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1972-04-17 第68回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十七日(月曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  四月十七日     辞任         補欠選任      土屋 義彦君     石原慎太郎君      神沢  浄君     須原 昭二君      柏原 ヤス君     矢追 秀彦君      小平 芳平君     三木 忠雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君     委 員                 石原慎太郎君                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 中沢伊登子君                 小笠原貞子君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       小田村四郎君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省情報文化        局長       和田  力君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        福間  威君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農地局長  三善 信二君        食糧庁長官    亀長 友義君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        海上保安庁長官  手塚 良成君        建設省河川局長  川崎 精一君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、塩出啓典君の質疑を行ないます。塩出君。
  3. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、きょうはまず最初に林業問題、これについて聞きたいと思います。  林野庁は今年二月、国有林の新しい森林施業方針を発表しておりますが、この背景と、その意図について御説明願いたいと思います。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のとおり、この林野というものは、本来公共的なものでございます。あるいは貯水地となってダムの作用をしたり、あるいは風土、気候を緩和したり、あるいはまた治山治水の面というようなことで、公共的な面が非常に多いのでございます。しかし、どうも公共的方面よりも経営という、利益的方面のほうに走らざるを得ないような態勢になってきておりましたので、林野経営あるいは林野会計が赤字にならないようにというようないろいろな考慮から、伐採などがとかく多かったという傾向に省みまして、それも必要ではございますが、それよりも、もっと公共的な面を生かしていかなくちゃならぬ。ことに環境問題なども起きてきておるときでございますから、そういう方面考慮に入れまして、伐採なども、全面伐採というようなことをしないで、計画的に、間伐をしたり、あるいはその中のある樹木を選んで切らしたり、こういうふうなことで、森林保護といいますか、育成といいますか、そういう方面に力を入れるべきだということから、御質疑のような方針に少し変えたわけであります。
  5. 塩出啓典

    塩出啓典君 国有林全面皆伐に対する批判は、非常に各地に起こっておるわけでございますが、先般、私参りました鳥取県の三国山、扇ノ山、あるいはまた広島、山口、島根にまたがる西中国山地等でも、県や地元から非常に反対が出ております。そういう点でいま林野庁がそういう方向転換をするということには、非常にわれわれも賛成でございます。  そこで、国有林伐採計画は、環境保全の立場から、県や地元意見もよく聞いて、そういうような地点は、この新方針に従って再検討をし、変更をするわけですね。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 四十年、四十一年のときに、私も、あの集中豪雨鳥取県の災害があったときに、ヘリコプターで行って現地を踏査いたしました。ですから頭にあるのでございますが、たいへんひどい災害でございました。しかし、言いわけするわけでもございませんが、当時としても計画的な森林伐採をしていましたから、そのせいとばかりは私は考えておりません。全面的に森林が戦後、たいへん戦争中に伐採しましたから、森林が減少しまして、それで森林の水を保有しておる機能というものを非常になくしまして、そうして各地災害が起きたことは事実でございます。そういうことも省みまして、先ほど申し上げましたような方向に力を転換をしていかなくちゃならぬ、こういうように考えておるわけでございます。でございますので、これからも十分環境保全、まあ森林そのもの環境保全しているものなんですが、全体的な環境保全という意味で、森林の持つ機能というものを環境保全方面相当力を入れていく、とこういうふうに考えております。
  7. 塩出啓典

    塩出啓典君 ひとつ、そういう方針が出されたのですから、現場においてもその方針の結果が反映されるように、方針はきまったけれども現地のほうは知らぬ間に予定どおり、これじゃいけないと思うので、この点、要望しておきたいと思うのです。  それと、外材輸入の問題でございますが、昭和四十一年四月、閣議決定いたしました「森林資源に関する基本計画」並びに「重要な林産物の需給に関する長期の見通し」、これは林野庁発表。これによりますと、昭和五十年には国産材自給率を七・一%にするとなっているのですが、最近はもうどんどんふえまして、四十年、外材供給率二八・六%が、四十五年は五五%になっておる。だから国内産自給率は四五%ですね。四十六年は、もっと下がるのじゃないかと思うのですがね。あまりにも急激に、輸出の場合でも急激に輸出するし、輸入もこう急激にと、こういうのは非常に好ましくないのじゃないかと思うのです。しかも林野庁計画とは大きくずれているわけなんですけれども、こういう点はどうなんですかね。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに急激に輸入材が多くなって、四十五年、御指摘のように五五%ということになりました。これは、日本の経済そのもの高度経済成長で、それでさらに建築ブームというようなこともあって、需要が非常に伸びたということで急激に外材輸入がふえたというようなこと、また価格の問題もございます。そういうことでございますが、外材輸入につきましても、相当これはコントロールといいますか、自由経済下でもコントロールしなくちゃならぬと思います。輸出国相当コントロールしているわけです。輸入国のほうは、過当競争みたいに需要に応じてどんどん入れる、こういうことから輸入が非常にふえたというような現状でございますので、これが相当、直接コントロールはできませんが、調整をするといいますか、外材輸入については、国内需給と見合って調整をしていくという方針をとるつもりでございます。
  9. 塩出啓典

    塩出啓典君 ひとつそういう点、実施に移して、もう少し秩序ある輸出輸入でないとまずいと思うんですね。それで、輸入材が年々増加して、そのために非常に木材価格が、ここ数年来むしろ下落をしていると思うのですけれども、国内産木材価格は、ここ数年どういうぐあいに変化していますか。大体わかりますか。
  10. 福田省一

    政府委員福田省一君) 最近の国内材は、外材に圧迫されましてだいぶ低下してきております。指数で申し上げますというと、昭和四十年度を一〇〇といたしますと、四十六年度には一三四%というぐあいに木材価格は、素材の点でございますが、上がってきております。四十五年度が一四二%。四十年度からずっと上がってきておりまして、四十五年度が一四二で大体ピークでございます。それから四十六年度に入りましてから初めてダウンしまして、特に四十五年度の十一月以降価格がダウンしたのでありますが、四十五年度の一四二%に対して、四十六年度は一三四%というぐあいにダウンしております。
  11. 塩出啓典

    塩出啓典君 私がいただきました資料では、スギ中丸太昭和四十三年が一四二で、それからあとずっと下落をしておる。また、ヒノキは四十四年が二〇八で、それからずっと下落をしておる。そういうわけで、非常に物価が上昇している中で、木材の値段が下がっている。しかも過疎化による労働力の減少、労働力老齢化によって、健全な森林経営はますます困難になっている。それでは山は荒れるばかりであるし、これではやはりたいへんだと思うのですね。やはり何か抜本的な対策を立てなきゃならぬと思うのですけれどもね。そういう点、農林大臣はどういうように考えておりますか。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま御指摘のような労働力の問題もあり、その他、前に御指摘のような外材の問題もあり、林野行政を取り巻くきびしい情勢はこのままでは捨てておけないという感じは、御指摘のとおり私も痛切に感じております。各種審議会などへも抜本的対策を講ずる諮問も出しておりますし、部内におきましても検討しておりますから、四十七年度、今年中あたりにその方策も打ち出して御批判をお願いしたいと、こういうふうに進めておる次第でございます。
  13. 塩出啓典

    塩出啓典君 群馬県の森林業者からも、いろいろこまかい要望点もきておりますが、これは次の委員会機会等に譲りたいと思います。そこで、先ほど林野庁の今年二月の方針によりまして、いわゆる国有林野事業経営方針自然保護重視経営に移るわけでございますが、そうなると、独立採算制をとるということが非常に困難になってくるのじゃないかと思うのですがね。そういう点で、特別会計独立採算制は改めるべきだという意見もあるし、また一方では、第二の食管になっちゃいけないという意見もあるわけでございますが、そういう点で農林大臣はどう考えておりますか。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほどから私が申し上げておりますように、森林公益性といいますか公益性がこれは元来多いのでございます。これは森林行政を、幕府時代から各藩を見ましても、そういう面に非常に力を入れておった。ところが、いまは採算といいますか、収支が均衡をとれるような、独立採算制みたいになっておるのは私はあまり好ましくないと思います。  で、これはだいぶ森林利益があって、その森林利益から一般会計へ金を繰り入れる、こういう必要から特別会計になってずっときておるのでございますが、最近のように、森林公益性を深く認識してその方面の施策をするということになりますと、営業をやっているわけじゃありませんから、独立採算制で幾らもうかった、幾ら損した、こういう制度は、少し考え直さなくちゃいかぬと私は思います。でございますので、今年などにおきましても、一般会計から森林特別会計のほうに相当繰り入れをしたわけでございます。もとは、森林会計のほうから一般会計繰り入れておったのでございますが、いまは逆になりまして、とても独立採算でやっていけない、公益性に力を入れれば入れるほど。そういうことになってきていますので、一般会計のほうから特別会計のほうに繰り入れ相当多くことしはいたしましたが、今後ともそういう方面も考え、また、特別会計という独立採算的なことがはたしていいのかどうかということについては、相当深い検討をする必要があると私は思っております。
  15. 塩出啓典

    塩出啓典君 大蔵大臣はこの問題をどう考えられるかですね。御意見を。
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 自然保護を中心にということになりますというと、当然、特別会計収支にいろいろな変化は出てくると思いますが、いま国有林野事業特別会計の経理上の問題は、自然保護に力を入れることによって伐採量が減るとの問題だけではございませんで、先ほどからお話が出ておりました外材輸入とか、あるいは代替建材が多くなることでの値下がりというようなこと、それにあわせて人件費増高というようなことが関係して、いまの財政の悪化を来たしておることでございますから、これについてはいわゆる抜本策を考えなければ、その次の予算措置をどうするかというような問題が出てこないのじゃないかと思います。ことに、この会計は、人件費がもう六〇%近いという特別会計でございますので、こういう点についても、これは特別会計のあり方ということも考えなければなりませんし、そういう意味で、林政審議会がこの問題を取り上げて、国有林部会でいまこの抜本策と取り組んでおる最中でございますので、私は、この結論を見てから、この独立採算制の問題、国費としてどれくらいのめんどうを見る会計にしたらいいかというようなものを、やはり国有林部会結論を見てから私はきめたいというふうに考えております。
  17. 塩出啓典

    塩出啓典君 わが国の森林は、戦後の荒廃から一貫して造林を続けてきている事情のために、非常に幼齢木が多くて、そのために、伐採期に来た人工林面積はいま少ないわけですね。そういう点で、長い将来を見通した、そういう抜本的な対策を立てて、やはり国の方針がはっきりしないと、現地のほうでは、どうしても独立採算制のために、低賃金、しかも伐採量をふやさざるを得ない。そういうわけで、根本の方針が変わらないと、うまくいかないのじゃないかと思いますが、そういう点で善処を望みたいと思います。  それで、次に、少し具体的な問題でございますが、先般、私、鳥取県の佐治村というところ、三国山のほうへ行ってまいったのでございますが、国有林を皆伐したために洪水が繰り返されて、その結果、十二億六千万円の総工事でダムをつくっておるわけです。この間完成したわけですけれども。結局、生産第一に走りすぎる。やっぱり山を切る場合には、たくさんまとめて切ったほうが確かにコストは安いわけですけれども、行ってみると、山全体がそうなっているわけです。そのために、三十四年、五年に切ったわけですが、それからあとずっと洪水がありまして、大体三十四年、四十年、四十一年と、被害も四億、一人死亡しているわけですね。そして、その後着工して、ダムができたわけでございますが、こういう伐採計画も、コストの面からいえば全部切ったほうが安いわけですけれども、総合的にいえば、やっぱりそのほうが損してしまうわけですね。そういうような点は、私は今後厳重に改めてもらいたいと思いますが、どうですか。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御指摘鳥取県の個所につきましては、私もよく事情は承知しておりません。おりませんが、いまのお話のように、たくさん伐採すればコストが安くなりますから、とかく現地でそういうことをやりがちだと思います。でありますので、今度、全面伐採というのは、してはいかぬという指令を出しました。分散伐採といいますか、筋をつけてやるような計画伐採するように、もうすでにそういう指令を出しております。森林伐採した、そこへダムを、いまの御指摘のように、つくったそうですが、森林そのものダムなんです、ほんとうは。森林そのものが水をためており、その水を適当に流していく、こういう機能なんでございますが、いまのお話のように、全面的に、また広地域を伐採すればするだけ、労働力もそこで省けるし、またコストも低下するというようなことで、やった例は、なきにしもあらずだと私も思います。御指摘現地はよく承知しておりませんが、先ほど申し上げましたように、そういう全面伐採ということはやめさせましたから、下のほうにも徹底させるつもりでございます。
  19. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、長野県の南アルプススーパー林道もつくったけれども、非常に土砂くずれが頻発をして満足に通れない。地質の専門家は、道路をつくるような状態ではない、非常にその道路のつくり方がめちゃくちゃだというようなことがいわれているのですが、その点はどうですか、わかりますか。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これも、私も具体的にその現地を見ておるわけじゃございませんが、一般から考えまして、あるいはまた森林経営という面から考えましても、林道要望は非常に強いのでございます。それで林道をどんどんつくっていく。なお林道のうちでも大きな林道、こういうものは希望が地元から非常に多いものですから、そういう林道をつくってきたと思います。しかし、林道をつくる際に、非常にそこが、何といいますか、砂がくずれたり地がくずれたり、あるいは林道建設中に非常に支障を来たすというような例も、ちょいちょい耳にいたします。環境庁などでも、そういう面から、いろいろ地元の市町村の要望等で、林道についての考え方を直してくれというような要望もございます。また、一方においては、林道をもっともっとつくってくれというような要望もございますから、そういう問題は、御指摘のような、林道をつくるために被害を受けることのないように、十分注意しながら林道を開設していくという方針で、林野庁にも私が命令して、慎重にやるようにいたさせます。
  21. 塩出啓典

    塩出啓典君 大石環境庁長官にお聞きしますが、やはりそういう自然破壊というのは、ある面から言えば、むしろ経済的な損失にもなっていくと思うのですね。そういう点で、自然環境保全法案環境庁は必ず成立をさせたい、そういうように聞いているわけですが、本国会に出せるのかどうか。一部難航しているやに聞いているわけなんですが、その点、どうでしょうか。
  22. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 自然環境保全法案は、この国会にぜひ提出いたしたいと願いまして、努力いたしております。おっしゃるとおり、いま非常に難航いたしております。ことに、林野庁との間の意見の相違がまたございまして、この調整にいま努力しておるわけでございますが、明日までのタイムリミットで、何とかお互いに意見調整しようということに申し合わせをいたしまして、いま努力いたしております。ですから、明日じゅうには私は合意を得るものと考えておるわけでございますが、それには、やはり林野庁としてもいろんな意見もございましょうし、われわれのほうにも意見がありますが、ある程度は意見調整をしなければならぬと思います。そういうことで、われわれが考えておりましたのと多少違う形にはなるかもしれませんが、とにかく、このような法律を通して、そうして自然保護の国の体制を少しでも固めていくことが大事であると考えまして、一生懸命努力いたしております。明日じゅうには、この方向が決定するものと私は考えておる次第でございます。
  23. 塩出啓典

    塩出啓典君 林野庁のほうはどうですか。明日までにということですが、大体どういう点でどこが問題になっているのですか、それをお聞きしたいと思います。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 林野庁のほうも協力させておりますので、私のかわりに次官も出て、大いに協力しろといっています。ただ問題は、木を切っちゃいかぬということだけじゃないんです、林野は。昔から、「木切らぬばか、木植えぬばか」といって、木を植えないばかもあるし、木を切らぬやつもばかだ、こういうことを俗に言っているくらいですから。それから林野から言えば、やっぱり用を足さないような悪いところなんか切って、新しいものに植えかえて、どんどんいいものにして自然環境を一そうよくする、こういうことが林野のあれだと思うんです。そういう意味におきまして、全面的にどこもここも切るなということになると、これは林野自然環境をよくしていく機能をそのままにして、悪い木ばかり残していっても困る。そういう点が根本的にちょっと考え方が違っているんじゃないかと思いますが、これは話し合えば調整できる問題です。でございまするから、林野庁長官、次官なども、環境庁と話し合いさせますから、これは結果的には私は調整できる、話し合いができる、こういうふうに信じております。
  25. 塩出啓典

    塩出啓典君 環境庁長官にお伺いしますが、これは私、新聞で見たのですけれども、第一種は禁止になっておりますよね。それはあれでしょう、一応禁止だけれども、いま農林大臣が言ったように、もう木が枯れかかって、早く切って植えかえたほうがいい、そういうところはやっぱり切っていいわけでしょう。禁止になったら、もう、たとえ野となれ山となれ、絶対切っちゃいけない、そういうのじゃないと思うんです。それはどうなんですか。
  26. 大石武一

    国務大臣大石武一君) その詳しいことは、いま自然保護局長がおりますから、局長からお答えさせますが、木は、ことに自然林、天然原始林というものは、できるだけ手を加えないで温存してまいりたい。それはいろいろな段階によります。当然、ある程度手を加えていい場合もありますし、それから大部分手を加えてもいい場合、いろいろ段階に分けて考えておりますが、できるだけ、なるべくは自然の姿で残したいというのが希望でございますが、もちろん、林分の生態を十分に考えまして、この際このような木を更新して、このような形に変えたほうが生態的に一番林分が繁栄するというような場合には当然そのような手を加えなければならぬと思いますが、詳しいことは、ひとつ局長からお答えいたさせたいと思います。
  27. 塩出啓典

    塩出啓典君 よろしいです。  それで、ひとつ、この法案は何とかよく調整をして、私はやはり林野庁の立場も、話し合えば結論が出る問題じゃないかと思うんですよ。縄張り等にとらわれないで、ひとつやってもらいたいと思うのです。  特に、この法案に関連して、瀬戸内海の埋め立ての問題ですけれども、長官は、先般、瀬戸内海を飛行機でずっと回られたわけですけれども、瀬戸内海の埋め立て状況を見て、どういう感想を持っておりますか。
  28. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 率直に申しまして、各県がでたらめに、かってに、都合のよさそうな入り江みたいなところを片っ端から埋め立てているような感じがいたしました。ところが、瀬戸内海沿岸の十一府県では、お互いに協力し合って、瀬戸内海を何とかもとのような姿に保ちたいということで協議会をつくりまして、われわれにもたびたび陳情があり、そのような陳情が、やはりわれわれの内閣における瀬戸内海沿岸環境保全促進対策会議ですか、こういうものをつくった土台にもなっているわけでございますが、そのような申し合わせをしているにもかかわらず、相変わらず埋め立てが行なわれております。ことに、県の名前はあげませんけれども、二、三の県では、自分のほうの県はよその県より埋め立てがずっとおくれている、これじゃつり合いがとれないから、もう少しやらなければならぬのだというようなことを言っておる県もございまして、私としては、この問題に非常に頭を悩ましております。やはり、この埋め立てというものはできるだけ押えていかなければならぬ、それには、できるだけみんなで歩調を合わせて、必要やむを得ないものであって自然を保護できるような形においてやっていきたい、調和のある形にしていきたいと、こう考えておる次第でございます。
  29. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま言われましたとおりでございますが、しかし、建設大臣にお聞きしたいのでございますけれども、いま、いわゆる公有水面埋め立て法というのは、各知事にその権限がまかされて、しかも、これは運輸省関係ですか、港湾なんかの場合には港湾管理者にまかされているわけですね。そういう点で、これからの海の埋め立てというのは、単なる宅地造成ではなくて、やはり瀬戸内海全体あるいは全体の環境保全という立場から考えていかないと、ばらばらではいけないと思うんですよ。そういう点で、やはり埋め立て行政というものは一元化すべきじゃないか、私はそのように思うんですけれども、建設大臣はどうですか、そういう点、意見は。
  30. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 公有水面の埋め立ては、現在の埋め立て法の定むるところによってやっておるわけでございまして、これは所管は建設省と運輸省ということになっております。公有水面の埋め立ての免許につきましては、国有財産である水面を埋め立てて、そこに権利を設定しようというものでございまするから、その認可にあたっては十分の注意をしなければならぬことは当然でございます。それが公共の福祉に沿うように十分注意をしなければならぬことは当然でございます。この権限は大部分は知事に与えられておりますが、五十ヘクタール以上は建設大臣または運輸大臣ということになっております。また、一部分につきましては、漁港権が設定されておるようなところは、これは水産庁の長官というようなこともありますが、十分われわれは注意をして指導いたしておるところでございまするが、いま言いましたように、中には、いろいろ公害を起こしておるようなところがないというわけにはいきません。いきませんが、今日瀬戸内海は非常にきたなくなっておるということでございまするから、今後はひとつ、その公有水面の埋め立てにつきましては、権利が設定されるのでございますから、あくまでも公共のために、その利益になるというようなことが確信されなければ認可をしてはいけない、かように思って監督を十分強化するつもりでございます。
  31. 塩出啓典

    塩出啓典君 建設省、運輸省に分かれているわけですけど、どうなんでしょう、今度の自然保護法の中に、水域の埋め立てについては、私が新聞で見た原案には、それが入っているんですけど、この自然保護法ができれば、その埋め立ての是非については、やはり環境庁環境保全という立場から相談に乗る、あるいはそういう要素が加えられなければならぬと思うんですけど、そういう点、どうですか。
  32. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま公有水面の埋め立てのお話でございます。確かに、一般の水面につきましては建設省、港湾の内側は、管理全部、運輸省の所管でございまして、やっている次第でございます。  ことに、ただいまお話がございました環境保全の立場からいたしまして、今日の港湾の埋め立てにつきましても、環境保全の点を十分に考えましてやることは当然でございまして、御承知のとおり、港湾の埋め立てにつきましては、港湾計画に即応したもの以外は絶対に認可をしておりません。また、港湾計画にのっとったものにつきましても、港湾審議会にかけまして、港湾審議会の議に付しまして、そしてかけることになっておる次第でございます。港湾審議会の委員には、御承知のとおり、環境庁の事務次官が委員に入っておりまして、そこで十分に環境庁意見も取り入れまして、自然保護に遺憾なきを期すということでやっております。また、平生建設省とは十分連絡をとっておりまして、水面の保全につきましては遺憾のないように期している次第でございますので、御了解を願いたい、こう思う次第でございます。
  33. 塩出啓典

    塩出啓典君 環境庁長官。
  34. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いま運輸大臣からいろいろお答え申し上げましたが、今度の法案の自然保護地域につきましては、埋め立てする場合には環境庁の許可を要することとなっております。なお、瀬戸内海のような、大部分が国立公園に入っておるような地域におきましては、やはりこれは環境庁の許可を得なければならないものと思います。大体そうなっております。そのほか、たとえばいまのお話にありましたように、港湾審議会にはわれわれの事務次官も入っておりますから——こういうことで、去年まではこのような体制はできておりませんでしたが、いまからは、一応こういう体制が整いましたので、これからみんなで緊密に話をいたしまして、できるだけ日本の埋め立てが正しい秩序のもとこ行なわれるようにいたしてまいりたいと考えております。
  35. 塩出啓典

    塩出啓典君 瀬戸内海も、ずっと、周防灘開発計画等もありますし、そういう点もよく環境保全の立場から慎重にやっていただきたい、そのことを要望しておきます。  次に、地盤沈下の問題で、先般いろいろこの委員会で質問をしたその続きでございますが、非常に地盤沈下のいわゆる実態を環境庁もよくつかんでいない。地盤沈下のためにガスパイプが切れたとか、この前言ったように、水田が非常に水没しているとか、かなりそういう被害が出ているわけですね。やはりそういう被害の実態というものを、これは調べなきゃいけないと思うんですよ。地盤沈下は、ちゃんと公害対策基本法の典型公害の中に入っているわけです。政府はその調査の責任があるわけですから、そういう点で、そういう被害の実態を実際に調べて、そして地下水をくみ上げるということがどれぐらい国土の破壊をもたらすものであるか、そういうものをはっきりさせていくことも、国民全体の認識を高める上に大事じゃないかと思うんですけれどもね。そういう被害の実態を調査すべきだと思いますが、その点どうですか。
  36. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ただいまのお話のとおりでございます。一応、いままでは大体建設省が中心となりまして、いろんな地盤の沈下の状態、現状を調べてまいっておりますが、必ずしも全部を調べ尽くしたわけでもございませんし、まだまだたくさん手抜かりがございます。こういうものは、われわれの役所だけでやれますかどうか。所管の関係のある建設省とか各地方の自治体と十分に連絡、協議をいたしまして、できるだけ早く実態をつかまえることに努力してまいりたいと思います。  なお、御承知のように、地盤沈下の大きな原因は大体地下水のくみ上げだろうと思われておりますが、まだそのほかに何らかの多少の原因があるかもしれないということで、それがいま、一応この問題をいろいろ推進するための引っかかりになっているわけでございます。こういうものにつきましても、それから、地下水がどの範囲まで一体くみ上げの影響があるのかどうか、そういうことをもう少し詳しく調べなきゃならぬということで、四十七年度にはそういう対策を、たとえば井戸を掘るとかの予算を取りまして、できるだけその実態と申しますか、その基本的なものも調べ上げてまいりたいと考えている次第でございます。
  37. 塩出啓典

