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1972-10-11 第69回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月十一日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 谷垣 專一君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 山本弥之助君 理事 門司  亮君       小山 省二君    高鳥  修君       中島 茂喜君    丹羽喬四郎君       後藤 俊男君    山口 鶴男君       山本 幸一君    桑名 義治君       和田 一郎君    林  百郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣         国家公安委員会         委員長     木村 武雄君         自 治 大 臣 福田  一君  委員外出席者         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         厚生省環境衛生         局水道課長   国川 建二君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         自治政務次官 三ツ林弥太郎君         自治大臣官房企         画室長     横手  正君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   中嶋 英夫君     後藤 俊男君 同日  辞任         補欠選任   後藤 俊男君     中嶋 英夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治に関する件  地方財政に関する件  警察に関する件      ————◇—————
  2. 谷垣專一

    谷垣委員長 これより会議を開きます。  地方自治地方財政及び警察に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣が就任されましてからいままでお尋ねをする機会がございませんでしたので、あまりこまかいことをお尋ねするつもりはございませんが、地方財政に立ち向かう大臣基本のお考え方を若干お尋ねをいたしておきたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、今年度地方財政が一体どうなるだろうかという問題であります。昭和四十七年度地方財政編成にあたりましては、私どもは、四十年不況の経験にかんがみまして、当時、地方交付税率を、二九・五%から現行の三二%へと二・五%引き上げたわけでありまして、交付税率引き上げ中心といたしまして、この財源の手当てをいたしました。昨年のニクソンのドルショックによりまして、わが国は非常な不況に直面をいたしたわけでございまして、この情勢は、かつての昭和四十年、四十一年の不況よりも深刻ではないか、したがって、四十一年度交付税率の二・五%引き上げをやったのであるから、当然それ以上の対策が必要ではないかということを私ども繰り返し強調いたしたのであります。ところが、残念ながら、当時、渡海自治大臣が、大蔵大臣臨時に兼務をすると申しますか、大蔵大臣臨時代理というような職にあったにもかかわらず、十分な対策がとれませんで、交付税率引き上げは全く行なわれませんでした。そうして、不足のつじつまをどうやって合わせたかと申しますと、約四千九百億起債をふくらます、財投から千六百億円借り入れるというような、いわば、借金によって本年度地方財政つじつまを合わせたという結果になっているわけであります。  最近の新聞を拝見いたしますと、大型補正を計上される、そして、特に、道路あるいは文教施設等公共事業を相当大幅にふくらますというようなことが伝えられておるわけであります。私たちは、産業基盤を強化するのでなしに、現在は国民生活に直結した生活関連社会資本を充実強化すべきだということを主張してまいりましたから、いま申し上げたことにすべて頭から否定的な態度をとるわけではありませんが、問題は、この公共事業実施に伴うところの、いわば地方団体裏負担の問題であります。そうでなくても、本年度当初、交付税措置すべきものを、起債財投からの借り入れで措置する、いわば借金でもってしりぬぐいをするという形をとった。そして、また、この補正に際して、大幅な公共事業の増額をするということになりますならば、当然、その地方財政に対する影響というものは非常に大きい、かように見なければならないと思います。その場合、この地方財政の現在の状況にかんがみまして、地方財政を強化するために、大臣としては一体どのような手だてをおとりになるおつもりでありますか。こまかい数字的な問題はけっこうでありますが、基本的な考え方をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、昨年は、ドルショック関係等から見て、非常な財政の落ち込みがあるというような考え方が非常に強うございましたし、また、予算編成上も非常に苦労をしたことは事実でございますが、その後になりまして、いささか景気が回復いたしておることは皆さんすでに御承知のとおりでありまして、いまの段階においては、昨年考えたような不況感は起きておらない、順次景気も回復しつつある、こういうことであります。したがって、地方税収等もある程度はふえる見込みでありますし、詳しいことは財政局長から説明させてよろしゅうございますが、われわれとしては去年考えたのとはだいぶん情勢がある意味で好転はしておると思っております。  それから、いま御質問のございましたところの、いわゆる大型補正予算を組んだ場合の地方に対する負担、この負担をいかように処置するかということにつきましては、いま、その補正予算内容を詰めておる段階でございまして、公共事業をどれくらいにするかということによって地方財政に対する影響も変わってくるわけでございます。いずれにしても、このようなことが地方財政に大きな悪影響を与えないようにするべきであるという考え方大蔵省と折衝を続けておる段階でございます。  もし必要ならば、財政局長から内容説明いたさせます。
  5. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 概略でけっこうです。
  6. 鎌田要人

    鎌田説明員 ただいま大臣からお答えがございましたように、経済全体の基調といたしましては、御案内のとおり、実質一〇%台に乗るという見通しもあるようでございまして、そういった意味合いにおきまして、何がしかの地方交付税、あるいは地方税自然増収というものが見込まれる、こういうことでございますけれども、他方におきまして、今度の公共事業追加補正、これの規模というのがただいまなお流動的でございます。まあ、新聞等におきましては、四千五百億前後ということが伝えられておるわけでございますが、まだ、大蔵省のほうで関係各省と詰めておる最中のようでございます。ただ、生活関連社会資本の充実ということが基本でございますから、住宅とか、あるいは公共下水道、あるいは義務教育施設といったものになってまいりますと、かなり地方負担のほうも多くなります。そういった意味合いにおきまして、地方負担分につきましては、前年度におきましては、御案内のとおり、税収が全然伸びない。伸びないどころか、逆に落ち込んだわけでございますので、この千五百億余りの公共事業追加に対しまして、地方負担は千五百億余りふえたわけでございますが、これにつきましては全額地方債を充て、その中の千二百億というものは政府資金を充てる、こういう措置でまかないをつけたわけでございます。本年度の場合におきましては、やはりこの地方債の充当というものをできるだけ多くする、その中におきまして、政府資金の割合をできるだけ多くする、こういうことによりまして地方団体財政運営に遺憾なきを期してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  7. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昨年の補正の際も、地方債地方裏負担は見た、その中心政府資金でまかなうように努力をしたということはよく承知をいたしております。ただ、問題は、本年度地方財政計画を計上いたしますときに、府県分公事業伸びに伴う基準財政需要伸びは全部起債肩がわりをしておるわけでしょう。いわば、根っこの部分ですね。昭和四十七年度の当初の地方財政計画自体が、あげて起債でもってつじつまを合わせるということをやってきた。その上、さらにまた地方債でもって裏負担を見る。一応つじつまは合うでしょう。しかし、そうなってまいりますと、地方財政地方債に対する依存度というものが急激に上昇していく。確かに形は太った。最近の子供みたいなものでありまして、ちょっと見たところは太っていて、体格はよさそうに見えるけれども肥満体であって、体質自体は非常に不健全になっている。私は、そういうような状態に地方財政を置いたのではいかがかと思うのです。幸い福田自治大臣肥満体ではないようでありますから、福田大臣のような体質地方財政を持っていくということが必要ではないかと思います。しかし、この点は、そういう主張だけを申し上げておきまして、いずれまた臨時国会になりました際に議論することにいたしておきましょう。  次にお尋ねいたしたいのは地方公営企業の問題であります。前の渡海自治大臣にも、あるいは前の佐藤総理にも、私は口をきわめて強調いたしたのでありますが、従来三K赤字ということがいわれた。最近、これに国有林を加えて四K赤字というようなことが新聞紙上伝えられておりますが、私は、それ以前にいま一つ問題の経緯があるんじゃないかと思います。それは、地方公営交通中心とする地方公営企業赤字の問題です。幸い、公営交通もKで始まりますから、国有林が加わる前にすでに四Kにしなければならぬ、私はこう思っておりました。国鉄赤字は、昭和四十五年度五千六百億、昭和四十六年度八千億といわれております。しかし、公営交通は、三十九の都市で実施しているにかかわらず、昭和四十五年度赤字が千六百億円、昭和四十六年度は一千九百億円にものぼる、こういう状況であります。したがって、国鉄との比較において議論するならば、国鉄財政危機よりも、むしろ、地方公営企業である公営交通財政危機はより深刻である、かように言って過言でないと私は思っております。また、そのような意味で私はお尋ねを何回もいたしてまいりました。そして、政府におきましても、昭和四十八年度において抜本的な第二次再建対策を講ずるということで鋭意努力をいただいておりますことは承知をいたしております。  ただ、私は、大臣と、考え方についてひとつ議論をしてみたいと思うのです。たとえば公営交通水道、これは住民にとって必要欠くべからざるものだと思います。どこの都市へ行きましても、水道のない都市はない。また、交通機関というものが整備されていなければ、都市としての機能はないと思います。これが受益者負担という形で住民サービスが行なわれているわけでありますけれども、しかし、考えてみれば、たとえば教育の問題にしても、これは学校に子供をやる父兄が受益者負担として持つべきだという議論があるかもしれない。しかし、教育というものは、国全体、また住民全体にもやはりサービスしなければならないという観点から、義務教育無償という形で、特に受益者負担というものを徴収しないで小中学校の運営は行なわれている。とすれば、この水道についても同じような考え方があってもいいのじゃないか。公営交通についてもそうじゃないか。警察消防だってそうだと私は思うのですね。治安を守る。それから火災を防止する。受益者負担というかっこうで料金を取ろうとすれば取れないことはないかもしれない。しかし、こういうものは一般行政サービスとして、受益者負担というものはなしにして今日まで運営をしている。とすれば、水道についても、公営交通についても、これは行政的なサービスであるという形で、いまのように、水道独立採算をとる、そのために赤字が問題になる、公営交通も、地方公営企業として独立採算をとる、したがって累積赤字が問題になるということでなしに、これが行政サービスだというふうに割り切っていきますならば、もっと違った形でのこの問題に対する取り組み方法があるのではないか、かように私は思いますが、この点いかがでしょうか。
  8. 福田一

    福田国務大臣 行政サービスの面をふやしてはどうかというお考えでございますが、この点は、私は、方向として決して反対をいたすものではございません。しかし、この点を順次広げてまいりますというと、これはなかなか限界がむずかしい面が出てくることもありますし、また、国の財政負担がそれまで持ちこたえられるかどうかという点も考慮しなければならないと思います。たとえば水道にしても、地下鉄にしても、これらのものは、やはり特定地域特定の人がそれによって利益を受けるということでございます。しかし、いま、警察その他の問題については国がめんどうを見ておるというようなことは、これはいささか種類が、といいますか、行政によって利益を受ける者の範囲が非常に広範囲にわたっておる。ところが、そういう水道とか地下鉄というようなものは、特定の者ということに限定するというわけにはいかぬかもしれぬが、限定しやすい面があるということから、国に力がついていけば順次これを広げていくということには私は賛成でありますが、いまの段階で急に広げるということはなかなか困難ではなかろうかと思っております。
  9. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 水道当該自治体市民がみな利用するわけでして、そういう意味では、私は、特定した受益者ということは言えないと思うのです。もちろん、一定額以上の水を使用することによってある程度営業をやっているという人もおるわけでありますから、そういうものに、一定消費量以上のみについて受益者負担を課するということは、私は別に否定するわけではありませんが、市民生活に必要な生活水というものは、市民いずれもがこれは利用しているわけでありますから、そうなれば、警察消防と何ら変わるところがないと私は思うのですね。しかし、水道については料金を徴収しているのがわが国の普通の制度だ。しかし、だからといって、それでいつまでもよろしいということではなくて、むしろそういうものは行政サービスワクでくくっていってもいいのじゃないか。水道自体をいつまでも独立採算ワクで縛りつけておくことは一体どうかという疑問を持たざるを得ない。公営交通の場合にはもっと受益者が限定されるかもしれませんが、しかし、都市機能考えたら、公営交通都市交通がたくて市民生活をすることは不可能なんでありますから、そういう意味で、この独立採算をいつまでもしいていくということについて疑問を持つことは当然ではないかと実は思うのです。  大臣、そういう意味で、一ぺんに独立採算ワクを取っ払うことにはなかなか納得しないようでありますが、とすれば、一歩譲って議論をすれば、もっと一般会計公営企業に対して負担を持つことによって公共サービスの色合いをより強めていくということは、当然お答えになってしかるべきじゃないかと私は思うのですね。そういう観点で第二次再建に取り組んでいただかなければ、膨大な公営交通赤字財政危機を解決することは不可能だ、かように私は思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  10. 福田一

    福田国務大臣 私は、先生のお考えのとおりに考えておるわけです。
  11. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点も、いま自治省では公営交通問題研究会をおつくりになりまして、その答申がやがて十月中には出ると承っております。当委員会にも、地方公営企業に関する小委員会がございます。各党でもそれぞれこの問題についてはお取り組みをされておるようであります。したがって、この公営交通赤字対策の問題、さらに広げていえば、地方公営企業財政再建対策の問題は、いまいわれている三K赤字、あるいは国有林を含めた四K赤字と同等に、いやそれ以上に、国が昭和四十八年度予算措置において抜本的にこの解決に向かって努力をするということを、ひとつこの際はっきりお約束をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  12. 福田一

    福田国務大臣 何もあなたのおことばをとらえて申し上げるわけではございませんが、抜本的といいますと、すっかりみんなやらなければならぬようになるのですが、方向として、順次そういう方向に向けていきたいということについてはお答えをいたしたいと思います。
  13. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 前の財政再建が非常に小手先でございましたから、あれと同じようなものではだめで、そういう意味では大いに抜本的なつもりで取り組んでいただかなければならぬ、こういう趣旨であります。  最後に一つお尋ねしたい問題があるのですが、実は、私、ことし、列国議会制度調査でヨーロッパに参りました。団長は自民党長谷川峻代議士でございました。イタリアに参りましたが、私、かねがねイタリア状況について関心を持っておりましたことの一つは、イタリアという国は非常に出かせぎの多い国であります。スイスあるいは西ドイツ、フランス、そういう国々にたくさんのイタリア方々が出かせぎに行っておられます。したがって、イタリアで総選挙を実施いたします場合は、各地に行っております出かせぎの方々投票というものを無視するのでは、真の国民の民意というものが反映をしないということから、国が二分の一の経費負担する。それから、イタリア国鉄が二分の一の経費負担いたしまして、結果的には全額負担という形になるのですが、そういう形で、国外に出かせぎに行っておられます方々投票の際には帰郷いただきまして、選挙参加をしていただく。こういう制度が前々から確立をしているということを聞きました。イタリアの大使館あるいはミラノの領事館に参りまして、その間の事情をいろいろ聞いたわけでありますが、これに対しまして、自民党長谷川峻代議士も、これは非常にけっこうなことだ、ぜひこれは実現をしたいということを言っておられました。また、横浜の飛鳥田市長さんを会長とする全国革新市長会という団体がございますが、ここでは前からこの問題に注目をいたしまして、そのことをぜひ実施していただきたいということを政府に要請をしようということにいたしておるようであります。  ここは公職選挙法特別委員会ではありませんから、私はこまかいことをお尋ねするつもりはありませんが、少なくとも、私ども地方行政委員会では、過疎過密の問題を議論し、過疎立法については、当委員会で実は議員立法で成立をさしたという経過がございます。したがって、この過疎地域対策の問題、また出かせぎ者の方々の問題というのは、当委員会でしばしば実は議論になっているわけであります。そういう観点からお尋ねいたしたいと思うのでありますが、イタリアのように国外に出かせぎに行っているという方はわが国にはほとんどございませんけれども、東北、北海道、北陸あるいは山陰、九州等地域方々は、京阪神あるいは京葉、京浜の地帯に多数の方々が出かせぎに出ておられます。三年前の選挙投票率が非常に悪うございました。これに対して、政治自体国民関心が少ないということは、やはり政治家自体が深く反省しなければいかぬのじゃないかという議論も当時ずいぶんあったと思うのであります。そういうことを考えました場合に、この際、出かせぎ者の方々に対して往復旅費ぐらいは国が持って、そうして文字どおり国民全体が役票参加をするといった体制をおつくりになることが、政治国民から信頼される道に向かって一歩前進することになるのではないか、かように私は思うのでありますが、この点、ひとつ自治大臣のお考え方お尋ねをいたしたいと思うのです。
  14. 福田一

    福田国務大臣 ただいま御説明のございましたイタリア不在者投票というか、選挙制度の問題については、お説明のとおりと存じておる次第であります。しかし、これを実行に移すというか、日本に引き移してきた場合にどういう差が起きるかといいますと、イタリアの場合は、出かせぎの人は相当多うございますし、それからまた、その投票自分市町村で行なわなければならないという規定があることは御承知のとおりでございます。そういたしますと、国外に行っている人が自分市町村投票しなければならないという義務を負わされているということになっておる以上は、やはり、国としてそれができるような措置を講じなければならぬ。したがって、海外におる人が帰ってくる場合に、国費あるいはその他の方法をもってこれのめんどうを見るということが必要になってくると思われるわけであります。ただし、日本の場合は、御案内のように不在者投票という制度がございまして、これは趣旨が徹底しておらないということもありますし、また、手続が非常に不便であるという面もあるかもしれませんけれども、しかし、東京におって青森投票ができないという制度にはなっておらないことも、これはもう御承知のとおりであります。しかし、それは不便じゃないか、そういう場合、くにまで帰してやったらどうかということでございますが、そうなりますというと一体どれくらいの出かせぎの人がおるのかというような実態問題も詰めておかなければなりません。それから、青森のように非常に出かせぎの多いところだというと、輸送計画というものも考えてみなければなりません。それからまた、休みの間は、無給にするのか有給にするのかという問題も、これまた考えておかなければならないと思うのでございまして、その意味ではイタリアとは制度が違っておりますし、実際、実行に移すとしても、いま言ったような問題がある。そのとき急に列車が間に合うのかどうか。たとえば青森まで行ってくるということになると、東京からどうしても三日くらいかかると見ておかなければなりません。そうすると、その三日の輸送が一体できるのかどうかということ等もやはり十分調査しなければならないかと思うのでありまして、私たちといたしましては、そういう面の調査等も含めて今後検討をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  15. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣お話のような、イタリアわが国制度の違いは十分承知いたしております。その上で申し上げているわけでありますが、結局、三年前の総選挙投票率が非常に低かったわけでありまして、これは、私ども国会に席を持ちます者がいろいろな意味で反省をしなければならない重大な意味を含んでいると思いますけれども、同時にまた、国民の皆さまが投票しやすいような仕組みというものをお互いがくふうをするということも、これまた重要なことではないだろうかと思います。しかもまた、最近、出かせぎの方々お話などをいろいろ聞くわけでありますけれども、とにかく、出かせぎ者を出しております家庭におきましては、いわば家庭の柱ともいうべき御主人が長い間不在であるということから、いろいろな意味で、その家族の中に問題があるであろうことは想像にかたくないと思います。そういうときに、総選挙の際、ほんとうに国民全体が投票参加をするんだという意味で、この休暇については、全部有給にするか、あるいはどういうふうにするかということももちろん論議をいただいて、しかも、旅費については、国が持って、みんなが投票できるような仕組みをつくってやる。そうすることによって、また、その出かせぎの家族も、投票の際には、御主人家庭に迎えて一家団らんも楽しむことができるということになれば、私は、これは非常にけっこうなことではないだろうかと思うのであります。要は経費の問題であり、また、その間出かせぎの方々休暇を一体どうするかという問題であり、また、大臣が言われた輸送計画の問題もあろうと思いますが、ひとつ早急に実態を御調査いただきまして、いま申し上げたような方向での施策をおとりいただくように御努力をいただけたらどうだろうかと思うのです。特に、そうすることによって、少しでも国民政治というものが身近にある、また、選挙というものが真に国民のための行事であるということが確立をいたしますならば、これは非常にけっこうなことではないかと私は思うのであります。わが国も経済が相当伸びまして、一人当たりの所得におきましても、ヨーロッパ各国とそうひけをとらないという状況まで来ておることは大臣もよく御案内のとおりだと思います。経費につきましては、そういう状況の中では何とか捻出できる道は十分あろうと思うのでありまして、この点につきましては、ひとつ大いに前向きに対処をしていただきたいと思います。国会、政局の動向等についてもいろいろうわさをされているときでありますから、早急にこの問題についてお取り組みをいただきまして、前向きに解決されるように強く要請をいたしたいと思います。  特に大臣のほうから、大いにやりたいという御決意があれば承って、とりあえず自治大臣に対するお尋ねを終わっておきたいと思います。
  16. 福田一

    福田国務大臣 先ほども申し上げましたように、制度の違いがございますし、何も投票ができないわけでもありません。したがって、不在者投票という制度選挙権行使に非常に不便であるということであれば、これはもう当然、また順次何か投票のやり方を改善するくふうを考えなければなりません。そういう意味で、もちろんこれは検討をいたさなければならないと思っております。そこで、その検討の段階において、これはどうしてもうまくいかぬということであれば、お説のように、くにに帰ってというような問題も第二段の段階考えていかなければならないかと思うのでありますが、まあ、こんなところで日本列島改造問題もあれですが、過密過疎の問題を解消していこうというのは、そういう出かせぎの人などはなるべくなくするような方向に持っていきたいというのが一応われわれの考え方でもございます。それがあるからといって、それをやってはいかぬということにはならないかもしれませんけれども、そういう点もあるということも申し添えさせていただきまして、今後とも十分に検討をさしていただきたいと思います。
  17. 谷垣專一

    谷垣委員長 桑名義治君。
  18. 桑名義治

    ○桑名委員 最初に電気ガス税についてお尋ねしたいと思いますが、去る九月二十日に、熊本におきまして、中曽根通産大臣は、電気、ガスは国民生活にとって空気と同じようなもので、これに課税することはよくない、全廃する方向自民党政調会と折衝中であるというふうに語っているわけでございますけれども、この問題について、自治省としてどのような考え方があるか、ここで明快にお答えを願いたいと思います。
  19. 福田一

    福田国務大臣 電気ガス税の廃止については、これは多年の問題でございまして、私がかつて通産大臣におったときもそういうことを要望いたした経験があるわけでございますが、しかし、どうも、立場をかえて自治省へ入ってまいりますと、市町村財政の問題等から考えまして、急にそれを変えるというか、減免をしてしまうということはどうも困難のように見受けられます。
  20. 桑名義治

    ○桑名委員 この、いわゆる電気ガス税でございますけれども、これはもう御承知のように、戦争中の財源の確保という立場からこういう電気ガス税ができたのでございますが、いわゆる戦後はこれが府県税に移行し、後に市町村税に移行して今日に至ったという、こういういきさつがあるわけでございますけれども、こういったいきさつを考えてみますと、税金は取りやすいところから取るべきであるというような考え方制度化して、いまだに改正されていない、これはいわゆる大衆課税の悪法の見本である、こういうふうに考えても決して過言ではない、このように思うわけでございます。方向としては、免税点をいままでそういう理由で一応引き上げてきたというふうな論議もあるかもしれません。また、かつて、前総理大臣である佐藤さんも、この電気ガス税については悪法であるということを言明しているわけでございますけれども、では、現在は、実際に電気ガス税による市町村の収入は四十七年度で千百五十八億円であるというふうにもいわれているわけでございますが、かわりの財源が見つかれば廃止する方向を検討するのか、それともまた、現状は免税点の引き上げで一応お茶を濁すという方向で進むのか、そこら辺を明快にお答え願いたいと思います。
  21. 福田一

    福田国務大臣 先ほども申し上げましたように、この税をなるべく減らしていきたいという空気はだれもが承知をいたしておるところでありますが、かわり財源を求めることがなかなか困難でもございますし、したがって、お説のように、この電気ガス税は順次減らしていくという方向については、これは堅持してまいりたいと思いますが、一挙に撤廃ということはかなり困難だと思います。
  22. 桑名義治

    ○桑名委員 先ほどから答弁がございましたように、大臣も、通産大臣の時代には、これは撤廃をすべきであるという御発言をなさったということでございますし、今回は中曽根通産大臣も同じような発言をしているし、また、佐藤前内閣総理大臣もこれは悪法であると言っている。これだけ一致しておりながら、あなたが自治省に来たら逆転するわけですか。そんな節のないような発言は困りますな。言うならば、大臣の発言というものは、これはもう当然それだけのことを見越してのいわゆる発言でなければならないわけでございますけれども自治省に来たら立場が違いましてどうもなどというのは、どうもいただけませんが、その点は、大臣として、前回の発言に対する責任をどうお考えですか。
  23. 福田一

