末現在、四十六年末でございますが、一日当たりくみ上げ量は、推定でございますが、約九万トン程度になってきております。したがいまして、差し引き約二十三万トン程度のくみ上げ量の減少というふうに見られる次第でございます。
  80. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、これからあなたのほうでも、いろいろ計画もありましょうけれども、現行工業用水法の規定によって、昭和五十年、これを目標にして、その時点でどういうふうになるのか、その点ちょっとお伺いしておきます。
  81. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 五十年目標で、規制の方法を東京都とともにいろいろ考えておるわけでございますが、特に地盤沈下現象の著しい江東、城北地区でございますが、この点につきましては、先生御承知のとおり、四十七年五月、全面的にくみ上げを禁止するという措置をとっておるわけでございます。ただ、工業用水道の整備との関係がございますので、一定の経過措置をとられております既存の井戸についての規制、これは四十九年度末、具体的に申し上げますと、五十年の三月までにはその強制転換を終了するということにいたすつもりでございます。  現在の指定地域内のくみ上げ量、これは先ほど申し上げましたとおり、城北地区で約九万一千トンでございますし、それから本年地域指定を行ないました江戸川区を含む江東地区で合わせてみますと、四万二千トンということになってございます。これらは、現在城北地区工業水道、先ほど申し上げました給水能力四十万トンでございますが、これの拡張工事、それから江東地区の工業用水道給水能力三十二万六千トン、これの完成が四十九年度末の予定になってございます。したがいまして、その時点において強制転換が完全に行なわれまして、五十年四月以降は、くみ上げ量はほぼゼロに近いものになるというふうにわれわれとしては考えてございます。
  82. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ほぼ何……。
  83. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) ほぼゼロでございます。まあ、ないということでございます。
  84. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ほぼゼロだって、そんなこと私は信頼できませんよ。ゼロならば、大いにやっていただいたら、まあこっちも安心するというわけですがね。だが、あなたのおっしゃったことを私は全面的に信頼するわけにいかないのです。今後も、まあ工業用水道法にはいろいろな盲点がある。また、現にこの環境庁水質保全局のこれを見たっていろいろ書いてありますよ。ゼロになるということについて、私も若干の疑義があるが、この点、保全局の方、どうお考えになりますか。ちょっとわかりやすくするために、少し、もう一ぺん聞きますけれども、四十六年三月ぐらいでこの地下水のくみ上げ量は幾らになっておるのか。そして工業用水の設定、その効果によって五十年には幾らになる。まああなたがゼロになるとおっしゃった。それを簡単に一ぺん算術計算で、単純ですけれども、ちょっとお伺いしたい。
  85. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 先ほど申し上げましたとおり、これはあくまでも、先生どういうようにお受け取りになられたのか、恐縮でございますが、私の申し上げましたのは、現在の江東と城北の指定地域内でのくみ上げ量に限って申し上げますと、四十六年の三月末から現在に至ります城北地区のくみ上げ量、これが約九万一千立米メーターということになっておりますし、それから、ことし地域指定を行ないました江戸川区を含めた全体で言いますと、四万二千ということになっております。そこで、五十年四月、これらの指定地域内の工業水道への完成に基づきます強制転換によりまして、合わせて十四万一千トンのくみ上げが転換されるという前提でお答え申し上げた次第でございます。
  86. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまの、江東とどこですか。
  87. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 城北でございます。
  88. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 東京都の場合はどうなりますか。
  89. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 東京都全体につきましては、指定地域以外も含めました数字としては、ちょっと私どももまだそういう計画予想を立ててございません。
  90. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 わかってないですか。
