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1972-10-17 第69回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月十七日(火曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 金子 一平君    理事 坂元 親男君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       宇野 宗佑君    齋藤 邦吉君       登坂重次郎君    中川 一郎君       原田  憲君    藤井 勝志君       坊  秀男君    森  美秀君       吉田 重延君    佐藤 観樹君       平林  剛君    堀  昌雄君       小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君         通商産業大臣  中曽根康弘君  委員外出席者         経済企画政務次         官       木野 晴夫君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         大蔵政務次官  大村 襄治君         大蔵大臣官房審         議官      秋吉 良雄君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省年金局年         金課長     幸田 正孝君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 金子一平

    金子委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  本日、参考人として日本銀行総裁佐々木直君の出席を求めております。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、佐々木日銀総裁通産大臣にもお越しをいただきまして、当面非常に重要な課題であります通貨問題を中心にしながら、あわせて補正予算その他関連することについてお伺いをいたしたいと思います。  そこで、まず通貨問題に入ります前に、通貨問題とやや似た性格を持っております金融政策一つである公定歩合の問題について、少し日銀総裁にお伺いをいたしたいと思うのであります。  実は、公定歩合操作というのは、その国の経済運営状態に応じて、必要があれば金融をゆるめる、必要があれば金融を引き締めるということによって経済運営を正常化ならしめるという一つ政策手段だと、私、公定歩合操作というものは考えておるわけでございます。そういう意味では、きょうはやや理論的な論議を少しさせていただくつもりなんですが、公定歩合操作というものはそういうものでありますから、本来公定歩合を上げることが悪であったり、下げることが悪であったり善であったりする性格のものではない。いま私が申し上げたような政策手段として、情勢によってそれが最もベターであるかどうかということによってそういう政策手段発動される性格のものだ、こういうふうに私理解しておりますが、総裁、いかがでございますか。
  4. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに公定歩合上げ下げ自体は、それによって価値を持つものとは思いません。それがどういう事態においてどういう動かし方をされるか、その動かし方の中に当局としての政策の意図が一般の経済界に理解される、そういう筋合いにおいて公定歩合操作というものは考えられる。お話しのように上げること、下げること、それ自体にはそれ自身意味はないものと考えております。
  5. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いまのことに関連をいたしまして、この公定歩合操作というものは、言うなれば国内における金融政策を通じて国内における経済情勢を正しく運営する一つ政策手段、こう考えるわけでありますが、要するに為替平価調整というものも、今度発表されました経済企画庁経済白書によりますと、まさしく政策手段だということで位置づけられておるわけであります。あとでちょっと読み上げてもよろしいのでありますが、ですから政策手段為替平価調整というものも、これは国際的な一つ金融政策といいますか、の中における政策手段である、こういうふうに認識をするのが正当なのではないだろうか。その点では、公定歩合操作と、もちろんやや次元や性格が異なってはおりますけれども、広い意味では同一のジャンルの性格のものではないだろうか、こう思いますが、日銀総裁、いかがでございますか。
  6. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに為替平価というものも、その国の貿易その他経済全般の動きに対してそれを調整する手段として使われるという意味におきましてはいまの公定歩合操作と似ているところがございます。ただしかし、その持ちます影響が、公定歩合の場合にはさしあたっては全般金利状況国内金利影響を及ぼすというものでありますけれども為替平価のほうはそれ自体直ちにその国の貿易の手取りを変更する、それからまたある場合にはその国の持っております外貨資産、それの評価を変えるというような点を持ちますので、そういう意味では非常に影響が広範であり、かつまた相当長期にわたって影響を持つという点に相当差があるように存じております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 私も、いま総裁おっしゃるように、同一だと思っておりませんが、広い意味では、少なくとも政策手段であるということにおいては私はやや似たといいますか、共通の部分がある、こういう認識を持っておるのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  8. 佐々木直

    佐々木参考人 その点におきましては、この九月のIMF総会におきまして各代表の演説の中にいままで以上に為替平価というものを変更することを断続的に考えるべきだという意見が述べられておりまして、そういう意味ではいまお話しになったような考え方が国際的にもだんだん広がってきておるように存じ上げます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 通産大臣お越しになりましたしするので、ちょっと政府のほうにお伺いをしておきたいのでありますが、大蔵大臣通産大臣にお伺いしたいのであります。  経済企画庁経済白書を発表いたしましたのは、これは閣議で承認をされて発表をされておりますと私は了解をいたしておりますが、その限りにおいては政府はこの経済白書内容については責任がある、こういうふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。大蔵大臣、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  10. 植木庚子郎

    植木国務大臣 政府閣議にはかってそうして出しました経済白書については、やはり政府はその責任を負うべきものだと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 そこで、実は今度の経済白書の中でいまの通貨問題に関連をしますところでは二つの問題がはっきりしておりまして、新しいポリシーミックスの柱は次の五つである。一つ福祉充実のための公共支出の着実な増加、二、租税政策積極的活用、三、国債政策弾力的活用、四、金融構造の変化に対応して金融政策多様化を行なう。五番、流動的な国際情勢に対処しつつ為替政策活用ということで、実はこれはポリシーミックスとしての政策手段だというふうにここで述べておりますし、終わりのほうでは「もとより、福祉充実への成長パターン転換こそ内外均衡達成への道であり、また現在の国際収支均衡には第二〜三章でもみたように、当面は景気回復を確実にするとともに、輸入拡大資本輸出増大経済援助増加によってまず対処すべきである。またこうした構造政策は今後もつねに必要である。ただ海外情勢が変化するなかで、平価固定に執着して物価上昇内外資源配分の歪みを放置することは、福祉向上の観点から避けなければならない。なお、物価の安定については、供給体制整備流通機構改善輸入拡大競争条件整備など構造対策による生活物資、サービスの価格安定が中心となるべきであるが、国内物価上昇により、国際収支均衡させるような方針は許されず、世界インフレ進行阻止のための国際協力に努めるとともに、必要な場合には為替政策活用可能性も検討さるべきものといえよう。」まあかなり割り切って為替政策について経済白書は触れておるわけでございます。  そこで、いま通産大臣もお入りになりましたから少し伺っておきたいことは、実は二十日の日までに政府は何か新しい円対策をきめる、こういうふうに私ども新聞紙上では承知をいたしておるわけでありますが、これはやはり円対策として何らかの措置をおきめになる、こういうことでございましょうか。通産大臣のほうでお答えをいただきたい。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 さようでございます。円の再切り上げを回避するということが国益上非常に重要な課題でありますために、輸出入のバランスを回復するような諸般措置を今度二十日に当面の問題としてきめたい、こういう考えでございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 私はいま、円の再切り上げの可否の議論をする意思はないのでありますが、実はこれまでの政府がやってまいりました経過をずっと振り返ってみますと、最初に出ました円対策の八項目でありますか、それから今年出ましたところの円対策項目、これはいずれもしごくもっともなことでありまして、やられればこしたことはないのでありますが、実はあまり実行に移されていなかったというのが最近のこれまでの実情ではないかと思うのであります。通産大臣のお立場では、この五月の二十日にきめました円対策項目でございますか七項目でございましたか、これはどのくらいの効果があったというふうにお考えになっておるか、ちょっと一回お答えをいただきたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はやはりある程度の効果はあったのだろうと思います。と申しますのは、この上半期における輸出輸入の傾向を見ておりますと、輸入増大をして輸出は漸増しておるという数字が出てまいりました。そういう意味において努力はある程度実ってきているのだ、こう思っております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 それはしかし、もちろん昨年の通貨調整影響と区別して考えることはできない性格のものでありますけれども、一体何を実際やったのか。財政金融政策の機動的な展開というのは、確かに公定歩合をお下げになったし、あるいは四十七年度予算を通じて支払いを促進をするとか、これはできたと思いますが、二番目の輸出秩序の確立というのは何かできましたでしょうか。ちょっとそれだけ具体的に伺っておきたいのです。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえばイギリスとの問題でボールベアリングの問題なんかございましたのですけれども、これは両者間の協議によりまして日本側がある程度自粛するということでトラブルは解決をいたしました。そういう問題が二、三ございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 グローバルな問題としてはきわめて小さな問題だと思うのであります。私は時間がありませんから特にこれにこだわるわけではありませんけれども、ちょっとここで非常に重要なことで基本的に認識をしておいていただきたいと思うことがあるのです。  それは私ども日本国民性といいますか、私はちょうど三十年くらい前に当時大阪警備府付の軍医科士官をしておりましたが、甲子園ホテル接収してそこに海軍病院をつくれという軍の命令がございました。そこで私は接収に参りまして当事者といろいろ相談をいたしましたときに、私が希望する日にちに明け渡してくれとやかましく言いましたけれども、彼は非常に抵抗をいたしまして、幾ら軍がおっしゃってもその期間までには無理です。日にちはちょっとはっきり覚えておりませんけれども、どうしてもそれから十日先にしてくれと言って、たいへんがんばりました。私は、幾ら軍命令であろうともあなた方の事情もあろうと思って、では十日間延期をいたしましょう。その十日過ぎた日にち接収をすることにいたしておりましたら、その四日くらい前に、準備が完了いたしましたからどうぞ接収してくださいという通知がありまして、私が参りましたときに彼が申しておりましたのは、私は長い間海外勤務をしておりまして、要するに日本人に悪いくせが一つあります。実はある日にちまでにものをつくる、たとえば時計の修繕をするというときに、実は少し無理ではないかと思っても一生懸命やればできるだろうというぎりぎりのところで日本人約束します。しかし向こうでは十分余裕を見たところで約束をしてその約束は必ず守ります。その内側で必ずものができている。これが国際的な慣行で、日本の場合は約束をしてもできないことのほうが多いのです。私は確かに軍の命令ですからやらなければならぬと思いましたけれども、どうしてもその日にちにできなかったときにはたいへん申しわけがない。そこでまず日にちを延ばすほうをがんばらせていただいて、そのかわりそれはきちんと守りますということをわれわれ日本人考えなければいけないのではないでしょうかと言われたときに、これは戦争中のことでありましたけれども、たいへん私は感銘をいたしました。  なるほど日本人が安受け合いをするということが、国際的信用を含めていかに問題が起こるかということをそのとき感じたのでありますが、私は、最近のこれら一連の円対策といわれるものが、それはやらない気できめておられるわけではないでしょうけれども外国から見れば一体何をやったのか、きめたものは一体どれだけやったのか、ほんとうにやる気であったかどうかという点には大きな疑問を持たれておるのではないかと思う。ですから、私はきょうここでいろいろお伺いする問題の中には、やはりわれわれも国際信用をきちんとする、大事にするという問題を土台に据えて論議をしてまいりませんと、国内だけで通用するものさしで論議をすることはたいへんこの際対外的にマイナスであるし非常に問題がある、こう思うのでありますが、その点については基本的なものの考え方でございますので、大蔵大臣通産大臣日銀総裁のお三方から一言ずつお答えをいただきたいと思うのであります。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府がやりました一つの顕著な施策は景気回復であるだろうと思います。最近の指標を見ますと、景気回復しつつありまして、このために内需がかなり起こってきておる。この内需上昇ということが輸出増大にもいずれこれは結びついてくるだろうと思いますし、また外需に対する内需への転換ということも、この景気上昇がある程度続いていけば転換が早晩見えてくるものである、こう考えております。  それから、輸入増大につきましては、今度の二十日の決定ではかなり思い切ったことをやりたいと考えておるわけであります。とりあえず内需の問題についてはかなりの実績が出てきつつある、そう思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話で、この問題が輸出入関係をする問題だ、貿易上の問題だということについては、そのとおりの御認識だと思いますからけっこうなんですが、あわせていまちょっと国際信用の問題が出ましたから触れておきたいのは、いまの日本外貨準備の問題でありますけれども、大体九月末で百六十三億ドルか百六十四億ドル、そのくらいの外貨準備だということでありますが、一体外貨預託としてこの外貨準備からはずれておるところの、ある意味では広い意味外貨準備というのは幾らでしょうか。大蔵省事務当局ちょっと答えてください。ラウンドナンバーでけっこうです。
  20. 林大造

    林説明員 大蔵省が現在まで進めております外貨預託の金額は二十億を若干上回っております。正確な数字は後ほど……。
  21. 堀昌雄

    堀委員 いま新聞紙上でも伝えられておりますけれども、その真の外貨準備を知らないのは日本国民だけであって、外国通貨当局日本外貨準備の実際のネットが幾らであるかということはみんな知っておる。こういうドレッシングをやるということは、私はいまの国際信用上の問題からすれば大きなマイナスではないか、こういう感じがするわけでありますが、日銀総裁、この点はいかがでございましょうか。
  22. 佐々木直

    佐々木参考人 御指摘のありましたように、その国の外貨準備というものはその国の総合した国際収支から出てくる性質のものでございますから、そういうものから計算した一つの見方が当然あると思います。それから外貨預託それ自身につきましては、日本はこれだけの外貨を持ちながら海外からの借り入れ金を相当やっておるということに対しましてそれを置きかえる意味はあると思います。しかし、これもやはり程度問題がありますので、その点は考えなければならないと思います。
  23. 堀昌雄

    堀委員 実際に必要な範囲の、いま総裁がおっしゃった置きかえる問題については、私はそれでけっこうだと思うのでありますけれども、どうも私どもが見ておる限りでは、やや外貨預託外貨準備ドレッシングに使われておるような感じがしてなりません。大蔵省を含めて政策当局が、やはり外国通貨当局が承知しておることをあまりにそうやってドレッシングなどをやることがかえって私は信用土台をくずすことになるのではないか、こう考えております。実は外貨準備がふえることが問題ではないと私は思っております。これに関連してはこの間の緊急備蓄用輸入問題も、これも私はどうも一種のドレッシングのような感じがしてなりません。実際には貿易収支の問題ではなくて、ある意味では資本収支長期処理をするという、これもどうも本筋の国際収支対策としては常道ではないと考えられますので、やはり一番重要なのは、何としても当面の貿易収支をいかにするかということがいまの通貨対策の非常に重要な問題だと思うのであります。  そこで、通産大臣にお伺いをいたしますが、昨日からけさの新聞にかけてでありますけれども、昨日でございますか、大阪通産大臣は、貿易管理令発動をひとつ考えたい、こういうふうなお話に触れておられるわけでありますけれども、これについては真意はいかがか、ちょっと公式な御答弁をいただきたいと思います。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 幾つかの段階考えられておりまして、いわゆる行政指導によって業界に自主規制を求める、そういうこともまず第一段階には考えられており、部分的にはやっておるところもございます。それから第二段階では輸取法によるカルテルをつくらせる。カルテルの場合にはアウトサイダーが出てきておりますが、今度アウトサイダー規制を厳重に行なおう、それが第二段階。第三段階貿管令によって直接数量規制、というより価格規制ということもやらざるを得ぬ場合にはやる用意をさせてあります。この場合には私らはむしろ数量を少なくして価格を上げる、そういう方向でいくことが賢明である、そういう意味数量価格規制という方式を適当と考えております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話ですね、実は最近の貿易収支状態輸出認証で見ましても、あるいは通関でみましても、前半のほうはやや漸増でありましたけれども、九月に入るとこれは急増の形をとってまいりましたですね。これは多分にラグやその他があると思いますけれども、しかしそれがあるにしても、これから大体十月以降の下半期というのは輸出日本としてはふえる時期でありますから、この時期の入り口でこれだけ輸出が急増しておるということに対しては、いまのお話自主規制だとかカルテルでの処理で間に合うのかどうかということですね。一つはOECDでは日本輸出カルテルについてはあまり了解しがたいというようなことも向こうで取りきめておるように報道がされておる情勢でありますから、ですから私は、やはりもしどうしても緊急避難処理をするとなれば、貿管令処理をする以外に実際にはないのではないか、こう思うのでありますが、ここでこの輸出貿易管理令発動ということは、これはなかなか私また重要な問題であろうと考えております。このような発動は確かに緊急避難といいますか、ごく短期的に所期の効果をあげるためにはこれはやむを得ざる処置であろうと思うのでありますが、もしこういうものを発動すると仮定するならば、これはある一定の時間、一体どれくらいの時間これをやるのか、どこまで数量を押えるのか、そういうような長さと内容の量というものを当初にある程度予測をして行なわれなければ、これは非常にむずかしい問題があとに残ってくるのではないか、私はこういう感じがいたしますけれども通産大臣、これいかがでございましょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でございます。これは臨時の緊急措置として考えられるべきものでございます。したがって、地域別あるいは品物別に点検を行ないつつ、そしていまのように期間を限り、あるいは地域や場所、品物等を限って行なうということがまず当面考えられることであります。
  27. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これは緊急避難でありますからそう長期に行なえるものでもなく、また全面的に行なえるものでもないという性格になりますと、はたして今日、さっき前段で申し上げましたように通貨調整というものを——もちろん皆さん政府でありますから、私はここで切り上げるとか上げないとか、こういう議論をするわけではありません。要するに理論的に考えてみますと、さっきちょっと前段で申し上げたように、平価調整というのは一体これは何だろうか、これはやはり主体的に政府考え政策手段であって、その選択一つであるのではないか。現在の情勢で、輸出入をバランスさせるためにいまのようなきわめて統制的な貿管令発動する、緊急避難発動してもこれはそう長く持続できない。しかし、いまの輸出関係というのは、経済白書でも触れておりますように、きわめて構造的な問題がございますから、この構造的な問題にインパクトを加えてそして構造が変化していくというためには、貿管令をやるとしてもかなり長期にやらなければそこまで構造改善のインセンティブにはならない。  こう考えてくると、この際は通貨調整というものをもう少し、政策手段として現状におけるベター政策が、一体貿管令のような処置をとるのがベターなのか、通貨をさわるほうがベターなのか、この点はもちろん政策手段選択でありますから政府にいまこれを伺う意思はありませんけれども、そういう角度で取り組まねばならぬ問題ではないのか。あくまで通貨調整は悪である、円の切り上げはしてはならないことであるという前提で政策がそのあとに組まれることについては、私は客観情勢との乖離が大きくなり過ぎて日本経済にとってはマイナスの要因も起こるのではないだろうか、こういう感じがするわけでありますけれども、理論的には通産大臣いかがでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在われわれが追求している政治価値日本福祉水準欧米並みに早く上げるということであろうと思います。もし万一再切り上げというようなことが行なわれますと不況が到来いたしますし、この低い福祉水準のもとに日本福祉水準が固定化される危険性多分にあると私は思っております。この際に年金や住宅あるいは社会福祉諸般の問題については福祉水準を思い切って上げて、それによってある程度の需要増を起こして外需に対する需要内需にも転換させて、そして外国との福祉レベルを同じ水準に引き上げるということのほうがはるかに国益に合致するやり方である、私はそう考えておりまして、通貨価値のほうに手をつけるということには反対であります。
  29. 堀昌雄

