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1972-04-10 第68回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十日(月曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員の異動  四月十日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     熊谷太三郎君      川野辺 静君     楠  正俊君      石本  茂君     山内 一郎君      大橋 和孝君     片岡 勝治君      沢田  実君     塩出 啓典君      木島 則夫君     中沢伊登子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 片岡 勝治君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 小平 芳平君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  塚原 俊郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君  政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府人事局長  宮崎 清文君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        警察庁刑事局保        安部長      本庄  務君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        行政管理庁行政        監察局長     小林  寧君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        国税庁長官    吉國 二郎君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  武藤き一郎君        厚生省保険局長  戸澤 政方君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林大臣官房技        術審議官     遠藤 寛二君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省畜産局長  増田  久君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    太田 康二君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        建設省河川局長  川崎 精一君        自治大臣官房参        事官       立田 清士君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、工藤良平君の質疑を行ないます。工藤君。
  3. 工藤良平

    工藤良平君 私は、一昨日の質問に続きまして続行いたしたいと思いますが、まず最初に西山記者の問題につきまして、準抗告が認められて釈放されたわけでありますが、この点について、総理並びに国家公安委員長のこれに対する所信をお聞きをいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは裁判手続でやったんですから、公安委員長からお聞き取りをいただきます。
  5. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 西山記者逮捕の件でございますが、これは当初警察といたしましては、国家公務員法百条の違反である——蓮見さんに関連を生じまして、百十一条の違反に該当する事項がきわめて多いという容疑が深いということで逮捕しておって、今日まで至っておったのでありますが、昨日、御承知のように準抗告決定されたのであります。で、決定理由等を見ましても、私は今日まで警察がとってまいった措置が適正でなかったということには解されないと思っております。警察といたしましては、今日までとってまいりました措置は適正であったということがおおむね認められておる。ただ、今日の段階では、本人等もかなり実情を申し述べておる段階では、身柄を拘束しないで取り調べてもいいではないかという見解に立って、準抗告決定されたものであると了承しております。
  6. 工藤良平

    工藤良平君 公安委員長のけさの談話によりますと、これまた政府の一方的な、政府側に有利なような解釈というものが談話として発表されているわけでありますが、私はまた国民的な立場から見るならば、当然政府みずからが知らせなければならない義務を持つものである、機密の問題については。したがって、公務員法でいう機密というものが政府側の一方的な判断によってきめられるべきものではないという反面もまた判決の中に出ているわけでありますが、この点についてどのようにお考えですか。
  7. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) この事案につきましては、西山記者のとりました取材関連する手段方法等が百十一条に違反容疑がきわめて濃厚であるという立場に立って捜査を進めたのでありまして、それから、さらに身柄を拘束して捜査を進める必要があるという観点に立って、それぞれの手続を済ませて、身柄を拘束して今日まで捜査を続けておったのであります。警察といたしましては、警察の独断とかあるいは行き過ぎとかということにならないために、ちゃんと法律できめられております手順というものがあるのであります。その手順を通って拘束して捜査をしておったのでございますから、私は警察が今日までとってまいりました手段方法等は違法ではないと、かように考えております。
  8. 工藤良平

    工藤良平君 取材行動の目的で一般社会通念上相当と認められるものについては、これは当然資料提供を求めても違法ではないという反面も出されているわけでありますけれども、この点についてはどうですか。
  9. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 具体的な問題につきましては、刑事局長から答えさせていただきたいと思います。
  10. 工藤良平

    工藤良平君 具体的な問題でなくて、一般的に、これが全体的に適用されること自身を私どもはたいへんおそれているわけでありますから、その点に対する基本的な考え方を聞いているわけです。
  11. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 今回の西山記者がとりました取材手段方法等が法の許す範囲内を逸脱しておるという観点に立って捜査の対象といたしたものでございまして、これが一般取材をしておる記者取材行為と同じ形で警察がそれを見るというようなことはございません。この事案は特殊の事態であるという観点に立って捜査を始めておるという状態でございます。
  12. 工藤良平

