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1972-04-15 第68回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十五日(土曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  四月十五日     辞任         補欠選任      川上 為治君     土屋 義彦君      阿部 憲一君     小平 芳平君      矢追 秀彦君     柏原 ヤス君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君     委 員                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 細川 護熙君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 大橋 和孝君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 柏原 ヤス君                 小平 芳平君                 塩出 啓典君                 木島 則夫君                 中沢伊登子君                 小笠原貞子君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府恩給局長  平川 幸藏君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省経済協力        局長       大和田 渉君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        外務省情報文化        局文化事業部長  加川 隆明君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        福間  威君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省畜産局長  増田  久君        食糧庁長官    亀長 友義君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        海上保安庁長官  手塚 良成君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省河川局長  川崎 精一君        自治大臣官房参        事官       立田 清士君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を行ないます。内藤誉三郎
  3. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、自由民主党を代表して、外交教育、物価、恩給等について関係大臣にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、外交の問題でございますが、世界情勢対立と抗争から対話と交渉時代に入り、緊張緩和が進められることを私はたいへんよい傾向だと思っておるのでございます。相互の誤解と不信を解くことが大切であり、この緊張緩和のムードをさらに定着させて、人類の福祉と世界平和に貢献することが外交基本使命であろうと思うのでございます。  緊張緩和方向として、西のほうには、あのベルリンの壁が突き破られて、ベルリン自由往来が認められるようになり、東においては、沖繩返還ベトナムからの米軍大量撤退——最近は戦争激化もございますけれども傾向としては、私はいいほうへ進んでいると思うんです。さらに米中会談、こういうことによりまして緊張緩和方向に向かっておる。私は、ただ、この緊張緩和の大きな原因は、西においてはやはりソ連の柔軟な姿勢、東においてはアメリカニクソンドクトリン影響がまた大きいと思うんです。ニクソンドクトリンというのは、私が伺っておるところによりますと、七五年を目標に一応完成したい——こういうことになりますと、これから日本外交は、七五年を目標に当面する諸問題の解決をしないといかぬと思う。七五年までにはおそらくグアム、マーシャルの線まで米軍が後退するのではなかろうか。そういたしますと、極東にあるところの台湾南北朝鮮の問題、日ソ間の問題、日中間の問題、こういう問題はその時点までに解決することが私は望ましいと思うのですが、この点についての外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ニクソンドクトリンというものは、私も非常にこれを重要視しております。このニクソンドクトリンというものは、アメリカがこれまで、アジアの安全、アジアの平和、そういうことに対しまして全責任を負う形で今日までやってきたわけであります。ところが、アメリカの財政、そういうものが窮迫してきておる状態で、そこで少し身軽になろう、こういう考え方があるんじゃないかと思う。その方法といたしまして、みずからを助ける者をアメリカは助ける——アジア諸国に対しまして全面的に責任を負うという形から、みずからを助けるその国々に対してその足らざるところを助けてやろう、こういうふうな変化を示しつつある、こういうことだろうと思います。内藤さんのおっしゃるとおり、そういう線に沿いまして、いまアメリカ政策が着実に変化しつつある、こういうふうに思います。  その変化、これはもちろん私は自然の流れのような気がいたします。いつまでもアメリカが、みずからの財力とみずからの軍事力をもちましてアジア責任を持つ、これが長続きをするものでもありませんし、また、必ずしもアジアの風土にこれが合った行き方とも考えない。したがいまして、そういう方法が打ち出されておるということは、すなおに私どもはこれを受けとめてよろしいと思います。ただ、受けとめまするが、われわれは、そういう受けとめ方に従いまして、われわれの姿勢もまたこれに順応するところがなければならない、こういうふうに考えるわけであります。そういうことを考えまするときに、わが国アジア外交、これは、一九七五年と、こういうきまった時点、これもとらえておくことはむずかしいんじゃないかと思いまするけれども、なるべくすみやかにアジアに、軍事力を中心とした平和でなくって、お互いの間に信頼関係、これを打ち立てる、こういうような形におけるところの平和状態というものが一日も早く到来するようにということを念願しながら、対中国政策あるいはその他のアジア諸国に対する関係、こういうものの調整を進めていかなきゃならぬと、まあ私どもといたしましても、また、そういう考え方のもとに着実な方途を講じていきたいと、かように考えております。
  5. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 今後日本外交を進める上に、私は、日米協力というものが日本外交根本姿勢でなければならぬと思っております。それは、私は軍縮論者でございますけれども、現実にはやっぱり、米軍の力は戦争を誘発する面もありますけれども戦争抑止力という点についてはわれわれは見のがすことができないと思うんで、日本経済力アメリカ戦争抑止力としての軍事力というものがお互いに協力し合ったならば、極東の安全と平和と世界の平和に貢献できると思うんですが、私は、日本外交基本をどこに置くかという点について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日のこの世界情勢見方、判断、これがわが国外交をどういうふうに進めるかという上において重要と思いますが、私は、非常に大きな立場から見ますると、やはり世界情勢というものは、米ソ対立というか、米ソ大国支配体制から大きく転じまして、多極化時代に移りつつあると、こういうふうに思うんです。また同時に、この多極化時代の中におきまして一筋の大きな動きが見られる。これは緊張緩和ということです。それに向かって各国の指導者たちが努力をしている、こういう状態にあると思う。そういう二つの情勢分析のもとに、私ども日本の国といたしまして、とるべき方向は何だと、こういいますると、やはり、多極化外交、多極外交と、こういう姿勢を、まあ一つとらなきゃならぬ。米ソ大国ばかりを見詰める外交であってはならない。やはり一つの大きな極として中国の登場という問題があります。また、遠くはECの強化、それから拡大という問題がある。それからさらに、私どもは、そういう超大国ではございませんけれども、あるいはアフリカに、あるいは南米に、あるいは中近東に開発途上国というものが存在する。これらの存在を無視することもできない。まさにわが日本世界じゅうに目を配って日本外交政策を進めなきゃならぬ、同時に、まあ平和外交——私は、わが日本の目ざすところの政治目標はどこにあるか、これはやはり平和で繁栄する日本社会の建設だと思います。しかし、この平和で繁栄する日本社会を建設するにはどうするか、こういうことになると、わが日本は、その前提といたしまして、どうしても世界が平和である、世界繁栄する、そういったことが欠くことのできない要素である、前提であると、こういうふうに思うんです。その世界の平和、繁栄に貢献する、これは私は、国際社会におけるわが日本の崇高な使令である、と同時に、わが国の平和、わが国繁栄、こういうものを確保していく、われわれが目ざすところの、この政治目標と合致する問題であるという、そういうとらえ方をしておるんです。私どもは、どこまでも正しく今日の世界情勢というものを分析し、判断し、その上に立って誤らざる国の歩みをいたしていかなけりゃならぬと、かように考えております。
  7. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 外務大臣の、日本繁栄をはかるためには世界が平和で繁栄することが前提だという御意見、私も全く同感なのでありまして、多極化された外交の中でも、私はやっぱり日米関係というものを大切にすることが根本じゃないかと、こういうふうに思っておるのでございますが、最近、どうも日米関係にすき間風が入ったと私は思うんです。それは、繊維をはじめ、貿易の問題あるいはニクソン訪中問題等で若干ひびが入ったように思う。私は、これはすみやかに回復して、相互信頼を取り戻して、日米協力ということが外交基本姿勢でなきゃならぬと思っているんですが、この前サンクレメンテで総理とニクソン——外務大臣おいでになったのですが、大臣は、あのときはニクソン訪中ということに意義があるので、たいした変化はないというふうにおっしゃったように記憶しておるんです。ただ、私は共同声明を静かに読んでみて、変化がないんじゃない、やっぱり若干の変化はあったというふうに私は思っておるんですが、特にインドシナの問題については、パリの和平会談が失敗しても民族自決という方向がまとまれば撤兵するという線が出ておるし、それから台湾問題については、アメリカ中国はそれぞれ違う立場で、アメリカは国際問題として扱い、中国は内政問題として扱っておりますが、平和五原則を双方が確認し合って、そして最終的に台湾からの撤兵を約束しておりますし、こう見ると、やっぱり極東情勢にいますぐ急激な変化はないけれども、この線によって今後台湾にも変化が起きるし、米中関係にも変化が起きると、こういうふうに私は判断しておるんですが、サンクレメンテ会談と、それ以後の情勢と、どういうふうに大臣は御判断いただいておりますか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、サンクレメンテ会談において、ニクソン大統領からアジア政策についてアメリカ考え方をよく伺ったわけであります。で、特にその中で、大統領中国訪問、これについての考え方、そういうものをお聞きしたわけでありますが、そのお聞きしたときのアメリカ考え方と今日のアメリカ考え方、それには変化はない。サンクレメンテにおいて、大統領は私どもに正直に、率直にものを言っておった、こういうことは申し上げておりますが、しかし、私は、この米中会談世界情勢に対して及ぼす影響につきましては、これはサンクレメンテどころじゃない。ずっと前の、昨年七月十五日ニクソン大統領訪中を発表したそのときから一貫いたしまして、これは重大な影響があると、それは何かというと、アジア全域に対しまして、まあこまかいところをとらえてみればいろんな現象も起こりましょうが、総合的に、あるいは大局的に見るときには、アジア全局に対しまして緊張緩和動きを、雰囲気をかもし出すであろうと、こういうふうに見ておるわけなんです。との見方は、私は一貫して今日なお変わらないんでありまして、ただ、個々の国について見ますると、この反響は複雑でありまして、たとえばベトナム戦争激化というような問題も出てきておる今日であります。あるいはインド亜大陸におけるところの状態、こういうものも、あのとき以降なかなか容易ならざるものがある。まあ今日幾らか鎮静化方向には向かっておりまするものの、まあ一口に緊張緩和とも言い切れないような状態である。まあそういう個々の国についていろいろな変化は起こりつつも、大局的に見ますると、緊張緩和、こういう方向雰囲気として大きく出てきておる。この問題は高く評価さるべきものであると、今日なおその考え方は変わっておりませんでございます。
  9. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 わが国をめぐる問題で、日中問題にしても最大の課題はやっぱり台湾問題だと思うのです。しかし、台湾問題一つとっても、日本だけでどうこうしても、これは始まらぬと思うのです。やっぱり、現に軍隊を派遣しておるところのアメリカがどういう意向かということですね。それから韓国でも同じだと思うのですが、いま南北朝鮮緊張緩和がいわれておるけれども、ある面で緊張激化しておるともいわれておる。しかし、これに対してアメリカはどうするのだと……。ニクソンドクトリンの当然の帰結として双方とも撤兵するということは、私はこれはいずれ解決されるべき課題だと思うのです。そうなった場合、日本台湾及び韓国に対してどういう政策をとるのか、これが私は当面の急務だと思うのです。そういう意味で、私は、どうもアメリカ意図日本政府に正確に伝わってないんじゃないかと思うのです。最近キッシンジャーがおいでになるそうですが、これも延期になりましたけれども、もっと時間をかけてアメリカ意図というものをしっかり把握して、そして、できるだけ双方信頼し、双方緊張緩和方向一致点を見出して極東の平和と安全に資するようにしていただきたいと思うのですが、大臣の御所見を伺います。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、多極化外交ということを申し上げました。そして、世界じゅう影響力のあるところのわが国対外政治というのを推進するというふうに申し上げたわけでありますが、それには、何よりもまず、前提といたしまして日米関係というものを確立しておかなきゃならぬと、こういうふうに考えるのです。内藤さん、さっき日米関係について若干不安を感じているようなお話でございますが、私は、日米というものは、これは政治思想を同じくし、また、国民の一人一人の考え方、これにもまあ、先進工業国家の一員といたしまして、それぞれ似たところを持っておると思うのです。それから太平洋をはさむ両国ということで、アジアに対して共通の政治的利益を感じておる。日米関係というものは、つまり相互依存というような関係にあると思うのです。この相互依存日米関係、これが、わが国経済力の発展というようなことから、その面からの摩擦現象が起きてくる。これは、昨年妥結はしましたけれども、あの繊維交渉に象徴されておると、こういうふうに思うのです。しかし、これはまあ大きな川の流れから言いますれば、つまり日米両国相互依存関係という流れから言いますると、これはさざ波だと。しかし、このさざ波といえども、これは連続していきますると大事に至るおそれなしとしない。そういう角度から、両国経済上の摩擦、これも軽視することはできない、こういうふうに思うわけでありまして、まあ、そういう摩擦現象、こういうものも、これをできる限りなくして、そして日米関係というものを真に、もっとより深い信頼関係にまで持っていく、心と心とのつながりまで持っていくということが非常に大きな外交課題ではあるまいか、そういうふうに考え、この上ともアメリカとの関係はそこへ持っていく、多少のさざ波がたちましても、決して相互信頼相互依存という関係に響きのないような形に持っていく、その上に立って雄大な世界政策を進めていくということが大事なことじゃあるまいか、私はそういうふうに考えます。  そこで、日米の話し合い、まあいろんな問題がある。あるいは対中国政策というような問題もありますが、これはサンクレメンテにおいて十分話し合いました。そうして、今日七億、八億という民を持つ大国である中国国際社会の外に置かれておるということ、これは世界の平和のためによろしくない、日米両国ともこの大国と接近すべきであるということにつきましては完全な意見一致を見たわけであります。ただ、しかし、アメリカアメリカ立場がある。また、日本には日本の置かれておるところの立場というものがある。お互い主権国家である。ですから、中国へのアプローチの方法につきましては、これは両国とも違いがあってもふしぎじゃないじゃないか、違いがあり得ることであるということを相互理解し合おうじゃないかという合意を見たわけでございますが、私は、日本日本である、アメリカアメリカである、そこで世界政治に臨む行き方については違いがあって何らふしぎがないと思うのです。しかし、違いがある、どこからその違いが出てくるかというような点につきましては、私どもの最も大事な友邦であるところのアメリカとの間に十分話がなされ、そして理解が届いておるということがまだ必要であるというふうに考え、まあ歩む道は違うにいたしましても、理解のもとに違うんだ、こういうことを相互に認識し合っておく必要を感じております。
  11. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、対ソ交渉の問題ですが、先般グロムイコ外相が数年ぶりに外相定期会談で訪日されて、北方領土の問題を含めて平和条約について締結する意思のあることを、ほのめかされたということは、私はたいへんすばらしいことだと思うのであります。本年中にこれに着手するということが合意されたようでありますが、なるべくすみやかにこの日ソ平和条約を締結し、相互不可侵条約を結んで関係改善をしていただきたいし、シベリヤ開発その他幾多の懸案もありますから、これもあわせて解決するように御努力いただきたいのですけれども、私は、ただ一つ、いわゆるソ連アジア集団安全保障というようなものに対して中国から中国包囲政策だととられるようなことは日本政府はしちゃいかぬと思うし、一切の中国敵視政策——敵視政策と思われるもの、中国側から見てそういうふうに思われるものは慎重にしていただきたいということをお願いしておきたいと思いますが、これについての大臣のお考えを伺います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まさに私も内藤さんのおっしゃるように考えております。ソビエトロシアにおきましては、アジア集団安保体制、そういうものを打ち出しております。私は、この考え方自体はたいへんいいと思うのです。ただ、今日現実の問題といたしまして、いま中ソが激しく対立をしておる。そういう状態下において、ソビエトが提唱するところの集団安保体制に中国が参加するかということになると、これはなかなかむずかしい問題じゃないか、当面は。しかし、中国が参加しないアジアの安保体制、こういうものはあり得ない。もし中国が除かれた形の安保体制というようなことになりますると、これはまさに内藤さんの御心配されるように、中国封じ込めだというふうなとられ方をされるかもしれない。そういうことは十分考えておかなければなりませんが、現実の問題とすると、いまそういう状態下において、ソビエトの提唱するところのアジア集団安保体制というものはなかなかこれはむずかしいんじゃないか、そういうふうに考えます。  それから、まあそれはそれといたしまして、ソビエトロシアわが国の隣邦である。そういうことを考えまするときに、一刻も早く領土問題を解決するという前提の上に立ちまして日ソ平和条約を締結する、これもわが国が当面している大きな課題、最大の課題一つであると、こういうふうに存じます。この日ソ関係は、もし平和条約ができるということになると非常に改善される。そして、いろいろの接触がソビエトとの間に出てきます。しかし、同時に、ソビエトは中国対立をしておるという関係にありますので、中国との関連がどうなるか、影響がどうなるか、これも十分腹に置いて進めなければならぬことだ、これはよく心得ております。
  13. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 日中国交回復の問題ですが、先般ニクソン訪中しましたが、私は、日中間については、アメリカよりも日本のほうが進んでおると実は思っておるんです。それば、貿易の面においても、人事交流の面においても、アメリカよりははるかに進んでおる。ただ、遺憾ながら、政府間の接触が全然ないということ、これは私は政府もお考えいただきたいと思うんですが、自由民主党をはじめ、民社党、社会党、公明党全部が訪中されて、中国側の事情は全部明らかにされておるわけですから、中国の主張は明らかだ。しかし、私は、日本には日本立場があると思うんで、こういう意味で、向こうの立場をよく理解されて、政府間接触をしていただきたい。特に問題の点は、いま日本も北京に覚書貿易事務所というものが常駐しておるわけですから、せっかく、私は日中国交回復の一つのパイプになると思うんですが、これを育成、強化、拡充する方向にひとつ御努力をいただきたい。  それからいま一つは、国交を回復する場合に私は、少なくとも過去のあやまちに対して日本は陳謝するという気持ち。それから、これは外務大臣はたびたび国交回復しているというふうに受け取られるような発言をしていらっしゃいますけれども、日華条約が及んでいるのは台湾と澎湖島であって、中国大陸には及んでいないんで、やはり私は国交未回復だという考え方を持っているんで、国交を回復するというお考え。それからさらに、中国側が主張する平和五原則、あるいは政治三原則というものがあるんです。この点については、佐藤総理も、先般来、平和五原則、政治三原則は認めると、こういうふうにおっしゃっているんですから、この線で私は直接政府間接触を始めるように御努力をいただきたい。私は、外務大臣が直接書簡を出されるのが一番いいと思うんです。向こうが受けないなら、向こうが受けない理由をはっきりおっしゃると思うんです。日本立場を主張して、政府間接触に入りたい、こういうことを、私は第三者を介しないで直接呼びかけてほしいと思うのであります。国会ではだめなんです。直接書簡をやるなり、何か向こうに意思が伝わるような方法をお考えいただきたいと思う。この点についての大臣のお考えを伺いたい。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、中国との間にわが国は国交を持ちませんから、直接の対話ができないんです。わが国の対中政策というものは、もうすでに、間接的になるのでありまするが、これを宣明しておる。つまり、わが国は中華人民共和国を中国を代表する政府というふうに考える、その代表する政府、中華人民共和国との間に国交の正常化を目ざして話し合いをいたしたい、つまり政府間接触をいたしたい、こういうふうに申しておるわけであります。中華人民共和国を、これを中国を代表する政府と認め、そしてその中華人民共和国との間に国交の正常化——「国交」というところが大事なんです。国交ということは国家の承認を含み、また外交関係の樹立を含むわけでございますが、その国交の正常化を目ざしまして、政府間の接触を始める用意があると、こういうことを言っておるわけです。この姿勢アメリカに比べますと、私は、いま内藤さんから、あるいは貿易の問題だとか、あるいは人事の問題だとか日本のほうが進んでおる、こういうお話がありましたが、基本的な姿勢としても、アメリカと非常に違う。アメリカは国交の正常化ということを決して言わないのです。両国関係の正常化ということを言う。国交ということに触れません。その辺がアメリカ日本の対中アプローチ、これがたいへん違うところなんです。アメリカは、いわば積み上げ方式で、だんだんと、なしくずしに中国関係を打開していこう、こういうふうに言う。わが国はそうではない。もう国交の正常化のところまで割り切って、ふんぎりをつけておるわけなんであります。  そういうことでございまするが、中国側からこれに対する反応というものがまだ的確に出てきておらないというのが現状でありまして、中国側は、いろいろな人がいろいろな接触をしますが、中華人民共和国を唯一正統の政府であるということを認めよ、台湾は中華人民共和国の不可分の領土であると認めよ、日華平和条約はこれを廃棄せよと、こういうようなことを言っておるわけですが、私は、日中関係につきましては、もう日本がそういう国交の正常化ということを宣言しておる、国交というところまで言うという点、「国交」に相当意味を置いた考え方、とらえ方、これが中国側においてなされることを期待しておるのです。また、そういう私どもの真意というものが中国政府に伝わるようにということの努力、これをいたしておるわけでございまするが、まあ、ある程度これが理解されるという段階におきまして政府間接触ということになってくるだろうと思う。まあそういう段階になりますれば、何も手紙を書くとかなんとか、そんななまぬるいことをやる必要はないと思う。両国の首脳が直接ぶつかって、そして日中間に横たわるそれらの諸問題を討議する、おのずから結論が出てくるのだ、私はこういうふうに確信しておりまして、いまその理解中国側に求めるという努力をいたしておるということでございます。
  15. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、外務大臣みずから中国へ乗り込んで、まず対話を始めることからやっていただきたいと思う。  その次に、本年度予算は不況対策として社会資本の充実と社会福祉を優先的にお考えになっておる。これは私はたいへんけっこうだと思うのですけれども、いま一番国民が困っているのは、道路と住宅、こういう社会資本が立ちおくれていることはよくわかるのですけれども、景気浮揚策として国内需要を喚起するとおっしゃるけれども、私はこれにも限度があると思うのです。そういう意味で、せっかくドルがたくさんだまって、実は非常にいやなことですけれども、円の再切り上げが言われておるような状況下においては、一番いい方向は、私は、もっと外国に対して経済援助、技術援助、さらに食糧も援助し、教育も援助する。先ほど福田外務大臣のおっしゃったとおり、日本繁栄を将来永遠に続けていくためには、やっぱり外国が平和で繁栄することだと思う。この際、私は、発想の一大転換を行なって、いままでのような日本中心でなくて、相手国が喜ぶように、相手国の国民のしあわせになるような方向で、思い切った経済援助、技術援助を行なうべきであると思いますが、この点については、ひとつ、外務、大蔵両大臣の御見解を伺いたいと思います。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まさに私も内藤さんのおっしゃるように考えるべきである、こういうふうに存じます。そういうような見地に立ちまして、ただいまチリのサンチアゴで行なわれておりまするところのUNCTAD会議、わが国の愛知代表はさような考え方を持ってこの会議に臨んでおるわけであります。やっぱり、私は、いまもう日本はここまで来たこの巨大な経済日本である。そうしますと、この日本がさらに繁栄をする、こういう道を求めるならば、もう日本だけでこれを実現するということはできないと思うんです。やはり、世界じゅうからわれわれは資源を求めなければならぬ国である、世界じゅうが平和でなければこの資源は求め得られないんです。同時に、わが国はその求めた資源を加工いたしまして、これを世界じゅうに売りさばく。そういうことを考えると、世界じゅうに、わが国の商品を迎える、繁栄せる経済社会が存在しなければならぬ。そうしますと、やはりどうしてもわが国世界じゅうの平和、世界じゅう繁栄というものに、わが国の国益ということを考えましても協力しなければならぬ国である、こういうふうに考えるのであります。  そういう見地に立ちますると、雄大な考え方を持ってこの世界経済情勢に臨んでいかなければならぬ、こういうふうに考えている。愛知前外務大臣日本代表として、そういう姿勢をもって今回の会議に臨んでおるわけです。  そこで、いま具体的にお話の出ました対外経済協力、そういうことにつきましては、まあ量の問題がある。これは胸を張ってもいいくらい、いまわが日本の対外経済協力の量は進んでおるのですが、さてその質の問題、そういうことになりますると、技術協力であるとかあるいは無償の協力でありますとか、そういう面においては、まだまだ国際水準から見ましても非常に肩身の狭いような状態だ。その辺はこの際大いに改善する。もうこれは、ほんとに革新的な改善をしなければならぬ時期にきておる、そういうふうに考え、水田大蔵大臣にも御理解を求めておる、こういうところの最中でございます。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一般会計の経済協力費は、本年度千二十四億円ということでございますが、これは実質的には、ふえない賠償とかいうようなものを差し引きますと、実質的には二九%の増額になっておりますが、御承知のように、今度UNCTADで、日本はGNPに対して〇・七%目標の政府援助ということを約束いたします以上、今後、この負担は相当大きいものになるだろうと思います。私ども計算しますというと、いまの一般会計の協力費は、年々相当増額しないというとこれはその目標額に達しませんので、したがって、たいへんなことではあると思いますが、しかし、いま外務大臣の言われたような方向が、もうこれからの日本方向でございますので、これは何としても私どもはそういう方向でやっていきたいと。  で、よく、いまドルが豊富であるから、やりいいんだというようなことを言われますが、このドルを使うということは、背後で財政支出をするということでございますので、この財政支出については、結局、今後私はやはり国民の合意ということが相当必要になるんじゃないかと思います。国内においては、中小企業に対する金利とかいろいろなことでまだまだすべき問題がたくさんあるのに、相当大きい何千億円の対外協力というものをこれからやっていくということについては、相当国民の了解というようなものも得ながら、同時に国内政策も、これにつり合いのとれたような政策をやっていく必要があるというようなことで、そういう点について、相当膨大な財政支出ということについては困難が伴うことと思いますが、しかし目標をきめた以上は、この達成に向かって努力したいと思います。
  18. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 量の点はともかくとしても、私は質の改善はしていただきたいと思うのです。やっぱり相手国が繁栄しなかったら日本繁栄はないわけですから、相手国の喜ぶような方向でやっていただきたい。  それから、私は中国の対外政策を見ておりまして非常に感心しましたのは、あの貧乏な国で、まことに衣食住とも日本に比べればはるかに劣っている国が、対外援助でタンザン鉄道に、昨年でしたか、四億ドル、二万人の技術者を派遣してやったこと、あるいはマレーシアがゴムの過剰生産で悩んでいるときに、四万トンの大量買い付けをやったというようなことは、日本政府も私は学ぶべきだと思うんです。もっと、相手国のしあわせのためにやることが日本繁栄につながるということを、私は、大蔵大臣外務大臣もよくお考えをいただきたい。  それから次に食糧援助の問題ですが、私は、日本はいま米が余っていると思うので、この余っているものを腐らしてはもったいないと思うので、そういう意味でバングラデシュその他、たくさんの難民がおるし、東南アジアには、食えないで貧しい者がたくさんおるのですから、こういうものは、私は無償で援助すべきだと思うのです。生産調整奨励金を出しても十分な成果があがってない。そういうところへ金を使うよりは、私は東南アジア、アフリカで困っている者に、もっとも米ですから限界がありますけれども、食糧援助に思い切って踏み切ったらいかがでしょうかと思うのですが、農林大臣のお考えと大蔵大臣のお考えを聞きたいと思います。
  19. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本の米は過剰であります。その過剰米の処理方法一つの問題がありますが、私はやっぱり一時的には、たなざらえといいますか、余っているんですから、これは海外援助にどんどん出すべきものだと思いまして、農林大臣にならない前にも、外務省その他と交渉しておったのでございます。しかし、恒久的にやるということは、なかなかこれは困難でございます。というのは、日本の米の生産費が、外国に比較すると非常に高くなっていますから、それから、米を輸出している国があります、開発途上国などでも、タイとかその他そういうところがありますから、恒久的に、余っておるからといってやることは、これは国内の面からみて考える面が十分ありますけれども、一時的に、たなざらえ的に過剰米を処置していくということは、日本の米の需給調整上あるいは生産上これは必要なんですから、一時的には、私はどんどんこれを早く処分していく。それには、米を困っておる国々などへ出してやるという方針は、非常にけっこうだと私は考えています。
  20. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま農林大臣の言われたとおりだと思いますが、援助については、そのときどきにおいて適切に現在無償援助も行なっておるところでございます。
  21. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 教育援助の問題ですが、国際交流基金が、本年度五十億認められたことはたいへんけっこうでございますけれども、これは福田外務大臣の御意見は一千億と私は伺っておったので、すみやかに一千億にしてほしいと思うのです。ただ、ことしは少ないせいか、私は一番大事なのは、海外協力の面で人的交流だと思うのです、相互理解信頼を高めることが大事だと思うのて、これを今回は除外されたというふうに聞いておりますが、すみやかに、こういうものも含めた総合的な教育援助に踏み切っていただきたいと思うし、特に私は、先行投資の面で非常によろしいので、いま国内では全学連がエネルギーが余っておるのですから、私は大学生も四年間のうち一年ぐらい、教官と一緒に行って向こうでいろいろ技術援助に参加したらどうだ、その者は文部省の単位に認めてやる、こういうふうにして、若い青年たちがもっと海外に雄飛して、そうして人類の福祉に貢献するような民族をつくっていただきたいと思うのです。  ちょっと、山中長官お急ぎのようですから、この御答弁はあとに回していただきまして、恩給問題、お願いしたいのです。  実は、山中長官のたいへんな御努力によりまして、恩給審議会の答申が一〇〇%実施されたということに対して、私は山中長官のすばらしい行政手腕、能力を高く評価しているものでございます。沖繩問題はじめ、先生の御努力に敬意を払っているものでございますが、私非常に残念に思いますのは、退職公務員の恩給が一〇・一%——現職のほうは一二・七%昨年の五月から実施しておる。退職者はその八がけの一〇・一%を本年の十月から実施するということで、そして毎年毎年格差が増大され、退職公務員のベースは四万、現職は八万で、いまや二分の一なんです。どうしてこんなに差別をされるのか。しかも、退職公務員は原則としてその三分の一なんです。ボーナスもなければ、定期昇給ももちろんない。こういうことで、生活保護の二万六千円よりはるかに低い。私は、こういうことを放置されるということはほんとうに情けないと思うのであります。いままでは確かにいろんな要求があったから、恩給審議会の答申を精力的に完全実施という御使命があったけれども、来年からは、少なくとも私は同率にしていただきたい。公務員が一二・七なら一二%、あるいは一一%なにがしなら一一%、そういうふうに、ひとつ現職と同じようなスライド方式をお考えいただきたい。これについての長官の御意見を承りたい。
  22. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ことしの予算編成作業の過程でわかりましたように、恩給というものは、その人の生涯の多くの部分を国家民族のために貢献したことに対する受給者の権利であり、そして、それに対して正当な金額は国がこれを支払う義務があるものであるというふうに考えておりましたことが、すなわち作業の過程としては、一次査定で、特殊な改善項目は別として、全額は予算編成過程において出てきた。私はこのことを理想といたしておったわけであります。権利義務の関係が明確に予算の上でも打ち立てられて、その点ではルール化されたと思っております。今後もこのルールは続けられていくものと思いますが、そこで、ただいまお話しのように、すでに退職されておる公務員の方々と一般のつとめておる現職の公務員の方々と、やはり同じアップ率にしろという御意見は、半面において私は真理があると思います。  私の手元にも、退職公務員、一例をあげますならば、学校の校長先生をされて退職された方、その方が、自分が教えた生徒が二十年、三十年たって退職をして、もらっておる恩給と比べると、まことに情けなくて涙が出るというようなお話であります。なるほど、退職時の俸給をとりますから、その後のベースアップによって現実にそうなっておることと思うんです。これらの訴えは、私も胸を打たれる思いで聞いております。ただ、満額を同率でもってということは、やはり実際につとめております公務員と、かつて公務員であった退職者というものとは、やはり国民に対して現実に現時点で俸仕しておるかどうかの問題については、少なくとも退職して、いろいろ御活躍はなお社会的に願っておりますが、公務員としてのいわゆる職務給的な部分については、現実にそれをつけなければならぬという点について若干の疑点があることは、これはやむを得ないことと思うのです。しかし現在、物価上昇率を上回る分の、六割にとどめておるそのとどめ方がよろしいのかどうか、ここらの点は、現実の問題としては今後私も、大体恩給の諸問題が一段落をいたしましたので、ここらでもとに返って、退職公務員の方々の普遍的な御要望に対してどのようにこたえられるか、検討を重ねてまいりたいと思います。
  23. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 山中長官、けっこうです。  先ほどの教育援助についてのお考えを外務、大蔵、それから大蔵には恩給についてのお考えをあわせて御答弁いただきたい。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回、国際交流基金を設置する考えのもとに、ただいまその法律案を御審議願っております。  この考え方は、わが国のこれから世界に臨む姿勢——先ほど申し上げました——これを推進していくということでございますが、いままでの世界との接触、これは何かと言いますると、どうしても経済関係になってくるんです。あるいはアジア諸国について言いますれば、ことしになって、すでにもうインドネシアから、あるいはフィリピンから、あるいはタイからシンガポールから、またマレーシアから、いろいろなプロジェクトにつきましての相談にやってきます。あるいはインドあるいはパキスタン、またバングラデシュ、そういう方面からの接触もあるわけです。中近東諸国からも同様な状態です。あるいはさらに遠くアフリカの諸国、アフリカ本土のみならずマダガスカルの国までがわが国を来訪する。南米におきましても、ブラジルの特使が参るとか、あるいは過日はメキシコの大統領が来る。きのうからはパラグアイの大統領が参る。また先日はニカラグアの外務大臣が参る。何かというと、これは経済的な接触ということが中心になる。これは私はたいへんいいことである、世界のすみずみまで日本経済的に力のある国になってきた、その日本との交流、接触を深めたい、こういうことでありますが、しかし、私はこの際、その経済関係を一歩踏み出しまして、そしてこれらの国々との間に心と心のつながる関係を樹立したい。そのために国際交流基金というものかその役目を果たすということにいたしたい、こういう考え方なんです。  で、そういう機構ではございまするが、その中のプロジェクトをどうするか、こういうことになりますると、やっぱりまず人と人との交流である。ことに、いま内藤さん御関心の学生の交流、これはいま文部省でも、長期滞在の学生の交流ということはやっておりまするけれども、御指摘の短期の交流関係、これもぜひこの交流基金のもとにおいてやってみたい、こういうことを考えておるわけなんです。しかし、何せ今度はスタートで、基金の総額も百億円、しかもことしは出資額が五十億円だ、こういうことなんで、これじゃ、とても私が申し上げるような仕事はできません。これは二、三年中ぐらいにはぜひとも千億円ぐらいの基金までもっていって、ほんとうに私は世界の中における日本が、物心両面を通じての深い関係、きづなというものを築き上げるようにしたい、そういう考えでございますので、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) かつて公務員であって現在公務員として奉仕しておる者でない者と、現在公務員として奉仕しておる者との違いということについては、恩給審議会でも討議のときにいろいろ御意見が出ましたが、一般公務員の給与改善率の中で、物価が上がるとか生計費が増高するとかいうような要素は完全に同じに見ても、現職者としての責任に基づいている職務給与的な要素というようなものを、退職者にそのまま反映させることは適当ではないというようなことから、ここに差別がついて、四十四年から実施しているものでございますが、いま総務長官が言いましたように、一応これが段落したら、そういう考え方がいいとしても、いまのこの格差がはたしていいかどうかということは、もう一ぺん検討したいということでございますので、これは私どもも、もう一ぺん検討していいというふうに考えております。
  26. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 文部大臣、ちょっと。
  27. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) ただいまお話しの問題は、文部省においてもすでに留学生制度の派遣、受け入れ、これらのことは二十六億円の予算でやっております。先ほども、一昨日フンボルト財団の事務局長が参りまして、せめて日本から来る学生に旅費だけを出してくれないかという申し出がございました。すでに予算を配分したあとでありまするので、昭和四十八年度からひとつ考えようと。  フンボルト財団は、御承知のように二百年の歴史を持っている財団でありますけれども、二回の戦争のために二回壊滅いたしまして、十八年前からやっておりますが、実は、世界の学者を、ことにこれは少壮学者でありますが、若い学者を六百人、毎年招致をいたしております。毎年招致をいたしておりまする六百人のうちで、驚くなかれ日本は、その一割の六十人を招致してもらっておるという状態でありまして、これは日本が呼ばれていくのだからけっこうだという態度でおるということは、これは適当ではない。私も来年は思い切って、少壮学者を出していく旅費を相当大幅にみなければならないと、かように考えておるわけであります。外務省と十分連絡をとりまして、御意見の趣意はまことに同感でありますから、実現に努力をいたしたいと思っております。
  28. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 ひとつ文部大臣にお願いですけれども、私は、いまの大学の教育が必ずしもいいと思っていない。むしろ外国で一年ぐらい、教官が一緒になってみっちりやったほうがよほどいいと思うから、こういうものもひとつ単位に入れてほしいということを、検討してみていただきたい。  それから大蔵大臣にお願いですが、いまの給与体系が、終戦後乱れたのです。昔は本俸中心だった。いまは職務給がたくさん出てきちゃったから、なるほど職務給をはずしたらかわいそうですよ。ですから、現職は職務給を含めた給与体系になっている、退職者は、かつては本俸中心だった、その給与体系の差があるということを御認識いただいて、もっと、退職公務員にみじめな思いをさせないように、私はいまの現役の諸君も、いずれはわが先輩はあんなみじめな思いをするのかと思うとかわいそうですよ。こういう、年寄りをいじめた政策をとっちゃいかぬと思うんですが、もう一ぺん御答弁願いたい。
  29. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ですから、この職務給的要素について差異をつけるという考え方は、私はあるいはいいんじゃないかと思いますが、はたしてそれが、いまのような差でいいかどうかということは、いま総務長官が言ったように、これからもう一ぺん検討したいということでございます。
  30. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 若い学生を外国に留学させる、そうして単位交換制度を外国の大学との間にもとったらどうか、私はしごくごもっともな御意見だと思います。ことし初めて、大学の単位交換制度というものを創設いたしました。これは案外評判がよろしいのであります。これを幅広く考えるならば、むしろ外国の大学で学びました単位を、日本の大学で学びました単位の中に交換をするというような制度も、将来やっぱり考えなければならぬということを考えておるわけであります。
  31. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 教育の問題についてお尋ねしますが、戦後、六・三制によりましてすばらしく教育は普及したと思います。ただ問題は中身の問題だと思うんですが、私はこのごろ、科学技術と機械文明、それから物質文明の中に、人間が埋没されておる、人間性が疎外され喪失されておると思うのですが、一番大事なことは、これは私は人間性を回復することだと思うんです。これが教育根本だと思うんです。  あの鬼畜のような連合赤軍の中にも、頼良ちゃん、生後三カ月の頼良ちゃんを救った人間性は残っておる。あの殺人鬼と言われた小原でさえ、吉展ちゃんを殺した小原が昨年の暮れに死刑執行されたけれども、私はあの歌を見て感心した。それは「ひれ伏して詫びたき思ひ噴き出づる泉の如く身に溢れつつ」という歌を残して、そうしてお経本を買って吉展ちゃんの冥福を祈ったということが書かれておりましたが、そういう人間性を育てるのが、私は教育根本だと思うんです。その点について終戦後の教育は、何か入学試験にとらわれ過ぎて、人間性を育てるということが欠けておったのじゃないかと思うんですが、この点についての大臣のお考えを伺いたい。
  32. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 教育に人間性を喪失したではないかと、これは、私は昭和三十五、六年ごろのいわゆる工業教育というもの中心の教育が、ややもすると人文科学というものを粗末にしてきた結果がいまあらわれておるという感じがいたすのであります。管子の、いわゆる「倉廩実ちて礼節を知る」というのが、日本の場合は、倉廩実ちて礼節を忘れたというかっこうになっておるというところに、まことに残念なことが起こっておるという感じがいたします。  しかし、これがひとり入学試験だけの問題では私はないだろうと思うのであります。私は入学試験が、特定の学校が特定の生徒を入れるための入学試験でなしに、学校教育一つ流れといたしまして、その大学に学ぶことがふさわしい人をとるという入学試験でなければならない。同時にまた、その試験を受けます子供自体も、能力適正に応じて——いわゆるエリート校というものを目ざしての入学試験をめちゃくちゃに考えるという考え方をとらせるところにも、一つ問題があると思うんですね。と同時に、入学試験の選抜制度自体についても、私ども考えなければならぬ問題がたくさんあると思っております。   〔委員長退席、理事初村瀧一郎君着席〕  いま調査会でやっております、たとえば共通学力制度の問題、内申書の重視の問題等の五つばかりの項目をあげておりますが、これらの項目について真剣に取り上げて、できるものから逐次やっていくことによって、できるだけ入学試験地獄から子供を解放してやるということも、人間性回復にとって何より大切な問題の一つであろう。けれども、これがすべてであるとは私は考えておりません。
  33. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 先般、OECDの教育調査団が日本に来まして、日本教育を評価するのに、日本教育は選抜に重点が置かれて、能力を身につけるという教育がおろそかにされておる。これには私は同感なんでね。いま一つは、価値観を身につける教育とイデオロギー闘争が混同されておる。第三に、文部省と大学、文部省と教員団体の間にコミュニケーションが不足して、相互不信の念がある。こういう三点が指摘されたように思うのですが、私はそのうちで、入学選抜については根本的に考えるべきである。もう多年の懸案です。終戦直後は御承知のとおり進学適正検査、その後は能検テスト、いずれも失敗した。しかし私は、世界中でこういう類例のないばかげた入学試験制度をやっているのは日本だけなんです。そういう意味で、ひとつ大臣、これはほんとうに真剣に私は取り組んでいただきたい。過去においてなぜ失敗したかということをお考えいただいて、これは私はいま反省しているのですが、一つは大学の非協力と日教組の反対があったと思うので、むしろ今度は、専門委員会もけっこうですけれども、これは実行しなければならぬから、思い切って日教組をはじめ職員団体を参加させて、あるいは大学も参加させて、実施体制を確立していただきたいと思うのです。これについての文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  34. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 入学試験制度の改革につきましては、抜本的改正をやるべきであるということは中教審のほうでも答申をしておりますけれども、私は内藤先生のおっしゃるように、日教組の反対があったから思うようにいかなかったと、そんな不見識な文部省であってはならぬと思いますし、私は日教組と十分話し合ってでもこの話は解決すべきであると、真剣にこの問題には取り組むということをはっきり申し上げておきます。
  35. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 どうも私は、日本教育で終戦後、OECDの教育調査団の御指摘のように、価値観を身につける教育とイデオロギー闘争が混同されておる、こういう御指摘も私もごもっともと思うので、私は、イデオロギーをこえて人間としての教育をしてほしいと思うのです。そのためには、憲法でも権利と義務、自由と責任、こういうことも考え、基本的人権は乱用してはならぬので、公共の福祉のために利用する責任があるということは憲法で明記されているのですから、少なくともこのくらいのことは文部大臣も教えていただきたいと思うし、また、私は最近の民主主義の危機を思いまして、祖先を忘れさせ、子孫を失い、同時代の人からも分離しておる、これはいかぬと思うので、われわれが今日あるのは、やっぱり先人の努力した文明の恩恵だと思うのです。これをますます発展させ継承するのが、われわれの義務だと思うのです。われわれは歴史の一こまだと思うのです。同時にわれわれは、世界じゅうが平和で繁栄であるのだ、そのおかげで日本繁栄だと、社会連帯というものが大事だと思うのです。この程度のことは、学校教育の中でしっかり教えてほしいと思うのですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  36. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 御意見、全面的に賛成でございます。私は、主義主張のいかんを問わず、人間の普遍的な価値というものについては、学校教育の場において教えるべきものであると同時に、権利権利ということを主張いたしまするが、権利のうらはらは義務を伴うものであるということを忘れてはならぬと思う。学校教育の場において一番大事な問題は、個人の尊厳を維持するということは、他の人の尊厳を維持するということでなければならないと考えるわけでありまして、そういう意味において、学校教育というものの場が、どうぞひとつ人間性豊かな、主義主張をこえまして、客観的、普遍的な価値観というものに立つ教育というものが行なわれることを心から望んでおります。
  37. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 中教審から教育改革の答申が出ておりますけれども、私は教育改革の根本は教員だと思う。終戦後、私は日本の教員養成は甘かったと思う。というのは、単位さえとればだれでも先生になれるという、こういう行き方が、反省すべきじゃなかろうか。明治の教育改革の根本は、大臣御承知のとおり、森有礼の師範教育制度の確立だったと思うんです。確かに師範教育についてはいろいろ弊害もあったと思うんですけれども、私は、大臣はその意味ではその師範教育のいい点、悪い点、十分体験されたと思うんです。  私はいまの教員養成制度を見まして疑問を持っているのは、一番大事なのは教育実習だと思うんです。これは病院のお医者さんと同じで、お医者さんが臨床を重んじると同じように、教育実習、これがわずか四週間程度で、しかも、ろくろくやってない。教えるということよりは、私は育てるということがはるかに大事だと思う。私はひとつ、いま教員が、小学校教員が不足しているんですから、定員増加のことも一つですけれども、それよりも、ブロック内で調整する意味で、ブロックに一つぐらいは新しい構想の教員養成大学をつくってみたらどうかと思うんですが、これについての大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  38. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 教員養成大学については、内藤先生みずから試案をお出しになっております。私も十分これを拝見をいたしましたが、全部が全部賛成というわけではありませんが、大体、私の考えている考え方一致をいたしておると思うのであります。ただ、教育実習の時間をふやせと、これはごもっともだと思います。それから教員養成大学をブロックごとにつくるということも、これもまた大切なことだと思いますが、問題は、その教員組織をどうするかという問題が、いま一番大きな問題に私はなってきておると思うのであります。それで、現在、御承知のように国立大学の人文系で一番入学者の多いのは教育学科であります。私は、日本の国立大学の教育学科がだめだから、新しい教員養成大学をつくるというのでは相済まぬと思っております。これは文部大臣としての責任上相済まぬと思っておりますが、できることならば、現職教員を対象とする、修士課程の、ブロックごとに大学院クラスの大学というものをつくってみたい。これが内藤先生多年御指摘の、新しい構想の大学にすることがいいか悪いかという問題を、いま検討をしておるところであります。実際、学校の先生は足りないのでありまするから、教員養成大学をつくる必要があることは私も認めてはおりますが、これを認めることによって、既存の国立大学の教育学部というものはだめだから新しい大学をつくるという印象を与えては、それこそ、日本教育界に非常な災いを来たすという考え方に立って、きわめて慎重に、しかも真剣に取り組んでおる、先生の試案というものについては、私は真剣にこれを検討しておるということを申し上げておきたいと思います。
  39. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、いまの教員養成で欠けている点があると思う。それは、やっぱり教育というものは教師の人格だと思うんです。その人の感化力だと思うんです。ですから教師は、まず人間形成という点について真剣に取り組まなきゃならぬと思うんですが、どうもいまの教員養成制度を見ると、一般大学と何ら変わりがないので、ただ教育学、教育方法論とか、若干の教育技術的なものを教えているだけだ。私はもっと根本的な人間性をつちかわなきゃならぬ。その意味では、たとえば文学とか歴史とか、あるいは哲学とか宗教というようなものは、必ず必修するというようなことが最もいいと思う。さらに、いま一番教育界で心配されているのは、エゴイズム、自己中心の考えですから、やっぱり全寮制とかあるいは合宿とか、そういうことによってお互いに、相互に切磋琢磨し、社会連帯の観念を植えつける必要があると思うんです。そういう意味で、ひとつ大臣、元気を出してほしいと思うのであります。これが私は教育改革の中心だと思うので、お願いします。
  40. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 教育というものは、結局は人と人との精神的な交流から生まれるものである。その意味において、学校の先生というものがいかに大切なものであるかということを、私は痛切に感じております。文部省がいかにりっぱな指導要領をつくり、いかにりっぱな教科書をつくりましても、教える先生によっては、どんなにでも曲げて教えることができるのであります。ここに問題がある。私は、教師の質のよしあるいはあしということは、教育者としての使命感に燃え、教育愛に燃えておる教育者をつくることが何よりも大切な問題ではないかと考えておるのであります。その意味におきまして、先生のおっしゃるいわゆる全寮制教育というようなものも一つの構想としては考えられる。ただ問題は、全体意識的なものの考え方日本のいまの風土に合うか合わないかという問題については、さらに検討を要する問題があるであろうという点で、目下、先生の試案を中心に検討中であるということを御承知おきをいただきたいと存じます。
  41. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は全寮制については賛成なんでして、たとえば高専の全寮制あるいは商船大学その他、私学でも全寮制の教育が成功しているわけです。つまり、生活を通じて教育するということなんです。これはひとつ御検討いただきたいし、欧米諸国の学生紛争のあとを見ても、オックスフォード、ケンブリッジのカレッジシステムは、いまやドイツにもアメリカにも波及しているわけですから、私は人間的接触という点において大臣にさらに御検討をいただきたいと思います。  それから、私はいまの教員養成制度が悪いと言っているわけじゃないんで、弊害が、一部足らぬ点があるからこれを改善したいと思うんですけれども、一ぺんには改善できないんですよ、限度があるから。だから文部省は、模範的なものをつくって、こういうものはどうかという一つ方向を示されることをお願いしたいんです。  その次に、大学の管理体制のことですが、終戦後、文部大臣の指揮監督権を排除したわけです。昔は、文部大臣は指揮監督権を持っておった。その排除するかわりに、大学には私学と同じように理事会を置けと言っている、学外者を含めて、経営の専門家を置けと言ったんです。ところが、なかなかそうはいかぬから、当分の間教授会で読みかえておったわけです。その当分の間が、いまや二十五年たっているんですよ。一向に改善されてない。私は大学紛争の原因の一端はここにあると思うんです。大学の先生は教育、研究の専門家であるけれども、学校経営の専門家じゃないんです。こういう点を考えて、私は大学改革に取り組んでほしいと思うんです。そして、先生方は教育、研究に専念して、経営のほうには別の人が当たったほうが私はいいと思うんです。これについての大臣のお考えをお伺いしたいと思う。
  42. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これはお話のとおりであると存じます。ただしかし、それじゃ教授を全部除外して、そして経営は経営、教育教育というように分担させることが教育上望ましい姿であるかということになりまするというと、やっぱり、教授にも経営の問題について責任を分担してもらわなきゃならぬ。ただいまの教授会オンリーという考え方は、必ずしも望ましい姿では私はないと思います。これは内藤先生と全く同じ意見であります。しかし、そのために角をためて牛を殺すような形で、教授会には経営についての発言権は一切認めないということが、はたして大学の将来にとっていいことであるかどうかということになりますと、やっぱり考えざるを得ない問題があるように思います。なお、この問題については、御提案でありまするので、十分検討をいたしたいと存じます。
  43. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は学長なり、必要なら学部長まで入ってもいいと思うんです。しかし、いまのようなことでやっておりますと、教育、研究もだめになっているんですよ。経営もだめなんです。いずれもだめなんだから、こういう中途はんぱなことをしないで、もっと教育、研究が伸びるような方向で、学問の自由が発展するような方向で御検討をいただきたいと思います。  それからその次に教員の待遇改善のことでございますが、私はいまの待遇はよくないと思うのです、正直言って。昔は五年ごとに年功加俸があり、やめれば恩給の加俸もあった。最大の魅力は、国民の三大義務であった兵役が免除されておったのです。そういう意味で、どうも終戦後の教員は一般公務員並みというけれども、ほんとうは並みでもないと思う。実は超勤問題を解決するのに、一号上げるのに何年もかかったと思うのです。私はこんなことをしておきますと、日本にはいい先生は集まってこないと思うのです。それこそ、でもしか先生になりかねないと思うのです。そういうふうにしてはならぬと思うので、教育者にもっと魅力のあるように、進んで教育界に身を投ずるような、そういう、これは待遇だけじゃないと思う。社会的地位の向上もあると思う。あらゆる点についてひとつ文部大臣の御意見を伺い、それから大蔵大臣人事院総裁の御意見も伺いたいのです。特に人事院総裁については、従来学歴、勤務年限というワクがありまして、あれでものごとを処理されては困ると思うのです。教育の特殊性にかんがみて、思い切った優遇措置を講じていただきたいと思うのです。御答弁をいただきたいと思います。
  44. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  教員の処遇改善の問題は多年の問題でございます。私は超過勤務手当を、実は個人としては出すべしという議論を持っておりましたけれども内藤先生なんかは非常に反対をされまして、教員は聖職だ、超過勤務手当、もってのほかだという御意見で、とうとうあの教職特別手当というような形になりましたが、私は、少なくとも教育者も働いておるんでありますから、食うだけのものはきちんとしてやらなきゃならぬと思います。ことに教員の社会的な地位を高めるという意味においては、いまの教員の待遇ではこれはとてもどうにもならぬと思っておるのであります。この点では内藤先生と全く意見を同じくいたします。問題は、人事院がそこまで踏み切っていただくことが何より大切だ。私も年功加俸の問題も賛成であります。ぜひそういう道を講じたいと思いますし、場合によれば特別法を制定するということも実は提案をいたしておるわけであります。この点については人事院、大蔵省とも相談いたしまして、私は最善の努力をすることをお約束を申し上げます。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 教員の待遇改善の必要なことは、もう御指摘のとおりだろうと思います。そこで、中央教育審議会の答申もこの必要性を認めておるところから、今度、一般公務員とのつり合いの問題、さらにまた教員の、いま負担になっておるといわれております研究費とか研修費というようなものが、実際にはどうなっておるかの実情も調べたいというようなことから、教員の生計調査費、それから外国との関係の調査費、教員給与についてのいろんなほかの研究費というようなもので、本年度は予算的措置を千六百万計上しているということで、この研究に本年度から入るということになっております。   〔理事初村瀧一郎君退席、委員長着席〕
  46. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お答え申し上げます。  教育及びその教育に従事されます教員の方々の使命の重要性ということは、もうつとにわれわれが強く認識してまいっておることは、これは内藤委員も御了察いただけるのだろうと思います。さればこそ、いま御不満のような御表現もありましたけれども、あの教職調整額なども、われわれとしては相当思い切って、そのほうの理想に給与を持っていったつもりでおるわけであります。しかし、それでもちろん満足しておるわけではございません。いまのお話にもありますように、また文部大臣内藤委員と非常に意気投合されまして、強い御発言もございました。私どもとしてはいままでの態度をさらに押し進めまして、そうしてこの待遇改善の方向へさらに努力をしてまいりたい。  ただ、すべて給与給与と、俸給表に出たお金の額だけで全部をわれわれの責任というように見られがちな傾向がございますけれども、私どもとしては、やっぱりその周辺にある、あるいは宿舎の問題だとか、研修旅費の問題だとか、少なくとも先生方がその給与の中から参考書をお買いになったりということのないように、その周辺の措置もあわせてこれはとっていただきませんと、万事給与だけということは、またそこにむずかしい面があるということだけは御了承をいただきまして、私ども給与の担当者としてはそのほうに大いに邁進してまいるつもりであります。
  47. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 先ほど文部大臣、私が教職手当で反対したと。誤解があるようでありますから申し上げておきますが、私は教員というのは一般公務員とやっぱり違う。労働者と違うと思うのです。それはILOでも、教師は、裁判官、弁護士、お医者さんと並んで専門職だ、こういう考え方が打ち出され——これは日教組も加盟しておるわけです。そこで、私は専門職たるの処遇をしてほしい。ですから八%の調整額を要求した。調整額になれば、ボーナスにも退職金にも年金にも全部響くわけですから。それが人事院に非常に御苦労いただきまして、やっと四%の調整額に落ちついたわけですから、四%の教職手当よりはるかにいいんですから、大臣、誤解のないように願いたいと思う。  それから、次の問題に移らしていただきますが、医師の養成ですが、医科大学というのはたいへんなんです。この間、浪速大学で不祥事件が起きていますけれども、私は私立で百億も出すことは無理だと思う。その意味では、やはり国立なり公立でつくるのが本筋である。そこで、本年度も何校かの調査費を組まれたことは、私はたいへんけっこうだと思うんです。しかし、同時にお考えいただきたいことは、既存の大学の定員増です。いま東大でもたしか百二十名だと思う。医科大学は非常に定員をきびしくしている。私はもっと定員増が可能だと思うんです。おそらく文部大臣は、それは病院がないからとおっしゃると思う。どこに隘路があるのか、大臣の御所見を伺いたいと思う。
  48. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) ことし六校、百二十人増員をいたしました。これは受け入れ側の大学は、教官の問題、病院の問題等でなかなか受け入れをがえんじないという問題が実はあるのであります。  お話のように、私は、私立大学を非常な経済的な基盤のはっきりした特殊の方がおつくりになるということについて、それを認可するのにやぶさかではございませんけれども、ことしは、特に私立大学の認可については私自身があまり賛成でない、むしろ医師養成というものは国がやるべきだ、それで国公立中心にやるべきだというところから、私立大学の増設につきましては、いままでは書面審査が中心であったことは内藤先生御承知のとおりでありまして、しかも審査会も、大学学術局の大学設置審議会、それから管理局の私立大学審議会、二つの審議会が可という答申をしなければ認可しないというたてまえをとっておったのでありまするけれども、しかしそれを書面上で検査をしただけではだめだというので、大口の寄付者については、寄付の動機、寄付の事由、寄付の真偽というところまで確かめてみたのであります。預金残高通帳だけを持ってきまして、六十億、七十億あると言ってみたところが、これはその日だけのことであったら意味がありませんので、大阪の浪速医科大学のごときは、土地の買却の資産がこれだけあるという証明を出しまして、この出しました証明について私は疑惑を感じたものですから、高槻でありましたか吹田でありましたか、法務局へ文部省のほうからこの真偽を確めましたところが、これはまっかなにせものであるという回答がまいりました。その後続々とこれがまいりまして、二十数件になった。したがって、これは不可にするということにいたしたわけであります。できることであれば、私は医学教育は国立でやるべきである、あるいは公立でやるべきであるという考えを持っております。というのは、非常に金がかかりますから、これは私立でなかなかできるものではございません。そこで、これはできるだけ国公立でやる。  私はこれが医師養成のためにやるということになりまするというと、やっぱり十年先にお医者さんが一人できるということですね。だから、この大学病院というものが、地域のお医者さんの医療水準を高めるだけの病院でなければならぬ。だからその意味においては、どんな辺地の県にもできるだけ国立の医科大学をふやしていきたいという念願から、今年は大蔵大臣に特にお願いいたしまして、三校、創立準備費をお願い申し上げておるわけであります。そういう観点から考えますると、もう十三校までいかなければ私の理想とするところまではまいりません。ただ、いま日本の医師はアメリカを基準といたしまして、人口十万について百五十人のお医者さんが要るということを言っておりますけれどもアメリカでは人口十万について百五十人のお医者さんでは足りないと言っております。そこで私どもは、これから医師養成を始めまして、できますのは昭和五十七年、目標昭和六十年と考えましても、その間に人口は一千万ふえておりますから、とても間に合うわけのものではありません。したがって、できることであれば、私は国公立の医科大学をつくるというたてまえを貫いていきたいものである、かように考えておるのであります。
  49. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、それはおっしゃるように先のことであるから、いま当面すぐできることは国立大学の定員増だと思うんです。その最大の隘路は、お話のように教官の面もありますけれども、一番の隘路は病院だと思う。いまの国立大学では臨床が中心になっていない。ほとんどが座学が中心で、あれではりっぱな医師はできないと思うので、私は医学教育根本的改革は臨床中心の医師を養成することだと思う。病人に接して、病人から学ぶという体制が必要だと思う。そういう意味で、実はいまの医学教育にたいへん不満を持っておる。ですから病院がないというなら、私は、厚生省所管には県立病院、市立病院、たいへんりっぱな病院があるのだから、ただ、これは研究、教育の設備が不十分だが、医師がしっかりしておれば、私はそういう教育関連病院を全国的に普及して、そうして定員を増加したらどうかと思う。そのほうがはるかに安あがりだと思う。一校つくるのに百億こえますから。そういうことで、ひとつこれは厚生大臣、私は医学教育は文部大臣だけではなくて、厚生大臣も一翼をになってほしいと思う。責任を分担するようにしていただきたい。そうして医学教育根本的改革をしていただきたいと思うんですが、これについての斎藤厚生大臣、それから文部大臣、お金の面がありますから大蔵大臣、三人の、簡単でけっこうですから、お考えを聞きたい。
  50. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それじゃ、簡単な御答弁ということでございますからお願いいたします。
  51. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お話のとおりであります。私も公立病院をできるだけつくりたい。厚生大臣ともその話はいたしております。ただ問題は、公立病院の中に医学教育を担当するにふさわしいだけのお医者さんがあるか、同時にまた、医学教育の実習をやるに、臨床をやるのにふさわしい設備があるかという問題を、厚生省と詰め合っていかなければならぬと思っております。  それから私、蛇足でありますけれども、実は獣医の国家試験を見ておりますと、五六%合格をしておる。医師の国家試験をみますと九六%合格をしておる。これは厚生省の問題でありますから、私がくちばしをいれる筋合いじゃありませんけれども、大学を出たら国家試験を通してやらなきゃならぬというのなら、どうも三千万か五千万か出しさえすればお医者さんになれるというのではいけないんじゃないか。むしろ国家試験を思い切り厳重なものにして、何千万円出して医科大学を出てもお医者さんになれない制度もひとつ考えてもらいたいものだと、私はひそかに考えております。
  52. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 あなたが考えるのでしょう。
  53. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私じゃありません。これは厚生大臣の所管でありますから。
  54. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 大学付属病院を国公立の病院をもって充てることについての意見は、私は大賛成というよりも、むしろそういうようにしてくれないか。そして、大学の入学定員を増したり、あるいは新設をする、その隘路は、いまおっしゃるとおりそこにあると私は見ている。医者の数が少ないということは、これは多年言われているとおり、厚生省もこの点全く痛感はしておるわけでありますから、そういう意味から、実は文部省にも強く働きかけているわけであります。ただ、医者の数をふやすということからだけでなしに、医学教育の内容につきましても、その他についても、とにかくこれは医療行政と私は密接不可分だと、かように思うわけであります。したがいまして、いまの制度のままではたしてどうなんだろうか、制度を変えることがむずかしければ、少なくともわれわれの要求のいれられるような、あるいは文部省にある審議会その他、あるいは文部省の大学局の職員にも医学教育をわきまえた者を入れてほしい、まず第一の段階といたしましては。  諸外国はどうなっておるか。私の聞くところでは、米・英・仏等は、付属病院というものを持たないで、一般の病院をいわゆる教育病院として指定し、そこの医者を教授にしてやっているということのようでありまするし、また医学教育についても、いわゆる医療を担当する所管大臣責任を持っているというようなことになっているようであります。そこで、それらの実情もよく調べて、外国の制度は必ずしもいいとは言いませんが、私も二度つとめをやってみまして、医療行政をやるについては、これからは医学教育ということが非常に大事であるということを痛感をいたしております。いま、文部省の専門の知識を持っておられる内藤委員が、医学教育についてそういう御意見を持っておられることを知って、非常に心強く思っておりますので、その面でひとつ、今後医学教育と医療行政をどうマッチさせるか、真剣に取り組んでまいりたいと、かように思います。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十七年度の学校の入学定員の増は今年で八百八十人、そのうち国立が、さっき文部大臣が言いました百二十人と、公立を移管した百人で二百二十人ということになりますと、ほとんど私学に依存する分がその四倍ということになりますので、今後やはり医師の不足に対処するためには、国立の医学部の拡充ということをやはりやらなければいかぬと思いますが、それをやるためには、財政上のことから申しますというと、さっきおっしゃられましたような教育関連病院の活用というようなことで、いまの付属病院のあり方について改善が加えられれば、財政的な負担が減少して、そうして学部の定員も増すということについて非常にやりやすくなっていくだろうというふうに思います。
  56. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に物価問題ですが、建設大臣お急ぎのようですから、物価問題で、私は最大の課題はやはり土地問題だと思うんです。地価の抑制についていろいろ建設省も御努力いただいておりますが、私は、公有地を拡大すべきだという議論を持っているんですが、大臣はどういう方向でこの土地問題を解決されるのか。つまり、いま幾ら公共投資の予算を組んでみても、大部分が土地に食われてしまい、そうして一般住民は一生働いても家が建たないというみじめな状態にあることを考えますと、私は、土地問題の解決は政治の最大の課題だと思う。これに対して建設大臣、どういう土地対策をお考えなのか、一端をお漏らしいただきたい。簡単でけっこうです。
  57. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 土地対策に対する私の考え方ですが、私は、申し上げるまでもなく土地は国民生活の基盤でございますし、また、土地は国民福祉の向上に密接に関係のある問題でございまするから、非常に政府としても、国家としても最も大事な課題でございます。そういうことでございますから、土地対策の解決にあたっては、やはり土地の利用について社会公共の利益と調和をはかりつつ、調和をするように、公益優先——土地は所有権の対象になって憲法で保障されていますけれども、やはり公益優先の立場でものごとを考えなければならぬと思っておるわけでございます。  土地問題につきましては、いままでも相当に何と申しますか、構想は出ました。いろいろな構想は出ましたが、とにかく一手できめ手がないわけでございます。したがいまして、政府としても、いろいろな構想が出た中から十分参酌をしなければならないし、しんしゃくしなければならぬという構想もございます。それも取り入れて、せっかく閣僚協議会等もございまして、いまそれをやっておる最中でございます。まあ考え方としては、とにかくすぐやれるもの、端的にやれるもの、それから長期的にやはり考えなければならぬ——土地でございますから、全国これは津々浦々を利用するというようなことは簡単にできませんから、やっぱり端的にやれるものと、長期的に考えなければならぬものと二つに分けて、せっかくやっておるところでございまするが、今回もいろいろ法律案を出しておるところでございまするから、これらも含めて強力に推進していきたいと思っておる次第でございます。
  58. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 建設大臣、私はスウェーデンや北欧諸国を回ってみたら、ああいう土地が少ないところでは、ほとんど公有しているんです。ですから、長年かかったでしょうが、やっぱり私は土地は公有化の方向に進むべきだと思う。この点について、大臣、一言でけっこうですから。
  59. 西村英一

