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1972-09-13 第69回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十三日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 金子 一平君    理事 奧田 敬和君 理事 坂元 親男君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 広瀬 秀吉君       齋藤 邦吉君    地崎宇三郎君       中島源太郎君    藤井 勝志君       坊  秀男君    毛利 松平君       吉田 重延君    吉田  実君       佐藤 観樹君    平林  剛君       堀  昌雄君    山中 吾郎君       二見 伸明君    寒川 喜一君       小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君  委員外出席者         外務政務次官  青木 正久君         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         大蔵政務次官  大村 襄治君         大蔵大臣官房審         議官      大谷 邦夫君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         自治省税務局固         定資産税課長  小川  亮君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  中村 俊男君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 九月十二日  辞任         補欠選任   中島源太郎君     菅野和太郎君 同日  辞任         補欠選任   菅野和太郎君     中島源太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 金子一平

    金子委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょうは久しぶりに委員会発言する機会を得まして、私が取り上げたいと思っている問題は四つか五つかのテーマがございますので、よろしくお願いしたいと思うのであります。  最初に取り上げたい問題は、ことしの八月十八日に大蔵省日本輸出入銀行等政府関係及び外国為替公認銀行の対居住者外貨貸しについてという新聞発表を行ないました。これはいわゆる外貨貸し制度の問題でございます。この新聞発表の原文を読んでみたのでありますが、アメリカからの緊急輸入などを実施するため、あるいは国内の民間企業ドルを貸し付ける外貨貸し制度実施要領が掲げられておるわけでありますが、一方新聞報道によると、細目について詰めた上、今月中つまり八月中には発足をさせると書いてある。実際にはもう発足したのでしょう。
  4. 林大造

    林説明員 ただいま御指摘のとおり、八月十八日に新聞発表を行ないまして、その後関係日本輸出入銀行その他といろいろと運営方法その他を打ち合わせ、それから各外貨借り入れ希望者から希望を聴取している段階でございまして、まだ現実に貸し出しの実行には至っておりません。
  5. 平林剛

    平林委員 この外貨貸し制度実施要領を読んでみますと、これは第六十八国会提出されました対外経済関係調整特別措置法案に盛り込まれた制度であります。これは一部違うところは、利子補給がないということを除きましては、大体対外経済関係調整特別措置法案に盛られたものであります。この法案は、国会審議段階審議にも至らず廃案になりました。この委員会におきましても相当議論があったはずであります。ところが、ハワイでの日米首脳会談で約七億ドル緊急輸入方針をきめて、どうもニクソン大統領の手みやげにしたのじゃないか。国会廃案になった法律案をあらためて法律案として国会審議を求めないで、現行法規範囲内でこれを操作したというのは、私に言わせると、国会を無視した独断の政治である。どういうお考え大蔵省はこういう構想を立て、しかも国会の承認も得られないうちに関係者意見聴取に入ったのか。私は、これは政治的な問題であるから、大蔵大臣から直接お伺いをいたします。
  6. 植木庚子郎

    植木国務大臣 日米間におきましての貿易上の不均衡と申しますか、わがほうの輸出超過、そのために両国間の貿易の不均衡をなるべく調整していくことが非常に必要なのが、ただいまの置かれておる日米間の貿易問題、それに関連する為替問題にもおのずからその影響がまいっておるのであります。それにつきまして仰せのように、前に第二の特別会計をつくろうという案があったことは私も承知いたしましたが、現在における状況から考えましていろいろ必要が生じました。  その必要というのは、たとえばこの問題につきまして、日米間の経済協力につきまして定期的に両国間においていろいろな協議を進めております。そのうちの一つに、ことしの場合におきましては事務当局レベル箱根会談箱根におきまして事務当局同士が寄って、そして日米間の貿易上の不均衡をできるだけお互い研究をして是正できないかというので研究をいたしました。その場合に、両国とも基本的な問題としていろいろ考えなければならぬ問題があるが、さしあたって当面の問題として考えられたのが、日本としてもう少し輸入し得る物資、物件があるかどうかという研究事務当局間でいろいろ行なわれたのであります。その際に、なお日本側としてこの際に若干の輸入を増加し得る余地があるということが考えられましたので、それをでき得るならば何とかして実行したいというので考えた結果が、当該法律によるところの特別な会計があるということも一つのいい方法でありますが、とりあえず、国会の閉会中でもございますし、そうしてまた法令的にも考え得る手段でございますから、その手段を利用して幾ぶんでもその調整に資しようという結論を出したのであります。これにつきましてはただいま、今後両国間においてだんだんと話し合いがついたものからこれを順次適用してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  7. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣、もののけじめをはっきりしなければいけない。いいですか。対米経済の権衡とかあるいはその必要を生じたとかということと、国会に対する政府義務というのとは違うのですよ。アメリカとの交渉、これで必要だからといって、一たん付議してそれが廃案になった法律案をそのまま行政上の範囲内で出すなんということは、できるはずがないのですよ。これは私は筋が違うと思うのですよ。対米経済調整は必要である、これはわかっていますよ。そしてまたそのために必要であるということもおっしゃりたいでしょう。それはわかります。しかし、国会に対する政府義務はこれとは別なんです。行政上の範囲内であるからできるとこう言うけれども、それなら対外経済関係調整特別措置法案はなぜ国会に出したのですか。そこのところを見きわめて、やっぱりはっきりしたひとつ責任のある答弁をしてもらわなければ困る。ほかの事情は幾ら言ったってだめです。私は政府国会との関係について述べているのです。
  8. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その問題については、国会との関係におきましては、なるほど前回において法案を出した、それが廃案になった。そうしてその後、事実上の日米間の状況並びに日本貿易全体の収支の状況等考えてみますと、とてもこれを放置することはできない。そうしますと、やはり政治をお預かりしている政府立場としましては、現行の各種の制度の上でこれを利用し得るものはこの際利用して、そうしてその間においてなお特別の、この前廃案になったような法案を出して、そういう方法によってやるのがよいかどうかについては別途十分審議も尽くしまして、そうしてなるべく早き機会において国会にまた御提案をいたします。それまでの間は、政府責任でもってこの問題を処していくよりほか、わが国の現在の対外金融貿易等関係から放置することができないと見きわめましたので、政府責任においてやらしていただいた次第でございます。
  9. 平林剛

    平林委員 そうすると、できるだけ早い機会にこれと同じものを国会提出する、それまでは政府責任でやらしてもらいたい、こういうことですか。
  10. 植木庚子郎

    植木国務大臣 そのつもりで現在進んでおります。
  11. 平林剛

    平林委員 あなた大蔵大臣だからあれだが、私は党の国対の責任者でもある。こういう措置をするときに、それならなぜ各党に対して、社会党だけじゃありませんよ、自民党であろうとあるいは公明、民社、共産、各党に対して了解措置をとって、真に国のためにやむを得ない、どうでしょうかと相談をかけないのか。そうやるべき筋合いのものじゃないでしょうか。もしこれが国家のために、あるいは日米間のためにどうしてもやりたいというものなら、もっと堂々と議論をしてからそれからやるべきじゃありませんか。臨時国会だって開こうと思えば開けた。そういう国会無視態度というのは、やはり田中内閣としてはとるべき態度じゃない。国会に再提出をする、同時にそれまでは政府責任でやらしてもらいたいというならば、しかるべき措置をとるのが政府のとるべき態度だった。これは大蔵大臣を責めてもしようがない。しようがないけれども、しかしこれは、本来政府官房長官なりあるいはまたこの問題に関する政府責任者にこの問題はあらためて問わなければならぬ問題であります。このことは私は保留をいたしておきますが、いわゆる外貨貸しワクは、いま事務レベルの話を聞いておるというけれども国会の開会を待って、そして国会の了承を得て、それから実施に移すという時間的余裕のない理由、これはどこにありますか。
  12. 植木庚子郎

    植木国務大臣 平林委員が私の答弁に対してあるいは誤解を持っておられると困りますから申し上げますが、ただいま私は、前に廃案になったあの法律を再び出すかどうかということについて、研究の上で、国会が開かれれば出すことになりましょうと申し上げたのではないのでございまして、そういう方法考えなければならぬ。しかしながら当面、この際考えているわれわれ行政を預かっている者の立場といたしましては、どうも一日もほうってはおけない大事な問題というふうに考えられますので、それで廃案になった法案を出すことについての研究も一方においてするかたわら、やはり現在の当面の急に応ずるために何らかこれにかわるべき現行制度の上で利用するものがないかということを研究した結果、この問題に踏み切って実行したのでございますと、こう申し上げておるのであります。
  13. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣、ちょっとそこの点があなた認識が不足しているのですよ。さっき言ったように、できるだけ早く国会にこの対外経済関係調整特別措置法案をそのまま出せと言ったのじゃないのですよ、私は。少なくとも大蔵省がまとめて発表したあのものでも、国会に付議する必要があるのじゃありませんか。たとえば外貨貸しワクが今度は大体十五億ドル程度の予定のようだし、しかし円の再切り上げがあれば、税金や郵便貯金資金源とした輸銀などの損失はやはり当面は輸銀政府関係機関がとるにしても、場合によってはそれは損失を埋めなければならぬという危険を持っておるものであるし、それから対米調整というかけ声だけで国会を無視するような新しい制度をつくるということは、これは問題があるということでありますから、さっきあなたはおっしゃたでしょう、それをあらためて提出したい考えである、それまでは緊急措置として認めてもらいたい、こうおっしゃたのでしょう。ちゃんと会議録を調べてみたらわかる。
  14. 植木庚子郎

    植木国務大臣 もし私の答弁がそういうふうに、出しますということを答えておるようなふうになっていますのでしたら、その部分は取り消さしていただきます。私はあくまでも、一方は一方で研究も続ける、廃案になったがその方法でやるべきか、やるほうがいいか、あるいは現行のわれわれがいまやり出しましたあのやり方でもって許されてしかるべきものであるという結論を出すようになりますか、その点はまだわれわれも研究をしておる、しかし、それは現在がもう放置しておけない状態と認めましたのでそれに踏み切ったのでございます、こう申し上げたのであります。
  15. 平林剛

    平林委員 それは認識不足で、もう考えている程度じゃ済まない。これはあらためて問題にします。しかし、私の聞いているのは、緊急やむを得ない、それは延ばせないのか。たとえば、臨時国会がいつ召集されるかわかりませんけれども、かりに十月の半ば過ぎとか十一月、そこに開催されるという場合に、それまで待てないのかどうかということを聞いている。待てない理由はどこにあるか。
  16. 植木庚子郎

    植木国務大臣 日米間のいろいろな諸般の政治上の問題ももちろんのこと、経済上のお互い両国間の情勢等について密接な連絡を取り合い、両方が、われわれとしても対米問題として十分主張すべきことは主張してやってまいらなければなりません。その一つ調整方法として、両国間でいろいろ閣僚の会議がありましたり、あるいは事務当局同士の特別な会議を催したりいたしております。その会議の席上におきましても生まれてまいった問題で、われわれ政府としては緊急に措置しなければならないということが十分研究の結果、事務局同士話し合いの結果わかったのでありますから、その意味におきまして、国会を召集いたしまして御審議を願うというほどの余裕がなかった、そのためにわれわれは現在ある法制の上で利用し得る道を使ってまいろう、その方式によってやっていこうということを政府責任においてやらしていただいた、こういう次第なのであります。
  17. 平林剛

    平林委員 あなた説明が、何というかな、自分で納得しているのだけれども、私にはちっともわからない。あなた、緊急やむを得ないと言うけれども、私にはわからないですよ。その理由を聞いている。ここで押し問答したってしようがない。ただ、平林剛がこの大蔵委員会においてこういう指摘があった、非常に問題点である、この取り扱いをどうするかということを、あなたは閣議で、これは法案提出者でもあるのだから、閣議でその問題を相談をしていただけますか。それを聞いて次の問題に移りましょう。
  18. 植木庚子郎

    植木国務大臣 平林委員の御質問で、わかりました、御意見のほどは十分私のほうでも研究材料にいたします。
  19. 平林剛

    平林委員 研究材料じゃないです。閣議にかけて正式な措置をとりなさい。つまり、各党了解を求めるとか、何かの国会としての措置をおとりになる必要があるということを申し上げたのですから。
  20. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いろいろな問題もあわせて研究をいたします、こう申し上げているのです。
  21. 平林剛

    平林委員 時間がもったいないから、次の問題に入ります。  第二の問題は、台湾に対する債権の問題であります。  ちょっと、政府当局でけっこうでございますが、私の資料は古いかもしれぬから明らかにしてもらいたい。現在、台湾政府との間に、いわゆる政府ベース円借款昭和四十六知九月現在で二百九十一億五千万円、民間投融資残高が八千四百五十万ドルで二百六十億二千万円、それから輸出代金保険債権残高延べ払いが一億八千七百万ドルで五百七十五億九千万円、いずれも三百八円で換算、合計して八百三十六億一千万円あると私は最近の資料承知をいたしておりますが、現状はいかがでしょうか。
  22. 林大造

    林説明員 資料とり方換算のしかたで若干の狂いがあるかと存じますが、私どもの手元の資料では円借款債権でございますが、それが四十七年の七月末で二百九十九億八千万円でございます。この中には輸銀分円借款関係いたします市中銀行による協調融資市中銀行債権二十一億七千万円を含んでおります。それから民間債権でございますが、これもいろいろとり方があるかと存じますが、若干古くなりまして恐縮でございますが、昨年の十二月末の数字で、ドルにいたしまして延べ払い関係が一億九千六百万ドル、六百三億円、それから投資関係が、これは三月だそうでございますが、ドルにいたしまして九千百七十万ドル、約二百八十三億円、合計いたしまして二億八千七百万ドル、八百八十六億円となっております。
  23. 平林剛

    平林委員 大体私があげた数字よりやや多いということであります。しかし、大体八百八十六億円かあるいは一千億円をこえるということは、ただいまの政府の補足の説明数字であります。  そこで、今日日中国交回復日本中国との国交正常化に関し、田中総理は近く北京を訪問をすることになりました。私どもはこれを支持します。そうして中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であり、台湾中国の領土の一部であり、日華条約はこれを廃棄すべきであるという原則で国交回復をするということを期待をいたしておるわけであります。この場合、台湾政府との関係が微妙であることは言うまでもなく、外務大臣の心がまえといいますか、台湾政府との場合についての見通しは、しばしば外務大臣が述べられた報道で私ども承知いたしておるわけでありますけれども、この台湾に対する債権問題は今後どういうふうに取り扱われるのでしょうか。その点を、外務大臣がおられないから、政務次官ひとつ、どういうふうに取り扱われるのか。
  24. 青木正久

    青木説明員 台湾に対するわが国債権取り扱いにつきましてですけれども政府といたしましては、日中国交正常化を推進するに際しまして、細心の配慮を払って対処してまいりたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員 外務大臣は、日中国交回復が進む段階において好むと好まざるとにかかわらずあるいは台湾政府との間の断交も頭の中へ入れておかなければならぬ、こうおっしゃっておるわけです。これは政務次官もお聞きになっているとおりです。その場合に、細心の注意を払うも払わないもないじゃありませんか。どうするかということがもちろん問題になる。現に、この間自民党の中でもいろいろこういう問題が議論をされたときに、新聞にも報道されておりましたが、これは台湾擁護派の方の発言でございますからどの程度信憑性があるかということは私わかりません。わかりませんが、台湾のほうでは日本の対中国接近策に反発をして、日本との戦争準備行為を進めているなどという発言まで新聞報道されているのです。これはまあどうかと思いますけれども、しかし新聞の報ずるところにはそういう発言も記録されています。現地でも日本企業資産没収だとか、台湾海峡敵性物資を輸送する場合の措置考えているようだという発言もなさっている方がございます。私はそれがまるまる信頼すべき発言かどうかこれは別にいたしましても、今後の推移いかんによりましては、こうした債権に対しどうなるのだろうかという一つの問題はあると思うのです。これについて一体どういうふうに取り扱われるつもりであるかということは、やはり細心の注意でなく、明確にしてもらいたいと思います。
  26. 青木正久

    青木説明員 中華民国は現在まで着実に償還実行してきております。中華民国経済も低開発国の中では特に良好な状態にありますために、経済的に見まして償還能力の点で問題はないと考えております。アジア開銀も、基本的にはこのような考え方に基づいてさき借款供与を決定したと考えております。  わが国からの借款は、民生安定と経済発展に貢献するために供与された純経済的な援助であることは御承知のとおりでございまして、このような援助にかかわる正当な債権は当然尊重されるべきものと考えております。  なお、中華民国は、外交関係を断絶した国々、たとえばカナダとかイタリア、イギリス、フランス、オーストラリアなどの諸国にも債務返済を履行しております。  いずれにいたしましても、政府としては償還の確保につきましてできる限りの努力をする覚悟でございます。
  27. 平林剛

    平林委員 今度自民党の副総裁になられた椎名さんが近く訪台しますね。台湾をたずねますね。そのときにこのことはお話しになるのですか。
  28. 青木正久

    青木説明員 椎名特使が行かれた場合の話し合いがどうなるかにつきましては、私はまだ聞いておりません。
  29. 平林剛

    平林委員 台湾政府との間で結ばれた交換公文がございます。これは一九六五年四月二十六日、それから一九七一年八月九日、二つございます。もう一つ一九七〇年四月二十四日の日に期限を延長したという交換公文都合三つ政府ベース公換公文があるわけであります。この公換公文には、両国政府はこの交換公文実施からまたはこれに関連して生ずることのあるすべての問題について相互に協議するという条項があるわけであります。いまや事態は新たなる発展に向かおうとしておる。台湾政府との間にどういう協議が行なわれたか、また、協議をするとある以上は何らかの協議がされたか、この点についてはいかがですか。
  30. 菊地清明

    菊地説明員 交換公文におきましていわゆる協議条項というのがございますことは先生のおっしゃるとおりでございます。先生のおっしゃいました二つ交換公文、基本的なものは二つでございますけれども、その両方協議条項が入っておりますけれども、この協議条項に基づいてわがほうないし中華民国政府のほうから協議の要望もございませんので、いまだその協議実施したことはございません。
  31. 平林剛

    平林委員 これは私は、他の国あるいはその他の例から見てだいじょうぶだ、細心な注意を払ってやるという一方的なことだけでは片づかない事態も予測をせねばならぬ。そういうときに備えまして、やはりある程度協議は必要でないかと思うのでありまして、椎名さんが行かれるときはこんな問題も少し話ししてくることを希望しておきます。  大蔵大臣、今度はあなたのほうの問題です。私実はこういうことを予想しまして、日中国交回復の問題は、いずれさき総理である佐藤さんがやめたあとには急速に展開をするであろうということ、これは私だけに限らずだれでも持っていた常識だったわけであります。そのときに、台湾政府との問題もいろいろな複雑な問題はある程度お互いに予測したはずでございます。そこで私は、三月二十二日の予算委員会分科会でこの債権問題を取り上げまして、今後の進展に対応して慎重な配慮を実は望んだのでございます。特に政府ベースで進められた円借款最初の五百四十億円、二度目の八十億八千二百万円。ところが、その三月の段階でまだ末契約のものがあったわけであります。つまりこれは、御承知のようにわが国輸出入銀行と向こうとの間にプロジェクトごとに問題をきめて、そうして契約ができて初めて具体的に実行に移されるという、そういう措置がまだとられていないものがありましたから、そういう末契約のものについては特に配慮してもらいたいという注文をしたわけであります。ところが、佐藤総理引退声明から自由民主党の総裁選挙のあのごたごたの最中にあわただしくかけ込みのごとく契約が成立してしまったわけであります。これはどういうわけですか。私はどうも解せないのであります。あれだけ注意を喚起し、慎重な取り扱いを要望したのに対し、しかもあのごたごたの最中にかけ込みのように契約が成立した。これはどういうわけですか。そのことをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  32. 植木庚子郎

    植木国務大臣 前内閣の当時に、台湾に対しましての借款については、すでに交換公文締結済み案件についてはそのとおり実施するということをきめております。そうしてその方針に従って事案の進捗をはかってきておったのでありますが、たまたま六月の時点におきまして貸し付け契約の要件が整いましたので、それで契約締結を行なったものがあるので、特にその時点を選んでどうこうしようとしたのではございませんが、交渉中の問題の話し合いがととのいましたので、それでその時点契約を結んだものが三件ございます。
  33. 平林剛

    平林委員 その三件とは電信電話施設、それから台湾製塩総廠との契約台湾との糖業公司との契約でしょう。たまたま成立したのじゃないんですよ。これはなぜ新しい政府ができて、今後の方針を立て、その見通しのもとに進めなかったのかということを私は言っておるわけであります。そんな事務的な答弁をしたのじゃだめですよ。たまたまそこでやったなんて、四十七年六月二十三日の契約調印というのはどうも解せないことである。しかもこれは、少なくともその間に立ったところの丸紅飯田だとか三菱重工だとか三菱商事だとか日商岩井だとかの仕事ぶりがそこへ持ってきて、これは早う佐藤さんやめないうちにやっておかぬとあとになるとだめになるというようなことで、かけ込みのような契約をしたのではないのですか。そういう点について大蔵大臣は一体どういうふうにお考えになっておるか。
  34. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいま申し上げましたとおりの状況に承っておりますので、さよう信じております。
  35. 平林剛

    平林委員 私はこういう問題はできるだけ国民に疑惑を残さぬような措置をとるのが政府態度でなければいかぬと思うのです。外務政務次官、何か政治的な意図があったのでしょうか。たとえば日中国交回復を進めるにあたって、台湾政府との関係をこれ以上悪化させたくないというような外交上の理由があってこれを進めたのか。そんなことでもあればこれはまた一つ理由にもなりましょうけれども大蔵大臣みたいな答弁ではどうしようもない。一体どういうことでこの新たなる政府の発足を待って、見通しの上に立って、こういうことは判こを押さなかったのか。これは大蔵大臣のほうはどうも事情がよくわからなかったらしいのですけれども、外務省はどうなんですか。
  36. 青木正久

