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1972-08-17 第69回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年八月十七日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 野呂 恭一君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       伊能繁次郎君    池田 清志君       海部 俊樹君    中村 弘海君       葉梨 信行君    木原  実君       鈴切 康雄君    東中 光雄君  出席国務大臣         建 設 大 臣 木村 武雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      本名  武君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 宮崎 清文君         警察庁交通局長 片岡  誠君         警察庁警備局長 山本 鎭彦君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁官房長  田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         防衛施設庁労務         部長      平井 啓一君         外務省アメリカ         局長事務代理  橘  正忠君         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         運輸省航空局長 内村 信行君         建設省道路局長 高橋国一郎君         参  考  人         (元全日空機接         触事故調査委員         会委員長)   山縣 昌夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 八月十日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     石田 博英君   中山 利生君     水田三喜男君   葉梨 信行君     村上信二郎君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     笠岡  喬君   水田三喜男君     中山 利生君   村上信二郎君     葉梨 信行君 同月十七日  辞任         補欠選任   奧田 敬和君     池田 清志君   笠岡  喬君     海部 俊樹君 同日  辞任         補欠選任   池田 清志君     奧田 敬和君   海部 俊樹君     笠岡  喬君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員給与に関する件  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  公務員給与に関する件について調査を進めます。  去る十五日の一般職職員給与等改定に関する人事院勧告につきまして、人事院より説明を聴取いたします。佐藤人事院総裁
  3. 佐藤達夫

    佐藤説明員 人事院は、去る十五日に、国会及び内閣に対しまして、公務員給与改定勧告を提出いたしました。勧告後、日ならずしてこの説明聴取の機会をお設けいただきましたことに対しまして、深く感謝いたします。  以下、その内容の概略について御説明を申し上げます。便宜、お手元にお配りしてあります、横長の謄写版刷りの「給与勧告についての説明」という資料がございますので、私はそれをながめながら御説明申し上げたいと思います。  人事院は、例年のとおり、官民給与の正確な比較を行ないますために、一般職職員給与に関する法律適用を受けます国家公務員、以下職員と略称をいたしますが、その全員につきまして、国家公務員給与等実態調査実施いたしますとともに、企業規模百人以上、事業所規模五十人以上の全国約七千二百五十の民間事業所を抽出いたしまして、職種別民間給与実態調査実施いたしまして、公務に類似する九十一職種に該当する約五十四万人について、本年四月分として支払われた給与月額等調査いたしました。  右の調査結果に基づきます官民給与格差は、いわゆる春闘による遡及改定分をも加えまして、一〇・六八%であることが明らかとなりましたので、この格差を埋めるため給与改定を行なう必要があると認めた次第でございます。  本年の給与改善にあたりましては、俸給表重点を置きながら、各諸手当につきましても種々配慮を加えることといたしました。  次に、給与改定内容でございますが、これは次のとおりでございます。  第一といたしまして、俸給表改善でございます。これは、全俸給表の全等級にわたりまして改善を加えましたが、特に初任給及び二人世帯形成時から三人世帯形成時にかけての職員給与引き上げを中心といたしまして、中位等級以下の給与改善重点を置いております。  職種別に申しますと、それぞれの職務の実態に応じまして改善を加えましたけれども、中でも小中学校教員及び看護婦等については特に配慮をいたしました。なお、准看護婦については、別途運用上の優遇措置を講ずるつもりでおります。  次に、初任給につきましては、民間初任給額を考慮いたしまして、一般事務技術系の場合、大学卒は五千八百円引き上げ高校卒は五千四百円引き上げということにいたしました。  その次に諸手当改善でございます。  まず第一に、扶養手当につきましては、民間における支給状況をも考慮いたしまして、支給月額を、次に述べますような引き上げをいたすことにしております。配偶者については、現行二千二百円を、二百円上げまして二千四百円といたします。子のうち二人につきましては、現行のそれぞれ六百円をそれぞれ八百円といたします。それから母子家庭世帯主など、配偶者のない職員の子のうちの一人は、現行千四百円を千六百円に引き上げることにしております。  次に、通勤手当でございますが、これは民間における支給状況及び職員通勤実態を考慮いたしまして、次のとおり改定することとしております。  第一に交通機関等利用者、これは運賃等相当額全額支給限度につきまして、現在二千八百円を限度といたしておりますのを引き上げて、月額四千円といたします。それから運賃等相当額が四千円をこえます部分についての二分の一加算限度月額二千円といたします。これが現行千四百円に相当するものでございます。  次に、自転車等交通用具使用者に対しまして、その手当通勤距離による区分によって区別をいたします。これはわれわれとしては新しい試みでございますが、その支給月額を次のとおりにいたしております。片道十キロメートル未満は千円、片道十キロメートル以上は千五百円としております。現在はいずれも九百円ということできめております。それを距離別に分けて引き上げたということでございます。ただし、その上、交通不便の場所につきましては、現在の千四百円を千八百円に引き上げることにしております。  なお、右の交通機関等利用自転車等利用、双方を併用しております人々についても同じような扱いをすることにいたしております。  次に、医療職俸給表(一)の適用を受けております医師及び歯科医師初任給調整手当につきましては、支給限度額最高を十万円といたしました。現行は八万円でございます。とともに、支給期間限度を、現在は三十年でありますが、三十五年に延長することといたしました。なお、これに伴いまして、支給範囲を一部拡大するほかに、初年度月額を据え置く期間を延長することの措置を考えております。  以下は勧告外措置でございますが、勧告外措置として予定しておりますものについて申しますと、社会保険審査医に対する俸給調整額改善いたしたい。  その次に、高等専門学校のいわゆる学寮当直に対します手当を、従来は全寮制に限って支給しておりましたのを、全寮制に準ずる学校の教官にも支給するように措置したい、こう思っております。  その次に、特殊勤務手当につきましては、次のように改善することといたしております。  まず、病棟に夜間勤務する看護婦についての夜間看護手当勤務一回当たりの額を三百五十円といたします。現在は三百円でございます。  その次に、交代制勤務に服します通信職員税関職員航空管制官気象関係職員等に対する夜間特殊業務手当勤務一回当たりの額を、深夜の全部にわたる場合は三百円、現行は二百五十円、深夜の一部にわたる場合は二百円、現行は百七十円、ということで引き上げをいたします。  なお次に、航空管制機器の整備、保守の業務に従事しております航空管制技術官に対しましても航空管制手当支給することにいたしたいといたしております。  それからなお、期末勤勉手当年間支給割合につきましては、調査いたしました結果、民間均衡が保たれていることが明らかとなりましたので、これは現行のままといたしております。  かくして、以上のうちで官民給与比較基礎となる給与についての改善は、俸給で九・三五%、諸手当で〇・七四%、その他で〇・五九%、合計一〇・六八%、金額にいたしますと平均八千九百七円ということに相なります。  次に、国立の高等学校教員等支給されております産業教育手当、それから定時制通信教育手当というのがございますが、これらに関しましては、本年一月から実施されました教職調整額との関連もございまして、これらの手当についても、制度上、人事院勧告対象事項として明らかにすることが適当であるというふうに考えますので、別途その旨の意見申し出を行なう所存でございます。  次に俸給調整額、これは昭和三十二年に現行制度に改められたものでございますが、その算定基礎となります給与の水準が近年著しく上昇しております。その他、この制度をめぐる諸事情に顕著な変化が生じておりますので、その適正化について根本的に検討する必要があろうと考えております。  なお、本年、給与調査に関連いたしまして、民間における勤務時間及び週休制度実態調査したのでございますが、これらの勤務条件については、官民の間に見るべき差異のないことが明らかとなりました。しかし、本院としては、これらの問題について、今後の情勢の推移にも留意しつつ、なお検討を続ける必要があるものと考えております。  以上は説明書に即して申し上げたつもりでございますけれども、以上のほか、説明書等には書いてございませんけれども、私どもの心がまえとして考えておりますところに触れておきたいと存じます。  期末勤勉手当につきまして次のように措置することを考えております。  その一は、昨年行ないました算定基礎額加算措置につきまして、なお民間年間給与との均衡問題等が残っておりまので、その適用範囲を一部拡大いたしますとともに、これに伴って加算割合を、法律に定められております限度内で若干改めたいと思っております。  期末勤勉関係のその二は、勤勉手当期間率算定にあたりまして、職員が許可を受けて職員団体業務に短期従事いたします期間は現在除算されておるのでありますが、これは除算の対象としないように措置したいと考えております。  最後に、給与改定実施時期につきましては、民間事業所の約七〇%において給与改定が四月から行なわれておるに至っている実情もあり、本院において種々検討を重ねました結果、四月一日とすることにいたしました。  なお、人事院といたしましては、昭和三十二年、給与制度の大改正以来、すでに十五年を経過しておることでもございますし、今後、給与体系その他給与制度の全般にわたって、その基本的検討に取り組んでまいりたい所存でありますことを申し添えておきます。  以上で御説明を終わりますが、人事院といたしましては、本勧告勧告どおりすみやかに実施されますよう念願しておる次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  4. 前田正男

    前田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊能繁次郎君。
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員 私は、当内閣委員会委員の一員といたしまして、今回の人事院給与改定に関する、佐藤総裁をはじめとする人事院の諸公の英断に対しまして、委員各位とともに、心から敬意を表し、感謝をするものでございます。ことに本件につきましては、当委員会は、超党派で一致して本日の裁定を希望をいたしておった次第でございまするし、なかんずく、同僚大出委員佐藤人事院総裁の間に、数年にわたります、かいぎゃくをも交えた、きわめて示唆に富んだ禅問答的なお話し合いについて、この成果を見たことを私は特に敬意を表する次第でございまして、この点については、いまお聞きの本名総務長官におかれましても、政府においてこの趣旨どおりひとつぜひ御配慮をいただきたいことをお願いをしてやまない次第でございます。  つきましては、この四月実施ということによりまして、一応懸案のある程度のものは完了いたしたわけでございますが、ただいま人事院総裁から御説明のありました、この第一項から五項にわたる裁定のうち、第四項の内容についてきわめて重大な御決意と発言がございました。かねてから同僚委員からも、医系公務員給与の問題、また看護婦あるいは技術系公務員給与の問題、特に航空管制官等、全体として公務員が安んじてその職に精励し得る体制給与というものが公務員能率をあげる最大の原動力ではないか。この点は、しばしば当委員会においても同僚委員から論議をせられたところでありますが、きょうは総理府人事局長もお見えになっておられますので……。  かつて本委員会におきましては、前国会において、同僚大出議員から退職金の問題についていろいろと重要な発言がございました。私はここで、この第四項に基づきまして、今後の公務員給与の問題とその業務実態とが、まことにバランスのとれたものであって初めて公務員能率が十二分に発揮をせられる、かように考えますので、いま総裁、今後の給与の基本的な問題について大いに意欲を燃やして取り組むという御意見でございまして、われわれ議員としては、佐藤総裁にして初めてそのことはなし得る、きわめて公務員給与についての最高権威者でありますので、これは人事院だけの所管ではなかろうと思いますが、公務員制度給与とのバランスのとれたあるべき理想図と申しますか、今後能率をあげるような体制をぜひ早くつくっていただきたい。ことに新内閣におきましては、稻葉文部大臣は、教職員給与についてたいへんな関心を示されておられますので、それらの問題等も含めて、公務員給与制度と、そうして公務員自体制度との調和と申しますか、今後あるべき姿についての御検討をぜひ賜わりたいと思うので、その点についてお答えがいただければありがたいと思います。
  6. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほど触れましたように、何ぶん、昭和三十二年以来、そのつどの処置で当面間に合ってきておるとは思いますけれども、先ほどは特に申しませんでしたけれども、いまのおことばに従いますと、この四月実施というのは、やはり一つの大きな転機ではないかということも考えまして、先ほどのような心組みで臨みたいと思います。したがいまして、およそ何から手をつけるかという問題はたくさんございますけれども、われわれとしては、もうできるだけ幅広く研究項目を並べまして、そうして着々と勉強を進めてまいりたい。結論をそう急ぐわけにもまいりません。実際上それは急に出るものではございますまいけれども、早く出したいという意気込みで取り組んでまいりたい。ただいまお話しのような諸点も十分含みまして検討に臨みたいと思っております。
  7. 伊能繁次郎

    伊能委員 たいへん前向きのお話を伺って感謝をいたしますが、同時に、政府側におかれましても、総理府人事局もあることでございますから、公務員制度給与の問題については、政府側自体におきましてもひとつ十分すみやかな御検討を賜わりたいと、かように考えますが、長官いかがでございましょうか。
  8. 本名武

    本名国務大臣 いま御指摘がございましたように、今次の人事院勧告は、まことに公正にして厳正な中立的お立場に立ってこの御勧告をいただきましたことは、私も心から敬意を表します。同時にまた、それとあわせて、われわれ政府といたしましても、この勧告を完全に実施するというたてまえで早急に処理をいたしてまいりたいと考えております。  なお、御指摘のございました公務員制度につきましては、まさに御意見ごもっともでございますので、政府におきましても、公務員制度審議会においてだんだんと検討を進めておる最中でございますので、その結論を一日も早くお待ちいたしまして、御期待に沿い得るような処置をいたしてまいりたいと考えております。
  9. 伊能繁次郎

    伊能委員 重ねて人事院並びに政府の御労苦に感謝をいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  10. 前田正男

    前田委員長 次に、大出俊君。
  11. 大出俊

    大出委員 ここ数年、実施時期の問題等をめぐりましてこの委員会で議論をしてまいりましたが、総裁並びに歴代の総務長官にもたいへんお骨折りをいただきまして、また今回は、本名総務長官にもたいへんな御努力をいただきまして、四月実施人事院が踏み切っていただきました。たいへん総裁には、政府あるいは与党の皆さんをはじめ一般の世論もございます、かつ十一年間五月ということで理論づけてこられた立場もございます、それを踏み切って四月に実施するという勧告をお出しいただきましたことにつきまして、感謝を申し上げる次第でございます。私も、たいへんこれは、さっき伊能先生お話がありましたが、言いにくいやりとりをしてまいりましたが、どうやらこれは決着がついたという気持ちがいたしております。これを契機にいたしまして、よりよい公務員給与のあり方、制度的にも、あるいは実体的にも、前向きでひとつなお努力をしたいと思っておるわけでありますが、一そうの御努力をいただきたいと思うわけであります。  そこで総裁に承ることが幾つもありますけれども、とりあえず本名総務長官に、これまた長年の懸案でございますこの勧告が出たにあたりまして、給与法改正国会に提案をしなければならぬことになるわけでありますが、その時期がいつも非常にずれてしまうということのために、せっかく人事院に御配慮をいただいて、昨年のごとく、一一・七四というかってない高額勧告が出た場合であっても、さあこれはいつになったらもらえるのかということで、公務員諸君は、家族を含めてずいぶん待ちこがれるという、実は事後措置に私は不満足な点があったと思っておるのでありますが、今回、臨時国会が開かれるのか開かれないのかという問題から始まりまして、なかなか先行きの見当がつきません。さきの山中総務長官時代に、それが政府与党の都合でおくれるのであれば、当然それなりの措置はすべきではないのか。利子をつけて差額をくれるわけではないのでありますから、公務員諸君ふところ勘定もこれあり、そこらの点についての政府の責任というのは一体どうあるべきなんだという点を詰めたことがございます。前総務長官は、確かに御指摘のとおりで、何とかこれはしなければいかぬ、とにかく八月に出た勧告が暮れ押し迫るまで給与法が通らないというかっこうで据え置かれるなんということがあっては困る。財政事情その他のたてまえからいきましてむずかしい点があるけれども、何とかこれを解決するために検討する、こういうことで今日に至っているのであります。例年ならば十月ごろには臨時国会ということでございますけれども、ことしはどうも、何か田中さんの新聞記者に言っていることによりますと、やりたくないということでございますから、十二月には通常国会を召集しなければならぬ法的義務があります。ありますけれども例年ならば十二月は論議はほとんどしていない。となりますと、この勧告のあとの扱いは一体どうなるのか、先の見通しを含めまして御回答いただきたいのであります。
  12. 本名武

    本名国務大臣 今回の人事院勧告をいただきますまで、当委員会におきまして、勧告後における政府のとるべき態度についていろいろ御激励を賜わりましたことを厚くお礼を申し上げます。幸いに、ただいまお話しのように、私どもも一応敬意を表する結果を御勧告いただきましたので、この上は一日も早く支給可能の時期を待ちたいというつもりでおりますが、御指摘のように、臨時国会がいつ開かれるか。あるいは通常国会例年のように十二月末ということになりますと、これは年内支給はもちろん不可能になる。せっかくの期待した勧告をいただきながら、これが年を越して支給を延ばすということは、私としては不本意でございます。したがいまして、私は何としても早期国会を開いて国会の御決定をいただいて直ちに支給できる体制をとりたい。  それならば一体国会はいつかということでありますが、これは御案内のとおり私の権限ではございませんけれども、私の立場から、特に給与等の重大な課題を控えておる今日でございますから、一日も早く開いて、従来よりもおくれることは絶対ないように、できるだけ従来よりも早く支給できるような体制に持ち込むために、それぞれ総理にも申し入れをいたしたいと考えております。しかしながら、それならば一体十月開くのか十二月開くのかということでございますが、御指摘のように、財政上の措置その他もございますから、そう早急には開けないと思いますが、私は、少なくとも従来よりもおくれることのないような支給時期を実現するように、国会召集等につきましては総理にも強く申し入れる所存でございます。
  13. 大出俊

    大出委員 分けて承りたいのですが、給与法を提出して国会がこれを議決をしない限り支給できませんね。
  14. 本名武

    本名国務大臣 そのとおりに了解しております。
  15. 大出俊

    大出委員 そうしますと、これを早く、あるいはまた旧来どおりとおっしゃると、臨時国会が開かれない限りは旧来どおりよりは早くならない、こうなりますな。
  16. 本名武

    本名国務大臣 私ども不敏国会法のことあまり詳しくわかりませんけれども、私の知るところでは、十二月には通常国会を開こうと思えば早期に開ける。従来は十二月末であったけれども、この時期にはいろいろなその他の重要案件もございますから、早く開いてもいいのではないかということ。  それからもう一つは、さっき申し上げましたように、いろいろな応急措置をすることは、この給与問題をはじめとして、今日のことでございますから、いろいろあるように私は思われます。したがって、必要あれば通常国会開会以前にも、何とかひとつ臨時国会を開いてもらいたい、開くべきだという気持ちを私は持っております。その気持ちを率直にひとつ総理にお訴え申し上げて、先ほど申し上げましたような決着をつけていきたいという考えでおります。
  17. 大出俊

    大出委員 これは補正財源などから見ましても、また総理以下が言っておられることを承りましても、たとえば国鉄運賃法が通っておりませんから三千億ばかり赤字になる。あるいは健保の、私どもにとっていえば改悪なんですが、この案が通っておりませんから来年度で三千四百億ぐらい赤字になる。米の値上げ処理をどういうふうにするかという点がありますが、これは食管とからんでおります。そうなると、いずれにせよこれは補正財源に苦しむことになる。かといって、減税などを含めて公債発行に踏み切るとなれば、この時点では、おそらくインフレ政策ですから、各般の批判が出てくる。かくて、臨時国会を開きようがないから、開けというならば、国鉄運賃法を通してくれますかなどというたわごとをおっしゃることになる。ずいぶんえてかってな話でありまして、国会が意思決定をして通さなかったのですから、私どもだけの責任じゃない。つまりいまそういう政治情勢でございます。だからよけい公務員諸君は心配するだろうと私は思っている。  だから、長官の立場でいえば、給与担当の大臣でございますから、その意味では、予算はこれこれである、したがって差し繰り財源だの節約だのということを言っておられますけれども、それはそれなりにわからぬわけではないが、なおかつ補正が必要であるのかないのか。あるのだということになるとすれば、その点はやはり積極的にすみやかに臨時国会は開いて、少なくとも公務員給与は通すべきだという御主張をいただかないと、事、給与に関しては、これは前に進まない、私はこう考えるのであります。  そこで、大蔵当局にお見えをいただいておりますから、総理府からお答えいただければそれでもいいのですけれども、どのぐらい財源がかかるのかという点を、これはいわゆる国家公務員が五十万ばかりございましょうが、国会職員の皆さんもおいでになりますし、裁判所の方々もおいでになりますし、共済関係もおいでになりますし、防衛庁の関係の方々もおいでになる、国家と名がついた場合に。だから、そこらが一体どのくらいかかるのかということと、これは自治省の所管にはなりましょうけれども、あわせて地方公務員段階においてどのくらい、どうなるのかという点、現在の予備費その他を踏まえまして、これは、災害なんかは歴年でございますから、そこにも予備費との関係がございましょうが、そこらも含めまして、大体財源的に見てどう押えたらいいかという点、結論として給与に関して補正が必要であるかないかという点、ここいらについてひとつ御説明いただきたいのです。
  18. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 今回の人事院勧告で、改定に伴う所要額、まだ計数に将来異同があるかもしれませんが、いまのところ一般会計で約二千三百億円、特別会計で約四百八十億円、計二千七百八十億円という財源が要るのではないか。ただ、一般会計、特別会計に重複がございますので、純計といたしますと約二千四百二十億円、こう考えております。ただ、一般会計の分につきまして所要額二千三百億円と申し上げましたけれども、そのうちすでに予算上五%措置しておる額がございます。これが九百十八億円でございまして、差し引き千三百八十億円の財源が要る、こう考えております。  なお地方公共団体分につきましては、所要額が私どもの計算では約二千七百九十億円。ただ、すでに地方財政計画上措置されている額、これが約千九百八十億円ございます。したがいまして、八百十億円ほどの所要財源が要る、こう考えております。  御質問のうち、特にことしは災害が非常に多発しておりまして、そういう点で現在の見込みでは、災害関係はこれからの状況でわかりませんが、約八百億円、災害復旧のために要するのではなかろうか。当初予算に現年災分として約百七十億円計上してございますので、災害分としても、推計でございますが、六百三十億円ほど要る。さらに、過般の生産者米価の引き上げに伴いまして、追加財源が、米価改定だけにはよりませんが、生産調整協力費なども含めまして約八百六十億円要るというような形になっております。これはまた、消費者米価の取り扱い等によりましていろいろ変動があると思いますが、ことしの予備費の事情は非常に窮屈でございます。ただ、申すまでもなく、人事院勧告は完全実施する、こういうたてまえのもとで、目下所要財源の捻出に苦慮いたしておる段階でございます。
  19. 大出俊

    大出委員 つまり、数字的に見て、結果的に補正は必要であるということになりますか。
  20. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 目下のところ、予備費は相当はみ出すという状況でございます。自然増収の見込みはまだ立ちませんが、そういう点で、今後どういう扱いになるか、私ども検討いたしたいと思っております。
  21. 大出俊

    大出委員 そういう事情でございまして、これはやはり本名さん、財源措置について総理府総務長官の立場だけでものごとをきめかねる、これはわかります。わかりますが、少なくとも昨年よりおくれない、できればより早くしたいというお気持ちがあることを明確にされましたから、その趣旨に従って、ひとつ、総理なりあるいは予算担当大臣なりに、その点はこうこういう見通しでこうやるんだという、決着のつくやりとりをしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  22. 本名武

    本名国務大臣 くどいようでありますが、国会召集につきましては、あるいは特に臨時国会召集につきましては、私の申し上げるところではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、実施は少なくとも従来よりもおくれるようなことに絶対にしてはならぬ。それでは、そのためには、一体いつの時点において国会を開き、もし必要ならば補正予算を提出して御審議をいただくかということにつきましては、これは時期の問題としていろいろな時点のとりようがあろうと思います。御指摘のような、国鉄、健保とかその他の重要な問題も政府としてはあるはずでありますが、その扱いは別といたしましても、私の立場からすれば、やはりどんなにおそくても十二月早々には国会を開いていただいてこの問題は解決したいという気持ちで、私はそのことを率直に、最悪の場合でも十二月初めでございますよということを総理に申し入れるつもりでおります。
  23. 大出俊

    大出委員 最悪の場合とついておりますからいいのですが、首班指名の国会が開かれて指名が行なわれた。施政方針をしゃべろと言ったら、ごめんこうむる。さて新聞記者にはかってなことをおっしゃっておって、アメリカとトップ会談をやろうという時期が来ているんだが、国会を開いてものを言おうとしない。それが終わって、さて九月の二十日からおそらく五日間ぐらいでしょうが、中国においでになるというのだけれども、これまた国会には何もおっしゃろうとしない。帰ってきてもなおかつ何も言おうとしない。そういうことで世の中済むはずはない。それならそれでわれわれも、これはひっくり返すように腹をきめなければいかぬですから。それは世論が許さない。だから臨時国会を避けて通るわけにはいかない。臨時国会をやれば、材料は山ほどございますから、田中内閣は長々と論議しているわけにはいかない、点数が下がるだけだから。そうなれば解散するということになる。だから私は、そこらのところも考えて、少し早手回しに準備しておいていただいて、二日か三日やって解散するにしても、そこでばっと通してしまうというぐらいな芸当を考えておいていただかんと、これは事、間違いますよ。材料は山ほど私のほうにあるのですから。国会が開かれれば、簡単に審議できないような中身は一ぱい持っておりますから、御心配なくその点は解散でしょうけれども、それでも給与法だけは通ってしまうという腹でいてください。だから私のほうも、国会対策委員会は二十二日に開くんですけれども給与法通さぬなんという気持ちはありませんから、そういうつもりでこれはひとつ御準備いただきたい、いかがでございますか。
  24. 本名武

    本名国務大臣 国会が開かれますと、御指摘のように、新内閣のいろいろな意思表明もございますでしょうし、また、いろいろそれに関連しての御論議もあろうと思いますが、これは先ほども申し上げましたように、給与に対するこの御勧告に対して、やはり一日も早く実施すべきだというたてまえからいくならば、これもかってな話ですが、私の立場からするなならば、どうかひとつ他の御論議はじっくりやっていただいてけっこうですが、これだけは早くきめて、そうして公務員の方方に、さらに一そう奮起して国民のためのしっかりした行政に携わっていただきたいという考え方から、一日も早く早急に決定していただきたいというのが私の気持ちでございます。
  25. 大出俊

    大出委員 せっかくの総裁の御努力をいただいて四月実施、しかも人事院の自主性というものを十二分にお考えの上でおやりになっているわけでございますから、新聞その他いろいろなことを言いますが、そういうたてまえでなく決断をされているのでありまして、それだけにすみやかにこれは通さなければならぬ。二十二日の私ども国会対策でもそういう主張を私はするつもりでおります。何が何でもこれはひとつこの際は決着を早くつける、国会でも開かれればすぐ通す、こういう態勢でいきたいと思っておりますので、ぜひひとつ、いまの御発言のつもりでお進めいただきたいと思います。  そこで、そのときに給与法が出てまいりますから、こまかいことは承ります。きょうは時間の関係もございますし、せっかく前向きに勧告をお出しいただいた総裁でもございますので、基本になるべきものを何点か承って終わりたいと思うのであります。  そこで、まず第一番に、今回の賃金勧告をめぐりまして、新聞がいろいろなことを取り上げておられます。ここに全部そろえてみたのであります。全部ここにありますが、ほとんど読んでみましたが、結論として、役人の低賃金時代は去ったのだ、そういうニュアンスでものを書く方々がいる。したがって高能率高賃金への追求が必要である、かくて民間と同様な職務給の導入をすべきであるとか、いろいろなことをいっておられる。人事院は将来の展望を欠いた、なんという社説までございまして、人事院は旧来の制度のほころびを是正するにとどまらず将来の展望を持てなんて、当たっているかいないか、いろいろな見方がございましょう。こういうふうなことがいわれております。  そこで、おいおいこれは申し上げていきますけれども、はたして低賃金時代というのは去ったのかどうかという点、これは一つ大きな論点でございます。そこで私、二、三点ここで承っておきたいのでありますが、労働省あたりがやっておりました賃金センサスなんというものがございます。この賃金センサスは、私、昨年、総裁に、また尾崎さんに御質問申し上げたことがある。時間の省略のために摘出して申し上げますが、高校卒の男子標準労働者、この方の所定内給与、これが昨年七月現在で、センサスにあらわれているものを見ますと、もちろんこれは民間でありますが、三十五歳で九万六百円。高校卒男子の標準労働者の所定内給与は、三十五歳の方をとりまして、昨年七月の時点でのセンサスにあらわれておりますのが九万六百円であります。昨年七月以後今日まで、本年春闘がありましたから上がっておりますが、この種の数字が以後出でおりませんから、それは申し上げませんが……。そこで、昨年の七月現在というこの当時に、同一条件における三十五歳の公務員、この方の賃金をはじきまして、私、質問に使ったのでありますが、この三十五歳の高校卒男子標準労働者というセンサスにあらわれているものに対比をする同条件の公務労働者、この方が七万四千六百円。これは、数字でごらんのとおりに、格差が一万六千円ございます。これは中身は、本俸、扶養手当、調整手当、住宅手当通勤手当を全部入れております。それでそういう結果になる。  今度の勧告で、このケースの公務の方は一体どのくらいになったろうかという点。私も、勧告が出て間もないのでございまして、忙しいために詳細に当たっておるひまがありません。ありませんが、概略当たってみますと、この方は、今年の昇給分その他いろいろございますけれども、八万二千二百八十四円ということになっているわけであります。そうしますと、つまり問題は、センサスにあらわれるこの民間賃金との比較の面で、はたして追いついたのかということであります。念のために申し上げておきますが、佐藤総裁におなりになってから足かけ十一年でありますが、ずいぶん御努力をいただきました。これは佐藤総裁の責任ではございませんで、それ以前の総裁のときにたいへん民間格差がついたはずであります。これは皆さんよく御存じだと思います。それを何とかして取り返すべく、ずいぶん総裁、御苦労なさってきておる。私もその間の経緯はよく知っております。そういう意味で申し上げますと、この佐藤総裁におなりになってから、四十年春闘のときでございますが、積み上げ方式というのを当時導入をされまして、積み残しを拾う、積み上げる。これは私たいへん当時敬意を表しておったのでありますが、これは総裁の当時の御功績で、世論もまあ納得しておりました。そして二%から、高く見ると三%ぐらい総裁は先取りをされた。いまだからそこまで申し上げていいと思うのでありますが、数字というのは魔術がございまして、ごまかしがききますけれども、私も昭和二十四年からやっているのですから、できたときから人事院勧告につき合っているのですから、私のほうもそう目がないわけではない。だからその意味では、ずいぶんたいへんな御功績をお持ちになっておられる。感謝申し上げるところなんです。  ところが、それにもかかわらずもう一つ民間が、三十九年の不況がございましたが、四十年回復いたしまして、ここから急激な賃金上昇を見た。これは、三十五年来の高度成長政策がようやく頂点に達しまして、三十九年不況を乗り切ったあとの四十年というところから、民間賃金は急上昇いたしました。したがって、せっかく総裁が御苦心なさって、積み上げ方式その他を導入されて民間を追いかけたのですけれども民間の急上昇に追いつくのに精一ぱいというのが今日までの総裁の御努力だったのじゃないかという気が私はするのです。したがって、そういう意味では、それ以前の官民の賃金格差というものが完全に解消し切っていないという感じが私はする。これには異論があろうかと思いますけれども、それが私は冒頭にあげたような数字にどうしてもあらわれてくる気がする。  そこで、実は今回一つの問題点は、直採用なんというものを御調査になっておりますけれども、そこらも賃金政策の官民の問題についての非常に大きな一つのポイントでございまして、ここらを解明してまいりますと、ほんとうのところ、今日まで人事院がやってきた官民比較というものが何だったかということがはっきりすると思うのでありますが、私はその意味では、世論に訴えるべきものは訴えなければならぬという気がしております。  それはともかくといたしまして、時間がありませんから中心になるべきものを幾つかあげましたが、かくて、はたして公務員の高賃金時代が来たのだ、低賃金よさようならという時代が来たのだということになるかというと、実は一そうの格段のまた御努力をいただかないと、役人の低賃金時代が去って高賃金時代になったんだと一がいに言い切れるかという、非常に大きな問題点がやはり残ると私は思います。この点について、できればこういう機会ですから、総裁の御所見をいただきたいのであります。
  26. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほどは伊能委員から、ただいまはまた大出委員から、私どもに対しましてお心のこもりましたおねぎらいのおことばをいただきまして、まことに感銘いたしております。  ただいまのお尋ね、まさに私ひそかに同感するところがございまして、去年の勧告あたりから、いまや役人は安月給ではないというようなことばがいろいろなものにちらほらと出始めまして、これはまたたいへんなことだと、われわれとしてはそういう気持ちを持っております。したがいまして、近年におきましては、記者クラブの方々に会見をいたします場合、その他外部の方々にお会いします場合にも、そういう先入観を持っていただいては困るんだ。たとえば、われわれがしょっちゅうこの場で御追及を受けておりますようなことを、そのときは借用いたしまして、初任給にしても、郵政をごらんなさいよ、一流の会社の場合をごらんなさいよ、どうしてもそこに大きな隔たりがある。そういう条件のもとでわれわれは、公務員の志願者を人海作戦で募集しなければならぬという立場にあるんだというようなことをいろいろ申しまして、しかしそれについては、われわれの今日まで堅持している、やはり、百人以上の企業規模、全国従業員のせめて六割程度はカバーできるようなところで水準を求めないと、今度国民の皆さんの御納得を得がたいという点が一つあるものだから、歯を食いしばってこれをやっているんだというようなことを十分御理解いただけるようにわれわれは努力してまいっております。決していまや安月給ではないというようなことばが、その文字どおり一般に理解されますと、われわれとしても、また一面において立場を失うわけでございます。そういう努力をしておることを申し上げまして、まことに御同感に承ったということでございます。  なお、いまのその他のいろいろなあり方につきましては、これはやはり私どもは、そういう基盤に立ってものごとを考えていかなければならぬというような心がまえでおるわけで、そのことを一つ申し上げておきます。
  27. 大出俊

    大出委員 時間がございませんから羅列をいたしまして、御答弁いただきまして終わりたいと思うのでありますが、一番申し上げたい大きな数字のポイントは、いま私が提起した問題であります。記者の皆さん、なかなかセンスのいい方々がたくさんおいでになるわけでありますけれども、つまり給与というのは、今日の給与制度がとられるようになってからの長い経過、変遷をおのおのチェックしてきた人でないとなかなかほんとうのところがつかめないというものであります。そういう意味でいま一点取り上げてみたわけでありまして、そこらひとつ、ぜひおわかりいただけるように総裁からも御努力いただきたい、こう思っているわけであります。  いま初任給の話が出ましたが、十八歳の高校卒男子をとりましても、私の主張からすれば、今回はだいぶ人事院初任給についても御苦労いただいた、こういうふうに評価いたしております。が、民間で十八歳、高校卒男子が三万六千八百円、これが昭和四十六年七月であります。ところで公務員は三万五千三百円。そこで、民間が、今春闘その他含めまして、一七%上昇しているということになっている。公務員が一六・八ということになるということになりますから、ここらのところでもまだ少し追いかけないと、いま総裁がおっしゃっている、かね、太鼓でさがさなければなかなかなり手がないという現状も、全部ではありませんけれども出てくる。こういう点が、まず申し上げたい次の点であります。  それから、今回のこの勧告をめぐりまして、公労協にどうも人事院は合わせているんじゃないか、そういう、特徴があるという言い方が出ておりますが、真にそうならば、これは膨大な金をかけた詳細な調査は要らないことになる。どうもそっちに引っぱられるという傾向については、総裁は向こうに首を振っておりますが、私は少し逆のほうに首を振っておいたほうがいいように思うのでありますが、その辺のところが一つ。あなた方のおっしゃるいつもの理屈は、やってみて結果的にそうなったのであって、ならないようであれば、それはおかしいんだということになる。私もそう思ってやってきたわけでありまして、より精密であり、より正確であった。それだけに、より精密、正確であったものの中に、精密ではあってもどうもこれは不合理であるというような点があった場合には、これは直していただかなければならぬわけでありますが、その意味で官民比較という問題が実は出てくるわけであります。直採用者などをお調べになったというところにも実はそういう面があったはずでありまして、民間のこの方々、先般申し上げたつもりでおりますけれども、平均年齢でいきまして三十二、三歳なんですね。ここに数字がございますが、三十二歳から三十三歳のところでございます。ところで公務員のほうは、今回三十九・二歳ぐらいのはずでありまして、男子でいけば四十歳弱ぐらいになっているのじゃないかと私は思う。そうしますと、勤続年数もこれあり、そういう点等からいたしますと、もう少し官民比較の面をお考え置きをいただくと、私が冒頭に申し上げた数字に信憑性が出てくる、こう私は思っているのでありますが、今回は、この直採用者その他をお調べになった結果として、どのくらいそこに開きがあったかという点ですね。私がすでに、二%ぐらいありゃせぬかということを言いましたが、これらはひとつあとでお答えをいただきたいと思います。  それから次に一時金の問題でございますけれども、例の傾斜配分。これもおそらく人事院規則の改正ということがあるからだろうと思うのでありますが、今回の勧告には、私が指摘いたしましたが、出てきておりません。私が、四月と書いていただければ感謝申し上げますと言ったら、いや感謝されぬだろうとおっしゃるから、総裁感謝されぬとおっしゃるについては、傾斜配分などがあるからだろうと、こう私がたたみかけたことがございます。だから、腹の中に消えているわけじゃないはずでありまして、そうなりますと、期末、勤勉等についての指定職の甲乙なり、一等級、二等級あたりについて、二〇%、一〇%をやがて二五%、二〇%、一〇%ぐらいに変えていこうという考え方があるのじゃないか。ただ今回の勧告からは抜いている。しかし人事院規則というものの制定権は皆さんにある。こういう関係が残る、だからそこらのところを一体どういうふうにお考えになっているかということ、これをあわせて聞いておきたい。  それからもう一つ。まあそれが、四十八年の一月以降にやろうという、風のたよりであったにしても。今回の引き上げについて、実は指定職の方々等は、二万から三万ぐらいひょっとすると上がることになりはせぬかという気がする。いまの傾斜配分等というのがそういう意味では——どうもその他の方々の場合は、民間も含めまして今年の傾向でございますが、率は一・〇六から一・〇八ぐらいまで落ち込んでいるのだけれども、額的には、昨年プラス、国鉄でいえば三百十二円ということになっている。こういう傾向を持っている。私はここらをとらえて、三百十二円なら三百十二円というものをどの階層にも当てはまるようにということになると、一〇・六七では少ないのではないか。八千八百九十円ですからね。だから、もう〇、〇五ぐらいくっつけて、一〇・六七をもうちょっと上げていただいて、あと七二くらいまで持っていってくれ、こう言ったら、今度一〇・六七が一〇・六八ぐらいになったので、ちっとは聞いてくれたのかという気がするのでありますけれどもね。私は、六七が最低ですよ、七二くらいまで持っていってくれるとうまく配分できるのですがねと言ったら、そうしたら六七を六八に皆さんされたので、文句も言えぬわいという気がする。全くゼロならおこりますけれども。最近はそんな気がしておりますが、まあそれはいいわけでございますが、しかし私は、ここで問題になっているのは、そういう意味ではまん中が残っている。期末官民比較でゼロだとおっしゃるのですが、全くゼロかというと、全くゼロではないようでありまして、風のたよりをあまり言っちゃぐあいが悪いのでありますけれども、どうもこの期末手当も全くゼロではない。四・八二ぐらいになっているのだとすれば、四・八が現行でございますから〇・〇二というのが本年の官民期末手当格差として残るはずであります。つまり〇・〇二は切ることになる。私はそういうことになりはせぬかと思って、〇・〇五というものをくっつけたって悪くないのだから、ちっとは前に切ったのを思い起こして、こういう時期に少し前向きにしてくれたらどうだと言っておいたのですけれども、これは残念ながら実現しませんでした。しませんでしたが、そこらと対比すると、傾斜配分というものは勧告には出ていないが、どうも先々やろうというお考えだとすると問題点です。単なる先憂後楽でがまんしろというわけにいかない。したがいまして、そこらをあわせて承っておきたいのであります。  それから、さっき申し上げましたが、〇・〇五プラスして七二ぐらいにしてくれという意味のことを言ったんですが、一〇・六八で終わった。私は六七という最低を押えて言ったんですが……。そこで、そうするとやはり配分の面で、正式には給与法が出てきませんとものを言いたくないのでありますが、公務員給与の特徴として職員分布がちょうちん式にまん中に集中しておりますから、どうしてもそこにしわが寄る。だから、あえて傾斜配分を期末、勤勉等について、指定職あるいは一等級、二等級等におやりになるならば、ここらで、まん中でたるんでいく諸君について、もう少しお考えになる気はないか。たとえば、まん中でいまの標準職務表の矛盾の改善。何が矛盾かということを言っていると時間がなくなりますから、矛盾の改善、ここらをお考え願えないかという点。あるいは昇給昇格の基準、ここらを少しいじれないか。そういう点で、上のほうばかり上がっちゃってという、そういう一般的な気持ちを、何とかひとつまん中のほうで御努力をなさって変えていくという気持ちがあっていいんじゃないかという気が私はする。この点も皆さんのお考えがあれば承っておきたいのであります。  そこで次に、先ほど官民格差のとり方等について、抜本的な格差算定の方式の改善という点に触れて直採用の問題だけ申し上げましたが、他にも高齢者その他の関係だとかいろいろなことがあります。将来の問題としてはそこらを一ぺん考えておく必要があるのではないかと思っておりますが、さっき触れましたのでこまかくは申しません。  それから付帯意見がついておりますが、付帯意見の中で、まず一つ調整額適正化の問題。一単位四%が、皆さんのいままでの御答弁によりますと二・九五ぐらいに下がってきている。これは尾崎さんのお話であります。だから今年は四%でなくて三%ぐらいにしたいのだという気がおありのようであります。やはり私はここで必要なことは——ねらいは職種間の格差三%に落とすという尾崎さんの尾崎流だろうと私は思う。思うけれども、これは尾崎さん、特に申し上げておきたいのですが、関係各労組にすると一つの既得権になっている。たいへん困るところも出てまいります。またそのしりを私のところに持ち込まれても困る。だから皆さんのほうでこの考えをお通しになる気持ちならば、おわかりになっているはずなんだから、十分そこのところの話を詰めていただいてやっていただかぬと、はね返りはこっちへくるのですから、そこらはひとつ十分お気をつけいただきたい、この点申し上げておきたいのであります。  次に付帯意見の二番目でございますが、時間短縮の問題等が出てきております。つまり時間短縮と週休制。これは総裁、どういうおつもりか知りませんけれども総裁らしくない。片っ方で四月と言っちゃったから、こっちは少し引っ込んでおけという気かもしらぬけれども、これは待ちの姿勢になっていますね。もう少し天下の形勢を待とうというぐあいの、まあ今年調査は見るべき格差がないのだ、しかし時代の趨勢はございますのでいう。時代の趨勢をお認めになるならば、そうあまりのんびり待っちゃ困る。いにしえに明治六年の太政官布告なんかで年末年始の休暇をきめた先例だってある。これはやはり官の制度というものが今日でも主導型なんですよ。だとするとあまり待たれちゃ困る。退職金なんかも、私はあとで本名さんに言いにいきますけれども、あまり待ってもらっちゃ困る。それから今日、勤務時間についていろいろいわれますけれども、これだって大正十一年の閣令六号が基礎ですよ。そうなると、そこらのところをお考えになると、せっかくつけた付帯意見ならば、お待ち申し上げますという意見はないでしょう。それなら書かないほうがいい。せっかく調査しちゃったからというのかもしらぬけれども。そうではなくて、労働省だって前向きで、一生懸命に中小企業にものを言っているでしょう、短縮しなさい、休暇をふやしなさいといって。港湾労働だっていまそういう趨勢で、ILOは六月に内陸運輸部会で論議しているのですよ。国際的趨勢だってある。だから、そういう点をお考えいただいて、あまり待ちの姿勢ではなくて積極姿勢をとっていただけぬかという気が私はいたします。  最後に、組合休暇の勤勉手当カット問題、つまり短期専従休暇の勤勉手当の是正。前に申し上げましたから中身は言いませんが、しかし、そっちのほうは少し前に向こうじゃないかという。どうもほかのほうに、職務専念義務その他とからんで、医者が健康管理のために云々というようなのも、中には職種としてありますから、そういう方方のほうは少しなんという気が、尾崎さんの頭の中にちょっぴりあるように風のたよりで聞くのですけれども、これは数の問題もありましてね、そう言ったって。片っ方の少ないほうをそうしますかと言ったって、片っ方のほうで少しよけいなんということになると、どうも、ふところ勘定からいけば尾崎さんのほうはまことにうまいかもしらぬけれども、困る面も出てまいります。ここらも少し気をつけてやっていただけぬかという気が私はするので、触れておきたいと思ったわけであります。  大体、以上申し上げまして、気がつきました皆さんの反論、御所見をひとついただいて、その上で、あとは給与法が出てきましたときにもう少しこまかく申し上げよう、こう思います。  以上でございます。
  28. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私からお答えしたいと思うところが三点ございますから、これをひとつお聞き取りを願いたいと思います。  まず第一に、傾斜配分というおことばは、これはどうも前々から申し上げておるのですけれども、傾斜支給と言い直していただきたい。配分と申しますと、下のほうの人の分を取って上へくっつけるという……。それは決してそうじゃないので、これは完全にプラスアルファであり、しかもそれは格差内の問題でなく、完全に大蔵省に泣いていただいてのお金でございますということを最初に申し上げておきたいので、配分といことばは、ときにはわれわれの部内でも使いますが、それはいかぬと言っていつも押えているわけです。御了承願います。  その根本の趣旨は、それはもう申し上げるまでもありませんけれども、去年確かにこの制度を設けていただいて、そして年間所得を比べると、これらの人々とお役人給与との間にはどうしても差がある、給与だけの問題ではないということから、二五%を天井としてのこういう制度をお認めいただきました。去年は多少遠慮いたしまして二〇%ということと、もう一つは範囲を相当狭めて出発いたしましたけれども、まず第一にわれわれのほうとしては、範囲の問題としてどうも均衡上思わしくない、少年院長だとか刑務所長だとか、他の俸給表のものについてどうしても不均衡がある、これは広げざるを得ない。ついては、それらの人については低いところの率を設けまして、だんだんと上へ持っていって、法律できめられておる二五%まで持っていったらばまず調整がとれるだろう。いみじくもいま御指摘がありましたように、これはいますぐやるわけではない、来年一月ぐらいからだという心組みでおりますので、特に文書には出しませんでしたけれども、御説明の機会に声を大きくして御説明しようということでまかり出ておるわけでございます。  第二点の、中位等級の辺の世帯のところ、これも全く私のほうとしては、かねがね申し上げておりますように、一番気を使っておるところで、初任給がものすごく高くなりますと一番苦労するのはその辺の扱いで、これはおわかりいただけると思いますが、標準生計費というものを、昔の使い方とは今度は違えまして、それをこっちのほうへ、てこ入れのほうへ使うということで慎重に盛りつけをやりましたが、これは、去年よりもこの辺は楽になっているのですよということを、自慢話がてら申し上げさせていただきたいと思います。  それから勤務時間と週休制の問題、これは何だか消極的じゃないかというおことばのように拝聴いたしました。私どもは、現在踏み切るかどうかという問題としては、最近のデータがこうでございます。報告書のほうをごらんになりますと、「しかし」と、こう書いてある。私も先ほどの説明では、説明書には「たが」と書いてありますが、私の説明では、しかしと申し上げたはずでございます。しかし、それはそれとして、今後の趨勢、情勢を見きわめながら前向きの態度で検討していきたい。ここで申しましたと思いますが、私どもはこれはいいことだと直観的には思っておることでございますから、その辺を御了承を願っておきたいと思います。  まず三点だけ申し上げさせていただきます。
  29. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 御指摘の中で官民比較問題がまずございます。  この関係は、たとえば職種のとり方、対応等級の合わせ方とか、あるいは相互の給与比較をする場合のとり方、そういったような関係で、いろいろ組合のほうからも問題点が指摘されているわけでございますが、私どもとしましても、たとえば公務の場合におきましては、だんだんベテランが増加しておるという関係で、業務のしかたもいろいろ変わってきております。また、民間の側におきましても、課制の廃止とかいったような、いろいろ遂行のしかたを変えている面もございまして、双方の適切な比較のしかたという点につきまして、従来のやり方が絶対不変というわけではございませんし、両方の動き方に絶えず適合するような形に検討をしておるわけでございまして、その点は今後も検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  たとえば直採用のお話がございましたけれども、これは退職手当の問題に関連いたしまして、現在は非常に中途採用者の退職者が一般であるといったような関係でございますけれども、だんだんそのうちに直採用の人がやめていく、そういう退職手当の問題になってくるといったような関係もございまして、だんだんに直採用の人が公務の中においても増加しておるという関係がございますので、そういう関係も踏まえて官民比較も考えていくということも一つの合理的な関係でもございますので、今後そういう関係を十分検討してまいりたいというふうに思いまして、ことしの調査におきましては、いわばそういう準備的な関係で、研究調査といたしまして調査を仕組んでございますけれども、今後その点も十分検討をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  その他、上のほう、たとえば指定職の関係と中位等級関係とのバランスの問題という御指摘がございましたが、指定職のほうにつきましては、民間部長級が二万円は上がりておるといったようなことも考慮いたしまして、かつ上位等級における官民格差も相当あるというようなことも考えまして、たとえば一等級におきましては八・三%、指定職の乙におきましては八・二%、指定職の甲においては七・八%とかいうように、行政職の下のほうからなだらかに落ちていくという、そういった形でつくってございます。  それとの関連で、いま総裁から、三人世帯中位等級のところについての御説明がございましたけれども、たとえば、ことしの場合には、標準生計費の三人世帯を算定いたしまして、これを三十二歳、六等級六号俸に対応させるといったような関係が、従来は対応していなかったわけでございますけれども、ことし初めてこれがサポートできるというようなことで、大体三十歳前後のところについて毎年力点を置いてやってまいりまして、かつことしもそれをやったという点によりまして、そこが従来になく改善されてきておるという点があるわけでございます。  なお、標準職務表の関係、あるいは去年の学歴差の短縮に伴う昇格基準の改正等につきましては、今後引き続いて検討をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  また、調整額の関係につきましては、やはり特別俸給表の水準差との関係などから言いますと、バランス上こういう問題があるということは、十分承知していただきたいというふうに考えておりますが、今後のやり方につきましては十分検討してまいりたいというふうに考えます。
  30. 大出俊