    国務大臣西村英一君) そういうこともございましょうが、スウェーデンが公有地をやったと言っても、相当の年月がかかっている。百年ぐらいかかっている。わが国でも、土地を全部国有にして、あるいは公有にして、しかしそれには対価が要りますから、それを交付公債を発行するというようなことも一つ考え方とは思いまするけれども、それは簡単にできる話じゃないと私は思います。しかし、その趣旨はあくまでも公益優先の原理で土地を利用するということしか、いまの方法としてはわが国ではとれないと思います。
  60. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 自治大臣にお尋ねしますが、ことしの農地課税ですね、私ちょっと疑問に思っていますのは、これは私だけでなくて国民が疑問に思っているのは、市街地の場合ですが、農地の転用が許可になっているところと農地転用が自由になるのとは、私は本質的に違うと思うんですよね。終戦後、農地だからただで取られた。価額ですね。農地で持っているのならいいんですけれども、これを売買の対象にするという行き方は、私、問題があると思うんで、ことし農地課税がたいへん国民から不満があるようですけれども、国民にわかるように簡単にここでひとつ御説明いただきたいと思う。
  61. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) いわゆる市街化農地の課税につきましては、宅地と、固定資産税の負担におきまして相当の不均衡があったことは事実でございます。これらの適正なる課税によりまして、この不均衡を是正し、他面、いま建設大臣に対して、内藤委員御指摘の土地対策の一環をも兼ねて、これの適正なる課税についての税制改革が、四十六年度の税制改革におきまして改正されましたことは、もう御承知のとおりでございます。本年から、実施に当たることになったのでございます。私たちは、この課税は、新都市計画法によりまして都市計画化された地域と農業調整区域と、土地の利用の計画というものをはっきりと区画した、この制度にもおんぶして四十六年度の税制改革はなされたものであろうと考えております。  しかしながら、実際四十七年度から適用をされるにつきまして、関係者、農地保有者、農業団体からたくさんのこれに対する反対陳情も出てまいりました。それらの御意向を聞いておりましたなれば、その意向の中に、あるいは、市街化区域の農地といえども緑地として残すべき特殊な地帯もございます。また、地域によりましては、市街化計画の未成熟な点もございます。また、農業政策のまだ未熟な点もあるんじゃなかろうかと思います。私たちは、これらのもっともと思われるようなものにつきましては、地方税法第六条によりまして、不均一課税を当該市町村において取れるということもございましたので、行政指導等によりまして、できるだけきめこまかい指導をもってこの制度をぜひとも実施に持っていきたいと、このように鋭意努力をいたしておったのでございますが、たまたま各党におかれましても、この問題を検討され、御承知のとおり、先般衆議院の地方行政委員会におきまして、各党一致委員長提案をもって、臨時特別措置の四十七年度に限るところの法律が提出された、こういうふうな状態になりまして、やむを得ざるものと私は考えております。  しかし、法律には四十八年度以降の税制につきましては、これらの点もよく検討して税制の的確を期せと、こういう附則における明文もございますので、私たち関係諸団体並びに関係当局と十分連絡をとりまして、いま申されました法制定の基本方針に沿った適正なる、しかも、納税者に納得のいけるような税制度をぜひとも検討いたしたいと、目下鋭意努力中でございますので、御了解を賜わりたいと存じます。
  62. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 自治省で、ことしは公有地拡大法が提案されていることを私はたいへんうれしいと思うんです。市街化農地について先買い権を認めたこと、この点と、それから免税の点。先買い権はけっこうですけれども、免税が私は少ないんじゃないかと思う。三百万ないし千二百万。民間の場合には裏取引があるんですが、これは政府がまるまる出すんですからね。どうも私は免税について少し低いんじゃないか。思い切って公有地を拡大するという政府の方針なら、そういう方向政策転換をするなら、まずこれは芽ですから、ぜひ通してほしいんですが、将来もっと思い切った免税をしてどんどん公有地を拡大する方向にすべきじゃないか。どうも免税の点が不満が一点。  いま一つは、政府資金がないことですね。私は、思い切って政府資金をやるべきじゃないかと思う。この辺は、大蔵大臣が思い切って発想の転換が必要だと思うんですが、両大臣に、簡単でけっこうですからお尋ねしたいと思います。
  63. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 免税の点、今回の公有地拡大の推進に対する法律の中の一つの目玉といたしまして、免税措置を大蔵当局の御理解も得て、特別措置法も昨日成立さしていただいたような状態でございますが、御指摘のとおりでございますので、私たち、今後ともこの免税の拡大によりまして法律の目的がより一そう効果を上げますよう努力してまいりたいと、かように考えております。  資金の面につきましては、従来から公有地先行取得債、あるいは土地開発基金、あるいは各事業債におけるところの資金その他によりまして、大いに土地取得のためにつとめておりますが、何と申しましても資金不足は事実でございます。私たちが計画を立てております公共事業百十兆円のビジョンにおきましても、二十二兆円、大体一年平均いたしまして、土地取得のために二兆円を地方団体は必要といたしております。このためには、相当の低利な資金を必要とするのではないか。このために政府資金の活用、まことに仰せのとおりであろうと思います。今後とも財政当局とも連絡いたしまして努力はいたしますが、しかし、私は、財政では限界があると思います。今後の経済運営におきまして、社会資本充実のためには、どうしても民間資金との案分におきまして、公的部門への資金再配分ということを考えなければならないと思っております。今回、農協系統資金の員外規制を緩和することを認めていただくというふうなことも入れておりますが、今後ともに、民間資金の活用も十分考えなければ、この土地需要に応ずることはできない、その方面においても努力いたしたい、かように考えております。
  64. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先取り、先買いした土地が、あとで公共事業の対象になってきたというときには、それに基づいて国の補助なり何なり、財政資金の計上ができるのですが、これはまだそこまでの計画を伴っていないものでございますから、とりあえずは、各地方団体の単独事業として行なわれるだろう。そうなりますというと、いままでこれはもっぱら縁故債で行なわれるということでございますので、その点については、各府県の要望どおりの地方債が今回は認められておるということだそうでございまして、これが切りかわってきた場合には、国の資金として十分見るべきものは見るということになろうと思います。  免税は、やはりこの強制収用のものと、拡大法によって所有権を制限されているものと、そうでない一般的なものとの区別はやはり必要であって、これについての免税は、強制収用とは区別があっても、一般のものまでこれを全部、公有地になるのだからという理由で無税にするということは、これはもうほかの税制との均衡から見てできない、不適当なことであると思いまして、せいぜいこの拡大法によるところあたりまでが免税措置の対象になっていいんじゃないかというふうに思います。
  65. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いや、私は大蔵大臣ね、土地問題が最大の課題だから、やっぱりもっと公有地を拡大する方向なら、思い切って免税をする、大臣がおっしゃるように、発想の大転換をしてほしいと、これを要望しておきます。  それから最後に赤城大臣にお願いしたいのは、輸入物資の値下げの問題ですが、きょうは通産大臣がお見えにならぬけれども、私は、せっかくの円の切り上げによる利得は、国民に還元すべきだと思う。農林省は特に小麦、穀物、こういうものは直接販売していらっしゃるのですから、ひとつまず小麦から、そして飼料その他、私は、政府部内でもっと輸入価格を末端まで監督してほしいと思うのです。輸入した物資については、国内のものはメーカーが最終段階の末端までちゃんと小売り価格を指定しているのだから、輸入物資についてもできないはずがない。もしできないなら、輸入業者をふやす、こういう方向でひとつ御検討いただきたいと思うのです。赤城大臣にお願いし、最後に、残った時間は同僚の細川さんにお譲りしたいと思います。
  66. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 輸入物資、最近主要農産物の輸入価格、小売り価格が相当下がっております。レモンとかグレープフルーツとかバナナとかその他、下がっております。いま御指摘の小麦、飼料でございますが、飼料もこれはずいぶん下がっておるんです、末端で。ただ、小麦は末端にいかないような、いまの食糧管理法の管理物資でございまして、七十億ぐらい平年度で減るわけなんで、予算にも計上してありますが、これは食管法の赤字を少なくするという、一般の税金のほうに回って直接に小売りのほうへ回っていかない、こういう一つの制度になっておるものですから、小売り価格のほうには直接は回りません。しかし、米価審議会で六月にきめるときに、その売り渡し価格等につきまして、相当またしんしゃくするようにというような方針は、経済閣僚会議でもきめております。まあ食管の制度からそういうことになっているものですから、小麦のほうはそうなっておると御了承願います。
  67. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 政府が率先して行なってほしいと思うのです。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 制度上、小麦はそういうようになっております。  それから一般的に輸入品については、輸入商人をふやして、そうして競争させて、実際、通貨などの関係から安くなったものは安く入れさして、それが消費者等にインフルーエンス、影響していくような方法をとるということは、通産大臣も明言して、その態度をとっております。
  69. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 内藤君の質疑は終了いたしました。  午後は一時に再開いたします。土曜日でおつかれでございましょうが、御協力のほどをお願いいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  70. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして質疑を行ないます。上田哲君。
  71. 上田哲

