運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-04-20 第68回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  四月二十日     辞任         補欠選任      西村 関一君     片岡 勝治君      神沢  浄君     佐々木静子君      塩出 啓典君     内田 善利君      木島 則夫君     向井 長年君      萩原幽香子君     中村 利次君      星野  力君     河田 賢治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君     委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 内田 善利君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 萩原幽香子君                 小笠原貞子君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        警察庁刑事局保        安部長      本庄  務君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        科学技術庁長官        官房長      井上  保君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務大臣官房長  安原 美穂君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省人権擁護        局長       影山  勇君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省関税局長  赤羽  桂君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        国税庁長官    吉國 二郎君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文化庁次長    安達 健二君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省薬務局長  武藤き一郎君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        食糧庁長官    亀長 友義君        水産庁長官    太田 康二君        通商産業大臣官        房審議官     飯塚 史郎君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        中小企業庁長官  高橋 淑郎君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        海上保安庁長官  手塚 良成君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       吉田  豊君        最高裁判所事務        総局総務局長   長井  澄君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議議といたします。  昨日に引き続き、片岡勝治君の質疑を行ないます。片岡君。
  3. 片岡勝治

    片岡勝治君 時間がありませんので、端的にお伺いをいたしたいと思います。  六〇年安保国会における次の政府見解は、今日なおかつ有効であるかどうか。その一、戦闘作戦行動を前提とした移駐、移動は、当然事前協議対象になるというこの見解。その二、戦闘作戦行動密接不可分補給活動事前協議対象になるということ。  次に、昨日お答えになりましたけれども事前協議対象になった結果、基地を提供した場合に、日本参戦国になるかどうかということについて、もう一度政府見解を。もし参戦国ということばが不適当であれば、交戦地域戦闘地域に、提供した基地がなると思うけれども、この点の見解をお伺いしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 安保改定当時の事前協議に対する見解は、今日なお変わりはございませんです。私が、この対象についておさらいをしたいと、こう言ってきておりますのは、それは有効なんです。有効なんですが、その運用を一体どうするかということについて、私も若干考えるところがありますので、そういう点をひとつ検討してみたいと、こういうふうに申し上げておるわけなんです。  それから、これはめったにないことだろうと思いますが、事前協議を受けた、その場合にイエスと言ったと、そういう際のことだろうと思いますが、これは私は、そのゆえにわが国交戦国になったとか、あるいはわが国基地交戦地域に入ったとか、そういうことにはならぬと思います。これはいま、今日現在でもソビエトロシア、これは北ベトナム軍の武器をほとんど供給しておる、こう言われておる。そのソビエトロシア交戦国かというと、そうでもないわけなのでありして、そういうようなことに比べますると、きわめて軽微な形における基地提供、それで日本交戦国になりましたと、そういうようなことにはならない、あくまでも基地を提供いたしましたということにとどまる、こういうことに考えております。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 関連。  昨日の片岡委員質問、それから先日の私ども質問に対して、日米安保運用について、日米協議委員会協議をされるということはこれは明白になっておりますが、しかしその協議が、先日来のようなあいまいな態度協議をされたら、私は非常に重大なことになると思います。たとえばいまの参戦国の問題ですが、国際法上、日本からアメリカ軍が出撃しても、直ちに日本参戦国になるとは思いません。これは明確であります。ただし、相手の国からいうならば、日本報復攻撃を加える権利を持つことになると思います。これは明白だと思いますね。  その意味で、実は私、昨日戻りましてから——昭和三十四年の三月四日の本委員会、ちょうどこの予算委員会です。この委員会で、当時の岸首相、それから藤山外相等に、片岡委員が昨日行なったと同じ質問を行ないました。そのとき、非常な明確な回答がここに出ております。というのは、これは新聞要約ですが、速記録はここにありますが、「米軍日本基地から海外に出動する場合には日米間で事前協議をすることになっている。その際、多くの場合は日本ノーというだろうが、同意する場合は」つまりイエスの場合ですね、イエスのある場合は「日本が直接に攻撃される危険が迫っている場合である。」、これは新聞要約ですね。これをより正確に速記録で言いますというと、日本にある米軍基地攻撃された場合にはこれを日本に対する攻撃とみなす、こういうことであります。その場合にのみ、つまり日本に直接かかわる直接攻撃なり、あるいは日本にあるアメリカ軍基地攻撃される場合のみ——これはいい悪いは別ですよ——その場合にのみイエスがある。それ以外にはノーである。それが事前協議の歯どめであるということを、明確にここに述べておるわけですね。これは一点の疑う余地もなく速記録に示されておるわけです。  ですから、イエスもあればノーもあるという場合に、イエスと言う場合にそもそも何かという場合には、日本にかかわりのある、日本攻撃を受ける場合、あるいは日本にあるアメリカ軍基地が外国から攻撃を受けた場合——受けるのは理由があるからですが、そのことはこの際は申し上げません——その場合以外にイエスがあり得るはずはないわけですね。そのためにこそ事前協議制度が設けられて、ここにもちゃんとありますように、その際には日米協議をして、イエスノーを明確にすると、こう言っておるわけです。  ですから、そんなことをあいまいにしておいて日米協議委員会に臨んで、統一見解なんかできたら、むしろやらぬほうがいい。私が先日、ぜひ日米間で協議をしてもらいたいと言ったのは、事前協議が歯どめの制度としてあるならば、それに値する処置をとってもらいたいという意味で言ったのでありますから、この点を明確にして日米間の協議に臨まなければ、やぶをつついてヘビを出すようなことになって、かえって問題の本質を失うことになる。したがって、昨日来片岡委員の述べた問題と、昭和三十四年の岸総理藤山外相の明確なこの答弁を想起して、この際、あらためて福田さんの御答弁を伺いたいと思う。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一般的に事前協議というものは、協議を受けた場合にイエスもあればノーもある、こういうふうに理解をいたしております。そのイエスと言う場合の、一つの態様として、ケースとしてこの藤山さんの御発言、そういうことがあるんだろうと思います。そういう、日本基地が直接爆撃を受けるというような場合ばかりじゃなくて、アメリカ日本基地を使う、それに対して日本イエスを言うか、あるいはノーを言うか、これはどっちの態度をとることが、日本国益に沿うゆえんであるかということの判断によるべきものであると、こういうふうに考えるわけであります。  いずれにいたしましても、ベトナム、この遠隔地域に対する問題として、私どもが、かりに事前協議を受けるというような場合におきまして、イエスと言う、そういうようなケースはこれは考えられない、こういうふうに思います。つまり、日本基地から飛び立って爆撃をする、そしてまた帰ってきて日本で修理をする、補給をする、また爆撃をする、そういうようなケース、そういうことは私は考えられないと、そういうふうには思います。したがって、もし日本に対しまして、さような意味における日本基地を使用する、そういうような要請がある、その場合には、これはもうノーと言うほかはございませんし、また、そういう要請を受けるようなケースもなかろう、こういうふうに存じますが、非常にこれは観念的な議論でありまするけれどもアメリカ日本基地を使って、そうして直接の戦闘行動を開始するという際におきましては、これはまあ観念的には、日本日本国益を踏んまえまして対処する。  まあベトナムは非常に遠隔な土地でありまするからちょっと考えられませんけれども、かりに朝鮮半島において問題が起こったというような場合には、わが国は、この事前協議の問題に当面することがあるかもしれない。ないかもしれませんが、あるかもしれない。そういう際には、今後は一つの問題としてわが国がその国益判断をしなければならぬ、そういう立場に立たされる、こういうふうに思いますが、いま、藤山さんの発言というのは、そういうケース一つの場合を差し示したんじゃないか、いま私ははっきり覚えておりませんけれども、いまお読みくださったところを総合いたしまして考えますると、そのように考えます。  政府委員、だれかその当時のこと、わかっておるか……。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 政府委員はよろしい。  福田外相ね、先日の私の、数日前の関連質問をもう一度思い起こしていただきたい。それはこういうことですよ。つまり日米間で、アメリカ軍が出動する場合に、その際は、戦闘作戦行動に参加する意思はありません、ただ南のほうへ移動するだけですよと言えば、それっきりでしょう。だから、終局において戦闘作戦行動参加すること、そういう意味で出ていくことがもう明らかな場合、結果的に見てでなくても、あらかじめ予知できるような場合、そのような場合には、もう、日本から出ていく場合にアメリカとしては作戦行動に参加するとは言わなくとも、結果において同じことが起こるならば、それらについて直接作戦行動命令を受けたと同じ判断をしなければ、それは抜け穴で、事前協議は何の意味もないということを私が関連質問で言った際に、福田外相が、そういうこともあるので事前協議の再検討をしたい、こう言われておるわけです。ですから、そのことを踏まえて考えていただかないと何にも意味のないことになる。  どんな場合でも、日本を困らしてはいけませんから、アメリカが、これから作戦行動に出かけます、なんて言いません。命令はないと、何々に移動するだけだ、そして途中から命令を受けて行動に入るならば、すべてこれは抜け穴になって、何にも歯どめにならない。そういうことがあってはいけないので、安保改定当時の説明では、そういう場合の規定を非常に明確にしたわけです。ですからそこらを明らかにしなければ、最初からわかっておる場合にノーと言うのは、これはあたりまえの話です。  ここではこれは私、関連質問ですからこれ以上申し上げません。あとは分科会で詳細にやりたいと思っておりますが、これ、見てください。これは愛知外相が一昨年、沖繩返還後のベトナム出撃——イエスもあればノーもあるじゃないんですよ、オールノーです。——イエスもあればノーもあるんではない、オールノーであるがそれでいいかと言ったら、そのとおりでございますと愛知外相はこのように答えたが、佐藤総理はどう思うか、四十五年十二月十五日です。総理大臣「そのとおりでございます。」——三回、外相二回、総理に一回、私、三回確認をいたし、全部オールノーになっている。間接的にも、戦闘作戦行動に参加する場合ですよ。これは速記録にも明確になっておりますが、これはいずれにしても分科会で明確にしたいと思います。これ以上申し上げません。  ですから、先日の関連質問に関して思い起こしていただいて、つまり、日米間で協議をする場合に、洗い直そうというだけでなしに、抜け穴をどうして防ぐかという意味で洗い直さなければ何にも意味がないということからお考えをいただいて、もう一回、あらためて御答弁をいただきたい。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が、事前協議条項ですね、この機能について考え直す、こういうことを申し上げておる、これは、事前協議の歯どめとしての機能を緩和するとか、弱体化する、そういう意味じゃないんです。もう少しぴしっとしたものにしたい、こういうことです。  ただ、いま御説明のように艦船が日本の港を出港する、こういうような場合になりますと、なかなか、羽生さんがおっしゃるような御趣旨のことをどういうふうに運用するか、これは非常にむずかしいということを申し上げているんです。飛行機の場合は、わりあいはっきりしておると思うんです。岩国F4の部隊がおる、これが戦闘作戦命令を受けていない形において南方に移動する、こういう問題があるとする。それが南方でなくて、西のほうへ今度かりに移動するという形をとった、そういうような場合を考えまするときに、その岩国から発進するF4が、これがもう重装備をし爆弾を積んで、そうして行き先はベトナムだ、こういうようなことになる。しかし、まだ戦闘作戦命令はその瞬間においては受けておらぬ、こういうことになると、これは、私はそこに問題が出てくる、こういうふうに思うんです。そういうような点もあわせまして私は検討してみたい、こういうことを申し上げておるわけであります。いずれにいたしましても、歯どめを弱めよう、弱体化しよう、そういうような趣旨は全然考えておりませんから、その辺は御理解のほどをお願いしたいと存じます。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 一つだけ。  あのね、外務大臣、再協議の場合に、事前協議について、しり抜けにならぬようにするとか、せぬとかいう議論のもう一つ前に、私はあなたの答弁を聞いていて、非常に重要な問題があると思います。というのは、戦闘作戦行動日本軍事基地を使うんだということで事前協議を求めたときに、こちらがノーと言う場合もあればイエスと言う場合もあるということを言っておられるわけですよ。その事前協議を受けて、イエスと言った場合に一体どうなるのかという認識が的確でないというと、その事前協議に対処していく政府側態度がはっきりしてこないんじゃないですか。  私は、片岡委員質問もそこに焦点があると思うんです。つまり事前協議を受けてイエスと言ったならば、それは参戦したことになるんではないか。あるいは参戦ということばを使わないにしても、その場合は、日本に所在する軍事基地を含んで、日本というものが交戦地域になるんではないか、片岡委員はこういう質問をしているわけです。ここのところを明確に把握しておくということが、事前協議イエスを与えた後にどういう事態が起こってくるのかということを認識する上において、政府態度が決定されることになるわけです。そこのところを明確にしておかぬといかぬと思うんですね。  私は、事前協議に、イエスを言って、直接戦闘作戦行動日本軍事基地を使わしたという場合には、参戦になると思うんです。自衛隊員が直接戦地に送られておる、送られておらぬでなしに、日本にある軍事基地が直接戦闘基地として使われるのですから、私は参戦になると思う。ところが、あなた方の場合に、参戦になるということばが使いにくいにしても、交戦地域に含まれてくるということは、これは言えるんじゃないですか。敵さんのほうから見たら、これはそういう場合には、アメリカ戦闘発進基地になっておる日本にある基地を、たたかなきゃだめだという観念になるのはあたりまえですからね。そうすると、向こうにそれだけの力があれば、必ず攻撃してきますよ。そういう点の、重大な事態に発展するという認識を持って事前協議に臨まなければいけないのであって、参戦になるのか、交戦地域に含まれてくるのか、きわめて重大ですよ、これ。その認識はどうなんですか。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ参戦国にわが日本が、そういう際になるかどうか、あるいはそういう基地交戦地域の中に入るかどうか、この法律論は別といたしまして、実際の問題といたしまして、問題は、わが国米軍戦闘活動基地として使われるということになりますると、相手国は、これは特殊の感触をわが国に対して持つ。それは私はそういう傾向を持つだろうと思うんです。さればこそ事前協議があるんです。ですから、事前協議に対してイエスもありノーもある、こう言っておりますけれどもイエスと言う場合はきわめて事態重大でありまして、緊急の必要がある、こういう際に考えられることであろうと、こういうふうに思うんです。  いまベトナム戦争、これが問題になっておる。それで、北ベトナムに対しましては、これは世間では、そのほとんどの兵器、これはソビエトロシアから供給されておる、ソビエトロシアから供給されているということは、ソビエトロシア基地から発進をしておるんだということになる、その場合に、ソビエトロシア交戦国なのか、その発進基地はこれは交戦地域なのかというと、私はソビエトロシアはそんなような考え方は持ってないだろうと思うんです。  わが国も、そういう意味じゃない、一方において安全保障条約上の義務がある、そういうようなことからくる問題でありまして、これを私どもは履行したといって、それで交戦国としての姿勢を示したというような考え方をとる、そんなことはあり得ないと思います。また、わが国が、その米軍の使ったところの基地交戦地域内に入りましたという認識を持つというようなことはあり得ないと、こういうふうに思うんですが、いずれにいたしましても、イエスと言う場合、非常にこれは国益上重大な場合、必要がある、そういう場合にイエスと言うことなのでありまして、そうむやみにイエスと言う、そういうようなことは考えておりませんし、羽生さんからも話がありましたが、ベトナムの問題は、もうあれだけ遠隔地域の問題である。わが国事前協議を受けて、それに対してイエスと言うというような場合は考え得られざることであると、こういうふうに思っております。  なお、条約局長がちょっと補足をしたい……。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 局長はよろしい。  私は二点申し上げたいのですがね。一点は、外務大臣、ソ連がベトナムに武器輸出をしておる、あなたは援助ということばを使われたのですが、それをしておるのと日本軍事基地戦闘作戦行動に使われた場合とは、およそ次元の異なる問題ですから、これを一緒に議論される大臣の感覚というのは、私はわかりませんね。よくお考えください。ソ連からベトナムに武器を輸出しているこの問題と、日本の、たとえば横田なら横田の基地から直接米軍が出動して戦闘に参加する場合と、全然次元が違いますよ。これを一緒にして議論なさるということは、議論の焦点をことさら何というのか、ごまかそうという、そういう非常に心外な考え方だと私は思います。これはやめていただきたい。  それからもう一つは、事前協議を受けたその後にくる事態が、きわめて重大だということはあなたは認められておる。その事前協議を受けた後にくる事態というのは、直接日本軍事基地戦闘行動に使われるんですからね、これは率直に、交戦地域に含まれる、あるいはまた率直に言うならば、参戦の立場になるんだということを、私は正直に言ってもらいたいと思う。こういう国会の場は、お互いにだまかし合いの議論をするんじゃないんですからね。重大な事態、きわめて重大な事態に至って事前協議を受けた、イエスと言った、アメリカ軍日本基地から直接戦闘行動に出て行く、これは明らかに参戦ですよ。必ずしもわれわわがそう思わなくても、相手方は日本参戦したと見るんですから、相手方は日本交戦地域になったと見るんですから。われわれがどう見ようと。そこのところを私は、もっと客観的に、正直な議論していただかぬと、ことばの先だけでごまかせるような、そういう軽々しい事態ではないということを認識してほしい。私は、外務大臣、率直な態度を望みます。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事前協議を受けましてイエスと言う場合は、これはきわめて重大な事態である、そういうふうに率直に考えます。それでありまするから、イエスと言うほうがいいか、あるいはノーと言うほうがいいか、これはその時点における国の立場を全面的に考えまして、どれが最大の国益であるかという判定のもとにイエスノーかをきめなければならぬと、こういうふうに考えております。  また、第一の問題であるソビエトの立場、日本の立場、これはケースは違いますよ、確かに。違いますが、私がまあ常識論、大局論として見た場合に、同じような状況があるんじゃないかということを申し上げたわけでありまして、別に他意はありませんから御了承いただきたい。
  13. 片岡勝治

    片岡勝治君 イエスと言った場合の日本の立場について、外務大臣も、非常に重大な段階になるという発言がいまあったわけであります。この点はひとつ、もっと明確にすべきであると思われます。  このベトナム戦争を契機にして、非常に問題なのは、イエスノーかという判断をするその機会をアメリカが与えていないということです。それは、結局安保条約にもかかわる問題でありますけれども事前協議そのものが空洞化されておる。いま非常に大臣が心配されて、イエスノー判断するには非常に重大な決意が要ると。そういう機会がないでしょう、このベトナム戦争を契機にして。私たちはそれを心配をしているわけであります。−大臣も事前協議が空洞化されているということをお認めになって、洗い直すとかあるいはおさらいをするというような発言をしておりますけれども、その意味は、事前協議が空洞化しているということを率直に認め、それを改定するようにアメリカ側と交渉すると、そういうふうに解釈をしてよろしゅうございますかどうか。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事前協議制度は、私は、これはわが国が戦争に巻き込まれないというための、非常に大事な歯どめである、そういうふうに考えておるわけです。ですから、この制度の基本に触れましてこれを改めるというようなことは、考えていないんです。ただ、もうだいぶ時間もたちましたし、それからさらに、沖繩返還というような新しい事態も起きてきておる。この辺でこの制度運用面、それにつきまして洗い直しておいたほうがよかろうと。それから、しばしば皆さんに御質問にあずかりますが、そういう際に明快に皆さんに御理解を願えるような立場に置いたらいかがでしょうかと、こういうふうに考えておるので、あの制度が空洞化だと、こういうような認識じゃないんです。もとより、さればといって歯どめの機能を弱体化するんだというようなことは、これはもう全然考えておりませんけれども、はっきりした基準のものにしたい、こういうふうな考え方であります。
  15. 片岡勝治

    片岡勝治君 最後に一つ。  沖繩返還が近く行なわれますが、ベトナム戦争の状況から、沖繩基地から直接B52発進アメリカ側から要求されることが危惧されますが、この場合には、政府はいかなる態度をおとりになりますか。最後にお答えいただきたいと思います。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま、そういうことは私どもは予想しておりませんけれども、いずれにいたしましても、沖繩基地から五月十五日以後におきまして——以前は格別ですが、以後におきまして沖繩基地から、B52にせよ、他の飛行機にいたせ、これが発進する、そして直接爆撃のために北ベトナムに向かうというようなことにつきましては、私どもはこれに対して、非常に重大な事態である、これはイエスというようなことは言えない立場にあろうと、こういうふうに考えております。
  17. 片岡勝治

    片岡勝治君 ノーですね。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 沖繩基地をそういう目的のために使う、つまり事前協議がありました場合にはノーと言いたい、そういうふうに考えております。
  19. 片岡勝治

    片岡勝治君 終わります。
  20. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で片岡君の質疑は終わりました。(拍手)     —————————————
  21. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、神沢浄君の昨日に引き続いての質疑を行ないます。  この際、江崎防衛庁長官から発言を求められております。これを許します。江崎防衛庁長官。
  22. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 昨日御質疑のありました北富士演習場の件につきましては、当委員会開会期間中に結論を出し、御回答を申し上げることといたします。
  23. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 神沢君。
  24. 神沢浄

    神沢浄君 いま答弁がありましたが、委員会の審議の進行に協力もするたてまえから、了承しようと思うんですが、ただ一つ確認をしておきたいと思いますのは、この委員会の終了時点までということになりますと、たとえばその統一見解の内容によっては、反論の必要もありますし、さらに論議を深める必要もあると思うわけです。したがいまして、やはり終了時点というと、それはもう終了の瞬間ということも含まれるわけですから、少なくとも分科会の終わる時点までくらいには見解を出していただきたいと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  25. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  26. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  ただいまの神沢君の御発言に対しましては、委員長において趣旨を十分しんしゃくいたしまして、善処いたしたいと存じます。
  27. 神沢浄

    神沢浄君 それでは次の質問に移りたいと思いますけれども、まず外務大臣にお尋ねをいたしたいのですが、私は、きのうに引き続いて、この北富士の問題についてのお尋ねを用意をしていたわけですけれども、その前に一点だけ御質問を申し上げたい点は、きょうの朝日新聞の紙面に、ちょっと読みますが、「訪中の政治家は……宇山駐国府大使語る」(台北十九日AFP)「宇山新駐国府大使は十八日夜、台北で内外記者団を夕食会に招き、席上「北京を訪問した日本の政治家は、だれ一人として日本政府の真意を反映しておらず、これらの政治家の中には佐藤首相が本年後半引退する際、後継首班になる人はいない」と語った。」云々ということでありまして、さらに「同大使は、北京が一九五二年に調印された「日台平和条約」の破棄と台湾との断交を要求しているが、北京を訪れた一部政治家がなんといおうとも、これらの要求は日本の世論に反するものだと述べた。(なお、この会見を伝えたロイター電によると、宇山大使は、日本新聞〈複数〉は国民の“親台湾”的感情を必ずしも伝えておらず、逆にしばしば北京首悩の声明を大きく報道している、とも述べている)」と、こういう記事が出ているわけでありますが、私はこれを見まして、たいへんなことを言ったもんだと思うわけですよ。  第一点としましては、これは今日の日本の外交の方針をゆがめている点が一つ、もう一つは、自由人の自由の言動ならいざ知らず、少なくとも日本の外交官がこういうことを無規制にしゃべっていいものかどうか、これはもう大臣の、というか外務省の一つの綱紀にもかかわる問題にもなりますし、それらの点について、まずひとつ所見を伺いたいと思います。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も実は、けさ新聞で宇山大使が何か発言をしている、こういうことを見たわけです。そこで、さっそく外務省をして、宇山大使にその模様を聞かしたのです。で、あそこの台北では、これは非常に特殊事情があるわけなんです。つまり、わが国新聞社の人が一人もおらぬ。会見の相手は、あるいは国府系の方でありますとか、あるいは第三国の記者でありますとか、そういう方なんです。ですから、もう宇山大使もたいへん困るらしいのです。日本語で正確に自分の言ったことを伝えてくれないと、まあ嘆いておる、そういう立場の方の会見です。  けさの新聞に載りましたその情報は、外人記者によってわが国のほうに伝えられたものでありまして、私はピンときたのは、これはそういう事情があるから、きっと何かその辺でいきさつの間違いがあるんじゃないか、わが信頼するところの宇山大使が、わが国政府考え方と違ったことを言うはずがない、こういうふうに考えたわけでありますが、調査してみますると、そのとおりでありまして、こういう質問があったというのです、日本のマスコミが中国問題につき偏向した報道をしておるのではないか、そういう質問、それに対して、日本の世論調査の結果では、日中国交正常化を希望する声が多数であるが、日華関係を切るべきではないという意見も多いと、こういうことです。これは別に支障のないことを言っておるんじゃないか、そういうふうに思います。つまりわが国政府は、日中国交正常化、これを望んでおるわけです。私などは、日中国交の正常化はこれを歴史の流れだ、われわれが取り組むべき最大の課題である、そう言っているんです。そのことを端的に宇山大使は言っておるわけです。しかし同時に、私どもは、日華平和条約、これは日中政府間交渉の過程において解決すべき問題だと、こう言っておるわけでありまするから、この日華関係を切るべきではないという意見も多いという宇山大使の発言、これは別に支障はない、こういうふうに考えております。  それからもう一つの論点なんですが、訪中する日本の政治家は日本政府を代表して中共側と話し合いをしておるのではないと、こういう趣旨のことを宇山大使が言っております。これは大体のことを言っておるんじゃないかと思う。日本政府の、ただいま申し上げましたような私ども政府考え方、これを正確に伝えてくださっておるのかおらないのか、その辺につきましては、行かれる人の考え方もありましょうから、私は、必ずしも日本政府の立場に立ってやってくれておるということも少ないんじゃないか、そういうふうに考えまするときに、宇山大使が台北におるという立場においてそういう発言をされた、これも、そう奇異の感じを私は持っておりませんです。そういう雰囲気からそういう答弁をする、まあ自然の答弁であったと、こういうふうに考えております。しかし、とにかく外交官の発言というものは、置かれておる環境がいかにせよ、これは正しく日本政府の意向を伝えなきゃならぬ、日本政府の意向と相反するというようなことがあっては断じて相ならぬわけであります。また、日本の世論というものにつきましては正しく伝える必要がある、こういうふうに考えますので、この上とも言動には注意をさしたいと、かように考えております。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 関連。  外務大臣ね、私も二回か三回外国に行ったことがありまして、そのときに、よく外国駐在の外交官の方と会って話をしますときに、外交官の方というのはわりあい国内に帰ってくる機会が少ないので、ほとんど任地を転々としておられる関係で、必ずしも的確に日本国内の情勢というものをつかんでおられない場合がある。そしてまた、その任地国の情勢はよく知っておっても、それ以外のグローバルな情勢を知らないという場合が多いようです。したがって、やはりもう少し外交官にそういった情勢を十分に知らせる努力というものがあってほしいし、そしてまた、そういう片寄った知識の中からいろいろな発言をなさると、あなたがおっしゃったように、きわめて重大な視点にある外交情勢の中で無用の問題を起こしますのでこれは、外務省としては、やはり特に大臣としては、厳重に在外のこうした外交官の言動に対しては注意をしていただきたいということを、特に私は要望をしておきます。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 宇山大使はまだ行ったばかりでありまして、インドから向こうへ回ったんです。しかし、インドから向こうへ回る場合に、東京へ帰りまして、十分日本政府の意向につきましては身につけておるはずでございますが、一般論といたしまして矢山さんがおっしゃるようなことがありますから、この上とも注意するようにいたします。
  31. 神沢浄

