運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-09-12 第69回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月十二日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 小沢 辰男君    理事 伊東 正義君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 向山 一人君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君       井出一太郎君    大橋 武夫君       小金 義照君    登坂重次郎君       中島源太郎君    中村 拓道君       別川悠紀夫君    松山千惠子君       粟山 ひで君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 塩見 俊二君         労 働 大 臣 田村  元君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      斉藤 一郎君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省領事移住         部長      穂崎  巧君         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         大蔵省主計局給         与課長     西垣  昭君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         社会保険庁年金         保険部長    八木 哲夫君         通商産業大臣官         房審議官    仲矢  鍛君         通商産業省企業         局次長     橋本 利一君         通商産業省公害         保安局公害防止         指導課長    松村 克之君         通商産業省化学         工業局化学第二         課長      小幡 八郎君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働政務次官  塩谷 一夫君         労働大臣官房国         際労働課長   森川 幹夫君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         参  考  人         (日本鉄道建設          公団総裁)  篠原 武司君         参  考  人         (日本鉄道建設          公団理事)  北原 正一君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 八月十日  辞任         補欠選任   大原  亨君     黒田 寿男君 同日  辞任         補欠選任   黒田 寿男君     大原  亨君     ————————————— 九月一日  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働  組合関係)(第六十八回国会内閣提出)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力  車労働組合関係)(第六十八回国会内閣提出)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施  設労働組合関係)(第六十八回国会内閣提出)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働  組合関係)(第六十八回国会内閣提出)  は、三木内閣総理大臣臨時代理から議長宛長期資  金を融資する等所要の財源措置を講ずることによ  り裁定を実施しうる見込みが明らかになった旨の  通知があったので自然消滅となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 小沢辰男

    小沢委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。山本政弘君。
  3. 山本政弘

    山本(政)委員 八月の七日に労働省大蔵省のほうの名前で、政府関係特殊法人給与問題アンケートというのが出ております。それについてお伺いし、時間があれば東罐興不当労働行為についてあわせて質問したいと思うのですけれども、まず第一番に、そのアンケートが一体どういう目的で出されておるのか、あるいはどう活用なさるつもりか。私はこれを手にしてみたところ、全体を見ますと、そういう言い方はおかしいかもわかりませんけれども質問が何か誘導尋問式である。考えようによれば労働省大蔵省のほうに都合のいいような問題の提起のしかたになっておるのじゃないか。しかも質問のしかたに根拠を示してはおらぬというような感じもするわけです。たとえば一二ページの「特殊法人に関する労使関係制度基本的なあり方について」の一番なんかについて見ますと、「その事業内容も高度の公共性を有する等労使関係観点から見ても種々特殊性公共性を有するとする意見があります。」と一方的にそういっているが、そういう根拠は一体どこにあるのかということが示されておらぬというようなことがあるわけであります。そういう意味で、一体このアンケートはどういう目的で出されたのか、どう活用なさるおつもりなのか、この点をひとつまずお伺いしたいと思います。
  4. 石黒拓爾

    石黒説明員 このアンケートを出しましたいきさつは御承知のとおりでございまして、ことしの春の通常国会審議の過程におきまして、当委員会において時の塚原労働大臣政労協賃金問題に関するあり方につきまして、人勧準拠は当面やむを得ないけれども、しかし、種々問題があるので、関係者意見も聞いて検討したいということを申し上げ、その大臣発言に基づきまして、私とも労使とも接触いたしまして、まず全般的にアンケートで、文書でもって意見を伺いましょう、そのアンケートが済みましたならば労使の代表的な方々に個別にヒヤリングをいたしましょう、そのアンケートヒヤリングに基づいてさらに次の段階を検討するというふうにスケジュールを考えたわけでございます。その考え方につきまして労使とも御異存はなかったように承知いたしますので、アンケートをつくりまして、アンケートの案も労使にお見せした上で八月七日に出したわけでございます。これが今後どう活用されるかという点につきましては、この問題が非常に複雑、困難な問題でございますので、全般的に労使がどういう御意見を持っておられるかという概観を得るためのものでございまして、さらに具体的な突っ込んだ御意見ヒヤリングで検討することといたしたいというふうに考えておりまして、特定の方向に持っていこうというような意図は毛頭ございません。
  5. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、一体政府のほうは、政府関係特殊法人理事者に対して、賃金問題については労使自主解決のために努力をするという指導をしているのか、私はそういう質問をしたいのです。と申しますのは、法律のたてまえからいえば、自主解決をするのがほんとうだと私は思うのですよ。そして、これは四十四年の五月に、当時の労働大臣であった原さんも、特殊法人賃金紛争が長期化しているのは好ましくない、自主交渉で解決すべきである、その点に関して政府部内関係当局と協議、努力をする、こういうふうに約束しておる。  そうすると、私は実は確認したいわけですけれども、そういう点を踏まえていくならば、まず第一点は、自主解決というのが原則だろうと思うのですけれども、その点について一体どうお考えになっておるのか。  もう一つは、そうだとするならば、賃金問題についての労使自主解決のための努力ということに対して、一体政府としては具体的にどういう指導理事者側に対してなさっておるのか、この点をひとつお伺いしたい。
  6. 石黒拓爾

    石黒説明員 政府関係特殊法人につきましては、御指摘のごとく、労組法労調法適用になっておりまして、賃金その他の労働条件団体交渉によって定めるたてまえに相なっております。しかし同時に、これらの法人出資金とか補助金交付金というような政府の金によってまかなわれておる部分が非常に多い。したがって、その予算給与等につきまして、政府承認にかかわらしめられておる点が多いわけであります。この政府承認というような財政的見地からする措置と、それから労組法労調法の自主的な団体交渉ということをどう調和させるかということが、この問題の焦点であると考えておるわけでございます。  従来いろいろ議論をされておりましたが、当面政府といたしましては、いわゆる内示をできるだけ早くする、かつその内容もできるだけ弾力的にするというような方向で、一歩前進をはかってきたわけでございます。しかし、それだけで足りるかどうかという問題ももちろんあるわけでございますので、この際そういう問題も含めて検討いたしたいというふうに考えております。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、自主交渉原則で、いまおっしゃったように、どう調和をするかという問題が一つある、もう一つ内示を早くして弾力的にやりたい、こういうことだそうでありますけれども、そうすると、もう一度質問しますけれども自主交渉原則であるということは間違いないわけですね。そうして、その自主交渉を十分に尊重するということも間違いないことですね。その点いかがでしょう。
  8. 石黒拓爾

    石黒説明員 労働法的観点から申しますと、自主交渉を尊重するということであります。しかしながら、組織的、財政的な見地から見て、縛りがかかっておる。これをどう調和させるかということが問題であろうかと考えております。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 調和するのはわかるのだけれども、要するに私が聞きたいのは、自主交渉がたてまえであるのではないかどうか、その点だけなんです。自主交渉がたてまえであるのかどうか。あとでその点についてはお伺いしたいと思うのですよ。自主交渉がたてまえであります、しかし出資金とか交付金とかあるいは補助金とかありますから、これとの調和があります、こうなってきたら、自主交渉がたてまえでありますという原則は、原則でなくなってくるというおそれが出てくるでしょう。原則としながら、なお調和というものを考えていきたいというならわかるのです。だけれども、いまのお答えならば、要するに、労働法関係から言えば自主交渉であります、しかしこちらから言えば調和というものがありますというなら、これは原則が主たる意味というものをなさなくなってくると思うのです。その点どうなんです。と申しますのは、では国鉄なんか一体どうなるのかという問題が当然出てきますよ。しかし、これはほとんど自主交渉とほぼひとしいようなことになっているでしょう。少なくとも特殊法人労働組合と比べてみたら、いまのお答えからいえば、そういう問題が出てくるのです。ですからぼくが聞きたいのは、自主交渉原則であるかどうかということなんです、それだけです。それをお認めになるのか、ならぬのか。
  10. 石黒拓爾

    石黒説明員 一昨年ですか、先ほど御指摘のございました原労働大臣当時の発言につきましても、特殊法人公共性特殊性を踏まえながら、自主交渉促進が望ましいというふうに申しておりましたので、私どもとしては、どちらか一方を決定的にとるということはおそらく正しくないんじゃないか、あくまでその調和ということが必要であろうと考えておるわけであります。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 特殊法人公共性というものはどんなものですか。具体的に聞かせてください。
  12. 石黒拓爾

    石黒説明員 特殊法人は非常に数も多うございますし、その任務もまちまちでございますが、全般的に申しますならば、営利を目的とするものではなくて、国民全般の利益のために業務をするという意味におきまして、ある場合には国の業務の代行をするというような点におきまして公共性を持っておるものと理解しております。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 それではちょっとお伺いしますけれども政府関係特殊法人というのは官公労働者のような争議行為禁止規定は何もないのですね、これが一つ。  それから民間の場合の公益事業といいますか、そういうものは労調法の三十七条の制約もたしかないと思うのです。たとえば予告というような制約もないと思う。そうすると、基本的な原理というものを私は尊重するのがほんとうだと思うのです。いまお話によれば国の業務をやっているからとかいう話があるけれども、私が申し上げたように、官公労働者争議行為禁止、制限あるいは民間の場合の公益事業制約というものがないとするならば、これは法を尊重するたてまえからいえぱ、まさしく基本的な原理を尊重する以外にないのじゃないか。ほかに何かそういう制約をするものがあるのだろうかどうだろうか。その辺が実は私疑問になってくるわけですよ。その点はどうなんですか。
  14. 石黒拓爾

    石黒説明員 御指摘のように政府関係法人労使関係につきましては労組法労調法適用があり、自主交渉認められているわけでございますが、同時にそれらの公庫、公団事業団設置法規におきまして、予算給与等について政府承認にかかわらしめられておるという点におきまして制約があるわけでございます。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 だから、そうなってくるとおかしいのですよ。さっき石黒さんは、片一方自主交渉という原則がある、片一方にはしかし出資とか補助とか交付というものがあってそこを調和しなければならぬ、こう言っている。今度は承認の問題に対しては制約があるというふうにおっしゃっている。これはつじつまが合わぬですよ。いままではずっと一貫して、私が聞いている範囲では、調和ということをおっしゃっていたわけです。この段階になって、今度は制約があるというふうになってきた。これはちょっとおかしいんじゃないですかね。
  16. 石黒拓爾

    石黒説明員 私別に違うことを申し上げたつもりはございませんで、一方で労組法労調法があり、片一方では財政法設置法上の制約がある、この両者をいかに調和させるかということが問題なんだという趣旨で申し上げております。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、ちょっとお伺いしますよ。一般的にいえば、労働条件については要するに労使対等という原則がありますね。そしてその裏づけは結局は労働基本権、これは憲法二十八条だと思うのです。そうすると、政府関係特殊法人労働者について労働基本権というものを制約をする法律というものは一体何があるんだろうか。つまり原則的には労働者団結によって、自主的な団体交渉によって特殊法人労働者労働条件が決定されるということが、やはりそこに基本的に認められていることになるのじゃないだろうか刀そうすると、その基本原理をそれじゃ政府としては尊重するのかしないのか、これだけ一つ聞かしてください。
  18. 石黒拓爾

    石黒説明員 いろいろな制約があるにもかかわらず、労働組合自主性ということも尊重いたしたいと考えております。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 労働者に対する労使対等決定原理というものが労働基準法の第二条にある。そしてその裏づけとして労働者側労働基本権つまり団結権とかあるいは団体交渉権とか争議権というものが憲法上保障される、それが基本じゃないですか。もあるというような言い方じゃなくて、それが基本にあるということじゃないですか。憲法に保障された労働者に対する基本的な原理というものがきちんと少なくとも政府関係特殊法人に対して保障されているなら、それが原理になるはずだけれども、しかしほかに原理があるだろうか。ないはずじゃありませんか。だからこのアンケートに対して、あなた方が何か、要するに政府大蔵省都合のいいアンケートになりはしないかという危惧を持つのは、そういうことからぼくは申し上げるのです。少なくとも憲法上保障され、そして基準法からいっても疑いのないそういう労使関係というものが政府特殊法人労働者に対して準用されるのであるならば、それが原理原則になるはずであります。しかし、それがいまの話のように、もあるというようなお答えになってくると、それは原理原則にはならなくなってくるでしょう。だからぼくはこのアンケートというのに疑問があるというのですよ。つまり先ほど申し上げたように、政府立場に立って何かこう答えを誘導するような質問のしかたになっていはしないか。その根拠にいまの石黒さんのお答えが基礎になっているんじゃないか、そういう感じがするのですがね。再度確認したいのですよ。
  20. 石黒拓爾

    石黒説明員 この問題は非常に根の深い問題でございまして、労働権というお立場からごらんになればまさにおっしゃるとおりでございます。しかし設置法あるいは財政法規という点から見て制約があるし、これもまた財政的見地から見ればやむを得ない。これをどういうふうに調和させたらよろしいかということについて非常にその調和がむずかしいもので、以前からたびたび当委員会におきましても、あるいはほかの委員会におきましてもお取り上げをいただいて御検討いただいているわけでございます。一つのプリンシプルですぱっと割り切ることができるものであれば、私どもも非常に幸いでございますけれども、なかなかそういかないところにこの問題のむずかしさがある。このアンケ−トにつきまして、私どもは、こういう意見があるが、この立場をとればこういう問題が出る、あるいは逆の立場をとればこういう問題が出るというふうに、双方の考え方をできるだけ並べて書くようにいたしましてアンケートをつくったわけでございまして、どっちの方向に、持っていこうというような意図は決して持っておらないわけでございます。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 調整をするという気持ちはわかるのです。ただ基本的に——ぼくは何回でも繰り返しますよ。基本的に、要するに労使対等決定原理というものはあるのかないのかということだけをひとつ聞きたいと言っているのですよ。調和ということはわかります。だけれども、その底流に流れるものには、要するに労使対等決定原理があるのではないか。何回も、執拗だけれども聞きますよ。お答えによれば何回も聞く。それがあるのかないのかというだけでいいのです。大臣、いかがです。政府特殊法人労働者というのは、憲法に保障されて、そして労働基準法にもちゃんと準用されることが書かれてある。そうすると、それが原則的に適用されるのがほんとうだろうとぼくは思うのですよ。政府は法を守るのに一番忠実でなければならぬと思うのですよ。そうすると、いまの議論の中で、大臣お聞きになったと思うのですけれども、いま申し上げたように、労働条件については労使対等決定原理というものが政府特殊法人労働者に対しても適用されるのが、原則としてはそうであると、こう私は、どうやっても答えはそうしか出てこないと思うのですけれども、ほかに答えが出てきますか。ぼくは、非常に進歩的な労働大臣だから……。
  22. 田村元

    田村国務大臣 私ちょっと途中で入ってまいったものですから、前段のくだりの質疑応答を聞いておりませんので戸惑いがございますけれども、先ほどからの山本さんの御質問に対する石黒君の答弁を聞いておりまして、私は石黒君の答弁が間違っておるというふうには受け取っておりません。労調法労組法でこういうふうに認め、こちらのほうで財政法その他でこういうふうにという、一方においてこういう考え方、一方においてはそれに対して制約的なことになっておるのですから、制約があればこそ調和が起こるので、制約がなかったら調和も何もないので、それだけでやってしまえばいいということになりますから、私は石黒君の答弁が間違っておると受け取りませんでした。ただ、その前の御質問に対するこちらの答弁というものが、私ちょっと閣議でおくれて参ったものですから、聞いておりませんので、若干ピントが狂うかもしれませんけれども、少なくとも聞いておる範囲内では間違っておるとは受け取りませんでした。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ大臣、こう言っているのですよ。政府関係特殊法人労働者については、労働基本権制約する法律は何一つ存在しない。これはちゃんと法律的にはそういうふうになっている、憲法からいっても、労働基準法からいっても。そうすると労働者団結によって、自主的な団体交渉によって政府関係特殊法人労働者労働条件も決定される、これが本来ならば基本的な原理になるんではないかというのが私の質問なんです。しかし、そういう質問に対して、補助金とかあるいは出資金とか交付金というものがあります、だからこれが制約されるということになれば、それは原理にはなり得なくなってきます。そこで石黒さんの話は、調和をする必要がある、こうおっしゃっているのですよ。しかし、少なくとも労働法的な立場からいえば、私が申し上げたことのほうが正しいんじゃないだろうか。そのほうが論理的でしょう。基本的な原則というのはここにある、しかしそれをチェックするものがあるから、これは調整しなければなりませんけれども、しかし原理はあくまでもこれが原理だというものが基本的に成り立つでしょうというのですよ。そうしなければ、労働基準法というのは無視されることになるでしょう。憲法二十八条というのは要らぬことになりますよ。補助金が出されているとか、交付金が出されているとか、あるいは出資金があるということだけで労働基準法が無視されていいのか、憲法二十八条が無視されていいのか。その点どうなんです、大臣
  24. 小沢辰男

    小沢委員長 まず石黒労政局長から答弁して、それから大臣答えていただきます。
  25. 石黒拓爾

    石黒説明員 憲法二十八条の労働基本権政府関係特殊法人に雇用される労働者にも当然適用に相なる。私どもこれを否定するつもりは全くございません。しかしながら同時に、一方の当事者である使用者につきましては、これは種々制約がある。したがって、使用者側労働側団体交渉に応ずるにつきましても、完全なフリーハンドの裁量というわけにはなかなかいかない。そこでそれをどう調和するかということが問題であるというふうに考えまして、労働権を否定するという考えは毛頭ございません。
  26. 山本政弘

    山本(政)委員 初めからそうおっしゃっていただけば私は理解できるのですよ。初めからそうおっしゃらないからそういう質問が出てくるのです。そうすると、いまの御答弁であるなら、個々政府関係特殊法人における個々団交を通じて、その結果について法人相互間に何らかの差異を生ずることは当然でしょう。これはアンバランスを生ずるとかなんとか言っていますがね。要するに一律なものでなくて、個々に交渉させると、給与決定について労使の完全に自主的な団体交渉にゆだねた場合には、特殊法人相互間に給与アンバランスが生じ、問題であるとする意見がありますが、これをどうお思いになるか、こう言っている。しかしいま申し上げたように、個々政府関係特殊法人における個々団交を通じて、その結果について法人相互間に相違が生ずるのは、これは論をまたないことだと思うのだけれども、私が申し上げたいのは、こういう設問のしかたが正しいかどうか。逆にお伺いしたいことは、いかなる差異を生ずることも一切許さないという法律上の根拠というものは一体あるのかどうか、この辺の法理というものを一体お認めになるのかどうか、その辺お伺いしておきます。団交個々にあれば、必ず違ったものが出てくるはずなんです。多少のアンバランスを生ずるのはあたりまえだと思うのだけれども、しかしこういう設問のしかたというのは、やはり少しばかり疑問を感じます。その点についてお伺いしたい。
  27. 石黒拓爾

    石黒説明員 各法人間のアンバランスの問題につきましては、政府立場から言えば、政府が同じように補助金交付金等出して、そして似たような性格の仕事をしているものについてはバランスがとれることが望ましいと考えることは、これは当然であると思います。労働者の側から言いましても、同じような仕事をしている場合にはバランスがとれることが望ましかろうと思うわけでございますが、しかし同時に、多少の出入りということもやむを得ないかどうか。従来私ども組合側の方に接触しております場合にも、この公団とこの事業団との間が非常に給与アンバランスであるというふうな御指摘もしばしばいただいておる。したがって、そのバランスという問題をどの程度重要に考えるべきであるかということを私どもとしては知りたいわけでございます。絶対にバランスを一分一厘くずしちゃいけないという立場でお聞きしているわけではございません。これについてどうお考えになりますかということだけを承知したいと考えておるわけでございます。
  28. 山本政弘

    山本(政)委員 大蔵省のこの点についての考え方を聞かしてもらいたい。
  29. 西垣昭

    ○西垣説明員 いま労政局長からお話がございましたことと同じように考えております。
  30. 山本政弘

    山本(政)委員 同じような考えをもう一ぺん聞かしてほしいというのです。
  31. 西垣昭

    ○西垣説明員 アンケートにつきましては、先ほど労政局長から御説明申し上げましたようにこの際あらゆる問題を提起していただいて、基本的な問題を洗い出してその解決をはかりたいということであのアンケートをつくったわけでございます。そういう意味アンケートの構成といたしたしては、閉鎖的な質問のしかたではなくて、どんな御意見でも出していただくという意味であの構成はできております。われわれといたしましては、どのような御意見が出ましてもそれを慎重に検討させていただく、かように考えております。
  32. 山本政弘

    山本(政)委員 それならば、この設問のしかたというのはぼくは問題があると思うのです。「給与決定について労使の完全に自主的な団体交渉に委ねるべきであるとした場合、特殊法人相互間に給与アンバランスが生じ、問題であるとする意見がありますが、これについてどう思いますか。」給与決定について労使の完全に自主的な団体交渉にゆだねるべきであるとした場合、その点についてあなたはどういうお考えを持っておりますかということで、アンバランスが出るとか出ないとかいうことは、何もあなた方がここによけいなことをつけ加える必要はないじゃありませんか。その点はどうなんですか。しかもいま労政局長のお話のように、すでに一律内示の中にアンバランスが出てきている。そういう話が出てきているわけでしょう。そして大蔵省の説明の中では特殊法人の平均年齢は三十四歳弱である、一方、国家公務員は三十九歳強であるということで、大学卒の初任給と平均引き上げ率との間を当てはめてみますと、国家公務員の平均年齢三十四歳の引き上げ率は一一・六%、こういうようになる。だけれども、現実はそれよりかずっと少ないわけでしょう。あなた方は現実にアンバランスが一律内示の中ですでに出ていることをお認めになっていながら、なぜこんなことを書くのですか。例はまだほかにもありますよ。一律内示をやればアンバランスが出ないということにはならぬでしょう。すでにアンバランスが生じておるにもかかわらず、一律内示をやることによってアンバランスがあたかもなくなるような錯覚を起こさせるかのごとき設問でしょう。こんな設問のしかたが正しいかどうかという問題になりますよ。これはどちらのほうがこういう設問をおつくりになったか知りませんが、大蔵省にちょっとお伺いしたい。その点についてどうお考えですか。
  33. 西垣昭

    ○西垣説明員 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては特定の方向へ誘導しよう、そういう趣旨で質問をつくったわけではございません。あるいはできばえが悪かったかもしれないと思うのでございますけれども、われわれとしてはそういう考えはございません。
  34. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしたらこの三番の前かあとに、給与決定について一律の内示の場合すでにアンバランスは生じております、これを一項入れるのがほんとうなんです。そんなものが抜けちゃって、そして自主交渉をやればアンバランスが出ますよという言い方は、非常に片寄った設問のしかたになるじゃありませんか。大蔵省として、これを入れますか。あなたたちが給与の問題の担当者なんですから、入れなさいよ。その点についてどうお考えになりますか。
  35. 西垣昭

    ○西垣説明員 アンケート設問のしかたにつきまして、いろいろと御意見があるとは思います。その点につきましては、理事者側にも組合側にも、御意見があれば御遠慮なくそれを書き込んでください、こういうふうに申し上げております。
  36. 山本政弘

    山本(政)委員 これは実際問題としてのあれですけれども、また自主交渉にゆだねていった場合に、組合のほうがいつも天井知らずの賃金要求を出していく。そして理事者がその要求をそのままいつも受諾をするというふうにあなた方はお考えになっているのかどうか。この点はいかがですか。
  37. 石黒拓爾

    石黒説明員 団体交渉におきまして、当局側の提案につきまして労働組合側が常にそれに同意しなければならないとは考えておりません。
  38. 山本政弘

    山本(政)委員 現実の問題として、もちろん組合側が要求を出す、その要求を理事者のほうが常に受諾するということは、これは政府関係特殊法人の場合でなくったって、そういうことはちょっと考えられないと私は思うわけですよね。そういう事例というものはないだろう、やはり限界というものがあるだろうと思うのですけれども、そうすると、「一般民間企業の場合と異なり、競争市場における企業の存立の維持という賃上げの歯どめがなく、問題であるとする意見がありますが、」というこの設問のしかたも、ぼくは少し無理があるんではないだろうかと思う。   〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 団体交渉というのは、いつも労使の両当事者の合意によってのみ効力が生ずるものだとぼくは思うのですよ。そうすると組合側の主張に使用者側の主張が対立した場合に、この設問というものは少なくとも歯どめをかけていったような質問になりはせぬだろうか、逆に歯どめをかけるような設問になりはせぬだろうか。そんな感じがするわけですけれども、この点はどうお考えになりますか。
  39. 石黒拓爾

    石黒説明員 政府関係特殊法人団交につきましてこういう意見が現実にあるからそれについてどうかということを聞きましたので、先ほどから申し上げておりますように、二つの立場調和が非常にむずかしい、こういう立場をとればこういう問題が指摘される、逆の立場をとればこういう問題も指摘されるということを並べて書いておるわけでございまして、こういう意見があるからどうしても自主交渉認められないんだというような立場で書いたわけでございませんで、そんなことは問題じゃないんだという御意見であれば、そのように書いていただけばよろしいわけでございまして、決して誘導尋問ではございません。
  40. 山本政弘

    山本(政)委員 ですから私が申し上げたいのは、つまりそういう歯どめがなくなるというふうな意見がもしも出てくるとするならば、それは要するに理事者側のほうにむしろ問題があるわけで、その理事者を任命したのは実は政府なんです。これは政府間の問題になる。政府間の問題というものをむしろすりかえて労働者のほうへ持っていって歯どめ論、歯どめ論というようなことを言うことは、ぼくは筋違いだというような気がするのですね。その点はどうですか。これは石黒さんと大蔵省、お二人に御意見を聞かしてもらいたいと思います。
  41. 石黒拓爾

    石黒説明員 たいへん貴重な御意見でございまして、私どももその御意見を十分念頭に入れて検討いたしたいと思います。
  42. 西垣昭

    ○西垣説明員 同様でございます。
  43. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ時間もありませんから次の質問に入りますけれども労使自主交渉をそこなうような不承認——先ほど承認というおことばがありましたけれども、そういう不承認ということは許されるのかどうか。私は制度上承認権というものはあると思うのです。しかしその承認権というものについては厳重な制約があるだろうと思うし、それから、自主交渉をそこなうような不承認というものは許されないというような感じが実はするわけでありますけれども、その点について、あるいはこれは大蔵省のほうのお考え方をお伺いしたほうがいいかもわかりませんけれども、その辺はいかがでしょう。
  44. 西垣昭

    ○西垣説明員 ただいま人事院勧告に基づいたいわゆる内示制度というものをやっておりますが、これはそういった事態が起きないようにということでそういう制度になっておると存じます。
  45. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、つまり自主交渉権をそこなうような不承認があっちゃいけないということでやっているということですね。ことばを変えれば、そういうことは許されないということにもなりますね。そういうふうに理解していいですね。もう一度答弁をお願いいたします。
  46. 西垣昭

    ○西垣説明員 不承認という事態を招かないようにということで、内示制度というものをやっておるわけでございます。
  47. 山本政弘

    山本(政)委員 じゃ、もう一ぺんお伺いしますけれども労働基本権を実際上空洞化するようなそういう不承認というものは許されませんね。この点はどうでしょう。これは労政局長のほうの御意見を伺います。
  48. 石黒拓爾

    石黒説明員 承認制度というものが労使の自主的な交渉の結果を否定するということになることは好ましくないことでございますので、そうならないように十分苦心しておるところでございます。
  49. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、現実の問題として、いま大蔵省あるいは労働省のほうから御答弁があったことは、若干違ったような問題が出てきていることを私は指摘しなければならぬと思うのですけれども、現実には承認の有無というより前に、一方的な内示というものが出てくる。そうしてそれをたてにとって、理事者のほうで、団交を回避するとかあるいは責任を回避する、そういうものが実は行なわれておることを私は知っております。そうすると、そういう実情があるということについて、一体、これは当然とお考えになっておるのか、あるいはそういうことは好ましくないというふうにお考えになっておるのか、この点はいかがでしょう。
  50. 石黒拓爾

    石黒説明員 使用者側団体交渉を拒否するということは、もちろん好ましくございません。しかしながら、現在の制度におきましては、団体交渉もなかなか円滑にいかない場合があるということもございますので、私どもこの問題を検討したいと思っております。
  51. 山本政弘

    山本(政)委員 そういうことによって団交を回避しちゃいかぬだろうし、責任を回避しちゃいけないと私は思うんですよね、理事者としては。これは私どもの後藤君がしょっちゅう当事者能力のことを質問しておりますけれども、少なくとも、内示が出た、ですからこれでもうしようがありませんというようなことで、それをたてにとって団交を回避するということは好ましくないし、労使関係というものをいたずらに悪化させる、こう思うのです。ですから、それはやはりそういう事柄が起きないようにきちんと団交に応じなければならぬだろうと思うけれども、そういう指導というものをやはり大蔵省それから労働省もしてもらいたい。その二点について、一体、団交回避をすることは、これは好ましくないことか好ましいことだと思うか、この点と、指導上の問題、この点をひとつはっきり答えていただきたいと思います。
  52. 石黒拓爾

    石黒説明員 団体交渉を逃げるということは好ましいことではございません。当局側としては、自分の正しいと思うことにつきまして、労働組合側の納得を得るように努力をするということが必要であろうと思います。   〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、最後の質問に入りたいと思うのです。  このアンケートの一二ページですね、「特殊法人に関する労使関係制度基本的なあり方について」の二番目に「特殊法人特殊性公共性から、特殊法人労使関係については、一般民間企業の労使関係とは異なった特殊性があり、労働組合法及び労働関係調整法の適用にあたり一部特例を認めるべきであるとする意見がありますが、これについてどう思いますか。特例を認めるべきであると思う場合には、その内容を具体的に書いてください。」こう書いているのですけれども、これはたいへん問題があるんじゃないだろうか。つまり何も知らない特殊法人労働者の中にこれがすぽっと入っていくと、なるほどなあと考えるかもわからぬというふうに私は思うのです。つまりここで私が言いたいことは、こういう設問のしかたは、越権行為なんていうことは言うつもりはありませんけれども設問としては公正を欠いているのじゃないか。というのは、五月三十日の労働大臣の言明の趣旨と私は違うと思うのです。大臣労使双方から意見を聞くと、こう書いてある。そうすると、そういうことと矛盾しやしないだろうか、こういう設問のしかたというのは。ここには何か、場合によっては法改正をしなければなりませんよというサゼスチョンがあるような感じもするんですがね、暗ににおわせているような感じが。こういう設問のしかたというのは、私はたいへん困ると思うのです。この点について、法改正をするというおつもりなのかどうかというのを、これは労働省にひとつお答え願いたい。
  54. 石黒拓爾

    石黒説明員 現実にこういう意見があることは事実でございますので、それについての御意見を承る。おそらく労働側としては、とんでもない話であるというお答えがあるだろうと私ども考えております。法改正をするかどうかということにつきましては、私どもは全く白紙でございます。
  55. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、白紙であるということは、このアンケートに従って、この結果によって改正することもあり得るんだというふうに考えていいのですか。
  56. 石黒拓爾

    石黒説明員 このアンケートのみを唯一の根拠にして改正するということはございません。今後なお当事者の意見を十二分に聞き、慎重な検討がもちろん必要でございます。
  57. 山本政弘

    山本(政)委員 くどいようですが念を押しますけれども、まさかもういまのうちに調整をしなければならぬというところは改正をしなければならぬということが頭にあるわけじゃないでしょうね。この点はきちんとぼくは聞かしてほしいと思うのです。
  58. 石黒拓爾

    石黒説明員 私ども先ほど申し上げましたように、制度の改正というような問題につきましては全く白紙でございまして、どこをどう改正しようというような腹案があるわけではもちろん全然ございません。
  59. 山本政弘

    山本(政)委員 時間がありませんから、一つ最後に要望——要望といったらあれですか、お願いだけ申し上げて終わりますけれども東罐興業というところでいろいろ労使関係の中でごたごたが起こっておるようでありますが、私どもの手元にある資料によりますと、四十六年に組合の支部長が転勤を断わったために懲戒解雇になった。しかもその前には東罐興業の厚木支部の書記長が職種変更で札幌出張所に転勤させられた。それから六月には同じく厚木支部の副支部長が、支部の執行委員と一緒に滋賀県のほうに転勤させられた。それから同じ日に、厚木支部の執行委員が仙台の工場へ転勤させられた。七月には書記長の後任の次の書記長がまた職種変更されて、名古屋へ転勤された。同じ日にはまた別の厚木支部の執行委員がこれまた職場を配転させられた、こういう実態が出てきておるわけであります。きょう時間があれば、私は、これをひとつお伺いしたかったのですけれども、どうもこんなにたくさんの組合の支部長、書記長それから執行委員が半年もたたぬうちに次々と配転あるいは転勤をさせられる。そして、このあれから見れば、正当な理由があるにもかかわらず、それを拒否した人に対しては懲戒解雇。私は前に東ビンの不当労働行為について質問したことがありますけれども東罐興業と東ビンは系列がある、つながりがあるような話も聞きました。そうすると実は不当労働行為について一貫した労務政策が貫徹されているのではないかという感じがするわけでありますので、ひとつこれをぜひ至急御調査を願って、そして事情を聞かせていただきたいと思うのです。その次第によっては、またあらためて質問させていただきたいと思います。どうぞお願いします。  終わります。
  60. 小沢辰男

    小沢委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  61. 小沢辰男

    小沢委員長 速記を始めて。次に、後藤俊男君。
  62. 後藤俊男

    ○後藤委員 第一番に政労協関係内示の問題についてお尋ねしたいのです。  ことしの四月二十五日でございましたか、前の竹下官房長官に社労委員会に御出席いただいて、この問題につきましてもいろいろ話したわけですけれども、そのときに最終的な結論として、ひとつできるだけ内示の時期を早める、昨年はいつでしたか、九月二十七、八日ごろだったと思うのですが、さらに弾力性について、持たせるようにしたい、簡単にいえば、内示の時期を早めることと弾力性問題について最終的なお答えがあったと私も記憶しておるわけなんです。聞くところによりますと、この内示問題については遠からず出るように聞いておるわけなんです。私のお尋ねしたいのは、内示はいつ出るか、さらに弾力性の問題についてどういうふうにお考えになっておるか、この二点についてまずお尋ねしたいと思います。
  63. 西垣昭

    ○西垣説明員 いま先生からお話がございましたように、昨年は八月十三日に人事院勧告が出されまして、それから作業を始めまして、九月二十七日に内示をいたしております。ことしは人事院勧告が八月十五日と、二日おくれておりますけれども、われわれ作業を急ぎまして、去年より早く、できれば九月二十日ごろに内示をするようにしたい、かように考えております。  それから内示内容につきましては、現在作業中でございますので、まだ申し上げられないわけでございますけれども、弾力性の問題につきましては少しでも前進できるようにということで作業を進めております。
  64. 後藤俊男

    ○後藤委員 この弾力性の問題について、いま検討中だから言えない、こういうことですけれども、一々具体的なことをこまかく説明は聞かなくてもいいのですが、こういう点とこういう点とこういうような点についていまやっておるのだという大まかな方針というか考え方というのは言えると思うのです。その点の御説明をいただきたいと思うのです。
  65. 西垣昭

    ○西垣説明員 先生のおことばでございますけれども、まだ作業中の段階でございますので、とにかく方向としては少しでも弾力性を持たせたいということで作業いたしておりますので、御了承願いたいと思います。
  66. 後藤俊男

    ○後藤委員 作業中でございますので、少しでも弾力性を持たせます。これではさっぱりわからぬのだけれども、いままで長い間この問題は毎年毎年問題になってきておる点ですが、これは御承知のとおりだと思うのです。初任給の問題であるとかいや何だとかいって、いままである程度幅を持たせた、団交できめるというような弾力性を持たせた時期もあったわけですけれども、先ほど言いましたようにことしの四月二十何日でしたか、官房長官まで御出席いただいて、そういう話がきっちりできておるのですから、そうだとすれば、弾力性の問題については具体的にこういう点とこういう点をわれわれは考えておるのだというくらいなことを言うたっていいと思うのです。なぜそれが言えないのですか。まだきちっと仕上っておらぬから言えぬというのですか。これが新しく出てきた問題なら、それはあなたのほうも重要視しなければいかぬかもしれませんけれども、もう政労協賃金関係はここ五、六年だけでも私ども連続して叫び続けてきた問題なんです。それで先ほどあなたが言われましたように、いま作業中である、弾力性については十分考えておるんだ、こういうお話です。しかも、今月の二十日にもう内示を出すというのでしょう。今月の二十日というのは、もうあと一週間でしょう。一週間後に内示を出すきょう、その弾力性の内容についてどういうことを考えておるんだ。一々こまかいことを私は聞くつもりはないけれども、大まかにこういうふうなことを考えていま作業を進めておるんだというぐらいな親切な説明があってしかるべきじゃないですか。これは労政局長、どうなんですか。
  67. 石黒拓爾

    石黒説明員 大蔵省におきましても弾力性を持たしたいということで種々御検討、御腐心いただいておるというふうに承知いたしておりますが、内容につきましてはいま作業中のようでございます。
  68. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうすると、労政局長、あれですか。弾力性の問題であるとか内示の問題であるとか、この労政関係賃金の問題ですね、再三再四あなたにもわれわれはねばり強くいままでやってきておる問題ですが、この弾力性の問題については大蔵省まかせですか。おれは知らぬ、大蔵省でやっておるんだ、そんなあなた、水くさい態度なのかね。
  69. 石黒拓爾

    石黒説明員 大蔵省には種々御要望も申し上げておりますが、最終的な決定は大蔵省でなされるものと考えております。
  70. 後藤俊男

    ○後藤委員 どういう要望をされておるんですか、労政局長のほうとして。内容です。
  71. 石黒拓爾

    石黒説明員 従来の内示の弾力性の問題は、初任給を中心とした問題でございます。私どもも、それを中心としてさらに一歩進めてお考えいただきたいということを申しております。
  72. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われました初任給の問題をさらにそれより一歩進める、そういう方向でひとつ弾力性を持たせということを大蔵省のほうへ要求してあるわけなんですね。  そうすると、大蔵省給与課長にお尋ねしますが、いま言われた問題について、いま作業を進めておられるわけなんですか。いま労政局長がはっきり言われましたそのことについて、いま作業を進めておられるのですか。
  73. 西垣昭