    堀委員 私も前段でおっしゃった福祉政策を推進することについては同感であります。ただ、おっしゃった通貨処理をすることによってデフレがくる問題は、これはまたたぶん政策手段で補完できる問題ではないでしょうか。私は、通産大臣はお時間がありますから先に終わりますけれどもあと補正予算の問題があります。通産大臣はかねてから大型補正予算を主張していらしたわけでありますが、今日の経済情勢では私は大型補正は必要がないと思うのです、実は。なぜかといえば、大体この一−三月経企庁の発表では瞬間風速一一%台、それから四−六も一一%台、こうきておりまして、七−九も最近の卸売り物価なり鉱工業生産の動きを見ておりますと一−三、四−六より下に下がることはないと見ておりますし、おそらくこれも一一%台ということになるのじゃないか。四十七年度の経済も集約的にここでいま政府考えているような補正予算をもし出すとするならば一一%をこえるのじゃないかという、私はいまそういう感じであります。  だから、もし通貨調整というものが非常に大幅なものが行なわれるとすればまた別でありますけれども、こちら側が政策手段として主体的に問題を処理するときにはこちらの選択が行なえるのであって、追い込まれた通貨調整には私はならないと思うんです。だからこちら側がイニシアチブをとって自分たちとして最も望ましいやり方をするならば、それに対しての景気調整のいろいろな手段というものは政策手段として残されているのじゃないだろうか。だからその限りでは、まあ補正予算の中身についてはいまちょっと通産大臣のおっしゃったようになっていないような気がするので、大蔵省と詰めてみたいと思うのでありますけれども、この点は私は何も通貨調整をしろと言っているのではないのです。通貨調整もあり得るということでの政策態度を先にとっておくことのほうが今日重大なのではないかという感じを私は持っているのです。政府がどう考えようと考えまいと、客観的な事実として何かが起こるときには起こると私は思います。これは日本だけではなくて国際的な問題の中の一環でありますから、だからそのときに、要するにこれまでの私ども通貨調整が何か悪であるかのような考え方が前に先行したためにそれに対する備えが十分になかったということが今後の大きな問題になるのではないかと思うので、私はその点も含めてものを考えるということであったほうがいいのではないか。だから通貨調整というのは悪でも何でもなくて、現在置かれている経済情勢の中での政策選択手段としては何が一番いいのかというときに対応のしかたが備えられているなれば、こちらの指導性で処理をしたほうがかえって国益に沿う問題も起こるのではないか。理論上の問題でありますから、いまやれとかやるなという話をしているのではありません。理論的にはそういう問題ではないかと私は認識をしておるわけなんです。通産大臣、重ねてもう一ぺん御答弁願います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず申し上げたいことは、私はいわゆる調整インフレというものには反対であります。一応、やや誤伝されたことがありましたから申し上げておきます。  それから第二に、物価騰貴の問題は、あくまでわれわれは真剣に政策対象として考えていかなければならぬと思っておりますけれども、ここである程度景気のアクセルを踏んでも物価騰貴はそれほど起こるとは思っておりません。消費者物価につきましては四・五、六%で、大体これは生鮮食料品とかサービス料金が非常に影響しておりますが、ことしは幸い恵まれている年でもあります。それから卸売り物価は最近少し上がってきておりますが、その内容を見ますと、鉄鋼、繊維、木材等であります。鉄鋼はいまカルテルがかかっておる状態であって持ち上げられているという要素がございます。それから、繊維は羊毛、毛糸に関して投機的暴騰が若干ございます。それから木材も風水害による需要等もございまして、これが長期的に急上昇する要素を持っているとは私は思いません。したがって、ここで補正予算をやや大型のものを組んだといってインフレ化する危険性はそれほど大きくない、警戒は要するけれども大きくない、そういう判断を持っております。  それから第三に、われわれは国際通貨機構の中において、スミソニアン体制を維持していくというやはり一半の責任を持っているだろうと思います。いまの固定相場を維持していくということは国際的にも迷惑をかけないためにわれわれが懸命に努力しなければならぬところであって、その努力目標に向かって直進していくというのが政府の当然の態度であります。したがって、みずから通貨に手をつけるというような考え方はスミソニアン体制に背反する態度であるとわれわれは考えなければならぬと思っております。しかし、経済企画庁が白書に書きましたことは、あそこは理論家の多い役所であって、非常にそういう長期的な展望のもとにおける理論があそこに一般論として書かれている。あの一般論としての長期的な理論的な考え方を私は必ずしも否定するものではございません。あれは一つの見方としてやはり国際的にも通用し得る考えであると思っております。しかし、今日の当面の日本にその考えをすぐ適用していいかと言えば、私はノーであります。
  31. 堀昌雄

    堀委員 通産大臣おいでになります前に実は私、経済白書というのは閣議で承認をされておるから政府責任を負いますねとだめを押したのですが、そうすると大蔵大臣は、当然閣議で承認をいたしましたから政府責任負いますとこうなっておるので、その点はちょっと念のために申し上げておきます。  経済白書の中にこういうことばがある。「いまから考えれば、海外インフレの影響が強まり、国内需給も引締まっている時期に円切上げが行なわれれば、それは物価の安定と国際収支均衡の両者に一石二鳥の効果を発揮したであろう。しかし現実には四十四年秋には金融引締め政策がとられ、これもあって四十五年夏以降景気は後退局面にあり需給ギャップが拡大した。このため卸売物価は低下傾向に向った反面、対外不均衡はさらに拡大する結果となった。円切上げがこうした段階に行なわれたため、その影響の現われかたにも次のような特徴がみられた。」とあって、ここでは要するに四十四年の引き締めを今日顧みてみると、あのときは金融引き締めよりは通貨調整がよかったのではないかと経済白書は明確に指摘をしておるわけであります。  今日の日本情勢というのは、日銀総裁も御心配のように卸売り物価はかなりなスピードでいま上がりつつあります。で、国内経済情勢は、過熱とはまだいきませんけれども、ややそういう方向へ踏み切ってきておる、こういう情勢だと私は思うのであります。政策手段としては、いま通産大臣がおっしゃったように大型補正を組むのですね。しかし、金融調節は、これは私はできないと思います。おまけに外為のほうはやはり、ラグがあるにしろ何にしろ、輸出としてはどんどんふえて、そうしてここでは金融は過剰流動性をどんどんふやしていく。これはもう卸売り物価上昇に拍車をかけるきわめて好個な客観情勢である。卸売り物価が上がれば、それがある一定の期間を置いて、タイムラグはありますけれども、それが消費者物価にはね返るのがこれまでの日本経済の経過だと私は思います。日銀総裁、いままで私が申し上げたことは大体そうでございましょうね。ちょっとそこのところ、日銀総裁お答えください。
  32. 佐々木直

    佐々木参考人 話の大筋ではそのとおりであると思います。
  33. 堀昌雄

    堀委員 まあ日銀総裁がオーソライズしていただきましたから……。通産大臣、そういう情勢なんですね。そういう情勢通産大臣は、まああまりインフレにはならない、心配はないんだ、こうなりますと、私がいま申し上げておる通貨調整問題というのは、やはりこの際にはたして貿管令をやったからこれで卸売り物価がどうなるかというと、これは関係ありませんね。こういうような数量調整をやるということ自身が、それはもちろん輸出が減ればその分が市場に回るからといいましても、輸出に回る部分というのはごくきまったものであって、貿管令で何もかにも全部やれるわけではありませんから、これはごく小部分にしか影響がないから、私は貿管令というものは卸売り物価には影響がないだろう。一部あるかもしれませんが、ないだろうと思いますが、通産大臣はあるとお考えでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それほどあるとは思いません。しかし、多少鎮静させる効果はあるだろうと思います。
  35. 堀昌雄

    堀委員 ですから、総合的にいま私ども考えなければならぬことは、通産大臣前段でおっしゃったように、いかにして国民福祉を優先する経済転換をするかということが、これはもう与野党一致しておると思います。この点については一致しておる。その政策手段をどこにとるかというところに非常に大きな今後の問題点が出てくるのではないか。私どもは、前回の通貨調整に際しては非常に反対をいたしました。なぜ強く反対をしたかといえば、まだ不況が立ち直らないところでの大幅な通貨調整は、これはたいへん日本の企業に影響するし、そのことは労働者大衆を含めて国民にたいへん大きな影響を与えることになる、これは回避してもらわなければならぬというのが強い私の意向でありました。しかし私は、九月初めの大蔵委員会で田中通産大臣に御出席をいただいたときには、しかしどうしても回避をする場合には数量調整以外にはしかたがないのではないですかと、私はあそこではっきり申し上げておるわけです。しかし政府は何もしませんでした。九月以来何もやらなくて通貨調整になったという経緯がありました。今度もいよいよもう追い込まれたころになって初めて貿管令という数量調整の問題がようやく出ておるわけですね。  この春の国会の終わりに緊急措置法が出たときに、通産省の諸君が私のところに参りまして、これ何とか考えてくれと言ったときに、私は、貿管令があるにもかかわらずこれにも手をつけないで、こんな緊急措置はお断わりだ、持って帰れと言った。だから私は、いろいろな点から見て、貿管令をやれというのではないのですが、やらなければならないときに何もやらないというのがいまの日本政府の最大の欠陥だと思いますね。だからその点を含めて私はこの際、一体ほんとうに国民のために何が必要かといえば、非常に重要な問題は物価を安定させるということが福祉政策をやることの土台ではないか、こう思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 物価の安定ということは、経済政策の基本でございます。またそれが福祉政策の基本にもつながることと思います。
  37. 堀昌雄

    堀委員 ですから、それが重要ならばそれだけに私は補正予算の問題等も、これはなかなか慎重な配慮を必要とする問題だと思います。  お約束の時間が来ましたから、最後に一つだけお伺いをしておきたいと思うのでありますけれども、実は経済白書を見ますと、この間のスミソニアン協定によっては、比較的中小企業を含めてあまり大きな打撃はなかった。もちろん打撃はあったと思います。しかしあまり大きな打撃はなくて、何とか今日体制が持ち直されつつある、こういうふうに白書は書いておるわけですが、通産大臣はこのように認識をしておいでになりましょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、中小企業にとっては深刻な事態であったと思いますので、それで政府はかなりの金融政策を講じましてあの危機を切り抜けたというふうに思っております。それで、ようやく景気回復してきて、中小企業等が経済力を蓄積するかあるいはその赤字を解消しつつある、そういう段階にまたここで切り上げが行なわれるというようなことになりますと、中小企業は今度は担保物件がなくなるという情勢にあると思うのです。そこが一番大事なところであろうと思います。そういう意味において、われわれは円の再切り上げということは阻止しなければならない、そういうかたい決心を持っておるわけであります。
  39. 堀昌雄

    堀委員 再切り上げを回避したいというかたい決心はけっこうなんですけれども、客観的に絶対起きないかというと、起きないともいえない、こういうふうに私は思うのです。そうすると、起きることも予想してそういう中小企業にいまからひとつ対策をとっておくべきではないか。起きなければたいへんけっこうです。中小企業の体質改善になりますからたいへんけっこうですから、今日から、備えあれば憂いなしではありませんけれども、絶対起きないと政府が保証できないものについては、そのリスクに対して最も弱い中小企業にあらかじめの対策を講じておくことも必要ではないかと思いますが、通産大臣いかがでしょう。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業対策は、何も円の問題のみにかかわらず国の基本的政策としてわれわれは取り上げなければならぬところでございまして、その点については、来年度の予算にかけましてかなり思い切った中小企業あるいは中小商業振興、そういう方面について思い切った政策をとるつもりでいま用意しております。
  41. 堀昌雄

    堀委員 どうぞ通産大臣、けっこうでございます。  大蔵大臣、そこでいまの問題の一つの側面が私は補正予算の問題だと考えております。この補正予算は、私はこの前、八月に大蔵大臣に当委員会で質問さしていただきましたときに、大蔵大臣はこうお答えになっているのです。「現時点におきましての私の所存といたしましては、災害その他発生してまいりまする予算補正の需要内容的にはいろいろあろうと思います。こうした問題についての補正はやむを得ませんが、いわゆる景気振興のために大きな補正予算を組むとか、あるいはそういう補正をやるとかということについては、多分に私は消極的態度をとっております。」これが第一点です。第二点は、私が「「健全な公債政策運営することにより」と、ここに明らかにしていただいたことは、要するに植木大蔵大臣は財政法第四条の考え、そうして第五条、日銀引き受けによる国債の発行の禁止、建設国債の範囲内で国会が承認すれば国債を発行してもよろしいというこの四条、五条でございますね、この財政法四条、五条を守って公債政策運営されることを私は健全な公債政策運営と理解をいたしますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。」「簡単にお答えすれば御推察のとおりであります。」こう二点はっきりお答えをいただいておるわけですね。ところが、どうもいま新聞で伝えられるところでは、補正予算はかなり大型になりそうなふうに伝え聞いておるわけであります。大蔵大臣は参議院の大蔵委員会でもそういうお答えのようであります。  これはこのときに確かにお断わりになっております。「現時点におきましての私の所存」と、こうおっしゃっていますから。いま時期が変わっておりますから。なぜ変わったのかを大蔵大臣お答えをいただきたいのです。この「現時点」と今日の時点では、何があなたの考えを変えさせたのか、これをちょっと伺いたいのです。
  42. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいま御指摘のように、当時の私の心境といたしましては、でき得る限り多額の予算補正をするようなことは避けていって、そうして景気を刺激することがないように持っていきたい、こういう考えでおったのでございます。しかしながら、御承知のように、その後いろいろ財政上の需要が起こってまいりました。そのうちの若干を申し上げてみましても、たとえば人件費のために必要な公務員給与のベースアップの関係の問題、あるいは災害の関係のそれが、ことしは近年にないわりあい大きな災害がございまして、そのために必要な復旧のための経費、それからさらには、いろいろな問題のもう一、二を申し上げてみますと、米の生産調整のための関係の経費が相当額やはり必要になってまいります。あるいはその他におきまして一般的に義務的経費、たとえば義務教育の国庫負担金の決算的の需要その他の問題……
  43. 堀昌雄

    堀委員 大臣、それはもうみんなきまったことですから、それはわかっております。それ以外にはないのですか。
  44. 植木庚子郎

    植木国務大臣 それ以外におきましては、われわれはこの際公共投資の追加という問題について考えております。
  45. 堀昌雄

    堀委員 なぜそれを追加することになったのか、そこをおっしゃってください。
  46. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ですから、その公共事業の投資追加の問題につきましては、われわれは新内閣の一つの方針といたしまして、やはりこの際国民の福祉の増進ということに一つの大きな重点を置こうとしております。そのうちで、いろいろと近年における経済の成長、非常な成長、それに伴って産業の成長に非常に重点が入っておった。それに伴って自然と社会福祉、国民の福祉、生活環境の是正といったような問題についての投資が、どうもしばらく置き去りとはいいませんけれども、重点の置き方がまずかった。これに対してわれわれはやはり反省をして、そうしてそのための必要なる公共施設についてはでき得る限り、大きな影響、悪い影響を及ぼさない範囲内において、でき得る限りこちらにも重点を移していきたい、こういうことを考えておるのであります。そのために、これらの経費をもこの際ある程度計上してまいりたい、こういうことの結果も一つの大きな原因と思っております。
  47. 堀昌雄

    堀委員 公共投資がふえるということで、いま大臣は国民の生活環境の整備とおっしゃいましたから、それは国民の生活環境の整備だけでございましょうね。ほかにまた道路だとか何だとか、これはもちろん広義には国民の生活環境の整備かもしれませんが、私どもはちょっとそんなものを生活環境の整備という中へ入れるのはやや行き過ぎだと思っておりますので、これは予算項目としても、生活環境の整備というのは道路までは入っておりませんので、ちょっとそこのところは少しはっきりしておいていただかないといかぬと思うのです。これは事務当局でいいですよ。いま、もう問もなく皆さん閣議へ出すのでしょうから、考えておる中には、公共投資という中には、生活環境整備以外のものとその他ではどういうウエートになるのか、中身の金額なんかいいですから、生活環境整備は八〇%、道路その他が二〇%なのか、そこらのところはどうですか。
  48. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 今回補正追加いたします中には道路とか治山治水とか、あるいは生活環境の整備とか種々の内容があるわけでございます。その追加は、国際収支の動向をにらみながら、またいろいろな意味で社会資本の蓄積がおくれているということで編成しておるわけでございますけれども、何ぶんにも道路とか治山治水、これは当初に対する伸び率は生活環境の伸び率に比べ低くなっておりますが、その絶対額が多いということと、シェアといたしましては生活環境よりも上回るという形になっております。
  49. 堀昌雄

    堀委員 実は、生活環境整備というのは、四十七年度予算でも伸び率はたいへん大きいのですが、御承知のようにネットはごく小さいのですよ。片方は伸び率は相対的にはちょっと減っていますけれども、ネットが大きいからたいへんな金額になっているわけですね。だからあなたのいまの話でいけば、生活環境整備という羊頭を掲げて公共投資という狗肉を売るということですね、率直にいえば。どうですか吉瀬さん。そういうことでしょう。
  50. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 羊頭狗肉というお話がございましたけれども、私どもといたしましては、上半期におきまして御承知の公共事業の促進を行なっているわけでございます。九月までの目標率七二・四%に対して八月末までの実績が六三というようなところで、大体上半期においての公共事業の促進は所期の目的を達成できるのじゃないか。したがいまして、下半期におきまして、やはり公共投資のいわばすき間ができる。そういう面も補てんする面を持っておるわけでございまして、いま堀委員の御質問にございましたけれども、生活環境の伸びというものは、私ども相当重点を置いたつもりでございまして、絶対額が少ないのでウエートが若干ほかに比べてなお小さいことはわかるわけでございますが、この伸び率を持続いたしますれば、将来生活環境の関係の公共投資が主流を占めるということになるのじゃなかろうか、こう考えております。
  51. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、要するに公共投資でいまの経済をささえている。私は公共投資だけでささえておると思いません、個人消費も大きなささえになっている、こう思うのでありますが、そのささえをはずしたくないということはやはり景気刺激ですね。その限りでは私はやはり景気刺激だと思うのです。  そこで日銀総裁にお伺いしたいのですが、いまの卸売り物価情勢でこういう予算を組むことが、この際の国内均衡をはかる上で適切だと思われるかどうか。これは私、非常に重要な問題だと思います。さっきから申し上げておるように、物価政策というのは、中曽根さんは経済政策の基本だとおっしゃいますが、そのとおりでありますが、国民経済をささえていく最大の土台、柱だと思っておりますが、その点日銀総裁どうお考えになりますか。
  52. 佐々木直

    佐々木参考人 先ほどお話としてありましたように、最近の経済の伸びは相当高いものになっております。そこに七月ごろから卸売り物価が上がってまいりまして、この形勢はまだもう少し続くのではないかという感じがいたしております。したがって、この際補正予算を組まれることはこれはどうしても必要があろうと思いますけれども、その編成にあたりましては、そういうような経済の実態の推移、それからすでに卸売り物価が上がり始めているという事実、こういうことを十分頭において慎重にやっていただかなければいけない、こう考える次第であります。
  53. 堀昌雄