    ○上田哲君 蓮見事務官が釈放されまして、西山記者とともに起訴されたようでありますが、ふしぎに思いますことは、東京地裁の決定によって、出されていた拘置請求の理由である証拠隠滅、このことがもはや必要ないということで一方の西山記者が釈放されたにもかかわらず、何で蓮見事務官は今日まで、勾留期間いっぱい拘置されなければならなかったのか、御説明をいただきたいと思います。
  72. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その点は、先般の準抗告に対しまする決定におきまして、証拠必ずしも十分ではない、また、証拠隠滅のおそれも強度ではないというような意味合いで、まだいろいろ、起訴しますについては情状とか、いろんな問題が残っておったわけです。量刑なんかに対するいろんな心情状、そういうような問題ばかりではなしに、まだほかのいろんな配慮もあったようでありますが、そこで二、三日おくれたわけでありますけれども、本日釈放したということでございます。
  73. 上田哲

    ○上田哲君 起訴が百十一条だけであるということになると、いま法務大臣の言われた、そのほかというところがよくわからぬのです。
  74. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) いろいろと、釈放しますについては身元の引き受け人とかいろんな問題がありまするから、そういうような点も申し上げたわけです。
  75. 上田哲

    ○上田哲君 身元の引き受けですか。
  76. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 釈放するにつきまして、身元を引き受けてもらったり何かしなければ、検察庁としては、あとのことも考えなければならぬですから、そういう意味です。
  77. 上田哲

    ○上田哲君 身元の引き受けは、御主人もおられますし弁護人もついております。これは全然わかりません。
  78. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) したがって、弁護人と十分な打ち合わせも必要だったと思います。
  79. 上田哲

    ○上田哲君 それでは、その問題がなければ西山記者と一緒に釈放すべきであったのですか。
  80. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) できるだけ早くわれわれも釈放すべきだと思いました。しかし、いろいろと、決定にも申しておりますように、まあ犯罪構成要件についての証拠は十分であるが、それ以外の証拠は必ずしも全部そろっておるとは認定していないわけです。でありまするから、そういうような点、十分なやはり慎重な調査、捜査をやらなければならぬということであります。
  81. 上田哲

    ○上田哲君 その後、家宅捜索であるとか、その他の参考人の事情聴取であるとかの事例を聞いておりません。そうなると、いまの御説明では、蓮見元事務官に対しては不当拘置ではなかったのか、こういうふうに考えますが。
  82. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は、事実問題については詳細を存じません。しかし、不当であるとは考えておりません。
  83. 上田哲

    ○上田哲君 この起訴理由の核心になるものは、問題の機密文書が、逮捕当時、機密であり得たかどうかということであります。機密文書の機密解除というものは確かに逮捕当時よりはあとではありますけれども、現実に政府当局の手によって機密解除がなされているということになれば、逮捕当時の機密性についてもかなり薄弱になってくるのではないか。いかがですか。
  84. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) それは、やはり犯行当時の機密の事実で考えていかなければなりません。その後、もうこれは全部公表というのでありまするか、自然にわかったわけでありまするから解除されたのだと思いますが、いずれにいたしましても、犯行の当時においては、秘密であったことについては間違いないことは、先般の準抗告の決定もはっきり申しております。
  85. 上田哲

    ○上田哲君 その後、機密解除されたということは、その理由を薄弱にするものではありませんか。
  86. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) それは事柄によると思います。しかし、もうすでに全部が周知しておるからおそらく解除になったと思うのでありまして、当時は、やはり非常な秘密であるということには間違いないのであります。
  87. 上田哲

    ○上田哲君 念のために確認しますが、いまはその電文は秘密ではありませんね。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 往電二通につきましては、秘密を解除しました。
  89. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、法務大臣、過去の事実に対しての容疑で起訴したということですね。
  90. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もちろん、犯行当時の秘密ということであります。
  91. 上田哲

    ○上田哲君 すでに違法性がなくなっている、すでに今日においては根拠のない機密性に対する、さかのぼっての起訴であるということを確認をしておきます。  さらに重要な問題は、起訴理由には、西山さんと蓮見さんの間に親しい関係があったと、このことを取り上げて、取材の方法としてふさわしくないという意味のことが述べられております。東京地裁の決定でも、これが基本的に取材の目的であったかどうかについては異論がないところとしております。方法ということになってみると、私どもは、ここにまた言論の自由の問題が出てまいります、取材の自由の問題が出てまいりますが、一体、二人の人たちが、二人の人間関係において特に親しかったということが、どうして取材の方法論上、罪に問われなければならないのでありましょうか。
  92. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは決定にも申しておりますように、「相手方の困惑に乗じ」とか、あるいは「欺罔」をもってという、非常に異常なといいますか、相当性の範囲を越えておると、こういうところであります。
  93. 上田哲

    ○上田哲君 そのとおりですね。ほかにはありませんね。そうしますと、二人の関係が親しかったということが、取材の方法論に違法性を生じたということではないわけですね。
  94. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) やはり「困惑に乗じ」とかというものと関連するわけだと思います。
  95. 上田哲

    ○上田哲君 あるのですか、ないのですか。関連して、あるのですか。
  96. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) やはり関連しておることだと思います。
  97. 上田哲

    ○上田哲君 もう一ぺん確認しますが、二人の関係が親しかったということが、取材の方法論上問題になるという見解ですか。
  98. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 親しかっただけでは、それはならぬと思います。その親しいのに乗じて、あるいは、要するに困惑に乗じたということだと思います。
  99. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。二人が親しかったことは、取材の方法論上の違法性を生ずる素因ではないということを確認をいたしておきます。これらを通じて、たいへん事実関係あるいは法文解釈の点からも私どもは疑念をたくさん持つわけでありますが、今後の推移に照らして、いろいろと御見解をただしていきたいと思いますが、今時点で、たいへん今日までのいきさつがわれわれの納得のしがたいものを多く含んでいる。したがってこの起訴理由というものも、非常に疑念を抱かせるものであるということを強く表明をしておきます。  そこで、この問題について、外務大臣は総理から注意処分を受けられたと聞いておりますが、一連の処分というようなものがなされたという中の一つだとも思いますが、その責任者であられる外務大臣が注意処分を受けられたという点について、いま二人の起訴あるいは起訴理由ということも勘案しながら、どのような御心境であられるか、伺いたいと思います。
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どもの外務省から外交上非常に大事な秘密が漏れた、これは私は、外務省内における綱紀の問題である、こういうふうに考えまして、その外務省を統轄する立場にある私といたしましては、非常にこれを責任を痛感いたしております。私は最初から、災いを転じて福となす、こういうことでなければならぬということを申し上げておったわけでありますが、何とかして再びこういうことが起こらないように心がけておる次第でございます。昨日、総理からも厳重に注意を受けましたので、その注意を体しまして精進をいたしたい、これが私の心境でございます。
  101. 上田哲

    ○上田哲君 はなはだ不見識であります。ただいま外相の御答弁は、綱紀が乱れたことに対して責任者として責任を感ずる、こういうことであります。外務省が守らなければならない行政機密が流れたことについて、そのことについてのみ責任を負い、行政の最高責任者である総理に対しては申しわけないという気持ちであるというようなことであっては、一体、この問題が、長いこと議論されてまいりました国益の問題、国民の利益の問題、あるいは知る権利の問題という関連において、本来知らすべきものを知らさなかったという問題、ここは、外務大臣が十分にお認めにならないとかりにしても、少なくとも、国会に対してうそを言った、アメリカ局長もこの席でそのことを正式に謝罪をされた、私どもはその二つともいけないと思うのだけれども、少なくとも、外務大臣が認めておられない部分を除いたとしても、国会に対して当然言わなければならない答弁をなさらずにうそをつかれた、「言えません」と言えばいいところを「ありません」と言ったことがいけなかったと、あなたもおっしゃっているわけですから、そういう、国民に対して、国会に対して言うべきところを言わなかったという問題についての責任というものも、私は、総理大臣のあなたへの注意処分の中にはあると思うのであります。そのことはないのですか。あるのならば、はっきりそのことを、この際御見解を明らかにしていただきたい。
  102. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の処分、つまり総理大臣が注意処分をした、もちろんこれは私ばかりじゃありません、国民の前において私に対して注意を喚起する、こういうことなんです。ですから私は、それを受けとめまして、私が外務省の総括者である、綱紀の振粛をしなければならぬということ、それから、いま御指摘のありました、国会においては発言が妥当でなかった、そういうような点の反省、そういうことを含めての注意である、こういうふうに理解をいたしております。
  103. 上田哲

    ○上田哲君 その点について、国民に対しては、いまどのようにお考えでありますか。
  104. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民に対しましては、守るべき機密、これは守らなければならぬ、こういうことが一つ。そのためには、外務省の綱紀を振粛しなければならぬ、そういうふうに思います。また、国会に対しましては、その答弁等において、今後再びああいうようなことがあっては相ならぬと、かように考えております。
  105. 上田哲

    ○上田哲君 不満足でありますけれども、一応外務大臣のただいまのおことばを、ひとつ反省の最大の表現なんだろうというふうに、あえて受け取っておきます。  官房長官にお伺いしたい。この問題が発端となって、さまざまに行政機密の問題が議論をされてまいりました。あるべきもないたくさんの機密が行政府内にあるということを、整理しなければならぬというところに問題がしぼられておりまして、各委員会で政府側がその整理の考え方を述べておられますが、あらかじめ申し上げておいたのでありますが、この機会に官房長官から、どういう方向で、どういう方針でそうした整理をなさるのか、御見解を表明をしていただきたいと思います。
  106. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) お答えいたします。  まず、「秘密文書等の取扱いについて」という、これは、私が当時内閣官房副長官でありました四十年四月十五日の事務次官会議申し合わせ、これは、私は当時、その背景にありました国会において行なわれた御議論というものは、いわゆる秘扱いの文書が多過ぎるのではないかと、こういう背景があったわけであります。したがって、これを整理するための方針を示したという限りにおいては、この事務次官会議の申し合わせというのは、読んでみれば、それぞれ今日各委員会で御指摘をいただいているような問題が、整理されて指示事項として載っているわけであります。しかし、それが現実に、まあ下世話なことばで申しますならば追跡調査が足りなかったとでも申しましょうか、現実の問題として、各省庁間の文書取り扱いについては、せっかくの事務次官会議申し合わせ事項というものが、結論から申しまして、生かされておらないわけであります。ちなみに、最も新しくできました環境庁の文書取扱規程というものは、私どもが四十年に作成をいたしました際に廃止をした二十八年四月の申し合わせに基づいてできておる感もいたすわけであります。そこで、一昨日の事務次官会議において、さらに申し合わせの趣旨を徹底いたしまして、各省庁の秘密文書を極力減らすとともに、いわゆるこれに沿っていない省庁は、文書管理規程を改正の上、直ちに報告をしろと、こういうことを決定をいたしたわけであります。で、さらに、私が外務、防衛両省の事務次官に指示をいたしましたのは、いわゆる秘扱いの文書の中で、俗に、防衛、外務以外にございます文書の多くは、一つは人秘、すなわち発令までは伏せておくという人事の秘密でありますとか、あるいはまた物品購入、工事請負等々の秘密であります。で、これらは私はいままでの取り扱いで大きな誤りはなかったように思うわけであります。問題は、特に外務省と防衛庁に数多く存在しておりますところのいわゆる極秘文書であります。そこで、私が指示いたしました内容は、今度は、逆の立場からと申しましょうか、解除をする方法についての協議を至急検討せられたいと、こういう指示をしたわけであります。しかし、これは昨日指示したばかりでございますので、それについてまだ返答は参っておらない、こういう実情でございます。
  107. 上田哲

    ○上田哲君 大体の考え方はまだまとまるべくもない段階だと思いますが、少なくとも、一歩でも半歩でも踏み出そうという方針なんだというふうに受け取るとして、たいへん多岐にわたり、そうして各省庁間にアンバランスがあるこういう問題が、今後の課題にもなっていくだろう。これはかなり技術的な問題にもなりましょうが、そうした点では、そうした整理を含めて、大体一定の基準なり——基準というのは、何が機密かということであってはなるまいと思いますが、整理基準ですね、そういうものをまとめて、一定のラインに達するといいましょうか、それはいつごろをめどに置いておりますか。
  108. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先ほど申しましたいわゆる人秘とかあるいは試験問題とか、そういう問題につきましての基準といいますか、それは来週中には整理したいと思っております。ただし、先ほど申しました極秘問題につきましては、両省の考え方というものを聞いて、私がもう一度大所高所に立って判断をした上で基準作成ということになりますと、なお来週とかあるいは再来週とか、明確に上田委員にお答えする状態にまでは残念ながら今日至っておりません。
  109. 上田哲

    ○上田哲君 簡単に言いますと、だれかがべたべた判を押せば、それがマル秘になる、こういう状態がどういうふうに改善されるかということです。こういうところにしっかりメスを入れて改善をしていくということになりますか。
  110. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) お説のとおりであります。
  111. 上田哲

    ○上田哲君 国民ひとしく注目をしているところでありますので、その方針に基づく整理の過程あるいは結果を、すみやかに御報告いただくことをお約束いただきたいと思います。
  112. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 承知をいたしました。
  113. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  114. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  115. 上田哲

    ○上田哲君 私、これから防衛問題を中心にお尋ねをいたしたいと思いますが、たとえば、そこからひとつ見ていただきますが、これ、新聞ですね。これは日本の新聞か外国の新聞かわかりますか。どなたでもけっこう。防衛庁長官。
  116. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは日本の新聞じゃないでしょうか。
  117. 上田哲

    ○上田哲君 新聞には見えますね。いいですね。これは新聞じゃないのであります。こっちは本物の新聞です。これは実は新聞ではなく、こういう特別のものであります。自衛隊広報版と称する折り込み広告であります。だれが見ても、これはこの中にこういうふうに折りたたんで入ってきますから、ぴったり同じ大きさであって、新聞としか思えないものなんです。こういうものが許されておりますか。
  118. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは当然許されるのじゃないでしょうか。ちょっと見せていただけますか。自衛隊広報版ね、なるほど。
  119. 上田哲

    ○上田哲君 許されるわけですか。
  120. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは折り込み用の自衛隊の広報版と、こういうふうに承知いたしております。
  121. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁は、いつもこういうことをやっていますか。
  122. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 四十六年度で初めて実施いたしました。
  123. 上田哲

    ○上田哲君 この広告は、二月十五日に福岡県内の大新聞三つ、朝日、毎日、読売ですが、それから宮崎県内の宮崎日日、ここに配られています。どのくらい配られましたか。
  124. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 突然のお尋ねで、ちょっと正確な数字は覚えておりませんが、御指摘のように、九州方面の新聞にお願いして折り込み広告をやりました。数万あるいは十数万部じゃないかと思います。
  125. 上田哲

    ○上田哲君 百二十万枚であります。あとでひとつ調べて、しっかりしていただきたいと思うんですが、長官は、いまそういうことは許されているだろうと言われた。それは、なるほど法律の規定はありません。法律の規定はありませんが、こういうまぎらわしい意見広告になってはいかぬというので、この間から問題になっております新聞倫理綱領のほかに、新聞には、同じようなカテゴリーで新聞広告倫理綱領というのがあります。——ランプがどんどんいきますから私は読みません。また渡すから読んでください。はっきりここに書いてあることは、こういう新聞の大きさと同じものが、しかもそれが意見広告になるとたいへん読者をまどわすから、これは受け付けないようにしたいものだと受け付けないようにしていたのであります、いままで。これを防衛庁が押し込んでやらした。受け取ったほうに問題あるかもしれないが、まあ、ことばはやめましょうか。とにかくそれを防衛庁がやった。これはどうですか。
  126. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まあ、無理にやらせたということはないと思います。やはり依頼するほうと引き受けるほうと、両方あるわけですからね。よく私どもも、従来そういうものを、ハウジングの広告だとかそういうようなもので経験をしておるわけですが、九州地域については、比較的防衛庁の方向理解をする層も厚いというようなことでそういうことをしたのか、よく私一ぺん役所に帰りまして調査いたしたいと思いますが、これは、ちょうど東京の広報版が新聞に折り込みでくるというような形じゃないでしょうか。
  127. 上田哲

    ○上田哲君 「日本新聞協会では、新聞半ページ大以上の折り込み広告は、(1)新聞本紙の一部と混同されやすい、(2)配達に支障をきたす、などの理由から、昭和三十二年十月以降『折り込み広告の大きさは新聞半ページ大以下のものに限る』ことを申し合わせているので、受け付けてはならない。」また「政治問題について極端な主義主張を述べたもの」、「政治問題について極端な主義主張を述べたものや判断のむずかしいもの(係争中の問題について一方的な主張を述べたもの等)は」受け付けないように決定しよう、こういうことになっております。これは当然外から広告をする側が、受け付ける側の問題もあるが、当然に尊重しなければならない、言論の自由なり報道の自由に対する立場でなければならぬと思いますが、いかがですか。
  128. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 依頼者のほうとしても気をつけることは御指摘のように必要だと思いますが、やはりどうでしょう、実行する側が判断をされるということのほうが、引き受ける側にやはり重点があるように思いますが、その点いかがなものですかね。どうでしょう。
  129. 上田哲

    ○上田哲君 何言ってますか。そんな答弁でいいですか。
  130. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私は、引き受ける側が判断をされる、たとえば、これは私ども政治活動をしておる者が、まぎらわしいものを依頼しますというと、たいてい折り込みをする販売店なりしかるべきところで断わられますね。そういう経験は、長い政治生活のうちに私持っておりますが、そういう点から言うというと、やはり主として判断は引き受け側にあるのではないか、かように私考えます。
  131. 上田哲

    ○上田哲君 とんでもありません。そういうことをしないことが社会の倫理でしょう。持ってくるほうがなければ、受け付けるほうはありませんよ。向こうが全部ければいいんだから何でもこっちがどんな意見でも出していいということになりますか。一ぱい規定がありますよ。公序良俗に反するもの、あるいは人の名誉を侵すもの、そういうようなものは絶対にいけないのだということの中に、まぎらわしい意見を押し込むような形のものはやめなきやならぬと。そうすると、形の問題が入っているわけですよ。やるほうはどんなことを書いたってかまわないのだというようなことを、為政者の大臣ともあろうものが言っていいことでしょうか。
  132. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) どんなものでもいいということを申し上げたわけじゃなくて、まあ自衛隊は現に現存しておりまするし、こうして審議の過程においてでき上がったものでありまするし、当然国家の重要な防衛の機関であります。その実態を知らせるということについて、このPRをする、これは私はあっていいと思うのです。他に方法もいろいろあろうかと思います。ただ、同じ形であってまぎらわしい、このことを上田議員が言われるとするならば、その点については今後十分検討をいたします。
  133. 上田哲

    ○上田哲君 時間がないので省略しますが、その最後の一点、しっかりしましょう。新聞協会としてはこういうものは受け付けてない。明らかにこれは新聞の側の立場からいって、公正な記事とまぎらわしいことになることは避けねばならぬという判断は、正しいと思うのですよ。そうでない形をとるべきだということはあたりまえですね。これはいかぬですね、こういう形は。
  134. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) よくひとつ今後検討いたします。
  135. 上田哲

    ○上田哲君 いや、だから、こういう形のものを——新聞倫理綱領を総理は侵してはならぬという見解を表明されている。同じレベルの新聞広告倫理綱領を侵していいということですか。
  136. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それとこれとは一緒にならないように私は思います。
  137. 上田哲

    ○上田哲君 どうしてですか。これを見てごらんなさい。新聞倫理綱領と新聞広告倫理綱領は同じものですよ。こうのがありますよ、見てごらんなさい。これは、それとこれとどうして違うのですか。
  138. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いやいや、どうも。ごもっともです。まあ御指摘の点はよく注意をすることにいたしますが、そうかといって、一々これを見て、広告といいますか、PR版をつくるわけじゃありませんから、やはりこういうものが現存しておれば、引き受けられる側で注意を願う、こういうことのほうが、私は今後とも望ましいと思うのです。これは何も自衛隊に限らず、あらゆる場合に言えることだというふうに考えます。(発言する者あり)
  139. 上田哲

    ○上田哲君 委員長、うしろがうるさいから少し静かにさせてください。(「答弁そのとおりだよ」と呼ぶ者あり)どうもうしろがうるさいから静かにしてください。御注意を願いたい。
  140. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御質問以外の方は御静粛に願います。
  141. 上田哲

    ○上田哲君 広告をつけるときに、その倫理綱領を御存じなかったということはしかたがないかもしれない。しかし、それはそのあと直さなければならぬのだということをはっきりしていただけるでしょうか。
  142. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そういうお話であれば、当然私どもも今後気をつけたいと思います。
  143. 上田哲

    ○上田哲君 そこで問題になるのは、じゃ、そういうことをいつやったかというと、二月十五日ですよ。四次防で国会が、明らかに衆議院で二週間、三週間にわたって空転を続けているまっただ中に、こういうものを出すということについての政治判断というものは、どういうものですか。
  144. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、いま私もちょっと拝見した程度で、内容に深く触れておりませんが、まあその程度のものは、政治的な情勢とかそういうことを考えないでやったと。それからまた現地のものからいたしますると、やはり政治判断というのは私どもがすることでありまして、おそらくそれは広報課でやったことでありましょうが、どうでしょう、四次防問題と、その自衛隊ありのままの姿といったような一つのPR版とは、無関係ということで御了解を願いたいと思います。
  145. 上田哲

    ○上田哲君 もう少しやはりすっきり御答弁なさるべきです。ここに書いてあることは、自衛隊PRとは違うのですよ。防衛費が足りないからということのPRが書いてあるのですよ。防衛費をどうしようかということが四次防の問題ではありませんか。あなたは中を御存じないでそういうことを言っているのはいかぬですよ。それならどんどん具体的に詰めますよ。まだ一ぱいあるのだ、これは。逃げ口上じゃなくて——予算を審議している最中じゃありませんか。各国の防衛費比較をして、わが国はもっと防衛費はなければいかぬということをやっているわけじゃないですか。まさに四次防が先取りかどうかということが議論になっているときですよ。そのときにそういうものを、国会が空白状態になって空転しているときに出すということは、どうですか、一体。妥当ではなかったという表現があってしかるべきでしょう。それぐらいのことをおっしゃらぬと、あと、ありますよ。適切ではなかったという表現は少なくともあるべきです。
  146. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まあ御指摘の内容は、従来パンフレットにこれは掲載している程度のものですね。
  147. 上田哲

    ○上田哲君 パンフレットと新聞の折り込みは違いますよ。
  148. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まあ、そういうふうにおっしゃれば、これはやはり政治的な問題もあったかと思います。あったかと思いますが、どうもこれは、まあそのそこまで深い考え方なしに従来のパンフレットを折り込んだと、これが新聞型であることはけしからぬとおっしゃるならば、それは今後十分注意をいたしますと、こういうことでいかがでございましょうか。
  149. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと貸してください。いいですか、これはGNP比というのは問題でしょう。小さい小さいということが出ているわけですよ。それから「晴れた日の夜、空には美しい星がいっぱい。しかし、その星影を縫うようにして〃侵入者〃がやってくるかもしれません。」——こういう書き出しですよ。こんな書き出しが自衛隊のPRですか。これが自衛隊のPRですか。星影の空に侵入者がそっとやってくるかもしれないという書き出しが、どうして平和な自衛隊のPRになりますか。意見広告じゃないですか。第一、こういう広告の大きさというのは自衛隊以外やっていないのですよ、どこも。初めてやったのです。もっとすなおにお認めになるべきです。
  150. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは「全国二四カ所に設置されたレーダーサイトは、こうした空の無法者を防ぐため、昼夜、日本の空を監視しつづけているのです。」と、こう現状説明をしておるのですね。ですから、ことばの言い回し等については、よくこういう性格上検討はいたしますが、えらい刺激的なことを書いているというふうには思いませんが、私、まあそんなふうに……。
  151. 上田哲

    ○上田哲君 そのことは、あとでそこで明らかにしましょう。
  152. 徳永正利

    委員長徳永正利君) さしでお話しにならないように。
  153. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、そういう他のパンフレットにもあるものを新聞型にして折り込んだということです。したがって、こういう形が倫理綱領に、広告倫理綱領に制約されておるということであるならば、政府機関がそういうことを進んでやるということはよくありませんので、今後注意をいたしたいと思います。
  154. 上田哲