    大出委員 終わります。  総裁、どうもほんとうに御努力をいただきまして、ありがとうございました。私どもも苦労いたしましたが、すっきりいたしました。今後御健闘いただきますようにお願いいたします。長官にも、なるべく早く実施していただきますように……。
  31. 前田正男

    前田委員長 次に、伊藤惣助丸君。
  32. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままで同僚委員から質問がございましたが、なるべく重複を避けて簡単に伺いたいと思います。  まず、人事院総裁に伺いたいのですけれども、今度の人事院勧告が予想どおり四月実施をうたい、そしていまも大出委員からお話ありましたように、低いとはいうものの、わりあいいままでにない前向きの勧告が出されたという点で私は評価いたしております。だから、全面的にいいというわけじゃありませんけれども、そういった問題について二、三、総裁に伺いたいわけです。  まず、四月実施に踏み切ったという基本的な理由、これについて総裁に伺いたいと思います。それから特別給ですね。これを段階的に支給するというふうに言われておりますが、それがこの報告に記載されていないわけであります。その理由はどうなのか。それから人事院は、規則事項、これを報告に入れたり入れなかったりしておりますが、入れる場合の基準、入れない場合の基準といいますか、その基準はどこに置いて、いつも入れたり入れなかったりしているのか。こまかい問題で恐縮ですが、そういった点について伺いたい。
  33. 佐藤達夫

    佐藤説明員 引き続きまして冒頭におことばをいただきまして、うれしく拝聴をいたしました。  いまの第一の四月実施に踏み切った理由と申しますのは、もう済んだあとですから、相当腹蔵ないことを申し上げてもいいかとも思いますけれども、まあそれはしばらく遠慮いたしまして、四月説、五月説という話が起こりました当初から、両論立つということを私は申し上げてきておったつもりです。そして相当理屈は四月説にある、五月説が正しいという点についての説明は求めないでいただきたいということまで申し上げてまいったわけですけれども、一番うれしかったのは、当委員会において、去年の十二月でしたか、附帯決議をいただきまして、これはもうほんとうに百万の味方を得たように私どもは思いました。私どもは口に出しては申し上げておりませんでしたけれども、やはりいつかは、なるべく早い機会にそっちのほうにいけばすっきりするという気持ちだけは心の中に満々と持っておったものですから、非常にうれしかったということをここで白状させていただきます。したがいまして、先ほど大出委員も触れられましたように、政府主導とかなんとかということばもちらほら見えますけれども、私は国会主導というのが正しいというくらいに思っております。そういう心組みの上に立ちまして、いよいよ機は熟したということで踏み切らしていただいて、ほんとうに私どもは、多年のひそかなる念願ではございましたけれども、これを果たさせていただいた。総理とお会いしましたときにも、多年の宿望を達したなと言ってくれたわけです。総理は大蔵大臣のころから、こっちが陳情にしょっちゅう行っていますから、こっちの気持ちはそれとなくわかっていただいたと思って、多年の宿望を達成したということばは、私どもとしては、非常にうれしくこれをいただいたわけです。そんなことでございます。  次に、この段階的支給の問題、それから最後のおことばですが、これは相当御説明しておいていい事柄だろうと思います。率直に言いますと、規則事項は、黙ってここで何ら表に御報告なり説明なりを申し上げなくても、これはやれることだと理論的には思います。思いますけれども、やはりその中には相当重要なものもございますし、ことにその中では、さかのぼって実施したいというようなものもございます。そういうもので煮詰まりましたものは、できるだけ報告書の中にあげておきたい。ことに看護婦さんの問題のように、世間の関心を引いておるような問題については、やはりここではっきり方針を宣明したほうが望ましいだろうというようなことで従来やっておりますが、しかし、勧告あるいは報告を申し上げましたあと、なお懸案事項としてわれわれ検討を続けて、そしてその結論を得ましたものについてはまたそのつど実施しておるものも、これは実績がたくさんございますから御承知だろうと思います。おもなものを取り上げた、説明書で。これは、報告にも勧告にも取り上げてないので、説明書で取り上げるのはどういうわけだという、おそらくまた御疑念もあるかと思いますけれども、その程度の扱いで、報告、勧告、正式なものには取り上げない、しかし説明書にはうたっておきたいなというものはここに載せてあるというふうに、きわめて大ざっぱに御理解いただければいいと思います。  この傾斜配分の問題は、これはいまお話にありましたように、大体が規則事項でございますし、しかも法律で二五%という非常に正確な天井がきまっておる中でのやりくりでございますのと、それから私どもとしては、さかのぼって実施するというようなことも考えておらない。先ほどちょっと触れましたように、来年一月くらいから結論を得て実施したいのだということでございますから、先ほど大出委員の触れられました、例の短期従事のあれも同じものなんです。あれも実際上はわれわれの内部の扱いだけでできることでございます。しかし、それにしても問題は問題でございますから、口頭ではぜひ明らかに説明させていただきたいというわけで、書いてありませんものもここで特に触れさせていただいたというわけでございます。
  34. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 住宅手当扶養手当の問題ですが、一つは住宅手当を見送った理由ですね。最近の物価上昇のとき、しかも昨年ですか、新しく住宅手当制度ができたわけでありますが、つくった以上は、やはり今回もこの問題については触れてほしかったと私は思うわけですが、この点まず第一。  それから扶養手当の問題ですが、たとえば妻が内職でどの程度賃金を得たらもらえるものか、もらえないのか。要するに奥さんが内職した場合、どの程度の賃金をとったならばもらえないのか。またワクがあるとするなら、その金額をもっと上げるべきじゃないかと私は思うのですが、その点についてはどう考えるか。  それからもう一つ通勤手当ですけれども、これは先ほど説明ございましたが、もし国鉄が上がった場合はどうするのか。今回の改善でどの程度カバーできるのか。もし簡単に例示ができれば、それを示して御説明願いたいと思います。
  35. 佐藤達夫

    佐藤説明員 住宅手当だけについては私からお答えさせていただいて、あとは給与局長からお答えいたします。  これは御承知のように、先年非常な御要望もございまして、いろいろ問題はありますよと申し上げながら踏み切ったいきさつもございます。しかし、はたしていろいろな問題なるものが次々と御指摘いただいて、われわれは真剣にそれらと取り組んでやっておりますけれども、ただ問題をだんだんと突き詰めてまいりますと、やはり、借金をして家を建てた人とその借金の返済の負担というようなものが当面つながって出てまいりますし、さらに今度は、借金をしないで月々の給料からつめに火をとぼすようにしてお金をためて建てた人というのが、すぐそこにつながって出てまいります。そうすると、本来親譲りの家を持っておる人でも、古い家は改造しなければならぬ、この改造に幾らお金がかかるかというような、ずっと一連の問題が出てまいりまして、住宅手当の問題の対象にならないのは親がかりのむすこさんだけということになりそうな連鎖関係を持っておるわけです。そこをどこで打ち切るかという問題がございます。そこをわれわれは苦慮しておる。  それからもう一つは、民間の例を先年の調べで見ますと、住宅手当と銘打ちながら、住宅に関係の有無を問わずみんな全職員に対してパーで配分しておる。これなどは理屈をいえば、むしろ本俸のほうに入れたほうが、職員の側としては、退職手当にもはね返りますし年金にもはね返るということで得なはずなのに、なぜそんな住宅手当というような名義でそういうことをするのかというと、これは採算上の問題じゃないかなという疑念が出てくるというような、あらゆる方面からこれをせんじ詰めて考えてまいりますと、なかなか解決はむずかしい問題だと思います。したがいまして、なおわれわれとしては結論は得ておりません。今後も検討を続けてまいりたいという段階でございます。
  36. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 妻が内職いたしました場合には、それが相当な収入になるという場合には扶養手当支給しないという形にいたしておりますが、これはその限度といたしましては、一人世帯の標準生計費と見合いと考えております高校卒初任給の約半額を上回る額を考慮いたしまして現在きめているわけでございますが、それがいま現在の金額は二十万八千円ということでございますが、今度の額は、それによりまして二十二万五千円程度になろうかというふうに考えております。  それから通勤手当の関係でございますが、今回の支給限度額を相当引き上げたわけでございますが、その限度額の引き上げは約四三%でございます。国鉄の運賃の値上げの関係が前国会では議論されたことはございますけれども、その額は二五%ということでございます。でございますので、かりにその運賃値上げが行なわれるといたしましても、まだ約二〇%ぐらいの余裕があるということでございます。
  37. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど、時間がないから申し上げなかったのですが、二十二万幾らまでは今度はならなくなったわけですね。その金額でも少な過ぎるのではないかと私は思うのです。年間二十二万といったって、月々考えますともう二万以下でありますからね。だからそういう意味では、もう少し金額を上げるべきである、こう思うのですが、その点についてどう思うかということですね。  それから最後に、時間もあまりありませんので申し上げますが、この人事院勧告が四月実施になったわけでありますが、これから人事院としては将来の給与体系というものについて基本的に検討すべきだ、こういわれておりますが、こういうことに対する総裁の構想なり見解なりを伺いたいと思います。  そして総務長官に伺いたいのですが、この四月実施については、すでに総務長官は、そういう勧告が出れば実施したいという発言をしばしばなさっておりますね。そこで、これはわれわれとすれば、早く臨時国会を開いて、そしてこういった問題について国会で議決をし、早く支給してほしい、こう思うわけでありますが、そういった点についてどういう考えであるのか伺って、質問を終わりたいと思います。
  38. 佐藤達夫

    佐藤説明員 われわれとしては、今後の課題といたしまして、現在すでにたびたび御指摘を受けておりますように、もう継ぎはぎだらけじゃないか、特一等級とか特三等級とか、これはまさに継ぎはぎの尤なるものじゃないかという面からの御指摘もございます。しかし、そういうものの調整、形を整えるということだけにとどまりませんで、この際もっと抜本的に全部洗い直すような気持ちで取り組んでいこうじゃないか。一つは私どもは、職階制に関する法律というものが現にありまして、なおそれに基づく職階制ができていないというようなことも、一つの課題にしょっておるわけであります。そういう点の解明あるいは解決ということをもまた一方考えながら、それとの関連において、給与問題、あるいは公務員の任用問題を考えるべき分野もあろうというような、あらゆる面から腰を落ちつけてひとつじっくり取り組もうじゃないかという心がまえでおるわけでございます。
  39. 本名武

    本名国務大臣 お話のとおり、四月実施につきましては、しばしば私は心から実は期待をいたしておりました。幸いに今回勧告の中にはっきりと明示をされまして、これはもういままで申し上げたとおり、完全に実施いたすことには変わりはございません。  それから、これを早期にきめるために臨時国会を開けというお話でありますが、臨時国会を開くか開かないかは、私の申し上げる責任外のことでございますが、しかし、せっかくの勧告であり、またしかも、前向きにお進めをいただいたことについては敬意を表すると同時に、やはりいっときも早く支給すること。そうしてその上に立って職員の皆さん方がほんとうに国民のために御精励いただくという意味からも、一日も早くきめたいという所存でおりますが、国会の召集等につきましては、私の立場から、この案件を中心にして、総理にもつとめて早く開くように申し入れをいたしたいと考えております。
  40. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 終わります。
  41. 前田正男

    前田委員長 次に、和田耕作君。
  42. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 人事院総裁に。いまの住宅手当の問題なんですけれども、これは民間のいろいろな調査をした場合に、民間ではどういうふうに支払われておるかという集計はできるわけではありませんか。とすれば、それに見合った公務員の住宅手当の問題についての引き上げの目安もつくというふうに考えられるのですけれども、この問題はどうなんでしょうか。
  43. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私ども、住宅手当制度を立法化していただきましたそのときの勧告で、周到なる民間調査をやったわけです。ただ、これは御想像もつきますように、いろいろな形がございまして、どれに的中するかというような、そこの問題がもう一つあった。われわれとしては、まず踏み切りの一つの基本としては、公務員宿舎に入っておる人、これは相当安い家賃で入っておる。ところが、それに入っておらないで民間の借家に住まっておる人、その家賃に比べた場合にいかにもアンバランスが明白ではないか。まずそこの均衡をとっていくというところに着目すれば、これはもう一つの鉄則として恥ずかしくない鉄則であろうということで出発いたしました。したがって、その基本的な原則は、われわれとしては一切間違っておらぬと思いますが、しかし現実問題としては、先ほど来お話に出ましたように、やはり自分の借金で家を建てた人との関係はどうこうというような連鎖的な問題がずいぶんございまして、もちろんわれわれとしては、それは無視はできませんけれども、さてどこで線を引くかということになりますと、先ほど申しましたように、基本的な基準というものを今度は根本から変えてまた臨まなければならぬということがありますので、慎重なる検討を続ける必要があろうという体制でおるわけでございます。
  44. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 お話の趣旨はよくわかりますけれども、やはり昨今のような住宅の状況ですから、これらも非常に上がっておるという状況ですから、手当という形の支給でなくても、この問題については、人事院としても相当いろいろな対策を考えて、住宅問題についてのアンバランス、あるいは不平等等の問題を解決すべきだと思うんですね。その点はぜひひとつ要望したいと思います。  それからこの勧告は、かなりりっぱな勧告だと私は評価しておるわけですけれども、関係者の労を多としたいと思いますが、先ほど来同僚委員発言もありましたとおり、これを今年度内に実施するという問題ですね。これは総務長官、この十二月の初めにはできるだけ開くようにしたいというおつもりのようですけれども、これは総選挙を十一月中に済ましてしまって、そしてこの十二月には臨時国会を開くというような気持ちがありますか。
  45. 本名武

    本名国務大臣 先ほどもお答え申し上げたのですが、やはり年度内でなく、できれば年内に支給  できるようにいたしたい。そのためにはやはり国会において御議決をいただかなければなりません  から、そうするとやはり、早目に国会を開かなければならないということになりますと、私の立場としては、つとめて早く開いて、従来の支給時期  よりも早くなっても、おそくなるようなことの絶対にないようにいたしたいということにいたしま  して、これからひとつ総理にも国会の召集についてはいろいろと申し入れをし、話をしたいと思っております。  それから解散につきましては、これは全く私が申し上げる筋合いでございませんので、これは何も申し上げるところはございません。ただしかし、解散がある、ないということを前提にした給与に対する考え方は、私としては避けたいというふうに考えております。
  46. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 解散の問題は、むろん総務長官の権限ではございませんけれども、年度内実施という問題考えますと、この問題との関連がどうしても出てくると思うのですが、解散をするにしても国会の召集が必要なわけですけれども、召集した国会——かりに解散をしても、その劈頭でこの問題とか災害の問題は片づけるようにぜひともしたい、という御意思を担当大臣である長官が持っておられるかどうかということですね。そのことを聞いているわけなんです。お気持ちとしてはどうなんですか。つまり、十一月に臨時国会が開かれる、何らかの形で劈頭に近いところで解散が行なわれるというような場合でも、この問題と災害の問題だけは、各党そう文句は言わないと思いますから、やるということを強く総理に進言をしたい、こういうようにお考えになっておるのかどうか。つまり年度内実施の意思ありやないやという、その濃度の問題をお聞きしているわけです。
  47. 本名武

    本名国務大臣 これも先ほど申し上げましたが、私は従来どおり年内に支給できるように努力をいたしたいということでありますが、特に解散の問題については、先ほど申し上げたとおりでありますが、私は総理の御発言もございましたが、私自身も、年内には解散はないんだということを前提にいたして、この問題を処理したい。そうなりますと、残る問題は、いつの日に通常国会を開くか、あるいは通常国会がおくれるなら、たとえおそくても十二月には臨時国会を開いていただいて、この問題だけは片づけたい、こういうことですから、したがいまして、解散は年内にないという前提に立って、十二月には処理されるもの、また処理しなければならないという考えで進むつもりでおります。
  48. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 よくわかりました。  それから人事院総裁一つ要望しておきたいのですけれども民間の平均賃金、平均給与というものに見習って公務員給与を定めていくという制度があるわけですけれども、この調査のしかたについてはいろいろと議論があることもよく承知しておりますが、かりにこれが、文句はあっても一応正しい調査のしかた、比較のしかただということにして、現在いろいろな議論はあっても、民間の平均の給与と役人の平均の給与とは大体バランスがとれたというふうにお考えになっておられますか。
  49. 佐藤達夫

    佐藤説明員 官民比較のたてまえを貫いておることはおことばのとおりでありますけれども、私どもは、たびたび申し上げておりますように、企業規模百人以上の全国の企業をとらえて、その水準を求めております。したがいまして、そのことに関する限りは、絶対にこれはぴったり合っておりますと申し上げられるわけであります。ただし、いろいろお話に出ますが、有力企業の上から一番二番というようなところをとらえて、ここの初任給と比べてどうだというお話が出ますと、これはわれわれとしては、どうしてもそのとおりでございますとは申し上げかねる。やはりこれは、国民の皆さんの御納得を得るためには、どうしても百人以上で押えて、全国従業員のせめて六割をとらえたものの水準でございますということでまいりませんと、皆さんに御納得いただけないんじゃないかということに基本線を置いておるものですから、したがいまして、大企業に比べれば遜色があることを認めざるを得ないわけでございます。
  50. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そこで、今後のいろいろな政策的な、あるいは希望的な問題が出てくると思うのですけれども、たとえば生産性といいますか、能率といいますか、そういうレベルが民間と役人とで調和がとれたということにみなして、今後の問題として、たとえばいまお話がありましたとおり、民間の五百人以上の大企業に比べて役人が非常に安い、これは不当だという議論も成り立つと思うのですけれども、そういう場合には当然、その能率とか生産性とかいわれる仕事のしぶりの問題が出てくるわけですね。こういう問題を、人事院総裁は今後の問題としてどういうようにお考えになっておられるのか。そういう問題を取り上げるような段階に来ているとお考えになっておるのかどうか。この問題をちょっとお聞きしたい。
  51. 佐藤達夫

    佐藤説明員 まことにわが意を得た御指摘でございますので、その辺に私ども始終神経を使いまして、私個人といたしましては、人事院主催の公務員の研修は、いろいろな課長クラス、補佐クラスございますが、その際には、できるだけ機会をとらえて出向きまして、そういうような趣旨のことを何回もたび重ねて申しておるわけですが、今回の勧告にあたりましても総裁談話を発表いたしました。これは残念ながらすべての新聞には載りませんけれども、いま御指摘のとおりのことを実はここで述べております。「公務員諸君は、給与はすべて国民の負担によってまかなわれるものであることを、ここにあらためて自覚するとともに、公務員は、全体の奉仕者として、つねに国民の注視のなかにあること、また、給与官民均衡と照応して、その勤務ぶりについても民間のそれと対比されるものであることに十分留意し、公務能率の増進と行政サービスの改善に一層の努力を傾注されるよう、この機会に強く要望しておきたい」というのを出しておるので、気持ちだけはお察しいただけると思います。
  52. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 強くというところに非常にアクセントを置いた御答弁ですけれども、これはいろいろな議論のしかたがあります。一番大事な点は、民間の平均の給与公務員給与とがしっかりとバランスがとれたという、この線は絶対はずすことはできません。これは確保しなければなりません。この段階になりますと、若干問題はあっても、大きく見てこの段階にあるということになれば、やはり公務員民間と別個の仕事をする人ではありません。やはり国民として同じような仕事をしている人なんですから、仕事によって高能率高賃金といいますか、そういうことばが語弊があれば他のことばでもいいのですけれども、そういう観点からのもっと強い刺激というのですか、たくましさというのですか、あるいはそういうものが公務員の仕事のしぶりあるいは給与の立て方の中に入ってこなければならない。  これは私は、こういうところで言いにくいことですけれども、いまだにいろいろな民間の人たちの会合に出て役人の話が出ると、役人の悪口を言えば拍手が出るのです。これは一般民間の国民はそういうような気持ちがいまだにある。あるのは、そういういまの問題と関係があると私は思うのですね。これは率直に総裁もやはり考えてみなければならぬと思います。今後とも、非常に福祉国家的な行政になるとすれば、役人の数はどんどんふえていきます。ふえるのは当然です。役人は当然の給与を得なければなりません。その当然な福祉国家への発展をはばむ民間からの抵抗の重要な要素としては、役人は一体何しているんだ、おれたちはこんなに働いているのに役人は働いていないじゃないかという、つまりこの気持ちが福祉国家への発展をはばむ重要な要素になっている、こういうこともお考えになって、重要な基準にできるだけ努力して到達をした、この段階では、もっと生き生きとした、民間の仕事のしぶりと調子の合ったような各制度をとるために努力をしてもらいたいということが、結局役人の皆さん方も張りの出ることだ、国民とともに福祉国家をつくり上げる先頭に立ってやっていけるというふうに私は思うのですね。民間の人たちから、いろいろな会合で、役人の悪口さえ言えば拍手が出るような状態から抜けていかなければならない、こういうふうに考えますので、率直に御要望申し上げまして、御質問を終わります。
  53. 前田正男

    前田委員長 次に、東中光雄君。
  54. 東中光雄

    ○東中委員 時間が迫っておりますので、簡単にお聞きしたいと思うのですが、今回の勧告で四月実施に路み切られまして、公務員労働者の要求も含めていれられたということ、私、非常によかったことだ、こう率直に思っておりますので、申し上げておきたいと思います。  ただ、勧告の額の問題でありますが、非常に激しい物価高と苦しい生活実態の中で、公務員労働者の要求は、御承知のように、二万円以上の賃上げ、最低引き上げ額一万四千円ということでありました。諸手当の増額と差別賃金の是正、こういった要求が切実な要求として出されたわけですが、それと比べて勧告はずいぶんかけ離れたものになっております。春闘自身は、率では昨年を下回っておりますが、少なくとも額では、何百円かはそれぞれの階層で昨年より上回って賃上げをかちとっておるわけです。今度の場合には、公労協水準を確保されているとはいっても、春闘並みとはいえない。公務員だけは昨年並みになっておるわけでありますから、これは勧告制度という、協約権なりスト権なりを否定されておるところから出てきておるということに、結果においてはなっておるわけであります。特に人事院総裁の談話で、勧告は「公務員給与民間給与の水準に追いつかせる趣旨のもとに行なった」、こう言われておるのですが、賃金上昇率は、昨年額より一・〇六%低いこととあわせて、春闘による平均賃金上昇率一五%、労働省調査——これは定昇込みですが——よりも約一・二%下回ることになっておるように思います。公務員の定昇を三・一%と計算しての大体の数字でありますが、こういう点では春闘による率よりも下がっておるわけでありますし、労働者の要求との関係、春闘との関係から見て、今度の勧告に、たとえば国公共闘でも公務員共闘でも不満の意思表示をしております。こういう点について総裁どのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  55. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほど、大出委員でしたか、おことばがありましたように、いまや公務員は安月給ではないというような考え方が一部にはあるという時期において、二万円足りないんだということを大きく叫んでいただくことは、先ほど申しました私ども気持ちから言うと、それは叫んでもらっても一向差しつかえないのじゃないかという気持ちを持っておる。しかし、現実にそれだけいくかどうか、これは無理でしょうということは、またその部面、その部面で申し上げております。公務員はそんなに苦しいんだ、二万円もらわなければ暮らせないんだという声をあげられることは、低賃金ではないという世間の見方に対しては、ある意味では一種の影響力を持つだろうということはあるわけです。現実に民間の従業員諸君も、春闘で戦われております場合に、おそらく、二万円とか三万円とか一万円とか、いろいろな理想額を掲げてお戦いになったと思います。その結果が結局相場としてあらわれておるわけです。そこで、二万円とか三万円とかいう相場は、残念ながら現実の結果としては出ていないというようなことも、否定すべからざる事実だろうと思うのです。われわれは、民間よりも上回って特権的な給与ということは、これは考えるわけにはまいりませんから、やはり一般民間調査の結果の水準に合わせる、的確に合わせていくということが一番正しい数字だというふうな感想をまじえて申し上げましたように、そういう気持ちでおります。
  56. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど申し上げました平均賃金上昇率が春闘の場合と比べて約一・二%下回るという問題も含めまして、民間との関係で、あるいは春闘との関係で人勧制度が——制度の問題と言うと、これは総裁、そんな問題とは違うということになると思いますけれども、基本的に結果として、そういう労働省調べと違った、より低い数字が出るという問題について、私は、今度の勧告はもっと検討されるべき性質のものだったのじゃないか、ということを申し上げておきたいわけであります。  次に初任給の問題であります。この前にも若干お聞きしたのですが、高卒初任給格差が毎年ふえてきております。一九六五年に四百円だったものが、六九年には四千円になり、昨年で五千五百円だったわけですが、ことしも、それを詰める方向じゃなくて、百円でありますけれども格差が広がる方向になってきています。これは公労協関係、特に郵政省関係でありますが、こういう格差がふえてくるという問題について検討さるべきなんじゃないかというように思うのですが、いかがでございましょう。
  57. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 初任給でございますけれども、たとえば高卒の初任給といたしましては、先般、労働省が発表いたしました調査の結果は、三万七千九百円、一五・九%ということでございましたが、わがほうで調べました百人以上の事業所の平均といたしましては、三万八千四百六十円ということでございます。それを本俸相当額に直しまして三万七千四百五十四円ということでございますので、それを三万七千五百円という形で、去年の金額から五千四百円引き上げまして、民間の平均と合わせるということにいたしたわけでございます。  御指摘のように、公労協関係、三公社五現業関係の金額とは約五千円の開きがございます。ございますけれども、この関係は、われわれのほうの関係は民間のまん中、平均というところに合わせておるということでございますが、公労協の関係はそれよりも非常に高くて、まあいわば日本の初任給水準の中で最も高い水準のところにあっておるというような位置にあるということを申し上げたいと思います。
  58. 東中光雄

    ○東中委員 性質的に見て、たとえば電電公社にしても郵政関係にしても、少なくとも民間から見て、同じ性質の社会的な感覚を持って見ているわけですが、そこで五千円あるいは五千円以上の格差があり、それがむしろ開いていくという状態は、これはやはり非常に奇妙な状態だと私言っていいと思うのですが、検討をさるべきだということを申し上げておきたいと思います。  ただ、もう一点ですが、中だるみの是正を強くいわれてきたわけですが、賃金配分の具体的内容を見ますと、実際の行政実務をささえている中高年齢層の労働者の賃金は、たとえば六等級一号から七号までが、三百円から百円程度、昨年のアップ額よりもアップ額が下がっていますね。一方、次官の場合は、昨年二万円のアップに対して、ことしは三万円アップになっている。局長は、一万五千円アップに対して、ことしは二万円アップになっている。要するにいわゆる高級官僚の場合はずっと上がる、そして昨年のアップよりも減っているという状態。これはいわゆる中だるみが一そうふえていくということを意味しておるわけだと思うのですが、なぜこういうことになるのかということを人事院にお聞きしたいことと、それから総務長官に、こういう勧告になっておるわけですけれども、昨年のアップ額よりも今度下がっているという部分は——民間の場合は全部上がっている。若干にしろ、数百円にしろ上がっているわけです。公務員は大体その線になっておって、中堅層といいますか、ほんとうに行政実務をやっている人たちのところではアップ額が下がっている。この部分について使用者としての政府という立場で、勧告とは別にひとつ検討される御意思がないかどうか、その二点をお聞きしたいと思います。
  59. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 ただいま六等級付近、まあいわば中堅と申しますか、若い二十七、八歳から三十歳くらいの職員でございますけれども、その辺のところが昨年に比べて百円から三百円くらい下がっているではないかというお話がございます。昨年との引き上げ額の対比の問題でございますけれども、この関係は、昨年一般より特に引き上げたということを考えますと、昨年におきまして特に引き上げたという部分について、その特に引き上げた水準を維持したといったような場合には、昨年の金額がことしはない。特に引き上げた部分は、ことしは特につけるということはない、したがってその分は下がるという関係が一般的にあるということを御留意をいただきたいと思うわけでございますが、昨年は、その辺の六等級の前のほうにつきましては、学歴差を、高卒と大学卒との関係を、従来六年差ございましたのを、五年差に縮めまして一号俸詰めたわけでございますが、その延長としまして、六等級の初号の付近につきまして、約三カ月短縮に相当する数百円、特にこれを引き上げたということをいたしたわけでございます。ことしは、その特に引き上げた昨年の水準を維持するということによりますと、その去年特に引き上げた五百円部分はなくなる、その部分だけ引き上げ額は下がるということに相なるわけでございますけれども、しかしながら、ことしもそこを特に重点事項として重視しまして、ことしもまた三百円ないし四百円を引き上げたということでございまして、ほかに比べて、特にそこをまたことしも引き上げたということになるわけでございます。したがって去年との関係を見ますと、結果として百円、金額の引き上げは少なくなるわけでございますけれども、去年も特に引き上げたからことしも特に引き上げたという内容を持っておるということを御理解をいただきたいと思います。その結果としまして、三人世帯の標準生計費で六等級六号俸の付近がいままでサポートできなかったのが、ことし初めてサポートできるようになったという点があるわけでございます。そういう関係で、昨年との関係は百円下がりましても、ことしもまた特に引き上げておるということを御留意いただきたいというふうに思うわけでございます。
  60. 本名武

    本名国務大臣 人事院におかれましては、公正にしかも厳密な御調査をなさって御決定になり勧告されたと信じております。特に、御指摘のような民間関係等、あるいは春闘等も、当然御検討の中に加味して今日の勧告になったものと思われます。したがいまして、政府としては、勧告以上のことをいま直ちに処置するという考えは持っておりません。
  61. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんのでもう終わりますが、要するに民間春闘の結果としていえば、額で昨年のアップ額よりも全部上がっているわけです。ところが、公務員の中だるみ是正といっておられるその中間のところでは下がっておる事実があるわけですから、その計算のしかたはどうあろうと、事実そうなっているわけです。そして一方、次官、局長というところでは非常に上がる。  一時金の増額問題についても、今度は〇・〇二月分しか差がないから増額は見送るということであって、一方では、これは先ほど言われております、来年一月からにしろ、次官、局長、課長は二〇%から二五%上げる、あるいは管理職の部長クラスで一〇%から一五%という形で、六カ月ないし五・五二カ月、三種の場合もやはり上がる、こういうかっこうで、結局上厚下薄という、これはもうこまかい理屈を抜きにして上のほうほど上がっていく、下はとにかくとめられている、中だるみになっている、こういう事態があるわけです。私はこういう問題について、上厚下薄といわれるような事態をなくするというふうにぜひやられるべきだ、こう思うわけであります。その点を申し述べて、もし御意見がありましたら、承って終わりたいと思います。
  62. 佐藤達夫

    佐藤説明員 ただ、中だるみのところだけは、これは先ほども自慢話として実は御報告申し上げたように、われわれの一番力を入れておるところでございますから、去年よりもなおことしはよくなっておりますよということを申し上げております。それをもう一ぺん再確認していただきたいこと。それから民間の場合も、やはり初任給を不自然に上げておるものですから、中だるみが大体の傾向。われわれの措置は、民間の中だるみに比べるとよほどよくなっているということを御納得いただきたいと思います。
  63. 東中光雄

    ○東中委員 では終わります。      ————◇—————
  64. 前田正男

    前田委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。大出俊君。
  65. 大出俊

    大出委員 米軍にかかわる車両輸送の問題が、戦車を含めましてたいへん大きな問題になっておりますが、先般八日の日に、大平外務大臣、また増原防衛庁長官、建設省の高橋道路局長さん等にお出かけいただきまして、地位協定五条、十六条に関する問題等について詰めてみたわけでありますが、三十五年の安保改正のときに特に地位協定十六条を挿入したいきさつがございまして、一国の主権国家の中に外国の軍隊が存在をする場合の主権との関係、そういう意味で軍人、軍属あるいは家族構成員は国内法を尊重しなければならぬという義務づけがある。したがって五条というのは、そのワク内における協力義務であろう。この点については外務大臣もお認めになりましたし、防衛庁の長官もお認めになりました。国内法尊重のたてまえ、これは明確である、こういうわけであります。  そこで、十五日の朝刊等に取り上げられておりますように、相模原におきまして市の職員が逮捕されるなどという事件が起こりました。昨日あたりも市民がたくさん集まりまして、二千人をこしてしまいまして、私も昨日は相模原にも参りましたし、連絡もとりましたし、現場もよく調べてみましたが、周辺の方々に聞いてみると、もうこうなるとわれわれは日本人で相手はアメリカなんだ、そこまでの感情をるる私の耳に入れる方々ばかりであります。まさに理屈抜きになってしまっておる。だから、何も出てこいと言ったわけではないのだけれども、二千人も集まってしまった。そして警察官が一人を逮捕した。一たん散ったけれども、また市民が三々五々集まって二千人をこえてしまった、実はこういう雰囲気なんです。  これには実はたくさんの理由がありますが、結論をもう少し先に申し上げますけれども、これは田中総理がたいへんじょうずな任命のしかたをなさったので、ここまでくるとたいへんありがたいのですが、木村建設大臣はあわせて国家公安委員長でございまして、建設省と警察と両方お持ちになっておりますから、建設省と警察と自治体にかかわる問題でございますので、外務大臣には先般お見えいただきましたので、木村委員長と木村大臣に、ひとつきょうは二役買っていただきまして、御答弁をいただきたいのでございます。  まず建設大臣として承りますが、この道路法の改正が行なわれましたのは、正確に言っていつでございますか。それで、この改正の趣旨、どういう趣旨で改正されたかという点をまずお述べいただきたいのでありますが、道路法四十七条の一項に基づく車両制限令、正確には四十七条一項に基づく政令でございますけれども、通称車両制限令、これはどういう趣旨で改正をなさったのか。届け出制が許可制に変わっておりますが、そこらの趣旨をまず明確にしていただきたいのと、それが一体いつから発効しているのかということと。あわせて、建設省だけではできません、その後、対警察庁等に一体どういう手続をおとりになっているかという点。ここらについてまずお答えをいただきたいのであります。
  66. 木村武雄

    ○木村国務大臣 改正いたしました趣旨は、日本人といえども、外国人といえども、やはり改正した趣旨に沿うてそれは尊重してもらいたい、こういうことはきわめて明確なことだ、こう思っております。いつそれが改正になりましたかは事務当局から答弁させます。
  67. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 道路法等の一部を改正する法律昭和四十六年でございます。それから道路法施行令の一部を改正するのが同様で四十六年でございます。したがいまして、昭和四十六年七月十五日及び七月二十二日に公布されまして、一部を除きまして昭和四十六年十二月一日から施行されるようになっておるわけでございます。  その改正の趣旨は先生も御承知と思いますけれども、従来の車両制限令を罰則を強化いたしまして直罰方式に改めたというのが、主要なる改正になっているわけでございます。
  68. 大出俊

    大出委員 罰則は百一条でございましたか、百二条ですか、二カ条に分かれておると思いますが、どうなっておりますか。
  69. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 百二条の第一号でございます。「第四十七条第二項の規定に違反し、又は同条第一項の政令で定める最高限度をこえる車両の通行に関し第四十七条の二第一項の規定により道路管理者が附した条件に違反して車両を通行させた者」、これらに対しまして五万円以下の罰金に処する。以下ございますが、そういうようなことでございます。
  70. 大出俊

    大出委員 罰則の強化をした。つまりそれは取り締まりの強化に通ずる、こう理解してよろしゅうございますか。
  71. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 さようでございます。
  72. 大出俊

    大出委員 そこで、お答えがないのでありますが、建設省の皆さんは警察庁に対しまして、建設省の道路局長さんの名前で警察庁の交通局長さんあてに、四十七年三月二十七日に「建設省道交発第一四号」、こういう文書をお出しになっていますね。局長御存じでございますか。
  73. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 存じております。
  74. 大出俊

    大出委員 大臣、この文書について御承知でございますか。
  75. 木村武雄

    ○木村国務大臣 詳しいことは存じませんけれども、そういう文書が出された以上は、それは尊重するのが当然であります。
  76. 大出俊

    大出委員 大臣、そこまでいきますと二役になるのでございますが、建設大臣であり兼国家公安委員長ということでお尋ねするのでありますが、一人二役でまことに都合がいいわけでございます。  これを出しましたのは建設省道路局でございますから、建設大臣としての木村さんの所管でございますが、受け取りましたのは警察庁交通局長でございますから、てっぺんは国家公安委員長でございますので、国家公安委員長としての木村さんが、これをお受け取りになることになる。だから木村さんの御意思でこれはどうでもなる。その目的は取り締まりの強化。罰則まであるんですからね。そうでしょう。  そこで、これを読みますが、「警察庁交通局長殿 建設省道路局長 車両の通行の制限に係る違反車両の指導、取締りについて」、こういう表題であります。「道路法等の一部を改正する法律昭和四十六年法律第四十六号)及び道路法施行令等の一部を改正する政令(昭和四十六年政令第二百五十二号)は、それぞれ、昭和四十六年四月十五日及び七月二十二日交付され、一部を除き昭和四十六年十二月一日から施行されておりますことは、すでに御案内のとおりですが、車両の通行の制限に関する改正規定のうち、罰則の適用、許可の一元化及び手数料の徴収につきましては、来る四月一日から適用されることになっております」。つまり建設省でございますが、「当局におきましては、これが運用の万全を期するため、道路管理体制の強化を図るよう各道路管理者を強力に指導するなど必要な準備を進めてきておりますが」、つまりこれは、道路管理者は国道であれば国でございます。一部もちろん県市にかかわる管理権委譲のものもありますが、かつまた県道であれば県知事でございまして、市道ならば市長でございます。つまりここでいっている道路管理者に対して、明確なんでございますが、「道路管理体制の強化を図るよう各道路管理者」、つまり、市長、県知事、かつ国でありますが、しかし建設省が出すのですから、そうなると実際は知事、市長なんです。建設省自体が出しているのですから。つまり「道路管理体制の強化を図るよう各道路管理者」、知事、市長「を強力に指導するなど」——建設省が強力に指導されたのです。「必要な準備を進めてきておりますが、従来の規定では、違反者に対する罰則の適用が道路管理者の措置命令違反の場合に限られ」——今度はそうじゃない。旧来は、建設省には鋼製橋梁耐荷重量基準だとか、当時いろいろ基準がありまして、私これは、蓑輪さんが道路局長のとき質問したことがございますけれども、つまり届け出制になっておりましたから、措置命令があって、それに違反すると罰則、こうなっていた。ところが、それを強力に取り締まり強化、罰則強化という形で進めた。だから道路管理者の権限が強くなった、こういうわけであります。「措置命令違反の場合に限られ、その取締りにおのずと限界があったため、罰則の強化を中心として所要の改正を行なった経緯にかんがみまして」——限界があってやれなかった、だからその限界を取っ払ってやれるようにした、こういう趣旨であります。そして罰則を強化した、こういうわけであります。「違反車両の指導、取締りについて警察当局の一層のご協力をお願いする次第です。併せて、貴管下関係機関に対するご指導方お願いします」。これは大臣、中身知らぬとおっしゃるが、改正したことは知っているとおっしゃる。これは当然末端まで指導徹底させなければならぬ責任がございます、国の法律でございますから。それをなおかつ、建設省が念のためにそこまでの文書を出しておられる。「なお、当局の車両の通行の制限に係る違反車両の指導、取締り方針は、概ね下記のとおりですので念のため申し添えます」。  「記 一、違反車両の指導、取締りについては」——指導と取り締まりの両方です。「道路監理員制度」、これは道路法七十一条でございます。道路監理員を任命することができるように法律上なっている。これは、たとえば横浜市なら横浜市の道路管理課長であるとか、あるいは係長であるとか、あるいは職員であるとか、市長が任命をするわけでありますから、これは法律上明確な身分であります。「道路監理員制度を積極的に活用し、その監視体制の強化を図るとともに、警察、陸運局等関係機関と緊密な連けいを図り、万全を期する」。そのことをあらかじめ建設省から、警察あるいは陸運局に、これも道路監理員制度ができたのだから、限界を越えた取り締まりや罰則もあるのだから協力してくれなければ困るよ、法律上そうなんだということを伝えているわけですね。  「二、(1)制限をこえる車両の許可の内容」。今回の問題でありますが、「制限をこえる車両の許可の内容若しくは許可の際に附した条件に違反して運行している者又は許可を受けていない者の違反の態様、程度を勘案して」——調べなければ勘案はできないのですからね。「悪質な違反者に対しては、直ちに司法警察職員たる警察官に告発する」。告げる、これやってくれと。そして「必要な措置を命ずるものとし」、つまり許可をとってない車両が出てきた。違反車両である。その程度を調べる。これはひど過ぎるじゃないか、こんな違反は。ちっちゃな違反ならがまんできるが……。それを道路監理員がすぐ調べて、これはたいへんな違反だというので、警察官に、これは違反だ、すぐとめろと、「必要な措置を命ずるものとし、それ以外の違反者に対しては」、つまりあんまり大きな違反でない者に対しては「必要な指導、警告」、いけませんよと警告する。大きな違反については警察官に告げてすぐ措置をする。とめる、罰則の適用、こういうわけであります。「警告を行ない、又は必要な措置を命ずるものとする。」「(2)措置命令は、違反の態様、程度、道路及び交通の状況、とり得る措置等諸般の事情を勘案し、通行の中止」——中止ができるのですよ、措置命令は。通っちゃいけないと命令を出す。これは市長です、権限は。「交通の状況、とり得る措置等諸般の事情を勘案し、通行の中止、積載物の分割又は軽減」、つまり、載っかっているM113なる兵員輸送車は重量制限違反になる。これは、載っかっていると、おろせ、あるいは分解しろと言えるわけですね。「徐行、」早く走っちゃいけない。「他の道路への迂回等具体的に行なう」。  ここまでの明確なものを、皆さんは建設省道路局長名で警察庁の交通局長にあてて出しておられる。そのもとは、新しい法律ができて施行されたんだから、有効なんだから、その立法の趣旨にも従って厳に進めるべく末端の道路管理者である県知事、市長等に厳重に準備をさしてきているんだ、だからそうしてもらいたい、こう言っているわけですね。ここまでの中身、お聞きになっておわかりになりますか。中身御存じないとおっしゃるが、大臣いかがでございますか。
  77. 木村武雄

    ○木村国務大臣 よくわかりました。
  78. 大出俊

    大出委員 これは建設大臣の木村さんが警察庁に言ったわけだけれども、片や公安委員長でございますから、両方あなた一人で引き受けておられるのだから、一括わかってしまわねば、これは困るのです。そうでしょう。このくらい協力体制がすみやかにできることはない。建設省が出した、警察庁が受け取った、責任者は一人である。これはまことにみごとにできている。  そこまでお認めになったわけでありますが、さて一体、相模原で点滅灯をつけて、道路パトロールカーが来て、この法律の、この厳重な建設省の命令に従って、指示に従って厳にやれというのですから。法律改正されたんだ、罰則も強化されたんだ。交通車両についての制限というものを明確にこれは守らせろ、大きな違反については警察にすぐ告げてとめさせろ、そして分割させろ、あるいは道路指定を変えろ、ここまで言っている趣旨に従ってやらなければ建設省はおこるはずですからね、地方の道路管理者に、あなた、厳命しているのだから。そうでしょう。  そこで相模原市長は、道路管理課長、この方を通じ、この方も一緒にパトカーに乗りまして出かけていった、M113が出てくるということで。ところが、パトカーを結果的に——いろいろな事情があります。私も克明に調べてまいりましたから何でも知っていますが、これを逮捕するだけならまだいい。管理課長なんというのは、警官のたてで押し飛ばされて、グリーンベルトに倒されている。おまけに、そこについていた二人の方は、逮捕すると言われて飛んで逃げた。道路管理者が何だ、道路監理員が何だ、てめえら何だ、そういうむちゃくちゃなことを言う。黄色い色のパトカーに乗っかっていて、点滅灯がついている。そこからおりてきたのをみんな見ている。おりて、車のほうはグリーンベルト寄りに寄せて、あとは歩いて、ちゃんと証明書を掲げて——形まできまっているのです、これは。そういうふざけたことはない。  しかも、もう一点だけ時間倹約のためにつけ加えておきますが、実はこれは私は直接、相模原市の道路管理課長さんに話を聞いてみた。そうしたら、この方はたいへんに憤慨しております。国がやれと言ってきて、その市はちゃんと相談をして、監理員の任命もして、パトカーもちゃんとそろえて、警察とは連日のように打ち合わせをしてきたというわけですよ。つまり相模原市の問題だから、市警察ですから、三日にあげずいままで打ち合わせしてきていますというのですよ。そしてしかもこの日の朝、問題の日の朝、当日朝、道路専用係長のところに、名前はとりあえず伏せておきますけれども、相模原市警察署の係長さんが朝お見えになっている。そして道路専用係長さんのところでは、当日の車両制限令についての超過トン数その他幅員等の問題について計画書というものをつくってあったという。道路管理課が計画書をつくってあった。つまり、どういう形でチェックするかという計画書をお渡ししてお見せして、こういう計画でやりますということを御説明した。もちろんそれは持って帰っておりません。それをお読みになって帰られた、この警察の係長さんは。そこまでのことはやってある。これはいろいろな言い分が皆さんの中にあろうと思いますよ。思いますが、私がいま取り上げた限りにおいて、建設省がそこまでのことを自治体の長に、つまり道路管理者に厳重に言っておられる。忠実にそれを守ろうとしている。警察にも文書を出しておられる。協力義務を訴えておられる。だから、いま私が取り上げたここまではいい。いいが、そこから先、その道路監理員を、法律上明確な身分の者まで逮捕するとか、突き飛ばすとか、押し倒すとか、てめえら何だとか、そういうふざけたことをやった警察というものについて、見ていた人は一様に憤慨している、これはたいへんだと。学生がどうのこうの言わない、聞いてみると。あんなふざけた警察が法治国家にあっていいかということです、言ってみたら。大臣、それこそあなたは、さっき、見てみなければわからぬということをおっしゃっているけれども、聞いてごらんなさい、相模原へ行って。一ぺんです。私は行って聞いてみたんだから。同じことを言います。そういう状態でいいはずがない。まずこれまでのところ、どうお考えになりますか。
  79. 木村武雄