    神沢浄君 続けて外務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、私はさらに、二葉の新聞紙を持参しているわけなんですが、これは二つとも、私の県の山梨日日新聞、その十六日の記事に、「国連大学を富士山ろくへ」というのが出ております。「関係団体を軸に誘致運動」、「国連大学設立について検討を続けていた国連大学専門家委員会はこのほど大学の設立を積極的に推進すべきであるとの結論に達し、これを先にパリで開いた同委員会第三回会議の報告としてまとめた。報告はこの問題に関する国連事務局側としての最終的意見で、設立の可否は今秋の国連総会で決定される見通しである。国連大学については日本が相当積極的で、本部か一部誘致が実現した場合、本県の富士山ろくもその候補地の一つとなりそうである。」、こういう記事の内容でありますが、外交からながめた場合、富士は日本の象徴だし、同時に、世界の多くの人々の憧憬の的でもあるわけでありますから、私は、きわめて最有力の構想になっていくだろうと、こう考えるのですが、この点の内容について、御存じよりのところをお聞きしたいと思いますし、同時に、この構想についての所見を伺いたい、こう思うわけです。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国連大学構想は、国連前事務総長のウ・タントさんの打ち出したものなんです。これはウ・タント構想とも言われておるわけですが、一九六八年でしたか——九年だったと思います。九年の国連総会で取り上げられまして、自来、論議を呼ぶというようなことになってきたんです。ところが、その論議の傾向を見ておりますと、これはいわゆる先進国側です、これが消極的で、そして開発途上国、このほうでは非常に熱心に歓迎すると、こういう態度を示しておるという状態で今日に至っておるというのが現況でございます。で、わが国はどういう態度をとっておるかというと、これは、ウ・タントさんのこの構想というものは、いまや世界は一つになろうとしておる、そういう際に、国際マインドを身につけた人をなるべく多数養成するという必要に世界は迫られておる、その考え方はたいへん私はけっこうなことじゃないか、ことに、私どもは、とにかく開発途上国に対しましてはできる限り援助をしようと、こういう姿勢を打ち出しておる、その前提として、全日本人も国際感覚というものを身につけなければならぬ、そういう時期に来ておると、こういうことを言っておる。そういうたてまえから見ましても、わが国とすると、この構想はたいへんけっこうなことだ、それで推進派のほうの役割りをしておるんです。その辺は、アメリカだとかソビエト、そういう大国と違った立場なんでありますが、とにかくまだ結論は出ておらぬ、こういうのが現況でございます。  なお、わが国はいままでの姿勢をさらに積極的に進めたいと、こういうふうに考えますが、さて、それが、国連大学構想というものがきまった場合におきまして、わが国にこれを設置する、私は、わが国に設置するということになればたいへんけっこうなことだと、こういうふうに思いまして、われわれの出先機関に対しましては、そういう含みで行動するように指示をし、また、外務本省といたしましても、そういう考え方、文部省においてもそういう考え方を持っておる。  それで、それがいよいよ実現した際に、一体日本のいかなる地点が国連大学のサイトとなるか、こういうことでございますが、万博のあとを使用したらどうだというような意見もあります。あるいは沖繩にそういう施設をというような、あれもある。また、富士山ろくをどうだというような意見もありますが、この国連大学、これは日本だけできまる問題でもありませんけれども、その重要性にかんがみまして、どの辺が一体いいのだと、こういうことを、十分利害得失を検討いたしまして結論を出したい。もちろん、その際には富士山ろくも一つの有力なる候補に相なろうと、こういうふうに存じます。
  33. 神沢浄

    神沢浄君 もう一枚のほうは、これは十七日付の同じ山日の新聞ですけれども、ここに写真が載っていますが、この写真は、いま日米の知事会議が開催をされておるようでありまして、アメリカの二つの州の知事が富士山を訪れて、山梨県の知事夫妻が案内をした、それを実は写しておる写真ですが、立っている場所がどこかというと、昨日来私が問題にあげてきているところの北富士の演習場のそばに立っているわけですよ。私は、この写真を見ましたときに、やっぱり、ぐっと胸にこみ上げるものが二つばかりありました。一つは、やはり日本のシンボルということでもって、たずねていただくその富士に、演習場はまことに似つかわしくないということであります。もう一つは、これはもう、おいでになっておったアメリカの二州の知事はどんな見解であられたかわかりませんけれども、それだけに、案内をしておる山梨県の知事としては、少し肩身の狭い思いでもって、気の毒だという感じであります。  そこで、私は率直にお尋ねをするんですけれども、昨日来指摘をしてまいっておりますように、何といっても富士山ろくというのは日本の顔であります。富士は、もう国民からすると霊峰だと言われており、これは憧憬の的でもあるんですが、それが、外国の賓客を迎えたときにも、演習場のそばでなければ、案内もできなければ、説明もできないなどという、この姿というのは何とも情ないと思うわけです。あそこに廠舎があります。私は、あの軍隊の廠舎などよりか、あそこに大きな国の建てた迎賓館でもありまして、そして外国の賓客を迎えるというような姿のほうが、まことにこれはふさわしいものではなかろうかというようなことを、実はしみじみ考えたわけでありますけれども、そこで外務大臣外務大臣というだけのことじゃなくて、当代の日本の政治に責任を持つ有力な政治家という立場で、こういう姿をひとつ変えていく、こういうようなあり方というものを、この際、発想の転換というようなことを言われておりますが、変えていくというような、言うなれば、もっとスケールを変えた政治感覚というようなものをお持ちになって努力をされるようなお考えがあるかどうか、これをひとつお尋ねをしたいと思うんです。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も、ちょいちょい富士山ろくへ参りますが、どうも、あの富士山ろくが、あのきれいな景色が無計画にむしばまれている、こういう状態を見まして、たいへん嘆かわしいような感じを持って帰るんです。もう少し、あれを霊峰富士の名にふさわしいような形で保存できないか、いろいろ施設ができる、あるいは民間の第二ハウスができるというようなことになるにしても、もう少し霊峰富士に似つかわしいような形でできないものか、それが、虫が食ったような形で雑然と、あそこにそういうものが集中していくという傾向が続きますると、これは、日本全体のシンボルである富士山のあり方といたしましては、私は妥当でない、こういうふうな感じがしてならないんです。しかし、演習場の問題は、これは代替の施設がない、こういうところに非常に問題がありますので、これはそう簡単な問題じゃございませんが、いま御指摘の、迎賓館でもりっぱにつくったらどうだと、こういうような御構想、ごもっともなことと思いますが、いま現実の問題とすると、迎賓館につきましては、赤坂離宮を、これを迎賓館とするということで、いま迎賓館向きへの改修を行なっておる途上でございますので、あらためて富士山ろくに迎賓館というのも、これは重複のきらいがあろうかと、こういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、富士山ろくをきれいに保存するということにつきましては、私も人後に落ちないつもりでございます。
  35. 神沢浄

    神沢浄君 赤坂離宮がある上へ富士山ろくへ迎賓館を建てろということを言ったわけではないんです。演習場よりも、そこに国の大きなすばらしい迎賓館でも建てて、各国の首脳、使節等が集まって、日本がリーダーシップをとって、世界の平和外交を推進するくらいの、スケールの大きい政治感覚をお持ちになったらどうですかということを申し上げたのでありまして、次の質問にひとつ進みたいと思います。  防衛庁長官にお尋ねをするのですが、きのう来論議を進めてまいりまして、国土計画の上から言っても、あるいは公害列島化したと言われております日本の国民のために、緑や、きれいな空気や、休養を提供するためにも、また、いま外務大臣の御答弁の中にも出ておりますように、日本の外交の展開の上にも、私は、あの富士演習場というものは、これは日本の政治にとっても重大な地域になってきている。いわゆる大きな価値の変革というものが現実にあると、こう思うわけなんです。  そこで、国のほうでは、何か、県に対しまして、あの北富士演習場の自衛隊への使用転換の申し出というのが数次行なわれておると思うわけなんですが、現状のアメリカ軍の演習場の場合は、これは条例の関係その他で、敗戦、占領以来の沿革というものもありますから、その点においては私ども現実的な経過というものを認める立場ですが、自衛隊の演習場ということになりますと、同じこれは日本の国の政治の中の問題でありますから、私は、あの演習場の価値を見直すという、こういう観点の上からも、自衛隊への使用転換というような国の方針はここでもって修正を考えられたらどうかということを思うわけなんです。その点の御見解をいただきたいと思います。
  36. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 仰せの意味はよくわかりますが、もともと米軍基地ということは、もうこの時点で一体どうであろうかと、特に御指摘のような霊峰富士であります。したがって、自衛隊が直接県側から契約をいただくことによって、必要に応じてアメリカ軍にも自衛隊が提供する、これもしかし一歩前進ではなかろうかというような気持ちで実は県側にもお願いをしておるわけであります。したがって、また、自衛隊ということになれば、これは東富士演習場の前例もあります。ちょうど私前任のころにあれを手がけた記憶がございますが、したがって、地元の御期待に沿えるように、できるだけ協力するということも、自衛隊ということになれば、また話し合いがしやすくなるのではないか、自衛隊も困るとおっしゃる意味はわかりますが、そこまでおっしゃいませんで、どうぞひとつお考え直しをいただきたいものだと思います。
  37. 神沢浄

    神沢浄君 いや、私の言っているのは、アメリカ演習場の場合は、これはもう占領以来の経過というものがあるから、いま条約なんかの関係上、政府も非常に手をこまねいておられる姿も現実的にはあり得ると思うのです。しかし、自衛隊というのは、日本の国政の中の問題です。同時に、きのう来の論議の中で明らかになってきたと思うのですけれども、あの富士北ろくの新たなる価値の問題、こういう点から勘案をしてみまして、早くアメリカから演習場を返還してもらいたいわけでありますが、それをさらに今度自衛隊が使っていくということになりますと、これはもう理屈が相通らぬことになってしまう、その辺の見解をお聞きしたわけなんですけれども、どうでしょう、この際ひとつ、自衛隊への使用転換というような、そういう考え方というものはやめまして、そうしてアメリカから返してもらうと同時に、これは演習場などという、軍事的ではない、もっとほんとうに日本の富士にふさわしいようなあの土地の利用というようなものに、いわば発想の転換をされていくようなお考え、そういう御努力をなさろうとされないでしょうかという点を重ねてお尋ねをします。
  38. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 自衛隊がお借りすることになれば、これは、地元の御要望にも沿って、お返しするものはする、自衛隊でお願いするものはお願いするということで、東富士の場合でも、わりあい円滑に地元との話し合いがいったわけでございます。で、やはり自衛隊がお願いするにしましても、地元が全面反対ということで、どうもうまくいくはずもありませんので、まあそのあたりは、当然、自衛隊側も、返還の機会に、お借りはするけれども、解除するところは解除して、地元のいろいろの計画に資するような協力体制にも立っていく、これは私は大事なことだと思うわけです。まあ、そういうことで、全然どうも、あのところをあきらめてしまえということの結論については、これはちょっと簡単にここで御答弁申し上げかねるわけでありまして、まあ、このごろ富士山麓というものが全体的に見直され、非常な好適、かっこうの地としてクローズアップしてきたことは私もよく知っております。知っておりますが、そういう地元側の要請にもこたえていける形で、今後ともひとつ自衛隊も、よくお願いを申し上げていくつもりでおります。で、また、考えようによっては、いままであれだけの犠牲をお願いしてきたわけでありまするが、そういうことが、また、かっこうの地点というものが温存されておったということにもなるわけでありまして、あの地点が今後ばらばらの計画にならないように、やはり地元側としても大計画を持っておられるようでありまするが、ほんとうに理想的な、かっこうの適地というふうに伸びていくことが望ましいと思っております。そういう意味で、お返しするものはする、お借りする限度のものはひとつ切にお願いをすると、こういう態度で今後話し合いを進めていきたい、これが私ども考え方でございます。
  39. 神沢浄

    神沢浄君 ついでになりますけれども、現在の米軍演習場を自衛隊が使用をしておる、あの使用の法律的な根拠といいますか、その点を少し詳しく聞かしていただきたいと思います。
  40. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 北富士演習場の中に自衛隊が使用しております徹甲弾射場がございますが、これは地位協定の二条四項(a)という形で共同使用でございます。それ以外の部分につきましては、今日までいろいろ、まあ陸上におきますところの普通の訓練に使用さしてもらっておりますけれども、これは、いわゆる地位協定三条による米側の管理権のもとにおける使用と、こういうことでございます。
  41. 神沢浄

    神沢浄君 そうすると、いま御説明があった徹甲弾周辺の一部地域を除けば、地位協定の三条一項ですか、によって使用しておると、こういうことになりますと、あの北富士演習場におけるところの自衛隊の管理権、同時に、この直接的な使用権限、こういうものはないということになろうかと思うんですが、その点はいかがですか。
  42. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほどの、まあ使用転換ということになりますれば、自衛隊が管理して米軍に共同使用させる、こういう形になりますが、今日の段階では、三条に基づく使用というものを米側との間に協議いたしまして認めさしておるわけでございますので、まあ根拠といいますれば、やはりその地位協定三条というものが根拠でございまして、その限りにおいては自衛隊も使用権限はある、こういう解釈でございます。
  43. 神沢浄

    神沢浄君 まあ法律論争をやろうとは思わないですけれども、私は、まあないと、こう考えておるわけなんですが、この問題は、いずれ他の機会に譲りたいと思います。  そこで、続いて防衛庁の長官にお伺いをいたしたいと思うんですけれども、長官も御存じのように、とくにかくあの北富士というところは、もう、米軍に占領されて以来、使用が始まってから今日まで四半世紀にも及ぶわけですけれども、この間、地元の住民との間に絶えず紛争が続いておるわけでありまして、ときには惨事に至らんかもしれぬと思うようなことなどもしばしば起こっております。つい先般、数日前にも逮捕者を出すようなトラブルなども起っておるような状況でありますが、私どもの知るところによりますれば、やはり、この住民の権利関係が、住民の主張するように正当に国によって認められていないというところに、長期にわたるあの紛争の原因というものがあるように思えるわけであります。たとえば、演習のたびにゲリラが活動する、そのたびに警察が出動する、これは容易なことではありません。国費の乱費という点から言っても見のがし得ないようなものがあると思うのですが、私どもも、これはもうすみやかに紛争の解決というか、正常な状態というものが確保できるように望んでおるところであります。ちょうど十年ほど前に、私も当時県会に議席などを置きまして、若干この仲介に入った立場でもありますが、ちょうど長官がこの前の防衛庁長官のときにたいへん御努力をされて、そして住民の入り会いの慣行などの尊重の約束をされ、それから、早期返還への努力を約束をされて、あのときにはみごとに収束をされました。私は、あの当時からは長官には敬意を表しているのですよ、実際は。しかし、その後、残念ながら、小やみなくああいう状態が続いておるわけでありまして、今回また長官になられて、この時期に、もう少しひとつ、地元の人たちとほんとうにひざを交えての真剣な話し合い等をなされて、何とかあの状態というものを正常化するような御努力をなされる御意思があるかどうか、まず、その点をお伺いをしたいと思うのですが。
  44. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) お話は、一つ、入り会い権なんかの問題だと思います、忍野村の。これは、お話がありましたように、私もこの前のときに苦労をしたわけでありまするが、なかなか今日も、これという解決のめどが立っておりません。で、もともと国有地というものに入り会い権はなしと、国有地はきれいな土地である、こういう最前提があるわけでありまして、しかし、あの当時、そうかといって、民有地に入り会い権が認められておるというなら、これは一つの慣行として尊重をしていこうというのが、たしか仲裁の者の言い方、表現であったというふうに記憶をしておりますが、これ、一ぺん、この国会のほうが一段落いたしましたら、ひとつ、先生なんかにも御協力を願いまして、ぜひ、演習場のこの契約の本問題もありますし、それから、忍草部落との問題等につきましても、やはり腹を割って話し合ってみる、先方の言い分も十分聞いてみる、そんなところから話というものはほぐれるように思いまするので、努力をしてまいりたいと思います。そのときは、ぜひひとつ、また御協力を願いたいと思います。
  45. 神沢浄

    神沢浄君 お互いに協力しなければならない立場は十分認識をしますが、私は、わりかた、問題は、意味は簡単だと思うのですよ。いま、はしなくも長官が触れられましたように、いわば官公有地には入り会い権というものを認めないという、こういう国側の態度が何としてもガンになるわけでありまして、私は、民有地に認められているその入り会い権、それは、入り会い慣行と言おうと、何と言いましょうと、同じものだと思うわけなんです。大体、国が所有する、だれが所有するなどと言う以前から、これは歴史的に住民が今日まで生存の根拠として持ってきた慣行ですから、民有地にはそれを入り合い権として認めて、官公有地には認めない、認めない根拠は何かというと、しばしばその問題についてはお尋ねをしたのですけれども、大正四年の大審院判例以外には何にもないわけです。大正四年というと、私が生まれた年でありまして、これは当時の権力国家日本の判例なんですよね。その後、日本は民主国家になっておるはずです。したがって、国の見解だって、その辺は、もっとずっと柔軟性を持たなきゃならぬと思うのですよ。そして、私は、住民とそういう態度でもって話し合っていくということによって、紛争の解決の方向というものは断じてないことはないというふうに私なりに考えておりますけれども、どうでしょうか。
  46. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) よくわかりまするので、一段落いたしましたら、これはほんとうに話し合いをしてみたいというふうに思っております。で、従来、国有地というのは非常にむずかしくて、さっきお答えしたような見解で来ておるわけですが、事実上は、慣行尊重ということで現実処理をしておるわけでございまして、もう一歩だというような気がいたします。なお努力いたします。
  47. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で神沢君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  48. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、矢野登君の質疑を行ないます。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  49. 徳永正利

    委員長徳永正利君) じゃ、速記をつけて。  十二時半まで休憩いたします。    午前十一時十八分休憩      —————・—————    午後零時三十六分開会
  50. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないますが、その前に政府委員の方に申し上げますが、大体予定時間は御連絡申し上げていると思いますから、予算委員会の審議に差しつかえのないように御出席をいただくように特にお願い申し上げます。  それでは、矢野君の質疑に入ります。矢野登君。
  51. 矢野登

    ○矢野登君 私は、中小企業対策、エネルギー対策について質疑を行ないます。  まず最初に、国内の中小企業が産業面においてどうした比重を持っているかということについて、私の調べた範囲内につきまして一言申し上げます。製造出荷額で——いささか古い材料でございますが——大体中小企業が四九・五%、商業販売額で中小企業が四八・五%、その従業員は大体六三・七%というような比重を占めて国内の産業に従事しておるわけでございますが、この中小企業が御承知のように非常に企業体質が弱いということで、年々多数の脱落者を出しております。ある興信所の調査によりますと、昭和四十四年度に倒産の件数が八千五百二十三件、しかも、この負債総額が五千四百八十四億、四十五年度が九千七百六十五件で七千二百九十二億円の負債をしょっている。さらに四十六年度には幾分金融の緩和もございましてゆるんだとはいいましても、九千二百六件で七千百二十五億円の負債をしょっておると、こういうことでございまして、三年間の合計で二万七千四百九十四件の倒産に一兆九千九百二億円の負債がかかっておると、こういう実態を見ております。この状況をまずお含みの上、いろいろと政府の御答弁をお願いしたいと思うのであります。  去る四月の三日に、私の出身県であります栃木県の中小企業者によって「栃木県商工政策推進の会」というのが開かれました。大体千五百人の中小企業者が会同いたしたのでありますが、過去において、中小企業者の集まりとしてはこんなすばらしいみごとな集まりはなかった。そのときに商工会連合会の会長が設立の趣旨をこういうふうに述べております。「わが国の経済が高度成長を続ける中にあって中小企業の果たした役割りはきわめて大きく、今後においてもわが国経済の中核として役割りを負うべきものと確信するものであります。しかしながら、中小企業者の置かれている経済環境はますますきびしさを増しており、その存立基盤をゆさぶる重大な危機に直面しているのであります。われわれはこれらの事態を自覚し、みずからの責任と努力によって企業体質の改善と近代化を図るための自助努力と創意工夫にまつものがあるにしても、企業個々の努力だけでは突破できない限界があるのであります。」、以下を省略いたしますが、問題は、国ないし地方の公共機関等の強い援助をお願いしたいというのが趣旨でございました。私は、この会が全国津々浦々に今後設立されていくということを聞いたので、この会の基本方針として取り上げましたものを全国中小企業者の声として質問の材料にいたしたいと思います。したがいまして、非常に素朴な質問でございますが、大体中小企業者は一千六百万といわれておりますが、この一千六百万の中小企業者に答えるという趣旨政府側の御答弁を願いたい、こういうふうに思います。  第一番に、指導組織の強化並びに財政援助についてお願いしたい、こういうことでございますが、全国の商工会議所の数が四百五十八カ所、商工会の数が二千七百五十四カ所、しかも商工会議所の会員が五十万、商工会のほうの会員が八十一万一千、こういうふうな数字になっておりますが、この商工会並びに商工会議所に対する本年度の予算の内容はどういうふうになっているかひとつ御発表を願いたいと思います。
  52. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 四十七年度予算案におきましては、商工会、商工会議所に対します予算は五十九億六千六百万円を計上いたしております。その内容のおもなるものは、指導体制の強化、事業内容の拡充、施策普及の徹底をはかるということと、特に小規模事業者に対する指導に万全を期するということでございます。
  53. 矢野登

    ○矢野登君 次に、市町村に商工課を置いてもらいたいということと国に中小企業省を設置していただきたいということを強く要望しております。全国の中小企業者の事業所数が、調べてみますと、四百六十一万八千六百事業所、これは大中小企業を合わせて九九・三%になっておる、大部分が中小企業である、こういうことでございますが、しかも、先刻申し上げましたように、この中小企業の事務所に働く者が一千六百六十万、家族二人としますと、全人口の大体三〇%になんなんとする中小企業者であるということでございますが、大企業の資本金がすでに二千億を突破した現在で、通産省の中に中小企業庁というものがあるにしましても、雑居しておったのでは、どうしても見落とされてしまうんじゃないかということで、中小企業者の直接血の通った中小企業大臣ができて見守ってもらいたい、こういう意見でございますが、これに対する通産大臣のお考えをひとつ。
  54. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業は御指摘のとおり日本における特殊な業務でございます。世界各国には例を見ないというものでございます。非常に膨大もない組織であり、機構であり、また人員でございますから、これに対する行政が非常に複雑多岐なものであることも御指摘のとおりでございます。しかし、これを中小企業省にするかどうかというのはもう二十年来懸案の問題であり、いつでも議論が起こるのでございますが、どうも中小企業省ということで通産省と分離をすることのメリットがあるのかどうかということの可否を全部研究してまいりましたが、結論としては、中小企業というものを分離をして省にするということではその目的は達成できない、これはやはり日本の産業全体の中に中小企業の位置を明確にして、そうして中小企業をだんだんと育成をして、中小企業としての適正規模で充実をせしむるものもありますし、また、これを中心企業に、また大企業にと育成強化していかなければならない。産業の中の一つの分野であり、一つの過程でもあると、こういう考え方日本の全体的な産業政策と切り離しては効率的な中小企業対策が行なえないという結論で、民間在野の意見も十分徴し審議会の審議等も願った結果、中小企業庁という外局のほうがよろしいということで、責任分野を明らかにして内局から外局にしたわけでございますので、外局として実効をあげ得ないということであれば、そこにウエートを置いて行政を行なう、予算づけを行なうということが正しいことであって、必ずしも中小企業省という問題には踏み切れないというのが現状でございます。
  55. 矢野登

    ○矢野登君 了解いたしました。  次に、商工会館の建設助成金をひとつ考えてもらいたいということでございますが、内容を調べてみますと、全国で商工会というものが結成されたのが二千七百五十四カ所、そのうちで、自分の力によって会館を持っておるもの、会館——いわゆる事務所でございますが、これを持っておりますのがわずかに六百九十六カ所でございます。あとの二千三十七カ所は借り家に住まいをしておる、こういうようなことで、二十一カ所が答えがないので不明だと、こういうような内容を聞いておるのでございますが、本年度のこの会館の助成という問題に対して商工会議所のほうにどの程度出ておりますか、この予算案をお聞きしたいと思います。
  56. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 昭和四十六年度には商工会館の助成のために八十カ所分の予算を計上されました。四十七年度予算におきましては百二十カ所分、一億八千万円を計上いたしております。
  57. 矢野登