    工藤良平君 この論争をいつまでやっていてもどうもしようがないようでありますけれども、これは最後に総理にお聞きしますが、官房長官、あなたはきのうの各党討論会の中で、機密政府がきめるべきものである。政府がきめたものを発表する、それを新聞記者は外部に報道していくことが当然であるということを言われておりますけれども、この判決とあなたの考え方の間にはどのような食い違いがあるか、一致しているか、この点をお聞きします。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お答えいたします。  今回のこの決定と、私が昨日放送討論会で申し上げました内容と一致している部分、異なっている部分については、私も判然と精査をいたしておりませんので、私が申しました一般論についてお答えをいたしまして、御理解をいただきたいと思います。  私が申しましたのは、機密とは、しょせん、国益に照らしてこれが機密とすることが是か非かという判断を行なうべきものである。したがって、まずその国益というものがその前に判断せらるべきものである。その国益とは、これは総理からも申されましたごとく、国民決定するものである。しかし、今日の代議制度のもとに、主権者たる国民に対して国会がある種の委任を受けておる。その国会において首班指名選挙がなされて内閣が組織せられる。この立論から言うならば、政府がそのつど判断をすべきであるという立論も成り立つであろう。しかし、そこにはおのずから国会という厳正な監督機関があり、そうして報道という、国民に対して直接影響を持つところの報道機関存在し、その監視と世論の中に、おのずから良識あるところの国益判断がなさるべきものである、このように論理づけをいたしたわけであります。したがいまして、機密とは、それらの判断に立ちますとき、今日これが国益是か非かという場合は、いわゆる国民次元の総選挙、あるいは政府提出をいたしましたものを国会で御承認をいただくという手段、あるいはさらに政府そのもの判断をするという、結論は国民次元のものになる、このように申し上げたわけであります。
  14. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと。  その解釈は私も聞きましたが、非常に一方的な解釈です。国益に照らして——国益国民判断するんだ。それは国民代表する国会であり、その多数でつくった政府がこれをやるのである。これはできるだけ最小限にやりたい、そういう関連の中で国家公務員法の百条とか百十一条が出てくる、こういう話であります。そうして、国民代表である国会監視をし、また国民監視をする、それに対してできるだけ報道の自由、取材の自由を伴って、国会監視にふさわしい状況を提供していかなきゃならないというひとつの問題もあります。そうして、そういう理論を考えるならば、それじゃ国会監視をする監視の場で、できるだけ真実を言わなければならないのに、国会うそを言ったという責任は同時にその中に存在をするわけです。しかし、これは一方の理論であって、国益というものは国民決定をするということになれば、国民は基本的には情報のすべてを知るといういわゆる権利があるということが片側存在をするわけであります。しかも、国民主権である原理から考えてみて、国家的な事項はすべて国民的事項であるから、終局的には国民に対して秘密というものは存在をしないという、そういう考え方一つそこにあるわけであります。同時にまた、複雑化し、国際化し、情報化している社会において、国民がその主権を行使する、知る権利を行使するためには、あらゆる情報や意見に自由に接しなければならないという、つまり、国益国民決定をするというならば、国民決定し得る条件というもののためには、あらゆる情報がそこに正しく知らされなきゃいけないし、知る権利はそこにあると思うんであります。それが報道の自由であり、また表裏一体の自由であるわけであります。もしかりに、国民にそれを知らせなかった、そういうことになってくるならば、その一部、つまり国家の安全をはかる上において一部の秘密があるとしても、これが知らされなかったということであるならば、その責任をやはりそこに明らかにしなけりゃいけないのであります。つまり、国益国民判断をするから、国会がそれを代表し、政府がそれをきめる、最小限にきめるというならば、政府が、監視すべき国会うそを言った責任を一方で明確にとらなきゃいけないんであります。同時にまた、国民がそれを判断するために、あらゆる情報、あらゆるものを知る権利がそこに存在をするわけであります。その、国民が知る権利を妨げて、それを秘密にしておいた政府責任というものは、別の方面にあるわけであります。それを、この前、総理は、いわゆる、政府として責任を感じている、というのはこのことなのであります。国民にすべてを知ってもらう。最終的には、主権在民である以上、あらゆることを知る権利がある。そうであるのにかかわらず、それをいまあらためて暴露されたことによって、国民がそれを知らなきゃいけなかったことについて、政府は完全な知る権利を実現しなかった責任があるわけであります。単に国会の運営が渋滞をしたという責任ではなくて、国民の知る権利を完全に行なわなかったというところに政府責任があるわけであります。その責任をあなたは衆議院予算委員会で明らかにしたわけであります。当然国益というものは、一方、国民代表する国会、その場において監視する。国会情報を提供しないでうそを言ったという今回の場合の責任を明らかにすると同時に、知らせる権利について、それを怠った政府責任を明らかにするということがなければ、一方的な国益は、国民判断をし、それを代表する国会であり、それの多数を占めている政府がそれをきめるなどという一方的なほうの議論だけを強調するということは、完全な誤りであります。そういう反省をすべきである。それを何かもっともらしく、国益国民判断をいたします、国民代表いたしますのは国会でありますので、国会の多数を占めている政府判断をすれば、それは国益のためのいわゆる秘密判断になりますなどというような、一方的なことを言うのではないのであります。
  15. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡潔に願います。
  16. 松永忠二