    ○西垣説明員 先生も御存知だと思いますけれども、初任給につきましては、昭和四十四年までは大卒、短大卒、高卒、中卒の四つに分けまして公務員の各引き上げ額を内示いたしております。それから四十五年度にこれを前進させまして、この四ポイントにつきまして公務員の各引き上げ額につき二百円という弾力幅を持たせました。昨年は、この四ポイントを二ポイントに減らしまして、大卒と高卒だけを初任給の内示ということで内示をいたしまして、それぞれ二百円の弾力性を持たせております。現在は、その方向でさらに何か前進できないだろうかという検討をいましております。  それから、多少マイナーの問題ですから申し上げませんでしたが、従来職員給の最高制限という制約を設けておりましたが、これについては撤廃する方向で検討いたしております。
  74. 後藤俊男

    ○後藤委員 大体いま言われたそんなところですか、弾力性については。   〔委員長退席、向山委員長代理着席〕 初任給の関係と最高制限を撤廃する。ぜひひとつ少しでも早く内示を提示してもらうということと、それから弾力性の問題については何回となく論議をいたしたところでございますので、とにかく十分考えて、少しでも自主性の発揮できるようなものを内示の際には含めていただく、これはぜひお願いしたいと思うのです。これは労政局長よろしく頼みますよ。それから次は、公務員の人事院勧告が出まして、  それに準じて内示が出ると私は思うわけなんです。そうしますと、原資というのは人事院勧告に準拠して出すとするならば、これに基づいて予算が必要なんですね。この予算の計算というのはどういうかっこうではじき出されておるのでしょうか、はじき出されようとしておるんだろうか、この点をお尋ねしたいと思うのです。質問の中身わかりましたか。わからなければもう一ぺん言いますが……。
  75. 西垣昭

    ○西垣説明員 先生の御質問の趣旨は、人事院勧告に準じまして特殊法人給与の引き上げを行なうとするならば追加の財源が必要だろう、その追加の財源についてはどういう予算措置が必要だろうか、こういう御趣旨だろうと思うのですが、特殊法人にもいろいろございまして、国として追加の財源措置をやらないでも済むものもございます。それから、各特殊法人の中で予備費を取りくずしてやれるというものもございます。一般会計に響いてまいりますものは、人件費補助というかっこうで一般会計の増額補正をしなければならないだろうと思いますが、それにつきましては当然公務員のベースアップに基づきます補正の際にあわせて補正を組む、こういうことになると思います。
  76. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、ことしの人事院勧告というのは一〇・六%ですね。ところが、公務員の平均年齢というのは三十九・二歳ですね。それに対して一〇・六%の人事院勧告が出ておるわけなんです。政労協関係の平均年齢というのは三十四歳だと思うのです。そうしますと、平均年齢三十九・二歳に対して一〇・六%である。平均年齢三十四歳についてはどういうふうな引き上げパーセントになってくるか、これはおのずから変わってくると思うのです。簡単に言っておりますけれども、人事院勧告の中身の数字を十分考えた上での私の質問なんです。たとえば人事院勧告の引き上げ率というのは三十九歳で一〇・六%、三十八歳で一〇・八%、三十七歳で一一%というかっこうになっていますね。二十七歳でございますと、二%になるわけなんです。二十八歳でございますと一二・八%。大体一歳が〇・二%になっておるわけなんです。そうだとするならば、人事院勧告の平均年齢三十九歳で一〇・六%ですけれども、若くなることによって〇・二%ずつふえてきておるわけなんです。それが人事院勧告の内容なんです。それに準じて政労協関係内示を示そうとする場合には、いま申し上げました人事院勧告の中身に準じてこれをやらなければいけないわけなんです。政労協関係の平均年齢というのは、先ほど言いましたように三十四歳なんです。ですから、平均年齢が三十四歳ということと三十九・二歳で一〇・六%ということとの関連は一体どういうふうにお考えになっておるか、この点をお尋ねしたいわけなんです。
  77. 西垣昭

    ○西垣説明員 先生から御指摘がありましたように、公務員の平均と特殊法人の職員の平均との年齢差が約五歳ある。人事院勧告の中身としては、下級号俸の上昇率が高いために、これはつまり若年層の上昇率が高いから、公務員の構成をそのままにして特殊法人の上昇率にすることは、特殊法人の職員にとって決して人事院勧告に準拠したことにならないのではないか、こういう御指摘だと思いますが、私ども、かねてこの委員会の場その他におきまして、人事院勧告の上昇率をそのまま特殊法人の職員の給与上昇率に使うことは、形式的には人事院勧告に準拠ということにはなっても、実質的にはそうならないではないか、こういう御意見があることは十分承知しております。  ただ、職員構成の差というのは必ずしも年齢差だけではない、こういう問題がございますし、それから特殊法人法人の間の賃金水準の差でございますとか、それから特殊法人間でも年齢の高いところ低いところ、あるいはその他の職員構成でいろいろな違いがございまして、年齢構成その他職員構成の差をどのように特殊法人職員の給与水準の改定に使ったらいいかということにつきましては、非常に複雑な問題がございますので、その問題につきましては、基本的には現在労働省と一緒に作業をしようとしております基本問題の検討の一環として考えていきたい、かように考えているわけでございます。ただ、それならば本年度の内示の際には全然見ないのか、こういう御質問があろうかと思いますけれども、いま申し上げましたような複雑な困難な問題それから基本問題をこれからやろうとしているということ、こういったことも踏まえまして、何かいい方法を考えていきたいということで現在作業をしているところでございます。
  78. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われましたけれども、ちょっとわからぬのですがね。もう少しはっきりとそこをお答えいただきたいのです。年齢関係等についても十分検討してやっていきたいと言われる気持ちはわかるのです。その気持ちはわかるのです。ところが、内示そのものが人事院勧告に準じて出されるという趣旨は変わりがないと思うのです。そうしますと、人事院勧告そのものが、年齢によりまして、かなり引き上げ率が変わってきておるわけなんですね。そうだとするならば、それもやはり内示に反映してもらわなければいかぬわけです。ですから、三十九・二歳で一〇・六%から、平均三十四歳ならばざっと計算して五年違う。五年違うということは、〇・二%掛ける五で一%違うのじゃないか。そうしますと、公務員関係は一〇・六%ですけれども政労協関係としては一一・六%という引き上げになるのじゃないか、私はこういうふうに思うわけなんです。そういう趣旨で出ておるのが人事院勧告の趣旨じゃないかと私は思っておるわけなんです。そこなんです、聞きたいのは。そのとおりだとおっしゃっていただけば、それでいいわけなんです。もう二十日、一週間後には内示が出るんですから、もう作業が終わっておると思いますけれども、そこをもう少し明確にひとつお答えいただきたい。
  79. 西垣昭

    ○西垣説明員 先ほど申し上げましたのは、公務員全体と、それから特殊法人全体との間に職員構成で大きな違いがございます。その一つが年齢差でございますけれども、そのほかにも、たとえば職種構成でございますとか学歴構成でございますとか、人員構成としてはいろいろなファクターが複合されて、その結果違いが出てきておるわけでございます。それから特殊法人ということで、八十三法人を一体として取り上げて一応考えているわけでございますけれども、その八十三法人の中の法人の間の違いというものも相当大きうございます。  そこで、そういった職員構成の差をどういうふうに今後の給与に反映すべきかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、労働省と協力してやることにしておりますが、基本問題の検討の中でやらしていただきたい、かように考えているところでございます。
  80. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま課長が言われましたように、八十三法人ある。その中で年齢構成も違えば、条件もいろいろあるんだ。そのいろいろな条件、いろいろな中身の違いがあるものですから、それらを十分検討をしてやっていきたい、こういう説明だったと私思うのです。  そうなりますと、いま言われました八十三の法人の年齢構成が平均三十四歳である。公務員のほうは三十九・二歳だ。公務員の関係としては一〇・六%だ。いま言われた八十三の政労協関係の構成は、平均年齢が三十四歳である。そうだとするならば先ほど私が言いましたように、公務員、これは一口に公務員といいますけれども、全般の平均が一〇・六%ですね。八十三団体の平均が一一・六%前後引き上げるんだ、人事院の趣旨に従えばそうなるんだ、そういうかっこうの内示が出るんだ、こう考えていいわけですか。
  81. 西垣昭

    ○西垣説明員 理論的に考えますと、その他の職員構成が公務員と特殊法人と全く同じ、それから勤務条件その他も同じであれば、先生のおっしゃったようなことになろうかと思います。
  82. 後藤俊男

    ○後藤委員 年齢のみを考えると、どういうことになるのですか。
  83. 向山一人

    ○向山委員長代理 西垣給与課長、もう少し大きい声でやってください。
  84. 西垣昭

    ○西垣説明員 先ほど先生が言われましたように、年齢の高いところと低いところを比較しますと、一般的に申し上げますと、人事院勧告では低いところのほうの上昇率が高うございます。したがいまして、その他の条件を全部はずして考えれば、年齢の低いところの上昇率は高くあるべきだ、こういうことになろうと思います。
  85. 後藤俊男

    ○後藤委員 年齢のみを考えれば、当然人事院勧告に基づいて、若い人というとおかしいのですが、引き上げ率がよくなるんだ、そういうことなんですね。だから、そういうかっこうの内示を今回出すんだ、そこまではいかぬわけかね。聞きたいのはその辺なんですよ。あなた、少なくとも人事院がこういう勧告を出しておるのなら、とやかく言わずに、人事院勧告に準じて出したらどうや。内容がどうとか職種がどうだとかこうだとか、おもしろいことを言わず、人事院勧告の趣旨に従って、三十九・二歳で一〇・六%だ。あなたのおっしゃるように、三十八、三十七、三十六、したがって、一年違えば〇・二%の違いで人事院勧告が出ておると思う。それだったら、政労協関係は三十四歳だから大体五年違う。五年違えは、〇・二かける五で一%違うのだ。そうすれば一%分だけは公務員よりかよけい原資を使うところの内示を提示すべきだ。ほかにもいろいろ問題はあろうけれども、そういうことが基本方針になっておる、こう言われれば、さようでございますか、こうなる。どうもあなたの言われるのはわかったようなわからぬような、歯切れの悪い話で、もうちょっとすっきりせぬわけだ。これは、人事院勧告に準ずるのだから、簡単な問題だと思う。いままで、人事院勧告が出るまで待たしたのじゃないですか。春闘で解決せい解決せいといって、すったもんだすったもんだあなたのほうで言われて、労組法適用の組合でありながら人事院勧告まで待たす。待たしたあげくに、一番肝心なこういうポイントのことを聞くと、あいまいなことをおっしゃる。あいまいな中で内示を出してしまって、それをやらす。どうもいままでの話と前進しておらぬように思う。四年か五年か連続してわれわれ追及しておりますけれども……。もうちょっと明確に答えてください。
  86. 西垣昭

    ○西垣説明員 先ほども申し上げましたように、職員構成の差をどういうふうに考えていくかという問題につきましては、今後基本問題を検討します大きな一環として研究してまいりたいと思います。ただ先生がおっしゃいましたように、年齢差の問題というのは確かに大きな問題でございますので、先ほどもお断わりいたしましたように、ことしの内示の中身についてはまだ申し上げられませんが、その辺も十分考えて原案をつくってまいりたいというふうに考えております。
  87. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまのところ内示が最終決定しておりませんので、その説明を全部してくれと私は言いませんけれども、いまあなたが言われましたように、人事院勧告に準ずる内示でございますから、年齢構成につきましても人事院勧告に準じて内示を出すように全力を尽くしたい、十分考えてやっていきたい、そういう御説明ですから、ぜひひとつその点はお忘れのないように、内示の中に十分含めていただくようにお願いしたいと思うわけです。  それからその次の問題としまして、先ほどもあなたが言われましたように八十幾つからのたくさんの企業があるわけです。ところが各企業によって格差ができておると思うのです。調べてみますと、賃金ベースで大体二万五千円ぐらいの格差があるわけです。賃金ベースで二万五千円の格差のあるところへ内示で率でぽっと出されると、格差がますます大きくなると私は思うわけです。こういう格差についてどういうふうに内示の面でお考えになっておるか。その格差を認めたままでまたべースアップを認めていく、認めたままで認めていくということを連続してやっていきますと、どんどん格差が開いてくるわけです。それも千円や二千円じゃない。大きい二万五千円からの格差があるのです。よもや大蔵省も、この格差を認めて、どんどん大きく格差が開いていく一律内示ということにならぬと私は思うのです。どういうふうにその辺を検討しておられるか、御説明いただきたいと思います。
  88. 西垣昭

    ○西垣説明員 いま先生から御指摘がありましたように、従来一律の率でもって内示をしております結果、格差がそのまま残るという問題がございます。それは基本的な大きな問題だと思いますので、それにつきましては、先ほど申し上げました基本問題の研究ということで十分検討を進めていきたいというふうに考えております。
  89. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまの格差の問題については、一週間あとに内示を出すのですから、もうはっきりしておるのではないですか。私は、大体こういう内示を出すというのは方針がもうできておるという前提に立って質問をさしていただいておるわけですが、いま言われた格差問題については、基本問題の研究ということになるから、そこでひとつ十分研究したい、そんなことを言っておって、二十日に内示が出るのですか。格差問題はいままでどおりやっていくので今後の問題として考えたい、そういう気持ちじゃないのですか。現実に格差が二万五千円ある。それと同じ率をプラスしてまたベースアップしていったら、どうなるかわからない。今度の内示はそんなことを考えておらぬならおらぬとはっきり言ってください。考えておるなら、こういうふうにやるのだと、ありのまま率直に答えていただければいい。考えておらぬことを考えたような顔をして答弁されると話がなかなかむずかしくなる。確かに指摘されておる点は問題点だ、いままでそれは問題にしなかったけれども、それは何とかして今度の内示に反映させなければいかぬということで、残り一週間でこの問題を徹底的に研究して実施に移すなら移すということなら、なるほどそうか、それならぜひひとつ頼むということで話が進んでいくわけですが、どうもあなたの答弁があいまいだから話が次へ進まぬわけです。
  90. 西垣昭

    ○西垣説明員 どうもはっきり申し上げられなくて申しわけありませんが、先ほど申しましたように、この問題については基本的には基本問題の調査ということで今後の研究にまちたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 後藤俊男

    ○後藤委員 基本問題ということで今後の問題として研究したい。それでは今度の内示はどうなるのだ。それなんですよ、私が言っておるのは。一週間後にあなたのほうで出される内示の中は一体どうなっておるのですか。二万五千円からの格差がある。これがまだどんどん開いていくのですか、そのまま開きっぱなしでずっといくのですかということを私は聞いておるわけです。それであなたはよろしい、そういう内示をやると言うなら、その理由を説明してもらわぬければわれわれ納得できぬわけです。今度の内示ではこの賃金格差の問題は考えておられないということですか。
  92. 西垣昭

    ○西垣説明員 今度の内示には、検討中ではございますけれども格差問題は間に合わないと思います。
  93. 後藤俊男

    ○後藤委員 間に合わないと言って、まるっきり汽車に乗るようなことを言われますけれども、そうしますと、格差二万五千円からの開きがあるのをそのまま認め内示を出される、そういうことになりますよ。あなた、間に合わぬということは、格差がますます大きくなってくるわけなんです。  これは次官、いかがですか、この問題は。あなたもここで聞いておられてわかると思うのです。政労協関係の企業というのは八十から九十から、聞くところによると百何十あると思うのです。その中でずっと賃金を調べてみますと、二万五千からの格差があるわけです。そこで、人事院勧告に準じて内示が提示される。これはパーセントで提示される。そうすると、金額が上がれば上がるほど格差がふえてくる。そういう内示をするのだということを大蔵省給与課長は言うのだ。今度は考えておりませんというわけだ。それではたして妥当な内示になるのですか。
  94. 塩谷一夫

    ○塩谷説明員 御質問の趣旨は私十分わかっておりますが、大蔵省としてはまだそれが基本的に固まっていない、したがって今回間に合わないということは、私自身としては少し御質問の趣旨に対して仕事が怠慢だと思います。
  95. 後藤俊男

    ○後藤委員 次官、怠慢だ、こう言われますけれども、ただ一口に怠慢だけでは通らぬような気がするのですがね、まだ一週間あるのですから。給与課長が中心になって内示をつくっておられる。格差のことは考えておらぬ。考えておらぬけれども、来年度あたりの内示、それまでに研究したい、こういうことだろうと思うのですが、矛盾しておらぬですか。給与課長、このやり方が正しいのですか。正しくなかったら正しく変えてもらうことだと私は思うのです。正しいと思って内示を出されるのではないのですか。間違った内示だけれども、しょうがない、出すのだ、こういうことじゃないでしょう、今度出される内示は。これで大蔵省として労働省とも十分相談をして最高のものである、これが人事院に準じたりっぱな内示であるということで御提示になると思うのです。そうすると、それに基づいて各組合は団体交渉をやったり、いろいろやってきめてくるわけなんですね。そこに結局弾力性を持たせるような方向へ進めるわけにいかぬのかということを私は言いたいわけなんです。何もかも一律でぱっとやってしまうわけですから、二万五千円は相変わらずどんどんふえる一方です。何もかも四角四面で、定木の上に乗せてしまって、賃金の問題は、政労協関係労働組合が何のためにあるのかわからないようなことになるのですよ。一年間ストライキをやって、やった結果がこんなことで、縛られて縛られて縛られてしまって、相変わらず格差は格差でどんどん認めていくことになるわけです。それを、一週間後に出る内示は格差のことは考えておりません、あと一年ほど考えて研究してみましょう、こういうあなたのお考えですから、私はのんびりしていると思う。だから、この点も含めて、あわせて先ほど言いましたところの年齢関係の問題ですね、年齢構成の問題、これらのことも非常に重大な問題ですから、まだ内示の提示は一週間ありますから、一ぺん根本的にひっくり返してやり直してもらいたいと思う。われわれはそれくらいなことは言うあれがあるのですよ。五年も六年も同じ問題を、この社労委員会を開くたびに政労協、春闘をやり直してきたのですから、大蔵省ももうちょっと真剣に取り組んでくれたらどうですか。間違ったところは直すようにしていったらどうですか。もっと自主性を持たせるようにやったらどうですか。もうちょっとそういう気持ちになるべきだと私は思うのですよ。正しいというならば、正しいという理由を説明してくれれば私は納得するのですよ。
  96. 西垣昭

    ○西垣説明員 私のことばが足りなかったからだろうと思います。そのために労働政務次官からも怠慢だというおしかりを受けたのだと思います。私が申し上げたかったのは、結論として出ております各法人間の賃金水準の差というものは、確かにかなり大きなものがございます。ただ、各法人の性格の違いでございますとか、仕事の内容の違いでございますとか、職員構成の差でございますとか、その格差が出てまいった過程においては、いろいろな理由がからみ合って出てきているのだろう、こういうことでございますので、基本的には、先生がおっしゃいますように、格差問題を、そのままにしておいてよろしいとは決して思っておりませんけれども、そのためには、先ほど申し上げましたように、基本的に問題を洗いざらい洗い直してみる必要がある。そういう意味基本問題研究の一環といたしまして、この問題につきましても真剣に取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  97. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは課長、こういうことも言えると思うのです。これは政労協関係の皆さんにおしかりを受けるかもしれませんが、たとえば九月二十日に内示を提示する。ところが根本的な問題がまだ十分入っておらぬ。だから九月二十五日まで内示の提示をちょっとおくらす。おくらすというと変ですが、故意におくらせるわけではない。ただし、いま言いました問題は全部内示の中に含めまして妥当な内示を出す、そういう方向をたどるとするならば、あえて私はそのほうがいいような気がするわけなんです。四日や五日先に出してもろうて、中身を見てみたら間違いだらけで、根本的に研究するといろいろな問題が出てくる、そんな間違った内示を四日や五日先に出してもらうよりも、たとえ四、五日おくれたにしたって、五年も六年もわれわれここですったもんだやってきた中から前進するような内示なら、そういう関係の八十三団体の皆さんもあえてしんぼうはしてくれると私は思うわけなんです。ですから政務次官、一ぺん大蔵省と、課長とも相談してもらって、内示をもう一ぺんやり直す、二十日に間に合わなければ二十一日に出す——これは故意に延ばすのじゃないですよ、われわれの言いたいのは、あと一週間あるから、これはやろうとすればやれると思うのですよ。万が一にも一週間で間に合わぬときにはという話を私はしておるのであって、だから今回出される二十日の内示には、いま言いましたように一ぺん根本的にひっくり返してやり直してもらう。年齢構成の問題から格差の問題から初任給の問題——これは、初任給の問題も私は次にやりたいのだが、時間がたちますからついでにやりますけれども、この政府関係の機関の初任給というのは七、八年前には非常に高かったのですよ。いまはどんどん下がってしまって、公労協関係の初任給と比較しても、いま公労協関係よりも初任給は低いのです。私は専売の労働組合の初任給とここの初任給と比較してみました。どんどん下がってきておるわけなんです。こういうような点についてだって、一体大蔵省内示する場合どういうように考えておられるのか。やはり有能なる人材を雇うためには初任給も妥当な初任給でなければいかぬと思うのです。そういう意味で七、八年前には初任給が高かったと思うのです。いまどんどん下がってきて、公労協の専売と比較しましたら、専売よりかこれは低いのです。あなた、低くないような顔をしていらっしゃるけれども、金額的に言えというなら、私は資料を持っていますから言えるのですよ。だからそういう点と年齢構成の問題、格差の問題を含めて、どうあろうとも今度の内示の中にはそれらを解決するところの内示方向を示してもらわなければいかぬと思うのです。だから、せっかくいままであなた方が一生懸命やってこられたと思うけれども、それを一ぺん御破算にしてもらって、いま言いましたところの内示内容に修正をしてもらって、そしてその内示を二十日、それだけの大作業だから一日おくれれば二十一日、それでもかまわぬと思う。そのほうが一般適用される人々は喜ばれると私は思うのだ。そこまで踏み切ってやってくれるかどうか。これは政務次官、お尋ねします。
  98. 塩谷一夫

    ○塩谷説明員 ただいまの御質問の趣旨を十分受けまして、大蔵省も苦心のあるところでありましょうが、私は私の申し上げましたように怠慢だと思いますので、極力努力するように政府部内で相談をいたします。
  99. 田邊誠

    ○田邊委員 関連して。いま後藤委員から話がありましたのは、私も社労でもって取り上げたこともあるし、またずっと聞いておったこともありまして、いまさらの問題ではないわけですね。ですから給与課長の話も私よく聞いておって、問題のむずかしさは私知っておるわけですよ。しかしそれは、毎年行なわれる人事院勧告だって、たとえば中だるみの問題にしても、あるいは技術職の給与改善の問題にしても、全部が一挙に解決していないけれども、長年の懸案事項というのが逐次解決する方向で勧告は出されておると思うのですよ。五月実施も四月実施になってきたという、こういう経緯もあるわけだから、この際一挙に全部が解決できないとしても、その中で当面取り上げられる問題、あるいはまた格差にしても初任給にしても、それは全部の項目についてできないにしても、将来にわたってこうすべきだというような考え方を示すことぐらいは私はできると思うのです。これは石黒さん知っているけれども、この前の通常国会でも、賃金問題は期限を切って何らかの解決方法をとるべきだということを言っていたわけだ。これは労組法適用があるといっても、実際には大蔵省がさいふのひもを握っておって、予算がこれは特別な予算だから、なかなか自主的な解決を与えない。そういう中でもって格差問題も出てきたとすれば、これは責任は大蔵省にありますよ。政府にありますよ。ですから、いま答弁を聞いておっても、いままでやっておったことが全部正しいとは言っていないでしょう。直すべきことはあると言っているのでしょう。したがって、根本問題の研究をしてやりたいと言っているのでしょう。実際はおそきに失しているのだ。いまさらとわれわれは思うのだけれども、せっかくそういう努力があるならあるでもって、それはやってください。しかし当面それだからといって手をつけられないわけじゃないわけだ。手をつけられる問題は手をつけて、そしてまた具体的に今度のことでもって、これだけはやりました、やらないけれども一年間なら一年間の検討の中でもって、この問題についてはやるべきだということを、各種公社公団なりに示すという方法だってあるわけだ。方法はいろいろあるわけだから、その一つや二つは取り上げてやるというような熱意がなくて、百年河を持つというかっこうは、私どもは承知できないと言っているのですよ。後藤委員だって、毎年これを取り上げてやってきた立場からいったってこれは納得できない。あたりまえの話だ。いま政務次官はそういうふうに大蔵省と相談されるということを言われましたから、われわれはその熱意にせっかくひとつ期待をいたしますけれども、これは大蔵当局も、私は決して無理を言っているつもりはないし、またあなた方が前向きの姿勢であるということについて全く否定しているわけじゃないのだ。しかし国会の中で答弁をすれば、毎度答弁が行ったり来たり、あるいは進むような後退するような、そういう形では、これはわれわれはやっぱり国会審議というものをないがしろにしたというように思わざるを得ないわけですよ。そういう観点でひとつしっかりやってみるというふうにはっきり言ってください。
  100. 塩谷一夫

    ○塩谷説明員 ただいま田邊委員の御趣旨のとおり、将来までの抜本的な問題は十分余裕をいただいて、まず弾力的なことができますように積極的に努力いたします。
  101. 後藤俊男

    ○後藤委員 では、大蔵省もわかりましたね。そこであとからもう一ぺん聞きますが、労政局長、この間アンケートを出されましたね。あれはだれが出したのですか。
  102. 石黒拓爾

    石黒説明員 あれは労働省大蔵省と共同で出したものです。
  103. 後藤俊男

    ○後藤委員 あのアンケートを大体私も見たのですが、一口に言うと、文章は違うかもわかりませんが、特殊法人関係賃金の問題が毎年毎年長い間問題になってきておる。ところが労組法適用の組合である。だからアンケートの中の第何番目でございましたか、大きな三番の数字でありましたか、この際労組法なり労調法なりこの辺のところを改めて、特別にやれるようなかっこうにしたいと思うが、これに対してどういうような御意見でしょうかというアンケート一つあったわけなんです。これはあなたも出したほうだから十分記憶しておられると思うのです。これを一口に言うと、われわれが五年間六年間やってきたのを、労組法適用の組合であるけれども、こういう関係の機関については人事院勧告に基づいて賃金をきめていくんだというようなかっこうに法律改正をしてしまおうと考えておるがいかがでしょうかという問いが出ておるわけなんですね。それはわれわれがいままで五年六年叫んできたこととまるっきり方向が違うわけなんですね。あんなアンケートをなぜ一体出されたのですか。いままであなた方は一生懸命にやろうということでいつの通常国会においてもこれは取り上げた問題なんですよ。それと全く趣旨の違うようなアンケートを出して、そのアンケートに基づいて進めていこう、そういうふうな気持ちではないかと私は推測するわけなんですが、どういう気持ちでいま申し上げましたところのアンケートをお出しになったのか。いま出した問題がアンケートの中で一番中心問題だと私は思うのです。いかがですか。
  104. 石黒拓爾

    石黒説明員 このアンケートは、政府関係特殊法人労使関係についていろいろな問題があり、いろいろな意見が出ておる。そのすべてについてできるだけ全部カバーするように皆さんの御意見を承りたいということで、現実に労組法労調法の特例を認めろという意見も実はわれわれの耳に入っているわけでございます。そういう意見もあるがどう思うかということで、特例を認めたいがどう思うかというふうには決して申しておりません。私どもといたしましては、労働組合側はおそらく絶対反対ということをおっしゃるであろうと思っております。そういう反対の御意見が多ければもちろんそれに従う、それを尊重すべきものでございましょうし、一応あらゆる意見についての皆さん方の御意見を承るというだけで、法律改正云々というようなことにつきましては、現在全く白紙で、透導的な気持ちは持っておりません。
  105. 後藤俊男

    ○後藤委員 あのアンケートはどういう範囲に配られたのですか。
  106. 石黒拓爾

    石黒説明員 政府関係のいわゆる特殊法人といわれておるもの八十三団体並びにその団体で労働組合があるところはすべてこの労働組合ということでございます。
  107. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、これはえらい単純なことを言って申しわけないのですが、八十三の労働組合と八十三の管理者のほうに出したということですか。
  108. 石黒拓爾

    石黒説明員 八十三の法人の管理者に出して、それからその中で労働組合のない法人もございます。そこには出しておりませんから、労働組合の数はやや少のうございます。
  109. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、労働組合のない団体もあるとおっしゃいますが、そうすれば管理者側のほうが数が多いわけですね。それでは、けっこうだ、労組法労調法を改正して、特例法を認めてやってくれという管理者側の意見が多かったらそうなるのじゃないですか。労働組合の数のほうが少ないのでしょう。
  110. 石黒拓爾

    石黒説明員 これは先ほど山本委員の御質問にもお答えしたのでございますが、一応の御意見の概観を得るためでございまして、このアンケートの集計ができましたら、今度は個別に労使の代表的な方々とヒヤリングをする、さらにその上で検討をするということでございまして、このアンケートの数によって、労調法の特例が多数だったから改正しますなどというような軽率な結論の出し方をするつもりは毛頭ございません。
  111. 後藤俊男

    ○後藤委員 軽率に扱われると私も思いませんけれども、あのアンケートの中身を読んでみまして、われわれのいままで言ってきたのとだいぶ違っておる。法律改正してでも現行で押し切っていこう、こういう気持ちがあの中にあらわれているような気持ちがしたものですから、そこで、いま言われましたように管理者側と労働組合側とに出して、管理者側のほうが数が多いのですから、来年になると、アンケートを出しましたら数が多うございましたのでこうやりました、こういう説明になると思うのです。軽々しくやるとはおっしゃいませんでしたけれども。だから、いままで長い間毎年毎年やってまいりましたところの趣旨というのはぜひひとつ忘れないようにしていただきたいと思います。  先ほど次官からも田邊君からの話に明確に答えていただいたのですが、大蔵省、ひとつ内示提示に対する決意のほどを表明してもらいたいと思うのです。
  112. 西垣昭

    ○西垣説明員 先ほども御説明の際に申し上げましたように、私どもといたしましては、少しずつでも前進するようにということでいままでやってまいりましたし、今後もそのつもりでおります。今度の内示をも含めまして、少しでも前進するようにつとめたいと思います。
  113. 後藤俊男

    ○後藤委員 少しでもではなしに、先ほど田邊議員が言われた点についてどうなんだということなんです。そんな抽象的なお答えを私は聞いておるつもりじゃないのです。少しでも前進いたします、そんなことは毎年毎年いままで言われてきたことなんです。先ほどから約一時間にわたって年齢構成の問題格差の問題、初任給の問題、自主性の問題をやってきたでしょう。たとえば格差の問題についても、あなたは今度の内示では考えておらぬというのでしょう。次官が言われましたのは、いまから一週間で無理だろうとは思うけれども真剣にひとつその問題も取り組んでみたい、私は次官はそう言われたと解釈しておるわけなんです。それならそれで、それをつくっておる大蔵省給与課長は、次官の言われることに従ってやるのがあたりまえじゃないのですか。
  114. 西垣昭

    ○西垣説明員 特に御指摘のございましたのは年齢の格差の問題、法人間の賃金格差の問題初任給の格差の問題だろうと思いますが、御指摘の御趣旨を十分考えて、少しでも前進させていくということで努力をさせていただきます。
  115. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは次官、ひとつ先ほどから問題になっておる点を内示の面で実現をするようにお願いをいたしたいと思います。大蔵省もぜひ頼みますよ。  終わります。
  116. 向山一人

    ○向山委員長代理 次に、田邊誠君。
  117. 田邊誠

    ○田邊委員 私の質問をしたい問題について、法務省なり警察庁のほうの担当の答弁者がまだ出席でございませんから、とりあえず郵政省のほうにお聞きをいたしたいと思います。  労使関係の正常化について郵政当局と労働組合の間でいろいろと努力をされてきたと思うのでありますが、われわれは昨年一年、また今年にかけてもかなりこの労使問題を取り上げてまいりました。何といっても郵政は人の職場でありますから、この労使関係が正常化しなければ事業の円滑な運行ができないという観点で、種々具体的な問題を取り上げてまいりました。全般的にいってかなり正常化に向かっている点が私は多いと思うのですが、しかしそれはそれだけに、局地的に起こっておる問題について正確な結論を出してもらうことが必要だろうと思います。きょうはその中でも特に郵政省に関係をする刑事事件について、これは実はいろいろないきさつがありまして、ただ現象的な面だけを見て事をはかるというわけにはいかない面があると私は思うのです。これは郵政省自身はよく知っておると思うのですが、特にあとでお伺いする警察庁なりあるいは法務省なりに対して実はこのことを強調したいと思っておるわけですが、いずれにいたしましても、そういった刑事事件に類すること、特に暴力事件といわれておるような事犯が起こっておるとすれば、これがいずれの側に属する問題であっても避けなければならぬことだろうと思っておるわけです。  ところで、ことしになりましてから発生をいたしました暴力関係の事件で、これが司直の手でもって捜査をされ、あるいはまた被害を受けた側からするところの告訴、告発等によって起こっておる問題は、概括的にいってどれほどございましょうか。その中で特に告訴、告発によるものについて一体どんなものがございましょうか、数だけでけっこうでございますからお答え願いたい。
  118. 北雄一郎

    ○北説明員 本年の一月から八月まで全体で百九件、残念ながら起こっております。そのうち四十二件が告訴、告発、そういう形をとっておるものと把握いたしております。
  119. 田邊誠

    ○田邊委員 その中でいわゆる労働組合の側で告訴、告発したもの、それから労働組合でない、管理者側といいましょうか、でしたもの、これはわかりますか。
  120. 北雄一郎

    ○北説明員 そこの詳細にいたしましたものをただいま手元に数字を持っておりません。
  121. 田邊誠

    ○田邊委員 いまちょっと御報告をいただきましたことによって明らかなとおり、百件以上の事犯があるということは非常に残念なことでありまするが、その中で特に告訴、告発をしておるというのが約半数に近い数を占めている、これは私は一つ特異的なことだろうと思うのです。というのは、いわゆる第三者が見て、かなりこれは暴力的な行為であるということは、いわば捜査をする側にも伝わるものですけれども、しかしこの中にはかなり意図的に告訴、告発をしたというようなものも私はあるのではないかと思うのです。かなりそういう事犯が多いですね。このことに対して一体どういうふうにお考えですか。
  122. 北雄一郎

    ○北説明員 告訴、告発はいろいろなケースがあると思うわけであります。組合員同士間の争いというような場合もありますでしょうし、管理者側が告訴するというケースもあると思います。前者について考えますと、これについては特段に暴力行為云々ということは言っておらないわけでございます。したがいまして、当事者が告訴しようと思えば告訴するという形になりますので、この辺がその点どうなっておるかにつきましては私どもわからないわけでございます。管理者が告訴いたします場合、これにつきましてはおのずからやはり事の軽重、それからその暴力行為がありました後における加害者のほうの態度、こういうことがやはり勘案されて適正な判断でもって告訴をしておるものと、かように考えております。実はどういう場合に告訴せよというようなことにつきましては、私どもとして具体的な指示は一切いたしておりません。ただ考え方としては当然そうあるべきだというふうに思っておりまして、そのことはある程度会議等の機会でもって浸透しておると、かように考えておるわけであります。
  123. 田邊誠

    ○田邊委員 たとえば福島県の平の局において昨年の四月に配置転換をめぐって管理者と労働組合員の間において起こりました交渉といいましょうか、この際にも暴力事件が起こっておるというのであります。これは全逓の組合員の側が局長を告訴しておるわけですけれども、ところがこれは不起訴になっておる。嫌疑不十分というので不起訴になった。ところがこれに対して局長、貯金課長が逆に今度は全逓の組合員を告訴した。これは八月の二十四日に四名が起訴されたという事案があるのを御承知であるとすれば、これに対して一体どういうようにお考えですか。ちょっとお聞きしましょう。
  124. 北雄一郎

    ○北説明員 八月二十四日に起訴されました事案と申しますのは、ことしの一月十三日に起こった事案だと存じますが、これは局長が約十日間の打撲傷、その他四名の管理者が同様の打撲傷を負う非常に顕著な暴力あるいはそれに基づく傷害、こういう事案でございましたので、これは本人たちが告訴をしておる、こういうふうに考えます。
  125. 田邊誠

    ○田邊委員 この一月十三日に起こった事件については、そう一方的なふうに実はわれわれは印象づけることはきわめて間違いであると思っておるのです。この組合員の側も、局長あるいは課長から二十日間以上の傷害を受けた、こういうこともあるのです。私もこの局長を知っておりまするけれども、この局長は全逓の組合をかなり敵視して不当労働行為や強制労働をやっておるということを私も実は聞いておるわけです。現にまた私自身もあの局に行ってこの局長に会ったことがありますので、ある程度はその人の持つ性格等についても承知をいたしておるわけですけれども、郵政省もこれに対してただ単に管理者をかばうような立場なり、またそういう観点でもってものをとらえるだけでなく、双方においてこれはかなりエキサイトしているこういうことがある。一方的に局長なり課長が何かなぐられたりして傷害を受けたというこんな形のものでは断じてありません。そういうことについて、正確な把握が必要である。ふだんも不当労働行為について実はかなり顕著な対象になっておるこういった局長についての措置も、当然考えていかなければならないことじゃないかというように私は思っておるわけですけれども、これらについてあなたのほうで十分な調査をいたしたことがありますか。
  126. 北雄一郎