    福田国務大臣 私は、撤廃するということを要望したことはございません。比率を下げてもらいたいということを、当時、実は私が通産大臣のときに言って、少しは下げてもらったはずでございます。その後も順次そういうふうにして下げてきておると私は承知をいたしておるのであります。これを順次下げることには賛成でございます。  それから、ただいま、私が通産大臣当時に言ったことばといまのことばとは違うということですが、内容は、いま申し上げたように、私が大臣の当時に言ったことは、順次減らすべきであるという、率の改定を求めた発言をいたしたわけでございますが、しかし、それはそれといたしましても、私は、それぞれの役所がそれぞれの立場において異なった意見を述べ合うということも意味があるのではないかと思います。そうでないと、完全な一人の独裁になってしまう。各省がおのおのの立場においておのおのの意見を述べる、それを統合していくことにおいてやはり政治が公正な道が歩めるのではないか、このように考えておるわけでございます。
  24. 桑名義治

    ○桑名委員 いろいろといま説明がございましたけれども、しかし、原則として底に横たわっている思想というものは、この電気ガス税は悪法であるという前提があると私は思うのです。であればこそ、漸次免税点を引き上げていく。あるいはまた、前の佐藤さんの発言じゃないけれども、悪法であるということを国会で発言をしている。こういった事実を踏まえながら、あなたがそういうふうな考え方であるとするならば、その方向に従って、これに見合うだけの財源を見出して、これも一日も早く全廃していく。こういう方向で進むべきであるというふうに私は考えるわけでございますが、その点について伺いたい。
  25. 福田一

    福田国務大臣 御趣旨に沿って努力をいたした  いと思います。
  26. 桑名義治

    ○桑名委員 千百五十八億円ぐらいであれば、これは生活にかかわる電気、ガスに課税しなくとも、特定のレジャーに課税するとか、あるいは国がこれを補てんするとか、幾らでも方法はあると私は思います。要は、自治省がどういう態度でこういった問題に対して対処していくかという、いわゆる前向きの努力なり、姿勢なり、考え方なり、これが一番大事なことであろうと私は思うのです。そういった立場から考えますと、いま小刻みに免税点を引き上げていくという段階ではない、このように考えますが、この点についてお伺いしたい。
  27. 福田一

    福田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、それではそれにかわる適当なものがいまあるかどうかということは検討させていただきますけれども、いま、この段階においてそういうものがありますから、そこで撤廃に向かっていきますということは、ちょっとお答えいたしかねるかと思います。
  28. 桑名義治

    ○桑名委員 では、先ほどの発言の中からお伺いした点については、漸次これは免税点を引き上げるということでございますけれども、来年度引き上げるという予想が立ちますか。あるいは確約ができますか。その点について伺いたい。
  29. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 電気ガス税の免税点につきましては、ここ数年その引き上げ努力をしてきたところでございますが、今年の場合におきましては、特に、ガス料金等につきましての値上げ等がございまして、従来免税になっておりました世帯が、料金引き上げによって課税世帯になるというような事態もあらわれております。そういう状況を十分検討いたしまして、免税点の幅等につきましては、従来より免税世帯が減らないというような方向で検討してまいりたいと考えております。
  30. 桑名義治

    ○桑名委員 いま説明がありましたように、いわゆる電気、ガスの値上げの問題が出ております。いまの答弁の中では、現在の免税点の、それに該当する世帯よりも上回ることがないようにということでありますが、それでは前進ではない。少なくとも、それ以上の前進の態度があってこそ初めて免税点の引き上げの効果が国民生活の上にあらわれたというふうに評価することができると思うのですが、いわゆるそれ以上の免税点の引き上げというのはできないのですか。
  31. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 やはり、一面におきましては、来年度地方財政状況、特に、市町村財政状況の見通しということも考え合わせなければならない問題でございます。私どもとしましては、できる限りお説のような方向での検討をいたしたいと考えております。一面におきましては、やはり財政収支の面からの制約がおもにあるということでございます。
  32. 桑名義治

    ○桑名委員 では、この問題についてはこの程度にしまして、また機会を見てこの問題を提起してみたいと思います。  次にお伺いしたいことは、沖繩県の水道の問題でございます。これは過日委員会で取り上げられたこともございますけれども、実際に沖繩が復帰をしまして、沖繩県という立場になった。この時点で、自治省としての考え方も、これは明快にしておかなければならないという立場からこの質問をするわけでございますが、米軍は、八月三十日付で、関係市町村に対して、県企業局と直接給水契約をしたいというふうに文章で申し入れをしておりますけれども、米軍がその法的根拠にしている米軍布令による給水契約の内容について、まず最初に御説明を願いたいと思います。
  33. 国川建二

    ○国川説明員 お話しの点は、復帰前の五月十日に結ばれた給水契約の点かと思いますが、これは、当時の琉球水道公社のロンバード理事長と合衆国政府の契約担当官との間に結ばれました給水契約でございます。その内容は、その時点におきましての水道公社と米軍との間の水量並びに料金についての契約の内容でございます。  以上でございます。
  34. 桑名義治

    ○桑名委員 いまお話しがありましたように、復帰五日前、それから公社が解散する二日前の五月十日に、公社としての決定権を持つ理事会があるわけでございますが、これが、沖繩側が三人で、米側が二人で構成をされているわけでございますけれども、米民政府の公益事業局長のハーリー・W・ロンバード氏と高等弁務官府の購買契約官ジェームズ・W・レイッツ氏という米軍当局者との間でこの契約が結ばれたわけでございますけれども、この契約がはたして合法的であるかどうか。現在生きているのかどうか。この点について、厚生省としてはどのような考え方を持っているか、明らかにしていただきたい。
  35. 国川建二

    ○国川説明員 復帰前のものでございますので、外務省に……。
  36. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  復帰前、すなわち米国が沖繩に施政権を行使しておりました時代における、米側のいわば統治権内部の行為でございまして、その有効ないし無効を日本政府の立場でただいま論ずることはきわめてむずかしいかと思います。したがいまして、本件は、またいずれ御質問に応じてお答え申し上げますが、国と国との交渉事にまだ至っておりませんので、そういう段階になりますれば、先生御指摘の点も含めて、いずれ私どもは米側と論議を詰めなければならないと思います。しかし、ただいまの段階ではまだそこまで至っておりませんし、米側から、彼らの考える法的根拠ということの正式な説明も受けておりません段階でございますので、コメントは控えさせていただきたいと存じます。
  37. 桑名義治

    ○桑名委員 しかも、この契約を合法的なものとするために、その前日の五月九日に、旧高等弁務官の特命で、公社定款の第四条をかってに手直しをしている。こういうふうな事実関係があるわけでございますが、いわゆる公社の決定権を、理事会から米側の代表、理事長一人に移譲するというふうな体制が、現時点から考えた場合に、これはいわゆるかけ込み的な内容であるというふうに考えざるを得ないわけでございますが、では、この点について自治省としてはどういうふうにお考えになりますか。自治省としての考え方を述べてもらいたいと思います。
  38. 鎌田要人

    鎌田説明員 この問題につきましては、自治省の所管の問題に入ってまいります以前の問題というふうに私ども考えておるわけでございます。ただ、問題は、現在、沖繩県の企業局あるいは市町村、それと米軍、こういう関係に相なっておるわけでございますが、順序を立てて申し上げますというと、ただいま先生御指摘になりましたような契約の有効無効の問題、これは大きな問題だと思うのです。ただ、現実には、県が琉球水道公社の資産というものを受け継いでおるわけでございまして、現実に企業局の水がアメリカさんのほうに行っておる。これも事実としては間違いないわけでございます。ただ、それは水道法の関係から申しますと——これはここに厚生省の専門家がおられますから、私がよけいなことを言うべきことでないかもしれませんけれども水道法の規定によって、市町村が同意しなければ県から水はやれないということがあるようでございます。かたがた、市町村のほうにしてみますと、市町村は何も持っていない。何も持っていないところで、ただアメリカさんに水をやるんだ、水をやるんだといいましても、施設を自分が持たなければ供給はできないのでありますから、その施設の移管の問題があろうと思います。そういうことで、県がやるにしても、市町村がやるにしても、いまのところは、法制的にも、あるいは事実的にも、まことにこんとんとしておりまして、決して私は逃げるわけじゃございませんが、それは自治省の所管の問題ではなく、厚生省の所管の問題でございますので、私ども、そこの関係が厚生省の指導によりまして一日も早くすっきりするという事態になるのを見守っておる、そういう事態が早く来るように祈っておるということでございます。
  39. 桑名義治

    ○桑名委員 じゃ、厚生省にお尋ねしますけれども、現在米軍が日本に滞納している水道料金、これは大体どのくらいに積算されていますか。
  40. 国川建二

    ○国川説明員 やはり、問題は、その水の値段によると思います。たとえば、契約締結時におきます、その料金市町村の卸値段という形でいたしますと、概算一億五千万程度ではないかということであります。
  41. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしますと、いま、日本に、いわゆる本土に在駐している米軍に売り渡している水道料金で積算するとどのくらいになるのですか。
  42. 国川建二

    ○国川説明員 本土におきます米軍基地への給水は、それぞれの市町村でやっておりまして、値段もいろいろ異なっておりますので、ちょっと簡単に比較はできないと思います。
  43. 桑名義治

    ○桑名委員 いろいろな報道機関の話とか、そういうものから積算しますと、約二億二千万という数値が上がっているわけですが、あなたの場合は一億五千万。ずいぶん格差があるわけですが、大体どういう積算なんですか。
  44. 国川建二

    ○国川説明員 私が申し上げましたのは、県の水道から市町村への用水供給をしておりますところの、いわゆる卸料金の値段で計算いたしますとそういうことでございまして、それぞれの市町村水道料金、これはもうばらばらでございますけれども、それを適用いたしますと二億数千万になるというように聞いております。
  45. 桑名義治

    ○桑名委員 自治省のほうも、この事態は大いに着目していただかなければ困ると思うのです。沖繩が日本との間に行政の格差を非常に生じている。そういった中で、現在二億数千万円の滞納金がいまだにあるという事実、これは現在の沖繩の市町村にとっては、財政的には大きな比重があると思うのです。この問題をよく認識をした上で、自治省としては、各省のしりをたたくという方向で一日も早くこれを解決していかなければならない重大な問題だと私は思うわけでございます。  そこで、外務省にお尋ねをしたいわけでございますが、外務省としては、復帰前にこのようなことがなされたのを全然知らなかったかというのです。知らなかったとすれば、これはたいへんな問題であると私は考えるわけですが、米軍政から県政への移行あるいは復帰対策を推進してきた日本政府が、このような動きを察知していなかったとすれば、これは怠慢である、その責任はのがれられない、私はこのように考えるわけでございますが、外務省はどのように考えておられますか。
  46. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  五月九日の権限付与、それに基づく五月十日の新契約の締結という一連の事案につきましては、日本政府、私ども外務省といたしましては、その事後に承知いたした次第でございまして、事前に米側から連絡があったとか、あるいは協議があったということはございませんでした。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、その段階及び現在までの過程で、まだ、公式に米側との政府間の話し合いをするに至っておりません。これは、わがほうの内部にも、そこに持ち上げるまでの詰めがまだできていないという事情がございますけれども、非公式には、在京米大使館を通じて、当時の経緯、現在における米側のものの考え方は打診してございます。  一応の説明によりますと、御承知のとおり、復帰前におきましては、米軍はすべて自営水道をとっていたわけでございます。これを、返還協定に即しまして、一たん水道公社に移管し、県の企業局に引き継ぐという段取りがとられたわけでございますが、従来、自営水道という、自分で水を処理し、米軍基地へ配水するという自営行為でございましたから、彼らは、いわば軍活動の一環として処理しており、軍以外との直接の関係を持たず水を運用していたわけでございます。しかし、復帰を迎えることとなり、返還協定に基づきまして、ただいま御説明したように、水道公社、県の企業局へ引き渡すということになりますと、米軍としては、水をみずから運用するのではなく、消費者の立場に転化するわけでございます。そのような法的な段取りは復帰前ではもちろん必要でございませんでしたので、何らやっておらないわけでございます。したがいまして、復帰が迫りました段階で、いよいよ自分たちも消費者の段階に性格が変更することに伴って、所要の法的整備、契約面の整備を行なった上で復帰を迎えるという、いわば復帰のための一連の調整事務の一部として法律的にそのような契約を結ぶ必要があったのだ、そういう説明を非公式にしております。
  47. 桑名義治

    ○桑名委員 それは米側の一方的な説明でございまして、当然、水道公社は日本のほうに移管をされるわけでございます。したがって、日本政府は、返還の交渉の段階水道問題を取り上げたわけですから、そのときに、今後水道問題はどういうふうな契約を結んでいくべきかという話し合いは当然なされるべきだ。これは当然な考え方です。だから、その点について、米側が消費者の立場になるんだからこういうふうな一方的な契約を結んだんだという考え方はおかしいと思うのです。いまあなたが説明したのは米側の説明だけである。だから、日本政府はどのような考え方を持っているのか。あるいはまた、返還の時点でいろいろ行政上の事務の詰めをやったわけですから、水道公社だけをぽんと別問題として取り上げたわけではない。実際に水道公社の問題は、沖繩返還の問題でも一つの重要な事項としていろいろと論議をされたわけですから、その時点で、供給者と使用者の関係をどういうふうに結んでいくかという話し合いは当然されるべきじゃないですか。それを、いままでこういう契約が結ばれたことを知らなかった、あるいは米側はこう言っているというようなことでは私たちは納得できないのですが、その点についてはどうですか。
  48. 松田慶文

    ○松田説明員 先ほどの先生のお尋ねが、当時の事情を承知していたかというお尋ねでございましたから、それに限って御答弁させていただいた次第でございますが、ただいま、日本政府はどうであるかという重ねての御質問でございますから、あらためてお答え申し上げますならば、御承知のとおり、返還協定を昨年締結いたしますまでの返還交渉の過程におきまして、御指摘のとおり、水道は非常に重要な項目の一つでございまして、返還協定第六条第一項に明示されておりますとおり、その他の公社資産とあわせましてこれらが日本国に移転する、そして公社が有する権利義務は、日本国の法令に即して日本政府が引き継ぐというふうに定めまして、国会の御承認を得た次第でございます。この際に「日本国の法令に即して引き継ぐ」という原理原則を貫いた次第でございましたが、それに加えまして、第六条に関する合意議事録におきまして、このような水道その他の公益事業、公共の役務は、本来、米軍がわが国本土において、安保条約、地位協定のもとで受け取っている権利権能と同じものでしかないということを明定した次第でございます。したがいまして、日本政府が返還交渉におきまして水道問題を処するにあたりましては、本土並みの原則、日本の法令に即するということの原則、この二つを貫きまして、ここに返還協定に明定した次第でございます。したがいまして、今後行なわれるべき当事者間の調整、米軍と沖繩県ないし市町村、そして、厚生省をはじめとする政府官庁の助言、援助によってそれが進行する。それによって早急な円満な解決に至らない場合には、他の案件と同様、これは政府間の交渉に持ち上がってまいりますが、この交渉のすべてを通じまして、返還協定に明示されておりまするただいまの二つの原則は、政府としては、これはもうすでに返還交渉でいわばかちとっている既成のことでございますので、そのラインに沿って交渉するのみでございます。
  49. 桑名義治

    ○桑名委員 いまお話がございましたように、返還協定の六条第一項の権利義務は引き継ぐという点をもって、米軍がこのような主張をしているというように考えるわけでございますが、しかし、権利義務の履行というものは、いまお話がありましたように、日本の法令に沿ったものでなければならない。私は、この原則はあくまでも守っていかなければならないというように考えるわけです。政府としては、いまの御答弁の中にありましたように、この原則はあくまでも守るという立場ではございますけれども、そういうような立場から考えますと、いわゆる米軍がとった処置というものは、この契約が復帰直前に定款をかってに変えたというふうな事実を考えると、米軍の主張は、二重にも三重にも横暴な態度をとってきたということは考える余地がない、こういうように考えるわけでございます。  それにしましても、現在の政府の態度の中から考えるとあまりにも交渉の段階が長過ぎるのじゃないかというように思うわけでありますが、いま交渉の段階ではどういうふうになっているのですか。
  50. 松田慶文

    ○松田説明員 先ほど厚生省の水道課長から御答弁がございましたように、ただいままでの段階では、日本側内、すなわち県の企業局及び市町村及び私ども政府当局との間において、なお、なすべき幾つかの側面がございまして、それの手当てを行なっておる。したがって、米国政府日本政府との間の政府間交渉にはまだ持ち上がってきていない、そういう実情でございます。
  51. 桑名義治

    ○桑名委員 そうしたら、もうほとんどやっていないということですが、その前の段階では、これはまた厚生省にお尋ねをしたいのですが、先ほど自治省のほうから説明がありましたように、まだ個々の実体がいろいろふくそうしていて、確定したものが出ていないというお話しでございますが、復帰の時点で、こういう問題についての指導助言はどのようにしたのですか。そして、現在その指導助言はどのようにしているのですか。沖繩の水道の実態というものはいろいろとふくそうしているらしいですけれども、しかし、その実態が早く固まらない以上は、交渉の段階で非常にむずかしくなってくる。こういった面について、厚生省として、いまどういう助言をし、そしてまた、現在どういうふうな形でまとめているか。その段階を教えていただきたい。
  52. 国川建二

    ○国川説明員 先生御承知のように、沖繩におきます水道施設は、その建設時代から、先ほどもお話しがございましたように、基地への給水というようなものを前提とした施設の建設が行なわれたりしたこともございまして、非常にふくそうしたと申しますか、複雑な形態になっておるわけでございます。たとえば、基地に入っております配水管からさらに一般市町村等へ給水されているというような形態もございますし、さらにはまた、県の水道施設から直接基地に給水されているというようなものもございまして、全体的にこれを画一的に処理するというのは非常にむずかしかったわけでございます。私どもは、水道の取り扱いにつきましては、復帰後は、国内の水道法のたてまえをもちましてこれを扱っていくということはもちろん当然原則でございまして、それに基づきまして、県と市町村あるいは米軍の関係者におきまして、円満に話し合いをつけたいということで、復帰前からそういう指導を続けて努力してまいったわけでございますが、先ほどもお話しがございましたように、施設の移管その他の問題も含めまして、なお今日そういう扱いが、若干残っているわけでございます。復帰後もかなり日にちがたっておるわけでございますが、この八月の末に、沖繩県からも、この扱いにつきまして、私どものほうにも協力の要請がございまして、引き続き実態の調査も行なったりしまして、すみやかに水道法の趣旨に沿った扱いをいたしたい。一般的に、国内で申しますと、横須賀あるいは佐世保等の例におきましても、市町村水道から給水されているという形態がございますから、県あるいは市町村の要望と申しますか、そういうものを十分尊重…たしまして、合法的に、できるだけすみやかにいたしたいと、目下県と市町村と盛んに協議をいたしておる段階でございます。  再度申し上げますけれども、私どもとしては、もちろん、たてまえは水道法の趣旨に沿ってすみやかに処理をいたしたいと考えております。
  53. 桑名義治

    ○桑名委員 あなたのおっしゃるように、すみやかに日本水道法に従って処理をしたいというお話しでございますけれども、それと同時に、先ほどから言われているように、まだ実態が整っていないということですね。実態が整っていないということは、復帰対策の時点で指導、助言が完全に行なわれていなかったということになるわけでございますし、また、復帰後の指導、助言が非常におくれた、いわゆる怠慢であったということにほかならないわけでございますけれども、実際にこの実態を明快にするために、どの時点を目標にして作業は進んでいるわけですか。いまのあなたのお話しの中では、ただ、県、市町村との間に鋭意検討がなされているということでございますけれども、実際問題、沖繩が復帰する以前におきましては、いわゆる本土の実態が明快に沖繩には理解されていなかったという点もありましょうし、いろいろな問題が含まれておったわけですよ。したがって、復帰の時点でいわゆる水道公社が完全に日本に移譲されるならば、当然それに伴って派生的に出てくるこういった問題を明快にするべく、実態を一日も早く整えるのがあなたのところの仕事じゃなかったのですか。その点はどのように考えているのですか。そしてまた、どの時点を目標にしてこの実態を整えようと努力されておるのか。そこら辺を説明願いたい。
  54. 国川建二

    ○国川説明員 水道法の法律のたてまえから申しますと、もちろん市町村の同意が前提でございますが、県が水道事業体となりまして米軍基地へ給水するということも、法律的には可能なわけでございます。したがいまして、現在、県は市町村からの給水を希望いたしておりますし、そういう形で実態的に処理したい、あるいは処理しなければならないわけでございます。先ほども申し上げましたけれども、非常に複雑な形がございますので、一つ一つのケースにつきまして、県と私ども相談しておりますし、さらには、一部にはまた、市町村の間での調整問題も若干残っている点もございます。期限ということになりますと、米国との外務省を通じての問題になってくるかもわかりませんし、米国との関係もございまして、いつまでということにはまいりませんけれども、少なくとも、国内法、水道法のたてまえからの問題の解消につきましては、目下鋭意詰めておるところでございます。できるだけ早い時期に私ども処理いたしたいと考えております。
  55. 桑名義治

    ○桑名委員 どうもたよりない答弁で、また、何を言っているかさっぱりわからないような答弁なんですが、しかし、先ほどから言っているように、こういう実態になることは、復帰の時点で、最初から明らかであるわけですよ。したがって、現在の水道の実態、施設の実態をさらに整理をするという指導、助言が実際に復帰前に行なわれていたかどうかという点と、さらに、今後いつを目標にしてこの問題を詰めていくかという問題、これを明快にしてもらわないと、私は現実に納得できないのですよ。このままでいきますと、いま二億数千万円が未払いになっていると言いますけれども、さらにこれはふくれ上がってきますよ。そうすると、それぞれの水道公社はまた一つの資金的な危機に直面するということも、これは事実ですよ。あなたの答弁の中に、また外務省にも責任があるような答弁がいまありましたけれども、外務省はあなたのところの実態が整わないから交渉の段階に至らないと言うし、あなたのほうは、外務省との関連もあるのでなかなかむずかしいと言うし、お互いに責任の転嫁をやっていたのでは、いつまでもこの問題は解決しないと私は思う。だから、厚生省の立場として私はお聞きしているわけですから、そこの辺を明快にしてもらわなければ困りますな。
  56. 国川建二

    ○国川説明員 沖繩におきます水道の給水の方法につきましては、形態が非常に複雑でございますので、私ども、復帰前から、県、市町村に対しまして、水道法に基づいた形で処理をするように、現地で委員会等もつくりまして、北方対策庁を中心といたしまして、関係省ともども協議を重ねながら指導いたしてまいりまして、復帰前に、このようなことが起こらないというつもりでやっておったわけでございます。しかしながら、現在このようなことになっておりますので、現在、市町村間での調整あるいは県と市町村との間の調整等も県のほうにしていただくように指導いたしておるわけでございますし、私どもも、それらの問題にあらかたのめどがつきますならば、水道法に基づいた処理、処分と申しますか、そういうことを直ちに厚生省としてきめたい。そのときも、先ほどから申し上げましたけれども、当然、水道法に基づいてこの扱いを定めていきたいと思っております。
  57. 桑名義治

    ○桑名委員 何回聞いても同じような答弁ばかり出てくるわけでございます。これが、いつがめどか、めどがつかないような御答弁です。外務省はまた、アメリカとの交渉ができないというような御答弁でございますが、米軍の使用する水量というのはばく大なものがあるわけですが、いまでさえも二億数千万円の赤字ということでございますが、そうなってくると、水道公社には財政的な大きな穴があいてくる。この補てんはどういうふうに考えているのですか。この補てんは考えていますか。
  58. 国川建二