    ○木村国務大臣 大出委員のおっしゃるとおり、いろんなことがやっぱりあるようであります。そして私は、私の担当しておりまする警察側からいろいろな話はお聞きいたしております。しかしそのようなことで、私はいいとか悪いとかという判断はしないつもりであります。いま大出さんから別な話をいろいろお聞きいたしまして非常に参考になったと思っております。建設省のほうから警察庁のほうに、四十七年の三月ですか、改正になりました法の内容を逐次述べて、これをどうか徹底せしめてもらいたい、こういう連絡を警察が受けておった。受けておりましたけれども、それを末端まで徹底せしめていなかったのじゃないか、私はこういうように拝察するものであります。  ただ、私の非常に遺憾に思いますることは、たかがアメリカの自動車の問題で、日本人同士がこんな対立してみたり、抗争してみたり、それから被害者を出してみたりするなどということは、全くばかばかしいことであると思う。こういうようなものをこれからなくすように徹底せしめなければならない。そういう点で私は私なりに、非常にこの問題とは取り組んでいかなければならない。  前の、横浜にあの事件がありましたときに、私は沖繩におったのですよ。それをテレビで見まして、幸いに横浜の飛鳥田市長は友だちなものですから、即座に電話をかけまして、事の真相を聞いてみようと——あの人はうそを言う人じゃない。政治的な立場が異なっておっても、かけ引きずる人じゃない、そういう信頼感がありましたから、あの飛鳥田さんを非常にさがしたのですけれども、残念ながら当日見つからないで、翌日電話でお話しすることができたのです。それで飛鳥田君からいろいろな話をお聞きいたしまして、その前に警察に対する態度は私は指示しておりましたけれども、そのあとで飛鳥田君から話をお聞きいたしまして、私は飛鳥田君との話し合いに基づいて、自分のその後の態度とか指令をしたつもりでありまするが、私は全くこんなことはばかばかしいことであると思っております。何としても、こんなことのために日本人同士がいがみ合いなんかするものじゃない。そういうものをなくすためにはどうしたらいいかということをほんとうに考えていきたいというふうに思っておりまするから、一方の意見だけは聞いておりません。きょうはお話を承りまして、ありがとうございました。
  80. 大出俊

    大出委員 大臣は内閣委員長を長らくおやりになっておられまして、私も個人的なおつき合いもいただいておりますから、私はよくわかっておるつもりなんですが、また飛鳥田横浜市長のところへ御連絡をいただきまして、沖繩におられて、帰りたいと思っているというお話が最初にあったですね。お忙しいところだから、市長と私で空港まで行こうかというお話を実は飛鳥田氏とばくはしておった。結果的に電話でのお話になりましたが、たいへん御心配をいただいているということもよく知っているのです。こういう電話の話であったということも、市長から、電話が終わったとたんにすぐ私に連絡が参りましたから、よくわかっているのです。それだけにまた、いま口に出されておっしゃっているように、米軍の車両が出たり入ったりすることをめぐって、日本人同士で大騒ぎになってしまうということは好ましいことじゃない。全くその点は同感なんです。相模原の周辺の人もそう言っている。日本の国内じゃないのか、だから、違反であるものは違反だとなぜあらかじめ明確にできないのか、こう言っている。  そこで、私はもう一点申し上げておきたいのですが、実はあらかじめ明らかになっているはずなんです。だから、きょうはお出かけをいただいたのです。  これは外務省に承りたいのですが、外務省もこの法律改正がなされておることはよく御承知なんですね。ですから、六月だと思いましたが、念のためにもう一ぺん承りますが、日米合同委員会にこの趣旨については外務省が申し入れているはずです。外務当局に手落ちはないと私は思っている。というのは、私はここに持っておりますけれども、横浜市が文書を再三にわたって出す過程で、建設省の御意見、外務省の御意見、運輸省の御意見、かつまた警察庁の御意見もいただいてある。全部聞いた。そのときに外務省のほうから、六月の段階で日米合同委員会に、こういう法改正があったから守ってもらいたい、この種のことを申し入れている。そうじゃございませんか、外務省の方。
  81. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、五月末に口頭で申し入れたあと、六月八日の合同委員会におきまして、文書により先生のおっしゃいましたとおりの申し入れをいたしております。
  82. 大出俊

    大出委員 ですから、木村さん、警察庁は建設省からの申し入れで——もちろん大臣の就任以前でございます。ございますが、事のいきさつは明確になっている。県知事なり市長なりという道路管理者は積極的に、車両制限令に基づく取り締まりが変わったんだから、強化になったんだから、しかも旧来は越えられない権限が越えられるようになったんだから、道路監理員を任命してやれるんだからということで、やれと言われてきている。警察もそのことは知らないということは表向きは言えない。ただし一点だけ残念なことに、末端の警察官の方々なり署長さん等を含めまして徹底されていない。つまり、道路監理員とはいかなる職責を持つ者か、改正された法律の車両制限令というもの、並びに罰則の強化、取り締まりの強化というものはどこまでのものかということについて御存じない。まして末端の警察官は知らない。だから、証明書をちゃんと——つまり計画は立てられている、計画書を警察官に見せているんですから。その計画に書いてあるとおり証明書を掲げ、腕章をつけて、声をあげて、私は相模原市の道路監理員です。しかも身分証明書を持っておるんですよ。職名は道路管理課長ですと言って、車両に近づいていったわけですよ。とめようというんじゃないんですよ。許可を受けていますか——許可を受けていないと言ったら、建設省通達で、警察官にすぐ告発をしてとめてもらうことになっているんですから。そうでしょう。その義務を果たそうとして行ったわけです。それをいきなりたてで突き飛ばされたり、グリーンベルトに倒されたり、逮捕するとおどかされてあわてて逃げたり。若い方じゃありませんよ、道路管理課長という方は。しかも、てめえらは何だ、道路パトロールが何だ、道路監理員が何だ、こんなものはという調子でやられたんじゃ、話は逆で、むしろ警察官はそこで、この通達の趣旨に従って協力をして聞かせてあげる。運転手は日本人だったんですから。許可証を持っていません、持っていなければ警察官は、司法警察にすぐ手続をとってとめる、こうなっているんだから、とめてください。これは警察官がとめなければいかぬのです。  それを、とめなければいかぬ警察官が、チェックに来た、しかも計画書まで見せているその人間を追い飛ばして、てめえら何だ、道路監理員が何だというので、グリーンベルトに倒してしまって、ぐずぐずしていれば逮捕するぞと言われて、あわてて逃げる。そういう話は、一体どっちを向いているのかわけがわからない。そうでしょう。その一番根源が末端まで徹底していないんだというならば、徹底させなかった責任は一体だれにあるのですか。
  83. 木村武雄

    ○木村国務大臣 すべての法を末端まで徹底せしめることができなかった、こう言えば、そいつは私の責任であります。国家公安委員長は法的には直接の関係はありませんけれども、しかし責任は決して回避いたしません。しかしこれからは、なかなか末端まで徹底させるということは容易じゃありませんけれども、末端まで法を厳守することを徹底させるために、思い切って努力してみたいと思っております。
  84. 大出俊

    大出委員 警察庁の長官はおいでになりますが、やはりこれは政党政治でございますから、国家公安委員長という職は、大臣という立場においでになる方がつとめておいでになるのですから、やはり法律政府提案といういま日本の制度でございまして、アメリカのように政府法律を提案しないんじゃないのですから、そうすると、閣議決定というものが、時の政党政治に基づく政府の意思として末端に伝わる、国民一般のすぐそばまで行っているということでなければならないはずなんで、その点は筋ですから、ぜひそうしていただかなければならぬ。それが全く逆の結果になっているというところに問題の一番本質がある、こういうふうに私は思う。  そこで、アメリカの側だって、外務省の松田安保課長さんお答えになっておりますように、口頭で申し入れている。あわせて、合同委員会に文書で同趣旨のものを申し入れている。それを知らないとは言わせない。にもかかわらずあえてやるというところに、これはやはり、日本の米軍に対する政治の姿勢が、私は問題になると思う。これは大平さんにも申しましたが、また松田さんにもあのとき申し上げましたが、やはり国内法は守ってもらう、こういう答弁を松田さんからもいただきましたから、それはいいのですが、そこで、このパトカーがどうのこうの、送検するとかなんとかと言うんだけれども、ふざけた話でして、克明に調べた。この道路管理課長さんからも、その後担当の有川さんという人からも、よく聞いてみた。ところが、グリーンベルトにななめに——前が見えないですから。構造はこうなっている。相模原の総合補給廠に行ったことのある方はみんな知っていますけれども、そこから五百九十メートルちょっとが相模原市の道路、それを通ると十六号国道に出る、こうなっている。グリーンベルトが両側にある。そこで、門を出てすぐ、五十メートルぐらいのところに横浜線の踏切がある、こういう構造なんですね。  ところが、なぜここで騒ぎが大きくなったかというと、その前に問題がある。相模原警察署、ここで二回にわたる問題の発表がある。一つは、時間を言いますが、まず第一回は十五日の午後三時の記者会見、ここで松本相模原署長さんが、M113といわれる兵員輸送車、正式にはM113A1というのですが、この兵員輸送車等についての説明をしている。この説明によりますと、兵員輸送車の重量は九・四六トン。それを乗せているトレーラーは十六トン。この十六トンと言っている意味は、牽引車、トラクターを含めてなんですね。九・四六トンと十六トンですから、合計二十五・四六トン。だから、車両制限令の重量制限に違反していないと述べている。違反していない。ところがこのときに、この車両制限令なるものを知っている人もいるのですから、はたして違反していないかという疑問があるものですから、それは一体どういう種類のものだと聞いたら、一般だと答えた、一般の車両。これは記者会見ですから、そこで一般だということになると、これは制限違反ではないか、二十五・四六トンというのは制限違反ではないか、こうなった。  なぜかといいますと、説明が要りますから申し上げますが、ここに車両制限令がございます。この車両制限令によりますと、この中で、特認、つまり特に認めるというケースがある。それは何かといいますと、バン型の——バン型というと、つまり上から積み込むようになっていまして、なぜこれは特認で認めるかというと、積んだ荷物が横にもずれないし、荷姿が変わらない、そういうものですから。そこで、「バン型のセミトレーラ連結車」、カッコがございますけれども、これを省略いたします。それからもう一つは、「コンテナ用のセミトレーラ」、バン型のものとコンテナ用のもの。コンテナも荷姿がくずれません。この二つについては、高速道路の場合は三十四トン、一般の普通道路の場合は二十七トン、ここまでは特に認めているのです、この政令は。だから、最初、警察署長の頭に、バン型トレーラー用ということに、つまりそっちのほうに持っていこうという頭があったんだと思うんでありますが、二十五・四六トンと説明した。二十五・四六トンなら、二十七トンまでは特認で認められているはずだという主張だった。そこをつかれたら、知らないのですよ、署長さんも中身を。この政令をよく読んでいないのだ。だものだから、バン型なのかコンテナかと言われて、いやいや普通のだ。普通ならば違反じゃないか、二十トンじゃないか、何だということになった。バン型とコンテナ用だけは、荷姿がくずれませんから二十七トンまで認めているのです、一般道路で。ただ、一般のものについては二十トンが制限トン数なんだ。それ以上のものは許可が要る、申請が要る、こういうことになっている、明確に。それを、二十五・四六トンと発表しておいて、違反でない、制限以内である。それじゃ一体それはバン型かコンテナかと聞かれて、一般だと答えた。一般ならば二十トンじゃないか、何だということだ。こういうことになると、明確に署長が制限違反ということを認めることになるのだから、二十五・四六トンと言っているんだから、そうだとすれば、それは許可がないのに運び出すというわけにいかぬじゃないか、市のほうもそれでは当然チェックせざるを得ないじゃないか。あたりまえのことだ。だから、それを所定の計画に基づき、警察に見せてある方法でそのとおりやったわけなんだから、一つも悪くはない。そこで、とめなければならぬ警察が、逆に、チェックしに行ったほうを逮捕してしまうなんてばかなことをやり、しかもそれを送検をする。  で私は、一体それはどういう罪名なのかと聞いた。何と安全運転義務違反。ふざけなさんな、点数一点にもならぬものがなぜ逮捕の対象になるか。こんなふざけた話はないですよ。ギア入れ違いなんということは年百年じゅうある、運転している人には。そんなものを一々逮捕されたらたいへんなことになる。しかも、点滅灯がついていて、黄色い塗りで、相模原市道路パトロールカーと表示してあるものを。そういうことについて、誤認逮捕だというのならば、それでわかります。わかりますけれども、そうではないとなると、これは簡単におさめられる問題じゃない。ないから、相模原市議会は満場一致決定をして、憲法に基づく自治権の侵害である、市議会の決定でそう認定をして——新聞に出ておりますよ、ちゃんと。告発をしよう、こういうことです。また周辺の都市も革新市長が多いわけですが、相模原の市長は、私どもからいう革新市長じゃございません、河津さんは。しかし、周辺の革新市長のほうだって、みんな道路パトロールカーを持っているのですから、道路監理員を任命しているのですから、同じことがあってはいかぬというので、統一見解を出している。これもたいへんな自治権の侵害だ、まさに警察の責任問題、責任をとるべきである、こういう考え方です、これは。この状況というものはめったにくずれません。そうなってしまった今日の状況の発端を考えたときに、単に、末端が知らないんだ、徹底していなかったで済みますか、これは一体。
  85. 木村武雄

    ○木村国務大臣 それはごもっともでありますが、私は、いままでの政治の流れが間違っておったからして、自分で改正しなければならない、そしてほんとうの政党政治をつくってみたいものである、そして上から下にわたって全体の流れが統一できるような状態をつくらなければならないものだ、責任体制を確立してみたいものだというのが私の在来の主張だったんです。そしていまの田中内閣が誕生したんですが、なかなか末端までそういう気持ちというものを浸透させるということは、かすに時間のかかることだけは間違いないと私は思っております。それでありまするから、それはどうしても時間をかけて末端まで浸透せしめなければならないものである、こういうふうに自分は確信を持っております。いま御指摘お話、そいつは、私はうそじゃないと思いますよ。あなたのお話はうそじゃないと思いますが、やっぱり私は私として、警察庁の国家公安委員長なものですから、自分にはそれ相当のやっぱり所属機関があるんですね。その所属機関の意見というものももう一ぺん確かめてみなければいけません。あなたの意見を全然採用して在来の機関の意見というものを全然無視するというわけには私はまいりませんです。そうでありまするから、そんなことをしたならば自今目的が逆になってしまう危険がありまするから、これは全部確かめてみたいと思っております。そして、私の一番おそれますることは、その事件そのものは大切でありまするけれども、事件そのものが起こした一波万波の大きな社会状態を非常に心配いたしております。たかがこんなことで大きな社会状態にしたくないものであると、こういうようなことが自今起きないように、これを最後にしなきゃならないものであると、こういう気持ちをもって私はこの問題と取り組んでおりまするから、そのことについては御了承くださいまして、いまあなたの御質問に対しまして、それはごもっともだからそうしましょうという返事はいたしかねますけれども、時間はかしてください。そして、どういう処置に出るかということは見ておってくださるようにお願いしたいと思います。
  86. 前田正男

    前田委員長 建設大臣の時間が過ぎているらしいので、なるべくひとつ簡単に……。
  87. 大出俊

    大出委員 これはあれですよ。委員長に申し上げておきますが、そう簡単に……。  あなたは視察をなさるというんだけれども、現状は、相模原市は五百九十メートルの——だれがということを申しません。申しませんが、補給廠から十六号国道へ出るのには、どんなことをしても五百九十メートルのこの相模原の市道を通らなければならないんです。市議会は満場一致できめているんですよ。どんなことがあっても許可しませんよ。もう一切出られません、重量制限以上のものは。戦車はもちろんのこと、M113もだめです。横須賀市のほうもこんりんざい認めません。横須賀市の市道と相模原市の市道を通らなければ、まず相模原補給廠から出られない。よしんば強引に出たって横須賀にははいれない。これは間違いない。しかも自治体と警察、つまり警察権力とまっこうからぶつかったまま、しかも事は車両制限令の道路の問題、建設省の所管の問題。こういう時期に、どういう大きな視察があるか知らぬけれども、事は国会だ。本来ならば建設大臣みずから出てくるべきですよ、こんなことは。冗談じゃないですよ。行きたければ行ってください、けっこうだから。
  88. 前田正男

    前田委員長 もうちょっとおってもらいますから……。
  89. 木村武雄

    ○木村国務大臣 あなた、そんなにおこらないで質問しなさいよ、けっこうだから。おこらないで、私がここから出ていくと言ったんじゃないんだから、質問しなさいよ。
  90. 大出俊

    大出委員 木村さん、どこの視察か知りませんけれども、承ってないんだけれども、そこらの視察をしているうちに、ますますもってエスカレートしますと、あなたが冒頭に、アメリカの車か何かのことで日本人同士でこんな大きなけんかをするなんて、ばかばかしいことがあっちゃならぬなんてことをおっしゃっているんだから、ばかばかしいことがますますばかばかしくならぬように、聞いていただいて、ひとつあなたの考えを明らかにしておいていただく必要があるから聞いているんですから、あまり時間、時間とおっしゃらないで、もうちょっと聞いてください。いいですか。
  91. 木村武雄

    ○木村国務大臣 いいですよ。
  92. 大出俊

    大出委員 ところで警察庁の方々に承りたいんですけれども、何で一体このM113なるもののトン数をたびたび変えて御発表になるのですか。これは何がほんとうなのかさっぱりわからぬでしょう。どこから聞いたんですか。これは米軍から聞いたそうなんですけれども、そこら明確にしてもらえませんか。私は、ジェーン年鑑その他、客観的な資料を持っておりますけれども、ひとつおっしゃってください。あまり御都合主義でものを言われちゃ、しろうとが迷惑でね。
  93. 山本鎭彦

    ○山本説明員 これは米軍のほうから、八月十四日午後九時及びそれ以降、兵員輸送車を補給廠からノースピアまで移動する計画について、輸送車両の配置は民間営業用トラクター、セミトレーラー及びAPCM113となります。この組み合わせの重量は十五・八三八である。各個別の重量は次のとおりである。トラクターが四・〇八八トン、セミトレーラーが三・四〇〇トン、M113兵員輸送車が八・三五〇トン、合計十五・八三八トン、こういう連絡が米軍のほうから来ております。
  94. 大出俊

    大出委員 そうすると、松本署長が発表したのはどういう数字なんですか。記者会見で発表されていますよ。これはどこから来たのですか。もう一ぺん言いましょう。三時の記者会見です。トレーラーが十六トン、兵員輸送車が九・四六トン、合計二十五・四六トンで、車両制限令の規定に該当している。これはどこから出たのですか。これも米軍だというのですか。
  95. 山本鎭彦

    ○山本説明員 そのほうに聞いたところでは、相模原署の署員が直接米軍補給廠の係員から聞いた数字をそのまま発表したということで、食い違ってしまったわけです。
  96. 大出俊

    大出委員 いいかげんなことを言っちゃいけませんよ。英国のジェーン年鑑というのは、そう簡単な調査によって書いているのじゃないですよ。一つ言いましょうか。M113A1、これは十・七五トン、自重です。ジェーン・ウェポンズシステム、一九七一年版。あなた方は最初に言われて、二十七トンまでならば制限内だからというので切り抜けようとなさった。それがひっかかったら、今度は十五・八三トンだと言う。私のほうの計算からいきますと、ちょうど上に乗っけるやつを乗っけなければ、トラクターとトレーラーでちょうど十五・八三トンだ。ごまかしてはいけませんよ。それならば、外務省なり警察庁なりは責任を持ってトン数を米軍にあたりますか。
  97. 松田慶文

    ○松田説明員 外務省といたしましては、この種の個々の事案、個々の作業の一々につきまして、直接事案処理に担当すべき立場にございませんけれども、ただいま本件が問題となっており、先生も御質問なさっているという現状にかんがみまして、あらためて外務省より公式に米側に問い合わせをいたしたいと存じます。
  98. 大出俊

    大出委員 防衛庁に承りたいのですが、私は相模原の補給廠に戦車が何台あるかと聞いたら、わからぬとおっしゃる。かつてこの席で、相模原の補給廠で扱っている車両、一九六五年から七二年まで私は全部あげた。これは米軍の資料です。単にM113だけじゃない。火炎放射器搭載のものもあれば、架橋用のものもあれば、たくさんある。みんなこれ制限トン数をこえるものばかり。113だけじゃない。全部あげた。議事録に残っています。一九六八年からベトナム国軍というものができて、仕分け上ベトナム国軍の戦車になっているもめもある。これはこまかく申し上げたはずだ。そうして先般は防衛庁に戦車が何台あるか聞いたら、わからぬという。お調べくださいということになっている。一体、このトレーラーというものが何種類あるのですか、相模原の補給廠で修理しているトレーラーの中に。と言うてみても、建設大臣の視察時間をなくすつもりはありませんでね。
  99. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私に質問してください。
  100. 大出俊

    大出委員 トレーラーは四種類ございましてね。一番軽いM113、これが七・五五トンですよ。一番重いM12A2、これが二十一・三〇トンです。そしてM113A1というのはディーゼルですが、旧113はディーゼルが石油です。このディーゼルのM113A1を使っているのですが、これが十・七五トン。一番低いのをとりましても、つまり十・七五プラス七・五五トンなんですが、これはトレーラーでございまして、トレーラーを引っぱる牽引車、トラクターが要る。トラクターはおおむね五トンですよ。四・八九と言っている人もあり、四・七八と言っている人もある。こういうことは調べようと思えばすぐわかる。そこで直しているのは全部日本人従業員ですからね。しかも私はいま、ジェーン・ウェポンズシステムなる国際的に有名な年鑑その他の資料に基づいて、一つだけものを申し上げておる。これは防衛庁でわからぬはずはないでしょう。いかがですか。
  101. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この間の御質問で戦車の数を調べるということで、問題が起きました関係から施設庁のほうで問い合わせをしたのですが、施設庁の立場としてのあれには答えをしてくれないということです。それで、外務省のほうに大体四十数台というあれがわかっておるということで、そのように聞いておるところでお答えをしようと思っておりましたが、四十数台という戦車ですが、外務省のほうのあれではこういうことになっております。
  102. 大出俊

    大出委員 私が四十八台と当時申し上げたのですよ。四十数台というなら四十八台も四十数台のうちですから、そこらのところぐらいは、もう少し皆さんが気を使ってくれてもいいのじゃないですか。ぼくは木村さん、さっきから申し上げておるように、日本政府の米軍に対する姿勢の問題だというのだ。何でもかんでもおっしゃるとおり聞いてきてものを言うということだから、松本さんみたいなことを言う。それじゃ困る。知っている人が調べれば、そんなことはすぐわかる。それじゃ事は済まぬじゃないですか。  いずれにせよ、一番軽いトレーラーを使って運んだとしても二十トンをこしてしまう。しかもバンでもなければコンテナ用でもない。そうなれば、さっき私が取り上げている車両制限令違反ですよ。そうでしょう。  しかももう一つ、これは重量だけじゃないのですよ。幅員も制限されているのですよ。幅員も明確に違反じゃないですか。幅員だってあなた方発表したでしょう。皆さんはトン数ばかりお考えになったようだけれども、幅も長さも明確に違反。これは長さだってそうだ。トン数もそうなんですが、ここにおたくの防衛庁がお使いになっているトレーラーがあるじゃないですか、増原さん。これは大型セミトレーラー。これは防衛庁がお使いになっておる。これは自重は一体幾らかといったら、車両九・七トンですよ。米軍が正式に発表したそんな四・何ぼなんというトレーラーは防衛庁だってないのです。うそばかり言っちゃだめですよ。ここにもう一つある。セミトレーラー、これは防衛庁のです。これの自重、車両重量十一トンです。いいですか、防衛庁が使っている軽いやつだって九・七トンある。見てごらんなさい。これはおたくで使っているんだから、一番よくわかるでしょう。横に長いのが二つあるでしょう。これは九・七トンと十一トンですよ。内局の皆さんは内局にだけいて、見たことないというかもしれぬけれども防衛庁に長くおられるならわかるでしょう、そのぐらいのことは。そうでしょう。それ以下のものはないのですよ、あなた。アメリカのほうが大きいんだから。日本の戦車というのは六一式だって三十五トンの中級戦車じゃないですか。そうでしょう。そんないいかげんなことを言っちゃだめですよ。警察も警察で、防衛庁の中心は警察でしょう。警察コントロールじゃないですか、防衛庁は。それが警察が知らぬじゃ困るじゃないですか。ごまかしちゃいけません。  幅も、ここに新聞も、確かにこう書いている新聞もありますけれども、何とこのM113A1、これは幅が二・六八メートル。さっきの車両制限令にこれは明確に違反です。ここに幅があります。幅は二・五メートル。二・六八メートルあるのですよ、このM113というのは。二・六八メートル。車両制限令は二・五メートルまでしか認めていないのですよ。そうでしょう。トン数のみならず幅もこれは明確に違反じゃないですか。こういう現に違反しているもの、それが出てくるんだから、相模原の道路管理者が命令をして、道路監理員が行ってチェックしようとする。あたりまえのことじゃないですか、それは。建設省が流している通達に忠実に従っているじゃないですか。それを、やれ今度は安全運転義務違反、一点にもならぬものを逮捕する。それで今度は送検をする。最初は威力公務妨害と言った。私が聞いたらそれを言わないです。そんなことを言ったらえらいことになるから。現場には一人や二人いたんじゃない。そういういいかげんなことでごまかしちゃいけませんよ。ほんとうならばこのあたりで——まあ休会中の委員会ですから、あまり開き直ってとめてみてもしようがないんだけれども、そうでなければ、これは田中総理を呼んでこいというので、ほんといえばすわってしまうんだけれども。つじつまが全然合わないじゃないですか。何とかしてくださいよ。
  103. 木村武雄

    ○木村国務大臣 大出さんから内閣委員会に出てこいと言われたのはゆうべなんです。その前に視察の日程をつくっておったのですよ。建設行政というものはたくさんあるものですから、やはり一々見てみないとのみ込めない。私は特に頭が悪いものだから、とても書類じゃのみ込めない。一々見てみようと思いまして、きょう日程をつくっておったのですよ。その前に大出さんから言われますれば、そんなことはもう何のそのと一切捨てて、その日程は全部やめさして、そして来たのでありまするけれども、日程をつくってしまったあとで昨晩言われたものですから、担当者が非常に気をきかして時間の制限をしたようでありまするが、それは何も悪意も何もありませんから、どうかこの際は居すわらないでしていただきたいと思います。  それから、何も警察官がそこに出動して、そして調査しようとするものを妨害しようなんという気持ちは、いささかも私はなかったと思うのであります。そんな悪意であそこに行ったのじゃないだろうと思いまするけれども、何せ意見が徹底してなかった。そういう点でいろいろな問題を起こしたのではないだろうかと思います。そういう点でおわびしなければならないものは幾重にもおわびを申し上げます。それから、間違っておった点があったならば、それは幾重にも訂正することにやぶさかではありません。  しかし、その後法律も変わりまして、法律を徹底せしめなければならない当然の責任がある。しかし、それにはやはりかすに時間をかける必要もありまするし、それからやはり、私のようなものでも同じでして、問題が起きない前に勉強するということは、全部を覚えるなんということはなかなか容易なことじゃない。こういう問題が起きますると、はっと思って一生懸命になって勉強して、ものの解明をやって、自今こういうようなことが起きないようにしなければならないと考えておりまするし、そういう点については、私はこういう男なものですから、建設省におったからといって、建設省の意見をまるのみにする男じゃない。警察におったからといって、警察の意見をまるのみにする男じゃない。むしろ私は、反対派の意見というものを非常に尊重するやつなんですよ。そして、大出さんなんかそういうお話をおっしゃいますると、神さまのことばを聞いておるように、ほんとうにそれを受けて立っておりますよ。そして行き着くところはたった一つなんですね。同じ日本人同士で外国のことのためにいろんなことをしたくない。それからいままでの姿勢が確かに間違っておりましたよ。間違っておったものはこの際直さなければならないと真剣に取り組んでおるつもりなんですが、何せ至らないものですから、まだまだそこまで及びませんけれども、どうかその点はお許しください。そして、約束しておった人、みんな待たしておりますると申しわけないような気がいたしますから、どうかひとつ……。
  104. 大出俊

    大出委員 私が言ったのじゃないと大臣が言うから、大臣が言うまで質問したのですが、大臣から、ちょっと約束した時間があって視察に行かなければぐあいが悪いというお話が出ましたから、結論にいたします。  そこで、神さまと、神の声なんて——せめて神さま、仏さま、大出さまくらいにしてくださいよ、三番目くらいに。私は選挙区で、神さま、仏さま、大出さまと言っているのですから、神、仏の次にまじめなんだと言っているのですから。  ところで木村さん、やはりこれはこのままじゃいけませんよ。やはり自治体と——革新自治体が次々にできる。皆さんの姿勢が、アメリカに対して、米軍に対してきちっとしないから、なおのこと革新自治体がふえるのですよ、率直に申し上げて。だからごらんなさい。基地のあるところはみんな革新になってしまうじゃないですか。そうでしょう。これは大きな目で見れば、安保条約というもの、地位協定というものの持っている危険な側面というものがベトナム戦争との関係で出てくる、住民が心配する、国民が心配する、皆さんが強い姿勢でアメリカに当たらない、そこに不満が累積をする、こうなるわけですね。だからここのところは、やはりその市民感情をすなおにとっていかなければならぬ。だから、法律がきまって通達が出て末端までおりていたにもかかわらず、それを全く知らないでかってにやったということになるとすれば、相手を罰するなんてことを考えるべきじゃないですよ。そうでしょう。しかも相手も公務なんですから、そんなことをいえば警察も公務執行妨害じゃないですか。そうでしょう。しかも義務違反ですよ。逆に今度はあなたは、道路法に基づいて違反車両をとめなければならぬ、それを怠っている責任はどうするのだ、そうなれば痛み分けだ。そうでしょう。長官が私を知っているとおり、ぼくもかたいことを言う気はないけれども、事はやはりこの辺で適切な措置を考え出さなければいかぬ。この問題の決着がつかぬうちは、とにかく相模原の補給廠から出さない、違反あるいはそれの疑いがあるものは出さないということにして、道路のほうも、おたくの所管なんだけれども、あぶなっかしいところは山ほどあるんだけれども、そこらは適当に夜陰に乗じて夜盗のごとくなんということはしない。やはり許可を出す。市道ならめったに市長は許可する意思はないですけれども、話がつけばまた話は別だ。そういう意味で、やはり皆さんはそこのところは慎重に、市民感情をはき違えぬようにしていただきたい。これはお願いしておきたい。  その辺でひとつ、大臣のことですから、とにかく田中さんより上なんですから、大臣は。通称木村元帥というのですから。やはり元帥が大将にやり込められては困るのですから。そういう点で、冗談はともかく、高い視野にお立ちいただいて、との問題のポイントは一体何かという点を御探求をいただいて、政府はどうすべきか、アメリカに対してはどうするかという点を蛮勇をふるっておやりいただく、こうしていただきたいのですが、いかがでございますか。
  105. 木村武雄

    ○木村国務大臣 やはり法は、どんなことがあっても、日本人だけでなく、日本におる人にはみんな守ってもらわなければなりません。守らせることが秩序を維持する立場をとっております警察の責任だと思っております。その点は自今絶対間違いのないようにやらせるつもりであります。  それから、道路のほうももっとりっぱにして、どんなものでも通れるような道路にしていきたい、こう考えておりますので、夜盗のごとく夜陰に乗じて云々なんというようなことは考えておりませんよ。  それから、それだけでなく、そういういまおっしゃった政治という点ではほんとうに精力的にやってみたい。そうして誤解のないようにしなきゃならない。いままでは、たくさんいろんなことがありましたし、それから、やらなきゃならないことをみな投げっぱなしにしてまいりましたし、何もかにもいま詰まっておるのです。私が建設省に行ってみても、何でこのようなもの、しかもささたるものじゃないか、いままでなぜ解決をしておかなかったかというようなものが山ほどあるわけです。それを一つ一つ打開していきたい、こういうように努力しておるのです。田中総理より年は上ですけれども、それ以外のものは下なんですよ。一生懸命やりますよ。
  106. 大出俊

    大出委員 大臣、橋もりっぱにするとおっしゃるけれども、現にある羽衣橋なんてどうですか。大江橋の先の橋、横浜の伊勢佐木町を出まして、伊勢佐木町通りの向こう側を走る橋ですが、羽衣橋なんというのは、調べてみると、橋げたを見ると、大正十五年建設ですよ。下へ行ってみると、そこらじゅう腐食だらけですよ。幾らかましな尾張橋なんというのを調べてみましても昭和四年。睦橋でさえ昭和三年。大臣と一緒で、たいへん時代がかっているのです。おまけに、村雨橋は何とか鉄板置けば通れるだろうなんて、建設省はおっしゃる。その先の今度は千鳥橋。ところが千鳥橋のほうは、実は少し千鳥足なんだ。まだ古い。二十七トンしかない、簡易算定表で調べてみて。だから、そういうことなんですけれども、どうかひとつ無理をなさらぬで——いいじゃないですか、ちょっとやそっと、アメリカの言うように、ベトナムに戦車が行かなくたって。それだけベトナム人が死なないのだから。ゆっくり腹をきめて紛争を解決して、それで話し合いをする。そういう方向で御努力願いたいのですが、いかがですか。  これで終わります。
  107. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私も考えがそういう考えですから、もちろんそのつもりでやっていきたいと思います。しかし、道路局長、そんな古い橋はいつまでもほっておくべきものじゃないのだから、大出さんの御注意があったのを幸いにして、橋を直しなさいよ。(笑声)
  108. 大出俊

    大出委員 大臣、四十分ばかりおくらせてすみません。たいへんどうも御迷惑かけました。これはきのうやきょうじゃないものですから、どうしてもああいうことになるのですけれども。ところで、事務的な点を三、四点聞かせてください。  建設省に伺いたいのですが、橋の建設重量、設計重量その他、簡易算定表以外にございます。そこらに基づく計算をなさっているように思うのでございますが、そこらの点をひとつどういう計算になったのか。横須賀へおいでになるというならば、橋は限られておりますから。私には電話で局長は、大体出てきて三日くらいかかるとおっしゃったのだけれども、竹田四郎参議院議員には、どうやら一日あればというお話があったというのですが、そこで、いずれにせよ、調査は終わっているから簡単にイエス、ノーが言えるということならば、調査が終わったのならば、その資料を念のためにお出しいただきたいという点が一つ。     〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕  それから外務省、松田さんもお見えでございますけれども、現状は一体補給廠の戦車その他をめぐってどんなぐあいになっているのですか。やれ大江橋の突貫工事をやれば二十四時間でできるとか、二十日までにはできるとか、びょう打ちしてあるのだから鉄板敷けば走れるとか、いろんなことが新聞に載っているのだけれども、あまり騒がせないでくださいよ。大体今月はだめだとか、来月になったらゆっくり考えるとでもいうのなら、そう言っておいていただければ、暑いところこっちも橋を一生懸命見て歩かぬでもいいので、そこらのところは一体どうなっているのですか。そこらを二つまずお答えください。
  109. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  先生もよく御承知のとおり、本件輸送にかかります出発点は一つでございます。ただし、これを日本国外に搬出する方法については必ずしも一つではございませんし、そこに至る道もまた複数でございます。政府といたしましては、地位協定五条に示されている米側の権利を保全するという条約上の責務を履行するという観点から米側に協力し、所要の道路、橋梁等に関する計算、手当て等を建設省にお願いして作業をお願いしてございますが、その全面的検討はまだ終了するに至っておりません。もちろん、この問題が生じましてから約一週間余りもたっておりますので、それなりの技術的な検討の進展はございますけれども、全体の検討を了しまして、その上で総合的に判断し、かつ米側とも協議してきめなくてはなりません。  この間、米側といたしましては、いつまでに積み出さなければならないという、逆に申しますと、いつまでは待てるという明確な意思表示はございませんで、すでに当初予定されました輸送日時からは相当たっておりますし、一日も早く運び出したい、そういう希望をるる述べております。しかしながら、幾ら一日も早くと言われましても、車両制限令等が定める基準は守らせなければなりませんので、国内法のたてまえにも適合し、地位協定五条の米側の権利も確保されるような、いわば両者の調和された矛盾のない形のものを選び出すのに相当の時間がかかっておる現状でございます。結論的に申し上げますと、ただいま現在、明確な段取り等について申し上げる段階に至っておりません。
  110. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 先ほど御指摘の横須賀までの国道十六号線の橋の強度でございますが、これは先生御承知のように、簡易計算方式によりますると、今回のM48はだめでございます。したがいまして、個々の橋につきまして、それぞれの主げた、横げた、縦げた、床板というようなそれぞれの部材につきまして計算をさせております。それぞれが全部合格しないと使えないわけでございます。全部まだ計算は完了しておりませんが、大部分のものは、特殊な走行条件、つまり往復二車線のまん中を通す、センターラインをはさんでまん中を通すような方法で、しかも非常にゆるいスピードで、つまりインパクトがゼロに近いようなスピードで通したならば大体交通可能ではないかというように判断されております。その計算が完了いたしますのが、実は参議院の竹田委員からも再三催促を受けておりますが、あす、おそくも土曜日、十九日には完了することになっておりますので、その時点で一応提出できると思います。
  111. 大出俊

    大出委員 十九日にそれが完了した、実はアメリカの側は、外務省にものを言っているけれども回答はこない、こう言っているわけですね。外務省に早く通してくれと言っているけれども回答はこない、現地はそういう言い方ですね。だから、まず橋のほうの全部計算ができた——これも私は非常に問題だと思っておるのは、簡易計算表を各自治体等には渡しておられる。それに基づいて計算している。そうすると、みんな無理がある、こういうわけですね。ところがそれを、簡易計算表ではなくて、設計重量その他いろいろ別な角度から考えて何とか通そうということで計算なさる。だから新聞報道によれば、単体で、つまり戦車をおろして走らせる橋が三つぐらいあるなんてことが書いてあった。そういう非常に危険な状態でなおかつ運ぼうとなさるのかという点に非常に大きな疑問が私はあるのですが、大臣ではございませんから、そこまで求めやしませんけれども、つまり簡易計算表でだめだというものを、あなたのほうは何とか通そうというところに中心を置いて、あぶないかもしれないからまん中をなんということになる。どうもそこが私は納得しかねるのですね。これは宿題にしておきましょう。  そこで増原さんに承りたいのですが、外務省とも相談をされて、基地そのものは施設庁の所管ですから、私は相模原の補給廠に実はもう一ぺん行ってみたいです。米軍折衝をして入れていただきたい。皆さんについていっていただいて、現にある車両、これを全部調べる必要がある。そしてこれはどのくらいのトン数、トレーラー、何を使っていけばどうなる。これだけ問題になっておるのに、あらかじめこれがなぜ明らかにできないのか。そうでなければ、出てきたものをチェックする以外に方法はない。政府があって、担当各省があって、事前に輸送される米軍の車両その他について、それがどの程度のものであり、幅員だって明確に制限がある、国内法があるにもかかわらず、あらかじめ何ともおっしゃらない。チェックのしようがない。そうなれば、出てきたものを、建設省の指示どおりに、警察庁に協力を求めてチェックする以外にない。これは至るところそうなりますよ。そこらのところをあらかじめ明らかにする方法ございませんか。いかがですか。
  112. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 防衛庁のたてまえにおいて、いまちょっとおっしゃったことをはっきり即答いたしかねるのですが、基本的な問題は安全保障条約の地位協定に基づく五条のあれでありまするが、そういう問題を基本としてやるわけであります。しかし、こういう問題の起きておるときですから、特別な計らいをしなければなるまい。それはひとつ外務省とも打ち合わせをしまして、おっしゃるように、現に問題になったことであるので、トン数、幅員その他ちゃんとあらかじめ調べて、路上において問題を起こし、阻止をするというようなことにならないように、ひとつそれは検討をさしていただきたい、こう思います。
  113. 大出俊

    大出委員 これはどうしようと思っても、増原さんおいでになるからおわかりだと思うが、この間の相模原のようなことが起こると、これは世論が許さないのですよ。これはああいうことをされるのはまことに困ったことです。だからちょっとおさまらぬ状況にある。どこの市議会もやはりたいへんに論議を呼んでしまっておる。県会も二十何日か知りませんけれども、社会党二十六名いるのですからね。二十四名あれば臨時県会の招集の要求ができる。しようがないから、一日にも臨時県会を開くことをきめた。臨時県会でまたこれが問題になる。その雰囲気が全体に流れる。ますますもってこれは事が複雑になる。だから、なるべく混乱を避ける意味では、手続に従ってそのくらいのことは皆さんのほうで事前にやっておく必要がある。だからそう申し上げているので、いまそういう意味のお話がございましたからいいですが、これは建設大臣もいなくなりましたからもうこれ以上言いませんが、念を押しておきますけれども、これはあまりあわててこういう雰囲気の中でやろうとするとたいへん大きな問題になりますから、慎重に時間をかけて、数々あるいろんな問題を解決をして、正常な話し合いのルートに乗せてということをお考えにならぬと……。これは大体M48なんか運ぶこと自体にやはり無理がある。その本質にも触れて、これはひとつ御検討いただきたい、こう思います。  戦車関係の問題は、そういうことで問題は数々ありますけれども、時間もございませんからあとに譲りまして、三点ばかり四次防に関する問題で承っておきたいと思います。  増原さん、長官におなりになってから言われることが、どうも私はふに落ちない。なぜならば、そんなにまで防衛庁の防衛構想というものはくるくる変わるのか。一つは中曽根さんの時代。その前は水ぎわ防衛だったはずです。これは専守防衛という意味で水ぎわ防衛。水際において、こうなっておった。時間がありませんから、一々文章を読み上げませんが……。ところが中曽根さんの時代に公海防衛に変わった。制空、制海という問題が出てきた。江崎さんになってから、またどうやら戻ってきて、専守防衛を徹底してというようなことになってきた。それで中曽根構想なる四次防がこわれたやに見受けられる発言も出てきた。五兆三千億なんという案が出てきた、当時。ところが増原さんになってとたんに戦略守勢とは何ですか、これは。戦略守勢といえば、鳩山さんの考え方に戻ってしまう。座して死を待つわけにいかないという論法になる。相手の基地をたたくような論法になる。そういうものの考え方はあり得べきではないと私は思っているのだが………。  さらに、極東の緊張緩和という問題をとらえて——米中会談があり、南北朝鮮の話し合いムードがあり、さらに日中国交回復のムードがあるという中で、そこで、この緊張緩和というもの、これをとらえて、増原さん、あなたは、歓迎すべきことであり好ましいことであるが、しかし防衛力、つまり軍事力ですね。これは周辺の軍事力と対応するものである、対応して考えなければならぬ問題だ、だから四次防を進めるのだ、こういうことになるのですが、この論法でいけば、松野さんの時代の、向こう岸が高くなればこっちの岸を高くしなければならぬという論法と一緒です。そうなれば、これは歯どめがないことになる。おまけに五次防まで含めて考えておられて、やれ航空機にすれば一千機あるいは一千二百機、さて海上艦船トン数その他からいって三十万トン、あるいは陸上は十八万体制、質的強化あるいは省力化その他を考えてやっていく、こういうことなんですが、そうは言ってみても、さっき申し上げたような考え方ならば歯どめがない、こういう結果になる。そこらがこれはさっぱりわからぬことをおっしゃるので、一体、増原さんの防衛構想というのは一体どうなるのですか、そこのところは。  そこで特に、伊藤さんもおいでになるので、時間を省いて申し上げますが、脅威があるとおっしゃるならば、その脅威の主体は一体何だということ。ある新聞は、昨今あるいは近い将来を見通して脅威ゼロの時代、こういう表現をしているところもある。私どもが前から言ってきたように、極東の緊張緩和の方向に向いてきている。そうならばむしろ漸減方向をとっていい。ところが四次防の今回の構想というのは、たとえば、陸上十三個師団のうち、北海道千歳の七師団を除いては機械化師団ではない、九千名師団であっても。五個師団にふやすことになっておったその四つを先へ送るとかありますが、しかし五次防までを見通せば、今回落ちたものは五次防で何とかすればいいわけですから、そういう意味でたいした変化はない。中曽根構想はみごとに生きていることになる。八千トンの空母をやめるといってみても、ヘリ三機載っける空母をつくれば一緒なんでして、八千トン先に送ればいいことになる。つまりそういう意味で主体は変わっていないのですが、そこらは一体どう考えているのか、まず基本的な考えを承っておきたい。
  114. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いろいろ大事な数点についてお尋ねがあったように思います。いわゆる防衛の考え方といいまするか、従来の三次防における防衛の考え方、中曽根案における考え方その他と何かたいへん変わった考え方を私が持っているのじゃないかという御指摘でしたが、変わった考えは持っておりません。戦略守勢ということばを私が使いまして、これがときの説明のしかたその他に、私は不十分な点があったと反省をしておりまするが、専守防衛ということばと、意味は同じ意味で使ったわけなんであります。あのとき使いましたのは、専守防御ということばを使っておったが、専守防御というのは少し防衛行動が制限され過ぎる響きがあるので、これは戦略守勢という言い方のほうがよろしいと言うたのですが、その場合にも、これは意味は専守防衛と同じことでございますということは言うてあるわけなんです。考え方として戦略守勢ということばで、いま鳩山構想と言われたのは、座して死を待つような場合には、そして他に手段がない緊急の場合には敵の基地をたたくこともあり得る、法律上、憲法上は、ということばを言われたと思いますが、そういう意味は毛頭ありません。戦略的に敵の基地をたたこうなんという意思は全然持っておりません。戦略守勢ということばは、当然の解釈でそういうことでございまして、そういう点では、いままでの三次防の考え方なり中曽根原案における考え方から、私のほうが何かえらく進んで戦略的に防衛行動をとるという意味は決して持っておりませんので、その点、私のことばの使い方が若干不用意であったかもわからぬということはつつしんで訂正をさせていただきます。     〔加藤(陽)委員長代理退席、委員長着席〕 その考え方は変わっておりません。専守防衛という考え方でございます。あくまで自衛、防衛に徹するという考え方でいくわけでございます。  そして、緊張緩和という情勢の中にあってなおかつ四次防をやるというのはどういうことかというお尋ねでございますが、そうして脅威という問題も言及をされましたが、私ども申し上げておると思うのでありまするけれども、現在脅威がわが国の周辺、わが国に対してあるという考え方は、私どもとっておりません。しかし、緊張緩和という好ましい状態がいまアジア、日本の周辺にあるということも了承しておるわけですが、この防衛の問題は、急に五年、六年で整備がされる状態ではないわけでありまして、いまの日本の防衛庁、自衛隊の防衛体制というものは、昭和二十九年から始まりましていま整備の段階にあるということであるわけですが、これが、緊張緩和というものが完全に定着をしたという形であることは——十分に考慮に入れなければならぬと思いますけれども、まだ定着をしたというまでは言い切れない。周囲は緊張緩和の好ましい傾向にあるというべきであるということで、現在の日本の防衛力整備の段階からいいまして、四次防をもう全然やらなくてもいいというふうには考えられない。しかし、いわゆる防衛庁原案で考えましたものは、緊張緩和のこともあり、あるいは経済、財政の状態の変化等を考えまして十分考慮に入れてまいりたいと先般来申し上げておるのでありまするが、最近まとめました防衛庁案では、金額にして四兆八千億程度のもの、これは三千億ばかりの増の要素を考えましてそういうふうになったものでありまして、いわゆる中曽根案といわれる防衛庁原案に比べますれば相当の減額をいたした。これは緊張緩和という好ましい状況を考慮に入れ、経済、財政の状態を考慮に入れたということでございます。  それで、四次防で減らしても五次防へ繰り込めば同じではないかということ、これは、いわゆる防衛庁原案という場合の考え方は、一応十年後の状況及び兵力量を考えて、十年でこの程度のものを整備したい、そういう構想の中で四次防を五年でこれだけの兵力を整備をしようということであったわけであります。そういう考え方は御破算にいたしまして、三次防の考え方と基本構想、防衛構想においては同じに、自衛力の漸増、増強、国力、国情に応じて防衛力を漸増していくという形になってきた。もとより四次防でこれがとどまるとは私ども考えておりません。五次防というものをおそらくやるようになりましょう。したがいまして、今度削減されたというふうな兵力量が五次防のところで出てくるということは、当然あり得るわけでございまするけれども、これはいわゆる原案に考えました十年間を想定して、十年間に相当の積極的な防衛力を整備するという考え方は完全に御破算にしてあるというものでございます。  しこうして歯どめの問題がございます。これはどの程度の自衛力、防衛力というものが日本のアジアにおけるいまの位置において歯どめとしての限度であるか、これはたいへんむずかしいと思うのでありまして、なかなか考えにくいということを申しましたが、先般来申し上げておりますことは、いまの緊張緩和の状況が続くということを大前提としての想定として、及び日米安保条約というものがやはり一つ背後にあるといいまするか、ということも前提としまして、このアジアの中における日本の最小限必要な自衛力というものは研究ができるのではあるまいかということで、その点を係の者に命じて作業をひとつ始めてみようということを申しておるわけでありまして、決して四次防を一応削減したが五次防で取り戻せば同じことで際限がない——周囲の状況というものがあるということを申し上げたのは、脅威というものはないが、しかし日本の安全のための防衛力を考える場合には、やはり周囲の軍事力といいまするか、そういう力をやはり日本の安全を考え防衛力を策定する場合は考慮に入れるべきものであるという意味で申し上げたので、脅威という考え方はとっておらないわけであります。そうして、そういうものが非常に大きい場合と小さい場合とでは、わがほうの考える防衛力に影響があるということは考えなければならぬことでありますけれども、そういうことをなお考えましても、緊張緩和がいまのような状態で続くという前提で、安保条約を背景に持つという前提でいくならば、ある程度のものは考えられるのではあるまいか、これはひとつ策定をしていきたいということを申し上げておるわけであります。決してとめどなく四次防から五次防あるいは六次防へと膨張していくという考え方を持っておるわけではないということはひとつ御理解を願いたい、かように思うわけであります。
  115. 大出俊

