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1972-04-27 第68回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十七日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      竹田 現照君     杉原 一雄君      神沢  浄君     大橋 和孝君      高山 恒雄君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 大橋 和孝君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 河田 賢治君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  塚原 俊郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   小田村四郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        警察庁警備局長  富田 朝彦君        宮内庁次長    瓜生 順良君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        文部大臣官房会        計課長      須田 八郎君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁次長    安達 健二君        厚生省年金局長  北川 力夫君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林大臣官房予        算課長      松本 作衛君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        労働省大臣官房        労働統計調査部        長        青木勇之助君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、理事補欠選任につきましておはかりいたします。  委員異動に伴う理事補欠選任につきましては、先例により、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、理事向井長年君を指名いたします。     —————————————
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三葉を一括して議題といたします。  これより締めくくり総括質疑に入ります。松永忠二君。
  5. 松永忠二

    松永忠二君 中労委公労委がたいへん努力をされておりますし、当事者間でも非常に努力をしておりますけれども、心配をされました交通ゼネストの様相になってまいりました。一刻も早く正常化されるとともに、争議関連をして思わないトラブルが起こらないことを念願をして質問に入りたいと思うわけであります。  まず最初に、中労委公労委努力の様子を、きのう来拝見さしていただいているわけでありますが、私鉄が六千七百円最初回答がありましたけれども、われわれとしては、非常に低かったのではないか、不況鉄鋼でさえも昨年並み回答をしているのに、不況にあまり影響のない私鉄が、昨年の妥結額の九千七百円、それから組合の要求の一万八千円を大幅に下回って、しかも経営者のほうは、きのうからきょうにかけて、回答にこだわらないというようなことを言っているわけであります。で、最終の段階で九千七百円に上積みをしていこうということを言っていますけれども、あまりいい回答最初出さないというのは、秋に予定した運賃引き上げの際に政府の認可を受けられないのではないかという意識当事者にあって、こういう措置がなされたというようなことも言われているのでありますが、こういう点について総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま争議鉄道争議、これは松永君と同じような気持ちを私自身持っておりまして、どうかうまく早くこれ、平静に帰すように、そのために、労使双方中労委等努力、これを高く多とするものでございます。政府が、御承知のように、こういう段階において介入すべきではない、そういう立場を堅持しております。どこまでも公平でなければならない、労使間の問題として、と、かように考えております。  ところで、ただいまの労使双方交渉に何だか、かけ引きがある、そのかけ引きの中に政府も一枚加わっているんじゃないか、かんでいるんじゃないかというようにとれるようなことをいまのお尋ねのうちには聞き取れたのでございます。しかし、私は、労使双方のやること、これはおそらく、かけ引きやなにかではやらない、お互いが誠意を尽くしてやるべき筋合いのものだ、このことは私は言ってもいいと思いますし、また、かけ引きその他をやっておるというようなことならば、これはその態度を改めるべきだ、かように思います。  秋の運賃改正、これにからんでおるんではないか、こういうお話でございますが、ただいま私鉄からの運賃の問題は私ども全然伺っておりません。したがって、ただいまのような点を気を回すまでもなく、労使双方が腹を打ち割っての話し合いがお互いの中でできることですから、そういう形で話をされて、そして妥結されるように心から願うものでございます。どこまでも政府としては中立的な立場、さらに深く申せば、ただいまのような問題はただいまの段階では全然関知しないものだ、かように私は思っております。
  7. 松永忠二

    松永忠二君 公労協有額回答が六千八百円で出て、総額を昨年並みにするために定昇分純粋ベースを少し減らした。そうしてその金額だけ合わせたということの、まことに小細工に過ぎるのではないかということで、組合のほうから非常な憤激を買っているわけであります。しかも、公労委調停を見ていると、中労委待ちだというので、きのうの午後九時からずっと中断をしているわけであります。ようやく少し動き出したようでありますけれども、民間の賃金の相場が固まっていない、あるいは密接な私鉄の賃上げが解決しないというようなことで、結果的には、いわゆる私鉄スト公労協関係ストがダブって未曽有ゼネストに入ってきたという、こういうふうな状況になってきたわけであります。私は、この現象を見ても、もっと当事者能力を発揮すべきじゃないか、政府関係が間接的な圧力を加えているというような点が意識をされ、こういう中で必要以上の混乱をしているという感じを受けるのでありますが、この点について労働大臣官房長官はどういうふうな見解を持っておるのか、これをひとつお聞かせをいただきたい。
  8. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 先般の当予算委員会においても申し上げましたように、予算が御審議中の段階において、いわゆる当事者能力有額回答をすることにつきましてはいろいろ問題がありましたことは、この前の論戦でおわかりだと思います。しかし、われわれは、御審議中である予算、しかし、これが通過したものということを前提といたしまして、タイミングを失することなく処置をとりたいということも申し上げてまいったのであります。昨年同様の金額についての御意見でありまするけれども、その間、政府としてこれに制約を加え、干渉したというような事実はございません。なお、三十九年の太田・池田会談というものによって、民賃の動向を見てからこれを行なうというプリンシプルは曲げたくないということは申し上げたとおりであります。今日まで確かに鉄鋼は百五十円ぐらい高いものが出ております。造船は下がっております。私鉄は同じようなものが出ております。その他電気等も出ておりまして、妥結には至らないが、これは全部出そろって解決したわけではございませんが、われわれは民賃というものが六、七割ないし七、八割出たという政治的な判断に立ちまして政府関係閣僚会議を開きまして、ああいう数字を各企業に示したわけでありまして、各企業は、それぞれの団体交渉を行なっておるところであります。もちろん、国鉄におきましては、これはおくれまして、昨日の段階で、そういう措置がとられたわけでありまするが、御指摘のように、これに対して政府が何らか干渉し、圧力を加えたというような事実はございません。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 労働大臣お答えで尽きておると思います。私どもも、閣僚会議に至ります間、労働大臣大蔵大臣、絶えず緊密な連絡をとりつつ見守っておりましたが、その間政府が介入して圧力を加えたというようなことは、その経過においてもございません。お答えといたします。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 私は、政府が直接圧力を加えたとは言わないのであって、私の聞いたのは、当事者能力というものをもっと発揮すべきでないか、私鉄にしても、今度の公労協の各企業にしても、私は、それが言えるのではないかということを指摘をしたわけであります。どうですか。
  11. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 当事者能力の問題は、ここ数年来たいへん論議されてまいりまして、一昨年から私はよい傾向が出てきておると思っております。企業によっては、企業ごとにそれぞれの異なったものがあることは、もう松永委員承知のとおりでありまするけれども、私たちから言わせれば、それぞれ当事者能力を発揮して、労使間において企業ごとに自主的な解決がはかられることを一番希望しておるわけでありまするし、今後そういうことになることを一番望んでおるわけでありますが、いま現実の問題としては、そうもいきませんので、今度のような措置がとられたわけであります。今日までのとられた処置につきまして、とかくの御批判があることは私も承知いたしておりまするが、いま今日の段階では、やはりそれぞれの交渉というもの、あっせん、調停というものが中労委公労委で持たれておりまするので、これの推移を重大な関心を持って見守っていくということが一番よろしいのではないかと考えております。御指摘の、当事者能力を発揮して企業ごとに自主的に解決する姿、これは一番望ましいものであります。
  12. 松永忠二

    松永忠二君 私は、交通ゼネストという形になったことについては、やはり公労委調停状況を見て中断をして、それを待っているということは、あえて両者一緒になるという結果をもたらした、これは当事者能力そのもの関連をするものだと思っているわけである。で、国鉄は第一次の有額回答を示さなかったことに対して労働組合が非常に反撃をした。総理国会である段階で示されるだろうということを言われて、前向きの姿勢を示したわけでありますが、いま大蔵省運輸省は、この争議の最中に仲裁裁定が出ても裁定に従わない、公労法の十六条を発動して——そういうようなことが一部言われているわけです。政府努力が不足をして今国会で非常に空白を来たし、運賃値上げの法律が通らないのに、労働者にしわ寄せを寄せたり国会責任を負わせて、こんなものの言い方をすることはけしからぬと私は思う。一体争議中にこういうようなことを言うということは、争議に油をさすようなものだと私は思うのです。このことについてどういう見解を持っているのか。あるいはまた、総理は現在、一体公労法の第十六条を発動するというつもりを持っているのか。この点を明確にひとつ、労働大臣総理国鉄総裁からお伺いをしておきたい。
  13. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 公労法十六条のことにつきましては、私は口にいたしたことはございません。したがって、政府見解として出されたといのこと、それはおそらく新聞紙上で、どこかの紙面が扱った問題を取り上げておるのではなかろうかと思いまするが、私としては、そういうことを申し上げたことは一回もございません。
  14. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 目下、御答弁申し上げます前に、本日のいわゆる争議行為によりまして、全国で約一千万以上の国民に御迷惑をおかけしていることを深く陳謝申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、公労法十六条の問題につきましては、まだ仲裁裁定も出ておりませんわけでございます。私のほうといたしましては、その仲裁裁定が出ました段階で、十分政府と御相談して処置をしなければいけないということで、現時点で私から申し上げるべき筋合いでないというふうに考えております。
  15. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ、大蔵省運輸省はそういう気持ちを持っているのか、政府はそういうことを考えているのかどうか、それをひとつお聞かせをいただきたい。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階は、ただいま労働大臣並びに国鉄総裁が答えたとおりでございまして、いまから政府の考え方を予定しているような状況ではございませんから、そこには誤解のないようにお願いをいたします。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま国鉄総裁が言われましたように、仲裁裁定も下っていない段階でございますので、したがって、国鉄当局がどういう態度をとるかもまだわからないときに、私のほうからとやかく申すべき問題じゃないと思います。
  18. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 御答弁申し上げる前に、運輸行政責任者といたしまして、今回のストに突入いたしまして、国民の皆さまに非常に御迷惑をかけました。まことに遺憾に存じまする次第でございます。  ただいまのお話は、総理大臣の御答弁のとおりでございます。私どもただいまのところは、いかにしてストが早く解決をしまして、国民混乱を防ぐか、それだけを念願しておる次第でございます。
  19. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、総理の頭の中には、そんなことはちっともないということを確認してよろしゅうございますか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) よろしゅうございます。そのとおりでございます。
  21. 松永忠二

    松永忠二君 労働省のほうで昭和四十六年度の雇用情勢というものを調査をしたものがあるわけでありますが、それはどんなふうですか。
  22. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 政府委員をして答弁をさせます。
  23. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) お答え申し上げます。  雇用情勢につきましては、各月いろいろな調査をいたしておりますが、ただいま四十六年度の失業状況とか有効求人倍率とか、そういう年間のものをまとめておりますが、たとえば失業者につきましては、四十六年度は六十四万人でございまして、失業率が一・二%に相なっております。それから有効求人倍率につきましては、四十六年年間を通じまして一・一と、こういう数字に相なっております。その他、月間有効求人数とか月間有効求職数とか、そういうものを調査いたしておりますが、おおまかに申し上げまして、失業率その他、いま申し上げましたような状況に相なっております。
  24. 松永忠二

    松永忠二君 新聞には、そういうようなことは出ていないんでしょう。雇用情勢が非常に悪くなった、賃金上昇率所定外労働時間、こういうものはどうなったんですか。
  25. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) 賃金推移につきまして、は昨年は対前年比率で一三・七%の増、こういう数字に相なっております。
  26. 松永忠二

  27. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) 実質賃金のほうは、先生御承知のように、消費者物価が六・一%年間で上がっておりまして、その関係がございまして対前年増加率は七・九% ……。
  28. 松永忠二

    松永忠二君 前年とその前と比べて、どうなんですか、そんなこと一緒に言ったらどうなんですか。
  29. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) 四十五年の対前年上昇率は八・七%、四十六年の対前年上昇率は七・九%、これは実質賃金でございます。それから名目賃金のほうは、四十五年が対前年一七・六%、四十六年の対前年が一三・七%、こういう数字に相なっております。
  30. 松永忠二

    松永忠二君 四十六年の雇用情勢は、賃金上昇率も鈍化しているし、所定外労働時間も大幅に減少し、雇用が非常に減少して悪化をしているということが指摘をされている。あるいはまた、労働大臣にお聞きいたしますが、諸外国と比べて、国民総生産に対して賃金上昇率物価上昇率労働分配率雇用者比率というものは、総体的に見て、日本は諸外国に比べてどうですか。
  31. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 賃金につきましては——賃金及び労働生産性の動きは景気の局面によって差がありまするが、製造業についてこれを見ますると、しかも長期的に見ると、両者上昇率はほぼ見合っておるということが、製造業ではあらわれております。
  32. 松永忠二

    松永忠二君 諸外国と比較してみて……。
  33. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) ですから、欧米諸国と比べますると、ILOの資料その他からこれを判断したのでありまするが、アメリカの三割弱、西ドイツの六割弱、イギリスの七割強、フランスイタリアとは、ほぼこれが水準として並んでおります。
  34. 松永忠二

    松永忠二君 ほかのところはどうなんですかね、いま聞いたそれはどうなっているか、労働分配率雇用者比率は、諸外国に比べてどうなのか。いいのか悪いのか。別にこまかい数字は要らぬから、いいのか悪いのかということを言ってください。
  35. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 賃金についての数字はいま申し上げましたようなことでございまするが、分配率数字についてはいま持ち合わせておりませんので、何でしたら、後刻調査いたしまして、これは提出いたします。
  36. 松永忠二

    松永忠二君 数字じゃなくて、いいか悪いかということを聞いているのですよ、諸外国に比べて。
  37. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) いや、ですから、いま私その数字を持ち合わせておりませんのでね。
  38. 松永忠二

    松永忠二君 そんなことがわからぬだったら……。
  39. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 私は、賃金と同じような形で考えれば、賃金で申し上げたような数字である。ですから、まあフランスイタリアとは並んでおりまするが、その他先進国から見ればこれは低い、このように考えております。もし間違いがあるといけませんから、数字につきましては後刻調べまして、その数字の面から御説明申し上げます。
  40. 松永忠二

    松永忠二君 これはもう常識なんであって、労働分配率も諸外国より低いし、雇用者比率も悪いし、国民総生産上昇率に比較して賃金上昇率も低い。しかも四十六年の雇用状況もすっかり悪くなっているという、こういう状態である。私は、労働者賃金を大幅に引きあげなければいけないという条件は、そろっていると思うのでありますが、この点について一体労働大臣はどう考えておりますか。
  41. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 分配率につきましては、数字の面からのお答えはできませんでしたけれども、賃金から見ますると、私はそれほど悪いとは考えておりません。先ほど申し上げたようなことで、何もフランスイタリアと並んでいるからいいというようなことではございませんが、現在の段階においては、私はそう低いものではないとというふうに考えております。
  42. 松永忠二

    松永忠二君 こまかい数字のやりとりはいたしませんけれども、労働者の政策をやっている労働省の大臣が、そんなことを言っていたのじゃしょうがない。現実に雇用の条件は、四十六年は悪くなっているじゃないか。それからまた、いま言ったようなことも非常に低いし、そういうことを改善をしていくということが、福祉経済に転換をしていく重要な問題だというようなことは、はっきり言っているんでしょう。一体総理大臣、その点の理解はどうでしょう。
  43. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) ちょっと誤解があるようでありまするから——私は、現状における数字から申しましたわが国の賃金を申し上げたのでありまして労働者の生活が向上するということはこれはもちろん望ましい姿であり、その線に沿ったものをわれわれは考えておるわけでございまするので、その点、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松永君も御承知のように、わが国の経済は停滞しております。最近の状態で一番心配しているのは、この経済を浮揚さすことだ、そういう意味であらゆる努力をしている。これが、労使双方にも影響のある問題である、かように私は考えております。ただしかし、アメリカにおけるような失業率ではない。日本の状態は、アメリカに比べればまだまだいいところがあるのじゃないか、かように思います。ただ、いまの週休二日制にいたしましても、一部実施はいたしておるが、それらの点でまだ時間的にはもっと余裕がある、こういうような状況——余裕があるというと誤解が生じますが、もっと労働者の利益のために整理すべきものはあるだろう、かように思っておりますけれども、とにかく労働条件、労働賃金、それらも一般の経済情勢のうちの一環として考えなければならぬ。これだけは御理解がいただけるだろうと、かように思っております。先ほど来申しておりますのもそういう意味の問題であって、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  45. 松永忠二

    松永忠二君 こまかい数字はあれですが、私は、すべてそういうような条件は整っている。しかも国の政策にも合っている。この際やはり大幅に上げていくことが必要ではないか。  春闘というものは、八百万の組織労働者で行なわれ、産業別、地域別に組織が持たれて十六年間行なわれている。三千万労働者の賃上げ、労働条件の引き上げ、間接的に国民水準を引き上げるということに果たしている役割りというのは非常に大きいと思う。また、春闘というものはいまや定着をしているというふうに考えるわけですが、この春闘の役割りというものの認識について、総理はどういうふうなお考えを持っているのか。その点をひとつお聞かせしてください。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、春闘の役割り、こういうものについて、これは松永君の考え方と必ずしも私は一致しないように実は思っております。私は、御承知のように本来労使双方においてそれぞれがきめるべき労働条件、そういうものが労使双方でなしに、いわゆるゼネスト的傾向においてきまる、こういうことになると、企業の特殊性、事業の特殊性、そういうものは十分反映しないのじゃないか、実はそれを心配しております。これにはそれなりの意義がある、ゼネストならゼネストというものについての一つの意義は、私も認めないではございません。しかし、ただいまの春闘そのものが、そういう方向に発展することによって企業間の差別がなくなる、そういうようなことにはどうも納得のいきかねるものがある。その点では、必ずしも松永君と意見が一致しない、このことだけは私は申し添えておきます。
  47. 松永忠二

    松永忠二君 その点は全然意見が違うというか、一部意義を認めているというお話でありますが、私は、やはり春闘が労働者全体の生活水準を引き上げる、また、それを標準にして国民水準も引き上がってくるという、こういう大きな役割を果たしている。こういう中で、この問題をひとつ十分解決をしていただきたいと思うのであります。  そこで総理にお尋ねをいたしますが、あなたは四月三日の衆議院の予算委員会で、「四十七年度総予算審議中に種々の批判を受ける事態を招いたことにつきましては、まことに遺憾であります。政府責任者として深く責任を感じております。各党の本件に対する御意向はよく承知しております。」と、こういうお話でありますが、各党は、予算成立後責任をとるというふうに受け取っていますけれども、総理大臣はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、その当時の状況で私の意は十分尽くしておる。また、各党の党首から、ただいま松永君が御指摘のようなお話は、私は聞かなかった。ただ私の所信表明について、一部賛成もされ、一部はあるいは食い違っておるかわかりませんけれども、松永君がいま御指摘になりましたようには、その当時の各党の党首ははっきりは申しておられなかったと、かように私は理解しております。
  49. 松永忠二

    松永忠二君 いずれの党首も、早い時期に責任をとるべきだということを強く主張しているわけです。四十七年度予算の成立も近い時期でありますので、総理責任を明らかにする時期はいつなのか、また、どういう形で責任を明らかにしようとしているのか、その点をひとつお聞かせしていただきたい。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの松永君の御意見でも、また、当時の私の声明でも、予算がまことに大事だと、かようなことを釈明でも申しておりますから、一応、予算成立後においてその責任の所在が明らかになるだろう、かように期待を持たれることも、必ずしも当たらないと私は申し上げるわけではございません。  しかし、御承知のように、予算だけが通過したからといって、直ちにそれが実行できるわけではございませんし、これはもう予算を成立させ、それが実行し得る、そういう状況に置くためには、予算成立そのものは必要なことではありますけれども、なお条件が整ったと、かようには言うわけにはまいりません。それらの点は、私の所信表明で当時、各党の御協力もお願いしたつもりでございます。各党からの御意向も、ただいま言われるように、いついつとは言われないけれども早期退陣を迫られていること、これは私もはっきり知っている、かような意味を、あの中には言外に申し述べたつもりであります。だから、その点はその点で私は理解しておる。ただいま申し上げますように、ただ予算成立の時期、そういうような時期は明示した覚えはない。そのことをはっきり申し上げておるわけであります。
  51. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、あなたは、あらためて責任を問われなければ責任をとらないのか、それとも、みずから判断をして適当な時期に責任を明らかにするのか、これはどういうふうなことなんですか。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、衆議院における私の所信表明でおわかりだろうと思います。
  53. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、それは早い時期にそういうことを考えておられるんですか。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所信表明であらためてまたどういうような表明をするとか、こういうことはない。四月三日の表明が私の考えをそのまま伝えておると、かように御理解をいただきます。
  55. 松永忠二

    松永忠二君 あなたは、大幅な会期延長ということを言われているわけです。ところが、まあ成立しない法案は新しい政権でやったらどうだろう、きりをつけたらどうだろうということで、大きな反発が与野党から出ていることなんです。大幅な会期延長という問題と、責任をとるという問題は、一体どういう関係があるんでしょう。あなた自身の口から言われていることについて。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 会期延長に政府がいろいろくちばしを出すという、これは、政府がお願いするにいたしましても、会期延長は、これこそ国会のきめる事柄でございます。その点は、これはもうはっきりしておるわけであります。  私が当時、新聞記者諸君に廊下で話ししたこと——いろいろ間違って伝えられるなと、かようにも申したのであります。私が正式に会見を持って云々したことなら、これはもう十分責任がございますが、廊下で歩きながらしゃべっている、そういうことに、ただいまのような記事が出る。私は、そういう場合の新聞記事には責任は持てない。これだけははっきり申し上げる。私が言ったとか言わないとかいうことではなしに、歩きながらやっているような、そういう事柄について一々私は責任は持たないと、このことだけはっきり申し上げておきます。
  57. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、とにかく予算委員会で明確にしたように責任を明らかにする、ただ、予算成立ということではないけれども、とにかく早い時期に責任を明らかにする、こう理解してよろしゅうございますか。
  58. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、ただいま申し上げますように、とにかく予算は成立しても、やはり裏づけの法案が成立しなければ、これは完全に成立したとは言えないと、こういう事態を私はひとつ御理解をいただきたいと思います。それから先の問題は、これは私がやはり四月三日にきめた点でございますから、これは私におまかせをいただく。私はまた、松永君の考え方が間違っているとか間違っていないとか、かように申し上げるとこれは少し立ち入り過ぎる、かように思いますのでそれは申しません。これは御自由だと、かように御了承いただきます。
  59. 松永忠二

    松永忠二君 くどいようですが、責任を明らかにするということにおいては間違いがない、と。よろしゅうございますか。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 四月三日に声明したこと、これは所信表明でございます。国会の公式の場ではっきり申し上げたことでございますから、これを、私がまた取り消す、あるいは変えるというような考え方はございません。
  61. 松永忠二

    松永忠二君 佐藤内閣では、西村、原、大石と、放言する閣僚が相続いて、首相の統制力をまことに疑うわけであります。しかし、これらはいずれも記者会見とか地方の集会での放言であったけれども、山中総務長官は、個人の見解であるということは前置きをしているけれども、憲法制定二十五周年記念を前にして、予算委員会の分科会という公式の場で、憲法にきめられている第九十九条に基づいて憲法を順守し擁護する義務を負う内閣の閣僚が、憲法制定経過にからんで、憲法の自主性に疑念、疑問を持つような発言をしたことは、まことに不謹慎のきわみだと私は思う。一体総理は、いま憲法改正をする考えがあるのかどうか。また、山中総務長官の真意はどこにあるのか、また、どういう反省をしているのか、この際明らかにしていただきたい。まず総理からお聞かせください。
  62. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 予算分科会において、お話のような、民社党の栗林卓司委員に答えた私の内容が不謹慎であり、かつまた憲法九十九条から見て、国務大臣としてのあり方について議論を呼んだことについて深く反省をし、したがって衆議院、参議院のそれぞれの関係委員会において、正式に私の発言の憲法にかかる部分は取り消しをいたしております。
  63. 松永忠二

    松永忠二君 取り消しているというだけかね。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ憲法の論議——いま、ようやく新しい憲法が国民の間に定着をした。ことに、そのうちでも、主権在民、民主主義、そういう点についてはほんとに理解を得ているこの際でございますから、政府はもちろんのこと、各党とも、よもや憲法改正の議論はただいまないだろうと私は理解しております。しかし、党によりましては、なお憲法改正論が相当取り上げられておるというような話も聞きますけれども、私自身は、また政府自身は、さようなことはただいま考えておりません。これははっきり申し上げます。
  65. 松永忠二

    松永忠二君 社会党の第五次の訪中団、あるいは公明党、民社党の代表の訪中、あるいは年々のMT会談を通じて、なぐなった松村謙三氏を中心とした自民党の日中打開グループ、あるいは近くは藤山、三木氏の訪中など——日中復交運動を深める上で果たしている役割りというのは、非常に高いと私は評価をするけれども、このことについて、総理大臣はどういうふうなお考えを持っているのでしょうか。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ最近、政府は中華人民共和国と交渉を持つ機会がございませんけれども、その他の関係におきましては、各党とも、また、わが党でもただいま御指摘になりました藤山君あるいは三木君等の有力者が訪中して、そうして中国の考え方をも私に伝えております。これは、全部そのまま伝えたのか、あるいはその一部だけを伝えておるのか、そこのところは私は明確にできませんけれども、しかし、とにかく対話の形でこういうような両国関係が少しでも進んでいくこと、これは日本立場についても理解が深まり、われわれの希望する日中の基本的な路線も必ず開けるものだと、私はかように思って、非常に歓迎をいたしております。  その間には——これから松永君からさらにお尋ねがあろうかと思いますが、いわゆる原則論というような、三原則、五原則等々のものがございますが、どうも、それらについて先走っての議論をするということは、これはお互いに避けたほうがよろしいのではないか。そしてやっぱり日中両国が、これは隣同士の国でございますし、過去においては私どもはほんとうに忌まわしい思い出があり、また、中国に対して十分理解してもらわなければならないような、謝罪もするというような考え方で、これらの点をも明らかにする考え方でございますが、話し合わないうちからとやかく言っていることはいかがかと思いますけれども、ただいままでの状態では、政府そのものがただいま北京を訪問して話をする、こういう機会に恵まれてないこと、これは私まことに残念に思っております。これは同時に、遺憾に思っております。  これらの点でも、社会党をはじめ各党、公明党、民社党、さらにまた、わが党の松村さんはなくなりましたが、藤山君あるいは古井君、田川君、最近は三木君まで出かけておりますから、これらの方々の努力に対しては心から敬意を表しつつ、また、これから話をする場合にそれらの問題もやはり念頭に置きながら、機会があって中国と話をする機会には、十分これらの問題を、皆さん方が折衝されたその経緯をも踏まえて、そうして話し合いを進めるべきだと、かように思っております。  望むべきは、とにかく日中国交回復、それがスムーズに一日も早くできることだ、何よりもそのことだと、かように思いますので、そういう意味において、いままでの各党の、また皆さん方の御努力に対して心から敬意を表しながら、ただいまのような私の所感を率直に申し上げます。
  67. 松永忠二

    松永忠二君 まことに失礼な申し分ですけれども、あなたは、政府間の話し合いを始めることが急務であって、国交正常化のためには政府間の接触が必要だ、話をし合えば中国の誤解や不信感は解除できると、こうおっしゃっているけれども、あなたの手ではもう政府間の交渉はできないのではないか、こう判断するのでありますが、どうでしょうか。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、松永君も率直にお話しでございますが、そういう話も、私の耳にも入っております。これは私は全然存じあげない、知らない、かように申すわけではございません、私の耳にも入っているということを申し上げておきます。
  69. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと、正面からひとつお答えを願いたいのは、あなたのお考えとして、この点についてどういう考えを持っておられるのか、率直にお聞かせしてください。
  70. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は本来、旧陸海軍、空軍等のいわゆる軍隊組織のもとにおける日本の膨張政策、これについては深く反省をしておる、これはもう新憲法のもとにおいては、日本のあり方はすっかり変わっておるのだ、こういうことをまず基本的に理解してもらわないことには、これは話ができるわけのものではございません。  私は、いままで各党とも出かけられた方々が、おそらく同じように、新しい憲法、そのもとにおける民主国家の日本のあり方、これについて説明されたことが不足だと申すのではございません。これは十分されたと思っております。そうして、なおかつ戦後のこのすさまじい経済発展、これにもかかわらず日本は新しい行き方をするのだと、こういうことを強く各党とも説明をされたと、かように私は思っております。しかしながら、それにしてもなおかつ、われわれの与野党の主張と北京側との間にはずいぶん開きがある、どうも原則論的な立場に立っての御議論がいろいろ展開されておると、かように私のところには報告をされておるのでありますが、しかし私は、どうもそれをそのまま受け取るつもりはございません。  と申しますのは、やはり戦後から今日まで、国連に中国が加盟、中国の代表として中華人民共和国が国連において迎えられた昨年までの間、その間の経過を全然無にするわけにはいかないのではないか。それが、そこにぽっかり歴史的に穴があいている、そういう状態は、国と国との間においてはないのじゃないかと、かように私自身考えますので、それらの点についてはもっと話をする必要があるのではないか。新しい日中の関係を云々する前に、過去の状態につきましても穴がないような状態でやっぱり話をすべきではないだろうか。この点の話について十分意見を交換することも、全然無意義だと、かようには私は思えない、有意義なものではないだろうかと思います。もうすでに、これだけの貿易額はできておるし、また主要な政財界の人たちが中国を訪問しておる。そういう状態のことを考えると、やはり過去の、戦争後のその状態だけが今日まで穴があいていた、かように考えるのはいかがかと、かように思いますので、その点については、十分私は意を尽くした説明がいたしたいように思うのであります。新しい将来——これはもう中国の代表は国連においてきまっておる、かように思いますから、そういう意味においていままでの諸条約等はいろいろ整理される、こういうことはあろうかと思いますけれども、ただいまの段階でそれが全部無効だと言うわけにはいかないのじゃないだろうかと。  私はそういう意味で、日本の場合とアメリカの場合と、これを比較して考えますと、アメリカはかつての同盟国だ、こういう意味で戦争をした日本よりはよほど話がしいい、こういう立場にあろうかと思います。しかしそのアメリカが、何と申しましても北爆以来、朝鮮における朝鮮事変以来、いろいろ中国との間にもまずい思いをした。そうして米華条約を結んでいる。そういう立場でニクソンは訪中はしたけれども、その関係においては、まだいわゆる国交の正常化がはかられたと、かようには私ども思っておりません。これはやはり、どうも日本の場合とよほど違っている点じゃないか。しかしアメリカの場合は、いわゆる戦時中の同盟国だ、こういう立場で、中国も特別な理解を与えているかと、かように思いますが、日本の場合は、明治以来、満州攻略その他においてずいぶん苦い、また忌まわしい思い出の数々がございますから、同盟国であったアメリカと、日本を同一の立場において考えるわけにはいかないだろうと、かように思います。しかし、それだけに、日本の状態については十分説明する必要があるのじゃないだろうかと、かように私は思っております。  ただいま、基本的にどういうようなものの考え方をするのか、こういうお尋ねでありますから、基本的なものの考え方は、ただいま申し上げるように、過去において空白ができてこないような、また、将来において日中友好の関係を樹立することができるような、そういう状態を築くべきではないだろうか。そういう意味で私は、中華人民共和国、中国の代表者と早く話し合ってみたいと、かように思っておるような次第でございます。
  71. 松永忠二

    松永忠二君 お気持ちはわかるけれども、総理としてそれはどうもできないのじゃないかということを、率直にお話しを願いたいと思ったのですが、まあ基本的なお考えをお聞きいたしました。  外務大臣にお尋ねをいたしますが、外務大臣は、日中国交回復は歴史の流れだ、私はこれと正面からぶつかるのだ、正常化するためには政府間の接触をしたい、政府の首脳が中国側の首脳とじかにぶつかるということであって、総理とか外務大臣が訪問するとか、特派大使が交渉するとか、そのための非公式の事前工作もやる、そういう考えだというが、一体、現在どんな方法でやっているのか。この政府間折衝というのは、その可能性が見出し得るのかどうか。この点ひとつどうお考えでしょう。
  72. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま、私の考え方を松永さんは正しくとらえてくださいまして、私が日中国交正常化は歴史の流れであると、こういう理解を持っておる——たいへん私は喜んでおります。私は、まさにそのとおりに考えておるのです。もう、とにかく二千年の歴史のある中国である、また、一衣帯水の隣組である。この中国と日本との間に国交が正常化されていない。これは非常に不自然なことである。私は、これはもう当面するわが国外交の最大の課題として、この問題とまつ正面に取り組みたい、こういうふうに思っておるんです。  そこで、私どもの姿勢といたしましては、中華人民共和国が中国を代表する政府である。この中華人民共和国との間に横たわるところの諸問題につきまして、一番大きな問題は何にしても台湾の問題であろう、その他、世界全体——特に中国とすると、ソビエトの問題とかいろいろあります。そういうような問題もありましょうが、とにかくわが国は中華人民共和国を交渉の相手国といたしまして、そして国交正常化の話し合いをいたしましょう、正式にいたしましょうと、こう言っておるんです。国交正常化というところに私は非常にアクセントというか、意義を置いておるんです。国交正常化をすれば一体どういうふうな問題が出てくるか、これを深く読みとりますれば、おのずから中国側におきましても理解するところが出てくるであろうと、こういうふうに思います。  そういうようなことで、政府間接触の段階がもう来たと、強く、こういう呼びかけを間接的にいたしております。いろいろ中国のほうへ行ってこられた方がありますが、その報告もまちまちでありますけれども、日本がそういう立場にある、そういう考え方を持っておるということは、必ず中国側によって正しく理解される日が来ると、こういうことを確信いたしておりまして、その理解の届くようにということをただいま努力をしておる。いろいろな道筋を通じましての努力をいたしておる。これが現況でございます。
  73. 松永忠二

