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1972-04-22 第68回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十二日(土曜日)    午前十時七分開会     —————————————  昭和四十七年四月二十一日予算委員長におい  て、左のとおり本分科担当委員を指名した。                 白井  勇君                 高橋 邦雄君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護熙君                 若林 正武君                 上田  哲君                 佐々木静子君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      向井 長年君     松下 正寿君  四月二十二日     辞任         補欠選任      上田  哲君     松井  誠君      西村 関一君     工藤 良平君      松井  誠君     小柳  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         平島 敏夫君     副主査         松下 正寿君     委 員                 高橋 邦雄君                 長屋  茂君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君    政府委員        法務大臣官房長  安原 美穂君        法務大臣官房会        計課長      伊藤 榮樹君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省矯正局長  羽山 忠弘君        法務省保護局長  笛吹 亨三君        法務省人権擁護        局長       影山  勇君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        公安調査庁長官  川口光太郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       吉田  豊君        最高裁判所事務        総局総務局長   長井  澄君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君        最高裁判所事務        総局民事局長   西村 宏一君        最高裁判所事務        総局刑事局長   牧  圭次君        最高裁判所事務        総局家庭局長   裾分 一立君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者平島敏夫主査席に着く〕
  2. 平島敏夫

    平島敏夫君 恒例によりまして、私が仮主査をつとめさせていただきます。  ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、予算委員異動に伴い、向井長年君の補欠として松下正寿君が選任されました。  また、本日上田哲君が委員辞任され、その補欠として松井誠君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    平島敏夫君 本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして、私が正副主査選任につきましてその議事を主宰いたします。  これより主査及び副主査選任を行ないます。  つきましては、選任方法はいかがいたしましょうか。
  4. 西村関一

    西村関一君 主査及び副主査選任は、投票の方法によらないで、主査平島敏夫君、副主査松下正寿君を推選することの動議を提出いたします。
  5. 平島敏夫

    平島敏夫君 ただいまの西村関一君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 平島敏夫

    平島敏夫君 御異議ないと認めます。  それでは、主査に私、平島敏夫が、副主査松下正寿君が、それぞれ選任されました。     —————————————
  7. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) ただいま皆さま方の御推挙によりまして主査をつとめることに相なりました。何とぞ皆さま方の御協力を切にお願い申し上げます。  審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。  本分科会は、昭和四十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府のうち、防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く部分及び法務省所管並びに他の分科会所管外事項を審査することになっております。  二十六日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、主査といたしましては、本二十二日は裁判所及び法務省、明後二十四日は内閣及び総理府、来たる二十五日は環境庁、二十六日は国会皇室費及び会計検査院という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 昭和四十七年度予算中、裁判所及び法務省所管一括議題といたします。  慣例では、まず裁判所当局及び政府側から説明を求める順序でありますが、これを省略して、お手元に配付してある資料をごらん願うこととし、その説明資料は本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言願います。
  11. 西村関一

    西村関一君 最初に、沖繩恩赦の問題につきまして法務大臣お尋ねをいたしたい。  法務大臣は、昨日の衆議院法務委員会におきまして、政令恩赦によるものよりは個別恩赦中心考えていきたいという意味の御発言があったようでございますが、特に国民といたしまして関心の深いのは、今度の沖繩恩赦によりまして選挙違反に問われて刑に服しました君たちに及ぶんじゃないかということでございますが、これが行なわれますというと、恩赦が行なわれますというと、きれいな選挙、公正、明朗な選挙を進めてまいりまする上に、したがって、わが国の政治姿勢を正してまいりまする上に非常に大きな影響があるかと思うんでございます。この点につきましては、それをも含めろという意見もあるやに伺っております。しかし、これは除くべきであるという意見が世論の多くを占めているように思われます。この点につきまして法務大臣としてはどういうふうにお考えでございますか。
  12. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 昨日、恩赦一般に対する質問に対しまして、私は、できるだけ刑事政策を取り入れていくのが将来の方向であろうということをお答えしたのであります。沖繩恩赦につきましては、実は私、まだ皆さんの御意見をいろいろ伺っております段階で、昨日、何か、新聞によりますと、総理がやるかやらぬかというようなお話があったようでありますが、総理の御意向は何にも伺っておりません。また、私も事務当局に相談もいたしておりません。と申しますのは、こういう恩赦ということは、できるだけその直前考えるべき問題でありまして、慎重に考えていかなければならぬ問題だというふうに考えておりますので、ただいまの段階でどういうふうにするとかいうような考えは持たずに、ほんとうに白紙で皆さんの御意見をいろいろ伺っておるというのが現段階であります。しかし、もうぼつぼつ実際問題として考えていかなければならぬとは思っておりますが、したがいまして、ただいまの御意見も御意見として私慎重に考えていきたい、かように思っておる次第でございます。
  13. 西村関一

    西村関一君 昨日の衆議院法務委員会における御答弁につきましては、一般論としてお話ししたということであり、恩赦の問題については直前まで各方面の意見を聞きながら慎重に結論を出すべきであるという御趣旨の答弁がなされましたが、その際、どちらに重点を置いておやりになりますか。政令恩赦、大量の恩赦ということをお考えになりますか、あるいは個別恩赦中心にお考えになりますか、一般論としてですね、その点、いかがでございますか。
  14. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 一般論として考えますと、私は、できるだけ刑事政策にマッチした行き方ということになりますと、個々の人のいろんな状況に応じて、そうして恩赦を適切な、意味のあるものにしていくというふうに考えております。これは、一般論としましては、私、従来からさように考えておる次第でございます。
  15. 西村関一

    西村関一君 むしろ個別恩赦重点的に考えていきたいという従来からのお考え方ということを伺ったわけでありますが、特に私は、法務省最高責任者といたしまして、法務大臣は、選挙が公正に行なわれる、法を犯して法に触れた行為をいたしまして選挙違反に問われ、服罪——服罪と申しますか、刑が決定した者たちに対しましてもやはり恩赦の恩典を与えていくべきであるかどうかということは、これは個々の問題だというふうにお考えになっていらっしゃるんじゃないかと思いますけれども、一般論といたしまして、選挙が公正に行なわれるということのためには、これらの者に対して寛大に恩赦の恩恵に浴さしめるということが、はたして、民心を引き締めていく上からいいましても、あるいは選挙の公正明朗を期するという上からいきましても、これは好ましくないことだというふうに考えられますが、その点、大臣はどうお考えでございますか。
  16. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 一般論ということでありましたら、恩赦そのものも、なかなかこれ、私の先ほど来言っておりますように、個別的に考えるのが本筋だと思います。ただ、恩赦というのには、やっぱり国の慶事とか、そういうようなことの喜びを分かつといいますか、みんな平等に喜びたいという意味合いもありまするから、その辺をどういうふうに適宜調節していくのが一番適切な方法であろうかどうかというようなことを、私今後十分考えてみたいと思います。
  17. 西村関一

    西村関一君 いま法務大臣の御答弁によりまして、恩赦直前までは結論を出しかねる、こういうことでございますが、私は、有力な閣僚であり、りっぱな政治家として野党側の私どもの側からも期待をかけております前尾法務大臣といたしましては、今度の恩赦につきましては公職選挙法に問われた者に原則的には及ばさないというたてまえを貫いていただきたいということを強く希望するものでございます。これは御答弁は要りませんから、希望として、このことを申し上げておきます。  次に、私は収容施設の問題につきまして若干御質問をいたします。  現在、刑務所少年院等は幾つございますか。
  18. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 本所、本院というものに限定いたしまして申し上げますと、約百四十ございます。
  19. 西村関一

    西村関一君 これらの施設収容されております人たちに対しまして、法務省といたしましては、矯正あり方をどういうところに置いていかれるのか。まず、そのことをお伺いいたしたいと思います。
  20. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 御承知のように、行刑施設並びに少年矯正施設におきましては、刑事被告人収容している面もございますが、ただいまお尋ねの点は、おそらく受刑者あるいは非行少年の問題だろうかと思いますので、その面に限定いたしまして申し上げます。  この矯正行政重点と申しますか、これにつきましては、何をおきましても、収容を確保すると申しますか、とにかく逃げられるということが非常に困るわけでございまして、収容確保ということが一番の眼目になろうかと思います。  しかしながら、何のために収容するかと申しますると、要するに、そこは矯正教育を行なうための場でございまして、すべての他の活動矯正教育という点に集中されなければならないわけでございます。で、刑務所におきましても、あるいは少年院におきましても、近代的科学的な知識をできるだけ取り入れまして、受刑者改善、更生と申しますか、社会復帰と申しますか、とにかく間違いを起こした者がまた健全な社会人として社会に帰っていくというためのいろいろな措置をいたすということになっておるわけでございます。
  21. 西村関一

    西村関一君 矯正行政あり方につきましては、対象者人権を重んじていくことを主眼として、身体的な、科学的な、あるいは社会的な教育を含めた矯正教育を行なっていきたいということでございますが、現在、私は、従来と比べましてその点が改善されておるということは認めるものでございますが、まだ昔からの慣習が残っているふしが若干ないではないだろうと思うのでございます。もし私の申しますことが間違いであればけっこうでございますけれども、たとえば、全体集会と申しますか、受刑者を集める場合にも、看守の方が所長に報告するのに、「かり込みを終わりました」というようなことばが使われております。こういうことは、もうございませんですか。
  22. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) この御質問をいただきましたので、至急に調べてみたんでございますが、東京周辺では、このことばを使っていないようでございます。で、この繰り込み云々と申しますのは、順々に入れるとか、順々に入るという、自動詞あるいは他動詞に使うことばのようでございますが、現在使っております施設におきましては、非常に限られた場所、しかもそれは工場のようなところではなしに、講堂、あるいは教誨堂というようなところに順々に入れるとかいうときに使用しておるようでございます。で、別に、けさこれは参考までに聞いたのでございますが、石炭を掘っておりまする炭鉱でも、この繰り込みということばは使っておるようでございます。もしこれが何か、受刑者の方に、いかにも刑務所らしいというような印象を与えて処遇上おもしろくないというようなことがございますならば、また十分検討さしていただきたいと思います。
  23. 西村関一

    西村関一君 私は、「集合終わりました」ということばで十分じゃないかと思うんであります。「かり込み終わりました」というようなことばが使われておるということは、もし部分的でありましても、これは改めるように御指示を願いたい。また、その他にも、いろいろそれに類することばがあるんじゃないかと思います。私が関係しておりまする施設の問題ではございません。私は滋賀刑務所関係をいたしておりますが、これは最も新しい施設であり、また、歴代の所長及び職員の方々も、その新しい施設にふさわしい運営をなすっていらっしゃるということは認めるんでございますが、全般的にそういう弊風が残っておりますならば改めていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  24. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) いかにも受刑者に対する処遇であるというようなものが、従来ぼつぼつ目についたわけでございます。たとえば、裸にいたしまして検身をいたしますが、これは素っ裸にいたしまして木をまたがせる。工場に出入りいたしますために、すなわち金づちとか、のみというものを隠して持って出てはまずいというようなことから、素っ裸にいたしまして、さらに木をまたがせる。これが累犯のなれた人間になりますると、非常におもしろおかしく木をまたぐというようなことがございまして、彼らの陰語で、かんかん踊りというようなことを申しておったわけでございます。こういうようなことは非常にやはり処遇上望ましくないということで、徐々にまあ廃止いたしまして、今日かんかん踊りをやっておる行刑施設はないと思います。  同じような考え方で、お尋ねの繰り込みということば、先生は「かり込み」とおっしゃいますが、かり込みというのは使っておりません。「繰り込み」でございます。このことば処遇上やはり適当でないということになりますれば、やめるということにいたしたいと思います。
  25. 西村関一

    西村関一君 いろいろと苦心があることは私も幾らか承知いたしております。改善されておりますことも認めておるのでございますが、やはり矯正教育をいたします場合に、りっぱな職員を確保するということが先決問題じゃないかと思うのでございます。りっぱな職員を確保するためには、職員処遇改善していかなければならぬと思うのでございます。年々刑務官志願するところの者の数が減っておる、また、刑務官の退職する者の数はふえておるということを聞きます。したがいまして、刑務官の質が低下しておるのじゃないかということを心配するのでございますが、現在の状況について、志願者状況あるいは退職者状況並びに職員給与職員処遇等につきまして当局の御答弁を伺ってまいりたいと思います。
  26. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 御指摘のとおり、この矯正教育というものは、犯罪性あるいは非行性を持った人間改善し更生させるということで、非常にむずかしい仕事であると思うのでございます。したがいまして、この衝に当たる職員は非常にりっぱな人物でなければならぬ、そういう意味におきまして、待遇も十分に措置をしなければならぬというふうに考えるわけでございます。と同時に、幾ら待遇をよくいたしましても、教育訓練がこれに伴いませんと、まずいわけでございまして、本年度予算におきましても、その待遇改善の面と教育訓練という面を特に前年度予算に比較いたしまして力を入れた、まあ金額的にはそれほどの問題ではないかもしれないんでございますが、われわれといたしましては、かなり力を入れたつもりでございます。で、昨年の予算の御審議のときにも御説明を申し上げましたが、俸給、給与自体の引き上げにつきましても、その他の諸手当につきましても、あるいは机とか、いすとか仮眠室寝具とかいうような勤務環境における各種の施設の整備、充実というようなことに極力意を用いた次第でございます。そのほかに、ただいま申し上げました、特に、常に受刑者接触いたしまする職員、いわゆる看守看守部長というような一番受刑者に密着いたしておりまする職員、これの再訓練というような経費を計上いたしておるわけでございます。
  27. 西村関一

    西村関一君 刑務官志願する人の数はどの程度になっていますか。
  28. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 毎年平均約五、六百の退職者が出ておるのでございまして、いわゆる公務員試験を通って候補者名簿に載りまして、そして志願をすると、こういうルートで志願をしてくる人々が、実は御指摘のように必ずしも多くないんでございまして、当面、半数以上が縁故採用、すでに働いておりまする職員の子弟、知り合いというようなものからの縁故採用ということになっておる現状でございます。
  29. 西村関一

    西村関一君 私は、その原因がどこにあるかと申しますと、やはり処遇の問題がありますし、それからもう一つは、刑務官とはどういう大事な仕事をしているかということに対する、つまり収容者がりっぱに社会に復帰するということはきわめて大事な社会的な国家的な意義を持つ仕事であるということに対する自覚と申しますか、そういうことが、いまお話しのように再教育ということも考えられてきたんだと思いますが、一般社会に対してそういう認識を深めていくという広報活動と申しますか、刑務所はこういうところである、こういう仕事をしているんである、また、こういうふうにしてりっぱに復帰した事例もたくさんあると、そのために看守人たち日常接触をしながらどんなに苦労をしているかということ等につきましても国民認識を深めていくことも必要じゃないかと思うのでございます。  まず第一に、直接収容者接触をせられるところの看守人たち心がまえの問題、ただ心がまえといって精神的なことで片づけてしまわないで、やはり処遇の問題を含めて心がまえをしっかり持っていただくという、また、そういうことのためにもりっぱな青年が刑務官志願すると、こういう両々相まって成績をあげていくことが大事であると思いますが、だんだん改善されつつあるということでございますけれども、なお御留意を願いたいと思うのでございます。  それから仮眠室お話が出ました。机や、いすの話も出ました。これは私はこの前の予算分科会指摘したところでございまして、仮眠室はきわめて殺風景である、休息をとることができないような——できないとは言いませんが、とるにふさわしい状態でない、というふうに私はあちこちの刑務所を見まして感ずるのであります。その点、いまだんだん寝具等もよくなっておる、いすや机もない刑務所のそういうことに対する配慮もできているというお話でございますが、その点、もう一度お答えを願いたいと思います。
  30. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 何ぶんにも施設の数が多いものでございますから、一挙にというわけにはまいらないわけでございますが、昨年、何年計画でということで申し上げまして、そんなゆうちょうなことではだめだというおしかりも受けましたことにもかんがみまして、鋭意諸設備を整備するための努力をいたしております。特に仮眠室のごときは、夏などは非常に暑くて寝苦しいというような場所もございまして、休憩するのか、くたびれるのかわからぬというような仮眠室もあるようでございまして、そのようなところには実行上ルームクーラーというようなものを考えてはどうかというようなことまで目下検討中でございます。
  31. 西村関一

    西村関一君 収容者の食費はどうなっておりますか。
  32. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 一日平均いたしまして、百円ちょっとでございます。百十円くらいだと思います。
  33. 西村関一