    大出委員 そこに一つの矛盾があるのですね。時間がありませんから、きょうは深く突っ込み過ぎることはやめますけれども。大前提になっておりますのは、日本の防衛を考える場合に、旧来言ってまいりましたのは脅威ですね。防衛白書が中曽根さんのときに初めて出されましたが、この中でも中国をとらえて、中国というのは、核開発を含めまして極東の緊張の問題について大きな要素になっておるという趣旨の言い方がある。時間がありませんから読み上げません。  ところでいま、脅威ゼロ、脅威はありませんというお話をされた。これは確かに、米中会談、日中交渉あるいは南北朝鮮の話し合いムード、これはもっと大きく言えば、東西ドイツの関係、東方条約批准の問題がございます。そうなると、脅威ゼロの時代が続くという新聞論調というのは間違いではない。それの定着の度合いということになってまいりまして、先ほど来いろいろお話がありますが、定着させねばならない日本の立場があると私は思っておる。そういう立場からすると、脅威ゼロの時代をつくりたい、真に脅威ゼロの時代をつくろう、そういう意味で定着をさせなければならない政治責任がまず日本にはある、こう思いますね。そうすると、それとうらはらな関係の、逆にいく日本の防衛、こうなってくると、これは逆な作用しか出てこない。だから、脅威ゼロの時代が近づきつつある、当面脅威がない、これにやはり合わせた防衛力というものを考えていくのでなければ、私のように安保条約に反対をする立場、非武装中立の立場でない一般の国民だって理解しがたいところが出てくる。それは、各新聞の論調にあるとおりであります。  とかく防衛庁は言い方を非常に考えて、ここら辺も作為が一々見えるのですが、中曽根構想のときは、アメリカに行った中曽根さんがわざわざベースアップまで含めて五兆八千億なんて言ったんでしょう。そうでしょう。これはなぜかといえば、それだけ日本は防衛に力を入れているんですということです。そういう印象を与えようというわけですよ。今度は国会でがたがた先取り問題から始まってこんなになった。今度は一生懸命狭めようというんで、江崎さんのときに五兆三千億という話はちゃんとあったのです。五兆八千億から五千億引いて五兆三千億。西村さんのときにぼくは長い質問をしている。お認めになった面が幾つもあった。つまり、国際的な緊張、これについては流動的である、だが国内的な経済情勢というものは、円切り上げ不況以来こうなっている、そこに力点を置きまして五兆三千億、こう言っている。この五兆三千億はベースアップを含んでいます。これはあなたのおっしゃる四兆八千億。私も給与を担当している人間ですが、四兆八千億に将来のベースアップを想定すれば、ラフな想定であっても五兆三千億前後にいく。今度はわざわざベースアップ分を抜いちゃって四兆八千億、こう言う。何とか低く見せようという。しかし、中身は五兆三千億の時代とさっぱり変わっていない。正面兵力、正面増強兵器をながめてみたってそうです。だから、そういう言いのがれではなしに、やはりほんとうにいまの情勢に対応する防衛力というものを考える、こういう方向に動いていっていいはずだと私は実は思っている。二月十五日のアメリカのレアード報告の中で、四次防というものを日本はきめて出発したなんてことを書いてあったりしますが、それはさておいて、やはりそういう考え方を持たなければならぬと私は実は思っている。だから、ここのところがどうもはっきりしない、長官のおっしゃっていることと合わない、矛盾をしている、発言の中に。ほんとうに脅威ゼロの方向で定着させたいならば、そのようなやはり構想をお立てにならなければならない。四兆八千億が出てくるはずはない、こう私は実は思うわけでありまして、くどいようですがここがもう一ぺん承っておきたいところであります。  そして、四次防の期末で、陸、海、空に分けて、しからば大筋で一体どういうことになりますか。つまり四次防末の防衛規模、おもな装備として、戦車二百八十両とか、装甲車百七十両とか、作戦用ヘリ、バートル107二十六機だとか、地対空ミサイル、ホーク三個群だとか、こういうふうなものがずっと出てきますね。そして四次防の期末勢力、これは一体どういうことになるかという点。戦車にしても八百二十両くらいになるのだろうと思いますし、航空機なんかも、これはF86などのとり方によって違うのですけれども、三次防のときには三百機とかなんとか言っていたのですけれども、これは一体どういうことになるのかという点。護衛艦その他含めての外航護衛群ですか、この一群の近代化だとかいろいろありますけれども、ここら潜水艦その他含めて一体どうなるのかという点。  そしてもう一つ、十年というものの見方はやめたんだとおっしゃるんだけれども、かといって五次防をやらないというんじゃないとおっしゃる。そうなると、五次防というものまで見通すと、一体どうなるのか。くずしたと言いながら、五次防はおやりになると言うんだから。それではどの程度変わったのか。中曽根構想にいう五次防末の、航空機にしても、やれ一千機ないし千二百機なんて言いましたが、そこらのところはどう変わったのか、五次防をなくすのならば、十年間を想定しているんじゃないと言うのならば。そこらのところがはっきりしなければ、中曽根構想と変わったと言ったって、変わっていないことになる。五次防は想定していないとおっしゃるならば、いまの三次防ペースでいくとおっしゃるんだから、それでいくというと、五次防期末に一体どのくらいになるのですか。そこまで言っていただかなければ、これはわからない。変わったことにならない。五次防の期末にいったら中曽根構想と同じことになっちゃったというんでは意味がない。そこらは一体どうなんですか。そこらのところをお答えをいただきたい。  それからもう一つ、さてその上で、一体四次防というものはこれからどういうふうにお進めになるのかということ。八月末ということを田中総理その他に進言をされて確定をしてもらった、というような新聞記事がございましたが、そのとおりに進んでいくのかどうかという点。そして、もしそうなった場合に、国防会議は当然開かれまして四次防をきめるという段取りになる。なった場合に、先般の国会で問題になりまして、二十七億でございましたか、予算の凍結がございました。九百億ちょっとでございましょうが、これは国庫債務負担行為に関しても凍結しているはずであります。ここらのものは、議長あっせんが介在いたしますが、防衛庁側は、国防会議で四次防がきまったら自動的に解除されるものであると受け取っておられるのかどうか。もし受け取っておられるのだとすると、われわれの認識とたいへん違う。議長あっせんなるものは、衆議院、参議院、両方の議長にかかわる。この中にはシビリアンコントロールの問題もある。だからというので、内閣委員会論議してくれなんという話も途中ではございました。論議らしい論議になっておりません。  私どもは、そこらのことが国会をもって了承される必要がある、こう考えておる。単に、四次防、国防会議、これだけを議長あっせんは言っているのではない。だから、もしそうだとすれば、次の国会でまたもう一ぺん先取り事件と一緒に、何で国会に何の了承も得ないでかってに解除したんだ、もとへ戻せ、でなければ審議ができないということになりかねない。間違いなくこれは問題が起こりますよ。この前のときも、四次防の国会扱いその他についてNHKのテレビ討論がございましたから、当時、松野さんと江崎さんでございましたが、私と石橋書記長が出ましたが、あのときに、こういうことをなさると、先取り事件だということで国会が運営できなくなりますよと念を押した。そんなことはございません。——いや実は沖繩国会のときの水田さんの答弁とも違いますよと念を押した。ところがおやりになった。なった結果はああいうことになってしまった。予言しておきますが、いまへたな扱い方をなさると、おそらく、選挙後になるかどうか知りませんけれども、やはりこれは大きな問題になりますよ。だから、そこらを含めてどういうふうにそれを受け取っておられるのかという点をあわせて明らかにしていただきたい。
  116. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 脅威がないと思ういまの時代に、どうして四次防をやるかという御質疑が第一であるように思います。いわゆる脅威がないと想定をしておるのは、最近といいますか、四次防をつくるという段階で考えたわけでありませんで、相当前々の期間から脅威という考え方は防衛計画策定には持っておらぬわけでありまして、これは周辺に、さっきも申し上げましたように、武力があるということを、防衛力整備の場合には考えなければならぬという申し上げ方をしたわけでありますが、これが前々からの考えであります。いわゆる脅威がないと申しましても、世界の全体の状況を考えまして、それぞれの国がいわゆる脅威があるというたてまえでそれぞれの防衛力をつくっておるというふうには私どもも見ていないわけでありまして、やはり周辺の武力というものを考え、国際紛争というものがどういう形でいつ起こるかもわからないというふうなことが防衛力整備の基本になっておる。われわれの防衛力整備の考え方もそういうことでありまして、いまの世界情勢の中で、いわゆる脅威がないと考えるということで防衛力がなくていいというふうには、政府として、私どもとしては考えられないという意味でやるわけでありまして、防衛力整備をやっていこうということでございます。  四次防末の勢力は防衛局長のほうから説明をいたさせますが、四次防というものができてあと五次防をやらないとは言えないと言われましたが、おそらく五次防を考えるようになると私は思います。そうすると、いわゆる中曽根原案といいますか、防衛庁原案と同じことではないかという御疑問がありましたが、これはそうではございません。四次防の段階において原案よりは削除した。これは五兆二千億と言いましたものを四兆八千億に削りましたというので、ベースアップは入っておらないということを明確に申しておるわけでございます。ベースアップを除いたのは、経済企画庁のほうで経済見積もりがまだなかなかできない。年々の経済見積もりとしての、成長限度一〇%になるか、その他のことがまだできないということにかんがみまして、あれをやったのでありまして、われわれは五兆二千億を削ったとは申しておりません。五兆二千億に対応するものが四兆八千億になったという言い方をしているわけであります。したがいまして、少し大ざっばになるかもしれませんけれども、四次防を原案のときよりはそういう形で減少をいたした、金額にすれば増の要因を考えつつも五兆二千億から四兆八千億に削減をした。その中の主要項目は防衛局長から説明をいたしますが、これが五次防をやるといたしましても、いわゆる防衛庁原案、中曽根原案のときの五次防原案といいまするか、十年後の見通しのようなものになることはないわけでございます。四次防で削減した分を五次防で中曽根原案のとき以上に増強するというふうなことは考えられないわけでございまして、五次防になれば、原案とこの際の防衛庁案と同じになるというようなことはないわけであります。やはり国力、国情に応じて漸進的に防衛力を整備するということでいくわけでございます。  そうして四次防の策定は、御承知のように、六月三十日の国防会議議員懇談会で、夏以降なるべくすみやかにこれを国防会議にかけて決定をしようということがきめられておるわけでございます。夏以降なるべくすみやかにというのは、当時としては八月末を目途とするということであったということでありますので、その決定のスケジュールに従って進めてまいりたいということを総理及び国防会議議員の閣僚にお話しをして、そういう形で段取りを進めることに賛成であるという了承を得ておるということでございまして、特別に急いでやろうということではございません。  その際に、凍結を解除する方法についてどういうことであるか。これは私よりも大出さんのほうがよく経緯を御承知であります。なかなかいろいろ微妙な点があるようでございますので、この点はいま官房長官のところで検討をしていただきまして、どういうことでどういうふうにやるかということを検討してもらっております。私どもももちろん意見を申し述べながら検討してもらっておるという段階であります。その検討をまちまして、決して皆さまに申すべきことを申さないで、いきなりやっちまうなんというようなことはいたさないつもりでございます。そういう検討の結果に従いましてこの凍結解除の手順を運んでいただくようにしょう、こういうふうに考えているわけであります。
  117. 大出俊

    大出委員 いまの、その凍結解除ですがね。きょう二階堂さんにお見えいただこうと思っていたのですが、官房長官はきょう何かお国入りだそうでございます。またこれをはずすとお国入りできぬというので、こればかりは、やはりお互い議員稼業をやっておりますから、御無理申し上げられぬと思って、私も了解をいたしました。しかし、その間の、こういう質問であることを知っておられるのですから、もうちょっとこれは話し合っておいていただかぬと……。つまり皆さんのほうは、国防会議で四次防をきめたら、それはもう自動的に解除されるものとお受け取りなんでしょう。そうなんでしょう。それならそれで私どものほうも、それに対応する考え方を明確に持ちます。そこをはっきりしていただきたい。私どものほうも会議をいろいろ予定しておりまして、資料もだいぶ集めてありまして、国会が始まったらどうするかくらいのことは考えておるのですよ。  だから、八月末なら末に四次防策定の国防会議が開かれてきまった、といったら二十七億なり九百億なりというものが消えてなくなっていいのだ、解除されたんだという認識にお立ちになるなら、はっきりそうおっしゃっていただきたい。それならそれでけっこうです、それなりの策を私のほうは考えますから。そうではない、次の国会がいつ開かれるかわからぬけれども臨時国会等があった場合に、かくかくしかじかのことをこうやったのだという——竹下官房長官の手元で、シビリアンコントロール等についていろいろと私に直接にお話しもいただいた。内閣で何とかやつでくれぬか、議長あっせんもこれあり、そうでないと、国会でそこらのところをやってくれぬと決着がつかぬのだ。その中に案もあった。当然私は、議長あっせんに基づいてそういう手続がとられて、国会も曲がりなりにもまあいいだろうということになる。国民も注目しておったわけですから、それから解除ということになるの、だろうと思っておった。そういう認識を私も楢崎君なんかも持っていた。ところがそうでないのだということになると、予算委員会でいろいろあったのだが、内閣で引き継いでくれぬかという面もあのときは幾つもあって、横田の問題だってそうです。シビリアンコントロールなんかについて、そういうニュアンスのことが予算委員会ではやりとりされている。私も詳しく知っている。だから、そうでないならないとはっきりしていただきたい。四次防が策定される国防会議が開かれてきまったということになると自動的に凍結解除、こういう御認識ですか。いかがです。
  118. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 決してそういうことではありません。議長あっせんのあれから言いましても、国防会議できめたことを議長が確認をするということも明確にあるわけです。この問題についての国会における質疑応答等もいろいろございます。そういうことを踏まえまして、いま官房長官のところで検討をするので、これが国防会議できまったら自動的に解除になる、ことに二十七億が解除になるなんということは全然考えておりません。国庫債務負担行為の九百億が解除になるというだけの問題でありますが、それも自動的に解除になるというふうには、もとよりわれわれは考えておりません。どういうふうな手続をどうすればいいかということは、経過が相当入り込んでおりますから、官房長官のところでいま検討をしてもらっておる、こういうことでございます。
  119. 大出俊

    大出委員 そうでないと、私どもこれは議長不信任まで考えなければならぬことになりますので、参議院のほうもこれあり、それなりの腹はきめなければなりませんので承ったわけです。  そこで、もう一点だけでやめますが、五次防というものをながめて、中曽根原案のようなことにはならないはずだというのですけれども、四次防の期末勢力、これは四次防で防衛庁原案があるのですが、異例な出し方をされておられますね。これはわかります。ただ、こまかい中身について、何か知らぬが皆さんなかなかお出しにならぬ。これは、ならぬならならぬで、きょうは時間がありませんので切るよりしようがないのですが、やはり五次防までながめてみてものを考えるのでないと、皆さんはそう言ってきたのだから。久保さんは中曽根さんのときからやっている。長官もおかわりになったのだから、橘さんそこにいるけれども、あなただっていたのだから、それで進めてさておいて、えてかってな話で、これは今度は全く違うのですと言う。しかし、五次防の先行きがどうなるのかはっきりさせないで、それで限度も歯どめもありゃしない。五次防の期末と違うのなら、中曽根さんははっきりものを言っているのですから、では一体いまのペースで考えてどのくらい違いそうなんですか。三次防ペースで四次防をやるということなら、やはり三次防ペースで五次防をやるということになる。あなたの言っているようになればそうでしょう。そうなれば、それは五次防とたいへんに違わなければいかぬのです、ほんとう言えば。しかし、四次防の規模からいって違いそうもない。だから聞いているのです。違うなら違うで、どこがどれだけ違うか言っていただかなければならぬ。それが言えないとおっしゃるなら、たいした違いはない。どうなんですか、そこのところは。違ったというなら、おっしゃってください。
  120. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 四次防のあれは久保局長説明させるつもりでいたのですが、中曽根案といいますか、この原案のときは、四次防というものが一つ、具体的な計画の上に、十年先の情勢に応じた見積もりというものがちゃんとあるわけです。だから、これはまあ五次防と言うてもいいようなものがあったわけです。これはしかし、せんだっての国会におけるいろいろな四次防についての論議の結果、政府としてはそういう考え方をとらないことにして、そうして四次防の基本方針を国防会議できめた。これは三次防の基本方針と同じような考え方でいくので、五年間のものを定める。それはいま、具体的に説明を、中曽根原案のものと比較して申し上げます。そのあとで、しかし五次防というものをやはりつくるようになりましょうと私は申し上げた。これはしかし、このたびの場合にはまだ五次防というものの構想はございません。ございませんが、四次防というものが、原案に比べて、金額にして五兆二千億が四兆八千億になる。そのうち三千億はプラス要因も入っておるんだということにかんがみ、その兵力の削減を比べて申し上げます。そのあと五次防を今度考える場合にも、その四次防で前の原案から下がった分を次に取り戻そうなどという考え方は毛頭持っておりませんから、したがいまして、五次防をやるようになりました場合でも、中曽根原案の十年目というふうなものになるということは考えられないということをさっき申し上げたので、四次防の数字を説明いたさせます。
  121. 久保卓也

    ○久保説明員 それでは、四次防におきまする四次防末の姿で、原案と今回の案でどう違うかという問題が一点と、それから五次防を原案では考えておったんではないか、そうすると今回の案に立った場合の五次防の姿はどうなるであろうという問題について、二つお答えをいたします。  原案と比べました場合、これは陸でありますが、方面隊、師団、それからホークの部隊、これは変わっておりません。ただ、戦車などの甲類、これは相当変わっております。原案では、四次防末で、これは完成時でありまするけれども、九百五十両ぐらいの予定のものが八百二十両ぐらいに減っている。それから代表的な例だけ申しますが、作戦用のヘリコプターが、原案では約四百機でありましたものが三百四十機になっている。それから海上自衛隊で申し上げますと、護衛艦が原案では、末の姿でありますから、六十隻で十三万八千トンの予定でありましたが、今回では五十六隻で十二万五千トン。それから潜水艦は、原案で十九隻が十五隻に減っております。航空機は全体で三百五十機のものが、約三百十機になっています。それから空では、部隊で申し上げますと、要撃戦闘機部隊は変わっておりません。それから支援戦闘機部隊が四隊を予定しておりましたのが三隊であります。それから偵察と輸送の部隊は一隊と二隊で、それぞれ変わっておりません。それからナイキの部隊は、七を予定しておりましたのが六隊になります。航空機は、原案では九百十五機を予定しておりましたが、現在の案では八百四十機になっております。八百四十機というのは、三次防末の姿である八百八十機に比べても、相当減っております。  それでは五次防末の姿でどうなるか。中曽根原案では五次防末と明確には申しておりませんで、大体十年後ということで、したがって、われわれの頭の中では、八〇年代初期というやや大ざっぱな見当でありましたが、その際の数字の見当はあります。ただし、国会で中曽根長官が申し上げたのは十八万人であり、一千機であり、海上部隊については四次防と同程度の努力をもう一度やる程度ということでありましたが、それを数字に直せば三十二万トンぐらいにそろばん上はなるはずであります。  ところで、今回は三次防の延長であるというふうに四次防の大綱で定められたということでありますので、若干の増減はありまするけれども、ほぼ三次防のペースに従って、主として更新分による近代化を中心にしながら若干の内容充実をはかっていくという姿勢しか実は四次防の大綱では示されておらないわけです。したがって、私どもがどう考えようと、政府の方針の範囲内で申し上げるならば、それはいまの四次防がどういう姿になっているかということを申し上げるほかはない。  そこで、あとは仮定の話になりまして、もしも四次防と同じようなことを五次防でやったらどうなるか。それは政府の方針ではないけれども、そろばんをやってみなさい、もしこうおっしゃるならば、おそらく陸の部隊は変わりません。ただしホークの部隊は、おそらくそうふえる見込みはないと思います。それから機動力が、これは不足いたします。という意味は、つまり、人員が少なければ、それを効率的に使うという意味では、ヘリコプターなどを中心にして増強をはかっていきたいと思うでしょう。したがって、それを三次防ペースでやるかどうかは別としまして、そこにある程度の数字がまいるということは同様だろうと思います。  それから海につきましては、今回は約七万トン強建造するわけでありますが、そろばんを置けば同じトン数ぐらいということになります。そうしますと、現在がそろばんでいって約二十一万九千トンでありますが、これは除籍の船がありますから、ほぼ五万トンぐらいふえると見込めば、二十二万トンと五万トン、二十六、七万トンというようなのが一応の姿になる。これは同じ努力を続けたという場合であります。  それから空の場合は、これは原案では、実はいろいろな部隊の増強を考えておりました。航空機全体としては千機前後の数字でありますが、若干の増強を考えておったわけでありますけれども、おそらく五次防の段階では、総体のワクをそう変えないで内容の充実をはかっていく。特にナイキの部隊は、二次防以来、毎年二つ三つふやしておりましたけれども、これをそうふやすということはあるまいというようなのが、おおよその将来の姿というふうにお考えいただけばけっこうかと思います。
  122. 大出俊

    大出委員 結論にしますが、増原さん、何か限界に類することについて指示をされたということですね。防衛力の限界。いま久保さんがお話しになっている三次防ペースを踏襲するのだということになるとすると、特殊な事例が出てきましょう。いま機動力の話が出てまいりましたが、そうすると、片一方、冷戦緩和という形が進展をしていく四次防年次でありますから、私は、定着化の方向に向かうだろう、なお一そう定着化するだろうと見る。国内経済体制をながめてみましても、国際的な情勢の中で、どうもたいへんむずかしいところにいま来ている感じがする。そうすると、国防の基本方針、国力、国情等を考えてみても、もうこの辺で防衛力のほうも、私の立場を離れて申し上げて、定着をさせる必要があろう、国民が安心する意味で。つまりそれは限度です。そこの三次防ペースをくずさないということになるとすれば、おおむねの想定がつく。  そういう意味の限度を、それはこういうわけで変わるということはあとから説明がつくとしても、この際、もうここまで来ると、国際情勢をながめて、冷戦思想にお立ちにならないなら、脅威ということばは使わないとおっしゃるが、ことばは使わないだけで脅威を考えておられるからこそ、周辺の軍備の増強状況をながめたときに、紛争がいつ起こるか起こらぬかわからないということがあるということを、あなたはおっしゃっておる。それが脅威なんです、ことばは使わないだけで。敵国、仮想敵国と言ったら、三輪さんが次官のときに、ここにわざわざ出てきて、仮想敵国ということばは対外的に影響がありますから申し上げられません、あるけれども言わないということをはっきり言った。増田さんになったら今度は何だといったら、いや対象国だ。演習を見てごらんなさいよ。緑国だとか赤国だとかなんとか、みな書いてある。そうでしょう。だから、そういう言い抜けでなしに、ことばのあやじゃなしに、やっぱりここまで来ると、国民が一番安心する方法、歯どめがないではないか。限度がないではないか。向こう岸論では困るじゃないか。周辺の防衛力をながめてみて、それに対応してとおっしゃったのじゃ、向こう岸論になっちまうじゃないか。こういう議論になるのですから、そういう意味で、やはり三次防ペースをくずさないならくずさない。四次防から先、五次防を考える場合があっても、老朽したものをかえていくのだとかなんとかいう、そういう限度で押えるのだというなら、やはりそういう限度を明確にしなければならぬ時期に来ていると私は思う。そうでないと、シビリアンコントロールの議論を始めても始まらない。だから、その辺のところをやはりこれははっきりさせる必要がある、こう思うのですがね。最後に質問いたしますが、いかがでございますか。
  123. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 おっしゃる趣旨、先ほど承って、私よくわかったつもりでお答えをしたのですが、そういう意味の限度をひとつ策定をしてみたいというので、係の者にそういうことを申しつけてあるわけであります。最小限度防衛力というものを、やはりある程度具体的にめどをつけて申し上げるということが適当であろう、なかなかむずかしいとは思いますが、ひとつそれをやってみよう、こういう考えでおります。
  124. 大出俊

    大出委員 まあ沖繩の問題もございますが、時間の関係であとに回させていただきます。  以上で終わります。
  125. 前田正男

    前田委員長 それでは、次は、加藤陽三君。
  126. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 防衛問題についていろいろお伺いしたいこともありますが、時間の関係もありますので、きょうは四次防問題を中心にお伺いしてみたいと思います。  八月の一日に防衛事務局案というものを発表せられまして以来、いろいろと世論に反応が出てきておるわけでございます。私は、これらの反応を私なりに整理しながら、政府の見解をお聞きしたいと思う次第でございます。  それに入ります前に、最近のわが国の防衛上と申しますか、特異な事象があったかどうか。たとえば、前から言われておりましたとおり、領空侵犯の事件とか、あるいは領海の不法通行とか、そういうふうな事柄があったかどうかということについて、まずお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  127. 久保卓也

    ○久保説明員 特に変わった事態としましては、北ベトナムの機雷封鎖以後、ソ連の艦艇が、日本の海峡、特に対馬海峡を通峡するというケースがふえておりまして、全般的には従来と変わっておりませんが、若干の数字を申し上げてみますと、一つは、日本海周辺で、外国の艦艇、主としてはソ連でありますが、ソ連艦艇がどういうふうに動いているかといいますと、これは日米の共同演習をやっておりますけれども、その場合に、追尾監視をやります。これは外国では、お互いにソ連とアメリカはやり合いっこをやっておるようでありますが、昭和四十六年に一回ありました。ソ連の艦艇が六隻、この際追じょうをいたしております。それからやはりソ連の艦艇で、太平洋と日本近海の海洋調査に際してわが国に寄港したものというのが昨年で二十二隻あります。それから、対馬海峡及び宗谷海峡での遊よく——まあ、どういう任務でありますか、常時その辺を遊よくをしておるというのが、対馬海峡の場合に、戦闘艦艇と補給艦が各一隻。それから、対馬海峡の場合は非常に再々でありますが、宗谷海峡の場合にはときどきということで、これは小型艦艇であります。それから、太平洋、インド洋等の外洋に往来する場合の航行、これが相当数ございます。  それから、領空侵犯の関係でありまするけれども、ずうっと古くは別といたしまして、比較的最近としましては、昭和四十一年でありますか、それが一回あった以後は、いわゆる領空侵犯というものはございません。  そこで、わが国周辺における国籍不明機、どこの航空機かわかりませんが、国籍不明機が接近をして、そしてわが方でキャッチをしたもの、これがことしの六月三十日現在で百四十五件、二百六十五機。これは例年大体四百機前後でありますが、昨年一年間では三百件の約五百機でありましたので、大体本年は昨年並みということであります。それから、いわゆる東京急行ということで、北のほうから東京周辺まで太平洋岸を南下してくるケース。東京急行と申しておりますが、六月三十日現在で、七件の十四機。これは昨年一年間で四件の八機でありましたから、半年分としては比較的多くなっておるということであります。そのほか、北海道の東あるいは三陸沖などへの飛行がございます。それから、日本海側では、まあ、日本寄りに南下をしてまた北上するといったようなケースがございます。それから、対馬海峡を通過した後また反転するといったようなケース。ただし、本年も昨年も、日本を一周するようなケース、これは出ておりません。  大体以上であります。
  128. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次にお伺いしたいのは、まあ、四十六年度の予算に関連した防衛二法案がことしもついに成立をしなかったわけです。非常に残念なことに私は思うわけでございますが、このことは考慮に入れて新しい四次防計画というものができておりますのかどうか。それをお伺いいたします。
  129. 久保卓也

    ○久保説明員 四次防の場合には、二法案につきましても、四十七年度中には通過するであろうという期待のもとに一応設定いたしております。したがいまして、本年末ぐらいになって、そのいずれも不可能であるというような見通しができました場合にどういう影響が出ますか、これは考えてみなければなりませんが、ただ、四次防の中では、初めのほうの増員が比較的多くて、あとのほうの増員が少なくなっておりますので、期間中を平均してみれば——当面ここ数年は非常につらいわけでありますけれども、四次防の末に至ってみれば回復するのではなかろうかという考えも持っておりまするけれども、その点はもう少し精査をしてみたいと思います。
  130. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまおっしゃったことは人員の関係等もあると思うんですがね。予算は、防衛庁関係は、四十六年度まで大体全部成立しているわけですが、装備のほうについては、三次防は予定した装備が一〇〇%できた、技術研究開発も一〇〇%できた、こういうふうに解釈をしてよろしいのですか。
  131. 久保卓也

    ○久保説明員 総体の予算の上では九七・五%が達成率であるというふうに申しておりますが、これを装備の面で見ますると、千五百トンの護衛艦DEが一隻計上されておりません。すなわち、護衛艦は三次防計画では十四隻でありましたけれども、実際の実績では十三隻になっております。それから、パトロールボート、小型哨戒艇が十隻ばかり落ちておりますが、これは非常に小さなもので、まあ、予算上のテクニックといいますか、そういった関係で落ちております。反面、これは小笠原の関係であったと思いますけれども、輸送艦ASTの一隻千四百五十トンが、計画になかったものが入れられております。そのほかでは、たとえば飛行艇の二機あるいは中型対潜機の一機というようなもの、それから、バートルとか連絡機とか、そういったややこまかいものが落ちておるというようなことで、大勢としてはほぼ達成されておるというように思っております。  それから研究開発のほうでは、予定されたものよりも若干スローダウンしておると思いますけれども、特に大きなものといたしましては、三次防の中でAEW機、早期警戒機の開発を予定いたしておりましたが、これは対米関係もありまして、三次防上計上しておったものが全く着手されておらないというような点であります。
  132. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまおっしゃった三次防で達成されなかったものは、新しい四次防の原案をおつくりになるときには、当然考慮に入れて四次防計画としておきめになっておるんだろうというふうに了解して、質疑を先に進めたいと思いますが、もし違っておりましたら御答弁いただきたいと思います。
  133. 久保卓也

    ○久保説明員 おっしゃるとおり、四次防を策定する場合には、それをまず第一に取り入れて計上しております。
  134. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次に、四次防の問題に入りまして、増原長官にお伺いしたいと思うのでありますが、いろんな新聞の論調等を見ておりまして、大きな問題は、今度の四次防が三次防の防衛構想を引き継いでおるというところにあるように私は思うのであります。物価も上がっておりますけれども、予算の総ワクとして二倍に近い予算になるわけでございますから、これが三次防の防衛構想をそのまま引き継いだという形において四次防がつくられるということが妥当かどうかという点に、多くの新聞が疑問を投げかけておるように私は思うのであります。  先ほどもおっしゃいましたとおり、確かに国際情勢の変化ということもあるわけであり、防衛庁でもお認めになっておるとおり、緊張はだんだん緩和の方向に向いておるけれども、まだ定着はしていないとおっしゃると同時に、一面、国際情勢というものは変化するものであって、これに流動的に対処するような防衛計画を立てなきゃならぬ、これも話はわかるわけなんです。わかるわけなんですけれども、五年前に三次防をお立てになったときと、今度の四次防にお入りになるときとには、確かに国際情勢の相当激しい変化があった、こう見なければいけないと思うのですね。それを、同じような防衛構想で四次防をつくるんだと言われる点に、一番大きな疑問があるように私は思うのであります。  具体的に一つ取り上げて申してみますと、日米安保条約についてやはり三次防と同じようなかまえをしておられるわけでございますが、つい先般もモスクワで、戦略核兵器の制限交渉、暫定交渉ですが、これもできました。ABMについては条約ができたわけでございます。五年前におけるアメリカとソ連との戦略攻撃力と申しますか、私、これは非常に開きがあったと思うのであります。ところが、ベトナム戦争というものがあり、アメリカがベトナム戦争に努力を集中しておる間に、ソ連は戦略核兵器においてどんどんアメリカに追いついてきた。五年前と同じような考え方で日米安保条約というものを期待して一体いいんだろうか。また、ニクソンが政権をとりまして以来、いわゆるニクソン・ドクトリンというものを発表いたしまして、アジアからの撤退を進めておるわけでございますが、そういう点について、国民の多くの方々はやはり何か割り切れない感じを持っておられるのじゃなかろうかという気がしてならないのでありますが、この辺は大臣、どういうふうにお考えでございましょうか。
  135. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 四次防は、三次防と防衛構想その他は大体同じ考え方で、これは四次防の基本方針にそういうきめ方を国防会議でしてもらったわけです。そういう意味で同じような方向でいっておる、こう言うたわけですが、その場合、いま金額にすると倍強になっておる。これは申すまでもなく、加藤委員よく御承知のように、ベースアップというものが相当の要素をなし、それから、大体古い航空機、艦船その他、新陳代謝の場合に、もっと能率のいいといいますか、しっかりした艦種、機種に変更する。その場合、飛行機などは、同じ機であってもたいへんな値上がりをするというふうなことで、経費として倍強になるということでありまして、軍艦のトン数であるとか、飛行機の機数であるとか、戦車の数であるとかというようなものでいきますと、えらい、倍になったなどということは、もとよりないというわけでございます。そういう意味のもので二倍強の金額になったということで、これは、われわれとしては十分考慮しなければならぬ要素ではありまするが、三次防と四次防で比較して、えらく大きい増強をしてきたものではないということであります。  そして、緊張緩和の問題に関連をして、日米安保条約をわれわれ背景にするというか、一つの基盤とするということについて御質問がありましたが、これは米ソの関係で、核の問題などは、三次防期間中にソ連がランチャーなどはうんと追いついてしまった。そこにSALTができ、ABMの制限もできるというふうなことになりましたことが、日本が安保条約を背景に持っていくということには基本的な変化はないと見ていいのであって、私はやはり、安保条約というものは、日本のこれからの防衛力整備の一つの背景、基盤であるということをどうしても考えなければならないと思うので、そうした点についての考え方は変わらない。ニクソン・ドクトリンで、アジアの諸国がそれぞれ自分でやるべきことはやってくれ、その次に周辺諸国が力を合わせて国の守りをしてくれ、それでできないことはアメリカが手伝うという考え方が声明をされておりまするが、これも日本としては、できるだけの自衛力は国力、国情に応じて整備をしていくといういままでの方針を私どもは遂行をしていけばいいのではないか。考え方としては、これは相当の変化があるというべきでありましょうけれども、四次防を策定するという場合には、そのことを特に兵力量その他においてあらわさなければならぬ、四次防のいまの策定を変える必要があるというふうには考えなくてもいいのではないか、そういうふうに考えます。
  136. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 と申しますのは、昨年の春、当委員会に、当時の中曽根長官が、新防衛力整備計画と銘打たれまして四次防の原案を出されまして、この委員会でも相当審議が行なわれたと、私、記憶しておるわけです。そのときに、中曽根長官の意向といたしまして、このニクソン・ドクトリンというものはこれからだんだん適用が広がっていくのだから、新しい防衛力整備計画においては自主防衛ということを相当強調しなければいかぬというふうなことを言っておられたように私は記憶をしておるわけでございます。その点が三次防の防衛構想をそのまま引き継ぐという点とうまくマッチしておるのか。いま増原長官のおっしゃっておることを承っておりますと、何かそういうふうな気もするのですけれども、その辺が意識的に無視されておるのか、あるいはやはりそういう点も考えてやったのだということなのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  137. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その点は十分考えに入れておるわけです。ニクソン・ドクトリンによっていわゆる自主防衛というものをやらなければいかぬということは、私もそのとおりと思いますが、自主防衛というのが少し強く響き過ぎて、急激な防衛力の増強というふうにとられたきらいがあると思いまするので、自主防衛ということばを、いま私どもはあまり使わないということはありまするが、ニクソン・ドクトリンで、やはり与国ができるだけ自分のことは自分でやってくれというアメリカの考え方は、私は、やむを得ぬというか、当然のことであると思いますので、われわれが自分でできるだけの防衛力は自分で整備をしていく、そういう意味の自主防衛はもとよりやっていかなければならぬ。しかし一面において、アジアにおける情勢が好ましい方向に向かっておる、そういう状況が今後も続いていくと見てよろしい。日本のドル・ショックその他、世界通貨不安等にからんだ経済見積もりも思うにまかせぬようになった、当初中曽根原案で考えたものよりは詰まってきた、緊張緩和と経済、財政状況というものもやはり考慮に入れざるを得ないというふうなことで原案に対する削減を行なった、というふうに考えていただけばいいと思うのでありまして、基本的な考え方は、やはり三次防の延長としての防衛力整備ということでよろしいのではないか、こういうふうに考えております。
  138. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 お考えはわかりましたが、日米安保条約というものは、五年前と同じような考え方でわれわれが期待できるかどうかという点ですね。これは疑問が残るのでございます。ことに日米関係というものが今後五年間にどう変化いたしますか。いまの中国問題等扱いをめぐりましても、私は、いままでの五年間のようにはいかぬのじゃないかという気がしてならないものでありますから、お尋ねしたわけでございます。  その次に、先ほど長官の御答弁の中で、脅威というものはないんだ、脅威というものを直接考えてるわけではない、しかし日本の周辺の諸国はそれぞれ軍備は持っておる、国際情勢の変化等も考えて、日本自身としても自衛力というものはある程度確立しなければいけないんだというふうな御趣旨の御答弁があったように思います。私も全く同感でございますが、この間、新聞で拝見をいたしますと、この四次防というものが、いま日中関係の国交正常化に向かっておる段階で、中共側を刺激するんじゃないかということで、八月の決定を田中総理の訪中後に延ばしたらというふうな意見がちょっと新聞に出ておりましたが、この点は、長官どういうふうにお感じになりますか。
  139. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 そういう意見が新聞に出ておりましたことは私も見ておりますが、四次防というものは、たびたび申し上げますように、三次防と同じ考え方で、国力、国情に応じて防衛力を整備していくということでありまして、これは、戦後防衛庁、自衛隊が発足をして防衛力の整備をいたしますときに考えました基本の構想というものが、特に変わらず、変える必要なく続いておると私は思う。  脅威がない、脅威というものは考えておらないということの説明は、先ほども申しましたように、しかし周囲の武力、兵力というものはやはり考慮に入れなければならぬ。その武力、兵力に意図が加わった場合に脅威になる。いま、意図はないという意味で脅威はないということでございまして、周辺にはそれぞれ相当の武力がある、これに何らかのことで意図が加われば脅威になり得るという情勢では、これはあると見なければならない。これは、そういうことで世界じゅうそれぞれの自国に応じた防衛力整備をやっている、というふうに私どもは考えておるわけであります。  そういう意味において、やはり防衛力の整備というものはやっていかなければならぬし、それは特にどこの国というものの意図を想定したものではない。そうして、でき上がりつつある日本の自衛力というものは、本来の考え方、防衛、自衛に徹するということで、他国に攻撃的脅威を与えるものなどは、考え方としてもないし、具体的な力としてもないという形のものを明確に考えてやっておるわけでありますので、四次防をきめるということが、周囲の国に脅威を与えるとか悪影響を及ぼすというふうな種類のものではない。そういうことはよくいろいろな機会に申し上げてもおるし、将来もしっかりそういうことは説明をしてまいる。ということであるならば、この点について、当面の日中国交正常化という問題にからんで、特に四次防の策定の時期を延ばす必要はないのではあるまいか。えらい急いでやることももちろん考えておりません。初めの予定どおり、八月末を目途とする。目途とするということでありますが、若干のおくれができることは通常であろうと思いますので、若干のおくれは私は出るんじゃないかと思いますが、そういう当初の予定に従ってやることで近隣の諸国に悪影響を及ぼすことはあるまいというふうに考えております。
  140. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も全く同感でございまして、増原長官のいまのお話のように、これは八月末と申しますけれども、もう昨年の四月から実は防衛庁原案が出されまして、幾たびか変遷はありましたけれども、相当長い期間をかけて政府部内においては審議しておられると思うのであります。当初の目途どおり、八月末に、それは目途でありますから狂うかもわかりませんが、四次防を正式に御決定になるように希望する次第でございます。  それから、先ほども大出委員から御質問がありまして、これに対する増原長官の御答弁も、私、静かに聞いておったのでありますが、やはり、国民一般の中には、日本が経済成長に伴って、国力、国情に応じて自衛力を整備していくという方針は了承できましても、これは限度がないんじゃないか、一体自衛力というものはどこまで持てばいいのかという素朴な疑問は、大多数の人が持っておるように思いますね。長官の御趣旨も、私、先ほど拝聴しておりましてよくわかりましたが、この間ある新聞を見ましたところが、長官の談話として、大体一応の限界はつくりたい、それには陸上十八万、海上が三十数万トン、航空が約千機というふうに出ておったように思いましたが、あれはどういういきさつだったのでございましょうか。お尋ねいたします。
  141. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 せんだって愛媛県へ参りましたときに、記者会見で限度の問題の質問がありました。これはたいへん限られた時間のあれで、私の郷里愛媛へ帰ったときの記者会見という、そういうときであったわけですが、前々から委員会での御質問もあり、考えておったところを申したので、やはりたいへんむずかしいことではあるが、現在のような緊張緩和の情勢が続いていくという前提、日米安保条約というものがあるというような前提で考えて防衛力、自衛力の限界というものがつくれるのではないかということで、係の諸君にそういうことを考えてみてくれと言うてある。その場合に、きわめて大ざっぱなことを申せばというので、まず、陸は十八万ぐらいであろう、海は三十二、三万トン−四、五万トン、空は千機−千二、三百機、これはたいへん大ざっぱなことであるが、そういうふうなことで、最小限自衛力というものの限界をきめ得るのではないかと思って作業をしてもらっておる、こう言ったので、少し数字をあげたのが、私あとで考えて不用意であったかと思いまするが……。それで、新聞によりますと、陸は十八万ですが、海は三十五万トン、空は千三百機、これが限界だというふうな出され方をして、たいへん恐縮をしたわけですけれども、そういう意味ではないので、空にしても千機から千二、三百機、海も三十二、三万トン−四、五万トンというふうなたいへん大ざっぱなことですが、ということで申し上げた。そういう意味にお受け取りを願いたいので、私のねらいは、やはり自衛力の限度というものを、むずかしくともひとついろいろ検討をしてつくりたい、そういうことで国民に安心をしてもらうようにしたい、こういうつもりでございます。
  142. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も新聞を拝見したのでありますが、いま長官がおっしゃったようなぐあいに出ておったのです。ただ私、感じましたことは、数字が出ておりましたが、あの数字は、中曽根元長官が当委員会において言っておられた数字とあまり変わらないんですね。陸が十八万、海が三十数万トン、空が千機ないし千二百機と言っていましたか。やっぱり常識的な線かな、政治的に判断したらこういうものかなという感じを、私、非常に強くしたのであります。先ほど大出委員もここで言っておられましたが、それはもちろん国際情勢の変化というものはありますから、一応きめた限界というものが変わることは私は当然だと思うのです。それは変わったらそのときにまた変えればいいのであって、むずかしい作業でありますけれども、おおよそこれぐらいのところだということは、私は長官として国民にお示しをいただけたらいいのじゃないかという気がしてなりませんので、先ほどの御答弁で、事務当局に検討を命じておるというおことばでございましたので、早くできますことをお願いをする次第でございます。  その次にお伺いいたしたいのでございますが、どうも私、昨年の春ここで中曽根原案を審議したものでありますから、それの頭がなかなか離れませんので困ることになるかもわかりませんが、三次防を引き継ぐとおっしゃったけれども、三次防では有事即応体制ということをうたっていらっしゃるのですね。四次防ではその点はやはり同じように引き継いでおやりになるのでありますか。その点をひとつお聞きします。
  143. 久保卓也

    ○久保説明員 三次防の大綱では、有事に際し迅速に対処し得るよう後方体制の整備につとめるものとする、こういうふうに書いてありました。これを有事即応の体制であるというふうに呼んだわけであります。さて、やや勇ましい表現でありますが、防衛力とすれば、本来、特に日本のような自衛をもっぱらとする、旨とする国にありましては、有事即応体制であることは望ましいわけでありまするけれども、二次防、三次防とやってきてまいりまして、われわれがひるがえって考えてみますると、現在の防衛力の内容、それからそれを包む周辺の環境からしますると、全般的に有事即応体制にすることは事実上不可能である。したがって、一般的に有事即応体制という考え方はとらないけれども、部分的な問題、たとえば監視体制のようなもの、レーダーサイトでありますとか、海峡の監視でありますとか、それから防空の一部。それから場合によれば陸上関係のいわゆる奇襲攻撃、そういった部分的なものについては有事即応体制をとるべきであるけれども一般的な体制として事実上とり得ない。そうとすれば、できないことを文言のうちに書くのは不適当であろうというふうに考えまして、国防会議事務局と相談して、私どものほうでそれを削除してもらったという次第であります。
  144. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も、三次防と比較いたしまして、その点のいまのあなたの御答弁に全く同感であります。三次防と同じように有事即応体制をとる必要はないのじゃなかろうか。ただ部分的に、いまあなたがおっしゃったようなところは、これは必要だと思います。そういう考えで四次防をおやりになるなら賛成でございます。  その次にお伺いしたいことは、やはり中曽根構想では、航空優勢の確保とか制海というふうなことばを使っておられましたけれども、その点は、いまお考えになっておる四次防では、どういうふうになっておるのでしょうか。
  145. 久保卓也