    塩出啓典君 建設大臣にお伺いしますが、国土地理院が地盤沈下のそういう測量はやってきているわけですが、いろいろ調べてみますと、いままで測量してきたのは、わりあい地盤のいいところを測量して、ほんとうに地盤沈下の、ゼロメートル地帯だけの測量、そういうものはまだあまり進んでいないわけですね。やはりゼロメートル地帯というのは地震や台風のときの非常に危険な地帯ですから、特にそういうところを重点的に調べて、全国でどこそこはゼロメートル地帯がどれだけあって、そこには何人住んでいるんだと、そういうこともやっぱりはっきり常に調査しなければいけないと思うんですが、そういう点、ひとつさらにゼロメートル地帯の測量というものを重点に、優先してやってもらいたい、そうお願いしたいんですが。
  38. 西村英一

    国務大臣西村英一君) いや、そうではありませんで、東京だけじゃございません、全国で公共団体が地盤沈下の調査をいたしております。その場合一番大事なことは、公共団体ではでき得ない水準の測量ですね、水準測量は、国土地理院でやっておるわけでございます。その実施、それからその結果の取りまとめというようなものは、国土地理院でやっております。そうして、それを地図にあらわすとか、あるいは報告書をつくりまして、いまやっておるところでございます。東京、名古屋、大阪、北九州、佐賀県、必ずしも地盤沈下というのは地下水のくみ上げということのみではございません。した、がいまして、あらゆるところに起こるわけでございます。新潟県のようなところは、地下水のくみ上げとか、そういうところだけじゃございません。したがいまして、この国土地理院で水準の測量、これを受け持って、その結果は、各公共団体と打ち合わせまして地図に書き込んで、その成果も、報告書も出しておるところでございまして、今後全国的に、これはやはり国土地理院で詳しいこのデータを集めたい、それによって対策を考えたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  39. 塩出啓典

    塩出啓典君 ひとつそういう点、よろしくお願いいたします。  それで、農林省にお伺いしますが、先般お話ししましたように、千葉県等では、かなり地盤沈下のために水田が水没しているわけですね。そういう実態をよく調べてもらいたいと思うのですけれどもね。千葉県等は、まだ市当局もあまりよくつかんでいない状態ですね。聞くところによると、新潟県においては、天然ガスで地盤沈下したところに、農林省が予算を出してそういう排水の工事をやつでいるやに、新潟地区特殊排水事業というものを、四十七年度もかなりの予算で、十六億五千四百七十九万ですか、出してやっているわけですが、そういう方式なりに準じてやはり対策も立てるべきじゃないかと思うのですが、その点どうでしょうか。
  40. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本の国土の成立からいって、ここは湿地帯で、まあ水田地帯ですから、だんだん乾田化したり工業地帯になるものですから、全体として地盤は沈下します。でございますので、農林省としても早くから、いままで土地改良なんかをしましても、地盤沈下しまして、用水排水がきかなくなってしまったり耕作物が浮き上がったりして、それで湛水防除事業などというようなこともして排水をよくしたりなんかしている、こういうこともやっています。また、御指摘のように、新潟は天然ガスをとりまして地盤沈下をする。一面においては、山くずれがありまして災害が起きるということでございまするから、排水等の仕事をしていますが、千葉県等におきましても御指摘のとおりのことがございます。でございますので、農林省としても、四十七年度において徹底的に調査するということで、調査費を計上しまして調査することにしていますが、そればかりではなく、それに対する対策というものも講じていくという方針で進めておりますから、御了承願います。
  41. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、これは通産省にお願いしたいわけでございますが、地盤沈下の問題については、抜本的な対策環境庁が考えるというお話でございますが、それはそれとして、やはり非常に工業用水の使用の実態というものが、企業によっては九〇何%回収水を使っているのもあれば、中には排水を希釈するに地下水を使ったり、非常に工業用水の使い方がよくないと思うのですね。やはり水資源は非常に足りないわけですから、工業用水の使い方というものは厳重に指導をして、もっと合理的に使うように、海水を使うとかあるいは回収水を使うのを義務づけるとか、そういうような指導が必要ではないかと、そういうふうに思うわけですが、その点どうでしょうか。
  42. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 工業用水はだんだんと需要が大きくなってまいりますが、しかし、水資源の開発にも困難性がだんだん大きくなりつつあります。工業用水の使い方、再生水等の使い方とか、これから研究をして効率的な水資源の活用ということをはかるべきだということで、いま通産省でもいろいろな角度から検討いたしております。
  43. 塩出啓典

    塩出啓典君 実は、昨年の予算委員会のときに、大体通産省はそういう意図に沿って工業用水法の改正をするといって、案までできておったわけですが、間に合わなかったか、どういう理由か知りませんが、昨年は中止になったわけですね。それからもう、一年もたっているわけですけれどもね。やはり私は、ちょっと通産省のやり方はのんびりしているんじゃないかと、そういうふうに思うわけですけれどもね。そういう点どうなんですか、それは。
  44. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 今度の国会で工業の再配置促進法案の審議をお願いしているわけでございますが、実際、東京や、大阪、名古屋というような、集中的に工場が集っておりますものを是認をしておる場合は、まあ水資源の開発、それから再生水の使用、海水の真水化等、いろいろ考えなければなりませんが、しかし集中地域というものの地下水のくみ上げは、もう全面的に規制をしなければならないような状態になっております。東京等は、もう五百五十メートルないし六百五十メートルよりも浅いところからは水は取れないという規制をいたしておるわけでございます。ですから、六十年を展望して考えますと、やはり工場の再配置というものを行なわなければならないという考え方が前提になるわけであります。集中を無制限に許しておいて、水とか、地価の抑制とか、公害の排除とか考えても、これには限界があるわけでありまして、どうしても国土の総合利用ということから広範な検討を進め、その中で工業用水法の改正も取り上ぐべきだという考え方に立っております。  六十年を展望しますと、水はいまの大体、倍以上貯水をしなければならないということで、建設省にも積算をしてもらったのですが、全国で、大ざっぱに申し上げて千カ所くらいのダムを必要とする。これは工業用水だけではありませんが、そういう状態でございまして、その計画に沿って、いまダムサイトの調査等行なっておるわけでございます。  まあ、世界で水は一番豊富だといわれておる日本でありながら、集中的な立地を許しておったというところに問題があります。ですから、もう阪神地区などは、いま千万トンの水が二千万トンになるということになりますと、琵琶湖の開発などがいま現に計画をせられておりますが、それだけではどうにもならないという状態でございますので、根本的には、全国的視野に立った水資源の活用開発ということを前提にして、しかもやむを得ない地区に対しては、工業用水の確保をはかるために水資源の開発を行なう。その上なお可及的すみやかに、地盤沈下地域の地下水のくみ上げというものも全面禁止の方向に持っていく。そういう前提というものをはっきりきめて、それに対応する工業用水の確保という施策を完備すべきだという考えでございます。
  45. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから私が言うのは、現段階でも、そういう水の合理的な使用というのは、これはもう大いに指導できるわけですからね。だから、それをもっと強力に——現実に水が足りなくて、上水道にもだいぶ地下水をくみ上げているわけですから、どうしてもそれはやむを得ないものもあると思うのですよね。けれども、もう工業用水道がなくても、現在の段階では工業用水道がないと規制はできないわけですけれども、工業用水道がなくても、使用をもっと減らせる。安いからといってくみ上げても、結局結論的には大きな損失になるわけですから、そういう企業の工業用水を節約をして、もういいかげんなのは地下水をくみ上げさせないという、そういう強い態度で臨んでもらいたい、そういう要望です。
  46. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 通産省の指導は、水の効率利用ということを指導するわけでございますが、これは地域的には、千葉県、東京都等地下水のくみ上げを禁止しておりますから、やはり禁止をすることによって工場が追い出されるというようなことが相またなければ、政策効果はあがらない。新潟のように、水溶性ガスをくみ上げたものは、圧力をかけて、分離された水をまた地下に戻すというようないろんな方法をやっております。技術的にも相当開発されております。しかし、通産省としても、町の中における工場について、工業用水道がまだ設置されていないために地下水のくみ上げの禁止ができないというようなところでは、水の効率利用、特に排水の利用等々いろいろなことを考えなければならないはずでございますし、また、そういうことは考えております。おりますが、東京都が今度全面的な禁止をやるというように、地方自治体が、地盤沈下を抑制するためにビル用水や工業用水のくみ上げを禁止するという措置と相まって、これらの問題は国家的なものになる、このように考えます。
  47. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、きょうは時間がないので、最後に運輸省に。  タンカーからのいわゆる廃油処理について、海洋汚染防止法ができまして、六月から本格的適用ですけれども、現在でも、もうすでに百五十トン以上のタンカーについては、廃油処理施設のある港に向かう場合は、必ず廃油処理施設にかけなければいけないという、そういう規定があるわけでございますが、たとえば岡山県の水島港の廃油処理施設等は、一月のうち一日分ぐらいしか稼働していないわけですね。適用を受ける黒ものの油を積んでいるタンカーが、千五百隻ぐらい入港するわけですが、そのうち処理施設を使っているのは、わずか平均して十隻なんですね。こういう状態では非常に困ると思うのですけれどもね。こういう原因は何か。そうして、今後はもう少し取り締まりを強化してやってもらいたいと思うのですけれどもね。
  48. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま御指摘がございましたように廃油処理施設、これを整備をいたしまして、そうして海洋におきまするところの汚染を防止するということは、ほんとうに緊急の要事であると思っている次第でございます。したがいまして、御承知のとおり、各製油所におきまして自主的に廃油処理施設をつくる以外に、国と自治体とが相談をいたしましてつくっているものが、すでに四十六年で二十四港、四十一施設がございます。本年予算の御可決を願いますれば、四十四港の六十七施設になる次第でございまして、その予定でございまして、漸次これを整備してまいる。  しかし、ただいまお話がございましたとおり、やはり処理施設を使う指導方面、あるいはまた処理施設の器具等におきまして、まだ欠くるところが実際問題としてあるのじゃないか。その点をよほど強化をしていかなければならぬということでございまして、それらの点で、利用者に不便でございましたらば、それらの整備にもこれから当たっていかなければならぬ。また処理施設を十分使うように、要するに海洋汚濁防止の思想というものを、各そういったタンカーの運航者に徹底せしむるような施策が一番必要でございますとともに、お話がございました監視体制ということはほんとうに強化をしてまいりたい。  これはすでに御承知と思いますが、検挙件数も非常に上がってきております。これは、私ども監視体制を非常に強化をした一つの実例でございます。すでに私どもの海上保安庁の第五管区、第六管区におきましては、海上公害監視センターというものが設けられておりまして、舟艇あるいは航空機取締官というものも増強しておりまして、これを強化している次第でございますが、予算の御賛成を願いましたならば、四十七年度におきましては、第七管区にも海上公害監視センターをふやしまして、瀬戸内海のそういったような体制の強化をする。また航空機あるいは巡視艇というようなものも非常に強化するとともに、それらの体制の人員も相当、今度は十七名もふやしまして、それに専門に当たらせる、第七管区だけで当たらせる、こういうふうな体制をとっている次第でございまして、一そうそれらの点を、御趣旨に沿いまして強化をいたしてまいりまして、タンカーによる汚濁防止についてはできるだけのことはやってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  49. 塩出啓典

    塩出啓典君 廃油処理施設を使えば時間もかかるし、料金もかかると思うのですけれどもね。しかし、私らが見ますと、大体原油価格の〇・三%ぐらいあればできるわけですからね。やはり海というのは国民の海なんですから、だから、やっぱりたれ流し——これからどんどん油の量もふえているわけですし、油のよごれる件数も年々瀬戸内海もふえているわけですから、そういう点はやはり企業のモラルの問題もあると思うし、また、ちゃんと船には油の記録簿もあるわけですから、もう少し海上保安庁も厳重にひとつやってもらいたいと思うのですよ。それをひとつ要望しておきます。詳細はまた委員会等で詳しくやりたいと思います。  で、最後に、一昨日の専売公社のほうの結果を簡単に御報告願いたいと思います。
  50. 福間威

    政府委員(福間威君) さっそく調査いたしました結果を御報告申し上げます。  問題は、錦海塩業の排水が錦海湾のカキの生産に影響を与えるのではないかという問題でございます。錦海塩業の排水につきましては、従来から、県のほうからその水質を絶対中性に保つようにという指示を受けておりまして、会社のほうもその指示をずっと守ってきておりますし、それから岡山県の試験結果によりましても、錦海塩業の排水が県の公害基準をおかしているというようなことはないようでございますが、昨年の初め、錦海湾のカキが減産をいたしまして、地元のほうから、これは錦海塩業の排水が原因ではないかという声が出まして、岡山県の意向のもとに、昨年四月から、県、地元の邑久町、牛窓町、地元漁業組合、錦海塩業等の関係者によりまして対策委員会をつくりまして試験を行なっております。試験は、カキの試験だなを錦海塩業の排水口の近くに設けるというような方法でやっておるようでございまして、一部に減産が認められておるようでございます。で、試験結果につきましては、近く岡山県の水産試験場のほうで結論を出すということになっております。  以上が御報告でございますが、この水産試験場のほうの結論が、科学的に錦海塩業の排水であるということが判明しなくても、錦海塩業がその原因に何らかの関与をしていると考えられる場合には、岡山県が、その解決を指導するということになっているというふうに聞いております。したがいまして、私どものほうといたしましても、専売公社のほうに、この県の指導に協力させるようにいたしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  51. 塩出啓典

    塩出啓典君 では、その点は、錦海塩業の入り口に近いところほどカキが非常にできが悪くて、一番近いところは二割ぐらい、平均して四、五割ぐらいと、そういう事情でございますので、地元の漁業組合とも十分ひとつ話し合って、すみやかな解決をしていただきたい。また、将来そういう塩田もできるわけですけれども、そういうことのないように、ひとつ万全の対策を立ててもらいたい。そのことを要望して、終わります。
  52. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で塩出君の質疑は終了しました。     —————————————
  53. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、松井誠君の質疑を行ないます。松井君。(拍手)
  54. 松井誠

    ○松井誠君 財政投融資の問題をはじめ、財政経済の数点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、財政投融資についていろいろお尋ねをいたしますが、その前に、ことしの秋の一応予想をされる補正予算——これは補正予算の可能性があるかないかという質問のしかたではなくて、もし補正予算を組まざるを得ない事態になった場合に、一体財源はどうするかという観点でお尋ねをしたいわけです。  で、経済企画庁のいろんな景気の指標は、いわゆる景気の底がため——上昇に向かいつつあるような形になっておりますけれども、しかし、やはりその底にある深刻な通貨不安ということを考えますと、いままでのこの経済指標から常識的に推測するような形には簡単にはいかないんじゃないか。したがって、ことしの秋、大臣が期待をしておるように景気が浮揚をして、初めて来年には立ち直るというところへいくかどうか。特に、財界では、公債発行三兆円という、そういう要望が依然としてあるわけでありますから、景気浮揚のための補正予算を組まなければならぬという可能性は私は相当あると思う。それだけでなくて、たとえば生産者米価を上げるとか、あるいはベースアップとか、補正予算を組まなきゃならぬ要因というのはほかにもあるわけです。しかし、私は、いまその可能性の問題を問題にしておるのじゃなくて、もし補正予算を組むとすれば、一体財源はどうされるのかということをお尋ねしたい。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、普通の、例年度見られるような補正予算は組むことはございましょうが、景気対策の補正予算は本年度組まなくて済むと、こういう見通しのもとに今年度の予算編成をやっておりますので、したがって、そういう事態が起こった場合の財源というものについては、これはそのときに考えないといけない問題であろうと考えております。たとえば、建設公債の発行にいたしましても、御承知のように、ほとんど本年度は限度一ぱいの発行ということで、もう不況回復はこの本予算で勝負するという態勢で出ておりますので、そういう点から申しましても、赤字公債を出さないという範囲内の予算措置は本予算においてとられておりますので、したがって、私は、あらゆる努力を払っても、景気回復のための補正予算に追い込まれないという措置をとるつもりで、この本予算の編成に臨んでおる、こういうことでございます。
  56. 松井誠

    ○松井誠君 大臣の願望としてはわかりますけれども、しかし、必ずしもそういう事態になるかどうかわからないと思うのです。で、そういう状況での補正予算でありますから、税金が財源になるということも考えられない。どうしても建設国債ということになるわけですが、いま大臣も建設国債はほとんど一ぱいだと言われた。建設国債は、いまの対象公共事業のワク内で、大体ギリギリ——どれだけまだ出せる予定なのですか。
  57. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債発行対象経費の総額は二兆一千百三十億円でございますので、したがって一兆九千五百億円の公債を発行する場合に千六百三十億円の発行余力があるということでございます。
  58. 松井誠

    ○松井誠君 千六百三十億まるまる出せるのですか。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) あとは解釈の問題でございますが、たとえば自動車重量税の収入というものは、一般財源ではありますが、事実上使途は特定されているような性質の税ということ。また、競馬会からの収入というようなものも、草地開発というふうに公共事業で特定された部門へ支出するというようなことになっておりますものは、やはりこの際余力として見られるかどうか疑義がございますので、こういうものを九百何十億引くということになりますと、問題のない余力としては、五百五、六十億円と、こういうことになろうと思います。
  60. 松井誠

    ○松井誠君 解釈の問題ではなくて、私はそれは問題として、自動車重量税の問題にしても、これは公共事業にやるということになっておるわけですから、いまさらその分はこの国債の対象の公共事業とは別の、たとえば防衛庁の施設の費用のほうへ、そちらを回そうというような芸当はまさかできないでしょう。ですから、やはり一千六百三十億のうちで、自動車重量税相当分、あるいは競馬会の納付金の相当分、それだけは当然やはり公共事業として、その財源として初めから予定をされてあるもんなんですから、それは当然引いて、残りだけがその建設国債の発行の余力、こういうことに当然なるわけでしょう。解釈の余地などというものではないんじゃないですか、はっきりさしておいてください。
  61. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは当初予算を盛るときに私どもは非常にこの問題を検討いたしましたが、いずれにしろ、一般会計の収入である以上は、そこに若干の問題がございますが、しかし、いま言ったような解釈で、これは余力と見ないことのほうが妥当であろうというふうに、私どもはいまのところ考えています。あとは、いざというときのための弾力条項としては、政府保証債というものについての弾力的な措置がとれるようになっておりますし、ほかだ、本年度は予備費の準備も相当しておるという程度でございますが、これはまた、予備費は、平常のこの予算補正の問題に対処する必要もございますし、こういうものは不況対策の予算としては期待できないものであると思っております。
  62. 松井誠

    ○松井誠君 私も、大臣が赤字国債というものに対して抵抗をして、とにもかくにも、この建設国債のワクの中でとどめたという努力は多とするものであります。しかし、もし今度大型の補正予算を組もうということになれば、どっちみち赤字公債以外にはない。大臣、悪いときに大臣になったと私は思うんですけれどもね。しかし、そのときに大臣になっておられるかどうかわかりませんが、しかし、そうなりますと、私はやっぱり、しわ寄せば財政投融資に来るんじゃないかと思うんです。いまちょっとお話がありましたが、財政投融資というのは、もうほとんど第二の予算と言われるような実体を持っておって、一般会計が窮屈になると、どっちみち財投へ来るわけです。財政投融資の追加の原資としては、一体どれくらいを見込んでおられますか。
  63. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政投融資の追加原資としては、郵便貯金の動向がどういうふうにいくかによって、これがきまると思います。
  64. 松井誠

    ○松井誠君 昨年度の財投の追加の場合の原資というのは、どういう状況、どういう追加になっておりましたか、数字をちょっとお示し願いたい。
  65. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の財投の追加額は七千八百九十億円でございましたが、その原資は、資金運用部資金が六千七百二十億円、簡保資金が百三十一億円、政府保証債が九百三十九億円、公募地方債が百億円、合わせて七千八百九十億円と、こういう内容になっております。
  66. 松井誠

    ○松井誠君 資金運用部資金の大部分は郵便貯金ですね。
  67. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうことでございます。
  68. 松井誠

    ○松井誠君 郵便貯金の去年の財投の計画を立てるときの見積もりと、最終的な実績とは、どういう数字になっておりますか。
  69. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 昭和四十六年度当初計画では、郵便貯金の伸びは一兆三千五百億円でございます。それに対しまして本年の三月末までの実績は一兆八千九百億円、その差額は五千四百億円でございます。
  70. 松井誠

    ○松井誠君 四十七年度の財投計画における郵便貯金の見積もりは幾らになっておりますか。
  71. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 四十七年度財投計画の原資見込みといたしましては、郵便貯金は一兆七千億円を計上いたしております。
  72. 松井誠

    ○松井誠君 昨年度で一兆八千何がしかの郵便貯金があったわけですから、当然今年度も一兆七千億の当初の予定は大幅に上回る、大体どれくらい上回る見通しか、いまの段階は、まだ、もちろん的確な予想はできないでしょうが、およその見当はつきますか。
  73. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 財政投融資計画を策定いたします際に、その大宗を占める資金運用部資金、中でも郵便貯金が大きなウエートを持っておるわけでございますが、どの程度の目標を設定するか、これは郵政省と相談をいたして決定をいたします。で、従来目標値を下回った年度もございますので、われわれ財投作成官庁といたしましては、できる限り郵便貯金の原資が多いことが望ましいわけでございますが、これは郵政省当局の判断を中心として最終的には額を決定いたしておる次第でございます。
  74. 松井誠

    ○松井誠君 だから、本年度どのくらいかわかりませんか。見通しは全然わからない……。
  75. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 本年度どの程度の目標に対する超過額が生ずるかということは、現段階では的確に申し上げる状況にございません。
  76. 松井誠

    ○松井誠君 昨年度の予算編成のときに、この財投の原資の見積もりについて、当初の大蔵原案と最終的にできた政府案とに若干の違いができたわけですが、その違いを生じた原資の見積もりの最大なものは、郵便貯金でもなければ年金でもない「その他」という項目の原資だと言われているわけですが、この辺の事情を説明してください。
  77. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいまお尋ねになりました趣旨は、四十七年度の財政投融資計画策定の際に、当初に内示をいたしました金額に対して約二千四百億円程度の復活をいたしております。その二千四百億円程度の復活の原資は、資金運用部資金の中の「その他」をもって充当いたしたものでございます。
  78. 松井誠

    ○松井誠君 「その他」というのは、具体的にはどういう原資なんです。
  79. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 資金運用部資金のおもなものは、郵貯からの積み立て金、厚生年金保険及び国民年金保険の積み立て金でございますが、そのほかに、法律の規定によりまして、各特別会計の余裕金、あるいは積み立て金もお預かりをいたしております。そのほかに、過去に融資をいたしたものの回収金もございます。それを合わせたものが、いわゆる「その他」でございます。
  80. 松井誠

    ○松井誠君 で、この当初の内示の案と、最終的にきまった案との差額の、つまりふくらんだ原資の大部分というものが「その他」になっておる。私がなぜこんなことを問題にするかというと、この予算編成のときに、いわばその税収見積もりが隠し財源になって、それが官僚の予算編成における支配の道具になっておる。それと同じようなことが、財投では、郵便貯金の見積もりとか、いま言った、わけのわからない「その他」というものの原資をふくらませる、それの見積もとを大きくしたり小さくすることによって、何か支配の道具になっておる。そういう実態を明らかにする必要が実はあると思ったからなんです。  そこで、お伺いをしますが、いま、郵便貯金、具体的にどれくらいの増があるか、必ずしもわからない。ただしかし、そのほかに資金運用部にはまだ予算編成の原資となり得るものがあるんじゃないですか。
  81. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 財政投融資計画の原資といたしましては、産投会計の出資、それから資金運用部資金、簡保資金、そのほかに政府のあっせんする公募資金、あるいは政府の保証いたします政府保証債による調達原資がございます。それを合わせたものが財政投融資の原資でございます。
  82. 松井誠

    ○松井誠君 私のお尋ねをしているのは、ふくらますことのできる原資があるだろうということなんです。  そこで、具体的にお伺いをしますが、この資金運用部では国債を持っていますね。この保有している国債の内訳、つまり当座のこの余裕金で運用しているその保有の国債と、当初から引き受けた国債の内訳を報告してください。
  83. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 正確な数字は後ほどお答え申し上げたいと存じますが、本年の三月末で資金運用部資金が当初から引き受けました国債は約五千四百億円でございます。そのほかに、先生御指摘になりましたように、短期の運用として約一兆六千億円の国債を持っております。
  84. 松井誠

    ○松井誠君 短期の運用の国債というのは、どっちみち財投の対象にはなるわけではありませんが、しかし、当初から資金運用部が引き受けた国債が四十六年度末までで五千四百億何がし。本年度は二千五百億の引き受けの予定なんでしょう。
  85. 橋口收