    松永忠二君 政府間折衝のいろいろな努力をしている、それを具体的に少し聞かせてくれませんか。
  74. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは具体的に、どこで、だれが、どういうふうなことをしておるということは申し上げかねる。これは松永さんにも御理解がいただけるんじゃないかと思います。しかし、公の筋もあります。あるいは公でない筋もあります。あらゆる筋、あらゆる機会をとらえまして、そういう努力をしておる。しかもこの努力は、私の見るところによりますれば、決して前進していないということはない、前進の実を示しておる、こういうふうな見解を持っておるわけであります。
  75. 松永忠二

    松永忠二君 で、中国側の見解としては、政府間の訪問については、まず原則に立つことが根本であって、原則どおりにものごとを運ばにゃならない。いかに国民立場の現実主義を唱えてみても、原則に対する対応姿勢があいまいでは、具体的な問題は一歩も前進しないと、こういうように言っておるわけです。また三木さんは、日本政府のほうから積極的に日中復交に対する措置をとらなゃできないのであって、日華平和条約で日中間の戦争状態が終結していないという現実認識から出発をしなきゃできぬ、こう言っておるわけですが、あなたはこういう考え方について、どういうふうなお考えを持っているのでしょうか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日中両国間の接触を始める、そのためには、やはり過去の歴史なんかを考えてみますると、やっぱり私は、三木さんがおっしゃるとおり、わがほうから積極的に呼びかけるという態度がいいと思います。そうあってしかるべきであると、こういうふうに思うんです。ですからこそ、ただいま申し上げましたように、まだ発表することはできない、目には見えないけれども、いろいろな努力はいたしておる、こういう次第でございます。  それから、原則について云々という問題でありますが、これは三木さんは、原則の問題もあります、しかしその前にやはり大事なことは、日中両国がお互いに信頼感を持つことだと、こういうふうに言っておる。これが大事なんだということを力説しておるんです。私もその通りだと思う。先ほど総理からお話がありましたが、そのためにいろいろ手を尽くしておる、こういうことが現況でございます。
  77. 松永忠二

    松永忠二君 あなたは、中国国民に対して率直におわびをすべきだと、この日中問題打開のスタートであると考えて、おわびをするし反省もする、その気持ちを率直に伝えなきゃならぬと、こういうようなことを言っておられる。具体的にこれはどういうことですか。
  78. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはやはり、過去四十年間の長きにわたりまして、日中間においては不幸な事態があった。四十年間というのは、これは満州事変以来のことを言っているわけです。そういう四十年間の中の、前の十五年間、これは何としてもわが国は兵を大陸に進めましてたいへん御迷惑をかけておる。これは中国国民に対しまして率直に私はわびなければならぬ、そうあってしかるべきである、こういうふうに考えるんです。そういう気持ちを私は言っておる。これがスタートでなければならぬ、こういうふうに言っておりますが、まあ、あるいは佐藤総理が北京を訪問するというような機会があるといたしますれば、北京空港においてそういうことを堂々と、率直に表明されるということも一つの方法ではあろうと思いますが、とにかくいずれか、公式な方法によってそういう気持ちを表明する機会も持ちたいと、かように考えております。
  79. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、政府が、戦争状態の終結のため中華人民共和国との間に平和条約を結ぶ用意があるということを閣議決定をしたらどうか。あるいは日台条約の取り扱いについて、国連を尊重する立場から日華平和条約に対する態度をまず明らかにしたらどうか。あるいはまた、中華人民共和国を中国を代表する唯一の政府だということをまず確認をしたらどうかという、こういうふうな具体的な三つの問題について、あなたはやはりこういうことを選ばなければ、日中の国交回復の政府交渉はできないというふうに考えておられるのか、いや、そういうことを明らかにせぬでもできるとお考えになっているのか、その点はいかがですか。
  80. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国側は、いまお話のように、対日三原則というものを示しておる。これは間接的にであります。その第一点といたしましては、わが国がまず中華人民共和国を中国を代表する唯一合法の政府と認めよと、こう言っておる。その点につきましては、私どもは、これはまあ多分にことばの問題でもありまするけれども、とにかく中華人民共和国は中国を代表する政府であると、こう申し上げておるわけです。これは非常に明確に申し上げておる。それから第二点の、台湾は中華人民共和国の不可分の領土であるということを認めよと、こういうことを言っております。それに対しましては、先般示したように、そういう中国の主張に対しましては、あるいはカイロ宣言等のいきさつ、こういうことから見まして、そういう主張をするであろうという中国側の主張、中華人民共和国側の主張はよく理解できると、こういうことを申し上げておるわけであります。それから第三に、中国側は日華平和条約を破棄せよと、こういうことを言っておる。これはわが国とすると非常にむずかしい問題なんです。つまり、いま現実の問題としますと、中華人民共和国と相並びまして国民政府が台湾に現存をいたしておる。その台湾政府との間に——国民政府との間にわが国は平和条約を結んで今日まで平穏に交流をしてきておる。そういう関係にある。その国民政府との間の基本条約をここで廃棄するということになりますると、これは、まだ北京政府との間には国交も始まっておらぬ、その前に国民政府との間の国交も断絶してしまう。これは非常な混乱した事態が起きる。そういうようなことを考えますると、これはなかなかそう簡単にはいかぬ問題です。  そこで、私どもはこの問題につきましては、日中国交正常化の政府間接触が始まるであろう。その政府間接触の過程において、十分中国側と話し合ってみまして、その話し合いを通じて、わが国のこの条約に対する方針をきめる、こういうことにしたいと、こういうふうに申し上げておるわけです。そこまで、三つの点について、わが国は明確な姿勢を言っておるんですから、これは、私は、その大前提といたしまして、私どもが、中華人民共和国は中国を代表する政府である、その政府と話し合いをしたいと、ここまで言っている。私はこれはぎりぎりの立場じゃないか、そういうふうに考えますが、必ず、私は、中国側は私どものこの態度に対しまして理解を示すと、こういうことを確信いたしております。
  81. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことを言っていて、そうしていろいろ努力をすれば、国交正常化はできると、そういうふうにあなたは判断するんですか。
  82. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、二つの段階があるんじゃないか、そういうふうに思うんです。一つは、国交正常化を始めるまでの段階——一つは、政府間接触を始めるまでの段階、それから次は政府間接触段階、こういうふうになると思う。  で、今日、この時点は、これは政府間接触を始める前の段階なんです。私は何か、この政府間接触というものが始まる前の段階が日中間は非常にむずかしいんじゃないか。そこが、佐藤総理が先ほど申し上げましたように、アメリカあたりと違う点じゃないか、そういうふうに思うんであります。これは時間があるいはかかるかもしらぬ。しかし、粘り強く努力いたしますれば、わが国の立場というものは、私は正当に中国側に理解されると、こういうふうに思うんです。まあ、しかし、そういう過程を経まして、そうして政府間接触が始まる、こういう段階になりますると、日中間の諸問題というものは、ただいま私が申し上げたようなわが国の態度から見まして、そうむずかしいことはなかろう、そう大きな時間はかかるまい、こんなふうな見通しをいたしておるという状況でございます。
  83. 松永忠二

    松永忠二君 政府間接触の前に、私がいま言った三つの問題について態度を明らかにする時期があるんですか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、政府間接触——まあ、こういうことを言う人があるんです。中国側は三原則を示しておる、この三原則をのまなけりゃ政府間接触は始まらぬぞ、もうこれをのんで政府間接触を始めなさいと、こういうふうに忠告してくれる人が多いんです。しかし、わが国も主権国家である、そういう立場から考えまして、これはもう二国間の交渉というものは、相手の言うことを全部そのまま了承しなければ交渉は始まらない、こういう立場をとること、これもどうかというふうに思うんです。でありまするが、しかし、日中間の特別な事態がある。これもよく承知しております。ですから、ぎりぎりの態度を示しておるわけなんです。  ただいま、松永さんにお答えいたした三原則に対するわが国の態度、方針というものは、いま、これはもう裏も何もありません。率直に松永さんに申し上げたような、非常に明快な態度を示しておる。ただ、中国側の言い分に一〇〇%沿っておらぬという点がですね、まあ、私どもに忠告してくださるそれらの方々の意見と違う、これだけの話なんです。しかし、一〇〇%中国側の意見とは合いませんけれども、しかし、わが国のとっておる態度、姿勢、方針というものは、これは明白である、かように考えております。
  85. 松永忠二

    松永忠二君 残念ながら、その程度のことでは、あなたの手で国交回復はできない、正常化はできないという判断をせざるを得ないと思うわけです。  そこで、総理大臣にお聞きをいたしますが、あなたの施政演説について、ある新聞は、佐藤政治のあと、どのように決算し、そこから得た経験と反省を今後の政策転換への礎石としていかに生かそうとするか耳を澄ましてきたけれども、首相の答えは七年前と同じ問題の提起であったり、黙殺だったと。で、首相の演説は昭和三十九年十一月に言ったことと四十七年一月の今度の国会で言ったこととほとんど同じことをまた呼びかけている。あなたには、自分の政治がどこから出発をして、いま、その目標のどこまど迫ったのか。目標の達成を妨げた要因は何かということを率直に反省して、次の時代にバトンタッチをするという展開に、国会答弁も所信の表明も私は欠けていたと思う。どういうわけで、七年間、特に社会開発、高福祉の問題に努力をしてきたのに、それが再びこれを呼びかけなければできないのか。そこのどこに欠陥があるというふうに総理はお考えになっているんですか、お聞かせしていただきたい。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の必要な社会開発、これはなかなかいままで七年間もかかりましたが、思うようにはできておらない。しかし、新しい社会開発の手がかりになるようなものはそれぞれ手がついた。同時に、社会開発をする条件は整ってきたと思っております。これは、しかし、私が高度経済成長ととれるかのような言い方をしたけれども、それに反して、おそらく後世の史家は批評するでしょう、佐藤内閣の間に非常に経済は発展成長したと、しかし、社会開発の面では思うようにはなってないと。彼らはどういうような批判をするか、これはまあ後世に待つ以外にはないように思っております。  ただいま、同じことを言っていると言われるのは、おそらく社会開発の問題だろうと思う。同時に、私がいま答えるのも、高度経済成長は、これはやめて、社会開発に力を尽くすべきだと、かように実は申しておりました。しかし、この間において、経済の成長はいまだかつてないような状態に発展をした。押えようとしたけれど、この力はすばらしいもんだった。いまこそ、社会開発を手がけたものに、さらにそれに肉をつけ実を結ぶような、そういう条件が整ってきたのではないだろうか、かように私は思いますので、ただいまわれわれの今後のやるべき仕事はそういうことに一つはあるのではないか。これは内政上の問題で一番の大きな問題でございます。そういうように取り組んでいただきたいもんだと思っております。
  87. 松永忠二

    松永忠二君 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、あなたは、高福祉が達成できないのは、国際収支の天井が低かったんで、十分な施策ができなかったと言っているけれども、その原因はそこにあるというように考えておられるんですか。
  88. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり福祉政策の基盤となるべき一定の経済成長がなければ、高福祉政策というものを実行できないものでございましょうが、過去、数年間はやはり経済成長に非常に力も入れましたし、また、それが必要な時代でもあったと私は考えます。日本経済の規模が非常に小さかった、で、むろん国際収支の天井は低かった、こういうときでございますので、民間投資と政府投資というものが競合するというときには、どうしても政府投資のほうが民間投資にところを譲らざるを得なかったと。これを二つもし一緒に競合させたら、すぐに経済の過熱を来たし、国際収支をさらに悪化させると、こういうことになったのでございますから、どうしてもこの国際収支の天井というものを意識した政策をとらざるを得なかった、こういうことから、民間設備の伸び方と政府投資の伸び方に不均衡ができたということが過去の実際であったと思います。しかしその間、福祉政策を怠っておったわけではございませんで、社会保障制度の整備ということは、この間着々政府努力してきましたことでございますので、社会保障制度は、ようやく児童手当もことしの一月から発足するようになりましたし、そういうことを最後にしまして、制度自身で見ましたら、一応先進諸国の水準に制度は達しておるということでございますので、問題は、これからこの中身の充実ということになろうと思いますが、ようやく一定の経済成長と国際収支のゆとりというこの二つのものを結びつけて、福祉政策へ転換するならば、今度は、いま総理が言われましたように、充実する条件ができたということが言えようと思いますが、過去においてはこれができなかったというのが実際でございます。
  89. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、いままで日本は経済的に貧しかったから、余裕がなかったから福祉政策が十分行なわれなかったんだと、こういうことですか。
  90. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この公共投資のおくれということは、いま言ったように、国際収支の天井が低かったということでございますし、それから社会福祉政策のおくれ、社会保障の給付等の諸外国に比べた立ちおくれというものは、明らかにやはり日本経済のそこまでの実力のなかった、俗に言えば貧しさからということであったろうと思います。
  91. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、これは間違いですか、昭和四十三年十二月の社会保障制度審議会は「実績を験するに、昭和四十年までは若干の進展があったがその後は停滞気味で」「その実質はむしろ後退ぎみだといわねばならない。この間にわが国の経済は目ざましい成長をとげ、その成長率は年々予想をはるかに上回った。したがって、社会保障のための財源がなかったとはいえない。」、昭和四十七年三月経済審議会の住宅・生活環境専門委員会の報告書では、「従来は資源配分が合理的におこなわれなかったということがある。すなわち公私間の調整がほとんどおこなわれず、公共投資の面でも、実績が必要以上に重視され、政治的に決定されていた。このような資源配分のあり方を根本的に見直さなければならない。」というようなことを言っているこれは誤りですか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 誤りではございません。事実、昭和四十年の不況を境にして、この不況回復のために、さっき申しましたような、やはり経済成長による不況脱出ということを急いだために、公共投資そのほかの比重が非常に落ちたということは事実でございます。四十年から四十四年まで、統計を見ましても明らかに落ちておりまして、民間投資とそれから政府の公共投資との比率は、いまようやく今年度の比率が六一%というぐらいのところでございますが、この四十年から四十四年までの間は四〇%台というものに落ちていますから、はっきり比重が落ちたということは、資源配分においてこの点は非常に当を欠いたといいますか、適正でなかったということは言えようと思います。
  93. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、福祉水準が所得水準に比例をするには、一定の政治的な条件、つまり制度とか政策が必要だと私は思うのですが、これは御異議ございませんか、大蔵大臣
  94. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 特に、この社会保障給付の問題等におきましては、物価の事情、経済の変化というようなものを一定年数において全部見直して、これを始終改善するということをやっておりませんというと、おくれがきますので、年金制度についてはそういう措置をとっておりますが、全般にわたってそういう考慮がないというと、ここにアンバランスというものが起こり得るということになろうと思います。
  95. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、財政支出の面で資源配分を変える政策として、一体、民間企業設備というのが二五%から三〇%まで伸びたというようなことは、民間設備投資型の経済になったというわけですが、これについての有効な減速措置をとったんですか。
  96. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点でございますが、この間私が述べたように、そういうときに国民資源の配分というような意味から国債政策を活用することがよかったか悪かったかということをいま利どもは検討しておりますが、たとえば昭和四十四年度のようなときに、景気不景気対策という国債の本来の機能ということからではなくて、資源配分という意味を国債に持たせておって、ああいうときに国債の発行をしてこの資源配分を変えるということはできなかったか。そうすれば自然に民間の設備投資部分になるものが制限されるというようなことが行なわれたかもしれぬと、そういうことを考えますというと、先般もお答えしましたように、来年からの公債政策の活用という点におきまして、経済がよくなったら国債の発行を減らすとか、悪いときにはふやすというオーソドックスな関係以外に、一定の国民資源の再配分の比率を確保するというような意味から、これをまだ活用する余地というものが今後福祉政策にからんで出てきやしないかというようなことも、今後の財政政策の一つの検討課題ではないかというふうに考えておりますが、そういう点において過去は、民間投資の進み方については、ほとんど大きいブレーキをかけなかった、金融政策だけでやってきたということは事実だろうと思います。
  97. 松永忠二

    松永忠二君 率直にその点は認めたことになるわけですが、一体法人税の問題についてそういうことをやったのかどうなのか、輸出割り増し償却制度というものでそういうことを有効にやったのか、あるいは景気調整としての税制を諸外国がやっているようなやり方でやったのかどうか、それをひとつお話ししてください。大いにやったというならやった、やらぬならやなぬということをひとつ。金融面の話はわかりました。
  98. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 景気調整についての税制というものは、ほとんどこれは活用できませんでした。
  99. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、これからはそういう点についても留意してやるんですか。
  100. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 税制においてやり得る部門の税制の活用ということは必要だと思いますが、やはり景気調整ということになりますというと、財政政策と金融政策がやはり中心になるだろうと思います。
  101. 松永忠二

    松永忠二君 輸出が非常に伸び過ぎたというけれども、輸出の割り増し償却制度というのは適切に行なわれたのですか。昭和四十年以来——四十年と四十六年、ひとつ数字を出してみてください。
  102. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 申しわけございませんが、ただいま御指摘数字はちょっといま手元に持っておりません。
  103. 徳永正利

    委員長徳永正利君) わかりますか。
  104. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) すぐわかります。
  105. 徳永正利

    委員長徳永正利君) すぐわかる——それじゃ。
  106. 松永忠二

    松永忠二君 私の手元にありますが、総理よく聞いてください。四十年に二百四十六億の輸出振興減収が四十六年に七百十億までずっとのぼりっぱなしですよ。法人税の税率というのは四十年、四十一年に三%引き下げたのに四十五年になって初めて一・七五%、二年臨時に引き上げた。法人税に有効な景気調整手段として延納利子課税をやったけれども、これもうまくいかなかった。重要産業用の合理化機械等の特別償却という適用制度を設けたのに、これは全然やらなかった。全然やってないということじゃないですか。
  107. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) ただいま御指摘になりましたいろいろの制度につきましては、しばしばいつ発動するかという議論がありましたけれども、現実問題としては発動しないで終わっております。
  108. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことは何にもやらぬで、金融的な面でもやらぬでおいて、そうしていわゆる民間設備投資はうんとのぼっちゃて、そうして結果的には社会資本が取り残されたのに、天井が低いだとか金がないとかなんて、そんなことを言えぬでしょう。そういう点について指摘をしなきゃなりません。  そこでお聞きするのですが、これから高度の福祉経済を達成するための目標、それから政府支出の推定値というものを大まかにわかりやすくきめる必要があるのじゃないか。たとえば海外のいわゆる経済援助が約〇・七だと、今度はたいへんなことだ、一%だと、あるいはまた防衛計画は国民総生産の一%と、非常にわかりやすいものを出して、そしてそれに努力をするという、こういう大まかな非常にわかりやすい目安をつけて、そうしてその福祉政策を充実をしていくというようなことについては、大蔵大臣あるいは厚生大臣、経済企画庁長官も、国民経済計算の上でそういうようなめどというものを大きくつくる必要があるというふうにお考えでしょうか。
  109. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) ただいま策定中の長期経済計画の中で、いま松永さんのおっしゃったような目標をきめたいと思いますが、ただ防衛費のワクというのは、この長期計画の中では、政府経常支出の中の一部分でございますけれども、そういうワクは私のほうではきめませんが、たとえば振替所得をどうするかというようなことは、はっきりした数値でもってあらわしたいと、こう考えております。現在のところ昭和四十六年度で大体振替所得が五・七、国民所得に対比しまして。そういうものを、たとえば七・五がいいか八がいいか、そういうことも含めてはっきりした目標をきめたいと、こう考えております。
  110. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいま企画庁長官が申しましたように、まあ少なくとも振替所得の国民所得に対する比率をめどを立ててそれに近づくように努力をする、これが一つの努力目標であろうと、かように考えて、今度の新しい経済成長計画のもとにおいてはそういう策定をいたしましょうというので、いまいろいろと立案の基礎を固めつつあるわけでございます。
  111. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国民所得に対する社会保障給付の割合というものは、十年間ぐらいの間にやはり一%以上、二%近くふえて、四%幾らから六%、六・五%くらいに現在四十七年はなっておると思いますが、とにかくこの十年間に二%くらい国民所得に対する比率は上がってきましたが、これが何%くらいのところへいくことがいいか、何%をめどにすることがいいかということは、私なかなかむずかしいことでございまして、結局その国の経済財政の事情等が関係することでございますから、これから企画庁でつくられる新経済社会発展計画というようなものによって今後の一応長期的なめどがこれによってつけられるのではないかというふうに私どもは期待しております。こういうものが一応でさましたら、それに基ずいたいろいろな財政の見通しというものもつくし、したがって当面五年間にはどう、十年間にはこうという目標を立てた計画もできるのじゃないかというふうに考えております。
  112. 松永忠二

    松永忠二君 私が言っているのは、そういうこまかいことも大事だけれども、社会保障の費用というものを国民所得の一四%程度に高めたい、あるいはまた一般会計の社会保障の費用が一四%だけれども、これを二〇%ぐらいにしていきたい、あるいは国民経済計算上経常収支が七・六%で外国に比べて非常に低いので、四、五%これを高めたい、あるいは個人移転収支が非常に少ない、これをまあ四・一%から八%にするのだ、新経済計画なんかで五十五兆円というのは非常によくわかった。こういうふうに何かそういうわかりやすい一つの目標を置いて、それが達成しているか、していないかということがすぐわかるというような方法を講ずるということが非常に私は必要だと思う。今度いわゆる海外経済協力が〇・七%になった、たいへんなことですよと、こう言っておるが、政府も言っておる、一%にしたいということは非常によくわかる。こういうことが必要ではないかと私は思うのですが、いま言われた関係大臣からもう一回そういう点について、私の言ったようなことについて御意見を聞かしてください。
  113. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私はいまが六・五%と言いましたが、これは制度がようやく整っても、まだ年金制度が未熟なために、成熟していませんから、これが今後成熟してきますれば、この比率はどんどん高まってくるというふうに思いますので、あと何年たったらどの辺まで高まっていくかというようなことも計算の中へ入れて目標を立てなければなりませんので、そういう意味でやはり年末までにできる新しい計画をもとにして、そういう要素を全部織り込んだめどというものを年末までにはやはり立てたいというふうに考えております。
  114. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 社会保障の面におきましては、やはり一番の根幹をなすものは生活保護であろうと思うわけであります。これは国民の最低生活水準を確保するということでございますから、金額的にも相当多いわけであります。これは勤労者の平均所得水準の何%をめどにするか、何割をめどにするかということが必要であろうと思います。今日では五二、三%に、あるいは四、五%になっているかもしれません。これを平均所得水準の六割というものをめどにして、そしてやってまいりたい。今後さらに五、六%を増すということで六割に達成をいたすわけでありますが、これをまずめどにして、これを五カ年でやるか、十カ年で達成をするか。この基準まで達成をいたしてまいると——その基準を維持してまいれば、まず最低生活の、まあいわれている憲法二十五条のまず根幹が満たされるのではないか。それをもとにして他の生活保護、社会保障関係の充実をはかるということが根本ではなかろうか、かように考えております。
  115. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま考えておりまする長期経済計画、まあ目標を昭和五十二年までの五年間にするか、あるいは五十五年までの八年間にするか、まだ最終的に決定しておりません。しかしながらその中で国民福祉の向上と国際協調の推進、これが二つの大きな柱になっております。その中で国際協調の問題は、いま御指摘のような経済協力をわが国が今後どう一体、どの率でもって、GNPに対するどういう比率でもっていくか、またその中における政府の直接開発援助をどの程度の割合でいくかということまで数値をきめなければなりません。また国民福祉の中では、特に生活関連社会資本の充実と振替所得その他にあらわれます社会保障、社会保障の中でもいままで多少医療保障に偏しておりましたので、これを改めまして所得保障というものに重点を置く。そういうものをはっきりした数値でもってあらわしていきたい、こう考えております。
  116. 松永忠二

    松永忠二君 まあ私への答弁は厚生大臣のが一番ぴんときたので、やはり見ながらにわかりやすいものを示す、いろいろな数字を示すというよりは、むしろ標準的なものを一つ示して、それはもうみんながわかっていて、それと比べてどうだという、こういう理解ができるように、大まかなみんなにわかる目標を一つきめてもらいたい、そういうふうに考えてほしいということを申し上げるわけであります。  それから企画庁長官に——新しい経済長期計画作成にあたってはいろいろなことが言われているわけです。つまりさまざまな分野について達成すべき目標をできるだけ数量化して示したらどうか、あるいはまた計画期間中の政府の支出をできるだけ詳細に推計したらどうか、あるいは収入の調達の計画を具体的に明らかにしたらどうか、あるいはまた一年または二年ごとに改定延長作業を行なうということをきめたらどうか、あるいは各年度予算と経済計画との間の緊密なつながりをそのつど持っていく、こういうことが必要じゃないかと言っているが、このことについてどうお考えでしょうか。
  117. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 御承知のとおり、長期経済計画は、先ほど申し上げましたような大体内容でいま策定中でございますが、やはり何と申しましても、マクロモデルを使った計画でございますので、そのつど、最近の国内外の経済情勢の変化は非常にテンポが早うございますので、それをある時点で調整する作業は必要だろうと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたような、私は昭和五十五年までの八年間の計画よりも昭和五十二年までの五カ年計画をまず策定して、それを各年度の経済情勢に応じて逐次修正する、こういうような作業のほうがより適切ではないか、こう考えております。まあいずれにしましても、策定作業に着手したばかりでございますから、詳しいことは順を追うてまた国会方面に御説明いたしたいと思います。
  118. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと経済企画庁、いま五つ言ったんですがね、そのことについてどうしますか。もっとこまかくいろいろな分野について達成の目標を示したらどうか、あるいは政府の支出金額を詳細に、五十五兆円というのじゃなくて、もっとこまかくしたらどうか、それから収入を調達する計画をこの中に具体的に出したらどうか、あるいはまたいま修正についてお話があったが、年度予算との関連を緊密にしていくということをやったらどうかという、このことについて従来の新しい経済社会発展計画との反省の上に立って、私がこのことを指摘をしたことについて、あなたの御意見を具体的に聞かしてもらいたい。
  119. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) その点はなかなか困難な点もございます。たとえば公共部門で、いま御承知のような各部門についてのわりあい詳細な数字を出しておりますが、しかしその中でもやはりそれにまた並行いたしまして、たとえば港湾整備だとか、都市公園整備だとか、そういうような五カ年計画が——長期計画が各公共部門の分野で策定されております。それと密接な関係はもちろん保っておりますし、今後も保っていかなければなりませんが、各年度の予算との関連、あるいは将来の収入達成のいろいろな措置、それを数値的に経済計画の中で詳しく出すことはちょっとむずかしかろうと思いますが、しかしおおむねの見通しは、いま御指摘の点でこれをたとえば税でやるかあるいは公債でやるかというような点も、財政調達の手段の問題になってまいりますので、それの大まかな見通しはできますが、各年度について予算との関連を詳しく関連づけることは、この長期計画の目的よりちょっと逸脱するのではないか、こう考えております。
  120. 松永忠二

    松永忠二君 いやもっと反省の上に立ってやってほしい。特に福祉というものは天下り的な福祉ではだめではないか。もっと委員の人選について国民の層を入れたらどうか、あるいは公聴会方式とか中間方式をもっと取り入れたらどうか、経済審議会と財政制度審議会、税制調査会、これらが密接に接触をする必要があるのではないか。つまり天下りでない、こういう方法についてどうお考えになっているのでしょう。
  121. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) もちろんこの計画作業を進めます上においては、いま御指摘のような各種審議会あるいは国民の選好度の調査その他を進めておりますが、ただこういう非常に計量作業でございますので、専門的な事業にもなりますから、その個々について一々国民の皆さん方の調査、これはもう世論調査その他はいたします、国民選好度調査あるいはNNWとか、そういうような調査に基づいての開発はいたしますけれども、ただこの計量モデルについての作業であるためにいささかマクロ的なものになることは、これはいなめないことだと思います。
  122. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ大蔵大臣にお尋ねしますが、一般会計と財政投融資の比率国民総生産に対する財投の比率というのから見て、財政投融資の重要性が非常に高まってきていると思う。あるいは公共事業、公共投資の全貌というものは、すでにもう一般会計ではわからない、こういうふうになってきていると思うが、数字的にそういうことを認識をしているでしょうか。
  123. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政投融資と国民総生産との比率を申しますと、昭和三十五年度で財政投融資は三・七%、それが十年たちました四十七年度においては六・二%というふうに非常に比率が高まっております。また財政投融資と一般会計の関係を見ますというと、昭和三十五年度当時が三八・七%という数字でございますが、現在では四十七年度の、今年度の予算におきましては四九・一%ということでございますから、大体一般会計の約半分の規模というふうに財政投融資の比重は高まっております。
  124. 松永忠二

    松永忠二君 住宅対策とか道路対策において財投の占める比率というのはどんなでしょう。建設大臣ひとつ答えてください。
  125. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 建設省の公共事業関係における財投と一般会計の比率ですが、昭和四十三年度が三〇・六%、四十四年度が三一・七%、四十五年度が三一%、四十六年度が三二%、四十七年度、これからの予算が三三・六%になっています。この事項別の表もありますけれども……。
  126. 松永忠二

    松永忠二君 住宅対策と道路対策について、国費と財投の割合をちょっと言ってください。
  127. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 四十六年度と四十七年度だけ申し上げましょう。
  128. 松永忠二

    松永忠二君 ことしのですよ。
  129. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 四十七年度だけ……。
  130. 松永忠二

    松永忠二君 四十七年度で住宅対策費は、国費が幾らで財投が幾ら。どういうふうになっていますか。
  131. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 四十七年度におきましては、住宅については総事業費が八千三百七十三億でございまして、それに対して、国費、それからこの財投とそれから地方負担でございますが、国費が千三百十七億、財政投融資が六千九十八億、それから、その他の地方公共団体の負担が九百五十八億でございます。
  132. 松永忠二

    松永忠二君 それは公営でしょう。公営住宅じゃないですか。道路について……。
  133. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 道路につきましては、一兆六千三百六十三億の総事業費に対して国費が、一般会計でございます、八千五百八億、それから財投が四千三百六十七億、地方の負担が三千四百八十八億になっております。
  134. 松永忠二

    松永忠二君 私のほうで言うと、住宅対策費一兆一千四百五十一億、国費が千九百四十二億、財投、自己資金を入れて一兆三百九十二億、道路対策はいまおっしゃったとおりで、全くもう道路対策、住宅対策は財投を抜かしては問題を考えることができない状態だということを言うわけです。大蔵大臣どうですか。
  135. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 道路政策において、当然一般会計から支出すべき金額と、そうでなくて、事業として有償でこの道路政策を実施し得る仕事というものに対しては財投資金を活用するということができますので、そういう意味でこの一般会計と財投資金の組み合わせというものができておるわけでございますが、道路政策上、やはり有料道路の建設ということによって急速にこの施策を急がなければならない問題もございますので、そういう部門に対しましてはこの財政投融資の資金を充当しているということで、この二つの組み合わせによって道路政策は遂行されておるというのが現実の姿でございます。しかも、もう道路は有料道路がございますし、公団住宅というようなものについては、これは無料の住宅ではございませんので、したがって利子の出る財政融資をしておるということでございますから、財政投融資の金額のほうが非常に多くなっておるということでございます。
  136. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  137. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を始めて。  それでは、松永君の質疑の途中でございますが、午前はこの程度といたしまして、午後は一時再開いたします。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  138. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、松永忠二君の質疑を行ないます。松永忠二君。
  139. 松永忠二

    松永忠二君 大蔵大臣、財政投融資の原資を中心にして、資金運用部資金、簡保資金四兆二千百九十三億という金を資金運用審議会という七人の審議会で配分を審議し、あるいはまた報告をしているのですが、この審議会がこんなたくさんな金を少数で審議をしているということについて、検討すべきだと私は思うのですが、どうですか。
  140. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは要するに一般会計と違って融資の金でございますので、各公庫、公団、特別会計等にどれだけの配分をするかということをきめるいわゆる融資計画でございますから、私はいままでのところは、この程度の審議会のメンバーの諮問によって、支障を来たさずにいままでのところはやってまいりまして、要するに、中心は大蔵省責任において配分をし、それを審議会にかけるということでございますので、特別の支障はいままではございませんでした。
  141. 松永忠二