    ○久保説明員 昨年春に出ました四次防の原案は、実は私どももあとで考えてみると、誤解を与えるような書き方であったろうと思いますのは、四次防原案の中身といいますか、四次防原案の中に書かれてあることでありますのに、説明そのものは、長期目標が達成された後、すなわちほぼ十年ぐらい後においての防衛力はこういうような能力を持つでしょうというような書き方になっております。したがって、それをやや誤解をいたしますると、四次防で航空優勢あるいは制海確保ができるのではないかというふうに読まれる方もあったわけでありますが、事実はそうではありません。  それからまた、航空優勢あるいは制海の確保というような表現も、定義の上からしますると、やや幅の広いような表現のようでありまして、全般的に航空優勢、全般的に制海を確保し得るという場合もありまするし、必要のつど、局地的にあるいは時間を限って優勢をとり得る、あるいは制海を確保し得るような能力という場合もあるそうでありまして、したがってその点では、原案における表現はややあいまいさを残しておった。しかも誤解を与える表現もあった。のみならず、四次防においてそれをしようということではなかったのでありまするから、今回は、そういった目標というものは必ずしも私は悪いと思いませんけれども、四次防の中で、全般的な航空優勢、全般的な制海の確保をし得るというたてまえには立っておりません。何度も繰り返しますように、三次防の延長という性格でありますので、三次防の方針に従って内容の充実をしていく。したがってその範囲内において、ある種の航空における防衛、海上における防衛が遂行し得るという比較的あいまいな内容になってこようかと思います。
  146. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次に四次防計画大綱の中の文句で少しお伺いしてみたいと思うのでありますが、前の、昨年の春のときには、整備方針が、通常兵器によって限定された侵略事態に対応すると書いてあったわけですね。今度は三次防と同じように、「通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対し、最も有効に対処しうる効率的なものを目標とする」。これは考え方を変えられたのですか、どうなんですか、その点をお伺いします。
  147. 久保卓也

    ○久保説明員 限定的な局地戦、限定された武力紛争という表現を四次防原案ではとりました。それを引き出してくる一つのねらいは何であったかと申しますと、一般防衛力の限界というものは相対的なものでありまして、必ずしも具体的な数字を明示し得ません。しかしながら、何らかのめどというものをつけるべきではないか。そうすれば、われわれの予測し得る時期といいますのは、大体いまから十年後くらい、そういった時期における周辺の軍事能力というものはある程度予測し得る。そうすると、そういったものを考慮に入れながらわれわれが持つべき防衛力というものは何であるかということを考えることは可能であります。しかし、可能でありまするけれども、その場合にもいろいろの条件を出して、非常に大規模な長期間にわたって続く戦闘あるいは防衛に対処し得るということを考えるのか、あるいは比較的制約された範囲内で、いわゆる第二次大戦後に登場してまいったリミテッド・ウォーという考え方、制限戦争という考え方、そういったような範囲内に対処するものを考えるかということを検討しなければならないわけでありますので、われわれのほうで、十年後の長期目標を出すたてまえ、前提といたしまして、われわれが防衛対象というものを、ある程度制約したもの、限定されたものとしてそこに意義づけをしたわけであります。したがって四次防原案の場合には、そういった発想が意味のある発想であったわけであります。  ところが今回は、三次防大綱の継続、継承ということでありますので、三次防の延長ということでありますると、格別長期目標を現在提示するわけではございません。したがって、長期目標と関連のある、限定された局地戦ということをいまここで明示しなければならないという理由がなくなったわけであります。しかしながら、それでは整備構想を離れて防衛計画あるいは防衛構想としてどういった事態を考えておるかということを問われるならば、それは整備構想とはまたはずれまして、防衛計画上は、そういう大規模な、長期間継続するような、日本にとっての全面的な戦争というものを考えるわけではありませんで、比較的いろいろな事態、あるいは手段、方法、そういったようないろいろなものがある程度制約されたもの、そういうものをわれわれは防衛上は前提として考えてまいるでありましょうということでありますので、一応、防衛力整備計画、つまり四次防計画そのものと、それから運用の面、防衛構想の面、その面ではやや異にして扱ってよろしいのではないかというふうに思っております。
  148. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次に海上防衛の点ですが、四次防大綱では「防衛力の向上については、とくに周辺海域防衛能力および重要地域防空能力の強化ならびに各種の機動力の増強を重視する」。周辺海域の防衛能力の考え方につきまして、いままで防衛庁のお考えをいろいろ承っておりますと、実は外航護衛という観念が一つある。もう一つは限定した海域内の対潜掃討能力というものを持ちたいというお考えがある。四次防ではこの辺はどういうふうに考えておられるのですか。
  149. 久保卓也

    ○久保説明員 この周辺海域の防衛能力は、比較的内航の関係、つまり、ごく近間の問題と、それから比較的遠い範囲の問題と、両方あると思いますけれども、いまの御質問の場合は、比較的遠い範囲、つまり中曽根長官が言っておられたころは南鳥島、沖ノ鳥島とあるいは南西諸島を結ぶ範囲、距離でいいますれば一千マイルくらいというような範囲の問題であろうと思いますけれども、現在われわれが、海上護衛をやるか、あるいは哨戒の航路を選定をして特にそこを重点的にやっていくかということについては、これは運用上の問題である。それから一千マイルというのは、海上交通のほうの場合にそういった航路を選定する場合もあるでありましょうけれども、特に潜水艦に対して常時哨戒を行なうといったような距離は数百マイルであろう。そういった海域について外航護衛群の二群でもって対処をするということでありまして、現実には、海上護衛をやるのか、あるいは航路を選定してそのところについてのみ哨戒をやるのか、これは運用の問題であろう。ただし、四次防の艦艇、航空機の算定の上では、海上護衛をやるというたてまえで計算をしてみる。そして航空機の必要性あるいは艦艇の数を決定いたしまして、その上でどういうような方法をとるのがしかるべきであろうか。これはそのときの海上交通の重点の置き方によっても違ってまいりましょうから、運用の問題であろうということで対処をしております。
  150. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはいずれまた時間をかけて、私、議論させていただきたいと思うのですが、四次防の中で問題はやはり、海上自衛隊の整備と航空自衛隊の整備。外国にもし脅威を与えるとすれば、この両自衛隊だと思うのであります。十分な配意をなさっておると思うのですが、時間がないので、きょうはこれはやめまして、次の問題へ移らしていただきたいと思います。  その次は、装備の国産化の問題なんですが、この前、新聞で見ておりましたら、大平外務大臣から増原長官に対して、アメリカの兵器の輸入調達を考えてほしいというふうなお申し出があったように新聞に出ておりましたが、あれは事実はどういうことなんでございましょう。またこれが、現在考えておられます四次防原案では、どのように扱われておるのでしょうか。
  151. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 装備問題は、外務大臣からせんだって話がありましたときには、いわゆるドル防衛といいまするか、日本対米国におけるドルの改善の問題にからんで、それぞれの大臣が、所管において米国からの輸入をふやし得るものがあるか、どれくらいのものを輸入をしてドル収支改善に役立つことができるか、そういうものを防衛庁のたてまえで検討をしてみてもらいたいということであります。これは以前にもそういう話はありまして、一応四次防の段階でいまの案がきまるということであるならば、米国から、これは兵器だけではありませんが、装備品輸入が七億ドル見当、これは五年間になる。これをしかし、緊急輸入とか、あるいは特に輸入をその間増加するということは、防衛庁の装備品等の関係から困難であるというふうな話をしてあるわけであります。われわれは防衛のための装備品は何でも国産にしたいという考え方は持っておりません。おりませんが、しかし、できるものは国産化していくことがよろしい。いろいろな意味があるわけで、特に申し上げる必要はないかと思いますが、できるものは国産化ということで、防衛庁、自衛隊発足以来しておるわけであります。しかし、いかなる不利をしのんでもやろうということではもちろんありませんし、ことに、いまの対米関係でドルの収支改善をするということは、日本のたてまえとして相当に考慮すべき問題でありますので、その点は十分四次防について検討をしてみたということでありまするが、申し上げたように、特に緊急輸入をふやすというものはなかなかない、こういうことでございます。
  152. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いろいろな話を聞くわけでございますが、私も何も全部国産にしなければならぬというふうに思うわけではございません。ただ、知的集約産業といいますか、そういうものが今後日本としては重点を置かなければならない産業であるとするならば、飛行機とかミサイルというふうなものはなるべく国産にするように持っていくことが必要なのではなかろうかなと思うのでございます。  そこで研究開発ですが、四次防では研究開発についてどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  153. 久保卓也

    ○久保説明員 わが国が外国に比べまして、研究開発に投ずる経費というものが防衛費の中では比較的少ないのでありまして、従来、大体二%前後であると思いますけれども、そういったことで、われわれのほうとしては、防衛費の中で占める研究開発の比重というものを高くしたいというふうに考えております。しかしながら、反面、現実に予算が成立することを考えてみますると、予算が非常に飛躍的に伸びるということもむずかしいし、また日本の現実の能力から考えまして、べらぼうな金がまいりましてもそれを消化する能力がないかもしれないということも考えあわせて、比較的現実的に、将来日本が装備するに適当であろうというものを、私ども立場から言えば厳選をいたしまして、防衛庁の原案では百二十項目ぐらいありましたが、それを百項目ぐらいにしぼって、総額で千二百億ぐらいであったと思いますけれども、四兆八千億の中で千二百億ぐらいを研究開発部門に投ずるという考え方でおります。そしてただ、この研究開発をやる場合にも、単に開発を進めたから必ずそのまままっしぐらに進んでいく、そしてまた装備につながっていくということではなくて、開発をする場合でありましても、それぞれチェックポイントを設けて、わが国が開発をそのまま続けるのが適当であるか、あるいは開発を中止をして輸入に切りかえたほうがよろしいかということは不断に検討してまいらねばなるまいというふうに考えております。  それからまた、国産重点でけっこうだとは思いますけれども、あまりに重視し過ぎて、どんなに値段の高くなっても開発だというような態度も、これもまた考えねばならないのではないか。最近はアメリカでもそういう点が非常に強く指摘されておるようでありまして、そういうことも考えてまいりたい。  それから、輸入にたよっておりますると、われわれがちょうど使用のピークに達したときにアメリカで生産をしてしまわなくなる、生産を中止するということになって、われわれのせっかくの装備の整備が非常に混乱を来たすおそれもありますので、どういうような分野が日本で開発するのが適当であるかということも考えてみる。さらに将来の発展性ということも考えあわせて、結局、各種のミサイル。対空、地対地、これはすべて短距離でありますが、それから空対地、そういったミサイルの系統、空対空もありますが……。それから対潜哨戒機あるいは早期警戒機といったような大きなもの、それから電子機器、そういうものを中心に開発を進めてまいりたいというふうな位置づけをいたしております。
  154. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 先刻来、基地問題について深刻な事態になっておることを、私も新聞でも知り、この委員会でも聞いておって憂慮しておるものの一人でありますが、一体四兆八千億円の五カ年計画の中で基地対策関係の予算はどれぐらい見積もっておられるのですか。
  155. 小田村四郎

    ○小田村説明員 基地対策の問題につきましては、非常に重要な問題でございますが、一応、防衛施設庁関係の経費といたしましては、約四千億円を見積もっております。これは、先般の沖繩の復帰に伴います借料等も含めたものでございます。
  156. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も選挙区内に基地があるわけですが、たとえ日本の防衛という問題を真剣に考えておる人たちでも、基地による迷惑というものは、これはやはり非常に痛切に訴えられますよ。なぜわれわれだけがこういうような不便を忍ばなければならぬのだろうかということなんですね。もっともだと私は思うのです。やはり国のほうで相当めんどうを見てあげなければいけない。いままで、そればかりが原因ではないでしょうが、基地のある自治体がどんどん革新の市長さん、町長さんにかわっていっているような事態は、やはり政府の基地対策のおくれを示すこれも一つの原因ではないかと思うわけでございます。五カ年間で四千億円ですか、沖繩を含めて。沖繩を含めてですね。これは少ないのじゃないでしょうかね。長官、どうでしょうか。
  157. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 加藤委員の御心配、たいへんありがたい御心配で、いまの数字の中には、いわゆる基地交付金は自治省に入っておるので、入っておりません。基地交付金を固定資産税見合いのものはきっぱり差し上げるというふうに、いまだんだんやっておるところですが、これは早く固定資産税に見合うものを満度にということに持っていきたいと思いますが、これは予算としては自治省のほうに入ります。そのほか、御意見のとおり、やはり基地のためにいわゆる迷惑がかかるというものは、これは相当に思い切っていままでの私どもの発想を変えて周辺対策を行なうべきものだと考えますので、これは年々の予算でも、いまの政府の方針の二五%にかかわりなく予算を組み、決定をある程度例外的にしてもらっておるといういままでのあれもあります。将来一そうこの点は気をつけまして、遺憾のないようにしてまいりたいというふうに考えます。
  158. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 長官、いま四兆八千億円の中で沖繩を含めて四千億円だとおっしゃいましたけれども、これは何とかもう少しふやすように御努力をぜひお願いをしたいと思うのであります。  その次に、私、非常に関心を持ち、これはいいことだと思っていたのですが、昨年の春の中曽根長官の原案のときには、情報本部というものをつくろうということでたいへん意気込んでおられましたが、あの構想はその後どうなったのでしょうか。
  159. 久保卓也

    ○久保説明員 情報本部は統合幕僚会議事務局の付置機関として設置をしようとしたわけであります。実はその前に、各幕の情報の大部分を吸収して情報の付属機関、全体の付属機関というような大きな構想のものを考えたわけでございますが、いろいろな観点からの妥協として、統幕の付置機関という情報本部の性格を持ち出して、いわゆる戦略情報というものをここで扱わせようとしたわけであります。ところが、この場合に百数十名の増員があり、またそのために施設を建設しなければならないというような基本的な問題があり、また情報の中枢がどこであるべきかという議論が関係各省の中で相当出まして、むしろやるならば内局の強化という形のほうが適当ではないかという有力な意見も、関係機関から出てまいったわけでございます。したがいまして、事実上、いまの情勢ではなかなか付置機関としての情報本部というものは通りにくい。われわれとしては、少し大きな規模のもののほうを望むわけでありますが、現実に予算を獲得するというたてまえからいけば実現性のある範囲のものを要望、要求せざるを得ないということで、四次防の中では情報本部の構想をあきらめまして、現在のところ、内局、特に防衛局の中の情報機能を中心にして、そこに政治と申しますか、英語でいえばポリティコ・ミリタリーといいますか、そういった分野と軍事的な情報とを統合して持ってまいる。そして統幕なり各幕なりがそれぞれの機能に応じた情報を収集して内局でそれを統合するというような方向でさしあたってまいってみたい。そういったところで実が上がれば、将来の構想としてはまた別途のものを考えてはどうだろうかというのが四次防の中の考え方であります。
  160. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これは私、ちょっと考えが違うのですが、その内局の情報機関には、制服の諸君を入れることになるのですか。どうなんでしょうか。
  161. 久保卓也

    ○久保説明員 現在、制服を予定しておるわけではございませんけれども、事実問題としてはこういう事情がございます。御承知のように、各幕では情報の専門官が育ちにくいわけであります。つまり階級制があって、いずれ他の部隊に出して幹部として育てていくというような方針もあって、なかなか情報官として育っていきにくい。そこで私どものほうでは、二佐であれ一佐であれ、そういった専門の人はそのままのポストで、そのままの階級で持ってくる場合もあり、それをシビリアンに切りかえて長く私どもの局で仕事をしてもらうというようなことも考えられる。主として後者のほうで専門官を育ててまいりたい。したがって、内局であれ各幕であれ、通じて適任者であるというような者を防衛局のほうに集めてまいりたい。これはいずれ将来どういうような形で大きな組織ができるかわかりませんが、そういった場合には、そのための要員の養成にもなるのではなかろうかというふうに思っております。
  162. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはまたそれでいいのかなという気がいたしますが、この程度にしておきます。  いま内局の問題が出ましたので、増原長官にお伺いしたいのですが、私は、去年の暮れからことしの初めにかけてのいろいろな防衛庁の問題の起こるのを見まして、どうもこれは内局と各幕との間に意思の疎通に問題があるのではなかろうかという気持ちが非常に強くしたわけでございます。いま情報関係で内局を強化するというふうな案がおありのようでございますが、増原長官は、防衛庁内における内局と各幕との関係について、どういうようなお感じを持っていらっしゃいますか。もし悪い点があるとすれば、どういうふうに改めたらいいというふうなお感じをお持ちでございましょうか。
  163. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私も外からはずっと防衛庁を国会議員として見ておりましたが、やはり入ってみると、またなかなか外では気のつかぬこともありまして、いまはっきりした御質問のあれにお答えするものはまだきまっておりませんが、私は一つの問題は、制服の増というものは、とりにくい点もありますが、年々の法律改正で必要に応じた整備拡充をしてまいりましたが、内局のほうは、一般的な人員整理をやはり食ったりしまして、全体としての組織が大きくなっておるのに、内局のほうは十分な人的整備がむずかしいというふうな感じをいま受けておるわけです。したがって、内局の若干の人員増、整備強化をいたしたい、そういうことで各幕僚幹部の諸君との意思疎通、交流というものを改善していくことができるのではあるまいか、そういう方向からということでありまして、各幕の制服の諸君を内局に入れるという問題は、加藤委員御承知のとおり、防衛庁発足以来の常に研究をされ論議をされる問題ですが、その問題は、まだ私は、今度防衛庁へ入りまして、しっかりと具体的な事情を見きわめるに至っておりません。したがって、内局の整備拡充をやって、そういうことによる内局と各幕との連係、意思疎通が一そう効果的になるようにしたいということをいま当面考えておるわけであります。
  164. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も防衛庁内部のことはよくわかりませんが、見ておりますと、制服のほうはどんどんふえていき、幕僚幹部は大きくなっていくが、内局そのものは数年前とほとんど変わらない。何か、増原長官のもとで私どもが一生懸命苦労してつくったときの体制が、少しアンバランスになりつつあるのではないかなという気持ちがしてならないのでございます。いまの御答弁を聞いて安心をいたしました。  時間が来ましたので、最後に一つだけ。  この間、ある新聞を読んでおりましたら、田中総理大臣が、防衛庁の幹部会食の際に、隊内教育の問題を強調されて、若い隊員が、中学を卒業した者は自衛隊に入っておれば高等学校卒業の資格がとれるとか、あるいは高等学校を出た者は大学卒業の資格がとれるというふうにできぬものかというふうなことを御質問になったというふうな記事が出ておりましたが、これは事実はどうでしょうか。どういうふうにお考えでございましょうか。
  165. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 加藤委員お話しのとおり、田中総理から防衛庁幹部昼食会をしていただいたときに、中学卒業で入った一般隊員は、四、五年の勤務をしておる間に、隊員としての資質の練磨のほかに、一般教育として高校卒業程度の実質と形式を与えるようにしてはどうか、及び高校卒で入った一般隊員は、やはり四年とか五年とかいう勤務の間に、大学卒の実体、形式を与えるべきであるというお話がありました。これは防衛庁のそれぞれの係でも、そういうことを内々考えておったようでありまして、これはたいへん大事な示唆を受けたので、早急に具体案を考えてみよう。まだその途中で、結論、どういうふうな具体案ということを申し上げる段階に至りませんが、しかし、なかなかむずかしい面がありまして、隊務の運営の面、特に艦艇勤務など特殊な勤務状態の者、小人数の部隊でそれぞれ遠隔地にあって勤務しておるような者などが数を合計すると相当たくさんあるのですが、この者についてどういうことをやればできるかということが、具体的になかなか検討を要するということで、まだ具体案をつくるに至りませんが、ひとつ何らかの方法でこの田中総理の構想を実現してみたいというふうに、いま鋭意努力をしておるところであります。
  166. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 質問を終わります。
  167. 前田正男

    前田委員長 次に、木原実君。
  168. 木原実

    ○木原委員 きょうは二つばかりお伺いをしたいことがございます。一つは雫石の例の衝突事故につきましての報告が出ましたのでお伺いしたいと思いますが、これは事故調査委員会の山縣さんのおいでを願っておりますので、お見えになりましてからお伺いをいたしたいと思います。  いま一つの問題は、山口県の山口市におきまして、自衛隊の隊員の事故でなくなった方でございますけれども、その方の霊を遺族の意思に反して護国神社に合祀をした、こういうことが関係方面でたいへん深刻な問題になっておりますので、そのことをお伺いをいたしたいと思います。  その前に伺いたいのですが、自衛隊の外郭団体に隊友会というのがあるそうですけれども、これは一体どんな性格で、どんな組織なのか、お示しをいただきたいと思います。
  169. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 隊友会は、自衛隊の退職隊員を会員としまして、国民と自衛隊との相互理解、自衛隊の退職者の親睦、それから相互扶助、そういったことを目的といたしまして活動をしております。社団法人でございます。現在の会員はことしの五月で約十万三千名でございます。さらに若干申し上げますと、大体、都道府県単位にしまして、支部連合会というのが五十一ございます。その他に支部として約千七百ばかりございます。  それから事業内容を羅列的に申し上げますと、一つ防衛意識の普及高揚、それから自衛隊諸業務に対する各種の協力、機関紙の発行及び出版、会員の親睦、会員で不具廃疾になった者及び遺族、家族に対する援助、それから会員の就職援護、その他会の目的を達成するにふさわしい事業というのが大体の隊友会の概要でございます。
  170. 木原実

    ○木原委員 これは部隊との関係があるのですか。たとえば、財政的に補助をするとか、あるいは支援をするとか協力をするとか、人を出すとか、そういう協力関係はどうですか。
  171. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 部隊とは先ほど申しましたようなことでございまして、彼らが事業をいたします上でいろいろな深い関係がございまして、部隊とは緊密な連絡をとりますけれども財政的な援助というようなことは行なっておりません。
  172. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、たとえば事務的な協力とか、人を出すとか、こういうこともやっていない……。
  173. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 部隊との具体的な関連を申し上げますと、たとえば隊友会で「隊友」という機関紙を発行しております。こういうのを購入いたしまして部隊に配付する、あるいは隊員募集の際にポスターを張ることをお願いいたしましてその労賃を支払うというような関係、具体的に申しますればそういったような関係がございます。
  174. 木原実

    ○木原委員 この隊友会は、自衛隊とは財政的その他に関係がないということですが、隊友会が、隊員であった人で事故等でなくなった方の霊を護国神社に合祀をする、こういうような方針をとってそういうことをやっているのですが、それらのことについては何かお調べはございますか。
  175. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 山口県で四十四年に、公務で殉職いたしました隊員を含めまして、二十七名ばかり護国神社に配祀をするというようなことがございましたが、これは自衛隊がやったことではございませんで、この奉齋をするにあたりましては、山口県殉職自衛官奉齋委員会という名前の委員会ができまして、その委員会が活動いたしまして、先ほど申しました山口県出身の二十七柱の殉職隊員を護国神社に配祀をしたという事実がございます。
  176. 木原実

    ○木原委員 時間がありませんので端的にお答えを願いたいと思うのですが、防衛庁長官、この護国神社というものですね、これはどんなふうなものだとお考えでございますか。
  177. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 どういう意味で御質問がありましたか、ちょっとのみ込みかねるところがありますが、いわゆる護国の英霊をお祭りをするといういままでの形で、大体、各県につくられておる神社である、こういうふうに考えております。
  178. 木原実

    ○木原委員 神道に基づく宗教団体であることは間違いございませんですね。そこに、先ほどもお話がございましたように、隊で事故でなくなった方等の霊を合祀をするということでございますね、いま局長の答弁ですと。具体的に名前があがりました山口市の方の場合は、いろいろ手続上の問題があります。奥さんは反対だのに、ある意味では一方的にお祭りをしている。宗派が違うというのですね。しかも委員会ができていて、そこがやったのだということですが、実際は、山口の防衛庁の地方連絡部の係官が奥さんのところへ出向いて、合祀をしたいから書類を整えてほしい、こういう申し出をし、断わられました。そうしますと、一方的に二十七柱と一緒にそこへ祭った。奥さんはクリスチャンですから、たいへんなことだと言って、再三抗議をしたり、取り下げを願ったりしたのですが、それがいまだに認められていない。たまたま、これが先般一部の新聞に報道されましたために、少し問題になりまして、現在は何か中央のほうの指示だという名目で、そこの山根さんという一佐が中に立ちまして、奥さんの説得をしておる。さらに奥さんの義父に当たる人のほうに話をして、いわばそちらから手を回して何か納得をさせるというような動きをやっているという、実は現地から、私のところへたくさんの報告などが来ておるわけなんです。  ともかくといたしまして、そのいきさつを見ておりますと、隊友会ないしそれに関連をするいろいろなものが動きまして、そういうことをやっておるのでしょうが、具体的に、自衛隊の出先の幹部ないしは係官の人たちが、積極的にそういう方面に動いておる、こういうことが実は明らかになったわけなのです。そうしますと、護国神社、これは神道に基づく神社ですから、宗教団体であることは間違いございませんが、そういう宗派の中に、積極的に、先ほど長官のおことばにありましたように、国のために尽くした英霊だ、こういうことで合祀をするというようなことが半ば公認をされておるような姿があったのでは、私ははなはだ困ると思うのですが、御見解いかがでしょう。
  179. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私も、本日、木原委員の御質問があるということでこのことを承知をしましたので、まだ私自身、具体的な事実をいまお伺いしたこと以外は知らないような状態でございます。しかし、護国神社に遺族が反対をしておる人を合祀するというようなことは、私はやはり適当であるとは思いません。その点は十分に取り調べまして、防衛庁の地方連絡部なり何なり関係の者がそういうふうなことをしておるということがあれば、そういうことは控えさせるというふうにしたいと思います。
  180. 木原実

    ○木原委員 長官御存じのように、われわれの委員会は、問題の靖国法案というのをかかえておるわけです。自民党の皆さん方からの議員提案という形で提出をされておりまして、毎度廃案になっておるというようないきさつがございます。この問題については、たいへんきびしい見解の違いがあるわけでございます。したがいまして、われわれの委員会といたしましては、そういう底流があるものですから、この種の問題については、かなり真剣にといいますか、深刻に事態を考えたい、こういうことなのです。  御参考までに申し上げたいと思うのですが、いま例にあげました山口市の方の場合は、御主人が岩手の地方連絡部釜石支部におられて、先年事故でなくなられた。その郷里の山口に未亡人が引き揚げたわけでございます。この未亡人は熱心なクリスチャンであります。こういう経過があるわけでございます。ところが、いま局長のほうからお話がございましたように、ことしの春、四月十九日と二十日に、新たに自衛隊の殉職者二十七柱が合祀をされた。その中の一人としてこの事故でなくなった方の霊が合祀をされたということなんです。ところが、クリスチャンの奥さんですから、妻としては自分で夫の霊をなぐさめたい、こういう立場でこれを拒んだ。そうして山口の地方連絡部へ参りますと、係官がこういうことを申しておるわけなんですね。「遺族の中には、宗教によって祭り方の違う者もあろうが構わぬ。隊員は自分のためではなく、お国のために死んだのに、何の措置もないのはおかしい。忠臣の人が崇められている護国神社に祭って、それと対等ぐらいの資格があってもいいのではないのか、このことで隊員に誇りをもたせるため、遺族の賛成、反対に関係なく、隊友会と父兄会とが奮起してやったことだ」、こういう解釈なんですね。このようなことは九州や四国でもやっておる、こういう回答を奥さんに与えておるわけなんですが、私どもは、非常に微妙で、しかも危険な考え方だと思う。もし係官のこういう解釈が防衛庁全体の見解であるということになりますと、私どもはたいへん深刻な問題を持ってくるのではないかと思うわけなんですが、いかがなものでしょうか。
  181. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 具体的事情をよく調査をいたしまして、先ほど申し上げましたように、遺族が反対をしておるのに無理に合祀をするというふうなことは避けるべきだ、そういうことで具体的によく事実を当たってみたいというふうに考えます。
  182. 木原実

    ○木原委員 これは具体的な事実の措置の問題とあわせまして、私はこの際にぜひ長官の御見解を伺っておきたいと思うのです。私どももうかつだったわけですけれども。  たまたまこれが問題になったわけですけれども、しかし、係官の言明によりますと、隊友会その他が同様なことをすでに各地において行なっておる。しかもその大義名分が、国のためになくなった隊員なんだから個人のものではないのだ、したがってこれは靖国神社へ祭られると同じようにあがめなければならないのだ、こういう考え方に基づいて、もしこういうことが一般に普遍的に、あるいはまた防衛庁としても、そういう方向でよろしいという暗黙の了解でこういうことがこれから先もやられてよいのかどうか、こういうことなんですが、いかがでしょうか。
  183. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 申し上げたように、その具体的事実が、いま木原先生のおっしゃったとおりであるとするならば、そういうことは私は避けていくべきだというふうに考えます。そういう基本的な考え方でこの問題に私ども具体的に当たってみたい、こういうように思います。
  184. 木原実

    ○木原委員 これはくどいようですけれども、すでに表に出ましたのはこの一つですけれども、そういう考え方を聞きたいわけなんです。表面に出ましたのは、たまたまこの一つの事件ですけれども、類似の形ですでに合祀のことが広く行なわれているという事実も指摘をされておるわけなんです。つまり、いま述べましたような考え方に基づいて、たとえば自衛隊と密接な関係にある隊友会が、ある意味では自衛隊の暗黙の了解のもとに、この場合は具体的に、出先の人たち、係官が協力をしておられるわけですが、そういう形で合祀というようなことを進めてよいのかどうかということが一般的な考え方ですが、いかがでしょうか。
  185. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 遺族がそういうことを反対をする、それも宗教的な問題であろうと思うのですけれども、そういう反対にかかわらずそういうことを押し通していくということは、私は申し上げたように、避けるべきだという考えのもとにこの具体的事実をよくあれしてみたい、こう思います。
  186. 木原実

    ○木原委員 遺族の反対を押し切ってやるというのは、これは論外だと思うのです。しかしその前に、遺族の承認も了解もなしに合祀をするというのは、どこであろうとあってはならないことですね。  しかし、これは問題は簡単だと思うのですが、それ以前の問題としまして、ごく一般的に、隊で事故その他でなくなった方を護国神社に合祀をするという一つのやり方、風潮、そういうものが許されていいのかどうか、こういうことなんですが、いかがでしょう。
  187. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 遺族その他にも反対はないという前提で考えまして、そういういわば殉職者を護国神社に合祀するという問題については、私いまここで、そういうことには決定的に反対であるというふうにはちょっと——もう少し私も検討さしていただきたい、こう思います。
  188. 木原実

    ○木原委員 それじゃ最後に、この問題についてこういうことばがございます。「もし、国家がある特定の宗教と結びつくと、その結果、他の宗教を信仰する人々の国家に対する憎悪、不信、反感をもたらし、国家の基礎を破壊する危険を招来する。のみならず、特定宗教に対する国家の政治的、財政的援助は、該宗教に対する人々の尊敬を失わせ、その腐敗堕落を醸成する。すなわち、宗教は世俗的権力の介入を許すことができないほど、余りに個人的であり、神聖であり、かつ至純なものである」、実はこういうことばがあるのです。言ってみれば、信教の自由というのは民主主義の一番根底にある問題なんです。宗教というのはどこまでも個人的な問題だと思うのです。かりそめにも、国家、あるいはその機関である防衛庁なら防衛庁、自衛隊なら自衛隊というものが、国のためになくなった方なんだからあがめよう——その趣旨はともかくといたしまして、そういうふうな立場で、そういう最も個人的な問題まで介入していったことが一般論として許されるのかどうか、こういうふうに考えるわけですが、いま読み上げました文章をどんなふうにお考えでしょうか。
  189. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この文章を承っただけでどうとちょっと言いかねますが、いわゆる憲法に定められた信教の自由ということに抵触のあるようなことをしては相ならぬ、そう確信をいたします。
  190. 木原実

    ○木原委員 いま読み上げました文章は、津の地方裁判所の判決の中の文章なんです。すでにこういう判例が出ておるわけなんですが、長官は、靖国の問題につきましては、自民党のほうからいわば党議というようなかっこうで、従来も国家護持の法案が当委員会等に提案をされております。いまのお考えですと、靖国神社のいわゆる国家護持について何か御見解はございますか。
  191. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 靖国神社国家護持につきましては、自民党として一応の案があるわけでございますが、その場合の靖国神社国家護持——神社という名前が使ってありますが、御承知のとおり、これは宗教行為をなすものではないという前提のついたものでございます。そういうものが自民党として一応あるということでございます。私は信教の自由ということと抵触をしないものという形においてこれを受け取っておるということでございます。
  192. 木原実

    ○木原委員 この問題につきましては、たいへんきびしい問題があるわけでございます。したがいまして、自衛隊に望みたいことは、おそらく善意に基づいてやられたにいたしましても、事はあまりにも個人の一番根源的な問題に触れる問題ですから、かりそめにも、いわばわれわれから見れば善意に基づく軽はずみなこの種のことをやってもらいたくない、こういう希望が強いわけでございます。したがいまして、具体的になっております問題につきましては、早急に善処をして対処をしていただきたい。それから慰霊その他のことにつきましては、やはり自衛隊は最も厳粛な国家の機関でございますから、この動作、行動等につきましては十分な自戒を望みたいと思います。
  193. 前田正男

    前田委員長 ただいま参考人として、元全日空機接事故調査委員会委員長山縣昌夫君が出席されました。  なお、御意見は質疑をもって聴取することといたします。木原実君。
  194. 木原実

    ○木原委員 それでは、山縣先生の御出席をいただきましたので、雫石の事故調査にかかわる問題について二、三お伺いをいたしたいと思います。  特に長官は、昨年の七月末、雫石事故の問題に逢着をされまして、就任日が浅かったわけでございますけれども、政治的な責任をおとりになって退任をするというような経験を得られました。自来一年を経過をいたしまして、つい先般私どものところにも雫石上空での衝突事故についての詳細な調査報告をいただくことができました。拝見をいたしまして、たいへん御努力のあとが見えておりまして、関係者の方々に敬意を表したいと思います。ただ、そうではございますが、あれだけの大きな事故でございましたし、報告書を拝見をいたしますと、二、三やはり疑問に感ずること、これからの措置等について幾つかの問題があるやに思いますので、お伺いをいたしたいと思います。  山縣委員長、さっそくお出ましをいただきまして、早々でございますけれども、具体的なことからお伺いをいたしたいと思います。  私どもがいただきましたこの白いほうの報告書の中の最後のほうの部分、六六ページの「推定原因」という結論の後段の部分がございます。これを通読をいたしますと、あの事故の一番大きな背景の中には、きわめて明らかなことでありますけれども、衝突をいたしました自衛隊の教官機が民間のジェットルートに入って機動隊形の訓練をやった、こういうことが言えるかと思うのですが、その際になぜ教官機がジェットルートに入り込まなければならなかったのか、こういうことについての解析が私は不十分なような感じがいたすわけであります。近接をした空域でございますから、この種の演習訓練をやれば、逸脱をして入り込むだろうという予想は少なくとも立ったのではないのか。それにもかかわらず入っていった、そして事故になった、なぜ教官機がジェットルートに入り込まなければならなかったのか、その辺がこの報告書では何か不十分な感じがいたしますけれども、御見解はいかがでしょう。
  195. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 お答えいたします。  ただいま御指摘がございました六六ページの「推定原因第一の原因は、教官が訓練空域を逸脱してジェットルートJ11Lの中に入ったことに気がつかず機動隊形の訓練飛行を続行したことである」。それでこの理由ですが、「このことは、教官が指揮した機動隊形の旋回訓練には、上下、左右、前後に非常に大きな飛行空間を必要とするものであるにもかかわらず、比較的狭い訓練空域で高々度において地文航法のみによって訓練を行なったため、正確な機位の確認ができなかったためと考えられる」、これがいまの御質問に対する御答弁でございます。
  196. 木原実

    ○木原委員 当日、臨時に新しい空域が設定をされている。当時も問題になったことですけれども、新しく空域を設定したほどですから、あの種の訓練をやれば逸脱をするだろうという判断は当然なければならなかったわけですね、隊長なりあるいはその教官なりに。それなのに、ともかくある意味では予測されたとおりに、ジェットルートの中に入っていって事故を起こした。つまり、予測は立たなかったのか、予断は立たなかったのか、あるいはわかっていてやったのか、こういう今度の事故を追及する場合の前提の問題が私はあるような感じがするわけであります。ところが、報告書を拝見いたしますと、いまお答えがございましたように、何かその辺は比較的さらりとお触れになっているような感じがするわけですが、いかがでしょうか。
  197. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 ただいまの御質問でございますが、御承知のとおりに、われわれといたしましては、事実を事実として検討いたしました。いわゆることばははなはだ悪いですけれども、犯罪捜査というようなことはやらないたてまえになっております。  そこで、いま御質問がございました、比較的狭い訓練空域で、しかも高々度において地文航法のみによって訓練したということ、その背景ということまでは、われわれといたしましては、この報告書に書いてございません。また、ただいま申し上げましたように、私ども犯罪捜査というたてまえをとっておりませんので、その点につきましては、この報告書では触れてないということでございます。
  198. 木原実

    ○木原委員 それはそうかもわかりません。それならば、これは防衛庁のほうにお伺いいたしたいのですけれども、事故調査報告書を拝見いたしましても、あの事故の状態を調べる際に、どうしても前提になります一つの問題は、なぜジェットルートに近接をして臨時に訓練空域までつくって——危険な訓練であることは、おそらく経験上もわかっていたと思うのですけれども、なぜそういう危険なところに隣接した空域をつくったのか。そういう政治責任といいますか、そういうものが残るような感じがするわけです。もはやこういう形になったわけですから、責めるとすれば、やはり、そういう危険性があるにもかかわらず、危険が予測されたにもかかわらず、そういう空域をつくって訓練をさせた、こういう責任は残ると思うのです。その点については、何か防衛庁として御反省がございましたでしょうか。局長、いかがです。
  199. 大西誠一郎

    ○大西説明員 自衛隊の訓練空域につきましては、従前から、航空交通が非常にふくそうをいたしております空域を避けまして、設定をいたしておったわけでございます。あの東北の空域におきましても、ジェットルートの中心線から五ノーチカルマイル離れた空域の範囲内で訓練をやるようにということで、常設のものとして五カ所の訓練空域が設定されております。     〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕 たまたま当日は訓練量が若干多うございましたので、臨時に横手の空域を指定いたしましたが、横手の空域につきましても、ただいま申し上げたと同じような原則で設定をされておりまして、訓練空域の設定という点においては、間違いなかったのではないかというふうに考えております。
  200. 木原実

    ○木原委員 空域の設定は間違いなかったというのですけれども、間違いなかったというはずの空域をはずれてしまって飛び込んじゃったわけです。  それでは、空域の設定そのものを前提としてお伺いしますけれども、当時、民間のジェットルートと訓練空域と隣接した場合に、その関係についてきちっとした律するものが何かあったのですか。飛び込んではいけないという一般的な規定はありますけれども、そういうふうに民間ルートと自衛隊の訓練空域が接近をしていた場合に、その関係をたとえば塔乗員に示すような具体的な規制その他のものが、何かあったのですか。
  201. 大西誠一郎

    ○大西説明員 パイロットは、訓練空域で飛行する場合に、まず自分の位置を確認をするということが命ぜられております。それから次には、航空路なりあるいはジェットルートを横切るときには、直角に横切れという指導がなされております。その点につきまして、今回の事故において、教官機の行動に適当でないものがあったということは、私どもも事故調査報告で示されているとおりであると思います。
  202. 木原実

    ○木原委員 これはあとでもう少し触れたいと思うのですが、空域を設定するような場合には、たとえばパイロットに失敗があったにしてもなお安全だ、こういうような設定上の原則というものがあると思うのです。ところがやはり、これは事故が起こったから結果論で言うわけではありませんけれども、パイロットの責任で自分の位置を確認をして、入ってはいけないのだよ、これだけですね。それだけでは本来不十分だと思うのです。人間ですからミスをおかすこともあります。しかしミスが起こってもなおかつ安全だという設定のしかたをしなければならないのだと思います。悪く解釈をすれば、われわれ激しい訓練をやっているのだからかまってはおれないのだという、かりにもそういう考え方があって、制約をされた空域の中で広い空域を設定ずるわけですから、いろいろな制約はあったでしょうけれども、空域の設定について、そこに安易なものがなかったかどうかということは、これから先の問題として私は聞いておきたいと思います。いかがでしょう。
  203. 大西誠一郎

    ○大西説明員 航空事故の防止のためにいろいろな手段を重ねて措置をするという必要があるということは、ただいま先生がおっしゃいましたとおりでございます。私どもも、航空安全対策を立てる場合に、単に個人の注意力に依存するということではなくて、やはり航空事故に関連しそうなあらゆる条件において、安全であるように配慮をしなければならないということは、そのとおりでございます。したがって、この場合におきましては、訓練空域の中で、非常に立体的に、あるいは平面的に多くの空間を所要する形の訓練を、あそこの横手の北の空域で行なわせたという点については適当でなかった。それから、したがいまして、今後の措置といたしましては、運輸省と協議をいたしまして、事故以来さらに、航空路あるいはジェットルートから分離をするという原則をシビアに貫くということで、訓練空域を主として洋上のほうにいま設定をいたしている次第でございます。
  204. 木原実

    ○木原委員 あわせてお伺いをいたしたいのですが、報告書の最後の勧告のほうの部分に、これからの措置としては、航空交通管制区もしくは航空交通管制圏、そういうようなところでは、特殊なジグザグな飛行をやらないような法的な措置をとるべきだ、あるいはまた逸脱防止の措置をとるべきだ、こういう勧告が出ております。これらについては、こういう勧告が出たわけですが、何かこれから具体的にお考えになるおつもりはありますか。これは航空局長と両方からお伺いしたいと思うのです。
  205. 大西誠一郎

    ○大西説明員 空域の問題につきましては、航空局長からお答えがあると思いますが、現在、訓練空域を設定をいたしまして、そこの中で特殊な訓練を行なう。さらに基地から訓練空域に至る途中の経路でございますが、これも回廊を設けまして、ある高度、ある空域、あるいはある時間というものを制限をして航空機を飛ばすということをやっております。しかしながら、その訓練空域あるいは回廊から逸脱をするというようなことが万々起こらないために、現在、航空自衛隊が持っておりますバッジにスコープを追加をして設定をするとか、あるいはビデオマッパーの装置をそれに加えまして、レーダーで航空機を監視するという体制を現在とりつつございます。
  206. 内村信行

    ○内村説明員 ただいま防衛庁のほうから大西参事官が御説明申し上げたいとおりでございます。まず第一に、私どもといたしましては、交通分離、異種交通を分離していこうということを確立いたします。そのために、先ほどちょっと御説明がありましたが、訓練空域というものを設定いたしまして、これは航空路等から離しまして、それと、先ほど先生がおっしゃいましたように、たとえちょっとはずれても無事なようにある程度バッファーをとりまして、そして完全な分離をいたしたいというふうなことでございます。そのほかに、さらに特別管制空域というものを設けまして、いわゆる管制空域におきましては、従来は、VFR、つまり有視界飛行の場合には、管制の指示を経ずに自由に目で見ながら飛べるということでございましたが、特定の交通のわりにひんぱんなところ、ふくそうしているところにつきましては、有視界飛行といえどもなお管制の指示を経るというふうな空域を設定いたしまして、いわば交通指示というものをしっかりやる。それによりまして規制を行なうというふうなことをいたします。  それからさらに、今後、航空法の一部改正によりまして、さらに姿勢をひんぱんに変更するものはどういうふうな規制を受けて飛ばなければいかぬとか、いろいろ種々交通規制に類するものをいたしましたけれども、遺憾ながら先国会では継続審議になりまして、成立の運びに至りませんでしたが、そういうことも、事実上、防衛庁とのお約束あるいは一般の行政指導によっていたしたい、こういうように考えております。
  207. 木原実

    ○木原委員 私に与えられた時間が残念ながらだんだんございませんので、ひとつ答弁を簡潔にお願いしたいと思います。私も簡潔に伺います。  具体的にこれからの問題としましてたいへん気になりますことは、成田が開港になりました場合に百里との関係ですね。百里にはおそらくすでにファントムが配置をされているわけですが、言ってみればファントムを中心にした実戦部隊が配置をされる。そうしますと、これは私の推測ですけれども、当然飛び方は訓練のようなぐあいにはいかないと思うのですね。相手は何も海からばかりやってくるわけではありませんから。具体的にそれじゃ、百里にたとえばファントムならファントムを中心にした実戦部隊が配置をされて、それがさまざまな、多様な飛び方をすると思う。その場合に、非常に離発着の頻度の多い成田空港の空域と隣接をするわけですけれども、これらの関係について何か新たに規制を考えていくとか、あるいは対策を考えていくとか、そういう方向はお考えですか。
  208. 内村信行

    ○内村説明員 御指摘のように、成田空港ができますと、百里との関係が問題になってまいります。私どもといたしましては、この成田の空域と百里の空域、これは完全に分離していくという方向で考えております。すなわち、それぞれの進入、出発経路、これは完全に分離いたします。そしてこれらの経路を使用いたしますに際しましては、あるいは高度により差をつけるとか、あるいは前後左右の間隔を完全にとるということを考えまして、完全に安全性を確立いたしたい、こう思っております。  さらに、こういった問題については、IATAのほうのいろいろな御要望もございますけれども、それについても大体了承をとりつけておるわけでございます。
  209. 木原実

    ○木原委員 防衛庁のほうで、いま局長からああいう御答弁があったわけですが、それじゃ、実際にスクランブルをやる、実戦配置につく任務の完遂ができますか。
  210. 大西誠一郎

    ○大西説明員 ただいま航空局長からお答えがございましたように、百里基地における管制業務につきましては、新東京国際空港が運用を開始する時点においてもう一度見直す。見直すにあたりましては、民間航空と自衛隊航空の運用に抵触しないという点で調整をするということになっております。ただいま御指摘がございました、たとえばスクランブルというような場合でも、進入あるいは帰投の経路というものをあらかじめ幾つかきめておきまして、そしてその中において、自衛隊から飛行計画の承認を運輸省の飛行管制部のほうに出しますと、運輸省のほうで、民間航空の交通状況を判断しながらそれを承認する、出発をさせるということになっておりますので、いかなる訓練態様をとりましても、民間航空の交通の安全と自衛隊の任務との間に大きなそごが起こるということはなかろうかと思っております。
  211. 木原実

    ○木原委員 これは私は必ず将来問題が出てくる可能性は含んでおると思うのです。きょうは時間がないから、あまり詳しいことは詰めませんけれども、私が要望しておきたいことは、昨年の事故のこともそうですけれども、いずれにいたしましても、たいへん限られた空域の中で、しかも非常に過密な、相互の飛行機が入り乱れる、こういうう状態。しかも実戦部隊を配置をする百里なんかの場合においては、そうおっしゃいましても、いつもきまったところから相手が来るわけではありませんから、つまり、スクランブルの動きと民間の頻度の多い動きについての分離というおことばがありましたけれども、これはことばではなくて、かなりシビアなきびしい措置をとる。場合によれば、私はやはり、民間優先という前総理のことばがこの事故に関してあったわけでありますから、思い切って百里が移転をするなり成田を取りやめるなり、どちらかを選択すべきだと思うのですが、それぐらいのきびしい条件があるように思います。したがいまして、このことにつきましては、さらに両当局で、おそらく話し合いは円満に進んでいるのだろうと思いますから、きびしく問題を詰めてもらいたいと思います。  それから、時間がございませんので急ぎたいと思うのですが、山縣先生にこれはお伺いをいたしたいと思いますが、調査の過程の中で、今度の事故に関連をして三沢にあるバッジというのは有効に働いていたでしょうか。お調べになりましたでしょうか。
  212. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 三沢のバッジシステムにつきましては、私どものほうの当時の委員会の管制グループの方が二回たしか訪問したと思いますが、その際、当局の方の御説明、またいろいろな資料を拝見さしていただきました。その結果は、私どもがこの報告書を書きますための資料として役に立つものはございませんでした。したがいまして、この報告書には全然触れておりません。
  213. 木原実

    ○木原委員 レーダーシステムが有効に何か資料を提供するような要件がございましたでしょうか。
  214. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 その問題につきましては、実は私どもからお答え申し上げるよりは、自衛隊のほうから御返事申し上げたほうがいいかと思います。また私から申し上げるべきではないと思いますので……。
  215. 木原実