    堀委員 政府は、まあ大蔵省ですが、いまさっき私が言ったように、一−三、四−六、おそらく七−九も一一%台の瞬間風速が続いているという認識があるのでしょうね。どうですか。大蔵省、審議官がいなければ、これは予算編成だから吉瀬さん答えてください。
  54. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 瞬間風速一一%、瞬間時にはございましたけれども、今年度においても各月ごとには相当な格差があると思います。ただ瞬間風速としては一〇%というような線が出てきていることも事実でございます。
  55. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと企画庁に伺いますが、この前からもこの問題は出てきておるのですが、いまのところ上半期、これはまだ七−九月は出していないのだからわかりませんけれども、しかしその他のデータ、卸売り物価、鉱工業生産その他の諸般経済情勢を分析すれば、私は上期というのは平均をしてほぼ二%台くらいになるのじゃないか、こう思いますが、企画庁どうでしょうか。
  56. 新田庚一

    ○新田説明員 いま御指摘のとおり、実績に出ておりますのは四−六まででございます。すなわち瞬間風速、年率にしまして一一・七%、前年同期にしまして八・一%でございます。まあ瞬間風速は統計的に非常にばらつきがございますので、そのまま受け取れませんが、私ども現在補正予算関連しまして本年度予算の見直しをやっておりますが、大体の感じとしましては、上期の風速一〇%前後じゃないかというふうに考えております。
  57. 堀昌雄

    堀委員 上期が一〇%となりますと、いまのトレンドからすると、下期を合わせるとどうも一一%に届くのじゃないか、私はこういう感じがしておるわけであります。たいへんな成長ですね。政府の最初の見通しは七・七ですから、たいへんな実は成長になっておるので、私はどうもいまの問題は善意に解釈すれば通貨調整というものを頭において補正を組んだ。そこで先取りをしているというなら私は話はわかるのですよ。通貨調整のデフレ部分を補正予算で先取りをして、その分カバーしていこうという政策態度というものはこれは見上げたものだと思うのだけれども、選挙対策ではないかという感じがすると、あまりどうも見上げたことにならぬなあという感じがするのです。経済政策というものが選挙対策で行なわれたのじゃ国民はたまったものではありません。それによって国民は物価のそのはね返りを全部負うわけでありますから、そこで心配なのであります。この問題はここでこれ以上詰めたってなかなかあれでしょうから、財源問題をここでちょっと大蔵省に伺っておきたいのです。  そこで、この補正予算の規模は大体吉瀬さん幾らくらいを予想しておるのですか。
  58. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 歳出の追加で六千五百億、それからそれに関連いたしますいわゆる債務負担行為等でいわわゆる一般会計予算関係の事業費、その規模が約一兆三百億くらいでございます。そのほかに財投の追加、これが現在調整中でございますが、あるいは四千ないし五千、こういうようなことになっております。
  59. 堀昌雄

    堀委員 まあとりあえず一般会計の六千五百億ですね。これは高木さん税収で幾らですか。いま私が言うように、四十七年度の——これは名目ですね、名目で幾らになるかわかりませんが、いまの感じでは一六%くらいは間違いなくいくのじゃないかという感じがするのですがね。企画庁どうですか。名目でいきますと、さっきのをちょっと伸ばした感じですがね。一六から一七の間ぐらいじゃないかと思うのですが、どんなものですか。
  60. 新田庚一

    ○新田説明員 先ほど堀先生ちょっと誤解——御承知だと思いますが、風速と前年同期を間違えまして、一応私ども現在上期風速一〇%内外と申しましたが、前年同期にしますと八%くらいというような感じでございます。年度としての成長率を現在計算中でございますが、おそらく一四%台ではないかと思います。一五%以上にはいかないのじゃないかと思います。
  61. 堀昌雄

    堀委員 名目でね。それじゃ一五%と見てもいいですね。そうすると、当初の見積もりが幾らだったか、一二でしたかな。
  62. 新田庚一

    ○新田説明員 一二・四でございます。
  63. 堀昌雄

    堀委員 一二・四だから三%近くは名目が上がる、こういうことになるのですね。そうすると高木さん、自然増収はどうなりますか。
  64. 高木文雄

    ○高木説明員 自然増収は、実は企画庁のほうの経済見通しがかなり、時々というと激しいのでありますが、しょっちゅう動いておりますので、私どもも非常に立てにくくて困っておるわけでございます。しかし一つは税収のおくれということがやはりありますから、かりにいまちょっと企画庁のほうからお話がありましたように、一四%台ということになりました場合、そのままそれが税収にはね返るかどうか、それは必ずしもそうはいえないわけで、本年度の税収見積もりを少し低く見積もり過ぎましたのは、実はショックがどういうふうに来るかということがはっきりしなかったわけでございますので、それが意外とショックが小さくて済んだといいますか、そういう感じで、ことしの四月以降の税収が非常に順調でございまして、そこは私どもが見積もり違いを起こしたこととは御指摘のとおりでございます。今後の部分のうちどの部分が四十七年度税収としてはねてくるかということはなかなかもう一つの要素としてむずかしいわけでございます。そこで現在の段階では非常に見積もりが立てにくいということで、現在のところはまあ確実といえるのは三千億をちょっと切るところではないかというふうな感じでおるわけでございます。
  65. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまの六千五百億で三千億、まあ一応税収でまかないますね。三千五百億円というのは、そうすると何でまかないますか。事務当局で言ってください。
  66. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 公債発行によりまかなうつもりでおります。
  67. 堀昌雄

    堀委員 その公債発行は、さっき私は大臣との間で確認事項があるわけですが、あと三千五百億というのは財政法第四条、五条の範囲で処理できるということでしょうか。
  68. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そう考えております。
  69. 堀昌雄

    堀委員 それはもうちょっと、新聞では、何か政府筋は福祉関係予算を公共投資ということでやりたいんだというのが出ている。官房副長官——まだ入ってないですね。まあ、これは新聞が伝えるところですから、本人に来てもらわなければわからぬけれども大蔵省は、この際は、大臣が前回の委員会で私にお約束になったように、財政法第四条、第五条の規定をくぐり抜けるような処置は一切しない、こういうことでいいですね。まず先に事務当局で一ぺん答弁しておきなさい。それから大臣に答弁してもらいます。
  70. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そう考えていただいてけっこうでございます。
  71. 堀昌雄

    堀委員 大臣、ひとついかがでしょうか。
  72. 植木庚子郎

    植木国務大臣 この前お答えしたとおりでございまして、ただいまの事務当局の申し上げたとおりですが、ただ私は、お話しのように、福祉関係予算はと、こうおっしゃいますと、福祉関係予算の中にも、いわゆる事業費に必ずしも当たらないで、補助をやるとか手当てをやるとかというような意味の福祉関係の経費というものもいろいろございます、御承知のように年金の増額だとかというような問題がございますから。ですから、私の申し上げている福祉関係の仕事といいますと、いわゆる保育所をこしらえるとかあるいは病院を建てて、そうしてそこに不幸なる人たちの入院をたくさんにさせてあげて、そこで治療をしてあげるとか、そういう場合に、これは広い意味において国民福祉の大事な仕事でありますが、こういうことにも重点を置こうという新内閣の一つの方針を持っておりますから、そういう意味においては、私は公共事業費として、その建設、施設を充実するための費用として補助金を出すとか、あるいは国がみずからやります場合にはそれの財源に充当するということは少しも差しつかえない、かように考えておるのであります。
  73. 堀昌雄

    堀委員 事務当局にちょっと伺いますが、私、この国債問題というのは、昭和四十年の特例法以来当委員会で長くやっているわけですね。要するに四条の解釈の中にいま大蔵大臣がおっしゃったような福祉事業に伴う施設の費用、これはたとえばこの前もちょっとここで特別会計のいろいろな予算をやりましたね。労働保険の問題、いろいろやって、この中には実は労働保険ということで入っておるだけであって、その中での施設費というのは、これは公共投資じゃないんですね。現在の取り扱いはそうなっておりますね。だからいま大臣のおっしゃることは非常に重大な発言なんですが、事務当局はどう受けとめていますか。これまでの大蔵省考え方、公共投資というものの考え方と、いまの大臣の言われる——なるほど建物は確かに一般広義の常識概念では公共投資といえるかもしれない。しかし実際には、政府予算の中では公共投資のカテゴリーの中には入っていない考え方ですね。そう私は理解しておるわけですが、これはいま言われるように事業費なんですね。だからその点違うと思うんですが、大蔵省は最近豹変したんですか。事務当局、ちょっとそこのところをはっきりしてください。
  74. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 実は本年度の当初予算に、堀委員御承知、のとおり、公債発行の対象経費ということがございまして、これは一般公共事業経費の中に、あるいは建物なり土地の取得だとか施設的な価値として残るものを公債発行の対象経費として計上してございます。したがいまして、私どもは公債発行をもって十分まかなえるのではないか、かように考えております。
  75. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまの社会福祉関係の土地と施設の国が負担する分に限ってということですね。
  76. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そうでございます。
  77. 堀昌雄

    堀委員 そこのところまでは、そうするとはっきり区切りがつくわけですね。土地は多少問題があるけれども、建物を建てるものは土地を買わなければならないでしょうし、そこまでは一応そうだとするけれども、そこの限度までははっきりさせるということですね。——わかりました。  そこでもう一つちょっと伺って私は終わりにしたいんですが、一兆三百億、債務負担行為というのは主たるものは何ですか、こまかいことは聞きません、もうこれで終わりますから。
  78. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 実は一兆三百億、これは公共事業の関係の一般の歳出、これが五千三百億と施設費まで合わせまして先ほど申し上げておるわけでございますが、事業規模で申し上げますと、公共事業の系統の歳出が八千四百億、それに対しまして債務負担行為が事業費で約二千五百億でございます。この二千五百億の大部分は、一般公共事業の千九百五十億、これが大部分をなしております。
  79. 堀昌雄

    堀委員 じゃ、終わります。
  80. 金子一平

    金子委員長 佐々木参考人には御多用中のところ御出席いただき、貴重な御意見を承りありがとうございました。  どうぞ御退席くださってけっこうでございます。ありがとうございました。  広瀬秀吉君。
  81. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 準備した質問要旨にほとんど堀委員が触れられたので、順序を変更しまして、いまちょうど補正予算の問題に入ったところですから、私も引き続いてその補正予算の問題について少し質問をいたしたいと思うのでありますが、いま日本で一番売れている本は「日本列島改造論」、それと同時に「恍惚の人」である、こういうことであります。これは非常に象徴的だと私は実は理解するわけなんです。一方においては日本列島改造論、威勢のいいものが打ち出されて、日本列島が鉄とセメントで固められて自然は破壊され、公害は充満し拡散され、しかもその上に物と札束が乱れ飛ぶような日本をつくろうという威勢のいい話、その陰にまた老人問題、老人福祉がきわめて立ちおくれているということを有吉佐和子さんが「恍惚の人」という一書にまとめてあの悲惨な状況を書いている。そうして八十四歳のおじいちゃんの姿を見て、孫たちは、あれはもう人間じゃなくて動物だと、こう語っている。そうして、パパもママもあんなに生きないうちにひとつ死んでくれ、こう孫が言うというような悲劇が語られている。その本がいまベストセラーである。こういう日本の現実、これはアンバランスと言うよりはあまりにも深刻な現実だと実は思うわけなんです。  そこで、今度の補正予算、これはいま数字的にも説明があったわけなんですが、社会資本が立ちおくれているということでこの大型補正を組もう、こういうことになってきた。財政法の第二十九条によって補正予算が組まれるわけですが、公務員の給与増額分あるいは災害復旧あるいは米価引き上げに伴う一般会計からの繰り入れなど、これは二十九条に書いてある。補正予算はどういう場合に補正予算を出すかということに対して、「法律上文は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合」「予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合」、こういうようにあるわけでありますが、この公共事業、なるほど社会資本の立ちおくれということは、これは言うならば今日の日本の最もおくれている部分であることはだれしも認めるところでありますが、それならば一体、これは当初予算編成の段階で予期されていなかったのかどうか、こういうことが財政法上の問題として当然問題になるはずだと思うのであります。先ほども触れられたように、選挙が近いということで、社会資本の充実ということに名をかりて選挙対策的にこれを出していく。こういう以外に、財政法の趣旨からいって、補正予算というのはかってやたらに、予算編成後に生じた事由というのを田中内閣ができたというのも事由になるんだ、日本列島改造論が出たというのも事由になるんだというのなら別だけれども、こういう点、大蔵大臣は財政関係では昔からたいへんな権威を持ってこられた人だと私ども考えておるわけだけれども、少なくとも今回の補正予算については、私はやはりこの臨時国会においてかけるべきものは、先ほど申し上げた公務員給与、災害、さらに米価の関連の問題、この辺のところで通して提出するのが当然であろうと思うわけでありますが、財政法二十九条との関連においてこの点は一体どのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  82. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私といたしましては、先ほども堀委員の御質問にお答え申しましたとおり、いろいろとその後におけるいわゆる情勢の変化等もございまして、そうしてそれによってわれわれが御承知の円の問題、国際通貨制度の改正の問題等にもその後新しく現地に参加して帰りましていろいろ感じましたところを総合してみますと、国内におきましての需要を、法制上差しつかえない限りやはり一部を公債財源に仰いでも、これによって、内需のうちで本来四十七年度予算で計上すべき、あるいは計上する希望の非常に強かったもののうちで、すでに地方あるいは各団体において実際は計画が熟しておるというもので、直ちにそれが土地の値上がりを起こすとかあるいは基本的な問題にまで大きな需要を起こすものでないものであって、そうしてこれが政府の助成によって福祉増強の施設に充当されるならば、この点はわれわれ公債財源として充当して差しつかえないという考えのもとに、これらのものも今回の所要経費の上に乗せておるのであります。その乗せております趣旨は、おのずからまた別の意味におきましても、福祉増強の予算ということであって、これがまた国内需要国内における問題とに分かれますが、そのうちで国内需要に充て得るものについては、一般的に日本の産業構造の基本から直しでいったほうがいいという大きな問題である通貨問題、その通貨問題のうちでも、こういう場合にそうした経費の使い方いかんによってはやはりこれが間接には通貨制度の改革の上において必要な一つ手段として考え得るということもあわせて考えまして、これは申し上げましたような趣旨の内容予算にしたわけでございます。
  83. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この財政法二十九条によると「緊要」となっている。「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」「特に緊要となった」というのは、内容的に一つ一つこまかくどういう経費を公共事業費として追加補正したいのだという内容がまだはっきりしておりませんけれども予算作成後に生じた事由に基づいて緊要になった、そこのところはどういうように解釈をされておるのか、その点を事務当局からでもけっこうだから説明してもらいたい。われわれいまお話を聞いてみましても、公共事業で特に、先ほど堀委員に対する答弁にございましたように、生活関連の社会資本を重点にやりたいということもおっしゃられておる。これはもう予算編成当時においてすでに緊要であることはわかっておったはずなんです。それをやらないでおって、この段階でやるということは、やはりこれは財政法二十九条に基づく補正予算の趣旨とはかけ離れたもので、もしそれが作成後における事由に基づいて緊要だということだったら、やはり円切り上げというもの、こういうようなものの情勢がだんだん迫ってきておる、そういうものに対して、先ほど中曽根通産大臣も答えたように、内需をもっと振興しなければいけないんだ、そのためにはちょっと便乗しようか、しかも選挙が近いから、こういう対策上もこれあり、こういうようなこと、いかにもこれは政府の便宜主義的な考え方であって、これは財政法二十九条の趣旨からは非常に違反するわけで、いわゆる補正予算の二十九条の趣旨からははみ出した組み方ではないのか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 広瀬委員御指摘のとおり、これが財政法二十九条の「緊要」に該当するかどうかという御疑念が起こるのは自然の疑念かと思いますが、昨年度の補正予算におきましても、そのときには景気刺激という観点から相当規模の公共投資の追加を行なったわけでございます。本年度は特に景気刺激という面から公共投資の追加をこの規模で行なう必要があるかということは、私どもは問題であると思っております。ただ私ども当初予算を編成いたしました際に、過日行なわれました通貨調整効果をずっと見守っていたわけでございますが、残念ながら昨年十二月の段階でその効果についてはっきりした見通しが立てにくかった。その後経済情勢の推移を見守っていますと、ますます国際収支の黒字基調が継続している。なお、これは別にそれにこたえたわけではございませんが、諸外国におきましても、日本内需喚起の政策をとらないということに対して批判もあるわけであります。私どもといたしましては本年度の公共投資の実行にあたりまして、先ほど堀委員お答えいたしましたとおり、それを繰り上げ施行して、たとえばおくれた社会資本の蓄積の回復をはかる、それと同時に内需を喚起するというような政策をとったわけでございます。この段階におきまして、私どもといたしましてはこの政策を継続いたしまして、ある程度の規模の公共投資の追加を必要とするというぐあいに判断したのもこの事情によるわけでございまして、これはやはり財政法二十九条にいう予算作成後に生じました事情の変化に基づいて対処する措置である、こう考えておるわけでございます。
  85. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 公共事業を繰り上げてやりたいという気持ち、そうなるとやはり予算の単年度主義というのは、それはそれなりにいろいろな問題点もあるし、批判もあるところだし、これがオールマイティーの絶対的な価値を持った原則ではないかもしれぬけれども、いまは少なくとも財政法のたてまえでは単年度主義をとっておるわけであります。そういう中で政府が非常に便宜主義的に、選挙対策的に、いままで景気刺激というようなことはやらないのだやらないのだと言いながら、円切り上げというものを含めてそういう内需の振興というようなところに補正予算の意義を見出していくというようなやり方は非常に私は問題があるだろうと思うのです。予算の単年度主義という問題について、大蔵大臣は将来どういうように、これは単年度主義ではなくていこうというお考えなのかどうか。そういう点、ひとつお考えを聞かしていただきたい。
  86. 植木庚子郎