    ○北説明員 一応の調査はいたしております。ただ、この一月十三日の事案、管理者側で告訴いたしましたけれども、相前後して組合側も管理者を告訴しております。この八月二十四日に組合側が起訴をされ、二十五日に管理者側が不起訴になっておる、こういうような事案でございます。その間当方といたしましても、そういったトラブルが現実にあったわけでございますから、ある程度の調査はいたしました。ただ、私どもこういった件がございますと、行政処分ということも考えなければならぬケースでございますので、処分ということも関連いたしまして、なお詳細に調査をする、そういうことでございます。
  127. 田邊誠

    ○田邊委員 これは私はもう一度調査をしていただきたいと思うのであります。その場面についても両方の言い方をかなりよく聞いてもらいたいと思うのであります。そうでないと、一方的なあなた方の事情聴取によってもし処分等がありとすれば、これはきわめて不穏当なことでございますからね。私はそういったことがかなり多いんじゃないかと思うのですよ。たとえば四十五年の十二月の九日に郵便課長と組合員が交渉した際に、当時の銚子の郵便局長である日下部というのがめいていして入ってまいりまして、おまえら何をしているんだ、早く働けと言って怒号しながら、この組合員の胸部をいきなり両手で突き飛ばして、同人をコンクリートの上に倒して加療二週間を要する傷害を負わせたというような事案がありますね。これはその後実は群馬県の伊勢崎の局長に転動をいたしました。また今度の異動でどこかへ移ったようでございますが、こういう管理者のやっておったことに対して、あまりにもそれをかばうような状態というものがあったら、いかに正常な労使関係のことを言っておっても、これはやはり信用できないという形になってくると私は思うのですよ。この種のものがありとすれば、これはあなた方のほうも司直の手を待つまでもなくそれに対して調査をして、やはり処分をするならするという措置をとらなければ、厳正な形にならぬ。みずからも戒めなければならぬ。私はこういうふうに思っているのですけれども、このことについで御承知ですか。
  128. 北雄一郎

    ○北説明員 銚子局長の案件についてはただいま記憶いたしておりません。おりませんが、お示しのようなケースというのは絶無ではございませんで、遺憾ながらたまにございます。そういったものにつきましては調査をして処分をしておる例が、最近でもここ数年間にやはり数件ございます。私どもそういった場合にそういった管理者をかばうという態度は決してとらないつもりでおります。
  129. 田邊誠

    ○田邊委員 私はそういった面で関心を持っておりますだけに、たとえば郵政省自身が調査が行き届かなくて漏れているようなことであっても、いわゆる全逓の組合員とかあるいは全郵政の組合員とかあるいは未組織の者である、それを問わず、この種のものについては私は厳正にやらなくちゃならぬと思うのです。  それと同時に、一番最初に申し上げたように、そういったことが起こる根源というのがあるわけですね。これを突き詰めていかないと非常に誤りをおかすんじゃないかと思うのですね。たとえば静岡問題は法務委員会で実は話があったと思うのですけれども、入局したとたんに全郵政に加入をしておる。これは自主的に本人が判断をしてやったということであればわれわれは何も言わぬのでありますが、しかしまだ若い青年が入ってきて、二つある組合のどちらを選ぶかについては、自主的な判断だけでなくて、かなりその周囲のいろいろなものが実は加わると思うのです。そういう中に管理者のいわば指導なりあるいは指示なり助言なりというものがあったとすれば、これがやはり紛争の種になる大きな要因じゃないかというふうに私は思っておるわけでありまして、このいわゆる暴力的な行為として表面に出ているような問題の解決はそれぞれの立場でやらなければならぬけれども、その根源をなすものが、いま言ったような一つの事例でもっておわかりのとおり、かなり管理者の諸君の態度にかかっておるということを思うときに、従前にも増してこれを防ぐ意味からも、組合に対するところの不当介入なりあるいは管理者によるところのそういったものに何か一方の側に助勢をするようなそういう立場は私は断じてとってはならないというように思うわけであります。このことを特に私はきょう強調しておきたいと思う。  それで特に静岡の問題の中で、五月三十日の五時ごろ、静岡郵便局の四階廊下で、採用と同時に全郵政に加入した会計課の中谷君に対して、全逓の組合員が全逓加入の説得活動を行なった。これは暴力的な型でなくて平穏裏に行なわれていたということはだれしも知っているところですが、そのときには全郵政の側からその説得活動に対して、それは困る、こういう話があった。私はこのやり方がどうであったかということについてはつまびらかでありませんけれども、そこのときに問題になるのは、この静岡郵便局の管理者が全郵政の役員と一緒に来ている、こういうことを聞いておるわけであります。これは一体どういうわけでしょう。
  130. 北雄一郎

    ○北説明員 当時は全郵政のある一人の組合員を全逓の十数名の人が取り囲んでこれをいじめていたというので、全郵政の当該局の役員三名がこれを救出しようといって現場に行ったところ、乱闘といいますか、四名対十数名で壁に押しつけられたりという騒ぎが起こった。それで、局内のことでありますので、管理者がそれをとめに入るといいますか、救出するというそういう行為に出たものでありまして、これはやはり庁舎内の管理権ということからして、庁舎内でそういった事件が起こっておればこれをおし静めるのが管理者の任務であろうかというふうに思います。
  131. 田邊誠

    ○田邊委員 何かいまあなたの言うことであれば、乱闘事件ですか、起こってから管理者が行ったのですか。そうでないでしょう。それは、全郵政の役員と一緒に管理者がかけつけたのでしょう。それでやはり何か間に入ってそれを引き離したりとめさせたり、管理権の行使のようなそんな状態じゃありませんよ。一方のほうに助勢をする立場で来ておって、それを現認をしているということについて、実はあとでこれが逮捕等の一つの大きな要因になっているというふうにわれわれは承知をしているのです。その辺に実は非常に微妙なこれはやりとりでしょうけれども、私はどうしてもやはりその郵政省の現場の管理者というものが何か一方について、またその一方に対して敵視をして、これから何か分裂を策するような、従前たびたび指摘されてあなた方もそれを改める立場をとらざるを得なかった、そういう考え方なりそういう気持ちなりというものがこの場面においても現実に出てきているということを実はわれわれは聞いて、これはやはり——これは一つの職場に二つ以上の組合があった場合にいろいろとトラブルというか、暴力的な意味でなくてもトラブルなり紛争が起こることは間々あることですよ。しかしその際にやはり管理者の立場というものはあくまでも厳正でなければならぬ。ところがそうでない。なぜそうでないかといえば、このいわば対象になった男は明らかに採用時に全郵政に入るについては管理者側からかなりの指導を受けている、こういうふうにわれわれは聞いておるのですよ。実はそういう前提があるのですよ。だから、それに対して全逓側が全逓加入の説得活動をすると、これはたいへんなことになった、これは何とかしなければならぬ、こういう形で、いわゆる乱闘事件なりが起こらないうちに管理者がいち早くかけつけて、それに対して、そういうことをしちゃ困るとか、つるし上げをしちゃ困るぞ、それは本人を帰宅させなければいかぬぞというようなことを言うのですよ。そうすると、それがまた一つエキサイトする要因になってくるのですよ。あるいはかなり大きな声を出しても、決してそれが暴力的な事犯でなくて、限度を保ちながらやっておった説得活動というのが、そういう一つの管理者の助勢なり出現によってまた一段とエキサイトする、こういうことが、全国各地で起こっているかなりの事犯の中で一つの要因になっているのじゃないかというように私は思うので、この問題を取り上げたのですが、これはそういうふうにあなたは正確に調査してもらわなければ困ると思うのです。どうですか。
  132. 北雄一郎

    ○北説明員 いま先生御指摘の、全郵政の職員が最初一人でやられておったわけでありますが、これは脱退した本人じゃなくて、全郵政の組合員としてだれかを脱退させたじゃないかということでこの人間がつるし上げを食っておったものでございます。それからあと三人の全郵政の役員がこの一名を救出に来ましたときに管理者が同行しておったかどうか。いま御指摘のそこは私実はただいまちょっとはっきり把握しておりませんので、たいへん恐縮でございますが、その点はまたよく調べまして申し上げたいと思います。
  133. 田邊誠

    ○田邊委員 法務省と警察庁の方がお見えですが、すでに法務委員会でいろいろと問題を取り上げたろうと思いますし、法務委員会質疑がちょっと長くなったものですから、私の割り当てられた時間が実はなくなってきておるものですから、非常に残念ですけれども簡単にお聞きをしますから、どちらでも該当するほうで、法務省のほうも警察庁のほうも、お答えいただきたいのです。  まず全逓や国労、動労あるいはまたそれ以外の組合についてもいろいろな刑事事件が起こっているものは、いま郵政省からも聞きましたが、郵政省の関係でもって起こっている事件について最近の状態をお聞きをしますると、全逓側が告訴等をしてきておることについてはかなり捜査がおくれておる。たとえばいまちょっと事例として申し上げたのですが、銚子郵便局長の日下部というのが四十五年十二月九日に暴力事件をやったことに対する告訴が行なわれているけれども、これはいまだかって、千葉の地検の八日市場支部ですか、一度も取り調べをやっていない。これが転勤をいたしまして前橋地検に行きましたけれども、一度も取り調べを行なっていない。またこの日下部という男は次のところに転勤をこの夏の異動でやられているということがございます。これは一体どういうわけですか。こういうふうに捜査がおくれている。それからほとんどが不起訴なり起訴猶予でもってこれはやられておる。ところが全逓の側が告訴をされた事件、これといま申し上げた告訴したものとを比較をしてみた場合に、かなりこれは起訴をされておるということがございます。これは私は、事犯が軽微であるとか重たいことであるとかいういろんな認識がありましょうけれども、暴力的な事件といってもこの種のものは一週間なり十日なり二十日なりの加療を要する傷害というのがかなり多いのでありまして、これは非常に感じ方によって違うのでありますけれども、私はそういった差別的なことがあっては断じてならないというふうに思っているわけですけれども、これに対してどういうお考えであるか、これが第一番。それから第二番目には、この種の事件は原則として私は任意捜査で当たるべきものであるというふうに思っておりますけれども、そういう原則でございましょうか。それから強制捜査の必要がない事件についても強制捜査を行なっている。静岡の郵便局のことがいま問題になって、あるいは質問があったと思いまするけれども、この種の問題も、現に任意捜査に応じて出頭いたしておるにかかわらずこれが逮捕に踏み切ったということについては、これは一般的な意味における刑事事件についてももちろん任意捜査が原則でありましょうけれども、特に労働組合等の問題についてこういう強制捜査をすることについては、これは捜査権の乱用ではないかというように考えられますけれども、これに対して一体どうかということについてひとつお伺いいたします。
  134. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま御指摘の郵政省関係労働関係に関連いたします不法事犯でございますが、この種の事件は本年に入りましてから八月末現在までに私ども全国の検察庁が受理いたしておりますものの数は合計七十六名でございます。そのうちすでに起訴処分をいたしましたものが十九名。不起訴処分にいたしましたものが二十四名。残りが未済ということに相なっております。それでこの間の処理がおそいのではないかという御指摘でございますが、これは各地の実情がありますけれども、できるだけ早く処理をいたしておるわけでございまして、七十六人のうちその過半数のものはすでに処理をいたしておるという実情でございます。  なお、この間につきまして全逓関係者のほうの被疑者の事件は早くやり、全郵政関係のほうはおそいではないか……(田邊委員「全郵政とは言わぬぞ」と呼ぶ)まあ全逓関係のほうは特に早くやるんじゃないかというような御指摘もあろうかと思いますが、未済が三十三名となっておりますが、そのうちの大部分は——もとより事件か多いのでありますが、二十六名が全逓関係の未済ということに相なっておりまして、その間捜査のかげんをして、ある組合のほうには早くする、ある組合のほうにはおそくするというようなことは絶対にございません。  それから第二点の、およそ犯罪捜査については任意捜査を原則とすべきではないかという御質問でございますが、仰せのとおり、犯罪の捜査というものは任意捜査を原則とするものでございます。ただ、被疑者に証拠隠滅のおそれがある、あるいは、組合関係の事件につきましては逃亡のおそれということはあまり考えられないと思うのでございますが、抽象的に申しますと、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあるという場合にやむを得ず逮捕、勾留という手続がとられるわけでございます。こういうことは十分含んで検察庁においては処理をいたしておるわけでございます。ただ、抽象的に申しまして、多数人の被疑者があるというような事件につきましては、被疑者相互間の供述が食い違うということが間々あるわけでございます。  そういう意味におきまして、証拠の収集が非常にむずかしいということが事案の性質上言えるわけでございまして、そういう場合には、抽象的に言いまして、強制捜査というものが使われることが多いと思われるわけでございますが、捜査はあくまで任意捜査ということを原則にいたしておるわけでございます。
  135. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、法務委員会でもあるいは質問があったと思いまするからもう重複を避けまするけれども、この春五月の三十日に静岡の郵便局で起こりましたいわゆる暴力的な事件としてあなた方が捜査をし、そして処分をしたもの、これが、任意出頭にも応じいろいろと供述もしているという状態の中で、途中から逮捕に踏み切った、こういうことであります。これは一体どういうふうな処分をいたしましたか。
  136. 辻辰三郎

    ○辻説明員 いわゆる静岡の郵便局の事件でございますが、静岡の検察庁におきましてはこの事件を本年の八月十日に受理をいたしまして、本年の八月十九日、被疑者八名のうち七名について罰金請求の略式請求によりまして公訴を提起いたしました。一名については起訴猶予処分ということで不起訴にいたしております。
  137. 田邊誠

    ○田邊委員 まあ結果をもって論ずるわけではありませんけれども、大体一人は起訴猶予で、あとの七人は略式ですね。罰金という事犯であったわけですね。そのことをもってしても、これはやはり任意捜査でやれたのではないかと私は思うのですよ。しかもかなりの期間任意でもって取り調べをし、供述を求めている。したがって相互間に証拠隠滅をしたりいろいろと通報し合うなんということは、これはもう単純な事件ですからそうありようはずがない、こういうふうに思うのです。このことをもってしても、強制捜査をすることについて妥当であるとは言いがたいというふうに私は思うのですよ。それ以上のいろいろな暴力事件についても任意捜査でもってやっているということについて、われわれもかなり知っておるわけですからね。私は、こういう形でもって強制捜査することは慎むべきである、これはどうしても慎重にすべきであるという反省をしなければならぬじゃないかと思うのですよ。  しかも、私さっき言いましたが、郵政省に暴力事件が起こったといいまするけれども、それにはいろいろな要因がある。社労でもっていま取り上げているのもやはりそこにあるのですね。労働組合員が組織を守ったり組織を拡大したりするために未組織の者、入ってない者あるいはほかの組合に入っている者に説得活動をする。これは私は労働運動の一環だと思うんです。それがある一つのきっかけでもってエキサイトしてくるということになってまいりますると、これが暴力的な事件に新たに発展するわけですね。そういった要因を私どもさぐってみますると、これはただ単に単純な暴力事件として取り上げるにはもっと根の深いものがあるというふうに思うのですよ。ですから一種の町の暴力的なものと事を同じに考えてやるという形になれば、これはまた行き過ぎを来たすようなおそれがあるというふうに私は考えておるわけです。そういった点から、私はこの事件についても強制捜査についてはかなり疑問があったのではないかというふうに思っておりますけれども、いかがです。
  138. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま御指摘の静岡郵便局事件につきまして、検察の処分の結果が一人は起訴猶予、残りの七名が略式請求の罰金請求事件であった。こういう事件について捜査の過程において身柄の拘束をしたことは行き過ぎではないかという御指摘であろうと拝承するわけでございます。  それで、おことばを返すようでございますけれども、やはり検察官が事案の真相を的確に捜査をして、さらに各被疑者についての情状その他も慎重に検討する、そして最後に検察の処分が行なわれるわけでございますから、やはり事案の真相を明確にするという点におきまして、おそらくこの事件の場合には、やむを得ず被疑者の身柄を逮捕せざるを得なかったということに相なったのではなかろうかと推察するわけでございます。しかし一般論としまして、軽々しく身柄を逮捕すべきでない。特に労働関係の事件におきましては、その背景にいろいろな事情がございますから、そういう点を十分に考えて、身柄の逮捕はもちろん、捜査の慎重を期すべきことはお説のとおりでございますので、検察におきましてはその点は重々心して処理するものと考えております。
  139. 田邊誠

    ○田邊委員 もう時間がないからやりとりはあまりしませんけれども、私の認識では、いずれにいたしましてもこの捜査は、六月の二十日から七月の十一日にかけて任意でもって呼び出しがあった。被疑者として七人、参考人として五人、延べ十八人が出頭した。ところがそれから約一カ月たった八月八日になって、これが逮捕に出てきた。こういうところにも私はかなり無理があると思うのです。こういった任意でもって出頭し、供述をしておって、かなり取り調べが進んでおる段階、しかも一カ月もその間に間をおいて強制捜査をするいうことについても、私は一考を要するのではなかろうかと思うのです。この点について十分な御認識をもう一つお願いしたいと思うのです。  それから、いろいろのことがあるのですけれどももう省きまして、第二次の逮捕を八月の十五日にしていますけれども、これはいわゆる勤務時間中に逮捕をしておるのですね。このことも私は何も一刻を争う、勤務時間中でなければ逃亡するような形でないと思うのです。何か、配達をしてきたあとだというようにあなたのほうでは言っているそうでありますけれども、いずれにいたしましても、勤務時間中逮捕したということについて、私はこれはやはり明らかに警察のあまりにも捜査をあせった結果であり、常識を逸するやり方であるというふうに思います。  もう一つは、その際に、静岡の中央警察署の一警察官が、逮捕をした一人の青年を、何の抵抗もしないにもかかわらず、これは明らかに勘違いをして投げ飛ばして、頭を強打するという暴行を加えたということがあるのです。これは私は明らかにこの警察官の公務員としての行き過ぎな行為じゃないかというふうに思うのです。何の抵抗もしない。これを顔を洗ってロッカーに顔をふきに行って戻ろうとしたところを、何か逃亡するというように勘違いをしてうしろから投げ飛ばしたという事件であります。これに対して一体あなたのほうはどういうふうに聞いておりますか。  それからこれは何か、全逓の組合の側で、その本人でしょうか、八月の十六日かに告発をしたと言っているのですけれども、二十八日に不起訴になっておる。これはまた処置が早いのです。非常に早く、電光石火不起訴にしている。私は郵政省にもさっききつく言ったのですけれども、こういうような形をわれわれ知らない者が常識的に見ますと、これはさっき刑事局はえこひいきはないと言ったけれども、やはりだれがどうであっても、そういうことについて、許さるべきものでないことについては厳正な態度をもって臨むべきであるというように思っておりますが、これに対してどう考えられますか。時間がないから簡単でいいです。
  140. 斉藤一郎

    ○斉藤説明員 ただいまお尋ねの点、簡単に申し上げますと、最初の、勤務中に逮捕したではないかという御指摘でございますが、これは私どももできるだけ逮捕する場合に勤務の場所でないところ、あるいは自宅で逮捕するのも適当でないので、勤務が終えて帰るような、そういう時点で逮捕するということがいろいろな意味からいって適切ではないかというように指導しており、この場合にはほかにも逮捕者があったのでございますが、大体そういうつもりでやったのであります。ところか勤務の都合その他で二人だけがまだ局内で——ほかの方は終わったのでございますが、二人だけが局内で区分け作業をしておられた。これを捜査員が郵便局の課長に話をして、業務の引き継ぎをアルバイト学生にさせて逮捕したということになっております。そういう意味で、当該捜査員としてはその場におってやった措置としては十分配慮したつもりでありましょうが、全体的にいって御指摘のようにはたしてそんなに急ぐ必要があったかどうかという反省など十分いたしまして、今後関係者のみなが捜査について納得をするという適正なやり方をやりたいというふうに思っております。  それからもう一点は、暴行したのではないか、これも簡単に申し上げますと、逮捕に行ったときにもみ合いができて、そして相手の方も倒れたが、逮捕しようとした警察官も一緒に倒れた、それが暴行だということで、この場合には告訴を受けて——地検に告発を受けております。私どものほうで調べた結果はそういうことでございまして、その具体的なトラブルのやりとりにおいて適正を欠いたことがあるかもしれませんが、暴行するという意思はなかったというふうになっております。いずれにしても、先ほど御指摘があったように、この種の事件についてそもそも警察が関与すること自体がほんとうは私どもあまり好ましくないのですが、暴行その他があって警察がどうしてもこれを警察の立場から措置しなければならぬという場合にも、一般の暴力団の暴力事案とはおのずからまた違った雰囲気、背景があるということを十分に承知しまして措置をしたいと思います。  ただ、先ほども法務委員会でそういう思いを深くしたのでありますが、もう少し——従前も一生懸命やっておりますが、思わないところに、私どもの気のつかない、たとえば先ほどは国鉄と相談しながら逮捕したのではないかという御指摘があったのですが、相談したつもりはないが、捜査の過程で国鉄さんのほうで御承知になって、そして国鉄さんのほうで逮捕を前提にした措置をされたというようなことが、いかにも相談してやって、警察の捜査に公正を欠いたではないか、私どもから見れば主観的にはそう思っておりませんが、逮捕された側から見ると、まあそう思われてもやむを得ぬような事態が一つあったりして、そのほか私どもそのつもりでなくても、相手側からそうは見えないという場合がたまたまございますから、この種の事案については十分に私どもが慎重な配慮をして、単に違法でないというだけではなくて、適正な捜査をやって、それで関係者の方々がまあやむを得ぬなというふうに御納得をいただくようにやりたいというふうに思っておりますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  141. 田邊誠

    ○田邊委員 刑事局長、またあとでお聞きしますから処分についてはいいですけれども、いま警察庁からも話がありましたけれども、われわれはこれはどこの組合であれ、どこの管理者であれ、事件については厳正にやってもらうことについてはとやかく言わない、また適正なあるいは敏速な捜査をするということについてもこれは当然なことだろうと思うのですが、しかし事は労働組合の運動、活動、そしてまたそういった実は組織等の背景、それに当局がからむ場合があるといういろいろなことが起こっているだけに、それらのことを勘案して、やはり私はその原則を守りながらこの種の問題についての取り扱いをやってもらわないと、あなた方のほうではこれは権力を使うのですから、権力が乱用されたという印象をこういった一つの民主的な運動をやっている諸君に与えることは、私は結果はどうでもマイナスの面があるのではないかと思うのですよ。ですからどうかひとつ、いままでの事案についても私どもはさらに厳正な態度をもって臨んでいただくことを強く要請すると同時に、いま言ったような背景も考えながら慎重な取り扱いをやっていただくことを特にお願いしておきたいと思います。郵政省に対しては先ほどいろいろな面で申し入れをしておきましたから、それを踏まえてひとつ労使関係の正常化に向かって直進していただきたいことを申し上げて、非常に短時間でありましたけれども私の質問を終わります。
  142. 向山一人

    ○向山委員長代理 次に、古寺君。
  143. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に鉄建公団にお伺い申し上げますが、去る九月二日に児島博さんとおっしゃる方が青函トンネルの関連作業中に死亡いたしております。この件につきましては私どもが前から、世紀の大工事である以上は安全を確保していただきたい、このことを強く要望してまいったところでございますが、こういうような犠牲者がすでに出たということはまことに遺憾なことでございます。こういうようないわゆる安全衛生の確保という立場で、鉄建公団はどういうような対策をお考えになっていらっしゃるか。今後新幹線の工事等非常に大規模の建設工事が多くなるわけでございますが、こういう点に対する鉄建公団考え方、また対策というものについてお伺いをしたいと思います。
  144. 篠原武司

    ○篠原参考人 お答えいたします。かねがね青函トンネルは世界が注視している大工事でもございますので、絶対に事故を起こさないようにということを繰り返し申してきておるわけでございます。私ども各支社長会議というのを招集しまして、青函の建設局長どもみなそこに列席するわけでございますが、そういう場合にでも必ずと言っていいくらいに毎回、事故を起こさないように、作業上の事故はもちろんでございますが、不祥の事故を起こさないようにということを繰り返し繰り返し申しておるわけでございます。すでに青函関係で六人の犠牲者を出しておりまして、ただいま御指摘のように先生からもお話がございましたし、私どもも繰り返し注意してきたわけでございます。  ただいま御指摘になりました児島君というのは、トンネルの中じゃございませんで、資材の運搬の関係で事故を起こしてなくなったようでございますが、これはどういう関係であろうとそういう死亡事故なんか起こしたのではまことに申しわけないということで、私どもさらに一そう戒心してまいりたいというふうに考えております。隧道ではないからいいのだというようなことは絶対に考えておりませんので、今後とも注意してまいりたいと思います。
  145. 古寺宏

    ○古寺委員 この児島さんの際には、わざわざ県知事の要請によってヘリコプターまで救援に出ております。しかしながら、これは時間が間に合わなかったわけです。こういうことは現地にそういうような医療体制というものが完備されていないがゆえに、こういうような事故を発生しているわけなんです。こういう点について、公団側としては今後どういう医療体制をつくるのか、どういう病院をおつくりになるのか、その点についてまず承りたいと思います。
  146. 篠原武司

    ○篠原参考人 吉岡のほうにも竜飛のほうにもお医者さんはおるのでありますが、特に竜飛のお医者さんを確保するということが非常に困難でございますが、万難を排してお医者さんにお願いしまして、職員の医療に従事していただいておるわけでございます。特に今回大規模に請負関係の仕事をやるようになりまして、人間も非常にふえてまいりました。したがいまして、現在のような体制ではもう足りないという時点が必ず参りますので、これに対してはどういうような形でやるかということを現地でいろいろくふうして万全を期したいというふうに考えております。  児島君のことにつきましては、北原理事からちょっと御説明させたいと思います。
  147. 北原正一

    ○北原参考人 緊急の処置につきまして、現地のいろいろな関係のところと打ち合わせをいたしまして、最もよろしいのは現地にりっぱな病院ができるということでございまして、その点もお医者さんの確保——建物などは簡単でございますけれども、お医者さんの確保ということにいろいろと難関がございまして、県知事さんをはじめ弘前大学の先生方にもいろいろお願いしたりしておるのですが、まだこういう病院ができるということは確定まで至っておりません。しかしながら、私どもの診療所はございます。外科の先生もいらっしゃいますが、その診療所は拡張することにきめまして、ただいま拡張しつつあります。そこで応急的なことは治療できるようになっておるわけでございますが、先ほどお話にございましたように、きわめて重態な場合にはヘリコプター等をお願いすることもあり、だいぶ以前にも一度、自衛隊のヘリコプターをお願いしたこともございます。応急用には救急車も備えておりますのですが、御指摘のように、この問題非常に重要でございますので、さらにお医者さんの確保等具体的にもう少し、できるだけ進めてまいり、診療所も大きなものを、できるだけ完備したものをつくっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  148. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、非常事態でございますね。たとえば大量の湧水があったとか、あるいはいろいろな事故が発生した場合の非常事態に対するいわゆる対策としては、どういうことをお考えですか。
  149. 篠原武司

    ○篠原参考人 青函トンネルは、御承知のように海面下二百七十メートルというような深いところで仕事をしております関係で、その水圧というのは非常に大きなものでございまして、実に二十七気圧というような高圧がかかるわけでございます。それですから水をまともに出したならば、これはとうてい簡単な問題じゃございませんで、これの復旧ということは非常に困難になるわけでございます。それで絶対にそういうことのないようにやるということでございまして、事故の場合その中でいろいろな段階があると思います。たとえば竜飛で前に一回出水事故がございました、こういうような場合とか——これは全部海か抜けたわけじゃございませんで、一部の水が流出してきた、そういうような場合には防水の壁をある高さまでつくっておきまして、その向かいにポンプ座の大きなものをつくりまして、その水がはけるような設備を十分つくるということになりまして、中にいる人の災害をなくそうというふうに考えております。  そういうようなことだとか、いろいろな災害の場合の措置というものは、いつも考えておるわけでございまして、前にお話がありましたようないろいろ作業上の事故については、もう絶対ないようにいろいろな努力ももちろん重ねてまいります。そういうような仕事をやっていきます上で、出水というようなものが非常にこわいのだということは、繰り返し繰り返し現場にも徹底させております。その処置も十分考えていっております。
  150. 古寺宏

    ○古寺委員 世紀の大工事でございます。しかも海底二百七十メートルの深いところを掘るわけでございますので、当然考えられないような異常出水あるいは爆発、いろいろなものが考えられます。さらに停電等が重なってくる場合もあります。こういうような大災害に対して、鉄建公団側ははたして十分な対策をお持ちであるかどうかということは非常に疑問でございます。現在のポンプの能力にいたしましても、非常に限度がございます。あるいは停電の際の措置にいたしましても、いろいろ問題がございます。こういう点に対しては、もう少し世紀の大工事を無事故で完遂する。またそこで働いている労働者が安全に安心して作業ができるような体制というものをまずつくっておく必要があると思うのです。先ほどの医療の問題にいたしましても、現在医師の確保がむずかしいという考え方から、病院の建設もまだ十二分に煮詰まっていないようでございますが、こういう点について本気でいわゆる災害から守る、安全を確保する、そういうような腹がまえというものがないような気がするのでございますが、それはいかがでございますか。絶対災害は防止できる、また安全は確保できる、そういうような確信がございますでしょうか。もう一度承りたいと思います。
  151. 篠原武司

    ○篠原参考人 ただいまお話しのような災害の点では、非常にいろいろなものを注意深く考えてきております。たとえば、二百七十メートルのところで水が出たらたいへんだということは、工事にかかる前から十分考えておりまして、青函がそういうような深いところをなぜ選んだかという理由から御説明しなければなりませんが、青函の一番深いところでは水面下百四十メートルの海面の深さがございます。それから岩の下の岩盤の厚さということを言ったほうがわかりいいと思うのですが、われわれは土かぶりと申しますが、この厚ささが百メートルをわざわざ確保しております。これをもう少し浅いところを通しますならば、隧道も短くなり、しかも早くできるということは十分わかっているわけでございますが、岩の深さをやはり百メートルぐらい保っていないと、万が一というときに非常に困るということで、トンネルの上から海面までの岩の厚さを百メートルを最少限にするということで押えたわけでございます。こういうことによりまして、水に対する心配を絶対になくそうというふうに考えております。  それからもう一つの大きな問題は、必ず先進ボーリングといって、ボーリングをいたしまして地質を確かめまして、それで軟弱地盤あるいは水の漏るような地層にぶつかった場合には必ず注入をしてまいります。これは心配のないようにすっかりまわりを固めまして、それから掘さくにかかるという方法をとっております。それでなお心配の場合もあるわけでございますので、先進ボーリングのほかに、別に切り羽と申しますか、工事をやっているトンネルの先で、なお別にたくさんの注入をいたします。その注入をしている状態で、そこに水がどういうふうに出てくるかということは十分わかるわけでございます。それですから、大水害というものは絶対に起こさないということでやっておりますので、安全の上にも安全にやっているわけでございますので、その点は御安心していただきたいと思います。  ただ、多少の岩の中にたまった水が出てくるというケースは場合によって起こり得るのでございまして、それがこの間の竜飛で起こりました出水でございます。これはこの経験がまた工事の上に非常に役に立ちまして、技術陣のほうもそういう経験を経てなお一そう確信を持ったと言ってもいいんじゃないかと思います。それですから、事故については皆さまに御迷惑をかけないように、私どもは万全の措置をとってまいるつもりでございます。
  152. 古寺宏

    ○古寺委員 この前、科学技術庁のなだれの実験中に非常に大きな災害がございました。それと同じように、やはり予想できないいろいろな災害が今後起こり得る可能性が十二分にあるわけです。そういう面から考えまして、今後十二分な体制が必要でございますが、非常時訓練というものをやはり一応やっておく必要があると思うのですが、そういうような訓練はいままでにやったためしがございますか。停電がある、異常出水がある、そういう場合にどういうふうに対応するかというような非常時訓練をおやりになったことがございますか。
  153. 篠原武司

    ○篠原参考人 本社へ参ります前、現地で現場を担当しておりましたし、いまでも青函の工事を担当しております北原理事に説明させたいと思います。
  154. 北原正一

    ○北原参考人 御指摘のような非常災害を想定した訓練というのは、年に数回やっております。これは私ども災害に対する——災害といいますか防災、安全に対する体制でございますが、月に一回は点検をしております。それで二カ月に一度程度は青函建設局の本部のほうから安全点検に参っております。  それから非常の場合の訓練というのも、それらと一緒にやる場合もありますし、別にやる場合もございますが、先ほど申し上げましたようにやっております。  それから停電というお話がございましたが、予備発電機というのを備えつけておりまして、これは機械が備えつけてありましても、いざというとき動かないと困るということで、これも月に一度はその予備発を動かす作業をやっております。そのほか、労働省のほうからいろいろ御指導がございまして、安全施工推進連絡会議というのを労働省の御指導によりましてつくっておりますし、それで、安全対策要綱というのも、あるいは安全作業基準というのを労働省の御指導でつくりまして、それに基づいて、現地でもそれに合うように案をつくって作業を始めております。そういう点で労働省の超大型工事という御指定を受けまして、よく指導していただきながら、私どもとしても万全の安全対策を講じてやっているつもりでございますが、なお、これは次々と、より安全に、より安全にということを考えながら、ただいまつくっただけで安心しておるわけではなくて、その点を深めながら、やっていくつもりでおります。
  155. 古寺宏

    ○古寺委員 現在青函トンネルの作業に従事している鉄建公団の方々は、ほとんどが臨時職員でございますね、毎年更新の。この世紀の大工事を八年間なら八年間おやりになります、老後の保障がないのですね。それから、竜飛の建設所に行きましても、非常に人員が足りないのです。職員が足りない。こういうような従業員の問題、職員の問題あるいは竜飛の建設所の持っている権限にいたしましても、ほとんどないにひとしいのです。こういうものをきちっとつくらぬうちは、この世紀の大工事も順調に進むことは困難だと思う。いま、鉄建公団のこの工事というものは非常にスローモーであるということを指摘されております。そういうところに、やはり問題点があるんじゃないかと思うんですが、安全確保の問題にいたしましても、あるいは従業員対策にいたしましても、もっと世紀の大工事をやるにふさわしい体制というものをまず公団側がお持ちにならなければ、当然いろいろな事故というものは発生してくると思います。  こういう点について、今後職員の待遇の改善、あるいは停電の問題は先ほど心配ないとおっしゃいましたけれども、せっかくつくったシックナーなんかがときどき停電で問題を起こしております。こういう問題について御存じなのかどうか。あるいは非常時の訓練にいたしましても、私は十二分にやっていないというふうに聞いておりますけれども、こういう点について心配がないのかどうか、もう一度承りたいと思います。
  156. 篠原武司

    ○篠原参考人 臨時職員をよけい使っておるという御指摘でございますが、労務者でございますので、職種によりましていろいろ段階がございます。たとえば隧道の中で一番先頭で働いている職員とか、あるいは、だんだん年とってまいりまして、坑外に出て守衛をやるなど、いろいろな種類の職種がございまして、ちょっと申し上げますと、号令というのがございます。それから号令補、坑夫、線路工、機械工、機械工助手、電工、電工助手、坑内夫、線路工、坑外工、機械工助手とか電工助手とか、そのほかいろいろ、自動車運転士から、守衛長、守衛まであるのでございます。そういうようなものを臨時ということでやっておりますが、いろいろみな給与が違います中で、平均給与の高いのは三千八百円をこえるような日給を取っておりますし、坑外へ出て軽い職業につく者は二千円というような程度の給与もございます。これはやはりからだの力に応じまして、本人の希望もございまして、いろいろ職種が変わる場合があるということで、また仕事が、青函のようなところはわりあい長くおられますけれども、ほかの隧道で従事した場合にはときどき、仕事が終わり次第変わっていくというような問題、いろいろございまして、これの扱いについては臨時という取り扱いをしておるわけでございます。  それで臨時の職員の給与を、それなら月どのくらいになるかというのをはじいてみましたが、平均給が二千六百円としまして、いろいろな手当その他を入れまして——超勤の問題もございます。超勤が一日四百六円平均になりますので、こういうようなものを全部入れまして八万九千円をこえるわけです。そのほかに坑内手当とかいろいろ入れまして約十万円近い金が取れるようになってくるわけでございます。これが平均でございますが、しかし、これを本採用にした場合にどうなるかということでございますが、本採用にいたしますと、かえって給与が減るというようなこともございます。たとえば一つの例としまして、ここに持ってきてございますが、連続ある程度長く勤務いたしまして本採用にしたのがございますが、九万二千円から七万八千五百円に変わったという例がございます。八万一千五百円が七万八千五百円に変わったというようなことで、多少給与が下がるというような面もございまして、現在公団としましては臨時職員という扱いをとっているわけでございます。しかし臨時職員で、中に本職員にしたほうがいいというようなものがございますれば、これはそのときの条件に応じまして変えることも、いま例に申し上げましたように、あるわけでございます。
  157. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうことは私も資料を持っております。九時間拘束三交代ですね。それで、長い人は岐阜当時からずっと引き続いて働いておりますよ。もう二十年近くなっております。それから平均の勤続年数を見ましても、三年をこえているんです。長い人は六年三カ月でございますか、トンネル工事だけでも。こういう方々をやはりもう少し優遇してあげませんと、いまおっしゃっているのは、いわゆる九時間労働で三交代でもって、そういう労働賃金を支払っていらっしゃるかもわからない。しかしトンネル工事が終わって退職する場合には、十年つとめても十カ月分くらいの退職金しかもらえないのです。こういうようなことでは、一生懸命世紀の大工事をやっている方々にとっては、老後についても非常に不安がございますし、もっと安心して働けるような待遇をひとつやっていただきたい、こういうことを御要望しておきます。  次に、労働省に申し上げますけれども、こういうような大規模建設工事については、安全の確保、これはもう絶対にやっていただかなきゃならぬわけでございますが、現在の青函トンネルの建設工事を見ますと、そういう面が非常におくれております。これはやはり労働省指導に非常に欠陥があるんじゃないかと思うのです。こういう大規模建設工事については救急の医療体制あるいは非常事態に対するいろんな防止体制とか災害防止のいろんな措置をやはり義務づけるべきであるというふうに考えるのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  158. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 青函トンネルの建設工事その他山陽新幹線であるとか、いろいろ大規模工事が行なわれております。これらの大規模建設工事につきましては、本省で特に超大規模建設工事として指定をいたしまして、そういうものにつきましては現地の基準監督署におきましても重点的に監督、指導を実施いたしますほか、労働本省におきまして直接鉄建公団その他の発注者と連絡会議等を持ちまして、そして施工法の安全性を検討するなど、総合的かつ広範な災害防止対策をとるようにつとめておるところでございます。  先ほど先生から御指摘ございました緊急時の問題等につきましても、たとえて申しますと、ことしの五月三十一日に公団の青函局長公団の建設事務所長等にあてまして、出水、爆発、火災等の災害、あるいは停電時の災害等、想定でき得る災害を仮定いたしまして異常時訓練を実施するよう、文書によって勧告をいたしておりますし、また先ほど一番最初に、緊急時の医療体制等につきましても、現地の局におきましても必ずしも十全でないというおそれもあるということで、やはり同じ五月三十一日に、公団並びに隊道工事の共同企業体に対しまして、そういう発生時におきます緊急対策として、病院その他の関係諸機関を含めて、連絡、通報、救助、医療等の迅速な活動ができるような体制を整えるような勧告も五月三十一日のときにいたしておるということで、私どもといたしましても、こういう世紀の大工事につきまして、安全上の遺漏があってはならない。万一の大災害が起きてはならないということで、本省におきましても現地におきましても、最大限の注意を払いまして、そういう事態のないように指導をいたしておるところでございます。
  159. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣にお尋ねしますが、労働大臣はこの世紀の大工事といわれる青函トンネル工事のこういう実態についていままで御存じであったかどうかということを一つ。  もう一つは、労働省がいかに勧告をしても、建設工事を担当する鉄建公団がやらない場合に、いろいろな災害が次から次に発生した場合に、だれが一体これは責任を負うかという問題です。この二点について大臣からお答え願いたい。
  160. 田村元

