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1972-08-22 第69回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    七月十二日  鴨田宗一委員長辞任につき、その補欠として  藏内修治君が議院において、委員長に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十七年七月十三日(木曜日)委員長の指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  エネルギー・鉱物資源問題小委員       内田 常雄君    大久保武雄君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       進藤 一馬君    羽田野忠文君       橋口  隆君    岡田 利春君       田中 武夫君    松平 忠久君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君  エネルギー・鉱物資源問題小委員長                 橋口  隆君  流通問題小委員       稲村 利幸君    小川 平二君       海部 俊樹君    鴨田 宗一君       北澤 直吉君    八田 貞義君       増岡 博之君    松永  光君       武藤 嘉文君    石川 次夫君       加藤 清二君    中村 重光君       岡本 富夫君    松尾 信人君       吉田 泰造君  流通問題小委員長       武藤 嘉文君  沖繩国際海洋博覧会に関する小委員      稻村佐四郎君    大久保武雄君       海部 俊樹君    鴨田 宗一君       左藤  恵君    始関 伊平君       椎名悦三郎君    進藤 一馬君       八田 貞義君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    山田 久就君       石川 次夫君    岡田 利春君       中村 重光君    松平 忠久君       近江巳記夫君    岡本 富夫君       吉田 泰造君    米原  昶君  沖繩国際海洋博覧会に関する小委員長                稻村佐四郎————————————————————— 昭和四十七年八月二十二日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 稻村佐四郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 樋上 新一君 理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    大久保武雄君       海部 俊樹君    鴨田 宗一君       木部 佳昭君    小山 省二君       左藤  恵君    始関 伊平君       塩崎  潤君    田中 榮一君       松永  光君    石川 次夫君       近江巳記夫君    岡本 富夫君       松尾 信人君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      有田 喜一君  委員外出席者         通商産業政務次         官       丹羽 久章君         通商産業政務次         官       安田 隆明君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    斎藤 英雄君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         参  考  人         (日ソ経済委員         会石油委員会委         員長)     今里 広記君         参  考  人         (日ソ経済委員         会石油委員会幹         事)      檜垣 順造君         参  考  人         (日ソ経済委員         会石油委員会作         業委員)    石井  浩君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 七月十二日  辞任         補欠選任   前田 正男君     藏内 修治君 同月十七日  辞任         補欠選任   進藤 一馬君     小山 省二君   増岡 博之君     木部 佳昭君 八月二十二日  辞任         補欠選任   小川 平二君     佐々木義武君   始関 伊平君     田中 龍夫君   椎名悦三郎君     金丸  信君   八田 貞義君     大坪 保雄君 同日  辞任   大坪 保雄君     八田 貞義君   佐々木義武君     小川 平二君   田中 龍夫君     始関 伊平君 同日  理事小宮山重四郎君七月七日委員辞任につき、  その補欠として稻村佐四郎君が理事に当選し  た。     ————————————— 七月十二日  一、兵器の輸出の禁止に関する法律案伊藤惣   助丸君外一名提出、第六十八回国会衆法第二   一号)  二、武器等製造法の一部を改正する法律案(武   藤嘉文君外三名提出、第六十八回国会衆法第   四五号)  三、火薬類取締法の一部を改正する法律案(武   藤嘉文君外三名提出、第六十八回国会衆法第   四六号)  四、通商産業基本施策に関する件  五、経済総合計画に関する件  六、公益事業に関する件  七、鉱工業に関する件  八、商業に関する件  九、通商に関する件  一〇、中小企業に関する件  一一、特許に関する件  一二、私的独占禁止及び公正取引に関する件  一三、鉱業と一般公益との調整等に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 藏内修治

    藏内委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  このたび、はからずも商工委員長に選任され、まことに光栄に存じます。  わが国をめぐる内外の経済情勢はきわめて多端であります。このときにあたり、今後の産業経済政策はますます複雑多岐となり、本委員会の使命は非常に重大なものがございます。  幸いにいたしまして、練達たんのうなる委員各位の御協力によりまして重責を全うし、円満なる委員会運営を期してまいりたいと存じます。  何とぞ、よろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  3. 藏内修治

    藏内委員長 この際、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事補欠選任につきましては、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藏内修治

    藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長稻村佐四郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 藏内修治

    藏内委員長 通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  石油に関する問題、特にチュメニプロジェクトについて調査するため、日ソ経済委員会石油委員会委員長今里広記君、同委員会幹事檜垣順造君及び同委員会作業委員石井浩君を本日参考人として御出席を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藏内修治

    藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 藏内修治

    藏内委員長 この際、参考人各位一言あいさつを申し上げます。  参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、石油に関する問題について調査を行なっておりますが、本日は忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見を十五分程度に取りまとめお述べをいただき、次に委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、今里参考人にお願いをいたします。
  8. 今里広記

    今里参考人 今里でございます。  本日、衆議院の商工委員会におきまして話を聞いてやるというふうなことで、チュメニ石油開発の問題につきまして、私、日ソ経済委員会石油委員長としまして、一通り御説明したいと思います。  プリントその他によりまして一通りのことは書いてあるつもりでございますが、それを補足する意味で、その経緯、内容問題点意義見通し概要につきまして御説明したいと思います。  本件プロジェクトは一九六六年、すなわち昭和四十一年の第一回日ソ経済合同委員会におきましてソ連側から提案されたものでございますが、当時わが国外貨保有高は約十六億ドルでございまして、十四億五千万ドルというソ連側希望クレジット供与が不可能に近いことは言うまでもなく、結局たな上げの形となりまして、一九七二年、すなわち昭和四十七年、ことしの二月の第五回日ソ経済合同委員会に至ったものでございます。  約一年間の事前準備、研究の後、この第五回合同委員会日ソ双方がそれぞれの基本的考え方を提案し、ソ連側は、この問題に対する追加資料の提供、日本側専門家チュメニ油田視察に同意しまして、去る六月十六日より七月一日に至ります間に、私を団長とする日ソ経済委員会石油委員会専門家代表団現地視察が行なわれた次第でございます。お手元に配っておりますのがその報告書でございます。  本件プロジェクトは、わがほうとしましては、低硫黄原油供給源分散確保供給長期安定化目的としております。このために約十億ドルの資金、これは本件への投資額の約三分の一に当たりますが、これをソ連に供与し、その範囲内において、主としてイルクーツクナホトカ間の原油パイプライン建設に必要な鋼管、ポンプその他の設備、資材及び若干の消費材延べ払い供給によって協力し、ソ連側によっては、その完成後、ナホトカから当初年間二千五百万トン、四、五年後におきましては四千万トンの原油供給を二十年間にわたって受けることを内容としております。イルクーツクナホトカ間パイプラインの延長は四千百七十八キロメートル、口径千二百二十ミリの鋼管を使いますと、必要鋼管量は約百七十万トンとなります。とのほかに、投資の対象としましては、対日供給量を確保するための山元の追加開発イルクーツクまでの既存のパイプライン輸送能力の増強、ナホトカにおける貯油、積み出し施設の建設が含まれます。  本件プロジェクトにつきましては、第一に、チュメニ油田地域は、はたして安定した対日原油供給源たり得るか。第二に、その原油はわがほうの期待に沿い得る低硫黄原油であるか。第三に、チュメニ地域からナホトカまで六千五百キロメートルの長大パイプラインが安全操業できるかという問題が提起されました。  その確認のために専門家代表団が派遣されたわけでございますが、結論から先に申し上げますと、本件プロジェクトは技術的に問題なく実現し得ることに尽きます。すなわち、第一番目に、チュメニ油田地域原油予想埋蔵量は約六百億トン、可採埋蔵量は六十億ないし七十億トンときわめて大きく、生産量は一九七〇年の三千百四十万トンから一九七五年の一億三千五百万トン、もとの目標はこれが一億二千五百万トンでしたが、いまの見通しとしては一億三千五百万トン、一九八〇年の三億トン、これはもと目的は二億六千万トンが現在では順調にいきまして三億トンの見通しでございます。したがって、十分に安定した対日原油供給源となり得る。  二番目に、チュメニ原油の性状、ことに硫黄分含有率は、現在オビ川中流全油田混合物では一・二六%でありますが、これはさらに低下する見込みがあり、また、対日供給源となる主力油田、すなわちサマトロール油田原油では約〇・八%でございますので、ナホトカに到着する原油硫黄分は一%以下に十分押えられる見通しでございます。ただし、これは将来の交渉段階におきまして価格と関連して十分に煮詰める必要があります。  三番目に、寒冷地における長大パイプライン輸送安全性については、その設計建設ともソ連側には豊富な経験があり、自信を持っており、現に実施しつつある安全措置をとれば、技術的問題はないといえます。過去六年間、西シベリア低地における事故例はたった一件にすぎず、しかも、流送を停止することなくわずか二時間で修復している。以上のとおりでございます。  本件プロジェクト経済的意義につきましては、お手元にお配りしましたパンフレットに述べてありますように、第一に、ますます緊迫を予想されるわが国石油需給事情の緩和に役立つこと。第二に、原油供給源の地理的、政治的分散を促進させ、供給長期安定化に役立つこと。第三に、輸入原油の低硫黄化、したがって、公害克服に寄与し得ること。第四に、タンカー船腹海上運賃を節約させること。第五に、日ソ両国間の貿易の均衡拡大に役立つこと。第六に、西欧諸国及び米国がその関心を深めつつある現在、わが国シベリア天然資源開発への協力への踏切台となり得ること。第七に、わが国、ことに日本海沿岸地帯及び北海道の地域開発に十分寄与できることなどがあげられます。最大の眼目は、何といいましても重要なエネルギー資源である石油安定的確保でありまして、わが国長期石油政策に一致するものと確信いたしております。  本件プロジェクト規模内容意義などにかんがみまして、私ども日ソ経済委員会は、政府が本案件の原則問題、クレジットの額、方式引き取り供給保証価格決定基準等につきまして、ソ連政府との間で合意を達成することを交渉開始前提条件考え、さきに昨年末前内閣に対しまして要望し、また、去る七月下旬、現地視察報告提出するとともに、重ねて現内閣に対してこれを要望いたした次第でございます。つまり、本件プロジェクト経済的必要性と技術的な現実的可能性につきましては、もはや問題はないと考えまして、また大かたの同意も得ておりますので、あとはマクロの視点からの政府政治的決断をお願いいたしているわけでございます。ソ連側もそれを待ち望んでおります。  私ども見通しとしましては、幸いにして両政府間の合意が本年秋にでも達成されましたならば、そのワク内でソ連側機関との交渉を開始し、すべての問題を解決しておおむね明年三月、四月ごろ基本契約の締結に持ち込みたいと考えております。そういたしますと、パイプライン建設準備期間約一年を含めまして合計五年かかりますので、一九七八年にはチュメニ原油を載せた第一船がやってくることになると思います。いま私どもは、両政府間の合意後の交渉に備えて、万全の体制を確立すべく準備をいたしております。  以上をもちまして、本件プロジェクト概要説明を終わります。この席から、委員各位の御認識と御支援を心からお願いいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手
  9. 藏内修治

    藏内委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  10. 藏内修治

    藏内委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。橋口隆君。
  11. 橋口隆

    橋口委員 本日はお忙しいところをこの委員会においでくださいまして、まことにありがとうございます。また、過般は調査団を編成されまして遠くシベリアまで詳細な調査をなさいました由で、ほんとうに御苦労さまでございました。  ただいまいろいろとお話を承りまして、われわれもこのシベリア開発チュメニ油田開発には全面的に賛成でございます。ペルシャ湾だけに依存しないで石油を広く分散するというのは、政府としても、また国会としても大体一致した意見であろうかと思います。そういう意味で、このチュメニ油田開発は、ぜひとも今後とも推進をしていきたいと思うのでございますが、ただいまのお話に関連いたしまして二、三の点について簡単にお伺いしたいと思います。詳細な点は、この委員会エネルギー・鉱物資源問題小委員会というのがございますので、非常に御多用と思いますが、いずれおひまなときをうかがってひとつ開かせていただきたいと思いますので、きょうは基本的な問題について伺います。  ただいまお話がございましたのですが、この話し合いについてはわれわれも賛成でございますが、交渉につきまして、まず民間で話し合いを煮詰めていただいて、あと政府が一括的に交渉することになるかと思いますが、その点については、政府に対してどういう点を一番強く要求をされますか、また、期待されている借款の総額は幾らぐらいになるか、開発に要する資金ワクというものがございましょうから、そのうちで幾らぐらいを日本要求するのであるか、そういう点についてちょっとあらかじめ伺っておきたいと思います。
  12. 今里広記

    今里参考人 ありがとうございます。  いまお話しのことは、現在までおよその計算としてできておるのは約三十億ドルくらいかかることになっております。向こう側要求といいますか、願いは、日本政府からの保証もとに、バンクローン形式によって、そのうち三分の一の十億ドルを三年ないし四年間にわたって出していただきたい、この十億ドルは、あるいはそれを上回るほど日本のパイプなり機械なりステーション設備なりあるいは消耗品なり消費物資なりというふうなものを買い付けていく費用にして、日本にそのままその金を置いて、物資で持っていくということを言っているのでございます。  それから原局はもちろん通産省でございますから、通産省を窓口のように考えておりますが、通産省大蔵省あるいは外務省、この前、現地報告書をみんなそちらへお配りして出しておりますので、政府間におきまして折衝されまして、技術団報告が技術的の見地から見てもうこれでよかろうということになった場合には、このローン形式をどうするか、バンクローンにするのか、サプライヤーズクレジットにするのか、あるいはこの十億ドルをいま言います何年間でどういう形にするか、利息をどうするか、支払い保証——向こうで何年間でこれを返してくれるか、あるいは引き取り石油代を何年間で持ってくるかというふうなことを政府間で詰めが行なわれまして、その後は、政府を中心にしてわれわれも参加させていただきまして、その原案をもってソビエト交渉しなければならないというふうに思っておるわけでございます。  一番大きな問題は、向こうは、いわゆる利息は少なくとも六分だということを言っております。日本政府のほうにおきましてこれをどういうふうにお取り上げいただくか、まあ六分二厘か六分五厘かということになろうかと思いますが、ぜひひとつ六分くらいでこれを何とか政治的に考えていただいたらこの話は非常にまとまりやすいのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  13. 橋口隆

    橋口委員 それでは政府側にちょっとお伺いいたします。  鉱山石炭局長に伺いますが、いま今里団長から、政府に対してもこういう御意見が出たようでございますが、それについては、通産省としてはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  14. 外山弘

    外山説明員 このプロジェクト推進にあたりましては、通産省の中でもいろいろな局がございますし、それからいまも御指摘がございましたように、大蔵省あるいは外務省とも事務的に詰める問題がたくさんございます。  私のサイドで申しますと、先ほどの御指摘のような点が、技術的な問題あるいは可能性の問題を含めまして精細な報告を得ております。したがいまして、この報告に基づきまして前向きに対処していく考えで現在おるわけでございまして、私どもとしましては、今後供給される原油の品質、価格供給保証といったような問題を検討するとともに、関係のところにおはかりいたしまして、日本側クレジット供与方式あるいは規模あるいは今度は私どもの問題としては原油引き取り体制、こういった問題につきまして鋭意検討を進あてまいりたい、こういう考えでおるわけでございます。
  15. 橋口隆

    橋口委員 この問題につきましては、一つの国民的な課題でもございますから、政府も、ぜひひとつ前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  つきましては、もう一回団長にお聞きいたしたいと思いますが、この開発につきましては、日本だけでなくてアメリカ側も食指を動かしているように聞いております。特にガルフがぜひとも提携したいということでございますが、現在ではどの段階まで話が続いているか、また、ガルフほんとうに参加した場合にひさしを貸しておもやを取られるというような、そういう懸念が多少なきにしもあらずでございますが、その辺についてのお考えを承っておきたいと思います。
  16. 今里広記

    今里参考人 お答えいたします。  初め日本ソビエト、いわゆる日ソ経済合同委員会の形でこれを取り上げましたから、向こうとしては、日本だけだというふうに初めは思っておったわけなんです。しかし、私は、この途上におきましてやはり外国のメジャーというふうなものが一枚日本側にかんだほうが、仕事の進めぐあい、日本の世論のいわゆる持っていき方というようなものがいいのではないかというふうな気がしまして、向こうの意向を探りましたところが、二、三のメジャー側から希望者があったわけなんです。そのうちから、いまおっしゃったガルフというのを日本サイドの内側につける、ガルフ会社を抱いていくということにしまして、その資金も、まだはっきりしておりませんが、一〇%ないし一五%、はっきり言いますと一億ドルないし一億五千万ドル程度向こうから出してもらう。それで油の分け方もそういう分け方をするというふうなことでソビエトのほうに交渉しましたら、ソビエトは、日本がどういう形をとろうとそれはソビエトの直接タッチすることではない、日本責任において日本側に抱いてくる、しかしテーブルをはさむものはあくまで日本ソビエトだ、日本うしろ側アメリカの資本がある、アメリカ引き取りに一部加わっているということがあってもそれはちっとも差しつかえないということでしたから、ガルフ責任者連中とも数回会いまして、向こうからもよく来ますが、その話し合いを進めております。  それからナホトカ港湾設備をするのに約一億ドルばかりかかりますが、これを現在、日本建設会社、すなわちかりに言いますと、鹿島建設とか大成とかいうのが組んでおりますアメリカベクテルという会社があります。サンフランシスコにありまして、建設業者としては世界で一番大きな技術的ないわゆる発言力を持っておる会社でございます。これが日本建設会社といわゆる業務提携しておりますから、それもひとつ仲間に入れて、ナホトカ港湾設計管理というふうなことは日本責任においてやってみたいというふうに考えておるわけでございます。ベクテルのほうとも折衝を進めておりますが、向こうも非常に喜んでおるようなわけでございます。これもソ連側では異議ないということになっております。
  17. 橋口隆

    橋口委員 この計画日本だけでなくて、最近では国際的な大事業になると思います。そういう意味で、どうか今里団長以下皆さんの格段の御努力をお願いする次第でございます。  本日は、まことに御苦労さまでございました。御健闘を祈ります。
  18. 藏内修治

  19. 田中榮一

    田中(榮)委員 ただいま今里委員長からも詳細の御説明があり、また、われわれの同僚からも質問がございまして、大体要領はわかったのでございまするが、簡単に御質問申し上げますので、要点だけお知らせ願えればけっこうでございます。  日本ソ連に与えるところのクレジット方式はどういう方式をおとりになるか、まずそれが第一。  それから、先ほど橋口先生からも、政府の参加をぜひ前向きの姿勢でやってもらうように政府当局に希望いたしたのでありますが、やはりソ連側日本政府のギャランティーを非常に必要と懇望しておるようでありますが、このような大きな仕事でありますから、やはり政府が積極的にこれにある程度援助を与え、参加し、ギャランティーでも与えるというような形式をとらなくては、このプロジェクトの完成はなかなかむずかしいのじゃないか、かように私は考えていますので、重ねて政府側にもう一回ひとつ意向をお確かめいただきたいと思います。  それから、ガルフが参加することはけっこうである、しかしあくまで日ソの間の取りきめによってやるのが主体であるという、その線でいくのが一番正しいと私は思うのでありまするが、ある程度アメリカ側に進んだ技術があるならば、やはりこれを取り入れてやることが、木プロジェクトを完成させる上において、また将来の問題におきましても非常に好結果があるのじゃないかと思いますので、その形式のいかんにかかわらず、ガルフなり適当なるアメリカの技術資本をある程度参加させるということをわれわれは希望いたしておるわけであります。個々に申し上げますから、要点だけお話しくださればけっこうでございます。  それから、チュメニとイルクーツクの間はパイプラインが非常に細いということでございますが、これはそのままでよろしいのであるかどうか。それに対しての何か経済援助でもしてこれを改造する必要があるのじゃないか。  それから、ナホトカの築港の改造費が大体一億五千万ドルでございますか、それで全部が完成するものであるか。それで全部差しつかえないのであるかどうか。  それから、今度はこれをタンカーで持ってくるわけだと思いますが、その際に、日本の陸揚げ港は大体どこを予定しておるのであるか。  それから、将来これを精製する場合におけるコンビナート等は、あるいは太平洋岸がいいのであるか、日本海岸がいいのであるか。そういう点について、将来のコンビナートの設定等についてはどういうお考えであるか。これもひとつお答え願いたいと思います。  それからもう一つ肝心なことは、われわれは北方領土の復帰を非常に念願いたしておりますが、この問題は、北方領土の復帰とは全然別な問題であろうと思いますが、しかし、これはやはりうらはらじゃないかと思うのであります。日本が多年その復帰を念願しております北方領土の問題これもやはり折衝の衝に当たる今里先生その他幹部の方々は、こういう北方領土の復元の問題も十分にひとつ頭に入れられて交渉していただくことが必要じゃないだろうか。  以上の諸点につきまして簡単なお答えをいただきたいと思います。
  20. 今里広記