  91. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 正確な数字じゃございませんけれども、東京都全体の推計をわれわれのほうでいたした結果によりますと、大体今後減るものは三十二万トンぐらいと見まして、なお十四、五万トンは残るんではないか。それは工業用水のための地下水として揚水されることになるであろうというふうに推計いたしております。四十六万トンのうちに三十二万トンぐらいは規制によって減ってまいりまして、残り十四、五万トンは残るであろう、こういうふうに推計いたしております。
  92. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 どうもその数字もちょっと私の調査と少し違うように思うんですが、とにかく、まだ地下水の問題は相当量私は残ると、このように思うわけです。  そこで、問題になってくるのは工業用水の規制の問題ですがね、これをちょっとお伺いしますけれども、これは都の報告ですがね、これを読んでみますから、これに対してどういうお考えか。四十五年度末までに削減されたのは、地下水は全体でわずか日量が三十万トン、それから工業用水だけでは日量が十三万トン、それも四十年以降になってようやく減らされた、しかし、四十六年四月以降でも工業用水は日量七十一万トンが、ビル用水は四十三万トンがくみ上げられている。都では、これらの地下水くみ上げは、現行工業用水法などの規制によっては、昭和五十年の時点でも工業用水で毎日三十三万トン、ビル用水で七万トン減らされるにすぎない、つまり両方で計四十万トンですね、だから四十六年三月にくみ上げられていた百七十万トンの地下水は、五十年になってもまだ百三十万トンはくみ上げられることになる、こういうようなのが出ていますがね、この点いかがです。
  93. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) たいへん申しわけないことでございますが、都の全体の量の方針については、私ども工業用水という見地で指定地域につきましての数字として申し上げました以外に、この東京都全体、ビル用水も含めた観点での数字、ただいま先生のおっしゃったことにつきましてちょっと知悉してございませんので、たいへん恐縮に存じますが……。
  94. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 東京都の公害防止計画によりますと、ただいまの数字はちょっと私存じていないのですが、公害防止計画によりますと、百七十万トンのうち九十二万トンを削減するというふうな計画になっております。これは工業用水のみならず全地下水でございます。
  95. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 百七十万トン……。
  96. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 百七十万トンに対しまして九十二万八千トン削減する、こういう計画でございます。ですから残りはやはり八十万トンぐらいあります。
  97. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうすると、残りはまだ八十万トンか百万トンぐらい、昭和五十年代になっても吸い上げられていくと、そういうことでしょう。そうすると、毎日あなた八十万トン、百万トンの水が五十年以降も東京都の場合は地下からどんどん吸い上げられていく。こういうような調査の結果ですね、あなたの資料をそのまま受け取ってみても。そうすると、まだこれからやはり沈下は続くものと、こういうふうに見なければならぬ。一日に八十万トンから百万トンだったら、これはもう一年間に膨大なものになる。  そこで、この工業用水法の規制の問題について若干お伺いしたいのですが、この工業用水法の第三条に、これは三十七年度改正になったわけですが、一番目が地下水の水位が異常に低下をした場合、それから地盤が現に沈下をしている地域であること、三番目が、かつその地域工業用水道がすでに布設されているか、または一年以内にその布設工事が開始される見込みがある場合に限ってのみ、この工業用水法の地域指定の上、くみ上げの規制ができる、こうなっているわけですね。この点はそれで間違いありませんか。
  98. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 法律第三条の条文はそのとおりでございます。地下水採取に起因して——地底の要件でございますが、地下水採取に起因して地下水のまず水位が異常に低下または——これが全部じゃございませんで、異常低下があるか、塩水または汚水の水源への混入があるか、地盤沈下のいずれかの障害が生じているということと、それから工業用地下水の利用量が相当大きいことと、もう一つ要件がございます。最後に、その地域工業用水道が布設されているか、または一年以内に布設工事が開始される見込みがある場合ということになっております。したがいまして、必ずしも、地盤沈下が必ず起きているということはもちろん政策の主対象になりますが、地盤沈下がなくても、異常低下あるいは塩水あるいは汚水の水源への混入ということで、かなり予防的な方法で、指定地域ということは、そのほかの要件が具備されればできるわけでございます。
