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1972-09-13 第69回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十三日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君    理事 浦野 幸男君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 樋上 新一君       金丸  信君    木部 佳昭君       中島源太郎君    中山 利生君       羽田野忠文君    松永  光君       吉田  実君    石川 次夫君       加藤 清二君    田中 武夫君       松平 忠久君    近江巳記夫君       松尾 信人君    伊藤卯四郎君       川端 文夫君    谷口善太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      有田 喜一君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         経済企画庁長官         官房参事官   北川 博正君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省重工         業局長     山形 栄治君         通商産業省繊維         雑貨局長    斎藤 英雄君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         通商産業省工業         技術院長    太田 暢人君         中小企業庁次長 森口 八郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 九月十三日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     中山 利生君   塩崎  潤君     中島源太郎君   山田 久就君     吉田  実君   米原  昶君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   中島源太郎君     塩崎  潤君   中山 利生君     坂本三十次君   吉田  実君     山田 久就君   谷口善太郎君     米原  昶君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、公正取引委員会委員長に就任されました高橋俊英君を御紹介いたします。
  3. 高橋俊英

    高橋説明員 ただいま御紹介にあずかりました高橋でございます。  先般、公正取引委員会委員長を命ぜられました。たいへん未熟者でございますが、ひとつよろしく皆さんの御後援、御指導をいただきまして、何とか責務を果たしてまいりたいと思います。  どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  4. 藏内修治

    ○藏内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋口隆君。
  5. 橋口隆

    橋口委員 田中総理は、日本列島改造案の基軸として工業配置の問題を非常に強く打ち出しておられます。すでにこの委員会におきましても、さきの通常国会におきましてこれに関する法律案も通過させたのでございます。したがって、これから内政の焦点は、この再配置構想に集まるのではないかと思います。もちろん中曽根新大臣も全面的に御賛同のことと思いますけれども、あらためてこれについての大臣としての御所見を初めに伺っておきたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本工業配置といいますか、生産体系というものは明治以来また終戦以来ひとえに経済成長を目ざしまして、そのために経済的効率性を主として追求してきたうらみなきにしもあらずであります。そういう意味から、日本は世界でも有数の高密激動社会となって局部的に過密状態が出てきたり、あるいは公害が激しくなってきた現象が散見されることは周知のとおりでございます。  そういう事態に対して、今日ある程度の経済力も蓄積されつつある情勢から見ても、ここでいままでの構想を一転して国民福祉のための経済国民福祉のための成長という方向に切りかえなければならぬときが来た、そういう時点において田中総理日本列島改造論というものが出てきたので、これは歴史の必然性でもあるし、日本人の生活の知恵でもあると私は思います。  そういう基本的観点に立って、日本国土をもう一回新しい観点から見直して、適正な工業配置と人間の働き方というものをあみ出して、バランスのとれた、そして国民福祉中心にした考え方に立った新しい観点からの工業配置政策を実行しよう、そういう考えに立っておるわけでございます。基本的理念は、そういう国民福祉中心にして全国的バランスのとれた工業配置をやるということであると考えております。
  7. 橋口隆

    橋口委員 この構想はきわめて卓抜なもので、この委員会としても全面的に賛同したところでございます。  そこで、いよいよことしの十月一日からこれに関する公団も発足をする、来年からいよいよ実施の段階に入ると思います。ところが問題は、この前の審議の過程においても明らかになったのでございますが、どうしてもこの工場追い出しをかけることが必要で、そのために工場配置税構想、あるいはそれに伴って工場配置についての特別会計の設置が最も必要じゃないかと思われますが、これについて通産大臣としてはどういうふうに対処されようとするおつもりでございますか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 何らかの形でインセンティブを与えるとか、あるいはインパクトをつくって、そういう再配置を促進するということが必要だろうと思います。その場合に再配置税あるいは追い出し税という形が適切なものであるかどうか、これは社会的な諸情勢等にもかんがみて非常に慎重に目下検討しておるところであります。しかし、これに関する特別会計は私は必要であると思いまして、いまそういう方向大蔵省と折衝するつもりでおります。
  9. 橋口隆

    橋口委員 この政策はぜひとも御推進をいただきたいと思います。つきましては、工業配置によって工場が移転をする、それから新規に工場立地をする、そのためには非常に膨大な新しい工業用地を必要とすると思われます。そうしますと、既成の工場地ではもちろん足りませんので、一番問題になりますのは、基幹産業についての新しい工業用地。これについて政府も従来大規模工業基地構想を打ち出されて、いまそれが各地で展開をされておる最中でもございます。ところが、これにつきましては住民反対もある。また、その反対にも無理からぬ点もあった。自然環境の保護あるいは公害防止というようなことにこれから真剣に取り組む必要があると思われます。つきましては、この大規模工業基地をこれからどういうふうに推進されますか、まず中曽根通産大臣の御意見を聞きたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 将来の日本産業構造基本をいわゆる知識集約型産業に切りかえていくという方針は、これはほとんど明白であると思います。しかし、それに至る過程においては、重化学工業との混合形態というものがやはり考えられるであろうと思います。やはり一億の人口を養っていくためには、ある程度の重化学工業基礎なくして知識集約型産業というものも花が咲くとは思わない。そういう基礎なくして知識集約型産業が興るとすれば、これは外国からの技術導入その他にたよった切り花のごときものになるのではないかとも思われます。要は公害のない重化学工業タイプというものをいかに賢明に適切にある程度つくっていくかということであると思います。  そういう面から将来の需給関係を見ると、いわゆる大型工業基地という必要性は、私はまだ必要と思います。問題は、いかにしていままでのようなものでない、無公害のそういう基地をつくるかという考え方にあると思うのです。そういう面から、いままでの構想がもしあるとすれば、これを再検討して新しく出発するという必要性はあると思います。しかし、これらの問題は、国の方針もさることながら、やはり県当局あるいは地元住民意向というものが非常に重要でございますから、県あるいは地元住民考えをよく尊重して、よく理解し合ってこの問題は進むべきである、そういうように考えます。
  11. 橋口隆

    橋口委員 この大規模工業基地を過般成立いたしました工業配置促進法適用地域、いわゆる誘導地域としてこれを指定されることができますか。また、指定するとお考えになりますか。それをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それらの地域は大部分過疎地帯にあたりますから、おそらく大部分できるだろうと思います。
  13. 橋口隆

    橋口委員 いまの大規模工業基地につきまして経済企画庁長官の御意向を伺いたいと思います。  最近のいろいろな公害発生問題等に関連いたしまして、経済企画庁では新全総を総点検する、それによって大規模工業基地その他の大型プロジェクトの再検討をしよう、こういう御構想があるようでございます。その中で今回のこの大規模工業基地というのはどういうように位置づけられるか。やはり地域開発起爆剤としてこれを推進されるお考えでありますか。その点をひとつあらためてお伺いしておきたいと思います。
  14. 有田喜一

    有田国務大臣 大規模工業立地の問題につきましては、現在太平洋ベルト地帯にあまりにも集中し過ぎていますね。したがいまして、過疎地帯のほうにそれを持っていって、国土が秩序ある発展、利用ができるように、こういう考えを持つわけです。したがいまして、いま新全総があるのでございまして、もちろん新全総もそういうことを考えてはおったのでございますが、依然として人口工場が大都市に集中する傾向がある。そこで一そう見解を新たにして、そして環境改善公害防止、そういうことに重点を置きながらいま総点検をやりつつある。その点検過程におきまして、大規模工業立地のあり方について私は十分検討を遂げて、そして日本国土が全体的に開発されるよう、こういう考えでおるわけです。
  15. 橋口隆

    橋口委員 いまや日本で残された大規模工業基地というものはきわめて数少ないもので、いわば北東地域では苫小牧東部、それにむつ小川原、それから南西地域では志布志湾、これくらいが残されたところではないかと思います。そこでむつ小川原につきましては、先般新聞の報ずるところによれば、近くこれについて新しい開発基本方針をきめるやに伺っておりますが、それにつきましてはどういうふうなお考えでいらっしゃいますか。
  16. 有田喜一

    有田国務大臣 むつ小川原につきましては、御承知のとおり青森県知事から第一次基本計画というものが出ておるわけですね。それは私のほうのみならず、関係各省庁に提出されておる。いま企画庁におきましては、関係各省とそういうことにつきまして調整をはかりつつある段階です。  私どもとしましては、せっかくむつ小川原開発するにつきましては、一そう基本的な問題を掘り下げて考えたい。そうしてことに公害のもとをなすようなことについて十分検討を遂げて、基本的な問題を解決しながら総合開発計画にかかりたい、かように考えております。
  17. 橋口隆

    橋口委員 そうしますと、南西地域ではいま問題の志布志湾が残ってくるわけでございます。これにつきましては、先般この商工委員会では、もう調査団が参りまして調査もしてまいりました。これにつきましては、もし住民の納得が得られ、自然環境を保護し、また、公害防止施策が講ぜられれば、やはりこれも大規模工業基地として推進をされるお考えでございますか、それを念のために伺っておきたいと思います。
  18. 有田喜一

    有田国務大臣 志布志の問題は先ほどのむつ小川原とちょっと趣を異にしまして、とにかくむつ小川原地元責任者であるところの知事から、一つの基本計画といいながら、第一次でございますが、そういうものが提出されておるんですね。したがいまして、われわれはそれをめぐりまして関係各省庁との意見調整とかいうことにかかれますけれども、志布志のほうは、まだそういう段階になってないのです。そこで、われわれとしては、いまこれをどうする、ああするということは言うことを避けたいと思うのですが、こいねがわくは、地元調整がうまくできることを期待しております。
  19. 橋口隆

    橋口委員 仰せのとおり、確かに志布志湾開発については、県と住民との間に合意が成立することが基本条件であると思いますが、もしこれが成立した暁には大規模工業基地として推進をしていただくようにお願いをしたいと思います。  これにつきまして中曽根通産大臣の御所見を伺いたいと思いますが、前に田中通産大臣は、志布志湾は残された日本の宝庫である、そういうことで強く推進したいという意向を表明されております。これにつきましては、あらためて新大臣の御意向も承っておきたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 有田長官が答えたと同じ見解を持っております。
  21. 橋口隆

    橋口委員 そこで、北東地域にしましても南西地域にしましても、大規模工業基地起爆剤として地域開発推進するということでございますが、これにつきまして、下北半島の開発、南のほうでは大隅半島の総合開発、こういう問題が出てくると思います。現に県もそういう試案を出しております。これを特定総合地域として政府で取り上げて、それを指定をして、強力に公共事業なりその他の関連事業を整備するという方式考えられますかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 県や地元皆さま方の御意向が、そういう開発及び前進の方向に決定しますれば、当然そういう考慮をしてよろしい、そう考えておる次第です。
  23. 橋口隆

    橋口委員 いまの問題は経済企画庁の新全総の中でも一番大きな課題ではないかと思います。ことに新全総を見直して新々全総をつくるという場合に、そういう制度を創設される御用意がありますかどうか、それを念のために伺っておきます。
  24. 有田喜一

    有田国務大臣 先ほど言いましたように、いま新全総を総点検しつつあるところでございます。したがいまして、総点検の中においていまおっしゃることも十分考慮してみたい、かように考えております。
  25. 橋口隆

    橋口委員 そうしますと、場合によっては、必要があれば、特定地域としてこれを指定してもいい、そういうお考えでございますね。
  26. 有田喜一

    有田国務大臣 先ほど言いましたように、いま総点検をやりつつあるときでございますから、そういう場合に配慮してみたらどうかと思っています。こうする、ああするということは、いま点検の最中でございますから断言はできませんが、十分配慮したい、かように思います。
  27. 橋口隆

    橋口委員 それではこの大規模工業基地の問題は強力に推進をしていただきたいと考えております。  つきましては、工業配置の問題にいたしましても、いまの工業基地の問題にいたしましても、問題は公害をどうして防止するかということに煮詰まってくるのではないかと思われます。これにつきましては、まず石油コンビナートの総点検をしようということで、通産省ではそれをお進めになっておるようでございますが、いままでの状況はどういうふうになっておりますでしょうか、それをあらかじめ伺っておきたいと思います。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産局長を団長にしまして、八カ所のコンビナートについて点検をやらせました。来週の半ばごろその報告が出てくる予定でございますので、その報告を見ましていろいろ措置をしたいと考えております。
  29. 橋口隆

    橋口委員 これについて抜本的な公害防止対策が講ぜられると思うのでございますが、その場合一番問題になりますのは、まず大気汚染の問題ではないかと思います。  そこでSO2の問題、これは現在でも技術はかなり進歩しているようでございますが、新しいガス化脱硫技術なんかも出てきて、これを強力に推進することによって解決できるのではないかとわれわれしろうとなりに考えているのでございます。通産省としては、これに対しては今後どういう対策を講じ、そして見通しとしては大体いつごろになればこれが完全に実用化できるか、その点の御見解を伺いたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 無公害工場建設のためにいろいろな面の研究を、国立試験所研究所あるいは民間に委託等してやらしております。排煙脱硫あるいは重油脱硫あるいはガス化脱硫、いろいろな点をやっておりますが、いまお説のとおり、ガス化脱硫というのは非常に有望なように見受けられます。問題はコストの点のようであります。コストの点さえある程度見通しがつけば非常に有望なものであると報告を承っております。  もし御必要があれば、具体的には当局をして御説明申し上げさしてもけっこうでございます。
  31. 橋口隆

    橋口委員 それじゃ公害保安局長からもう少し詳しく御説明いただきたい。
  32. 青木慎三

    青木説明員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、低硫黄化対策につきましては、まず第一には低硫黄重油LNG等輸入促進の問題があります。これを推進いたしますとともに、重油脱硫排煙脱硫ガス化脱硫というような技術開発が現在進んでおりまして、一部につきましては普及の段階でございます。通産省としましては、工業技術院大型プロジェクト等につきましてこれらの技術開発推進してまいりましたが、その結果重油脱硫につきましては技術が確立いたしまして、排煙脱硫につきましてもほぼ実用化の域に達しているというふうに判断いたしております。  ガス化脱硫につきましては、まだ実験の段階でございますが、相当数企業開発に携わっておりまして、通産省としましても、重要技術研究費補助金交付というようなことによりまして、この技術開発を促進しているのであります。現在の段階では、まだ確実な実用化時期を予測することはむずかしいわけでございますが、いずれにしましても、これらの技術開発の進展によりまして、将来のLS化はさらに一そう推進されるものと考えております。
  33. 橋口隆

    橋口委員 いまの問題は時期が非常に問題だと思うのです。これにつきまして工業技術院でも補助金を出しておられるはずですが、実用化段階は——いままで補助金研究の期間を四年を三年に短縮して、そして実用化の期限を一日でも早めよう、こういう構想のように聞いておりますが、いかがですか。
  34. 太田暢人

    太田説明員 ガス化脱硫に関しましては、現在重要工業技術補助金の中のクローズドプロセス特別ワクにおきまして補助をしているわけでございますが、先生の先ほどのお話のように、従来計画を短縮しまして非常に急いで開発をしていただくようにやってもらっておるわけであります。大体補助段階あと二年で終わるわけでございますが、そのあとにやはり実際の工業化をするための検討時期が若干要るかと思いますので、それらをあわせて考えますと、はっきり時期を申し上げることは非常にむずかしいわけでございますけれども、希望的には五十年とかその近辺にはものになるのではないかというぐあいに期待しております。
  35. 橋口隆

    橋口委員 いま工業技術院長からお話しありましたように、五十年前後には完成をするようにひとつ全力をあげていただきますように、これは大臣にも特にお願い申し上げる次第であります。  また、これと並んで、これは石油コンビナートやあるいは製鉄コンビナートだけの問題ではなくて、自動車あるいはその他の都市の公害も含めての問題になりますが、問題のNOxでございます。これは解決はなかなか困難だと思いますけれども、技術的な立場から、工業技術院長はこの防止対策についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  36. 太田暢人

    太田説明員 現在NOx除去に関しまして、工業技術院といたしましては、傘下の研究機関、それから助成金制度を使いまして、固定燃焼装置に関しましては燃焼器の改良及び触媒を使っての除去方式、それから自動車排気ガスに対しましてもいろいろの研究を進めております。しかし事が緊迫してまいりまして、非常に緊急性を増してきつつございますので、来年度といたしましては、国の研究機関の総力をあげての研究と、それに民間研究を委託するという形を組み合わせまして、NOx対策総合研究制度というものを新しく取り入れまして、大々的に力を入れまして、なるべく早くこの重要な問題に対しまして取り組みまして、何とか解決する方向に持っていきたいと考えております。  ただ問題は、技術的にはスタートはかなりおくれておりまして、まだ緒についた段階でございます。したがいまして、はっきり見通しその他申し上げることは非常にむずかしいわけでございますが、できるだけ早い時期に、この問題について技術的なすぐれた方法を確立いたしたいというぐあいに考えております。
  37. 橋口隆

    橋口委員 いま申し上げましたような大気汚染をはじめ水質汚濁あるいはその他の公害、これを克服するということは、もう日本経済に課せられた至上命令ではないかと思います。中曽根新大臣国民福祉目標として通産政策を進めていただく上でも、これは最高の課題であろうと思います。そういう意味で、公害防止日本経済のやらなくてはならない絶対の課題である、そういう決意のもとに、財政においても税制においてもひとつ十分な対策を講じていただきたいと思うのでございますが、それに対する御所信をひとつこり際承っておきたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 無公害通産政策ということが通産政策のアキレス腱であることは認識しております。そういう新しい観点に立って大いに努力していくつもりでございます。
  39. 橋口隆

    橋口委員 なお、この公害防止と並んで、これからの工業地帯というものは日本自然環境とマッチしたものでなければならないと思います。たとえば工業地帯の緑化、あるいは広くインダストリアルパークをつくる、そういうようなことが必要であると思いますが、これについて法制化考えておられるように聞いておりますが、どういうふうにお考えになるつもりでございますか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 略称工場法という発想のもとにいま内容を詰めさせております。それは、要するに工場立地を行なう場合に環境との調和、つまり無公害工場建設ということを中心にいたしまして、その工場内部における諸般規制、それから工場と外部との接触面における諸般規制等々についていろいろ適切なる処置をやろう、そういう考えに立ってやっておることです。事務的な内容につきましては、もし必要があれば説明させることにいたします。
  41. 橋口隆

    橋口委員 この工場法の制定はどうしてもやっていただかなければならない課題であろうかと思います。そういう意味で、本日は時間がありませんからまたあらためてお聞きしたいと思いますが、ぜひともこれは強力に推進をしていただくようにお願いを申し上げます。そこで最後にお伺いしたいと思いますが、今後の産業構造転換の問題でございます。日本列島改造案によりましても、鉄鋼昭和六十年には二億トンという非常に膨大な数字、また石油については七億五千万という非常にばく大な数字があげられているようでございます。これを一体このまま推進をされるのか、それとも知識集約型の産業転換をするというのであれば多少この目標額は修正をされるものであるか。鉄鋼石油、この二つについて、特に大臣の御所見を承りたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれの通産政策目標が無公害社会建設で、しかも知識集約型の構造転換をやろうとしておる情勢でございますから、いままでかりに試算されたそのような数字が今後そのまま適用されるとは限らないと思っております。それにこだわる必要はない。むしろそういう原材料の輸入を中間地帯において処理するとか、あるいはできるだけそういうものを使わない産業転換させていく方向が賢明であるというような考えにも立って、新しい産業計画通産政策というものを考えていくべきであると思っておりますから、いまのような数字に対しては、私たちは必ずしもこだわらない。新しい見地で新しい数字が出てきて当然である、そう考えております。
  43. 橋口隆

    橋口委員 確かに特にいまのエネルギーの問題につきましては、すでに石油についても原料獲得競争が将来予想される。だんだん窮乏化してくると思います。また、現在内地で問題になっておるように、工業立地がきわめて困難になってくる。そういうような意味からいたしましても、このエネルギーの消費というものあるいは生産というものは、日本列島の中でこの七億五千万というものを消化するにはなかなか無理ではないかという気がいたします。そういう意味で、過密地帯への再配置あるいは大規模工業基地を最後として、海外立地に踏み切ることが必要ではないかと思いますが、それについてすでに準備がなされておりますかどうか、それをひとつ承っておきたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのような原材料を産地あるいは日本に来る中間地帯において処理するという発想は、通産省の中にもございますし、またその発想に基づく研究もなされておりますけれども、具体的にどういうものをどこでやるかというようなところまでは、研究はまだ進んでおりません。
  45. 橋口隆

    橋口委員 いまの問題はだんだん研究段階に入ってくると思われますので、ひとつ十分御研究お願いしたいと思います。  国民福祉経済発展とを調和させるということは、これからの通産政策の最大の課題であろうと思います。そういう意味で、どうかあなたが新たな構想のもとに前進をされますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 藏内修治

    ○藏内委員長 松平忠久君。
  47. 松平忠久

    ○松平委員 参考人を呼んでいただきたいということを提案しておいたのですが、きょうお見えにならぬようですが、その理由はどういうわけですか。
  48. 藏内修治

    ○藏内委員長 松平委員にお答えをいたします。  参考人の御出頭についての要求が昨日の夕方近い時間でございましたために、当人のところに連絡がつきかねたそうでございます。
  49. 松平忠久

    ○松平委員 それでは、日自振の会長が出てこられなければ副会長でもいいです。あるいは担当の理事ということも私は要請してあります。担当の理事はどういう用件で出てこられないのですか。
  50. 藏内修治

    ○藏内委員長 お答えをいたします。  担当の理事の出席までは昨日のところ手続がとり得なかった。それから当日の参考人出席要求につきましても、きょうの理事会までに間に合わなかった、こういう経緯でございます。
  51. 中村重光

    ○中村(重)委員 議事進行。いままで委員から質問に関連して参考人を呼んでもらいたいという申し出があった場合は、所属する党の理事にあらかじめ相談をして、その取り扱いについて話し合いをしたはずです。松平委員からそのような申し出があったとするならば、当然私に相談をしてしかるべきであった。しかし、いま松平委員から質問があるまで、けさの理事会にも何らそのことについては触れておられない。委員長としては怠慢じゃないか。
  52. 藏内修治

    ○藏内委員長 お答えいたします。  委員長も、ただいま松平委員の御要求が当席でありまして、初めて参考人の御出席の要求があったのを承知したようなことでありまして、この点、委員部及び委員長の間の連絡不行き届きはおわびを申し上げます。
  53. 松平忠久

    ○松平委員 委員部に申し入れたことは確かであります、委員部の者がそう言っているのですから。それは、委員部と委員長との関係はどうなっているのですか、一体。委員会の運営はあなたの責任ですよ。ただあやまっただけで済むのか。どうですか。
  54. 藏内修治

    ○藏内委員長 手続の不備がありました点は、いま申し上げたとおりであります。委員長として委員部を督励して、以後かようなあやまちのないように注意をいたします。
  55. 松平忠久

    ○松平委員 それでは後刻にこの問題を保留しておきます。  時間がございませんようですから、大臣並びに関係政府当局に若干の質問をしたいと思います。  大臣通産大臣になられたのは、たしか七月七日であったと思うのです。その後の七月十四日の毎日新聞に非常に大きく競輪の八百長の問題が取り上げられました。そしてこの問題は、たしか昭和四十一年に田中武夫君がこの委員会におきまして、大阪における八百長の問題を取り上げまして徹底的に追求したのであります。そうして通産省並びに日本自転車振興会におきましてはこの問題を非常に重要視しまして、そうしてみずから守るという自衛の方針を強化していく、こういうことをきめまして、いわゆる八百長というものを根絶させていくと、こういう方針をとったのであります。若干そのやり方については疑問の点もありますけれども、結果的にはやや私は八百長は少なくなってきた、こういうふうに思っておりました。ところが、今度のこの八百長事件というのは、昭和四十一年の大阪における八百長事件とは比べものにならない大規模なものでありまして、史上始まって以来であるということが新聞には報道されております。このために動いた金が約一億五千万円、そうして当時の新聞におきましては、十八人が逮捕されておるのです。その後続々と逮捕されておるという報道がございますし、また、週刊ポスと等においては、かなり微に入り細をうがったところの記事を掲載しております。  この問題に対しまして、競輪法自体の中におきましては、いわゆる刑事事件といたしまして罰則の規定があります。その罰則によって処分することは当然でありますけれども、しかし、このように世間を騒がせ、そうして大きな影響を与えておる。しかも、いわゆる公営ギャンブルというものは将来どういうふうにしたらいいかという段階に来ていると思います。  御承知のように、東京都におきましては、すでにこれをやめた。地方の財政のためにいままでやってきたのでありますけれども、それをやめていくという考え方が漸次広まってきつつあると思います。そういう中におきまして、この公営ギャンブルはどういう方向をたどっていったならばいいかという段階にあります。イギリスのような国営にするのか、ソビエトのように国営にするのか、その問題が私は将来のこの事業については考えるべき段階に来ていると思うのであります。  それにはどうしたらいいかというと、やはり国民に対して信頼の置けるやり方、もちろん競輪法の中には公正かつ円滑なやり方をしなければならないというものがモットーに書いてあるのであります。公正ということがきわめて重要である。したがって、ただ単にそういう事件ができたからこれを法律的に処分するのであるというのではなくて、このような事件が昭和四十一年以降、しかも、いままで最大の事件ができてきたということは、私は、政治的責任あるいは社会的責任というものがあると思うのであります。したがって、ただ単に法律によって処分するというだけではなくて、将来を考えるならば、社会的責任というものを負ってもらわなければならぬと思う。これに対して大臣はどういうふうにお考えですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の事件は、まことに不祥事件でございまして、監督官庁といたしましてまことに申しわけない次第であると思います。いろいろその事後処置につきましては、当局をして厳重にやらしておりますが、今後も監督を厳重にいたしましてあやまちをおかさないようにしていきたいと思います。
  57. 松平忠久

    ○松平委員 大臣は、私の言うことに対して答えていないのですね。今後監督を厳重にするのだ——いま起こったこの事件に対して社会的責任はどういうふうに考えておるかということを私は質問しているのです。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 監督庁といたしましてまことに申しわけないと思って、将来戒めていくつもりでございます。
  59. 松平忠久

    ○松平委員 それでは監督官庁が監督して、その下に監督される機関があるわけでありますが、このような事件の発生を事前に防止して食いとめていくという責任はどの機関が持っているのです。
  60. 山形栄治

    ○山形説明員 お答え申し上げます。現在、競輪の業務の施行に関しましては、御存じのとおり日自振というものが中央にございまして、この傘下といいますか、関連傘下のところに、全国八カ所に競技会がございまして、実際の競輪施行業務を行なっておるわけでございます。したがいまして、日自振というところは、競輪選手の登録、出場のあっせん、選手の養成、訓練等を行ないまして、八カ所にあります競技会が現実には施行者の意向、委任を受けまして競輪の業務を行なっております。かいつまんで申し上げますと、日自振と各地方の競技会との共同で業務を行なっておる現状でございます。
  61. 松平忠久

    ○松平委員 あなたの答弁では、日自振と自転車競技会が責任を持っておるということですか。
  62. 山形栄治

    ○山形説明員 ちょっと不十分で恐縮でございました。日自振と各地の競技会と、それから当然のことでございますが、全国に現在二百五十ぐらいございます施行者、これは市町村が主でございますけれども、その施行者が当然に施行の責任を負っておると、こう考えてしかるべきだと思います。
  63. 松平忠久

    ○松平委員 施行者は自転車競技会に委託をして競技をしておるのじゃないですか。そうすると、自転車競技会と日自振というものはやはりその責任を持たなければならない、こういうふうに思われますが、そうではないのですか。施行者自身が直接自転車競技会を施行しているのですか。
  64. 山形栄治

    ○山形説明員 先ほども御答弁申し上げましたように、施行者からの委任に基づきまして競技会が実質的には競技を実施いたしておるわけでございますので、具体的な各行為の直接責任というのは競技会であろうかと思います。
  65. 松平忠久

    ○松平委員 競技会は、これは法律にもありますけれども、いま選手の教育とか訓練ということも一つの業務としてやっておるわけでありますが、この選手の教育、訓練は必要でありましょうけれども、日常の教育、訓練を終わって選手になったという場台に、日常の訓練とかあるいは日常の公正な競技をしなければならないとか、そういった訓練というものはだれがやっておるのです。第一、やっていますか。
  66. 山形栄治

    ○山形説明員 選手の訓練につきましては、競技会ではなく日自振が責任を持ってこれを実施いたしております。まず選手が最初登録されますと、これを現在十カ月間、特別の訓練所におきまして、競技ルール等は当然のことでございますが、それ以外にも一般教養等の研修訓練を行なっております。  なお、選手の日常の行為につきましては、これはなかなかフォローがむずかしいのでございますけれども、各地に選手会という組織がございまして、選手間の相互の連絡及び自主的なる規律の保持等を行なっておりますので、その選手会の活動に現在は相当の部分が依存しておるわけでございますが、なお、別途日常の行為につきまして非常におかしいと思われる選手を事前にチェックし、それをキャッチする必要がございますので、各地に専門調査員を置きまして、常時選手の日常の行動等につきましてはこれを追跡調査をし、これを中央に敏速に連絡するような体制も現在とっておる次第でございます。
  67. 松平忠久

    ○松平委員 日自振が選手の行為、行動について責任を持っておる。日自振は、このためにスタッフとして何人の人がこの選手に対する日常の教育、訓練をやっているのですか。選手の数は三千五百人と聞きましたけれども、いわゆる専門員といいますか、それはいままで三十五人であった。百人に一人だ。そこで、日自振自体が直接やっておるのですか。そうではなくて、日自振は金だけ与えて、そうしてやらせているというのが現状じゃないですかね。
  68. 山形栄治