    西村関一君 一日百円ちょっと、百五円、百十円くらいの平均であるということでありますが、それで、はたして栄養のある食事ができるでありましょうか。健康管理が十分だと言えるんでございましょうか。
  34. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 決して十分だということは言えないと思うのでございまして、これもわれわれの毎年の懸案になっておる一つでございます。  で、実情を申し上げますと、施設によりましては、非常に優秀な栄養士が配置されておるところがございまして、その栄養士の方が非常に創意とくふうをこらされまして、この乏しい予算ではございますが、この予算を使いまして、かなりいい給食をしておられるところもあるように思うのでございますが、従来のわれわれの悩みは、この金額があまりに少ないために、動物性たん白というようなものがどうしてもとらせにくいということであったわけでございます。したがいまして、この辺も財政当局にいろいろお願いをいたしたのでございますが、で、結局、本年度予算におきましては、この百十円のほかに若干の増額をしていただきました。それは、一週間に鶏卵を二つ追加するという程度の問題でございますけれども、しかし、これでもその金額にいたしますと、一千万円以上ということになるのでございまして、こういうような点を今後さらに増額をはかってまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  35. 西村関一

    西村関一君 それから、収容者の労役に対する賞与金給付ということがありますですね。賞与金というのはどういう意味でございますか。また、現状では、どのくらい賞与金を一カ月平均与えておられるか。
  36. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 作業賞与金は、受刑者作業をいたしました場合に国が恩恵的に与えるという考え方になっておりまして、労務に対する賃金というようなものではないわけでございます。  で、もともと、この賞与金は、これを与えることによりまして、受刑者勤労意欲と申しますか、働く気を起こさせる、そして、出ていくときには、その自立更生の資金の一部に充当ができるというようなふうに増額されることが望ましいと思うのでございますが、作業収入が年間約七十億でございます。それと、これを踏まえまして——受刑者の中には、相当多くの人間がなかなか、技能と申しますか、能力が低くて、まあ、せいぜい紙細工というようなものしかできないというようなことがございまして、これの大幅な増額が非常に困難な実情にあるのでございます。しかしながら、これは現在は平均いたしますと一カ月に約千円でございまして、まあ一年刑務所におりまして一万二千円程度を持って出るというのが平均の実情でございますが、これは、ただいま申しましたこの賞与金のあるべき性格にかんがみまして、やはり増額をはかっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ちなみに、従来の予算が非常に低かったために、これを急に上げるということがなかなかむずかしい実情にあるのでございますが、本年度予算編成におきましては、やはり公務員の給与ベース改定というような、ベースアップというような実情を考慮いたしまして、一〇%以上の引き上げになっておる。しかし、それはそれなりにまだ改善の余地があるということは事実でございます。
  37. 西村関一

    西村関一君 全体の作業収入が七十億、これに対して賞与金給付額の総額は幾らですか。
  38. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 約五億でございます。
  39. 西村関一

    西村関一君 収容者が働いてあげた収入が七十億で賞与金が五億というと、国がこれらの人たちの労役によって、もうけておるというようなことが端的に言えると思うんでございますが、もちろん、賞与金制度の性格から申しまして、これは普通の労働者の賃金というものではないということはわかりますけれども、やはり収容者の気持ちといたしましては、何か割り切れぬものがあるというふうに私は考えるんでございまして、これはやはり賞与金ということば自体も若干問題があると思いますけれども、いまお話しのように、これを少しく引き上げるということが必要じゃないかと思うんでございますが、いかがでしょう。
  40. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 御指摘の点は、私どもも現在計画をいたしておりまする監獄法改正の作業の過程におきまして、相当議論もいたしましたし、いろいろな改善方策を考慮したのでございますが、なお、いろいろな改善方策を追求してまいりたいとは思っておりますが、たとえば、これを労働賃金というような考え方に変えまして、金を払うということにいたしますと、たとえば、ただいま七十億の収入に対して賞与金五億円だということになりますると、国は六十五億まるもうけというような印象があるのでありますが、別途、卑近な申し方をいたしますれば、この受刑者は食事つきで住み込んでいるというような労働者に準じてくると思うのでございまして、そのような諸経費を全部差し引き計算いたしますると、結局、やはり国のほうが相当部分が持ち出しであるというような実情にございまして、なかなか一挙に賃金というような考え方にいきにくいという実情にあるのでございます。  しかしながら、先ほども申しましたように、とにかく一カ月に千円というのはあまりにも低いということは事実でございますので、今後とも何らかの改善をはかってまいりたい、かように考える次第でございます。
  41. 西村関一

    西村関一君 私が申し上げたいと思っていますのは、受刑者がその収容所の中において働いて、幾らかでも賞与金なるものを貯金いたしまして、社会に復帰いたしましたときのために備えるという意味から、やはり引き上げていただくことがほんとうじゃないか、こう考えるのです。これは御答弁は要りません。  次に、私は教戒師、宗教教戒師のあり方につきましてお伺いをいたします。  矯正施設におけるところの宗教教戒の必要性ということは、いまさら私が申すまでもございませんが、予算の中に宗教謝金というのがございますが、これはどのようになっておりますか。時間がございませんので、簡潔にお答えをいただきたい。
  42. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 宗教謝金は、四十六年度予算におきましては総額で九百七十九万一千円でございます。ただいま御審議をお願いいたしておりまする予算案におきましては九百九十二万二千円というふうに相なっております。  なお、先ほど鶏卵二個の代金につきまして一千万円と申しましたのは、これは約七千万円でございますので、訂正させていただきます。
  43. 西村関一

    西村関一君 この九百九十万円の中には、宗教行事を行なう費用もおそらく含まれておると思うのでございますが、外来の講師に対する謝金は、宗教教戒以外のものは別に予算が組まれていると思います。あるいは映画とか体育とかというようなことも別だろうと思いますが、大体宗教教戒師に対して具体的にどのくらいの謝金が渡されておるのか。
  44. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 平均いたしまして、一回おいでをいただきまして約六百円程度のお金でございます。したがいまして、御熱心な教戒師さんで何回もおいでくださるということに相なりますると、どうもその六百円がまた下がらざるを得ないというふうな実情にあるわけでございます。
  45. 西村関一

    西村関一君 宗教教戒師、教戒師の方々は、みなボランティアでありますから、そういう謝金などを当てにしている人はおそらく一人もいないと思います。しかし、国はそれらの方々におんぶして、国が果たすべき役割りを果たし得ないということは、よくないと思うのであります。たとえば、教戒師の方々が全国的に、あるいは管区ごとに研修会をやられる、その研修会の費用などは、教戒師個人の負担でなくて、国の費用でそういう研修会などをやっていただいてはどうかと私は考えるのであります。で、これは自転車振興会から五百六十万円の補助金を受けて研修会をやったという例もありまして、これが悪いというわけじゃございませんが、教戒師の方々の中には、自転車振興会からの補助金によって教戒師の研修会をやるということに対して抵抗を感じていらっしゃる方もあるようであります。それらの点をも考えまして、法務省予算でこの大事な仕事を奉仕的にやっておられる方々の研修等につきましては考えられていいんじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  46. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 自転車振興会から寄付を受けられるという点は、全国宗教教戒師連盟のほうでおやりになっておられることで、何とも意見を申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、もしこれが国からの予算が十分でないということでこういうふうになっておるといたしますれば、私どもといたしまして、やはり十分に検討をさしていただきたいとも思うのでございますが、何ぶんにも、先生御案内のとおり、事柄が宗教でございまして、宗教的な問題に国がどこまで予算を組めるかという非常にむずかしい問題があるように思うのでございまして、まあ十分ひとつ今後の懸案として考えさしていただきたいと思う次第でございます。
  47. 西村関一

    西村関一君 最後に、法務大臣の御見解を承りたいと思います。  いまお聞き及びのとおり、矯正教育につきましては御苦心をなさっていらっしゃるし、御努力を重ねておられる点はわかるのでございますが、まだまだ不十分な点が多いと思うのでございます。収容者の食費の問題につきましても、めし代を含めて百十円では十分なことはできない、これはわかり切っておる。やはり収容者人権を重んじながら矯正教育の実をあげていく。このためには、職員の素質の向上ということもございます、施設改善ということもございますが、これに対して予算の面からいろいろ当局は御苦労なさっていらっしゃるが、もう少しく予算をふやしてもいいのじゃないかと思うのでございますが、それらの点につきまして最後に法務大臣の御見解を承りたい。
  48. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私も、先ほど来伺います前に、食費につきましてもいかにもちょっと度はずれて低い、あるいは賞与金の問題が出ましたが、これはもう当然改善すべきである、ベースアップで一割上げということでありましたが、そういう点、大蔵省との折衝過程におきまして、いろいろ、法務省全体として、皆さん、まあことしはよけいついたというような感じをお持ちのようでありましたが、中身に入ってみますと、どうもそうでなかった。食費につきましては、先ほど局長から申しましたように、鶏卵二個、七千万円と特別についた、その点はいいといたしまして、賞与金につきましても、実は最後に私その点も持ち出して、何とか上げろと、こう言って大蔵省と折衝いたしました。ただ、ベースアップ以外に上げるというには、もう少し実態調査をさしてくれと、こういうことで来年度に約束したわけであります。そういうような関係もあり、また、教戒師さんに対する競輪の問題について、私承知いたしております。競輪の当局者とも、何か出資金というので、できないかというようなことも申したのでありますが、あそこのたてまえとしてはちょっと困難だというようなことで、今後にこの問題は持ち越してしまったので、私十分ただいまのお話につきましては私みずから認識いたしておりまして、御期待に沿いたいと、最善の努力をいたす覚悟であります。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私もまず法務大臣に伺いたいと思います。  実は私、ちょっといま西村委員の御質問のときに所用で一時席をはずしましたので、あるいは質問が重複するかと思いますので、その点をお許しをいただきたいと思うのでございますが、本日の朝刊を拝見いたしますと、法務大臣恩赦のことについてお述べになっていらっしゃるのでございますが、今回、沖繩復帰に伴って恩赦をなさる御予定でおられますね。
  50. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 新聞に出ております昨日の衆議院のあれは、一般論として沖繩恩赦の問題はまだ白紙である——事実白紙でありますし、一般論として述べたものが載っておるわけでございます。沖繩恩赦につきましては、先ほどもお答えいたしたのでありますが、私は恩赦というものは非常に慎重に考えて、できるだけその日までは慎重に考えるべきものだと思っておりますので、総理からもお話を伺ったことはありませんし、私みずから事務当局にもいろいろ話したこともない、皆さんのいろいろな御意見を慎重に伺って結論を出したい、かように考えております。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 この新聞で十分にわからないのでございますが、一般的な問題として法務大臣恩赦に対する基本的なお考えをお述べいただきたいと思います。
  52. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まあ、恩赦というものにつきましては、国の慶事に際しまして、文字どおり恩恵という面ももちろんあります。しかし、一面、われわれは刑事政策ということも考えていかなければならない。むしろ、刑事政策に沿った合理的な、しかも刑事政策という面から考えますと、個人的にその人をよくしていくということが中心になると思います。したがって、本来はできるだけ個別的に審査をし、その人にふさわしい恩恵を与えるというのが本筋だというふうには考えております。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣の恩赦に対する基本的な御姿勢、よくわかりましたわけでございますが、これは非常にお答えにくい質問かとも思うのでございますが、昭和三十一年の十二月十九日の国連加盟恩赦の場合に例をとりますと、六万九千六百二十七名の者が恩赦に浴しており、そのうち六万九千五百二十五名、実に九九・九%が選挙違反を犯した者であった。こういうことは、これは一般的な問題として、大臣はどのようにお考えになりますか。
  54. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ちょっと、なるほど、六万九千のうち選挙違反が六万九千、異様に感じておるわけでございます。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 この資料が大臣のほうに……。いずれ御検討の上、また機会を見て御見解をお述べいただきたいと思うわけでございますが、この恩赦の性格の中に、これは刑事政策的な意味も多分にあると思うということを大臣もおっしゃいましたし、また、不平等な判決を平等化する、あるいは裁判というものが非常に慎重に行なわれていることはもうよくわかるわけでございますが、何ぶん数が多く、裁くのが人間であるということから、いろいろな不測な事態が起こっている。そういう人たちを救済するというふうな意味も含まれているのではないかと思うのでございます。  たとえば、これは私が若干タッチした事件でございますので、わかるわけでございますが、昭和二十六年に起こった八海事件などにおきましては、その主犯といわれて起訴された阿藤という人は、一審、二審がともに死刑判決で、最高裁で差し戻しになり、第二回目の控訴審で四回目の判決が無罪であり、再び最高裁で差し戻しを受け、そして第三回目の控訴審、六回目の判決は死刑判決であり、しかも七回目、三度目の上告審で無罪が確定したというような例もございまして、この同じ人間が三回も死刑の判決を受けている。ところが、現在におきましては、この真犯人が、彼は全然関係がなかったのだということをはっきりと証明いたしておりまして、こういうふうな全然関係のない人間が三回も死刑の判決を受けるということが、やはりたくさん数ある裁判のうちには起こるという事態を考えますと、私は、この裁判というもののおそろしさを痛感するわけでございますが、こういう問題から考えまして、実は長い間死刑の判決を受けたり、あるいは無期懲役の判決を受けたままで苦しんでいるという人たちがおられます。たとえば、占領下の混乱期に、昭和二十二年の五月に起こった西武雄さん、あるいは石井健治郎さんらを犯人と断定したところの福岡事件というのがございます。これは西さんには死刑の判決が出ております。昭和二十三年一月二十六日に起こった帝銀事件におきましては、平沢さんが死刑の判決を受けたままになっております。また、同じ年の十二月二十九日に態本県で起こった免田事件の犯人とされている免田栄さんも、死刑の判決を受けたまま現在に至っております。また、昭和二十五年の四月、三鷹市の牟礼神社で起こったいわゆる牟礼事件で犯人とされ、死刑の判決を受けて現在に至っておる佐藤誠さんという方もおられます。  このような方々は、事件当時は事情が十分にわからないままに真犯人だと思われておったわけでございますが、いまでは、この事件の真相というものも国民がもう知っている。少なくとも、これらの事件に関係のある人間は真相はどうであったのかということを知っている。まあ、たとえば帝銀事件などを例にあげますと、法曹人の中では、これはもうタブーである、お互いに平沢さんのことはもう口にしないというふうな零囲気になっておるわけでございます。こういう人たちを救済するために刑事訴訟法上再審の規定がございますが、これは大臣も御承知のとおり、非常に門戸が狭うございまして、再審でその判決をひっくり返すということはなかなか困難なことでございます。それで、その再審の特例法案を提出しようということで、昭和四十四年七月八日に衆議院法務委員会にそれが提案されたことがございますが、これはいまの前尾法務大臣じゃございませんが、時の法務大臣が、再審法案にかわる恩赦法の適用を考えているということを明らかにされ、そして現在に至っているわけでございます。  大臣は、この誤った国家権力の行使に、死と直面して、長きにわたっては、もう二十年以上も死と対決しているこの気の毒な人たち、もう冤罪に泣いているということ間違いないこれらの人たちを救済するために、この恩赦において誠意と良心をもって臨んでいただきたい。ぜひとも国家権力が責任をもって国民のための恩赦を行なっていただきたい。私はそのように特にお願いしたいと思うんでございますが、この人権保障と恩赦ということに関連いたしまして、大臣はどのようにお考えでございますか。
  56. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 具体的な問題につきましては局長から御説明いたしますが、もちろん、恩赦、ただいまお話しのように、また再審につきましても、まあ人間でありまするから、もちろん裁判も絶対に間違いないものではありません。また、検察庁にしましても間違いがある。そういうことについての十分な反省をもしながら、恩赦あるいは再審を十分活用して考えていくべき問題だと思いますが、具体的な問題につきましては保護局長から答弁させます。
  57. 笛吹亨三