    今里参考人 お答えいたします。ありがとうございました。  このローン形式は、向こうバンクローンをいっております。バンクローンでも、しかし先ほど言いますとおり、バンクローンの形でいままではほとんどサプライヤーズクレジットという形をとっておりましたが、今度は自分がフランスでやっている、あるいはイタリアでやっている、西独とやっているバンクローン形式にしてほしい。しかし中身は、内容的なものは、サプライヤーズクレジットでちっとも差しつかえないのじゃないか。ただ、向こうの国は相手方が一本ですから、日本のほうはたくさん商社がおりますし、メーカーもたくさんおりますから買いたたかれないように、そうかといって向こうの杞憂しておりますように、いわゆる押しつけた値段でみんな引き取らせるというふうなことのないように、そういうところに配慮していかなければならぬのじゃないかというふうな気がいたします。  それから、アメリカの技術を使うということは、先ほどおっしゃいましたとおり、非常にけっこうじゃないかと思う。ナホトカ港湾設計とか管理とかいうのは、むしろこちら側でその主導権を持ったほうがいいのじゃないか。しかし、向こうのチュメニからイルクーツクイルクーツクからナホトカ間のパイプラインの敷設については、ソビエトは、寒冷地の技術は自分のほうがアメリカよりも上だというわけなんです。いわゆるツンドラ地帯の非常に長いパイプラインの敷設でございますが、これはシベリアの奥地にアメリカなりあるいは日本なりの技術者がどんどん来て、何年間も滞在してなにするというふうなことは独立国家として受けがたい。また現にパイプラインの敷設そのものは自分のほうに技術があるんだから、見学されるのはよろしい、しかし、アメリカなり日本なりの手によって敷設工事そのものをやるということは少しおかしいじゃないか、それは困る。また、アメリカの中に、たとえばソビエトの労働者とか技術者というものが何年間も入り込んでいってやる、これはアメリカも拒否するだろうと思います。そういう意味で、これはやむを得ないのではないか。ナホトカからこちらのことは、日本側アメリカと一緒に協力した形でやっていくのがいいのではないかと思っております。  それから先方も、日本政府保証なり裏づけなりというものを非常に欲しております。これは十億ドルの金ですから、これをかりに四年間で払うにしましても一年間に二億五千万ドル、三年間で払うとしますと三億三千万ドル、これを民間の金で調達するということはとてもできないことでございますし、そういう意味からしましても、また、石油そのものがいわゆる国家をあらわすような産業でもありますので、政府の大きな裏づけ、政府の大きな保証というもの、あるいは指導がなければ、このプロジェクトは完成しない。向こうもそれを渇望しておるわけでございまして、私たち民間人が幾ら約束しましても向こうは信用しないという形になっております。  それから、現在チュメニからイルクーツクまでのパイプラインはすでについております。しかし、これはパイプラインの口径が少し小さいので、これを増強するということにしております。それからイルクーツクからナホトカ間、このプロジェクトの一番中心になるやつでございますが、これは四十八インチ、千二百二十ミリのパイプラインを約四千百七十キロにわたって敷くことになっております。それでイルクーツクまでの少しパイプの小さいのを増強するということで、そのパイプも日本から買い付けるということを言っております。  それからタンカーは、ナホトカから日本海沿岸あるいは北海道というふうなところに持ってくるとしますと、およそ二日間じゃないかと思います。現在中近東から日本まで持ってきておりますのが、マラッカ海峡、インド洋を通りまして約二十二日間、その約十分の一の時間で来るわけでございまして、余談でございますが、このフレートのトン当たりの値段が約二百円でナホトカから日本に持ってくるはずでございます。現在中近東から持ってきますのが約千二百円、だから、これは六分の一の値段でこっちに来ることになるわけでございます。そういう点からしまして日本海の沿岸、はっきりいいますと秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、鳥取というふうなところに持ってくる。  それから、最近非常に問題になっております——これは私の個人的な意見でございますが、瀬戸内海の内海が、タンカーがあまりたくさん入ってきておりますので、非常に汚染されている。それもタンカーが満腹状態になっております。ことしが約二億トンから二億一千万トン、七五年度はこれが三億トンになるのではないかと思います。いまの計算では、八〇年度にはこれが五億トンになるのではないかと思います。そうなりますと、もう日本じゅう至るところにタンカーがあがってくる場もなくなってしまいますから、日本海沿岸に持ってきまして、いま言います福井県とか富山県とかあるいは鳥取県とかいうところから、地元の了解が得られますならば、そこに石油の基地をつくって、わずかのキロ数でございますから、瀬戸内海のほう、あるいは兵庫あるいは大阪というところにパイプで流し込むというふうな方法にしたら、瀬戸内海の方面も非常にきれいになるのではないかというふうな気がしております。  それから北方領土の問題でございますが、これはちょっと私職掌が違いまして、実のところ、われわれのやっているのは純経済ベースの話でございまして、これを北方領土に結びつけることがいいか悪いかわかりませんが、これは先生方の御判断でもありましょうし、できるならば、私の希望からいいますと、この問題を北方領土と切り離して純然たる経済ベースで持っていっていただきたいというふうに思うわけでございます。
  21. 田中榮一

    田中(榮)委員 政府考え方をもう一度ひとつ確認したいと思うのですが、鉱山石炭局長でもお願いしたいと思います。
  22. 外山弘

    外山説明員 関係するところがたいへんございますので、省内並びに各省との意見の調整をはからなければなりませんが、ただいま御指摘の、一つは信用供与条件の問題、これはソ連側は、いまお話しがございましたように、バンクローン希望しております。私どもとしましては、政府内で慎重に信用供与条件の検討を進めているところでございます。  それから、いまの引き取りの問題につきましては、今里団長からいろいろの点の御開陳がございました。私どもも、そういうことも含めまして、いろいろ今後も十分慎重に検討を進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  23. 藏内修治

    藏内委員長 参考人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、厚くお礼を申し上げます。      ————◇—————
  24. 藏内修治

    藏内委員長 通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、中曽根通商産業大臣から発言を求められております。これを許します。中曽根通商産業大臣
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 今回、通商産業大臣を拝命いたしました中曽根でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  委員各位にごあいさつを申し上げます。  今日、内外の経済情勢はきわめてきびしく、かつ流動的であり、この間にあって国民の負託にこたえるためには、通商産業行政も新しい展開を遂げることが強く要請されていると考えております。  私にとりまして通商産業行政は新しく経験の乏しい分野ではありますが、この時期に際し、全力をあげて各位の御協力をいただきまして、その職責を果たす決心でございます。  今日はせっかくの機会でございますので、通商産業政策について二、三私の考えを申し述べてみたいと思います。  私は、これからの通商産業政策の基本は、内にあっては国民福祉の向上であり、外に対しては国際協調であると考えております。  これまでの高度の経済成長は、国民各層にわたって豊かさをもたらしてまいりましたが、同時に、その過程において、公害の発生、社会資本の不足、過密と過疎等、国民福祉の面で相当の立ちおくれを招来し、国民は、これまでの成長の成果を福祉の向上に役立てることを希求いたしていると考えております。  また、国際的には、わが国経済の動向が国際経済社会の発展と安定にとっても重要な意味を有するに至っております。わが国としては、諸外国との間の不均衡や摩擦の解消のために最大限の努力を行ない、また、流動的な国際社会の変化に的確に対処していかなければなりません。通商産業政策は、内外にわたるこれらの基本的な要請にこたえることに最大の重点を置かなければならないと考えている次第であります。  このような基本にのっとり、私は、まず公害の防除、物価の安定、消費生活の充実等国民生活の質的向上をはかる施策を実現したいと考えます。  この意味から、特に公害防止対策の拡充、過密過疎是正のための工業再配置対策の推進をはかるほか、消費財をはじめとする安全対策の拡充等、流通対策の強化、住宅産業の振興につきましても、積極的な施策を講じてまいる所存であります。  さらに、この激動期に多くの困難に直面している中小企業に対しましては、新しい時代に対応できる体制を整備し得るよう積極的に指導、支援を行ないたいと思います。特に、小規模企業の経営の改善に対しましては抜本的な施策を講じてまいりたいと考えております。  このほか、輝かしい未来を築くために、わが国産業経済の体質を改善し、その基盤を強化するために、知識集約産業の振興をはかり、また、各種エネルギー資源について長期的かつ総合的な施策を講じてまいりたいと考えております。  次に、国際面についてでございますが、私は、対外経済関係の調整に全力をあげて取り組む所存であります。すなわち、輸出における摩擦の回避につとめ、輸入を促進し、資源確保、経済協力等に外貨の有効な活用を行なって、貿易の安定をはかり、国際経済におけるわが国責任を果たしたいと考えております。  特に、日米経済関係の長期的、安定的な発展は、わが国対外経済政策の基本であり、当面輸入の促進等により緊急に両国間の貿易収支の不均衡是正につとめ、引き続き両国間の話し合いを通じて調和ある経済関係の維持発展をはかる所存であります。  また、新内閣最大の課題の一つであります日中問題については、国交正常化の観点から、貿易をはじめとして両国の経済交流に積極的に取り組みたいと考えており、このため必要な施策を講じていく所存であります。  なお、当面の国内景気につきましては、長期にわたる沈滞をようやく切り抜けてゆるやかな回復過程をたどりつつありますが、国民福祉を充実し、国際的な不均衡を是正する方向で、景気の回復を確実ならしめるようつとめてまいる所存であります。  なお、沖繩国際海洋博覧会は、世界で初めての海洋をテーマとする博覧会であり、沖繩の経済開発と海洋開発の飛躍的推進の観点から、りっぱに成功をおさめるため、担当大臣として各省の協力を求めて開催準備に万全を期してまいりたいと思います。  以上のような方向で、通商産業政策を強力に推進し、わが国経済をめぐる内外の試練を克服する決意であります。  何とぞよろしくお願いいたします。
  26. 藏内修治

    藏内委員長 次に、有田経済企画庁長富から発言を求められております。これを許します。有田経済企画庁長官。
  27. 有田喜一

    ○有田国務大臣 このたび経済企画庁長官を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。  きょうは、就任以来初めての商工委員会でございますので、一言所感の一端を述べてみたいと思います。  最近の経済動向を見ますと、生産、出荷は上昇基調にあります。景気は昨年の暮れを大体の底と考えまして、だんだんと回復の段階に入りました。本年度の経済成長率も、このまま順調に推移していくならば、政府見通しの七・二%を相当上回ることとなると思われます。  しかしながら、今日の景気回復の主導力は、財政、個人消費、民間住宅建設であるため、回復テンポは従来に比べまして比較的弱く、また、国際収支の黒字幅も依然高水準にあります。  このような経済情勢にかんがみまして、当面の政策運営にあたりましては、国内景気の推移、国際収支の動向などを見守りつつ、適切な措置を講じてまいる所存でございます。  次に、物価問題についてでありますが、物価の安定は、国民生活の向上にとって不可欠の条件であります。また、国民の政府に対する最大の要望でもあることを十分認識しまして、これに真剣に取り組んでまいる所存でございます。  このため、従来から実施してまいりました低生産性部門の構造改善や輸入政策の活用、競争条件の整備等の諸施策を一段と強力に推進するほか、特に、流通費用の増大が消費者物価上昇の大きな原因となっていることにかんがみまして、生鮮食料品、輸入品を含め流通機構の改善合理化を推進していきたいと考えております。  なお、公共料金につきましては、極力抑制的に取り扱うべきでございますが、半面、公的サービスの円滑な供給を阻害しないよう配慮することもきわめて必要でありますので、慎重な態度で対処し、国民の理解と納得を十分得た上で処理していきたいと考えております。  消費者保護につきましては、消費者保護基本法の精神にのっとりまして、危害の防止、公正自由な競争の確保、消費者啓発等各般の施策を進めているところでありますが、この上とも地方消費生活センターの拡充など、地方公共団体との連携を強化しながら、消費者保護のための施策を機動的、総合的に推進してまいる所存でございます。  ところで、わが国をめぐる内外情勢は急速に転換を遂げつつありまして、いまや長期的展望に立って、わが国経済社会発展の基本的方向を明らかにすることは緊急の課題となっております。  このため、政府は、国民福祉の充実と国際協調の推進を目ざした新しい長期経済計画を年内にも策定することといたしまして、明二十三日に経済審議会に対して諮問を行なう予定になっております。  次に、国土開発問題につきましては、新全国総合開発計画策定後三年の年月を経過し、この間、この計画に基づいて、国土の均衡ある発展をはかりつつ、豊かな環境を創造するための総合的施策を展開してまいりましたが、人口、産業等の大都市への集中傾向は依然として続き、また、公害に代表される環境悪化の問題がますます深刻化してきております。  このような情勢にかんがみまして、地域開発政策の面で、新しい開発のあり方を検討するために、特に環境問題の側面から、新全国総合開発計画の総点検を行なうことといたしております。それと同時に、適正かつ合理的な土地利用をはかるため、より強力な施策を展開してまいる所存であります。  以上申しましたような施策の推進に格段の努力を傾注してまいる決意でございますので、本委員会並びに委員各位におかれましても、格段の御支援と御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げまして、私のごあいさつといたします。
  28. 藏内修治

    藏内委員長 この際、新たに政務次官に就任されました丹羽通商産業政務次官及び安田通商産業政務次官を御紹介いたします。
  29. 丹羽久章

    ○丹羽説明員 一言商工委員の諸先生方にごあいさつを申し上げます。  ただいま委員長から御紹介いただきましたように、このたび通産政務次官に就任さしていただきました丹羽久章でありますが、非才浅学でありますので、何とぞ諸先生方には御指導、御鞭撻、御協力賜わりますようによろしくお願いいたしましてあいさつにかえる次第であります。  どうもありがとうございました。(拍手
  30. 安田隆明

    ○安田説明員 このたび通産政務次官を拝命いたしました安田でございますが、中曽根大臣のもと、きわめて責任の重大なことを痛感いたしております。今後あらゆる意味で御指導と御鞭撻をいただきますようお願いを申し上げましてごあいさつにかえさせていただきます。(拍手)     —————————————
  31. 藏内修治