    ○山形説明員 選手の養成といいますか訓練といいますか、これを日自振で担当しております部局は業務第二部でございまして、部長、次長、それから三課、七係で構成されております。この業務第二部の総数がいま何人であるか、手元にちょっと数字はございませんけれども、相当完備した組織で一応やっておると思っておる次第でございます。  なお、選手の養成、監督等につきましては、おお話しのとおり日自振が責任を持っておるわけでございますけれども、何ぶんにも、いま御指摘のとおり選手全体が三千七百名余でございますので、選手会にも委託をいたしまして、日自振と選手会と両方力を合わせて事務の処理に当たっておるのが現状でございます。
  69. 松平忠久

    ○松平委員 選手会というのは、法律上どういう立場にあるのですか。
  70. 山形栄治

    ○山形説明員 選手会は、自転車競技法に基づく団体でございませんで、いわゆる民法三十四条の公益法人としてこれは認可されておるわけでございます。
  71. 松平忠久

    ○松平委員 そこで、いま三千七百人と言いましたけれども、その三千七百人の一部の者が不正をやっておったわけでございますが、当時の新聞によりますと、大体四十一年の大阪の不祥事件のあとにも若干各地において不祥事件が小さいながらあったということなんですが、私は、今度の事件というものをいろいろな人に聞いてみると、四国の高松で不祥事件があったのをもみ消してそれを公にしなかったというのがその後の事件を非常に大きくした最大の原因であるということを聞いております。その点はどうですか。
  72. 山形栄治

    ○山形説明員 いま先生お話しのように、高松で事件があったのをもみ消したという話は、実は私ども詳細に聞いておりません。現在選手十八名、その他三十三名、計五十一名がまだ結果も出ておりませんので、その点からも詳細なことはわかりませんが、高松の事件のことは聞いておらないわけでございます。
  73. 松平忠久

    ○松平委員 今度の事件というものを最初に発見して取り上げたいきさつというものはどういうふうになっているか、これは警察庁のほうからお答え願いたいと思います。
  74. 本庄務

    ○本庄説明員 今回の事件につきましては、目下捜査中でございますので、いままでわかっております点につきまして概要を申し上げたいと思います。  今回の事件の端緒といたしましては、本年の五月ごろ都内におきまして、はっきり申しますと、聞き込みがございまして、これが具体的な端緒でございますが、それに基づきましていろいろ内偵捜査をいたしました結果、競輪に八百長があるという容疑が濃厚になりまして、選手とそれから相手方を逮捕いたしまして、その後継続して捜査いたしました結果、九月の十二日までに競輪選手あるいは元競輪選手あるいは暴力団員等全部で五十一名を逮捕いたしまして目下取り調べをやっております。端緒といたしましては大体以上のとおりでございます。  不正レースの方法あるいはその内容等につきましては、もしさらに御質問がございましたら、わかっている範囲で後刻お答えしたいと思っております。
  75. 松平忠久

    ○松平委員 警察庁のほうから端緒を発見して捜査を進めた、こういう御答弁でありますが、こういう八百長というような事件について、あるいは選手の動向とかいろいろなものについては、日自振自体も、あるいは自警という意味で専門委員というものを置いて、そして日常の生活なりあるいは暴力団と何らかのコネクションがあるかどうかということを調べておるということを聞いておるわけであります。  そこで公正な、かつ円滑な業務の運営をはかっていくという公営ギャンブルについて、そういった情報交換ということを警察庁と日自振は定期的に行なっているということをきのう課長は私に言っておりましたが、定期的というと、一カ月に一回なのか、二カ月に一回なのか、どういうふうに定期的に会合を開いておるのか、警察庁のほうからお答えを願いたい。
  76. 本庄務

    ○本庄説明員 振興会との情報交換と申しますか、相談と申しますか、原則といたしまして大体年に二回程度、それ以外に臨時に私のほうからいろいろ要望を申し上げたり、あるいは私のほうから情報をいただきにいくということはございますが、一応定期ということばで表現いたしますならば、原則は年に二回というふうに御理解いただきたいと思います。
  77. 松平忠久

    ○松平委員 通産省のほうにお伺いしたいのですが、今度の事件のきっかけというものは警察庁のほうで端緒のようなものをつかんだというのでありますが、日自振なりあるいはそれを監督している通産省のほうなりは、そういうにおいのようなものはおかぎになったことはなかったのですか。
  78. 山形栄治

    ○山形説明員 今回のことに関しましては、事前に若干おかしいという感じがございまして、先ほど来申し上げましたような専門調査員の調査等を通じまして、今回検挙されました十八名中、約半数につきましてはこれを捜査当局のほうに御連絡申し上げた次第でございます。全員はカバーできなかったわけでございますけれども、約半数につきましては事前に警察当局に御連絡いたしました。  それから、先ほど警察当局に対する御質問に関連いたしまして、公式には年間二回ということでございますが、最近の競輪の施行業務の実態に関連いたしまして、非常にひんぱんに、非公式には警察当局と御連絡をとっておる次第でございます。
  79. 松平忠久

    ○松平委員 現在の日自振がとっている、あるいは皆さんが監督しておられるところの自警体制というものはどういう程度に行なわれておるのですか。
  80. 山形栄治

    ○山形説明員 現在専門調査員は十四名でございまして、一人最近死亡いたしましたので、現在十五名の定員が十四名でございます。近くこれにつきましては、この事件の発端を契機に二十五名に増員する手順で、近々にこれが二十五名に増加される予定でございまして、なお十月一日におきましてはこれを三十名にいたしたい、こう思っております。  また、情報委員会というものを各地方に置いておるわけでございますけれども、この情報委員会と中央の情報委員会との連絡の緊密性につきましても格段の努力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  81. 松平忠久

    ○松平委員 三千七百名もおるということで、三十名程度のものでできるのかどうか、あるいは予算はどうなっていますか。その方面の自警の予算というのは幾らぐらいですか。
  82. 山形栄治

    ○山形説明員 これは日自振の予算でございまして、ちょっと数字につきましてはいま詳細にお答えできないわけでございますが、後刻でよろしかったら御連絡申し上げたいと思います。
  83. 松平忠久

    ○松平委員 その予算は、俸給と行動費とかあるいは補助員のようなものを雇うような場合には補助員の金とか、そういうものもあるわけですか、どうでしょうか。
  84. 山形栄治

    ○山形説明員 俸給は当然のことでございますけれども、これは相当尾行等も行なうわけでございますので、管内だけでなく長距離の旅費、それからいわゆる滞在等々、いろいろな雑費も相当かかると思いますので、調査費という費目でその所要の経費は計上しておるやに聞いております。
  85. 松平忠久

    ○松平委員 それは幾らくらいなのか、あとで知らしてもらいたい。  それからもう一つは、そういうことで聞き込みとかいろいろなことがあると思うのですけれども、競輪が行なわれる場合に変なことがあるということをちょっと察知したという場合に、聞き込み捜査というようなことをいろいろとやるための補助員のようなものが必要じゃないかと思うのですけれども、それはありますか、どうですか。
  86. 山形栄治

    ○山形説明員 御指摘の必要は当然あろうかと思いますが、現在の体制では、いま申し上げました専門調査員と、それから競技会がいろいろと各地の実情に明るいものでございますので競技会の活用、それからもう一つは、選手会という自主的な団体が、これは非常にうまく運営されておる団体でございまして、中央の選手会及び各地方の選手会の活用、この三つの体制で行なっておるわけでございます。
  87. 松平忠久

    ○松平委員 そういう自警体制というものを確立していくということで専門委員というものも置かれる。それが中心になっていると思うのです。それに競技会なり選手会が協力するということでありますが、その競技会なりあるいは選手会なりに協力してもらう金というものは出ているのですか。
  88. 山形栄治

    ○山形説明員 不正確かもしれませんけれども、これは日自振からそのための費用というのが選手会、競技会に出ておるとは思いません。それぞれ競技会、選手会の目的に照らしまして各団体が自主的なる活動として行なっておると思うわけであります。
  89. 松平忠久

    ○松平委員 それではちょっとばらばらになるような傾向があって、どこが責任だかわからないじゃないですか。日自振が責任を負うというのなら、日自振がそれを統括してやっていかなければならない。それが自警体制だろうと思うのですよ。そうではなくて、各個ばらばらに自分の金でもってやるのだ、選手会は選手会でやる、競技会は競技会でやる。これじゃ自警体制というものはうまくいかぬでしょう。その辺のことをもっと再検討する必要があるのじゃないか。あなた方はこの問題をあまり重要視していないと思うのです。きのう課長に来てもらいましたが、課長は、とてもむずかしくてむずかしくて、こう言うのですよ。それじゃ答えになりませんよ。十中八九あるようなことを言っている。そんな態度でもって八百長が撲滅されるはずはない。新聞によりましても、世界で一番大きな八百長だといっているじゃないですか。こんな八百長は世界にないのだ。こういう実態なんですよ。それに対する取り組み方というものはあまりにお粗末じゃないか。どうだね。その辺は、大臣どうですか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、まだその内部情勢について知悉しておりませんので、よく調べまして、もし足らざるところがあればこれを補うようにつとめてまいりたいと思います。
  91. 山形栄治

    ○山形説明員 日自振と競技会と選手会、ばらばらにやっておって、その統一性が欠けておるのじゃないかというような御指摘もございましたけれども、われわれのほうといたしましても、そういうことになってはこれはたいへんな問題でございますので、従来から情報委員会というものを中央、地方に置きまして、いま申し上げました関係者の横の連絡の緊密性をはかっておるわけでございまして、予算上の措置等につきましては、日自振が全部持っておるわけではないわけでございますけれども、業務上の連絡につきましては、緊密なる連絡で統一性の保持に留意いたしておるわけでございます。
  92. 松平忠久

    ○松平委員 緊密なる横の連絡というそのほんとうの責任者はだれなんです。三位一体のようなことを言っているけれども、その責任は一体だれがとるんです。選手会がとるのか、あるいは競技会がとるのか、日自振がとるのか。責任はやはりばらばらですか。
  93. 山形栄治

    ○山形説明員 責任の最終の所在といいますのは、私の考えでは、日自振と各地にございます競技会と、この両者であろうかと思います。  ちなみに、競馬に関しましては、中央競馬会がこの業務を一括処理いたしておりますが、競輪のほうでは、その業務を日自振と競技会と両方に割っておりますので、日自振と競技会と両方が最終の責任であり、選手会は選手の自衛的な機構といたしましてこれに協力をいたす、こういうことであろうかと思います。しかしながら、実際はなかなかこの選手会が力がございます。選手の日常の実態も非常に選手会の役員はよく握っておりますので、われわれといたしましては、この選手会の協力に非常に現実には期待いたしておるわけでございます。
  94. 松平忠久

    ○松平委員 いまのお答えだと、競馬法によると中央競馬会が責任をとるんだ、自転車競技におきましては責任の所在が二つに分かれておる、こういうふうにおっしゃいましたが、法律上そういうふうになっているんですか。
  95. 山形栄治

    ○山形説明員 競馬につきましては私のほうの所管でございませんので、間違うかもしれませんが、われわれのほうの調べた限りにおきましては、中央競馬会が選手のあっせん等も含めました実際の施行業務を行なっておるということに法律上相なっております。  競輪のほうにつきましては、自転車競技法に基づきまして、日自振は選手のあっせん等を行なう、実際の施行はもちろん施行者でございますが、競技会が施行者の委任を受けて実施は行なう、こういうふうに二本立てに相なっております。
  96. 松平忠久

    ○松平委員 その点が私は問題じゃないかと思うのですよ。私も競馬法を調べてみた場合に、自転車競技法、競輪のほうの法律と違っているところは、中央競馬会が一つの責任体制をとってぴしっとやっておる。ところが、競輪のほうはどうもそこがあいまいなんで、日自振が中央競馬会のような権限を持っておらない。それから法律自体も、両方比べてみると、競馬のほうは、比較的法律の中にやっちゃいけないこととか、いろいろなことを具体的に書いてあるけれども、あなたのほうは業務方法というようなもので逃げてしまっている。こういう関係で、同じような国営のようなかっこうになっているギャンブルというものが、競馬のほうはきちっとした体制をとっているけれども、自転車競技会、つまり競輪のほうはどうもその点がはっきりしていない。そういうところに私はやはり問題点があるのじゃなかろうかというふうに見ていますが、この私の考え方に対してどういうふうにあなた方は考えておりますか。
  97. 山形栄治

    ○山形説明員 競馬は非常に古い歴史を持っておる競技でございまして、かつ当然のことでございますけれども、馬匹の改良というようなことから、従来から国営的にこれが運営されておったやに聞いております。競馬には競馬の長い歴史と運営の基準というのがあろうかと思いますが、われわれといたしましては、昭和二十三年に自転車競技を始めまして、これまた一応非常に長い歴史の積み上げで、いろいろと不備の点はあろうかと思いますけれども、改善を当然にしなければならぬ点は改善をすべきであり、現在の骨格になっておる体制自体が非常に不備であるためにいろいろと不祥事件が起こっているというふうにわれわれのほうでは感じておりません。現行の形の中で今後いかにこれを迅速に強力に改善していくかという問題であろうかと考えておるわけでございます。
  98. 松平忠久

    ○松平委員 いま二本立ての体制だ、したがって、責任が二つの機関にあるということなんですが、それではお伺いしたいのですが、自転車競技会のほうは、今度の事件に対してやめたり辞職したりして責任をとっておるような者があるようなんです、新聞によりますと。日自振のほうは、これに対して責任をとっておる者がありますか。
  99. 山形栄治

    ○山形説明員 私も詳細に存じ上げませんけれども、新聞紙上によりますと、競技会及び選手会のほうで責任をとったということで、一、二名の方が職をのいたというようなことを見ているわけでありますけれども、日自振につきましては、現在そういう事実はございません。責任をとっておるということはございません。
  100. 松平忠久

    ○松平委員 それはちょっとおかしいじゃないですか。責任が二つの体制に分かれておって、一方は責任をとっておる、しかし一方はそういうことはない。しかも、あなたはいま新聞でそれを承知した、一体何ということだ。これだけの世界で初めての大事件を起こしながら、新聞でこれを承知したとは一体何事だ。何のための監督なんだ。あなたはだれを監督している。もう少しまじめになって答えたらいいじゃないですか。新聞で承知したなんてばかな話はないよ。だから、片方の競技会が責任をとったら、片方のやはり責任体制を持っているところのもう一つの日自振が責任をとるのは当然じゃないですか。大臣どうですか、そこは。片方は責任をとった、片方は責任をとらない。しかも、責任体制は二つになっておる。こういうやり方で一体いいですか。これはなまはんかのことじゃないですよ。
  101. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事件の内容をよく調べまして、検察当局あるいは警察当局等の調書もよく調べまして、もし責任をとらせなければならぬことがあれば、処理しなければならぬと思います。
  102. 山形栄治

    ○山形説明員 ちょっと答弁に不足がございましたので、補足的にもう一回答弁させていただきます。  先ほどの答弁で、競技会及び選手会において責任をとった方がおられるということを申し上げましたけれども、競技会においては、一応現段階ではこの件で責任をとったことはございません。選手会系統で、責任といいますか、選手会の役職員を辞任なさった方がおられるわけでございます。
  103. 松平忠久

    ○松平委員 それはなおさらおかしいと思うのだね。選手会というのは自主独立型の、法律に基いたものでも何でもない。競輪法に基づいたものじゃないのです。これはいまあなたもおっしゃったように民法によるところの法人なんだね。それが責任をとっておって、そうしてこれを十分公正円滑な運営をしていかなければならない責任者であるところの競技会なり日自振というものは何らの責任もとらない。これで一体いいですか。私が言うのは、これは法律上の問題もありますけれども、しかし私がいま申しましたとおりに、これは将来どういうふうになっていくかというせとぎわに来ているのですよ。そういう場合に、一般大衆の信頼を得なければならない、そうしなければ存続は不可能になる、こういうことなんです。したがって、当初申し上げたように、一般の大衆に対する責任というものは社会的責任なんです。あなた方のいままでの態度というものは、その社会的責任というものを全然感じておらないのじゃないか。この点はどうですか。
  104. 山形栄治

    ○山形説明員 競輪は、先生のお話のとおり、公正に運営され、これが健全なる娯楽として育つべきものだと思います。その点、今回のような不祥事件は非常に遺憾でありますとともに、競輪という一つの事業の今後の公正なる運営につきまして非常に問題が多いんじゃないか、われわれ懸命にこの改善について関係者及び広く世論にも聞きまして改善いたしたい、こう思っておるわけでございます。われわれ、非常に不備な点があろうかと思いますけれども、できる限りやる決意でございますので御了承願いたいと思います。
  105. 松平忠久

    ○松平委員 最後に、大臣に若干お伺いしたいのですが、いま局長の答弁にもありましたとおりに、真剣になってやるというでございます。しかしながら、たとえば日自振におきましても、みんな会長その他は通産省の役人の先輩がいっているのです。これは大臣の決断ということによらざるを得ないと思うのです。このことは局長課長でできることじゃありません。したがって、私が当初申し上げましたように、将来にわたってこれをどういうふうに存続さしていったらいいかということの一番基礎になるものは、国民の信頼性だと思うのです。その国民の信頼性があるような競技であるならば、これは存続する可能性があります。しかし、そうじゃなくて、八百長、でたらめをそのままにして、社会的責任もとらないということであるならば、競輪に対する批判というものはますます激しくなる、私はそういうふうに見ているのです。ですから、この点については、通産省の事務官僚の考え方ではなくて、あなたのほんうの意味考え方、政治家としての考え方をもって処理されるように希望いたします。どうですか、大臣、ひとつ答弁を……。
  106. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく事件の内容について検察庁あるいは警察当局の調べをよく調べまして、その上に立って御趣旨をよく考えながら処理いたしたいと思います。
  107. 松平忠久

    ○松平委員 終わります。
  108. 藏内修治

    ○藏内委員長 加藤清二君。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 与えられました時間が非常に短うございますので、簡潔に要点をしぼって質問いたしますから、答弁なさる方も簡にして要を得た答弁をお願いしたいと存じます。  まず中曽根通産大臣に申し上げたいのですが、歴代の総理はたいてい通産大臣の経験者です。通産大臣という職は総理への登龍門になっているようです。私は、中曽根さんはその資格と実力を持った方だと期待いたしております。ぜひひとつ、この通産大臣の任務を全うされまして、やがて最高の総理にまでのぼられまするよう通産大臣の職を全うしていただきたい、こう思うわけであります。  そこで、あなたにお尋ねしたいのですが、景気調整のための調整インフレとは一体何であるか。それから田中総理が中国へおもむかれる。その前後にまた通産大臣も中国へという意向があるやに承っておりますが、その目的と時期はいつでございますか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御激励をいただきまして、まことに恐縮に存じます。身、浅学不肖にいたしまして、ただいまの職責を守るにきゅうきゅうたるありさまでございます。  まず中国の問題から申し上げますと、日中が経済的に、文化的に交流するということは必然の流れでございまして、ここで国交正常化が行なわれますならば、それがさらに促進さるべき趨勢にあると思います。しかし一面におきましては、日中間は、ほかの国の関係とは違いまして、過去において戦争状態の悲惨な経験もございますし、われわれとしての反省の立場もなければならぬと思うわけでございます。したがいまして、われわれのほうからおこがましく出かけていくという押しきせがましいことはできるだけ避けたいと実は思って、もし先方にその要望があるならば、われわれはそれに対応して喜んで参ります、そういう基本考えに立っております。  私は、田中訪中後適当な機会に、もし先方にそういう御希望があるならば、喜んで経済関係問題の将来の提携及び調整等の問題について隔意なき懇談をして、日中間の経済協力を長期安定、そして両方に互恵平等のものになるように基礎づくりをしたいという非常に強い熱意を持っておりますので、その機会があればそういうふうにしてまいりたいと考えております。  もう一つ、先の問題は何でございましたか。
  111. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 中国へ渡られます時期はいつですか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 時期はわかりません。わかりませんが、田中訪中の結果によりまして、総理とも御相談をしてきめたい、そう考えております。  それから調整インフレの話でございましたが、私は、インフレと名のつくものは、いかなるものであるにせよ反対でございます。私は調整インフレ云々ということばを用いたことはないのであります。私が用いましたことばは、景気をもう一段階刺激する必要がある、それによって、外需に向かっている輸出力を内需に向けなければいけない、そういうことを申しまして、当時の段階においてはもう一段階アクセルを踏んで景気をふるい起こす必要がある、そういうことを申し上げました。それが調整インフレというふうに誤解してとられましたのは、はなはだ遺憾でございます。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、中国へ渡られまする時期は目下あいまいもことしている、しかし総理が帰られてから、その結果を見てと、こういうことですね。それは臨時国会の前ですか、あとですか。それによって質問が変わりますから……。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 臨時国会が開かれるかどうかは、私まだよく存じません。いずれにせよ、田中訪中というものがどういう成果を生むか、またその田中訪中に際して、周総理あるいは毛主席のような方々がどういうお考えをお持ちであるか、そういうことをよく確かめた上で時期及びその内容について考えていきたいと思っております。
  115. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 臨時国会は大体十月のうち、総理が中国から帰られてからと、こういうことのようですね。では、その関係の質問はその時点でする。つまり臨時国会において本件の質問はする、こういうことで次へ進めたいと思います。  いまの調整インフレのことでございまするが、これは新聞、週刊雑誌等に、通産大臣調整インフレをして卸売り価格を上げる、卸売り価格が伸びていないからこれを上げて、輸出を押え、内需に向けるんだ、こういうことが宣伝されておりますが、これはあやまちですか。
  116. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が一番念願しておりますことは、円の再切り上げを防止するために全力を尽くすということでございます。再切り上げを防止するというために必要な措置をいろいろ考えてみますと、一つは内需をさらにふるい起こして、輸出に向かっている力を内需に向ける、そういうことにあると考えたわけです。そのためには財投その他でもう少し景気をふるい起こす必要がある。日本の最近の景気の状況を見ますと、前のように民間設備投資が起こってきて、それで自動的に景気が上昇していく形と違って、政府の財政需要、それに伴う民間の消費力、これによって景気がわき起こっている状態でございます。ですから迷走台風みたいに蛇行して、なかなか上昇力がふんばって出てこないわけであります。九月までに大体公共事業の七二%を繰り上げて使って景気をふるい起こしているわけでございますが、そうすると後半になると二八%しか残っておらぬ。それではたしていいか、そういうことも心配いたしまして、そういうわけで、もう一息景気をふるい起こすために財政投融資その他の措置をやる。必要とあればこれは臨時国会でも開いてもらって、補正予算でも組んでやる必要があろう、こういう見解を当時持っておりました。しかし臨時国会で補正予算をやるということは実現性がなくなりましたので、財投その他によりまして、地方公共団体に対するいろいろな措置をやって、起債そのほかの措置も行ないまして、いま景気のアクセルを踏んでいるというのが実情でございます。  そういう形で外需を内需に振り向けようというのが趣旨であり、また円の再切り上げを防止するということは私にとっては至上命令であると心得て一生懸命やっている、それが調整インフレというふうに誤解されたのであります。
  117. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 円の切り上げ、これは日本経済にとってたいへんな問題である。だからこれを避けたいとおっしゃる、その御趣旨は、野党のわが党も賛成です。野党社会党は、決して何でも反対ではありません。何でも反対が専売特許のようにいわれまするけれども、事中国への友好親善——この問題も長きにわたって赤だのピンクだのといってわれわれは悪口を言われてきた。いまようやく財界も政界もなだれ現象で中国へ、中国へと草木もなびくようになった。趣旨が同じであり、方法が相似ておるものであれば、私ども決して反対とは言いません。したがって、円切り上げの防止策、これは防止策というより、円切り上げをさせられては困る、それは防がなければならないという、その趣旨については賛成です。しかし、方法が、この上、景気を刺激して卸売り物価を上げて、輸出を押えて内需を喚起するというその方法論については、いささかいただけない面がございます。この問題も論争したいところでございますが、与えられた時間がきょうは非常に短うございまするので、それは避けて通りますが、ほんとうに円切り上げを防ぐ、輸出に対してある程度のブレーキをかけるということならば、これはアメリカの私の友人どもが盛んに言うておりますことのほうがずばりじゃないかと思うのです。何か。日本の人が働き過ぎるからアメリカと同じように週休二日制にしてくれとこう言う。レーバーダンピソグ、チープレーバーをやめてくれとこう言う。したがって、賃金を上げなさい。またの一つは、日本企業公害出しつぱなし、たれっぱなしである。それは製品コストを安くする道に通ずる。その安いものを先進諸国へ売り出すということは、これはガットの平等の精神に違反する行為である。ゆえにペナルティーをつけるべきである。そのペナルティーは関税がよろしい。その関税の率は、これは先進諸国が公害に投資している率を課するべきである。数字としては一〇%から二五%が妥当である。これは国際公害会議で何度も提案され、あわや決議に至らんとした問題なんです。したがいまして、ほんとうに輸出、チープレーバー、レーバーダンピングと言われるそれを押えなければならぬとするならば、公害も労働も先進諸国並みにすると同時に、余った金は社会投資、社会福祉にもっと使うようにすべきだと思うのですが、これは臨時国会か予算委員会で論争する、こういうことにしましょう。  そこで次に、そういうやさきにありまして、まあそれの一環、日本の円を弱くするという一貫作業の意味もあり、片やニクソンさんの次の大統領選挙に応援するという意味もあって、日米繊維協定が結ばれました。これは日本の業界にとってはたいへんな打撃であります。いま倒産がもうどんどん出ておるのです。あなたの郷里もそうです。私の郷里もそうです。地場産業はたいへんな打撃を受けております。歴史に名高い大阪の市新までが今度倒産するんです。そういうやさきに、せっかく結ばれました協定、せっかく協定で数字の詰めまでいたしました製品を協定の中からピックアップして、いま個々別にトリガー方式をとって、日本の繊維の輸出を制限しようということがアメリカで行なわれております。特にその最たるものがウールであります。大臣はこれに対してどのような対策をとられましたか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ウールにつきましては、ダンピング法を適用して調査するという情報もございまして、累次にわたりまして在京アメリカ大使館当局及びワシントンの日本大使を通じて国務省、財務省対して何回か抗議もし、警告も発してとりやめるように強く要請してきたところでございます。なお、エバリー代表が参りましたときにも、私から直接この問題を指摘いたしまして、反ダンピング法の問題についてハイレベルの協議を行なうということもきめまして、いまその協議を始めようという情勢になってきておるわけでございます。このウールの問題につきましては、私らの考えでは、明らかにこれは不当な措置でございまして、すでに日米間の繊維協定があって、そのワク内で忠実にそれが守られ、しかもそのワクのはなはだ低い部分に輸出量がとどまっているという状態でダンピング法が適用されるということは、はなはだ不当なことで、非常識なことであるとわれわれは考えております。そういう立場に立って、こういう措置が最終的に行なわれないように今後努力していくつもりでございます。
  119. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さすが頭のいい通産大臣ですから、事柄の次第はよくおわかりのようでございます。問題は、その観点に立って何をどのようになさったかという問題と、今後何をどのようになさるかということが問題でございます。政治は言いわけではございません。政治は実行だと思います。この問題は、もはや経済ベースでは片づきません。政治問題でございます。いみじくも大臣がおっしゃられましたように、この案件は、すでに繊維協定の中に特定品目としてうたわれ、ニクソン・田中、時の通産大臣との間にりっぱに協定が結ばれている問題なんです。それを取り出してきてねらい撃ちをするということは、その前提に何かインジュリーか、あるいは協定違反か、あるいは協定にうたわれたところの数字をはるかにオーバーしたとか、何か原因がなければならない。ところが、何も原因はない。逆なんです。一九六八年をピークとして、日本のウール輸出は下がる一方なんです。一九七一年、去年はピーク時の三分の一に輸出量は減っている。協定以後は一体どうなっているか。これは釈迦に説法だろうと思いまするけれども、協定以後は協定で結んだワク、それすらも消化していない。ダウンの一途なんです。何がゆえに財務省がトリガー方式を発動しなければならないか。何がゆえにこれをしなければならないか。背景は、一にかかって政治問題なんです。しかし、これがいよいよ関税委員会になりますると、これは独立機関なんです。だから、そこへ回らぬ先に、財務省の段階において打つべき手は打たなければならぬということを、私は田中通産大臣にも、田中総理大臣にも再三申し上げてきたことなんです。田中さん、これはあなたが生んだ子ですよ、それが育たぬ先に、その効果もあらわれぬ先に、また別なアメリカの国内法でこれを制限するということがいいことですか、それだったら協定はなきにひとしいじゃないか、明らかにこれは不祥事件でなくて、国際法違反である、国際法違反を協定相手国が犯すとするならば、とるべき手段があるでしょう、もはやこんなことは繊維局長あたりにまかしておくことではないということを再三申し上げましたところ、これは中曽根通産大臣にも両角次官にもよく話しておいてくれ、そうして善処をしてくれ、協力をしてくれ、こういうことでした。したがって、それ以後通産当局としては一体どうやられましたか、お尋ねしたい。
  120. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたような外交ルートを通じて、累次にわたって先方に警告を発し、また、その非をわれわれは指摘してまいりました。国務省当局は多分に了解して、財務省当局に働きかけてきてくれた由であります。  エバリー氏が来ましたときに、私はこの問題を鋭く指摘いたしまして、ハイレベルのこの問題等に関するダンピング法適用の会談をやることになって、この九月十一日からワシントンでいま始まっているところです。この先方との話し合いにおいて、われわれの代表は激しくこれを指摘して、最終的にそういう不幸な結果が起こらないようにいろいろ努力させておる最中でございます。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わがほうの代表はだれですか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際経済部長の天谷事務官でございます。
  123. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それで効果があがるでしょうか。その話し合いの結果、独立機関であるところの関税委員会、これに了承を得るような効果がはたして望めるでしょうか。これはもはや外交ベースでもない、政治ベースの問題である。そもそも発足がそれなんです。バーリントン社のキャラウェー社長は、ニクソン氏のさきの大統領選挙のときに頼んで、そしてこのことを始めてきたのですから、背景は完全に政治ベースなんです。したがって、当を得たところの日本の政治家がこれに当たり、ニクソン氏と直接ないしは間接に話し合うことが先決だと思う。それをすべきだと思うのです。もうそういう時期にきていると思う。もしこれで事を誤りますると、私は、事アメリカにとってもたいへんお気の毒なことになるではないかと思われます。  たとえば、国際協定をアメリカの国内法によって制限をする、国際協定が結ばれた直後において、それを否定する行為をアメリカの国内法によってとられるということになりますると、これは遺憾ながらアメリカの国内法は国際法に優先するということになってくる。これは明らかに国際法の違反行為なんです。もしそういうことが可能でありとするならば、私どもは安保に対しても考え方を変えなければならない。われわれ社会党は安保に対しても変えなければならぬことになってくる。安保を廃止して日本の憲法を優先させるべきである。もうすでにそういう論が出てきておるのです。貿易管理令を優先させて兵器輸出は直ちにやめさせるべきである。日本の兵器は、日本の貿易管理令によって制限することが可能なんです。国内法が優先するとするならば、そういう論が出てくるわけなんです。目には目、歯には歯なんです。アメリカがアメリカの国内法を優先させて国際法や協定を否定するという行為に出られるならば、これまた目には目でやむを得ない反動になると思う。  きょうは外務省に来ておってもらいませんが、外務省は中川条約局長、いま国連の大使、あの時代からこの考え方は一貫しておる。またすでに国際法並びに国内法と競合があって裁判がありました。判例もみな国際法、国際協定が優先するということになっておる。過去の判例も明らかなところなんです。なぜ日本が唯々諾々としてアメリカのこの理不尽なやり方に対しておじぎをしていなければならないのか。  これについて関係業界のほうからもずいぶん陳情が来ております。その陳情は大臣の手元にもあると存じます。その一節を読んでみますと、かかることを行なわれますと、「今回の財務省の措置は、日米二国間繊維協定が実施されているにもかかわらず、国内法たる反ダンピング法によって二重の制限を意図しているものとしか考えざるを得ません。日米協定に基づき秩序ある輸出に務めるわが業界としてはかかる措置は全く我々の誠意を無視した暴挙といわざるをえません。かかる理不尽な米当局の態度は、我々業界に壊滅的打撃を与えるのみならず、多年にわたり友好的につちかわれた輸出基盤を崩壊させ、ひいては日米両国の友好関係にも好ましからざる影響を及ぼし、対米不信を惹起するものと考えます。」当然のことです。業界としては、ミルズ下院歳入委員長のオーケーもこれあり、日本政府のオーケーもこれあり、すでに自主規制を結んだのです。そのために日本政府は七百億余の予算を組んだのです。それに追い打ちをかけて、それよりもきびしい協定なんです。また、その協定のあとから追い打ちをかけて、今度はアメリカの反ダンピング法なんです。二重三重の圧力を加え、いまや倒産が続出しているという状況なんです。  私は、この際は、通産大臣も総理も心を一にしてこの難局を打開することに専念すべき時期だと思うのです。あたかもわれわれが前から言っている、それほどアメリカさんがきびしいことをおやりになるならば、われわれはやむなく市場転換をしなければならない。市場転換はやがて社会党の——はっきり申し上げましょう。中間派から右の者までが左へ向かなければならぬことになってくる。それでもよろしゅうございますかということを再三にわたって私はアメリカの友人に申し上げている。これは私は、大臣、ほんとうに大臣が誠意をもってやられたらできる案件だと思うのです。アメリカに理解を与え、そうしてアメリカ自体、すなわちニクソンさんが善処すると思う。そのことはあなたと私ならよくおわかりです。かつてのスチール問題のときも、理解を得て帰ってきたのですから、私はできると思うのです。どうしてもとおっしゃるならば、私は大臣のお供をして、大臣が中国へ行きなさる前に、アメリカへ私はあなたのカバンを持ってでも行きましょう。田中総理も、ニクソンと会ってこられたそのときに、話はされたはずです、すると言ってみえましたから。だけれども答えがない。さすれば、担当大臣が行かれるべきだと思う。  私は、国内で、この委員会ではあなたと争います。しかし、事波打ちぎわから向こうへ向かった場合には一致結束するつもりです。過去の実績もそうなんです。日本経済を守り、日本の国民を守るためであれば、あえてニクソンといえども私はやむを得ぬと思う。波打ちぎわから向こうへの問題については、国内の政治家は一致結束して国難に当たるべきだと思っている。大臣がその気になられれば、私は選挙最中といえども行くだけの用意を持っております。大臣の決意のほどを承りたい。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく、あなたのおっしゃるとおり、私も全く同感な気持ちでおるわけでありますから、可能なあらゆる政治手段を使いまして努力してみます。  私が行く行かぬかということは、いろいろ国会との関係やらあるいは通産省の政務との関係等もございますが、それはともかくとして、ともかく、私に与えられる、許されたあらゆる政治手段を使って努力してみます。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間が参りましたので、まだその他たくさんありまするが、あとは簡潔に申し上げます。  沖繩の繊維関係。私は、先日商工委員会調査団の一行に加わりまして屋良さんたちと親しく会いました。同時に、かの地の繊維輸出業者とも会いました。九月末まではワクがあるけれども、それ以降、十月一日以降は、返還後のどさくさの関係で適当な手続がとられていない。そのために輸出契約ができませんと、こういう言いようでございます。これについてよく検討していただきまして——きのうも私詰めをやりました、課長さんたちと。まだよく検討されていないようでございます。したがって、きょうあなたにその答弁を求めようとは思いません。これはよく検討していただきまして、善処していただきたいと思います。  なぜかならば、コットンだけは、LTAの関係で制限を受けておりましたけれども、毛や化合繊は野放しであったはずです、アメリカの占領下ですから。それが内地返還と同時に制限を受けるとなりますと、一体、内地のワクの中の操作でいくのか、プラスアルファでいくのか。もし内地のワクへ沖繩のあれが食い込んでくるとなると、これは内地は承知しません。なぜならば、そのときには、協定を結ぶ段階においては、沖繩のことは別扱いでございましたから。そういうトラブルも想定できる案件もございますので、早急に調査、善処をしていただきたい。  次に、最後に、LTAに対する態度いかんということです。LTAはどう臨まれますか。
  126. 斎藤英雄