    ○上田哲君 もう一点、指摘しておきますと、これは大体私どもの計算ですと、一枚一円十銭から一円五十銭のものでしてね、販売手数料が。紙が三円です。そういう計算を全部してみますと四百三十万円。ちょうど、どうして二月にやったかと言いますと、防衛庁の広報予算が、この分だけ、四百三十万余っているという計算が私のほうで調べがつきました。年度末になって金が余ると、こういうことをしたのだと、さっき防衛庁長官も言われた。すなおな発想だが、九州のほうは自衛隊に好意的である——まさに九州一円、宮崎、新田原、ここをねらったという形はたいへん私はすなおではないと思うのです。
  155. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これはどうぞひとつ、誤解がありませんように。私が好意的と申したのは、比較的志願者が多いという意味を含めて申し上げたわけです。それから二月にそれを折り込んだという意味は、さっきも官房長に私はただしたわけでありますが、ちょうど学校卒業時期、就職時期と、こういうところをねらってやったと言っております。これは時期的に見てもそのとおりでありまして、年度末に予算が余ったからむだづかいをしたという程度のものではありません。のみならず、相当な金額でありますから、やはりそういう就職の時期、学校の卒業の時期、これを見はからってやった、これが真相でございます。
  156. 上田哲

    ○上田哲君 予算の数字があまりにもぴったり合い過ぎるので、ひとつ具体的な数字は後刻出していただきます。  それから、お認めになった部分をしっかり確認して、今後こういう、防衛庁以外やっていないような、防衛庁の持っているPRメディアと新聞折り込みとは違うのですから、明らかにこういうことは今後しないということをはっきり確認してください。
  157. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 十分検討いたします。
  158. 上田哲

    ○上田哲君 検討じゃないですよ。今後こういう形のものはやらないと。
  159. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) よくわかりました。
  160. 上田哲

    ○上田哲君 やらないのですね。
  161. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) はい。
  162. 上田哲

    ○上田哲君 こういう話ではなくて、私は防衛構想の基本に触れる問題をぜひじっくりお話をしたいと思います。  まず最初に、柱になる主要な部分について基礎認識を求めておきたいと思います。第一番に、米中関係が正常化され、アジア緊張緩和が定着するのはいつだとお考えになりますか。
  163. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは簡単に御説明できにくいと思います。確かに緊張緩和方向がきざしたことは事実でありまするが、いまお説のように、これが平和という形になってどう定着するか、これはしさいに今後見守っていく、きわめて日本にとっても重要な問題だと思います。これがすみやかに平和の形で定着することを私どもは望むものであります。しかし、これがいつであるかという点については、軽々に判断しがたい要素があまりにも多過ぎるというふうに思います。
  164. 上田哲

    ○上田哲君 わからぬということですか。
  165. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 率直に言えば、わからぬということです。しかし、われわれは平和の形に定着することを望むわけです。望みます。したがって、それを十分注視していきたい。現在まだ国連社会に出た、それからもう一つは、ニクソン・毛沢東両者の会談があった、この後の様子というものはきわめて重要でありまするから、やはりこれをしさいに検討していく。やはり緊張というものは、緊張をしたり緩和をしたり、緩和したり、また緊張ということの繰り返しのうちに一つ方向が定まってまいります。やはり私はここ一両年の視点というものを十分見きわめていく大事なところだと考えております。
  166. 上田哲

    ○上田哲君 第二点ですが、ニクソンドクトリン前の三次防からそれ以後の四次防の性格はどう変わりますか。
  167. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ニクソンドクトリンはよく承知をいたしておりまするが、わが国の自衛力というものはまだ整備段階である、こういう踏まえ方を私ども防衛庁ではいたしております。したがって、三次防の延長としての五カ年間、三次防構想の武装の面においての補備充実、そして新たに五カ年計画で足りない分をカバーしていこう、こういった計画に立っております。
  168. 上田哲

    ○上田哲君 三番目に、有事の場合、日米安保条約に基づいてのどの程度米軍の軍事行動というものを期待していますか。
  169. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 日本はあくまで専守防衛であります。したがいまして、通常兵器による局地戦、これには当然日本責任において、たえていかなければならぬと思います。敵の基地をたたくとか、攻撃的要素とか、これはやはり有事の場合において日米安保条約のもと、アメリカ軍に期待をする、これが従来の説明であります。
  170. 上田哲

    ○上田哲君 まるっきり答えていない。どういう形を期待しているかということですよ。
  171. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 三番目の御質問は二番目の問題とも関連をするわけでありますが、有事の場合に、米軍がまず支援をするであろうというものは、海上兵力、特に第七艦隊の存在でありまするし、それから航空兵力の打撃力であります。ただ、それに加えるに後方支援関係、たとえば兵器の補充であるとか、そういうことは期待できると思います。しかしながら、陸上兵力の支援というものは、先ほどのニクソンドクトリン、これは七二、七三会計年度のレアード報告についても明示されておりますように、多くを期待することは困難であろう。その点がヨーロッパとアジアの相違であるし、また、そういうようなものを背景にして四次防の場合は考えてまいらねばなるまいというふうに考えております。
  172. 上田哲

    ○上田哲君 四番目に、日米安保条約が将来変わるとすればどういう方向ですか。
  173. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 条約そのものは、私は将来ともここ当分は必要だという考え方に立っております。ただ、軍用の面において、これはやはり両国の合意においていろいろ変わっていくこともあろうかと推測いたします。
  174. 上田哲

    ○上田哲君 全然答えていないですよ。どういう形があり得るかということですよ。  では、もう一歩踏み込みますがね。いまは軍事同盟であると、ラベナルなんかも全部言っているわけです。そういう性格が、たとえば政治同盟というような方向をたどることがあるかというような言い方にしたら、どうなりますか。
  175. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 現在は軍事的協力、経済的協力も、うたっております。したがいまして、これがどう変貌するかという点につきましては、やはり私は実際の運用面において変化が起こり得る可能性があるというふうに考えております。
  176. 上田哲

    ○上田哲君 全然不満足ですな。  五番目に、防衛力増強の限界を数量的には設定しませんか。
  177. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、第四次防衛力整備五カ年計画の大綱をつくったところでありまして、数字的には今後検討をしてまいりたいと思います。  それから、四次防はまだ充実段階でありまするが、将来とも私は五次防、六次防というものがあってよろしいと。それは、防衛力を政府はどういう形で予算化していくか、このおよそのめどを国民に説明することは望ましいことだ。で、五次防、六次防の場合、たとえばいまは増額段階でありまするが、減額段階というものも当然あり得ると思うんです。そういうものも、六次、七次という形で、おおむね五カ年計画ぐらいの視点で一国民に防衛努力というようなものをはっきり明示していく上で知らせていくことが望ましい、こういう考え方に立っております。
  178. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ、最後に、五月十五日以降、地位協定の改定にどういうふうに取り組みますか。
  179. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) お答えします。  沖繩の返還協定で、安保条約及びこれに基づきます地位協定がそのまま適用されるということになっておりまして、現在のところ、これを法律的に改定するということは全く考えておりません。
  180. 上田哲

    ○上田哲君 それでは具体的な問題に入ってまいります。  私は、日本の防衛構想というものがあるとすれば、それはいま最大の転換点に立っているという認識を持ちます。ニクソン大統領大統領教書のことばをかりれば、やはり、日本もまたその影響の中に一つの分水嶺を越えなきゃならないところに来ているんだろうと。これは立場のいかんを問わず、客観的なことだろうと思っております。そこで、そういう認識に立つ限り、一番のポイントになるのは、日本の防衛構想を今日まで四次——まあ一次から二次、三次と持ってきた考え方のポイントになっている脅威の見積もりですね、脅威の見積もりという考え方について、ひとつ検討を加えなきゃならないときに来てるんじゃないか。防衛庁は、いまプロバビリティとポシビリティということばを使われております。これをちょっとよく説明してください。
  181. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) プロバビリティとポシビリティと申しますのは、中曽根原案の防衛構想の際に検討したものでありますが、いまの脅威論と関係があります。つまり、軍事的な脅威というのは、顕在的な脅威の分野、これはたとえば国境紛争でありますとか、民族関係、宗教あるいは領土、経済、その他いろいろの紛争要因がありまして、侵略なり武力紛争が起こりやすい、そういうような場合に、比較的——日本語で申せば可能性ということばでありましょうが、その可能性の比較的起こりそうな、起こりやすいというような場合にプロバビリティ、プロバブルであるというふうに申しました。しかしながら、一般的な国の防衛力整備の考え方というものは、かりに平和の見通しが濃くあっても、周辺諸国の軍事力、軍事能力にある意味で対応できるものを持ちたいというのがほとんどの国の整備方針であります。そういった場合に、その国が他の国を攻めるということを前提にするわけではありませんけれども、国家の意思というものは変わりやすいものである、将来も保しにくい、将来がどういうふうになるかわからない。したがって、客観的に見た軍事能力というものを判断をいたしまして、それを一種の脅威と見る。それが潜在的な脅威ということでありますが、起こり得る可能性がある、侵略の可能性がある、武力紛争の起こる可能性があるという意味でポシブルということばを使うわけであります。  そこで、日本の場合の脅威と言うときには、いわゆる中曽根原案の中にも書いてありまするように顕在的な脅威はない、したがって、武力紛争の起こる要因はないとわれわれは考えるけれども、軍事能力というものを周辺諸国が持っている、それがいつ何どき顕在化するかもしれない、当分は平和であるけれども、そういったものを一応の基準に考える、それはポシブルな脅威である、つまり潜在的な脅威である。そういう意味で、いまの二つのことばを使い分けたわけであります。
  182. 上田哲

    ○上田哲君 つまり、差し迫った脅威はないということをしっかり説明したことになりますね。
  183. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 差し迫った脅威もないし、当分の間を見通した場合にも、具体的な脅威というものは日本については起こり得ないであろうということを、ポシブルな脅威ばない、顕在的な脅威はないと、そういう表現をしたわけであります。
  184. 上田哲

    ○上田哲君 非常に徹底的な局限的な意味で脅威というものは見当たらないと、こういう表現だというふうに理解していいと思います。たとえば、かりに、前の国防総省のアジア局長のラベナルのことばがあるんですが、現在あるいは近い将来に日本に対する何らかの軍事的脅威があるかと、こういう問いに対してラベナルが言っているのは、まじめな軍事問題研究家なら、だれでも情勢を概観して、そのような脅威を考えたりすることはあり得ないことだと言っています。これはやはり日米双方の脅威論についての基本になるだろうと思います。いいですね、長官。
  185. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これはまさに防衛局長がお答えしたとおりだと思います。いま、にわかに日本に大きな脅威があるとは私も考えておりません。ただ、脅威というものは、その意思が武力に結びついて……。
  186. 上田哲

    ○上田哲君 全然それじゃいまのと違ってきちゃう。だめですよ。
  187. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そんなことないでしょう。要するに、現在ある武力というものに侵略の意思が結びつけばそのとき脅威になると、こういうことを私どもは思っておりまするが、現在、武力が直ちに脅威になるというふうには考えておりません。
  188. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、現在日本の防衛構想の、まあ、もし科学的な根拠といえばORですね。そのORは今後も続けますか。
  189. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 従来防衛庁の中で検討しましたのは、三次防をつくるにあたってという場合と、それから長期構想——十年前後を見通した将来における防衛力の整備がいかにあるべきか、そのうちの特に航空自衛隊についてORをやりました。四次防については、かつてORで出ました結果で利用できるものは利用できますが、これは相当の経費と、それから相当な期間を要するものでありまして、新たにORをまた大規模にやるという計画はいまのところございませんけれども、今後の長期計画を立てるにあたって、常にそういうものによって点検をしていく、つまり、四次防をつくりました後にも、その内容についての可否を考えていく、四次防の後の将来の防衛力のあり方についてもそういったORを活用して中身を点検してまいるということは続けてまいりたいと思います。
  190. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっとよけいなことですが、このORに新機種が入っておりますね。
  191. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 三次防までの点検の場合には新機種は入っておりませんが、将来構想の場合には、現在のF4の将来の新しい機種、あるいはナイキなどの対空ミサイルについての改善された体系というものを一応想定の中には入れております。
  192. 上田哲

    ○上田哲君 それで、問題を戻しますけれども、脅威のポシビリティだと、こういうところまで、はっきり来ていると、こういうことになると、日本の防衛構想というものは、そこでひとつ脅威論を考え直さなければならない。つまり、現在の日本の防衛力は、直接侵略というものにはオールマイティに対処しなければならないということに向かって増強されつつあると、こういう傾向ですね。
  193. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 直接侵略に対してオールマイティのものを持つという考え方、これはアメリカ流に言えば、あらゆるスペクトラムに対応する、つまり、あらゆる戦争要素に対応し得る兵力を持つということを考えておりまする国は、アメリカソ連と、それからNATO、ワルシャワ条約機構というようなものしかございません。したがいまして、その他の国はそれぞれ何らかの設定を設けての防衛力整備を考えるということでありまして、私どもは、周辺諸国の軍事能力を一応基準にするといたしましても、それらに十分対応する防衛力を持とうということは考えておりません。最小限の自衛力でありまするから、何らかの意味で対応できる、つまり、侵略国はどのような侵略もできるかもしれませんが、第二次大戦以後の様相を考えてみた場合に、起こりそうな事態というもの、それを考えます。そういうような事態に限定をして、そういう限定された事態に対応できる程度の防衛力を持つ、それが今日流における最小限の自衛力ではないかというふうに私は考えておるし、四次防のおそらく基本的な思想も、そういうことになるのではなかろうかというふうに思います。
  194. 上田哲

    ○上田哲君 防衛局長が座談会で言っていることばがあります。いま防衛庁での悩みといいますと——中を抜きますけれども——政府はどういう直接侵略に備えなさいとは言わないのでありますから、どのような規模のものであれ、また、だれが来ようと、直ちに直接侵略に対して防御できなければいけない、そういう任務が課されているならば、これに応ずる防衛力は十分に持つべきであるという考え方が出てくるわけであります。これがあなた自身も言っておられる悩みでありまして、いまのままでいくと、自衛隊はどうしたって、脅威のポシビリティに対して、ただ大きく大きく膨張していかなければならないという自己目的を負わされることになるわけです。これが一つ。  そして、それは、いまの国力からいっても——国力国情論が出てきますけれども、どんなにそれを増強していっても、GNP一%なんていう数字を、かりに、かなぐり捨てたとしても、そのことでわが国の武力的防御ということはできないという二律背反にぶつかるわけですね。これが私は、いまの防衛庁の最大の悩みでなきゃならぬ、防衛構想の最大の困惑でなきゃならぬと思うのですが、いかがですか、久保さん。
  195. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) まさにおっしゃることが国防会議で議論さるべきであろうと思うのです。ところが、現在われわれに課せられておりまするのは、自衛隊法によって、日本に対する直接侵略に対して防衛しろという一般的な課題が、あるいは任務が与えられているだけでありまして、どの範囲の任務でよろしいということを規定されておりません。そうすれば、自衛隊のほうでは、あらゆる直接侵略にこたえねばならぬという発想に立つのはやむを得ざることでありまして、そこにまた、いろいろな問題が派生してくる。したがって、これは政府レベルで、あるいは国全体のレベルで、防衛というのはこういう範囲で事足りるという課題を自衛隊に与えるべきである、そういう課題というものは自衛隊が出すべきではなくて、国なり政府なり、何らかの上層機関、政治の方針がそういうものを打ち出すべきである、それを受けて、自衛隊がそこそこの規模をきめるべきである、というふうに私は思います。
  196. 上田哲

    ○上田哲君 こちらへ課題を預けられたという気持ちがします。だから、それでいいですよ。まさにそうだと思う。政治の課題だと思う。久保さんも率直におっしゃっていいんだ。やはり私が言ったような悩みが、いまの防衛構想の悩みですね。
  197. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 自衛隊が大きくなろうということを必ずしも自衛隊自身が考えておるわけではありませんが、自衛隊に対する任務が、そういうことをいま法律上与えられているものですから、やむを得ない面もあろうかと思うので、これこそ、まさにいま言われまするような課題として御検討をいただき、われわれに任務を付与していただきたいというふうに思います。
  198. 上田哲

    ○上田哲君 それは悩みですね。
  199. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) はい。
  200. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官、そういうことなんですね。まさしく、いま自衛隊の踏んできた防衛構想は、そういう意味で、どうしても——どういう意図を持っているかということを、いま政治的に、つくのじゃありませんよ。現在の防衛構想論から言えば、どうしても膨張していかなければならない論理の上に乗っている、しかも、それは防衛力としては無意味だという矛盾にぶつかる、これがまさに、久保局長のことばをかりれば、国防会議で一ぺん考え直さなければならぬ一番基底の問題なんだ、そこを解決しないと次へ行けないという、非常に大きな問題が一つ出てきていると思うのですね。これはいいですね。
  201. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 確かに、政治の面において十分検討を加える余地は大いにあると思います。それを助けるのはやはり内局の仕事ですから、これはやはり政治の面及び防衛庁の内局の一体の作業という形になってこざるを得ないと思います。ただ、日本の防衛力というものは、しかし、そうかといって、私は無制限に伸びていくものじゃないと思うのです。それはやはり憲法上の制約で、いつも言われておる海外派兵をしない、政策的には非核三原則とか、あるいは徴兵制をしかないとか、そういう問題がありますから、ただGNPの問題だけを防衛力の整備ということにしたのでは、私はやはり問題があろうかと思うが、いろいろな面で制約が引き合って、いろいろ、こう、要素があるわけですから、そういうものを十分踏まえながら、一体日本の防衛力の限界をどこに置くのか、これはやはり今後とも深刻に検討をしていく重要な問題だと思っております。
  202. 上田哲

    ○上田哲君 限界をどこに置くかという話じゃないんですよ。限界じゃないんです、これは。性格論なんですよ。防衛構想論なんです。そこのところを詰めて、やはりちょっと勉強して答えていただかないと困る。いまおっしゃったから、そこへひとつ乗りますけれども、わかりやすいのは、形のことを言っていれば一番わかりやすいのですから、だから形は、あなたのおっしゃったように数量的限界というのはやはり示すべきである。  念のために聞きますけれども、中曽根原案八合目論というのは、いまはないわけですね。
  203. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 確かにございません。
  204. 上田哲

    ○上田哲君 ひとつ、いまあなた自身がおっしゃったように、そこをやはり、数量的限定ですね、これは出したほうがいいと思うんですが、いかがですか。大体、西村構想を引き継いでおられるわけでしょう。
  205. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御承知のように、経済見通しが非常に困難である。GNPの問題は、先ほどから議論がありまするように、これは金科玉条とは思っておりません。日本のGNPがどんどん伸びていけば、これは一%といいましても際限がないということでありましょうし、また、このGNPがいまのようにスローダウンしていくということが考えられれば、一%をはみ出ざるを得ないというようなことになってきたら、この尺度は尺度として、そんなに権威のあるものとは思われません。ただ、三次防の段階において大体GNPの一%以下ということが一つの標準になり、これが国民的な理解も得られたというふうに私どもは考えておるわけでありまするが、しかし、その要素すら、いま見通し難であるということから、年度内に策定しようというものが、御承知のとおり、延ばさざるを得なかった。そのことがいろいろな疑義を生んで、国会の空転ということにもなって、御迷惑をかけたわけでありまするが、当然、夏過ぎといいますか、経済のおよその見通しができれば、主要項目、そうして金額、こういった面を具体的に裏づけていきたいと考えております。
  206. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと、全然質問と違うのですがね。
  207. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  208. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  209. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 当然、四次防構想というものの中には、船はどうするのか、空は何機にするのか、陸は一体どういう装備でいくのか、これは具体化せざるを得ませんし、また、具体的にこれをお示しする。ただ、はっきり申し上げられることは、十年を視点とするというのは、いまの極東のこの情勢等々からいって、いささか長過ぎる、やはり五カ年間でいいのだ、その五カ年間はしからばどういう考え方、いわゆる基本方針に立つか、言うならば三次防の延長線としての五カ年間、そうして三次防終末時の武器を補備充実すると同時に、四次防で新たな構想も、これは何がしかを加えながらいく、それはまだわれわれ防衛構想というものは充実の段階であるからですと、こういう意味です。
  210. 上田哲

    ○上田哲君 防衛構想が、ですか。
  211. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 防衛力ですね。
  212. 徳永正利

    委員長徳永正利君) どうもお二人同士の話があれのようでございますから、私はせっかくここで整理しておりますから。
  213. 上田哲

    ○上田哲君 委員長におわびをいたします。  先へ少し進みます。二月十五日に出たアメリカの七三会計年度国防白書、つまりレアード報告で、現実的抑止戦略の完成だといわれている。ここで、いままでの二カ二分の一戦争体制から一カ二分の一、こうきたやつが、なくなってしまった。あるいはNATOを場合によってはこっちに回してもいいんだというところもなくなってしまった。これをどういうふうに理解されますか。
  214. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この前も御質問がありまして、ことば足らずでありましたが、現在二カ二分の一から一カ二分の一に変わり、さらにまたそれがゼロになったのではないかという批評が一部にございます。しかし私どもは、必ずしも現在のアメリカ政策が、一カ二分の一からゼロになったとは、特にアジアについてゼロになったとはどうも考えにくいのであります。  で、いろんな理由はありますが、一つだけ申し上げてみますると、七三会計年度の米国の予算教書の中でこういうふうなことがうたわれております。同盟諸国軍隊とともにヨーロッパまたはアジアにおける共産軍の主要な攻撃に対処し、さらにアジアにおける小規模な脅威に対抗する同盟国を援助し、かつその他の地域における小紛争に備えるものとするということで、一応一カニ分の一戦争戦略論というのは生きておるように私どもは思うわけであります。  ところで二カ二分の一戦争戦略論がいわれたときに、もうすでにアメリカはそれたけの軍備は持っておらなかったといわれたのと同様に、一カ二分の一戦争戦略を持っているからといって、必ずしもそれに即応する軍備を今日備えているかというと、そこには疑問があるかもしれない。そこに、レアード報告の中で必ずしも明瞭に指摘していないところがあるのかもしれないように思うのであります。  また、最後に言われましたNATO向けの軍をアジアに持ってこないかもしれないという思想は、特にニクソンドクトリンによりまして、むしろヨーロッパ第一主義に復帰をしたというふうに観測されるものでありますから、ヨーロッパに問題がある以上、そう軽々にアジアに兵力を振り向ける、特にヨーロッパ向けの、NATO向けの兵力を振り向けるということは予想しにくい。しかしながら、軍事力の使い方を一がいにこうだときめてしまうのもやはりおかしいので、アメリカとしては弾力的に運用できるであろうと。少なくとも私どもの考えとしては、アメリカが言っていることについて、私ども関係国として正確に評価をし、それに対応した防衛力なり運用なりを考えるべきであるということであります。
  215. 上田哲

    ○上田哲君 私はこのレアード報告は、私の表現で言わしてもらえば、アメリカの肩抜きだと思うんです、肩抜き。それが、言われるようなアメリカアジアにおけるゼロ戦争体制だということになるんじゃないかと。この見解とは違うんですか。
  216. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカの肩抜きというのはちょっとよくわかりませんでしたが……。
  217. 上田哲

    ○上田哲君 アジアの。
  218. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アジアについてアメリカが手を引く、そして地域各国に肩がわりさせていくという一般的な方針があるのは確かであります。しかしながら、レアード報告にもありまするように、陸上兵力については、それぞれの国が第一義的に担当しなければならない。しかし一般の兵器、後方関係の物質の支援及び、最初に空及び海の兵力の支援はやるというふうに明示されておりまするので、その範囲における支援というものはやるだろうと思います。  もう一つ指摘しておかなければいけませんのは、レアード報告のどの項目かに、米軍の駐留と申しますか、その類型が書いてありますが、その中で韓国については、ヨーロッパと同じように兵力を常駐させて防衛に当たると。ところが、日本とかアジアの他の地域については、いわば有事駐留のような形の類型をあげております。で、これらは、韓国の常時駐留であれ、またアジアのその他の地域における有事駐留であれ、やはり米国が支援をするというたてまえのもとに、そういったいわば一種のジャンルというものを設けているものというふうに考えれば、一がいに肩がわりと、そしてまたアジアについてアメリカはゼロ戦略をとっておるというふうには言えないのではないかと思います。
  219. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと、そうなると気になることがありましてね。ニューズ・アンド・ワールド・レポートで、レアード国防長官との一問一答があるわけでありまして、もう一つはクレアレイ太平洋艦隊司令長官の補足見解もあるのですが、簡単に言いますと、この中で、インド洋でのソビエトの活動増大についてどうかと。それに対する答えが、これはもう日本にとっても関心事であるに違いない、すでに私はこのことを日本側に表明してある、日本はインド洋経由で膨大な量の石油を入手しており、インド洋と日本の間を絶えず船舶が往来しており、日本はこの航路の確保に大きな関心を抱いているに違いないと。そこでこのことから、インド洋に日本の海軍力が進出する可能性があるか、必要があるかというのに対して、あり得るのだと、こういうことを言っておるわけです。
  220. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは私も見ましたが、インド洋に関心があることは事実です、これは日本としてですね。しかし、海上自衛隊が出ることは、これはありません。われわれは、あくまでインド洋の航行というものについては、やはり外交の面において関係諸国と友好関係に立って安全を確保していく、こういう方面で臨むつもりでおります。
  221. 上田哲

    ○上田哲君 関連して念のためにその部分をやっておきたいのですけれども、マラッカ海峡論なんというのはもうすでに、とっくに消えているはずですけれども、いわゆる船団護衛論ということもありませんね。
  222. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そういうことは考えておりません。
  223. 上田哲

    ○上田哲君 さっきの話に戻りますが、そうなりますと、核のかさ問題というものが出てくるわけです。長官、核のかさというのは、私は政治のかさにすぎないと思うのですが、どうですか。
  224. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ある意味では、私やはりそういう言い方ができると思います。アメリカが核を持っておる。ソ連も核を持っておる。両方が持っておるところに、双方の力が引き合ってバランスがとれておる、抑止力になっておる。そういう意味では、きわめて政治的な要素が多いと思います。
  225. 上田哲

    ○上田哲君 そういう意味じゃなくて、政治的な目的でしかない、政治的な効果でしかないということだと思うのですよ。
  226. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そう言い得ると思います。しかし、アメリカ側は責任を持って保障をすると、こう言っておりまするが、御指摘の、まあことばの意味を私は取り違えておるかもしれませんが、そういう発想はあると思います。
  227. 上田哲

    ○上田哲君 逆に言いますとね、核のかさというものは純軍事技術論的には成り立たないということなんですよ。はっきりやってくださいよ。
  228. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 核兵器の存在そのものが、きわめて政治的になっているということは言えようかと思います。ところで、核のかさの場合も、そういった政治的な意味合いもありましょうが、やはり軍事的な性格というものは十分に内臓しておるところだと思います。  問題は、核のかさの信頼性、少なくとも軍事的な面で見ると信頼性ということばが出てまいります。で、日本アメリカの核のかさのもとに入っているので、核からの脅威に対しては安住できるということになっておりまするし、アメリカはあらゆる手段をもって日本を防衛するということになっておりますので、核のかさというものは政治的な意味合いもあるにせよ、やはり軍事的な色彩は当然残っておりまするし、そのかさの信頼性のもとに日本はあるというふうな立場に政府は立っておると思います。
  229. 上田哲

    ○上田哲君 久保さんはナンバーワンの防衛官僚なんだから、もう、もっとはっきり言ったほうがいいですよ。たとえばここにブレジンスキーの「ひよわな花」がありますよ。総理にも会った写真が上に載っているくらいだから、相当権威のある本だと考えたとして、ここにたとえば「日本の防衛当局は、何らかの状況下に、アメリカ日本の核計画に対して、核供与の形で援助を提供する可能性があるかどうかを検討したうえ、結局、その種の援助はほとんど期待できないとの結論に達した」と、こう書いてありますよ。このことは技術論的な問題だけではありませんけれども、もっと軍事技術論的に、核のかさというものはないのだと、こういう、問題をはっきりしたほうがいいと思います。
  230. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この問題については世界的にも意見が分かれているところでありまして、アメリカの核のかさというものに最も疑問を提出しておりますのはフランスであります。ドゴール及びそれをささえた軍事理論家たちの意見が今日のフランスの核政策につながっておるわけでありますが、その点から言いますると、アメリカが核のかさとは言うけれどもアメリカの国あるいは国民を犠牲にしてまで他国のために核を発射することがあり得るだろうか、NATOの場合はともかくとして、まあNATOの場合についてもフランスは疑問を出したわけでありますが、いわんやNATO、ヨーロッパ以外の国について、そういうことがあり得るだろうか、したがって、核のかさというけれども、その信憑性、信頼性というものは十分なものではあり得ない、だから自分の国はそれぞれ核を持つべきである、というのがフランスの多くの人たちの意見であります。で、そういうような議論も一応はあり得るわけで、軍事的にそういう面もありましょうが、ただ一般的に言えば、そういうような軍事的な分析に入る前に、むしろ、アメリカの膨大な核戦力とソ連の膨大な核戦力、これが相互抑止をし合って、世界ではそういう大規模な核戦争は起こり得ない、そういうような状況のもとに、日本だけでなくて、世界各国が、中で安住をしているというふうに見るのが妥当であろうという見解も生じておりまするし、だんだんそういう意見が強くなっているように思います。
  231. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ、それは話を分けなければいけない。それはつまり核手詰まり論なんですよ。核手詰まり論で、核のかさの有効性を言うならば、それはあり得る。そうじゃなくて、純軍事技術論的に言うのは、有事の際に核のかさということが、いま言われているわけでしょう、いざとなったら、おれのほうの核でもって、かさをかぶせて助けてやるぞとという……。純軍事技術論的には有事の際に役に立たないということを言っているので、核手詰まり論としての意味というのは別ですよ。そこは区別して、いまの場合は、あなたのはそこまではいいけれども、もっと技術論的に詰める力を持っている人が言わなければだめだよ。
  232. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは、日本の政府当局者も、アメリカの政府当局者も、やはり核戦争に備えてアメリカが核戦略体制をとっている、そういうような体制のもとに与国は安住できるという思想に立っておるわけで、私が例示しましたようなフランス型の思想というものもありまするけれども、一応私どもは政府の思想を支持します。ただフランス風の考え方というのも理論的にはやはりあり得るんだというふうに解したいと思います。
  233. 上田哲

    ○上田哲君 まあ、防衛庁長官、そこをちゃんと整理してください。純技術論的にはないでしょう。
  234. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 確かに政治的な意味合いというものは多いと思います。しかし、いま防衛局長が申しまするように、結論的には、やはり政治的信頼のこれは問題ですから、いよいよというときに、ほんとうにその核のかさが有効に働くかどうか、これはやはり信頼関係に立つというわけですから、これは政治論ですね、政治論としてこれは踏まえなければならぬと思います。技術的にさてどうかというならば、やはりフランスの意見もそうでありましょうし、あるいはNATO下における西ドイツが、空軍五個師団にいつまでもおってもらわなければならぬ、そして、もしものときにはアメリカの市民の連帯性においてそれを助ける意味も含めて、海を越えて核のかさを有効適切に用いてくれるであろうといったような現実論もあろうかと思います。まあ日本の場合は、政治の面にウェートがかかっておる。御指摘の点は私は肯定いたします。
  235. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官としては言いにくい点がありましょうから、そこまで言ってくれればいいですよ。純軍事技術論的には、これは疑問を持たなきゃおかしいわけですよ。じゃ核武装しようという話になっちゃ困るので、これははっきりくぎを刺しておきますけれども、そういう疑問に立たなければならない時点に来ているわけですね。  この際、一つはっきりしておかなければならぬのは、一月十四日の経団連の河野防衛生産委員会会長の、例の、かさ代を払おうじゃないか……、あのかさ代というのはどうしますか。かさ代。
  236. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) どうも、ことばがちょっとよくわかりませんでしたが、かさ代、もちろん日本が払う必要はないと思っております。  それから、どうぞ、私さっき申し上げた意味は、あなたの理論を理論として承ったわけでありまして……。
  237. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣に何か言われて戻っちゃうようじゃ困る。
  238. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 日本としては、あくまでこの核のかさに信をおく、これはやはり冒頭私申し上げたつもりですから。——いや、別に外務大臣は何も言うたわけじゃありません。——信頼関係に立っておるのですから、この点は有効に働くものと、そういう認識に立っておる。これは繰り返し申し上げておきます。
  239. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣から何か言われると急に戻っちゃうようじゃ困るのでありましてね。そういうことじゃ防衛委員会なんかつくったってしょうがないでしょう。  そこで、どうしてもそういう話が発展してくると、日本の核武装はどうなのかということになってくるのです。そこで、同じブレジンスキーの言い方を借りれば——全部読むと時間がありませんけれども、一九七五年にはいよいよ日本は核問題についての決断のときが来るということを言っていますね。これはもう御存じだと思います。こういう考え方はどうですか。
  240. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私は、非核三原則というものを厳粛に踏まえていく。大事なことだと思っております。ただ、問題は、核の平和利用、これは幸い国会においても全党合意をいたしております。したがって、GNPがもし自由圏の二位であるというなら、平和利用の面においては、二位にもなり、まさに一位にもなる。原子科学者の数というものも相当数あるわけですから、そういった努力は、これはある程度、首相の金勘定でできることですね。ですから、そういう面に日本がもっと努力をしていくということによって、よほどこの核の脅威というものから日本を遠ざけることができるという、まあ見解を持っております。
  241. 上田哲