    政府委員(笛吹亨三君) ただいま御質問にございました石井、西両名あるいは佐藤誠のこういった死刑確定者でございますが、これにつきましては、現在恩赦の上申がございます。また一方、この人たちから再審の請求が出ておるわけでございます。裁判所において鋭意御審理なさっておることと思います。一方、中央更生保護審査会のほうにおきましても、これに並行いたしまして恩赦が相当であるか不相当であるかということの審議をいたしておるわけでございます。  また、先ほど御質問にございました第六十一回の通常国会で時の大臣が再審特例法案の問題についてお話しございました。その件でございますが、その当時、いわゆるあの再審特例法案といいますか、これの対象になった人が七名おったわけでございます。そして、できるだけといいますか、恩赦になるものについては恩赦で考慮して、いこうと、こういうことを申されたと思うのでございますが、それによりまして中央更生保護審査会におきましても、もちろん恩赦に該当し得るものは恩赦に持っていこうということで慎重に審議されまして、その七名のうちの二名の人につきましては、それから間もなく一、二年の間におきまして、減刑ということで恩赦に相なったのでございます。あとの五名の者たちにつきましては、先ほどの西、石井がその中に入るわけでございまするけれども、この人たちにつきましても、現在再審が出ておりますし、また恩赦の請求も出ておるままでございまして、中央更生保護審査会におきまして慎重な審議をいたしておるところでございます。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと法務当局が誠意を持ってあたってくださっているということを伺いまして、たいへんに心強く思うわけでございます。これらの、いま名前をあげました人たちも、これは実際のところは、再審によって自分の無実をはっきりさせたいというのが一番の願いなのだろうと思いますが、しかし、何ぶんにも死と直面して長い間拘置所の中で暮らして、中には平沢さんのような高年齢の方もある。そういう事態を考えますと、ぜひとも法務当局におかれまして慎重に、そして、ほんとうにそれこそ恩赦の精神を持って、慈悲の心を持って、そしてまた国家権力がその責任を持って国民人権を保障するという精神に基づかれまして、ぜひとも誠意ある御処置をお願いする次第でございます。  それともう一つ、これに関連して伺いたいのでございますが、この恩赦あるいは特に仮釈放に関しまして、本人が犯罪事実と違う事実を、判決で認定された事実と違う事実を主張している、あるいは無罪を争っているという場合には、これは主として仮釈放の場合でございますが、恩赦もあるいは関係するのではないかと思いますが、そういう対象からはずされるというふうなうわさをよく聞くわけでございますが、本人の考え方というものが当局の判断の基準になっているのでございましょうか。どうでしょうか。
  59. 笛吹亨三