    政府委員(橋口收君) そのとおりでございます。
  86. 松井誠

    ○松井誠君 合計約八千億。これは、財投の追加をするというような必要のときには、売却をして原資にするというような予定はないのですか。
  87. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 資金運用部資金の保有いたしております国債には、ただいま御説明申し上げましたように二つの性格がございます。当初から運用部資金で引き受けをしたものと、その後、短期資金の運用として日本銀行から購入して保有したのと二つございます。で、後者につきましては、本来市中銀行が保有しておりましたものが、日本銀行の窓口を経由いたしまして資金運用部資金に来ておるわけでございますから、これは、ただいま御指摘がございましたような、将来の財投追加の原資が必要になるという場合には、これを売却して資金を調達する余裕があるものでございます。
  88. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  89. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  90. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいま御説明申し上げましたのは、短期運用として保有をいたしておる分について御説明申し上げたわけでございますが、原理的に考えますと、原始的に引き受けました五千四百億円につきましても、これは将来必要となれば売却し得るものと考えております。
  91. 松井誠

    ○松井誠君 大臣にお伺いをするのですが、だから、原資必ずしもないわけではない。この引き受けた国債約八千億、これはどうされますか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ですから、財投の部門においては、これは必要な場合には、まだ売却して原資にし得る余裕というものは非常にあるということでございます。
  93. 松井誠

    ○松井誠君 それじゃ、この国債について二つお伺いをしたいのですが、一つは、金融が逼迫しておって、なかなか市中消化ができないというときは別として、本度二千五百億引き受けるというのは、どういうわけなんですか。つまり、市中銀行を圧迫しないようにするという意味、配慮は、今度の場合必要じゃなかったのじゃないか。にもかかわらず、二千五百億を引き受けるというのは、一体どういうわけなんですか。
  94. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 昭和四十七年度に財政投融資を追加する場合の原資いかんという仮定の御質問でございますが、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、四十七年度予算には、いわゆる政府保証債の借り入れ限度につきましても、弾力措置を打ち込んでおります。さらに、借り入れ金につきましては、これまた予算総則におきまして、将来必要に応じて増加をするということが含まれております。したがいまして、かりに四十七年度におきまして財政投融資を追加するという必要が生じました場合には、まず、現在の市中の状況等から勘案をいたしまして、政府保証債の増額ということは可能であると思います。まず、そういう措置をとりまして、さらに必要になる場合にどうするかという問題であろうかと思います。
  95. 松井誠

    ○松井誠君 私の聞いているのは、市中の金融をこれ以上圧迫しては困るというようなときに引き受けるというなら話がわかるけれども、そうじゃなくて、まさに、超緩慢だといわれるそのときに、二千五百億というのを、なぜ資金運用部で引き受けるのかということなんです。
  96. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 昨年、四十七年度予算を編成いたしました当時におきまして、一兆九千五百億円という大幅な国債の額になったわけでございまして、したがいまして、国債の引き受けシ団等といろいろ折衝をいたしました過程におきまして、政府のほうでも国債の引き受けに努力をしてもらいたい、こういう折衝の経過といたしまして、二千五百億円を資金運用部で引き受けることにしたわけでございます。
  97. 松井誠

    ○松井誠君 私が心配をしますのは、将来、国債を発行しなきゃならぬ、しかし、金融は逼迫をしている、そういうときに、前にも一度議論が出たように、資金運用部でひとつ全部引き受けてくれ、日銀引き受けじゃなくて資金運用部で引き受けてくれという、そういう橋頭堡にこれがならないということです。
  98. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 松井先生の御心配の御趣旨は、資金運用部資金は政府の管理する資金でございますから、国債の発行に対して、いわゆる歯どめが乏しくなる、こういう点の御心配であるかと思います。しかし、よく考えてみますと、資金運用部資金は、その大宗を占めるものが郵便貯金でございますし、いわゆる国民の任意貯蓄でございますから、そういう意味におきましては、市中銀行による引き受けと性格的には同じものというふうに考えております。
  99. 松井誠

    ○松井誠君 もう一つ、これを財投に——資金運用部での国債引き受け、直接の引き受けが、財投の計画に載ってないというのは、どういうことなんですか。
  100. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 財政投融資計画は、御承知のように、財政対象機関を縦に掲記をいたしまして、横にその必要な原資を掲記いたしております。したがいまして、財投計画は、それぞれ特定の任務を持つ財投対象機関に対して、政府の管理する資金、あるいは政府のあっせんする資金が、どの程度配分されているかということを一表に示したものでございます。これに対しまして、国債に対する資金運用部の投資は、一般会計のいわば財源調達の手段としてこれを引き受けているわけでございますから、国債の発行対象経費は公共投資でございますが、本来、プロジェクトに特定いたしておりません。したがまして、現在の財政投融資計画表の作成上の原理といたしましては、対象機関なり、あるいは対象事業というものが、はっきり特定したものに対するものを掲記いたしているわけでございます。
  101. 松井誠

    ○松井誠君 沿革的には、あるいはそうかもしれません。しかし、国民としては、資金運用部のこの金が全体としてどういう運用をされているのか、その全貌を知る権利があると思うのですね。地方債の購入の場合にはちゃんと財投計画に載っておる。であるのに、国債の場合には、一体、載せないという合理的な理由は何もないじゃないですか。
  102. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 地方債と対してお話でございますが、地方債につきましては、それぞれ使途別にはっきりしたものに対して地方債計画を立て、それに対して、資金運用部による投資をいたしております。国債は、ただいま申しましたように、一般会計のいわば財源として投入されるわけでございますから、その使途が公共事業に限定されているということにはなりますが、かりに、財投計画に国債保有を計上いたしますと、一般会計と財投計画との重複計上というものがふえてまいります。そういう点も配慮いたしまして、現在の財投計画には計上いたしておりませんが、ただいま先生から御指摘がございましたような、資金運用部資金の運用の態様という点につきましては、これは明らかにする必要があると考え、昭和四十七年度の予算の説明におきましては、特別会計の説明の欄に注記をいたしております。二千五百億円ということを明らかにいたしておる次第でございます。
  103. 松井誠

    ○松井誠君 確かに、あなたの言われておるとおり、あそこのところに、ほんの一、二行、ちょっぴり書いてあるだけですよ。あそこのところを見落とせば、二千五百億を引き受けたというようなことは新聞で見る以外にはないわけですよ。そういうことで一体いいのかどうかということ。二千五百億というのは大金ですから。  そこで、その問題に関連をするのですが、この財投というものを国会の議決にかかわらしめたらどうかというのは、特に去年の予算委員会以来議題になっている。それに対して、財政審議会で一応の中間報告をしておりますね。これに対して、大臣、この議決が必要だというわれわれの主張に対して、どのようにお考えですか。
  104. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは、もうここでも私も一、二へん答弁したと思いますが、この中間報告でも言っておりますとおり、二重議決になる部門は制度としてこれは採用ができないと。しかし、そうかといって、これは単なる受動的な資金の配分というものではなく、もう財投資金というものは財政資金の配分的な意味を現在持っておる以上は、これは何らかの形で国民の前に、はっきりする必要があるために、ここでそれについてのくふうをこらす必要があるというのが審議会の意見でもございますし、私どももやはりそう考えます。単なる資金の運用じゃなくて、財政資金的な意味を持った資金の配分でございますから、国会との関係において何らかの解決をしたいというふうに考えて、いま私ども大蔵省自身でも検討しておりますし、審議会にもお願いしておりますし、同時に、一方、資金運用部のほうの審議会というものはいままでこの問題に関係しておりませんでしたが、ここにも相談をかけて意見を聞くということをこれからやりたいと思っておりますし、衆議院におきましては、予算委員会の中にこれを検討する小委員を与党、野党でつくるということも今度きめられましたので、そういう形で何とか来年度の予算編成までにはこの問題について適当な解決を私はしたいと思っております。また、審議会のほうも、秋までにこの問題は結論を出して答申してくれるということになっております。
  105. 松井誠

    ○松井誠君 いま大臣が、何か、一番の理由であるかのようにあげられた二重議決、これは具体的にはどういうことなんですか。法制局から伺いたい。
  106. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま、財政制度審議会の中間報告にございますところの二重議決の問題についての御質問でございますが、この中間報告にもございますように、現在の財投計画に盛られております事項のうち、産業投資特別会計からの出資につきましては特別会計の歳出予算、それから、政府保証による資金調達につきましては一般会計の予算総則におきまして、それぞれ議決案件として国会に出されることになっておるわけでありまして、したがいまして、財投計画を全体として議決案件といたしますると、その面で二重議決の問題が生ずることになるわけでございます。  そこで、二重議決は法律制度として、なぜいけないかという問題につきましては、いわゆる一事不再議の原則を考慮に置いての見解であろうかと思います。このいわゆる一事不再議の原則につきましては、もう御承知のとおり、これは憲法及び国会法におきましては何ら明文の規定があるわけではございませんが、一般的に申しまして、会期の定めのある合議体におきまして、同一会期中に再び同一の議決をしたり、あるいはまた、同一案件につきまして前の意思決定と異なる議決をしたりするということになりますると、議事のスムーズな運営が期せられないという見地に立ちまして、いわば一つの条理上の原則であるというふうにいわれておるわけでございまして、国会の議事運営におきましても一つの慣例として確立しておるというふうに伺っておるわけでございます。この中間報告におきまして、いわゆる二重議決になるので法律制度上好ましくないというような見解を述べておりまするのも、この一事不再議の原則を前提にしてのことと思われます。このような原則を前提とする限りにおきましては中間報告のようなことになるのではないかと、かように考えておる次第でございます。  なお、この財政投融資計画全体をどういう取り扱いに持っていくかということにつきましては、ただいま大蔵大臣からお話がございましたように、この秋までに最終的な結論が得られるということになっておりますので、その結果を待ちたいと、かように考えておる次第でございます。
  107. 松井誠

    ○松井誠君 一事不再議というのは、旧憲法と違って、いまの憲法には別に明文がないんでありますから、なぜそれがいけないかという理由は、私は必ずしもわからない。しかし、その問題は別として、いまの問題は、一体、そういう意味での、一事不再議に抵触をするという意味での二重議決になるのかならないのか。なりますか。それ、同じ議決ですか、内容が。
  108. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほど申し上げましたように、たとえば産業投資特別会計からの出資という点に着目いたしますると、これは特別会計の歳出予算に計上されておるのでございまして、これとあわせて財投計画の一環としてこれが国会の議決案件として提出されるということになりますと、これは全く同じ事柄につきまして同一会期の国会におきまして議決案件として二つのものがそろって成立されるということになりまして、その点から見ますると、やはり二重議決になるのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  109. 松井誠

    ○松井誠君 そういうのを二重議決と言うとすれば、たとえば予算で、国鉄の運賃値上げというものを目標にした予算、これも広い意味では法律の一種だといわれますね。つまり、予算を議決をする、それからその値上げのための法律案を議決をする、予算は通っても法律案はつぶれるという場合もあり得るわけです。したがって、同じ問題が、一方では可決をされ、一方では流されるということもあり得るわけです。二重議決がなぜいかぬかという理由は、議決そのものの間に矛盾が生じちゃいかぬということでしょうけれども、現実に矛盾の生ずるようなことが現実にあるわけでしょう。もしこれが一事不再議だとすれば、たとえば国鉄の運賃というものの値上げを前提にした歳入歳出予算、それからそれに基づく、それを可能ならしめるような法律案というものだって一事不再議だと言えないですか。私は、こういう形式的な理屈でこの議決から、はずそうということは、一種の非常に形式論理だと思うのですがね。
  110. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまの点でございますが、法律とそれから予算の関係、これと、いま申し上げておりますところの産業投資会計からの出資そのもの、これが特別会計の歳出予算に計上され、かつ財投計画の——かりにこれが議決案件になった場合に、財投計画のほうにも計上されるということになりますと、これは全く、いわば同一の事項につきまして二つの議決案件がそのまま出ておるというようなふうに解せられるのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  111. 松井誠

    ○松井誠君 この二重議決という議論にしろ、それから財政審議会が書いているいろいろな、現実にもう審議の対象になっておるではないかという議論にしろ、非常に形式的で、この財投というものの持っておる本質的な重みというものを全然理解をしていないと私は言ってもいいと思うんです。先ほど私が冒頭に申し上げましたように、補正予算がなかなか組みにくくなれば、しわ寄せは財投に来るというように、財投はまさに一般会計予算の半分の規模を持つ、そうして、合わせて一体として考えなきゃならない、まさに第二の予算です。この第二の予算というものを、こういう形式的な理由で議決から、はずすなんということは、私はナンセンスだと思うのですね。たとえば、道路行政一つをとってみても、住宅行政一つをとってみても、一般会計とこの財投とを二つ継ぎ合わして見なければ国のそういう行政の全体がわからない。そういうのに、一方は議決にかかわらしめる、一方ではこういう形式的な理由で議決からはずす、こういうことは実質的な理由にならないでしょう、大臣。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もそう思います。それだけ、もう財投計画というものは国の財政方針と結びついた重要な意味を持つものでございますから、予算編成方針のときに、これが何らかの形で予算と関連して論議されることは私は必要なことであると思いますが、ただ、問題は、やはりこれは予算とは違うものでございますので、個々のどの機関にどれだけの融資をするか、この一つ一つに立法府が介入して、それがきまらなければ予算全体がきまらないというようなところへ入るというと、これは大きい弊害を起こすということにもなるでしょうし、問題は、財投全体を減らすか、あるいはことしは思い切って拡大した運営をするかという大きい政策的な問題、それからどういう部門にこれが重点的に投資されるかというような問題とか、そういうようなことについて国会が意思を表示する方法というものは、私はくふうをこらせば、意義のあるやり方というものが何らか出てくるんじゃないかというふうに考えます。そういう点でいいますと、二重議決とかなんとかいうような問題は、私はそう問題にしなくてもいいんじゃないかという気がします。問題は、これが最も合理的に適正に審議されるような形のものが出ることがいいんであって、そうでなくて、個個の小さい一つの問題がきまらぬために全体がきまらないというようなところまでいってしまったら、これはなかなか問題が多いと思いますので、そこらをこれから十分私どもは一つ一つ検討してみたいと考えておるところでございます。
  113. 松井誠

    ○松井誠君 私は、大臣がいま言われたような理由なら、実質的な理由として、いわば討議に値すると思うんですね。特にこの財投の追加の場合に、補正予算を組むのと違って機動的にできる、そういう意味で、国会コントロールをはずしたほうが行政が効率化をするんだという理屈がある、それはそれで——私は反対ですけれども、一つの議論になり得ると思う。しかし、逆に言えば、民主主義というのは元来ひまのかかるものなんで、そういう議会のコントロールをおそれて、効率化、能率化ということを基準にして財投というものを考えると、私はやはり危険だと思うんですね。現に、これは一つの例ですけれども、北海道東北開発公庫というんですか、これは何か十九社はかり——これは、私が調べた資料というのは四十年ごろですから、その後ふえているかもしれませんけれども、十九社ばかりに出資をしているというんですね。しかし、その出資の先なんかは、とうてい国会コントロールの中にはありませんし、具体的にどういう会社にどれだけ出資をしておるなんというのは知るよしもない。しかし、国民の税金がこの北東公庫を通じてどこへどう流れているかということは、私どもはやっぱり知る権利がある。そういうものが、その出資をする会社、その出資を受けた会社がさらにまた出資をするというような形で、国民の税金は限りなく無数に広がって、わけのわからない形になっていっておるわけです。これを全部国会コントロールに置くということは困難かもしれませんけれども、しかし、やはり予算と一体となって、その全体の税金の流れというものを見るという機構を、私はやっぱり——議決ということにこだわるわけじゃありませんけれども、大臣の言われるように、何らかということじゃなしに、やはり議決という、形式的にきちっとした形のものでコントロールをするという保証がないと、私は野方図になってしまうんじゃないかと思うんです。いまお話を聞けば、そのことを衆議院でも予算委員会で具体的にやるそうですから、あとでこの委員会でも何がしかの形で、ひとつ措置をとってもらいたいと思います。  そこで、その問題はそのくらいにしまして、財投のもう一つの問題、考え方によればこれがいわば一番基本的な問題だと思うんですけれども、この財投の原資の使い方がいままでどおりでいいのかという、つまり、この辺で基本的に発想のまさに大転換をしなければならぬのじゃないか、そのことをお尋ねをしたいわけです。  この財投の原資の最大のものは郵便貯金、この郵便貯金をしておる人たちの心情を考えてみるというと、将来子供が大きくなったら学費に要るだろう、家を建てる足しにもしたい、病気になったときには入院費にも困るじゃないか、いろんなことで小口の貯金を、いっぱいの人がやっているわけでしょう。それを景気対策に使ったり、大企業のために使ったり、高度成長のために使ったりということになりますと、一体預金をしておる人たちの意思というものは根本的に踏みにじられてしまう。最近、財投というのは生活関連の資本にたくさん使われるようになったということを言っておりますし、確かに表の上ではそうなっておりますけれども、しかし、これにもまだまだ問題がある。私は、基本的にこの財投の原資の使い方そのもの、いままでのような高度成長の従属をして、それのしもべになってきたという、そういうあり方を決定的に改める、こういう発想の転換は、大臣、できませんか。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本年度の使途別の構成比を見ますというと、大体生活に関連の深い住宅・生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業、この六つの分野において財政投融資が五八・三%、それから国土保全、災害復旧、道路、運輸通信、地域開発という項目で二七・四%、基幹産業四・七%、貿易経済協力九・六%、こういう構成比になっておりますが、そのうちで一番大きい構成比を持っておるのが住宅で、全体の二〇・四%を占めておりますし、生活環境整備が一四%、中小企業部門の投融資が一四・五%、運輸通信が一二・二%——構成比が一〇%以上になっておるのはそこらでございますが、問題は、この構成比を、どう、もう少し比重をつけていくかということにあると思いますが、ここ十年間ぐらいの比率の変化を見ましたら、実質的には非常に変わって、国民の生活に直接関係する部門に配分される部分が非常に比率が多くなっておることは事実でございますが、今後さらにこの方向をだんだんに強化していくということをすることがやはり一番いいことであると思いますが、よく、大企業にこれがどうこうという非難が昔はされておりましたが、最近の使途別の分類から見ましたら、こういう点はもう、いまの財政投融資の使い方にはほとんどないということを言っても差しつかえないだろうと思います。
  115. 松井誠

    ○松井誠君 その比率を私は何も否定はしません。しかし、あげ足をとるわけではありませんけれども、生活関連の関係に財投が重点を移してきたというのも、考えてみれば、元来生活関連の社会資本などというものは、こういう財投でやるべきものではなしに、ほんとうは一般会計で、コストのかからない税金でやるべきものなんですね。それを、そういうことをしないで財投に回すこと自体が問題なんで、そういう、本来一般会計でやるべきものを財投に回す。したがって、財投における生活関連の社会資本の充実という形がふえるという形になって、そこだけ切り離してみれば、何か福祉優先のことのようですけれども、しかし、逆に言えば、一般会計の肝心のところがお留守になっておるその結果だという——全部が全部そうだとは言いませんよ。しかし、そういう因果関係があるということもやっぱりお考えいただかなければならぬと思う。  そこで、確かに生活関連関係の比重がふえてきておりますけれども、それでは一体、この政府の資金が産業投資の出資として出ていっている比率と、それから融資という形で、貸し付けという形で出ていっている比率——たとえば公庫とか銀行ですね。というものを私は政府から資料をもらった。それによりますと、最も典型的な例を申し上げますと、たとえば住宅金融公庫、これは、一般会計や産投からの出資というのは政府資金のうちの全体の八・六%、あとの九割二分というのが政府からの借り入れ、資金運用部、簡保その他からの借り入れということになっておる。ところが、輸出入銀行などというのは、政府の出資というのが二八%で、それから借り入れというのは七一%、開銀も、その比率は、出資は高くて借り入れは低い。つまり、出資が高くて  出資の比率が高いというのは、コストのかからない税金で出資をしておる、したがって、その銀行の貸し付けのコストというのは安くなるということ、そういうものが一番必要なのは、たとえば金融公庫だとか、住宅金融公庫だとか、国民金融公庫だとか、そういうところが一番資金コストを低くしてもらいたいわけでしょう。ところが、実際には逆になっているわけですね。開銀とか輸銀というものに資金コストのかからない出資というものがよけい行って、借り入れ金の比率は少ない。国民金融公庫とか住宅金融公庫は、出資の比率が少なくて、借り入れ金の比率が多い。したがって、資金コストが高くなって、貸し出し金利もどうしても高くならざるを得ない。ですから、生活関連資本にたくさん出しているとはいうものの、内実に少し入ってみれば、こういうことなんです。この辺の事情を御存じでしょう。これは何とかやっぱり変える必要があるんじゃないですか。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その事情は存じています。
  117. 松井誠

    ○松井誠君 ただ、国債発行になってからの財投の原資のあり方というものは、相当やっぱり変わってきますね。つまり、国債を発行されたあとの公共事業というのは、これはやはり、利子のつく、そういう金でまかなう公共事業ということになりますと、財投の原資と同じようなものになってくる、ただの租税というわけにはいきませんよね。そうなりますと、これは、財投のあり方そのものにもいろいろな問題が出てくる。そのことを含めて、そのことを、前提というか、承知の上で私はあえて言いたいんですけれども、この間の総括のときに、私はナショナル・ミニマムというものを提唱しました。この財投の金を使うというのは、こういう資金コストのかかる金を使うというのは私は賛成じゃありませんけれども、次善、三善の策として、これは、財投の金を景気浮揚に使うとか、高度成長のために使うとかということじゃなしに、つまり、ナショナル・ミニマムの実現のためにこれを使う。この原資というのは、好況、不況というものの波のあまりない原資ですから、そういう意味では、わりあい額は安定をしておる。そういうものでナショナル・ミニマムをまかなおうという、そういう、いわば発想の転換というものはできないものかというのが、私がさっきお伺いをした趣旨なんです。御意見を伺いたいと思うんです。これは田中さん、ナショナル・ミニマム大いに賛成でありましたから、あわせてお伺いをしたいと思います。
  118. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう発想の転換はできると思います。ただ、財投の原資はコストを持っておるものでございますので、これを割るわけにはいかない。したがって、運用においてそういう制約を持っておりますので、そういう発想の転換を遂げる場合には、やはり一般会計からの利子の補給とかいうような政策を伴わないと、この財投資金を有効にそういう方面に使えないという問題がございますので、したがって、それと関連して、一方、一般会計のほうの予算の編成問題にこれはなってくるものでございまして、それとの関連で財投資金の有効な活用ということは、これは、しようと思えばできると思います。
  119. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先般お答えをしたとおりでございまして、方向としては、その方向で考えていかなきゃならぬことだと思います。
  120. 松井誠

    ○松井誠君 私の聞いたのは、財投のあり方についての御意見でしたけれども……。まあいいです。  それでは、次に、国際収支の問題についてお伺いをしたいのです。貿易収支のことはあとでまた触れますけれども、一番投機的な短期資本の収支、特にこれは十二月の通貨調整後の一、二、三月の短期資本の動き、これを、まず報告してください。
  121. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 十二月の通貨調整後の短期資本の収支についての御質問でございますが、この国際収支表におきまするいわゆる短期資本というよりも、ややもっと広い意味のいわゆる一般に短期資本といわれております、つまりリーズ・アンド・ラッグズなどを含みました数字について申し上げますと、本年の一月が四億九千五百万ドル、二月が三億九千五百万ドルと、いずれも主として輸出前受けが流入をいたしましたために流入超が続いておりました。そこで、二月二十五日に輸出前受けの規制をいたしましたために、三月はそれがとまりまして、逆に、従来の輸出前受けで出ておりましたものが充当されるというほうが多くなりまして、したがいまして、まだ正確な数字は統計が全部そろっておりませんが、三月はおそらく逆に一億五千万ドルぐらいの流出超に転じたのではないかというふうに考えております。
  122. 松井誠

    ○松井誠君 一月、二月、為替管理の前に輸出前受け金が相当激増したという事情はどういうことなんですか。
  123. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) これは、一月から二月にかけまして相場が大体三百八円のセントラル・レートよりもだいぶドルの高いほうにございました。したがいまして、今後国際収支の状況等をそれぞれ勘案をいたしまして、各業者の方は当然相場が下がってくるであろう、ドルが下がってくるであろうということで、おそらくそういう関係から輸出前受けと、早く代金をとっておくというふうな傾向が強く出てまいりまして、これは日本だけではございませんで、全般としての短期資本と申しますか、資本の移動の関係では、ヨーロッパ各国におきましても同様な傾向があったわけでございますが、これは、わが国におきましては、先ほど申しましたとおり、二月二十五日に輸出前受けに対する規制を復活をいたしまして、それから、ほかのヨーロッパ諸国におきましては、それぞれ公定歩合の引き下げでございますとか、あるいはそのほかの意味の為替管理を志向をいたしまして、そういうようなことがきいてまいりましたために、このところ、三月の中旬以降は、ヨーロッパ、日本、いずれも落ちついておるわけでございます。
  124. 松井誠