    青木説明員 その問題につきましても、ただいま大蔵大臣答弁されましたように、たまたまそうなったということを私も聞いております。
  37. 平林剛

    平林委員 不明朗きわまる。これはまたいずれこの次の機会材料をそろえて私はやります。きょうは時間がないので、これはこの程度にしておきます。次に三つ目の問題は、厚生年金と国民年金の積み立て方式に関するいわゆる財政運用についてです。先月八月三日、植木大蔵大臣の所信表明を私聞きました。この所信表明の中におきまして植木さんは、国民は経済の量的拡大より真に人間性豊かな福祉生活を待ち望んでおるということを言われておる。いいことです。正しい理解のしかたであります。今後の政策課題の第一は、人間性豊かな福祉社会の建設に積極的に取り組むことである。これもいいことであります。私はそういう意味ではこの所信表明が具体的に実行に移されることを期待しております。特に社会保障につきましては、年金政策を重視して、国民年金と福祉年金を改善するということは大事なことであります。それも発想の転換をはかりまして、現行の積み立て方式を賦課方式にする、それからスライド制の問題も、政策スライドから自動スライドに切りかえていく、そして最低保障額を設定する。こういうことは私はある意味では国民の願望であると思うのであります。そこできょうは、ちょっと数字の面でこれからの福祉財源につきましてお尋ねをしていきたいと思うのであります。国民年金の加入者数二千四百二十三万六千五百四十四人が大体毎月のように掛け金をかけていきまして、昭和四十六年度の計算でありますと、一般会計からの受け入れの五百七十六億を含めまして二千三百二十六億二千九百六十四万円掛け金収入があったわけであります。ところが国民年金の給付額は二百四十億五千九百三十万円でございますから、収入に対する支出の割合は十分の一であります。四十七年度の予算を見ると、一般会計からの受け入れ六百七十一億円を含めて二千七百七十七億四百六十一万円でありますから、このときの国民年金の給付額は五百三十億六千七百四十二万。つまり、収入に対しまして給付額は五分の一足らずであります。  厚生年金のほうで見ますと、厚生年金のほうは、加入者数二千二百二十五万九千六百十六人。それで、集まるお金は、四十六年度で一兆千八百六十九億四千二百七十七万。これに対する給付は千八百七十三億四千八百三十一万だから、六分の一です。四十七年度の予算で見ると、保険料収入は、一般会計からの受け入れ三百六十五億を含めまして、一兆五千四十五億九千八百二十三万。これに対し保険の給付額は二千二百二十六億四百七万円ですから、七分の一です。  つまり、こうして実際に払い込んだ保険料収入、掛け金に対しまして実際の給付は、四十七年度で、国民年金においては五分の一、厚生年金では七分の一。つまり、今日までにかくて国民年金と厚生保険の大蔵省資金運用部に預託金として積み立ててあるのは、昭和四十七年四月現在で六兆五千五百二十四億円ばかりある。ことしも大体一兆四千億円程度は増加するわけでありますから、来年の四月になればおそらく八兆円に達する。そこで、預託して積み立ててあるものを一応除外しても、もし財政方式を変えて、つまり積み立て方式に変えて、毎年の保険収入を財源とする賦課方式に改めるとするならば、ちょっとわかりやすく言いますけれども、国民年金はいまの給付額の五倍にできる、厚生年金は六倍から七倍にできるという勘定になるわけであります。つまり、その給付を増加することができるはずである。私は今日、国民年金、厚生年金の加入者はこうした問題について政府はどう対処するかということを見守っておると思う。大蔵大臣も、福祉優先、福祉政策充実、人間性豊かな福祉社会の建設に積極的に取り組むと、こういっておるのですから、どういうふうに取り組むかということについては期待しておると思う。御見解を承りたい。
  38. 辻敬一

    ○辻説明員 厚生年金、国民年金につきましては、御指摘のように積み立て方式をとっておりまして、さらに制度がなお未成熟の段階でございますので、目下のところ給付よりも収入が上回っております。積み立て金が累増する形になっておるわけであります。しかし、かりにお話のように、厚生年金あるいは国民年金の財政方式を直ちに賦課方式に移行させるといたしますならば、受給者が少ない現段階におきましては、確かに負担が軽く済むとかあるいは給付を上げるということも可能であるかもしれないわけでありますけれども、その反面、人口の老齢化が御承知のようにただいま進んできておりますし、年金制度自体だんだん成熟してまいります。そういたしますと、受給者が当然非常にふえてまいりますので、そういう受給者がふえてまいりました段階におきましては、保険料の負担を急に高く上げなければならないという結果になってまいります。したがいまして、世代によりまして負担に著しい不均衡を生ずるということになるかと思うのでございます。特にわが国におきましては、年金制度が発足間もない段階でございますし、また欧米諸国にも例のないような急激な人口の老齢化が進んでおりますので、その点は特に考慮しなければならない問題であろうかと考えております。  なお、御承知のように、厚生年金、国民年金につきましても、積み立て方式とは申しますが、いわゆる完全積み立てではございませんで、必要とされます保険料の六割あるいは七割程度の拠出を求めていることになっています。いわゆる修正積み立て方式と申しておりますが、そこで、所要の給付費用のかなりの部分は後代の負担に送っているのが現状でございます。そこで、人口の老齢化、あるいはこれから考えられます年金受給者の増加ということを考えまして、将来にわたって長期的な見通しに立ちますと、当面は現在の修正積み立て方式を実情に即して配慮を加えながら維持していくということが適当な考え方であろうと、かように考えておるわけでございます。
  39. 平林剛

    平林委員 それは、今後の老齢人口は確かにふえますよ。昭和四十七年が六十五歳以上が総人口に対して七・四%、二十年後、まあ十八年後ですな、昭和六十五年に一〇・五%、昭和七十五年なんというと、もう実際ここにいる者がどのくらい生きているかわからぬけれども、かなり先の話でございますが、そのときでも一三・四%。ですから、いまの六十五歳以上の総人口の七・四がまだ二倍にならない。それから先のことはどうなるか、それはわかりませんよ。まだふえるかもしれぬ。しかし、そういうことを勘定に入れましても、私は現行の年金制度は諸外国に比較をして低過ぎるんじゃないかと思う。日本経済の成長や国民経済の実力から見ても低過ぎる。私は、この国民の経済の実力に応じた福祉を受ける資格があるんじゃないかと思うんです。再計算の時期は近く来るわけでありますけれども大蔵大臣、来年にもその再計算の時期を繰り上げて、国民生活優先、福祉充実ということに取り組む意思がございますか。
  40. 植木庚子郎

    植木国務大臣 国民の福祉増進の問題は、現内閣におきましても大いに重点を置きたい事項になっております。しかしながら、この問題についての、何と申しましても第一次の責任官庁は厚生省でございます。われわれもその財政的見地からもちろん御相談も受けなければなりませんし、変わった意見があればこれも十分御相談をしようと思っておりますが、ただいま平林委員の仰せになったようなこの理論も、私は理解できないことはございません。しかしながら、財政当局の立場になってみますと、ただお互いの給付を高めることによって、それが後代の財政負担あるいは国民の大きな負担になりますそのときの対策として、十分いまからやはり考えておかなければならない問題であることも御理解していただけるんじゃないかと思うのであります。私はその意味で、やはり新しい年度の、いわゆる四十八年度の概算要求に際しまして、厚生省側からはこの問題について、もちろん第一次の責任の官庁として福祉増進のために研究をしておられると思いますから、御要求に従って、またわれわれも十分意見を戦わせて進んでまいりたい、こう思っております。概算要求は御承知のように八月一ばいということになっておりますから、一応は八月一ぱいで参っておりますが、まだ私はその内容については十分個々の問題で承知しておりません。
  41. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣、後代に負担が残るというけれども、私がいま数字をあげて申し上げたとおりだ。ことしは総人口に対して六十五歳以上の人が七・四だが、十八年後においても一〇・五にすぎないじゃございませんかと、こう言っているわけですよ。後代の負担がふえる、ふえるというけれども、十八年後においてただいまのような数字なんです。ですから私は、これからふえる掛け金収入その他から考えてみて、もっと思い切った前進措置がとれるはずですよ、ということを申し上げておるわけなんであります。水田大蔵大臣はこの間、再計算の時期を繰り上げて四十八年度に計画を立てると答弁しておりますけれども、植木さんはそれより後退するつもりですか。
  42. 植木庚子郎

    植木国務大臣 前任大臣がどういうことをお答えになっておるか、実は遺憾ながら拝聴もしておりませんでしたし、あるいは速記録も読んでおりません。
  43. 平林剛

    平林委員 どうも田中内閣というのは心細くなってくるね、こうなってくると。水田さんは、四十八年度に計画を立てると国会答弁している。ですから植木さん、それよりおくれるようなことがあっては田中内閣のイメージがダウンしますす。それじゃ前のことは聞かなかったということにしましょうか。しかし、その点はしっかりあと継ぎをしておいてください。  それじゃ植木さん、じかに伺いますが、四十八年度予算の編成の前に、再計算によって長期見通しを立て、少なくとも私は年金政策を改善強化する年次計画をまとめるように努力すべきだと思いますけれども、それはいかがですか。
  44. 植木庚子郎

    植木国務大臣 国民の福祉増進の問題については重点事項として政府全体としても取り上げておりますから、当然財政的立場におる私の責任におきましても、同じような意味で大いに努力をしてみたい、研究をしてみたい、こう考えております。
  45. 平林剛

    平林委員 次に、土地価格の問題についてお尋ねいたします。  新聞報道四十七年九月十日の朝日新聞によりますと、大蔵省は企業による土地の買い占め、投機的な取引を抑制するために、土地保有に対する課税の強化を基本として法人に対する土地保有税を創設する方針を固めたと伝えられておるわけです。あしたから始まる税制調査会の審議にはかる方針であると伝えられておりますが、これについて大蔵大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  46. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その問題につきましては、過日から内閣に設けられております税制調査会におきまして、いろいろといわゆる来年度実施すべき問題、さらに将来も見通しつつ今後の税制の改正の必要があるかないか等々の問題でいま調査を開始していただいております。われわれのほうからもいろいろ要点を、究明すべき点であると考えられる点を申し上げまして、その審議を御開始願っておるのであります。われわれはこの問題につきましては非常に大事な問題であり、別にまだ大蔵省として土地税制関係でどういう案を採用するか、実行するかということについての結論を申し上げる程度にはとてもまだいっておりませんが、十分世上に行なわれておる、あるいは相手の役所所管の事項について所管行政から、おのずからわれわれの立場においては土地税制はこうしてもらいたいという問題等の御要望も出つつあるようでありますから、これらの問題もあわせて十分審議をいたしまして、そうして不当なる、過当なる土地の値上がりが起こったりあるいはその結果非常に何と申しますか穏当ではない非常な収入増加を来たされるそれに対して、現行税制では何ら措置する道がないというようなことがあってはなりませんので、これに対してもしかるべき程度、しかるべき研究の結果を十分それに審議を合わせまして、そうして適当な方法考えなければいかぬというふうに考えております。それはただ単に、いわゆる来年度予算におきましていろいろたくさん実現したい問題がありますから、財源が足りません、その財源が足りないのをいかにして捻出するかということのみならず、その問題そのものについてもやはりしかるべき方法を講じなければ、いろいろな弊害が各方面に起こってまいると考えられるからでございます。
  47. 平林剛

    平林委員 そういうお答えは、私この間の委員会でやったときの植木さんの御答弁と大体同じなんです。私が聞いているのは、九月の十日に報道された大蔵省案というのはただいま申し上げましたようなものを大体固めて提出したと伝えられておりますから、それはいかがでございましょうかと、こう聞いておるわけなんです。
  48. 高木文雄

    ○高木説明員 現在の段階で法人の土地保有について特別な保有課税をするという案を大蔵省として何か固めたというふうに伝えられておりますのは、若干事実に反するわけであります。私どもは、土地の課税問題につきましては、もうこれは三年、五年前からの問題でございまして、その際に譲渡についての特別な課税ということで土地税制について対処すべきであるという御意見が一般的にかなり強いのに対して、かねがね保有の段階での課税ということが同時に行なわれないと、譲渡課税だけでは有効な税制にはなり得ないのではないかというふうに考えておりますので、その意味におきましては土地保有課税について何らか名案がないかということを考えていることは事実でございます。しかしながら、これにつきまして何か具体案をまとめたとか大蔵省意見を固めたとかいうのは、まだその段階にないということでございます。
  49. 平林剛

    平林委員 もう時間も来ましたけれども、私はなお建設省が出した、あの企業が土地を売った所得については他の所得と分離して、法人税四〇%、地方税二〇%の計六〇%の重税を課するという案も読みました。大蔵省案と伝えられるものについても読んでみまして、それぞれ一長一短ありますし、あわせてこれは検討すべきものである、こう考えておるわけでありますが、いずれにしても地価の高騰の元凶は、私は法人の土地の買いあさりであるという結論であります。経済企画庁でも八月十四日発表した企業の土地利用に関する調査でも、在来事業部門の拡充という名目で調査対象になった東証上場の七百三社のうち過半数の五三・五%が四十六年度中に土地を取得しておりますし、資本金五十億円以上の大企業では八〇%をこえるなど、土地投機の実態が浮き彫りにされておるわけでございます。建設省でも、東証上場企業の千二百九十九社のアンケート調査をやりましたら、企業がこの六年間に取得した土地の三八%は値上がりを待って宅地造成など何らかの手を加えて売り渡すのが目的であったということもあるのです。  どうも大蔵省はそういう点ではおくれているんじゃないだろうか。いままでの政府の土地税制は、国民に安い土地を提供するということでスタートしたのに、地価は実際は消費者物価の三倍のテンポで上昇し、土地成金を生んだだけであります。売られた土地は国民の手に渡らない。法人に買い占めされている。法人に買い占められた土地は土地の値上がりを待った上で転売差益をかせぐというたらい回しを繰り返しておるわけです。こういう法人の資金力で土地の買いあさりをしたり土地の投機を野放しにしておいて物価高騰を押えるということはできないのです。政府がこの地価の高騰をそのままにしてしり抜けの地価対策をやっておったのでは、私は土地の買いあさりが一そう刺激されて、地主や資本家がインフレ利得を取って、富の不公平が拡大をし、社会不安が激しくなるだけだと思うのであります。社会党の当面の地価対策に関する申し入れを政府にいたしておりまして、たぶん大蔵当局もごらんになったと思うのでありますが、最後に私は大蔵大臣にお尋ねいたします。  土地税制の問題、いろいろな試案がございますけれども、あしたから始まる税制調査会にはかって、少なくともその結論が出たものについては四十八年度から実施するという決結があって臨まれるかどうか。やはりそのくらいの態度大蔵大臣としてはおとりになって、この国民大多数が懸案の問題に解決の緒を見出すべきである、こう思うのであります。四十八年度から税制調査会で出た結論実施するという決意でおられるかどうか、これを最後に伺いまして、私の質問は終わりたいと思います。
  50. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その土地に関する問題については、われわれとしてもこの際十二分に研究してみたいと思いますので、いずれ近く正式にその事項として調査会におはかりをいたしたいと思っております。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 関連して、ちょっと先に主税局長にいまの土地税制でお伺いしたいのですが、これまで皆さんいろいろ税制をやってきましたね。地価抑制に効果があったとあなたは思っておりますか、そこをちょっと最初に伺っておきたい。
  52. 高木文雄

    ○高木説明員 個人の土地の供給をふやすという働きには役に立ったと思っておりますが、これが他の要素、税だけでなくて他のもろもろの要素との関連ではたして土地価格を抑制し得るというところまで働いたかという点については、私ども非常に疑問といいますか、自信が持てないということであります。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまあなたも保有税に踏み込まなければ土地税制というものは生きてこない、こう言われたわけですが、その保有税のほうは、御承知のように、当委員会でも固定資産税を含めてかってだいぶ議論をした。ところが固定資産税の取り方とかいろいろな関係で、わが党を含めてということを言っておかなければいけませんけれども、固定資産税問題というものは一向に進行していないというのが現状だと思いますね。  そうすると、いまのあなたの答弁からすると、平林委員はいま税制で大いにやってもらいたいと言われておりますが、私はどうも税制では土地価格の抑制にはならぬという感じがしておるわけです。さっきのあなたの話の保有税はもうすでに行き詰まっておるわけですね。もっとやれということになってもやれない。この前の線引きその他のいろいろな問題も、全国的にあれをやったことは非常に間違いであって、あれをとりあえずは首都圏と近畿圏というふうにごく限られた範囲だけでやっておけば、私はもう少し成果があったと思うのですけれども、どういう政策の間違いか、それを全国でやるということになりましたから、本来最も重要なところが抜けてしまって、あれは骨なしになったという経緯があるわけですね。だから、私は、いまの土地問題を考えるときに、どうも税制で片づくものではないのではないか、それでは片づけられないような客観情勢があまりにも多過ぎる、こういうことではないかと思うのです。  そこで、大蔵大臣にお伺いをしたいのですけれども、やらないよりやったほうがましだということかもしれませんが、考えようによると、税というものは常に回避行為を伴うものですから、何らかの税を考えればまたその上をいくということになって、税金をたくさん取られるならその分積み足してまた売買をするということになり、結論的には税による土地価格の抑制というものは非常にむずかしいことではないのか、こういうふうに私は率直に考えておるわけですが、大蔵大臣はどうでございましょうか。あなたの立場から税は役に立たぬとは言いにくいかもしれぬけれども、しかし、土地問題というのは今日日本の政策の中の最も重要な問題だと私は思うのです。限られた資源があって、それを使うという場合にはやはりかなり思い切った政策でなければ、こそくな手段は問題を引き延ばしたりあるいは逆に土地価格を引き上げたりすることにつながっておるような気がするのでありますが、大蔵大臣としてはどんなふうにお考えか、ひとつ率直な御意見を承っておきたいと思います。
  54. 高木文雄

    ○高木説明員 一言前にお答えさせていただきますが、私どもも、土地に関して税制だけでものごとを処理しようというのは無理である、不可能であるというふうに考えております。ただ、今後土地に関する税制を整備することによって、土地価格の抑制にはたして役立つかどうかという点につきましては、御指摘のような問題があるにいたしましても、一方において、いわば税自体の問題と申しますか、課税の公平という問題と申しましょうか、そういう面だけに限って考えましても、現状のままでいいかどうかという点につきましては、このごろ多分にいろいろ疑問を持っておるわけであります。その意味におきまして、税制にあまりに大きな期待をかけられて、税制が整備すれば供給が豊富になり地価が押えられるということについては、正直のところ自信がないわけでございますが、それだから全く何もしなくてもいいというわけにもなかなかいかない。つまり税の公平の見地からだけいたしましても、この際何らかの手が打たれるべきではないかという観点がございます。その意味も含めましてただいま検討中でございます。
  55. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたとおりでございまして、われわれといたしましても、第一読会式に各方面で伝えられておるような土地税制の問題について検討を、まだきわめてラフではございますが、してみましたところが、ただいま政府委員のお答え申し上げたとおりでございまして、そのうちのどれが非常にいいとか、どれがとてもお話にならぬとかいうところまでは、とてもまだ議論も尽くしておりませんし、なお先ほど申しました税制調査会にも諮問をいたしまして、その専門家の方々の御意見も十分頭に入れて、そしてなお結論としましては、私の立場としては何らかの方法で適当な対策、言いかえればある程度の課税なりあるいは従来の制度の改正なりについて検討が必要であるということは痛感はしておるのでございます。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの高木さんの答弁で、私はいまの税の公平の面で、土地の売買その他によって得た不当な利益は、できるだけ他の利益の質と同じような形の課税対象になるべきだということについて、税プロパーの面から土地税制考えるということには賛成ですから、その点はひとつ大いにやっていただきたいと思うのですが、あまり振りかぶって、供給を税によってふやそうとか、価格抑制に役立てようなどということで問題を考えないほうがいいのではないか。その問題はやはりより基本的な考え方で処理しなければならぬ、私はこう思っているわけです。  また一つ申し上げておきますと、この前大原君も代表質問で申し上げたけれども、私はかねてから土地公団構想という考え方を持っておるわけであります。この公団は、国が大型のものをつくって、そして一般の土地売買はすべてこの公団を通じなければできないということに立法すべきであるという考えです。そうすれば国民が、だれか買いたい者はどこの土地を買いたいと公団に申し出れば公団のほうからその方に話をして、売れるか売れないかそれは別の問題でありますが、公正な価格でしか売買できない。それから開発利益は全部認めない。そういう形のものができるならば、騰貴を見越した土地売買というのはなくなると思うのですが、騰貴部分は全然認めないわけですから。相対の売買は禁止をする。これについては重い罰則をかけるということにすれば、土地問題というものは基本的なところで処理ができてくる、そういう土地というものに対する基本的な政策なくして税制でこれをやろうなどという発想は間違いだ、私はこう考えておりますので、どうかひとつ税制調査会においても、そういう土地の供給とか価格の問題を横にのけて、要するに税制プロパーとして土地の売買その他についての利益というものをいかに国民の上に公平に処理をするかという角度から問題を進めていただくのが筋ではないかと私は思いますので、その点を申し上げるのと、あわせてひとつ、きょうは主計局の人も入っておりますから、そういう土地公団構想というようなものももう少し政府も真剣に考えて、要するに限られた土地をスペキュレーションの対象にすべきではないわけですから、それについては大幅な公的介入によってそういうようなスペキュレーションを断ち切るということなくしては、私は土地問題の解決はあり得ない、こう考えておりますので、その点も要望いたしまして、関連質問を終わります。
  57. 平林剛

    平林委員 私は、ちょっと時間が足りないものだから、きょうは土地対策について大構想をぶち上げるのは遠慮したわけであります。しかしさっき申し上げたように、われわれが苦心してつくった土地問題に関する申し入れが政府に行なわれております。それで、これは主税局長も直接税制調査会で御相談になると思います。わが党がかなり苦心してまとめ上げた、いま堀委員の言われたようなことも全部含めた総合的な土地政策をまとめて政府に申し入れてございますから、十分参考にしてもらいたい。わが党に限らず各党それぞれがお持ちであります。私は税制調査会にはそうした各党意見も全部あれしてやるような態度でこの土地問題には取り組んでもらいたい、そのことをひとつつけ加えておきたい。きょうは時間がないから大演説はしないで、この辺で終わりにいたします。
  58. 金子一平