    ○矢野登君 意見を申し上げておきます。  せっかく国の法律で商工会をつくらして、その商工会が、事務所を持っているのが全体のうち六百九十六カ所、ないのが二千三十七カ所というようなことで中小企業者を指導していけというところに無理があるのではないか。こういう問題は、まず事務所があって、これが中心となってすべての仕事が進捗するというようなことで、この会館建設についてはぜひひとつ長官のお骨折り、来年度において特別に御考慮を願いたい。お願いを申し上げておきます。  それから次に、同じような問題でございますが、商工会の事務局長職というのを置くのに特別な御配慮をいただきたいと、こういうことでございます。自分たちのやっている仕事をその関係者は自分たちで見つけるべきではないかというような意見も私申し上げました。しかし、現在御承知のように経済の国際化の時代である。こういう時期に地方の中小企業者の手によって十分な人材を迎えるということは容易なことではない、ぜひこういう問題についても国のほうの特別なお力添えを願いたいというのがこの趣旨でございます。中小企業庁長官にこの事務局長職設置についての助成問題についてお聞きしたいと思います。
  58. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) いま御指摘のように、商工会の事務局長職に対する補助あるいは設置の助成について要望が非常に強うございました。いろいろ検討いたしました結果、重点商工会に対しまして指導環境を整備するというために一般管理費の一部、それからそれぞれの地区に適合しました独自の経営改善普及事業等に要する経費を小規模事業対策活動特別推進費という項目で補助するよう四十七年度予算案に総額一億円を計上いたしております。
  59. 矢野登

    ○矢野登君 現在技術者を養成するのに国の力で職業訓練所をつくっております。この中小企業関係団体は結局何十人、何百人の中小企業育成の指導者でございますので、どうしても地方においてなかなか現在のように激動する時代にマッチした事務局長というのを採用するということができないので、将来の問題として国の力によってこの指導者を育成する、こういうような機関が必要ではないかというように考えておりますが、中小企業庁長官のそうした問題に対する御意見をひとつお聞かせ願いたい。
  60. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 現在中小企業に対する経営指導につきましては、各都道府県の総合指導所によるもの、あるいは商工会、商工会議所に置かれております経営指導員によるもの、それから中小企業振興事業団によるもの等いろいろございます。さしあたりまして、やはりこの商工会議所それから商工会に置かれております経営指導員の資質の向上、能力を高めるということに重点を置くべきものであると考えまして、四十七年度の計画といたしましては、各通商産業局それから各都道府県の共催によりまして経営指導員約五千名に対しまして研修を行なう。それから中小企業振興事業団におきまして一カ月間あるいは三カ月間の専門研修をそれぞれ二百八十名、四十名を対象人員として実施いたしたいと考えております。
  61. 矢野登

    ○矢野登君 時間がありませんので先に進ましていただきます。  金融、税制の面について、本年度は政府系の金融機関に対する財政投融資が大幅に引き上げられております。その規模、前年度との比較、それからあわせて貸し出しワクがどの程度になっているか御発表を願いたいと思います。  あわせて四十六年度における金融面の需給がどういう程度にいっておるか、中小企業対策の面でひとつ御発表願いたい。
  62. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 四十六年度の政府関係中小企業金融三機関に対します総貸し出し規模は一兆一千八百二十五億でございます。そうして、四十七年度におきましては一兆三千九百五十四億円の貸し出し規模、財投といたしましては六千九百十六億円を予定いたしております。
  63. 矢野登

    ○矢野登君 昨年度の一兆一千八百億の財投で中小企業各地区の出先機関で貸し出しに不足を生ずるようなことがなかったかどうか。昨年度の問題をお聞きしたいと思います。
  64. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) ただいま申し上げましたように、当初計画は一兆一千八百二十五億でございましたが、年度間におきまして景気浮揚対策、輸出関連中小企業対策、年末対策、繊維関係に対する特別融資等々、必要に応じまして貸し出し規模の増ワク、財投の追加というものを行ないまして、年度間を通じまして約一兆六千億の貸し出し規模となりました。したがいまして、必要な中小企業金融需要に対しては対処できたものと考えております。
  65. 矢野登

    ○矢野登君 次に、大企業と中小企業の金利の負担状況について、私の調べた範囲では、民間普通銀行の平均年利が七・四五%、中小企業の国の金融機関関係の平均年利が八・三二%、これに中小企業がほとんど信用保証料一・三七%程度の負担をしております。これを合計いたしますと、大企業の七・四五%に対して中小企業は九・六九%と非常に高い金利負担をしいられておるというような状態でございますが、せめて国の資金というようなもの、それから信用保証料というものの引き下げというようなことで、大企業並みの金利程度を使う方法がないかどうか、使わせる方法がないかどうか。それが中小企業に対する最も大切な問題だと考えるわけでございますが、長官のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  66. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業は大企業に比べてより良質低金利でなければならないにもかかわらず、いま御指摘のように、中小企業が大手企業よりも高い、劣悪な状態において金融を受けなければならないという不合理は確かに存在いたします。まず、それは担保余力が少ない、また中小企業は倒産というような、経営に不安定であるというようなことで、コマーシャル・ベースで考えれば当然金利が高く、また融資に制約を受けるということになるわけでございます。その意味でそういうものを補完するような立場で中小三機関の設立が行なわれましたり、また、随時財投が追加をされておるというようなことでございます。しかし、金利がだんだんと低下をしてまいりますと、政府関係三機関の金利も必ずしも民間金融機関の金利よりもまさるとも言えないわけでございます。その意味で、信用補完の制度や無担保融資の制度をつくりましたり、まあいろいろな政策的な措置をすることによって中小企業をカバーしておるわけでございます。しかし、原則的に考えると、やはり中小企業というものはそれなりに大企業よりも弱いのでありますから、政策面でカバーをしていくということを考えていかなければならないという方向であることは事実でございます。その意味からいうと、どうしても政府機関というものの融資比率を拡大をしていくということになるわけでございます。しかし、一%の金利を下げるには商工中金だけでも二、三百億の一般会計からのつぎ込みをしないと下げられないという制約もございます。そういう意味で、御指摘のような事態を、現状を改善するために各般の努力を積み重ねてまいりたいと、こう思います。これからは私は実質金利も下がると思います。公定歩合も必ず下がると思います。そういう意味で緩慢な金融情勢の中で中小企業はいま息をついておるわけでございますが、しかし、大企業と比べて必ずしも優位な融資状態ではないということに対しては、政府も御指摘のような状態をつくるべく努力を傾けるつもりでございます。
  67. 矢野登

    ○矢野登君 次に、税制について大蔵大臣にお尋ねしたいと思うんですが、中小企業のほうがどうも大企業よりも税負担が大きいということなんです。これは四十四年度の統計でございまして、いささか古いので、現在は改善されていると思うんですが、法人税において中小企業が三一・三%、その金額を基準にして納めておる。大企業はこれに対して二九・八%である。それから法人税と住民税を合わせたもので中小企業が三九・六%、大企業は三六・六%と、ここに三%の税負担の差があるのでございますが、これは最終の問題でございまして、大企業の配当控除とか、中小企業の同族会社の留保金課税等、こういうような問題がかなり関係をしているのではないかと思いますが、そういう問題を越えてもなおかつ中小企業の税負担というものは考えるべきじゃないかと思うんですが、大蔵大臣のひとつ御所見を。   〔委員長退席、理事白井勇君着席〕
  68. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 中小企業と大企業と比べまして、法人税負担を比較していろいろ議論される場合がございますが、これはいわばマクロにいろいろ議論されることは非常に危険でございまして、決して中小企業の負担が大企業の負担に比べて大きいということはないと確信しております。しかし、中小企業の税負担につきましては、長期的にはなお今後とも考えるべきものがあるわけでございまして、四十七年度の税制におきましても留保金課税の対象範囲を縮減することができますように考慮しておりますし、それから、中小企業の持ちます機械等についての特別の償却制度についても新しく比較的簡素な制度を設けたというのも、全体として中小企業の税負担を軽減するという趣旨から出たものでございまして、長い目で見て漸次そういう方向に税負担のバランスを考えていくべきものと考えております。
  69. 矢野登

    ○矢野登君 時間がないので先に進みますが、流通問題、地域開発の問題で自治省にお願いしたいんですが、一体、現在過疎地域の開発について特に考えてもらいたいということが出ておるんですが、自治省の過疎地域対策の内容についてひとつお聞かせを願いたい。
  70. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 御承知のとおり、昭和四十五年に過疎地帯振興法が制定されましてから、過疎地帯に指定されましたものが千四十八市町村でございます。大体全国の市町村の約三二%に当たっておりますが、これらの市町村から過疎地帯振興、計画をそれぞれつくっていただきまして、その計画の総額が一兆一千億余りになっております。この過疎地域を持っております府県に、都道府県の行なわなければならぬ過疎地対策の計画もつくっていただきまして、この計画の総額が九千億になる。合計二兆円の計画で昭和四十五年から発足いたしまして、今年三年目でございますが、この五カ年計画は大体財政的にながめましては順調に進み、五カ年計画の四十九年にはこの計画全部が達成できるという姿で事業は進めております。事業の内容は、最も必要な交通の整備、それから無医村の医療対策、それから小中学校の統合、あるいは社会関連施設、集落の整備事業、その他の事業でございますが、これらに対する計画を着々実施に移し、本年はその中間の年度になっております。しかしながら、この計画ではたして過疎地域が十分目的を果たし得るものであるかどうかということも考えなければなりませんので、私は四十七年度の実施にあたりましては、あわせてこの計画が十分であるかどうであるか計画そのものを反省し直さなければならないのでないか。各府県、各市町村ごとに計画に対する反省、その効果等をお調べ願いたいという姿で運営に当たりたいと、かように存じております。しかしながら、過疎対策は単に短期的に解決するものでなくして、長期的には人口の流出というものを防ぎとめるような過疎対策が必要でなかろうかと思います。そのためには産業基盤の整備ということが最も重要でございますが、これは過疎地域だけでは解決することができませんので、この過疎地帯を含む広域市町村圏の振興という点をとらまえまして、その中で解消をはかっていただきたい。こういう姿で広域市町村圏の振興をあわせはかることによりまして過疎地域の長期的な解決をはかりたい、このような指導方針で過疎対策を行っておるような次第であります。
  71. 矢野登

    ○矢野登君 過疎地域対策の問題に逆比例いたしまして、現在国鉄が、赤字路線対策というようなことでどんどん路線の廃止の方向に進んでいるのではないかということ、その地域の住民はほとんど寝る時間もないようにこの問題で苦しんでおります。地方の私鉄バス会社も、国鉄ですら赤字線は廃止して平気なんだ、われわれ私鉄バス会社が赤字の路線を継続する理由はないというようなことで現在進んでおります。こういうことで、今後の過疎地域の庶民の足をどうするか、重大問題だと思うんですが、運輸大臣からひとつ御所見を承りたい。
  72. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 過疎地域におきまする公共輸送機関の確保ということは、過疎地域の対策の問題で最も重要な問題の一つであると考えている次第でございます。ただいま国鉄のローカル赤字線の撤廃の問題が御質問に出ましたけれども、国鉄のローカル赤字線と申しましても、真にもう大量に、人口が非常に減少しておりまして、そうして他に代替輸送機関がございまして、もう国鉄のあの多額な経費を投じなくてもやれると、もう国鉄としての、鉄道の特性を失ったというふうに認定したものにつきましてこれをやろうということでございまして、私も当委員会におきましても前にもお答えを申しましたように、ただいまは需要は少なくても、将来国土再開発によりまして非常に大きくなるというような地方、また、ただいまはそういったようなまあ閑散線に入りそうなところでも、線路と線路をつなぐ、いわゆる短絡をすることによりまして鉄道網が完成をする、一貫性を持ちまして鉄道需要がふえてくるというようなところのものは、これはむしろ連絡をさしたほうがいいんじゃないかというようなことでやらせる方針で進むつもりでございます。  そしてまた、ただいまバスの問題もお話しございましたが、国鉄バスは、御承知のとおり、大体におきまして過疎地帯を通っていることを使命としておる次第でございます。東名、名神、これだけの主要道路を通っている以外は、主要道路を通っているバスはございません。四十五年度でも八十七億の赤字が出ておりますが、これはやはり過疎対策として必要であるということで、私はこれを縮小させる考えはございません。今回は政府からも相当金を出してもらう予定でございますので、そういったものはやはり過疎対策の一環として続けさしていくというつもりでいる次第でございますので御了解願いたいと思います。
  73. 矢野登

    ○矢野登君 これに続いて、年金制度を確立していただきたいという問題と中小企業の労働力確保の問題これはここで論争いたしましても結論がつく問題でもないと思いますので、追ってあらゆる機会にお願いすることにいたしまして、エネルギー問題についてお尋ねいたしたいと思います。  エネルギー全般についてお尋ねする予定でございましたが、時間がございませんので、石油問題について、エネルギーの七五%を占めておるといわれておりますので、石油問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、四十七年度の石油の需要の量の見通しがございましたら御発表願いたい。
  74. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 石油は昨年二億二千万キロリットルでございますが、いまの計画では五十年には三億キロリットル、六十年には七億キロリットルというのが予想数字でございますが、これより大きくなっても、なかなか小さくならないというのが現状でございます。
  75. 矢野登

    ○矢野登君 この国内需要の原油の仕入れ先、御承知の世界八社の原油の供給会社があるわけでございますが、このメジャーズを経由して入る量がどの程度か、その他から入る輸入の量がどの程度か、これを知りたいのでございますが。
  76. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 輸入依存度は九九・七%、うち中近東からは八二・八%、南方からは一四・六%、ソ連から〇・二%、アフリカから一・六%、こういうような状態でございまして、OPECの依存度は九六・二%でございます。以上の数字は四十六年度でございますが、四十五年でメジャーズ依存度六五・六%ということでございます。
  77. 矢野登

    ○矢野登君 そのうちで国産原油が何%になっておるかお聞きしたい。
  78. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 国産原油は百万キロリットルでありますから——こまかい数字が必要であれば事務当局から申し上げますが——百万キロリットル弱でございますので、二億二千万キロリットルに対する百万キロということでございますから、もうほとんどゼロに近いものであると。
  79. 矢野登

    ○矢野登君 本年度は石油開発公団の業務をだいぶ拡張しまして、改府の財投もだいぶ活発に進んでおり、活動方針も非常に進んでおると聞いておるのですが、今後この石油開発公団をどういう方向まで仕事をさせる見込みでございますか、この点についてお尋ねをいたしたい。
  80. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 石油開発公団は、石油資源開発法、それから石油公団法に今度は第三の段階として業務の拡充ということにいたしたわけでございます。日本の石油は非常に多く外国に依存をし消費量も膨大であります。六十年度を展望しますと、自由世界の貿易量の三〇%以上を日本に搬入しなければならない。こういうような国でありながら、石油開発の実態というものは非常に弱小であります。日本全体の海外における石油開発というものはアメリカの一私企業にも劣るというような状態でございましたので、石油開発公団の拡充をはかってまいったわけでございます。この種の問題は非常にリスクの多い問題でございますので、まあ、国が主体になって試掘、探鉱をやるというところまでが原則だと思います。世界の先進工業国でも、全く国でやっておるものもございますし、それから西ドイツのように一貫して特殊会社がやっておりまして、国はそれに対して、国が行なうと同じような制度上の優遇をいたしておるものもございます。まあ、千三つというように、この種の問題は昔は千に三つ当たったらいいほうだと言われるぐらいむずかしい問題でございましたが、このごろは物理採鉱等が行なわれるようになりましたので、確率も千三つではないということでございますが、リスクの多い事業であることは申すまでもないわけでございます。でありますので、先ほど申し上げましたように、一〇〇%に近く外国から依存をしておるという石油でありますから、これはやっぱり石油開発公団が長期安定的に石油を確保できるような措置をとらなければならぬことは言うをまちません。そういう意味で、石油だけではなく、——今回の石油公団法の改正案を御審議をいただいておりますが、その中には可燃性天然ガスの試掘、探鉱、開発も行なえるようにということで業務を拡大しておるわけでございまして、今度の石油公団法の改正だけで済むものでは絶対にないということでございまして、いま大蔵大臣と御相談をしておりますこの第二外為というようなものができるとすれば、やはり石油開発公団を通じまして長期的な安定的な開発輸入ができるように石油公団が窓口になるというように拡大をしてまいりたいと思います。
  81. 矢野登

    ○矢野登君 四月十二日の日経新聞が、OPEC各国とメジャー八社を抜いて直接取引をする、そういう方向に日本政府があっせんしているようなことが報道されておりますが、この問題について大臣のお考えを。
  82. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日経新聞の報道によるものだと思いますが、現実的にOPECの代表が日本に参りまして、日本の石油の需給状況等、関係方面と連絡をしたり、視察を続けたことは事実でございます。しかし、政府関係との間に具体的な問題に対して討議をし、契約をしたという事実はありません。まあ、OPECに対しては、OPEC攻勢が大きくなる、強くなるという方向にあることはこれは言うまでもないわけでございます。それで日本もOPEC諸国との間に合弁でもう仕事をすでに進めておるものもございますし、これからは現地製油とこれに付帯する二次製品の加工工場等、そういう方向に進むであろうということは避けがたいことであろうと思いますし、また日本も適切なる措置をとるということでございます。ただメジャーズと全然関係を断つなどということは考えておりません。先ほども申し上げたとおり、メジャーズによる石油搬入量は非常に大きいのでございますし、そういう意味ではOPECとの問題は具体的なバイ・ケースで片づけてまいるということでございます。
  83. 矢野登

    ○矢野登君 時間がなくなりますので、石油税の内容について、国税局長になりましょうか、ひとつ御発表願いたいと思います。
  84. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) お尋ねは、石油に関する税がどういうことになっているかということかと思いますが、現在、揮発油税、地方道路税、それから地方税として軽油の引取税、以上がございます。以上のほかに、重油等についての関税があるわけでございます。
  85. 矢野登

    ○矢野登君 その内容について詳細をお聞きしたいんですが。
  86. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 揮発油税は、一リットル当たり二十四円三十銭という税率で……。
  87. 矢野登

    ○矢野登君 ちょっと、四十七年度の徴収の予定がありますか、総額を。
  88. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 四十七年度の予算額は、揮発油税は五千九百九十六億円、地方道路税は千八十六億円、軽油引取税は財政計画上千六百六十六億円ということになっております。
  89. 矢野登

    ○矢野登君 あわせて、原油関税がどういうふうになっているかということも……。
  90. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 原油関税についてお答え申し上げます。  現在、わが国の原油関税でございますが、一キロリッター当たり六百四十円、従価に直しますと約一二%相当に相なるわけでございますが、この関税が課せられております。なお、昨年度より、公害対策の一環といたしまして、硫黄分が少ない原油については、ただいまの六百四十円よりも安い五百三十円の原油関税が課せられておるわけでございます。
  91. 矢野登

    ○矢野登君 大体、石油関係の税金が、全部で計算してみますと一兆百四十四億円、私の調べた範囲で所得税が二兆五千九百十七億円ございますから、石油税が国民全体で納める所得税の半分、法人税が三兆四千億でございますから大体三分の一、こういうすばらしい税金を石油関係で納入しておるわけでございますが、これに対して私が常に心配していることは、末端の中小企業者がこの税負担を継続できるかどうかというような感じで心配しております。この税金を課する上において、大蔵省当局は、取り扱い業者に間違いがあるとかあるいはトラブルが起きたかというような問題が過去においてあったかどうか。それから脱税問題がかなり問題にされておるようでございますが、そういう内容についてひとつ御発表を願いたい。
  92. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 揮発油税につきましては、御承知のとおり、製造者課税になっておりまして、製油所あるいはそれに準ずる者からの移出の際に課税をいたしております。そういう関係では、正規の業者についての脱税問題というのは実際上ほとんど起こっておりませんが、いわゆる他のものを加えて揮発油を製造する行為というものが最近しばしば問題になっております。この問題は現在まで脱税の実例はございますけれども、末端のスタンド等でそういうことをやっている者についての脱税事例というのは、現在のところまではまだ発生をいたしておりません。
  93. 矢野登

    ○矢野登君 脱税というようなことがあまり問題になっておらないようでございますが、私の見ておる範囲では、かなり大きい問題になっておるんじゃないか。その一つの原因として、非常に税率が高過ぎるのではないかということを考えております。国税庁長官、どういうふうにお考えになっておりますか。  私の調べた範囲を申し上げます。特級酒が四一・一%、一級酒が三五・三%、二級酒が二四・一%、これは酒税の税率でございますが、さらにカメラが一五%、貴金属、ダイアモンドの指輪が二〇%のところへもっていって、揮発油税が二万八千七百円、これは現在の小売り価格でみなして大体六〇%、こういう税金でございます。軽油引取税のほうが一万五千円でございまして、これが大体市場価格の五〇%というようなことになっておりますが、こういうふうに重要物資である石油の税率を決定した基礎にどういう点がありますか、一つお聞きしたい。
  94. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 御指摘のように、揮発油税と地方道路税をあわせましてガソリンに賦課されております税率はかなり高いものであるということは、御指摘のとおりであると思います。これは過去におきましてしばしばいろいろの過程を経て現在の税率に到達したわけでございますが、一応現在のところは、形式的にはとにかくとして、実質的にはいわば目的税のようになっておりまして、御存じのように、道路の整備に主として充てられる目的税的な性格のものになっておりす。そこで、わが国の場合は、先進諸国と比べましても道路の整備がおくれておる、これはまた極度におくれておるということもあって、今日まで道路の整備の緊急性が叫ばれそうして、その場合に、単に一般財源のみならず、道路の利用者に負担を求めてはどうかということからこのような税率になってきたものと思っております。
  95. 矢野登

    ○矢野登君 通産大臣にお願いしたいと思うのですが、現在農村においてまで石油というものが家庭生活の基礎になっておるようでございます。こういう問題を今後も増税の対象にしていくということに非常に問違いがあるんじゃないか。  それから自治大臣にお伺いしたいのですが、今年は自治省において軽油引取税の値上げが計画のうちにあったやに聞いております。今後この重要な石油に対する増税というようなものがあたりまえの方法で考えられるかどうか、ちょっと御意見を承りたいと思います。
  96. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 新道路法及び有料道路法、道路整備の財源等に関する法律が昭和二十八年から制定をされたときからガソリン税の増税が行なわれてきたわけでございます。それによって道路整備が行なわれてまいったわけでございますし、道路特別会計の一番大きな財源でもあるわけでございます。過去に四回増徴されてきたと思いますが、もうこの税金も大体頭打ちだと考えます。これは、まだ、二、三年前から、五回目だと思いますが、五回目の増徴を行なおうという議論があったわけですが、まあアメリカを除く先進工業国の石油に対する税率と比べますとまだ低いというが議論ありますが、しかし、もうこれ以上引き上げられないのじゃないかということでいままで延び延びになっておりますから、もう大体頭打ちだろうという感じでございます。  それから漁業用及び農林用等に対しては軽油は除外されておりますので、税の対象にはなっておらないわけでございます。通産省としては、今度税でもどうしても幾らか財源を求めるためにこれほど大きな財源はないわけであります。そういう意味で、またということになれば、それは脱硫装置とか、今度公害をやらなきゃいけませんから、そういうものの特別財源でもということにでもならないと、まあここらで頭打ちにするのがいいのではないかというのが私の本税に関する基本的な考え方でございます。
  97. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) いま矢野委員御指摘のとおり、軽油引取税は、揮発油税の六〇%に対して五〇%と格差がございます。各国の例をながめましても、揮発油税と軽油引取税の税というものは大体均衡がとれておるという姿もございます。しかし、わが国におきましては、もっぱらディーゼルエンジンを利用されるところに軽油が使われると。したがって、トラックとかバスとか、比較的公共性の高いものに対して軽油引取税が使われるというふうなところから今日格差があるという姿でございますが、地方道路財源その他におきましてこれが均等に取れないかということで検討されておったことは従来からの検討でございます。たまたま本年は、いまの円・ドルの換算が変わりました関係上、原価が下がるようであって消費者に負担がないようであったなれば、この際にそういったことの検討もございましたので引き上げさしていただいてはどうかという検討はいたしましたが、OPEC等でなかなか原油が引き下がらないという姿でございましたので、とりやめさしていただいたような実情でございます。
  98. 矢野登

    ○矢野登君 この税は、所得税の半分、法人税の三分の一というような非常に大きい税金を販売業者が取り上げておるわけでございますが、所得税、法人税は一体どの程度の徴収費をかけておるか、それから揮発油税の徴収にどの程度の徴収費がかかっているか、国税庁の問題かと思うのですが、御発表を願いたい。
  99. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) お尋ねの点は徴税費の問題だと思いますが、私どもが徴税費と申しておりますのは、国税庁が所管しております内国税の租税収入総額で国税庁予算を割った百円当たりの数字で申しております。現在、四十四年度では、決算額で申しまして、百円当たり一円四十六銭という数字になっております。それから四十五年度では一円四十銭まで下がりましたが、四十六年度は、まだ決算ができておりませんけれども、補正予算で申しますと、御承知のように、不況のために租税収入を一部補正予算で減額いたしました関係もございまして、一円五十三銭程度になるかと思います。  各税別の徴税費予算と申しますのは、何と申しましてもこれはいわば一般管理費的なものが入ってまいります関係で、個別には計算をいたしておりません。ただ、一般的に申せることは、何と申しましても、直税関係には非常に多くの従事員が必要でございますし、間接税関係は相対的に少ない。さらに、揮発油税のような場合には、納税義務者数自体が非常に少ないものでございますから、その徴税費が所得税に比べれば非常に少ないと、これはもう申せることだと思います。
  100. 矢野登

    ○矢野登君 所得税、法人税の回収費が一円五十三銭。通産省のある方の意見をかりますと、揮発油税の徴収費が五銭未満であるというようなことです。大蔵省の皆さんにお聞きしたいと思うのですが、一体、揮発油税というのは、そんなに簡単に徴収できるものかどうか、五銭程度で。これは、私の見ている範囲では、この幅というものはほとんど中小企業者の犠牲によって取り立てをされているものであると、こういうふうに考えるのですが、ひとつ国税庁長官の見方を御返事願いたいと思います。
  101. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 揮発油税は、ただいま申し上げましたように、納税義務者を製油業者にいたしまして、その製油所を移出する際に徴収をいたすことにいたしております。そのため、いま御指摘——五銭というのはどうかわかりませんが、非常に安い徴税費で済んでいることは事実でございます。  御指になりました中小企業という問題は、その課税をされた結果の揮発油が、それをコストとして含んで価格が成立し、その価格で流通していると。したがって、何万というガソリンスタンドがそれを売っているということを御指摘だと思いますけれども、私どもは、税の徴収という面はすでに製油の段階で終わっているという点で、各末端の小売り業者が努力をされていることはわかりますが、それらは徴税費であるとは考えておりません。
  102. 矢野登