    ○上田哲君 まあ、かなり信頼されているブレジンスキーの見方として言えば、一九八五年前後には、必要とならば日本は年間数百発の原爆を製造するに至るプルトニウムを供給できるだろう、こういう状態を見越しても、なお絶対に核武装ということはないのだということを宣明できますね。
  242. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私どもは核の被災国であります。で、被災国だから核兵器を持たない。これは説得の理論がないと思います。しかし、この被災国であるがゆえに、これを人類に貢献させる、平和利用で活発な日本になる、こういうことで核兵器というものを押え込んでいく。私は可能だと思うのです。しかし、人類共滅の兵器を日本が持たなければならぬというような拙劣な外交であってはならぬと思うわけです。だから、あくまで平和に徹した日本というものを、もっと国際社会に十分徹底をして、核は持たない、この方針は貫いていきたいと思います。
  243. 上田哲

    ○上田哲君 そこが情念の話をされちゃ困るのですよ。やっぱり、単なる政治討論会じゃなくて、これは、日本の防衛構想の上で核を持たずにいけるのかという話がどうなるのかということですよ。いいですか。核を私は持てなんということは、これっぽっちも言いませんよ。しかし、核を持たなければ、すべての世界が核防衛体制になってしまったらばどうなるかという問題だって、机の上の話としては議論をしているに違いない。そういう形の中で、被災国だからなんという話じゃないのですよ。それは大事なことですけれどもね。防衛構想論として、そういうものを持たずにいくんだという展望を具体的に説明してくれなきゃ困る。
  244. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 持つ必要はないと確信いたしております。
  245. 上田哲

    ○上田哲君 それじゃ話にならないですよ、議論になりません。たとえば、ニクソン訪中の数日前の二月の一日でしたか、アメリカで行なわれた核論争があります。これは有名な論争ですから御存じだと思う。たとえば、そこでも出てきているのは、将来日本のそういう核武装というものにアメリカが手を貸すべきなのか貸すべきでないのかという大きな議論があるわけですよ、核体制というものにね、核武装と言ったら語弊が大きいかもしれないから。手を貸すべきか貸すべきでないかという論争がある。どちらになったとお考えですか。知っていますか。——そんなことじゃだめじゃないですか。
  246. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカの多くの意見というのは、日本がいずれ核装備するであろう、まあ、早い人は七〇年代の後半には日本が核装備するであろう、そういった核装備必至論の上に立って、そういう日本情勢に対して、アメリカ日本の核装備を手助けをしたほうがよろしいか、あるいは日本の独自の核装備にまかせたほうがよろしいかという話があります。その際には、多くの人は、日本の核装備に手助けをしたほうがいいであろう、そのほうがアメリカにとってプラスになるという発想があるということは承知いたしております。
  247. 上田哲

    ○上田哲君 どうですか、その見解。
  248. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 要らざるお世話だと思っております。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 まるっきりそれは答えにならないんですよ、長官。
  250. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そうじゃないでしょう。政治論として私は言っておるんです。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 いや、政治論……。
  252. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私は、政治論として率直に日本の意思を申し上げておるので、アメリカの軍事評論家が何と言おうと、アメリカの軍の高官が何と言おうと、それはわれわれのとるところではない、これをはっきり申し上げたわけです。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 これは当然なことで、そうでないと言ったらたいへんなことになるんです。だから、それは当然なことなんです。そんな、あたりまえのことを議論しているのじゃなくて、実際に防衛構想論というものが、あなたが具体的にこっちの片端を持っていらっしゃる日米安保条約の中で、いろいろと変わってきていく、動いていくわけですよ。そういう中では、向こう側の持っている防衛構想なり、防衛体系なり、核体系の中で、どういう影響を受けてくる中でわれわれはどういう選択をするかということが具体的に語られなければ、全部何も説明しなければ、やらないんだという説明ではこれは議論にならないということを言っている。時間がないからしようがないですがね。いま防衛局長が言われたような形で、手を貸すべきであるというような意見が出てきているわけですよ、手を貸すべきだと。こういうことになってくると、それをどうやって防ぐのかということにならざるを得ないじゃないですか。そうでしょう。あなたは断固として排除するんだとおっしゃるけれども、防衛構想そのものについての議論もできないで、向こう側に、おれはいやだ、いやだだけでは、一体これは防ぎ切れるのかどうかという疑問を持つんだということも言っておきたい。たとえば、この本を読みましたか。フレッド・グリーンです。「米国の政策アジアの安全保障」、お読みになりましたか。
  254. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 読んでおりません。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 これぐらいは読んでみてください。簡単に申し上げると、この中で、フレッド・グリーン、つまり国務省情報調査局東アジア太平洋部長が、前の論文ではありますけれども、出しているのです。その中で、もう時間がないから簡単に申し上げれば、中国の核脅威に対する日本の安全保障として日米双方にとって最善の方法は、アメリカの核戦力の管理に日本が参加する形で日米二国間海上核戦力を創設することである、二番目に、日本側がこの二国間海上核戦力の創設及び同戦力に属する艦艇の日本への寄港の自由、日本基地からの米軍前線派遣承認、日米安保条約の長期延長などの日米核同盟の条件を満たせば、米国はその代償として沖繩の施政権返還が可能になる云々と、そういうことがあるんです。時間がもったいないんです。いいですか。古いときの論文ではありますけれども、明らかに現在の国務省の東アジア太平洋部長がこういう見解を持っているんですよ。これをどういうふうに反論していきますか、必要ないということを。
  256. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは相当古いもののように私も思います。四十何年ごろですか、日本流に言うと。
  257. 上田哲

    ○上田哲君 六六年ですよ。
  258. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 六六年でしょう。ですから、それは少なくとも中国封じ込め政策をとっておるときの日本に対するものの考え方であろう、今日の時点ではやはり上田委員が冒頭御指摘になるように、様子は変わっておりまするから、それが必ずしも固定したものであるというふうには私は思いません。
  259. 上田哲

    ○上田哲君 私もこれが一番初めに、そういうふうに言われるに違いないと思ったから、だから、古いのではあるけれども、と言っているんですけれども、じゃ、これが完全に今日、主流——私も主流だとは思いたくありませんよ。しかし、そうでないという論証もない。たとえば別の傍証をあげれば、ブレジンスキーは、定義のしかたによって違ってくる——これはもう一番近い見解ですよ——定義のしかたによって違ってくるが、日本にとって相当な核抑止力とは核弾道弾ポセイドン積載型潜水艦十隻前後を持って云々と、こういうことばがあるんですよ。こういう見方というのはいまもありますよ。
  260. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) かつて軍事国家であった日本であるだけにいろいろなやはり見方はあろうかと思います。しかし、われわれは非核三原則を政策的に押し通していく、この方針に変わりはないわけですから、相手の国々が何と言おうと、われわれはその政策を押し通すと、こういうふうにお答えするよりお答えのしようはないように思います。
  261. 上田哲

    ○上田哲君 いや、政治姿勢としてはそれでいいんですよ。内局からでけっこうだ。こういう見解について防衛構想上の反論をちゃんとしてください。
  262. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカの一部の人がそういう見解を持っておることは資料にも出ているところであります。しかしながら、アメリカの政府全体の長い流れの中から見ると、そういった結果は出てこないと思います。しかし、アメリカがどう考えようと、わが国の軍事政策立場から考えてみますると、政治面は夙にしましても、軍事的に見て、私は日本の核装備というもの、これは戦略核兵器であれ、戦術核兵器であれ、成り立たない。膨大な核超大国を相手にして、あるいはその自余の国を相手にしましても、わが国は非常に狭小であり、人口、産業、文化が集中している——ような国柄では核戦争というものは成り立たない。したがって、わが国にとっては核兵器を持つことは不利な兵器であるというふうに考えております。したがって、わが国はかりに持ち得る能力はあっても、軍事的に見てすらも持つべきではないというのが結論であります。
  263. 上田哲

    ○上田哲君 短い時間だから十分ではないでしょう、答弁も。しかし、それをぐんと詰めてください。そして長官、こういう見解がいろいろ出てくるだろう。それを防衛構想の問題としてきちっと押し返してもらいたい。それを決意してください。
  264. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いま防衛局長が言いましたように、核というものはやはりあとの反撃体制というものがなければならぬと思います。まさにそのことを防衛局長は言うたわけで、第一撃でやられてしまう。報復体制が海にあったからといって、一体この狭小な国土で、しかも人口が蝟集しておるというこの国情からいって、核兵器というものは必ずしも日本に有利なものではない。私も全く同感だと思います。だから、平和利用においては、私は政治家としてこれからもまだ政治生命を持っているつもりですから、少なくとも世界的にGNPのように二番とか三番とか、そういう熱意を燃やしていくことにおいて日本独自の抑止力にしたい。これは私の政治家としての一つの主張として申し上げたわけであります。
  265. 上田哲

    ○上田哲君 久保さんね、あなたはある座談会で、脅威——軍事的な能力に何らかの意味で対応できるようなものを持つということになれば、やはりたいへん金がかかる。かりに限定的な局地戦であっても金がかかる。そこで、そういった思想を根本的に変えてしまうという考え方があり得ると思うんだと、脅威に対応するものをつくろうとするんじゃないという考え方があるべきじゃないか、こういうことを言っておられる。これは私はいいと思うんですけれどもね、この見解をもう少し説明してください。
  266. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) わが国の防衛力整備にあたっては、周辺諸国の軍事能力を一応の脅威と考える。それを潜在的な脅威と考えて防衛力を整備するというふうに初めに申し上げました。で、この場合には、かりに防衛対象を限定をして、それに対する最小限度の自衛力ということを考えましても、周辺諸国の軍事能力というものは膨大でありまするし、質も非常に高い。したがって、最小限度の自衛力といえども、将来にわたっては相当の経費、相当の人力その他を要することになる。したがって、世界各国はいまのようないわゆる脅威論に立っているんですけれども、それから離れた防衛力整備の考え方はないものであろうかというのが発想の根拠であります。で、いずれ防衛庁としましては、将来の問題としましてそういうものを検討してまいりたいわけでありますが、また検討中のものを申し上げるのは適当でないかと思いまするけれども、私自身が教えを訓う意味で二、三の論点で例示してみたいと思いますが、たとえば完全にこれはまた脅威論から離れるわけにもいかないですけれども、たとえば平時においては、訓練を中心にする部隊、あるいは特定の新しい研究部隊を中心にしたようなものをつくって、それを母体にして、有事の場合には必要に応じた拡張を行なっていくというような考え方に立てば、平時においては比較的少ない兵力を持ち得る。しかし、これはこれなりのまた欠点があります。それから労効不償という原則があります。これは一つの国を攻める場合に、その攻めるのに要する労力と、その攻めることによって得られる効果がつり合わない程度に相手国をやっつけ得る程度の防衛力、つまり、労力のほうが得られる効果よりも大きく中るような防衛力を持つという考え方、これはたとえばそれを明示しておるのはスウェーデンでありまするし、こういう程度のものでありましても、相手国が大きければこの労効不償の原則にのっとっても相当の防衛力を要する。スウェーデンの防衛力を見られればわかるとおりであります。そこで、その程度までいかないまでも、相当手ひどい痛手を与え得る程度のものにする、これも程度がありましょうけれども、そういったような防衛力の持ち方もあろうと考えるわけです。あるいは、安保体制を維持し得るという程度の防衛力。つまり、アメリカにとっても、日本なら日本が防衛努力をしないのに、アメリカ国民が日本を援助しようという気持ちにはならないだろう。そこで、アメリカ国民も喜んで日本の防衛に協力し得るような、つまり安保体制が有効に働き得るような防衛力を持つというような持ち方もあります。これはある程度実質よりも形式に重点がいくような防衛力の持ち方、たとえば昭和三十年代にはこれが見せかけ論あるいは米国へのおつき合い論ということで防衛論として議論されたことがありますが、そういったところに重点を置いた防衛力の持ち方もある。これは脅威そのものから離れた考え方であります。しかし、私が二つ三つ例をあげましたが、いずれもそれぞれ長所もあれば短所もあるということで、そういうようなものを、何といいますか、結合したようなもの、そういうものを総合したような防衛力の持ち方というのがあり得るのではないか。あるいは、いま例示したもの以外にも、脅威から離れて平和が続くであろうという見通しのもとに何らかの意味で抑止力になるような防衛力というものを持つということがわれわれとしては将来の防衛力構想上重要ではないか。一つの完全な私見でありまして、防衛庁の中でそういうようなものを中心に練り上げてまいりたいというのが防衛庁の今後の課題であると思っております。
  267. 上田哲

    ○上田哲君 非常に示唆に富んだ考え方が出たと思うんですよ。私は、防衛構想というようなもの——まあことばは正確でないでしょうね、いいことばでないと私は思う、われわれの立場からすれば。しかし、そういうものがいま根本的に検討しなきゃならない検討点にあるということの認識に立てば、われわれはやはりそこに非武装中立ということを唱えたいわけです、それはまあ前提としてですよ。しかし、とにかくいまある姿の中から考えていく立場に立てば、いま防衛局長があげた三つの点、そしてそれを結合するという四つ目の態度、これは、私は、やっぱり戦後二十数年間の中で防衛庁が初めて検討しようとしている姿勢であるだろうし、また、そうしなきゃならないところへきている問題としては非常に大きな問題だと思うんですよ。これは前向きに考えてみる気はありませんか。
  268. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私も、全く、就任以来、国会に明け暮れているわけです。あなたがおすすめのそういう本を読む時間もないという形ですが、十分前向きで検討をしてみたいということをしみじみ思っております。
  269. 上田哲

    ○上田哲君 重要なことは、根本的に冷戦感覚を捨てること、それが一つ。それからアメリカアジア戦略と切り離すということ、これが一つあるだろうと思うのです、まあ一緒にしなくてもいいですけれどもね。そういうものを込めながら、根本的に脅威論を前提としない防衛構想を考えてみようとする出発はどうか。
  270. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 防衛構想を分析していく上に、いま御指摘の点は重要な要素だと思います。十分検討いたします。
  271. 上田哲

    ○上田哲君 脅威論というものからの脱却は、これが防衛構想が金額の上からいっても装備の上からいっても倍々ゲームで果てしなく広がっていかなきゃならぬということは、自他ともに困るに違いない。説明がつかないのですから、防衛構想がないところで哲学がないところで端だけが大きくなるのですから、ここにはやっぱりほんとうの意味で議論がなきゃいけないんです。そういう意味では、脅威を前提とし、そこに向かっての対応力を考えていたのでは、脅威の見積もりという発想ではだめなわけで、いま長官のおっしゃったのは、そういう脅威の見積りというところから脱却する考え方もひとつぜひ検討してみようということだと思うので、ひとつぜひ進めてもらいたいと思います。  たいへんお待たせをして申しわけなかったのだけれども、官房長官、ひとつ総理の代理として、いまのような考え方をあすあさってすぐしろとは言わないけれども、また、われわれはそういうことが正しいという言い方を持つ立場にはいませんけれども、少なくとも議論というものは、いま日本の防衛構想上大きな分水嶺の頂に立っている、そこに立っているのだという見解の中で、それは脅威論というものをひとつ別ワクにして考えてみようという態度はどうなのかと、この二つについて御見解を承っておきたいと思います。
  272. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 本格的ないわゆる防衛論争、その中で上田委員御指摘の問題は、私も静かにこれを傾聴いたしました。そのことを率直に総理にもお伝えいたしますが、直ちに私がここで御返答申し上げる自信もございませんが、高度な防衛論としてつつしんで承りました。
  273. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 脅威を全然度外視して防衛構想というのは、これは私なかなか成り立たないと思います。脅威をいかにして小さくするか、また、脅威感覚というものを事こまかに分析する、こういうことは御質問の趣旨もわかるような気がいたしまするので、真剣にひとつ努力するつもりです。
  274. 上田哲

    ○上田哲君 あのね、変えてしまえと言っているのじゃないのですよ。そういう発想の検討も始めたらどうかということ言っているのです。ちょっと丁寧に言ってください。
  275. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) やはり、防衛の要素の中には脅威というものがあるから、防衛構想というものが出てくるわけですね。ただ、この脅威をどう踏まえるか、これはやはり問題がある点だと思います。十分こまかく分析をして検討いたします。
  276. 上田哲

    ○上田哲君 終わります。
  277. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で上田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  278. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、細川護熙君の質疑を行ないます。細川君。
  279. 細川護煕

    ○細川護熙君 私は、きょうは、四次防に関連をしてわが国の安全保障の基本的な問題、それから国連の環境会議を踏まえた環境の問題、それから日本の将来のエネルギー政策の中でのチュメニの問題、この三点にしぼって伺いたいと思います。  何か環境庁長官のお時間がないらしいので、初めに環境の問題から伺いますが、今度の会議の席で、中国と、渡り鳥条約ですか、自然保護条約といったようなものを結ぶ意思があるかどうか。長官はすでに中国と接触をしておられるという話を聞きますけれども、この点、いかがですか。
  280. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 御承知のように、日本には、いま、約四百種類以上の渡り鳥が、中国あるいはソビエトあるいはアメリカあるいは豪州の方面から渡ってきております。この鳥を何とか保護することが自然環境を保全する一つの大きな要素と考えまして、渡り鳥についての各国間との間の保護条約を結びたいと考えているわけでございます。その第一歩として、初めてことしアメリカとの間の渡り鳥保護条約が締結されたのでございます。中国からも約二百種に近い渡り鳥が飛んでまいります。これにつきましても、やはり何らかのお互いの接触を持つことが大事であると。それには、いろいろとまず情報交換から始まって、お互いの調査、保護のしかたをすることが大事でございます。ただ、現在のところ、いままでは何らのそのような連絡がございませんでした。御承知のように、まだ国交もございません。したがいまして、私どもは何とかして中国ともそのような接触を持ちたいと考えておりましたが、政府間の接触がありませんので苦慮しておったところでございますが、幸いに、昨年の十一月、東京経済界の人々が中国を訪問されたわけでございます。そのおりに、知人がございましたので、その知人に、一応向こうにそのような意向を打診するために、ぜひともそのような渡り鳥についてのお互い交渉を開始したいということを打診していただきました。向こうへ行かれまして打診されました結果、非常に向こうでも好意的であって、まことにけっこうな話であると。渡り鳥には国境もない。また、渡り鳥が日本から中国に戻ってくるには別に香港から広東を経由してくる必要もない。まっすぐに来られるんだ。まことにけっこうな話であると。しかるべき機関を通じてそのように連絡いたしましょうという連絡がございました。そういうことで、いま、これがだんだんそれへの方向で民間同士の一つの連絡ができるかと思っております。で、こういうことを土台として、お互いに情報交換、連絡を行ないながら、いずれ国交が回復した暁には政府間の折衝にまで持ってまいりたいと考えております。
  281. 細川護煕

    ○細川護熙君 ぜひそういうふうなことをお願いしておきます。  そこで、ひとつこの問題に関連をして海洋汚染の問題で一つ伺っておきたいと思うのですけれどもわが国は、御承知のように、昭和四十五年の十二月に世界に先がけて海洋汚染防止法というものを公布をいたしました。しかし、その後、この同法に基づく政令の制定公布というものがおくれているということを聞いておりますけれども、今度のストックホルム会議にも関連をして、この政令制定の進行の状況、それから廃棄物の排出海域、排出方法、そういった問題について環境庁の見解を伺っておきたいと思います。
  282. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 御承知のように、海洋汚染防止法が改定になりましたのでございますが、完全なその発動は本年六月からでございます。その間に、いろいろな、具体的な廃棄物の処理であるとか、あるいはその廃棄物を廃棄することのできる海域の指定だとか、そのような政令、そういうものをこれからきめなければなりません。現段階では、すでに海域を指定する政令の原案はでき上がりまして、いま中央公害対策審議会にかけておるわけでございます。いずれ答申が参りますれば、間もなくこれをはっきりときめることにいたす方針で、六月からのその発動に備えてまいりたいと考えております。
  283. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  284. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  285. 細川護煕

    ○細川護熙君 ところで、今度の会議でナショナル・レポートというものを提出されるということは、せんだってから本委員会でも議論になっておりますけれども、これの中に、例のあの水俣病であるとかイタイイタイ病、そういったものが抜けておるということで、あとから追加資料として別途に出されることになったということは、これはきわめて私は当然なことだと思います。  それで、この問題に関連をして、いま非常に大きな問題になっている水俣病の問題についてちょっと若干伺っておきたいと思うのですけれども、せんだっての熊本大学の実態調査によって、新しい患者というか、精密検診を要する人が新たに三百五十何人か見つかりました。今度の調査は、御承知のように、まだ三年計画の初年度分であって、これからさらにまだ患者が非常にふえてくるということは十分に考えられることだと思うのです。また、今回の調査で地域的な拡大ということもあらためて指摘をされたわけですけれども、今後のこの水俣病の推移という問題について長官はどういうふうに考えられるか、基本的な認識をちょっと伺っておきたいと思います。
  286. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) このお答えの前に、一つ間違いがありましたので、訂正さしていただきます。海域の指定につきましては、すでに三月に中央公害対策審議会から答申はもらっております。いま、それに基づきまして鋭意作業中でございますので、その訂正をさしていただきます。  それから水俣病につきましては、御承知のように、昨年の八月でありましたか、新しい患者の認定方法の基準を示しましたので、それによりまして幅の広い解釈が行なわれまして、できるだけ漏れることがないように、全部の患者を救済いたしたいという方針でいま進んでおるわけでございます。そういうことで、そういうことに基づきまして、さらに鹿児島県、熊本県両県におきましては、その関係していると思われる地域の全面的な一斉検診が行なわれておりまして、御承知のように、先ごろの発表でも、三百人余りの精密検診を要する容疑者が——容疑者と申しますか、疑いのある者が出たわけでございます。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕 今後、おそらく、いろいろと、いままでと違いまして、もっとさらに患者がふえてまいることが予想されますが、それは何ぼふえてもやむを得ないと思います。できるだけ一人でもそのような見落とされる患者がないように、的確にその患者が救済されることをわれわれも望んでおるわけでございます。  御承知のように、この患者にいわゆる健康被害者救済法の法律で適用されますのは、地域を指定しまして、その地域の患者に大体適用されることになっておるわけでございます。現在におきましては、熊本県におきましてもいろいろな地域がございますが、たとえばその向かい側の天草の、あそこは何といいましたか、御所浦ですか、ああいう地域はまだ指定になっておりません。あるいは鹿児島県の一部のものがなりまして、多少でも患者がいると思われるような地域でまだ指定されていないところがございます。しかし、御承知のように、この指定というものは、いろいろな環境汚染が進んでおって、その結果いろいろな患者が多く発生しそうな地域に限りまして、県とともに連絡をいたしまして、県を中心としたいろんな調査の結果地域を指定することになっておるわけでございます。御承知のように、いま一斉検診をいたしておりますので、その結果を待って、できるだけ手落ちのないように患者が救済されるような地域の指定をいたしたいといま考えておるわけでございます。ただし、いま指定されていない地域内に患者がおりましても、それが公害病患者だと認定されますと、これは全部救済されます。したがいまして、必ずしも地域指定にはとらわれないのでございますので、その点は十分に救い道はあると考えております。
  287. 細川護煕

    ○細川護熙君 きのうの新聞の報道によると、患者の発生は、これまで昭和二十八年から三十五年までといわれてきたものが、昭和十七年から四十六年まで新しい発病者の出た疑いが強いということでありましたけれども、その事実は聞いておられますね、間違いありませんですね。
  288. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) まだ、精密検査の結果、患者は確定をしておりませんが、大体そのような傾向であるだろうと私も思います。
  289. 細川護煕

    ○細川護熙君 これは、ここに持っているのは、今度熊本大学が出した報告書なんですけれども、これによると、きのうの新聞報道に出ていなかった面で非常に重要な事実が幾つかあると思います。たとえば、きのう出ていた報道によると、昭和四十六年に——これは自覚症状が発現をした時期ですけれども昭和四十六年に六人、昭和四十五年に十一人、昭和四十四年に十一人といったような数字が出ておりましたけれども、実際には、この報告書によると、もっともっと多い数字が、たとえば昭和四十六年にも九人、昭和四十五年には十六人、昭和四十四年には十四人といったぐあいに、もっともっとこれを上回る数字がこれに報告をされております。昭和十七年にも二人ほど報告をされておりますけれども、そういうことになると、これは非常に——確かに四十三年をピークとして患者の数は減ってきておりますけれども、これは非常に重要な事実だと思うのです。この点について、長官、どう考えられるか。
  290. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いままでは、おそらくそのような患者は発生しないだろうというような見通しが強かったのでございますが、このように非常に患者がふえておりますことにつきましてはわれわれもその将来を心配いたしております。なぜ新しい患者が出てくるかということはわかりませんが、いろいろな考え方はあるでしょうが、一つは、やはりいままで見落とされておったというのもあるのではないかと思います。必ずしも自覚的に自分ではそういわゆる公害病患者でないと思っていた人もあるかもしれませんし、あるいは、いままでの一般的な医療によってそれが公害病でないと見られてきたのもあったかもしれません。しかし、また、新しい学説のように、そのようなあとから発生するものもあるかもしれません。いずれにしましても、われわれは、要するに、診断班と申しますか、そのような検診をする医師団の方々の正しい判断を土台としてその対策をきめてまいりたいと思います。したがいまして、ぜひとも間違いのない明確なあたたかい判断を心から願っておる次第でございます。
  291. 細川護煕

    ○細川護熙君 いま私が申し上げたこの四十六年までの要精密検診者の中から認定患者が出るということになれば、そういうことになれば、こういう人たちの発病の原因というものが、患者多発当時に食べた魚の有機水銀による遅発性のものなのか、あるいは、現在もまだ水俣湾の底にある有機水銀というものの影響で不知火海の魚が非常に汚染をされているということにもなるのじゃないかと思うのですけれども、その辺のことはいかがですか。
  292. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 不知火海ですか、この海中においては、その海底の沈でん物、ヘドロ等につきましてはいろいろと検査をいたしておりますが、水銀ですね、総水銀の量はやはりほかの地域に比べまして多いようでございます。ただし、いわゆるアルキル水銀は検出されておりません。ただ、全体として無機的な水銀が多少よそより多いようでございます。また、この海域でとれました魚を毎年いろいろと水銀をはかっておりますが、やはり他の地域に比べますと、多少多いようでございます。しかし、昭和四十四年と四十五年を比べますと四十五年度には多少下がっておるようで下がっておるようであります。でありますから、ある程度魚の中に水銀の量が他の海域より多少多いことは確かなようでございます。ただし、これが直ちに患者発生の原因になるとはあまり考えられません。と申しますのは、第一に魚をいままでのように日常たくさん食べないような指導いたしております。私も実はあそこに参りまして、魚を食べてまいりましたが、別に何にも心配はありません、心配しながら食べてまいりましたが。ですから、どのくらいの量を食べたらどうかということについては、まだまだいまのところそういう残念ながら報告がきておりませんが、ある程度のみな用心はいたしておるようでございます。したがいまして、その新しいその後魚を食べたことによって発生したというよりは、やはり遅発性の症状であったか、あるいはいままで発見されないで残っておったか、そういうことが多いのではなかろうかと、一応考えておる次第でございます。
  293. 細川護煕

    ○細川護熙君 私もその遅発性であるということを望みますけれども、現在この報告書の中にも現在安全であるとされているこの地区の魚介類について徹底した調査研究が必要であり、それは緊急を要するということがやはり書いてございますが、そういう意味でもそういう調査というものを緊急に私はしていただく必要があると思うのですけれども、現にこの水俣湾の海底にはチッソ側の発表でも約六十トンの無機水銀が沈でんをしておると言われております。熊大の調査だと約六百トンの無機水銀が沈でんしておるということでありまして、これを何らかの条件によって有機化をするという可能性が否定できない以上、新しい患者の発生というものは、私は今後もやはり考えなくちゃならぬことだと思うのです。現に御存じのようにスエーデンであるとか、あるいはアメリカではむしろ有機水銀の排出のほうが重視をされて、これが海底や湖の底でバクテリアによってメチル水銀化するということが非常に問題になっておるわけでありまして、現にそういった研究に基づいてスエーデンであるとか、あるいはアメリカでは五大湖の周辺でも食用に供するためのフィッシングが禁止をされておりますし、また幾つかのかん詰め工場は製造したかん詰めも販売を中止したり、廃棄処分にしたということも聞いております。そういう実情にかんがみても、一体この水俣湾沿岸で漁業というものが継続をしてやれるのか、あるいはこの付近の魚は食べてもだいじょうぶなのか、危険だとすれば、その海域とか、魚種の制限というものはどうするのか、一刻も早く私はそういった行政的な手というものを打たなくちゃならぬと思うのですけれども、この点についていかがですか。
  294. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いまお説のような、やはりはっきりしたものの判断をする必要が私は大事だと思います。したがいまして、この魚は食べていいのか悪いのか、そして食べていいなら安心して食べるように、そうしたらいいでしょうし、食べていけないものなら、やはりこれは禁止するよりしようがない。それを禁止する場合には、何万人という漁業者に対しては十分な生活権の保障をしなきゃならぬ、いろんな問題が出てまいります。したがって、そのようなはっきりした私は行政を打ち立てたいと願っております。しかし、それにはその前提として、はたしてその魚が食べていけないのかどうかという科学的な立証をあげなきやならないと思うのです。御承知のように、いま無機水銀から有機水銀に変わるというようなことは、以前は実験室では可能でございましたが、その後は天然の中でも何かこの間の、一週間ばかり前の新聞を見ますと、そのようなことが可能である、そういう実験が見られたというような報道もございましたが、それはそうであるかもしれませんが、どのような速度で、どのような経過によってどうかということは、まだ詳しくはわからないと思うのです。ですから、やはり現在は、いまおっしゃるとおり、無機水銀がずいぶん海底にもあるようでございますが、アルキル水銀はまだ検出されておりません。したがって、これらの無機水銀かそのままで安心なのか、これがはたしておっしゃるようにいろいろな生物学的な機序によりまして、それが有機化して体内かあるいは生物の体内に入って有機化されるのか、そういうことがなかなかむずかしいことですが、そういうことも確かめなければなりませんが、もう少しいわゆる確実な、ある程度の科学的な事実の積み重ねがありませんと、直ちにいま魚をとってもいけない、何してもいけないということもできないと思うのです。そういうことで、いまはなはだこれは時間がかかって残念でございますけれども、いまの状態はそのようなわけでございます。しかし、現在においてそう大量のものが、無機から有機化されるということは考えられません、いままでの科学的な考え方からすれば。それから魚もはかってみた魚は、ある程度量は多いのでありますが、それほどのむちゃくちゃな有機水銀は含んでおりませんので、こういうものはやはりそう適当な指導さえすれば、新しい水俣病患者をつくるものではないという判断のもとに、われわれは指導いたしておるわけでございます。
  295. 細川護煕