    松永忠二君 それはちょっといただけない。四兆二千百九十三億ですよ。しかも公共事業でも、いろいろ財政の問題についても、非常な大きなウエートを占める財政投融資の計画が、七人の審議会で大蔵省のいろんな諮問に応じるとか、いろんなことをしてきめるということは妥当ではないと思う。一体、あれですか、いつ——暫定予算を組むときに審議会を開いたんですか。
  142. 橋口收

    政府委員(橋口收君) お答え申し上げます。  先生のお手元に資料とし提出をいたしておりますが、資金運用審議会の開催の実績表で、ことしの三月二十八日に、昭和四十七年度の資金運用部資金融通条件等について、ということで貸し付けの条件等についておはかりをいたしておりますが、その際に口頭で説明をして御了承をいただいておるわけでございます。
  143. 松永忠二

    松永忠二君 この報告書というのをなぜ国会に出さないんですか。
  144. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先生の御指摘は、資金運用部資金の運用計画及び実績の報告書のことであろうかと思いますが、これは法律の規定によりまして、先ほど大臣からお答えがございましたが、現行の資金運用部資金法によりまして、資金運用審議会に提出をして議決をいただくと、こういうことになっておるわけでございます。
  145. 松永忠二

    松永忠二君 大蔵大臣、再度聞きますが、これだけのたくさんな金を、とにかく日本の財政に大きな影響を及ぼす金を、七人の人で、ただ大蔵の人たちの言うことを聞き、報告書なども国会に出さないでおいて、それで一体正しい運営ができると思いますか。これはやはり検討すべきだと思うのですが、どうですか。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは御承知のように、いま問題になっております財投計画全体を国会の議決事項にしたらどうかというようなことがいわれておりますが、そういう問題との関連で、いま、一応この財投の問題については検討することになっており、現に検討中でございます。
  147. 松永忠二

    松永忠二君 佐藤総理、どういう感じを持ちますか、この問題について。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま大蔵大臣も、検討中でございますと、かようなお答えをいたしました。私はまことに松永君の御指摘は重大な問題だと、かように思いますので、これは十分検討して、しかる上で対処策をきめるべきだと、かように私も思います。
  149. 松永忠二

    松永忠二君 公募債借入金等の七千二百四十三億の中で政府保証債四千億という金は国会承認事項ですけれども、三千二百四十三億というのは、極端にいえばこの審議会にもかけないで、かってに大蔵省がつまりきめているわけでありますが、この点はどうでしょうか、大蔵大臣
  150. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 御指摘がございましたように、政府保証債につきましては予算総則で国会の御承認をいただいているわけでございます。それ以外に、借り入れ金、あるいは縁故債、公募債等がございます。これにつきましては、審議会にはかって御承認をいただいているわけでございます。
  151. 松永忠二

    松永忠二君 資金運用部資金のその他一兆九百六十四億という金は、一体どういう金ですか。なぜ特別会計の「その他」のところに説明がないのですか。それからまた、どういうわけで一体その九六ページの資金運用部資金四兆二千百九十三億というのは、この三つを合わせたってその金にならないでしょう。なぜ「その他」というところを省いたのですか。
  152. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これも資料として先生に提出をいたしておるわけでございますが、「その他」一兆九百六十四億円、その内訳は、船員保険の関係が二百六十億円、補助貨回収準備資金の関係が六百七十五億円、共済組合が六百六十二億円、その他特別会計からの預かり金及び回収金が九千三百六十七億円、計一兆九百六十四億円でございます
  153. 松永忠二

    松永忠二君 聞いているのはそうじゃないんですよ。何で「その他」という、そういう説明をこの説明の中に書かないのか。  それともう一つは、その財政投融資の九六ページに郵便貯金、厚生年金、国民年金合わせたって四兆二千百九十三億にならない。その他というのを書いてないんですよ。勘定合わせたってこれは計算できないのに、何でその他というのをここに書かないんですか。それじゃ何もわからない。
  154. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これは従来から財政投融資計画の原資見込みを計上いたします場合に、その大宗を占めますのが郵便貯金、厚生年金、国民年金でございますから、それが大体四分の三を占めております。そういう代表的なものを掲記をいたしたわけでございまして、その差額が先ほど御説明いたしました「その他」でございますが、この点につきましては、ただいま御指摘がございましたように、多少問題もございますので、衆議院で大蔵大臣からお答えをいたしましたように、将来は「その他」という項目を入れるということをお約束したわけでございます。ただ、特別会計のほうには、先生から御指摘がございましたように、「その他」という項目を入れてございます。
  155. 松永忠二

    松永忠二君 そういうふうに「その他」と、一兆九百六十四億ですよ。その他の、郵便貯金とか、そんな金よりずっと多いんですよ、これは。何も説明もしてない。片方には入れてない。しかもこの大蔵原案が政府原案にかわるときには、この金を伸ばして財政投融資の金をふやしている。一体、こういうことは妥当ではないと思うが、この点について大蔵大臣、どうですか。
  156. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題がございましたので、衆議院において今後「その他」というものを全部計数的にこれを示すことにお約束いたしましたので、この次からは、その他の金額を明記することにいたします。
  157. 松永忠二

    松永忠二君 大蔵大臣は、この財政投融資に問題があるから、今度は参考資料の中に補充をして、資金関係のものを、資金収支を入れたと言っているけれども、これでは事業は何もわからぬじゃないですか。たとえば住宅公団でいわゆる建設戸数は幾らなのか、宅地造成の面積はどうなのか、事業計画は全然わからぬじゃないですか。これでは十分な説明の資料とはいえないと思うが、大蔵大臣、それをどう考えますか。
  158. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 財政投融資計画の計表につきましては、法律の規定によりまして三表作成いたしておりますが、これは昭和三十六年改正の資金運用部資金法によって三表作成いたしておりますか、この三表のみでは必ずしも実態を十分反映していないという、そういう配慮等もございまして、昭和四十七年度予算からは、先ほどお話がございましたように、資金収支を二十八条書類に加えるほか、予算の説明におきまして、従来の大体三倍程度のページ数を充ててその内容説明をいたしております。ただいま御指摘がございました日本住宅公団につきましては、一〇〇ページにその建設戸数と概要が説明してございます。
  159. 松永忠二

    松永忠二君 どこに説明してあるんです。来て説明してください。
  160. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 一〇〇ページです。
  161. 松永忠二

    松永忠二君 それはあれじゃないですか。その説明でしょうが、それ。——いやいや、それはだめなんです。これにない。
  162. 橋口收

    政府委員(橋口收君) いまこれを申し上げているんです。
  163. 松永忠二

    松永忠二君 これを聞いているのにそれを言ったって何にもならぬじゃないか。なぜこれへそういうものを入れないのか。それでなければ、幾ら金を使ったって、どれだけ家が建てられて、どれだけ宅地の面積を買ったかわからないじゃない、それでいて、大臣はこういうふうな収支を書きましたからとか……。
  164. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 説明できますか。——相澤主計局長
  165. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 二十八条書類は、財政法二十八条に基づくものでございますが、これに第七号、「国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他についての前前年度、前年度及び当該年度の状況に関する調書」ということになっております。そこで従来は、資産、負債、損益ということでございますので、貸借対照表及び損益計算書を掲げておったわけでございますが、なおこれらの主要法人についての資金収支をこの財政投融資との関連において明らかにすることがより適当ではないかと思いまして、本年度から資金収支の表を加えたわけでございます。御指摘のように、この資金収支の表では、その事業の内容が出ておりませんが、それはお手元の予算の説明の中に、たとえば住宅公団で申しますと、住宅の建設戸数あるいは宅地の造成面積等を明らかにしてあるわけでございます。
  166. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ、この書類は正式のものですか。
  167. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) それは国会での御審議の参考に供するために配付しておるものでありまして、財政法等に基づくものではございません。
  168. 松永忠二

    松永忠二君 これに間違いがあったときには、これは法律的な根拠じゃありませんと、さっきその他も勘定に入れてない。いまそういう説明です。このものにはっきりそういうことを書くべきであって、あなたが財政法第二十八条七号には、「国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他について」という、「その他」に今度いわゆる資金収支を入れたんであって、事業計画もその他に入れればそれでいい。第十には、「その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類」というのを法律にきめてある。こんなものを出して、それで財政投融資の全貌が明らかだなんというのはとんでもない話だ。そういう不備を感じませんか。
  169. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 財政法の二十八条の七号の解釈の問題にもなりますが、私どもは、従来これは、「国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益、その他についての」状況に関する調書ということで、先ほども申し上げましたとおり、貸借対照表並びに損益計算書を出しまして、これで十分であると思っておりましたんですが、さらにこの財政投融資の資金の流れとの関連を明らかにする意味におきまして、資金収支の表を加えるほうがよろしいというふうに判断して、本年度からこれを加えることにしたわけでございます。で、お説のとおり、この「その他」ということでもって、その事業の計画の内容を明らかにするということも、これはできないことではないと思いますが、しかし、この条文の従来の解釈からいいまして、まあ私どもが従来とり、また本年度とりました措置で、大体において十分であるという判断をしておったわけでございます。
  170. 松永忠二

    松永忠二君 それは十分じゃありませんよ。こっちのほうに説明してあるからといったって、これは法律根拠がない。ただ参考だと、こっちにそういうものがなければ、一体幾ら戸数をし、幾ら面積をするかわからないじゃないですか。責任あるものじゃないじゃないか。「その他」というところに書いてあるから資金収支を入れたと言うなら、事業計画を入れたって悪いことはないでしょう。
  171. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) これはその条文の書き方に関連すると思いますが、政府関係機関その他の法人の経理に関しましていろいろと規定のしかたがありますが、たいていの場合には損益計算書、貸借対照表等のほかに事業計画あるいは資金計画というものが主務大臣等の承認を必要とする場合にはそれがはっきり書いてございます。したがいまして、もしこの条文においてその事業内容と事業計画というようなものを予定しておりますれば、当然そういうような記述があるのが普通だろうというふうに考えております。そういう意味におきまして、私どもは従来ともこれを貸借対照表並びに損益計算書というものを意味しているというふうに解釈しておったわけでございます。
  172. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃなお、お聞きいたしますがね。この財政投融資の中で、ここに書いてあるいろいろ事業団とか特殊会社の中で、この自己資金等で借入金やあるいはその公募の金の書いてない金額は幾らなのか。それから自己資金等の中で借入金は一体幾らあるのか、それを言ってください。
  173. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先生の御指摘の趣旨は、財政投融資計画の財投の合計のほかに自己資金等という欄がございますが、さらにその両者を合計いたしまして再計という欄がございます。この再計という欄のある機関とない機関との問題についてのお尋ねであろうかと思います。で、再計の欄がございますのは、達観して申しますと、財政投融資資金によって当該機関の事業の規模なりあるいは契約の規模なりがはっきりきまるようなものについては、再計の欄まで設けておるわけでございます。ただ、たとえば一例で申し上げますと、日本航空株式会社とか、あるいは国立学校特会のように、日本航空で申しますと、大体年間二千億ぐらいの売り上げがございますし、全体の資金計画三千億円程度の機関でございますが、それに対しまして増資に応ずるための産投会計の出資でございますから三十七億円でございます。あるいは学校特会自体につきましても、数千億の規模を持つ会計でございますが、そのごく一部につきまして財投資金を投入いたしております。したがいまして、財投資金の結果として当該機関なり特別会計の規模がきまると、こういう性格のものでございませんので、再計の欄というものを設けてないわけでございます。  それから、自己資金につきましては、ただいまお話がございましたように、内容といたしましては、当該機関の金繰りを見て財投の額を決定いたしておりますから、前年度からの持ち越し現金あるいは回収金、縁故債等の自己調達資金、産業投資特別会計以外の特別会計あるいは一般会計等からの出資金は全部ここに入っておるわけでございます。
  174. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ私のほうの数字を言いましょう。自己資金等という中には一兆七千三百五十三億という借入金が入っている。この自己資金等に書いてない金が七百四億借入金がある。それは間違いですか。
  175. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ちょっと、お尋ねの御趣旨を十分理解いたしかねて申しわけないんでございますが……
  176. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  177. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  178. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいまお尋ねがございましたが、たいへん専門的なお尋ねで恐縮なんでございますが、一兆七千三百五十三億円、この数字の内訳がわかりましたので御説明申し上げますと、国鉄関係の特別債、事業債は二千三百億円でございます……
  179. 松永忠二

    松永忠二君 いや、それだけあるということを言っているので、内容のことの説明を聞いているんじゃないんですよ。それだけあるという、自己資金の中にそれだけあると言えば、それでいいんですよ。
  180. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ええ、ちょっと申し上げます。国鉄関係が二千三百億、電電が五千八百四十四億。大きな金額のものを申し上げます。営団地下鉄が百九十億、商工債券が千四百二十億、そのほかに地方団体の縁故債等が五千三百八十八億、合計一兆七千三百五十三億、その数字は間違っておりません。
  181. 松永忠二

    松永忠二君 合うでしょう。じゃあ、なお聞きますよ。出資法人が百二あるというのは、ことしその百二の出資法人の借入金の総額は幾らですか。——わからないんですよ。これは国が出資をしている法人ですよ。それの百二の中で借入金を幾らことし全部でしているということがわからない。
  182. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 政府出資法人の全部につきまして、四十七年度の借入金の合計額あるいは借入金の残高、これは手元に資料の持ち合わせがございませんし、いま直ちに調べましてもはっきりしたお答えはいたしかねると思います。
  183. 松永忠二

    松永忠二君 私、こまかいことを聞いたのは、政府の出している財政投融資の中ではそういうことがわからないんですよ。借入金、いわゆる自己資金等に一兆七千三百五十三億という金があること、ここに書いてない借入金があること。ここへは書いてないけれども、政府が出資した借入金がわからない。それじゃ国の財政金融の面で受ける全貌をつかむことができないじゃないかということを言っているわけなんです。そういう点を大蔵大臣認めますか。
  184. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政投融資計画は特別会計——政府の公団、公庫各機関に対する融資を一まとめにした表でございますので、これだけでは、いま言ったような政府活動の全貌というものを知るということは大体できないような仕組みに現在のところはなっておると思います。
  185. 松永忠二

    松永忠二君 だから、将来この点をやはり検討すべきだということです。一体いま公債収入に依存する一般会計の資金と財政投融資計画の資金との性格上の違いというのはどこにあるんでしょう。
  186. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 財政投融資計画と一般予算との違いというまあ御趣旨ではないかと思いますが、財政投融資は、御案内のように、本来運用を目的として資金を集めるという性格のものではございませんで、受動的な資金の受け入れがございまして、それをいかに運用するかということから本来発生したものでございます。それに対しまして、国債発行収入金を含めました一般予算は、本来支出の目的なりあるいは経費の必要性がきまりまして、それに対する財源を調達すると、こういう性格のものでございます。したがいまして、財政投融資につきましては、先生よく御承知のように、利息のついたお金が集まってくるわけでございますから、これを利息のついたお金として運用するという、事業の有償的性格に充てられるものが財政投融資でございます。したがいまして、国債によって調達をいたしました一般予算と、財政投融資によって調達しました資金とは、その資金の性格も違いますし、また、その果たす役割りも違うというふうに考えております。
  187. 松永忠二

    松永忠二君 まあ、こまかいことが言えませんけれども、資金コストにかかるという点でも相違はもうなくなってきている。それから民間資金をやはり債券の市中公募という形で調達するという点では、公債と公庫公団の政府保証債と何にも違いはなくなってきている。しかも資金運用部資金によって公債を消化をしている面もある。そういうようないろいろな点から、ほとんどもう性格は一緒になってきている。したがって、どうしてもやはり総合的に再編成をして、財政投融資計画というのは国会の承認事項とすべきではないかというのがわれわれの考え方であり、まあこれは検討しているということでありますから、今後そういう点を十分に考えていくべきだと思うわけであります。  なお、ここで大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、福祉国家というような特色を、膨脹ということばであらわしている人もあるくらいに、社会福祉を本格的にやれば非常な金がかかってくる。で、来年度義務的な経費とか純当然増とか、あるいは新規政策とかがもう当然考えられてくるのだが、来年の一般会計とか財投の規模というのは一体どのくらいになるだろうと考えておられるのか。
  188. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 来年度の一般会計の規模は、来年度の経済情勢そのほかによってきまる問題でございますので、いまのところまだこれを正確に見通しを立てるわけにはまいりません。で、来年、経済の立ち直りがどの程度のものであるか。それによって税収は自然増がどの程度見込まれるかというようなことと、国債の発行をどの程度すべきかという問題と全部からんで一般会計の規模もきまることでございますし、今年度の予算がここできまる瞬間でございますので、いまのところこの見通しを立てることは非常にむずかしいと思います。ただ、福祉関係予算、社会保障費につきましては、これは経済の好況、不況には財政需要がほとんど影響のないものでございまして、一ぺん軌道に乗って踏み切りをつけましたら、これはもういつも言うとおり、あと戻りのできないこれは国の経費でございますので、したがって、不況の場合は特にそうですが、好況になっても、事実上この失業予算も縮小するというわけにはまいらないというような性格を持っているのがやはり福祉に関係する予算でございますので、ことに今年度は、そのいろんなところに芽を出してあることでございますので、来年、これが何にもしなくても、この予算は自然にふえていって、財政需要というものも相当に大きくなると、この予想は大体計算できるところでございますが、いずれにしましても、そういう大きい財政需要が見込まれるときでございますので、来年度の財政についてはいろんな問題が起こると思われますが、この正確な見通しを立てるということは、まだいまのところ困難でございます。
  189. 松永忠二

    松永忠二君 それでは、他の問題に移りますが、朝鮮民主主義人民共和国に対する政府態度というのはどういう態度でありますか、外務大臣。
  190. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 朝鮮半島に対しましては、長期的な観点といたしましては、これが統一される、そして一つの政府になると、これを念願しております。ただ、現実には、まだなかなかそこまでいきそうもないんです。そこで、北に対しましては、文化、スポーツ、そういうところの交流をぽつぽつ始めていこうかと、こういうふうに考えております。
  191. 松永忠二

    松永忠二君 ぽつぽつというのはどういう意味ですか。
  192. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そう急というわけにもまいりませんが、逐次考えていきたいと、そういうことでございます。
  193. 松永忠二

    松永忠二君 北は権威を持っているし、また日韓条約というのは北を含めての問題ではない。また、日本は北鮮との間に敵視政策は持っていないし、朝鮮は必ず一つになるものだ、一つであるということを希望し、その実現について、そういう意味で協力すると佐藤総理が言っておりますが、この点については間違いありませんか。
  194. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおり考えております。
  195. 松永忠二

    松永忠二君 佐藤総理にお聞きいたしますが、米中の接近というのは、南北朝鮮にどんな影響を与えているとお考えでしょうか。また、南北統一の話し合いの動きというのは非常に多く出ているわけでありますが、こういうことについて、どういうふうに政府は考えておられるんでしょうか。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 韓国というか、朝鮮半島というか、米中会談が影響を与えておることは見のがすことはできません。それは御指摘のとおりであります。しかし、これがどういうことになっておるかと、ここまで掘り下げてみると、米中の会談よりも中ソの影響が北鮮に対しては特に強いのではないか、そのほうをまず第一に考えるべきではないかと。私は、米中会談、これはアジアの緊張緩和に役立ったと、かようにも考えますし、アジアというその範疇には中国、それが一つの大きな問題であることは申すまでもないのですが、同時に、朝鮮半島もその中に入っていると、かように理解しておるのでございます。でありますから、私は、いま御指摘がありましたが、ただいまの関係は、むしろわれわれが心から願っておる朝鮮半島の安全、平和、そういう事柄は、ただいまのところ二つの政府のあることは事実でありますから、それらの間において、同一民族ではあるし、話し合いは可能だろうと思うし、外の影響力があまり露骨なかっこうで出てこないことが望ましいのではないかと、かように私は思っております。
  197. 松永忠二

    松永忠二君 南北統一の問題についてあまりお話がありませんけれども、政府の朝鮮政策の基本の方針として、統一朝鮮というものを想定した上での朝鮮の政策を確立していかなきゃできぬと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  198. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 朝鮮半島に対する施策といたしましては、国連の決議があることは御承知のとおりでございます。この一九七〇年の国連決議におきましては、とにかく一民族一国家、そういうことを念願をしておる、そのために阻害要因になっておる、そういうものを逐次除去していく、こういう姿勢で国連は対処しましょう、こういう内容の決議ということになっておりますが、私ども、これは国連尊重主義だと、こういうふうに言っておるわけでありますが、そういう国連の姿勢は、私は日本政府として尊重すべきものであると、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、現実の問題といたしますと、南北に分かれておって、そしてこれの間に、ときに緊張が、ある、また、ときにはそれが緩和されるというような一進一退の形勢でございまするけれども、まあとにかく朝鮮半島は、わが国とは非常に地理的にも近いし、歴史的にも関係の深いところでありまするので、そういう形の長い目の考え方というものを踏まえながら、当面の、現実の事態に対処していく、こういう考え方になろうかと、こういうふうに思うんです。まあ先ほども申し上げましたが、南のほうは日韓基本条約がある、しかし北のほうはそういう関係にない。しかし、逐次文化交流あるいはスポーツの交流、そういうようなところから交流の道も開いていき、またそういうことを背景にいたしまして、統一、そういうようなことにつきまして、わが国として何かお役に立つというようなことがありますれば、そういう機会もとらえましてお尽くしいたしたい、こういうふうに考えます。
  199. 松永忠二

    松永忠二君 外務大臣、再度お聞きいたしますが、その南北統一の話し合いとか、あるいは統一朝鮮というものをやはり想定をして朝鮮の政策というものは考えなくちゃできぬという点については、どういうお考えですか。南北の統一というようなことについて、あなたはどういうように考えておられるのか。また、朝鮮の政策は、南北統一朝鮮というものを頭で考えて基本的にやっていかなければできぬじゃないか。これは、総理最初に確認したように、朝鮮は必ず一つになるものだ、一つであることを希望し、または必ずそれが実現する、そういう意味の協力をするということを言っておるわけです。
  200. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先ほどから私が申し上げておるのは、まさに総理大臣がそう言われる、そのことをふえんして申し上げておるわけなんです。長い目の朝鮮半島に対する考え方といたしましては、どうしても一民族一国家と、こういうことだろうと思う。私は、時間のほどはわかりませんけれども、必ずそういう方向にいくんであろうと、こういうふうに確信を持ちますが、しかし現実の問題はそうでない。現実の問題は現実問題として、そこまで至る途上の問題として処理していかなければならぬ、こういうことだと思います。しかし、帰するところは朝鮮半島の統一、これが私は大事な問題じゃなかろうか、また、南北朝鮮半島の国民の皆さんもそういうお考えを持っておられるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  201. 松永忠二

    松永忠二君 国連で、御承知のとおり、朝鮮問題の決議について、この韓国の代表を投票権なしで朝鮮問題の審議に参加させよう、あるいは朝鮮民主主義人民共和国には条件をつけて招請をするというようなこと、こういう決議について七〇年の第二十五回の総会では十四票の差になっている。この前は、一年たな上げという方式をとったが、今度の秋には、おそらく南北朝鮮無条件同時招請というのが通過する見込みではないかといわれているわけですが、そういう点についてのお考え方、政府はどういうふうな態度をとっていかれるのか、それをひとつお聞かせしていただきたい。
  202. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この秋の国連におきましては、必ず朝鮮半島の問題が論議されるだろうと思う。そういう際に、南北朝鮮の同時招聘問題、これが日程にのぼるかのぼらないか私はまだ予断を許さぬと思うんです。昨年のごときは、赤十字会談が始まると、こういうような情勢で、朝鮮半島の事態はなお静観をすると、こういうようなことで朝鮮問題たな上げというふうになりましたが、私は朝鮮半島はいろいろいま転換期にあるんじゃないかというふうにも思うんです。つまり米中会談が行なわれたと、これの影響もありましょうと、こういうふうに思います。それから米ソ会談がこれから行なわれる、そういうものによって朝鮮半島がどういう影響を受けるか、こういう問題もありましょう。いろいろ朝鮮半島を取り巻く客観情勢、こういうことも動いておりますから、これは私は何らの変化がないという状態じゃなかろうと思う。ことに、最近の赤十字会談、これの動きなんかはかなり活発化しておる、そういうふうに見ておるわけでありますから、そういう動きへ移るところの朝鮮半島をめぐる客観情勢の中で、さて、これを国連の場においてどういうふうに処理するかということが秋の問題であろうと、こういうふうに思うんです。でありまするから、国連に臨みましてわが国がどういうふうな態度をとるか、こういう点になりますると、そういう客観情勢推移、これが、かなりのものがまだこれから秋までの間に予見される、こういうような今日の時点では、いまあらかじめきめてかかるというのはまだ少し当を得てないのではあるまいか、そういうふうに考えるんですが、要するに、国連に臨むわが国の姿勢、それは先ほど申し上げましたような基本的な姿勢にのっとりまして、そして現実の問題といたしまして、朝鮮半島をめぐるところの客観情勢、あるいは朝鮮半島におけるこの情勢がどういうふうに動いているか、その辺をとらえながら対処すべきものであると、こういうふうに考えておるんです。そこで、時間もありまするから、そういう考え方で慎重に態度につきましては検討していきたいと、かように考えます。
  203. 松永忠二

    松永忠二君 外務大臣は、一九五一年の二月一日の第五回の例の中華人民共和国の朝鮮介入非難決議、これは国連に中華人民共和国が加盟したということから、中華人民共和国に関してはこれはもう死滅をしたものだと思うというような答弁をされているわけです。しかし中華人民共和国は、ここにも、決議にも書いてあるように、中華人民共和国が朝鮮において侵略行為を行ないつつあるものに直接援助を与えたということなんであって、その前提にある、朝鮮における侵略行為を行ないつつあるものというものと無関係で私はないと思うんですが、どうですか。
  204. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一九五一年の中国非難決議は、これはもう中国が国連に加盟したと、国連というのはどういう社会であるかというと平和友好国の集団です。そこへ中国が入るというそのためには、当然、前提として、国連においては中国を平和友好国として認定しなきゃならぬということであろうと思うんです。そういう意味からすると、中国を侵略者として非難したというあの決議、これが生きておるというふうに考えることは私はこれは矛盾であると、そういうふうな考え方で、これは当然死滅したものだと、こういう解釈をとるわけであります。ただ、いま松永さんのおっしゃるように、中国が当時非難されたのは何だというと、北朝鮮に対して援助をしたと、こういうことであると思いますが、まあしかし、それとは別に関係なく、とにかく国連に加盟をいたしましたということで、私は、あの決議は中国に対しましてはこれは死滅したと、こういうふうに言うんですが、まあ北鮮の問題につきましては、これは国連がどういうふうにこれを処理するか、客観情勢もずいぶん移ってきますから、また変わった考え方も出てくるだろうと、こういうふうに思いまするけれども、とにかく、国連の場において検討さるべき問題であると、こういうふうに考えております。
  205. 松永忠二

    松永忠二君 北鮮に対しての問題については二つ、いろんな決議について、北鮮から武力の攻撃がされているということを一つ非難しているわけですね。それと同時に、この地域における国際の平和及び安全を回復され、必要と思われる援助という二つのことでいろいろな決議がされているわけです。現に、もう北鮮から武力攻撃はしていないという事実がある、それからまた、米中の対立というのは、もともと朝鮮問題から起こった事柄であるので、米中の接近ができれば、当然これはまあ朝鮮の問題について波及をされ正常化をしてくることは考えられる、事実アメリカもそういうことを言っているわけです。しかも、中華人民共和国は、国連参加の際に、これらの決議は不当であって廃棄をすべきだということを主張しているので、これらの国連の一連の決議が無効にされる時期というものがくるのではないかということを判断するんですが、この点はどういうふうにお考えでしょう。
  206. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ことしの秋が、まあ国連にとりまして朝鮮半島の転機というふうになるか、あるいは来年にそれが持ち越されるか、この辺はまだ私もはっきりした見通しは立たないんです。しかし、いずれにいたしましても、一、二年の間に朝鮮半島における事態がクリアされると、こういうふうな感じがいたすわけであります。したがいまして、そういう朝鮮半島の国連との関係のクリア・アップ、そういう時点におきまして、ただいま御指摘の諸問題というのが話題に当然なり得る、なる問題であると、そのときにそれらの問題が解決されることになろうと、こういうふうに見ております。
  207. 松永忠二

    松永忠二君 なお、外務大臣にお聞きいたしますが、吉田・アチソン交換公文というのは、国際連合に対して協力を日本が約束をした、その後、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定というものができて、これらの軍隊に対して日本の施設を使うというようなことについて協定を結んだ、その後、朝鮮国連軍協力新公換公文というのが一九六〇年に結ばれて、アメリカの軍隊については、これはいわゆる安全保障条約を適用するということにまあなったわけです。そこで、現在において、日本における国際連合の軍隊というのはほとんど存在をしちゃいない、しかもいま言ったような決議が、地位協定の基礎になる国連決議が再検討をされる情勢が出てきている中で、当然私は、この吉田・アチソン交換公文だとか、いわゆるこういう日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定などというものは、もうこれは廃棄をするし、そういうふうな交渉をすべきだと思うけれども、この点については、もうそういう時期にきていると判断するんですが、外務大臣どうお考えでしょう。
  208. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国連軍がいま朝鮮半島に滞在をいたしておるわけであります。その関連におきまして、わが国にも国連軍が滞在をしておる、わずかなんでありますが、三十人ばかりでございます。まあしかし滞在しておる、そういう関係がありまして、わが国は国連軍に関する地位協定というものを締結をいたしておるわけでありますが、この地位協定によりますると、朝鮮半島における国連軍が撤退した日、それから九十日たちますると、この協定に基づくところの国連軍はわが国からは撤退をする、同時にこの協定も消滅をする、こういうことになっておるわけであります。いまお話しのように、朝鮮半島における事態も激動しておる、またさらにこの一、二年のうちには国連の場においてもかなりの変化が出てくるんじゃないか、そういうふうに思いますが、とにかく、しかし、今日この時点におきましては、国連軍がなお朝鮮半島に現存をしておる、それに若干の関連のあるところの国連軍がわが国に駐留しておる、こういうような状態でありまするものですから、これをいま廃棄するというのも、ちょっと時期として当を得ないかと思うんですが、朝鮮半島の事態の推移とにらみ合わして検討を要する時期が近いうちにやってくるであろう、こういうふうに思います。
  209. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、国連の決議が再検討されるときには、もう現実にほとんどいない国際連合軍の地位に関する協定というものは検討し直す、そうしてアメリカの軍隊は、安保条約の関係で施設の協定を別個にしているわけだから、もう現にいない国際連合軍についてはそういう時期には検討する、こういうことでいいんですか。
  210. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) つまり、この一、二年あるいは二、三年というふうになるかもしれませんけれども、国連の朝鮮半島に対する見方、これがかなり改訂をされるであろう、こういうふうに見るんです。そういう際に、かりにいま四万の米軍が国連軍として朝鮮半島に駐留していると申しております。また、タイの軍隊百五十人ぐらいですか、これはわずかでございますが、これが国連軍として朝鮮、韓国に駐留をいたしておる、それらの軍隊が引き揚げてしまう、あるいは国連軍としての性格を失う、こういうことになりますれば、これはもう当然わが国は、この国連軍地位協定、これを廃棄するということを考えなきゃならぬことになるんですが、いまはとにかくそういう軍隊が残っており、そういう軍隊の朝鮮半島における駐留を前提としての協定でございますものですから、いま直ちにというわけにいかないんです。しかし、さような変化が朝鮮半島において起きてくるということになれば、自然わが国といたしましては、この問題の処置を考えなきゃならぬ、すなわち、これを廃止するという方向のことを考えなきゃならぬ、こういうふうに考えます。
  211. 松永忠二

    松永忠二君 それは、いまのお話によると、何か朝鮮に、韓国に国際連合軍というアメリカの軍隊がいる間はだめなんだというお話のようだけれども、そうじゃなくて、国連の決議が検討されたときに、現に日本にいる国際連合軍というのは、ほとんどアメリカ以外には三十人ぐらいしかいない、だからその時期に検討するということであって、何も韓国にいるアメリカの国連軍が撤退しなきゃ、こっちの問題は検討し直さないということではないと思うんですが、あらためて、どうですか。
  212. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 韓国におりまする米軍は、これは米軍としての立場もありまするけれども、国連軍として駐留をいたしておるわけであります。他の国の軍隊とともにおるわけなんです。そういう関連を持ちながら、わが国に国連軍が駐留をする、こういうことになり、わずか三十人内外でございまするけれども、そういうものが存在をする、こういうことになる。したがって、朝鮮半島、韓国に駐留するところの米軍が国連軍の地位を失うということになる、あるいは、もっとさらに、基本的に韓国から撤兵をしてしまうというふうなことになりますれば、当然、わが国のそういう関係はなくなるわけでありまするから、そのときは当然わが国は国連軍地位協定についてこれが廃止を検討すべきものである、こういうことでございます。
  213. 松永忠二