    植木国務大臣 予算の単年度主義ということばが、毎年予算を編成して国会の審議を経て、そしてこれを実行に移してまいるという意味においての単年度主義というお話でございますならば、そのとおりでございます。
  87. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これは事務当局伺いますが、この公共事業費、先ほど大蔵大臣は生活関連ということを言ったわけでありますが、具体的に公共事業費の追加として約四千億近くやる、そして債務負担行為が一兆三百億だ、こういうことですけれども、この内容は、生活関連の中身というのをどういうところにどのくらいということをひとつ数字で示してもらいたいと思います。
  88. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 実は参議院の大蔵委員会でも質問が出まして、資料の要求もあったわけでございますが、これは実は総ワクとしてある程度のめどをいまつけて各省と折衝している段階でございまして、中身として申し上げますと、たとえば下水道だとかあるいは環境衛生施設とか、あるいは公園とか住宅とかいろいろございますが、この具体的な額につきましては、二十日に予定されています閣議の日までちょっと控えさせていただきたいと思います。
  89. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この予算の説明書によりますと、治山治水とか道路整備とか港湾漁港空港整備、住宅対策、生活環境施設整備、農業基盤整備、林道工業用水等事業費、調整費等、あるいは災害復旧、これはまあ別になりますが、それらいま前段に申し上げたようなそういう項目の中で、公共事業費の補正は一体どこに一番重点が置かれているのか。これを優先順位に、これとこれとこれの順だ、こういうようにひとつ言ってください。
  90. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 具体的な数字で申し上げられなくて恐縮でございますが、伸び率といいますか、生活環境関係ではおそらく四割をこえる伸びを示しております。これが最重点でございまして、あとは大体通常の事業、消化可能な範囲にとどめておるわけでございます。
  91. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 伸びでしか示せないというので、ここでこれ以上やっても水かけ論になるだろうと思いますからあれですが、大蔵大臣、冒頭に私は恍惚の人と日本列島改造、二つ並べて申し上げたのですが、なるほどこの追加予算の中で公債発行というものを財源にして補正予算を組むということでは、先ほど堀委員論議しましたように、四条、五条ということで問題があるということでありますから、当然福祉関係というものは、まさに「恍惚の人」の中に見られるように老人福祉など世界で最も劣悪である、少なくとも先進国の中で最も劣悪であるということがいわれておりますし、大体国民総所得の中で六・二%くらいしか社会保障に回ってない。老人年金に対してはこれが〇・三%だ。西ドイツのごときは八%、イタリアですら五・九%、フランスが五%、アメリカで三%、こういうような率になっておるわけです。これは、まあ補正予算では無理でありますが、来年度予算においてこの老人福祉の問題についてもう実に急速に、何%増しでございますというようなそんなことではなくて、何倍にするというような思い切った——先ほど中曽根通産大臣も思い切った、思い切ったということを盛んに言っておられるのですけれども、そういう老人年金の問題について何倍増しにしていくという思い切ったものに、先進国並みにここ一両年でやっていくというような考えがいまこそ私は必要だろう、こういうように考えるわけですけれども、この点についての大蔵大臣のお考えをこの際はっきり聞いておきたいと思うのですが、いかがですか。
  92. 植木庚子郎

    植木国務大臣 老人対策の問題等々の、社会福祉あるいは国民の生活環境、あるいはそうした施設についてのわれわれの心組みといたしましては、各省からもそれぞれ相当思い切った御要求もございますし、われわれとしましても、国民の福祉増強のために、明年度の予算におきましてはでき得る限り力をこれにも注いでまいりたい、かように考えております。
  93. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、税制の問題について若干伺いますが、われわれは前から年内減税をやれといって主張をしてきたわけですが、年内減税は今度の補正予算でも全く考えられていない。先ほども景気回復したのも公共事業費の下ざさえというか、てこ入れというか、そういうものが大きく響いたと同時に、やはり個人消費というものの堅調さというようなことが大きな原因になっておるわけでありまするけれども、そういう中で物価は依然として上昇を続けておるし、しかも卸売り物価が年初来九月段階で二・六%も上がっている。しかも八月、九月というのは〇・七%、〇・九%というようにたいへん急激な値上がりをしておる。これが必ず近い将来において二次製品、三次製品にはね返って、消費者物価をさらに押し上げる大きな力になるだろう。こういうようなことで、国民の生活はそういう物価値上げの面からも圧迫されておるわけであります。したがって、私どもは年内減税をやるべきであるという主張をいまでも持っているのですが、これは大蔵大臣、もう事ここに及んで、それをいま大蔵大臣に聞いてもせんないことかもしれないけれども、私はやはり昨年と同じように年内減税をやるということ、これのほうが公共事業を少しばかりやるということよりも、むしろ国民全体が、特に低所得階層が幾分でもゆとりある人間らしい暮らしをするために一番必要なことではないか、そのほうが政策順位として優先をすべきじゃないか、こういうように思うのですが、この点大蔵大臣はどのように割り切って今度は年内減税をやらないという結論に達したのか、これを伺いたいと思います。
  94. 植木庚子郎

    植木国務大臣 先般の当委員会においてお答え申し上げました当時におきましては、私といたしましては、やはり広く国民の階層の中で低所得層の方もたくさんございますし、こうした方々の声として所得税の減税についての非常な御要望が各方面から出ておったことを申し上げ、これについては自分もでき得る限り努力をしてみたいと思っておりますがということで触れたことがございます。その後私がだんだんと、今回の補正予算を必要とする先ほどから御説明申しました義務費的なもの、あるいは今回の重要な部分をなしまする部分について考えてみますと、どうしてもこれもやらなければならぬ。公務員給与しかり、米価関係もしかりというような需要がたくさん出てまいりました。そうしますと、所得税の問題等について考えてみるのもあるいは一つの方法であろうということは考えられませんではありませんが、しかしこれをやることによって、あの節も申しましたように、所得税の減税というようなものでも、ちびりちびりとした小さい減税というものははたしてそれが効果的であるかどうかということが問題ですというふうに考えておりますということも申し上げましたが、その意味において、所得税の減税等をやるような場合でも、もちろん低額所得の方々に均てんがよく及ぶようにしなければなりませんが、これについてはやはり相当多額の財源が要るのでございます。その意味で私は、この年度内に減税をするだけの財源的余裕がとても得られないのではないかということを考えまして、それで年内は所得税その他一般的な減税の問題はこの際残念だけれども見送ろう、こういう気持ちに相なりまして、そしてこの際所要の緊急なものについての補正予算の御審議をお願いしようということに相なった次第でございます。
  95. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ちょびりちょびりやるのはどうかと思うということですけれども、それでは来年一兆円減税ぐらいやってくれるのか。また田中総理もその辺のところをにおわしておったのだけれども、いつの間にかそれがしりすぼみになって、来年度所得税減税は大体三千億程度だというようなことが新聞にもちらほら書かれている。こういうような問題について、来年度はそれでは大幅にどのくらいの考えでこの減税をやられるお気持ちなのか、その減税規模と中身、どういうところを重点に置いてやられるのか。たとえば給与所得者の減税の問題もあるし、中小企業の事業主報酬制を認めろといったような要求に対しては、大蔵省もこれはやるべきでないのだというような結論を出して税調に説明した。税調にかけるということで一歩前進かと思ったらそうではなくて、依然として旧来どおりのことであるとか、あるいはまた年金等の所得、老齢年金、あれほど少ない、世界的に非常に少ない年金額、こういうようなものに対してまで税金をかけているというようなことなんかについては、これは年金に対する課税はやめたらどうかというようなことも私ども言っているわけなんだけれども、それらの具体的な問題の若干をも含めて、その額と中身についての大蔵大臣考え方をこの際できる限りにおいて示していただきたいと思うのです。
  96. 植木庚子郎

    植木国務大臣 来年度の減税問題に関しましては、先ほど御説明が政府当局からございましたように、来年度の自然増収がどれくらいになるだろうかということについてきわめて概数と申しますか、大ざっぱな見通しについてはいま研究が始まっておりますので、だんだん固まるとは思いますけれども、その規模がどれくらいにいけるだろうかという自信を持てる数字を発見するのにまだ骨が折れている状況であります。他面所得税等の減税が、やるとすれば一つの大きな税目でないかと思っておりますが、しかしこれをどの程度にやるかについては、所得税そのものが非常に大事な社会保障的な施策をやるのに必要な普通歳入でございます。だから、この金額がわかりませんと、どの程度の規模で来年はやれるか、またやらなければならぬという決心ができるかということについて、私はなお研究している最中なんであります。のみならず、事務当局並びに大蔵省といたしましても、税制調査会というものが内閣にこしらえてございまして、そうして来年度の税制のあり方等についても、もうすでに御研究、御審議を始めてもらっております。それでその審議の結果もまだとてもわかりませんし、非常に苦心している、いろいろ御研究願っている最中でございますから、その数字がもう少し、おぼろげながらでもはっきりわかってまいりませんと、私らのところとしては簡単にその規模はどれくらい、税種はどれとどれというようなものも容易にきめかねているのがただいまの実情でございますから、その金額等については、いましばらくお許しを願いたいと思うのであります。
  97. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まあいわゆる大臣答弁でありまして、大体新聞あたりでは、もう五千億減税というようなことがいわれておるということなんですが、あなた自身いまお考えになっておられる考え方として、ちょびりちょびりやるような減税は避けたほうがいいんだ、かなり大幅にやりたいんだということなんですが、それはやはり少なくとも、減税額はいままでここずっと三千億をこえたなんというのはないのですね。それで少なくとも五千億ぐらいを下回らない減税をやりたいのだというような、その程度の表現ならばお答えできるのじゃないですか。いかがですか。
  98. 植木庚子郎

    植木国務大臣 やるときにはできるだけ大きく減税もやってみたい気持ちがあるということはこの前も申し上げたのですから、きょう新たにお答えするとなりますと、最初からお話しのように何千億なら何千億という額を言えという御用命だと思いますが、それはただいまの私といたしましては予算編成を控えている際でございますから、ワクが幾らというところまではぜひひとつ遠慮させていただきたい、こう思います。
  99. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんので、ほかに予定したものもあるのですが、省略をして、最後に一つだけ……。  きのうでしたか、いよいよ日本の財政もこれからもう公債依存財政に踏み切った、こういうようなことで、そのためにはやはりいまの金融機関の体系を変えていかなければならぬというようなところから、貯蓄銀行構想というものが大蔵省、日銀でかなり構想されている、こういうようなことが報ぜられておるわけでありますが、そして今日の中小専門金融機関ですか、これを貯蓄専門銀行にしてしまうのだ、そして公債をこれに引き受けさしていくということで公債発行、その消化がスムーズにいくように、また公債発行財政というものが定着していって、こういうようなものとのうらはらの関係においてそういう構想が立てられておるということが報道されておるわけでありますが、これは非常に大きな問題であり、公債発行政策というものがそこまで組織的に財政の中に完全にビルトインされていっていいのかどうかという問題についてはかなりまだ議論をしなければならない。それと同時にまた、今日における金融というものが果たしているいろいろな役割り、特に中小企業金融の問題等について、それではたして中小企業というものが立ち行くであろうかというような問題など、さまざまな問題があるのですが、これについてはどのように現在考えが固まっており、そういった構想は、いつごろの実現を目ざしてそういうことを考えておるのか、この点について大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
  100. 吉田太郎一

    吉田説明員 いま広瀬委員のお話の記事というのは、おそらく昨日の新聞に出ておった、大蔵省が貯蓄専門銀行の創設を検討しておるという記事ではなかろうかと思いますが、現在のところ、そのような考え方は全くございません。ただあの記事の趣旨が、そういう貯蓄専門銀行の創設というところに重点を置いておるのか、あるいはこれからの経済運営の中で資金の流れが変わっていくのに応じて、それに対応した金融制度あるいは金融のあり方を考えていかなければならないのではないかという問題意識であるとすれば、私どもといたしましても同様の問題意識を持っておるわけでございまして、先ほど来の御論議の中にも出てまいりましたように、いままでの企業中心金融から国民生活あるいは公共部門に重点を置いた資金の流れが金融面でもそういう姿になっていかざるを得ないだろうという問題意識は持っております。また金融の環境も、もっと金利が弾力的に働き、金利機能が活用されていくような環境、そういう方向でものを考えていかなければならないということも、私どもの問題意識として持っておるわけでございます。その辺のところについては、今後私どもあるいは金融制度調査会等を通じて御審議をわずらわすことでございます。そういう問題が直ちに貯蓄専門銀行の創設あるいは現在ございます中小企業金融機関をどうこうするという問題に結びつくとは私は考えておりません。そういう意味で、もしも貯蓄専門銀行の創設ということでございますならば、それは全く考えてないとお答えしたほうがいいと思います。
  101. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣、いかがですか。
  102. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいま局長お答えしたとおりでございまして、貯蓄専門のための金融機関創設というような問題については、いまだ何ら会議の話題にしたことすらございません。私が参りましてからは全然ないことでございます。どういうところからこういう話題が出ましたか、素材が出ましたか、私にはさっぱりわからないのでございます。
  103. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がだいぶ超過しましたので、これで私は終わります。
  104. 金子一平

    金子委員長 午後二時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後二時二十五分開議
  105. 金子一平

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  先般、各地に委員を派遣し、税制金融、専売事業及び国有財産の管理等に関する実情を調査いたしたのでありますが、その報告書が各派遣委員より提出されております。  これを本日の会議録に参照として掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 金子一平

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕      ————◇—————
  107. 金子一平

    金子委員長 質疑を続行いたします。松尾正吉君。
  108. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 午前中から補正予算についての論議がいろいろ行なわれたわけでありますが、重複する分は確認にとどめて、この点について私も一、二大臣に伺いたいと思います。  まず、追加の規模が六千五百億円、このうち税を見込んだものが三千億、残りを国債に、こういうことでありました。この中身につきましても、公務員給与の引き上げに充てるもの、災害復旧費に充てるもの、その他公共事業に大幅な追加をしたということが問題になって論議されたわけでありますけれども、この公共投資一般の伸び率、それから生活環境の伸び率について、まず事務当局からでもけっこうですが、伺いたいと思います。
  109. 長岡實

    ○長岡説明員 御質問の趣旨は、今回の補正予算を含めまして、当初予算と合わせて……
  110. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いや、今回のものについての伸び率を午前中に伺いまして、大体生活関連に結びつくものが四〇%程度だろう、こういう話なんですけれども、その点をはっきり立て分けて伺いたい、こういう趣旨です。
  111. 長岡實

    ○長岡説明員 午前中に吉瀬次長からお答え申し上げましたように、公共投資全体につきまして今回の追加が約五千三百億円ということは申し上げてございますが、事業別の内訳につきましては、まだ関係各省との間で完全に話が詰まっておりませんので、これをさらに細分いたしまして、生活関連で何%、それから産業関連で何%という御説明を申し上げる段階に至っておりません。午前中に吉瀬が申し上げましたのも、今回の追加につきましても、比較的立ちおくれております生活環境施設の整備に重点を置いて現在作業を進めておりますので、現段階で申し上げますればそちらのほうにウエートをかけて大体四割程度は伸ばすことを考えておりますという、きわめてばく然としたお答えで恐縮でございますが、現在のところはそのような段階でございます。
  112. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、もう一点あわせて伺いたいのは、四十七年度当初の道路とか港湾、公共投資の総額、それから生活関連の総額、この割合を伺いたいのです。
  113. 長岡實

    ○長岡説明員 四十七年度当初の公共事業関係予算総額は、災害復旧を含めまして二兆一千四百八十四億円でございます。このうち生活環境施設の整備は千四百一億円。ただし、通常生活関連の公共事業と申しますときには住宅対策も含まれますので、住宅対策の公共事業が千五百五億円でございますので、両方合わせまして二千九百六、七億円というものが生活関連の公共事業費であろうと存じます。
  114. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま伺いまして、当初の公共投資総額の中の生活関連というものは、住宅対策を含めて二千九百億、きわめて微々たるものです。ところが午前中の論議で大臣が、この補正予算は大型にしないとかつて所信表明等でも述べておったのですけれども、これが急激に、ここへきて大型補正を組まなければならない理由として伺ったのですけれども、この理由についても先ほどの大臣の答弁ではどうも私も納得ができない。この年度当初に、景気状況等は多少見通しがむずかしかったということはそれは理解できます。けれども、もともと生活関連あるいは福祉部門というものが大きくおくれているということは、予算委員会をはじめあらゆる委員会において、もう徹底して指摘されておる点で、これはもう野党のわれわれから指摘するまでもなく、大蔵大臣としてもよく理解している点であろうと思うのです。所信表明の中でも、福祉は非常におくれているので、ということが言われております。こういった福祉が非常におくれている、にもかかわらず生活関連費は二兆円の中のわずか、住宅対策を除けば一千四百億、こういった微々たるものを計上しておいて、ここへきて、わずか二カ月かそこらしかたたないのに、緊急性が生まれたのでこういう補正を組まざるを得なくなった、こういうことになりますと、財政法四条、五条の問題も、それから二十九条の予算編成後の特に緊要となった経費の支出といえるかどうか、この点について大臣のはっきりした考え方伺いたいのです。
  115. 植木庚子郎

    植木国務大臣 御承知のように、内閣の更迭がございまして、そうして新総裁のもとに自由民主党がいろいろと今後の施策について研究いたしたわけであります。そうしてその中の一員でございまする私が、たまたまあやまってでございましょうが大蔵大臣の要職を受けることに相なりました。いろいろ相談をし合っておりますうちに、やはり新内閣といたしまして、従来のわが党の予算の編成についても見直しをしなければいかぬというような議が起こってまいりました。そうしてその結果は、やはり今度の問題といたしまして、御承知のいわゆる日本列島改造というような名前のもとに、いろいろな施策を、重点の置きどころを研究しなければならぬ、しかもそれは一日もゆるがせにできない新内閣の方針であるというもとに、この補正予算の問題が起こったのであります。  補正予算はもともと、景気浮揚のための大型補正予算議論もございましたが、私はどうしてもそれに賛意を表することができませんでした。しかしながら、いま申しましたようなこの新内閣の新方針、そうしてこれをあわせて私が自分の立場から、国際通貨制度の改正に関するIMFの総会等に出席いたしまして、そうしていまわが国の置かれておる立場を考えますと、どうしてもこの際によほど考え直さなければ大きな時勢の変化が起こってまいる、それに対して日本国益に反するような問題も起こりかねないという状況を見てとったのであります。  その結果、私といたしましては補正予算好むところではない、ことに景気浮揚のための補正予算に至ってはどうしても避けて通りたいという考え方でございましたが、やはりこれに資することも一つの目標にもなり得るということを考えました。わが党の既定予算内容を研究いたしますと、確かに、いわゆる福祉予算というものについての努力がどうも不十分であったのではないかという反省が生まれ、しかも、この際にある程度の国内においての刺激を起こすということは、景気浮揚のためにはしたくないけれども、しかしながらこの大事な国際通貨制度の改正に資する点は、少なくともある程度のことはあり得るのではないかということ等も考えてみますと、国民の非常に要望しておられる福祉国家の建設、すなわち、われわれがこの点についての足らざる点を補い得る財源があるならば、ある程度のものをここにさくことは当然考えなければならぬというふうに思いまして、それで私といたしましても、なるべくなら避けたい、またなるべくなら計上しても少額にとどめたいと思った補正予算のことではございましたが、内容は午前中も若干事例を申し上げましたとおりの内容において、この際この程度の補正はやむを得ないじゃないか、これが物価その他に対して非常に大きな悪影響を及ぼすというようなことはまずなしで済んでいけるのではあるまいかというように私が考えまして、そうして考究の結果、申し上げましたような今回の予算を計上したわけでございます。
  116. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 まあ午前中と大差のない答弁で、私はこれには全面的に納得できないのです。といいますのは、国債の性格につきましても、これをここで論議すれば相当長時間になりますから、国債の発行が、この唯一の歯どめである財政法の四条、五条のワク内で大臣ははっきりやれるという確信をお持ちかどうか、その点をまず第一点伺っておきます。
  117. 植木庚子郎