    ○斎藤説明員 お答え申し上げます。LTAは、御案内のように来年の九月に一応期限が来るわけでございます。それで現在ガットのWPにおきまして、事実を調査するということで、繊維全般にわたりましていろいろ調査を行なっております。いろいろその結果が十二月末までに一応出るということになっておりますが、LTA、今後の問題をどうするかという問題、それにも多少関係があるかと思いますが、私どもといたしましては、現在のところ関係の面の皆さまといろいろ相談をしております。右、左といろいろ意見がございますけれども……
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。それでけっこうです。わかりました。制限時間が参りましたから……。  これは繊維局長に私尋ねてもしようがないと思うのです。いろいろ相談するのじゃないのです。私は、田中通産大臣と末席で約束しておる。あなたはそのときにまだ繊維局長でなかったからやむを得ない。いまあなたの答弁、そういう答弁をなさってもこれはやむを得ぬと思う、聞いてみえないんだから。  LTA、国際協定、一年前に意思表示することが可能なんです。だからいま聞いておる。ただし私は、田中通産大臣のときにこれをお尋ねしたのです。なぜかならば、合繊、ウール等々の関係もこれあり、田中通産大臣はそのときに、わかりました、これは日本にとってよろしくない協定でございますので善処します、いわんやその中で合繊、ウールまで一括して包含されるようなことになりましたら、これはたいへんなことになります、だから、あなたの趣旨よくわかりましたから検討して、なるべく約束どおり、この協定は期限切れと同時におしまいにするよう努力するという旨の答弁がはっきりあっておるのです。ですから、あれからもう三カ月にもなっておるのです。あの事務引き継ぎがなければ別です。これはやむを得ませんが、事務当局もよく検討していただくと同時に、通産大臣は、いまのアメリカのアンチダンピング法とともに、このLTAをいかにすべきやというのは、おそらくあなたの通産大臣の任期中にこの結論を出さなければなりませんし、もし日本の意思表示をするとするならば、一年前からこれはできるはずになっておりますから、ぜひそのようにしていただきたいと要望いたします。大臣見解を承りたい。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前通産大臣が言明したことを私も守って実行していきたいと思います。前通産大臣が国会でどういうお約束をしたか、よく正確に調べてみます。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  130. 藏内修治

    ○藏内委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  131. 藏内修治

    ○藏内委員長 速記を起こして。  樋上新一君。
  132. 樋上新一

    ○樋上委員 通産大臣にお伺いいたします。  去る九月一日、二日、ホノルルで開かれました日米首脳会談ですが、歴史的とも言える田中総理の訪中を目前にして、中国問題と安保条約の再検討、さらには近年悪化を伝えられている日米経済関係など、重大な問題を協議したと新聞等に報道せられておりますが、特に日米経済問題は、かなり時間をかけて突っ込んだ論議がされたようでありますが、共同声明を読んでみますと、当初わが国がこれだけは主張すべきであるといわれていたことが盛り込まれていなかったように思うのでございます。たとえば、去年切り上げになったばかりの円再切り上げの問題については、スミソニアン体制の堅持を政府は主張していたにもかかわらず、共同声明のどの項にもそれがなかった。かえって円切り上げをにおわすいわゆる国際通貨制度基本的改革がうたわれておりまして、「両国政府がこのような改革を早急に達成するため努力することを約した。」こうあります。かなり米国側の圧力に私は譲歩した感が深いと思うのでございますが、総理のその後の記者会見において、円問題については話し合っていないと述べられております。  先日行なわれましたIMF理事会の中間報告によれば、黒字国の責任を明確にしており、また九月十四日、十五日行なわれるOECDの第三作業部会においては、国際収支の均衡措置など、あるいは十カ国蔵相会議、IMF総会、拡大二十カ国の委員会などは、わが国に対してかなり強力に要求してくることが予想されるのですが、これに対してどのような態度で臨むのか。田中総理は円の再切り上げはないと言っていますが、それではそれに対する代案はあるのかどうか、通産大臣の御意見を承りたい。
  133. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年の円切り上げ以来、その効果が最近ようやく出てまいりまして、輸出は減り、輸入が激増してきているという傾向が顕著でございます。この傾向がそのまま持続していけば、そういう圧力も減ってくると思われます。  それから、アメリカとの関係につきましては、緊急輸入をとりあえずやることにいたしまして、日本側としてのそういう積極的熱意を示したわけでございます。また、一方において、われわれ国内需要の喚起、景気の上昇ということがようやく目に見えて出てまいりましたから、それによってある程度外需が内需に転換することも考えられます。そういう動向をよく見守りながら、円切り上げに対する圧力をできるだけ緩和するように今後とも努力していくつもりでございます。
  134. 樋上新一

    ○樋上委員 当然今回のこの会談にあたっては、数年来の日米貿易の不均衡是正ということが主であったと思うのですが、共同声明において、この問題については合理的な期間内に是正すると述べられておりますが、田中総理は、両三年をめどに置いてこの不均衡を是正する、そして経常収支の黒字を国民総生産の一%にするとニクソン大統領に約束した。はたしてこの両三年に、四十七年度黒字見通しの八十五億ドルを三十億ドルに減らす二とができるかどうか、私は非常に疑問を感ずるわけですが、その理由としては、一つには、従来の輸出第一主義的な経済構造、政策運営を根本的に早期に改める、こういうことが言われている。こうなければならないと思いますし、また、米国自身の経済自体の体質、いわゆる多国籍企業、またインフレ経済などを考慮いたしますと、これは非常に思い切った政策を講じない限りは、繊維問題の二の舞いを踏むのじゃないか、こう感ずるのですが、この点はいかがでございましょうか。
  135. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のような諸条件があると思います。そこで、われわれといたしましては、ただいま申し上げましたような政策を急ぎ、かつ、事態の推移を冷厳に見守りながら、いろいろの対処策を考えておるわけでございます。私の感じでは、アメリカが一たんある方向に動き出しますと、これは経済の底力はかなり強い国でございますから、輸入過剰、輸出過少というような現象が、またたく間に解消されるという可能性もなきにしもあらずです。たとえば、ベトナム戦争が終わればどうなるか、そういうような政治的ファクターも必ずしも予見されないわけでもございません。そういうようなあらゆる変化を頭に置きながら、日本として再切り上げを回避するという措置を万全を期してやりたいと考えておるわけです。
  136. 樋上新一

    ○樋上委員 いわゆる両三年にできるかどうか、向こうのほうの言っていますところの農作物、コンピューターなどの自由化をアメリカは言っていますね。こういう点はどうか。  また、今回の会談において、わが国がアメリカのほうにかなり譲歩したということはこれはいなめないことだと思うのですが、しかし、わが国としても、主張すべきことは主張しなければならぬ。米国は、わが国に両国間における貿易収支の不均衡をたてにかなり強力な要求をしてまいっております。米国の赤字の原因は何か、何といっても年間二百五十億ドル以上といわれるベトナム戦争への出費と国内インフレあるいは多国籍企業の海外進出によるドルのたれ流しであり、特に多国籍企業の海外進出は、失業者の増大を来たしており、また、ドルの流出などの理由で、ジョンソン大統領はかなり制限した政策をとっていたが、ニクソン大統領になってからは制限が緩和されている。赤字の原因となっているのは、これは米国の失政である。このことを反省せずに他国にしわ寄せをするということは許せないことである。また、簡単に譲歩するのでは、日本としての、何でもアメリカが言えば譲歩する、いわゆるいまだに追従主義の政策が変わっておらない。  そこで、お伺いしたいのですが、米国系多国籍企業の海外子会社による年間生産額は一体どのくらいあるか、二、三年間の推移をおわかりになるなら大臣に述べていただきたいと思うのです。
  137. 小松勇五郎

    ○小松説明員 米国以外にございます米国系企業、特に巨大な多国籍企業の活動は、御案内のように、ますます活発になっておりまして、このような企業から日本が輸入しております金額は、いろいろな計算のしかたがございますけれども、昨年一九七一年を例にとりまして一つの試算をいたしますと、総額三十九億七千万ドルという数字が出てまいります。したがいまして、その年のアメリカからの日本の輸入は四十九億八千万ドルでございまして、合わせますと、八十九億五千万ドルばかりになるわけでございます。同じ年のアメリカ向けの輸出は七十四億九千万ドルばかりでございますから、総合いたしますと、日本のほうがかなりの入超になるという計算ができるかと思います。
  138. 樋上新一

    ○樋上委員 こちらも調べたのですけれども、米国系の多国籍企業の海外子会社による年間生産額は二千百億ドルといわれておるのです。七〇年の場合、これらの多国籍企業による米国の国際収支は九十億二千万ドルのマイナスの影響を受けたのである。内訳を見ると、米国系多国籍企業海外子会社の存在で、米国からの輸出が減り、九十七億七千九百万ドル、また子会社から逆輸入があって、二十二億一千万ドルというのですが、この二つが貿易収支上のマイナス分、子会社への輸出がプラスで、結局、貿易収支には八十七億ドルのマイナス効果を与えておるのであります。  このようなことを考えると、多国籍企業の影響は非常に大きいのであって、そこでお伺いしたいことは、現在わが国には米国系多国籍企業は何社あるか、またわが国から米国にどのくらい進出しているのか、この点お答え願いたい。
  139. 小松勇五郎

    ○小松説明員 わが国に対します米国系企業の進出の数その他につきましては、申しわけございませんが、ただいま手元に資料を用意いたしておりませんので、早急に取り調べまして御報告申し上げたいと思います。
  140. 樋上新一

    ○樋上委員 私、調べたのですけれども、米国から日本に対する会社は三百七十五ございます。それから日本からアメリカへ行っておる会社は四十八、米国糸の数が圧倒的に多いわけですが、この中で生産会社はどのくらいあるか、反対にわが国の多国籍企業の米国における生産会社はどのくらいあるか、御存じですか。
  141. 小松勇五郎

    ○小松説明員 役人らしいことを申し上げまして恐縮でございますが、実は所管が企業局なものでございますから、企業局長をこの場に呼んでくるべきでございましたが、手違いで、おりませんので、これも取り調べまして至急御報告申し上げたいと思います。
  142. 樋上新一

    ○樋上委員 きのうから通告してあった。そういうことがしてあるのに、それは調べます、調べますと朝からそんなことばかり言っておって一つも徹底されていないのですね。われわれが委員会で質問するというのを軽視しておるのですね。あなたのほうから、質問はどんなのですかと聞いてくるから、この問題とこの問題を尋ねるよと言っておる。いまになってみたら一そうだろうと思ってこっちはちゃんと調べてあるのですけれども、やはりそれだから答えてもらわなくちゃね。こっちが尋ねてこっちが答える、一人でしゃべっていては質問にならぬ。一人でしゃべって一人相撲をしている。大臣は横にじっとしている。にこにこ笑っておられますけれども、これは問題なんですよ。そんなことではいかぬ。  わが国から米国へ進出している生産企業は三社ですよ、向こうで製造しておるのは。日本ミネチュア、宝イス、吉田工業、こうなんです。アメリカのほうがこちらへどんどん来て、アメリカが製造工場日本に持っておる。ここに非常に問題があると思うのですね。米国の場合は、三〇〇のものをつくる場合、一〇〇は米国内で製造し、残る二〇〇は他国で製造する、ヨーロッパの場合は、二〇〇のものを製造する場合は、八五は他国で製造するといわれているのですが、わが国の場合はほとんどすべてといっていいくらい国内でつくって他国へ輸出しておるありさまですね。これでは輸出が増大するのは当然だと思いますが、それでアメリカが日本の輸出を防ぐ、アメリカ自身がわが日本へ来て子会社をこしらえて、それで製造をやっているのではないですか。  このような観点から日本の場合を見てみると、七一年においては対米輸出は七十四億九千五百万ドルで、今度対米輸入のほうは四十九億七千七百万ドル、二十五億ドルの黒字を計上しておるのです。米国系在外企業からの輸入額を見てみますと、三十九億ドルもあって、米系輸入は合計八十九億四千九百万ドルとなり、貿易バランスは逆にわが国の十四億五千四百万ドルの赤字となるわけです。そうでしょう。その点についてわが国は米国にもっともっと強く主張すべきではないか、こう思うのですよ。この点大臣いかがですか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まさに御指摘の点があると思います。多国籍企業による米国の輸出力というものは、米国そのものから表へ出ておりませんけれども、御指摘のような要素は十分あるのでございまして、この点も箱根会談その他でわれわれのほうからアメリカに強く指摘したところでございます。しかし、今後とも、アメリカにはアメリカの事情があるでしょうが、日本にはまた日本の事情があるわけでございますから、われわれの立場を強く堅持して申し入れるべきところは申し入れるつもりでございます。
  144. 樋上新一

    ○樋上委員 この点よく大臣も存じておるとおっしゃったのですが、こういう点があるのですから、一方的に赤字の是正を迫ってくる場合は強くこの点を主張してもらわなければならぬのですよ。  話題を変えますが、わが国も先進国の仲間入りを果たした現在、海外進出にあたっては従来のような後進国に片寄ることなく、先進国への企業進出の増大を考えるべきときがきておるのではないか。いわゆる政府が従来二の足を踏んでいた理由として、一つには技術問題、二つには課金問題ですが、現在では十分に諸外国と競争できるまでに成長しているのです。こう判断してよいのではないかと思うのですが、今後のわが国における海外企業のあり方の方向を示してもらいたいと私は要望するのですけれども、これはいま申し上げてもいろいろな資料もそろっていないと思います。  そこで、海外に企業が進出する場合、確かに危険が伴うことは当然でありますが、それを補助する制度として、海外投資損失準備金制度がありますね。これが現在、後進国に対して五〇%、先進国に対しては一〇%になっているのですが、これら諸般の事情を考慮して、先進国も後進国と同様にまで引き上げるべきではないかと思うのですが、大蔵省並びに通産省の御回答を願いたい。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、やはり発展途上国と先進国との間では危険性の度合いが多分に違うと思うのです。そういう意味において、危険性の少ないほうが少なくなるということはやむを得ないことではないかと思われます。しかし、日本の最近の企業を見ておりますと、かなり輸出や何かがどんどんいっているものの中には、日本も多国籍企業とかジョイントベンチャーでいかなければもう次の段階はだめになるということをよく意識して、ある程度外国のシェアを確保したら現地法人をつくって、そこで多国籍企業的に転化していこうと考えているものも出てきているようであります。私はこの方向は一つの方向であるだろうと思っております。  しかしいずれにせよ、確実性という点を見ますと、先進国との間のいまのような交流というものは非常な確実性を持っておるゆえんでもありますから、お説のとおり同感のところもありまして、その方向に進めていきたいと思っております。
  146. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  ただいまの海外投資損失準備金につきましては、ただいま通産大臣のおっしゃられたとおりと考えております。  若干ふえんさせていただきますと、現在の海外投資損失準備金の考え方と申しますのは、基本的に企業はその投資を自分の責任と自分の判断において行なうべきであろう。しかしながら、低開発地域につきましては、政情不安その他の問題がございまして、非常にリスクが高い、むしろ経済外的なリスクがございますので、これを五〇%認めております。  それから一昨年でございますか、さらに先進国につきましての投資につきましても一〇%を認めることといたしましたのは、これはむしろ一般の経済の危険と申しますより、やはり外国で事業を始める場合と日本で事業を始める場合とでは、同じ企業の自己責任で行なうべきであるといっても若干の相違があるということから一〇%を認めた次第でございまして、やはり低開発国と先進国との間に、現在の海外投資損失準備金についての考え方から申しまして、若干差を認めざるを得ないのではないかと考えております。
  147. 樋上新一

    ○樋上委員 少し私と見解を異にしておりますが、そういう御答弁もあろうかと思います。私は、そういう点はこの時代に入ってくればもう少し同じようにしていいと思っておる次第でございます。  そこで、公取委員長おいでになっておりますので、お伺いします。  先般、消費者八団体、日本チェーンストア協会が再販制度廃止に関する要望と質問書を持参したときに、前委員長は、再販制度廃止の方向検討していると答えられたように新聞で報道されておりますが、この点に関して今度の委員長はどうお考えになりますか。
  148. 高橋俊英

    高橋説明員 再販制度の問題について、消費者の八団体の代表の方から要望がございました。そのとき、新聞記事の面は、これはいろいろと見出しのつけ方とか、どの点を書くか、いろいろ御自由でございますから多少ニュアンスが違っておりますが、私の答えたことはいまでもあまり変わっておりませんが、廃止の方向検討するという表現は全然いたしておりません。  消費者の主張にはそれなりの理由があると十分認められます。しかし、この問題は何しろ二十八年以来十九年間存続しておる指定品目、いま五品目でございますが、それが残っておる。それで、これはたいへん消費者になじみの深い日常の消費物資でございますが、そういうものについてなぜ十九年間も、現在までそういう制度が存続してきているのか、そういうことと、それから当初始めたときの理由もありますが、そういうことについて、私は私なりに十分検討をした上でないと、いずれにするかということをはっきりお答えするわけにはいきません、いつまでにということにつきましても、これは期日を限ってお答えを出すというわけにはいきません、しかし私は、この問題についていいかげんに済まそうという逃げ口上で申しているのではない、ほんとうに検討したいと考えておるのです、こういう表現を用いたはずでございまして、廃止の方向でということを、受け取られる方があるいはそういうふうに好意的に受け取ったかもしれませんが、私はそういうことばを用いたこともありませんし、またそういうニュアンスを強く出したわけでもありません。  ただ、何か今日の段階において再販制度というものが、特に指定品目につきまして、法律に定めてある品目が別にございますが、そうではなくて、公取として指定をしている品目が五つある、これにつきましては、はたしで今日的な意味においてどういうメリットがあるのか、あるいはその必要性があるのか、これを廃止した場合にはいかなる利点があるのか、あるいは不利益な点が生じてくるのかどうか、関係する立場それぞれについてみな主張が違うわけでございますから、それらの点を十分検討した上で、何らかの結論を出すように努力をしたい、こういう趣旨でございます。
  149. 樋上新一

    ○樋上委員 それでは、現在公取が再販価格制度を是認している理由として二つあげておるのです。販売業者の適正なマージンの確保、それから安売りによるブランドイメージの下落と品質の低下をあげているのですが、そうでしょう。しかし実際には、再販を実施している医薬品メーカーでは、二〇%をこえる利益をあげている企業が少なくない。中には再販商品の一部の小売りマージンを四、五〇%としたり、特売期間中に小売り店に対して購入量と同量を添付したりすることがあるのです。またブランドイメージも、商品の使用、広告による印象などによって消費者が持つもので、値段の高低とは直接関係がないのではないか。現行制度による消費者の不利益などを考慮しての今回の発言になったのかどうか、この点をひとつ確認しておきたいのです。
  150. 高橋俊英

    高橋説明員 それぞれの品目について弊害と思われるようないろいろな現象があることは認められるわけでございます。そこで、ただいまはさしあたりそういった再販制度を維持しながら、その間にメーカーが主として行ないますところのいろいろなよけいなこと、はっきり言えば、余分なサービスをしたり、あるいは消費者に対して何か必要以上のイメージを与えるとかというふうなことは慎んでほしいというふうな、弊害を是正するという措置はすでにとっております。  しかしながら、何しろ五品目と申しましても関係業者の数も非常に多く、その品目の細目にわたりますと非常に多岐にわたっておりますから、いま御指摘のようなことについて確かにあるいは事実としてあるかと思いますが、そういう点だけをとらえて、さて廃止するかどうかというふうに簡単にはいかない事情もございます。つまりこれは、いまここで私としてはその理由を明確に申せないのですが、なぜ存置させているかという理由で、ただいま小売り業者の保護といいますか立場を守ってやるとか、あるいはブランドの保護というふうなことがありますが、かつては確かにそういう日常品で昭和二十八年当時であれば、おとり販売の種にされやすいというふうなことがあって、再販を希望するものに指定をしたという事情もあるようでございます。  今日はたしてそういう観点からそういう制度を維持しておくべきかという点になると、確かにいろいろ疑問の点もございます。ですから、先ほど申しましたように、確かに検討を要する段階に来ているとは思いますが、さりとてそれをやめた場合に一体いかなるメリットが消費者に与えられるかということも考えておかなければならぬ。不利なことは全くないといっていいのかどうか。あるいは小売り業者の立場というものを、これは何も五品目を扱っている小売り業者だけをどうこう言うのはほんとうはおかしいのですけれども、たとえば医薬品等について全国的な配置が現在実際は行なわれている。事実上ある。そういうことについて考慮しなくてもいいのか。安売りを専門とするものが、この場合は、廃止した場合には思い切った値引き販売をすると思います、流通経路が違うのでありますから。そうすると他の小売り業者はどうすればいいのかというふうなこともないではない。  私ども、必ずしも中小企業の保護を目的とする官庁ではございませんから、そういう観点からとらえるのではなくて、やはり公正な取引というものを基本に置きながら競争の維持ということも考え、しかもなおその中において小売り価格を固定するような再販商品を認めておるわけでございます。  それはこういう説もあるわけであります。たとえば場合によりましては、再販商品であるがために値上げをするというときには逆にしにくいというような声もあるわけですね。はっきり再販と指定されていますから、値上げをするとなると固定された小売り価格をはっきり引き上げるというふうになる。それがちょっとひっかかり、逆にやりにくいという面もあるのではないか。しかし、それらの点はそれぞれ一つずつの理由にはなるけれども、全体を積み上げてみて、どのようなメリット、デメリットがあるかということをよく検討した上でないと、いずれとも早急に決断を下し得ない問題である。非常にやさしそうであって、かつ根の深い問題ではないかと思いますので、そういう点をひとつ御了承いただいて、しばらくの間検討の時間をかしていただきたい、こういう趣旨でございます。
  151. 樋上新一

    ○樋上委員 最後に、時間の関係上一、二点伺います。  貿易面での各国間の不均衡の拡大は、通貨不安の原因となっています。そこでその結果、秩序ある輸出が要請されているのですが、これは輸出自主規制や輸出割当の協定などを内容とするので、輸出国の独禁法に触れるおそれが強いと思うのですよ。輸出秩序と国際協調とのバランスを今後どういうふうに考えていかれるのか。さらに輸出相手国との情報交換についての基準を明らかにしてもらいたいと思うのです。  もう一つは、各国との独禁政策調整はどうはかるのか。  この二つの問題についてお伺いしたい。
  152. 高橋俊英