    松永忠二君 そうではないのであって、アメリカの朝鮮にいる軍隊は、日本に来れば、これは安保条約に基づく地位の協定でちゃんと確保できる。だから三十人そこそこ、ほとんどいない、そのものについてのいわゆる条約、協定の問題なんだから、そういう問題は、国連決議が出ればそのことをし直せばいいのであって、何もアメリカの軍隊の問題は、これは日本に来ればすぐ安保条約を適用するということになるのだから、三十人くらいやそこらのために日本における国際連合の軍隊の地位の協定という、そんなものをつくっておく必要はないじゃないですか、どうですか。
  214. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国連で朝鮮半島に対する考え方が変わってくる、そういうことになってくると思うのです。もう国連軍は国連軍として駐留する必要はない、つまり、たとえば北のほうは侵略者ではないのだというようなことがきまるということになると、そういう議論が出てくると思うのです。国連軍の駐留というものは、そういう北に対する備えというところから出てきておるのですから、そういうことになる。そこで、かりに国連がいろいろな朝鮮半島に対する決議をやるでしょう、あるいは決議の改訂をやるでしょう。その中でいろいろな朝鮮半島に対する見方の変化が出てくる。その中の一つといたしまして、もう国連軍は韓国には駐留をさせないのだ、こういう決議があれば、これは当然わが国の国土に駐留する国連軍、これに対する地位協定、これはもう廃止していいものでありますから、そのときにはこれは自然そうなる、そういうふうに考えております。
  215. 松永忠二

    松永忠二君 そういう時期が早晩来るという判断をしていますか。
  216. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どうも先々のことでわかりませんけれども、私は希望的観測も言っておるかもしれません。つまり、私は朝鮮半島における平和ということをこいねがっているがゆえに、そういう観測になるかもしれませんけれども、国連においては、この一、二年、おそくも二、三年には、かなり朝鮮半島における見方の変化というものが出てくるのじゃないか、そういうふうに思いまするし、また、朝鮮半島自体にも、これは時の流れというか、それに応じましてだんだんと変化が出てくると、こういうふうに見ております。
  217. 松永忠二

    松永忠二君 外務大臣と通産大臣にお聞きをいたしますが、日朝貿易の拡大の条件というのは非常にある。つまり、韓国だけに援助するということは統一の支障にもなるという点も出てくるし、西欧諸国が国交を回復していないのに相当やっているという事実、アメリカが、また米韓関係の改善をはかろうと考えているというようなことや、北朝鮮の態度も非常に弾力的だというようなことからして、日朝貿易の拡大の条件は非常にそろっていると思うけれども、この点についてどういう御判断でしょう。
  218. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先ほどから申しましておるとおり、わが日本は、これは北に対しまして文化だとか、あるいはスポーツだとか、そういう交流を逐次始めていかなければならない。また逐次始めるようにいたしております。しかし、通商の問題、この問題になりますと、民間貿易です。これはおっしゃるとおりでありまして、かなりの条件が整備しつつある。また、その整備を前提といたしまして、かなり私は進展を見るであろう、こういうふうに見ておるのです。ただ、政府がこれに関与する貿易、つまり輸銀の問題とか、そういうようなことになりますると、これはいま東欧諸国のような、イデオロギーがわが国と違う国とわが日本との関係、それと違いまして、朝鮮半島はいま南北に二つに分かれておる、その南の韓国とわが国が基本条約を締結しておる、こういうようなことから、南に対する配慮、これもまた必要なんです。そういうようなことで、政府がこの貿易に関与する形でこの貿易を進めていくと、これにつきましてはなおこれは慎重なかまえが必要じゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。しかし、民間の気分がかなり熟しておりまするから、そのほうは大いに伸展するというふうに見ておりまして、これに対してこれを制肘するとか、そういうようなことは一切いたしません。  ただ、政府間の問題になりますると、南との関係を配慮しながらやらなければならぬというので、何か具体的な案件が出てくるというふうな場合におきましては、まあケース・バイ・ケースの検討ということに相なろうかと、かように考えております。
  219. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 北鮮との貿易につきましては、基本的な姿勢は外務大臣が述べたとおりでございます。この四年来を申し上げますと、五千四百万ドル、五千六百万ドル、五千七百万ドル、去年は五千八百五十万ドルというふうに、非常に貿易は順調に伸びております。それから輸銀は使っておりません。輸銀は使いませんが、延べ払いの件数も、去年は千五百五十万ドルというふうに、件数は四件に伸びております。
  220. 松永忠二

    松永忠二君 そういった日朝貿易拡大の条件はあるが、日朝貿易の支障になっているものは一体何だと考えておられるのか。外務大臣、法務大臣、通産大臣にひとつお尋ねをいたします。
  221. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) やはり南との関係をどういうふうに見るかと、こういうことが日朝貿易については支障というか、まあ障害になっておると、こういうふうに思うんです。私どもは、日朝貿易、これは進めたいと思います。思いまするけれども、同時に、基本条約を結んでおるところの韓国の立場というものも配慮しなければならぬ、そういう立場にあること、これが一つの北鮮との貿易を制肘する要因になっておる、こういうふうに存じます。
  222. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 端的に申し述べますと、いま外務大臣が述べられたことでございます。北鮮側からは貿易——延べ払い、輸銀の使用等の要望がございます。そして具体的なプロジェクトも提示をされてもおりますが、輸銀使用というものにつきますと、大蔵、外務、通産三省で合議をして、国益の問題とか、いろいろなことを考え、決定をするわけでございますが、いままでは輸銀の使用ということがなかったわけであります。これは、まあ率直に申し上げると、台湾と中国大陸の問題、それから韓国と北鮮の問題、同じように、いろいろクレームがつくという問題もありまして、なかなか、国際情勢推移によってバイ・ケースでと、こう申し上げておりますが、いままで輸銀使用の例を見なかったということでございます。
  223. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま両大臣から話されたとおりで、われわれ出入国のいろいろ管理行政をやっておりますが、やはり南との関係も考え、朝鮮半島全体が総合計して最もうまくいくようにというような配慮をしていかなければならぬ。それが、ある場合には北朝鮮には非常にネックになるというようなこともあるわけでありまして、そのときの事情に最も適合した行政をやっていくべきだというふうにわれわれ考えております。したがって、将来には打開されるものだと期待しておりましたが、なかなかそういうことが進捗しないために、われわれも、客観的な情勢が変わりませんので、いわゆるムードというような程度でいろいろいままでの行政上にもあらわしておりますが、根本的にはもう少し客観情勢が進んでまいりませんと、それに対応した、方針を変更するというわけにいかない場合が多いわけであります。
  224. 松永忠二

    松永忠二君 総理大臣にお聞きいたしますが、あなたは日中貿易なんかで、いわゆる政経分離だと、こう言っているわけです。政治の問題と経済の問題は別なんだと。そういうようなことを考えてきたときに、しかも統一を前提にし、統一はできるものだというような考え方で、そのような話し合いにも協力していこうというならば、こういうときこそ政経分離して経済問題をも進めていくという基本的な考え方を持っていくべきだと思うんですけれども、どうでしょう。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ先ほど来いろいろお話を申し上げております。私どもの一番心配なのは、日本の周辺で問題が起こらないこと、そういうことで、こういう事柄、いわゆる緊張を激化するような事柄はとにかく避けていかなければならない、こういうのがいままでのとってきている態度であります。  私は、まあ中国大陸に対して政経分離だという、そういう形で長いことやってまいりましたけれども、このほうは国際的な世論がきまった、昨年の状態で。これからもまた変わっていこうと、こういうのでありますし、また韓国の場合におきましても、朝鮮半島に位する二つの政府、こういうものの間も、これはやはりだんだん変わってくるのじゃないか。そういう場合に、これはたいへんむずかしいことなんですが、中国の場合と違って、朝鮮半島の場合は二つの政府がただいまありますが、そのいずれもが日本と一時一緒にいたと、こういう関係でありますから、これをどういう形で独立さすか、これでたいへん関心を持っている。それがいわゆる日韓国交正常化、そういう形で一応片づき、やれやれと思っている際に、ただいまのようにまだなかなか北鮮と韓国、まあ北鮮と言わないで朝鮮民主主義人民共和国ですかと、それから韓国政府、その間の話がなかなかつかない。しかし、まあ最近の、きわめて最近の状態から見ると、板門店を中心にして両国赤十字間でいろいろ話し合いを進めるとか、またいろいろな関係も平和のうちに話が進むだろうと、こういうような点も考えられておりますから、いましばらく模様を見ることが必要ではないだろうか。ただいま政経分離だとかいう、そういう政策を打ち立てることは、かえって誤解を受けるので、むしろいまのままのほうがいいんじゃないだろうか。先ほども通産大臣が申しますように、いままでの経過と違って、昨年は貿易額もとにかく在来の十倍以上に急にふえておる、こういうような状況でありますから、とにかく隣の国との関係は、政府がとやかく介入するよりも、国民的な、また一緒であった民族的な関係もありますから、そういう意味の話し合いのほうが現実には問題をスムーズに進めていくのではないだろうか。私どもはとにかく隣に問題が起こらないように、その辺のみに実は注意をしておるというのが現状でございます。この点を率直に私は御披露いたしまして松永君にも御理解をいただきたいと、かように思います。
  226. 松永忠二

    松永忠二君 統一は推進をするし、政府が直接はだが民間では貿易を拡大していこうというのならば、ここで支障になっている点は、どうしたって、やはりせめて技術者くらいは日本の国に入ってこれるようにしなければ、あるいはプラントの問題を相談するったって、ただ書面で、電報でやっていたのではそれはとてもできないということはわかると思う。諸外国はみんなそれを認めているじゃありませんか。しかも、日本の国から出かけるということについては、北朝鮮はこれを拒否をしているわけじゃなしに、もっと相互主義という立場から考えたって、当然これは日本にも入れるべきだと、私は思うんです。こういう技術者の来日という点について、積極的に外務大臣はどう考えておられるのか、あるいは通産大臣は、そういう面で経済の拡大から、どう考えているのか、あるいは法務大臣は、一体この問題をどう片づけていこうとしているのか、これをひとつお聞かせをしてください。
  227. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先ほど私は、日朝貿易を妨げる問題は、これは韓国への配慮であると、こういうふうにも申し上げたんです。いま技術者のお話でございますが、まさに、この技術者の問題というのは、これは入国を許可するかしないか、また、入国した技術者を出国を許可するかどうか、こういう問題があって、そこに日本政府の意思が働いてくるという問題で引っかかりが出てくる、そういう問題なんです。で、この問題、ざっくばらんに申し上げますと、実は韓国において非常に神経をとがらしておる、こういう事情があるわけなんです。そこで、私どもといたしましては、これは慎重な扱いをいたしてきたわけなんです。もとより、技術者を入れました、その結果、これが輸銀の延べ払い問題なんかに直結をしてくるというようなことであると、これはかなり問題が複雑であります。しかし、技術者が入国をいたしました、これは輸銀のそういう問題には引っかかりがありません、これは民間の日朝貿易問題にからまってくる問題でありますというと、やや緩和された形の考え方、これができてしかるべきじゃないか、そういう考え方も起こってくると、こういうふうにも思うんですが、これは、松永さん、せっかくのお尋ねでございますがね、ちょっと時をかしてください。ここでお答えをするというようなことになると、かえってこれがまた問題のぶちこわしになる、そういう可能性もなしとしないということを私は心配しております。これは少し時間を置いてお答えをさしていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  228. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 北朝鮮との貿易は、先ほど申し上げましたように、だんだんと拡大をしておりますし、また拡大の方向に進むと思います。拡大の方向に進む過程においては、技術者の入国ということは当然起こってまいります。起こってまいりますが、この問題に対しては、いま外務大臣が述べましたとおり、外務省の意見も聞き、また、私たちの意見も法務省にも述べておりますが、最終的には外務省及び法務省に右にならえということをやっておるわけでございます。貿易するほうは、売ったり買ったりということに対しては拡大をする方向に、こういうことでありますが、しかし、入国問題という問題はまた別な問題として、外務、法務等で検討を進めておりますので、バイ・ケースにより、関係各省でしかるべく協議をいたします、こういうことで、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  229. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 大体、両大臣からの御答弁で尽きていると思いますが、まあ、われわれとしましても、具体的の話、またその必要性ということを認められる場合には、私はそんなにやぶさかではないわけでありますが、かなりいろんな宣伝に使われているということも考えなければなりませんので、率直に言いまして、抽象的にいろいろお答えするということが、かえって障害になるというので、いままでにつきましても常にその点は注意しておるようなわけであります。
  230. 松永忠二

    松永忠二君 私は、そのために総理の基本姿勢を聞いたんですよ。いまの答弁なんか聞いていると、韓国、韓国と話しているが、それじゃあまりにもこの基本線と違うじゃないか。その点についても意識して今後努力すると、政府間でなければ、民間のことであれば、また積極的な面もあるというお話なので、その話は聞いておきますが、法務大臣、再入国問題については、もう一九六八年の九月の創建二十周年祝賀団派遣の際に、憲法二十二条で在日韓国人にも海外旅行の自由を保障していると解すると、再入国を認められないのは、日本の国益や公安を害するおそれがあるなど、公共の福祉に反する場合に限るという判決が出ているじゃありませんか。しかも、この判決は最高裁で、祝賀行事が終わっているから利益が失なわれているということで、この問題についてのことじゃないじゃありませんか。当然、もう人道上から言ったって、あるいはまた積極的な意味から言ったって、これは、再入国をし、あるいは技術者その他の来日を十分認めて、相互主義を貫いていかなければならぬ、こういうことは当然だと思うんですけれども、再度ひとつお聞かせください。
  231. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) あれは、最高裁としましては、率直に言ったら、どうも逃げたと申しますか、そういうような判決でありまして、法務省としましては、まだあの下級審の判決に満足しておるわけではありません。それはそれといたしまして、今回につきましても、先ほど来申しておりますように、原則として変える客観的な事実はありません。しかし、ムードとしてわれわれが実質上ある程度考えるべきだというようなことで、先般のような処置をしたわけであります。人道上という筋は変えておりませんが、実質的にある程度認めたというようなかっこうになっておるわけなんです。
  232. 松永忠二

    松永忠二君 日朝貿易の船を韓国の整備艇が停船を命じて調べたりなんかする事実はいまでもあるのですか。
  233. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 最近さような事実はないそうです。
  234. 松永忠二

    松永忠二君 こういうことが昭和四十五年に問題になったときに、厳重に抗議をしてあって、こんなことはありませんと、そう言っておるのに、実際には、昭和四十六年十一月十八日、南朝鮮チャンギ岬沖合い二十マイルの地点で、発砲を受けて停船を命ぜられた船がある、こういう事実を知っておりますか。
  235. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう話は聞いておりませんでございます。
  236. 松永忠二

    松永忠二君 そういう事実をやっておるし、また、盛んに発光信号などでいろいろの点を、停船を命ぜられたり、内容を聞かれている事実がある、そういうことも承知しておりませんか。
  237. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう話は全然聞いておりませんです。
  238. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃ、あればどうしますか。
  239. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういうことは想像できない、こういうふうに言っておりますが、もし万一そういうことがありますれば、わが国としましては当然厳重な抗議をいたします。
  240. 松永忠二

    松永忠二君 じゃ、直ちに調べて厳重な抗議をすると一緒に、こういう事実を再度起こさないということを確約してください。
  241. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 調べまして、もし事実がありますれば抗議いたします。  それから、そういうことが起こらないように確約せいと、これは無理な話なんで、これは韓国側の問題ですから、韓国側がそういうことをしないように抗議をいたしまして、事前の抗議もいたしておきます、こうお答え申し上げるほかはございませんです。
  242. 松永忠二

    松永忠二君 ちゃんといま記録で、はっきり言ったんだから、調べてちゃんとしていただきたい。  なお、いろいろありますし、お聞きをしたいのでありますが、時間も来ましたので、予定したものを少し割愛いたします。  国立大学の授業料を値上げした理由は何ですか。
  243. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 国立大学の、あるいは公立大学の授業料というのは、学生、生徒が設備、施設を利用する利用料であると同時に、教職員によって得まするところの、役務に対する受益者負担金のきわめて一部である、こういうように理解をいたしております。今回値上げをいたしましたのは、国立大学の授業料というものは、そのときどきによって値上げをしてきたのでありますが、今回は、九年間据え置かれておったのでありますので、諸般の事情を考慮いたしまして、値上げをすることに踏み切りました。ただ、値上げをするにあたって、私どもは、私立とのバランスを考えて値上げをしたのではないということを、ひとつ御承知をいただきたいと思います。と申しますことは、私は、この値上げの財源が私立に回ることを期待をいたしました。そこで、私立大学に対する補助金あるいは育英資金、これらのものとの見合いにおいて、これらを画期的に引き上げていただくならば授業料を上げようということで、幸いにいたしまして、私立大学に対しましては、経常費が五二%の増額になりましたし、奨学資金につきましてもそれぞれ増額になりましたので、この機会が最も適当な機会だと判断をいたしまして、値上げに踏み切った次第であります。
  244. 松永忠二

    松永忠二君 公立の大学と、それから私立の大学の授業料というのは、どういうふうなものだと考えているんですか。
  245. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これはまあ二つあると思います。私は、施設、設備に対する使用料と、それから教職員の教育というものの役務に対する受益者負担金と、こういう考え方をとるべきではないか、かように考えております。
  246. 松永忠二

    松永忠二君 総理と文部大臣にお聞きします。営造物の使用料だということになれば、値が上がれば上げるのは当然じゃないか、教育のサービスだというなら、よい教育をしていれば、高い対価を出して受益者負担を上げるのはあたりまえじゃないかという話が出てくるでしょう。日本へ来たソビエトの新聞プラウダの大学高等教育部長がこう言っています。驚異とも言える高度経済成長を遂げ、国民生活は豊かになった日本なのに、国立大学の授業料値上げをなぜせねばならぬか、全くもって不可解であり、理解に苦しむことである、この疑問は、日本に来て最初に感じたものであり、かつ最大の疑問だ、そのために、機会あるごとに質問を試みたが、残念なことに、十分納得した回答に接することができなかった——イギリスは、ほとんど大学の授業料については公費負担の原則が貫かれているし、国際的にも、そういうふうに高等教育を無償にしようという国際的な傾向、現に実現している社会主義の国ということから考えれば、いまのお話はどう理解したらいいんでしょう。総理からもひとつ聞かしてほしい。
  247. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 全体主義国家におきましては、国立大学は授業料を免除いたしております。が、イギリスにおきましても、私の承知いたしておるところでは、教員養成大学については授業料を免除いたしておりまするけれども、その他は授業料を取っております。ただ、アメリカ合衆国におきましては、州に住んでおる州民が州立の大学に入ります場合に限って授業料を免除いたしておる、という状態でありまして、私は、自由主義諸国の大部分は授業料を取っておるというのが実情であると、かように考えております。
  248. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま文部大臣が答えたとおり、どうも政治形態も違っておりますから、一がいには、ソ連と日本と同一であると、こうはいかぬと、かように思います。
  249. 松永忠二

    松永忠二君 イギリスなんか違いますよ。八〇%国庫で補助をして、私立がほとんどだけれども、授業料の納付金は一〇%以内、奨学金のほうでその金を払っているので、大学の学生は、ほとんど授業料が幾らだということを知らない。イギリスの大学の授業料については公費負担の原則は貫かれておる、こういうことであります。その他の国でも、そういう方向に持っていこうと努力しているじゃありませんか。文部省がそういう資料を出しているじゃないですか。
  250. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 御指摘のように、イギリスは国立大学を持っておりません。先ほど申し上げましたのは、県立の教員養成所については授業料を免除する。私立が非常に多いのでありまするから、私立に対しましては、国からの補助を八割——大体八〇%程度の補助をいたしております。これは私立オンリーの国でございますから。フランスは全く逆になりますけれども。そういう状態でありまして、それは先生御指摘のとおりであります。
  251. 松永忠二

    松永忠二君 公立はほとんどなくて、私立であって、私立が高等教育を担当している。それは、ほとんど無償だということになっておるわけです。日本の国の授業料の考え方も大幅に修正をすべきであって、日本も、公費負担主義というものが、憲法の二十五条とか二十六条、教育基本法の三条一項などで掲げられておるし、学校教育に要する教育費は原則として公費負担主義というのが、教育基本法第六条にも「法律に定める学校は、公の性質をもつ」と——学校教育法の第六条では「学校においては、授業料を徴収することができる。」ということが書いてあるだけであります。また、政府は、教科書裁判などでも、教育権は国にあると、こう言っておるでしょう。日本の国にも、いまの憲法や教育基本法から考えて、いわゆる授業料の公費負担という考え方が具体的に提示されておると思うんですが、この点について、文部大臣はどう考えますか。
  252. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お話のとおりであります。イギリスの場合は御指摘のとおりでありますが、私ども、日本の場合を考えまするというと、国公立と私立との比率は、大体国公立が四分の一であり、私立は四分の三であるという現状であります。そこで、私立は企業じゃないかという議論が一つありますけれども、私は、少なくとも、国の当然やるべき仕事を私立でもってやっていただいておるのでありまするから、これは国が補助金を出さなければならぬというので、昭和四十五年から皆さんの御支持を得まして、経常費補助の制度をつくりました。今年も五二%の増額をいたしたわけであります。しかし、これはイギリスの例にならってやるということになりますると、これはもう財政上たいへん大きな問題になりますので、漸を追うてその形を実現していきたい、かように考えておるところであります。
  253. 松永忠二

    松永忠二君 考え方があるかということを聞いておるんです。
  254. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 考え方と申しますか……。
  255. 松永忠二

    松永忠二君 日本の国にもそういう考え方があるかどうか。
  256. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) ございます。それでなければならぬと思います。
  257. 松永忠二

    松永忠二君 非常にはっきり、そういうことがあると。それは確かですよ。憲法二十六条にも「教育を受ける権利を有する。」とか、教育基本法の第三条一項には「その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」、経済的地位によって教育は差別をされないとか、いろいろなことが書いてある。文部大臣、そのまま認めたので、私はそれでいい。  そうすると、授業料というのはできるだけ安いほうがよいという原則があるじゃありませんか。
  258. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私も、授業料が安いにこしたことはないということは、松永先生と全く同じ意見でありますけれども、時の動き、時の流れというものも、やっぱり考えてみなければならぬと思うのであります。諸般の情勢から考えまして、国立大学の授業料が現在の月千円でいいのかということになりまするというと、これはただにしたらいいじゃないかという議論も出るでありましょう。けれども、私立大学等との——私は比較で申し上げるわけじゃありませんけれども——私立大学に助成を回す意味においては、国立の負担をもう少しふやすことを考えなきゃならぬじゃないかという判断に立ったわけでございます。その点、基本においては先生の御意見と私の意見とは違うところじゃございませんけれども、やむを得ずそういたしました。
  259. 松永忠二

    松永忠二君 したがって、授業料というのはできるだけ安いほうがいいという、そういう原則のもとに考えなきゃいけない。私立学校の授業料というのは公共料金なんですか、何ですか。
  260. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  これは私立学校設立者が学校法人を設立いたしまして経営をいたしております。したがって、この学生たちは授業という役務を受けますところの対価を支払っておるということになるのでありますけれども、本来は私は国がめんどうを見てやるのが筋道だと考えておるのであります。したがいまして、国立の授業料を上げました分よりはるかに大きな私立大学の助成をいたしました趣意はそこにあるということを御理解をいただきたいと思います。
  261. 松永忠二

    松永忠二君 経済企画庁、総理府にお聞きをいたしますが、消費者物価指数において、公共料金のウエートで公立の学校の授業料それから国立の大学の授業料が入っているわけですが、一体、私立は高等学校で三割、私立の大学は七割あるわけでありますが、これは全然公共料金に入ってないが、これは矛盾してるんじゃないですか。
  262. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いわゆる公共料金は、私どものほうで、政府が関与する料金、したがいまして、公共的料金ではございますが、私どもの言う狭い意味の公共料金としては扱っておりません。
  263. 松永忠二

    松永忠二君 で、そういう考え方も少し問題です。政府が関与しなくても、地方公共団体が直接統制をしている価格もあれば間接的な価格もある。だから、事業主体が公法人、私法人であるとを問わないで、提供される役務自体が広く一般人の社会生活に強い関連性を持っている公共的、公益的な事業の施設の料金を公共料金と言うべきではないか。私立学校の授業料というのは届け出制でしょう。
  264. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お説のとおり届け出制でございます。
  265. 松永忠二

    松永忠二君 大学を許可するときにも、学則の中に授業料と入学料が書いてある。そしてまた届け出制をしいているのに——じゃ届け出をするということはどういうことなんですか。届け出をしたことによってそれを抑制をするという、そういうことをやったことがあるんですか。
  266. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私の先ほどの答弁、ちょっと食い違っておりましたから訂正いたしますが、私立大学は学則できめることになっておりまして、届け出になっておりません。したがって、文部大臣が私立大学に対して授業料の問題で指図をするということは少なくとも私学に介入することになります。これは極力避けなきゃならぬことである。上げてもらいたくはないんでありますけれども、これは別な方法で上げなくて済む道を講じてあげると、そのためには私学に対する奨励金というものを思い切ってふやしていくということを今後ともに考えていくよりほかに方法はないだろう、かように考えておるのであります。
  267. 松永忠二

    松永忠二君 学則はそれを届け出をして大学設置基準のときにそれを認可をしているわけです。学則が変更したら届け出をせよということになっているんだから、結局、授業料というものは届け出がされている。そういうことでしょう。それに間違いないでしょう。
  268. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 授業料の問題は、学則の記載事項として必須の事項になっておりません。
  269. 松永忠二

    松永忠二君 そんなばかなことありませんよ。学校教育法施行規則四条一項に、学則の中に授業料、入学料等の費用徴収に関する事項を記載しなければならない。変更については、大学と高専は文部大臣に、その他は都道府県の知事に届け出をすることに学校教育法施行規則第二条一項に書いてあるじゃありませんか。
  270. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お話しのとおりで、私の答弁の間違いでございました。これは訂正をいたします。ただ、単価を幾らにするということは届け出の条項にはなっておりません。授業料、手数料、納付金というような金額を届け出……
  271. 松永忠二

    松永忠二君 書いてあるでしょう。
  272. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) それはなっております。それは私の答弁の間違いであったということで訂正をいたします。
  273. 松永忠二

    松永忠二君 届け出をしたものをいわゆる行政の措置をして引き下げたりなんかした事実がありますか。
  274. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私立学校を新設いたします場合の設置審議会等におきましては、授業料が高過ぎる、安過ぎる——安過ぎるということは一ぺんもございませんが——高過ぎるというようなことで注意を与えた例はございます。ただ、その後における改定について文部省はこれは指図、権限を持っておりません。さよう御承知をいただきたいと思います。
  275. 松永忠二

    松永忠二君 変えたときに届け出をするというのだから、これは届け出したものについてこれを指導することはできるでしょう。大体タクシーの代金でさえもこれが公共の料金であるのに、私立の授業料なんというものをただ届け出をすれば野放しにやっていいという筋合いではないでしょう。こういう届け出制というのは、これをやはり指導するということがなければ、届け出制の意味がないじゃないですか。それじゃ何のために届け出をするのですか。
  276. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お話しのように届け出に対して指導ができないわけじゃございません。ただ問題は、私どもは私学の経営者の意思というものをできるだけ尊重をしなきゃならぬ。私学には私学の権威があります。伝統がございます。この権威というものを尊重する意味においてできるだけくちばしをいれないことにいたしております。
  277. 松永忠二

    松永忠二君 じゃ、私立大学や高等学校の授業料というのは適正だというふうに思っているんですか。あんなたくさんな授業料を取りあんな入学金を取っても、それでもいいと思っているんですか。
  278. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) まことに残念なことでありますけれども、いいことだとは思っておりません。いいことだとは思っておりませんけれども、経営の内容というものの実態を調べてみますというと、私立学校の経営というものは実に苦しいものであるということだけはよく承知をいたしております。
  279. 松永忠二

    松永忠二君 私立学校といえどもこれは公のものだというふうにちゃんと規則に、法律に書いてあるわけです。だから、こういう抑制をする。届け出をする以上、抑制ということを考えていかなければ意味がないじゃないですか。
  280. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) その抑制の手段として私立学校経常費等の補助を増額をし、できるだけ値上げを防いでいきたいという考え方でおるのであります。その意味においては、今後ともひとつ御協力をいただきまして、私立学校に対する補助金というものをできるだけふやしてやって、それによって授業料を値上げしなくてもいい状態を、健全な経営のできる状態をつくるように御協力のほどをお願い申し上げます。
  281. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、行政的な指導は私立大学の授業料というものにできるということを確認してよろしゅうございますね。
  282. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 法律上はできます。
  283. 松永忠二

    松永忠二君 今度の国立大学の授業料値上げした分を育英資金の奨学金の純増に充てているということがあるわけでありますが、奨学金についてどういう問題点があるというふうに考えておりますか。
  284. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、奨学金というものが、出発点は育英資金という形で出発をいたしております。その育英資金という形で出発をいたしました当時の奨学金というものは何であったかというと、エリート養成ということであったと私は理解いたしております。ところが、今日のように高等教育を受ける者の数が非常にふえてまいりまするというと、教育の機会を均等に与えるというたてまえからいうと、育英資金ということばは必ずしも当たらない。むしろ大学院の博士課程におる連中こそ育英の名に値するかもしれませんけれども、普通の場合は私は奨学資金ということばを当てるほうがいいんじゃないか。だから、日本育英会法も時期を見て改正をいたしたいと考えております。それによって私立大学——いまのところはこういう状態になっております。国立大学のほうは大体三分の一奨学資金を受けておるんですね。ところが、ことし私立のほうは千二百人ですか、定員をふやしてもらいましたけれども、とても問題になりません。というのは、四倍もおるんですから。問題になりませんので、むしろこれは奨学資金という名のもとにだれもが平等に受けられるように制度を変えていかなきゃならぬというのがただいま私が考えておる構想の一つでございます。
  285. 松永忠二

    松永忠二君 奨学金制度について抜本的な改正をやらなきゃできない。諸外国と比べてみても、諸外国は給費制度を使っているし、その数、その額、そういうものについても非常な開きがある。中教審の答申でも、年に二千六百億使うと書いてあるのに、現実には二百二億しか使ってない。この奨学金の抜本改正というものについてどんな具体案を一体持ってるんですか。
  286. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) いろいろな問題を考えなきゃならぬと思いますけれども、私はまず資金をふやすということを考えなきゃならぬ。そのためには民間資金の導入ということも一つの方法として考えるべきじゃないだろうか。銀行ローン制度ですね——を考えなきゃならぬじゃないだろうかというようなことをいま構想いたしておるところであります。イギリスなんかの奨学資金が非常にたくさん出ておりまするのは、銀行ローン制度が非常に有効に適用されておるというところに原因があるようであります。これは日本も学ぶべきところではないかと、かように考えております。
  287. 松永忠二

    松永忠二君 そんな銀行ローンなんか使うことを考えないで、日本育英会が構想しているようなそういう問題をひとつ根本的に考えてください。  総理にお尋ねをいたしますが、あなたは明日香地方を視察をされて、そうして飛鳥藤原宮跡保存整備というものをやってるわけでありますが、これにどういう問題点があるというふうにお考えでしょうか。
  288. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) どういう問題点があるかという御質問に的確に答えることになるかどうかわかりませんが、要は、国家が国費あるいは公共事業その他の文化財保護、古都保存法等の措置を講じましても、地域に住んでおられる住民の方方、その人々の生活上当然要望される権利としての希望というものと、国家が全体的にそれらの地域に望みをかけております住民のあり方というものとの間は必ずしも一致しない。明日香の例でいいますと、周辺は宅造がずいぶん進んでおりますから、土地の値段も高騰して、自分たちもできれば手放したいというような意見もあるけれども、それをお願いをしつつ、理解を得つつ、手放さないで協力をしてもらっていただいておる。ここらのところが、今後いかに費用を投じても、法律の網で努力をしても、なお努力して、最大の一致点を見出さなければならない難関であろうと考えております。
  289. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまので大体御理解をいただけるかと思いますが、最近のことばでいえば、開発か保存かと、こういうことが一つの命題になります。地域的な住民からいえば保存第一だと、こういうことで、近代的な開発はおくらされる、こういうことになる。また、その地域に埋蔵されている文化財、そういうものがいろいろの観点から、これまた全部を解明することもできないようなそういう状態に置かれておる。民族の文化はたいへん大事にしなければならないものでございますが、そういうような問題もある。いろいろ内蔵している問題は多岐にわたっておると、かように理解しております。
  290. 松永忠二