    ○矢野登君 この問題は、過去においてあらゆる場合に議論された問題でございます。とにかく、明治以来現在まで続いておる税務署の全能力をあげて回収する税金が一円五十三銭かかる。揮発油税は、所得税、法人税に比べてもっともっと回収に骨が折れている。販売から回収までやっていることでございますから、非常に犠牲が大きい問題である、こういうことでございまして、先刻の業界の石油を混入して販売するというような違反事実も、こうした苦しみから苦しみに耐えられないで小さい販売業者がそうした問題も起こしているのではなかろうか。ここに、血の通った徴税費用を考えるというような問題を大蔵大臣にお願いしたいと思うのですが、大蔵大臣が過去政調会長の当時は、われわれ何回もお伺いしまして、大企業の精製業者よりはおまえたちのほうを考えてやらなくちゃいかぬということは何回もおことばをちょうだいしておるわけでございますが、今後ひとつこの問題を十分に御検討願いまして、中小企業者の進む道に間違いがないように、   〔理事白井勇君退席一委員長着席〕 それから混合油の問題について申し上げますが、あの混合油というやつは、完全燃焼しないんです、エンジンの中へ入って。そこには一酸化炭素というやつが発生しまして、公害問題からいっても大きい問題だと思う。ところが、業界においては、まだまだそういう問題が起こっているという反面に、このすばらしい税金の回収負担という問題が存在しているというように考えておりますので、ひとつ、大蔵大臣、この点を特にお考え願いたい。
  103. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その問題は私も十分に承知しておりますので、引き続きこれは努力したいと思います。
  104. 矢野登

    ○矢野登君 これは、税の盲点といいますか、同じ種類の石油製品である石油ガス、軽油というものについては、貸し倒れに対して、非常に高い税金が含まれているので、税金だけは返してやろうという制度になっております。ところが、一番高い揮発油だけはその返還の道がない。一体、どうしてこういうような方向に進んできたか、大蔵省の方々の御意見を、どなたでも。
  105. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 現在の揮発油税なり地方道路税につきましては、石油精製業者が納税の義務を負っておる。そこで、定められた税を石油精製業者が納められる。その税と、それから原価なり利益なりを込めたものを含めて、リッター当たり幾らということで卸なり小売りなりに回されるわけでございます。したがって、精製業者から卸、小売りの段階に渡されるときには、税の部分と、原価といいますか本来の価格構成部分とが一体となっていくわけでございますので、どの部分が税であるか、どの部分が本来の原価部分であるかというふうに分かれないわけでありますから、したがって、卸もしくは小売りの方がそれを販売された先が貸し倒れになったという場合に、税を徴収いたしました国税の立場としてそれを卸なり小売りなりの段階にお返しをするということは、現在の税の仕組みから非常にむずかしい、なかなか理論的にも立てにくいということでございます。
  106. 矢野登

    ○矢野登君 重ねてお伺いいたします。  軽油の場合は、貸し倒れになった場合には、返還の道を講じております。これが国税のほうの石油ガス税についても返還の道が開かれておる。揮発油税だけが中間の販売業者が負担しておるというその理論をお聞かせ願いたい、どういう点からそうした理論ができたかということを。
  107. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 軽油については貸し倒れの場合の控除制度があることは、ただいま御指摘のとおりでございますが、これは、一つには、まず異例の制度になっております。現行の間接税体系の中で貸し倒れ控除制度がありますのは、軽油引取税の場合に唯一の例外ということになっております。なぜこういう制度があるかということについては、いろいろ経緯がございますし、また、そういう立法が行なわれましたにつきましてはそれなりの実態があるからだということであろうかと思いますが、その場合に、法律的には、軽油引取税につきましては、供給をされる小売り業者といいますか、小売り業者が特別徴収義務者のような形になっておるわけでありますので、そういうところから出ているものと思われます。
  108. 矢野登

    ○矢野登君 揮発油税法の制定されたのが昭和二十六年、軽油引取税の制定されたのが昭和三十一年というように記憶しております。新しい法律が新しい時代に処するのにこの道を選ぶというのに、なぜ古い揮発油税がそのままそうした方向で進んでいるかということでございます。先刻も申し上げましたように、税総額においてすでに一兆円、その一兆円の税金をあげる中小企業者に自分たちの犠牲においてその回収をせよということ、しかも、税務署は、明治時代からできておる税務署が、現在回収するのが百円で一円五十何銭もかかるのに、一方においては五銭程度で、あとは全部中小企業者にまかしておく、それを背負わしておくという問題、こういう問題は根本から考えなければいけない問題だと思うのですが、この問題について、大蔵大臣、通産大臣の御意見をお聞きしたい。
  109. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) このガソリン税は蔵出し税でございます。ですから、いまも主税局長が述べましたように、あとからできた軽油引取税のほうが例外規定でございます。蔵出し税でいいか悪いかという問題は、当時、ほんとうに議論された問題であり、二十六年のガソリン税ができ、二十七年に道路三法ができ、道路整備の財源等に関する法律によってガソリン税は特定財源になり、その後改正が行なわれ、地方道路税採用のときにこれが法制上の目的税に転化したわけでございます。その間においていろいろ問題があったわけでございますが、蔵出し税というのは徴税費がかからない合理的なものであって、道路費というような特定財源を確保するには最もいい方法である、まあそういう議論を行なった結果、蔵出し税にしたわけであります。これから逆進税制であるとかいろいろなことをいわれておりますが、しかし、間接税にウエートがだんだんと移らなければならないというのが税制調査会の答申にもございます。そういう意味からいいますと、また、私も、そういう間接税にウエートが置かれるということそのものが逆進税制だという議論は当たらないと思います。まあ人のふところに手を入れて人権問題を起こすような直接税中心主義から、やっぱりウエートを移さなければならないということでございますし、財源確保ということから見ると、この蔵出し税はあなたの言うように問題はあるにしても、政府としては合理的な制度である、こう言わざるを得ません。どうもこれは通産大臣としてはおかしな発言のようでございますが、これは国務大臣としての発言としてはそう言わざるを得ない。なぜかといいますと、私は二十八年施行のときの道路整備の財源等に関する法律の立案者でございます。非常に議論を行なって、参議院においては百日間議論を行なったという経緯を持つものでありますので、比較的この問題には詳しいわけでありますが、あなたが言われたように、蔵出し税であるので、税額を含めておろされております。ですから、実際問題としては税の徴収をスタンドがやっておるということも事実でございますが、どうも法制上は、先ほど主税局長が申し上げたように、税も原価も一緒におろされておりますから、現実的に税務署の役人と同じことを事実やっておるんだといっても、どうもその分け方はむずかしいわけでございまして、これはガソリンのスタンド等に対して税法上というよりも政策的に補助金を出すとか、そういうことでカバーさるべき問題だと、長い間議論して、大体そういう結論に達しておるのでございます。
  110. 矢野登

    ○矢野登君 大蔵大臣、ひとつ……。
  111. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき国税長官からも言いましたように、たてまえの上では流通業者に徴税費を負担させておるということにはなっておりませんが、実際問題としては、そういう面がございますので、流通業者のためにはほかのことでまだ考えてやるべき問題が御承知のとおり去年から問題になっておるようないろんな問題がございますので、そういう点であわせて解決をするよりほかしかたがないんじゃないかというような気がします。
  112. 矢野登

    ○矢野登君 時間がありませんので、両大臣にお願いをしておきます。税理論という点からいきますと、現在のところやむを得ない問題だと思いますが、実際に政治論あるいは現実論というものからいけば、ぜひともこの問題を御考慮を願いたい。それが公害に通じ、あるいは税制に通ずるというような問題でございますので、ぜひとも御考慮を願いたいとお願いを申し上げておきます。  次に、行政関係で申し上げたいと思うのですが、行政需要の実態に即した石油行政機構の拡充整備をはかるべきであるということを考えております。現在、通産省の鉱山石炭局の中の一課で石油問題が取り扱われているということで、むしろ、私は、局あるいは庁ぐらいの規模を持った石油関係の管理所ができてよろしいのではないかというように考えておりますが、通産大臣のお考えを……。
  113. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のとおり、通産省の鉱山石炭局、石油というのは石油参事官一人を置くということでございまして、これは膨大もないものでございますし、これはこれからの外交などではやっぱり経済問題がほんとうにその大宗をなすというぐらいに大きな問題になっておりますし、石油問題はほんとうに外交問題にもこれは南北問題の大きなポイントになるわけでありますので、私も石油局にしたいということを考えておるわけでございますが、まあ行政機構の整理縮小という方向にもございますので、これは大蔵大臣がここに聞いておりますから、来年はひとつこういう問題を持ち出そうと。あなたは庁にでもしたほうがいいという、私もその考えはよくわかります。これは何百人いなければ局でなければいかぬということではなく、西ドイツなどは二百人でもって住宅省というのをつくっておりますから、局には車がつかなければいかぬ、参事官が次長がということではなく、やはり内容によって責任を明らかにするためには行政機構は整備さるべきだという考えであります。
  114. 矢野登

    ○矢野登君 最後に、ことしの冬は石油価格が物価問題の中心になると、こういうようなことをいわれておりました。ところが幸い暖冬でございまして、石油のほうも十分に関係者の考え方からいって家庭の主婦の皆さまに満足をいただいた価格でできたというように考えておりますが、しかし、OPECの値上げというものは年々歳々ここ五年間は原油の値上げを計画しております。メジャーのほうもこれを承諾しております。五年間は値上げする、五年たったあとは値上げはないかということになりますと、そうではなくて、もっと大幅な値上げに持っていくんじゃないか。東大の脇村先生の意見からいきますと、地球上の原油は三十年間で大体掘り尽くされるであろうと、こういうことを言われておりますが、この石油に対する根本対策が必要なんじゃないか。それには末端の石油行政をどういう方向へ持っていくかということになると思うんですが、大体石油流通業法というような法律でもつくって、この末端の石油の配給対策を考えなければいけないんじゃないか、こういうようなことを考えております。もちろん、この場で御返事をいただこうとは思っておりませんが、今後の問題としてぜひ通産大臣にお考えを願いまして、そういうような方向で、この円満な安定した石油の供給という課題をどこまでも続けていけるような方向に進んでいきたいと考えております。最後に私の意見を述べさしていただきまして時間が参りましたので、どうもありがとうございました。(拍手)
  115. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で矢野君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  116. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、内田善利君の質疑を行ないます。  環境庁長官が入りましたら質問を始めていただきます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  117. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  大石環境庁長官に申し上げます。  きょう午前、政府委員の出席が不ぞろいなために、ついにこの委員会を中断せざるを得なかったわけです。いまもまた、環境庁長官の御出席を待って、各委員はもう八分間ここでみんなくぎづけになって待っております。どうかひとつ御協力を願います。
  118. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 以後注意いたします。相すみませんでした。
  119. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 内田君の質疑に入ります。内田君。
  120. 内田善利

    内田善利君 私は、いま問題になっておりますPCBについてお聞きしたいと思いますが、私は主として今後の対策についてお聞きしたいと思うんですけれども、今日まで通産省、環境庁、厚生省がPCB対策についてとられた処置、結果そして今後の対策についてまずお聞きしたいと思います。
  121. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) PCBを使う問題につきましては、これを使わないようにということで、三菱モンサント、それから鐘淵は三月及び六月末までには製造を全面的に中止をするようにいたしました。それからPCBの製造を中止するということで、PCBにかわるべき物質の開発に全力をあげておるわけでございます。  それからもう一つは、感圧紙等を原料にして使った故紙等、また手持ちのものに対しては現在調査を行なっておりまして、これが公害汚染を起こさないように措置をすべく努力をいたしておるわけでございます。なお、閉鎖系のもので現にPCBを使っておりますトランス、コンデンサー等につきましては、これが回収の万全を期すために各企業に対して通達を行ない、要請を行ない、その完ぺきを期しておるわけでございます。いま残っておりますものは非常に少ないものでありますが、この使用についても回収が前提であるということで、厳重な条件を付しておるわけでございます。問題は、ノーカーボン紙等を故紙として回収をし、ちり紙などにして、すでに消費者の手に渡っておるものがございます。それからもう一つは、テレビの受像機その他、大衆的にもう使用されておって追跡調査ができないというようなものもございます。こういうものに対しては、公害の元になるものでありますから、やはり可能な限り最大の努力をして回収を行なうということ、回収を行なって処理をするということにつとめるべきだと考えておるわけでございます。
  122. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いまPCBが非常に国民の重大な関心になっておることはおっしゃるとおりでございます。このような重大な問題であるにかかわらず、いまだに的確な手段がとられておらないことはまことに残念でもございますし、申しわけなく思っております。環境庁といたしましても、事の重大性を十分にいま自覚はいたしておりますけれども、いまだたいしたことはいたしておらない実は段階でございます。と申しますのは、まずこのPCBの実態というものをつかまえなきゃなりません。それが残念ながら、その分析方法がまだ十分な確定の段階にまで至っておりませんので、ここがいま一番その問題点として困っているわけでございます。しかし何にしても、このような問題になる以上は、暫定的なものにせよ、ある程度の基準というものをきめまして、これによって一応の全国的なPCBの汚染の状態、あるいは水の状態、あるいはこれに対する規制のしかたを考えなきゃならぬということで、いま水の排水基準、これも基準と申しましてもごく暫定的なものでございますけれども、それをきめたいと考えまして、いろいろと各地域に対して調査を依頼したり、命じたりして努力している段階でございます。早く、おそらく近いうちに一応の基準のきめ方が決定すると思いますので、それを土台として、とりあえず厚生省その他と十分連絡をとりまして、このPCBの総点検と申しますか、一番汚染されているだろうと思われる地域を中心として、あるいは水域を中心として点検を行ないまして、その実態をつかんでまいりたいと、いま考えておる段階でございます。
  123. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 厚生省におきましては、PCBの食品中におけるその分析の方法を、科学技術庁、環境庁と一緒になりまして、一応分析方法をきめまして、そうして、それによって食品中にあるPCBのいま調査をいたしております。PCBに汚染された食品、ただいまのところでは魚類に一番多いのじゃないかという結論でございますが、ごく最近に滋賀県の草津のPCBを使う工場の近辺における米の汚染というものも発見をいたしたわけでありまして、また、母乳の中にPCBも含まれているということが最近に発見をされまして、これらにつきましても、さらに、全国的規模で調査をいたしておるわけでございます。
  124. 内田善利

    内田善利君 通産大臣にお聞きしますが、このPCBを含んだ感圧紙がまだだいぶ残っているということですが、これの処分方法はどのように考えておられますか。
  125. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) たいへん残っておるという状態ではございませんが、そういうものは使わないように、それを廃棄処分にするようにというようなことでございますが、いまもうPCBを含むものの在庫というものを確実に調査をするということはたいへんむずかしい状態でございます。
  126. 内田善利

    内田善利君 閉鎖系のコンデンサー、トランス、これの回収方法、処分方法はどのように考えておられますか。
  127. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 九電力、電電公社、それから国鉄というようなところは、もう確実に回収をするようにということでございまして、これは確実に回収はできるわけでございます。しかし、もうすでに古くなって廃棄をされておるようなもの、まあこういうものが汚染源になっておるわけでございますが、まあこういうものもこれから調査をしながら回収をして、汚染源にならないように努力をしてまいるということでございます。
  128. 内田善利

    内田善利君 まあ全部回収されるのかどうか、国鉄等はまだ使用したいということのようですが、国鉄等の使用は許されるのか、この点はどうですか。
  129. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 技術開発でございますから、これにかわる物質がすみやかに開発をせられると思いますが、現時点においてこのような高性能なものがなかなか出ておりませんので、局限されたものはどうしても使いたいということがあるわけでございます。使う場合には、当然回収を義務づけるというもの以外には使わせないということでございます。
  130. 内田善利

    内田善利君 三菱モンサントも鐘淵もPCBの製造をやめるわけですが、代替品でやるつもりなんですか。
  131. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三菱モンサントはもうすでに三月製造は中止をいたしました。それから鐘淵化学は六月末で中止をするわけでございます。ですから、これはいつでも申し上げるのでございますが、非常に高性能なものでありますので、まあトランスやいろいろなものに使いたいということは、製造コストを引き下げるためにはそういう生産意欲はあるわけでございますが、これだけ公害問題を起こしておりますので、もう必要やむを得ざるもの以外は使わない。しかも、必要やむを得ないものでも回収が完ぺきである、責任を持てるというものでなければ使わない、こういうことにいたしておるわけであります。まあテレビなどでもそういう高性能なものを使えば、ポータブルテレビのように、性能はいいが小さいもの、持ち運びができるものがつくられますが、PCBを使わないというようなものになると、過去のテレビのように非常に重い、二人で持って持ち歩かなければならないというようなものになるわけでございます。ですから、まあ精密機械等の中にそういう部分を使用するという面に対しては、これにかわるべき高性能な物質が見つからない場合にはどうしても厳重に、公害を起こさない、回収を義務づけるということで使用せしむるということに局限されるわけでございます。
  132. 内田善利

    内田善利君 外国製品ですか、PCBは。製造中止するわけでしょう。
  133. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中止をいたしておりますし、外国からはもう輸入はいたしておりません。
  134. 内田善利

    内田善利君 そうすると、PCBはなくなる、製造中止するわけですから。だからどこのものを使用するのかですね。
  135. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま工業技術院等で研究をしております。これはもう日本の産業全体の問題でございまして、PCBにかわるべきものというものは当然開発を行なわなければならない。開発が行なえないからその間、高性能のPCBを使って公害を振りまく、そんなことは許されるはずはないわけであります。
  136. 内田善利

    内田善利君 最近、鳥の卵もPCBに汚染されたという報道がなされておりますが、この状況と、これに対する対策を環境庁長官にお聞きしたいと思います。
  137. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 鳥の卵ということでございますが、これはまあ母乳の中からという問題が一番大きな問題をいま提供しておるわけでございます。これはノーカーボン紙等を原料として使ったちり紙、再生紙としてつくられたちり紙等からまあ体内に入ったということと見るべきでございます。また、そうではなく、まあこのごろはいろいろな私もテレビを見たり、いろいろな調査報告等を見ておるのでございますが、野菜とかいわゆる卵だとか、そういう食料品の中にもPCBが含まれておる。それを摂取することによって母乳から検出をするということになるわけでありますので、その原因というのは、いま言ったように、再生ちり紙等を使うということであって、こういうものはもうこれからはほとんど混入されないわけでありますから、これから大きくなるとは思いませんが、しかし、いままでつくられたもの、五万五千トンという大きなものが、閉鎖型、開放型のいずれかで使われたわけでございますので、いままで使われたものの結果として検出されたということだと思います。
  138. 内田善利

    内田善利君 鳥の卵まで汚染されたということ——われわれの常食する卵です、これの状況を把握されておるのかどうか、この点お聞きしたいと思います。
  139. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いま、魚の一部とか、米の一部とか、そういうものについては、これはわずかなデータでございますが、その分析をしていろいろな結果が多少出ておりますけれども、鳥や卵につきましてはわれわれ詳しいデータは何もまだ聞いておりませんが、おそらく大体汚染されておるであろうという考え方が強いと思いますけれども、まだはっきりしたデータはつかんでおりません。
  140. 内田善利

    内田善利君 これは飼料になる魚粉が原因だと——先ほど魚が非常に一番汚染されているということでしたが、やはりそういった魚粉が原因であるということであれば、この辺は十分早く検討していただきたい。できれば、そういった卵も常食にすることは危険になっているのじゃないか、このように思うわけですね。  その次に、われわれはかねてから、昨年のこの予算委員会においても同僚の藤原議員がこのPCBの問題については質問したわけですけれども、その後あらゆるところを調査してまいったわけですが、滋賀県の草津の日本コンデンサの草津工場、このPCBのたれ流し事件、これの現況と対策を環境庁並びに通産省にお願いしたいのです。
  141. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日本コンデンサの工場は、コンデンサーの製造をもう中止をいたしました。しかも、この排水処理その他に対しましては、沈でん池のような施設を設けて十分これが流出しないような措置はとられておるわけでございますが、しかし、沈でんをしておるわけでありますから、こういうものをどう処理するかということは、科学的に完ぺきな処理を考えなければならないというのが現状でございます。
  142. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いま通産大臣からお答えしたものでございますが、そのため池を、これはすでにもう買収を終わりまして、周囲をコンクリートで固めまして、一切外に汚染が響いていかないように、そういう努力はいたしております。  なお、その付近の土壊なり水につきましては、まだ心配がございます。そういうものにつきましてはいま研究中で、できるだけ早く実態をつかまえましてそれに対処する、土地改良、土壌改良ですか、そういうことをいたす方針で、いま調査中でございます。
  143. 内田善利

    内田善利君 土壌の汚染は、当然汚染米も出たということですが、これに対して農林省はどのような対策を講ぜられますか。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 一般的に申し上げますと、汚染区域から政府が買い上げた在庫米ですが、これはとりあえず売却を一時保留しております。それからまた、自主流通米として在庫をしておりますものにつきましては、県及び経済連に出荷を保留させております。汚染地域の農家から希望がありましたならば、厚生省とも打ち合わせて廃棄することを検討しております。  今回の滋賀県の草津市で、問題となっておりまするPCB汚染米につきましては、とりあえず出荷を停止しております。今後関係各省庁とも十分打ち合わせの上、食品として有害と認められたものにつきましては適切な処置をとる、こういう方針でございます。
  145. 内田善利

    内田善利君 この草津工場だけじゃなくて、全国のPCB使用工場の周辺の土壌汚染対策が必要だと思いますが、この点、いかがですか。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、草津市の場合ばかりじゃなく、一般的の汚染地域の米に対しての対策を申し上げたのでございますが、一般的にも、今後関係各省庁と打ち合わせの上、食品として有害と認められたものにつきましては適切な処置をとるということにいたしたいと思います。
  147. 内田善利

    内田善利君 もう一つ聞いておきますが、ため池はコンクリートで周辺を構築したということですけれども、いまから雨期に入りますし、オーバーフローするおそれはないのかどうか。また、そういった一あれは三万二〇〇〇PPMだったと思うんですが、三万二〇〇〇PPMというのは、ため池が三%のPCBを含んでいる、こういう有毒なため池なわけですから、これはそのままにしておくのじゃなくて、何らかの対策を講ずべきだ。私は、これをくみ上げてどこかタンクに密閉して保存するとか、何らかの方法を講じない限り、これはオーバーフローして、また琵琶湖に流れ込んでいくんじゃないか、このように思いますが、この点はいかがでしょう。
  148. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いまの御意見はごもっともだと思います。それにつきましては、詳しいことは所管の局長からお答えさせたいと思います。
  149. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 日本コンデンサの工場外のため池の問題でございますが、先ほど大臣からお答えいたしたと思いますけれども、このため池につきましては、現在所有権が日本コンデンサにございませんので、これを至急買収をいたしまして、ヘドロの処理につきましては、一つの方法といたしまして、これを固める。コンクリートでは多少問題があるということも聞いておりますので、別の方法によってこれを固めるという方法も考えられますし、また、ヘドロをしゅんせついたしまして別途処理するということも考えられると思います。いずれにいたしましても、周囲の環境汚染がこれ以上広がらないような方法で早急に対処するということで、これも通産省と相談いたしまして現実方法を具体的に検討中でございます。
  150. 内田善利

    内田善利君 私は、カネミ油症患者の姿を一番最初に見ました。それから何回も会っていますけれども、全然よくなっていない。非常に悲惨な姿です。こういったことから、もっと早急に対策が講ぜられべきじゃないか、こう思うんです。いまから総点検をやるとか、いろいろいま各大臣が答弁なさったわけですけれども、非常に手おくれじゃないか、このように思うわけですね。さらに、そういった社会的な不安を出しておる、国民は非常にこのPCBについては不安を持っている。そういうときに、今度はもうすでに代替品が出回っておる、市販されておる、こういう状況は非常に無責任じゃないか、このように思うわけですね。  最初、PCBが使われておる感圧紙についてお伺いしますけれども、どういうPCBにかわる感圧紙が市販されているのか、まず、この点をお聞きしたいと思います。
  151. 佐々木敏

    政府委員佐々木敏君) お答えいたします。  ただいま感圧紙メーカーは四社ございますが、昨年二月感圧紙にPCBを入れることを停止いたしておりますが、現在はPCBにかわりまして別の薬品、アルキル等の薬品の感圧紙をつくっている次第でございます。
  152. 内田善利

    内田善利君 そういう答弁じゃなくて、どこの工場で何をつくっておる、いつから市販されておる、そういう詳しい答弁をお願いしたいのですがね。アルキル薬品なんて幾らでもあるのですよ、世の中には。
  153. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) お答え申し上げます。  感圧紙の問題でございますので、感圧紙に限って申し上げますと、感圧紙に使われておりましたPCBは、塩素の数のわりあいに少ない性格でございました。現在代替品として開発されましたものは、アルキルナフタリン類、それからアルキルジフェニール類という二種類ございまして、このアルキルナフタリンのものは、呉羽化学が、実は数年前から、カネミオイル事件が起こりましてから検討を進めておりまして、昨年開発を完了したものでございます。それからアルキルジフェニールの系統のものは日本石油化学で、ごく最近開発をされましたもので、それぞれ東京歯科大学、金沢大学、日本大学医学部薬学教室等々の公正なる学会におきまして、急性毒性、亜急性毒性等の試験を完了いたしております。ただ、ちょっと蛇足でございますが、問題なのは、蓄積性といいますか、分解性といいますか、その辺が問題でございますので、会社側といたしましては、われわれのほうへの報告におきましてはやはり同種の、いまの学会で、分解性も十分あるという御報告になっておりますけれども、なおこれに念を入れまして、通産省といたしましては、所管の微生物工業研究所で、現在、分解性につきまして、より詳細な試験を実施しておる段階でございます。
  154. 内田善利