    金子委員長 佐藤観樹君。
  59. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まず最初に、おそらく大蔵大臣はいま、いわゆる円の切り上げの問題、外貨の問題、これで正直頭が一ぱいなんではないか。この前の福田大蔵大臣のときは、頭の片すみも円の切り上げの問題はないと言ってましたけれども、今後の経済運営をするにあたって、外貨の問題をどういうふうにしていくかということ自体が今後の経済運営にとっては非常に大きな柱になってくると思うのであります。  御存じのように、ハワイ会談での共同発表によれば、「合理的な期間内に不均衡をより妥当な規模に是正する意図であることを指摘した。」という文章になっておるわけです。御存じのように「合理的な期間内に」ということは、両三年以内に不均衡をより妥当な規模、現在不均衡というのは大体年間日本の出超が三十八億ドルくらいになるんじゃないかといわれておるわけですが、これを十億ドルくらい減らして二十億ドル台に持っていきたい、これが妥当な規模ということのようなんですけれども、この合理的な期間内に不均衡をより妥当な規模に是正をするというのは、一体具体的にどういうふうなことをやっていこうとするのか。これは私はかなりきびしいことをやらないと、両三年内に二十億ドル台にアメリカとの出超を持っていくことはなかなかできないのではないか。今後の貿易収支を考えてみましても、日米貿易収支に大きな変化が与えられると考えられるものは緊急輸入。これにしても、先ほどお話がありましたけれども、大体本年度に払うのはせいぜい四億ドルくらいではないか、こういわれているわけです。  それから、景気が上昇をすれば輸入がふえるので、したがって外貨の保有高も減ってくるのだというふうに政府は長らく答弁をなさってまいりましたけれども、この理論についても、日銀の総裁すら、たいへんむずかしい、これで説得することはむずかしい理論である。こういうことからいいますと、景気が回復すれば、私はかなり回復していると思うのですが、景気が回復すれば輸入もふえるというこの論理自体もかなり疑問になっているわけです。こういうふうなことを考え、さらに昨年行なった円切り上げの効果、これなんかにしても、効果があらわれるのは二年かかるといわれているけれども、人によっては、いやあの効果というのはもう出ちゃっているのだ、三百六十円から三百八円になったくらいの効果なんというのはいまもうあらわれちゃっているのだ、こういわれているわけですね。こういうことから考えてみますと、これはハワイ会談で発表になった三十八億ドルの対米出超を二十億ドル台に持っていく、両三年のうちにやるというのはかなりこれはむずかしいことではないかと思うのですが、植木さんは田中さんについて行かれなかったわけですけれども、今後の財政運営上、この内容というのは一体どういうふうにやっていこうと考えていらっしゃるのか、まずその基本的な点についてお伺いをしたいと思うのです。
  60. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいまの御質問において御意見をお述べくださったように、われわれ当局といたしましても、これをどういう方法で、ハワイ会談に両国希望しておられるような、総理並びに大統領の考えておられるような結果を招来し得るかということについて非常にいま苦心惨たんして研究をしておる最中なのでございます。しかし、それだからといって、とても放置すべき問題ではございませんから、なるべくならばいわゆる円の再切り上げというようなことは避けたい、絶対にこういうことはしないでおきたいという強い念願も一方には持っておりますし、それであればこそ、ますますその対策としていかなる案を主張すべきか、また国内の政策の上においても実行できるかということで非常にいま衆知を集めて研究をし結論を得たいと思っているのがただいまの現状でございます。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、田中さんがハワイ会談で約束したこの内容、両三年の間に対米出超の不均衡是正をしたいというのは、いまの御答弁ですと具体的内容はなし、こういうことになると思うのです。これは新聞その他の解説においても同じようなことで、いやしくも日本の首相がアメリカに対して約束をしたことですから、しかもこれは日本経済にとって非常に重要なことですから、中身がないというのはきわめて遺憾なことだと思うのです。いろいろ考えてみるに、いま申しました三十八億ドルくらいの対米出超を二十億ドル台に持っていくというのはたいへんむずかしい。田中さんの言うことをそのままやろうとすれば、どんな手段を使ってでも黒字幅を縮小させるということばに言いかえられると思うのです。こういうことになりますと、欧米並みの貿易あるいは資本の自由化あるいは関税障壁こういうものを徹底的に取っ払う、これは欧米並みまで完全に進める、こういうやり方か、調整インフレについて、私はあまり景気が上昇しても現在の日本経済は景気が上昇したから輸入がふえる、対米出超が減るというふうに思いませんので、調整インフレについては私は疑問があるわけですが、いま申しましたように、欧米並みの貿易あるいは資本の自由化を完全に徹底的にやる、あるいは円の切り上げをして日本の国際競争力を弱める、こういうようなどちらかの選択しか、事実上田中さんがアメリカと約束をしたことを実行しようと思うと、この二つのやり方の二者択一を迫られているんじゃないか、こう思うのでございますけれども大蔵大臣の意向はいかがでございましょうか。
  62. 植木庚子郎

    植木国務大臣 残念ながら私も、この問題については非常に苦労しておりますが、そしてまた事務当局とも一緒に研究しておりますけれども、まだここで御披露申し上げるような程度結論をどうしても得られないのが、ただいまの実情でございます。
  63. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それに関連しまして、そういう御答弁ですと、たとえばこの前のOECDの発表なり、つまり黒字国に責任があるんだ、あるいはこれから行なわれるIMFの総会においてもおそらくそういうようなことで日本に対する圧迫というのはたいへん強くなってくると思うのです。その辺のところを、この前の円の切り上げでだいぶ円切り上げのアレルギーがなくなったということで、いつやるかというようなやぼなことは聞きませんけれども、やはり大蔵省の頭の中に円切り上げもやむを得ない、これは考え方によっては日本の労働力が高く買われるということですから、そういう面では円の切り上げというのも、この前のショックのように何でも悪いんだ、悪いんだと考えるのも私はどうかと思うのですが、やはり円の切り上げのほうに追い込まれていくのではないか。あるいはそれをしない場合にはしないで、現在のように貿易の自由化も渋りあるいは資本の自由化も渋っている、こうなるとますますヨーロッパ、アメリカから非常に孤立した、ブロック経済化をしていく傾向がある。それを国際的に引き戻す、あるいは国際間に入っていくためにはやはり円の切り上げもやむを得ないのじゃないか、こういう考え方もあると思うのですが、その辺のことについて円の切り上げについては大蔵大臣としてはどういうような考えでいらっしゃいますか。
  64. 植木庚子郎

    植木国務大臣 先ほども申しましたとおり、私は円の切り上げは何とかして避けていきたい、その考えでおりますので、いろいろこの問題についてはすでに過去において七項目とかいうような方法で、これもやってみよう、あれも力を尽くそうというような問題もすでに提示せられているものもございす。決定しているものもございますから、そういうラインについてのできるだけ努力を深めていって、そうして円切り上げは避けていきたいという考えでおるところでございます。
  65. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでそろそろ予算が、昨日御存じのように概算要求が発表になっておるわけですけれども、何といってもここまでこの外貨の問題がこじれたと申しますか追い込まれている中には、やはり日本経済自体が基本的には輸出志向型の経済である。戦後一貫して、輸出をするためには金融の面でも税制の面でもあらゆる便宜措置をとってきて、そういう輸出志向型の日本経済というものが、今日百六十億ドルという外貨を保有するような日本経済になったと思のですね。その意味では、輸出志向型日本経済というのを、かなりの部分内需でまかなえる日本経済の形に構造を変えていかなければならない時期が、たいへんおそくなりましたけれども、いまここに来ておると思うのですね。その意味では、四十八年度の予算をつくられるとぎに、そういうことを具体的に予算編成される際に頭に置かれる考えがあられるかどうか。
  66. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいまの御質問に対しましては全くわれわれもそのとおりの考え方を実は持っておるのでありまして、各省からの御要求の内容を十分検討して、そうしてつづまるところこの通貨問題に影響の起こる大問題でありますから、これに支障のあるようなものはできるだけ避けていきたい、認めないでいって、そうしてわが国のすでに実行に着手しようとしている、なかなか着手の困難である七項目その他についても十分配慮をしてまいろう、こういうつもりでおるのであります。
  67. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも田中さんはハワイ会談で約束をことば上はしてきたわけですけれども、具体的内容ということになると一体どうなっているのかということはどうも何も中身がないようで、これではたしてやっていけるのかどうかということをたいへん心配するわけです。  少し問題を変えまして自治省にお伺いをしたいのですが、建設省が九月七日の幹部会で、マイホームを所有している人の税負担を軽くするために、四十八年度からは住宅地の固定資産税を四分の一程度減税をしたい、こういうふうに言っているわけなんですけれども、これは自治省にはまだはかられてないと思いますけれども、もう一つこれは関連してくると思うので一緒に聞いておきますが、いわゆる地方税法の三百五十一条にあるところの固定資産税の免税点、償却資産については現在三十万円、土地が八万円、家屋が五万円、こういうふうになっているわけですが、これは御存じのように四十二年以来改定をしていないわけです。償却資産が三十万ということは、四十二年からですから現在もう五年もたっているわけですから、これはかなり大幅に、私たちは百万円と言っているのですが、百万円程度にまで免税点を引き上げる必要があるのではないか。これと並行して、建設省が言っているマイホームを持っている人の税負担を軽くするために固定資産税を四分の一程度減税をする、これはある部分ではオーバーラップしてくる部分もあると思うのですが、この辺は現在自治省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  68. 小川亮

    ○小川説明員 現在固定資産税は三年ごとに評価をいたしておりますが、納税者の急激な負担の増加を防ぐために、御承知のとおり負担調整措置を三十九年からとっておりまして、四十五年の評価額に比べまして現在の課税標準額は平均しますと四割のところであるわけでございます。さらにその価格の上昇率に応じまして、毎年一・一から一・四という上昇率を連乗していきまして、評価額に近づけようという調整措置をとっておるわけでございます。来年がまた評価額の改定時期でございまして、一方では評価額課税をすべきであるという意見がございますし、一方では納税者の負担ということを考えまして負担調整措置をとるべきであるというような意見もあるわけでございまして、こういったものが固定資産税の課税の基本に大きい問題としてあるわけでございます。さらにその上に、土地対策でありますとか住宅対策、こういう問題があると思いますが、やはり基本的な問題はいま申し上げました負担の調整という、十年近く続けてきたこの問題でございます。非常に大きな問題でございますので、こういうものは全部ひっくるめまして税制調査会にも御審議いただこうという段階でありまして、自治省として、いま具体的におっしゃいました件につきましてこうしようということをきめておる段階ではございません。  それから、免税点の問題でございますが、いまおっしゃいましたように償却資産で三十万ときまったのは四十一年でございまして、それからもう数年たっておる。その前は三十四年であったと思いますが、七年ぶりに十五万から三十万に償却資産の免税点が変わったわけでございます。この免税点につきましては、免税点の趣旨、それから固定資産税には土地、家屋、償却資産、三資産ございますので、その均衡等を考慮してきめなくちゃならないということで、来年土地、家屋の評価がえの時期を迎えておりますので、こういうものとも関連いたしまして検討いたしたいというのが現在の段階でございます。
  69. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その検討したいというのは、私の言うように免税点引き上げの方向で検討するということですか。それとも、固定資産の評価を変えることはできないと私は思うのですけれども、そういう免税点引き上げの方向で、しかもこの率がいろいろと問題になると思うのですが、それが考えられるということですか。
  70. 小川亮

    ○小川説明員 評価がえいたしますと、土地、家屋それぞれ評価額が上がるわけでございます。したがいまして、免税点を引き下げる方向ということはないと思いますが、どういう額にするのか、あるいは据え置くのか、こういったものを含めまして検討するということになると思います。
  71. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間がないので、その次にちょっと証券問題についてお伺いをします。  御存じのように、証券市場がたいへん活況を呈して、八月十六日でしたかダウ平均四千円を突破したわけですね。ますますこのダウ平均は上がってくるのじゃないか。五千円だ、八千円だというたいへん景気のいい話ですけれども、よくよくこれは注意をしなければいかぬと思うのですが、この景気のいい話は、新聞なんかの解説によりますと、金融が超緩和をしている、法人筋が余裕資金の運用上、土地は先行投資のブームが済んだので、その次には株式投資だということで先行投資をしている、こういうようなことをも聞く。いろいろな話を聞きますと、大口の法人の買いが無配当株といえどもたいへん高い位置に株価を引き上げている、こういうふうに分析をしているわけですけれども、その面から考えますと、法人がたいへんのさばってしまって、それに伴うところの大証券ばかりがどうも証券界で独壇場になっていて、いわゆる証券の基本でなければならない大衆投資家の保護という面がたいへんなおざりにされているのじゃないか。いろいろな話を聞いてみますと、こういうふうに分析できると思うのですが、まずこの現状について、法人投資と個人投資の問題、それからこれだけ株が高くなってきて、株の業界では山高ければ谷深しという有名なことばがあるわけなんですが、たとえば円が切り上げになったとした場合にまたいろんな変動で暴落をすることがある。こういう際に一番被害をこうむるのは、何といっても大衆投資家であるわけなんです。こういうふうなことで、現在の株価の異常高値に対する警戒措置というか、この辺のところは一体証券局としてはどういうふうに考えていらっしゃるのか、まずその点をお伺いしたい。
  72. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 まず、最近の株式市況でございますが、これはただいまのお話にもありましたように、金融の緩和あるいは法人の安定株主工作というものによってかなり上がってきておるといわれております。しかし、いまお話のありました法人に対しましては、われわれといたしましても証券会社に対しまして、法人の株式投資の勧誘を行き過ぎないように、あるいは金融機関に対しましてもあまり株を買い過ぎないようにということをいろいろお願いしているわけでございまして、これは計数的に見ましても、ことしの一−三月には非常に多かったのが四月以降次第に鎮静してきているという状況でございます。  一方、株価が暴落することはないかということでございますが、株価というものは内外の経済政治、いろいろな要因によって上がったり下がったりいたしますのでなかなか見通しがつかないわけでございますが、われわれといたしましても御心配の点ごもっともでございますので、昨年の冬以来信用取引の規制措置あるいは証券会社に対しまして投資勧誘の態度、行き過ぎた営業のないように種々指示をしております。そういうことをやりまして、株価の状況を慎重に見守っているわけでございます。
  73. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それにちょっと関連をするわけなんですけれども、いまの証券市場の様子を聞いてみますと、たとえば法人の金融機関とかそういう巨大な金融力を持っている投資家が——昭和三十六年のときには個人の投資家が四七%あったのですけれども、現在では三六%と個人の投資家が減っているわけですね。そしてこういう個人の投資家が、いまの株価の問題にしてもあるいはその他の環境の問題にしてもなかなか入れる余地がなくなってきているように話を聞いているわけです。本来、多数の投資家が資金を出し合って健全な値段をつけるというのが大衆投資家保護という現在の証券の基本であるはずでございますけれども、現状では逆に法人のほうがたいへん大きくなってしまって、その法人が巨大な資本を背景にして株価をつり上げるという状況になっているようです。個人投資家というものがたいへん肩身の狭い少ないパーセンテージになってしまっているということについて、いわゆる証券局としてこれからどういう指導をなさっていくつもりか、その辺をお伺いしたいと思います。
  74. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 まず、個人投資家の数でございますが、これは横ばいでございまして必ずしも減っているわけではございません。それから個人投資家の持ち株数、これもふえてはおりませんが減っているわけではございません。ただ、一方で増資等があるわけでございまして資本金額がふえてまいりますので、相対的に個人の持ち株比率はただいま御指摘のように毎年若干ずつ落ちてきております。この傾向がいつまで続くかということでございますが、昭和二十数年来六〇数%で、当時は法人は全然株を持つ力がなかったということで個人の比率が多かったと思いますが、その後系列化の問題、安定工作の問題等ございまして最近非常に法人の持ち株がふえてまいりましたが、今後このままの趨勢でいくのかどうか、あるいは現在が非常にピークになっておりますのでこういう傾向が出ておるのかどうか、これはもうしばらく様子を見なければわからないわけでございますが、われわれといたしましては、証券会社に対する営業姿勢といたしまして過度に法人に依存しないように、お話のように法人の比率が上がってまいりますと市場が狭くなる、これは問題ではないかということ、それから個人投資家に対しましてはあまり行き過ぎた勧誘をしないように、こういうことを指導いたしまして、節度ある市場ができるようなことを期待しているわけでございます。
  75. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、株価の好況に関係をして、東京証券取引所の一日の出来高が大体いま七億株近くといわれているわけですね。たいへん出来高が急増しているわけですけれども、この急増に結局東京証券取引所が対応できないということで、たしか七月の末から八月の初めにかけて立ち会い時間を三十分短縮をしたわけですね。実はこういうふうな中身をいろいろ聞いてみますと、忙しい忙しいと言いますが、忙しいのは取引所の職員と一部の大証券だけで、中小の証券会社というのはそんなに特別に忙しいわけではないわけですね。立ち会い時間は御存じのように九時から十一時までが前場で、一時から三時までが後場、そのうちの三十分を取引を停止するということは私はかなり大きな問題だと思うのです。御存じのように、株式の売買というのはまず第一が値段、第二が早い者勝ち、つまり時間というものがたいへん大きな影響を持っているわけなんですね。その意味で三十分縮めるということ、これは法律上禁止はされておりませんけれども、やはり取引所をあけるという投資家に約束をした時間を縮めるということは、これはたいへん大きな問題だと私は思うんですが、この取引所の取引を三十分短くしたことについて証券局としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  76. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 ただいまお話しのように七月の初めから八月の中ごろにかけまして、非常に出来高がふえたということによりまして立ち会い時間の三十分短縮というのがしばしば行なわれたわけでございますが、証券取引所の使命といたしましては、有価証券の適正な価格形成というものが円滑にできなければいけないわけでありまして、あまり市場が込み過ぎまして値段のつけ方が非常に混乱するということでは一般の信頼にもそむくことになりますので、やはり取引所の理事長としては市場の状況によってそういった取引時間の短縮をはかるということはやむを得ないと申しますか、妥当な措置であると考えております。  それからお話のように、そういうことがしばしば起こるかどうかということでございますが、まあこの株式市場ということは非常にいろいろな関係がありますので、出来高を平均的に押えることはできないと思います。ことしの七月、八月が平均三億株を上回るということで非常に活況を呈しておるわけでございます。これを過去の数字をとりますと、一年を通じまして二億株をこえたことはありませんし、一月を通じましても三億株をこえるということはほとんどないような状況でございます。したがいまして、七月から八月にかけまして立ち会い時間の短縮がありましたが、これが今後恒常的になるというふうにはわれわれ必ずしも考えておらないわけでございます。  それからまた中小証券のお話がございましたが、たとえば四十六年中出来高に占める四社のシェアというのが五三・七%でございます。それが四十七年の一月−八月をとってみますと五四・二%でございます。したがいまして、〇・五%ばかりはふえておりますが、必ずしも大きなところがどんどんふえて中小証券が減っているということではないわけでございます。出来高がふえておりましてシェアが〇・五%ぐらいの違いでございます。中小証券におきましても出来高はかなりふえているという数字になっていると思います。
  77. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまのお答えの、有価証券の適正な価格を形成するために混乱が起こらないようにするというのは、ぼくはこれが一番大事なことだと思うのですが、そのときに立ち会い時間を短くする。きょうはどうも出来高が多いので短くする。投資家に対して開くと約束をしている時間を短くするということは、これは私は適正な価格形成にはならぬと思うのです。その意味でやむを得ない措置であったということならわかりますけれども、東京証券取引所として妥当な措置であったということについては私は納得できないと思う。したがって、やむを得ない措置なんで今後どういうふうに対処するかというんならわかりますけれども、東京証券取引所として——私はこれからもうちょっとそれに関連してお伺いしますけれども、これからますますふえていく投資に対する対策を考えずして、公開をしているこの六時間という時間を三十分縮めるということは、六時間のうちの三十分ですから大きなパーセンテージを占めるわけですから、その意味で妥当な措置であったという表現については私は納得できない。やむを得ない措置であるというならわかるのですが、その点どうですか。
  78. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 ただいまお話しのように、四時間という前場、後場合計立ち会い時間でございます。これを縮めることは好ましくないということは同感でございます。したがいまして、そういう仕組み全体としてはやむを得ない措置であったということでございますが、あるいはことばの問題かとしれませんが、非常に出来高が急増した場合にはああいう措置をとるしかないという意味で妥当であったと言わざるを得ないということでございますから、まああえて言えばやむを得ない措置とおとりいただいてもけっこうでございます。
  79. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 先ほど六時間と言いましたが、四時間の私の勘違いです。  それで、それに関連をするわけですが、いま東京証券取引所でも機械化をするということで、出来値と出来高と、気配のほうはわかりませんけれども、とにかく出来高と出来値をコンピューターで報道するように考えておるわけですね。こういうことをすればますます大衆投資家というのは、大衆でなくてもつまり投資家というのは、情報の伝達だけはどんどんされるので今後投資というのはますますふえていくと私は思うのですね。そういうことから考えてみますと、情報の伝達だけの機械化ではなくて、今後は注文自体の事務処理を機械化する部分まで東京証券取引所というのは機械化をしていかなければいかぬのじゃないか。その辺の指導は証券局としてはどうなっていますか。
  80. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 いままですべて人力でやっておりましたものを、情報の伝達にせよ機械化するわけでございますから、非常に新しいことを始めるわけでございます。したがいまして、その準備に非常に時間がかかったわけでございますが、いまの予定でまいりますと、おそらく情報の伝達の機械化ができますのは四十九年の秋以降でございますから、あと二年ちょっとあるのじゃないかと思います。一方株式市場としての先進国である諸外国におきましても、現在の段階では機械化しているのは情報の伝達にとどまっているわけでございます。そういう観点からいたしまして、当面の問題といたしまして、機械化は情報の伝達にとどめるというのは穏当な措置であろうかと思いますが、しかしお話のように、将来情報の伝達が敏速になることによって市場出来高がふえてくる対策はどうかということは、われわれとしては考えなければならないと思いますが、たとえば取引のやり方をどうするかとか、そういう問題をからめての今後の問題であろうかと思っております。
  81. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間がないからそれをあれしておってもしようがないのですが、情報の伝達だけやって注文者だけはどんどんふえる、しかし実際に注文を受けてから売買するまでの肝心の部分を機械化できなければ、四時間のうちの三十分市場を閉鎖しなければいかないという状況というのはますます目に見えていると思うのです。ですから、今後の問題として、情報の機械化をするならば、注文のほうの機械化、事務処理の機械化というのをやはり一緒に進めていかないと、一番肝心な大衆投資家保護という観点から、四時間の開くべき時間を三十分縮めるというようなことになってくると思うので、その点もひとつ指導してもらわなければいかぬと思うのです。時間がありませんからそれについてお答えはけっこうです。もう一つ、これからも証券市場というのはだんだん国際化をしてくると思うのですけれども、少しこまかい問題ですけれども、たしかことしの七月一日に許可になっていると思うのですが、アメリカの証券会社のメリル・リンチですね、日本の投資家がこのメリル・リンチを通して外国の株を買う、このときにはメリル・リンチが会員になっている取引所に上場されている株について、たとえばニューヨークの取引所とかそういうメリル・リンチが会員になっている取引所に上場されておるところの株については手数料は要らない。ところがメリル・リンチを通さないでほかの証券会社を通す場合には要る。これはいまは一社だけのことですからいいですけれども、今後いろいろと問題が起こるのではなかいと思うのですけれども、これはどういうふうなことを考えていらっしゃいますか。
  82. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 いまの御質問でございますが、外国証券業者法というものによりまして、外国の証券業者が日本に支店を出すということになりまして、その第一号といたしまして、メリル・リンチがその認可を得たわけでございます。メリル・リンチは、やはり郷に入っては郷に従えということで、証券業協会という証券会社の連合団体がございますがそこに加入しております。そこで実はその証券業協会の取りきめといたしまして、やや技術的になりますが、外国に注文する場合には、外国での手数料は当然取られるわけでございますが、それと同時に、外国に注文するにあたっての諸経費というものが要りますので、そういう手数料を徴収することについて、投資家から徴収することにしているわけでございます。したがいまして、証券業協会に入っております証券会社は、その取りきめを守らなければいかぬということで、メリル・リンチも入っておるわけでございますので、その規定を守っておるわけでございます。ただメリル・リンチといたしましては、一ころ、自分はアメリカに親会社と申しますか、ありますから、アメリカの親会社に入る手数料も、自分に入る手数料も、同じかどうかということがございますけれども、ふところが似ているということで、日本の普通の証券会社がアメリカの取引所に発注するに要する手数料というもの、テレックスの費用とか電報の費用とかいうものはまけてもいいという話をしたことはございますけれども、それは証券業協会の話し合いによりまして撤回いたしました。したがいまして、ただいまはメリル・リンチも日本の証券会社も同じような体制になっておりますので、差が生ずるという問題は生じておりません。
  83. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これはちょっと私も調べてみます。  それからメリル・リンチは、たしか日本の場合は正会員には入っていないわけですね。たしか非会員だと思うのですが、正会員、非会員というのは、おそらくやり方は行政措置と申しますか、営業方法書を書かして、正会員、非会員でやっていると思うのですけれども、この行政指導というのは、いろいろ聞いてみますと、日本だけのものでアメリカ行政指導というのはないようですね。そうしますと、これからますますこういう外国の証券会社が日本に入ってくる場合に、いろいろとまた日本流のやり方が通用しない場合が起きてくるのではないかと思うのですが、その辺のところを何らか法律的な、法改正をする必要があるのではないかと思うのですけれども、従来どおりはたして行政指導ということでできるものだろうかどうか、この辺のところはいかがでしょうか。
  84. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 ただいま申し上げましたメリル・リンチの会員の件は、これは取引所会員というお話だと思いますが、これは取引所の決定でございまして、取引所が自主的にきめている問題でございます。したがって、行政指導云々という問題は、この点に関してはないわけでございますが、ただ、お話しのように、証券行政につきましても国際化という波が非常に押し寄せてまいっておりますので、いつまでもいままでのままでいけるかどうか、あるいは場合によっては法律的の手配を要する問題も将来起こらないとも限らないと思います。これは逐次通常業務を進めていく場合にそういう必要があればまたやがて法律の改正等をお願いする機会があると思いますので、その節はよろしくお願いしたいと思います。
  85. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと私の認識が違うのかもしれませんけれども、メリル・リンチが日本で営業をする場合に、これはおそらく、上場銘柄は原則として正会員を通して売買を行ないますというような営業方法書というのを大蔵省に出すのじゃないですか。出して認可をもらわないと、これはできないのじゃないですか、そういう意味での営業方法書を、これは行政指導ですね、法律には何にもないわけですけれども、出さないと、つまり非会員で日本の株を売買できないようになっているのじゃないですか。協会だけの問題ではないと思うのですが。
  86. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 私もその業務方法書の内容をつまびらかにいたしませんが、たしか取引所の定款でございますか、外国証券業者の支店は取引所の会員に入れないという規定があったかと思います。したがいまして、自動的になれないという仕組みになっていると覚えております。この辺はもう一ぺん確かめてみてもよろしゅうございますが。
  87. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間がありませんから、きょうはこれだけにいたします。
  88. 金子一平