    ○松井誠君 逆に言えば、日本でも為替管理をゆるめても、一月、二月のような状態にはならないということですか。
  125. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの段階で為替管理をゆるめてもだいじょうぶかどうかという御質問でございますが、それはやはり、そうではございませんで、この通貨調整後、資本の移動におきまして、わりに資本、資金の移動に関しまするプレッシャーと申しますか、それがヨーロッパ及び日本について大きかった一つの理由は、米国とそれ以外の先進国との短期金利の差というのがございまして、まあ、これはだいぶ、この三月に入りまして、最近まで、アメリカの短期金利が反騰のきざしを見せておりますので、若干緩和されてはおりますけれども、しかしまだ現状におきましては、たとえば輸出前受けの規制を撤廃をしてもいいかと、日本について申しますと撤廃をしてもいいかということにつきましては、その撤廃をするということは、やはり短資の流入が相当強く現在におきましても、起こり得るのではないかという状況でございますので、当面は為替管理をゆるめるというわけにはいかない状況であろうかと存じます。
  126. 松井誠

    ○松井誠君 アメリカの金利は上がりつつありますから、金利差で入ってきたというものならばそこでとまる。しかし、おそらく私はそうじゃなしに、あなたが説明しにくいかもしれませんけれども、やはり国際的な通貨不安、再切り上げに対する不安、そういうものに対しての投機的な動き、そういうものがやはり輸出前受け金の激増という裏にあるんじゃないかと思うんですよ。  もう一つお伺いをしますけれども、オランダとかベルギーの為替平価の動きなどがしょっちゅう注目をされる、これはどういう理由ですか。
  127. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) これはオランダ、ベルギー等が特に現在はよろしいのでございますが、先ほど申しました、この三月の初めまで、主として二月中でございましたが、そのころまではこのオランダとベルギーにおきまして、ドルが底と申しますか、例の変動幅、上下それぞれ二・二五%の変動幅の、ドルのほうから見まして底と申しますか、底のほうにずっとついておりました。そこで、あるいはオランダ、ベルギー等が持ち切れなくなってフロートに転ずるのではないかというようなうわさが一時あったことがございます。そういうようなことで、われわれといたしましてもこの相場の動きに注目をいたしておったわけでございますが、この関係は、先ほども申しましたような、それぞれの国がそれぞれのやり方に基づきまして為替管理を強化するなり、あるいは国内金利の面での操作をするなり、他方、またアメリカのほうにおきましても、三月に入りましてから短期金利が反騰に転じてきているというようなこともございまして、いまのようなプレッシャーは非常に緩和してまいりました。そのうちの一つの原因といたしまして、市場、マーケットでは、オランダ、ことにベルギーでございますが、国内法の関係でこれ以上のドルの購入ができないのではないか、そうするとその国内法に触れてくるのではないか、そういうようなことも一つのうわさの原因であったと思うのでございますが、この点につきましては、実はオランダ、ベルギー当局等に聞いてみますと、全くそういうことはない、これから十分さらにドルを幾らでも買える国内法上の余地はあるし、また現実問題としてもプレッシャーが弱ってきたわけでございますけれども、その前におきましても十分に買い足される、フロートなどする意図は全くないということがはっきりいたしておったわけでございますが、その後、ただいま申しましたように、全体といたしましてヨーロッパの為替市場も平信に推移しておるわけでございます。
  128. 松井誠

    ○松井誠君 オランダ、ベルギーというのはいまもちょっとお話がありましたけれども、国内法の関係で準備資産の中で金の一定割合を持っていなきゃならぬ、そういう意味でドルの無制限な買いささえはできない、ですが、やがて天井がくる、そのときにはフロートするんじゃないかということ、そこでもし一角がくずれればまた世界に波及するんじゃないかというのが注目をされておった原因ですね。ですからいまこそ小康を保っておりますけれども、私は何かの形で、何かの拍子で投機的な大きな短資の動きが起きないという保証はないと思うんですよ。そこにはやはり国際通貨不安というものは依然としてやっぱり率直にある。大蔵省のあなたからオランダ、ベルギーのいまの状況はあぶないですよというような説明を私は聞こうとは思いません。思いませんけれども、そういう意味で注目をされておったことは間違いない。一体なぜこういう形になってきて、この通貨不安というのは一体どうなるんだろうかとみんなやっぱり心配していますわね。それと、基本的にはいま日本へ来てますボルカー財務次官が言っているように、実質的にはIMF体制というものは実質的には終わった。終戦直後の金の約七割、あるいは生産力の七割を持っておるというアメリカならば、ドルを事実上の世界通貨として使えるような、そういう経済的な実力を持っておる。しかし、それがこの資本主義のそれこそ不均等な発展のために輸出力が強くなる、日本が強くなる、そういう意味で、もともとIMFの経済的な基礎というものは元来なくなってしまった、それを無理して維持してきておったわけですから、もともとが無理があるわけですね。ですからこれを一体どう再建をするか、たいへんなことだと思うんです。昔ならばあくまで平価の切り下げ競争、ブロック化あるいは帝国主義戦争というようなところへ行きかねないような、そういう状況にありながら、とにもかくにもこれが平衡を保っておるのは、よくいわれるように恐怖の協力ということだと思うんですね。日本の場合、金が少なくてドルが多い、ドルが減価したらたいへんだという、あるいは貿易に依存をしなきゃならぬから、どうしてもグローバルな組織が必要だ、そういうことで、いやでもいまのこの現行の体制に協力をしなきゃならぬというたてまえがあるからやむなく協力をしている、そういう状況の中で、一体われわれはどうしたらいいのかということを私たちは私たちなりにやはり考えざるを得ないわけですね。で、皆さん方に聞いても、通貨当局というのは平価の変更についてはうそを言う権利と義務があるというのですから、一体平価の再切り上げはありますかというようなことを私は聞くつもりもありません。聞いたってどうせほんとうのことを言わない。当たらないことがきまっている八卦ですから聞く必要がないわけだ。しかし私はそれならそれで、再切り上げがないならないようにするためには、やはりそれこそ言動で示す以外にはないと思うのですね。そこで一昨々日でしたか、ここで田中通産大臣と大蔵大臣とが討論会をやりましたね。あの討論会、私はここでもう一ぺん再演してもらうつもりはありませんけれども、あそこではやはり二人の間には相当考え方の違いがあったと思うのですよ。それは少なくとも現在の政策の焦点の合わせ方が違っておったと思うのですね。用中さんは、だいぶ考えが違うじゃないかと言ったら、首を横にあのとき振っておられましたけれども、現実にやはり相当考え方の開きがあるでしょう。私はやはりこの際は、これは大蔵大臣が言うように、恒常的な貿易収支の黒字の仕組みそのものを変えることが基本なんだ、外貨減らしというけれども、たまった外貨をどうして減らすかというところに問題があるのではなしに、かりにいまの外貨がそのまま減らないでおっても、この貿易収支の恒常的な黒字の仕組みがなくなれば、いまの程度の黒字の外貨がこれ以上ふえないということになれば、私は再切り上げの圧力にはおそらくならないだろうと思う。問題はそうじゃなしに、いまの外貨の幅が大きいか小さいかよりも、依然としてこれがふえ続けるという仕組みがちっとも改まらない、そこに問題がある、その点は通産大臣、どうお考えですか。
  129. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 水田大蔵大臣との間に原則的な違いはないのです。立場の違いでございます。これ立場を入れかえればまた同じことを言うつもりでして、立場の相違でございます。私も大蔵大臣在職中は水田大蔵大臣と同じようなことを言っておったわけでありますが、私はただ去年の七月から通産省に行ってみまして、大蔵省当局が考えておるような、また経済企画庁が考えておるようなマクロ的認識とは相当異なったものがある。やはり産業の実態をつぶさに見ますと、相当な認識の違いが出てくると、こう思うのです。これは今度の景気浮揚策に対しましても同じことでございますが、公共投資が先行してまいりますから、そうすれば確かに四十七年度、年度中を通じて景気は浮揚する、七・二%ないし七・五%にと、こういう見方は過去のパターンから言えば、当然、計算、予測されるわけでありますが、私が昨年度から十カ月ばかりの支出を見てまいりまして、実態をつまびらかに調査しますと、どうも三十七年、四十年というような状態とは違う。ですから、公共投資について、大幅な予算が執行されるわけですから、その過程においては確かに四−六月期、七−九月期では高い成長が続くと思いますが、しかし、十−十二月期、一−三月期については、過去のように公共投資に付随をして民間の設備投資が起こらない、いまのままでは絶対に起こらない。ですからその意味で自然発生というような状態を是認する限りにおいてはだめだ。だからそこで政策投資、つまり政府が誘導的な施策を進めていくことによって、ある程度の高い成長、すなわち、七・二%程度の成長は確保されるかもしらぬ。二十九年から三十九年まで、一〇・四%、三十五年から四十五年まで一一・一%という高い成長を続けてきたので、いろいろな弊害が起こってまいりました。公害の問題もその一つでありますし、交通や住宅の問題も物価の問題もみなそこに起因しておるわけでありますが、しかし、やはりここで頭打ちになったという感じなんです。ですから私は実際において来年度からずっと続けて八%、九%というような成長を続けていくためには相当誘導的な政策を進めないといけない。現状は過去のように二五%に近いような設備投資が民間の力だけで起きるというような状態にないということを考えておるわけでございます。ですから、そういう国内的な事情から考えてみても、やっぱり、去年と過去十五、六年間の足して二で割った平均値をとっても七・五%以上になるわけですから、やはり、そういうなだらかな状態において、日本の将来的な構想を進めていかなければならないというような考えでおるわけでございます。その意味では、やっぱり輸出をうんと押えて、というような状態を急激にはとれない。ですから、私は言うことはわかるんです。やっぱりここ一年、二年というものは輸出をある程度伸ばしていかねばならないとしたならば、輸入を思い切って増加させる。開発輸入も行なったり、備蓄を行なったり、そうしなければならない。まあ四十五日間の石油の備蓄というような状態で、一体、これは正常なのかということを一つ考えてみてもわかるわけでございます。それでまた、石油の開発輸入をしても、アメリカの私企業の一つにもならないというような状態でありますから、まだまだ先行的な立場での投資を進めなければならない。そういう意味で、外貨減らしということを考える前に、やはりその外貨の活用ということで、ここ五年や十年分というものは、長期的に備蓄をして余るものではない。やっぱり、すぐ浪費というようなものに通じやすい面よりも、せっかくここでためた外貨でありますから、やはり、長期的な安定経済成長というものができるような各種の前提条件をここで整備するということが私は一番大切だと、こう考えておるだけであって、大蔵大臣の言っていることを理解をしていないわけじゃございませんし、これは、もうほんとうに、考え方は二人とも同じである。立場の相違で、ちょっと、こう同じ回答でもアクセントがつくと、こういうふうに理解をしていただきたい。
  130. 松井誠

    ○松井誠君 そんなことじゃ困ると思うんですね。通産省はよく業界代表だと言われる。特に大企業代表だと非難をされるわけです。しかし、大臣までがそういうレベルでものを言われたんじゃ困るわけで、もうあれじゃないですか、通産省レベルじゃなしに、日本の政治全体のレベルでものを考えなければならぬ時期じゃないですか。つまり、そういう意味でいえば、私は財界の考え方はおかしいと思うんですよ。外貨減らし外貨減らしといったって、いまある外貨をどうして減らすかということだけに重点がある。いままで輸出してもうけておいて、もうけてたまった外貨でまた一もうけしようという、そういういわば発想でしょう。そうじゃなしに、ほんとうに秩序ある輸出なり、あるいはほんとうに公正な競争力のもとに競争するというような、そういう秩序をつくるということにはちっとも一生懸命じゃない。そういうものに、私はそのまま通産大臣が乗っかっておっちゃ困ると思うんですよ。ですから、やはり恒常的な輸出競争力の問題として考えるといろいろ問題があるけれども、それは、私はこの前は賃金の問題で申し上げました。しかし、その前に、輸出税という構想かこの間の新聞にでっかく出ていましたけれども、これについては、田中通産大臣がまっ先に立って反対の意見を述べられましたが、大蔵大臣どうなんですか、これは、やっぱり具体化するんですか。
  131. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に具体化の構想をいまのところ持っているわけじゃございません。
  132. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、新聞にはずいぶんでっかく出ましたけれども、その輸出税というのは私たちも別に最善とは思いません。しかし、ほんとうに、オーダリーマーケティングというようなことを財界が自主的にやろうとしなければ、次善、三善の策として、私はしかたがないと思う。しかし、問題は、もう少し恒久的に考えれば、私は、やはり競争力というものを公正にするということをまずやらなければならぬ。田中通産大臣は、輸出は悪だという考え方は悪いと言いますけれども——輸出は悪だという考え方は間違いだと言われましたね。よくそういうことを言われますけれども、私は、そこのところ、不正な輸出、それから不公正な輸出は悪だという、そのことにはやっぱり徹しなければならぬと思う。日本の輸出は不公正なところがある。それは何かといえば、一つは、やっぱり賃金が低いということですね。ですから、この賃金を上げろという問題をこの問お尋ねをしましたら、総理大臣はそっけもない返事でしたけれども、これはお二人いかがでございましょう。つまり、国際的に日本の賃金が低いことは、もういろんな統計が示しておる。それは、やはり国際並みにするということが競争力を公正にするという基本的な前提ではないか。いかがでしょう。
  133. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、先般、財界の一部の方に申しましたが、いま、われわれが一番いけないと思っていることは、せっかく企業が落ちついて、これから気迷いから脱して立ち上がろうという気概を持っておるときに、また円の再切り上げというようなことを非常に宣伝して、ここで、心理的に景気政策へ水をかけるというようなことが一番いま困るのだと、で、何でそういう円再切り上げなんていうことを言うかというと、私どもの聞いているところでは、それは、まあいろいろ言う人はあるにしても、特に財界の一部には、これは必ず切り上げになるかもしれぬから、われわれは、それに対して二百七十円程度で輸出してもいいような体制、体質を整えるのだということを理由に下請をみんなたたいてしまう。下請をたたいて、そうして、この輸出価格を上げないで輸出しようということを考えろと、こういうことになるというと、円が切り上がった分だけ品物が高くなればいいのに、これを逆に低くするというようなことをやったら、これこそほんとうの不当競争であって、そういうことをするから、黒字基調というものを外国が非常に問題にするのだ、なぜ輸出品を高くしないのかと。円の切り上げということは、それだけ安売りを避けるということであって、日本の品物が高売りできるのだということ、初めて賃金の問題、いろんな問題が——いままで実現しなかったものが解決する。そこに問題が出てくるのであって、この円の切り上げという効果を全部なくしてしまうのは、再切り上げを唱えて下請をたたくというようなことをやって輸出品の値を上げないところにあるのだ、これは日本の企業家がよほど考えてくれなければ困るということを言ったんですが、こういう点をみんなしっかりとやってくれるのでしたら、私は輸出税とかなんとかいうような構想なんというものは要らぬことでありますし、やはり、ここまで国際摩擦を起こしている問題である以上は、私は、日本の企業家がそういう点で、やっぱりもう少し行儀をよくするということが必要じゃないかということを考えます。
  134. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私が申し上げておるのは、輸出は悪であるということ、勤勉なことは悪であるというようなこと、これは日本としては誤りでございます、かように明確に答えております。しかし、オーダリーマーケティングの問題とはおのずから別でございまして、これに対しては全力をあげて取り組んでおります。毎日のように業者を呼んで、とにかくこの輸出価格を上げなさいと、こんなときに一〇%引き上げて、その引き上げ分の相当部分を下請や中小企業に恩恵を与えるようにしなさいということを言っておるのです。そうでなければ、大蔵省は、もう輸出税を徴収すると言っているじゃありませんかと。(笑声)いや、それは、もう非常にきめ手として言っておるのです。ここで各自が態度を是正しなければ私も賛成するかもしれませんよと。私は、ただ賛成はしません。日本のいまの状態は、各国から指摘せられるように、社会資本が不足しておりますし、また、国際競争力にたえられるのかといったら、そういう状態でもありません。繊維部門などは、いま機械の更新をしておりますが、西欧の織機に比べたら全部スクラップにならなければならないという状態であります。私は、輸出税、輸出課徴金というようなものが万一制定せられるとするなら、いろいろの前提となる条件が満たされなければならない。すなわち、どうしても輸出価格が上がらない、輸出は伸びる、輸入はふえない、国際的にはたたかれるということが続くなら、それはきめ手としては輸出税、課徴金問題が出てくると思うのです。しかし、それは一般財源ではなく、特定財源として、これが東京や大阪や名古屋から地方に工業が再配置をされるときの費用とか、公害除去の費用とか中小企業の転職とか廃業に資するものであるというような特定目的に使うのでなければ賛成はできないという考え方、これは、私は正しいと思うのです。そうしなかったら、十年、十五年後の日本の理想的な姿をつくるわけにはまいりません。輸出税については、大蔵省がもうすでに新聞でキャンペーンを始めてるんだから、輸出業者が自分で価格を上げたらどうだと、こう言っているのです。通常、親企業は、中小企業や下請について、その設備資金の三分の一を供給しています。そういう債権を確保するためにも、また、中小企業、下請を、ほんとうにりっぱな企業として育てるためにも、輸出価格を一〇%上げて、その分を中小企業等に還元したらどうですか。私の言うことを聞かないと大蔵省の言うとおりになりますよと、ここまで言っておるのであります。私自身は、戦前の自由競争時代に安かろう悪かろうということで、日本が世界じゅうからたたかれたというような事態を二度と繰り返さないために、理想的なやはり道を歩まなきゃならない、こう考えております。それから、賃金問題、これはいつでもソシアルダンピングだと、こう言われておるのですから、賃金を国際水準に引き上げなければならないということは、これはもう当然のことであります。私は、日本人全体を考えてみても、一流企業の社長である何であると言っても、三十年、四十年働いても財産形成もできないというような事態、これは、やっぱり制度に欠陥があると思うのです。ですから、ある意味においては、私は、十年前大蔵省におりますときから、ある時期には所得税率を半分に下げなければいかぬ。しかし、下げる財源をどこに見つけるのかということで、まあ応益負担の原則というような意味で、反対をさんざん受けましたが、自動車重量税などを創設したわけであります。私自身は、二十五年の間に、ガソリン税を目的税にした議員立法の立案者であります。今度また、第二の特定財源として、自動車重量税を提唱したわけでございます。やはり、何かに不合理なところがあったら、それを置きかえて、正常なものにするためには、ただ利率を引き下げるとか、ただ輸出を押えるとかいうことでは、私は悔いを残すと思うのです。私は、働いて、うんと輸出をして、世界じゅうが困ってもやむを得ぬなどという論者では全くない。ですから、日本の実態というものと将来図というものをかきながら、その中でよりよき道を選ぶということでございまして、そういう意味では、大蔵大臣も私もほんとうに同一意見でございます。閣内不一致はありません。
  135. 松井誠

    ○松井誠君 われわれも、率直に言って再切り上げというものには反対です。それは、今度もし切り上げになれば、年末のあれとは違って、もっと非常にドラスティックなものになるでしょうし、そうでなければ、またやる意味もないわけですし、そういう、非常に大きなデフレ効果というのは、どっちみち勤労者のところへやってくる。特に、輸出関連の中小企業というのは、もうみんな整理をされて、日本経済全体の合理化に資するというようなことにもなりかねない。ですから、再切り上げというものにいかないように、われわれとしてはどうしたらいいかということを考える、その一つが賃金ベースアップです。それからもう一つは、この間もちょっと言いましたけれども、やはり資本が当然負担をすべき社会的な費用、ソシアルコストというものは当然負担をすべきです。その典型的なものは公害の費用ですね。これは、もう何人かが言われましたから、私も重複を避けますが、ただ一つ気になることがある。それはOECDの環境委員会というところで、それこそ企業者負担の原則、PPPというのですか、スリーPというのをきめておる。そうしますと、さっそく、日本の政府は、今度は別の工業委員会というところで、それの例外を拡大をするような提案をするかのような新聞報道を実は見たことがある。何でも、日本の政府は、いい原則ができると、すぐその例外の風穴をあけて、そして、それを原則にしてしまうという習癖がありますからね、私はそれを心配する。経済協力局ですか、来ていますか。
  136. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 来ています。
  137. 松井誠

    ○松井誠君 その辺の事情を説明してください。
  138. 平原毅

    政府委員(平原毅君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘になりましたとおり、ことしの二月二十五日でございますか、OECDの環境委員会におきまして、公害の国際貿易に与える面に関しましての指針と申しますか、その案をつくりました。これが今後どうなりますかということにつきましては、ことしの五月二十四日からOECDで開かれます閣僚理事会、ここにおいて採択されますと、ほんとうのOECDの決議ということになるわけでございます。見通しといたしましては、わが国も含めましてこの公害と貿易に関する問題の指針というものが採択される、賛成される。そういうふうに考えております。
  139. 松井誠

    ○松井誠君 工業委員会は……。
  140. 平原毅

    政府委員(平原毅君) 工業委員会におきましては、先生がいま指摘になりましたとおり、まだそのような例外を大きくするというようなことを正式に申したこともございません。そして、いま申しました二月二十五日に採択されました指針に関しまして申しますと、ここにも一応例外というものを認める趣旨がございます。第一番目に過渡期間——特に過渡期間においては、例外もしくは特別措置を考えてよろしい。ただ、それに条件がございまして、そのために国際貿易または国際の投資に関しまして、著しいゆがみと申しますか、ひずみと申しますか、そういうことは起こしてはいけない。しかし、例外は考えてよろしいということになっておりますが、その例外をいかなるものにするかというような具体的な話につきましては、まだ国際間で話が始まっておらない、こういう状況でございます。
  141. 松井誠

    ○松井誠君 ですから、もうスリーPの原則そのものに、初めから例外の道があけてあるのですから、それを大きく広げて、例外を原則にするという動きはかりそめにも日本政府としてやるべきではない、そのことを申し上げておきます。そうして、公害問題というのは、ECのマルファッティ委員長が二月に来たときも、公害ダンピングというようなことばを使われた。それですから、やはり公害防止の費用を政府が大企業にまで出してやるなどということをやるような公害政策ではなくて、やはり民事責任をきちっとする、刑事責任をきちっとする、両方の法律とも一番大事なところを骨抜きにするなどということはやめて、やはり企業に対する規制をきびしくするという、そのことが大前提でなければならぬと思うのです。そうじゃなしに、公害防止のための予算をどれだけつけましたかということが、−何か公害防止に熱心であるかのような考え方ですから、公害ダンピングなんと言われるわけですよ。その辺の姿勢をひとつきちっとしてもらうことをお願いをして、最後の問題に移りたいと思うのです。  それは、日本の貿易構造をこの際やはり変えるべきだという——これはまあほとんど国民的な合意でありますけれども、しかし、やはりなかなかそれが進んでいないと思うのです。いままでの、いわば冷戦型の日本の貿易構造。反共国家には大いに貿易をし、仲よくするけれども、そうでないところはそでにするという、そういういわば冷戦型の貿易構造というものから、ほんとうに平和型の貿易構造にいま転換すべきだ。そういう意味で、共産圏との貿易というものについて、私はもっと飛躍的な発展をするように本腰を入れるべきだと思うのです。ところが、時間がありませんから簡単に申し上げますと、私が政府からもらった資料で計算をいたしますと、昭和四十年から共産圏地域に対する貿易の絶対額は、もちろん全体がふえていますから、貿易といっても輸出だけですけれども、全体の輸出総額に対する共産圏貿易に対する輸出の比重というのが減ってきておるわけです。ここ一、二年はふえてきておりますけれども、減ってきておる。それから輸出保険の認証額に至っては、絶対額そのものも四十年から下がってきておる。最近は多少上向きになってきましたが、これはどういう原因でしょうか。
  142. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のとおり、六五年から七一年の統計をとりますと、わが国の総貿易は、六五年に百六十六億ドルであったものが七一年には四百三十七億ドルでございますから、非常に大きくなっております。この中で、対共産圏貿易は数字的には伸びておるのですが、この率は平均数字よりも下がっております。共産圏貿易は六五年に約十億ドルでございましたのが二十億九千百万ドルというふうに伸びておりますから、六年間で倍になっております。おりますが、その比率は、六五年に六%だったものが、七一年には、金額は倍になっておっても、総体的数字に占めるシェアは四・八%に減っておる。共産圏貿易には、一つにはココムの制限とか、いろんなものがあります。ありますが、そういうものもさることながら、日本との貿易においても、貿易バランスをとろう、こういうのが基本的にございます。物物交換ではございませんが、輸出入のバランスというものはとりたい、こういう前提がございます。で、共産圏から——輸出は伸びておりますが——輸入する品物に適当なものがない、こういうところに問題があるわけであります。まあ、そういう意味で、これからは輸出先の多様化ということが当然考えられなければならない問題でありますので、共産圏貿易というものはだんだんふえていく。まあ、とにかく、この間申し上げたように、ソ連の実態からいうと、六五年から七一年までは下がっております。特に、ソ連は下がっているわけです。下がっておりますが、三十億ドル以上のプロジェクトを現に検討いたしております。こういうことでございますので、だんだんと拡大をしていく方向にある。またココムの制限等が大幅に緩和されますので、そういう意味からも、共産圏貿易は拡大していくという考え方でございます。
  143. 松井誠