    ○国川説明員 現在まで、県の企業局の水道から水が送られておるわけでございます。したがいまして、現在までのものが、将来とも全く未払いになるというようなことは毛頭考えられないと私どもば思っております。もちろん、この問題は、長引けば長引くほどいろいろな問題が出てまいりますので、私どもも、一日も早く片づけたいということで、県と協議を進めておるわけでございます。できましたならば、今月末までには県との関係の調整を終わらせたい。ただ、先生御承知だと思いますけれども、いろいろな問題がございます。市町村間の同意、あるいは地域住民市町村との間の話し合い等があるいは残るかもわかりませんが、その期限と申しますか、そういうことについて現地の事情がございますのでなかなか私も申し上げられないのでございますけれども、大綱と申しますか、大まかな方針は水道法の趣旨に沿って処理するということでございますから、その中でも、おもなものにつきましては、今月中にでも、県と市町村と私どもを含めまして、合意と申しますか、ある程度の筋は何とかきめたい、そういうふうに思っているわけです。これも一日も早いのがいいわけでございます。そういうことで鋭意煮詰めていきたいというふうに思っております。
  59. 桑名義治

    ○桑名委員 大体時間が参りましたのでやめたいと思いますが、外務省に最後にお尋ねをしておきたいのです。  実態がつかめなければ交渉ができないというお話がございました。大体原則的に、ですね。しかしながら、これは、国と国との段階で、料金の問題は一応ある程度詰めることができるんじゃないか。現実にこういうふうに料金がきまってくれば、どこに支払いをするかという問題がある。県が管理している以上は、県が管理しておいて、その配分については、話し合いがどうでもつくと思うのですが、そういう大まかな交渉というものが実際になされているのかどうか。そこら辺をまずお尋ねしておきたいと思います。
  60. 松田慶文

    ○松田説明員 御承知のとおり、国みずからの事業でございますれば、各省庁間の調整を経まして、国の立場で米軍と交渉するということはあまた事例がございまして、比較的容易でございます。しがしながら、水道事業のごとく、地方公共団体の事業とされているものにつきましては、国が独自に、後見者の立場と申しますか、国がかく考えるという、国限りの思想ないしは考え方で事を処すことは、地方自治の原則もこれあり、私どもは直ちにはとり得ない。すなわち、政府日本国を代表して米側に当たるにあたっては、当事者である地方公共団体との意見調整は、日本側としての立場の確立ということを踏まえませんと、国が独走はできない、このように信ずるものであります。したがいまして、ただいま先生から根本的解決に至るまでの間の暫定的な現状救済という、側面の非常に建設的な御示唆がございましたが、そのようなことも含みまして、県、市町村と国との間の重大な連絡を密にした上で、御指摘の点も踏まえまして、今後米側に当たりたい、このように考えます。
  61. 桑名義治

    ○桑名委員 言うなれば、これは、いわゆる沖繩の返還がなされる時点の事務上の一つのミスから派生をしているわけでございますので、返還協定の残務整理的な性格がまだ十分にあるわけでございますので、ただ単に、市町村の合意がなければならないとか、あるいは地方自治の精神を侵害するとか、そういうこと以前の問題であろうと私は考えるわけでございますので、この問題については鋭意交渉を続けていただきたいと考えるわけでございますが、この点についての自治省としての見解を伺って終わりにしたいと思います。
  62. 鎌田要人

    鎌田説明員 先ほど申し上げましたことの繰り返しになるわけでございますが、非常に冷ややかに申しますと、私どもの守備範囲に入ってくる入口以前の問題だというふうに理解をいたしているわけでございますが、しかし、あくまでも、公営企業の健全な経営という面では、これは何よりもの仕事でございます。したがいまして、私どもといたしましては、これは外務省にも厚生省にもお願いしなければならぬわけでございますけれども、問題は、結局十七円で売るか、四十七円で売るか、それだけのものであろうと私は思うのであります。私は、やはり先ほど厚生省からもお話しがございましたが、市町村が区域内の住民に対して水道を供給するというたてまえもありますから、市町村から給水をする、こういう御指導の方針なんだろうと思います。そういうことであれば、それで早く結着をつけていただきたい。おそらく、アメリカさんのほうが問題にされるのは、きのうまでは十七円でもらっておったのが、五月十五日の時点でとたんに四十七円というのが向こうとしても割り切れぬということだと思いますが、こちらのほうとしてみれば、市町村の給水は四十七円であるから四十七円。十七円、四十七円の問題だけと言ってはあるいはおしかりを受けるかもしれませんが、そういう問題なんだろうと思うわけでございます。早く結着をつけていただきたいという気持ちは私どもも当然強く持っておるわけでございまして、政府部内におきまして私どもの意見を申し述べさせていただく機会というものがあれば、これは私どもの立場で早く結着をつけていただきたいということでありまして、それ以後の時点におきまして、市町村の給水施設等について設備改善の必要があるとか、あるいは、経営内容の面におきまして、私どものほうで援助すべき点、指導すべき点があれば、これはもちろん進んでやってまいりたいということでございます。
  63. 桑名義治

    ○桑名委員 いまの鎌田さんの答弁、私はどうも気になるのですよ。ただ十七円、四十七円の料金だけの問題じゃないのです。要するに、沖繩の米軍が、いわゆる軍事優先の姿勢をくずさないところに問題がある。これは単なる水道料金の問題だけで取り上げるのは間違いだと思います。一切がっさい、そういう軍事優先の態度が沖繩において依然として変わらないという米軍の態度に私たちは憤りを感ずると同時に、これを是正していかなければ、今後の沖繩の県政の施行の上に非常に大きな障害が生ずるということを憂えるのです。だから、自治省として、意見開陳の場所があればというのではなくて、自治省としては、県の段階の一つの問題ですから、積極的に意見の開陳なり要望をすべきである、こういうふうに私は理解をしておりますけれども自治大臣の答弁をもう一度求めて終わりたいと思います。
  64. 福田一

    福田国務大臣 ただいま政府委員からいろいろ御答弁をいたしたような段階であると思いますが、地方財政という面から見れば、決して関係のないことではないわけでありますから、御趣旨に沿って努力をいたしたいと考えております。
  65. 桑名義治

    ○桑名委員 終わります。
  66. 谷垣專一

    谷垣委員長 門司亮君。
  67. 門司亮

    ○門司委員 もうあまり時間もありませんので、私は、率直に少しばかりお聞きをしておきたいと思います。  最初に聞きたいと思いますことは、自治省は来年度予算編成の規模をどのくらいにしておるのか。
  68. 鎌田要人

    鎌田説明員 来年度地方財政規模の問題でお尋ねだろうと思いますが、明年度景気の動向等、先ほど大臣から申し上げておりますように、かなり明るい見通しを得ておるわけでございますが、肝心の地方税がどれだけ伸びるのか、あるいは地方交付税がどれだけ伸びるのか、その辺のところが、率直に申しまして、まだ不確定と申しますか、流動的でございます。新聞等の伝えるところでございますと、来年の国税は二兆円程度の自然増収が見込まれるという話もちらほら出ているようでございますけれども、その内容についても、まだ、もちろん、私どもがそれを基礎にして積算をするという段階にまで立ち至っておらないわけでございます。  他方、歳出におきましては、はっきりいたしておりますことは、たとえば給与でございますと、現在の規模のまま推移をいたしましても、一般財源で四千億余りのものは当然ふえてまいる。あるいは交際費でございますが、これは一千億程度の増加額は当然計算上出てまいるわけでございます。ただ、たとえば社会福祉系統の経費につきましても、御案内のとおり、老人医療の平年度化の問題がございますが、そのほかに、生活保護費等の系統でどれくらい伸びるのか、あるいは投資的経費でございますが、これが直轄、公共でことしのように二九%という大きな伸びになるのか、あるいは従来どおりの二〇%の伸びになりますのか、その辺のところもすべてこれから国の財政規模とのからみで出てまいると思うのでございますが、一つの考え方といたしまして、かりに、ことしが沖繩を含めまして二一%の伸びでございました。二一%の伸びということになりますと、十一兆七千億でございますから、二兆四千億程度の財政規模の伸びになる。そうなりますと、それに伴いまして、一般財源といたしましては、どうしても一兆八千億ぐらいの伸びというものを確保しなきゃならない。そういうことでございまして、その数字と、伝えられますような国税の自然増収というものとのからみで、地方税がどれぐらい伸びるのか、交付税がどれぐらい伸びるのか、こういうものを考えてまいりますと、やはり、いまの段階におきましては、ことしと同様の大きな額の財源不足というものに直面するのではないだろうかという感じでおるわけでございます。まだ非常に流動的かつ不確定な段階でございますので、その程度の、はなはだ不満足な、不十分なお答えしかできないわけでございますが、そのような状況でございます。
  69. 門司亮

    ○門司委員 その次に端的に聞いておきますが、税制改正をやる予定があるように新聞には書いてある。これはどういうことになりますか。私がそういうことを聞いておりますのは、地方財政を見てみますと、予算規模と税収等は年々下がってきておるというか、パーセンテージは減ってきておる。だから、結局、地方財政というのは、毎年毎年不健全化してきているということがはっきり言える。その辺のことを自治省はどうお考えになっているか。それの最も中心をなす税制改正はどの程度行なわれるつもりなのか。
  70. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 税制改正の問題につきましては、現在、税制調査会におきまして、いろいろな問題について御審議をお願いしている段階でございまして、まだ確定的な方向というものは定まっておらないわけでございます。ただ、私ども考えておりますのは、御指摘のように、確かに、地方財政の中で、特に、歳入構成の中に占める地方税収入の比率というものが、市町村におきまして毎年低下している傾向にある。これは、一面におきまして、市町村の最近の財政需要の増高が非常に大きくなっているという点からくることと、もう一つは、市町村税制自体におきましてやや弾力性が欠けておる、こういう面があることだろうというふうに考えております。したがいまして、特に、地方税財源の増強をはかっていくということの重点は市町村税制に置かれるべきものであろうというふうに考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、一面におきましては、確かに、住民税を中心にいたしまして、負担の合理化をすべきだということも言われておるわけでございますけれども、他面におきましては、市町村財政がその自主財源というものを強化していく必要があるというような観点からの税制改正ということも、私どもとしましてはいろいろ検討をいたしておるわけでございます。  その一つといたしましては、たとえば固定資産税につきまして、特に、土地に対する税金というものが、その評価額によった課税がいま現実には行なわれておらないというようなことも、都市財源を中心にして非常に問題が出ておるのではないだろうか。そういう意味におきましては、現在の固定資産税におきまして、本来ならば家屋なり償却資産なりと同じように評価額をもって課税すべき土地について、別に課税標準額が定められておるという点についての不合理さというものについての検討、これは不合理を是正するという意味においての検討を進めておるわけでございます。  さらにまた、現在の財源不足という点からいたしまして、現行の税制の中でなお担税力が予想される面につきまして、それを強化していくという点についても、やはり検討する必要があるだろう。これを直接的に言いますと、たとえば法人の所得課税などの面におきましては、なお余力があるのではないだろうかというようなことで、こうした点につきまして、いろいろ税制調査会の御意見等も伺いながら対策を講じてまいりたい。  そのほかにまた、伝えられるところによりますと、たとえば道路整備計画というものの改定がある。あるいはまた、公害対策事業というものが今後とも相当好調を続けていく傾向にある。こういうものに対しての財源対策をいかがすべきかということについても、私どもいま検討の段階でございます。
  71. 門司亮

    ○門司委員 具体的なことは何も聞けないのですが、例の日本列島改造論に基づくことから、たとえば工場の追い出し税というようなものも考えているように、新聞には始終書いているのですが、こういう問題は、一体地方税になるのか。国税としてそういうことを考えておられるのか。どっちなんですか。
  72. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 いま、重要な問題を一つ落としまして、申しわけなかったのでございますが、都市財源の問題の中で、昨年来私どもが検討を続けてまいっておりますものに、事務所・事業所税というのがありますことは御承知のとおりでございます。この税につきまして、昨年からいろいろ各方面から御意見が寄せられておったわけでありまして、それをもとにいたしまして、私どもも私どもなりに検討を進めてまいったわけでありますが、工業再配置促進法の制定もこれあり、そうした新しい地域開発、地域整備というものに対する財源対策もあわせて考えるということになります場合に、どういうような財源対策が適当であろうかということも検討いたしまして、私どもとしましては、都市整備税という税制の創設を考えております。これは、特に大都市地域における都市の再開発、いわば都市機能の回復というための事業費並びに工業が再配置される、いわば新しい地域地域整備のための財源、この両方をねらいまして、都市整備税というものを起こしたいということで、いま関係省との話を詰めておる段階でございます。私ども考えておりますのは、やはり大都市には大都市なりの非常に大きい財政需要があり、そしてまた、現実に、財政的にも相当問題が出てきておるということでございますし、また、工業再配置あるいは集中の分散というような観点から、その受けざらとなるべき地域開発ということも、これは当然に必要なことでございます。そういうものについての、いわば先行投資的な地域整備のための財源というものも当然用意していかなければならないわけであります。その面から見ますならば、あるいは、この税制というものは国税というような性格を持つものであろうというふうに考えますけれども、やはり、徴収する地域が限定をされる。そしてまた、そうした大都市地域における企業が、その集中の分散によって、それなりの利益というものがあるわけでありますから、そういう意味におきましては、地方税として構成をしながら、その使い道については、その徴収地域団体の財源とし、そしてまた、その一部については、他の地域の新しい地域開発の金として配分をしていくということが可能ではないだろうかということで考えたわけでありますが、なお、通産省なり建設省なりで、それ相当の税制についての考え方がありますので、現在、各省の意見を調整しながら、また一方、税制調査会におきましても意見をお伺いしながら、政府としての考え方をまとめていきたいというふうに考えておるわけであります。
  73. 門司亮

    ○門司委員 この問題は、私がそういうことをなぜ聞いたかということでありますが、税制調査会で検討されることもけっこうでしょうし、皆さんのほうも専門屋でありますし、学者の先生も大ぜいおいでになりますので、そう心配しなくてもいいかと思いますが、ただ、税の性格論から話を進めていきますと、これが国税でいいのか、地方税でいいのかということは非常に大きな問題が出てくるわけですね。大都市といいますけれども、大都市ということに限るということになると、法定税としての性格を備えるかどうかということが一つの論点になると思う。これを法定外普通税というものの考え方できめようとすれば、またそこにも多少の疑念が出てくるような気もする。その辺が、税が普遍的でなきゃならぬというたてまえからいくと、一体国税でいいのか、地方税のそういう法定外普通税的な性格を持たすほうがいいのかということは、かなりの論議がなされなければ、この税金を軽々しくきめると非常に迷惑をする。この都市ではこれだけのものにこれだけの税金がかかる、この都市ではかからないという、この点に追い出し税をあいまいにしているところの性格があると思っているのです。実際は、田中総理の言う日本列島改造論の、一つの、これは中心的な役割りを演ずるものだと思いますが、何といっても、事業主は採算のとれるところでなければ行きませんからね。採算のとれないようにして追い出そうというのでありますからね。あるいは、それを受け入れるほうにどうしようということがなければならぬ。これは整備のための税金を考えると、追い出すほうの税金を考えると、実に妙な矛盾したものがどうしても出てくる。そこで、税の性格から来る、いまの基本論に立ち返って議論をする必要があろうかと思いますが、きょうはその議論をしているひまがありません。いずれにしても、この種の税金を定めようとすれば、国税であるか、地方税であるかという点についての問題は明確にしておいてもらいたい。そうしないと、非常にむずかしい段階がその次に来るということを一応知っておいていただきたいと思います。  そこで、その次の段階として、それの続きみたいなものですが、聞いておきたいと思います。これは特に大臣からひとつ聞いておきたいと思いますが、いままでの日本地方財政に及ぼしておりまする国家財政あるいは国家行政から来るものを、この間ちょっと各省別にとってみました。どの省がどれだけ補助金を出しているか、そして、その件数は幾つあるかということ、これをとってみますと、補助金の分でいま一番多いのが農林省でありまして、農林省は百三十八件の補助金を持っております。これは予算の内訳の中で、目まででありまして、それから下のものはなかなか調査がむずかしいので、目までを一応調べた数字であります。全部でこれが五百七十五件あるのです。各省から出る補助金と称するものが、ですね。そして、これは、昨年度、四十六年度補正予算を入れて、予算総額からとってみますと、この補助金だけで八十二件ふえているのです。  その次に、負担金という部分が国から来ているのがある。これも各省別にずっと調べてみますと、やはりどこが一番多いかということになると、どうしてもこれは総理府が多いのですね。総理府が二十件ある。農林省は五件持っている。この数字も、全体の数字からいくと約六件ふえている。  その次の問題として考えるのが交付金であります。これは交付税は除いて、交付金でありますが、交付金と称するのが、各省別にずっと分けて、こまかい数字を申し上げることは避けますが、これも結局一番多いのが総理府の二十三件であります。全部でこれが百四十件になっている。そうして、これは、四十六年度補正まで全部入れてよりも十五件ふえている。  その次に補給金というのがある。この補給金も、各省別にずっと調べてみると、いろいろ問題はございますが、しかし、これは各省全部あるわけではありませんので、特殊の問題だけに限られておりますが、これも、四十七年度は、四十六年度の十七件から十八件にふえておる。これも一件ふえておる。  それから、その次にありますのが委託費。いわゆる国からの委託費として地方が受けている件数は二百十四件に及んでおります。しかし、これはどういうことになっているのか、四十六年度よりも四件減っております。こういう数字が出ております。  その次に出てくるのが、分担金というのが出てくる。この分担金の件数は三十九件であります。これは前年度と同じであります。  全部を比較いたして、増減を見ますと、四十六年度よりも百件ふえているということですね。四十七年度の予算における政府のそうした各種の補助金ですね。国の補助金、負担金、交付金、補給金、委託費分担金、こういう複雑な地方財政仕組みというものがあるわけであります。したがって、先ほどから私が申し上げておりまするような税の問題について、毎年毎年、税の予算総額に対する減り方というのは、これは私のほうよりも、地方財政に関する限りはあなたのほうがよく知っていることだと思いますが、減っておる。そして、負担金というものがこういう形でずっとふえてきている。一年に百件以上もふえているということは、それだけ政府の干渉が地方の自治体に及んでいると言っても差しつかえないかと思う。その上に出てくるのが日本列島改造論というもので、その中で、二十五万都市をこしらえるとか、どうだこうだということを言っていて、これもほとんど中央集権の、中央の指図においてのみ問題が解決されようとしている。そうなってまいりますと、日本地方行政というのは、ほとんど全額が国にたよらざるを得ないのじゃないか、こういうことが実は言えるわけでありまして、予算総額から見てまいりましても、やはりいろいろな問題を出すのではないか。いわゆる地方財政計画の面で出てまいっております政府から来る補助金、補給金というようなものを全部合わせて、補助金の総額が大体二兆五千二百四十三億七千五百万円ですか、こういう数字が出ている。しかし、これを全部合わせていきますと、非常に大きな数字になって、どういうことになっておるかというと、この数字は、御承知のように、三兆五千八百八十七億という数字になってくるわけです。だから、地方財政計画の中にあらわれてくる補助金以外にこういうたくさんの補助金がある。この上にさっき言いましたように、私はもっとあると思いますよ。目までしか私は調べておりません。  こういう地方財政仕組み等について、私が先ほどちょっと申し上げましたように、田中さんが考えている、というより、むしろ新しい政府がお考えになっていると考え日本列島改造論による地方財政の計画と、あるいは地方財政の運用といいますか、実際との間に、どうもますますこの傾向が強くなるのではないかということでございまして、そういう点に対する自治大臣としての見解をこの際聞かしておいていただきたいと思います。
  74. 福田一

    福田国務大臣 いわゆる三割自治とか二割自治とかいま言われておりまして、自治体のいわゆる権限というものが非常に少ない、すなわち地方自治というものが非常に権限が少ないという点につきましては、私は、お説のとおりであると思っております。今後の方向としてどう考えたらいいかということであれば、やはり、できるだけ自治体の権限を強めてまいるようにいたさねばいけない。そのときに予算というものがどういうような影響力を与えるかということについては、何といっても、そういうものが多ければやはり圧力が加わるということも行なわれるでございましょう。そういう意味では、私は、大きな目から見るというか、真の鳥瞰的な立場に立ってものを処理していくという場合においては、やはりもっと地方自治体の権限をふやすようなくふうをすることが自治省としての任務であると思う。こういう意味合いにおきましては、来年度におきましては、地方振興局というのを設置をいたしたい、そうして地方の自治をできるだけふやすようなくふうに持っていきたい、こう私は考えておるわけでございます。  次に、日本列島改造の問題とこの傾向とがどうからみ合っていくかということでございますが、この場合におきましても、これはまだ政府の固まった方針ではございませんが、しかし、私といたしましては、地方自治体の意向を十分に尊重するというたてまえをとって日本列島の改造計画をつくってまいりたい、かように考えておるわけでございまして、地方自治をできるだけ拡充をしていくということについては、今後もその方針をますます強めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  75. 門司亮

    ○門司委員 あまり時間もございませんから、あまりやかましいことは聞きませんが、いま一応申し上げましたように、政府地方の自治体に対する態度というか、そういうものが、予算面から見て、昨年の四十六年度の予算と四十七年度の間に、政府が干渉するといえば干渉することのできるものでありますものが百件もふえておる事実。こういう事実を前にして、国が今後の地方行政計画を一体どうされるかということについては、かなりこの際慎重に考えていただかぬと、地方の自治行政なんというものは全くなくなってしまう。財政の面でも、さっきお話のございましたように、年々の税の予算総額、というよりは、むしろ財政計画、規模に占める割合というものは低下していることは事実でありまして、ことに、先ほどからお話しがありまするように、市町村が非常に大きく動いております。このことを考えますと、日本の税制改革をいたしました二十五年から二十六年程度のウエートを見ると、市町村財政はかなり豊かなように数字的にあらわれております。それが年々減ってきている。そこに行政財政とのからみ合わせで一つの大きな問題がありはしないかということ。地方の自治体がどんなにやかましいことを言っても、基本になる税収がだんだん減ってきておる。したがって、端的に言いますと、私は先ほどから地方税か国税かなどということを聞きましたけれども、国、地方を通ずる税の配分関係をこの辺で一応やり直す必要がありはしないか。田中さんが考えておるように日本列島をどんなに改造しましても、これは二十五万なんということを言っておるけれども、いまごろ二十五万なんということを言ったって、だれもそれを本気にする者はありません。やろうとすれば、やはり百万を単位にするぐらいなものでなければ田中さんの構想は生きないと思っております。二十五万というような小さな市が幾らできたってどうということはありはしないと思います。しかし、それにいたしましても、この際、税財源の問題がいろいろ議論になっておる今日の状態では、国と地方とを通ずる一応の税の配分関係というものを見るべきではないかということである現状からすれば、大体国が一二%ないし一三%は取っていないのでありますが、やや近い数字を取っておる。地方の自治体は、大体市町村は三%もらっておらないというのが現実だろうと思いますが、そうすると、残り四%ぐらいが大体県が取っておるという、こういう実態。そうして、その中で、県と国との間の財政配分が非常に不公平に行なわれているものもあろうかと思いますが、これは何といっても、改革の一つの要素として考えなければなりませんのは、国がとっております税制全体を調べてみて、一体これをどう配分すればいいかということが一つあります。その税金の中で、従来ほとんど専売に近かった酒税というものは、これは蔵出しのときに取るし、それから、地方的に異なっておりまするから、あるところとないところとありますので、一律にはいかぬかもしれません。しかし、こういう税金というのは、地方の自治体に、最も消費に密接した税金である限りにおいては、税の性格論から言い、税の配分の論から言っても、これは地方に還元されるべきものではないかということであります。これを国が全部取っておるということはただ税制上の手続の問題では、国が取ることが一番安易であるからよろしいかと思いますが、一体、そういう基本的な改革をする必要がありはしないか。いわゆる消費財、日常生活に直結したものの税金というようなものは、できるだけ地方におろす必要がありはしないかということ。あるいは、たばこの専売益金等もそうでありますが、お酒の税金は三二%だけ地方に持ってきておる。たばこのほうは二〇%くらいになりますか、一九・何%というのが地方に還元されておる。こういう問題を、税自体というものを本気でこの際改革をしていただかぬと、田中さんのせっかくの構想である日本列島改造論というものを受けて立つ自治体というものが非常に困りはしないかということが考えられますので、お酒やたばこやその他の税金は触れなくとも私はよろしいかと思いますけれども大臣の気かまえとして——いま申し上げましたように、二十五年、二十六年になりますか、税制改正のときに、税の配分関係で、地方の自治体の財政を豊かにするということが民主行政の一つの大きなあり方であるということで、市町村財政に非常に大きくウエートを置いて税制改正をいたしております。その後の日本の経済の伸展に従って国税がふえてくるということは、いまの日本の税法のたてまえから言えば当然であります。地方の自治体にできるだけ固定した財源を与える、いわゆる景気のよしあしによって財源が上がったり下がったりすることのないようにするという配慮が行なわれてできた税制から見ていきますと、今日、もうこの辺で日本も税制の中でひとつ改革をして、そうして地方の自治体のあるべき姿というものを出す必要がある。田中さんの言うように、地方の自治体が欧州先進国と同じような社会環境をつくっていこうとするなら、そこにはやはり税制改革を行なわなければ困難ではないかと思います。これは政府側に立った質問のようでありますけれども地方の自治体全体を見ると、どんなに田中さんが欧州先進国と同じような福祉行政をやるのだと言ったって、いまのこういう税制の中で、さっき言いましたように、補助金、分担金というのが一年に百件もふえているというような現状の中で、地方の自治体が独立して福祉国家をこしらえよう、そういう行政を行なおうなんということはできっこないのです。  だから、少し回りくどいような質問でありますけれども、一つだけにしぼっておきたいと思いますことは、繰り返して申し上げますように、この辺で、国、地方を通ずる税の配分関係の改正を行なう必要があろうかと存じて、その点に対する自治大臣の見解を承っておきたいと思います。
  76. 福田一