    金子委員長 小林政子君。
  89. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、さきに行なわれましたハワイでの日米首脳会談、ここでの一つの重要な問題になりました日米経済調整の問題について、いわゆる貿易収支の不均衡を是正するということと、これを合理的な期間内に改善をしたい、あるいはまた十一億ドルにのぼる緊急輸入を約束をしたということが発表されております。そして、その後行なわれました記者会見などでも、田中総理は、今後ともドルの力を維持するということがきわめて重要である、こういう意味の記者会談を行なったというふうに発表されておりますけれども、私はこのような一連の措置というものは、アメリカドル防衛政策に日本が積極的に協力をすることではないか、このように考えますけれども、大臣にまずお伺いをいたしたいと思います。
  90. 植木庚子郎

    植木国務大臣 その問題につきましては、それは日本アメリカの間におきまする輸出入の均衡のとれておらない、この状況があまりにも現在の関係諸国間で露骨な、はっきりした数字の上にまでもあらわれておる問題であります。したがって、この問題解決のためには関係諸国全体がお互いに力を合わせなければならぬのでございますが、日本アメリカの間における貿易の不均衡が非常に目立って多いということから、おのずから両者間で深く話し合いをしなければならぬ、非常にむずかしい問題ではありますが、両国ともにこの問題について十二分に議論もたたかわせ、そしてそれぞれの対策をそれぞれの国でやはり考えていくということをやっていこうという話し合い結論としては出ておるのでございます。
  91. 小林政子

    ○小林(政)委員 これらの問題をめぐっての国際通貨問題ということが最近非常に重要になってきておりますけれども、私はやはりアメリカの国際収支の赤字、これが増大をしている、あるいはまたドル危機が相当深刻になってきている、こういうことがいわれておりますけれども、これのやはり主要な原因は、むしろアメリカのいわゆる侵略政策、ベトナム侵略政策に積極的に金を使っている、ここのところに原因があるということはもう世界で周知の事実でございます。当然この一九七一年のアメリカの公的決済ベースの赤字というものが二百九十七億六千五百万ドルであったけれども、その最大の要因というのは、一つには軍事関係費あるいはまたアメリカ政府借款、こういうものが、いわゆる政府関係の取引の赤字というものが七十三億一千七百万ドルにもなっております。こういうことを考えてみますと、ほんとうにドル防衛をまずアメリカがみずからこれを正していくということが私は当然だろうというふうに考えます。そのためには日本政府は当然今度の会談の中でアメリカに対してこの点を正しく指摘をし、そしてアメリカのベトナム侵略を直ちにやめるということを日本政府は主張し、要求をすべきだったと考えますけれども、これらの点について一体要求をされたのかどうなのか、この点についてもお伺いをいたしたいと思います。
  92. 植木庚子郎

    植木国務大臣 ただいまの御指摘の点につきましては、世上そういう批判の声があることも聞いております。批判の声と申しますのは、単に日本側においての輸出が非常に出過ぎておるということだけのほかに、アメリカ自身にもいま仰せになったような原因があるのではないかという批判が行なわれておることを私も承知しておりますが、先般の両巨頭会談において、そうした点についてどういうようなところまでお話し合いをなさったかはつまびらかにしておりません。
  93. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題に何らかの形で触れたのではないかということで、いろいろ発表された文書などを見てみましても、いまのところ根本的なこの問題については一言も公表をされておる文書の中には触れられておりません。こういう中でただ十一億ドル緊急輸入日本がこれからもやっていくんだとか、あるいはまた貿易収支の不均衡の問題について短期間にどんなことをしてでもこれを何とかしていかなければいけない。こういったようなことをただ日本アメリカの言いなりで解決をはかっていくというようなことになりますと、これは明らかに経済面からいわゆるアメリカの侵略政策に日本が協力をしていくということになるのではないかというふうに私は言わざるを得ないわけでございます。  また、日米共同声明の第六項の中に、いわゆる国際通貨制度の基本的な改革の問題について触れておりますけれどもアメリカは国際通貨制度の改革に対する態度としては黒字国の責任でレートの切り上げを行なって解決をするということを非常に強く主張しているわけでございますし、また七日に発表されましたIMFの報告書でも、従来の固定平価の問題についてこれを維持していくという、こういう基本的な態度についてはこれを改めて、そして基礎的な不均衡がある場合にはいわゆる平価変更を行なう、こういうことがいわれると同時に、またそれを義務づけていこうとするような動きが強まっております。為替レートの変更というようなことが当然視されるようなことが現在発表されておりますけれども、特にこの中で、アメリカが国際通貨の改革については黒字国の責任でもって解決するという、いわゆる為替変更を行なうということを非常に強調している国でありますし、そこと一緒になって具体的に日本がこの問題の解決をしようということは一体どういうことになるのか。私は、こういうことを約束してきたということは、わが国が円の切り上げというものに追い込まれる、こういう道を開いたことではないかというふうに思いますけれども、大臣、この点についてどのようにお考えになられますか。
  94. 植木庚子郎

    植木国務大臣 二国間の国際収支の非常な不均衡とか、あるいは貿易上の不均衡というようなものは、両者にやはり原因があるという議論もございますが、その議論は私はいま非常に傾聴しておるのであります。したがって私としましては、十分そうした問題については、単にいまの赤字国、黒字国といいますか、その黒字が、たとえば日本の場合非常な対米関係は黒字でありますが、この黒字が日本だけの責任である、あるいはこれを直すのについては日本だけが努力をしなければならぬのだというふうには考えておらないのであります。  おそらく両巨頭会談においても十分その辺の話し合いは、主張すべきことは主張されたものと、これは想像でございますが、私は思ってはおりますが、聞いてはおりません。内容についてはつまびらかにしておりませんと先ほど申したとおりであります。それで、黒字国である日本がただ日本だけが緊急輸入の問題で、輸入が非常に少ないから輸入もでき得るものはひとつこの際やろうじゃないかというような考え方になっておる点もありますが、ただ最近の国際情勢全体を見ますと、黒字国が非常に責任を重く持たなければならぬというような考え方がどうやら少し広がっているようにも思えるのであります。さればといって、正論がございまして、やはり赤字国も十分その責任考えるべきだということをいっておる点がございますから、私はやはりこの点は理論的の考え方に従って、今後いろいろな機会が向こうへ行きましてもあろうと思いますから、微力ではございますが、純理論で自分は主張すべきものはどんどん主張してみたい、こう思っております。
  95. 小林政子

    ○小林(政)委員 黒字国の責任で解決をはかっていくということを特に強く主張しているのは、これは大臣承知のとおり。特にその点はアメリカが優先的にこの考え方を取り入れているわけですし、強く主張しているところでございますし、私どもはそういうう立場をしっかりと踏まえると同時に、やはりドル危機の根本的な原因というものを踏まえずして、そしていろいろとあれこれの対策によってこの問題を正しく解決することはできないと思います。前回、一六・八八%の大幅な円の切り上げの際にも政府は円の切り上げはやらないのだということをいいながらも、実際に大幅な円の切り上げによってどんなに中小零細企業者やあるいはまた工場で働いている一般の人たち、国民全体に大きな影響、不利益な大きな犠牲を与えたかということは、もう新聞などでも大きく取り上げられておるので、大臣もよく御存じだと思います。私どもは、やはりドル危機の主要な原因こそ日本が主張し、そしてその上に立って国際的な調整という問題についても話し合いをしていくべきが当然だと考えますし、国民にこのような大きな犠牲を払わせるようなベトナム侵略に日本経済を協力させるというようなことについては、私どもは断じてそういうことは認めるわけにはまいらないわけでございます。この点を強く主張しておきたいと思います。  次に、特にいま田中総理大臣の「日本列島改造論」ではいろいろなことが述べられておりますけれども、新しい国づくりを効率的に推進するために財政資金の重点あるいは先行的な投資が必要だというふうにいわれております。特にここ数年来国民所得に占める財政の割合を見てみますと、昭和四十三年には二二・八%、四十四年、四十五年は十三・九%、そして四十六年になりますと、国民所得の対前年の伸びが九・五%に対していわゆる財政支出の伸びは一七・六%です。四十七年の予算を見てみますと、国民所得の対前年比の伸びが一一・一%に対して歳出の伸びが一八・三%です。国民所得に対する財政支出の比率というものがここのところ急速に高まっているわけです。このような傾向をたどっている中で、改造論では年率一〇%のこれから経済成長を続けていく、こういうふうにいわれています。高度成長をこれから保証していく、こういう計画を財政指導していく、これから行なっていくということになると、一体国民所得に占める財政の割合というものはどの程度ふくらんでいくのだろうか。ますますこれから増加せざるを得ないんじゃないだろうか、こういうふうに考えますけれども、大臣いかがでしょうか。
  96. 植木庚子郎

    植木国務大臣 新内閣におきまして主張しております、総理考えておられますることは御承知のとおりでありますが、日本列島改造という名のもとにいろいろとたくさんの財政需要が必要でございます。しかし、他面においてこれに対する大きな一つの柱として国民福祉の向上、すなわち福祉国家の建設に向かってあらゆる努力をささげたいという気持ちを持っております。そのために全体として財政の占める割合が御指摘のように相当ふえております。それがすなわち私ども財政を預かる者として非常に今日悩み続けており、いろいろな研究をしておる点でございまして、それがなかなかにもって名案がそう簡単に出るものじゃないので、今後来年度の予算編成にあたっては、各省の御了解も十分得られるように努力もし、そうして均衡がとれた来年度の予算、すなわち国民福祉の向上という国民全体のほとんど最近においてはコンセンサスにまでなっておりますようなこの大きな問題と、そして列島改造の名のもとにあげられております社会資本の充実整備というような問題とあわせまして、両々相まって研究をし結論を出していかなければならぬという難問題を抱えて悩んでおる際でございます。
  97. 小林政子

    ○小林(政)委員 私も田中総理がやろうとしている改造論を読んでみましたけれども、いま大蔵大臣が言ったようなことよりも、むしろそれこそ工業の再配置を行なわなければいけないとかあるいはまた大都市の再開発を本格的にやっていく必要があるとか、大規模工業基地を建設していかなければならないとかあるいはそれを結ぶ大きなネットワークとしての情報交通網と高速道路あるいは幹線道路、新幹線、こういったようなものを本格的に進めていくということがずっと述べられているわけでございます。このことを考えてみますと、ほんとうに財政規模がふくらむということは、いままで取り忘れられていた所得の低い人たちやあるいは老人問題や社会保障やそういったようなものにたくさんの財政をふやすということではなくて、むしろ大企業本位の立場に立っている。この改造論というものを私どもが読めば読むほどその点が明らかになっているというふうにいわざるを得ないわけでございます。こういったような中で国民所得に占める財政の割合が大きくなるということは、・国民所得の増加よりも財政の規模の増加が早いということを示しているわけでございますし、そうすればその財政の膨張をまかなうための財源措置、これが非常に重要になってくることは言うまでもございません。政府は、今後この膨張する財源をまかなうためのいわゆる財源措置を一体どのように考えておられるのか、基本的な構想をお聞かせいただきたいと思います。
  98. 植木庚子郎

    植木国務大臣 基本的な構想と言われましてもなかなか名案がないのでありますけれども、私どもといたしましては、わが現内閣が主張して、首班が主張しておられるこの問題につきましては、それにはそれ相当の理由があるのであります。いまのままで放置されておるならば、都会地における各種公害その他で、生活環境というものが人間の住むにふさわしくないようなところになってしまいはせぬかということも、理論上の計算をするとそういう一面も確かにあるのでございますから、これについていまから過密、過疎の解消等のためにいわゆる日本列島改造ということばがたまたま使われたのだと思いますが、これが重点を置かなければならぬ問題の一つであることは申すまでもないのであります。しかしながら、仰せのようにそれが財政の各重要事項に対する配賦が不均衡であるというようなことになってはならぬ。人間尊重、お互いの生命を一番大事にし、そうしてお互いの生活を向上していかなければならぬ。文化の向上は言うまでもありませんで、さらに後代の国民のための教育にも力を費やさねばならぬといったようなことで、こういう生活あるいは教育といったような面につきましても今日のままでは放置できない問題がたくさんあるのでありますから、これをあわせて考える。そこはすなわち今回の列島改造の場合には、いわゆる公共事業に力点を置くだけのことを考えますと、あるいはこれが財政法の規定する建設公債のワク範囲内でできないということにもなりかねない。さらばといってこの問題のために赤字公債を発行するということは、財政当局として容易に賛成すべからざる問題だ、こう考えております。しかも他面におきましては、福祉増強のために非常な要望も国民全体から湧き上がっておりますし、これに対するこたえをするということもまた田中総理の常に主張しておられるところでございますから、この間の彼此あんばいというものがわれわれ当局として一番骨の折れる問題でありますが、何としてもこれは切り抜けなければならぬ。そうすると、それぞれのワクがいろいろな点で生じてまいりますから、そのワク範囲内でお互い責任を持ち合った行政の各担当大臣が譲り合いをし、妥協をして、両々相まった適切な来年度予算を編成してみたい、こういう考えでおります。
  99. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、この財政措置をどうするかという問題については当然大蔵省がいろいろと検討しているのだろうというふうに考えておりましたけれども、非常にはっきりしない。いわゆる裏づけの財政がなくてアドバルーンだけ上げるというようなことであってはますます根拠のない、全くまやかしのものにすぎないというふうに言わざるを得ないのじゃないかと思うのです。政府は、来年度の予算の中で十四兆円とかあるいは十五兆円とかそういうような予算を組んでいくんだということを言うと同時に、また直接税五千億減税を来年はやっていきたい、こういう宣伝もしているわけです。これではほんとうの財政の確保という点で、大幅な赤字公債を発行するか、それともいわゆる新たな形で税収を引き上げていくか、その二つにしか私は道はないのじゃないか、こういうふうに考えるのです。いま大臣は赤字公債の発行ということは極力避けていきたいという意味のことを御答弁なさいましたけれども、私はやはりいま政府が発行している公債、これは建設公債だ、建設公債だというふうにおっしゃっていますけれども、建設公債といわれて発行されているものも事実上は私どもは赤字公債であるというふうに認識いたしております。一体、来年度の公債発行をどのくらいにお考えになっているのか。大臣の言われているその建設公債、いわゆる赤字公債と私ども考えておりますけれども、そういうものを来年度どのくらい発行をせざるを得ないというふうにお考えになっているのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  100. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いわゆる来年度の公債発行額を幾らにするかについては来年度の予算編成全体の内容からしておのずから出てまいるわけであります。おのずから出てまいると私の申しますその意味は、財政法の規定する建設公債、この財政法上許される建設公債という程度は絶対にこれは守らなければいかぬ、こういうことを考えておりますから、だから、その点はおのずから予算全体の内容からくるのでありますから、したがって、予算全体の内容を各部分ごとに積み上げる際に、いわゆる赤字になってしまう、財政法上のワクをはみ出してしまうということにならないような予算の承認のしかたといいますか、編成のしかたをしなければなりませんから、その点でおのずから限度がきまるので、いまこれが何兆円だとかあるいは何兆何千億であるというようなことはとてもいま私には計算上まだお答えいたすことができません。そういう状態にあるのであります。  一方、福祉増強のための費用といたしましては、これはやはり昔からいわれる普通歳入、当然租税収入がその大宗をなしておるのでありますが、これがおのずから減税しなければならぬという要請もあり、一方においては、それではとても足りないから、だから福祉増強のためにはやはり普通財源式な適当な、臨時的な税制ではなくして恒久にわたってそれが維持できるような新しい税制考えていかなければならない、すなわち減税するならば増税のほうもおのずから起こってくるのではないか、かように考えられますので、そこがこれから予算の要求の内容を見てまいりませんと何ともまだお答えがしかねる、理論だけを申し上げておるわけでございます。
  101. 小林政子

    ○小林(政)委員 公債の発行についても今年度のいわゆる一兆九千五百億を下回ることはないという御答弁でございました。  また、税制については今後どのように考えておられるのか、これについても伺いたいと思うのです。自動車重量税だとかあるいはガソリン税あるいは物品税など間接税を増税をしていこうというようなこともすでにいわれておりますし、あるいはまた付加価値税の採用も将来避けられないと思いますけれども、これらの点について一体どうお考えになっているのか、具体的な詰めた数字をあげてということではなくて、構想として伺っておきたいと思います。
  102. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私の考えといたしましては、やはり国の政策、国の予算というものは、ただ一年、二年、三年の短期だけを見ておっては、これは将来のためにおそるべき間違いを起こすもとになりますから、やはり本来の健全財政というものを頭に描きつつ、その方針に従って今後とも苦しい中を各関係者了解を得て、そうして誤りなきを期したい、こういう考えでおるのであります。
  103. 小林政子

    ○小林(政)委員 私ども、やはり委員会ではもっと責任のある御答弁をいただきたいと思います。確かにまだばく然としているので、数字を一々あげてというようなことを私どもも聞いているのではございません。具体的に構想を、こういう構想を持っているのだ、こういうような点をはっきりと聞かしてもらいませんと、質問をしても何かぬかにくぎを打っているようで、国会答弁というものは私はもっと国民に責任を持って行なっていくべきが当然じゃないだろうか、それが政府責任だというふうに考えます。  私はいまの政府に対する税調の答申その他をいろいろと見てみます中で、間接税は結局これからふやしていく、こういう方向を強めていこうとされておりますけれども、間接税が低所得者に重い負担を負わせる悪税であるということはいままで言われ続けてまいりました。政府は福祉予算だとか五千億減税だとかいうことを言っておりますけれども、結局私は大企業本位の日本列島改造論計画、これを実行に移すという、こういう中でその財源は所得の低い者に重い負担をかけ、あるいはまた間接税の大増税というような結果を招き、赤字公債を発行せざるを得ないという、こういう事態の中でインフレの進行によってまかなわなければならなくなり、改造論というものが結局私は国民に対する重い大収奪を課していくものにすぎないのではないか、このことを強く考えますので、この点について大臣の答弁を要求して私の質問を終わりたいと思います。
  104. 植木庚子郎