    田村国務大臣 私はもちろん現場は存じません。先般北海道へ参りましたときに北海道の労働基準局長からも、また道の労働部長からも、詳しくいろいろと青函隧道に関する報告は受けました。また説明も受けました。私自身が現場を知りませんから、その点は不勉強でありますけれども……。  ただ、とりわけこういう大規模な工事はなおさらのことでありますが、労働災害防止という点については、労働省はいま異常なまでにきびしい態度をとっております。先ほど基準局長が申しましたように、超大規模、まあこれはとりわけ新幹線工事なんかに多いわけでありますが、そういうものは特に指定して、そうして労働本省まで——現場の局署のみならず労働本省まで発注者と協議をし合っておる。それから、先ほども局長からもちょっと触れておりましたが、青函隧道に関しましては五月の三十一日に、緊急事態に備えての医療対策をも含む勧告もしておるというようなことで、たいへん気をつかっておるわけです。  残念ながら九月四日でありましたか、気の毒な事故もあったわけではありますけれども、私どもとしてはきわめてきびしい態度で臨んでまいりましたが、同時に、今後はより以上きびしい態度で臨まなければなりませんが、責任の所在ということになりますと、これはたいへん現実的なお答えで恐縮でありますけれども、これはまあ工事を請け負っておる者が、これは責任の所在といえばそういうことになるわけでありますけれども、当然鉄建公団にしても労働省にしても、道義的にはこれはやはり責任を痛感しなければならぬし、とりわけ鉄建公団においては、発注者ですから、これはもう大きな事故が起こったら当然責められるものだと、私はそのように思います。とりわけ私は役人ではありませんから、政治家でありますから、そういう点は特にきびしい態度で今後も臨んでいきたいし、その責任が法的にどんなものか、どういうことであるかということも当然ながら、道義的にどういうものであるかという点についても、きびしい態度で臨みたいと思っております。
  161. 古寺宏

    ○古寺委員 これで質問を終わるのですが、このいわゆる海底トンネル新幹線工事につきましては、大規模建設工事として特に事前にこういうような安全確保の体制をとるように、再三私は労働省に要望してある。今回この本工事が始まる前からこういうことは何べんも申し上げてあります。ところが、現実にいまこういう体制になっている。それをいまの大臣の御答弁でいきますと、発注者は鉄建公団なんだから労働省はあまり責任がないようなお話でございましたけれども、やはりこれは日本の労働行政を一応責任者として見ていく以上は、その責任の一端というもの、あるいは全責任といってもかまわぬでしょう。今回の場合は、やはり大臣がこういうものをはっきり認識をして取り組んでいただきませんと、今後次々に災害も起きてくるし、犠牲者も出ると私は思いますので、特にこの点については今後力を入れて安全の確保をしていただきたい、こういうふうに御要望して終わらせていただきたいと思います。   〔向山委員長代理退席、竹内委員長代理着席〕
  162. 田村元

    田村国務大臣 誤解が生じるといけませんから、私もう一回申し上げますが、責任の所在は鉄建公団であって、労働省には責任はないということは申しておりません。当然労働省も責任を感ずるべきである。あたりまえのことだと思うのです。でありますから、今後もなお一そう、いまの御意見は、率直に言ってわれわれにもたいへんありがたい御意見でありますから、なお一そう入念に、しかもきびしく対処してまいりたいと思っておりますから、どうぞ御協力をお願いします。
  163. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 大橋敏雄君。
  164. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が非常に制約されておりますので、答弁のほうは要領よくお願いしたいと思います。  ただいま私が手元に持っております本は、日本評論社発行の月刊「労働問題」という雑誌でございます。この中に、「急がれる有給教育休暇の検討」小山泰蔵先生の論文が出ているわけでございますが、私はこれを拝読させていただきまして、非常に興味を覚えるとともに、その重要性を深く感じますがゆえに、本日若干の質問を行ないたいと思います。  まずその冒頭に、「本年五月から六月にかけて開催されたILOの第一八三回理事会は、「有給教育休暇」を明一九七三年に開催される第五八回ILO総会の議題とすることを決定した。」このように見出しがあるわけでございますが、大臣はこの本を読まれているか、読まれていないかは承知しておりませんが、いずれにしましても、このような動きがあるということは御承知でございましょうか。
  165. 田村元

    田村国務大臣 私不勉強でその本はまだ読んでおりませんが、そういうことは承知しております。
  166. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これはいままでよくいわれております年次有給休暇とは別に、労働教育のために有給教育休暇を与えるというもので、ILOが、国際的労働基準として定めようとしているわけでございます。有給教育休暇とは非常に耳なれないといいますか、あまり世間に知られていないことばではございますが、これは簡単に申し上げますならば、雇用関係を続けたままで教育の機会を与えようという内容だと思うのでありますが、これについてどのような理解をお持ちであるか、労働省の方に答えていただきたいと思います。
  167. 森川幹夫

    ○森川説明員 ただいま先生の御指摘のございました有給教育休暇制度でございますが、これはすでに先生も御指摘になりましたように、近年の技術進歩や社会の変革に即応いたしまして、労働者が生涯にわたりましてその技能や知識を絶えず更新し、あるいは向上させることを必要とするに至ったことがその背景でございます。  ILO事務局の案によりますと、有給教育休暇は、労働者が職業訓練、一般教育等を受講できるように、通常の労働時間内に、賃金を失なうことなく、仕事から解放いたしまして休暇を与えることを内容とした制度でございます。
  168. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 さらにこの記事によりますと、ILOとしましては、有給教育休暇に関する決議が一九六五年に可決されてから七年目に当たる一九七三年の第五十八総会でその第六議題として、この有給教育休暇の第一次検討が行なわれる。翌一九七四年の総会で、第二次討議が行なわれた後に、条約または勧告として採決されることになるということを記事に示してありますけれども、この見通しについてはどうですか。
  169. 森川幹夫

    ○森川説明員 ただいま先生からお話しでございましたように、明年の総会におきましては第一次討議、再来年の総会で第二次討議が行なわれます。現在ILO事務当局のほうから来年の総会を控えまして質問書が参っております。この質問書の中で、かかる有給教育休暇につきましてはいかなる形式、たとえばいま先生のお話のありました条約または勧告という趣旨でございますが、一応ILO事務当局案によりますと、勧告という案が出ておるわけでございます。
  170. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま大臣お聞きのように、労働省のほうに、すでにILOのほうから質問書も届いておるそうでございまして、話によりますと、その文書の翻訳作業も一応七月下旬に終わって、ILOの質問書に対する政府の見解をつけて、八月の十日ころに労使双方の団体に送る予定であったということでございますけれども労働省の見解ですね、これを示してもらいたいのです。  いま申し上げましたように、八月の十日ころすでに労使双方の団体にその内容を送るということであるということですが、すでにその見解ははっきりして示されておると思うのですね。これを示していただきたいと思います。
  171. 森川幹夫

    ○森川説明員 質問書がILO当局から参りまして、わが省といたしまして一応検討中でございまするが、わがほうの考え方といたしましては、一応有給教育休暇制度につきましては、フランスあるいは西ドイツ等で採用されました比較的新しい制度でございまして、世界的に見ましても、この有給教育休暇制度につきましてはまだ模索の段階にあるわけでございます。したがいまして、先ほどのILO事務当局案にございまするように、勧告という制度をとるべきが妥当ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  172. 田村元

    田村国務大臣 実は当然質問書が来れば回答しなければならぬ。それでまた回答するには代表的な労使の団体の意見を聞かなければならぬわけです。ただ、いま課長が申しましたことで尽きておるのでありますけれども、率直に言いまして、私ども個人としてながめても、非常に興味ある構想だと思うのです。ところが問題は、世界でこれを実施しておる国がほとんどないわけですね。フランスとか西ドイツとか——フランスは法律でやっております。西ドイツの場合は日本でいえば都道府県の条令ですか、州法でやっている。それで労働協約にゆだねておるというようなことであります。同時に西欧では終身雇用的な形態が整えられていないわけですね。  ですから、そういうことから非常にこれはむずかしい問題でございまして、たいへん興味を持ってながめておるし、もちろん取り組んでいかなければならぬ問題でありますけれども、率直に言って、先ほど課長がいいことばを便ったわけでございますけれども、模索中なんです。でありますから、しり込みをしておるとか、あるいは批判しておるとかいう姿勢ではございません。それだけちょっと念のためにつけ加えておきます。
  173. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでわが国については模索中だ、まだ世界で実施しているのは一、二しかない、といってみましても、この問題が検討され始めたのはもう十年前、ILOでもそうですし、あるいはユネスコ等でもこの問題が検討されてきたわけですね。そしてこれは非常に重要な問題であるとして、ILOもこれを国際労働基準として定めようという動きが積極的になっているわけですね。そういうときにそうした質問書も来て、おそらくその回答を九月三十日までにジュネーブのILO事務局に到達するような要請がなされているはずと思うのですけれども、その点はどうですか。
  174. 森川幹夫

    ○森川説明員 いまお話しのございました九月三十日でございますが、確かに原則といたしまして九月三十日まででございます。しかし、わが日本のようにマザータングが英語でございません国は、十月三十日までが回答期限でございます。
  175. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いずれにいたしましても、非常に短期間の日にちにそういう作業を進めていくということは、私としましては、いいかげんな回答が出るのではないかという不安があるわけですね。労使双方代表団体の意見を求めようとしましても、求めて協議した結果がこの回答書に盛り込まれることになるわけでございますけれども、いま言いましたように時間的に非常に短いスケジュールでありますし、形式的に終わるのではないか。そしてまたいま言われたように、経験の浅い、あるいはないと言ってもいいでしょうね、そういう問題を検討するわけでございますので、中身が満足な十分なものではないのではないだろうかという懸念を抱くのですけれども、この点についてはどういうお考えをお持ちですか。
  176. 森川幹夫

    ○森川説明員 いま先生のお話にございました、なじみの薄い制度である関係上、かつ期限も限られておるので、うまい労使からの回答が、われわれも含めまして出ないのではないか、こういう御指摘でございますが、一応私どものほうは本年の一月にも、実は有給休暇に関する専門家会議が開かれておりまして、その際は日経連の雇用教育課長でございました藤田さんが出ておられますし、また組合等におきましてもドイツのDGB等あたりの実例を御勉強中でございます。したがいまして、労使の団体の御専門家の方は、この内容等も十分に承知されているかというように私ども承知をいたしておりますので、いずれ、期間は短うございますけれども、十分建設的な御意見がいただけるのではないかと私どもは期待しております。
  177. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それで、いま私が心配しているような、いいかげんな報告書にならないように作業を進めてもらいたいということと、それから、この休暇制度についてはきわめて重要な問題だと私は思いますし、前向きの姿勢で積極的に進めていただきたいということを要望しておきます。  そこで、いま大臣は、労働の時間短縮の問題だとか、週休二日制の問題についてはきわめて真剣に取り組んでいらっしゃいますし、この教育休暇の実現についても、これと並んで積極的な姿勢で取り組んでいっていただきたい。先ほどお話がありましたように、二年後には条約とまでいかなくとも、勧告が予想されている今日でございます。したがいまして、この時点になって、さてどうやったらいいのだろうというように、うろたえるようなことがあってはおかしなことだと思いますので、そういう点を十分踏まえた上で、労使双方に対して、この有給教育休暇に関する認識と知識を十分与えられるよう、またそれを吸収するようにPRをしていただきたい、せねばならない、私こう思うのでございますが、大臣の見解はいかがなものでございましょうか。
  178. 田村元

    田村国務大臣 実は私は、これも率直にお答え申し上げますと、これから勉強しなければならぬ段階だと思うのです。先般八月に雇用政策調査研究会の中間報告が出ました。それの一七ページに「訓練休暇制度の検討」という項目で、この問題が書かれております。もうすでに御承知と思いますが、ちょっと要点だけ読んでみますと「近年教育訓練のための休暇制度について各国の関心が高まっており、ILOやOECOなど国際機関でも本腰を入れてとりあげるようになっている。」ということからこの問題が書かれております。そうして、「このような制度が労使間で真剣に検討され、在職者の能力開発の基盤づくりがなされることが望まれる。」ということが中間報告で出されておるわけです。でありますから、私もこの問題ととにかく取り組むには知識を持たなければならぬ。残念ながらまだ世界の各国が、フランスや西ドイツという特殊の国以外は、率直に言ってこれに関する知識があまりない。日本もごたぶんに漏れないということでありますので、私自身もこれからこの問題をうんと勉強しまして、まず理解をして、そうして私なりの夢も描いてみたい、こういうふうに思っているのです。  ただ、いまどうだと言われてみても、あまりにも新しい問題なものですから、そこらはひとつ御寛容のほどをお願いいたします。
  179. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いずれにいたしましても、来年のILO総会に取り上げられることは事実でございますので、いまさき申し上げましたように、積極的な姿勢でこれと取り組んでいただきたい、そうして労働行政の発展に備えていただきたい。  時間がもう過ぎておりますので、残念でございますが、このあと実は、労働基準法施行規則の第二十七条、「物品の販売等に従事する者の労働時間の特例」というのがありますね。これはすなわち、商店等で働いている人の時間の特例でございますが、一日九時間制になっておりますが、この労働基準法施行規則ができたころと、いまでは二十数年の開きがありまして、労働環境もずいぶん変化している今日でございますので、こういう特例はこの際削除すべきではないか、私はこのように思うわけでございますが、実はこの件について詳しく質疑応答をやりたかったのですけれども、結論から申し上げますと、これは削除すべきではないかという私の考えについて、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  180. 田村元

    田村国務大臣 この問題は、実はけさほども基準局長と相談をしたのでございますが、きょうこういう御質問があるやに承ったものでありますから、そこでさっそく基準局長によく検討せいということを申しておきました。私もあの条文は読みました。これから鋭意検討していきたいと思います。
  181. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 じゃ基準局長意見はどんなふうですか。
  182. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 この施行規則二十七条で設けられております特例は、これらの業種が公衆の不便に非常に影響があるということで設けられた規定でございますが、御指摘のように、その後の情勢の変化もございまして、昨年の暮れに労働基準法研究会から出されました報告におきましても、これらの特例の適用を受ける関係労使の話し合いによって所定の労働時間が改善されるように指導する、また関係規則の内容自身も検討せい、こういう御指摘をいただいております。  最近の一般的な時間短縮の傾向の中で、実際にはそれらの業種の相当数におきましては話し合いによる時間短縮が進められておりますが、規則自身を廃止あるいは改正するかどうかという点につきましては、よくその影響等を十分検討の上で考えてみたい、かように考えております。
  183. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 こういう週休二日制とか時間短縮の問題、一生懸命取り組んでいらっしゃるわけですけれども、そういう立場から見た限りにおいては、この問題は削除の方向に行くのが至当である、私はこう感じますので、これも積極的な姿勢で、いまの私の意見に従うような方向努力していただきたい。  以上をもちまして、終わります。
  184. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 次に、田畑金光君。
  185. 田畑金光

    ○田畑委員 初めに、私は郵政省の人事局長においでをいただいておりますので、長い時間をとらしませんから、二、三まずお尋ねをしておきたいのでございます。  きょうは特定の名前はあげませんが、Aという普通郵便局がある、この局長の人事の異動等はどういう手続で発令されるわけですか。
  186. 北雄一郎

    ○北説明員 手続と仰せられますので、御意向に沿うかどうかわかりませんが、申し上げますと、局の段階に応じまして大臣が発令する局長、それから地方の郵政局長が発令する局長、二通りございまして、そういった区分に従って発令をいたすわけでございます。
  187. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣の発令あるいは地方の郵政局長の発令による局長の異動、そういう人事の異動は、たとえば郵政省の場合はあらかじめ全逓の労働組合であるとか、あるいは全郵政の労働組合と相談して発令されるのか、あるいはまた、発令されるにあたっては事前に労働組合に、今度はこういう発令をするがという内諾なり同意を求めるのか、これはどういうことになっておりますか。
  188. 北雄一郎

    ○北説明員 事前に組合と相談をしたり、あるいは内諾を求めるということは、一切ございません。
  189. 田畑金光

    ○田畑委員 ならば、A郵便局、普通局の局長の異動が、局長自身も、局長を補佐する各課長も、これもすべて管理者の諸君でありますが、知らないのに、全逓の労働組合の県の委員長であるとか、あるいはその局の支部長であるとかそういう連中があらかじめ承知して、今度のうちの局の局長はこうなるのだ、左遷されるのだ、こういうようなことを公然と発表しておる。結果においては事実そのとおりに発令されておる。これはどういうことで、このようなことになるわけですか。
  190. 北雄一郎

    ○北説明員 いろいろそういった人たちが取りざたをするということはあるかと思います。それからまた、人事の異動の時期というのは大体わかるわけでございますから、それ以前の時期におきまして、そういった団体あるいは個人というようなものが、だれをどうしてくれというようなことを言いに来ることはございます。でありますから、かりにお説示のようなことがどこかであったとすれば、それは、そういうことを言ってきたのに対して、それがあたかもそうなるというようなことを言いふらしたのが、たまたま符合したというのが絶無とはいえないと思いますが、いずれにしろ、事前に相談したり内諾したりというようなことは絶対にございません。
  191. 田畑金光

    ○田畑委員 特定の団体なり個人等がそのようなことを申し出てきた、結果においてはたまたま符合した、そういうことになってくれば、当局は特定の団体なり特定の個人の言うことに結果において同意し、それに迎合した、こういうことに現実においてなったわけだが、そのようなやり方で郵政省の人事管理というものほうまくやっていけるのかいけないのか。人事局長は最高の責任者であるわけです。私は、これはいずれ郵政大臣の出席を求めて、あらためてどの局でどのようなことがあったかということを明らかにしますが、偶然にたまたまそうなったというあなたのお話だが、結果においてそうなったということは、あなた方は結果において特定の団体なり個人の言うことを聞いて、そのような人事の運営をやった、こういうことになりはしませんか。
  192. 北雄一郎

    ○北説明員 あくまで私どもが判断したわけでございます。御承知のように、人事をやります場合に、栄転というケースもございますし、横すべりというケース、それからいわば左遷というケースがあります。むろん量的にはほとんど全部が栄転でございまして、一部、水平異動つまり横すべり、あるいは左遷というケースが毎年毎年——定期異動をやっております関係で毎年と申しますが、毎年毎年ございます。その場合、人事異動以前にそういう申し向きがあった。おそらくそのうちの大部分はそれと違っておると思います。しかし、ごく一部、当局の自主的な判断におきまして、過去一年なり二年なりの勤務の実績を判定いたしまして、これは横すべりである、あるいはこういった具体的なマイナスがあったから左遷であるというのが、ごく一部において符合するということがあり得るわけでありまして、そのことをもって直ちにそういった団体もしくは個人の意見が通ったということには相ならぬ、かように確信いたしております。
  193. 田畑金光

    ○田畑委員 あなたのほうでは、たとえば貯金業務が非常に成果をあげたとか、簡易保険の保険業務が非常にいい成果をあげた、このような場合に、大臣の表彰であるとか局長の表彰をやると思いますが、それはどのような場合に、どんな基準を達成した場合にやるのか、それを御説明願いたいと思います。
  194. 北雄一郎

    ○北説明員 それはそれぞれ基準と申しますか、第一に数の基準があるわけであります。一定の数のワクがございまして、その数のワク内で一定の基準がそれぞれございまして、その基準に照らし合わせて上位の者をその数のワクの中へ押し込める。ただ、ある局で、その当該業務は非常にようございましても、たとえば大きな犯罪があったとか、あるいは犯罪でなくてもまずいことが他の面であったというような場合には、表面的な基準を満たしておりましても、その数の中へ入れない、こういった角度からおおむね表彰局を選考しておる次第であります。
  195. 田畑金光

    ○田畑委員 すでに、君の局はこのような成果をあげたから今度このような受賞になるであろう、こういう内示、内定まであって、突如としてこれを取り消した。その取り消しについては、すでに内示もしておるし、また正規の手続によるわけにもいかぬから、局のほうで自発的に辞退をせよというようなやり方で辞退をさせておるわけだが、あなた方としてはこういうようなやり方をしばしば用いておるのかどうか。  それから、あなたのことばの中に、成績はよかったけれども、何かほかの事情によって落とす場合があるということだが、内示段階まで来ていて、そうして後ほどこれを自発的に遠慮しろ、こういうようなやり方というものは、人事のあり方、あるいは業務の正常な運営として、あなたとしては、まともなやり方であると考えておるのか、間違っていたという考えなのか。そのこといかんによっては、あらためて私は具体的な事実を君たちに突きつけてこれを明らかにしたい、こう思うのだが、この点について、どうあなたは考えるか。
  196. 北雄一郎

    ○北説明員 内示ということをおっしゃいましたが、私ども、たとえば人事にいたしましても表彰にいたしましても、表彰あるいは人事がすべてである。ただし、その場合に内示という行為もあるわけであります。しかし、これはやはりその表彰なり人事ということをやりますのが、先ほど申しましたように区分がございますけれども、郵政大臣の権限事項であれば、いろいろ責任者のところを文書が回りまして、最終的に大臣が決裁をされまして、初めて省の意思というものがはっきりするわけであります。その上で内示というものが、あればある。それから実際の表彰決定、あるいは人事の決定というものがあるわけであります。したがいまして、それ以前におきまして内示というものはあり得ないわけであります。かりにあるとすれば、何かでそれが途中の経過で漏れたというにすぎないわけであります。  そういった意味合いからいたしまして、郵政省が意思を決定いたしまして、そして内示があってこれを取り消したという例はないと思います。かりにあるとすれば、郵政省が意思決定をいたしましたあと、世間の耳目を騒がせるような犯罪等が生じた場合には、これは取り消すということはあります。そういった場合以外には、そういったケースはございません。
  197. 田畑金光

    ○田畑委員 かりに内示があったあと、それを取り消すような事例というのは、たとえばある種の犯罪があったとか、そのような大きな事故を見落としていたというような場合は、内示をしても、それを取り消すこともあり得るといういまのお話だが、その場分の犯罪というのが、これは具体的な事実に即して言うならば、問題はあなたの言う犯罪などというものは全然考えられない、なかったという状態において私は聞いておる。しかもその局はりっぱな生産性の向上をやった。局長以下全部が全力をあげて郵政業務に精励をした。すばらしい成果をあげた。だからして当然表彰も受けられるだろうし、表彰の内示も連絡はあった。ところが、突如としてひとつ遠慮してくれ、自発的にそこから辞退を申し入れてくれ、こういうようなやり方、こんなことはちょっと普通の官庁の行政としては考えられないことなんだが、もうかくかく私が言う以上、あなたもおおよそ推察はつくと思う。その局でそのような犯罪が管理者にありましたか。
  198. 北雄一郎

    ○北説明員 先生がそういうふうにおっしゃられますと、思い当たる節があるわけであります。ただし、これは内示というものではございませんでして、   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 そういったどこを表彰するかということをきめます場合に、これは内部のことで非常に恐縮でありますけれども、たとえば貯金なら貯金ということで表彰しようといたします場合には、貯金局が一つ考え方を打ち出して、それを関係の各局に相談するわけであります。そして関係各局間で相談がととのいまして、そして大臣の決裁を得る、こういう手続をとるわけであります。その始発の段階であるいは表彰適当という判断をいたしましても、途中で関係部局で故障が出るということは往々にしてあるわけであります。そういった場合内示というものでありますならば、最初に申し上げましたように、関係各局の意向がととのい、そして大臣が決裁をして初めて内示がある。それ以前のものは内示ではないという考えをとります以上、いま先生のおっしゃいましたように、内示があって取り消したという問題はなかった、かように思っております。
  199. 田畑金光

    ○田畑委員 これは局長、あらためてひとつまたやりますから——いずれまたあなたに資料なども要求するから、きょうはひとつ小手だめしにあなたに質問した。こういうことで大臣の出席を求めて、あらためてこれはやりますから、あなたもきょうはこれでけっこうです。  次に、私は労働大臣にお尋ねしたいのですが、「昭和四十八年度新労働政策」この第一の柱に、総理と労使代表との定期会談の実施、あるいはまた全国、産業、地域、企業、職場等各レベルにおけるコミュニケーションの積極的な推進、また国内多国籍企業の労使関係等の実態把握と対策の推進、非常にりっぱなことをあげておられます。また田中総理も労働大臣立ち会いの上で労働界の首脳部との話し合いもなされたわけであります。その中でいろいろな、人事院勧告の実施時期の問題あるいは定年制やあるいは週休二日制の問題等々非常に明るい前向きの話をなさっておるようでありますが、心配することは、佐藤総理の時代を振り返ってみても、当初やはりいろいろ民間との話し合いなどなされたわけだが、いつの間にか権力の座にあぐらをかいた。私は、庶民宰相と田中さんが言われておるけれども、だんだんぼろが出てくると結局同じことになりゃしないのか、こういうことを心配するのでございますが、ぼろが出るのは先のことでしょうから、この労働政策の最重点において考えておるこのコミュニケーション、この問題は私は非常に大事なことだし、またけっこうなことだと思いますが、労働大臣としては、どのような構想のもとにこれを推進し、そしてまたそのことが、わが国の労働行政に大いなる寄与をかくかくの意味においてなすであろうという確信のもとで進めておられることだと思うのでございますが、まずこの点について労働大臣考え方のほどを承っておきたい、こう思うのです。
  200. 田村元

    田村国務大臣 いま仰せのとおりでありまして、先般田中内閣成立直後に、労働界のトップメンバーといいますか、トップリーダーたちと総理とをお引き合わせしたわけです。これはもうたいへん私はやってよかったと思っております。今後も随時、総理も労働界のトップリーダーと会うと思いますが、また会ってもらわなければならぬわけでありますが、そのあっせんも私はしていきたいと思いますけれども、今度三木国務大臣が副総理になられたわけです。私はさっそく三木副総理に、総理段階でももちろん随時会っていただくけれども、副総理段階ではなおさら、きめこまかく会ってもらいたいということを申し入れました。副総理の快諾を得たものですから、いま総評や同盟やあるいは新産別、中立労連等のほうと大体日取りをぼつぼつ詰めようかという時期であります。また地方におきましても、民間においても労使のコミュニケーションを確立して、そうして合理的な労使関係を確立していくことは何よりも必要だと思います。  私は、こういうような姿勢でわれわれも一生懸命に努力をして、ごあっせん申し上げてやっていったならば、現在すべてがすべてそうだとはいえませんけれども、ときに労働争議の原因が多分に労使の不信感の上に立っておるというようなことを考えるにつけましても、そういうことがだんだんと薄まるでありましょうし、円満な労使関係が必ず将来できていくであろう、こういうことに望みを託してがんばっておるわけであります。これからも私の最大の労働行政のトップの問題として、これは意欲を失うことなく、ますますがんばっていきたい、こう思っておる次第でございます。
  201. 田畑金光

    ○田畑委員 政府とあるいは労働界の間に、あるいは企業の段階における労使の間にコミュニケーションを持つということは、私は非常に大事なことだし、また労働大臣がそれを側面的に推進されるということもまた労働行政の一環として当然のことだと、こう思うのです。ならば、特にいまのわが国の労使関係の分野において国民が心配しておることは、またこの十四日から順法闘争が行なわれるであろう、どっちに理屈があるなしは別にいたしまして、ただ順法闘争の名において、結局国民が迷惑をこうむるということなどを考えてみると、私は赤字をかかえて、すでに倒産しておる国鉄労使関係のこのコミュニケーションを、なぜもっとうまくはかることができないのか、これあたりは、やはり私は労働大臣として、あるいは運輸大臣として緊急にひとつ努力をなさるべきところではなかろうか、このように考えるわけなんです。  また最近、非常にこれはいいことだと思うのですが、労使が福祉共闘、こういうようなことで総評あるいは同盟、中立労連、新産別と日経連との間に福祉問題を中心に、すでに総評と新産別とは具体的な話がなされた、とこういうことですね。その話の中身をわれわれが新聞で拝見したところによれば、退職金についての減税の問題、あるいはまた厚生年金については、特に日経連のほうから公務員の共済組合の年金と同じ額ぐらいに、すみやかにこれは引き上げるべきだという点、あるいはこの間の六十八国会で問題となった政府管掌の健康保険等の問題について、赤字が出てからすぐ受益者負担とは、そんな考え政府はやるべきじゃない、あるいはまた黒字が組合健保にあるから、その黒字を赤字の政管健保にただ取りするようなやり方はやってはいかぬ。そういう点について労使の話し合いがなされて、大局的には意見の一致を見て、これから政府に共同で当たるのかどうか知りませんが、政府に対して、とにかくもっと労働者に対する福祉政策の面で積極的に努力してもらおう、このようなことになるようでありますが、私はこういうようなこともけっこうなことだ、こう思うのですね。ただ残念なことには、この労使の話し合いの中でも田村労働大臣の金看板であり、田中内閣の大きな公約である週二日制の問題あるいは定年制延長の問題についてはすれ違いに終わった、とこう報じておるのですね。こうなってまいりますと、どうも日経連、せっかく労使共闘で福祉共闘を進めるということはけっこうなことなんだが自分にすぐ問題がかかってくるような週休二日制あるいは定年制延長についてはすれ違いだ、こういうことですね。  この問題についてすでに労働大臣は日経連等とも話をなされたと思うのですが、すでに来年度の重点施策の中に、労働者の福祉の充実強化というのが一番大きな問題として取り上げられておるわけでありまするが、その柱は言うまでもなく週休二日制の問題であろうし、時間短縮であろうし、あるいは定年制延長の問題であろうし、あるいは労働者の財産形成をもっときめこまかく深めていくことだと思うのでございますけれども大臣としては労使の福祉共闘、そしてまた経営者の姿勢、態度、こういうようなことなどをかれこれ考えられて、どういう方向で週休二日制なり定年制延長を誘導していかれようとするのか、それをひとつこの際、聞かしていただきたい、こう思うのです。
  202. 田村元

    田村国務大臣 日経連と労働団体とが話し合って、問題によっては共闘しよう、これはもう大歓迎でございます。私はあの報道を聞きまして、心から快哉を叫んだ一人であります。  ただお説のように、あるいは定年制延長あるいは週休二日というような問題については、すれ違いに終わったのかどうか私は存じませんけれども、双方に微妙な意見の食い違いがあったようなニュアンスの報道がございました。私は直接日経連や総評に会ってそれを聞いたわけではありませんから、論評の余地はありません。しかしながら私は日経連とも会いました。総評とも先般会いました。そしてこういう問題を私は赤裸々に申し述べて協力を求めました。私は、必ずこの労使の話し合いのまないたの上に現実問題としてこういう問題が乗っかってくると信じております。まだ一回しか会っておらぬですから、まあ手っとり早い問題からいったのでしょうけれども、これは必ずまないたに乗るだろう、また乗ってもらいたい、私はこう思っております。  率直に申しまして、定年延長につきましての問題点といえば、言うなれば賃金体系であります。現在日本の多くの企業がとっております年功序列賃金体系というものをどのように考えたらよいのか、あるいは退職金の算定方式をどのようにとらえたらいいのか、また管理職の問題をどういうふうにこれから考えたらよいのかというような問題が、問題点として大きくいまわれわれの前に横たわっております。  それから週休二日につきましても、中小企業に対してあるいは迷惑を与えることがないだろうか。私は中小企業に対して迷惑を与えないように万全の措置をしなければなりませんが、同時に中小企業の労働者にも大企業の労働者や公務員に匹敵する社会福祉の恩恵に浴せしめたい、これは私の悲願であります。このような問題点があるわけですが、それを賃金研究会や労働者生活ビジョン懇談会にいまおはかりをして解明を急いでもらっております。これが遠からず答えが出てくるであろうと思います。  そのときには、好むと好まざるとにかかわらず定年延長や週休二日という問題が公然と論ぜられるという時期がそのときくる、私はそう思うのです。でございますから、私はまだ賃金研究会や労働者生活ビジョン懇談会からお答えをいただいてはおりませんけれども、それの解明方をお願いをして当然お答えをいただくわけでございますから、いまの時点から、とにかく労使双方にお目にかかってその機運を醸成していきたい、こういう意欲に燃えまして日経連にもお目にかかり、東京商工会議所にもお目にかかり、これから労働組合の方々にも——この十四日には私は大阪へ参りまして、関経協にもお目にかかり、そのあと名古屋にも行こうと思っております。九州へも行こうと思っておりますが、私のこのからだで行脚をして、こういう問題を認識を深めてもらう、その雰囲気も醸成していく、そういう努力をしたい、こう考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、経営側と労働側とが社会福祉、労働福祉の面でああいう形で話し合われたことは非常に歓迎すべきことでございまして、今後いよいよ話し合われて、ときに政府に対してきびしい要求をなされましょうとも、それはたいへんな前進である。私はそのように思っております。
  203. 田畑金光

    ○田畑委員 労働者生活ビジョン懇談会であるとか賃金研究会の答申を待って取り組むというお話でございますが、それはもう当然四十八年度の予算措置なり——四十八年度からはこの定年制延長の問題をどう具体的に推進していくか、失業保険法との関係云々というような話もありますし、いま御答弁の中にありましたように、わが国の賃金体系の問題等も検討しながら、これをどう進めていくかということになるわけであります。  私、いろいろこまかくお尋ねをしたいのでございますが、時間がございませんから、これは大まかにだけお話を承っておくわけでありますが、先ほどすでに大臣のお話にありました、先般労働大臣の諮問機関である雇用政策調査研究会が雇用問題については一つの答申を出しておりますね。ここに問題点が取り上げられているわけです。これを現行の賃金体系その他の問題から、さらにきめこまかく検討しようというのが今度持たれる懇談会の役割りかなという感じはいたしますが、当然これは来年から実施するのだ、こういうように理解しておるが、そう理解してよろしいのかどうか。  それからまた、きょうは幾つか質問がありましたが、もう時間が来ましたから私はやめざるを得ぬわけですが、最近非常に政府の各大臣一つのビジョンの打ち上げ花火の競争みたいな感じがするのです。日本列島改造論という大きな問題が打ち上げられたので、たまたま予算の編成の時期にも入ったというようなこと、こういうようなことで各大臣それぞれ構想を打ち上げておられるのでございますが、たとえばこれは厚生大臣もいまお見えになっておりますが、今度厚生省としては、年金の預託の金利を六分五厘から六分二厘に引き下げる。その代償として、交換条件として還元融資の幅を大幅にふやさせる。そうしてそれでもって住宅建設をやるとか、あるいは大型の保養地をつくるとか、こういうようなことを打ち上げておられる。さらにまた最近は、もちろんこれは厚生省がおやりにやるのは当然のことだと思いますが、老人福祉の一環として年とった人たちの雇用の問題について、労働省の所管である中高年齢者雇用促進特別措置法等についても、厚生省の側からこの法律をもっときめこまかく見直したい、注文をつけたい、これもけっこうだと思います。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕  このように、厚生省は厚生省の立場労働者の住宅の建設の問題とか、資金貸し付けの問題、大型保養地をつくるとか、また一方においては、この労働省の来年の重点施策を見ますと、住宅資金の問題であるとか、また財産形成法の中で住宅資金をどう見るとか、あるいはまた大型保養地として余暇を利用するための大きな施設を設けるとか、これは労働大臣労働大臣、厚生大臣は厚生大臣、いろいろ上げられておるのでありますが、両者の調整の中でもっと総合された立場に立って、このようなものを政府全体の施策として進めていくというのでなければ、これは単なる花火に終わりはせぬのだろうか、こういう感じを持つわけなんです。  ことに日本列島改造論を背景として通産省は、たとえば新二十五万都市構想を上げる。今度は建設省が地方中核都市整備法案を提唱する。自治省は負けないように新都市圏整備法案を打ち上げる。そうして税金の場合は通産省が工場追い出し税を取ると言っておる。建設省は特別土地開発税を取ると言う。自治省は都市整備税を新しく設ける。いろいろばらばらにやっておるわけでありますが、やはり労働大臣と厚生大臣、同じ労働者の福祉の行政を進めていかれるためには、両者の関係においては連絡調整等々が必要である、こう思うのであります。そして内閣全体、政府全体として、思い切った施策をこのように推進するのだ、このような形で進めてもらわぬと、これはどうも本気じゃないんじゃないか、こういう感じがするわけでありますが、この点だけを承って、時間が来ましたから、いろいろ具体的な問題の質問を準備しておりましたけれども、きょうはやめることにします。
  204. 田村元