    高橋説明員 現在のような日本が置かれている立場、大幅な輸出超過でございまして、輸出入の格差が著しいために、アメリカを中心として、あるいは西欧諸国からも、日本の国際収支全体の上からいって円が強過ぎるのではないかというので、へたをすれば円の再切り上げを求められるような情勢下におきましては、日本の国全体の利益を考えた場合、あるいは他国との協調を考えた場合に、輸出カルテルを相当幅広く認めていくという基本的な態度は、これは当然であって、正しいあり方だと思います。輸出カルテルをとやかくいうような段階ではない。むしろオーダリーマーケティングを確保するためには、そういう方法を弔いることによって他国をいたずらに刺激しないということが一番肝心な政策であろうと思います。  私どもは、それに対しては全面的にその政策は妥当であるというふうに思います。しかし、長期的な観点に立った場合に、すべて貿易を制限する方向に各国がいくということは決して好ましいことではありません。日本がいまとっている政策は、私の所管ではありませんけれども、何が何でも輸入を大幅にふやすという方向でいっているわけでございまして、逆に輸出のほうはこの際としては押えていこうじゃないか、あまり急激に輸出が伸びることは決して日本としてプラスにならない、好ましいことではないという判断に立っての政策がとられているわけでございます。  ところが、日本の体質を考えますと、長期的に見た場合には、やはり私は輸入は増大するだろうと思います。これは個人的な見解でございますが、日本の原料、燃料が国内で生産する分に依存するのは非常に少ないわけでございます。ですからどうしてもそういう燃料の関係では、長期的に見れば国内の政策いかんによりまして輸入は増大するであろうと思います。としますと、そういう段階になってかなり急速に、たとえば貿易収支は均衡に近い状態が得られ、したがって、経常収支も相当改善されるといいますか、黒字の幅が減るということになりますれば、やはり私どもは基本的な態度として輸出も適度に伸ばすべきである。輸出を押えるという方向だけでいくのではプラスにならないと思います。ですから長い目で見た場合、これは何年後にくるか、あるいは早ければ一、二年後にくるかという問題でありますが、そういうときには、輸出カルテルそのものについて打ち切るものは打ち切らなければならないと思いますけれども、国際的な協調という点からいいますと、これは相手国との市場の問題もございます。ですから日本の立場からいえば、どんどん輸出を伸ばしたい場合でも、相手国からいえばそれは困るという場合もございまして、現にそういうことがいまの輸出カルテルの基本になっているのです。  逆な意味において、今度は日本が輸出カルテルを認めたいといったところが、西独のごときは輸入を押えるという考えは決してないわけですね。ですから値段を押える。値段をつり上げてくるのは困る。カルテルというのは結局数量規制であっても、価格を下げないという結果を伴うわけです。西独の政府としては、物価問題について非常に神経質であります。ことに選挙を控えればよけいそうなるわけでございます。日本がこの間やろうとしましたのは、白黒テレビとそれからテープレコーダーでございますが、それについては、西独カルテル庁はこれは困るというので、実は西欧向けのカルテルが結べないで、つくれないでおる状態でございます。  そういう場合に、わが国としてはできるだけこちらの立場を相手国に十分説明してやっていかなければならぬ。できるだけ理解していただく。そういう国際的な舞台で協調をはかっていく。いかにすればいいかということはたいへんむずかしい技術を要しますけれども、そういう考えで国際的な協調を大いに進めていきたいということであります。  それからなお情報という点は、業者間で情報交換という程度にとどまるものであれば、これは何ら違法性はないと思う。その情報交換が行き過ぎまして、業者間の合意に達する。言ってみればこれは一つのカルテルになりますが、国際的なカルテルということになりますと、これは原則としては日本の国内法にも触れるし、相手国の国内法にも触れるということで、これは認めがたい、こういうことになるわけでございます。
  153. 樋上新一

    ○樋上委員 終わります。
  154. 藏内修治

    ○藏内委員長 中村重光君。
  155. 中村重光

    ○中村(重)委員 諸案件にわたって質問申し上げます。  その前に、経済企画庁長官の時間の関係もありますから、私があとで質問をいたしますガス料金等の値上げに関連をいたしますので——公共料金の値上げの申請がこれから続々出てくると私は思っているわけです。それに対して経済企画庁長官としてはどういった態度でお臨みになるつもりなのか。その点をひとつ伺っておきたいと思います。
  156. 有田喜一

    有田国務大臣 御承知のとおり、一昨年の暮れでしたか、公共料金の値上げは一年間はストップする、こういう原則を貫いてきたわけです。   〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕 ところが、公共企業といえどもやはり従業員の賃金も上げなければならぬ。また他の物価も上がる。とてもやっていけないというので、本年になってから御承知のとおり郵便料金をはじめ公共料金が次から次に上がってきた。これは事実そうなんです。  そこで、私たちの考えとしましては、公共料金は押えるということが原則です。しかし、その公共企業の実態をよく把握して、合理化すべき余地がないかということをずいぶん追及し、また将来の展望の上にも立ちまして、そして押えるものは押える。どうしても押え切れないというものにつきましては、あるいは政府から援助といいますか、低金利の財政資金を与えるとかいろんな措置も講じ、なおどうしてもいけぬというときはしかたなく受益者負担、こういうような考えでいかざるを得ない。要するに、地区住民の福祉、しあわせということを考えなくてはならぬ。あまり押え込んで公共企業が立っていかないというような姿になりますと、かえってサービスが非常に低下して地区住民に迷惑をかけることもある。そういうことも勘案しながら、原則としては押えながら、その実態をよく把握をして、将来の展望の上にも立って善処していきたい。これが私どもの基本的な態度です。
  157. 中村重光

    ○中村(重)委員 考え方としてはいまの御答弁で明らかにされたわけですが、具体的な問題として、消費者米価の値上げも平均八%上げるんだという態度をおきめになった。審議会はそれに対して抵抗の態度を示している。また、その他西部瓦斯の料金値上げであるとかあるいはバス料金の値上げ、タクシー料金の値上げ等々出ているわけです。そういった具体的な値上げ申請に対してはどういった態度でお臨みになりますか。
  158. 有田喜一

    有田国務大臣 先ほど申しましたような基本方針に基づきまして、具体的に、申請案件に対しましてはそれぞれの企業内容をよく把握し、そしていま申したようないろんな観点に立ちまして、やむなく上げるものは上げざるを得ない、こういう態度です。
  159. 中村重光

    ○中村(重)委員 公共料金の値上げの消費者物価の値上げに対する寄与率は、私は非常に高いと思っている。政府の四十七年度の経済見通しの中で、消費者物価の上昇率を五・三%と見込んでおられる。現状のように公共料金が次から次に値上がりをしているという中で、四十七年度の消費者物価は大体どの程度の上昇率になるであろうという見通しですか。
  160. 有田喜一

    有田国務大臣 私はあまり数字をはっきり言うことは好まないのでございますが、しかし企画庁で現在四十七年度における消費者物価の値上がりは大体五・三%以内でおさめたい、こういう態度でおるわけです。いままでの実績を見ますと、幸か不幸か季節的に影響されるところの野菜その他のものが比較的落ちついておるのですね。それから工業製品も落ちついておるのです。したがいまして、公共料金がいままで相当上がっておりますけれども、少なくとも上半期の実績を見ますと、四・五%という程度に落ちついておるのです。しかし私は、これから台風もあるかもしれないし、季節的に影響されるところの野菜、生鮮魚介なんかにつきましても、まだどういうことになるかもしれないということを非常に懸念しながら、何とかして五・三%以内におさまるように、こういう配慮をしておるということであります。
  161. 中村重光

    ○中村(重)委員 配慮というのはわかるのですよ。しかし五・三%の値上がり率に押えていくということになってまいりますと、当然いま出されているところの公共料金の値上げ等を抑制するという方針で臨まない限り私は不可能だと思っております。だから大臣はその確信があるわけですか。いかがです。
  162. 有田喜一

    有田国務大臣 抑制の基本的態度でありますけれども、先ほど申しますように、どうしても押え切れないものもあります。しかし、その内容について、たとえば先般四大都市のバス料金その他の公共料金の値上げの申請がありました。あのときも、近距離を三十円から五十円にしたい、その過渡的の措置で四十円ということになりましたが、その四十円を申請よりも三月延伸していくとか、そういうようなある程度査定を加えながら、申請どおりでなくて、ある程度それを査定をして、少しでも消費者に迷惑がかからないように、こういうようなこともやりながら進んでおるのですから、どうしてもしかたがないものに対しましては、いま申しましたようなことをやり、そして今後の企業の刷新といいますか、合理化といいますか、そういう方面にしっかりやるようにわれわれは大いに激励しておる、こういうことなんですね。  中村さんもよく御承知でしょうが、この間の四大市の申請を見袋しても、これは横浜、名古屋、京都、神戸でございましたが、その中には革新の市長もおられるし、また革新の市会議員もおられますが、実際に当たってみると、せっかくベースアップになっても賃金も十分のことができない。そこで借り入れ金で一時しのぎをやってそれを満しておる、こういうような実態を見たときには、やはりその事業というものは不健全である、これはやはりある程度値上げの申請を認めながら将来を戒めて、そして一方において合理化も大いに進めてまいる、こういうようにやらざるを得ないことになったわけですから、そういう点もよく御理解を願いたい、かように思っております。
  163. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えになったようなことはいろいろあるだろうと思うのですよね。ですけれども、五・三%に押えるという基本線、これはあくまで堅持していくのだ。そして公共料金というのも、これはもう申請があったものを絶対に上げさせないというのではない。その企業の実態というものを十分分析をして、そして何というのですか、申請をスローダウンするような形で認めるようなこともあり得る。あり得るけれども、それはあくまでも五・三%という天井があるんだ。それから出ないような形でこれを認めていくのだ。そういう方針であることに変わりはないわけでしょう。その点はいかがでしょうか。
  164. 有田喜一

    有田国務大臣 そういう方針のもとに進んでおることは間違いないのです。しかしいろいろと、さっきもちょっと触れましたように季節的の変動のある物価もありまして、そこら辺のところを非常に苦慮している、こういうことであります。
  165. 中村重光

    ○中村(重)委員 方針としてはそうなんだけれども、いま季節的なもの云々、たいへん苦慮しているということになってくると、五・三%を出ることもあるかもしれないというような、そういった印象を受けるのですが、そのとおりなんですか。
  166. 有田喜一

    有田国務大臣 それはもうはっきりこうでございますと言いたいのですけれども、いまそういうことをはっきり言っても、もしものことがあったらうそつきということになってもまた相すまぬということで多少余韻を残しておるのですが、気がまえとしては五・三%内でおさまるように、そういう気がまえで進んでおるのです。
  167. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたは大臣に就任されたとき、御承知のとおりいろいろなトラブルがあったわけです。それだけにあなたの大臣就任に対しては相当注目されたことも事実です。その際私はテレビで、あなたが消費者代表の方々と懇談をされた、そのテレビの映像を実はじっと見守っておった。かつて私が所属する委員会委員長であられたし、あるいは文部大臣、いろんな関係であなたの人柄も私はよく知っているつもりなんで、あなたの言明というものはあくまで守られることを私は個人として期待をしているわけですし、五・三%という見通しはあくまで堅持する、そういう態度で臨んでもらいたいということを強く要請をいたしておきたいと思います。  それからあとで日米首脳会談に関連をいたしまして私が質問をする際に、個人消費の問題として賃金の問題等も出てくるわけでございますが、大臣が十分念頭に置いていただかなければならないことは、輸出を抑制し、輸入を伸ばす、こういうことになってまいりますと、内需をふやしていかなければならぬ。内需をふやしていくということになると、私は先般の委員会でも申し上げましたが、これは購買力を高める、購買力を高めるためには、やはり現在の日本の低賃金構造というものを変えなければいけない。それから生産性の低い農業、中小企業の生産性を高めるという、そういったいわゆる庶民の暮らしをよくするということでなければ購買力はふえてこないわけなんだから、同時にいまは日米関係の生産性と賃金の水準というものを見てみると、生産性は日本の一に対してアメリカの一・五、賃金水準は一・三、ここに日米の貿易収支の不均衡という最大原因があるということを念頭に置いて、あなたは企画庁長官として対処してもらわなければいけないということを私は申し上げておきたいと思います。  一時半におでかけになるのでしょうから、あと通産大臣にお聞きすることにし、長官はけっこうです。  通産大臣がまだお見えにならぬから、公正取引委員会にお尋ねいたしますが、先ほど再販の問題について、樋上委員の質問に対して公取委員長はお答えになっておられましたが、いままでの公正取引委員会の再販問題に対処してこられたことと、これから高橋委員長が再販問題に対処していこうとすることとどう変わってまいりましょうか。
  168. 高橋俊英

    高橋説明員 いままでの過程、私十分にまだ詳しく検討しておりません。また聞いてもいませんが、すでに九品目ありましたうち四品目は廃止されております。指定品目からはずされております。それはそれぞれ理由がございますが、要するに事案上その意義を失っているといいますか、要件を欠いている。たとえば競争が行なわれるということがない場合、そういう場合には要件を欠くことになりますし、とにかくいずれにしても四品目が廃止されているということは事実でございます。  残る五品目について、私が従来と違ったといいますか、どういう態度をとるかということは私ただいま明言はできませんが、しかし少なくともそれぞれの品目について当分まだ存置しておく理由があると認められるもの、あるいはその理由が非常に乏しいもの、そういうものを十分に検討した上で、原則的にはやはり品目別の整理というふうになろうかと思いますが、従来のやり方をとかく批判して、私がここで思い切って荒っぽい措置をとるとかいうふうな考えはありません。しかし、少なくともこの問題から逃げていく、逃げて通るという考えでは決してない。何らかの結果をお示しできるようにしたいものであるというふうに腹の中ではそう考えているわけでありまして、そういう点でどの程度いままでの委員長と違うかといわれましても、私もそういう前の方々を批判するというほどの立場にございませんから、にわかに違う点はどうだということはちょっと申しにくい事情にございます。そういう点は意のあるところをおくみくださいまして、これからの私どものやり方を十分見ておいていただきたい、こう思います。   〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほどのあなたの樋上委員の質問に対する答弁の中で、再販なるがゆえに、値上げをしようと思っても値上げがむしろできないということだってあるんだ、そういうお答えが実はあったわけですね。私は、あなたがこの再販制度というものをこの際検討して、これをはずすこともあり得るというふうに思っているのではないかなと思って実は聞いておったわけです。前委員長の際に、ある程度の再販の商品に対してこれをはずす、それから弊害是正ということを実はやったわけです。私どもは、そのやり方は必ずしも満足はいたしていないわけなんです。だから、あなたがこの再販問題について取り組んでいこうとしておられる姿勢は、私は支持いたしたいと思います。ただその際に、あなたが念頭に置いていただかなければならないことは、再販制度によって一番利益を得ている者はだれかということなんです。一番犠牲を受ける者はだれなのかということをまず第一に、再販制度と取り組むにあたってあなたはそのことに重点を置いてひとつ検討してもらいたい。  端的に私をして言わしていただきますならば、再販制度によって優遇され、その利益を受けている者はメーカーであるということなんです。そして小売り店はメーカーによってこの再販制度によって操作されているということです。リベートもマージンもメーカーによってきめられる。最近若干改善をされてまいりましたが、その商品をどういったようなものを仕入れるかということすらも小売り店の自由、いわゆる選択というものは認められていなかった。私どもは、この委員会において、きびしくメーカーのそのような不当な態度を指摘してまいりました。それによって最近若干改善をしてきたことは事実である。ただ小売り店が再販制度を何とか維持してもらいたいと願っておるのは、スーパー等のおとり販売ということと関連をいたしまして、過当競争になる、お互いに食い合う、そのことが倒産に結びつくということであってはならない。この再販制度というものは、メーカーによって自由自在に扱われるということはまことに心外千万だけれども、ともかくつぶれるよりましだ、そういったような気持ちから再販制度を維持することを小売り店は願っておる。消費者は全くその再販制度の犠牲にされておるというこの事実をあなたは念頭に置いて今後再販制度に取り組んでもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。  きょう私は再販制度について質問をする予定になっておりませんから、いずれあなたのほうもじっくり検討されるでしょうし、私のほうも、今日までいろいろと勉強してまいりましたこと、また弊害是正が行なわれたあとの実績がどうなのかということについて私なりに調査をいたしまして、あなたに対して質問をしてまいりたい、そのように考えております。  家電の問題についてお尋ねをいたしますが、先般公正取引委員会は家庭電気製品の売買価格の調査をされまして、そのことを発表しておられるようでございますが、あなたのほうから出されておる調査結果によりますと、テレビをはじめとする家庭電気製品は二重価格というものはもう解消したというように読み取れるような資料になっているわけですが、そのとおりでございましょうか。
  170. 高橋俊英

    高橋説明員 家庭電気製品の調査対象は四つの種類でございます。カラーテレビ、白黒テレビ、それから電気冷蔵庫、もう一つ電気洗たく機。いまお話ありました二重価格はなくなっているというふうな発表をしたということは、それはいささか違っているのじゃないかと思うのです。公正取引委員会の態度としましても、そういった商品につきまして二重価格を完全になくせというふうな指導はしておりませんし、そういう結果が出るとかえっておかしなことになりはせぬかと思います。二重価格そのものを否定するのではなくて、二重価格が行き過ぎておる、つまり表面上掲げられた標準価格というものと実際に売られている価格とが開き過ぎている、値開きがはなはだしい、それが好ましくないのである、いわば不当表示に該当するのであるということから、全国平均に見ましてその値の幅が縮まってくるということが望ましい、こういうことで指導したわけでありまして、また結果においても大体そういう結果は出ておると思います。
  171. 中村重光

    ○中村(重)委員 その点、私はそれでよろしいと思うのです。ただ、二重価格というものを、これは形式的なものですから、それにだけメスを入れて——販売価格とか現金正価とかいろいろあるのですね。そういった形式的なことだけメスを入れて、それはいけないのだということになってまいりますと、むしろ値上がりになるという結果を生むことだってあり得ると思うのです。  現に、前に公正取引委員会で、特に通産省がそういう指導をやって、そして一五%の値下げをやったということで、大きな成果であったということで評価をされたようです。ところが現実にはそうではない。なるほど系列店は値下げの影響というものを受けて、もらっておったリベートがもらえなくなってしまった、二重価格制度というものはなくなって一五%というものがあたかも値段が下がったかのような印象を与えたのだけれども、現実には下がらなかった。むしろ三割、四割値下げをして販売をしておった量販店は、これを一五%以上値下げはできないというように実は規制をされて、むしろ値上がりになるという結果を生んだのですよ。そして、申し上げたようにメーカーは損をしなかった。系列店はもらっておったリベートをはずされたんだから、先ほど申し上げたようにそういう弊害すら生み出されておるという事実であります。  これは私がいまここで指摘をしているのではなくて、私も何回か委員会で申し上げましたし、私と同じようなことが、参考人として物価問題特別委員会に出てまいりました量販店の経営者からその事実が明らかにされておる。それは議事録をお読みになればあなたもおわかりになると思います。そういった問題は、きょうは時間の関係もありますから省略をいたします。私はこの二重価格の問題といったようなことを、ただいま申し上げましたように、まなじりを立てていろいろ言おうとは思っておりません。おりませんが、少なくともその当時通産省が指導をして、二重価格はいけないのだ、したがってこれを廃止させた、それで一五%下げたといったようなことを成果として相当高く評価をしておりましたが、そのことであるならばまたもとに戻ったということなんです。  今度は現金正価というのが標準価格というような形に変わってきた。それはカタログ価格なんというようなものもいろいろある。値段にいたしましても、いまは新製品、新機種といったようなものは、出るたびに値段は上がっている。旧型はたいへん安く売られでいる。しかし旧型はどこで売っているのかというと、スーパーであるとか量販店にしか売られていない。系列店が安く売りたいから旧型のテレビであるとかその他の電気製品をぜひ売らしてくれとメーカーに持ち込みましても、メーカーはおろしません。メーカーの中には特販部というものがある。特販部というのはスーパーと量販店専門の販売機構なんです。系列店と、そういったスーパーであるとかあるいは量販店といった現金でおろすところとの差というものがそんなに露骨に出ておるという事実を、私は公正取引委員会も念頭に置いておいていただきたい。これは独禁法に触れるのかどうかという問題はまた別の問題になりましょうが、少なくともあなたのほうで独禁政策を進めていかれる上において、相当参考にされる必要があるであろうということを私は申し上げておきたいと思います。  通産省にお尋ねをいたします。昭和二十七年と四十七年の間に、小売り店の数はどういった変動があったか、お調べになっているならば、お答えになっていただきたい。
  172. 山形栄治

    ○山形説明員 小売り店の数は明確にお答えできませんので、これは後ほど調べまして御連絡したいと思います。系列小売り店の現在の売り上げの中に占めますシェアは、大体八二%程度でございます。先ほど来出ておりました量販店、スーパー、百貨店等が一三、四%、その他は少数ございますけれども、大体そんなようなシェアといいますか、販売のウエートに相なっております。
  173. 中村重光

    ○中村(重)委員 メーカーの名前を特に秘しますが、有名メーカーで、昭和二十七年に五十億の資本金であったのが四十七年には一千億になっている。私は長崎ですが、長崎でそのメーカーの小売り店は三十店であった。いまこれが二百店になっています。そこで、資本金もふえる、販売高も経済成長に伴って増大をしてまいりました。まいりましたが、小売り店は少しも栄えていない。ただ小売り店の数がふえてきたということだけなんです。この現象はどうして起こるんでしょうか。
  174. 山形栄治

    ○山形説明員 私の考えますところでは、家電製品は製品のバラエティーが非常に多く相なっておりまして、かつ技術の進歩に応じまして、同じ商品でもいわゆる新製品が売り出されておることは、御存じのとおりでございます。国民生活の向上につれまして、へんぴな地域においても需要が非常に多くなり、かつそれの修理、定期修理、不定期修理等のサービス体制の確立も必要になってきておりますので、各企業といたしましては、非常に競争が激しいせいもございまして、できる限り自分の系列の店を各地に置くことによってサービスの向上、宣伝を通じての販売活動をやるということで、おそらく系列小売り店の数は、そういう観点で非常にふえているのではないかと考えるわけであります。
  175. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたのそういった調査の結果のお答えであるとするならば、それはそれなりの調査でございましょうから、別にメーカーを保護するという立場からのお答えではないでしょう。ですけれども、私の調査ではそうではありません。メーカーが小売り店の店員を引き抜いて、次から次に系列店の小売り店をつくっておるという事実は、調査の結果おわかりになっていらっしゃいますか。
  176. 山形栄治

    ○山形説明員 非常に遺憾なことでございますけれども、そういう調査はいたしておりません。もしそうでありますれば、望ましいことではないと考えるわけであります。
  177. 中村重光

    ○中村(重)委員 小売り店の数がふえる。一つの小売り店の零細化が依然として改まらない。これはどこに原因があるかということになってまいりますと、小売り店が大きくなるということはそれだけ販売高がふえるということなんです。販売高が大きくなるということは、マージンだけじゃなくてリベートがふえるということなんです。メーカーはそれを望みません。できるだけマージンだけでとめておきたい、リベートをできるだけ出したくないということで、小売り店が大きくなりますと、今度はそこの店舗からなれている店員を引き抜いて、それに金を出して小売り店を出させる。それから小売り店がメーカーの方針に反するような行為をしたり、あるいはまたメーカーがこの場所は何か売れそうな場所だというふうに考えますと、あらかじめそこにみずから小売り店をつくります。それから意に沿わないような小売り店のそばに、また自分でメーカーが小売り店をつくる。そして適当な店員を引き抜くまでは、会社直属の社員をもってその間はつないで販売をさせる。それから引き抜いて、今度はそれを系列店にする、そういう露骨なやり方をやっている事実は御調査になっていらっしゃいませんか。
  178. 山形栄治

    ○山形説明員 特別そういう調査はいたしておりません。
  179. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま私が申し上げたことは事実であります。これが、小売り店はふえるけれども、零細化は依然として変わらない原因だということです。  それから中小企業庁は、中小企業対策としては少なくとも共同仕入れということを強力に推し進めておられるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  180. 森口八郎

    ○森口説明員 中小企業庁としては、当然、中小企業者が組織化をして大企業と対抗するような力をつけるということを政策基本といたしております。したがって、小さな商店の経営者が協同して共同仕入れをするというような方向については、しかるべき方向であろうと考えておりますし、積極的にこれを支援いたしたいというように考えております。ただ、小企業が集まって共同仕入れをいたします場合には、当然のことでございますが、やはりりっぱな指導者とこれに裏打ちされた資金力等がないとなかなかうまくいかないというところが現実でございますので、こういうような点につきましていろいろ援助をし、さらに指導を進めてまいりたいというように考えております。
  181. 中村重光

    ○中村(重)委員 当然のことでしょう。ところが、小売り店が共同仕入れをするとそれだけ格安で品物が入る、また消費者に対しても安く売ることができる、そういうことで、小売り店同士が話し合いをやってメーカーに共同仕入れの申し入れをいたしましても、メーカーはこれを拒否いたします。そのようなことが許されてよろしいんでしょうか。これは大臣からお答えいただきましょう。
  182. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 好ましからざる現象であると思います。
  183. 中村重光

    ○中村(重)委員 ところが、大臣、現実にそういうことをやっているんですよ。なぜでしょう。これは先ほども申し上げたんですが、販売高によってリベートがふえるからでしょう。ともかく飽くなきメーカーのやり方なんですよ。これにメスを入れなければ中小企業、なかんずく零細企業の苦境と申しますか、零細性というものから脱却することはできない。だから、このようなメーカーの不当なやり方というものは、徹底的に改めさせなければならない、私はそのように思います。私が申し上げましたことに対しての指導をし、またそういった事実があるといたしますならば、これを改善をさせるという御意思がございましょうか。
  184. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのようにいたします。  そこで、もしこの場で不適当であるならば、そういう業種、会社名、関係商店等をお知らせいただければありがたいと思います。
  185. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の資料にはメーカーの名前も書いてあります。しかし、きょうはメーカーの名前を特に避けます。私は小売り店の方七人に集まっていただきましていろいろと話し合いをいたしました。実態の調査もいたしております。ですから、単に私がうわさとしてここで質問をいたしておるものではないということだけは御理解をいただきたい。まだこれに関連をいたしまして質問したいこともありますけれども、いずれまた適当な機会に申し上げます。山形局長にはこういった事実についてある程度お話を申し上げたこともありますけれども、なお詳しくお話をいたしますから、あなたのほうも積極的に実態の調査をしていただきたい。  これは公正取引委員長見解を伺いたいのだけれども、そのものずばりこれは独禁法違反という形にもならないであろうと思うのですが、広い意味では公正取引委員会も関心を持って指導、取り締まりに当たらなければならないのだとも思うのですが、御見解があればひとつ伺いたい。
  186. 高橋俊英

    高橋説明員 ただいまのお話は、非常に詳しく事情をお聞きし、調べてみないと、普通の流通段階でのことについて、つまり経路を省略するとかあるいはメーカーと小売りとが直結するとか、そういう問題について公取の立場からいいとか悪いとかということはちょっと申しかねる。要するに取引の方法が公正であるかないか、つまり競争その他の条件もございますが、不公正な取引に該当するかどうか、共同行為等によって不公正な行為をするということも、これは独禁法に関係ありますが、詳しく事情を調べた上でないと、私のほうの委員会関係あるかないかもちょっと申しかねます。
  187. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、いまあなたがお答えになりました不公正な取引にならないかどうかという点でむしろ的確にお答えいただいてもよろしいと思ったのですけれども、きょうはあなたとこのことについて議論をしようと思わなかったから、関心をお持ちでしょうから、もし御見解があれば伺いたいという形で、実はきょうはあなたも初めてでありますし、私としては十分配慮して申し上げたつもりなんですが、少なくとも私がいま申し上げたようなことについては公正な取引ではないということをあなたはそこで聞いておられてお感じになっただろうと私は思う。メーカーが優越的な地位を利用して小売り店に対して圧力をかける、不当な利益の侵害をやるというようなことは、広い意味における公正取引委員会の所管事項であると申し上げて差しつかえないと私は思っております。もちろん、これは厳密に、法の乱用という形にならないようにおやりになるという慎重さは必要でございましょうけれども、少なくとも公取とは関係のないものではないということだけは申し上げておきたいと思うのです。  西部瓦斯の料金の値上げについてお尋ねをいたします。公益事業局長お見えになっておりますね。西部瓦斯の料金値上げの申請が出ておると思うのですが、内容はどういうことになっておりましょうか。それから、この申請に対してどのような取り扱いをしようとお考えになっていらっしゃるのか。
  188. 井上保

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  七月二十二日に料金の改定申請が出ております。したがいまして、ガス事業法の定めるところによりまして、法令の定める手続に従いまして公聴会等を行ないまして、なお会社からは詳細なヒヤリングを行ないまして、なおかつ、これは通産大臣から通産局長のほうへ権限が委譲してございますけれども、一応通産局の査定したものにつきましては、本省も監督上十分にこれを見まして、しかる上で、なおかつ経済企画庁とも相談の上、最終的に適正な料金を認可いたしたい、こういうふうに考えております。現在査定進行中でございます。
  189. 中村重光

    ○中村(重)委員 査定はいつごろ終わる見通しですか。
  190. 井上保

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  現在担当課長のところで最終的な整理をしておる段階でございまして、まだ局長まで上がってきておりません。したがいまして、また特に問題がなければ、直ちに経済企画庁と打ち合わせをするということになると思います。しかし、やはりあと数週間程度は要するのではないかと考えております。
  191. 中村重光

    ○中村(重)委員 東京瓦斯が、十二年前に料金値上げをやったというわけで、先般二三・何%かの料金値上げをお認めになった。今度の西部瓦斯は十四年目の料金値上げである。そこで、供給密度も東京都と比較いたしますと非常に薄いといったような関係等から、ある程度の料金値上げを認めなければならないであろうというような観測も伝えられているのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  192. 井上保

    ○井上説明員 ただいま先生御指摘のとおり、十四年間料金を据え置いておりまして、その間における資本費の増高、あるいは人件費の高騰、あるいは公害対策費の増額、あるいは先般から問題になっております燃料の値上げ、こういうような問題がございます。これをいかにして会社側の企業努力によって吸収するかということでございますが、そういう点を十分に勘案いたしまして査定をしていきたい、こういうふうに指示してございますので、そういう線で査定が行なわれていると思います。
  193. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど経済企画庁長官は、公共料金というものはできるだけ抑制策で臨みたい、会社の合理化対策というものを強く推し進めるように指導していきたいということを言われた。西部瓦斯はどのような合理化努力を今日まで続けてきておられますか。
  194. 井上保