    福田国務大臣 貴重な御意見として承っておきます。
  77. 門司亮

    ○門司委員 そうなると、あまり引っ込むわけにはいかなくなってまいります。大体、もう少し本気で考えてもらいたいんだな、これは。私がさっき言いましたように、いまの税配分関係というものはめちゃくちゃなんですね。そこからくるのは、こういうように一年に百件もふえている。これは国が干渉するとは私は言いません。これは法律上干渉してはならないことになっているから、干渉するとは言いませんが、国が関連した地方の自治体の仕事というのは百件もふえている。そうして、くどいようですけれども日本列島改造論を読んでみますと、この調子でいくと、来年の予算になるともう百件くらいふえやしないか。中央集権で、何もかにもみんな持っていくという形のものが出てくる。そして、地方の自治体はこれを受けて立たなければならぬ。受けて立たなければならぬということになると、非常に税金が少ないから、やむを得ずこれを起債に仰がなければならぬということになる。国が起債をすることには、いろいろ税法上の問題や何かありましょうけれども、そもほど気に病まなくてもいいかと私は思いますけれども地方の自治体が借金をするとしますと、非常に大きな負担に将来なるのです。これはそう簡単にいかぬのですよ。そういう面を見てみると、いまのような答弁でなくて、この辺でぜひひとつ国全体の税制改正、税の配分関係を考えて——これはあるいは総理に聞くべきことばであるかもしれない。あるいは大蔵大臣に聞いたほうがいいかもしれない。しかし、あなたは当面の責任者でありますから、いまのような答弁でなくて、もう少しはっきりした答弁をしていただかぬと私はちょっとぐあいが悪いのですがね。
  78. 福田一

    福田国務大臣 政府委員から答弁をさせます。
  79. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 ただいま御指摘のとおり、特に、昭和二十五年に現行地方税制ができました当時は、市町村税制というものが財政収入の中に占める割合は四五%であったわけであります。それが四十五年度の決算を見ますと、三三%というふうに極端な落ち込みが見られました。それからまだ、国税と地方税の比率にいたしましても、国税は、所得課税が税制の中で非常に大きいウェートを占める。そしてまた、この所得課税をとっております税制は、過去の高度成長の経済下においては最も自然増収の強い税制になっておったわけでございます。そういうことで、現在、国税と地方税の配分比率は、三分の二が国税で、三分の一が地方税、そして、しかも、これが現実に使われる姿を見ますと、その比率がちょうど逆になっておる。これはもう門司先生も御承知のとおりであります。確かに、今後の国、地方を通じての財政の動向というものを見ますならば、どうしても地方団体行政の比重が高まるということは、これからの行政の転換ということを考えていきます場合に、当然の傾向として予想されるところであります。そういう意味におきまして、地方団体の自主性をさらに高めていくという観点からいたしましても、自主財源としての地方税を増強していくということは当然必要なことであろうと私ども考えておるわけでございます。ただ、現在、地方団体におきましては、過疎過密の現象が進行してきており、いなかのほうになかなか適当な税源がないというような現状を、いわばこの地方税制を考える場合にどういうふうに割り切っていくかという問題がございます。そういう意味におきましては、どこの市町村にもまんべんなく税源があるならば、税制というようなことにつきましては、もうこの辺で少し考え方を変えて、税源のあるところに税制を強化していくという方向で国税、地方税の配分ということについて検討していく必要があるだろうというふうに思うわけでございます。そういう意味におきまして、私どもも、この税源の配分の問題は、今後の行政内容あるいは財政需要の動向とにらみ合わせて、これは当然に必要な措置であろうと思いますし、私どもの税制改正の最も重点にする事項であらうというふうに考えておるわけでございます。
  80. 門司亮

    ○門司委員 これは質問ではありませんが、いまのお話の中に、はしなくも出てきたのでありますが、これ以上地方の新しい税金を求めることは私は困難だと思います。だから、問題はいま国税であるもの——さっきちょっとお酒の税金のことを言いましたけれども、国税で取っているもの、しかも住民が普遍的に消化しているもの、これは何も国の景気、不景気に関係はない。多少関係するかもしれませんが、しかし、これは一つの嗜好品であって、国がこうやったから税金がこうふえたという所得税とは違うのであります。したがって、そういう税金を持ってくれば実際はおろせるのですね。そういう税の再配分をしようとすれば、税種目をふやして、あるいは課率をふやして税金をよけい取るなんということは考えないほうがよろしいと私は思う。むしろ、国と地方との間の税の配分関係だけを考えていけばそれでよろしいのじゃないかということであります。日本財政が、国、地方を通じて、これ以上財政要求を非常に大きくするというのなら、これは別な話でありますけれども、いま国が大型予算を組もうとされておるのに——これを議論していると長くなりますから議論はいたしませんけれども考え方もないわけではございませんけれども、私の言う国と地方との税財源の配分というのは、新しい税源を見つけて、そして地方からよけい金を取ろうなんということを考えているものではないはずであって、住民の消費に関係する税金というのが非常に高く取られておる。ことに、日本の物品税を見てごらんなさい。高級消費財については税金は非常に安いのです。そして、お酒だとか、たばこだとか、お砂糖だとかいう、どんな低所得の人でも嗜好品として使い、また、家庭の必需品として使わなければならないものが非常に税率が高いでしょう。同じ物にかける税金にいたしましても、高級消費財が非常に安くて、そして、日常の住民の生活に全く直結しているといっていいこういうもののウエートが非常に大きいというのは、税の負担区分から言っても不均衡があるのでありまして、こういう面をやはり政府としては考えてもらいたい。さっきも言いましたように、これはあるいは総理大臣大蔵大臣に聞いたほうがいいかもしれませんけれども自治省自治省なりにそういうことを考えてもらって、税財源の配分というものをいまこそ考えるべき時期だ、こう私は思っているのでありまして、そのことだけ申し上げておきます。
  81. 谷垣專一

  82. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 木村国家公安委員長お尋ねをいたしたいと思うのですが、木村国家公安委員長は、大臣に就任以来、国家公安委員長として、また、建設大臣として、非常に精力的に全国各地を御視察なされておるようであります。ある新聞で拝見をいたしたのでありますが、就任以来三カ月、その間五十日間は地方を視察し、あるいは全国各地でいろいろな発言を精力的におやりになっておられるようであります。  そこでお尋ねしたいのですが、一体、国家公安委員長室に何日御勤務でございましたか。また、建設大臣として、建設大臣室に幾日御勤務でございましたか。あるいは、首都圏整備委員長としてのお仕事は一体幾日ぐらいおやりになったのでありますか。その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  83. 木村武雄

    ○木村国務大臣 勤務日数から言いますと、七月は二十一日、それから八月は十八日間、それから九月は十二日間、十月は三日間で、五十四日であります。それから、旅行日数は、七月は十一日、八月は十七日、九月は十七日、それから十月は九日で、五十四日間、こういうふうになっております。
  84. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今日まで、旅行に出られた日が五十四日、大臣室に御勤務なされたのが五十四日、ちょうど日の数が同じということですが、この内訳は、国家公安委員長のほうが何日ぐらいで、それから建設大臣のほうが一体何日ぐらいでございますか。
  85. 木村武雄

    ○木村国務大臣 東京におりますときは、建設省に行って用事を足して、それからあと国家公安委員長の部屋で用事を足しておりまするから、大体同じだと思います。
  86. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 聞くところによりますと、十一月の幾日かで大体全国各地をお歩きになるという御予定だそうでございまして、今後もこのようなスケジュールで全国をお回りになる。かように受け取ってよろしゅうございますか。
  87. 木村武雄

    ○木村国務大臣 国会が開かれなければ、十一月九日まで回ってみたい、こういう考えを持っておったんです。しかし、国会が開かれまするから、それは取りやめになると思っております。ただ、私は、何としても全部を回ってみたいという気持ちを持っておりますが、回るにつきましても、もう日曜はすべて返上して回っておりまして、回りたいという気持ちは非常に強いのであります。
  88. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣が、所管行政に関して、全国各地の実態を把握されたいという御熱意を持ってお回りになることについて、私ども特に文句を申し上げるつもりはございません。ただ、問題は、その所管の行政に関して大臣としての職責を十分お果たしになっておられて、その上で全国各地を実情調査にお歩きになるということであれば問題はないと思うのでありますが、その点に関して、若干、私どもとしては受け取りにくい点があるわけであります。  と申しますのは、一つ例をあげましょう。九月のたぶん十九日か二十日だったと思いますが、大臣は千葉のほうへ御出張になられました。そして、たまたま私は群馬でありますが、群馬で大きく問題になっておりますところの、いわゆる沼田ダム計画の当初におきましては、約二千七百戸が水没をし、現在におきましては、四千戸以上が水没をするという大きな規模のダム計画でありますが、これについては、千葉では、ぜひとも沼田ダムについては建設をしたいということをおっしゃられたわけであります。そしてまた、その四日ないし五日後、九月の二十四日に参りまして、沼田ダムについては、千葉ではつくりたいと言ったが、ダム建設のために四千戸以上が水没するという状況を群馬に来て聞いた、これではこの住民の納得を得ることは無理だと判断し、沼田ダムはつくらない、と、こういう御発言をされたわけです。そして、さらにその五日後、九月二十九日に再び前橋においでになりまして、政治判断では無理だと思ったのでそのように発言をしたが、事務当局からはあきらめないでくれと言われた、と、こういう御発言をいたしておるわけであります。全国各地を実情調査にお歩きになることはけっこうだと思うのですが、ある地へ行ったらダムはつくりたいと言い、ほかの地へ行ったら、これはつくることは無理だと言う。また参りまして、どうも無理だと判断したけれども、事務当局はあきらめぬでくれと言っておると言う。それでは、一国の大臣としての発言について、国民大臣の真意を一体どう受け取っていいかわからぬと思うのですね。全国各地をお回りになるのもけっこうでありますが、同時に、事務当局をして大臣の意向に沿った事務手続をきちっとやらして、その上に立っての一貫した御発言を大臣の責任においておやりになるならけっこうだと思うのですが、行く先々によって御発言が違う。これでは、大臣としての職責を全うしているとは、国民の側から見て考えられない。この点、私は非常に遺憾に思うのです。  そこで、私は、冒頭、勤務の日数のことをお尋ねいたしたわけでありますが、大臣、どうなんですか。大臣としての職責の上に立ちまして、自分が所管する官庁を大臣としてもっと御把握になることにおつとめになることが先じゃありませんか。いかがですか。
  89. 木村武雄

    ○木村国務大臣 ごもっともなことでありますが、ただ、私は、行政べったりじゃないのですよ。ほんとうに、ですよ。たとえば、千葉県とか埼玉県あたりは非常に水に困っておる。そして、大きな水の発源地である沼田ダムというものに対して、千葉県などは非常にあこがれを持っておられるが、千葉県に参りますときは、沼田ダムのことは勉強していかなかったのですよ。千葉県の問題ではありませんでしたからね。そして、そんな話があったものですから、私は、沼田ダムというものは水資源上必要だろうな、と、こういう発言をしたのですね。そうして帰ってまいりまして、沼田ダムの実情はどうだという話を聞いたところが、二千六百戸も水没になるのだ、したがって、今日まで十年間もこれに手をつけることができないでおったのだと言う。こういう話は帰ってまいりましてから当局から聞いたのであります。  そういうようなことなんですが、全国の問題について、何もかも話をしてくれればけっこうなんでありますけれども、事前に話をするものと話をしないものもあるんじゃないだろうか。回って歩くと、そういうものにぶつかるのですよ。それですから、私は、二千六百戸の水没家屋をつくってまでも沼田ダムというものをやらなければならぬということはないだろうし、それは不可能なことだとおれは判断するがな、と、こういうような話を群馬県に出かけていってしたのですよ。そうすると、それは当初の話であって、現在は二千六百戸どころじゃないんだ、四千戸もあるだろうし、場合によったならば五千戸もあるだろうという話でしたから、それはますます不可能と判断すると、こういうわけで帰ってまいりまして、自分は不可能と思う、だから放棄したらどうか、こういう話をしてみたんですよ。ところが、事務当局といたしましては、やっぱり、私がそう言ったからといって、即座に捨てるなんということは言えないんじゃないだろうか。だから、大臣、そういうことはそうかもしれませんけれども、沼田ダムはもう建設省は捨てたということだけはまだ言わないでもらいたい、と、こういう話だった。それで、私は、それをすなおにそのままどこでも話をしておるんですよ。  それで、私の考えとしては、事務当局というものを全然無視して、政治判断だけで強行すべきものでもない、しかし、徐々にそういうものは事務当局を納得さして、変更させなければならない、やっぱりやめろと、一がいにこういったことは言わないで、徐々に変更させるべきものである、若干時間がかかるだろうが、と、こういうふうに自分は現在でも思っておりまするが、政治判断というものは、不可能だと、こういうふうに自分は判断しておりまするし、不可能なだけではなく、そういうことをやることは、善意であっても非常に悪政を生むことになると思っておりまするから、それではそういうように事務当局とも話し合いを取りまとめてみたい、こう思っております。  ただ、こういうことは、本省の中におったからすべてがわかるというものじゃないのじゃないか、回って歩く間に、現地でいろいろな話を聞きまして、そしてそれを承知して事務当局と話をしていくというところに生きた政治が出てくるんじゃないだろうか、こういうふうに自分は感じておりまするから、役所の中におって一生懸命になって勉強をしておったならばわかるとは必ずしも私は思わないのでありまして、むしろ、外からいろいろなもの見ながら、聞きながら、そして本省に帰ってまいりましてものを確かめていったほうが、生きたやり方ができるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  90. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 事務当局の行政レベルべったりではなくて、より高度な政治的な判断で仕事を進めていきたいという、そういう大臣のお気持ちは私ども十分多とするわけですが、とすれば、この沼田ダムの問題に例をとれば、事務当局はあきらめないでくれと言われても、一ぺんにはいかぬけれども、少なくとも、大臣政治判断の方向においてこの問題については決着をつけていくという御決意は当然変わりがないというふうに受け取ってよろしいわけですか。
  91. 木村武雄

    ○木村国務大臣 無理なものは無理ですから、そいつは、私は、徐々に、そういう方面で事務、政治の意見の統一をはかっていきたい、そして政治を事務に納得してもらいたいという考えでありますが、ただ、沼田ダムが不可能だとすれば、ほかに幾つか集めればそれと同じようなものがつくれるんじゃないかと思うから、そういう点でもっといろいろなことを勉強してみなさい、言いかえれば代案のようなものを考えてみなさい、と、こういうように言っておりまするから、一生懸命でいま考えておるようであります。  そういうことでありますから、沼田ダムは政治的判断どおりに不可能である、こういうふうに私は考えております。
  92. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 事務当局の行政レベルべったりではない、新機軸を生み出して大臣として御活躍をされたという、そういった気持ちはわかりますが、しかし、あるところへ行くとつくると言い、あるところへ行くとつくらぬと言う。また来て、無理だと思ったけれども、事務当局は異論を唱えているからというようなことになりますと、国民の側から見ると、みずからの所管の建設行政について、いわば検討と申しますか、勉強が何か足らぬのではないか、そう言っては悪いわけですが、付録として大臣をおつとめになっておるんじゃないかと、こういうような感じを持ちますのは無理ではないと私は思うのであります。  そこで、お尋ねをいたしたいのでありますが、九月の二十四日でございますが、群馬県に大臣がお見えになりまして、相当長時間にわたって御雄弁をふるわれたようでありますが、その中で次のようなことをお述べになっているようであります。私もテープを通じて聞きましたので、よく承知いたしておりますが、田中内閣が成立をして、「田中内閣ができたものですから、その論功行賞において、私は建設大臣と国家公安委員長をお受けしたものでありまして、人間そのものにおいて値打ちがあって大臣になったものではありません」というふうにお述べになられました。大臣の値打ちがあったからなったんじゃなくて、田中内閣を生み出した論功行賞によって建設大臣と国家公安委員長をお受けすることになったということを御発言されました。次いで、田中総理から「君は大臣になったならば何を希望するかといわれ、私は田中総理大臣に向かって国家公安委員長を希望すると、こういったのであります。いままでは国家公安委員長になるものは大臣の中でも二級品でありまして、一級品はならないのであります。それで、国家公安委員長を二級品扱いすると気の毒だと、こういうことで、建設大臣を付録としてつけてよこしてくれたのであります(爆笑)」となっているわけですね。私は、ここに幾つか問題があると思うのですが、大臣、私は社会党でありますから、自民党内部のことはよく承知しないわけでありますが、田中内閣を生み出したことによる論功行賞で大臣になったと言われますが、組閣というものは一体そういうものでございますか。大臣は、あくまでも、田中内閣を生み出した木村元帥としての論功行賞によって大臣になられたと確信をいたしておるのでありますか。お尋ねをいたします。
  93. 木村武雄

    ○木村国務大臣 ありがとうございます。その点では、私、いまのことばは感謝を申し上げます。私が大臣になったときに、木村が大臣になったのは論功行賞だと、こういうふうに書いた新聞が相当あったのですが、それに対して、私自身は非常に不愉快に感じたものなのであります。ほんとうのことを言いますと、ですな。そうでありまするから、それに対しては一つの抵抗を自分は持っておったのであります。その抵抗が別な形になって発言された、と、私は、自分ではそう思っておるのであります。自分も長らく政界におりますから、少なくとも、政治の活動も人には負けないようなこともできる、それから自分の行ないにおいても、人にはおくれをとらないようなことをしてきた、と思っております。にもかかわらず、論功行賞であるなどと新聞に出たときには、実は、非常に不愉快で、抵抗を感じたのでありますが、それを逆に私はあのときは表現したのでありまして、これは心の表現でありまして、あなたからそういう質問を受けまして、ほんとうにありがとうございます。ほんとうに自分の気持ちを述べ得たことをうれしく思っております。  それから、国家公安委員長は二級品だということも、いままでの、特に戦後の政治なんですけれども、これはあまりに経済に重きを置き過ぎたんじゃないかと私は思う。経済も非常にけっこうなんであります。したがって、経済閣僚は大体出世コースをたどっていく。しかし、それ以外の者は総理大臣になっているかというと、そんな者は一人もいない。たとえば、国家公安委員長もそうなんであります。それから、法務大臣なんかもそうであります。文部大臣なんかもそうなんでありまするけれども、経済に重きを置く人事の配慮というものにも抵抗を実は感じておったのであります。そうでありまするから、今度は流れを変えた政治になったのだから、そういうようなものをなくしてもらいたいという気持ちが私の心の底にあったのであります。そいつを逆な形で私は表現した。しかし、その表現がああして新聞記事になってみますると、やはりそれは非常にまずい表現であった。討論会なら別ですけれども、いやしくも大衆の前で話をしまして、そういうような表現というものが気に食わないという人が一人でも二人でもおいでになるのであったならば、政治をする者の心がまえとして、それはやめるべきであると思い、私は、自後すっとやめておりまして、新聞に書かれましたがために、私は私なりに勉強させてもらって、非常によかった、こういうように自分は思っております。  それから、あれは建設大臣を付録扱いしたのではありませんです。そこでも述べましたとおりに、自分は、国家公安委員長というものに対しては、なったならばどういうことをやるかというおおよその心の準備はしておったのであります。そうでありまするから、国家公安委員長になりましてからは、治安対策もさることながら、一番大きな問題はやはり人間尊重だ、人の生命を大切にすることなんだ、その人の生命を大切にするということの初めとして、まず、交通事故死から人を守るという方針をとりてみようじゃないかというわけで、全国を回って歩きまして、とにかく、交通事故死というものから人命を守ることが非常に大きな政治なんだということ、これを警察官諸君も自覚してもらいたいという話をしております。そいつは前から心の準備のあったものですから、そういうことは言い得られたのでありまするが、建設大臣になるとは、実は私は考えていなかったのですよ。それが建設大臣にされたでしょう。それで、私自身もびっくりしたのであります。ほんとうに勉強しておったならばよかったと思っておりまするけれども、実際、建設大臣になるなんということは考えていなかったものですから、心の準備もしていなかったのでありまして、その準備をしていないやさきにたいへんな大役を仰せつかったものですから、自分で勉強のしかたを考えてみた。それで、建設省の中にいて、いろいろな書類によっていろいろな話を事務当局からお聞きして、そいつを自分のかてにするよりも、百聞は一見にしかずという、こういう勉強をするほうがより以上の勉強になるのじゃないか、考えてもいなかった建設大臣という大役を仰せつかった、そいつにこたえるためにはそういう勉強をしなければならない、こういう考えを起こしておりましたときに、集中豪雨があったものですから、その現地回りをした。それから引き続いて、現地に立ちながら勉強をしておるというのがいまの私の心境なんであります。そういうような私の気持ちを、ただ新聞記事に出たというだけで、どこでもお話しすることができないでおったのでありまするが、きょう山口さんから御質問を受けまして、私は、私の心境を申し述べる機会を与えてもらいまして、非常にうれしく思っております。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 質問したことにたいへん感謝されて、こちらも恐縮でありますが、ただ、私は、これははっきり申し上げたいのですが、今度大臣に就任されて、論功行賞だといろいろ書かれたり、報道されたりした、それに対してふんまんやる方ない気持ちが実はあったんだ、それをいわば比喩的な形で発言をしたのが真意である、という趣旨の御答弁をなされたわけでありますが、しかし、大臣が発言されたのは、田中内閣ができたものですから、その論功行賞において私は建設大臣と国家公安委員長をお受けしたのだということをはっきり言っておられるわけですね。そうして、一体何を希望するかと田中総理に言われて、国家公安委員長を希望した。ところが、国家公安委員長は従来二級品であって、一級品はならない、したがって、気の毒だというので建設大臣を付録としてもらった、これが大臣の発言ですよね。ふんまんやる方ない気持ちだかどうだか知りませんけれども、まさに、報道されたとおりの御発言を大臣がされたわけでしょう。国民の側からすれば、なるほどそうか、今度の田中内閣というものは、全く内閣成立の論功行賞によってできたのかというふうに受け取るのはあたりまえじゃありませんか。また、国家公安委員長というものは二級品がなるんだということを、国家公安委員長たる大臣がみずから御発言されたということになれば、警察法によって、不偏不党、厳正中立を守って国民の治安に当たるべき全国の警察の諸君は、なるほど、おらが大臣は二級品なのかということを考えるでしょうし、また、国民も、国家公安委員長というのは二級品なんだということになれば、幾ら警察法で厳正中立、不偏不党とりっぱなことを聞いておっても、二級品の大臣なら、政治的圧力に屈して、現実には不偏不党ではない、きわめて一方的な、党派的な警察行政が行なわれるのは、なるほどそこに理由があるのかと、こう思われるのはやむを得ぬと私は思うのですね。ですから、大臣が、ふんまんやる方ない、おれはそう思っていないということならば、なぜそのように御発言をなさらないのですか。大臣は御発言なされておるわけでありますから、国民の側からすれば、いま大臣がるるお述べになったような気持ちを受け取ることは無理だと思うのですよ。少なくとも、大臣は御発言には責任を持っていただきたいと私は思うのですが、いかがですか。
  95. 木村武雄