    松永忠二君 かりに一方的なことを認めるとしても、そこにいわゆるうそを言った責任がある。片側では全部を知らなきゃいけない権利を妨げて、秘密にしておいて、あらためて暴露されたこの責任政府は明らかにする、この二つのものが伴わなければ、官房長官のその議論は、あたかも非常に合理的なごとく装うだけであって、事の本質を明確にしているものではありません。そういう意味で、あなたがいろいろな機会にそういうことをおっしゃるようで、私は、たまたまこの問題が出ましたので、このままにしておくわけにいかないので発言をしたのであります。——答弁しなさい。思考に誤りがあったということですよ。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いまも松永先生からもお話がございましたが、一つ論理体系としてはそれは成り立ち得ることである。しかしそれだけに、一政権、一内閣の側から見た国益という断定のしかたが議論をされやすい状態にある。そこで、積極的な取材活動には応ずる姿勢を持たなければならないし、そして取材活動をするほうにも、また知らす義務のある私どものほうにもおのずからモラル存在しなければならない、こういうような討論会発言をいたしたつもりであります。
  18. 松永忠二

    松永忠二君 モラルでなく責任ですよ。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこで、いま別の問題として御提起になっておりますのは、いわゆる沖繩国会の際に、知りません、と言った。これは国民に対して知らす義務を怠ったその責任は重大である……。
  20. 松永忠二

    松永忠二君 国会に対して知らす義務のことを言った。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) もとよりそのとおりであります。主権者たる国民代表である国会に対して、知らぬ存ぜぬを申したのは、これには責任がある、こういうお話でございます。これは明瞭に私も分けるべきだと思っております。
  22. 松永忠二

    松永忠二君 知る権利責任……。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) したがいまして、知る権利のある人に対して知らす義務を、国民は知る権利があるわけでございますから……。
  24. 松永忠二

    松永忠二君 その権利を妨げた。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いやいや、そうじゃございません。国民には知る権利がございます。したがって、知らす義務というものが生ずる。その知らす義務を、言うならば、沖繩国会において知らぬ存ぜぬと言ったその責任は重大であると、こういうふうにいまおっしゃったように理解をいたしております。これにつきましては、私が討論会で申しましたのは、総理の答弁にもございますごとく、それはいま言えませんという答えをすべきであったと、こういうことがありました。しかし私が申し上げましたのは、今日の私どもの、私も国会議員の一人としてというお許しをいただいて申し上げたわけでありますが、お互いが質疑討論をいたしますと、今日の時点で、それは言えませんという答えに対しましては、言えないということは必ず何かあるはずだと、こういう反論が当然出てまいるであろう。だからその際、知りませんと、こう答えたことに対しては、福田外務大臣が遺憾の意を表しておられると、こういうふうにお答えしたつもりであります。
  26. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことを聞いているんじゃないですよ。
  27. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡潔に願います。
  28. 松永忠二