    ○井上説明員 燃料の確保、燃料費のアップに対するいろいろな交渉、あるいは廃ガスを三菱化成とか新日鉄から買っておりますが、そういうものの安定的な供給の確保、あるいは人件費の高騰を押えるということにつきまして、非常に努力をいたしてきております。したがいまして、十四年間値上げを押えることができたということでございます。
  195. 中村重光

    ○中村(重)委員 料金値上げの申請の理由の一つとして、保安確保の諸費用云々ということがあるわけですが、保安確保のためにどのような努力をしてきたのか。設備の点について、その他保安確保のための諸対策という点について、あなたのほうで把握しておられる点についてお答えをいただきたい。
  196. 井上保

    ○井上説明員 公益事業におきます保安確保の問題は、これは基本的な問題でございまして、公益企業規制の最も中核的な問題点の一つといたしましては、サービスの確保、料金の安定、それからいま一つは安全確保ということでございます。したがいまして、安全確保につきまして、十分な努力を常時いたしておるということでございます。特に最近におきまして努力をした、特定の問題につきまして大きなことをしたということはないようでございますが、常時その安定については努力をしておる、こういう実情でございます。
  197. 中村重光

    ○中村(重)委員 保安検査の問題だけを申し上げますと、都市ガスとLPガスの保安検査は同様に取り扱うということを当委員会においてお答えになっておる。だがしかし、都市ガスの保安検査、それからLPGの保安検査は同様ではありません。消費者にとっては全く同じなんです。なぜに都市ガスとLPGの保安検査に差をつけるのですか。
  198. 井上保

    ○井上説明員 先生の御質問の点は検査の頻度の問題かと存じますが、LPGのほうは毎年検査をいたしておるということでございますが、都市ガスのほうは毎年ではない、隔年であるという点が違うということだと思います。これにつきましては、ガス事業のほうはいろんな点につきまして周知徹底する義務というものを課しておりまして、保安につきましての問題がないようにいろいろ需要者の方に周知徹底をしておるということでございます。確かに検査の点はLPGよりも頻度が少ないようでありますけれども、その他の点でこれをカバーしておる、こういうふうに考えております。
  199. 中村重光

    ○中村(重)委員 保安についての周知徹底は、都市ガスであろうともLPGであろうとも同じなんです。同じにやらなければいけない。片や周知徹底をやるようになっている、片や保安の検査の頻度というものについて都市ガスと比較する場合にLPGのほうがその頻度が高い。しかし、一方は周知徹底ということをやらせているんだからそれで補っているんだということでは答弁にならない。そういうことであってはいけない。消費者にとってはその危険度合いというものは同じなんだから、導管を通じてこんろによってガスを使っていくわけです。同じなんです。であるならば差をつけるべきではない、消費者本位でいかなければいけないということを私どもは指摘をしてまいりました。そのとおりいたしますという私の質問に対する答弁になっている。議事録をお調べになればよろしい。改めますという答弁もなされている。しかし一向改めない。だから大企業に対してはきわめて寛大に扱い、中小企業に対してはきびしくやっているという批判を受けるのはそのためなんです。重要事故にいたしましても、LPGよりも都市ガスのほうが多く発生をしている。事故の件数にいたしましても、都市ガスのほうが必ずしも少ないということにはなっていない。当然やらなければならないことをあなたのほうは怠慢というのか、特定業者を保護していこうとする、いわゆる大企業を保護していこうとする意図からなのか、ともかく公平ではありません。業者本位であってはなりません。あくまでも保安の安全を期するため、消費者を守る、事故を発生させない、そういう観点に立って、保安検査、保安取り締まりをやるべきであると私は考える。その点はお聞きになっておられたのですから、中曽根大臣からもひとつお答えをいただきたい。
  200. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御趣旨はごもっともでございます。消費者及び安全の確保ということは非常に大事な要点であると思います。
  201. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は声を大きく申し上げているんだが、あたりまえのことを申し上げているんだから、政府のほうも誠意をもってお答えをいただきたいのです。私の質問に対して、いやそうじゃないのだ、これは差をつけることが当然なのだというお答えが前にあっておれば別なんです。ところが、あなたの指摘は正しいんだ、そのとおりにいたしますという答弁が前になされておる。しかし現実にはそれが実行されていない。だからまだその途中でも、なぜにこれを改めないのかという私の指摘に対しては、またそのとおりするという答弁が数カ月かあるいは何年か後かになされている、それが今日に至るまで改められていない、それを指摘しているわけなんです。  都市ガスは、簡易ガス事業というのをどの程度やっていますか。
  202. 井上保

    ○井上説明員 ただいま手元に数字がございませんが、相当程度やっていると思っております。
  203. 中村重光

    ○中村(重)委員 都市ガス事業者が簡易ガス事業をあまりやるということは、中小企業に対する商権の侵害にも事実上なる。いわゆる中小企業を圧迫することになる。だからそうならないように、中小企業に対しては、実際はボンベ売りから実は導管供給による簡易ガスをやらせるようにした。ところが、これをLPG業者よりもむしろ都市ガスがこの簡易ガスによる供給をやろうというように変わってきつつある。私はそれは本来の行き方ではないと思うのです。これは調査をして、やはり都市ガスは都市ガスとしての本来の供給体制というものをやってもらう。そうしてLPGをボンベ売りからできるだけ導管供給によって保安の安全も期する。それから料金の適正化を期するためには、やはり何といってもボンベ売りよりも簡易ガスということになってくると価格も許可になるわけですから、これは消費者を守ることにもつながっていくわけです。そういうことについては、ひとつ公益事業局は最大の努力をしてもらわなければいけないと思うのです。都市ガス事業者が簡易ガスをやるためにいろいろなトラブルが起こっている。そのトラブルを防止するために、円満に処理するために地方調整協議会というものを実はつくった。私どもこれを修正してより完全なものにしたつもりなんだけれども、しかしながらこれを運営するのはあなたのほうだもんだから、せっかく修正までしてこれを強化して効果的な運営をしてもらいたいとする地方調整協議会が、あまり効果的な運営がなされていないように私は見受ける。この地方調整協議会がどのような役割りを果たしておるとお思いなんでしょうか。
  204. 井上保

    ○井上説明員 お説のとおり、都市ガス事業者がLPGの供給をやるということにつきましては、これは供給地域内においてはやはり例外的なものというふうに考えるべきであると私は考えます。  それから地方調整協議会でございますが、これは関係の都市ガスであるとかあるいはLPG業者等の利害の調整についてその役割りを果たしている、こういうふうに考えております。
  205. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係がありますから、またいずれいまの問題は突っ込んでお尋ねをすることにいたします。  この西部瓦斯の料金値上げ申請に伴って公聴会がガス事業法第十七条に基づいてなされておると思うのですが、公聴会は開催されたのかどうか、そうしてその公聴会はどういった状況であったのか、お調べになっておられたらお答えをいただきたい。
  206. 井上保

    ○井上説明員 西部瓦斯の公聴会でございますが、これは八月の十八日に公聴会を開催いたしております。  それで、意見の陳述者が十七名ございまして、賛成が二人、それから条件つきの賛成が十三人、反対が二人ということでございます。
  207. 中村重光

    ○中村(重)委員 この公聴会の意見というものは料金値上げに対してどの程度の比重と申しましょうか、尊重と申しましょうか、公聴会というものの位置づけなんですが、どれほどの役割りを果たすことになりますか。
  208. 井上保

    ○井上説明員 これは実際の担当者、たとえば通産局長であるとかあるいは本省のほうからも行きまして、現地の需要者の方々あるいは学識経験者の方々の意見を伺うわけでございまして、その意見は相当尊重いたしまして実際の査定に影響させておるということでございます。
  209. 中村重光

    ○中村(重)委員 公聴会の意見反対が多数であればその料金値上げというものを認めないこともあり得ますか。
  210. 井上保

    ○井上説明員 料金の算定につきましては、料金の算定基準というのがございまして、それに従いまして申請をいたしますし、それに従いましてまた査定をするということでございます。したがいまして、いろいろな取り扱いの点につきましてその間おのずからある程度の見方の相違のある点もございますので、そういう点につきましては、極力公聴会の意見を参考にいたしまして査定していくということでございます。根本の考え方はやはり料金の算定基準というのがございますので、算定基準に全然反したような査定になるということはないと思います。
  211. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになったとおり、公共料金というのは原価主義になっておる。算定基準があるから算定基準に基づいてあなたのほうは許認可をされる。そこで公聴会というものは、私は料金値上げの隠れみのみたいな形に運用されておるのにすぎないのじゃないかと思います。公聴会の反対意見が何ぼ多くても、その意見が尊重されて料金値上げが押えられたという事実はない、事例はないのです。いまお答えになったようなその算定基準によってやっている。これは公営企業法に基づいてそういったような原価主義になっているのだからやむを得ないのだということになってくると、違法ではないのですね。しかし、そのことは公聴会が単に形式的に開かれるにすぎない。そこに問題がある。消費者の方はそうではないのですよ。公聴会に対してはきわめて真剣なんです。これを重視している。自分たちがそこの公聴会に出席をしていろいろと意見を言うことが料金値上げに大きく反映されるであろうという期待感を持って公聴会に出席をしていると私は思うのです。現実にはそうでないところに、出席する公述人よりも公聴会を開催する側にきわめてこれを軽視するという傾向があるということを私は遺憾に思っている。そのことが西部瓦斯の料金値上げの公聴会におけるあのような——ここに私は新聞の切り抜きを持っておりますが、「市民不在の無軌道行政、長崎市役所で申請書類を紛失、公述人出席できず、事後処理も通り一ぺん」こういったような大きな見出しで公聴会のあり方というものを批判される結果が生まれてきたと思うのです。私は少なくとも、いま質問いたしておりますことは前もって申し上げておきましたから、先ほどの私の質問に対して、公聴会の様子を伺ったのに対しては賛成が何人、反対が何人というのではなくて、もう少し実はこういうことがあったということを進んでお答えがあるだろうと期待しておりました。しかし、それはありませんでした。しかし、まあそれはそれでよろしいでしょう。  そこでお尋ねをいたしますが、私はいま新聞の切り抜きを読み上げましたが、この公聴会のトラブルというものに対して調査をしておられるでしょうか。その点はどうお考えになっておられますか。
  212. 井上保

    ○井上説明員 経過の内容を御説明申し上げますと、実は七月二十八日に公聴会開催の官報告示をいたしております。それで八月八日に陳述の申し込みの締め切りをいたしておりまして、先ほど申し上げましたように、八月十八日に公聴会を開催いたしたわけでございます。そして七月二十八日に公聴会開催の官報掲示をいたしますと同時に、翌日に関係市町村のほうにその旨を連絡いたしまして、婦人会であるとかあるいはいろいろな関係、商工会議所とか関係のところによくその旨を徹底していただきたいということを書類で送ったわけでございます。  それからなおかつ、その地方の放送局へ放送してくれることを同日付で依頼したわけでございます。ところが、はなはだあれでございますけれども、長崎市におきまして、こちらから送付しました書類が紛失されたような様子でございまして、結局そういう周知徹底が行なわれなかったということと、それから放送局へだいぶ依頼をしておった、四局ほど依頼をいたしておったわけでございますけれども、そのうちで長崎放送局だけが放送をしなかったというようなことが重なりまして、非常に周知徹底がまずかったわけでございます。したがいまして、実は八月の十二日になりまして、西部瓦斯の説明会が長崎市の生活学校か何かでございまして、そのときに初めてそのことがわかったというようなことがございます。したがいまして、締め切り日を過ぎておったので、陳述の申し入れがあったけれどもこれを受け付けなかったというようなことがございます。  実際のその後の取り扱いといたしましては、長崎市の生活学校連合会の方のほうで、自分と同じ意見の方をいろいろ紹介してくれというようなことがございまして、北九州市のほうで、北九州の消費問題協議会の婦人協議会ですか、何かそこの事務局長が代理されまして、その長崎の生活学校の連合会の意見を言われたということでございます。そのときの公聴会では、その旨を冒頭に述べられて北九州市の代表者の方がその陳述をされた。それからなおかつ、十二日には、その長崎の生活学校の連合会の方が五人通産局へ参られまして、担当の部長に意見を申し述べていかれたということでございます。  そういうことでございますが、私どもといたしましては官報掲載だけでは非常に不十分であろうということを常々感じておりまして、したがいまして、関係の市町村へそういう連絡をしたりあるいは放送したりするような措置をとっておったわけでございますけれども、非常に思わざる事故が重なりまして結局周知徹底ができなかったということでございます。  今後の措置といたしましては、そういう旨を周知徹底するという点につきましてさらに一そうの努力をするということ、今度のような特殊な事情がありましてやむを得ず陳述の日に間に合わなかったというような場合には、これは特別の配慮をすべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  213. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣、いまお聞きのとおりです。通産局から佐世保のほうへ送った公述人の申請書、これが届いていない。いや送った、いや届いていないと佐世保のほうは水かけ論になった。長崎に送った申請書類は、市役所が紛失をしてしまった。そのことが後日わかった。そこで今度は代表の方は、いま局長の答弁では意見を言いに来た、こう言ったのだけれども、自分たちは知らなかったのだ、市が書類を紛失をしたのだから、自分たちは行って公述をしたいのだから、意見を言いたいのだから何とかしてもらいたいということで陳情に行った。ところが、十八日の公聴会は八日で締め切っているからだめなんだということで、公聴会に行って公述をすることは通産局から拒否されるということになったというので、意見でも言いなさいということで意見を言ったのでしょう。しかし、それにもかかわらず——真剣ですからね、値上げをされることは。だから十八日出席をした。四つの生活学校の代表が行った。しかし、意見を言うことはできないんですよ。傍聴なんですよ。そして福岡や熊本から行っている公述人に自分たちが言いたいことを代弁をしてもらった。そういうことなんです。  いま局長から、もっと周知徹底させるようにしたいとか、あるいは今回のような事件については特別な配慮を払うようにしなければならないという答えがあった。少なくとも公述人の責任ではないわけなんだから、出席をして公述をしたい、意見を言いたいという意思があるのだったら、これは何とか特別の配慮というものがあってしかるべきだ。何もそこで表決をするわけじゃない。それが親切な、しかも料金値上げというものに対して十分理解というものがいくということになっていくのではないか。やむを得ない、これは値上げをしてやらなければいかぬ、西部瓦斯の場合十四年間値上げをしていない、供給密度というものも非常に薄い、したがって、これはコストが非常に高くなるのだ、したがって、料金値上げはある程度認めてやらなければならない、こういうように通産省考え、あるいは経済企画庁もそう考え、大多数がそういうことであったにしても、このような公聴会軽視、公述人の意見を無視するようなやり方になってくると反発をする。そして料金値上げそのものに対しての大きな反発ということに発展していくであろうと私は思う。もう少し行政というものは親切でなければならない。誠意をもって当たらなければならないと私は思う。これがお役所仕事の典型的なものだと私は指摘をしたい。このことに対して大臣はどうお考えになりますか。
  214. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公聴会を置く趣旨は民意を聞くというのが趣旨でございますから、学校の入学試験やオリンピックの選手の出場と違って、これはむしろこちらのほうから積極的にもう少し弾力的な措置をとって、そうしてわざわざ出てきた人ならば聞かしてもらうとか、あるいは時間的余裕があるならば通産局長の裁量で認めるとか、そういう措置をやっていいものだろうと私は思います。
  215. 中村重光

    ○中村(重)委員 いいものであろうということばじりは決してとらえません。少なくとも私が大臣に期待をするのは、いま公益事業局長すらも、今後はそういった場合は特別の配慮をしたい、こういう答弁をしたのだから、あなたは胸をたたいて、これはまずかった、今後はこうさせるというくらいの気概をもってお答えをいただかなければ、どうもよそごとみたいにとられます。評論家としてあなたに質問しているのじゃないですよ。担当大臣たるあなたに私は質問しているのだから、もう少し責任ある、気概のある、確信のある答弁はできませんか。
  216. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 けっこうです。そのようにいたします。
  217. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから通産大臣、電気ガス税ですが、いまこれが従価税になっているのです。ところが、いま料金値上げの申請が出ている西部瓦斯、これは先ほど申し上げましたようないろいろな条件から料金も高いわけです。高い上に従価税ですから、税金がまた高くなるのですよ。ダブルパンチです。私は、これを従量税に変えるべきであるということをいつも主張している。それが私は合理的だと思っている。公平なんですよ。これは改めさせなければならないと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  218. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 電気ガス税はやめたほうがいいと思います。
  219. 中村重光

    ○中村(重)委員 電気ガス税はやめなければならぬ、私は、悪税だからやめろ、こう言っているのですよ。しかし、やめないのは政府でしょう。先ほどから評論家としてあなたに質問しているのじゃないと私は言っているんだ。あなたは、少なくとも大臣ならば、やめたほうがいいというようなことで他人ごとみたいなことで言うべきではないでしょう。やめないのは政府なんだから。いろいろな地方自治体の財源問題その他によってやめにくい事情があるのでしょう。政府がそういうことでどうしてもやめないから、やめないのだったら次善の措置として現在の従価税を従量税に改める、そこでダブルパンチにならないようにすることをまず考えるべきではないか、私はこういう質問をしているわけなんだから、やめたほうがいいにきまっているのですよ。だからそれに対しては、やめたほうがいいというのではなくて、従価税より従量税が合理的なら合理的であると思う、しかし、それよりも自分は通産大臣としてこれをやめさせるように最大限の努力をする、そういうような御答弁であるならばわかるわけです。一国会議員としてのあなたであるならば、いまのような答弁で——答弁というのか意見でわかりますけれども、大臣ですからそうもいかないでしょう。じゃ、あなたはやめたほうがいい、それはやめさせる、そういうことであると理解をしてよろしいですか。
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この間、省議をやりましたときに、この税金はやめさせる方向で努力しよう、そういうことを私言いまして、大蔵省その他ともかけ合ってみたいと思っております。
  221. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、日米会談の問題に入るのですけれども、経済企画庁からお見えですから、一点だけ伺っておきます。  対馬の空港、これに対して現在の六百メートルを千五百メートルにするということを先般の離島振興対策審議会で明らかにされたわけですが、これは継続をして千五百メートルの工事をやって完成をするというように理解をしてよろしいかどうか。
  222. 北川博正

    ○北川説明員 お答えいたします。  ただいまの点は来年度千五百メートルの滑走路の要求をいたしたい。関係官庁の了解を得て要求するつもりでおります。
  223. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣にお尋ねをいたしますが、田中総理が記者会見で、両三年内に貿易収支の黒字幅を国民総生産の一%に減らすことを望むという発言をしておられます。これは共同声明の表に出てないのですが、双方の合意内容ということになっているのでしょうか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 田中首相のそういう希望の表明あるいは意図表明ということであろうと思っております。両方がそれを正式に契約的合意をしたということではないと思います。
  225. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、そのことはやはり通産大臣をはじめとして関係大臣と十分打ち合わせをされて、ある種の確信を持って日米会談にも臨んだのでしょうし、記者会見においてもああいった態度を表明されたと思うのですが、そのとおりと理解してよろしいでしょうか。
  226. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう意図を持って臨んだことは間違いありません。
  227. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど樋上委員からも指摘をいたしておりましたが、この両三年の不均衡是正は無理ではないのかということについて、あなたはベトナム戦争終結の見通し等含めて可能だというようにお答えになっておられた。ベトナム戦争は別といたしまして、黒字幅をGNPの一%ということになってくると、これは相当不均衡是正のための思い切った措置をとらない限り無理であろう。ところが、そのことはわが国の経済に及ぼす影響は相当大きい、こう思うのですが、その影響の度合いということについてどのようにお考えになっておられますか。
  228. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済動向の趨勢を見ますと、輸入が激増して輸出が停滞ぎみでございまして、この効果はまだ出てくるだろうと私は思っております。そういうこととか、アジアにおいて平和と国際緊張の緩和が訪れてくるという情勢等々をいろいろ勘案してみますと、両三年くらいで不均衡を是正するということは一生懸命やればできないことではないであろうと私も思います。
  229. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、貿易収支の均衡の要請というのは、最近の傾向を見ると、EC諸国に対する輸出が非常に伸びているのですね。当然そこらからも不均衡是正といったような要求が出てくるのではないかと思うのですが、そういった動きはありませんか。
  230. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 EC諸国に出ている金額あるいは量というものはそれほど大きいものではないのです。ただパーセンテージは大きいわけです。つまり輸出量の絶対量の少ないところへ量がふえているものですから、パーセンテージとしては大きくなっておりますが、そういう金額の総量においてはそれほど著しく大きいというものではありません。したがって、EC諸国と国別によく業界同士で話し合って理解を遂げ合うということは非常に重要であろうと思います。これをオーダリーマーケティングという方式でもって独禁法にひっかからないように注意しながらやっていけば、ある程度段階的に輸出を伸ばすということも可能でありまして、そういう方途によって国際的圧力を切り抜けていこうと考えているわけでございます。
  231. 中村重光

    ○中村(重)委員 この貿易収支の黒字を減らす対策ですね。対策としては輸出の抑制と輸入の拡大ということをあげて、そして輸出の抑制、輸入の拡大の具体的な目標と申しましょうか、たとえば、輸出の抑制は、景気の刺激とか輸出税とか調整インフレ、産業構造の変革、輸入の拡大は、景気刺激、自由化の拡大、関税の引き下げ、流通機構の改善、こういったことを報道されている。この点は日米間の合意ということになっているわけですか。
  232. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その項目のすべてが合意されたわけではございません。その項目の数点については、わがほうからこういう方法でやると意思表示をしている部分もございます。
  233. 中村重光

    ○中村(重)委員 全部でないということになってくると、あなたは調整インフレ——インフレという名前のつくものは絶対反対だ、こう言っているので、この点も合意になっているのかどうかわからないのですけれども、それから輸出税、これは課徴金の問題なんだけれども、あなたはこれをやるんだということを一度発表して、これをまた取り消しをされておった。これも真偽はわかりませんけれども、新聞には確かにそのとおり報道された。ここらの点はどうなんですか。合意ということになりますか。
  234. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう二つの問題について先方に話しかけたこともございませんし、そういうことを考えたこともございません。いま輸出課徴金について御言及なさいましたが、私は輸出課徴金を取るというようなことを言ったことはございません。
  235. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたは私のこの前の質問に対しても、調整インフレ、インフレという名前のつくものは全くいやなんだ、これは自分の意図でないものが報道されて迷惑しているということをお答えになったのですね。しかし、何ぼあなたがインフレと名前のつくものはいやだと言っても、これは日本列島改造論の問題にいたしましても、景気刺激策にいたしましても、インフレになる、名前がいやだいやだと言ったって、これはインフレですよ。デフレ政策をとらない限り、これはインフレになるのですね。だから、これは現実問題として私は議論していかなければならないと思っているわけですが、きょうは時間の関係がわずかしかないからあらためてまたやりますけれども、おそらく合意した問題については関税引き下げとか、自由化の拡大とかいろいろあるんだろう、こう思っている。それから流通事業の自由化の問題等も明らかにされておりますから、そこらあたりもおそらく合意事項である、こう思うのですが、そういった各項目にわたる議論は別として、私は基本的にどうも納得できないことは、アメリカの貿易収支、それから経常収支、総合収支、これを改善するための努力をアメリカはどれだけしたのかということですよ。  国際収支の赤字というのは、アメリカは八十三年ぶりに初めて赤字が出たわけでしょう。かつて日本の大幅入超で日米貿易というものは始まったわけですね。そこで第一回の日米貿易経済合同委員会でこれを何とかしてくれといって、日本は泣きついた。しかし、アメリカから、そんなことは自分の努力でやれといって一蹴されたという苦い経験を日本は持っているんでしょう。それを何のために黒字国の責任だけで問題を処理しなければならないのか、赤字国の努力というものをなぜ日本はもっと強く要求しないのか、私はどうもそこらが納得いかないのですね。何のためにそんなに弱腰外交というものをやらなければならないのか。少なくともあなたはまだ若い。総裁候補、将来総裁として日本の政治を担当していかれる気概を持っておられるでしょうし、それならばあなたは堂々とそこらあたりは主張すべきものは主張する、閣内において大きな発言力を持つというくらいのことが私は必要であろうと思うのですが、どうでしょうか。私の見解が間違いでしょうか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この間の箱根会談におきましても、通産当局は、大臣の意図を体してよく健闘したと思っております。かなり勇敢にアメリカ側の難点も指摘して、対等以上に渡り合ったと私は評価しております。大体アメリカ人というのは、あの大陸にこもって、ほっておいても物が輸出して食っていけたという国でありますから、物を売る努力を知らない国民だと私は思います。日本人ならば、トヨタあるいは日産が輸出しようと思えば、ハンドルの位置を変えて、向こうの道路に合うように、向こうの規則に合うようにハンドルの位置を変えて自動車を輸出しますが、アメリカが日本に輸出しようとしている自動車の努力があったかといえば、依然としてあの大型車は日本の小さな道路には入れないような、またハンドルも、日本の交通規則に合うように切りかえたようなハンドルをつくったということを聞いておりません。この一つの例を見ても、彼我の輸出に対する努力というものは格段の差があると私は思うのです。そういう点、アメリカ人にも私らよく指摘して言っているところでございます。しかし、国際経済全般の協調ということを見ますと、これは別に政治的観点から世界的な調和の中に日本も生きていかなければならぬところもありますから、そういう点においてはわれわれも謙虚になるべきところはならなければならぬと思っておるわけでございます。しかし、一方的な不当な要求にわれわれは屈するという気持ちは毛頭ございません。
  237. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう一つ私は、アメリカが赤字国としての責任として当然とらなければならない措置、また要求しなければならないことは、現在世界的に問題となっているドルの過剰流動、この過剰流動性というものを吸収するという問題、この点について具体的な方法というものをアメリカが各国に提示する義務があるのじゃないかと思うのですね。また、日本をはじめ各国はこれを要求することが当然であると思うのですが、中曽根通産大臣は、通産大臣として、かつ国務大臣として、この点どうお考えになりますか。
  238. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感であります。われわれとしては、アメリカ当局に対して、ドルに対する自制と申しますか、世界通貨としての責任性を強く強調したいと思っております。いずれこれはIMFその他において日本も当然要求する分野であると思っております。
  239. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうだと思いますね。ドルと金の交換性の回復ということをしないところにアメリカがドルの過剰流動性というものを放置をするということになっているのではないか。当然金とドルの交換性の回復ということを要求しなければならない、私はこう思うのですが、その点に対してはどうお考えになりますか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ経済がもう少し回復して強靱になれば、そういう可能性もあるかもしれませんが、今日まだ重体の状態を国際的には続けている情勢でもありますから、いますぐそれを言っても実現できる可能性は少ないと思いますけれども、しかしともかく世界通貨としての健全性を考えてみると、そういうこともひとつ考えてもらわなければならぬことであると思います。
  241. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、政府としては、国際基軸通貨としてはやはりドルが適当であるというお考え方ですか、あるいはSDRを基軸として推進することが適当であるという考え方を持っているのでしょうか。
  242. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは私見でございますけれども、今日の情勢においてはやはり病めるドルを健康体に戻して、そうして健康体に戻ったドルを世界通貨としてこれを活用していく。そのかわりいままでとスタンダードは多少変わるかもしれませんが、しかし、当分そういう形でやらざるを得ないのではないか。その間にSDRそのほか世界性を持った通貨を考えていく、あるいはこれを次第に増強していく、そういう形でいくべきではないかと思います。
  243. 中村重光

    ○中村(重)委員 その点もう少し議論したいのですけれども、時間がございません。  それから共同声明の第六項に、国際通貨制度基本的改革が緊急、緊要であるというようなことがあるわけですが、この点は日米間で合意して、そして具体的な話し合いというのがなされたということになるわけですか。
  244. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはやはり必要性を強調したという意味の声明であると私は思います。そのことはもうすでにIMFの総会やあるいは十カ国蔵相会議その他において論ぜられる問題であろうと思います。
  245. 中村重光

    ○中村(重)委員 日本としてはスミソニアン体制の堅持を表現をするようにということを主張したのだということが伝えられておる。しかし、これはアメリカ側が容認をしなかったということのようですが、そうだとすると、私は、円の再切り上げといったような問題が相当議論をされたのではないか、たしか新聞にもそのようなことを報道しておったようにもちょっと記憶するのですが、その点はいかがなんですか。
  246. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 円の再切り上げは議論された事実はないと思います。私がエバリー氏と会談したときに、スミソニアン体制の維持ということを強く強調いたしましたら、彼は合意をいたしました。これは二人の間の話でございます。アメリカ側もそういう世界的なジョイントコミュニケの中には書ないかもしれませんが、スミソニアン体制を維持していくという点においては一致していると私は思います。
  247. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、鶴見・インガソル会談で合意された緊急輸入ということですね、この点の詳細を聞きたいのですが、事務当局からでもけっこうです。
  248. 小松勇五郎

    ○小松説明員 鶴見・インガソル会談で合意されましたいわゆる緊急買い付けでございますが、ただいまのところ、濃縮ウランは一九八一年以後引き取ることになりますけれども、それにつきましての契約を近く締結いたしまして、三億二千万ドルばかりをできるだけ今年度のうちに支払うということになっております。それから農産物につきましては、約五千万ドルの追加買い付けを行なうことになっております。中身は飼料が主だと思います。それから、民間航空機につきまして三億ドル強の契約をいたしまして、そのうち頭金を、約三千万ドルばかりになるかと思いますが支払うことになっておるかと思います。  なお、契約ベースで十億ドル強といわれておりますものの中には、農産物の買い付けの増加見込み分三億九千万ドルが含まれておるかと思います。おもなものはそのようなことと承知しております。
  249. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えになりましたような緊急輸入の物資は、相当長期間貯蔵しなければならぬものも含まれているわけですね。そうなってくると、これと外貨貸しの関係というものが出てくるのじゃないか、私はこう思うのです。  それから、この前の国会で廃案になったのですが、経済調整法案、このことについても私は当然関係が出てくるであろう、こう思います。その点をお答えいただきたい。これは大臣からお答えいただかなければなりません。  それから、通産大臣としては、この廃案になりました経済調整法案を再提出する御意思はあるのかどうか、それもあわせてお答えいただきたい。
  250. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外貨貸しは適当な方法によって行なう考えであります。それから、経済調整法案につきましては、これは再提出すべきかどうか、目下慎重に検討すべきであると思って検討させております。次の国会に提出するとまだきまっておりません。
  251. 中村重光

