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1972-10-03 第69回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十月三日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君    理事 浦野 幸男君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 樋上 新一君 理事 吉田 泰造君       小川 平二君    海部 俊樹君       木部 佳昭君    北澤 直吉君       塩崎  潤君    羽田野忠文君       松永  光君    加藤 清二君       松平 忠久君    近江巳記夫君       岡本 富夫君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      有田 喜一君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         大蔵大臣官房審         議官      秋吉 良雄君         大蔵省主計局主         計官      禿河 徹映君         大蔵省主税局総         務課長     山内  宏君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         農林省畜産局参         事官      下浦 静平君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局参事官    三枝 英夫君         中小企業庁長官 莊   清君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 それでは液卵輸入の問題で大蔵省農林省にお尋ねをいたしますが、中国との国交正常化によって、中国からの農作物の輸入増大することが予想されるわけですが、特に、生産増大をして、品質も非常によくなってきました液卵輸入、これは卵の生産農家にしましても非常な脅威を実は感じているわけですが、この点に対する見通し、それから、四十六年度の実績とか、あるいは四十七年度の計画、それらの点について一応の御説明を伺いたいと思います。
  4. 下浦静平

    下浦説明員 お答えいたします。  液卵輸入につきましては、主として豪州あるいは中国というところからの輸入が行なわれておりますが、四十七年におきましては、大体二万三千トン前後の輸入という見通しでございまして、これは全体の数字でございますが、そのうち、中国からのものにつきましては五千トン程度という見通しでございます。大体この程度数字におさまるのではないかというぐあいに考えております。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 もう少し親切に答弁してくださいね。質問は、四十六年度の実績がどうであったか、四十七年度の計画がどうなのか、それから、非常に品質もよくなっているので、今後の国交正常化に基づいての輸入圧力というものが加わってくることも避けられぬであろうから、それらの見通しについてどうかと、その三点についてお尋ねしているわけだから、質問によってお答えをしていただかなければいけない。
  6. 下浦静平

    下浦説明員 四十六年の輸入実績でございますが、これは全体の数字で申し上げますと、二万七千三百トン強でございます。そのうち、中国からの輸入のものにつきましては三千トン強、三千七十トン程度というぐあいになっております。したがいまして、中国からのものは割合におきまして一一%程度、オーストラリアからのものが一番シェアとしては大きいわけでございますが、これは四四%程度、こういうぐあいになっております。  それから四十七年度につきましては、先ほど申し上げましたような見通しでございまして、全体で二万三千トン程度、そのうち、中国からのものが五千トン程度という見通しでございまして、ほぼ実績的にもこの程度数字でおさまるのではないかと存じております。  それから品質でございますが、これは御指摘のとおり、だんだんよくなってきておるということがいえると思います。  なお、今後の問題でございますけれども中国との国交回復ということに伴いまして、これから中国側からの輸入圧力というものが加わるのではないかというような御指摘でございますが、価格の点におきましてもかなり中国側のほうが安いということもございまして、御指摘のようなことではないかと存じておりますけれども、これはすべてこれからのことというぐあいに考えております。  なお、今後の輸入数量見通しでございますけれども、私どもといたしましては、トータルで四十七年の先ほど申し上げました二万三千トン程度、大体これを下回る程度数字に何とかおさめてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 関税は現在キロ当たりが二五%かあるいは六十円のいずれか高いほうということになっておるのですが、関税引き下げといったようなことも生産者の側は懸念をしておる、こういうことなんですが、いまの日本輸出が非常に増大をしているという点、また輸入が意外に伸びないという点から、関税をもっと引き下げるべきであるというような意見が、国際的には言うまでもないのですが、国内にもそれはやむを得ないのではないかというような意見等もある。これはいまの液卵の問題だけをさして言うわけじゃなくて、一般的な傾向として申し上げているわけですが、この液卵の場合についてはどうなんでしょう。
  8. 秋吉良雄

    秋吉説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、ただいま関税を扱っております大蔵省といたしましては、経済国際化あるいは消費者対策等の観点からいたしまして、現在関税率審議会において、今後関税をどう持っていくかということについて御審議を願っておるわけでございます。   〔委員長退席武藤委員長代理着席経済国際化に対応すべく、関税については極力引き下げるという方向でこれから取り組まざるを得ないかと思いますが、御指摘のように、国内産業摩擦ということもわれわれ十分配慮しなければならないことは当然でございまして、ただいま御指摘液卵の問題もこれありでございます。したがいまして、御承知のように、昭和四十七年度の関税国会の御審議を願ったわけでございますが、関税については数品目について相当引き下げを行ないましたけれども、この液卵につきましては、ただいま御指摘ございましたように、逆にキログラム六十円という従量税選択課税ということを新たに設けまして、いわば関税をむしろ上げたというような措置を講じたわけでございまして、今後液卵関税についてどうするか、御案内のように、これは一年間の暫定措置法でございます。したがいまして、今後輸入動向等を見つつ、さらにまた農林当局ともよく御相談を申し上げ、関税率審議会において検討してまいりたい、このように考えております。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 的確なお答えはできないのかもしれないのだけれども、今後検討するということですが、いま言ったように一年間の暫定になっている。そしてそのいずれか高いほう、こういうことになっています。だから方向としては関税引き下げなければならないといったような方向にあるのではございませんか、どうなんですか。
  10. 秋吉良雄

    秋吉説明員 私どもの全体の基調といいますか、基本的な考え方としては、できるだけ関税水準を全般的に引き下げ輸入促進消費者対策を講じてまいりたいというのが大蔵省関税に対する基本的な考え方でございますが、しかしながら、国内上のいろいろ配慮すべき品目もあろうかと思います。そういった問題については、当該産業保護担当局と十分御相談を申し上げて、適切な関税政策の運用をしてまいりたい、かように考えております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、大蔵省としては、鶏卵生産農民というのは、非常に大量生産もあるわけですけれども、そうではなくて、零細な生産者というのが非常に多い。価格の問題にいたしましても、卵の値段だけは十年、二十年ほとんど上がっていないといったような状況で、最近は飼料安といったような点等々から比較的また卵価も値が強いというので安定した経営状態にはあるものの、こういったようなことは珍しいわけですね。だとすると、やはり関税引き下げられる、それから中国から現在の輸入量というものはあまり多くはないわけですけれども、先ほど農林省からお答えがございましたように、品質がよくて、そして価格も安い中国からの輸入増大をしてくる傾向にあるということになってくると、関税引き下げに拍車をかけるということになってくるのです。いまそういった国内摩擦といったようなものは避けなければならないというお答えがあったわけですけれども、そのような事情国内鶏卵生産があるのだということは、よくおわかりになっておられるのだろうと思うのですが、その点いかがですか。
  12. 秋吉良雄

    秋吉説明員 たびたび同じようなことを繰り返して申しわけございませんが、そういうようなことを踏まえて、本年度特に従量税を設けまして選択課税にした趣旨でございますが、来年三月三十一日、一年間の暫定措置法でございますから、それまでの間において十分農林省当局関税率審議会において検討してまいりたい、このように考えております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 それからこれは農林省の見解を伺ってみたいのですが、四十七年度は、先ほどお答えになりましたように二万三千トンですね、このワク内で押える、こういうことなんですが、今後の問題なんですけれども関税の問題についてはいま大蔵省お答えはありましたが、そういう関税引き下げという傾向も非常に強くなってきているという点からいいますと、これは問題は依然として残ってくるような気もいたします。また、そのことが鶏卵生産農民に対する大きな不安にもなっている、こういうことですが、輸入規制ワクをこの際設けるべきだといったような意見相当強いわけです。それらの点に対してはどのように考えるのかという点です。  それからいま一つ、関税引き下げだとすれば、輸入規制はきちっと確保してもらわなければ困るのだというような意見も非常に強い。それらの点に対しては、農林省はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  14. 下浦静平

    下浦説明員 お答えいたします。  ただいま液卵輸入につきましては、国内生産の面におきましても、御承知と存じますけれども、過剰夢みというような状況でございますので、生産調整を進めておる段階でございます。そういう状況を踏まえまして、輸入につきましても、関係者からなります協議会を持ちまして、一種の液卵輸入自主規制というようなことをやっております。もちろんこれは別段権限のないことでございまして、いまのところはそういう形でうまくいっておりますので、これは今後ともそういう形で輸入関係自主規則ということを、私ども行政指導をいたしまして継続をしてまいりたいというぐあいに考えております。  それから関税の面につきましては、ただいま大蔵省のほうから御答弁があったところでございますが、外国産の液卵にかなり安いものがあるといろこと、それから先ほど申しましたように、国内での生産調整というようなことをやっておる段階であること、これは先生のほうから御指摘がございましたように、鶏卵価格というものが非常に安定的に長い間推移してきておるということ、これらをよく踏まえまして、今後大蔵省当局ともよく相談をしてまいりたい、こういうぐあいに考えます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 輸出の場合ならば自主規制ということもあり得るのですが、輸入の場合の自主規制というものは、結局国内生産調整、先ほどちょっとお答えがございましたように、それ以外には考えられないことだ。ところが、農林省は、この生産調整に乗り出してこれを指導しておられるようですけれどもお答えがございましたように、あまり強力なものではない。ましてや予算が伴わないですね。予算が伴わない生産調整というものはたいした期待は持てないのではないか、こういうことです。しかしながら、中小零細企業というのは、これに協力をするというたてまえをとっているのですね。ですけれども輸入圧力というようなものが相当強く加わってくるということになってくると、生産調整そのものは無意味だといったような形にもなりかねない。だから国内生産調整というものについてこれをやるならばもっと国が助成をしていく、そういうことで、もっと強力な生産調整体制を整えていくということでなければならないのではないかというように私は思うのですが、その点に対しての考え方はいかがなんですか。
  16. 下浦静平

    下浦説明員 生産調整もあまり強力なものではないのではないかというお話でございますけれども生産調整につきましては、これも行政指導の一つではございますけれども、これは市町村の段階あるいは県の段階、こういう段階まで含めまして、協議会システムを設けまして、ただいま強力に推進をいたしておる段階でございます。  なお、この生産調整のほかに、鶏卵価格安定につきましては、実はいろいろな仕組みがございまして、鶏卵価格安定基金というようなものが全国団体といたしまして二つございます。これは一定の価格水準を割りました場合にその差額を補てんをしてまいるという仕組みでございます。これは二つと申しますのは、農業団体系統、それから商社の系統、こういう二つ系統に分かれて、それぞれ安定基金があるということでございます。  それからなお、最近液卵公社というものを、株式会社ですけれども組織をいたしまして、それに対しまして助成もいたしておるということでございます。これは価格安定基金機能を働かせまして、さらに、価格のささえということが非常にむずかしいという場合に、この液卵公社が買い取りをいたしまして、割卵をいたしまして液卵の形で調整保管をいたす、そうして価格が上がったときにこれを売ってまいる、こういう仕組みでございます。  なお、価格安定基金関係二つ系統があるというお話を申し上げましたが、これらにつきましてもそれぞれ助成をいたしておりますので、まだこの二つシステムが動き出すというような段階にはここのところきておりませんけれども、もしそういう状況になります場合には、十分にこれらの機能を発揮するように指導をいたしてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 生産調整をやるということになってくると、結局生産を抑制するという形にならなければいけない。その場合に、価格安定基金の問題ですよ。いわゆる建て値をどうするかという問題が出てきますね。これが低ければ、結局低い上に生産調整をして生産量を低くする。こういうことになってくると、いまでも非常に薄利なんですよ。だから、ますます利益の面においては圧迫されるという形になってくるわけですよ。ですから、生産調整をやります場合には、建て値の問題と切り離して考えられない、こういうことなんですね。その点をどうするのかという問題が一つあると私は思う。  それから基金でも、基金二つあるわけですが、その二つ基金に全部入っているわけじゃない。いろいろな感情的な問題、あるいは、古い歴史ですからいろいろな問題もあって、いまなお二つ基金協会に入っていない生産者もいる、こういうことであります。そこらの問題も、これはやはり強力な行政指導をもって解決をしていくということでなければいけない。やはり輸入の問題と価格安定基金のいわゆる建て値の問題、それから生産調整、この三者というものは一体化した形の施策が講じられなければならない、私はそう思います。   〔武藤委員長代理退席委員長着席〕 その点に対しての考え方はどうか。輸入の問題は関税を含めての問題なんですが、関税のことについては、先ほど秋吉審議官から、そういう国内事情というものを十分勘案していままでも取り組んでいるし、今後もそういう態度で取り組むのだ、こういうことですから、一応考え方はわかりましたけれども、肝心の農林省が、そこらが必ずしも強力な体制の中にないような気が私はいたします。  以上、私が申し上げましたようなことについての考え方をこの際はっきりさせておいていただきたい。
  18. 下浦静平

    下浦説明員 ただいまの御指摘の点につきましては、私ども十分頭に入れて今後の指導に当たってまいりたい、こう考えております。  なお、生産調整でございますけれども、これは生産を押える、生産を低いところに持っていくということではございませんで、需要に見合いました生産をやってまいるということで、ただいまの生産調整を推進いたしておるわけでございます。  さらに、価格安定基金につきましては、ただいまのところはまだ動き出すという段階ではございませんけれども、過去におきましてかなり機能を発揮したといろこともございますので、十分今後の動向をながめてまいりたいと考えております。  また、加入者外生産者という御指摘もございましたけれども、これは観念的にはどちらかの系統に仕分けをされるわけでございまして、漏ればないというぐあいに考えるわけでございますけれども、現実の問題といたしましては、いろいろな事情からアウトサイダーでとどまっておるという生産者の方もおられるかと存じておりますが、できるだけ加入促進ということにもつとめてまいりたい、こういうぐあいに考えます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 この点は、あなたのほうからお答えは要りませんけれども生産調整需要に見合う生産調整とおっしゃる。国内だけの場合はそれでもいいいわけなんだけれども、そうではなくて、輸入圧力というものが相当強く加わってくるということになってくると、その影響というものをもろに受けることになるわけだから、その点も十分頭に置いた指導をやっていかなければならないということなんですよ。お答えは要りません。うなずいてもおられることだし、考え方は同じだろう、こう思います。  それから、いま両大臣がお入りになりましたが、いま私は、中国との国交正常化に基づいて相当中国から農産物その他の輸入というものが強くなってくるであろうという問題で、液卵の問題を中心に、大蔵農林両省考え方をただしてきたわけです。中国農産物あるいは中小企業製品でも同じなんですが、中国から競合するようなものを輸出するという場合、相手国の零細な農民とか中小企業者を圧迫しないことを限度とする輸出であるというのを原則とするということが従来いわれてきたわけなんです。それに甘えてはいけないと私は思うのだけれども、その原則に対しての理解はどう持っていらっしゃるのか。これは今後の交渉の問題も出てまいりましょうから、中曽根通産大臣からひとつお答えいただきましょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 貿易原則等は互恵平等ということを先方は言っておられるので、その精神を基本にして、応用問題として解いていくべき問題であるだろうと思います。互恵というのですから、両方にべネフィットは公平に行き渡るという意味で、中小企業とかあるいは農村に対して過酷なしわ寄せがこないように、やはり両方共存共栄で、長期的に見て提携繁栄できるような方策を見出す。たとえば、生糸の問題とかあるいは豚肉の問題とか、そういう問題、日本農村の人々はいま非常に心配しておりますけれども、そういう問題について心配の起こらないような措置を私たちはやっていかなければならないと思います。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵農林両省、お引き取りになってけっこうです。  経済企画庁長官にお尋ねいたします。  日本列島改造論国土総合開発及び新々全総との関連ということについてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  22. 有田喜一

    有田国務大臣 日本列島改造と従来あるところの国土総合開発、非常に似通った面がたくさんあります。多少の幅は違うところがあります。たまたまわれわれとしましては、いま総合開発の新全総の総点検をやっておるところで、そこで、日本列島改造のいいアイデアを取り入れながら点検をやって樹立したい、かように考えております。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 私の質問に対しては必ずしも明確なお答えになってはいないのですが、列島改造論の問題はあらためてひとつ時間をかけて議論しなければなりませんけれども、この点だけを伺っておきたいのですが、列島改造論現行法、六十八通常国会で成立をした工業配置法、いまいろいろと準備にかかっておるようですが、それと農村工業導入法首都圏整備法新産都市法離島振興法産炭地振興法、まだありますが、地域開発拠点開発列島改造論との関連というものはどのようにお考えになりますか。
  24. 有田喜一

    有田国務大臣 日本列島改造は、そのことばのように日本全体の過疎過密の解消、あるいは交通通信網のネットワーク、あるいは地方都市の建設等々、そういう全体に考えております。しかし、それを具現するときに、いっときに何もかも一ぺんにやれるわけではない。そこで、やはりそれぞれの地域開発の実情と合わしながら、秩序を立てながら、地域的なところから開発を進めていくのが至当じゃないか、かように考えております。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 いずれにいたしましても、日本列島改造論、これは具体的にはいろいろな法律をつくっていかなければいけないということになる。基本法も必要になってくるかもしれない。これは当然必要になってくることでしょう。工業配置法案審議の際にも、私ども基本法の問題を取り上げて、当時の田中通産大臣は、工業配置法基本法とする、そして従来の地域開発あるいは拠点開発施策は、これにぶら下げていくといった構想を明らかにされておるわけです。今度は列島改造論というものが出てきたわけですね。ですからこの点が、さらに従来の地域開発拠点開発関連はどうなるのだろうかというようなまだはっきりしないものがありますから、不安もありましょうし、いまやっていることに対する足踏みといったようなものもなきにしもあらず、こういったようなことにまたいろいろな思惑も出てくるということになってまいりますね。ですから、経済企画庁としても、新全総を改定して新々全総をつくるとかなんとかいろいろなことが言われている。それは、国土総合開発の問題について、また会合をお持ちになる御予定だろうと実は思っております。その際にも私はただしてまいりたいと思いますけれども、精力的にこれらの問題を明確にしていかれる必要があるということを一つ申し上げておきたいと思います。  この四十八年度の予算の編成に対する基本的な考え方、もう概算要求を出しているわけですから、経済企画庁経済企画庁として、当然これは経済見通しが一番柱になってくるわけですから、その点に対する経済企画庁基本的な考え方を明らかにしていただきたい。
  26. 有田喜一

    有田国務大臣 経済企画庁としましては、まず最近の景気回復状態、これはいつかお話ししたかと思いますが、あらゆる面から見まして、景気は非常に堅実な足取りをとりながら回復基調にあることはもうはっきり言えると思います。  そこで、ちょうどいま、われわれとしましては、いわゆる長期計画ですね、いままでは新経済社会発展計画という五カ年計画がありましたが、それは三年前にできたものでありまして、それをもう一ぺん改めまして、新しい視野に立った長期計画をいま樹立中なんです。それが四十八年度からの計画ですが、その長期計画は、いままでの考え方を改めまして福祉優先、福祉充実、そして国際協調と、二つの大きな柱を立てまして、いままでややもすると高度成長、輸出第一主義に流れておったものを改めた五カ年計画をいま考えております。これは大体本年の十二月の中旬までには仕上げて、予算編成の最後の一つのとうとい基調としなければならぬ、かように考えておるわけです。いまそういう段階でありまして、来年度こういう規模でこうだということは、いまはっきりと申しかねる段階であります。  しかし、個人的に見ましたときには、本年度、四十七年度も相当回復をしておりますが、その回復基調は来年も続くものだ、かように考えております。ことに、本年度は、最初は七・二先の実質成長率を考えておりましたが、それをはるかに上回る状態であります。ただ、これから変わることは、さっきもちょっと触れましたように、いままでは民間設備投資というものが大きな牽引力になって、ことばをかえていえば、重化学工業あたりが大きな牽引力となる、また輸出産業あたりが大きな牽引力となって、日本経済をぐっと回復に持ってきましたが、今回は少し変わりまして、昨年からやっておる財政面の力、それがことばをかえていうならば、公共事業というものが中心となって、また個人の消費あるいは住宅建設等々が一つの景気回復の牽引力になっておる。したがいまして、その景気回復の伸びは、従来と比べまして少しゆるやかな伸びだと思っております。したがって、来年度からも、いわゆる生産事業の面に大きな期待をかげるよりもむしろ非生産面の事業からの景気の伸びが大体出てくるんじゃないか、かような見通しのもとに、先ほど言いました長期計画をいまいろいろな観点から立てつつある、こういうのでありまして、来年度も、個人的な見解としましては、相当伸びていく、こういう見通しのもとにおることは間違いない、かように思います。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 ここで私は、四十七年度の経済見通し、これは予算編成の基礎になったものですから、その関連でお尋ねをするわけですが、貿易収支の関係は、四十七年度の場合、輸出をできるだけ押えて輸入をふやしていこうということでしたが、それにいたしましても、貿易収支は七十一億ドルを見積もっておられるのですね。それから、個人消費は、これをふやしていかなければならぬという主張でございましたが、数字といたしましては、四十六年度が一三・八%、四十七年度は一三・五%と見積っておられる。ほとんど横ばいである。四十八年度は、これらの点に対してはどのようなお考え予算編成に臨もうとしておられますか。
  28. 有田喜一

    有田国務大臣 貿易収支は、御承知のとおり、輸出が依然として伸びておる、しかし景気回復が順調に進みまして、その伸び率はやや鈍化しております。そして輸入のほうが伸び率は高い。したがいまして、いまの国際収支の黒字幅は、従来よりも多少狭まってくるんだろう、かように考えておりますが、しかし輸入輸出の開きが相当大きゅうございますので、それに対する適当な対策は講じていかなければならぬ、かように思っております。  それから個人消費の伸びの問題ですね、これは見方によっていろいろありましょうが、先ほどちょっと触れましたように、個人消費が相当景気回復の力になっておることはやはり言えるわけでございまして、いろいろな物価の面なんかもありますので、その辺のところは、個人消費をぐんぐん伸ばして、賃金、給与を上げたらいいとばかりは言っておれないが、しかし、そういう国民生活の向上というものをあわせ考えながら、また国民生活の安定は同時に物価問題ともつながると思いますから、その辺のことを勘案しながら、適当な方策で進みたい、かように考えております。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 現在の推移ということだけで経済見通しを立てていくというようなことであってはならぬですね、四十八年度の予算編成にあたって。それではなくて、やはり思惟的におやりにならなければいけない。貿易収支というものを、これはハワイ会談の中におきましても、アメリカとの関係でも、黒字幅を両三年の間にGNPの一%、そういう約束もしてこられた、こういうことでしょう。  それから、いまお答えになりましたように、輸出生産第一主義から、生活であるとか福祉優先に転換するのだ。それならそれのような具体的な政策を強力に推し進めていかなければならない。四十七年度がこういう状態にあるからというその推移だけでこれは何とか経済見通しを立てていくということであってはいけないと私は思いますよ。それと、いま私が申し上げました個人消費の問題は関連をしてくるわけですから、調整インフレとかなんとかというようなこともそこらあたりから出てくる問題ですね。  たとえば、この前の委員会でも私が申し上げたことですが、賃金にいたしましてもアメリカの三分の一ということになっているじゃないか——生産性というものは日本の一に対してアメリカは一・五だ、賃金は日本の一に対してアメリカは三である、そういうことですね。すでにここでバランスがくずれているということになる。ですから、生産第一主義から生活と福祉優先を第一に持っていくのだ、転換するのだというならば、それなりの強力な施策を講じていかなければいけないのじゃないか。なるほど、いまあなたがお答えになりましたように、個人消費の伸びが物価との関連も出てくるでしょうね。しかし、それは物価を抑制する強力な施策を講じていくということがなければいけない。  それで、あなたがこの前お答えになりましたように、公共料金の抑制とかいろいろなことをやらなければいけない。あるいは国からもっと支出を多くするということによってそれを押えていくという、そういうこともあるであろうと思うのですね。ですから、やはり賃金をもっと引き上げていくというそのことは、予算面には、国家公務員あるいは地方公務員の給与をどうするかという問題だって出てくるわけですからね。  それから、生産性の低い農漁業であるとか、中小企業生産性をどうして高めていくのか。そのためには、いまのように概算要求がいままでの二五%であったのを三〇%ということになると、従来とちっとも変わらないような概算要求をしておることになるのではないか。それではいけないのだ。そういう四十七年度の予算というようなものを横目で見ることはわかるけれども基本的な転換の方策をここに打ち出していこうとするならば、それにとらわれることなく、抜本的な、そして強力な施策を講じていくということでなければいけないと私は思うのです。そうしなければ公害をなくすることにもならないし、生産第一主義から生活と福祉優先に転換することはできないのじゃないか。  しかし、いま大蔵省概算要求三〇%——あとでお尋ねをいたしますが、通産省でも、通産省全体では三〇%、しかし、中小企業との関係において中小企業庁に対してはそれを四五%といったように、一つの賞庁におきまして重点的にはやっておりますけれども、政府全体という形においては各省やはり三〇%という概算要求をしておるにすぎないじゃないか。従来の姿勢というものは変えていないじゃないか。ただ五%だけを概算要求の中にふやせということでやっている。その前に基本的な政府の姿勢、施策というものを明らかにして、それによっての概算要求というものをやらせるということでなければいけないのだ、私はそう思いますね。  経済企画庁は、それらの点に対してはもっと基本的な考え方を持って指導性を発揮していくということがなければいけないと思うのです。何といってもあなたのほうは、経済見通しを打ち立てる、物価の問題についての主管官庁でもあるわけですから、それらの点に対するあなたのもっと迫力のある一つの答弁といいますか、考え方をひとつこの際明らかにしておいていただかなければいけないと思うのです。
  30. 有田喜一