  99. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それならば江戸川区の荒川以東地域の場合、これは過去十年間の沈下量が八十センチ、一年平均したら八センチですね、そういうところがあちこちあるわけです。地下水規制のため工業用水法による地域指定がなされたのがことしの五月一日です、ことしのですよ、五月一日。過去十年間がずっと一年に八センチ、十年間で約八十センチ、一メートル近い。そういうものがことしの五月になってやっと地域指定にされた。このため、この地域ではいまなお既設の井戸からはくみ上げができるし、五月までは井戸の新設さえ規制できなかったわけであります。こういうことですが、これは一体どういうことですか、こういう顕著な地盤沈下のところがことしの五月までほうってあったということは。
  100. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) ただいまお話のございましたとおり、江東地区の、特に荒川右岸の地域は禁止してあったわけですが、左岸の地域でございますが、この辺の事情につきましては、その地域の需要量の把握であるとか、あるいは代替水源の確保をどうするかとか、いろいろ問題がございまして、法律の指定要件の中で工業用水道があること、あるいは一年以内にそれが使用に供せられる、そういった具体的計画がなかなか定まらなかったことが大きな理由になってございます。もちろんこの件に関しまして東京都といろいろ協議等を行ないまして、調査、設計等指導してきたわけでございますが、ようやくその辺が、昨年度計画が具体化を見たということで、本年度から江東地区工業用水道の拡張事業として補助対象とするということを決定すると同時に、この地域を新たに五月追加指定した。こういう現状でございます。
  101. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 こういうところはマンマンデーにやるからそういうふうにどんどん進んでいくので、工業用水法の指定地域にしても、既設の井戸からは吸い上げられるということになるわけです。そうしますと、まあ私の調査では、毎日五万トン工業用水がまだこの地域から今後も吸い上げられておる。そうすると、毎日五万トン分はまたこれは沈下していくということですね。この辺どうお考えになっているのか、どうも納得いかないのですが、その点伺いたい。
  102. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 昨年五月と本年五月、東京都及び千葉、埼玉含めまして、周辺地域について基準の強化あるいは指定の追加等を行なったわけでありますが、その際に基準外の古井戸のくみ上げ、これが放置されておるのではないかという点でございますが、既設の井戸につきまして、適合しないもの、これはまず先ほどの指定要件にも見られますとおり、代替水源としての工業水道の完成を待って、その使用を禁止あるいは強制的に転換させるというたてまえになってございます。その辺の前提条件がないままに、直ちにということになりますと、やはりその地の企業あるいは操業の問題にも非常に重大な影響を持つことになりますので、現行法ではそういう見きわめをつけた上で指定をし、工業用水道——代替水源としての整備を行なってそれの使用に供せられる状態になる一年前に、この強制転換の措置をとっていくということにいたしておる次第でございます。したがいまして、昨年五月から基準強化が行なわれました東京都の江東、城北地区、それから埼玉県南部、それから本年四月に基準強化が行なわれました千葉県の葛南地区、これにつきましてはまだ強制転換措置が完成していないという現状にございます。それから本年四月に地域指定を行ないました江戸川区、それから千葉県の東葛地区についても同様でございます。これはいずれも現在それぞれ見合いました水源転換のための工業用水道の拡張につきまして工事を進めておる段階でございますので、それができますと、強制転換という形で大幅な既存井戸の規制ということになる次第でございます。
  103. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは、事情はわからぬでもありませんがね。わからぬでもありませんけれども、この十年間もそのまま沈下を見ておったというような、そういうところに行政の怠慢も私はあるんじゃないかと思う。いろいろな事情はあるんでしょう。地下水くみ上げの規制をしたって水がないじゃないか、それならそれで、もう少しピッチを上げておやりにならないというと、これまた八十センチも一メートルも沈んでしもうて、やっと、いまからやりますよ、地下水の規制をやりますよ、工業用水法の地域指定にいたしましたよ、本年五月一日からですな。しかし、まだ古井戸はけっこうでございますよ、その分が、まあ五万トンはまだ今後も吸い上げられると。それは通産省のほうがやかましく言いませんと、そういうことですね。そしてまた地盤沈下が進んでおって国の金をかけてまたやる。こういう点に、私は非常に納得できない点があるのですよ。よく検討してください。時間がありませんでね。  それから次は、いわゆる地下水の水盆地域ですね。たとえば江東地区のほうの地下水のくみ上げをやっても埼玉のほうは減らない。ところが埼玉のほうでくみ上げをしますというと、江東地区のほうが規制をしておってもこっちのほうが減ると、そういうことがあるわけですね。そういう規制は一体どうおやりになるのか。まあ簡単に言うと水脈の水盆地というのがありますわね。こっちのほうは沈下しない、こっちは沈下しておる。だからこちらのほうは地下水のくみ上げを規制する。ところが水盆地になっているから、こちらをとめて、こちらですくい上げたらこっちがまた減るということもあるわけですが、その辺の規制はどうなっているんですか。全然おやりにならないのか。