    松永忠二君 総務長官が言われたように、住民生活の向上をはかるために国や地方公共団体、民間の一体的な協力が必要だということを閣議決定されている。もっと明日香村の村民が誇りを持って今後とも文化財保存に貢献できるように、生活の基盤を安定させる方向で政策を実施していかにゃいかぬ。この点が最も重要な点である。また、保存の政策が観光開発にどうも傾いているのではないか、あるいはまた、その各権限がばらばらで、保存の行政が統一をされていないのではないかというようなことも考えられているわけです。十分こういう問題はひとつ再検討をしてほしいと思うんですが、どうですか。
  291. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのようなことを初めから総理が懸念をされまして、いわゆる文化の官庁である文部省、あるいはまた事業を実施する建設省、あるいはまた厚生省等の見解総理府等において調整機関としての古都保存法に関する審議会がございますから、そういう立場から、総合的な行政がばらばらにならないように、そして村民の意思等がよく反映するようにという配慮のもとに、私がその具体的な作業の下命を受けたわけであります。いま、逐次順調に進んでおりますし、保存財団も積極的な協力をしてもらっておりますが、やはり、まだまだ住民の人々の意見というものが的確に国と一致しておるという点については足らない点があるように考える節もございますので、自分たちは明日香にたまたま住んでいたために生活が犠牲にされておるというようなことにならないように、今後一そう十分配慮していく所存であります。
  292. 松永忠二

    松永忠二君 問題があれば、質問をするわけではないんでありますが、時間もございませんので、十分なことはできません。特に、文化財保存という点で非常な不備な問題が出、その中でも、埋蔵文化財の保存ということが非常に危機に瀕している。しかも、その文化財を破壊するものが、国がやる道路やあるいは公団の建設などであるということから考えてみて、文化財保護法を抜本的に改正すべきだと思うが、これについてどういう考え方を持っているか、ひとつお聞かせをしてください。
  293. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 開発と文化財の保護の問題は非常にむずかしい問題であります。その適例は、おそらく松永先生御承知の伊場遺跡がその最も適例であろうと思いますが、私どもといたしましては、現在の文化財保護法という法律だけではもはや処置できないという感じを持つに至りました。ただ問題は、いまのところは届け出制になっておりますが、埋蔵文化財の分布図をつくっておりますけれども、新しく開発されるところでどんどん出てくるんです、新しい物が。そこで、さらに精密な文化財の分布地図をただいま作成中でございますが、その場合に、単に届け出制でやりますというと、土建業者なんかがかってに掘ってしまった場合に、これに対する強制権が何もございません。それから、それじゃ強制する何か立法措置をとるということになりまするというと、個人の私益に関する問題が出てまいります。こことの調和も考えなきゃなりませんけれども、少なくとも現在のようにただ届け出て罰金五千円ですか、それで済むということであるならば、埋蔵文化財は、保護するどころじゃない、もう破壊される一途をたどると考えざるを得ないのでありまして、文化財保護法ができましたたしか昭和二十五年であったと思いますが、国宝保護法だとか史跡保存法だとかいう法律を一本にいたしまして文化財保護法をつくりました昭和二十七年でありますか、その時点から実は大きな法改正をやっておりません。この辺で一度私権の制限に大きな影響を与えない範囲で文化庁長官に権限を与える法律の改正が必要じゃないかというので、実はいま検討に取りかかっておるところでございます。ひとつ御協力をお願いいたします。
  294. 松永忠二

    松永忠二君 その一つの例としてお話のあった静岡県の浜松市の伊場遺跡、この調査の人は、もはや浜松における遺跡であることにとどまらず、日本屈指の遺跡となり、全国に伊場遺跡としてその名を高め、今後伊場遺跡を除いて日本の古代史を論ずることはできないと、こういうふうに言っているわけであります。この伊場遺跡にいわゆる鉄道高架に伴って、ここに電車区をつくろうというようなことが国鉄で考えられている。しかし、建設省は今度これについての都市計画の事業を決定をしたけれども、この決定をした都市計画事業の中には伊場遺跡の場所に電車区をつくるというような事業の計画を認定をしなかったというふうに考えているが、それは事実であるかどうなのか。また、国鉄は、調査の結果に基づいて考えるのであって、いまそこに建設するなどということを考えているのではないと思うのでありますが、これについて御意見をお聞かせいただくと一緒に、いまこの伊場遺跡の調査のために市が約三千万いままで使って、今後四千万かかろうと。まあよくやるのには八千万の金がかかろうというふうなことであるけれども、これについて文部省はどういう協力をしようとしているのか、この点をお聞かせをいただきたい。国鉄側のほうからも、建設省側のほうでも、この問題についての態度をお聞かせを願いたいと思うのであります。
  295. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) この伊場遺跡は、昭和四十三年に静岡県指定の史跡になったのであります。確かに、お話のように、市は非常な金をかけていることを承知いたしております。同時にまた、西側のほうの遺跡は弥生後期のもののようであります。ただ、東側が奈良朝時代の郡衙——郡役所のあとで、これは非常に貴重な全国で珍らしいものでありまして、何とかしてこの遺跡は残したいものだと私どもは考えております。同時にまた、これに必要な金は来年度はぜひ要求をいたしたいと、かように考えております。何とかして保存する努力をいたしたいというつもりでおるわけであります。
  296. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 浜松駅前の高架の問題ですが、都市計画決定をしたのは、鉄道高架化事業として都市計画を決定をいたしたのでありまして、操車場は含んでおらないと承っております。この場所につきましては、私の聞くところでは、ずいぶん前から電車駐留所がありましたので、鉄道としてそれを移転する計画があったということでございます。高架化それ自身については、あなたがおっしゃいますように、直接の関係はございませんけれども、間接の関係が大いにございます。したがいまして、いま、この伊場遺跡の問題については、せっかく関係者の間であるいは浜松市が中心になって、いまおっしゃいましたようにたいへんな金を使って調査をいたしておるようでございます。この調査の結果がどうなるかということは、まだ決定をいたしません。これを全部凍結するということになれば、これは操車場の移転個所がありません。しかし、個々にこれを堀り出しておいて資料館でもつくってというようなことになれば、これはまた別な考え方でございます。最近一つの案が浜松市から提出されております。いずれにいたしましても、いま調査中でございますので、せっかく関係者と相談をいたしまして、この埋蔵文化財については慎重な態度で臨みたいと。高架化の事業にいたしましても、二、三年ではできません。あそこを高架化するというと、やはり十年に近いくらいなたいへんな大工事でございます。工事それ自身は国有鉄道でやることになっております。  いずれにしても、調査を急いで、そうしてその結果によって考えたいと、かように思っております。
  297. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国鉄といたしましては、浜松市の問題につきましては、いわゆる高架化事業に伴う浜松市の再開発にもぜひ御協力申し上げたいと。また、いま先生の御指摘の伊場遺跡の文化的な保存についてもできるだけそう御協力できればいたしたいと、こういうふうに思っているわけでございます。したがいまして、すでにあの伊場遺跡の場所は、先生御承知のとおり、市有地——浜松市の土地でございます。その浜松市の土地とうちのいま電車などを置いてあるところとの土地の交換の問題でございますので、私どもといたしましては、浜松市がすでに第四次まで発掘をしておられるようでございまして、ことし第五次の発掘をなさるそうでございますので、浜松市の発掘の済むまでお待ちいたしました上で更地として交換するというふうなことにいたしたいと思っています。しだがって、その発掘がおくれますれば、若干都市の再開発がおくれてもこれはいたし方ないと、こういう根本的な態度でございます。
  298. 松永忠二

    松永忠二君 いまの国鉄総裁のは、少し不満であります。これはまた個々にお話をして問題の解決をはかりたいと思います。  以上で終わります。
  299. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で松永君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  300. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、矢山有作君の質疑を行ないます。矢山有作君。
  301. 矢山有作

    ○矢山有作君 まず最初に、もう近くおやめになるだろうと想像されます総理にこういうことをお聞きするのはいささか酷とは思いますが、まあお聞きしたいと思います。  去る四月の二十一日の毎日新聞紙上に全国世論調査の結果が出ておりましたが、総理もおそらくごらんになったと思います。あれを見ますと、佐藤内閣の支持率は一九%、まさに戦後歴代内閣の中で最低の支持率でありますから、したがって、それだけに世論の批判のきびしさということもお感じになったと思いますが、ひとつあれをごらんになっての御所見を承りたいと思います。
  302. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、毎日新聞の世論調査の結果は目を通しました。私個人に対する支持率が非常に低下したこと、これもさることですが、私は、政党支持率、そのほうに実は重点を置いております。一人の人間よりも党の生命が大事だと。したがって、最近の形から見まして、政党の支持率がよほど変わってきている。全部の方々が政党を感ずるという、そういうことでないんで、いわゆる支持率なしという方も相当ふえてきている。そこに政治の不信があるのではないか、かような意味を私は指摘せざるを得ない。そういう意味で、やはり人の問題はいろいろの考え方がありますけれども、政党のもとでただいまの国会運営、またその他の政治が行なわれる、そういう際に、国民の関心がそこに向いていないというのは、これは何という情けないことかと私はまことにさびしい思いがいたしたのであります。これは、保守党といわず、革新政党といわず、最近、政党の支持率の上がった政党はないといわれる、ここに私はたいへん意外な感をするのであります。おそらく矢山君も同感ではないだろうかと、かように思います。これは私の率直な感じでございますので、これはひとつ……(「すりかえるな」と呼ぶ者あり)別にその他の話にすりかえたと、こういうことではございませんから、そういう意味でお聞き取りをいただきたい。
  303. 矢山有作

    ○矢山有作君 あの世論調査は、佐藤総理のおことばですが、佐藤個人に対する批判では私はないと思います。これは佐藤内閣というものに対する批判であろう、これをまず第一点として申し上げておきたい。それから確かに国民の中に政治不信というものがいま大きくなっております。しかし、その大半の責任——ほとんど全部と言ってもいいと思いますが、その責任は、やはり時の政権を担当しておる政府なりその与党にあるということは、十分御自覚になる必要があろうかと思います。  そこで、過日の本予算委員会の質疑において、佐藤内閣の存在はこれは佐藤公害だ、だからなるべく早くおやめになっていただくのが国民のためなんだというような発言がありました。まさに世論調査はそのことを事実として証明しておると思うのです。ところが、同じ四月二十一日の朝日新聞を私は見ておりました。そうしたら、その朝日新聞紙上におきましても、「新政権待ち?」——クェスチョンマークがついておりますが——「の経済官僚」という見出しで、当面の経済政策の重要課題として、不況脱出、福祉型経済、国際収支の黒字圧縮、そして円の再切り上げ回避という山積する問題をかかえているのに、霞が関の経済官僚は腕を組んだままふてくされている。「やがて内閣が代って新大臣がくる。次官が代って局長クラスの大異動もある。いまどきチエを出したり、馬力をかけたりするのはバカですよ」というのが彼らのきょうこのごろの本音だと、こういうふうに書かれております。私も、どうもいまごろ接触をしてみて、いささかそういう感なきにしてもあらずと、こういうふうに感じておるんですが、こういうところから見ましても、この重大なときに、本格的に政策に取り組まなきゃならぬ第一線の官僚陣がこういうことじゃ困る。そういうことになるのは、やはりこれは私はいまの内閣にその責任があるんではないかと、こういう点から考えましても、まあきびしい言い方ではありますが、佐藤総理がいまにして国民に奉仕する最大の奉仕はやはり早期退陣である、こういうふうに考えますが、おやめになる時期はまだわかりませんか。
  304. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見は、私もただいま静粛に承っておきました。ありがとうございました。
  305. 矢山有作

    ○矢山有作君 じゃ私は、佐藤さんが国民に奉仕されるという立場から早期御退陣になられることを重ねて要望しておきます。  次に、米中の会談以来、大勢としては緊張緩和の情勢が生まれた、緊張緩和の雰囲気が確かに生まれたと、こういうことを政府は言っておられるのですが、私は、日本が持っておる平和憲法のたてまえ、あるいは始終皆さんが口にされる平和外交に徹するという立場からするならば、この緊張緩和の情勢を積極的に推進していくことが政府責任ではないか、こういうふうに思うのですが、その点、いかがですか。
  306. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まさに私は、矢山さんとその点については意見が全く一致いたします。つまり、米中会談は、その波及といたしましてまあ局所的にはいろんな問題を起こしております。しかし、大勢といたしましては、緊張緩和、このムードをかもし出したいということは、これは争えない事実である。私は、このことは世界政治の上に非常に貴重なことであったと、こういうふうに思いました。この貴重なムードを大事に育て上げていくということが、平和に徹するわが日本外交の基本でなければならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。いま正月以来をとってみましても、あるいはフランスのシューマン外相がやってくるわ、あるいはグロムイコ・ソ連外務大臣がやってくる、あるいはメキシコの大統領だ、パラグァイの大統領だ、あるいは昨日帰りましたが、アフリカのモーリタニアの大統領外五国務大臣がやってくる。そのほか、中南米諸国、あるいは中近東、いろいろな接触がくしの歯をひくようにあるわけなんです。それらの国に対しまして何とかして日本は平和世界を実現したいというための働きかけをしておると、こういうことでございますが、アジアにおきましても、アメリカに先んじてバングラデシュの承認を行なうとか、モンゴリアとの修好を行ないますとか、あるいはベトナムに対しましても若干の働きかけを行ないますとか、私どもといたしましては、できる限りの平和外交をこの際にこそ推進しなければならぬというふうに考えまして、世界じゅうに向かってそういう行動を展開しておる、こういう現況でございます。
  307. 矢山有作

    ○矢山有作君 お聞きしておまりすと、確かに、この緊張緩和のムードを大切にして大いに推進したいという意欲は私は高く評価をいたします。そうして、あれもやった、これもやった、いろいろ言っておられますが、私が聞いておるところでは、一番肝心かなめな緊張緩和にとって重要な問題が落とされておるのじゃないかという感じをしておるんです。私は、何といいましても、現在のアジアにおける緊張緩和というものを推進して行き、これを定着せしめるためには、日中間の、あなた方のことばで言うならば国交正常化、われわれのことばで言うなら日中間の国交回復、これが最大の課題だと思うんです。どうしてただいまの答弁でもこれだけ重大な問題を避けて御答弁なさるのか、承りたい。
  308. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 別に避けたわけではございませんで、まあ非常に大まかに申し上げたから、個々の問題については触れなかったんです。私どもは、アジアの平和のためには、何といっても日中国交正常化、これはどうしても必要である、こういうふうに考えておるんです。同時に、日ソの問題、これもある種の動きが始まってきております。これも結実させなければならぬかと、こういうふうに考えておりますが、特に一番困難な問題であり、しかも重大な問題は何かというと、日中国交正常化の問題である、こういうふうに考えておるわけでありまして、決してこれをよけるというようなことじゃない。これに真正面から取り組むという姿勢を示しておる次第でございます。
  309. 矢山有作

    ○矢山有作君 特に私は申し上げたいんですが、真に緊張緩和を口にされるときには、あなた自身も一番大事だと思われる日中問題を落とされることのないように、ここに焦点を合わせて問題を考えていただきたいと思います。  そこで、いままでいろいろ言われておりますが、私は、日中国交回復を達成する上で最大の問題は、やっぱり台湾問題なんだろうと思っておりますが、こういう考え方で話を進めてよろしゅうございますか。
  310. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私もそう思いますが、それはやや具体的な問題の角度からそう考えるんです。しかし、その前に、私は、日中間の信頼関係、こういうことがあるだろうと思う。三木さんも中国へ行って帰った、そして、三原則というような問題、これは技術的な問題だというようなふうにも言っておりますが、その前にどうしても信頼関係ということが非常に大事だと、こういうことを申しております。私もそう思います。信頼関係さえあれば、これはもうあとのことは、私はそうむずかしい問題じゃないのじゃないか。その辺に戦争というような事態を経過いたしました日中間にむずかしい問題があるというとらえ方をいたしております。
  311. 矢山有作

    ○矢山有作君 長い間そういう戦争という不幸な時代を経てきた。しかも、その戦争をしかけたほうは日本であります。その現実の認識の上に立って信頼関係を回復するのには一体具体的にどうしたらいいのか。これをお考えになったことはありますか。
  312. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は両国——二国間の問題でありまするからこれは相互に理解し合うということが大事だと思いまするけれども、とにかくこの戦争という歴史を回顧してみますると、わが国が兵を大陸に進めまして、たいへん大陸の方々に御迷惑をかけた、こういうことがある。そういうようなことを静かにわが国としては特に反省をしてみる。その反省の上に立って気強くわが国の姿勢に対する理解、また親善ということを呼びかける。こういうことが必要じゃあるまいか、そういうとらえ方をいたしております。
  313. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう反省をするというのなら、やっぱりその反省をしておるという事実が証明されるような行動がないと、口先では反省をするとか国交正常化をやると言ってみても、実際にやっておることがうしろ向きのことであれば、これは私は信頼を得るどころか、むしろ逆に不信感を買うだけだと思うのです。そういう意味でやはり私どもが一番考えなきゃならぬのは、過去の歴史を考えれば考えるほど、やはり国交正常化のためには、先ほど言われておりますような、一つは中華人民共和国政府が中国人民を代表する唯一の合法政府であるということ、それから、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部だということ、日台条約は不穏当であり廃棄すべきだということ、このことだけはやはりはっきり認識をして確認をしてかかる必要があるのじゃないかと思う。この認識があいまいなままで、いかに口先で日中国交正常化を唱え、あるいは双方の信頼感を育てなければならないと言ってみても、私は不毛のことばの遊戯にしかすぎぬと思うのですが。
  314. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日中間のむずかしい問題はやはり台湾の問題だろうと、こういうふうに思います。台湾につきましては、中国側が、まず、台湾は中華人民共和国の不可分の領土であるということを承認せよ、それから、日本国民政府との間の日華基本条約はこれを廃棄すべし、こういうことを要請をいたしておるわけなんです。それに対しましてわが国は非常に明快な態度を示しておると私は思います。つまり、第一の台湾の領土帰属につきましては、これはカイロ宣言あるいはポツダム宣言の経緯あるいは中華人民共和国が国連に加盟したといういきさつから見まして、これは中華人民共和国が台湾は中華人民共和国に帰属するという主張、これは理解できると、こういう態度を示しておるわけなんです。私は、台湾の領有権を放棄いたしましたわが国といたしましては、これはもうぎりぎりの見解だろうと、こういうふうに思います。それから、日華平和条約につきましては、これは相手のあることであり、その相手は、いま現実の問題として現存をいたしておると、こういうわけです。そこで、一方の大陸の中華人民共和国とはどういう関係にあるかといえば、まだ国交も結ばれておらない。まだ、結ばれるというか、そういう状態にもなし、また、さらにそのための政府間接触さえも始まっておらぬと、そういう段階であります。そういう際にわが国が日華平和条約を廃棄するということになったら、一体日本のアジアに対する立場というもははどうなるのだ。これは非常にむずかしいことになる。そういうようなことでありますので、これも私はぎりぎりの見解だと思うのでありまするけれども、日中国交正常化の過程においてこの問題を話し合いましょう。わが国は、国民政府——当時、とにかく国連におきましても優勢であった国民政府であります。中国を代表するというふうに世界的に認められておった国民政府、その政府との間に結ばれた条約である。それですからこれは今日まで堅持してきたわけでありますけれども、中国側にも中国側の主張がありましょう。ですから、この問題は政府間接触の過程において話し合ってみましょう。その上で日本政府といたしましてはこれは結論を出します、こう言っておる。これも私はぎりぎりの見解であると、こういうふうに思うのですが、とにかく、それの前提といたしまして、私どもが中華人民共和国は中国を代表する政府であるという認識に立って正常化交渉を始めようというのです。正常化ということは何だといえば、国の承認まで含めての話であります。これは内容は非常に広範で、包含するところの意味合いというものも深遠なるものがある、こういうふうに考えておるのですが、この辺は私はもう少し話し合いを一お互いが意思を通じますれば、これは中国側においてもわが国のそういう立場というものは理解できるのじゃないか、そういうふうに考えておるのでありまして、まあ、各方面に、いわゆる対日三原則を認めなければこれは話し合いが始まらぬのじゃないかというような議論もありまするけれども、私どもの日本国としても日本立場があるのです。その立場というものをぎりぎりのところまで制約しての見解をいま示しておる。これにつきましては、私は中華人民共和国におきましても正しく理解する日が来るであろうということを確信をしております。
  315. 矢山有作

    ○矢山有作君 中華人民共和国が台湾は中国の不可分の領土であるという主張をしていることを理解するということろまで言うのでしたら、人ごとのようなことを言わないで、そのとおりだと言ったらどうですか。不可分の領土だということになれば、引き続いて、中華人民共和国が唯一の正統政府ということになるのですからね。それももう言ってしまえばいいことだと思うのですよ。私は、その辺をもたもたして踏み切れない政府態度がふしぎでしかたがない。  それからもう一つは、私は台湾に目を向けるのではなしに、いままでの経過というものを純粋に理屈の上でお考えを願いたいのです。これは一々詳しい歴史を言っておりますと時間がたいへんですから申し上げませんが、要するに、中華人民共和国が成立したのが一九四九年でしょう。それで五〇年の初頭には、アメリカはこの台湾問題等には不介入、不干渉の声明を出していますね。それが、台湾に対しててこ入れをして二つの中国をつくり上げてきたのは朝鮮戦争の勃発前後からのことでしょう、アメリカがそれをやったのは。そしてそれにカイロ宣言を重ねてずっと考えてきたならば、純粋の理屈の上から言うならば、中国が復交三原則と言っておるこの主張は正しいのじゃないですか。あなた方がこれを認める、認めないという議論は、いましますまい。その復交三原則というものは、いま言ったような歴史の事実の経過から純粋に理屈の上で言ったならば正しい主張なんじゃないですか。
  316. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国側が対日三原則というものをさような形で打ち出す、これは私は理解はできます。しかし、わが国にはわが国の立場があるのです、これは。とにかく長い間国民政府との間によしみを重ねてきた、そういう歴史がある。このことも私は踏まえてかからなければならぬ。しかし、私どもが言っておることは、とにかく中華人民共和国は中国を代表する政府なんだ。それと国交の正常化をしよう。正常化というものは、その意味するところ非常に大きいわけです。それを考えておる。その辺で私は、中国側においてもわが国の置かれておる立場、そういうものについて理解ができ得るのではあるまいか、そういうふうに見通しをいたしておるわけであります。
  317. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう口先の議論ではおそらく国交回復正常化という問題は困難だろうということは、先般来民社党の代表団との共同声明なり、あるいは春日委員長の記者会見での発言、あるいは自民党のほうの三木武夫さんのお帰りになってからの記者会見での発言等々を見て、私はもうはっきりしておるだろうと思います。この復交三原則というものが国交正常化に入っていく前提として確認されない限りは、おそらくいかにどう言ってみても、私はこの国交正常化という交渉の端緒までも開けないのではないか、こういうことをやはり言わざるを得ないわけです。この問題、後ほどまた触れるといたしまして、私はもう一つお聞きしたいのは、戦後四分の一世紀にわたって政治、経済、軍事、あらゆる面で世界に君臨してきたアメリカが、ニクソン訪中実現にこぎつけるために、ニクソンが就任して以来、口先よりも実際の行動でいかに努力をしたか。このことはおそらく政府当局もよく御承知だろうと思います。このことは、たったこの間発表されました外交教書ですか、あの中にもかなり詳細に書いてありますから御承知だと思いますが、それをどういうふうに考えておられるのですか。アメリカですらあれだけの口先でない実際の行動で示してきたわけです。その結果がニクソン訪中という成果を生んだわけですからね。
  318. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、アメリカの対中国政策、これはニクソン大統領の出現以来新しい段階を迎えたと、こういうふうに見ております。その理由は、一つは、やはり中国という国はとにかく人口七、八億を擁する巨大な国である。その国に対しまして封じ込め政策をとっておる。こういうことがはたして世界の緊張緩和という点から見てどんなものであろうか。また、それに関連いたしましてアメリカ自体の財政上の負担とか、そういうようなものも考えたと思う。同時に、これはソビエト・ロシアとの三角関係アメリカ、ソビエト・ロシア、中国、そのこと、これを頭に置いておるであろうと、こういうふうに思うんです。そういうようなことから中国封じ込め政策の大転換ということに踏み切ったと、こういうふうに見ておるわけでございますが、いずれにいたしましても、私たちアジアの国として見ますると、大局的にはたいへんいいことであると、こういうふうに考えておる次第でございます。
  319. 矢山有作

    ○矢山有作君 アメリカアメリカ立場で真剣に米中間の接触を求める。そのための努力を、口先でなしに実際の行動でやってきたということです。私よりももっともっと外務当局のほうがよう御存じでしょうが、私どもが知っているだけでも、これはたしかニクソンが大統領になって一九六九年三月に発表された外交教書ですが、このときにすでに米中間の関係正常化を求めるということを明確に言っております。それから後、絶えず御存じのような努力を重ねてきた。それがあの米中間の接触ということになったわけです。それに引きかえ、わが国政府は、口先には日中国交正常化を唱えるが一体何をやってきたかということになると、私は何もやってないと言わざるを得ぬし、それからもう一つは、昨年の七月にニクソン訪中が発表されたときに、まさにびっくりぎょうてんしたというこの事実は、いかに日本の外務当局が米中の動きに対して無知であったか。知っておってやらなかったというのはけしからぬけれども、おそらくびっくりしたというから、びっくりしたのがほんとうなら、知らなかった。これだけのたいへんな動きをアメリカがやっておるのに知らなかった。そしてニクソンの訪中が実現してびっくりぎょうてん。これでは、まさに日本外交というのは私はお粗末だと思う。一体外務省は何をしておるのかと言いたくなるんですが、そのことはこれでとどめておきます。  そこで、私はお聞きしたいのですが、政府はかねがね国連決議には従うのだということを言明しておられます。ところが、国連専門機関が続々と中国招請の決議をしておるのに、政府はこれに対して終始棄権の態度をとっている。これは口に日中国交正常化を唱えて実行が伴わぬ一つの実例じゃないんでしょうか、いろいろ言いわけはあるでしょうが。
  320. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、わが日本ばかりの態度じゃないんです。あなたがいま称賛をされておるニクソン大統領の率いる米国政府におきましては、もっとこの問題につきましては厳格な態度をとっておるんです。わが国は申し上げるまでもありませんけれども国民政府との間に多年友好を重ねてきた。この関係というものをひとつ踏まえておかなければならぬ問題もあるわけです。これは現実の政治としてある。そこで、国連の下部機構の問題になりますると、事がわが日本の一票できまるという際におきましては、これは慎重な配慮をしなければならぬ。しかし、そうでもないケースがほとんど大部分でございます。そういう際にわが国がどういう態度をとるかということは、やはり現実というものへの配慮、このぐらいのことはしてしかるべきじゃあるまいか、こういうふうに思うわけです。これはアメリカ政府あたりから、日本がさらに強い態度をとってしかるべきじゃないかというような話もずいぶんありますけれども、われわれは必ずしもそういう意見に同調するわけでもないのです。大体、大勢は読める、そういう際に、棄権というような態度をとる、これも現実的な行き方ではあるまいか。実際外交として評価されていいのじゃあるまいか、そういうふうに考えております。
  321. 矢山有作

    ○矢山有作君 次期総理を目ざす人がそういうふうに大勢観望というのは情けない話です。アメリカ態度をずっと見ておって、アメリカがやればおれも続いてやろう。これでは、これはもう外交の自主性というものは全然ないということになりますね。私は、アメリカアメリカで筋を通しておると思うのです。ちゃんと訪中をして、そうして毛沢東と会い、あるいは周恩来と会い、そうしてそれぞれの話し合いの中で共同声明を出す。そうして棄権するところは棄権する。きちっと筋を通している。ところが、日本態度一体何ですか、これは。さっぱり話にならぬ、それに比べると。私は、緊張緩和の情勢を歓迎しこれを推進するというのなら、こんな小さなことぐらいは、アメリカが棄権をしておろうが、しておるまいが、そんなことは関係なしに、国連決議には日本は従うのだと言ったのだから、どんどんその決議に参加して賛成をしたらいい、これは。  次に伺いたいのは、吉田書簡の問題がいまだに解決つかずにおるのですが、   〔委員長退席、理事白井勇君着席〕 これは、私が承知しておりますのは、六十五年の二月の国会ですね。ここで佐藤総理は、吉田書簡は私信であるが内閣は拘束される、こう言っておいでになる。このことは私信、私信と言いながら、その私信を政治レベルにまでみずから高めた発言なんですよ。そうして足を縛られて、いまどうにもこうにもならぬでおるのですが、これはいかがですか。
  322. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 佐藤総理がかつてそういう御答弁をされたということは私も聞いております。しかし、いまやわが国と中国間は、非常に事態が動いておるわけです。わが国は、中華人民共和国を、中国を代表する政府という認識のもとに国交の正常化までやろうという決意をした。そういう段階になりますると、この問題の考え方はまさに矢山さんの御指摘のように、変えてかかる必要がある。先般来私どもは、この書簡はもう死滅したものだと、こういうふうに言っておるわけです。したがって、わが国はこの書簡によって拘束はされません、こういうことを言っておるわけでありまして、これなんかは、日中国交正常化のために大いに日本政府努力しておる、高い評価を与えられてしかるべきかと、かように考えます。
  323. 矢山有作

    ○矢山有作君 じゃ確認しておきます。吉田書簡は私信であるからもう無効なものであるということをはっきり公式に発言なさるわけですね。
  324. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府はこれによって拘束を受けませんということをはっきり申し上げます。
  325. 矢山有作

    ○矢山有作君 なるべくなら、拘束を受けるとか受けないとか、持って回った返事じゃなしに、こんなものは無効でございますと言ったほうがはっきりする、事態が。どうも政府は持って回ったような言い方をするから誤解を与えるのです。  それから次に、米中関係と日中関係の最大の相違点というのは大体何だとお考えになっておるのですか。いろいろ話はいままで聞きましたけれども、どうもどこが最大の相違点かということがはっきりわからないんです。
  326. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一番大きな違いは、米中間には同盟関係があった、しかし戦争という事態がなかった。これに反しまして、わが国は中国との間に支那事変、さかのぼっては満州事変、さらに最後には大東亜戦争というような戦争という事態を経験しておる、こういうことかと思います。
  327. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまは日中間には鉄砲の撃ち合いはないにしても、法的に言えば戦争状態があるという認識はないわけですか。
  328. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 実際的にも、また心情的にも、あるいは法的にも、日中間には戦争はございません。そういう認識でございます。
  329. 矢山有作

    ○矢山有作君 その理由は何でしょう。
  330. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私が「実際的」と申し上げましたのは、今日、日中間では戦争をやっているというような状態じゃございません、これは。あれだけの人が行き来をされる。また、貿易も中国から見れば世界一の貿易をしておる。こういうような状態でありまして、実際戦争があると、これはどこのだれが考えましても、戦争があるなんという認識はないと思います。それからまた、「心情的に」というふうに申し上げましたが、われわれは当事者である日本国民といたしまして、中国と戦争しておるというような気持ちは毛頭持っておらぬ。それからさらに法的にはどうかというと、当時、中国を代表するという立場にありました国民政府との間に日華平和条約を締結しておる。これによって戦争は法的に終了した、こういうふうにとらえております。
  331. 矢山有作