    植木国務大臣 今回の予算の中で公債財源といたしましておはかりしようと思っておりまする、いま作成中の原案の程度でありますならば、何ら財政法に違反することはないという考えを私はいたしております。
  118. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そういうふうに承って、あと論議はまた臨時国会で行ないたいと思います。  それからもう一点は、国益中心にということばが出ましたけれども、現在のこの緊要な支出、財政法の二十九条にいう緊要な支出ということが、先ほど申し上げましたように当初にきわめて少ない生活関連の公共投資を組んでおきながら、伸び率が四〇%程度であって、一般産業関連部門に流れる金が相当大きなウエートを占めているのに、四〇%の伸びで、はたして今度の、福祉がおくれているためにこれに充てる財源として、当初予算後の緊急な支出、こういうふうに大臣は確信をもって考えておられるのかどうか、この点をひとつはっきり伺っておきたいと思います。
  119. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私といたしましては、緊急に必要なる経費であるという判断のもとにいま準備中でございます。
  120. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 こまかい論議をやっていますと先へ進みません、四項目ほどありますので。  ここで私、一点考えておりますことは、痛感していることは、まず、最近の福祉が非常に低いということ、その中で特に老人問題については午前中も論議が出ました。最近の新聞報道等を見ましても、社会福祉がおくれているために、わが子を殺さなければならないようなところへ追い込まれたり、あるいは一家心中をしなければならない、こういうところへ追い込まれているという事実が相当件数数えられております。こういった捨てておけない問題がある中で、確かに社会福祉施設に充当することはけっこうと思いますけれども、しかし、それをうたい文句にして一般の産業関連部門に相当大きな金が流れているというところには、その緊急性において大きな問題が指摘できるわけであります。また大きくこれを総体で見ると、今度の第四次防衛計画も、国民は、おそらく一人一人聞けば、緊急性があってどうしても計上しなければならない経費、こういうふうには考えていないと思う。国民がまず総反対していると考えられる国防費が年額一兆円をこえるほど組まれている。にもかかわらず、一方国民が、人間が自殺をしなければならないというような面について、当初においてはきわめて微々たる数字しか計上されていない。それを四〇%伸ばして福祉に力を入れたのだ、これが緊急なんだ、こういえるかどうか。この点の判断についてもやはり大臣にはっきり伺っておかなければならないと思うのですけれどもお答えをいただきたいと思います。
  121. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点につきましても、私はただいまの御質問を通じての御意見かと思いますが、これが本予算にありまするところの総額に対しまして、いわゆる福祉予算にいたしましてもなるほど率的には小さいかもしれませんが、それだけにまた国民が特に要望をしておる、またわれわれもこの問題に将来とも大いに留意してまいろうという気持ちがここにあらわれておるのでありまして、それだけにわれわれの立場としてはこの仕事が非常に緊要であり、緊急であるということを考えて、遺憾ながら御所見は異にしますけれども、ただいま準備を進めておる最中でございます。
  122. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それからいまの答弁のもう一点のこの補正が物価上昇しないという、こういうお答えをいただいたのですけれども、とにかく本年度の国債発行総額は四十五年度の八倍、ドル・ショック対策として発行量が非常に多かった四十六年に比べても約二倍近い大きな額になっている。国債依存率が一九・六%と非常に大きな額で、この依存率を比べてみても、アメリカのベトナム戦中の七二年度、一六・四%、七三年度当初でも七・四%、このアメリカの国債発行を大きくしのいでいる。西ドイツ、フランス等と比較してみると四ないし五倍という異常な伸びを示しているわけです。これだけの大きな補正をぶち込んで、そうして一方で年額一兆円をこえる四次防経費を使う、こうした点から考えて、景気回復は順調であるけれども、インフレに結びつかないと大臣はここではたして言い切れるのかどうか、その点非常に心配なんですけれども、この点の全体を通しての考え方も伺っておきたいと思います。
  123. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点につきましても、私といたしましてはやはりこの問題が直ちにインフレに結びつくというふうには考えておらないのであります。それは若干の影響を及ぼすことはあり得るだろうということは是認せざるを得ません。しかしながら、これが直ちにインフレにつながる問題だというまでには私は深刻さを感じておらないのでございます。その点、意見の相違があるかもしれませんが、私の考えとしてお聞き及び願いたいと思います。
  124. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 午前中の論議の中にも、長時間ではなかったけれども、インフレに結びつく懸念があるではないか、こういうことが論議されまして、参考人として出席した日銀総裁も、この際大型補正を編成するということについては慎重に考えなければいけない、こういう意見を本日も述べております。またいままで何回か、卸売り物価の非常な上昇がある、これは必ず消費者物価に反映していくからこの際大型補正は組むべきではない、こういう意見をしばしば述べておることが新聞に報道をされておりますが、結局いままで政府物価上昇は押えるのだ、いろいろ手を打つのだ、こういうことはしばしばいっております。きょう大臣ははっきりこの場で、広範囲に考えてみてもある程度のインフレはやむを得ないかもしれないけれども、国民生活を圧迫するようなものはない、こういうことを言われたのでありますが、これはもうしばらく実態を見ていきたいと思う。  いずれにしても今回の大型補正でインフレはもう避けられない。したがって、中曽根通産大臣もこの際私は調整インフレということは反対でありますということを言っておったけれども、一時は調整インフレの必要性というようなことまで論議があった。こういったことを考えたときに、これは当然調整インフレ等も意図されたものではないかという点を通してみて、私はどこまでも今回の大型補正等は国民のために国益考えたならばやるべきではない、こう考えます。したがって、これをあえてやるとすれば、これは明らかに国民を犠牲にして選挙目当てのものである、こう指摘せざるを得ないのでありますが、いま大臣からは国債についてはきっと四条、五条のワク内でやる、しかも緊急性についても確信がある、しかもインフレについてもこれはインフレはない、こういう答弁を得ましたので、これは推移を見てまいりたいと思います。  次に、円の再切り上げ対策について。これもやはり午前中から論議がありましたけれども、大臣が就任直後の所信表明では、国内景気については非常にむずかしい段階がありまして、当時は大臣は悲観的であった、こういうふうに述べておりますが、現在のいろいろな指標を見ると、この上昇テンポも非常に向上してきている、経済成長率も一〇%を上回っているという現状でありますが、この好況のときに大型補正予算を組むことは景気を過熱しないかどうか、この点についてはどうお考えですか。
  125. 植木庚子郎

    植木国務大臣 景気を過熱させないかという御質問でございますが、それにお答えする前に、ただいま、私が先ほどお答えした問題についての御判断といいますか、御推定といいますかその中に、私はこの補正予算の結果若干物価等に影響が及ぶことはあり得るかもしれないがとは申しましたけれども、インフレになってもそれはやむを得ないのだというふうに御推定になったと思うのですが、私はインフレということばは使いませんでした。私はやはりインフレという問題になりますと、インフレにはいろいろな定義のしかたもございますし、定義の云々よりはやはりこれが大きな悪影響を及ぼすようなそういう物価騰貴、インフレというような問題はあくまでも避けなければならぬと思いますが、若干の物価等に影響があり、そしてまたそれが影響がないよりはあるほうが悪いにきまっているかもしれませんけれども、しかし私はその点についてはインフレを意とするに足らぬというふうには申しておらないのでございますから、この点はどうぞ御理解を賜わりたいと思うのであります。  なお、ただいまのそのあとの御質問でございますが、こういう問題につきましては、私はやはり人おのおの意見を異にするところがあるのは、これはやむを得ぬと思います。私自身もある時点におきましては、先ほども御指摘なさいましたとおり、やはり大型な補正ということは景気浮揚のためにはやる必要はないのだ、こういうことを考えておりましたし、またそのつもりでずっと処してはおったのでありますが、その後におけるいわゆる景気の立ち直りの状況等を見ておりましても、なかなかもってこちらの希望するようには順調に回復をしておらない時期もこの間にございました。そうしたことを見ますと、なるほど人間は見るところおのおの違うものだなということを感じましたのは、いわゆる大型補正をやらなければ日本景気の立ち直りが幾らたっても来ないじゃないかという強い声も国民の中から、あるいは世論の一部から明瞭に私の耳にも入ってきたことも何回となくありましたが、私は、そのときにはなおやはり消極的な立場をとっておりました。しかし今回の問題になりますと、だんだんとその後の情勢考え、しかも国際通貨制度の改革のためにアメリカへ参りまして、そうして各国の代表等とも会いまして、いろいろこの対策を私は私なりに、日本の立場として何を考えるべきか、どう処すべきかということについて考えました結果、今度の補正がある程度のもの、そうむちゃくちゃな大型でさえなければ、これがあるいは今度の日本通貨対策のためにも資し得るところもあるのではないか、直接に非常に大きなよい影響とはいえないかもしれませんが、これもやはりどうもあり得るのではないかという判断も持つようになってまいりましたので、それで私はいま予算の編成に取り組んでおるわけでございます。
  126. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これで打ち切ろうと思ったのですけれども、いま答弁の中で、これが景気の過熱あるいはインフレ等にはそう結びつかないというような答弁があったのですが、したがってもう一点、どうしても聞いておきたいことは、今度の大型補正というのが結局福祉に緊急性を迫られてということが先ほど来の答弁で私には認識できるのです。ところが一般財源に大部分を充てておいて、そうして伸びは四〇%程度の生活関連というけれども、これは結局は民間設備投資の再燃じゃないか、こういうふうにしか私には解釈できない。したがって、福祉に手を打つんだといいながら、いままでの産業優先の姿勢をこのまままた再燃させていく、そうすることは外貨減らしに少しでも役に立てたいという、こういう意図を大臣は述べられましたけれども、結果的には国際競争力を強化する結果になってしまう。そうすると、黒字減らしに役に立つということばは聞きましたけれども、結果的には逆効果で、むしろいままでの民間設備投資の再燃につながるし、大臣の福祉優先の政策転換していくんだという所信表明の公約に明らかに反してしまう、私はこういうことを考えるのであります。  黒字減らしに役立つ、こういうことでありますので、その点についてまず伺いたいのですけれども貿易収支についてはいままで何回も手を打って、そうして黒字減らし対策を講じてきたわけです。まず四十六年の六月の外貨対策八項目、このときの貿易収支を見ると、四十六年の四月から八月と、それから八項目を講じた後の四十七年の四月から八月までを比べてみたときにほとんど変わっていない。この八項目効果ははたしてあったのかどうか。それから四十七年の五月にあらためて七項目措置を講じたけれども、はたしてこのときの効果はあったのかどうか。数字的に見るとほとんど変わっていないのですが、大臣からその点についてひとつ伺いたいと思うのです。要するに貿易収支について黒字を減らそうというので八項目、七項目という対策を講じたけれども、その効果ははたしてあったのかどうか。いかがでしょう。
  127. 林大造

    林説明員 若干数字にわたりますので、私から申し上げますが、昨年の六月四日に閣僚懇談会できめられましたいわゆる八項目、その中には輸入の自由化、特恵関税の早期実施、関税引き下げの推進、資本自由化の促進、非関税障壁の整理、経済協力の推進、秩序ある輸出財政金融政策の機動的運営という八項目が述べられております。また御指摘のことしの五月二十日のいわゆる七項目におきましては、財政金融政策の機動的展開、輸入促進対策、輸出取引秩序の確立、資本輸出対策、外貨活用対策、経済協力の推進、さらにそれに加えて所要の立法措置を講ずる、いわゆる七項目になっているわけでございます。  これらの施策がわが国の輸出入にいかなる影響を及ぼしたかということでございますが、この八項目あるいは七項目の実施、それによりまして日本景気は御指摘のとおり非常に回復してまいりました。さらに加えまして、昨年の十二月のいわゆるスミソニアン体制の確立によりまして各国のレート調整が行なわれた。これらの施策はいずれも若干のタイムラグをもって輸出及び輸入にあらわれてきております。この輸出及び輸入数字の変化のうち、どの対策がどれだけの効果をあらわしたか。それぞれの増加率というのは、タイムラグの関係もあり、実際問題として数字を詰めることがむずかしいわけでございますが、一応前年同月比でまず最も効果があらわれました輸入について御説明申し上げますと、これはIMF統計による対前年同月比でございますが、昨年の七−九月にはマイナスの二・三%でむしろ純減でございました。それが十−十二月にはプラスの五・一%、ことしの一−三月にはプラスの一一・九%、それからことしの四−六月にはプラスの一一・〇%、それから七−九月には二六・一%、輸入が非常に顕著な回復を示しております。このうち四−六月がやや横ばいに推移しておりますのは、一つには海員ストの影響もあったかと存じます。  一方におきまして輸出のほうはと申しますと、輸出のほうの影響輸入ほど顕著にあらわれない。これは景気上昇効果あるいはレート調整効果というのが輸出のほうにどうしてもあらわれ方がおくれて、はっきりあらわれない面があるからでございますが、一応同様の数字を申し上げますと、昨年七−九月には前年同月比、プラスの二六・三%、十−十二月には二三・四%、ことしの一−三月には二二・二%、四−六月には一二・二%、最近の七−九月には一七・八%、というふうに相なっております。九月は速報値でございます。したがいまして、どの項目がどれだけ寄与したかということを確定して申し上げるのは非常に困難でございますけれども、いずれにいたしましても、政府がとりました諸般の施策というのがかなり顕著な効果をあらわしているということは申し上げられると思います。
  128. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いまの数字を見て、顕著な効果をあらわしたと言うんですけれども、それならば何も緊急な対策なんかは講ずる必要はない。八項目、七項目で非常に顕著な効果をあげたと言うんですが、IMFの総会あたりではこれを国際的に評価しているのかどうか。顕著な効果をあげて日本は努力していると評価しているのかどうか。この点はどうですか、大蔵大臣
  129. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私の申し上げたいと思いますのは、先ほど、決してあげ足をとろうというようなそんなさもしい根性で申すのではございませんが、黒字減らしのためにいわゆる福祉型の予算といいますか、福祉のために貢献する、そしてそれがまた日本の国際通貨改革の手段一つとして資し得るような経費の使い方ということをするのに役立つ、こういう意味で資するということを申し上げたのであります。だから、その点私は、いま仰せになりましたような、直接的に貿易で黒字が出た、そしてその黒字によってわれわれがこの日本国内の福祉に重点を置くのだという考え方ではなくして、今度のこの福祉関係予算というものは、やはりこれによっておのずから多数の国民の福祉の向上を期待しておるものにこたえるという大きな効果があるのであります。その効果をわれわれは考え、しかも将来に向かってやはりわが党としまして、この際にぜひ皆さまに御理解を仰いで福祉主導型の予算の形に持ってまいりたい、こういう考えを持っているので、それでわずかでありましても、やはりそのほうに重点を置く、そうしていわゆる経済成長型の予算というものにはそういう金は使わない、そういうところへは財源は使わないというところにわれわれのねらいを定めたのでございます。この点、御理解を賜わりたいと思います。
  130. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いままでのあらゆる論評を見ると、七項目、八項目ともにほとんど効果はなかった、あらためて二十日を期して新対策を閣議決定したい、こういうところまでいっておるわけでありますけれども、新しい緊急対策として、午前中に来た通産大臣は、貿易管理令までやって緊急避難措置を講じてやりたい、こういう意見も出たわけであります。しかし、この新しい項目について、まず輸出規制についてはどういったものを、それから輸入に対してはどういう手を考えておられるか、その点だけ伺って、この質問を打ち切りたいと思います。
  131. 林大造

    林説明員 先ほど非常に顕著な効果があらわれていると申し上げましたが、御指摘のありましたように、これで十分というわけでは決してないわけでございまして、依然として黒字の幅は大きい。そこで、御指摘の二十日の新対策の準備をただいま進めている最中でございます。輸出につきまして、けさほど通産大臣からお話のございました輸出貿易管理令等を発動するかどうか、発動する場合に、その対象品目、態様いかん、また輸入についてはどういうような具体的な措置をとるかという質問でありますが、その輸出面の調整措置につきましては、まだそこまで具体的に煮詰まっておりません。その点は通産大臣もお触れにならなかったわけでございまして、たいへん申しわけない次第に存じますが、二十日の金曜日になりませんと、具体的にどういう措置が打ち出せるか申し上げられない次第でございます。輸入につきましては、現在いろいろな方策を私どもといたしまして考えておりまして、関税引き下げでございますとか、あるいは特恵関税の関係をもっと充実するとか、あるいは輸入割り当ての拡大ないしは輸入自由化等々を考えております。それにつきましても、目下各省間で鋭意折衝中でございまして、まだ詰めが残っておりますので、具体的にどういう内容で実施するかということをはっきりここでお答えできる状態になっておりません。
  132. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これは二十日を過ぎないとお答えできないということでありますので、どうか緊急に、輸出貿易管理令という考え方まで浮かんでいる時期ですから、どうかいままでのような項目を並べるだけでなく、実効のある措置をぜひひとつ大臣も真剣に考えていただきたいということを要望しておきます。  それから次に、減税についてでありますが、午前中もこれは質問がありましたけれども、大臣は午前中の答弁の中で、広く国民にこたえるためにちょびちょびした減税では意味がない、こういうことで、前内閣のときには総理大臣も大蔵大臣も、税収の伸びを見て、できたならば何とか低所得層の国民のためには減税を考えたい、こういうことで、伸びたならば減税をするという、こういうふうに受け取れる意見まで出たのでありますけれども、現在主税局で見通した以上の大幅な伸び、いわゆる自然増が三千億という状況になったのですけれども、これに対して大臣は、もう前とは変わったんだからという考え方で午前中のような答弁がなされたのだと思うのですけれども、年内減税についてはやはり意図はない、こういう判断でありますか。
  133. 植木庚子郎