  104. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 確かに、おっしゃるとおりの地下水水理の動きというものに基づきます、相当離れた地域での原因が結果を生んでおるという事象はあるわけでございまして、ただそれにつきましては、現実の問題といたしまして、江東地区の沈下に影響があると見られます埼玉県につきましては、すでにその南部、これは地域指定を行ないまして、全面的にくみ上げ規制ということをいたしておる次第でございます。それから、今年度から新たに、さらにこういった広域規制の必要性を痛感いたしておりますので、首都圏全体を一体としてとらえました地下水理の総合調査ということをやっております。その辺の結果を踏まえまして、指定地域につきましての妥当な拡大につきまして積極的な考慮を払ってまいりたいというふうに考えております。
  105. 松田豊三郎

    説明員松田豊三郎君) 環境庁といたしましても、いま先生おっしゃいましたような地下水盆説といいますか、地下構造のメカニズムについて専門委員会を設けまして、これから積極的に検討しようということにいたしております。その結果によりまして、確かに首都圏につきましては、たとえば南部の水盆説もあるわけでございますので、そういう点で、専門の先生方の御検討をいただきまして、井戸の規制対象、規制の範囲ということにつきまして、さらに検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  106. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がありませんでね、いろいろ問題点を、私はいまからお伺いしますので、それの対策を総括的にお伺いしましょう。  次は、地下水くみ上げのポンプの規制は一応できている。けれども、それは井戸の吐き出し口の断面積、それによって規制をされているわけですが、ところが、くみ上げるこの地下水の総量というものの規制はどうなっておるのか。これもパイプのごついやつを使わなくても、少し小さいやつで幾らでもすい上げられる。これもちょっとおかしく私は思うのですが、その点。  それから、先ほども申し上げましたが、くみ取り井戸の許可基準外の既設の井戸この使用につきましては今後どうおやりになるのか。これはいまでも古い井戸はしようがないということですい上げておるわけですからね。この問題。  それから今度は洪積層、この洪積層の下部からのすい上げ、これはくみ上げが可能であるということになっていますが、今後もどんどんくみ上げられると思いますが、その辺の規制。  以上、一括してお伺いしたいんですが。
  107. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) ただいまの現行法によります規制のしかたが、指定地域内での井戸につきましての取水ロ——ストレーナーといっておりますが、この位置、すなわち深さでございますが、それとポンプの吐き出し口の断面積、これによって基準を設定しているというのが現状でございまして、量を規制するという直接的なやり方はやっていないわけでございますが、これの深さとそれから断面積ということで、結果としましては採取量そのものの調整ということになっておるわけでございます。この辺につきましては、総量を個々に規制するというのはなかなか技術的にむずかしい、あるいは監視体制をどうするかというような問題もございまして、現状では一番行政的に把握しやすい形での規制方式ということになっております。ただし、この点につきましては、いろいろだだいま先生のおっしゃいますような御意見もございまして、現在中央公害対策審議会の場を中心といたしまして、地盤沈下に対します総合的対策というものの討議の一環といたしまして、個々の井戸についての量規制を行なうべきかいなか、その技術的可能性等含めまして検討を行なっていく所存でございます。  それから洪積層の下部からの取水、これは沖積層の下にある層でございますが、大体五百五十メートルから六百五十メートル以下の深部からのくみ上げでございますが、この辺の規制につきましては、できるだけその指定地域の実情に応じて必要かつ十分な基準を設定するということになってございますが、特に昨年からことしにかけて基準強化あるいは新たに指定地域になりましたことによる設定を行ないました東京都、埼玉県及び千葉県における基準、これはストレーナーの位置を五百五十メートルまたは六百五十メートルより深い点というふうに設定してございまして、洪積層からの取水をも規制しているということでございます。  それからもう一点、基準外の井戸の使用、これが例外許可ということで、法律第五条で認められておるではないか、この辺を放置するのかということでございますが、この点につきましては、現在保安用水の確保等、ほんとうにどうしてもほかに措置がないというぎりぎりやむを得ない場合だけしか認められておりませんで、非常に限定的でしかやっておりません。