    政府委員(笛吹亨三君) 仮釈放、特に仮出獄でございますが、御承知のように刑法の二十八条に規定がございまして、一定の刑期を終えた者は、改悛の情があれば仮釈放できるという規定になっております。したがいまして、この事実について無罪を主張するとか、あるいはその事実は私はやっていないのだということで否認するといいますか、そういうことが直ちに改悛の情がないというように普通——改悛の情がないということの一部に普通考えられるもので、そういう御質問が出たのではないかと思いますが、しかし仮釈放をやっておりまする地方更生保護委員会におきましては、そういった本人の主張というものも、これは十分耳に入れますが、行刑施設内における本人の行刑成績、本人が社会に対してどういった気持ちを持っておるか、それから正しく生きていく意欲があるのかどうか、それからまた出所をした暁においてその人の環境がどうであるか、そういったことをもっぱら調査いたしまして、そういったものが仮出獄相当であるという結論になりましたら仮出獄させておるのでございまして、無罪であるとか事実が違うとか言ったことだけで、仮釈放させないということにはなっておりません。また事実、そういった人で仮釈放になっておる実例もあるわけでございます。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話を承りまして、法務行政が、そういうふうな仮釈放、仮出獄の基準が公正に行なわれているということを伺って安心したのでございますが、ぜひともそういうふうな線におきまして、ほんとうに無実の人間が無実を訴えるのは、これは当然なのでございますので、そのような本人の主張によって仮釈放の基準を左右させる、あるいは恩赦におきましても同様、そういうふうな基準を左右されるということのないように、ひとつ特にお願い申し上げたいと思います。  次に、戸籍の問題に移りたいと思います。  これは憲法の十四条で法のもとの平等ということが明らかにうたわれてから、もうすでに二十数年を経過しているわけでございます。そして私どもの戸籍も、昭和二十三年に改正されました民法の施行に伴いまして、新たに戸籍の原簿が書き直されたわけでございますが、現在、除籍簿及び改製原戸籍には、なお従来のとおり族称その他、個人の尊厳と平等な立場を傷つけるような記載がまだされておるわけでございます。基本的人権を擁護する上に、これは重大な問題ではないかと思うわけなんでございます。  たとえば例にあげますと、これは私が一々お見せする必要もないと思うのでございますが、私ここに取り寄せました戸籍に、やはりこういうふうに族称が、「平民」とか何とかという記載、これは除籍簿でございますが、載っているわけでございますし、それから戸主と当人との続きぐあいを、ここにありますように庶子男、庶子女、あるいは私生子男、私生子女というような、そういう表示が除籍簿にはそのまま原簿に残っているわけでございます。そして、これは私ども相続登記をするような場合には、この除籍簿は必ず必要なわけでございますので、登記の謄本あるいは抄本を、市役所、町村役場へ申し立てて交付を受けるわけでございますが、現実には、このような除籍簿の原簿あるいは改製原戸籍などが容易にその謄本が手に入る、あるいは簡単に原簿を閲覧することができるという関係から、結婚調査などに使われまして、そして現実にはその出身が調べられたり、あるいはその系図が調べられたりして、重大な人権侵害問題を起こしているわけでございます。  そのことにつきまして、これは一日も早く、この除籍簿の書きかえ、原簿の書きかえということが、この新憲法下、当然考えられなければならないのではないかと思うわけでございまして、各地方自治体では、すでにそのような作業に非常に熱心に取り組んでおるところもあるわけでございますが、法務大臣としますと、このような身分差別、あるいは出身をはっきりさせているようなこの除籍簿が、現在各市町村役場に残っている。しかも、いつでも国民に閲覧でき、また謄本が交付されるという状態がそのまま続いていることについて、どのようにお考えになりますか。
  61. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話のとおりに、現在使っております戸籍には、もちろんそういう記載がないわけでありますが、除籍簿の中には、おっしゃるとおりのことが載っておるわけでございます。これを全部書き直してつくるということになりますと、まあ金の問題としては百億円ぐらいのものだと思いますが、手間その他のことを考えますと、なかなか容易じゃありません。そこで、結局これをつくり直すといいましても、実際に謄本なりを出しておりますのは、現在の戸籍謄本を出しておる分の一割にも満たない、〇・七%と聞いておりますが、その程度の要求しかないわけであります。でありまするから、これを全部やり直すということはたいへんな手数になりますので、御承知のように戸籍法には、市町村長が正当な理由があるときには閲覧を禁止するというようなこともありますし、こういう関係のものを書かずに謄本を出すということもできるわけでございます。地方的にいろいろそういう要望もあるやに伺っておりますが、その戸籍法を活用していただいて、そしてその分は記載せずに、あるいは閲覧は禁止するというような処置をとっていただきたいと、かように思っておりまして、何らかの方法でそういうことを周知させるということを考えておるわけでございます。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大臣のほうで、いろいろと御配慮いただいていることはわかるのでございますが、現実に謄本を交付するときに、これは、このようにぐあいの悪いところを黒く塗りつぶす、あるいはコピーが写らないようにするというような手段がとられていることが多いようなのでございますが、ところが、わざわざ塗りつぶしたり、あるいはそこだけコピーが写らないようにしてあると、これは結婚調査、就職調査などのときにふしぎに思いまして、特にここが塗りつぶされているのは何かわけがあるのではないかということで、かえって厳格な調査をする。そのために、これは大阪府で昨年も起こった事件でございますが、未解放部落の青年であるということがわかりまして、そのために結婚ができなくなって、ついに彼は思い詰めて自殺をしたというようなことも起こっているわけでございます。そのような事柄から考えますと、これはたまたまその一例でございますが、自殺までに至らなくても、多くの人権侵害を呼んでいると思うわけでございますので、多少費用がかかっても、この除籍簿の原簿の書きかえということに、これは一ぺんにいかなくても、ひとつ御努力いただきたいと思います。  これは各市町村長から申請が、お願いが出ているかと思いますが、大阪府におきましても、この除籍簿原簿を全部書きかえるということは、これは行政が基本的にそういう方針をとっておりまして、大阪府の場合には、大阪市がそれに要する費用は三億七千万円、大阪府下全部で五億六千万円という概算が出ております。ひとつ、これは重大な人権問題でございますので、大臣におかれましても、ぜひとも来年度予算の中にはこの件を組み入れていただきたい、前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  63. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 私から、実情につきましてちょっと御説明をさせていただきたいと思います。  いまの族称でございますが、これは先ほど仰せのとおり、現在の戸籍ではそういうものは記載しておりません。過去のものでございます。したがって、過去の戸籍つまり現在では正式な戸籍として使われていない、除籍として保存してあるものにその記載があるということでございます。この除籍の中にあります族称の記載、具体的には華族、平民、士族という三種があるわけでございますが、これが記載されていることが、除籍につきましても閲覧が許され、謄・抄本の交付が許されるということから問題になっておるということは事実でございますが、この点につきましては、古い通達がございまして、謄・抄本を交付する場合には除籍の部分は写さなくてよろしい、写してはいけない、そこの欄は空欄にしておけという趣旨の通達があるわけでございます。したがいまして、御提示になりましたこの謄本というのは、その通達の上から申しますと違反しているわけでございます。おそらく最近では、こういうコピーというものができてまいりまして手書きをしないというところから、ついこのまま出してしまった、それがこういう結果になったのではないかというふうに思うわけでございますが、従来から、族称というものは無用なものであるから、これは謄本などには記載しないようにという扱いをしておるということを、第一点として申し上げたいと思います。  それから現在、この族称につきまして問題となっておりますのは、全国のごく一部でございます。ごく一部につきまして、その地域の住民感情というようなものを考慮して、除籍の閲覧禁止とか、あるいはその除籍簿原本の再製を考えてほしい、こういう要望が出ているわけでございまして、これにつきましては、閲覧を禁止するという点につきましては、先ほど大臣がお述べになりましたように、戸籍法の規定を活用して、市町村長が自分の判断で閲覧を拒否するということをやってもいいだろうと、こういう考えでおります。  それから、謄本の作製につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、原本を書きかえるという点になりますと、非常にこれは費用が高くつきます。現在、計算してみますと、全国に除籍が四千八百万あるわけでございますが、そのうち一年間に利用されるものというものは、先ほど大臣が仰せになりましたように〇・七%というごくわずかなものでございます。そのために全国にわたっての除籍の書きかえを行なうということは、非常にむだな費用になるわけでございますし、書きかえするにつきましても、いろいろな方法考えられるわけでございます。ですから、一部の市町村におきましては、国が経費を見てくれれば一番ありがたいけれども、自分のところで積極的にやりたい、ついては、いろいろな方法等について相談に乗ってくれというようなことを申しておるところもございまして、そういう点につきましては、できる限りの協力をいたしておるというのが現在の実情でございます。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと、本件について法務当局が御苦心なさっていることはよくわかりますが、しかし、やはりもう憲法が施行されてから二十数年たっているのに、まだこのような原簿が残っているということは、これはやはり責任官庁としても、私は恥ずかしくお考えになるべきことじゃないかと思うのでございます。この事柄につきまして、費用の問題もさることながら、これは非常に基本的な問題であろうかとも思うわけでございます。  で、地方自治体で、いまもお話のように、国から補助がもらえなければもうこれは待っていられないからというようなことで、その作業を始めているところもあると思います。また、先ほどお話にありましたように、出身差別のきびしいところ、あるいはまた、差別される側の人のたくさん住んでいる府県などにおいて、それらの問題が一そう深刻になっているのではないかと思うわけでございますが、これは何といたしましても、この戸籍事務は、地方自治体が法務省の機関委任事務として行なっているわけでございますので、ことしは間に合わなくても、来年はひとつ、その分の予算もしっかり法務省の責任においてとっていただきたい。特に前向きで解決されることをお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。  法務省に対する質問はこれで終わりますので、次に最高裁判所に伺いたいと思います。
  65. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  66. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 速記を起こして。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 昭和四十七年度裁判所予算は、これは八十八億一千七百八十三万円の増で、国家全体の予算の伸び率二一・八%と比べますと、裁判所予算は一四・三%にすぎないわけでございます。そして、そのうちで、工期三年で第二年度をことし迎えている最高裁庁舎の建設費が三十八億六千七百一万円で、沖繩関係費をこれに加えますと、この裁判所予算のうちの五五・七%というものがそれに使われているわけでございます。  最高裁が、これは三権のうちの一つといたしまして、国を代表するようなりっぱな建物、りっぱな庁舎をお持ちになるということは、これはある意味においては当然であり、私もそれに反対するものではむろんございませんけれども、この制限された裁判所予算の中で、最高裁の庁舎費、そして沖繩関係予算、これはまあ当然の支出でございますが、これを引きますと、わずかそのうちの四五%にも満たない額しか残らないというわけでございますが、このような裁判所予算現状で、全国の裁判所において、国民の要望にこたえるよう十分な裁判が行なえるとお思いになりますか、どうですか。
  68. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 本年度裁判所関係予算総額七百四億円のうち、最高裁判所の庁舎の新営に要する経費が約三十八億であり、また沖繩関係が十億四千万円であるという点につきましては、佐々木委員仰せのとおりであります。そこでお尋ねの趣旨は、こういう最高裁判所あるいは沖繩関係予算によって、全国の下級裁判所施設のことでございますとか、裁判事務でありますとか、そうした点に支障を来たさないかという点に重点を置いたお尋ねであると存じますが、私どもといたしましても、佐々木委員の仰せのとおり、裁判は、全国の裁判所にすべて必要なことでございます。国も力を尽くさなければならないことは当然のことでございます。  そこで、若干その点について御説明申し上げたいと思います。  まず、庁舎関係でございますが、これは全国にまだ古い裁判所も残っておりますが、私どもといたしましては、そうした古い裁判所の新営でありますとか、あるいは増築でありますとか、これにつきましてはとりわけ力を注いでおりまして、庁舎をつくり執務環境をよくするということにずっと力をいたしております。幸いにいたしまして、ここ数年来、予算面におきましてもそうした下級裁判所の整備というものも進んでまいりました。昭和四十五年度、新営を認められましたものが十二庁、四十六年度十八庁、四十七年度二十四庁というふうに、下級裁判所の新営のほうも伸びているわけでございます。また、それに伴いまして、いろいろな執務環境の改善といったこまかい点につきましても、できるだけ努力をいたしておるつもりでございます。今後とも、そうした点につきましては十分な努力を傾注いたしたいと、かように考えます。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は昨日も私、大阪の友人の裁判官にちょっと電話をして、現在その裁判官の部に、これは民事ですけれども、係属している事件を何件担当しているのだということを聞いてみますと、彼の場合は、そこの部は八百三十六件とのことだったわけであります。これはどう考えてみましても、人間離れした数字ではないかと思うわけです。彼自身も、その人は非常に裁判官ということに対する使命感に燃えている人でございますので、これはもう命がけでもこの裁判をやらねばならぬと、一生懸命になっているわけですけれども、どうしても一人一つの部で八百三十六件というのは、むちゃくちゃな数である。そうして、その裁判官が幾らがんばってみても、その手足になる書記官あるいは速記官の数が全然少ないので、本人が幾らがんばるといっても、これはもう限界に来ているという話なんでございます。  いま、庁舎その他などについての設備が、ある程度完備したようなお話がございましたが、この一番肝心な人員の配置充実ということについて、これは最高裁のほうでどのようにお考えになっているわけでございますか。
  70. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 大阪地方裁判所の事件の負担の過重は、多年指摘されておりますところで、私どもも非常に責任を感じているところでございます。庁舎の関係がきわめて狭隘でございましたために、人員も、増員が思うようにならないというような事情がございましたので手当てもできなかったのでございますが、庁舎の完成とともに、部としてのていさいをなす施設としての余裕ができてまいりますので、増員についてはそのリザーブをいたしておりますので、その関係はできるだけ、いままでの御不自由をおかけした分もあわせて解決いたしたいと、このように、ただいまいろいろ計算中でございます。  なお、これはいいとか悪いとかという問題ではございませんで、やはり、その土地における裁判の結論に対する納得と申しますか、その土地の方の法意識による裁判に対する理解の程度、当事者の納得を得るというような観点から、どうしても証拠調べにも特殊な手続の進め方というようなものが出てまいります関係からか、大阪、京都方面が、一般に審理期間がほかの地域に比べて少し長くかかっている。そういう事情が出てまいりますと、悪循環で、ますます次回期日が遠のくというような事情も出てまいりますので、そういう点もあわせて解決されれば、負担件数というものも、延びたがための負担増というものも解消されていくと、こう考えております。いずれにいたしましても、増員の件は、庁舎の完成とともに、私どものほうは最優先に手当てをいたしたいと考えておる次第でございます。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、いろいろ大阪の現状についても御配慮いただいているということでございますが、要するに、この審理が大阪、京都などで長引くということは、これは人員が足らないから、次の期日までの期間が六カ月以上かかる。証人調べを一回やれば、五月に証人調べがあれば、次回期日は、夏と秋を通り越して十二月ころになるという現状である。そういうことから、一年に二回ぐらい。そうして、三年たつと、もう裁判官は転勤で、その間、また半年ほどブランクがあく。やっとやってもらえるかと思うと、また裁判官が異動するということで、これでは結局、裁判所で働く裁判官や職員の方々もたいへんであると同時に、それ以上に、裁判を受ける国民にとっては、これは憲法の、裁判を受ける権利というものが事実上奪われたようなかっこうにもなってしまう。  そういうことにつきまして、最高裁のりっぱな庁舎を建てるということも、司法の権威を示す上にあるいは必要なことだとは思いますけれども、それより以上に、司法の権威を高めることは、これは国民の信頼にこたえるところの裁判を充実するということだと思うのです。そういう点について、ぜひとも、今後とも当局のほうで人員の確保ということについて、特に御配慮いただきたいと思うわけでございますが、それは裁判官のみならず、いまも申し上げましたように、書記官あるいは速記官について特に充実していただきたいと思うわけです。  それから裁判所職員が、いま申し上げたような非常な労働過重で、職業病を訴えている者が多い。また健康をそこなう者が多い。そういう事柄について、これは当局としてどのような対策を考えておられるか。
  72. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判所書記官、それから速記官の職業病の問題は、実は私どもといたしましては、非常に重大な問題としてこれまでも取り組んでまいりましたし、今後もその点については全力をあげて、職業病といったようなものが起こらないようにいたしていきたいということを考えておる問題でございます。  御承知のように、書記官にいたしましても速記官にいたしましても、手を使う、手の指を使う仕事でございまして、いわゆる書痙という職業病、あるいは腱鞘炎という職業病、あるいは頸肩腕症候群といったような、その職業に特有の病気というものが全国的にあるわけでございます。しかし、全国的と申しましても、主としてそれが多く発生いたしておりますのは、東京、大阪といった大きな裁判所に群生するというような状況にあるわけでございます。  で、私ども現在の状況といたしましては、そういったことがなくなるようにするということが、これがもう根本の問題でございますが、ただ、現在の速記システム、あるいは書記官の調書の作成といったような観点から見てまいりますと、なかなかこれを根絶していくということはむずかしいことでございます。現在、そういった病気を訴えておる、そういった症状を訴えておる者に対しましては、できるだけ早急に、それが公務に起因するものであるかどうかといったようなことの判定をいたしまして、公務に起因する場合は、当然国家の費用をもってその治療・治癒に全力をあげるということでございます。また、そうでないということでございましても、そういった速記の仕事をする人、あるいはものを書く人、あるいはいわゆる和文タイプ等を打つ人、そういった人にそういう病気が多いということでございますれば、これに対する抜本対策として、書くというようなことをできるだけ合理化していくように、コンピューターとかそういうふうなものを、いわゆることばを文字にいたします過程において導入できないかどうかというようなことについても、真剣に検討に取り組んでおる、そういう状況にあるわけでございます。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、その裁判所職員の労力軽減について、いろいろ新しい方法をお考えというようなことを伺いまして、実は、東京地裁民事の三十五部方式のような、新しい試みをとられているということを聞いているわけでございますが、そういう新しい方式を、この是非については私も十分にまた御意見も承って検討したいと思っているのでございますが、この新しいコンピューターその他の機械力を用いるとなれば、またその財源が問題ではないかと思うのでございますが、それは、予算上どういうふうになっておるわけでございますか。
  74. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) コンピューターの導入に関しましては、現在、まだ研究開発の段階でございます。四十七年度予算には約一千万の予算を計上いたしまして、研究開発をいたす予定になっております。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは全国の大きな裁判所でしょうが、一千万ぐらいで何とかなるんですか。私ども思うと、焼け石に水のような感じがするのですが。
  76. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) ただいま申し上げましたように研究開発でございまして、まだ実用化という段階には入っていないわけでございます。でございますので、将来実用化ということになりますと、もちろん相当の予算を必要とするわけでございますが、研究開発でございますので、現在はその程度でもって研究をいたすということになっておるわけでございます。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは機械化を行なうか、あるいは人員を急いでふやすか、どちらかの方法を早急にとっていただきたいと思うわけです。  今度は家庭裁判所の調査官のことについて伺いたいのですが、今度全国で十五名増員になったわけですが、これも私、同じく焼け石に水じゃないかと思うわけでございます。いま少年事件の担当調査官ももちろん仕事が非常に多いわけでございますが、このごろ、とみに家事調査官の仕事の負担が多くふえている。そのために、非常にこれも労働強化されているという状態でございます。  この件に関しまして、私、家事調停事件を事実上行なう調停委員の年齢などを考えますと、これは六十歳台の人が一番圧倒的に、全国的に家事調停委員の中で数が多い。その次が七十歳台が多い。そしてその次が五十歳台、そして四十歳台が四番目になっていますが、五番目が八十歳台。そういうふうな非常な、ほかの社会の年齢配置から比べると高年齢になっている。これは私も、実は個人的なことですが、調停委員の経験もございますので、この調停というものが、かなり年齢がいっているほうがやりやすい場合、また説得力のある場合も非常に多いと思うのでございますけれども、これはあまりにも年齢がいき過ぎているのではないか。そのために実際の活動が、元気な調停委員であれば十分自分でできるところの仕事も、家事調査官の負担になっていることが多いのじゃないかと思うのですが、そういう事柄に対して、家庭裁判所ではどのようにお考えでございますか。
  78. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 今年度、家庭裁判所調査官の増員がわずか十五名にとどまったということは、やはり全体的な事件処理の観点からは遺憾なことでございますが、事件の伸び率及び、何よりも給源の関係からいたしまして、十五名にとどまらざるを得なかったわけでございます。家事関係で、ことに資質の調査の必要なことが近年力説されておりまして、この方面にも非常に重点を入れていきたいということは強い念願でございます。  なお、調停委員の年齢の高齢化ということは、ことに家庭事件の紛争の解決という面では、新しい法の理念と家庭の倫理というものからはきわめて問題の存するところでございまして、臨時調停制度審議会というものを設けまして、この点についてただいま真剣に御検討をいただいておりますので、その成果を見まして、抜本的な改善策を実現していきたいと、このように考えている次第でございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからもう一つ、これは大阪の家庭裁判所の調停室のことなんでございますが、これは、大阪の家庭裁判所が事件数に比してきわめて狭い。そのために、調停をやるのに一つの部屋を間仕切りして二つの調停事件をやっている。ところが、御承知のとおり、家庭事件というのは秘密を要する問題であるが、もう隣りのつい立ての向こうで言っていることが手にとるように聞こえる。こちらでは、慰謝料二百万ぐらい出せと話をしているのに、つい立ての向こうでは、十万円で話が解決したということが聞こえてくると、これはもう調停も何もむちゃくちゃであるというような非常にぐあいの悪い状態になっている。この家庭裁判所の調停室を、もっと、少なくても私は三倍ぐらいふやさないと追っつかないと思うんでございますが、どのように考えておられますか。
  80. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 佐々木委員の仰せのとおり、調停をする場合の部屋でございますが、これは非常に大事なことでございます。そこで話すことが関係者に漏れるということになりますと、これは調停の成立に非常に悪い影響を与えることでございます。大阪家庭裁判所の調停室は現在約三十近い数があるわけでございますけれども、一部会議室などで間仕切りをして使っておる、そういうところから、そういう問題が発生していることを実は私ども最近初めて承知したわけでございます。これに対しては早急にその問題を解決したいと、まあかように考えます。  なお、全国的な点につきましても——まあ大阪周辺におきましても、御承知かと存じますが、尼崎でございますとか堺でございますとか、ごく最近におきましては神戸家庭本庁におきましても増築をいたしまして、法廷もふやす、あるいは調停室もふやすという措置をとっております。かような点も今後全国的に十分配慮いたしまして、そういう関係に支障のないように努力をいたしたいと考えております。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、また大阪のことで恐縮なんでございますが、いま大阪の高裁庁舎を新しく建築され、一部完成したわけでございますが、工事の施行者は、これは最高裁の事務総局直接が施行者になっていらっしゃると思うんでございますが、この設計などにつきまして、実は、この一部完成した庁舎で現実に仕事をするとなると、これは司法労組と申しますか、裁判所で働いている職員人たちの話では、非常に健康上ぐあいが悪いという、日当たりが悪いし、それからエレベーターが数が全然足らないので乗れない、また、この広い庁舎の一方にのみしか階段がないので、たとえば五階から六階の反対側の一つ上の部屋へ上がるためにも、一々何十メートルか何百メートルのところを歩いて階段を利用しなければならない、非常に能率が悪いというような話を聞いており、また、弁護士の人たちも非常にその点、こぼしているわけなんでございますが、こういう裁判所の庁舎をお建てになるときに、裁判所職員組合とか、あるいは地元の弁護士の方たちと、その設計について十分御相談になっていただいているんでしょうか、どうなんでしょうか。
  82. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 大阪高等裁判所のことについてお尋ねがございましたが、大阪高等裁判所は、実は第一期工事と第二期工事と分けて工事を施行しております。で、仰せのとおり、これは最高裁判所におきまして直接設計をし、直接工事の施行をやっておるものでございます。そこで、第一期工事がことしの三月に完成したばかりでございまして、第二期工事はいまから二年かかるわけでございます。そこで、本来でございますと、第一期工事は、法廷棟、法廷分としてつくったところでございますので、法廷だけに使うのが本則でございますけれども、実は、佐々木委員も御承知のとおり、大阪法円坂に大阪地方裁判所の民事の分室がございまして、堂島と離れておるということで訴訟関係人にいろいろ御迷惑、御不便をおかけしております。そこで、第一期工事が完成したこの機会に、法円坂分室に勤務する裁判官あるいは職員もそこに収容しまして、そこで執務していただく——ここはもちろん設備の点におきましても全館空調というふうな設備になっておりますので、そうした点はよろしいのでございますけれども、いずれにしましても、これは本来執務の部屋としてつくったものではございません。法廷としてつくったところに入っていただいている、そういう部分もあるわけでございます。したがいまして、そういう観点からして、そこに入った裁判官あるいは職員といたしましては、これはちょっと部屋としてはおかしいじゃないかというふうな疑念を抱かれるのは、これは十分うなずけるところでございます。しかし、それはまあ、二年間そこで裁判所の者もしんぼういたしまして、できるだけ訴訟関係人にも便利なようにいたしたいという点から来ましたので、これは二年後にはすっかり解消する問題でございます。  なお、エレベーターの問題が出ましたが、エレベーターも、現在は十五人乗りのエレベーターが七台ございます。将来は事務棟のほうにも、またさらに六台ふえまして、かなりの数に実はなるわけでございますが、実のところを申しますと、四月は法円坂から移転したばかりでございまして、あさって移転が完了するということになっております。そこで、裁判所の内部の交通制限をいたしまして、現在ちょっと交通に不便なような状態を来たしております。そこで、職員あるいは弁護士の方々にも御不便をおかけしている事情があるのではないかと思います。これもやがて通常の形に変わるはずでございます。  私どもといたしましては、設計にあたりましては、裁判所職員でありますとか、あるいは弁護士さんでございますとか、そうした人々の意向というものを十分踏まえまして設計に当たっておる次第でございまして、まあ大阪の裁判所につきましても事務棟の建設が残っておりますので、今後ともそういう点に配慮いたしまして努力を傾注いたしたいと考えております。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話でよくわかりましたが、今後さらに工事を進められます上におきましても、これ、実は裁判所の偉い方々は一たん庁舎へ入ると一日上がったりおりたりする必要があまりないと思うんですが、実際そこで働く職員とか、あるいは裁判所仕事をする弁護士をはじめ、一般国民は、これは上がったりおりたりしなければならないので、そういう人たち、たとえば弁護士会とか裁判所職員意見も十分にお聞きの上で、さらに続く工事をお進めいただきたいということを特に要望申し上げる次第です。  それからもう一つ、これも全国全部というわけじゃないと思いますが、たとえば大阪の従来の、いま使用している裁判所などでは、これは古くからのでございますので、駐車場が全然ないわけでございます。むろん、自動車を無理して入れれば、とまると思うんですが、駐車禁止になっておりますので、庁内に自動車は置けない。ところが、このごろはもう大衆の足としてみな車を利用している。そうして、証人に呼ばれたような人が十時に出頭ということで車で来たら、裁判所の中へは車を入れてはいけないんだと言われて、あわてて付近の有料駐車場を探し回るが——これは東京も同じだと思いますが、過密の中にありますから、有料駐車場が昼間おいそれとあいていないわけですね。ところが、裁判所の呼び出し状には、故なく出頭しなければ拘引するなどと書いてあるものですから、初めて出頭する人たちは縮み上がりまして、これはおくれたらたいへんだということで、もうやむなく路上に車をほって裁判所に飛び込む。ところが、証言を終わって出てきたならばちゃんと罰金が取られるようになっているということで、こういうことの苦情は、実は私個人の耳にでも、もう一月に何べんも聞くわけなんでございます。これは、駐車場法によりますと、これは昭和三十二年にできておりますが、公共の建物におきましては、これだけの面積においてはどれだけの駐車場を用意しなければならない、しかもそれは、そこの庁の車でなくて、一般国民の利用するための駐車場を備えなければならないという規定が、きまっているわけでございまして、新築の庁舎におきましては、それはもちろん裁判所当局も守っていただけると思っておりますけれども、これは、従来からの庁舎についても、やはり裁判所の責任で何とか、駐車場を借りるとか、そういう方法をとっていただかないと、これはあまりにも国民の立場というものを無視した裁判所あり方じゃないかと思うわけです。こういうふうなことで、ひとつ前向きに検討なさるおつもりはありませんですか。
  84. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 大阪高等裁判所につきましては、四十八年度に完成いたしますので、その際に、庁舎の周辺を整理いたしまして、そこに駐車場をつくるという計画になっており、現在その具体的な設計を進めているわけでございます。車の問題は、佐々木委員の仰せのとおり、これは現在におきましてはたいへん大事なことでございますので、ただいまのお話を十分頭にとどめまして、具体的な設計につきましては配慮いたしたいと考えます。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、ぜひとも前向きに早急に取り組んでいただきたい。裁判所に証人に出たばかりに、次は刑事被告人になったという人があまりにも多いわけです。そういうことをよくお考えいただいて、早急に対策を講じていただきたいと思います。  時間もありませんので、最後に、これは検察審査会のことでございますが、今度初めて沖繩で検察審査会というものが設けられるわけでございます。検察審査会、これは本土で発足しましたときは私もよく覚えておりますんですが、はなばなしくこの新しい制度というものが国民に宣伝されたと思うんでございますが、まあ、いまは遺憾ながら一ときほど国民がこれを利用していないんじゃないかと、私感ずるんでございますが、沖繩におきましては今度初めてこういう制度が用いられると思いますので、そういうことについて、検察審査会当局とすると、沖繩県民にこういう制度を知らすための用意というものを、どのように考えておられるか。
  86. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 沖繩についてのお尋ねでございますけれども、沖繩におきましても、約二年間本土と同じ検察審査会が設けられておりまして、その二年間の間、現地の検察審査会の事務官の献身的な努力で、広報には非常に力を入れておるようでございまして、若干の事件も、これまで取り扱った実績もあるようでございます。したがいまして、今後本土に引き継ぎました以上は、私どももそのあとを担当しなければならないわけでございますが、広報については本土と同様努力してまいりたいというふうに考えております。
  87. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんので、あと最後に、この広報の問題でございますが、昨日時間もなかったのでそれ以上お尋ねできませんでしたが、あまり裁判所広報活動はしないでいいんだというふうな趣旨の事務総長の御答弁のようだったと思うんでございますが、私は、これは大きな間違いであると思うんです。やはり裁判所というものはどういう仕事をしているのかということ、これは民間会社のようなコマーシャルなどやる必要はないと思いますけれども、国民に裁判の果たしている役割りというものを正しく認識させる必要があるのではないか。また、国民が、そういう制度がある、たとえば家庭裁判所に行けば家事相談にも乗ってもらえる、あるいは貧困者は法律扶助という手続も、訴訟扶助の手続もあるんだ、あるいは検察審査会という制度もあるんだというようなことは、これは私は裁判所の責任においてやはり広報しなければならないんじゃないかと思うわけでございます。そういうふうな点で、広報ということにどのくらいの予算をさいておられるのか。
  88. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 広報が非常に大事な仕事であるということは全く佐々木委員仰せのとおりでございまして、私どももそのために十分な努力をいたさなければならないと考えます。予算といたしましては、約一千万円の予算を計上してございます。
  89. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間もございませんので、最後で……。  まあ、いまお話を承っていますというと、いずれもこれはお金につながる問題で、予算がないためにできないということが多いと思います。そういうことにおきまして、まあ事務総局とすると、国民の要望にこたえる裁判所というものを実現するためにどのように今後取り組まれていくおつもりであるか、これは事務総長から最後にお願いしたいと思います。
  90. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) お尋ねの点の前に、ちょっとお断わり申し上げますが、私が予算委員会で佐々木委員の御質問に対しまして、裁判所としては宣伝をあまりしてはいけないではないかという趣旨を申し上げました。これは、訴訟事件を無理に起こして裁判所に持ってくるようなことを宣伝してはいけない、こういう意味で申し上げましたので、先ほどお尋ねのように、やはり裁判所の制度を、ことに裁判制度、それから調停制度、検察審査会の制度、こういう制度があること並びにそれについて裁判所としては準備もよく整えてある、こういうことは大いに宣伝しなければならないと思っておるわけでございます。先ほども経理局長が申しましたように、予算も千万円、それから人員もそれについてはとってございます。その点については御心配のないように今後いたしたいと思います。  最後に、まあ予算全体のことについてのお尋ねだと思いますが、私どもといたしましては、やはり訴訟の適正迅速ということが一番裁判所に課せられた問題だと考えております。この目的を達するために、やはり予算の裏づけというものはこれは絶対に必要でございますので、予算をできるだけ多く計上するように懸命の努力をいたしておりますし、今後もなお一そうそういうことにいたしたいと思っております。
  91. 佐々木静子