    植木国務大臣 いろいろ重ねての先ほど来の御主張の御質問でございますが、私の立場としましては、いわゆる各省からそれぞれ予算の要求があり、そしてその予算の要求をそのままのめる状態であるかといいますとこれはのめません。現在すでに八月一ぱいまでに出ただけでものめないのであります。いわんやそこに今度は新しく新政府として、現在の内閣としてあれもやりたい、これもやりたいという問題が出ておりますが、これは九月一ぱいかかりませんと、これまた正確には捕捉さえできない、要求額の捕捉さえできないのがいまの姿でございます。その姿において、私がいまここで赤字公債は出しません——出したくありませんということは言ってはおりますけれども、しかしそれ以上に、それでは新税はどうするのか、あるいは国民の福祉増強のためには、私がいま申しましたように、二年、三年の短期のものではいけないのだ、やはり将来にわたっての財源をちゃんと考えておかなければその福祉増強もなかなかできないのだという問題がございます。また他面においては、いわゆる現在の税制において減税の要望がこれはまた国民の多数の方面から出ておりますし、またこの問題についても十分研究をしていかなければならぬ問題であります。  そういうふうにいろいろな問題があるので、ただいまの私の立場、ただいまの大蔵省立場としてこれをいま編成前にどうするのかこうするのか、もう少し具体的にと言われますが、われわれはやはり数字そのものをもっとはっきりとつかみませんというと、これ以上のことはできませんとか、あるいはこれはこの程度でがまんをしてもらったのですという説明に最後はなると思いますけれども、それはかすにもう少し時間をもってしていただきませんと、どうにも現時点においてはっきりしたことを言えと言われましても、あるいは財源を求めるための増税をどうするかというなことを考えましても、それじゃその税種についてどの税がいいか、どういう税がいいかというような問題は、なかなか容易に踏み切れないのであります。のみならず、また減税をするという面におきましても、その中身は所得税についての御要望の多いことも承知しておりますけれども、その他電気税、ガス税といったようなああいう生活必需品にまで負担がかかるような、これは安い率ではありますけれども、あの問題なんかもいつまでもこのままにしておいていいのかどうか、私は多年そういうことも考えておるのですが、だからそれがどうしてもこの際政策上この問題をやらなければいかぬ、列島改造のためにこれはやらなければならぬ、福祉増進のためには老人対策はどうしなければならぬ、教育の問題をどうしなければならぬというような問題を考えますと、いずれもりっぱないい仕事ではありますが、やはり国民全体がお互いでもってこの国を経営していくのでありますから、その意味におきまして、現在の私なり大蔵当局にどうやるのだ、もう少し具体的に言えと言われることは、私は遺憾ながらどうもお答えすることが困難なのであります。その点は御了解を仰ぎたいと思います。
  105. 金子一平

    金子委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  106. 金子一平

    金子委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、最近の金融事情等について、参考人として全国銀行協会連合会会長中村俊男君の御出席を願っております。  中村参考人には御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。最近の金融事情等について、何とぞ忌揮のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見は十五分程度にお取りまとめいただき、そのあとに委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。中村参考人。
  107. 中村俊男

    ○中村参考人 私が、ただいま御紹介いただきました中村でございます。  本日は、最近の金融情勢並びに今後の銀行のあり方ということについて、全銀協会長として意見を述べるようにということでございますが、御高承のとおり、全国銀行という範疇の中には、都市銀行や地方銀行といった普通銀行のほかに長期信用銀行や信託銀行も含まれておりますので、全銀協会長とはいいながら、本日は都市銀行に身を置く者という立場から、日ごろ考えております点についてお話をさせていただきたいと存じますので、この点御了承いただきたいと思います。  さて、初めに最近の金融情勢と今後の展望についてでありますが、一昨年の秋以来停滞を余儀なくされておりましたわが国経済は、先般発表されました経済白書にも明らかにされておりますとおり、昨年末をもって不況も底を打ち、本年に入りましてすでに回復過程に入りまして、昨今では、回復のテンポも次第に高まっているようでございます。  昨年夏のニクソン・ショック、その結果といたしまして、昨年の暮れには、わが国未曽有の経験と申すべき円の切り上げという事態を余儀なくされたのでありますが、それらの影響をさしあたり最小限にとどめて、予想より早く回復過程に入り得ましたのは、財政金融政策の適切な運営のもとで、国民が不況の克服に真剣な努力を重ねた結果であると存ずる次第であります。  しかし、経済が回復段階に入ったとは申しますものの、いわゆる需給のアンバランスはなおかなりのものがあり、また国際収支面での不均衡を早急に是正するためにも、今後の景気回復をさらに堅実なものとする必要があると考えられます。  その一環として、先ごろは公定歩合の第六次引き下げをはじめとする金利水準の全般的な引き下げが実施され、またこのたびは財政投融資計画の追加が行なわれました。今後もこのように財政金融政策の運営が弾力的に行なわれますれば、遠からず経済は本格的な上昇軌道に乗るものと確信いたしております。  しかしながら、わが国経済の行くえをやや長期的に展望いたしますると、その前途は必ずしも楽観を許されるものではないと存じます。  その第一は、世界経済に占めますわが国の地位の上昇に伴って生じます政治経済両面における国際的義務責任の増大であります。  わが国経済の規模の大きさと発展力の著しさは、世界経済、国際通貨の両面に少なからぬ影響を及ぼすに至り、わが国経済動向、したがってまたわが国の財政金融政策のあり方が、世界の注目と期待を集めるところとなっているのであります。  このような事態に対処いたしまして、政府はすでに種々の方策を打ち出してはおられますが、今後も国際協力を積極的に推進してこそ世界の信頼を得、今後のわが国の新しい発展に望ましい結果をもたらすものと考えます。  第二の変貌は、これまでの設備投資、輸出リード型の経済から国民福祉重視型経済への転換と、それに伴って生じます経済成長率の相対的な鈍化であります。  これまで、わが国経済はいわゆる超高度な成長を続けてまいりましたが、世界の経済発展と無関係にひとりわが国だけが高度成長を続けていくことはもはや許されず、わが国経済も減速過程に入ることを余儀なくされましょう。そして成長の果実を国民福祉の充実に還元せよとの国民の要請がますます高まりますのも当然でございます。国民あっての国家であり企業であります以上これらの要請に経済が傾斜いたしますのは必然の方向であると考えます。  経済の成長鈍化は、その他の要因からも予想されます。たとえば技術革新のスピードの鈍化、人手不足の激化、資源の入手難、工場立地条件の悪化などがこれであります。  いずれにせよ、短期的な景気循環は別といたしますると、趨勢としてわが国経済は一〇%を大きく上回る経済成長はあまり期待し得ず、その中で人間性豊かな福祉社会の実現に邁進してまいらねばならないと存ずるのであります。  こうした経済の変貌の中において、金融環境も大きな変化を見せてまいりました。特に昨年来金融市場はかってない緩和状態を現出いたしました。このため、都市銀行の貸し出し金利も急速に低下はいたしまして、平均約定金利もこの七月には六・六〇五%という戦後最低の水準にありまして、低下傾向はさらに進行いたしております。  ところでこのような金融市場の緩和をもたらしましたのは、外貨の流入に伴って外為会計からの巨額の資金が市中に供給されましたことが最大の要因でございますが、国内の企業の資金需要の鎮静化がこれに拍車をかけたかっこうになっております。もちろん、これまでの緩和は異常であり、これが長続きするとは考えられません。すでに景気回復に伴って企業の資金需要も出てきておりますし、対外対策の実施も含めまして、外為会計の払い超額も大幅に縮少しております。したがいまして、季節的には逼迫することも十分予想されるのであります。しかしながら、やや長期的に見ますると、日本列島改造に伴いますもろもろの資金需要がかなり予想されますものの、前述のわが国経済の成長率鈍化を前提とする限り、過去におきますような大幅な資金不足が恒常的に続くとは予想されず、金融市場の正常化は引き続き進展するものと思われます。そして銀行の資金運用の対象は、法人部門が減少して、財政部門、海外、そして個人向けの比重が高まるものと予想されます。こうした動きは先進諸国の過去の歴史について見ても十分うかがえるところでございます。このような経済金融環境の変化に対応いたしまして、銀行の役割り、あり方も当然変化してまいります。  そこで、次に銀行の今後のあり方について話を進めさせていただきます。  その第一は、日本経済の国際化と銀行のあり方についてであります。  前に申し述べましたとおり、日本経済の国際的な地位の上昇に伴いまして、日本経済のいわゆる国際化が急務となってきております。経済の国際化とは、企業を中心にもろもろの活動が地理的、人種的なかきねを越えて行なわれることであると考えられます。現に企業はかなり以前からこのような方向に積極的に動き出しているのでありますが、今後わが国が国際的な均衡を維持しながら発展してまいりますには、欧州あるいはアメリカだけでなく、広く発展途上国を含めた全世界に歩を進め、世界経済発展に貢献することが必要だと考えられます。こうした流れに沿って銀行も国際化の進展を急ぐべきことは言をまたないのであります。  その場合、銀行の役割りといたしましては、海外支店網の充実、あるいは国際投資銀行への参加等を含めまして、国内であると海外であるとを問わず、必要とされる金融機能を一段と拡充し、もって企業の国際的な活動を円滑化することであると考えております。それと同時にきわめて重要なことは、わが国金融市場を国際的に孤立することのないよう市場の国際的水準へのレベルアップに協力することであります。ただし、これはひとり銀行のみの力でできるものではなく、まず金融環境そのものをこれまでの半ば閉鎖的なものから開放的なものに移していかねばならないと存じます。それには金利メカニズムが一そう働くように金利の弾力化、自由化を進め、為替管理の方式も原則自由で有事規制の方向へできるだけ早く移行すべきだと存じます。またそのほかにも金融に関するもろもろの制度行政、慣行などを見直し、世界の金融市場に対抗し得るよう金融正常化を推進せねばならないと存じます。  もちろん、最近に至りまして対外投資の自由化、外貨集中制度の廃止、ロンドンでのCD発行等漸次前向きな政策が打ち出されてまいっておりますが、資金の吸収、放出の両面において規制を一そう緩和し、わが国の銀行が世界の銀行と対等の条件で競争しうる環境が整備されるよう期待いたしております。そうしてこそ、わが国の銀行も、その有する機能を活用して、内外のニーズにこたえられることと考える次第であります。  一方、経済環境の変化に伴いまして銀行の国内面において果たすべき役割りも当然変化してまいります。  それは、わが国の新しい発展目標に沿いまして国民一人一人の生活基盤の上昇並びに国民の真の豊かさにつながります社会資本充実への貢献でございます。社会資本充実のためには、政府金融機関等公共機関の果たすべき役割りは大きいのでありますが、すでに銀行は国民生活の向上という観点から、公共資本充実のための国債、政保債等いわゆる公共債の円滑なる消化はもとより、公共企業体に対する貸し出しなどを行なっておりますが、今後こうしたウエートが高まるのは前述したとおりでございます。  しかしながら、新時代を迎えての銀行の最大の責務は、国民大衆のあらゆる要請にこたえ、信頼を寄せられる銀行になることだと思います。銀行にとりまして国民の大切な財産である預貯金を安全かつ有利に保管することは重大な責務でございますが、同時に国民が利用しやすい貯蓄手段の開発を鋭意心がけてまいらねばならないと考えております。先般、景気動向並びに国際的な観点から、預貯金金利の引き下げが行なわれましたが消費者物価の上昇がなお続いている事情等にかんがみ、国民の貯蓄意欲をそこなわない方策の実施が望ましいのであります。もちろん、その中心は地価対策をはじめとする強力な物価安定策の実行でありますが、それとあわせてこの際、預貯金利子に対する課税の優遇がぜひとも必要だと信じております。全国銀行協会連合会では、預貯金利子の源泉選択分離課税率二〇%の据え置きをはじめ、老齢者の預金利子の非課税、住宅貯蓄並びに住宅ローンについての税制上の優遇等を強く希望いたしており、これにつきましては近く関係各方面にお願いに参上する所存でございますので、よろしくお願いいたします。  もちろん、貯蓄者に対する配慮は私ども銀行でも十分検討いたしており、金融資産の多様化という国民大衆の要望にこたえて、貯蓄者にとってより有利な貯蓄手段の開発につとめてまいりたいと存じております。  銀行の国民大衆に対する役割りは、貯蓄面についてだけではございません。今後は国民一人一人の生活水準の向上のためにいかにして安定した低利資金を提供するかが大きな責務となってまいります。すでに銀行は国民生活の向上という観点から、住宅金融をはじめいわゆる消費者金融の拡充につとめております。しかし、国民福祉の充実という点におきましては特に住宅金融の質と量両面にわたる充実が必要だと考えます。すでに銀行の住宅ローンは次第に定着しつつあり、また民間金融機関の出資による住宅金融会社の運営もようやく軌道に乗りつつあります。こうした制度面の充実と同時に金利面でのサービスをさらに一そう進め、国民住宅の建設に積極的に貢献いたしてまいる所存でございます。こうした国民生活の実質的向上はひいては産業界の発展にもつながり、バランスのとれた経済発展の道を約束するものと思います。  ただ、銀行の大衆化を心がける場合に特に自戒すべきことは、制度の整備と同時に銀行員の一人一人が顧客の立場に思いをいたして、真に要請されるサービスを提供することだと考えております。  以上述べましたような経済金融環境の変貌に伴いまして、企業の経営環境はいよいよきびしさを増し、資金の提供者としての銀行に対する期待は一そう高まるものと思われます。また、国民の銀行に対する要請も多岐多様になることも必定といえましょう。その場合、銀行のあり方としては、預金者に対してはできるだけ高い利息を提供する半面、資金の需要者には低利な資金をいかにして安定的に供給するかであります。しかも国際化のもとでは海外の銀行との競争にもたえていかなければなりません。  こうした役割りを全うするには、銀行はこれまで以上に効率化、合理化を推進せねばなりません。かねてより銀行はコンピュータリゼーションを中心に鋭意効率化に努力してまいりましたが、明年四月以降、全国銀行内国為替制度の稼働も予定しております。これによりまして全国の約七千の銀行店舗が、これには商工中金も入りますが、通信回線で結ばれまして、送金、取り立て等が最長の場合でも一時間以内に完了され、お客さまにとってもたいへんな便宜となるのであります。通常二、三分で決済をされる見込みであります。これは全く画期的な全世界に例を見ない制度でありまして、今後もこうした効率化に対する努力を続けてまいる所存でございます。  しかしながら、金融機関サイドによる合理化の推進には限度があることは否定できません。したがいまして、金融制度の改善を含めた効率化も考えませんと、国際的な競争に立ち向かえないと思うのであります。たとえば欧米の銀行にならいまして、業務の多様化を進め、業務分野間のかきねを漸次低くしていくことも必要だと思います。こうした方向のもとに銀行相互間に適正な競争原理を導入して、民間の自主的な判断によります提携、合併等を進めて、金融界全体の効率化を推進すべきだと存じます。  そうは申しましても、銀行は一般の企業に比べ一段とその公共性に思いをいたさねばなりませんし、信用機構の中枢でございます銀行界に無用の混乱を生ずるような事態は、絶対避けなければなりません。また現在の金融制度には歴史的、社会的背景が強く結びついているのでございます。したがいまして、これを単に経済合理性とか効率化という理論的側面だけから軽々しく論ずるのも問題があるかと存じます。すなわち、経済的、社会的背景の変化を十分に洞察し、タイミングに十分配慮しつつ、弾力的にしかも着実に前進させていくことが必要だと考える次第でございます。  以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  108. 金子一平

    金子委員長 これより質疑に入ります。堀昌雄君。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま中村さんからお述べになりました点についてお述べになったことは私も大部分同感でございますけれども、実はいま御承知のように、日本政治全体が一つの転換点に参っておるわけでありまして、最初のほうでお述べになったように、これまでの産業、企業中心から社会的環境、まあ国民の生活中心、福祉中心への転換というふうにいわれておるわけでありますけれども、ただ問題は、はたしてことばのように、これが実際の経済なりその他の面で生きてくるかどうかというところが、私は今後の重要な課題だと考えておるわけであります  そこで、最後のところでも少しお触れになったわけでありますが、私は今後の金融機関、銀行経営のあるべき姿の問題の中で、これまでもしばしば論議をしてまいりましたけれども、やはり現在は資本主義社会であり、銀行も一つの企業でありますから、その企業が基本的な営利性を追求するということはこれはやむを得ないことだと思いますけれども、反面金融機関に与えられておる公共性との関連をどう見ていくかということが私はきわめて重要な課題だと、こう思っておるわけであります。  そこで、これらに関連をして少しお伺いをしていきたいわけでありますが、新聞等で承知をしておることでありますけれども、今回田中総理は、日本列島改造論に関連をしてでございましょうが、都市銀行の店舗の再配置問題については、これはできればそういう過疎地帯から過密地帯への店舗の配置をかえるという考え方はやめたらどうかということを大蔵省に話されておるように実は承知をいたしておるわけであります。これは最も象徴的な銀行の公共性と営利性とのあらわれの一つだと思うのでありますが、やはり私は、このいまの再配置をやることになりましたもとは、御承知のようにかつての澄田銀行局長時代から効率化行政ということで競争原則の導入と効率化に少し比重が強くかかった結果、都市銀行の場合にはそういう現象が起きてきた、こう考えておるわけでありますが、全般的に金融機関を見ますと、地域的な金融機関は実はそこから動いていくことはできない金融機関もあるわけであります。ですから、その場合には、そういう地域の金融機関のほうが、営利性はともかくとして公共性を強く求められる。都市銀行のほうが公共性よりは営利性に走って銀行の再配置をやって、まあ首都圏なりそういう人口集中地帯に配置転換をしたというのが過去の例でありますけれども田中総理発言も私の考えもその点は共通しておるところがあるわけであります。一体これからのそういう都市銀行の場合における公共性と営利性の関係でございますが、これはどういうふうにお考えになるか、ひとつそれを例示的に店舗の再配置問題の上で一ぺんお答えをいただくとこの問題が非常にはっきりするかと思いますので、その点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  110. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいまの御質問でございまするが、すでにいろいろとお耳に入っておることかと思いまするが、都市銀行の地方の、まあ過疎というほどでもございませんけれども、地方の店舗を閉鎖して、そしてもっと経済活動の活発な地域に店舗を移して営業をするという方針は、まあいわゆる効率化の一環としてとられてまいりまして、私どももある程度その方針に沿って地方の店舗を整理してまいったことは、これは事実でございます。しかしそれを引き揚げる、閉鎖することによって非常にその土地の取引先その他に御迷惑をかけるというつもりはないのでありまして、大体、地方の非効率店舗と申しましても、これは自行の営業政策にも沿うことでありまするけれども、自行のもよりの店舗がそれを引き継いで、そしてなるべく御迷惑をかけないようにしてやってきてまいったつもりでございます。しかし、実は率直に私もそういう衝に当たりまして、そのつどその現地に参り、いろいろと御了承を得て、御納得をなるべく得て閉鎖をしてまいるのでありまするけれども、しかし私自身こういうことはしてはいかぬということを痛切に身をもって感じた次第でございます。  全国と申しましてもやはりわが国はそう広い国ではない、アメリカのカリフォルニア一州くらいにしか相当しないという国であります。しかも私ども都市銀行は全国に一応店舗を張らしていただいておるのでありまするけれども、しかしそういうことをして閉鎖などいたしますると、やはり何といっても都市銀行たよるに足らず、ひいては都市銀行の信用失墜になるということをつくづく感じまして、やはり私のみならず、いまの都市銀行の経営者の方々は、地方店舗の非効率化の理由をもって閉鎖をする、必ずしも過疎というほどの地域ではございませんけれども、そういうことに対してはいま強く反省をいたしておりますし、銀行の社会、公共性という問題にこれは決してプラスにならないということを痛切に感じておる次第でございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまの関連の点でありますけれども、よく地方でいわれますことは、特に信用金庫などは地方の資金を地方に還元、こういう表現で、これは地域金融機関でありますから、その地域で集めました資金はその地域の企業なりその人たちに返る、こうなるわけでありますが、都市銀行の場合は全国ネットで集めました資金がややもすれば中央のほうに引き揚げられて、そうしてそこで大企業に融資をされる。これはもちろん、大企業というものの存在はそういうものでありますから、私は基本的にそれをすべてを否定する考え方はないわけでありますけれども、今日やはり田中さんの発想の中にあるあまりに集中的であることはよくないという点は、私もこれは考えるべき余地のあることだと思っておるわけであります。  そうしますと、そのことは連なって、前段でもすでにお話がございました企業向けの問題と個人向けの問題というものが一つございます。個人向けということならば、当然それはいまの地域的な関連の中に入ってくる問題になるわけでありますが、あわせて、企業向けと申しましても大企業と中小企業という問題があると思います。ですから、大企業は首都圏とか近畿圏とかあるいは名古屋周辺とか北九州とか、かなり集中的にあるわけでありますが、いまの中小企業の問題、もちろんそういう首都圏などにもたくさんありますけれども、これはやはりかなり分散的に全国に広がっておる。こうなるわけでありますから、いまのものの考え方でございますけれども、これまでの中小企業に対する金融の比率が最近次第に上がってまいっておるわけでありますが、金融の情勢をずっと見ておりますと、この八月ぐらいからちょっと峠を越して、これまでの資金の余裕はやや八月ぐらいから詰まるというところまでいくかどうかわかりませんが、さま変わりの様子になりつつあるように感じるわけでありますけれども、今後のこれらの融資態度と申しますか、大企業と中小企業向けの貸し出しのウエートの問題、あるいは貸し出し中に占める今後の個人向けの消費者金融またはその中に含まれる住宅金融の問題、これらについては、今後もさらにこれまでの路線の上で、伸び方は小さくなるにしても、さらにいま申し上げた中小企業金融や個人向けのほうに比重が高くなるような経営態度をとられるのか、あるいはまた一回高くなったものが逆戻りをして、これがまた大企業へ還流するということになるのか、ここらで、前段でお述べになった国民の福祉優先への転換になるのか、また産業優先の政策に戻るのかという点の、非常に大きな役割りを金融機関が果たされることになると私は思いますので、今後の銀行経営のあり方としては、いまの国民福祉優先の立場に立てば当然中小企業あるいは個人向けの比重が、徐々にではあっても高まっていくということのほうが望ましいと私は思っておりますが、その点はいかがでございましょうか。
  112. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいま御指摘の前段で、都市銀行は全国に支店を張っておる、したがって地方で集めた資金を都市に持ってきてそこで集中して運用して資金を地方から吸い上げてしまうというお話がございました。確かに私どもの取引先には大企業が多い。それが地域社会に密着しておりますいわゆる中小金融機関のあれとは多少取引構造が違うということは事実でございます。しかし、私どもの取引先の大企業といえども、私の営業所の周辺である都市だけに事業所があるばかりでないのでありまして、事業所というものは大企業になればなるほど全国に広がっております。ただ経理の組織として、資金を効率的、集中的に調達、運用するというようなことから本社に集中されておりますので、そこで貸し出しその他が起きる。そしてその資金がまた地方の工場その他に流れているのでございまして、表の数字で見るほど全部こちらに吸い上がっていることではないということを一応やはり心にとめておいていただきたいのでございます。  それから、何と申しましてもいままでの大企業の大生産中心に基づくいわゆる経済発展ということの時代におきましては、御指摘のとおり、私ども都市銀行の取引先の構成上、やはり非常な緊迫状態に追われて、大企業の経済活動の資金の充足をはかるために、そちらに、ことに貸し出しの面が集中しがちになり、したがって中小企業あるいは個人のローンというものに対して、いままでは私ども大衆化ということを心がけておりながらも、なかなかにそれは資金が回りかねたことは事実でございます。しかし先ほどお話ししましたように、すでにそういう時代はいろいろな事情から去っておりまして、近くそれがまたよみがえってくるというようなことはちょっと考えられませんので、今後はやはり、かねがね私どもが念願いたしておりました——ここ両三年、それは非常に伸展いたしておりまするけれども、安定成長の時代に入り、また非常な目玉商品で大きな設備を要求するというような商品もいま考えられておらない。かえってきめこまかい中小企業によってなかなかいい技術を持って世界にも冠たるものもあるのでありまして、やはりそういう方面も含めて、また地域密着化も含めて、中小企業への貸し出し、また御指摘の、最近、ここ一両年の間にとみに伸びてまいりました消費者金融、ことに社会福祉充実という観点からの住宅ローンの充実、個人への融資ということにつきましては、幸いにして資金の余裕もそういう意味で出てまいりましたので、御指摘のありましたとおり、そういう中小企業部門への融資個人の消費者ローンの融資というふうなものは、まだパーセンテージは欧米先進国の銀行に比べますれば少ないのでありますけれども、顕著に——顕著にと申していいと思いますが、顕著に伸びております。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 実は大蔵省でちょっと資料をいただいてながめてみますと、都市銀行のいまの中小企業への貸し出しの構成比でございますけれども、四十四年の九月末が二六%でございまして、それから四十五年の三月−九月、四十六年三月−九月と、この間はいずれも二五%の上のほうを推移をしてまいりまして、四十七年の三月に初めて二六・八%、まあここのところ、四十七年六月にはいま中村さんの御指摘のように二七・九ということで、一・一%と、ごく新しいところでは確かに急速にふえつつあるわけでございます。金融機関によりましては違いがいろいろあるのだろうと思うのでありますけれども、そうするとこれは一体、まあこれは都市銀行全体でのお話でけっこうでありますが、大体どこらまでは中小企業金融のウエートというのは伸びられるのだろうか、これが一つでございます。  今度は、いまの消費者金融の推移でありますけれども、この消費者金融もいま御指摘のように、四十六年の三月に総貸し出しのうちで四%に達して以来、四十六年九月で四・二%、四十七年三月で四・四%、四十七年六月で四・八%、まさに最近目ざましく実は構成比がふえておりますから、このこともたいへんけっこうなことだと私は思うのでありますが。これは一体どこらまでその部分の構成比がふえると見込んでいらっしゃるか。一応その適正な配分と申しますか、都市銀行の資金全体としての配分というものはこれは大体どのくらいまでを目安としてお考えになっておるのか、もしお答えがいただければお答えいただきたいと思います。
  114. 中村俊男