    ○木村国務大臣 全くごもっともでありまして、あそこに集まっておった大衆は、おじいさんやおばあさんが非常に多かったものですから、私は、ものをわかりやすく話をしてみようという考えで、非常にリラックスな気持ちで話をしたのですが、たとえそうであったとしてみても、そういうような別な印象を受け取ったとすれば、これはやはり改めなければならないと思いまして、以後はずっと改めておりまして、二級品ということばを使っておりませんし、付録なんということばも使っておりません。そうでありまするから、その点は、自分で、表現というものはつくづくむずかしいものであるというふうに考えておりまして、改めております。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ああいう会合であるからリラックスな気持ちで御発言になったということでありますが、これは大臣もお忘れではないと思うんですが、かつて、衆議院の本会議で、静岡県選出の小林武治さんですが、当時大臣でございましたが、この方の御発言が問題になったことは御記憶であろうと思うんですね。当時法務大臣だったと思いますが、その、法を守るべき責任者である大臣が、まあ、選挙演説というリラックスしたムードであったかどうか知りませんけれども、国会を軽視する御発言をされた。その大臣は、とにかく、野党というものはでっかい声でぎゃあぎゃあ言うだけであって、何の効果もないんだということで、国権の最高機関たる国会の審議というものに対して、非常に悔辱すると申しますか、それをきわめて茶化すような御発言をされた。確かに、選挙演説だからおもしろく話さなければ人が聞いてくれないということを、当時、小林大臣も予算委員会で言われたと思います。しかし、法を守るべき大臣、しかも法務大臣、その大臣が国権の最高機関たる国会を悔辱するような発言をするということは、これは憲法の趣旨にまっこうから反する言辞であるということで辞職されたことは大臣も御記憶に新ただろうと思うのです。ですから、これは選挙演説ではないと思いますが、また、講演会の演説ということだろうと思いますが、やはりリラックスして話したと言われましても、小林さんの先例から見ても、これは何ら違うところはないでしょう。そういうところの発言なら一切の責任をとらぬでよろしいのだということには国会はなっていないと思うのです。小林武治さんの御発言の例からいいまして、大臣、あなたは一体どうお考えになり、この御発言に対しての責任は一体どうされようと思っておられるのですか。お尋ねしたいと思います。
  97. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そういう発言をいたしまして、それがきっかけとなって、やっぱりことばというものは慎んでまいらなければならないものであるということがわかりましたから、以後慎んでまいりまして、そして、慎みながらこれからやっていきたい、こう思っております。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 二十四日に新聞に出まして、慎むといったということだと思いますが、しかし、あとでこれはわが党の後藤君から関連質問があると思いますから、簡単に申し上げたいと思いますが、二十四日の、国家公安委員長は二級品、建設大臣は付録という新聞の報道は二十五日に出ましたですね。それから二日おいた九月二十七日に、滋賀県に参り、まして、大臣はまた御発言になっておられますね。詳細は後藤君からお尋ねがあると思いますから簡単にお尋ねいたしますが、「平和ということは概念でわかるが、具体的なことはつかんでいなかった。平和ほど難しいものはない。特に社会党、共産党、連合赤軍は人を傷つけ、平和を暗くしている」とお述べになり、さらに「人ひとりの命は地球より重く、救うには銭金を惜しまない」「連合赤軍のように人の命、自分の命をごく粗末に扱う者をなくす」ということに全力をあげるとお述べになったそうです。「平和ほど難しいものはない。特に社会党、共産党、連合赤軍は人を傷つけ、平和を暗くしている」と、こういう御発言をされましたね。大臣、わが社会党は人を傷つけ、平和を暗くしていると確信をされておるわけですか。
  99. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そのことばは、山口さんを通しておわびを申し上げます。  私は、あのときは、こういう発言をしたつもりだったのですよ。共産党、社会党は別ですが、血を流し、人を傷つけたりする連合赤軍というものは、と、別ですが、というようなことばを私は入れたつもりでおったのであります。ところが、あとから記者諸君がおいでになりまして、そうしてそれが入っていなかった、と、こういうことだったものですから、それについては、たいへんなことだと思って、そうであったならばそれは取り消させてもらいますと言ったわけです。前段と後段をお聞きになるとわかると思いますけれども、共産党とも社会党とも、あくまでも話し合いでものを解決するんだ、そして、内に争いのない日本をつくるんだ、ということで、こういうようなこととそれは結びつかないのでありますから、それはもう全く私も寸足らずであった、それは取り消しさせてもらいますと言って、新聞に取り消しをお願いしておったのでありますが、翌日の新聞にそういうことが出たものですから、社会党と共産党にたいへんな御迷惑をかけてしまったと思いまして、石橋書記長にも謝罪をいたしましたし、申しわけなかったと、こういうように思っております。全然そういう考えは持っておりません。そうでありますから、なおあらためてここで取り消し、謝罪させていただきます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私、前段に、群馬県での発言を取り上げてお尋ねをしたわけです。群馬での発言はきわめて不見識な発言であったということをお認めになり、責任はどうかと私がお尋ねをしましたら、以後慎むというふうに言われたわけですね。大臣はお慎みになったはずなのに、二十五日の報道から、その二日後の二十七日にまたこういう御発言をされている。大臣の御発言が不見識であるということで御反省をなさったにしては、二日後に、また、このような、まさに公党を侮辱する大放言をおやりになるということでは、不見識な発言をしたことに対して責任をお感じになっているとはわれわれは受け取れないじゃありませんか。責任をとるということは今後慎むことだと言われたが、慎んでいないではありませんか。この点、いかがですか。
  101. 木村武雄

    ○木村国務大臣 このことについては、おわびする以外に方法はありません。私は、何といいますか、東北生まれのものですから、舌足らずのところが、ことばの回りの悪いところが非常にあるのですよ。それから、全国なんか回って歩きまして、休みなしのときには、非常に疲れも出て、言い足りないことも非常にあるんじゃなかろうかと思っておりまして、たとえば、群馬で発言したことは、それなりに身にこたえて、そして慎んでおりますけれども、それ以外のことなんかについても慎んでおったつもりになっておっても、そういう足らないところがやはりあった。しかも、それは、社会党そのものに対してたいへん御迷惑をおかけいたしまして、これだけは重々おわびを申し上げる次第であります。その点だけは、重ねて何回でもおわびを申し上げます。
  102. 谷垣專一

    谷垣委員長 後藤俊男君。関連質問を許します。
  103. 後藤俊男

    後藤委員 大臣、いまの、慎んでおわびするしいう話でございますけれども、いま、山口委員から、滋賀県の県警本部における、警察官の幹部連中が百人以上集まっておる席で、二十七日の午後の五時半ごろからでございますか、大綱はいま話がありましたが、一口に言って、共産党、社会党、さらに連合赤軍、これらは人を騒がしたり、傷つけたり、人を殺したり、そのことによって日本の平和を曇らせておる、と、こう明確に訓示なさったわけなんです。いまも大臣から話がありましたように、新聞記者のほうからいろいろ話が出まして、訓示に対する弁明のような記者会見が行なわれた。これも新聞に載りました。さらに、その翌日におきましては、京都での、きのう滋賀県でしゃべったことについては取り消したい、実はこういうつもりであったのだという弁明のことばが新聞に載っておりましたけれども、この弁明のことばすら、すっきりしておらぬわけなんです。新聞を持っておりますから読んでもけっこうなんでありますが、そうなってまいりますと、いま、大臣は、書記長に頭を下げました、党に申しわけないといってお断わり申し上げましたと言われますけれども、少なくとも天下の公党に対して——しかも、滋賀県は、御承知のように、大津の市長選挙が終わった直後なんです。これは革新統一候補が当選をしまして、保守党のほうのあなたとしては気に入らなかったかどうかは知りませんけれども、そういうような時期に、いま申し上げましたように、共産党なり社会党なりは連合赤軍並みの扱いだ。彼らは人を傷つけたり、殺したりして、日本の平和を曇らせておると言う。こんなことは、国家公安委員長なり、建設大臣として、発言のできることじゃないと思うのです。これは私のことば足らずでありましたということでは通用しないと思うのです。お断わり申し上げましたからこれでおしまいでございます、ということにはならぬと私は思うのです。その席上におきまして、いま言われたように、訓示の内容として、社会党、共産党は連合赤軍並みであって、人も殺したり何かして、日本の平和を曇らせておる、と、明確にそこまではっきりとおっしゃっておられるのですから、何をもってそういうことをおっしゃったのか。その点の御説明を、私は、第一番にいただきたいと思うのです。  ないことを大臣としてはおっしゃらないと思うのです。社会党は人を殺したりしておるんだ、そうして日本の平和を曇らせておるんだという、こういう気持ちがやはりあなたの腹の中にあったればこそ、訓示の中でそういうふうな話が出たと私は思うのです。しかも、公安委員長という重職で、滋賀県警の幹部連中を全部集めた席上で、しゃべっておられるときには、確信をもって訓示をしておられたと私は聞いておるわけなんです。あなたが訓示をされましてから、滋賀県会でもこれは問題になっておるわけなんです。さらに、県警本部自体としましても、いや取り消しであるとか、いや何だかんだということで、続いて新聞記事が出ますもので、あの訓示を一体どう受け取ったらいいんだろうかということで、いろいろ迷惑を受けておると思うのです。さらに、県会におきましても、本部長が引っぱり出されて、その当時の訓示に対して一体どういう手配をして、どうやったというようなことまで問題になっておるわけなんでして、そういうような情勢でございますので、少なくとも、あなたが舌足らずであったとか、何であったとか、そういう問題じゃないと思うのです。明確に訓示されておるのですからね。そのときは、そう思われたからそういう発言を行なわれたと私は感じておるわけなんです。そういうふうに思われておる根拠なり理由というものをひとつ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  104. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そういう気持ちがあったからそういうことばが出たんだろう、したがって、その考えておることを述べろとおっしゃいますけれども、全然ないのです。私は、ほんとうにないのです。それで、私としては、社会党、共産党は別として、と、こういうことばを使ったつもりでおったのですけれども、それが使われなかった、聞こえなかった、こういうことでしたから、自分がそう言ったつもりでおりましても、相手が聞こえなかったということであったら、それでは聞こえなかったと言う人の意見をとるべきでありますから、私は、それは取り消してくださいよ、と、こういう話をしたのでありまして、全然そんな気持ちは持っておりません。もしもそんな気持ちが私にありましたならば、社会党の人なんかともおつき合いなんかあまりいたしませんよ。そうであります。そんな気持ちは全然ありません。私は、戦争前から、淡谷君とか稲村君なんかと非常に仲よくしておった。それでありますから、全然ない。そうですから、別として、と、別として、ということばをなぜ使ったかといいますと、そのあとで共産党とも、社会党とも、どんなことでも争わないで話し合いをしてものを進めていきたい、そして、争いのない日本をつくるというのが私のものの考え方なんだ、こういうことは言っておるのですよ。そうですから、別として、ということばが入らなかったという点で、私は、全く寸足らずで、御迷惑をかけて申しわけなかった、こう言っておるのでありまして、ほんとうに考えておりませんです。うそ偽りはありません。ほんとうに考えていないのであります。そういうことは木村は考えていないという点だけはどうかお察しくださるようにお願いを申し上げておきます。
  105. 後藤俊男

    後藤委員 大臣、全然考えておらぬというのが、いま、声になって、口から出たのはどういうわけですか。そういうように、考えておらぬことがしゃべれることばないと私は思うのです。しかも、新聞記者の人が、一人だけなら話は別だったと思うのですが、たくさんおいでになるわけなんです。全部の人がそういうふうに聞きまして、翌日の新聞には全部同じことが書いてあるわけなんです。一、二の新聞だけなら、聞き違いだったとか、あるいは聞き落としたとかいうこともあってしかるべきだと私は思いますけれども、そうではなしに、ほとんど全部の新聞記者さんがそういうことを聞いて、翌日の新聞記事はみな全部同じように書いてあるわけです。しかも、あなたがいま言われましたように、社会党、共産党は別として、というように思われる節は全然ないわけなんです。それは、あなたがあとからお考えになったことばだと私は思うのです。いまあなたが言われましたことは、それなら、滋賀県の訓示を取り消すというときに、何でそういうことを言わなかったのですか。全然そんなことは入っていませんよ。あるいは、その晩に記者会見されたときに、実は、社会党、共産党は別として、と入れたかったけれども、別としてということが、声が小さかったから聞こえなくて、誤解をされたかもしれないけれどもと、当然言うのがあたりまえだと思うのです。そんなことは、きょう初めて私は聞いたのです。  それとあわせて、いま、全然考えておらぬと言われますけれども、全然考えておらぬことが訓示になって出るということは考えられぬと私は思うのです。そうなってまいりますと、これからあなたがしゃべられることを、あの人は考えておることをしゃべっておるのだろうか、考えておらぬことをしゃべっておるのだろうかと考えねばならぬことになりますよ。それが公安委員長で、建設大臣だと言っておるわけにはまいらぬでしょう。付録であろうと、二級品であろうと、そんなことは、山口委員のほうからいま話がありましたから、いまさら私はとやかく言いませんけれども、過去にどんないきさつがあって大臣になったにしろ、一たん大臣、公安委員長に任命された以上は、その大臣の任務に邁進するのが大臣だろうと私は思うのです。国民だって、それを希望しておると私は思うのです。いま言われましたように、全然考えておらぬということでありますが、考えておらぬことが声になって出たというのは、一体どういうわけなのか、その説明をいただきたいと思います。
  106. 木村武雄

    ○木村国務大臣 大津で警察官の前で話をいたしましてから、こういうことを言ったということで新聞記者の人が三人くらい見えて、話があったのです。そのときに、私は、社会党、共産党は別として、と、別として、ということばをおれは入れたつもりであったのだ、しかし、そっちのほうで聞かないということであったならば、そいつは取り消さしてもらいますと言っているのです。新聞記者にははっきりと、そういう、別として、ということばを言ったはずだけれども、それが言わなかったとすれば、私の失言だったから、そのことばは全部取り消さしてもらいますと、こういうことは新聞記者にはちゃんと言いました。それから、京都では謝罪いたしました。京都では、翌日の新聞を見まして、そしてそういうことが載っておったものですから、そいつは謝罪いたしました。前の大津の新聞記者三人ばかりに対しては、別として、と言ったはずだけれども、聞こえなかったとすれば、聞こえないほうが正しいだろうから、そいつは取り消さしてもらいますと、ちゃんと言っておきました。  そして、全然考えていないということは、私は、警察官に話をしておりまするのは、取り締まりに当たっておるのは警察官だ、したがって、警察官が平和に対してすっきりしたものを持たないと困ると思うから、平和とはこういうものである、人命を尊重することであるという話をずっと続けてしておるのですよ。そして、別として、ということばは、一番最後に、私は、世界に類例にないような、事故死のない日本をつくってみたい、そして、世界から尊敬される国になってみたい、そして、内に争いのない日本をつくってみたい、そのためには、どのような問題でも話し合いで解決していきたいと思う、共産党とも、社会党とも、すべて話し合いで解決していきたいと思うのだ、そういう内に争いのない日本をつくってみたいのだと、こういう考えを一番最後に述べておるものですから、その中に、社会党、共産党は、ということばが出てくるのです。それで、別として、ということばを私は入れたつもりでおったのです。ところが、入れなかったということであったならば、入れないとおっしゃったことが間違いがないのだろうと思いまして、これは申しわけなかった、こういうふうに私は申し上げておるのでありまして、社会党をそんなような団体であるなんということ、そういうことは思っておりませんです。(「何で二つの政党だけそこへ出したのか」と呼ぶ者あり)
  107. 後藤俊男

    後藤委員 これは大臣、私は、大臣がやられました訓示の前後というのはよく読んで、よくわかっておるわけなんです。いまも声が出ておりますように、なぜここへ突如として……(「共産党と社会党だけが出てくるのだ」と呼ぶ者あり)共産党が先じゃない。社会党が先だ。社会党、共産党、こうなっておるわけです。言われたことをそのまま言わないと、また誤解を生じるといけませんからね。それから連合赤軍と、こうなっておるのです。だから、大臣が言われるように、社会党、共産党は別として、と、——前段、後段のつなぎを読んでみますと、なぜ社会党、共産党をこんなところへ持ってきて、しかも、これは別として、というようなことをなぜこんなところで言わなければいけないんだろうかということなんですよ。ですから、前後のつなぎからすっと考えてみますると、社会党、共産党、連合赤軍はと、これはなかなか文章としてうまくつながるわけです。そのとおりをあなたが言われたわけなんです。それを、日にちがたって、いろいろお考えになって、これは社会党、共産党は別として、と言ったほうが、何とかこの問題の解決の糸口になるんじゃないだろうかとお考えになって言っておられるような気が私はするわけなんです。前後の文章全部を読んでみますと、くどいようなことを言いますけれども、こんなところへ社会党、共産党が出てくること自体がおかしな話なんです。出てきたところへ、また、別として、ということで取り消されておるわけなんでしょう。ですから、いま大臣がそう言われましたけれども、私は、そのときの心境というのはそうでなかったと思うのです。あなたの気持ちの中には、社会党、共産党あたりは、人を傷つけたり、殺したり、連合赤軍並みなことをいままでやってきた、こいつらが日本の平和を曇らしておるのだという気持ちがあって、そういう気持ちで堂々と訓示を行なっておられるのですよ。これは新聞記者連中がみな聞いておるわけですからね。県警本部長だってそういう聞き方をしておるんでしょう。県会でもそういう話が出ておりますよ。だから、そういうことを言っておいて、翌日、取り消しましたからこれで終わりでございますということにはならぬと私は思うのです。(「大体、訓示の取り消しなんかあるのか」と呼ぶ者あり)その訓示たるやまた、これは言い方はおかしいかもわかりませんけれども、警官が大衆的に三千、四千と、全部の者がおいでになるときではなしに、少なくとも部下を教育していくという幹部連中が集まっておる会合なんです。滋賀県下の幹部連中が集まっておるわけです。その人らが、大臣の、いわゆる公安委員長の訓示を聞いて、各職場に帰って、部下に全部伝えるわけなんですから、これは非常に重要な問題なんです。しかも、また、いま話が出ましたように、訓示の取り消しであるとか、やり直しであるとか、こんなことは、昔から、いまだかつて私は聞いたことがありません。翌日になって取り消すとか、新聞記者会見をやって弁明するとか、そんな訓示なら、最初からなさらぬでおいたらどうですか。しかも、あなた自体がこういう気持ちでやっておられるのですから、この訓示の内容というのは非常に今日問題になっておるわけです。何ぼ石橋書記長に頭を下げようと、だれに頭を下げようと、頭を下げることによってこれは終わりという問題ではないと私は思う。しかも、先ほどから、山口議員のほうからいろいろ話がありましたが、放言の連続じゃございませんか。これからまたどれだけ出てくるかわからないですよ。そういうふうなことをやっておられる公安委員長、建設大臣は、国民の目から見た場合には、非常に不安を感ずると思うのです。なるほど、御意見を率直におしゃべりになるのはけっこうだと私は思うのですけれども、だけれども、言うていいことと悪いこととあると思うのです。少なくとも、訓示の中で天下の公党を批判するとは一体何事だと私は言いたくなるわけなんです。そんな公安委員長なら、そんな考え方大臣なら、もう翌日にでも退任してやめてもらう、これくらいな決意でわれわれはおるわけなんで、この問題を非常に重要視しておるわけです。  だから、先ほどからの話をずっと聞いておりますと、ただ弁明をいたしまして、まことに悪うございましたと頭を下げただけであなたはこの問題を解決しようとしておられますけれども、われわれ社会党といたしましては、そんな簡単な問題として扱おうとは考えておりません。この問題につきましては、徹底的にわれわれは追及をしていく、最終的に大臣の責任をとってもらうという気持ちのもとに、これから臨時国会、通常国会に向かっていくと私は思うわけでございますが、そのことに関して、大臣としては、現在の御心境はいかがでございましょうか。
  108. 木村武雄

    ○木村国務大臣 山口委員にもお答え申し上げましたとおりに、全く舌足らずで、誤解を受けるようになりまして、全く遺憾である。おわびを申し上げます。ほんとうにおわびを申し上げる気持でおります。
  109. 後藤俊男

    後藤委員 大臣、わびただけでは通りませんよ。その辺のところでちょっとしゃべったという問題と違います。少なくとも、公安委員長という責任で、先ほども言いましたように、滋賀県警の幹部連中を集めた席上でそういう訓示をやっておられるのですから、私の言ったのは間違いでございました、おわびいたします、それでは通らないと私は思うのです。やはり、あくまでもあなたに責任をとっていただく必要があると思うのです。しかも、これが初めてならともかく、二回、三回と放言があるわけなんですね。あなたが放言されなければ、国会においても、こういう貴重な時間を費やす必要はないのですよ。これだけでもあなたは責任があると思うのです。それにかてて加えて、公党に対する誹謗、批判というのは、あなたが悪うございましたと言うだけでは通用いたしませんよ。いかがですか。
  110. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私は、謝罪する以外に道はない、こう考えまして謝罪を申し上げております。
  111. 後藤俊男

    後藤委員 責任をとっておやめになる気持ちはないのですか。
  112. 木村武雄

    ○木村国務大臣 いまは持っておりません。
  113. 後藤俊男

    後藤委員 いま責任をとってやめる気持ちはないけれども、そのことも十分考えてみたい、そういうことですか。
  114. 木村武雄

    ○木村国務大臣 いま与えられた職務に一生懸命、忠実に働くのが私の責任だと思っております。
  115. 後藤俊男

    後藤委員 それでは終わりますが、いずれまた、この問題につきましては引き続いて追及していきたい、こう考えております。
  116. 谷垣專一

    谷垣委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  117. 谷垣專一

    谷垣委員長 速記を始めて。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいま、わが党の後藤委員大臣とのやりとりを拝聴いたしておりますと、大臣がおっしゃるのは、社共は別として、という意味で、社会党、共産党、連合赤軍は平和の名のもとに人を傷つけ、平和を暗くしているということは毛頭考えていない、と、こういうことを繰り返し強調されたわけです。しかし、大臣、あなたは、先ほど私がお尋ねしたところの、たとえば、国家公安委員長は二級品であるとか、あるいは、今度大臣に就任したのは田中内閣を生み出した論功行賞だということを言われたことについては、非常にふんまんやる方ない気持ちだったんだということを言われました。そうして、ふんまんやる方なく、自分が論功行賞で大臣になったんだとは毛頭思っていないのに、そのことを群馬では御発言になっている。それからまた、滋賀県におきましては、毛頭考えていない社共と連合赤軍を同一視して、人を傷つけたり平和を暗くしているということを発言している。そうしますと、大臣は、心に思っていないこと、ふんまんやる方なく、そんなことはないと思っていることのみを御発言している。結局、大臣の御発言というのは、その気持ちには全くないことばかりを発言しているということに、いまの御答弁を聞いていればなるじゃありませんか。私は、そんなおかしいことはないと思うのですよ。いやしくも国務大臣です。大臣の御発言は、行く先々で全く考えておらないことをしゃべりまくる。ふんまんやる方なく、そんなことではないと思っていることを御発言になる。こういうことでは、国民は、大臣の御発言というものを一体どう受け取ったらいいんですか。大臣、そんなことではだめですよ。自分は思っていないことだけを言ったんだと、そんなことで大臣の御発言が通りますか。私は、そのことをひとつはっきりお答えをいただきたいと思うのです。  それからさらに、こういうような発言をした理由として、結局旅から旅で疲れが出たのだ、したがって、つい舌足らずの発言が出たのだと、こういうことを言われましたが、私は冒頭に聞きました。大臣就任以来三カ月たちました。そのうち五十日も御出張になっておられる。こういうことは、所管の行政を責任を持って統括する大臣というお立場ではたしてどうなのかということをお尋ねしたのでありますが、大臣とすれば、国会がなければ十一月九日までさらに視察の旅を続けたいと言っておられるわけですね。旅から旅で疲れが出て、心にもないことがついぽんぽん口から出るということを反省しながら、なおまた、これからさらに疲れの出る旅を続けようとするということは、私は、全く反省していないという証拠じゃないかと思うのですが、どうなんですか。結局、失言をしたということについては陳謝をする、反省するということを言っておられる。しかし、繰り返し放言はなされる。そして、さらに旅から旅に出て、疲れるような状況をおつくりになる。そうして、しゃべったことは、すべて、あれは思っていないことだと言う。こんなことで国会が通りますか。どうなんですか、大臣
  119. 木村武雄