    藏内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 中曽根大臣にお尋ねしますが、いま大臣がお入りになったときに、日ソ経済委員会石油委員会の訪ソ専門家代表団報告がなされて、それに対して簡単な質問が行なわれたわけでありますが、通産大臣としては、チュメニ石油計画推進についてどのような態度を持ってお臨みになろうとしておられるのか、簡単でけっこうでありますから考え方をお示しいただきたいと思います。
  33. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、日本エネルギー供給源というものをできるだけ多面的に、かつ国際協力をもって確保しよう、そういう基本的考えに立脚いたしておりまして、たとえば石油のような問題にいたしましても、アラビア海のみに集中するということよりできるだけ分散するほうが適当である、そう考えておるわけでございます。したがいまして、チュメニの問題にいたしましても、われわれとの話し合い、条件が合うならば、これは積極的に進めていきたい、そういうように考えております。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 各般にわたってお尋ねをしてまいりたいと思うのですけれども、両大臣の時間の関係から、十分な時間がとれないわけであります。したがいまして、簡潔にお尋ねをしてまいりたいと思うのですが、ただいま有田経済企画庁長官のごあいさつの中で、景気は回復の基調にある、経済成長も七・二%の政府見通しを相当上回っている、回復のテンポはしかし比較的弱いというようなことであったわけであります。  この景気回復の問題に対しましては、政府部内におきましても必ずしも見解は一致していない。また、各方面においても同じようなことが言えようかと思うのでありますが、通産大臣は、景気回復は、いま経済企画庁長官のお話のように回復基調にあるという考え方を持っておられるのかどうか。景気刺激についてはこれは必要であるということも伝えられているわけでありますけれども、それらの点に対してどのようにお考えになっておられるのか。同時に、経済企画庁長官は、いまのごあいさつの中にございましたようなことですが、景気刺激策ということそれ自体はどのようにお考えになっておられるのか。それらの点に対して、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  35. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 景気に対する基本的な考え方といたしまして、今回の景気のゆるやかな回復と過去における景気の回復とは性格はやや違うように考えております。過去におきましては、民間設備投資が旺盛になりまして、それによって景気の回復の押しの力は非常に強かったわけでございます。今回のものは、政府関係の財政需要及びそれに伴う消費需要、そういうものを起こしまして、それによって景気がゆるやかに回復しつつあるので、過去の民間設備投資のような力が目下のところありません。したがって、回復も非常にスローなカーブを描いてやっておるわけであります。  現在、政府は、いままでに、まあ九月ぐらいまでに、政府支出の公共事業費その他七二%程度を消費して景気に刺激を与えているわけでありますが、こういう情勢でいきますと、もう一段階アクセルを踏んで需要を起こして、下半期における景気をささえる力をつくる必要がある、私たちはそういうふうに認識しております。したがいまして、ゆるやかに回復しておりましたけれど、私の表現によりますと、坂の上の雲を見詰めながら大八車を坂を押しているようなものだ、手をゆるめればまた下へごろごろ落ちるぞ、そういう表現で申せばそういう形のものではないか。そういう点からも、政府は先般財政投融資で約三千五百億円程度の仕事を起こしたりいろいろやっておりますけれども、そういう努力が必要である、そのように考えております。
  36. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほども説明申しましたように、景気はだんだんと回復基調にございます。先ほど通産大臣から言いましたように、いままでの景気回復の動きは、いずれかというと重化学工業というようなものが牽引力となって、ぐうっと大きな急激な回復を遂げておった。ところが、今回の日本の景気の回復は、昨年来行ないました財政金融措置、いわゆる公共投資というものに力を入れて、それがじわじわと効果をもたらしまして、いま申したような回復の基調にあります。  そこで、先ほども言いましたように、大体四十七年度の実質成長率は七・二%ぐらいのことを予想しておったのですけれども、最近の情勢からいうならば、これは最後の数字ははっきりは言えませんけれども、大体八・五%をこえるのじゃないか、こういうような見方もできるわけでございます。そこで、先ほども通産大臣が言いました財政資金の投入もありますし、また災害復旧、その他いろんな面が出てまいりますので、私は、この調子でじわじわと景気の回復をされることを期待しております。あまり高度成長にいきますと、またそこにいわゆるひずみが出てくる。それを考えたときは、じわじわながら健全な回復の基調をとることが望ましい、かように考えております。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 まだ経済企画庁長官はテンポは比較的弱いとおっしゃったんだけれども、三十七年と四十年の回復テンポから見ると、私は、むしろこれは着実に回復をしているのではないかという感じがするわけです。必ずしも弱くはない。中曽根通産大臣もいまお聞きになっておられたとおりですが、景気刺激が必要であるというように大臣はお考えになっていらっしゃる。ところが、景気はあまり刺激し過ぎると、また重化学工業というものの設備投資というのが再燃してくるというようなことが懸念されるのではないかというように思うのです。この点はやはり問題ではないかというように考える。先ほどのごあいさつの中にも、知識集約型の経済構造に持っていきたいというようなお話が実はあったわけなんです。それらの点と関連をしまして大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  38. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 お説のとおり、重化学工業のギャップを埋めて、また昔の過失を繰り返す、そういう考えはございません。新しい方向に日本の産業構造を次第に転換していくやさきであると考えております。そういう面で、国民の皆さま方の非常な強い御要望、それから社会経済的効果、そういういろんなものを勘案いたしまして、私は、やはり住宅政策を推進する、そのことが一番適切ではないか。  それからもう一つは、災害復旧その他含めまして社会資本の充実、下水とかそのほかの環境整備、公害に対する諸手当て、そういう面で財政支出をかなり行ないまして、それによって景気を回復していく、こういう考え方を持っているわけでございます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 考え方はわかるのです。わかるのですけれども、中曽根大臣が通産大臣に御就任になって、通産行政というものに直接取り組んでみられてどのようにお感じになっていらっしゃるのだろうか。依然として生産第一、成長優先の型の経済というものから脱皮していないというように私は判断をしているわけですね。ですから、いま大臣のお考え方というようなものをほんとう推進していこうとするならば、これを完全脱皮をしなければならないのではないか、こう思うのですね。大臣は脱皮しておられるという確信をお持ちになりますか。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 脱皮させつつあると確信しております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると経済構造を変えていこう、こういうことなんですが、それに対しては生産第一、それから成長優先ということで脱皮していこう。こうするならば、それは住宅であるとかなんとかというお話があったわけですけれども、具体的にそれではどうしていくのかということなんです。数字は正直なんですからね。政府の方針としましては、四十七年度の予算編成の中にも経済見通しというものが出て、十一兆四千億という予算が編成をされたわけですね。ところが、現実には依然として輸出というものが衰えていない。輸入はふえない。それから個人消費をふやしていかなければならぬというのだけれども、個人消費というものは、経済見通しの上からいきましても、四十六年が一三・五%でしょう。四十七年は一三・八%ですよ。横ばいなんだな。だからいろいろ私どもの質問に対してお答えになるのは、もっとものようなことをおっしゃるのだけれども、現実には数字から見ましてもそうなっていない。ですから、これをほんとうにいま脱皮していくのだとおっしゃるならば、そのとおりに抜本的におやりにならなければならぬと私は思う。ですから、その点に対する単なる考え方ではなくて、具体的にどうするのだということをもう少し突っ込んでひとつ御説明をいただきたいと思う。
  42. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 景気回復の諸施策におきまして、重化学工業方面に対する投資というものは積極的にやっておりません。行なっておるとすれば、公害防除施設についてかなり大幅のものをやらしている、そういう状態でございます。  それから政府としては、田中内閣ができましてから、私らが考えました方向にいま施策を進めておりまして、財政投融資の面においていろいろそういう施策をいま着々と打ち出しておるわけでございます。学校の老朽校舎であるとかあるいは国立病院の古い木造の建物を改築するとか、やれば幾らでも仕事はあるはずでございます。そういう諸点も閣議におきましてはいろいろ論議も出まして、田中総理からもそういう指示もございまして、そういう方面に今後とも力を入れていく予定でございます。先般、三千五百億の追加投資を行ないましたのはその一つのあらわれであるとお考え願いたいと思います。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから意見を言わないで端的にお尋ねをしてまいりますが、対外均衡達成の方法としてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 対外均衡達成につきましては、七項目の政策を推進するということを政府はきめておりまして、大まかに申し上げれば、一つは内需をもう少しふるい起こして、輸出に向かうものを内需に向けさせる。それから緊急輸入を行なって、特に日本の輸出が非常に旺盛であるアメリカに対してある程度の輸出入調整を行なおうというような政策をいま実はやっておるわけでございます。特にアメリカとの関係において、わがほうはことし大体三十五億ドルぐらいの出超になる見通しであります。アメリカ側はもう少し多いといっておりますが、しかし田中総理はこれを二十億ドル台にしておきたい、そういう考えを持ちまして、そういう面からも対米出超をチェックするために内需をある程度喚起しつつ、また緊急輸入措置というものをいろいろ考えているわけでございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 輸出を内需に向けさせる、緊急輸入をする、こうおっしゃる。そうすると輸出を押え、輸入をふやしていく、国際収支の基調というものを減らす方向に進めていく、こういうことになるわけです。国内需要をふやしていくための具体策というものがなければならぬですね。いまのお答えの中では、必ずしも明確ではないわけです。抽象的ではなくて具体的にどうしていくのか。私は先ほど経済見通しの点について若干触れたわけであります。それらの問題も含めて具体的な考え方をお聞かせいただきたい。
  46. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、社会資本の充実のための追加投資をこれから行なっていく。先ほどいろんなポイントについては申し上げました。それから住宅につきましてさらに積極的な政策を推進するために、ローンの問題であるとかあるいは減税の問題であるとか土地政策であるとか、そういう問題についていま建設省を中心にいたしましていろいろ積極策を策定している最中でございます。これらの諸点を本年度及び来年度予算等につきましても強く推進してまいりたい、そのように考えているわけでございます。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど私が触れましたように、内需に向けさせるということになってくると、個人消費というものをぐっとふやさなければならないですね。ところが、四十七年度の経済見通しでは、先ほど申し上げたように、一三・八%の伸びでしょう。四十六年は一三・五%ですよ。横ばいですよ。これでよろしいとお考えになっていらっしゃるのか。それではだめなんだということであるならば、これをどうするのか。それは具体的に、賃金は抑制の方向で進めていこうとしているのか。その経済成長率というものは、アメリカをはじめヨーロッパ諸国と比較をすると三分の一である、あるいは半分であるとか——物価は世界一高いわけですよ、経済成長率はいま申し上げたように高いわけなんだから。ところが、賃金においては、いま申し上げたように、これはアンバランスである。非常に低いわけですね。時の氏神ということばもあるのだけれども、やはり賃金をもっと引き上げていく、少なくとも、ヨーロッパ並みの方向へと推進をし、ていくということでなければならぬと思うのです。  同時に、政府は口を開けば、いつも低生産性部門に対するところのてこ入れをやるんだとおっしゃる。それでは、中小企業対策について具体的にどうするのか、それから、生産性の低い農業に対してはどうするのかといったような、生産性を高めるということについての具体策というものは必ずしも明らかではない。口ではおっしゃるんだけれども、現実の問題としては、これを抑制する方向にあるということですよ。そういうことをしておいて、内需に向けさせようと言ったって、そういうことはできないですね。たまたまいまおっしゃったように、住宅をたくさんつくるということは、広い意味の社会保障なんだから、それは大いに歓迎をしたいと私は考える。それ以外には何もないじゃありませんか。ですから、そこいらをもっと具体的に、こうするんだということを明らかにされると同時に、これを実践をしていく。それでなければならぬと考える。補正予算も今度は御提出になるのでありましょうから、その中でどのような具体的な補正予算をお出しになろうとお考えになっていらっしゃるのか。来年度の予算編成の構想も含めて、両大臣からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中村先生おっしゃいましたような趣旨も考えて、またこれは当然のことでございますが、人事院勧告をことしは四月から実施する、政府はそういうことも踏み切ったわけでございます。これによってある程度の内需喚起にも役立つであろうと思います。  日本のいままでの物価の上昇を見ていますと、消費者物価につきましては、生鮮食料品が暴騰するとこれが非常に響く。それからあとはサービス料金が響いておる。工業製品は、家電でも何でも大体下落していくという情勢にあるわけでございます。したがって、消費者物価の問題については、いま言ったような、生鮮食料品とかあるいはサービス料金の問題をよく注意してやっていけば、消費者物価の問題はある程度切り抜けられると私らは考えます。そういう点については、内閣は流通面のいろいろな政策を強力に推進する予定でございます。  そしてサービス料金については、公務員あるいは大企業が春闘あるいは人事院勧告によりましてベースアップすると、中小企業に働いていらっしゃるそういうサービス業の従業員の給料も上げてやらなければ、人間の労働価値というものは同じわけでございますから、これも不公平になります。これはある程度上げてやらなければ——そういう場合にはバランスをとる必要があると思いますが、そういう点は環衛法によりまして、設備の近代化ということによって、できるだけそちらのほうの、消費者関係の物価を上げないように、政府はつとめていくべきものである、そういうように考えておるわけであります。  それで補正予算につきましては、人事院勧告も出ましたから、いずれ組まざるを得ぬと私考えておりますが、私らの、通産側の見解といたしましては、いまのような社会資本充実のためのかなりの予算を、もし補正予算を組む機会がありましたら組んでもらいたい、そういうように考えておるわけでございます。それは住宅あるいは下水道、そのほか、いま申し上げたような社会資本にわたる部面でございます。
  49. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほども言いましたように、昨年来打ってきた財政金融の面、すなわち、ことばをかえていえば、公共投資に力を入れた。それが着々実を結びつつありまして、五月ごろの情勢を見ますと、輸出は、まあ伸びておるけれども、非常に鈍化した。その反面において輸入がふえつつある。こういう傾向が見えたわけですよ。ところが、御承知のとおり、六月、七月は海員のストがありまして、六月、七月の統計がちょっと番狂わせになっておるのです。そこで八月にはわれわれの期待どおりのものが出やせぬか、こういうことを期待しておるわけですが、やはり有効需要もだんだんと伸びておるのですね、消費者需要というものが。そういう面からいって、先ほど申しましたように、景気は着実に回復しつつある、こう私は申したのです。  そこで物価問題ですがね。これは御承知のとおり、この一月から比較的多くの公共料金が上がりました。にもかかわりませず野菜その他生鮮食料品が比較的安定しておりましたために、この上半期においては、世間でいわれるような物価の上昇は高くないんですよ。数字でいえば四・五%というような数字が出ておる。しかし、問題は今後にありますから、十分警戒をしなくちゃなりませんけれども、この物価問題というのは多くの国民が期待されておる問題であります。この間も私のほうで国民の選好度調査というものをやりましたが、それによりますと、所得の増大と物価の安定といずれを望むか、こういう問いに対しまして、所得の増大よりも物価の安定という人が七〇%あるのですね。物価の安定よりも所得の増大という人はわずか一三%しかない。これを見ましても、いかに物価の安定を国民の多くの人が望んでおられるかということがはっきりしておりますから、そこで先ほど言いましたように、消費者物価、なかんずく生鮮野菜あるいは魚介類等に対する流通の改善をやりまして、何とかこの生活の安定に寄与するように措置したい、かように考えておるわけであります。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 流通の改善ということは、これはまあ非常に重要な問題であることは言うまでもないですね。しかしながら、一つ一つけちをつけるようだけれども、新中央卸売市場の法律案を私どもは先般審議をして、これは成立をしておる。いよいよいま実施の段階に入ってきた。その中身を見ましても、必ずしも流通機構が整備されておるとは私は思わないのですよ。問題点は非常に多いですね。解決してないですよ。何か生鮮食料品の問題について、いま中曽根大臣もお答えになったのだけれども、それはまあ特定の地域、東京であるとか大阪であるとかというような大都市、そこについては特別な配慮がなされておる。しかし、地方の都市については、これはもう全く顧みられていないということを私は申し上げたいと思う。  たまたまサービス料金の抑制の問題について、環衛金融の問題についてお触れになった。これも何があるのかといえば、何にもないです。いま環衛金融公庫は六分五厘とか七分七厘とかいうような、そういう制度金融みたいな形をやっておる。しかし、その低金利による設備は少ない。ほとんど年率八%の融資であるわけです。そうすると、民間金融機関よりもむしろいま政府関係金融機関の金利は高い。こんな矛盾した話はないですよ。それらの点からいいましても、環衛金融公庫といって声を大にして、これがサービス料金引き下げに役立つなんということは言えないと私は思う。しかし、そういった一つ一つの問題にあまり触れますと時間がございませんから、いずれまたじっくりと、大臣にも時間をとっていただき、私も時間をとって掘り下げて、ひとつこの問題に取っ組んでいきたいと思います。  通産大臣は調整インフレ構想を明らかにしておられますが、具体的な点がわかりかねるので、この点についての具体的な構想をお示しいただきたい。
  51. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、調整インフレというのは否定しておるのであります。あれはたしか電機・機械業界であったと思いましたが、懇談会、意見聴取の会をやりましたときに、いまの情勢から見ると、もう一段アクセルを踏んで景気をあげていかなければいかぬと思う、しかし、日本の現在の経済構造から見ると、生鮮食料品及びサービス料金について注意をしていればそれほど物価は上がるようになるとは思わない、そういう考えを言いまして、当面の、一番日本として大事なことは円の再切り上げを防止するということであるから、円の再切り上げを防止するために、やはり内需をもっと旺盛にして、外需に向かうものを内需に向けるように自分は政策を進めていきたい、そういう趣旨の話をしたのを調整インフレというふうに書かれてはなはだ迷惑しているわけです。私はインフレと名前のつくものは、あらゆる名前のインフレ、すべて反対でございます。このことを重ねて申し上げておきたいと思います。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 あなたが調整インフレ構想を明らかにされたと新聞には確かにそう伝えておったのですね。だから先ほど私が申し上げましたように、労働賃金を上げていく、コストプッシュというようなことで、これはインフレに通ずるという意見も実はあるわけですね。しかしながら、その必要性ということはあなたがお認めになって、そういうことをやらなきゃいけないのだということでああいう構想をお出しになったのだろうか。これは確かに聞きがいのある構想だろうと思ってきょうお尋ねしたわけでしたが、しかし、この問題については、おっしゃるようにインフレという名のつくものは私どもは反対なんだ。しかし、十分検討して掘り下げていく必要があるだろう。これもまた適当な機会にお尋ねをしたいと思う。  たまたまいま大臣がお触れになりました円の再切り上げのことなんですが、これは防止しなければならぬことは言うまでもありません。ところが、これに対する見通しを大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  53. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近、先ほど経済企画庁長官も申されましたように、輸出は停滞ぎみで輸入が増大しております。この間の港湾ストのかげんで若干波乱はございましたが、傾向としては着実にそういう方向に来ております。この前の円の切り上げの影響というものは半年、一年後に強く出てくるものでありまして、それがようやく出つつあるものだろうと私は思います。したがいまして、この最近の傾向から見、かつ、われわれが内需をもう少し旺盛にしていけば、国際的に日本が再切り上げをしなければならぬという情勢にはならぬ、再切り上げは回避し得る、そういうように考えております。また、そのために大いに努力してまいるつもりであります。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 ドルの保有量というのは実際どの程度あるのですか。公称百六十九億ドルともいわれるのですね。しかし、おそらく二百億ドルを突破しておるであろうともいわれる。これは現実にどうなのか。これはどちらからお答えをいただくのがいいのかわかりませんけれども、いろいろと見込みがだいぶ違っておるようでありますから、その点に対してひとつお聞かせいただきたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私が最近受けた報告ではたしか百五十八億ドル前後であったと思います。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 ホノルルで日米首脳会談が実は行なわれることになるわけでございますけれどもアメリカ側は、新聞で伝えられておりますように、経済問題というものに相当な期待をかけておるということのようでありますが、先般箱根の会談というものがなされた。私どもはそれらのことをずっと関心をもって見ているわけですが、かつて日米の通商関係について一年間の休戦ということが実は確認されたというように伺っているわけです。ところが、まだ一年たたない。それに対して箱根会談というものが持たれる。あるいは今回またホノルルにおいての首脳会談というものは、日本考えているように日中の正常化の問題というようなことだけではなくて、経済問題について向こうが相当な期待を持っている。先ほど中曽根大臣お答えになりましたように、アメリカに対するところの出超が三十五億ドル、ところが総理はこれを二十億ドル、そういうようなことでいくと、キッシンジャー補佐官との間に意見が一致したかのようなことも伝えられておるわけなのですが、そうなってまいりますと、アメリカ側が期待をしておるところの目玉商品、農産物であるとかあるいは電算機であるとかいったようなものに対して、出超二十億ドルにこれを押えていくということになってまいりますと、当然これらの問題が大きな問題点として出てくるであろう。緊急輸入といったようなことだけでは、私はそうした問題の解決にはなり得ないというように考えるわけですが、それらの点に対してどのようにお考えになっていらっしゃるわけでしょうか。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 われわれのほうとしましては、二十億ドル台に減らす努力目標をつくって先方とも話したわけであります。それで、いろいろ品物を洗ってみまして、次に、申し上げるような品物を検討しておる最中でございますが、元来これは事務レベルでお互いに貿易バランスを検討していこうということは話ができておって、その事務レベルの一つのレビューのチャンスとして箱根会談というものがあったわけであります。そこで事務レベルの話をしたわけでありまして、牛肉をどうするとか、牛をどうするとかいうようなことを大統領や総理大臣が話し合うというのはちょっとレベルの低い話じゃないかと私は思うのです。ですから、そういう事務レベルの話の延長をハワイのほうに持っていかないで、これは事務レベルで解決しておく。片方が出過ぎれば少し調整する。そういうことは両国経済を円満にしていくためには必要な措置なんでございますから、事務レベルで解決していく、そういうわれわれのほうは態度をとって箱根会談にも臨む、これが私も総理も考えておる考え方でございます。  しかし、ニクソンさんと総理大臣が会えば、これは世界の通貨体制とかあるいはスミソニアン体制をどうするとか、ガットの問題とか、そういう大所高所の話は政治的観点から出るだろうと思います。しかし、いまのような、箱根会談の物資別の話がああいう場所で出ることは適当であるとは思っておりませんし、たぶんそういうことはしないだろうと私は思います。  そこで、洗っている品物というのは、濃縮ウラン——濃縮ウランといってもこれは濃縮の手数料を払うわけです。それから飼料の輸入、それから飛行機類等々で、日本の国民経済や社会生活に有用であると思うものをいろいろ洗っておる最中でございます。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 それではホノルルにおけるところの首脳会談の中では、そういう具体的な問題の話し合いはなされない。しかし、その二十億ドルに出超を押えていくということについての具体的なものは、それではその後の段階において話し合いをされるということになるわけなんですか。また、政府部内においては、少なくとも田中総理が、この三十五億ドルあるいはそれ以上の出超を二十億ドルに抑制をするというようなことがキッシンジャーさんとの話し合いでぽんと出るはずはない。いまお答えがございましたような濃縮ウラン、これは手数料の問題、飼料、飛行機、こういったようなことだけでは、恒常的な形で出超抑制をしていくという形にはなり得ないのではないか。やはりアメリカは、少なくとも目玉商品の自由化であるとか、あるいはアメリカ側からする輸出の拡大というようなものを強く要求してくるであろう。そういうことでなければ、いま申し上げたように恒常的な形で日本の出超をそれだけ押えていくということにはならないのではないか。したがって、それらの点についても十分政府部内の中で検討をして、田中総理の二十億ドルというような数字が出てきたのではないかと思うわけですが、それらの点についてはどうなんですか。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大体お説のとおりの考えに基づきまして政府部内でいろいろ検討いたしまして、そうして大体これこれこれでいけば二十億ドルぐらいには落とせる、そういう目標を立ててやってきたわけでございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 だから具体的にはどうなんですか。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 具体的な品物ですか。——具体的な品物は、こちらの希望、目下検討中のものとして濃縮ウラン大体三億二千万ドルくらい、これは濃縮単位にして一万トン、それぐらいに当たる部分、それから飼料が私の記憶では五千万ドルぐらいになりますか、そのほか、ことしは昨年に比べて農産物の輸入量がふえておりまして、昨年よりも三億ドルぐらいふえているのではないかと思うのです。数量といたしましてはそういうものも含まれ得るでありましょう。そのほか、航空機の類等々を一々チェックしておるところでございまして、二十億ドル台に下げたい、そういう努力目標をもってやっている最中でございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 意見として申し上げておきますが、いま中曽根大臣がお答えになりましたように、農作物の輸入が非常にふえているわけですね。過去五年間に五割以上が増加をしている。そうして農作物の総輸入量の三割というものはアメリカからの輸入という形になっているのです。これほどアメリカから農作物輸入をしておるのに対して、なおかつ目玉商品であるから果樹であるとかあるいはオレンジであるとか、牛肉の輸入を強要する。また、日本がこれに対して、自由化というものは、次の総選挙の関係もあってなかなかはっきりさせられないから、だが、しかし、輸出の拡大という形で、これを適当に話し合いをつけようというような考え方をとっておられるような気がしてならない。私はそういうむちゃな要求というものに対して迎合していくということは絶対に納得できない、そう思うわけですね。まあそれらの問題はあらためてまたお尋ねをすることにいたします。  中曽根大臣は、田中総理の日本列島改造論に対して、大臣としては重要な役割りを果たすことになってまいるわけでありますから、この点に対しての大臣の考え方というものをお聞かせいただきたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本列島改造論という発想は、私は非常な卓見であると思います。  日本が明治以来、これだけある意味において国際社会に伍する発展をしましたのは、明治の初めに鉄道敷設法をつくって全国に鉄道のネットワークをつくって文化をしみ込ませる。それから郵便、逓信制度をつくって電報もすぐ東京に及ぶようにする。そういう全国ネットワークをつくったということがやはり日本の産業や文化がこれだけ出てきた基本であったと思うのです。しかし、富国強兵、殖産興業のラインで出てきて、重化学工業偏重という形で今日公害が出てきて、ここで、もう一回考え直して、じゃ、新しい国づくりを明治初年に返ったつもりでもう一回やろう、それで新しい日本のビジョンというものを国民全体の前に見せて、いろいろ議論を引き起こして、そしてそのまとまったところでやっていきましょうという契機をつくったという意味で、非常に歴史的な発想であると私は思います。  それで、田中総理の本を読んでみますと、全国新幹線鉄道あるいは高速自動車道網の全国ネットワークを今度はつくって、日本列島というものを一日行動圏内におさめる。そうすると、太平洋ベルト地帯と日本海沿岸との時差がなくなってきて、競争条件が同じようになってくる。むしろ労働力もあるし、いろいろな過密の問題もない、そういうところに誘導措置を構じてそちらに工場を移していく。文化も均てんさしていく。そして全国に二十五万程度の、私に言わせると文化連合都市——いままでのような都市をつくろうとは思っておりません。やはり文化連合都市というか、連合文化都市というか、そういう新しい都市づくりをやっていって、そして日本列島を均勢にしていく。そういう新しいアイデアを持ち出して進めているのであります。  その中で通産省の引き受ける役割りは、工場の再配置とか非常に大きな部面があると思います。関係各省とも連絡をとって、その目標が着実に、大きな摩擦、不必要な摩擦を起こさないようにスムーズに前進するように私はつとめていきたいと考えております。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 新しい国づくり、ビジョン、文化連合都市をつくっていく、こういうことなんですね。それがどういう社会かということはわかるような気もいたしますが、これをどういう社会ということに名づけるのでございましょうか。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはり人間の価値を最大限に重んじた、平和と文化を非常に大事な市民の守る目標として都市づくりをしていく、そういう新しいタイプの都市をつくっていきたい。それも、一つのところに集落して街路ができているという形でなくして、幾つかのものが連合して、その間には鎮守さまもあるし、たんぼもあっていいと思うのです。そういうような新しいタイプの連合文化都市といいますか、集落が集まって二十五万ぐらいになって、その中にはいろいろ有機的な構造が併存している、そういう形のものをつくったらいいと私は希望しておるわけでございます。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると高度の福祉社会ということになってまいりますかね。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろんそうでございます。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、集落が集まって二十五万都市をおつくりになる。それには一つの点がそこにでき上がるわけです。そうすると、点と点との線というものがどうなるのかということが問題になってくるわけです。こう深く入ってまいりますと、時間がわずかになりましたから、これもまたあらためてやらなければなりませんが、まず構想、工場再配置の問題にいたしましても、私どもはたしか十二点かにわたりまして修正をしまして、これは賛成でもって成立をさした経過が実はあるわけです。  その中に、問題点といたしましては環境という問題がきわめて軽視されておった。それから都道府県知事であるとかあるいは市町村長、いわゆる住民の意見というものを吸い上げていこうとする点に法律案の中身が欠けておった。だから私どもはそれらの点を中心にして大幅修正を加えて、そして修正不可能な点は全部与党の諸君がのむわけではないので、やむを得ず私どもといたしましては附帯決議をつけましてこの法律案賛成、成立をさせるという扱いを実はやったわけです。  ところが、その後、日本列島改造論なるものが出てまいりました。これが先に出ておると若干工場再配置も問題があったかもしれないのだけれども、この法律案が通ったあと日本列島改造論なるものの田中構想というものが明らかにされた。  そこで、いろいろとこの日本列島改造論の中で問題になっている点は、やはり土地政策をどうするか、地方自治体に対する負担、いわゆる住民の福祉というようなことがはたしてどうなっていくのであろうか。いま大臣は、きわめてけっこうであるということで、田中構想なるものを大いに推奨なさったわけなんですが、私もそれを頭から否定はいたしません。ですけれども、お答えがありましたように、高度福祉社会をつくり上げていくというためにはそれだけの内容というものがなければならない、そしてこれが成功する方向へと進められていかなければならない。その中の一つといたしましては、いまのように土地政策がない、地価対策も何も持っていない。公害に対しましても、公害をこうすれば散布しない、ほんとうに公害というものはこうすることにおいて発生をしないでいくのだという基本的な方針も方向も日本列島改造論の中では明らかにされていない。  それから、中核都市をおつくりになる。ですけれども、いま申し上げた点と点との線を結ぶ、そこをどうするのかということについての解明もなされていない。そういう具体的な問題はあとでやるのだというふうにお答えになるかもしれませんけれども、それではいけない。それでは今日まで公害によって締めつけられた、あるいは政府の拠点開発政策、地方開発政策によって痛めつけられた地方自治体あるいは地方住民というものは、私は納得しないと思う。いわゆるいままで問題であったそこを一つの基本的な点として、それを先に明らかにしていく、そういうことでなければ住民は納得しないであろうし、住民のコンセンサスがあり得ないものは、決して成功するものではないと私は考える。それらの点に対して、どのようにお考えになりますか。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはまことにごもっともで、私も同感であります。野党の皆さんがつけられました修正案、附帯決議を私も拝読して、私自体も非常に共鳴しましたから、文化連合都市というふうに私は言っておるわけでございます。  それで、一番の基本はネットワークをつくってあげなければ引っ越していかぬだろうと私は思います。やはり子供の教育の問題がありますから、引っ越せと言ったってなかなか引っ越せるものではありません。だからそういう工場再配置や文化連合都市をつくる一番のポイントは、労働組合の諸君との話し合いがうまくいくかどうか、そういうポイントであると私はにらんでおるわけです。労働組合の皆さんが魅力を感ずるような環境をつくってあげるということが政府考え方でなければならぬ。  それにつきましては、土地問題につきまして、これは建設省でもお考えでありますが、日本列島改造論の中にありましても、公共の福祉優先という思想があります。それから土地委員会というような発想も、あの本の中には書いてございます。そういうようなものをいずれ建設省当局でいろいろ検討して具体化してくるだろうと思いますが、何らかそういう公共福祉優先という思想によって、土地については強力な政策をやらなければいかぬと思いますし、それから、道路、交通、情報、そういうネットワークをつくって安心していけるということをつくることが労働組合の皆さんの御協力を得るもとでもある、ポイントはその辺にあるということを考えて、私たちも慎重に対処していくつもりでございます。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 私は、いまの中曽根大臣のポイントは正しいと思うのです。私は長崎なんですけれども、長崎市に三菱重工の造船所の下請が無数にある。これを約二十キロくらい離れたところに一カ所に集めた。そこへ労働者がどれだけ行ったか。前の工場から労働者がそこへ移ったのは五分の一程度なんです。行かないのです、労働者は。ですから、ほんとうに労働者がついていけるように魅力あるそうした都市づくりというのか、交通ネットワーク、それをつくり上げていくということでなければいけない。ネットワークだけでなくて、申し上げたように魅力ある都市づくり、地域開発というようなことが必要であるということを強く強調していきたい。比較的それらの点も軽視されている。比較的ということよりも、ほとんど問題にされていない。労働者というのはついてくるものであるというような、そういう考え方の上に私はつくり上げられているような気がしてなりません。ですから、新たな失業問題が発生する、雇用問題が発生する、そういうような点からこの問題を解決をしないと成功しないというような考え方すら私は持っておったわけです。その点、大臣が重要なポイントであるというような点に目をつけておられたという点については敬意を表したいというように思います。  それから、工場追い出し税というのを、これは工場再配置の法律案と附帯決議もあったわけですから、これに関連をして具体案を次の通常国会に御提案になるのだろう、こう思うのですが、いま伝えられているところでは、工場追い出し税というものが創設をされますと、税金を納めさえすれば出ていく必要がない、そういうことになるのかどうか、それも明らかでない。同時に、この税を徴収する、賦課する目的は何なのか、工場をほんとうにそこから出していこうとすることなのか、誘導地域に工場を持っていくために財源が不足するから目的税的にこの税を賦課していこうとする考え方なのか、それらの点も明らかではございません。ですから、いずれにこのウエートを置いていこうとお考えになっていらっしゃるのか。具体的には、申し上げたように、税を納めさえすれば出ていく必要はない、こういう形になりかねないわけでありますから、その点もひとつあわせてお答えをいただきたい。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 追い出し税という名前はあまりよくない名前で、何かたたき出すような冷たい感じのする表現で、私はそのことばを使っておらないのでございます。通産省としても追い出し税という名前は使わないようにと、私、指示しております。むしろ行政の妙味からいいますと、奨励措置のほうがうまいやり方だ、いやな感じのする何かひっぱたかれるような感じでやられるということは、行政としてはへたなやり方じゃないか、だから、積極的に出ていく、喜んで出ていく、そういうほうの措置のほうに私は重点を置いていきたいと思うのです。  それで、いまのような課税措置というものをどういうふうにやるか、いま事務当局で検討中でございまして、まだここで申し上げる段階に至っておりませんが、私の基本方針は、そういう喜んで出ていく奨励措置のほうに重点を置いた考え方でものを進めていきたい、そのように考えます。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 いまのお答えの中からも大いに議論が出てくるところでございますけれども、いずれまたその点をお尋ねをしていくことにいたしたいと思います。  それから、私の触れました土地政策、地価対策、この点は重要であるということは、これは言うまでもございません。労働者が行くかどうか、これと同じような比重でもってこの地価対策、土地政策というようなものがポイントにもなってこようかと思います。これは建設省が四構想なるものを出しておったようでございますけれども、ああいったようなことでは、これは問題にならない。ですから、工場再配置の所管大臣として、この点が一番悩んでおられるところでありましょうし、また、これを確立をしていかなければならないという点でもあるわけでありますから、それらの点についてお考えを聞かしていただきたい。これは物価の重要な問題でもあるわけでありますから、その点は、有田経済企画庁長官からもあわせてお答えをいただかなければなりません。
  73. 有田喜一