    内田善利君 このようにPCBの汚染、油症患者のああいう姿、そしてPCBが社会的な不安を起こしておるというときに、こういった代替品が非常に安易に出されている。いろいろな大学で検討したということですけれども、通産省あるいは環境庁はこれでいいんですか。こういう市販を、もうすでにしておりますけれども
  155. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 通産省も、PCBにかわる物質の研究、工業試験所及びその系統の機関を総動員して検討を行なっておるわけでございます。また、大学等とも連絡をとりながらやっておるということでございますし、通産省がPCBの開放系に対する使用を禁止する、しかも製造も中止せしめる、輸入もしない、なお、閉鎖性のもので、やむを得ざるものに対しても回収を義務づける、こういうことで、PCBを使わなければならないという、真にやむを得ないものだけに限り、しかも新たな公害は絶対に出さないということでございます。しかも、いままで使われた開放系のもの——まあ閉鎖性のものはこれを早く回収するというような措置がとれるわけでございますが、開放系のちり紙などは、どこでどういうふうになっているのか、これは全国民を調べてもわからないわけでございます。  ですから、いま申し上げたように、日本コンデンサの操業を停止するとか、いま沈でん池のあるものを固形化するとか、それから、どろの中に含まれているものをどういうふうにして中和させることができるのか、分解させることがどうできるのかというようなことをやっておりますが、これは実際、通産省としては、全国的に散らばってしまったものを、五万五千トンが使われた先を追及して、実態を明らかにして、措置をするということはなかなかむずかしい問題でございます。これは努力はいたします。いたしますし、もう工場さえも停止をしておるわけでございますから、あらゆることをやっているわけでございまして、PCBの公害を防ぐために全力を傾けておることは事実なんですが、ちり紙までは、その中で、故紙なのかどうかさえもなかなかむずかしいことでございます。最終入手者も、もうほとんどが使われてしまったというふうに見るべきだと思います。
  156. 内田善利

    内田善利君 PCB対策については、いまおっしゃったとおりと思いますが、環境庁長官も言われましたように、まだPCBについても検討中である、その毒性についてもいろいろなことを検討している、基準もまだきまっていない、それを通産省としては製造禁止までした、そういう中で、すでに代替品として市販されている。これは呉羽化学ですが、こっちのほうは日本石油化学ですけれども、その安全性あるいは分解性が、大学の教授、これもたったお一人ですけれども、それによって、たった三十日間の試験結果で、急性、亜急性までは試験できたかもしれない、しかし、慢性毒性は、じゃ、これでだいじょうぶなのか。このように疑われるわけですね。もっともっと検討し、また、通産省でも、あるいは環境庁でも、もっともっとクロスチェックなり、検討した結果、これならだいじょうぶだというところで製造を許可し、また市販していただきたい。これが国民の声じゃないかと思うんですね。もういつの間にか、こういうことがなされて——これは四十六年の十一月二十日、これは四十七年の三月三十日です、こういうふうにして安全性と分解性が発表になったのは。ところが、市販は四十六年の三月から市販されているのです。一体これはどこがチェックし、どこが監督し、また、どこが許可をしたのかどうか。この辺はいかがなものですか。
  157. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、新しい物質の研究ということは、これから非常に行なわれるわけでございます。ですが、やむを得ず、どうしても毒性のあるものでも使わなくちゃならないもののよき例としては、青酸カリ等がございます。こういうものは、これはもう保管とか、使用に対しは非常に厳重な制度がございますが、新しい物質というものに対しては、今度はPCBや、カドミウムや、いろんな問題が起こってまいりましたからそういう制度や法制というものは完備さるべきだと思います。これは、今度の無過失公害賠償責任というような制度ができると同じように、だんだん完備していくべきだと思いますし、また、通産省も新しい製品に対して、そういう制度をつくらなければならぬということを考えております。これはしかし、PCBも、外国から、初めはアメリカから輸入したというものでございます。ですから、こういうものに対しても、世界的に連絡をするような会議、そういう組織、しかも研究をする——人体には害がないということまで、新しい製品、新しい物質というものに対しては、そういう世界的な機構というものも必要だろうというふうには考えております。いま、そういう態勢において、新しい製品に対して、全部通産省が試験をして、そして毒性がないということが確認をされるまでは使ってはならないというふうには、法制上、制度上なっておらないわけであります。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕
  158. 内田善利

    内田善利君 長官、どうですか。
  159. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) せっかくノーカーボン紙をやめましても、やっぱり新しく出た代替品が、またそれに劣らないような毒性があるのでは何の意味もございません。かえって害になります。私は、かねがね申しておりますように、どのようなわれわれの生活に便利に役立つようなものであっても、それが毒性がないという証明がなされない限り、あるいはそれを製造するまでの廃棄物が無害であるという証明がなされない限りは、絶対にそのものの製造並びに使用は許すべきでないというのが私の持論でございます。当然、これは近い将来、はっきりと法的にもそのような方向を打ち出すべきであると考えておりますが、まだ現在そこまで行っておりません。  いろいろ通産大臣からいまお話がございましたように、ノーカーボン紙はすぐやめなければなりません。なりませんが、それにかわる何ものかがないとすると、やはり、いま申しましたような代替品が、わりあいに、必ずしも厳密な科学的な検査を経ないでも行なわれるというのは、やむを得なかったかと思いますが、これは必ずしも正しいことであるとは思いません。したがいまして、やはり、この点はどうしたらいいか、私もいまそういう具体的な面についてはお答えできませんけれども、いままで述べましたような考え方を基礎として、やはりもう少ししっかりした、公害というものを十分に考えた、あり方を今後とも一日も早く確立することが必要ではなかろうかと考える次第でございます。
  160. 内田善利

    内田善利君 私は、この代替品をつくった工場はわかっているんですから、やはり通産省としては、これをやめさせる権限はなくても、そういう制度はなくても、ちょっと待てと、通産省で検討し、あるいはもう少し権威あるといいますか、もう少しクロスチェックして、その後市販すべきだというような行政指導は、これはやっていいんじゃないか、これほどPCBが問題になっているときですから、代替品の市販については、もう少し慎重であるべきではないかと、このように思います。私は、極端に言えば、即刻こういった代替品は販売をやめて、そして通産省なり、あるいは権威ある学者グループの分析結果、テストが終わってから市販するなり、すべきじゃないかと、このように思うんですけれども、いかがでしょう、この点は。
  161. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは、まあ科学や技術の進歩というものは、日々刻々新しい物質を発見しておるわけでございます。そういうものに対して、すべて通産省がやらなければならないということになると、これは非常に膨大もない組織になりますし、それはたいへんなことなんです。ですから、いま法制、制度は完備されておりませんということでございますが、しかし、いままで新物質や新製品が開発をせられたときには、それなりに、学者、学会等の証明に近い結果が公表されて、あの大学が言うのであるからよかろうということで使用しておるわけでございます。  PCBなどというものも、これほどの公害ということは考えておらなかったものでありますから、五万五千トンも製造をし、これを使ったということになると思うんです。ですから、新しい物質というものは、ある期間、相当長い期間たたなければ、これの有害性というものはなかなか証明されないというものもございますし、使ってから、自然条件と混合して有害物質に転化するというものもございますし、なかなかむずかしい問題である。しかし、こんなことを言っておると、ほんとうに地球上は、発明しなければ人類は永遠に住めるのに、発明をしているために、地球が汚染されて、人類がなくなるんじゃないかという議論に直結するわけです。私も人の子でありますから、ほんとうに暮夜ひそかに嘆ずることはあるわけですが、これを全部完ぺきな制度でもって、ということになると、進歩をとめることにもなりますし、やっぱり人間の英知がこれを調整をしていくということでなければならないと思うんです。  ですから、なかなか初めから有害であるというものはわからない、しかし、高性能なものには確かに反作用があるということはお互いが理解できるんですが、どの程度にということはなかなかむずかしい問題でありますので、先ほども申し上げたように、これは、新しい物質、それが多量に使われるというものであり、高性能のものなら、これはやはり世界的なそういう機構が必要だろう。通産省でも、これだけの問題があるのですから、通産省で可能な限りの、どう一体整備すればいいのか、組織をどう法制化すればいいのかというような問題、たいへんむずかしい問題でございますが、ひとつ勉強してみたいということでございます。  私が考えたのは、昔の理化学研究所のような総合研究所、いまの理化学研究所もそのとおりでございますが、もっと総合的なもので、そこで一つ判断というものがあって使われることが、新製品、多量に使うもの、というものは望ましいなあという感じは持っておりますが、まだ結論に達しておりません。
  162. 内田善利

    内田善利君 このPCBにつきましても、昭和二十三年ごろから学者は問題にしているわけですね。熊本大学の医学部の野村教授は、もうすでに問題にしているんです。そうして大阪でも松下電器工場のほうで、従業員が五〇%も油症患者のような姿が、患者が出た。あるいは三年半前には九州であのような、あるいは全国にまたがっておりますが、油症患者が出た。こういうことなんですから、もう少し国民の側に立って、われわれの健康という面から対策を講ずべきだ、そういうことから、今度の代替品の市販にしても、もう少し慎重にやるべきじゃないかと、このように思うわけですね。私は何人かのPCBの先生方に聞いてみましたんですが、急性、亜急性に対してはやってあるけれども、慢性中毒が心配だ、特に発ガン性、突然変異、そういうことが起こる心配があると、このように権威ある学者の先生方が言っているわけですから、もう少し慎重にやるべきじゃなかったかと、こう思うわけですね。まあ、PCB対策にしても、これだけかかって、問題が起こってきているわけですから、もう少し政治的な配慮がほしいと、このように思うわけですね。  厚生大臣にお聞きしますけれども、このPCBは毒物劇物取締法の対象に入れたかどうか、もうこのように問題になっているわけですが、毒物劇物取締法の対象に政令でお入れになったかどうか、お聞きしたいと思います。
  163. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいま食品中に含まれるPCBの実態検査をいたしておりますが、暫定許容量をなるべく早くきめまして、そうしてその許容を越える食品は人体に摂取させないという方法をとりたいと、かように考えております。
  164. 内田善利

    内田善利君 PCBは毒劇物に入れたかどうか。
  165. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) これは毒劇物には入れておりません。
  166. 内田善利

    内田善利君 私は、これほど問題になっているんですから、やはり毒物劇物取締法の対象にして取り締まっていくべきだと、このように思うんですが、この点はいかがですか。
  167. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) お答えいたします。  先生御承知のように、毒物劇物取締法は急性毒性についての取り締まりを従来からやってきておりまして、そういう法体系になっております。PCBの急性毒性につきましては、現在の指定されております毒物劇物につきましてのような急性毒性はございませんので、ただいまのところ、指定することについては考えておりません。
  168. 内田善利

    内田善利君 私は、もうここまで来たら、毒性、毒物というものに対する観念を、考え方を変えるべきではないか、急性毒性のみならず、健康に被害を与えるものについて、その分解性、あるいは蓄積性、そういうものも検討して、そういうものも含めて毒性、毒物を検討すべきときが来たんじゃないかど、そのように思いますが、厚生大臣、いかがでしょう。
  169. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) いま局長がお答えいたしましたように、毒物劇物の定義といいますか、これを一応いままできめてきておりますが、ただいまおっしゃるような趣旨に沿いまして、そういった点、もう一ぺん考え直す必要があるがどうかということを、関係の委員会等に御意見を聞いてみたいと思います。
  170. 内田善利

    内田善利君 ぜひそうしていただきたいと、このように思います。  今度は閉鎖系の代替品についてお聞きしたいのですが、コンデンサーとか、トランス、そういったものに使っているPCBにかわる代替品は、どんなものを使っているか、聞きたい。
  171. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 閉鎖系のPCBの代替品につきましては、鉱油系のもの、それから炭化水素系のものを現在使っておるわけでございます。これは先ほどの感圧紙の場合と違いまして、今回新しく開発されたものではございませんで、大体石油系の、昔からございます鉱油系のいわゆる絶縁剤でございます。したがいまして、PCBに比較しまして性能は劣ることはいなめないわけでございます。
  172. 内田善利

    内田善利君 石油系の、鉱油系の絶縁物じゃわからないんです。成分は何かと聞いている。それじゃ毒性があるかどうかわからないじゃないですか。
  173. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 成分は正確にわからないのでございますけれども、いま私ちょっと判明しないんでございますけれども、石系油のいわゆる鉱油といいますのは、大体その性格がいわゆる石油と同等のものでございまして、一般的に石油が考えられておる、何といいますか、石油はその毒性がないということと、化学的に同じものであると考えていいものではないかと、こう思う次第でございます。
  174. 内田善利

    内田善利君 そういう、成分のわからないものを、PCBが毒性があるからかえるということで、成分不明だということで使うということはどうなんですか、これは。
  175. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 電気用には、昔から絶縁用に鉱物油が使われておるわけでございますが、二十九年ごろからこのPCBというものが出たもので、これがより絶緑性が高いし、それから不燃性も、より能率がいいわけで、これに切りかえたわけでございますが、今回PCB問題が起こりましたので、全部もとへ戻るというふうにお考え願ったらいいと思います。しからば、そのPCBが出る前に使っておったいわゆる鉱物油というのは、軽油に非常に近い硫分のものと了解しております。——鉱物油というのは、PCBを使う前に使っておった鉱物油というものは、いわゆる軽油でございますね、軽油とほとんど硫分の近いものでございます。
  176. 内田善利

    内田善利君 よくわからないんですがね。鉱油と同じものだということですが、カネクロール三〇〇というのがどんなんですか。
  177. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) カネクロール三〇〇というのはPCBの一種でございまして、先ほどもちょっと言いましたように、PCBといいましても、塩素の数が多いのと少ないのとございますけれども、このカネクロール三〇〇というのは塩素数三のPCBでございます。
  178. 内田善利

    内田善利君 だんだん、塩素がないほうがいいんだということで、カネクロール三〇〇というのはPCBの塩素の少ない分だということですけれども、そういう塩素の少ないものということで、コンデンサーあるいはトランス等に現在まだ使われておると、そのように聞いております。これは塩素が少ないので蓄積性がないということで使われておるわけですけれども、急性毒性が非常に強いということで心配だというふうに聞いております。このようなコンデンサーですか、閉鎖系ですから、これは回収ということが問題になると思いますけれども、この対策はどのように考えておられるか、聞きたいと思います。
  179. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 家電用品等、不特定多数の需要者に出すために回収が非常に困難と思われるものに関しましては、おそくも九月一日までに生産を禁止いたしまして、それに対しては問題が起こらないようにいたしますが、それ以外の大口需要者に対するものにつきましては、回収が可能な態勢を確認した上で出荷するというふうに通牒を出しております。  具体的に申し上げますというと、メーカーのほうとユーザーのほうと両方に対して対策を通達しておりまして、メーカーのほうにおきましては、出荷先が回収態勢ができるということを確認した上で出荷するし、出荷状況を通産省に報告してその確認を求める。他方、ユーザー側におきまして、すなわち電気炉等、大量に使用し回収が十分できるもの、さらには国鉄、電電あるいは電気事業者、そういうようなものにつきましては、別途ユーザーのほうに対策を講じてこれを必ず回収する。その回収態勢はどうであるかということを報告させ、それをあとでもって十分チェックするというふうな対策をとることにしております。
  180. 内田善利

    内田善利君 私は、このPCBに対する政治的な配慮、姿勢、こういうものが非常に不足しておったと思うんですね。昭和二十三年ごろから学者はそうして警告を発しておる。カネミ・オイル事件等が起こった時点でもうすでにいまのような対策が講じられるべきだったと、このように思うわけですが、PCBが悪者になっておりますけれども、やはりわれわれ政治的な配慮、そういうものがなかったと、このように痛感するわけですね。しかも、その上こういった代替品が遠慮なくもうすでに市販されている。閉鎖系にしろ開放系にしろ正体不明のものが、通産省の役人の方にも成分が発表できないほど正体のわからないものが市販されているというようなことは、これはもう国民として納得のできないことじゃないかと、このように思うわけですね。こういったことで、ひとつ今後の代替品に対しては適切な指導をしていただきたい、このように思います。通産省がとられたいろんな通達、見せていただきましたが、これも自粛を要請するということばなんですね、全部。自粛を要請するということでなしに、もう少しこのような国民を不安にしているPCBなんですから、もう少し強く姿勢をはっきりしていただきたいと、このように思うわけです。製造禁止をされるようにしていただきたい、このように要望いたします。  その次にお聞きしたいことは、通産省、環境庁にお伺いしますが、公害の原点といわれる足尾鉱山に対して、いままでどのような調査をなさってきたのか、そしてどういう対策を講じてこられたか、この点をお聞きしたいと思います。
  181. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 鉱山法には、御承知のとおり、非常に強い無過失責任の規定がございます。そういう意味で、足尾銅山も例外ではなく、長い歴史の中にあるわけでございますが、これが鉱滓の処理その他に対しては、法律に基づいて適切な処置がとられておるわけでございます。  ところが、足尾銅山の下流にある渡良瀬川の川どろの中、その他からカドミウムが発見をされたということでございます。また北海道に移民をしたというような悲惨な歴史もあるわけでございますが、この問題に対しては、足尾銅山と地元との間には長い間、協定が成立をいたしまして農業組合に対して足尾銅山から金が支払われて、協議によって問題を解決をしてまいったわけでございますが、科学的な処理の問題としてはこれから出さなければならない問題として残っておるわけでございます。この間、これは原因者が足尾銅山だけではないというようないろんな説が立てられたわけでございますが、群馬県側は長い調査の結果、その原因者は足尾銅山であるというような結論を出したわけでございます。会社側は、まだこれに対しては同調しても認めてもおりませんが、そういう状態でございます。これから群馬県当局とも十分連絡をとりながら、これが調査をもっと徹底的にやると同時に、公害防止の問題に対して対策を立てなければならないというのが実情でございます。
  182. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 足尾銅山につきましては、まず銅の問題でございますけれども、銅の問題につきましては、旧水質保全法によりまして、銅の排出等につきましてすでに規制が行なわれております。上流地点におきまして一・五PPMということで規制をいたしまして、取り入れ口近くの高津戸地点におきましては、かんがい期平均で〇・〇六PPM以下に保つというような規制が現在行なわれておるわけでございます。  なお、銅の問題は、究極はやはり土壌汚染の問題として解決せざるを得ないというふうに考えておりまして、私どもは現在、土壌汚染防止法によりまして銅を有害物質に追加指定をするということで、中央公害対策審議会の土壌部会に現在諮問をいたしております。近く答申が得られるというふうに考えておりますので、その答申によりまして、政令により銅を追加指定をし、それによりまして対策地域の指定が行なわれ、土地改良その他の対策事業が行なわれるというふうに私どもは考えておるのでございます。  また、カドミの問題が最近出まして、群馬県に頼みまして調査をいたしました結果、やはりカドミウム汚染をしております。一PPM以上のカドミが玄米中に含まれる地点が相当出ております。それにつきまして、原因調査等につきまして、これは農林省からの委託によりまして群馬県が原因調査をいたしておりましたけれども、最近群馬県のほうで、これは群馬県独自の見解のようでございますが、この汚染の原因は古河鉱業であるということを群馬県は発表いたしております。私どもといたしましては、カドミにつきましては、すでに土壌汚染防止法によりまして有害物質の指定が行なわれておりますので、先般の群馬県の土壌並びに玄米の調査の結果によりまして、これも近く対策地域の指定が行なわれるというふうに考えております。
  183. 内田善利

    内田善利君 農林大臣にお聞きしますけれども、この土壌の汚染の状況ですね、調査並びにその結果をお聞かせ願います。   〔理事若林正武君退席、委員長着席〕
  184. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 土壌の汚染地域の指定がありますところにつきまして、土地改良法の施行令などもこれは改正いたしまして、そして土壌汚染に対する特別の土地改良をすることにいたしてきておりますので、そういう地域につきましては、この施行令を適用して土地改良を、土壌の改良をするつもりでおります。
  185. 内田善利

    内田善利君 農林大臣、けっこうです。  通産省にお聞きしたいんですが、群馬県がこの間発表したわけですけれども、これは群馬県独自の調査なんですか。私の聞くところでは、通産省の指導のもとに、群馬県、栃木県の三者が合同で調査をしたと、このように聞いておるわけですが、この点いかがでしょう。
  186. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 渡良瀬川のカドミウム汚染につきましては、農林省の補助金によりまして群馬県が調査をいたしたわけでございますが、これに栃木県と、それから通産省の下部機関でございます東京鉱山保安監督部が協力をいたして調査をしておるわけでございます。  調査結果につきましては、私どもの知りましたところでは、カドミの量が鉱山から下流に向かいましてだんだんに減少をいたしております。これは銅と同じ傾向でございますが、足尾銅山は御承知のように銅を主要な産物とする金属鉱山でございまして、鉱石中にカドミウムが入っておるわけでございますが、現在のところPPM台というふうにかなり低い量でございますが、やはり金属鉱山でカドミが入っておりますので、私どもはやはり足尾鉱山が渡良瀬川のカドミの汚染に対して関係がないというふうには言えないというふうに考えておるわけでございますが、一方、渡良瀬川の支流と申しますか、特に、鉱山のない足尾山系の川のどろの中にもやはりカドミウムが入っておるわけでございまして、それと、下流にずっとカドミウムの量が低下をするという一般的な傾向があるわけでございますが、川筋をしさいに調査をいたしますと、ある部分では逆に下流のほうがカドミの量が増加しておるというふうな地域もあるわけでございまして、やはり鉱山以外の自然汚染という影響もあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから現在の鉱山から出ます水質でございますが、これはカドミその他の重金属につきましては厳重に監督を強化いたしておりまして、御承知のようにカドミにつきましては〇・一PPMというのが排出基準でございますが、現在私どもの調査では〇・〇〇一から〇・〇〇四くらいの濃度になっておるわけでございまして、環境水質の基準といたしましては、〇・〇一PPMでございますが、現在のところ渡良瀬川の本流におきましては、大体、分析の定量限界以下というふうに承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、渡良瀬川の汚染につきましては、足尾鉱山にも原因がないとはわれわれ考えていないわけでございますが、自然汚染との関係、特に量的な問題につきましては、なお今後の調査に待たなければならない部分が残っておるのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  187. 内田善利

    内田善利君 このように三者が調査して、群馬県が発表して、それに対して、群馬県の発表に対しては反対ではないというようなことですが、やはり三者合同で協議してやったんですから、三者合同の発表をすべきじゃないか、このように思うのですが、群馬県の発表を、これでは是認したことに私はなるのじゃないかと、このように思いますが、いかがですか。
  188. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先ほど申し上げましたように、なお量的の問題を含めまして調整の余地があるわけでございますので、この点についてはなお群馬県と見解の調整を進めていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  189. 内田善利

    内田善利君 栃木県はどうなんですか。
  190. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 三者の調査でございますから、もちろん栃木県を含めまして三者の間で見解を調整するということでございます。
  191. 内田善利

    内田善利君 このデータについては異論ございませんね。
  192. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 三者の共同調査並びに分析でございますので、基礎にいたしますデータについては、別に意見があるわけではないわけでございます。
  193. 内田善利

    内田善利君 どうも環境庁長官、おかしいと思うのですが。通産省、栃木県、群馬県と一緒に合同調査をやっておりながら群馬県が発表した。それは、発表の時期も三者が話し合って検討して発表すべきじゃないかと思うのです。それを群馬県が発表した。それに対してデータは異論はないけれども、その結論についてはまだ少し調整の必要があるということですけれども、やはり国民の側では、群馬県が発表されればそれを信ずる以外にないわけですね。ああやっぱり足尾銅山だったかと、こういうことになるわけですけれども、この点はどうなんでしょうか。
  194. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) これは、私からお答えしても別に返事ができませんけれども、おそらくは古河鉱業に遠慮しての通産省の発言でなくて——群馬県だけでやったとはわれわれ考えません。やはりいろんな話し合いの結果、そうすることが一番妥当であろうということで話し合いしたのではなかろうかと、まあ推察するわけでございます。
  195. 内田善利

    内田善利君 そうしたほうが一番いいだろうということで群馬県が発表したと。そのあたり非常に不明瞭に思うわけです。通産大臣はいかがですか。
  196. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 本来ならば、政府の委託を受けてやっておる調査でありますから、政府が結論を出して発表するのが一番正しいことだと思います。しかし、まあこの問題、非常にむずかしい問題でございます。こういう問題を——阿賀野川の水銀中毒の問題でもそうでございましたが、あれはもう最終審の判断を待たずして、一審でもってもう話がきまったということで、望ましいことでございますが、これは、最後まで争うという時代もあったわけであります。ですから、この問題に対しては、できれば栃木県、群馬県、通産省三者でもって最大公約数的な結論を、現時点においてはこうだと思います、こうであるという結論を出すことが望ましかったのでしょうが、それには時間がかかる。時間がかかるということになると、世論もありますからということで群馬県が発表したのだと思います。私もこの間の状況、さだかには報告を受けておりません。おりませんが、全然意思が違うというようにお取りにならなくてもいいんじゃないかと思います。
  197. 内田善利

    内田善利君 先ほど、調整すべき点があると言われましたが、久良知局長、どういう点ですか。
  198. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先ほどお答え申し上げましたように、足尾鉱山に関係があるわけでございますが、汚染の寄与の度合いと申しますか、足尾の責任の範囲をどの程度と見るかという問題があるわけでございます。現在問題になっておりますのはカドミでございますが、先年、この銅につきましては、水質審議会の渡良瀬部会におきまして、いろいろ足尾鉱山の銅の汚染についての寄与について審議が行なわれたわけでございますが、そのときの結果は、鉱山の汚染分と申しますか、これが全体を一〇〇といたしまして六四、自然汚染の分が三六。で、鉱山の六四の中で古河鉱業の責任に属するものが三二というふうにきめられたケースがあるわけでございますが、銅とカドミについては若干事情が違うわけでございますが、私どもといたしましては、やはりカドミにつきましても銅と同じように、そういう責任につきましての量的な面も含めましてやはり結論を出したほうがいいのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  199. 内田善利

    内田善利君 企業のほうは、まだこれに対しては反対だということですが、四月の十日に、太田農協に古河鉱業の名義で二千百万円の金が振り込まれてきておりますが、この点を御存じですか。
  200. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 会社側から、振り込む前に報告をもらっております。
  201. 内田善利