    ○松井誠君 私も、国別あるいは品目別に検討したわけじゃありませんから、的確にはわかりませんけれども、くしくも佐藤内閣が成立してから共産圏貿易は下がってきておる。私は、これは偶然じゃないんじゃないかと思うんですよ。そうでなければ、最近、また上がってきたという理由の説明にはならぬでしょう、いま言われたような理由でもし言われるんだとすれば。まあ、しかし、それはいいです。  それはいいですが、私は、一番、共産圏との貿易の中に隘路になっているのはアメリカとの関係、言うまでもないことですね。このアメリカの対共産圏貿易に対する規制、国内的な規制の仕組み、これはアメリカの国内法ではありますけれども、しかし、実際は、日本の貿易構造そのものに干渉する仕組みにもなっておるわけですから、この辺の仕組み、簡単でけっこうですが、ひとつ説明をまずしてください。
  144. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) アメリカには、いろいろな法律や組織があるわけでございます。申し上げましょうか——共産圏貿易の法律はたくさんございますが、その主要なものは輸出統制法、バトル法、対敵取引法及び外国資産管理規則等々があるわけです。こういうものがございまして、ソ連・東欧——ソ連圏に対してはこういう制限をする。それから、中国に対してもこういう制限をすると言っておったんですが、中国に対しては、いままで、ココム・プラス・アルファというのがあったのですが、去年からこのプラス・アルファが取れて、ソ連・東欧並みになったということでございますが、対敵取引法というようなものは、これは、キューバとか、現に交戦をしておるという立場にある北ベトナム、北鮮に対しては非常に強い規制をしておって、北鮮、北ベトナムに対しては、米国からの輸出貿易はゼロ、こういうことでございます。キューバに対しては、御承知のとおりベルを押したという歴史的な事実もございますが、キューバはアメリカの交戦国ですのでその取引は禁止されている。また、アメリカのキューバに対する禁輸品目を他の国の企業がキューバ向けに輸出すると、その企業は、アメリカ向けに同種品目を輸出できない、こういうことでございまして、ニッケルを含むものについて、フランスはキューバに輸出をして、アメリカから全部シャットアウトを食ったことがあり、驚いて、キューバヘの輸出をやめて、対米輸出に切りかえてしまった。そのために、キューバに対しては輸出はゼロになった、こういうものもございます。傾向としては、こういうのはだんだんとなくなると思いますし、また、なくしていかなきゃならぬと思いますが、なかなか日本には見られないような相当なものがございます。
  145. 松井誠

    ○松井誠君 キューバの話が出ましたから、それじゃ具体的にお聞きをしますが、日本からキューバへ品物を輸出をしようとするときに、障害になっておるアメリカの国内規制の根拠というのは何ですか。
  146. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 一番最後に申し上げました外国資産管理規則というものがあるわけでございます。日本もキューバからは砂糖をたくさん買っておるわけでございます。一億三千万ドルだと思いますが、その程度の大きな量の砂糖を輸入しております。そういう意味で、キューバはいろいろなものを日本から入れたい。それは砂糖を持ってきた船がから船で帰っておるということでございますので、太平洋をから船で返しておくのもおかしいじゃないかということで、私も去年からいろいろやってみたんですが、少しずつは片づいてもおります。いずれにしても、業者がアメリカと全然関係のない商社ならこれはやれると思いますが、アメリカと大なり小なり関係のある商社は、いま申し上げたこの資産管理規則というようなものを横目に見ております。したがって、輸出はしたいという業者はございますが、なかなか商談が大きくまとまらないということでございます。これは覚書貿易などばかりやっておる専業者がやればどうなるか、わかりません。そういう問題もいま通産省でこまかく検討し、調査をしておりますが、いずれにしても、アメリカと関係のない商社というのはなかなかありませんので、そういう意味では、慎重であるというのが実情でございます。
  147. 松井誠

    ○松井誠君 外国資産管理規則というのは、北朝鮮、北ベトナム、それから中国だけで、キューバには関係ないんでしょう。
  148. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) あなたのほうがよく知っておられて……。キューバ資産管理規則というのは別にあるんです。
  149. 松井誠

    ○松井誠君 キューバ資産管理規則は、キューバから輸出をする場合の問題であって、キューバに輸出をする場合には、キューバ資産管理規則じゃないんですよ。
  150. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 詳しくお答えするつもりで、たくさん用意してきたわけですが、どうも短い時間でありますので、あちこち申し上げて恐縮でございますが、その場合は対敵取引法の第五条のB項によっています。
  151. 松井誠

    ○松井誠君 その調子ですよね。つまり、なぜ私がこんなことを言ったかというと、一体、キューバに対する輸出の障害は何かということを役所に聞きに行ってもわからないんですよ。大臣もうその答弁をしておられる。で、そのアメリカの国内規制の条文はありますと言うんですけれど、それは英語しかないんですね、翻訳はない。いつも英語でやっておるのかと思うと、そうじゃなくて、何を手引きにしてやっておると思ったら、経団連の手引き書というのがある、これでやっておるんです、役所が。私は役所の第一線の役人を責めるつもりは毛頭ありません。しかし、これがやっぱり共産圏貿易に対する政府の姿勢なんですよ。肝心のその規制の取引法なんかも、正確なことは何もわからないでやっているから、どだい行政指導なんかできるわけないでしょう。経団連のほうがよく知っているんだから。そういうところに私問題があるということを実は指摘をしたかった。  ですから、これからあと時間がありませんから、もう終わりますけれども、これは東南アジアだけでなしに、中南米というのは、私は去年の夏回って見ましたけれども、確かにやっぱり日本に期待しています。で、これから——いままでは社会主義の国を日本はどうも毛ぎらいしておったけれども、ことに開発途上国なんというのは、早く発展しようと思えば、どうしても社会主義になるか、社会主義的な政策をとらざるを得ない。そういうものをもう毛ぎらいしておったんじゃ貿易はできませんよ。キューバはいままでOASの孤児だといわれておりましたけれども、いまはもう決してそうじゃない。ですから、キューバとの貿易の拡大というのはやっぱり中南米の将来の貿易というものを一つは占うことにもなる。アメリカのそういうふうな国内的な干渉を排除をして、もつとやっぱりこんな中腰でなしに、よるべき資料さえもないというような状態ではなしに、本腰を入れてやってもらいたい。その抱負、経綸を最後に聞いて、終わりにしましょう。
  152. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) アメリカとの交渉、特にサンクレメンテの会談においては、日本は、アメリカに三〇%も貿易依存をしておるようなことで、このような会議を行なわなければならぬのだが、日本はどうしても輸出をしなければならない国です。ですから、輸出が落ちれば、国民生活のレベルアップの速度はそれだけ落ちるんです。そういう意味輸出の多様化をせざるを得ない。多様化をする場合には、ココムの全廃を求めます。こういう説明に対して、日本の立場はよく理解できるということでした。自分のところも買わない、人のところへも売るなというのでは、日本はどうしようもないわけです。したがって、姿勢としては、可能な限り、われわれは輸出の多様化をやっていくということでございます。その意味では去年からだんだんと他市場向けがふえておる。いまのキューバの問題は私も十分調べたんですが、あなたも行ってこられたということもありますが、私も、砂糖を買って、から船で返すのはおかしいじゃないか、自動車ぐらい何で積んでやれないんだということで、それは十分調査いたしました。でも、特にアメリカはキューバに売らない。それからヨーロッパ諸国も売らない。ラテンアメリカ諸国はみな売らない。こういうことなら、日本から輸出について文句を言う国が多い中にあって輸出を待望しておる国があるんだから、その点ぐらいのことが解決できないかということで検討しておるんです。ですから、非常に積極的に勉強しておるということでひとつ御理解願いたい。
  153. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で松井君の質疑は終わりました。  午後一時四十五分再開いたします。暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後一時五十六分開会
  154. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。石原慎太郎君。
  155. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 私は、さきの総括質問で玉置議員がなさいまして、私もいささかの関連をいたしましたが、中国問題に関する日本の新聞の報道の偏向とそれに対する中国側の規制の問題について継続して質問したいと思います。  この問題の発端になりました三好修氏の「経済往来」に載った論文でありますが、どうもお読みいただいたはずの総理が読んでないと言われるので、話が進みませんので、ここで簡単に論文の——報告の要約をいたしますと、従来LT貿易交渉を窓口にして行なわれてきた日中記者交換は、あくまで対等互恵のものであったが、いつの間にか日本側の報道に関し北京側の強い圧力がかかりだし、日本人記者の監禁や国外追放が行なわれるようになった。その点について一九七〇年九月帰国した西園寺公一氏は、すでに一九六八年の覚書貿易のコミュニケの際に従来の日中記者交換メモは廃棄され、以後は共同声明と北京側の言う政治三原則を受け入れた上で報道する新聞社以外は中国へ入れないことになっている。このことは古井、田川自民党代議士によって、とうに日本の新聞界に周知されているはずだ、との発言を行なった。驚いた新聞社は、翌十月、帝国ホテル「桐の間」で秘密会合を持ち、古井、田川両議員から事情聴取をしたが、その際両氏は、記者交換を政治三原則を守ることを前提として行なうことに同意しなければ覚書貿易にも調印しないという北京側の強い言い分をいれて覚書貿易をまとめ、従来の九社九名の線を中国側の言うように削減し、五社五名のワクとすることにも同意し、以後北京特派員の派遣については両氏があっせんすることになったと言明した。六八年の共同声明の秘密の取りきめは、実に二年半後、ようやく新聞人たちに限ってのみ明らかにされたわけだ。新聞界は右の事情聴取でがく然としたが、以後もなぜかその秘密会合の内容を公表せずに今日に至っている、というものであります。  この論文に関して四月十三日に田川氏の反論の記者会見が載りまして、毎日新聞が一番それを詳しく報道しておりますが、田川氏は、この論文は非常に誤謬の多いものであると言っておられますけれども、その点、私は後に三好氏とも面談し、三好氏側の言い分では、自分の書いた報告の田川氏が指摘している点があくまでも正しいというための証拠、証人というものは十分あると言っております。いずれにしても、そこで田川氏が言われている、この問題を発端にして私たち有志の議員で発足した「報道の自由を守る議員懇談会」が中国との国交回復に水をさすものであるという非難は、これは全く当たらないので、これは全く反中国運動ではない。ともかく日本の新聞が正常で自由な条件下に報道を行なうその条件を守ろうということで発足したものでありまして、日本の報道が公正で自由な条件のもとに行なわれているかどうかということを知る権利は、その新聞を読んでいる読者全体、つまり日本人全体にあるはずだと私は思います。実際に日本と中国のプレスの中国報道は非常に、百八十度違うという点が多々ありまして、こういった問題の背景にそういった政治的な規制があるということは非常に重要な問題ではないかと思いますし、問題が重要な外交問題だけに、国論の形成を誤ると日本の命運が左右されるというおそれがあると私は思います。しかし、いずれにしても、田川氏は非常に大事な点を、事実を記者会見の中で認められました。それは六八年の覚書貿易のコミュニケ作成のときに、六四年にされたLT貿易のワク中での記者交換の体制の八名、後に追加されて九名のワクを四名に減らすことには同意をした、そして、それを新聞界にも公表したと言われておりますが、実は公表しなかった。その理由は、新聞界が混乱をすることを心配したということですけれども、実際に、田川氏のことばのとおり、九名のワクが四名に減ることで新聞界が大きく混乱をするほど、この数の問題は重要な問題だと私は思います。そして、その後それを公表したと言われておりますが、実際に七〇年の九月の帝国ホテルの桐の間の新聞界の要人との秘密会談まではこれが発表された形跡はない。「言論人」の林三郎氏が、七〇年の十一月号に、紙上で公開質問をしましたけれども、返答もなく、田川氏は返答を出されたと言っておりますが、林氏のほうは返答を受け取った覚えがない、その点についても対決してよろしいと言っておられます。いずれにしても、われわれ国民は、四月十三日の三好論文と、われわれが行なっております報道の自由を守る議員懇談会に対する田川氏の記者会見による反駁で、初めて公式に北京の日本特派員のワクが数の上で九名から四名に減らされた、しかもそれに日本の国会議員が政治家として立ち会ったという事実を知らされたわけでありまして、どういうわけか、この問題が、今日まで不問に付されたといいますか、秘密にされていた。少なくとも国民の目に触れることがなかった。七〇年にすでに桐の間の秘密会談でその事実を通告されながら、新聞界は、政府の機密に関しては知る権利を振りかざして政府を弾劾しておりますけれども、新聞界自身が持っている報道の条件に対する非常に大きな変化というものを機密としてか秘密としてか、いずれにしても私たちに知らせることがなかった。これは事実だと思います。  さて、六四年にまとまりましたLT貿易の際の記者交換メモには、あくまでも人間は八名、後に追加されて九名、そして政治的制約なしということがうたわれております。といいますよりも、政治的制約については一行もしるされていない。それが、いま、数の上では四名になり、そして政治三原則という政治的な規制が明らかに加えられた。たとえば、ここに、皆さんも御存じかもしれませんが、七〇年の九月に共同通信の中島特派員が北京を追放されるときに共同通信に対する北京側からの公式の通達文がある。その中に、はっきりと、共同が、われわれの厳正な警告を無視し、この会議を開いたことは——これは台湾が含まれているアジア通信社連盟第三回総会を共同が開催したということですが、この会議を開いたことは、共同が米日反動派の中国反対活動に積極的に参加し——その次が重要であります。中日双方が記者交換にあたって必ず守るべき中日関係の政治三原則、中日覚書貿易コミュニケの原則をひどく破壊したことを示しました。これによって、われわれは、これに対抗する措置をとらざるをえなくなりましたということで中島特派員が追放されたわけであります。同じように、NHKが、アジア・ブロードキャスティング・ユニオンに入ってい、それを主催し、しかもその中に台湾が入っているということで、いろいろなチェックを記者の再入国などに関して受けました。明らかに政治三原則というものがはっきりと日本の報道に対して規制されてある。田川、古井両議員がどう言われようと、中国側は、はっきりと、政治三原則と、しかもそれを含んでいるMT貿易コミュニケの原則というものを守らなければいかぬということを言っているわけでありまして、そして、田川氏は、数を減らした以外の修正はない、政治三原則が追加された事実はないと言っておられますが、いずれにしても、事実として向こう側の日本の報道陣に対する扱い方としてそういったことが歴然としてあるというわけであります。  これに関して、この三好報告の内容の真偽については、私たち報道の自由を守る議員懇談会もこれを追及し、でき得れば、その結果、国民のために日本の新聞がどのような状況下に中国問題を報道しているかということを明らかにするためにも国会で調査されるべきものと私は心得ますし、その努力をしたいと思いますが、この報告の中の幾つかの事実が正しいか正しくないかということは、そういった機会に明らかにされるでありましょうし、三好氏は、もし国民が自分の報告の真意を知りたいと欲し、それを国会国会の権威で知らしめる意思があるならば、証明もするし、そのための調査報告以外の資料なり証人というものももたらすであろうということを言っております。そういった機会にこれは明らかにされるでしょうけれども、この報告の中では古井氏がこういうことを言っている。「覚書協定の調印の前に記者交換で話合いたいとの申入れを受け、一日中激論した。中国側はこれが——記者交換がです——まとまらなければ覚書協定も調印しないという態度だった。こうして、記者交換も、政治三原則等を守ることを前提として行なうことになり、今後北京特派員の派遣については、自分たちが斡旋することになった。」司会者は「それは初耳だ!」とがく然としている。こういった事実が正しいか正しくないかということは、この会談に出られた当事者も証人として喚問されて明らかにされるところでありましょうが、いずれにしても、いまわかっている事実だけについて、私たちは、新聞の中国問題に対する偏向のバックグラウンドというものを知る必要があると思います。  そこで、まず第一にお聞きしたいのは、政府としてこの問題にどのような関心を持っていらっしゃるか。つまり、これが日本の国論の形成を左右し、ひいては日本の国益を左右し、つまり政治の指針というものをも左右する問題であるだけに、この問題はやはり厳正に厳密に国会の場で国会の権威のもとに調査されるべき問題だと私は思いますが、官房長官、いかがお考えでしょうか。
  156. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 石原委員の御質問でございますが、私、政府としてのいわば対報道関係者との窓口に当たるという、確かに職務上そういう立場でございます。ただし、今日までいわゆる中国との記者交換という問題はいわば民間レベルの取りきめであるという現実に立ちますとき、政府として私からそれに論評することにお許しをいただきたいと思います。ただ、この二つの三好さんと衛藤さんの論文は私も読ませていただいて、私なりにも、まあ個人の見解を申し述べるならば、ずいぶん勇気のあるお方だと、このような印象を受けております。  いま一つ、この国会の場において明らかにすべきであるということでありますが、これは私は間々この国会対策と政府と取り違えたりしておこられることがございますけれども、正式に申しましてあくまでも政府という立場に立ちます場合、国会での調査権に対する論評は差し控えたいと、このように思います。
  157. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それでは、違った形で御質問しますけれども、政府もまた、政府のあくまでも原則的に権限の及ばぬ国会の調査がこれを政府のためにも明らかにすることをお望みではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  158. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 国会でいわゆるどうした問題にせよ、一つの新聞論調のバックグラウンドというようなものがそれなりに究明されていくということは、政府のためというよりも、国民のためにそれはあってしかるべきことであると、このように思いますが、政府自身がそれによって利するか利さないかという問題もやはり私の論評の外にあるような気、がいたします。
  159. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 田川氏は、ロサンゼルスタイムスのジェームソン記者にインタビューを受けた際に、政治三原則は実は六八年の覚書貿易共同声明以前に新聞記者交換の条件として暗黙のうちに六四年からあったんだということを言っておりますし、また、六四年に松村氏と一緒に訪中した日経の幹部もそうだということを言っておるようであります。しかし、日本新聞協会、つまりあくまでも記者交換というものの詳細に通じていなくてはならぬ、また、それが条件としてあとで述べますけれども法務省も外務省も未承認国との記者交換を認めた、その新聞協会の江尻事務局長は、そういうことは一切承知しておらないというように同記者に答えておりますが、外務大臣あるいは政府委員にお尋ねしますけれども、外務省は六四年のLT貿易体制のワクの中で記者交換が行なわれたときに、すでにそこに政治三原則が含まれていたということを御承知でしたかどうか、お聞きしたいと思います。
  160. 和田力

    政府委員和田力君) 記録によりますと、六四年当時には政治に関しましての規制というものが記者交換に付随して話し合われておるということは私どもは承っておらないようでございます。
  161. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 では、そういった事実が実際にあったとすれば、外務省が知らぬところでこれが了解されていたということになるわけでありますが、いずれにしても、六七年にLT貿易が一方的に中国側によって破棄されまして、これによってLT体制下の記者交換メモも破棄されたと考えざるを得ないわけですが、六七年のLT貿易の破棄に際して、LT体制下の記者交換メモが破棄されたかいなかということについて、外務省は何かお聞きになっていましたでしょうか。
  162. 和田力

    政府委員和田力君) 六八年に交渉が行なわれました後に、当時の交渉の衝に当たられました団員の方から、非公式に、いままで九人であった記者交換の数を四、五名にしたいと向こうから申し入れがあったというお話は承っておりますけれども、その他の条件等については何ら承っておりません。
  163. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 まあその新聞協会も、LT貿易が破棄されたその時点で、一体、記者交換の条件、体制がどうなったのかということを確かめるべきだったと思いますし、その反省は新聞協会内にもあるようでありますが、いずれにしても、六四年に松村謙三氏が訪中されるときに、当時の曽野情報文化局長が新聞協会の幹部に、当時の大平外務大臣が松村氏に伝えた記者交換条件に対する外務省の意向を、その要旨を説明されて、それが文書になっていたそうでありますけれども、それには、政治的治動は行なわないと、八名のワク、そしてあくまでも新聞協会がこの交渉にすべて通じていなければ、つまり、協会が知った上で行なわれたものでなければ、未承認国である中国との記者交換は外務省は認められないという意向であったようでありますけれども、私、それをいまもう一度ここで確認したいと思いますが、それは正確でありましょうかどうか、当時の外務省の意向はどうだったんでしょうか。
  164. 和田力

    政府委員和田力君) この記者交換につきましては前からの経緯がございまして、新聞協会が当事者であるという了解のもとに六十四年当時には外務省は新聞協会とお話をいたしておりましたわけでございます。しかしながら、結果におきましては、LT貿易のワクの中に入りまして、表立って新聞協会は当事者とならないという結果になっております。
  165. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それは外務省が望むところであったのでしょうか、それとも、外務省にとって好ましからざるつまり新聞協会の位置であったんでしょうか。
  166. 和田力

    政府委員和田力君) これはもともとが民間のお取りきめでございますので、外務省がはっきりした指図をいたすべきものではないと思いますが、希望といたしましては、それから了解といたしましては、当時、新聞協会が衝に当たられるものという了解で進めておったことは事実でございます。
  167. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 その外務省のいわば非公式の意向というものは、今日でも続いているのでしょうか、それとも、途中で何らかの変化がありましたでしょうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  168. 和田力

    政府委員和田力君) 特に新聞協会でなければならないというふうには考えておりませんけれども、新聞協会が適当な窓口であるという考えには違いございません。ただし、当時、代表団の方々から、現実には新聞協会では交渉ができないのだというふうに承ったようにいたしております。
  169. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 その結果、新聞協会は、桐の間の例の秘密会談で覚え書き貿易のコミュニケの発表と同時に非常に態様を変えた記者交換の条件についてがく然としたわけですけれども、とにかくそれはわれわれの関知しないところで、あくまで九社九名のワクで行くのだ、三原則の規制はないのだという姿勢を通すと言っているわけです。これは、言ってみれば、現実の状況と全く違った一種のフィクションでしかないわけでありまして、そういったフィクションというものを前提にして話をすれば、物事は一向に進みませんし、ますます現実の報道の態様というものは食い違ってくると思いますが、いずれにしても、現在、新聞協会が強く望んだ九名のワクというものは一方的にとにかく四名に減らされた。同時に、共同通信に対する通告文にも見られるように、はっきりと政治三原則という政治的な規則というものが北京から要求されて、それが記者交換の日本の記者が北京に行って取材報道する一つの条件になっているというこの状況は、これはあくまでも民間のことかもしれませんが、いずれにしても、間接的にもこういった未承認国との記者交換にかかわりある外務省として、あるいは日本全体に行政を及ぼしておる政府として、この記者交換の現状の状況というものが好ましいものであるかどうかということ、つまり、イエスかノーか、いいか悪いかという判断をお聞きしたいと思います。外務大臣あるいは官房長官にお聞きしたいと思います。
  170. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もこの間、石原さんから総理大臣に対しまして御質問があった。そこで、「経済往来」の論文を見てみましたです。私の感じを申し上げますと、いま私が取り組んでおる最大の外交課題は日中問題である。この外交問題がまたデリケートな段階にきておるわけなんです。私は、かねがね申し上げておりまするとおり、日中国交の正常化、これはもう歴史の流れである、何とかしてこの問題の解決をはかりたいと、こういうかたい考えを持っておるのです。しかし、この交渉はどうしても一方的な立場で解決されるべき問題じゃない。中国側には中国側の立場がありましょう。しかし、わが国にもわが国の立場があるのです。ですから、わが国といたしますれば、どこまでも主体性ある態度を持って行動をとらなけりゃならぬと、そういうふうにかたく考えておるわけなんです。そういう行動をとる際に、マスコミ、言論界、こういうものが非常に重大な役割りを演ずると思うんです。つまり、私どもは国論を背景にする、国民的なコンセンサスというものを背景にしなければほんとうに自主、主体性のある正しい外交交渉はできないと思うんです。そういう際であればあるだけに、いま言論界が中国問題を扱う姿勢、それに対しましては、私は言論界の態度というものがほんとうに公正で、妥当な立場になければならぬと、こういうふうにしみじみと思います。で、そういうふうに考えるわけでございますが、とにかくこの間来、言論の自由また知ることの権利、いろいろと議論をされる。されますが、私はほんとうにもう民主主義社会において言論の自由ということが、これはほんとうに基本をなしておる。これが失われたら、民主政治というものは動かないくらいに考えておるんです。しかし、同時にマスコミは、第四の権力とまで言われるくらい非常に影響力が多いんですから、その影響力のあるという反面につきましても、これはもうどうしてもマスコミにおいて十分考えて行動していただきたいと、こういうふうに考えておるんです。非常にデリケートな段階でありますので、切にマスコミ自体がそういう立場に立っての行動を強く期待をいたしておると、こういうのが私の感想でございます。
  171. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 デリケートな問題について非常にデリケートなお答えを私なりにパラフレーズいたしますと、おっしゃるとおりだと思いますが、非常に大事な問題だけに、私たちはコンセンサスを取りつけて、これを外交問題として処理していく必要がある。その正当なコンセンサスをつくっていくためにも、報道というものは、この問題に関して、公正で自由な報道というものをしていかない限り、国民の健全なコンセンサスの取りつけようがないと私は思います。  もう一つ外務省にお聞きしますけれども、六八年の覚え書き貿易のコミュニケの際に、古井、田川両氏に非公式にでも、記者交換の条件の変化の有無について、外務省としてはただされましたかどうか。また、ただすべきだったと思います。つまり、六四年の松村氏の訪中のときに、それだけはっきり外務省の内意というものを伝えたのですから、この際にも、そういった内意が今度のコミュニケの際にも変化がなかったかどうかということをただすべきだったと思いますけれども、これはただされましたかどうか。
  172. 和田力