    ○細川護熙君 やはり私、いま一番必要なのは、今後のこの水俣病の徹底調査をやはり実行していただくということだと思うのですけれども、ここにもいままでの昭和三十一年からの各省庁の予算がありますけれども、調査、治療研究にかかった各省庁の予算というものがありますけれども、やはりいま現在、熊本県がさっき実施しておられるとおっしゃいましたけれども、この程度の調査では、非常に機械も使わないあいまいな調査なんですね。たとえば視野狭窄を調べるにしても、非常に手でこういうふうなことをやってる非常にあいまいな調査なんで、やはり今回熊大がやったような非常に徹底した厳密な検診というものが必要だと思うのです。しかし、そういうふうな厳密な検診というものをやるためには一つの大学の、一大学の能力をはるかに越えた予算というものが必要なんで、そういう面でひとつ国のサイドからの裏づけというものをお願いをしておきたいと思います。  それでこの問題でお願いはお願いとして、今度のストックホルムの会議でも例のPPPの原則というものが、おそらく確認をされることは間違いないと思います。また六月のOECDでは正式にきまることになるでしょうけれども、昨年の九月に長官は水俣病患者認定の審査の段階で、疑わしいものについてはどんどん救済の場を広げるということをおっしゃいました。それは確かにけっこうなことなんですけれども、しかし、せんだってからいろいろここでも議論が出ておりますように、どんどんこの認定をすることはけっこうなんですけれども、企業がつぶれてしまった場合に、これはやはりその責任をだれがとるかという問題が出てくるわけでありまして、せんだってもここで土呂久の話なんかも出ておりましたけれども、そういう意味からもやはり私は国が低利の資金を貸し付けるとか、あるいは公害共済保険的なもの、あるいは労災保険の発想と同じように、そういう場合に、企業にかわって国がその損害賠償を担保するような何らかの制度といったようなものを、たとえば公害補償の保険制度といったようなものをやはりこの際、国が前向きに考えるべきじゃないかと思うのですけれども、この点について重ねて大石長官と大蔵大臣にも伺っておきます。
  296. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 水俣病のいろいろな研究、治療、その他の研究につきましては、熊本大学の医学部は非常な貢献をされておりますが、いまでも努力していただいております。しかし、熊本大学だけにじゃございませんで、新潟医科大学におきましても、あるいはその他の研究機関におきましても、中心的な学者の方の研究グループをつくっていただきまして、そこを中心としていろいろな総合的な研究を分担して進めておるようにいま努力いたしておりますので、そういうものは、いますぐという結果がなかなか出にくいものでありますだけに、時間はかかりますけれども、必ず近い将来には何らかの成果を上げるものと考えております。その研究費につきましても、必ずしも大きいものではございません。いままでの、去年あたりまでの役所——厚生省、環境庁の予算にしましても、二千万足らずのものでございますし、もちろん県やその他いろいろな費用を入れますと、二億以上になっております。しかし、十分なものではございません。本年度の予算にしましても、大体八、九千万は用意してございます。その全部とはいいませんが、それを使い得るように、いまわれわれ用意いたしておりますが、もっともっと十分な予算と大きな構想で、この正しい水俣病の全体をとらえるように、それから治療方面も治療を見出すように努力してまいりたいと考えております。おっしゃるとおり、いろいろなこういう人々の生活の保障の財源の問題でございます。現在は、その医療費なり介護手当とかそういうものにつきましては、それぞれ国、県、市、あるいはこれのための財団——いま財界では資本金五千万以上の会社から寄付のような金を徴収いたしまして財源をつくりまして、そういった費用の二分の一はその財団で出しておりますので、一応その治療にはこと欠きませんけれども、おっしゃるとおり将来の生活の保障なり賠償というものが必要でございます。企業が健全であれば当然その企業の責任においてこれは支払わなければなりませんけれども、おっしゃるとおりその企業がいつまでも健全であるかどうかわかりません。またばく大な患者、ばく大な費用になれば、これは負担し得ないことになります。そういうことでわれわれはその財源を、どのような場合にあっても、その生活の保障をするような財源をつくっておかなければならないと思います。現在では、政府にはそのような保障する義務といいますか、法律がありませんので、いまでは、もし企業がつぶれましても、これは政府が直ちに支払うことができない現状でございます。したがいまして、急いでそのようなことは考えなきゃならぬと思います。同時に、今度衆議院においてようやく無過失賠償責任制度の法律案を審議していただくことになりましたが、こういうものをつくりましても、その反面としてやはりこれに備える財源を考えなければならないと思うのです。   〔理事若林正武君退席、委員長着席〕 そういう意味で財源を考えます。それは政府が何としても中心になってこれが財源をまとめることに努力しなければなりません。その金は、どこで払うか。政府が出すか、企業が出すか、あるいは全企業が拠出するか、いろんな考えがございます。それを基金にするかあるいは保険のような制度にするか、あるいは課徴金と申しますか、そういう形、いろんな形がございますけれども、しかし、近い将来にはやはりPPPの考えによりまして、企業というものが大体それを負担すべきことが原則であろうと考えます。そういう意味で、ただ、政府はもちろん一生懸命努力して音頭はとりますが、まとめるべく努力いたしますが、その財源の構想とかあるいは財源の出場所と申しますか、そういうものについては今後十分に検討いたしまして、できるだけ早くそのような体制をつくり上げたいと考えておる次第でございます。
  297. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま今年度の予算では、公害医療研究費の補助金のほかに、新たに健康被害調査研究費というものを設けて、三千八百万円でございますが、このうちの一部を充当するということで、この配分については、いま関係者の間で検討中でございますので、したがって、この水俣病の研究には、大体今年度はこと欠かないような措置はとれるだろうと考えます。
  298. 細川護煕

    ○細川護熙君 時間がないのでたいへん早口になって申しわけありませんが、次に、それでは防衛の問題について伺いたいと思います。  さっきの上田委員との質疑の中でも言われましたけれども、中曽根原案八合目論というものは白紙になったとさっきも言われましたね。まあ西村案も含めて、これは今度の大綱で白紙になったのだということをせんだっても言われましたけれども、ということは中曽根原案にいう限定された局地戦という考え方までも白紙になったということでよろしいですね。
  299. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは案そのものが四次防大綱ができた時点で白紙になったということでありまして、あの中に含まれておる防衛庁としてのものの考え方、これが全部否定された、そういうわけのものではありません。当然重要な要素を含んでおるわけです。ただし、十年を視点とする防衛構想というものは、これは根底から変えていこう、五カ年計画でいこう、これは繰り返し申し上げておりまするから、時間の関係上繰り返しません。
  300. 細川護煕

    ○細川護熙君 この中曽根構想は白紙になったということでありますけれども、しかし、防衛庁の中でもまだいまだにこれはテンポをスローダウンしただけであって、白紙になったのじゃないんじゃないかというふうな受け取り方をしている人もまだあるようであります。どういう理由であれ、防衛力整備というものをスローダウンして、一年のリードタイムも考えた防衛構想に移管をしたということであれば、それはやはり三次防のすみやかに事態に対処するという有事即応体制という方針と、明らかにこれは考え方が違ってくるわけでありますから、それはただ財政上の理由からということではあまり説得力がないので、それはやはり当然国防会議にかけて、今後十分に御審議を願うのが筋道であろうかと思うのです。  そこでもう一ぺん、財政上の理由からということになるかもしれませんが、三次防の有事即応体制というものを破棄して、リードタイムを一年としたという根拠はどういうことなのか。もう一ぺんあらためて伺います。
  301. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 十年を視点にしたというのは、これはむしろ国際情勢、特に極東情勢等を踏まえて、十年を視点にしての計画は長過ぎる。同時に、それじゃ五年はどうであるかというわけでありまするが、五年は防衛整備計画というもの、防衛努力というものを国民に知らせていく上に大体妥当な年数ではないか。これが大づかみに言った五年間の一つの主張になるわけです。経済事情だけでこれを改めようとしたわけではありません。もちろん極東情勢等も踏まえながら、この五カ年間の装備をどう展開していくか。これは三次防末期の現状維持と同時に、まだ充実段階でありまするから、新たに装備を加えるものもある、こういう考え方、これを進めようというわけです。
  302. 細川護煕

    ○細川護熙君 この西村削減案も白紙だということでありますけれども、しかし、実際問題として、これを初めから作業をやり直すということは、たいへんなことだと思うので、実際にはこの考え方をやはり実質的には基礎にしてこれからやられるということですね。
  303. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは微妙なところですが、西村削減案というものは、中曽根四次防構想というものから正面兵力を主とした——もちろん他の経費も含みますが、正面兵力を主とした経費五千億というものを削減しようと、こういうことで試算をしてみたものですね。ですから中曽根構想が白紙になれば、当然西村構想というものも白紙にならざるを得ないわけなんです。これは理論的にはそういうわけですね。しかし、さっきも申し上げましたように、中曽根構想そのものは防衛庁で積み上げてきたもともと根拠のあるものであります。したがいまして、今後四次防の原案を策定してまいりまする上にいろいろ参考になる点はもちろんあるわけです。したがって、西村長官当時の減額構想というものも、私は一つのやはり重要な参考資料にはなる、こう考えております。しかし、もちろんあの大綱に基づいて新たに策定をしていくわけでありまするから、時を得て新たに慎重に検討をして最終的にはきめていきたい、こう思っております。  なお、つけ加えますならば、金額的には西村減額構想とは別に、あのあたりというものは相当重要に考えられる金額ではないか、これは言えると思います。
  304. 細川護煕

    ○細川護熙君 それではちょっと参考のために伺いますけれども、この西村削減案で削ると言われていたその内訳は、どういうことになりますか。これは参考のために、いままであまり公表されたことがないので伺っておきます。
  305. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これはたとえばということで、最も事務的な作業を長官が命じたという程度のものでありまして、外に発表するていのものではございません。
  306. 細川護煕

    ○細川護熙君 それではもう一つ基本的な問題を伺っておきたいと思うのですけれども日本の安全は従来、日米安保体制が主であったけれども、これからは自主防衛が主で、安保が従だということがしきりに言われて、たとえば国防白書でも自主防衛の推進ということがうたわれておりますけれども、歴代の長官もそういうことを言ってこられました。しかしどうも自主防衛というものの具体的な中身がいま一つよくわからないのでありますけれども、この自主防衛と安保体制との関係、並列的なものであるのか、補完的なものであるのか、あるいはどちらかにウエートを置いて考えておられるのか、その辺をちょっと伺いたいと思います。
  307. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 国防の基本方針は、御承知のとおり、昭和三十二年にきめたものであります。今度の四次防の大綱におきましては、その昭和三十二年にきめた国防の基本方針にのっとる、この国防の基本方針には日米安保条約を基調としてと、こういう見解に立っておるわけです。したがって、今度の四次防大綱の中にも国防の基本というところにやはりそういう文章が出てくるわけです。そういう見解が出てくるわけです。しからば、歴代長官が、安保を補完としてと、こう言っておったが一体どうか——これは私は一つのやはり重要な質問点であるというふうに承っております。私は、それに対しては、国防の基本はやはり専守防衛でありまするから、あくまで自分の国は自分で守る。通常兵器による局地戦にはこれは日本が第一義的に処していく。しかし、ほんとうに事があった場合には、それだけでは座して死を待つというような場面もありまするので、安保条約に依存しなければならぬわけです。これを運用面において補完ということばを使ったので、やはり基本考え方としては、日米安全保障条約を基調とする、これが今日の防衛庁のものの考え方の基礎になるものであります。そういうふうにお受け取りを願いとうございます。
  308. 細川護煕

    ○細川護熙君 中曽根構想では「わが防衛力をもって第一義的に対処する」ということが書いてありますですね。しかし、四次防の大綱にそれが見えないということは、これは四次防の大綱に書いてありませんけれども、それは意識的にそういう表現を使うことを避けたということですか。つまり、安保の一環として初めて自主防衛というものも意味を持つんだというふうに軌道修正をしたというふうに受け取っていいですか。
  309. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、中曽根長官が国防の基本方針というものを変更しようということで事務的に内局に向けても作業を命ぜられたことは事実であります。また、自民党の安全保障調査会においても、いま農林大臣の赤城さんが会長で、私がその補佐役で、これをどう検討するかということで慎重に検討をした段階がありました。しかし、結論として、昭和三十二年の国防の基本方針を踏襲してしかるべしと、また、首相のものの考え方もそういうふうであったということで、改められないで今日に及んでおる、これが実情であります。したがって、中曽根長官も、国防の基本方針を改めようとされたが、これは改めるに至らなかった、これが真相であります。
  310. 細川護煕

    ○細川護熙君 どうも、この自主防衛というものの実体が、いま一つよくわからないのですけれども、さっきもちょっと質疑がありましたけれども、安保との関連で、どういう状態になったらどこまでアメリカがやってくれるのかという、さっきも議論の出ておったのはその点だと思うんですけれども、ことばをかえて言えば、米軍に期待しているものは有事駐留なのか常時駐留なのか、あるいは米軍の応援というものにどれぐらいを期待しておるのか、何日ぐらいを期待しているのか、その点、いかがですか。
  311. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 政治問題を離れて純軍事的に申しますると、ある程度の常時駐留が望ましいということが言えると思います。これは純軍事的であります。つまり、日米安保体制というものがありまするけれども、それが単に条約上のものでなくて、実効的であらしめるためには、NATOやら韓国などで議論がありまするように、ある種の人質的なものがあったほうが望ましいということになろうと思います。しかしながら、米軍の存在というものは純軍事的のみには考えられませんので、やはり政治的諸般の情勢を考えてやらねばなりません。のみならず、こちらがそう思っても、米側の方針もあります。そういうことであれば、日本の将来というものは、常時駐留ではなくて、有事駐留形式のものになるということになります。それは七三年度のレアード報告の中にも日本の類型をそのように位置づけているということは、先ほども申し上げました。ところで、そういったような状態、特にニクソンドクトリンのもとで日本がどの程度応援を求め得るかということは、米側の報告の中で見られまするところでは、海空の支援、海は第七艦隊でありましょうし、空は日本周辺におりまする航空部隊、おそらくそれだけではありませんで、有事の場合には他からもまた応援がかけつけてくるであろうと思います。それから装備の関係、後方関係の支援も予期できます。ただし、陸上部隊については、これは、たとえば、現在では沖繩に海兵の部隊がおりまするように、海兵の部隊はいわゆる火消し部隊でありますから、一個師団ないし二個師団というものは予想できます。一般的な陸上部隊がどの程度期待できるかということは問題でありまするけれども、これを皆無というのも少し言い過ぎでありましょうし、非常に期待できるというのも、また言い過ぎである。言うならば、そう多くは期待できないけれども、ある程度の期待を寄せ得るというような考え方でしかるべきであろうというふうに思います。  そこで、期間の問題でありまするけれども、通常、陸上部隊を考えました場合に、アメリカが、米本土から本格的な陸上部隊の支援が行なわれるというのは三カ月を要すると見られております。しかしながら、ある程度の陸上部隊であれば約一カ月、これはもちろん装備品も含めてでありますが、約一カ月程度というのが私どもの判断であります。
  312. 細川護煕

    ○細川護熙君 ちょっと、いまよく聞き取れなかったんですけれども、海上の兵力のことですね。海幕は日米安保条約による米軍の援助を前提にしない限り戦略は成り立たないということは前から言われておることですけれども、具体的にどういう援助を期待しているのか。
  313. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 日本の海上自衛隊は、日本の周辺海域を防衛するという立場に限定をされます。そこで、アメリカが持っておりますのは何かといいますと、第七艦隊というのはいわゆる打撃部隊であります。そこで、わが国を防衛するために相手国の基地もしくは遠方の海域を攻撃するという必要がありまする場合には、第七艦隊の打撃能力に依存せざるを得ない。そうしてまた、日本周辺以外の遠い海洋における、たとえば潜水艦に対する脅威については、これまた米側に依存せざるを得ない。しかし、その脅威については、第七艦隊は必ずしも能力を持っておりません。これはいわゆる打撃部隊でありますから。そこで、第七艦隊以外の勢力についても、ある程度は米側に期待せざるを得ないということになります。
  314. 細川護煕

    ○細川護熙君 三次防でいう、通常兵器による局地戦以下の侵略に対応するといっている、そのことが、いま言われたように、アメリカとの間に詰めがなくてできないということであれば、持久期間を一カ月と定めている根拠はどういうことになりますか。
  315. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 持久期間を一カ月と定めておるわけではありません。ただ、防衛力整備にあたっては、たとえば第二次大戦における日本のごとく、数年にわたって戦闘に耐え得る兵力を整備するということは、たいへんなことであります。そこで、第二次大戦以後の戦争状態を考えてみますと、特殊のもの、たとえば朝鮮戦争でありますとか、ベトナム戦争でありますとか、いわゆる内戦の形をとったもの以外については、きわめて短期間に終わっております。いわゆる限定戦争というものでありますが、そういう過程の中では、半年やら一年やらが、いわゆるホット・ウォー、非常に砲火の盛んにかわされるような戦争状態が長期間にわたって続くのではあるまい、数カ月以内であろう、したがって、わが国が防衛力を整備するとするならば、その程度でよいのではなかろうか。一カ月なり二カ月なり持久できる程度のものを、つまり、持久と申しますよりも、ホット・ウォーを維持できる程度のものを整備の対象と考える。しかしながら、戦争の態様というものは種々さまざまでありますから、実際の戦争においては、三カ月であれ、半年であれ、持久できるように、これは運用の面で考える。したがって、戦争がどの程度続くかということと、防衛力整備の対象をどう考えるかということを別にして考えております。
  316. 細川護煕

    ○細川護熙君 御承知のように、三次防では「通常兵器による局地戦以下の侵略に対処する」ということになっておりましたけれども、中曽根構想では「防衛力をもって対処すべき事態、様相を限定し」というぐあいに、局地戦というものが限定をされて、二次防、三次防を通じて局地戦以下と言ってきたものが、その頭に限定的なという修正の字句がついて、部分的な局地戦以下のものに対処をするんだというふうな、何か印象があるんです。そういうことになれば、これは非常に大きな変化で、そうなればやはりそのことを今度の四次防の大綱あたりにも明記をすべきじゃないかと思うんですけれども、この点はいかがですか。
  317. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 大綱の整備方針というところに「わが国が整備すべき防衛力は、通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対し、最も有効に対応しうる効率的なものを目標とする。」と、こういう形で方向を明示しておるわけですね。これが今度の四次防の構想、中曽根長官当時のものは一つの試案であるというふうにお考えを願います。
  318. 細川護煕

    ○細川護熙君 外務大臣に一点伺いますが、せんだっての委員会で、事前協議の問題について、事前協議の運用は一つの問題点なんで、今後日米安保協議委員会の場で検討したい、米側と話をするという趣旨のことをおっしゃいましたけれども、この事前協議というものは、その日米安保協議委員会の場でやるということもまあ何ですけれども、本来は随時協議がたてまえであると思いますけれども、この点はいかがですか。
  319. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のとおりであります。つまり、事前協議の具体的ケースは、これはもういろいろ方式があります。随時に両国で相談をする。私が申し上げておりますのは、そうじゃなくて、事前協議の対象にすべき事項を相談し直してみると、こういうことなんです。つまり、この特別のケースじゃなくって、どういうケースがこの事前協議の対象となるか、それを整理してみたいと、こういうことでございます。
  320. 細川護煕

    ○細川護熙君 それでは、今後その日米安保協議委員会でなくて、随時協議をするということでよろしいわけですね。
  321. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 個々のケースですね、これは、いまだかつてそういうケースが出てこなかったんですが、そういうケースが出てきた場合におきましては、たとえば在日アメリカ大使と私との間の話でもいいし、あるいはアメリカ大使館の公使とアメリカ局長の話でもいいし、まあ適当なルートで話し合うと、こういうことでけっこうだと思います。ただ私は、重ねて申し上げますが、問題にしておりますのは、その事前協議の対象となるべき事項、これが、国会の論議なんかを通じてみて、私として少し明確でない点がある。ずいぶんこまかいことを皆さんから聞かれます。そういうとき、すらすらと答弁できないようなことがあります。そういうことがすらすらとお答えができるように、対象となるべき事項の整理をしておきたいと、こういうことでございます。
  322. 細川護煕

    ○細川護熙君 それでは、ちょっと初めの問題に戻りますけれども、この西村削減案で四次防は実質的にスローダウンをしたんであるということでありますけれども、四次防で総対的にどういう形の戦力を持ちたいのか、どうもその辺のところが、いま一つ不明確なように思うんです。GNPの比率である程度の水準にしたいのか、あるいは全くそれとは関係なしに、純粋に一つの力として持とうとしているのか。どうもその辺のところが明確でないんで、もう一ぺん、その辺のところをひとつ明確にお願いをいたします。
  323. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 四次防の持つ意義というものは、今後の四次防計画作成の過程の中で検討してまいりたいと思うわけでありますが、四次防そのものは三次防の延長であるとなっております。ところで、三次防を見ますると、必ずしもその性格がはっきりいたしておりません。そういたしますると、三次防の延長である四次防の性格もはっきりしないことになります。ところで、防衛庁原案といいますか、昨年四月に発表しました原案の中では、先ほど長官も申されましたように、十年の先を見越しまして、その先における意義というものをつかまえました。その意義に向かって、四次防はその前段階であるということで、四次防の位置づけが、わりと明確になったわけでありますが、一応長期目標というものをはずしましたので、単純に国防の基本方針にのっとって、国力、国情に応じ防衛力を漸増するという、そういう計画のものに現在はなりつつあるわけであります。しかしながら、相当額の経費を投じて防衛力を整備する以上、また、四次防計画という五カ年計画をつくる以上は、何らかの意義を持つべきであろうというふうに思っておりまして、この点については四次防作成の中で検討してまいりたいと思います。
  324. 細川護煕

    ○細川護熙君 それでは、ちょっと、もう一ぺん別の言い方で伺いますけれども、中曽根構想が白紙に返っても、四次防、五次防でその目標の達成は変わらずにしていくわけですか。つまり、四次防は一つの能力として持ちたいという、その意図は変わったわけですね。
  325. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは変わったと申し上げたほうが正確だと思います。それは、今後極東緊張緩和、これがまあ平和の形で定着することをわれわれは希望するわけですね。また、それをにわかにどう防衛計画に織り込むか、この段階では非常にむつかしい問題だと思います。しかし、当然四次防末期、五次防初期というあたりにはこれは具体的になってまいりまするので、そういったものも考え合わせながら防衛力整備をしていきたい、こういう態度です。
  326. 細川護煕

    ○細川護熙君 さっきも、この四次防は三次防の延長であって、装備の更新であるということでありましたけれども、どうもその辺のところがよくわからないんですが、それであれば、何も五カ年計画を立てる意味はないんですね。単年度予算でもやれるんじゃないかという気がするんですけれども、その点、いかがですか。
  327. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 五カ年計画の根本的な意義は、国民に、防衛努力をどういうふうにしておるか、これをはっきりするということ、それから、防衛庁自体から言いまするならば、自衛隊の装備というものは数年を要するものです、この数年を要する兵器をどういう姿で充実させていくのか、これは落ち込みと見合って継続的に、しかも長期の視点に立って、大体三年から五年くらい、これは相当精巧な兵器であればあるほど、時間的にかかるわけですから、そういうことで五年というのが妥当である、十年というのは少し長過ぎる、特に国際情勢等を織り込んでいくということになりまするというと、長きに過ぎるではないか、こういうことであります。
  328. 細川護煕

    ○細川護熙君 さっきお答えになりませんでしたけれども西村削減によって、その中身はわからぬという話でありましたけれども、あの西村削減の中で、例のDLHというものが一ぱい削られることになっておりました。これが、もともとは二はいでワングループをつくってハック・グループということでやるんだという話になっておったわけですけれども、これはどうなりますか、今度の四次防の中で。
  329. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 今後慎重に検討する課題ですから、現在の時点で何とも申し上げられませんが、防衛庁はどう考えているかと言われるならば、それはぜひ建造したいと思っている。隻数においてどうするか、減らすかという方向で検討いたしております。
  330. 細川護煕

    ○細川護熙君 そうすると、一ぱいでも、これはやはり意味があるということですか。二はいでないと、何か、外航二群、内航二群の護衛をするということにおいて意味がないんじゃなかろうかという気がするんですけれども、一ぱいでもやはり意味があるということに受け取ってよろしいですか。
  331. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 防衛庁原案において二隻を予定いたしましたのは、現在、外航護衛隊群というのが二群あります。その二群のうち一つについては、すでに三次防まででDDHという約四千トン程度のヘリコプター搭載の護衛艦をつくることになっております。この場合には、DDHの場合には二隻で一単位になります。そこで、一外航護衛群にはそれでカバーできるわけですが、残り、もう一外航護衛群と、それから原案においては対潜掃討部隊というものを考えておりました。いわば潜水艦を掃討するための機動部隊でありますが、このグループが一つあります。そこで、残りの外航護衛群一つと、それから対潜掃討部隊一つのためにDLHを二隻を考えたわけです。DLH一隻はDDH二隻に相当するわけでありますから、二隻を置けば、外航護衛隊群と、それから対潜掃討部隊用にあてがい得るわけでありますが、その際一隻を削るとすれば、対潜掃討部隊のものを削って、外航護衛群二グループは、それぞれ対潜ヘリコプターを搭載をした護衛艦を持つということになります。
  332. 細川護煕

    ○細川護熙君 T2のような新しい機種は、せんだっての船田議長の凍結案で、国防会議にかけるという確認がなされたわけですけれども、もし今後このDLHのような問題があると、こういう問題もやはり国防会議にかける必要があると私は思うんですけれども、その点はいかがですか。
  333. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 四次防決定そのものが国防会議できめられるわけですから、当然そういったものも一括会議にかけられるという場合もありましょうし、また、何かの関係で予算措置が別になるというような場合には、かけたほうがいいと思っております。
  334. 細川護煕

    ○細川護熙君 陸海空の各幕僚監部とも、それぞれ相手が三割程度の損害をこうむると作戦継続が困難になる、したがって、事態はおさまるというふうな判断はずっと以前からしてまいりました。それが、今度の新防衛力整備計画で、さっきも話が出ましたように、限定的な局地戦に対処ができるという、その一番の根拠であったと思うのです。しかしながら、その三割の損害というものがその後の作戦継続を困難にするというのは、これは私、きわめて独断的な判断であると思いますけれども、さっきこのDLHを持つことの意味において議論をされたことも、私はそのことじゃないかと思うのですけれども、どういう根拠でこの三割という数字が出てきたのか。一体何の三〇%なのかということをひとつ伺いたいと思います。
  335. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 常識的に三割ということが言われておりますが、たとえば艦艇で申しますると、通峡阻止の場合に、三割程度のものが通峡を断念をする、あるいは潜水艦が一航海たとえば三十日なら三十日航海するときに、その過程の中で、つまり三十日航海する中で全体の隻数の三割が三十日を通じて撃沈されるというようなもの、あるいは日本を航空攻撃をする場合に、航空攻撃をかけた機数の三割程度を落とすというような程度、これは一応軍事常識的な線でありまして、各幕では戦史を事こまかに調べまして、必ずしも三割というふうに確定はいたしておりません。それよりも少ない数字もあれば、大きい数字もありますし、相手方によっても違いますが、ほぼそんな程度撃墜あるいは撃退すれば継続的な戦闘は困難であるという一応の算定基準を立てておるわけであります。その数字が悪いからといって、別に他の適当な数字があるわけでありませんので、第二次大戦までのそういった数字を基礎にして積算をしておると、こういうことであります。
  336. 細川護煕

    ○細川護熙君 久保・カーチス取りきめのことについて二、三伺いたいと思いますが、久保・カーチス取りきめが、文面どおり実施できなくなったということは、もう、せんだってから新聞等でも報道されたとおりでありますけれども、この取りきめの持つ基本的な性格というものが、どうもまだよくわからないので。  そもそもこの久保・カーチス協定というものは、これは一局長の覚書ということでありますけれどもアメリカのほうでは上院なんかにも説明資料として出しておりますし、非常にこれは協定に準ずる性格のものとして重視をしているように思われます。政府は、この間の国防会議参事官会議で、まあF104とか、人員の配置を減少する方向で検討を始めたということでありますけれども、そういうことになると、つまりこの取りきめにはどの程度の制約力があるのか、どの程度のことなら変更ができるのかということが、あらためて問題になってくると思うのです。人員や資材の配備ならともかく、読みかえの時期まで狂ってくるということになると、そう簡単なことではいかないと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  337. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 従来、米軍責任を持っておるところへ性格の違う日本の自衛隊が入ってくる、これを技術的にきめたものであると、こういうふうにまあ申し上げてきたわけです。しかし、国対国が、その施政権の及ぶところ、局地防衛に任ずるということで約束をしたものでありまするから、大筋において大変化をもたらすということは、これは国際信義の上からきわめて遺憾なことだと思います。しかし、これはあくまで取りきめ、アレンジメントをしたわけでありまして、技術的な話し合い、申し合わせといったようなものでありまするから、向こう六カ月以内に三千三百人程度を配備をいたしますと、こういう数字は出ておるわけでありますが、それじゃ必ずその数字どおり実行しなければならないかというものではないと思います。時に三千五百人に、実人員を張りつけてみると、なるという場合もありましょう。あるいは二千九百名程度で済むということもありましょう。これは上限下限一割程度の動きというものは事実上の配備においてはあることだと思います。まあその程度の意図が現実にいま配慮されつつあるわけです。いずれ十七日の国防会議で最終的にこの張りつけの具体的なあり方についてはおきめをいただくことになっておりますが、いま防衛庁においては二千九百名程度というものを考えておるわけです。その時期をいつどうするかということについては、あの取りきめにおいては具体的に触れておるわけではありません。したがいまして、国際信義に反しない範囲で、沖繩県民の感情を考えながら、自衛隊の配備というものをしていきたい、そういう現実的な政治配慮に立って、いま計画を策しておると、これが現状でございます。
  338. 細川護煕

    ○細川護熙君 この久保・カーチス取りきめにいわれている沖繩への配備というものが一応あるわけですけれども、佐藤・ニクソン共同声明に基づく局地防衛の引き受けのために、最終的に、もっとこの人員なり資材なりというものが変更されるという可能性はありますか。
  339. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 四次防を策定いたしまして、四次防の段階、特に四次防の最終年度と申しまするのは昭和五十一年になりまするが、そんなころには約倍程度のものを考え——一すでに防衛庁側の意向としては沖繩関係の法律案審議の過程において申し上げたことがございます。六千五百名程度ということを申し上げておりました。
  340. 細川護煕

    ○細川護熙君 久保・カーチス取りきめには、この文面にある以上の詳細な実施計画というものはあるんですか。あるとすれば、その中身はどういうことになっているか、伺いたいと思います。
  341. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは、沖繩担当の幕僚が府中の米軍の司令部におります。それに対して陸海空幕僚監部との間で、具体的な、建物をどういうふうに借りるか、通信施設をどういうふうに設置するか、それから、いつごろからそういうものをやるか、共同使用の——たとえばホワイトビーチを海上自衛隊が共同使用するわけでありますが、その共同使用する区域をどうするか、波止場をどうするかといったような詳細な事柄について、向こう側と打ち合わせをしている段階であります。
  342. 細川護煕

    ○細川護熙君 そうすると、この中に書いてある、たとえば航空基地隊一とか、航空隊一といったような問題についても取りきめがあるわけですね。
  343. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 部隊そのものにつきましては、すでに取りきめの中で触れられてありますので、そのものについての取りきめというものは必要はございません。  そこで、たとえば領空侵犯措置については、この取りきめの中では半年以内というふうになっておりますが、その際に米側でどういうふうにやってもらうかというようなことについて、向こう側とそれぞれ話し合いを進め、ものによってはメモにしたものもあるはずだと思います。
  344. 細川護煕

    ○細川護熙君 ちょっと時間の配分の関係がありますんで、防衛の問題はこれくらいにしたいんですけれども、とにかく、いまの日本に、しっかりとした、つまり説得力のある防衛構想というものがないということが私は一番大きな問題だと思うんです。陸海空そのいずれをとっても、いかにその与えられたデータというものを好意的に読んでみても、かりに——これはあくまでもかりにの話ですけれども、まあ大陸諸国の通常兵力と比べてみた場合に、いまの自衛隊が、まあ三十日はおろか、三日間ももたないであろうということは、非常にこれは厳然とした事実だと思うんです。しかし、それにもかかわらず、今度の四次防でも明らかなように、非常に、何というのか、まあ見せかけ的なものに力が注がれておって、ほんとうに、じみちでもいいから、この小さな海洋国家というものを守る、そのための方途というものが、私はどうも見失われているような気がいたします。これは私は非常に危険なことだと思いますし、また、これだけ膨大な国民の税金を使う立場からいっても、あいまいな算術を土台にしたものであってはならないと思うんですけれども、どのような力の相手に対して、どれだけの期間を、どう戦うのか、その戦う力は何日のうちに準備をするのか、そういったことが、やはり、まず明確にされなければならないと思うんです。しかし、さっきもちょっとORの話が出ましたけれども、このORなんかを見ても、聞くところによると、後方の支援体制が破壊されるようなことが全然抜きにされておったりするということで、そういうことじゃ、全く私は話にならないと思うんです。長官、どう考えられるか知りませんけれども、このORというのは、私は、あくまでもこれは検算のための手段だと思います。そのためには、当然、やはりその前提になるフィロソフィーなり、あるいは外交なりというものを土台にした構想というものがあって、防衛力の最終目標というものがきまってくるのであって、ORによって最終的な防衛目標をきめるというのであれば、これは私はものの考え方が逆転したものだと言わざるを得ない。ですから、やはり私たちは、ここいらで、どうも防衛問題というと野党しかやらないので——私たちの責任ですけれども、そうではなくて、ほんとうに天然資源のない小さな島国が、費用対効果の面でも、弱者の戦法というものに徹して、どれだけのどういう形の守備隊というものを持つか、そういう、もっとも基本的なことを、この国会での論議を通じて、たたき上げていく、そのことが私は、シビリアンコントロールとかなんとかいう問題よりももっと前に、非常に緊急な、肝要なことだと思うんです。まあ、あまりそんなことを長く話していると時間がなくなるので、この辺でやめますけれども、どうかそういうたたき台になるような防衛構想というものを、私たちも考えますけれども、やはり防衛庁で煮詰めて、説得力のある形で出していただく、そのことを防衛庁長官に重ねて強くお願いをしておきます。
  345. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) よくわかりました。まさに私は中曽根構想の場合でもそういうことが言えたと思うんです。あれは一つのやはり見識に立った構想だったと思いますが、もう少し大蔵省とか、外務省とか、そういう横の連絡を密にし、説得力をもってやれば、あれは一つのやはり形をなしてきた、その金額でどうとか、装備でどうとかということは別にしまして、その点では非常に惜しいことだったと思っております。で、私自身も、これはいま国会に明け暮れておりますが、少し時間ができましたら、十分ひとつ検討して、いい四次防計画というものる真剣に取り組んで、つくり上げてみたいと思っております。
  346. 細川護煕