    ○有田国務大臣 御指摘のように、地価対策というものは最も重要な課題と思っています。これにつきましては税の面からとらえることも必要でしょう。また、あるときは、いわゆる公共的なものは、先行投資といいますか、もっと公共の面、公団をつくるかどうかは別といたしまして、そういう面から先行投資的にいくことも必要でしょう。いろいろな面をかみ合わしまして、これはやはりせっかく列島改造をやりましても、それが地価がはね上がって、そしてそれが地元住民が利益するというならともかくとしまして、途中のブローカー的なものが利益する、あるいはそれを投機的の材料に土地買いをやる、そういうようなことは厳として戒めて、そうして地価を暴騰しないような対策を講じることが私は必要だ、かように考えております。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 どうもこれほど重要な問題にそういう抽象的なお答えではなくて、もっと具体的なお答えができないものでしょうかね。その程度のことは、私はまとまっておらなければいけないと思いますね。ですけれども、その程度のお答えしかいまのところ出ないわけでございましょうから、またあらためてこれはお尋ねをしていくことにいたしたい。  今度は、フランスやイタリアがいまやっておるように、計画前の価額でなければ土地の売買はできない。これもやはり一つの参考にする必要があるのではないか。おっしゃるように、この土地ブローカーが、最近は銀行屋さんが、どんどん土地を買い占めていくわけでしょう。土地成金——高額所得者というのは土地成金ばかりなんですね。大企業なんというものが土地の値上がりによった収益というようなものが大きな経営上の部門を占めている。これではお話になりません。土地投資によって得た、いわゆる何といいますか、所得なんというものは、政界へどんどん流れてきている。だからして、これを押えることはできないのだとさえいわれておるというこの現状、そういう実態なんです。だから、この点に対しては、いま長官がおっしゃったように、これは徹底的にメスを入れる、そうして健全な土地政策、地価対策を確立をしていくということでなければならぬと私は思う。  次に、通産大臣に日中国交正常化の問題についてお尋ねをするわけですが、日中の経済関係の伸長というものをどのように見通していらっしゃいますか。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは先方の周国務総理あるいは毛沢東主席、中国側のお考えがどういうものであるかということによってわれわれは対応すべきものであって、われわれのほうからどうこう、ごうごうという発言は差し控えたいと思っておるわけでございます。しかし、いままで周総理にお会いした人たちの報告を聞いてみますと、国交を正常化すれば、日中間に経済交流の可能性はかなり大きく広がるやに推測しております。もしそういう場合が起こった場合に対応できるように、当方としても諸般の検討は加えておかなければならぬ、そういうわけで、通産省の中におきましては、それに対応するように諸般の検討をやらしております。  私といたしましては、もし中国側においてそういう御希望があるならば、われわれのほうも、それに対応いたしまして積極的に経済協力という関係に入っていきたい、積極的に推進していきたい、そういう希望を当方は持っております。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 十月に訪中する覚書貿易交渉ですね、これに対する政府の態度なんですが、従来はどうしても盛り込むことのできなかった、たとえば鉄鉱石であるとかあるいは原料炭であるとか食肉、この三大品目を今回は盛り込もうという意欲を持っておるように伝えられておるわけですが、政府の方針としてはいかがなんですか。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ日中間で国交が正常化しておりませんし、政府間のそういう話し合いが正式に行なわれておりませんから、覚書貿易という延長線でいくのであるだろうと考えておりますが、その具体的な品目につきましては、まだ私、報告を受けておりません。しかし、肉等については、いろいろな措置を通じて、できるだけ先方の希望をかなえたい、そういうことを検討しているように私聞いておりますし、そのほかの諸物資につきましても、円元決済という決済方法が円滑に決定すればかなりこれは推進されるのではないか、そういう期待を持っております。
  78. 中村重光

    中村(重)委員 いま私が申し上げましたのは、覚書貿易というものも政府とは無関係にいままで進められてきたわけじゃない。与党の諸君が交渉に当たってきているわけですから、準政府ベースでこれをやってきている。そしていままで申し上げたように、これは日本政府の意思によってこれを盛り込むことができなかった。したがって、今回、日中正常化というような方向に向かって、この問題をどうするのかということは重要な問題点であろう、私はそう思うわけですから、大臣の見解を実は伺ってみたわけであります。  それから、大臣は年内訪中の意図が伝えられているわけですが、この点に対してはどうなんですか。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 田中総理が訪中されまして、中国との間で国交正常化の道が開かれますならば、当然経済交流、経済協力という問題が出てくるかもしれないと私は予測しているわけです。日中間の非常に大きな仕事は経済交流ということであると私心得ておりますから、もしそういう状態になれば、友好貿易とか覚書貿易とか決済方法とか、今後の日本の経済協力のスケール、長期計画、そういうようないろいろな問題について先方の意見も聞き、こちらの見通しをつけたいと思っているわけでございます。したがって、田中総理訪中後、もしそういう機会があれば、私は使節団をつくりまして、先方へ行って、専門家同上の話をよくして、そしてわがほうの政策というものを固める一つの手段としていきたい、こういう考えを持っているわけであります。
  80. 中村重光

    中村(重)委員 大臣が十五時でもって退席をしたいという御意向のようでございますから、私の割り当て時間はもう若干あったわけでありますけれども、私どもの予定より早く退席をされるということでございますから、これできょうの質問は一応終わりたいと思っておりますが、日中正常化と関連をいたしまして、台湾との経済関係、これをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 台湾との関係につきましては、やはり自然の交流というものは、これは自然に行なわれるものであるだろうと私思います。経済、文化関係の交流というものはお互いに尊重し合いまして維持し、継続していく。将来においてもそういうことが可能であれば、そのほうが適当であると私は考えます。
  82. 中村重光

    中村(重)委員 もう少し具体的に伺っておきたいのです。  新聞に報道されるところによりますと、いわゆる逆政経分離というようなことでやるのだ、従来取りきめた借款であるとか、そういったようなものは、これは認めていくんだというようなことも伝えられているわけでありますし、それから最近、台湾との原子力発電のプラントについて輸銀の延べ払いを許可されたということが伝えられている。私は、この時期にこれをお認めになったという真意のほどがわかりかねているわけですが、これをなぜにお認めになったのか。それから延べ払いの条件、今後の方針ということをお答えをいただきたい。それから台湾に対するところの借款供与、海外投資の実情、さらに今後の方針、この点もあわせてひとつお示しいただきたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三菱の発電プラントの話は前内閣時代からの懸案でございまして、商談がととのうのに時間がかかっておりまして、延引してきたわけでございます。商談がととのいましたので、前内閣以来の経緯にかんがみましてこれを承認したわけでございます。  台湾に対しまするいろいろな経済指標等につきましては、通常の延べ払い輸出が三億四千万ドルばかりです。これは四十七年三月末。それから円借款が二百九十九億八千万円。これは四十七年四月末でございます。それから民間投融資が約八千万ドル、これは四十七年六月末でございます。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 大臣に対する質問はこれで終わりたいと思います。  あとは、大臣に対する質問が終わりました後に、政府委員に対しましてまだいろいろな問題についてお尋ねしてまいらなければなりません。これで私の質問は、保留をいたしまして、終わります。
  85. 藏内修治

  86. 石川次夫

    石川委員 通産大臣がおらないようでありますので、その間、経済企画庁長官に、実は質問の予定がなかったのでありますが、先ほど来の答弁を伺いましてちょっとふに落ちない点があるものですから、念のために伺っておきたいことが生じたわけであります。  それは、先ほど来通産大臣は、景気回復は徐々に、ゆるやかに上昇の気配をたどっておる、しかし、景気の下ざさえのために、これをより確実なものにするために財政投資をもっと積極的にやらなければいかぬ、こういうことを言われておったのでありますが、経済企画庁長官としては、景気は着実に回復をしておる、しかし物価への影響なども考えてというような慎重な発言がございまして、積極的な公共投資ということには何かあまり意欲的ではないような印象を私としては受けたわけなんであります。どうも若干のニュアンスの違いがそこにあるのではなかろうかという感じがいたしますので、その間の所見を念のために伺っておきたいと思うのです。
  87. 有田喜一

    ○有田国務大臣 どういうように誤解を招くか知りませんけれども、先ほどもあいさつの中にも申しましたように、この転換期における日本の経済は、いままでややもすると生産第一主義あるいは輸出第一主義、こういう方向がとられておったですね。そこを今回は、社会保障はもちろんのこと、環境の改善も加えた広い意味の福祉優先、そして国際協調、こういう方向に転換していきたい、こういうごあいさつを申したわけですね。その基本線にのっとりまして景気の回復はだんだんと快調に回復、まあ堅実な足取りを迎えつつありますが、私は、それはいままでのように民間設備投資、ことに重化学工業が牽引力となって景気の回復を引っぱるのではなくて、むしろ公共投資——財政金融ということを言いましたが、公共投資を通じてこの景気の回復に向かうのだ、また、そういうことでいかなければならぬ、こういうことを申したのです。したがいまして、環境改善を加えた公共投資というものは、これは財政的に相当の幅を占めなければならぬ、かように考えておりまして、そうなった結果、日本の景気が堅実に回復して、徐々に輸出は減退し輸入がふえる、やや輸入がふえて、そして国際均衡もだんだんととれていくだろう、こういうような見方です。  そこで、私はいまの推移を慎重にながめながら、いざというときには適切な措置を講じて、そしてこの景気回復を堅実なものにしたい、かようなことを申したわけですが、また、そういう考えでいまおることをはっきり申し上げます。
  88. 石川次夫

    石川委員 私は、ずっと前に、景気の見通しの問題で前経済企画庁長官といろいろ話をしたことがあるのですけれども、私の見通しは、いまになってみて誤っておったということを反省をいたしております。  それは、民間の景気の回復が私が思ったよりは意外に早いテンポで回復しつつある。もちろん、石油化学とか大装置産業関係での需給のアンバランスというものはいまだに解消はしておりませんけれども、民間消費というものの下ざさえ、あるいは公共投資というものの成果も、これは私認めるにやぶさかではございません。そういうふうなことで、案外景気の回復は早いなという感じがしたのでありますけれども、そこで、民間設備投資が主導型にはなっておらないということは、私は正しいと思うのです。しかしながら、民間設備投資型でなくても、四十年とか三十六年の不景気の状態に比べてみますというと、非常に特徴的な差が四十六年の不況にはあったのではないか。それは何かというと、在庫投資がこの昭和四十年あたりは四%くらいプラスになっておるのでありますけれども、昨四十六年度は企業が非常に弱気になって、在庫投資というものが六六・二%のマイナスになっている、減少になっておる。したがって、在庫の循環投資ということがこの景気のささえというものになっておるのであって、需給のアンバランスということがはたしてどの程度までのアンバランスであったか。われわれが思ったほどのアンバランスではなくて、在庫投資を非常に消極的にしたための不況というものが相当の影響を与えているのではないか。したがって、この前の不況のときは——その次の年の三十七年は一三%経済成長を見ております。それから、四十年の次の四十一年、これは一二%経済成長が伸びるということで、不況の年の次は相当な力でもって伸びておる。まあ民間の設備投資というもので経済成長、景気を引っぱるというふうな力は多くを期待できないかもわかりませんけれども、この在庫投資というものが循環していくということになれば相当の勢いで景気は上昇するのではなかろうか、こういう感じがしてならないわけなんです。  そうなりますと、ゆるやかに上昇をしたが、しかしなお通産大臣の言うように、さらに刺激的な意味で公共投資をするというような必要性がはたしてあるのかどうか。私は、福祉というもののギャップを重視して、これに相当の投資をしなければならぬということは認めるのでありますけれども、景気を刺激するための公共投資という必要があるだろうかという点について相当疑問を感じておるわけです。これはいま少し私も検討しなければならぬと思っておるわけでありますけれども、すでに景気を押えるということのために、ほんとうは利子を上げたい、公定歩合を上げたいという意向が銀行のほう、金融筋では出されておるけれども、それはまた国際収支の関係でちょっと簡単にはできないということになって、日銀内にはインフレ抑制策としての円再切り上げ論も出ておるというような新聞記事も出ておるし、ポジション指導もかなり強化されつつあるというような状態でありますので、景気を刺激するということがはたしてこの段階で必要なのかどうか。私は、公共投資そのものを否定するのではなくて、その内容いかんによると思うのでありますが、景気を引き上げるための大幅な公共投資の必要性というものがあるかどうかということについては相当疑問を感じておるわけです。この点、企画庁長官はどうお考えになっておりますか。
  89. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、国際収支のアンバランスといいますか、これは早く黒字幅を縮小するように努力しなければならぬ、かように思っております。  そこで、景気の見通しですが、大体の見通しは先ほど来申しておるとおりでございますが、実は、この六月、七月というものが海員のストライキなどによりましてちょっとアブノーマルであったために、ここにはっきりとかくかくだということがいま言えない。私のほうは、もう少しその推移を見通しながら善処したい、こういうことを申しておるわけですが、八月のはっきりした統計が出ますと、もう一つはっきりと、日本の景気はかくかくになりますということが言えると思いますが、そこでいますぐ景気刺激策をやるか、いやそれは要らないかというような論議は、いま避けたいと思うのです。しかし、大体のいままでの足取りからいえば、堅実に伸び、しかも七・二%という成長率が、どうもどこから考えても八・五%あるいはこれ以上になりはせぬか、こういうような見通しもつくものですから、いま直ちに景気刺激策をかくかくにやるのですとか、あるいはそれは不必要だということは、私はこの際避けたいと思いますが、大体の見通しからいって、堅実な歩みで回復しつつあるということは大体申し上げることができる、かように思うのです。
  90. 石川次夫

    石川委員 実は、これは通産大臣が来て質問をしようと思っておったのでありますが、確かに六月、七月は海員ストの関係で輸入が減っておるというようなことは考慮に入れましても、七月は大体九億九千万ドルの貿易の黒字、総合収支では四億一千万ドル黒字、こういうような大幅な黒字を生んでおるわけです。ただ成約を見ますと、大体五月、六月というのは、大手十四社の関係だけでありますけれども、大幅に減っておるというようなことはあるわけですが、いずれにいたしましても、この輸出入のバランスをとるという方策については、これは通産大臣の関係ですからあとから質問したいと思うのでありますが、景気の刺激をすることを通じて——調整インフレということについても質問したいと思ったのでありますけれども、このインフレを促進するというふうな策はもってのほかだというふうに私は断言してはばからない。それどころではなくて、物価というものは、六月現在で四・四%消費者物価は上がっております。去年は、御承知のような情勢のもとに卸売り物価というものは若干下がったというふうなこと、日本はずっと六〇年代は年率一・三%くらいしか卸売り物価というものは上がっておらないというようなことであったのですが、調整インフレというものをやれば当然卸売り物価は大幅に引き上げられるということにならざるを得ない。それで現在のところは四・四%でありますけれども、この消費者物価が昨年同月比四・四%というプラスが、これから私鉄、バス、大学の授業料、それから東京瓦斯、さらにまた消費者米価引き上げというふうなものを控えて、とてもじゃないが五・三%という最初の見通し、これではおさまるまいという感じがしてならないわけなんです。この点、企画庁長官はどうお考えになっておりますか。
  91. 有田喜一

    ○有田国務大臣 物価問題は非常に大事でございますが、先ほども言いましたように上半期、六月末までは比較的順調であった。あれだけ公共料金が上がったにもかかわらず、比較的野菜等の関係は順調であった。今後の問題でございますが、できるだけ物価に十分な注意を払って、そして五・三%という、あまり数字を言うのは私はきらいなんですけれども、というのは、いままでそのとおり当たったことがないから、あまりそういうことを強調するのはどうかと思いますけれども、しかし、国民の多くの人は物価の安定を非常に期待されておりますから、その国民の要望に沿うためにも物価の安定に全力を注いで努力したい、こういう決意でおるわけでございます。     〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕
  92. 石川次夫