    植木国務大臣 年内減税の問題は、午前中もお答えいたしましたように、私といたしましてはこの際やることはできまいという見通しで仕事を進めております。と申しますのは、やはりわれわれがこれから後来年度予算の編成のうちの大きな一つの柱として考えておりますのは、今回は額が小さいという御批判でございましたが、しかしながら、本予算に入っておる福祉予算よりは非常に少ないと仰せになりましたが、私はやはり来年度の予算においては福祉型の予算をつくるということで、うんと力を尽くしてみたいという考えを持っておるのであります。福祉型の予算と申しますと、やはりその中にはもちろんいろいろ建築その他物的な施設の増強もございましょうが、それぞれの不幸なる人たち、恵まれない人たちに対しての金銭的な補助、助成、力づけというようなものも非常にたくさんの金が要るのであります。こういうことのためにはやはり、たとえば所得税のようなものは、恒久財源として、そして普通歳入として最も社会福祉等の福祉型の予算に使うのには持ってこいの大事なものでございます。それだけに私は年内の所得税減税は避けていきたい、そうして、来年度の伸びも幸いにして、最近の私の知ったところによりますと、その伸びもだんだんと悪くないようでありますから、これをそうした社会福祉、いわゆる福祉国家建設のための大事な財源に充てたいという腹もありますので、年内減税はこの際思いとどまっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  134. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 非常に残念な答弁であります。前には税収が伸びたならば何とか減税をすると言っておったのが、ずっとしりすぼみになってしまった。しかも午前中の答弁ですと、所得税の減税を中心に大幅なものにしたいと言うけれども、その規模すら大臣の口からは聞くことはできない。こういうことで非常に残念でありますが、どうか所得税減税を中心にやるという点については絶対にこれを動かすことのないようにお願いしたいと思います。  それからもう一点は、来年度税制でいわゆる産業優先から国民福祉優先に切りかえる、こういうもう田中総理も大蔵大臣も同じ考え方だと思うのですけれども、従来わが党では税の公平という点を中心に、産業関係の税、いわゆる法人税が非常に税額も低く押えられている。すなわち昭和二十七年の四二%から年々引き下げられて、現在では四十年不況当時よりももっと低い三六・七五%、こういう線で据え置かれておって、これは先進国に比べて低いということは主税局長等からもいままで伺っておりますが、非常に低い。したがって、黒字を押える、あるいは税の公平という点から見ても、この法人税については当然これは引き上げを考えなければならないと思うのです。その税率が低い上に資本蓄積あるいは社内留保、こういう名目で非常に多くの租税特別措置が設けられておる。大蔵省としても今回は相当思い切ってこれらの措置には手をつけていきたいということは、いままでの答弁の中でも私も伺っておるのですが、この租税特別措置に対してはどういうふうに考えておられるか。この点について大臣からはっきり伺いたいと思います。
  135. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その点につきましては、税は公平でなければならない、それが一番大事だとただいまも仰せになりましたが、私もさように存ずるのであります。したがいまして、いま行なわれております、現在なお存置しておりまする法人関係の特別なるゆるやかな不公平さが一部分でも残っているならば、これをできるだけ是正をしなければならぬ、かように考えておりますので、おそらく、私もこの趣旨のことを政府税制調査会の席で一つの意見として申しておりますから、あるいはその席上においても今日いろいろと御研究をしておってくださるものと思っておるのであります。こいねがわくはその有力な御意見をいただいて、そして私もその考え方で、従来の甘いのではあるまいかという疑いを受けておる部分についての是正はぜひともやってみなければならない、かように考えております。
  136. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 大臣のその決意はわかるのですが、事務当局から従来問題になっておったいろいろの社会保険診療報酬に対する特例あるいは海外市場開拓準備金等は、これは当然撤廃しなければならない問題だと思うし、交際費課税の強化等もやらなければならないということがしばしば強調されておりましたし、私どももこれは当然やるべきだということを言ってまいりましたが、具体的に撤廃をする項目等がはっきりしておったならば主税局長から答えていただきたい。
  137. 高木文雄

    ○高木説明員 かねて御議論の対象となっております特別措置のもろもろの項目につきましては、来年度の予算編成に関連する税制改正の事項として鋭意検討を続けております。その中で、ただいま御指摘のありました社会保険診療報酬の問題については、この春以来税制調査会の中にそのことを審議するためだけの特別委員会が設けられておりまして、すでに数回会合が持たれ、そして研究が進んでおります。海外市場開拓準備金の問題につきましては、これはただいま議論になっております国際経済環境の改善のための諸施策の一つとして、私どもとしては、まだ期限は参りませんが、この機会にやめてはどうかということで、政府部内で検討中でございます。いま御指摘のありましたもう一点の交際費の問題、これは前国会等でもしばしば御討議いただきましたところでございますので、私どももそれを踏まえて目下研究をいたしております。
  138. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もう時間が参りましたので、最後に年金問題について、大臣は非常に力を入れるということを前に所信表明で伺ったのですが、現在老人、いわゆる六十歳以上の老人が約一千百万人、こういうふうに記憶しておりますが、この中で現在年金を受給している数、いわゆる厚生年金、老齢年金その他含めて年金を受給している数、総ワクで幾ら、何人になりましょうか。
  139. 辻敬一

    ○辻説明員 現在老齢年金の受給権者数は福祉年金、恩給等すべて合わせまして六百二万二千人でございます。
  140. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 「恍惚の人」その他をあげるまでもなく、一千百万人もおる老人の中で六百二十万人しか受給をしていない。したがってこの中には、いわゆる老齢福祉年金月額三千三百円しかもらっていない人が三百三十万人余りおると思うのです。こういう三百三十万人もの低い人、その上に約四百万人近い所得制限その他いろいろなもので受けられない人がいる、泣いている人がいる。こういう状態のときに、いままでも公明党をはじめとして野党は全部そうですが、賦課方式をとって、とにかくこの老人にあたたかい手を差し伸べるべきである、こういう主張をしておるのですけれども、賦課方式を政府では一体どう考えておられるか。厚生省からおいでになっておると思いますが、お答えいただきたいと思います。
  141. 幸田正孝

    ○幸田説明員 お答えいたします。  御指摘の賦課方式の問題につきましては、私どもといたしましては、結論的に申し上げますならば、現在直ちに賦課方式を採用するということについては適切でないという考え方を持っております。と申しますのは、先生御案内のとおり、日本の老齢人口、現在一千万人をこえます六十歳以上の老齢人口がおりますけれども、今後十年あるいは二十年とたちました場合の老齢化というのは、諸外国に例を見ないほどの非常に大きなスピードで老齢化が進んでまいります。したがいまして、現在直ちに賦課方式をとりますならば、私どもの世代はきわめて安い負担で済む反面、今後私どもの後代の世代というものが非常に過重なものになるわけでございます。私どもといたしましては、そういった世代間の負担の公平という観点からいたしまして、現在の時点で直ちに賦課方式に移行するのは適当でないという考え方を持っております。
  142. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もちろん負担の公平という点から考えて、いま当面直ちに切りかえることについては問題があろうと思う。しかし一方、老齢福祉年金等月額三千三百円という状態に置かれておっていろいろな社会問題を起こしているわけです。しかも先進国の中では、スタートに相違はあるけれども、もうほとんどの国が賦課方式をとっておる。額ももう老齢福祉年金を取り上げたときには問題にならない額を支給されておる。こういった状態考えたときに、いまのような状態、今後十年、二十年先にこの老人問題は解決するんだということを先ほど大臣が答弁をしているように、福祉問題に力を入れてそうして産業優先から国民優先の政策に切りかえるんだということとはたして合致するかどうか、その点についてはどうですか。
  143. 幸田正孝

    ○幸田説明員 先生御指摘のとおり、現在の老齢福祉年金をはじめといたしまして、その他の老齢年金の額が老後保障という点におきまして必ずしも十分でないということは私どもも十分承知をいたしております。問題はやはり年金額の水準を適正なものにいたしまして、老後を託するに足る年金にいたすということが最も肝要なわけでございまして、そういった意味で私ども厚生省といたしましては明昭和四十八年を年金の年ということにいたしまして、現在関係審議会の御意見も聞くかたわら、私どもも明年度は年金の大幅な引き上げということに重点を置きまして鋭意作業を行なっている段階でございます。
  144. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間がだいぶ経過しましたのでここで打ち切りますが、いずれにしても来年度大幅な増額というのですが、三千三百円の老齢福祉年金、これを予算要求では幾らにして適正水準にしたいと考えておられるか、その点伺いたい。  それからもう一つは、いろいろな所得制限があって、これは個人の所得の多い場合には問題ありませんけれども、私が最もけしからぬと思うのは、扶養義務者の所得が多いからといって適格者が制限をされるということについては問題があると思うので、この撤廃についてはどう考えておられるか。その二点を伺って終わりたいと思います。
  145. 幸田正孝

    ○幸田説明員 福祉年金の問題につきましては、拠出年金との関連その他がございますので、明年度は月額五千円に老齢福祉年金を引き上げるということで予算要求をすでに行なっております。  それから、扶養義務者の所得制限につきましては、先生御指摘のとおりの問題がございますので、本人の所得制限は別といたしまして、扶養義務者の所得制限につきましてはこれを撤廃をするということで、これも同時に予算要求を八月末の概算要求の際に行なっているわけであります。
  146. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま扶養義務者の所得制限は撤廃する、こういう予算要求をやっておる、それから老齢福祉年金は三千三百円を五千円に引き上げる、こういう要求をしているというのですけれども、結局大蔵大臣としてもその線で実現をさせていきたいかどうか、この点について大臣にお答えをいただいて終わりたいと思います。
  147. 植木庚子郎

    植木国務大臣 この問題につきましては、老人対策は非常に大事な時期に来ておると思いますから、でき得る限り好意を持って前向きに研究をいたしたいと思います。
  148. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 終わります。
  149. 金子一平

    金子委員長 竹本孫一君。
  150. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣に主としてお伺いしたいのですけれども、午前中にも堀委員からいろいろ御質問が出たようでございますけれども、私なりに一通り御質問いたしたい。  問題は円の再切り上げの問題ですが、私はこの問題に触れることが適切であるかどうかということについてはずいぶん考えておりました。実は先般、一週間ぐらい前でございますが、中小企業団体中央会の全国大会が新潟でありまして、それに出席をいたしましたところが、非常に大きなスローガンとして、円再切り上げ反対と書いてある。中小企業に与える打撃の大きいことを考えますと、当然なことだと思います。しかし、私そこにすわってじっと大会を見ながらいろいろ考えたのでございますけれども、反対といってスローガンを掲げて大会で決定をすると、一体それで何ができるのであろうか。それから、そういうことを言って政府を若干鞭撻する意味もあるでしょうが、鞭撻するとして、円の再切り上げがないようにうまく推進ができるであろうか。あるいはそういうことよりも、再切り上げはあり得るという前提のもとに、むしろ気の毒な中小企業に対しては、それに対応する準備なりあるいはいろいろの指導なりを行なうほうがより適切なのではなかろうかといったような問題をいろいろ考えてみたわけであります。そういう意味で、私は結論から申し上げて、はっきり論点を明らかにしたいと思うわけですけれども、私はここまでくれば円の再切り上げは避けることができないであろうという立場でいまから御質問をいたしますので、避けられるというならばその立場でいろいろとお考えを承って、どういう点において見解の相違があるのかという点をひとつはっきりさせてみたい、こういう意味で御質問をいたしますので、ひとつ明快な御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいことは、すべての政策にはメリットとデメリットがそれぞれありますから、円の再切り上げが万能薬とはもちろん私も思いませんが、むしろデメリットが多いという前提で再切り上げ政府としてはできるだけ避けようと御努力をいただいておると思うのですけれども、円再切り上げのメリット、デメリットはどういうふうに考えておられるのか、そのポイントだけを、簡単でけっこうですが、メリットとしてはこれだけのものがあるかもしれぬが、デメリットはこれだけある、よってデメリットのほうが多いから反対というならば、そういう立場でひとつ御答弁をいただきたい、こう思います。
  151. 植木庚子郎

    植木国務大臣 詳細な数字にわたります点が必ずしも私には十分でございませんから、足りないところは事務当局に補足していただきますが、私はやはり円の再切り上げを行なうことによって、国民の多数の階層、しかもどちらかというと必ずしも力の十分じゃないような中小の企業の方々、こうした方面に及ぼす悪い影響が非常に広範である。だからこれは、いわゆる再切り上げをやってしまってそうして救済措置を講ずるというようなことではとても追っつかないんじゃあるまいかという感じがしてならないのであります。  そこで私は、やはり円の再切り上げはあくまでも避けたい、絶対に避けたいという強い念願、しかも強い意思を持って各省の諸君とも話し合い、またいろいろな機会に自分の話し合いのできる人にはこうした考え方に賛成を得て、そうしてそれぞれの立場でそれぞれがやはりその応分の努力をしていただくということをつとめてみたいと思っておるのでございます。しかしながら、私も微力でございます。だから私のその考え方、念願、意思とでもいいますか、こうしたものがはたして必ず実現できますと約束をせいといわれてもこれは非常に困難であり、また約束せいといわれたっておまえの約束じゃたよりにならぬとおっしゃられるにきまっておりますから、私はやはり自分がその職責におる限りはあらゆる努力をしてみたい、そうして各省の理解を仰ぎたい、こう思っておるのであります。したがいまして、今度の十九日、二十日を目標にして経済企画庁長官にあっせんの労をおとり願って、そして各省の意見の相違を調整して、そうしてでき得る限りこうした再切り上げが避けられるような努力をみんなでひとつ力を合わせていただきたいという努力をしようと思っております。これがはたしてどの程度までに皆さんの合意を得られるか、私としては事務当局と一緒になって、そして各省の諸君に当たってみたい、お願いをしてみたい、また上司に対しても十分われわれの意のあるところを伝えて、そしてでき得るならばわれわれの意見もぜひ尊重してもらって、適切なるあっせんの労を、長官は言うまでもなく、幹部の方々にも訴えてまいりたい、こう思っておるのでございます。
  152. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣の非常に良心的な御答弁だと受け取っておりますが、確かに再切り上げがあった場合、三百六十円が三百円前後になったということだけでも中小の企業はそれを受けとめるのにたいへんな苦しみを持っておるわけですから、それがさらに二百八十円になるか九十円になるかは別として、再切り上げになれば非常な打撃を与える。大臣の御答弁でいえば救済は追いつかないような打撃を与えるであろうというお考え、これもよくわかります。私どもの立場からいえば、デメリットとしてはそうした、壊滅的とはいいませんけれども、致命的な打撃を与えるということと、それがまた一つの契機になりまして、せっかく福祉国家を建設しようというような、いろいろと考え方が強く前面に出てきておるその福祉国家への軌道修正そのものまでも、円の再切り上げのためにお預けになるとかいうようなことになってはたいへんだ、これもまたデメリットの大きな点だ、こういうふうに私も実は思っております。  しかしながら、そうしたデメリットのほかにメリットがあるのかないかという点も、やはり一応はまじめに考えてみる必要があるじゃないか。大臣は答弁しにくい立場にもおありだと思いますので、私が申し上げますが、これは円が切り上げられるならばそれだけ日本の円の価値が上がり、したがってまた日本の労働の価値も上がるということでございますから、それは一つのプラスになる。中小企業等に対して致命的な打撃を与えるということは、別な面から見れば、いま限界生産力まで動員してGNP中心で動かし過ぎておるわけですけれども、それのすす払いというとことばが悪いかもしれませんが、能率の悪いところを切ってしまうということになるでしょうから、それだけの意味においては日本経済のある程度の再編成に一つの契機をつくる。ことばをかえていえば、円の資源の再分配という機能がそこで一歩前進するきっかけができる。そういう点も一つ効果ではなかろうか。三番目には、これで物価の引き下げをどの程度期待し得るか疑問でありますけれども、流通機構の整備等もあわせてやれば、日銀あたりでもそういう期待あるいは考え方があるようですから、このものすごく上がり始めた卸売り物価その他物価問題の解決にも一つの役割りを行なうようなことが期待されるかもしれない。特に輸出につきましては、円の切り上げだけ今度は単価がどうしても上がるわけでしょうから、輸出価格を引き上げるという形において、とにかく輸出市場に集中豪雨のごとく出ていったといわれる日本輸出を若干コントロールすることができる。まあ四つぐらい少なくともメリットもあるではないか。  このメリット、デメリットを考えて、本来ならばこの問題に取り組むべきだ。どちらが大きいかということは立場によっていろいろ違いますし、私もにわかに結論を出し得ない点があるのでございますが、ただ私は、そのメリット、デメリットを比較してデメリットが多いから反対、メリットが多いから賛成と、こういうようなゆっくりした政策論議をやる余裕がいまの段階であるかどうかということのほうがより問題ではないか。私自身は、いまやもうそういう論議議論を戦わしてその結論を待つというような段階ではない。それこそ好むと好まざるとにかかわらずやらざるを得ないところへ追い込まれるのではないかということを見ておるわけですけれども、そういう意味で、これから二、三の点をひとつお伺いをしたいのですが、まず最初に、国際金融局長数字で二つのことをお聞きしたいのです。  一つは、大蔵省はこの前ドル減らし政策について田中構想というものが出て、緊急海外何とかややこしい名前をつけて措置をやるといった場合に、円が一体どこから出てくるか、ドルはそこからそのまま出していくということはおかしなことになるといったような純粋な経済理論も含めて、田中構想は考え方が少し経済について幼稚な考え方である、とはおっしゃらなかったけれども、われわれはそう思っておるわけですけれども、幼稚過ぎるということが一つ。  それから第二番目には、そういう必要はないではないか。大蔵省考えとしてはドル減らしの方法はあるというような御説明があったと思うけれども、その説明はいま考えると間違っておったのかあるいは考え方を変えてこられたか、その点が一つ。  それから、そういう価値判断は別として、中期、長期の国債をアメリカから買うとか、あるいは輸銀のどうだとかいって貸し付けをするとか、あるいは預託をするとかいうような形で、ドルをどの程度に減らすといいますか、隠すというかわからないけれども、減らされたのであるか、その数字をひとつ伺いたい。二つであります。
  153. 林大造

    林説明員 まず第一点のお尋ねでございますが、いわゆる外貨貸し構想といわれるものにつきまして、いろいろな問題があるから、したがって単純に、外貨がそこにあるからそれを貸せばいいではないかという議論には乗れないということは、今日もそのように思っております。外貨を貸す以上、必ずそこに円の裏づけがなければいけないということは、現在も依然としてそのとおりに考えておりまして、過日、八月に外貨貸しの要綱を発表いたしましたが、これは二つのルートで外貨貸しが行なわれるわけでございまして、一つ政府関係機関である輸銀その他から外貨貸しが行なわれるケースでございます。この場合には輸銀その他が円を調達いたしまして、外国為替資金特別会計から外貨を買ってくるわけでございますから、したがって円の裏づけがある。それからもう一つのチャンネルといたしましては、為銀が外貨貸しをする。その場合の外貨はどういうふうに調達してくるかというと、そこにある外貨ではなくて、為銀が外国為替資金特別会計からドルを円をもって買ってもよろしいし、あるいは海外からドルを引いてきてそれを貸してもいい、その原資はあえて問わないということにいたしております。  したがいまして、外貨貸しというのは円の裏づけがなければいけない。単にたまったドルを外にさばくという考えではいけないという考え方は依然として持っておりますが、しかし現在対外投資が、ドルの先行きについての不安を理由といたしまして手控えられる傾向にある。したがってそれを打開するという意味におきまして、いろいろな条件をつけまして外貨貸し構想に踏み切った次第でございます。  で、そのような外貨貸し構想、その他ことしに入りましてから、為銀に対する外貨預託あるいは中長期海外債券等の購入というような形によりまして、海外からの借金を返済させましたり、国あるいは日本銀行が保有しております公的な外貨の効率的運用をはかるということで、どの程度の運用をしたかというお尋ねでございますが、これは一月以来九月の末までで約二十七億ドル、そのチャンネルで運用をいたしております。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 外貨貸し構想に関連して、円の裏づけがなければだめだぞという大蔵省考え方は、基本的なものは一つも変わっていない。これはけっこうでありますし、またそれ以外には考える方法はありませんから、変わらないのがあたりまえだと思いますが、その点は了解いたしました。  それからいまの二十七億ドルということの中身をもうちょっと具体的に言ってもらいたいというのが一つ。それからあのときの大蔵省考えは、田中構想であわてなくても、外国の中期債なら中期債あるいは長期債を買うというような方法その他で、まあ当時は百六十億ドルであったか百五十億ドルであったか忘れましたが、ドルの蓄積について問題の多いようなたまり方については大体解決ができるというようなお考えであったと思うのですね。その考えはいまでも正しかったのか、間違っておったのか、それ以上に情勢が発展したということであるのか、その点についてのお考え伺いたい、こういうことであります。
  155. 林大造