    松永忠二君 私の言っているのは、あなたの理論を通していく場合に、国会監視をするということについてうそを言った責任はもう明確である。こんなことをあらためて説明してもらう必要はない。今度は反対側のほうで言うと、国益国民がきめるという以上、国民はすべてを知る権利があるということです。すべてを知る権利があるのにかかわらず、政府沖繩のいわゆる協定の際にそれを知らせなかった、あるいはその後において秘密ではないと裁判所も言っていることを、暴露されなければ言わなかったんです。その責任というものが、政府として、そこに存在するということを考えなければ、ただ国会において監視の役割を果たすことができないことについて、いわゆる知らぬ存ぜぬと言った責任があるということだけを言うのではなくて、逆に、国益国民判断をする以上、国民はすべてを知る権利があるという一つの、もう一つの表現の自由というものが憲法に明確になっているわけです。その際に、国の機密国家の安全を害するものについては、ある時期は国民に知らせることはできないけれども、できるだけ、それも時期を過ぎれば全部を知らせなければいけない。その全部を知らせることについて、結局政府沖繩国会において、国会というか沖繩協定について怠ったわけです。その責任を追及をされたから、総理大臣国会においてその政府責任を明らかにしたんだ。そういう片側理論を明確にしないで、何か国益国会代表するかのごとくして、そこに当然規制の法律があるということを言い、監視役割りだけの問題を取り上げたんでは、国益判断にはなりませんぞということを言っているのである。あなたは、こちら側の理論が抜けているということを私は指摘をしたのである。だから、誤解のないように私の指摘をもう一度ひとつ考えていただいて、機会を見て、またあらためて議論をしたいと思うんでありますが、このあなたの考え方は私は一方的なことだけを言っているんだということを申し上げたいわけであります。
  29. 上田哲

    上田哲君 委員長
  30. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ごく簡単に願います、あとでまたあなたには時間がありますから。
  31. 上田哲

    上田哲君 西山記者釈放に関する東京地裁決定関連して御質問いたしますが、重要な問題でありますから、ぜひお許しをいただきます。  この決定で重要なことは、報道の自由は尊重さるべきだと決定は言っておりますけれども、この事件の争点となっております国民の知る権利政府機密との関係、こういう問題については判断を示しておりません。つまり、本質的な争点は依然として国会の論議に持ち越されたと言うべきだと考えます。国益論などここで出てくるのはたいへん困ることでありまして、政府はこの決定をもってこれまでの論議の基本的な部分が解決を見たとするような考え方は厳に戒むべきだ、この点をまずきちっと御確認をしていただきたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上田君のただいまの御意見は御意見として、私まだ全部片づいているとは思っておりませんから、さように私も了承しております。
  33. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 上田君はまた後ほど、きょう質問時間がございますから、ひとりそのときに譲っていただきたいと思います。
  34. 上田哲

    上田哲君 そのときじゃだめなんです。これは……。
  35. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それじゃあなたのほうのお立場もありますから、簡単に一問だけお願いします。
  36. 上田哲

    上田哲君 じゃ、きわめて簡単に申し上げます。  ただいまの総理の御答弁は……。この決定によっては本質的な問題が全く解決されていないのだということを御確認をいただきたい。  それからその次に、少なくとも、この決定では、検察側は捜査の行き過ぎを戒めている、こういうことだけは明らかであります。われわれは、もとより国家公務員法百十一条をもって西山記者を逮捕することを不当と考えておりますけれども、それにしても、百十一条をもってこれ以上身柄を拘束することの行き過ぎを戒めているということは、つまり、西山記者から先のコピーの流出ルートについて捜査の重点を置くことは間違いであるということを戒めた、こういうふうに理解しなければならないと思います。  それから決定の中で、釈放の理由を「諸般の事情を考慮する」、こういうふうに言っておりますが、これは政府の高圧的な姿勢への広範な世論の反発を評価したものと私たちは考えたいと思いますが、いかがですか。政府はこの際、国民の間にわき上がっている知る権利への要求に謙虚に耳を傾けて、今日までの姿勢を改めるべきではないか。簡単に御意見を伺いたいと思います。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、これで大事なことは、決定がそのとおり行なわれたということじゃないだろうかと思っております。これは、いろいろな関係者としては御議論があるだろうと思います。しかし、決定どおり釈放された、こういうことで、この事件はそれなりに評価されてしかるべきだ、かように思っております。
  38. 工藤良平