    佐々木静子君 最後に法務大臣に、この事実上の予算の問題を担当されているお立場としまして、今後の御姿勢についてお述べいただきたいと思います。
  92. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 裁判所なり検察庁の予算につきましては、率直に申しまして、人間中心で、事業をやるところではないものでありまするから、予算の技術から言いますと非常にとりにくい予算であります。しかし、また、仕事がじみで、世間に知られない、といって、国の治安なり、あるいは法秩序を守る上には一番大事な仕事であります。日本が非常に治安が守られ、まあ、ほかの外国から見ますと法秩序もわりあいに、こう、守られてきているというところに経済成長があったんだと思います。したがいまして、ここに予算をとるということについては、私は、非常に大事なことだというので、ことしの予算の編成方針にも法秩序の維持というようなことを一項目あげてもらって、その旗じるしのもとに、できるだけとりたいというので努力はしたのであります。もっとも、法務省としましては、裁判所予算は最高裁でおやりになっておりますが、しかし、やっぱり関係深いわけでありまするから、ただいま申しましたような予算の編成方針に入れるというようなことによって、側面的にまあ援助していかなければならぬというふうに考えておりますし、今後におきましても、極力、法務省なり裁判所の重要性ということを認識さして、万全を期して、予算を十分とるということに努力していきたいと思っております。
  93. 佐々木静子

    佐々木静子君 これで終わります。     —————————————
  94. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) この際、分科担当委員異動について御報告いたします。  ただいま、西村関一君が分科担当委員辞任され、その補欠として工藤良平君が選任されました。  午後一時再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  95. 松下正寿