    ○中村(重)委員 大蔵省では、田中総理が実現をしたのだからこれは当然再提出をしなければならない運命にあろうなんというようなことかもしれませんけれども、この前むしろ批判的であった、消極的であった大蔵省が、これを再提出をするよらな意向が非常に強い。そうして通産省のほうはあまり声が大きくない。この前は逆であったわけですね。ですから、大蔵省でそういったことを検討しておるということについては、通産大臣としてはどうお考えになっているわけですか。
  252. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大臣がかわればまた政策も多少は変わってきますから、必ずしも前のものがそのまま通用するというわけでもございません。あの法案の中に全面的にあのままいけるかどうか疑問の部分もあるわけであります。そういういろいろな点をしさいに検討しておる最中でございます。      ————◇—————
  253. 藏内修治

    ○藏内委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  エネルギー・鉱物資源問題小委員会及び流通問題小委員会において、それぞれ参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいとの両小委員長からの申し出があります。つきましては、両小委員会に参考人の出席を求め、意見を聴取することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。     —————————————
  256. 藏内修治

    ○藏内委員長 質疑を続行いたします。松尾信人君。
  257. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 私は、きょうは大臣に、適正な貿易収支という点、いろいろ問題も出ておりますけれども、この点につきまして二、三質問したいと思います。   最初に総括的なことでございますけれども、過日の日米ハワイ会談におきまして、わが国の対米貿易不均衡の問題、いろいろ論議されまして、いまもお話に出ました緊急輸入というようなこともだんだん固まってきておるわけでありますけれども、このようなことがわが国の国際収支というものの基本的な解決になるものではない。これは大臣も十分御承知のはずと思いますが、さらにまた、あすからはOECDの第三作業部会も開かれます。次いで月末にはIMFの総会が開催される。このような国際通貨会議が控えておりまして、わが国の貿易黒字の基調、これが本年度六十億ドルともいわれるような、この基調に対するいろいろな圧力と申しますか、いろいろな論議というものが今後いろいろな形で出てくるのではないか、このように予測されますが、通産省といたしまして、このような問題についてどのような対策考えていらっしゃるか、総体的にこれこれこれというようにおっしゃっていただきたいと思います。
  258. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘の点は、われわれも非常に考慮しておるところでございます。また、憂慮しておるところでもございます。これらの国際会議において日本の立場が窮しないように、やはり相当の対策も講じておらなければならぬし、またわれわれもそのつもりで努力してきたところでもございます。いままでお答え申し上げましたような考えに立って、一面においては、この前、閣議できめました七項目を実践していく。それで内需の振興という方面と輸入をふやすということと、それから緊急輸入等の措置によって当面を切り抜けるということと、そういういろいろな面を組み合わせながら、長期的に見てバランスが回復されるようにいま努力しておるところでございます。  詳細の点は通商局長から御説明させます。
  259. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま総体的なお話が出たわけでありますけれども、それをもう少し具体化すれば、いまお話しの外貨貸しの制度ですね。それからいままでの輸出奨励制度と申しますか、そういう制度は今度はなくしていくのだ、そういうこともあると思うのですね。そういうことにつきまして、いま外貨貸し制度も出たのでありますけれども、私は特に最初に聞きたいのは、外貨貸し制度というものは、どのようなところまでお考えになっておるかということですね。外貨貸し外貨貸しとおっしゃいますけれども、では、どういうものに対してどういうふうな面から考えていらっしゃるのか、こういうことをまず聞きたいと思います。
  260. 増田実

    ○増田説明員 お答え申し上げます。  外貨貸しとしてどういうものが対象になるかというお尋ねでございます。現在外貨貸し制度につきましては、ようやく大蔵省と私どもの間でほぼ大綱がきまったところでございまして、まだ最終的には至っておりませんが、対象として考えておりますのは、海外における資源開発に必要な資金を外貨で貸す、こういうことでございます。それからもう一つは、このたびきまりました緊急輸入、これも外貨貸しの対象にするということで、以上申し上げました資源開発に必要な資金及び緊急輸入に必要な資金をさしあたり対象にしよう、こういうことで考えております。
  261. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 では、これはまたもう少し煮詰めた段階で論議するということにいたしまして、総体的にはそのような方向であることはいまわかりました。  次には、輸出金融制度ということでありますけれども、制度全体的にはこれを廃止していくんだということがたびたびいわれてもおるし、報道もされておるわけであります。これは筋としてはけっこうでありますけれども、輸出関連の中小企業と申しますか、そういう方々にとりましては大きな問題であります。中小企業団体六団体等からもいろいろの要望が通産省に出ておると思いますけれども、輸出の奨励制度、金融制度、そういう制度はなくすんだという中で、輸出関連の中小企業、貿易関連の中小企業を一体どうするのかという点は、どのようにお考えになっていますか。
  262. 増田実

    ○増田説明員 ただいま松尾先生のおっしゃられました中小企業に関する輸出優遇制度、これは具体的には輸出前貸し手形の制度を御指摘になられたと思いますが、この輸出前貸し手形、いわゆる貿手と申しておりますが、これが輸出の優遇措置でございますので、これをできるだけ廃止したいということで、先月の下旬、大蔵省及び日本銀行から通産省あてに相談が参ってきております。  私どもは、このような輸出優遇というふうに見られるような制度については、こういう現在の客観情勢におきましては廃止の方向に持っていきたい、こういうふうに一応賛成しておりますが、しかしただいま先生が御指摘になりましたように、輸出中小企業者がこれの廃止によってその犠牲をこうむるということであってはならないということで、現在日本銀行及び大蔵省との間でいろいろ協議をいたしまして、また私どものほうも中小企業者からのいろいろの要望事項を聞きまして、その内容に基づきまして大蔵省ないし日本銀行に対して申し入れをしております。  現在までのところ、中小企業につきましてはほとんど影響のないような取り扱いをするということで、ほぼ話し合いが進んでおりますが、まだ結論に至りますまでには数日要するかと思いますが、一応輸出中小企業者に対しまして、中小企業者が犠牲にならないような方法でこの制度を廃止するという方向で鋭意努力いたしております。
  263. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 方向はわかりました。いずれにしましても中小輸出業者は円の切り上げもありましたし、また特恵関税もありますし、国内不況もあるということで、いろいろな点で非常に苦しい立場であります。いまあなたがおっしゃった線でしっかり確保してもらわないと、大きな問題を起こすであろう。やはりこれは基本的な線というものと、その中で大事に育てていくものが当然あるわけでありますから、国際的にも堂々としっかりやってもらいたい。いまおっしゃった線を堅持して、ひとつ実効あるようにやっていただきたい、これを強く要望しておきます。特に金利の問題ですけれども、五分が六分五厘とかなんとかいうのはたいへんな問題になりますので、この点はしっかり考えてください。  それから日本と東南アジアとの貿易じりの問題であります。これはぼくのほうでわかっておりますけれども、最近三カ年、日本と東南アジア諸国とはどのような貿易じりであるか。これは局長からでいいですが、まずここ三年ぐらいの毎年の輸出、輸入、そのバランスをちょっとおっしゃってください。
  264. 増田実

    ○増田説明員 ただいま先生から最近三年間ということでございましたが、手元にあるのは最近二年間でございますので、あとでもう一年調べましてお答えいたしますが、一応一九七〇年と七一年、暦年のおのおのの合計を申し上げたいと思います。  一九七〇年、これは暦年でございますが、東南アジアに対する輸出の合計が四十五億三千三百万ドルでございまして、これに対しまして輸入が二十九億一千二百万ドルになっております。次に一九七一年でございますが、輸出が五十二億八千七百万ドル、これに対しまして輸入が三十二億六千万ドルでございます。
  265. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 七〇年の数字につきましては、いまおっしゃったのは私はちょっと疑問があるのですけれども、私の調べでは、七〇年の日本からの輸出は四十九億ドル、日本の輸入が三十億ドル、約十九億ドルの出超ですね。七一年も、いまおっしゃったように約二十億ドルの出超ですね。こういうことを長年続けてきておるわけですよ。他方東南アジア等の発展途上国に対しましては、日本経済協力を一生懸命やっていこうというような姿勢もあります。対米関係も大きな問題でありますからいろいろ論議もされていくけれども、東南アジアのほうはあまり論議されないので、大臣も御存じないのじゃないか、関心があまりないのじゃないかというような気もするものですから、きょうは特にこの東南アジアの貿易収支をもう少し考えていくべきじゃないか、こういうことであります。このうらはらは経済協力につながってまいります。  そこで、どのように考えていくかということでありますけれども、もともとが発展途上国、東南アジアのそのような国々の貿易が停滞しておる。先進国は伸びておるけれども、こういう諸国は逐年貿易が停滞しておるわけであります。その最大の原因は、輸出は一次産品への依存度が非常に高いということでありますけれども、その需要がなかなか伸びてきていない、一次産品の価格が不安定であるというようないろいろの要素がございまして、発展途上国の貿易が停滞しておる。それで日本の対東南アジア貿易を見ましても、そのように日本の大きな出超である。十九億ドルまたは二十億ドルというような出超を続けておる。そして日本が買っている品物を見てみますると、やはり原材料というものが非常に多い。一次産品というものが多いわけであります。これは通産省のほうでわかっておりますか。東南アジアから日本が輸入するもので一次産品というものを種類を何品かあげていただいて、このような情勢であるとわかりますか。わかればそれをここで述べていただきたいと思います。
  266. 増田実

    ○増田説明員 ただいま東南アジア諸国からの一次産品の輸入の実績のお尋ねでございますが、最近の三年間を申し上げますと、一次産品の合計、これは内容的に言いますと食料品、原料品それから鉱物性燃料でございますが、その合計を申し上げますと、一九六九年は二十億六千六百万ドル、それから一九七〇年におきましては二十五億二千万ドル、一九七一年は二十八億四千四百万ドルという合計になっております。
  267. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまの金額の表示でありますと、なかなかお互いわかりにくいのでありますけれども、これは私のほうで調べたものによるわけでありますけれども、輸入の大半は一次産品である。原材料である。その中でも繊維原料、金属原料等の原料品が全体の四六%を占めておる。鉱物性燃料、これは石油でありますけれどもこれが一九・二%、いまおっしゃった食料品が一八%でありまして、合計八五%というのが一次産品による日本の輸入ということになっております。問題は額でありますから、この一次産品というものを日本が今後どのように買い付けていくかという問題が大きく貿易収支というものに響いてくるのじゃないかと思うのですが、何か考えがありますか。
  268. 増田実

    ○増田説明員 ただいま松尾先生のおっしゃられましたように、東南アジアと日本との間の貿易は非常に出超でございまして、今後輸入をふやさなければならない。輸入をふやしますためには、御指摘の一次産品の買い入れを促進しなければならない、こういう方向で私どもも非常に早くからこの問題に取り組んだつもりでございますが、通産省といたしましては、一次産品でどういうものが買えるかを見つけるための調査を行なう。調査いたしましたあと日本が買いやすいように、一次産品のたとえば農産物も日本の需要する品種をつくらせるように指導するということでやっております。  それからさらに、それに関連しますいろいろの金融措置を行なっております。ちょっと具体的になりますが申し上げますと、昭和三十六年度から国家予算によりまして、一次産品の買い付け促進補助事業というものを行なっております。これは民間調査団を派遣いたしまして、一次産品を採算ベースで買い付けできるかどうかということを調査する。さらに、技術指導し、またその利用方法を調査するということでやっております。  それから次に海外貿易開発協会、これは従来アジ貿といわれておりましたアジア貿易開発協会でございますが、これを昨年から発足いたさせまして、一次産品の開発輸入の促進機関として発足さしておりますが、具体的には一次産品の開発輸入事業に必要な施設の建設資金を長期、無利子で貸しておるということをやっておりまして、たとえば一次産品を運びますための道路の建設、これらにつきまして無利子の長期の金を貸し付けるということをやっております。それ以外に、これは外務省の所管の団体でございますが、海外技術協力事業団、OTCAが一次産品の開発技術協力事業というものを行なっておりますが、これにも通産省としては全面的にバックアップいたしております。また農林省の協力も得ておる、こういうことでございます。  それから、それ以外に官民合同の一次産品問題処理対策会議というものをつくりまして、各界の代表がいかなる品物が国別に買えるかということにつきまして総合的に調査しまして、そこで計画を立てまして、先ほど一番目に申し上げました調査団の派遣あるいは技術指導を行なっています。  それから、東南アジアの諸国につきましては、御存じのように昨年から特恵関税が施行されるようになりましたので、一次産品は従来に此べますと買いやすいという形にもなっております。  それから、日本貿易振興会は、従来は輸出の振興機関でありましたのですが、時代に合わせましていろいろ輸入促進の事業を行なわせておるわけでございます。その一つの事業といたしまして、発展途上国の一次産品の展示会というものを随時行なっております。  大体以上のようなことをやっておりますが、私どもとしては、先生の御指摘のように、確かに東南アジアとの貿易を振興し、また現在いろいろと問題を起こしております輸出輸入のアンバランスを解決するためには、一次産品を大幅に買うように努力いたさなければならない、こういうふうに思っております。
  269. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 努力はわかりますけれども、具体的にもう少し必要な原材料を品種別に検討されまして——いまおっしゃったのは予算的な措置、経済協力の予算を言ったのじゃないですか。それはそれでけっこうでありますけれども、もう一つ、貿易としての開発輸入に対する予算をうんととる、外貨をそこに十分持ってくる、そして買い付ける。経済協力は裏、貿易面における買い付けというものを表というぐらいにしまして両々相まってやりませんと、経済協力のほうも、向こうが借金を払えない、これも累積赤字でありまして、貿易のほうも入超だ、借款のほうも払えないというので、利払いにも困っておるという国も一ぱいあるわけですね。もう利払いをとめておる国もあります。そういうわけでありますから、もちろん経済協力のほうは思い切った政府借款による開発輸入というところに力を入れるのはけっこう、当然であると思いますが、それと同時に、ひとつ貿易面におきましても、一次産品を開発輸入するファンドというものを設けてしっかりこれを買い付けていきませんといかぬのじゃないか。  もう一つ、一次産品で困った問題は、価格の変動の問題であります。なかなか安定しない、需要が伸びないということでありまして、この東南アジアの発展途上国をどのようにしていくか。その市場の育成というものはむしろわが国の責任であるというぐらいに感じてやりませんと、抽象的なお答えではこの貿易じりというものはなかなか改善されぬのではないか。かえって縮小均衡みたいになっていくおそれがあるんじゃないか。思い切って買わなければいけない。そこに思い切って一次産品の原材料に対する各部門別の計画を立てて買い付けていかないといけないのじゃないか、こういうことでありますけれども、そのようなことで、年間十九億ドルとか二十億ドルという貿易収支をどの程度まで持っていくのかというのが、ぼくは来年度の課題だと思うのですよ。そこまで踏まえて、ひとつ局長からでけっこうでありますけれども、あと大臣考え方構想というものを、東南アジア貿易について私はこう思うのだというものを聞きたいと思う。大臣からもはっきりそういう構想というものをいま示すべきときであろう、こう思うのですが、逐次答えてください。
  270. 増田実

    ○増田説明員 ただいまお話ありましたように、東南アジア諸国の中には輸出、輸入のバランスが合わないで、そのために経済的に困難におちいっている国もございますが、しかし資源はいずれの国も豊富でございまして、これらの資源あるいは農産物でございますが、日本に合うように技術指導をし、またそれを品種改良を行なうということをやれば、さらに日本のこれら一次産品の輸入がふえる、それによりましてこれらの国々にも非常に役に立つということになると思います。その意味におきまして、私どもとしては、東南アジアの一次産品の買い入れが促進されるようにあらゆる方向で努力いたしたい、こういうふうに思っております。
  271. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり長期的に見ますと、開発輸入という関係で産物をふやしてもらうということが大事であるだろうと思います。それにはある程度年次計画で長期的に一歩一歩やっていかないと、そうふえるものじゃないと思います。そういう計画をつくりまして、それと同時に、やはり一番大事なのは東南アジアにおける経営者、企業家、技術者、そういう人たちの質を高める。経営能力というものは非常に大事な要素でもあるように思います。そういう面における協力もわれわれ大いに力を入れまして年次的にこれを解消していくように努力していきたいと思います。
  272. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いまの技術協力等も当然であります。これはやはり裏と表とありまして、貿易面におけるいろいろの是正といいますか、発展策、それから経済協力におけるいろいろの技術面の問題とかその他がありますから、これは両方かみ合っておりまするので、いま大臣のお答えのとおり、これをいま少し抽象的でなくて具体的に予算等も組んでみて、そして来年度から東南アジアの貿易じりをこのぐらいにしていく。だんだん、三カ年でもけっこうですし、五カ年でもけっこうです。そして向こうには外貨を与える。そして向こうの民生安定といいますか、やはり経済的な発展というものをはかっていくことこそが、私はいまわが国に対する大きな責務だろう、こう考えます。この点はきょうはこのくらいで、時間がありませんからとどめますけれども、これはしっかりがんばっていただきまして、来年度の私の質問のときには、お互い非常によかったなと、このような結果が出るようにしっかりがんばってください。これは強く要望しておきます。  次は、PCBの問題でいろいろお聞きしたいと思っておりましたのですけれども、時間がありません。それできょうはもう通産関係は一応私の質問はこれでとどめますけれども、このPCBの問題が長崎県におきましては非常に重大な問題でございます。それで、あわせてお尋ねするということで厚生省関係から来ていらっしゃると思うのですが、どうですか。
  273. 藏内修治

    ○藏内委員長 来ております。食品衛生課長が来ております。
  274. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 そちらのほうの質問を続けていきますから、大臣はしばらく休憩されてけっこうです。  では厚生省のほうへお伺いしますが、このカネミ油症の問題は、いま食品衛生法に基づく中毒事件というようなことでありまして、国家というものが全然タッチしていない。ほとんど報告を聞いたり、少し何かやっているという程度でありまして、何も国としての解決方法はない。そういうことで企業側との話し合い等も進みませず、現地は非常にたくさんの患者で困っております。われわれも四月の三、四、五と三日間現地に行きまして実情の調査をいたしてまいりました。非常に問題なのは、その中でも玉之浦町というところが一番患者が多いのでありますけれども、認定患者が三百九名おる。その中でも生まれた赤ちゃん四名、これは黒い赤ちゃんと言われまして、生まれたときからまっ黒であります。すでに死亡が八名、未認定のほうでも百五十三名おります。その中で胎児がまだ十七名認定されていない。これも黒い赤ちゃんでありまして、産婆さんの証明をつけても認定されておらぬ。いろいろの苦しい問題をかかえて現地では患者が苦しんでおります。  そういうことでありまして、カネミ油症の患者の療養関係をながめてみましても、いままで四十三年から四十七年四月までの累計で医療費が三千百二十七万円、それを保険者、国民健康保険等で町のほうが負担しておる金額は二千百八十六万円、カネミの会社が負担しておるのがわずか三〇%でありまして、これは九百三十六万円。このカネミ油症という病気が起こったために、なけなしの町の財政というものが非常に苦しんでいる。町も苦しんでいますけれども、生活のできない患者がほんとうに現実に一番苦しんでおるわけであります。  そういう実態を踏まえていろいろわれわれは政府にも対策を強く申し入れておるけれども、なかなか進展していない。まことにこれは残念であります。でありますから、いよいよ来年度の予算も編成をするときに来ておりますのでこれはいいわけでありますけれども、まずこのカネミ油症の治療対策は、国がやはり一つの責任ある機関を設けてやるべきじゃないかという点でありますけれども、いままでのやり方、それを反省して今後どのように考えていきますか。
  275. 三浦大助

    ○三浦説明員 御質問の油症患者の治療対策でございますが、四十三年の十月にこの問題が発生いたしましてから、この種の事件は非常に原因者がはっきりしてまいりますから、したがって会社の責任という問題が非常に大きな問題になってくるわけですが、国といたしましては、主として治療研究またその毒性の基礎研究、こういう面に大いに対策を立ててきておったわけでございます。現在までこういう面に使いました研究費、合わせまして約六千万近くの研究費を投入して治療研究に当たってきたわけでございますが、現在治療につきましては、油症研究班を組織してございまして、この班が認定を行ない、患者の治療も行なっておるというのが現状でございます。
  276. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 いま治療費の話が出ましたけれども、カネミ油症だけに関する調査研究費ですか、そういうものは減っておりますよ、四十六年度と四十七年度と比べますとね。ですから、これを来年度はどのようにやっていくかというようなこともあわせて聞いておるわけであります。いままで九大だとか長崎医大だとか、そういうところで調査研究されておりますね。そういうものを今後はどういうふうに国が取り上げて国の責任体制でやっていこうかということもあわせてお答え願いたいと思います。
  277. 三浦大助

    ○三浦説明員 ただいま御指摘いただきました点で、研究費の問題でございますけれども、これにつきましては、カネミ油症に対します研究費は確かに前と比べて若干減っております。しかし、これは研究費の中心が、毒性というものがわかりませんと治療の開発がなかなか進まないということがございまして、毒性研究につきましては、PCBの毒性研究、こういうことになりますので、科学技術庁の特別研究費その他もあわせましてお考えいただきますと、決して前よりも減っておるというふうに私どもは思っておりませんが、なお来年度予算等におきましては、これまた増額の方向で進めてまいりたいと思っております。
  278. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 総体的にふえていくのは当然でしょう、PCBでこのくらい大きな問題が起こっておりますから。その中でいま取り上げておるのはカネミ油症の関係でありますから、全体はふえておるけれども、カネミ油症関係は減っているのだということでなくて、やはりこれは治療の方法もない、お先まっ暗な患者に対する大きな問題でありますから、そういうふうな治療の研究機関というものを国家的なものをつくり、いままでの各大学の成果というものを取りまとめた治療の方針等も立てていくべきでなかろうか、こう思うわけです。その点だいじょうぶですか。
  279. 三浦大助

    ○三浦説明員 この治療の問題につきましては、先生御指摘のとおり、おそらく先生のおっしゃることは、もう少し研究班の組織なりそういうものももっと大きな国の機関にして——こういうこともしばしば国会等で問題になっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この原因者が明らかだということがございますと、なかなかこれが公的措置ということに結びつきがたいという問題があるわけでございます。そうかといって裁判までの間、患者さん方を困らせるわけにもまいりません。したがって、つなぎの措置として、私どもそういう救済の制度というものを基本的に検討すべきじゃないかということで、これは来年度の予算の中に要求してあるわけでございますが、その一環としてこういう研究制度ということを総合的にどういうふうに持っていくかということもあわせまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  280. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 内容がややばく然としたお答えでありますけれども、要するに、われわれとしましては、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、いわゆる公害病の認定がいまのところできない、こういうわけでありますから、それに準じた措置をとれ、それはあなたのほうでもたびたび検討する、こういうふうにお答えになっているわけです。でありますから、公害病としての認定、そういうものが現在のところできないとすれば、せめて食品中毒による救済というようなことを基本的に考えていくべきであろうし、その中でも、特にいまから制度をどうだこうだというのでは非常におそくて困るのです。現実には患者がたくさんおりまして困っておるという状態でありますから、何かこれはとりあえず生活面をどうしていくかということが非常に大事な問題です。いま何にもありません。病気で働けない、生活保護を受ける、医療保護を受けるというような段階に、いまこのカネミ油症のために追いやられているという姿であります。いま少しこれは救済という、生活を守るという点を考えていくべきではなかろうか、そういう点において何か考えておるかどうか、難病対策としての一つのお考え方等があるのか、そういう点いかがですか。
  281. 三浦大助

    ○三浦説明員 現在カネミ油症患者に対しましては医療費の自己負担分、それから入院時の経費、それから付き添い費、それから主たる生計維持者が入院した場合の生活援助、こういうことをやってきておるわけでございますが、患者さん方にとっては十分ではないということでいろいろ問題があるわけでございまして、これらはまた県自体がいまいろいろな施策考えておりますが、各県の実情等も考慮いたしまして、私ども総合的な対策を立てたいと思っておりますが、その御指摘の中で難病対策と一緒に考えられないかという御質問がございました。これはいま部内でも難病対策と一緒にできないかということで現在検討しておる段階でございます。
  282. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 政府が、やる根拠がないというようなことでやってくれぬものですから、関係の県とか市町村が苦労しておるわけですね。何をやっているかといえば、見舞い金を三千円だとか、生活資金といって十五万円の貸し付け、これも借金でございますから、払え、払えと言いまして、支払い能力のない人にいまそういうことを言ってはいかぬというので、いまやっと払え、払えということをしばらく見合わせていいですよというふうなかっこうになっておりますね。ですから、そういうことでありまして、関係県とか市町村の財政措置というものは限られまして、ほとんど言うに足りないものである。これはよく御了解願いたい。そういうわけでありますから、私が言いましたのは、難病対策なら難病対策で取り上げていきますとどういうふうな効果がこのカネミ油症患者にあるのか、少なくともそういう予算というものを来年度にきちっと確保する、そのような腹がまえがあるのかどうか、その点をもう一回念のため聞いておきたいと思います。
  283. 三浦大助

    ○三浦説明員 厚生省の来年度のカネミ油症患者の対策に対します考え方といたしまして、ともかくそういう公害病に準じた救済の措置が、何か制度的に考えられないか、こういうことの問題でございますが、これにつきましては来年度では、おそ過ぎるじゃないか、こういう御指摘をいただくかもしれませんけれども、現在そういう制度検討自体私どもいろいろやっておるわけでございます。たとえば保険という問題もありますが、こういう問題につきましても、食品の製造業者が事故を予測して保険に入るということ自体おかしいじゃないか、なじまないじゃないかというような問題につきましてもいまいろいろやっておるわけでございます。こういう救済制度の問題につきましては、来年度の予算要求の中でこれは考えていこうということでございます。  なお、先ほどの難病対策の一環としてという問題がございますが、難病というものとこのカネミ油症というものといろいろ違う点もあるわけでございまして、この点につきましてもいま部内で検討をしておる段階でございます。
  284. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 では最後でありますけれども、かりに難病対策の一環としましてやっていく、予算的な措置を考える、これは大いに大蔵省に対して強く要望してもらいたい。あなたも一ぺん現地に行ってみたらよくわかるわけですよ。そういうことでありますから、そういうことでどのくらい彼らの生活を守っていけるかということでありますけれども、どうなんでありますか。難病対策の一環として、これをかりにあなたの強い要望によって大蔵省が認めるというようなことになった場合、どのような——現実にその患者に対する生活補助的な、または医療保護的なものがどうなるんですか。予算を組んでそれがどういうふうに患者にあらわれていくのですか。
  285. 三浦大助

    ○三浦説明員 難病対策の一環として考えられないかということで、いま検討しておる段階ですが、この生活保護あるいは援助、あるいは医療の援助の問題につきましては、これまた別の問題もございます。非常に原因者が明らかなので、これは原因者が当然やるべきじゃないかという問題もございますので、その辺のかね合いについても鋭意検討してまいりたい、こういうことでございます。
  286. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 どうもはっきりしない。原因者がはっきりしておれば、そこのほうを、関係の農林省とかあなたのほう、環境庁あわせまして、しっかりやってもらわないと、相手は非常に弱体ですよね。患者は多い。ですから、いろいろ行き悩んでおる問題があります。訴訟する者もあれば、妥結した者もおる。妥結のしかた等もいろいろ問題がありまして、きょうは申し上げませんけれども、そういう中で苦しんでおる。会社としてもなかなか支払い能力もない、そういう段階において、治療の方法もない、そういうものをどうしていくかということでありますから、もう一度これは厚生省としましてもしっかり考えられまして、一環としていけるかどうか、いけなければそういう予算はとれない。調査研究費のほうで、どのように彼らの生活を守っていくようにやっていくか、こういうことでありますから、いずれにしても難病対策の一環としてやるにしましても、かりにそのような方向がだめだといたしましても、カネミ油症による彼らのこの現実の苦しみというものをどうにかしていかないと、会社自体もそういう能力はないわけですから、訴訟したところで何年かかるかわからないということでは、訴訟費用も、また裁判所に行く費用もないのです。費用を負担する人も非常に苦しがっているわけですから、そういうこともひとつよくわきまえられまして、どのように、どういう方向でやっていこうとするのか、安心するようなお答えを一つぐらいここではっきりおっしゃってくださいよ。これを最後にいたします。
  287. 三浦大助

    ○三浦説明員 これからどういうことでいくかということでございますが、軽症患者はわりあいなおりが早うございましたが、問題は重症患者でございますが、なおその重症患者から新生児の油症とか、それから母乳にPCBが非常に多く含まれた問題とか、たくさん出てくる問題がございました。問題は、ともかく私ども一日も早く治療の方法を確立することだということが一番大きな問題だと思いますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように治療の調査研究をうんとやっていくということでございます。  それから救済措置につきましては、先ほども申し上げましたが、医療費その他の生活援助につきまして、医療費は全額見ておるわけでございますが、生活援助につきましては、会社のほうにも私どものほうからなるべく手厚く見てやるようにという指示はいたしてございますが、ただ裁判中でございまして、したがって、その間のつなぎという非常に深刻な問題が出てくるわけでございます。したがって、やはりこれから公害病に似たようなかっこうで何かそういう制度考えなければいかぬのじゃないか、こういうことで来年度の予算要求をやっておるということでございます。
  288. 松尾信人