    ○中村参考人 まことに具体的な御質問で、しかも私ども数字がだんだん伸びておる。いままで伸びておったのが減って、またそこへ戻すというような状態でもございませんので、一つ一つがいままでになかった数字で伸びてまいっておりますので、どのくらいまでいくだろうかとおっしゃいますことは、これは簡単にお答えすることは非常にむずかしいのであります。今後のわが国経済活動がどういう方面に流れていくか。金融というのはやはり大体が資金のめんどうを見て差し上げる場合には、取引に追随して金融というものがついてまいるものでございますので、したがいまして、今後の日本経済がいわゆる中小企業部門を通じてどういうようになっていくか。そういうようなことに付随するものでございますので、その面の活動が非常に活発になれば、先ほどお話ししましたようなことで、幸いにしてそっちの方面へ十分な資金は御用立てができるということになります。  それから、消費者金融の面も全く同じことでございまして、資金のニーズに従って私どもは御用立てをするわけでありますので、どこの辺までとおっしゃられても、ちょっとこれもお答えしにくいのであります。感じとして、近い将来にさしあたり三割近くまでは中小企業はいくんじゃないだろうか。それが理想の形とは私はあえて申しません。そのときの中小企業の活動が日本経済の中でウエートは私は進んでいくと思いますので、それが理想、それがとまりとも思いませんけれども、つい近いうちに三割くらいまでいくんじゃないだろうか、大きなあれがない限りは、と思っております。  消費者金融のほうもすでに五%近くになっておりますが、まだこれが二、三%ふえることはそう遠くないのではないかという感じを持っております。全くこれは金融が主導していくものでもございませんので、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私は、もちろん何%ということを伺うのが目的だったわけではないのですが、感触を伺ってけっこうだったのでありますが、ニードはみんな出てくると思うのです。これを八月以前のように、資金は十分にあって、だれかが借りてくれる、手をあげればだれでも貸せるという条件がずっと続くという前提ならばたいへんけっこうだと思うのでありますけれども、それほどではないんではないかというふうに今後の資金需要を私は感じているものですから、そうしますと、ニードのあるときにそこを選択をするのが金融機関の立場になってくるというときには、やはりニードに対してそのニードの強さの問題と、もう一つ金融機関における経営上の問題といいますか、そうなるとやはり大きな企業のほうはいろいろな預金もロットが大きい、それから貸し出しもロットが大きい。そうするとコストは非常に低くなる。個々の消費者金融のような小口の金融、これからあとでも伺いますけれども、信用調査その他の面においてもややリスキーな点もある。いろいろな条件をそういうふうに個々に判断をしてみますと、やはり私はさっきの前段に返るわけでありますけれども、銀行の営利性という立場に立つならば、リスク少がなくてコストが安くて収益性の高いものに貸し出したいというのが、営利性の立場からしたら私は一つの原則だろうと思うのであります。  そうしますと、結局いま私が三つ例示をしておりますものは一番リスキーでもあるし、コストもかかるし、またその個々の預金量というものから見れば小さい部分の消費者金融というものが一番最初に犠牲になり、その次には中小金融が犠牲になって、やはり最終的には選択をする場合には大企業向けのものが残るとなると、これらのウエートがまた転換をしてくるのではないか。現状にストップするということでもなかなか私はそれなりに意義があると思うのでありますが、しかしやはり国民が求めておるものは実はいまさっき申し上げたような住宅ローンであり、消費者ローンだと思いますし、同時に中小企業、大企業とこういう順序がいま政策として求められておるものではないか。ここでやはりいまの営利性と公共性との関連からして、やや乖離の問題が出てくるように思うものでありますから、そこでやはり消費者金融というものはいろいろとそういう問題はあるけれども、ひとつ今日的使命にかんがみて、都市銀行では今後はいま五%程度のものは二、三%さらに上積みをする方向で考えたいというお話であるならば、私はそれを銀行経営の一つの姿勢として受け取りたい、こういうことでございますので、そのパーセンテージいかんというこまかい問題よりも、そこに一番最初に申し上げた基本的な一つ問題点を銀行側上して解明しておいていただければ、国民の側としては、都市銀行でそれじゃかなりこういうものがまだ借りられる余地があるんだという気持ちが持てるのではないかと思いますのでお伺いをしたわけでございます。そういう意味では、大体私の申し上げたようなふうに、多少の営利性の問題はさておいて、そういう国民福祉優先への方向にやはり金融機関もともに進んでいきたい、こういうことになるかどうかを伺いたいと思うわけであります。
  116. 中村俊男

    ○中村参考人 銀行は私企業でありますので、営利の、利益の追求ということはこれはもちろんゆるがせにできないことでございますけれども、しかし半面公共性ということは私どもゆめゆめ経営上忘れたこともございません。のみならず、あらゆる企業、銀行ばかりではございません、やはり深く大衆化に徹して、広く大企業以外の中小、大衆というものに、御個人というものに基盤を張らなければやはり繁栄はないのでございまして、そういう意味で。私どもも従来からつとめて心がけてまいったのでありますけれども、何せ世界の例を見ないような急成長がああいう形で行なわれましたために、私どもの取引先の構成上そういうことになったわけであります。まあ繰り返すようでありますから繰り返しませんが、情勢も変わってまいりましたので、私どものいわゆる大衆にしっかり基盤を張った企業としての金融機関、私どもは常日ごろ、御個人、大衆の皆さん方の——金融機関というものは大衆の皆さん方の日々の暮らしの空気や水のようになるべきなんだということを行内の者にも言っており、銀行協会その他でも新聞記者の方々にもよく申し上げておる、それが理想でありまして、そのくらいにやはりしっかりとした大衆に基盤を持つことによって銀行の公共性というものは非常に強められますし、また企業の強みが出てくるのであります。  したがいまして、今後もちろんいままでのような金融逼迫というものは想像されません。しかしながら、いろいろな世界の情勢その他によって、日本金融情勢というものもやはりそれに一環として順応していかなければならぬこともあるわけであります。現に今度の利下げなどもその始まりといえば始まりでございましょう。そういう場合に引き締まりを見せましたときに、このときはやはり大企業も中小企業も御個人もあわせて引き締まるのでありまして、ただそのときにいままで結果そうなっておったことがならないように大いに努力いたすつもりでございます。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで消費者ローンの問題の中身に入ってちょっとお伺いをしたいわけであります。  資料の時期がちょっと古いのでありますが、四十六年の九月末でございますが、都市銀行と地方銀行を並べて比較をいたしてみますと、都市銀行は、四十六年九月末現在で消費者ローンの総計がまだ五千三百二十億円でございました。ちょうどこのときに地方銀行は幾らかといいますと、四千八百七十七億円でございまして、全体の貸し出しに占める消費者ローンの比率は、この時点では都市銀行が二・一%、地方銀行が三・七%、これは国内向けの貸し出しということのようでありますが、というデータが実は銀行局の資料の中にございます。これで見ますと、要するに、地方銀行に比して都市銀行のほうが、二・一%と三・七%でありますから、かなりウエートが低いという感じがいたすわけでございます。  さらにその中身にもう一歩入ってみますと、都市銀行の場合は提携ローンが三千四百八十七億円、地方銀行は二千三百八十六億円で、都市銀行のほうは提携ローンがちょっと多うございます。その多い理由の中には、住宅の提携ローンというのが千七百二十七億あります。地方銀行のほうは住宅提携ローンは四百二十六億しかありません。そこで非提携ローンのほうを見ますと、都銀が千六百三十億で地方銀行は二千四百二十九億、ここで八百億ほどの違いが出ておりますのは、非提携ローンは、都市銀行のほうは住宅が千四百九十六億に対して地方銀行は二千百五十三億、非提携ローンにおける住宅ローンの差が実は非提携ローンの差になっておるということが、ちょっと資料で見ると明らかになっておるわけであります。  そこで、国民の側が同じ住宅ローンを求める場合には、提携ローンというのは企業との関係がくっついておりますから、どちらかというと、どこの会社の住宅を建てるということでそのローンがいただける。非提携ローンの場合には、銀行からお金を借りて、自分たちが建てたいものの業者は選択が自由になる、こういう問題があると思うのであります。私は考え方としてはもちろん提携ローンも差しつかえないのでありますが、都市銀行の場合にはやはり非提携ローンというものをもう少し拡大していただく必要があるのじゃないだろうか。これのもとに関連するのはそれじゃ何があるかというと、これはやはり信用調査機構の整備という問題と無関係ではないだろうと思うのでありますが、都市銀行では来年から信用調査機構か何かの機関を整備されるようにも承っておりますけれども、個人向けの地方銀行に比べて都市銀行のウエートが低い問題、それからその中身として提携ローンのほうに比重がかかり過ぎて、非提携ローンのほうの比重が少ないという問題等はやはり今後改善をしていただく余地のある問題ではないか。あわせてそのことはいま申し上げた信用調査機構が整備をされることを必要とするわけでありましょうけれども、これらの問題についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  118. 中村俊男

    ○中村参考人 いま御指摘数字、申しわけございませんが、私も不勉強で、いま御指摘いただいて初めて、ああそうかなというふうに教えていただいたような次第でございます。比重を置いているとか置いておらぬとかというようなおことばづかいでありますけれども、結果的にいまそうなっておるということであって、私どもは必ずしも提携ローンに重点を置き、そうでないものに重点を置いていないというほどの心配りでやっておったつもりもございません。提携ローンと申しますと、まあいろいろなものがありまするけれども、御個人にお売りをして、ああこの金融はこっちへいらっしゃい、いらっしゃいといって、どっちかというと、銀行へ御紹介くださるのが提携ローンが非常に多いからして、やはりそういうものが多くなってくるということ、しかも提携先は私どもの企業としては取引先があるというようなことで、私どもが行ってローンをあれするよりも、来てくださる。そういう紹介をして、三菱銀行なら三菱銀行へおいでくださいというようなことで、そういうことになったんだと思います。  まあそれはともかくといたしまして、やはり私どもそれについて何も重点非重点とやっているわけでもございませんし、それから個人の情報につきましては、来年一月から全銀協に個人情報センターというものをつくることになっておりまして、それがだんだんと各地の協会と連絡をとって十分にその方面も、個人信用調査も行き届くと思います。そういうことで、やはりそういう方面もこれは必ず伸びていくものと思っております。ただ重点、非重点ではないことをひとつ御了承願いたいと思っております。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 そこであわせて、いま問題になっております一つに、既往分の住宅ローンの金利引き下げ問題というのがございますね。けさの新聞でも、信託銀行のほうでは最大年〇・六%ぐらい下げるというようなことが報道されておりますが、都市銀行でも一部すでに下げるということを御発表になった銀行もあるようにも思いますけれども、全体としては、これまでの貸していらっしゃるものがプログラムに組まれたりいろいろしておるということもあるんでありましょうが、やはり片方で預金金利も下がった現状でもありますので、まあ貸し出し金利というのは普通はこれからの問題というのが一般的、通例でございましょうけれども、いまの国民福祉費の中で一番比重を占めるのは、最初にお話になったように、やはり私ども住宅というものに比重がかかっておると思いますが、この点は都市銀行としてはいかようになるのでしょうか。
  120. 中村俊男

    ○中村参考人 住宅ローンの既往分の金利はどうなるんだというお話でございますが、十五年、二十年という長期の期間にわたります貸し出しの金利につきましては、その後の金融情勢によって金利が上下いたしましても、これはさかのぼらないというのが通例の取り扱いでございます。それはそれなりに理由があるのでございまして、下がったときももちろん既往分はお下げしないが、上がったときももちろん既往分はお上げしない、そのままでいくんだというのが、これが通例の扱いになっております。  しかしいま御指摘の住宅ローンの問題でありまするけれども、今回は十一年ぶりで預金金利も下がりましたことでもありまするし、預金金利の引き下げの幾ぶんでも大衆に還元するというような心がまえもありまするしするので、そう原則論ばかりもいっておられないなという気持ちでおりますことは事実でございます。ただ、都市銀行全体としてどうこうということは、これは貸し出しのことになりますので、話し合いをすることはできませんので、いま各行がそれぞれこの問題については検討をいたしております。もちろん長期の貸し出しでございまするから、公定歩合が引き下げになって、短期の貸し出しに——公定歩合の引き下げにすぐ長期の貸し出しの金利が連動するというものでもございませんので、一とき間があるかとも思いまするけれども、しかし従来の場合とちょっと違うからして、これはやはり社会福祉という面もありまするから、銀行がそれぞれいま検討いたしておる。近く御承知になれることかと思います。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話で、確かに今後の問題でありますけれども、貸し出し金利の既往にさかのぼるかどうかという問題は、これまで預金金利が日本の場合には非常に固定しておったということも一つ関係があるんじゃないかと思うのです。金利の問題というのは、私、この前も大蔵大臣にお尋ねをしたわけでありますけれども、下げるときだけは下げるけれども、今度は金融がタイトになってきたときには当然上げるべきだ。貸し出しのほうはタイトになれば上がるわけですね。これまで十一年間の中で何回も貸し出し金利はたいへん高い金利になったことがありますけれども、預金金利はそれにつれて上がったという例はなかったわけであります。この前〇・二五%上がりましたけれども、それはそういう意味ではなしに、貯蓄増強といいますか、そういう考え方で上げられたように思っておりますので、私も、前段でお触れになったような預金金利というものはもう少し、下げるということが今度のような形で行なわれるりなら上がるときも上げるべきだ、こう思っておりますから、預金金利の弾力的な運営そのものは当然だと思うのであります。  ですから、そういうふうになりますと、確かにそのつど上げたり下げたりするということはなかなかむずかしいという問題があるかと思いますけれども、銀行のコストなり利ざやなり、いろんなものをずっと拝見をしておりますと、私はこの前の委員会でも申し上げたのでありますけれども、この間の預金金利というものが、信用金庫を含めて全部の金融機関の利ざや等を見ていると、どうしても下げなければならないところまで来ていたような感じがちょっとしていなかったわけであります。なおかつ、もうしばらくは金融機関が倒産をしたりするようなことになるほどにいまの金融情勢というのはむずかしい情勢ではなかった国際的な理由で預金金利を引き下げたといわれておりますが、どうもこれも私どもはあまり納得ができないことであったわけであります。  そこで、ちょっとそれに関連をしてお伺いをしておきたいと思いますのは、今度預金金利が引き下げになって、これから以後、まあ今期はほんのちょっとでありますから来期でありますね、この十月一日から始まります期間に、かりに銀行の収益が非常にふえてきたということになりますと、国民が見ますと、結局預金金利を下げた分だけは銀行が得をしたのじゃないかということになりかねないような事態も起こり得ると思うのであります。皆さんのほうの銀行のこの三月末の決算をちょっと拝見をいたしますと、上位行では半期の、この間の期の利益が三百億に近づくほど実は収益はあがっておる。そのもとは、一つ金融が非常に緩慢になって、外部負債をお返しになった結果、それらのコストが下がってきたということが収益に役立ったと思いますし、また預金、貸し出しの両面の資金がふえてきたことももちろん関係があると思うのでありますけれども、今度の十月から以降のときにさらに大幅な収益が出てくるということは国民感情としてはいろいろと問題が出てくるのじゃないかという感じもしておりますので、その点は貸し出しとの関係等で、やはりあまり多額の利益が、現状程度はいいと思うのですけれども、預金金利引き下げによって起こるようなことになりますとまずいという感じを受けるだろうと思います。ですから、それらをもにらみ合わせて、いま申し上げた既往分の各種のローン等についてもこの際は一ぺん点検をしていただくことが必要ではないかというふうに考えておりますので、それらについてはどんなふうにお考えになっておるか、ちょっと承っておきたいと思います。
  122. 中村俊男

    ○中村参考人 住宅ローンの既往分の金利の引き下げと、それから銀行の収益との関係をからめていまお話しになりましたが、収益が減るからとか、ふえるから下げるとか下げないとかいうふうに私ども考えておりません。それは別個の問題でございます。銀行の収益でございまするが、まあおかげさまで私ども順調に収益をあげております。各企業が経済成長で非常に発展しておりますときは、私どもの収益もそう目立ったものではございませんけれども、昨今のようなことになりますと相対的に目立ってきている。私どもの収益が毎期毎期非常に伸びてきているというほどのものでもございませんけれども、私ども金融機関の本来の使命にかんがみまして、安定した収益をあげていきたいというふうにいろいろ苦心をいたしておるわけでございます。  来期はどうなるかというお話でございますけれども、貸し出し金利はまだ相当下がってまいると思います。第六次の公定歩合引き下げの貸し出し金利への影響というのはまだ出ておりませんし、今後それが出てまいると思いますし、それから外部負債が非常に減少したことによって収益を助けたということもございますて、これもやや景気回復によりまして外部負債の金利の下げどまりというものも起きておりまするし、利ざやは縮小いたしておりますので、傾向としてはやはり経常利益は私どものはやはり減少の基調にあるというふうに私ども考えております。預金金利の引き下げも、非常に定期預金などの多い構成から、やはり半年だけでは全面的にそれが享受できるということにもならないかと思いますので、総じて私どもの感じは収益は減少の基調にあるというふうに判断いたしております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 私もちょっと過年度の伸び率のところを見ておりませんからよくわかりませんが、この三月期の資料を見ますと、経常利益の対前期比の伸びは、大きいところでは一五八%とか、たいへん大きな伸びもありまして、都市銀行十四行の平均が一二七・八%経常利益が伸びておりますね。率直に申しますと、この期の伸びはかなり大きいように思います。私は収益があがってはならぬというのではありませんけれども、やはり国民感情としてみると、預金金利を下げたのなら当然貸し出し金利がいろんな面で下がって、まあニュートラルであってほしいと思うのが私は当然だと思いますものですから、何もいまの収益を目当てでどうこうではございませんが、要するに経営態度でございますね、経営態度の面でやはりできるだけの努力をしていただくことによって実効があがればたいへんけっこうだと思います。皆さんの経営についてはたいへん御努力をいただいておることが、銀行局の資料を見ましても明らかでございまして、四十六年の下期の場合には、人件費率がこれまでの一・一三くらいあったのが一挙に一・〇五というふうに、たいへんここでは人件費率が下がっております。物件費率も〇・七四ということで、最近の例から見るとたいへん下がっておりますから、皆さん方がたいへんそういう点でさっきお話しになった効率化、合理化に御努力をなさっておる経過があらわれておりますから、ですから、四十六年の下期に収益の出ましたことは、単にその外部負債だけの問題でなくて、企業努力があらわれておりますことは私も承知しておりますから、その点はそれでいいのでございますけれども、要するに来期以降、ちょっと預金金利が下がったということは新しい一つの、まあコストが下がってくるわけでありますので、その点は特にひとつ十分協会としても御検討をいただいて、国民の批判を受けないようにお考えをいただきたいと思います。  その次に、やはり金利に関連をして、最近新聞紙上等で拝見をしておりますと、老齢者に対する預金について、たしか信託協会のほうも御意見があったと思います、都市銀行のほうからも御意見があったのじゃないかと思うのですが、これに対して何か税金上のフェーバーを与えたらどうかという御要望か何かが出ておるようでありますが、ちょっとこれについてのお考えを承っておきたいと思います。
  124. 中村俊男