    ○木原委員 バッジのシステムもレーダーも、自衛隊の任務に基づいて多額の金をかけて配備をされているわけなんですが、しかしこれは、いずれにいたしましても空の監視についてかなり高い機能を果たす、こういう前提があります。そうして、これはまた当然のことですけれども民間にさまざまな協力があるということは、規定の問題を越えて、規定以前の問題としてあると思うのですね。今度の事故のことに関連をしまして私どもの知り得た範囲の中では、一体バッジがどの程度に動いていたのかさっぱりわかりません。それからまた、いまも山縣先生からお話がございましたけれども、レーダーには当然何か残るはずでありますけれども、レーダーが十分な何かを立証しているのかどうか、これまた私どもにはわからないわけなんです。自衛隊のほうとしてはいかがですか。
  216. 大西誠一郎

    ○大西説明員 先生御承知のように、航空自衛隊のバッジシステムは、領空侵犯に対する措置の一環といたしまして、対空の監視あるいは要撃機の誘導ということを任務といたしております。もちろん平時はそれ以外にも要撃訓練の管制ということをやっております。しかしながら、航空管制業務というものについて任務を与えられておりませんので、ただいま申し上げました種類の航空機以外につきまして、これを監視するとか、あるいは航跡を追跡するというようなことはいたしておりません。したがいまして、あの事故が起こりましたとき、全日空機が、千歳から函館を経由いたしまして盛岡の上空に差しかかったその過程におきまして、当時たくさんの飛行機が飛んでおりましたから、三沢のレーダーにもいろいろな航跡が映っております。しかし、それが全日空のものであるかどうかという点につきましては、それをなかなか識別するということはできなかった次第でございます。
  217. 木原実

    ○木原委員 私ども、何か不可解な要素が残るような感じがするわけであります。限られた任務というのはわかりますけれども、あの種の事故の問題について考えますと、片一方は自衛隊機ですから、自衛隊機の航跡はおそらく追っていたのではないか、また追うべきではないのか、こういう感じがするわけであります。しかし、それがどうも十分な機能を果たしていなかったのではないかという疑問が、いまお答えを聞きましても率直に残るわけであります。したがいまして、これからのバッジその他の運用につきましては、自衛隊独自の任務を持っておるわけでありますけれども、しかし何もいま戦争をやっているわけではありません。何よりも空の過密のほうがおそろしいわけでありますから、少なくとも自衛隊機を飛ばしたときには、この自衛隊機が正確に安全に、ほかに被害を与えないように飛んでいるのかどうかぐらいな検証は、私はやってもらいたいと思うのです。そういうことも感じますので、これらの問題につきましては、バッジの運用、レーダーシステムの機能の強化、こういう面について格段の御配慮を願いたいと思います。あまり任務の分担をきびしくし過ぎて、民間だ、自衛隊だといって、金の出ているところは同じなんですから、働き方につきましては十分に運輸省のほうとも御連絡をとっていただいて、全体の安全のために自衛隊も働くのだ、こういう観点をひとつつくり上げてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 大西誠一郎

    ○大西説明員 ただいまの説明、ちょっとことばが足りなかったので、あるいは御理解を得なかったと思いますが、あのときの自衛隊機は航空教育集団に属しておる飛行機でございまして、レーダーサイトが追跡をし管制をする航空機の部隊は、航空総隊の所属の部隊でございます。     〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、いま先生がおっしゃいましたように、訓練といえども、つまり要撃訓練以外のものについても、ジェット機のような高速のものについては、そのレーダーの機能を活用して航空安全のために使ったらどうかということは全くごもっともでございまして、私が先ほど申し上げましたように、事故が起こりましてからレーダーサイトに指示をいたしまして、要撃管制の訓練以外のものについても、航空自衛隊のジェット機のほうについては極力レーダーサイトで見ていろ、また、そのために器材をつぎ込み、あるいは人の手当てをするという措置をやっております。また一般の運輸省の航空路の監視につきましても、これは国会等でも御指摘がございまして、自衛隊の防空レーダーを活用できないかということについて、従来、緊密に連絡をして御協力を申し上げております。
  219. 木原実

    ○木原委員 同僚に迷惑をかけますので、あと山縣先生に推定原因の第二の(1)と(2)のところを少しお伺いをいたしまして終わりたいと思います。  この報告書によりますと、「全日空機の操縦者にあっては、七秒前から視認していたと推定されるが」、こういう文章があるわけでございます。そしてこのあとで、「全日空機操縦者が訓練機と接触すると予測しなかったためと考えられる」、こういうことばが続くわけであります。ここで一つお伺いをいたしたいのですが、これはいろいろなケースが考えられるわけですね。操縦者が予測していても、どうしていいかわからない場合もあったんじゃないか。機長はそういう訓練を受けていない。あっと思っても、どうしていいかわからないという判断もあっただろう。あるいはまた逆に、接触すると考えていたかもわからない。しかしそれは記録に残ってないわけですね。したがってこういう判断の文章が出たんだと思うのですけれども、こういうふうに判断をされました根拠というのはいかがでしょうか。
  220. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 ただいまの六六ページの第二の原因の(1)のことでありますが、これは五七ページのところから出ておりまして、五七ページのまん中からちょっと上のところ、「全日空機操縦者が訓練機との接触を予想し得たか否かについては、いろいろの要因が考えられ、正確な推定は困難であるが、およそ次のようであると推定される」。ここにございますように、いまお話がございましたとおりでございまして、われわれといたしましては、このパイロットの心理的の問題、環境の問題、いろいろございまして、少なくともこの七秒前には訓練機を見ていたろう、しかし、その七秒前から接触するまでに、一体全日空機のパイロットがどういうふうに考えたかということにつきましては、これは何ら証拠もございませんし、確定的に申し上げるということは委員会としてはできないということで、いま私が読み上げたとおりの表現になっております。しかし、いま一応考えてみれば次のようなことであろう、こういうことでございまして、六六ページのこのことは、「全日空機操縦者が訓練機と接触すると予測しなかったためと考えられる」。結果的に予測しなかったと考えられる。しかし、その予測しなかった原因が何であるかということにつきましては、これもことばは悪うございますけれども、たとえば不可抗力であるとか、あるいは過失であるとか、そういったことまではわれわれとしては詰め得なかった、こういうことでございます。
  221. 木原実

    ○木原委員 しろうとでございますからあれですが、たとえばローリングをやっていたかもわからない。しかしそれは記録がないということでございますね。そうしますと、この飛行機が積んでおりましたフライトのデータ、これが五チャンネルだ、こういうふうに承っておるわけですが、少し古いんじゃないかと思うのです。この間イギリスで何か事故が起こりましたときには、十九とか二十五とかのチャンネルのあるものを使っていたというような情報を私ども耳にいたしましたけれども、もしそうであるとすれば、これからの措置の問題として、フライトのデータの精度の高いものを備えるべきだ、こういう勧告などをなさったほうがよろしいんではなかったかと私は思うのですが、いかがなものでしょうか。
  222. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 このフライト・データ・レコーダーが旧式のものであると、私、考えておりませんけれども、むしろそれよりは、この勧告にございますように、六九ページの上からたとえば四行目の、接近警報装置、衝突回避装置、こういった直接的なものを開発するような努力をしていただきたいというのは、私どもの当時の委員会の意向でございます。
  223. 木原実

    ○木原委員 もう一つ。今度は推定原因の(2)のほうに移るわけでございますが、教官のところがございます。第二の原因の(2)のところでございますけれども、これは私ども一番大事なところだと思って精読をいたしましたけれども、端的に一つお伺いをいたしたいと思います。  教官の全日空機視認がおくれたということなんでございますけれども、なぜおくれたのか。この教官は、首を少し振れれば、少なくとも数十秒前からこの全日空機が視界に入る、そういう位置にいた。それらを考え合わせますと、どうして視認がおくれたのか、あるいはまた何秒前に訓練機に対して回避指示を与えたのか、これらのところが若干不足しているような感じがするわけですが、いかがでしょうか。
  224. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 全日空機を視認するのがおくれた、これは隈一尉の証言にございますとおりに、隈一尉が、推定でございますけれども、大体、接触前二秒か三秒前に、全日空機と訓練機が衝突するおそれがあるということを視認いたしまして、そこで回避の命令を出しておるわけでございます。  それから、いまの御質問の、その前から見ておったのではないかということでございますが、それにつきましては、隈一尉は見ておらなかったということを言っておられます。これに対する反証というものはわれわれとしては見出せなかった。しかし、この六四ページの(14)でございますけれども、「教官にとっては、訓練機の方を見ていれば、少なくとも接触三十秒前から注視野内に全日空機が存在していた」。でございますから、ここにございますように、教官が訓練機のほうを見ておれば、少なくとも三十秒前からは全日空機が見えたろう、こういうことは言えると思いますけれども、はたしてそういうふうに三十秒前から数秒前までの間に教官が訓練機のほうを見たかどうか、ここの証拠と申しますか、事実をわれわれはわかりませんものですから、訓練機のほうを見ていれば全日空機の存在が視認できたということだけを言っているわけでございまして、その点は最終的な結論がわれわれとしては出なかったということであります。
  225. 木原実

    ○木原委員 私はやはり、一番微妙な、一番大事なところじゃないかと思いましてお伺いをしているわけでございますけれども、全日空機の操縦者のほうは生命を失って、いないわけでございますから、残されたデータに基づいて科学的にできる限りの解析をする。しかし、自衛隊機のほうは、教官、訓練生を含めまして幸いにして存命をいたしておる。おことばにございましたように、証言に基づいて判断をする。そうしますと、人間的な要素といいますか、やはりそういう要素がどうしても入りがちだと思うわけでございますね。そうしますと、われわれもまた可能性について追及をしなければならないということになると思います。  先生がお示しになりましたように、あの飛行機の構造からすれば、ちょっと首を振れば、訓練機のほうを見ておりさえすれば、少なくとも三十秒ないし二十秒前からは確実に全日空機が視界に入っているはずだ、こういうことは御指摘のとおりだと思いますね。しかし、それにもかかわらず、二秒前に回避の指示を与えておる。その間に一体何をしていたのだ、こういう問題が実は私どもとしては残るわけでございます。残念ながらそこらの点について、この報告書は、いわば責任を追及する、犯罪を追及するという立場ではございませんので触れてないという、おそらくそういうことでございましょうけれども、私どもとしましては、その間に依然として大きな問題が残っている、こういうふうに考えざるを得ないのでございますけれども、そのように考えることは少し行き過ぎでございましょうか。いかがでしょうか。
  226. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 決して行き過ぎとも私ども考えません。しかし、私どもといたしましては、何らそれを証明すべき証拠と申しますか、そういうものがございませんので、こういう書き方になっておるわけでございます。
  227. 木原実

    ○木原委員 これで終わりたいと思いますけれども、そのことに関連をいたしまして、「法的検討」という項目の中に、法的措置について航空法施行規則その他についての所見を求めたところ、六八ページの、「衝突回避のためいかなる措置をとるかは、エアマンシップの問題である」、こういう回答があった旨の記述がございます。エアマンシップということばが実は出てまいっておるわけでございます。  昨年、この事故の直後に私どもは連合審査を開きまして、当時さまざまな問題を追及しました中に、この事故が、一つは自衛隊の訓練の内容にかかわるような体質の問題に関連をしておるのではないか、こういう問題を指摘をしたことがございました。また同僚議員からは、この衝突は当然予測をされた事故ではなかったか、あるいはまたニアミスについては、しばしば自衛隊機のほうからしかけると言うと語弊がありますけれども、つまりある種の民間機を標的にしてニアミスをはかるというような疑いがあるのではないのか、こういう指摘も行なわれたところです。この報告書を拝見をいたしまして、山縣先生、私があれこれと憶測をするのは必ずしも行き過ぎではないという御判断をいただきましたけれども、一番大事な二十秒ないし三十秒の間に肝心の教官機は一体何をやっていたのかという問題が残る。この残された時間、二十数秒の時間の中に、私はやはり自衛隊としてきびしく戒心をしてもらわなければならない問題が残っているのではなかろうか、こういう考えを抱くわけであります。決してこの事故が標的を追ってしかけられた事故だ、そういうふうに私はいま考えたくはございません。しかし、当時さまざまな指摘が行なわれたのは、これは当局の関係者の方々はお聞きのとおりだと思います。そうして事故調査報告が出ましたこの段階でも、やはり少なくとも、このあるいは事故が回避されたかもわからない二十秒ほどの間に、ポイントを握る教官が何をしていたかということについてのデータは、本人の供述以外には何も出ていないということなんです。この残された問題については、結局は防衛庁自身が、これからの訓練その他の問題としてきびしく詰めていく問題が残されているのではなかろうか、こういうふうに考えるわけなんですが、いかがでしょうか。
  228. 大西誠一郎

    ○大西説明員 ただいまの三十秒から二秒までの間に自衛隊の教官機が何をしておったかという御質問でありますが、これは私どもも、隈一尉の供述、また、その供述を基礎にしてつくられましたこの報告書以外に根拠はございませんけれども、やはりその見張りが不十分であったということに尽きるのではないかと思います。  ただいままた、この報告書の「法的検討」のところを御引用なされましたが、これにつきましては、ここに書いてあります「所管官庁の見解を問い合わせたところ」という点から、おそらく運輸省ではないかと想像いたしますが、ここに引いております航空法施行規則の条文と、それからここに書いてありますエアマンシップということばを並べて判断いたしますと、非常に特殊な状況であったので、とっさの臨機の措置をとるということがエアマンシップであるというふうに私どもは判断をいたしておるわけであります。
  229. 木原実

    ○木原委員 私は、エアマンシップということばが出ておるということは、少なくとも二十秒余りの間にとらなければならなかった措置ができなかったということも含めて、教官のほうにエアマンシップにもとるものがあったのではないか、こういうことを実は申し上げたかったわけなんです。しかし、これは先ほど申し上げたことで終わりにいたしたいと思います。  最後に、山縣先生にお伺いいたしたいと思いますけれども、いまも見張り義務の問題が出ました。勧告の中でも、見張り義務についての勧告が行なわれておりますけれども、今度の事故につきましては、全日空機の操縦者の側に見張り義務を怠ったという疑い、そういうものがあって勧告をなさっているのでございますか。全日空機の操縦者が行なったであろう行為については、たとえば見張りの件についてはどのように御判断をなさいましたか。
  230. 山縣昌夫

    ○山縣参考人 御指摘のとおりに、勧告のところに「他の航空機等と衝突しないように見張りをしなければならないよう法的に明確化する」ということがございます。この勧告がどういう理由で出てきたかということでございますが、この事故調査に約一年かかったわけでございますが、ありとあらゆる面から一応検討いたしました。その場合、当然見張りの問題も出てまいりました。そこで結論的には、見張りということはこの報告書ではほとんど書いてございません。と申しますのは、この結論、推定原因がこういうふうなものになっておる関係で、見張りということが直接問題とはわれわれは考えることができなかった。しかし、いま申し上げましたように、ここまでに至ります間にはいろいろなことを検討した。やはり見張りというものは非常に大切で、現行のように、航空法では裏から言っておると申しますか、非常に明確化しておらないわけですが、やはり衝突を避けるということになりますれば、これは当然民間機も自衛隊機もそうでございますが、やはり何らかの方法で見張りを厳重にしなければならぬ、そういうことを法的に明確化してほしいということでございまして、最後のこの報告に直接見張りという問題を関連づけてはおりません。その過程において見張りということはいろいろ議論されたので、やはり見張りというものはしっかりしなければいけないのじゃないかというので、こういう勧告になった、こう御了承いただきたいと思います。
  231. 木原実

    ○木原委員 これで終わりたいと思いますが、山縣先生には、たいへん事故調査委員会の委員長としてお骨折りいただきまして、敬意を表したいと思います。  それからこれは長官に。たいへん長官にはかかわりの深かった事故だと思います。いまあらためて事故調査報告が出たわけでございますけれども、この報告書をどのようにお受けとめになっていらっしゃるか、所見を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  232. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この報告書全体を防衛庁としては謙虚に受けとめまして、ことに勧告の事項などは、すみやかにこの趣旨に沿う措置をとるというふうに考えておる次第でございます。
  233. 木原実

    ○木原委員 終わります。
  234. 前田正男

    前田委員長 次に伊藤惣助丸君。
  235. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官にお伺いします。  きょうは、最近、基地問題、あるいはまた四次防の問題など、時局の問題でたいへん大事な問題がありますので、私は、いままでの同僚委員の質問との重複を避けながら、簡単に質問したいと思います。  一つは四次防の問題、それから沖繩のSR71の問題、さらに沖繩における爆弾輸送、米海兵隊の道路使用の問題、また緊急輸入兵器の問題、北富士演習場返還の問題、辺野古基地を含む土地強制収用の問題、こういった問題について若干の質問をしたいと思います。  初めに防衛庁長官に伺いたいのですが、この八月一日の四次防の主要項目について、これは御存じのように、増原防衛庁長官が就任なさいまして、一番先にこのことを原案として発表なさいました。私は、この四次防の主要項目を見まして、これは中曽根原案と変わっていない、ただ中曽根原案をペースダウンしたにしかすぎない。その証拠には、開発兵器あるいはその機種は何ら変わっていない。たとえば、ヘリ空母といわれる六機搭載の護衛艦については、今度は三機のにして二隻分の要求をしている、その間においては何ら変わっていない、こういうふうに思うわけであります。  そこで、この主要項目を読んでいきますと、三次防の延長であり装備の更新にしかすぎない、こういうふうにいわれておるわけでありますけれども、私は、まず防衛庁長官として、どういうような防衛構想のもとにこの四次防を発表なさったのかという点で、先ほど来聞いておったわけでありますが、あなたが防衛庁長官になりまして記者会見をやられて、長官としての考えというものを私は新聞で見ました。それによりますと、新聞記者の質問はこういうことなんですね。今度の構想というものは、三次防の延長、更新ということで、中曽根原案の自主防衛というものと違うはずだ、こういう質問に対しまして、あなたが答弁したのは、「中曽根君の案は説明の仕方がカラフルなので、そういう印象を与えがちだが、内容は基本的には変っていない。自主防衛といっても、四次防ぐらいでは米国の協力援助なしに日本は守れない」、こうあなたは答弁されております。要するに、中曽根さんははでにおっしゃったけれども、実際は内容というものについては基本的に変わっていないのだ、というあなたの考え方はここにあるわけですが、その点ではどういうふうに思われておるのか。もう一回、この点を伺っておきます。この新聞報道が間違いなのか、それともほんとうにこのとおりと思っているのか、いかがですか。
  236. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その新聞のあれは間違ってはおりません。ただ、そのときの質問と答えの主眼点からいってそういうふうな言い方をしたのですが、御承知のように、四次防というものは、いわゆる中曽根原案、防衛庁原案として発表をされて、そうしてこれが昨年来論議をされて、そうして、本来ならばおそくともことしの三月三十一日までに国防会議で決定をしなければならぬものが、決定をされないで持ち越された。その間に四次防というものについて、御承知のように、四次防基本方針を国防会議で定められたわけです。その定められた基本方針というのは、すなわち三次防の延長である、三次防と同じような構想で基本方針がきめられたということがあるわけでございます。そういう点をちゃんと前提に申し上げるべきであったのを、それを申し上げなかったということで、いまお尋ねのようなふうにお考えになったことは当然だと思います。それはたいへん私の説明の手落ちで、二月七日に四次防の基本方針がきまりました。それには三次防のあれだということで出ておる。私がそのときに申したのは、中曽根構想というものの持つ、いまおあげになった主要品目などについては大体そういうものを踏襲をしていっていいと思う。もとより削減をするということはそのあとで申し上げておるわけです。そういう意味で申し上げて、たいへんことばが足りなかったという点で、それに書いてあることはそのとおり言うたことは間違いありませんが、私のつもりはそういうことであったということを釈明さしていただきたいと思います。
  237. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、前段の説明があったけれども、しかし、内容は中曽根構想と変わっていないということは事実であるということですね。
  238. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 そのいわゆる目玉といわれたようなものですね。そういうものについては、これを改めていくというふうな考え方はないのだということを言うたつもりなんです。
  239. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たくさん聞くことがありますから、要約をひとつお願いしたいと思うのですが、要するに前防衛庁長官からは、もっぱら守るところに一切の焦点を合わせていく専守防衛ということを常に強調しておったわけであります。しかし、四次防というものが三次防の二倍以上、しかもそれが、五千億減ったとしても、実際にはやはり三次防の二倍強であることに変わりない。そういう点から、兵器の近代化だとか、あるいはまた新機種の開発によりまして、朝鮮だとか大陸に進出し得る航続距離の長い艦艇とか飛行機というものを調達することは専守防衛のワクを越えるのではないか、こういう心配を実は国民はしておったわけですね。そういうような質問に対しまして、あなたはこう答えていますね。「敵が攻めてくることがはっきりしているとき、実際に攻撃されるまで待っていられない。敵の基地をたたくこともある。だいたい「専守防衛」なんていい方は間違いで「戦略守勢」ということなんだ」、こう明確に出ておりますが、先ほど大出先生の質問にも、それは違うという話を聞きましたけれども、私はこの点も確認しておこうと思ったのですが、この点はいかがですか。先ほどの答弁ですと、何か専守防衛と戦略守勢ということが同義語みたいなことを長官おっしゃったように思うのですが、その点いかがですか。
  240. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いまの受け答えの中には、私が言ったことが全部ではなく、省略をされておる面があるのですね。それとちょっと私の言い方が間違っておったかもわからぬが、私がそう言うたのじゃないと思うのは、敵の基地をたたくとは私は言わなかったつもりなんです。出てくるところをたたくということもあるという意味で申したわけです。私は、さっきも御質問に答えましたように、専守防衛ということばを言いかえて戦略守勢と言うたのではないのです、そのときは。専守防御ということばが使われておるけれども、これは少し観念として狭い感じを与え過ぎるから、ことばとしては、戦略守勢ということばが適当だ。これは私が考えついたのではなくて、防衛庁の係の者から聞いたことばであります。そういう意味で、戦略守勢というのと専守防衛というのと違った意味を持ってはいない、これは先ほどもお答えをしたとおりでございます。そういう意味でそのお話をしたというふうに御理解を願いたいと思います。
  241. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私、その辺ごまかしてもらいたくないのですがね。私、新聞というのは、自分が質問したこともよく読みますが、非常に正確ですよ。インチキを書いたなんて一回も思ったことはありませんよ。私も、これもちゃんと時間をとって長官に聞いて、そして同じようなことがやはり一流新聞に出ておるのですから、私はこれはことばの間違いではなかろうと思うのですよ。私は、そのことについて率直に明快に言うべきだと思うのです。何も、間違いであったとか、そういう意味ではないなんていうめめしいような発言は、これからの防衛庁長官としてやっていくときにあたって、長官がそれなりに、われわれも増原長官はタカ派だと思っておるのですから、もう堂々とおっしゃっていいと思うのですよ。そうしてそのことが国民の間で議論をされて、どうしてもまずいというならば、これはまた考えていろいろ言うべきじゃないかと思うのですね。ですから私は、いいかげんなことを言っているのじゃなくて、御存じのように、何回も何回も線を引いて、そんなことがあるかなと思って読んだ。長官だって、自分のことが書いてあれば、全然見ないわけじゃないでしょう。もしこれがほんとうに間違いだったら、私は、新聞社に電話をして、間違いだからと訂正ぐらいの抗議だってしたっていいはずだ。この中にはちゃんと、専守防衛は間違いだ、戦略守勢というのが大事なんだ、こういうふうに明確におっしゃっているわけですよ。実はそういう意味ではないなんということをいまさらおっしゃられても、何かぴんとこないわけですよ。  そこで、戦略守勢ということについては、いろいろ前からも議論されてきました。そしてちょうど船田長官の時代にも、あるいはまた岸総理の時代、こういった時代についても、座して死を待つよりは先んじて攻撃する、このこともいわば防衛の範囲である、こういうふうな議論は国会に出ていますよ。そういうことを踏まえて長官はおっしゃったと私は思うのですよ。ですから、この考え方がほんとうにこうなのか。あるいは前江崎長官が言ったように、戦略守勢ではなくて、ことばは私はいろいろな使い方あると思いますけれども、とにかく専守防衛という、そのワク内での四次防を考えるということなのか。いま言ったような戦略守勢という考え方に変えるのか。その点を明確に伺っておきたいと思います。
  242. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 先ほどの質問者にもその点答えたのですけれども、繰り返して申し上げますが、ものの考え方は、専守防衛といい戦略守勢といい、同じ意味に私は使っておるということでございます。  その記事が出ましたあと、防衛庁の記者クラブでも、懇談の席その他でその問題を話題にし、私があるいはそのとき言い間違いをしておったかもわからぬがということも言って、私は、専守防御ということではなくて、戦略守勢というほうがいいんだというふうに言うたつもりだが、間違いがあったかもしらぬ、心持ちは専守防衛と戦略守勢とは同じ意味に私は使っておるんだということを話をして了解も得たのであり、その後の委員会における質疑にもそういうことを言っておるわけでありまして、ごまかしておるのでは決してございません。
  243. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実はここで発言した間違いだというのは間違いなんですか。専守防衛は間違いで、戦略守勢であるということなんだとおっしゃったことは、これは間違いなんですか、そうしますと。
  244. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私は、専守防御というのではなく戦略守勢というほうがいいと言ったつもりですが、そのときは、あるいはそういうふうに言ったかもわからぬ。言ったかもわからぬとすれば、それは言い間違いをしたことであって、私の意図するところではないということで了解を求めたということであり、その後の御質問に対してはそういうお答えをしておる、こういうことでございます。
  245. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この議論をまたやりますとだいぶ長くなりますから、私はこれでやめますが、増原長官はこれで三回目ですね。三回目というよりも、一番最初の保安隊ですか、あのときの、まあいわば自衛隊の創立者の一人ですね。そして前回、残念ながら一カ月そこそこであの大事故の問題でおやめになりましたが、それ以来から見ますと、三たび防衛庁長官になられたわけです。そうしますと、しろうとの長官なら私はわかるのですが、専門家がそういったことについて、私の言ったことが間違いだなんということはちょっと考えられない気がします。だけれども、いずれにしても、どこまでも専守防衛というものは専守防御ということであり、それが戦略守勢であるというふうにおっしゃるなら、それで私はとりますけれども、しかし、そうなりますと、江崎防衛庁長官が言うのは、どこまでも専守防衛に徹し切っていく。当時すでに、それにはやはり憲法上の問題もある、あるいはまた防衛力、自衛力の限界、これを明確にする必要があると常々言っておったわけでありますが、あなたの発言は、これによりますと、次の段階に出てきますが、自衛力の限界なんということは相対的なものである、きめられるものじゃない、こう言っていますね。その点はいかがですか。
  246. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その点、本日の先ほどの質問者に対してもお答えをしましたように、防衛力の限界というのはなかなかきめにくい、相対的なものであるということを申したわけであり、その点はいまもそう考えておりますが、しかし、そうした問題であっても、さらに考えを煮詰めていきまして、現在の国際情勢の推移、特にアジアにおいて国際情勢の推移がいまのような緩和の傾向を続けていくという前提に立ち、米国との安全保障条約を一つの背景にするというふうな前提に立って防衛力の限界ということを考えてみようではないか、むずかしいかもしらぬが考えてみようではないかということで、係の者にその旨を伝えまして、その検討にかかった、そのときそういうことを申したことはそのとおりでございます。そういうふうにただいま考えておるということでございます。
  247. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 前国会においてこの四次防の問題が大きく問題になりました。そうして現在では新規開発機種の凍結ということが実際あります。ですからこれは、非常に慎重に四次防の防衛庁案というものは発表すべきだろうというふうに考えておりました。発表されたものを見ましては、何のことだかあまりよくわかりませんけれども、しかし内容的には変わっていない。このあなたの発言からいっても、どうも訂正はなさいますけれども内容的には基本的に中曽根案と変わっていないとか、どこまでも戦略守勢に基づいてこれから考えていくとか、あるいはまた自衛力の限界については、相対的なものだからきめることが無理なんだということが、あなたの長官としての考え方。しかしながら、どうしても自衛力の限界というものを出せというなら、それを出して検討させているというふうにおっしゃって、いわばわれわれ野党及び国民に対して示せと言われたから、やむなく、では何とかしようかというような感じの、そんな考え方での防衛力の限界ということについて検討しているということであれば、私は大問題だと思うのですよ。  といいますものは、わが国の防衛というものについては、常にどこまでいくのかということ。いままでは、陸が八合目であるとか、海が五合目だとか、その中間が空であるとかいうようなことをいわれてきましたけれども、しかし、そういったことについても、八合目というのは富士山の八合目なのか、あるいはもっと高いヒマラヤ山脈の八合目なのか、あるいはまた五合目とはどこの五合目なのか、そこら辺だって実際は明確ではないわけですね。  そこで、一番国民が心配している点は、防衛力というものが、一次防から始まって二倍、そうしてこうきたわけですね。四次防についても二倍以上です、間違いなく。そうして開発機種は全然変わっていない。私は、ここで防衛庁がほんとうに国民に対して自衛隊を理解させ、そうして四次防についてあれだけ問題になった点からいいましても、国民の納得できる自衛隊というものについて考えるならば、四次防を出す前に、自衛力の限界はこうあるべきだ、そこから出発してすべてのことに言及していくということが基本ではないか。また国民の立場から言うと、それを一番望んでいる。それが、防衛力の限界がわからない、四次防が最後なのか、五次防が最後なのか、六次防になるのか、七次防になるのかわからない。中曽根さんのときにはいろいろな批判はあったけれども、四次防といわない、新防衛力整備計画である、十年間のうちの前五年分である、こうおっしゃっている。あなたの答弁はここでは、中曽根さんははでに言ったけれども、しかし実際中曽根さんと内容は変わってない、こういう答弁をしている。それで、その自衛力の限界についても、前々からわれわれが強く防衛庁に要望し、言い続けてきたことであります。そのことについても、あなたが長官になっても、その自衛力の限界については、さっき言ったようなニュアンスの形で検討していると言われたのでは、私は今度の四次防についてたいへん疑問を大きくするわけであります。その点についてどう長官は考えられますか。
  248. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その談話にこだわるわけではございませんが、その話をしましたときには、まだ防衛力の限界ということが強い問題としては出ていないときで、いわゆる中曽根原案というものは、十年先の防衛力というものが限界であるというふうに受け取られて質問応答が行なわれたというのが、そのときの実情でございます。しかし、その後、いわゆる中曽根原案というものを、緊張の緩和なり財政経済情勢の見通しが悪くなったという支うな重要な要素とからみまして、考え直していかなければならぬ、基本方針も変更をされるということになりまして、削減案というものを考えたわけであります。削減案というものはそういう意味で、中曽根原案と同じです、そういう意味でないことは当然でございます。さっきも申したように、主要項目について中曽根原案にあるようなものを持ってくるということを申したということでございます。そういう意味で、いわゆる原案についての検討という形の——これはその前に、西村長官のときに考えられた一案というものがあるわけであります。そういうものを踏まえていまの四次防の案というものをつくった。その段階で、私申したように、いま伊藤委員の申されましたような趣旨で限界というものを出すことが、国民の理解を得るためにも必要であるということで、むずかしいことではあってもそれはやってみる必要があるということを考えまして、係の者にその作業を命じた、こういうふうになっておるわけでございます。
  249. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 きわめて大事なことですから、いつごろまでに出すのですか。それから、先ほども答弁があったかと思いますが、いわゆる四次防の原案を今度は国防会議にかけて正式に決定するわけですね。いっごろをめどにしているのか。それからあなたは、最近の国際情勢は緩和されている、しかしながら、直ちにそのことが四次防を組みかえるとか、あるいは変更するということにはならない、やはり国際情勢というのは十年ないし十五年という周期で見るべきだと、こうおっしゃいましたが、あなたの考えでは、それじゃ十年、十五年後にはまた、やはりいままで以上に緊張が高まるというようなことも想定しているというか、頭の中にあるのですか。
  250. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 第一の、限界はいつごろまで出すか、あるいは四次防をいつごろまでにきめるかというお話ですが、四次防につきましては、国防会議議員懇談会で六月三十日に、夏以後なるべく早い時期にこれをきめるという申し合わせができております。夏以後なるべく早い時期という意味は、八月末を目途とするということであったということであります。だからそれに従ってやってまいりたい。もとより八月末ぎりぎりにきめるということではありません。若干のおくれが出るということは、こういうものとしてはあり得ることである。そういう意味で八月末を目途としてまいりたいということでいま準備を運んでおるわけであります。  防衛力の限界につきましては、これは早いほうがいいわけですけれども、なかなかむずかしい作業でもありますので、いまのところ、できれば年内くらいには、作業をいま督励をしましてめどをつけてみたいというふうなことを考えておるわけでございます。
  251. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど、基本方針を変えるというふうな、ちょっと私の聞き間違いかどうかわかりませんが、一発言したように思うのですが、その点はいかがですか。
  252. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 基本方針というのは、二月七日に四次防の基本方針を国防会議できめた、そのことでございます。これは中曽根原案のときの方針は、十年を一つ見て、その間の五年ということで四次防をつくる、これは一つの基本方針です。それを、三次防と同じような考えで、すなわち三次防の延長として、新しい交代のものは、能力の高いいいもので力はふえるということでございまするが、三次防の延長としての整備というふうになった。それが、四次防としては初めてつくった基本方針ですが、中曽根原案で考えておった基本方針とは変わった、こういう意味でございます。
  253. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのほかもろもろ聞きたいのですけれども、次の質問もありますから、一応四次防の問題について了承したわけではありませんけれども、少なくとも私は、防衛力の限界というものを先に明示して、さらにほんとうに国防の基本方針についても、前には、変える、変えない、変える——官房長官とか関係閣僚とともに、じゃ事務次官クラスに話を広げて何とかするとかしないとか、あいまいになって現状のままになっておる。こういう問題も実はあるわけですね。ですから私は、この四次防と取り組む前にいま一番大事なことは、とにかくいろいろな問題を総洗い直しまして、新たな見地から、防衛構想とか、また基本的な考え方について、長官は特にそういった点を明確にしておくべきだ。要するに、この四次防というのは三次防の更新、三次防と同じであるということ自体が非常にナンセンスな表現ですよ。じゃ三次防の延長であるということについて、やはり新機種の問題とか、足の長いものとか、いろいろ買っているわけですから、それだけじゃ納得できないものがあります。どういう防衛構想でいくのか。やはり長官としては、三次防の改定、更新という五年間であるといっても、ただそれだけでは何ら意味がない。要するにそれだけでは、ただ単に装備のための防衛構想だ。防衛というのはそうではなくて、やはり一つの多極的な——軍事力偏重になるような、そういう防衛構想であってはいけない。やはり、経済または国内体制の調整の問題、社会投資の問題とのバランス、あるいはまた経済発展、こういうもののワク組みの中で考えていく。  ですから、そういう三次防の更新あるいはまた延長だというふうに言うならば、やはり増原長官としては、新たな防衛構想はこうなるのだというような一つの考え方を示すべきだ。中曽根さんのときは、ずいぶんとカラフルに言いましたけれども、いろいろ批判された。しかしながらちゃんとした目標を持っていた。あなたの場合は、何年間を一つの山として、たとえば今度の三次防の改定はどこまでも延長するのか、あるいはまた何年間をめどにしてどこまで整備するのか。報道によりますと、陸上は十八万でいいとか、海上は三十五万総トンぐらいまででいいとかあるいはまた飛行機については、千二百から千三百機、このくらいがいいとかおっしゃいますけれども、それは何年間であるのか。それを十年間でやるなら中曽根構想とはあまり変わらない。それとは違うのだと否定しながら同じようなことを言っている。だから私はわからないということを言うわけです。その問題はいろいろあります。ありますけれども、自衛力の限界などを先に示しながら、そうして四次防というものをまとめていくべきだ、こう私は強く主張しておきます。  ところで、防衛庁長官が、これは十五日の午前の経済閣僚懇談会の際に大平外務大臣から、日米貿易収支改善のために緊急輸入という面について米国製兵器を加えてほしい、検討してほしいという要請があったように私は新聞報道で知ったわけでありますが、この経過について伺いたい。そして兵器の緊急輸入についての対象となるものは何か。これはもう言うまでもなく、ファントムであり、あるいはまた、これから四次防の課題であるところのAEW、すなわち早期警戒レーダー機、あるいはまたPXLですか、対潜哨戒機、現在のP2Vの後継機、こういうものの輸入という問題については前々からいわれてきたわけですね。それを国産化するとかしないとかという議論があって、いまだその点ははっきりはしておりませんけれども、おそらくこういう点についても私は米国からは打診があるだろうと思います。そのほかにも、艦対艦、あるいはまた空対地、あるいはまた地対艦、こういうもののミサイルの輸入等についても話があるかもしれませんけれども、いずれにしても、私はいま早急に考えられることはファントムの問題です。ファントムが実は二十機買う予定が十四機に減った。それはいろいろなことがあったわけでありますけれども、このファントムという戦闘爆撃機というのは、アメリカではことし生産中止になる機種でありますが、わが国においては、四次防、五次防とこの十年間でその機種を購入していくわけであります。いままでも私はこの委員会において、防衛庁の未確認事項という中で、防衛庁ではアメリカから数々の兵器を買ったけれども、生産中止した機種を買ったがために、パーツが調達できなくて使えないという飛行機があることは私知っております。だから私は、この際に申し上げておきたい点は、ファントムなどを緊急輸入してくれというようなことが言われた場合、やはり将来の問題として、同じようにこういったことがあとあと起きるということが考えられます。そういった点も含めて、私、時間がないからずっと申し上げているわけですけれども、簡単明瞭に、また率直に答弁願いたいと思います。
  254. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 関係閣僚懇談会でアメリカからの兵器輸入のことで話があったという問題は、これはすでに前にも話のあったことでありまするが、防衛庁としてドル改善に資するための米国からの輸入にどれくらい寄与できるかという話がありました。そうしてそれは、いまの四次防が大体われわれの案のように認められれば、五年間で七億ドル強のものがあります。これはまだこまかい数字は当たっておりまするが、それがある。しかしそれを緊急輸入で、五年間ですから、一ぺんに輸入することはもちろんできないし、来年の分を繰り上げるというようなこともなかなかむずかしい種類のものでありますということを、そのときは答えたということでございます。  そして、いま御指摘をされた、米国で大体今年中で製造を終わるようなものをやると、あとパーツその他で困るぞというお話はそのとおりでございまして、これはしかし、いまああいう要撃戦闘機としての性能を、いわばアメリカだけではなく欧州方面にわたっても調べ、研究をしました結果、やはりファントムが要撃戦闘機としてよろしいということになってきまったものでありまして、パーツ類もやはりその点をちゃんと見越して注文をして買うというたてまえをとるものであります。いま買うことにきまったというのは、ファントムの偵察機RFといったものであります。なおそのほかに五年間に若干のファントムを買う。もう三次防で買うことがきまって、これから入ってくるものもまだファントムについてあるわけでございます。もう購入がきまって注文を発しておるものもあり、四次防でこれからきまるものはこれから注文を発するということでございまして、その点、パーツや何か困ることのないようにはちゃんと手配をいたしますし、今度ファントムをきめたのは、慎重な検討の結果、いまある飛行機の中でやはり一番日本の防衛戦闘機として適当であるという、検討の結果きまったものであるということでございます。
  255. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その場合、ファントム十四機ですか、だけの話になっていることですか。それとも次期戦闘機FXの選定についてはもう始まっているわけですから、現在アメリカで開発されておりますF14、F15、こういうものも新FXの選定の有力候補にあがっているようでありますけれども、こういった点も含めて検討をなさっているわけですか。
  256. 久保卓也

    ○久保説明員 RF4Eのほうは、現在、四次防の中では十四機で打ちどめという計画にしております。したがいまして、米側から別に話があるわけではありませんが、話がありましても、それをふやして購入するということにはなるまいと私どもは考えております。  それから、F14、15を含めての将来のFXの問題については、新聞でいろいろ取りざたされておりまするけれども、これは四次防の段階では、まだ格別準備段階として取り上げるものは全くございません。おそらく五次防段階では、F4の後継機としてどういうようなことをしなければいけないか、問題になってくるであろうと思います。
  257. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 早期警戒レーダー機AEW、それからP2Vの後継機、この点はいかがですか。
  258. 久保卓也

    ○久保説明員 P3などについて、アメリカはあるいは、日本側に買ってほしいという希望があるかもしれません。これは具体的にP3の名前が出たことはございませんけれども
  259. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 P3じゃないでしょう。
  260. 久保卓也

    ○久保説明員 これは、P2JのPXLにかえてという意味でのP3でありますが、具体的な名前は出ておりません。  あるいは、AEWのようなものは、日本がこれから開発するということですから、場合によっては米側で要求を持つ可能性はあると思います。しかしわれわれのほうは、この四次防の計画の中で、また現実に四次防を実施する過程の中で、いまの計画を変える意思はございません。したがって、AEWについては、今後四次防から五次防にかけての研究開発を進めますが、ただ、AEWの開発を慎重を期する意味で、三年後ぐらいにAEWのチェックポイントを設けて、国内での開発が十二分に可能であるかどうか、その時点では見きわめたいというふうに考えております。
  261. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 じゃ、いままでのとおり、国で国産化するという基本方針は変えていない、しかしその時期においては、三年間くらいの猶予期間を見て、そしてなおかつ日本においてその開発が不可能ならば緊急輸入もあり得るということですか。
  262. 久保卓也

    ○久保説明員 三年後チェックポイントを設けるということは、現在のいわゆるフェーズドアレー方式というものでいまのC1を基礎にしてAEWの開発を考えておるわけでありますが、いまの方式がだめな場合にどういうような方途でいくか。別の開発をするのか、あるいは外国のものを輸入するのかということは、その時点で考えらるべきことだと考えます。ただし、かりに国内開発はどのような方式をとろうとも無理である、外国のものを購入すべきであるという結論が出たと仮定をいたしましても、四次防で手当てをするゆとりはございません。
  263. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はやはり、この武器の問題については、長期的展望に立っていろいろものを言ってくると思うのですね。ですから、今度の日米会談のときに、緊急輸入問題について、もうすでにきまっているR4Eの偵察機の購入だけのことについて米側が打診するとは思えない。やはり新たな機種、そしてまたAEWなどというのは、まあ一部報道によりますと、国内開発すれば百億かかる、こういう話もありますですね。輸入すればホークアイというものは六十億程度だ。またPXLというものは、非常に長距離の、B29のような大きなものになってしまって、これまた開発に二百億かかる、こんなこともいわれているわけですね。やはりこれは、われわれはそんなものは持つべきではないと思いますが、政府の土俵に立って考えてみた場合でも、あまりにも国内における開発というものが高ければ、やはり国民の税金を使うわけでありますから、しかも一機くらいじゃどうにもならない、特にAEWが完全な性能というものを発揮するには二十機くらい必要である。あるいはまたP3の問題についても、完全装備するには数十機必要である。こういう多額な国内開発だったら最初からやるべきではない。むしろそうであるならば、そういうものについては輸入とかということを検討することも大事じゃないか。われわれは反対ですよ。反対ですけれども、皆さんの立場に立った場合でも、私はそう思うわけです。今回の打診が、四次防の原案が出てはおりますけれども、私は、八月末までにはきめられる、きめてハワイ会談に乗り込むということだろうと思いますが、その場合、原則的にちゃんとした四次防というものが決定されない前に、またされない時点できめておることは、これはたいへんなことだと思うのです。そこでやはり長官として基本的に、そういう話が出た場合にはどう対処するのか。いま言ったようなことの中で、長官が私はこう思うという点について御答弁願います。
  264. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 日本で一応開発をしたいという方向のものも、それを考えまする場合に、何でもかんでも国産にしようという考え方は、いま政府防衛庁はとっておりません。したがいまして、同じような目的のもので輸入すればたいへん格安なものがあるというときに、無理に国産をやろうという方針はいままでもとっておりません。十分その点は仰せのとおりに考えてまいるつもりであります。  緊急輸入の問題については、現在四次防で考えておりまする輸入分、それ以外に、たとえば国産でやるものに考えてずっときておるT2というようなものを今度輸入に切りかえるというふうなことは、いま考えてはおらないということでございます。何でもかんでも、高くても何でも国産でいくという方針では考えておらないということでございます。
  265. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 おそらくミサイル関係の買いつけについても言ってくるだろうと思うんですね。いま「あまつかぜ」に積んでありますターターではなくて、今度新しく護衛艦一隻に艦対艦ミサイルをつける、そのことなんかも実は入るだろうと私は思います。それから、現在開発中である空対空、あるいは地対空のミサイルなどの購入などの話もあるんじゃないかと思うのですが、その点どんな話があったか。内容についてわかればお話しいただきたい。
  266. 久保卓也

    ○久保説明員 ミサイルの話は全くございません。ただ、ターターについては、DDGをこの四次防期間中一隻つくることになっております。三次防でもつくりましたが……。したがって、これは当初の四次防計画の中でターターを購入する予定にしております。  それから艦対艦のミサイルは、これはアメリカにも実はございませんで、アメリカも、さしあたってはヨーロッパのものを輸入、もしくはヨーロッパのものをライセンス生産しようかというような方向でありますので、これは現在日本でやるとしても、開発を進めてはおりますが、装備というものとしては、四次防段階ではヨーロッパものということになります。  それから対空ミサイル、これは短距離の対空ミサイルでありますが、これはたしかアメリカでは該当するものはないと思います。アメリカでも研究開発中のものでありますので、われわれもそれを米側から買うというものはございません。  それから空対空のミサイルについては、スパローは最初はノックダウンで購入いたしますけれども、あとは国産。  それからファルコンについては、AAM2型という国産のもので代替をするという方針で進んでおりまするし、五十一年度もしくは五十二年度ごろから装備ができるということでありますので、当初の間、各種の実験用に一部のファルコンを購入することはありますけれども、これは当初の四次防計画に織り込み済みのものでありますから、特にあらためてそれを非常に量をふやして購入する余地というものもこれまたないということで、しいてあげればASMということでありましょうが、これも四次防では装備することを考えておりませんので、購入の対象にはなるまいというふうに思います。  したがって、米側から話はないのでありまするが、かりに可能性を考えてみても、私がいま申し上げたようなことで、あまり可能性はないように思います。
  267. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官、その点、いまの久保局長の答弁のとおりですか。  それで私は、この緊急輸入について一番心配いたしますのは、このファントムをもう少し買ったらどうだとか、数が少ないから五次防分まで約束しようとかという、実際買わなくても次の五カ年計画に影響を与えるような、そういう約束事なんかも私は憂慮をするわけでありますが、そういった点について長官、どう思います。
  268. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 そういうようなふうの話は、いままでもちろんありませんし、ありましても、そういうものをここでえらい計画変更をしてやるということは、ちょっとやるべきではなかろうというふうに考えております。
  269. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、大平外務大臣から打診はあったけれども、何もしないということですね。これから相談されても、総理に言われても、防衛庁としては、この兵器の購入、緊急輸入については何ら対象はない、こう明確に言えますか。
  270. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 大体そういうことでございますが、ちょっと伊藤委員のおことば強いようでございます。われわれとしては、現在四次防で計画のものをしさいにお示しをするということを約束をした、それ以外のものについては、ちょっと緊急輸入のものはございません、こういうことでございます。
  271. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、沖繩の嘉手納飛行場にSR71という偵察機がございますが、この点について伺いたいと思います。  このSR71という偵察機はマッハ三・三ぐらいで飛べる飛行機である。そうして、ワシントン、七月十六日のAPで報道した記事を読みますと、この米空軍の超音速偵察機SR71がマッハ三、すなわち音速の三倍以上のスピードで新記録を樹立した、そしてこの二人の乗員が十八日に空軍の最高飛行勲章を授与された、こう出ております。この新記録は、昨年の四月二十六日に米国の中、西部上空の高度約二万四千メートルで行なわれて、同機はマッハ三以上のスピードで約十時間半、二万四千キロの距離を飛び続けた。この飛行距離は、サンフランシスコ−パリ間往復に相当する距離である。いろいろこう書いてありますけれども、このSR71はロッキード社の製品でチタン合金を使っておる。それで米空軍の最も誇る新鋭偵察機として有名であります。  この偵察機について伺いたいのですが、現在この偵察機は嘉手納に四機ございますけれども、この四機の偵察機が現在偵察活動が行なわれているかいないか、その点伺いたいと思います。
  272. 久保卓也