  108. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いろいろとそういうような問題があるわけですね。この問題について大臣にこれはお伺いしますけれども、最後に締めくくり的に……。  その前に、これ二十三区以外のところでは、上水道用のための地下水のくみ上げが年に一割近くもふえている。四十五年中の調査では、毎日五十五万トンも吸い上げられておるわけですね。そして東京都内の指定地域におきましては、工業用水とビル用水、これは規制がされておりますけれども、それ以外のくみ上げということは、これはまあ野放しということになるわけです。要するに、簡単に言いますと、指定地域の中の工業用水とビル用水だけは規制がある。けれどもそのほかはもう野放しじゃないか。しかし、そのほかからも相当量の地下水のくみ上げがあって、しかも水脈というものはつながっておるわけですから、片方は規制して、片方はどんどんくみ上げる。どうも、もっと総体的にお考えになって——ただ産業優先というわけにはもうまいらないと思います、この点になりますと。そういうことも踏まえて、今後都市化に伴って水道需要もふえるわけですけれども、国の法的規制措置として、はたしてこれでいいのかどうか。この点今後の対策ですが、これを大臣にひとつお伺いしたい。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 貴重な水でございますから、単に工業用水のみならず上水道あるいは農業用水、これを総合的に活用する必要があると思います。そういう意味におきまして、各省おのおのの考えを審議会に持ち寄って、それを適当に調整しながら、最も効率ある利用方法を水についてはとらなければなりませんし、またいままでお話しいただきました地盤沈下につきましては、逐次規制を強化していきまして沈下を防ぐ、そういう強い態度で臨んでいかなければならないと考えております。
  110. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間もあまりありませんが、最後に——最後といったって二、三問ありますが、工業用水道事業のことにつきましてちょっとお伺いしたいのです。それは江東地区工業用水道の場合、これは給水能力に比べて四十六年度末の給水実績、これはまあ三分の一程度にすぎない。配管等、給水施設もかなり遊休化しておるわけですが、これはどういうわけですか。せっかく工業用水をつくって、使っているのは三分の一というのですがね。
  111. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 先生御指摘のとおり、江東地区の工業用水道は、現在給水能力が三十二万六千で、四十六年三月末の給水実績、これは三四・五%程度になってございます。ただこの点につきましては、当時この工業用水道の建設を決意した時点で約二十二万トンぐらいの地下水がくみ上げられておった。それからさらに、今後生産の増大に伴いまして、用水の増も伴うということで、このような設計で準備したものでございます。ところが、この江東の工業用水道は水源が下水処理水でございます。二次処理した下水処理水を水源にしてございます。したがいまして、いろいろ使うほうの側におきまして毛ぎらいされた面もございまして、上水道へ転換をしてしまうとか、あるいはその後の事態としまして工業用水の使用の合理化が進んだこともございますし、あるいは周辺で、立地条件のいろんな過密化等の問題で悪化したことによりまして、工場が移転減少したというような事情もございます。そこで計画どおりの給水が行なわれてございませんが、今後、この地区の地下水くみ上げ量が現在六千五百トン程度に減少しておりまして、これにつきましても、先般申し上げました昨年五月の基準強化に伴う強制転換ということが四十八年八月ごろまでに行なわれますので、それの水の使用可能量は若干ずつ上がっていくというふうに考えております。
  112. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がありませんので。この下水処理水の問題につきましては、多少いやがられる点もあろうかと思いますが、今後さらに三次規制とか、いろいろと技術面を開発して、せっかく工業用水をつくっても使ってもらわなければ何にもならない、地盤沈下のために用をなさないということになりますから。  それからもう一つ。葛南工業用水道の場合、これもちょっと私はおかしく思うんですが、これは従来からの七万一千トンにのぼる地下水のくみ上げをやめさせるため建設された。七万一千トンですよ、地下水のくみ上げ。そうすると、これは四十六年度末における給水量は三万二千トンである。この約半分しか使っていない。そうすると、あとの約三万トンというものは、今日なお地下水がくみ上げられておる、こういう勘定になりますがね、計算では。この点いかがですか、これは。