    ○矢山有作君 その点で私はやはり疑問を持っておるんです。日華平和条約が締結された当時のいろいろな議事録を引っぱり出して読んでみたんですが、それを見ると、この日華平和条約というのは、いわゆる限定承認というのですか、そういう形をとっておるというふうに解せられるわけです。それで、このことは時の全権委員の顧問をやっておられた西村熊雄さんですか、この方も指摘しておられますが、この限定承認というようなことは国際法上いままで例がなかったんだと。しかしながら、今度の日華平和条約はその例のない先例をつくったんだ、こういう言い方をなさっておるわけです。それともう一つは、例の、御承知のような吉田総理からアチソンでしたかにあてた書簡、いわゆる吉田書簡の中を見ましても、あるいは日華平和条約の締結されたときの交換公文ですね、これを見ましても、やはり私は日華平和条約の適用範囲というのは、当時としては台湾及び澎湖島に限られておったと、私は、そういう立場からこの条約は締結された、そしてまた、そういうふうにすることのために将来の日中間の関係を非常に憂慮された総理が全力をあげてきたんだろうと、こういうふうに思っております。そしてまた、議事録の答弁もそうなっておるんですね。ところが、その答弁が変わってきたのが四十六年ごろ、愛知外務大臣のころからこの答弁がくらりと変わっちゃって、先ほど福田外務大臣がおっしゃったような答弁になってきたわけですよ。これは私はちょっとおかしいと思うんですよ。佐藤内閣になってから変わっちゃった、対中姿勢が悪くなると同時に。そうじゃないですか。
  332. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私ども、中華民国との平和条約におきましての態度は、当初におきまして、ただいま先生がおっしゃったような限定承認というような考え方を政府側は持って交渉を始めようとしたことがあったように聞いております。しかし、でき上がった条約そのものは、やはり中華民国を中国を代表する政府としてこの中華民国との間に平和条約を締結したというふうに従来解釈しております。
  333. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし私はね、条約自体の中にも中華民国を中国全土の唯一正統政府とみなすという文句が全然ありませんね。日韓条約を見ると、朝鮮半島の唯一合法の政権はいわゆる大韓民国政府だということになっておる。ところが、日華条約にはそういうことばすらこれは入っていないのですよ。それというのは、交換公文と照らし合わせ、いろいろなその当時の状況を考えた場合に、私は西村熊雄さんが指摘しておるように、あるいは吉田総理答弁をしておるように、限定承認、中国全土の正統政府として認めたものではないというふうに解釈するのが当然であるし、そういう解釈で先ほど言った四十六年までは来ておるわけですよ。そういう正しい認識に立って私はものを処理しないから誤りが起こると思うのです。そういう正しい認識に立つなら、日本と中華人民共和国との間には戦争状態は法的には終了していないのですからね。その点を、私はやはりもう一ぺん検討し直されにゃいかぬと思うのです。ほんとうにこの両国間の国交正常化を求めようとされるなら、それが私は当然だろうと重ねて申し上げたいのですが。
  334. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま矢山さん御指摘の点につきましては議論が存することはよく承知しております。しかし、わが政府が一貫してとっておりまする態度はこれは中国を代表する政府としての国民政府との間に条約を締結した、こういうことでありまして、国と国とのつき合いという部面につきましては、全中国を包括するたてまえの条約であると、こういう認識であります。ただ一点、さらばといって、国民政府が中国全土に対して実効的支配をしておるか、おったかというと、そうじゃない。台湾、澎湖島だと、金門、馬祖だと、こういうようなことになってくる。そういうようなことで、この条約の適用につきましては、これは地域的な配慮を要するものにつきましては、この条約はその実効的支配を及ぼしている地域に限られるということになりまするけれども、国と国との基本的な関係につきましては、これは全中国の領土を包含した中国、この中国としての国民政府、これと日本国との間において締結された条約である、こういう理解なんです。ただ、この問題は、おそらく中国側においてはそういう理解をしておらないんじゃないかと、こういうふうに想像するわけです。ですから私は言っているのです。そういう日中間において争いのある問題こそ政府間接触において話し合ったらどうだ、そして、大いに議論をして、妥当な結論を得るということにしたらどうだろう、これが実際的じゃないか。また、わが国にはわが国の立場があるんだから、それくらいのことにつきましては中国側も理解を示してしかるべきであると、こういうふうに考える次第でございます。
  335. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、この議論はすれ違いでありますが、いずれにしても、将来の日本と中国の間の関係を考えて苦労してきた先人の立場を尊重して、日本の国の利益になるような解釈を積極的にやるという態度がほしいということを申し上げておきます。  それから次は、ASPACの閣僚会議が六月中旬に開かれる。ここに政府はこれを解消するつもりはない、あるいは脱退するつもりはない、反共色をなくするように努力すると言われるのですが、私は、こんなものは、そもそものおい立ちから考えた場合に、緊張緩和の権勢を促進しようそして日中の国交正常化を考えようというんであれば、私は参加しないほうがいいと思いますが、どうですか。
  336. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は世界じゅうと仲よくしたい。特にその中でもアジアの諸国と仲よくしたいし、また、アジアの国々が相連帯して協同発展をするということを強く念願をいたしておるわけです。   〔理事白井勇君退席、委員長着席〕 そういうためには、このアジア諸国をつなぐ共同の機構というものが必要である。今日、アジア開発閣僚会議があります。あるいはASEANの会議がある。あるいはアジア開発銀行という機構もある。しかし、同時にASPACという会議も並び存しておる。このASPACの会議につきましては、これはかつてこれが反共軍事同盟的な色彩があるという批判が国会でも、まあ国会外においてもあったことはよく承知をしております。そういうようなことで、軍事同盟的なあるいは反共的な、というような色彩につきましては、わが国はこれが色彩の払拭されるようにずうっと努力をしてまいりまして、わが国のそういう努力も実りまして、今日非常に文化的な、あるいは社会的な、あるいは福祉的な共同作業の場としてのASPACと、こういうことになっておる。このASPACに対しまして今日、これが加盟国のうち、ある国はいま矢山さんがおっしゃったような見解を述べておりまするけれども、大勢といたしましては、私がただいま申し上げたような受け取り方をいたしておる。そういう状態でありまするので、これを廃止するとか、あるいはこれから脱退をするとか、それは、これからのアジアが連帯して大きく伸びていこうと、こういうやさきにおいて妥当な見解ではないのじゃあるまいか、そういうふうに考えております。
  337. 矢山有作

    ○矢山有作君 通産省にお伺いしたいんですが、何かこの間、報道によりますと、アジア経済協力機構というものをつくろうという構想があるということですか、これは事実ですか、どういう構想でしょうか。
  338. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) アジア開銀が現にございますが、新しい機構という問題に対してまだ正式な議題にはなっておりません。おりませんが、米中間の交流の中に、アジア問題に対して一つの提言がなされたというような情報は得ております。また、これに対して中国側が反応を示し、アジアというものに対してはアジアで理想的な姿をつくろうというような意思の表示があったということも情報としては聞いておりますし、関心は持っております。持っておりますが、これが正式な議題になり、テーブルの上にのっておるものではありません。
  339. 矢山有作

    ○矢山有作君 朝鮮問題については、もう同僚の松永委員のほうからいろいろお聞きになりましたので申し上げませんが、一つだけ言っておきたいと思いますのは、アメリカが最近、朝鮮民主主義人民共和国との関係の改善に意欲を見せだしたんじゃないかという感じがいたします、たとえば三月七日のロジャーズ国務長官の記者会見なんかを見ましてもね。これは私はよほど注意していないと、やはりほんとうにアジアにおけるアメリカが考えておる政策実現というためには、私は、朝鮮民主主義人民共和国との関係も改善に本格的に出てくると思うんです。中国問題の二の舞いにならぬように、このことは私は特にお願いしておきたいと思います。  そして一つだけお伺いしたいのは、いま韓国と日本との経済的な結びつきは非常に強くなっておるわけですが、これに対して、いま韓国の有識者がどういう見方をしておるかということですね。どういうふうに考えておられますか。
  340. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 矢山さんおっしゃるとおり、日韓の経済関係は非常に緊密化しております。それに対しまして韓国財界並びに政府におきましては、特にこの一、二年が韓国経済では非常に重要な時期になってきておる。焦点を、この一、二年に置いて日本の経済的協力がほしいと、こういうことを強く念願しておる、こういうふうに理解をいたしております。ただ、一部には、日本の対韓経済協力、これが必ずしも実効を奏しておらぬじゃないかというような見方をする者もあるわけです。確かにケースによりましてはそういうケースも見られないことはない、こういう状態でありまするが、そういう問題につきましては、韓国政府自身が深くこれを反省いたしまして、再びそういうことのないようにということを念願をし、また努力をいたしておる、そういうふうな認識でございます。
  341. 矢山有作

    ○矢山有作君 韓国内で、私は一部の人の見方でなしに、たとえば六月の三十日——昨年ですが、ソウル市内で学術、言論、放送、宗教、文学、その他各界の著名人七十八人が寄って、民族守護宣言大会というのを開いておるのです。ここに韓国経済の実態というのを非常に詳しく分析した報告書を出して、そうして、その報告書にもいわれておることであるし、それから、最終的にどういう決議をしたかといいますと、要約して言えば、こういう決議をしておるわけです。日本の経済援助は韓国の経済支配から政治的、軍事的支配にまで進んで民族統一を阻害するものになっておる。こういうふうな見方をしているわけですね。したがって、私は、こういう指摘というのは、必ずしも根も葉もないものではない。私どもが外務省から出された——たしか外務省だったと思いますが——日韓経済協力に関する調査報告を読んでみましても、こういった非難が韓国から出てくる要素は私はあると思う。したがって、今後、韓国に対する経済的な結びつきを緊密化していくという問題については、私は、これはよほど考えなければいけないし、また、それをやればやるほど、緊張緩和といいながら、北朝鮮との関係は悪化していくということを考えますので、この点は特に私はお考えを願いたいと、こう思うわけです。
  342. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 対韓経済協力が、これが南北の統一、あるいは南北の緊張、そういう面にマイナスになるというようなことでありますれば、これはもうわが国としては全く願わざるところであります。そういうことでなくて、わが国が基本的な国交関係を持つ韓国がいま非常に苦しい時期だ、そういうことで、何とかこれに協力をしようという善意から発しておるわけでありまして、特にいま軍事的云々という話がありますが、これが軍事的な協力ということにならないようにということについては、これは非常に神経をつかっておるのです。ですから私は、日本の対韓援助が、これが南北の統一を妨げる、あるいは軍事力の増大につながるというような見方は、これは朝野を通じてきわめてまれな見方ではあるまいか、そういうふうに考えます。
  343. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、もう一つお聞きしたいのは、政府はかねて日米安保体制と日中国交の正常化は矛盾しないと、こういう発言をしておるように記憶しておりますが、そのことの主張をなさる理由は何でしょう。
  344. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国側の日本への見方、これはどういうことかというと、一つの大きな側面は、日本アメリカの中国封じ込め政策の一端をになっておる、こういうことであったかと思います。そして、この考え方からいいますると、日米安全保障条約、これはまさにそういう役割りを担当する仕組みである、こういう見方をしておったと、こういうふうに思うのです。ところが、この中国封じ込め政策の主体であるところのアメリカが封じ込め政策をやめまして対話の姿勢をとりだした、こういうことでございまするから、したがって、この日本に対する中国の見方、いろいろな側面がありまするけれども、ただいま申し上げた側面においては、もう基本的な変化が来ておると、こういうふうに見ておるわけであります。したがって、安全保障条約、これの存在が日中国交正常化を妨げる要因にはなり得ない、こういうふうに考えておるわけであります。
  345. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、サンクレメンテ、あのときの会談のあとの記者会見で佐藤総理が、台湾条項は消滅したとおっしゃったのは、これはほんとうですね、いまの話を聞くと。どうですか、これは総理でしょう、あなたがおっしゃったのだから。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体、答えないでもういいかと思っていたのですが、やはり引き合いに出されました。サンクレメンテの会談では、あのとおり申したのが、それがそのとおり伝わっております。私は、いまの中国の問題は、日本が日米安保条約、それを締結しているということで、やはりひとつアメリカの封じ込め政策に加担している、その一翼をになっている、こういうことを中国側で指摘されている、かように思っております。  もう一つは、安保、これを足がかりにして、日本は軍国主義への道を歩む、こういう非難があると、かように聞いておりますので、私はさような事柄のないことを、これをはっきりさすことが何よりも大事なことだと、かように思っております。
  347. 矢山有作

    ○矢山有作君 この台湾条項のことに答えてください。それがあとで何かおかしなことになりました、ああいう付属物抜きで台湾条項は消えたと、これでいいんですか。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいますわってお尋ねでございますが、しかし速記にははっきり載っているだろうと思いますから、そのとおりでございます。よろしゅうございます。
  349. 矢山有作

    ○矢山有作君 台湾条項がはっきり消えたということであるなら、私は、福田外務大臣が日米安保の問題について、この日米安保と日中の国交正常化は必ずしも矛盾をしないとおっしゃったことばは、それなりに評価をいたします。  そこで私は、もう一つ、そこまで——台湾条項が消えたというところまで総理がはっきり断言されるならば、もう一つ私は進めて、そこまでの大きな情勢の変化があるわけですから、したがって、日中間の国交正常化をほんとうにやるんだ、そしてアジアの緊張緩和をほんとうに進めていくんだという立場に立って、安保条約の極東の範囲の中から、もう台湾を除外するということにしたらどうですか、これをはっきりさしたら。
  350. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日米安全保障条約の極東の範囲、これは必ずしも固定した考え方は持っていないんです。わが国の安全に重大な支障のある地域、つまりフィリピン以北、台湾、朝鮮半島を含む地域と、こういうふうに当面理解しているんですが、そのさらに周辺の地域が、これらの極東の地域にまた影響をしてくる可能性もあるというので、周辺の地域もまた安全保障条約上特別の配慮をしなければならぬというふうな理解をいたしております。ただこの地域というものは、ただいまフィリピン以北云々と申し上げましたが、これは客観情勢によってどんどん移動してくる。わが国の安全にかかわりのない、こういうような地域につきましては、これは安全保障条約の対象とする必要はない地域であります。これは極東の情勢推移において流動的に考えてしかるべきである、こういうふうに考えますが、今日ニクソン大統領の訪中によりまして、極東の情勢、これは緊張緩和の方向に向かったと、こういうふうに申し上げることはできると思います。しかし、いまベトナム戦争は激化している、こういうような局地的に反対の方向も出ているわけです。そういうような情勢下において、まだ緊張緩和の体制、これが定着した、こういうような状態ではない。ただいまの状態におきましては、安全保障条約ができた当時申し述べましたあの地域、これがまだ変え得るような状態ではない。しかし将来、客観情勢がほんとうに変わってくる、その変わった状態が定着をするという時期になりますれば、これは再検討していい問題だと、そういう見解でございます。
  351. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから私は、どうもいまのところは総理よりも外務大臣のほうがだいぶうしろ向きだ。客観情勢が変わるのを待つというのでなしに、米中接触によって緊張緩和の情勢が生まれた、雰囲気が出たと、そう言う。それは大歓迎だ、それを進める立場政府は立つんだというなら、積極的にそういう客観情勢をつくり出す努力、その緊張緩和を定着させる努力を私はやるべきだと言っているわけです。  そこで、台湾条項は消滅したと言い切るならば、そういう緊張緩和の情勢を促進して、これを定着させるために重要なのは、これは台湾問題だから、したがって、台湾は極東の範囲から除外するということを、この際明確にすべきである。このことは、日中間の国交正常化をはかっていく上においてきわめて大きな影響があると思うのです。そこまでどうして踏み出せませんか。ただ客観情勢の動きを待つのでは、これは受動的なんですから、やはり外交というのは、もうそろそろ私は、あなた方が言う世界第三位の経済力を持ったのだから、もう少し自主的であってもいい、主導的であってもいいと思うのです。そこまで踏み切れませんか。
  352. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ニクソン大統領もはっきり言っていることです。米中関係は改善に向かいまして、長い長い道のりの第一歩を踏み出したのだと、そういう状態なんです。一体米中国交の正常化、あるいは国交の正常化とまでいかないにしても、関係の正常化がいつ実ってくるのか、こう言うと、これはまだなかなか前途あることではあるまいか、そういうような感じがしてなりません。  そういう状態で、アジアの緊張緩和、特に米中の関係につきましては、緊張緩和の傾向は出てきておるわけでございまするけれども、しかしまだこれが固定化していない、そういう段階でございます。そういう段階でありますので、われわれとしては、いま総理が台湾条項、これは一九六九年の時点における、あの台湾海峡に対する認識を述べたあの台湾条項について触れられましたが、それと、安全保障条約の対象としてのこの台湾海峡、これはまた別の問題です。われわれはこの台湾海峡、これを安全保障条約の極東の地域から除外をするというのは、なおこれからの推移を待たなければならぬ、こういう見解でございます。
  353. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは総理に聞いたほうがよさそうだ。お考えくださいよ。軍事的、経済的、政治的に世界を支配したアメリカ、しかも全力をあげて中国封じ込めに狂奔してきたアメリカ、それが長い間の着実な努力の結果、訪中を取りつけて、大統領みずからが北京に出かけていった。そしてそこで話し合いをして、平和五原則に基づいて台湾から撤退をするということを約束した、このことはたいへんなことだと私は思いますよ。そうなれば、これはそういう情勢が生まれたなどというようななまやさしい評価じゃだめですよ。これはもう台湾問題は決着したと見るのがあたりまえの問題です。もうアメリカは台湾から手を引きましたよ。もしあなた方がそうではないとおっしゃるなら、あなた方はそういう緊張緩和の情勢を歓迎しておられるのだから、しかも総理みずから台湾条項は消滅したと言うならば、この際一大勇断を振るって、極東の範囲からもう台湾はのけますよという話し合いでも始めたらどうですか。これは総理ですね。
  354. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、外務大臣がお答えしているように、どこまでも日本は自主的な立場で考えていく、日本の安全、これを確保することに最善の努力を払っておる。こういうことでございまして、したがって、そういう意味では、これはもう安全保障条約は厳としてあるわけでございます。日米安全保障条約によってわが国の安全を確保している。このことは、よもや矢山君も否定はなさらないだろう。そういうものに立っての日本のあり方、また仮想敵国を持たない日本のあり方、先ほど来申すような経済力は世界第三位と、かように言われても軍国主義化しない、そういう日本だ、平和愛好の日本だ、これには変わりがないのでございます。しかし、ただいまのように、口でこそ申しませんけれども、隣に火事が起きたら、それは私ども傍観するというわけにいかない。まずみずからが類焼を免れるようにやっぱり、何と申しますか、防火体制に入る、これは当然のことだと、かように思います。したがって、ただいまのような台湾条項云々、これが一九六九年の条項と、今回の声明では発言が変わっておりますが、しかし、そういうことは十分御理解いただきたいことでございます。私どもの心配なのは、アメリカがどうあろうと、日米安全保障条約で、やっぱりアメリカは信ずるに足る私どもの条約の相手国でございます。そういう意味で、ただいまのことははっきりしておく。しかし私どもは、アメリカがベトナムに出て戦争している、それにその一翼をになうと、こういうようなことはごめんこうむると、こういうことで、いわゆる事前協議の対象からも——外務大臣は、そういうような場合にはノーとはっきり言いますと、こう答えておる。この一事をもってしてもおわかりだろうと思います。いま問題は、仲よくしようとする地域、それを特にあげて、それが安保条約適用の区域だとか、範囲だとかどうだとか、こう言う事柄は一体不適当ではないかと思います。しかし、安全保障条約のたてまえから申せば、そういう地域が入ること、正面を切ってお尋ねなら、そう言わざるを得ない。しかし、一九六九年の際の表現とは変わっておること、これを御認識いただきたいと、かように思います。
  355. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ私は、あなた方の立場を多少考慮しながらものを言っているのです。安全保障条約を全面的に廃棄しなさいと言っても、とてもあなた方ようなさる仕事じゃないんだから、そこで、それはあっても、それはあなた方の立場に立って認めましょう、しかし、いまの情勢からいうなら、極東の中から台湾をもうはずしてもいいんじゃないですか、台湾は火をふくことはありませんよと、こういうことを申し上げているのですが、これは幾ら言っても、なかなかそこまでは勇気を出して踏み切れぬようですから、このくらいでやめておきます。  次に、政府は四十六年の四月の新防衛力整備計画案、俗に四次防、いわゆる中曽根原案ですね。これは白紙になったと言っておりますが、この案の目玉商品といわれたT2、C1、RF4Eの取得は、四十七年度支出の頭金だけは削除されたけれども、国庫債務負担行為は全部残った。AEWやPXLの技術研究開発も、また防衛医大の設置も予算化されておる。これでは、私は白紙になったとおっしゃるのは口先だけで、白紙にも何にもなっていないんじゃないか。全部生きている、脈脈と脈打っていると思っているのですが、どうなんですか。
  356. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 中曽根原案は、幾度も申し上げまするように、確かに白紙になっております。そこで現在私どもは、新たな見地に立って、五カ年を視点としての防衛力の充実、整備をはかっていこう、これはまだ整備段階にありまするので、これを整備しようと、こういうわけであります。兵器そのものについては、これはやはり世界の兵器の情勢というものがだんだん高度なものになれば、それに相対し、ある程度は見合うように、日本の武器更新ということは、これは考えていかなければならないわけであります。したがいまして、四次防の計画そのものが、議長の裁定案に基づきまして、よろしいということになれば、その時点でさっき御指摘予算化したものが解除されることになるわけでございまして、そのもの自体は、これもしばしば申し上げてまいりましたように、四次防とは無関係なものでありますと、こういう立場予算査定が行なわれたものでありまするので、御了解を願いたいと思います。
  357. 矢山有作

    ○矢山有作君 了解できませんね。口先では無関係だと言ったって、現実の問題として無関係どころの話じゃない、大いに関係があるのですからね。これは幾ら言ったって水かけ論でしょう。  そこでお伺いしたいのですが、防衛庁長官は、四次防は、中曽根原案から五千億円くらい減らした西村構想とそれほど食い違いはないんだということを最近言っておられるようですが、これは私は、何と言うんですか、中曽根構想の存続をいみじくも認めた発言だと思っておりますが、五千億円減らすというのは、一体どういうふうに減らす考えなんですか。また、五千億円減らしたときの防衛構想というのは、中曽根原案のときと、それから減らした後とは変わってくるのですか、どうですか。
  358. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) その点はたいへん微妙な点だと思います。中曽根構想はなくなったんですから、その中曽根構想の主として正面兵力において五千億程度を減額しようとした西村構想というものも、これはまあ白紙に戻ったと、こう言わざるを得ないわけであります。ところが、当時経済がスローダウンするであろうということを考慮に入れながら、主として正面兵力を中心に西村さんがチェックをしてみた。これはまだ試算段階であって、表に発表するほどの成案を実は得ていなかったわけであります。したがいまして、私が申し上げましたのは、先ほど矢山さんが指摘されたような言い回しではなくて、あの五千億を減額したという総金額五兆三千億、これはベースアップ分を入れての金額でありまするが、この数字というものは、ある程度参考にしていくに足るものである、参考に資するに足るものであると、こういう表現をいたしておるわけでありまして、現在まさに国会に明け暮れしておりまするので、それこそ明日あたり予算を上げていただきますると、鋭意そのほうの防衛庁内の作業にかかろうと、こういう段階でありまして、まだ現在では、さてどういうふうにするのか、特に経済の見通し難という点で策定がおくれたものであります。それでは今日の段階において経済の見通しは立ったかとおっしゃるならば、まだ立っておりません。したがいまして、この作業ももう少し時間をちょうだいいたしたい、こう思っております。
  359. 矢山有作

    ○矢山有作君 長官の発言としてはあまり穏当な発言じゃないですね。やはり国会審議をやる、特に防衛問題等について審議をやるということは、きわめて、あなた方が言われる文民統制の上からも重要なことなんで、その予算が今日まで延びているというのは、これは四次防予算の先取り以来の政府責任なんですからね、おかしなことをおっしゃらぬほうがいいですよ、これは。  で、五千億円削減の具体的な中身は何なんですか。そしてそれの背景になる防衛構想は変わるのか変わらぬのか、そこのところを具体的に言ってください。
  360. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 中身についてはまだ発表を申し上げる段階に至っておりません。  そこで、背景はどうだという御質問は重要な点だと思いますが、要するに五カ年を視点として、現在まだ充実の段階にありまする自衛隊の防衛力整備、充実、これを三次防から向こう五カ年間に継続的に行なっていこうと、こういうわけであります。中曽根構想に言っておりました十年を視点として、局地戦には第一義的に対応し得る戦力を整備する、しかも海に、空に特に重点を置いてこの整備をはかる、こういった構想は白紙に戻ったと、要するに三次防の延長としての五カ年計画を整備したい、こういう考え方でございます。
  361. 矢山有作

    ○矢山有作君 長官、四月二十四日の朝日を見ると、「4次防全体計画」として、これは新聞に出ておりますが、これは漏れたんですか。いまのお話を聞くと何にもないとおっしゃるのですが。
  362. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) あの記事は私も見ましたが、まさしく朝日の記者の推測記事でありまして、現在ああいったものが現実に検討されておるというわけではございません。
  363. 矢山有作

    ○矢山有作君 それではもうちょっとお聞きしたいのですが、先ほどもお触れになったように、中曽根原案には、限定された直接侵略については、わが国周辺において必要な限度における航空優勢、制海を確保しつつ云々と、こうありましたね。ところが、今度の四次防大綱を見ると、特に周辺海域防衛能力及び重要地域防空能力の強化云々と、こうなっておるのです。われわれよくどこがどう違うのかわからないのですけれども、これらはやっぱり一つの防衛構想につながってくる考え方だろうと思うのですが、具体的に言うと、どこがどういうふうにこれは変わってくるのですか。私は同じことを言っているのだろうと思っておるのですがね。
  364. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) たいへん違ったことを言っているわけでございます。それはたとえば海の場合で申しますると、中曽根構想の場合は、沿岸海域の防衛、三海峡の防衛はもとより、周辺海域の航路帯というものを設けまして、一千マイル先までは潜水艦の跳梁を許さないといったような一つの具体的説明があったように私承知いたしておるわけです。で、したがいまして、今度の三次防の延長としての第四次防衛力整備計画におきまして、現在私どもが考えておりまするものは、もちろん貿易立国でありまするから、この沿岸、特に沿岸海域の安全確保ということを重点的に考え、また三海峡の安全運航、これができるように十全の措置をとっていく。でまた、航路帯等についてはいかにも千マイルは——千海里ですか、千海里はいかにも長きに過ぎるではないか、まあその約半分程度でよかろう、その辺を構想して、今後計画を具体化しよう、いわゆる細部計画を立案しよう、こういう姿勢でおるわけであります。
  365. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、そういう考え方から言うなら、大型ヘリ積載護衛艦ですか、DLHですね、こんなものはもう要りませんね。それから、支援戦闘機としてのT2ももう要らぬだろうし。それから、C1もこれは要らぬのじゃないですか。それからAEWも要らぬような気がしますね。PXLも要らぬ。これはいまおっしゃったことばに反して、これはやっぱり要るというのですか。
  366. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それらの一々についてまあ議論をいたしますると長くなりますから省略をいたしますが、目下、一口に言うなら、検討中というわけですが、特にいまのヘリコプター搭載艦等につきましては、これはやはり今後真剣に検討しなければなりません。しかし、T2などはこれはもともと国防会議にかけなかったということは、あれは練習機であるというところから見解が分かれ、疑義が生じ、問題になってしまったわけでありまするが、練習機なんです。
  367. 矢山有作

    ○矢山有作君 T2は支援戦闘機に使うのでしょう。
  368. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) したがって、これは支援戦闘機に使おうという構想も確かに持っております。持っておりますが、これはまだ開発段階でありまして、大体よかろうということにまあわれわれ承知はいたしておりまするものの、最終的にはまだ決定をいたしたわけではありません。T2そのものは、マッハをこえる要撃機に乗せるためのパイロット養成のためには、やはりこのT2ぐらいの性能の高い練習機で練習をさせることが不可欠であると、こういうことで、これは必要だと思っております。まあC1も、これは輸送機であります。——承知のとおり、まあいまは例の沖繩へ、あれはまあ海でありますが、輸送船が八ノットでのたのた実は送っておるわけです。こんな兵器ではどうにもなりません。C46のごときは沖繩に参りまするのに入間を出てから板付で給油をして、しかもフルスピードで沖繩を目ざして那覇空港におりるのは八時間あとということになるわけですね。これでは一体民間航空機に比べましていかに輸送機とはいいながら、何とも性能において劣り過ぎるわけですね。しかも、これはMAPでアメリカから供与を受けた輸送機であります。したがって、輸送機をジェットエンジン化しようということは、これはもう当然なわけでありまして、このあたりはひとつ御了承を願いたいところでございます。
  369. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  防衛庁長官の御答弁はまるっきりその核心に触れておらぬのです。飛行機の性能や航続距離などはこの際御説明いただかなくてもいいのでありまして、つまり、どうかと言えば、それは全部トータルをしたところで今日防衛庁側がひとつ有効な防衛構想をお立てになろうとすれば、現実性をそこには全く発見することができないという問題が防衛庁自身にあるのだということだと思います。関連質問だから前に戻って繰り返すことはやめますけれども、基本的に防衛庁のこの予算委員会なり分科会の答弁を通じて出てきたことは、基本的に新しい防衛構想あるいは防衛力整備計画をつくるについて、世界の雪解け状況というようなものも一つ踏まえながら、雪解けがいつ具体化するのかということについての判断はしばらくおくとしても、そうした方向に向かって日本の独自な安全保障体系というものがどうなければならないかということについて言えば、防衛庁にはまるっきりその構想が、修正されるべきなんではなくて、ないわけなんですよ。そういう構想を持つことがいいかどうかということの議論はあるかもしれませんけれども、しばらくおくとして、そもそもそういう問題の分岐点にあるのだという議論は、たとえばこの一カ月の予算委員会を通じてもかなり議論が深められたわけです。これを端的に言えば、今日脅威のプロバビリティーというものから脅威のポシリティーといところに変わってきたのだというのが防衛庁の御答弁、そうして脅威のポシビリティーということを考えれば、そういうものに対応する足し算の防衛力を整備していくというような論理に立てば、四次防、五次防あるいは十次防までいって、中曽根構想のような千機、十八万、三十五万トンというものをつくったところで、これは脅威のポシビリティーに対応する構想にはなり得ないのだという観点から、江崎新長官はこれを撤回されたのだというふうにわれわれは好意的に理解していますよ。そうでなければ理論ではない。そこでいまや日本の場合は、われわれの立場は非武装中立ですけれども、防衛庁側からは防衛庁自身の防衛構想の論理からいって、みずからお立てになっている脅威のポシビリティーというものにただ算術的についていくのではなくて、その脅威の見積もりというものを転換をするような考え方というところで防衛構想というものを立てなければいかぬのじゃないかと、こういう点をお認めになったし、これは総理に伺いたいのですが、ぜひそういうことで、官房長官総理の代行として新しい考え方に立たなければいかぬと、こういうことを検討するということをおっしゃっているわけです。分科会でも防衛庁長官はそういうことを明言をされているわけです。プロジェクトチームまでつくるというところまではいかないけれども、それは防衛庁の有力な研究課題としてこれから考えていかなければ、日本の防衛構想は中国とソビエトと韓国とその他のすべての潜在武力の総和に対応するものでなければならないということになってしまう。それを考え直そうではないかというところに来ているのじゃないですか。これが問題なんでしょう。これが問題になるならば、飛行機の航続距離や潜水艦の潜水能力の問題なんということはこの際問題ではないわけでありまして、そこのところへどうやって踏み出すのか。一言でいいです。脅威の見積もりという形ではないところに新しい防衛構想を、いまないのですけれども、ほんとうの防衛構想をつくっていく分岐点にあるのだというところへ踏み出そうとしているのか、していないのかということを明確にひとつ、これは確認の答弁ですけれども、出していただいて、総理から前向きな御答弁をいただかなければならぬと思うのです。
  370. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ただいまお尋ねの点につきましては、分科会等でもしばしば議論があり、私どもの久保防衛局長からもお答えを申し上げたところであります。いま私が率直に申し上げたいと思いまするのは、四次防というものは、まだ私どもの見方としては防衛力は十分でない、また兵器もきわめて古い、だからこれは更新し、充実整備しなければならぬ。きわめてこれは整備充実という、事務的ということばは当たりませんが、そういうコースをたどろうというわけであります。しかし、あなたがいま御指摘になった一つの日本の防衛構想をどうとらえ、今後どう対処していくか、これはやはり極東の緊張緩和がまさに平和という姿で定着すること、これはわれわれにとっても非常に望ましいことです。そういう形になっていくことを十分見通しながら、構想として今後検討をしていく真剣な課題である、こういうふうに考えております。したがって、構想そのもの、いまあなたの言われるような問題については十分検討の余地もありまするし、ひとつ防衛庁として新しい防衛構想というものをまとめていきたい、この熱意は確かに持っております。しかし、そのこと自体と四次防の計画そのものとは直ちに結びつかない。これはおそらく五次防であるとか、六次防であるとか——これは誤解をしていただいてはいけませんが、五次防、六次防、七次防と、私はあっていいと思うんです。それは、たとえば武力を足踏みさせる場合、後退をさせる場合、やはり防衛力計画というものによって国民にわかりやすくこの防衛力整備の方向というものが説明、納得され、同時にまた、防衛庁自体から言うならば、これが継続的に整備充実されていく、あるいは足踏みをするということがはっきりわかったほうが継続しやすい、こういうふうに思いますから、この点はちょっと補足いたしておきますが、いま上田さんの言われる点は、分けて考えておりますと、こういうふうに御了承を願います。
  371. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの防衛庁長官からの答弁でいいかと思いますが、とにかくこの国会で、いわゆる四次防の先取りと、こういうところから、ずいぶん防衛力整備計画については各方面から御意見を伺うことができました。私はたいへん、その意味において、四次防自身は持ってはおらなかったが、防衛力自身について、これは各方面で議論されたことによって国民の理解が深められたと思います。ただ、いまお尋ねがありましたように、私どもがつくるというその自衛力の整備計画、これはおのずから限度がございます。それが効率のいいものであることを願って種々研究しておるわけであります。ただいまも話をしておるのは、別に八ノットの船をつくろうというわけじゃありませんけれども、とにかくいまのところでつくりかえなきゃならない。いま使っている輸送船、それは時速八ノットだと、いかにも旧式の古いものだと。これは、前のような形のものをそのままつくるとしたら、それこそたいへんなことです。これは、そういうものをつくっている会社はどこにもないんじゃないか。また、飛行機にいたしましても、もうすでにいま日本の自衛隊が使っている航空機、そんなものはもう古いのですから、特別にそんなものをつくろうといったって、それはたいへんむだな金のかかるものです。そうじゃなくて、新しい計画をする、それが時代におくれない、わが国の安全を確保するための方法だと、そういう意味の整備計画をいま立てようと、かように言っておるわけであります。これはしかし、ただいま言われますように、野方図にというわけではない。この際には、文民統制ということがやかましく言われておりますし、そこでしっかり内閣、政府、それが皆さんからハッパをかけられて、もっと国防会議というものを重視して、そうして成案を得るようにする、国民の負担を軽くし、同時にまた、実効のあがるようにしろと、これがただいまの段階ではないかと思っております。先ほど来話はいたしておりますが、まだ私も、国防会議事務局に出されるような自衛隊の原案そのものができ上がったとは聞いておりません。したがって、ただいまこれらの点は、先ほど来話をされたような意味において慎重に検討されるものだと、かように御了承いただきたいと思います。
  372. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと簡単に。  総理、防衛庁長官の御答弁で、二つのものはいますぐに結びつかないということですから、これについてはそれ以上は言いません。  しかし、根本的に御説明をいただきたいのは、いまおっしゃるように、シビリアンコントロールというのは、中の歯どめです。そして、大きく一番上には、十八万だ、三十五万トンだというようなことは、外側の歯どめです。そういう量的な問題ではなくて、そうしたものの中身の考え方は何なんだと。つまり、日本の安全保障策というものは具体的にどういう考え方に立つんだということが、中身として一つなければならない。四次防というものも、そういうものを基礎にしてでなければならないはずですね。だから、その二つは分けるとおっしゃるが、基本的には結びつかなければ説明にならないわけですけれども、ここで問題となるのは、ただ一次防から三次防まで、そして四次防を目ざして、金額的には倍、倍、倍ときたですね、まあ、大きいことはいいことだというような形でしかとらえられてないような形できたような形ではなくて——これは説明力になりませんから、そうではなくて、たとえば、政府はいままで仮想敵国ということばはつかわなかった。仮想敵国はないなどと言われてきた。想定敵国というようなことばが出てきていることもありますけれども、そういうところはいいです。それにかわることばとして政府がつかってこられたのは、脅威の見積もりということばで、その倍々ゲームを説明してこられたわけです。しかしそれは、われわれの追及ではなくて、政府自身の防衛構想というものをつくらなければならない。このままでは、量的にふやしていくだけではだめなんだ、マンパワーから言っても、経済的に言っても。そういう問題が出てきている。それが、まさしく安保体制そのものの検討というものが世界情勢の上にも出てきていることとあわせて、いま大きな分岐点にあるんだという認識、その認識に立てば、仮想敵国がどうだというような次元のところに行きませんけれども、脅威の見積もりというような在来の考え方ではいけないんだということを防衛庁内局のここで答弁しているのであるならば、大きいところでは結び合うものとして、そういう考え方を、根本的にひとつ脅威論というところではないところで日本の平和保障論というものを考えてみるときだと、それがやがては四次防、五次防というようなものの考え方の基礎に据えられなければならないだろう、こういう観点をひとつ御解明いただきたいと思います。
  373. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に誤解はないと思いますが、もちろん日本は仮想敵国、さようなものは持っておりません。また、隣の国が持っている軍事力、その総計に対応するもの、こういうようなものも考えておりません。どこまでも自衛の範囲、これを逸脱するものでない、これはもうはっきりしております。  ところで、いま考えてみていかにも不十分だと思うものは、空と海だと。これはもう表現のしかたがそう言ったほうがわかりいいんじゃないか。私はどうも空と海について、いまの状態では十分だとは思えない。十分じゃなくても、それは、何か十分の一でもそういうものがあるんだということならば、これならまあ安心だといえるが、それもないんだと、それがいまの現状ではないかと思うのです。そこで、それが、先ほど来言われているような整備計画として出されておるのであります。それをいまいろいろ研究していると、かように思っております。私は何がいい、どういう機種が空に対しては必要だとか、あるいは潜水艦何隻がいいとか、さようなことを私が申し上げるわけじゃありません。しかし現状は、観閲式をやりましても、空はいかにも残念なことだ、また海は不十分だ、これはもうだれでもすぐわかることなんですよ。昨年の観閲式、空に飛行機はとにかく飛ばなかったと、これは天候にもよりますが、やっぱり飛べるような状態でなかったと。また海上で見る、昔なら観艦式というこのほうも、これはまことに不十分きわまるもんです。それらのことを考えると、不十分なら、それこそもっと十分役立つ、そういうようなものにしない限り、せっかく金をかける以上そこまで持ち上げること、これは国民の皆さんも許されるだろうと私は思います。  大事なことは、シビリアンコントロール、同時にまた、かつてのような軍事国家にならないこと、これはもうもちろん、最高の責任である国会も、さような案が出てきたら皆さん方がお許しになろうとは思いませんから、私はよもやさようなものが国会で成立するとは思わぬ。したがって、わが国の自衛の最小限度のものがやはり要望されると、かように私考えておりますので、そういう意味でただいま原案を作成中です。
  374. 上田哲