    政府委員和田力君) 先ほどお話し申し上げましたとおり、当時の事務所長大久保さんから非公式にこういう話があったという事後報告を承っているだけでございまして、どうもそのときの記録によりますと、いまおただしの政治原則についての規制というものがあったということは、全然伺っておらないように思われます。
  173. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 記者の数のワクが九名から四名にこの六八年のコミュニケの時点で削減されたということは、お聞きになりましたか。
  174. 和田力

    政府委員和田力君) そのことは伺っております。
  175. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 お聞きになりましたか。
  176. 和田力

    政府委員和田力君) はい、さようでございます。
  177. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それなら、そういう大事な問題を何で外務省というものは公表されなかったのか。また、その問題について疑う人間がいなかったので、外務省にそれをただす機関がなかったのかもしれませんけれども、いずれにしても、六四年のLT体制の記者交換の条件は変わってきているわけです。これに対して外務省が不満か不満ではないか、満足しているかどうか知りません、明らかに新聞協会は不満なわけですね。非常に強い不満を持っている。これは非常にデリケートな問題が発生してくるわけですけれども、未承認国である中国との記者交換の中国記者の保証人は新聞協会になっている。そしてこの新聞協会が六四年の時点で、新聞協会にとって望ましい、満足のいく状況で記者を交換する限り外務省は認めようと、結局法務省もこれを認めるということだったと思うんですが、いずれにして、今日日本にいる中国人記者の資格というものは、その望ましい条件下での、つまり六四年の時点でですね、新聞協会はこれを不満としているから一種のフィクティシャスな設定ですけれども、六四年の体制がいまだに続いているという、これはこれなりにこちら側の一方的な姿勢をとっているわけですが、その新聞協会があくまで満足する六四年の時点での体制下に——新聞協会が保証人になる限り、つまり中国記者の滞日が法的に許されているはずですけれども、この点法務大臣いかがでしょうか。
  178. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまの御質問は、法務省の関係としては別段のことはないと思います。要するに、ただ未承認国の間におきまして、これは非常な例外であります。その場合には、できるだけ相互主義というのが一つの尺度だと思います。そういう点から考えますと、現状は私は必ずしも満足すべきものではないんで、率直に言って、非常に困ったものだという感じを個人的には持っておるわけであります。
  179. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 法務大臣がいま個人的な見解として申されましたが、これは、やはり政治家である前に、一人の日本人として、日本の新聞を読む人間として、当然な見解だと思うのです。私たちは、やはりこれを是正する努力をする必要があるし、今日の日本の新聞が置かれている非常にデリケートな状況からいって、多分、私の今日の質問はおそらく黙殺されるかもしれませんけれども、しかし、いかにそういった手段がとられようと、やがて国民はこれを知るでしょう、また知らなきゃいけない。また政治家はこれを国民に知らせ、国民の知る権利に私たちが満足を与える努力をすべきだと思いますし、同時にまた、第一線で活躍しておられる報道の諸君も、そういった姿勢でやはりこの状況の改正というものに努力すべきだと私は思うんです。それは当然な努力ですし、それがない限り、私たちの社会というのはどこに行くかわからない、非常に不安定な状況にさらされると思う。つまり中国人は、いまの中国の社会で報道がどういう状況で報道を行なっているかということを知ることはできないかもしれませんけど、日本の社会で、日本人が一つの知る権利として報道がどういう状況で報道しているかということを、要するに知りたいと思う。この辺は、社会体制というものは貴重なものですし、それが貴重である限り、私たち政治家も、あるいは報道の担当者も、これを守る努力をしなくちゃいかぬと思うんです。これはやはり私たちも報道の自由を守る議員懇談会として、これから二回、三回公聴会を開き、三好氏なりあるいは田川、古井両代議士に出席いただいて、これをただしたいと思いますし、できれば国会の権威でこういった問題を国民の目の前でもっと大きくやはり調査し、その調査の結果に非常に不満な点があれば、ひずみがあるならば、これを是正していきたいと思います。  質問を終わります。
  180. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で石原君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  181. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、和田静夫君の質疑を行ないます。——それでは質疑を始めます。和田君。
  182. 和田静夫

    和田静夫君 十三日の衆議院外務委員会秘密理事会に外務省が提出した外相書簡案でありますが、十四日の新聞にはすでに報道をされておりますけれども、もう隠す必要がないと思いますので、ここでそれをお示しください。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あの書簡は沖繩交渉の経過のものでありまして、実際は出しておらない書簡案であります。したがいまして、これは秘密にしておるわけです。まだ秘密は解除しておりません。ですから、当委員会でも御要請がありますれば、秘密理事会においてごらんを願うと、かようにいたしたいと存じます。
  184. 和田静夫

    和田静夫君 すでにもう報道されていますから、何も秘密とする必要はないと思いますが、そこで何月何日にあの案はアメリカから提示をされましたか。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府委員がお答えします。
  186. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいま手元に資料がございませんので、あとで御返事いたします。
  187. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  188. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  189. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま照会しましたところ、六月九日に井川スナイダー会談において出た書類だそうであります。
  190. 和田静夫

    和田静夫君 返還協定批准間近なこの時点で、そうした内容の書簡案がアメリカ側から提示されたということから、福田外務大臣は、経過としてはそういう話もあったが、結果としては密約はないと答弁をされていますけれども、それはまさに成り立たないのではないですか。
  191. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は真実をお答え申しております。
  192. 和田静夫

    和田静夫君 私を含んで国民の疑惑は、まさに六月九日にこういう案が提示をされた、それが単なる経過であったということを真実として受けとめることは、これはどうしてもできない。私はこの際、あの書簡を日本政府が出したか出さないかというのは、もう問題ではないと思うんです。あの書簡を日本政府が出すべくアメリカ側が要求した事実が私は問題だと思う。三億二千万ドルという金額がきまるまでの経過の中に、軍用地の復元補償費四百万ドルを日本が肩がわりするということが含まれているからこそ、アメリカ側はそのことを国内——議会筋等に示すべく日本側にあの書簡を出すことを要求した。こう見るのが自然でありますが、そうではありませんか。
  193. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三億一千六百万ドルという段階があって、そしてそれに積み上げまして、復元補償費四百万ドルと、こういうことになって三億二千万ドルになったんだという経過でありますれば、まさに和田さん御指摘のような疑問が起こるんじゃないかと思うんです。しかし、いかなる段階におきましても三億一千六百万ドルという階段はないんです。三億二千万ドルというものがきまった、それと並行いたしまして、わがほうは復元補償交渉をしておったわけです。三億二千万ドルというのは先方に払う金であります。それから復元補償費というものは先方から取る金なんです。それが三億二千万ドルというものが別途きまって、アメリカ側ではわが国に対する支払いのほう、これが大体四百万ドルになるんでありまするが、これについては非常に頑強に抵抗いたしておったわけなんです。しかし、ぎりぎりのところにきまして、復元補償に応じましょうと、こういうことになったわけです。なったが、さて、四百万ドルの支出をアメリカの国会にどう説明するかということが問題になりまして、やりとりがあり、いま御指摘の書簡案というようなものが討議されたと、こういうことなんでありまして、私は三億二千万ドルというものがきまったんだということを申し上げておる。それは、私は一点の真実でない点を申し上げておるつもりはございませんです。これを裏を返してみれば三億一千六百万ドルという段階が一度あったと、そして四百万ドルだ、こう言うなら、まあ、そういういろいろ疑惑を招く余地もあろうかと思いますが、そうじゃないんです。三億一千六百万ドルという段階はいかなる段階にもなかったということをはっきり申し上げます。
  194. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣がいかに言われましてもね。  そうしますと、私は文書の写しは持っていますけれども、この後半の部分ですね、日本政府は、米国政府が第四条三項に従って自発的に支払いを行なうための信託基金を設定するために、この一括決済額から四百万ドルを留保することを了知する。この部分は、そんな話は全くないのに、アメリカの側が四百万ドルなどという架空の金額を持ち出してこういう書簡を出せと言った、そういうことにあなたの答弁を聞いているとなりますよ。そんなことはありませんでしょう。
  195. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三億二千万ドルというのはもっとずっと前にきまっておるわけなんです。そして、その三億二千万ドル、これはアメリカとすれば私は、日本政府はよく出してくれたという感触を持っていると思うのです。つまりその交渉の過程で、私は大蔵大臣をしておった。そこで二億ドル台にとどまらぬかということを強く主張しておったんです。それを受けて愛知外務大臣もずいぶんがんばってくれたと思う。そのがんばりに対しまして、まあ最終的な妥結として三億二千万ドルとなったと。私は、この三億二千万ドルは、わが国の立場から見ますると、これはとにかく四億といい五億といわれるようなマスコミの報道がありましたが、それにもかかわらず三億二千万ドルできまった。私は、まあよくきまったと、こういうふうに見ておりますが、私どものほうの頑強な態度から見まして、アメリカのほうでもまあまあのところできまったという感じを持っておったと思うんです。  まあ、それはそれといたしまして、三億二千万ドルのこの説明、これをアメリカ政府は国会に対して行なわなきゃならぬ。その際に、アメリカ政府は、国会に、日本から取るものは取ると、しかし出すものは出さぬという空気があったことをよく承知しておるわけです。そこで、この四百万ドルというものを何とか別除した形がつくれないかということを考えた時期があるわけでありまして、それがいま御指摘の書簡というふうになってきておる。時期的に見ましても、とにかく三億二千万ドルというものはかなり前にきまっておる。この書簡案の論議されたのはもうずっとおくれて六月の九日という時点であるということからごらんになりましても、私は御了解を願えるのじゃあるまいか、そういうふうに考えます。
  196. 和田静夫

    和田静夫君 何のためにアメリカがそんなことをする必要があったとお思いになりますか。
  197. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカ政府は、ただいまも申し上げましたが、アメリカの国会では取るものは取っちゃう、しかし出すものは出さぬ、そういうような空気があったと、そういう必要からであったかと、かように思います。
  198. 和田静夫

    和田静夫君 まあこれは、だれが考えても密約があったとしか思えない状況であります。そして私は、何よりも許されないのは、この密約問題を国家公務員法違反という低次元の法律的しかけの中にたたき込んで問題の本質をすりかえたということであります。  伝え聞くところによりますと、福田さん、あなたは官房長も通さずに直接人事課長に命じてこれを行なったというではありませんか。まあ、司馬遼太郎氏はそうしたやり方を称して、最近あるところに「良質な政府のすべきことではない。地球のどこかにある三流か四流の政府のすることである。」と書いておりますが、特に福田外務大臣はこのことを私は肝に銘ずべきだと思うのであります。  次に、今度の起訴状の内容でありますが、これは今度の機密漏洩事件をスキャンダルにすりかえるという最低で最大のすりかえを行なっています。  法務大臣、あなたは、あの起訴状を出される前に目を通されましたか。
  199. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 法務大臣は全然それまでにはこの問題にはタッチいたしておりません。起訴されて、起訴状を初めて見ました。その後いろいろの批判があります。ただ、刑事訴訟法から言いますと、ある程度犯罪の構成要件を明確に、また日時、場所等を記載しなければなりません。でありまするから、その点はやむを得ないのではなかろうかと考えております。
  200. 和田静夫

    和田静夫君 たいへん博識な法務大臣がそういう答弁をされるというのは驚きですが、あの起訴状は正式には何という名前の事件にからむ起訴状ですか。
  201. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 国家公務員法違反ということであります。
  202. 和田静夫

    和田静夫君 この外務省の機密漏洩事件、これを国公法違反事件の容疑になぜ二人のプライバシーにかかわることを持ち出す必要があったのですか。
  203. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 手段が非常に不相当といいますか、相当性を逸脱しておるということを明らかにしませんと、犯罪は構成しないのであります。その犯罪構成要件といたしまして、その点は明確にせざるを得なかったんだと思います。
  204. 和田静夫

    和田静夫君 個人のプライバシーの問題が犯罪構成要件に関係があるなんという認識は法務大臣、たいへんな間違いじゃないんですか。
  205. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そそのかしという内容を非常に明確にしなければ、犯罪には該当しないわけであります。だから非常に異常であるということを明確にしませんと、刑事訴訟法の訴状としては成り立たないわけであります。そういう必要性からああいうことが記載されておるんだと思います。これはもう文学的な表現が非常にまずいとおっしゃるなら、それはまた別個の問題であります。
  206. 和田静夫

    和田静夫君 これは常識的に言えば、ああいうことは、たとえば公判の過程で明らかにされることはあっても、起訴状に書くなどということはちょっと考えられないことであります。一般的な人たちの代表という意味で取り上げるのですが、司馬遼太郎氏は十六日の新聞に、「渋谷の「ホテル山王に誘って情を通じたあげく」などという低次元の性風俗的光景を堂々たる国家機関がうたうというようなことになっては、日本国の権威も尊厳もおしまいである。私は昔から起訴状というものに関心をもっているが、私の管見する限りでの起訴状の諸例で、こういう小説まがいの描写文がはいっている例があったためしがない。」、こういうふうに書いていますよね。そして、よほど品性下劣な政府を持っているのだという驚きの念を最後に表明をしています。検察当局はなぜここまでしなければならなかったのか、明らかにしてください。
  207. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 起訴状の表示につきましては、ただいま法務大臣が答弁されたとおりでございますが、それをなお技術的にこまかく申し上げたいと存じます。  起訴状の表示のしかたにつきましては、刑事訴訟法二百五十六条に相当詳細な規定がございます。で、それには、何よりもまずこの被告人の氏名あるいは罪名とともに公訴事実を記載しなければなりません。しかも「公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。」という規定がございます。そのためには、この公訴事実及び訴因という概念は、犯罪構成要件に該当する事実、これを具体的に特定する意味におきまして記載しなければならないわけでございます。  で、問題は、本件の場合には国家公務員法第百十一条のそそのかしという一つの犯罪構成要件に該当する事実が、本件はどういう事実であったかということを特定しなければならないわけでございます。さような意味におきまして、そのそそのかしの態様、これを書く意味におきまして、起訴状の記載があのような記載になったと、かように理解をいたしておるわけでございます。
  208. 和田静夫

    和田静夫君 私は、いまその内容に立ち入るよりも、検察当局は、あの起訴状が現下の情勢の中で新聞に公表され、公衆の目に触れることをどの程度意識してこの起訴状を書いたか、そのことについて……。
  209. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 起訴状の記載でございますが、検察当局としては、ただいま申し上げましたように、法律上必要かつ十分の記載をすべきものであろうと思います。その限度におきましていろいろと考えました末、ただいま御指摘のような点をも十分考慮いたしまして、なおかつ、この刑事訴訟法所定の必要かつ十分な記載は本件の場合にはあのようになると、かような判断のもとにあの記載をしたものと理解をいたしております。
  210. 和田静夫

    和田静夫君 その場合、二人のプライバシーについての配慮は全くなかったわけですか。
  211. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、本件の場合のそそのかし行為というものを特定するために、必要かつ十分の表現は——起訴状上の表現はいかにあるべきかという点にかかわる問題でございます。  この点は、この被告人になられましたお二人のプライバシーの問題も、この表現を考えますときに当然考えたものと存じております。しかしながら、刑事訴訟法所定の起訴状の記載としては、これはやむを得ない記載であろうという判断のもとに、かような記載ができたものと考えております。
  212. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、刑訴法に基づいてこういう記載をされた過去の例というものはありますか。
  213. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 国家公務員法百十一条のそそのかし行為という、この訴因で起訴した事例はございますけれども、本件のような内容を持った事件ではございません。そういう意味におきまして、国家公務員法第百十一条違反の起訴事実としてかような表現をした事実はございません。これはかような事実がなかったからでございます。
  214. 和田静夫

    和田静夫君 私は一般的なことを含んで聞いたんですが、先ほど法務大臣は文学的な表現についてはやはりもっと考えるべきであったという旨の答弁がありましたが、二人のプライバシーを侵害したことについて、法務大臣としては何ら責任をお感じになりませんか。
  215. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私がとやかく申すべき問題ではないと思いますが、いずれにいたしましても、法律の、いわゆる刑事訴訟法上やむを得ないということになれば、これは当然やむを得ないものだと思います。
  216. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、私はたいへん検察ファッショ的な起訴状であるという感じを持ちます。そして、その裏に動いたところの背景というものを類推をいたします。そのことはさらにいろいろ調査を進めますが、外務省の処分の内容について若干お尋ねをしておきます。  私は、基本的には西山、蓮見両氏が、国公法違反で起訴されたという事態と対比して、国会にうそをついた、すなわち国民にうそをついた、この国民に奉仕すべき国家公務員として許すべからざる罪を犯したアメリカ局長やあるいは井川前条約局長が、人事異動という程度の処分で処理をされる、こういうことに対して何ともまあやり切れない気持ちであります。この人事異動というのは、将来にわたってきびしいものになっていくと思いますが、外務大臣いかがですか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どものとりましたこの機密漏洩に対する措置、これは国家公務員法による懲戒処分並びに内規による処分と、この二つになるわけです。それで、いま御指摘のアメリカ局長は当該書類の関係責任者であります。そういう意味において、国家公務員法による懲戒処置をいたしております。それから、井川前局長、これはどうかといいますと、これはこの漏れた電文には何ら関係はございません。でありまするから、国家公務員法による処置はしておりませんです。ただ、両名とも国会の答弁におきまして、電報をちらつかせられながら、こういう事実があったかなかったか、こういうような御質問に対しまして、これは機密のものでありまするから申し上げられません、と言うべきところを、そういう事実はありませんと、そういう答えをした。これは御指摘がありましたが、これは妥当な答弁ではない、こういうふうに考えます。その妥当でない答弁をいたした責任、これに対しましては、人事異動という面におきまして考慮をしたい。これは国家公務員法の問題でなくて、多分に政治的責任の問題であると、こういうとらえ方をいたしておると、そういう考え方であります。
  218. 和田静夫

    和田静夫君 で、私は、この人事異動がかなりきびしいものでしょうねという問い方をしたのは、たとえば役人が食言問題を国会で追及されて、その役人が一応左遷という形をとる、ところが一、二年たってほとぼりがさめると、いつの間にか中心的なポストに戻ってくる、そういうことは今回の場合はあり得ませんね。
  219. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ刑事処分でも、あるいは恩赦ということもあり、いろいろな事後措置があります。でありまするから、それは今後永久にこの責任を問うというようなことは私は妥当じゃないと思います。今後の改俊の状況でありますとか、そういうようなことを考慮いたしまして、人事の面の措置をいたしたい、それがまた自然な措置であると、そういうふうに考えております。
  220. 和田静夫

    和田静夫君 機密漏洩の管理責任ということで、九人の処分が発表されていますが、その中に一人平の事務官、すなわち山田事務官が訓戒処分になっています。これはどのような責任をとったものですか。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは蓮見事務官とともに安川審議官室詰めなんです。同僚といたしまして、いろいろ職務上の関係があります。その同僚といたしまして、蓮見事務官の今回の行動に対して責任を感ずるところはないか、こういうことでございます。その責任を問うたと、こういうことであります。しかし、これは同僚のそういう責任でありますので、国家公務員法による懲戒処分に付するほどのことはあるまいというので、内規による処分と、こういうことにいたした次第でございます。
  222. 和田静夫

    和田静夫君 山田事務官が今度の一連の事件に、何らかの形で関係していることはないですか。
  223. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 関係しておるところはありませんと、そういうふうに存じております。
  224. 和田静夫

    和田静夫君 これは法務大臣、いかがです。
  225. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 捜査の結果、関係いたしておりません。
  226. 和田静夫

    和田静夫君 私は、何も調査せずにやっているわけじゃありませんからね。食言問題の起きないようにしといてくださいね。  あの起訴状に出てきます秋元政策研究所の今度の一連の事件で果たした役割りでありますが、これはただ事務所を提供しただけですか。
  227. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 本件につきましては、御案内のとおり去る十五日に公判請求をいたしたわけでございます。その関係で、本件の事実関係につきましては、将来公判において究明されるべきものと存じますので、捜査の具体的内容につきましては、私からこの席で答弁させていただくことは差し控えたいと存じます。
  228. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、次の質問はいつか別の機会にやりますが、私はこの一連の事件に何かすっきりしないものを実は感じておりましたが、あの起訴状が出て、ますますある疑惑を深めました。で、私はこの疑惑を解くべくみずからも調査を進めたいと思いますが、公判その他の過程にも当然注目をいたします。  そこで、防衛庁長官、おくれて来られましたが、アメリカのハノイ、ハイフォンに対する空爆をどのようにお考えになりますか。
  229. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 時間におくれましてたいへん恐縮でございました。  せっかく米中会談等によりまして、またニクソン・ドクトリン等によりましても、ベトナムからは地上軍はだんだん引いていく、そういうことをわれわれ聞いて非常に平和の方向があらわれたと思って喜んでおったわけでありまするが、北側の浸透とともに、そのまた報復爆撃といいまするか、戦局が非常に苛烈になってきた、この状況は、いかにも平和を願う日本としては残念な形に思っております。ただ、この局面だけをとらえてみますると、非常に苛烈でありまするが、北側の整備体制、補給体制等々から考えまして、これがきわめて遺憾な形で相当長期にわたるかどうか、この点については私は多分に疑問を持っております。のみならず、なるべく早く解決することを祈るものでございます。
  230. 和田静夫

    和田静夫君 いまの同じ質問について、外務大臣どうですか。
  231. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、日本国は、ベトナム半島については当事者ではございませんけれども、しかし、アジアの友邦といたしまして、ベトナム半島南北間に争いが長い間続いておる、このことを深く遺憾として、かつ、一刻も早く和平が到来するようにということを念願をしておった。ところが、アメリカ側の主張によりますると、北ベトナム軍が中立地帯を越えて南進をしてきた。それに対してアメリカ側が爆撃措置をとるに至ったと、こういうことでございますが、いずれにいたしましてもわが国は、この南進がどうとか、あるいは北爆がどうか、それに対してこの是非を論ずべき立場にはないんです。これはあくまで第三国である。そういうことでございまするけれども、いま防衛庁長官が御指摘になりましたように、一刻も早く南進も、北爆もこれがやまって、そうして和平が一日も早く到来するようにということを、ただただ念願するのみであると、こういう気持ちでございます。
  232. 和田静夫

    和田静夫君 いれがいわゆるアジアの民衆と、それぞれの国家、そしてその外交に与える影響というものを、日本の外務省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  233. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 米中会談が行なわれた、その結果、一体どういうふうなアジアに変化がくるだろうということにつきましては、私はここでかつて申し上げましたがところどころによっては、これはまた緊張の激化というところもあるかもしれない。しかし、大局的に見るときには、これはアジアに緊張緩和のムードをかもし出すであろう、こういうふうに理解しておったわけです。そのとき、ところどころによりましては緊張が激化するということばの裏には、ベトナム半島のことがあったのです。つまりベトナムにおきましては、北ベトナムが米中会談につきまして、非常な不快な念を持っておった。また、その深い関連におきまして、ソビエト・ロシアがこれに同じような気持ちを持っておった。これらを背景といたしまして、米中会談というものがどういう結果をベトナム問題にかもし出すか、その辺、私は実はいささか心配をしておったのです。しかし、私が心配しておったこと、それが現実のものになった。こういうことを非常に不幸なことだ、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、ベトナムに一日も早く和平が到来するように、そういうふうに念願をいたしておる、これが私の心境であります。
  234. 和田静夫

    和田静夫君 ニクソンの訪ソを目前にした北爆の拡大でありますね、これによって、米ソの関係というのは国際情勢にかなりの影響を与えるでしょうが、それらについてはどのような判断をされていますか。
  235. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 北ベトナムとソビエト・ロシアが深い関係にあるということは、私もそのように推察をいたしております。しかし、今回のアメリカと北ベトナムとの関係が、これがソビエトとアメリカとの関係にどういう影響を及ぼすであろうか、私はこれは、決してこれがいい影響を及ぼすというような感じは持っておりませんけれども、まあ悪い影響がどの程度の影響になるであろうか、そういうことにつきましては非常に捕捉困難な状態でございます。いずれにいたしましても、もう近く米ソ会談が行なわれる。その米ソ会談の場において、ベトナム和平について強い線が打ち出されるということになりますると、たいへんけっこうなことじゃあるまいか、私はそういうふうに考えております。
  236. 和田静夫

    和田静夫君 今度の北爆が、沖繩の返還について全く影響を与えませんか。
  237. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一九六九年の日米共同声明に、ベトナムの状況によっては沖繩問題を再協議する、こういう条項があります。ありますが、もういま沖繩の返還は五月十五日、目睫の間に迫ってきておる。もう決定的になっておるわけであります。したがいまして、沖繩返還にこれが影響するというふうには考えておりませんです。
  238. 和田静夫