    ○木村国務大臣 前のことなのでありますけれども、それは逆なことばを使うこともあるというわけで、何ということなしにそういうことを申し上げたのであります。ただ、そういう気持ちを持っておったのだということを私が申し上げたのであります。  それから、あとの問題は、ほんとうに考えてもみなかったことで、別として、ということばを自分は言ったつもりになっておったが、言わなかったのだ、向こうは聞こえなかったのだ、こういうことでありますから、私は、それは取り消しを新聞記者にはさしてもらいました。それからあとは、翌日には謝罪する、こういうことを申し述べたのであります。  それから、それだけの旅行をやっておりますと、疲れは出ますけれども、それがそのままいつまでも疲れておるものでもないが、そのときは疲れておったんじゃないだろうかと、こういうような発言を私がしたのでありまして、何も、そのためにどうのこうのということはないと私は思っております。
  120. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 冒頭の、国家公安委員長は二級品であるとか、建設大臣は付録だとか、それからさらに、自分大臣になったのは論功行賞だというような発言につきましては、実は、私ども、次のような考えがあるわけです。  それは、今度の内閣が成立いたしましたときに国家公安委員長と建設大臣大臣は兼務をされました。戦後の内閣の歴史を見ましても、国家公安委員長と建設大臣を兼務いたした例はございません。御案内だと思いますが、警察は都道府県警察であります。職員は地方公務員であります。ですから、従来は、地方公務員である警察官を所管する国家公安委員長を、同じその地方自治体の所管をする自治大臣が兼務をされるというのが通例でありました。最近になりまして、荒木国家公安委員長が行管長官を兼務をされましたが、その際、自分の本職は国家公安委員長だというようなことを言いまして、行管長官は付録のようなことを実は言われて、問題を起こしたことがございます。それ以来、国家公安委員長を行管長官が所管をするという例がございましたが、建設大臣と国家公安委員長の兼務は初めてです。私の出身地は上州ですけれども、上州では、やくざがとりものをつかさどる目明かしを兼務する、いわゆる二足のわらじというようなことがよくございましたが、結局、建設省といえば、そう言ったら恐縮でありますが、補助金が膨大であります。補助金の使途等についてしばしば問題をお起こしになる官庁であります。そこの官庁の長たる建設大臣と国家公安委員長が兼務をされるということは、ちょうど、かつての江戸時代の二足のわらじと同じようなことじゃないか、たいへんどうも不見識だということを私どもは主張してまいりました。そういう中で、あえて前例をくつがえしてこういう御兼務をされたわけでありますけれども、そういう中で国家公安委員長を侮辱するような御発言をする。それからまた、大臣就任については論功行賞だというような発言をされる。このことは、やはり、大臣を任命された田中総理にその考え方というものを聞かなければ問題は解明されないと思います。  それから、さらに、訓示の取り消しはないということを皆さん言われましたが、訓示というのは、少なくとも、国家公安委員長として、その部下に対して、御自分がこれからどのように警察行政をやっていくかということについて、基本的な考え方を責任をもってお述べになる場でしょう。そのお述べになった訓示の取り消しをするというようなことが通らぬことは、これはもう大臣も十分御存じだと思います。したがって、この問題につきましては、私ども、やはり田中総理が御出席の場で追及する必要があると考えます。特に、社会党、共産党等、公党に対する侮辱の言辞を弄されたということについては、政治的にきわめて重大な問題であります。そういう意味でも、当然、予算委員会等、総理大臣の出席される場でこの問題をあくまでも明らかにいたしたいと思います。  そう思いますから、本日はここで大臣に対するわが党の質問は一応終わっておきたいと思いますが、しかし、大臣、最後に申し上げておきたいと思うのですけれども、心にもないことばかりを繰り返されるとか、それから、疲れが出て言い足らないところがあったとかいうことを反省しながら、さらに旅から旅を計画されて、さらに放言をする御機会をつくるようなことは、私は、もう慎むべきではないかと思います。そのことだけ大臣に申し上げまして、質問を終わっておきたいと思います。
  121. 木村武雄

    ○木村国務大臣 ありがとうございます。いまのおことばは、ほんとうにうれしくお聞きいたしました。ありがとうございます。
  122. 谷垣專一

    谷垣委員長 林百郎君。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、共産党として、あなたの放言について、これはあなたの真意がたまたま出たのだと思うのですけれども、非常な迷惑をこうむっている党として、あなたの責任を追及せざるを得ないわけです。いろいろ弁解をなさっておりますが、新聞報道によれば、九月二十七日に滋賀県警本部であなたが訓示を行なった際のことばはこうなっているんですね。「戦後は、敗戦を厳粛な事実として受け止め、平和追求を目的に、人命尊重国家をつくり上げた。ところが平和主義者にはなったが、概念でわかっただけで、真の平和をつかんでいない。戦争と平和の相違は、人命を粗末にするかどうかで決まる」「社会党、共産党や連合赤軍の連中は、平和の名の下に騒いだり、人を傷つけたり、殺したりして来た」新聞ではこういっております。あなたが、九月二十七日に滋賀県警本部でこう言われたことは間違いないですか。
  124. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そのことについて申し上げたのでありまするが、私は、社会党、共産党は別として、ということばを入れたつもりでしゃべったのだけれども、それが聞こえなかった、入っていなかったという話でしたから、そうだとすれば、それは取り消しさしてもらいます、こういう話をしたのでありまして、新聞記者の人は言ったとおっしゃるのであります。そうでありまするから、言ったということを前提にして、別として、ということばは入れたつもりだったのだけれども、入らなかったとすれば誤解を招くから取り消しさしてもらいます——翌日の京都では、あらためて両党に謝罪さしてもらいます、こう言ったのであります。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一度念のために聞きますが、何でここへ、連合赤軍と並べて、共産党、社会党ということが出てくるのですか。この二つの党だけをどうしてここへあなたは引例しなければいけないのですか。そのあなたの真意をお聞きしたいのですよ。
  126. 木村武雄

    ○木村国務大臣 その真意と言われますると、しからば、どこででもその共産党、社会党ということばは使っておったのかといえば、使ってもいなかったのです。あちこち聞いてみたところが。そうですから、ことさらに私がそういうことばを使ったとすると、京都なんかでいろいろな騒ぎがあって、その騒ぎの中で、警察官と連合赤軍なんか対決しておって、そのために平和という概念が曇るといけないというような気持ちが私に一つあったんではないだろうか。そのときに、共産党、社会党も一緒にされると困るから、別として、ということばを特にそこに使ったのじゃないだろうか。あっちこっちで使っておったならば別ですけれども、ほかじゃ何も使っておりませんからね。そこで、私は、京都に行くについて、特別な配慮を私の心の中でやったのじゃないだろうか、こういうように自分は思っておるのです。しかし、ほんとうに何げなく使ったことなんでありまして、そんなに重要視して使ったんじゃありません。必要なことばじゃありませんからね。それは、自分は形容詞として使ったものですから、必要じゃありませんから、全体のあれを変えないで、全部話しておりますよ。そうでありますから、何で使ったのだと言われますると、心の中にそういう配慮があったんじゃないだろうか、と、私はこういうふうに思うのであります。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 何げなく言ったとか、心の中にそういう配慮があったとあなたはここで弁解されますけれども、言ったことはそれと全く反対のことじゃないですか。逆のことを言っているんじゃないですか。「社会党、共産党や連合赤軍の連中は、平和の名の下に騒いだり、人を傷つけたり、殺したりして来た」と言っている。あなたの配慮だとか、あるいはあなあの真意でないとかということは、国会のここの委員会で弁解として言っているだけで、これはあなたの真意だと言われてもやむを得ないんじゃないですか。新聞にはっきり出ているじゃないですか。そのために、天下の公党である共産党、社会党がいかに迷惑をこうむっているかということははかり知れないものですよ。それが、それとなく言ったとか、あるいは真意ではなかったとか、そういうことであなたは通ると思いますか。しかも、あなたは取り消されて、共産党、社会党は別として、と言ったつもりだと言いますが、あなたが、この日の夕方、このことについて訂正をされた、そのことばの中には、別として、ということがないでしょう。九月二十七日に滋賀県の県警本部で言われて、あなたが、別として、と言ったというのは十月四日ですよ。これを取り消された、直後のあなたのことばは、これも新聞に出ておりますが、こうなっているのですよ。「共産党、社会党両党を連合赤軍と同列に考えているのではない。共産党、社会党両党は騒いだり、人を傷つけたりしたこともあるが、連合赤軍は人殺しをやったと、別個に話したつもりだ。ことばが足りなかったので訂正する」と。この訂正したことばの中にも、「共産党、社会党両党は騒いだり人を傷つけたりしたこともあるが」と、あなたは言っていますよ。これは、どういう根拠からあなたはこう言っているのですか。
  128. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そうなると、私はわからなくなるのですよ、あなたがおっしゃることが。あのとき、三人の新聞記者の人がお見えになったと思いますが、その話は私はしたと思いますが、しかし、新聞記者の人はそういうように、社会党、共産党は騒いだり、人を傷つけたり、それから連合赤軍のほうは人を殺したり、そういうように言ったということになってまいりますると、私は、そのときの内容がほんとうにわからなくなってくるのですよ。それですから、私のものの考え方というものは、別として、ということばを入れたつもりであったのだけれども、入れなかったとするとたいへんなことだ、こう私は思って謝罪申し上げておるのです。しかし、そのときに新聞記者諸君が三人ほどおいでになりましたけれども、私は、いろいろな話はそのとき雑談でしましたよ。しましたけれども、別として、というようなことばを入れたと私は思っておるのですが、しかし、あなたはそうじゃないとおっしゃると、私はわからなくなってくるのですよ、正直なところ。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたは九月二十七日に滋賀県警本部で訓示をされて、そして、それを最初に訂正されたのはいつですか。
  130. 木村武雄

    ○木村国務大臣 訂正された、というと、どういうことですか。訂正された、というのは……。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは、県警本部の訓示が自分の本意どおり表現されておらなかったから、これを、自分の本意を表現するように訂正したと言っているでしょう。それはいつの話ですか。あなたの最初に言ったのはいつですか。
  132. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私が一番最初に警察でそういう話をしたのは、始まりは北海道だと思うのです。北海道が初めだと思うのです。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 北海道でこういうことを言っているのですか。
  134. 木村武雄

    ○木村国務大臣 言っておりません。だから、ほんとうは、本心がそういう意図であったならば、私は最初からそう言いますよ。言っておりません。どこでも言っておりませんよ。どこでもそれについて指摘されなかったのですよ。滋賀県で指摘されたわけです。それですから、そういう点で、そんなことを特別に言ったとすれば、私の心の中に、京都に行くんだからと、そういうようなものの考え方があったんじゃないだろうか。それがたまたまそういうことばで出たんじゃないだろうか。そして、そこで指摘されましてからは、一切そういうことばは使っておりません。それは、何とならば、誤解を受けるようなことばは使いたくないし、それからもう一つは、必要なことばじゃないのですよ。全体のその内容から見て、必要なことばじゃないのです。だから、削ったって何でもないのですよ。その後は全部削っております。もしも私が本心でそういうことを言ったのであれば、最初からそれは言いますよ。それは全然違うから、私はそういうことを申し上げておるのであります。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、私の尋ねていることに答えてください。あなたはいまそんなことを言ったって、新聞に出たものは、あなたがここでそんなに開き直ることとは全く逆なことが書かれているのですよ。そのことに対して、あなたは何ら反省も責任も感じていないのですか。あなたは、自分の言ったことがそのとおり表現されておらなかったから、直ちに訂正をしたというのですか。その訂正をしたのは九月二十七日の夕刻ではないですか。その九月二十七日の夕刻あなたが訂正されたものの中には、共産党、社会党は別として、なんということは言っていないですよ。共産党、社会党を別として、なんと言ったのは、十月四日の松山です。それまではあなたは直していませんよ。それが事実かどうかという事実関係を聞いているのですよ。
  136. 木村武雄

    ○木村国務大臣 その二十七日、滋賀県警で話はしたのです。県警で話をした中で、社会党、共産党、連合赤軍というものを一緒に、同列に扱ったのはけしからぬじゃないかということは、新聞記者諸君から終わってから言われたのです。それですから、私は、同列に扱った覚えはないという話をしたところが、実際そう言ったんだと三人の新聞記者の人が言ったので、そういう話をしたのです。そうだとすると、私の真意というものは伝わっていないのだ、あの内容の中では、騒いだり、それから血を流したり、傷つけたりということばを使っておることだけは間違いないけれども、そういうことについて、もしもそうだとすれば、社会党、共産党は別として、ということばを私は入れたつもりでおったのだ、それが入っていなかったとすればたいへんだから、それは取り消させてもらいますよ、こういう話をしたのです。それですから、私は、そのとおり話をしておるのであります。しかし、相手の人がそうでなかったと言われれば、それまでのことなんです。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたは、夕方、あなたに言わせれば取り消したと言われているのですけれども、その日の、あなたがいわゆる取り消したという中には、別として、ということばはないわけです。「共産党、社会党両党を連合赤軍と同列に考えているのではない。共産党、社会党両党は騒いだり、人を傷つけたりしたこともあるが、連合赤軍は人殺しをやったと、別個に話をしたつもりだ。ことばが足りなかったので訂正する」と言って、今度は、十月四日の松山市の記者会見で初めて、あなたは、「共産党、社会党は別として連合赤軍のごとき」と言っているんです。そうして、あなたが訂正したという中には、まだ、共産党、社会党は騒いだり人を傷つけたりすることもあるが、ということを言っているんですよ。新聞にこう出ていたとすれば、それは新聞のほうがうそを書いたのだとあなたはここで言えますか。
  138. 木村武雄

    ○木村国務大臣 その、滋賀県における新聞記者諸君とのことばのやりとりなんでありまするが、私は、やはり自分の本心ですから、別として、ということばは言ったつもりだ、しかし、言わなかったとすれば、それは取り消してもらいたい、こういう話をしたんです。  それから、松山というのはどういうことなんですか。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 松山へあなたが行かれたときに、記者会見をされて、そうして、やはりこの問題をまた言っているんです。この問題はこういう真意だったということを、ですね。
  140. 木村武雄

    ○木村国務大臣 それは、新聞記者諸君から、滋賀県の事件はどうであったかという話を聞かれたから、滋賀県のときにはこういう話をしたのだ、別として、ということばを使ったのだと新聞記者諸君に答えたんだと思いますよ。それから、そのあとは少しもそのことばは使っておりません。そのことばは何にも必要なことばじゃありません。全体の修辞からいっても、必要なことばじゃありません。それを削ったからといってどうのこうのということばじゃありませんから、その後はどこでも使っておりません。ただ、松山の問題は、滋賀県の事件はどうだったかということを聞かれたから、あのときば、別として、ということばを言ったはずだったけれども、聞こえなかった、言わなかったということだから、それは取り消した、と、こう私は言ったのであります。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは、このことを非常に軽く考えて、そのあとはどこでも言っておらないとか、あるいは自分の真意が伝えられていなくて、ついこういうことばを言ったとか、こう言っておりますけれども、それは、そんな簡単に事が済むわけじゃないんですよ。これは、きょうのずっと一貫した質問の中にも出ておりますように、事は、滋賀県警の本部で幹部の諸君に与えた訓示の中に出ているわけなんです。そのときにあなたが言っているわけです。それが、あとになって、あの訓示は舌足らずだったとか、あれは自分の本意ではなかったとか言われますけれども、少なくとも、国家公安委員長たる国務大臣がする訓示が、そんなことで通りますか。あなた、これは重大な責任問題じゃありませんか。ことにこれはもう他の委員からの質問の中にも出ましたけれども警察法の二条では、警察の責務を規定して、第二項に「その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」と規定し、三条では「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」と書いてあるわけなんです。そういう中で、共産党、社会党と連合赤軍を一緒にして、騒いだり、人を傷つけたり、人を殺したりしているというようなことを言って、あとになって、それは舌足らずだったと言う。そんな不見識な訓示というものはどこにありますか。しかも、共産党は、御承知のとおり、ここではっきりあなたに言いますけれども、人を殺すとか、そういうことの最大の事態である戦争というようなものに対しては、一貫して反対してきた。その共産党です。いま、党員が三十万。それから、参議院の選挙でも、五百万の支持者を持ち、地方自治体では、百二十二の地方自治体で共産党が推した首長が生まれてきている。しかも、これはことしの三月十六日ですが、連合赤軍の問題で、本会議で、佐藤前総理に私が質問したことに対して、佐藤総理ですら、「私は、日本共産党は合法政党であり、りっぱな政党だ、それぞれの主張は違いますけれども、これは憲法で認められた政党だ」と言い、過激派学生とは縁のない政党であるということをはっきり言っているのですよ。こういう歴史的な経過の中で、あなたが滋賀県警本部の幹部の諸君にこんなことを言うということは、あなたは、ここで単に軽い気持ちで言ってしまった、舌足らずだった、疲れていたのだということだけで責任がのがれられると思いますか。このことばは、憲法に規定されている結社の自由、それから警察法の精神、これの重大な違反ですよ。そういうことを言っておきながら、その警察の最高責任者であるあなたが、委員会で、そんな軽々な取り消しをする程度で、自分の責任を果たしているとお考えになりますか。あなたの本心をお聞きしたいと思うのですよ。
  142. 木村武雄

    ○木村国務大臣 社・共と申しますけれども、二十七日に滋賀県であいさつをしたあとで、記者諸君から、あいさつの中でこういうようなことがあったと言われて、そこで、三人ばかりの新聞記者諸君とのやりとりで、私は、社・共は別として、ということばを言ったはずだったけれども、言わなかったとすれば、そいつはたいへんなことだから取り消す、取り消してもらいたい、こういうような話をしたのですよ。そして、翌日の新聞を見たところが、取り消しどころじゃない、そういう記事が出ておったものですから、社・共両党に対してまことに申しわけがないと思いまして、京都で、あらためて、新聞記者諸君の前でも謝罪をした。そいつは私の本意でないことが出ておって、その結果非常な御迷惑をかけたことに対しては申しわけないと思ったから、私は謝罪をしたのでありまして、それから、社会党と共産党の京都の支部の方々もお見えになりましたから、そのとおりに私は申し上げておったんであります。それから、その後あっちこっちの警察を回りましてあいさつをしておりまするけれども、その中では、社・共は別としてだとか、社・共なんということばはもう一つも使わない方針をとって今日まできておるのであります。そうでありますから、本心であったならば、最初から私は使いますよ。本心でありませんから、ただ形容詞として使った程度のものであったから、そいつは非常な影響を与えて悪かったと思って取り消したのでありまして、そのとおりなんであります。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、あなたがこういう重大な訓示をしていながら、それを単に形容詞だったとか、舌足らずだったとか、あるいはその後には言っておりませんとか、そういう程度でこの事態をこぎ抜けようと考えていること自体に、あなたの国家公安委員長としての資格について重大な疑義をわれわれは持たざるを得ないわけですよ。私のほうは、これについて、実は、二階堂官房長官に対して十月五日に抗議したわけです。で、二階堂官房長官は、政府としてもしかるべき措置をとらせると私どもに約束しております。この、二階堂官房長官がわが党に約束した、しかるべき措置をとらせるということは、その後どうなっているのですか。
  144. 木村武雄

    ○木村国務大臣 総理から、私は、自後失言はするなよという訓戒を受けましたよ。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 それで、あなたはどう考えたのですか。そういう注意を総理から受けて、あなたはどういう反省をなさったのですか。
  146. 木村武雄

    ○木村国務大臣 これからは一言一句といえども慎んで発言しなければならないと、こういうふうに考えました。すなおに受け取りました。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、あなたは、総理から、失言をするなと注意を受けて、すなおに受け取った、と、はなはだ簡単に問題を処理しております。  先ほど、社会党の石橋書記長には謝罪をしたと言いましたが、共産党に対してはどういう態度をおとりになっているのですか。少なくとも、これは、公党に対する重大な迷惑をかけたことばなんですから、党に対して正式にあなたは謝罪すべきだと思うのです。そのためには、あなたが国務大臣であろうと、党本部を訪問して、ちゃんとあなたの真意を伝えるべきだと思いますが、そういう措置をとっていますか。
  148. 木村武雄

    ○木村国務大臣 京都から帰ってまいりまして、あなたのほうの書記長の不破さんにお目にかかりたいといって、ずいぶん何べんも連絡をとりましたよ。ずいぶん連絡をとりましたけれども、連絡がつかなくて、今日まで、不破書記長に対して謝罪するという機会を持たなかったのでございまするから、あらためてあなたを通して謝罪申し上げます。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 これは党との関係でございますから、この委員会で私にあやまったからといって、何も共産党にあやまったことにはならないわけです。やはり、共産党の本部をちゃんと訪問されて、そして、あなたが正式に謝罪を表明するのが党に対する真の謝罪の方法だと思うのですよ。  なお、こういう訓示をされるということは、あなたは、つい失言が出たんだと言われますけれども、国家公安委員長が、少なくとも、警察法で不偏不党ということが明確に規定されている警察に対して、天下の公党に対して偏見を持つようなことを言われることは、結局、警察自民党の私兵にしよう、要するに、自民党の言うとおりのものにしようという意図があなたの底意にあったのではないですか。と同時に、また、御承知のとおり、大津だとか、ここでは、共産党や、社会党や、労働組合、民主的な勢力が統一して、新しい首長が生まれたところなんですよ。共産党や社会党が与党としての責任を負っているところなんですよ。ここへ来てあなたがこういうことを言うということは、そういう新しい首長を生み出した大津の市民や滋賀県民に対して、あなたは挑戦していることと同じ意味になるのですよ。事態は、そういう重要な意味を持っているということですね。この己とをあなたは気がついておられるかどうか。それが一つと、それから、あなた、京都へ行くから特に共産党、社会党のことが意識にのぼっていたということは、これは一体どういう意味なんですか。
  150. 木村武雄