    ○副主査松下正寿君) 第一分科会を再開いたします。  昭和四十七年度予算中、裁判所及び法務省所管一括議題として、休憩前に引き続き質疑を続行いたします。  質疑のおありの方は順序御発言願います。
  96. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最初に、中国人と、北朝鮮の人民共和国のいわゆる籍といいますか、北鮮人の法的地位の問題で伺いたいのですが、戦争の終結で、いわゆるポツダム宣言のあとで日本が平和条約を結んだ、その平和条約の効力が発生した日から日本の国籍を離脱した者についての、その問題解決のために、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基づく外務省関係諸命令の措置に関する法律というのがありますが、その法律の、昭和二十七年の百二十六号でありますが、二条六項の中に、そういう方々については「出入国管理令第二十二条の二第一項の規定にかかわらず」と規定されて、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」と、こういうふうにありますけれども、これが、いわゆる韓国籍の者については法的地位に関する協定で解決をしておりますけれども、ほかの者については、戦後すでに二十数年たっておるのに、いまだに解決を見ていない。こういうところからひとつ伺っていきたいのですけれども、現在のところ、いわゆる二条六項に該当していた者の中から韓国人だけが抜けたわけでありますけれども、抜けた人と、抜けなかったいわゆる朝鮮籍の人あるいは中国人といいますか、そういう方の、日本にいる身分上の法的な差異、違いというのはどういうところにあるのですか。
  97. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) ただいま御指摘の、韓国との協定によりまして韓国国籍を持っておる方が、百二十六号該当者の方と処遇の点で違うおもな点を申し上げますと、まず、退去強制の事由の適用範囲が違っておること、協定永住の方は七年以上の刑に処せられた者、それから一般の百二十六号該当の方は一年をこえる刑に処せられた者という、その点で違いがございますし、それからまた、協定永住をとった方は国民健康保険の適用を受けるという点で違いがございます。それからまた、日本を引き揚げて韓国に帰る場合の、財産の持ち帰りに優遇措置を受けるという点、そういった点がおもな違いであると存じます。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうしてこういう差ができたものか。片方は協定ができたからだということだと思いますけれども、二十数年たってしまっているという点から考えても、やはりこの辺で何らか、この違いというものをなくしていかなければいけないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、その辺、大臣はいかがお考えでしょうか。
  99. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 協定を結んだ国には、協定でそれだけの恩典といいますか、相互主義でいろいろありましょうが、そういう恩典といいますか、そういう有利な点があるわけです。協定を結ばない国は、率直に言って、すっかり違った待遇に甘んじなくちゃならぬということでありますが、これはやはり協定を結ぶというところに意味があるので、したがって、これから協定を結ぶような国になる、と言うと失礼な言い分かもわかりませんが、お互いに協定を結ぶような国になっていくことが望ましいということでありまして、協定が結ばれぬのにこちらで特別な措置をとるということは、これは積極的にとるべきだというふうには、私まだそこまではいかないような感じがするわけであります。
  100. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで問題なのは、この法律百二十六号、これで見ると、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間」となっておるわけです。ここのところには、協定の協の字も出てこないわけです。それが一向に「決定」されてこない。「法律」も定まってこない。これは非常に問題だと思うのです。一方は、いつまでも無資格で在留する、また期間というものもまあ無原則といいますか、そういう点に出てくるわけで、これは結局、この法律第百二十六号の第二条六項に、完全にその精神に反しているのではないかというふうにしか考えられないわけですが、その点はいかがですか。
  101. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 御指摘のとおりずいぶん時間がたっておりますが、ただいま私どもといたしましては出入国法を今国会に提出しておりますが、これを御審議願いまして、これが通りました段階において、法律百二十六号のほうの手当てをいたしたいと考えておる次第でございます。
  102. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、それはさかさじゃないかと思うのですね。これは逆に言えば、はっきり言って百二十六号の法律の手当てが先じゃないかという感じがしております。それから後に考えてもいいのじゃないか。というのは、韓国人の問題が解決されていなければ何も言うことはありませんが、これは解決を見ている。先ほども話があったように待遇でも、健康保険であるとかあるいは生活保護であるとか、義務教育であるとかというものの保障がある。一方にはそういう保障はない。そういう待遇のことは別としても、資格についても、一方は無資格、片方はある。こういう点では非常におかしいと思うのです。これははっきり申し上げて、現在では完全な外国人ということになっているわけでしょう。そうですね。完全な外国人であれば、なおそういうみぞというものを早目に埋めることが先じゃないですか。その辺はどう考えているのですか。
  103. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 現行の出入国管理令も、制定されまして二十数年を経ておりまして、現在の航空機の発達により大量輸送化の時代になっておりますので、まずこれを先に、出入国法の制定によりまして改正いたしまして、しかる後にこれをやりたい、百二十六号の改定をいたしたいということで、過去数年にわたってその方針で進んできておりまして、御承知のとおり出入国法案が現国会に提出された段階でございますので、御指摘のとおり、どちらを先にするかということにつきましては御議論もあるかと思いますが、現在の準備段階から申し上げまして、実情を申し上げますとそういうことになっておる次第でございます。
  104. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、この法律百二十六号にあるように、すみやかな国内法の制定というのは、これは行なうことははっきりしているんですね。
  105. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 行なうことは、われわれの方針としてはっきりしております。
  106. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 管理令が出入国法になる、それが法律になる、ならないということとこれとは、やはりどこまでも管理令を改めた後でなければやらない、こういう感覚ですか。それとも管理令が法律になるのが非常に時間がかかるということであれば、百二十六号のほうを先にいじるということにするのか。どちらでしょうか。
  107. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 御承知と思いますが、現在の出入国法の原案に当たりますものは、過去六十一国会にも提出されまして、その後多少の改定を加えながら今国会に提案されておりまして、準備の進みぐあいから申し上げまして出入国法が先になったということでございまして、法第百二十六号を改定しないという意図は毛頭ございません。
  108. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 出入国管理令の第二十二条「永住許可」の問題がございますが、これについても現在対象にはなっていないわけですね、はっきり申し上げて。そうすると出発点では、この管理令で見ても、現在の韓国の方も全部が同じように扱われていたのじゃないかと思うのですけれどもね。どういうことになるわけですか、そこは。わからないので伺うんですが。
  109. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 韓国との協定ができます前は、同じように取り扱われておりました。
  110. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、はっきり申し上げて、日韓の間の協定ができた、そうして戦前からいる韓国人は協定永住を与えた。その後平和条約締結までに日本に入ってきた者には、入管令の第二十二条による永住権を与えている。さらに、協定永住者の家族には同じように永住権を与えている。こういうふうに、いろんな段階で優遇措置を一方に与えているわけですね。それが片方には全然適用されてこないというふうに、まあ適用されないというわけじゃないけれども待遇が違ってくる、こういう点はどういう理由によるのですか。理由はどういうことによるのですか。
  111. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、日韓両国の間では、諸般の懸案を解決するため、長い間かかりまして日韓協定を締結いたしまして、その交渉の過程においていろいろ懸案となっておったことを具体的に取りきめて解決したわけでございます。したがいまして、そういった取りきめのない中国及び朝鮮民主主義人民共和国の国籍に属する方の間には、そういった特典が及ぼされていないという状況でございます。
  112. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大臣、そういう点は非常に私はおかしいと思うのですね。いつまでもいつまでも置いてやる、と。戦後二十数年たっている。一方についてはいろいろ特典が与えられるけれども、一方は、出入国管理令によるところの、素行が善良であるとか、独立の生計を営むに足りる資産または技能を持っているとかという、そういうようないろんなことがあったりして、そういう有資格者である。しかも、どう見たって日本人じゃありません、外国人です。それなのに取り扱いが違ってくるということは、これは大きな問題になると思うのです。これから先、法務大臣も非常に中国との問題についてはお考えがあるようでありますけれども、中国とかあるいは北朝鮮の人民共和国とか、こういうところとの復交とかいろんなことを考えていけばいくほど——国内では、大きな差しさわりになる問題じゃないと思うのです、それだけに、法的な整備というものを、先ほどのような答弁よりもさらに急いで私はやらしたほうがいいのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しますと、まあ韓国と同じような状態に国同士がなっていくことが望ましいことであり、ただいま、こちらの手続の関係からいいましても、出入国法をぜひ今度は通していただいて、すぐそれに着手していくということで進んでいきたいと思います。これは両面でやっぱり促進すべき問題だと思います。
  114. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この問題はそのぐらいにしまして、今度は入管行政そのものについて、簡素化の問題について伺いたいのですが、外国人の期間の更新とか再入国の申請、こういったようなことについて、十四歳以上は本人が入管の事務所へ出頭しなければならない、こういうことになっているのでございましょうか。
  115. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) お説のとおりでございます。
  116. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは管理令にはないわけですね。どういうものでやっておられるのでしょう。
  117. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 省令に基づいてやっております。
  118. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 たとえば五人の、十四歳以上で成人に達しないお子さんがいた、こういうような場合に、親がその日、子供たち一人一人と行ってあげなければならない、付き添って行かなければならない。あまり年端がいかないということになると、そうなると思います。その負担というものも非常にたいへんでありますし、ですからこういうのは、ばらばらに行かないで家族が一括して行ったら済んでしまうというような措置は、とれないのかどうか。これは事務的な問題ですから、改善ができるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  119. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) いまの御質問は、滞在延期・更新の期間が、全く同時にたとえば五人の子供にくれば、同時に出頭してやっております。ただ、時期が異なりますと、それぞれ別々に行なうということをやっております。
  120. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 だから、そういうふうにばらばらになるのを避けるために、一括して行ったときには、ある程度の時期というものをまとめて受け付けてしまうというようなことはできないのかということです。それとも、入管は人が余ってるから何度でもいらっしゃいと、こういうことなのか、ということになっちゃいますから。
  121. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 運用上、期間が同一あるいは非常に近接しておる場合には、一括してできると思います。
  122. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 非常に近接しているというのは、どのくらいの期間をいうのですか。
  123. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 別に、特にどのくらいということは私も見当がつきませんけれども、たとえば、申請いたしまして許可になるまで二週間程度かかるといたしますならば、その二週間あるいは三週間ぐらいの近接は認めてもいいのではないかと存じます。
  124. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 できるだけそういう点は、在留の外国人にも便利なようにさしてあげなければいけないと思いますのでね。  その次には、申請のときに、もう一ぺん受領のときに、二度行かなけりゃならぬ、こういうように本人が出頭するということがあるわけでありますけれども、これは責任ある代理者が行けばいいというふうには、少なくとも一回にはならないのかということですね。
  125. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 申請に際しましては、御本人の旅券を見て、また御本人と間違いがないということ、それから御本人の意向を聞くという意味におきまして本人に出頭していただき、それから、その旅券をそのままお預かりするというわけにまいりませんので、その旅券を返して、今度許可になります際には、その旅券に承認を与えるという意味でまた御本人の出頭を求めて、少なくとも二回だけは御本人の出頭がやはり必要であるというふうにわれわれ考えております。
  126. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 だから、私は一回は代理でいいのじゃないかと言うのですよ。最初のときには旅券をきちんと見るわけですから、二度目のときには、ほかの代理人が旅券を持ってきてもいいというふうにはできないのかということです。
  127. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 病気その他で御本人が出頭できない特別の場合には、例外的に認めております。
  128. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 例外的な話を聞いているのじゃないので、そういう便宜というものは与えてもいいのじゃないかということなんですから、いまは病気のとき等にやっておりますというのじゃなくて、一回目に来たときに、申請を受け付けたときにパスポートと合わせるのであれば、本人に間違いないということがわかったわけでありますから、死亡とか何とかというのであれば別でありましょうけれども、再び来るときには、代理人が委任状なり何なりを持ってくればよろしいというふうにはできないのですか。
  129. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 一応、旅券は御本人が常に携帯しておるというたてまえでございますので、従来は申請の際と、それから許可の際、出頭を願っております。しかし、いま先生のお話にございました点につきましては、今後、方針として改定することができるかどうか、われわれとして検討さしていただきたいと思います。
  130. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから再入国申請のときには納税証明書というものが要るのでしょうか、いま。どうも管理令ではわからないのですが。
  131. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 納税証明書は、その人の職業あるいは活動状況によっては提出を受けておりますが、全員に対してこれは提出を要求いたしておりません。
  132. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 話ですからほんとうかどうかわからないのですが、欧米人には要らない、ただし中国人であるとかあるいはそのほかの方々、東洋人には要るとか要らないとか。こういうことは、実際問題あるのかどうか。あったら問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  133. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 欧米人、東洋人ということで差別ないし区別はいたしておりません。
  134. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、納税証明書それ自体が要らないのじゃないか、ということは、管理令を見ましても、納税云々の問題でもって強制退去の理由にはなっておりません。そういう点で、納税証明書を添付するという意味がよくわからないのですけれども、どういうわけで必要があれば添付させるのか、その意味について伺いたい、理由を。
  135. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 特に商業活動をやっておられる方の、在留状況を審査する目的のために徴取いたしております。
  136. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その、在留状況の審査をしなければならないということは、法律のどこにあるのですか、それは。
  137. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 外国人の再入国許可をいたします際には、法務大臣の自由裁量になっておりますので、本人の在留状況等、諸般のことを慎重に検討いたした上で決定するということにいたしております。
  138. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうも納税証明書がよくわからないんですね。ただそういう在留の状況を見て、納税が滞納されているから許可をしないとか、そういうものでもないわけでしょう、と言うんです。それとも、事業活動をこんな大々的に、こんなに税金を納めるほどやっているんだから再入国を認めない、こういうふうなことのために用いられるのか。だから私は、一つむだな書類をお取りになっているのじゃないか、こういう気がするものですから伺っているのですが、その辺はいかがですか。それを取って状況を調べるというのは、どういう状況をお調べになろうということなんでしょうかね。
  139. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 税金をたくさん納めていただいておるということに対して難点はございません。むしろ、滞納があるのではないかという観点から調べておるのでございます。
  140. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 滞納があった場合には、国税庁等とも連絡をとったり何かして、いろいろなことをおやりになるのですか。そういうことはしないのですね。
  141. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 御指摘の点はやっておりません。
  142. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうも私は、その点はぴんとこないんです、はっきり申し上げて。滞納しているかどうかなんていうことを調べるのだったら、国税庁のほうでがっちりこれは押え込んでおりますよ。そういう点で、調べるのは可能であろうと思いますし、そういうのはちょっと私は書類としては要らないじゃないか、事務の簡素化の点で考えられたらどうかということですけれども、これはひとつ大臣においても検討してみていただきたいと思います。要望だけにしておきます。  それから非常に話があれでありますけれども、中国人コックの問題でありますが、中国人のコックについて、日本でいま現在、何人ぐらいの中国人のコックがおられますか。
  143. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 熟練労働者としての資格を取って日本に入っております者が、御参考までに申し上げますと、昭和四十四年から申し上げますと、四十四年が百二十七名でございます。四十五年が百五十三名でございます。それから四十六年が百四十四名でございます。
  144. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 熟練労働者というのは、全部コックというわけですか。そうじゃないでしょう。
  145. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 全部が全部コックということではございませんが、ほとんど大多数が中国料理のコックでございます。
  146. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日本に一体何年ぐらいおられるんでしょうかね。それからそういう人たちがわが国から出ていった場合、またすぐ入ってきているのか、きていないのか、その辺のところもちょっと伺いたい。
  147. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) いま、日本に入ってきた人たちが総数でどれくらい滞留しておるかということは、詳細な統計がございませんが、大阪の万国博覧会が終わりました昭和四十五年に統計を一応調べまして、その時点において、滞留しておる者が大体三百八十四名でございました。それで、先ほど申し上げましたのは入国でございますが、これが出国いたしましてまた再び日本に帰ってくるという者も多少おると聞いておりますが、その数はきわめて少数と承知しております。
  148. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大体何年ぐらい日本にいることができるのですか、普通で。
  149. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 最初の入国にあたりまして、一年間の在留期間を与えております。その後二回だけ更新を認めておりますので、計三年になると思います。
  150. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどの答弁では、きわめて少数の者が再び入ってくるというような話ですけれども、日本のいまのこの数から見れば、非常に数が少ないわけですね。そういう点から見ても、たかが知れていると思うのです。人によっては、一ぺん本国に帰ってまた再び入ってくるというふうにならざるを得ないので、そういう点の弾力的な運用というのは今後考えられないものでしょうかね。
  151. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 現に申請がそれほど多くないということと、それから申請にあたりましては、職場の規模その他営業状況を見て、そういった中国人コックが必要であるかどうかという点だけをチェックいたしておりまして、強い規制は現在のところ設けておりません。
  152. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 できるだけ早くそういう点は円滑にしてあげて、二回の更新じゃなくて、三年たったら一ぺん本国に戻ってまた来るというようなことは、よほど考え直してあげていただきたいと思うのです、そんなむだのないように。  それから一つここでちょっと伺っておきたいのですが、保証書を出すようになっておりますが、その保証書の意味はどういう意味ですか。
  153. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 保証書は、往復の旅費を負担させるということと、生活費を保証する、それから日本において日本の法律を守らせるということを保証させる意味において、あらゆる人から取っております。
  154. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは新聞記事なんですけれども、四月二十日の朝日新聞でしたか、ベルギー人だと思いますが投書が出ておりまして、その中に、日本の女性とベルギーで結婚した、日本語の勉強のために妻とともに入国した、ところが滞在ビザは、日本にいる日本人の滞日保証書がなくてはだめだという法律で、近親者訪問ビザで入国をした、自分の奥さんがいながら、その奥さんが日本人でありながら、その妻が保証ができない、本人の素性も何も知らない者が保証書を書いている、こういうことは非常に理解できない、ということがあるのです。夫のほうは妻を保証できて、妻は夫を保証できないという、こういうふうになっていくと非常におかしなことになるのでありますけれども、申請をし直すとなれば、一ぺん国外に六十日行ってこい、それだけの旅費はないし、という投書があるわけです。  これは、弾力的な法の運用というものをはからなければいけないのじゃないかというふうに、非常に感ずるわけです。運用していくのに何となく一つ一つぎくしゃくしていて、非常に扱いにくいものになっているという感じを受けるのですけれども、この点は改善方法はないものかどうか、またどう考えるのか、この点、伺いたいのです。
  155. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) ただいま御指摘のケースは、おそらく観光ビザで入ってきた方かと思いますが、現行法令によりますと、観光ビザで入ってこられた方の資格変更はできないというたてまえになっておりますので、われわれはそういった点も考慮いたしまして、ただいま国会に提出しております出入国法におきましては、そういった点で融通性を持たせるという方向で法案を作成しております。
  156. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから次は、だいぶ雑誌とかあるいはいろんなものに書かれているのでありますが、いろいろなところに外国人のホステスが働いている。外国人ホステスの入国というものは許可をしているのでしょうか。どう見てもこの第四条にはないんですけれどもね、管理令の。
  157. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 御指摘のとおり、ただいまの入国管理令では、ホステスとしての在留資格はございません。したがいまして、その目的で在留しようとする者に入国を許可したことも、また、別の在留資格を持っておる者が資格外の活動として申請してきて許可したことも、いまだかつてございません。
  158. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、銀座とか赤坂で外人のホステスがいる。こういうのは、これははっきり申し上げて違反になるわけですね。
  159. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) お説のとおり、在留資格外の活動でございますから、違反でございます。
  160. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 じゃ、その場合、資格外の活動をしていると当然取り締まりの対象になるわけでありますけれども、その取り締まりの対策、それからどういう措置をいまとっていらっしゃるか。
  161. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) まず一応在留指導を行ないまして、在留期間の更新を求めてきた際にこれを認めず退去さしておりますし、また非常に悪質な者に対しましては、直ちに資格外活動で退去強制をとる手続をいたしております。それで、一例といたしまして、四十六年三月に、浅草のクラブでホステスとして働いておった韓国の女性二人が退去されておりますし、また四十六年五月、渋谷のクラブで稼働しておりました外国人女性、アメリカ人二名、フィリピン人一名がやはり退去強制になっております。
  162. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それがはっきりと違反になり、いまのように取り締まりをしているというならば、これは「コーリアンハウス」というのがあるそうでありますけれども、そういうところへつとめているようないわゆるキーさんといわれる、これはまあはっきり言えば芸者みたいなものですけれども、そういう者が働いているのも違反になるわけですね、あそこで働いている人は。
  163. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 韓国系の料亭に招聘されておる韓国人の女性は、歌舞音曲を業とする者で興業活動をするという意味で、例の四条一項九の在留資格によって適法に入国し、それから滞在期間は二カ月でございまして、一度だけ更新し、最大限四カ月在留するということになっております。
  164. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは四条の九というのは「演劇、演芸、演奏、スポーツその他の興業」を行なうということになるわけですね。そういうことをおっしゃっても実態はホステスじゃないですか、あれは。そういうふうに、どなたから見ても完全にホステスだと、こういうふうにいわれている、それが第四条九号のいわゆる芸能人であるということであると、これは非常におかしいです。まあ、入管にまつわっているいやなうわさもちょっと聞いておりますけれども、それは私は信じておりませんがね。こういう点、非常にすっきりしないものがあるのですけれども、たとえ二カ月、更新して四カ月といっても、一方にきびしく、一方におかしいと。ちょっとどう考えてもこれはおかしいじゃないかというふうにしか考えられないのですけれども、いかがですか、その点は。
  165. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 私ども了解いたしますところでは、韓国系の料亭では、韓国側が迎賓館等に利用するということと、それから、これらの女性はその料亭で働く以外に、少なくとも二回は養老院その他のところで公演をするというふうに了解しております。
  166. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、養老院そのほかでもって興行すればいいということになれば、先ほどの強制退去をさせられたホステスの場合も、そういう意味でもって動いたならば、それはけっこうでございます、いわゆる慈善活動みたいなもので、けっこうですということになるんですかね。
  167. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) ただいま原則的なことは申し上げられませんが、そういったものはケース・バイ・ケースで審査していけると存じます。
  168. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は非常に、そういう資格外のいわゆる活動というのは好ましくないと思うんです。すでに新聞等にも、英字新聞にもホステスの募集の広告も出ている。そういうことで、いろんな形で現在すでに外人ホステスがあらわれている。しかも、これは入国管理令のどこにもない。はっきりいえば全部資格外活動です。中には学生のビザで入ってくるのもいるでしょうし、いろいろある。そういうのは好ましくないことだと思うのですね。  では一体、この取り締まりはだれがやっているのかということが一つ。これは入管がおやりになっているんでしょうけれども、その取り締まりの人数はどのぐらいいるのか。この二つを伺いたいですね。
  169. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 昨年一年間における資格外活動の取り締まり状況を申し上げますと、立件いたしました件数が九十七件でございまして、このうちホステスに関する件が三十四件でございます。
  170. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 取り締まりの人数、こちらの。
  171. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 取り締まりに関しましては、主として警備官が全国的にやっておりまして、このものだけのために何人動員され、どこで何人ということは、はっきりわれわれとしても把握しておりません。
  172. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この問題、これは法務大臣、はっきり申し上げて、英字紙にも、ある銀座のクラブの広告が出ている。若いホステスを求むという、勤務時間から、月給についてもトップサラリーを出すというようなことが書いてある。こういうようなことが行なわれているというのは、ちょっと感心できないと思うんです。で、はっきりとするならばはっきりしていただきたい。  先ほどのいわゆる「コーリアンハウス」の問題、入管局のほうからの話は、芸能人である、こう言っておりますけれども、裏へ回るともっとひどいのがあるらしいんですね。いかがわしいふるまいとか業務をやっているのもいるらしい。しかも、それに対していろいろ、これはうわさですから私は信じたくないのですけれども、入管において何かそことのつながりがあるのではないかというような話もある。こんなことではまずいと思うんです。ですから、この辺についてはっきりした措置をおとりになるというふうにしていただきたいし、この点がかっちりいきませんと綱紀の紊乱にもなることでありますので、いかがお考えか、それを伺いたいのです。
  173. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 公然とそういう広告が出たりしておるというようなことを、ほっておくわけにはまいりません。また、「コーリアンハウス」についても、これは長い慣習で簡単な問題ではないと思いますが、しかし、それがいかがわしいようなことが行なわれるということであれば、厳重に注意もし、あるいは韓国に大使を通じて交渉しなければならぬ。いずれにしましても、ただいまお話のような点、十分調査して適正なやり方をやりたいと思っております。
  174. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 入管へ最後の質問ですが、入管事務所ですね、これが国の玄関であり、そこを通ることによって、日本国というのはいい国か悪い国かとか、国の品位というものもいろいろ言われるわけでありますけれども、ところが東京入管でも、また地方においても同じですが、トイレもよくない、食堂もきたない、こういうのが非常に外国人の間で評判になってきている。これは、わが国の品位としても非常に感心できないことなんです。何としてもこれは改善すべきだと思いますが、四十七年度予算でおやりになる気があるのか、ないのか。
  175. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 入国管理事務所は全国に十三カ所ございまして、中には非常に老朽化しておりまして、皆さまに御迷惑をおかけしているものがございます。私どもとしましても、鋭意これを改善していきたいというふうに考えておるわけでございまして、現在、まだ完全にでき上がっておりませんものが五つございます。そのうち、今年度中に新装成って新しいものができ上がりますのが、名古屋、神戸二カ所と、それから、すでに予算に計上されておりまして着工しようというのが大阪でございます。その他、あと二カ所につきましてもようやく計画が固まりましたので、明年度中には必ず着手をするように運びたい、さらに既存の建物の維持管理等につきましても、御指摘のような点もよくわきまえまして、なお万全を期していきたいと、こう思っております。
  176. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 入管についてはその程度で終わりますが、あと法務省に、刑務所の問題でありますが、刑務所の移転のことで伺いたいのですが、土浦の刑務所が動くというような話でありますけれども、あれも町のまん中のお城のそばにあるということで、ぜひとも早く実現してほしいと思いますけれども、これはどういうふうな経過になりましょうか。
  177. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 土浦拘置所は、ただいま御指摘のように土浦市のお城あとの近くにあるわけでございますが、非常に近隣が発展いたしまして、市のほうから移転の要請がございました。昭和四十四年ごろから、この拘置所をどこか郊外のほうへ移してくれないかという要請がございまして、その後、移転候補地をいろいろさがしておりましたところ、ようやくこれが見つかりましたので、現在、市当局との間に話を詰めておりまして、ただいま四十七年度が始まっておりますが、四十八年度で移転についての予算措置を講ずるよう手配をいたしたい、こう思っております。
  178. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あと地は、どういう計画がいまありますか。
  179. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) これは市のほうへおそらくお渡しすることになると思いますが、市のほうから承っておるところによりますと、新しい市の庁舎あるいは市の公会堂にお使いになる、こういうふうに伺っております。
  180. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つは、これは浦和の刑務所のあとですね。あそこのあと地はどういうふうに利用されていくのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  181. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 浦和刑務所は、御承知と存じますが、昭和四十五年の暮れに川越少年刑務所のほうへ移転をいたしまして、そのあと地が約五万平方メートルあるわけでございます。このうち約四万平方メートルは、あとで申し上げますような官庁用地に予定しております。残りの約一万平方メートルを、埼玉県の御要望によりまして埼玉県へ払い下げるという計画でございます。  で、いま申しました約四万平方メートルの中身を申し上げますと、表通りのほうに並びまして法務省関係の合同庁舎が一つ、それから裁判所の合同庁舎が一つと、それからその裏のほうにすでにできておりますが、拘置所が一カ所とそれから少年鑑別所が一カ所、こういうふうに利用する計画になっております。
  182. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは裁判所がおられますかね。いらっしゃらないですね——。そうすると、裁判所の合同庁舎をつくるとなると、いままでの裁判所のあとはどうなってしまうのですか。
  183. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 裁判所のあと地の処分については、私ちょっと的確な知識がございません。
  184. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つは、例の宇都宮の刑務所を動かす際に黒羽のほうへ動いたのですが、あの際に非常に刑務官の方が、家族の方々が、移転をすると通学に非常に困難であるとか、あるいは自分が移転をしなければ今度は通勤に困難である、こういうことで非常に問題になったわけでありますけれども、そのあとはどういうふうに片づいたのか。この経過をちょっと伺いたい。
  185. 羽山忠弘

    政府委員羽山忠弘君) 御指摘のように若干不便であるということで、転任を非常に希望しない者がございましてちょっと心配されたのでございますが、その後の措置といたしましては、主として北海道出身の刑務官の子弟を採用いたしまして、現在、独身寮に入れましてまかなっております。で、黒羽刑務所平均年齢が、たしか二十二歳か三歳か、きわめて若い職員が多い施設ということになっております。
  186. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 けっこうです。   〔副主査退席、主査着席〕
  187. 松下正寿

    松下正寿君 時間も制限されておりますから、私は、法務省関係は公安調査庁の問題の一点だけをお尋ねしたいと思います。  公安調査庁は、むろん破壊活動防止法に基づいて設置されたもので、破壊活動を防止することが目的になっておるわけでございましょうが、現在公安調査庁に使われております予算はどのくらいで、それが、人件費がどのくらい、調査費がどのくらいの割合になっておりましょうか。
  188. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  公安調査庁の四十七年度予算の要求は、基礎額四十七億円でございます。その七割までが人件費でございまして、その残り十数億のうち、活動費は十億とちょっとというところでございます。
  189. 松下正寿