    有田国務大臣 もちろん経済の推移ばかりを見ておるというわけではありません。しかし、やはり経済も一つの流れでございますから、その推移というものを見ながら、また一方において先ほど言いました大きな福祉優先というほうに転換しなければならぬ。そこをいま考えてやりつつあるところでありまして、いま一応各省は三〇%までのものを概算要求しておるようでございますが、これからいよいよ予算査定に入りまして、その中身の問題はこれからでございますので、これは各省庁とも、それぞれの省で重点的に考えてくださっておると思いますけれども、一そう全体的の立場から、大蔵省を中心として、われわれも経済見通しと今後のあり方というものを勘案しながら重点的な施策を進めていきたい、かように考えております。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから、経済企画庁長官に対する質問は、きょうはこの程度にとどめておきます。  通産大臣、むしろ通産大臣ということよりも国務大臣としてお答えをいただかなければならない質問が多くなりますが、IMF総会でシュルツ米財務長官が、九月二十六日でしたか、平価調整について重要な提案をされたようでございます。しかも、各国がこのシュルツ提案に対して共鳴をするというようなことでございまして、日本が孤立するような存在になってきておる。シュルツ提案というようなものが実施されるようなことになってまいりますと、日本経済に及ぼす影響というものは非常に大きいと思うのですが、このシュルツ提案に対しての政府の受け取り方はいかがでしょうか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 けさ植木大蔵大臣から聞きましたが、IMFの総会におきましては、各国がみな各国それぞれの考えを述べ合って、ほかの国のやり方、考え方等に対して批判がましいような対立的な意見というものではなかった、建設的に世界の通貨体制の確立に向かって進もう、そういう気分でありましたと、そういうことでありました。シュルツ演説も、そういう雰囲気とそういう基調のもとに行なわれたものであるだろうと私は思いまして、アメリカ側の御見解がそういうものであると承知しております。しかし、日本には日本の立場がございまして、われわれは先にきめた七項目、あるいは通産省や大蔵省がいろいろいま努力していることを持続いたしまして、さらにこれを成果あらしむるということによって、日本のドル問題というものを解決していくつもりでございます。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 このアメリカ側の提案というのは、公式な警告というような形になるのじゃないですか、いかがでしょう。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 警告というものよりも、やはりアメリカの所信表明というものであるだろうと思います。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 このシュルツ提案は、日本として予想しておったところですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは大蔵省の主管の仕事でございますが、通産省としてはある程度、アメリカは独自の強い考えを打ち出してくるであろうということは予想しておりました。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 シュルツ提案の、外貨準備の増減を為替レート変更の指標とするということなんですが、これはいかがでしょうか。固定レートというようなことを意味するのか、あるいは為替変動相場制ということを意味するのか、この受け取り方はいかがですか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 IMFの基礎精神というものは、固定相場制を堅持して世界的な体系を維持していこう、そういうことでスミソニアン体系もできておるのでありまして、そういうフラクチュエートするチャンスが非常に強くなるということは、世界経済安定のためにも好ましくないと私は思います。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、いま日本には日本考え方がある。これは新聞報道によりますと、同じ二十六日に植木提案というものがなされておるわけですが、日本はどういう態度で臨んだのでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は大蔵省にお聞き願いたいと思うのでございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 私が通産大臣にお尋ねしておりますのは、これは通産行政に及ぼす影響というものはきわめて大きいわけですから、したがって、重大な関心を持ってこの植木提案というもの、あるいはシュルツ提案というものを受け取られたであろう、また、このような提案をするにあたっては、少なくとも経済閣僚である通産大臣大蔵大臣との間には十分な話し合いがなされたであろう、そういう受け取り方をすることは無理でしょうか。私は、そうだと思ってあなたにお尋ねをしています。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は大蔵大臣意見を支持しております。大蔵大臣意見が出るまでには、事務的にも各省の間で調整が行なわれて発言したものでありまして、日本政府の考え方でございます。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 日本側の提案ということに対しての内容については、私は触れません。やはりあなたがお答えになりましたように、アメリカをはじめIMF傘下の国々がこれを受け入れるか受け入れないかは別として、日本が置かれておる立場あるいはものの考え方ということからの提案でございましょうから、それはまたいずれ適当な機会にあらゆる角度からひとつ考え方をただしてまいりたい、こう思っておりますが、きょうは、あげてシュルツ提案に対する見解をお尋ねをしていきたいと思うのです。  この不均衡を是正しない国への制裁として、黒字国には輸入課徴金を課するというきびしい提案なんですが、先ほど申し上げましたように、各国はこれを支持しているという。ここで私は若干日本の提案との関連で疑問に思っているわけですが、この前ハワイ会談の際、緊急輸入というのが十一億ドルでしたか、一応これをきめましたね。それから恒久的な均衡ということについては、先ほども申し上げましたように両三年の間にGNPの一%程度の幅にこれを縮小するんだ、こういうことであった。これはやはり合意したのであれば、今回シュルツ提案といったものはなされなかったのではなかろうかというように私は思うのですけれども、この前から、例の箱根会談それからハワイ会談、その前は田中、当時の通産大臣がアメリカに参りましたときに、いわゆる一年間の休戦なんということの話がついたというようなことを言われた。ついておるならば、箱根会談になったりする必要はなかったのではないか。その際も実は私は疑問に思ったわけです。今度同じ疑問を受けておるのですが、この点については、どう通産大臣は受け取っておられるのでしょうか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 シュルツ演説というのは日本にのみ向けられた演説ではなくて、通貨体制に対するアメリカとしての世界各国に対する所信表明であると思います。しかし、その中でも黒字国の尤たるものはわが国でございますから、わが国としては重大な関心を持ってあの演説を聞き、また分析もしてみなければならぬと思っております。しかし、まああれはアメリカ独自の立場に基づいて言ったところが多いので、アメリカ自体の行なうべき努力というものについては何ら言及していないところもあります。やはり国際関係というものは相互主義でもありますから、国際協調を目ざしながら、お互いがそういうおのおのの立場を調整しながら協調していくということが好ましいのではないかと思います。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 中身は日本向けなんですよ。それはおっしゃるように日本という形で名ざしていないんだけれども、これはだれが考えてみても、中身を見ると日本に向けられたことがわかる。だから世界各国はこれを支持するという形になってあらわれた。正直にいって日本が袋だたきにあって孤立したということには間違いがない。したがって、植木提案というものが政府の態度であるということですけれども、残念ながら政府の態度というものは各国から支持されていないというところに円の再切り上げといったようないろんな不安というものが出てくることは当然だと私は思う。  そこで、植木提案の中ではっきりしない点がありますので、この点だけはお尋ねしておきたいと思うのですが、日本としては通貨制度の改革が必要と考えているのかどうか、この点はいかがですか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も大蔵大臣にぜひお聞き願いたいと思うのです。通産大臣が通貨制度まで言及することは越境することになります。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 越境にもならないでしょう、さっき十分話し合いをしての政府の態度だというお答えがあったのですから。この点は先ほど申し上げたように、通産大臣は、どの大臣よりももっと深い関心をお持ちになっていらっしゃると思うのですよ。私がお尋ねするのは、植木提案では、調整可能な平価制度のワク内で長期的、均衡的に定めるべきである、こう言っているわけです。このことは、ハワイ会談における田中現総理が両三年云々と言われたことと同じになってしまうのですね。してみると、どうもいま通貨制度というものの改革をやらなければならぬという考え方の上に立っていない。そういう意味で、シュルツ提案に対しては、このような内容は支持しない、日本としてはこうなんだということなんです。ですから、通商政策の最高責任者でいらっしゃる中曽根通産大臣、この植木提案の関係は、あなたのこれから進めていく行政というものに重大な関係を及ぼしますから、通産大臣御自身としては、個人でもけっこうなんですけれども、この通貨改革が日本として必要なのか必要でないのか、また、ハワイ会談で田中総理が提案をした両三年云々といったようなものは、通貨改革の必要を認めていないという考え方、する必要はないんだという考え方の上に立った均衡策としての提案ではなかったのかというように私は思っているわけなんですが、あなたとしてはいかがなんですか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際流動性の強化とか、あるいはSDRというような新通貨体系に対する協力とか、あるいはそれの強化であるとか、あるいはドルにできるだけ早期に健康体に戻ってもらって、世界通貨としての一機能を十分果たすような力を回復してもらう、そういうことも、いまのスミソニアン体系を維持していく上について非常に貴重なことでもあると思いますから、そういう面については私は賛成であります。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、国際収支の調整はまず国内政策で行なうということも言っているわけなんですけれども国内政策で行なうということは、効果的なものはどういうことをお考えになっておられるのか、この点いかがですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 調整インフレには賛成いたしません。ともかくある程度内需を振興して、輸出に向かう力を内需にもっと向けさせるというようなこと、これは前から私が申し上げているとおりでございます。あるいは輸入増大を目ざした諸般の政策を行なうこと、たとえば輸入金融についてもっと便宜的措置を行なうとか、可能な限り関税率を引き下げていくとか、そういうことによって輸入増大させるというようなこと、あるいは外国に対する経済協力をもっと促進する、そういうような諸般のこと等も実行するし、外貨貸し制度のようなものも発動して、できるだけドルの蓄積を散らしていく、そういうようなことが適当であると思います。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、先ほどの通貨改革の問題と関連してくるわけですが、この前、通貨調整によって日本は一ドル当たり三百八円ということになっておりますが、現在為替レートというものが基礎的に不均衡を生じておるという認識をお持ちになっておられるのかどうか、そうではないと考えるか。これは日本国内政策というようなものに対していま少しく積極的な、いまあなたがお答えになりましたようなもろもろの施策、あるいは輸出を抑制する、もっと輸入をふやす、個人消費の問題もそうなんですけれども、そういった施策を講ずることによって十分是正し得るものであって、基礎的な不均衡というものは生じていないのだという認識なのかどうか、このあたりいかがですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり日本には輸出を押し上げる力が依然として根強い。それに見合うだけバランスのとれた輸入の力がまだ弱い。そういうことは否定できません。そういう問題をある時間をかげながら力強く解決していくということは必要であると思います。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 その通貨調整をやるということになってくると、これは日本のいまの為替レートというものが円切り上げという形において変わってくることは当然である。ところが、円切り上げというものはできるだけ避けなければならないという考え方の上にお立ちになっておられる。しかし、基礎的不均衡というものが生じておるということであるならば、これはどんなに国内的なテクニックをやりましてもどうすることもできないものがある。一時的にはできましてもこれはまたすぐくずれてしまうということになる。そういうことを繰り返しておりますと、救いがたい経済的な混乱というものが私は起こってくるような感じがしてなりません。ですから、円切り上げというものはいけないのだというようなことだけではなくて、やはり純粋にこれらの問題に取り組んでこれを検討して、そうして日本経済というものを安定的な方向にこれを確立をしていくということでなければいけない、私はそう思うわけなんです。きついことばかり幾らやっておりましても、これは実はからだをこわしてしまうような結果になるのと同じようなことだと私は思うわけです。それらの点に対する通産大臣のお考え方はいかがですか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 円の再切り上げを回避するということはわれわれの非常に強い政策でありますから、それに向かっていままで申し上げましたような政策をさらに強力に行なう。最近は景気回復がようやく力強くはい上がってくる形勢を見せてまいりまして、これはいずれ輸入増大につながってくるものであり、また輸出がだんだん頭打ちになっていく一つの要因になるであろうと見ております。この景気回復の情勢を見守りながら、その傾向を助長していくように私たちも努力してまいるつもりであります。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 政府は、いま円の再切り上げというものは回避する、そのためにいろいろな施策を講じていくということをおっしゃるが、ちょうどこの前の円の切り上げをやりました際と同じような道をたどっておるような気がしてならないのです。いま大臣お答えになりましたようなことを先般の円の切り上げの際も同じようなことを言っておる。そして、ずっと時間がたってまいりますと、実際の国内政策によってどうすることもできないというような形が出てきた。そこで、今度は財界方面からも円の切り上げということをやらなければならぬということを強力に発言をするということになってきた。そして円切り上げをやる。いまのような施策を講じていくというようなことでありましては、どんなに政府が否定をいたしましても、円の再切り上げというものは私は避けられないのではないかというような感じがいたします。  そこで、一つの希望的観測ということではなくて、どうしたならば円の再切り上げを回避することができるのかという点、それからシュルツ提案に対する対応策というものはどうするのだということをこの際お聞かせをいただきたい。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点につきましては、通産省としまして、田中総理が中国へ行かれる前に、われわれの考え説明をいたしました。大蔵省大蔵省で、いま諸般のことを検討しておられるようであります。  田中総理と私の話では、総理が中国へ行っている間に事務的にそれらの問題をよく検討させて、そうして適当なときになるたけ早期にそういう経済関係の閣僚が集まって、総理の主宰のもとにそういう政策を力強く推進する場をつくろう、そろいうことでございます。いずれ大蔵、通産、そのほか関係省のいまの政策に関する調整が詰まってさましたら、両方で話のつかぬところはつかぬとして政治のレベルに上げて総理に断を下してもらう、そういう段取りで進めておりますし、けさもそういう話をしたところでございます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、その点は置きまして、またあらためてお尋ねすることにいたします。  日中国交回復の問題に伴ってお尋ねするわけですが、日中国交は、ここで不正常な状態というものがなくなって正常化することになった。やはり日中国交回復を強力に推進してきた立場からいたしまして、非常に喜ばしく思っておりますし、政府の努力に対しても敬意を表したい、そう思います。  そこで、台湾との関係ですが、共同声明の内容、それから大平外相の記者会見による見解の表明ということによりましても、国交関係はなくなった。ですが、今後台湾地域における経済活動をどう進めていくのかという点、従来の台湾政府の位置づけというようなものはどうなるのか、その点はいかがでしょうか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民間レベルにおける経済交流、経済活動は自然のままそのまま行なわれていく、そういうように解釈しております。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 外務省の経済局西田参事官おいでですので、アジア局まだお見えになっておりませんが……。
  60. 藏内修治

    ○藏内委員長 来ております。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 それでは中江参事官から……。
  62. 中江要介

    ○中江説明員 お答えいたします。  いま御質問の点は、実態は中曽根通産大臣お答えになったようなことになろうかと思いますが、日中国交正常化と申しますのは、何度も言われておりますように、中華人民共和国政府と日本国政府との関係を正常化するということでありまして、台湾を積極的に切るというところに主眼があったわけではなかったわけでございます。したがって、日中国交正常化の結果として、大平外務大臣が申されましたように、まことにやむを得ないけれども、国民政府との外交関係は維持できなくなるという点ははっきりしておるわけでございますが、それ以外の点につきましては、続けられるものなら続けていくことが日本と台湾という地域の関係から見て妥当ではないかというのが日本政府の希望であります。  これがどういうふうになるかという点は、まさしくその台湾を引き続き支配しております国民政府の反応といいますか、考え方いかんによる。目下のところは、まだ共同声明が出たばかりでございまして、どういうふうになるかはっきりした見通しを立て得る段階にきていない、こういうふうに見ております。
  63. 中村重光

    中村(重)委員 気持ちはどうあろうとも、この日台条約というものは失効した、それから台湾との外交関係というものはこれで打ち切られた、こういうことになっておるわけですね。したがって、それ以外のものということになってくると経済関係ということになるのだろうと私は思う。経済関係ということになってくると、円借款はどうするのだという問題が直ちに起こってまいりますよ。円借款は当然打ち切らなければならないと思います。打ち切らないということになってくると、外交関係というものがなくなったわけだから、円借款というものは国に対する借款という形になってまいります。ですから、その問題ははっきりしておかなければ混乱が起こってくるということは避けられないと私は思うわけです。それをどうするのかということです。
  64. 中江要介

    ○中江説明員 外交関係のほかには、おっしゃるように非常に重要なものは経済関係だと思います。ですけれども、そのほかにはいわゆる民間の人事交流もございますし、文化関係もございます。いろいろの問題があろうかと思います。いま御指摘の政府借款のような、政府が表に出て何か交渉なり話し合いをしなければ動かないようなものは、中村先生のおっしゃるように外交関係が維持できなくなった結果として継続はできない、これははっきりしております。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、従来の借款はどうなるのですか。
  66. 中江要介

    ○中江説明員 これは先ほど申し上げましたように、実施の段階ですでに民間ベースといいますか、民間の銀行と向こうの業者なり関係機関との間の話し合いで進んでいるものがどうなるのかという具体的な問題につきましては、それを政府としてどう見ていくかということは、先ほど申し上げましたように、国民政府側の反応なり希望なり、そういうものに応じて適宜ケース・バイ・ケースで対処していきたい、こういうふうに思っております。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 私は政府間借款をお尋ねしたわけだから、いままでの政府間借款はどうなるのかということです。
  68. 中江要介

    ○中江説明員 いままでの政府間借款の中で既契約分といいますか、実際にローンアグリーメントのできているものとできていないものといろいろの場合があると思います。具体的にどうということは、あるいは関係官庁のほうからお答えになることが適当かと思いますけれども、一般的に申し上げまして、継続し得るものは継続したい。しかし、その場合に、政府が表に出て何らかの政府としての措置を要するようなものは日本政府としてはできなくなる。非常に抽象的なのですけれども、そういうふうに外務省では考えておるわけでございます。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 それはもう先ほどの答弁でわかったわけだ。もうすでにその借款をやっているわけです。だから私どもは、日中関係というものが正常化するというような方向であったし、政府の考え方というものが一応出ておったから、借款というものは打ち切るべきではないかという主張をいままでもしてきた。それに対して、従来認めておったものは借款を与えるのだといって、昨年でしたか、新たに借款を認めたこともある。ですから政府が表に出てすでに借款を供与しているということですね。それの扱いをどうするのかということを言っているわけなのです。
  70. 中江要介

    ○中江説明員 すでに与えたもので継続中のものは、無理にこちらから切らなければならないというふうには考える必要はないのではないかと思いますが、なお、これは主管官庁の中曽根大臣もお見えになっておりますので、あるいは中曽根大臣からお答えいただいたほうが適当かと思います。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 中曽根大臣、先ほどシュルツ提案に対して大蔵省にということをあなたはおっしゃったので、この点だけでも外務省にお尋ねしようと思ったのだが、その点、あなたが主管大臣であるわけですし、通産大臣からお答えいただきましょうか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 将来のものは政府借款はもうあり得ない。過去のものをどう処理するかということは、これは事務処理の問題でございまして、局長から答弁させます。
  73. 小松勇五郎

    ○小松説明員 従来の円借款の取り扱いにつきましては、いろいろ法制的な問題もございまして、目下法制局と取り扱いの根本になります法制面の解釈、取り扱いなどにつきまして打ち合わせをしておる最中でございまして、いまだに結論が出ておりません。気持ちとしましては、従来のすでにできました契約はそのまま続けられるような方法を講じたいというふうに考えております。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたの答弁でわかりかねるのだけれども、でき得るものは継続したいと思っているというのはどういうことなのですか。
  75. 小松勇五郎

    ○小松説明員 先ほど外務省のほうから答弁がございましたように、二つございまして、従来の円借款によりましてすでに契約はできて、先方もこちらもその契約を実行すべく準備をしておるというものがございます。これにつきまして法制上特に困難がなければ実行できるように措置をいたしたい、こういう意味でございます。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 まだ実行していないのですよ。政府が表に出て借款を与えるということはあり得ない、こういうことをはっきり答えられたのだ。それは大臣もお認めになった。ですから、これでは借款を与えていくということに変わりはないのだ。まだ実行していないわけだから、当然これは打ち切るべきではないのですか。私は当然それは打ち切るべきものであるという考え方の上に立って、すでに与えている借款を回収する、そういう手続的な関係をどうするのか、回収する上について、そういった問題を中心にいまお尋ねをしているわけです。
  77. 小松勇五郎

    ○小松説明員 先生指摘のように、法制上まだ実行してないのではないかという解釈にあるいはなるかと思いますが、すでに契約ができて、これを実行する寸前にあるというものにつきまして、法制上絶対無理であるかどうかということも含めまして、法制上の問題を法制局と詰めておる最中でございまして、ただいまも念のためにもう一度確かめましたが、目下検討中であって結論が出ない、こういう段階でございます。
  78. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、先ほどあなたがお答えになりました、でき得るならば継続したいと思うという答弁は訂正なさいますか。
  79. 小松勇五郎

    ○小松説明員 もしできない、法制上無理であるという結論が出ましたら、これは実行できないことは当然でございます。先ほど申し上げましたのは、あるいはことばが足りなかったかと思いますが、取引の一歩前といいますか、実際物をつくって出しかけておるとかいう場合に、取引に混乱を起こさせない方法があればそれを講じてまいりたい、こういう趣旨でございます。ただし、できないということになる結論が出ます可能性もございますので、その辺は法制的な点をよく詰めまして結論を出したいというふうに考えておる次第でございます。
  80. 中村重光

    中村(重)委員 すでに実行したものの回収に対する諸手続と方法と申しますか、そういうことすら非常にむずかしい問題である。これはこれからも十分検討していかなければならないということで、それほど困難だ。ならば、実行してないものをできるだけ与えていこうという考え方は、気持ちとしてはわかるけれども、しかし少なくとも国民の金なんです。税金なんですよ。それを政府の台湾に対する愛情か何かわかりませんけれども、そういうことでできるだけやろう、やろうというような態度は——少なくとも今回田中総理が訪中をされて、あらゆる角度から話し合いをし、そして小異を残して大同につく、そういうことで合意をしてきたわけでしょう。その前、小坂訪中団が参りましたとき、椎名発言ということで、深夜ということなんですが周総理から呼ばれて釈明をしなければならぬというような事態すら起こってきた。それらのこと等々を考えてみると、いまだ実行してないものを無理にひねくり回して実行するということになってくると、国際的な背信行為という形になりかねないと私は思う。問題が起こりかねないという保証はないんじゃありませんか。ですから、そういうことはあまり情におぼれたような形で事をやるべきではない。やはりきちっとやらなければならないことをやる、そういう態度であってしかるべきであると私は思いますが、通産大臣、いかがでしょうか。
  81. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その昔は外交関係が正式に設定されておって、相手国政府として認めてやった協定なりそういう効果を持っておることでございますから、それがこういう事態になって外交関係がなくなったという場合に、その既存の協定なり約定がどういう効果を国際法上あるいは国際私法上持つか、そういういろいろな面についてやはり専門家の意見を聞かないと、私のようなしろうとが発言することはちょっと危険だろうと思いまして、そういう専門家の検討をまって答弁させていただきたいと思います。
  82. 中村重光

    中村(重)委員 まあいまのあなたの答弁ならばわかるような気もいたします。でき得るならばそうしたい、無理にしていこうというような姿勢はよくないではないか、こう私は言っておるわけです。  次にお尋ねいたしますが、輸銀使用による延べ払い輸出というものは、今後どういうことになりましょうか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは原則として行なわれないようになるかもしれない、かどうか検討中です。しかし、ケース・バイ・ケースで、そのケースをよく検討してみて、考慮さるべきものがあるかもしれない。これはそのときの政治情勢やらあるいは案件等を見ながら考慮すべきものであると思います。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 原則としてできなくなるかもしれない、だがしかし、ケース・バイ・ケースによって、その案件によって、これは認められるものは認めていこうというお答えですが、冒頭お答えになりました原則としてできなくなるかもしれないという意味は、どういうことなんですか。そして、あとのケース・バイ・ケースによってというのはどういうように理解したらよろしいのでしょうか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中華人民共和国政府と正式に国交が回復して、日中両国間の国交は正常化したわけでございます。そういう厳然たる事実に対して、われわれはやはり信をおかなければならぬ、そういう面が一面にございますし、また一面において、国交のない場合でも輸銀使用を認めた場合はいままであるわけでございます。これはかつて国交がなかった時代に、中国に対して輸銀使用を認めた例もございます。そういうようないろいろなケースもございますから、原則としてということばをまず申し上げて、長期、大きなものは簡単にはきめられないであろう、しかし小さなケースのもので、いろいろ情勢判断からして可能であると思うことがないとも限らない。それはすでに国交のない国にやった例もあるという前例もあります。そういう意味においていろいろ情勢判断をして考慮すべきものであると考える、こういう意味であります。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 前段の答弁からするならば、私は後段の問題は出てこないように思うのです。そうではなくて、政府間という形ではない、民間ベ−スという形において、ただ輸出入銀行というものが、輸銀の意思によって経済関係ということで処理できるのであるという解釈の上に立ってこれを処理していこうとするのであれば、これは国際的にも法的にも支障がないということであれば私はよろしい、大体私どもは、中国に対する輸銀使用をケース・バイ・ケースで政府がやろうと言ったときに、こういう議論の展開をしてきた。輸銀というのはコマーシャルベースではないか、それを政府がだめなんだということで、政策的立場から、あるいは外交的、いわゆる吉田書簡によってこれは打ち切られたわけですから、そういうことで政経分離といいながら政経不可分な形でやることはおかしいじゃないかという議論を展開してきたことがある。それを裏返してくると、その意味では台湾との関係といったものが、これは純然たるコマーシャルベースだ、国交のあるなしを問わないという、こういう形になるのであるならば、私は後段の問題は生きてくると思うのですけれども、前段の答弁ということがあります以上は、これはそういうことで原則とおっしゃったのだとするならば、後段の問題と結びつかないような気がしてなりません。その点はどう理解したらよろしいでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 論理的におっしゃると、そういうふうにも感じますけれども、やはり政治は生きものでございまして、原則としてということばを使いましたのは、日中両国の国交が正常化して、そしてお互いが厳然として政府として交際をしていくという、そういう情勢を加味いたしましてそういうことばを使ったわけでございます。しかしこれは、論理的には先生のおっしゃることは筋が通っておるようにも思いますが、やはり外交関係や国際場裏のことは、そのときの情勢判断をして生きた事態に対処していかなければならぬことがあると思うのです。そういう意味で、政府は非常に慎重にその問題に対処するという意味で申し上げたのであります。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 いまのとおりに理解をいたします。大体いままで政府がとってきた中国に対する輸銀使用の問題を考えると、ことばとして苛酷なようなことばであるかもしれませんけれども、やはりそこは当初の原則という上に立って、筋を通して、問題の起こらないようにき然たる態度をもって臨む必要があるということを私は申し上げておきたいと思います。  これらの点に対して中国との間に、田中・周総理の間にはもちろんこういった具体的な問題の話し合いはなかったと思うのですけれども、外務大臣同士の間にはこれらの点に対しての話し合いがなされたのではないでしょうか。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はけさ総理に、その間の情勢について何かありましたかと聞きましたら、別になかったと総理は言っておりました。おそらく外務大臣同士の間にもなかったのではないかと私想像いたします。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると台湾との通商関係をいままでずっと強力に進めてきた、そうした中小企業というものが非常に多いわけなのです。ところが、いま中小企業が非常にためらっている。いま貿易額が非常に減少するということは避けられないであろう。ドル・ショックの際はそうした窮状に立った中小企業に対して強力な施策を講じられたわけですが、この台湾とのいわゆるショックと申しましょうか、この場合は、政府としてはどのような態度をもって中小企業に対する救済策をおとりになりましょうか。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民間同士の自然な交流というものはそのまま自然に行なわれるべきであり、続けられると思います。そういう観点に立って政府としては、日本中小企業の立場の擁護、あるいは中小企業が海外経済協力についても強力に出られるようにするということは望ましいことである、そう思います。そういう意味において民間ベースのそういう仕事が行なわれるということは、われわれとしてはこれを是認し、また日本中小企業の保護のために働かなければならぬと思います。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 私はそれを打ち切れと言っているのではないんです。少なくとも中小企業は、この台湾との貿易その他において大きな影響を受けることは間違いないのです。だからいま中小企業は、貿易を進めるべきか進めるべきでないか、また貿易額が減ることは間違いないんだが、これに対してどうするかというので、たいへん困っていることは事実なんです。ショックを受けることは間違いないんですよ。そういったショックを受けた中小企業に対しては、ドル・ショックの際は減税であるとか、あるいは融資の面において必要な保護策が講じられたわけだが、だから台湾とのそういったことがショックというならば、いわゆるそういったショックを受けて大きな痛手を受ける中小企業に対してはどのような措置をお考えになりますか、こうお尋ねしている。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは、一体どういうショックを受けたのか、どういう実害が及んできたのか、そういうこともよく調査いたしまして検討すべき問題であると思います。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 それはそれでよろしいと思います、将来起こってくる問題でしょうから。次に、中小企業関係で、わずかな時間ですけれども、お尋ねいたします。  一般会計予算が十四兆七千億というように伝えられているわけですが、これはきちっとしたものではない。わかるんです。ところが、中小企業庁が大蔵省に対する概算要求をしておる中小企業対策費は七百二十六億、総予算の中に占める割合は、十四兆七千億としました場合に〇・五%です。ところが四十七年度は〇・六%です。まだ本ぎまりをしていないのだからと言われればそれまでですけれども、どうもいま概算要求をしている額より上回るということはなかなか困難ではなかろうか。これとても四五%の、中小企業対策費は四十七度に比較して伸びになっているわけですから、小規模対策費は七十七億八千万、これは伸び率はわずかに三〇%、四十七年度よりも非常に低いわけです。政府は、生産性の低い中小企業あるいは農漁業、こういうものの生産性を高めていくということが物価対策にもなる、あるいはまたドル対策にもつながってくるといったようなことで強力にこれを推進するということを従来主張してこられたわけですが、現実に中小企業庁が大蔵省予算要求をしておる額がこの程度でありましては、生産性の低い中小企業の振興というものは期待できない、私はそのように思うのです。  先ほども経済企画庁長官に申し上げましたような考え方からいたしまして、非常に大きな国際的な変動の中において中小企業をめぐる条件というもの、環境というものは非常にきびしいものがある。それらの点と、ただいま申し上げましたように、この日本経済を安定的な方向に運営をしていくというためには中小企業というものを柱に据えていかなければならないと私は思う。そのためにはやはり従来の中小企業対策というものを抜本的に改めて、強力に推進していくということでなければいけないと思うのですが、予算面からだけ、あるいはその具体的な予算要求の内容からいたしまして迫力というものが感じられないように思うわけです。ですから、それらの点に対する通産大臣のお考え方を伺いたい。
  95. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの要求は概算要求段階でございますが、中小企業関係については、いままでの例から見ますと、かなり思い切った増額を要求しておるのです。それで三機関等については、昨年に比して約八五%増の金融のワクを要求しております。これらをわれわれは死守して、削られる率が少なく、そして実質的に昨年よりはるかに強力な政策を展開していくつもりでございます。  なお、政策の質を見ましても、今度の中小零細企業に対する金融措置とかあるいは中小商店振興法、そういうような関係の法律というものはいままでなかったような発想でありまして、そういう点について特に力を入れたいと思っているわけでございます。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業の、いわゆる零細企業対策として小規模企業振興法、これは仮称でございましょうが、私どもは、中小企業の定義というものを改める、現在五千万円、それから従業員三百人、これを拡大して、資本金一億まで持っていこうという考え方、そうした法律案を次期通常国会には御提案なさる準備を進めているように伺っているわけですが、そうなってまいりますと、大きいところに政府三機関の融資というものが片寄ってしまうということであってはならない。施策はそうなる可能性なきにしもあらず。そうであってはいけないので、圧倒的に多い小規模企業に対するところの施策を強力に推進しなければならないということで附帯決議をつけてまいりました。その点を尊重して、いま通産大臣お答えのように、小規模企業対策のための立法措置をお考えになっているということでありますから、それは非常にけっこうであると思います。ですけれども、やはり正直言って、銭がなければ動きません。いま要求しておられるところの小規模企業対策も七十七億八千万円、四十七年度は五十九億でございましたから、その程度の伸びでどれだけ強力な施策が小規模企業対策として講じられるのであろうか。そうなってまいりますと、せっかくの大臣のいまのお答えでございますけれども、多くを期待できないというように思います。もちろん融資の点もあるでしょう。しかし融資にいたしましても、今日銀行から事業に融資するところの実効ベースは七・一%とかあるいは七彩とかといわれている。ところが政府が、政府三機関から中小企業に融資をいたします国家資金が七・七%であるという事実であります。  本来政府関係金融機関というものは、民間金融機関より金利というものは安いはずなんです。これは前は確かに安かった。しかしながら、公定歩合が引き下げられて、そして銀行から企業に対するところの融資の実効利率というものは引き下げられて、ただいま申し上げましたように七%か、若干それを上回る程度になっておる。しかも、大企業に対しましては五%程度で融資をしておるという事実がある。民間金融機関からの実効ベースが七・七%あるいは七・一%か二%ということになってまいりましても、中小企業というものはそれより高い。民間金融機関は、大企業には金利を安く、中小企業には高い。そうなってまいりますと、政府関係金融機関でこれを補っていかなければならないのにもかかわらず、政府関係金融機関は、いま国民金融公庫において七・七%、民間金融機関のベースをはるかに上回っておる。そういうことでありましては、金融対策といたしましても、中小企業に対する抜本的な強力な施策を講じたということにはならない。税金の問題にいたしましても、個人事業税は依然として撤廃をしない、あるいはまた国税の中小企業の個人事業主の報酬制というようなものは、これは調査会の答申がもう出ているのではないかと思いますけれども、これとても多くを期待できないのではないかということになってまいりますと、大企業中小企業というものの格差は非常に大きく、依然としてこの格差は縮まらない。二重構造というものは解消できない。そういう事態であることは事実なんです。してみると、生産性の低いところの中小企業というものの生産性を高めていく、そして日本経済の中に占める中小企業の役割りを大きく期待するということにはならないではないか。ですから、大臣のいまのお答えではなくて、もっと中小企業に対する、なかんずく小規模零細企業に対するところの施策をいま少しく強力に進めていくということでなければいけないと私は思いますので、この点に対するお答えを伺いたい。
  97. 莊清