  113. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) ただいま御指摘の葛南地区の問題でございますが、御指摘のとおり、指定時の昭和四十四年におきまして、この地区で工業用水としてのくみ上げ量は八万一千トンございまして、そこで転換をはかっていくということで、葛南地区の工業用水道を建設するということになりましたわけでございます。ところが四十六年三月時点では、確かに御指摘のとおり、二万九千トン、三六%程度の給水実績でございます。ただその後、全面給水が工業用水につきましてできましたので、四十七年三月末を期して水源の強制転換が行なわれました。したがいまして、現在では給水量は七万トンに達しておりまして、約九〇%近い利用実績になってございます。したがいまして、その地区の工業用水としての地下水くみ上げ量、これは四十四年当時八万トンでありましたものが一万トンばかりに減少して効果があがってございます。
  114. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから名古屋市工業用水道の現況といいますか、これも給水量と需要の差というものが約六〇%に満たない、こういうように聞いていますが、この点はいかがですか。
  115. 三枝英夫

    説明員(三枝英夫君) 先生の御指摘のあれは、工業用水道としての名古屋市二期地盤沈下対策との関連で設置しました水道のことであろうかと思います。これにつきましては、昭和三十五年地区指定をいたしまして、当時六万七千トン程度の地下水がくみ上げられておったわけでございます。そのためにこれを何とか軽減、解消させるという方向で、このくみ上げ量のうち約二万トン程度の転換を見込んで計画したものでございまして、転換そのものは、この水道の建設によりまして、計画どおり実施されておるという現状でございます。約五割か六割見当の利用実績にすでになってございます。しかし、この工業用水道をつくるにあたって、給水能力と実給水の差、これは当初、今後工場等の生産増によります工業用水の需要量、これが大幅にふえるという前提で設計いたしたものが、その点大幅に狂ってきたという実態は、御指摘のとおり確かにございます。しかし建設の当初の目的でございました転換には十分役立っておるということでございます。
  116. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これはあなた……。
  117. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ちょっと、大臣が二時から……、昼食をとりたいらしいのです。大臣になければ……。
  118. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ終わりますが、大臣お急ぎのようですからこれで終わりますが、いろいろとあなたもお聞きになったように、問題点がありますので、今後よくひとつ御検討なさっていただきたい。特に、いまお伺いしましたせっかく工業用水を引きましても、下水処理水の技術の面が非常に不完備である。したがって、忌避される点がある。そういったような点。さらにはまた、非常に貴重な水でありますから、企業側の工業用水の再生といいますか、循環利用といいますか、そういう点。ただ、もう水をじゃぶじゃぶ——これはことばに語弊がありますが、循環利用というようなこまかい点もよくひとつ御指導願って、あわせて工業用水道事業の健全なる事業内容と、地盤沈下を未然に防ぐという点をよく御検討なさって、今後の処置をしていただきたい。これは非常に、あまり質問をしてみてもはなばなしくない、非常にじみな質問でしてね、まあ取り上げる人も非常に少ないようでありますけれども、非常に大事な問題だと思います。最後に、こういった点、大臣に今後の対策等に対する御見解をお伺いします。これで終わります。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまいろいろ御指摘いただきました諸点につきまして、よく検討を加えまして、御期待にこたえるように処理してまいりたいと思います。
  120. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 関連。さっき中尾委員のほうから質疑がありましたときに、円切り上げの効果があらわれて、輸出が停滞をして輸入が増進をしていると。したがって、三年ぐらいの間に収支が償うんじゃないかというような大臣の答弁があったんですけれども、そうしますと、大臣の従来からのお話の、調整インフレは必要ないということになるわけですか。その点をちょっと伺おうと思ったのですが。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 調整インフレは必要ありません。私は調整インフレということばを使ったことはないのです。インフレと名のつくものはあらゆるインフレに反対であります。
  122. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 他に御発言もないようですから、通産省関係決算につきましてはこの程度にいたします。  次回の委員会は、明十三日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十二分散会      —————・—————