    ○中村参考人 御承知のように、日本の人口の寿命と申しますか、まあ男子七十歳、女子七十五歳というようなこともいわれまして、非常に高齢者の数がふえてまいっております。そういう.ことで、昨今のいろいろな情勢からやはり老齢者への福祉、ひいては社会全体の福祉というものにつながるわけでありますけれども、そういう観点から、今度預貯金の利子が下がりますにつきまして、全面的にいろいろと御配慮をお願いしておりまするけれども、その中から、やはり老齢者の方が数がふえ、何となく取り残されているという感じから、私のところにもずいぶん投書が参ります。そういうようなことから、特別の利息をつけるというわけにはもちろんまいりません、いまの仕組みでは。そこまでは考えておりませんけれども、大体お願いしております構想は、六十五歳以上の方の預金元本五百万円までの利子についてはひとつ無税にお願いできないだろうかということをお願いしておるのでございます。これはいまの非課税、マル優制度とは別でございまして、まあ六十五歳以上の方に一千万円という案も出ましたけれども、しかし、さしあたり元本五百万円ぐらいの預金利子に非課税をあれして、まあこれが全面的ということではございません、全面的に老齢福祉の非常な助けになるというものでもございません、その一助でございますけれども、こういうこともひとつ考えてやってみたいということでお願いしておる次第でございます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 政務次官、実はいまのお話に関連をするのですけれども、金利の引き下げがありましたときに、あるいは物価が上昇しますときに、一番弱いのは実は老齢者だと思います。年金生活者を含めて老齢者が金利の引き下げあるいは物価上昇に非常に弱い。金利の引き下げというのはしょっちゅうありませんからいいのですが、物価上昇に対抗できない人たちですから、これは私も、もう少し政府を含めて考慮が必要だと考えているわけです。  そこで、これは私の試案でありますけれども、銀行のほうでもそういうお考えもある。ただ私は、これは無税にすれば片づく問題だとは思っていないのです。言うなれば、国だけが負担をすればいいんだという問題ではないと思いますね。そこで、これは私の一つの提案でありますけれども、半分ぐらい全金融機関で出資をしてもらい、あと半分は政府が出資をして、そこで老後の皆さんのための老後資金といいますか、これを一元的に運用する機関というものをひとつ考えてみたらどうかと思うのです。実はちょっと主税局で調べてみますと、昭和四十六年の税務統計では、退職者が二百三十四万九千人あって、支払われた退職金の額は一兆三百八十二億円と、かなり多額の金額が一年に退職金で支払われておるわけでありますね。これを一人当たりに平均すると四十四万円くらいで、小さいようでありますが……。そこで、要するに退職金を受け取る人たちがこれを老後の生活の原資にしようというときに、なかなかそれを適切に運用するということは私はむずかしいと思うんです、金融の専門家でもありませんし。何かやっているうちにつまずけばなくなってしまうという問題もありますから、ひとつさっき申し上げたような新しい機構を考えて、そして退職金をもらった人は、そこでいろいろなパターンをつくって、どういう形のものを希望しますかということで、一般の市中金利の問題を離れた運用を何かそこで少し考えるという方法はないのか。そうして自分は年金としてこういう形で何年くらいで受け取りたい、そうすれば厚生年金の上にこの自分の退職金をやったのでどうなる。企業年金もあります、いろいろなものがありますから、本人たちのいろいろな希望によって、その運用といいますか、それのパターンがいろいろなものに定式化されたものが出てくるだろうと思うのでありますが、何にしても少しそういうもので一それは無税ですね。要するに、老人六十五歳以上の人間の預金を無税といっても、これはなかなか調査をするのがむずかしい問題なんですね。税務上は私は非常にむずかしい問題だろうと思う。しかし、郵便局ではありませんけれども、ひとつ半官半民のそういうようなものができて、そこで取り扱うものは無税だというならば、税務行政上は非常に簡単でありまして、あるいはそこに、もし必要があるならば多少何らかの配慮もできる。それは何も退職金に限ることはありません。ある六十歳なら六十歳の年齢に達した商売やっている方たちが、自分はこれで商売をやめましたということで、そこで何らかの原資をそこへ預けるとか、お百姓の皆さんが、農民の方たちがむすこに譲って、自分の蓄積した資金はこれだけだ、これだけはひとつそこへ入れて、国民年金と一緒で自分たち暮らすためにはこうしたいと、要するに国民すべてでいいわけでありますが、そういうことになれば、大体においてその資金というものの出どころもはっきりしてますから、無税にする処置ということも簡単でもありますし、私は今後の老齢者対策の中で、もちろん年金もわれわれは正面から取っ組んでいかなければなりませんけれども、この人たちが自分たちで持っておる資金をより効率的に高利に運用して、そしてこの人たちの将来の生活の安定に資し、あわせて物価上昇に対応できるようなものをこの際ひとつ考えてみたらどうかと、これはひとつ全銀協の皆さんのお知恵も入れて、これは公のものだけでやれということでなしに、ひとつ民間の知識を十分に活用しながら、その原資の運用等もいろいろ問題がありましょうから、資金運用部に運用さしたら安い金利でとてもじゃないけれども問題になりませんから、やはりできるだけ高い金利で運用できるためにあらゆる階層の知識を集約していただいて、ひとつ老齢者がそこへ退職金を預けておけば安心してそれなりの果実が得られるというようなものを考えてみる必要もあるんじゃないかと思いますが、政務次官、いかがでしょうか。
  126. 大村襄治

    ○大村説明員 老齢者の優遇をはからなければならないという御趣旨は全く同感でございます。そこで、それを実現する方法としてどういった方法がいいか。いま全銀協のほうで要望されておるような方法あるいはただいま堀先生が非常に新しいアイデアを教えていただきましたので、そういったものを含めまして、誠意をもって検討さしていただきたいと思います。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、銀行のサービスの問題について少しお伺いをいたしたいと思います。  銀行のサービスというのにはいろいろあるのでありますが、いま私一つ今後の問題として非常に重要な問題だと思っておりますのは、金融機関につとめていらっしゃる皆さんの立場をこれは金融機関の皆さんの立場だけではありません、国民全体でありますけれども、週休二日制という問題が、いま当委員会でも私論議をしておるわけでありますけれども、労働行政の今日的課題として非常にいまクローズアップされております。世界じゅうで週休二日制でない先進国というのは日本だけでありますから、特に金融機関は全部先進国は週休二日制になっておりますから、当然私は週休二日制ということが具体化されてしかるべきだ、そのことがこの間の円切り上げ等を含めた問題の中のやはり一つ問題点になっておるように思うのでありますが、ただ、そうだからといって、いきなりいま週休二日制で金融機関が土曜日を休んでしまうということになりますと、貸し出しのほうは何も土曜日に急にということではなくていいだろうと思うのですが、預貯金の関係はやはり、土曜日に急にお金が要るという方があるでしょう。預金のほうはまあともかくとしても、払い出しが要るというような問題もあるだろうと思うのであります。最近銀行でもこれらについて御準備をいただいておるようでありますが、いま自動預金支払い機でございますか、これらが整備をできるのは、大体いつごろになれば全国的に銀行としては一応の整備が整いますでございましょうか、お答えいただきたいと思います。
  128. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいまの御質問、まあ週休二日制というのはこれはもう一つの傾向でございまして、私どももそういう方向に向かって、いろいろとあり、組合からもいろいろな要望が出ておりますので、そういうふうに動いているということは十分承知いたしておりますし、またそうしなければいかぬと思っておりますが、やはりお話しのとおり金融機関ばかりが急にやるというわけにもまいりませんし、やっぱり銀行がそういうことをするについての社会的な、何と申しますか、暗黙のうちのコンセンサスというものができ上がってからやりたい。先ほど申しました日々の暮らしのやはりずいぶんお手助けをしているわけでありますから、そういう意味でもそういう点のコンセンサスができてからというふうに考えております。もちろんそのときには、いま申しましたようななるべく御迷惑をかけないようにするということで、キャッシュディスペンサーの問題でありますとかあるいはナイトデポジットとでも申しておりますが、そこへほうって入れておいていただければ月曜日に出勤して整理をする、そういういろいろなものを整備いたしてからやったほうが非常にいいのでありますけれども、まあ週休二日制はそうなりますれば都市銀行ばかりの問題ではございません。その他のいろいろな金融機関の問題にもなるのでありましょうし、またそういう金融機関の方々が一体というキャッシュディスペンサーの問題とかナイトデポジットの問題とかいうものをどう処理されるのか、そういうことでいま堀先生の御質問、いつごろになったらキャッシュディスペンサーが——私のほうの銀行がいませいぜい六十台ぐらいが整っておるような程度でございます。私のほうの銀行のことだけ、キャッシュディスペンサーだけならばまた別でございますが、実はお取引先の便宜も考えますと、オンラインでコンピューターがつながっておるというようなことから、やはりそれは全銀行共通なカードで使えるようにしてみてはどうかというような動きもいま寄り寄り相談いたしておりますので、そういう事の次第によっては非常に早くなるかもしれませんし、そういうことでちょっとお見通し、御回答できないのはひとつ残念でございますが……。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私が伺ったのは、できるだけ早くそういうサービスを整備をしていただいて、週休二日制に踏み切っていただきたいということなんでございます。その伺い方がちょっとまずかったわけであります。実は私、やはり日本で週休二日制をやってまいります場合には、金融機関とか官庁の先行型をとりませんと、なかなか日本ではいわゆる企業のほうから週休二日制ということはむずかしいという判断をしておるわけであります。現実にはもう銀行は隔週の週休二日ということになっておりまして、あと一歩のところにきておるわけでありますし、官庁の中ではまだ不十分でありますけれども、もうすでに公社のような中にはそういうことが行ない得る条件に至っておるところもあるわけでありまして、できるだけやはり私は週休二日制をとることがいろいろな意味でさっきお話のあった国民福祉優先の政治にもつながってくるし、同時に海外から日本の働き過ぎということに対する批判に対しても、やはり海外と同じような条件でわれわれは働いておりますということになることのほうが適切だと考えますので、ぜひひとつ週休二日制については前向きに取り組んでいただきたいし、同時にしかしそうだからといって、要するに預金者が不便になることが望ましいわけではありませんから、いまお話しのように、もしオンラインで——全国でオンラインで皆さんの銀行の中でいま私どももどこでも引き出せる通帳というのをいただいているわけですから、それがいまの自動支払い機でいただけるようになればたいへんけっこうでもありますから、これらの問題についてはひとつ早急に整備をしていただいて、まあこれは銀行法改正になりますので皆さんだけでの問題でございません。当然当委員会における法律的な手続の問題を含めてのことでございますけれども、銀行側としてもそういう受け入れ体制をひとつすみやかに整備をてしいただきたいと思うのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  130. 中村俊男

    ○中村参考人 御趣旨全く同感でございまして、鋭意その方向に努力いたしたいと思います。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 それから、さっきちょっと消費者金融のところで一つ落としておりましたけれども、一般的に私、商工委員会で割賦販売法の問題を議論しましたときにも問題にしてまいったのでありますが、アドオン方式という月賦販売なり消費者ローンについての表示の問題でありますけれども、これはまさに計算上はたいへん簡便な方法だと思います。ですけれども、実質金利がわからないという点に非常に私は難点があると思います。たとえば百万円を一年一〇%の金利で二年借りるということにいたしますと、これは百二十万円でございますね。ですから、その百二十万円分を二年で割るということになりますから、二十四カ月で割りますと月五万円ずっと、計算としてはたいへんよくわかります。しかし実際には、どんどん返還をしていきますならば、本来なら金利は下がってくる、残存部分は減ってくるにもかかわらず、そういう計算になっておるために、実は金利が一体幾らなんだかは借りている人たちよくわからないという問題があるわけであります。計算上の問題もさることながら、私たちはやはり最近こういう金利というものに対して国民の関心も強くなっておることでありますから、やはりアドオン方式やめてしまえというのは無理がありますけれども、必ずアドオン方式の場合には、実質金利は幾らだということが計算上添付されるようでないと、国民の選択の上で非常に、そう思ったけれども違ったなということになりかねませんので、この点はひとつぜひ御検討いただきたいと思いますか、いかがでございましょうか。
  132. 中村俊男

    ○中村参考人 割賦金融の利息の計算方法アドオン方式というのは、これは実は欧米、ことにアメリカから輸入をいたしまして始めた方式でございまして、私どもの消費者金融がまだ始まりのころにそういうやり方でやりました。まさしく御指摘のとおり、アドオン方式で利息幾らというのと実質利息は非常に違うのであります。ある意味で非常な誤解を招き、ミスリードするということになりますので、ただいまはアドオン方式も続けておりまするが、このアドオン方式は実質の金利は幾らであるということを必ず併記いたしておりますので、その点実質金利が誤解のないようにということを心がけております。今後も実質金利は幾らで、それをアドオンで計算するとこうなるというふうな形で、まあ併記も同じことでございますが、考え方が、実質金利が幾らで、それをアドオンの方式で割ってこういうふうにするというふうにいたしてまいるつもりでありますが、併記ということはほとんど例外なく行なわれていることと思います。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度は、あと時間もありませんからちょっと急ぎまして、国際金融の問題で二、三伺っておきたいのでありますが、最近国際金融、いまさっき前段でお話しになりましたように、今後の銀行にとって非常に重要な部分だと思います。非常に重要な部分でありますが、ただ今後にいろいろ問題が起きてくるというおそれを各界が持っておられますのは、後段のほうでもちょっと初めにお触れになったわけでありますが、外国の金融機関は、御承知のようにアメリカを除いては大体証券業兼業になっておるわけでございますね。それから業務も、そういうわけですから非常に幅広い業務を海外の金融機関がやっておる。そこでやはり海外ではこれとの競争関係がありますから、当然そのような方法をある程度海外における日本金融機関といえども採用することになると私は思うのであります。最近のロンドン市場におけるCDの発行等は、私はその一つの顕著な例だと思うのでありますけれども、これが今度はだんだんこっちへ入ってまいりますと、今度は銀行によるアンダーライター業務の問題というのがそこへまた出てきているわけでございますね。だんだんいまや国内と国際関係というものが錯綜心してきますと、どうもアメリカがとってまいりました証券と金融の分離、言うなれば証取法六十五条問題というものはなかなか微妙な課題になってくるというふうに私どもいま見ておるわけであります。  そこで中村さん、銀行の立場でありますから、まず最初に銀行の立場からちょっとそれにお答えいただいて、あわせて今後大蔵省は、そういう銀行のお立場もあろうが、どういうふうに考えるかということをひとつこの際ちょっと伺っておきたいと思うのであります。中村さんのほうからお答えを最初にいただきたいと思います。
  134. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいま証取法六十五条の非常に具体的なお話が出ました。あれは証券業界、銀行業界のいわゆる非常な火花を散らしている接点だというふうに皆さんお受け取りになっている面が非常に多いのでございまするが、そのことはさて置きまして、昌頭の公述でも申しましたように、やはりこれだけの国際化が進んでまいりますと、金融機関の合理化、効率化というものもいわゆる全体を含めて、そして場合によれば皆さん方のニードにこたえられるように私どものサービスも多様化し、商品も多様化し、そういうことによって金融機関相互の間のかきねというものはなるべく低くしていきたいというのが私どもの念願でありますし、またそうあるべきであるというふうに考えております。ことに都市銀行といたしましては、口はばったいことを申すわけではございませんけれども、やはりわが国の代表する銀行として都市銀行が外の銀行とのいろいろな折衝、いい意味の競争を進めていかなければなりませんので、その手足を縛られるようなことはなるべく避けていただきたいというのが私の念願でございます。
  135. 吉田太郎一

    吉田説明員 問題が六十五条ということになりますと、実は私どもまだ大蔵省としてそれほど切迫した問題であるというようには考えていないわけでございます。その前にむしろ幾つかの問題が出てくるだろうと思われることは、堀委員指摘のとおりであろうと思います。日本の法制と違う国の金融機関が日本にやってくる、あるいは日本の法制を受けたわが国の銀行あるいは証券会社が外国の違った法制のもとで活動するといった場合には、いままでの金融の秩序、わが国金融の秩序あるいはものの考え方では律することのできない問題に幾つかぶつかるわけでございます。その端的な例がCDのロンドン市場における発行、あるいは慣行と違うという意味からいたしますと、外国企業が日本で円建て債を発行いたします場合の無担保債、そういう問題が今後幾つか起こってくるだろうと思います。この辺のところにつきましては、その具体的な問題について現実的な立場から解決をしていくのが最も実際に合った方法ではなかろうか。理念的なあるいは哲学に関する問題についてこれをこの際割り切ってしまうということがいいことかどうかということについては私はむしろ疑問を持っております。したがいまして、たとえば証券業務と銀行業務という問題についてその行きつくところにはいま御指摘のような問題があろうかとは思いますが、この辺のところはいましばらく現実的ないろいろなそれ以外の問題の情勢あるいは金融環境あるいは経済の環境の変化に適応していくという形で進めていくべきではなかろうか、かように考えております。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 いま銀行局長のほうで外国の企業の無担保社債の国内における発行というものが一つありましたね。ところがそこまでならこれはまだ外国企業ですから、ちょうどCDをロンドンで発行すると同じようなことで、これはけじめがついているのですが、外国の無担保債が発行されるなら国内でも無担保債でいいんじゃないかという議論が起きてまいっておりますね。これについては中村さんいかがでございましょうか。
  137. 中村俊男

    ○中村参考人 御指摘の点、確かにいま問題になっておりますが、具体的に問題になっておりますのは、一般社債でなくて転換社債についてどうだという御議論がございます。転換社債は一般社債よりも性質が株式に近いんだから、株式に担保とかそういう問題はないんだから、転換社債は無担保でもいいんじゃないかということがいわれておるわけでございますが、しかし、転換社債も転換されるまでやはり社債でございまして、したがいまして、一般の社債権者の保護ということは一般社債の場合と違いはないわけでございます。外国の企業が東京市場で外債を発行する。無担保じゃないか。これはもちろん東京で出しますので物理的にいろいろと担保を取るということはなかなか簡単にもまいりませんので、相当名の通った外国企業の社債がいまここで無担保で出ております。それと一緒にしろということは、これはまた外国、日本のいわゆる環境とだいぶ違いますし、のみならず何と申しましてもやはり社債権者の保護、これは無担保なんだぞ、社債権者はこれは無担保なんだからどんなことがあったって自分のリスクで持てよといって突っ放してしまうほどこれは簡単なものでもないと思います。そういたしますと、やはりこれにはいろいろな制限条項をつけていかなければならぬ、財務条項をつけていって、できるだけ一般社債権者の保護ということは、従来は四十年間担保主義でずっとまいった関係もありまして、手放しにするわけにはいかない。ところが御承知のとおり、日本の企業の財務状況というものは欧米一流企業の財務状況に比べて非常に脆弱である。自己資本が非常に少ない。借り入れに非常に依存しておる。したがってその制限条項も非常に幅の少ないものになってしまう。そこに非常に問題がある。すぐ突っかかってしまう。突っかかってしまってどうする。急拠償還に持っていく。それにはほかに金が要るような問題がございまして、これはいわゆる日本金融環境の風土の上からそう簡単にまいらないのでありまして、ひいてはこれは金融政策の一環にも関連してまいりますし、緩慢なときはいいが引き締めのときにどんどんそれで穴が抜けてしまっても困る。こういうようないろいろな問題がありまして、やるにしても非常に限られたものしかできないんじゃないだろうか。そんなものが一体いま日本にあるんだろうかというような考えもありますし、これはいまそういうことで私どもも、しかし一般論として理屈の上では無担保債もあってもいいんだということは確かにそうでありますが、現実の問題として非常に尚早ではないという意見もありますし、個々の問題として踏み切れるものは踏み切ったらどうだという問題もありますし、ただいまそういうことで方々の関係先といろいろ話を煮詰めておるところでございます。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局と証券局、多少立場も違うでしょうから、政務次官のほうで、これは大蔵省は大体どう考えるのか、ひとつ答えてみてください。
  139. 大村襄治

    ○大村説明員 検討中でございますので……。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 まあけっこうです。いまのお話で私も一般社債ではこれはとても問題にならないと思っておりますが、一つは転換社債という条件が一つついておりますから、さっきお話しのように、転換社債で転換が非常におくれてるのではこれは一般社債とそうあまり変わりませんから、ごく短期にこれが転換するということになるのならば、ある意味では私は自己資本をふやすということにつながってくるわけでありますから考慮する余地はあるというふうに思っておりますけれども、いまお話しになりましたように、無制限にこれをやられては、日本の企業の場合にはたいへん問題がありますので、この点はやはり十分な歯どめをかけた上で、やるとすればやるべきだろう、こう考えておるわけでありますが、原則的には、自己資本をふやすという意味では、単なる社債でいくよりも転換社債でいくほうが自己資本がふえることにはなるわけでありますので、そこら、いまの政務次官の話じゃありませんけれども検討の余地が残っておる問題だ、こんなふうに考えておるわけでございます。  そこで最後に、銀行の皆さんにとってはちょっと望ましくない質問でございますけれども、私、昭和四十二年以来当委員会で架空名義預金という問題をずっと取り上げて毎年やっておるわけでございます。本年もこれを取り扱ってやりました。結論的に申しますと、実はなかなか改善の兆があらわれないということが申し上げられるかと思うのであります。銀行でも掲示をしていただいたときがあります。私、少し銀行の店舗を歩いてみましたら、掲示がしてあるところは見えないようなところに掲示がしてあってこれは掲示に値するかなということで、また委員会であんな掲示ではしようがないじゃないか、一ぺん全銀行点検しろというようなことを申して、いたしたこともあります。しかし、何としても架空名義預金のようなものは、これはひとつ排除をするために銀行側としてもほんとうに真剣にお骨折りをいただきたいと考えておるわけであります。  それで、特にことしの国会では少し詰めた議論をしたわけでありますけれども、四十五年度から銀行の店舗別に見てどの銀行が犯則調査で一番出てくるか。犯則調査しか実はこれを点検するものがございませんから、国税庁の犯則事件におけるデータだけですから、これが必ずしも公正な姿だと思いませんけれども、いまわれわれが入手し得るものはそれだけでありますから、それで見ますと、実は銀行の名前はわかりませんが、ある都市銀行は四十五年度に四十八店舗で架空名義預金のものが出てきた。ところが昭和四十六年度には五十店でまた出ている。全然改善の兆のないところが実は一つあるわけでございます。二番目のほうは、四十五年五十一の店舗で出ておりましたのが、四十六年は三十四の店舗になっている。三番目は、四十五年六十一店舗で問題がありましたのが三十二店舗になっておる。ここらは改善の兆が出ておるわけでありますが、しかしそれにしても、この上位のほうというのは、相当な店舗でこういう問題が出ておるわけです。一件当たりで調べてみますと、架空名義預金は一件当たり大体百万円程度であります。そうして、一犯則事件当たりで見ますと、五十件、大体五千万円程度が発見をされておるわけであります。  私は、それを見まして、大体一件当たり百万円以上の預金が固定的にある顧客に対して、いまの銀行の情勢で、これがどこの馬の骨かわからないという形で放置をされているはずはないのじゃないか。やはりそれくらいの預金のある方には、何らかの形で預金の勧奨等が行なわれておるんじゃないだろうか。そうすれば、そこに行ってみる、あるいは文書を送ってみたら舞い戻ってきているということになれば、それはやはり疑いがあるということで、その名義の預金について何らかの調査をしていただく等のお骨折りを少しいただけないものだろうか。ともかく銀行の側にも、だれのだれべえといわれても一々点検する道はもちろんございませんから、受け取るときに、架空名義を受け取られるのはやむを得ない銀行側の立場があることも私は承知をいたしておりますけれども、長い経過にわたって預金をされておるものがそのまま最初の名前だけで処置をされておるということについては、やはり何年かの中では、預金の勧誘等に行かれたときにはそういう問題もわかる機会もあるんではなかろうか、こう思いますので、この際ひとつ、私、四十二年からすでに五年間続けてこれを論議しておりますが、特に悪質な方については当委員会で銀行名を発表してもらいたいということをこの間は要請をしたわけでありますが、国税庁のほうで、この調査は三年間にさかのぼっておるので、これらの問題がはっきりいわれてから以後の問題もあり得るからということで、私も、銀行名の発表は、じゃ当面は差し控えておくけれども、しかし銀行局としてはひとつ十分適切な指導を行なってもらいたいということを要望しておるわけでありますが、この架空名義預金については、中村さんのほうではどういうふうにお考えになっておるか、今後銀行側として、どういう対策によってこういうものがなくなるために御努力がいただけるのか、お伺いをしたいと思うのであります。
  141. 中村俊男