    ○上田哲君 新しい新構想の分岐点に立っているというふうにお考えにならないわけですか。脅威論というようなものをやっぱり検討すべきじゃないかということです、ポイントは。
  375. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、そういう意味で、上田君が先ほどから御指摘になる、誤解を受けないような立場に立たなければならぬことが一つ、またわれわれも新しい立場に立って防衛構想を練ると、こういうことが必要だと、かように私は思います。
  376. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの議論を踏まえて、従来のような脅威の見積もりというようなことに基づいて防衛力整備ということについては一つの反省が生まれてきておるというのは、先般来の分科会等を通じて私も感じておるところなんです。それだけに私は四次防の発足を急ぐべきではないと、特に国防の基本方針等によると、国力、国情に応じて防衛力整備ということになっておりますが、その国情ということにおいては、最近わが国を取り巻く内外の情勢に非常に大きな変化が生まれておるときですから、したがってこの際、その情勢の変化を踏まえて、防衛構想はいかにあるべきかということをゆっくり検討して、そしてやってもおそくはないんじゃないか。それを何が何でも第四次防はこの夏発足させるのだという発想に私は問題があると、こういうふうに考えておるわけです。しかしまあ、この脅威論等やっておりますと、これはきりのない話ですから、具体的な問題に入っていきます。  キッシンジャーが訪中をして、ニクソン訪中の段取りをやっておる、一方では。一方ではレアード国防長官が日本に来て長いこと滞在して各地の自衛隊を見て回って、自衛隊の強化をしろということを盛んに言って帰った。またニクソン訪中の直前に国防報告を発表して、いわゆる総合戦力構想のもとに日本の軍事力増強をすすめておる、こういうやり方は私は非常に矛盾があると思うんですがね、どういうふうに考えておられますか。防衛庁だけよりも外務大臣からもほしいね。
  377. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まあ私から先にお答えを申し上げます。  まあ、レアード国防長官が来まして日本の実情を見たというのは、ちょうどまあ前の中曽根防衛庁長官が訪米をいたしましたことに対する一つの国際的儀礼というふうにお受け取りをいただきたいのであります。そこで、まあ日本の自衛隊を見たところが、武器の手入れはまことにけっこうだが、まあ何と古い武器をお使いですかと、これは私はやっぱり素朴なレアード国防長官の表現だと思っております。やはりアメリカの少なくとも世界の防衛力においてはいわゆる一流国という立場から見れば、まあ日本の自衛隊というものがいかに微々たるものか、これは逆な観点に立って批評を受けるということもできるわけでありまするので、必ずしもレアードが日本の防衛力充実ということに非常な力を入れて、ウェートを置いて要請したというようなことは私一つも承知をいたしておりません。しかし、当然専門家としての批評は批評として謙虚に聞く、これは必要なことだと思っておりますが、強要をされたり、特に日本の自衛隊そのものの充実強化について積極的な発言があったということはありませんので、この点は御安心を願いたいと思います。
  378. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) キッシンジャー補佐官が訪中をして米中会談の用意をする、その同じ時期にレアード長官が日本に来て自衛隊の視察をする。私は、これは必ずしも矛盾した行動とも思いません。先ほども申し上げましたように、米中接触、これによりましてアジアにおける情勢というものが非常に変わってきておる。ことに中国側から見まして、日米安保体制、これに対する見方というものはかなり変化がきてしかるべきものではあるまいかというふうに見ておるわけです。そういう形勢下のレアード長官の日本訪問、そして安保体制を両国の間ではとっておる、その重要な一翼をになうところの自衛隊の状況に関心を持つ、これは私は当然なことであり、また、決して米中会談に矛盾を来たしておるものではないと、こういうふうに見ております。
  379. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、このアメリカのやり方というのは非常に矛盾した面があるような気がしているのです。というのは、中国とは門戸を開いて対話をしようとする、しかしながら、反面それによって周辺諸国に動揺を与えることは避けよう、あるいはまた自分のアジアにおける影響力は保持しよう、こういう二つの側面があるような気がするのです。そして、その後段の役割りを日本に果たさせよう、こういうアメリカの考え方が、私はこういう、一方でキッシンジャーがニクソン訪中を取りつける、一方はレアードが日本へ来て自衛隊を見て回って装備を近代化しろとか何とか言う、そういう言動になってあらわれたんじゃないか、こういうふうな気がするんです。  もう時間がありませんから引き続いて申し上げますと、私は、このアメリカのやり方を見ておって、アメリカは米中間には友好、日中間には緊張状態をつくり出す、こういうようなやり方をやっておるんじゃないか、そうして日中の対話はできない、そうすると、アジアにおいて中国と日本との関係で非常に力を持てるのはもうアメリカだけだということになるわけですね。日中間はどうにもならない、アメリカは中国とも話ができる、日本とも話ができる、そういう虫のいいことを考えてやっておるんじゃないかと思っておるんです。だから、これはへたをすると、日本アメリカのアジアにおける番犬の役割りを果たさせられるというようなことになるんではないか、アメリカはそれを意図してやっておるんじゃないか、こういう私は気がしてしかたがないんです。その点どうでしょうか。
  380. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 封じ込み政策時代におきましては、あるいはそういうような役割りをわが日本に期待したかもしれません。しかし、封じ込め政策が対話の姿勢というふうに変わってくる。それはわが国に対する期待はそういうことから言いまして非常に変わってきておるんじゃないか、こういうふうに思います。一部にはニクソン・ドクトリン、米軍がこれによりましてアジアから撤兵をする、その肩がわりを日本に求めるというような見方を言う人がありますが、アメリカ日本がもう憲法第九条というものを持っておる、このことはよく承知しております。日本にそういう強大な軍備体制を求める、また、したがって肩がわりを求めるというようなことは、非常にこれは困難なことであり、不可能なことであるということをよく認識しておりますから、一部にそういう議論を、肩がわり議論を出す者がありまするけれども、さような心配はございません。
  381. 矢山有作

    ○矢山有作君 最後に、きわめてこれは具体的な問題なんですが、核の問題について一つ聞いておきたいんです。沖繩返還時の核抜きを確認する方法として、ロジャーズ国務長官の書簡が出されるということに大体なりそうですが、聞くところによると、その内容というものも大体固まっておるんではないかということです。したがって、それがもし固まっておりましたらお知らせを願いたい。
  382. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大体固まりつつあります。最終段階にきております。ただ、この形は、大統領の命によって、まあ国務長官が日本の外務大臣に対しまして発出する書簡と、こういうことになりますが、しかしその内容がどうなるか、これは両国間でなお最終的な詰めをなすまではこれを発表することはできない。まあよろしく御了承願います。
  383. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はふしぎなのは、ロジャーズが書簡でもって、返還時沖繩には核はないということを確認するというんですがね。一方においてはアメリカ当局からは盛んに核抑止力の恩恵を受けようと思うならば、核の存在についてあまりいろいろのことを言うなと、こういうことが言われておるんですね。そうすると、これは両方並べてみると、どうも私は核は沖繩返還時には沖繩にはないんだといってみたところで、なかなかこれは信用できないという気がするんです。したがって、これは紙きれ一枚もらうんでなしに、やはり点検をする方法、核の存在の有無を検証する方法というものを、やはり真剣に考えなきゃならぬじゃないか。それはこれまでも、日本の本土にも、あるいは沖繩にも核の存在がたびたび云々されておるわけですから、そういう経験からして、そのことを特に深く感じておるわけですが、どうでしょうか。
  384. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 核の問題につきましては、これは一九六九年の共同声明でも厳粛に両首脳は返還時には沖繩には核がないということについての意思表明をしております。それからさらに、返還協定自体でもこの共同声明の文言を引用するという丁重なことをやっておるわけなんです。ですから、もうこれはそこまで——協定にまで織り込むというような慎重な配慮をしておりますので一点の疑義はないと、こういうふうに思いますが、なお、それでもいろいろのお話がありますので、今回アメリカ政府から日本政府への書簡、こういう形を考えたわけでございまして、まあその書簡の内容はいま申し上げることはできないのですが、この書簡をごらんになって見られれば、これはアメリカというものが日本の核政策についていかに理解を持っておるかということが十分御理解できることであろう、こういうふうに思います。ただ、いま具体的な問題として点検はどうだというお話でございまするが、この点検の問題は、基地の性格上わが国がこれを権利として行使するということは、これは不可能でありまして、これに対して御期待を持たれることは、これは非常にむずかしいことであるということをはっきり申し上げます。ただ、具体的な問題といたしましていろいろお話がある。そういう際にそのケース・ケースに応じまして適切な措置をとりまして、もしこれについて疑惑があるというような事態がありますれば、これが解明につきましては全力を尽くす所存でございます。
  385. 矢山有作

    ○矢山有作君 問題をほかに移します。  文民統制ということをよく言われるのですが、文民統制というのはどういうふうに理解したらいいんでしょうか。私もよく意味がわからないんです。
  386. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まあいろんな表現のしかたはあろうかと思いまするが、やはり文民たる首相のもと、文民たる防衛庁長官が軍を統轄することを直接的には言うわけですが、一口に言うならば軍事に政治を優先させる、この原則をさしたものだと思います。
  387. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこで参考にお伺いしたいんですが、三十一年に国防会議が発足して以来、国防会議の活動状況はどうでございますか。
  388. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは政府委員から答弁させます。
  389. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私、答弁する資格はございませんが、以前国防会議事務局におりましたのでお答えいたします。  回数は正確ではございませんが、国防会議の議員懇談会でおそらく四十回前後、それから正式の国防会議としまして十数回、二十回近く開いていると思います。中身としましては主要な兵器、主要な装備、つまり戦闘機でありますとか、哨戒機P2Jでありますとか、そういったものの機種の選定、もしくは国産の場合の総機数というもの、そのほかには第一次から第三次までの防衛力整備計画、これが決定事項になっております。自余の国防会議の議員懇談会におきましては主として国際情勢の評価といったようなことが行なわれておると思います。
  390. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまお聞きのように、総理自身が議長だから一番よく御存じでしょうが、国防会議の活動というのは、いまの話を聞いていると、これは全く防衛庁の制服組のつくった防衛庁所管事項の審議をやっているだけなんですね。これでは、文民統制の重大な責任を果たそうということにはならぬのじゃないか。国防会議というのはもう少し内外の情勢を高い次元から分析、検討して、そして文字どおり政治を軍事に優先させるという態度で運営されなきゃならぬのじゃないかと思うのですが、これは議長としての御感想は、どうですか。
  391. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ちょっと私から先に申し上げますが、制服側からのいろいろな要請に沿いまして内局がいわゆる防衛計画を立案するわけなんです。ですから、内局には相当行政能力のある経験豊富な部員を持っておりまするので、これによってつくったものを国防会議がまたチェックする、こういう仕組みになっております。したがって。私どもとしては、やはりあくまで内局を充実させなければならぬ。しかも、先般の国防会議で議長たる首相から、国防会議事務局と防衛庁に対して、特に文民統制の重要性にかんがみて今後の国防会議の運営、かけるべき要綱等々を含めて、両者において十分検討しろ、こういう命令も出ておるわけでありまして、目下成案を得べく事務局においても、私ども防衛庁内部部局においても検討しておる、こういう段階でありまするが、防衛庁側から言うならば、やはり内部部局をあくまで充実させ、眠っておるような機関があるなら、これをゆさぶり起こして十分活用するようにしていきたい、こう考えております。
  392. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま矢山君の言われるように、ほんとうに政治が軍事に優先する、そういう形で国民の信をつなぐ、信を得る、こういうことでなければならない、かように私は思っております。
  393. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、長官が言われた手続的なことは、こっちもわかっておるわけなんでね。ところが、いままでのやり方というのは、実質的に制服組がつくったものをP2の審議だとか、戦闘機がどうとか、そんな話だけしておったのだ、それでは国防会議本来の役割りは果たせぬので、もう少し高次元のところでやはり防衛問題を論議する、実効のある運営をすべきじゃないかということを言ったわけです。  それから、文民統制というのは、私は最終的には国会の手に帰すべきものだと思っておりますが、これは誤りでしょうか。
  394. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まさにそれは正しいと思います。
  395. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこでお聞きしたいのですが、国会で実際実のある防衛論議ができるような状態に置かれておるとお考えになっていますか。
  396. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは国会の問題でありまするから、国会議員全体で判断することでありまするが、私どもも議員として思いまするのに、このままではいけない、これも話題になっておりまするように、ぜひともひとつ国会に防衛問題の専門の委員会というものが置かれることが望ましいと考えております。
  397. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう話を持ち出すと、すぐ組織、機構の問題を含めてくる。組織、機構の問題じゃないのですよ。どんなに委員会をつくってみたところで、いままでのように数十万件の秘密事項があって、こういうものはどうだといっても全然資料を出さない、そういう状態の中で何が審議できますか。委員会をつくってみたところで同じことなんですよ。だから私一番大切なのは、ほんとうに国会の防衛論議というものを実のあるものにして、真の文民統制の成果をあげようとするなら、防衛庁がもう少し姿勢を改めなければだめだ。数十万件も秘密をこしらえておくことはない、もっとどんどん国会に持ってきて、われわれの防衛構想はこうなんだ、この防衛構想に基づいてこういう整備をやっていくのだ、これをもっと端的にぶちまけぬと全然論議にならぬでしょう。だから国会における防衛論議といったら、何かあなたのほうの手違いで漏れたものをとっつかまえられて、そうしてぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅうやっておるだけの話でしょう。これではだめだと思うのです。これは総理にしても、防衛庁長官にしても、ほんとうに文民統制ということを重大に考えられるならば、防衛庁の姿勢、ひいては政府の姿勢を改めてもらいたいと思うのですがね。
  398. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 防衛問題に秘密が必要なことは否定できないと思います。しかし秘密の……
  399. 矢山有作

    ○矢山有作君 多過ぎる。
  400. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そのとおりです。件数が多過ぎるとおっしゃるならば、私は多過ぎると率直に認めまして、選挙以来実は再検討を命じておるような次第であります。  それから、どうぞひとつ議員の方は、できるだけ自衛隊を視察していただくこと、こういうことがまた一つの文民統制にもつながるように思いまするので、この機会にあらかじめお願いをいたしたい。
  401. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまちょっと聞きおらなんだので、ちょっともう一ぺん言ってください。
  402. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 秘密の点はわかりましたか。
  403. 矢山有作

    ○矢山有作君 わかりました。
  404. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ですから秘密は必要だと思いますが、目下多過ぎると私も思いまして再検討をしておるということ。  それから、文民統制の一つの姿として、できるだけ国会議員の皆さん方に自衛隊を視察していただく、こういうことが非常に私有効にこの文民統制の面で働くように思いますという私見を申し上げたのであります。
  405. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは自衛隊の訓練を視察したぐらいじゃとてもじゃないがわかりません。やっぱり自衛隊に関するいろいろな資料を要求した場合に、どんどん出して、そして国会の論議の場にのせなければ、それはそういう形式論で逃げてはいけません。しかし、私は、この問題でやり合ってもしかたがないから、とにかく秘密を少なくして、どんどん国会に積極的に出して、防衛論議を実のあるものにしてもらいたいということを申し上げておきます。  それから、次は、ちょっと方面が変わるのですが、米軍用地の復元補償四百万ドルの問題は、すでに衆参両院で論議をし尽くされております。私も衆議院の議事録をずっと見てまいりましたが、もう論議は尽くされておるようです。しかし私が衆議院議事録を読んで感じたのは、どうも言いっぱなしになって、具体的にはなかなかはっきりとした詰めができてないようなところがあるようですから、その点を二、三点にわたってお尋ねをしておきます。  第一点は、六月九日、井川・スナイダー会談で、米側より提示のあった請求権に関する提案として、返還協定第四条第三項に次のとおり追加するとして「支払総額は四百万米ドルを越えないものとする」との提案があったといわれておりますが、事実ですか。
  406. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府委員からお答え申します。
  407. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 請求権交渉の過程において、そのようなやりとりがあったことは確かでございます。
  408. 矢山有作

    ○矢山有作君 事実ね。では引き続いて、その提案に対して、日本側は「米側内部の問題であり(かかる規定がなくとも、米側はその支出を四百万に押えることができる筈)、協定に書く必要なく、かつ、不適当である、」と拒否した。これも事実でございますか。
  409. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 事実でございます。
  410. 矢山有作

    ○矢山有作君 次は第二点。トラストファンド設立のために、愛知大臣からマイヤー大使あてに、不公表書簡の発出を要請された。その内容は「日本政府は米政府による見舞金支払のための信託基金設立のため四百万米ドルを米側に支払うもの」とするというもので、「本件書簡は米政府部内でゼネラル・アカウンタンツに対する説明上必要とされる場合に提示するにとどめられ、その場合も極秘資料として取り扱うものであり、日本側に迷惑となるようなことはないことをアシュアーしたく、本件書簡が」なければ、請求権に関する日本側の提案は受諾し得なくなるとの主張が、米側よりあったといわれておりますが、これも事実でございますか。
  411. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) それも事実でございます。
  412. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、日本側は、この提案に対して、「いかにコンフィデンシャルな書類であろうと資金源について書くことは全く受け入れ難い旨強く反ばくした。」、種々議論の末、日本側から書簡案として別電の案文を提示したとありますが、これも事実でございますか。
  413. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) それも事実でございます。
  414. 矢山有作

    ○矢山有作君 そして、この別電の案文については、スナイダー公使は、本国政府の訓令を越えるとして日本側の提案を本国政府に取り次ぐと述べ、日本側は政府部内で検討してみないと何とも言えぬので、至急愛知大臣と協議すると述べ、会談を終了し、そうしてその別電をパリあてに打った。これも事実でございますか。
  415. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) それも事実でございます。
  416. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、請求権問題に関連して、「ロジャーズ長官は、本大臣の書簡を必要とする旨述べたので、本大臣より、」——「本大臣」というのは愛知外務大臣です。「本大臣より、本書簡は公表されざるものと了解してよろしきや、と念を押したところ、ロジャーズ長官は、行政府としては、できるだけ不公表にしておくよう努力する所存なるも、議会との関係で、これを発表せざるをえない場合も、絶無ではないと答えた。よって本大臣より、本件書簡の表現ぶりについては、すでに東京において一応合意に達した旨、連絡を受けているが、これが公表される可能性があるというのであれば、表現も、より慎重に考えたいと述べた。ロジャーズ長官は、日本政府立場も理解できるので、米側の法的な要件をみたしつつ、日本側の立場をも配慮した表現を発見することは可能と思うと述べた。」、これがパリから打電されておりますが、これも事実ですか。
  417. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) その経緯も電報のとおりでございます。ただし、その後に続く点につきましては、その電報では結局書いてないわけでございますが、結局その手紙は双方合意に至らず、したがって発出はしておりません。
  418. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうして、そのとき日本側から示した別電といわれておる案文ですね。いわゆる不公表書簡なるものは、外務大臣よりの不公表書簡というタイトルで、日本政府は、沖繩の復帰に伴う財政問題の一括決済として、第七条に同意した日本政府は、米国政府が第四条三項に従って、自発的支払いを行なうための信託基金を設定するために、この一括決済額から四百万ドルを留保することを了知するという文面でありますが、これも事実でありますか。
  419. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) その文面のはっきりした内容はいま覚えておりませんが、おそらくそれは先般、衆議院の外務委員会において、政府から非公式にお見せしました文案と同じでありますれば、それはそのとおりでございます。
  420. 矢山有作

    ○矢山有作君 そのとおりでありますというのは、日本側から提示した文案ということですね。
  421. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 日本側から提案した文案でございます。ただし、このとき、さらに少し経緯を申し上げますと、結局この交渉は、先方がこういうような手紙を出してほしいと言い、それに対して、わがほうはそのようなやつは出せないが、こういうようなやつならどうかと、こういうような交渉のやりとりがあって、一応出したものでございまして、その意味でそれを返していただきたい、こういうことでございます。
  422. 矢山有作

    ○矢山有作君 おっしゃるとおりです。私もそう承知しております。これで事実の経過というものは、私は、すべて明らかになったと思います。  そうすると、六月九日に井川・スナイダー会談が行なわれて、その結果がパリに滞在しておる愛知大臣に電報で打電され、そうして、そこでロジャーズ長官と愛知大臣との間に、直ちにすべての沖繩返還協定に関する問題が解決をしたということになれば、この事実経過をそのとおりに——そのとおりでございますとおっしゃったことから勘案して考えるならば、四百万ドルといういわゆる軍用地復元補償の金は、日本アメリカに渡してやって、そしてアメリカから払ったごとくに擬装したということが、これは明確になったと思います。この点、どうですか。
  423. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そこは大いに違います。つまり、そういうことでありますれば、三億一千六百万ドルというものがきまって、そうしてそれに四百万ドルを積み上げたと、こういうことでなければならぬはずです。そうじゃない。三億二千万ドルが一括してきまったわけです。これは、日本政府からアメリカ政府に支払うものである。ところが一方におきまして、復元補償費支払い、これはアメリカ側から日本側に支払うもんです。それをよこせと、こういう要求をしておったわけなんです。ところが、アメリカ側は三億二千万ドルはいただきます、しかし、四百万ドル——おおよそ四百万ドルのこの復元補償費を支払う、こういうことは応じませんと、こういうふうに言っておったんでありますが、最終段階におきまして、復元補償に応じましょうと、こういうことになった。そこで、その説明をそれじゃ——アメリカ側の国会は、取るものは取る、しかし出すものは出さぬと、こういうような空気であったので、アメリカ側にどういうふうに説明するかと、こういう問題があった。そのいきさつというものは、いまお読み上げになられました資料によりまして明白だと、こういうふうに思いますが、この三億二千万ドル出しましょうというのは、三億二千万ドルとしてわが国が支払うということがきまったんです。それと並行して、こっちの取り分の話があった。その取り分の説明をどうするかという交渉の経過、それがただいま御指摘のいろんな往復電報、往復文書になっておると、こういうことでございまして、いま、何かきめつけられるがごとく、わが国が財源提供をいたしまして復元補償を自発的にさせたんだという形をつくろったと、こういうようなお話でありますが、その点は、さようなことじゃない。どこまでも、三億一千万ドル・プラス・四百万ドルじゃございません。三億二千万ドルということできまったんだと、こういう御理解を願います。
  424. 矢山有作

    ○矢山有作君 六月九日に、パリで、愛知外務大臣とロジャーズ長官との間で、話がついたわけでしょう、全体の。で、そのときの模様というのは、先ほど私が「請求権問題に関連してロジャーズ長官は、本大臣の書簡を必要とする旨述べたので、」云々ということで引いたわけです。これは事実だとおっしゃった。だから、そういう中で、パリでこの話はついてしまったのだ、全部。一体、その後に、結論はそうではなかったんだとおっしゃるんですが、じゃあその後、アメリカとどういう交渉をなさったのですか。そういう交渉をなさった経緯があるんですか。あるんなら、それをやっぱり明らかにしていただくということが、今日これまでに沖繩返還交渉をめぐって国民の中に深まっておる疑惑を解く政府責任ですよ、これは。だから、六月九日以降、あなた方は、変わった。最終結論は日本が出したんじゃないとおっしゃるんなら、六月九日以降の交渉経過が一体どうなったのか、これを明確にするということ。  さらにもう一つ言うならば、この沖繩返還交渉において、いろいろと電文がかわされたり、話がなされたでしょう。その記録を、電文を含めて全部、この場にお出しになるということ、そうしてこの疑惑に包まれておる沖繩返還交渉の実態を明確にするということは、いまや、これは政府の重大な責任になってきたわけです。そのことを私は特に申し上げておきたい。その姿勢が政府にないならば、これは、やはり、政治不信をぬぐい去ることができませんよ、これは。そのことは特につけ加えておきます。
  425. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはまあ何回となく御説明いたしておるんですが、三億二千万ドルというものがきまらんで、三億一千六百万ドルという段階があった、そういうことであれば御指摘のような疑惑、そういうものが残ってくるのだろうと思う。ところが、三億二千万ドルという支払いは、これは相当早くきまったんです、これは。かたがたわが国は、アメリカ側から復元補償を自発的に行なうべきことを主張しておった、そういうことなんです。そういうことでありまするから、私はこの問題はいきさつはあった、アメリカが国内に対する説明上いろいろなことをしなきゃならぬ、そういういきさつはあったにいたしましても、わが国が財源提供までいたしまして形をつくろうというようなことをしたことはないということは、私はきわめて明瞭だ、こういうふうに思うのです。六月九日、愛知・ロジャーズの話以後、なおそういうアメリカの対内説明ぶりをめぐりまして話し合いがあって、結局この話し合いはしかし成立をしなかったと、わが国はアメリカに対して書簡の発出はいたさなかったと、こういうことでございます。  それから電報を全部出せと、こういうお話ですが、外務省の電報というのはそういう簡単なものじゃないのです、これは。これを全部出すということになれば、暗号解読にも便宜を与えるというようなことにもなり、またその間においていろんな話をしております。その話、これは非公開でなければしないというような性質のものも多々あるわけでありますから、これを全部公表すると、これは私どもといたしましては、せっかくのお話でございまするけれども、お受けするわけにはまいりませんです。
  426. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう一つつけ加えておきますが、いま、先ほど私が述べた経過をずっとたどってみると、六月の九日の問題では、たった一つの問題が残っておっただけ、それは何かというと、三億二千万ドルを出す。その中には四百万ドルという、いわゆる軍用地復元補償金まで含まれておる。ただ問題は、アメリカの議会と日本の議会にいかにうまく説明をするか、その説明をうまくやるための手段方法を相談したというだけなんです。そういうことにはっきりしているわけです。それで、あなたは、全部の記録を公表することはできぬとおっしゃるけれども、私はこれを公表するのが国益だと思いますよ。なぜかというなら、もう済んじゃったのだ、沖繩返還は協定書の批准までやったんだから。この際もう全貌を明らかにして、あなた方があくまでも、うしろ暗いことはやってないとおっしゃるのなら、かくのごとくうしろ暗いことはやってないと、何が文句があるのだと、こういうことでちゃんと国民に信を問うて政治不信を一掃すべきです。この責任があります。
  427. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 外務省の電報というものは、そもそもこれは、人と人との間の話を伝達する、こういう性格なものでありまして、それがあとになったにいたしましても、公表をされるのだというようなことになったら、われわれは外国の人とほんとうにざっくばらんな話し合いというようなことはできない。外交がそもそもできなくなっちゃうんです。そういうことをお考えになりますれば、外務省に沖繩返還の交渉の電報を全部出せなんというようなことは、ちょっと御無理なことじゃないかと、こういう御理解ができるのじゃないかというふうに思いますが、とにかく矢山さんに、はっきり申し上げておきますが、矢山さんの疑念の起こるところは、財源まで提供して形をつくろったというところにあるようでありますが、そうじゃないんです。これは三億一千六百万ドルという段階は一回もありませんから、この点はひとつ御了解を願います。
  428. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  最終段階ですから、こまかいことは申し上げられないと思うのですが、やっぱり政府としては、疑念を根本的に解消するという努力をどうなされるかということだと思うのです。こまかいことを申し上げれば、吉野アメリカ局長は、先ほど矢山委員の具体的な指摘に対して、そのとおりでありますとおっしゃったけれども、そのとおりでありますとおっしゃった、つまり不公表書簡はこちら側から出されたものであったのを、向こう側から出されたものでありますという御答弁をなさっていらっしゃる。これ自身がもう大きな、うそということばはあまり使いたくはないけれども、明らかに違うところです。しかし、そこのところはしばらくおきましょう。どうも私どもいままでの経過を考えてみて、大事なことをひとつあたりまえのように聞き過ごしてしまったようなところがあると思いますので、具体的に御確認をいただきますけれども、一体、復元補償費というのは幾らですか。四百万ドルであるのかどうかということも、私どもはまだ明確に承ったことは一回もないわけです。その辺は、具体的にいろいろな各項目について積み上げをすればこういう額になるんじゃないかということを。アメリカは、もうすでにとっくに払ったんだ、議会に言えないから払う必要がないんだという答弁もあり、こちら側が、いやいや払ってもらわなければいかぬのだという具体的な交渉があったということは認めていらっしゃる。そういう経過があって、一体、復元補償費というのは幾らなんですか。それがよくわからぬのと、それから、その復元補償費が四百万ドルであるというならば、これははっきりしていただきますが、それがどういう手続でアメリカ側がいつ日本側に支払われるのかということはどうなんです。そこのところ、明確にひとつ御答弁願いたい。
  429. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 復元補償費というものが幾らになるか、これは一々の当該事例を調べてみまして、それを査定してきめるんですから、まあ最終的に幾らになるかということを今日申し上げることはできません。ただし、大体どのくらいの見当になるかということを琉球政府に聞いたことがあるんです。そのときの返事は四百三十万ドル、こういう話であったと思います。それをまあ頭に置きまして、復元補償費の話し合いというものが行なわれた。その結果、まあ三十万を落としちゃって四百万ドル、四百万ドルと、こういうふうに言われたんですが、これは実行してみますると、あるいは四百万ドルをこえるかもしれないし、あるいは四百万ドルに及ばないかもしれない。これは実施してみなければわかりません。なお、その実施の手続につきましては、政府委員のほうからお答え申し上げます。
  430. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) この先方の復元補償を支払う手続は、協定第四条の二項によりまして、「アメリカ合衆国政府は、日本政府との協議のうえ定められる手続に従いこの協定の効力発生の日以後そのような請求権を取り扱いかつ解決するため、正当に権限を与えた職員を琉球諸島及び大東諸島に置く」、こういうことになりまして、結局そのようなアメリカ側の職員が置かれて、それで、その職員が日本側と協議して、この解決のための手続をきめまして、そして申請を受けまして、そして、その申請について、以前に払いましたその復元補償の……(「アメリカ議会ですよ」と呼ぶ者あり)わかりました。これは支払い方法でございます。  なお、アメリカ議会の、この金をどういうように出すかという点でございますが、これはわれわれとしては、原則として、いずれにせよアメリカ側が払うものであるから、どこからどのような手続で出そうとかまわないと、こういうように申しておりますが、おそらくアメリカ側としては適当な会計上の措置をとり——予算にするかどういうことになるかそれは知りませんですが、そうしてその金で払ってくると、こういうことになるだろうとわれわれは考えております。
  431. 上田哲