    田村国務大臣 私は、各省が競って新しい構想を打ち出しておることを非常にいいことだと思っております。日本列島改造論という新しい大構想が生まれて、これは一種のビジョンともいえましょう。そして週休二日をやれば当然余暇施設というものが要る。これは労働省だけがやるべきものでもなければ、厚生省だけがやるべきものでもない。各省がみんなで競ってやってもらいたい。それから定年延長ということになれば、これはもう年金制度の抜本改正、食える年金を、とにかくどんな経済変動があろうとスライドさせていって、そして老人に安定した生活を保障していく、こういう制度がなければ定年延長の意義は半減いたします。そういうことで、私は各省がいろいろな構想を打ち出しておることを一個の政治家としても非常に愉快に思っておりますが、同時に労働大臣としてもたいへんうれしく思っております。  そこで、お説の総合的な施策という点でございますが、これはおっしゃるとおりであります。今度はきっすいの党人内閣ができたわけでありますが、私ども長年の代議士生活を通じ、あるいは再度にわたる政務次官生活を通じて感じましたことは、外国でもそうでありましょうけれども、日本の場合は、とりわけ官庁の縦割り行政、横のコミュニケーションに欠けておるという大欠点がある。でありますから、各省が横のコミュニケーションをとにかく確立して、そして内閣自体の総合政策としてまとめていくことは、これは非常にいいことだと思います。  そこで、いま厚生大臣ここへ来られたわけでありますが、厚生大臣と相談をいたしまして、厚生省と労働省はやる仕事が非常によく似ております。もともとは同根であります。でありますから、まず会おうということでわれわれは会いました。新聞等で御承知だと思います。会って、私どものほうから年金問題の抜本改正について何とか考えてくれないか、食える年金にスライドさせてくれということを頼みました。厚生大臣からは中高年の労働者の雇用問題についてきめこまかい配慮をわれわれに求められる。そしてお互いに大いにディスカッションいたしました。これからもしばしば会おうということになっております。  このように、私どもは厚生省といま力をあわせてやっておりますが、厚生省が住宅対策でも新しくお立てになったことを、労働省としては、少なくとも労働大臣としてはこれを全面的に支持いたします。大いにやってもらいたいもの。余暇対策、大いにやってもらいたいもの。そういうことで、私は各省にいま働きかけをいたしております。そしてきわめて近い将来、官房長官の主宰による定年延長あるいは週休二日制を主たるテーマにした関係閣僚会議も開く段取りであります。  このようにして大いにやりたい。線香花火に終わりはせぬか、終わらしてはならぬわけであります。線香花火に終わらしてはならぬ。それでは労働者大衆に、あるいは国民大衆に政治家がうそを言ったことになり、いわんや政府がうそを言ったことになりますから、これはそういうわけにはまいらぬ。だから私はこの点でいま非常に思い詰めておるわけです。ただ惜しむらくは、われわれ平大臣の任期は短うございますから、私どもの任期のある間に緒をつけていきたいというので、非常に思い詰めると同時にあせっておるというところであります。  いずれにいたしましても、賃金研究会やビジョン懇の中間報告がやがて出ましょうし、そこいらからフル回転をやっていきたい。それじゃいまフル回転をしていないのか。大いにやっておる。御承知のとおりであります。いま私は行脚をしております。そういうことで日本のすべての労働者、恵まれた労働者だけでなくて恵まれざる労働者にも、西欧先進国並みの社会福祉の恩典に浴せしめる、このヒューマニズムの上に立って労働行政をたくましく回転させたいと思いますので、ひとつ野党の方も大いに御協力をお願い申し上げる次第でございます。
  205. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣の非常な御高説、ありがたく拝聴いたしました。  私は一言だけ希望を申し上げておきますが、ただ、大臣の御答弁の中でひっかかるのは、今度は党人内閣というお話もありますけれども、党人内閣や官僚内閣という区別は一体何なのか。大体内閣の構成を見ると、やはり官僚出身者の人方がたくさんいるわけで、田村労働大臣みたいな純粋な政党人だけじゃない。その前歴は官僚の出身の人もたくさんいらっしゃる。だからそういう意味において、田中内閣は党人内閣だなんて言われても、われわれ野党として、国民としては、すなおに承るわけにはまいらぬわけです。  それからもう一つ、私はこの際、労働大臣に特にお考え願いたいことは、コミュニケーションの問題で、十四日から予想されます国労、動労の順法闘争の問題であります。非常に人気がいいと世間では伝えておるし、田中総理の支持率は相当なものだ、世論調査の結果か知りませんが、新聞はそう言っているのですね。ならば支持率のいいところで、ひとつ総理なり運輸大臣なり、労働大臣等か中に入られて——国鉄労使関係はあまりにも荒廃し切っているじゃございませんか。もっとお互いがコミュニケーションを通じて国民に迷惑をかけないような方向に、せめて新内閣の手始めとして御努力をお願いしたいと思うのだが、この点はどうお考えでしょうか。  同時に、私は労働大臣考えていただきたいことは、労働者の福祉の充実について労働省と厚生省が一生懸命やられること大賛成、われわれも野党で大いに協力いたします。  問題は、労働者の権利の回復の問題もあわせてお考えになったらどうであろうか。今度の国労、動労の一つの指標がスト権奪還といわれておる。やはり同じ輸送業務に携わっている私鉄はストライキ権があるのに、国鉄だけにストライキ権がないということは、ヨーロッパの国々を見てもおかしいと思うのです。権利は権利として労働者に保障する。しかし、自分たちの使命に基づいてスト権を乱発するようなことは、やがて国民あるいはその労働組合の構成員自身が批判し、反省していくであろう。こういうことを考えてみますると、もうこのあたりで国鉄の組合のストライキ権等についても十分検討する問題ではないだろうかということが一つ。  さらにもう一つ労働大臣も御存じかと思いますが、電気事業と石炭にはスト規制法という争議行為の制限の法律があるわけなんですよ。これあたりももう私は時代おくれだと思うのです。エネルギー産業なるがゆえに、石炭とそれから電気にはストライキの方法について制限を加えるなんということは——ならば石油化学あるいは重油、石油を取り扱う産業等においても当然ストライキを制限すべきであるにかかわらず、そうはなっていない。一、二の産業にだけスト規制法をいつまでも強要するということは、法のもとの平等にも反する。ましてやいまの労調法によって、公益事業等において長期のストライキがあって国民経済にたいへんな迷惑をかけるようなことがあれば、当然総理大臣の緊急調整権でそれはできないような仕組みになっている。国民に迷惑をかけないように法律の上でも制度ができている。私は、こういうような問題もこの際、あわせて労働大臣としては頭に置いて御検討をいただきたいと思うのでございます。福祉の問題とともに、労働者の権利の回復の問題についても、この際十分御努力をお願いしたい。労働大臣の御所見があれば承りまして、私の質問は、これで終わりたいと思います。
  206. 田村元

    田村国務大臣 まず冒頭おっしゃいました党人内閣とは何ぞやということでありますが、きわめて簡単に申し上げるならば、内閣総理大臣が官僚にあらざるきっすいの党人出身であり、そしてその党人出身の総理大臣のイニシアチブのもとに、リーダーシップのもとで官僚のマンネリズムを排しながら国民大衆の行政をやっていく、政治をやっていく、これが私は党人内閣だと思うのです。だから、そういう意味で申し上げたわけでございます。  それから先ほどの国鉄問題でございますが、率直にいって、違法ストをやる。それが順法闘争という名前であろうと何であろうと、違法ストをする。それで処分をする。そうすると、その処分撤回でまた違法ストをやる。率直にいって悪循環でございます。でありますから、いま十四日がどうのというお話でございましたが、いまの段階で私が特に申し上げることは控えなければなりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう悪循環はなくしたいものでございます。これは労使双方に言えることでございます。ただ、いかなる事情があれ、違法ストというものを労働大臣として容認するわけにはまいりません。  それからスト権の問題でございますが、これは非常に微妙な問題でございます。国鉄と私鉄とは違います。私鉄は民間であります。国鉄の場合は政府関係機関であります。でありますから、国民全体を対象とした機関でもありますし、政府関係機関、いずれにしても政府の保護を受けておる機関でありますから、これは一がいに同じに見るわけにはまいりますまいし、それから電気その他の件でも産業の根幹をなすことでございますから、私がいまここで軽々に結論を下すような言い方をするわけにはまいりますまいかと思いますが、ただ、いま田畑委員がおっしゃいました御意見一つの見識ある御意見だと思います。でございますから、そういう御意見も十分私ども参考にいたしまして、そしてよき労働慣行の確立という線に沿って今後も鋭意努力していきたいと思っておる次第でございます。      ————◇—————
  207. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 次に、厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。後藤俊男君。
  208. 後藤俊男

    ○後藤委員 最初、環境衛生局長さんにお尋ねしたいのですが、PCB関係の厚生省の暫定基準の問題です。特に滋賀県におきましては、非常に関係の深い問題でもありますので、漁業組合関係といたしましては、魚介類の暫定基準につきましては、かなり影響が大きいということで関心が非常に深いわけなんです。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、これも衛生局長十分御承知だと思いますけれども、滋賀県の草津における日本コンデサ関係のPCBの問題です。このPCBの暫定基準ができましたのは、ごく最近だと思うのですけれども、答申が行なわれて、これからPCB関係の基準の問題につきましても順次きまっていくのであろうというふうに私は見ておるわけでございます。食品衛生調査会のPCBに関する特別部会が、先月の十四日でございますか、答申を出しまして、それに基づいて暫定基準三PPMというのが新聞等でも発表されておるわけですけれども、いま厚生省として、このPCBの魚介類の問題に対する暫定基準はどういうふうなかっこうにきまっておるのであろうか、法的にどういうふうな価値があることになっておるのだろうか。その点につきまして、簡潔でけっこうでございますから、要点だけひとつ御説明いただきたいと思います。
  209. 浦田純一

    ○浦田説明員 先月八月の十四日に食品衛生調査会から御答申をいただきましたPCB食品の暫定基準についてでございますが、この中で魚介類は平均して一PPM以下に押えることを目標として、特に日本人の魚介類の摂取の状況等を勘案いたしまして、いわゆる遠洋ものにつきましては〇・五PPM、近海、内湾魚介類につきましては三PPMという規制値を答申いただいたわけでございます。  この根底にある考え方は、現在までの集められ得るデータをもとといたしまして、まず人体、成人へのいわゆる一日最大許容摂取量というものを五マイクログラム体重一キログラム当たり毎日というふうに算出いたしまして、それに基づき、五十キログラムの体重の成人の場合に、この計算によりますと二百五十マイクログラム毎日PCBを摂取するという——それ以下であれは、人体への影響はないという計算に基づきまして、きめたものでございます。したがいまして、この規制値を守っていただく限りは、私どもは健康に与える影響は心配しなくてよろしいというふうに考えております。  またこれの法的な意義でございますが、答申の冒頭にも述べられておりますように、あくまで暫定的なものでございます。したがいまして、私どもはこれはいわゆる行政指導一つの指針として運用してまいりたいと考えております。
  210. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いまあなたが言われました遠洋ものについては〇・五、近海並びに内湾関係については三PPM、こういう答申が出たわけなんですね。これは別に法的根拠はない、これを基準にして行政指導を行なっていくのだ、そういうふうに言われるわけなんですが、はたしてその行政指導が徹底するかどうかというところに非常に私は疑問を持っておるわけなんです。  たとえて申しますと、琵琶湖も三PPMのうちに入ると思うのですが、県で調査をした場合に、二十PPMなり三十PPMというような大きなものを含んでおる魚もある、あるいは三PPM以下の魚もあるだろうし、あるいはまた場所によって変わってくるでありましょうし、こういうものを一体とういうふうに行政指導をして——この暫定基準ができて、暫定基準に基づいて、人体に影響のある問題ですから、完全に実施させるチェックのしかたが一体あるのかないのか、私これは非常に問題だと思うのです。この点について厚生省としては、どういうふうにお考えになっておられるのか御説明いただきたいと思います。
  211. 浦田純一

    ○浦田説明員 法的な位置づけは確かに強制力はございません。しかしながら、全般的には食品衛生法に基づく施設への立ち入り検査権というものがございまして、これを最終的なたてといたしまして、その現場への立ち入り、また事実に基づく指導ということは、いままでもほかの事例についても行なってきたところでございまして、たとえばBHCの牛乳中の残留量でございますがこれらにつきましても行政指導ということで行なってまいりましたが、これで私どもは所期の行政目的は達しつつあるというふうに考えております。  また、このような基準を設けましても、実際に的確な検査ということが行なわれなくてはならないわけでありますが、これらにつきましては、やはり農林省、水産庁、関連の省庁と十分に連絡をとりまして、それぞれの立場におきまして汚染魚の把握、ことに水産庁におきましては数はいま正確に覚えておりませんが、百数十個所のいわゆる疑わしい水域、問題水域につきましては、現在精密な調査を進めておるという段階にあると承知いたしておりますが、厚生省といたしましては、原産地で押えていただくということに大いに期待いたしますが、万一漏れて魚市場なり、あるいは最終的には小売り店なりにくるといったようなこともあろうかと思いますが、私どもはそのようなことに対しましては、各都道府県の関連の試験機関を使いまして、定期的に、定時的に魚市場の当該魚のPCBの測定を続行させることによって万が一にもそれ以上の段階、小売り店の段階、店頭に来るようなことは防ぎたい、絶滅を期したいと考えております。また法的強制力こそございませんけれども、水産庁にも十分にお願いいたしまして、事実上の問題としてこのような汚染魚が食用に供されることのないように努力してまいりたいと考えております。
  212. 後藤俊男

    ○後藤委員 ちょっと話が具体的でこまかくなって申しわけないのですが、たとえば魚といいましても、はらわたから、骨から、食べられる部分から、いろいろな部分から成り立っておるのですが、そうしますと、今度の魚介類の三PPMというのは、魚全体が三PPM以下でなければいけないということになっておるのか、あるいはまた新聞によりますと、魚の食える部分だけを調査して三PPM以下ならよろしいんだというような記事も私見たような記憶があるのですが、厚生省として、三PPMをもって今後各省と相談をしながら、行政指導でしっかりやっていくんだ、こういうふうに御説明になったわけですけれども、その三PPMとは一体魚でいいますと、全体の中身に含んでおる量なのか、あるいは先ほど申し上げましたように、骨であるとかはらわたであるとかそういうものを除外いたしまして、魚の食える部分だけの三PPMの制限なのか、その辺のところが私はあいまいなような気がしますので、その点どうなのか、ひとつ明確に教えていただきたいと思うわけです。
  213. 浦田純一

    ○浦田説明員 魚介類の規制値であります〇・五PPMあるいは三PPMの具体的な解釈のしかたでございますが、これは答申の中にはっきりと「可食部」というふうに書いてあるわけであります。可食部について測定するということであります。そういたしますと、たとえばマグロのように、さしみなどで食べるといったような場合には、当然内臓、骨が除かれる。ところが、頭のまま食べるような小魚、イカナゴとか白魚とか、いろいろそういったものがあると思いますが、こういったものは頭のまま食べるということでございますので、この場合はまるごとでございます。要は人体の中に、実際に食べものとして入るそのものが問題でございますので、このような表現になっているのでございます。
  214. 後藤俊男

    ○後藤委員 これは一つの例でございますけれども、いまも局長が言われましたように、小さい頭からまるごと食べる魚は、これは可食部分であるとかないとか、区別ができないと思うのです。琵琶湖あたりで申しますと、小アユが非常に多いわけです。あれのあめだきというのですか、あれはかなり多量に販売されておるわけなんです。これらが三PPM以上であるということになりますと、製造販売はもう停止になると私は思う。行政指導はそうなると思うのです。そうなってまいりますと、それで商売をしておられる人々に対する影響というのは、まことに大きいものが出てくると思う。そういうふうになった場合に、どういうふうに行政指導をなさるのか。その点が非常に重要な問題だと私は思うのです。いわゆる漁業関係の人々の生活にも影響を及ぼす大きい問題だと思うわけであります。  それを、三PPM以上であるから、もう販売してはだめだぞ、ただそれだけでは業者は納得してくれないと思うのです。行政指導として、こうしてこうしてこういうふうにやっていくのだ、それらの問題に関する補償についてはこうするのだというところまで十分話をしなければ、いかに行政指導をしてみましても、やはり自分の命が大事でございますから、なかなか指導はしかねる、私はこう思うわけなんです。これは小アユだけの話ではございませんけれども、特に私は、琵琶湖の関係に非常に多うございますから、三PPM以上になった場合には一体どうなるのだということについて御説明をいただきたいと思います。
  215. 浦田純一

    ○浦田説明員 結局、漁業者、ことにそういった汚染魚を破棄しろとか、汚染魚からつくだ煮などいろいろなものをつくっておられる業者に、製造を中止しろとかいったような、行政勧告でございますが、それに伴ういわば補償と申しますか、広い意味での補償といったようなことに相なると思いますが、私どもは、生産者に最も近いところで、ひとつできるだけ流通段階に入る以前のところでチェックするということに相つとめるように、水産庁その他と話し合っているわけでございますが、万一汚染魚が発見された場合、それについてどのような救済措置、手段をとるかということにつきましては、水産庁のほうにお願いしてございます。水産庁としては、この問題については、かなり正面から受けとめて、いろいろと考えていくというふうに私どものほうに話しているところでございます。  なお、全般的な対策といたしましては、環境庁がまとめ役になりまして、PCB対策連絡協議会というところで、これらの問題を含めまして、いろいろ具体的な策について各省庁相寄って政府としての統一的な対策を進めるということに相なっておる次第でございます。
  216. 後藤俊男

    ○後藤委員 関係の各省庁が寄りまして十分相談をしてやっていくのだ、そのことはよくわかるのですが、それなら一体国が補償をするのかしないのか。たとえば内海面における漁業組合等が、この暫定基準が出た、そして三PPMによりまして、かなり大きな影響を受ける。いままで長いこと漁師をやっておったけれども、漁師がやれなくなってしまうというようなことになった場合に、当然これは国が補償すべき問題ではないかというふうな気がするわけなんです。その点もはっきりしない限りにおきましては、いかに行政指導でどうこう言いましても、やはり自分の暮らしを立てていかなければならないものですから、容易にその行政指導が効果をあらわすということは、私はなかなかむずかしいような気がするわけなんです。  ですから、先ほど局長が言われましたように、先月の十四日でございますか答申が出ました。その答申の内容の暫定基準に基づいて、漁業組合関係なり漁師の皆さんの生活に大きく影響する。影響はするけれども、人体に及ぼす公害問題でございますから、そのほうが優先すると私は思うのです。ではそうなった場合に、そのことによって暮らしておりました漁師の人は一体これからどうして暮らしていくのだ、これを明確にきっちりしない限りにおきましては、いかに行政指導、行政指導と言いましても、それに携わっておる業者の人なり関係の人々というのは、納得しないと思うのです。その点が、国が補償するのだ、補償のしかたその他につきましては、各省庁が相談をしてこれからきめていくのだ、国が補償することは間違いないのだ、こういうふうに考えていいかどうかです。その点をできればひとつ明確にお答えいただきたいと思うわけです。
  217. 浦田純一

    ○浦田説明員 生産地並びに生産者に対する対策は、これは水産庁のほうで検討いたしております。詳細につきましては、水産庁のほうからお聞き取り願いたいと思います。
  218. 後藤俊男

    ○後藤委員 局長さん、水産庁と言われましたけれども、先ほどあなたが言われましたのは、関係各省が寄って、寄り寄り相談をしてやっていくのだと言われましたものですから、私はあなたに聞いておるわけなんです。そんなことは水産庁まかせで、おら全然知らぬのだということでは、行政指導も私できないと思うのです。  こういう点、厚生大臣いかがでしょうか。たとえばいままで漁師をやっておりまして、それで生活しておった人が、三PPMが出たものですから全然やれなくなってしまう。そうなると、それで食っておったところの関係の人はどういうふうになっていくのだ、おらの将来一体どうなるのだ、これらに対しては、国がやはり補償する立場に立って行政指導をやるということなら、私は相談のできぬ話ではないと思いますけれども、これ以上はひっかかるからもうやっちゃだめだぞ、販売してはだめだぞといっておいて、そのままやりっぱなしておいたのでは、これはものごとは半分も達成しないと私は思うのです。あとの問題につきましては、国が全部補償するのだ。いま具体的にどう補償するかはわからぬけれども関係各省が寄っていま相談しておる。国が補償することには間違いないのだということなら、まだまだ一カ月くらいしかたっていませんから、さもあろうという気もするのですが、その辺いかがです。
  219. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまの御質問、まことにごもっともと思うわけであります。  やはり、お話しのとおり、私どもは、このPCBが人体に汚染を及ぼすということをまず第一義的に考えて、これを防止するということで行政をやっていかなければならぬと思うわけでありまして、いやしくも人体に危害を与えるというような魚類の出回りというものは、これはどうしても防止しなければならぬと思っております。ただいまお話しのとおり、そういった場合において、これを生産しておる漁民の方々がそのために非常な打撃を受ける、そういうふうな場合に、そういう打撃に対する政府の施策なくして、はたしてそういったような魚類の出回りを防ぐことができるかどうかということについての御心配だと思うわけでありまして、もちろんこの問題につきましては、直接にこれらの漁民の方々の生活にタッチして、その行政を担当しておるのは水産庁でございまするが、私どもも重大な関心を持っておるわけでございまして、ぜひともこういったような思い切った規制の措置をするという反面におきまして、そうした生産者の被害につきましては、これは国としても当然考えなくてはならぬというようなことで、先ほど局長から申し上げましたとおり、PCB対策連絡協議会におきましても、こういった点については、いままで協議をしておったところでございまして、そういった点につきまして、水産庁としてもそれぞれ対策を用意しておると思うのでございまして、私も水産庁がそういう仕事を、そういうふうな施策をしていただけるものと期待をしておるわけでございます。
  220. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまも大臣言われましたのですが、この暫定基準を出しておるというのが、その責任というのはやはり厚生省だと思うのですね、食品関係のPCBにつきまして。それに基づいて行政指導でこれからやっていくということになりますと、やはりあとの補償問題、そのことがからんでくると思うのです。ですから担当としては、水産庁になるかもわかりませんけれども、やはり国民の厚生関係考えておられる、担当しておられる厚生省としましても、暫定基準を出して、それに基づいて行政指導をされる以上は、影響を受ける国民に対しましては十分相談をして、国の補償の方向で進めていくのだ、そういうふうな考え方でやはり進めていただかないと、何べんも繰り返すようですけれども、きまったけれども実行に移らぬ、行政指導がうまくいかぬようなものに従っておられるか、命がなくなるわい、ということにもなりかねないような気がするわけなのです。  ですから、いま大臣が言われましたように、水産庁でいま検討はいたしておりますけれども、厚生省としても当然国が補償すべきである、そういう立場に立って今後も進めていくのだ、そういうふうにいま大臣言われましたというふうに申し上げていいわけでございましょう。いかがですか。
  221. 浦田純一

    ○浦田説明員 まず事実関係を若干簡単に御報告いたします。  水産庁はこの汚染魚について、まず第一に、どうも特定の水域というものがあるのではないか。つまり特定の工場、その周辺部が特に汚染がひどいという事実があるようでございます。それをまず明確にいたしたい。その上で加害者が特定する——加害者といいますか、汚染者か特定する場合には、それに対する求償という問題を検討いたしたい。その他特定の汚染源を推定できない、特定できない場合がございます。それらについては財政援助といいますか、あるいはその他の措置を講じていくといったようなことを前提としていま調査を進めておるといったようなことでございます。
  222. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま局長が言われましたことは、簡潔に言えばこういうことなのですか。  暫定基準にひっかかるどころか、それを調査をすれば地域がはっきりする。その地域がはっきりしておるということは、その地域に何か公害源があるはずなのだ、ですから、その分については、公害源に対して補償の問題を十分やらせるのだ、いかに調査をしてみましても、その公害源というものがつかめない場合には国が補償をしていくのだ、そういう立場でいま水産庁は検討をしておる、そういうふうに解釈していいのですか。
  223. 浦田純一

    ○浦田説明員 厳密な補償ということばがこの際当てはまりますかどうか、この被害を受けた漁民の方の生活、なりわいが成り立っていくという方向で水産庁は救済措置考えていくというふうに考えております。
  224. 後藤俊男

    ○後藤委員 厚生大臣としては、いまの問題どういうふうにお考えでしょうか。
  225. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 内海魚につきましては、いままでの実績等から見まして、水産庁におきましても、大体どういう地域においてこういうふうな汚染のある、濃度の高い現象があるかということは、すでに把握をしておられるわけでして、これについて水産庁といたしましても、それぞれ今後さらに調査その他を進めて、そして汚染魚が出ないという対策をとるように努力しておると思います。  そういうような場合に、いまお話しのございましたように、廃棄しなければならぬような魚が現実に出てきた場合、その対策を一体どういうふうにとるかということにつきましては、これは非常に広範囲観点から結論を出さなければならぬと思います。  ただいま局長答弁申し上げましたとおり、明らかにPCBの排出先が確定をしておるというような場合におきましては、やはり私は、求償の責任というものもこの場合考えなければならぬと思いますし、またそうでなくて、一般的に原因不明だというような事情等があれば、そういう問題とはまた別個に、その状況に応じまして、具体的に妥当な補償の結論を出さなければならぬと思いますし、もちろんその点につきましては、漁民の生活や万般の問題をあわせて考慮してやらなければならぬと思いますし、またその対策につきましても、いろいろの多様な方策があろうかと思いますので、こういうふうな点につきましては、もちろん所管の水産庁において十分検討善処していただきたいと思いますし、われわれ厚生省といたしましても、やはりPCBの汚染を防止する、これはもちろん第一義の問題でございますが、それに伴って自分の責任でない原因から漁民が不幸な状況になるということは、これはわれわれとしても、国としても当然看過できない問題だと思いますので、十分に省庁連絡をして、妥当な方策を立てたいと思っております。
  226. 後藤俊男

    ○後藤委員 そこで、もう一つお尋ねしたいのですが、これは局長のほうになるのだと思うのですが、PCB関係で米の規制の問題魚介類には暫定基準が答申の中に出ておりますが、ところがお米につきましては、基準がいまないわけなんです。  そこで、御承知だろうと思いますけれども、具体的の問題として滋賀県の草津の日本コンデンサの排水の流域は、お米が凍結されておるままなんです。倉庫に入ったままなんです。ですから、そこの農村の皆さんは、これから一体どうなるのだろうか、自分のつくった米は倉庫の中に入ってしまっておる。たんぼはたんぼで減反に充当するような形でお米がつくれなくなってしまっておる。ですから、日本コンデンサと補償問題で団体交渉をしようと思えば、厚生省の基準が出ましたら、ひとつ話に乗りましょう、厚生省の基準が出ない限りにおきましては、まだ相談するわけにはまいらないというようなことで、そこでお米をつくっておられるお百姓さんの皆さんは、一体国は何を考えておってくれるのだろうか、魚介類だけの暫定基準を出して、なぜ一体米の基準を出さないのかというようなことで、滋賀県からも公式に、たしか五月四日だと思いますけれども、米に対するPCBの基準を出せ、これは強い要望書が来ておるはずなんです。  ところが、最近私聞きましたところ、全国的な問題ではない、あるいは資料が十分でない、その基準をつくる必要にいま迫られておらない、つくるにいたしましても、来年の六月ころでしょう、こういうようなことを言っておられるそうです、厚生省として。そんなことされましたら、その沿線の百姓の皆さんは、つくった米はもう凍結そのままだし、たんぼは全然つくれないし、補償の話は一切進まぬし、こういう現実を見てもらうならば、厚生省として当然米に対するPCBの基準を一刻も早く出すべきじゃないか。それをいいこと幸いにして、会社側のほうは基準が出たら補償の問題をやりましょうということで延び延びになってきておるわけなんです。聞けば来年六月までどうこうというような話があるそうですけれども、なぜ一体米に対するPCBの基準はきまらないのか、答申の中になかったから、きまらないんだと言われれば、そうかもわかりませんけれども、それでは厚生省として私通らぬと思うのです。この点どういうふうにお考えでしょうか。
  227. 浦田純一

    ○浦田説明員 今回答申のありましたPCBのいわゆる暫定規制値の考え方は、これ以上環境におけるPCBの汚染を進めるわけにはいかぬ、最後の関門である食品というものに規制値を設けることによって、人体へのこれ以上の汚染を防ぐ。これによって将来起こるかもしれないところの障害を未然に防ぐことが主眼でございます。あくまでも健康を守るということが主眼でございます。したがいまして、いままでの資料を集められるだけ集めて、現段階における判断を示したということでございますが、何ぶんにもPCBに関する諸種のデータはまだ不足な点が多いわけでございます。しかし、一方では非常に緊急の問題でもあるということで、日本人のPCB摂取に最も大きな部分を占めております魚介類の規制値をつくるのを最大眼目としたわけでございます。魚介類からとるPCBの量は、日本人の場合には全体の九〇%以上を占めているといったような状況でございます。したがいまして、魚介類について、まず何といっても一番先にきめなくてはならぬということでございます。  米につきましては、今回の規制値においては、米とその他穀類あるいは野菜類等から入るであろうPCBの量を余裕を十分に見てきめておりますので、一応今回の暫定規制値でもって、さしあたり健康上の問題は安全確保できるというふうに考えておりますが、米、穀類その他につきましては、おっしゃるとおりに実は資料も乏しい、また時間的余裕もなかったということで、今回の答申には含まれておりませんが、私どもはさらに今回の規制値だけでなくて、これから資料の整い次第、必要なものに対しましては、規制値を今後も設けていきたいということで、実は昨日もPCB特別部会のほうにその旨お願いしてあるわけでございます。このような状況から、今回は米あるいは穀類についての規制値はつくらなかったのでございます。
  228. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われました米の問題については、大阪であるとか滋賀県であるとか岡山であるとか、やはり関連しておる公害地があるわけなんです。資料がなかったからどうのこうのと言われますけれども、少なくとも厚生省でいま入手しておるところの資料に基づくならば、これは常識的に規制問題については、暫定的にはなるでありましょうけれども、何かお米に対する規制も私できると思うのです。それができないばかりに、先ほど言いましたように、農村の皆さんにしたって、いつ一体どうしてくれるのだろうかというようなことで、被害を受けておりますのは、その公害地のたんぼを持っておるところのお百姓なんです。魚介類だけは出たけれども、米がない。補償の問題も全然会社が相手にならない。米も全然つくらしてくれない。つくった米は倉庫にほうり込まれておる。これを厚生省は黙って見ておられますか。こういうことになっておることは、私は考えるべき問題だと思うのです。  ところが厚生省あたりに聞きますと、全国的な問題でないとか、いや資料が少ないとか、そんな高いところにとまっておる問題じゃないと私は思うのです。これは現実の問題として非常に深刻な問題に進んでおるわけなんです。県だってお手あげなんです、厚生省が規制を出さないものですから。なぜ一体厚生省が、暫定にしても基準を出さないのだ。これは県の公害課あたりも非常に憤激しておるわけなんです。ですから局長にお尋ねしたいのは、米に対する基準の問題については、先ほども言われましたように、きのう部会でやられたそうでございますけれども、一体いつこれを出す予定でおられるのか。先ほど言いましたように、来年の六月とか七月とか言っておられたのじゃ、公害による公害がまたふえてくるわけなんです。この点いかがですか。
  229. 浦田純一

    ○浦田説明員 PCBの暫定規制値、これは実はあくまで人体の健康を守るということがたてまえでございます。したがいまして、補償という問題とは実は直接には結びつかない問題であると思います。しかしながら現に起こっている滋賀県のこういった事例というものについて、これはどのような判断をするかということは、また別の点があろうかと思います。  現在のところ、私どもは滋賀県の場合の汚染米の状況につきまして、精白した場合に非常にその汚染が落ちるということもわかっておりまして、米全般のPCB汚染という問題をどのようにとらえるかということについては、これは私は主食であるだけに慎重に考えるべき問題だと思っております。しかし、現在その規制値を設けるかどうか、設けるとすればどのようなものになるべきかということにつきまして、PCB特別部会にその検討をお願いしているわけでございますが、できるだけ早い機会にこの辺についての御見解を回答していただくようにお願いし、私ども努力してまいりたいと考えております。
  230. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われた人体を守る、それはあなたのおっしゃるとおりなんです。それはそれでいいと思うのです。そのために一方で人を泣かしておいていいかということを私は言っておるわけなんです。PCBの規制が出たということは、やはり人体を守るという立場に立つ、それはもうはっきりしております。そのために、一方ではお米の規制が出ておらぬものですから、農村の皆さんは何にもない。補償の話もできなければ、米がどうなるのか、米も凍結したまま、このままお正月が過ぎれば来年の六月まで持ち越していくということになりますと、及ぼす影響というのはものすごく大きいわけなんです。  それなら食品衛生の魚介類のときに、なぜ一緒にお米も出さないのだ、それはあなたが言われるように慎重にやるべきだ、それは最も慎重にやってもらわなければいけません、主食ですから。なぜ一体魚介類だけ先にやって、お米を切り離して、こういうようなことをやるかということが私にはわからぬわけなんです。PCBの暫定基準を出すときに、魚介類と一緒に出せばいいじゃないか。一緒に諮問すればよかったのです、答申は一緒に来るのですから。それを資料がないとか、なんとかこうとか言われてどんどん先に延ばされていく。泣かされるのは百姓なんです。だからできるだけ早く何とかしましょうというようなあいまいな回答では私はわかりませんが、大体いつごろ出す、いつごろを目標に努力をする、それくらいのことはひとつ言ってほしいわけなんです。
  231. 浦田純一

    ○浦田説明員 米の規制値の問題ですが、これはいままでの乏しい資料ではございますけれども、全国的に見た場合には、米の汚染はほとんど心配しなくてもいいというレベルでございます。しかしながら、いやしくも一地区でそういったような問題があるということで、これについてどのような判断を下すかということは私どもやはり厚生省の責任であると思っております。現在一・三PPMないし〇・五PPMの汚染米が滋賀県の草津地区でとれておる。それが現に倉庫に眠っておるということも十分承知しております。これにつきまして私どもは一体食品に、たとえば精白にした場合、あるいは米としてたいた場合、どのような濃度になるかということについても、いま追及してある程度のデータは持っておるわけでございます。その結果からいきますと、ほとんど人体にいまのところ影響を与えるといったような濃度ではないというふうに考えております。  しかしながら私どもは米という問題につきまして、やはり日本人の主食でもございますし、規制値が必要ではなかろうかということでもって、いまPCB特別部会に特に検討をお願いしているわけでございます。今回の会合では、今後の作業スケジュールというものの打ち合わせがなされました。いま何月何日までにその回答をいただくというふうに明確にお答えできませんけれども、できるだけ早い機会に、重要な問題でございますので御回答を願うように私どもはお願いしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  232. 後藤俊男

    ○後藤委員 ああいうところで、部分的に問題になっておるところは、別個にこれは処置されるおつもりなんですか。
  233. 浦田純一

    ○浦田説明員 その点は十分検討してまいりたいと考えております。
  234. 後藤俊男

    ○後藤委員 それからPCBの米の問題につきましては、いまそう言われましたけれども、とにかく早急に考えていただく。さらにまた大阪なり、岡山なり、滋賀県等では部分的に問題になっておるところでございますから、こういう部分的で問題になっておるところにつきましては、早急に解決するように厚生省としては行政指導の面でひとつやってもらう。これだけはぜひひとつ約束してもらいたいわけなんです。
  235. 浦田純一

    ○浦田説明員 PCB汚染米の人体への健康の問題ということも含めまして、環境庁と共同でいまの問題について、検討してまいりたいと考えております。
  236. 後藤俊男

    ○後藤委員 もう時間がございませんので、一緒にものを言いますけれども、フェノールの大気汚染の問題、これも厚生省としては十分御存じだと思うのです。この大気汚染に基づいて米がやはり何百トンと凍結をされておるわけなんです。これもやはり大気汚染の問題で規制とかそういうものは一切ないわけなんです。ですから、いま倉庫に入ったままでどうなるものやらこうなるものやらわからぬというような情勢にもなっておるわけなんです。これは彦根の新神戸電機のあの工場の関係なんですけれども、このフェノールの問題につきましては一体どうなっておるのか、これが一つと、それからさらにアンチモンの問題なんです。  これは三年くらい前からこのアンチモンの公害につきましては会社と地元の関係で紛争を起こしておる問題なんです。この問題につきましても、厚生省としてもその情勢というのは握っておられると思うのです。新聞にも載っておりますから。三、四年前からのこれは問題なんですから。こういう問題を厚生省として行政指導の面でこうあるべきじゃないかというものをはっきりしない限りにおいては、住民とそこの会社との関係の問題県との関係がどうもうまくいかぬわけなんです。中心になって、こうならこうだという規制なら規制を出すことをしませんから。この問題について厚生省としてどういうふうにお考えでしょうか。
  237. 浦田純一

    ○浦田説明員 フェノールによる米の汚染についてお答え申し上げます。  これは調査いたしました結果、当該地域から取りました白米から〇・七〇PPMのフェノールが検出されておるという事実がございます。このために汚染の疑いをかけられました米約二百五十トン余りが出荷停止になりました。これに対する食品衛生上の見解でございますが、これはなかなか軽々に申し上げるわけにいかないと思いますけれども、従来のフェノールの体内における経緯等、生理学的なあるいは病理学的な経緯等、いままでのデータから察しまするに、これは非常に分解しやすいものでございまして、体内への蓄積ということは考えなくてよろしいかと思います。しかしながら非常に濃度の濃いものこれを多量にとった場合には、いろいろと急性の障害を起こすということも、これも事実でございます。したがいまして現在の濃度が一体どの程度のものであるか、どういうふうにこれを考えたらいいかということでございますが、一般的に言った場合には、これは心配は要らないのじゃないかというふうに考えます。しかし全般的な問題でございますので、さらに食品中の許容基準の設定という御設問につきましては、私どもは専門家の意見も聞いて検討してまいりたいと考えております。  なお、アンチモンにつきましては、環境庁のほうからお答えいたします。
  238. 山本宜正