    ○木村国務大臣 共産党の本部を訪ねて謝罪するのは当然じゃないかというお話しなんでありまするが、それはごもっともなことだと思います。私は、それで、社会党の石橋書記長に向かっておわびにお伺いしたいと申し上げたところが、わざわざ本部になんか来なくてもいいじゃないかということで、こういうわけで会ってくださいましたよ。そのときに、社会党の石橋書記長の、君は非常に先輩でもあるし、わざわざ来なくてもいいのじゃないかということばに私は感激いたしましたよ。そういうわけですから、社会党の書記長には謝罪を本部でやらなかった、共産党には私が出かけていって本部でやったというわけにいかないのですよ。それですから、同じ衆議院議員でもありまするから、国会でお目にかかって、そして謝罪させてもらいたいということを申し込んでおきましたけれども、それに対して何らかの返事もなくて今日に及んだ、こういうことなんであります。私も、国家公安委員長だから云々なんというものじゃありませんけれども、同じ国会議員として、同じ衆議院議員として席を列しておったならば、やはり、その衆議院議員としての不破書記長にお目にかかって私は謝罪申し上げたかったのでありまして、本部に参りまして云々と言われましたけれども、残念ながら、それはできなかったのであります。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 国務大臣、これは公党の関係なんですからね。一議員とあなたとの関係じゃないのですから、公党に対して、言いがたき、はかりがたき迷惑をかけたのですから、それはやはりあなたが党へ行って謝罪するのがあたりまえじゃないですか。不破書記長もあなたにそう言っているじゃありませんか。それをあなたはまだ実現していないじゃありませんか。そのことがいかに共産党や社会党に迷惑をかけたかということをあなたはほんとうに反省していない。そのことをはっきりあらわしていると思うのです。ですから、共産党としては、あなたがそういう措置をとることがしかるべきだと考えております。そうして、今度のこの問題については、あなたがきょうこの委員会で弁明した程度では、とうていあなたの責任は許されるべきものでないと考えております。われわれも、社会党と同じように、この問題については、本会議、予算委員会で徹底的にあなたの責任を追及せざるを得ないのですよ。そして、同時に、こういうことをあなたが言われるということは、政府自民党が連合赤軍などの反共暴力分子を意識的に泳がしておいて、それをわが党や民主勢力に対する反共攻撃に利用しているということで、私たちは一貫してこのことを言ってきたのですよ。このことと通ずるのじゃないですか。少なくとも、一国の国務大臣が、あとになって取り消したとはいえ、共産党や社会党と連合赤軍を、同じようなものだ、人を傷つけたり殺したりしていると言うということは、われわれが一貫して反対してきた連合赤軍だとか、トロッキストだとか、これをむしろ、あなた方のほうが泳がして、それを反共の材料として使っていることになるのじゃないですか。このことについてのあなたの所感を伺いたいのと、それから、やはりこれは公党との関係ですから、党に対してあなたの謝意を表する機会を持つべきだと思います。これが、二階堂官房長官も言っておる、しかるべき処置をとるということのまず第一歩だと思いますが、この点どうお考えになりますか。
  152. 木村武雄

    ○木村国務大臣 連合赤軍なんかを泳がして云々という、そんなことは考えないでくださいよ。そういうことは考えないでください。そんな気持ちなんか毛頭ございません。  それから、国家権力、警察権を私物化する気じゃないかという、そんな気持ちは毛頭ありませんよ。私が全国を回って歩きまするのは、何としても理想を追求する国家警察になってもらいたい、そのためには、世界に類例のないような、事故死を持たない日本にしてみたいということで国家警察を回って歩くのでありまして、それ以外のことなんか何にも考えておりません。それと、あなたの立場でこうだろう、ああだろうなんて勘ぐって、断定して議論されるということは私はあまり好みませんよ。そうでありますから、そんな気持ちなんて毛頭持っておりません。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 好む、好まないの問題じゃない。問題はあなたから出ているのじゃないですか。少なくとも「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」と、こういう立場に立って警察行政というものは行なわなければならない。この最高責任者であるあなたが、このような、共産党、社会党、連合赤軍は人を傷つけ、人を殺すというような訓辞をするということは、これはあなたのほうから問題は出ているのじゃないですか。しかも、そのことが新聞に出れば、これは国務大臣として、こういう連合赤軍というようなものを利用しているんだ、反共の道具に利用しているんだと言われたって、それはあなた自身の責任じゃありませんか。これは好ましいとか、好ましくないとかいう問題じゃないじゃないですか。とんでもない話ですよ。いまのことこそ失言ですから、まず取り消しなさい。重大な失言ですよ。あなたは、自分で言ったことを、こういう意味にとれるじゃないかと言われて、好ましくないと言うということは、どういうことなんですか。
  154. 木村武雄

    ○木村国務大臣 あなたのおっしゃった警察は不偏不党だ——私は、警察を回って歩きまして、その住民のためにどうだとかこうだとか、そんなことは少しも言っておりませんよ。あくまでも人命を尊重することが一番大切なんだ、それで、とりあえず、まず、交通事故というものから人命を救済しようじゃないか、そして、事故死のない日本をつくろうじゃないかということを望んでおるのでありまして、社会党がどうだとか、共産党がどうだとかいうことは言わない。ただ、滋賀県で、社会党と共産党は別として、と、別として、ということばを言ったつもりだけれども、言わなかったということから問題を発生したのであって、そいつは派生的なことなんですよ。私としては、そんな気持なんか毛頭持っておりませんからね。あくまでも、警察というものは不偏不党でなければならない。一党のために働くなんということはあり得べきことじゃない。変わっておりませんよ。特に、警察に対して望んだものは何かといいますと人命救助、人の生命を救うのだ、そいつに徹してもらいたい、事犯もさることながら、それ以上の重大な使命がある、そいつは人命救済だということをつけ加えて言っておるのでありますけれども、事犯に重点を置いた話なんか何一つ言っておりませんよ。そいつを、あなたは、そうじゃないというふうにおっしゃっている。そうして普遍的なことを抹殺されて、派生的な問題をつかまえて、そいつをとって、全部である、全部だ、全部だとおっしゃいますけれども、私は、そんな気持ちは毛頭持っていない。こういうことを申し上げておきます。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 まとめてあなたに御質問しますが、あなたは、別として、ということばを言ったはずだ、言ったはずだと言いますけれども、それじゃ、何でここでそれを言わないのですか。私があなたにいろいろのことを質問しますけれども、その根本的な責任は、あなた自身にあるんじゃありませんか。国家公安委員長として、国務大臣として、一県の警察の幹部に対して訓辞をした訓辞の内容が、重大な憲法違反の、警察法違反のことばを使っている。あとになって、自分が言ったつもりだが抜けていると言ったってそれは通らないことですよ。あなた、国務大臣が各省で訓辞をして、あとで新聞記者から注意をされて、実はこのことばは足りなかったからこうだなんて、いままで例がありますか。前例のないことをあなた自身がやっていて、そこから責任が発生したことを私が追及するのに、開き直るという態度がどこにあるのですか。そのことが一つ。  第二は、共産党に対して、公党に対して、非常な迷惑をかけているわけなんですから、あなたは今後どういう措置を共産党に対してとられるかということ。これが第二。  第三は、私は、きょうのあなたの態度の中には、この問題が、共産党や、社会党や、民主的な勢力に対して、いかに重大な迷惑をかけているかということについての反省が全くみじんも感じられないと思うのです。しまいには開き直っている。開き直って、一部を全部とするとかなんとか言うのですけれども、最も重要なことばを自分で抜かしておいて、しかも、訓辞として言っておきながら、あとになってこの委員会で開き直るなんという態度は、全然あなたに反省の態度がないと思います。だから、私のほうは、これを徹底的に追及するつもりです。あなたの国務大臣としての適格性についても、徹底的に追及するつもりです。  この三つの点、これに答弁を求めて、私の質問を終わります。
  156. 木村武雄

    ○木村国務大臣 開き直るとおっしゃいましたけれども、そういう気持ちがあるだろう、あるだろうとおっしゃるから——私はそういう気持ちなんか全然ないのだ、ないのだと申し上げても、あなたはあるだろう、あるだろうとおっしゃるから、勢いそう言わざるを得なくなってしまったのであります。そういうことなんですよ。そうでありまするから、私は、ほんとうにあのときには失言であった、申しわけなかった——そうしてそのことは謝罪しておりまして、謝罪したので、そいつを繰り返しておるかといえば、どこでも話しておりません。それから、その以前にもそんな話をしておったのかといえば、そんな話も、どこにもしていないのであります。それでありまするから、一事をもって全部が悪いとおっしゃらないでくださいと、私はこういう話をしておったんだ、と、こういうことをあなたにお話ししておるのでありまして、開き直って私はあなたに反撃を加えたなんということじゃ全然ありませんよ。ほんとうに、私は、その点では申しわけなかった。公党に失言をして、被害を与えて申しわけなかったということはほんとうに残念に思っておりまするが、そういうことを申し上げておるのであります。その点を、あなたのほうでも、どうか誤解のないようにしてくださいよ。私は、自分の失敗したことを開き直って話をするなんて、そんなことはいたしませんよ。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二点。共産党に対して今後どういう謝意を表する措置をとるかという点。そして、今後あなたの責任をどこまでも追及するということについて。この二つを……。
  158. 木村武雄

    ○木村国務大臣 先ほども申し上げたとおりに、不破書記長を通じて謝罪をしてみたい。こういう気持ちは少しも変わっておりませんです。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、あなたの責任を今後共産党がどこまでも追求することに対して、あなたはどういう態度をとるのですか。
  160. 木村武雄

    ○木村国務大臣 共産党を連合赤軍と同じように扱ったような記事が出たことに対しては、まことに申しわけない。したがって、それは幾重にもおわびを申し上げます。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 これでもう私の質問を終わりますが、記事が出たという、まるで新聞記事の責任みたいなことを言っているのですよ。だから、わがほうとしては、これに対してはとうてい納得できませんから、今後あらゆる機会になお継続してこの問題は追及するということを委員長にも申し上げて、私の質問を終わります。
  162. 谷垣專一

  163. 山本弥之助

    山本(弥)委員 だいぶ公安委員長として責任を追及されたようでございますが、私も、歴代の公安委員長で、訓示を取り消したという事例を耳にしないのですけれども、まあ、その話は、いずれまたいろいろな機会があろうかと思いますので、本日は、建設大臣として御質問申し上げたいと思います。  実は、先月の地方行政委員会におきましても、土地の騰貴の問題に対する地価対策等につきまして御質問を申し上げたのでありますけれども、時間の関係がありまして、十分御答弁をお聞きする機会がなかったわけであります。ただ、私は、その際、建設大臣から、こういう土地の騰貴につきまして、非常に遺憾の意を表されまして、土地というものはもうからないものである、もうけられないものであるというような、そういう原理にのっとったような対策を、この点について一生懸命に検討しておるという御答弁がありましたので、そのことにつきまして、おそらく早急に対策を講ぜられるだろうということを期待しておったわけです。たまたま大臣が最近岐阜県のほうにおいでになった際の記者会見で、やはり、この問題がいかに重要であるかということについての御認識に立っての発言がありましたので、私ども力強く感じたわけでありますが、その中で、従来建設省といたしましては、新聞に散見いたしましたところでは、譲渡利益に対して高率の分離課税をかけるということをお出しになっており、また新聞の伝うるところによりますと、大蔵省では、いわゆる土地の保有課税ということを主張しておるような新聞記事を拝見いたしたわけであります。岐阜県の記者会見では、大臣は、税制といたしまして、譲渡所得に対する分離課税の強化、あるいは保有課税についてもあわせて建設省では検討しておる、いわゆる土地税制としては、この二点、二つの税制で対処をしようというふうな発言がございましたので、この点は、そういうふうに早急に税体系を——いま税制調査会も開催されておるわけでありますか、そういうお考えで今後強力にお進みになるのかどうか。お考えをお聞きしたいと思います。
  164. 木村武雄

    ○木村国務大臣 そのとおりでありまして、法人税に対しては、やっぱり分離課税でやってまいりたい、そして、税も思い切って高額なものをかけてみたい、こういう考えでおります。  それから、保有課税のほうも、そうして土地を持っておることがやっぱり損だというような印象を与えるような課税方針をとってもらいたい、こういうことを党及び大蔵省のほうにも話をしておるのであります。  それから、ただ、政府といたしましては、税制調査会に諮問しております関係で、そういうような答申を待ってから会議を開いてみたい、こういう考えでいま検討中であります。
  165. 山本弥之助

    山本(弥)委員 この前もちょっと私触れたと思いますが、大臣がお見えになる前に、自治大臣に対しまして、同僚の山口委員あるいは民社の門司委員からも質問があったわけでありますが、いままでの税制のあり方といいますか、国税と地方税との関連ですが、これを非常に重視をしてまいりまして、私どもといたしましては、地方税、ことに市町村の税の充実について努力をすべきであるということを主張してまいっておるわけであります。この譲渡所得に対する高率の分離課税にいたしましても、あるいは保有課税にいたしましても、これは、ある意味において、国税と地方税の分離、いわば両方に課税をするような考え方は私はあり得ると思うのですが、建設省でお考えになっておる分離課税にいたしましても、あるいは保有税にいたしましても、これは地方税の関係において、国税と地方税に配分をするというようなことをお考えになっておるかどうか。この点をお聞かせいただきたいと思います。
  166. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 事務的な問題でございますので、私からお答えいたしたいと思います。  先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、私どもといたしましては、土地の税制といたしては、いわゆる高率の分離課税という所得税の体系、それから保有課税の適正化という二つがきめ手であろうと思います。その場合、先生のおっしゃったとおりに、譲渡所得は国税、保有課税は地方税——これは、大蔵省では、先ほどお話しがありましたように、保有課税ということを言っております。これは、私どもまだ新聞紙上で拝見するだけで、大蔵当局としてもなお検討中であるというお話でありますが、これは国税を考えておるかもしれませんが、私どもとしては、最初に、来年度の土地税制で、来年度以降におきまして要望をいたしておりますのは、現在の固定資産税、保有課税の適正化ということでございます。したがいまして、国税及び地方税ということでそれぞれ考えて、適正化を考えておるということでございます。
  167. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そういたしますと、譲渡所得の分離課税は国税で考えておる、それから、保有税は、その内容は明らかではないが地方税ということになりますと、固定資産税の関連において考える、そういたしますと市町村税。そういうお考えでございますか。
  168. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 ただいま申し上げましたとおり、私どもが建設省として考えておりますのはそういうことでございます。
  169. 山本弥之助

    山本(弥)委員 かつて四十四年でございましたか、農地に限りませんけれども、個人所有の土地については——ことに宅地の需給関係の緩和といいますか、そうなりますと、宅地として供給させることが地価を押えることであるという考え方に立って、農民がその土地を手放した場合に、最初は一〇%課税、あるいはその次は一五%、四十九年、五十年は二〇%という、いわゆる手放しやすい分離課税。これに関連いたしまして、地方税住民税でも同じような分離課税をしておりますが、これは手放すということにおいては、税を安くして手放さす、これは完全に失敗しているわけですね。この失敗していることについてはいろいろ問題があるわけでございまして、私どもは、このことは是正しなければならぬというように考えておるわけでございますが、しかし、同じ分離課税でも、いわば所得に対する分離課税ですから、住民税はやはり所得に対する課税なわけですね。この際にも、そういった分離課税をする際に、地方にも財源が入るというふうな考え方は成り立ち得るわけですね。  それからもう一つ、固定資産税に関連しているということを承っておきたいと思うのでありますが、ただ、問題は、いままでの法人の土地の資産というものは、これはいろいろ建設省のほうでも御調査になっていると思いますけれども、ほとんど問題にならないような、非常に安い価格なんですね。それが含み資産になっていることは当然なわけで、ことしの私ども委員長一般質問でも、この際再評価すべきではないか、その再評価したものに課税することによって、それを全部取り上げるということは不可能であっても、ある程度まで、それの半額とか三分の一、しかも、課税を、単年度ではなくて、数年度に分離して課税をするということで吸い上げる、そうすると相当の税収というものが期待されるのではないか、こういうことを質問をしておるわけであります。いわば、大法人の所有しておる、いわゆる帳簿価格の再評価に対する課税、こういった考え方はお持ちになっておりませんでしょうか。
  170. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 最初の第一点の、所得税の場合におきましても、地方税がもちろんからみます。これはもうおっしゃるとおりでございます。たとえば、今度は、私ども一般に四割の分離課税を考えております。特別地域は八割を考えておりまして、地方税を含めますと、それぞれ五二%、九二%でございます。それによって、地方税も、おっしゃるとおりからむわけでございます。  それから、第二点の法人の資産の再評価の問題でございますが、これもそういう議論もございまして、特に、先生のほうの社会党からもそういう御質問が予算委員会であったことも承知いたしております。これも、確かに、土地問題として、問題提起をされておる一つの問題点でございますけれども、これが一般経済に与える影響というようなものを考えますときに、やはり慎重に検討していく必要があろうかと思います。  しかし、先生の目的とされるところの、法人による土地の投機的売買というものを何とかして抑制する必要がありますので、先ほどから大臣も御答弁申し上げているとおり、所得税の面において分離の高率課税、もう一つ、固定資産税等の保有課税の適正化という方法が一番きめ手になるのではないかということで、私どもはそういう要望をいたしておる次第でございます。
  171. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そういたしますと、第一点の分離課税については、その配分は、いろいろ私ども地方税に重きを置いてほしいという考え方を持っておりますが、分離課税は所得税としても入る、あるいは住民税としても、分離課税の高率の適用でありますので、当然入ってくるという考え方に立っておることは間違いないわけですね。
  172. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 おっしゃるとおりでございます。
  173. 山本弥之助

    山本(弥)委員 それで、この税制の改正ですね。これは臨時国会にお出しになりますか。あるいは通常国会になるのでしょうか。非常に早急に手を打たなければならない問題でありますが、問題は、税制の改正でありますので、やはり、所得税法、法人税法あるいは地方税法、それぞれの改正を伴うわけでありますが、まだ内部で煮詰まっていない、税制調査会の答申をまたなければならぬということになりますと、二十七日からの臨時国会、これはもう召集を受けておりますが、それまでに法案の提出は間に合わぬのじゃないかと思われるのですが、臨時国会に提出を極力間に合わせるのかどうかということが第一点。  それから、間に合わないとなれば、税制でこの際手を打つということは来年までできないわけですね。あとで詳しく建設省から——大臣、時間が来ましたら退席願ってけっこうなわけですが、お聞きしたいと思うのですが、ずっと急速に土地投機がいまでも行なわれているわけですね。それまでの過渡的な対策といいますか、そういったものはどうお考えになっておるか。これは大臣から御答弁願って、所定の時間でありますので、御退席願ってけっこうでございます。
  174. 木村武雄

    ○木村国務大臣 御指摘のとおりに、臨時国会には間に合わないのじゃないかと思っておりますよ。それでありますから、最初から通常国会に出すという気持ちで取り組んでおった問題であります。
  175. 山本弥之助

    山本(弥)委員 暫定対策は……。
  176. 木村武雄

    ○木村国務大臣 暫定対策なんですけれども、ちょっと事務当局から答弁させます。
  177. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 先生のおっしゃるとおり、通常国会といたしますと、この間まだ相当間がございます。私どもとしては、やはり早急に何かの手を打ちたいわけでございますけれども、国会で御審議いただかないと画期的な施策は講じられません。したがって、現在やっておりますいろいろな方策を推進する。たとえば、公的な保有を拡大していくとか、また、実際に各都道府県でやっているところが最近相当多くなっておりますが、たとえば、千葉県あたりでは、法人の一定規模以上の土地の買収にあたりましては、事実上指導して、連絡を顕著にさしております。そういうことによりまして、県庁におきましては、そういう宅地問題連絡調整会議というものを持ちまして、そこで土地利用の関係その他から十分検討いたして、適切な指導をするということをいたしております。そういうようなことを、事実上もっと役所が指導力を発揮して行なうということ等によりまして、法人の土地投機による地価の高騰を防ぐというようなこども一策であろうと考えておる次第でございます。
  178. 山本弥之助

    山本(弥)委員 その暫定措置が講ぜられぬということであれば、いろいろ当面打つ手があるんじゃないかと思われますのは、これはすでにもうこの前の委員会で申し上げたのですけれども、あるいは通常国会の公有地拡大推進法案審議の際にも申し上げたのですが、いわゆる金融の緩和あるいは金利の引き下げで、いま大企業は何に向かっておるかというと、株の買いあさりのつり上げと土地の買いあさり、これが顕著になっておるので、大蔵省は呼んでおりませんけれども、金融的にある程度までそれを押える体制をとるべきだということを申し上げたのですよ。私は、暫定措置でそういうことも真剣に、通産大臣なり、あるいは大蔵大臣、建設大臣自治大臣等で話し合うべきじゃないかと思う。手がいま打てないとするならば、ですよ。  それから一点は、日本列島改造論というのは、本来、地方に適正に工場が分散して、いままでの過疎を真剣に解決づけるということなんですね。しかし、その問題に手を打つ前に、すでに土地というものが、大部分、大企業あるいは相当の資産を持っておる方々に買い占められたあとでは、これは公共事業の推進にいたしましても——本年度も、相当無理をして国も地方公共事業を推進しているんですね。その推進をしているときに、土地をどんどん買い占められますと、そういう公共用地あるいは公共事業用の用地というものの取得というのは非常にむずかしくなるのですね。そういうさなかに、総理の列島改造論のビジョンといいますか、それにおくれまいとして、どの都市はどうする、この都市はどういう指定を受けていろいろ整備するんだという基本的な問題を、真剣に検討しないで新聞記者に発表したりする。本来ならば、そういう失言は、国家公安委員長の失言よりもほんとうは重要なんですね。個人のささやかな住宅建設用地も買えないというのがますますきびしくなりますからね。日本列島改造論が、いかにも、一般大衆が自分の土地を確保するのに有利になり、あるいは、その住んでおる土地がよくなるということのために宣伝されることによって、結局、逆に、その地方は法人が買いあさりに入っておる。盛岡の周辺の北の滝沢村だとか玉山村というのは、ちょっと立ちおくれておる地域なんですけれども、今後いかにしても、自然を保全し、あるいは快適な住宅や研究機関の整備ということをしなければならない町村なんですね。そういうところが、村がわからないうちに土地が買いあさられているわけなんですね。たとえば、金を積んで、登記面の買い手の名前はあけて、そして代書人に頼む、そして、飛行機で往復して買い人の名前を明示して、登記をする。こういう事例が出てきているんですね。ですから、日本列島改造論のビジョンに立ちおくれまいとしての各省のいろいろな不謹慎、あるいはその省のセクショナリズムから来るアイデアを出されることは、列島改造論が、いわば土建屋あるいは不動産業者、大法人の利益のために逆に奉仕しておるという結果になりかねない実態になりつつあるわけですね。しかも、来年の税制をきめないうち、遡及して取らない限りは対策が打てない。しかも、つり上がった地価というものは押し下げることはできない。まあ、利用区分で押し下げると言っておられますけれども、利用区分で押し下げるということもなかなかむずかしいのじゃないかと私は思うのですが、そういうことを十分配慮願いたいということを、念のために、御答弁は要りませんが、申し上げておきます。  そこで、いろいろ新聞にも発表しておりますし、私ども調査も持っておるわけでありますけれども、いまの土地投機の実態を建設省で調査された実情というのはどうなっておりましょうか。いろいろな数字をあげての建設省の発表もあるわけですけれども、一番新しい事例で、一体どの程度まで投機の対象として買いあさられたのか、あるいは法人の手に帰しておるのか、どこにおもに集中して持っておられるのか、その辺のところをまずお聞かせ願いたいと思います。
  179. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 ただいまの御質問、買い占めの実態ということでよろしゅうございますか。——本年の五月に、私ども法人の土地保有の状況調査というものをいたした次第でございます。これは東京証券取引所の一部、二部上場の全企業約千三百社につきまして、昭和四十七年三月三十一日現在の土地保有状況というものと、昭和四十一年から四十七年三月三十一日までの六カ年の土地の取得状況、開発の状況等をアンケート調査いたしたものでございます。この回答率は七百四十社、五七%でございました。この種のアンケ−ト調査では、普通の回答率のようでございます。したがって、大体の傾向はこれで察知できると私ども考えておる次第でございます。調査結果につきまして、いろいろございますけれども、その主要なポイントだけを簡単に御説明申し上げます。  ただいま申し上げました昭和四十七年三月三十一日現在土地を保有している企業は、その保有面積が約三十三万ヘクタールでございます。それから、土地の取得状況は、先ほど申し上げましたように、六年間でございますが、回答がありました七百四十社のうち二百九十四社でございますが、六年間の取得の総面積は約四万三千ヘクタールでございます。それから、これを年度別に状況を見ますと、昭和四十一年から昭和四十六年までの六カ年でございましたが、全体で約二・四倍と、大幅に増加いたしております。事業用資産では約二倍、たなおろし資産では約三倍ということになっております。  取得しました土地の種類について見ますと、事業用資産におきましては、事業所、工場等直接業務に必要な用地は約七割でございます。それから、森林だとか、資源確保を目的とするものは約一五%であります。たなおろし資産では、一番多いのはやはり住宅地の分譲用、これは約七八%でございます。それにレクリエーション施設用というのが約七%でございます。これがおもなものでございますが、土地を取得する際にすでに転売を目的としたものというものは、事業用資産では〇・七%、たなおろし資産では二・一%、それから、用途不明という回答があったのが、事業用資産で五・三%、たなおろし資産で一一・四%ということになっておるわけであります。  それから、取得しました土地のうち、すでに譲渡されましたのが二千四百七十ヘクタール、約五・六%でございます。その保有期間でございますけれども、保有期間のはっきりしておりますものについて見ますと、三年未満のものが約七割ということになっておるわけであります。  それから、この取得されました土地がどこにあるかということでございますけれども、太平洋ベルト地帯というようなもの、そういう大都市の周辺というようなところがやはり相当多うございますが、しかし、都市計画上の区分で言いますと、事業資産では、都市計画区域内が約三分の一、たなおろし資産では、都市計画区域内が約七割というようなことになっておる次第でございます。
  180. 山本弥之助