    ○莊説明員 補足して御説明をさせていただきます。  零細企業金融につきましては先ほど大臣から申し上げたとおりでございまするが、七十数億の一般会計予算の外ワクといたしまして、新規の要求として、一般会計で零細金融の原資の一部として百二十億円の新規要求を追加して出しております。零細企業向けの一般会計の予算としては、その分だけは少なくとも純増という形でふやしておるつもりでございます。なお、従来からやっておりました零細企業向けの経営改善指導その他の各般の施策がございますが、それについても要求のワク内で極力増額を別途はかっておる、こういう所存でございます。  それで、定義改定についてもただいま問題の御指摘がございました。私どもも、中小企業の定義を改定する際には、そういう御指摘のような問題が確かにあるということを懸念いたしておりまして、今回の財政投融資の要求におきましても、三機関につきましては定義改定に伴う融資対象の増加というところから五百億程度の別途の財投の上積みを実はやっておるわけでございます。  それから零細層に対しては、いま申し上げた零細金融制度の創設ということで上のほうも下のほうもあわせて強化をするということで努力を今後いたすつもりでございます。  金利の問題でございますが、これはもう先般来たびたび懸案になってまいった問題でございまするが、八月一日から三機関とも利下げを行なったわけでございます。したがいまして、国民金融公庫につきましては現在七分七厘という金利になっておりますが、別途民間のほうは相当下がっておりまするが、最近の金融基調の変化等非常に微妙な動きもございまして、金が余ったときには出るけれども、少し締まってくるとすぐにまた締まるというふうなこともございまして、御指摘のとおり、政府関係機関というのは非常にしっかりして、そういう中小企業金融の支柱にならなければならぬというふうに心得ます。したがって、金利も低いほどいいわけでございますけれども、現在のところ、経費の問題も実はございますから、限度ぎりぎりまで実は下げたということで七分七厘でございます。別途国民公庫の場合、原則としていわゆる信用保険というものもつけることなく融資をいたすということにいたしておりますから、市中銀行の場合に比べまして一%何がしというものは、少なくともその点は有利であるというふうな問題もございますが、来年度におきましても、出資等、三機関につきましては、金利の引き下げの問題を含めまして実は要求を別途いたしておるわけでございます。これは大蔵省のほうの経常予算になっておりますが、そういう点についても別途努力をしておるという状況でございます。
  98. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、中小企業の具体的な内容について私はあとで——大臣への質問が三時までで、同僚議員を含めてきょうは終わらなければなりません。大蔵省も呼びまして、中小企業の具体的な、しかも重要な点について長官にお尋ねをすることにいたします。  いまあなたがお答えになりましたような数字を合わせましても〇・六%以下、あるいはそれをちょっと出る程度です。お話になりません。ざらに金利の問題にいたしましても、これは民間金融機関と比較をいたしまして高いです。そういったことで、どうして中小企業というものは救われるのか。一般会計が低い、予算が低い、税金は高い、金利は高い、おまけに歩積み両建てをとられる。何を中小企業にさせようとしておるのか。私はその点を強く反省を求めたいと思います。従来のからを一歩も出ないではないか。私は、この点は大臣に強く申し上げておきたいと思います。  それから、田中首相は、就任早々の財界との懇談会で、流通産業の一〇〇%資本自由化には前向きの態度で臨む、そういう意向表明をされたわけです。御承知のとおり、いまは十一チェーン、資本の自由化率は五〇%、これを一〇〇%にするということになってまいりますと、中小企業に及ぼす影響というものはきわめて大きいわけです。これに対してはどのような態度で臨もうとしておられるのか、これは通産大臣からお答えをいただきたい。
  99. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 小売り店の自由化の問題については、先方からかなり強い要望が依然として前からございまして、これは日本の小売り店が先方に対して自由に行けるようになっておる情勢から見て、アメリカから見ればアンフェアである、そうとられるのはまたやむを得ないところでもあります。ただ、日本中小企業や商工業の実態にかんがみまして、急にそれを行なうということはかなりの打撃がくるものですから、今回は、箱根会談の結果、ある程度の譲歩をいたしたわけでございます。趨勢としてはやはり自由化の方向に行かなくちゃならぬと思いますけれども日本中小企業や商工業の抵抗力をできるだけ早くつけて、それに応じて段階的にこれは処していきたいと考えております。
  100. 中村重光

    中村(重)委員 いま大臣が御指摘のとおり、競争力が非常に弱いですね。外国には、ヨーロッパ諸国にはないでしょう、日本のように大企業中小企業のこんなに格差のあるところは。労働者の賃金だって、大企業中小企業と比較して〇・五%ぐらいしか差がないでしょう。そして中小企業というのは、ところによっては、昼間二時間や三時間くらい店を閉めるとか、一年じゅうには一カ月や二カ月ぐらいは店を休んで観光旅行し得るぐらいの余裕というものが外国の中小企業にはありますよ。ですから、大企業がある程度自由化に進出をしてまいりましても競争力というものは持っている。しかし日本の場合は、中小企業というものを非常に無慈悲に押えてきて、そして下請と親企業との関係は、景気変動のときの用心のために下請企業というものを自由自在に操作してきている。どこの国にもないようなそういう事態に日本の場合は大企業中小企業、親企業と下請企業というものの関係がある。ですからその競争力をつけないまま流通企業の一〇〇%自由化をやるということになってまいりますと、中小企業というものは一たまりもない。ですからこの点は十分配慮される必要がある。  同時に今度は、この点は通産大臣からお答えいただくのですが、百貨店法の改正をしようとお考えになっていらっしゃる。これは明日流通小委員会を開きまして、参考人にも来ていただきましてお尋ねをしようと思っていますけれども、通産大臣は小委員会には御出席になりませんから、通産大臣の見解も伺っておきたいと思うのですが、いま許可制でしょう。今度はこれを届け出制にしようとしておられる。そして疑似百貨店もスーパーも、これはいままでは野放しだった、それを届け出制にするのだから一歩前進ではないかといえばそれまでのことなんですけれども、一面においてはこれを保護することにもつながっていく。ですから、百貨店法の改正というものが中小企業に与える影響というものはきわめて大きいものがある。だからして、この百貨店法の改正につきましても、これは答申は答申としてありましたでしょうけれども、やはり担当大臣としての通産大臣は、十分なこれらの点に対する配慮が必要である。これから法律案の作成にかかっていくのでございましょうから、その点に対しての考え方をひとつお聞かせいただきたいということであります。  それからいま流通事業の自由化の問題に対しまして、五〇%から一〇〇%ということは段階的にお考えになるというような意味のお答えがありましたが、いま直ちに一〇〇%の自由化ということをお考えになっているのではなくて、五〇%から幾らか自由化の率を広げていこうとするお考え方なのかどうか。その点もあわせてひとつお答えをいただきたい。
  101. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 後段から申し上げますと、抵抗力の増勢に応じて段階的にふやしていく、そういう考え方に立っております。  それから流通問題につきましては、消費者の保護、流通の近代化、合理化それから中小商工業の保護、そういう三つの命題を解決するように、今回百貨店法改正に着手しようとしておるところでございます。しかし、やはり関連するところ非常に大でございますから、その三つのグループの間の話し合いをよくやってもらいまして、摩擦が起こらないように、経営の時間とか、そのほか商売の運営方針等について協調してもらうようにいまあっせんにこれつとめておるところでございます。  勧告といろ形でいろいろ行政指導もできるようにしておりますから、いままでよりもさらに有機的に三者の間の協調が保てるようにできるのではないかと思いますし、そのようにいたしたいと思っております。
  102. 中村重光

    中村(重)委員 それでは私に割り当てられた十二時半までの時間が参りましたから、あと中小企業庁に対する質問を留保いたしまして、これで一応終わります。
  103. 藏内修治

    ○藏内委員長 樋上新一君。
  104. 樋上新一

    ○樋上委員 三十分の割り当ての時間の中で簡単にお伺いいたします。  まず大臣にお伺いするのですが、日本列島改造論の具体化の第一弾として通産省が進めている工業再配置の計画は、政府の地方自治体の実情を無視した計画のあり方で、私はかなり難航しているように思います。また、当初十月初めに発表する予定であった移転促進地域、誘導地域の指定、あるいは工業再配置・産炭地域振興公団の発足は、振興公団の発足のみという変則的なスタートになったわけでありますが、一体なぜこの線引きがおくれているのか。その理由はどういう理由か。それからまた、いつごろ発表ができるのか。こういう点、お答えを願いたいと思います。  もう一つ、時間の関係で続けて申し上げます。誘導地域につきましては原案よりかなり広げる方針に切りかえるようでありますが、最終的に言って、移転促進地域、誘導地域はどのくらいを考えておられるのかという点。  それから特に移転地域は、当初行政区域による指定を考えていたようでありますが、これを京浜地帯については、首都圏整備法に基づく市街化区域、また、京阪神地帯については、近畿圏整備法に基づく既成都市区域に基づくいわゆる既成都市区域と一致させるように原案より狭くすることに踏み切ったようでありますが、この点はどうか。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず時期的には今月上旬に最終的にきめたいと思っております。  それから第二に、自治省あるいは自治団体等ともよく連絡をとりまして調整を念入りにやったほうがいいと思いまして、私は念入りにやらしておくらしているわけでございます。あんまり急進的にやるとこういうものは成功しないと私は思いまして、よく話を聞いてやるようにと、そういうことをやっております。  それから線引きの範囲を広げるかということでありますが、誘導地域は広げたいと思っております。それからいわゆる再配置地域、稠密な地域につきましては、これもまた非常にデリケートな問題がございますから、自治体の意見も十分聞いて日本列島改造に合うような、また公害をおそれている住民の希望等もよく考えまして慎重に対処していきたいと思っているところでございます。
  106. 樋上新一

    ○樋上委員 線引きの問題を慎重に考慮してもらうということはまことにけっこうでございます。  私は京都の問題をお伺いするのですが、もう再三京都市長並びに陳情団から、京都の伝統産業、手工業というような点は大臣は十分お聞きくださったと思いますし、それにつきまして京都の中小企業団体の会合に私も数回出まして実情を聞いて、何とか京都は指定地域からはずしてもらわなければならない、こういうことを陳情にも申し上げて大臣もよくお聞きだと思いますが、さらにもう一ぺん念のためお伺いするのですが、京都が九月の内示によって指定された理由としては、人口、工場の集中などを考慮し、既成都市であるということで指定されたと考えてよいのか。また、この工業再配置促進法の第二条には「この法律において「移転促進地域」とは、大都市及びその周辺の地域のうち、工業の集積の程度が著しく高く、当該地域内にある工場の移転を図ることが必要な地域で政令で定めるものをいう。」こうなっておるのですが、はたして京都がそれに該当しているのかどうか、この点についてお伺いしたいのです。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当初の基準で当てはめてみますと京都は該当しておりました。しかし、その後いろいろな御陳情もあり、また、われわれのほうでもそういう基準を維持していいかどうかということを再検討いたしまして、目下いろいろ調整しているところでもあり、また自民党の意見も、この基準全般について相談してみる必要もありますから、党の意見も徴しておるところでございます。
  108. 樋上新一

    ○樋上委員 それじゃ、まだ決定した基準は出ておらないということですね。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ出ておりません。
  110. 樋上新一

    ○樋上委員 くどいようでございますけれども、そんなことはわかっているのだとお思いになるかと思いますけれども、決定の前にさらに私はもう一つお願いしておきたいのですが、近畿圏整備法の目的は、端的に言って、新しい町づくりという名目で制定されたものでありますが、たとえば、大阪などにおいては、大企業が密集し、公害企業があるところにおいては、工場などを分散させることによって新しい町づくりをしていく。しかし、京都を考えてみますと、首都圏及び近畿圏の他の大都市と著しく異なっておるわけでございます。京都におきましては、加工度の高い伝統的な中小工業が圧倒的に多い、いわゆる都市型中小工業であり、相互に地縁性、関連性が深く、都市を離れては存立し得ないということは御承知かと思いますし、単に既成都市区内だからといって安易に指定することは、そういうようなものは役人の机上プランではないか。京都の実情をほんとうに見てもらって、それがそうなったのかいなかということを何回も私は申し上げておるのであります。  また、京都市は、地方自治の本旨にのっとりまして近畿圏整備法、都市計画法、工場立地の調査等に関する法律等を基本とした町づくりの構想を策定しておりまして、計画的な土地利用並びに秩序ある工業立地を目ざしており、工場の市域内適地への移転計画を進めております。これらの自治体の努力を無視して中央からの圧力というか、いわゆる地方自治の主体性を押しつぶすようなことは断じて私は許せないと思います。それが全京都地元民の考えでございます。京都市を白紙に戻してもらいたいということはほんとうに切なる願いであります。  また、いわゆる工場分散を容易ならしめるために日本列島改造計画について、来年度の税制について考慮しておるようでありますが、この結果、通産、建設、自治などの各省がばらばらに新税構想を出しているようでありますが、これを一本化すべきではないか。また、いわゆる工場追い出し税、こういったものを公害工場、公害を出さない工場に一律にかけるのは考えねばならない。どうしても都会に立地しなければならない工場があるのに、これらに一律に課税するのは問題ではないか。こういう点について、通産大臣並びに大蔵省の方針をお伺いしたいと思います。
  111. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 課税の問題は、国民の権利義務に関係するところ非常に大でございますから、これは各省よく協調いたしましてよく統一のとれた税制というものを考えなければいかぬと思います。また、それも無理のないような、長続きできるような考え方でしなければならぬと思いまして、各省の調整はこれを実行いたします。その他につきましては、政府委員より答弁させます。
  112. 山内宏

    ○山内説明員 御指摘のとおり、現在各省庁から日本列島改造構想並びにそれの財源としての新しい税金を取ったらどうかといったような構想がしきりに議論をされておりますことは、御指摘のとおりでございます。  ただ、現在の段階では、なおそれぞれ各省が考えておられます構想といいますのは、あくまでもまだ構想の段階でございまして、われわれといたしましても、各省との間で非常に詰めた議論をいたしておる段階ではございません。いずれ各省の考え方がある程度具体化をしてまいりますと同時に、私どものほうといたしましても、税制をあずかるものといたしまして、どういったものがその政策目的に適合した税制であるかということについては、今後検討してまいることになろうと思いますけれども、いずれにしても、いまの段階では少なくとも列島改造そのものを具体的にどういうふうにやっていくのか、そのためにまたどの程度の財源がどういうテンポでかかってくるのかといったような歳出面の諸項目がなお十分でない現在でございますので、それに対応する財源措置としてどういうふうな税目を考えるかという具体的な点については、なおわれわれとしても検討中にとどまる段階であるというふうに申し上げたいと存じます。
  113. 樋上新一

    ○樋上委員 中小零細企業の場合は特別に考慮するということは、大臣考えになっておりますね。これは変わりありませんね。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 変わりありません。中小零細企業をなるたけ中に入れないようにいま一生懸命努力さしているところです。
  115. 樋上新一

    ○樋上委員 ややもすると大企業の犠牲になって、そして京都のように関連性のある中小企業、いわゆる零細企業がいろんな面で間引いて、この工場は床面積が幾らだ、これは機械化しているんだからといってそこを移転さそうというようなことがありますと、一つの工場を移転することによって、関連して一つで仕上がらないという特殊な事情考えますと、この中小企業、零細企業にはそういう追い出し税はかけないという——考えということですけれども、その前に、そういう税制問題とか、また面積という問題よりも京都を全部その指定地域から除外してもらいたいということを再度申し上げるのですが、この点、大臣がまだ決定してないとおっしゃいますけれども大臣の方針として、あなたのお心持ちとしてはどうお考えになりますか。
  116. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下慎重に検討中でございまして、党の商工関係の諸君の意見も徴して最終的にきめたいと考えております。
  117. 樋上新一

    ○樋上委員 重ねてくどいようですけれども、けさ自民党の商工部会をやったのでしょう。そのときの情勢はどうでございましたか。はっきりそれを教えていただきたい。
  118. 三枝英夫

    ○三枝説明員 けさほど自民党の商工部会に呼ばれまして、第二次案に近いものとしていろいろお話を申し上げましたが、その際、やはり京都の問題を実態に即して考えろというお話は出ています。  それからさらに、ただいま御指摘中小企業の問題、これは税とのからみが非常に大きいということをよく認識して、中小企業について適切な配慮を明確にして、できるだけ早い時点において出しなさい、こういうような御指摘をいただいてございます。当方からはそれらの点十分考慮いたしまして、ただいま大臣御答弁のとおり、慎重に検討してこれに対処してまいりたいと考えております。
  119. 樋上新一

    ○樋上委員 これ以上御回答を得るところまで——慎重に考慮してくださるというのですから、他の都市はどうあろうとも、何回も申し上げますけれども、京都はそういう事情であるということで、大いに事情酌量によって全地域を指定からはずすということを大いに期待しております。また、これは京都二百万府民の願いであります。  最後に、関係都道府県知事は、工業再配置計画に関し通商産業大臣に対し意見を申し出ることができるが、京都の府知事も意見を具申しておりまして、はずしてもらいたいと言っております。私は、このときに、京都市長も意見を具申することができるということをやっておけばよかったと思うのですが、京都府知事が市と府を代表して言っているのですから、大臣、自民党、また国を信頼して、中小企業、零細企業が大企業の犠牲にならないように特に要望して、この問題は終わりたいと思います。  そこで、今度はココムの問題についてお伺いしたいのですが、最近、東西賢易の制限緩和が叫ばれまして、西欧諸国においてもこの動きは急速に活発化してまいりました。特に米国における対ソ貿易は年々増大傾向を示しておりますし、また、中国貿易においても、七一年の大統領声明の中における五項目からなる対中国関係緩和政策が発表されました。  これによりますと、御承知のとおり、一は、米中間の直接貿易のため、一定の非戦略物資を対象とし、そのリストを検討する。二は、中国からの旅行者、旅行団体に査証を発給する。三は、中国がドルを使用できるよう為替制限を緩和する。四は、中国と運航する船舶、航空機に対する米石油企業の燃料補給制限を解除する。五番目は、米国の船舶、航空機が中国外で中国の貨物を運び、また米国所有の外国籍船舶、航空機が中国に出入することを認める。こうなっておりますが、この一と三は、日中貿易にかなり影響を及ぼすものと私は思うのでございます。四と五の項目は、同国の対中国外国資産管理規制による制限の緩和につながるものとして見てよかろうと思いますが、わが国においても、歴史的田中総理訪中によりまして国交正常化が成立した現在、中国を敵視するような委員会に加入するメリット、理由はどこにあるのか、こういう点、御見解をお願いしたいと思います。
  120. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ココムにつきましては、あれが制定されたときと環境、国際情勢が非常に変わってまいりまして、わが国といたしましては、相次ぐ会議においてこれを緩和する方向に積極的な発言をしておるところでございます。先般開かれた国際会議におきましても、わが国としては、具体的な解除品目をあげて提案をしております。その品目について発言することは差し控えたいと思いますけれども、引き続いてそういう基本線に沿って努力していくつもりでございます。
  121. 樋上新一

    ○樋上委員 昨年の七月、ことしに入って二月、七月と第四ラウンドと何回となく会合を繰り返してきたようですが、この経過は一体どうなっておるのか。  また、九月十八日パリで開かれた最終委員会の様子はどうなのか、この点を述べていただきたいと思うのです。
  122. 増田実

    ○増田説明員 このたびのココムのレビューの会議でございますが、ただいま先生のおっしゃられましたように四回にわたって行なわれています。  第一回につきましては、昨年の十月十八日から十二月十五日まで行なわれまして、このときには各国がいろいろ提案をいたしておりますので、それに関しましての専門、技術的な討議ということで、具体的な個々の品目の議論までは入っておりませんでした。  それから続きまして、本年に入りまして第二回目を二月の十七日から四月の二十一日まで行ないました。このときには、相当実質的な内容についての討議が行なわれています。  若干中断がありまして、さらに第三回目を五月十七日から六月六日に行ないましたですが、これは第二回目の会議の問題点となったものを全部総洗いをいたした、こういうことでございます。  さらに、先月、九月の十人目から二十六日まで第四ラウンドを行ないまして、一応各品目についての検討がほぼ終わった、こういうことになっております。
  123. 樋上新一

    ○樋上委員 この品目につきましては、従来百六十七品目であったのですね。それが日本の要求は六十七品目ですね。今回は五十数品目になったのですが、当初わが国は六十七品目を提案したようですが、その中に電算機や通信装置が含まれているのかどうか、この点をお伺いします。
  124. 増田実

    ○増田説明員 ただいま先生からおっしゃられました数字につきましてちょっと先に御説明申し上げますと、現在ココム関係品目といたしましては百六十七品目先生おっしゃられたとおりでございます。  それから、これにつきまして日本側の提案いたしました数字の合計は六十七品目でございますが、ただこの六十七品目は、先ほど申し上げました総合計の百六十七品目から六十七品目を落とすということではございませんで、全部落としてくれというのと、それからもう一つは、その中の定義を変えたりあるいは一部削除、こういうことになっておりますので、あらかじめそれだけお断わり申し上げたいと思います。  それから、御質問の電算機、通信機械がその中に入っているかということでございます。この品目につきましては、いろいろココムの会議の性格上、詳しいことをここで申し上げるのはできないのでございますが、いまお尋ねの電算機関係、それから通信機関係は入っております。
  125. 樋上新一