    石川委員 経済企画庁長官、けっこうでございます。  通産大臣がお見えになりましたから、いまの質問の大体繰り返しみたいなこともございますけれども、私は、経済企画庁長官の意見と通産大臣の意見が微妙に食い違っているような感じがしてならないのです。ということは、いまも質問いたしたのでありますが、景気は着実に回復をしておるという見方で、それ以上景気刺激という必要性はないかのごとき印象を受ける答弁を経済企画庁長官はされておる。ところが通産大臣は、ゆるやかな上昇はしておるけれども——これは装置産業なんかの関係では、需給のアンバランス、ギャップというものはまだまだ解消はしておりませんから、一部の大企業にはもちろん不況はございましょうけれども、全体としてかなり早いテンポで景気は回復しておる。その原因は、私は、去年の在庫投資というものが異常に低かったということの立ち直りが相当大きな要素になっておるのではなかろうかと考えておるわけです。実にマイナス六六%という落ち込みがあったわけです。でありますから、設備投資の牽引力というものはなくても、在庫調整というものの循環作業でもって景気は相当回復するのではないか。これは私は、以前には見落としておった点なんでありますが、そういう点で物価の動向なども懸念をされて、調整インフレというものを徹底的に批判をするという新聞記事が相当出ておるわけです。  きょうは物価の問題について申し上げる時間がございませんけれども中村委員の質問に対しまして、調整インフレということは絶対言っておらないとおっしゃっておるわけなんですけれども、景気を刺激するために大幅な公共投資をやるということが調整インフレとつながった誤解を与えたんではなかろうか、こういう感じが——誤解あるか、正解であるかわかりませんが、日商の会頭である永野さんは、調整インフレをだいぶ歓迎する、こういうふうなことも発表されております。  それから、前に永野日商会頭は、資源の備蓄とドル買いの見返りに必要な円は日銀券をどんどん増刷すればそれでいいんだという、きわめて暴論に近い放言をしておった。そういうことが背景で、インフレ待望論というものは産業界には当然あるわけです。たとえば賃上げの負担を軽くする、あるいは自己資金の少ない運営費というものを用いて多くの企業は運営されておるわけですから、インフレになればなるほどその負担は相対的に軽くなるというふうな見込みで、どうしてもインフレ待望論ということにならざるを得ない。その財界の要望に沿った景気刺激策ということでこれは調整インフレ論と結びつけられたんではないか、こういう感じがしてならないわけなんです。この点はきっぱりと御否定になるかどうか、ひとつあと一回、念のために伺いたいです。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 きっぱりと否定をいたします。インフレと名のつくものは、あらゆる名前のインフレと称するものについて私は反対でございます。ただ、昨年以来の不況をいかにして脱出していくか、そういう過程にまだあるのでございまして、そういう点についてもう少し刺激をして内需を旺盛にする必要はある、そう私は感じておるのです。企画庁長官と考えがそう変わっているとは思いません。大体考え方は同じで、海員ストの影響で少し波乱があったので今後の推移を見たいという表現を企画庁長官もいたしております。私らのほうは、大体もう一息アクセルを踏む必要があるという点において企画庁長官より多少積極性を持っておりますけれども、大体事態の認識においてはそう変わっておるものではないし、住宅あるいは公共投資方面において、特に社会資本の充実の方面において自民党がもっと施策を講じなければならぬという点においても一致しているわけでございます。私が大体のんきな顔をして、彼が渋い顔をしていますから、考えは同じでもそういうふうに受け取られるのではないか、私はそういうふうに思います。
  94. 石川次夫

    石川委員 やはりどうも微妙に違うのです。微妙に違うのですが、それはあとでよく調整をはかっていただきたいと思います。  景気の刺激がやはり必要な段階だということをおっしゃっておるけれども、私はその必要——もちろん公共投資それ自体を私は否定しようとするのではございません。それはいま経済白書の中に書いてある福祉のギャップ、国際収支のギャップ、それから需給のギャップというふうな三つをとらえて、これをどうするかということのいろいろなことが書かれておりますけれども、最終的には福祉のギャップというものは何とかしなければならぬ、こういうことになっております。  これはいま申し上げる必要はないのでありますが、日本とイギリスはほとんど同じような国民所得になったわけなんです。同じ国民所得になったのですけれども、その中身を見ますとたいへんな違いがあるわけであります。たとえば、下水道はイギリスは九〇%、日本はわずかに一四%、公園も二・四平方メートルに対してイギリスは二二・八平方メートル、社会保障に至っては日本の三十二・七ドルに対しましてイギリスは二百一・六ドルという比較にならない差がある。したがって、同じ国民所得といっても、過去の蓄積が向こうにはあるとはいいますけれども、非常な福祉の低さというものを見出さなければならぬと思うので、どうしてもこの福祉のギャップというものに重点を置いた公共投資優先ということにならざるを得ないし、また、先ほど来そういうふうな趣旨のお話がございましたが、その点を信頼をいたしまして、何としてもこの福祉のギャップを埋めるということを重点にして来年度の予算はお考えをいただきたいということを強く要望しておきます。  そこで、「日銀内に円再切上げ論」というショッキングな見出しでの新聞記事がきのう出ておったわけです。これは景気の回復が意外に早いテンポなので公定歩合を引き上げるわけにいかぬ。したがって、ポジション指導だけをやる。しかし、そのほかにやはり円の再切り上げ、クローリングペッグだろうと思うのでありますけれども、そういうことをやらなければならぬという意見がぼちぼち出始めておるということについて一体どうお考えになっておるか。これは政府部内ではございませんけれども政府とは不離一体の関係のところでこういう意見が出始めておる。  時間がありませんから私の意見を申し上げますと、日米の貿易関係では、私は、アメリカのほうから相当強い要望が今度の会談でも出されるのではないかと思っておりますけれども、日米貿易評議会のスチット理事が言っておったように、七一年におけるところの日本アメリカからの輸入は四十億ドル、第三国のアメリカ系の子会社からは三十九億七千万ドル、それから十億ドルのアメリカ製品というものが第三国に出ておる。それから旅行とか船舶とかあるいは保険とかのサービス業でのアメリカから見ての対日黒字が四億五千万ドルあるというようなことで、決して一方的なアンバランスな形ではないのだということを強調されておる方がアメリカにもいるわけです。  それとあと一つは、大手十四社の成約状態を見ますと、五月は前年同月に比べて二二・四%のマイナス、六月はわずかでありますが三・九%のマイナス、七月も、成約状態はまだはっきりいたしておりませんけれども、相当マイナスのようでありますから、先行きは相当私は輸出というものは減るのではなかろうか、こういう感じがしておるわけであります。そういうことを踏まえて、今度の日米会談で円の再切り上げその他の問題が出た場合には、厳然とした態度で何でもかんでも円の再切り上げは食いとめる、こういうことで対処してもらわなければならぬと思うのでありますけれども、通産大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 全く同感であります。新聞で日銀当局が円の再切り上げに賛成とかなんとかいう記事を拝見いたしましたが、まさか日銀がそんなことを言うはずはないので、もし万一言ったとすれば無責任な話だと私は考えます。日銀に聞きましたらああいう事実はない、そういうことでございましたので当然のことである、そう思いました。  それからアメリカの貿易バランスの問題は、多国籍企業の収支、第三国を通ずるいろいろな関係というものを見ますと、これはかなり根強い腰を持っておるのでありまして、単に貿易バランスだけを二カ国間だけで見るということは必ずしも当を得たものではない、御指摘のとおりであるだろうと思います。われわれは円の再切り上げを防止するために全精力を集中いたしまして、ハワイ会談はもちろんその他の機会におきましても努力してまいるつもりでございます。
  96. 石川次夫

    石川委員 円の切り上げを阻止することのこれは正道ではなくて、ほんとうに輸出入のバランスをとるということから出発をしなければいかぬと思うのでありますけれども、実は日本の海外資源開発ということがこれからたいへんな課題だということは、いまさら通産大臣に申し上げることもないと思うのです。自給力の一番高い銅ですら現在わずかに二四%の自給力ですけれども、これがあと十年もたつというと、一〇%ぐらいになってしまう。ほとんどの重要資源というものは海外に依存しなければならぬし、それを全面的に海外にだけ掘らせるというのではなくて、日本自体がやらなければならぬ。     〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕 三〇%ぐらいの目標で日本自体の手でこれを開発していくということでなければ、確保するということでなければ、バーゲニングパワーにならぬということになることは明らかだと思うのです。  そういうことで、この海外資源の開発とも結びつけて、いまの外為会計というものを二つに分けたらどうかという提案をわれわれもしたわけでありますけれども、つまり第二外為会計ということで相当熱心に田中さんが推進をはかったのでありますが、とうとうこの前の国会では日の目を見なかったわけであります。私は意見はあえて申し上げませんけれども、この第二外為会計という構想は次の国会で日の目を見ることになるのですかどうですか、その点を伺いたいと思うのです。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 目下のところは、円資金を輸銀あるいはそのほかに貸しまして、その円資金をもってドルを買って、そして外貨を活用する、そういう方法で処理していく予定でございます。その処理のぐあいがどういうふうに運行していくか様子を見まして、第二外為会計の問題は考えてみたいと思っております。
  98. 石川次夫

    石川委員 私は、輸銀預託ということになったときに、田中さんの最初の構想から見るとたいへんな後退をしたなということで、これだけではいけないのではないですか、あなたが総理大臣になられたら、ぜひ第二外為をやられたらどうですかと言った。実を言うと社会党自体としても意見がきまっておるわけではございません。私個人の意見でありますけれども、何が何でもこの円の再切り上げは阻止するという一面と、それから海外の資源開発——備蓄の問題については、私、若干ものによりけりでありますから意見があるのでありますけれども、そういうことの関連でぜひ考えてみたらどうかという意見を強く持っておるわけであります。この点は要望として申し上げるにとどめます。  それからあと三、四点あるのでありますけれども、これは実は前の国会田中通産大臣とある程度の約束をし、また、ある程度前向きの善処をするという約束を取りつけてあるものについて、念のために私は結論だけ申し上げたいと思うのです。  その一つは、いまの地下資源の会社、非鉄金属鉱山というのは炭鉱の二の舞いになるのではないか、こういう懸念を企業ではもちろん持っておるでありましょうが、従業員も非常な危機感を持っておるわけであります。そこで、これを何とか前向きに、炭鉱の二の舞いにしないということにしないと、海外の資源開発の技術温存すらも不可能になってくる、こういうことを十分に配慮して善処してもらわなければならぬということの具体策といたしまして、一つは海外資源開発のための成功払い制度、これは一〇〇%成功払いというわけにいかぬでありましょうけれども、相当程度の成功払いという制度をひとつ積極的に認めていく方法をとらなければいかぬのじゃないか。ドイツのウランでとられておるように、ある程度の成功払い、それが成功払いでもって成功して払う時期になって、その金の倍をそれから六年間の間に使うということになれば、その成功払いで返すべき金も返さなくていいというようなきわめて積極的な施策が、ドイツのようなやはり日本と同じように資源の足りないところではとられておるわけです。したがって、日本はそこまでいかなくとも、とりあえずウランと石油というエネルギー資源だけではなくて、金属鉱山がまさに危殆に瀕しようというようなときには、そういう形での前向きの政策というものが必要になってくるのではないかということが第一点であります。  それからあと一つは、鉱業法第百九条によりまして無過失賠償責任というものがあるわけです。笹ガ谷あるいはまた土呂久などを例にとりましても、この因果関係というものは全然はっきりしない。安政年間とか慶長年間からずっと続いてきた鉱山の公害がいまきている。その因果関係を証明しようと思ってもなかなか証明できないというと、たまたま大きな企業がそこでやっておったというようなことで、そこへ全部無過失賠償責任というものが過去にさかのぼってかぶっていく。保安対策は、私は五年間の期限でもって絶対にやるべきだというふうに思っておりますけれども、この無過失賠償責任をうしろ向きにいつまでもやらせるということは酷ではないか、これでは、金属鉱山というものがほとんど危殆に瀕しておる現状であって、しかも、円の再切り上げということになれば、全面的に崩壊いたします。こういうような状態でありますので、この従業員を路頭に迷わせないということのために、資源の確保のために、海外資源開発の技術を確保するということのために、どうしても私は無過失賠償責任の——基金制度というものは一応いま民間であるわけです。これに対して政府が援助するというような形でこれを制度化して、あまりうしろ向きな心配をかけないで済ますような配慮というものが必要なのではなかろうかということについての前向きの政策というものをお約束をしておったわけでありますが、それはどうなっておりましょうか。この次の国会で何らかの対策をお考えになっておりますかどうか、それを伺いたいと思うのです。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 第一点の成功払いの点につきましては、ウランにつきましては、本年度から金属鉱物探鉱促進事業団において成功払い融資制度を実施することといたしております。その他の金属鉱種につきましても、来年度から金属鉱物探鉱促進事業団において海外探鉱に対する成功払い融資を実施できるように予算要求を行なう考え方でございます。  それから鉱山対策でございますが、来年度から通産省といたしましては金属公害事業団というものをつくろうと思っておりまして、この金属公害事業団において、事業団による直轄の公害防止工事の実施、鉱業権者に対する融資等の公害防止助成事業、それから第三に公害防止工事費の積み立て等を行なうようにいたしまして、対策を講じたいと思っております。
  100. 石川次夫

    石川委員 石油とウランは、もちろんエネルギー源として基本的に重要な物資でありますから、これは当然考えられてしかるべきだと思うのでありますけれども、私は、金属鉱山といえども、これは産業用の資源というふうにとらえることはできないと思うのです。われわれの生活にかかわる問題であります。日常生活にきわめて関係の深いものであって、これが全面的に日本の国内でもって崩壊をしてしまうというようなことはどうしてもやってはならないということで、ぜひ積極的な前向きの姿勢で、炭鉱の二の舞いにならぬような形での対策をいまからひとつ考えていただかなければならぬ、こう思っておりますので、これを強くお願いをしておきたいと思います。  それから、あと一つお話をしておったのは日本の大気汚染の問題でありますが、これをこのままほうっておいたらどこの電力会社も全部ストップになってしまう。〇・五PPMというふうな約束をしておりますけれども原油のなまだきだとか、あるいはまたナフサをそのままたくとかいうふうな案も苦しまぎれに出ておるようであります。四日市裁判のあとにそういう方法も出ておるようでありますけれども原油自体をたくとか、ナフサをたくとかいうふうなことでは、ナフサの需給関係などが逼迫して相当な値上がりをもたらすというようなこともなしとしない。これは非常に拙劣な方法であります。やむを得ない方法でありましょうけれども、拙劣な方法であります。したがって、われわれとしては排煙脱硫をどうしても強化しなければならぬ、これを徹底的にやらなければいかぬ、こう思うのでありますが、工業技術院長も見えておりますけれども、一応五カ年でありましたかの大プロジェクト研究として完成したのだ、終わったのだ、こういうようなことでそのまま話が進んでおるわけであります。しかし、これは乾式、湿式、あるいは半乾、半湿式というようないろいろな方法があって、私は五通りか六通りぐらいの方法かなと思っておったのでありますが、よく調べてみると三十通りから四十通りもあるわけですね。相当いろいろな種類の排煙脱硫の方法というものがあるわけで、その中の二、三、実験的に一応試験が完了したということで済ましておるような感じでありますけれども日本の場合は西暦二〇〇〇年になりますと、日本の人口は半分以下になるという説が相当有力になっている。これはもちろん公害だけではございません。食品添加物のこともあるし、あるいは農薬の公害というふうなこともございます。いろいろなことはそれぞれの立場で違いますけれども、それぞれの立場で、日本人は一体西暦二〇〇〇年になったらどうなるのだというようなことが出ておるわけです。  その中の重要な一環としての大気汚染を防止する方策として排煙脱硫の研究開発はもう済んだのだということでは、私は済まされないと思う。どうしてもマンハッタン計画に匹敵するような大規模な研究開発をやるのだということでなければにっちもさっちもいかない事態というものが必ず招来する。そういうことを考えますと、排煙脱硫の研究開発をもっと積極的に前向きにやる。あるいはマスキー法なんかも積極的に——これは窒素酸化物などというものは非常にむずかしいと思うのです。むずかしいと思うけれども、これもやらなければいかぬ。そういうふうな研究開発と、それから研究開発と、同時に設置義務というものを相当私は強化していかなければならぬ必然性があると思うのです。こういう点について大臣の御所見があればひとつ伺いたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 排煙脱硫の規制に関する石川委員の御発言は非常に傾聴に値するものだと私考えております。通産省といたしましてもこの問題は非常に重要視しておりまして、今後さらにこの問題を取り上げていくつもりでございます。現在いろいろな方法がやり方として成立しておりまして、乾式の方法とか湿式の方法とかいろいろありますが、現在実施中のものとして東京電力の鹿島火力、これは四十七年九月から実施いたします。中部電力四日市、これは四十七年の二月から使用しておる。関西電力の堺火力、これも四十六年九月から、関西電力尼東火力、これは石灰石膏法というのだそうですが、この三月からやっておる。いろいろなこの経験をよく検討いたしまして、さらにこれを改良、前進させる方向に積極的に施策してまいるつもりでございます。いろいろ技術的方法については工業技術院の院長にお尋ねいただきたいと思います。
  102. 石川次夫

    石川委員 非常に良心的な御回答なのでございますけれども、実はビッグプロジェクトとしての研究年度は終わっちゃっているのですよ。終わっちゃっているからこれでもう一段落でございますという姿勢になっておるようなので、それはきわめて官僚的だ。これはもっともっと研究開発を——日本の場合は、御承知のように単位面積当たりのエネルギーの消費量というのがアメリカの十倍以上といわれておるわけでございますだけに、これはよほど真剣に取り組まなければ将来おそるべきことにならざるを得ない。ただ単に公害の問題だけでは——公害の問題もございますけれどもエネルギーをいまの契約でいったら全部とめなければならぬということにならざるを得ないというようなこともございますから、ぜひこれは、一応研究段階は終わったのだということで済ますべき問題ではない。たとえば鹿島その他でやっております排煙脱硫にいたしましても、石膏、出てくる副産物の処理をどうするかという問題は全然解決していないのです。こういう問題を含めて、その廃棄物の処理も含めて、ぜひとも大がかりな研究開発を積極的にやり、それとあわせて何とか工業化の有利な方法というものを見出して、設置義務を強化するということはぜひとも現内閣でやってもらわなければならぬ緊急の課題だということを強く申し上げておきたいと思うのです。  それから、まだほかにたくさんあるのでございますが、きょう私がちょっと耳に入ったことで念のために——企業局長いらっしゃいますか。これは通産大臣でもよろしいのでございますけれども、千葉市にニュー・ナラヤというビルができている問題であります。これは最初は中央から三越が来るということに抵抗して地元の企業の方々がみんなでこれを阻止するということで手をつないだ結果、ニュー・ナラヤは地元の業者として発足をするということになったのです。これがふたをあけてみると、最近になって三越と提携をしてニュー・ナラヤ・三越という名前に変わってしまったわけですね。しかも、これは三カ月以内でなければ広島市でやっているように行政訴訟はできないので、三カ月たってからそういう相談をして、訴訟のできないような形において内容を変えてしまった。だから審議会において設置をした内容とは全然変わってしまっているわけです。  私は、中小企業の問題もいろいろ申し上げたいのでありますが、一番の問題は、中小商業の問題と、それからさらに下請の問題というのが中小企業の問題としてはたいへんな課題だと常々考えておるわけですけれども、百貨店法に基づいて認可をされたのが三カ月たって訴訟のできないような状態にしておいて、そこで中身を変えちゃって審議したときと全然違う内容でもって三越というものが資本も入れ、それから役員も送り込んで発足をするということは、私は完全なペテン行為だといっても差しつかえないと思うのです。これに対しては、さすがに通産省のほうでも事態を重視いたしまして、ニュー・ナラヤとそれから三越に対しまして勧告をやっております。社名を申請時どおりニュー・ナラヤに戻せ、これは直しておるようであります。それから三越からの資本全額を引き揚げて申請時どおりに戻す、三越からの経営者を全員引き揚げて申請時どおりに戻す、こういうふうなことにするのが——私は、申請のときの内容の変更というものを一方的にやるということは許されないことでありますから、きわめて当然のことではないかと思うのです。こういうふうなことが、地方でもってやたらにこれが先例となって行なわれるということになれば、たいへんな不満を地元の中小商業に与えざるを得ない。契約違反——契約違反というよりは、私は道義的な問題でもあるし、法律的な問題でもあると思うのでありますけれども通産省は、以上のような勧告をニュー・ナラヤ並びに三越に責任をもって実現をさせる、こういうことをお約束をしていただかなければ、たいへんな紛糾した問題になるのではないかという心配をいたしておるわけでありますが、御所見を伺いたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中小企業の保護というのは、われわれが最大眼目の一つにしている政策でございます。消費者保護と同じように重視している政策でございまして、あの問題につきましては、私も関係者に対しまして、認可条件どおりに戻しなさい、つまり三越という名前は使わないということ、それから重役の派遣、資本参加、そういう面において認可条件のときのように引き揚げる、そういう方向でいま指導しております。
  104. 石川次夫

    石川委員 ほかにいろいろ質問ございますが、私の約束が二十分まででありますから、中途半ぱになりますのでこれで終わって、あらためてまた質問したいと思います。
  105. 藏内修治

  106. 川端文夫

    川端委員 私の質問予定も時間的に制約を受けておりますので、きょうは一、二点だけ重点的に中曽根大臣に御質問申し上げたいと存じます。  まず最初に、最近新聞等に伝えられていることでありますが、中曽根通産大臣が、田中総理大臣が日中国交回復の話し合いができれば中国に行きたいという意思を発表されているやに伝えられているのですが、それは真意であるかどうか、あるいは真意であるとすれば、どういうことを当面しようというお考えで中国訪問を考えられているのか、この点も承りたいと思います。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はそういう希望を持っております。ただし、これは先方の御意向にもかかわることで、先方がもし希望なさるならばと、そういう条件つきであります。目的は、日中国交正常化に伴いまして日中間の経済協力の太いパイプを正規につくろう、そういう考えに立って基本的な話し合いをいたしたいと思っているわけでございます。
  108. 川端文夫

    川端委員 大臣のいまの御答弁では重ねて質問するほどのことはないのですが、しかし新聞の伝えることやうわさ話ではありますけれども、日中国交回復をされれば、ある意味の経済協力を大型に日本政府考えているというまことしやかな話が伝わっておるわけです。そういうことが構想として政府部内にあるのかどうか、あるいは中曽根通産大臣も経済協力意味における何らかの案を準備されているのかどうか、この機会にできるだけの真相を御発表願いたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在すでにいろいろ経済交流はあるわけでございますが、これは国交を正常化すればやはり政府のオーソライズされた正規のものとして、経済交流、経済協力というのが行なわれるのが国際間の正常な姿であるだろうと思います。その間には通商航海条約の問題もありますし、あるいは貿易協定が出てくるかもしれませんし、あるいは国によっては経済協力協定という可能性もなきにしもあらずであります。そういういろんな諸点について中国側に御希望があれば、われわれもそれに対応して積極的に協力いたしたい、そういう考えを持っておるということでございます。
  110. 川端文夫