    山本説明員 米原町の日比野金属によるアンチモンの環境汚染の問題でございますが、私どもも昨年から、県からいままでの事情を伺いまして、特に住民検診を行なっておられたわけでございますが、地域の住民とも私参りまして話し合いをいたしました。今年度におきましては、工場の周辺二町、四部落につきまして約一千七百八十九名の検診を県によって計画をさせました。専門の先生の医員をもってこの判定をしていこう、こういうことでございます。  七月の下旬から八月の上旬にかけまして、いまの対象人員につきまして一斉検診をいたしました。現在二次検診にどのような方を拾い出して二次検診を行なうかということを県においてプランをしておりまして、私ども環境庁といたしましても、十分この健康調査につきましての指導もして、なるべく早い時期に住民の方が安心をしていただくような結論を出していきたい。なおかつ、工場の排水等の指導につきまして現在排出基準あるいは環境基準等ができておりませんが、この点につきましても十分な検討を進めてまいりたい、かような方針で考えておるわけでございます。
  239. 小沢辰男

    小沢委員長 後藤君、時間です。
  240. 後藤俊男

    ○後藤委員 もう終わりますが、いま言われました工場の排水基準についても、できておらぬわけなんです。ところが、これが問題になったのは三年も四年も前からなんです。いまごろになって、さらに検討して基準をどうこうというようなことを環境庁言うておっていいわけなんですか。地元では公害問題でたいへんになっておるわけなんです、三年も四年も長い間。いまあなたがおっしゃるように県は県でやっておるといたしましても、基準というのはやはり環境庁から出さぬわけにいかぬのでしょう。それを長い間やりっぱなしでおいて、さらに検討をして、これからやります。  だから私が言いますことは、公害問題につきまして、すべて何か先へ先へ延ばされておるような政策が行なわれておるような気がしてしようがないわけです。こうなってまいりますと、さっきのPCBの話じゃないのですけれども、百姓に言わせると、政府は会社のほうの味方をしておる、こういう言い方になってくるわけです。規制値が出ない限りは補償問題は進まぬ。その規制値を出さないように厚生省は次から次に延ばしておる、そういうふうにとられてもしようがないようなかっこうで、いままではやられてきておる。  いまのアンチモンだってそうですよ。環境庁はなぜもっと早く排出基準をつくらないのですか。いまになってどうこう言われておりましても、もう手おくれなんですよ。だから、そんなことを言っておりましてもしようがない問題で、早く解決しなければいけない問題でございますから、ぜひ先ほど言われたところの日比野金属のアンチモンの公害の問題、さらに彦根の汚染米の問題草津の汚染米の問題、PCBにフェノールにアンチモン、これだけが地域的にいま大きい問題になっておりますから、厚生省なり環境庁によって、早急に解決できる方向へ全力を尽くしてもらうということにお願いしたいと思うわけです。大臣、どうでしょう。
  241. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまの御意見の線に沿って努力をいたしたいと思います。
  242. 後藤俊男

    ○後藤委員 おそくなって済みませんでした。
  243. 小沢辰男

    小沢委員長 次に、田邊誠君。
  244. 田邊誠

    ○田邊委員 時間を節約をいたしますので前提は申し上げませんし、また答弁のほうもまくらことばは要りませんから、簡単にお答えをいただきたいと思います。  環境破壊を防止したいということは国民的な声になっておりますが、その中の一つである廃棄物の処理をどうやるかということは現代的に大きな課題でありまして、さきに廃棄物の処理及び清掃に関する法律を制定をいたしましたし、また通常国会では廃棄物処理施設整備緊急措置法が制定をされました。それによって、それぞれ行政施策を行なっているわけですが、特にきょう問題にしますのは産業廃棄物についてでありますが、この産業廃棄物は、現在一体どんな状態でしょうか、ひとつ総体の数字をお教えいただきたい。  一緒に聞きます。第二番目に、処理の状態は一体どんなぐあいになっていましょうか。  それから第三番目に、これに要するところの費用というのは一体どんなものでありましょうか。
  245. 浦田純一

    ○浦田説明員 その後調べましたところでは、昭和四十六年度末の推計でございますが、全体といたしまして一日量約百九十五万トンでございます。この中で、ほとんど大部分は建設用の廃材でございます。五一%余りでございます。それから次に大きいのが廃酸、廃アルカリでございまして、これが二八・六%を占めております。次に大きいのが汚泥あるいは家畜ふん尿、都市系の汚泥等で一五・一%でございます。あと順次金属くず、ガラスくず、鉱津などのいわゆる無機性のもの、これが締めて二・三%、それから廃プラスチック、ゴム等が一・四%、紙くず、木くず等が一・六%といったようなことになっております。  その処理の状況でございますが、大部分を占めております建設廃材につきましては、これは主として埋め立て処分ということになるわけでございます。残りの廃酸、廃アルカリあるいは汚泥、家畜ふん尿等が処理を要するわけでございますが、これらにつきまして、実はつまびらかな資料がございませんが、大体六〇%程度が企業内でもって処理されておりまして、あとが多少つまびらかでございません。  それから、全国的に今度、産業廃棄物の処理計画を知事が立てるということで、いま調査をしておりますが、それらにつきましても、二十六都府県につきましての一応の報告がございますが、まだ全体的に集計・分析するというところまでは至っておりません。
  246. 田邊誠

    ○田邊委員 通産省のほうは一体、廃棄物の現状については、いまの厚生省の見方と大体同じですか。
  247. 松村克之

    ○松村説明員 私どものほうでも、ちょっと資料が古うございますが、昭和四十四年の産業廃棄物の処理状況について調査をしたものがございます。ただし、私ども調査は、これは通産省関係の所管物資だけでございますので、建設廃材といったような、いま厚生省のほうから御説明のありましたものについては調査はいたしておりません。通産省関係の所管物資だけの調査でございますが、それで見ますと、昭和四十四年の総排出量が、年間に約五千八百四十七万トンというふうに出ております。それで、昭和五十年の予想といたしましては、これが約一億一千万トンという予想がなされております。  以上でございます。
  248. 田邊誠

    ○田邊委員 この廃棄物の排出の現状についてはいろいろな説があったりしまして、極端にいいますと、これではまだ何分の一かというふうな見方もありまするし、はっきりした集計はないのじゃないかと思うのですね。大阪だけで一日に十万トンか十五万トンぐらいじゃないかという話がありますけれども、これも確かではない。私、自分の県にもいろいろ聞いてみましたけれども、なかなかはっきりしたことは出ていない。こういうことで、この現状把握がまずもって急務じゃないかと思うのですね。これをお願いいたしたいと思います。  それから、いま言った埋め立てをしなければならぬもの、あるいはいろいろな破壊をしなければならぬもの、あるいは焼却をしなければならぬもの、あるいは海洋に投棄しなければならぬもの、いろいろありましょうけれども、現状、非常に不十分である、野積みになっているということが非常にいわれておるわけですけれども、これに対して一体どういうような指導を、いままで政府はしていたのでしょうか。これは通産なら通産の側でもいいですが、特にわれわれが公害国会以来、この廃棄物処理法等を制定してきた趣旨からいって、これを一体その後具体的にどういうような形で指導してきたのでしょうか。もし何か指導をされてきたような文書なりというものがありましたら、あとでお届けいただいてけっこうですが、ひとつ要点を御説明いただきたいと思います。
  249. 浦田純一

    ○浦田説明員 産業廃棄物の処理につきましては、四十五年度のいわゆる公害国会法律上、いわゆる事業者の責務ということを明確にしたわけで、これで一応法律上の基礎は固まったわけでございますが、その後、これに基づきまして、私どもはまず何と申しましても、この法律の中にもう一つ都道府県知事の産業廃棄物の処理計画をつくれという義務がございますので、まずこれが先決と考えますので、各都道府県に通知いたしまして、それぞれの当該地域の産業廃棄物の実態の調査を命じ、それに基づいての計画の樹立ということについて勧奨したところでございます。  その結果、いま十数県につきましては調査がすでに完了いたしまして、先ほど申し上げました数字も、ある程度これから推定したものでございます。また残りの十県ほどが調査を現在続行中ということでございまして、はなはだこの時点においておくれておるという実情でございまして申しわけないのでございますが、しかしながら京阪神あるいは京浜地区におきまして、また名古屋地区におきましては、これらの調査に基づいて都府県が実際に産業廃棄物の、ことに中小企業を対象とする産業廃棄物の処理施設、処理事業を開始し、もしくは開始しようとしておるというところでございます。  それからなお、大企業あるいは特定の企業につきましては、通産省側に特にお願いいたしまして、企業内での処理を完成するためのいろいろな事業というものをしていただくようにいたしております。その一つの例といたしましては、プラスチックがございます。廃プラスチック類の処理につきましては、これは後ほど通産省のほうから御報告があると思いますが、かなり具体的に処理事業が行なわれております。  なお、一般産業廃棄物の処理業者の状況でございますが、これは遺憾ながら、産業廃棄物の処理事業というものが非常に多額の投資を要する、あるいは技術的に困難である、あるいは先行性を特に要求されるといったようなこともございまして、全般的、最終処分まで行なうといったような処理業者が実はいまのところは非常に少のうございます。それでも八月一日現在で許可済みの業者が百五十四業者というふうになっております。  なお、産業廃棄物の処理に関しまして、私どもは全国の保健所をネットワークとして環境衛生指導員によって、これらの指導監督を行なっておるところでございます。
  250. 松村克之

    ○松村説明員 通産省でこれまでやってまいりました対策といたしまして、大きく分けまして業種別の対策と、それから地域別の対策、それからあと研究開発という三つに分けてよろしいかと思うのでありますが、業種別対策といたしましては、いま厚生省のほうからお話がございました廃プラスチック対策、これにつきましては廃プラスティック処理促進協会というものを設立いたしまして、これは財団法人でございますが、ここで産業系の廃プラスチックの自己処理体制あるいは有効利用のための技術開発、こういったことをプラントをつくりまして、実施中あるいは技術開発中でございます。それからプラスチックの処理施設の改善と申しますか、これは研究開発のほうになりますが、工業技術院の繊維高分子材料研究所のほうで特別研究といたしまして、処分しやすいプラスチックの製造ということについて研究いたしております。  またそのほか、今度はたとえば廃油対策といたしまして、ガソリンスタンドの廃油等の処理有効利用ということで全国的に各地域で検討しているわけでございますけれども、現在のところ、それの具体的に計画の進んでいる地域といたしましては、神戸等が最も進んでいるというような状況でございます。  それから鉄鉱の鉱津の有効利用といったようなことも現在考えております。  また地域対策といたしましては、岡山県の水島について廃棄物の有効利用に関する調査を、昨年とことしと通産省で行なったわけでございますが、その結果を用いまして、岡山県のほうで廃棄物の有効利用のための公社と申しますか、そういう事業体の計画を具体的に進めている段階でございます。  また技術開発としては、一番大きな問題は、やはり廃棄物を出さないような生産プロセスの技術の開発ということが最も有効といいますか、基本的な問題でございますので、それについては四十七年度に約三億七千万円の予算で、いわゆるクローズドシステムの研究開発ということをいたしております。  そのほかにプラスチックであるとか、あるいはスラッジ、間接脱硫から出てくるアスファルトの分解とか、工業技術院のほうでは廃棄物関係の研究もいたしておるような状態でございます。
  251. 田邊誠

    ○田邊委員 ちょっとそれをいろいろ全部聞きたいのですけれども、いいでしょう、あとでまたお聞きします。  そこで、いま言ったように、なかなか現状把握もまだままならない。それからいろいろな研究開発も緒についたところである。これもまだプラスチック等の一部分についてですから、全般的にはまだとてもそこまでいってない。  こういう状態でありますが、そこで私は、この段階をまず一応承知をするわけで、つい最近厚生大臣、官民共同の特殊会社を新設するという構想を明らかにいたしました。私はこの廃棄物について、国なり地方自治体が果たすべき役割りは当然あると思います。しかし、すべて産業廃棄物について国が責任をしょい込むというようなやり方は、当然私はPPPからいっても、これは当てはまらないと思うのです。避けなければならぬというよりも、当てはまらない。ですから、いまのところまだ、おととしの十二月の廃旗物処理法の制定の際に、われわれは特に処理困難なものについては、できるだけ処理を容易にするようにつとめなければならぬという政府の原案だったものを、議会の中でこれを変えて、これは企業責任において処理しなければならない、また終末処理ができるようなぐあいにしなければならぬと義務づけたわけです。これは私はPP原則からいっても、国会のとった措置は当然だろうと思うのです。それが現在まだ実は各企業間において浸透してない。とてもまだそこまで一般の意識からいっても、体制からいっても進んでない。そういう状態の中で国が出資をして、そしてまた財投を持ち、あるいは社債の発行を政府保証でやりながら特殊会社をつくることについて、私は一面、考え方によっては、これは廃棄物処理を促進するという役割りはあると思うけれども、一面において企業責任を回避させる、これをいわば軽視する、こういうような傾向におちいったとしたら、事は重大だと思うのです。かなり企業は、これに対するところの体制を整えて、なるほど一生懸命やっている——いま通産省も言われたけれども、いろいろ厚生省なり通産省も指導している。それに基づいて、かなりこれに対して研究を——みずからも研究するだろうし、みずからの手で施設をつくるだろうし、あるいは共同でもっていろいろなことを考えてするというような形、そういう中でこのことを考えられたのならまだいいと思いますけれども、いまの時期においてそういうことをやるのは、はたして適当か、これについてかなりこまかく順を追って質問したかったのですけれども、それはやめておきます。  当面政府がやるべきことは、やはり何といっても技術開発である。第二には、施設の建設用地の確保、第三には、埋め立て等があるとすれば、この埋め立て処分をするところの用地の確保、それに、どうしても一企業等でできないかもしれない、またいろいろな、いわば世界的な海洋の確保という面からいってできないところの海洋投棄等についての措置、こういう形の中で政府がやられる、あるいは指導するという、このことであれば当然のことだろうと思います。  もう一つは、これはあなたのほうで答弁があるかもしれないけれども、やはり何といっても、中小零細企業に対してなかなかそれはできぬじゃないか。われわれも実は国会の附帯決議の際にも、中小企業については、企業責任は当然だけれども、国もひとつ積極的に何か考えなければならぬだろう、こういうことは言ったのですけれども、これと混同して、いま緒につかんとする段階の中で国がこういう考え方を出すことについては、そのプラス面と同時に、というよりも、またいわゆる企業責任という面から、大きな問題を実は投げかけるのじゃないかというように思っておるわけなんです。  せっかくの構想を出された大臣としては、それらのことをどうお考えの上に立って、廃棄物処理に対して誤りのない今後の展望を開かんとするのかということについて、ひとつこの際、基本的な考え方をお聞きしておきたいというのが質問の第一の趣旨でございます。いかがでございますか。
  252. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま御指摘の点等、これが、やはり私どもその点を考えまして、この際、産業廃棄物の処理につきましては、国もその責任の一半を持たなければならぬというような結論になった原因でもあるわけでございます。私どもは、基本的にいって、企業の廃棄物の処理責任というものをこの際改めるとか、あるいはこれを回避させるというような気持ちは、これは毛頭ないわけであります。ただ、現在の日本の現状から見まして、この廃棄物の処理という問題は非常に大きな問題になっておると私は思うわけであります。  ただいま厚生省並びに通産省からお話がございましたが、必ずしも数量が的確なお話がなかったわけでございますが、少なくとも工場周辺に野積みにされておる、あるいは今後数年間たったら、いまのままの状況でいって、私どもが担当しておる環境について、りっぱな環境が保たれるかどうか、私は非常な危殆に瀕しておると思うのでございます。また、先ほどお話がございました用地の確保の問題にいたしましても、海洋の投棄等考えてみましても、なるほど超大企業でも、ほとんどなすことができぬじゃないか、なかなか用地の確保は困難であり、海洋投棄ということもなかなか困難である。私は、これはいろいろな企業の廃棄物を効率的にまとめて処理するということも考えなくてはならないだろうと思いますし、あるいはまた最終処理場の用地の取得にいたしましても、いまの日本の現状からいたしまして、相当強大な力をもってこの先行取得もやっていかなければ、なかなか不可能ではないかというようなこと、あるいはまた人工の島を一つつくり上げるにいたしましても、これは単なる一個の企業ではできないのではないかというふうな、非常に大きな問題をいま含んでおると思うわけでございまして、したがって、この産業廃棄物の問題を解決をする、われわれのりっぱな環境をつくり上げるという立場から見ましても、この産業廃旗物の処理を行なうという場合におきましては、これが一体企業責任ということだけで国が放置していいかどうかということは、私は大問題だと思うわけでございまして、決して企業責任を回避させたり、あるいはPPPの原則をどうかという問題でなくて、とりあえず環境整備をし、そして産業の廃棄物につきましては、これの処理の見通しをつけるということは、私は国家の重大責任じゃないかということを感じたわけでございます。  したがって、これに対して何らかひとつ方法を講じなくちゃならぬということで考え出しましたのが、いまのお話しの法人組織であるわけでございまして、ただ、この問題につきましては、ただいま御指摘のとおり非常に多くの問題を含んでおるわけでございます。あるいはPPPの原則、あるいはただいま御指摘の企業責任の問題こういうような問題に抵触のないように、またこういう問題との調整をはかっていくことはもちろんでございますが、それになおかつ、これを特殊法人として企業側の協力も得なくちゃならぬというようなことでございますので、企業側との十分な連絡あるいは関係省庁との連絡、その他いろいろの問題を含んでおるわけでありますし、また実際の事業計画を行なうにあたりましても、さしあたり一体どういう地域にどういう事業を行なっていくか、あるいは先行取得にいたしましても、どういうふうな先行取得をするのか、あるいは海洋投棄にいたしましても、どういうふうな船をどういうふうにつくっていくかというようなこと等、問題は多々かかえておるわけでございます。  しかしながら私どもといたしましては、やはりこの問題に積極的に取り組んでいかなくちゃならないということで、やるということの前提のもとに、こういった問題につきまして、それぞれの方面の御了解もいただき、また御支援もいただき、そしてこの計画を進めていきたいと思っておるわけでございまして、決して企業の責任を引き取るというような気持ちはないわけでございます。私は、場合によれば、この会社が一応採算のベースに乗り、りっぱにやっていける見通しができれば、国としてももちろんその時点においては手を引いてもいいと考えておるのでありまして、ただ、この産業廃棄物の行政を現状のままで置いておいていいかどうかということにつきましては、このままでいけないということを痛感をいたしておるわけでございます。したがって、それの対策の一つとして、この問題を推進して、この問題の解決に資したい、こういうつもりで、一応とにかく予算の編成期も間近になりましたので、これをやるという前提のもとに概算要求にも出しておるような次第でございます。  ただ、まことに申しわけないわけでございますが、いまお話しのございましたような諸点につきましては、各方面との協議あるいはコンセンサス等いろいろなものを得まして、一つ一つの問題を具体的に解決して、この産業廃棄物の処理、少なくとも国家の責任をこの場合に尽くすということで努力したいと思っておる次第でございます。
  253. 田邊誠

    ○田邊委員 大臣、私はあなたの言っておることについて全然わからなぬではない、かなりその趣旨に賛同するところもあります。ただ、国家の責任を負わなければならぬという話は当然のことでしょうけれども、それは負い方があると思うのです。  もう一つは、この現状のままではいかぬから何とかしなければならぬというのは、だれしも考えるところですね。しかし、それには前提があると思うのです。   〔委員長退席、向山委員長代理着席〕  一体それじゃ国は、この産業廃棄物を排出するところの企業に対してどれだけの強力な指導をしたのか。私は、その言い方はちょっと適当でないかもしれないけれども、この問題に対して一体企業をどれだけ痛めつけているのか。これは通産省もおるし、厚生省もおりますけれども、私は実はそれをつまびらかに聞きたかったのですが、きょうは省きますけれども、これはまだ手ぬるいですよ。一体野積みにしておる現在あるものに対して、それが処理できるものであっても、甘ったれているような企業はありませんか。そういうものに対して、ほんとうに国が断固としてこれをやるべきだといって企業責任を企業者に負わせるような、そういう指導をしておりますか。私は手ぬるいと思うのですよ。だからこそ私は危険があると思う。せっかく、大臣、いわば国の責任を負いたいという気持ち、この考え方、これが裏目に出たり逆目に出たりして、企業はもっともっとやらなければならぬことをさぼりはしないかというおそれを私は痛感するのです。  これはあなたのほうの役所でもって設立の案を出されておりますけれども、この中にも非常に気がかりな文句があるのです。事業者の資金を活用することはもちろんであるけれども、しかし国や地方公共団体も出資をはかるべきであると書いてある。これは一見何か普通のようなことに見えるけれども原則は、当然、出資民間でもって企業者がやるべきなんです。しかしてその足らざるところについて、また国が全体的に見て、それはやらなければならぬと思う分について、国も、国民の立場からいって、国家の立場からいって、それは負いましょう、こういうふうになるべきなんであって、安易にこういう文句を使われることは、何といっても、いまの現状の中では企業に対して寄りかかる気持ちを与える、こういう危険性をはらんでいるのじゃないかと思うのです。  これは精神訓話みたいですけれども、そうじゃないのです。現にいままでたどってきた過程を見れば、そういう危険がありありとあると私は思う。こういうふうに思うから、したがって、もしこの構想というものを是としてやられるとするならば、それに並行して、いままでのような手ぬるい行政指導でなくて、各企業に対して断固たる、やるべきことについては、やり得るものについては、それをやらせる、こういう行政指導が、やはり前提として、あるいはまた並行して行なわれなければ、新聞等についても、かなり批判的な論調もあるわけなんです。これは国民が心配しているわけですから、PPPあるいは企業者責任というものに対して、この際、国がそれに対して明確にする、こういうことをやってもらいたいということですが、端的でいいですから、どうでしょう、私の意見と同じでございますか。
  254. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 この法人の計画は、法律に明確に規定された企業責任をいささかも免除するものではないわけでございます。したがって、ただいまの御趣旨で、こういう事業をやると同時に、むしろ私は企業がその責任を感じて、自分の尽くすべき企業の責任というものは、かえって逆に厳重に尽くしてもらいたい。この点が、企業の責任を免除するという意味に理解されると全く趣旨が違うわけでございまして、要するにいまのままでいって能力の不足であるとか、あるいは共同に処理したほうが便利であるとかいうような観点から、われわれはこれを推進しておるわけでありまして、企業に対して、法律規定した責任を免除する気持ちは毛頭ないわけでありまして、これまで積極的にやれば——さらに一そう厳重な自己責任を全うするために努力をするように指導いたしたいと思います。
  255. 田邊誠

    ○田邊委員 その強力な指導の中身についても、いろいろお聞きをしたいのですが省きまするけれども、こういう構想が出ますると、それに対してどうしても寄りかかるということを私が言ったのは、最近、東京、大阪、京都などの大都市をかかえる十都道府県の議長会が、産業廃棄物の処理問題について、一番困難な埋め立て用地の確保も、広域処理体制の確立のために公団方式はどうかというようなことをいって、これを政府に要望するということがいわれておるのですね。  これはもちろん一つの方法でしょう。方法でしょうけれども、それらがどうも寄ってたかって、いま申し上げたような危険が方向に、何か国だけが最終的に寄りかかられて、それに対しては確かに国民の立場からやらなければならぬことだしするから、いやおうなしにやらせるというかっこうで、それ以外のところがだんだんとぼやけてくるというようなことにならぬかと私は思うのです。この公団方式についても、どうお考えですか。
  256. 浦田純一

    ○浦田説明員 公団方式につきましては、私どもむしろ、この特殊会社の構想と比較した場合に、先生のお説の汚染者負担の原則というものから見た場合に、よりやはり公共の性格あるいは国の性格といったものが強くにじみ出るものではないかといったことで、それよりも特殊会社構想のほうが、これは純然たる民間でございますから、よろしいのではないかというふうに考えております。
  257. 田邊誠

    ○田邊委員 そういうようないろいろな意見もありましょう。それらも勘案し、私の大前提というものをどうやって確立をするかということに対して、やはり具体的な提示をひとつ私はお願いをして、それからこれが将来にわたって、国がその処理を全部まかされるような形ではなくて、あくまでも民間のベ−スで事が主体的に運ばれるような条件というものをつくってやるということを主体にして考えていただきたいと思うのであります。  きょう中身について実はお聞きをしたかったのですけれども、やめておきます。  最後に、ちょっとこれは資料で提出をしていただくということでお願いしておきます。  例のごみ屎尿等の四カ年計画について、実はいろいろとこの前の国会で論議をいたしましたが、最近自治体の直営という原則が守られていないというような気がするのです。企業の下請化等が進んでいるというように聞いているのですが、どうでしょう。これをひとつ、一年前はこうだったけれども、いまはこうなった……。  それから無料化、したがって、その地域住民に対する料金低廉化というのはやってもらいたいという国会の希望があるわけですけれども、これは一体たとえば一年前に比べてどうなっているか、その傾向ですね。  第三番目は、地方自治体の処理というものが円滑に行なわれるような体制にあるのかどうか。  その第一は、人員を十分確保しているかどうか。たとえば下請に出したりしておるけれども、なかなか人が足らない。したがって人員を逆に地方自治体が貸しておるというようなことがいわれております。そのことはほんとうにありますか。とすれば、一体これはどういう根拠で行なわれているのか。私は好ましくない傾向じゃないかと思いまするけれども、これはどうです。  それから、ごみの施設等について一体どういうように進んでおりましょうか。特に廃プラスチック等の問題もありまするから、技術開発等も含めて焼却炉等の新しい開発あるいは建設がどういうように進んでいるのか。  ごみの運搬等について、ロードパッカー車等の購入がかなりおくれている。したがって、そのために過度の労働等がしいられているということを聞くわけですけれども、これが一体どういうふうに進んでいるかということ。大体半々ぐらいだというふうに私はこの前の資料をいただいたときには思ったのですけれども、これは一体現状どうなっているか。  それから、労働条件、これはちょっと労働省のほうにもお聞きしておきますけれども、労働密度の問題、賃金等の問題労働時間の問題これが一体どうなっているか。  それから、かなり固疾等を含めた職業病等があると思います。私、前橋市の状態をこの間ちょっと見ましたら、七十二名のうち、ヘルニア患者が十二名、コルセットをはめている者が四名いる、こういうことを実は聞いてきたのでありまするけれども、こういうことについて一体どういうふうになっているか、したがって、特殊健康診断を含めてどういうふうになっているか。  それから安全衛生要綱というのがあるけれども、これはこの前の約束でありまして、局長通達でありましたけれども、これを省令等に昇格するというような話があったけれども、これが進んでいるかどうか。その他いまの安全衛生要綱等が厳格に守られているか。守られていないですよ。現在、ヘルメットもかぶっていないやつが、うしろにぽっと飛び乗って次のところにすっと行っておりますね。片手でもって乗っているという形を見受けますけれども、こういう状態は非常にあぶない状態でありますし、それからまた施設についても、そこに乾燥場とかふろ場とか洗い場とかいろいろなものが設けられているか、こういう状態が一体どんなぐあいに進められているかというようなことも含めて、この要綱が一体厳格に守られているのかどうか。それをそういった省令等に昇格をして、なおこれをやらせる、そういう御予定があるかどうかということについてお聞きをいたしたいのでありますけれども、もう時間がありません。私があまり時間を過ごしても申しわけありませんから、ひとつ資料でもってお届けをいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  258. 浦田純一

    ○浦田説明員 資料をできるだけ集めまして、まとめて提出したいと思います。
  259. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 労働省関係につきましても、できるだけ資料を整えましてお届けいたします。
  260. 田邊誠

    ○田邊委員 それではせっかく御返事をいただきましたので、これで終わります。
  261. 向山一人

    ○向山委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  262. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、老人に関する問題を若干お尋ねしたいと思います。  御承知のように九月の十五日は敬老の日でございます。いわゆる老人週間を目前に控えまして、実は非常に気にかかる新聞記事を見た次第であります。これはこのまま黙って見過ごしていくわけにはいかないという感じを持ちましたので、この委員会の場で取り上げてみたいと思うのですが、これは九月九日土曜日の朝日新聞なんです。「移民の老後に冷たい故国 調査費用、政府出さずブラジル側が負担」という大きな見出しで出ているものでございますが、大臣はこの新聞をごらんになったでしょうか。  簡単に中身を要約しますと、南米のサンパウロの日系福祉関係者の強い希望、要請を受けまして、厚生省の老人福祉専門官の森幹郎さんがサンパウロへ出かけていくということでございますが、その際の旅費、航空運賃の片道代を日本政府のほうで見てくれないかということが先方から要請されたわけでございますが、外務省も厚生省も、その要望にはこたえられないという、いわば冷たい処理をしているということなんです。この記事の中に、受け入れ側のサンパウロ日伯援護協会というのがありまして、その協会の財政状況というものは決して豊かなものではない。現地の日系の篤志家からいろいろ寄付等を仰いでやっと運営している状態にある。したがって、日本の外務省への渡航あっせん依頼状の中に、滞在費と片道運賃はわれわれのほうで持ちますけれども、片道分だけは母国政府で何とか負担してほしい、こういう旨の依頼状がサンパウロの総領事に届けられているはずでございますが、大臣は御承知でしょうか。  また、これは外務省の方も来ていらっしゃると思いますけれども、そのほうにもお尋ねしたいと思います。
  263. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 まことに残念でございますが、私承知しておりません。
  264. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 お答えいたします。  本件は、本年の四月、先ほど申されましたサンパウロの日伯援護協会から厚生省の森さんをよこしてもらいたい。問題は、ブラジルもずいぶん移民の歴史が古いものですから、一世も相当の年になりまして、二世、三世との間にことばのギャップその他がありまして、老後の問題について将来不安を感じておる、そういうことにつきまして専門家である森さんにいろいろお話を聞きたい、こういう要望であったわけであります。  それで、サンパウロから本省に参りましたのは、森さんがおいでになるのであれば、滞在費と帰りの旅費は負担するから、往路の旅費は日本側で負担してくれないか、こういう要望でございました。そこで外務省といたしましては、厚生省にこの問題を移しまして、厚生省で検討していただいたわけでありますが、ただ厚生省の内部でこういうものに必要な旅費が予算に計上されてないというような事情もございまして、直ちに返事が出せないような状態でいろいろ苦慮しておったわけでありますけれども、現地の協会のほうでは早く来てもらいたいということで、上たびたびの催促がありましたので、とりあえずの中間報告としまして、金がなくて、ちょっといま検討中である、こういうことを言ってやりましたら、それを受けました協会が、それならば、もう自分のほうで金を全部持つからすぐに来てもらいたい、こういう返事がありました。そこで、それじゃ参ろう、こういうことになった次第であります。
  265. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私がただいまお尋ねいたしましたのは、この新聞記事に出ているような片道だけは何とか日本政府で持っていただきたい、こういう要請文が領事館に届いたでしょう。それは認めましたですね。そして外務省は厚生省の関係者にその旨を話したということなんですが、大臣は全然知らなかったなんて言っておりますけれども、そういうことじゃよくないですね。それじゃ連絡不十分ですよ。  これは非常に大事な問題だと思います。片道の旅費は、新聞の記事の内容によりますと二十五万円程度なんですね。その程度のお金を外務省も出さなければ厚生省も出さないというのは、これはいまから現地に行っていろいろと調査や視察をなさる森さんの心境に立ってみて、私は非常に冷たい仕打ちではないか、こう思うのですが、この点についてどうお考えになりますか。
  266. 加藤威二

    ○加藤説明員 この問題につきましては、確かに先生御指摘のように、外務省のほうから社会局長あてに森専門官を派遣してもらいたいという要請がことしの六月二日でございますか、ございました。  で、問題は、この新聞記事につきましても若干正確を欠いている点があると思います。たとえば見出しといたしまして「調査費用、政府出さず」という見出しでございますが、確かに国の公務員として国の命令でいろいろな調査をするということであれば、これは当然出張命令ということで、その出張に要する費用は国が負担するということは当然でございますけれども、これはいろいろいきさつがございまして、実は向こうの団体のほうから、森専門官というのは非常に老人問題について詳しい、ブラジルでもいろいろ老人問題が非常に問題になってきているので、主として講演をしてもらいたいという講師としての招聘でございます。そうなりますと、政府の仕事というよりも、むしろ森専門官個人に対してその学識経験というものを買って、それをブラジルの老人たちに話してもらいたいという講演の依頼ということでございますので、そうなりますと——しかも団体のほうで費用は持つ、ただいま領事部長のほうから話がありましたように、若干のいきさつはありましたけれども、最終的には全部向こうが費用を持ってもいいから来てもらいたい、こういうことで、それならけっこうではないか、こういうことになったわけでございまして、必ずしも冷たいという気持ちではなかったわけでございます。
  267. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私も質問するからには、いろいろと事情を私なりに調べてみたわけですね。こういう新聞記事に出る出ないは別としまして、現地ブラジルのほうから、移民された方々で老境に入られているお年寄りが非常に苦しいという状況が、私信の姿でどんどん連絡されているわけですね。したがいまして、形式は確かにあなたがおっしゃるように、講師招聘という立場をとっているでしょう。講演ないしは指導というものが表面的な問題であろうけれども、やはり現地の皆さんの真のねらいといいますかお願いというものは、早くこっちへ来て実情を知ってください、そして助けてください、これではなかろうかと思うのです。ただ国の国策に従って移民した皆さんが、あまりだっこにおんぶというような感じでは申しわけないということでこういう形式をとられたのだと私は思うわけですよ。そういうことからいきますと、厚生省の皆さんも実態は大体は御承知と思うのですよ。あくまでも形式にとらわれて云々なさるので、冷たい処置ではないと言われるけれども、現実問題はそういうふうに見られざるを得ない結果になっていると思うわけですね。  ですから、これは私思うのです。形式はともあれ、実態はかなり現地で困っていらっしゃるお年寄りがずいぶん多いということも聞いておりますので、そういう状態を視察し、それに応じて救済措置をとる、救済対策をとるという、そういう仕事も含めて出すのだという立場で、旅費くらいは支給してあげるべきだと私は思うのです。これは局長さんに聞いたって無理だと思うのですが、大臣どうですか。
  268. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 私は心情的にはいまの御意見のとおりだと思うわけでございますが、ブラジルの老人たちに対して日本国民として御同情申し上げ、お手伝いするのは当然かと思うのでございますが、直接的には、これが厚生省の所管であるかどうかということにつきましては若干問題があろうかと思うわけでありまして、これはやはり日本人全体として外務省なり、あるいは向こうもそういう民間機関がお世話をしておりますし、日本の民間機関になり国全体として、これに対処するようなそういう体制で基本的にはいくべきではないかと思うわけであります。  たまたま森専門官ですか、具体的に、厚生省の人の御指名があったわけでありますけれども、そのいきさつにつきましては、六月ということでございまして、私もまだ就任しておりませんで、そのときの事情は承知をしなかったわけでありまするが、そういうふうなことであれば、それぞれの各機関が協議してきめなくてはならぬと思います。おそらく予算関係とかいろいろなことで心ない結果になったとは思いまするが、こういったような外国におる老人対策等につきましては、やはりいろいろな機関が相談をして、それぞれ対策を立てるべき筋合いではないかと思います。
  269. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの答弁の中に、厚生省が所管するかどうか、ちょっと考えものだなんというような意味のことをおっしゃいましたが、やはりお年寄りの困った問題が現実にブラジルでは起こっているわけです。お年寄りは厚生省の所管じゃないですか。救済の立場からいけば厚生省ですよ。そういうことをおっしゃるから、私は冷たいとこう申し上げるわけです。  いずれにいたしましても、御承知のとおり、かつて国策に乗って南米へ移住された方々が、当時は働き盛りであったとしてみても現在は先ほど申し上げますように老境に入っているわけです。そうして成功話もしばしば聞かれるわけでありますけれども、その反面老後のためのたくわえもなく、あるいは社会保障制度の対象にもならないで、日系の老人ホームもあるにはあるけれども、数が非常に少なくて入れない。あるいは帰国を希望する老人がいたとしても、旅費の負担能力や、あるいは日本での身元引き受け人といいますか、そういう問題が障害になりまして、なかなか思うようにいっていない、こういうのが私は実情ではなかろうかと思うのです。  したがいまして、これは目をばっちり開いてもらって、かつては移民というよりも棄民と言われたほどのいわば犠牲者ですよ。その方々が現在はお年寄りになって、なおかつ泣くような状態に置かれているのが数多くあるのですから、やはり厚生大臣、立ち上がってもらわなければ困ると思うのです。  そこで外務省にお尋ねしますが、日本から移民された方で、まだ日本の国籍でいる方々はいまどの程度いるのか、これをまず説明してください。
  270. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ブラジルについて申し上げますと、昭和四十五年十月に国勢調査を行ないましたが、そのときのブラジルにおる日本の国籍を持っておる者の数は約十四万五千人、そのうち六十歳以上の老人は約三万五千、このように考えられております。
  271. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの外務省の答弁のとおり、十四万五千人のうち六十歳以上は三万五千現在いるというわけですね。さて、そういう方々がどういう状態でいるのかというのは、これからの問題になっているわけです。いろいろ私信的に来ている情報では、いま言ったような状態で、かなり苦しい立場に置かれているお年寄りはたくさんいるということです。  そこで私は思うには、たとえば総領事の任務の中には、移民した人たちの安全とか保護、あるいはそういうものが当然その任務の中に含まれていると思うのです。したがいまして、外務省のそういう連絡とともに、厚生省もその気になって、やはり視察あるいは調査というような中身を含めた派遣にしてあげるべきである、すべきである、こう思うわけでございますが、その点はどうでしょう。
  272. 加藤威二