    ○樋上委員 アメリカが中国にこの電子計算機を売っているということは御存じですね。
  126. 増田実

    ○増田説明員 具体的にはよく知りません。
  127. 樋上新一

    ○樋上委員 アメリカが中国に売った、これはココムリスト違反である、こう私は考えておるのです。承知しておりませんと言われますが、それは売られておるのです。電算機、通信装置が、もし中国から引き合いがあったときに、日本はどのように処置をされますか。
  128. 増田実

    ○増田説明員 電算機及び通信機械関係はココムリストの対象になっておりますが、それぞれいろいろの定義がございますし、また、機械の種類、内容によりましてそれぞれ取り扱いが違っておりますので、具体的な中国側からの注文がありましたとき、それに応じまして検討いたさなければならない、こういうことになっております。
  129. 樋上新一

    ○樋上委員 今度は通産大臣にお伺いするのですが、いずれにしても、ココムが成立したときと世界情勢は全く変化しております、先ほど大臣がおっしゃったように。わが国としては、これら時代の流れに逆行した委員会に加入することなく、私は、次期ココム委員会には解消の提案を、あるいは脱退を申し出て、わが国の態度を明確に世界に示す機会ではないか、こう思うのです。したがって大臣、NATOをフランス自体が脱退を宣言しているのですね。NATOとココムとは違うと言うたら違うのですけれども、フランスの態度を世界に明確にした。この時期において、私は、いま申し上げましたようなことをやられるお考えはあるかないか、お伺いしたいと思うのです。
  130. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本はOECDあるいはその他の会議にも入りまして、自由世界の諸国と協調して世界経済を維持発展させようとしておる場合でございますから、日本だけがそういう独自の行動をとるということは、これは慎重にしなければいかぬと思います。
  131. 樋上新一

    ○樋上委員 田中総理が訪中後行なわれた初の記者会見において、日中正常化後は国際収支の改善に全力を尽くすと述べられていますが、先日二十九日に終了したIMF総会における通貨問題においても、黒字国責任論で各国とも一致しており、かつ、わが国に対する円の再切り上げの要求は強くなることは十分予想することはできるわけですが、これら円切り上げ対策は、昨年の円対策七項目、本年に入っての新円対策七項目にもかかわらず、相変わらず黒字額は増大する一方でありますが、これは従来行なわれてきた二回における円対策が効果をあげていないのではないか、私はそういう証拠である、こう思いますが、これをどう把握していらっしゃいますか、大臣
  132. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 遺憾ながら十分成果をあげていない結果であると思いまして、われわれはさらに努力していかなければならぬと思います。
  133. 樋上新一

    ○樋上委員 これに対して大蔵省の見解はいかがでありますか。大蔵省は出ていませんか。
  134. 藏内修治

    ○藏内委員長 総務課長だけおりまして、国際金融局長がさっきおりましたけれども、いまは退席いたしております。
  135. 樋上新一

    ○樋上委員 じゃ、しょうがない。時間がありませんので先へ進みます。  そこで、通産大臣は、田中総理に対して、この国際収支の大幅黒字を解消して円再切り上げを防止するための第三回目とも思われる輸入促進輸出規制を中心とした総合対策を考えておられるようですが、どういうぐあいに考えていらっしゃいますか、それを述べていただきたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、総理が訪中される前に通産省の意見を総理に具申をしておきました。それで総理訪中の間に、大蔵省との間に事務的にそういう線についていろいろ詰めを行なうという約束をしておりまして、その間にいろいろ大蔵省と折衝して、いろいろ成果を生むように努力してきたところでございます。また、植木大臣もIMFへ行って国際環境の空気も十分吸って帰ってまいりましたし、近く植木大臣と私らと総理をまじえて、そういう問題について結着をつけて、やるべきものはどしどし実行する、そういう方向に進んでいきたいと思っているところです。
  137. 樋上新一

    ○樋上委員 その中で、これは新聞の報ずるところでございますけれども輸出調整で業界の輸出自主規制がまとまらない場合は輸出貿易管理令を発動して輸出規制に踏み切るといわれておりますが、このことについて、もう少し詳しく説明していただきたいのですが、どうですか。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事態が起こらないことを希望しておりますけれども、外国から著しく非難されて、貿易秩序を乱している、そういうような認定をされるものについては、万やむを得ない場合には発動もまたやむを得ない、そう考えております。
  139. 樋上新一

    ○樋上委員 大蔵省としても、輸出規制政策について考えておられるようです。これは大蔵省にお伺いしたいのですが、もうおいでになりませんでしょう。  そこで、輸出課徴金などを考えておられるようですが、これは実行にあたり、かなり困難があるのではないか。たとえば、米国向けに課徴金をかけるがヨーロッパはかけない、またA商品にはかけるがB商品にはかげない、あるいは特定地域、特定商品にかけるということになれば、税の公平という点からいって問題ではないか。また、立法期間中に猛烈に輸出を刺激するおそれがありますし、また、海外において円切り上げの前兆として受け取られるのではなかろうか。これらに関して、大蔵者はいかに考えておられるかということをお伺いしたいのですが、これも答弁できませんか、大蔵省は。
  140. 山内宏

    ○山内説明員 私は主税局でございますので税制の分野についてお答えを申し上げますが、いま御指摘のような問題に対しましてさしあたってわれわれとして検討すべき問題の第一は、いわゆる輸出振興税制と呼ばれております既存の租税制度を今後どういうふうに持っていくかという問題でございます。これにつきましては、私どもは、御指摘のような客観情勢にかんがみて早急にこれを改廃をいたす必要があるのではないかというふうに考えておりますけれども、この点につきましては、なお他の諸種の経済政策との関連もございますので、これはさらに各省庁との意見調整が必要であろうかと思われます。それからもう一つは、最近新聞紙上などに報ぜられておりますが、輸出税という問題がございます。輸出税を課するということは、現下の置かれました国際経済情勢から見まして、一つの緊急措置としての手段と考えられます。したがいまして、われわれも現在のところ、いろいろな角度から研究はいたしておりますが、なおここで具体的にその方向を御説明できる状態には至っておりません。
  141. 樋上新一

    ○樋上委員 九月三十日の「輸出課徴金で対立」という新聞記事に、大蔵省は黒字縮小を早める、通産省は自主規制で十分、こういうぐあいに対立した意見が出ておるのでございますが、これについて中曽根通産大臣はどう考えておられますか。
  142. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いずれ政府の内部においてそれは統一的に調整されなければならぬと思っております。通産省といたしましては、輸出税制、輸出課徴金という、そういう考えに対しては消極的であります。
  143. 樋上新一

    ○樋上委員 何にいたしましても、この大蔵省、通産省が意見の対立のままでわが国の円再切り上げに影響するようないろいろなものを含んでいる問題は早急に話し合って、業界も非常にこれに対して注目しておりますし、他国のこの黒字問題につきましての日本に対する圧力といいますか、そういう問題につきましても十分考慮して対処しなければならない、こう思います。それを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  144. 藏内修治

    ○藏内委員長 一時三十分から委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  145. 藏内修治

    ○藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  先般、各地の産業経済の実情を調査するため委員を派遣いたしましたが、派遣委員からそれぞれの報告書が提出されております。これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  147. 藏内修治

    ○藏内委員長 質疑を続行いたします。川端文夫君。
  148. 川端文夫

    ○川端委員 大臣がお見えになっておりますから大臣にお尋ねしたいのですが、目下、四十八年度の予算編成期を前にして、通産省は通産省なりの概算要求を出されて折衝されているやに承っておるわけですけれども、この四十八年度予算における通商行政における基本的な問題点は何かということと、特にもう一つは、日中国交回復後における日中関係に対する予算措置も何か準備されようとしているのか、その点をまずもってお聞かせ願いたいと思うのです。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大蔵省概算要求を出す前に、いろいろ省議を開きまして方針を決定いたしましたが、無公害社会の建設であるとか、あるいは中小企業政策の充実であるとか、あるいは日本列島改造に関する諸施策であるとか、あるいは国際協調政策の確立であるとか、あるいは技術開発等々、そういう諸点が今度の政策の重点になっておるわけでございます。  中国との問題につきましては、あの時点におきましては、こういう事態はまだ予想されておりませんでしたものですから、この事態を踏まえてもう一回再検討しなければならぬ点があると思っております。
  150. 川端文夫

    ○川端委員 一応は中国との関係に対する予算的な準備はこれからだ、こういうことと承ったわけですけれども、もう一つの問題は、やはり今年のこれからの通商行政の中における、先日終わりましたIMF総会等における通貨対策に関する問題等は、何か予算措置の上においても準備が必要ではないかと思うのだが、この点は後ほどまたこまかい御質問を申し上げますけれども基本方針の中にどういう考え方でこれに対処されようとする準備をされたか、この点もお答え願いたいと思うのです。
  151. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は、景気の振興による内需への転換、それから輸入増大、あるいは輸出に関する適正規模のオーダリーマーケティングの遂行というような基本政策をもちまして、おのおの予算的にも処置すべきものは処置しておりますが、関税率のかなりの引き下げとか、あるいは輸入金融に対する特別措置とか、そういうポイントもこれから強化していかなければならぬ、そう思っております。
  152. 川端文夫

    ○川端委員 なお、後ほどまたお尋ねするとして、基本的な問題として、今回の日中国交回復に伴って、中国側の方針として声明の中に取り入れられました賠償請求権の放棄というか、この問題が出ているのに、単に過去における日本の八十年のあやまちを反省するというだけでよろしいのかどうか、やはり経済協力的な問題点は予算の上にも準備をすべき時期ではないか。特に中曽根大臣が、十一月ですか、訪中されるということも伝えられているのですが、何か腹案があれば、あるいは考え方でもよろしいのですが、お聞かせいただければ幸いだと思うのだが、いかがでしょう。
  153. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中国側にその御希望があれば、われわれは互恵平等のもとに経済交流を促進するということについて、もちろん歓迎して行なうところでございます。一切は先方の意見なり希望をよく聞いて、それからわがほうがこれに対処するという考え方が正しいと思いまして、こちらのほうから差し出がましい考えは差し控えたほうがいいと思っているわけです。ただ心がまえといたしましては、話の内容をよく聞き協議をいたしまして、協力すべきものは積極的に協力していきたいという基本的な考え方を持っております。
  154. 川端文夫

    ○川端委員 きれいごとの話ではそれでもよろしいかと思うのですが、言うなれば、賠償請求権はかなり長い間中国側としてはあるのだ、こういう態度をとっておられたわけでありますが、今回の日中国交回復に対して自発的な意思においての放棄を声明していただいたということに対しては、やはりそれに報いるという何か——精神面だけではなく、向こうの意見があればというだけではなく、こちら側として、いろいろ世上にも伝えられております。あれもどうだこれもどうだということは伝えられておりますけれども、少なくとも政府の立場で通産大臣中国へ来月行かれるとすれば、あるいはこういうことも考えていかなければならぬという、ことがあるのじゃないか、こういうふうにもわれわれは理解をしながら通産大臣の行動を見守っているわけですが、この国会においてまだ言えないのか、向こうから聞いてから考えるというのか、この辺はもう少し内容をお話し願いたいと思うのです。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 こういうことはすべて先方と話し合って、先方の考えを聞いた上でやることが適切に行なわれると思いますので、アイデアがないわけではございませんけれども、そういうものは、先方との会見以前にこちらから一方的に発言すべきものではないと思います。
  156. 川端文夫

    ○川端委員 これ以上は、相手のほしがらないものを持ち込んでもどうにもなるものじゃありませんから、アイデアはないわけではないということのお話があったことを話として承っておいてよろしいですね。アイデアがないというわけではないけれども、一応話し合ってというように理解したというふうに承ったとしてよろしいでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済交流等の問題につきましては、ともかく先方の意見を承ってから、わが国がこれに対する対応の態度をとる、そういうことでございます。
  158. 川端文夫

    ○川端委員 せっかく大臣の答弁の中からそれならいいと言ったのに、また打ち消すような答弁を繰り返されたのでは、これだけで時間を取ってもいけませんから、私は前の点を、アイデアがないわけではないというこのことを十分理解された上に訪中されるものとして、やはり向こうに対しての日本側の誠意もあらわすべきだという見方を持っていることで、次の機会を待ちたいと思います。  そこでいま一つの問題は、現実の問題として午前中からもいろいろ質疑の中にありましたけれども、台湾の問題はやはり重要な問題ではないかと思うのです。中国との国交を回復した以上は、台湾との外交関係は一応打ち切らざるを得ないということを日本側は声明したわけでありますから、この点は双方とも一つの中国論を唱えてきた立場であるけれども中国と違って台湾は、日本の統治下にあって、日本人として長い間日本協力して、あるいは戦争に参加して、あるいは軍属に参加して、日本と苦楽をともにしてきた千数百万の台湾人民がおる。蒋政権は一つの中国論で今日まで固執されておるけれども、台湾の千数百万の人民は、はたしてそれで満足できるかどうかという問題があるわけです。  午前中の答弁を聞いておりますと、台湾に対しての円借款その他の問題も打ち切るということを明確に答弁されておるわけですが、この点でひとつ外務省にお尋ねしたいのだが、円借款の過去におけるある程度話し合いのでき上がったものの打ち切りはよろしいかと思うのですが、話し合いの結果、供与するという約束をして継続中のものはどの程度あるのか、あるいは金額にしてどの程度のものか、この点ひとつ内容を具体的に知らしていただきたい。  もう一つつけ加えれば、午前中の答弁からいえば、打ち切った場合にそのままの姿で民間に肩がわりしてもらうとは言われないけれども、そういう趣旨の答弁もあったわけですが、民間に肩がわりしてもらうとすればどういう方法を考えておられるのか、この点もつけ加えて外務省の御巫さんから御答弁願いたいと思うのです。
  159. 御巫清尚

    ○御巫説明員 お答え申し上げます。  台湾に対します円借款は第一次と第二次と二回ございまして、第一次はかなり前でございますが、金額にして約束いたしましたものが五百四十億円、その後さらに台湾側の要求がございまして第二次円借款というのが金額にして約八十億円でございました。  そのうちで円借款の交換公文は両方ともすでに結ばれたわけでございますが、それが実際に実行に移される間にはいろいろの手続がございまして、まず本邦の貸し出し機関との間にいわゆる貸し付け契約というものを結ばなければいけないということになっております。  その貸し付け契約をすでに結んでありますものが大部分でございますが、第一次円借款のうちで、本邦の貸し付け機関が輸銀でありますものが一件、それから本邦の貸し付け機関が経済協力基金でありますものが一件だけ、いわゆる貸し付け契約が未済のものがございます。これらにつきましては、おそらくもはやそういうものが結ばれるには至らないであろうかと想像しておりますが、その他のものにつきましては貸し付け契約がすでに締結されておりまして、それを今後どういうふうに解釈いたしますかにつきましては、いまのところ政府関係の各省の間で態度を協議しておる段階でございまして、これをどういうふうに処置いたしますかはいまだ態度をはっきりこの段階で申し上げられないのは遺憾でございますが、そういう段階にございますということを申し上げたいと思います。
  160. 川端文夫

    ○川端委員 私は、先日中曽根通産大臣が田中総理と一緒されたわけではないから、知らぬと言われれば困るのだけれども、言うならば、これらの問題をも含めてかなり突っ込んだお話し合いが田中・周会談において繰り返されたのじゃないか、したがって、台湾の経済問題、外交上の基本原則を認めた上に立って、経済的な問題に対してはかなり話ができ上がっておったのじゃないかと想像しておるわけです。この点は、たとえばジャカルタなんかに行きましても、日本のいろんな援助計画でホテルを建てるというものがいまだにたなざらしになってさびついて、そのままの醜態を残している形もあるのに対しては、向こう側としてはかなり感情を刺激されている一面もあるように私は見て帰ったわけです。したがって、台湾に対しても、経済借款契約ができたもので中途にあるものはどうするかというくらいのことはかなり煮詰めた話があったのじゃないか、この程度のことは経済的な協力をしても差しつかえないと思うからこうやろうとしているという話がきょうあってもいいように思うのだが、これはできないのでしょうか。ちょっと大臣から……。
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう突っ込んだ話はなかったように承っております。
  162. 川端文夫

    ○川端委員 どうもものを言えば損だというような形で中身を答えないという答弁のしかたはどうかと思うのですが、委員会ですから、やはりできるだけ知れる範囲において国民に了解させるという意味において御答弁いただきたいものだと御希望申し上げておきます。  もう一つの問題は、民間のいわゆる投融資ですね。民間には二つの型、パターンがあると思うのです。一つはやはり合弁の形における投資なりあるいはバイヤー方式における——いろいろ向こうに行って買い付け準備資金等を向こうに貸しているという事情もあって、これらの問題は、大蔵省として、どれくらい、どうなっておるであろうかという現状に対しての把握をされておるのか、大蔵省筋からお答え願いたいと思うのです。
  163. 林大造

    ○林説明員 お答え申し上げます。  台湾に対します民間の投融資でございますが、御指摘のとおり、大きく分けまして延べ払い債権関係と合弁その他の投資関係とに分かれまして、前の延べ払い債権関係が、昨年の十二月末現在——これが現在把握し得ます一番新しい数字でございますが、約六百二億円、投資関係が、これはことしの六月末で二百八十七億円でございます。
  164. 川端文夫

    ○川端委員 これらの中で中小企業とか大企業に分類できるような内容を何か御存じでしょうか。
  165. 林大造

    ○林説明員 お答え申し上げます。  一件別に当たりますれば計数をとれると存じますけれども、現在までのところ、中小企業と——その場合の中小企業というのはどういうような定義をとっているかという問題も、まだ私ども詰めておりませんし、現在手元には、申しわけございませんが、計数はございません。
  166. 川端文夫

    ○川端委員 私どもの聞いている話では、表面に出ている政府関係でいっても六百二十億円程度だといわれておるし、あるいは民間は八百九十億近いものを出しておるというのですが、もっと大きな数字と聞いておるわけです。  それはそれとして、私はここで数字を詰めようとも議論しようとも思いませんけれども大臣にお尋ねしたいのですが、これらの言うならばことしの七月までは台湾が日本の唯一の中国の対象国家であるという形において条約を認めてきて、日本の立場で、国際的な大勢でやむを得なかったとしても、民間なりそれらの人々は、政府の方針に従って台湾に協力したものを、かりに台湾経済援助に対して強い態度が外圧によって出てきた場合に、これらの人々はやむを得ないとして見殺しにされるのか、見切りをされるのか、この辺にどういうふうにお考えになって今日まで検討されてきたか、お答え願いたいと思います。
  167. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民間の経済交流は自由に、自然に行なわれるというのがわれわれの方針でございまして、これは今後も同様でございます。しかし、それらの民間の経済活動を不当な損失を受けたりすることがないように政府が保護することは政府の責任でございますから、そういう点については配慮してまいりたいと思っております。
  168. 川端文夫

    ○川端委員 来月大臣中国へ行かれるように伝えられておりますから、これ以上深追いしませんけれども、やはり台湾に対しての経済関係が、政府間においてもかなりの深入りがあるし、民間においてもより以上の、しかも数多い経済交流のあった事実をもって、十分配慮できるような処置をとってきていただきたいことを要望申し上げておきたいと存じます。  そこで、もう一つの別な角度で、これも午前中質疑のあった問題ですけれども、二十九日に終わりましたIMFの総会の模様ですが、日本側とアメリカ側とのかなり意見の食い違いがあるけれども、要約して、新聞の記事をたくさん切り抜いて並べてみますと、結論的には、表向きの話と事実は違って、かなり深刻に日本に対しての、表現はどうか知りませんが、向こうは外圧の準備をしているようなことが伝えられてきておるのですが、この点は、大蔵省の国際金融局長はどういうふうに御判断なさっているか、お答え願いたいと思います。
  169. 林大造

    ○林説明員 お答え申し上げます。  IMFの総会におきます通貨制度の問題につきましては、昨年の総会と違いまして、非常に建設的な前向きの論議が行なわれました。そこにおきまして、日本の植木大蔵大臣は、大きく分けまして、四つの主張をなさったわけでございます。  第一は、世界が一つの世界として国際通貨制度を立てていかなければならない、地域主義とか保護主義に逆戻りすることはいけないということを申されました。  それから第二点といたしまして、公的準備資産の移動で国際収支は決済をする、端的に申し上げますれば、たとえば米国が現在の姿で行なっておりますような国際収支の赤字を自国の債務の増加という形で処理するということは何とか避けて、やはり赤字は公的な資産で決済するという方向を示唆されたわけでございます。  それから第三に、国際的な準備資産といたしましてはSDRを育成強化していかなければいけないということを言われました。  それから第四点におきましては、国際収支の調整の過程におきまし、まず何と申しましても国内経済政策運営が大切である。  それから、為替レートの調整にたよらざるを得ない場合におきましても、長期的トレンドを見て調整を行なうべきであって、フロートをするとかあるいは客観的指標に重きを置く考え方は支持し得ないという趣旨を説明されたわけでございます。  このうち、第一点から第三点までは大体各国の代表も同じ意見でございまして、比較的意見が各国の中で分かれておりましたのが第四点でございます。国際収支の調整につきましては国内経済政策運営が重要であるという点につきましては、これは各国ともかなり認める態勢でございました。問題は為替レートの調整のしかたでございまして、このことにつきましては、御指摘のとおり、米国の代表であるシュルツ財務長官は、外貨準備高にある程度の目安を置いた為替レートの調整という考え方を発表したわけでございます。しかし、これにつきましてはヨーロッパ諸国におきまして同調するところはほとんどない状況でございましたし、これから制度改革の論議を通じまして、幸いにしていわゆる二十カ国委員会というのも今回の会合中に第一回の会合を開いて発足をいたしました。その代理会議も同様に発足をいたしました。この会議で今後前向きに通貨制度改革の論議が進められると思います。  この総会におきましては、今後の通貨制度をどうするかという問題が論議の対象だったわけでございまして、現在の国際収支の情勢がどうであり、たとえば日本の国際収支の黒字をどういうふうにすべきであるかという問題につきましては何ら論争はございませんでした。  しいて申し上げますれば、IMFの専務理事であるシュバイツァー氏は、国際収支の調整のためのレートの切り上げ、切り下げというものは、効果が出るまでに非常に時間がかかる、おそらく来年ぐらいの間にその効果が出てくると思われるという表現をしておりました。またドイツの代表も、自分はスミソニアン体制を堅持する意向であり、他の国も同様にすることを期待しているということを申しておりました。  いずれにいたしましても、通貨改革の問題は今後世界の通貨制度をどういう方向へ持っていこうかということでございまして、各国それぞれ穏やかな中にも主張すべきことは主張いたしました。今後その主張をお互いに詰め合って、その協調の必要性が特に強調されましたから、したがいまして、自国の立場にあまりこだわってはいけないといろことをいろいろと言われております。今後どういうふうに行きますか、いずれにいたしましても性急に日本の黒字をどうしろということは、今回の総会では話題にはならなかったわけでございます。
  170. 川端文夫

    ○川端委員 新聞も、アメリカのシュルツ財務長官が必ずしも日本をねらい撃ちするものではないという伝え方もしておりますし、日本の植木大蔵大臣日本側の立場をかなり熱心に説明されたということも伝えております。しかしながら、新聞の裏の一面を伝える情報によりますと、こういう記事も流れてきておるわけです。  ニューヨーク一日発ですが、「二日発売のニューズウィーク誌最新号は、米国が、英、西独と協力して日本に円切り上げを迫ることを計画していると伝えた。同誌は、IMF総会での表面のおだやかな空気とはうらはらに、実際には日本に対して厳しい感情があることを指摘している。同誌によると、IMF総会に出席した米財務省最高首脳の一人は、私的に「円は現行レートではもう終わりだ。これを吹っ飛ばしてやる。そう思っているのは、米国だけではない(英、西独もそうだ)。円は少なくとも一〇%は切り上げなければならなくなろう」」こういう記事が伝わってきておるわけでありまして、会議の表面と腹とは違うという、日本流にいえばたてまえと腹は違うというふうに伝えておるわけでありまして、そこで植木大蔵大臣も、帰国されて、羽田における談話の中に、新円対策五項目を提唱されて、これから日本の対策を立てるということをおっしゃっておるわけです。  そこで、通産大臣にお尋ねしたいのですが、昨年の六月に通貨問題が起きようとするその前において、日本は六項目でありましたか、六項目の対策を発表されて、十一月にはまた八項目という通貨対策に対する日本の態度というものを発表されておる。いままた五項目を植木大蔵大臣——内容を見るとかなり重複している面もあるけれども、問題が起きれば何か何項目対策というものを出して、それが、昨年の六月の日本の通貨対策に対する項目がはたして具体的な成果があがっていたのかいないのか、あるいは十一月に考えられた八項目というものもお題目だけで具体的な成果はあがっていないんじゃないかということで、次々に問題が起きるたびに項目を出して問題をだだことばで逃げようとされているんじゃないか。これではいわゆる国際協調の上からいって円再切り上げは避けられないんじゃないかということを心配しているのですが、私どもの心配は無理だと断定できますかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  171. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年以来のことを御指摘になりましたが、その点はわれわれも実行力が足りなかったと反省しております。ああいうことを繰り返さないということが非常に重要であると思いまして、近く田中総理主宰のもとに関係閣僚集まって、そして今度は決断と実行ということでございますから、実践していきたいと思うわけでございます。
  172. 川端文夫

    ○川端委員 どうも選挙演説みたいになって決断と実行で全部吹っ飛ばそうとされてもなかなか理解しにくいのですが、現に日本輸出実勢の問題に対してはいまや三百八円という相場、そういうものは通用しないんだと豪語している財界人もあって、二百八十円ぐらいだといわれているのがこのごろ二百五十円台にまで切り上げているというか下げた輸出関係の成約をしようとしている動きも出ている。したがって、政府がどのように口をふさいでものを言わなくても、実勢というものが先行している姿の経済の中において、阻止できない勢いというものがやがてくるんじゃないか。これは今年の大統領選挙後になるか来年の春になるか、いわゆる来年の秋になるかという見通しの問題もありますけれども、これを通じて一番影響を受けるのは、やはり何としても、大企業は実勢として対応できるかもしれませんけれども中小企業輸出関連産業は、多くの中小企業は太刀打ちできなくなるというおそれがあるのですが、これらに対してはいわゆる保護貿易主義ではいかぬということで見捨て、見切り発車をされるのかどうかという問題をも含めてひとつお答え願いたいと思います。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく円再切り上げを回避するという方針でいくのでございますから、その方針を堅持して、再切り上げの事態に至らないということがわれわれの基本的な考え方でございます。いずれにせよ、しかし、政策一般として中小企業を保護しこれを強化していくというのは、われわれの一貫した総合政策の重要な大黒柱でもありますから、それは前から努力の継続としてもやっていくつもりでございます。
  174. 川端文夫