    ○久保説明員 具体的に承知をいたしておるわけではありませんが、偵察活動は行なっておると思いますけれども、その頻度あるいは海域、空域その他については、了承しておりません。
  273. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 偵察しているということであれば、どの方面を偵察しているか伺います。
  274. 久保卓也

    ○久保説明員 従来私どもの承知しておりますのは、黄海、東シナ海、それから朝鮮半島という空域であったと思います。
  275. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 偵察活動が他国の領空を侵犯するということは、これは国際法違反になりますか。
  276. 高島益郎

    ○高島説明員 当然なります。
  277. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 北朝鮮とか、あるいはまた北ベトナム領空を侵犯するような偵察活動は、安保条約のワク外の行動であると思いますが、その点いかがですか。
  278. 高島益郎

    ○高島説明員 安保条約を含めまして、いかなる条約も、国際法違反を容認するようなことは書いてないはずであります。
  279. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もし国際法違反の行為を米軍がわが国の基地を使ってやっていたとした場合、日本政府はこれをどうしますか。
  280. 松田慶文

    ○松田説明員 政府といたしましては、SR71偵察機の活動を含めまして、米軍が国際法にもとるがごとき行動はしていないと承知しております。
  281. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その偵察活動をしていないということはどうして知ることができますか。
  282. 松田慶文

    ○松田説明員 御承知のとおり、沖繩返還交渉の過程におきまして本件がクローズアップされたことは、先生よく御承知のとおりでございます。その交渉の過程におきまして、日本政府といたしまして、米国政府に照会し、問いただし、そのような確認を得ている次第でございます。
  283. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは八月十五日の新聞報道です。UPI共同によりますと、「沖繩の米軍事筋によると、沖繩の日本返還後も米軍のSR71スパイ偵察機は引続き沖繩から秘密任務に飛立っている。同機の中国上空のスパイ飛行は、ニクソン米大統領の中国訪問前に中止されたが、同筋は、北朝鮮へのスパイ飛行は、日本政府の同意のもとにいまも定期的に続けられている」、こういう報道がございますが、この点いかがですか。
  284. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘のような、UPI沖繩発、ロバート・ケラーという記者の署名入りの記事が流れていたという事実は承知しておりますが、諸般の意味におきまして、本件報道は正確でなく、特に日本側の同意を得ていると思われるという部分は全くの事実無根でございます。
  285. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、まさかこんなことを、秘密取りきめなんかによって、秘密電報か何かによって同意を与えておる、こんなふうには考えたくありません。ただしかし、もうすでに御承知かと思いますが、公明党は、沖繩の米軍基地を含めて全国の基地再総点検を現在実施中であります。SR71の飛行機がはたして領空侵犯をしているかどうか、その点についても現在調査中であります。しかしながらこういう報道もあり、この点については、あらためて外務省としても否定しているわけでありますが、わがほうとしても、これをある一定期間にわたりまして調査をいたしました。その調査結果は、毎日SR71は午前十一時ごろ、あるいはまた午後一時ごろ、こういう時間に嘉手納飛行場を飛び立ちます。非常に飛行機が速くて、ファントム以上でありますから、すぐに宙返りをしながらそのまま東シナ海に消える、こういう感じの飛行が多いわけでありますけれども、その中で言えますことは、同じ飛行機が必ず三時間もしくは四時間かかって帰ってまいります。  それで私は、このマッハ三及びそれ以上の速さで飛ぶ飛行機が具体的に、マッハ一で飛んだ場合、二で飛んだ場合、どの程度まで行けるのかということについて地図で引いてみました。ところが、この赤い線でもおわかりになると思いますが、これは沖繩の嘉手納を中心とした線を引きました。マッハ一で飛んだ場合にどこまで行くか。行動半径です。マッハ一というのはどういうことか、音速の速さであります。もう少し正確に申し上げますと、高度一万メートルで温度が零下五十度で秒速が三百メートル、時速で千八十キロであります。ですからそれで見ますと、マッハ一の場合は一時間でこの線まで行く、二時間でこの線まで行くということであります。さらにスピードを上げた場合を考えますと、マッハ二をとりますと、一時間でこの線まで行く。この線とは中国で、北のほうを申し上げますとウスリー川、それから長春のはるか上、ウランホトですか。あるいはまた、こちらは重慶を越えています。さらにハノイ、ハイフォン、こういったところまでも一時間で行きます、マッハ二で飛んだ場合には。  ということになりますと、私は、この沖繩におりますSR71が三時間もしくは四時間飛んで帰ってくる場合、やはりどう考えてもこれは他国の領空を侵犯して偵察行動しているという疑惑が晴れないのであります。たとえば外務省が、沖繩米軍は絶対に他国の領空を侵犯しておりませんということを、あなた方がそれこそ米軍の立場にかわって幾ら申しましても、全くこのSR71についての情報は極秘中の極秘でありまして、このことについては、たいへん向こうは神経を使いまして、そばに行くことも関係者に話を聞くこともできない。しかしながら、そのSR71のことについては前々から問題になっておった。しかも、北朝鮮あるいは中国の軍事情報によりますと、しばしばSR71がわが国の領空を侵犯しているという報道はわれわれ読んでおります。ですから私は、このSR71が問題について、たいへん他国の領空を侵犯している疑惑がある以上は、外務省がどこまでもおっしゃるように、これは領空侵犯しておりませんというなら、この飛行任務、ブリーフィングというものを私は要求したいわけです。いかがですか。
  286. 松田慶文

    ○松田説明員 少し時間をちょうだいして御説明申し上げます。  私どもは、公式に米国政府から、SR71の活動が国際法にもとるものではないとの説明を受けておりますが、ただいま先生が御指摘になった状況証拠よりして、中国奥深く入っているに違いないというおことばに対します私どもの考えといたしまして、その問題提起に対する最も的確なお答えは、中国のSR71機問題に対する態度を見ることによってある程度推察できるかと考えます。  中華人民共和国は、ただいままでに四百九十七回の領空、領海侵犯が米国によってなされたと主張しております。そのうち数回は軍艦による領海侵犯でございますが、そのほとんどは飛行機による領空侵犯でございます。中国の場合、侵犯事件に際しましては、場所、時間等を明確にして北京放送で放送しております。その一部のデータをただいま持っておりますが、そのほとんどは南シナ海の西沙群島及びその付近、広東省付近の島ないしは海岸でありまして、SR71を名ざしで中共奥地に侵犯があったという事例を、中華人民共和国は過去五百回にわたって抗議の中で、ただの一度も言っておりません。また、この種の抗議が行なわれました最後は、昨年の十二年二十五日の抗議が最後でございます、その他、南の島の分も含めまして。  このような事実から、SR71が沖繩に配備されましてから、御承知のとおり約三年を経ておりますけれども、その間全く言及されていない。西沙群島といいますのは、フィリピンとインドシナ半島の間にございまして、いわば海上に浮かぶ小さな諸島でございますが、その上の領空侵犯だけは言っておりますが、ほかはほとんど言っていないという、このようないま申し上げました一連の事実からいたしまして、私どもは、SR71が中国大陸を侵犯しているということは全くないと確信しております。
  287. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は前国会において、SR71が偵察行動をしながら非常に戦略的な活動をする。すなわち、日本の東京都内でSR71に搭載する謀略宣伝用のポスターを印刷させて、それをSR71に搭載してまいている疑惑がある、この質問をしたことがございます。当然そのことは他国を侵犯している。あなたは中国にしぼっておっしゃっておりますけれども、高度二万メートル以上だったら、どんな飛行機か、そんなことは確認できませんよ。それと、中国だけじゃありませんよ。北朝鮮もある。しかもニクソン大統領の報道によりますと、この中国訪問前に中止されたということだってあるじゃありませんか。その後はしていないということも考えられるわけです。  しかも、SR71だけを私は申しましたけれども、じゃ、ほかの飛行機、領空侵犯をしているという飛行機はどんな飛行機ですか。またその飛行機が沖繩にいるとすれば、これはたいへん問題じゃありませんか。予想される飛行機はRB57、EC135、RB47、こういうような飛行機が常に電子戦争をやる、あるいは電波を傍受する。スクランブルをソ連と同じようにアメリカもやっております。アメリカも常に敵の電波をスパイし、あるいはまた電子戦争というのはもう始まっているんだといわれているような事実も、実は軍事的にあるわけであります。マッハ三ぐらいで飛ぶ飛行機、しかも二万メートル以上飛ばれた場合、それがSR71かどうかということは、私は確認は不可能だと思います。しかしながら、先ほど言いましたように、私がこの線で引きましたように、これだけ飛べるということ。たとえば南シナ海というものを偵察するならば、P3があるじゃありませんか。EC135という電子飛行機がいるじゃありませんか。ホークアイという、これまた早期警戒レーダー機がいるじゃありませんか。SR71はそうじゃない。世界戦略の立場から使われている。しかもこのSR71というものはペンタゴン直属ですよ。沖繩米軍の直接介入できないところに指揮系統があるのですよ。  中国についてはおっしゃったけれども、北朝鮮はどうなんですか。北ベトナムはどうなんですか。そういう点なんかもあるのですよ。いかがですか。
  288. 松田慶文

    ○松田説明員 北朝鮮について御説明申し上げます。  先ほどの答弁で申し上げましたとおり、SR71が沖繩に配備されて三年を経過しておると存じますが、最初の抗議は昨年の三月十五日に行なわれました。この場合にはSR71の名をあげての抗議でございます。昨年の三月に抗議が始まりまして、本年三月までに十回抗議がございます。それ以後は全くSR71に触れたことはございません。
  289. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ伺いますが、先ほど飛行機が領空侵犯しているという機種をあげて言った。どんな飛行機が領空侵犯したのですか。
  290. 松田慶文

    ○松田説明員 中国の場合でございますか。
  291. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうです。
  292. 松田慶文

    ○松田説明員 私が申し上げましたのは、SR71の名をあげて抗議はしていないと申し上げたわけでございます。
  293. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうじゃなくて、いままで中国が、何月何日にどこどこの上に飛行機が領空侵犯したと、そういう報道があっても、SR71はないとあなたはおっしゃった。
  294. 松田慶文

    ○松田説明員 重ねて申し上げますが、私は、中国は日にち、時間、場所をあげて抗議をした例はありますが、飛行機の機種、SR71ということに触れて抗議をした例は、北鮮の場合と違いましてございませんと、そのように申し上げたわけでございます。
  295. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから、飛行機の領空侵犯はあるけれども、それがSR71なのか、RBなのか、ECなのかわからぬというわけでしょう。
  296. 松田慶文

    ○松田説明員 そのとおりです。
  297. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから、可能性としてはSR71だって領空侵犯をしているということだって考えられるじゃありませんか。どうですか。
  298. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、SR71というのは非常に大きな国際問題となっておりましたので、北朝鮮の抗議と中華人民共和国の抗議とは同じ次元で論ずべきものと考えます。北鮮がSR71の名をあげて抗議しているのに比しまして、中華人民共和国の抗議は名をあげていない、ここに大きな差があるということを申し上げたい次第でございます。
  299. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ちょっと、わかるように言ってもらいたい、時間がないのだから。  いままで何回も領空侵犯した、しかしSR71は名前をあげていませんというが、逆にいえば、SR71も含めて領空侵犯しているのがあるじゃないですかというのですよ。北朝鮮は名前をあげているけれども、こっちはあげていない。それは確認というのは、どういうかっこうでやっているかわかりませんよ。わかりませんけれども、片やSR71をはっきりととらえたからこそ、SR71と言ったのかもわからないし、あるいは超高空から偵察された場合には、これは確認できませんよ。そういう場合は、機種不明であるけれども領空侵犯されたという発表はあるでしょう。要するにそれは、高度の問題で名前が出たり出なかったりするのじゃないですか。そういう点から考えまして、私が申し上げたい点は、国民の前にその疑惑を晴らしてもらいたいということです。  私はあなたにそんなことを言って、あなたに責任追及しているわけじゃない。ただ、沖繩の人たちが、また日本のわれわれが、SR71の飛行任務については何ら知らされていない。沖繩米軍についても、何を聞いてもノーコメントなんです。ですから私は、こういった問題について、ほんとうに領空侵犯していないというならば、そのSR71の飛行任務、そしてまた、どこまで飛んでいるということは軍事機密でしょうけれども、どんな任務説明でその搭乗員が偵察行動に従事しているのか、それを政府は日本国民にかわって米国政府に正式に聞いていただきたい、そう思うのですよ。いかがですか。
  300. 松田慶文

    ○松田説明員 二つお尋ねがあったと考えます。一つは、先般の報道に関しまして、政府としてはどういうふうにアメリカに問いただしたかという側面と、あとは、SR71の活動そのものについて明らかにするよう求めるべきではないかという二点だったと思います。  第一点につきましては、報道のありました十五日、その日のうちに在京米大使館に右の報道について確認を求めましたところ、全面的にそのような事実はないという否定の回答を得ております。  第二点でございますが、軍隊の活動でございますので、その任務の実行にあたり公表をはばかる諸般の側面があることは理解しなければならないと存じます。特にSR71を含むこの種の偵察活動につきましては、御指摘のとおり米側はその取り扱いにきわめて神経質でございます。沖繩交渉の過程におきまして本件をるる論じました際にも、米側といたしましては、国際法にもとることは絶対にない、そのような保証を一方で与えつつも、その具体的な任務の内容、行動等につきましては、当方の照会、質問等に対して応じ得ないという強い態度でございました。
  301. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、われわれが何らかの形で一つ一つ実態調査して、そしてこういう事実があるではないかといったときに限って外務省は抗議するわけですか。私がいま申し上げたい点は、国民の疑惑を晴らすためには、そうではないというなら、やはりそれなりの説明が必要だと思うのですよ。私はそれが外務省の役目だと思うのです。日米関係の信頼に基づいて、向こうがやっていないと言うからやっていないというふうに受け答えする、これでは日本の外務省ではない。アメリカの外務省になってしまう。ですから、どこまでもそういった点について、領空侵犯の疑惑があると私たちが指摘した以上は、そのことについて再度照会するなり、あるいはまた、そうではないという何らかの証明がなされなければ、やはり国民というものは、どこまでも疑惑を持ちつつ、常にSR71についてはそういう目で見るというふうになりますよ。そしてほかの飛行機について、ファントムといえども、KC価といえども、たいていの飛行任務、あるいはまたその戦略戦術上の問題については、これはもう司令官に聞けば明らかにわかる。しかしながら、このSR71についてのみは全くの秘密のベールに包まれておる。指揮系統が違う。本来ならば、日本にいる場合には在日米軍の指揮下に入る。たとえ日本に来ることができても、その指揮系統が日本にない場合には長期に滞在はできない、これは従来からの条約上の解釈じゃないですか。これは、この委員会で高島条約局長に私は質問して、安保条約の広義と狭義の問題について質問したときに、条約局長が明らかにした。そういった点から、このSR71の問題についてはどうするのか。私が言ったことに対して、向こうがどこまでも領空侵犯してないんだからいまのままでいいという態度をとり続けるのか。あるいはまた、私の指摘に対して、じゃ外務省は具体的にどう対処するのか、その点だけ明確にしてください。
  302. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  外務省といたしましては、先生の御質問をまつまでもなく、この種報道がありました段階で、さっそくに米国大使館へ照会しております。すなわち、国民の皆さまがSR71に非常に大きな関心をお持ちであるということは私ども重々承知しておりまして、この種報道があるたびに、私どもとしては、照会ないし確認の手だてをそのつどとっている次第でございます。  また私どもは別途このロバート・ケラーという記者がどういう人であるかも聞いてまいりましたが、私どもといたしましては、国際的ないしは国内的にきわめて著名な記者の方がお書きになったような場合はともかくといたしまして、率直に申し上げまして、そのクレディビリティーに問題があるような記事につきましては、その新聞記事の一々につきまして措置をとる、このようなことはいたしておりませんし、今回もいたしませんでした。ただ御指摘のように、放置していたわけではございませんで、米国大使館に問い合わす、これは先ほどから申し上げておるとおりであります。
  303. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これはまたあらためて問題にします。安保課長がどこまでも、米大使館に問い合わせて、やってないんだからやってない、そんなことでこの問題を処理しようとするところに、やはり基地問題で国民が基地闘争に入っていく大きな原因があるんですよ。あなた方が日米親善を考え、どこまでも安保条約を基調として、そしてこのまま米軍を駐留させるとするならば、やはりもっともっと国民に理解されるような窓口の役割りを果たさなかったら、外務省の価値なんかないですよ。あなたに言ったってしようがないけれども。  それでもう、事務局で時間が来ているというような顔していますから、申し上げますけれども、この間私は、沖繩の嘉手納基地と知花弾薬庫の中間にある沖繩県道第十六号線の弾薬輸送の件について質問しました。そのときは交通課長が参りまして、実態調査して報告しますということだったわけですが、その実態について簡単に御説明願いたいと思います。
  304. 片岡誠

    ○片岡説明員 前に当委員会で先生から御指摘がございましたので、直ちに沖繩県警本部を通じて実態調査させました。調査いたしました結果、先生御指摘のように、嘉手納基地から知花弾薬庫へ至る間に、一日に数回、一回一台ないし三台ばかりの車が県道十六号線を横断いたしております。その際、通行する場合にMPが立って交通整理に当たったり、あるいは他の交通をとめてその弾薬輸送をさせておったという実態がございましたので、直ちに所轄署であるコザ警察署から基地のほうの責任者に、一般車両に対してそのような通行どめをするという措置をするのはおかしいということで警告をいたしましたところ、現在のところは、MPはもうすでに立たなくなって、そしてただ道路の交通の流れを見て、米側の運転手が安全を確認しながら道路を横断しているという状態になっております。そういうことで、いまの交通量をもってすれば、このやり方で大体、安全を確保しながら、しかも日本の法規に従った形で通行が行なわれるということになるものと思います。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで交通局長、私、問題提起をしたいのですよ。といいますのは、私はやはり、道路を横断する場合に、弾薬ですから、いままではMPが立って民間車をとめて、その間に弾薬輸送をした。しかし最近はMPがいなくて、車がいないそのすきを見て、ぱっと渡るというわけでしょう。私はそのほうがむしろこわいと思うのですよ。私も沖繩にはもう十数回行っております。それで、あの道は何回も通りまして、そしてその遮断されたときにも何回も私はあっております。少なくとも時間にしますと五分から七分間とめられるのです。そのトラックたった一台通るにしましても、やはり向こうは慎重を期しているわけですよ。私は弾薬輸送は当然だと思うのですよ、そのくらい慎重に扱って。もし民間車がそこにスピードを出し過ぎて、とまろうと思ってもとまれないで衝突したり、あるいはMPもガードマンもなしに、弾薬輸送車だけが——あの辺は傾斜になっておりますから、見通しが悪い。しかしながらスピードを出す。それで沖繩県警では、その弾薬輸送のちょっと手前の林の中に隠れてスピード違反をとっているところだから、あそこは。そういう車のスピードの出るところを、MPも何もつけないでさっと渡るなんて、これこそ私は弾薬輸送についてたいへん危険な輸送をしているというように思わざるを得ないわけですよ。しかもこれは、一両通るのでも二両通るのでも三両でも同じです。大体、一飛行機について爆弾を輸送する場合、そんなトラックで何台も運ぶわけじゃないんですから。しかもこれからも一日に数回ぐらいは必ず毎日運ぶ。それが時間は不定期である。夜中の場合もある。朝の場合もある。昼間の場合もある。そういわれているところですね。  私はむしろ道路管理者に伺いたいのですが、知花弾薬庫と嘉手納基地というのはもう隣接しておりまして、県道を中間にはさんでこちら側に基地があるわけですね。それをガードなし、MPなしで、しかも道路を、車が走っていないところを見はからってさっと通る。弾薬輸送というのはのろのろ走るのですよ。しかも長いのと短いのとありまして、長いのを運ぶときにはたいへん時間がかかる。そういうような輸送を今後続けていくことは、これからたいへんこわい状態になることを私は憂えます。私はむしろ、MPでもガードマンでもいいから、きちっと整理してやるべきじゃないか。その場合に、やはり国内法に基づいて、米軍のいままでの慣習というものをそのままに認めないで、厳重に道路管理者が県警と打ち合わせした上でこの問題は処理すべきじゃないか、こう思うのですが、道路局長どうですか。
  306. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 ただいまの事案は道路管理者の仕事ではございませんで、交通取り締まりのほうの側の仕事でございますので、むしろ警察庁のほうの所管と思います。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、交通局長いかがですか。国内法を順守するあまり、非常に軽率な運搬を最近になってし始めたということに、私は問題があると思うのです。いかがですか。
  308. 片岡誠

    ○片岡説明員 できれば交通警察官が整理すれば一番いいと思いますけれども、いま申したように、時期的にも不定期であれば、必ずしも交通警察官がすべて立つだけの能力があるかどうか、もう少し調べてみたいと思います。しかし、そうだとすれば、できれば半感応の信号機で処理するのがあるいはいい方策かもしれません。つまり、いつもは十六号を青にしておいて、そして米軍の車が渡るときに、そちらのほうをとめて車が渡るという、そういう新しい信号機がございますから、いわば歩行者の押しボタンの信号機のようなものでございますが、そういうものをあるいは設置すればどちらも安全であるというやり方になるかと思いますので、検討したいと思います。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私そのとおりだと思うのですよ。基地がある以上、やはり地位協定などに基づいて彼ら米軍にいろんな面で便宜を与えていく、これは安保条約上の義務であると思うのですが、その場合、いま問題になっておりますが、国内法軽視の問題、国内法無視の問題です。条約上の義務だけを考え過ぎて国内法を無視し、基地問題でたいへん国民に疑惑を与えているが、こういう一連の問題の中で考えていかなければならぬ問題だと思うのです。そこで私は、そういう処置をする際でも、沖繩県警が交通局長のおっしゃったような形で国内法を尊重して、いままでの慣例をそのままいいとしないで、そして慎重に対処していただきたい、このことを要望いたします。重ねて答弁願いたいと思います。  それからもう一つあります。この写真は辺野古の一号の県道です。ごらんになってください。これは辺野古地域に駐留しております米海兵隊の演習の行軍です。すでに北ベトナムを想定していろいろ沖繩の基地は使われておりまして、それがいままでと何ら変わらずに使われている。これは現地に行って私がとった写真です。日本人が日本の県道を歩く場合でも、四列横隊で歩く場合には当然警察の許可が必要ですね。しかしながら、米軍はいままでと同じように何ら許可も受けないで、そして指揮官が、あるいは途中の先頭に立つ米軍人が、自動車の進行に立ちはだかって、帰れとか、向こうを通れとかという指示をしております。この問題も、大きな国内法を無視している米軍の実態一つですよ。  それからもう一つ、米軍の弾薬輸送。これも交通指導課長に調査していただきましたけれども、これも、一括して八月一ぱいで一千五百トンの弾薬を運びますというような簡単な書類で認可を受けて、いままでどおり弾薬輸送をしておるようであります。私は通常弾薬というものについては、安全だとはいっても、何かがぶつかれば爆発することは、いままでの例からいっても、あるいはまた航空機が墜落した際に爆発をしておる事実から見ても、これはたいへん慎重に考えなければならぬ問題だと思います。現在は、米軍から小禄運送ですか、これが一手にやっておるようでありますけれども、私はこの認可の問題についても、はたして国家公安委員会が、その爆弾輸送について火薬類取締法第十九条、第二十条に基づいて行なっておるかどうか。私の調査ではそうはなっていない。そのことについても交通局長どういうふうに思われているのか。私は少なくとも、沖繩が日本に返還になったが、米軍としてはいままでの習慣が抜けずに、ついいままでの慣例に従って輸送もしたり訓練もしたりしておると思うのです。しかしながら、やはりそこはけじめをつけることが大事だし、その監督者である警視庁においては、それはもう沖繩県民の立場に立って、また沖繩県民の安全という問題からいっても、これは厳重に国内法に基づいて米側に通告をし、また米側に対し一定の書類なり一定の届け出をきちっとさせるようにすべきじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  310. 片岡誠

    ○片岡説明員 仰せのように、沖繩が本土復帰してまだ期間が短うございますから、米軍の側にも、あるいは沖繩県の警察本部にも、従来の惰性と申しますか、慣行と申しますか、そういう空気があるいは残っておるかもしれないという危惧の念は持っております。したがいまして今後は、仰せのように、本土並みにきちっと国内法規を守れる、あるいは沖繩県民の安全の角度から十分考えて措置するように指導してまいりたい、そのように考えます。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは参考までにお見せしますが、これもそうです。観光バスをとめて完全武装の海兵隊が、自分たちがかって気ままに訓練をしておるという写真です。これはマスコミの報道ですけれども。これが、いわゆる沖繩県民に対してたいへん感情を高めているという実態がありますので、その点をさらに今後十分に調査をしまして、国内法尊重というたてまえから、国内で行なっている所定の手続を踏ませるように強く私は要望いたします。  それで今度は施設庁です。瀬長島の強制収用の件でありますが、この瀬長島の強制収用については、防衛庁では公用地暫定使用法の二条三項に基づいて強制収用した、こういうふうに私は聞いておりますが、これはもうすでに終わっちゃったということですか。
  312. 高松敬治

    ○高松説明員 瀬長島の問題につきまして、十二日にその土地の所有者十二名に対して、公用地暫定使用法第二条三項に基づく通知をしたということでございます。これは御承知のように、収用自身は二条二項の告示によってすでに発生をいたしておる。その告示は、四月二十七日、五月十一日に八十六件について告示が全部行なわれております。したがって収用自身はその段階において終了しておる。ただ、第一条にもありますように、なるべく賃貸借その他同意を得てやるのだというのがたてまえでございますので、そちらのほうを急ぎまして、あと残っているものにつきまして、瀬長島の十二名についてまず十二日に通知をいたした。通知をすることによって、今後賃借料の支払いなり供託なりという手続が始まっていく、こういうことでございます。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ということは、通知によってもうそれは終わったという意味ですね。したがって支払いについて次の段階に入るということですか。
  314. 高松敬治

    ○高松説明員 暫定使用自身の効果は、すでにその告示によって終わってしまっている。通知は遅滞なくやるようにというふうに書いてございますが、これがこの前の国会でも、この遅滞なくというのは、大体二カ月ぐらいのうちにできるだけ早くやる、これがおくれると、すでに使用のきまった人に対してかえって迷惑になるから、遅滞なくなるべく早くやれということでございました。そこで、もう二カ月過ぎましたので、私どもも、なるべく急いでやれ、八月末ぐらいに一応やれということで進めておりましたら、十二日にその一部についてそういう通知をいたした、こういうことでございます。
  315. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、告示が復帰前にもあったと思いますし、それに基づいて通知を最後にそれは終わった、だからあとは支払いについて話し合いをするのだということだと思うのですね。その次の段階で嘉手納とかトリイ・ステーションとか那覇の補助施設ということを考えていますが、これはどういう形で通知をやる考えなんですか。
  316. 高松敬治

    ○高松説明員 これも大体同じでございまして、特に、いままで契約を拒否されている人、それから所在の不明の方がだいぶございます。そういう所在の不明な方については公示をする。それから拒否をされておる人については、逐次調べてまいりまして、できるだけ契約に応じていただく。しかし、どうしても契約に応じられない場合にはそういうふうな通知をやっておる、こういうのをたてまえにいたしておるつもりでございます。
  317. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 聞くところによりますと、二十日前に通知を出すということでありますが、いかがですか。
  318. 高松敬治

    ○高松説明員 この次に何名どこに通知を出すかということについては、いま検討しているところでございます。必ずしも二十日というふうに日にちを区切っておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、二カ月ぐらいでできるだけ早く遅滞なく通知をするということを国会でも申しておりましたので、私どもとしては、事務はなるべく急いでやりたいというふうには考えております。
  319. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これはやはり瀬長島と同じような性格のもので、すでに告示が終わっておりますから、時間の問題で通知をやるのじゃないか。一説には、このことが、本庁と那覇防衛施設局との間に考えがお互いに通っていなくて、那覇防衛施設局が独断でやったということも新聞で見たわけでありますが、その点いかがですか。
  320. 高松敬治

    ○高松説明員 その点につきましては、いま申し上げましたような性格の通知でございますので、那覇防衛施設局としてはなるべく早くやれということを、私どものほうでずいぶん言われましたものですから、急いでやった。ただ私どもとしましては、公用地暫定使用法というきわめて異例な法律適用になるわけですから、そういうことについては、こまかく私のほうに申して、そして打ち合わせをした上でやるようにということに考えておりましたのですが、それが十二日の分はいきなりぼっと出ましたものですから、そういうことではいけない、この次の分からはきっちりそういうふうに処理をする、ただ急ぐという方針には変わりがない、こういうことでいま指導しております。
  321. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 施設庁長官は、同じような嘉手納、トリイ・ステーション、那覇補助施設については早急にやらなければいかぬという考え方で、これも数日中に通知をすることを考えていらっしゃるのですか。
  322. 高松敬治

    ○高松説明員 むしろその賃貸借契約の借料の支払いを受けられる方の便宜を考えて、なるべく早くそういう手続に入れるようにしたほうがいいということで急いでおるわけでございます。できれば今月中には大体のところ終わるようにいたしたいということで、いろいろ督励をやっております。ただ、先ほど申し上げましたように、元来が、第一条にありますように、できるだけ契約に応じてもらうということがたてまえですから、それと並行しながら事を進める、こういうのが基本的な考え方であります。
  323. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私、このことについて、いま質問したことを認めておるわけじゃないのですよ。ほんとうに沖繩の県民の方々は、あの二十数年間にわたる米軍施政下にあっても、一方的な接収にあいましても、二十数年間反対し続けてきたわけですね。そして契約に応じなかったわけです。それを防衛庁が行きまして、しかも公用地暫定使用法があるのだからといってこれをたてにとりまして、そして米軍ですらも、いまのような状態にしておいて何かのときには返還に応ずるような状態できたのに、今度防衛庁に提供する場合には、法律をたてにとって、通知をしたことによって終わったなんという、そういうたてまえでいくことは、私は非常に問題だと思うのですよ。やはりそういう歯どめにもなるように、公用地暫定使用法の一条二項には明確に、十分な話し合いをしなさいということが、だからこそ書いてある。だからこそつくったと私は思うのです。この話し合いが完全にされてない。そしてただ単にこの二条三項で適用した。これはもうおこるのはあたりまえですよ。  いま沖繩で問題になっておりますのは、防衛庁は話し合いに来ないというんですよ。米軍の場合はいろいろと言ってきたというんです。もう本土の人間というのは沖繩県民の心を無視している、もう少し沖繩の民族性を知ってほしい、これはわれわれが行くといつも訴えられることですよ。だから私は、何のための一条二項なのか。施設庁がいつまでもそうやっておけばお金も払えない、まあ強制収用した場合でも借料にかわる補償金をあげるのだからいいじゃないかと、ただ金だけで解決するという考え方、これは私は沖繩県民の感情をさかなでするものだと思うのですね。だから、もっと一条二項にある精神を生かして、あなたが今度新しく施設庁長官になったわけですから、かってにやって問題になったのですから、今度は言えということですから、だから同じようにやれということじゃないと思うのですね。十分に話し合いをしろ、向こうで誠意を尽くし、そしてなおかつだめだといった場合でももう一回話し合いに行けというのが、私は施設庁長官の立場だろうと思うのですね。そういう点からいっても、もう少し慎重に、この強制収用については、今月中なんて言わないで、この一条二項によって話し合いを繰り返しながら説得を続ける考えがあるかないか、伺いたい。
  324. 高松敬治

    ○高松説明員 先ほど来申しておりますように、いままで二カ月を一応めどにして国会でもそういうお約束を申し上げておったことがもう一月以上オーバーしてきているというのは、その話し合いがなかなか進まないということに一つ大きな原因があるというふうに私は報告を受けております。それで私どもが、私どものほうに報告をよこしてきちんとやれというのも、その話し合いの度合いなり、そういうものをよく見定めてやっていく。一条二項があくまでも本筋のたてまえであるということで、そういうことも見て、そしてこれはもうやむを得ないというものをやっていく。まだ余地のあるものについては、なるべく一条二項といういま御指摘のような方針でまいる、こういうことにしております。ただ一応のめどは八月末までということにしておりますけれども、個々の事案をそういうふうに一つずつ点検してまいりまして、そして納得のいけるような方法で進んでまいりたい、こういうのが私ども気持ちでございます。
  325. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 住民が納得のいくような、あるいはどこまでも一条二項を中心に考えてこれからはやるというふうに了解してよろしゅうございますか。
  326. 高松敬治

    ○高松説明員 そのとおりでございます。
  327. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうかその点については、今後基地の提供については、五カ年間で終わるわけではないと私は思います。ですから、先ほど言いましたように、これが沖繩県民をさかなでして、法廷闘争に入ったり、あるいはまたたいへんな基地の反対闘争、三里塚闘争みたいに発展することを私は憂えるわけです。ですからどうかその点は、沖繩県民の感情、民族性をよく理解しながら対処していただきたい。いままでの那覇施設局長のやったことは、決して法的には間違いでなかったかもしれませんけれども、早まった。私はその点について、やはり本庁としては反省していただいて、今後は慎重に対処していただきたいと要望いたします。
  328. 高松敬治

    ○高松説明員 その点につきましては、防衛庁長官からも私どもおしかりをいただきました。私どもも、そういうことのないようにということで、自後の手続についても十分に気をつけてまいりますし、それから、いま御指摘のあったような、沖繩の県民の気持ちというものも十分に考えていろいろな措置をとっていくように、私どもとしても全力をあげて努力してまいりたいと思います。
  329. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 基地周辺整備法の問題なんですが、今年度、幾つかの防音校舎なり、あるいはまた周辺整備法を適用するという、沖繩のいろいろな問題について施設庁としては原案があるわけでありますが、ある沖繩県民は、そういった話が全然わからない、予算は組んでいるようであるけれども、いろいろな話は風のたよりには聞くけれども、現在どんな考え、どんな具体的な構想を持っているのか、そういう点について防衛庁側に聞いてほしい、実はこういう声もあったわけです。簡単でけっこうですからこの点について伺いたいと思いますし、またその進捗状況、こういった点についても御報告願いたい。
  330. 高松敬治

    ○高松説明員 沖繩における周辺対策事業というものは、本土に比べましてたいへんおくれているということは事実でございます。したがいまして、私どもとしても早急にこれに対する施策をいろいろやってまいりたい。一つにはいろいろの実態がよく把握できないという点がございます。それで補助事業の全体計画を樹立するための調査費約三千万を計上して、片方ではいろいろな実態調査を進めております。  それから本年度の事業としては、とにかく障害の程度が非常にひどくて緊急に対策を要するというものを、障害防止対策事業、河川改修等も含めまして一億三千万、防音対策事業三億五千万、民生安定助成事業として三億、それから道路改修事業六千万、合計八億五千八百万をとりあえず今年度の予算をもって実施していくということで、現在、沖繩県並びに関係の市町村等についていろいろ協議を進めておるということでございます。したがいまして、本年度すみやかにひどいところをやるということ。もう一つは、早く実態調査をして、それに対する措置を逐次とっていくということにいまかかっておると思います。
  331. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 八億何千万というお話をいま聞きましたが、具体的にはどこをどのように検討しておるのですか。その具体的な関係について私は伺いたいと思っておるのです。どこの河川を改修しようとしておるのかね。
  332. 薄田浩

    ○薄田説明員 事案ごとに御説明いたしますが、大体おもだったものは、先ほど長官から御説明がございましたように、たとえば河川について言いますと、日本本土と違いまして、ああいう土質の問題、それから傾斜地の問題、直ちに海に流れ込むというようなことで、具体的に全部がきまってはおりませんが、一応考えておりますのを申し上げます。  河川改修につきましては大体十七件、先ほど長官がおっしゃったとおりでございますが、具志川市の安慶名地区の排水、それから宜野湾市の普天間飛行場関係の排水、浦添市の大平川の改修、那覇市の山下というところの排水関係、それから玉城村の排水、こういうものを主としております。その他はあと調査費をかけたいと思っております。  それから一般助成でございますが、これはなかなか御希望がむずかしいものですから、現在考えておりますのは、先ほど長官が申されました二件、これは大体伊江村の水道施設、それから勝連村の農民研修施設でございます。  それから防音の助成は、先生御承知のように、四十五年度から琉政でいろいろおやりになっておりまして、それの継続がございます。これは屋良小学校、嘉手納小学校、嘉手納中学校、北美小、読谷村の学校、読谷村の高校、その他伊江村で一件ぐらいということで、一応十一件ぐらいを考えたい。これもなかなか、その場その場の騒音の測定と、それからやはり御希望、それに、御承知のように単年度ではできません、いろいろ設計等にもかかりますので。しかしそれぐらいは手がけたい、こういうふうに思っております。  それから道路改修も、御希望は相当ございますが、これも調査費をかけて検討したいと思っておりますが、対象といたしましては、読谷村の道路一路線、それから具志川市の川崎、西原とかいうところの一件、コザ市の七十八号線、こういうようなものをやっておりまして、先ほど長官御説明のとおり、われわれとしては、ことし大いに調査費で調査をいたしまして、来年度また予算を計上いたしたい、こういうふうに思っております。
  333. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このことはいままで公表されていたのですか。いないのですか。
  334. 薄田浩

    ○薄田説明員 いわゆるこういう席では公表は初めてでございますが、御承知のように、予算の実行計画等はとりますので、そういうことで考えております。それから地元には、局の者が行きまして、これは多少地元負担もあることでございますから、いろいろ御説明しております。
  335. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは沖繩県としてまとめてそういった説明がない。われわれの調査ではわからなかったわけですよ。知っていないのですね。私はそれは不親切だと思うのですね。今後は、こういう具体的な問題について、ほんとうに周辺整備法というものを適用して沖繩の県民の方々のために資するというならば、こういうことこそ前向きで明らかにしていくべきではないか、私はそう思います。それは施設庁長官、あなた初めてですけれども、そういった点いかがですか。
  336. 高松敬治

    ○高松説明員 これは当然、沖繩県庁、それから地元の市町村というものと那覇施設局とで協議を始めておるはずでございます。ただ、これが全額補助ではなしに補助裏が要るというところに一つの問題があって、なかなか話の進まないものもあるようでございますけれども、現地で全然これを知らないということでは決してございません。
  337. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私の調査では知られていないのです。それは一部の人間は知っているかもわかりませんよ。しかしながら、確かに自衛隊に対する感情というのは、施設庁にも同じ感情を持っておりますから、そういう点の方々がおりますと、そういう問題も明らかにできなかったのか、しなかったのか、故意にやらなかったのか、それはわかりませんけれども、私の調査ではわからなかった。だからいま初めて私は聞いたのです。その予算編成については私聞きましたよ。聞きましたけれども、沖繩県では知らなかったから私ここで聞いておるのです。施設庁長官、頭を振ったって、あなたは今度なったばかりですから、そんなことわかるはずないじゃないですか。
  338. 薄田浩

    ○薄田説明員 これは沖繩復帰とともにいろいろ行政機構も変わりまして、特に学校等は、日本でいいますと、市町村の手を離れて教育委員会といいますか、あういうところが主体になった。そういう関係でいろいろな勢力関係が内在しておりまして、御説明に行っても会わないというところも事実ございます。そういうことで、御指摘を受けたように、大いに精力的に話して歩いたということはございません。  それからもう一つ、土地の賃借交渉をしておりましたときに、たしか委員会でもおしかりをこうおりまして、何だ、施設庁はいろんな対策事業をあっちこっちしゃべり回って、何か取引しているんじゃないかなどとも言われたものですから、私自身ちょっと指導しまして、少し手をゆるめろ、事案は検討しろ、だけれども、あまり地元に行くのはちょっとやめろなんと言ったことも、ある時期ございましたので、そういうこともひとつ御理解いただきたいと思います。今後大いに局長を、いろいろ皆さまに御理解いただけるように指導したいと思います。
  339. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その問題についていろいろありますけれども、私は、持ち時間が来ておりますから、最後にもう一つ伺いたいのですが、北富士演習場の問題です。  これはもうすでに私たちは報道で知っておりますが、この二十二、二十三日に米軍が北富士演習場を使いたいと通知してきております。しかし、法律的にいいますと、これはもう期限が切れておりますし、それはたとえ条約上の義務があったとしても、民法六百四条というたてまえから、そう簡単に使えないと私は思うのです。このことについては、問題のない国有地だけ使おうというような考え方もあるようですが、その場合、民有地なり県有地を通ってその演習場に行くということからして、これまた強行すればたいへんな問題になる。それを憂えているわけですが、いかがですか。
  340. 高松敬治

    ○高松説明員 二十二日、二十三日の米軍演習については、現在そういう演習の通告を受けております。私どもとしましては、まだ一週間ぐらい日にちがありますので、これをこの期間に極力県との話し合いを進めてまいる。現在、話は、内閣官房のほうと県との話に移っておりますけれども、大体その期間内に何とか解決のめどをつけていきたい、かように考えております。
  341. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 基本的に聞きたいことは、もし話し合いがつかない場合ですね。これは、官房長官が地元の金丸代議士を通じ、県知事に打診をしているという話も聞いております。いまは、最高政治レベルで解決してもらう、防衛庁としては関知しないということだろうと思うのですが、この場合、どこまでもやはり六百四条というたてまえもありますし、話し合いがつかなかった場合、これは米軍の演習については提供できない。こういう立場に立って、この問題についての考え方、また長官としての見解というものについて、私はそうあるべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  342. 高松敬治

    ○高松説明員 民法六百四条によりまして、県有地については国は無権限の状態になったということは事実でございます。ただ、米軍と日本国との間においては、条約に基づいてそれを提供している。米軍はそれを使用する権利を持っておる。日本政府は無権限で米軍にそういう施設を提供している。国と県との間の問題に国内的にはなっているということでございます。  二十二、二十三日の問題につきましては、今度は大砲の訓練じゃございませんで、戦車を中心にした訓練ということで通告が来ております。戦車砲の問題であれば、最悪の場合、どうしてもそれまでに解決ができなければ、米軍に対しても、国有地の中で他に被害の及ばないような方法において、いろいろ考慮を求めるということも考えられるだろうかと思います。しかし、もう過去ずいぶん米軍に対しても演習の中止を求めておりますし、それから、事実、演習についてははるか前から計画され、船の配船その他からいっても、これの予定を変更するということは、米軍自身としてもなかなかたいへんな問題のようでございます。  そういう点もありますし、それから、もうすでに二十七日からこれで三週間近くなるわけですから、私どもとしては、防衛庁は関知しないとおっしゃいましたけれども、大いに関心を持ちまして、そして何とかこの期間内に話し合いをまとめていくということに全力をかけていくというつもりで、これは大臣もそういう御方針でいまいろいろ折衝を続けておるというところでございます。  いまの御質問につきましては、もう少し期日が切迫した時点において考えられる手は考える、われわれとしては、当面はとにかくそれまでに解決するということに全力をかけていく、こういうつもりでおります。
  343. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、防衛庁長官に伺いたいのですが、あなたの発言の中で、この問題については特別措置法をたてにとって強制収用はしない、そんなことは考えていない——法的には行政協定なんかによってできるようでありますけれども、地位協定に基づいて、土地使用等については条約上の取りきめでやれるようなことが書いてありますが、この問題について条約上の義務を果たすということも、確かに国際信義の上から大事ではありますが、日本国民とすれば、国内法尊重という立場に立っても、地元との話し合いのつかないうちは私はやってほしくない。  いまの施設庁長官のお話によりますと、最悪の場合は、戦車砲だからそんなに距離は使わないから、国有地だけで使ってもらうんだというようなニュアンスの話でありますが、それにしても、その土地に行くまでにはやはり民有地とか県有地を通るわけです。もうすでに、その場合には地元では、地元のいろいろな婦人団体やいままで反対闘争をした方々が、道路にすわり込んででも阻止するなんということを言われているわけです。そういったところで強行することは非常に好ましくない。国内法を無視して条約上の義務を果たすという行き方についてはたいへん問題である。どこまでも国内法を尊重し、その調整をとりながら、地元との話し合いがつかない限り提供しないという基本線で臨むべきではないか。もちろん、そのためにこれは全力を尽くしてやるべきでしょうけれども、基本的にはそういう考え方でいくべきではないか。決して特別措置法などの強制収用なんというものはしない、こう私は長官に要望したいわけですが、いかがですか。
  344. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、国と県との間のことでございます。いままでもずいぶんやっておりますが、これからも話し合いを続けて解決をする、特別措置法を考えるということはしないでまいりたい、こう思っております。
  345. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 地元との話し合いなしには提供しない、これを再確認しまして質問を終わりたいと思います。間違いないですね。
  346. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 はい。
  347. 前田正男

    前田委員長 和田耕作君。
  348. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょうは六時に終わる予定で、私もそういうつもりでおったのですが、現在もう七時になっておるわけでございます。委員長、今後、皆さん各党ともやるときは、もっと時間のあんばいを厳正にやってもらいたいと思います。ゆっくりと、二時間、三時間とやる必要がありますけれども、そういうときはそういうときで考えていただかないと、あとになる者は困るわけです。要望しておきます。  長官、今度、内閣委員会で能登半島に視察に参りまして、そして輪島のレーダーの基地を拝見したのです。そこで特に私、感じたことが一つあるのですけれども、この基地は、ソ連に向かってのレーダーの、近く、あの三つのうちの中心になるところで、大事なところだと思うのですが、これはいま設備を近代化するための工事をしております。その工事費が、基礎が大体二億円、そしていろいろな設備の費用が十六億円と言いましたか、こういうかなり大きな金がかかるレーダーの新しい基地なんです。そのいろいろな計画を拝聴しておりまして、せっかくああいうりっぱなものをつくるのだけれども、さてというときにこういうレーダーの基地をどうして守るのだろうかということが頭をかすめたわけですね。それで、レーダーの重要な基地を非常時にどうして守るのだということを聞きましたら、そういうときには大したものもない、機関銃なり高射砲のようなものを引っぱり上げてあれするのだというふうなことを言っておりましたけれども、格別、そういう重要な施設を守らなきゃならない、また、守るための施設、あるいは訓練、そういうものがほとんど念頭にないような感じがするのですね。これは長官、どういうようにお思いになりますか。
  349. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 あとで防衛局長から追加をさせたいと思いますが、やはりレーダーサイトの防衛というものはたいへん重要でございまして、これがつぶされますと防空戦闘機の行動ができなくなるわけであります。最も重要なものの防衛をする防空戦闘機も、そこへ向こうの飛行機が来て爆撃をするというようなことを防衛をするということは、重要な一つの任務になっております。そういうことでございまして、高射砲あたりで防御するということも和田先生に申し上げたのだろうと思いますけれども、防備については考えは持っておりますが、りっぱにやれるかどうかという点では、まだ自信はなかなか持てないというところがあるわけでございます。
  350. 久保卓也