    ○加藤説明員 老人問題につきましては厚生省が一番詳しいわけでございますけれども、しかし、それは国内の老人の問題ということでございまして、やはり在外の日本国民につきましては、これは老人であろうと何であろうと、そういう人たちが困っているということに対する救済というのは、これは外務省が所管する、こういうたてまえになっております。  ただ老人問題については先生御指摘のとおり、厚生省が一番検討もいたしておりますし、一番関心も持っております。そういうことで、今後やはりブラジルの老人問題というものは、日本より以上に非常に深刻な問題があろうと思います。日本の老人より以上に孤独感を味わっておるというような話も聞いております。そういうことで、やはり第一線は外務省でございますけれども、私どもも、まあ森専門官が今度参りましたときに十分見てもらいまして、その報告に基づいて外務省とも相談をいたしまして、実質的には外務省がいろいろな補助金等を持っておりますので、そういう点でわれわれも外務省と連絡を緊密にいたしまして、われわれの意見も外務省に述べて、ブラジルの日本人の老人ができるだけみじめな思いをしないようにということを、日本の国として外務省とか厚生省のワクにとらわれず、これはできるだけ努力いたしたいと思います。
  273. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 外務省はどうですか。
  274. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 海外におります老人も、いまの問題は先ほども指摘のありましたように、われわれとしては移住対策の一環として考えなければいかぬ、このように考えております。しかしながら海外の老人も、たとえば精神的に老後に不安を感じておる方、あるいは物質的に困っている方、こういうふうに概略二つに分けるわけでありますが、たとえば精神的に困っている方、これはもちろん現地にいろいろな日本の団体もございますし、それから移住事業団の支部もございますし、そういう方々が、精神的な支持を与えるということが可能かと思います。  しかしながら物質的の問題につきましては、これはやはり金がかかることでもございますから、何らかの措置を講じなければならない。ただ御承知のように日本ではなくて外国のことでございますから、日本と全く同じようにというふうにはいかないと思いますけれども、われわれとして現在とっております措置は、まずそういう困った方がありますれば、それらの人がほんとうは、ブラジルには各種の日本人のつくった援護団体、さっき申し上げましたサンパウロの日伯援護協会もその一つでありまして、これは現地の日本人が自発的につくった団体でありますが、こういう団体が、そういう申し出によりまして生活費なり医療費なりを援助する。国としましては、やはりこういう団体の好意だけにはたよっておられませんから、一国はこういう団体にかかったものを補助するというような仕組みに、保護謝金というものを一項予算に講じております。  しかしながら、こういう生活援助を与えますことも長い期間にわたることはできませんので、もしそれが非常に長い期間である、もう向こうで暮らしていくのに一人では暮らせないというような方には通称国援法と申しておりますが、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律、これに基づきまして、そういう方に帰国の旅費を貸し付ける、あるいは場合によっては日本の船に命じまして、日本までこういう人を輸送する、こういうこともしておるわけでございます。もちろんその場合に、日本におります身寄りがありませんと困るわけでありまして、どこに引き受け人があるかということも調べますが、しかしそれもないというような場合は、厚生省等にお願いしまして、国内の老人ホームに収容するというような方法によって、最終的には日本へ帰っていただいて、日本で老後を迎える、こういうような措置が現在では講じられております。
  275. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大体話はわかりました。いま厚生省の局長さんが言っておりましたように、お年寄りの援護等は厚生省が専門である。しかし外国に出ておる日本人の皆さんについては、これは外務省が直接の担当なものだからという話がありましたね。外務省の皆さんの仕事はきわめて重要なものだと私は思う。特にいまブラジルの具体的な問題ですね。いまお話がありましたように、今後森専門官が現地に参りまして、専門的にこれはこうだ、あれはああだということがはっきりしてくるでしょう。いまおっしゃるような姿で、帰国してもらったらいいという方々もたくさん出てくるかと思います。いますぐに帰国するための旅費を貸し付けるという話もありましたけれども、これも非常に問題だと思うのですね。はたして貸し付けられた金を返せるめどがあるかないかといえば、ほとんどないと思うんですね。そういうことも再検討してもらわなければならないと思うわけです。  先ほども申し上げましたように、ブラジル移民の方は国策に乗って、むしろ棄民といわれたような犠牲者であるわけです。その人たちを最終的に助けるためには貸し付けなどというのではなくて、特別立法かなんかをやりまして措置を講ずべきである。同時に厚生省は、いまのような状態がいろいろと明らかになってきますと、これは本国に帰す以外にない、帰したほうがいいということになれば、当然老人ホーム等に収容することになってくるであろうと思いますが、そういう事柄がはっきりした際、積極的な援助措置、救済措置を講じられる意思があるかないか、それを大臣にお尋ねしたいと思います。
  276. 加藤威二

    ○加藤説明員 いまの御指摘のように、たとえばブラジルから老人が引き揚げてこられるというような場合には、もちろん身寄り等があれば別でございますけれども、そうでなければ、そういったブラジルで暮らされた引き揚げの御老人につきましては、最優先的に既存の老人ホーム等に収容するという措置を講じたいと思います。
  277. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、よろしいですね、いまの局長答弁大臣の意思も同じですね。  それから外務省にお尋ねしますが、先ほど帰国の旅費については貸し付けるとおっしゃいましたけれども、もし返済能力がないと認められる者については全然対象外にするのか、それともかりに能力がなしとしても、実情に応じては貸し付ける、何らかの特別措置によって支給して返すように努力なさるのかどうか、その点どうでしょうか。
  278. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 法律のたてまえは貸し付けではございますが、もともと非常に困ってお帰りになるのでございますから、たてまえは貸し付けでございますけれども、この回収につきましては実情に応じまして無理なことはしない、こういうふうにしかるべく考慮を払っております。
  279. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それじゃ要するに返済能力がかりにないと見られる人も、必ずその状態に応じて帰国させる方向努力をする、こう認識してよろしいですね。——それでは時間もだいぶ迫りましたので、ブラジルの問題は以上で打ち切ります。外務省の方、お帰りになってけっこうです。  養護老人ホームというのがありますが、当然特養に収容されるべき状態の老人が、養護老人ホームに実は全入所者の一割ないし二割程度いらっしゃるという実情を御承知でしょうか。
  280. 加藤威二

    ○加藤説明員 事実そのとおりでございます。
  281. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 そこで私が現実に養護老人ホームを訪れまして、その実態を見たときに非常に不合理だと思うことは、特養ホームに入った人と、それから養護老人ホームに入った人は、当然生活費だとか事務費の単価が違いますね。同時に国や県、市の補助率も違っております。私がいま言いたいことは、養護老人ホームであろうとも、特養に入るような状態にいるお年寄りについては、その方についてはやはり特養並みに扱うべきではないか、措置すべきではないか、このような考えを持っているわけでございますが、いかがでございましょうか。
  282. 加藤威二

    ○加藤説明員 確かに御指摘のように、特別養護老人ホームに入るべき老人が相当数養護老人ホームに入っているという実態がございます。それについての事務費その他のアンバランスについては、先生御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては筋道といたしましては、やはり特別養護老人ホームと養護老人ホームというのは、それぞれ性格の違いがございますので、それぞれその施設にふさわしい老人を収容するというのが一番理想でございます。そういうことで現在先生も御承知のとおり、私どもといたしましては鋭意老人対策の一環として、特に寝たきりの特別養護老人ホームの急速な増設ということに、いま全力をあげておるところでございます。そういうことで、できるだけこの特別養護老人ホームを増設いたしまして、現在養護老人ホームに入っておられるそういう寝たきり老人の方々につきましては、できるだけ特養のほうに移っていただく、そういうふうに措置をいたしたいと思います。  ただ、それは一挙に、直ちにはできませんので、それに対しましては、特に養護老人ホームに入っておられる寝たきり老人につきましては、病弱者加算というのを月額二千九百円、それから保健衛生費、これを千五百円、そういうものを他の寝たきり以外の老人とは区別いたしまして、そういう予算を特別につけている。それから、これは要求でございますけれども、来年度は生活費の特別加算ということで、約千九百円の要求をする予定にいたしております。これでも十分ということではございませんけれども、寝たきり老人が養護老人ホームに入るという変則的なものを、ある程度カバーするという形で、以上のような予算をつけておるところでございますが、要はできるだけすみやかに特別養護老人ホームの増設をはかって、現在の養護老人ホームの寝たきり老人をそちらに移していく、そういう方向努力いたしたいと思います。
  283. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 局長がおっしゃるとおりだと思うのです。これの解消は、特養の施設を早急に拡充、充足していくべきであるということだと思うのですね。ところが、現状はいまおっしゃるとおりですよ。現状は、特養に直接入れたいと思っても満員なんです。福祉事務所のほうから養護老人ホームのほうに入れてくれませんかという依頼がくれば、りっぱな方々ばかりですから何とかいたしましょうということで、あいていれば引き受けているわけですね。そういうことでずっと数がふえているわけです。したがいまして、いわゆる深夜にわたってめんどうを見なければならぬのです。おしめを取りかえたり、何かしたり、かにかしたりということで、いろいろと想像以上のあれがあるわけですね。保母さんの定員等についても、一方は五対一、こちらは十五対一というようなアンバランスがあるわけですから、そういう点から見ても、何としても特養の施設を早急にふやしてもらいたい。と同時に、それが実現するまでのつなぎとしまして、ただいまおっしゃったような病弱者加算ですか、あるいは保健衛生特別加算とか生活特別加算ですか、そういう点で多少のカバーはなさっているようでございますけれども、先ほど言いました事務費だとかあるいは生活費の特養と養護ホームの違いは、その程度の違いではない。ぐっと開きがあるわけですね。ですから、相当の措置は講じていらっしゃるようだけれども、確かに、あなたがおっしゃるように不十分でございますので、一日も早く特養を増設して、これを解消していただきたいと思います。  それから次にお尋ねしたいことは、社会福祉法人の施設等で働いている職員の方々に対する福利厚生を拡充強化していただきたい。これは公の立場で、公務員という立場で働いていらっしゃる方々のそれと比べると、非常に劣悪でございます。本俸のほうは大体もう近づいてきたと思いますけれども、いわゆる福利厚生、年金だとか退職金だとか、あるいは身分の保障等がないわけですね。したがいまして、お年寄りのために働いてあげましょうという気持ちで一生懸命働いてはいるものの、将来の自分の立場考えるときに不安が生じて、早くやめていかなければならぬような状態になっていくということですね。せっかくお年寄りとの間に人間関係ができて、お年寄りの癖だとか、そのほか性質もつかんだ職員の皆さんがよそへ移っていく、そうなればこれは非常に問題だと思うわけです。  したがいまして、こうした民間あるいは社会福祉法人等の立場で働いていらっしゃる職員の処遇改善といいますか、そういうものについて福利厚生の面でどのようなお考えを持っていらっしゃるか、ここで答えていただきたいと思います。
  284. 加藤威二

    ○加藤説明員 確かに先生御指摘のとおり、私どももいま、先ほど申し上げましたように、特別養護老人ホームを中心といたしまして、社会福祉施設の緊急整備をはかろうといたしておりますが、将来の一番大きな問題点は、やはりそこに働く従業員の方々の確保の問題、これが私は一番大きな問題になるであろうと思います。そういうことで、そういった社会福祉施設に働く職員の方々の処遇改善、先生御指摘のような福利厚生施設関係を含めまして、可能な限りそういった御苦労に報いるような措置をすべきであるということで、先生も御指摘になりましたように、少なくとも給与の面につきましては、本年度、先生方の非常な御鞭撻にもよりまして相当の引き上げがなされたということがいえると思います。  今後は、そういう給与の引き上げにつきましても努力いたしますと同時に、たとえば退職手当金の共済制度というものがございますが、これは現在、昭和四十六年度は二段階でございますが、四十七年度は四段階に格上げいたしました。基礎になる金額は、四十六年度は二万一千円と二万九千円の二段階であったわけでございますが、四十七年度は二万三千円から三万七千円まで四段階つくったということでございます。四十八年度は、さらに飛躍的にこれを十段階まで引き上げるということで最高十万円まで。こういたしますと、国家公務員の退職手当と大体似てくる。予算要求としては相当大幅な要求でございますが、そういう対策を講じたいというぐあいに考えております。  それからまた住宅の問題、そういう問題につきましても、これは職員の住宅の確保ということで、施設整備の五カ年計画の一環として、職員の住宅の整備に努力をしてまいりたいと思います。そういったことで、こういう施設に働いていて非常に御苦労の多い職員の方々の福利厚生にできるだけ努力をしてまいりたいと思います。
  285. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間がございませんので、大臣にお尋ねします。  現在、社会福祉事業振興会というのがありまして、そこはもちろん、国の援助のもとに福祉事業費の貸し付けなどをやっているわけですね。その貸し付け要件というものを再検討してもらいたい。というのは、今日まではほとんど、定員増のための増築とか建築、それにはお金を貸しましょう。しかし、老人ホームの環境整備等に対しては、全くその対象にしてないわけですね。  この環境整備、もっと具体的にいいますと、老人ホームに入っていらっしゃる皆さんは、納骨堂や葬祭場を建ててくれないかというきわめて深刻な、そして真剣な要請があると思います。これは老人ホームに行ってお年寄りに会って聞かれるとわかるわけですが、実際それを建てつつある篤志家もいますけれども、そういうものについて、その貸し付けの相談に行ったら全然相手にされないわけですね。そういうものはいままでに前例がありませんということでけられておりますけれども、これはもう環境整備、そういうものを含めたものについても、やはり貸し付けのワクを広げるべきである、私はこう思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  286. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 老人問題につきましては、全般的にどうしてもこれを推進してまいらなければならない。私ども政府側におきましても、そういう強い決意を持っておるわけでございまして、ただいま中央社会福祉審議会におきましても、こういった老人の処遇につきまして意見をまとめておるところでございまするが、ただいまの先生の御意見を承りまして、そういった点につきまして十分の配慮をいたしたいと思います。
  287. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後に一言申し上げまするが、私は、これ以外に福祉年金の所得制限の撤廃の問題だとか、あるいは年金額の大幅引き上げの問題あるいは支給年齢の引き下げの問題等々いろいろとお尋ねしたかったわけでありますが、時間が参っておりますので、またの機会に譲ります。  次回の通常国会で公的年金の財政方式は、いま修正積み立て方式といわれておりますけれども、これを賦課方式に切りかえるような努力をなさるのかどうか、その一点だけお尋ねしまして終わりたいと思います。
  288. 横田陽吉

    ○横田説明員 ただいま御指摘の財政方式の問題につきましては、いろいろむずかしい問題がございますので、現在のところ、どのような方角にいくかという結論は出しておりません。   〔向山委員長代理退席、竹内委員長代理着席〕 それで、目下、御承知のように関係審議会におきまして、来年の年金の給付レベルなり何なりの問題をどのようにするかということを御審議中でございますので、その際の重要な御審議事項の一つになっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、審議会の御結論をいただきまして十分に検討いたし、方針を決定いたしたいと存じます。
  289. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では終わります。
  290. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 田畑君。
  291. 田畑金光

    ○田畑委員 年金積み立て金の金利の引き下げの問題についてお尋ねをしたいと思うのでございますが、九月一日からいまの年金積み立て金の金利を六分五厘から三厘引き下げて六分二厘にする、このようなことが大蔵省と厚生省の間で決着がついた、このようにいわれておりますが、三厘引き下げることによってどの程度年金財政面にマイナスになるのか、まずそれを一つ伺いたいと思います。
  292. 横田陽吉

    ○横田説明員 ただいま御指摘の問題でございますが、九月一日から新しく預託契約を結ぶ分につきまして三厘の引き下げでございますけれども、これも御承知だと存じますが、年金の積み立て金の預託はいずれも七年契約になっております。現在の資金運用部資金の預託金の中では一番期間の長い預託金になっておりますので、したがいまして、これからあと七年たちますと、預託金の全部につきまして三厘の引き下げということになりますが、当面はそういったことで新しい契約分についての三厘の引き下げでございますので、金額的には非常に少ない金額でございます。それで非常に正確な計算をいたしておるわけではございませんけれども、四十七年度の預託金利につきましては、三厘引き下げによりましておおむね十三億円程度の利子の目減りになる計算でございます。
  293. 田畑金光

    ○田畑委員 四十八年は……。
  294. 横田陽吉

    ○横田説明員 四十八年度につきましては、これまた保険料率をどのようにするかという問題等が入ってまいりますので、現在の料率で計算した場合にはおおむね六十億円程度ということでございます。
  295. 田畑金光

    ○田畑委員 金利の引き下げのかわりに、いろいろ還元融資のワクを広げるとか、あるいはまた新しい施策として個人の住宅貸し付け制度であるとか、あるいは大型保養地を建設するとか等々という交換条件のようでございますが、皆さんとしては今回の金利引き下げによって、とにかく四十七年度は十三億、四十八年度は六十億、こういわれておるわけでありますが、これはだんだんこれによる金利の目減りが大きくなっていくことは明らかであろう、このように思うわけです。ましてや料率が引き上げになったようなことを想定いたしますと、もっとこの目減り額というのはふえていくものだと考えるわけであります。  すでに国民年金審議会でも、あるいは社会保険審議会の厚生年金部会等も、この問題については慎重な配慮をするように申し入れがなされておるわけですね。しかも考えてみると、来年度は年金の再検討の時期である、財政再計算の時期である、こういうときにあたっておるわけです。年金財政の基盤の強化をはかっていくためには、できるだけ有利な運用ということは生命だ、こう思うのでございます。にもかかわらず今回引き下げ措置を受けざるを得なかった、大蔵省の要求に屈服せざるを得なかった理由は何にあるわけですか。
  296. 横田陽吉

    ○横田説明員 積み立て金の預託料率の問題は、実は年金サイドから申しますと、先生御指摘のように、できるだけ高い利息をかせぎまして、それを給付財源にしたい。そのとおりでございまして、私どもも可能な限りこの利率の水準の維持というものは、将来とも高水準に保ってまいりたいと努力いたしておるわけでございますが、御承知のように、最近のわが国の金融情勢が内外の経済動向からいたしまして、非常に低金利の時代になっておりまして、こういった背景のもとにおきまして年金の積み立て金だけが相当高い利回りでもって運用されるということは、実際問題として不可能に近い、そういうことになっておるわけでございます。したがいまして、私ども年金サイドからいたしますと、可能な限り高い利率という気持ちは全く失っておるわけではございませんけれども、超低金利時代におきまして、そういった金の回し方ができないという背景から、こういった利下げという問題を応諾せざるを得なかった、こういうことでございます。  ただそれにつきましては、将来にわたってこの目減り分その他について国の負担、一般会計からの積み足しをどうするかという問題がございまして、そういった観点が問題になってまいりますと、先ほど先生御指摘の、来年度は厚生年金につきましては一年繰り上げまして、また国民年金につきましては二年繰り上げまして財政の再計算をすることにいたしておりまして、その際に相当飛躍的な年金の改善をいたす予定にしております。  そういったことになってまいりますと、大幅に年金を改善いたすにつきましては、国庫負担のあり方等につきまして相当大きな改善を財政当局には要求いたすことになろうかと存じておりますが、そういった問題の一環として、これらの利息が下がることによっての目減り分の手当等も考慮していただきたいということで、今後とも継続して財政当局と十分な折衝をいたす所存でございます。
  297. 田畑金光

    ○田畑委員 局長のお話を聞いて、こういう超低金利の時代であるから、年金だけの金利を維持することは至難であった、不可能であった、こういうことですが、私はこの点大臣にお考えを承りたいのですが、年金積み立て金というのは、言うまでもなく被保険者や事業主から強制的に取り立てて積み立てた原資であるわけです。これは一般の銀行の預金というようなものとはおのずから性格が違っておるわけです。また資金運用部資金の原資というのは、郵便貯金であるとかあるいは国民年金、厚生年金の積み立て金である。資金運用部資金の中の三五%がこの年金積み立て金、それが原資になっておる。このようなことになっておるわけでありますが、私は、年金の積み立て金というものと、その他の任意の、自由意思に基づく預金というものとはおのずから性格が違っておるのじゃないのか。なるほど景気刺激政策からいって、また国際的な経済環境から見て、わが国がいま低金利政策によって国内の景気を刺激しなければならぬ、これも確かにそうだと思います。しかし、公定歩合を下げた、市中金利を下げる行政指導をした、そういう時代からして、たとえばこの間の国会で、郵便貯金について、郵便局の窓口の小口貸し出しをやるかわりに零細な郵便貯金の金利を代償として引き下げさした、こういうことですね。  私は、今日の企業の中で、銀行ほど暴利をむさぼっておるところはない、こう思うのです。五大銀行を見るならば、半期の純益だけでも百億だ、こういわれておる。銀行ほどもうかっておるところはない。表面金利と、歩積み両建てからくるところの実質金利から見るならば、これが銀行資本というものをますます太らしていく。われわれからいうと、許すことのできない銀行経営の実態、丸の内を歩いてみると大廈高楼すべてこれ銀行だ。銀行資本に奉仕するために郵便貯金の金利まで下げさしてしまった。貸し出し金利を下げるためには預金者の金利も下げなくちゃならぬ。そうして郵便貯金も同様だ。そのような一環として今度また年金積み立て金の金利も下げざるを得ないような状況ですね。これは私は納得がいかぬわけでございますが、このことによって受ける勤労者のマイナス要因、すなわち年金財政の、このことによって受けるマイナス要因、ほんとうにこれは財政資金で見るというような約束なり大蔵省との話し合いの上に立って、厚生省としては三分の金利引き下げを甘んじて受けられたのかどうか、この点をはっきりしてもらいたい、こう思うのです。  いまの局長答弁によると、来年は幸い財政の再計算期でもあるし、この機会にひとつ、年金財政の中には国の財政面の援助を大幅に取り入れたい、こういうようなお話がございましたが、私が明確にしていただきたいのは、今回の金利引き下げに基づく年金財政のマイナス要因というものは、確実に来年の財政再計算期を契機に国の負担、補助をもっと大幅にふやすという確約の上に立って、今回の金利引き下げを甘んじて受諾されたのかどうか、この点を厚生大臣からはっきりお答えを願っておきたい、こう思うのです。
  298. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 前段の、田畑議員のこの積み立て金の金利についてのお考え方につきましては、私も大体同感でございます。ところが、この年金積み立て金の金利の場合におきましては、一般の金利情勢のほかにもう一つ、やはり財投の貸し出し金利、すなわち貸し出しを受けるほうの金利の引き下げ、こういったような要望も相当に強いわけでございまして、三%の減はまた貸し出しの金利の減になる。しかも、その対象が多くの年金積み立て者の利益に反映するような面に対する相当の貸し出しもあるわけでございまして、そういった点も考慮しなければならぬと思うわけでございます。  さらに、積み立て金の金利引き下げによって生じた、従来そのままであれば原資として存在をした、そういう金について、一体どういうような補償があるか、こういうようなお話でございましたが、その点も、私どももいろいろと当時考えたわけでございまして、いずれにいたしましても、私どもは年金給付額の引き上げということをいま予定をしておるわけでございまして、もちろん審議会等の御意見等も出た上で確定的な案をつくりたいと思っておるわけでございますが、そういった際におきまして、今後あるいは保険金の増額なり、あるいは給付水準の引き上げなり、あるいは財政負担なり、こういったものを検討しなければならぬと思うわけでございまして、そういったような際に、この金利引き下げによる減少した原資というものにつきまして、やはりこういうふうな事実が存在をしておったということを、給付水準の引き上げ等の場合において、その引き上げの際の財政を検討する場合におきまして、こういう点について検討をしていただきたい。これは総体の計算の中におきまして、この事実をひとつ含んで検討願いたいということで、どうしろという、確約というお話がございましたが、確約ということは少し、そこまでいっておるわけでは、ございませんが、やはりこういった事実について、こういう事実が存在をしたということを前提にして、こういったような財政全体の検討をひとつお願いしたいということにつきましては、大蔵大臣とも私は話をしたような次第でございまして、そういったようなことで一般の金利趨勢なり、あるいは貸し出し金利の低下というような問題等もあり、また、先ほどお話がありました還元融資保険者の利益に還元をするといったような点もひとつ十分に考慮してもらいたいというような、いろいろな要素を考えまして、こういうふうな結論にいたした次第でございます。
  299. 田畑金光

    ○田畑委員 これは局長にお尋ねをするのですが、いまの年金財政ですね、国の負担というのはどの程度にのぼっておるわけですか。年金のいわゆる給付財政、財政の給付ですね。保険料の負担、それから国の負担、いわば修正積み立て方式、こういわれておるが、この修正積み立て方式の中の国の負担というのは、どの程度にのぼっておるわけですか。
  300. 横田陽吉

    ○横田説明員 私どものほうで所管いたしております厚生年金、国民年金について申しますと、厚生年金につきましては給付費の二割が国庫負担でございます。それから国民年金につきましては保険料の半額でございますから、給付費に直しますと、給付費の三分の一が国庫負担であるということになっております。
  301. 田畑金光

    ○田畑委員 そこで、来年大幅に年金の引き上げ措置を講ずる。大幅に引き上げ措置を講ずるということについては、現行平均にして大体ことしの三月現在で厚生年金については夫婦で一万六千円前後だ。新規の裁定とか既存の裁定を含めた平均はそんなものだと思います。  この間、私の質問に対し厚生大臣は、来年はこれを倍くらいの給付に引き上げたい、こういうお話ですね。さらにまた、最近日経連や労働団体との話し合いの中で、日経連、いわゆる経営者団体のほうでは、厚生年金等については、すみやかに公務員の共済組合に準じて四万七千円くらいには持っていくべきだ、このような主張をしておるわけですね。問題は、倍額に引き上げるにあたって、一体国の負担というのはどう考えておるのか。これまた保険料率の引き上げによって、被保険者や事業主の負担によって、この給付の引き上げをやっていこうとするのか。この際、修正積み立て方式とかあるいは賦課方式とかいろいろいわれておりますが、国の負担分を漸次引き上げていくような方式で年金の再検討を進めていくのかどうか。その一環として、今回のこの金利の目減り等については、国の負担の中で十分配慮してやっていこうというようなことなのかどうか。ことに私はその点をひとつ明確にしてもらいたいと思うのだが、「年金資金等の運用について」という大蔵省と厚生省との申し合わせ事項の中身を見ますと、目減りの問題等については国が配慮するというようなことは、どこにも載っておらぬ。どうなんですか、この点は。
  302. 横田陽吉

    ○横田説明員 お答えが前後さかさまになろうかと思いますが、先ほどの厚生、大蔵の申し合わせでございますが、その申し合わせば、還元融資のやり方につきまして、理財局長と私との間の覚え書きでございます。  それから目減りの問題等を含めまして、来年度相当大幅な年金制度の改正をいたします際の国庫負担のあり方を、十分に予算編成時において検討してもらうというふうな点につきましては、大臣同士の口頭の申し合わせでございます。したがいまして、一般会計面でどうするというのは、いま御指摘のその文章の文面には出てきておらないわけでございます。  それから来年度におきましての年金の大幅な改善でございますが、一番大きい問題は、何と申しましても、給付水準をどのように設定するかという問題でございまして、これは給付水準が、もしたとえば倍になったといたしますと、黙っておりましても、国庫負担の金額はその二割でございますから、それだけで倍になる、こういうことになってまいります。  ただ、私ども考えておりますのは、そういったことだけではございませんで、日本の年金制度で非常に大きな欠陥といわれておりますのは、十分にそのときそのときの経済情勢等に即応して年金額が改定されない。言うならば、ある程度硬直化した、そういった年金水準がある程度の年限維持される。こういうことでございますので、来年の改正の際には、具体的に言って、どのような方式でのやり方になるかは別といたしまして、スライドの問題はどうしても導入せざるを得ないであろう、こういうふうなことでございます。  したがって、この給付水準の大幅引き上げとスライドの導入の問題につきましては、現在審議会においていろいろ御審議中でございますが、一番の問題は、年金額をスライドいたします際に、保険料はすでに納め終わった方、既裁定の方、そういった方はこれから保険料をいただくわけにはまいりませんので、保険金だけ、保険の給付水準だけをスライドいたしまして、これをレベルアップしてまいりますと、どうしてもそこに保険財政上の穴があいてくるわけでございます。そういった点につきまして、いわゆる整理資源というものが必要になってまいるわけでございますが、その整理資源をどのような方法で調達するか、一般会計のほうからもその辺についてどの程度導入をしてもらうのかという問題が非常に大きな問題だろうと思います。  いずれにいたしましても、そういうふうなことで来年度の年金制度の大幅な改善にあたりましては、国庫負担のあり方というものについて相当大きな問題が出てまいりますので、先ほど大臣から申し上げましたように、そういった際には、利率の引き下げ等によって生じた目減り分等の問題も合わせて、一環の問題といたしまして十分考慮をいたす、こういうことでございます。私どももそういった方角で十分な予算折衝をいたしてまいりたいということでございます。
  303. 田畑金光

    ○田畑委員 私はこれで質問を終わりますが、大臣に特に希望することは、今回の金利引き下げに伴う代償として還元融資のワクをふやし、中身をもっと被保険者の人方の福利に充当するように、このような申し合わせがなされておりますが、局長答弁にありますように、これは理財局長と年金局長との間の申し合わせ。しかし、この目減りに伴う保険財政のマイナス要因を国庫でカバーするかどうかという問題は、今度は主計局の問題、こういうことになってくるわけですね。  しかもいまの局長のお話で、来年の年金財政の引き上げの方向というものは、おおよそ輪郭が明らかになりましたが、給付を倍にするというような問題、さらに同時に一番大事な問題は、いまお話もありましたが、スライドの問題で、このスライドの問題の解決なくしては、年金受給者の生活というものは、毎年物価高に応じてレベルダウンしていくわけであります。しかもまた国民一般の消費水準が高まっていくにかかわらず、年金生活者だけは消費者物価の値上がり一つを見ても、生活水準がレベルダウンすることを考えてみますと、やはりスライド制というもの、物価の値上がりや国民生活の水準に応じて引き上げていくというこの問題は、私はぜひひとつ来年の年金の改善の節には実現を願いたい、こう思うのです。そして何よりも既裁定の現在の受給者についても、給付の改善が同時に享受できるように、その足らざる財源は当然国の負担措置が講ぜられてしかるべきだと思うのです。  同時に将来の考え方方向としては、先ほど申し上げたように修正積み立て方式といわれておるが、これをだんだん国の負担分をふやしながら、将来はやはり賦課方式に持っていく一つの前提に立って来年の財政再建をはかっていただきたい、こう考えておるわけであります。  大蔵大臣と厚生大臣との間には口頭によって何か話があったような答弁でございますが、今回のこの金利引き下げに伴うマイナス要因はもちろん、わが国の今後の年金のあり方等について、もっと国の責任を明確にするように、予算編成期において、厚生大臣、最善の努力を払うことをひとつここではっきり確約していただきたい、こう思うのです。  ひとつ大臣の決意のほどを伺って、私の質問はこれで終わることにしたいと思うのです。
  304. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 年金の給付水準の引き上げにつきましては、私どもも明年度の最大の課題として努力をいたしたいと思うわけでございます。またこの解決にあたりましては、保険財政全般につきましていろいろの検討問題も起こってくるでございましょうし、非常に困難な問題も多々あろうかと思うのでございます。しかしながら、私どもとしては合理的な、健全な年金財政の基礎のもとに給付水準の引き上げに最善の努力を尽くしてまいりたいと思います。
  305. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  306. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 速記を起こしてください。次に、古寺宏君。
  307. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に、青森県の消費生活センターが県内の十一市町村の小売り店から竹製の塗りばしでございますが、これを集めまして調べた結果、摂氏八十度でもって一時間入れたものからは法定基準の十倍以上のホルマリンが検出されまして、最高が二百三十・七PPM、こういう数値を示しているわけでございます。食品衛生法で定められているところの試験方法は、現在摂氏六十度の温水に三十分入れた場合、こういうようになっておりますが、この中の二点からは二十四・六PPM、三十PPMのホルマリンが検出されております。  こういう結果に基づいて私は質問を申し上げるわけでございますが、ホルマリンは御承知のように劇物に指定をされております。本来はこれは当然検出されてはならないものであろうかと考えるわけでございますが、こういう点について、厚生省はホルマリンの毒性というものについて、食品衛生上どういうようなたてまえをとっているのか、お考えを持っているのか、まず最初に承りたいと思います。
  308. 浦田純一

    ○浦田説明員 ホルムアルデヒドにつきましては、確かにそのままで使った場合にいろいろと障害があるわけでございますが、実は一部食品、たとえばシイタケの中にはかなりの濃度で含まれておる。つまり自然に含有されておると見られるものもございまして、この濃度は大体百から四百PPM程度のものでございますが、このことにつきまして昭和四十五年に食品衛生調査会に意見を求めております。その結果、この程度では特に人の健康をそこなうおそれはないという意見を得ております。  しかしながら、一方ホルムアルデヒドの生体における代謝の実態というものは、なお究明する必要があるんじゃないかということで研究は進めておるところでございます。したがいまして、この研究の成果によりましては、さらに規制を検討していきたい、強化することも考えてまいりたいというふうに考えております。
  309. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、劇物に指定はされているけれども、天然のものに含まれているために、こういうふうに塗りばしだとか、あるいはいろいろな食器の中に多量にホルマリンが出ても、これは有害ではない、こういうふうなたてまえをおとりになるわけですか。
  310. 浦田純一

    ○浦田説明員 天然に含まれているから、それでいいということではございませんで、ただ先ほどホルマリンの、あるいはホルムアルデヒドの毒性の問題についてのお尋ねでございましたので、天然に含まれている場合もあるということを申し上げたわけでございます。しかしながら食品衛生法上は先生が御指摘のように、現在アセチルアセトン法によりまして四PPM以上ということになりますが、検出されてはならないということになっておりますので、私どもはこのような規格、基準からはずれる、はしその他の食器につきましては、やはり好ましくない、禁止すべきであるという立場でもって行政を実施してきているところでございます。
  311. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで通産省にお尋ねしますが、品質表示法によりまして六月一日から家庭用品の、特に台所用品も対象になりますが、品質表示をすることになっているのですが、竹ばしが除外されております。これはどういう理由でございますか。
  312. 仲矢鍛

    仲矢説明員 竹ばしを除外いたしましたのは、品質表示法で規定しますものは普通日常よく使われておるものという原則で入れておるのでございますが、当時竹ばしにいろいろなものを塗るというふうな例はほとんどないであろう、私どもいろいろ調べましたところ、結果といたしまして、竹ばしに塗った例といいますのは特殊な工芸品でございますとか、そういうものはないことはございませんけれども、一般にはあまりないという判断で竹ばしを除外したということでございます。
  313. 古寺宏

    ○古寺委員 その判断の根拠は、どういう調査をやってそういう判断をなさったのですか。私どもが見ている限りでは一般家庭、特に東北地方なんかをお回りになればわかりますけれども、農村に行っても漁村に行っても、ほとんどの人がこの塗りばしを使用しておられるのです。どういう根拠でそういう判断をなさったのですか。
  314. 仲矢鍛

    仲矢説明員 いろいろの手段でもって調べたわけでございますが、先生御指摘のように、私ども不明で、少し調査が不十分であったかと思いますけれども調べましたのはそれぞれの業界を通じ、あるいはまた都道府県の商工課あたりに聞きまして、どういうものを一体品質表示に指定すればいいんだろうかということで調べたわけでございます。
  315. 古寺宏

    ○古寺委員 少なくとも台所用品であれば、量が少なくとも多くとも当然表示すべきですね。今後この塗りばしの場合は表示しますか。
  316. 仲矢鍛

    仲矢説明員 先生御指摘のように、それが非常に多方面に使われておるということでございますと、指定するように検討いたします。
  317. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省にお尋ねします。  日本薬局方ではホルマリンは一応劇物になっておるわけでしょう。じゃ、なぜ劇物に指定しておるのですか。
  318. 松下廉蔵

    ○松下説明員 いまのお尋ねの薬局方におきましては、医薬品でございますので、劇薬として指定いたしております。それから、毒物及び劇物取締法におきましては、いま御指摘のように劇物という扱いをいたしております。これは一%以上の水溶液を劇物といたしております。  劇物としております理由は、ホルムアルデヒド、これは通常純粋な形ではガス体でございますが、水溶性のもの、油に溶ける、たん白質を凝固させる作用がございまして、これを飲みました場合には、量によりまして呼吸困難、目まい、嘔吐、胃けいれんというような症状を起こし、あるいは口腔に炎症を起こす。多量に服用いたしますと、チアノーゼとか心臓衰弱で死に至るというケースがあるわけでございます。それからガスにつきまして——ガスがホルムアルデヒドでございますが、呼吸器などの粘膜を刺激いたしまして、貧血とか呼吸困難というような症状を起こす作用がございますので、これを医薬品の場合は劇薬、その他の薬物の場合には劇物という指定をしておるわけでございます。
  319. 古寺宏

    ○古寺委員 じゃ、環境衛生局長はこういうことをお知りになっていないわけですか。
  320. 浦田純一

    ○浦田説明員 承知いたしております。
  321. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、今後毒性についてさらに検討するというお話が先ほどございましたが、どういうことを御検討なさるのですか。
  322. 浦田純一

    ○浦田説明員 急性毒性という点では、確かにただいま薬務局長のほうから説明があったとおりだと思います。しかしながら、食品を通じて体内に摂取する場合にはいささか様子の違っているところがございまして、たとえば体内における蓄積性あるいは微量を長期間にわたってとった場合の毒性といったものを検討しなくてはならないのでございます。したがいまして、これらの点についても、やはり食品衛生の立場からは検討する必要があるということを申し上げたのでございます。
  323. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、摂氏六十度で三十分間という場合には検出されないものでも、摂氏八十度で試験いたしますと、一時間あるいは三十分、時間によって違いますが、非常に多量のホルマリンが出ているわけです。当然、日常生活におきましては、こういうはしは、そういう熱い摂氏八十度くらいのものに使う場合もありますね、こういうおわんも。これはみんな出ているわけですよ。こういうような食器類を放置しておくということは、食品衛生上非常に問題があると思うのですが、今後こういうものについてはどういうふうに規制していくお考えですか。検査法もあわせて……。
  324. 浦田純一