    和田静夫君 確かに返還そのものに変化はないでしょうが、一九六九年十一月の、日米共同声明が出された当時の日米両国のベトナム戦争に関する見通しが大きく狂ったことは、これは事実ですね。この見通しの狂いから、たとえばB52の沖繩再配備などということは全く考えられませんか。
  239. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま、そういうむずかしい事態になろうというふうには考えておりませんです。
  240. 和田静夫

    和田静夫君 同じ質問を、防衛庁長官に。
  241. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘のように、全く困った事態が起こったと思っております。しかしまあ、そうこれが長期化しないであろう、そんな見通しを持つわけでありまするが、したがって、早く解決するように、それを念願するのみという、外務大臣と全く同感でありまして、沖繩の基地配備というものに、いまにわかにこれによって影響することはあるまい。しかし、これが長期化いたしますると、いろいろまた問題も出てまいりまするので、われわれとしてはやはり早期解決を望む。見通しは、先ほど申し上げたように、まあそう長く続くものではあるまい、こんな考え方を持っております。
  242. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣はこの委員会でもしきりに事前協議制の再検討を何べんか口にされたのでありますが、このベトナム戦争の激化を背景に考えてみた場合に、逆にアメリカ側が強硬態度に出てきて、そして初の事前協議という事態に突き当たる可能性があるように思われますが、いかが判断されますか。
  243. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五月十五日以降になりますと、まさに沖繩において事前協議問題が起こるわけです。その沖繩において、観念的に存在する事前協議が具体的なものになるかどうかということにつきましては、おそらく私はそういうような事態は起こるまい、こういうふうに見ております。
  244. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば、岩国あるいは横須賀の基地が、ベトナム戦争の海兵隊などの補給基地となっている事実関係について、本委員会でも何回か明らかになりました。そこで、あなたがあのときに答弁をされた、言ってみれば事前協議制についての再考ですね、そういうような問題について、この際、事前協議について具体的な変更を求める方法を国民の前に明らかにする、そういう決意があってしかるべきだと思うのですが、そういう意思はありませんか。
  245. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ事前協議につきましては、一回もこれが実際問題化したことはないのです。ないのでありまするにかかわらず、国会におきまして、私どもはいろいろむずかしいこの事前協議制の応用問題について御質問を受ける。その際、事態が非常にデリケートで、むずかしい御質問だものですから、なかなか私もお答えしにくいことが多いのですよ。多うございまするものですから、そういうことがないように、今度はすらすらと御答弁ができるように、ひとつ事前協議の対象というのは一体何だということを、この際、沖繩が日本に返ってくる、また、いまの安保条約ができて十二年にもなるこの際、おさらいをしておく必要がある。その際に、いろいろ御指摘のありました諸問題に、すらすら御答弁ができまするように整理をしてみたい、そういうふうに考えているわけであります。
  246. 和田静夫

    和田静夫君 あなたが言われるこの際、この際とは、いつ幾日くらいまでですか。
  247. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく、いま私どもは国会に忙殺をされているわけです。昼間はほとんど国会の中に閉じ込められている。それから、夜は夜で外国からいろんな要人がやって来る。その上、さらに本来の行政事務をやらなければならぬというので、実は、私はもとよりのこと、事務当局においても寸暇もない。こういうような状態であります。一方、相手側のアメリカはどうかといいますると、マイヤー大使がかわりまして、つい数日前新しいインガソル大使が着任をするという状態であり、また、安保協議会のもう一人の構成メンバーでありまするところの太平洋軍司令官、これがいま交代の途上である。こういうような諸般の状況から見ますると、いま直ちにこの日米安保協議委員会を開催するということは、これは不可能であります。したがいまして、国会が済み、まあ相当の準備をいたしましてから、事前協議問題を協議するための日米安保協議委員会を開催したい、こういうふうに考えておりますので、ちょっと時間がまだかかりそうであります。
  248. 和田静夫

    和田静夫君 たいへん忙しいことはわからぬわけではないが、その忙しい中でも、一番大切にして一番緊急性を持ってあなた自身が考えなければならぬ問題ですよ。したがって、ゆうちょうにかまえておってもらっちゃ困る。  そこで、日本の国民の平和への希求という観点からはもちろんでありますが、この際、日本政府のこの問題での強固な意見、意思を——この問題とは北爆に対してです、これに対して示しておくためにも、北爆に対して日本政府として、もっとアメリカに対してものを言う必要がある、こういうふうに思います。防衛庁長官、アメリカ側に対して北爆の停止要請をする意思はありませんか。
  249. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、防衛庁長官としての職務権限外のように思います。
  250. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣。
  251. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカに対しまして、北爆を停止すべしという要請を一方的に行なう考えはございませんです。これは、先ほども申し上げましたが、北と南——つまり、南といいますれば、これは南ベトナム政府もあります。また米軍もあるわけでございますが、この南と北との間の問題であって、そのいずれが今回の事態に対していいか悪いか、そういうことを判定すべきわれわれは立場にない。私などがものを言うといたしますれば、これはもう南北双方が戦闘行為というものはやめるべきである、そして一日も早く和平が到来する、そのためにパリ会談を再開する、そういうことであって、一方的にアメリカの北爆を責めるという、そういう立場はとり得ない問題である、そういうふうに理解しております。
  252. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣の姿勢というのは、どこの国の外務大臣か実はわからないんですがね。アジアの中で起こっている緊張、それが与えるところの、いわゆる平和を希求する日本国民に対する影響、そういうものをしっかり判断をしながらものを言うという姿勢が、あなた方にあまりにもなさ過ぎるわけですね。常にイエスマンであっては困る。もっともっと、こういう問題についてアメリカに対してほんとうにものを言う、そういう立場というものが堅持をされなきゃならぬと思う。したがって、私はそういう意味で防衛庁長官に先にお聞きをしたんです。外務大臣には、次のような実は聞き方をしたいと思った。日本政府の意思を決意表明というような形でもってアメリカに伝える、そういうことを、この機会に佐藤内閣としてやったらいいんじゃないか。私は、佐藤さんが退陣するにあたって唯一なすべき最大の仕事だと、そういうふうに実は思っております。
  253. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 北爆が、これは一方的に悪いんだという立場に立っての抗議だとか、あるいは意思表示でありますとか、要請でありますとか、そういうことは私はいたしません。ただ、南北の間に和平が一日も早く到来する、そのために南北ともにこれは良識を発揮しなければならぬということ、これはもう当然、わが国の態度としてはそのとおりでなければならぬと、かように考えます。
  254. 和田静夫

    和田静夫君 いや問題は、人口密集地帯に対するところの、無差別のこういう爆撃が行なわれている。それに対して、アジアの国の、言ってみれば一国の外務大臣として、この深刻な事態についてやはりものを言う、そういう態度をあなたはお持ちになるべきだと、こう言うのです。したがって一番最初に、今度の北爆についてどのようにお考えになりますかと問うたのも、そこにあったわけです。あなたは、不幸な事態だと言われた。国民もみんな不幸な事態だと思っているのだから、この不幸な事態だという認識をアメリカの側に伝える、その義務を日本の外務大臣は負っている。アメリカの外務大臣じゃないんだから、あなたは。
  255. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は日本の外務大臣です。ですから、この問題については第三者の立場にある。ですから、南北のいずれのほうに責任があるかということを判断すべき立場にはないと、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  256. 和田静夫

    和田静夫君 かつて北爆を支持をされたあなたの考え方は、それじゃ今度の場合には、やはりそのまま生きていますか、今度の場合は改められますか。   〔委員長退席、理事白井勇君着席〕
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 戦争によりまして、これが戦争に関係のない無事の民というか、そういう人に被害が及ぶということは、これは人道的に考えてよろしくないことだと思います。それはしかし、そういうことは北爆ばかりじゃございません。これは地上軍の行動にも、そういう問題はいろいろ出てくるわけであります。そういうようなことを考えますと、この問題を一方的にアメリカの責任だ、おまえ、北爆をやめなさいというだけの主張をするということは、私は妥当じゃないと思うんです。今度の問題の経過を見てみると、私どもにははっきりしたことはわかりませんけれども、アメリカの責任ある当局は、北ベトナムの軍隊が中立地帯を越えて南進をしてきた、ですからそれに対応するための北爆をやるんだと、こういうことを言っておる。私ども、実際問題にタッチしておりませんから事の真相はよくわかりませんけれども、とにかくこれは南北両国間、南の中にはアメリカが加わっておりまするけれども、そういう問題であって、わが国が、そのいずれが是であるか非であるか、そういうものを判定する立場にはない、そこにわが国の外交の限界がある、こういうふうに考えておるのであります。
  258. 和田静夫

    和田静夫君 ほんとうに、地上で行なわれているところの戦闘と、こういう人口密集地帯に対する無差別のいわゆる爆撃とを、一緒にとらえるような感覚でもってものを判ずるということに最大の誤りがありますよ。そして、第三国であるからと言う。確かにそれはそうだ。しかし、アジアの中において、平和を維持するために努力をしていくべき日本、そこの外務大臣として、こういう事態に対してはやっぱりアメリカに対してものを言うという姿勢をお持ちになるのが自然なんですよ。そして、そのことを多くの日本の国民は平和希求の上に立って求めている、そういう判断に立って行動をおとりになったほうがよい、こういうふうに注意を申し上げているわけです。  そこで、この際に、もう一つお聞きをしておきたいのでありますが、昨年の五月の十七日の参議院決算委員会で、私は佐藤総理と幾つかのやりとりをした末、実は核拡散防止条約についての批准、それを即時批准すべきだと求めました。それに対して佐藤総理は、本委員会でも先日答弁をされていましたが、核拡散防止条約は批准すべき段階にきていると思う、こう答えられたのでありますが、ひとつ核拡散防止条約の批准を私は急ぐべきだと思うのですが、外務大臣、総理大臣が段階にきていると判断をされているこの条約批准について、いつおやりになりますか。
  259. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 結論を申し上げますと、まだ、いつという段階まできておりませんです。で、わが国は核不拡散条約に調印をいたしたんですから、いずれは批准しなけりゃならぬという立場にはあるわけです。しかしながら、その前提といたしまして、当時調印をしたときに声明をいたしたんです。これは査察の問題です。この問題なんかについて、わが国が不利な立場に立ってはならないというような点、また、この協定が核の平和利用に対して阻害要因となってはならぬとか、いろいろな態度を打ち出しておるわけでございますが、この査察問題なんです、問題は。これがどうもはかばかしく進捗をしない。いまユーラトムと国際原子力機関との間で査察協定をめぐりまして交渉が行なわれておる。これなんかの推移を見なけりゃならぬ。そしてわが国は、少なくともユーラトムと原子力機関との間のこの協定、それなんかに対しまして不利な条件であっては相ならぬと、こういうふうに考えておるわけなんであります。この査察協定が原子力機関との間で合意されませんと、この条約の批准というものはできないわけなんですが、私どもとしては、さしあたりその査察協定、これを国際原子力機関との間で急がなけりゃならぬ、こういうふうに考えております。そういう考えではございまするけれども、まだ、この国際原子力機関との間のその交渉も、これが予備交渉というものがあるんです。本交渉の前に予備交渉がある。予備交渉は一年半と区切っておるわけでありまして、この予備交渉が始まりますると、一年半すると本交渉をしなけりゃならぬ、こういうことになりますが、その予備交渉の段階までまだ入らないのです。予備交渉のその前のさぐり合いというか、そういうことをやっておる、こういうのが今日この瞬間における状況でございますので、まだちょっと時間はかかりそうでございます。しかしいずれは、調印したものでありまするので、この批准をしなければならぬ問題ではあることはよく了知しております。
  260. 和田静夫

    和田静夫君 少なくとも、いま佐藤内閣なんですよね。その内閣を主宰する総理は、批准をすべき段階にきている、こう答えている。あなたは、かなり時間がかかると。この距離は、一体どういう形で埋められますか。
  261. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまるる申し上げましたが、この段階は、正式の予備交渉の、前の予備折衝という段階がまずあるわけです。それから正式の予備交渉というものがその次にくるわけです。それから本交渉と、こういうことになる。そのただいま第一の段階の予備、正式の予備交渉の前の予備交渉の段階であると、こういうのでありまするから、まだ時間はちょっとかかるのじゃないか。総理が批准をすべき段階にきておると申したということは、おそらく、もう調印をしたものだ、次の段階は批准だと、こういう抽象的なことを意味したのじゃあるまいか、さように考えます。
  262. 和田静夫

    和田静夫君 ともあれ、総理答弁との距離を縮める努力というものをやっぱり力一ぱいやる、そういうことがいま必要だと思いますから、強くそのことを求めておきます。  で、総務長官に尋ねますが、昨年の八月三十一日と九月一日の二日間、東京の台東区の体育館、そこで開かれた部落解放国民運動中央行動の席上で、長官は、四十七年度同和予算の各省要求は、四十六年度の二六三%増である、これを大蔵省に認めさせるよう努力している、こういう形でその態度を明らかにされています。さらに、同和対策事業特別措置法による十カ年計画の、前期五カ年において三分の二を消化をするとも言明をされました。この二六三%増といい、三分の二消化することといい、数字の上では私は大きな前進と言える。しかし、その基礎となっているのは、四十二年度のきわめて不十分な実態調査に基づいて一昨年七月に出された、ずさんな十カ計画によるものであります。その十カ年計画なるものは、総額六百億円で部落問題の完全な解決がはかられると考える、そういう糊塗的な性格のものである。これは部落問題の完全解決には、私はほど遠い数字だと思うのです。にもかかわらず四十七年度の同和予算は、きわめて不十分な差別予算とも言えます。各省要求額、その額の半分、九十六億円しか認めていない。これは断じて承認することはできません。このような予算の内容の中に、政府各省担当者の部落問題に対する理解の水準の低さと、ある意味では差別性がなお端的に示されているのだ、こういう形できびしく糾弾をしなければならないと思うのですが、半分しか認めていない根拠は何ですか。
  263. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは一応、要求の内容を台東区の体育館において私が説明をいたしたものに関するものでありますが、やはり予算要求は、要求満額取れることはなかなか困難であります。しかし結果としては、五五・二%の予算獲得は一応いたしましたし、また起債等についても、自治大臣も来ておられますから御答弁があるかもしれませんが、同和対策事業債も五〇%増でありますし、一般の公共事業の配分のワクも、大体二百億をこえるであろうと思っております。そこで、いまその五カ年間に七割消化という問題ですが、これは確かにお示しのとおり、前の四十二年調査に基づいた一応の見通しを目安といたしておりますことは、間違いありません。しかし、その間の時勢の推移、あるいはまた四十二年調査のあとにおいて、特別措置法なり計画の内容等が明らかにされましたために、地方自治体のこれに対する協力姿勢というものが非常に違ってまいりましたために、昨年の四十六年度予算において悉皆調査をいたしました。これで二、三漏れている県がありますので、さらに督促をいたしておりますが、この調査の結果を関係省庁分けまして、いま新しい施策の方向について、実態を踏まえた検討をいたしておりますので、さらにこれに新しい計画を実態に合わせていくためには、確かに四十二年調査を前提としたものとしては現在では不足しておるだろうと私も思いますが、いまの予算のテンポでまいりますならば、四十二年の調査を前提にした決定された十カ年計画は、前期五年において大体七〇%の消化は可能である、そう思っておるわけであります。
  264. 和田静夫

    和田静夫君 九十六億円で、今年度における部落の問題の解決ができるとお思いになっていますか。
  265. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、九十六億とか五五・二とかいうパーセンテージとか、そういうものだけでできるものだとは思いません。しかし、逐年内容の充実もはかられておりまして、農林漁業金融公庫の新しいワクを、同和ワクを設定したり、あるいはまた通産省の中小企業信用保険公庫への出資額の配分等について、五億のワクを設けたり、いろいろとくふうをこらしておるわけであります。逐年、御要望を受けつつ新規の政策というものを生み出しておりますので、そういう質の面もやはり考えていかなければならないと思いますが、決して満足すべき金額であるとは思っておりません。
  266. 和田静夫

    和田静夫君 同和対策特別措置法が制定されてから、すでに四年目に入っていますね。しかし、同法を肉づけ具体化する具体的計画が、いまだ明らかにされていない。向こう六カ年間に対する計画はどうなっているのか、具体的計画はすでに立案をされる段階にあるのか、されていないとすれば、どういう作業日程でこれをされるつもりか。
  267. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは当初から議論のあったところでありますが、すなわち、十カ年計画の金額を定めてその計画の消化につとめるのが実態に沿うのか、あるいはまた、先ほど申しました新しい実態調査の内容等を踏まえながら、事業の質あるいはその事業の分野ごとの積み上げ計算の中で、それを逐年消化していくことのほうがいいのか、その問題については意見のなお一致していない点があります。なおその作業の困難性等もあるわけでありますが、しかし十カ年計画といっても、総体の資金のワクか、あるいは事業のワクというものが、明らかにされていなければ、先ほど私の言いました七割消化というものも、何に対して七割かという疑問も起こってくるわけでありますから、これは私どものほうで総理府が中心になって各省庁とたびたび会合を持っておりますが、今後の課題として新しく取り組む問題としては、十カ年計画とはどのようなものであるかという問題を、予算の金額で示すか、もしくは実態調査を踏まえた、新しい背景の中における事業の質の積算の総額を示すべきであるか、そこらの点について検討いたしますとともに、やはり十カ年計画という以上は、何らかの形において十カ年後の姿が想定できるというものを前提にしていなければやはりおかしいわけでありますから、この作業は詰めていきたいと考えます。
  268. 和田静夫

    和田静夫君 政府は、昨年六年一日に全国未解放部落地区に対する実態調査を実施されました。この調査は、われわれの要求も非常に強かったわけでありますけれども、先ほどお話があった四十二年度に行なった政府の実態調査が、きわめて不備、不十分だった、現実に部落地区の住民の生活環境が、各地方自治体の行政のあり方によって大きな格差が生じて、そしてアンバランスになっている、そういう理由から、その不備、不十分を補う目的を持っておった。そうして格差の解消のために行なったわけでしょう。しかるに現実には、その実態調査はそういう方向に推進をされていません。実態調査の結果は、まずどうなっていますか。
  269. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) お答えいたします。  実態調査は、昨年の六月一日を基準日といたしまして、各省協力のもとに実施したわけでございます。調査結果につきましては、昨年末から本年初めにかけて集計をいたしまして、その内容につきましては、一般的な事項につきましてはすでに発表してございます。  概要を簡単に申し上げますと、地区数につきましては全国で三千九百七十二地区。それから世帯数につきましては、地区全体で約三十八万七千世帯。それから、このうち同和関係の世帯が二十七万七千世帯でございます。それから人口につきましては、地区全体で百四十五万八千人。それから同和関係の人口といたしましては百四万八千人という結果が出ております。  なお、この調査の目的は、各地方団体におきますところの同和対策事業の実態を把握いたしたいということが目的でございますが、その各事業の内容につきましては、事業を実施いたします各所管の省庁におきまして、ただいま分析、検討を進めておるところでございます。これを踏まえまして今後の同和対策事業を推進してまいりたい、かようなことを考えておる次第でございます。
  270. 和田静夫

    和田静夫君 この調査結果の未提出地区、九州では長崎、宮崎、北陸では富山、石川、関東では栃木、さらには東北六県が提出をされていないでしょう。どうなっていますか。
  271. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 御指摘ございましたように、同和地区につきまして報告がございませんでしたのは、北海道、青森、岩手、宮城、秋田、福島、栃木、富山、石川、山梨、長崎、宮崎この十二道県でございます。なお山形県につきましては、地区数についてのみ報告がございます。
  272. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この未提出を許している責任はどういうふうにされるのですか。いつまでに提出されるのですか。
  273. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 前回の四十二年調査でも一応調査に応じた県であって、今回は全然応じないと申しますか、書類が出てこないところもありますし、これは極端な例ですが、また、関係者の団体の方々等から見れば、明らかにあるのに、県が調査をして結果を報告してないという県も指摘されておりますから、ただいまそれらの県については全部、あるならある、その内容は調査の目的に従った項目を記入してもらう、ほんとうにないならば、ないということをはっきりさせるための返事をしてもらうということで督促さしております。
  274. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、こういう未提出状態を踏まえながら、実態調査と称して、そして四十七年度同和予算がこの上に処理をされて計上されている。こういう事実や、あるいは未解放部落の実態を、言ってみれば把握し切らないで同和予算を組むという結果になっているわけですね。こういうことについては、一体どういうようにお考えになっておりますか。
  275. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 四十七年度の予算要求は昨年の八月末で締め切っておりますから、これは昨年調査いたしました調査の結果を前提にはいたしておりませんので、この前提として組まれる予算は、四十八年度予算ということになると思います。  なお、いままでもうすでに十カ年計画の三カ年を経過しているのに、四十二年調査を前提として予算をつけてきたという点については、明らかにこれはお話を待つまでもなく、実態の不明確なまま、あるいは正確を期しがたいままに予算化を進めてきたという点について、政府のほうに手落ちのあることを承知いたしております。したがって、これを補完するために、四十八年度予算からさらに新実態調査を踏まえたものをもって、今度は実態を踏まえた予算要求というものが当然なされるということになります。
  276. 和田静夫

    和田静夫君 この問題で最後にもう一つだけお聞きをしておきますが、今日、たとえば大阪など部落解放運動が非常に発展をしている先進地区においては、なぜ部落ばかりよくするのかという、そういう形で言われるところの逆差別の認識、こういうようなとらえ方をする一般住民の声が出ているようであります。これは、部落問題の歴史性と部落差別の悲惨さを十分理解していないところからくる、差別意識の新しい今日的な現象形態だろうと思うのです。だが、この逆差別的認識の発生する背景には、これは一般住民の、部落と変わらない低位性があることに着目をしなければなりません。一般住民ないしは一般地区への対策の立ちおくれというものが、結果的に、同和対策のみが進むというような形の認識にいってしまう。一般に住宅対策が十分であれば、部落の住宅対策にねたましさを感じない、こういうことになるはずです。全体的な住宅対策の貧困が、こうした部落の、言ってみれば住宅問題解決への足を引っ張る、こういう形も見られます。  ここで行政の面における差別性といいますか、新しい差別行政が出てきている。同時に、こうした一般住民の逆差別的な感情を利用して、一般住民と部落住民との分断をはかって相対立をさせて、そして差別の温存と差別の助長、拡大、再生産を企図する動きが出始めている。このことは、同和審答申やあるいは同和対策特別措置法の精神からいっても実は見のがすことのできない重要な問題です。こういう逆差別的認識をなくするための問題の解決というものは、部落がよくなっていくことは一般もまたよくなっていくという、そういう道理を具体的に示すところの行政を実施することにある、こういうふうに思うのです。  で、自治大臣も含んでこの辺についての御見解をお二人から承りたい。
  277. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 逆差別ということばを使ってよろしいのかどうかわかりませんが、私もこの同和行政は、末端の地方自治体というものにも非常にアンバランスがあり、濃淡の差がある。こういうことが都道府県ごと、あるいは市町村ごとに問題を提起するということもまたあり得ると思うのです。そこで、一昨年、第一線のそういう同和行政を担当しておる都道府県の行政担当職員の人たちと座談会をやってみたのです。まあ懇談といったほうがよろしいのですが、非常に得るところがございましたので、ことしの予算では、地方の同和の第一線担当の責任職員の方々を中央で研修する予算を組みまして、そして国の予算でもって、その研修の場を通じて、バランスのとれた施策のやり方を各都道府県関係者が持っていただくように、また、私どものほうは第一線の人々の御苦労というものでいろいろ問題点が指摘されますから、それらを中央で吸い上げて、中央が心して、あるいは中央が努力してやらなければならないことは何か、こういう問題に取り組んでいくつもりで予算化もいたして、実行するつもりでありますが、問題は周辺地域の人たちの、どうしてあの地域だけが特別な補助率で事業の進捗がいいのかという素朴な疑念というものも、場所によっては起こり得ると思いますので、やはりこれは農業の土地改良等の特別な扱いその他も考えながら、都市周辺部においても、そういう道路の整備とか学校の整備とかという問題等でも、周辺地区等もやはりそれに準ずるところ等については配慮をしていくべきであるということで、この点は気がついておりまして、そういうことの行政上の配慮をさらに進めていきたいと思います。
  278. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) いま山中総務長官からお答えもありましたが、これらの行政の実施にあたりましては、私はきめこまかい配慮が必要であるということを痛感いたしております。いま大阪の場合を例にあげられまして、逆差別ということを言われましたが、私は和田委員指摘の、何と申しますか、同和地区だけがよいことをしている、片一方の地区はそのようになっていないという点よりも、むしろ非常に自治体の財源が乏しい、その中で同和地区の事業をたくさんしなければならない、そのために、ほかの事業に手がつかないという自治体財政の苦しさの中から生まれているものであり、同和事業そのものに対しては、一般住民もよく御理解できるのじゃないかと思っております。  この意味におきまして、私は、あの法律制定のときに関係さしていただいた一人といたしまして、ぜひとも十カ年計画内にこの法律が目的を達成しなければならない。時限立法である。しかも、十カ年を延長することを許されない時限立法であるという考え方から、十カ年計画の中にどうすべきであるかという点を、各地方団体も計画的に組んでいただきまして、一般住民の理解を求めるという姿で進めていくことによって、いま申されました異和感がなくなるのではなかろうかと思い、個々の理事者に対しましてそのような配慮を私自身願っておるような状態でございまして、今後ともそういった方向で、私たちも地方財源の特別の充実によって、他の事業に迷惑をかけないような方向でできるだけ努力いたしていきたい、かように考えております。
  279. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣に、十五日に終わった通貨体制の改善を打ち合わせるための日米会談の結果ですね、これについて若干これからお尋ねしたいと思いますが、まず総括的に、ボルカー米財務次官と政府の話し合いの内容とその結果、そして、それに対する日本政府の評価をお示しください。
  280. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十四日、十五日、こちら側は大蔵次官以下当局と、ボルカーと二日間にわたって会談をいたしましたが、内容は、今後の通貨問題に対する討議の場をどうしたらいいかという、いわゆるフォーラムの問題について両国の意見を交換したということでございまして、まだアメリカの考え方が固まっておるわけでもございませんし、こちらのほうも、これについて考え方を固めておるわけではございませんので、両方で感触に触れ合ったという程度で、結論らしいものは出ないまま別れております。いずれ、両方で考えておいて、もう一度こういう問題の相談をしようということになっております。  そのほかの問題については、私も報告を受けておりますが、たとえば新聞に出ておりました何か中期債の要望が出たとか、あるいは今度通貨の、たとえば円の再切り上げの問題とかいうような問題の話が出たというようなことが新聞にあるようでございますが、一切、会談のときそういう問題については触れなかったというのが実際でございます。
  281. 和田静夫