    内田善利君 これはどういう趣旨の金ですか。
  202. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) カドミの汚染米の取り扱いに関しまして、県と古河鉱業との間で見解の相違がございますが、県のほうの要請が非常に強いので、何らかの解決策をとらなければならないということで、県のほうで計算をされました金額を一時立てかえるということで払い込みたいというふうに聞いております。
  203. 内田善利

    内田善利君 私は、こういう不明瞭な金が出入りすることは非常におかしいと思うのですね。私は、この一言で、古河鉱業がカドミウムを流したということを認めている、このように思うわけです。それに対して通産省に指導を受けたといいますか、ところが、それを許可しておる、こういうことに私は思うのですが、非常によくないと思うのですが、どうですか。
  204. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) この問題は、今度起こった問題ではないのです。これは長い、紛争というか、この問題に対して地元と古河鉱業との間で協定が行なわれておって、そして過去にも、何回も同じ名目で金円が支払われておるということでございます。これは裁判できちっと片がつくということまでいくにはなかなかめんどうな問題があるし、しかし、現状は被害を受けておるし、被害を受けるような事実が存在する。そういうことに対して、何とか話にならぬかということが、両方の長い歴史の中で解決をしてきた一つの問題でありまして、今度もその例にならって地元に対して金円を交付したということなんでしょうが、しかし、これは今度、三者でもっていま原因究明を行なっておる、また調査が行なわれておるというような新しい事態がありましたので、そんな一方的な金は受け取れぬということで受け取りを拒否したと、このように私は新聞報道で——けさの新聞でございますか、きのうでございますか、承知をしたわけでございますが、まあ、こじれてきたなという感じを持ったわけでございます。
  205. 内田善利

    内田善利君 群馬県知事が発表したのは四月二日ですね。そしてそのあと四月十日にこういう授受が行なわれておる。受け取ったほうも、何の金かわからないので県に聞きにきたということですが、私は、この三者合同といいますか、政府が補助金を出して調査した。そのことについて群馬県だけが、まだ調整のつかないうちに発表した。そういう何といいますか、はっきりしない態度が、こういったごたごたの原因ではないかと、このように思うのですけれどもどうなんでしょう。
  206. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) この件につきましては、まだ、会社並びに群馬県のほうから連絡をいただいておりませんので、私も、その後の経緯がどうであるかということについて承知をいたしていないわけでございますが、調査の結果の発表につきましては、私どもの印象といたしましては、群馬県のほうが唐突に発表をされたというふうな印象を受けているわけでございます。
  207. 内田善利

    内田善利君 唐突に発表をさせることが、私は問題だと思うのですね。そういった、もう少し行政指導なりが行なわれておれば、こういう唐突な発表はなかったのじゃないかと、そのように思うわけですね。そうしたことがこういった金銭の授受も行なわれた——まあ長い問題でありますから、いままでの習慣で出されたということですけれども、私はこの辺に問題があると、このように思うわけですね。政府が中心になっておりながら、そういった、唐突に県のほうから発表したというようなことがこういった問題を引き起こしている、そのように思うので、こういうことのないようにしていただきたい。  それから、銅のほうは発表になっておりませんが、これを発表していただきたいと思います。
  208. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) ちょっと恐縮でございますけれども、銅の何でございますか。
  209. 内田善利

    内田善利君 調査結果。
  210. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 銅につきましては、実は非常に古い問題でございまして、過去、対策事業等も随時行なわれてきたという経緯もございます。またさらに、大規模な土地改良事業も計画されておりまして、その際、農林省その他が調査いたしておりまして、激甚地帯、中程度の被害地帯、軽度の被害地帯というような調査も出ております。しかし、私ども考えておりますのは、土壌汚染防止法によりましては、また別途の調査が必要ではなかろうかというふうに考えておりまして、先ほど申しましたとおり、近く中央公害対策審議会から答申が出まして、政令で銅の対策地域の指定基準というものができれば、それとあわせまして詳細は土壌中の銅の含有量というものが調査され、その結果によって指定が行なわれるというふうに私どもは考えております。
  211. 内田善利

    内田善利君 どうも局長のお話を聞くと、不審なんですがね。銅のほうもカドミウムと一緒に調査結果が出たわけですから、私は当然、まだ銅の基準がきまっておろうとなかろうと、こういう結果が出たのですから発表すべきだと思うんですね。内容については非常に綿密な調査が行なわれておるんです。もう、あらゆる河川の状況、あるいはどろの状況の調査が行なわれて、しかも、ものすごいデータなんですね。  念のために申し上げますけれども、時間がないのにこんな発表をするのはたいへん惜しいのですが、七月二十七日、二十八日の調査の川どろは、最高二万六二三二PPMも銅が含まれているのですね。これは砂畑乾泥地です。それから、松木堆積場の下では八三六二PPM、その他水質のほうも二五とか三八・六六とか、四三・一三とか、あるいは一〇・二〇、二二・三一、あるいは四三・七〇と、この銅の調査結果は非常に深刻な問題じゃないかと、このように思うわけです。それが発表されていない。  私は、国民は知る権利があるんですから、こういうものはどんどん発表していただきたいと思うのですね。足尾銅山といったら、銅を主体とする鉱山なんです。その鉱山の銅のほうを発表しないで、カドミウムのほうだけ発表されておりますが、銅もカドミウムも問題であり、また、環境庁としては、銅の基準もつくろうとしている、そういう時期にこういう発表がなされていないということは問題じゃないかと思うんです。いかがです。
  212. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 私は、公害につきましてはやはり秘密があってはいけないと思います。すべてのデータは公表すべきだと思います。ただ、公表ということと、新聞、テレビ、ラジオ等に発表することは私は別だと考えております。と申しますのは、公表するということは、それがわれわれの生活に役立つことであるということが私は基本であると思います。そういう意味では、このような数字が出たということは、そういうことを研究する人とか、そういうことを知る必要がある人は、当然お調べになればわかるようなことは全部いたしておりますけれども、それをただいたずらに発表するということよりは、このような基準であるからこうなんだというような、親切もあわせた考え方の行政が、私はむしろ大事じゃないかと思うんです。ですから、われわれ決してそういうものは、見たいという方には隠したりいたしません。ですが、当然これは、そのような公表ということはどういうことかわかりませんけれども、いつでも調べようと思えば調べられるような状態、そういうものが私は公表の前提じゃないかと思うんです。  そういうことで、いまも、詳しい大体の土壌の調査が出ているようでございますが、それがまだ新聞、テレビ等に公表されなかったということのようでございますけれども、それは、私はそのような基本的な考えのもとにあることと、もう一つは、そのようなことと同時に、近く、おそらくきょうの審議会の部会で銅の基準がきまります。そういうことで、そういう銅の基準がきまりました場合に、こういう基準だ、したがってこうであるという解説を添えて、一般の人に知らせることがより親切ではなかろうかと、事務当局は考えておったと私は解釈する次第でございますが、われわれは、公表というものは、見たい人、知りたい人、調査したい人には必ずそれはいつでも提示いたしますという形のものであることが、公表の基本であると考えておる次第でございます。
  213. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。  いまの答弁は、非常に私はおかしいと思うのです。見たい人、知りたい人には言うけれども、いわゆる流域に住んでいる方々、硫酸銅ですか、銅があるところの土壌、そういうところで作物をつくっている者、そういう人にとってはこれは重大な問題です。これは長官も御承知のように、桐生の水道の取り入れ口、そういうところの銅のPPMもかなり高いことは御承知のとおりですよ。ほんとうにはっきりしたことが出てくれば、足利方面まで影響されているというのです。そういうことがはっきりしているだけに、銅の基準がどうであろうと、発表するのがあたりまえでしょう。国民に知らせることが先ですよ。それで、一体基準がきまっていようとなかろうと知らせて、こういう状態でございますと、こういうことでなければならないんじゃないか。それから、要求があっても被害者には見せてないという一つのできごともあるわけです。長官の言っていることは全然違う。政府は知らせる義務があると、この前から答弁されているんですよ。それもやらないじゃないですか。そんなことはマル秘の問題じゃないんですから、私は、そういう態度というのは非常におかしいと思う。すみやかに全部を発表してもらいたいと思いますよ。
  214. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ただいまの鈴木さんの御質問、私もおっしゃるとおりだと思います。われわれは、基本的にはいま申しましたように、何でもかんでも発表すると申しましても、どこに発表して——いつでも知りたい人には知らせるという原則を話したのでございます。今度の銅の問題につきましては、どのようないきさつになっておりますか、いま詳しくその所管の局長より御答弁させますので、それをお聞き取り願いたいと存じます。
  215. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私、先ほどお答えいたしましたのは、渡良瀬川流域の土壌、特に農用地の土壌汚染の状態につきましてお答えいたしたわけでございますが、御質問は、おそらくはこれは想像でございますけれども、カドミの汚染、その原因調査を三者がやったわけでございますが、聞くところによりますと、その際、カドミウムのほかに銅とか砒素、鉛、亜鉛、それからPHの状態その他も、ついでにといいますか、あわせて調査をいたしたようでございます。今回の調査がカドミウムの汚染原因の調査ということでありましたので、おそらく群馬県におきましてはカネミの状況だけを公表したのかもしれませんけれども、そういうような資料につきましては、当然これはやはり公表をすべきであろうというふうに私どもは考えておりますが、現在、私どものところにまでは資料はまいっておりません。
  216. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) これは、調査が群馬県、栃木県、それから通産局と三者でやられた調査でございますし、委託が農林省からの委託費でやった調査でございます。私どもはなるべく早くこれを公表するように、関係のところに申し入れたいというように考えております。
  217. 内田善利

    内田善利君 私は、カドミウムと一緒に銅その他の金属をやっている以上は、やはり銅についても、特に足尾銅山の場合は銅が主体なんですから、その主体の銅はこうだったというふうに公表すべきだと思うのですね。これを必要な人だけに知らせて、必要でない人は知る必要がないというのではなくて、特に足尾銅山の場合は、銅こそ——私はイギリスが発表されても、銅はどうなんだろうと、これが国民の知りたいところだと思うのですね。当然発表すべきだと、このように思います。だから、早急にひとつこの銅並びにカドミウムの合同調査の結果は発表していただきたい、このように思います。  次に、私は産業廃棄物の今後の取り扱いについてお聞きしていきたいと、このように思います。  一昨年の十二月、産業廃棄物処理法が制定されたわけです。そして昨年の六月から施行されておるわけですが、はたしてその産業廃棄物に対する対策がとられておるかどうか。非常に不十分であり、非常に憂慮すべき状態にあります。私もあちこち見てまいりましてつぶさに見てまいったわけでございますが、これは早急に、ごみ戦争ということもいわれておりますが、産業廃棄物については特に配慮していかないとたいへんなことになると、このように思いますので、その点についてお聞きしていきたいと思いますが、まず、昨年の十二月十八日ですね、大牟田川で福岡県が採水した中に砒素が非常にたくさん入っておったと、この問題についてまずお聞きしていきたいと思いますが、この点は御承知でしょうか。その後どうなっておるか、お聞きしたいと思います。
  218. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) お答え申し上げます。  三井東圧の大牟田工業所につきまして、大牟田市が四十六年十二月に大牟田川の水及びどろを採取いたしまして分析いたしました結果、水については最高一三八九PPM、どろにつきましては最高四〇・八五PPMの砒素が検出されたわけでございます。で、県は引き続きましてこの立ち入り検査を実施いたしたわけでございますが、当該大牟田工場では染料を生産いたしておりまして、これは染料のほんのある非常に限られた一部でございますが、スレン系の染料の一種をつくっておりますが、その中間原料の製造工程の段階で工程上のミスがございまして、大量の砒素がそこから流出したということが判明いたしたわけでございます。同工業所におきましては、将来この砒素を使わないでスレン系の染料を製造するような方法に切りかえることといたしまして、それまでの間は、県の御指示もございまして、現在工程を、製造を停止いたしておるわけでございます。県側と連絡をとりつつ、完全なかっこうで再開ができるように、現在工場側としては努力いたしておると聞いておる次第でございます。
  219. 内田善利

    内田善利君 まあ詳しくはお聞きしませんけれども、いま工程のミスと言われましたが、最後の、スレン染料をつくって最後に出てくる廃液、これをまず最初工場内に貯留するわけですが、その貯留タンクは水質汚濁防止法による特定施設であるかどうか。特定施設であるならば県に届け出るはずなんですが、この辺はどうなっておりますか。
  220. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いま政府委員からお答えさせますので、ちょっとお待ちを願いたいと思います。
  221. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) ちょっといま法律的にさらに検討しなければならないと思いますが、おそらくは特定施設であろうと思いますし、特定施設であるならば届け出がなされているものというふうに考えております。
  222. 内田善利

    内田善利君 私も特定施設に入ると思うのです、最後の廃液をためておるタンクですから。ところが、私あれを見て、これを県はどういうことで許可したんだろうと、このように思うわけですが、届け出だけで、許可はしないのかどうか、この点はどうなんですか。
  223. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは法律上、届け出を受けまして、その内容を点検した結果特に問題がなければそのままとなりますし、もし問題があれば、改善命令その他が出るというような段階になります。
  224. 内田善利

    内田善利君 これは欠陥特定施設だと、私はそのように判断します。申し上げますと、上から廃液がおりてくるタンクがあります。そのタンクから、一番上のほうからパイプが出ておる。コックは何にもありません。そうしてどこへ行っているかというと排水口に行っております。だから、どこまで上がってきたかという窓もなければ、フロートスイッチもない、コックもない。満杯したらちゃんと第一排水口へ流れるようになっている。これでは、形だけ特定施設があって、一ぱいになったらめくらパイプで第一排水口に入っていく。そういうことで欠陥特定施設だと、このように判断したのですが、これはもう許可した県もよくないし、こういった欠陥特定施設のために住民は迷惑をこうむっていると、このように思うのです。通産省のほうで、こういう技術的な問題があると思うのですけれども、どのようにお考えですか、こういう特定施設について。
  225. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 前回も申し上げましたが、私もいま通産省の内部で議論をしておるのでございます。まあこういう化学工場というもの、ほんとうにむずかしいものでございますから、戦前に工場法というのがございました。これは、しかし、いまの労働省所管の事項等が中心でございまして、現にはないわけでありますが、これは環境庁だけがいろいろなことを言っているけれども、いろいろなことをやるようになっておりますし、法制整備も行なっておりますが、新しい時代の要請として、新たに工場法というようなものが必要ではないかという私は提案を事務当局にしておるのです。これは私自身がやっておるのです。事務当局としては、これはまあたいへんな仕事であるということでございますが、しかしやはり、工場法というようなもの、新しい意味における工場法というようなものが、準拠法がないとやはりいまのような問題が起こるわけでございます。ですから、いままだ勉強中でございまして、通産省の中でも、私が工場法の必要性について勉強しなさいと、こう言ったのは、去年の七月に参ってからすぐそういうことを言ったわけですが、まあ非常に複雑多岐になっておるし、まあそういう問題に対してすぐ結論が出る問題ではございませんが、やはり化学工場等に対しては、いま電気事業法もあるし、またいろいろな規制法もあるわけでありますから、やはり新しい制度が必要なのではないかという私の考えはいまでも変わっておりません。
  226. 内田善利

    内田善利君 今度はそれにバキュームカーの取りつけ口があったので、どこへこれは持って行くのかと言ったら、バキュームカーでそれを取って、もとの同工業所の敷地の速金という火薬工場のあとに持って行って捨てているのです。そこは小高い山の中なんですね。門衛がおってきびしくチェックされておるのですが、そこに行ってみましたら、もう非常にきたない液をバキュームカーが捨てておる。そういう実情で、廃液の処分場といいますか、処理場といいますか、あるいは、どういうわけでそこに持って行くのか知りませんが、廃液を化学処理もしない、燃焼もしないでそういうところへ持って行って捨てておると、こういう状況なんですね。写真もとってきました。カラー写真でとってきましたが、それこそきたない廃液が投げ込まれておると、こういうことなんですけれども、こういう廃液の処分場は厚生省の清掃法の廃液取り締まりの範疇にあるのかどうか。県知事に届け出る、そういう義務があるのかどうか。県知事ははたしてこれを許可しているのかどうか、非常に不審に思ったわけですが、この点はどうなんでしょう。
  227. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第十二条の政令第六条に定めております特定施設から出ます砒素その他の有害物質を含んだ汚泥、これの処理は、昨年の九月二十五日から、もしも処分する場合には、脱水その他の手当てをいたしまして隔離処分をするというふうになっております。その当該処分地が届け出をしておるかどうかという事実については、さっそく調査の上お答えしたいと思います。
  228. 内田善利

    内田善利君 これは届け出しておりません。そういう状況ですから、非常に清掃法の不備を感ずるわけです。不備というか、行政指導ですね。というのは、産業廃棄物に対する計画書をつくるようになっておりますね。その計画すらまだできてない、施行になってからそういう廃棄物処理計画ができてない、そういう実情です。そういった——これは福岡県だけじゃなくて、各県そうです。こういった行政指導を早急にやっていただきたいと思いますが、これはどういう関係なんでしょうか。
  229. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 産業廃棄物の処理計画につきましては、都道府県知事がこの計画を作成するという義務があるわけでございます。法の施行に伴いまして、現在のところ、そのために必要な実態調査が終わった都道府県の数は、北海道、山形以下十五都道府県でございます。現在調査中の府県は、宮城、新潟等、以下十一県でございます。ただいまそれに基づきましてすでに具体的な計画を策定しておりますところは、東京、大阪、愛知、神奈川、埼玉、千葉、長野、山形、兵庫の九府県でございまして、福岡県は現在産業廃棄物の実態調査を施行している段階でございます。
  230. 内田善利

    内田善利君 三井東圧の大牟田工業所だけを申しましたが、北九州の三菱化成の黒崎工場も全く同じです。八幡区の穴生という山の中に、元火薬工場、そこの山の中に、これも門衛が非常にきびしい。住民はそこにそういったスラッジが、廃棄物が捨てられているということは知りません。何人かの方に、ここには三菱化成の黒崎工場の廃棄物が捨てられておるが知っておりますかと聞いても、知らない。ときには防毒マスクをつけた人が入っていくこともあると、このように言う人もあります。そういう実情でありますので、私はもう詳しくは申しませんが、その他の工場ですね、大体そういう傾向にありますので、この産業廃棄物の処理については厳重なひとつ行政指導を早急にやっていただきたいと、このように思います。  それから、その次にお聞きしたいことは、せんだって広島県の日東化学の大竹工場から産業廃棄物を四国の高知県の足摺岬の沖で投棄した廃液処理船が、船長以下三人が死亡した事件がありますが、この事件について、その後どのようになっておるか、お聞したいと思います。
  231. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私のほうでわかっている点をまず申し上げます。三名死亡をいたしましたその死因について高知県警で調べましたところが、一人はシアンの中毒、もう一人は溺死、いま一人は転落溺死ということになっておりまして、そのうちの一人のシアンの中毒ということは、この廃棄物から起こった中毒であると、かように考えております。この実態については、ただいま高知県警でさらに調査中でございます。
  232. 内田善利

    内田善利君 これはアクリロニトリルという物質の廃棄物なんですが、アクリロニトリルというのは劇物か毒物か。何に使われるか。
  233. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) これは劇物でございます。何に使うか、ちょっと存じませんので。
  234. 内田善利

    内田善利君 そのアクリロニトリルは劇物ということですが、何に使われるかお聞きしたいと思います。
  235. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) アクリロニトリルの用途でございますが、アクリル系の合成繊維、合成ゴム、それから合成樹脂の原料でございます。
  236. 内田善利

    内田善利君 その廃棄物はアクリロニトリルを含んでいたかどうか。
  237. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私のほうでわかったところでは、あのときのまあ廃棄物の中にはアクリロニトリルはやっぱり含まれております。しかしながら、これは海洋投棄してもいいという基準であったであろうということでございます。ただ、そのときに無機シアンが多量に混入されておった。それがあの事故を起こした原因であろうと、かように考えます。その無機シアンも、海洋投棄をするのには許されていない分量が含まれておったわけでありまして、これは産業廃棄物、また毒物劇物の違反でございます。
  238. 内田善利

    内田善利君 海洋汚染防止法でまあ捨てていいとは思いますけれども、その捨てていい範囲ですね。無機シアンの場合、どれだけ入っておったら捨ててよろしい、これは基準はわかりますか。
  239. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 現在まだ海洋汚染防止法の政令は出ておりませんので、現在廃棄物関係で規制されておりますのは廃棄物法の政令によってでございます。廃棄物の政令では、有害物質を含むものにつきましては特別の規制をしておりますが、その有害物質の中にシアンはまだ指定してございません。したがって、現行法規の上からいきましてシアンにつきましての投棄規制は毒物及び劇物取締法によってなされるということでございます。で、毒物劇物取締法の中におきましては、無機シアンを含む廃液の場合、これが無機シアンが一PPM以上含まれているという場合には、毒劇法の特別の規制によって、これを希釈その他の方法を講じた上でなければ捨ててはならないということになっておるわけでございます。
  240. 内田善利

    内田善利君 劇物毒物法で取り締まるということですが、それが無機シアン一PPMということですが、この廃液はどの程度入っていたのですか。
  241. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まだ捜査当局、海上保安庁によります分析は出ておらないようでございますが、高知の衛生研究所でございますか、これの分析結果によりますと、無機シアンが三〇〇PPMをこえる程度入っているというような報告を受けております。
  242. 内田善利

    内田善利君 海上保安庁はどうですか。
  243. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 成分につきましては、先ほど環境庁から御答弁ありましたとおり、私どものほうでまだ分析鑑定結果が出ておりませんので、数値をもって御説明申し上げにくい段階でございます。
  244. 内田善利

    内田善利君 私が工場から聞いたのでは、高知県の衛研が発表したわけですが、第五海上保安部がこれは発表しております。それによると、三ハッチの左と右の廃液をとってやっている。御存じですか。
  245. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、私のほうで、まだいま発表しておるものはございません。
  246. 内田善利

    内田善利君 第五海上保安本部がやっているんでしょう。
  247. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) これは保安本部が直接担当いたしまして、保安本部からただいま分析、鑑定に出しておりますので、一部何らかのプライベートな話は出ておるかもしれませんが、公式の鑑定結果というのはいまだ出ておりません。
  248. 内田善利

    内田善利君 また、そういうことを言うんですがね、プライベートじゃないですよ、これ。そして海上保安部がタッチして発表している、それを海上保安庁が本省のほうでそういう答弁をなさるのは、私はまことに納得できないんですよ。
  249. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 無機シアンが中に含まれておるということについては、ある程度判明いたしておりますが、ただいまおっしゃるようなことにつきましては、今月中には鑑定結果が出るという報告になっておりまして、いまだ公式には出ておりません。
  250. 内田善利

    内田善利君 じゃ、この第五海上保安本部が発表したのは、本省は御承知ないんですね。
  251. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 本件について発表しておるということを聞いておりません。
  252. 内田善利

    内田善利君 これはトータルシアンが第三ハッチの左で三一九・一PPM、右のハッチが三〇五・二PPM、無機シアンが三一九・三、多いからちょっとふしぎに思うんですが、それから右のほうが二五五・九PPMと、一PPMをはるかに飛び越しておるわけですね。それから広島の公害研究所でやったのがトータルシアンが四二・〇PPM、無機シアンは発表しておりません。それから工場自体で分析したのが、一番ハッチがトータルシアンが五二二PPM、無機シアンが八一PPM、三番ハッチでトータルが六三二、無機シアンが一八六PPMと、このように発表しておるわけです。いまの一PPM以下ならば毒物劇物取締法で許されるわけですが、こういう非常に多い、百倍も二百倍もあったような無機シアンが出ているわけですが、またアクリロニトリルも若干入っていたと、こういうことですが、こういうことになりますと毒物劇物法取締の対象になるわけですが、これはいかがですか。
  253. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) いまのお話のように、無機シアン化合物が一PPM以上ございますと毒劇法の対策になりますので、当然廃棄については取り締まりの対象になります。
  254. 内田善利

    内田善利君 これをどのようにお考えですか。
  255. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 廃棄の場合には、政令で基準がございまして、保健衛生上問題がないようにという基準がございます。したがいまして、そういう観点からこの問題の調査を現在進めておるところでございます。
  256. 内田善利

    内田善利君 この問題について、こういう一〇〇PPM、二〇〇PPMあるようなシアンが、過去十五年ですか、過去四年間ですか、どんどんどんどん海上に捨てられておったということですが、こういうことは毒物劇物法の取り締まりの対象になるのに、どうして三人の犠牲者が出るまでわからなかったのか、この点お聞きしたいと思います。
  257. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 現在までの調査によりますと、船に廃棄物を入れまして、室戸岬の沖の黒潮の先のほうで少しずつ投下していたということでございまして、現在のところ問題はなかったのではなかろうかということでございますが、なお、詳細につきましては海上保安庁のほうで捜査中でございます。
  258. 内田善利

    内田善利君 問題でなかったものが、このように問題になったのはどういうことなんでしょう。海上保安庁いかがですか。
  259. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 今回の事故は、この廃棄に伴いまして、中毒を含めまして三名の死亡者が出ておるということになりまして、私どものほうで、業務上の過失ではなかろうかということで捜査をやっておるという問題でございます。全般に、いままでの監視という面におきましては、従来の観点からは必ずしも法違反ではなかろうと思います。なお、ちょっと付け加えますが、先ほど先生のおっしゃいました数値は、私どもの関係の出先ではございませんで、おそらく高知県の衛生研究所で御発表になったものではないかというふうに考えます。
  260. 内田善利

    内田善利君 ぼくの質問に的確に答えてないのですが、どういうわけで毒物劇物取締法に反するような、こういう事故が起こったのか、取り締まりをしておる海上保安庁に、その理由ですね——この当日、どうしてこのようなことが起こったのか、あるいは、いままでずっとこういう三〇〇PPMも出しておったのかどうか。もしそうとすれば、これは厚生省の怠慢でありますし、このときだけの問題ならば、海上保安庁のほうでどの程度お調べになっておるのかですね。
  261. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 今回の事故につきまして私どもが捜査をいたしました過程で、きわめて特異である、また、いま御質問の点であろうかと思う点がございます。それはこの製造工程におきまして熱交換器が故障をいたしました。これを修理する必要から三日間全製造工程の操業を中止いたしました。その際、無機シアンを多量に含有いたします急冷塔内の残液、四十ないし五十トンありますが、これを廃液貯蔵タンクに排出をいたしました。当然この中に無機シアンが含まれておったと思いますが、この無機シアンの含まれましたものに何がしかのホルマリンを投入をいたしまして、その投入をいたしましたものそのものを、廃液の分析を十分行ないませんままに豊隆丸という船に積み込んで投棄をしようとした、こういう過程がございます。
  262. 内田善利