    ○川端委員 もう一ぺん繰り返しますけれども、昨年の八月十五日に至る日まで一国会が開会中であったけれども、円の切り上げ等は行なわないということを断言し続けた。まあ佐藤内閣であったからあれは違うのだと言われればなんだけれども中曽根通産大臣は、当時自民党の総務会長として重要な役割りを果たされておったわけです。今日なおそのことばがはたして具体的にいま言われて——先ほどから言っております六項目なり八項目なり、今度大蔵大臣が言われている五項目なりの問題で、すみやかにこの手を打て、これだけはやらしてくれということをいろいろな意味でお話あっていいのじゃないか。腹を割って話されていいのじゃないか。したがって、短い臨時国会であるかもしれぬけれども、その期間にでも行なうべきことは行なう、法案が必要なものは出すということがあっていいのじゃないかと思うのだが、ただ円の切り上げを阻止するために私どもは精一ぱいの努力をするということで何か逃げ回っているようにしか感じられないことはまことに残念なんですが、この点はいかがでしょう。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 近く総理のもとで、経済関係の閣僚が集まりまして、そういうポイントは一つ一つきめて、そして実行すべきものは早く実行するということをやりたいと思いまして、けさも総理にそういうことを進言したところでございます。緊急にやる必要があるものが出てくれば、これは法律を要するのならば法律もやる必要はあるでしょうし、法律を要しないで行政措置でできるものならこれも行政措置でやる、そういう心がまえで進みたいと思います。
  176. 川端文夫

    ○川端委員 いつも委員会等で申し上げていることですが、どろぼうを見てからなわをなう、このかっこうはやめてほしい。やはり政策の先取りをして、準備を一口も早くしていただきたいということを常に申し上げてきておるわけです。通貨の問題に対して軽率な発言はできないことはわれわれも承知の上ですが、われわれの言いたいのは、ことばではなしに、これの準備のためにこういうことが必要だということで、それがわかるような政策が出てきていないということで問題点を指摘しておるわけでして、この点は十分考慮して今後の対策を急いでもらいたい。このことを要望申し上げておきたいと思うわけです。  時間の関係上あまりこの問題だけで議論できませんけれども、もう一つ今度は問題を変えて、いわゆる日本列島改造というか工業配置法の問題等で、きのうでしたかけさの新聞かで、東京都の美濃部知事が日本列島改造を自治体の意向を聞かないで一方的に移転促進地域を指定するようなことに対しては反対だということを意思表示されている記事が出ておりました。このことは御存じであるかどうか、企業局長お答え願いたいと思うのです。
  177. 三枝英夫

    ○三枝説明員 新聞記事に美濃部東京都知事がそういうふうにおっしゃった記事は拝見してございます。  工業配置法におきます線引きの問題、ただいま鋭意詰めておるところでございますが、先先のお話のように、地方自治体の意見を全然聞いてないということではございませんで、われわれも十分その点は御意見を伺うという立場で、実は八月の初めごろから当方で一応のたたき台的な原案をつくりまして、地方通産局を通じまして道府県及び市町村の御意見を伺ってきたわけでございます。それに基づきまして、さらにたたき台的原案に修正を加えまして、現在最後の詰めに入っておるというのが現状でございます。
  178. 川端文夫

    ○川端委員 日本列島改造論なり工業配置法というものは、過疎過密関係における過密を緩和したいというこの大前提があることは当然で、われわれも理解しておって、昨年の国会審議に当たったわけですけれども、言うならば、私は、過疎地帯におけるメリットがあるじゃないかという押しつけと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、地方に工場分散することに対しての努力は熱心であったかもしれないけれども、過密地域からの移転促進の問題に対する具体的な相談がなかったんじゃないかと新聞を見てはっと気づいたのですが、この点は間違いないですか。東京の美濃部さんが一人合点で発表されたのか。皆さんは、今日まで過疎地帯における工場誘致地域に対する指定等には努力されたが、過密地域の線引きに対してはかなり手抜きがあったんじゃないか、手抜きということばは、連絡不十分であったんじゃないかと思うのですが、この点いかがですか。
  179. 三枝英夫

    ○三枝説明員 お答え申し上げます。  当省といたしましては、移転促進地域あるいは誘導地域の区別なく、局を通じまして地元の都道府県及び市町村の御意見を伺うということで御連絡した次第でございます。ただ、移転促進地域に関連いたしましては、先生御存じのとおり、工業再配置税あるいはそのほかの税の問題というようなものが同時並行的にそのころからうるさく出ておりまして、そういう地域に指定されるとその税がかかるんじゃないかというような疑心暗鬼等、当然のことでございますがいろいろ起きたために、実は自治体の御返事の中でもなかなか最終的な御返事をいただけなかった。いろいろ割れたりなんかしまして、そういう事情は確かにございまして、最終的な正確な御返事ということで出していただけなかったという向きもございます。しかし、それに対応しまして、当方でいろいろ原案の修正等逐一御連絡したりしてございますけれども、正確な最終的な御結論というものをいただいていないところもまだございます。
  180. 川端文夫

    ○川端委員 私の感じも当たらずといえども遠からずで、言うならば、誘導地域に対してはかなり熱心に呼びかけをされたけれども、移転促進地域等には必ずしも十分でなかったようなことを新聞を見て私は感じたのですが、それはそれとしてもう一つの問題は、伝えられている追い出し税というか、こういうものの構想はどの辺まで大臣の腹が固まっているのか、どういう考え方に立っておいでになるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は、目下慎重に検討しているというのが実情でございます。それで、いわゆる移転促進地域の問題と、それから課税の問題とは切り離して考えよう、移転促進地域は移転促進地域、課税地帯はまた別個の見地から課税地帯、こういうふうに考えて、これがそのままダブるというような考え方は当然抜きにしたほうがいいのではないかという考えもまだ基礎に持っております。  それから、ほかのいろいろな各省との関係もございまして、そういう点の調整を十分慎重に詰めてこの問題は処置したいと思いますので、まだ私の腹は、最終的にこういうふうにいこうときまっているわけではございません。
  182. 川端文夫

    ○川端委員 かりに誘導地域が設定されましても、企業が行けるような条件をつくって都市計画をしてあげるという準備がなしに、単に追い出し税的なものをかけるということは、私どもは絶対に賛成できがたいところです。この点は、私ども反対したいという気持ちを申し上げているのですが、いわゆる大手の財界等の集まりである経団連等においても、この追い出し税のかけ方に対しては反対だということを意思表示、発表しておることから見まして、単に準備なしに出ていけという追い出し税的なものは十分配慮してもらわなければならない。特に中小企業等の場合は、どの辺まで線を引くのかという脅威を感じている。もう政府の——日本という国はありがたい国で、総理大臣が何かものを言われれば、それをきまったようにとって、何というか、官尊民卑というか事大主義というか、そういう感情が国民の中にありまして、追い出し税は政府が言ったのだからもうきまったように思っている二面があります。したがって、かりにきめる場合においても、この辺まではそういうことを考えるとしてもこれ以下はこうだという、何か構想はおありでしょうか。この点はきまらない、きまるまでものを言えないという立場にお立ちになるのか、大臣の構想を聞かせていただきたいと思います。
  183. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は中小企業の保護論者でございますから、中小企業になるたけひっかからぬように、そういう配慮をもって限界をきめよう、そういう一般方針をもって事務当局に検討を命じております。
  184. 川端文夫

    ○川端委員 こう理解してよろしいのでしょうか。まだ腹がきまってないから来年は追い出し税はかけないぞ、かけさせない、かりに再来年、明後年になってかけるような状態が来ても、中小企業の、できるだけ下のほうにはかけないということを腹にきめておる、政治生命をかけてもきめているというように大臣がおっしゃったと私は理解してもよろしいのでしょうか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 税制の施行時期というものは未定で、これは慎重に検討しなければならぬところでございます。しかし、中小企業の問題については、中小企業保護というのが私の基本方針でございますから、できるだけそれがひっかからないように配慮するように指令してあるところでございます。
  186. 川端文夫

    ○川端委員 時間が迫ってまいりましたからこまかい質問を省略しますけれども、一つは、かりに追い出し税的なものをかけて、大都市からの過密都市からの工場を移転させるといたしましても、従来の地方自治体は、やはり法人事業税なりあるいは法人所得税をもらって財政をまかなっていたわけですから、財政上にもかなり狂いが出てくるという形で非常に心配されておる。この点はかりに百歩譲って、人の組織の中にかってに線を引くことは賛成ではないという感情論と、あわせて財政的な将来の見通しの問題もかなり心配されて問題とされているのではなかろうかと、都知事の発表を見て感ずるわけですが、この点は、ひとつ十分に地方自治体の——誘導地域に行く場合においても、公害その他の問題に配慮して自治体の意見を聞かなければならぬということを附帯決議等でわれわれつけたのですが、これは当時の与野党の合意による附帯決議のつけ方ですから、いわゆる地方自治体の首長は政府に向かって意見を言うことができるという程度のなまぬるいことになってしまったのであって、聞かなければならぬということになっていないのです。ならなかったのです。したがって、あれは文書で出してこなければ、言ってあるという形になって摩擦が起きる危険が十分心配されると思うので、この点はマクロ的にはわかっても、その現実の具体的な問題に対しては、出ていってもらわなければならぬものに対する親切な処置と、あわせて、やはり地方自治体の財政上の問題に対しても配慮がしかるべくなされなければ摩擦が大きくなるという心配をいたすわけですから、この点は大臣の決意がそこまで至っているかどうかお尋ねして、質問を打ち切りたいと思うわけです。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは決議にもあることでございますから、地方自治体の意見をよく聞いて、そして話し合いの上でこの問題を進めていくという方針でまいりたいと思います。
  188. 川端文夫

    ○川端委員 時間がなくなりましたから、十分おくれたのだけれども節約します。
  189. 藏内修治

    ○藏内委員長 近江巳記夫君。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは大臣も非常に時間が限られておられるようでございますので、私も何点か簡潔にひとつお聞きしたいと思っております。  まず初めにお聞きしたいことは、この九月三十日にIMFの総会が終了したわけでございますが、時期的に、田中訪中という歴史的な事件の陰に押しやられたような形になったわけですが、しかし今後の国際経済あるいはまたわが国経済に及ぼす影響等を考えましたそういう意義というものは非常に大きいものがあると思うのです。  まず、今回のIMF総会の論議の内容及びその成果等について、通産大臣としてはどのように把握されておられるか、まず初めにお伺いしたいと思うのです。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 世界経済の現状に即して、各国おのおの自分の信条とする通貨体制、新しい通貨体制の建設について独自の見解を述べ合って、わりあいに協調的に会議が進められた、巷間伝えられるような、他の国に対する批判、対立、そういうようなものはなかったといち報告を植木大臣から受けております。しかし、全般的に見ると、黒字国の責任というものもかなり論ぜられておるので、最大の黒字国である日本としては、そういう国際会議における論議を無視してはならないし、これに対応する対策を講じていく必要があると考えました。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣もおっしゃったわけでございますが、特にシュルツ米財務長官のこの国際収支黒字国の責任論、これは非常に大きく伝えられたわけでございますが、当然その中身としては、黒字国の平価の切り上げ、あるいはそういう国際収支の均衡処置をとらない黒字国からの輸入品に対する課徴金、こういう非常に強硬な提言も出ておるわけです。こういう論議を考えてみますと、いずれにしても、わが国の現状を念願に置いていることは間違いないわけでございますが、それに対して、通産事務次官がこの九月二十八日の記者会見等で痛烈な反論を加えておられるわけですが、通産大臣としてはどのように考えておられるか。この辺をひとつお聞きしたいと思うわけです。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際社会というものは相互協調で進めていかなければならないところで、黒字国の責任ばかりを追及さるべきものではないであろう。赤字国には赤字国としてとるべき国内対策もありましょうし、赤字になった原因自体がほかの国の責めに帰すべからざる理由によって赤字になったというところもあるだろうと思うのです。そういう点について、お互いがその理由を発見し合い、協力し合って、世界的バランスを回復していくべきものだ、そういうふうに感じております。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、今後この二十カ国の委員会によって国際通貨の交渉が行なわれると思うわけですが、それについての見通しあるいは問題点を大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、所見をひとつお伺いしたいと思うわけです。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり会議全般の趨勢というものはありますから、黒字国として黒字のかなり大きくたまっている国はやはり注目を浴びて、その国がどういう態度をとるかということを各国が関心を持ってながめてくるだろうと思います。そういう点については、われわれもそれに対応すべき措置も講じ、また、そういう会議に対処すべき方針も持っていかなければならぬと思います。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、国際収支あるいは貿易収支の調整ということが今後は非常に問題になってくるわけでございますが、この対外経済政策につきましては、昨年六月のいわゆる円対策八項目、それから九月のその見直し、また今年五月の円対策七項目等があるわけです。しかし、そういう成果はほとんどあがっていないということがいわれておるわけですが、その間、円の切り上げあるいは対外経済調整法案等の廃案等もあって、結局今日に至っておるわけですが、そういう点、原因あるいは理由はどこにあるとお考えでございますか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの中の一つの項目の、景気回復、内需の充足という面は、景気回復しつつありまして、この面は顕著な結果が出てきつつあると思いますけれども輸入増大という面がどろも思わしくない。この面をわれわれはさらに開拓する必要があるように思っております。  それから、全般的に見て、切り上げの効果というものは一年半くらいたたなければ出てこないというのが通説でございますから、そういう切り上げの効果はそろそろ出だしつつある。輸出の停滞ということは散見し始めております。それがこの後どういうふうに動くか、非常に関心を持って見詰めながら対策を進めていきたいと思います。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう問題について総合対策を今後お考えになると思うわけですが、いままでのような考え方でいきますと、結局は円の再切り上げに追い込まれる可能性が強いんじゃないかと非常に心配されておるわけですが、その点、円の再切り上げに追い込まれる可能性が強いということにつきまして、大臣としてはどういうようにそれを受け取っていらっしゃるか、ひとつお考えをお聞きしたいと思うのです。
  199. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事態が起きないように、ともかく全力をふるって回避する諸般の政策をとっていきたいと思っております。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、対策の一つとして、輸出課徴金の問題が政府部内で非常に論戦の焦点になっておるということを聞いておるわけですが、通産省はこれに対して反対なさっておる。これは非常にむずかしい問題でございますが、これにかわる的確な貿易収支調整の具体的な方法というものについてどういうようにお考えになっていらっしゃるか、この辺についてお聞きしたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 輸入増大をやるために輸入対策に非常な助成を行なう、関税引き下げもこれを思い切ってやっていく、そういう輸入増大政策が今後強く打ち出されなければならぬと思います。  それから輸出については、いわゆるオーダリーマーケティングを乱すようなやり方については、最悪の場合には貿管令を発動して直接政府が規制する、そういう用意も整えておるところであります。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 輸出貿易管理令の発動ということもおっしゃっておられるわけですが、具体的にどういうように実施されるお考えなんですか。
  203. 増田実

    ○増田説明員 輸出貿易管理令につきましては、ただいま大臣から御答弁がありましたように、最後の手段として用いるという考えでございます。それで私ども輸出につきましてオーダリーマーケティング、輸出秩序の確保という政策を強く打ち出したいという考えでおりますが、そのためには一応三段階措置をやろうというふうに考えております。  それを御説明申し上げますと、まず一番初めに、輸出が出過ぎまして、相手国市場において市場撹乱が起こっておるか、また起こるおそれがある、こういう場合には直ちに私どもから業界に話しかけをいたしまして、カルテルによって数量あるいは価格を規制するということを考えております。これは業界で行なう、こういう方式でございます。ただ、その場合に、アウトサイダーその他がありまして、なかなかまとまらないという場合には、第二段階の発動といたしましてアウトサイダー規制命令をすぐに出すという措置をとりたいと思います。  以上申し上げました第一、第二段階輸出秩序維持対策の骨子でございます。しかし、いろいろな事情がございまして、なかなかそれだけでは輸出秩序の確立が全うされないという場合におきましては、貿管令を発動いたしまして輸出を規制する、こういう考えでございます。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから先般廃案となりました対外経済調整法案、これの再提出の構想があるように聞いておるわけなんですが、もしもありましたら、その方針、内容、特に利子補給等についてどういうように考えていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  205. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 検討はしておりますが、いまのところ、私はこれを再提出するというほうには傾いておりません。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから次に、中国問題についてお聞きしたいと思うのですが、日中の国交が樹立をいたしまして、いよいよこれから新しいスタートラインに着いたということが蓄えるのじゃないかと思うのです。そうなってまいりますと、この日中の経済関係におきましても、やはり今後はそういう基本的な構想なりをきめて対処しなければいけないのじゃないかと思うのですが、基本的な考え方について、大臣としてはどのようにお考えか、それを承りたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済交流につきましては、私たちは先方の御意見を聞いて、積極的に熱意を持っております。ただ、こういう問題はわれわれが一方的に推し進める問題ではなくして、先方の要望なり計画その他をよく聞いてそれに対応するということがわれわれの考え方でございます。そういう意味で、もしそういう機会があれば、先方の意見を私自体が直接聞くチャンスがあればいいと思っていたわけであります。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、さしずめ考えられるのは、協定の締結であるとか決済方法であるとか関税問題であるとか、いろいろあろうかと思うのですが、もう少しそういう具体的な点をお聞きしたいと思います。
  209. 小松勇五郎

    ○小松説明員 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、先方の意向を十分に聞きましてから具体的なことは詰めるつもりでおりますが、関税につきましても、その他の輸入自由化の問題につきましても、現在国交の有ります国と大体同じような取り扱いになるものと考えております。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、たとえば事前許可制等もまだ残っておるわけですね。それから関税等もやはり八つですかね、とっておりますし、この辺についてはどういうお考えですか。
  211. 小松勇五郎

    ○小松説明員 事前許可制につきましては、近く全面的な廃止をする予定でおります。関税につきましても、最恵国待遇の供与をすることになるかと思いますが、この辺はもう少し事務的に煮詰めてみたいというふうに思っております。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 円元決済等については銀行間におきまして大体基本的な取りきめが行なわれておると思いますが、それが具体的にどういう時期に動き出すのか、その辺の感触はどうでございますか。
  213. 小松勇五郎

    ○小松説明員 先生承知のように、円元決済の問題につきましては、現に東銀その他若干の銀行と支払いに関しての協定ができまして、それで動いているわけでございますが、国と国との支払い協定につきましては、将来貿易支払い協定のようなものができます機会に、統一的な方針がきまるかと思います。当分の間は、現在行なわれております、東銀などがやっておりますような円元決済方式で貿易が行なわれていくものと考えております。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 ココム等の問題につきましては、以前から大臣基本的な考え方というものをお聞きしておるわけですが、国交樹立という段階になりまして、さらにそれをどういうように強く表明されていかれるか。その辺の態度についてはお変わりはないわけですか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは前から申し上げておりますように、わが国は累次の会議におきまして、品目の縮小ないしは撤廃ということを強く要求してまいってきているところです。近く行なわれる会議におきましても、同様具体的にそういう方向で推進していきたいと思っております。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、通産省のほうにも出ておると思うのでございますが、特に国交樹立をいたしまして、万博のあと地等で中国の大博覧会を開催したい、これが大阪の商工会議所あるいはそれをバックアップしまして大阪市等でも、盛んにそういう強い意向というものが出ておるわけであります。正式に通産省のほうにもそうした提案あるいはまた陳情等も来ておると思うのでございますが、これは当然中国相手のそういうものをやるかやらないかという問題もあるわけですが、国交樹立となりまして、やはり向こうも相当前向きに来るのじゃないかと予想しておるわけですが、これはあくまで予想ということでありまして、まだ向こうの返事は来ていないわけですけれども、向こうがもしぜひともやりたいというようなことがあった場合、地元の大阪等では強くバックアップしたいということも言っておるわけです。しかしながら、大阪市や大阪府といっても、これは単なる一府県にすぎないわけでありますし、何といいましても政府の大きなバックアップということが一番の大きなささえになろうかと思うのです。仮定の問題といえばそれまでですけれども、もしも向こうがやりたいという意向を示してきたときには、政府としてはその点を大きく支援をしていただけるわけですか。
  217. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大阪の各方面でそういう御希望があることを私も承知しております。お話しのとおり、先方の御意見にもかかわることでございますから、そういう諸般の情勢をよく見きわめた上で、われわれのほうで判断していきたいと思います。  財政負担という面の問題もありますから、通産省だけではきめられない問題でございましょう。もしそういう財政負担がないというのならば、これまた通産省でもある程度考えられるところでありますが、そういう辺がどういうふうになるかというところも見きわめた上で、私たちは処理したいと思います。しかし、一般的にいえば、けっこうなことだと思っております。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 万博のときももちろん政府としてやられて、窓口、柱として通産省、中でも企業局ということがあったわけですが、そういう博覧会というようなことになりますと、どうしてもやっぱり通産大臣のそういうお考えなりということが大きくそれをきめると思うのです。そういう点、中曽根大臣も非常に前向きのことをいまおっしゃっていただいたわけですが、私はかなりこれは具体化するのじゃないかと思いますし、今後またいろいろな機会に政府のそうした姿勢というものも、大臣のほうからもよく働きかけていただきたい、このように思うわけです。  それから、この間私どものほうも竹入委員長が東南アジアをずっと回ってきたわけでございますが、やはり今後はアジア問題というものが非常に大きくクローズアップされてくると思うのです。それで、今後日本の果たす役割りというものが非常に大きくなってくると思うのですが、特にいま具体的に指摘されておる問題としては、やはり援助問題等が非常に大きな問題だと思うのです。そういう条件にいたしましても、非常に日本は利子も高いし、あるいはあまり相手国の意向に沿わないようなものも何か現実に行なわれておるように聞いておりますし、こういうことで、今後そういうアジアの経済援助等の問題をやはり早急に政府としても固めていただき、また、具体的なそういう諸条件等についても改善すべき点は改善しなければならぬと思うわけですが、そういう対アジアの援助問題について、大臣としてはどういうように基本的にお考えでございますか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、経済協力の問題は、いままでのベースよりさらに積極的に新たなる見地をもってこれを拡大していくということに熱意を持っております。その際、関係国の御希望なりあるいは所見というものは非常に大事なファクターになってきておりまして、いわゆる醜い日本人あるいは醜い日本、そういう印象を与えないように最大限の注意をしながらやっていかなければならぬし、そういう点について、いままでのわれわれのやり方について反省すべき点があれば反省しなければならぬと思っております。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままでのそういう援助方法等について、やはり私は大臣おっしゃったそういう考え方はよくわかるのですが、政府としてのはっきりとしたビジョンなり、そういうものを明確に出す必要があるのじゃないかと思うのです。そういう点、大臣としてはどのようにお考えですか。
  221. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう新しい見地に立った経済協力という問題については私自体いろいろ考えておりまして、特に中国と国交が正常化した今日においては、そういう新しいファクターも入れて、もう一回よく見直す必要があると思っているのです。そういう意味で、事務当局にも検討させてみたいと思っております。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 ちょっと戻って恐縮ですけれども中国と今後いろいろ話し合いをやっていかれるわけですが、前にも、中曽根大臣としても向こうへ行きたいとおっしゃっておられたわけですが、その時期等についてはかなり煮詰まっておるわけですか。
  223. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 煮詰まっておるわけではございませんが、けさも総理とその問題について話をいたしまして、もし可能であれば秋も深まったころ行ければ行ってみたい、そういうふうに考えております。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 各委員からも出たとは思うのですが、例の工場再配置の線引きの問題でございますが、当初通産省が考えておったそれが、地方自治体を無視した中で行なわれているのではないかというように、かなり各地方自治体でもそういう声が大きいわけです。そういうことで、いま具体的に作業に入っていらっしゃると思うのですが、そういう声を入れまして大臣としては基本的にどういう考え方でいかれるわけですか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は、地方住民の利害に関する大きな問題でもあり、また地方自治体の大きな問題でもございます。国会の決議の御趣旨もありまして、府県ともよく相談をしてやる必要があると思っておりまして、よく地元の意見を徴して、知事さんの意見も聞いて、よく調和してこれを進めていく。あまり無理する必要はない。しかし大事な点は、これを骨抜きにすると趣旨が失われますから、そういう点はしっかりやっていきたいと思いますけれども中小企業の擁護とか、そういう大事な点、ポイントについては、やはりわれわれは慎重に対処していかなければならぬ、そう思っております。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほども大臣は、中小企業は最も力を入れておるのだということをおっしゃっておられましたし、いまの線引きの問題にしても、中小企業の配慮ということを非常に頭に置いておられるように思うわけです。そういう姿勢については、私は非常にいいと思うのです。  そこで、来年度予算はいろいろなことがいわれておるわけですが、いままでの中小企業対策を見ておりますと、全予算の〇・五%にも達しないような状態でありますし、政府の金融機関もいろいろございますししますが、全部利子をつけて借りるわけですし、やはり中小企業自体の対策として、政府として、抜本的に本腰を入れて予算も組んでもらわなければいかぬと思うのです。  たとえば、地方の商工会議所なり商工会を見ましても、こまかい点になりますが、職員の給料の点にいたしましてもそうだし、あるいは什器、備品に至りましても、予算がないからということでいろいろ苦労もしながらやっておりますし、結局それは中小企業対策費の予算が少ないということに尽きるわけでして、そういう点、対中小企業のそういう予算を根本にしまして、来年度はどういう決意、姿勢で臨んでいかれるか、ひとつそれをお聞きしたいと思うわけです。
  227. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は午前中の御質問でもお答えいたしましたが、ともかくこの国際環境の中にあって、中小企業を擁護していくということが非常に大事なことであり、また一面において、海外に対して中小企業を進出させるということも適切な政策にもなってまいりましたから、海外に対する中小企業の進出及び国内における各流通段階との中小企業の位置づけ、それから中小企業の中でも個人商店あるいは同族会社に対する配慮、そういう諸般の問題についていままで考えていましたけれどもできなかったような政策もございますから、今度は特に実行していきたいと思っております。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、きょうは国民生活局長も見えておられますのでちょっと聞いておきたいと思いますが、米の値上げをはじめとしまして、大学の授業料であるとか、いろいろな点に影響が出てきておるわけです。国鉄の公共運賃割り引き廃止の問題であるとか、こういうことは非常に生鮮食料品にも大きな影響を与えておりますし、あるいはまた、さらに公営住宅の家賃も引き上げようという動き等もあるように聞いておるわけですが、こういう問題に対して、経済企画庁としてはどのように考えておられますか。
  229. 小島英敏