    林説明員 二十七億ドルの内訳でございますが、外貨預託によりまして海外からの借り入れを返済させる系統に約十八億ドル、それから海外の中期債の購入に約九億ドルを充てております。  それから、これらの施策を講ずれば十分ではないかということでございましたけれども、これだけの施策で完全に十分であるというわけにはいかないわけでございまして、やはりこれらは、たまった外貨をどういうふうな姿に運用するか、あるいは借金の返済に充てるか、いわばストックをどういう形で処理するかという問題でございます。しかしそのほかに毎月、経常収支、基礎収支、その他の黒字がかなりの金額にのぼっておるわけでございまして、この系統から毎月かなりの外貨日本国内に流入してきております。そのほうの系統もいろいろ処理しなければいけないわけでございまして、この系統は、昨年の八項目に引き続きことしの六月でございますか、五月でございますか、七項目をいたしました。それだけでも十分ではないということで、引き続きこの二十日にさらにそれを強化して対策を進めようというふうに努力をいたしている次第でございます。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣、いま私が詰めておるところは、大体八項目とか七項目とかいう対策を政府が講ぜられる御努力なりあるいは強い念願というものはわかるのですけれども、客観的に見れば全部間に合っていない。これは通産省のやっておるところを中心に言うてみるとそうなんです。そこで私がいま申し上げているのは、大蔵省外貨減らしという田中構想みたいなあわてた政策をとらぬでもよろしい。預託か外貨貸しかあるいは米国の国債の購入か、何とかすれば大体片づくんだというふうにお考えであったとぼくは思うのですよ。その点、局長と同じなのか違うのかちょっとよくわかりませんが、私は当時の大蔵省考えは、あるいはわれわれ理事に特に御説明があったときの空気は、少なくともこれでいけるんだからそうあわてる必要はないというような言い方だったと思うのですね。ところがそれはそうでなかった。たとえばいまの数字で見ると二十七億ドル、こういうことであるし、米国の外債を買ったのが九億ドルというようなお話だけれども、九月には一月で九億五千万ドルの貿易収支の黒字が出たというようなことになりますと、こういう情勢から見れば、やはり情勢判断において大蔵省の場合も十分でなかった。十分でなかったから、あとやります、あとやりますということばかり言うておれば当面としてはそれで成り立ちますけれども、私がいま一番大きな問題にしておるのは、情勢判断そのものが、大蔵省の場合でも通産省の場合でも常に甘過ぎるじゃないか。それがために結果的に見れば後手に回り過ぎたりあるいは外国から誤解を招いたり、あるいは国内でも必要以上の混乱なり不安なりを起こすんだ。そういう意味情勢の判一断にどうもしょっちゅう間違いがあるということについて、これが一つの例ではないかという点を私いま言っているわけですから、そういう意味で受け取ってもらえばいいんです。  いずれにしても二十七億ドル前後の話では話にならぬと思うが、さらにもう少し詰めて局長にお伺いしたい点は、日本にいま百六十四億ドルあるか五億ドルあるか知りませんが、それを一つ伺って、そのほかにいま言ったように米国の外債を買うとかなんとかいう形で、まあ悪くいえばちょっと形を変えて隠しているといいますか疎開しているといいますか、そういう形で化けておるといいますか、そういうものが一体何億ドルくらいあるかということを一つ聞きたい。  それからあわせて、日本に百六十四億ドルあるといっても、逆にもし何か事があれば、日本で株式を買っておるつもりだけれどもぱっとまた外国へ引き揚げてしまう、あるいは輸入ユーザンスの関係で入ったような形になっているけれどもさっと逃げてしまうということで、とにかく百六十数億ドルというものが、安定的基礎における日本の保有外貨ということになると、いまある結論としての百六十億ドルに対してプラスしなければならぬものとマイナスしなければならぬもの、少なくともそういうふうなことを前提にして考える場合に、すぐに二十億ドルなり三十億ドルなりあるいは多くすると八十億ドルなりが逃げるかもしれぬ、こういうことを言う人もおるですね。そういうことで、きわめて事務的でけっこうですけれども、いまのドルは幾らだ、それに対して最近における御努力でこういう形でドルを一応保有からなくしたというものがどのくらいあるか。しかしながらまたいまある中でも非常に不安定なもので若干思惑で入ってきておるものもあるから、それだけはほんとうの日本の保有外貨から差し引いて考えることも場合によっては必要であろうと思われるドルはどのくらいあるか。そのプラスのものとマイナスのものがそれぞれどのくらいであるかということを伺いたい。
  157. 林大造

    林説明員 九月末の外貨準備の高は百六十四億八千九百万ドルでございますが、この中にはSDRでございますとかあるいはIMFのゴールドトランシュその他のものも含まれている。また金も八億ドル余りが含まれております。  それで、ほかにどれだけあるかというお話でございますが、先ほど二十七億ドルという数字を申し上げましたが、これが全部外貨として使えるものではございません。九億ドルという中長期債は固定したものでございますし、また十八億ドルの外貨預託は借金の返済に充てたものでございます。非常に多額の外貨準備があって、それが隠されているというような報道が往々ございますが、それはいわゆる円シフト対策ということで、海外からの借金のルートを国内のルートに切りかえられたものが入っております部分が非常に多いわけでございますから、したがいまして流動性のある外貨準備といたしましては、この百六十四億八千九百万ドルを頭に入れていただければよろしいかと存じます。  一方におきまして、外貨が流出する可能性のある金額は幾らあるかということでございます。これにつきましては、最近時におきまして外銀からの民間の借り入れが約四十億ドル、それからユーロダラー市場からの取り入れが約四十億ドルございます。ほかに株式、債券のたぐいがかなりあるわけでございます。株式、債券のたぐいになりますと、これが日本国内で売却されまして海外に引き揚げられます場合に、現在株価が非常に高騰いたしております関係上、従来の流入額を単純に累計しただけではその金額が突き合わないわけでございます。したがいまして、その金額を累計すると一体幾らくらいになるか、株式及び債券を合計して幾らくらいになるかということはなかなかむずかしい推計作業になるわけでございますが、全部で約四、五十億ドルのオーダーであるというふうにお考えいただいてよろしいかと存じます。しかしこれは海外からの借り入れの大宗でございまして、このほかにドルが海外に流出していきますような場合には、当然のことながら円が弱くて海外のドルその他のほうが強いという状況にあるわけでございますから、リーズ・アンド・ラッグズとの差も現在より違う方向に働きますし、また国内から円が外貨を購入して流出するという状況にもなるかと存じます。現在のところは円が強いと一般に思われております関係上、海外に対しましてその円が外貨に化けて流出する方向はほとんど完全に自由でございますから、それがどの程度にあがるかということを考えてみなければならないわけでございます。ただ、ただいま申し上げました数字がそのまま全部海外に出ていくというのは、実際問題としては非常に可能性の乏しい問題であると存じますし、またそのときには、それなりのいろいろな流動性補完措置が現在の国際通貨機構に仕組まれているわけでございます。したがいまして、どちらかというと、世界で外貨準備が多過ぎるではないかという目をもって見られております今日、そのような可能性があるということは十分に認識しつつも、その点で特に懸念する必要もないというふうに言ってよろしいのではないか、こういうふうに存じております。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま御説明いただいた数字は、あとでまたちょっと簡潔にメモにしてひとつ見せていただきたいと思いますが、お願いいたしておきます。  いまの経済理論に関する限りは全くそのとおりだと思いますから、大体は一通りわかりました。  そこで、先へ進みますが、先ほども申しました円の再切り上げの回避策が間に合うかという問題に入りますが、・八項目、七項目、今度は十五項目、その次は三十項目といったように、項目はたくさん出てくるわけですけれども、この中できめ手になるものがあるのかという点についてひとつ心配があるわけです。私はやはりあまりきめ手がない、ただ概念整理として一応のそれぞれの項目があがっておることはりっぱだけれども、間に合うように、きめ手として役に立つかという点について非常に心配を持ちます。  そこで、それらのことを一つ一つやろうと思うと時間がありませんから、一つ二つポイントの重要な点について申し上げたいと思うのですけれども、きょうは午前中私ちょっと中座をしたので十分聞かなかったのですが、一つは、中曽根通産大臣は、場合によって貿易管理令発動考えるということの御答弁があったようです。そこで大蔵大臣一つ伺いたいことは、大蔵省として貿易管理令、まあ形は自主規制ということになるのかもしれませんが、そういうような形での規制による輸出調整、それと輸出課徴金とか輸出税とかいいますけれども、こういうものは閣議であるいは関係閣僚会議でもいろいろ御論議があると思うのですけれども、まとめて貿易管理あるいは自主規制といったようなものの方法と、それから輸出課徴金あるいは輸出税といったような、大蔵省のお考えのようでございますが、その政策とどちらがより適切とお考えであるかということを結論だけ聞きたい。  その前に、またあわせて伺いますが、たとえば貿易管理令というのは、法の制定が御承知のようにいまとは経済段階あるいは経済情勢が全く違うときにできた法律なんですね。すなわちドルが足らなくて困ったときに、どういうふうに輸入規制するかということが出発点になっておる。あの法文を読んでみるとそういうふうに書いてある。ただ役人が備考にそうでない場合もあり得るように、法律の技術としては両方書いてある。しかしながら、全体の趣旨はドルが足らないときにどういうふうに貿易規制するかということに中心があったのでありますから、法律の根底を見る、あるいはその他条文の端々を見ればそれがはっきりしておる。そこで私は、本来ならばそういうドルが足らないときの法律でドルが余ったときの規制をそのままやろうなんということは、それ自体政府の怠慢である。いつか法制局にも私はその点は大いに質問したことがあります。調べてみると、最近でも経済の復興なんということばがある法律が幾つもあるのですね。いま復興し過ぎて困っておるときに、経済の復興ということを中心にした法律で、しかもそれで規制をするということは全くごまかしというか、なまけ者というかしりませんけれども、はなはだ私は妥当性を欠いておると思うのですね。そういう意味で、貿易管理令でドルが余っているときに輸入ではなくて輸出規制するということは、法の根本義からいってもおかしいということが一つ。  それから第二番目には、貿易管理令とかいうような考え方は、特定の品物、たとえば繊維なら繊維というものについてやるならばまだ事情が違ったというか、問題を別にすれば一応考えられ得るのですね。ところが、今日問題になっておるのは、日本の全体の輸出が二十六億ドル九月にあったのは多過ぎるということが問題なんで、個々の品物を、繊維がどうだ、テレビがどうだ、あるいは自動車がどうだという問題とは違うと思うのですね。したがって、今度打つ手というものは、そんな個々のものを寄せ集めて並べてみれば対策になるというようなものではなくて、日本経済全体の体制なりあるいはわれわれで言うならば輸出中心主義の体質が問題になっておるときに、個々の管理令で押えてやっていこうということ自体は、政策目的を誤るだけではなくて、その効果も非常に疑問である。そういう個々の品物をしかも自主規制で押えていく、貿易管理令で押えていくということは、法の趣旨からいってもおかしいが、一体どれだけの効果があがるか。やはりいまの問題は、それこそ輸出税というか円の再切り上げというか、そういう全般効果のある手、そういう手を打たなければだめだと思うのですね。その点について大蔵大臣貿易管理令はそれぞれの個々のものを中心にした大体のお考え方であるし、それをまとめて輸出税のかわりに管理令でやるということは、私は法律技術からいってもなかなかむずかしいと思いますし、また効果の点からいってもはなはだ疑問だと思いますが、その点についてどうか。  それからもう一つの点は、いまは資本主義経済で、いわゆる自由経済の原則に立っておる。もし今度の場合、中曽根構想か何か知りませんが、そういう考え方輸出自主規制というものをやれば、全部の品物を押えて、しかもアメリカから文句を言われないところまで次々に輸出を押えていこう、こういうことになれば、ものすごい、戦時統制経済以上とは言いませんけれども、それにも匹敵するような統制を次々にやらなければならぬ。自由経済の原則に立っている自民党さんが、経済学の知識が足らないでやるのか何か知りませんけれども、方針を変えてやるというのではないでしょう、そういう考え方でありながら、めくらヘビにおじずでやって、結果的に見ればとんでもない統制経済体制に入ってしまったということになり得ると私は思うから、念のため申し上げるのだけれども、そういうことの見通しを持ってやるのかどうか。経済を知らぬで経済を論ずる人が多過ぎるので困るのでありますが、結局は経済というものは一つを押えれば次々に全部を押えなければならぬ、しかも貿易管理令のようなもので押えていこうと思ったら、日本じゅうのあらゆる産業をめちゃくちゃに押えていかなければ、いまのアメリカの要望に沿うような輸出のコントロールということは私はできないと思うが、そういう点からいえば、まだ円の切り上げなりあるいは大蔵省が言っておられるような考え方のほうがベターだ。通産大臣は、そういう経済秩序の全体にそれがどの程度の打撃なり影響なりを与えるかということを知って言っているのか、わからぬで言っているのか、その辺私はわからないが、大蔵大臣としてはそういう点について少なくともどういう見通しを持っておられるか、その辺をちょっと伺いたい。
  159. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お答え申し上げます。  お答えにならないかもしれませんが、私ども大蔵省といたしましては、先般来数回にわたって会議をいたしまして、そうしてわれわれとして各省に対し主張すべき点、また要請すべき点をいろいろと幾つかの項目を並べて、そしてそれをまず両方の意見のつけ合わせをやってみておるのがただいまの実情でございます。しかし、日はだんだんと非常に切迫してまいりますし、われわれとしては早く両者間のこの意見の食い違いについてあるいは合意点が見つけ出せるかどうか、これを経済企画庁長官にあっせんの労をとってもらって、そうして論議を尽くしてみたいというのがいま私どもの、熱心にそれぞれ自分の主張を、どういうふうにするかということの主張を研究したものを、それを相手にぶっつけるということはおかしいが、向こうに見せ合いまして、そして研究をしている段階でございます。したがって、私自身は御承知のように至って未熟な者でございますから、私はこういう問題について事務当局といつも一緒になって、そして皆さんの御意見を聞き、そして相手方はどういう主張をしておるのであろうかというようなことを実は説明を受けて、そして最後はどれとどれに線をしぼってやっていこうか、われわれの主張の最後はどれにしぼろうかというような問題について、まだ結論も得られていないようなありさまでありまして、今明日、あるいは明後日というような間に何とか最後のけじめ、意思決定、ここまではあくまでも主張するという決定をやってみたいというのがただいまの段階でございますので、実はいま大体この場合はこう、あるいは貿易管理令の場合はこういうような欠点があり長所があるというような問題についての十二分の研究がまだ遂げれておらないのが実情でございます。しかし、その日ごろの折衝そのものも、ここ数回事務当局同士で話し合いは進めてもらっておりますから、その段階においてお話し申し上げ、説明し得る点はできるだけ説明さしてみたいと思いますから、一応ひとつお聞きとりを願いたいと思います。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 いや、私が申し上げるのは、できるだけ早くまとめていただくということもけっこうですが、通産省の考えは間違っているということなのですね。ああいう考え方、これは間違った考え方で、へたな統制をやるようなことになるのだ。われわれが言っているようなもっと能率的な、もっと社会化された計画経済というものが、逆に悪いほうの宣伝に使われるぐらいのもので、結果的には国民経済を混乱させたり、強権政治になってみたり、たいへんな戦時統制経済の復活になってみたりする心配がありますので、本来こういう全体の経済体制の問題が問われている、あるいは円の価値が問われているというような問題に対して、それを避けるという努力の一つとしてではありましょうけれども輸出自主規制で、しかも次々にみなやっていこうというような形をやれば、おそらく通産省もそれを考えて、そこを願っているわけじゃないでしょうが、結果から見れば、とんでもない、へたな統制経済の復活みたいなことになるから、それは私はむしろ避けるべきだ。そういう意味では、大蔵省のお考えも私十分聞いておりませんが、まだ大蔵省考え方のほうが通産省の考えよりはベターである。そういう意味大蔵省の基本的立場というものをもっと堅持してもらって、突き合わせて、足して二で割るとかいうようなことじゃ困るわけですね。やはりこういう経済の基本に関する問題については、原則的なものはそれぞれ貫いてもらわなければいかぬ。  結局いまの田中内閣に対するわれわれの感じは、何でも思いつきが多過ぎる。極端にいえば、思いつきばかりだ。日本列島改造までそうですけれども、とにかく思いつきが多い。あとは勢いだけがいいということになると、とんでもない方向に行き始めたら始末がつかなくなりますから、そういう意味で、自民党の立場とわれわれの立場は違うでしょう、しかしながら、それなりに経済全体の体制なり秩序というものを混乱させてもらっては困るわけですね。そういう意味で、われわれは別な立場で、資本主義は資本主義なりにひとつ全体の体制を一ぺんに混乱させないような方向で問題を取り上げてもらいたい。それにはいま通産省が、言っておられるようなことは、もっと簡単に言えば、中曽根さんが言った——きょう答弁があったのは十分聞かなかったけれども考えておられることは、私はどうもあまり納得できない。貿易管理令、大演説をするにははででいいですけれども、その結果がどこまでいくかということ、日本経済全体、産業界全体に与える影響考えると、これはたいへんおそろしいことになる。また先ほどは、たとえば円の切り上げは中小企業に打撃を与えるという御心配をいただいておりますし、その点はそのとおりだと思うのですが、貿易管理でほんとうに自主規制をやるとか、あるいは政府が管理規制をやるということになれば、一番先に犠牲になるのはやはり中小企業ですよ。日本経済、産業界全体に混乱と摩擦を大きく起こすだけでなくて、またその中で一番打撃を受けるのは中小企業だと思うのです。そういう意味からいっても、この貿易管理構想というものは、管理令を発動しようという中曽根構想というものには私は反対である。  ついでに申し上げますが、これまた中曽根さんが言ったとか言わぬとか、変わったとか変わらぬとかいうのですけれども調整インフレ——インフレ政策というものは収拾がつかないからインフレだといわれるのだ。調整というのは、インフレを調整するという意味じゃなくて、卸売り物価外国に比べて安い、それを調整してある程度上げよう、こういう意味だと思いますから、調整インフレの調整とまた違いますけれども、しかし、インフレというのは、コントロールがきかないのがインフレでしょう。コントロールがきくようなら、これはインフレじゃないんだ。これは政策ですよ。それを、経済を知らない中曽根さんが、どこで聞いたか知らぬけれども調整インフレをやる、こう言うのだ。調整インフレなんというものは、歯どめのきかないインフレを歯どめをきかして政府政策手段にする、こう言うのだから、このぐらいナンセンスのことはないですよ。歯どめ、コントロールができないのがインフレでしょう。そのインフレを使って政策手段として効果をあげよう、こう言うのだから、もともと話が、もうわれわれから言うとナンセンスだと思うのです。まあその話はいずれあらためて予算委員会でやりますから、中曽根さんにやればいいことですから、大臣は要りませんが、大臣のお考えを承りたいのは、調整インフレであろうが何とかインフレであろうが、インフレというものは大衆生活を破壊するものであり、経済を破壊するものでありますから、インフレ政策というものは政策手段として考えるべきものではない、政策手段というものになり得ないものだという点を私は特に強調して、ひとつ大臣のお考えを承りたいのです。  それからもう一つあわせて、時間がありませんから最後に聞きますが、中曽根構想では、調整インフレをやれば卸売り物価が比較的割り安であるというのが引き上げられて、その結果輸出が減じて、そういう形で黒字がひとつ押えられるだろう、こういう期待あるいは考え方だと思うのですけれども日本においても相当いま、ことしの下半期は消費者物価も七%上がるとかいう話ですけれども、それだけある意味においてインフレ傾向を持っておる。しかしそれにもかかわらず、卸売り物価というもの、あるいは特に輸出価格というものはどれだけ上がったか、インフレと輸出価格の引き上げとはどういうふうに関連づけて見るべきであるか、その点についての大臣の考えを承りたい。
  161. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いろいろ御質問に託しての御高見拝聴いたしましたが、私といたしましてはきわめてまだ未熟でございまして、これについて直ちにいまここで御即答を申し上げるだけの自信がないのであります。しかし私は思いまするに、いまお話しになりましたような調整インフレということばによって託された——これは中曽根さんのお話かどうか私は実はあまりはっきりしませんけれども、その考え方新聞で見ました。見ましたけれども、私もあの問題に対してはやや理解しにくい点がどうしてもあったことだけを申し上げておきます。そうしてわれわれとしては、大蔵省大蔵省なりに、苦しくとも堂々と主張すべきところを最後までやってみて、そうしてその間違いなきを期そうじゃないかというのがただいまの態度で、しかもこれに対して容易になかなか各方面の責任者の御同意が得られておらないうらみがいまあることは、非常に残念にさみしく思っている状況であります。しかしあくまでもやってみます。あくまで努力をいたします。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 ほんとうはこれからいろいろ議論を進めなければならぬ入り口でありますけれども、時間が来ましたからこの辺で終わりますが、いま大臣は非常に謙虚な御答弁でございますけれども、やはりきょうは、日銀総裁においでを願って御質問があったようですけれども、そういうこともやはりこの通貨の問題、インフレの問題に対するわれわれ同僚の心配から来ていると思うのです。非常に重大なインフレの危機に立っておりますので、ひとつ信念的に強い態度で善処されるように要望申し上げまして終わります。
  163. 金子一平