    和田静夫君 この会談で合意に達した問題の一つといわれています、通貨改革を討議する場の問題がありますね、いま言われたように。この問題について、新聞には実は二通りの書き方がなされているわけです。一つは、十カ国蔵相会議、IMFとは全く別個の新しい会議とするという、朝日に代表される書き方、もう一つは、十カ国蔵相会議に発展途上国などを加えて拡大するという日経に代表される書き方、この二つはかなりニュアンスが、私はしろうとですが、違うような感じが読んでするのですが、両国が合意に達した線としては、どちらの言い方が正確ですか。
  282. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは、その点については大体両国の感触は一致しまして、いまのGテンという場では狭過ぎる。今後の国際通貨の中期、長期的な観点に立った協議をする場としては、やはり開発途上国も加えて討議することがいい。そのためには、いまのGテンをもう少し拡大する必要があるだろうという点については、これは今度始まったことではございませんで、前からそういう話が出ておりましたが、大体こういう考え方については、日米、意見が一致していると思いますが、さて、それじゃ、そういう考え方のもとにどういう機関をつくるかということについては、まだ両国の考え方が必ずしも一致しておるというところにはいっておりません。
  283. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカ側が、通貨改革の問題をIMFやあるいは十カ国蔵相会議とは別個の場で論議したいと言った裏には、戦後二十四年間ドルが流出して、アメリカの国際収支の赤字によってささえてきたそういうIMF・ガット体制が、もはや維持できないという認識のもとでアメリカの政府が、これとは別の体制を考え始めているということ、こういうことであるというふうに私は理解をしたいと思うのですが、それは、それでよろしいですか。
  284. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私が報告を受けているところでは、アメリカの考え方は別にそうではなくて、やはり通貨問題を討議する場合には、通商問題、援助問題というようなものが関連してくるので、そういうものを関連して扱うような委員会がほしいというようなことをアメリカは考えているようでございますが、さて、そうなりますというと、ちょうどこの前、Gテンのときでもそれが問題になりましたが、あすこへ出てくる大蔵大臣というものは、ほとんど全部が通貨についての討議の権限は持ってきておりますが、通商について討議する権限というものは各国持っていないというようなことで、アメリカがそう希望しても、なかなか各国の機構の上においてそういう会を持つということはむずかしいんじゃないかと。やはりいろいろの機関が、いまの現存機関があってこれを有効に活用しながら、さらにこの問題について新しい拡大された機関を考えることがいいのじゃないかというようなことを私どもは話し合ったということでございまして、アメリカがそれについて、こういう機関で、その機関にはこういう権限を代表者に与えてもらってどうこうというような、具体的な構想を示したというようなことはまだございません。
  285. 和田静夫

    和田静夫君 私は、今度の会談で実は最も重要な点は、通貨と通商を切り離さないということをきめた点だと思うのです。はっきり言って、これは国際通貨制度の改革途上のこととしてはマイナスではないだろうか。確かに通貨と通商とは切り離せないし、今日の国際通貨問題の裏には、貿易構造上の不均衡があることは、原理的には確認ができます。しかし、たとえばユーロダラーの問題が一つ存在をしていますね。あるいはドルが過大評価されているために、いわゆる多国籍企業にとって、外国で安くつくってそれをアメリカに輸入するほうが有利になり、それが直接投資を助長をする、アメリカの国際収支を一そう悪くする、そういうことによって国際通貨問題を拡大再生産をしていくということもある。また、アメリカの国際収支が改善されたら通貨問題が解消するといったたぐいのものでもない。要するに、今日の国際通貨問題は、ある程度通商問題から切り離して、独立にとらえるものであるのではないだろうか。通貨制度改革というのは、通商問題と一応別個に論議すべき性格のものではないだろうか。手続的に考えてみてもですね、そのまさに多角的問題としての通貨問題を、二国間の問題としてあらわれる通商問題と一緒にやったら、話は進まないのじゃないだろうか。そういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  286. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうだと思います。したがって、国際収支というものを論ずる限りにおいては、通貨の問題と通商の問題、対外援助の問題というようなものは当然関係しますので、そういう範囲において、関係させて論議する必要があるということは私どもは認めましたが、そうではなくて、その場をいわゆる通商交渉、貿易交渉の場にするというようなことには賛成できないというようなことで、これもまたアメリカでも、その場そういうふうな場に使うという考えはないんだというようなことも言っているようでございますし、これは考え方としては、この通貨と通商、こういうものを全部一緒にするということは、なかなか、この会議をさらにむずかしくする問題であるという面が十分あろうと思います。
  287. 和田静夫

    和田静夫君 IMF機構が成立をする少し前、一九四三年にケインズの国際清算同盟案と、そして一方ではホワイトの国際安定基金案が対立したことがありました。非常に単純化してあれを言ってみれば、ケインズ案というのはバンコールという第三の通貨的なものを介在させた、そういう多角的決済機構の提案であったと私は認識しますし、それからホワイト案は、為替相場を安定させるための短期融資機構の提案であったと認識をします。結局どちらかというと、アメリカのホワイトの線でIMF体制ができて、それがさまざまな矛盾を深めるに従って、さまざまな国際通貨制度改革が出されてきているのでしょう。それぞれ、このケインズ案、ホワイト案、どちらかの亜流であると言って私は過言ではないのではなかろうか。ボルカー次官との会談で、SDR本位制の推進が確認をされたそうでありますが、SDR本位制を採用するということは、ホワイト案、ケインズ案以来の歴史的対決に一定の結論を出すほどのまさに歴史的な転換であって、この歴史的な転換が、どの程度の現実性を持って語り合われたのだろうかというところが知りたいところなんですが、いかがですか。
  288. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ちょうどSDRの問題については、話し合った局長が来ておりますから、局長から報告したほうが正確を期せるのじゃないかと思います。
  289. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) SDRの問題に関しまして、今回のボルカー財務次官と大蔵省側との会談におきましては、先ほども大臣から御答弁がございましたように、今回の会談の主たる問題は、この今後の国際通貨制度の議論の場のことでございまして、したがいまして、実体問題は、わりにそんな深く入らないで済んだわけでございますけれども、まあ、お互いにこの実体問題のほうにつきましても、非常にこの後半、ばく然とした意味での原則論のようなことについて、まあ意見交換をしようということにいたしまして、その点も若干意見交換をいたしたわけでございますが、先生がただいまおっしゃいましたように、将来の制度の中心をSDRにするということで合意ができたということは、実はそうではございませんで、ただいま申し上げましたように、それぞれ考え方を自由に言い合ったということでございまして、これは御承知のとおり、このアメリカ側といたしまして、特にこのSDRというのを今後の中心にしていくべきだということではっきり態度をきめておるわけではございません。  わがほうは、これはしばしば、毎年のIMF総会における大臣の御演説その他でもはっきりいたしておりますけれども、SDRあるいはSDRのようなものを中心に考えていくべきではないか、この将来の制度の準備通貨の中心といたしましては、そういうふうな考え方がいいのではないかということを考えておるわけでございますが、しかし、それはやはり具体的にどういう、まあSDRと申しましても、現在のSDRが、そのまま将来の国際通貨制度におきまする準備資産の、中心的な役割りを果たすべきSDRとしては不十分であることも、御高承のとおりであろうと存じます。その制度自体も見直さなくてはいけないということであろうかと存じますが、いずれにいたしましても、この点につきましては、今回の会談は、ほんとうのフランクな意見交換ということでございまして、この国際通貨制度の中心となるべきものをどうするかというようなことについて、特に詰めた議論をいたしたわけではございません。
  290. 和田静夫

    和田静夫君 「円再切り上げ求めぬ」という、たいへん大きな見出しがある新聞があるのですがね。先ほど、まあそういうことに触れなかったんだという大蔵大臣の答弁があったのですが、円再切り上げを求めないという米側の意向、これ出されたと思うのですが、この時点における、ボルカー次官によるこの意向の表明が、わが国にとってはどういう意味を持ちますか。
  291. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ボルカー次官が言いましたのは、日米の会談の過程でこういう話が出たのではなくて、記者会見をしたときにこの問題を述べたということだそうでございますが、これは当然でございまして、世界各国ともこの二、三カ月前に、それぞれが責任を分担し合うという立場で、切り上げるもの、切り下げるもの、みな多角的な多国間交渉によってこの通貨調整ができた直後でございますので、したがって、各国ともこの体制を維持しよう、そのためには各国とも国内政策においてできるだけの努力をしようということで、金利の引き下げをやったり、あるいは為替管理を強めたり、各国ともそれぞれ必要に応じた措置をとって、この為替相場をみな守ろうということでいま協力している最中でございますので、米国にしろ、他の十カ国どこでも、いま、このいわゆるスミソニアン体制をここでまた変えよしと意図している国というものは、これは一つもございませんし、また、ないのが当然であろうと思います。したがって、日本においていろいろ、その当時の国が何か日本にこれを迫っているというような印象を、日本に与ておるということをボルカー氏も知っておりますので、この点はないのだということを、はっきり日本へ来た機会に述べたのであろうと思います。また、何かそういう意図で述べたというようなことも、どこかで語ったというようなことも聞いておりますが、これは非常に日本のために私はいいことを言ってくれたというふうに思っております。
  292. 和田静夫

    和田静夫君 私はちょっと逆なんでね、円切り上げなどということは、本来アメリカに要求されるそういう性格のものではないんだと。場合によっては、わが国が独自の判断でそれを断行しなければならぬときは、断行しなければならない。なのに、なぜいまさらアメリカ側が、円の再切り上げを求めないなどと、実は恩着せがましいことを言うのであろうか。これはやっぱり日本の経済外交にロジックがなくて、日本人は力しか理解しないという印象を外国に与えているからではなかろうかと、実はまあ、ひねくれているわけじゃないが考えたわけです。たとえば、貿易自由化を行なったほうが日本にとって有利なのに、自由化を一番サボってきた。あるいは残存輸入制限も、二年前に百二十幾つかあったのが、アメリカが力でおどすと、急遽一年ぐらいで二十八ほどに減らしている。いや、力でおどされたつもりはないと通産大臣言われるかもしれないが、客観的に見てそういう感じがする。で、何かこう、言われると少しずつ譲歩するが、自分自身ではっきりした政策基準を持って、それを明確に主張していくという態度にどうも欠けるのじゃないだろうか。  さきの円切り上げ直後の決算委員会で、私が田中通産大臣に、金を大量に持っているところのフランスがアメリカにドル切り下げを要求するのならわかるが、日本がそれを要求したのはちょっと、しろうととしてなかなかわかりにくいんだと言ったら、まあ田中通産大臣、その点は十分に答弁をされずに、すっとのがれてしまったのですが、どうも日本はロジックに合わないことをやっているのじゃないだろうか。また去年の七月ぐらいの時点まで、日本は基礎的不均衡はない、したがって円レートを変更する必要はない、こういうふうに政府も財界も一致して主張されていました。ところが、アメリカはじめ諸外国がぐっと力で押してきますと、初めは一二・五%まではしかたがないと言い始めて、ついには一六・八八%と、切り上げを超大幅に持っていくという屈服をする姿が出る。こういう状態では実は困るのでありまして、わが国としてはもっときちっとしたロジックを持って対処していかなければならないと実は思いますが、通産大臣、いかがですか。
  293. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 平価調整と貿易問題は区別して処理しなければならない。そういう意味では、日本は自由化や貿易政策に対しては全然別な立場でなさなければならないという、理論的な面は理解いたします。これは西ドイツが、すでにみずからの考え方でマルクの切り上げを行なっておるという事態から考えれば、当然のことでございます。  しかし、日本が近年急速な自由化を行ない、関税の引き下げを行なってまいりましたのは、これは先進工業国としては当然のつとめとして、もう戦後長い間十四条国として恩恵を受けてまいったわけでありますし、その意味では、その責めを果たさなければならないというラインに沿って行動してきたわけでございます。したがって先回の円平価の調整に際して、全然別な問題ではありますが、現実問題として去年の一月、四十五億ドルしかなかった日本の手持ち外貨が、半歳を出ないうちに百億ドルを積み増されるという現実問題をとらえて、もともと区別をしてかからなければならない問題ではあっても、その前提条件としての日本の経済政策や日本の貿易政策に対して言及してくることは、もう当然避けがたい事実でございました。  ですから、去年の九月の日米経済閣僚会議から、ことしの一月のサンクレメンテ会談に至る約半歳は、日米間の交渉というものは、もう全部貿易交渉であり自由化交渉であったのです。その中の目玉商品といわれておったのが電算機の自由化の問題でありました。電算機の自由化については反対の立場を貫き、相手側も納得しましたが、三年来の懸案であった繊維問題については、日米政府間交渉の形で妥結をしなければならなかったということでございます。いま自由化が行なわれておらない品目は三十三品目でございまして、やっとヨーロッパとは同レベルになったわけであります。アメリカは全然自由化をしていないものはないと言うけれども、実際二カ国問でいろいろな協定を行なったり制限を行なったりしております品目は、日本の非自由化品目三十三品目よりも多いわけでございます。  まあ、そういう問題でさんざん議論をしてまいったわけでありますが、いまの状態で申し上げると、自由化と関税政策に対しては、主要工業国十カ国の間に差異はないと言い切れる状態だと思います。しかし百七十億ドルに近い外貨を持っており、しかも対米では対前年度比輸出が二十数%伸びておる。半年前は、対米貿易は二十億ドルの赤字だと言っておったものが、三十二億ドルの赤字になっておるというような事実、また拡大ECに対しても、対前年度比五〇%以上平均伸びておる品目もあるというような輸出力、こういう現象が、理論とは別に問題にされるということは、これはもうやむを得ないことだと思っておるわけでございます。そういう意味で、今度ボルカー氏とは私も通産省の関係者も会っておりませんけれども、この大蔵省との話し合いの成果というものは注目をしておったわけでありまして、日本は円切り上げが再び行なわれるなどという議論さえ起こっておるのでありますから、そういうものは通貨調整とは全然別だなどとは考えておれない立場にありますので、まあ自由化を進めたり、オーダリーマーケティングに対して精力的に取り組むということはどうしてもなさなければならないことだと、こう考えて、いま政策遂行に全力を傾けておるというのが実情でございます。
  294. 和田静夫

    和田静夫君 ボルカー氏は日本政府に対して、米国政府中期債あるいは地方債などを十億ドル程度購入するよう要請したそうですが、その結末はどうなりましたか。
  295. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今度そういう話なんかは、全然会談の中に出ておりません。
  296. 和田静夫

    和田静夫君 これで最後ですが、過剰ドルのコンソリデーションを米国がもし打ち出した場合には、日本政府としては協力していくつもりですか。
  297. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ドルの交換性の問題、過剰ドルの処理の問題という問題は、結局、今後の通貨問題の相談の過程で解決されるべき問題であろうと思います。したがって、この通貨についての今後の話し合いが進んで、全般的には何らかの結論が出てくるというようなときでないというと、一体の問題としてこの問題の解決というものは私はできないものだろう、というふうに思っております。
  298. 和田静夫

    和田静夫君 地方財政で、時間がなくなりましたが二、三お聞きをいたしますが基本だけちょっと触れておきたいと思います。  昭和四十年代の地方交付税制度の実態を、昭和三十年代とそれとずっと比較をしてみますと、実はたいへん大きな変化をしています。それぞれ特色というものははっきり出てきていると思うのですが、自治大臣は日ごろ、そういったことについてお考えになったことがあろうか、まずお伺いいたします。
  299. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 率直に申し上げますと、和田委員からの質問概要をいただきましたときに、三十年代では、交付税率をいらっても貸し借りというようなものは行なっていなかったじゃないか、四十年代は、交付税率はいらわずに貸し借りを行なっている、交付税制度そのものがもう合わなくなっておる、こういうふうになっておるのではないかという御質問概要のように聞いておったものでございます。まさに私、御指摘のとおりであろうと思います。  毎年毎年、財政の不足に対しまして、交付税率の引き上げという措置で行なってまいりましたのが三十年代の姿でございます。四十年になりましてから、四十一年に二九・五%から二・五%引き上げまして三二%になって以来、そのまま据え置きになり、むしろ国家財政との間に、貸し借りという姿で財政調整の姿を出してきたというのが推移でございます。御指摘のとおりであろうと思います。しかし三十年代におきましては、地方財政をまかないますのに、地方交付税率というものが相当低位にあった。したがって、需要が伸びるたびごとに、税率の引き上げによって苦しい財政を補っていった。また、国家財政もこれを受け入れるような素地があった。このためにこのような姿が繰り返されてきたのじゃないかと思っております。  四十一年度のあの不況の際に、二・五%引き上げまして三二%にいたしましたときに、私、そのときにも感じたのでございますが、三分の一近い三二%になった。今後地方財政に不足を生じた場合、税率引き上げということは、はたしてどのような姿でやったらよいのであろうか。行きつくところまで行きつつあって、税率そのものでは操作しにくくなってきつつあるのが、交付税制度のあり方ではなかろうかと、四十一年のときにそういうふうな感じがいたしたのでございますが、その後、経済の好調によりまして、十分とは言いませんが、地方財政が改善されてきたことは御了承のとおりでございます。また国家財政におきましては、従来のようないき方よりも、むしろ不況のときには国債を発行する、好況のときには抑制して安定経済に持っていくというふうな国家財政の運営を行なってまいりましたので、その間の事情が、地方財政の年度間調整というものの形であらわれたのではなかろうかと、まあかように考えております。  しかしながら、これをもって直ちに交付税制度そのものの本質が変わったとは思いませんが、現在の社会資本充実という姿に対しまして、地方財政一般財源としてこれでよいかどうかという点、今後ともに地方交付税の安定性とまた充実性を、現在の地方財政事情から考えましたなれば考えていかなければならない。しかしこの問題は、単に地方交付税だけで解決し得るものではなく、地方税制のあり方、ひいては事務配分のあり方等、総体的なもとに慎重に検討さるべきものである、また、その時期にきておる、こう考えておりますので、今後ともにこれらの検討を行ないまして、地方財源の充実に資してまいりたい、このような気持ちでおります。
  300. 和田静夫

    和田静夫君 私、大蔵大臣に特に聞いておいていただきたいと思うんですが、いまも答弁にありましたように、三十代と四十年代とは、地方交付税制度の実態に非常に大きな相違点があると。  で、時間がありませんから多く言いませんが、昭和三十年代では地方交付税率が毎年引き上げられました。昭和三十年に二二%であった。これが、小きざみではありますけれども毎年引き上げられて、昭和四十一年に現在の三二%になった。ところが、その四十一年を最後に、ぴしゃっととまってしまったわけですね。で、地方交付税制度についてはいろいろの特別措置が、過去においてひんぱんに行なわれてきましたが、三十年代の特別措置の内容は、補正予算によって地方交付税が追加されたから翌年度に繰り越す、給与財源が足りないから国から交付税会計に所要資金を借り入れる、住民税等を減税したから国が臨時地方特別交付税を交付する、こういう、言いかえれば地方交付税会計自体における年度間の財源移動、もしくは国から地方に対する援助措置であった。  昭和四十年代になりますと、昭和三十年に行なわれたこのような措置に加えて、いままでと全然異質な特別措置が加わることになった。すなわち地方交付税の総額を削って、逆に国に交付税財源る貸すという措置ですね。で、昭和四十三年に四百五十億、四十四年に六百九十億、国に貸した。こういう地方から国への流れがあった。それから四十年代は、国税三税として、法人税収の当初見込みが狂って予定税収が得られずに、したがって、地方税は税総額が減額をされる、その穴埋めのために特別の措置を必要とする事態が生じた、こういうことなんです。まあ詳しいことをこれ以上申しません、時間がなくなってまいりましたから。  で、私は、この昭和四十年代の地方交付税制度の実存の形態について、一応幾つかの特色をあげましたけれども、この交付税制度の変貌が、何を原因として生じていると考えたらいいのですか。
  301. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この交付税が、三税でございますが、この三税とも経済成長時代にはこれが成長税でございますが、この成長税の三つをもとにした交付税制度ということは、当然、経済の動向によって今後地方財政に波を打たせることになりますので、私は、成長政策というようなものから財政政策が転換される、経済政策が転換されるということになりますというと、地方交付税制度においても、これは国税全体の収入の、たとえば何%とかなんとかというふうに、成長税でいわれたものだけの比率でこれが分与されるというような形にしておいて、いいかどうかというのが、これからの検討問題になるのではないかと思います。したがって、ちょっと不景気がくれば、もう減収がひどく立つというこの仕組みがやはり考えらるべきじゃないかというふうに考えます。
  302. 和田静夫

    和田静夫君 私は時間がないから論議はできませんが、地方交付税制度では交付税率、総額があらかじめ固定されている。そういうために、需要額がいつも過小に算定される弊害があった。このことが、地方団体の行政水準が非常に低いといわれるにもかかわらず、いま言われたとおり、少し景気が上向くと交付税財源の一部を国に貸す、こういう誤った運用がなされる結果を招いたと思うのです。で、四十年代の景気の変動あるいは税収の増減は、三十年代とは比較にならないほど落差が大きいわけでしょう。このようなときに、地方交付税の固有財源性を確保し、かつまた、おくれた行政水準の急速な改善をはかるためには、どうしても私は、かつての平衡交付金制度とは異なる新しい視点から、地方団体の必要経費を完全に保証する制度を確立するか、あるいは地方交付税率を大幅に引き上げ、地方交付税制度自体の中での年度間調整制度を確立する以外にないと思う。どうですか、検討されませんか。
  303. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 結局むずかしいことで、いままで企てられてはやめておりますが、中央、地方の事務配分というものとからんで、この財源配分というものをこれはもう根本的に考える、いままでの頭と違った、思い切った改革を考えるということ以外には、うまく解決できないんじゃないかと思います。固有の地方財源を与えたにしましても、財政調整の仕組みはやはり考えなければいけませんし、その場合の問題として、事務配分というものはいまのままでいいのかどうか、ここに大きい問題がございますので、それによって財源配分のやり方が違ってくると思いますので、これはもう、これからの大きい問題でございますので、私は政府にも機関をつくりましょうし、国会にもつくってもらって、この問題は、大きい仕事として今後の政治が取りかかるべき問題じゃないか。もうそこへいま来ておるというふうに私は考えます。
  304. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 高度経済成長から福祉国家への、福祉施策への転換ということは、七〇年代の課題でございます。この政策の転換に応ずる地方財政、このためには、いま御指摘の交付税制度というものを抜本的に一応検討すべき事態に来ているのでなかろうかと、私はかように考えるのでございます。いま、いみじくも、地方交付税の中における年度間調整というものもあわせ考えてと言われたところでございますが、財政需要を満たし得るような交付税でなかった、その単位費用は事実でございますが、これを一たん上げてしまいますと落とすことができないというふうなところから、交付税の年度間調整等をあわせまして、私は税制全般につきまして、また大きくは、民間資本と公共資本の部面の資源の配分はいかにあるかということまで入れまして、検討すべき時期にきている、また検討しなければならない、そうでなければ政策の転換に応ずることはできないと、かように考え、検討に努力いたしたいと考えております。
  305. 白井勇

    ○理事(白井勇君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度とし、明日は午前十時に開会いたします。  散会いたします。    午後四時三十二分散会