    松下正寿君 役所のことですから、全体として人件費が七割占めることはそれほどふしぎではない、至ってあたりまえだと思われるわけですが、どういう調査をしておられるわけでありますか。これは詳しく御説明を願わなくてけっこうですから、つまり、破防法で規定されておる一番重要な点について、十分な調査が行き届いておるかどうか、こういう問題ですが。
  190. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  御指摘のように、私どものほうでは破防法に基づきまして、過去において暴力主義的破壊活動を行ない、将来もまたそれを行なうおそれがあると認められる団体につきまして、規制を目的に調査しているわけでございますが、そういう団体はたくさんございますので、そのうち、特に危険性が大と認められる団体を、いわゆる日本共産党をはじめ左翼を九団体、それから右翼は大日本愛国党をはじめ七団体、合わせて十六団体、その中にはいろいろな分派がございまして、分派も入れますとたくさんになりますが、一応左翼九団体、右翼七団体、十六団体につきましてこの調査対象というように公安調査庁の長官が指定いたしまして、それにつきまして、詳しい調査項目を指示いたしまして、その役員がだれであるとか、あるいは団体意思はどういうようにして決定するとか、あるいはどういう団体にどういうようにして入り込んで、どういう活動をしているかということを絶えず調査しておりまして、その結果を全国から集めまして、それぞれの関係方面に報告あるいは連絡というようにいたしております。
  191. 松下正寿

    松下正寿君 その調査のやり方は、どういう方法で調査しておられるわけですか。
  192. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  御承知のように、破壊活動防止法によりまして、私ども公安調査官には強制調査権が与えられておりません。すべて任意調査という形でございます。で、その調査対象団体は、合法面、非合法面、いろんな活動をしているわけでございますが、私どもは合法面の活動はもちろん、公開の集会あるいは公刊された文書、そういうものを集め、あるいはそういう団体に接触している人からいろいろな内部のことを聞き出しまして、それを総合していく、こういう形が主なるものでございます。  それから強制権を伴うものにつきましては、これは破防法によりまして、警察あるいは検察庁と密接に協力しなければならないという規定がございます。その検察庁あるいは警察が強制捜査によって得られたところのものを、私どもの調査の役に立ち、規制に役に立つものはいただく、私どものほうで捜査とか警備の役に立つ情報を得た場合には、これを警察や検察庁に提供する、こういうことで非常に密接に連絡しております。
  193. 松下正寿

    松下正寿君 非常におかしな質問で、また非常に失礼な質問みたいな感じもしますけれども、たとえばこの間の連合赤軍派の事件とか、ハイジャックの事件とか、いろいろな世間を騒がすような重大な事件が起きたわけですが、その際によく世間では、警察は何してるか、なぜああいうことを未然に防止し得なかったかというような、こういう非難はちょいちょい聞くわけですが、その非難の中には公安調査庁というものの非難を聞いたことがないわけです。  これは、まことによく職務精励しておられて非難の余地なしというふうにも、そう解釈すればけっこうだと思うのですが、これは私の邪推かもわかりませんが、破防法というものができたときは非常に世間で騒いだわけですが、現在では、この破防法があることもまた公安調査庁というものが存在しておることも、世間では忘れているのじゃないか。あるいはこういう公安調査庁の存在など忘れられたほうがいいのかもわかりませんが、この忘れられているというのは、非常に仕事がうまくいっておってそれでスムーズにいっておるから、その調査活動がうまくいって人にあまり心配を与えないようにやっておるから、世間から非難もされないしまた存在も認められない、こうであれば非常にけっこうだと思うのですが、まあ何か存在価値がないのじゃないかというような、せっかくたくさんの金を払って努力をしておられても、ああいう事件が未然に防止できなかったし、あまり、活動されてもそれだけの効果が上がっていないじゃないかというような疑問が起きるわけです。  これを公安調査庁長官にお伺いするというのは少しお門違いかもわかりませんが、御自分のほうでどういうふうに認識しておられるか、非常に率直な失礼な質問ですが、ちょっと御見解をお願いしたいと思います。
  194. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  先生から御指摘のとおり、表面立った活動をいたしていませんので、世間にあまり知られていない、何をしているのだ、何もしていないではないかというような声も一部にあることは、私ども承知しています。ところが、先ほど来申し上げておりますように、私ども二千名の職員でございますが、それぞれが全力をあげて仕事をしているわけでございます。  御指摘のハイジャック事件のとき、これは、その前年の四十四年の春ごろ結成された共産主義者同盟赤軍派の犯行でございますが、この団体は、その結成当時から非常に過激なことを言っておりましたので、調査対象団体に指定いたしまして極力調査をしておりました。ところが、東京戦争、大阪戦争、それから大菩薩峠事件が引き続き、幹部をはじめ大多数検挙されまして、残った者はわずかであった。その連中が四十五年の一月ごろにまた再建活動をいたしまして、東京で集会を開いて、四十五年の秋に武装蜂起しようではないかということを言っておった。そのためにキューバその他へ兵員を派遣しまして、資金を得たりゲリラ訓練を受けようということを言っておりましたので、鋭意、もっとそれを確めようと調査を進めておる段階で、ハイジャックが起こったというわけでございます。  それから浅間山荘事件につきましても、この京浜安保は御承知のように、日本共産党革命左派神奈川県委員会という団体の指導を受けている学生反戦団、労働者反戦団、婦人反戦団等の共闘組織でございまして、これもやはり四十四年に結成されたのでございますが、当初から非常に過激なことを言っておりましたので、破壊団体として極力調査しておりましたところ、その後、米軍基地を襲撃したりあるいは猟銃の強盗をしたりいたしまして、幹部はじめ大多数の者が検挙されたわけでございまして、その赤軍派と京浜安保共闘の残党といいますか、その数十名が、昨年の九月ごろに連合赤軍というものを結成した。ところが、この両派はそれぞれ理論なども違いまして、大体一つになるのがおかしいような団体でございます。これはまあ金とか武器とかいう面で結びついたものと思われますが、いわゆる団体、私どもの規制の対象であります団体であると言うには若干疑問がございました。極力調査はしようとしていたのでございますが、そのうちに、三、四十名の団体でございますので、ほとんど全部地下にもぐりまして、私どもの調査が行き届かなくなった。その段階でこういう事件が起こりまして、非常に残念だったと。  私ども、全然先生の御指摘のように役に立っていないとは思っておりません。大菩薩峠事件その他の検挙にも、警察に情報を提供いたしまして、何らかのお役に立っておりますし、その他でも、ふだん極力、先ほど申し上げましたように検、警に連絡いたしまして、あるいは調査しましたところを政府の関係機関その他へ通報いたしまして、いろいろな面で相当効果をあげているつもりでございます。ただ、表面的にあまり出ていませんので、先ほど御指摘のような御批評もやむを得ないと考えておりますが……。
  195. 松下正寿

    松下正寿君 私は綿密に勉強したわけじゃないですが、日本の破防法ができたとき、アメリカの国家安全保障法を参考にしたらとかいう議論もございましたが、アメリカの実例としては、連邦捜査局ですか、FBIと非常に密接な連絡をとって、国家安全保障法は非常にうまく運用されているというふうに、私は間接に聞いておるわけです。具体的に、アメリカのやり方と現在の日本の調査庁のやり方と、どういうところが違うのでしょうか。私の聞いた、アメリカではうまくいっているということは多少誇張されておると思いますが、これは直接の所管事項でないですけれども、もし御存じならば参考までにお教え願います。
  196. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  御承知のように、御指摘のようにアメリカには国家安全保障会議というのがありまして、これは大統領、副大統領、それと国防長官とか、いろいろな最高メンバーが国家の安全について議する会議でございますが、その事務局的な仕事として、国家情報委員会というのがございまして、これにはいわゆる中央情報局CIAの長官とか、あるいは国防省の者、あるいは国務省の者、あるいは原子力の調査をしている機関とか、いろんな国防、科学、外交、それから先ほど言いましたFBIとか、そういういろんな機関の長が集まりました会議で、それをCIAの長官がリードして、そこで出たいろんな問題をまとめて、先ほどの国家安全保障会議に報告する、こういう形になっているそうでございます。  日本の公安調査庁というのは、先ほども申しましたように破壊活動防止法によりまして破壊団体を調査をして、場合によっては公安審査会に規制を請求するという、いわば、調査機関あるいは情報機関というよりは、司法機関に準じたような手続をするような機関というように定められております。したがって法務省の中に置かれているわけでございまして、まあわが国内でも、内閣調査室とかあるいは外務省の調査部とか、あるいは警察庁の警備局とかあるいは法務省の刑事局とか、私どもの公安調査庁、こういう機関を統合したような調査情報局を設けろというふうな御意見も一部にあるように聞いておりますが、先ほど御指摘になったアメリカのその委員会とは、非常に性格の違うものでございます。そのように承知しております。
  197. 松下正寿

    松下正寿君 要するに、現在の公安調査庁は万全を期すことができない、人事的なこともないわけでないでしょうが、主としてやはり制度に原因する、そういうふうに理解してよろしいですか——。  そうしますというと、法務大臣にお伺いしたいわけでございますが、破防法というものは、悪くすると非常にこれは基本的人権に影響を及ぼすもので、その点は非常に調査活動は慎重にやっていただかなければならぬ。行き過ぎなどは厳に慎んでいただかなければならぬ。これは当然のことだと思いますが、同時に、必要があるということが前提となってこの役所が設けられているわけです。そうであるとすれば、行き過ぎはいけませんが、行き足らずといいましょうか、十分に機能を発揮しておられないということがあるとすれば、これは非常に残念なことであって、何か改善の余地がありはしないかと思われるわけでありますが、その点についての前尾法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  198. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま御指摘のことにつきましては、私みずからが非常に心配しておることであります。  率直に申しまして、調査庁の諸君は一生懸命にやってはくれてはおりますが、はたして現実的な効果をどこまであげているかということについて疑問を持っておるのでありまして、これは全く調査庁の諸君に申しわけないわけでありますが、どこに根本的な難点があるか、どこを克服しどう改善していけばいいかということについて、最近私も、もう少し科学的な調査、そういうものができないものであろうかというふうなこと、それと、ただいまお話しのようにいろんなところとうまく連絡して、それが総合的に活動できるような方式をやはり考えなければいかぬのじゃないかというような点、ばく然と考えておるのでありますが、何しろ国会が忙しいものですから、法務省全体の人の意見を聞き、改善に着手するという段階に至っておりません。これは早急にやらなければいかぬ、かように考えておる次第でありまして、全くお答えになりませんけれども、ただいまお話しのとおりのことを、私みずからが感じておることだけを申し上げた次第でございます。
  199. 松下正寿

    松下正寿君 私、長く学界におったわけでありますが、学問の研究という点から見ますと、いろいろなことを調査されるということはこれは非常に重要なことだと思いますが、公安調査庁は、学問を研究する機関ではなくて、現実に犯罪を防止することを終局の目的としておられるわけですから、どちらかというと、世間から憎まれる役を買っておられるわけです。あまり役に立たなければ、もっと制度の改廃ということを考えなければならぬ。もし存在が必要であるとするならば、行き過ぎは避けなければならないが、行き足らないようなことのないように——法務大臣がいま、残念ながら私の最も憂慮しておることに御同意なされたわけでありまして、まことにこれは残念でありますが、これはお答えは要りません、いまのお答えで十分だと思いますが、その点を十分に御留意くださいまして、所期の目的を達するよう改善をしていただくように、いろいろ御考慮願いたいと思います。  次に、私は裁判所の問題について二、三お伺いいたします。  最近だいぶ下火になってまいりましたが、三、四年前から、現行少年法の改正ということがいろいろ問題になっておったようであります。これについて、裁判所側と法務省側と見解が違うということも世間に伝えられておったわけであります。これは裁判所は、改正の構想についてどういうお考えでございましょうか。
  200. 裾分一立

    最高裁判所長官代理者裾分一立君) 少年法の改正につきましては、昭和四十五年六月に、法務省の決定されました「少年法改正要綱」が法制審議会に諮問されまして、現在、法制審議会の少年法部会で審議が進められております。  裁判所側の基本的な考え方といたしましては、昭和四十一年の五月に法務省の発表されました少年法改正構想に対しまして、四十一年十月、最高裁判所の裁判官会議の了承を得まして発表しました「少年法改正に関する意見」の中に明らかにしておるのでありまして、現在でも基本的な裁判所側の考え方というものは変わっておりません。  これは要するに、裁判所としましてこれまでの制度運用の実績に照らしまして、現行少年法には幾つかの改善を要する点があるかと考えております。その、改善をわれわれが要すると考えております点は、第一に、保護処分の種類をもっとふやしまして、非行少年に対する処遇の充実というものをはからなくてはならないのではないか、こういうことが第一点。  それから非行少年に対する保護処分と申しましても、身柄を収容したりするような保護処分がございますから、言ってみれば、国家の権力によって少年の身柄を拘束するという実質的な側面を考えまして、少年自身は、自分自身の身を守る、弁護する能力というのもおとなほど十分ではありませんので、そういう少年に対しましては、むしろ手続上、国選弁護に相当するような国選付添人制度といったようなものを新設しまして、少年の権利保障・強化のための規定を整備するということが必要ではなかろうかというふうに考えます。  それから第三には、一定の範囲で検察官に、審判の席で意見を述べるとかあるいは検察官に裁判所の処分に対する不服の申し立てをなす権利を与えなくてはならないのではないか、そういったようなことも検討する必要があるというふうに考えております。  裁判所としましては、このように現行制度につきましても幾つかの改めるべき点がありますが、それは現行制度の充実強化の方向での改正が必要だと考えておるわけでありまして、これらの点は裁判所のみならず、各方面においておおむね異論のない点であろうかと思います。  しかし、法務省の改正要綱の言うような青年層の設置——青年層の設置と申しますのは、現行少年法が三十歳までを少年として取り扱っている、それを十八歳未満ということに改めまして、十八歳に達した少年、それから十九歳の少年、これを青年と申しますが、この青年層という層を少年とは違った手続、主として刑事訴訟法による手続でやっていこうというような考え方、あるいは検察官が先議権を持つというような現行制度の基本的な構造、基本原理といったものを変更するような方向の改正というものは適当ではないし、またその必要がないのではないかというふうな考え方に立っております。  それから、少年法は少年の取り扱いの基本法制でありまして、その改正ということは、非行少年処遇に関する国家百年の大計といったような面から光を当てて、十分に議論をしまして、この非行少年の問題について重大な関心をお持ちの各界に大体異論のない点から、徐々に改善の方向を打ち出して行なっていくべきではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  201. 松下正寿

    松下正寿君 いろんな政治的意見についてハト派・タカ派の対立ということがいわれているわけですが、いまの少年法についても、法務省裁判所とでは、その点で若干食い違いがあるように私は聞いております。私個人としては、ほかの場合は別ですけれども、少年法についてはやはり、ハト派的な立場と言ってはちょっと誤弊があるかもわかりませんが、そのほうが適切じゃないかと、私個人としては考えておるわけであります。裁判所としては、少年法の改正その他について、早く問題を処理するという点よりも、少年の健全な発育を助けてやるという、そういう立場からいろいろ構想していただくことを切に希望いたしまして、その点の私の質問は終わります。  次に裁判の事務。小さい問題でありますが、近代社会において、裁判事務といえども旧態依然とした仕事を繰り返すわけにはいかないわけであります。合理化というといろいろ苦情が出ることばでありますが、合理化というか、近代化ということが必要じゃないかと思いますが、各種の裁判統計、判例の抽出などについて、コンピューターを使うというようなことが非常に私は必要じゃないかと思いますが、そういうことをお考えでありますか、あるいはすでにお使いになっておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  202. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判事務を近代化する、あるいは合理化するということの非常に大事なことは、いま松下委員の仰せのとおりでございまして、私どもも、裁判統計についてでございますけれども、現在電子計算機を導入して現実にその仕事をやっているわけでございます。で、わが国の裁判統計につきましては、そうした結果、かなり内容が充実してまいりました。  しかし、ただいまお話のございました判例でございますとか、あるいは法令でございますとか、そういう方面の事項を電子計算機で処理するといったことは、まだ現実化してはおりません。しかし、すでに私ども聞き及びますところによりますと、アメリカなどにおきましては、かなりそういう方面の研究が進み、また一部には実用化もできるということでございます。そこで私どもといたしましても、やはりそういう方面の研究というものは進めなくちゃいけませんし、またそれが実用化できるかどうかということで研究開発も進めなければならないと考えまして、実は三年ほど前からそうした問題の研究に着手しておるわけでございます。まだ研究開発の段階でございますけれども、この研究開発の成果を見きわめました上で、いろいろ慎重に検討して、どういうふうにそれをのせていくかということを考えてみたいと、かように思っております。  ただ、アメリカの場合と違いまして、日本語の特殊性でございますとか、あるいはアメリカは判例法の国でございますから、わが国は必ずしもアメリカの場合と実情を異にしておる点もございます。そういう点にいろいろむずかしい点がございますので、なお十分な研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  203. 松下正寿