    ○小島説明員 企画庁といたしましては、公共料金の改定というものは原則として極力抑制的に取り扱うという考えでございます。ただ、遺憾ながら一昨年の暮れに行なわれました公共料金のストップの影響が本年に入りましてから出てまいりまして、春以来かなりいろいろなものが公共料金値上げをせざるを得なかったわけでございます。  基本的に抑制するということではございますけれども、何でもかんでも押え込むということになりますと、これはやはり長い目で見まして一種の資源配分のゆがみを生ずるおそれがございます。かりに、たとえば地方の過疎地帯のバスの問題などというのがよく出ますけれども、料金値上げを一切まかりならぬということで押えつけてまいりますと、結局事業として成り立たなくなりまして、別の意味で非常にまた国民が困るということもございますので、サービスの供給を円滑化するという観点からも長期的な配慮が必要でございます。したがいまして、公共料金を考えます場合には事業自体の合理化ということがまず前提でございまして、極力やはり合理化につとめてもらうということが前提でございますけれども、その上で、財政措置の配慮等も含めまして、消費者というものがどの程度負担するのが合理的であるかということを十分検討してまいるということでございます。  また、そういう検討の結果やはりある程度値上げをせざるを得ないという結論が出ました場合でも、従来とかく消費者の意見というものが十分聞かれないおそれがございましたので、最近は各省にもお願いして、極力公聴会等の機会を通じて消費者の意向を聞いて、全部の人に納得していただくというのは非常にむずかしいかもしれませんけれども、極力納得していただいた上で値上げをするということにつとめている次第でございます。  現在のところ、幾つかの公共料金値上がりが続いて非常につらい立場ではございますけれども、幸い最近の消費者物価は、昨年の不況の影響というものが需要面で現在影響が出ておりますし、それからもう一つは、天候が比較的恵まれたものですから、野菜の価格が比較的安定しておりまして、九月はちょっと東京は上がっておりますけれども、そういう二点に恵まれました結果、現在までのところ、まあ本年度の五・三%という目標が何とかいけるのではないかという感じを持っておる次第でございます。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、いま具体的にお聞きした公営住宅の家賃の問題、これはかなり建設省のほうでは具体的な提案もしておるわけですが、これについてはもう重大な影響が出ますし、民間家賃等にも大きく波及いたしますが、この点はどうお考えですか。
  231. 小島英敏

    ○小島説明員 各種の公共料金をグループに分けまして、一番重要なものが、いわゆる閣僚協にのせる事項というのがございます。それからその次の段階は企画庁に協議をいたす、協議してもらうというグループがございまして、その次の段階は事前連絡というグループがございます。いまお話しの公営住宅の家賃というものは実は第三のグループ、事前連絡のグループに属しておりまして、企画庁の協議事項になっておらないわけでございます。したがいまして、われわれとしては個々の問題について協議を受けるわけでございませんけれども、何といいましても家賃というものは一種の基礎的な支出でございますし、所得との関係というもので過大な負担にならないようにということは、これは当然国民生活局といたしましても重大な関心がございますので、建設省といたしましても毎年限度はきめますけれども、必ずしも限度一ぱいにみんな引き上げるというものではなくて、かなり所得の状況等を考えて、負担し得る程度にとどめていると聞いておりますので、建設省のそういう方針を見守ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 第三項目で協議事項に入ってないから見守っていきたいと、きわめて消極的な局長の御答弁でございますが、もう非常にそれは私たちが考えまして大きな不満でありますし、ことばを強くして言えばけしからぬと思うわけです。少なくとも国民生活局長、特に経企庁はそういう国民生活をやはり守っていかなければならぬ立場です。それを第三項目であるから、まあ協議事項に入ってないからというような傍観的な気持ちが少々でもあれば、私は大問題だと思うのです。ですからこれはどこの——特に私もこの間中国へ行ってきましたけれども、家賃なんか向こうは五%以下ですよ。それは嗜好品であるとかそんなものは日本に比べたら非常に高いです。たとえば若夫婦で家賃が三元、四元、「中華」等のたばこはフィルターがついたので〇・七元しておりますから、嗜好品等は確かに高いものもあるわけです。しかし、家賃はきわめて安いわけです。ですから、いまの日本の、特に勤労者等を中心にした公営住宅に入っておられるそういう人の生活を見ますと、やはり家賃の負担というものは一番大きいわけです。ですから、ほかの諸物価もそれは問題でありますけれども、特にやはり家賃のこういう値上げ問題というものは、民間の木賃アパート等に入っておられる人等にも大きく影響するわけです。少なくとも二割、三割くらいまできたわけです。これがさらに上がるとなりますと、ほんとうに国民生活の逼迫は目に見えてくるわけです。ですから、これは協議事項に入ってない、そんなことではなくて、経企庁としても最大の問題であるということで姿勢を変えてもらわなければ困ると思うのです。それについては、いまおっしゃったようなそんな態度でいかれるのですか。そういう態度でいかれるとなると、これは問題ですよ。
  233. 小島英敏

    ○小島説明員 現在のグルーピングと申しますのも固定的なものではございませんで、これは閣僚協に基づきます物価担当官会議というもので、各省の間の話し合いでグルーピングができているわけでございます。ですから、現在の体制はそういうことでございますけれども、かりに、実際に建設省の運営方針というものがどうも非常にまずいということになりますれば、これは当然また物価担当官会議で議論をし直して新しい体制考えなければいけないと思いますけれども、現状においてはそういうことでございますので、おっしゃるように、非常にまずい影響が出るというふうでございましたら、当然企画庁といたしましても、いつまでもいままでの体制でよろしいというふうには思っておりませんので、この辺は弾力的に考えております。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間もありませんからやめますけれども、重ねてその点については、これは商工委員会でも大問題になったということを企画庁長官にも申し上げていただいて、家賃の問題なんというものは、これはもうほんとうは閣僚会議にかけてもいいくらいの問題ですよ。あまりにも波及が大き過ぎるのですよ。土地の値上がり、また家賃の問題というものはたいへんな問題なんです。これは大体、そんな協議事項に入れてないこと自体、政府がいかに土地問題とか、そういう家賃の問題等を軽く考えておるかということになると私は思うのですよ。日本列島改造もいいですけれども、そういうふうな庶民の生活をばんばんばんばん値上げするような、安易にそれは協議事項だと言うような姿勢というものは、けしからぬと思うのです。それはやはり報告してもらって、また国民生活局長としても、これは非常に大きなウエートのある問題であるということで受けとめていただけますね。また、それを言うてくれますね。もう一ぺんそれだけをお聞きして終わります。
  235. 小島英敏

    ○小島説明員 申し伝えます。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 一応これで終わります。
  237. 藏内修治

    ○藏内委員長 中村重光君。
  238. 中村重光

    中村(重)委員 通商局長にお尋ねしますが、モスクワ国際見本市の日本館建設についてソ連側の要請がある、そこでソ連東欧貿易会を中心として計画が進められつつあるということを聞いておるのですけれども、どこまでこれは具体化していますか。
  239. 小松勇五郎

    ○小松説明員 それは、従来ありました国際見本市の会場が手狭になり不便になりましたので、新しく見本市の会場をモスクワ川の河畔に建設する計画を進めておるようでありまして、一応一九七五年ごろの完成を目途としていると聞いております。各国に対しまして、すでにソ連はそれぞれの国に展示館建設の申し入れを行なっておるようでございますが、わが国に対しましても、ことしの七月に申し入れを行なってきております。私たちといたしましては、できるだけ参加の方向でジェトロあるいはソ連東欧貿易会などを中心にいたしまして検討を始めたところでございます。
  240. 中村重光

    中村(重)委員 これは日本館の建設をやりましても採算のとれない事業ということになりますね。そうなってくると国の補助がどうしても必要だろうと思うのですが、その点どのように考えていますか。
  241. 小松勇五郎

    ○小松説明員 とりあえずのところ、来年度の予算につきまして、モスクワ展示館の建設費といたしまして設計料その他の準備費用を中心に予算要求をいたしておりますが、これが首尾よくできましたあとで赤字になるかどうかというその他の問題につきましては、まだソ連側と具体的な話を煮詰めておりませんので、もうしばらく研究をいたしてみたいというふうに考えております。
  242. 中村重光

    中村(重)委員 ソ連側ということよりも、日本館の建設はソ連がやるわけじゃなくて、こちらのほうで日本側でやらなければいけないと思うのですね。そうなってくると、ソ連側と話し合うということよりも会館建設そのものに補助をするかどうかということが問題ですね。そのあとの運営の問題は、これは会館がどういった人格になるのかどうかということによっておのずから解決していくんだろうと思うのですが、会館建設そのものに国が補助をするかどうかということが会館建設ができるかできぬかという問題につながっていくんだろうと思うのですよ。その点どうお考えになるかということです。
  243. 小松勇五郎

    ○小松説明員 日本の展示館を建設するということになりますれば、日本側が建設費用を負担することになると思います。まだソ連との話し合いが詰まってないと申し上げましたのは、償却の方法だとか土地の利用の方法だとか、そのほかこまかいことについて今後詰めてみまして、その上で具体的にどのくらいの金額がかかり、将来運営の段階に入ったときにどのくらいの赤字になるか、この辺を計算いたしてみたいと考えておる次第でございます。いずれにしましても、私たちとしましては前向きで予算も組み、進めてまいりたいと考えております。
  244. 中村重光

    中村(重)委員 額の問題を、幾らだということでここでお答えいただこうとは思っておりません。いまのお答えのとおり、前向きで建設に対して国がやはり補助金を出すということでやってもらいませんと、相手国に対しても、日本としては、見苦しいような非常にちゃちな会館をつくるということはやはり問題があるだろう、こう思いますから、その点はいまのお答えを信頼いたしますから、そういう方向でぜひやっていただきたい。  同時に、中小企業の組織であります日ソ貿易協会というのができているわけなんです。これも建設計画に参加をしたいという意向を持っているようでございますが、その点はどのようにお考えになりますか。
  245. 小松勇五郎

    ○小松説明員 まだそちらのほうからの正式な申し込みを受けておりませんので、申し込みを受けましたら検討いたしてみたいというふうに考えております。
  246. 中村重光

    中村(重)委員 私はその日ソ貿易協会の方々とお会いいたしました。非常に真剣なんです。ぜひひとつ委員会等において政府の考え方を聞いてもらいたいということでございますから、ある程度考え方が明らかになった上で書類を出したいということであろうと思いますから、当然中小企業貿易というものの重要性はこれからますます大きくなってまいりますので、これの建設にぜひ参画をさせるようにしていただきたい。  同時に、建設後の運営方針及び運営における中小企業に対する配慮ということになってまいりますが、それは先ほどのお答えの中にも出てはまいりましたけれども中小企業という点からどのようにお考えになるか。十分な配慮をしなければならないというお考え方であるのかどうか。私が先ほど申し上げたことと関連をしてまいりますから、お答えをひとつ聞かせてもらいたいと思います。
  247. 小松勇五郎

    ○小松説明員 この問題につきましても、中小企業につきましては十分配慮をいたしたいというふうに考えます。
  248. 中村重光

    中村(重)委員 長官にお尋ねをいたしますが、大蔵省は主計官以外はまだ見えてないですか。主計官はお見えですね。
  249. 藏内修治

    ○藏内委員長 主計官は来ております。
  250. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業の対象範囲の拡大のことなんですが、午前中にも私は大臣にお尋ねをしたところですけれども中小企業の定義を改める。現行の資本金五千万円、従業員三百名、これを中小企業庁の資料によりますと、資本金を一億、従業員現行どおりとあります。商業で、卸売り業は従業員五十人を百人、資本金一千万円を三千万円、小売り業は従業員五十人は現行どおり五十人、資本金一千万円、これも現行どおり一千万円、こうなっていますが、この一億円を相当とされた根拠、さらに卸売り業において従業員を五十人から百人にされた、しかし小売り業は据え置きと、こうなっているこれらの点に対する考え方をひとつお聞かせいただきたい。
  251. 莊清

    ○莊説明員 去る八月に中小企業政策審議会から総理大臣に対しまして意見具申が行なわれ、その中で定義の改定について具体的な御提案がなされておるわけでございますが、先生いまおっしゃいましたように、製造業では五千万円から一億円に資本金を上げるということでございます。これは工業統計等を基礎にいたしまして中小企業、大企業のその後の状況について数字的に詳しく調査を専門委員会等でやっていただきました結果、大体従業員のほうは従来どおり三百人で据え置いておいておおむね妥当であろう。その場合に、ほぼ三百人の従業員をかかえておる企業の資本金というのは、その後、物価の値上がりとかいろいろな状況経済規模も大きくなっておりますし、当時よりも上がってきております。そこで現在の時点で考えれば、三百人にほぼ対応する資本金規模はおおむね一億円とするのが妥当である。たまたま税の扱いで一億円以上と以下と分けておりますが、それにほぼ見合った取り扱いというのが中小企業政策の上でも数字的に妥当と考えられる、こういうことになったわけでございます。三百人は据え置いて、それに見合うのは現在ではほぼ倍に資本金の額がデータとしてふえてきておる、こういうことでございます。  それから商業関係では、御案内のように中小企業基本法を制定しました当時、商業は小売りも卸も区分せずに、大体それまで一千万円以下の商業というものを中小企業政策の対象にしておりまして、基本法をつくった当時、その一千万円に見合うのはほぼ五十人くらいだということで、卸、小売り共通にきめたわけでございます。その後、卸関係はいろいろ業界の要望等も実はございました。卸と小売りとはかなり業態が違いますので、資本金の額、従業員とも相当多い。しかし、多いけれども、つまりいわゆる大手商社というふうな大企業卸と中小卸というものは、これはまた相当大きな格差があるので、小売りと卸とは区分をして、卸は卸で大手卸と中小卸ということで区分けをするということにしてもらいたいという長年の希望も実はあったわけでございます。それで中小企業政策審議会の場でそういう前提に立っていろいろ数字の御検討をいただきまして、小売りについては五十人、一千万円の線というのが——三十八年当時もそうなっておりますが、小売りも卸も込みにした数字でありまして、小売りだけにすればその線でしいて改正の必要はないだろう、ただ卸については現在の時点では明らかに無理であるということで百人、三千人というあたりが妥当ではないか、こういうふうに、それぞれブレークダウンして御検討いただいた結果、意見具申をいただいておる、こういうわけでございます。私どもも、現在その線に沿って法律の改正を進めたいと事務的に考えておるわけでございます。
  252. 中村重光

    中村(重)委員 具体的には法律案が出ましてからお尋ねをすることにいたしますが、ただ私どもは、ある程度対象範囲を拡大しなければならないのではないかという当委員会における質疑をやっておりますし、また附帯決議もつけておるという立場から、ぜひ法律案が出る前にただしておかなければならない点があります。  この対象範囲の拡大とあわせてぜひやってもらわなければならないことは、小規模事業の振興対策であるということです。いただいております資料を見ると、小規模事業に対しましては特別融資の道を考えているとか、あるいは中小商業の近代化の推進ということで中小商業振興法の制定を考えているというようなことがうかがわれるわけでありますけれども、内容を見るときわめて不十分であるというように思われる。たとえば「小規模事業対策の抜本的拡充」とあるわけですけれども、小企業貸し付け対象としては、限られたわずか百万の小企業考えている。金額にいたしましても百万円以内、運転資金は五十万円以内、こうある。貸し付け期間にいたしましてもわずか三年以内。なるほど無担保、無保証ということにはなっておりますけれども、この程度では、対象範囲を拡大し、五千万から一億と、こう広げるわけですけれども、それに相当な比重がかかってくるということになってまいりますと、対象範囲の拡大がやはり小規模企業に及ぼす影響というようなものははかりしれないものがあるのではないかというふうに感じられるわけであります。その点に対してどのようにお考えになるのか、お答えをいただきたい。  なお、お答えをいただきます前に、委員長に、与党一名も出席がありません。少なくとも五名の理事のうち一人ぐらいは出席をしていただきませんと、与党としての責任上いかがなものであろうか、御注意を願いたいと思います。
  253. 藏内修治

    ○藏内委員長 委員長から与党理事には厳重に注意をいたします。
  254. 莊清

    ○莊説明員 小規模企業に対する経営改善資金融資制度の中身でございますけれども、いま御指摘のございました貸し付け対象約百万の小企業ということで資料を提出いたしておりまするが、私どもこれの対象に考えておりますのは、ちょうど特別小口保険の対象になっておるのと同じ製造業で従業員が五人以下、商業、サービス業では二人以下というふうな、いわゆる零細小企業でございます。全国では三百五十万ぐらいあると承知いたしておりまするが、実際に予算編成を行ないます場合に、これはもう保険でも同様でございますけれども、税を納めておるというふうな要件その他で  融資対象というものを一応押えてみますと、少なくとも百万人の人に対しては、これは融資を実行したければならないというふうに実は考えて積算の基礎として使っておるということでございます。的確なものがあれば、この制度で積極的に零細企業の振興をはかっていくという基本的な姿勢でございます。融資期間も三年ということで一応考えておりますが、たとえば零細金融を主としてやっております国民公庫の場合でも、ほとんどの貸し付けがこの程度の期間で行なわれておるという点等もございまして、三年というふうにとりあえず考えておるわけでございまして、小規模企業金融につきましては何しろ対象も多いわけでございまするから、決してこれだけの制度で金融の円滑化ができるとは思っておりません。私どもは別途信用保険においては特別小口保険、無担保保険等の限度の引き上げというふうなことも予算要求いたしており、きまりましたならば、法律の改正ということでぜひ次の国会でもお願いしなければならぬと別途考えておりまするし、近代化資金等につきましても、また別途ワクの制限がございますけれども、それぞれ努力をして、全体として効果をあげていきたい、かように思っておるわけでございます。
  255. 中村重光

    中村(重)委員 この特別融資制度が中小企業経営改善資金融資制度、こうなっているわけですが、経済環境の変化に対応し、経営改善をはかる中小企業に対し、低金利かつ無担保、無保証の特別融資をするのだ、こうなっているのですが、これは構造改善資金あるいは近代化資金と同じように、近代化あるいは構造改善をはかる企業に特別融資がなされていると同じようなことを意味するのですか。この経営改善をはかる小企業というのはそういうことですか。
  256. 莊清

    ○莊説明員 おっしゃいましたような厳密な意味で、きびしい意味でのある一定の制度に乗っかって主務大臣の認可を受けた計画に従って事業を行なうというふうな意味での高度化事業等とは異なります。それよりも、表現は適当ではございませんが、どちらかといえばもう少し幅の広い運用を考えておるつもりでございまして、御案内のとおり、小規模企業に対しましては、政府としては予算措置を従来から講じまして、経営改善指導員等を置きまして指導事業を行なっております。これは必ずしも団地化するとかあるいは提携するとか合併するとかいうだけの経営改善指導ではございませんで、小さな商店がある、それが中の設備も変え、商品のそろえ方なり配列なり、そういうことを変えて、そして独立の商店なら商店なりに経営の改善をやっていくという指導をきめこまかくやっているわけでございます。この制度は、そういう経営の診断をやり、指導をする場合に、従来はなかなか金融のほうにつながりにくかったという点をこの制度でひとつ裏打ちをしていきたいという意味でございます。いわゆる高度化事業のように団地化するとかあるいは業務提携をするとか、それの計画についてあらかじめ主務大臣の承認を受けなければ融資が受けられないというふうな意味でのきつい制度のワク内の運用ではございません。もう少し幅のある、零細企業の実態に即したような運用をぜひ行ないたいと考えております。
  257. 中村重光

    中村(重)委員 いまの後者の意味でなければ私もいけないと思うのです。  いまの段階お答えをいただけるのかどうか、また禿河主計官にこのことをお尋ねしていいのかどうかわかりませんが、禿河主計官、いまの中小企業庁長官お答えに対して、大蔵省としての見解はいかがでしょうか。
  258. 禿河徹映

    禿河説明員 ただいまお話がございましたとおり、小企業の経営改善資金の融資制度という要求が私どもに参っておりますが、何ぶんにも現段階でこれについて私どもどうこうということをまだ申し上げるまでに至っておりませんのでひとつこれから十分中小企業庁と相談の上結論を得たいと思っております。
  259. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから、具体的な問題でお尋ねをしてまいりたいと思います。  予算関係は先ほど大臣に私がお尋ねいたしましたとおりでして、その際に禿河主計官御出席になっておったのかどうかわかりませんが、まだ煮詰まってはいないのでしょうが、概算要求段階で一般会計の予算は十四兆七千億、こう伝えられている。ところが、中小企業庁からあなたのほうへ出している概算要求は、中小企業に対しては七百二十六億、別に百何十億か追加として出しているというように伺っているわけです。それにいたしましても、総予算に占める比率は〇・六%、抜本的にこの中小企業、なかんずく小規模企業対策を強化していかなければならぬ、生産性の低い中小企業あるいは農漁業、この生産性を高めていかなければ物価対策にもならないし、またドル対策といったような面等からいいましても、この小規模企業の果たしている役割りという面からもっと強力な施策が必要だし、その裏づけとなる予算が必要だと私は思っているわけです。  この点に対しては、いまお答えはいただかなくてもけっこうなんですけれども、まことに不満であるという意味で、きょうは午前中大臣に、従来の七二年度の予算にこだわらないで、中小企業あるいはこの零細企業対策はどうあるべきか、またどう強化しなければならないかという観点から予算要求というものはなさるべきであるということで議論をいたしたところです。今後大蔵省中小企業庁との間に予算概算要求をめぐっていろいろと折衝が行なわれるでありましょう。私は、むしろもう出し直して、七百二十六億とか八百億とかということでなくて、数千億の予算要求をすることが適当であるという考え方の上に立ちまして、そういった観点からひとつ十分検討をされるように要請をいたしておきたいと思います。なかんずく小規模企業対策は七十七億八千万円、伸び率はわずかに三〇%、これではもうお話にならないと私は思っておるところです。  予算面で具体的な問題ですけれども、退職引き当て金というのを新規事業として要求をしておるようですが、これはいままでゼロであったわけですから、予算を計上したということは、中小企業庁の熱意は多といたします。ですけれども、一カ月分の計上すらない。たとえば七万五千円の給与が支給されている、それを数字をずっと見てみますと、退職引き当て金はわずかに一万二千八百六十四円にしかならない。この程度の退職引き当て金では、経営指導員にいたしましても補助員にいたしましても、ふんまんやる方なしだと私は思うわけですが、なぜにもう少し、一カ月分くらいの予算計上という措置をおとりにならなかったのか、この点をお答えをいただきたい。
  260. 莊清

    ○莊説明員 経営指導員等の人件費の補助でございますが、ただいまの退職金の問題を新しく取り上げましたことのほかに、いわゆる基本給と申しますか、従来から出しております手当につきまして約一七%のベースアップの要求を片一方でいたしております。そのほかに、退職金と並びまして社会保険料に対する補助につきましても、実は来年度新しく要求を出しておりまして、全体では私ども——これは先ほどからワクに縛られておるのはおかしいという御指摘があったわけでございますけれども、極力指導員にもいい質の人が得られ、そうして安定した気持ちで落ちついてやってもらいたいと思って、その第一歩として実は四十八年度要求をしておるわけでございます。私どもこれで必ずしも十分だと思っておるわけではございませんで、今後ともまたよく実情も見まして、内容の改善ということは、今後もやらなければならない課題と、十分実は承知しておるつもりでございます。来年度はとりあえず、こういう要求でございます。
  261. 中村重光

    中村(重)委員 長官、従来なかったんだから新規事業としてやるんだから、まあないよりましじゃないかという考え方は間違いですよ。これはいまあなたが最後にお答えになりましたように、身分を保障して安定した立場で経営指導員あるいは補助員としての任務を全与していく、そのためになくてはならないものがなかったんだ、だから初めてやるんだから、まあ若干つけてやろう、その考え方はいけないのであって、従来あるべきものがなかったんだから、思い切ってやはり予算をつけていくという態度でなければだめなんですよ。いまの給与の問題にいたしましても、一号俸でしょう。国家公務員あるいは地方公務員と大体同じような方向でその手当を支給していこうという考え方であるならば、ベースアップはいま同じになっているんだけれども基本給が低いのですよ。ならば、二号給くらい引き上げて初めて、国家公務員あるいは地方公務員並みまではいかないけれども、それに近いものになるということになる。だから、いまあなたのお答え、気持ちはわかりますよ。わかりますけれども、もう一度繰り返すと、いままでなかったんだから申しわけないという気持ちがあるならば、もっと思い切ってつけていく。そういうことでなければ浮かばれないですよ、経営指導員なんというのは。指導員も補助員も同じなんですけれどもね。そうは思いませんか。
  262. 莊清

    ○莊説明員 経営指導員等につきましては、人事院の公務員のベースアップが今年度一〇%強であったと記憶いたしまするが、それはもちろん取り入れ、さらにその上に現在公務員の五等級何号俸かに相当しておりますが、それの一号アップというものを加味いたしまして、両方含めて一七・何%かの単価アップというものを基本給について実は要求いたしておるつもりでございます。基本給のほうについては、これが実現いたしますとかなり改善されると思いますが、先ほどもお答えいたしましたが、いままでなかったことは確かにこれは非常に残念であった。来年度からこれをつけていきたいと思っておりますが、積算の基礎といたしましては、現在他の政府機関、たとえば中小企業振興事業団等千分の三十というふうな数字も一応ございます。それの、国としては四分の一、地方が四分の一、合わせて半分の補助をするというふうなことで、千分の三十がいいか悪いかというふうなこととも実は関係いたします。  まあとにかく、今後こういう福祉社会とか人間尊重というふうな方向でございますから、従来のこういう制度については、長期的に見てやはり前向きの検討が国全体としてなされていくということが時代の一般的な要請だろうということは、私も私なりに心の底に入れておるつもりでございます。なかなか来年度一度にとまいりませんですが、先ほども申し上げましたとおり、前向きにこういう点の改善というものは重要事項として中小企業庁としては今後も努力をするということをもう一度申し上げます。
  263. 中村重光

    中村(重)委員 歴代中小企業庁長官に対して、いまあなたのほうで新規事業として予算を計上したことを、私どもは十年一日のごとく要求してまいった。なかなかこれを要求しなかった。あなた、莊長官になって初めて新規事業として予算要求するようになったということについては、先ほども申し上げましたが、多とするのです。しかし、あえて私は時の流れとは言いませんけれども中小企業に対する経済的役割りというものは非常に大きくなってきたということです。いまや中小企業に対して、非常にこの事業者もふえてくるし、団体に対するところのこうした職員も増加の一途をたどっているのですよ。これはもう時代の要求でもあるわけですね。だから、今回四十八年度に、福利厚生費にいたしましてもあるいは退職金共済の問題にいたしましても、また一号アップの問題——これは一号俸で私は満足して一号と言っているわけではないのですが、国家公務員あるいは地方公務員並みの給与にしないということになってくると、これはたいへんな問題だ。福利厚生費の問題にいたしましても、いままで農業団体、漁業団体というものには、もう国家補助というものはなされてきたわけですよ。公的制度としていままで取り上げられてきた。中小企業のみが放置されてきておった。ようやく四十八年度からこれをやるようになったが、その事業予算は第一歩だからというので切り詰められたのでは、先ほど申し上げたように浮かぶ瀬はない、こういうことになってまいります。  いま一つ、記帳指導員は来年もまた相も変わらず謝金にしている。記帳指導員が商工会あるいはその他の団体の中に果たしておる役割りというものをどのように評価をしているのですか。わずかの謝金でもって事足りるということじゃありませんよ、この記帳指導員の果たしている役割りは。また税務当局も、記帳指導員がおりまして、十分勉強し、零細企業指導している、そのことがいかに税務当局に対して大きく貢献をしているか。課税の問題、税の徴収の問題は言うまでもないのであります。そのことを考えるならば、各団体において一カ月間経営指導員あるいは補助員と同じような給与を出して——記帳指導をやっているのだから、それならば四十八年度はもう謝金ということではなくて、せめて補助員並みの給与というものを当然これは計上し、予算要求をすべきではなかったのかと私は思う。あなたは必要がないとお考えになっているのですか。
  264. 莊清