    ○細川護熙君 それでは次に、エネルギー政策の上で、また四極化のもとでの外交問題として、きわめて重要な意味を持つチュメニの問題について、通産大臣外務大臣に伺いたいと思います。  いまさら申し上げるまでもなく、原油輸入の九〇%以上を中東にたよっているわが国としては、エネルギー資源の安定供給という見地からも、この輸入先の分散をはかるということは、これはきわめて当然の策であると思うのですけれども、せんだっても、この委員会でも山本委員から質疑がありましたように、どうもこの問題を見ておりまして、政府は及び腰で、日ソ両国の民間ベースでの話は進んでおりますけれども、もうすでに話し合いが始まってから一年以上もたつわけです。で、われわれも民間ベースの話というのは聞きあきているんで、ここでひとつ外務大臣に伺いますけれども、現在の話し合いの進捗状況というものはどうなっておりますか。
  347. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) チュメニ油田開発問題は、これはまあ話としては数年前からあるんです。それで、これが本格的な軌道に乗りかけたといいますのは、これは一月の日ソ定期協議じゃないかと思います。グロムイコ外務大臣から私に対しまして、チュメニ開発計画があると、この計画に対しましてもし日本が欲するならば御協力くださるのもけっこうじゃないかと考える、こういう話があり、なおつけ加えまして、この計画は非常に膨大なものでありますので第三国の参加も私どもは否定する考えではないというようなことを伺いました。次いで二月の日ソ経済合同委員会においてシベリアの開発についてのいろんなプロジェクトが話し合われたんです。その中の重要なプロジェクト、これがチュメニであります。そこでいろいろ話し合いが行なわれましたが、結論は出ない。まだ資料が不足であるというような話で、五月に日本側から視察団がソビエトに出かける、こういうことにいまなっておるわけであります。この間政府といたしましては、これはオブザーバーとして関係者を傍聴さしております。ですから、この話には、政府としては話の内容についてはずっとフォローはしておるわけです。ただ、これはまあ民間の発意を待ち、政府がこれに協力をするという本質なもんでありますので、まだ民間の調査も済まないと、こういう段階です。で、五月、わが国経済視察団が行って、どういう結論になりますか、これが経済上の問題としてどういうふうに扱わるべきかというように、大体の方向は出るんじゃないかと思います。その上で政府がこれを取り上げましてどういう協力をするかということについて態度をきめると、こういうまあ段取りをしておるわけでありまして、決して及び腰だとか、そういうような事情はありませんですから。
  348. 細川護煕

    ○細川護熙君 今度その調査団には、大蔵、通産、外務からそれぞれオブザーバーとして行かれるわけですけれども、ということは、政府の事実上のサポートであるというふうに解してよろしいですか。通産大臣でもどちらでもけっこうです。
  349. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この計画を行なうためには、結局これは民間が主体になるわけです、わがほうは。しかし、民間だけじゃこれは行なうことはできません。政府の協力を求めると、こういうことになってくるわけなんです。そういう意味合いにおいて、最終的な結論は政府の協力が固まらぬと出てこないと、こういう性格のものである。そこで、政府はオブザーバーを出しておくと、こういう考えをとっておるわけであります。
  350. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま外務大臣が述べられましたが、チュメニ油田というのは非常に大きなものです。三十億ドルというものでございまして、そのうち十億ドルについて日本からの借款を求めるということですが、事業としては、四千二百キロにわたるパイプラインをイルクーツクからナホトカまで布設するでありますが、そのほかに、チュメニからイルクーツクまでのパイプラインをもう一本引かなければならないということなんです。実際には、いまわかってるのはそれだけだったんです。で、一月、グロムイコ外務大臣が来ましたときに、十億ドルといえば少ないものではないから、図面も、現地踏査も、実際の計画書も提示をしてもらわないと日本側としては検討できるものではありませんと。まあしかし、向こうの言うこともわからないではないんです。そこまで外国の協力を得てやろうとするまでには、国内でもいろんな問題があったはずです。これは、石油は日本でいう石油と違って、ソ連とかアメリカとかという国の場合は、これは戦略物資でありますから非常に数字、データを出すのをいやがるものであります。ですから、いままではその数字、データが実際において提供されない。ですから、向こうのほうは十億ドルだけバンクローンにしてもらいたいと、こう言う。とにかく使い道はあまり言わないで……。それではとてもいまのような状況では日本側としては話にならないので、やはり数字を出してもらわなきゃ困ると要求したわけです。ソ連にしては、従来そういうものは出したことはないと思いますが、私は、あなたがお出しにならなくても、ソ連は年間三億キロリットルの石油を産出をし、これだけお使いになってることは大体わかりますよというところまで話したんです。そういう経緯があった後、じゃ両方の専門家委員会に提案をしましょうということとなり、やっと軌道に乗ったわけです。またバンクローンということを言っておりますが、バンクローンということならなかなかめんどうなんで、こっちは輸銀を使う、結局、開発プロジェクトには、日本から鋼管を使ってもらう、日本から何を買ってもらうということでないとなかなか金を出せないんですよと言っておきました。また、そういうひもつきでないようなことが望ましいなら、国債を出したらどうですか、こう言ったんです。国債は出したことがないという話なので、出したことがなくたって、どこの国でも国債を出してるんだから、出したらどうですか、あなた方も自由市場で国債を出すぐらいのことをやったらどうですか、このプロジェクトをやるときにはアメリカの民間資本の協力を得て下請として使おうかということさえも考えてるんだから、国債をお出しになったらどうですかと、こう言ったんです。それに対して、そういう経験がないので、参考書があったらもらいたいということでしたので、参考のものもこちらから提示をしてあります。ですから、五月、六月に現地に参るということでやっと調査が軌道に乗ることとなったのです。だから、話が出たのは長いと言われますけれども、いま外務大臣述べられたように、実際的に検討ができるようになったのはやはり一月からである、そういうふうに理解していただきたい。この開発計画では、七六年ごろから年間二千五百万トンから四千万トンを二十年間ぐらい供給することとなっています。ところが、十五年ばかり前に、樺太−サハリンのガス開発でもってさんざん困った経験があるんです。そのときは、われわれはいろんなものを設立したりしてやろうとしたんですが、十五年たったら実際は埋蔵量がないんだということが明らかになり、失敗に終わったわけです。このようなことではどうにもならないので、われわれは慎重を期しており、しかも本件は七つもある大きなプロジェクトの中の最も大きなものですから、ひとつ本格的に検討しましょう、こういうことでようやくスタートした、そういうように理解をしてもらいたい。だから、及び腰というんじゃないんです。
  351. 細川護煕

    ○細川護熙君 このプロジェクトは非常に幾つもいろいろ、例の南ヤクートのチュリマンであるとか、ウドカンであるとか、サハリンも含めて、メジロ押しにたくさんいろいろなプロジェクトがあるわけですけれども、全部ひっくるめると何十億という膨大なものになるわけですけれども、この中でプライオリティというか、優先順位というものはあるわけですか。
  352. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のとおり、いま六つか七つあるんです。その一つはチュメニであり、その二つ目は極東森林資源開発プロジェクト、これはもう一億六千三百万ドルの機械設備や資材を出すということでありますが、これは順調に進展をしております。これは現在もう行なわれておるということであります。第三は、ウランゲル港建設のプロジェクトでございますが、これは八千万ドルもう投資をしまして、ことし中には完成する予定であります。それから第四は、工業用チップ及び広葉樹パルプ長材の開発輸入ということでございます。第五は、南ヤクート炭田の開発プロジェクト。それから天然ガス開発。それに大陸だなの資源開発。全部合わせれば三、四十億ドルになるということでございまして、もう二つばかりはやっておるわけです。やっておりますし、完成もしております。これから手をつけるとすれば、一番手っとり早いものはチュメニであると、こういうことであります。
  353. 細川護煕

    ○細川護熙君 さっきバンクローンにするかどうするかというお話がありましたけれども、これは大蔵大臣に伺ったほうがいいかと思いますが、どうも日本の借款供与というのは、いつの場合でも民間ベースの延べ払い交渉のほうが先行して、あとから政府がこれを追っかけて輸銀を認めるとかどうとかということが一つの通例になっておりますけれども、ですから、相手国にしてみれば、特に社会主義国とか、あるいはLDC諸国の場合には、非常にやりにくい面があると思うのです。ヨーロッパ諸国が初めに一つのクレジットラインというものを設定をして、その範囲内で輸出の商談を進めるという、そういう慣行に比べると、非常に日本の場合にはそのやり方が時宜に適さないやり方じゃないかという気がするのですけれども、その点はいかがですか。どちらでもけっこうですよ。
  354. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ちょっと……。実際は民間というのは、これは民間シンジケートでもって、民間資金というのじゃなくて、これは輸銀を使うということでございますから、これはソ連だけを差別扱いをしているとか、そんなことではない、ほかの国とみんな同じくやっているわけです。だから、政府がやるということになると、向こうは政治形態が違いますから政府ですけれども、こっちは全部窓口はプロジェクト別に輸銀で、民間が契約者になるということです。ですから、それはソ連も形態が違うのですから、これは中国でもそうです、向こうは一つですけれども、こっちはみんな各社別であるということであって、それはけっこうですと。ただ、日本の政府に要求したいのは、十億ドルというまとまった輸銀資金というようなものを出してもらうという、まずワクをきめてもらいたいということが一つ。もう一つは、年間二千五千万トンないし四千万トンの原油の供給のためには、相当な投資をするのだから、しかもナホトカまでのパイプラインというのは日本向けに建設するわけですから、二十年間引き取ってくれという、引き取り保証の問題、こういう二つの問題があるわけです。引き取り保証には問題はありません。いまもう二億二千万トンも使っているので、チュメニ原油が入ってくるときには、もう三億トン以上になりますと、六十年には七億トンというのが最小限度見込まれる数字ですから、これは日本の使用量の五%ないし一〇%程度にしかならないものでありますので、それは私がその件に対しては引き受けますと、こう言ったのです。  もう一つのバンクローンということは、これはとにかくソ連日本のものを買うということで、バンクローンにするのか、国債を出すのか、また研究しましょうということであって、低開発国とか開発途上国に対して海外経済協力基金を使うというケースのものではないということですから、これはもうきめれば輸銀の資金であって、金利を幾らにして、それから延べ払い期間を幾らにする、据え置き期間を幾らにするということがきまれば、もうそれで終わりであります。
  355. 細川護煕

    ○細川護熙君 この問額に関連をして通産大臣に伺っておきたいと思いますけれども、現在わが国の海外投資の五〇%ぐらいが、これは開発途上国向けであるということでありますけれども、これまでの海外投資の累計額というのはどのくらいになるかわかりますか。
  356. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 一九七一年三月末で三十五億九千万ドルでございます。去年の数字で見ますと、全世界開発途上国援助は百五十五億ドルだと思います。これに対して日本は幾ら出したかというと、十八億三、四千万ドルでございます。
  357. 細川護煕

    ○細川護熙君 これから今後、日本の企業の海外進出がだんだん円の切り上げによって活発になっていくと思われますけれども、このことに関連をして、財界あたりでもいま非常に関心を持っているのは、投資元本の安全の問題であろうかと思います。結局海外へ投資をして、その安全かどうかという問題です。この五月にニュージランドで開かれる太平洋経済委員会で太平洋投資憲章というものが採択をされるという話を聞いておりますし、また一方で、すでに世銀あたりから世界投資保険機構というものをつくるということについて打診もあったというふうに聞きますけれども、政府としては、今後この輸出よりも海外投資を奨励する中で、具体的にどのような方向へ進んでいかれるのか、現在のこの輸出保険制度というものを拡充をしていかれるのか、あるいは独立の機関をつくられるのか、その辺はいかがでしょうか。
  358. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日本は輸出保険制度が完備しております。そして、この前の国会にも、改正案の提出をいたしまして御審議をいただいたわけでございまして、保険制度の中では、非常に合理的な保険として大蔵省からもほめられておるような制度であるということは事実でございます。しかし、国際的には投資が非常に大きくなるということで、国際的な投資保険制度、投資を保護するための機構をつくろうという動きがあります。これは世銀を中心にしていま検討されておるわけであります。日本もたてまえとしては賛成であるということでございます。しかし、これには西ドイツ、カナダその他があまり賛成でないということがひとつございます。それからラテン・アメリカ諸国が加盟をしない。こういうような実情がございます。アメリカは非常に積極的でございます。これはアメリカは国有化をされたらいろんな事故が起こりますから、そういう事情でございますが、大筋としては、国際的なこの種の機構が完備されることが望ましいということだけは間違いありません。しかし西ドイツや日本は、いまでは自国の保険で十分まかなっていけるということで、現時点においては推移を見守るということでありますが、これは日米会談のときの一つの問題点でもありまして、日本はどうなんだとの質問に答えて、基本的には賛成であるという考え方を述べておきました。
  359. 細川護煕

    ○細川護熙君 外務大臣に伺いますが、このチュメニのプロジェクトは、ちょっと話が戻りますけれども外交的にも非常にいろいろな問題、意味を持っている問題であろうかと思います。最近、ソ連の北方領土問題に対する態度もずいぶんやわらいできたかのような感がありますけれども、このプロジェクトを日本が引き受けることによって、それが日ソ平和条約なりあるいは北方領土交渉の上で相当にいい方向に作用するという感触を持っておられますか。
  360. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本質的に申し上げますと、日ソ平和条約交渉、これは領土交渉でございますが、この問題とチュメニなどシベリア開発問題とはこれは別個の問題だと思います。ただ、チュメニの問題その他シベリアの問題が円滑に両国で合意されたというようなことになると、まあ雰囲気といたしましては、友好状態、そういうものが推進されるわけでございまするから、これはそういう意味合いにおいて領土問題に多少の影響はあるだろうと、こういうふうに思います。  ただ、いま細川さん領土問題でかなりいい空気が出てきたというような御観測ですが、私は微妙な変化は出てきたと思います。しかし、なかなか前途は容易ならざるものがある。ですから、チュメニを開発したから領土問題もこれは、ばたばたといくかというと、そういうところまではなかなか考えられない問題でありますが、いずれにいたしましても、非常にいい傾向です。この日ソ友好ムード、これは盛り上げていく。そうして最後には領土返還、北方領土の問題の解決というゴールに達したいと、かように考えております。
  361. 細川護煕

    ○細川護熙君 もう一点、外務大臣に伺いますけれども、このプロジェクトは、御承知のように、ずっと中ソ国境七千キロか通ってくるわけでありますけれども、中ソ対立というのが続いている中で、このプロジェクトが中国を刺激をするということはないか、あるいはまたアメリカがそれに対してどういう反応をするかということ、その辺のところはいかがですか。
  362. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この計画につきましては、アメリカは政府ベースではあまり関心を持っておりません。ただ、民間で一、二の業者の動きがある。こういうようなことが認められております。そういうような状態下でありますが、私は、このプロジェクトは、もし日ソ間でやろうというようなことになるその際には、アメリカの参加、これがあることが望ましい、こういうふうに考えております。  中国に対する影響いかん、これにつきましてはいろいろの見方がありますが、わが国といたしますると、石油資源のほとんど全部といってもいいくらいのものをアラビアに依存をいたしておる、こういうような状態です。この片寄った状態をどうしても直さなければならない、そういうふうに考えておるわけなんです。そういう状態のもとにおいてのチュメニ油田の開発、こういうことでございますが、いろいろ注意してはまいりまするけれども、そういうわが国の置かれておる立場、こういうものにつきまして、もし中国側において関心を持つ、こういうようなことがあるといたしますると、これはどうしても中国側に対しましては、わが国の置かれておる立場というものについて正当な理解をしてもらいたい、こういうふうに努力をしなければならぬ、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、わが国中国を刺激するためにこの問題を考えるなんという考え方は毛頭持っておらないので、むしろわが国の苦しい立場中国にも正しく理解してもらうという努力をすべきかと、かように考えております。
  363. 細川護煕

    ○細川護熙君 いまの問題で、このプロジェクトをアメリカに先取りをされるという可能性はありませんか。  続けて伺いますが、今度アメリカの企業の中にも、特にチュリマンの天然ガス等について非常に積極的な動きをしているところがあるということを聞いております。今度のキッシンジャーの訪日の目的の一つは、そのシベリア開発によって日ソが接近をするということが、今度の米ソ会談ソ連側の交渉立場を強めるということに対する牽制であるというふうな話も一部で出ておりますけれども、そういうふうなこのプロジェクトに対するアメリカ側の考え方というものはどういうものかということ。  それからもう一点は、アメリカの反応と同時に、この問題に対するOPECの反応はどうかということ、この二点。石油輸出国機構ですか、OPEC。
  364. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) アメリカに先取りをされるという心配は全くありません。これはアメリカの民間企業、はっきり言いますとガルフでありますが、ガルフが一枚かもうかという動きがありましたし、また、下請としてもやるということになればいいことだろうということで、サンクレメンテ会談のときに私が話を出しました。これは、もしもやるということになったならば、アメリカの私企業がこれに参画することに対して異議はないでしょうね、と念を押しておいたのです。そうしましたら、これは商務省の管轄ではなく、アメリカにおいても石油は国家安全保障会議の議題でございますからということでありましたので、それは政府間の問題として国家安全保障会議のほうにも日本側のこの質問の意思を通じておいてほしい、こう言っておきましたら、これはまあ民間には制限をしたり圧力を加えたりというようなことは一切しないのが国のたてまえでございますから民間が参加することには私のほうでは異存はありませんと、こういう結論だけは出してもらったわけでございます。それで、これはガルフがやるとしても日本と一緒でなければやれないのです。なぜかというと、この二千万トンないし四千万トンの石油は日本に持ってくるわけでありまして、日本海岸までパイプラインを敷くということは、日本からよそへ持っていけるものではないということでありますので、どうしても日本が協力をしなければ、この開発というものは行なえないということでございます。  OPECはどう考えておるかという問題、これは問題はない。というのは、これは、日本の石油需要について先ほど申し上げたように、六十年には七億トン近いものが必要であるということでありますので、OPEC諸国は、そんな問題よりも、まず自分たちのところから日本に送る石油に対しては共同開発をしようとか、石油精製までやってもらいたいとか、合弁でやろうとかいう考え方のほうが前面に出ております。いままでOPEC諸国からチュメニ石油開発に対しての異論とか、そういうものは全然ありません。
  365. 細川護煕

    ○細川護熙君 いずれにしても、日本のエネルギー政策の長期的な観点から言っても、また外交上の得失から考えても、あるいはまた、このプロジェクトが北海道であるとか、あるいは日本海沿岸の地域開発に寄与するであろう、そういうふうな観点から考えても、私はひとつ、妥結のかぎを握っている政府の前向きな姿勢をお願いをしておきます。  最後に、この十三日から開かれているUNCTADの問題に関連をして二、三伺っておきたいと思いますが、今度、政府が政府開発援助の比率を——時期は約束できないけれども、〇・七%にするという前向きの姿勢を打ち出したことはきわめて高く評価されることであると思います。しかし、大蔵省の試算によれば、この目標を達成するためには、現在のGNP援助額を前提にした場合に、目標達成は早くて一九八〇年、おそければ八四、五年になるということが言われております。しかも、この金額は、五千六百億から七千億円と非常に膨大な金額であるだけに、なかなかこれはたいへんなことだという感じがいたしますけれども、この目標達成の時期について、大蔵省なり外務省なりはどの程度の心づもりがあるか、その辺から伺いたいと思います。
  366. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 愛知代表が演説をいたしまして、まあ政府開発援助を〇・七%を目標とするということになっておるわけであります。この〇・七%の政府開発援助、これはどういう重みを持つものであるかと、こういう問題でございますが、いまわが国開発途上国に対しまして与えておる政府開発援助、これは〇・二二%でございます。これを金額にすると、これは財政資金になりますが、約千億ちょっと出る、この程度のものです。これをかりに〇・七%に引き上げる、その目途を一九八〇年と、こういうふうにいたしますと、財政資金が実に九倍ですね、まあ九千億円。前提といたしましては、GNPが一三%ずつノミナルでふえるという試算に基づくものでありますが、九倍になる、九千億円。ですから、これは財政上非常に大きな問題なんですが、これを一九八〇年に実現をするということになると、毎年毎年この援助額の財政支出を三〇%ぐらいずつ伸ばしていかなきゃならぬ、こういうことになるわけです。そこに、まあしかし、GNPの増加というものがありますから、三〇%ずつ伸ばしますれば、一九八〇年には〇・七%の政府開発援助が行なわれると、こういうことになるのです。ですから、財政上容易なことじゃございませんけれども、これはもう、とにかく日本国際社会に臨む姿勢とすると、対外経済協力ということは非常に大きな問題でございまするから、まあ大きな負担ではありまするけれども、やっぱり一九八〇年と、その辺をめどに努力をすべきものじゃないかと思う。しかし、まだ一九八〇年というようなことは政府としてはきめてはおりません。非常に大きな財政負担を要する問題ですから、そう軽々にはきめられませんけれども、意気込みといたしましては、まあそれくらいな意気込みで取りかからないと、なかなか国際社会における国の任務というか、立場、これは貫き得ないのじゃあるまいか、そんな感じがいたしております。
  367. 細川護煕

    ○細川護熙君 大蔵大臣、いかがですか。
  368. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) めどをはっきり持っていないということは、いま外務大臣のお答えしたとおりでございます。計算しますというと、ちょうどこの〇・七%を目標にするということを約束することは、自衛隊をもう一つ持つというだけの金額になりますので、これはなかなか大きい財政負担になりますので、まず私どもは、当面どこまで経済協力を強化できるか、政府援助ができるかという当面の問題としますというと、七五年までにはこのUNCTADの平均率くらいまでは日本は協力できるというようなことで、そういう目標は一応計算で研究いたしましたが、しかし、各国の求めるものはやはり最終の目標がきめられてあります以上、当面の目標を言うよりも、最終目標日本は全面的な努力をするということを言うことのほうがいいであろうということになって、これに賛成することにしましたので、したがって、その後何年たったらここまで行けるかという七五年以後の計算が、まだ私どもは自信を持って見通しがついていないということでございます。
  369. 細川護煕

    ○細川護熙君 これも私、大いに評価するところでありますけれども、先進諸国の同意が得られない場合でも、七五年をめどにしてわが国が一方的にひもつき援助の全廃を実施するということでありますけれども、LDCアンタイイングについても、ひとつ積極的に主要国に働きかけていただくようにお願いをしておきます。  そこで、通産大臣に伺っておきたいと思いますけれども、円切り上げによってプラント輸出が非常に鈍化の傾向にあるときに、ひもつき援助を全廃をするということの具体的な影響、見通しというものについて、どういうふうに考えておられるか。
  370. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ひもつき援助をなくしたいというのは、これはもう今度のUNCTADの会議における開発途上国の全面的な要求でございますから、これはそういう方向で努力をしなければならないということで、基本的に賛成をするつもりでございます。日本もそういうことを推進をいたしますが、その意味では、どういう影響が出るかというと、やはりプラント輸出に対してはどうしても影響が出てくるということでございます。だから、そういう意味では、プラント輸出の体質改善その他は、やはりやっていかなければならぬと思います。  もう一つは、ひもつきでないということにするには、この援助を受ける国もすべて公入札にするとか、いろんな問題があると思うのです。そういうことにすることによって、安い品物、より安くというような効果もあるわけでありますので、結論的にはひもつきをなくする、ひもつきでない政府援助というものは考えなければならぬと思います。これは直接二国間でもって援助をするというだけではなく、いまの第二世銀の資金を増加するとか、それからアジア開発銀行の資金を増加していくとかというような新しい組織や新しい制度というものも国際的には考えられ、実行されていくわけでありますし、そういうものもこの〇・七%というような中に当然組み入れらるべきものでありますので、これから形態も相当変わってくるということでございます。
  371. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまUNCTADの平均率と私が言ったようですが、DACの平均率ですから、訂正いたします。
  372. 細川護煕

    ○細川護熙君 アメリカのコナリー財務長官が、せんだっての記者会見で、国際収支の黒字国はその一定分をIMFに払い込んで、IMFを通じて恒常的な赤字国——その中にはアメリカも含まれるのでありましょうけれども、赤字国に無利子あるいは低利子で貸し付けるようにしたらどうかというふうな、日本にとってはいささか問題のある発言をしております。まあ、このUNCTADの場を、そういう意味で、アメリカにとって都合のいい通貨改革なり国際収支改善の場に利用されてはたまらぬわけでありますけれども、この通貨問題に対する南の参加、すなわちIMFにおける投票権の拡大といった問題については、日本としてもそれほど問題がないと思いますけれども、以上のようなアメリカの態度とも関連をして、ちょっとけさの新聞でも報道されておりましたけれども、IMFの特別引き出し権、いわゆるSDRと開発融資とのリンクについては、わが国としてどういうふうな態度で臨まれるか、最後に通産大臣に伺っておきます。
  373. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) IMFの特別引き出し権、SDRを開発途上国にも使わせるというような方向は、これは避けがたいことだと思います。そういう方向でこれから検討が進むものだという理解を持っております。
  374. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 細川君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  375. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、塩出啓典君の質疑を行ないます。塩出君。
  376. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まず最初に、防衛庁長官に自衛隊の火薬の輸送の問題でちょっとお聞きしたいと思います。  広島県の江田島の中国化薬で製造された弾薬が全国の自衛隊基地に送られているとのことでございますが、これは事実かどうか。また、どの程度、どういう方法で送られておるのか、お答えいただきたい。
  377. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 装備局長からお答えをさせます。  私が調べて承知しておりまする範囲では、それは火薬そのものをそこへ置いたり、砲弾そのものを置いたというのではなくて、薬きょうを一時的に置いたというようなふうに聞いておりますが、詳しくは政府委員が申し上げます。
  378. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 自衛隊では弾薬を購入いたしておりますが、弾体に弾薬を詰める仕事を中国化薬がいたしております。で、中国化薬から自衛隊の弾薬支処に送られているわけでございます。
  379. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大体年間どれくらい送っていますか。
  380. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 大体千七百トン、年間で千七百トンぐらいでございます。
  381. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私の調査では、年間二千六百十八トンが全国に送られておる。  そこで、呉市においては、自衛隊の弾薬輸送が行なわれるということを市当局も警察も知らなかったわけで、連絡を受けていない。最近そういう弾薬輸送が行なわれるということを聞いて非常に市民は驚いておるわけでございますが、こういうのはちゃんとやはり連絡すべきじゃないですかね。
  382. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 自衛隊で発注いたしました弾薬類は、受け渡しの場所は自衛隊の弾薬庫もしくは弾薬の支処でございます。で、その間は中国化薬側のほうで輸送するわけでございまして、現実には、それのまた委託を受けて、大半は日本通運だろうと思いますが、それが手続をいたします。で、火薬類の輸送に関しましては、発送地の地元の都道府県公安委員会に届け出ることになっておりますので、その面では公安委員会のほうでは十分承知しているものと思います。
  383. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは県の公安委員会にはちゃんと届けていますか。
  384. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 先ほども申し上げましたように、これはまだ自衛隊まで届いていない、つまり、いまのところは会社のものであるわけでございまして、会社側のほうでこれは輸送の責任があるわけでございますが、弾薬類の輸送は火薬類取締法の規定が適用されますので、当然届け出られているものと思います。
  385. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあひとつ、非常に何か、自衛隊の弾薬の輸送でありながら、中国化薬の責任のように転嫁していると思うのですけれども、やはりこれは防衛庁として責任があると思うのですけれども、そういう点、ひとつ、ちゃんと指導して、それでやってもらいたいと思うのですが、それはどうですか。
  386. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 当然、輸送の性格上、慎重を期するべきだと思います。厳重に注意するようにいたします。
  387. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 自衛隊の弾薬輸送は、これはまあ火薬類取締法の適用を一応受けてないわけですけれども、しかし、その趣旨に基づいて防衛庁独自の基準をきめて必要な措置をとるということですから、これはまあ、今回の呉の問題のみならず、全国の自衛隊の弾薬輸送についても、そういう点をきちっとした処置をとって、市民の人にもちゃんと連絡をして、まあ呉は、米軍の弾薬輸送の場合は、米軍のはちゃんと連絡があるわけですよ。まあこれは十分ではないですけれどもね。米軍のほうはちゃんと連絡があるのに、自衛隊の弾薬輸送については全くその連絡もない。それが突然わかったわけで、そういう点で、非常にここは民家も近いし、国道も近い、そういうような場所で貨車への積み込みが行なわれているわけですね。そういう点は、ひとつ防衛庁としても至急調査をして、先ほどの局長のように、民間業者にまかしているからと、向こうに責任転嫁するのではなくして、やはり防衛庁として責任を持ってやってもらいたい。その点、どうですか。
  388. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点は、きわめて重要であります。まあ、いままで自衛隊の弾薬輸送について幸い事故はありませんが、これは事故があったらたいへんなことですから、厳重に調査いたしまして善処いたします。
  389. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もう終わりですから、防衛庁はどうぞ。  それから次に、塩の問題について。まあ、私が塩出で、塩というわけではございませんが、大蔵省は、従来の流下式の塩田を全面的に廃止をして、イオン交換膜による製塩に全面的に切りかえようとしておるわけでございますが、そういう目的、また、その現況ですね、これを簡単に御報告願いたい。これはどなたでもいいと思うんですけれども
  390. 福間威

    政府委員(福間威君) 日本における塩の製造を、従来の塩田法からイオン交換膜法に切りかえておりますことにつきましては、昨年の春に成立いたしました塩業の整備及び近代化の促進に関する臨時措置法に基づいて行なっております。その目的は、この法律に書いてございますが、「塩業の経済的諸条件の変化に対処して、新技術による塩の製造方法への転換を基本にその近代化を促進するため、塩田等の整理を行なうとともに塩の価格の国際水準へのさや寄せを図り、もって塩業の自立化のための基盤を醸成すること」、これを目的といたしておるわけでございます。  その後の進行状況でございますが、従来の塩田法によって製造しておりました製造業者から相次いで廃止の許可申請が出ておりまして、そちらのほうの整理関係の仕事はほぼ一段落し、これから、イオン交換膜法による近代化企業の工業的な生産が逐次規模をふやしていくという状況にございます。
  391. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 こういう、イオン交換膜による塩を食用に使っている国というのは、世界で、どこ一とどこの国でございますか。
  392. 福間威