    川端委員 いま大臣の御答弁になっているようなことはいままで私どもも要請をしてきたし、要望も続けてまいったわけでありますが、いま伝えられているのは、こういう場所でこのことばが適当かどうか知りませんけれども、言うならば、中国側が終戦処理の姿の中に賠償留保をかりにしたとしても、日本はそれにかわる膨大な経済協力をせなければならぬのであるからたいへんだということを自民党の反主流派といわれている代議士の中から——私はタカ派と見ているのですが、反か何かは別として、こういう人らがいわゆる公の場所とはいえないかもしれませんけれども、かなり人が集まった中で話しておることばを私耳にしたわけです。したがって、そういう構想があるのかないのか、あるいはそういうこともある程度準備して中国に渡ろうとされているのかということをお尋ねしたかったわけです。その点も、もう一ぺんお願いします。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この点は田中総理と周総理の話し合いの中でどういう話し合いが行なわれるか、その結果を見てわれわれは考え、また先方の希望もよく検討してみる、そういう段階を経た上での考慮の問題でございます。ただ、われわれとしては、いますでに経済交流はあるわけでございますから、それをさらに促進してパイプを太くしていくことが両国のために適切である、そう考えておりまして、そのような希望を持っておるということでございます。
  112. 川端文夫

    川端委員 外交上の微妙な時期でありますからこれ以上深入りはしませんけれども、先ほどのを繰り返して申しますが、自民党の現役代議士がそういうことをまことしやかに、中国と国交が回復されればたいへんなことになるのだ、経済的にたいへんなことになるのだということを言う人がおるということだけは十分留意されて——中国側は、そういうこまかい野心を持って日本との国交回復を望んでおいででないという信頼の上に立って私どもは国交回復を促進したい、援助したいという考え方でものを見守っておることも申し上げておきたいと存じます。とにもかくにもこれは自民党なんですよ。自民党の議員さんがそういうことを平気でしゃべっておる人がおるということだけは間違いない。私がこの耳で聞いておることだけは申し上げて御参考に供しておきたいと思うわけです。これ以上この問題では深入りいたしません。  ただ私は、時間の関係上多くを申しませんけれども、七〇年代の発想の転換ということばの中に——ことばとしてはいろいろ多くの人々が過去においてもいろんなことばを使ってきております。たとえば八年前に佐藤総理が総裁選挙に臨んだ場合においても、経済の高度成長のためにはひずみを是正する、あるいは二重構造を解消するという発想のもとに総裁選挙を戦われたわけであります。自来いろんなことばが使われておりますが、先ほどから両大臣の所信をいろいろ承っておる中に、はたしてあのことばを言われるならば、それだけ国内体制の上に準備あってのことばかどうか。たとえば貿易収支の問題に対して、マクロ的には日本がドルをため過ぎて困っていることも事実ではあるけれども、貿易輸出の鈍化というものを歓迎するがごときことばを先ほど経済企画庁長官はこの場所において述べられている。マクロ的、統計的には、私どもはやはり国際収支の均衡というものが大切であることはわかるけれども、一昨年まで日本の通産行政というものは輸出奨励であったわけであります。その輸出奨励に乗って今日まで協力し努力してきたすべての人々を、マクロ的な国のそういう発想の転換でそれらの人々を切り捨てていいということばであってはならぬと思うのですが、この考え方はいかがですか。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 貿易というものは元来拡大均衡をすべきものであって、縮小均衡をとるべきものではない、こういう基本観念に私は立脚しております。問題は均衡ということが大事なので、拡大ということが悪いということなのではない、そういう基本方針に沿って前進していきたいと思っております。
  114. 川端文夫

    川端委員 まあ拡大均衡ということばならば、鈍化を歓迎するということになれば、鈍化の陰に鈍化させられている業種もあるということが事実として理解できるはずだから、これらに対してどういうことをしてやらなければならぬか、これをいわゆる見切り発車というか、見捨てていくのかどうかという問題をどのように大臣はお考えでしょうか。先ほど経済企画庁長官は、輸出鈍化を非常に歓迎するようなことばでものを言われたように私は受け取らざるを得なかったのですが、大臣はそういう問題に対して、なるほど当面の問題は、日本の輸出進出に対していろいろ批判はあることも知らぬわけじゃないけれども、一方に鈍化の中に泣いておる人々に対して、どういう手厚い処置ができるのか。言うならば、政治というものはマクロ的に統計上の議論だけしておればいいのではなくて、一人の人をも泣かせないということが大事じゃないかと思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 拡大均衡という考えに立ちますと、均衡ということばは今日は非常に重点が出てきておりまして、均衡を達成していくためには、あまり出過ぎるものは少しテンポをゆるめてもらうということが大事であると思います。しかし、いまの非常に鈍化して困っているというものにつきましては、当然政府としてもいろいろめんどうを見てあげることは大切であると思います。拡大均衡という面を考えて非常に大事なことは、輸入の増大ということだろうと思います。輸出、輸入ともに増大さしていく、これが世界経済が発展していくもとでございますから、そういう基本方針を堅持してまいりたいと考えております。
  116. 川端文夫

    川端委員 その点に関して、私は輸入の拡大等によって拡大均衡をとることに反対の立場で議論しているわけじゃないのです。しかしながら、今月の十五日の新聞でありますが、この新聞の中にも明らかにしているように、輸出業種の中に、特に中小企業輸出の中に、昨年度の比において五割なり六割の減をもたらしている業種が幾つかここにも書いてあります。時間の関係上こまかく申しません。  そこで私は突っ込んで話を申し上げると、昨年のあのドル・ショックの時代に緊急融資というもので処置をされました。あれはあくまでも私どもは一時的な均衡であって長期的なものではない、やがてこれらを見直して解決しなければならぬ問題が出てくるのではないか、しなければならぬであろうということも申し上げながら意見を言っておったわけですが、現に八カ月たった今日、同じ中小企業の製品であってもかなり値上げに成功しているものもあれば、値上げができなくて逆に輸出量が昨年比において膨大な減を見ている業種ふえているというか、あるというこの現実をこのままにしておいていいのかどうか。緊急融資をしたんだからそれでよかったんだという見方でいいのかどうかということに対して、どういう御理解をいただけるのか、理解されているのか、お答えを願いたいと思うわけです。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 たとえば御指摘のような業種の中には、クリスマス電球のような問題があります。このクリスマス電球のような場合には、お話のとおり、閣議決定によりまして緊急融資八億円を行ないました。ところが、この緊急融資にかかる経済条件の緩和について、個別企業ごとに金融機関と折衝中と聞いておりますが、当局としても、これから折衝状況をよく踏まえて必要な指導を行なってまいりたいと考えております。  また、業界の構造改善、転廃業対策等につきましては、昨年末に成立した国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の対象業種に指定するとともに、中小企業近代化促進法の指定業種に追加を行ないまして、今後これら法律上の措置を活用しつつ構造改善及び業種転換等の措置を行なっていきたいと考えております。
  118. 川端文夫

    川端委員 これからの質問は陳情みたいになるかもしれませんけれども、実質的にはそういうオーソドックスな法律のワク内になかなか当てはまらぬ業種なんですね。言うならば、昨年の金融を受けた当時においては、三百二十円をめどとしてそれで一応の金融を受けたわけですが、その後だんだん実勢が強まったというか、円の価値が上がってまいりまして、現在では短期ものでも三百円が大体相場になっていると思うのです。手取り三百円を切っていると思いますけれども、この三百円台になってまいって、さらに注文が減って、事業転換をしようにも準備の期間もなかった、ダブルパンチを受けたようなかっこうで、にっちもさっちも動かぬで、約三千五百人の従業員をかかえて今日どうする道も知らない、いい案があっても方策がないという実態におちいっているのが、いまおっしゃったクリスマス電球業界ではないかと思うのです。したがって、陳情としては、緊急融資の繰り延べ、あるいは利子補給というものがしてもらえないかという陳情でありますが、そういうことがいまの立法の中でできるのかどうか、いまの指導の中でできるのかどうか、何かお考えいただけるものがあるかどうか、ひとつ承っておきたいと思うのです。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御趣旨はよくわかりましたから、いまの法律の中で最大限行政指導その他によりまして御趣旨に沿うように努力してみます。
  120. 川端文夫

    川端委員 まあこの点ある程度担当局では知って、理解されている問題でもありますから、ぜひ大臣としても、行くも帰るもできない、全く自転車操業で、足を動かしていなければきょう一日動かないという実態に立ち至ってしまっておるので、まあ先日もある会合で私が申し上げたんだが、ひとつ集団的な不渡りでも出して更生法でも適用できないだろうか、そうすることによって負債のたな上げができれば事業転換なりいろいろ立て直しができるけれども事業転換しようにも過去の負債をかかえては新しい借り入れもできないし、新しい構想も生まれないという窮地におちいっているものが、クリスマス電球以外にも二、三あるやに聞いておるわけでありますので、この点はひずみというか、こういう一つの発想転換の中にはやはり犠牲が出る。この犠牲を見捨てていくということでないんだという、あたたかい血の通った政治を志していただきたいと思うのです。御希望を申し上げておきます。  最後に、私はきょうもう時間もないので、次の機会にゆっくりまたお尋ねしたいことがありますが、とにもかくにも現状ですら容易でない業種が幾つか出ておる上に、円の再切り上げというものは必至だというのが今日の大方の世論になってきているように思うのです。そこで、昨年のあの円切り上げ以前の問題に対しましても、いろいろこの場においても、商工委員会でも意見の交換をいたしましたが、政府が行なったこの通貨対策に対する六項目でありましたか、六項目を出されたのが六月で、実効が出ないままあのドル・ショックという八月十五日のニクソンの新経済政策のいわゆるパンチを食らい、それから十二月に三百八円のあの新時代を迎えた形になったわけですが、まだ八カ月しかたっていないのに三百八円ではまだ円が強いんだからという国際的な批判もあって、やがては大統領選挙後に必然的に円の再切り上げの外圧が加わるんじゃないかということが、何と言われても、いろいろな説明をされても、国民の中に浸透しつつあるように思うのです。  そこで政府は、この一月に日米首脳会談の後において、八項目の実施目標を立てて施策を行なわれておるはずなんですが、これらも具体的にはまだ実効があがっていないんじゃないか、こういうことも考えられるので、いまのような常に後手後手をおやりになれば、私は世論と同じように円の再切り上げは必至だと見ざるを得ないんだが、この点に対しては回避できるんだと先ほどの御答弁も承っておりますけれども、回避するためにはこういうことをやって回避するんだという具体策をお示しにならぬと、その場限りのことばのやりとりに終わるんじゃないかという心配がされるわけですが、何かこのようなことが行なえる準備が整ったということがあるなら、お示し願いたいと思うのです。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの七項目の中には、内需の振興というようなこととか、あるいは緊急輸入の問題であるとか、さまざまな七項目のことが書いてあるわけです。その中で景気を回復する、そして内需を旺盛にするということは、あの当時から見ますと景気は次第にゆるやかなカーブで上昇してまいりまして、先ほど企画庁長官のお話のように、本年度の経済成長率が大体八%、七・二%が八%半程度にはいくという情勢に今日の時点においてなりつつあります。これである程度外需が内需に転向する方向に動きつつあると思います。それからもう一息、ある程度景気を上昇させますれば、かなりの内需の方向に回ってくる。通産省としても、行政指導で、出過ぎるものはあまり出過ぎないようにという考え方に立ってやっております。  それから、緊急輸入というものを相当な果断をもって今度は行ないつつありまして、これらを行ないますれば二十億ドル台に押えることができる。その上、最近の輸入と輸出の傾向を見ておりますと、ようやく円切り上げの効果が出てまいりまして、輸出が停滞し輸入がふえつつあります。景気が回復してまいりますれば、輸入はもっとふえてまいるだろうと思います。そういう傾向が一つのトレンドとして放物線が描かれてまいりますれば、関係各国も理解してくるだろう。そういうあらゆる施策を講じまして、再切り上げを防止しつつあるわけでございます。
  122. 川端文夫

    川端委員 景気が緩慢ながら回復しつつあるということを否定しようというものではございません。しかしながら、先ほどから経済企画庁長官なり大臣がおっしゃっておるように、国内の景気回復の道はまだいわゆる民間設備投資にまで手が回らないで、言うならば、その他の公共投資なり国民の内需によって多少の動きがあらわれてきておることは事実でありましょう。しかしながら、私はこの外圧を防ぐ意味においては、もう一つの面から心配していることをお尋ねしたいのですが、やはりこの景気回復のためにという一つの見込みも加えて、減税という問題が出てまいっておるわけです。  そこで、その減税の中に、所得税の減税は名目的には行なうけれども、やはり間接税の引き上げを行なうということが昨日ですか、一昨日来、大蔵省意見として発表されている。そうなれば、従来からいろいろ懸念されて反対の強い付加価値税を復活しようということもあわせて考えておられるんじゃないかと思うのですが、もし付加価値税がここで復活してまいるようなことがあれば、小規模企業等はなかなか成り立たない事情に追い込まれるんじゃないかという心配もいたしておるわけです。この減税と増税という問題のからみ合いの中で、通産大臣としては、やはり国の国務大臣ですから、閣僚としての立場から、減税なり増税の問題に対しては産業政策あるいは小規模企業——大臣のいまキャッチフレーズになっているといわれている小規模企業対策に対して、どういう角度をもって、大蔵省が何と言おうとこの問題だけはこうしたいという、こうさせたいという意見がおありかどうか承っておきたいと思います。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 本年度は所得税減税はちょっと無理のように私見ておりますが、来年度は相当規模の所得税減税を行なうことが適当であると考えます。  付加価値税については私は断固反対であります。  それから、小規模事業者に対する対策といたしましては、やはり国際的な情勢を見ますと、小売りその他の自由化という問題は、必然的に時間とともに進むと見なければなりません。そういう面から国際競争力をいまからつけてやらなければなりませんから、税制、金融、そのほかの面で来年度予算で思い切った果断の措置をやりたい、そう考えましていま事務当局に大体の構想を示しまして検討させている最中でございます。いずれ成案を得まして、党にも報告いたしましたら当委員会におきましても発表させていただきたいと思います。
  124. 川端文夫

    川端委員 付加価値税については大蔵大臣と兼務していただくと一番ありがたいんだが、まあそういうわけにもいきませんでしょうけれども、付加価値税反対という強い御答弁をいただいて、私どもはその勇気をもってがんばっていただきたいと思います。ただ、いろんな意味においてのいま大臣の発想の小規模企業に対する金融措置に対しても、常に国は後手じゃないのか、政策のあと追いになるんじゃないかという懸念をしておるわけです。この小規模企業の無担保、無保証の制度、構想を発表されておりますけれども、これは東京都で現在やっておるわけですね。東京都ではやっておるものが国がおくれていることから考えて、少なくともあまりお気に召さない美濃部知事のもとにある東京都に負けないような、上回るものをやっていただきたいと思うのですが、それくらいの決断をもってやっていただけるかどうか、もう一言だけ承っておきたいと思います。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私の現在の私案では、大体三年間に五千億円ぐらい、五年間に一兆ぐらいの特別のワクをつくって小企業に融資体制をつくろう。それは商工会議所とか商工会を活用して、そちらの判定によって、その判定を尊重してそのワクを動かしていく。役人があまり査定したり銀行が査定するという、いままでの官の力をたよるやり方から、民の力にたよっていく、そういうふうに切りかえていきたいと実は私は考えているわけです。そうして大体私らの希望では、設備資金では百万ぐらい、運転資金では五十万ぐらい、これを無担保、無保証で出すようにしたい、こういう案をいま考えておりまして関係方面とも折衝しております。これは東京都の規模をはるかに上回る考え方だろうと思っております。
  126. 川端文夫

    川端委員 時間がなくなりましたから後日また御質問申し上げるとして、勇断をもって善政をしいていただければ、私どもは野党といえども賛成するにやぶさかではございませんので、ひとつ勇気をもってやっていただきたい。  ただ、もう一ぺん繰り返しますけれども、昨年来問題になっている事業転換という場合において、転換しようという中小企業はもう行き詰まってどうにもならなくなったから転換せざるを得ないという決断をするわけでありまして、それは政策的にはかなりおくれた状態をどう見るかということが常につけ加わらないと転換はことばに終わってしまうのだ、このことだけはしっかり御理解願いたいと思います。大企業のように政策の先取りをしたり経済の先取りをしてものをやれるだけの情報も持たなければ知識もないわけですから、行き当たってからでは担保力もなくなるし、いろんな意味でどうにもならなくなって、転換を求めても転換の余地がなかなか見出せないという事情にあるので、大胆な発想をもって小規模企業に対して、これからの激動する変化に対処できるような力を与えていただきたいことを繰り返しお願いして、私の質問を終わりたいと存じます。
  127. 藏内修治

  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近、日中国交回復の機運というものが非常に高まってまいりました。田中内閣もかなり力を入れてきておられますし、非常に私はいい傾向であると喜んでおるわけです。私も公明党の第二次訪中団の一員といたしましてこの五月に中国へ行ってきたわけでございますが、向こう政府も人民も、国交回復というものにつきましてたいへんな熱意というものを感じたわけであります。佐藤内閣以後の新政権に対しても非常に期待をしておりましたし、事実そのとおり向こうも両手を広げて国交回復をしよう、こういう態度で来ておるわけであります。そういう点で私は、非常にこういう機運が盛り上がった中でこの日中国交回復、さらにまた経済面での大きな飛躍をしていただきたい、このように思うわけであります。  そこで、きょうは商工委員会でもございますので、この中国との経済問題を考えたときに、やはり長期安定的な日中の経済交流ということが私は大事じゃないかと思うのです。その点、大臣としてどういう構想をお持ちか、お伺いしたいと思うのです。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日中国交正常化につきまして社会党、公明党、民社党、各野党の皆さんが従来非常なごあっせんをいただいて、ようやくそのとびらが今日開かれようとしていることにつきまして、私ども野党の皆さんの御労苦に対して非常に敬意と感謝を表したいと思います。  経済交流の問題につきましては、現在すでに経済交流がこういう変則な状態の中にもあるわけでありまして、国交が正常化されれば当然これは政府間の話し合いもとにもつと太いパイプで正規に経済交流あるいは経済協力ということが行なわれることが望ましいし、それは長期的安定のもと計画的に進められる必要があるように思うわけでございます。私ら個人的に見まして、中国側がどういう計画を持っていらっしゃるか、また、その経済を運用するについてどういう思想といいますか、経済指導方針をお持ちでいらっしゃるか、それに対してわれわれは先方に御希望があればどういう対応方策を講じたらいいか、そういうような点も長期計画もと考えておかなければならぬ問題でもございます。したがいまして、もしそういう機会があって先方の方々と話し合う機会があれば、私ら非常にありがたいと思っておるわけでございます。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう長期戦略ということになるわけですけれども、そういう点で、最近はこうした輸銀の使用の問題であるとか、非常に前向きであるという点については私も非常に評価をしておるわけです。それで、そうしたいろいろ考えていらっしゃる構想の中身をお聞きしたいと思うわけなんです。具体的にこういうことを考えているんだということをお聞きしたいと思うわけです。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはもう先方のお考えがどういうお考えで、われわれにどういう要望をお持ちになっているか、それをお聞きしないうちにこちらからいろいろ考えを申し上げるということは適切でないと思うわけです。何か差し出がましい、醜女の深情けみたいな印象も与えるわけであります。両国の国交の上からまずい結果を生むだろうと、私おそれているわけです。したがいまして、先方のお考えを聞いた上で、そしてそういう御希望があればわれわれはそれに対してどう対応するか、こういう態度でいきたいと思っておるわけでございます。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、そういう具体的な接触方法といいますか、もちろんこれは総理が訪中されるわけですけれども、中曽根大臣としては、経済担当としてどういうようにお考えなんですか。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この間、総理大臣と話しまして、総理が先方へ行かれていろいろお話しする中に経済問題は当然出てくるでしょう、したがって、先方にもしそういう御要望があれば、私は使節団をつくって先方へ参りましてよく話をしてきたい、そう言いましたら、もしそういう情勢になったらぜひ行ってきてください、こういう話で、私はそういうチャンスがあることを望んでいるわけであります。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、この国交正常化の交渉と並行して、たとえば通商航海条約とかあるいは貿易協定、そういう交渉をやはり進めるべきではないか。その場合、当然覚書貿易の協定を発展解消ということで政府間協定とすべきではないか、あるいはこの現在の対中差別関税あるいは事前許可制、こういう点についてどういうように考えておられるか、あるいは九月に予定されておるわけですが、ココムリストの見直しで、わが国としてはどういう基本的な態度でいくか、こういう点についてひとつお聞きしたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ココムリストから解除品を多くしようということは、わが国は従来非常に熱心にやってまいりましたが、こういうふうな情勢が開けてまいっているやさきでもありますから、さらにわれわれはそれに馬力を加えまして解除品を拡大するために努力をいたすつもりでございます。  なお、そのほか貿易協定とかあるいは関税問題、そのほか諸般の問題は、国交が不正常化されているから、そういう変則的な状態のもとにあるので、国交正常化に伴いましてそういう問題も普通の国並みにすべて正常化していくように私たちは考えてみたいと思います。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣のおっしゃるのはそのとおりだと思うのですが、この事前許可制なんかも適宜いままではずしてこられたわけですね。現在の残っているのも非常に不自然なものもたくさんあるわけです。そういうようなことで、事務当局のほうにもかなり煮詰まった線があるなら局長さんでもけっこうですけれども……。
  137. 山下英明