    ○久保説明員 先般も、有事即応体制にあるかないかという問題で若干申し上げたのでありますが、全般的な体制の中で有事即応にないという点が、はしなくもそういう点にもあらわれているわけであります。そこで、レーダーサイトの脆弱性というのは、空からと海からと地上からと、三カ所からあります。  空については防空関係でありますが、一般のナイキのカバーする範囲はナイキ、それから要撃機でもってカバーいたすわけでありますが、それ以外に、地域防空という観点からレーダーサイト自身の防空能力をつけなければならないわけであります。そこで、われわれのほうの計画といたしましては、現在L90という陸上自衛隊が装備しておりますものがありますけれども、これを逐次装備してまいりたい。四次防でどの程度でありましたか、ちょっと記憶がありませんが、まだあまり四次防の中では出ておりません。しかし計画としましては、L90というものでいわば地帯防空というものを持ってまいりたい。  それから海上からの攻撃でありますけれども、これで考えられるのは、潜水艦はありませんで、水上艦艇であろうと思います。この場合、もちろんわが航空機の活動する分野でありますから、相手方もそう大っぴらな活動はできませんが、この場合の防御としましては、四次防以降、PT、つまり魚雷艇、あるいはハイドロフォイル艇の系統。これはミサイルを積んでおりますけれども、そういうものを、四次防はわずか一隻でありますが、五次防段階以降において整備をいたしたい。  それからもう一つ、もっと身近な問題は地上からの問題で、これはゲリラ活動ということ。つまり、場合によっては国内の分子がそういう活動を行なうことも可能であるということで、これに対しては、勤務員に対して小銃その他の警備資材を配付しなければいけませんが、これまた十分でないということで、おっしゃいますように、この点はまだきわめて脆弱性が回復されておらない。そこで、訓練の場合は、これは防空演習といいますか、要撃演習の一環として防空関係はやっておりますが、いまの地上関係などについてはまだ不十分である。こういう点は、これからわれわれのほうが本気になって力を入れていかなければならない分野であると思っております。
  351. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そこで、現地の方々といろいろ話をしたのですけれども、あなた方は海上からこのレーダーサイトに対して攻撃してきたということを想定して演習をしたことがあるのか、あるいはそういう計画があるのかと言ったら、一切ないというのですね。しかし長官、これは四次防もいいのですけれども、せっかく重要な施設をつくったままで、実際にそれを動かさない、演習もしないということが、現在の日本の自衛隊の全般的な一つの欠陥というふうにお思いになりませんか。
  352. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その点は、ただいま防衛局長から御答弁しましたように、また、和田委員のおっしゃるように、はなはだ不十分な点でございまして、これは主戦の第一線ともいうべき後方でありまして、そうした演習その他のことについても十分考え、陸、海、空からの攻撃に対する防御も考えていかなければならぬ。これからその点をひとつ大いに戒心をしてつとめてまいることにいたしたいと思います。
  353. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは、昨年、九州のほうを視察したときにも、一昨年に北海道のほうを視察したときも、共通して感ずることは、いろんな設備はある、あるいは、兵員の充足も防衛庁として努力はしているけれども、せっかくつくったもの、配置した部隊、そういうものをまさかのときに役立つように運用する、あるいは訓練をする、あるいはそういう心がまえ、姿勢でおるというふうには思われないのですね。この問題は、ひとつ長官は特に気を配っていただきたいと思います。  これは、国内では御案内のとおりのマスコミの状態であって、特に防衛問題に対してのマスコミの報道のしかたは、私は反省を要すると思います。というのは、日本の防衛が必要でないというなら、そう言ったらいい。日本の防衛は必要なんです。その必要な防衛は——たくさんつくっちゃいけません。最小限度のものが必要です。必要であれば必要であるような態度の報道が必要なのに、そういう点から見て私は非常に遺憾に思う。また野党も、その点、必要でないとはっきり——それはそういう議論も立ちます。必要であれば、どの程度のものが必要であり、どういう形のものが大事であるかということは、見当をつけてものを言うべきことだと私は思う。そういう点で、マスコミその他から包囲攻撃を受けているような感じの自衛隊の皆さん方、特に長官以下の皆さん方は——私は、いままでもあまりこういうことがあるからといってやかましく言いませんでしたけれども、しかし、そういう問題がありましても、年に一兆円近い大きなお金、税金を使うのです。そして、たくさんのいろんな議論の中で、日本の必要な防衛というものに当たっているわけですから、せっかくつくったものは役に立つように運営してもらわなければなりません。役に立たないもの、あるいは形だけのものを次から次へとつくっても意味をなさない、こういうように私は思います。  特に、今度のレーダー基地を見たときに、その運用について——それだって一つつくるのに二十億近い金がかかる。いま設備しているものをつくっても、一番危険なところにあるわけですよ。能登半島のとっぱなに近いところで、いつでも攻撃にさらされるところにある。しかも、これは沿海州から日本の東京、名古屋、大阪を含めて、ここはまともに来るところなんです。これがこわされると、ほかのものは何にもならない。こういうものをつくっておるにもかかわらず、これを防衛する演習もしなければ、それを守る設備も置かない。第一、そういうふうな心がまえが頭の中にない。日本の四次防とか、そういう防衛の問題で、マスコミその他の攻撃からどうしたらのがれることができるか、あるいは野党の攻撃からのがれることができるのか、そういうところに頭が向いたんじゃ、とてもじゃないが日本の防衛はできないと私は思う。そういう点で、この際もう少し基本的なかまえを締め直す必要があるんじゃないか。  私が最近こういうことを特に強調しますのは、中国と今度国交が回復されて——非常に大事なことです。大事なことですけれども、中国との国交回復が行なわれると、もう日本の防衛を大きくスローダウン、あるいは減らしてもいいような状況になると御判断になりますか。その御判断をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  354. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 中国との国交正常化はたいへん望ましいことであり、私どもも、これが近く実を結ぶのではないかと思いまして、これを非常に望んでおります。その際、いわゆる緊張緩和という面で、アジアにおける緊張緩和というような大きい進展があるわけでございまするが、しかし、日本の防衛というものを総体的に全般的な問題として考えます場合に、やはりまだまだ、いまの世界情勢全般をながめ、アジア情勢全般をながめて、中国との国交正常化ができれば、それで日本の防衛力整備はもう大きく変更してもいい、軽減してもいいというふうには、私どもはいま考えるべきではないというたてまえをとっております。もとより、緊張緩和という方向としての整備の速度を若干ゆるめていくということはやるべきものと考えて、四次防の案を原案に比べて削減をしております。そういう考え方はとるべきものと思い、実行いたしましたが、しかし、それで大きく日本防衛措置を変更するほうがいいというふうには考えておらないわけでございます。
  355. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 中国との国交回復、そのために今度総理が向こうへ行かれる。これは国民の圧倒的な多数がこれを期待している。しかし、回復が行なわれたという状態を前提にして考えますと、いままでの日本の防衛力はソ連を一応頭の中に置いた計画だと私は思う。しかし、ソ連としては、中国と親しく交際を始めた日本に対して警戒をゆるめるということは私はないと思う。むしろいろいろな形で牽制行動が起こってくるという問題が起こってくる。これは当然考えられますね。また、中国と日本とが国交回復をしたというこの問題は、アメリカに対しては、従来よりは独立的な姿勢を強めるということになる。つまり、自分のことは自分で守らなければならぬというような状態が強まってくる。そういうことになりますね。中国との問題は緩和されていきましても、アメリカに対しては、いままでよりはもっと独立的な姿勢が出てくる。ソ連はソ連で、違ったような意味から日本を見るようになる。これを要約して申し上げますと、日本はもっと自分のことは自分でしなければならないという状況に入っていくということが考えられるわけですね。そのことは、最小限度の日本の自衛という問題は、強まることがあれ、弱まることがない。  つまりこの問題が、輪島のレーダーサイトの問題で指摘したように、形だけつくって、それでいいという状態ではなくなるわけですよ。いままでは、日米安保条約のたてまえからいって、ある程度の武力を持っていかなければかっこうがつかない、アメリカに対しても申しわけにならない、こういう立場でものを考えられた。しかし今後はそうじゃないでしょう。自前で日本の防衛をしなければならないということが、中国との国交回復ということでもっと強まってくるという面があるわけです。そういうことですから、今後四次防をつくって大きなものにするというよりは、いままであるものを使えるようなものにしていく。つまり精神のないものに精神を入れていくということが必要な時期に来ていると、私はそういう判断を持っている。  したがって、最近ある新聞で、日本の四次防の問題についていろいろ議論が出ている。私は、その新聞が取り上げておる議論は、いろいろと矛盾している面がたくさんあると思いますけれども一つの論点は、非常に正しい問題がある。たとえば、ある大新聞はこういう角度から批判をしております。今度四次防で相当戦車を増強しようとしている、しかし、現在でも戦車は四人の要員が必要だ、指揮官が一人、運転する者が一人、たまを撃つ者が一人、たまを装てんする者が一人、四人がなければ戦車は動かない、しかしどの戦車もたまを充てんする士がいない、こういう状態だ、こういう状態でもって次から次へと戦車をまた増強しようとしている、ナンセンスじゃないか、こういう主張があるわけです。そういう主張は、日本の自衛隊というものを正しく育成していこうという立場からの主張であればいいのですけれども、自衛隊をもっと減らせという立場からの主張ですから、ちょっとこれは矛盾しているわけですけれども、しかしこの議論は、自衛隊としては十分聞かなければならぬ問題だと私は思う。大体、いまの戦車をまともに動かすことのできる兵員の充実がなくて、実際の演習もできない状態で戦車をふやしていくということは、これは筋が違いますよ。もっと実際使えるものを使える形のもので訓練していくということが筋の通った形だと私は思う。そういう面が、先ほど言ったレーダーサイトの問題と共通した、かっこうだけをつくるというような、いままでの安保条約、アメリカのかさのもとでずうっと温存されてきた日本の自衛の姿勢というものが、最近大きく変わっていかなければならないときに出てくる論点だと私は思う。こういう問題は長官どういうふうにお考えになりますか。
  356. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 たいへんありがたい御指摘を受けました。おっしゃるとおりでございまして、脆弱点も、そうしてつとめるべきところも、御指摘のとおりでございます。アメリカに対する関係も、もうもともとニクソン・ドクトリンということで、自分でやれることはやってくれということを言うておる時期でもあります。日中国交正常化というような段階を考えて、これはやはり御指摘のとおり、一そうそういうことはやらなければならぬというふうにも思います。ソ連との関係もなかなか微妙なところがある、御指摘のとおりでございます。ですから、レーダーサイトに限らず、いろいろなものがほんとうにちゃんと動けるようなことにしなければならぬという御指摘は、全くそのとおりで、いま戦車のお話がありましたが、これは聞いてみますると、四次防では明確に四人という計画で人員の訓練配備を考えておるということでございまするが、戦車だけに限らず、すべての問題で、いわば後方の整備、人員の整備というようなことが重要な問題になりましょうが、これはほんとうにそれが動いて、ちゃんとした防衛の任務を達せられるような形にする。レーダーサイトのみならず、そういうことに十分の注意等を払い、計画の実施をやっていくということにしてまいるつもりでございます。
  357. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 久保局長、いまの、ある新聞で指摘しておる、四人の要員が要るのに三人しかいないのだ、実戦的な演習ができないのだということは、事実ほんとうですか。
  358. 久保卓也

    ○久保説明員 新聞記事を書かれた人が見られた戦車は、おそらくそうであったろうと思います。うそではなかったろうと思います。ただし、それを一般であると書いてあるとすれば、それは間違っていたようであります。つまり、一台を四人で扱うわけでございますから、一人が病気をすれば三人になるわけで、たまたまそれを見たのかもしれないと思うのです。現在四次防では——四次防といいますよりも、戦車の定数が千百両となっておりますけれども、現在ありますものが六百五十五両でございます。したがって、それから考えましても、定員充足が七割としましたら、六百五十五両ということは、定数七割で何とか間に合うという数字になっておるわけでございます。そこで、四次防の中では八百二十両にふえますけれども、これは、従来どおり四人の定員はそのまま維持する。ただ、これを千両とか千百両とかいうふうにふやしていった場合に四人確保できるかというと、これは物理上できてこない。そういった場合に、一体定員と定数の関係をどういうふうに考えたらよろしいかということが、将来われわれの新しい問題になってくるというふうに考えておりまして、これは四次防以後の問題として、私どもは、四次防が済んだ場合にひとつ本格的に取り組んでみたいというふうに考えております。
  359. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 まだ具体的な問題の指摘をしていきたいと思っておりましたが、時間がありませんから二つの例をあげるにとどめますけれども、この問題は、特に長官は、今後重要な局面で日本の防衛を指導していくわけですから、ぜひともお願いしておきたいと思いますけれども、マスコミは、日本の防衛は、大きなものでなくても最小限度防衛は必要であるという、おそらく基本的な判断を持っておると思います。その持っておるマスコミが中心になって、何かしら日本の自衛隊なんというものはやっかい者だ、必要でないんだ、緊張緩和すれば消えてなくなればいいんだというふうな感じの報道をずっと繰り返しておるのはどういう原因があるのか。そこのところをもっと考えてみる必要があると思います。なぜだと思いますか。あるいは、日本のマスコミは自衛隊の問題について、悪口だけを書かなくて正しい報道をしておると長官はお思いになっておりますか。
  360. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 たいへん微妙な御質問でございますが、私ども立場からはもうちょっと理解のある書き方をしてもらいたいと思っております。どうしてそういうふうにわれわれの思うようなことになるか、ちょっと私もいまここで明確に申し上げるあれはありませんが、しかし、われわれとしても、特に防衛庁のクラブの皆さんとは、時々定例会見あるいは懇談というようなものを持ちまして話を続けておるわけでございまして、これはやはり、この間私がかわりましてまだ間がないので、増原というやつはどんなやつか、ちょっとわかりにくいという点があると思いますが、だんだんお話をしていけば、言外にある心持ちもくみ取ってもらうようになりはしまいかということで、いまのところは、しっかりと接触しコミュニケーションをやる、私どもの聞いてもらいたいことも聞いてもらうということで、いま努力をしております。そういうことで、いま和田委員が言われたように、私も、基本的にはやはり最小限度の自衛力を必要とするというたてまえにマスコミも立っておられると思うのでありまして、そういうニュアンスが全体に出た報道をやってもらうようにコミュニケーションをしっかりやる、説明も一生懸命やるということをつとめてみたい、こういうふうに考えております。
  361. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そこのところを私は長官に特にお願いしておきたいのは、やはりマスコミの諸君は、もう何もかにもよくわきまえている方だと私は思うのです。ただ、この自衛力の限界がつかないという問題は、単に自衛隊の問題を事実よりも悪く書くような人でなくても、国民のほとんど大部分はこの問題について心配をしている。そのまたもう一つの下は、やはりいまの平和憲法、この憲法というものを大事にしない与党あるいは政府、この問題をこの段階で強く反省をしてもらわなければならない。その反省さえしっかりしておれば、私は、当然に自衛隊として言うべきことをもっと言う立場になると思う。またマスコミの諸君だってみな愛国者ですよ。やはり正しい立場に立った報道をすると思う。ただ、残念ながら、いままでの与党の姿勢が、あるいは政府の姿勢が、憲法を改正するという姿勢を持っておる。この憲法改正というものが、九条の問題を含めて、軍備の拡張に通ずるような指導をしてきたというところに最大の問題があると私は思う。  この問題については、先ほど申し上げたように、もう日本は、これからアメリカのかさの中におるわけにはまいりません。こっちがおりたいといったって、向こうからそういう状態でなくなってくる。自前で日本の防衛を考えなければならぬということになってくる。こういうことになりますと、やはり日本の国民の全体が、最小限度の自衛力はあたりまえのことだ、それはすぐ理解できるような状態だと思うのですけれども、そういう問題を含めて、政府としては、この憲法の問題、そして自衛力の問題、防衛庁の指導の問題、そういうものを含めて検討する時期に来ているのではないか、そう私は思うのです。  これはいままで戦後二十五年の状態とは違った局面です。いままでは日本はいいかげんなことでよかった。強力なアメリカがおって、困ればアメリカに頼んでいけば何とかなった。いまはそういう状態ではないでしょう。そういうふうな意味で、戦後二十五年とは大きく局面の変わった状態。ここでは国民の大部分が、やはり自分たちのことは自分でやるのだから、自前の自衛隊としてこれを理解し、そしてものになる、役に立つものをつくっていこう、お金がたくさんかかっては困るのだ、そういうふうなお金をたくさんかけた防衛力というものは日本の防衛をできる道でもありはしない、そういういろいろなまともな議論を堂々とできるようにする。野党でもそういうことになると私は思いますよ。  いまの憲法の問題について、あまりいいかげんなことをおっしゃらないで、この段階に立って、必要な日本の自衛力を強めるために、この憲法の問題を正しく理解をしていく。憲法の文言から言えば、自衛隊を持つということはあるいは矛盾するかもわかりません。単にことばの上から言えば、憲法を改正せなければいかぬという議論も当然なものを持っておると思いますけれども、憲法というものはそういうものではないでしょう。国の将来の大きな目標を立てる。現在の状態がそれに多少狂っておれば、何とかそれとつじつまの合うような解釈をしていく。憲法というものは、現在の状態をきめる面と、将来の理想を示す面と、こういう二つの面を持っているわけです。そういうことで、とにかく新しい感覚でしっかり憲法の精神を守っていくという考えに立って、今後の防衛の問題の御指導に当たっていただきたい。そうすれば、もっとまともな防衛に対する国民の気持ちが出てくるのではないか、そう私は思うのです。それはひとつ長官の御意見をお伺いしたい。
  362. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 御趣旨のとおりでございます。本日のいろいろ御質疑にもありましたが、やはり自衛力の限界というものを、私どもなかなかむずかしいという言い方ばかりいままでしてきておりましたが、そうではなくて、むずかしくてもひとつ考えてみるということで、いま作業を始めさせておるということでございます。その点はなるべく早い機会にひとつ皆さまに申し上げるようにしたい。そして憲法の問題も、いわゆる平和憲法——われわれが防衛、自衛に徹する防衛力を持つのだというたてまえは、これは憲法改正を言うておりまする自民党内の者でも、その点についての改正をしようという意見はいまもうございません。私どもも、平和に徹するといいますか、防衛、自衛に徹するというたてまえの憲法の趣旨というものは、あくまで尊重をしてまいろうということでまいるつもりでございます。そういう基本的なたてまえば、もう従来自民党内においても定着をしておると申し上げてよろしいと思うのでございます。御質問の趣旨にありましたような考え方を私も持ちましてこの問題を進めていく、最小限の自衛力について国民全般の御支持を得、御協力を得るというふうにつとめてまいりたい、こういうふうに考えます。
  363. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 一つ注文がありますけれども、自衛隊の制服の人たちを教育するその教科書、あるいはその他の指導書の中で、いまの憲法を守らなければならないということに触れた文言があるかどうか。これはすぐわかりますか。
  364. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 自衛隊におきます教育、訓練、諸種学校の授業でございますが、その中における教育では、憲法教育ということは一つ重点でございます。それで、防衛大学におきましては、専門の先生が専門の教科書を使いまして教育をしておりますし、それから陸、海、空の幹部学校におきましても、時間数はちょっと覚えておりませんけれども、それぞれ相当の時間をとりまして、専門の講師が参りまして、必ずしも教科書はないかもしれませんけれども、専門的立場から憲法の教育をしております。それから、その他の実際の実科の学校におきましても、できる限り憲法と防衛の問題というようなことに重点に置きまして、それからそういう自衛隊への認識との関係というようなことにつきましては、十分配慮をいたしまして教育をいたしております。
  365. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それはいろんな意見を述べるという形ではないのですか。憲法の精神は守るという形の教育はしておりますか。
  366. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 それはいまの日本国憲法の趣旨を守るという形においてやっております。普通の法科大学においてやる憲法論みたいな趣旨のものではございません。
  367. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 なお一つ、いまの自衛隊の中における、憲法の精神を教育する典型的な幾つかの例を、何か資料にしてひとつ提出していただけませんか。
  368. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 防大とか幹部学校あたりの例をあげまして、一応提出さしていただきたいと思います。
  369. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後に一つ。長官、私は前の江崎さんのとき、あるいは佐藤総理にもただしたのですけれども、自衛隊はあまりやり過ぎることもむろんいけないけれども、やるべきことをやらないのもいけないことだという立場から、五人の反戦自衛官、その前に一人おりましたが、あれは明らかに自衛隊法にかかる刑事責任を問うべきものだと私は思って、二回質問をしたのですけれども佐藤総理も江崎長官も、それは十分検討します、そういう方向で一ぺん検討してみますということを何回も答弁をされたのですけれども、その後どういうふうになったかわからない。これは、新しい長官にかわったこの段階で、長官、どのように引き継がれておられるのか、お伺いしたい。
  370. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この反戦自衛官の問題につきましては、この起こりました事態は御承知と思うのですが、これに対して身分上、行政上の措置というものはとったわけですが、責任を問うという意味の刑事上の措置については、総理なり江崎前長官がいろいろお答えをしたと思うのですが、いろいろ研究をしてもらいましたが、うまく適用できる条文及び条文の解釈というものがなかなか固まらないということで、私、就任をしまして聞きましたところでは、はっきりとしたまだ結論を得ていないということでございます。
  371. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは、ああいう例が今後出た場合も、刑事責任の追及はできないということになりますね。
  372. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 先般の四月二十七、二十八日の事件につきましては、自衛隊法六十一条の自衛官の政治的行為の制限の規定、それから六十四条の自衛官に対する怠業行為の教唆、扇動禁止の規定がございますが、これに該当するのではないかというようなことで警務隊が一生懸命調べました。われわれもその検討に参加いたしまして、あらゆる角度からその抵触の疑いにつきまして調べたのでございますけれども、どうもいまのところ、あの事態でありましては、直ちに六十一条ないし六十四条、これにかかる罰則の規定の適用はできない、こういうことでございまして、いまのところ、先ほど大臣も言われましたように、非常にむずかしいということでございます。しかし、この事件は非常に不祥事件でございまして、こういうようなことが二度とあってはならないわけでございまして、自衛隊では、あの事件のあと、内局、各幕僚監部、各自衛隊、これが一緒になりまして、当面の手当てをいたしました。と同時に、根本的なそういった事態が発生しないような調査研究をしなくちゃいかぬというようなことで、部内に青年隊員指導対策委員会というものをつくりまして、現代青年の心理とか、意識とか、それからこれに対する指導はいままでのようなことでよかったのかどうか、そういうようなことを含め、さらに先生御指摘の刑事罰の問題につきましても、あわせて入念な検討をしようということで、それらの問題を掘り下げる努力をしております。
  373. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あの自衛隊法にははっきり刑事責任として罰則がありますね。それでは何のためにあの罰則があるのですか。あの行動自体があれに当たらないというのですか。日本の各地の有力な地域の部隊から出て、しかも当時の佐藤内閣の中心的な政策を批判して、大衆の前でアピールをして、テレビその他新聞記者会見をする、しかも左翼の集会の場に出ていって、そうして宣伝をする、これが自衛隊法のあの条項に当たらないのですか。そうしてまたあの条項の罰則なるものをなぜ適用できないのですか。簡単にその説明をしてください。
  374. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 先ほども申しました六十一条の規定は「政治的行為の制限」ということでありまして、「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、政治的行為をしてはならない」、こういう規定がございまして、これは政令でその「政治的目的」及び「政治的行為」というものの内容が規定されております。「政治的目的」につきましては、その政令の八十六条の五号、六号というものが当たるんじゃないかと思うのですが、五号は「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること」、それから六号は「国又は地方公共団体の機関において決定した政策の実施を妨害すること」。これはそれぞれ解釈ができておりますが、その解釈からいきまして、「政治的目的」にいわゆる反戦自衛官の行為は当たらないということでございます。そういった点から、直ちに、先ほど申しましたように、これが刑事事件としてどうということはないわけでございます。
  375. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 簡単に答弁してくださったらいいと思うのですけれども、それじゃ、どういうケースが当たるのですか、六十一条の罰則には。
  376. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 たとえばここの五号の「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること」、こういった意図でもって、そうして八十七条に規定してあるような政治的行為をすれば該当いたしますし、それからもう一つ、先ほど怠業の教唆、扇動の禁止ということを申し上げましたけれども、例の場合におきましては、特定の隊員を相手にして怠業の教唆または扇動をしたということではなくて、一般的な大衆を相手にしてやったというようなことで、これもなかなか困難であるということでございます。
  377. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 わけがわからぬのですけれども、時間もありませんからこれ以上言いませんけれども、もし一般のマスコミを通じての御批判がこわかったり、そういうことであるとすれば、もうそんな自衛隊は必要でないですよ、長官。やるべきことはやらなければいけませんよ。私は何も、自衛隊を増強して日本を軍国主義にしたほうがいいなんということは考えておりません。日本の憲法をしっかり守って、そして最小限の自衛力としてやるべきことをやる、そういう自衛隊になってもらいたいと思う。それがためにせっかく自衛隊というものができ、自衛隊法という法律のもとで生活をしている。それが、仙台から、あるいは静岡から、東京から、九州から、いままでもずっとそういう傾向の男だといわれておる人間が集まって、そうして反戦的な言動を弄して、佐藤内閣の沖繩自衛隊派遣に反対をして、新聞記者会見をしテレビの会見をして、そして大衆の集会へ出て行動をしておる。そうですね。これがどうして政治の方向に影響を与えないものであるのか。あるいは自衛隊の諸君にアピールしなかったというのか。そういうやるべきことをやらないで、何ぼいろいなことを言ったって長官だめです。なぜそれくらいの決意をもってやらないのか。自分たちは何も軍国主義の手先じゃないのだ、平和憲法のもとで正真正銘に平和憲法を守っていくのだという立場さえしっかりしておれば、何も世間のいろいろな批判をおそれることはないじゃないですか。国民の大事な税金を使って、国民の負託にこたえてやる皆さん方です。いいかげん大事なことをあいまいにしてはいけませんよ。特に長官にはこのことを申し上げて、質問を終わります。
  378. 前田正男

    前田委員長 次に、東中光雄君。
  379. 東中光雄

    ○東中委員 警察庁にお聞きしたいのですが、先ほど話に出ておりました、米軍相模補給廠前で八月十四日夜、四十三人の検挙がやられたことに関連してですが、このとき警察は、二百人をすでに出動待機さしておられたということでありますが、これは米軍からの連絡で行かれたのかどうか。待機させた時期、理由並びに法的根拠を聞きたいと思います。
  380. 山本鎭彦

    ○山本説明員 お答えいたします。  相模原の補給廠から出る米軍の戦車輸送、これを阻止する動きは五月中旬ごろからぽつぽつ出てきて、これまでしばしば紛争が見られた状況でございます。警察としては、これらの阻止行動を見ておりますと、極左暴力集団、これも逐次入ってきておりまして、不測の不法事犯の発生することが十分予想されましたので、そのつど必要な措置をとってまいったところでございますが、今般、十四日の問題につきましては、当日、午後四時前ごろ、米軍の輸送責任者から、同日の夜、車両輸送をする旨の通報がございました。一方、米軍の車両輸送を阻止するという動きも見られたということで、別に米軍の依頼ではございませんが、これまでの経験からして、不法事犯が発生するおそれも十分あるということで、それらを未然に防止するという意味もありまして、所要の警察措置をとるために、神奈川県警としては警察官約三百名くらいを動員して、現場周辺の警戒に当たった、このように聞いております。
  381. 東中光雄

    ○東中委員 米軍から通報があった時期及び通報の内容を明らかにしてほしいのです。
  382. 山本鎭彦

    ○山本説明員 時期は当日の午後三時四十五分ごろでございまして、それは、車両六台、これで兵員輸送車その他のものを輸送するということで、その時期は午後九時以降であるというような趣旨でございます。
  383. 東中光雄

    ○東中委員 輸送される車両六台が車両制限令違反になるかならないかということについて、警察としては検討をそのときにされておるのかおらないのか。また、そういう問題について道路管理者と普通は協議されると思うのですけれども、この場合にはされておるのかおらないのか。その点を明らかにしていただきたい。
  384. 山本鎭彦

    ○山本説明員 その際、もちろん重量については、合計十五・八三八トンであるという通報がございましたので、いわゆる二十トン未満でございますので、車両制限令の適用はないというふうに判断をいたしたわけでございますが、それぞれの関係向きのほうに連絡があるということで、警察のほうに連絡があったので、それを相模原市のほうに連絡するということはしておりません。
  385. 東中光雄

    ○東中委員 結局、重量だけが合って、そして車両制限令にいう条件に適合しておるかどうかというようなことについては検討していないということに、いまの局長の話ではなるわけです。そしてその重量物が制限令をオーバーして通過するということになれば、これは先ほども話に出ましたけれども、日本人が運転している以上、これは犯罪になるという性質のものだと思うのですが、そういう点については一切警察は関知しないで、そしてそこへ集まる、いわゆる阻止闘争をやる人たちのほうを向いて警察は動員された、こういうふうに聞いていいわけですか。
  386. 山本鎭彦

    ○山本説明員 その重量の問題については、先ほど申し上げましたように、それぞれ十五・八三八トンであるという向こうの通報がございまして、それについては、その車種別その他からして一応間違いないというふうに判断はしたわけでございます。したがって、もしそれがこえているような場合ならば、それは日本の法令に適合するような措置をとるべきであるという趣旨の注意なり警告をするはずでございましたけれども、今回の場合はそういう制限にないということで、その点については問擬しなかったわけでございます。機動隊のほうは、先ほど申し上げましたように、それぞれの反対阻止行動の動員がかなり伸びるということで、そういうもの相互同士、あるいは米軍との関係において、阻止行動ということで不測の事態が起きないようにという配意でそれぞれ配置についていたということでございます。
  387. 東中光雄

    ○東中委員 私は重量だけを言っているのではないので、車両制限令というのは重量だけではない。車両制限令に違反すればこれは犯罪行為である。あなたは重量の点だけしか、通報をまるのみしたというだけだということを先ほど指摘したわけであります。と同時に、これはもうすでに問題になっているわけですが、相模原市の道路管理者あるいは管理課の職員をついに逮捕するに至った。先ほども話に出ておったパトカーが来ておるわけですが、その乗員を逮捕する。こういうことについて、警察は道路管理者と協力をしてやらなければいけない立場にあるのに、そのことには全く触れないで、逆の方向へ動いておるということについて、現在どう考えていらっしゃいますか。
  388. 山本鎭彦

    ○山本説明員 ただいま御質問の、相模原市のほうの職員を逮捕して云々ということでございますが、これは、そういう道路管理者として重量制限を確認する行為を阻止したということではないのでございまして、当日、相模原市の道路関係の者が乗ってまいった道路管理のパトロールカー、これに三人の市の職員が乗ってまいったわけですが、その輸送の現場に来たところ、非常に混雑しておりますので、西の門の手前でその車をとめまして、三人の市の職員はそこから徒歩で歩いて別行動をとったわけでございます。そしてその車には、うしろに下がっているように、こう言って車からおりたわけでございますが、そのときちょうどトレーラーが門から出てまいったという状況で、その運転しておる人は、うしろへバックしようと思って運転をしたんだそうですが、初めて当日その車を運転したために、操作を誤って、バックに入れるべきところを前進に入れて吹かしたために車が急に飛び出したということで、トレーラーの運転手にあとで聞いたところによりますと、約一メートル前まで来てとまったということで、トレーラーのほうも驚いて、そこでブレーキをかけてとまるというような状況でございまして、横から見ていますと、市の車が何らかの理由によって暴走して、トレーラーを阻止するような形で急に飛び出してきたという状況で、それで安全運転の義務違反のおそれがある、それから威力業務妨害のおそれがあるということで、その車をとめて運転手をいわば検挙したという状況でございまして、それらの者が車両重量制限の関係で調査するのを妨害したというような関係の、結果はそういうことが出たという状況では全くございませんで、いま言ったような状況で検挙したというのが実情でございます。
  389. 東中光雄

    ○東中委員 現場の状況についてここで議論をしておる時間がないのは非常に残念でありますけれども、警察が初めから姿勢が、まるっきり市民の強い要求とは逆の方向に向いていっているということと、それからこの車両制限令違反の問題がいま大きな問題になっておるときに、それには一切目をつぶって、そしてそれについての道路管理者の行動を事実上犯罪視して逮捕するというふうな行為に出た。これは私は、警察のあり方がまるっきり逆のほうを向いているということを、はっきり指摘をしておきたいわけであります。  時間がありませんので、外務省にお聞きしたいのですが、先ほどの御答弁で、この五月に日米合同委員会へ文書で、道交法の改正あるいは車両制限令等について米側に申し入れをしたということでありましたが、その内容、それからそれに対する米軍側の対応のしかた、それに対して外務省どうされたかという点を簡単に言っていただきたい。
  390. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  五月の中旬に、十六号線で若干の事件がございましたことを契機といたしまして本件が報道され、これに基づきまして私ども事実調査をいたしましたところ、米側に適切ならざる行為があったということを知りましたわけでございますから、五月三十日にとりあえず口頭で注意をしたあと、六月八日の合同委員会におきまして、文書により申し入れました。  申し入れの内容は二点ございまして、第一点は道交法の規定に従い交通安全に心すべきこと、第二点は道路法に基づく車両制限令の諸規定に従うこと、これは特に、四月一日以降改正になっているからその点を注意してくれという点を含めまして、以上二点を骨子といたしましたメモランダムを米側に提出いたしました。米側は、その後七月三日、外務省で開かれました安保条約四条に基づきます事務レベルの随時の協議の席上におきまして、重ねて私どもが本件を指摘したのに対しまして、米国政府側として——米軍ということではなく、大使館及び米軍双方においてこの趣旨を十分理解したという回答がございました。
  391. 東中光雄

    ○東中委員 回答はあったけれども、米軍側はその後もやってきた、こういうことになるわけですが、いま相模補給廠の戦車輸送について、米軍側が外務省に何か申し入れをしているような新聞記事があるわけです。きのうですか十六日、座間の米陸軍司令部のロス・R・コンディット参謀長が、「戦車をどういうふうに通すか、外務省に申請を出したが、まだ回答がない。回答があるまで戦車は出さない」というふうに言ったと伝えられておりますが、米軍側から外務省にどういう申し入れがされておるのか、明らかにしていただきたい。
  392. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘の報道の中に、外務省に申請を出しているが、まだ回答がないという表現になっておりますが、正式な申請は受け取ってございません。私どもが受理し、政府部内で検討の素材としておりますのは、彼らが運送したいと言っている荷物、すなわちこの場合、M48型戦車及びその運送に使いたいと言っておりますトレーラートラクターの諸元に関します資料を入手いたしまして、それを基礎として関係省庁間で、道路に与える影響、特に橋梁に与える影響等の計算、検討等をお願いしている段階でございます。
  393. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっとよくわからないのですが、米軍側から外務省へ正式の申請はない、こう言われたけれども、これは道路使用についてのそういう意味の申請はないということであって、しかし向こうから何か申し入れがあったということではないのですか。
  394. 松田慶文

    ○松田説明員 補足して御説明申し上げますと、今月の四日、五日に横浜市内で戦車の阻止という事件がございまして、これは米側との種々の交渉の結果、一たん相模補給廠に引き揚げた次第でございます。しかしながら、米側、特に米陸軍といたしましては、相模補給廠から横浜市内のノースピアへ物品を搬出したい、これは現に米陸軍としての機能の一端であるので作業をいたしたい、また特にM48型戦車を輸送したいという申し出がございます。これは当時からございました。  それに対しまして、わがほうといたしましては、国内法の関係から申しまして、何らの措置、手続を経ることなくこれを認めることはできない。第一に車限令関係の手続を一定の様式を踏まなければならないし、道路管理者の付すべき条件には従わなくてはならない。これはもう申すまでもないことでございます。したがいまして、政府といたしましては、そのような検討を行ないますにあたりまして、米側から、車両等の具体的な構造、サイズ、重量等のデータをとりませんと、検討ができないわけでございます。そういった一連の資料を取りつけて検討している、そういう意味でございます。  これは、私の承知いたしますところでは、一般の方々が特別の重量物を運搬されたい場合にも、あらかじめ道路管理者と協議されまして、このような荷物をどこどこへ運ぶにあたっては、たとえば橋はどういうふうにいたすべきであろうかという内協議のようなものがございまして、道路管理者から示されます一定の指示に従う、自分のほうで措置するということを条件として申請を出してくる。米軍の場合も特に変わった段取りをとっているわけではございませんで、できるだけ一般の手続に従いたい。なお、地位協定というものがあります以上は、五条で確保されている米軍の基地間移動を政府としても担保すべき一端の責任はございますので、できるだけの便宜供与、協力はいたしておる、こういうことでございます。
  395. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、正式のいわゆる通行許可申請はまだ出していない、内々の検討資料を出しての希望を言ってきておるという段階である。先ほどの御答弁で、戦車輸送の方法は一つではない、またその順路も複数あり得るということでありましたが、いまそのデータを米軍側から出されたのに従って、どういうコースをどの程度に検討されておるのか。その結論は一体どういうふうに出されるつもりなのか。いつごろ出されるつもりなのか。外務省は建設省と相談していらっしゃるようですが、その概要をお聞きしたい。
  396. 松田慶文

    ○松田説明員 とりあえず外務省で承知しておりますところを申し上げます。  米側といたしましては、第一義的にはあくまでもノースピアに諸般の荷物を搬出いたしたい、これを大前提といたしまして希望を申し述べております。これは米側として、その種荷物の搬送のための港として日本政府から提供を受けているのでございますから、これを使いたいというのはしごく当然な話でございまして、道路制限に抵触しない荷物は現にそれを使わせているわけでございます。問題の荷物、M48型戦車を運ぶ場合に、横浜市内の若干の橋をどのような条件で渡ることができるかという検討にまず一つの仕事がございます。それからあわせまして、この段取りが簡単に短期的にいかない場合の代替措置としては何があり得るかということを総合的に政府として考えております。もとより、具体的な橋梁の耐荷重量計算等は、私どもではいたし得べき能力もございませんので、それぞれの関係者にお願いしているわけでございますけれども、現在、午後の御説明で申し上げましたとおり、横浜ノースピアに至る道以外の複数の可能なルートを総合的に検討しておって、それがまだ全体としての見通しが立つに至っていない段階である、このようにお答えさせていただきたいと思います。
  397. 東中光雄

    ○東中委員 建設省、その点はどうですか。どのコースとどのコースを検討されておるのですか。
  398. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 ただいま外務省からも御説明がありましたように、まず横浜市のノースピアの道。先般、道路管理者である横浜市長によって阻止されましてバックいたしましたけれども、さらにもう一度検討する必要があるように感じておりまして、実はこれは建設省としては資料を取り寄せてチェックをいたしております。それと、新聞報道に随時出ていますように、横須賀基地におきます道路、主として国道十六号線になりますが、これらにつきましても同様のチェックを行なっている段階でございます。
  399. 東中光雄

    ○東中委員 横田にきのうC5A三機が来たようでございますが、C5AによってM48を空輸した例もありますので、いまそういう動きがあるのかないのか、外務省としてはどの程度知っていらっしゃるか。
  400. 松田慶文

    ○松田説明員 私どもといたしましては、M48型戦車を相模補給廠から日本国外に搬出するための総合的な方途を考えるように米側から依頼を受けておりますので、理論的可能性といたしましては、御指摘のように、横田へ持っていって横田から空輸するということもあり得ますし、これはまた四月以降の実例としてもあった次第でございます。したがいまして、お答えといたしましては、そのような可能性も当然にあり得るけれども、ただいま直ちにそれを実施したいという米側からの具体的な申し入れには接しておりません。
  401. 東中光雄

    ○東中委員 輸送コースが、いわゆる横浜コースであろうと、横須賀コースであろうと、道路は二つ以上の道路にかかることになると思うのですが、米軍側が正式に許可申請を出すとすれば、二つの道路、国道と市道にかかる場合、これはどちらへ出されることになるのですか。道路管理者は別々になるわけですから。その点はどうなんでしょうか。
  402. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 道路法によりますと、一つの管理者に申請を出せば、もう一つの管理者に対しまして協議することになっております。したがいまして、国のほうに出すか、あるいは市のほうに出しますか、これは米軍の任意であります。またそれぞれの管理者に別々に出す方法もございますので、これは米軍はどういうふうに出しますか、われわれの実は知らないところでありますが、一つの道路管理者に出た場合に、必ず他の道路管理者と協議する必要が生じます。
  403. 東中光雄

    ○東中委員 道路法四十七条の二の二項では、「二以上の道路に係るものであるときは、同項の許可に関する権限は、政令で定めるところにより、一の道路の道路管理者が行なうものとする」。結局そういうことになりますね。この場合は、申請を別々に出してくるということじゃなくて、二つにかかるときには、一つの管理者が権限を行使することになるのではないんですか。
  404. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 申請は別々に管理者ごとに出すこともできます。
  405. 東中光雄

    ○東中委員 この協議をして一つの道路管理者が権限を行なった場合、協議がととのわなかった場合、たとえば国側が国道に関して申請を受けて、そうして市側、市道の管理者と協議をする、協議がととのわないという場合には、国は許可しようというふうに考えて、しかし相模原市はそれを協議を受けたけれども、うちは許可しないというふうになった場合には、一つの道路管理者が権限を行なうという場合に、それはどういうふうになるのか。協議をしたけれどもととのわない、しかし国だけで許可をしてしまうということがあり得るのか、そうではないのか。その点どうなんでしょうか。
  406. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 ただいまのような場合、一の管理者が許可し一の管理者が許可しなかった場合には、これは許可できないことになります。ただ、ただいまの例といたしまして、相模原のもし市道が例となるならば、ここには橋も構造物もございません。したがいまして、道路法によりまして許可しないという理由はございません。路面が著しくいたむとかいうようなこともあるかと思いますけれども、その場合にはそれに対する手当てができますので、条件を付して許可すべきであるというふうに考えております。
  407. 東中光雄

    ○東中委員 許可するかしないかについて国の見解をお聞きしているのではなくて、四十七条の二の二項でいっている、「二以上の道路に係るものであるとき(建設省令で定める場合を除く。)は、同項の許可に関する権限は、一の道路の道路管理者が行なうものとする」、その場合は他の道路の管理者と協議をする、こうなっているわけですね。協議をして、そうして一つの道路の管理者である国が、「その権限を行なうものとする」で、行なうことになった場合には、相模原市、他の一つの道路管理者が許可しない。その裁量は、これはまた別のいろいろ争いもあるでしょうけれども、現実に許可しない、許可することに賛成しないという場合に、国は、一つの道路管理者は他の道路管理者と協議をしたけれども、協議ととのわないということで、権限を一方的に行使して許可するということがあるのかないのか。いままでそういう前例はなかったと聞いているのですが、どうですか。
  408. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 おっしゃるとおり、一つの道路管理者が許可しても他の道路管理者が許可しなかった場合には、これは許可できません。
  409. 東中光雄

    ○東中委員 どうも別々の申請の場合のことを言われているような……。一つの道路管理者に一本の申請が出されて協議をしたときに、協議に応じないというか、反対意見だった場合には、これは国道は許可しようと思っても、相模原が許可しないということになれば、国道も一本になったものとしては許可できないという解釈をとられているわけですね。そうでございますか。
  410. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 そのとおりでございます。
  411. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、四十七条の二の二項の規定の文理上の解釈からいきますと、「協議しなければならない」だけですから、だから危惧を持っておったわけですけれども、建設省としては、そうではない、国道についても一括しての許可はしない、そういう法解釈というか、見解をこれからもとられるということを重ねて念を押しておきたいのですが、よろしゅうございますね。
  412. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 そのとおりでございます。
  413. 東中光雄

    ○東中委員 最後にもう一点お聞きしたいのですが、米軍車両の基地間移動を車両制限令の適用対象から除外する、特別扱いをするような方向で建設省で事務的に検討を始めておられる、外務省とそういう点について協議をしておられるというふうに聞いておるのですが、どういう角度で、どういう点を検討されておるのか、明らかにしていただきたい。
  414. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 そういう事実はございません。
  415. 松田慶文

    ○松田説明員 現在問題になっております事案は、あくまでも現在存在する法令に従って処理すべきもの、このように考えております。しかしながら、ただいま現在の問題処理とは次元を別にいたしまして、現行法体系の中で自衛隊について一定の特例が認められております。その他、清掃車であるとか、死体運搬車であるとか、若干の特例がある中にあって米軍に全く特例がないということが、はたして法の均衡を保つものであるか。特に地位協定との関係で適正であるかどうかについては、外務省といたしましては問題意識を持っております。しかし、これを具体的に建設省にお願いしているとか、具体的な協議が始まりているとか、そのような事実はございません。
  416. 東中光雄

    ○東中委員 新聞報道では、今回の米軍戦車輸送問題が一段落するのを待って、外務、建設など関係省庁の意見を調整の上、近く車両制限令の改正を閣議決定するというふうな報道もあるわけです。今回のものではないといま外務省が言われたのですけれども、建設省の事務当局に電話でお聞きした範囲ですけれども検討しています、しかし外務省のほうへ、米軍人の場合の適用の問題についてはいろいろ問題があるから、意見を聞いております、研究はしていますと、こういう話だったのですが、道路局長、そうじゃないですか。
  417. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 いまほど申し上げましたように、外務省から正式に申し入れはございません。ただ、条約との関係、地位協定との関係、並びに現在の車両制限令は米軍を想定して書いてございません。はっきり申しますと、道路法本法そのものが米軍等を対象にして全く書いてございません。したがいまして、若干手落ちがあるというふうに考えておりまして、自衛隊には若干特例がございますけれども、実は米軍に対しましては全くそういう特例がございません。一般の国内の普通の車両と同程度に現在取り扱っておるわけでございますが、これらに対しましても法律的に若干疑義があるようでございます、米軍を対象にしてつくられている道路法じゃございませんので。そういう点につきまして、部内においては若干検討を行なっておりますけれども、ただいま外務省からお話がございましたように、特例扱いするというような考え方でもって検討を進めているということはございません。
  418. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど外務省は、自衛隊のことも言われたのですが、車両制限令では「道路交通法第三十九条第一項に規定する緊急自動車及び災害救助、水防活動その他の緊急の用務のために通行する建設省令で定める車両で、道路の構造の保全のための必要な措置を講じて通行するものについては、この政令の規定は、適用しない。」この十四条がありまして、だから明白に、水防活動、災害救助その他の緊急の用務のためにする行為、こうなっているのですが、省令では、自衛隊の演習やその他の部隊訓練のために使用される車両も入っておる。これは省令としては、災害活動、水防活動その他を例示してあるわけですが、その他緊急活動という中へ演習、訓練全部入れちゃう。これはもう体系としては、全く奇妙な体系になっておるわけです。その奇妙な自衛隊が入り込んでいる体系を今度は使って、米軍についても、そういう点を何か不公平だというような趣旨で検討するというのは全く本末転倒なんで、道路法が改正された趣旨は、交通の安全なり道路の保全、要するに国民の福祉ということを中心にするんだという立法趣旨だと思うのですが、この省令はそういう点では、米軍の車両を加えていく、あるいは車両制限令の適用対象から除外するというふうなことに持っていく論理的な必然性は全然ない、私はこう思うのですが、道路局長立場でどうでございましょう。
  419. 高橋国一郎

    ○高橋説明員 先ほども申し上げましたように、道路法本法そのものが米軍のことは全く頭にはなくてつくられております。まして車両制限令も同様でございまして、そういう面から、単にこれは米軍だけではございませんで、その他道路法全体について現在検討を加えております。その中の一環として米軍の車両についても検討を加えられることになろうと思います。
  420. 東中光雄

    ○東中委員 もう時間がありませんので終わりますが、最後に防衛庁長官にお聞きしておきたいのです。  この前も国務大臣としてお聞きしたのですけれども、これは道路法一般の中で検討をしていくということでありますけれども、この問題が起こって、そしてそういった法的な処置をしていくつもりはないというふうにこの前は言われておったわけですが、結局は、ことしの四月から改正されたばかりのやつを、今度はそこから除外していくという方向に変える意向を持っておられる。少なくとも事務当局では、そういう検討がすでにされておるということであります。特に制限令の場合は、これは法律じゃありませんから閣議でつくることになりますが、こういう形での改正は明らかに改悪だと思うのです。結果においては、アメリカのベトナム侵略に加担、協力する体制を強めていくということになって、いま国民感情からいって非常に批判的であります。そういう点から見て、そういうことはやるべきでないというふうに思うのですが、国務大臣としての御所見を聞かしていただいて、質問を終わりたいと思います。
  421. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この前お答えをしましたのは、これは防衛庁の所管のことではございません。その前に、建設省のほうでそういう問題を考えていないという話でありましたので、私は、所管外であるまするが、いまの建設省のお考えのようで私もよろしいと思います、こう申し上げたわけでございます。建設省も、いま当面の問題として改正をするということはないというお話であったようであります。そういう趣旨で私もこの間申し上げた、こういうことでございます。
  422. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ質問を終わりますが、結局は安保条約を強化していくことになるという点で、私たちは強く反対の意思を表明しておきたいと思います。
  423. 前田正男

    前田委員長 次回は、来たる九月十二日火曜日、午前十時理事会、午後一時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八後三十分散会