    松下正寿君 よくわかりました。  ちょっと話が筋道をそれますが、私はコンピューターのことについて全然知識がないわけですが、私、立教の総長をしておりましたときに、入学試験をコンピューターで採点する——これにはいろいろ非常な異論があったわけです、そんなことは不可能だという異論があったわけですが、私はこれはやったらどうか、やってみてできなかったら、それはまあしかたがないからまた逆戻りしなければならぬけれども、一応やってみたらどうかということで断行したわけです。第一回目はちょっと失敗しましたが、第二回目から少しなれて、結果は非常によかったわけです。  裁判所でもいろいろ、ことに判例などは、アメリカと違って判例法の国でありませんから、いろいろやり方もむずかしいし、また、ことばも御指摘のようにいろいろ困難があると思いますが、やはり従来なれたことはあまり変えないということでなくて、新しい近代科学はどしどしと採用されるという方針をとっていただくことを、切に希望するわけであります。これには別にお答えは要りませんから、私の希望だけを一方的に申し上げておきます。  それから家庭裁判所のことで。この前の法務委員会のときにも家庭裁判所にこだわりまして、ばかに家庭裁判所にこだわり過ぎているようなお考えもあったかもわかりませんけれども、何か私の印象——印象ですから証拠も何もないわけですが、家庭裁判所所長あるいは家庭裁判所の判事になるというと何か左遷されたような、ほんとうの裁判官というと刑事、民事というのがプロパーなんで、軍人でいうとほんとうの軍人、実際に実戦で戦う者ですね、家庭裁判所というと何か横道のほうへそれたような、そういう印象を持っている人があるのじゃないかという感じもします。  この私の印象でお答え願うのも変なものだと思いますが、それと関連して、東京の家裁なんかでは専門の所長がおられるわけですが、地方の地裁の裁判所なんかで、よく地裁の所長が家裁の所長を兼務する。兼務になるというと、いま言ったような印象が、ちょっと下じゃないかという印象が、制度にあらわれているような感じもするわけなんですが、そこで、地裁の所長を兼ねていない独立独自の所長を持っておられるところがどのくらいで、地裁兼務がどのくらいかということを、絶対正確でなくてもいいですから、大ざっぱでもいいですから、ちょっとお答え願いたい。
  204. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) まず、専任所長のほうから申し上げますと、ここ数年来家庭裁判所の専任所長の数がふえてまいりまして、本年度御審議いただいております予算におきますと、さらに一庁ふえまして、その結果、全国の家庭裁判所の半数が専任所長が置かれる、かような状況に相なっております。
  205. 松下正寿

    松下正寿君 私はこの家庭裁判所は、ほかの裁判所が重要でないというわけじゃありませんが、民事、刑事の裁判所の重要性についてはこれはもう常識になっていますから、あまり特に問題にする必要はないと思いますが、家庭裁判といいますというと、一つは法律が基礎になっているわけですから、これはむろん大事なことですけれども、実際上、法律で処理できない問題ですね。非常にきわどい人事問題、ことに夫婦関係のことなんか、非常にきわどいことなんですが、こういうことについて、どうも裁判所としては何となくこれになじまないような感じがして、またこの前、私法務委員会のときにも申し上げましたが、現在の調停委員の年齢層なども、私は四十代、五十代くらいがいいと思いますが、相当年輩の方がなかなかがんばっておって、いろいろまあこれはうわさにすぎませんが、相当顔をきかしておるということもあるわけです。また、いろいろ苦情も、陰ながら私は耳に入ってくるわけで、どうも頑迷固陋で困る、よく聞いてくれない、と。  私は、純粋の裁判だというと、きぱっと黒と白にきまって、これで解決がつくと思うのですが、ところが、この家庭裁判になりますと、解決つけてやらなくてもいいのじゃないかと思うことがあるんですよ、聞いてやるだけで解決がつくんだと。そういうことが非常に必要であると思うのですが、そういう面から見まして、家裁の所長という方は非常なそういう点についての、いわば高度の知性を備えた方でないとぐあいが悪いと思う。その点について、現在、ちょっと私の見聞きした範囲だけですが、相当優秀である、この方は非常にいいなあと思う方が、わりに早くどんどんどこかへ、優秀であるからでしょうが、わきへどんどん転勤あるいは栄転してしまう。で、あまり感心しない方が残っているという、こういううわさも聞くわけでありますが、その点についてどういうお考えでしょうか。
  206. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 家庭裁判所が果たす役割りが非常に重要であるということ、また、特に調停などにつきまして、単に法律的にしゃくし定木に割り切らずに、やはり当事者の言い分に十分耳を傾けまして、そしてその実情に適した、条理にかなった、そこに調停なり審判なりを行なうということがいかに重要なことであるか、そういった点につきまして、松下委員の仰せのとおりだと考えます。家庭裁判所の専任所長というものをここ数年来、先ほど申しましたように数をふやしてまいりましたのは、やはり家庭裁判所というものが非常に大事である、その中身を充実したり、あるいは強化したりしなければならないという最高裁判所一つの方針に基づきまして、ずっとそういうことに心がけてまいったわけでございます。したがいまして、当然、その所長の専任につきましても、そうした人に最も適する方が裁判官会議においていま慎重に選ばれておるということに相なっております。  しかし、家庭裁判所の重要性ということを考えますと、その点につきましては、ことにその人選等につきましては、幾ら注意いたしましても注意し過ぎることはないわけでございますので、私どもも、ただいまの件につきましてはよく上司にも報告をいたしまして、さらにその点について遺憾のないような措置をとりたいと、かように考えます。
  207. 松下正寿

    松下正寿君 その点、繰り返して申し上げますが、ひとつぜひとも、改善の余地がまだあるように思われますから、改善に全力を注いでいただきたいと思います。  それから、いまは人の面から申したわけですが、営繕面といいましょうか、物的面から見まして、私この間東京地裁を久しぶりに拝見しまして、非常に何かよくできて、まあぜいたく言えばきりがないし、あの程度ならこれは十分じゃないかという感じもしたわけなんですが、全国で、どうでしょうか、家庭裁判所は——裁判はみんなそうかもわかりませんが、特に家庭裁判というと、いわば個人のプライバシーといったようなもので、できたら家庭裁判所にも行きたくない、言わぬほうがいい、しかし、しかたなくて行くわけですから、来ておったということがなるべく知られたくないし、ことに、何かそこでいろいろ話をしておることがわきに漏れたりさしたくないという気持ちが非常にあると思いますが、それには幾ら慎重な態度をおとりになりましても、営繕というような意味で、個室がたくさんあるとか秘密を守っていけるような設備ができていませんと、これは理想倒れになってしまうと思うのですが、その点で東京家裁なんか非常にうまくいっていると思いますが、全国的に見て、営繕的な面から相当完ぺきにいっているという自信がおありですか。
  208. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 家庭裁判所の庁舎の建築につきまして、ただいま松下委員の仰せのとおり、地方裁判所と違って、いろんな点にこまかい配慮を設計上もいたさなければならないわけでございます。たとえば非常に入りやすい、親しみやすい、そういう建物であることが必要でありますのみならず、ただいまお話にもございましたように、部屋をできるだけ個室にするとか、あるいは中で行なわれております応答が外部に漏れないようにするとか、そういった必要性が、とりわけ家庭裁判所の場合は必要なわけでございます。しかも、その庁舎といたしましても、執務環境のいい、いわゆる鉄筋の庁舎、そういうものをできるだけふやしていくことが必要でございます。その中で、いままで完成しましたものの中では、ただいまお話にございました東京家庭裁判所などが、最もその理想に近いわけでございます。  全国の家庭裁判所におきましても、だんだんとそうした家庭裁判所の数がふえてまいりまして、本年度御審議いただいております裁判所関係予算につきましても、お手元にございます予定経費要求書、要求説明書きの別表をごらんいただきましても、昨年は熊本家庭裁判所の新営の予算が計上されましたし、今年度は福岡家庭裁判所の新営の予算が計上されておるということでございまして、私どもといたしましては、家庭裁判所の新営ということにもとりわけ力をいたしておる次第でございます。  しかし、ただ建物を建てましても、設計面でいまお話のようなことがございますと、これは家庭裁判所の機能を十分に満足することはできませんので、そういった点につきましては、十分にさらに心がけてまいりたいと思います。全国的な状況で申し上げますと、鉄筋庁舎として整備されておりますものは、大体全国の八〇%くらいまではもう鉄筋ででき上がっておりますので、あとは逐次その理想に近づくために努力をいたしてまいりたいと、このように考えております。
  209. 松下正寿

    松下正寿君 むろん鉄筋のほうが長く持つからけっこうでしょうが、そういう建物の堅牢性よりも、特に秘密保持といいましようか、個室、ほかに知れないようにやる、そういうような点から見て、全国的に見て、少なくともいまの東京家裁程度に完備されるにはあとどのくらいかかりましょうか。
  210. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) いま、はっきり年数をここで申し上げることはできませんけれども、そう遠くない将来において、重要な裁判所につきましてはそういう整備が期待できると考えております。
  211. 松下正寿

    松下正寿君 これは先日、法務委員会裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関連して質問した点でありますが、いまのところ、調停委員の身分、待遇、これは非常に少ないわけで、まあ少なくても、非常に使命を感じて、いわば名誉職としてやられるならけっこうじゃないかと、こういう見解もあると思いますが、実際問題として、人間は金がなくては暮していけるわけじゃないし、どこまでも名誉職というものに頼っていくところに少し不健全な、多少虫のよさがあるのじゃないかという感じもするわけなんですが、こういう点について、もっと抜本的な、何といいましょうか、名誉職という中間のところでなく、ほんとうのいわば職業といいましょうか、エキスパートとして使うんだというような考え方にならぬものでしょうか。
  212. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 調停も非常に重要なことでございまして、したがいまして、特にその任に当たります調停委員もやはり非常に重要な役目をになっておられるわけでございます。調停委員待遇につきまして私どもいろいろ心がけておりますが、さらに現在は臨時調停制度審議会という機関を最高裁判所の中に置きまして、昭和四十六年度及び四十七年度の二カ年にわたりまして、調停制度をどうすれば現代のものにマッチさせることができるか、その機能を十全に果たすためにはどういう点をどう手直ししなければならないかといったような点につきまして、現在その審議会が調査審議を行ないつつある段階でございます。この審議会には、裁判官あるいは弁護士、調停委員のほかに、各界の有識者の方にも加わっていただいておりますので、私どもといたしましては、その結論を十分に伺いました上でさらに今後の施策を練り上げていきたいと、かように思っているところでございます。
  213. 松下正寿

    松下正寿君 家裁について最後に私、質問要項になかったのですが、管轄についてちょっとお伺いしたいのですが、まあ純粋の財産問題だとむしろ民事調停のほうが適しているのじゃないかと思われるようなことが、よく家庭裁判所内で調停にかけられてやっておるわけです。これは私、そう系統的に調べたわけじゃないですが、偶然耳に入っただけですけれども、どうも家庭裁判所では、まあまあきょうだい仲よくしろと、夫婦は仲よくすべきものだと、これは悪くするよりかいいほうがいいにきまっているわけですが、そうなりますというと、純粋の財産問題というものがちょっといいかげんにされてしまう、幾らか圧力を加えるといったような感じがあるわけです。私などから見ますというと、むしろ、こういう問題は民事調停のほうになじむのじゃないかと思われることが家裁のほうに行っているような、そういうことを感ずることもあるのですが、こういう点はいかがでしょう。
  214. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほど申しました臨時調停制度審議会におきましては、調停に関する全般の問題を討議いたしておるわけでございますが、そのほかにも家庭裁判所に関する問題につきましては、最高裁判所の事務総局におきましても、各裁判所と協議をしつつ常に改善、検討を重ねておるわけでございます。ただいまお話しの点につきましても、さらに私どもといたしましても検討いたしてみたいと考えます。
  215. 松下正寿

    松下正寿君 最後に、裁判所の統廃合といいましょうか、こういう問題についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、裁判所といっても上級裁判所のほうはこれは別としておきまして、ことに簡易裁判所、これは非常に一般の国民とも密着しておるもので、これが非常に大事であると思いますが、ただ日本では、二十数年来非常に人口も移動しましたし、裁判所の配置ということは、現在適正に行なわれているかどうか。これを多少変えたほうがいいのではないか。非常にめんどうな問題があると思いますが、これについて、あまりに地方のほうからの、いわば政治的圧力等で、人口の少ないところにいつまでもあって、人口の多いところに裁判所がないとか、こういうことがあっても困ると思いますが、さればとて、その地方の住民の意思を全然無視することもできないと思います。非常に困難な問題でありますから、きっぱりしたお答えを期待することはむずかしいと思いますが、これについての最高裁の基本的な姿勢といいましょうか、お答え、方針のようなものがありましたらお聞かせ願いたい。
  216. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) たいへんむずかしい問題でございますけれども、私どもといたしましての基本的な考え方は、裁判所の配置を合理化するということは必要なことでございます。半面、やはり住民の訴訟に関する利便ということも無視するわけにはまいりません。したがいまして、そこら辺を両々相まって具体的に検討する必要があるわけでございます。  ただいま松下委員も仰せのとおり、時勢の推移に伴いまして、ある場所につきましては事件が非常に少なくなる、あるいは交通事情が非常に改善されたというふうな場所も、いろいろあるわけでございます。そうした実情につきまして一つ一つ私どもとして綿密に考えながら、裁判所の合理的な配置と訴訟に関する住民の利便というものを、十分双方とも調和させたいい案をつくり上げてまいりたいと考えます。
  217. 松下正寿

    松下正寿君 簡易裁判所の適切な配置、これについて誠意をもってやっていただけるというお答えがあって、非常にその点は満足いたしますが、これまた営繕のほうですけれども、最高裁など非常にりっぱにできておって、国の経費でできておるから非常にけっこうだと思うのですが、簡易裁判所は、ことごとくというわけでもありませんが、偶然かもわかりませんが、ときどき、ずいぶんお粗末でこれでは困るじゃないかと思うようなことも、ほうぼうで見受けますけれども、あれについての御計画、何年くらいたったら一応完備されて、あまりおかしくないものができるのはいつごろか。
  218. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 簡易裁判所のほうも逐年新しく建て直してまいっているわけでございまして、何しろ数が非常に多いので、まだ残っているところもございますけれども、全般的には、ここ数年来、かなり促進していることは事実でございます。  戦前に建築されましたものはきわめて数少ない状況でございまして、主として、いま松下委員の御指摘のございました簡易裁判所の庁舎は、戦後早々のころに建築されたものだろうと思います。そうした簡易裁判所は、新営後約二十年になるわけでございまして、そろそろ改築しなければならないところも出てまいっております。従来は、戦前に建築されました地方裁判所でございますとか高等裁判所でございますとか、明治年間に建てられたといったようなものを逐年改築してまいりましたので、戦後に建築されました木造の簡易裁判所までには手が回らなかったわけでございます。やはりそうした点につきましても、その現状をつぶさに検討いたしまして、改築の必要なところは改築してまいる、かような考えに相なっております。いま具体的に何年というところまでは詰まっておりませんけれども、やはり戦後早々のころに建てられましたようなところにつきましては、緊急にこれを改善するような計画を、私どもとしては現在検討いたしておるわけでございます。
  219. 松下正寿

    松下正寿君 私の質問は終了いたしました。     —————————————
  220. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 分科担当委員異動について御報告いたします。  予算委員異動に伴い、松井誠君の補欠として小柳勇君が選任されました。     —————————————
  221. 平島敏夫

    主査平島敏夫君) 他に御発言がなければ、裁判所及び法務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十分散会      —————・—————