    ○莊説明員 記帳指導ということは、御指摘のように非常に重要な、特に小規模零細企業に対しましてはこういう面の指導ということは非常に緊急かつ重要な業務であると考えておりますが、この記帳指導ということの性格上、経営指導と若干変わりまして、やはり外部の専門家等を謝金で委託をいたしまして、現在のところ千六百円程度の一口当たりの単価でございますが、来年度はそれを二千円程度へ増額はいたしまするが、専門の方を委託をして、そして月に何回か指導してもらう。そして指導を受けた中小企業のほうは、それによって次からは、一回だけではございませんが、一年なら一年指導を受けたら、そのあとは自分で一応の記帳はできるところまで指導をする、こういうたてまえにいたしております。もちろん一部には、この謝金で雇われた人が、需要が多いものでございますから、実際においては、たとえば商工会等で常勤のような形になってきておる。したがって、そういう人については経営指導員並みに固定給として定員化してめんどうを見るべきだという御要請があることも承知いたしております。ただ、それでは固定化しておる人はそういう扱いをして、そうでない人はそうするというふうなこともなかなか直ちには踏み切れる問題ではございませんし、またそういうふうにいたしますと、それをやっておりますところの商工会なり会議所のほうで、場合によってはまた全額補助がございませんから相当大きな負担になってくるとか、いろいろな運営上の問題等もございまして、明快な結論が得られておらないというのが現状でございます。  私どもは、来年は人数をふやすということと単価をもう少し実情に即して上げるということによっていい人が得られて、そして指導のほうが十分できるようにということを中心に考えておるわけでございます。  申し上げましたとおり、この仕事は非常に大切な仕事でございますので、御指摘の点等、実態などもさらによく検討し、それから記帳指導のあり方、どういう指導をどういうやり方でするか、あるいは一部では非常に手の込んだ指導をする場合には手数料的にお金を若干もらっておるというふうな、これはやむを得ないことだと思いますが、そういうことも現にございます。そういう点もよくにらみ合わせまして、最も適当な方法というのは引き続き十分検討し、勉強いたしたいと思っております。
  265. 中村重光

    中村(重)委員 現象としては、いまあなたがお答えになりましたように一カ月なら一カ月固定して記帳指導をやっていない商工会もあるのです。これは負担ができないからやむを得ずそうしている。商工会の中で若干、零細企業としても大きいほうの部類の零細企業の多い商工会、個々の企業がいわゆる負担能力のある商工会、そういったところは一人でなくて二人くらい記帳指導員が指導をやっている商工会もあるのです。ところが、もう零細中の零細のところ、そういったところはできないですね。だから国から出しておる謝金の程度でやっている。それでは指導はできないです。だから補助員並みの給与くらいを支給して、やはり固定してその指導に当たるということにしなければいけないのだ、こう言っているのですよ。だからあなたは現実をつかんでいらっしゃらない。ただ、姿だけを見て、いかにもそういうことをしたらアンバランスになるかのごとき考え方をあなたは持っているのではありませんか。もう少し実態をつかんでもらいたいですね。  禿河主計官、いかがでありますか。いまの記帳指導員の問題は、税務当局としても、その記帳指導をうまくやってもらうもらわないということは、事務的な面において円滑にいくかいかぬかということについて、私はたいへんな、重要な点もあると思うのですが、どうも大蔵省との間に話がうまくついていないのではないかと思っている。いかがでしょうか。
  266. 禿河徹映

    禿河説明員 私どものほうにおきましては、現在いろいろ中小企業庁からたくさんの御要求が寄せられておりまして、事務的に現在検討いたしておるような状態でございます。記帳指導員につきましては、おっしゃるような問題もあるということをよく聞いておりますし、あるいは現在八千何人の記帳指導員を二千人余りふやしてもらいたい、こういうふうなお話もきておりますので、各般の御要求等々にらみ合わせながら今後検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  267. 中村重光

    中村(重)委員 私が初めてこの問題を取り上げて、補助員同様固定して記帳指導員を置け、こう言っているならば、また別です。この記帳指導員制度ができた翌年くらいから毎回この問題を言っているのです。実態もある程度つかんでおられる。どうも長官がかわるたびごとに新しくなって、初めてのようなかっこうで受け取られて非常に困るのだけれども、もう少しこの問題は真剣に取り組まれる必要がある。  私は、これはうがった見方かもしれませんが、ともあれ金をふやすと人をふやしてもらえない、ともかく人で実績をつくって、それから固定した指導員を置いてもらう、そういう予算要求をしようという中小企業庁の配慮があるのではなかろうかという気がいたします。それを一面から見ると、大蔵省相当シビアだということにすぐつながってくるのだろうと思うのですけれども、必要な人員は確保する、必要な手当は支給する、こういうことでひとつやってもらわなければいけないですね。零細企業対策として私は重要な役割りを果たしておると思いますから、この点についてはこれで終わりではなくて、予算折衝段階において、ふっと正式に提案された予算の内容を見たところが、これは謝金ではなくて一カ月分のいわゆる固定給与という形になっておった、こういうことに私どもが拍手をもって迎えるようにぜひやってもらいたいということを要望として申し上げておきます。  それから環衛金融公庫の融資は、これは中小企業であることに変わりはないのだから、当初は大蔵者特金課がこれは所管でありますけれども中小企業予算の中にちゃんと入れておった。それで横の連絡が十分できておった。ところが、いつの間にかそれが消えてしまって、生鮮食料品近代化融資制度だけが——これはまあ国民金融公庫だけで融資をするという関係で、これが予算の中に出てくる。予算というのか、これは財投になっているわけですけれども、環衛公庫はそうでなければだめだ。もう少し中小企業庁は、中小企業であることには変わりはないのだから、関心を持って予算要求の問題にしても側面から協力をする必要もあるだろうし、関心を持つために資料の中にもこれを入れてもらうということにしてもらわなければならぬじゃないかという私の主張に対して、そうするという答弁が返ってきている。依然として環衛金融公庫の財投の関係というものは出ていない。この点どうお考えになっているのか、どの程度の貸し付け規模ということになっておるのか、この点をひとつお答えいただきます。
  268. 莊清

    ○莊説明員 環衛公庫の貸し付けの中で、いまお話のありました食肉店とかその他の生鮮食料品の流通関係に対する近代化資金は、これは商業対策というふうな見地も、もちろんスーパー対策等ございますが、物価対策という大きな柱もございますので、これについては十分考えて、厚生省とも連絡をとって、国民金融公庫の中で大幅な増額というものをすることにいたしておるわけでございます。  全体のその環衛公庫の資料というものにつきましても、私も従来の経緯は存じませんが、やはりそういう資料としても取りまとめるということは、なるほど御指摘のとおり、私いま拝聴いたしまして、そういう資料もまたつくりましてお届けをするということにさっそくいたしたいと思います。
  269. 中村重光

    中村(重)委員 末端で混乱をしているという事実を御存じないと思うのです。中小企業庁がこれに関心を持って要求等やっておりました当時は、商工会とこの環衛団体というものは一体として運営されておったのです。ところが、全くいまは中小企業庁を離れてしまって、厚生省、大蔵省ということになってしまったのですね。商工会の中に入っても意味ないという形で環衛団体というものは商工会から離れていくのですよ。それでもう末端には非常に数少ない。農村地帯におきましては、零細企業ですから、強力な指導もできなければ、運営もできないのですよ。そのようなことをお考えになるならば、もう少し中小企業庁は——環衛事業といえども中小零細企業であることには変わりはないのですよ。散髪屋さんやパーマ屋さんや、いまおっしゃるように肉屋さんとか、それから、まあ十六団体の業者を一々私申し上げませんけれども、もう少し一元化した運用というものが必要であろう、私はそう思うのです。あなたのほうがそれだけの熱意をもって、やはり生鮮食料品等小売り業近代化貸し付け、これに一緒に環衛団体というものを並べて、そうしてやはり調査もするとか横の連絡も十分とってやる、そういうことをおやりにならぬから、中小企業庁はある省によっては手が届かないというようなことになって、中小企業の行政というものが強力に推進されないということになる。やはり自分のほうから飛び込んでいくというくらいの情熱がなければ私はだめだと思うのですよ。大蔵省はそういうことはだめだなんということは言わない、やはり横の連絡を中小企業庁全般として見ていこうじゃないか、そういう態度に大蔵省だってなるんだろうと私は思うのです。そこの取り組みが弱いということを指摘をいたしておきたいと思います。  それから国民金融公庫の貸し付け限度額、これは一千万円までに当然引き上げなければならないし、償還期間というようなものも、もう今日十カ年程度にしなければならない。利率も七分七厘ではなくて、特別融資は六分五厘にしておりますけれども、国民金融公庫の融資は七分七厘から少なくとも六分五厘くらいにこれを引き下げるということが必要だろう。六分五厘にならなければ、せめて七分、民間金融機関よりもさすがに政府関係金融機関は低いんだということにならなければ私はいけないと思うのです。その点どうお考えになりますか。
  270. 莊清

    ○莊説明員 国民金融公庫につきましては、限度、それから貸し付け期間とも、ただいま御指摘のありましたような方向大蔵省に申し入れを実は行なっております。  金利の点でございまするが、八月一日から七分七厘ということでございます。国民公庫の場合には無担保貸し付けという制度もまた中に別途小口であるわけでございまするが、全体としては七分七厘というのが基準金利になっております。ただ、国民公庫の貸し付け期間というのは、運転資金につきましても、御案内のように市中銀行よりも相当長期のものが主体に相なっておりまするので、必ずしも市中銀行とぴったり同じということにもまいらないかと存じますが、来年以降も国民公庫を通ずる特別の零細企業融資等は六分五厘にし、これも初年度、次年度というふうに相当ワクを拡充いたしまして、公庫の対象になっておる零細企業というものに対しては、実質的には全体としての金利が極力下がるようにという方向で善処いたしたいと思うわけでございます。
  271. 中村重光

    中村(重)委員 七分七厘というのは、午前中あなたがお答えになりましたように、これは限度一ぱいだというようなお答えであったわけだ。資金運用部資金というものの利率関係からそういうことになり、逆ざやになるからやむを得ないということだろうと私は思うのです。それならば、なぜに国の出資をふやさないのかということです。国の出資をふやす、そうなってくると、この資金運用部資金とこれを一結にすることになるからそれだけ金利は引き下げられることになるのですね。だから資金運用部だけでもって計算をしてこれ以上下げられないということになりましては——これはまた資金運用部資金を下げることになれば、郵便貯金の金利を引き下げるとかなんとかいうような形になってくるでしょう。今日物価高の中で貨幣価値は下がっている、そういう際に零細な郵便貯金の金利を引き下げるというようなでたらめなことをやらなければならないということになってくるわけですね。なぜにドルはあり余って困っているというときに、中小零細企業あるいは農業とか漁業、そういったような方面に、先ほどから何回も申し上げるように、もっと生産性を高めるために思い切った国の施策を講じないのかということです。一般会計から出資すればいいじゃないですか、保険公庫にしてもこれは出資してやっているわけだから。国民金融公庫だって、商工中金だってできる。中小企業金融公庫だってできるわけです。そうすると薄められるでしょう。あなたが第一もうどうにもならないのだというようなあきらめの気持ちがあるのじゃないですか。
  272. 莊清

    ○莊説明員 金利の問題というのは非常に重要な問題でございまするから、中小企業庁としても重点を置いて考えてまいったところでございます。国民公庫というのは、中小企業の中でも一番零細層に対して主として長期の運転資金を供給するという機能を果たしております。中小企業でも規模が小さいほど最も必要な資金はこういうやや長期の運転資金でございます。  そこで国民公庫の金利を全部一度に下げるというわけにもなかなかまいりませんが、先ほど申し上げましたように、そのうちでも特に零細層に対しましては、来年度以降、小規模企業の経営改善資金制度というものをつくりまして、財投資金も来年度五百億をそのために予定いたしておりますが、別途それとあわせて百二十億、これは一般会計からの貸し付け金でございますが、これによって原資も確保するし、あわせて零細金融制度の金利も六分五厘というところまで薄めて下げるというふうなことを実は考えておるわけでございます。  政府系三機関全部金利一%下げるというだけでも二千数百億円ぐらいの新規出資ということが計算上は必要になろうかと思います。貸し出しの残が相当高水準にふえてきておりますので、なかなか大きな機関になっておりますから、全部を一度にということは実際問題としては、決して弱気で申すわけではございませんが、最も緊要なところから、効果の強くあらわれると思われるところに重点を置いて施策を講じ、実質的には金利を下げるというふうに努力をいたしたいと考えております。
  273. 中村重光

    中村(重)委員 長官、説得力がないのですよね。中小企業の定義が資本金五千万、三百人はそのままであって、特に零細企業対策として特別融資制度というようなものを考えて六分五厘にしたのだというならば、これはある程度説得力を持ちますよ。しかし、中小企業の対象範囲を拡大をして、資本金を一億まで広げるのですよ。その拡大された中堅企業というものも政府関係金融機関から融資を受けることができる。絶対量の貸し付け規模はこの程度でもって、中小企業に対するところの犠牲というものは非常に強まってくることになる。それをあなたがある程度薄めなければならないということから、私どもの附帯決議等を尊重という形になったのだと思うけれども、特別融資制度を考えた。しかし、それは三百万近い企業の中でわずか百万を対象にしている。そして金額にいたしましても、五十万とか百万。運転資金は五十万でしょう、設備資金が百万、そういうことをもって非常に前向きで考えたといっても、中小企業はそれじゃ喜んでいい施策を講じてもらったといって感謝するでしょうか。貸し付け規模といったって、この資料で見ましてもわずか伸びているにすぎないでしょう。こういうことでは中小企業の金融というものはやわらがない。むしろ対象範囲を拡大したことによって圧迫されるという点が強くなってくる、そのように私は考えているのです。だからあなたのお答えは強い説得力を伴わない、こう申し上げざるを得ないのです。  たいへんどうも苦言ばかり申して恐縮なんだけれども、事実は事実だから指摘せざるを得ないのです。いま概算要求をやったばかりのときですから、内容はまだ十分改めるだけの時間的余裕はある。ひとつ大いにふんばって、きょうの質疑がむだにならないように対処してもらいたいということを要請しておきたいと思います。  大蔵省と自治省には突然出席を要請いたしまして恐縮であったわけでありますが、時間の関係もありますから簡潔に三、四点お尋ねいたしますからお答えいただきたいと思うのです。  まず大蔵省の山内総務課長にお尋ねをいたしますが、個人事業主の報酬制度というのはもう答申があったのでしょうか。あったら、内容がどうなっているのか、お答えいただきたい。
  274. 山内宏

    ○山内説明員 いわゆる事業主報酬の問題につきましては、すでに何度か議論を重ねてまいったわけでございますけれども、なおまた本院におきましても、たとえば竹本孫一議員から政府に対する質問書の形でお尋ねをいただいております。政府の現在のたてまえは、その質問書に対する答弁においてお示しをいたしておるとおりでございますけれども、なおその中にも書いてございますように、この問題は、たてまえとして事業主報酬を認めることの可否、これについては法律上、それから実質的な負担のバランス上非常に問題が多いので、それをそのまま採用するということはおそらく非常にむずかしい問題であろうと思いますけれども、同時に、他面いかに中小企業の税負担のバランスをとるかということについては、これは前々からもそうでございますし、今後においても十分に検討を重ねる必要がある問題でございますので、そういった問題を中心といたしまして、現在私どもでは政府の税制調査会に議論をお願いしております。これはまだ議論の途中の段階でございまして、現在のところ、まだ結論が出ておりません。  以上でございます。
  275. 中村重光

    中村(重)委員 後段お答えになりましたように、事務当局としては、個人事業主報酬制度は何とか実現をしなければならないという考え方の上には立っておられますか。
  276. 山内宏

    ○山内説明員 事業主報酬という形の問題の取り上げ方としては、われわれは否定的に考えております。と申しますのは、先ほど申しましたように、たとえば、ここに先ほどの竹本議員の御質問に対する政府の答弁書がございますけれども、その中で、かいつまんで申し上げますと、一つは経済的実態が全然変わらないにもかかわらず、事業主みずからが事業主に報酬を払うという仮説と申しますか、擬制と申しますか、そういったものをとることによって税負担が変わる。それもその擬制のとり方が、自分自身としては、事業主としての報酬が百万であると考えるのと、百五十万であると考えるのと、ただ頭の中で考えることによって税負担そのものが実質的に違ってくるというのは、どうにも説明がしずらいのではないか、こういうことを書いております。  それから、そういうふうな理論的な問題はさておいて、かりに事業主報酬を導入いたしますと、事業主報酬の部分については、たとえば給与所得ということで課税するにいたしましても、その事業主報酬を除きました他の事業所得の部分についてはいかような負担を求めるのか。それから、たとえば事業部分の財産と、それからほんとうの純粋の個人と申しますか、家計に属する部分の財産とをどういうふうに区分けをするのか。その辺のところが実務的にも非常にむずかしい。むしろ事実上解決が非常に因難であるような問題が多いわけでございますから、そういった事業主報酬ということと、そのものを受け入れるという方向では、現在われわれは考えておりません。  ただ、先ほども申しましたように、中小企業の税負担、特に個人事業と法人事業の税負担のバランスというものを終局的にどういうふうな形でとるのが適当であるかということは、これは常に古くして新しい問題でありますし、われわれといたしましては常時チェックを怠るわけにはいかない問題でございます。特にこの問題を契機といたしまして、その点についてあらためて深く見直すという意味で税制調査会にお願いしておるということでございます。
  277. 中村重光

    中村(重)委員 むずかしいといえばむずかしいが、技術的な問題だから、あなた方のように専門家ですぐれた頭脳を持っている者がやろうと思えば、これはできるのですよ。現実に見込み課税をしているわけです。これは大企業とか法人のように計理士に事を頼めばいいといったようなことではあるかもしれませんけれども、なかなか勤労性の零細企業というようなものは、申告などというむずかしいことは実際やりにくいし、やれないという実態だってあると思うのですね。また、大企業なんかのように、交際費であるとかいろいろなものを経理操作がきちっとできていないから、私は、実質的な税というものは相当高い税金を納めているということになるだろうと思う。せめて事業主報酬というものを、何十%ということになるかわかりませんけれども考えてやらなければいけないんじゃないか、技術的なことはそうむずかしいことではない、私はそう思うのです。だから、あなたがおっしゃるように、事業主報酬制というようなことではなくて、中小企業の税負担という点から何か考えていかなければならないということのようですけれども、さればといって、それじゃどういうことで考えられるのかということになってくると、これまたなかなかむずかしいですね。だから、法人の場合は、法人税率というものをぐっと落としていくということも考えられるでしょう。それじゃ個人の場合はどうするのかということになってくると、所得税というものを賦課せられる場合に、所得税というものをぐっと税率を落としていく、いろいろなことで全くできないことではないかもしれない。ですけれども、全体のバランスという点からそれのほうがかえってむずかしくなってくる。むしろ事業主報酬というものを何%か何十%ということにされることのほうが簡単にできるんじゃないですか。そう思いますが、しかし、これは検討する余地はあるのでございましょうから、十分検討して、個人事業の税負担を軽減するということで強力に推進をしてもらいたいということを希望したいと思いますが、もう一度お答えをいただきます。
  278. 山内宏

    ○山内説明員 御趣旨はまことによくわかるのでございますけれども、ただ、この問題は具体的に申しますと、事業主報酬を認めるということは、結果的にはどうなるかということでございますが、それは事業所得者について給与所得控除を認めるという結果になるわけでございます。御存じのとおり、給与所得控除と申しますのは、これは事業者には従来全然認めておりません。なぜかと申しますと、これはサラリーマンについてだけ認める制度でございまして、サラリーマンがいわゆる被用者、雇われる立場に立って、そういう弱い立場のもとにおいて給料を稼得しておる。その稼得をした給料の、所得の弱さと申しますか、そういったものに着目をしている点が一つ。それからもう一つは、サラリーマンの経費を一々個別的に判定をするのが困難でございますので、そういった形で概算的にいくという性格と、そのほかいろいろございますけれども、大きく申し上げますとその二点が主要なものかと思いますが、そういう意味で、人に雇われておるサラリーマン、会社とか個人とかでございますが、そういったものに雇われておるサラリーマンに特有の控除ということで給与所得控除を認めておるわけでございます。  いまお説のように、事業所得者に事業主報酬を認めろということは、結局は事業所得者にもサラリーマンと同じように給与所得控除を認めろという結果になるわけでございますけれども、そういうふうにいたしますことは、現在のサラリーマンと事業所得者の税負担のバランスを大きく変えることになります。つまり、サラリーマンのほうは全然得るところがないのに対して、事業所得者のほうは現在の税負担が給与所得控除分だけ大幅に減殺されることになりますから、そういう変動がはたして適当なものかどうか。むしろわれわれは、いまここでそういった自分自身被用者でもなければ何でもない、みずから自分の事業のオーナーとして働いておる事業所得者について見れば、そういったサラリーマンと同じような意味での給与所得控除を認めるのではなくて、もっと別な形で事業所得者の負担の軽減をはかっていくという方向はなかろうかということで現在考えておりますので、再三くどいことを申し上げて恐縮でございますけれども、そういう意味合いでこの問題は非常に解決がむずかしい問題であるという点だけはひとつお含みを願いたいと思います。  なお、お話でございますので、われわれも今後さらにいろいろな点において検討いたしますし、また、先ほどから申し上げておりますように政府の税制調査会においても十分な検討をいただいておりますので、なお今後の問題として考えさせていただきたいというように考えます。
  279. 中村重光

    中村(重)委員 現行法からいったら、あなたが言われるようにあちこち壁にぶつかってくるということだと思うのですよ。しかし、個人事業主は頭脳労働者であると同時に筋肉労働者であるということです。ですから、何とかしてやらなければいけないということですね。いまあなたがお答えのようなことを厳密に解釈すると、地方税の個人事業主控除の問題にしたって、それは疑問というものが生まれてこないとは言えない。私どもは、個人事業税というものは二重課税の弊があるからこれは撤廃をしろ——あとで山下審議官にお答えをいただくのでありますけれども、これは撤廃しないで、個人事業主控除三十六万から四十七年度に六十万まで控除額を拡大しておる、四十八年度はまた何か考えるということだろうと思いますけれども、名目だってこれは個人事業主控除制度、こうなっているのですね。  いま申し上げたように、事業税を撤廃しないということで、これを軽減するということにつながってくるのだろうと思いますから、個人事業主報酬制度とは若干違うということは私も理解はいたします。いたしますが、重ねてお答えは要りませんけれども、申し上げたように、ともかく何とか軽減していかなければならぬということだけは事実であろう。ですから、やはりどういう方法で軽減をするか、そのことを十分検討して、軽減措置を講じておかなければならぬ。この法人の場合は、法人か個人かというようなだけで、実態は少しも変わらない事業体というものが多いわけですね。法人のほうがむしろ事業規模が小さくて、個人のほうが事業規模が大きいというものだってある。しかし、法人にしているから給与制度が認められる、個人の場合はこれができない。さればといって、個人事業主であるから収入が多くて自由にふところに金を入れているのかというと、そうでもないですね。やはりそういう実態を十分踏まえて対策を講じてもらわなければ、むずかしいということだけでは問題の解決にはならない。  しかし、何回もお答えをいただきましたように、あらゆる角度から検討している、前向きでやる、こういうことでありますから、そういうことで理解をいたしますが、事業主報酬制度というものを踏み切ることはむずかしいことじゃない。問題はおっしゃるように理解いたしますけれども、これを踏み切ることはやはり可能である、そう思います。  それから、協業組合とか企業組合の法人税率と協同組合との税率は同率にすべきだという考え方の上に私は立つのです。ただ、協業組合ということになってくると、片や共同事業、片や個人事業というものができるということで、協同組合と同率にはできないというような理解もできないではない。実は裏話をいたしますと、藏内委員長を団長といたしまして私どもは現地視察をやりました。その際に、これを撤廃しろということを強く要求された。そのときに私は、協業組合は半ば共同事業、半ば個人事業ということによって、製造加工面においては共同事業であるけれども、販売面は個人でやっているのだから同率にはできないのだ、まあ役所の立場に立って答弁をするようなかっこうだったのですが、私は、この協業組合が一般の民間法人と同じような税率ということには問題がある、協同組合と完全に同率でなくても、これを引き下げる必要があるであろう、企業組合の場合はこれは若干違う、ある意味においては最も共同化の典型的なものであるというふうに考えます。したがいまして、企業組合というものは協同組合と同率に税率を引き下げるということが当然である、そのように考えますが、この点についてのお答えをひとつ伺いたい。
  280. 山内宏

    ○山内説明員 釈迦に説法みたいなことで申しわけないのでありますけれども、協同組合の場合は、これは組合員そのものが依然として一つの企業体である立場を失わずに、その事業の一部を共同して運営をするという立場にあるのが協同組合であろうかと考えております。それに対しまして、先ほど御指摘企業組合にいたしましてもあるいは協業組合にいたしましても、これはいずれも企業者としての立場はもう全く失いまして、単なる企業組合なり協業組合の一員という立場に立っておるわけでございますので、逆に申しますと、企業組合なり協業組合というのは、それ自身一個の企業体として完全に活躍をいたしておるものでございます。協同組合というのは、いま申しましたように、そのそれぞれ独立のメンバー、独立の企業体としての地位を持っておりますメンバーの事業の一部を共同して遂行するという立場にございますので、そういう意味で、その企業体としての性格が全く違うのではなかろうかというのが現在の税法上のたてまえでございます。  この基本的な問題につきましてはまたいろいろ御批判もございましょうと思いますけれども、われわれといたしましては、そういう形で、その前身はともかくといたしまして、現在の形としては、明らかに一つの企業体として何らの制約なく活動できるという企業につきましては、やはり通常の法人としての法人税を負担をしていただくというのが事柄として最も適当であろうかというふうに考えておる次第でございます。
  281. 中村重光