    ○中村参考人 いま堀先生の御指摘の点、まことにごもっともでございます。私ども、かねがね架空預金は困るんだということはもう徹底しておるのでございますけれども、御指摘のようなことが現に出てくるということはまことに遺憾でございまして、私ども、いま堀先生指摘になりましたようなことをまたひとつ持ち帰りまして、みんなに注意を喚起して、そういうことの少しでも減っていくように、また掲示ももっとはっきりしたところに出すとか、お客さまの御協力も必要なんでありますけれども、大口なものについてそういうことということになりますと、確かに銀行側も大いに落ち度があるということにもなるわけでございますので、いまの御指摘の点は一々ごもっともでございます。十分にひとつ話し合ってみたいと思います。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に一点だけ。実は数年来銀行の事故が多発いたしておりましたが、最近幸いにして銀行の事故もこの一両年ございませんで、たいへんけっこうだと思っております。そのときに、一回私問題提起いたしましたことで、銀行員の預金の集金業務といいますか、行員が外に行ってお金を預かってくる。いろいろな問題がございまして、そういう問題もやはり銀行員のいろいろな疎外感にも通じるし、あわせてリスクもあるし、いろいろあるので、できるだけそういうことはやめられないだろうかという問題提起をしたことがございます。前段最初のお話にも、これから非常に人手不足という問題もあるので、銀行経営についてはより合理化をしなければならぬというお話がありまして、その点さっきの人件費率等で合理化されていることは明らかでありますけれども、今後人手不足になます時期に、りっぱな大学を出た人が預金を集めに歩くなどということは、私はまことにどうも現代的でないような感じがいたしますが、その後この問題は銀行協会としてはどういうふうにお考えになっておるのか、今後はどうなさるか承って、私の質問を終わりたいと思います。
  143. 中村俊男

    ○中村参考人 集金の問題は、非常に非効率な集金はひとつやめようじゃないか、集金の中でも、ことに従来から取り組んでまいりましたのは時間外の集金ということ、まずそれからお互いに整理していこうということで、集金も、公共機関への集金とか、それからほんとうにお客さまのいい意味のサービスのための集金というようなものもあるけれども、しかし時間外はまずひとつやめようじゃないかということで、その整理にお互いに取り組んでまいっております。いまちょっと手元にその数字はございませんけれども、報告としては非常に改善されておるということを聞いております。のみならず、営業時間内の集金もなるべくあれしていこうじゃないかということでやっております。しかし、これは銀行ばかりのことでもございませんので、やはりお客さまのほうは非常に便利でありますから、お客さまのほうとしてはいいサービスだというふうに御推奨いただくこともあるし、それでも非常に非効率的なものはなるべく整理しているということは事実でございます。非常に人件費が上がっておりますので、そういうことについて私ども今後も着実に取っ組んでいきたいと思います。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  145. 金子一平

  146. 平林剛

    平林委員 時間もだいぶ経過をいたしましたし、堀さんのほうから詳しく御意見を伺っておりましたから、私は簡単に二、三御意見を伺わしていただきたいと思います。  午前中、実は大蔵委員会で、私は土地の高騰の問題につきましていろいろ政府議論をいたしました。何といっても土地の値段を、価格を下げないことには、物価の安定というお題目を言ってもだめじゃないか、やはりこれからは政府は土地政策できりきり舞いするくらいでなければいかぬという話を実はいたしたわけでございます。  そこで、私は参考人にお尋ねしたいのは、最近の土地値上がりにおきまして金融機関の果たしておる役割りといいますか、土地投機をある程度助勢するような融資の傾向が強いのではないだろうか。私も、都市銀行あるいはそれぞれの全国銀行などの業種別の貸し出しの推移をながめてみますというと、昭和四十五年の十二月におきまして建設業とか不動産業とかというような貸し出しの状況は急テンポで伸びておる。たとえば建設関係は、これは都銀の業種別の貸し出し推移でありますが、昭和四十五年十二月には一兆五百九十七億円でございましたのが、一年後の四十六年十二月には一兆五千六十六億円と、この期間に四千四百六十九億円、増加率でいいますというと四二・二%もふえておるわけであります。不動産業も同じように、昭和四十五年十二月末に五千九百九十二億円でございましたのが、四十六年の十二月になりますと九千四百六十九億円、これは三千五百四十七億円の増でありまして、伸び率は五九・九%。この一年間における貸し出しの増加の平均増加率は二三・五でありますから、特に建設、不動産に対する貸し出し増加率が非常に高いということがうかがれるわけであります。これは最近の大幅な金融緩和というものを反映いたしまして、ある程度金融機関としてもだぶついた資金の運用を考えねばならぬ、そこで土地購入に奔走している企業にある程度積極的に融資をせざるを得ないという状況を示しているんじゃないだろうか。大蔵省もこの点に着目をいたしまして、ことしの四月、行き過ぎのないように厳重な警告をしたということを私は報告を受けておるわけであります。そこで、金融界といたしましては、その後どういう措置をおとりなったでありましょうか、それからその後の経過はどういう推移をたどっておるでしょうか、これが私のお尋ねしたい点でございます。
  147. 中村俊男

    ○中村参考人 ただいま御指摘のように銀行の不動産向け融資がすべて投機に流れているわけではなくて、私どもはやはり健全な国民住宅の建設に貢献しているものだと確信しておるのでございます。もちろん結果的に一、二あるいは非常なわずかな例でそういう御指摘を受けるようなこともあるのかとも思いまするけれども、しかし土地価格の高騰というのは、金融の面だけで、どうにもそればかりで押えることもできませんので、やはり土地の供給を十分にふやしていただくということについてのいろいろな措置を講じていただかないと、土地の暴騰というものはなかなか防げないのじゃないか。しかしこういう時勢で、公共投資あるいは国民の福祉、ことに住宅建設というような問題がこういうふうに脚光を浴びてまいっておりますので、それに必要な資金というものを私どもが提供するということは、私どもの公共性の任務と思っておりますので、銀行融資があおっているというふうにばかりひとつきめつけていただかないようにお願いいたしたいのでございます。  その後の、いま私の手元にあります不動産業だけの融資でございますけれども、四十六年十月から十二月期には前期に比べて一八・九%ふえております。それから四十七年一−三月は一九%の伸び、四−六期になりますとこれが一五・四%ということで多少鈍っておりますけれども、これがどんどんふえているという数字ばかりも出ておりませんで、一般企業向けの貸し出しまで土地の投機に流れているのじゃないかというような説もありますけれども、これについてはちょっと銀行は知り得ない状態でございます。しかしやはり住宅関係、工場の疎開、公害問題、その他いずれをとりましても土地に関係してしまうわけでございまして、それに関連する融資というものを銀行はやはりやっていかなければならないので、どうぞひとつその点は御了承願いたいと思うのでございます。
  148. 平林剛

    平林委員 私も、金融機関が建設だとか不動産に融資をする、そのすべてが投機を目的にしたものだとは一言も言わなかったわけなんです。しかし、この増加傾向の中から見ますと、これは経済企画庁でも建設省でも、いろいろな企業を調査いたしました結果から見ましても、やはり相当数が投機を目的にして土地を購入したというものがございまして、一番よく御存じなのは金融機関だと私は思うのであります。そういうことから考えまして、私どもの警告はすなおに受けてもらいたいと思うのです。現に大蔵省から警告があった後、いまおあげになったような数字の低下があれば、幾らか大蔵省の通牒もきき目があったのじゃないか、こういうことに相なるわけでございまして、私どもは土地の投機の問題については絶えず細心なまで、あるいはもう極端なくらいいろいろな主張をし、警告をしていく必要を感じておるわけです。きょうはあなたにだけ言ったものだから、自分ばかりが罪人のようにお思いになったかもしれません。私は金融機関だけに言っているのじゃありません。これは政府に対しても言っておりますし、必要なところに対してはすべてそれを述べておるわけでございますから、その点はどうぞひとつ誤解のないように御了承をいただきたいと思うのです。また、そういう態度で臨んでもらいたいということを希望しておきます。  それからもう一つ、午前中ちょっと議論がありましたが、最近の株高の問題であります。全国銀行の有価証券の増加状況を、これもまた資料からながめてみますと、昭和四十五年の上期、つまり四月から九月の間の有価証券はおよそ千三十億円程度でございまして、対前年同期の増加率は三六・二%でございます。ところが昭和四十六年の十月から四十七年二月の期間になりますと、株式の分が千七百六十三億、前年同期の増加率一一二・二%。これはおよそ三倍以上の増加率であります。政府のほうからも説明がございましてね、この増加理由を分析をしてみると、投機買いというよりは安定株主の依頼なんぞもあってある程度ふえるのだというお話はございました。しかしいまの土地の問題と同じでございまして、私は現在の状況において国民から預っておる預金の運用をはかって利益をあげていくのが先ほどのお話のように必要なことであるとは考えますけれども、異常な高値、これはもし何かあったときにそのはね返りがこわい。特にそれが大きな経済的な悪影響を起こさないとも限らぬ。何でもほどほどでなければいかぬということは絶えず考えておかなければならぬ問題点であろうと思うのであります。  そこで、たとえばこういう金融機関の有価証券の保有率とかいう問題については特設の定めはないように私思うのでありますけれども、現状から見まして、何らかの措置を必要としておるというようなお考えはないでございましょうか。そういう点についての御見解を承っておきたいと思います。
  149. 中村俊男

    ○中村参考人 金融機関の株式の保有の額が最近ふえているということは御指摘のとおりでございまするが、御指摘の点を繰り返すようでありますが、これの一番大きな原因は、最近の国際化、自由化に伴いましての安定株主工作ということが私はもう最大の原因だと思います。安定株主工作というのは会社経営の非常に基本に触れる問題になりますので話が事務的にはまいりませんで、私どものところへ直接お話があるというのが非常に多いのでございますが、そういう点からも私自身がそういうふうに感じておるわけでございます。  しかし御指摘のとおり、株式というものは非常に暴騰、暴落のあるものでございまするからして、金融機関としてこれを保有するということは非常に注意をしてまいらなければならないのでありまするが、長年のお取引の安定工作ということもあって最近はそういうことになっておりまするけれども、ただ現在の状況で都市銀行の経営を非常に危うくするという懸念が持たれるほどまで株式の保有額はふえておりませんし、私どもそんなにふやすつもりもございません。ですからいまのところはそういう御懸念は要らないんじゃないかと思います。しかし、いまの株価がどうも無配株その他まで非常に上がっておるということはやや行き過ぎではないかと思いまして、私どもも非常にその点は注意いたしております。
  150. 平林剛

    平林委員 金利の問題についてちょっとお伺いをいたしたいと思うのでありますが、実は私はこの間行なわれました政府の低金利政策についての批判者でございます。預金者金利を下げてまで貸し出し金利を下げる必要があったんだろうかという点について非常に疑問を持っておった一人でございます。  特に当時、貸し出しの約金定平均利の推移を見ますと、たとえば昭和四十五年十月末あたりの資料からずうっとたどってまいりますと、四十五年十月当時は七分七厘です。これは全国銀行の平均金利でありますけれども、それが四十六年に入りますと七分六厘八毛五糸、四十七年になりますと七分四厘七糸、それからさらに四十七年四月になりますと七分二厘三毛というぐあいに漸次低下をしておる。これは先ほどお話があったように金融の効率化その他いろいろな御努力があった結果だと思いますが自然な姿で貸し出し金利というものは低下の傾向にあったことは事実でございます。これは資料を見ても大体わかるわけであります。そういう時期に預金者金利まで下げて貸し出し金利の低下をはかるという政府の低金利政策は私はどうも合点がいかなかった。  この結果、全国銀行の貸し出し残高、これを四十七年三月末で見ますと五十兆七千二百四億円でありますから、かりに〇・五%として二千五百億円、〇・二五%だとすればまあその半分、こういうふうにある意味では産業界に対する効果というものはあったんだろうと思いますけれども、しかしどこをねらっての政策であるのかという点についてはどうも疑問を感じないわけにいかなかったわけであります。特に貸し出し金利の低下傾向や現状の超金融緩和の時代におきまして、あえて預金者金利まで下げてそれをやるということについてはどうも納得がいきませんでした。  しかし、まあこれは私の批判でございまして、もちろんその他いろいろな事情もあったことは承知いたしております。しかし金融機関の立場からながめてみましてですね、各業種別にそれぞれお金を借りておるわけなんでありまするが、この措置をとったことによって——まあ期間も短いからすぐに変化が出てくるというものじゃありませんけれども、しかし何らかの特徴的なものとか印象的なものをお感じになったというようなことはございましょうか。そのお感じをひとつ承りたいと思います。
  151. 中村俊男

    ○中村参考人 ちょっと御質問のポイントが…。私どもその渦中に入っておりますからではございまするけれども、今度の預金金利も含めて金利の引き下げということは、私、公述の冒頭にも申しましたように、わが国金融政策というものが孤立のできない、そしてああいうような情勢で外貨が非常に流れ込んできて資金が潤沢になる、外貨準備も非常にふえてしまうというような情勢で、やはり世界経済の先進国の金利水準の一環として日本の金利水準というものも見ていかないといけないんじゃないかという感じがいたしております。しかしまだわが国の国民一般というものはそう国際化になれておりませんし、そういう考えをそういう人たちに言ってみても何ともぴんとこないことではないかなとも思っております。  しかし、そういう見地からいたしますと日本の金利水準というものは必ずしも低くない。しかも金利の自由化、弾力化というものをこの際は少し進めていくというのに、やはり預金金利も含めてこれを下げていくほうがやりやすいんだ、しかしたてまえは上げるべきときは上げるんだという前提の話でございます。そういう意味で、そういうことから預金金利も含めて下げるということは、これは国際社会への、まあ責務というほどの強い感じもございませんが、やはりその一環としてやむを得ないんじゃないかというふうに私は考えております。しかし、上げ下げが国際的な理由からたびたび行なわれるということにだんだんなれていくということがやはりわが国経済の国際化にも通じるんじゃないかな、この際は金利の自由化を引き下げるほうにやりやすくするということだと思います。しかしその結果いろいろな御批判が出たり、現に預金者から非常なあれが出ているということは、これはもう当然なことでありまして、そういう方々の気持ちもやわらげたい意味から、別の意味でいろいろな手も打ってまいりたいということをお願いしておるような次第でございます。そんな感じを持っておりますでございます。
  152. 平林剛

    平林委員 私は、政治なり政策なりは国民のためにある、そしてそれは一部の人たちのものであってはならない、こういう考え方で低金利政策が行なわれるならば、その及ぼす範囲は広くなければいかぬ、一部のものの利益に終わってしまってはいけない、こういう発想から、多くの国民の側に立つわけなんでございます。  そこで、先ほどちょっとお話がございましたが、預金者金利を犠牲にして貸し出し金利を下げました。しかしいままでの例でいいますと、たとえば公定歩合が引き下げられると、それがそのまま貸し出し金利にイコールしていくという実態ではなかったようでございますね。たとえば今日までの引き締め解除の時期から公定歩合が五回ばかり下がって、そして一・五%大体下がったわけでありますけれども、貸し出し金利のほうを見ますと、この一・五%に対して全国銀行では〇・四五七、つまり三〇・五%ぐらい、公定歩合比でですね。それから都市銀行におきましても、一・五に対して〇・六一八ですから四一・二%くらいの低下にしかつながらないわけでありまして、これはいろいろな事情があると思いますけれども、対イコールにならないわけですね。今度の場合も私は同じような傾向になるのじゃないだろうかと思うのでございます。それは先ほどもなかなかそうつながらないのだというお話を私聞いておりまして感じたのでありますけれども、しかし世間にはいろいろな人もございますから、本来であればちゃんと公式どおりにいかぬものかいなという感じは私は消せというほうが無理だと思う。したがって、そういう意味では、せっかくの低金利政策、それが貸し出し金利を下げる、そしてそれが経済全般をよくするという方向であれば、やはりそれが貸し出し金利にできるだけすなおに反映するようご措置はとれないものであろうかと実は感ずるわけであります。そういう点につきましてお考えを承りたい。まあやむを得ない事情があってこの程度だというにいたしましても、そのぎりぎりの限界を追求するという努力というものが必要なんでないだろうか、こう思うのですが、その点はいかがでございましょう。
  153. 中村俊男

    ○中村参考人 御指摘の点、第六次、最後の公定歩合引き下げを含めますと、約二%公定歩合が下がっております。それに対して都市銀行は大体半分の〇・九%ぐらいなことで、半分近く下がっております。ただそれは全体の貸し出し金利でございまして、それには長期の貸し出しの金利も入っておりまして、公定歩合にすぐ連動して下がりますのは例の標準金利というので、これは短期の一流企業に対する信用貸し出しのレートでございまして、それが貸し出しのもちろん全部じゃございませんし、貸し出しの割合からいいますとそう大きいものではございません。それは通算二%は必ず下がりまするけれども、長期の貸し出しレートというものはやはり公定歩合と同じ率は下がりませんので、連動して下がってまいりまするけれども、ですから平均いたしますとそういうふうな差が出て、何だ公定歩合の半分近くしか下がらないじゃないかというような御批判を受けるのでありますけれども、しかしやはり公定歩合が下がった分だけは貸し出し金利には非常な影響を受けて下がっておる。先ほど申しましたように、都市銀行の平均貸し出しレートはいま六・六〇五くらいに七月で下がっておりますけれども、これは六次の公定歩合の引き下げというものはまだ入っておりませんので、まだまだ下がると思います、資金需要の関係から申しましても。ただしかし、都市銀行の貸し出しの平均レートが公定歩合と同じだけ下がるということはこれはないのでございまして、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  154. 平林剛

    平林委員 最後はお尋ねというよりは私の希望意見でございます。  いずれにしても、低金利政策ということをうたい上げまして、金利が下がっていくということに相なりまして、しかし先ほど私が申し上げましたように、金利が下がれば、その分が特定の企業の金利負担を軽くするだけにとどまるとか、あるいは一部のものがそれによって利益を得るとかいうようなものであってはならない、これは実は私の気持ちでございます。  そこで、たとえば、その企業がそれだけ金利負担が軽くなったとすれば、たとえば鉄鋼などは二兆数千億円借りておるわけでありますから、その分だけは金利負担が軽くなっていくということになるわけで、金融機関全部で八十何兆円もありますか、都市銀行で五十兆円とかといろいろありまして、その分だけは金利負担が軽くなるわけであります。それをどこに吸収するかということが私たちが深い関心を持つところなんであります。たとえばその企業でそれだけ金利負担が軽くなったらそれは労働者の賃金がよくなるとか、そういう方向に生きてくるならば、これは違う。  もう一つは、電力にしたってガスにしたって、金利が安くなれば、金利負担が軽くなれば、それが電力料金あるいはガス料金に影響してくる。下がるわけにいかないにしても、上げようと思っているのを押えるような方向に働くというようなことになってこなくてはならぬのじゃないだろうか。たとえば国鉄でもそうですね。国鉄企業が相当の金利負担をしておる。それが低金利政策によって下がる。そうしたら、国鉄運賃は、一〇〇上げるものなら、そんなに上げなくて七〇か八〇でがまんする。こういうふうに生きてくれば、私は低金利政策のメリットというのは国民全般が負うことができる、こう思うわけであります。  そうでなければ、特定の企業なり特定のものたちの利益にとどまるということになるわけでございまして、私はこういう点は政府に向かって言わなきゃならぬことでございますけれども、何しろ本日の参考人の方はこれは実力者でございますから、政府に対する圧力も非常におありで、力があるというのでございますので、そういう方面についてむしろ政府を叱咤して、平林の言うのもなかなかもっともなことである、そういうような方向にやれというような意見があったが、わしもそう思うくらいの叱咤勉励をしていただくようなことを私は御要望として申し上げておきたい、こう思うのでございます。  同時に、預金者金利が下がると国民感情はおもしろくないですよ。特に郵便局の金利まで下げられたわけですからおもしろくないです。物価がこんなに上がっているときに金利を下げやがって、こういうのです。しかし、それが直ちに預金が減っていくなんというふうには即断はしませんし、そんなことはないだろうと思います。むしろ私どもがかねがね主張しておりますように、国民の貯蓄というものは可処分所得、所得がふえていけばその余裕金が金融機関にいくというような形に持っていかなければならぬというわけでございますから、金利の問題が直ちに貯蓄にはね返ってくるなんというふうには考えないし、またあったとしても御努力なさるだろうと思いますから、その点はあまり心配しておらぬですが、ただ私は、これは金融機関の立場に立って考えてみても、国民の所得をふやすという意味では、たとえて言うと、この際減税をやるとかいうような形にすればいいんだろう、あるいは社会保障をふやすほうに回すとかという形で国民の余裕ができるような方向に持っていくという政策が必要なんだろうと思うのであります。これはもちろん政府間ベースでやるべきことでありまして、皆さんのほうの権限外かもしれませんけれども、先ほどと同じような意味で私は大幅減税をするというような機運をひとつ金融界のほうからも、筋が違うかもしれないけれども、わが身だと思ってやってもらいたいということなんでございます。そういうことでございまして、そこでたとえば貯蓄奨励のために、貯蓄を何ぼしたら優遇するなんという税制などにたよっていくというようなことは、今度の予算編成期には金融界ではあまり言わないで、そういうことよりもむしろ減税をやるべきだ、こういうような御主張をなさって、非課税分をふやしてくれなんというようなことは筋が違うわけですから、そういうことでないように——もっとも政府のほうが一兆円も減税するというときは、少しぐらい皆さんのほうの言い分も私は目をつぶってもいいなと思っていますけれども、いま五千億減税もしないなんというような政府に対しては、非課税貯蓄をふやすなんということはぜひおっしゃらないように、これも御要望でございますが、この二つの点についてちょっと御意見を聞かしていただきまして、私の質問を終わります。
  155. 金子一平

    金子委員長 答弁が要るのですか。
  156. 平林剛

    平林委員 御見解がありましたらちょっと…。私がなかなかいい意見を言うとか…。
  157. 中村俊男

    ○中村参考人 御要望として十分承わらしておいていただきます。どうもありがとうございました。
  158. 金子一平

    金子委員長 中村参考人には、御多用のところを御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本日は、これにて散会します。    午後四時二十二分散会