    ○山下説明員 事前許可制は、御承知のとおり昨年来縮小してまいりまして、ごく少数残っておりますが、残っているのにはそれぞれ理由がございますので、それをまた解決しまして全廃していく方針でございます。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 局長さん、先ほど申し上げました差別関税についてはどういうように考えていらっしゃるか。
  139. 山下英明

    ○山下説明員 これも先生御承知のとおりで、ケネディラウンド以降ガット関税を、中国はメンバーでございませんけれども従来ともそれを均てんするように努力したわけでございます。その方針は変わりありませんし、さらに今後の中国の政治的な地位の向上に合わして促進される、こう思っております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまの国交回復の機運からいきましてそういう流れは確かにそのとおりだと思うのですが、非常に抽象論なんですね。これこれについては具体的に考えておるというようなところは答弁できませんか。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはり国交が正常化するということが非常に重要なファクターだろうと私は思います。国交が正常化すれば、そういう問題はわりあいにスムーズに解決に向かっていくのではないかと思っております。私たちはそういう熱意を持っております。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、輸銀の使用ということを中曽根大臣もおっしゃったわけでございますが、しかし実際にこれに中国が乗ってくるかどうかという点は、これは吉田書簡にかかっていると思うのです。それで、前通産大臣の田中さんも、これは事実上はないのと同じだというような、そういう発言もなさってこられたわけです。そういうはっきりしたことがきまっておるなら、はっきりと吉田書簡については破棄するということを大臣としては表明できないわけですか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これだけの日中正常化の大洪水が起こっているときに、昔のそんな支流なんというのはあとかたもないような情勢じゃないかと思っております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、大臣は輸銀の使用ということをおっしゃって、中国のほうはまだ具体的に返事を持ってきていないわけですが、しかしその辺は相当やはりひっかかっていると私は思うわけです。そういうことで、大臣は支流であるということをおっしゃっているわけですが、向こうは支流と見てないわけだと思うのですね。向こうはどう考えているかわかりません。むしろ日台条約とからんでこれは本流であると思っているかわからない。大臣としては支流ということをおっしゃっているわけですが、向こうもそのように支流と考えていると思われているわけですか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 田中総理と周総理という両国の最高責任者が話し合って国交正常化をするというこれだけの大きな流れがあり、野党の皆さんもいろいろごあっせんしていただいて、ほとんど国民的コンセンサスで大洪水が起きているというときに、その支流というのは干上がっておって水がない状態で、こちらは満々とたたえた大流になっているだろう、私はそう思います。中国の方も、長い四千年の歴史を持っていらっしゃる国ですから、われわれ以上にそういう点ははっきり認識されているのではないかと想像いたします。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、大臣は渤海湾の油田の共同開発について中国側に打診を、稲山氏ですか、要請されたということを聞いておりますが、わが国の海洋開発の技術なりそういう面はかなり私は評価できるのではないか、このように思うのです。この間も、新潟の第二白竜号も見てまいりましたが、非常に性能もいいようですし、非常に期待もしておるわけです。それで前からエカフェの調査なんかによりますと、渤海湾も当然含めまして東シナ海のほうは、ひょっとすれば中東油田に匹敵するような大油田があるのではないかというような、そういう発表もなされているわけですが、そうなりますと、これは渤海湾がうまくいけば将来非常に共同開発という広がりが期待されるわけですけれども、そういう今後の見通しについて、東シナ海等の共同開発についてはどういう観測をなさっていますか。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 きのう海洋開発協会という協会の発会式がありまして、稻山さんがその会長に就任されて、私もその発会式に出席いたしましていろいろ懇談をしたわけです。その皆さんのお仕事は、石油の掘さくということもありますし、海中資源の探査ということもございます。そういう話がありましたので、せっかく中国へいらっしゃるのでしたら、渤海湾の石油の問題というのは大きな資源らしい、日本の技術あるいは日本の資本、そういう経済力で協力できることが可能であるならば、われわれとしては積極的意思は持っておる、しかしそれはいずれも先方がどういう意思を持っていらっしゃるかということにかかっている、あなた、せっかくいらっしゃるんですから、その辺どういうお考えを持っていらっしゃるか、打診して私に教えていただけばたいへん有益です、そういうお話を申し上げたわけでございます。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、輸銀使用について中国に対してそういう非常に明確な線を出されたわけでありますが、明確といっても吉田書簡の問題があるわけですけれども、北朝鮮に対しては、いままで予算委員会等でもお聞きしたわけですが、朝鮮もこのように変わってきておるわけでございますし、今後どういう姿勢で臨まれるか、お聞きしたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 輸銀使用はケース・バイ・ケースで考えるということでございますが、南北交流、南北和解の進展の度合いに応じまして、われわれもそのケース・バイ・ケースの考え方に弾力性を持たしていきたい、こう考えておるわけです。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 その弾力性ということについて、われわれも非常に期待を持つわけですが、ただ単なることばだけではなくして、積極的にやっていただきたい、これを要望しておきます。  それから、先ほどからずっと質問が出ておったわけですが、円の再切り上げと調整インフレの問題でございますが、大臣はこの調整インフレの問題については否定をされたわけです。それでわかったわけですが、しかし、そういう大臣の、否定はされたけれども、そういうニュアンスの発言というものは、最近は財界人が、大臣が発言されたことを基礎にして何か非常に勇気づけられたような発言が非常に見られるわけです。こういう点は、われわれ国民にとっては無視のできない重要問題である、われわれこのように思っているわけです。それで、もう一度、円の再切り上げと調整インフレ問題について基本的に、簡潔にお伺いしておきたいと思うのです。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの新聞記事は、あの懇談会があったあと、私が新聞記者の皆さんと会見してお話ししてできた記事ではないので、どこから出たか、私はわからないのです。ですから、おそらく懇談の中身が少し歪曲されて伝わってああいう記事になったのではないか、たいへん遺憾に思っております。インフレと名のつくものは、どんなものにせよ私は反対であります。これは先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、それと同時に、通産省として非常に心配し、政策に重点を込めてやっておるのは、円再切り上げ防止ということでございます。その円再切り上げをもう一回やられたら、中小企業はほとんどばたばたいくという危険性があり、失業群が出てくるという危険性もあります。その惨禍というものはおそるべきものがあると私らは心配しておるわけであります。でありまするから、円再切り上げ防止ということにいま全力を尽くしてやっておるのでありまして、内需の振興とか、そのほか諸般の政策をいまやっておるわけでございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、景気の問題も先ほども出たわけですが、たしか二千六百億の財投の追加をなさったと思うのですけれども、第二次の追加を大蔵省に要請されたということを聞いておるのですが、その内容とその後の経過についてお伺いしたいと思うのです。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は閣議の席上でそれを要請しておきました。しかし、その内容につきましては各省、各省でおやりになるので、私らは適当だと思うのは、たとえば国立病院の木造のものを鉄筋にするとか、あるいは図書館あるいは老朽校舎、そういうように土地を要しないで建てかえをする、そういうものをこの際思い切ってやったらどうか。それからそのほかの社会資本、住宅、そういう面についてもう一馬力かけてもらったらいい、そういうように考えているわけであります。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もその案については非常に賛成なんです。私は、それは非常に卓見であると思いますし、特に影響力の強い大臣でございますし、これはもう特に力を入れていただきたい、このように思います。さらにそれの推進をやっていただくように要望しておきます。  それから、一つは、大臣がこの景気刺激政策を推進されるわけですが、それにからんでくるのは物価問題なんです。それで、卸売り物価と消費者物価というものは、日本の場合は、欧米諸国に比べますと五倍くらいになるんじゃないかと思うのです。そういう点で、そういう影響というものが非常に心配なんですが、この消費者に対する物価対策については、大臣はどのようにお考えですか。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 経済成長で工業関係が伸びてきますと、わりあいに単価は下がって、家電やその他に見られるように、一個の台数、一個の値段というものは下がってきているわけですね。値が上がってくるのはどこから上がってきているかと見ると、やはり生鮮食料品が一番大きいようです。それからサービス料金。この生鮮食料品とサービス料金をしっかり押え込んで、そうしてほかの工業製品は横ばい、あるいはそれよりダウンさせれば、物価を上げないで済む、そう私は確信しております。  そこで、その中で大事なことは、卸売り物価があまり上がらないように押えておくということであります。最近、木材、鉄鋼等、若干上がってまいりましたが、これは昔落ち込んだのが少しカムバックしてきた。カルテルその他の影響もありまして、ようやく景気回復の水準に戻りつつあるというもので、卸売り物価がこれで暴騰していくというような危険性は、私はまだない、そう思って、ある意味においては景気回復の水準に戻りつつある、そういう程度であるだろうと思っております。しかし、この卸売り物価の動向は、いずれ消費者物価にも間接的に響いてくるわけでございますから、これは非常に注意して見ながら押えていくつもりでございます。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、この間、日米経済問題で箱根の通商会議でいろいろと討議をされたわけですが、日本側の縮小幅と米側の要求幅とのギャップですね。これに対する米側の反応がどうであったかということと、それから特に円の再切り上げの圧力の問題、それから保護貿易主義ですね。アメリカ日本の今後の出方を見守って、やはりそういう方向にくるのじゃないか、そういう警戒論というものが非常に高まっておるのですが、こういう点についてどういう見解を持っておられるか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカでも政治当局のほうは大統領選挙もありまして、特にまたハワイで会談すると、ハワイというのは民主党の地盤で、共和党のニクソンさんとしては、何とかあそこで一発打ちたいという場所でもあるんではないかと、政治家として私ら同情もし、推測もしておるわけでございます。しかし、日本には日本の立場と日本の主張がございますから、現在の日米間のギャップというものは、必ずしも日本だけが悪いのじゃない。アメリカも怠けているという要素もずいぶんございますし、多国籍企業の関係で、目に見えないアメリカのプラスもまた存在するわけであります。そういう点を踏まえ、またダンピング法の適用その他で不当な扱いを受けている問題もわれわれにはあります。したがいまして、そういう問題について是々非々の立場に立って箱根でいろいろ交渉をやらさせました。通産当局は非常によく健闘したと私は思っております。だがしかし、大局的に見ると、戦闘に勝っても戦争で負けるということがあります。官僚ベースでうまく成功しても、政治ベースでひっくり返されるということは、政局、政治の上ではよくあるわけでございます。だから官僚ベースで勝った勝ったといって喜んでおれる問題ではない。これはこの前、そういうことをしばしばわれわれ過去に経験したところであります。したがいまして、政治的なクライメートをよく分析し検討しながら、日本に災難がこないように、われわれは万全の措置を講じていきたいと思っております。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、たとえば輸入自由化につきましても、電子計算機をはじめとして農産物等、困難なものが非常に残っておるように思うのです。これは大臣も非常に強硬に、そういうような日本の今後を育てていくという点において強い姿勢も示されておるわけですけれども、特にアメリカ側要求の強い電子計算機の自由化問題、こういう問題について大臣の、きょう初めての質問でもありますので、基本方針をもう一度確認しておきたいと思います。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 われわれの産業構造を順次重化学工業重点から知識集約型産業、付加価値の強いもの、高いものに転換していくという基本方針を持っております。そのチャンピオンは電算機でもあります。そういう意味から、アメリカからいろいろいままで強い要望がありましたが、わがほうはわがほうの立場を堅持してきているわけでございます。五〇%まで自由化するという点までわれわれとしてはこの間譲歩いたしましたが、それ以上はやりません。ICの点については拒否をいたしました。こういう点は今後も堅持してまいるつもりでございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、アメリカ側が関税の引き下げについて非常に強い要求をしておるということを聞いておりますけれども政府としてはどういうように検討されておるわけですか。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは相互主義のもとに関税を引き下げて、世界の経済交流を拡大していくということはわが国の国是であるだろうと思います。したがいまして、来年行なわれるというガットの関税ラウンドにつきましては、日本としては、アメリカともその点は利益が一致いたしますから、共同歩調を組んで関税障壁をなるたけ下げるように協力一致してまいりたいと思っております。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、大蔵省、日銀等では輸出抑制をはかる積極政策の必要性ということを非常に強調しておるわけですが、しかし私たちが心配するのは、やはり中小企業の打撃なんです。そこで、この中小企業が打撃を受けない、影響のない、そういう輸出抑制策、こういうものが考えられないかどうかということなんです。その辺について検討されているわけですか。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 輸出抑止政策というのは、原則としてとりたくないと思っているわけです。  先ほど申し上げましたように、拡大均衡という姿勢が正しい世界の経済、貿易の姿勢である、問題は、拡大と均衡とを両立させる、いま不均衡であるがゆえに縮小という方向にものを持っていくということはあまり適当でない、そういう考えに立っておるわけでございます。しかし、政治でございますから、あまりに伸びのひどいようなものは行政指導でこれをチェックしていく、そういうこともやりたいと思っております。しかし、輸出がうんと伸びたというときには、それに応ずる輸入を伸ばすというやり方で拡大均衡の方向に進めていきたい。もし輸出をチェックするという形になると、やはり必然的に中小企業に一番打撃がくると私は見ているわけであります。そういう面からも、いわゆる課徴金を取るとか、輸出税を取るとか、そういう考え方に対しては、私は消極的であります。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前、田中さんが通産大臣のときに、対外経済調整法というものについて非常に力を入れてこられたわけですが、この法律について、これは仮称と思いますけれども、再提出をされる予定なのかどうか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 事務当局の話をまだ私聞いておりませんが、その法律の内容も私はまだ正直にいってよく勉強しておりません。私のいまの感じでは再提出する場所にない、そういうふうに私は考えております。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 この日本列島改造論のそういう発想については非常に評価ができるということを大臣もおっしゃったわけですが、しかし考えてみますと非常に問題が多いように思うのです。たとえば経済の成長率にしましても、昭和六十年度で一兆ドル経済といいますと、これは年率一〇%以上の、従来の高度成長と同じようなパターンになるのじゃないか、このように思うわけです。その時点で考えてみますと、概算ですけれども、粗鋼で約二倍、原油の輸入等は約四倍くらいになるのじゃないか、このようにいわれておるわけです。公害という点から考えますと、現在たとえばローサルファの原油にしましても二〇%以内になっておりますし、また、これが総体量がふえてくれば、やはり低硫黄原油というものについては二〇%をさらに割る可能性が出てくるわけです。しかしまた、それでは技術的にも脱硫装置の技術がそれだけ進んでおるかというと、それは民間などから見るとまだ非常に確信が持てない。工業技術院あたりはかなり評価しておるわけですけれども……。それからさらにコストが高くつく。また、天然ガスにしたって、それじゃどれだけ輸入できるかというと、やはり総体量からいきますと、これも微々たるものである。そういう全体量から考えますと、各コンビナートにおける工場であるとか大口のところが、地域においていろいろ協定等も結んでおりますけれども、しかしその協定を結んでいるとおり、全国のものを実際実施させれば、実際上低硫黄原油も足らないし、天然ガスも足らないということで、これは非常に不自然なことになってくるわけです。  そういう現状からしまして、一兆ドル経済に昭和六十年に持ってくるといったって、私は大気汚染をはじめとした公害問題というものが全国的にさらに拡大されてくるんじゃないか、そういう心配を非常にしているわけですが、こういうことについて大臣としてはどういうように考えておられるか。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの中にも書いてありましたが、成長よりも福祉が大事である、福祉のための成長である、そういうことが基本原則でございますから、福祉を阻害するような成長方策は私はとるつもりはございません。したがいまして、公害その他が出てきて住民に迷惑が及ぶという場合には成長は足どめする、そういうことにもなり得ると思うのです。あれは非常に壮大なビジョンを描いたので、あれをたたき台にして日本じゅうに百家争鳴が起こることを期待してあの本は出版されたのではないかと思います。  そういう意味で、国会あるいはそのほかにおいて、日本列島はいかにあるべきかということをいろいろ御審議いただいてわれわれに御忠告いただき、われわれがそれを採用さしていただいて、もっといいものにしていけば非常に幸いであると思うわけでございます。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 産業立地の問題ですけれども通産省の来年度の新政策で、工業再配置税あるいは工業再配置特別会計、こういう創設の構想が検討されておると聞いておるわけですが、どの程度具体化されておるのか、これについてお聞きしたいと思うのです。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 工業再配置政策は法律も通っておりまして、それに必要な財政措置そのほかについていま検討を加えております。それで今月に概算要求ができて大蔵に要求いたしますが、それらの中におきましても、諸般の政策と一緒に要求すべきものは要求する、そういうことでございます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 工場法ということもいわれておるわけですが、どういう具体的なことを考えておられるのか。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは要するに、工場再配置を行なった場合に、環境を良好ならしめて住民が快適な生活ができるような、また従業員も快適な生活ができるような工場立地という構想をもちまして、いろいろ建物の基準、敷地に対する建蔽率あるいはグリーンベルトの設置、そのほか工場の規模内容に応じてそういう規制をやる、そういう考えもとに工場の建設計画に関する指導政策を立法しよう、そういう考えでおるわけであります。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 その工場法については来国会提出されるわけですか。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 提出しようと思って、いま鋭意案をつくらしております。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、工業再配置法の移転促進地域と誘導地域の線引きの作業ですけれども、どの程度進んでおられるか、また、それに対してどういう全国の反応であるか、その辺についてお聞きしたいと思うのです。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いろいろ統計数字を駆使いたしまして、人口の過疎、過密あるいは工業生産物の状況あるいは環境の状況、そういういろいろな諸般の数字を検討いたしまして、大体大まかにこの地帯、この地帯という線引きの素案をいまつくらしております。大体素案はできましたので、府県当局にも意見を聞いて、そうしてわれわれの案を固めていく、そういう段階にございます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 この日本列島の問題等につきましては、わが党としてもいろいろいま対案も考えておりますし、後日いろいろとお聞きしたいと思っております。  それで、今後のそういう貿易政策というのを考えていったときに、拡大均衡ということもおっしゃっておるわけですが、ECとEFTAですか、このドッキングという問題が非常に大きく今後の貿易政策に影響してくると私は思うのですが、こういう動きに対して、通産省としてはどのように考え、対処なさろうとなさっているのか、この辺についてお聞きしたいと思うのです。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 拡大ECができますと、たしか拡大ECは八〇年か八一年を目途に通貨統一をやろうとしておると思うのです。そうすると、人口二億で、工業生産物からいったらアメリカの次になるぐらいの大きな経済圏がそこにできまして、しかもそれは文明的には同質に近い文明圏でもありますし、その内部が封鎖的な情勢でそういう一つの経済圏ができますと、それは世界の経済に非常に大きな影響を持ってくるわけであります。われわれはその動向を注視しながら、それに対応する措置をいろいろ検討していかなければならないと思っております。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろ検討なさっているわけですが、特に具体的に何かいまなさっていることはあるのですか。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 具体的にどうこうということはありませんが、ECのほうでも為替変動率の縮小、それから通貨の統一ということを目ざして非常に努力をしておるようですが、われわれが一番関心を持っているのは、外部に対するその封鎖性ですね。それが強く出てくるというと、日本としても貿易上非常な支障を来たす危険性もあります。その点は、アメリカとも利害が一致している点でもあります。そういう面において、これはやはりガットとかあるいは国際経済社会の内部において調整していけるように国際的協力で進めていこう、そういう基本方針に立っていろいろ検討しておるわけでございます。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、ちょっと話が中国にかわるのですけれども、この前、大阪の財界あたりが万博のあと地に中国博を開けばどうかというようなことをいっておったのですが、いままで万博の開催については通産省が担当しておったのですけれども、そういうことについてお聞きになっているか、その辺をお聞きしたいと思うのです。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう話はまだ聞いておりません。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、具体的に何かそういう要望等が出てきた場合は、通産省としてはどういうようにお考えですか。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのスキームといいますか、目論見書といいますか、主催者団体等の考えもよく聞いて検討してみたいと思います。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、中曽根大臣は科学技術庁長官も兼ねておられるわけですが、ロケットの問題ですけれども、いままで何回も計画を練り直しをしてきましたし、そういうことで、そういう点についてもう少し計画どおりいかないものか、こういう見方があったわけですけれども、今度NHKと電電のほうが国産実用衛星はもう開発は待てないというようなことで、米国にも打ち上げを依頼するというようなことをいっているわけです。こうなってきますと、宇宙計画等にも非常に波乱が出てくるわけなんですけれども、これについてはどのようにお考えですか。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは、世界気象連合とそれから国際学術連合とが協力いたしまして、たしか五十年ぐらいまでの間に気象衛星を四つ打ち上げるという話が進んでおるのです。それでアメリカが二個、日本が一個、ヨーロッパが一個、これは学術協力及び実務のためにそういう話が進んでおりまして、それもやらざるを得ない。ヨーロッパはまだ自分でそういう静止衛星を上げるだけの力がないから、アメリカに上げてもらって、衛星だけは自分でつくってやりたい、そういう計画のようです。日本もその国際学術連合等の関係で、まだ自分で上げる力がないから、アメリカのソー・デルタを買ってくるか、あるいはノックダウンするか、技術導入するか、そういう形で、衛星も日本の場合にはまだ進んでいませんから、アメリカのものを上げて、そして世界が統一して気象を正確にしていくという形になるのです。  そういう話があるものだから、NHKあるいは国際電電のほうでも、じゃこっちのほうもという気持ちになったのかもしれません。しかし、静止衛星というものは、ある期間たつと新しいのをまた上げなければだめなことで、永続的にやらなくちゃならぬことなんですから——私は原則として国産論者なんです。Nロケットというロケットを国産で開発しようとしていままで努力しているのですから、その努力を挫折する必要はない、そう考えておるわけです。しかし、この点につきましてはユーザーの考えも聞いてみなければいけませんから、NHKあるいは国際電電あるいは先ほど申し上げましたように宇宙開発委員会や郵政大臣等とも懇談会を持ちまして、適当なときに相談してみたい、そう考えております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうあまり時間もありませんので、あと一、二点お聞きしたいと思うのです。  大蔵省が、全業種原則一〇〇%の自由化を進める、資本自由化の総仕上げをしたい、こういう意向を打ち出したと聞いておるのですけれども、そういうことは通産省としては正式に聞かれていますか。また、それに対してはどのように対処されていますか。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私のところにまではまだ来ておりません。しかし、やはり国内経済の情勢を見ながら段階的に調節を保ってやっていく必要はあるだろう、そう思います。特に日本の将来産業あるいは中小企業に接触する部面については慎重にしなければいかぬ、そう考えております。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 事務当局にちょっとお聞きしますが、その点について何かもう少し詳しくお聞きになっておられ、また内容を持っておられたら答えていただきたいと思います。
  189. 山下英明