    ○松尾(信)委員 来年度の予算要求をやっているということでありますので、それを大きく期待いたしまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。今後しっかりがんばってください。
  289. 藏内修治

    ○藏内委員長 近江巳記夫君。
  290. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは朝からずっと長時間の審議が続いておりますので、大臣委員長もだいぶお疲れと思いますが、私を含めましてあと二人でございますので、よろしくお願いいたします。  まず初めにお聞きしたいのは、この間、商工委員会で沖繩海洋博を視察に行ってまいりました。それで政府からは私どもいろいろな報告を受けておりますが、今後の開催にあたって非常に心配な点がたくさんございます。そういう点で、きょうはまず初めにそういう問題をお聞きしたいと思うのです。  政府のほうからいただいたこうした現状の印刷物等を見ましても、実際このとおり行なわれておるかどうかということ、これは現地とあわせますとだいぶ差があるわけです。それで、この本部半島が選ばれた条件として、「黒潮に洗われる本部半島周辺の美しい海は、沖繩の亜熱帯性のすぐれた風物環境にもめぐまれて、その要求に十分応えている。」また「会場周辺の自然環境」云々、こうずっと書いてあるわけですね。たいへん美しいところである。  私たち那覇からずっと車に乗って行ったわけです。だんだん会場に近づいていきまして、あの半島が本部半島で、その先が会場です。ところがびっくりしたことは、美しいとうたわれておるその環境が、むざんにも半島一帯にセメント会社が山を築いておる。赤茶けた岩石が累々として露出しておるわけです。これは国際的には特別博ではありますけれども、外国人も来る。山を削り取って、県道にまでそういう岩石のこまかく砕いたものが散らばっているわけですよ。当然整備されると思いますが、まず景観からいっても、ああいう山を緑をどんどんつぶしてあのままそれが進んでいけば、美しい周辺の景観などといったって、全然これはことばが当てはまらぬわけですね。そういう会場ではたしていいかということです。  しかも、会場のところに港がありまして、そこに川が流れておりますが、その川からはおびただしい土砂が流出しておりまして、その防波堤の内側は濁って底なんか全然見えない。ところが、美しい熱帯魚が泳いで、もう天国のようにここに書いてあるわけですが、この港湾一つ見ても、こういうところが海洋博の場所としてふさわしいのか。それでは土砂の流出を防ぐ砂防ダムでもつくればどうかと思うのですが、そういうことも放置されている。いまそういう荒廃にまかしておる。この海洋博の周辺をこのまま放置していけば、ちょうど開催時期には手のつけられない状態になると思う。大臣、ごらんになったかどうかわかりませんけれども、局長のほうがよくわかっておると思いますので、局長にまず答えてもらってけっこうだと思います。
  291. 山下英明

    ○山下説明員 御指摘のセメントの採石場所は道路に面して、名護から少し過ぎたところの現場を御視察なさったものと思います。私たちも非常に気にしておりまして、ようやく会場までの道路計画建設省と話がついてきたところでありまして、道路建設に取りかかると同時にこれらのセメント採石と話をつける方針でございます。もとより削り取りました緑をどうするかということもあわせて検討してまいりたいと思っております。  いま一つ、満那川の入り口で沖繩の民間業者が埋め立てをしておることも私ども承知しておりますが、それを御視察なさったことと思います。これは海洋博決定前から埋め立て権を持ちました沖繩の民間業者がやっておりますが、この点は県当局とその業者との間で話がついておりまして、埋め立て後の使用に関しては海洋博に協力するということになっておりますが、私どもは今後とも監視をしていくつもりでおります。
  292. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もう一つ申し上げたいのは、川の上流から土砂が流出しまして港湾が黄色に染まっているわけですよ。ですから、それを砂防ダムとか早く手当てをしないと、あの海がよごれれば、海洋博の会場なんといったって、これはゼロですよ。あそこ以外に美しいところは幾らでもあるわけですね。だから会場をやはりもっと守るという——河川に砂防ダムをちゃんと設けていけば土砂の流出は防げるわけです。それをまるっきり放置したままなんです。しかも、民間業者が全く沖繩海洋博の海岸の埋め立てをやっているわけです。極端にいえば、バーやキャバレーを人が来るからということでどんどん建てたら、美しい景観などと言っておりますけれども、そこにネオンがきらめいて、そんなものは自然環境に全然マッチしないわけですよ。一体そういうことを民間のそういう業者の思うがままにさせていいかということです。あくまでも全体の環境にマッチしたものでなければいけないわけでしょう。ところが、民間がどんどん埋め立てをやってそのまま放置しておる。だから政府はいろいろ考えておったって現地は違うわけですよ。しかも、用地の取得にしましてもいまだにできてないじゃないですか。副知事からもよくいっていますということを聞いていますけれども、当時五ドル五十セントでいけるはずだったが、いまもう四十ドル以上にはね上がっている。しかも、土地ブローカーなんかがどんどん入り込んできている。待てば幾らでも上がるのだ。あの千里丘陵で開かれた万国博もおくれておりましたけれども、いまごろであればすでに土地は押えていますよ。それは万博は百万坪、海洋博は三十万坪、規模は小さいかもしらぬけれども、少なくとも計画を進めていく、用地の確保ということは先決問題でしょう。それがいまだに進んでいないじゃないですか。少なくとも政府が肩入れをして、力を入れて、県も総力をあげてやろうとしておるその会場もまだ取得できてない。どんどん土地は上がる一方ですよ。それはもちろん地主の人のそういうことも考えてあげなければならない。しかし、その辺をずるずるずるずるといっておってはたしてできるのですか。  私が申し上げた河川の汚濁、それから民間の今後の使い方、それから用地の取得、この三点について局長もう一度答えてください。
  293. 山下英明

    ○山下説明員 本日ちょうど九百日目でございまして、私どもも、大阪万博に比べて一年弱おくれておりますので非常に憂慮しておる点は先生と同じでございます。  用地取得のほうから先に申し上げますと、これは県が用地を取得しまして協会に渡す、そして三月起工式というスケジュールで進んでおりますが、大阪のときも一部そうでございましたが、取得に近づけば近づくほど値上がりの気配が出て、また民間不動産業者がそれに合わせて値をつり上げる傾向などがございまして、県当局自身が非常にただいま苦心しております。先生が引用なさった四十ドルという数字も、私ども聞いてないわけではございませんし、一部実際にそういう価格が言われておる現状でございます。私どもはこういう企画でございますので、決して高い値段では買えませんので、しんぼう強く交渉をして適当な値段におさめてもらうよう県とも話を続けております。  用地買収が済みますと、私どもは用地内における施設、環境等につき、すみやかに工事をしていくつもりでございますが、同時に、おっしゃいました一部には、用地外の本部半島の域外地域についての民間業者の造作や建設などもあろうかと思いますが、これらについては県とも話し合って、博覧会環境保全の見地から誘導していきたい、こう考えております。   〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕
  294. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、さっきの砂防ダムの話はまだ出ていないのですけれども、あとでもう一ぺんお聞きしたいと思いますが、それと、あの周辺をああいうふうに埋め立てをやって、結局あれはいろいろなことを民間考えておると思うのですが、少なくとも世界の博覧会ですから、幾ら特別博といっても、政府としては、何も民間だけでやるつもりはないわけでしょう。やる以上は、諸外国に出展を求めて、できるだけ世界から来てもらおうということでしょう。少なくとも国際博協会でもこれはもう承認されたわけです。そういう場合、そういう周辺に何の規制も施さずに、キャバレーが建とうがバーが建とうがほったらかしです。いまの状態だとそうですよ。これは法的にどうやって規制していくのですか。ただ協力してくださいじゃできませんよ。その辺のことについては煮詰めて話し合っているのですか。どんどん建ちますよ、周辺は。土地をさらに買いあさっていく。そういう周辺を含めてやはり対策というものを政府が真剣に考えなければ、沖繩だって初めてのことをやるわけです。人員の不足であるとか、いろいろなことの不足が言われているわけです。それをリードしてあげなければいけないじゃないですか。その辺についてはどう考えていますか。
  295. 山下英明

    ○山下説明員 おっしゃるとおりでございまして、本部半島全体に、海洋博が五十年に終わったあとこうしようああしようという計画もございますので、それが同時にまた土地の値上がりを刺激するというような因果関係もありまして、私どもは海洋博敷地周辺について将来どういう計画をするかは内々に検討をしております。ただし、その間に民間業者が入ってきてかってなことをするという事態に対しては、県当局でも国定公園指定を考える等々、ほったらかしてはおかないということで、現在、どのような規制ができるか検討をしておるところでございます。
  296. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ国定公園に指定するなら指定するで早くやらないと、いま言ったようにセメント会社でも本部半島の——実際那覇から来てみてこれが会場かと思っただけでぞっとしますよ。ほんとうに緑をとってしまって赤茶けた岩石が累累としておる。何が美しい景観ですか。全くいままでの企業一本やりの政府のやってきたそのままの姿が露呈されているみたいなものですよ。だからこれをほんとうに真剣に考えていただかないと、そういうことがどんどん進みますよ。それについて私は大臣見解をお聞きしたいと思うのです。
  297. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 環境庁長官ともさっそく相談しまして、いま聞くと何か審議会で二、三カ月かかるという話ですから、早く審議会を開いてもらいまして、早く指定してもらって、それに基づいて県当局で条例でも早くつくってもらって、半径何キロ以内はネオンを禁止するとか、そういう措置を講じたいと思います。
  298. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから局長、まだお答えにならなかったのですが、海洋汚染の点です。埋め立てであるとか、河川の汚濁の点です。河川の砂防ダムを早くつくるのですか。あのままほっといたら幾らでも汚れますよ。全然お答えになっていない、私は何回も聞いているのに。
  299. 山下英明

    ○山下説明員 お答えを落としまして恐縮でございます。おっしゃるのは満那川だと思いますが、その川の改修工事は四十八年度から行なうことで現在決定済みでございます。したがいまして、来年度早々には改修、砂防等々の工事をして、もとより会場の海洋は澄んだきれいな海にいたします。
  300. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから基本計画は定まってないということで、実際向こうへ行ってみればホテルなんというのだって全然ないわけですよ。それでかなりの入場者数が含まれておる。結局ホテルなんか政府や県でも建てる、そんなことはおそらく私はできないと思うのですね。そうするとやはり民間の協力も得なければならぬわけですよ。それが定まらないからどうすればいいのかということになってくるわけです。ですから、ホテルであるとか交通機関であるとか、いろいろ考えていらっしゃると思いますけれども、その計画なら計画も早くきちっと進めて、民間の協力もどういう形でしてもらうかとか、そういうことをいまからどんどん進めていかないと、私はいままでの万博の経過から見ても——万博もまあ大事故はなかったですけれども、最後はもう突貫工事ですよ。私は地元だからよう知っていますよ。そして初日は動く道路、ありましたね。ああいうのがばっととまって事故が起きてみたり、大事故には至らなかったけれども、いろいろな事故が続発した。それは最後の突貫工事でどんどんやるから点検ができなかったというところに原因があるわけです。ですから、日の詰まった突貫工事というのは間違っているわけですよ。先手、先手と打っていかなければならない。ところが、そういう基本計画だっていまだに定まってない。そうすると、民間の協力だってどうしていけばいいか、いまだに手のつけようがないわけですが、このことについて局長はどう思いますか。
  301. 山下英明

    ○山下説明員 基本構想のほうは御承知のように六月にきまりましたが、基本計画は九月末までにきめる予定でございます。都市工学の大家であられる東大の名誉教授、高山英華先生が現在せっかく計画を期日内におつくりいただくようにやっておられます。ただ、高速道路とか、空港をはたして本部半島あるいは伊江島につくれるかどうかということもこの基本計画関係しておりまして、これはまた政府部内の決断を要することでもありますので、高山先生のほうと政府側とでそういう一つ一つの要素も話し合いながら、いま検討しております。これができませんと、おっしゃるとおりに、誘導すべき民間側の協力もばらばらになってしまうということは、そのとおりでごごいます。
  302. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、もう伊江島に空港もあるわけですが、あそこに空港をつくるとか、いま局長ちょっとおっしゃいましたが、そういう地元の実情調査をよくしてもらって、ほんとうに効果あるようにやっていただかないと、もう机上プランだけで、だれかが立案したのならそれでいいわ、こういう方式は絶対いかぬと思うのです。ですから、通産省からも同行したわけですし、いろいろ現地調査もなさっていると思いますが、万博でいろいろな勉強もなさったわけですから、すばらしいものにしてもらいたいと思います。しかし、いまのままであれば、史上最低の国際博になることは、私は間違いないと思います。ですから、大臣も至急に設定等もするということをおっしゃったわけですし、その点はほんとうに力を入れて、総力をあげてもらいたいと思うのです。  それから、あともう一つこの点で聞きたいのは、本土企業がもう土地を買っているんじゃないかというようなことも盛んにいわれておるわけですが、そういう土地の買い占めについて、特に会場周辺の土地の買い占め等についてはどういう手を打っていかれるのですか。
  303. 山下英明

    ○山下説明員 現在までうわさは若干入っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、用地買収後、その周辺、本部半島についての規制がきまるまでは、政府側として許認可等々直接的な手だてはございません。それが現状でございます。しかし、実際にそういう動きが目に余るものがありまして、政府の指導で本土企業にそういう行為をしないようにという勧告、警告ができる場合には、私どももやるつもりでおります。
  304. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局は政府の指定なり規制なりそういう点がおくれたということが、こういうもろもろの結果を生んでおるわけです。したがって、政府の責任というものは私は非常に大きいと思うのです。そういうことで、これはもう病状でいえばほぼ危篤状態にあると私は思うのですが、これ以上破壊が進むようになっていけば会場としてはふさわしくない状態だと思うのです。これはほんとうに、大臣おっしゃったように早急に政府として手を打っていただきたいと思うのです。ですから、それを特に強く要望しておきます。  それから次に、経済問題についてお聞きしたいと思うのですが、この間からハワイ会談も行なわれておりますし、いろいろ非常に大きな動きがあるわけですが、全体として見まして、やはりアメリカにおいては依然として保護主義の高まりが見られておりますし、ヨーロッパにおいてはECの強化、あるいは共産圏は独自の経済発展を考えておりますし、そういうことを考えますと、日本としてはやはりドル圏経済の発展に協力をせざるを得ないような立場にあるのじゃないか、このように思うわけですが、しかし、日本が世界経済から孤立化を避けるためには、今後どういう方針政策で今後の日本経済の発展を考えていくかということが非常に大きい問題だと思うのです。この点について大臣のお考えを承りたいと思うのです。
  305. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはりこれだけ発展いたしますと、もう国際協調、国際協力、そういう面で全面的に協調精神を持ってでなければ、偏狭なナショナリズムではとてもいけないという時代に日本は到達していると思います。そういう意味において、国際協調を相当重要視しながら世界の中に生きていくという姿勢で進めていきたいと思います。
  306. 近江巳記夫

    ○近江委員 もちろん大臣がおっしゃるそのとおりであると思うのですが、しかし具体的にどう進めていくかということは、ほんとうに非常にむずかしい問題だと思うのです。  それで、いま円の再切り上げの問題がやはり依然として非常に強いと思うのです。IMFの報告の中にも、黒字国の責任ということを非常に強調しておるわけです。それで、この間もアメリカのミルズ委員長が、円の二五%から三〇%の再切り上げが必要であるということも話しておりまして、国際的に円の再切り上げという問題は、やはり熱がさめるどころか非常に上がってきているように私は思うのです。そういう点で、それを避けるということで大臣としてもいろいろ苦慮なさっておると思いますが、一時的には緊急輸入ということで考えておられるわけですが、しかし、それはあくまで一時しのぎであるということであります。今後長期的にこれを避けるためにどういうようにやっていかれるかということが私は非常に大きな問題だと思うのです。この問題について、具体的にはどのようにお考えですか。
  307. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前にも申し上げましたように、七項目を逐次実施していく、それから景気の動向を見ますと、やはり景気が非常に回復しつつあるやにも考えられますから、これでかなり内需に転換するということも予想されますし、輸入が増大してきたという現象もいい現象であります。そういう動向をよく見守りながら、今後の経済政策をどの程度政府として措置していったらいいかということを検討しながら進めていきたいと思うわけです。これといってペニシリンみたいに急にきく薬というものはないだろうと思うのです。総合的なことをやりながらじわじわ固めていく、そしてその様相、兆候に応じて手を打っていく、あるいは強化していく、そういう段階的に柔軟反応の姿勢で進めていきたいと思っております。
  308. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、アメリカが非常に自由化を迫ってきておるわけです。そこでわれわれ考えるのですけれども、去年の円の切り上げあるいは課徴金の問題であるとか、ショックに次ぐショックということで日本経済はたいへんな混乱に入ったわけですけれども、しかしアメリカのこういう出方を見ておりますと、そういう自由化、資本の自由化であるとかいろいろありますが、自由化を迫ってきておる。どっちかというと、日本を裸にして、その上で円の再切り上げというようなことになってくると、これはもう収拾がつかないことになると思うのです。これはあくまで仮定の問題といえばそうかもしれませんけれども、去年のああいうような手口を見ておりますと、私は十分考えられる問題ではないかと思うのです。そういう点、それは仮定かもしれませんが、将来そういうことが考えられるとした場合、大臣としてはどういう対策を立てられるわけですか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 去年の円の切り上げで中小零細企業は、もう担保を出してしまって、これ以上さらに切り上げをやられると、金を借りようにも担保力がないというような状態になってきておりますから、これはあらゆる努力を払って再切り上げを防止する、そういう方針で断固として進んでいくつもりであります。
  310. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣としては断固たる決意、これは非常に頼もしいわけでございますが、しかし去年のときもいきなりあれがやられたわけですし、その点非常にそういう点で心配なわけです。そういう点、腹がまえをよほどしていただいて対策を立てていただかないと、ほんとうに今度は取り返しのつかない打撃になると思うのです。その点を特によく考えて、準備をしていただきたいと思うのです。  それから、卸売り物価がじりじり上がってきておるわけですが、そういうことでインフレの懸念というものが強まってきております。そういうことで、いろいろなそういう不安定な要因というものが出てきておるわけですが、こういうことに対しまして、今後通産政策として、これは非常に大きなとらえ方かもしれませんけれども、どういうように対処されていかれるわけですか。
  311. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 物価の問題は、私が最も関心を持っておる政策でございますが、幸いことしは消費者物価はそれほど急激に上がっておりません。これは生鮮食料品の暴騰がなかったから助かっておるわけです。サービス料金につきましても、大体同じような傾向です。   〔橋口委員長代理退席、委員長着席〕 物価の値上がりは、消費者物価に関する限りは、生鮮食料品とサービス料金に非常に大きく依拠しておるようでありますから、これを注意する必要があります。  卸売り物価は最近微騰いたしましたけれども、しかし外国の騰貴の状況から見れば、日本はそれほど大きい騰貴率とはいえない状態であるだろうと思います。輸出カルテルあるいは不況カルテル等によりまして、特に不況カルテルによりましてその効果が出始めたという程度の卸売り物価の上がり方ぐあいであろう、そう私は考えて、それほど現在心配する必要はないと思っております。
  312. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし外国の場合は、卸売り物価の上昇と消費者物価の上昇というものはそう大きな差はないわけですけれども、日本の場合は一%上がれば四%や五%上がってくるという従来のそういうパターンになっておるわけです。そういう点からしますと、国民生活にとっては、これは非常に危険な心配な徴候であると言わざるを得ないと思うのです。そういう点、外国に比べてまだ少ないからというお考えはちょっと甘いんじゃないかと私は思うのですけれども、大臣どうでしょうか。
  313. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の情勢に関する限りは、それほど卸売り物価の微騰が消費者物価に響くとは考えられません。やはり日本情勢を見ますと、生鮮食料品やサービス料金というものが非常に大きなファクターを占めておるように思います。
  314. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点は国民生活にとりましても特に重大な問題でございますし、ひとつよくその点は警戒をしていただき、対策を立ててもらいたいと思うのです。  それから次にココムの問題ですけれども、近くココムが開かれるわけですが、これに臨むわが国としての基本的な態度というものをお聞きしたいと思うのです。このココムリストの改定に関して、わが国としてどのような具体的な提案を行なわれるのか。これについてお聞きしたいと思います。
  315. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 わが国は従来ココムの品目の縮小あるいは廃止を最も強く主張してきた国でありますが、依然としてわれわれはこの立場を堅持しまして、品目の縮小あるいは廃止を強力に主張するつもりであります。
  316. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでココム品目の全廃という点になってきますと、相当アメリカ等から反対が予想されるわけですが、そういう点、たとえば軍事目的に使用されるような品目を規制するような国内法——たとえばわが党が提案しております兵器の輸出の禁止に関する法律案、こういうような立法化等を検討する必要があるのじゃないかと思うのですが、そういう点、大臣としてはどういうお考えを持っておられますか。
  317. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 兵器の輸出につきましては、いわゆる三原則というものを持っておりまして、これを堅持していけばいいと思いますし、貿管令でございましたか、そういう法的背景もあり得ることでありますから、われわれとしては特に立法の必要はないと考えます。
  318. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから日本列島改造論、これは非常に大きな波紋を呼んでおりますが、田中総理も中曽根大臣の前は通産大臣をなさっていらっしゃって、その目玉が工業の再配置である。いろいろなことがその中身にありますが、一番の柱になるのじゃないかと思うのですけれども、その点に関しては、通産省としても当然柱として今後はになっていく立場でいかれると思うわけです。  そういう点でお聞きしたいと思うのですが、一つは環境保全問題としまして、工業配置促進法が成立し、これから工場分散の施策が進められようとしておるわけですが、結局早急に工場を移転しようとするのは、公害型の産業が主であるようにも思われるわけです。この結果、工場分散がそのまま公害分散になるのじゃないかというおそれがあるわけです。そういうことにならないようにするためのきめ手をどのようにお考えになっていらっしゃるか。このことについてお聞きしたいと思うのです。
  319. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本列島改造論は、そもそも無公害社会建設を目ざしたものでもありますし、そういう意味において工場配置等にあたっては、公害を起こさないように最大の注意をしなければならぬことであります。具体的には、たとえば工場法というような法律をつくって、公害規制環境等の整備等を厳重に規制していく考え方であります。
  320. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、これからの公害規制というのは、結局従来濃度規制をやっておったのですが、総量規制に移行させるということが日本列島改造論でもいわれておるわけですが、しかしこれは現行の法体系では無理でありますし、現在の技術水準から見ても非常にむずかしいことであります。そういう点で、法令上も、また技術的にも、そういう困難なことを今後どういうように実現していくかという問題があるわけですが、その点についてどういうお考えがありますか。局長でもけっこうです。
  321. 山下英明

    ○山下説明員 いままでの公害規制が排出基準もしくは着地濃度を中心とした環境基準でありまして、今回の四日市裁判で特に指摘されました総量公害については確たる基準で規制をしておらないわけでございますが、この問題に私どもが現在どう取り組んでいるかといいますと、従来とも工場立地に関しまして調査をする法律があり、特に大規模工業立地の場合には事前調査をし、その結果を県当局に示して、県側で工場誘致の際の基準にしてもらっておったわけでございますが、その際の技術的な方法としては、総量公害を全体としてはかり、それを基準にするという一つのやり方をとっておりました。この方式を拡大いたしまして、立地行政でできるだけ解決していきたい。この観点から、先ほど中曽根通産大臣の言われました工場環境整備に関する法案の場合には、工場立地のその敷地内における用地比率あるいは公害設備を含めた生産施設の配置及び、それが団地の場合には、団地敷地の周辺の緑地もしくは環境地帯との関連で立地上これを規制していこう、これが大きな方針でございます。
  322. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この日本列島改造論を見ますと、公害防止技術の革新あるいは符に重油の脱硫と排煙脱硫技術の発展というものに非常に期待しておるわけですが、現段階ではその保証がないんじゃないかと、言わざるを得ないと私は思うのです。それは工業技術院等でもいろいろ研究もなさっておるわけですが、一般の評判というものはあまり評価しておらぬわけですね。あるいはまた、企業側としても非常に金がかかるということで二の足を踏んでおるというようなこともあるわけです。今後燃料の消費量にいたしましても、おそらく昭和六十年には七億五千万キロリットルぐらいに達するんじゃないか、この日本列島改造論でいきますと。そういうふうになってきますと、まあ今後の公害問題という点を考えていきますと、一体どのようにやっていくのかということなんです。その点、現状は、いま申し上げたように技術的にはあまり評価されてない。しかも、ばく大な金がかかるということで二の足を踏んでおるという、こういう現状から考えて、今後どういうように通産省としては対処していくつもりですか。
  323. 山下英明

    ○山下説明員 燃料公害、特に硫黄分につきましては焦眉の問題でございまして、先ほどお答えしました工業立地環境整備という長期的な施策に合わせて、現時点でまっこうから取り組まなければならない問題だと考えております。  工業技術院大型研究費も、御承知のように直脱、排煙脱硫、さらには最も効果があるというガス脱硫の研究費も大規模に要求するつもりでございます。前の二つは年来やってきたものでありまして、たとえば排煙脱硫につきましては、小さい規模ながら二十万キロという程度であればすでに効果は持っておりますので、それを電力会社がかりに全体の現在の排煙を処理できなくても、一部でもつければ、それだけ効果があるわけでございますし、それから、直脱につきましては石油関係企業も鋭意検討しておりまして、研究成果のあがったものは着々実際に活用されております。ただ、おっしゃるように、六十年に七億五千万キロリットルという数字はともかくとしまして、生産拡大の規模が早いものですから、公害技術が追いつかないという点もございます。実際問題としては、ローサルファの原油を入れること、場合によってはナフサを直だきすること、原油なまだきをすること等の経過措置も入れまして対処していく方針でございます。
  324. 近江巳記夫

    ○近江委員 低硫黄、ローサルファのこともおっしゃっていますけれども、いままで通産省のやってきた限りでは、ミナス原油をはじめとして、総量の二〇%をこえたことはないのですよ。全体の原油の輸入量がこれだけ拡大していく中で、さらにそのパーセントを上げていく自信がありますか。世界各国みなそういうローサルファの原油は引っぱりだこですよ。そうすると、絶対量というものは見込めないわけですよ。LNGにしたって、それじゃどれだけ拡大していきますか。そうなってくると、どうしたって中東方面にたよらざるを得ない。これは非常に高い硫黄分の原油を入れなければならない。ところが、いま局長がおっしゃったように、脱硫装置にしたってあまり期待できない。そうなってくれば、これは真剣に通産省としても、それじゃ、この脱硫技術についてもいままでのような、ただ工業技術院研究しております、そんなことじゃ絶対だめですよ。ただ、そこに総力をあげてどういう体制でやっていくか、根本的な取り組み方というものをここでチェンジしなければ、これはえらいことになります。その点をどう考えておられますか。これは大臣にひとつ伺います。
  325. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お説のとおりであると思います。ただ、科学技術の進歩、開発というものはやはり一つ一つの積み重ねの上にできてくるものでありまして、金をいかにかけたからといって、それがすぐ開発に直結するものではございません。やはり研究者に対する配慮をいろいろよくやってあげて、そして新しい着想なりあるいは技術開発が行なわれるようにやってやる必要はあると思うのです。そういう新しい発明等が行なわれるまでは、やはり現在のものをいかにバランスをとりながら活用していくか、そういう形で過渡的にやっていかざるを得ぬと思います。
  326. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあ、大臣のおっしゃることも、現状それは当然通産大臣としてはそういう発言になろうかと思いますが、しかし、やはりよほどの腹がまえ、政府の取り組みをしなければ、ほんとうにこの日本列島はまさしく公害列島になることはもう火を見るよりも明らかなんです。ですから、そういうことで私は大胆にお聞きしておるのは、そういう天然ガスにしてもローサルファの原油にしても、その絶対量というものはやはり限られておるわけですし、どうしたってここに、脱硫装置を、ほんとうにすばらしい、評価できる、そういうものを開発していかなければならぬわけです。あるいはまた、コスト的にもやはり安くできる、そういうすばらしいものをしていかなければならぬわけです。それをただ従来のそういう研究だけで、それでまあ研究者を待遇してあげる——それはもちろんそうです。われわれもこれは特にお願いしたいことです、手厚くしてあげるということについては。ただしかし、そういうちょっとした対策だけではだめだということです。ですから、いままで工業技術院等でもやっていますけれども、大がかりなそういうプロジェクトチームでもつくって、そこはまあ専門家の通産省ですから、いろいろ考えておられると思うのですけれども、もう一歩いまよりも大きく踏み出さなければならぬということを申し上げておるわけです。  これについて大臣の決意をお聞きしたいと思うのです。
  327. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全く同感です。工業技術院をあげて、総力をあげて実は現在でもやっております。やっておりますけれども、現に完成した技術でも十分ではありません。したがいまして、さらによりよきものを獲得するために、さらに私たちは努力をしてまいりたいと思います。
  328. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、これはこれでおいておきますが、それからもう時間もだいぶん限られておりますので、工業基地開発につきまして、この改造論の中でも大規模工業基地開発をいろいろ考えておるわけですが、そういう候補地のうち、地元との合意が円滑に行なわれる見込みというのは非常に少ないわけです。これは非常に一方的な政府の押しつけという形で見られてきたのじゃないか。中央集権的な行き方じゃないか。政府としては、こういう工業基地開発地元の理解がない限り不可能である、また進めるべきではないということをはっきりここで基本認識として明言され、また徹底されるべきじゃないかと私は思うわけです。この点が一点です。  それから、工業基地開発につきまして地元のそういう合意が不可欠であることを前提にして、開発計画環境保全あるいは農林漁業等の調和を求めるための話し合いの場というものを常に持つことが必要であると思うのですが、この点に関して、政府としてどのように考えていらっしゃるか。この二点についてお聞きしたいと思います。
  329. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二点とも同感であります。  第一点につきましては、地元の協力、地元の了解なくしてこれを一方的に進めるということはいたしません。  それから第二に、農林業あるいはそのほか水産、あらゆる部面にわたるものとの協調、了解、協力、そういう方面についても一生懸命努力してやっていきたいと思います。
  330. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから最後にお聞きしますが、この新全総の見直しの問題ですが、どういう観点、またどういう必要性からこの見直しをしようとしておられるのか。この国土総合開発審議会の答申に基づく新全総の総点検の作業がどのように進行しておるか。やる、やるといいながらも全然ナシのつぶてなんです。これをひとつ経企庁にお聞きしたいと思うのです。  それから二番目に新全総と日本列島改造論との関係なんです。この性格の相違等について根本的な見解をお聞きしたいと思うのです。それとともに田中新内閣による新全総の進め方、基本路線の説明をお聞きしたいと思うのです。
  331. 下河辺淳