    ○上田哲君 その話を聞きまして、たいへん不思議でならぬのは、そんな程度のずさんな話し合いしがなかったというふうにはどうしてもわれわれは理解できないわけですよ。四百万ドルというのが両国の国会で追及された場合には、端数が出てはぐあいが悪いからというような話し合いがあったぐらいに、それだけ交渉上神経を使ったものであるにもかかわらず、その手続がアメリカ側の議会にどういうふうにかかり、いつ、どういう時期に出てくるのかというようなこともさっぱりわからぬということは、具体的に一八九六年の信託基金に関する法律というのを使ったならばうまくいくだろうよというような話し合いが向こうから提示されている。不公表書簡がどうだということで、向こうの原案が出てきて、こっちの原案を載せているというようなことがあった経過を踏まえて、その部分だけが抜けているというのは、これはどう考えても、常識的には私どもはわからないのですよ。私たちはそう思いますよ。アメリカ側に気を使っている金だという説明では、これはどうにも日本国民は納得させられないのです。現に、六月九日以降、いまの電文が示すところによれば、ほんとうに三十分、一時間刻みの経緯の中でパリにおける会談というものが決着をして、そのパリの会談が決着をして、そのときの愛知外務大臣は、これで全部終わったと、諸懸案を含めて全部終わったと発表しているぐらい決着がついているわけですよ。それ以来十七日までどれだけの話し合いがあったということは——あったというなら御説明をいただかなきゃならぬと思うのですね、これは。御説明にならないでしょう。電文でもなければ、外交機密でももはやここはないんですよ。一言で言えば、あったかなかったかで済むような時点でも、次元でも、お話がないと——そういうことになれば、六月九日の時点でそれらが煮詰まった、裏返して言えば、こうした問題の話し合いは当然あったということでなければ、日本外交は何とずさんな交渉をしていたということになりませんか。  そこで、縮めて一つ結論を申し上げたいのは、先ほど矢山委員が、これだけ大きく盛り上がっている疑念——総理にもひとつ御答弁いただきたいのだが、もう福田外務大臣があの批准書交換のときにあいさつされたように、沖繩返還はもうあと戻りはできないところになったのだというところにタイムテーブルは来ていますね。ここまで来れば、日本国内の政治に対する、政府に対する、外交に対する信頼にすべてはかかっていると思う。私は、五月十五日、これだけの大きな国会での疑念を国民全体にまき散らしながら、その十五日を迎えるということは、やはり非常に国益にも反するし、政治のあるべき姿ではないと思うのですよ。そこで、もう時間だって二分しかありません。政府はやっぱりすべてをかけて国民の疑念を晴らしてもらいたいと思うので、ふところから紙を出してどうだというような詰め方はしませんけれども、私は、矢山委員が言われたように、全経過を明らかにするということならば、むしろ私たちが間違っていたのなら、それはわれわれの疑念が深過ぎたということを申し上げてもいい。しかし、全国民にこれだけ疑念があるのを解かないということが、どうして外交上の機密であり、国益であるのかということを理解できないという立場で言えば、電文を明らかにすべきだ。しかし、それができないなら——譲るわけではありませんが、もう一つの提案は、三億二千万ドルは前からきまっていたんだと、三億一千六百万ドルということはなかったんだという説明を受け取りましょう。たとえば、受け取るとすれば、三億二千万ドルの内訳は、琉球電力公社など三公社の有償引き継ぎ分が一億七千五百万ドルで、米軍基地に働く労働者の退職金など労務費分が七千五百万ドルで、核兵器の撤去費などが七千万ドルで、合わせて三億二千万ドルだという説明では、これはやっぱりこれだけの税金を払って、沖繩返還をどんなに喜ぶ人であっても、説明としては不足であるほど疑念はありますよ。したがって、全電文を明らかにすることが外交上アメリカヘの信義にもとるのであるならば、これはひとつこの沖繩返還という歴史的なことをなすったと自負される政府は、この三億二千万ドルの三項目の内訳をもう少しく細密に御説明をなすって、その中ではなるほど三億二千万ドルだった。なるほど四百万ドルは出てこないじゃないかというぐらいの説明は、これは国民に向かってなさることが当然な方法論ではないか。外交上の問題は別にしてでも、これは当然できることではありませんか。なるほど、これなら四百万ドルはこの中に入っておらぬというだけのことは説明していただかなければ、これは沖繩県民九十万のみならず、日本国民の中にこれだけわき起こっている疑念というのは、私は解き明かすことができないし、政治の責任を果たしておらぬし、外交の機密は、そこまでの機密を国民に向かって誇示し得るものではないだろうと思うので、ひとつここにしぼってお答えをいただきたいと思います。
  432. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) くどいようでございますが、三億一千六百万ドルという段階というものは、いかなる段階においてもないのです、それは。ですから、あなた方の御疑念は、三億一千六百万ドルときまって、そしてその上に四百万ドル積み上げたんだろうと、その四百万ドルは日本側が積み上げ、つまり財源提供をして、そしてアメリカ側から四百万ドル、まあ内外の復元補償というのを自発的に行なうというつくろいをしたのじゃないか、こう言うんですが、しかし、三億一千六百万ドルという段階はどこにもありませんから、この辺は御了解を願いたいのです。その辺の御理解が届かないもんですから問題が起こってくる。しかし、それでもう大体それを御了承願えば、この問題はほとんどもう疑念はないと、こういうことかと思います。別の問題として、まあ上田さんが、三億二千万ドルの内訳をこまかく説明しなさいと、こう言うが、この交渉はそんな内訳のある交渉じゃないんです。まあ当時私は大蔵大臣としてずいぶん心配しておった、どのくらいの額になるだろう——マスコミあたりでは、大体四億か五億ドルだろうというふうな見方もしておった、それがとにかく三億二千万ドルで解決した。私のほうでは、非常にこれはまあ大蔵省立場から軽く済んだというふうに思った数字でございます。その辺は、私は国民にも高く評価していただいてしかるべきじゃあるまいか、そういうふうに考えます。ただ、アメリカのほうは——当時私が大蔵大臣で、とにかく最後まで私は三億二千万ドルには承知しないと、こういう態度をとっておりましたので、アメリカ側としては、三億二千万ドルがきまった瞬間におきましては、ほっとしたという感じをあるいは持ったんじゃないか、そういうふうに思っておりますが、まあそういう多額の要請がある、なるべくそれは払いたくないという、こういう二つをだんだんだんだん押し詰めてくると、こういう交渉でありまするから、中身が一体どうなんだというようなことになりますると、これを精細に申し上げることができない。そういう性格のものであるということもまた御理解いただけるんじゃないか。そういうふうに思うんです。ただ、申し上げられることは、上田さんも御承知のように、一億七千五百万ドル、また七千五百万ドルと、こういう問題はある。そこへ七千万ドル一括支払いというような額を積み上げたと、それに対しまして、私は大蔵大臣としてずいぶん抵抗したんです。しかし、この額がきまるということになれば、核の問題につきまして、これは協定に入り得るんだという愛知外務大臣からの話がありまして、私もそうか、核の問題が——つまり、この全国民が関心を持っている核の問題がこの協定においてきれいになるということならば何をか言わんやと、こういうことで最後に了承した。それが三億二千万ドルである、こういうことでございます。
  433. 松永忠二

    松永忠二君 委員長関連。  これはもう何回も同じことをやってきたので、三億一千六百万ドルという数字は全然ないんだということでは、あの電文はほんとうだと、こう言っているのに、それはうそだということと同じになるじゃないですか。三億一千六百万ドルという数字では困るということと、三億二千万ドルという数字があって、そして三億一千六百万ドルでは困るという電報の内容があり、一方で、その前段階において四百万ドルの財源を心配してくれたのはありがたいということが、その一つの電文の中に出ているわけでしょう。だから、そこでその電文が一番先に真実だということを言い、また、これがつまり発表されて、そうしてこの問題がまあ発端を起こしたわけであります。だから、あなたが三億一千六百万ドルという数字は全然ないんだということでは、あの電文というものがほんとうだということを証明をしていないじゃないですか。だから、私たちは三億二千万ドルという数字はきまったんだと、その中から四百万ドル出しなさいと、こう言ったと、そうしてそういうことについて三億一千六百万ドルという、こういうはっきりした数字を出してもらって、そうして四百万ドルの金を出そう、こういったアメリカ側のやり方に対して、それじゃ困るから三億二千万ドルという数字でなければしようがないんだということを政府側が主張をして問題は落着をした。そうなると、われわれのほうから言わせれば、結局、四百万ドルの財源を心配してもらったんだが、この二億一千六百万ドルという数字では日本側が困るので、最終的には三億二千万ドルという数字になったというのがわれわれの理解なんです。それが全然、三億一千六百万ドルという数字が一度も出たことがないということなんでは、あの電文というのは真実ではないということになるので、まあこの点、私も何回も確かめたんだが、あなたはあの電文は事実だし、前の財源を心配してもらったという、そういうことばも事実である。しかし、それはわれわれのほうは終始三億二千万ドルということを言ったんだと、こういう説明をされたんだ。いま聞いてみると、また三億一千六百万ドルという、そんなものは聞いたこともないし、そんなものは全然ないんだということでは、あの電文というものは真実だと政府が言ったのと全然違うのではないかということで、たいへんな——私は、こういう点であなたの答弁は行ったり来たり、また来たり行ったりで、全然話がわからなくなってしまう、この点が一つ。
  434. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この間、松永さんにもよく私は申し上げたつもりなんですが、私の話は行ったりも来たりもしておりません。行ったきりでございます。私は、この三億二千万ドルというものがまずきまって、そうして、その説明ぶりについてはアメリカがまあどういうふうにするか、復元補償との関連においてどうしようかということで相談を受けた、そのアメリカ側のほうで三億二千万ドルの中から四百万ドルを別除して、これは日本政府から取ったんだというような形をとる、そういうような意図のもとにいろいろな話し合いがあった、これはこの前も申し上げたとおりでございます。ただ引き算をすれば、三億一千六百万ドルというものが出てくるわけであります。そういう意味における三億一千六百万ドルというものはあるんです。しかし、日本政府アメリカ政府との間で、日本政府アメリカに対して支払いをする、その総額は幾らであるかということとしての三億一千六百万ドルという段階は一回もありませんでした、こういうことを申し上げているんです。三億二千万ドルがきまって、その説明を三億一千六百万ドルと、それから四百万ドルとに分けて説明をいたしたいというアメリカの要望ですね、そういう意味合いにおいての三億一千六百万ドルというものは、これはあるんですよ、電報にもそう書いてある。ですから、そういう意味合いにおいて電報をごらんになりますると、よく御理解がいけるのではあるまいか、そういうふうに思います。
  435. 松永忠二

    松永忠二君 いまあなたのおっしゃったことは、三億二千万ドルという数字と三億一千六百万ドルというあとの数字についてこれはわかるのですよ、そのとおり。しかし、そうなると、前のほうで、財源を心配してもらいありがたいというこの文章はおかしくなってくるということを言っているのですよ。だから、それじゃ、前のアメリカが言っている、財源を心配してもらってありがたいというこの事実は、うそなのかほんとうなのかと私が聞いたときに、あなたは、それはほんとうです、こう言ったでしょう。これもほんとうなんです。三億二千万ドルもほんとうです、三億一千六百万ドルもほんとうですということを確認をして終わったわけなんですよ。そうしたら、その次の質問のときに、また変なことを言い出したので、私が質問したのですが、何とかかんとか言われていた。あなたがいま言っている三億二千万ドルを、とにかく四百万ドルを出すということになるので、それで一この三億一千六百万ドルにアメリカがしてくれ。そうすればわれわれが出したということにはなるし、しかも、事実上はそれを実際には出さないということになるのだからということで、それにこだわったということは、アメリカ側が言うことはわかるのですよ。三億二千万ドルであなたが終始したということはわかるけれども、それなら前段の財源を心配してもらってありがたかったというそのアメリカ側の言い分はどういうことになるでしょうかと私たちは言っているわけだ。その文章がある以上、三億二千万ドルと言ってみたところが、その交渉過程の中でこの中に四百万ドル入っているから、だから、これはもういいじゃないですか。いや、そんならはっきり書いてくれとアメリカが言っている。それは書けませんよ、三億二千万ドルですよと終始言って、三億二千万ドルで話はついた。こう言うならわかるが、前段のことを全然あなたは言わないので、それじゃこの電文はおかしいじゃないかということを言っているんです。うしろの説明はあなたのおっしゃるとおり、よくわかるんですよ。前段の財源を心配してもらってありがたかったということは——アメリカ側の言っているのはどういう意味ですかということを聞いているわけなんです。
  436. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに、財源の心配までいたしていただきまして、ありがたいというような文言があったように思います。そこで、それについていろいろひっかかるものを感ずる、松永さんがそういう疑念を起こされることは私もわかるんです。わかりますが、先ほども私が申し上げた三億二千万ドルが妥結しましたという際に、私は、これは日本国のために軽く済んだという感触を持ったんです。しかし、アメリカ側とすると、これは当時私は大蔵大臣でありまして、かなり渋いことを言っておった。そういうようなことから考えまして、ある程度満足し得るものを取った、こういう感触だったと思う。その感触がそういう電報ににじみ出てきておるのではあるまいか、そういうふうに私は思うんです。私も当時の交渉者じゃありませんものですから事務当局にも聞いてみたんですが、そういうことかと、こう話をしますと、そのとおりに理解します、こういうことでありまして、多少その辺にちょっと私自身も松永さんのおっしゃることがわからないような気持ちはしないので、十分当時の交渉に当たっていた人に確かめてみたんですが、やはり私がただいま申し上げたとおりだろうと思うんです。また事務当局で折衝に当たった人もそう言っておる。当方としてはかなりいい妥結であったと思った、と同時にアメリカ側といたしましてもいい線にこぎつけ得たと、こういう両方が満足する状態で三億二千万ドルがきまった、ことれがこの電報ににじみ出ているし、そういうふうに私は今日理解をいたしていたております。
  437. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことであるならば、疑念を持つのは私もそうだ、こうおっしゃるなら、これは疑念を持つという点において共通しているのだから、それはいい。ただわれわれはその疑念を、こうであろうというふうにある程度判断を言っているわけなんです。その判断は、あなたは承知しないと言っているのだけれども、われわれはそういう判断をしている。また、そうだというふうに思う。それが最も常識的な解釈のしかただとわれわれは主張しているわけです。これをはっきりしておけば、この問題の一つの問題点はそれでいいと私は思う。それを何か、いま言ったようなことを言うので、もとへ戻ってしまって、またこういう質問をせざるを得なくなっているわけです。  そこでもう一つ、いま上田君の言った、これは沖繩国会であなたが終始いろいろなことを言われたようだけれども、この三億二千万ドルの内訳、いわゆる核撤去の七千万ドルというのは、こまかく言えと言ったら——積算せよと言ったら、いや、それは積算はできないのだと言ったけれども、この三億二千万ドルについて、上田君が言うとおりに少し大まかじゃないか、やり方が。そういう点についていろいろ話も出たのだろうから、もっと話をしようということは、現段階において私は当然な要求だと思うのですよ。また、あなた方が自信を持っておられるなら、そういう点について話したらどうか。いや、ここじゃ話せぬ、まだ話す場所があるというなら、その話を聞いてみたい、上田君のような疑問を持つのは当然だと私は思うのですよ。だから、この問題について一歩前進した方法はないのか、あるなら私はこの際ひとつそれを前進をさしてもらいたい。そのために必要ならば——矢山君はたった二分しかないけれども、これはやはりその問題のところで突き詰めてもらいたい。これはわれわれだけが言っているのじゃなくて、あなた方もこれは終始自信があると言っているし、こちら側も、しかしそれはどうもと言っているの、だから、ここまで話を詰めた以上、そういうことについてあなた方のほうで一歩前進する方法があるなら、また、そういうことができるならぜひしてほしいし、そういうことをわれわれも要望する。この点について御回答を聞きたい。どうもたいへん長くなってすみません。
  438. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 三億二千万ドルの内訳は、資産承継一億七千五百万ドル、これはまあ一応の積算があるわけなんです。それから労務対策費七千五百万ドル、これも一応の見積もりがあるわけなんです。それに対しまして七千万ドルを乗っけますと三億二千万ドルになる。この乗っけました七千万ドル、これはどういう内容かといいますると、米軍が今後どうせ引き揚げていく、その際に無償でアメリカ軍の施設をわが国に置いていくことになるんです。そのアメリカ軍の施設、これはまあ役に立たないものもあるかもしれませんけれども、また役に立つものもある。そういうものをひっくるめますると、これが五億六千万ドルでしたか、その辺までなるわけなんです。それと、それから核撤去というか、この両首脳の共同声明を誠実に実現をすると、こういうために必要な費用と、こういうことになる。で、この核の問題につきましては、私どもは、どういうふうにして、どういうふうな撤去をするのか、どのくらいの金がかかるのか、これは知るよしも実はないんです。それからアメリカ軍が置いていく施設、これも五億六千万ドルと言う。そんなものをみんな引き受けるわけにはとうていこれはいかぬわけですが、そういうものを縮め縮めまして、そして、それらの核だ、あるいは米軍引き揚げの際置いていく施設、そういうものもひっくるめまして、まあとにかく七千万ドルだと、こういうふうにきめた。これは高度の政治的判断としてきめた、こういう性質のものでありまして、私自身がこの内容を実は知りたいわけなんです、これは。それを知って、皆さんにこういうものだということを御説明を申し上げたいような気持ちです。しかし、これは対外交渉というものは、もう一がいにそうもいかない。向こうは幾ら要求する、こっちは幾らでというかまえをする。それがだんだんと縮んで、そうして妥結点に達する。こういうことになりますので、これだけはほんとうに内容のない一括処理の金である、こう申し上げるほかない。まことに残念でありますが、そうひとつ御理解を願います。
  439. 上田哲

    ○上田哲君 委員長、簡単にやるから……。
  440. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ひとつ簡単に願います。
  441. 上田哲

    ○上田哲君 一問にしぼりますから。……  どうしてもそういう御説明であると、最後に総理に伺いますから、一問だけですから総理ひとつよく聞いていただきたいのだが、いまの答弁で根本の疑点に答えることなく、内訳がないのだ、説明ができないのだ、しかし疑点は全くないと言われると、それならばこういう点をはっきりしてくれという例をあげて全体の疑わしさをはっきりさせなければならなくなってくる。そういう点が二、三点はあります。さっき矢山委員が外務大臣よりの不公表書簡として発表したもの。これが衆議院でも参議院でもこの文言を読み上げて説明を求めています。そのとき議事録に残っている言い方では、吉野アメリカ局長は、これはアメリカが出したものであってこちら側から出したものではないと言っている。あるいは、きょうの言い方では少しずれてきて、向こうが出したものをこちら側は引き合わして、これではどうかと言ったのだと言っている。しかし、われわれもここに紙きれが一枚あるわけです。書き直したということになっている。明らかにこれだって実にプリミティブなうそになります。この辺のところがどうなっているのかということも、そうなれば、交渉自身にあるいは答弁自身にわれわれは信頼ができないではないかということの一つの証左として、しっかりこれは経過は、違った答弁をされたのだから、これはつじつまを合わせる説明をしていただかなければならない。それから不公表書簡というものは出さなかったのだという御説明であります。そのことはかりにそのことだとしても、一八九六年にできた信託基金に関する法律というものを使えば、これは日本の財源を向こうに持ち込んで、アメリカ議会には説明しないでくるりとすり抜けて払うことができるようになったのだと、こういう形を使うことによってあなたのほうの金を受け入れることができるようになったから、不公表書簡を出してくれと言ったことを、不公表書簡は出さなかったという答弁によって説明がついても、一体、信託基金に関する法律というものを使い信託基金を設立したのかどうかという問題はまだしっかり解明されていません、これはどうなのか。これはアメリカの都合だからと——これはどうなったかということを具体的に説明していただかなければならない。  それから、あともう一つ。さっきから申し上げているのだが、六月九日に愛知全権・外務大臣は、向こうのロジャーズさんと話をして、これで終わったと言っているのですけれども、十七日までに何かあったのですか。何があったということが言えなくたって、せめて、あったかなかったかということを——いままではなかったと言っているのですから、あったというならあったということを、それだけはしっかり言ってもらわなければ、そういう少なくとも素朴な立場で、どう考えても話の合わない、理解のできない、そういう問題があります。  一問しかありませんから……。そこで、これらをまとめて私は総理に、それらの御答弁のあとでお願いをしたいと思うのだけれども、やはり外交交渉に機密がある、立場があるのだ、相手があることなんだという説明も十二分に受け取るとしても、やはり内閣あるいは外務大臣の御説明によって国民の疑念は、それ以上のボリュームにいまあるんだということは率直にお認めになりませんか。とすれば、いかに高く掲げるとしても、五月十五日の沖繩返還の日には疑惑とともに歴史に残るのだということでは晩節を全うすることにならないのではないかということは、私はこれ以上のことばを持たないから、そういうふうに懸命に申し上げたい。  その意味ではひとつ、いずれ外交交渉の機密もやがて歴史のとびらの中で明らかになることがある。そういう意味でも、信託基金というようなものを設けることになれば、ある意味ではオープンなアメリカ議会の今後の歴史の進展の中では、これはわかってくる、何年か何十年かの後にそのことがわかってくることで、一体われわれの国の政治は後世に信を問うことができるだろうかという問題が私はあると思うので、その意味では総理の言われる、あるいは外務大臣の言われる、つかみ金だからということでは、私は国民の疑念は解けないと思うのです。こんな大きな金を、いつものことばで言えばやはり国民の税金なんでありますから、沖繩が返ってくることがどんなにいいことであっても、どんなに安いのだと外務大臣が評価なすっても、国民が安いと思うか高いと思うかというところで国益はきめるべきだということが本国会の決着でありましたから、そういう立場で言えば、いま国民の受け取っている疑念を少くとも晴らすためにもう一歩の努力がなければならぬのと、そのことに関して言えば、アメリカに対して外交が弱腰であるという印象をぬぐえないであろう。したがって、つかみ金であるということでは説明がならぬのでありますから、しからば、これからでもアメリカに対して、明細の説明を求める形で、信を歴史に問うというような姿勢を総理はお持ちにならないかどうかということを、ひとつ御宣明をいただきたいと思います。
  442. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この問題の御理解は、私は非常に簡単だと思うのです。三億一千六百万ドルという、そういう数字がきまって、そうして別に四百万ドル出しますから復元補償をやってくださいといういきさつになっておれば、まさに皆さんの御指摘になるような、エラーをおかしている、こういうことになる。ところが、そうじゃないのです、これは。どこへいったって三億一千六百万ドルというような数字は出てきません。この一事をもって非常に事は明快である、こういうふうに考えるわけでございますが、いま吉野政府委員の発言ですね、このいわゆる不公表書簡、これは米軍がアメリカ側のものだというような答弁を一時しました。これは衆議院の外務委員会で、とっさの間に聞かれまして、まあそういう答弁をしたのであって、あとで訂正はしておりますが、何もこれは悪意があってどうのこうの、こういうたくらみごとじゃございませんから、これはひとつ御了承願いたいと存じますが、とにかく私どもといたしましては、そういうつくろいはいたしておりません。また信託基金につきましては、アメリカでそういう論議をした段階は、これはあります。しかし今日この信託基金というものを設定することになっているのか、あるいは従来のように軍事費で支払うということにするのか、まだ明らかにされておりませんのでございます。
  443. 上田哲

    ○上田哲君 聞かないのですか。
  444. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだ聞いておりませんです。
  445. 上田哲

    ○上田哲君 それは聞くのですか、聞かないのですか。
  446. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 聞く必要が私どもはあるとも考えませんですがね。これはたとえばわが国の支払いがどういう会計でどういうふうになろうか、こういうふうなことについて他国が関心を持つというようなことは、私はないのであって、まあ他国がわが国に対して関心を持つことは何だといえば、日本政府が誠実に支払いを行なうと、こういうことであろうと思います。わが国のアメリカに対する立場もそういうことでございます。
  447. 上田哲

    ○上田哲君 六月九日以降の外交は……。
  448. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは政府委員のほうからお答え申し上げます。
  449. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 六月九日以後の経緯につきまして簡単に御説明いたします。  私も、愛知大臣についてパリへ参りまして、一足先に帰ってまいりまして、愛知大臣は十二日ごろか、ともかく二、三日おくれてロンドンから回って帰ってきたわけでございます。そして、その間にやはりいわゆる井川書簡なるものにつきましてもう一回大臣におはかりしたわけでございます。ところが、大臣は、このパリからの来電に書いてある以上に非常に強くて、いや、もうこんなものはサインしないよということでございました。そこで、われわれも、それはまあけっこうでございますと、そういうことでこの問題をドロップしたわけでございます。で、その間、米側がどうやってあきらめてしまったか、私もはっきり覚えていませんが、いずれにせよ、米側も米側でこれ以上固執しなかった。これはおそらく、私の想像でございますから非常に危険だと思いますが、ロジャーズ長官自身もパリにおいて一回愛知大臣とやってみて、どうもむずかしそうだという感触を得たのではないかと考えられます。  以上のとおりでございます。
  450. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の意見を求められましたが、私の信頼する外務大臣があれほど何度も同じことを答えております。私からさらにつけ加える何ものもございません。以上でお答えといたします。
  451. 矢山有作

    ○矢山有作君 私が先ほど吉野局長に確認して言った事実、それからさらに、その後のやりとり、それを考え、さらに全体の交渉の経過を明らかにすることができないという政府立場、さらに三億二千万ドルの中の七千万ドルについての積算根拠が明示できないという政府立場、それらを総合して考えるとき、やはりこれは大きな疑惑を残しておる。私どもは、それが解明できぬ限り、事実経過に照らして、四百万ドルは日本が出してアメリカが払ったというような形をとらせる細工をしたと断定せざるを得ません。そして、吉野局長が言ったいまの話、これは帰するところは、そういう書簡を現実に愛知大臣からロジャーズ国務長官にあてて出したか出さなかったかだけの話です。だから話の内容には影響がない問題です。要するに四百万ドルは日本側が持ってやったんだ、そしてアメリカが払うような形をとったんだ、この事実にはごうも動くところはなかったと断定せざるを得ないと思います。  そこで、私は、実は財政の問題で少しお聞きしたかったんですが、時間がありませんので、たった一つだけお伺いしますので、これは総理と私が質疑をやるということはもうないでしょうから、総理からお答え願いたいんですが、私は、いま外貨急増対策としていろいろ大蔵省や通産省がやったり、あるいはやろうとしておられることをずうっとしさいに検討してみたんですが、これは私はどうも根本のところに問題が触れておらぬという気がしますので、そういう立場から申し上げるんですが、よく政府は口を開くと貿易立国だとおっしゃる。貿易立国、貿易立国ということになるとどういうことになるかというと、とにかく原材料を輸入してくる、それに加工をするんだ、したがって、その加工する場合の加工賃はできるだけ安いほうがいいんだ、コストはできるだけ安いほうがいいんだ、そして国際競争力を確保して、とにかく輸出をしてもうけるんだと、こういうことになっていくわけです。そこで、私は輸出急増対策としてこの際考えなければならぬのは、福祉型経済への転換であるというなら、この日本の経済機構の中での最大の問題点である低賃金、長時間労働という問題に私はメスを入れなきゃならぬだろう。しかも、いまや、この日本の低賃金、長時間労働は国際的な問題になっておる。そしてILOの動きもこの問題で始まろうとしておるわけです。したがって、この問題について目を注がなければ、この問題を解決しなければ真の意味の外貨の急増対策にはならぬ、そして、それをやることが真に福祉型経済への転換になるんだということを私は主張し、御意見を伺って質問を終わります。
  452. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今日の経済から見まして、ただいまのような低賃金という話がまた出てくるかと、かように考えますが、ドイツからエアハルトさんが来た当時、日本賃金は安い、低賃金だ、こういうことを指摘いたしました。また、その前に私が吉田さんにお供をして外国旅行した。英国へ行くと、英国のやはり国会で低賃金、こういうことが言われております。最近はそういう話がなくなった。いろいろやってまいりますが、私の耳にはそれが入らない。これはいろいろ標準が違うかもわからぬ、いわゆる低賃金という部類ではないように思っております。しかし、ただいまお話しになりましたように、いまの労働時間、これはなかなか長いんじゃないか、もっと週休二日制、休暇をふやせとか、日曜だけじゃだめだ、こういうような話が出ている。また中小企業でも、もう現に隔週でそういうような制度を採用しているところもある。だから、その点も私は各国並みに実は扱われつつあるんじゃないだろうか。とにかくこれは労働条件は改善しなければなりません。またしかし、ただいま展開されておるいわゆる春闘相場、これが適当なのかどうか、そういうことはこの機会に私は申しませんが、これはやはり冒頭に松永君からもお尋ねがありましたが、やはり何と申しましても、お互いの生活を充実さすと、こういう意味においての賃上げ運動、これには理解がなければならないと、かように私は思っております。しかしいま言われるような、かつてのような低賃金、その状態でないことだけは私どものところへやってくる——むしろ最近は、私ども心配しているのは公害日本、こういうような意味でたいへん心配があるのです。それはそういうことをも考えながら、日本は経済成長をしたのだから、外国からとやかく言われないようにぜひとも持っていきたい、そのための努力はしたい、かように思っております。
  453. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 総理がほとんど答弁いたしましたので、つけ加えることもございませんが、賃金の問題にいたしましても、まあ春闘で賃金のまあ平準化が推進されるというようなことは、これはおわかりいただけると思います。先ほども松永委員に、日本賃金がどれくらいであるかということでちょっと御批判もいただきましたが、逐次上昇しつつあることは、これは間違いございません。
  454. 矢山有作

    ○矢山有作君 まだ低い。
  455. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 低いとおっしゃるが、フランスイタリア並みになっておるという、この事実はひとつ数字で御認識いただいたわけであります。  さらに労働時間の問題でありますが、労働時間も短縮されつつある。週休二日制もまあ社会問題となり、政治問題となりつつある。労使間の話し合いも、コンセンサスを得るための努力も続けられておる。われわれも十分の行政指導をする。そういう意味でILO条約の問題ももちろん含めまして、われわれは前向きにこれと取り組んでおりまするので、賃金の面でも、それから生活擁護という立場から、生活防衛という立場から、また労働時間の問題でも、労働者によき結果の来ることを祈りながら、われわれは最善の努力をいたしております。
  456. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で矢山君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会