    山本(弥)委員 いまの調査結果でおつかみになっている数字は、上場株の会社一部、二部の照会の結果、しかも五七%ですか、回答があって、いろいろおつかみになった数字ですが、そのほかに、別の地方の小さなブローカーだとか、そういった数字も相当あるのではなかろうかと思われるのです。田中さんが、東京圏とか、大阪圏とか、近畿圏だとか、あるいは中部圏だとか、その面積が国土面積の一%ということをいろいろとよく表現しておられますね。その日本全国の国土面積の一%は、大法人その他に買収されているのではないかというふうにいわれておるのですが、私は、もっと多く買収されておるのではないかと思います。いわゆる市街地面積に対して、相当な面積は、もうそういった投機対象になっているのではないか。実際将来使われるという土地もありましょうけれども、投機の対象として、広く一般的な意味で、相当な比率で買収されているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  181. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 ただいまのお話、最近取得された面積であるのか、いま現在会社で保有しておる面積であるのかということによって違ってくるわけでありますが、現在法人の所有しておる面積は相当なものであろうと思います。ただし、最近取得した面積につきましては、そういう資料がございませんので、的確なお答えを申し上げかねるわけでございますが、先ほど御質問もございましたように、たとえば和光証券等が調べた資料によりましても、これもやはり一部、二部上場の会社だけでございますが、四、五十万ヘクタールというようなものが、企業が保有しておる面積でございます。私どもの五七%の回答でも三十三万ヘクタールございます。しかし、これは、それ以外に、おっしゃるとおり、いろいろな企業が全国にございますから、そういう法人の保有しておる土地はたくさんあろうと思います。と申しますのは、日本国土の大体三分の一が国公有地といわれております。それ以外は国公有地以外のものでございますから、個人のもの、法人のものも従来から相当多かろうと存じます。そういう意味におきまして、相当保有しておる面積があろうと思います。  これは、最近取得した面積がどのくらいかというものにつきましては、ただいま資料を持ちませんで、ここでは申し上げかねるわけでございます。
  182. 山本弥之助

    山本(弥)委員 できるだけそういう趨勢をおつかみにならないと、行政が後手後手になる心配があるので、建設省も、自治省も、極力その点に御配慮願いたいと思うのです。  そこで、本年度の通常国会でもいろいろ問題にしました公有地拡大問題でも、建設省所管の公共事業費に占める用地費の割合というのは、昭和三十四年に一〇%、昭和四十三年には二〇%ということを私どもお聞きしたわけなんです。本年度公共事業費というのは、景気浮揚対策といたしまして、相当積極的な予算を組んで、しかも上半期に集中して公共事業を遂行し、景気を浮揚させたいという政策で実施をされていると思うのでありますが、年度途中でありますのでわからないだろうと思いますが、四十三年度が約二〇%ということになっておりますので、本年度あたりは、土地の騰貴というようなことで、公共事業費に占める用地費の割合というのは二〇%を相当オーバーしているんではないかというふうに私は想像するのです。あるいは、用地確保に非常に支障を来たしておるということにつきまして、これは建設省のほうからも御答弁願いたいし、幸い自治省の政務次官もお見えになっていますので御答弁願いたいのですが、地方自治体が、公共用地、公有地の確保について、みずから、あるいは新しく公法人として設立を予定されております開発公団、開発公社というものも、まだそう活動はしてないと思いますけれども、従来、そういう公社がほとんどの府県、市町村にあるわけでありますが、府県市町村や、あるいはそういう従来の公社が用地の買い取りに非常に困窮しておるという状況であるのか、きわめて順調に購入できておるということなのか、これは両省からお聞かせ願いたいと思います。
  183. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 私のほうから先に申し上げます。  必ずしも私の所管ではございませんで、多少数字は正確ではないと思いますが、大体のところを申し上げますと、ただいまの御質問にございましたように、用地補償費の比率は、あるときの統計では大体二割でございましたが、四十七年度は少しふえまして、いまのわれわれの推定では、二三%ぐらいというふうに推定いたしておる次第でございます。  それから、もちろん、公共用地の取得につきましては、そう簡単ではございません。相当苦労が多いわけでございますけれども、従来から、先生のいろいろな御指導によりまして、先行取得というものを相当行なっておるわけでございます。したがって、総量から申しますと、大体一年分くらいは前年度に用地を確保いたしておるというのが普通でございますので、直ちに公共事業に支障を来たすというものでもございませんけれども、公共用地の取得にあたりまして、いろいろむずかしい問題が多くなったということは、先生の御指摘のとおりでございます。ただ、公共用地の取得と申しましても、全国土の公共事業遂行にあたっての用地でございます。したがいまして、地域によりましては、まだそういう土地問題が深刻でございませんで、むしろ、積極的に協力というところも、道路用地等その他につきましてはあろうと思います。しかしながら、大都市及びその周辺の土地問題の非常に深刻な地域におきましては、用地取得は非常にむずかしくなっていることは事実でございますので、これにつきまして、何らか円滑にいくような方法というものを私どもも検討する必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  184. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林説明員 公共用地の取得については、先生御指摘のように、一般的には、地方公共団体といたしましては、取得が困難なような状態でございます。そこで、自治省といたしましても、調査をすべく、現在準備中でございます。  また、詳細につきましては、事務当局からお答え申し上げます。
  185. 横手正

    ○横手説明員 本年度におきましては、地方公共団体においては、おそらく一兆円近い土地の取得費が必要であろうというふうに見込んでおりますが、一方、御承知の土地関係の地方公社、こちらにおきましても、六千億円ないし七千億円程度資金を借り入れまして土地の取得に当たっておる、こういう状況になっております。  いま政務次官から御答弁申し上げましたけれども一般的に申し上げますと、取得が容易であるというようなところは少ないというように思っておりますが、特に、人口急増地域におきましては、公共用地の取得が非常に困難であろうというふうに考えております。
  186. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そういった経済界の動きが、公共団体地方行政の動きより非常に先行して、打つ手がなくなるような状態に追い込まれることが多いわけですから、そのときどきの動きを、建設省、自治省はよく把握を願いたいと思います。  それから、先ほど、土地税制につきまして、建設省の意見を、大臣はじめ局長からお聞きしたのですが、自治省ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  187. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 地方税におきまして、特に土地の問題に関連いたしますのは固定資産税でございます。固定資産税の中におきましても、いま、土地に対する課税というのが、いわば家屋、償却資産に比較いたしますと変則な状態になっておるということでございます。  御承知のとおり、固定資産税は、評価額に基づいて課税をする、評価額を課税標準にして課税をするというたてまえでございますけれども、土地に関しましては、課税標準については別個の規定が設けられておりまして、宅地のみならず、土地についてはすべて課税標準の特例措置によって課税されるという、この点が非常に問題だと思っております。やはり、固定資産税におきましては、税のたてまえに従いまして、評価額によって課税をするという方向をできるだけ早く実現をしていくべきだろうというふうに考えるわけであります。  ただ、御承知のとおり、地価が近年非常に上昇いたしまして、また、評価との関係におきましてもいろいろ問題がございまして、御承知のとおり、昭和三十九年に思い切った評価がえを実施いたしたわけでございます。その時点におきまして、特に宅地などは六倍以上の値上がりをしたということで、負担調整措置といったような特例措置が実施されておるわけでございまして、さらに、その後、昭和四十五年の評価がえで約二・三倍くらいに上がったということで、宅地につきましては約十五倍くらいの値上がりになったわけでございます。そういうことで、評価額に課税標準が近づくというのが非常に困難な状況になっておるわけでございます。しかしながら、いつまでもこうした変則状態を続けておるということは、やはり、土地政策上も問題があるかと思います。そういうことで、来年度ちょうどまた基準年度になりまして、土地、家屋についての評価がえを実施する年でございますけれども、私どもといたしましては、やはり、固定資産税の原則に立ち返った課税にいたしたい。そういう意味で、評価額に基づいた課税というものを原則にしていきたい。  しかし、現実問題として、評価額課税というものを実施いたします場合には、非常に困難な部面もございます。たとえば、住宅用地などの場合には、評価額課税を実施するということになりますと、住宅を使用しております一般の納税者の所得水準の上昇と固定資産税の負担とが、なかなかつり合いがとれないというような問題が出てまいります。そういう住宅用地等の問題あるいは個人の企業用地といったようなものにつきましては、やはり若干の負担調整措置は残さざるを得ないだろうというふうに考えておりますが、そうした一挙に評価額課税に持っていくことに困難な面につきましては、従来の負担調整措置を継続するというような措置を置きながら、その他の面につきましては、評価額課税の原則に立ち返るというような方向で、いま検討を進めておるところでございます。
  188. 山本弥之助

    山本(弥)委員 先ほどの建設大臣お話を聞きますと、保有課税と、それから譲渡所得の分離課税、これは高率の分離課税ということを強力に推進するという答弁をいただいたのでありますが、保有課税となりますと、固定資産税も広い概念で入るわけですね。それらの検討を私ども十分今後やりたいと思っておりますが、本日は、時間の関係がありますので、御意向だけ承ることにしておるわけであります。  自治省としても、政務次官もおられたわけで、お聞きになっていただいていると思うのでありますが、今後の地方自治体の財源の確保の問題から言いますと、こういうように政策的に土地税制をいろいろ考えるという場合に、ややもすれば国税偏重になりますので、保有課税にいたしましても、所得課税にいたしましても、国税と地方税との配分の適正化を十分はかるということは、いずれ、今後、税制調査会なり、あるいは大蔵省等関係省が集まって煮詰めることだと思いますが、その際に、その地方税の今後の拡充という観点で、自治省は強力に御主張を願いたい。そして、税源を土地税制からも確保願いたい。固定資産税の評価額の改定というようなことになりますと、これはむしろ固定資産税の課税の内容として、いま税務局長がお話しになりましたように、個人の零細な所有の場合の免税点を高めるとか、あるいは率を調整するというような問題がいろいろと出てくると思うのですが、私は、こういうものこそ、政策課税というものを、負担の適正な配分からいっても当然やらなければならぬことだと思いますので、その辺を十分配慮願いたいということを強く要望いたしておきます。  それから、もう一点、この機会にお伺いしたいと思いますことは、当然当委員会においても小委員会で検討することになっております農地の宅地並み課税の問題ですね。これは来年度以降解決を迫られているわけですね。本年度は暫定措置をとったわけですからね。いろいろと新聞、世論を見ますと、この点に対する非難も相当あるようでありますが、いわば、供給をさせるという意味で、宅地並み課税だとか、あるいは農地の分離課税だとか、そういったことが——明らかに分離課税は失敗している。法人の手に渡った場合はもうどうにもならぬ。その後の対策がおくれるということで、供給がふえても、決してそのことが地価の引き下げに結びつかないということになっておるわけですが、その宅地並み課税について、自治省のお考えをもしお聞かせ願えるなら、聞かせていただきたい。
  189. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 市街化区域農地につきましての、いわゆる宅地並み課税につきましては、本年度暫定措置が講ぜられまして、さらに課税の適正化をはかるための措置を四十八年度以降適用するようにしろということが、附則で、先般の改正が行なわれたわけであります。そういう改正がありましたことを受けまして、私どもとしましても、自治大臣の私的諮問機関としまして、調査会を設置いたしまして、学識経験者あるいは地方団体、農業団体等からも参加をいただきまして、現在検討中でございます。この研究会の意見をできるだけ早く取りまとめをいただきまして、四十八年度以降の課税措置につきまして、適切な成案が得られますように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  190. 山本弥之助

    山本(弥)委員 時間がだいぶ迫ってまいりましたが、もう二点ほどお聞きしたいと思うのであります。  いまとなって考えれば、私どもの予測が的中して、どうもあまり期待できない法案だったと思いますのが公有地拡大推進法なんですね。先買い制度ども空文になったような感じで、はたして効果があがるのかどうかという感じです。それから、公示価格なんかも、いま推進をされるのでしょうが、四十九年度まで一万何千地点価格公示をやるといわれておるのですけれども、これも全くあと追いで、公示価格が売買の基準になりますというような公示価格法の法律も空文に帰しているのじゃないかと思うのです。この法律をどう改正するようにお考えになっておられますか。あるいは、公示価格の問題と法律に対する考え方をお聞かせ願いたいと思います。  私は、先買い権というものはもっと強力なものにしなければいかぬのじゃないか、あるいは、市町村に、その市町村区域における土地の売買の実態が把握できるように、届け出制あるいは許可制ということも含めて検討しなければならぬ時期になっているのじゃないか、そうでないと、地価政策あるいは土地対策というのは全く後手後手になるのじゃないか、こう思いますので、この二点をお聞きして、満足いけるようでありますと質問を打ち切ります。
  191. 吉田泰夫

    ○吉田説明員 公有地拡大法は、おかげさまで先国会通していただいたのでございますが、まだ、先買い届け出義務の規定が施行になっていないわけでございます。いろいろ準備その他周知期間を置く必要上、十二月一日から施行になることになっております。そういうことで、実態はまだ推量するしかありませんが、この法律によって届け出のありました土地を買い取る場合には、たとえば、三百万円の譲渡所得の特別控除を認めることとしております。そういったこともありますし、また、譲渡の相手方が地方公共団体であるというようなことで、一般個人に対するよりも、いろいろな点で安心感があるというようなことから、公有地の拡大について、相当の効果はあるのではないか。要は、先買いのための届け出なり、あるいは買い取り希望の申し出があった場合に、必要な土地をどんどん買っていくための資金量、あるいはその取得主体というものの充実にあると思いますので、この法律による土地開発公社の設立もぼつぼつ始まっておりますが、これも促進いたしますとともに、その土地開発公社あるいはその他の事業主体、これの先行的な買い取りに応ずる資金量の増加に極力つとめてまいりたいと思っております。
  192. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 地価公示関係につきましてお答え申し上げます。  地価公示につきましては、現在、ことしの四月一日に公示したのが二千八百地点ございます。これは、現在の法律では市街化区域内だけでございますので、今後の土地対策に資するために、全国土にわたりまして基準地点を拡大して、これを公示いたしたいというふうに考えます。また、その、国の基準地点の価格をもとにいたしまして、都道府県が四万地点、市町村で約二十四万地点を地価公示をいたすというふうに私ども考えております。同時に、そのくらいの地価公示がなされますと、先ほどからいろいろ御意見のございます保有課税、固定資産税の評価にあたりましても、この地価公示価格を基準にすることができると思いますので、ぜひそういうふうに私ども地価公示法を改正いたしたいというふうに考えて、目下事務的にいろいろ検討いたしておる次第でございます。  先生の御質問の中で、地価公示があまり役に立っていないじゃないかというお話がございましたけれども、現行法におきましては、御承知のように、まあ、数字は時間がありませんので申し上げませんが、公共用地の取得の際には、これを基準とするということになっておりまして、現在の公示されておる地点には、大体すべてこれが基準になっております。それから、不動産鑑定士の鑑定評価についても基準にすることになっております。これも、不動産鑑定士協会の調べによっても、すべて基準にいたしております。また、収用委員会が裁決をいたします際にも、やはり基準になるわけでございます。そういうことで、法律に義務づけておるものは、もちろんすべてこれはそのとおり守られておるという数字もございます。同時に、一般の取引につきましては、先生御承知のように、義務じゃございませんで、単なる目安、指標にすぎないわけでございます。しかしながら、これは、御承知市町村、区役所ではすべて閲覧に供することになっておりまして、その閲覧件数というものは相当多いのでございます。それからまた、最近、民間のデベロッパーが土地を買う者に対しまして、この地点の地価公示は幾らであるということを表示している例も相当多くなっているわけでございまして、次第にこの種件数がふえますと、これは利用されることになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  193. 横手正

    ○横手説明員 公有地拡大推進法関係でございますが、御承知のように、土地開発公社関係が九月から、土地の先買い関係が十二月から、こういうふうに施行が区分けになりました関係上、土地開発公社関係につきましては、九月議会において、少し新設なりあるいは変更の手続を進めておる段階がございます。多数のものがおそらく年度の切りかえのときに変更の手続を進めるというかっこうになろうかと思いますが、一応、私どもは、この法律に基づいて推進してまいりたい、かように考えております。  なお、土地の利用の規制についての関係でございますが、私どもは、適切な土地の利用区分によります土地利用計画というものを策定しまして、これに基づきまして、規制措置の必要なところについてはその措置の強化をしたい。特に、一定規模以上の土地の売買の届け出制でありますとか、あるいは開発工事の許可制でありますとか、こういうものが必要だというふうに考えておりますが、こうした考え方に基づきまして、関係省庁とも土地利用についての法制化をばかるべく協議中でございます。
  194. 山本弥之助

    山本(弥)委員 どうも十分納得がいかないのですけれども、たとえば、市街化区域よりも適用範囲を拡大する改正、あるいは、先ほど公示価格の問題がありましたが、早くきまった公示価格とあとの公示価格というのは、あとが時価を尊重してきめた場合には多少開きがあるわけですね。その場合に、適正な公示価格をきめれば、その公示価格が将来の公有地を買収する基準になる。あるいは民間売買についても、保有税だとか譲渡所得税というようなものを税制で考えた場合に、そういう公示価格を基準にするというお考えなのか。あるいは、この法案の改正の三つ目の点は、従来の先買い権というのは、届け出をしまして二週間、あるいは売買の協議を始めてから二週間ということになっておりますが、この期間をある程度まで拡大するなり、あるいはすべての先買い権と同じような届け出をとらせるとか、そういう改正をおやりになって強化する必要があるのではないか。いま思いついた三点について御質問しているのですが、次の通常国会でそういう改正を積極的におやりになる意思はないのかどうか。
  195. 横手正

    ○横手説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、現在は、土地の利用関係につきましては、新しい土地利用関係の法律が必要ではなかろうかということで、別途検討いたしております。この関係は、関係省庁が非常に多いわけでございます。現在経済企画庁のほうで取りまとめをされつつあるわけでございます。私どものほうの考え方としましては、先ほど申し上げましたような考え方のもとにこの法制化に協力してまいりたい、かように考えております。
  196. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 御質問の趣旨をもしも私が思い違いをしておりましたらお答え申し上げて、あとでもう一度再質問していただきたいと思います。  この公示価格は、何月何日現在での価格をいつ公示するかということになります。現在では、毎年一月一日現在のものを四月一日に公示いたしております。したがって、今後拡大いたしましたときにおきましても、もちろん、そういうことで、何月何日現在ということになるわけでございます。実際に、たとえば土地の売買をするとか、また、公共用地につきましてこれを取得するという時点は、それと違うわけでございますから、それを基準にして、どのくらいこれをプラスして確認するかということになるわけでございます。したがいまして、そういう意味の開きというのはもちろんあるわけでございます。  それから、もう一つ。届け出制度というものについて、先ほど自治省からも答弁がございましたが、私ども、先生のおっしゃるとおりでございまして、土地の売買については届け出制度をとりたいということで、実は、建設省では、独立の法律案を考えていたわけでございますけれども、先ほどの話にもございましたように、企画庁を中心関係各省でいま考えております土地利用法の法案の中にも、そういうものをうたわれております。したがいまして、私どもは、これはどちらの所管であってももちろんいいわけでございますので、ぜひこれを実現させてもらいたいということで、企画庁を中心に協力体制をしいて、先生方にもこれをぜひ実現するようにお願い申し上げておる次第でございます。  それから、もう一つ。この届け出制というのは、土地の所有者からの、自分の価格は幾らということの、いわゆる申告制といいますか、届け出制というのか、それをして、そういうものをもとにして土地の価格をきめたらという案も実はいまあるわけでございます。もしもこういう御質問でございましたら、現在、御承知の中華民国、台湾では、台湾方式という一つの申告方式がございまして、これをもとにして土地の価格をきめておりますので、これも一つの非常にいいアイデアで、参考になるものでございますので、私ども、担当官をすでに派遣して、調査をして、その内容について検討いたしておる次第でございますけれども、台湾におきましても、基準点というもの、政府の発表価格というものがやはりありまして、それをもとにして、各筆ごとの申告というのがとられておるわけでございます。何といいましても、その制度を実施するためには、先ほど申し上げたような、基準地点の地価公示を早急に全国土でつくり上げることが必要であるわけでございます。そういう基盤の整理の面におきましても、先ほど申し上げましたような地価公示の拡充制度というものを考えておるわけでございます。
  197. 山本弥之助

    山本(弥)委員 もう一点。私の言うのは、あとの点から申し上げれば、市町村の土地の売買を許可制というところまで、その法の改正によりまして、もう踏み切ってもいいんじゃないかということです。それから、公示価格は、その調査をした時点となりますと、去年の、四十六年四月一日の調査となりますれば、二年後、たとえば四十八年に売買されるとなれば、やはり、ほかの公示価格とのかね合いとか均衡を見て、多少の値上がりも基準にするということになるでしょう。そうじゃないですか。公示価格を意義あらしめるためには、ですね。
  198. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 毎年やるんです。
  199. 山本弥之助

    山本(弥)委員 質問を具体的に申し上げれば、公示価格は毎年おやりになるとすると、一万何千点という、全地域にわたっての決定というのは、毎年更新していくという意味ですか。
  200. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 おっしゃるとおりでございまして、現在も、四十五年から毎年、さっき申し上げた一月一日現在の価格を四月一日に公示いたしておるわけでございます。今後もそういうふうに私ども考えておる次第でございます。
  201. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そういたしますと、一年後の鑑定というのは、値上がりしていれば、値上がりした公示価格になるわけですね。
  202. 高橋弘篤

    ○高橋説明員 この公示価格は、法律に書いてございます、いわゆる正常価格でございます。正常価格とは何ぞやというと、自由な取引市場におきまして成立する価格でございまして、ただ、売り手、買い手が特殊な動機で値をつり上げる、また、非常に安くするということはございますが、そういう特殊な動機に基づくものを全部排除した、通常市場で成立する価格でございます。つまり、客観的な交換価値というものでございます。これはいわゆる仲値と呼ばれております。そういうものでございますから、土地の価格というものがそういう性質である以上、もちろん、毎年、そのときの経済事情その他に応じましてこれは変わっていくというものでございます。
  203. 山本弥之助

    山本(弥)委員 十分尽くしたいと思いますけれども、まあ、時間を約束した関係もありますし、いずれ、臨時国会でも開かれて、委員会が開かれました際に、十分時間を持って御質問したいと思います。  これで終わります。
  204. 谷垣專一

    谷垣委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十一分散会