    ○下河辺説明員 お答えいたします。  新全総計画の総点検につきましては、ただいま関係各省の間でようやく意見が整いまして、これから国土総合開発審議会にいろいろ御相談申し上げて正式にきめて、そして総点検の作業を開始するところでございます。実際の作業はすでに内部的には始めております。  この総点検内容につきましては、一つは新全国総合開発計画国土総合開発法に基づく計画でございます関係で、実際の産業政策であるとか、あるいは教育政策であるとか、その他基本的な政策との調整問題というのがございますけれども、これはさておきまして、国土総合開発法の中で総点検すべき項目を八つほど一応予想しております。  一つは、近く政府としてつくります経済計画と、あらためて経済成長なり産業構造等なりとの調整をはかってまいりたいという意味で、経済計画との調整問題というのを考えておりますが、国土開発の角度からは、やはり日本国土開発には、資源から見て、つまり環境から見て有限性があるということの観点から経済計画との調整をはかってまいりたいというのが一つでございます。  二番目は自然環境の問題でございますが、新全国総合開発計画の中で、長期にわたり人間と自然との調和をはかるということをうたっておりますけれども、その実効性という意味でかなり問題もあり、実態上の問題もございますが、環境庁におきまして前国会におきまして自然環境保全法ができましたので、その保全法におきます基本方針を現在環境庁が全国土にわたって作業しておられますが、その作業との調整をはかるという仕事をしてみたいと考えております。  三番目の問題は巨大都市の問題でございまして、巨大都市の問題はいままで工場の分散その他について提案しておる新全総でございますが、この段階で過密都市全体の都市生活上の問題点、あるいは中枢管理機能の分散の可能性というようなこともありますし、それから新幹線、高速道路が大都市を中心として、地方に建設されます場合の集中、分散に関する一つの評価をここであらためてやってみたいと考えております。四番目のテーマとしては工業基地工業配置の問題でございますが、きょういろいろとお話が出ましたところでございますけれども、工業配置計画との関係をここでもう一度調整し直してみたいと考えておりまして、一方では既存工業地帯におきます過密の現状、問題点から見ましてどの程度の再開発が必要であるかという問題、あるいは新たに総合開発をいたします地域におきます環境保全の観点からの対策はどういう形のものでなければならないかということを検討してまいりたいと思います。  それから五番目の問題といたしましては第一次産業の問題でございまして、農林、水産業問題を新全総で取り上げておりますけれども、この際、食糧の需給問題、農山村の生活問題というようなことだけではなくて、やはり緑とか海をいかにして保全するか、あるいは都市化いたします市民のレクリエーションとの関係で一次産業をどう見るかというような、かなり環境問題から広範な形で一次産業をもう一度つかまえ直してみたいという作業を考えております。  六番目の問題としては地方都市の問題でございまして、この地方都市の問題は、従来は工業誘致から始まって地方都市をつくるということで、新産業都市というものを代表として開発を進めておるわけでございますが、ここで工業誘致ということもありますけれども、それと同時に、そこに住みます市民の生活環境あるいは自由時間と申しますか、余暇時間に対応する環境条件というようなことが問題でございますし、そしてまた地方都市におきます地方自治、地方財政あるいは住民参加というような問題に若干入りながら地方都市の育成問題ということについて検討をいたしてまいりたいと考えております。  七番目の問題は土地問題でございまして、やはり新全総を進めていくといたしましても土地問題というものが基本であることは御指摘のとおりでありますので、この土地問題についてはどういう制度を必要とするかということを検討しようとしておりますが、内容といたしましては現在関係省庁との間でいろいろと検討をすでに始めておるところでございますが、先ほど通産省から御説明がありました工場環境に関する法令の検討と同時に、土地利用の調整に関する法令ということで各省間の調整をはかろうとしておりまして、特に大規模な土地の取得に関して事前の届け出その他の制度というものがどういう形で整い得るかということを検討中でございます。  八つ目は、やはりその基本となります国土総合開発法の改正問題ということを議論しておりまして、国土総合開発法を、昭和二十五年以来の法令でございますが、ここでどのように基本的に解決するか。これは全体の総点検作業の見込みといいますか成果を踏まえて抜本的に改正したいという作業をしております。  以上、八項目を取り上げて総点検作業を始めておるところでございまして、総点検の作業が半ばまとまりましたら中間的にでも国土総合開発審議会に御報告申し上げるという予定で作業中でございます。  総点検については以上のとおりでございます。
  332. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に答弁を丁寧にしていただきましたので、あと簡単にしますが、最後に大臣にお聞きしたいと思います。  この改造論で今後年率一〇%の経済成長を続ける活力を有する、このようにしておるのですが、地球的にいいましても、環境問題、エネルギー問題、資源問題等観点から考えてみましても、そういうことが正しいのかどうか、大臣としてどのように考えていらっしゃるか、これが一点です。  それからこの経済成長一〇%論を一応認めるとした場合に、NNWでどの程度になるのか、数字ではいま出ないかと思いますが、概念的には大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか。  それで最後に私のほうから申し上げたいのは、高度経済成長から福祉経済社会への転換を迫られておる今日、この日本列島改造論もGNPの伸びだけを根拠とするのでなく、国民福祉の伸展を数量的にとらえてそれを取り入れていくことが必要ではないかと私は思うわけです。これについてはどう思われるか。この三点について簡単にお答え願いたいと思います。
  333. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経済数壁に関する予測は私はふえてでざいまして、これはむしろ経済企画庁の専門家にお尋ねいただいたほうが正しい答えが出るかと思います。ただ、最後に強調なさいましたこのGNPからGNWあるいはGNSという方向に国政の中心を伸ばしていけというお考えには全く同感でありまして、通産政策の面においてもそういう一本筋を通して進めていきたい、こう考えております。
  334. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  335. 藏内修治

    ○藏内委員長 谷口善太郎君。
  336. 谷口善太郎

    ○谷口委員 午前中の最初の質問者であった自民党の議員の方に、大臣は、再配置税の問題について、構想はあっても内容はまだきまっていないのだという御答弁がありましたが、これは内容は全くきまっておりませんか、その特別会計をつくる以外には。
  337. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 内容はまだ固まっておりません。
  338. 谷口善太郎

    ○谷口委員 八月の九日に産業構造審議会の産業立地部会で、通産省は一応の内容の説明をなさっておられるようです。対象は、工場移転促進地域に指定した場合には、その指定の地域に残存する企業、それから指定地域及び調整地域に新しく工場を建てるとか、あるいは増設するその工場、これを対象に一平米幾らかの税金をかける、こういう構想を発表していらっしゃるようです。一平米大体床面積五百円ないし千円、それから新増設の場合は二千円、それで大体四百四十億円の収入を見込んでいる。六十年になった場合に促進地域に残存しているものは五千円に上げる、それから調整地域の場合には二万円にする、これで千八百七十億円大体見込んでおる、こういう内容を説明されておるようですが、それをしなかったですか。
  339. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはたとえばのごときアイデアもある、そういう一つの例示として説明したのであって、それが固まってそういう方向に行くというものではございません。
  340. 谷口善太郎

    ○谷口委員 たとえばであっても、政府の中にはそういう構想がある、そういうお考えがあると見ていいと思うのですが、いずれにしましても、移転促進地域内に残存する工場、これに対して何らかの形の課税、そういう新制度、そういうことを考えていらっしゃいますか。
  341. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業とか零細企業のようなものはさておき、大工業、大工場等に当たるものについてはある程度インセンティブなり、あるいはインパクトを与えて促進するという形は必要ではないかと考えています。
  342. 谷口善太郎

    ○谷口委員 中小企業あるいは零細企業に対して、これは一応そういう新課税の対象からはずすというお考えですか。
  343. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一定基準以下のものにはそういう考えが妥当だろうと思います。
  344. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その場合に、たとえば床面積五百平米とか、千平米とかいうような、そういう論議があったのですか。
  345. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだそういうことはきめておりません。
  346. 谷口善太郎

    ○谷口委員 あの会に出席した者の報告によりますと、そういう案もあるということを政府が言っておられるわけですね。きめてないけれども、そういう構想はないことはない、そう理解してよろしゅうございますか。
  347. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえばかくのごとき構想もある、そういう意味で例示的に説明したにすぎません。
  348. 谷口善太郎

    ○谷口委員 通産大臣あなたはそう無責任な言い方はまずいんだな。たとえばに違いないんだ、まだ構想がきまらないから。しかし、いろいろなことが考えられる中で政府のほうではこう言っているという、そういう一つの方向があるわけだな。この発言はやはり重大でありまして、関係自治体、そこに住む住民企業は、ここは非常に大きな問題になっているのですね。構想がきまっていないのだから、結論が出ていないのだから、そういうふうなおっしゃり方は一応理屈としていいわけです。だけれども、いわばこういうことが政府のほうから、こういう機関で話をされるということ自体、これはやはり住民にとりましては、国民にとりましては、そこに一つの方向があるというふうに見ます。そこからいろいろと問題が起こるわけですね。いずれにしましても、ある程度残存企業に対しては課税するということだけは明らかなわけですね。
  349. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 課税でいくか何でいくか、ともかくある種の促進剤を使うという必要はあるだろう、そう考えております。
  350. 谷口善太郎

    ○谷口委員 よくわかりました。税金を取るか賦課金でやるか、あるいはどういうことでやるか知らぬが、一定の促進のてこになるような、そういうことを考えていられることはよくわかりました。  そこで、実は通産省のほうからこの移転促進の指定地域についての内示が関係自治体にあったことから、この工場配置問題は大きな問題になっています。ですから、私は、実はきょうは、この問題を基本的にみっちりお尋ねするつもりであったのですが、各委員が申されましたとおり、私も時間制限を受けておりますので、端的に、当面する緊急な、私自身にも関連する問題についてお尋ねしようと思うのです。  あらためてこの問題については——われわれ共産党は、この工業配置促進法には反対だったのです。この法律自体は、やはり大企業に対する優遇措置あるいはこれに対する奉仕、その反面、中小零細企業は非常な苦境に立つ、そういうものであるからということで反対したのでありますが、現実に十月一日から政令をつくって指定地域をきめられるということになりますから、非常に急いだ問題になっております。  それで、緊急な問題だけをお尋ねしたいと思いますが、この指定地域として内示された中に京都市が入っておりますが、この根拠は何ですか。
  351. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはある程度数量的に人口の集積あるいは工業生産高等を計算いたしまして、これ以上集積しないほうがいいという場所を選定して、そしてむしろある程度稠密している場所はこれを間引く必要があるという発想に基づいて、そういういろいろな指定の基準をつくって検討を加えておるところでございます。  京都のような静かないい町は、古都保存法が適用されて、国民的財産でございます。ああいう文化的財産のある周辺にあまり工場ができたりすることは感心しないということを私は文化人の一人としても考えております。
  352. 谷口善太郎

    ○谷口委員 おそれ入りました。おそれ入りましたけれども、京都が非常に工業の集積度が高い、そういうお考えのようでありますが、工業集積度が高いということの判断の何か基準があるのでしょうか。
  353. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは人口の集中率、人口はまだふえているか減っているか、そういう人口の移動の問題、それから工業生産の高、そういうものを基準にしていろいろな数量的基礎を、スタンダードをつくったわけであります。
  354. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣は非常にあいまいなことをおっしゃいますが、人口のふえ方というようなことをいえば、京都市はあまりふえません。ふえないことはありませんけれども、そうふえない、たいしたことはありません。工場の集積度合いについて通産省はちゃんと算定する基準を、方式を持っていらっしゃるでしょう。それは局長さんでもいいですが、お答えいただきましょうか。
  355. 山下英明

    ○山下説明員 せんだって通りました工業配置促進法に書いてあります基準は、工業集積度と人口増加率を基準にすることになっておりまして、それから基準をはじいたわけでございますが、いま先生のお尋ねの移転促進地域に指定するという点につきましては、実際上は現在の既成市街地あるいは近畿圏で申せば既成都市区域、こういうものが基礎になっております。
  356. 谷口善太郎

    ○谷口委員 既成都市区域、京都は全域ではないのであります。しかし既成都市区域のある行政区を入れるそうでありますが、京都市全域にしているらしい。工業集積度を算定されるにあたっての方式がちゃんとあるわけでしょう。つまり出荷額を可住面積で割る、それから付加価値額を人口で割る、合わせてそれを二分するというようなやり方じゃないですか。
  357. 山下英明

    ○山下説明員 工業付加価値を人口で割りまして、その全国値と、工業付加価値を、その全国値を二分の一したものでございます。
  358. 谷口善太郎

    ○谷口委員 出荷額、可住地面積は加わらぬのですか。
  359. 山下英明

    ○山下説明員 一つは人口で割ったものと、それからもう一つは可住地面積で割ったものを足しまして、それを二分の一したものでございます。失礼いたしました。
  360. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そこで伺いますが、京都市の製造品出荷額と付加価値額との割合はどうですか。
  361. 山下英明

    ○山下説明員 私どもの計算では、先ほどの計算による京都市の工業集積度は、全国平均値を一〇〇とした場合四二五になります。
  362. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その資料はいただいております。だからそういう意味では、全国平均よりはるかに高いことは、四倍ですから、それはそうなります。私の伺ったのは、京都市の出荷額に対する付加価値の割合を聞いたのですが、私がやってきましたから言いましょう。四二・八%。これを神戸市と比較するとどうなりますか。あなたのほうはないようだからちょっと申しますと、神戸市は、人口百二十七万、可住面積二百四十五平方キロメートル、出荷額が一兆七百六億円、付加価値額が三千六百八十四億円、出荷額に対する付加価値額の割合は三四・二%。京都は、人口はちょっと多くて、可住面積は少なくて、出荷額が八千七百九十五億円、付加価値額が三千七百六十六億円、その比率は四二・八%。つまり京都は付加価値額が出荷額に対して四二・八%。神戸はそれが三四・二%。低いのです。この関係はわかりますか。
  363. 山下英明

    ○山下説明員 恐縮でございますが、ただいますぐデータをとりましてお答えいたします。
  364. 谷口善太郎

    ○谷口委員 データではありません。つまり付加価値額が出荷額に対して割合が多いということは、割合の少ないところよりも非常におくれた、非近代的な手工的な企業がわりあい多いということです。逆の場合は逆であります。つまり京都は確かに大臣のおっしゃるように文化的な都市でありますけれども、そういう点では非常に人口稠密で、小さい工場が一ぱいです。それは昔からなんです。いまのように公害とか交通災害とかいっている前の時代からそうなんです。これは他都市と違うのです。他都市でも中小零細企業が多ければこういう状況が生まれる。何もいまに始まったことではないのです。なるほど公害もあります。交通災害もあります。これは別な原因からです。特に中小企業が多い。その中での郷土産業というのは非常に率が高い。そこに京都の独得の密集地帯といいますか、それがあるのです。これはお認めになりませんか。
  365. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 なるほど京都は京浜地帯という地域から見れば、そういう独得の個性はあるだろうと思います。中小企業、零細企業については、そういう意味においても考慮すると先ほど申し上げたのでありますが、しかし全般的に見て、ああいう人口が稠密で、そうして工場群が大小にせよ存在しているということは、やはり該当するのではないか。特に京都のような場合は、社会的なあるいは国民的な、民族的な観点から見ても、古都保存法という法律によって特に保護されているような近辺でございますから、民族的な財産としてもわれわれは保護したい。民族主義の共産党も御同調いただけるのではないかと私は思うのでございます。
  366. 谷口善太郎

    ○谷口委員 まじめなあれをやっているんだから、ふざけた言い方はやめるべきだと思うが、その中で京都における郷土産業の立場ですね。あなたのさっきから盛んにおっしゃる文化都市であり古都であるということの一部になっているこの郷土産業が、今度のやり方だと破壊されるのです。  郷土産業の状況につきましては政府の皆さんにも資料を渡しましたが、ここに一応のあれが出ております。皆さんに渡した資料ではありませんが、京都の企業全体の数が一万八千です。その中でいわゆる郷土産業といわれる西陣だとか、京染めとか、仏具とか、清水焼とか、扇子とか、京人形あるいは木版画とか、あるいは七宝などがあります。こういうものがその中で実に一万二千あるのです。その割合が六六・四%。しかし事業者数は非常に少ないです。この製造業に働いている事業者数を全体で見ますとわずかに五万五千九百、その割合が三〇%弱です。出荷額も非常に少なくて、これは全産業に対する一七・八%、一八%弱、これも低いです。しかしこの事業者数のほかに、大臣、この点はあなた方に渡した資料です。工場で働いている事業者数のほかに、関連する業種がいずれの産業にも無数にあるのです。それを皆さんにお渡しした。西陣の場合と京染めの場合と二つだけしか示しておりませんが、いま私が申しましたのは、このまん中に書いてある力織機とか手織りとかあるいはつづれ織りとかいう製造機です。この工場の数を申し上げただけです。  それに関連しまして、たとえば原糸、撚糸、精練、糸染、糸繰、整経、こういういろいろなものがあります。関連して糸巻きがあり、経継があり、また別個に金銀糸、それから緯巻き、それからまた別に図案、意匠、紋彫、それから紋編、こういう業種があります。それには内職がどっさりついています。それから機械製造業、ジャカー製造業、それから機械直し業、筬屋、杼屋、こういうものは全部関連業です。そのほかに手織り機を持っている賃織り業があります。これを全部集めますと、この織り屋に参加している事業者の倍くらいおりまして、全体でその数が四万ともいわれ、六万ともいわれています。  これらの業種は、単にある製造工場なり企業なりに関連しているのじゃなくて、ただ市場に売って、そういう製造業者を消費者として相手にした商売なんです。だから一つの企業がどこかに移りますと関連したその専属企業、下請企業、賃機、関連してすべて移らなければだめです。そういう業種です。そういう産業なんです。これは陶器も同様であります。染めものも同様であります。そしてそれが京都の町の相当部分を占めている。そしてこれは大臣が繰り返したとおりに、やはり古都としてのそういう独特の産業で、これ自体が、町全体が観光資源でもある。これをどう移したらいいか、これは移さなければ税金かけるのですよ。税金かけないにしても、何か移らなければならぬようなかせをかけるんだ。大臣言ったでしょう。そういうところに追い込むことになるのだが、この京都の業種の状況は知っていますか。見たことがありますか。またどう考えますか。
  367. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま資料を拝見いたしましたのでよく検討してみます。
  368. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、あなたはいま一言で答弁されたけれども、そういうことで京都の市民は承知しないです。もっとここではっきりした一この京都の町をからっぽにしようというような法律を出し、これに基づいて一方的に押えつけるようなやり方で指定しようとする。それは、こう言いましたならば、あなたは、だから意見を聞いている、よく聞いた上でとおっしゃるに違いない。しかし、こうなったらあなたはやるでしょう。これは実際に断行するということを盛んに言っている。そう言っているのですからやると思います。  こういうことです。見てください。これは京都市の地図であります。西陣区域はこの上京と北区でほとんど占めます。これは京染め地域であります。これが中京と右京区の一部にあります。同様に下京にもある。南区にもあります。左京区にもあります。これが陶器の区域。これはいま言ったように、一つの親企業が移ればほとんど町ぐるみ移るか、あなたのおっしゃる何かのかせにかかる。税金かけられるかどうかする。そういう状況だが、単によく考えて何とか対処するというようなことをいまここでおっしゃっただけでは、ちょっと引き下がれない。なぜかといったら、十月一日から始めるのですよ。いまは九月の十三日です。ここで、はっきり政府として、京都のこういう特殊なところはこれからはずすということを言うべきだと思うのです。その言質をいただくことを私はきょうは望んでいる。それについてのもう少し具体的な立場のあなた方の考えをここにはっきりしていただきたい。
  369. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま資料もいただきましたからよく検討いたしますと申し上げました。いまのところは、それ以上申し上げるわけにまいりません。
  370. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それでは承知できませんので、京都のこういう郷土産業、古都としてのこういう観光資源でもある郷土産業を町ぐるみつぶす気でないということは言えますか。
  371. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は古都保存法ということと文化性をさきに申し上げたので、そういう点からも考うべき点がありとすれば考えなければいかぬ、そういうふうな意味検討してみると申し上げたのです。
  372. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、京都の場合は特別に考るということですか。
  373. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も含めて検討しようということであります。
  374. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ここに政府のほうへも持ってきておりますが、各団体のこれに対する陳情書があります。陳情書を一々読むわけにいきませんから、団体の名前だけを申しますが、まず京都市会が反対の決議を総務委員会でいたしました。つまり京都を移転促進地域に指定することには反対だ、これから抜いてもらいたいという決議であります。それから京都市も反対の立場で、すでに京都府へ意見書を出しました。それから京都府中小企業団体中央会、これは六万事業所が集まった業者の団体です。それから西陣織物工業組合など関連企業十三団体、それから京都中小企業団体協議会、これも十三団体で約四万企業です。これも指定に反対する決議をしておる。ただ何かの形で考慮しようということでは——もはやあとわずかしかありません。三週間足らずですから、委員会の開かれるのはきょうがおしまいでしょう。この問題について論議できるのはおしまいだと思う。ここでもっとはっきりしたあれを聞かぬことには、あなた方は京都をつぶしにかかっているというのが市民の感覚であります。これにこたえることにならぬのです。もっと誠意ある、もっと具体的な内容をここでいただきたいと思います。
  375. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業、零細企業には例外措置をとるとも申し上げておりますし、それから先ほど申し上げましたように、古都保存法あるいは京都の特有の文化的個性という面もこれは検討に値することであると申し上げました。これ以上申し上げるわけにまいりません。
  376. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、あなたは冒頭にこうおっしゃった。古都保存法もあるような古い都市、文化都市、こういう都市だから、そこに工場が密集しているなんというようなことは困るんだ、あなたはそうおっしゃった。いまは逆に古都保存法のある都市だから、そのことについては考慮する、こう言っております。その間に矛盾がある。あなたはでたらめ、その場所で思いつきを言っているにすぎないのです。そうでなければこんなことを知らぬわけはないでしょう。こういう状況を知らないのですか。いま私から聞いたから、初めて聞いてわかって、じゃ考えようというような言い方だ。それはだめですよ。ここではっきりまさに京都市全体をつぶす。しかも昔からある状況なんだ。何もいまに始まったことじゃないのです。ずっと昔からあるものなんです。それをあなた方は、あの法律でもって一律に他の都市と同様に考えている。他の都市としても、もちろん中小企業は非常に困るだろうと思う。これは特別に対処すべきだと思いますが、その中でも京都はこういう歴史的な事情があるのです。これをあなた方は知らなかったのですか。知らぬでああいう内示を出したのですか。知っておってやったのですか。どっちですか。
  377. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事務的な過程は私知りませんが、おそらくそういう公式を当てはめて、そしてその基準によってそういう考えを固めたものだろうと思います。しかし、いま申し上げましたように中小企業、零細企業というものは例外が置かれるということや、あるいは都市の特殊性という面についても、私がわざわざ古都保存法ということを最初に申し上げたのは、一般をもって律しられない条件があるかもしれぬ、そういうことも検討に値すると思って申し上げたので、これ以上具体的なことは、もう少し検討してみなければ申し上げることはできないのであります。
  378. 谷口善太郎

    ○谷口委員 つまり、こういう事情は政府では御存じなかったということですか。そういう産業構造であるということは御存じなかったわけですか。そう伺ってよろしいですか。
  379. 山下英明

    ○山下説明員 先ほどの点から先にお答えいたしますが、先生の御指摘は、京都の付加価値額と出荷額の関係をおとりになったものと思います。それが四二・八%、これは私どもの計算でもそのとおりでございます。ただ、私どもが出しました基準は、先ほど御説明しましたとおりに、付加価値のほうを人口で割り、出荷額のほうを可住面積で割る。そして神戸のほうも私どものほうは同じことでやりましたが、先生の御計算は、神戸のほうも付加価値と出荷額の比率を比べれば三四・二%になる、こういう御指摘だと思います。そこから出てくる私どもの解釈は、神戸に比べて京都のほうが付加価値が高い、こういうことになると思います。  なお、京都の特性につきましては、少なくとも工業企業面については私どもは相当承知しておりまして、先ほど大臣が言われましたとおりに法律に基づく機械的な基準をまず当てはめまして、県のほうに内々内示をして御意見を承った次第でございます。特に繊維関係、西陣織等につきましては、当方の繊維雑貨局、中小企業庁等は常時関心を持っておる面でございます。
  380. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もう時間がありませんから、私はいまの局長のお話にかかわる必要はないように思うんだけれども、私の言いましたのは、一般的な産業構造を見る場合でも、いま申し上げましたようにに、出荷額に対する付加価値額がわりあい高いということは、わりあい低い生産都市から見れば、つまり非常におくれた、労働力の非常に多い、そういう企業が多いということになるということですね。私は、神戸なんかもそういう意味ではそうじゃないかと思うのですが、たとえば神戸に比較する、東京に比較するということをやってみても、そういうことが一応言えるのではないか。そうすると、中小企業や零細企業は特にこの際援助するとか保護するとかいう考えがあるならば、そういう点からもやはり配慮が必要だろうということを、一応原則的なことも言ったわけですけれども、その中でも特にこういう京都における特別な、つまりよそにはない——よそにはないといっては語弊があるかもしれませんけれども、西陣とかあるいは清水焼とかあるいは京染めとかいうように、こういう郷土産業が密集している京都の産業構造ですね、これは皆さんのお出しになった単なる方式でもって律することはできなかろう。そういうことは皆さんはおやりになるかもしらぬが、少なくとも大臣は、こういうことには政治的に配慮しなければならぬ。そのことを私は求めているわけですね。大臣は、その分については特に配慮すると言っていますが、そうは言うものの、これを知らないということはおかしいと思うのですね。御存じだとおっしゃるけれども、あなた方、ほんとうに西陣に見に行ったことがあるかどうか、染めものをごらんになったことがあるかどうか、手書きのほんとうの職場をごらんになったことがあるかどうか。ないからこういうことになる、ないからあなたがおっしゃるように文化都市だというようなことを言って、これが文化財として産業自体がそうだということに理解がないのですね。だから大臣のことばでいえば、日本のわれわれの心のふるさとだ——あなた方は全部こわしにかかっている、自民党政府はこわしにかかっているということですね。これを京都はおこっているのです。だから、時間がないから私はやめますけれども、大臣、この点について、はっきり特別に考えて言うべきだと私は思うのです。  同時に、私どもはここで主張したいことがあります。いろいろ新聞記事などを見ますと、大企業はすでに幾つかの企業——たとえば日立なんかそのことの名のりをあげているわけですが、もう過密した都会における立地メリットがなくなったから、だから外に出ていくという計画を自発的にやりだしている。自分の経費で出ていく。あの工業配置促進法というのは、中小企業やその他から新しい特別税を取って特別会計をつくって、これを、大企業が自分の経費で出ていかなければならぬということになったら、大企業に国家として援助をするものだとわれわれは主張してきたのですけれども、まさにその形が出てきている。これはことばだけでは——大臣はさっきから、たとえば誘導地区に行った場合、その工場公害が出ないようにするとかあるいは環境を保全するとか、いろんなことを盛んにおっしゃっている。総合的にやる必要があるということをおっしゃっている。ことばでおっしゃってもだめなんで、実際にやるかどうかにかかっている。また、地方自治体やそこの住民意見を聞かないでやることはない、必ず聞くということをおっしゃるけれども、何の保証もないのですよ。法的にそれを聞くという規定もなければ、単に法律的にきめたものを意見を聞くだけであって、今度の場合でいえば区域を指定するということについて、たとえば京都の知事の意見具申という、そういうあれはないわけですよ。きめたあとに何か具申する、計画したあとに具申するということになる、そういう状態にあります。ですから幾ら地方自治体の意見を聞くとか住民意見を聞くとか言いましても、そういう保証がなければ何にもなりません。また、そういう実際に運動が起こっていることに目をつぶるというようなやり方だったら、新しい再開発はできないことだと思うのです。そういう点を私どもは強調しておきたい。  共産党は、初めから言っておりますとおり、この都市の過密状態また過疎問題、これを解決するという意味でも、公害その他の問題を解決するという意味でも、もちろんやはり適当に民主的な国土利用ということをわれわれは強調しております。そういう点ではただむちゃくちゃに反対しておるのじゃないので、われわれ自身の政策があります。そういう立場から、私は、少なくとも京都のこういうところはこの指定から除外すべきだという主張を持っており、また関係業者はもちろんのこと、京都市民も、つまり議会も、そういう意見を持っているということをここにはっきり申し上げて、大臣は、中小企業に対して特別に配慮する必要があるが、それに加えて京都の特殊事情つまり郷土産業というものについてはやはり考えてみるとおっしゃったから、それをひとつ具体的なものにしていただきたい。具体的なものにしていただくためには、十月一日に政令をおきめになる前に、京都はその指定からはずすということをきめていただきたい、これを強調して質問を終わります。
  381. 藏内修治

    ○藏内委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会