    内田善利君 このような事故が起こった理由は、非常に微妙な点があろうかと思いますけれども、私はやはり毒物劇物取締法でも対象になるような、そういう廃棄物を廃棄しているわけですから、またこのアクリロニトリル製造工場というのは、アクリロニトリルは劇物だし十分慎重にやらなければならない、このように思うのですね。PCBの問題は、先ほど検討しましたが、やはりこの毒物劇物を製造するような場合には十分注意していただきたい。先ほど通産大臣から、化学工場については特に工場の取り締まり法等をつくりたいということですが、ぜひそういうふうにしていただきたい、化学物質は何がつくられているかわからない、国民は非常に不安なわけです。いまも、そういった危険物を製造する場合に、工場が閉鎖した場合には特に注意が怠れない、こういう廃棄物が出てくるので。このように思うわけですが、こういった点についてもう一度通産大臣にお聞きしたいと思います。
  263. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 通産省は産業の所管省でございますから、こういう問題に対しては万全の体制をつくるべく努力を傾けなければならぬことは当然でございます。環境庁また厚生省、府県等、また在野の意見も十分聴取いたしまして、できるだけかかる制度、法制等が完備され、国民の健康が守れるような状態に向かって努力を傾けてまいりたいと思います。
  264. 内田善利

    内田善利君 このアクリロニトリルを製造する製造方法の中で、放射性物質を含んだ、放射能を含んだウラニウム二三八ですね、これをアメリカから購入して、七工場ですかでこの劣化ウランを使っておるわけですが、この劣化ウランをどうするか。この廃棄物、廃ウランをどうするかということはやはり大事な問題だと思うんですが、この点を科学技術庁に、どのように処置してこられたか、また今後どのような対策を講ぜられていくのかお聞きしたいと思います。
  265. 木内四郎

    国務大臣(木内四郎君) いまお話のアクリル系の合成繊維の原料をつくる、ちょっと舌の回らないようなアクリロニトリルですが、それをつくる際の過程において使う触媒は、いまお話のように劣化ウランを含んで、非常に低い濃度のものではありまするけれども、放射物質を含んでおりまするので、その取り扱いにつきましては、規制法の示すところによりまして、当分の間、工場内に安全に管理するようにということを各社に指示しまして、各社ともそれを守って、それを保管しています。しからば、当分の間とはどういうことかというと、ただいまこれを含みまして、放射性廃棄物全体につきまして、これをどう処理、処分すべきかということを環境安全専門部会、これは原子力委員会の中にありますが、そこで検討してくれておりますので、その結果をまってその処分方法をきめたい。それまでの間、当分の間はその工場内に安全に保管しておくようにという指示をしまして、それは守られておるようです。
  266. 内田善利

    内田善利君 この廃棄物の劣化ウランは、ドラムかんに入れて構内にずっと積み立ててあるわけですが、もう各工場ともだんだんだんだん一日に一本とか二本とかふえてきておりますので置き場に非常に困っている。そういう実情で、また非常にドラムかんが腐食しやすい。私の見た中でも、ドラムかんが腐食して積みかえておる、このような状況です。放射能を含んでおりますが、低レベルの放射能でありますけれども、これがどのように被曝し、人体に汚染をするか未知のものでありますから、この問題については、ひとつできるだけ早く安全な方法で処理できるようにしていただきたいと思います。その他、廃棄物についてはいろいろお聞きしたいと思いましたが、時間の関係でこれで割愛しますが、先ほども申しましたように、廃棄物処理法は、特に産業廃棄物についてはひとつ早急に対策を講じて、ごみ戦争と同様に汚染がひどくならないように注意していただきたいと厚生大臣にお願いいたします。  それから、文部省にお聞きしたいんですけれども、高松塚古墳の中に美しい壁画に囲まれた墳墓が見つかったわけですけれども、その後の文化庁の対策、また、今度とられた対策をお聞きしたいと思います。
  267. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 高松塚古墳は、奈良県高市郡明日香村平田の高松に位置する直径十八メーター、高さ五メーターの円墳でございます。この古墳から発見されました石室壁画は、わが国の絵画史上きわめて重要な新史料となるものでありまして、わが国の歴史上にも大きな意義を持っております。また古代史における飛鳥地域の重要性を再認識させるもので、これらを考え合わせて、きわめて重要な遺跡であると考えられます。このために文部省といたしましては、とりあえず史跡の指定を行なうことといたしまして、去る四月七日に文化財保護審議会に諮問を行ないまして、同日、答申を得ましたので、現在、現地の測量等の事務手続を進めておるのでありまするが、近日中に官報で告示をする運びになると思います。  なお、石室壁画の保存につきましては、単に考古学のみならず美術、それから保存科学等の専門家からなるところの高松塚古墳恒久保存対策——たいへん長い名前でありますが——調査会というものをつくりまして、去る四月六日現地調査を行ないました。この結果に基づきまして、四月十七日に壁画の剥落を防止する緊急措置を行ないまするとともに、入り口の覆土をきょうから行なうことにいたしたのであります。恒久的な保存対策につきましては、気温、湿度等の関係がございますので、今週まで覆土したままにしておきまして、その間、総合学術調査を実施いたしまして、これを完全に保存いたしたい、かような考え方のもとに処置いたしておるわけであります。
  268. 内田善利

    内田善利君 この壁画は、日本の古代の姿、それと朝鳥半島あるいは中国、そういったところと非常に関連が深いということですが、この調査研究について、そういった国々の専門家の方々の参加を求めて、その協力を得て、広い視野から国際協力を求めてその当時の研究をしていく、こういうことはどうでしょう。
  269. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) このことはきわめて大切なことであると思います。ことに、この絵画につきまして、専門家の方々の意見がいろいろに分かれております。たとえば、中国文化そのものであるという見方もありまするし、高麗文化であるという見方もございます。できることならば、北鮮、中華人民共和国等の御協力も得たいと考えております。ただ、この壁画を保存いたしまするために必要な処置を、何かイタリーにそういう専門家がおるそうでありますが、今週お招きをいたしまして、処置をいたしたい、かように考えておりますが、趣旨といたしましては、いま先生のおっしゃるとおり、各国の御協力を得ないというと、ほんとうの文化的遺産としての価値を正統づけることができないということになるだろうと思います。できるだけそういう形のものにいたしたいと存じております。
  270. 内田善利

    内田善利君 開発と保護という問題については、何回も文部大臣にお聞きしているわけですが、この問題は価値観の対立で、非常に調和というところがむずかしいわけですが、最近の山陽新幹線で破壊された文化財、あるいはまた鹿児島空港が四月一日からオープンしましたが、あすこは百五十三カ所も埋蔵文化財があったわけですけれども、これはたった二カ所しか発掘していない、そういう実情、これはほんとうですか。
  271. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 公私の——公または私的な工事等によって文財化に影響を及ぼす場合につきましては、まず第一段といたしましては、そういうところはなるべく避けるということが第一原則でございます。  第二原則といたしましては、その遺跡の価値、それと一方におきまして、その工事等の及ぼす公共性ということを勘案いたしまして、特に大事なものにつきましては、当該部分については工事を行なわない、これが第二原則でございます。  第三原則といたしまして、他に類例等があって、比較的価値がそれほどでもないというものにつきましては、これを調査した上で記録をとり、その上で工事をすると、こういうのが第三原則でございまして、従来からこの原則で鉄道の建設、道路の建設、住宅の建設等につきましても、この原則にのっとって処置をしてまいっておる次第でございます。
  272. 内田善利

    内田善利君 鹿児島空港は価値がなかったんですか。
  273. 安達健二

    政府委員(安達健二君) まず第一番目には、そういう工事をする前に、事前に遺跡の分布調査を行ないまして、大体どの辺にあるかということをまず確めるということが一つございます。このことにつきましては、全部をやっておるわけでございまするし、またそれに基づきまして、調査の必要があるものにつきましては調査をし、特に重要なものは保存し、そうでないものにつきましては記録をとって保存する、こういうことでございますので、いまお話のございましたところにつきましても、そういう原則をもって処置いたしておるはずでございます。
  274. 内田善利

    内田善利君 百三十五カ所のうちたった二カ所しか埋蔵文化財を発掘していないということは、これは開発のために文化財がみんなこわれていっている、こう思うんですね。そういったことから考えられますことは、いま技術者は、たとえば福岡県の場合は県庁の文化課につとめている人が二十人おります。五人が純県費でまかなっている人、あと十五人は道路公団とか新幹線とか国鉄とか、そういったところが人件費までまかなって、そして開発のための調査をしている、こういう実情ですが、これは全国そうだということですけれども、こういうことでは文化財の保護はできないと思うんです。開発のための緊急調査であって、言うことがそのままになってしまう、こういう実情についてどのようにお考えですか。
  275. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 発掘調査の費用につきまして、先ほど申し上げました事前の分布調査につきましては、すべて国なりないし都道府県の教育委員会の経費をもって行なっておるわけでございます。それから現状変更等を伴うところの発掘調査につきましては、二つございます。  一つは、公団とかいうように財政的な余裕のあるところにおきましては、これはその開発側において負担する。それから個人とかその他公共団体等につきましては、もとよりこれは都道府県が行ない、国が補助をするという形で費用の負担をしておるわけでございます。  ただ、いま仰せになりました開発側が発掘調査の費用を負担することの問題でございますが、これにつきましては、道路公団とか鉄道建設公団とか住宅公団とかとの間に覚え書きを結んでおりまして、先ほど申し上げました三つの原則を相互に承認いたしまして、現状変更を伴うところの発掘費用は公団等で負担する、こういうことでやっておるわけでございます。ただ、この場合におきましても、発掘調査を行ないますのは、公団のもとより職員ではなくて、公団から費用は出ますけれども、調査の専門家がこれに当たっていることは言うまでもないのでございます。  これの負担の方法につきましても、これは御見解もあろうと思いますけれども、現在ユネスコで採用いたしました公的または私的な土木工事等に伴う遺跡等の発掘に関する勧告がございます。これによりますと、発掘の調査費用につきましては、国または地方公共団体等の公の費用で行なうか、あるいは開発側の費用負担で行なうか、これはいずれをとってもよろしい、こういうような原則が立てられておるわけでございます。それは各国国内の事情に応じて行なうべきものである、こういうことになっておるわけでございまして、わが国におきましては両者を併用して行なっておるわけでございます。  それからもう一つ、念のため申し上げますけれども、発掘調査につきまして、この発掘調査をする担当職員が、費用は開発側から負担するからといって遠慮するとか、そういうことはなく、学問的な見地に立って確実なる発掘調査を行なっているものと確信いたす次第でございます。
  276. 内田善利

    内田善利君 そういうことはもうあり得ないことです。これは明確にイタリアなどではやっていることだし、大蔵大臣にお願いしたいことは、この文化財の保護について、こういった開発のために、鹿児島空港の場合は、先ほど申しましたように、百三十五カ所のうち二カ所しか掘れなかった。これはやはり財的措置がない、裏づけがない、そういうことで動けないわけですから、ひとつ文化財についてはもう少し配慮を願いたい。いかがでしょうか。
  277. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 文化財については、私は長い間予算編成に関係しておりましたが、あんまりいばれることはございませんが、文化財についてはいばっていいのじゃないかと思っております。と申しますのは、戦後ほとんど日本の文化財がもう荒れてしまうというとき、進駐軍の管理下にあったときに、私は文化財を失った民族というものは植民地人であるということで、当時二十年が四十万ぐらいの予算でした。二十一年が百万、あるいは二十二年が六百万という程度。百万台の予算でほとんど見るべきものがなかったというときに、まず日光の東照宮と姫路城、この保存から始むべきであると主張して、初めて文化財保護の予算を億の単位の予算をもって今日までずっとやってきて、この重要文化財の買い上げから史跡の買い上げ・保存ということをやってきまして、本年度も、いま言ったような開発のいろいろな事情を考慮いたしまして、昨年度は四十三億でございましたが、私は十七億増して四〇%という増しかたで、本年度は六十億の文化財予算を計上したわけでございますが、これはどうしても必要なことだと私は考えますので、この予算がいろいろなことで実際において足らないということでしたら、これについては不自由させないようないろいろなめんどうを私は見るつもりでございます。
  278. 内田善利

    内田善利君 最後に一言お伺いしますが、文部大臣にお願いしたいのですけれども、開発が進んで文化財が発見された場合に、民有地であったような場合は文化財がつぶされてもどうしようもない、罰則規定もない。イタリア等では、そういう文化財が発掘されたときには工事を中止して処置をとるというようなことをなされておるわけですが、そういった意味で、文化財保護法も改正するときがきていると、このように思いますが、いかがでしょう。
  279. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 文化財保護法の第五十七条の二を改正すべきであるという意見は前々からございますことは、内田先生御承知のとおりでございます。文化庁長官に何らの権限がないということでは、これでは文化財の完全保護はできない。ただ、御承知のように、民有地でございます場合には、私権の制限というものを無制限にやれるものであるかどうかという問題があるのであります。それらの問題と考えあわせまして、法律の改正は改正として、一つの方向として考えております。と同時に、民有地については、できるだけ国なり市町村で買い上げるという方向に進みたい、こういう基本方針で臨んでおるわけであります。
  280. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で内田君の質疑は終了しました。(拍手)     —————————————
  281. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、佐々木静子君の質疑を行ないます。佐々木君。
  282. 佐々木静子

    佐々木静子君 まず最初に、私は、いわゆる沖繩密約漏洩事件に関しましてお伺いしたいと思います。  四月十五日に西山さんと蓮見さんが起訴されました。この起訴状、これは新聞にも載せられましたので一応は読んでおりますが、法務大臣のほうからこの起訴事実について述べていただきたいと思います。
  283. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) すでに起訴状についてはもうおわかりのことと思いますが、犯罪の動機、そうして秘密漏洩の事実、さらにまた、それを漏洩しまするについてそそのかした事実、その後、結局漏洩したと。問題点は御承知のように、秘密がいわゆる実質秘に相当するか、形式秘だけのものであったかどうか。これは準抗告に対する決定でわれわれは知ることができるわけでありますが、裁判所は両方兼ねていると判定しておると思われます。また、そそのかしに該当するかどうかということについては、これまた準抗告の決定によりまして、非常にいわゆる相当性を逸脱した行為であるということを言っておるわけでありまして、それを具体的にあの起訴状に書いておると、そういうふうに私は理解をいたしております。
  284. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま御説明を伺いましたが、この国家公務員法違反、たとえば百条一項に蓮見さんの場合は違反している。しかし、いまおっしゃったような起訴事実のほかに、いろいろと枝葉の、要らないことがいろいろとこの起訴状には書かれているのではないかと、そういうふうに私ども痛感するというわけですが、法務大臣はそのようにお思いになりませんか。
  285. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 必要にして最小限度にとどめておるというふうに私は考えております。
  286. 佐々木静子

    佐々木静子君 この起訴状に、私もこれは使いたくないことばですけれども、たとえば「情を通じ」とか何とかというようなことばが書かれておったということについて非常に多くの国民は怒りを覚えているわけです。その怒りというのは、これは当事者に対してどうこうというのじゃなくて、こういうことを国家権力がですね、直接、犯罪にも何も当たらないことを起訴状にでかでかと書いたということに対して、国民はいまさらながら国家権力のやり方に対して大きな憤りと怒りを覚えているわけです。そういうことを御存じありませんか。
  287. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そそのかしというのは、非常に、普通の状態のことではないということを明らかに——いま、御承知のように、刑事訴訟法によって具体的にその事実を明らかにしなければなりませんから、具体的に、非常に逸脱した行為であるということを言うためには必要であったのではなかろうかと、私は推察いたしております。
  288. 佐々木静子

    佐々木静子君 この国家公務員法百条第一項に違反した場合の罰条ですね、これはどういう罰条になっているか、お答えいただきたいのですが……。
  289. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 国家公務員法第百条の秘密を漏らした場合の罰条でございますが、これは同法百九条の十二号でございます。
  290. 佐々木静子

    佐々木静子君 具体的に言いますと、そうしますと、これは一年以下の懲役かあるいは三万円以下の罰金というわけでございますね、刑罰は。
  291. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」でございます。
  292. 佐々木静子

    佐々木静子君 この一年以下の懲役あるいは三万円以下の罰金というのは、これはきわめて軽微な事件に属すると私は思うのです。これはいろいろありますが、たとえば道路交通法違反の刑罰を見てみましても、別に事故を起こさなくても、酒に酔っぱらって運転をしたということだけでやはり懲役二年以下あるいは五万円以下の罰金です。それよりもずっと軽い。三万円以下の罰金というのは、大体一方通行のところを間違えて反対側へ出てきたとか、一時停止を忘れて進んだとか——それもほめた話ではありませんが、いわば形式犯のきわめて軽い犯罪です。もちろん国家公務員法というものも単なる服務規定でありますから、この罰条が軽くてあたりまえのことなんですが、こういう軽微な犯罪を犯した人に対して、その犯罪の判決を受けるよりもはるかに大きな人権侵害に当たるような事実を法務省が認定し、そして起訴状に記載したということに対して、これは法務省とすると大きな人権侵害ではありませんか。そのことについてどのように考えられますか。
  293. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これはまあ法務省じゃなしに検察庁がやったわけでありますが、とにかく具体的な事実、起訴状に必要なことについてはやむを得ないのじゃなかろうかと。刑罰の上下によって起訴事実を、何といいますか、書き——区別をするというわけのものじゃないと私は思います。
  294. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、たとえば起訴状に、前科がある人の場合に前科があるというようなことを、前科があるがというようなことを書けば、これは裁判官に予断を抱かせるものとして不適法ということになっております。このように、構成要件以外のことは、裁判の過程において検察庁において実証していけば、あるいは主張していけばいいことにもかかわらず、このようなことを、これは実際問題として、罰金の三万円になるか、二万円になるか、あるいは無罪になるか知りませんが、かりに、一番重い刑だったとしたところで、その有罪判決を受けるよりも、はるかに大きな意味での人権を侵害しているわけです。犯罪を犯したと推定される、あるいは被疑者であるから、被告であるから、だから、そういう者の人権は守らなくてもいいんだという、そういう意味でこういうことを、事実を起訴され、しかも、その起訴状を公表されたわけですか、どうなんですか。
  295. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そそのかしに該当するかどうかという意味から、そのそそのかしに該当するということを具体的に述べなければなりませんから、そういう意味合いで書かれておるのだと思います。
  296. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は、いまも申しましたように、いろいろな事実は、これは公判の過程で国家権力のほうが主張すればいい。たとえば、いま、道交法違反でその罰金五万円、あるいは三万円以下に該当する罪を犯した人が、それにでかでかと、もう社会的に回復しがたいばかりの、プライベートな問題を公表されたような場合、それがどれだけ——有罪判決を受けるかどうかということよりも、その書かれたこと、公表されたことが、どれだけ重大な人権侵害になるかということを、そういうことを法務省は全然考えておられないのですか。人権を守る立場である法務省として、それにお気づきになっておらないとすれば、この事実こそ重大なことだと思うのです。
  297. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 起訴状の記載でございますが、起訴状の記載につきましては、御案内のとおり、刑事訴訟法二百五十六条に規定がございます。そして、先ほど御指摘になりましたように、この場合に、予断を抱かすべきものを添付してはならないとか、あるいは余事記載をしてはならないという趣旨の規定がございます。  ただいま御指摘の西山記者及び蓮見事務官の起訴状に関しまして、「情を通じ」ということばが起訴状の摘示としてはふさわしくないという御指摘でございますが、この点につきましては、先ほど来法務大臣が御答弁いたしておりますように、この「そそのかし」という、国家公務員法第百十一条の「そそのかし」という行為の態様を明らかにする必要がございます。その点が第一点。それからもう一つは、この行為の動機というものを明らかにするという意味でもう一カ所このことばが使ってございますが、これは刑事訴訟法所定の記載事項でございまして、何らこの点は逸脱したものではないと思うのでございます。  なお、この表現を用いますことにつきまして、私が報告を受けておりますには、検察庁におきましても非常にこの表現は苦労をいたしたのでございます。しかしながら、法律に該当する具体的事実を、特に「そそのかし」という行為の態様を明らかにする意味におきまして、どうしてもこれはやむを得ないという結論になったということを承知いたしておるのでございまして、検察庁におきましても十分この点は検討いたしたところでございます。
  298. 佐々木静子

    佐々木静子君 私どもはこの起訴状を見て、時代は江戸時代以前に戻ったのではないか、結局、権力者——お殿さまの言うことを聞かなかった腰元が素っ裸にされて打ち首にされ、しかもその打ち首をさらしものにしているという、きわめて前近代的な考え方、感じを抱いて憤慨したわけなんでございます。そういう意味で、その原因とか、事件が起こった背景というものを起訴状に書かなければならないのであるならば、なぜ、沖繩返還交渉の真相が国民に知らされないために、記者がそれを取材するために苦労したという、その背景まで書かないんですか。背景とか、バックを明らかにするのに、バックを書かずに単なるゴシップ記事だけを、しかも、国民を代表して検察権を一手に握っていられる重大な国家の権力が、ゴシップ本位にそのことを書いたということに対して私どもは強い憤りを覚えるわけですが、どうなんですか。
  299. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 起訴状の記載につきましては、ただいま申し上げましたように、刑事訴訟法二百五十六条の規定がございます。この規定のもとにおきまして、起訴状にどういう事実を書くべきか、どの程度書くべきかということにつきましては、御案内のとおり多くの判例がございます。この場合に、公訴事実を特定するに足る事実、それと動機、場合によっては情状、これらは起訴状の記載としては当然しなければならない記載でございまして、その必要最小限度においてこの起訴状の記載はなされておると、かように私ども理解をいたしておるわけでございます。
  300. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの説明を伺っておっても私は思うんですが、わが国においては、公開されるべきことが秘密にされ、どこのだれが考えても秘密にされなければならないと思うことが公開されている。この非常な見当違いに対して私はもうあ然とするわけなんですが、そういうふうにお思いにならないですか。
  301. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまの、沖繩の問題を公開すべきかどうかと、これは政治問題だと思います。ただいまの起訴状にいっております事実は、これはもうあくまで刑事上の問題であります。でありまするから、それはやはり区別して考えていくべきものだと私は思います。
  302. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは一つの事件が起これば、その背景になることが政治的な問題である場合とない場合にかかわらず、当然、いまの御説明によれば、事件の背景も全部書くというのであれば、沖繩密約問題を政府は隠していたためにこういうことが起こったのだという、そのいきさつも起訴状に当然書くべきではないですか。それは大臣、どうお思いになるのですか。だれが見たってこれはおかしいじゃないですか。
  303. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 起訴状に必要なのは、「そそのかし」という行為が非常に違って異常であるということでなければ犯罪にならぬわけであります。でありまするから、「そそのかし」の具体的事実を述べなければならぬと、かように解しておるのであります。政府が公開すべきかすべきでないか、そういうことがこの犯罪に関係があるかないかということについては、御承知のように準抗告の決定、それが取材のためだからということは何もこの犯罪事件を合法化するものではないということを言っておるわけでありまするから、その点については記載する必要はないと私は思います。
  304. 佐々木静子

    佐々木静子君 それなら構成要件と何にも関係のない、しかもちっとも犯罪に触れない——私はその事実の存否についてはいま問題にしているわけじゃないですけれども、その「情を通じ」とか何とかいうことだって書く必要はない。即時にその部分を撤回されたらどうですか、関係ないことなんですから。
  305. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ぜひ外務省の機密を知らしてもらいたいというだけでは犯罪にならぬのですから、いろいろなその犯罪になる理由については書かなければならぬ、かように思うわけであります。
  306. 矢山有作

    矢山有作君 関連。  法務大臣、あなた、いささかどうかしておるのじゃないですか。「そそのかし」という事実は、あなた方は犯罪構成要件になるのだと言っておるんでしょう。そうしたら、何もプライベートな「情を通じ」云々なんということを二度も三度も書かなくたって、そそのかして云々と、こうやったらいいじゃないですか。そのくらいのことがわからぬのですかね。
  307. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 起訴状にはその具体的な事実を書かなければならぬのでありまして、抽象的な「そそのかし」だけで済むものでありましたら書く必要はないと思います。しかし、起訴状は事実を明らかにする、その行為の態様を明らかにしろと、こういって刑事訴訟法が命じておるのでありまするから、そのことを書いておるわけです。
  308. 佐々木静子

    佐々木静子君 この、非常に私どもから見ると常識では考えられないような起訴状の結果、これは損害をこうむるのは男女とも同じであるはずであるのでございますが、現実には、いまの日本の社会においては、このようなことを、国民の、しかも、これだけ関心を持っているとき、全国の津々浦々にまでも起訴状によって響きわたらせられたそのことにおいて、この蓮見さんの場合は社会的にはもとより、家庭的にも人間的にも非常に気の毒な状態におとしいれているということ、これは国家権力の名においてこのような結果におとしいれたのだということ、単に罰金三万円以下ぐらいの、懲役一年以下ぐらいの軽微な事件を犯したにかかわらず、そういう人間に対して命を奪う以上に残酷なことを行なったということについて、私は法務省はじめ当局者に強い反省を求める次第であります。  では、次の問題に移ります。最高裁の事務総長に伺いたいと思います。  本年の三月二日以降三月六日までの間と思うのでありますが、最高裁判所の広報課長名で、各高等裁判所長官あてに新聞記事のことについて何か通知されたようなことがありますか。あるとすれば、そのことについて述べていただきたい。
  309. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 当時、毎日新聞に金野判事補のいろいろな行状や行動について報道されましたので、そのことに関しまして新聞社のほうに注意を促したわけでございます。その点につきまして、各高等裁判所長官に対しまして秘書課長からその点を知らせた、そのことではないかと私は存じます。
  310. 佐々木静子