    中村(重)委員 姿としてはあなたのお答えのとおりでしょうね。協同組合の場合は協同組合自体で一つの事業をやる、そしてその構成員は個人個人が事業をやっておるわけです。しかし、企業組合は、おっしゃるように個人事業というものから離れて、お互いが一つの組織の中に企業組合としての事業をやっている。協同組合は若干違うのですね。製造部門、加工部門ということのみを共同化する、そこでものを製造し、加工したもの、その販売事業というのは個人がやっている、その点違うですね。ところが、税率は一般の民間法人と同じになってくる。やはり若干これは無理がある。あまりそういうような窮屈な解釈をされると、国は、中小企業庁は、協業組合を盛んに推進している。そうすると足踏みをすることになります。企業組合というものも、これは共同化、企業合同という方向については、これは国策ですよ。やはりその国策に沿ってやろうとしているんだから、むしろこれを奨励するという方向でなければならない。それを大蔵省が税の面でチェックするということになってくると、中小企業庁の企業合同とか協業化の方向を推進するのをむしろ阻害するという役割りを果たすことになりかねないと私は思うのです。だから、そこのところは中小企業庁とよくお話し合いになって、やはり実態を踏まえておやりにならなければ、あまり形式論に走り過ぎると、これはせっかくの国策が国策ということにならない、こう思います。  私も実態をとらまえて実は問題提起をしているつもりですから、その点、これももう何年間同じようなことを実は申し上げておりますが、一向前進しないですね。私の言うことはこれはもう問題にならないというようなことであれば、そのとおりきっぱり言ってほしい。しかし、少なくともわれわれ委員会の中で議論をいたしますが、私の主張に対して与党の諸君といえども否定的ではないと私は思っております。だから、大蔵省だけは耳をかさないということはいかがなものか。検討する用意はございませんか。
  282. 山内宏

    ○山内説明員 どうも非常に追撃が急なので、私も御返答に窮するわけでございますけれども、私どもは、先ほども申しましたように、やはり利潤追求を至上目的とする団体と、それからそうでなくてメンバーの共同の利益のために、利潤追求そのものでなくて別の目的で設立をされております団体とは、やはり異なって扱うのもしようがない。しょうがないと申しますのは、はたして協同組合を普通の法人に比べて特に軽減をしなければならぬかどうかという点については、なお若干私どもは疑問を持っておりますけれども、しかしそこは協同組合の性格から見てある程度しようがないのではないかというふうに考えている程度でございまして、協業組合なり企業組合を、若干疑わしさを持っているところの協同組合並みにするという気持ちはわれわれは持ち合わしていないわけでございます。その点、まことに先生の年来の御議論と見解を異にして残念なのでありますけれども、いま御指摘のように、先生のほかに通産省からも本年は——本年だけではありませんが、本年もそういう趣旨の御要望が出てきておるように拝見をしておりますので、いずれこれはまた来年度の税制改正の問題として検討はいたしますけれども、年来のいろいろ熱烈な御要望がありながら、結局われわれが踏み切れなかったゆえんのものは、いま私どもが申し上げておるようなことなんでございますので、その辺のところは非常にむずかしいと御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  283. 中村重光

    中村(重)委員 どうも特権官庁のような気がしてしようがないのだけれども、それはちょっとかたくなだと私は思う。これは足して二で割れと私は言わないけれども、いまのいわゆる民間法人の国策に沿って、企業合併とか合同、そういう方向で進むとか、協業化——協業化だって、これは中小企業庁が最も適切な施策であるとして踏み切ったのです、協業組合というのは。それで私もこの問題についてはずいぶん質疑を展開したのだけれども、まさか税率が民間法人と同率になるなんということは全く考えなかったのです。ふたをあけてびっくりということなんだけれども、これはやはり十分検討されて適切な道を見出していく、そういう姿勢がなくちゃならないと私は思いますね。いま幅をもって対処するかのごとく、そういう印象もあったのだけれども、否定的なほうの声が若干大きかった。それは適当でないと思うのです。中小企業庁と十分話し合いをやり、また私どもの議論に耳を傾けて、そして答えがどう出るかはわかりませんけれども、きわめてみんなが納得のいく方向で結論を出す、そういう態度であるのかどうか、いま一度お答えをいただきたい。
  284. 山内宏

    ○山内説明員 非常に熱烈な御要望でございますので、その趣旨を体して今後も研究いたします。
  285. 中村重光

    中村(重)委員 私は、いまあなたの言質をとるのじゃないのですよ。これは、陳情これつとめるということではない。正しいという考え方の上に立って議論を展開しているということだけは、ひとつ十分念頭に置いていただきたい。  それから、これは自治省のほうになるのだと思うのだけれども、商工会なら商工会等の団体の住民税、それから商工会館というのを中小企業庁は奨励をしているのです。これに対して登録免許税というのが取られるのですね。それから不動産取得税というのがかかる。これもいかがなものだろうか。たいした税収ということでもないので、せっかく中小企業庁が中小零細企業の振興のためにということで、おそらく民間団体が会館等をつくるのに国が補助金を出してつくらせるなんということはいままであまりなかったのだと思うのですが、商工会というものの重要な役割りということを認識して、会館建設のための補助金を国と県が支出をする、そういうことになってきたわけです。いま申し上げたように、登録免許税、不動産取得税、こういったことは私は適当ではないのじゃないか、これは当然廃止すべきであると思うのですが、いかがでしょうか。
  286. 山内宏

    ○山内説明員 登録免許税は国税でございますので、私どものほうからお答えをさせていただきます。  御承知のとおり、登録免許税の性格は、いろいろいわれておりますけれども、その最も大きなものはやはり登録に伴う手数と申しますか、登録に伴う特別な権利の創造に着目をして課税をいたすものでございますので、原則としてはまけるということをいたしておりません。ただ、異なる性格によりまして、非常に公共的な性格の強いものについては個別にそういう扱いをいたしておるものもございますけれども、これはそれぞれの団体ないしは事柄の公共性、緊急性にかんがみているものでございます。  いまお話しの点につきましては、従来私どももあまり検討したことがございませんので、来年度の税制改正として、他のもろもろのそういった登録免許税の軽減とのバランスを考えつつ検討させていただきたいと思います。
  287. 山下稔

    ○山下説明員 不動産取得税の減免につきましては、現在個々の実態に即して検討いたしました結果、税の負担の公平の確保という点等とバランスを失してもやむを得ない、そういう判断がついたものを検討いたしまして非課税の扱いにいたしております。そういう観点から、いま御指摘の問題については、いままで負担の公平というような点も考え合わせまして非課税にいたしておらないわけでございます。
  288. 中村重光

    中村(重)委員 いまはどうしてかということを言っているんじゃなくて、非課税にしたということは私は知っておって尋ねておるのだ。だから、これは非課税にすべきである、住民税も不動産取得税も。だから、いまやっていることだって減税したり免税したりということで前向きで対策は講じられているんだから、いまの線から一歩も出ないということだったら何も質問する必要はないんですよ。だから、言っていることが適当ではないというお考えの上に立っているのかどうかということです。
  289. 山下稔

    ○山下説明員 いままでもそういう趣旨の御要望を承ったこともございますが、先ほど申し上げましたような趣旨で、いままでは非課税の措置を講じてきておりませんでした。そういう趣旨が従来と変化がきているかどうかということになるかと思います。目下のところ、私どもいままで非課税にしなかった事情は、変わっていないと考えてきているわけでございますが、いま先生の御意見もございますので、将来そういう見地から必要があるかどうか検討いたしたいと考えます。
  290. 中村重光

    中村(重)委員 商工会館を国とか県が補助金を出して建設をする前であると話はまた別ですよ。国が商工会館建設に対して補助金を出したのは昨年か一昨年か、その程度でまだ歴史は浅いですよ。だから、前に商工業者がみずから金を出して会館を建設をしたということと、いまのように国や県が補助金を出して公共事業的な形で扱ってきたということとは事情が別なんだから、現在の状態の中でどうするのかということを私は聞いているわけだ。
  291. 山下稔

    ○山下説明員 補助金を新たに出すことになったということは、公共性を認めた結果であろうということは、私もよくわかります。そういう点では、従来と事情が変わってきたということもわかります。ただ、国庫補助を出したというような性格のものがほかにもございますので、単に国庫補助が出るようになったというだけで判断するわけにもいかないと思いますので、そうした事情も含んで、ほかの事情考え合わせて総合的に検討いたしたいというふうに考えます。
  292. 中村重光

    中村(重)委員 まじめに答弁されるのだから、別に答弁に対して私も食ってかかろうとはしませんけれども、ただ、あなたの答弁を聞いていると、いかにもしゃくし定木で、よほど前からいまの公共性を持った会館建設であったかのような印象にとれるような答弁がなされた。そうなってくると、それじゃ非課税扱いにしているのはどういうものがあるかということをお尋ねをしなければならないということになってくるわけですね。それで、そういう問題を中心にして比較論争をしなければならぬということになると時間が幾らあっても足りないということになる。ですから、あとで、そういう公共性というようなものを持ってきたというその事実にかんがみて、だから検討するというようなお答えですから、これできょうは質問をやめますけれども、いまの私の指摘に対して、違えばおっしゃってください。検討するというようなことでないのかどうかですね。だから、そういう公共性を持ってきたというようなことなんだからと、そういうことでこれは十分中小企業庁とも話し合い、あるいはいま非課税扱いにされているもの、そういうものとよくにらみながら検討するという意味のお答えであったと私は受け取っておるのだけれども、それは違うかどうか、もし違うのだったらお答えをいただけばよろしい。
  293. 山下稔

    ○山下説明員 補助金が出されているというだけの理由で、いままで非課税にしたものも必ずしもそれだけの理由で非課税にしたわけではございませんので、それだけの事実で非課税にすべきだという結論にはならないであろうと思います。それも含めまして、公共的な性格を考えるという点と、それによって課税の公平が犠牲になるという点と比較考量しなければならないと思います。確かにほかにも現在不動産取得税を非課税にしているものがございます。そうしたものは、同じ建物であっても一つのものは課税され、一つのものは課税されないという税だけの面から見ると均衡を失するということだけは事実でございますので、そういう均衡を失してまでも非課税にすべきであると判断できるほど公共性が高いかどうかという見地からの検討になるであろうと思います。いま御指摘のように、すでに非課税になっているものも検討するときの一つの参考になるであろうというふうには考えますが、そうしたもろもろの事情を総合的に勘案いたしまして、非課税にすべきであるかどうかを今後検討いたしたいという趣旨でございます。
  294. 藏内修治

    ○藏内委員長 米原和君。
  295. 米原昶

    ○米原委員 私は、工業再配置の問題だけにしぼって若干伺いたいと思います。  六十八国会における工業再配置促進法案の審議にあたって、わが党は、この法案が地方自治体や中小零細企業を無視して大企業の利益のために使われる危険性のあることを指摘しました。それ以降の財界の動きや地域指定のための通産省の線引き案をめぐる事態の経過は、この指摘の正しさを証明していると思うのであります。  そしてこの法律の施行が数日後に予想される今日の段階では、これによって起こるであろうさまざまな複雑な問題について検討しなければなりませんが、本日は、そのうちの緊急に対策を立てるべき問題の幾つかについて伺いたいのであります。  まず初めに、工業再配置促進法第二条による地域指定のための線引きについて伺いたい。  八月中旬に通産省から各都道府県に意向の打診があり、その意見が集約されつつあるときでありますが、特に、移転促進地域については、京都市それから先ほども話が出ておりました東京都、川口市などの意見を見ると、自分たちで一定の計画を持って町づくりをやっているのに、移転促進の一律指定は認められない、指定の返上をしたいという点で共通しているようであります。  わが党は、この再配置法のみならず、工業開発地域開発を進める場合は地方自治体、地域住民の意見を尊重すべきことを主張してきましたが、今回の線引きの問題もこの点がたいへん重要であると思うのであります。したがって、線引きは、まず各地方自治体が原案をつくって政府に提出し、そこで全国的な調整を行ない、さらにそれを各地方自治体へ戻して調整し、同意を得ることにすればよいわけであります。そんなことをしたのでは時間がかかってしかたがないし、地域の主張ばかりで調整がつかないというような意見があるかもしれませんが、国土の開発は、そのように多少の時間をかけても民主的に定めらるべきものであると考えます。この根本的な点についてどう考えておられるか、この促進法を施行していく場合の一番重要な点だと思いますから、その点について意見を聞きたい。
  296. 三枝英夫

    ○三枝説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、線引きにつきまして通産省といたしまして作業をやっているところでございますが、工業配置法によります線引きにつきましては、全国的な見地に立ちまして、主として太平洋ベルト地帯から、過疎に悩みます北海道、東北あるいは裏日本、九州、四国というようなところへ、大きなゾーニングとして工場の移転をはかっていく、全国的に第二、第三次産業の平準化をはかるということによりまして、過密と過疎との同時解決をはかっていこうというねらいにあるように私考えておるのでございますが、その際に、やはりそういった線をいかにして実現するか、これは国としての一つの大きなねらいをもって考えるということがまず条件でございますし、同時に、それが国だけの意思ではなくて、地元にも受け入れられるということでなければならないかと存じております。したがいまして、まず当方といたしましては、ただいま先生の御指摘のとおり、八月中旬ごろ、一応たたき台としての、国としての立場で考えましたこの線引きの原案というようなものを、通産局を通じまして各府県、市町村に流しまして御意見をいただき、これを現在調整中ということでございます。かなり煮詰まってきた形のものもございますが、なお大きく問題を残しているところもございます。したがいまして、今後とも、先生指摘のように、地方自治体のほうの御意見は十分に尊重いたしまして、国の方針としてのこの再配置法の線引きというものとのすり合わせを十分にやりまして、具体的な結論を得たいというふうに考えております。
  297. 米原昶

    ○米原委員 いまの御答弁ですと、地方自治体の意見——もちろん国の意見考え方を知らせるのは当然だと思うので、自然発生的に地方自治体だけで国の全体の国づくりの計画を立てるのではありませんから、その点はいいと思うのですが、しかし、実際には地方自治体に押しつける形になってきているのじゃないかという点で問題があると思っているのです。そういう点で、いまの御答弁だと、では、地方自治体が一定の見解を持って案を立ててきた場合、それを十分尊重して必ず納得を得た形でやるということは保証できますか。
  298. 三枝英夫

    ○三枝説明員 移転促進地域につきましても、誘導地域につきましても、それぞれ地元から多数の御意見をいただいてございます。ただ、これを全部そのまま受け入れるということでは、また全般的な、先ほど申し上げましたような趣旨が場合によっては貫き得ないというような事態も考えられますので、そこはやはり地元と十分お話し合いをいたしまして、御納得を得た上でやるというような形に努力をいたしたいというように考えております。
  299. 米原昶

    ○米原委員 それでは次に、先月十三日の本委員会で、わが党の谷口議員の質問に答えて中曽根通産大臣は、来年度予想される再配置税の課税については、中小企業、零細企業には例外を設ける、都市の特殊性という面も検討するというような旨の答弁をされました。先ほども同僚議員の質問に対して通産大臣は、中小企業を自分は保護する立場に立ってやるんだということを繰り返されましたが、しかし具体的な面がまだはっきりしていないのです。ですから、あの答弁以後、政府としてどんな検討をされたか、その中身が大体どういう方向に向かっているかということを聞きたいのであります。
  300. 三枝英夫

    ○三枝説明員 工業再配置税の問題につきましては、御承知のとおり、まだ通産省としても最終結論ということにはなってございませんで、現在鋭意検討を進めておるという段階でございます。  前回の委員会で大臣が答弁申し上げました等の事情は十分考慮いたしまして、現在検討を進めてございまして、特に中小零細企業あるいはその地域でなければ成り立ち得ないような特殊性につきまして、これはやはり積極的な配慮というものを払わなければならないという前提で考えるということにいたしてございます。ただ、その辺がどの線までであるかという具体案につきましては現在検討中で、まだ結論を得てございませんので、本日はお答えいたしかねます。
  301. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、いまおっしゃった中小企業、零細企業あるいはその地方特有の伝統的な地場産業というようなものは、率直にいって課税対象からはずすべきだと私たちは考え質問したわけですが、中曽根通産大臣も大体そういう趣旨には賛成のような答弁だったわけですが、大体それをはずされる方向で話は進んでいるんだと理解していいのですか。
  302. 三枝英夫

    ○三枝説明員 そういう方向で現在検討を進めておるということでございます。ただ、どういう線で、あるいはどういう業種でというようなことにつきましては、いろいろ横にらみ等の問題あるいは複雑な問題がございますのでまだ結論を得てない、ただ、そういう方向で対処したいというふうに考えてございます。
  303. 米原昶

    ○米原委員 六十八国会の法案審議の際にも質問しましたが、工業再配置促進法に定められる優遇措置は、移転促進地域から誘導地域に移転する企業であれば、規模のいかんを問わず無条件で適用すべきものだ、そう考えますが、その点はどうですか。
  304. 三枝英夫

    ○三枝説明員 前国会でその点につきまして御質問があり、田中前通産大臣よりお答え申し上げましたとおりでございまして、規模の大小を問わず、この助成措置は適用するということでございます。ただ、無条件にという点につきましては、やはり規模の大小ということではございませんで、適格要件というものを備えていただくものについて無条件と、こういう意味でございます。
  305. 米原昶

    ○米原委員 もう一つ、あの工業再配置促進法の中には、これはいま業者たちもその点を不安がっているのですが、移転する企業に働く労働者の対策、あるいはその企業の下請関連企業についての対策、そういうものはあの法律の中にはまだ何も定めてないわけです。ところが、実際には一番その点を心配している。工場を移転させるについては、どちらにしてもそういう対策を十分考えなくちゃならぬはずであります。そういう対策については、どう考えておられるか。一体そういう対策が必要でないと思っておられるのかわかりませんが、そういう点はどう考えておられるか、聞きたい。
  306. 三枝英夫

    ○三枝説明員 工場の移転問題を考えます際には、先生指摘のとおり従業員対策、それから関連いたします下請企業対策等、非常に重要な問題であることを私どもよく認識しておるつもりでございます。今度の法律の実施にあたりましても、移転の際に、従業員あるいはその家族とも一体となって移転が円滑にいくということが非常に望ましいわけでございますが、現実の問題として、しかしそこにはやはりいろいろな障害というものがございまして、場合によっては移転できない従業員というのも出てくるということも十分考えられるところでございまして、職業あっせん等に関します雇用安定措置、あるいは職業安定法の機動的な運用とか、他への職業の転換というような形での職業訓練校、こういったものの施設の新増設によります訓練環境の改善というようなこととか、労働省のほうと十分対策を協議しつつ活用を行ないまして、遺憾のない措置を個別にはかってまいりたいというふうに考える次第でございます。この点に関しましては、たとえば税法上の適用を受ける場合におきます個別の認定の問題というような際に、十分その辺も計画上チェックするということで、もしその点に粗漏があればそういう計画は認定しないというようなことで対処いたしたいというふうに考えております。
  307. 米原昶

    ○米原委員 この点が実際問題としてはいま一番問題になっているわけです。もっとも、この法律ができる前から、御存じのように、もう東京都内でも幾つかの工場の移転計画というものがあるわけですね。そして、実際にその場になって、一体そこで働いている労働者が移転できるかというと、いろいろな複雑な問題が起こるわけです。実際は夫婦共かせぎでやっているとか、内職をやっているとかいうような人も多いわけですし、これが農村に移転したんじゃそういうことはできないというような問題もあります。移転した場合に一体住むところがあるのか、そういうような問題すらほとんど解決されないのに、いきなりこれが発表されたために——この法律の問題じゃないですよ。いつでもこれが大問題になってきて、いま労使の紛争問題の一つになっているわけです。そういう点で、私は、いまおっしゃったような対策はけっこうですけれども、法律そのものにはそういう保障がなかったわけなんですよ。その点が、私はこの法律に対して非常に不満だった一点でありますけれども、今度は大計画としてやられるわけですから、法的にもそういう場合に保障の基準というものを明らかにしたほうがいいんじゃないか、そうすべきだと思うんですが、どう思いますか。
  308. 三枝英夫

    ○三枝説明員 ただいまの、その保障という問題に関しましては、たいへん恐縮でございますが、どういう意味なのかちょっと私理解ができなかったわけでございますが、先ほどお答え申し上げましたもの以外に、特にこの問題は重要でございますし、来年度施策におきましては、これはまだもちろん構想の段階でございますが、従業員で、移転促進地域から誘導地域のほうへ工場とともに移転していくというようなケースにつきましては、もっと現在の施策を拡充し、特に前回新味のある従業員対策に乏しかったことは事実でございますので、その辺大幅に拡充いたしたい。特に、移転者につきまして、移転資金につきまして手厚い助成措置考えるとか、あるいは移転先の住宅の建設等につきまして、雇用促進事業団で現在やっております業務、これがもっと質的に充実できる方向で、利子補給の措置とか、いろいろ考えてまいりたいと考えております。  ただ、現在までの事態におきまして、もちろん個々に対労使問題としましていろいろ出ていることも事実でございますが、全体的にながめますと、これは現在の経済環境のしからしめるところかとも思いますが、非常に大混乱を生ずるような大量の失業発色というような事態にはならないで、むしろ比較的円滑に、その企業から離れましても新しい職場についておるというようにわれわれは事態を判断できるのではないかというふうに考えてございます。ただ、中高年というような問題になりますと、これは御指摘のように、今後新しい職場につくという点につきましていかにすべきか、確かに大きな問題であろうかと思います。
  309. 米原昶

    ○米原委員 では私も、ちょっといまおっしゃったこととも関連しますが、第一が労働者対策です。第二が中小企業関連下請企業なんかの問題、二つに分けて……。  労働者の問題ですが、企業とともに移転する労働者には、移転先での住宅の確保、それから子供の教育の問題、福祉厚生の問題などがあるわけですが、手落ちのないようにするのは当然ですが、一家をかまえて移転が困難な労働者や、さまざまな理由で移転できない労働者などは、退職を余儀なくされるのも出てくると思うのであります。このような労働者には十分な退職金を支払うこと、再就職のあっせんを責任をもって行なうこと、必要があれば、先ほども話があった問題ですが、在職期間中に職業訓練所に通わせて、別の技術を身につけさせて転職がしやすいようにするなどの対策が必要だ。大ざっぱに考えてそう思うのです。このような対策をとらないと、工業再配置促進法は、逆に企業が移転時を利用して、いまもおっしゃった中高年齢層などの首切りなどに利用するというような面が現実に起こっているのです。幾つか例をあげてもいいくらいですけれども、そういう問題があるので、その点に行政指導の面でも十分注意を払っていただきたい、これが第一です。  それから第二に、下請関連企業の問題ですが、下請関連企業の中にはかなり大きな企業もあるし、独自に営業できるところもありますが、これは別として、大部分は中小零細企業で十分な対策が必要であります。企業とともに移転する下請関連企業については、その家族も含めて必要な対策をとることは当然ですが、企業の移転によって発注を打ち切られる二次、三次下請も含めた下請関連企業のすべてのものについて共通する対策があると思うのです。  一つは、下請関連企業に対して発注を打ち切る場合は、一カ年以上前に予告することにして、これを守らない場合はそれに見合う補償をするとか、第二に、親企業は発注を打ち切った分に見合う別の仕事を責任をもってあっせんをして、仕事が続けられるようにするとか、第三は、もっぱら親企業の仕事のために買い入れた機械などは、原価に見合う価格で親企業が買い取るとか、第四に、転業を余儀なくされる場合は別の仕事ができるよう仕事のあっせん、訓練など必要な援助を行なうとか、概略そんな措置が必要だと私は思うのであります。  このような対策は、すべて移転する企業が責任をもって実施すべきものでありますが、この実施にあたって、政府は、確実にこれらが実行されるように指導し、義務づける措置が必要であります。  そこで、工業再配置促進法第五条による移転計画の認定にあたっては、以上述べたようなことを認定の最も重要な要件の一つとして規定することが重要ではないか。そのくらいにやってもこれはなかなか複雑、困難な問題を起こすと思うのでありますが、大体以上申し上げたような点を、認定のための最も重要な案件とするという態度をとっていただきたいのであります。この点をどう考えておられるか、伺いたいのであります。
  310. 三枝英夫

    ○三枝説明員 ただいま詳細に、むしろ御提言的にいただいた点でございますが、従業員対策の問題につきまして、行政指導の面で徹底してやれということでございまして、まことにそのとおり、私どもとしましても、個々の移転で、移転促進地域から誘導地域へ行くというようなケースにつきましては、計画の認定というような問題でチェックするような場もございますし、労働省と密接な打ち合わせのもとに、個別ケースごとにそういった行政指導の徹底ということをはかってまいりたいと思います。  それから、下請企業の問題でございますが、こういう移転を行なう際、親企業の移転の際に下請企業が一緒に移転するという場合には、確かにこの再配置対策の助成措置ということ、あるいは親企業もかなり積極的に土地の取得その他について、あるいは住宅等の建設について、積極的に配慮を払うということが必然的でございますし、かなりスムーズにいくという配慮もあるかと思いますが、そういうような計画につきましても、ただいまの認定というような場におきまして十分にチェックしていくということにいたしたいというように考える次第でございます。  さらに、移転できないような下請企業につきまして、これはやはりショックが急激にくることではいけないということで、親企業が移転計画を立てまして、実際に移転を行なうというような時期、これにつきましてはできるだけ早い時期に予告するように、これは行政指導をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、代替の取引先のあっせんであるとかいうような問題につきましても、親企業が遠隔地に離れましても、できるだけ引き続きこれを対象にしていくように、あるいは他の取引先にあっせんするとか、いろいろな場合の手を——下請振興協会、来年度予算で広域あっせん業務、これの拡充も考えてございますし、その辺であっせん業務を活用させるというようなこと、こまごまとした実態に即した指導助成をやってまいりたいというふうに考えます。  御指摘のいろいろな機械の代償提供あるいはその他関連した補償というようなことにつきましても、これはケース・バイ・ケースで考えませんと、一律的な義務づけということはちょっといかがであろうかと存じますが、そういった項目が入り得るようなチェック機能を認定の際にできるような形で運営を行なっていきたい。個別のケースについては、それぞれに応じて、実態に応じまして強力な指導をやってまいりたいというふうに考えております。
  311. 米原昶

    ○米原委員 時間の関係で大体これで終わりたいと思いますが、これに関連して私にたくさんの中小零細企業の方からいろいろな事情を言ってくるのです。非常に複雑なのに驚きました。たとえば川口なんかの場合も、御存じのように指定からやめてもらいたいという陳情も出ております。一定の地域を限って解除されるかもしれませんけれども、同時に、その解除される地域の中で移転したい小さな企業もあるのですね。ところが、今度は指定を解除されるとその場合の優遇措置がなくなる。まあこういうようなのは非常に少ないのです。大多数は指定には反対しておるわけですから、地域としては解除されるのが当然だと思うし、それがその地域の業者の大多数の要望なんです。ところが、そこにはまた移転したい人もある。解除されれば、移転する場合の優遇措置もそれでなくなるというような矛盾ですね。それと逆の場合もあるようですし、この場合、非常に複雑なんです。それを一つずつを解決しないとやはりかなり複雑な問題を起こすように思うのです。いまおっしゃったことはけっこうですが、実際に実行される面になるとこれは非常に複雑ですから、十分にその点を配慮してやっていただかないと、これはとんでもないことだ、これは中小企業をつぶすために考えて出した案だ、こういうことも中小企業の人は公然と言っておりますし、そういう状態だという実態をしっかり踏まえてやっていただきたい、こういうことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  312. 藏内修治

    ○藏内委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会      ————◇—————