    政府委員(福間威君) 現在のところは、外国では、塩の製造にこの方法を使用しているところはないと聞いております。
  393. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、最近、そういう各種の消費者団体等が中心になって、そのイオン交換塩の安全性への疑問が出されて、いろいろわれわれもそういう情報を聞いておるわけでございますが、この件については、先般、私も、政府に質問主意書を出してその回答を求めたのでございますが、その安全性についての厚生省の見解を——それで私はそのときに、いやしくも塩は、非常に人体に、毎日使う塩ですから、やはり動物実験なりして慎重に対処してもらいたい。そういう要望をしたわけでございますが、その点についての回答、質問主意書にはその回答がなかったものですから。
  394. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) イオン交換膜を使ってつくった塩につきまして、そこにそのために付着する、いわゆる物質というものは、もう全くネグリジブルであって、動物試験をやる必要がないと、こういうことでございますので、動物実験はやっておりません。
  395. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 厚生省は、いまのお答えでは、動物実験もする必要もないということですけれども、じゃ、イオン交換による塩と従来の流下式塩田による塩とは、たとえばNaCl以外のミネラルの成分のバランスというのは、やはり変化すると思うんですね。これは、イオン交換膜法の性質として、そうなると思うんです。そういう成分のバランスの変化は非常に微妙で、まあわれわれも影響はないと思うけれども、しかし、もう少し、厚生省としては私は慎重にやってもらいたいと思うんですけれどもね。そういう点で、人体に何ら影響もないと断言する根拠を説明してもらいたいと思うんですけれどもね。
  396. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) イオン樹脂交換膜によります製塩法によってつくられました塩、これは、確かに、在来法によったものとは、厳密に言えば成分はうわけでございます。たとえば、御指摘のように、ミネラル、NaCl以外の、ミネラルにつきましては、イオン樹脂交換膜によるほうが在来法によるものよりも落ちるわけでございます。これらの点につきましては、厚生省のほうとしては、栄養学上の問題といたしまして、専門学者の御意見も徴しまして、結局、利用の点から見て、ただ単にミネラルは塩からだけとるのではございませんので、全般的な面から見まして、特に支障はないと、考えられないという御意見でございます。  それから動物実験をして、さらに追求する必要があるではないかというお尋ねでございますが、これは、国立衛生試験所におきましていろいろと慎重に検討いたしました。その結果、一つ考えられますことは、そのイオン樹脂交換膜を通過する際に、何かわからない、未知の物質が溶出するんではないかということが一つ考えられます。これは、主として可塑剤として膜に含まれているものであると考えられます。これを、非常に過酷な条件のもとに、どの程度人体に摂取されるかということを計算いたしました。その結果、百年間で一万分の一三グラムと〇・一三ミリグラムということになりますが、百年間でかかる微量でございます。この条件としては、一日に十グラムこの種の塩を摂取すると、毎日続けていくと、それで百年間でそういう量になります。したがいまして、おわかりのように、百年間と申しますと、三万六千五百日余ということになりまして、一万分の一グラムをさらにその数で割るというのが日々摂取される量になります。したがいまして、これは、とてもいまの測定技術、あるいは化学のレベルでは実験が不可能である。また、かかる微量は、いままでの化学的な試験から考えましても、人体にとうてい影響があるものとは考えられない。これが根拠でございます。
  397. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 非常にむずかしいことを言われて、われわれよくわかりませんが、よく、こういうイオン交換による塩と自然塩との違いについて、たとえば、つけものが非常につかりにくいとか、あるいはたくあんがやはり非常になかなかいいたくあんができない、あるいはタコをゆでるときに、その塩でぬるぬるをとるときに、イオン交換塩ではとりにくいとか、あるいは貝を塩水につけてふたをあけるかどうかを調べたところが、イオン交換塩の場合は口をあけたとか、そういうようなことをよく聞くわけなんですけれどもね。厚生省は、そういうことは聞いていますか。また、そういうことに対してどう考えますか。
  398. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) ちょっといま質問の趣旨を聞き洩らしまして失礼いたしましたが……。
  399. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  400. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  401. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) そのお話は私どもも聞いております。それからまあ、つけものの、そういったことでもって非常に微妙な風味が変わる、変わらないという問題でございますが、私どもは、この点について、もう少し慎重にそういった事実については検討する必要があると思いますが、本質的にそこまでの相違があるかどうかということについては、いまの段階では、私は、そういうふうには言えないのではないかというふうに考えております。
  402. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 厚生省は、こういうようなことの実験ぐらいはやはり簡単にできるのですから、やったらどうですか。
  403. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) もともと塩そのものは御承知のように、天然界にあるものでございますし、また、人体の中にもあるものでございますので、なかなかその種の実験というものにつきましては非常にむずかしい点があろうかと思います。風味という問題も、これもまた、実は非常に微妙な問題でございまして、これはいままでの考えで、いわゆる化学的な実験ということには相ならないかと思います。結局まあ官能的な試験というようなことであろうかと思います。それから塩全般のこのような問題につきましての、さらにいろいろな点を考慮に入れての規格でございますね、あるいは製造の方式とか、こういったものについては、やはり、まあ塩の用途がいろいろとございますので、それらも考えまして検討していく問題であるというふうには承知しております。
  404. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 厚生大臣、いまそういう、いろいろつけものがっかりにくいとか、これはまあ庶民の声であって、科学的な論拠はないと思うんですけれどもね。いやしくも、いままで使われた塩が全面的にイオン交換塩に移行していく、そうなれば国民は前の塩をほしくても買えないわけですよね。そういうときには、もう少しこの程度の実験ぐらいは、厚生省も聞いているのであったならば、ただ、そういうのは、単なる風味の問題とか、何だかんだ言わないで、つけものを両方の塩につけて、それをみんな来ている人に食わして、そのアンケートをとればわかる問題ですよ。そういう点で、もう少しこの塩の、イオン交換塩とそれからいままでの塩との違いというものがどういうものか、ただ理論的に、成分の上から何だかんだ言って、それだけでは国民は納得しないと思うんですけれどもね。もう少し私は、これは国民の立場に立って、慎重にひとつ検討してもらいたいと思うのですけれども、どうですか、その点は。
  405. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) これは塩の消費者の面から考えると、ごもっともだと考えますが、厚生省としましては、そういうものにつきましては、これが人体に一体有害であるかどうか、あるいは栄養上どうかということは、これは厚生省はやらなければならぬわけでありますが、しかしその風味だとかいろんなそういう点は、これはやはり農林省とか、あるいは塩を販売される専売局で、国民の嗜好に合うようにやってもらうというのが筋だと思いまして、厚生省はちょっとそういうことには手が染められないと、かように思いますので、御了承をいただきます。
  406. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、大蔵大臣どうですか。
  407. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は味の問題を初めて聞きましたので、そういう問題はあろうかと思います。これは私のほうの管轄でもございますんで、研究いたしたいと存じます。
  408. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、これはもういまからやっても、全部法律が通っちゃって、全部いままでの流下式の塩はなくなろうとしているわけですけれどもね。そういう点で、私はまあひとつ大蔵大臣に検討していただきたいと思うのですけれどもね。やはり消費者には選択の自由があると思うんですよ。確かにイオン交換膜による塩は原価は安い。けれども少々高くても、やはりいままでの塩がほしいという人には、その両方の塩を与えて——選択の自由を与えてやるべきじゃないかと思うのですね。いま、米にしてもだんだんだんだん、そういう国民は量よりも質の段階にきているわけですから、塩においても、やっぱり専売法で統制しないで、自主流通米みたいに自主流通塩でもつくって、流下式の塩は自由販売で、まあイオン交換の塩は定価で、こっちのは少々高くても、やはりそれをほしい、高くてもほしいという人がおれば、やっぱり買えるように、そのような方向にぼくは検討すべきじゃないかと思うのですがね。そういう点どうですか、大蔵大臣
  409. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 嗜好に合う塩だって、つくり方は幾種類もつくれると思いますので、そういう点十分研究いたします。
  410. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、厚生大臣にお願いしたいんですが、厚生省はそういう動物実験の必要はないと言っているわけですが、しかし、そういう動物実験をぜひやるべきだという、そういう学者を中心とする、そういうグループがおります。それは先般私のところに来たわけでございますが、厚生省はそういう研究計画等を見て、私は、もし必要とするならば、厚生省かやらないならば、やっぱりそういう研究を、そういう学者にやらせるというのも、一つ方法じゃないかと思うんですけれどもね。いま食品衛生法等においても今度改正があって、疑わしいものはもう使わないという方向にきているんですから、そういう点から、もう少しやっぱり安全性というものに対して何らかの、やはり動物実験なり、もう少しぼくは検討すべきじゃないかと思うんですけれどもね、そういう点どうですか。
  411. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) このイオン交換膜といいますか、これを使って、まあ水その他の食品のある製造過程にも、現に諸外国でも使っているわけでございますが、いまおっしゃいます、その学者の意見というものを、これはやはり尊重しなければ、一応しなきゃならぬと思いますので、もし、その意見がございましたら厚生省にも出していただくようにお願いをいたしたいと思います。
  412. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、この問題の最後に、これは岡山県の邑久町にある錦海塩業という、これはイオン交換膜による製塩を始めた工場です。以前は流下式の塩をつくっておったわけですが、二年前からイオン交換塩に切りかえたわけですね。ところが、それからカキが非常に減少いたしまして、それはこの製塩工場から出る硫酸の公害である。工場に近いところほど悪くて、一番近いところは二割ぐらいしかできない。そういうことで、これは専売公社のほうも、県と一緒に去年から試験をやっていると聞いているわけでございますが、その結果が、もしわかりましたらお知らせをいただきたい。
  413. 福間威

    政府委員(福間威君) 私どものほうではまだそういうことを聞いておりませんので、さっそく実情を調査したいと思います。
  414. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃあ、それはこの委員会に——ちゃんと去年から五台の試験いかだをつくってやっているわけですよ。そういうのが、やはり専売公社でわからないというのはよくないと思うんですけれどもね。やはりイオン交換塩の工場では硫酸を使うわけですから、その硫酸が流れて公害を。私は各地に起こる可能性はあると思うんですけれどもね。これは、この委員会の終わるまでにひとつ電話ででも聞いて報告していただきたいと思うのです。その点いいでしょうか。
  415. 福間威

    政府委員(福間威君) さっそく調べさしたいと思います。
  416. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  417. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  418. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは公害問題について、まず最初に環境庁長官にお伺いいたしますが、瀬戸内海、これは一つの例として瀬戸内海は大体将来、環境庁長官としてはどういうようにするつもりなのか、魚の住めるような状態にするのか、運河にするつもりなのか、そのあたりをひとつ。
  419. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 瀬戸内海は、御承知のように国立公園でございます。しかも日本の一番代表的な、世界にもひとつ誇り得る景観の地だと思います。そういう意味で、瀬戸内海は昔ほどのものになるかどうかわかりませんが、おっしゃるとおり国立公園として、りっぱなものに残すようにいたしたいと考えております。
  420. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ、一昨年の公害国会で公害法案も通り、環境庁も中心になっていろいろそういう環境保全対策推進会議もつくってやってくださっているわけですが、いま瀬戸内海はよくなっているか、悪くなっているか、平衡状態か、どのように感じておりますか。
  421. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) これは非常にむずかしい御質問でございます。ただ、いろいろな水質の汚濁がことに広域化しまして、それに伴って赤潮が多発することは、非常に悪くなっております、見通しは。ただ、海面の一部一部のこれは汚染状態を調べますと、たとえば四十五年度と、四十六年度では多少はよくなっている面もございます。しかしまた一方、伊予三島とか川之江ですか、ああいう地区なんか非常に悪くなっているということでございまして、まあ残念ですけれどもあまりよくなっているとは申し上げかねる現状だと考えております。
  422. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長官の言われるように、確かに赤潮の発生も、赤潮はいままでは春以後に起こっておったんですが、今年は冬場にも発生した、そういうようになっております。また油による汚染の状況も、海上保安庁の白書を見ても年々非常に汚染件数はふえているわけなんですけれどもね。そこで政府といたしましては、下水道整備計画あるいは屎尿処理計画、そういうものを昭和五十年を目標にやっておるわけですけれども昭和五十年にそれらが完成した場合には瀬戸内海の汚染はどうなるか、その時点における瀬戸内海に流入するたとえばCOD汚濁負荷量というものを見た場合に現在とどういうふうに変化するのか、そのあたりはわかりますか。これはどなたでもいいと思うのですけれども……。
  423. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) たとえば屎尿投棄等は、それは四十七年度から禁止になりますし、その他いろいろと、御承知のように、五十年までには下水道五カ年計画も終了いたすことでございますから、一応の汚水の処理はある程度はできると思いますが、これでもまだ日本の国の三分の一余りしかやらないわけでございます。特に瀬戸内海沿岸に力を入れましても、いまの倍はなかなかできにくいということでございますので、まだ今後四年後における瀬戸内海の状態、そう必ずしも大きな効果はあげ得ないと思います。しかし少しでも努力していくことが大事なことでございますし、そうすれば私はある程度のことは防ぎ得る。また、いま御承知のように瀬戸内海環境保全対策推進会議、これをつくりまして、いろいろと検討しておりますが、当面の緊急なものについては一応の成案を得まして努力いたしておりますが、さらに今後大きな面から総合的な対策を立てなければなりません。それも早いうちにつくりまして、大いに将来、これがきれいになるには、おそらく十年、十五年はかかると思いますが、そういう目標は遠いけれども、それを目ざして努力してまいれば、五十年までにはある程度の進歩はあると考えております。
  424. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは長官にお願いしたいわけでございますが、やはり瀬戸内海というものの公害対策というのは部分的にやってもいけないと思うんですよね。やっぱりいまの工場排水の規制というものがパーセントですから、どんどん量がふえれば汚染してくるし、そういう点でやはり瀬戸内海を魚の住める状態——やっぱり自然浄化力があると思うんですね。自然浄化の力よりも少ない、COD汚濁負荷量に下げなきゃいけないわけですから、そういう立場に立って、公害対策基本法第九条で指定する瀬戸内海全体の公害防止計画を私はつくるべきである。これは瀬戸内海だけではない。そういうまとまったところは広域なやっぱり公害防止計画、そういう方向に行くべきである。そのように思うわけですが、その点、長官のお考えを伺いたい。
  425. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ただいまの御趣旨に私も賛成であります。ただ、現在の法律では、やはり県単位にこの公害防止計画はなっておりますので、したがいまして、やはりこれまでは十分な効果をあげることはできません。たとえば今年度から大竹あるいは岩国地区をやります。両県にまたがっておりますが、これ一本に考えなければならぬのでありますから、一応の予算的な措置とかそういうものは、計画は県別々に立てることになっておりますが、それをできるだけ一本のものにして効果あるような仕事をやらせるように、われわれも指導いたしておるわけでございます。しかしやはりこれだけでは不十分であります。おっしゃるとおり何らかのやはり新しい行政を考えて、公害だけの行政でけっこうでありますから、それを考えて総合的な防止計画を立てなきゃならないものと私も考える次第でございます。
  426. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで具体的な問題に入りますが、水質汚濁防止法、大気汚染防止法というのが、これが一昨年の公害国会で成立をしてすでに適用になって九カ月になっておるわけでございますが、大体これはきちんと守られておりますか。
  427. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 率直に申し上げまして、守られている点もございますし、あるいは改良された点もございますが、また必ずしも十分守られてない点もあるかと思います。
  428. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この法律では各都道府県が各工場の排水、まあ、きょうは工場排水にしぼりたいと思うのですけれども、それの測定をして、ちゃんと報告は環境庁にも来るようになっていると思うのですが、そういうものはちゃんときていますか。局長さんでもいいですよ、答弁は、どうぞ。
  429. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いまのお話の工場排水につきまして、各企業がその排水の水質を調査しまして、都道府県なり環境庁へ報告するというようなたてまえには必ずしも法律上はなっておりません。法律上では、公共用水域につきまして都道府県が毎年調査計画を立てまして、それに従いまして調査をする、その調査結果を公表するというようなたてまえになっているわけでございます。
  430. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、各工場排水の調査というのは県なりがやるのじゃないのですか。
  431. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) お話のとおり、公共用水域の水質環境基準を維持するためには、やはり工場排水の状態を調査し監視しなければならないわけでございまして、都道府県は当然それをやっているわけでございます。私ども従来都道府県はなかなか公共用水域だけでも手が回りかねる状態で、工場排水まで十分な調査がいっておらないと思っておりましたので、四十七年度におきましては私どものほうでも補助金を一応お願いをいたしている最中でございますけれども、それによりまして重点的に工場排水につきまして調査をし、これを報告させるというようなことを現在考えておる次第でございます。
  432. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、適用されて九カ月になりますが、県からのこちらへの報告等はまだ来てないのですね。
  433. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 問題の工場につきましての排水調査はそのつど入手いたしておりますけれども、全国的な調査結果はまだ私どもはいただいておりません。
  434. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この水質汚濁防止法は、水質基準をオーバーした場合は罰則があると思いますが、これはどうなっておりますかね。
  435. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 新しい水質汚濁防止法によりまして、従来と違いまして直罰方式というのをとっておりまして、基準をオーバーいたした場合には罰則がかかるということになっております。また、さらにそれ以外にも、基準を守らせるために都道府県知事が操業の一時停止その他をなし得るというようなたてまえになっておるわけでございます。
  436. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 きょうまで適用された例は何件ありますか。この水質汚濁防止法で基準をオーバーして罰則を受けたのがございますか。
  437. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私、その基準オーバーで罰則を受けたというのは現在聞いておりません。
  438. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 聞いていないということはないということですかね。
  439. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) おそらく、基準オーバーという点で罰則の適用があったのは、ないのではなかろうかというふうに実は考えております。
  440. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、環境庁長官、大体守られている点もある、守られていない点もあると言ったけれども、罰則を受けているのは一人もいないわけですから、そう言うと、必ずきちっと守られていると、そう判断していいのですかね。
  441. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 役人にしてみれば、やっぱり報告のないものは、守られていると解釈する以外にないと思いますのでそういう御返事をしたと思いますが、私は、実際考えてみますると、やはりいろいろの問題はあると思います。必ずしも全部が、日本のすべての地域が、まともに厳重に監視をして、厳重にそれが行なわれておるという、これが一番望ましい状態でございますが、そのようなものの考え方、また、必ずしも訓練が長い期間ではありません、新しいやり方でありますので、そういうことに対しては、必ずしも私は自信はございません、しかし、いまはそうであっても、来年、再来年、五年後はという希望を持って、そういうふうな足並みがそろうようなことを心から願っておる次第でございます。
  442. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、これは通産大臣にお聞きしたいと思うのですが、広島県のあるパルプ工場でございますが、ここは三億幾らの排水処理施設をつくったわけですね。ところが、昼だけ使って夜になると使ってなかったわけですよ。だいぶ市議会で問題になりまして、それはいまは使っているようになっているようでございますが、こういうことは、これは企業でも、大体ぼくたちが行きますと、いろいろそういう話をよく聞くのです。重油でも、昼間はサルファの低い重油を使って、あるいは通産大臣や環境庁長官が行くときにはいい油を使って、そうして夜になると悪い油を使う。ほんとうにそういうようなことは、はっきりあるわけなんですけれどもね。そういうのはどうですか。やはり通産大臣として、そういう企業のモラルというものは、これはなってないと思うのですけれども、どう思いますか。
  443. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まさに、産業人のモラルの問題だと思います。しかし、法律もつくられておるのでありますから、基準は守るということでなければならない。やはりいまでも私も、大石環境庁長官が述べられたように、必ずしも全部が守られておるとは思いませんが、しかし検査をした結果は、ちゃんと適正水準以下になっております。なっておりますから、そうすれば文句を言うところはないというわけでありますが、しかし、いま御指摘のような、夜と昼を違えるとか、検査のときはちゃんとしておくとかいえば、まあ検査は抜き打ち検査をするということにしなきゃなりませんし、公害問題がこのくらいめんどうな問題になっているときに、言うなれば悪徳な産業人の責任というものは追及さるべきですし、通産省も甘い態度ではなく、公害問題というものは手きびしく取り締まるべきだと、こう思っております。
  444. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつお願いいたします。  それで、私は法務省にお聞きしたいのですが、こういう事件は公害罪の適用に当たらないのですかね。わざと、設備があっても昼は使って夜は使わない。こういうのは、やっぱりそういう罰するものはないのですか。
  445. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) いわゆる公害罪法の第二条、第三条に公害罪の規定があるわけでございますが、そのいずれにおきましても、これはこの「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者」、これがこの公害罪にいう罰則に当たる行為でございます。  そこで、ただいま御指摘の件につきましては、私ども具体的には存じませんけれども、まず、排出される物質が「人の健康を害する物質」でなければならないということでございまして、生活環境の被害にかかる物質にかかるものは、一応はこの公害罪法の「物質」というものには原則として当たらないということが第一点でございます。それから次に、人の健康を害する物質を排出いたしましても、その結果、具体的に「公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」と、こういう危険な状態を生じさせるということでなければならないという、二つの要件がございます。こういう関係で、ただいま御指摘の案件につきましては、具体的事案がわかりませんけれども、おそらく公害罪法の適用は、むずかしいのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  446. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは環境庁長官、こういう事例は公害罪にも当たらないし、一体、われわれとすればどうすればいいんですか、こういう問題は。
  447. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) こういう場合は、なるほど公害罪の適用はないかもしれませんが、しかし、何か私は規則違反だと思います、こういうものは確かに。そういう実態を早く事実をつかんで、それを勧告するなり改善命令を出すなり、あるいはそれでも言うことを聞かなければ、おそらく操業をとめることもできると思いますから、やはりそのような十分な監視体制を強化する、そういう信念に徹することが必要ではないかと思います。
  448. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、これは法制局にお聞きしたいと思うのですけれども、やはりそういうことは従業員はみな知っているわけですよ。しかし、企業の秘密ということで押えられているわけですよ。これは、私はやはり企業の秘密の悪用じゃないかと思うのですね。国の法律を犯しているのを知って、黙っていることのほうがよほどおかしいのであって、そういう場合、私たちもその企業が、ほんとうに企業の秘密ということでそれに圧力をかけて、そういうことを漏らしたら調べて首にするとか、そういうような態度をもしとったとするならば、こういうのはほんとうにけしからぬ。私は常識——常識というか、いわゆる法律家ではなく、しろうととしての直感なんですけれども、法制局は、そういう問題でどう考えるかですね。
  449. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまの問題、企業の秘密の問題であろうかと思うのでございますが、その点につきましては、いろいろ法律・制度の面で手当てがあるわけでございまして、そういった法律・制度の面に触れる場合には、当然に、これは告発その他の問題に当たろうかと思うのでございますが、その辺、具体的にどういう案件につきましてということでございませんので、ちょっとこの段階でどうするというようなお答えはしかねるわけでございます。御了承願いたいと思うのでございます。
  450. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 よくわからない。何を言っているのか、よくわからないのですけれども、まあ、次にいきましょう。しようがない。きょうは法務大臣も法制局長官もおりませんから、これはまた次の機会に言おうと思いますが。  そこで、工場排水のチェックを、やはり夜間でもどしどし抜き打ち検査くらいやってもらいたいと思うのですよ。そうして、いつでもサンプルがだれでも採取できる、いつでもぱっと取れるというような、そういう状態にしておくべきじゃないかと私は思うのですが、環境庁長官、どうですか。
  451. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 現在の段階では、やはりおっしゃるようなことが必要であろうかと思います。ただ私は、いまそのような技術がまだ十分に開発されていないと思いますけれども、いずれ近い将来には、各工場で排出している量なり物質なりが、いつでも測定できるような、常時一日じゅう働くような、そのような施設を各工場にしておいて、その記録をとらせることが必要ではないかと考えております。たとえば、いまトラックにはタコグラフをつけまして、全部走行記録をさしておく、こういう意味で、やはり私は大きないわゆる共同の排水溝を持たない中小企業は、共同排水溝によって処理させることがいいと思います。それから大きな企業ではやはりそのような、いわゆる記録をしょっちゅう残しておくような、そのような装置をさせることが、将来どうしても必要ではなかろうか。それによって、初めて私はいろいろな排出の安全性が確保できるのじゃないかと思う次第でございます。
  452. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 通産大臣にお願いしたいのですがね。現実にいろいろ呉方面でずっと調査しましたら、やっぱり排水口が常時海面下のものがあるわけですよ。潮が満ちてくると下になって、引くと出てくるというやつもあるわけなんです。あるいは、私たちが調査に行ってサンプルをとろうとしますと、さくがあって中へはいれないわけですよ。中へはいってしまうと、これは不法侵入罪で逮捕されますからね、これはなかなかはいれない。これでは、やっぱりいけないと思うんですね。だから、いままでのやつはこれは改善すべきですけれども、これからできる工場については、排水口というのは必ず水面上にあって、たとえばわれわれが行っても、だれが行ってもすぐに、夜中でもいつでもサンプルがとれる、そういうようにしていくのも一つ方法ではないかと思うんですよね。そういう点、私の考え、どうでしょうか。
  453. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御発言の趣旨はよく理解できます。これは工場法というようなものが私は必要でないかということで、いま通産省の事務当局の一部に検討させております。戦前は工場法がございましたが、いま労働省所管の事項がおもでございましたが、新しい工場の公害問題等が起こってまいったのでありますから、やはり危害予防というだけではなく、公害防除やいろいろな面から、工場法の制定が必要でないかということを考えております。工場法の制定ができれば、当然こういうものはみな規制できるわけであります。ですから、これは通産省というよりも、いまの水質基準というような法律ができておるわけでありますから、基準をいつでも守っているか、守っておらないかということを検査するための、試験水がとれるような設備を設けなければならないというようなことが、当然考えられるべきだと思います。これは実際、許可がなければ、承諾がなければはいれないということになれば、先ほど述べられたように、人がいないときには暮夜ひそかに流すということになるので、これはモラルの問題だけだといって片づけられない問題である。やはり、絶えず水質基準を守るためには、検査ができるような措置を求めるということがやっぱり必要である。これは、私もそう思います。
  454. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、いま、政府のきめた水質基準は、パルプ工場の場合は、たとえばサルファイトパルプの場合に、これは、たとえばBODの場合は、法施行後三年間は一二〇〇、その後二年間は六〇〇と、まあそういうことですけれども、将来はやっぱりあれですか、サルファイトパルプのたとえばBODの基準ですね、これは六〇〇とか一〇〇〇とかいうのは話にならないと思うのですね。こんなのを大量に流されたのでは、これはもう川や海はきれいになんかなりっこないと思うんですが、こういうのはどうなんですか、将来は下げるのか。そういう技術があるのかどうか。そういう点、どうなんですか。これは環境庁長官。
  455. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 詳しい技術的な、数字的なことは局長からお答えさせますが、もちろん、それは近い将来には、環境基準というものをきめてございますから、これを達成させるだけのきちんとしたものにしなければなりません。そういう方針でおりますが、ただ御承知のように、そのような設備なりそういうことは、急にはできませんので、やはりある一定の、一年とか二年とか、残念ながらある期間をおかなければその体制ができないということで、必ず最終の目的は近い将来にはきちんとしたものにするという方針でおるわけでございます。  なお、その詳しいことにつきましては、局長に答弁させたいと思います。
  456. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) お話しのとおり、パルプ製造業につきましては、現在、排水処理の方法につきましていろいろ研究をいたしておるわけでございまして、私どもはこういうような、暫定基準と申しまして、甘い基準でございますけれども、これを二段階に分けまして、三年間はこの程度、それからあとの二年はこの程度、五年たちますと一般の基準、これまでは当然下げさせるという方針でやっておるわけでございまして、その後さらに技術が開発されれば、一般基準のほうも当然これは見直しをいたしまして、さらに強化をするという方針でおります。
  457. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、いま水質基準というのは各業種によって変わっているわけですね。これは私はおそらく、いろいろたくさんよごれた水を出す企業と、そうでない企業があるわけですから、一律にはいかない、そのために暫定的にそういう差を設けていると思うのですけれども、五年たつと、それは全部一律になるというのですか。それは大体五年後には、たとえばBODならばどの程度を目標にやっておるのか、そういう将来の目標というものをはっきり示しておかないというと、企業のほうとしても困ると思うのですね。五年後にはどうなりますか。
  458. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 五年たちますと一律基準ということになるわけでございまして、BODになりますと、最大一六〇PPM、日間平均で一二〇PPMと、こういうところまでもっていかせるということを現在の目標にいたしておるわけでございます。
  459. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、一六〇というのはパルプの場合についてですね。そうですね。
  460. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これは一律基準でございますので、すべての業種につきまして、この目標を達成するように努力をさせるというたてまえでございます。
  461. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 一六〇が最終の目標なんですか。けれども、環境基準というものは、もっとそれよりも低いわけなんですからね。一六〇ぐらいになれば、たとえば瀬戸内海なら瀬戸内海というのは自然浄化力で大体やっていけると、そういう見通しがあるのですかね。
  462. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 御承知のことと思いますが、いま環境庁でつくっております環境基準というものは、必ずしもこれは全面的にすべてが理想というものではございません。ただ、どうしても現実の面から考えまして、環境基準というのは理想的な望ましいものでなければならないわけでございますけれども、いまの汚染状態あるいは技術の問題、そういうことから考えまして、五年なり十年なりではとても達成することができない、理想ではできないという場合には、どうしてもある程度の一応の環境基準をつくりますが、それは最高限度にでき得るものを予想してつくるのでございまして、われわれが理想とするものとは非常に遠い場合もずいぶんございます。ことに水の場合はそうでございます。水の場合は、一番汚染度が各地域に進んでおりますし、また各水系ごとに全部状態が違います。しかも、水を直すには陸上の排水を、汚水を出すいろいろな数多くの設備に対しても、いろいろな制限を加えていかなければならないことなんです。そういうことで水の問題が一番あとまで残って、むずかしいと考えておりますが、おっしゃるように、五年なり十年なりで、一応の環境基準というものはきめておりますけれども、これは決して理想ではございません、できるならば、その五年なり十年なりよりもっと早い機会にその目的を達成させたいと思いますし、達成したあとは、さらによりよい、より理想的なものに高めていくようにいま考えておる次第でございます。
  463. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは通産大臣にもお願いしておきたいのでありますが、先般もPPPのことが問題になりましたけれども、やはり金がかかっても、企業は環境保全のためにその設備に力を入れてもらわなければいけないと思うのですね、こうなってくればね。そのためには、やはり製品の価格が上がっても、これはやむを得ない。それは、できるだけ企業努力でそうならぬようにしてもらいたいと思うのですけれども、高くなれば、そういう製品は、ほかにもっと公害を出さなくて安い製品があればそっちが売れて、そしてそういう高い製品が売れなくなれば、その結果はやはり自然にそういうものの生産もなくなっていくのじゃないかと思うのですね。そういう点で、企業に対してなかなかきびしいということは、向こうは困るかもしれませんけれども、長い人類の生存から考えれば、すでにおそ過ぎたわけではありますけれども、そういうきびしい態度で臨んでいただかなきゃいけないのじゃないかと、かようにひとつ要望したいのですけれども……。
  464. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) OECDでいま検討いたしておりますPPP、これは住みよい理想的な地球を守ろう、これは当然のことであります。人類が生存する限り、地球の環境保全ということにつとめなければならぬことは言うまでもありません。だから、いままで生産第一主義であったということから、なさなければならなかったものがまだ残っておったわけでありますから、少なくとも生産の過程において人類を滅亡に導くようなことは、これはもう厳に戒めなければならぬはずであります。ですから、そういう意味で産業公害が発生しないように、基準はきびしくあるべきである。しかも、私は、いまこの国会に工業再配置の法律案を出しておりますが、これは、産業立地の角度から検討すればまだまだ工場適地は幾らでもあるものが、経済ベースだけでものを考えるということで都会に工場が非常に集中をする。そのために複合公害というような状態が起こっておるわけでございまして、私はいろいろな角度から、この公害基準というものはきびしく規定をすべきであり、また通産省の立場でも、生産が幾らあがっても、国民総生産にどんな寄与をしても、輸出や生産そのものが罪悪であるというような思想を生みつつある現状に徴して、排出基準その他を厳重に規定し取り締まってまいろうという考えでございます。
  465. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、先ほど環境庁長官も、PPPの原則は何か遠い将来の話のような、私そういう印象を受けたのですけれどもね。やはりそういう出す公害の費用は発生源が負担をする、これは、むしろそれを早くから日本はやっておけばよかったと思うんですよね。先般も、この公聴会のときも話ありましたけれども、プラスチックが安い安いといって、そのために牛乳びんがプラスチックに移った、けれども、そのプラスチックの処理のために、地方公共団体では、もう焼却炉が非常にいたんで、結局、ものすごい損失なんです。だから、プラスチックの費用の中に当然そういう処理の費用も含んで、その上でやはり計算をしていく、それがやはり経済の合理性の追求じゃないかと思うんですね。そういう点で私は、先般、環境庁長官も公害税の話をされましたね。やはり公害税は、そういうプラスチックの廃棄物を出す場合には、その処理の費用を税金で取るという、そういう意味じゃないかと思うんですけれどもね。だから、それもそのPPPの原則の適用だと思うんですけれども、そういうものを含めて、私は将来の問題じゃなくて、すでにおそ過ぎたのですから、これからできる製品についてでも早急にやるとか、私は、いつも政府は検討中検討中といって、それでもう二年ぐらい過ぎてまた検討中で、ほんとうに長引いてきているわけですね。そういう点で、このPPPの原則をほんとうに実践に移すように、すみやかにやってもらいたいと思うんですよ。それで、通産省もそういう処理技術の、先般、公害を出すようなそういう企業の製造は禁止すると言っていましたけれどもね。処理技術が確立していないような、そういうような製品もやはり出すべきじゃないと思うのです、これからはね。まあそういう点で、こういうことは将来の問題じゃなくて、すみやかにひとつやってもらいたいと、そういうことを両大臣に要望したいのですけれどもね。答弁は簡単でいいですから。
  466. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公害に対しては、これが防除施設その他に対しては、原因者負担が原則であるということはもう当然のことでございます。将来というより、これから出る製品、特に新製品、そういうものに対しては、どういう弊害が起こるかということをやはり前もって考えながら、これが対策を立てるべきだと思います。まあ私も、プラスチック廃棄物等に対して今度は予算も計上してもらいましたし、機構もでき、また地方公共団体簿でもいろいろなことをやっておるわけでございますが、やっぱり工業技術院というのを持っていますから、新技術の開発もさることながら、こういう公害のもととなるような廃棄物の処理というものの技術開発というようなものに対しても、通産省自体も積極的にやってまいろうというふうに考えております。
  467. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ただいまのお考え、私非常にけっこうなお考えだと思います。で、外国にもそれに近いような、たとえばドイツの陸上の廃油処理なんかもそれに近いような構想のものもございますけれども、やはり日本でも即刻このような考え方を取り入れまして、できるものからそのような、まあPPPのこれは考え方になるでしょうけれども、そのようなあり方が望ましいと、私もそういうふうに行政を進めてまいりたいと考えております。
  468. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後にこれを一問お聞きして……。排水基準を定めた総理府令の中に、二種以上の業種が同じ排水口から水を出した場合の基準は、こっちとこっちの業種では水質基準が違うわけですから、一番最大の許容量の水質基準になっているわけですね。こういうのは、私はよくないのじゃないかと思うんですけれども、こっちとこっちで、こっちはきれいな水でこっちは悪い水と、非常に基準が高いわけですね。そうすると、こっちまで、悪いほうの以下であればいいというので、こういうのはちょっとよくないのじゃないですか。
  469. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) お話のような点、まさにあるわけでございますけれども、現在、技術的にやむを得ないといいますか、まあそういう措置をとっているわけでございまして、さらに将来、これは法律の改正になるかもしれませんけれども、どこで企業の責任を問うか、いま、公共用水に排水する時点でもって企業の責任を問うという法体系になっておりますので、それを、それ以前にさかのぼりましたところでもって水の水質を云々できることにするかどうか、これは将来検討さしていただきたいというように思っております。
  470. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと塩出君に申し上げますが、先ほどの専売公社の調査の件は、人が向こうにいなかったり等で、本日は調査できないそうですから、月曜日に調査して返答するそうです。  それでは、きょうはこの程度といたします。おそくまで御協力、ありがとうございました。  次回は明後十七日午前十時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会