    金子委員長 小林政子君。
  164. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、補正予算の問題について伺いたいと思いますけれども、補正の大型化あるいはまた国債の追加発行がインフレを促進するのではないか、あるいはまた公共投資がはたして国民福祉につながる生活環境整備、こういったようなものに投資をされるのであるかどうか、この点を中心にして質問をいたしたいと思います。  補正の規模は一般会計で六千五百億円ということでございました。いわゆる支出規模では約八千億円くらいになるのではないかというふうに考えられますけれども、そのうちで、いわゆる人件費だとか災害復旧の問題だとか、あるいはまた生産者米価の問題あるいは義務的経費、こういったようなものが、いわゆる当然増といわれているものがどのくらいになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  165. 長岡實

    ○長岡説明員 給与改善費が約千百三十億円、それから公共投資のうち災害復旧費が約千百億円、それから義務的経費の追加が百二十億円、大体そういったところであろうと存じます。
  166. 小林政子

    ○小林(政)委員 いわゆる生産者米価の引き上げ分等も含めて、いま言われた額を総計するとどのくらいになりますか。
  167. 長岡實

    ○長岡説明員 先ほど小林委員おっしゃいましたように、全体としての歳出の追加は約七千五百億円くらいになるわけでございますけれども、そのうちむしろ義務的経費といえないと申しますか、そういうものが公共投資のうち災害復旧を除きました約四千二百億円、それからその他に百七、八十億ございますので、それを合わせますと四千四百億円。それから交付税の交付金、これは三税の増収分を歳入に見込みますので、その三二%が地方交付税になりますので、これはいわば義務的と申しますか、半ば法律に基づくものでございますので、公共投資の追加その他合わせて大体四千三、四百億円というところが義務的経費ならざるもの。それから七千五百億円から引きました残りの三千三百億円、その程度のものが義務的経費、大きく分けますとそういうことが申し上げられるのじゃないかと思います。
  168. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、大体七千五百億あるいは八千億程度の規模でいまの経費を差し引いてみますと、大体残りの約四千億近くですね、これがいわゆる公共事業費の追加分であるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  169. 長岡實

    ○長岡説明員 そのとおりでございます。
  170. 小林政子

    ○小林(政)委員 先ほど公共事業費の生活関連事業、これを大臣もたいへん重視をされているということをおっしゃっておられましたし、また先ほどの午前中の御答弁の中でも、額ということは、生活関連についてはいま直ちに明らかにするということはできないけれども、伸び率で大体四割程度にしていきたいという御答弁がございました。そうしますと、一体公共事業費のうちで生活環境施設整備費等をいろいろ調べてみますと、四十六年度の予算規模が千二百十一億円ですから四十七年度は千四百一億円、したがって対前年増加率は、額では百九十億円で一五・八%になるわけです。そうしますと、これを四割伸ばすということになりますと、本年度の予算では千六百九十五億円にしなければという想定数字が出てまいります。したがって、補正ではここで二百九十四億円、約三百億円、この追加が必要だということが結論として出てまいるわけでございますけれども、そういう計算でまいりますと、実際には約四千億近くの公共事業のうち三百億は生活環境施設整備、こういったようなものに使うけれども、三千七百億円という額はいわゆるそれ以外の、先ほど来問題になっておりました道路建設だとか高速道路、その他一般の公共事業に使うというようなことになるのではないか、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  171. 長岡實

    ○長岡説明員 午前中に吉瀬次長からお答え申し上げましたように、現在のところまだ公共事業の種類別の内訳の数字が確定いたしておりません。したがいまして、吉瀬次長が午前中に申し上げましたのも、大体生活環境整備に重点を置いて公共投資の追加をいたしてまいりたいという気持ちから前年度に比べまして四割程度の伸びになるようなことをめどに一応各省と話を詰めてまいるということを申し上げたのであろうと思います。  ただいま小林委員のおあげになりました数字でございますが、四十六年度の生活環境施設整備予算は、公共事業の中で、補正後の姿で申しまして大体千二百億くらいでございます。ですから、これを約四割伸ばすということは、それだけで五百億近い数字になるということになるのではないかと思いますが、まだその辺が数字が詰まっておりませんので、どの経費で何百億追加ということまではお答えいたしかねますが、二百億、三百億という数字ではないかと思います。
  172. 小林政子

    ○小林(政)委員 具体的な数字はともかくといたしましても、しかし四十六年度の千二百十一億を基礎にして大体四割ということになると、大体どのくらいになるかということで計算すると約三百億、三百五十億になりますか、若干の違いはあると思いますけれども、そう大きな数字は出てこない。先ほどの公共事業費約四千億ということになりますと、三百億か四百億といたしましても、これではもう三千七百億近く一般の生活環境には関係のない公共事業に使われるのじゃないかという数字が出てくるわけでございますし、私どもこういう点から考えても、これは非常に問題があるのではないか。大臣のおっしゃっておるような生活優先ということがはたしていえるのかどうか。大臣、お答え願いたいと思います。
  173. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私は今朝来お答え申し上げたように理解をしております。
  174. 長岡實

    ○長岡説明員 午前中におそらく御質問にお答えをいたしておると思いますが、今回の公共事業の追加につきましては、今回の補正予算の編成の目的が、国際収支の改善に資するために、あわせて現在総体的に不足を告げております公共投資に対する追加支出を計上するということで補正予算準備をいま進めておるわけでございますが、その中で生活環境施設の整備に重点を置くという点ももちろん大きな一つの方針としてただいま各省と話を詰めておりますが、一方におきましては、今回補正で公共投資を追加いたしました場合の消化能力と申しますか、大体各事業別に年度当初来今日に至るまでにどの程度当初予算に計上いたしました各事業が消化をされていっておるか、またそれがどの程度追加をいたしまして円滑に執行ができるかといったような要素もあわせて考えてまいらなければならないのでございまして、気持ちの上では生活関連施設に重点を置きつつも、それだけで今回の公共投資の追加すべてを律するわけにもまいりませんので、各事業別の配分等につきましては実施官庁である各省とそういう点につきましても十分に話を詰めながら、目下経費のワクを詰めつつある段階でございます。
  175. 小林政子

    ○小林(政)委員 公共投資のいわゆる消化状況あるいはまたその執行の現状といったような問題について、いま数字を持っておりませんけれども、いつも問題になるのは、やはり公共事業の予算を組んでも、それに見合ういわゆる事務的能力だとかあるいはまた技術的なそういう配慮というものがされていない中で、なかなかこれが消化をされないというのが、いままでも大きな問題点になっていたわけです。ここでさらに、いまこのような中で、公共投資という名のもとで、生活関連はごく少数であって大規模な公共投資をやって、はたしてこれで消化できるのかどうなのか。そういうことすら私は重大な問題だというふうにいわざるを得ないと思います。しかも、この公共事業費の追加財源は全額国債ですか。
  176. 長岡實

    ○長岡説明員 一般財源でまかなうべきものも若干ござますが、大半は公債とお考えいただいてけっこうでございます。
  177. 小林政子

    ○小林(政)委員 御承知のとおり、この国債の追加発行という問題については、国民の中でもインフレにつながるんじゃないか、こういう危惧が非常に強まっているわけです。しかも今年度は、御承知のとおり当初予算のころから、一兆九千五百億というような、国債依存度一七%という非常に大きな比重を占める国債が発行されているわけです。その上に今回また公共投資ということで、これを含めれば二兆四千億というような非常に大きな額になるわけでございますし、まさに国債依存度というのが、予算の中に占める割合は二〇%にも達する。こういうようなことが実際に行なわれて、インフレにつながらないという保証はあり得ないというふうに考えられます。午前中の討論でも、いろいろとこの点については各党からも意見が出ておりましたけれども経済企画庁の発表したこの中身を見ても、実際には卸売り物価上昇している、しかも相当大幅な上昇である、あるいはまた消費者物価上昇の傾向にあるということがいわれているときに、このような中で国債を追加発行するということがインフレを促進するという危惧については、何ら大臣はお考えにならないのかどうなのか、ひとつはっきりと御答弁をいただきたいと思います。
  178. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  公債発行をいたします場合、私ども財政当局といたしましては、当然経済全体の均衡の中で公債発行の問題を考えていかなければならないと存じますが、現在景気は着実に立ち直ってはおりますけれども、先般の景気停滞、これがかなり長期にわたっておりましたために、特に今回追加いたそうとしております公共投資の関連産業の生産余力等もまだあるというふうに私ども考えております。それから今回の景気回復のパターンというものが、従来のようないわゆる民間設備投資中心型というよりは、やはり財政支出等によって景気回復がはかられていくという過程をたどっておりまして、テンポも比較的安定的と申しますか、なだらかと考えております。いろいろそのような点を考えまして、今回補正予算で追加発行しようと考えております公債によって、直ちにインフレを招くというようなことはないと私ども考えているわけでございます。ただ、小林委員の御質問にもございましたけれども、私どもといたしましては、やはり相当程度規模の大きな公債発行になるわけでございますから、今後とも経済運営にあたりましてはいろいろの指標を見ながら慎重に考えていかなければならないということは、十分考えておるつもりでございます。
  179. 小林政子

    ○小林(政)委員 やはりこういった事態の中で、当初予算でも相当の国債を発行している上にさらに追加発行ということは、これはインフレには直接つながらないと大蔵省側は言いますけれども、私どもは非常にこれは危険な内容を含んでいるといわざるを得ないというふうに思います。私は、国債発行というものを、消化能力もあるかないかわからないような、しかも生活環境の整備ということのごく少数の、予算の中でも大きな額を占めていない、こういったような公共投資というようなものは当然これは問題になりますので、国債発行というものをやはりここでやめて、むしろ景気回復ということも盛んにいわれておりますので、予想される景気回復ということで、自然増収を中心にして補正予算をしっかりと組んでいくということこそがいま必要ではないだろうか、こういうふうに実は考えております。  そこで、お伺いをしたいのですけれども、税の自然増の見積もりというものは約三十億円程度になるのではないかというような御答弁が先ほどございました。私は、この税収見込みの内訳についてどのようにごらんになっているのか、その内容についてお伺いをいたしたいと思います。また、法人税の税収見積もりなども試算の上で大体どの程度見積もっておられるのか、これもあわせてお伺いいたしたいと思います。
  180. 高木文雄

    ○高木説明員 いまの段階で税の自然増収見込みを立てることは非常に困難でございます。午前中にもお答えいたしましたように、経済が非常に動いておりますものですから、それがどの程度のカーブで今後いくかということを予測することが非常にむずかしいということもありまして、税収自体の見込みを立てるということが非常に困難になっております。ただ、当面補正予算の問題がありまして、その財源としてどの程度見込めるかという点に限って考えますと、一つは法人税でございますが、法人税は本年度当初予算ではかなりかたく見込みを立てておりました。それは、いわゆるスミソニアン体制がきまりましたのが十二月の十九日でございました。その時点と本年度の税収見込みを立てました時点がほとんど同じ時期でありましたので、どのようなショックが経済界にあるか、したがって、税収にどのように響いてくるかという予測が非常にむずかしいというところから、当時、四十七年度の税収は大体四十六年度の実績見込みの一〇〇%、つまり横ばいということで見ておったわけでありますが、その後、本年度の税収を見ておりますと、月々異同もございますが、対前年で大体八%から一〇%ぐらいのところで毎月の税収がきております。そこで、対前期一〇〇%、対前年九八%くらいに見ておりました法人税収を、ことしの上期の傾向からいって、年間を通じて大体八%強ぐらいは見ることができるのではないかという計算をいましております。それによりますと二千億前後の増収が見込めるわけでございます。  それから、見込みよりも顕著に大きくなっておりますのが相続税でございます。これは一番影響してまいりますのは、金利が非常に下がってまいりました関係で、延納が非常に少なくて、即納率が上がってきたという関係で相続税の収入がふえております。御承知のように、相続税は一時の税でございますので、延納制度を利用する方が多いわけでありますが、これが金利関係であまり利用されないということもありまして、ふえております。  その両者は確実であろうということから、その両方で約三千億足らずのものを補正予算財源として引き当てていかなければならぬというふうに考えております。
  181. 小林政子

    ○小林(政)委員 当初予算で非常に少なく見績もられていた、しかし、実際には月々伸びを見せているので、大体二千億程度法人税では税収の見込みができるのではないか、こういうことでございますけれども、私どもやはりことしの法人税は全く横ばいで見ていたわけですね。最近、非常に景気上昇機運ということがいわれておりますし、また十月の九日に発表されたいわゆる経済企画庁の月例報告によりましても、企業の経営見通しだとかあるいはまた利益見通しというようなものも、相当今後上昇をすることが見込まれるのではないかということがうたわれておりますし、また経済の名目成長率というものも非常に高まってきている。こういうことを考えてみますと、やはり法人税の税収等についても、四十六年度実績の横ばいということで低いところで見ていたわけですけれども、これは二千億というのをどういうところから出してきたのかわかりませんけれども、相当伸びが予想されるのではないか、こういうふうに考えられますし、また国税庁が先日発表しました大法人の不正申告、こういったようなものも、ほんとうにそういう立場で大企業を洗っていけば、自然増というようなものは、いま大蔵省が発表をしている内容よりもある程度ふえるのではないか、こういうふうに私ども考えるわけですけれども、こういった財源というものを、ほんとうに必要な経費、そしてまた緊急を要する経費一こういったようなものに振り向けて予算編成を行なうということが、この補正予算の中で非常に重要になってきているのじゃないか、こういうふうに私ども考えているわけでございます。  時間がありませんので、引き続いて私ども要望を含めて今後のこの補正予算等についての考え方を若干述べたいと思います。  一つには、いわゆる公債発行だとかあるいはまた公共投資ということではなく、通常財源の中で、限られた財源の中ではあっても、ほんとうに緊急の対策、こういったようなものを中心に具体的にやはり予算の中に盛り込んでいくべきだ、こういうことを私どもは提案をいたしたいと思います。  一つには、各党からも出ておりました老人医療費の問題でございますけれども、これは一月から七十歳以上の老人に対しては政府もこれを実施するということがいわれておりますけれども、すでに地方自治体がほとんど大部分これを実施しております。この時点で政府がここでやはりこの医療費無料化というものを踏み切るということであるならば、むしろもっと先を見て、六十歳以上を対象にして実施すべきということは、これは当然じゃないだろうか、こういうふうに考えます。千百万人のいわゆる六十歳以上の方々に対して、一人三万円として計算してみても、国庫補助三分の二で積算しても、ほんとうにわずかな金で六十歳から実施することができるわけです。約五カ月の間で八百億円あれば老人の医療費六十歳以上直ちに無料にするということの実施に踏み切ることすら可能なわけでございますし、こういうことを私どもは提案をいたしたいと思います。あるいはまた、消費者米価の値上げについても、これはやはり撤回されて、そうしてこの分を予算化すれば、わずか六百五十億でもってこれがやはり値上げをしないで済む、こういうこともできるわけでございますし、またいま大きな福祉問題の中での中心として新聞等でも取り上げられておりましたいわゆる堀木裁判が、児童扶養手当あるいはまた福祉年金の併給制ですね、この問題を違憲判決ということで、併給をやはり認めるということに踏み切るならば、これはもう三億円あればこの問題についても併給制に踏み切っていくということもできるわけでございますし、あるいは私どもこの中で緊急減税という、この点限られた予算の中ですからほんとうに限られた問題を取り上げるにいたしましても、いわゆるいままで大きく問題になってまいりました入場税、こういったような問題も、年間わずか百五十億円の税収ですから、半分に見ても七十億あれば、これも緊急減税ということでやはり実施をすることができるわけでございます。そのほか、難病対策の問題や、あるいはまた乳幼児の医療無料化の問題等についても、いま大きく母親の中で、赤ちゃんが病気になったときに医療が無料になっていたらという要求も、地方自治体ではいろいろと努力されているようでございますけれども、ゼロ歳から三歳までの子供の数は七百三十万人、これをいままでの健康保険で見ていた実績で計算しても、百四十億円あれば、これもゼロ歳から三歳までの子供をすべて医療無料化をすることができるわけです。  このように考えてまいりますと、限られた予算のワク内であっても、そうしてそうたいして大きな額を必要としなくても、こういった問題については、直ちにこれを実施していくことこそが、私は福祉優先の立場に立ったいわゆる経済政策と申しますか、その転換のまず第一歩を踏み出すことではないだろうか、このように考えますし、この点については、強く要望をいたしまして、時間が過ぎておりますので、質問を終わりたいと思います。
  182. 金子一平

    金子委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十七分散会      ————◇—————