    佐々木静子君 三月二日付の毎日新聞朝刊の記事でございますね。どういう記事であって、その記事の内容及びどういうわけで最高裁が注意を促したのか、その理由を述べてください。(「何で新聞社まで注意したのか。」「どういう権限があってやったのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  311. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 毎日新聞社に対して注意を促しましたのは、その当時、金野判事補外もう一名の名前が出ましたので、氏名を明らかにいたしましたことについて注意を促したわけでございます。
  312. 佐々木静子

    佐々木静子君 もっと内容をはっきり言っていただきたいです。何のことかわからないです。
  313. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 先ほど申しました名前を明らかにいたしました上で、あるいは再任を拒否されるかもしれないだろうと、こういう記事を載せましたので、その点について注意を促したわけでございます。
  314. 佐々木静子

    佐々木静子君 そこにその注意をされた記録があるなら、一ぺんここで読んでいただきたいと思います。
  315. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) その書面はここに持ってきておりませんです。
  316. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、すぐ取り寄せてください。最高裁はそこですから、すぐ取り寄せていただきたいと思います。
  317. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  318. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  外務大臣がお見えになりましたから……。  速記とめて。   〔速記中止〕
  319. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  320. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、その原文を読んでください。
  321. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 毎日新聞社に対して注意いたしました内容をここで読み上げます。以下でございます。「三月二日付毎日新聞朝刊一面に、十四期裁判官の再任と題し、二名の裁判官の氏名を特定明記し、最高裁判所事務総局が右の両裁判官のみについてその適格性に問題があるとし、名古屋高裁などに指示して、両裁判官に特定の事項について釈明させ、かつ、これに基づいて三月一日の裁判官会議において論議が行なわれた趣旨の記事が掲載されたが、このような事実はなく誤りであって遺憾である。今後この種報道については慎重に取り扱うよう注意されたい。」、こういう趣旨でございます。
  322. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、この新聞、いまも見ていただいたのですが、「二人拒否か」と、クエスチョンマークの記事ですね。これがなぜ間違った記事だと言うんですか。
  323. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) この記事はですね、最高裁判所から釈明要求をしたと、これを根拠に記事にしておるわけでございます。その意味で記事が誤りであると、こういうことでございます。
  324. 佐々木静子

    佐々木静子君 もし誤りであればですね、そういうこそくな手段をとらずに、なぜ正々堂々と訂正記事を求めないんですか。
  325. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 広報課長から記者クラブに対しまして詳しく注意いたしました上で、この書面の趣旨を正式に申し入れたわけでございます。(「答弁になっていない」「委員長質問したことと答弁が違うじゃないか」と呼ぶ者あり)
  326. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと——それでは時間をまけておきますから、もう一ぺん、はっきり質問してください。
  327. 佐々木静子

    佐々木静子君 予測記事ですね、これは。だから、当たるか当たらないか——最初から予測記事なんですから。だから事実と違うからといって、注意をするとかなんとかというのはおかしいじゃないか。事実とかりに違って最高裁が困るのなら、なぜちゃんと訂正記事を出してもらわないのか、その点を聞いているわけです。
  328. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 予測記事ではありますけれども、その根拠が違うということで、注意をしたわけでございます。新聞社が訂正を出すか出さないかは、これは最高裁判所としては直接どうするというわけにもまいりません。
  329. 佐々木静子

    佐々木静子君 これね、私の手元にある文書によると、この記者が遺憾の意を表したというふうに書いてありますけれどもね。私この記者に聞いたんですよ。そうしたら、全然これは予測記事で、遺憾の意を表することも何にもないから、こんなことは全然事実と違うという話なんです。念のために言いますが、これは私、新聞社から入れた情報じゃないですけれども、わざわざ聞いたんですよ。そうしたら、それは全然そういうことは違うというんです。裁判所ともあろうものがですね、ほかの官庁はいざ知らず、いま国民は裁判所までうそをつくということは考えておらぬわけですよ、まあ外務省はともかくとして。ところが、裁判所まで、うそをつくというんじゃ話にならぬじゃないですか。どうなんですか。
  330. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 裁判所は何も、うそは全然申しておりません。新聞記者の方が佐々木委員にどのようなことを言われたか、私は全然承知しておりませんです。(「陳謝したかしないか」と呼ぶ者あり)
  331. 佐々木静子

    佐々木静子君 新聞社の人が陳謝したというふうに、あなたのほうは、しかも公文書でですね、長官の名前で、各裁判官に流している。しかし、聞いてみると、それは全然間違った記事を書いたわけでも何でもないのに陳謝するはずがないということを私聞いたんです。確かめたんですよ、私のほうから。これを見た裁判官の人たちが、非常にむちゃくちゃな文書が裁判所の中に流れているというふうに、あっちこっち全国から入ったわけですよ。だから私、わざわざこれを新聞社に確かめたわけなんです。そうしたら、むろんこんなことは予測記事なんだから陳謝するはずがない、遺憾だなどと言うはずがないと言う。それを、かってにこの文書を書いて、しかも全国の裁判官に配っている。これは一体どういうことなんですか。
  332. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 先ほども何回も申し上げましたように、記事は間違った根拠を前提として書いてあるという点で誤りであると思います。新聞社のほうでは、今後注意するという趣旨で返事があったわけでございますから、やはり遺憾の意を表したと、そういう趣旨にとられてもやむを得ないんじゃないかと私は思います。
  333. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  いまの御答弁、よく聞き取れなかったので確認をしますけれども、陳謝をしたか、しないのかというのをはっきりしてください。書いた記者はですね、佐々木委員に対して、陳謝をしていないと言っているそうです。そうするとですね、陳謝をしたと本人が言っていないのに、あなたのほうは、それを一方的に、陳謝したと了解するということはできないでしょう。陳謝をしたということは、本人の意思に基づいての行為ですよ。そういうふうに具体的にしっかり受け取った根拠は、それこそ裁判所のほうからはっきり出すべきですよ。どういう根拠で陳謝したということになるのかならないのか、そこを明確にしていただきたい。それが一つ
  334. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 新聞記者の方は、広報課長からの先ほどの注意に対しまして、上司に直ちに伝えると、こういう旨にあわせて、遺憾の意を表したことは間違いございません。
  335. 上田哲

    ○上田哲君 上司に伝えるなんということはですね、こんなものは自分の内部関係の事務手続ですよ。遺憾の意を表するということばが、実際に取材した記者のほうから、そういう事実はないと言っているわけですから、あなたのほうはその立証をしなくっちゃ——こういう文書を出したということはたいへん不当なことです。はっきり言っていただきたいと思うのです。  それからもう一つは、根本的な問題だ。——こっちを向いて聞いていなければわからぬですよ。聖徳太子じゃないんだから、こっちを向きなさい。新聞記事には当然推測記事、想定記事というのはありますよ。これは取材者の責任において書くんです。例はよくないけれども、天気予報だってあるでしょう。当然に推測記事というものがなかったら、報道活動というものはあり得ませんよ。一々それを、推測記事を書いちゃならぬ、想定記事を書いちゃならぬ、こういう権限を裁判所は取り締まることはできますか。推定記事というものは、最も国民、読者の興味の存する問題について、書く側の責任において書くんです。書く側の責任において処置することになるのです。法によってさばくべき法規はどこにもないはずですよ。あなたのほうは名誉棄損だとか業務紊乱だとか、こういう問題で処置されるなら話は別だ。取材の自由については、そういう問題とは違うのです。非常に大きな認識不足だから——想定記事、推定記事というものは書けるものか書けないものか、あなたのほうの解釈を示してもらうほどのことはありませんけれども、そういうお考えについてはしっかり訂正をしておいていただきたい。
  336. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 私ども常に考えておりますことは、新聞の報道は事実だけは真実の事実を伝えてもらいたい。それに基づいていかなる意見を記事にされるかは、これは新聞社のほうの裁量でございますから、裁判所としてはこれに対して何ら文句を言う筋合いではないと思っております。とにかく、前提となる事実が間違っておると、こういう趣旨新聞社のほうに対して注意を促したわけでございます。
  337. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはね、別にこれに限らないんで、たとえば裁判所の方だから裁判所にわかりやすい例をあげると、あさって判決がある大きな事件の、今度は有罪か無罪かという予測記事が出るでしょう。有罪か無罪かどっちかで、両方になることはないから、どっちかが当たったら、どっちかが当たらないことになるわけだけれども、それを一々こういうこと。これこそ報道の自由じゃないですか。一体何なんですか、それは。どう思っているんですか。
  338. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いま判決のことに関してお話がありましたけれども、判決が宣告されたこと及びその判決の内容自体は事実と、この事実に基づいて新聞社がいろいろな意見なり批判なりをするのは、これは自由だと思います。
  339. 佐々木静子

    佐々木静子君 いや、あなたね、質問を聞かずに答えられるから、そういうことになるのです。私の言っているのは、三日後の判決に対する予測記事ですよ。事実に合う、合わぬというのは、予測だからわかるはずないじゃないですか。たぶんこうであろうという予測記事です。これだって裁判官のことをきめるのは、四月八日の裁判官会議ですよ。この記事は四月二日の記事ですよ。だから予測記事なんですよ。それが事実に基づくの、基づかぬのと言ったところで、それは基づくはずがないじゃないですか。まだその事実が到来していないのだから、事実が。
  340. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 判決の言い渡しの前の予測記事というのは、やはり純然たる予測記事だということは、これは世間一般の人が当然わかるわけでございます。しかし、今度の金野判事補外一名に関しますことは、裁判所の釈明したという事実に基づいて予測記事を書いておるわけでございます。したがいまして、その事実について、誤りであることを新聞社に対して注意を促したわけでございます。
  341. 上田哲

    ○上田哲君 さっきの答弁が落ちていますから、もう一ぺん伺いますがね。陳謝をしたという問題ですよ。第一点は。佐々木委員の調査に対して、当該記者は陳謝はしておらぬと言っているのですよ。社へ帰って上司に連絡すると、こういう表現は——あと、あなたはもう一言、二言つけ加えられたけれども、あとのほうははっきりしません。上司に連絡をしたというようなことは、陳謝とは日常用語では受け取らぬものですよ。これを陳謝をしたと——どういうふうに受け取るかは、まだ多少の自由はありましょうけれども、陳謝をしたからということを文書にして、全裁判所に、全国配るということになれば、これは、相手方の言動に対して、あなた方のほうは十分な責任をとらなけりゃならぬことですよ。部内の文書であるかどうかの問題を越えて、権威ある裁判所ですよ。この裁判所が、そういう文書を流したということになれば、陳謝をしたということが——明らかに佐々木委員は陳謝をしていないというデータに基づいてお話をしているんだから、ほんとに陳謝をしたのかどうかということが、どういう経緯とどういう立場で言えるのかということをしっかりと出していただきたい。そうして、もしも陳謝していない——それが非常に不明確なままに、一方的な裁判所側の判断で、陳謝をしたと了解するというようなことで、陳謝をしたと書いて全国に配ったなら、これは、当然あなたのほうで負うべき責任が出てくると思うのですよ。その部分にまでわたって、しっかりしていただきたい。  それから第二点は、推定記事というものはあらゆる場合にありますよ、これは。裁判所が判決を下す場合は何にも書いちゃいかぬということになりませんでしょう。裁判官というのは、いろいろな経過をたどって、即決裁判じゃないのですから、長い審理過程を通じて、どういうことになるのかというのは、多少法律をかじればある程度の推定もつこうというものでありますし、いわんや、そこに専門的にフォローしていけば、いろんな心証を積み重ねて、こうなるだろうということを書くのは、これは批判の自由の一つですよ。また、国民が知りたいということにこたえる一つの活動ですよ。そういうことは原理的に許されなければならぬと思うのです。それを、裁判所の判決が出る前は、そういうことを書くことがいかにも制限されるような表現をされるということは、これはやっぱり立場を越えた言い方だろうと思う。その部分を明確にしていただかなきゃならぬ。何かの根拠に基づいたと言われるが、どういう根拠に基づいたかということを、あなた、取材者に聞かなければわからぬじゃないですか。取材者が一体どういう根拠に基づいてそういう根拠の表現を用いたか、これはあなたのほうでは立証できないでしょう。具体的に答えてください。どこが悪かった、どこがいけなかったということを、事実をあげなければこれはだめですよ。
  342. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 広報課長からその新聞記者に対しまして、先ほどのような趣旨の注意をいたしました。それに対しまして、新聞社からの答え、その他のそのときの様子からいって、やはり遺憾の意を表した。こういうことに私どもはとっているわけでございます。
  343. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それが一つと、もう一つあるんですよ。
  344. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) もう一つの点は、先ほどから繰り返し申し上げておりますけれども新聞記事が推測に基づくからいけないということは、私は決して申し上げているわけじゃございません。ただ、誤った事実に基づく推測記事はいけないと、こういうわけでございます。
  345. 松永忠二

    ○松永忠二君 委員長ちょっと。  何もそんなに、あなたの言っていることを全部否定をしているんじゃないんですよ。だから、最初のことについては、ここにはっきり書いておるように、同記者は遺憾の意を表するとともに、直ちに上司にも伝える旨確約したと書いてあるのですよ。東京高等裁判所長の名前で当庁裁判官殿というふうに出して、はっきりこれに対し、同記者は遺憾の意を表するとともに、直ちに上司にも伝える旨確約したと書いてあるが、同記者は遺憾の意を表するということはしなかったと言っている。しているとあなたが言っているから、そこが違うんじゃないか。ただ、あなたの言っているように、ばく然と、そのときの感じから遺憾の意を表するということばを使ったんだというなら、そういうふうに言えばいいじゃないか。それは違っていると、はっきり。そういう表現のしかたをすべきではないと。はっきり文書にこう書いてあるので、本人が遺憾の意を表すると言わないのに言ったというんじゃ、それは間違っているだろうと。  もう一つ、いいですか、ちょっと聞いてください。あなたの言っているのは、事実と経過について違ったことを言っているから、いかぬと言っているのだから、そのことについて、内容がこうであるのにこういうふうに言っているのでいかぬというふうに、具体的に言ったらどうでしょうか。そうすればはっきりわかるではないか。事実に基づいて事実を伝えてほしいという、その要望について、何らわれわれも否定するものではない。しかし、このことは予測の記事であるというふうに言っているので、予測の記事であっても、経過として事実でないことを事実として伝えて書いてあるからいわぬとあなたが言っているなら、どこが事実と違っているのか、具体的に言いなさいと言っているわけだから、それを明確に言えばいい。  第一点の同記者が遺憾の意を表したことは事実か事実でないか。もう一度、再度あらためて、本人の記者がはっきり遺憾だと言ったのかどうかということをひとつ。もう一つは、経過において違った記述がしてあるというなら、どこが違っているのか、はっきり言いなさい。
  346. 徳永正利

    委員長徳永正利君) よく打ち合わせをして、何べんも立たれぬでも、一ぺんでぴしゃっと出るように覚悟をきめてやってください。
  347. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 新聞記者は、確かに遺憾の意を表すると申しております。  それから、事実が違う点でございますが、最高裁判所から釈明を求めた。そういう事実があるよいに書いてあることが誤りでございます。最高裁判所からは、何も釈明は求めておりませんでございます。
  348. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう少し、具体的に、ここのどこが違うのかというところを読んでください。
  349. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  350. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  351. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 新聞記事に基づいて具体的に申し上げますと、この冒頭の二行目から「すでに、両裁判官の司法行政上の監督権を持つ名古屋高裁などが両裁判官に対し“問題点”についての釈明を求めており」、このように表示してございます。これが事実と違うというわけでございます。
  352. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  353. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  354. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 先ほど、私が新聞記者とのやりとりの中で、遺憾の意を表しているように受け取ったと申し上げましたけれども、これは、間違いなく記者自身が遺憾の意を表しております。
  355. 佐々木静子

    佐々木静子君 私自身が聞いたところでは、全然遺憾の意を表していない。しかも、あなた自身、そういうふうにはっきりと遺憾の意を表したと、いまになって言うくらいなら、なぜ一番最初におっしゃらないのですか。さっきから、そういうふうな態度であったとか、要するに見えたとか、変なことばかり言って。遺憾の意を表したかどうか、あなたははっきりしないのでしょう、ほんとうは。
  356. 和田静夫

    ○和田静夫君 ちょっと委員長関連
  357. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 和田君、いまの関連ですね。
  358. 和田静夫

    ○和田静夫君 はい、簡単に。
  359. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 和田君。
  360. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、いまの答弁で、あなたは広報課長を通じてしか立証ができないわけでしょう。したがって、わが佐々木委員のほうからは、ちゃんと打ち合わせした結果について立証しているわけです。そういう事実はないと。あなたは人を介して、言ってみればいまの質問しかできない。したがって、答弁は変わっていくわけです。そこで考えられることは、広報課長は、あなた方上司に、遺憾の意を表したという形で報告をした。その報告が、言ってみれば間違っている可能性があります。そのことをもとにして、あなた方は一連の通達を出されたのですから、その間違った報告をもとにして司法行政は混乱をしました。その責任をどういう形で、あなた自身、そして広報課長自身にとらせますか。
  361. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いまお話のありましたように、私自身が新聞記者と話し合ったわけではございません。おっしゃるとおり、広報課長が新聞記者と話し合ったわけでございます。その際、新聞記者のほうでは、今後注意する、そうして、直ちに上司にもその点は報告すると、こういうことをはっきり言ったのでございまして、結局、それが遺憾の意を表すると、こういうふうに私どもは受け取っているわけでございます。
  362. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのもう一つの点ですね。名古屋高裁で、今度再任する判事補に対して、この二人の裁判官に対して釈明があったということを書いてあることが間違いだということを、いまあなたおっしゃいましたけれども、この十年の任期のある裁判官の任期十年が来て、次の再任の期限に来ているとき、高裁はその管内の裁判官の調査を全然しないのですか。何にも調べもしないで、全部、十年が来た者はそのまま最高裁の名簿に載せるのですか。やっぱり、いろいろ高裁が、管内の再任期に来ている裁判官についていろいろ調べるでしょう。いろいろその人について調べた上で、名簿と載せるか載せないか、きめるんでしょう。これは、いろいろ調べるのはあたりまえのことで、調べてないのですか、ほかの裁判官を一名も、高裁は。どうなんですか。
  363. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 上司から、その裁判官についてのいろんな事柄について、最高裁判所に、常時やはり連絡はございますです。この問題の時期に、再任拒否の理由に関する問題点について特に釈明したと、こういう事実は全然ございません。それを申し上げているわけでございます。
  364. 和田静夫

    ○和田静夫君 関連。  そこで、さっきの私に対する答弁の問題ですがね、明確に、広報課長の予見、広報課長の言ってみれば予断、状況判断、推定、そういう形でもって誤りましたね。こういう形のことにした、それに基づいてあなたは通達をされた。断定的な通達をされた。この責任はどういう形でおとりになりますか。
  365. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 私といたしましては、やはり新聞記者のほうで遺憾の意を表されたものととっておりますので、私は、この点について責任をとるという気持ちはございません。
  366. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまあなたおっしゃいましたけれども、この二人の、金野さんと安倍さんという人が再任を拒否されるやもわからないということは、これはもうずっと前から多くの人から言われておったわけですよ。何も、このとき出て、初めてみんながこういうことがあるのかと知ったわけじゃない。そして、これは三月二日の新聞ですけれども、この以前にも、これはほかの新聞にもこの人の名前など載っているわけですよ。だから、ある程度このことは、当然に知っている人の中では知っていたわけですよ、この人たちがマークされているということは。しかも、あなたいま全然何も調べてないと言うけれども、裁判官が十年の任期で、今度続いてまた裁判官に再任するかどうかということは、私、毎度この問題は、法務委員会で、横におられる人事局長にお尋ねしているのですけれども、裁判官に適格であるかどうかということを、もう慎重に調べ上げるという話をいつでもしていられるんですよ。だから、全然調べもせぬで、どうして慎重に調べて再任名簿に載せるのか。最高裁の中で言われることがあまりにも矛盾しているのじゃないですか。どうなんですか。
  367. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 最高裁判所といたしましては、事前にいろいろなことをよく調査しておりますので、この時点に至りましていろいろな調査をいたしますと、また誤解も生じますから、その時点では調査を命じたわけではございません。そういうわけでございまして、決して、さっき申しましたように、釈明をしたと、こういう事実はございませんので、その釈明も、この再任拒否の理由になった問題点、こういうことを前提にして裁判所のほうで釈明をしたわけでございません。そういう点についてやっぱり誤りがある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  368. 佐々木静子

    佐々木静子君 この釈明ということばにあなた非常にこだわっていられるけれども、どうなのかと聞く、あるいはこうこうだと言う、それも釈明なんですよ、広い意味で。法律用語の、六法全書の訴訟法に出てくる釈明ということを事務総長は思っていられるかわからないけれども新聞に出てくるこの釈明ということばはもっと広い意味なんですよ。当然この二人に限らず、再任する人を調べておられるでしょう。それじゃ、何にもしないなら、最高裁長官も、最高裁の事務総長も事務局も要らぬじゃないですか。それを仕事にやっているんでしょう、まあ、そればかりじゃないけれども。だから、当然再任名簿に載せるかどうかということは調査されたんでしょう。だからこそ、調査に基づいて、調査しているという情報を得てこの記事ができたわけです。これはちっとも間違った記事じゃないじゃないですか。
  369. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 新聞記事に金野判事補についていろいろ具体的な事実が記載してありますですね。その事実を、最高裁判所がそれを再任拒否の理由にして、そうして釈明していると、こういうふうに受け取られるということは、最高裁判所としては、再任拒否の理由を公にできない立場上、非常に迷惑な話でございます。そういう点につきまして、やはり新聞社のほうに、今後注意してもらうように申したわけでございます。
  370. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは国民が、三月、四月になれば、またかというくらい。裁判官の再任拒否の理由を示せ、あるいは裁判官を再任するときの基準を示せということを、声をからして言っておるでしょう。それに対して、最高裁は基準を示されないわけですよ。だからこそ、いろいろと推測せざるを得ないわけなんですよ。あなたのほうが、こうこういう基準、これとこれとこれの基準でやると言うのに、それを事実を曲げて書いたというなら、これは誤った記事だけれども、あなたのほうが全然、幾ら尋ねても言わないから、いろいろと状況証拠から憶測しないといけない。それは、もしのことが事実と違って、最高裁が多少でも迷惑するとすれば、それは最高裁当局の責任じゃないですか。言わなかった責任じゃないですか。もっと、そうじゃないんだというなら、正々堂々と再任の理由を説明し、そして再任拒否の理由を説明すればいいじゃないですか。どうなんですか、その点。
  371. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 再任拒否の理由を公にすることのできないことは、これまでに何回も繰り返して申し上げているわけでございます。金野判事補につきましては、別に再任拒否をいたしたわけでございませんので、その点をひとつよく御理解いただきたいと思います。
  372. 佐々木静子

    佐々木静子君 その、再任拒否の理由を言えないということですね、そのこと自体が全然おかしいじゃないですか。裁判をやるのは、国民主権主義で、国民が主権者なんですよ。最高裁の事務総長が主権者じゃないんですよ。国民の裁判所なんですよ。ところが、その裁判官のうち、一部の人が十年が来て再任されない。それは、どういう基準で再任されないのかということを、いろいろ聞いているわけでしょう。それをなぜ言われないのか。それを言われないから、いろんな問題が起こるんじゃないですか。もう、いまここからでもはっきりおっしゃれば、そうしたらこの記事は、かりにあなたの、最高裁の言っていることと違っていれば違っているで、はっきりするんじゃないですか。どうなんですか。秘密にしておくからこういう問題が起こるんじゃないですか。
  373. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 佐々木委員も弁護士でいらっしゃるわけでございまして、やはり、裁判官にはどのような人が適任かということは、よく御理解いただけるだろうと思いますが、とにかく、やはり裁判官にふさわしい、いわゆる品位と能力を備えた人、こういうことを考えて再任をするかしないかをきめるわけでございます。先ほども再任と申しましたけれども、決して再任ではございませんので、法律的にはやはり新任である。新任につきましては、最高裁判所がいろんなたいへんある候補者の中から候補者を指名して内閣に提出する、そこで内閣がその名簿に基づきまして任命すると、こういうわけでございます。
  374. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、私が弁護士であるから云々と言われましたけれども、弁護士であるから言うのです。日本弁護士連合会が、どれだけ、再任拒否の理由を明らかにせよということを、何回総会の決議でやっていますか。そうして、十年の任期が来て、一部の裁判官を再任しない最高裁当局はけしからぬということを、何回も総会でもって決議しているじゃないですか。全会員の、ごく一部の人を除いて、大多数の人、全会一致の場合もありますよ、そういう決議が何回も出されていること、事務総長知らないのですか。
  375. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 弁護士連合会でそのような決議のあることはよく承知しております。その決議は決議として、私どもは私なりに受け取っているわけでございます。
  376. 松永忠二

    ○松永忠二君 議事進行。  だいぶ、ここだけでははっきりしない面が出てきたので、広報課長もここにいるわけではないし、広報課長が、本人が陳謝したということを述べて、それを受けて文書にしたといっているのですから、再度あらためて広報課長にその辺を確めてくる。それからこちらの佐々木さんのほうは、直接記者から遺憾の意を表したことはないと言っているわけだから、これはやはりここで議論をしても、そこは明確にならない。  それからもう一つの点については、あなたはその釈明をしたという事実はないと、こうおっしゃっているし、佐々木さんも、それについては自分の見解を述べておるので、なおこの点についてはもう少しはっきりとやはり整理をして話される。それから佐々木さんもその辺をまとめて、この点を明確にするということで、本日はここでひとつ打ち切っていただいて、明日にひとつ質問を保留させていただきたいと思います。
  377. 徳永正利

    委員長徳永正利君) いま松永君の議事進行の御発言の中にございましたような二点について、それでは明日までによく広報課長とも打ち合わせて、答弁のことでございますから、気に入るような答弁はできないかもわからない、しかし、その点を明確にしておいていただくようにお願いいたします。よろしゅうございますか。  それでは佐々木君の質疑の途中でございますが、本日はこの程度といたします。  明日は午前十時、委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会