    ○浦田説明員 現在の試験方法は、実は昭和四十一年に改正したものでございます。以前はたん白鉄反応と申す試験方法で検査していたのでございますが、それを先ほど申し上げましたアセチルアセトン法に改めたのでございます。これは実はかなりきびしくなったというふうに考えております。しかしながら、その後検査方法が進歩してまいりまして、アセチルアセトン法によります場合には、いわば判定量と申しますか、検出限界が四PPMということでもございますので、多少問題もあろうかという意見も出てまいりました。私どもは、これを定量法に改めるという方向で、現在さらに実態に合うように試験方法についても改正を検討中でございます。
  325. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、これはカーテン地です。これから四百十四PPMもホルマリンが出ておるのです。目がちかちかするのです。いま全国のデパートにつとめていらっしゃる従業員の方からお聞きしますと、そういう目を刺激するようなカーテン地が非常に多いということを私どもは聞いているわけですが、厚生省はこれを調査したことがございますか。
  326. 浦田純一

    ○浦田説明員 別にそれのみを対象として調査したことはございません。
  327. 松下廉蔵

    ○松下説明員 ちょっと補足させていただきますが、家庭衣料品に含まれますそういった化学製品の調査につきましては、現在のところ、分掌によりまして環境衛生局と私ども薬務局のほうで手分けをして調査をいたしておりまして、いま御指摘のカーテン自体についての調査はいたしておりませんけれども、特に繊維品の中で最もからだに接します衣料、下着類がおもでございますけれども、衣料の中に含まれておりますホルマリンにつきましては近年、かなり衣料品による皮膚障害、かぶれであるとか、あるいは発疹であるとか、あるいはかゆくなるとかいうような問題があることが、調査の結果だんだんと出てまいりまして、その原因物質として繊維製品のしわを防ぐとか、あるいは風合いを向上させるというような目的で使用されておりますホルマリン樹脂加工剤から遊離するホルムアルデヒドが原因ではないかというような疑いを持たれておる向きがございます。そういったことを究明いたしますために、さしあたって今年度におきまして、ホルマリンその他の化学物質十五品目につきましての家庭用品の中における急性毒性あるいは慢性毒性、あるいは皮膚刺激試験、アレルギーの試験、臨床試験というような調査を目下進めておるところでございます。  なお、先生の御承知のとおり、四十五年の十二月に毒物及び劇物取締法の改正がなされておりまして、家庭用に使いますものの中に含まれておる毒物、劇物といったものの成分の含量とか、あるいは取り扱いにつきましての基準を指定できるという法的な基礎もおかげさまでつくられておりますので、早急にこの調査を進めまして、そういったものにつきましての正確な基準をつくって規制をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  328. 古寺宏

    ○古寺委員 これは下着でございます。このシャツを着た方がこういうふうに皮膚がかぶれてしまっているわけです。これ、大臣が居眠りするといけませんので、ごらんに入れます。——そこで通産省としては一体、消費者に対してこういう危険なものを販売させておくというのは非常にいけないと思うのですが、こういうものを規制していくお考えがあるのですか。
  329. 仲矢鍛

    仲矢説明員 通産省といたしましては、いろいろ製品関係の安全問題を検討しておるわけでございますが、繊維品につきましては昨年来繊維品の安全対策会議というものをつくりまして、それは消費者の方あるいはお医者さん方にも御参加いただきまして調べながら安全をはかってまいりたいと考えております。  ホルマリンにつきましては、昨年一年間いろいろ勉強していただきまして、必ずしもいま世上でいわれておる皮膚障害がホルマリンのせいだけではなかろうという結論ではございますけれども、ホルマリンが原因ではないとも言い切れないということで、繊維製品につきましてホルマリンを使う場合に、たとえば下着類には使わないようにというような結論を出しまして、行政指導をしておるわけでございます。
  330. 古寺宏

    ○古寺委員 そういう商品の安全をはかるための法律をつくる必要があると思うのですが、そういうような準備をしておりますか。
  331. 橋本利一

    橋本説明員 先ほど来先生が御指摘になっておりますように、私たちといたしましても、いわゆる危険な商品を排除いたしまして、国民に安全な消費生活を保障することを急務と考えております。特にここ数年技術革新とともに、技術的にも非常に複雑な、あるいは高性能な製品が出ておる反面、消費者のサイドから苦情ないしは欠陥の指摘を受ける商品もふえてきております。さような事情から、通産省といたしましては、この際さらに消費財の安全性の確保をはかるために総合的な立法の必要性を痛感いたしております。  さようなところから、昨年の夏以来、産業構造審議会の消費経済部会に対しまして消費財の安全性確保対策いかんという諮問をいたしまして、現在鋭意検討を進めていただいておる段階でございますが、この成案を得次第、次の通常国会に提案いたしたいと考えております。
  332. 浦田純一

    ○浦田説明員 厚生省といたしましても、家庭用品の安全ということは、国民の健康を守る立場からも重大な問題でございまして、先ほど薬務局長のほうからも答弁ございましたように、昨年来いろいろと実態の調査に取りかかっておるところでございます。これは将来さらに強化拡充しなくてはならない問題といたしまして、来年度の予算要求においては、問題の物質についての、ことに家庭用品に使われておる問題の物質についての安全性、衛生上の問題についてさらに施策を進めていきたい。場合によりましては、これを新しく立法化も考えていきたいということで同様考えておるところでございます。これらにつきましては、関係省庁のあることでございますので、十分に調整をはかりながら全体の立場から家庭用品の問題に取り組んでまいりたいと考えております。
  333. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、第二のPCBといわれるフタル酸エステルの問題でございます。DOPともいわれておるものでございますが、この毒性について厚生省はどういうふうにお考えになっているか、どういう対策をお考えになっているか、承りたいと思います。
  334. 浦田純一

    ○浦田説明員 フタル酸エステルにつきましては、ラットあるいはウサギ、犬等の動物試験によりまして慢性毒性試験及び催奇形性の試験などが行なわれております。その結果、経口投与では、毒性はきわめて低いものであるということが確認されております。またフタル酸エステルは、現在チューインガムの基礎剤、あるいは可塑剤として使用を認められておりますけれども、一般の板ガムには使用はされていないのでございまして、一部の風船ガムに用いられているにすぎません。この場合の添加量は約四%、かような次第でございます。  これらの試験結果によりますと、ガムを十五分間そしゃくした場合、ガムからの溶出量では一個当たり約一ないし三ミリグラムでございます。この程度であれば、人体への影響は考えられないということでございます。
  335. 古寺宏

    ○古寺委員 いろいろな医療器具であるとか、いろいろなものに使われておりますね。そういうものについてはどうなんでしょうか。
  336. 松下廉蔵

    ○松下説明員 いま御質問のございました医療器具に使われておりますフタル酸エステル、これは先生御案内のことと存じますが、医療器具の中で塩化ビニール樹脂製の血液セット、それから輸血輸液セット、そういったものに、ガラスにかわるものといたしましてフタル酸エステル、これはジオクチルフタレート、非常に高分子のものでございますが、そういったものが使われておるわけでございます。ジオクチルフタレートの毒性は、いま環境衛生局長から御説明があったとおりで、急性毒性といたしましては、ラットの経口LD50は体重一キログラム当たり三十・六グラム、それからマウスの腹腔内投与で五%の死亡率が体重一キログラム当たり百二十八グラム、急性毒性は非常に低いものでございます。  それから慢性毒性につきましても、ラットで二年間の経口投与で無作用量は体重一キログラム当たり一日〇・二グラムという状況でございます。  なお、現在輸血に使われております輸血セットにつきましては、ガラス製のものが大部分でございまして、この塩化ビニール樹脂製のものは数が少ないわけでございます。  このフタル酸エステルの毒性ということが問題になりましたので、私どもといたしましても、七月末に専門家にお集まりをいただきまして、諸外国における文献、あるいは国内における実験データ、そういうものについて検討をいたしたわけでございますが、そういった点から考えまして、またいまの塩化ビニール樹脂製の血液セットについて基準で定められております範囲内の溶出量から考えまして、現在の段階におきましては、現在の医療器具に使われておりますフタル酸エステルについては安全であるという一応の結論を得ておるわけでございます。  しかし事が医療器具でございまして、いやが上にも安全を期さなければならない性格のものでございますので、八月の半ばにこういった専門家を集めまして、このフタル酸エステルの医療器具への使用に関する研究班を発足させまして実験を開始いたしております。またアメリカにおきましても、こういった実験データがあるという情報を得ておりますので、外務省を通じてそういった詳細につきまして照会をしておる段階でございます。
  337. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうまだはっきりした安全性が確認されないものを、現時点では一応安全だといってそのまま使用させておくということは、非常に危険だと思うわけですね。いま二年間の慢性毒性試験であるとか、いろいろなお話がございましたが、そういうデータについては、後ほど提出をしていただきたいということを委員長にお願いを申し上げておきますが、その試験の内容というものはどのくらいの試験をおやりになったのか、ちょっと説明していただきたいのでございます。
  338. 松下廉蔵

    ○松下説明員 ちょっと手元に詳細な試験のデータを持っておりませんので、後ほど、いまお話のございました書類をもって提出させていただきたいと思います。
  339. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 委員長から申し上げますが、ただいま古寺委員の要求の資料提出は、厚生省のほうよろしいですか。
  340. 松下廉蔵

    ○松下説明員 よろしゅうございます。
  341. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 それでは、そのように取り計らいます。
  342. 古寺宏

    ○古寺委員 チューインガムについては、ことしの六月ごろからこの使用を一応自主的に規制している、こういうことを伺っているわけですが、他の製品が相当あると思うのです。またフタル酸エステルもいろいろな種類がありまして、その中には慢性の毒性の強いものも、あるいは毒性のないものもいろいろな種類がある、こういうふうに承っているのですが、このフタル酸エステルにはどのくらいの種類がございますか。
  343. 浦田純一

    ○浦田説明員 食品衛生法上での許可は二種類でございまして、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、この二種類ございます。
  344. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどの試験は、そのいずれのものの試験でございますか。
  345. 浦田純一

    ○浦田説明員 あとから申し上げましたブチルフタリルブチルグリコレートです。
  346. 松下廉蔵

    ○松下説明員 私が御説明いたしました試験は、ジオクチルフタレートの試験でございます。
  347. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、両方の試験の結果をひとつ文書で後ほどお願い申し上げておきたいと思います。  そこで、私は厚生大臣に申し上げたいのですが、いろいろなこういう食器類からも劇物あるいは劇薬に指定されているホルマリンが大量に出る。あるいはこういうカーテンからもたくさん出てくる。それから先ほどお見せいたしました下着は、これは現在何が入っているかまだ分析はしておりません。こういうようないろいろなものから有害な物質がどんどん検出をされてくる。しかもいまのDOPのように、第二のPCBといわれる物質が、チューインガムをはじめいろいろなものに使われている。こうなりますと、国民の不安というものはますます高まってくるわけでございますが、われわれの周囲にあるいろいろなそういう有害物質、そういうものについては、今後われわれの日常生活を通して体内に入らないように十分に規制をしていく必要があると思うのですが、そういう点については、PCBをはじめとしてそういう化学物質については今後どういう取り締まりをしていくお考えか承っておきたいと思います。
  348. 浦田純一

    ○浦田説明員 食品衛生関係のことで申し上げますと、古寺先生が御指摘のように、風船ガムに使っておりますわずかのフタル酸エステルは、現在すでに自主的に使用を停止いたしております。したがいまして現在では使用されておりませんので、添加物にせっかく指定はしておりますけれども、これは取り消すという措置を講じて、法的にも添加物の使用を禁止したいと考えております。  また食品容器等にも実はフタル酸エステルが使われていると考えられるのでございますが、これは主として塩化ビニール系統でございますが、これらにつきましても現在使用をたしか中止しているはずでございますので、今後厳重に規制してまいりたい。添加物としての使用については、認めないという方向でもって取り締まってまいりたいと思います。
  349. 松下廉蔵

    ○松下説明員 医療用関係につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、現段階におきましては、このフタル酸エステルの中で最も溶出性の少ないジオクチルフタレートを使いましたものを用いておりまして、なお基準で溶出の限度をきわめてきびしく規制いたしております。そういった試験に合格したものを使うという形をとっております。  なお、ガラス製品と比較いたしました場合に、一方で、ガラス製品よりも保存血の使用にあたりまして血球の破壊が少ないというようなメリットもございますので、そういったメリット、デメリットを考慮いたしまして、研究班の結論を待ちまして最終的な態度をきめたいというふうに考えております。
  350. 古寺宏

    ○古寺委員 通産省はどういうふうにお考えですか。
  351. 小幡八郎

    ○小幡説明員 通産省といたしましては、PCB類似の物質が今後開発されることもあり得るということ、それから既存の物質の中でもPCB様の物質があるかもしれないということ等を考えますと、やはりここで新規の立法を行ないまして、こういう疑いのある物質群に属する化学物質につきましては、新規のものはもちろん、既存の物質につきましても、これを再チェックするという体制をとるべきではないかということで、現在当省の軽工業生産技術審議会の化学品安全部会におきまして、学識経験者の参加を得て慎重に検討を続けている最中でございます。
  352. 古寺宏

    ○古寺委員 立法は今度の国会に間に合いますか。
  353. 小幡八郎

    ○小幡説明員 次期通常国会を目途に現在検討を進めておる次第でございます。
  354. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないようでございますが、それじゃ一つだけ最後に、これは大臣にお尋ねしますけれども、田中総理は、総理に就任なされてから、難病患者は全額公費でめんどうを見たい、こういうことを再三再四申されておりますが、厚生大臣は一体この点についてはどういうふうにお考えですか。
  355. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 御指摘のとおり、田中総理は難病について非常な関心を持って、これが公費負担のことも言われておるわけでございます。私どもといたしましても、いろいろな難病につきまして、これが対策を早急に進めなければならぬということで検討いたしておるのでございますが、御承知のとおり予算の概算要求の締め切りが八月の三十一日でございましたが、この難病対策につきましては、重点事項として特に大蔵省の了解も得て、大体今月末を目途にこれが成案を得たいと思っておるわけでございます。  それで難病ということばでございますが、難病というものをいかなる病気にこれを包括するかという点につきましても、いろいろ問題があるわけでございまして、私どもは、できるだけこれを常識的といいますか、あるいは社会的な観点から見まして、治療方法がいまだに発見をされていないとか、あるいは患者の負担が非常に高額である、あるいは長期療養を要する。そのために家庭が非常な不幸におちいるといったような病気、これを難病として包括して、これに対する対策を立てて推進したい。明年からこれを実行したいということで、ただいま計画をいたしておるのでございます。  したがいまして、この難病の範囲等につきましても、そういったような点もございますし、またいろいろな施設をやるにいたしましても、あるいは難病の看護の問題あるいはこれらの世話をする人の問題、いろいろな問題等もございまして、必ずしも明年一年でこれを全部完了するということは、なかなか不可能な点もございますので、こういった点につきましては年次的な計画等も立てて、施設なり、あるいは負担の問題なり、あるいは従事員の養成なりといったものを総合的に進めてまいりたいと思っております。
  356. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで大臣にお尋ねしたいのですが、ことし一応の治療費を含む難病の予算が三億一千万円あるわけです。ところが、その支給がおれているせいもございますし、政府の対策がおくれている原因もあると思いますが、今年の一月から九月までにスモン病の患者が九人、ベーチェットが四人、リューマチが三十三人、慢性肝炎が六人、現在判明しているだけでも合計五十二人の方が自殺をしていらっしゃるのです。来年度のことは、これは総理は一生懸命全額公費負担にする、こうおっしゃっていますが、今年度の予算の執行がなぜこういうふうにおくれるのか、なぜこういうふうに自殺者を出していかなければならないのか、その点についてひとつ大臣から釈明していただきたいと思うのです。
  357. 加倉井駿一

    ○加倉井説明員 難病といわれます疾病のもとに自殺をされた方があることにつきましては、私ども立場といたしまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  ただ本年の予算の執行が遅延いたしておりますのは、御承知のように私どものほうに特定疾患対策室が発足いたしましたのが本年の七月一日でございまして、特定疾患の選定に当たります特定疾患対策懇談会の発足も若干おくれてまいりまして、その選定に基づきまして予算を執行すべく私ども準備をいたしたわけでございますが、スモンにつきましては昨年度と同様、昨年の仕組みを四月一日にさかのぼって実施する予定でございますが、その他の疾患につきましては、関係方面とのいろいろ協議もございまして若干おくれておりますが、これにつきましても、できるだけ早く予算の執行の実現を見たい、かように現在努力中でございます。
  358. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省の御都合でおくれた、こうなれば、結局自殺した方やあるいは現在そういう恩恵を受けられない方は厚生省のために犠牲になっている、こういうふうにしか考えられないわけです。そういう責任は当然厚生大臣にあると思いますので、厚生大臣は——来年度のことは先ほどお話がございましたが、今年度の問題について、担当大臣としてどういうふうにこの問題を今後解決していかれるのか。たとえば難病の専門病院等のお話もございますが、こういう問題にしましても、こういうスローモーな行政では、実際に難病でお苦しみになっている方々はいつまでたっても解決されないと思うのですね。こういう点についてひとつ大臣から御決意を承って、きょうの質問を終わらしていただきたいと思います。
  359. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま御指摘のように事務が停滞をする、おくれるというようなことにつきましては、まことに申しわけない次第でありまして、御意見を十分に腹に秘めて関係機関の督励を行ない、この事務の円滑な、すみやかな執行のできる体制をつくりあげたいと思います。
  360. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 次に、寺前巖君。
  361. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もおそうございますし、大臣もお疲れでしょうし、関係者の御答弁もひとつ要領よく簡潔にお答えをいただきたい。問題はきわめて簡単明瞭に提起するつもりでおりますので、よろしく頼みます。  最近一連の新聞を見ますと、沖繩の水道契約についてアメリカ軍が一方的な通告をやってきたということで話題になっております。  これは九月四日の新聞ですが、こういうふうに載っておりました。このアメリカ軍の「文書は八月三十日付で加盟市町村のうち米軍基地を給水地域に持つ十八市町村あて送られてきた。差し出し責任者は旧米民政府総務課長バーク・グレン中佐となっており「司令官に代わり」とただし書きがつけられている。内容は旧琉球水道公社と給水契約を結んでいることを明示、これにより県企業局から一般県民より六割も安い卸し料金で直接給水を受ける“権利”があるとしている。」こういうふうな内容が一連報道されました。これがもうすでに五月十五日に沖繩が本土復帰になって以後三カ月半、四カ月近くたった時点での問題だけに、これは非常に重要な問題だと私は思うんで、まず最初にいま言ったこの報道されている内容は事実かどうか。  その次に、もう現在ないわけですが、米軍は旧琉球水道公社、これとの契約に基づいて権利があるんだというふうにいっています。県企業局と直接契約をする権利があるというが、はたしてそれがあるものかどうか。日本政府の態度をはっきりする必要があると思うので、この際大臣から、この内容について見解をお聞きしたいと思います。
  362. 浦田純一

    ○浦田説明員 事実関係でございますので、私からお答え申し上げます。  まず新聞に報道されたような事実があるかどうかということでございますが、すべて新聞に報道されたのが正確であるとは思いませんが、米軍と沖繩県並びに関係の市町村との間に給水をめぐっての争いがあるということは事実でございます。それから琉球水道公社が米軍との間に復帰前に締結された給水契約というものがあることも、これも事実でございます。
  363. 寺前巖

    ○寺前委員 見解は……。
  364. 浦田純一

    ○浦田説明員 この給水契約がはたして有効なのかどうかということに関してであろうと思いますが、琉球水道公社の権利義務は、沖繩返還協定第六条によりまして、日本国の法令に即して引き継ぐことになっておるわけでございます。  給水契約に関しましては、その内容が水道法その他の法令に即しているかどうかという問題がございますが、これには県、市町村が給水に関しどういう立場に立つかによっても異なると思われますので、その辺も含めまして、現在関係者の間で検討中でございます。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  365. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっとよくわからぬのですけれども、一番の事実問題、全部が全部正確とは思わないがというお話でした。私は全部何も言っていない。いま言った八月三十日付で関係の十八市町村に文書が出たという事実、それからバーク・グレン中佐が司令官にかわってというただし書きでつけられたという事実、それから内容が、給水契約を結んでいることを明示して、県企業局と直接給水を受けたいという事実、この三つの事実は、事実かどうかということを聞いたので、全部が全部正確ではないと言われるのだったら、どの事実が違うのか、ちょっとはっきり言ってもらわぬと、私らもわからぬですよ。これが一つ。いまの事実問題について、どの点が違うのか、どの点か事実なのか、これははっきりしてほしいと思う。私は報道を出された中身の全部を言うたわけじゃない、三つの点を読んだのだから。それが一つですよ。  それから第二番目に、ここで権利があるということを米軍が主張している。米軍がそういう権利があるということを主張できるのかどうか、これに対する日本政府の見解はどうなんだ。主張できるのかできないのか。契約はあったことは事実だ。それはさっき言われたのですよ。しかし、返還協定があって、六条で国内法に従えということになっている。国内法に従えということのもとにおいて県や市町村が、報道面を通じて言うならば、その契約は、そんなものは無効だというふうに言っている。だから、日本政府としては、協定六条で国内法に従えという立場から見るならば、権利があるという居直り方をしていることに対して、どういうふうに思うのだ。もうちょっとはっきり言うてもらわぬと困る。
  366. 浦田純一

    ○浦田説明員 八月三十日付で十八市町村に対して通告なされたという事実につきましては、まだ私どもは承知をいたしておりません。——県から報告はございます。  それから第二点の、権利があるかいなかという問題につきましては、目下こちらで法的な検討をしておる最中でございます。  給水契約につきましては、これは、先ほどもお答えしましたように、復帰前五月十日に琉球水道公社と米軍との間に締結した契約がございます。
  367. 寺前巖

    ○寺前委員 何だって——十八市町村に出したかどうか知らぬ。知らぬものが、あなた、こんなことを要求しているということになったら——全然知らぬということだな。十八市町村に対して送ってきて、問題が出てきているのでしょう。そんなことは知りませんというたら、中身も何にも知らぬということじゃないか。何を知っているのか、知っているというのは。紛争が起こっているといろことは知っておって、何で起こっているのかという中身を知らなければ、問題点ははっきりしないじゃないか。そんな怠慢な話ありますか。  沖繩協定はだれが結んだんです。沖繩県、県がやったんですか。違うでしょう。日本政府がアメリカ側とやったのじゃないですか。復帰の処理問題については日本政府の責任においてやるべき性格でしょう。そして、復帰されてまだ四カ月以内だ。その間にもうすでに何カ月間にわたって問題が起こっておる。それでいて、いろいろ往復の交渉がある中で、アメリカ軍のほうから十八市町村に対して、司令官にかわってということで旧民政府の総務課長が文書を出した、基地のあるところに。そこでこの権利要求をしているんだということが中心問題になっている。それについて私は知りません。それだったら怠慢じゃないですか。大臣、どうです、その問題について。そんなあなた、けしからぬ話ないですよ。
  368. 浦田純一

    ○浦田説明員 お答えのしかたがまずかったかと思いますが、私どもはこれらの事実につきまして去る八月下旬に、特に沖繩県の厚生部長がこれらの事実の報告に厚生省に参っております。それからそのあと引き続き八月三十日付の文書でもって、屋良沖繩県知事から厚生大臣あてに、米軍施設に対する給水について(要請)」ということで、文書でもって要請されておるという事実もございます。したがいまして、私どもは、この紛争とそれからどのような性格のものであるかということについては報告は受けております。しかし、いま御指摘の文書の中身ということについて、細部について私どもは特にその点について報告を受けておるということではございませんので、その事実については承知してないと申したのでございますが、総括的には全般の問題として報告は受けております。したがいまして、先ほどの答弁に補足させていただきたいと思います。
  369. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ聞くけれども、米軍が県企業局と給水を受ける、県企業局から一般国民より六割も安い卸料金で直接給水を受ける権利があるということを主張しているという事実について知っているのかどうか。
  370. 浦田純一

    ○浦田説明員 承知いたしております。
  371. 寺前巖

    ○寺前委員 その権利があるというものの言い方について、それでは日本政府として、一体権利があるというふうに言い切れる確信がありますか。そんなばかなことあるかと、復帰の交渉をやってきただけに、日本政府としてはっきり言わなければいかぬと私は思うのですよ、これは。これもあなた、三カ月半、四カ月近くずっと続いてきている話。そういうふうにやるという話にはなっていないんでしょう。なっていなければ、権利があるという言い方はできませんわな。お願いするということはあっても、権利があるということは言い切れませんわな、米軍のほうから。権利があるという根拠、ありそうですか。こういう点で日本の側に弱みがありますのやという根拠がありますか、何か。あるのだったら、日本政府としてみんなの前にはっきりしなければいけないのですよ。返還の取引をやってきたのは、協定をやってきたのは日本政府なんだから。絶対そんなこと、権利を云々させるという何ものもありませんというのか、いや、実はこういうことがありましたんやというのか、これははっきりしなければいかぬですよ。  少なくとも私たちが国会で論議している過程においては、返還協定の六条に基づいて、水道の問題については、これはちゃんと——六条一項の中に明確に書いてあるのですよ。第六条一項に「琉球電力公社、琉球水道公社及び琉球開発金融公社の財産は、この協定の効力発生の日に日本国政府に移転し、また、これらの公社の権利及び義務は、同政府が同日に日本国の法令に即して引き継ぐ。」となっている。しかも、昨年の十二月の参議院の、国会の席上で、この水道問題が論議になったときに、米軍に何ら特権はございませんということまで、わが日本政府国会の前に明らかにしているでしょう。そこまできっぱりちゃんと協定も書かれているし、特権的なことは何もないとおっしゃるんだったら、それじゃ日本国も水道法に基づいて、事業主体は市町村なんだから、事業主体である市町村に対して契約をするというのが筋の通った話であると思いますね。何で特権的に県企業局と直接契約する権利があるという居直った言い方を許すことになるのだろう。私はようわからぬので、日本政府が直接交渉された話だけに、この経過について、権利があるということを言わすことが可能なのかどうか、もう一回聞きたいのですね。
  372. 浦田純一

    ○浦田説明員 まず第一点といたしまして、米軍に特別の権益があるということはないわけでございます。私どもは、引き継ぎました後には、あくまでも日本国の法令に即して引き継ぐということで、したがいまして、この給水契約に関しましては水道法を順守してその範囲内できめていくということであるべきだと考えております。米軍がどのような根拠から権利ということを言っておりますか。察するに、復帰前に琉球水道公社との間にかわした契約、これをたてにしているのではないかというふうに考えております。この点に関しまして、私どもは、さらに事実関係、それから市町村側の水道法の事業認可その他いろいろな手続上の問題も実は残されている点があるわけでございます、そういった点等の実情もさらに検討しなければならないと考えております。  私どもは、いずれにいたしましても水道法の趣旨にのっとりまして、この問題を米軍との間で、もちろん対等の関係でもって円満に解決するように、これから指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  373. 寺前巖

    ○寺前委員 円満に解決する、けっこうですよ。何も円満に解決したらいかぬとは言いません。問題は事実関係を調べてみなければいかぬと言うが、あれは事実関係もくそもないのじゃないでしょうか。水道法に基づいて——水道法の六条によるならば、事業主体は市町村ということになるわけでしょう、特別な認可をやって、県が特別に事業をやらない限りは。沖繩ではそんなことはやってないんだから、そうすると市町村が事業主体になる。だから市町村の事業主体のもとに服するというのが沖繩の例の協定六条、それに基づくところの国内法の施行の範囲内に服するのだから、したがって、それをやるのがあたりまえだと言い切ったらだめなんですか。日本政府が言い切らないのは、言い切れない問題が何かありますか。
  374. 浦田純一

    ○浦田説明員 いや、一そのようなことはございません。
  375. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなことはないということは、それじゃ水道法に基づいて、六条によるならば、市町村が事業主体なんだから、事業主体と契約しなさいということでいいわけですね。はっきりしておきましょう。
  376. 浦田純一

    ○浦田説明員 そのような方向で県を通じ指導しているところでございます。市町村が事業主体になるのであれば、当然その市町村が米軍への給水契約を結ぶ当事者になるということでございます。
  377. 寺前巖

    ○寺前委員 外務省、これは一体どういうことになっていたのですか。米軍は盛んに権利だと言って居直っている。しかし琉球水道公社と契約を結んだという時点を調べると、五月十日でしょう。復帰になったのは五月十五日です。沖繩協定についてはもう昨年やっておる。国会の論議も昨年の話ですよ。一切の話し合いがずっと進んできて、あと具体的な処置になってきたでしょう。ところが突然五月の十日になって、報道によると、琉球水道公社の総裁は四月段階にそういう話をアメリカ軍の側から要求されて、そんなことを水道公社と米軍との間に契約を結ぶということは、あとあと日本政府との間で問題になるからできぬと言うてけったので、そこでランパート高等弁務官書簡で水道公社の総裁からその問題の権限を米軍側の水道公社の理事長なる者に権限が一方的に強められて、要するにアメリカ側の理事長と米軍と、アメリカ人同士で一方的に契約を結んだというのです。それを結んだのは五月十日だった。これは一体どういうことなんだろうか。  外務省として、従来沖繩協定を結んでくる過程で、水の問題についてどういうふうにきっぱりするという話になっておったのか。これははっきり外務省がそういうふうにやるということを知っていただろうか。日本政府として知っていて、あいまいな結果をつくっていたのか、こんな話ではなかったんだ、道義的に、これはどこから見てもかけ込み契約をこういうふうにやるということはけしからぬ話だ。日本政府としてどう思っているんだろう。この問題について、これが第一点、まず私聞きたいと思うのです。経過がどういう話になっておったのか、水の問題。まさにかけ込み契約、悪いことばで言えば火事場どろぼう的なこういう契約のやり方、これに対して交渉の当事者として一体これをどういうふうに思うのかということが一つ。  それから交渉の経過については一体どういうふうにきっぱりさしていたのかということについて、私は外務省の当局者に聞きたいのです。
  378. 松田慶文

    ○松田説明員 昨年沖繩返還協定交渉をいたしまして国会に御承認を仰ぎ、沖繩国会において水道関係についてもるる御説明申し上げました過程におきましては、当然政府といたしましては、このような事態になるということを全く想定しておりませんでした。これが経過、第一点でございます。  第二点は、このような事態はかけ込みではないかということについてその政府の見解いかんということだったと承知いたします。この点につきましては、それを直接お答え申し上げる前に、二つに分けて御説明させていただきたいと思います。  第一点は、先生御指摘の返還協定六条一項でいう権利義務は、日本の法令に即して引き継ぐということばの運用及び解釈でございますけれども、形式的には、権利義務が復帰前に設定されましたならば、それは引き継ぐ。これが第一点。  第二点、しかし、その権利義務の履行につきましては、日本法令に即したものでなくてはならぬ。これが第二点でございます。  米側が、先ほど厚生省から御答弁ございましたように、権利があると言っておりますのは、推論いたしまするに、返還協定の権利義務は、そのまま引き継ぐという面だけに着目して言っているのではないかと思いますが、次の国内法令に即してというのが実はわれわれとしての問題であると同時に、第二にそういう形式的適合性はさておいても、ただいま御指摘のように、復帰直前にこういうことをすることがはたして実体的に認め得る適当なものであるかという実質論と二つに分かれようかと思います。したがいまして、この種の水道の供給は、御承知のとおり地方公共団体が事業者であり、契約当事者でございまして、本土においても米軍と各関係地方公共団体とが話し合いの上契約を結んでおり、いわば一種の契約自由の原則に立っておる。政府はそれを側面からお世話をするという立場にあるわけでありますから、沖繩の場合も、厚生省からのお話がるるございますように、政府といたしましては、第一義的には当事者同士の話し合いをやっていただくし、それが円満に解決されずに日米当事者双方が国のレベルでの協議をお求めになる場合には、合同委員会を通ずる両国間の協議に持ち込まれるのではないかと考えております。
  379. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは厚生大臣に聞きたいのですが、これで話ははっきりしたと思うのです。外務省の見解から見ても、この話はなかった、まさにかけ込み的なしわざだということは、きわめて明らかです。それから厚生省の担当官の話を聞いても、これはもう水道法は市町村が事業主体であって、それに基づいてやってもらうのがあたりまえだということになると思う。そうすると問題はきわめて明確な状況のもとで、三カ月半、四カ月近くになっているのに、いまだにアメリカ側が——すでにもう費用にしたって二億二千万円余りだというのですよ。沖繩の自治体にとってはたいへんな事態だと思いますよ。  さらに沖繩の水問題というのは、あのアメリカの占領下の状況において水不足のときに、あの基地の中だけプールには水を一ぱい入れたり芝生に水をまいておって、沖繩県民は泣かされたという立場からも、水問題は普通では済まない問題なんです。われわれの島の問題については、われわれが主人公だというようなことをいま強く感じているときですよ。そのときにあの占領途中と同じような姿勢で、しかも復帰協定の立場から見ても、国内法に従うということになっているのに、いまだにこういう理屈をつけて居直っているということに対して、沖繩県民は非常に憤りを持っているだろうと思う。  問題は、日本政府が復帰の交渉をやってきた責任があるだけに、いま沖繩の当事者間同士でやっている話に対して、日本政府としても交渉をやった責任から見て、アメリカに対してそういう不当なことを言いなさんな、日本の国内法に従って、ちゃんと市町村が事業主体になっているのだから、そこに契約を結ぶようにさっさとやりなさい。二億二千万円からの滞納についてすぐに払いなさいということを、私は日本政府としては援助してあたりまえじゃないかと思うのですが、厚生大臣、この処理についてどういうふうにされますか。
  380. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 私もただいま外務省からの明快な答弁を伺いまして大体の経過がわかったような気持ちがするわけでございます。八月三十日付の屋良県知事からの文書をいまここで拝見をしたわけでございますが、この中に「当県は、水道法の本旨を尊重し、米軍施設所在市町村の水道事業体に実施させたいと考えております。」これはいまの給水事業者です、という文書が参っておるわけでございまして、私はこの間の問題——厚生省も今日まで係官を派遣したり、現地のいろいろ事業を調査したり、いろいろ努力を惜しんでおったわけではないわけでありますが、ただ、いまの水道契約の問題があり、あるいは県がおり、そうして水道法のたてまえでは市町村が事業体になるということでありますが、この事業体にさせたいということで、そういう事実上の事業体に対する認可の手続が済んでおるかどうかといったような点等につきましても、私はこの問題は大事な問題だと思いますので、私はこのあたりの具体的な事実をさらに係官も派遣をして、詳細にまずつかんでみたいと思います。  そして、もちろん水道法のたてまえをとっていくことは、これは日本の国内法でございますから当然のことでございまして、このたてまえに従って処理をしていかなければならぬと思うわけでございますが、はたして水道法に従って、もはや事業体になっておるかどうかというような点、そのあたりに相当に県あるいは市町村というようなところに事務の渋滞がありはしないかというような点も考えられるわけであります。  こういった点もすみやかに調査をして、そしてこの事務を軌道に乗せ、そしてわれわれの努力でいかない場合は、先ほど外務省の係官が申されましたとおり、場合によっては日米両国の話し合いにまであげなければならぬかもしれませんが、しかしそういったような努力をしたいと思いますし、その前の前提として、もう少しこの事実関係を明確にとらえたい。そのためには係員を派遣をして十分向こうの当局とも話をし、現実の事態をよく把握して、そして今後の手続その他の問題についても遺漏のないような措置をとりたいと思います。
  381. 寺前巖

    ○寺前委員 まだアメリカの給水体制からの引き継ぎの過程だから不十分な問題がたくさんあると思うのです。たとえば水道管の本管そのものが基地パイプでもあるし、その先枝管として——だからそれは普通な体制でないことは事実ですよ。そういう意味での整理問題というのは、私はこれから十分いろいろやっていかなければならないというふうに思います。  それにしても、米軍が——日本の側で事業主体を市町村でやっていくのだという立場を県も市町村もとっているわけでしょう。したがって、すべての人がそれに従いなさいというやり方をやろうというときに、私は県と契約しますというようなことで、日本の国内問題をとやかく言うてくれるなと、はっきり日本の事業主体どおりに従ってくれということをアメリカ側に要求してあたりまえだ、大臣はそういうふうに思われるかどうか。私は基本的な姿勢として、この点だけはきっぱりしてもらいたい。あとは事実の整備の問題、メーターをどうつけるとか、まだ一ぱい不整備ですよ。その問題は十分指導して成り立つようにやってもらうとしても、第六条の約束どおり一日本の国内法に従って事業契約を市町村がやるのだということになっておりますので御承知おき願いたいという態度をはっきりアメリカ側に示す。国内法に従ってもらいたい、この態度を明確にされるのかされないのか、ちっともわからないので、ここのところだけ聞きたいと思います。
  382. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま申し上げましたとおりでございまして、私どもは国内法は厳として存在をしておるわけなので、沖繩県が日本の国の一部になったわけでありますから、その国内法のたてまえに従って今後これを実行していくことは、もう間違いありません。  ただ外務省からもお話がございましたとおり、これについてはいろいろな経過等もあるし、そういったような問題については、むしろ領土の復帰以来、いろいろな経過等につきましては先ほど外務省からお話がございましたので、この問題については、外務省は外務省の見解に従って御処理になることと思いますし、私どもは、あくまでも原則は国内法に従ってこの問題を処理するということでございます。
  383. 寺前巖

    ○寺前委員 国内法を守ってやるのだという立場ですから、そうすると厚生省としても沖繩県並びに沖繩の市町村が要求している事態の解決に向かって、はっきりとそれを援助してアメリカ側に要求をしてやってもらうことを私は要望して、終わります。
  384. 小沢辰男

    小沢委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十分散会