    ○山下説明員 結論はいま大臣が申し上げたとおりでございまして、私どもには大蔵省から何も言っておきておりません。御承知のように、去年の九月に第四次を終えまして、あのときに、大部分のものはわがほうとしては自由化終われり、内訳で言いますと、農林水産業、石油、皮革等七業種は個別審査に残したが、あとは全部自由化。ただし、その中に五〇%ものと一〇〇%ものがございまして、五〇%ものが相当数ある、一〇〇%ものは二百二十八業種である、こういう状態でございます。  そのときに日本は、資本というのは五〇・五〇でやるのがいいんだ、東南アジアに出ていくようなときも日本はそれをやっていきたいんだ、こういう主張もしておりましたが、欧米各国は、やはり一〇〇%までしてもらわないとほんとうの自由化でない。ここのところが意見が分かれておったわけでございます。九月に三年間やってまいりました四段階作業を終えるにあたってどうするかというときに、少なくとも一年様子を見て今後の方針をきめよう、こういったいきさつがございます。そろそろ今後の方針は検討せねばなりませんが、一〇〇%自由化に踏み切る等々、一部報道されましたような大蔵省の意向は、何にもまだ聞いておりません。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどは日ソの石油問題等も出たわけでございますが、特にあとハワイ会談が非常に注目をされておるわけです。それで、当然今度は日中問題あるいは通商問題というものが非常に大きな問題になってくると思うのですけれども、先ほどもこれは若干お聞きしたわけでございますが、このハワイ会談にはおそらくアメリカも相当強硬にくると思うのです。それで、先ほどから緊急輸入の問題等も出ておるわけですが、そういう緊急輸入の問題といったところで、これは根本的な解消にもならぬわけでありますし、その点は相当向こうはついてくると思うのです。その点どういうようにこれに当たっていかれるのか、それを最後にお聞きして終わりたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本の輸出力がこれだけ伸びているというのは、一つは日本人の勤勉性あるいは経営者の優秀性あるいは日本設備投資が非常に近代化して大型化して早く進んだということ、そういう基本的条件がありますから、アメリカ側がいまのような勤勉度において日本と太刀打ちしたらやはり日本のほうが強いという情勢は続くだろうと思います。そういう情勢のもとに一挙にこれを解決しようとしても、そう急に変わるわけじゃありません。だからやはり二年、三年あるいは四年とかけて次第に均衡を回復していくということが、政治として、また日本側としては望むことであって、忍術みたいに一ぺんにこういうものは変わるものじゃないだろうと私は思うのです。  また、アメリカ側としても努力してもらわなければならぬことは、多国籍企業、そのほかいろいろな面においてもあるわけであります。たとえば、では牛肉を自由化せい、あるいはオレンジを自由化せい、自由化したらアメリカのものが来るかというと、アフリカのものが来るそうですね。あるいは豪州、ニュージーランドの安い牛肉が入ってしまって、アメリカものは来ないそうですよ。だからそういう点からしても、自由化したらアメリカのものがよけい入るというものではない。国際水準においてアメリカのものが安いということが一つの条件であるだろうと私は思うわけです。そういう点は、われわれもアメリカにびしびし言うことは言って、努力してもらうことは努力してもらわなければいかぬ。これはお互いさまのことですから、自由経済の国相互の間にはこういう経済的な摩擦が起こるのはあたりまえのことで、ここが統制経済の国と違うところでございますが、それを解決する方法をお互いが知っているということが非常に貴重なので、そういう意味で、何回も事務レベルや政治レベルの会談をやってそれの調節をとっていくということは、両国の生活の知恵であろうと私は思うのです。そういうふうに、随時協議を行ないながら調節をとって根気強くお互いの長期的な計画を合わせていくという、そういう基本姿勢に立って私たちはやっていきたいと思います。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  193. 藏内修治

    藏内委員長 米原和君。
  194. 米原昶

    米原委員 私、大臣がお帰りになるということだったのであとにしようかと思ったのですが、三時までおられるそうですから、一言最初に大臣に質問します。  いまもちょっと質問が出ましたが、箱根会談とそのあとの中曽根・エバリー会談では、米国の国際収支の悪化の原因が一体どこにあるかという問題ですね。何か日本責任があるような、米国がとっている国内のインフレ政策、あるいはベトナム戦争がその典型ですけれども、その他アメリカ自身が全世界に基地を置き、軍隊を置くような政策をずっと続けてきた、そのための支出、あるいは米国系の多国籍企業にその主要な原因があるということは、私は明らかだと思うのです。ところが、何かその点を明らかにしないで、日本のほうに主として責任があるような議論があったかのように聞いているのですが、大臣は、その点で、米国自身が責任を負って解決すべき点があるじゃないかという点についてどういう点を指摘されたのか、原則的な点を聞きたいのです。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、いま近江先生にお答えしたようなことを私も言いましたし、それから例の関税評価の問題、ダンピング法の問題、相殺関税の問題ですね、こういう問題については、われわれのほうも要求すべきことがある、そういうことを言って反撃をいたしまして、そうしてハイレベルのダンピング法の適用に関する協議をするということにもなったわけであります。  しかし、日米間というものは、非常に長い目で見てお互いに友好親善、提携協力していくべきもので、ミクロ的に見たらいろいろフリクションはあるでしょうけれども、マクロ的に見たら協調融合していく、そういう形が賢明なやり方である、そう私は思います。
  196. 米原昶

    米原委員 日本設備投資をやって生産性が非常に高まっているとか、日本人が非常に勤勉であるとか、これはある程度言えると思うのです。ただ、賃金の点からいえば、明らかに日本はまだ非常に低いので、基本的にはその点が日本の輸出がいつまでも続く原因でもあると思うのです。ですから、それだけを主張されたのでは、アメリカ自身の負わなくちゃならない責任、ことに私は、あのような状態になっても依然としてベトナムのああいう戦争を続行しているような状態では、その責任を追及するということなくして、日本だけが譲歩を迫られるのはいわれがないと思うのです。そういう点について主張されたかどうかということを聞きたいのです。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 賃金について、私は必ずしも世界的水準で日本が低いとは思いません。アメリカに比べたら低いでしょうけれども、大体ボーナスとかあるいはそのほかの厚生施設その他等を入れれば、ヨーロッパの水準にはもう入っております。昔は低かったですけれども、いまはそんなに低いということを自分から言うほど低いものじゃない、私はそう思っております。  まあ、いろいろアメリカ側がやっている世界政策については、われわれもいろいろ批判すべき点はあります。しかし、それは向こうもよく後悔しているところで、いかに早くベトナム戦争から抜け出そうかと思ってニクソン、キッシンジャー氏は必死になって世界を飛び回っているのですから、わかっているのにあまり追い打ちするのもおとなげないことですからね。われわれはわれわれに関係したことだけを言えばいい、そう思っているのです。
  198. 米原昶

    米原委員 いや、その点がとんでもない間違いだと思う。飛び回っていますが、全くおぼれかかっている海賊のような状態かもしれないけれどもほんとうの基本的な考え方はちっとも変わっていないですよ。依然として、あそこで新植民地主義的な根拠地を残そうということが、いつまでも長引かせている根本原因だと思う。そういうことがアメリカの赤字の根本原因であって、そういう点で何か日米安保条約の約束に縛られているような態度をいまとるべきでないのじゃないか。そこのところをむしろ強硬にこちらが主張しなくちゃならぬ段階にきていると思う。そうでなければ、ずるずるとアメリカのペースに引き込まれていく、こう考えるわけでありますが、この基本的な点についてもう一度見解を聞きたいのです。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 共産党かねての御意見として、拝聴いたしておきます。
  200. 米原昶

    米原委員 ではもう一つ。いままでわかっている点でもっと具体的な問題について聞きたいと思うのです。  箱根会談で流通業の十一店舗までは実質上一〇〇%自由化されるということになったと聞いておりますが、日本の流通業界のほとんどが中小零細な小売り業者で、外資が進出した場合大きな打撃を受けることは明らかであります。会談でも、最近発表された産業構造審議会の流通部会第十回中間答申でも、全面自由化の方向が出されておりますが、政府は米国の総合チェーンストアなどの進出によって日本の小売り業者、ことに小零細業者への影響をどのように考えておられるか、また全面自由化をいつごろに予定されておるか、この点聞きたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 流通政策につきましては、われわれは中小小売り業者の保護、それから消費者の保護ということに非常に重点を置いておるわけでございます。先方からは、小売り段階の自由化一〇〇%ということを非常に強く要望してきましたけれども、われわれは、日本の特殊の国情、特に中小企業保護という面から、われわれがまずこの程度ならと思う点しかその点は認めなかったわけです。十一業種一〇〇%という、しかもその扱う商品はアメリカ品あるいはそれに関連するもの、そういう程度に限定してきているわけで、まあこれは国際水準から見たら、まだ日本は尊王攘夷をやっている、そういうふうに言われるでしょう。だけれども日本のいまの情勢から見ればそれはやむを得ないということでがんばっておるのであって、それだけやっておるのにそういうふうにせっつかれるということはいささか私ら心外ですね。国際的な情勢をよく広く見たら、日本だけが孤立化して総攻撃を食らうぞ、そういう情勢にあるということもまた一面において御認識願いたいと思うのです。
  202. 米原昶

    米原委員 いまの大臣の御答弁はあまり具体的じゃないのですが、まあひとつアメリカ製品だけということにしたんだからという点ですが、アメリカ製品とみなされるような形のものまで含むんじゃないかということです。たとえば外資が進出して日本の業者のつくったもの、一定のものを賢い取る、その外国製品のブランドをつける、こういうことを契約すれば、これもアメリカ製品とみなされるわけです。実質的には制限がないのと同じであります。いま日本進出をねらっているシアーズ・ローバックがアメリカの小売り業界を席巻したときにとった方法がそういうやり方であります。また、シアーズは二十万種類の商品を取り扱い、九割は自社のブランドといわれておることは、必ず日本商品との競合関係が生まれてくることは明らかであります。生活様式や好みの違いなどの点ですが、日本の小売り業の上位百社が束になってもかなわぬほどの売り上げ高を誇る大企業がその力を背景に宣伝をされれば、消費者の好みはすぐ変えられます。現にコカコーラを見れば明らかであります。そういう点で、ただアメリカ製品だからということでは幾らでも抜け道があるんじゃないか。この点を実は一番この問題では心配しているのです。この点について一体どう考えておられるのか、聞きたいのです。
  203. 山下英明

    ○山下説明員 今回の日米会談では、わがほうも輸入を促進、米国製品で日本に買えるものは買おうということが基本でございまして、そこにいま御指摘の流通の自由化が出てまいりましたので、本来ならばこれはアメリカの国際収支にプラスするわけじゃございませんので、赤字になる、資本が出ていく、これはわがほう代表から指摘しまして、それではそれはわかったが、アメリカの品物を日本で売るためにやってほしい、これが原則でございます。  そこで、大臣から申し上げましたとおり、今回認めるものは米国製品である、それでは日本でつくられた米国製品はどうするかということが議論になりましたが、それは常識の限度があるけれども、米国製品と認められるものは販売してよろしいということでございます。ただ、御指摘のいわゆるスーパーマーケット、これを今回認めたことになるかといえば、私ども流通行政を担当しているものから見まして、今回はそうではない。御承知のとおりに通常スーパーマーケットとなりますと、食料品とか、医療品、化粧品等を四割から五割販売しませんとお客さまが来ないわけでございますが、そういうものはやはりシアーズ・ローバックがヨーロッパでやっておりますのを見ましても、七割は現地でフランス製品、ドイツ製品を購入して扱っております。今回はそれはできないことでございます。輸入の化粧品等は売りましても、日本の野菜その他は売れない。私どもは流通改善のために先ほど米原先生申されました部会の答申もいま第一答申ができ上がっておりますが、常に百四十万に及び零細小売り業の対策をどうするかということから流通行政を進めておりまして、今回のは、その観点からすれば、現状で日本流通業界が受け入れられる限度内で話を固めた、こう思っております。
  204. 米原昶

    米原委員 いまの御答弁だと、つまり全部がアメリカ製品で、私が先ほど言いましたような日本の製造業者と一定の生産高を買い取るというような契約を結んで、そうしてアメリカのそういう商社のブランドをつけるというようなことは一切やらないということははっきりしているんですか。
  205. 山下英明

    ○山下説明員 アメリカの資本に限りませんけれども、製品と認められるもので日本でつくられたもの、これも常識的に判断して米国製品と認められる範囲ではそう認めよう、こういうことでございます。したがって、たとえばアメリカの合弁会社日本で米国から原料を入れて、米国製品と同じものをつくった、それを扱っていいかというと、それは扱ってよろしいことになっております。
  206. 米原昶

    米原委員 その点についてはかなり抜け道が考えられるような気がしてならないのです。その点非常に影響が大きい問題であると思いますので、今後厳重な監視をしていただきたいと思います。  もう一つ。これは通商局長にお聞きしたいのですが、奄美大島の伝統産業である大島つむぎの問題について若干お聞きしたいと思います。  現在奄美大鳥における大島つむぎの生産は、年間二十五万反、九十億円に達しておって、一万四千人が生産に従事しているといわれております。奄美の中心である名瀬市では、就業人口の三七%に当たる七千四百人が従事している。そういう意味では、大島つむぎは奄美の基幹産業になっているということができます。この奄美の大島つむぎは、三十以上に及ぶ複雑な工程をすべて手作業で行なって、忍耐と時間を必要とする作業ですが、染色技術は、古代染色を今日に伝えるただ一つのものとして、テーチ木と泥染めによる独特のかすり染めで、精巧な工芸美術品でもあります。ところが、最近三井物産の肝いりで、韓国に合弁会社をつくって、韓国の労賃は日本の労賃の約五分の一といわれており、その韓国の安い労働力を使って生産して、逆輸入するというニュースが伝わって、現地では不安に包まれている、こういうことを聞いております。  そこで、お尋ねしたいのですが、大島つむぎの製品価格中の半分ぐらいが織り賃であるために、韓国の安い製品が日本に入ってきた場合は、奄美の事業者が大きな打撃を受けることは火を見るよりも明らかでありますし、また、単にそういう奄美の人の生活というよりも、こういう日本でも最もすぐれた伝統的な地場産業であり、工芸美術品だともいえる、そういうものをつぶすようなことになってしまうという点で非常に重大だと思うんです。このような、産地を犠牲にしてまで伝統的な技術を韓国なんかに渡してしまうという、こういうことを規制する必要があるんじゃないか、私たちそう考えるのですが、この点について通商局長の御見解を聞きたい。
  207. 小松勇五郎

    ○小松説明員 ただいまの御質問は繊維雑貨局長の主管かと思いますので、ただいま繊維雑貨局長が来ておりますので、かわりたいと思います。
  208. 斎藤英雄

    ○斎藤説明員 お答えいたします。  ただいま先生御質問ございました大島つむぎの件でございますが、いまお話ございましたように、大島つむぎは奄美大島独特の、泥を使用した泥染めの糸を用いております。申すまでもなく、古来から伝わりました伝統的な日本の技術でございます。したがいまして、そういうふうな独特の泥等を使用いたします関係で、本来の技術と申しますか、あるいはそれを具現した製品と申しますか、それ自身は、他の地方では容易に模倣ができない性格のものでございます。  しかしながら、最近非常に簡便な方法で、合成染料を用いまして、大島つむぎに似たような安いつむぎをつくるというふうな方法ができることになりました。したがいまして、そういうことでこの技術がほかの地方に伝播するというふうな傾向もあるわけでございます。しかしながら、現在のいろいろ国際経済情勢、これは先般来大臣その他皆さんお話しになりましたとおりでございまして、一般的なかっこうでいきますと、わが国の企業の海外進出というものにつきまして一般的にこれを制限するということは一面問題でございますけれども、なお大島つむぎのような、そういう古来から伝わりましたもの、しかも、それを簡単な方法でそれに類似したようなものをつくるというふうなことにつきましては、これは非常に問題でございます。しかも、御指摘のとおり大島つむぎは奄美大局の住民に対しまして非常に大きな影響力を持っておるものでございますから、私どもとしましては、いまのお話多少耳にしておりますが、その問題につきましては、当事者なり、あるいは関係の商社等ございますが、そういう方々に対しまして、現在そういう方々のいわば愛郷心と申しますか、それに訴えまして、行政ベースでいろいろ説得をしておる最中でございます。したがいまして、私どもとしましては、本件につきましては海外進出を思いとどまらせるようにいたしたいという気持ちで指導を続けておるのが現状でございます。
  209. 米原昶

    米原委員 お聞きしますと、ほんとうの伝統的な技術を持っておるもの、これはそう簡単に模倣できないということは事実だと思うのです。それに似た模造品というか、簡易につくるやり方というものが出ていく、これはなかなか防げないということもわかるのですがね。実際にこういう伝統的なものがつぶれる過程はしばしばそういうような形態をとると思うのです。本来の技術はそうそうまねはできないけれども、それにごく似た、近い模造品、しかも、非常に安価に入るというようなことでざあっと入ってきますと、実際には結局本物のほうまで打撃を受けるようなことになるのじゃないか、そう思うわけで、これは相当慎重にこの措置をとらないといけないのじゃないか。直接の問題としては、奄美大島の中でどのくらいの業者が本来的な伝統のものをやっていて、それから若干それとは落ちる、いま言われた簡易にできる似た品物ですね、そういうものがどのくらいの人がやっているのか、そのあたりの割合は大体わかるでしょうか。
  210. 斎藤英雄

    ○斎藤説明員 お答えいたします。  現在、伝統的な古来の技術、先ほどお話がございましたような技術で生産を行なっている者が、概数でございますが、おおむね全体の一割程度でございます。残余のものはそれよりやや簡易な方法で生産を行なっているというのが現在の実情でございます。
  211. 米原昶

    米原委員 大体の状況はわかりましたけれども、これは伝統的なものを守るためにも、その周辺にあるそういう業者がつぶれていくようなことがあると、実際は影響を受けるわけですね。だから非常に複雑な問題で、実際問題としては、そういう事実があるからといって、こっちのほうはしかたがないのだとほうっておくわけにいかないのじゃないか。そういう措置をとらないと、せっかくの伝統的な産業をつぶすようなことになるのじゃないかと思うのです。そういう点で、もちろん措置のとり方としてはいろいろあると思いますが、ことにこの伝統的な技術を守るための措置ですね。日本が持っている特殊なそういうものを守るための措置、それと競合するような製品の輸入をある程度押える措置、こういうことについては何か方法はないでしょうか。
  212. 斎藤英雄

    ○斎藤説明員 お答えいたします。  いまのつむぎの問題に限定をいたして申し上げますと、これは本場の大島つむぎということを、韓国産のものがありまして、かりに表示をいたしたといたしますれば、これは商標法上問題となるわけでございます。と申しますのは、奄美大島つむぎは本場の大島つむぎという商標登録をすでに行なっております。したがいまして、それと同じような商標表示をするということになりますれば、商標法上問題になるのではないかと思います。それからなお、表示にもし日本産という表示がありますと、これは原産地虚偽表示の問題になります。したがいまして、そういうことで、表示自身につきましては一応区別がつくと申しますか、区別ができる。逆に申しますと、輸入品につきましてはある程度いろいろな制約がございまして、本場の大畠つむぎと一応選別ができるというかっこうになっているのじゃなかろうかと存じております。
  213. 米原昶

    米原委員 やはりこういう問題は一地域の小さい問題と考えないで、そういう地場産業とか伝統的な技術というものが意想外に全体に実は影響をすることになってくるので、こういう伝統的な技術を守ったり発展させるためには、相当思い切った援助を与える必要があるのじゃないか。従業者の待遇の問題とか後継者の養成の問題、作業場の改善の問題、その他相当思い切った援助を与えていくということを同時にやられる必要があると思うのです。その点について所見を伺いたいと思います。
  214. 斎藤英雄

    ○斎藤説明員 お答えいたします。  伝統的なそういう製品につきまして、これは特に私どもが関係しております繊維品あるいは雑貨の関係に非常に多いわけでございます。したがいまして、この方面につきましては、私ども前からいろいろ考えておりますが、たとえば、そういう民芸関係だけのコンクールをやるとか、あるいは展示会をやるとかというふうな方向を考えておりますが、現在のところではまだ予算化をするまでには至っておりません。したがいまして、今後、先生お話しがありましたような方向で、いろいろ私のほうも努力をしてみたいというふうに考えております。
  215. 米原昶

    米原委員 この問題は、私ここにも新聞記事を持ってきているのですが、二年ほど前にも、鹿児島の業者がこの大島つむぎの韓国進出を計画しているという問題が起こって、そのときにも住民がたいへんな反対運動を起こして、計画は断念させるということが起こった。今度の場合は三井物産などの大資本が進出してきているので、その上に、この問題を韓国政府のほうは経済再建の国策の一つとしているそうでありまして、非常に複雑であります。しかし、こういうことのために地方の重要な地場産業がつぶれてしまうということになると、これはゆゆしい問題です。一般的な自由化とかなんとかいうことじゃなくて、やはりそういうものを守って育てていくという姿勢がくずれていきますとめちゃくちゃになってくると思うのです。  そういう点で、一そうこの問題に重要な関心を払って、適切な処置をとっていただきたい、このことを要求しまして、私の質問を終わります。
  216. 藏内修治

    藏内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時三分散会