    工藤良平君 私は、この問題についてはきわめて不満でありますし、政府側の一方的な考え方というものは依然として変わっていないというふうに理解をするわけであります。時間もありませんから、後ほどこれは上田君の議論の中で大いに戦わしていただきたいと思いますが、最後に佐藤総理に、先日から知る権利、あるいは国益の問題、機密の問題、これらが、あるいは報道の自由の問題が論議をされてまいりました。これらはいずれも憲法の原理に触れる問題でありまして、私は佐藤総理といたしまして、真に国民の負託にこたえ、そして政治家の良心にこたえて、十分なる論議をする必要があると考えるわけであります。それと同時に、また責任も当然とるべきだと考えるわけでありますが、この点についての総理考え方をお伺いいたします。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事柄の性質上、具体的に申せば民主主義の原則、原理、さような意味からも、この知る権利、こういう事柄について、もっと論戦があってしかるべきだ、かように私も思います。また、この問題に直接関係はいたしませんが、いわゆる衆議院段階におきまして、外務省の機密文書漏洩事件について、政府の統一見解も出しておりますから、そういう意味で御了承をいただきたいと思います。
  40. 工藤良平

    工藤良平君 私はその責任のとり方の問題について、けさの新聞によりますと、福田外務大臣、田中通産大臣、それぞれ佐藤総理責任のとり方の問題、あるいは時期の問題について発表しておるようでありますけれども、その真意を伺いたいと思います。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はきのう福島県へ参りまして記者会見がありまして、その席上、佐藤総理退陣の時期はどうですかという質問がありましたから、自由民主党の総裁としての任期は十月末に切れます、それまでは、少なくともそれまでは職務を執行するであろう、総理としての職務を執行するであろう、そういうふうに答えております。
  42. 工藤良平

    工藤良平君 先般の衆議院委員会における首相の発言、そして三党の意思表明の中では、その時期が任期一ぱいにいくという前提の上に立っておりましたか。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ちょっとよくわかりませんでした。
  44. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 時間には入れませんか、ら、もう一ぺんやって下さい。
  45. 工藤良平

    工藤良平君 あなたは、佐藤総理の任期中の十月一ぱいまでいくということが当然であろうということを言われましたけれども佐藤総理が先般の野党との意思統一、どの程度されたか私は知りませんけれども、しかし、少なくともその時期の問題については明らかにしていない、そのことがやはり国民多くの者が佐藤総理の退陣の時期というものについてはきわめて重要な関心を払い、これからの政治の問題についてもきわめて重要だと見ているわけであります。佐藤総理が十月任期一ぱいいくということは、それは自民党のたてまえからするならばそうかもわからないけれども、しかし、国民はそうは見ていないと私は思っているわけであります。現在の閣僚、しかもあなたは次の総理になろうかといううわさまである人でありますが、その方が軽々と十月一ぱいまでいきますというようなことを発言をするということは、私はきわめて重要な発言だと思うのでありまして、少なくともこの重要な問題が論議をされているさなかに、そのようなことを発言をするということは、私は閣僚の一人としてきわめて重要だと思っているわけであります。それは閣僚内部における、政府の内部における意思統一がまことに乱れておることであり、これは佐藤総理の統括の問題にも私はきわめて重要な問題になると思うのでありまして、言論の自由を束縛をし、あるいは機密の問題をとやかく言う前に、まず私は閣内における十分なる意思統一をはかって統制をすべきだと考えるのでありますけれども福田総理候補、私は、その点については、ひとつぜひ国民の前にその点についての考え方をもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、この記者会見で自由民主党総裁としての佐藤総理の任期は十月一ぱいあるということを強調したわけなんです。その他の点については触れておらない。これは総理のおきめになることである、こういう考え方からであります。
  47. 工藤良平

    工藤良平君 きわめて不満でありますけれども、時間がありませんから、次の問題に移ります。  それでは本題に帰りまして、農業の問題についてお聞きいたしたいと思いますが、まず、経済企画庁に質問をいたします。  農業を、日本の経済発展計画の全体から見た場合にどのような意義を持っているか、まず基本的に経済企画庁の考え方をお伺いいたしたいと思います。
  48. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 当然農業が日本の経済社会構造における最も重要な産業であるという認識は基本的でございます。そのために、食糧の自給度をどの程度まで高めるかということは、もう御論議もあったと思います。ただ、日本農業といえども、やはり大きな国際経済の中の一環として今後進まなければならぬ。そのために、農業自体の体質の改善、また、国際競争にたえ得るように生産を高める必要があるというような認識を持っております。
  49. 工藤良平

    工藤良平君 先般、経済企画庁の宮崎局長が物価政策の優先順位を高めよという意見を出しておるようでありますが、この点について長官はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  50. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) ある新聞で、宮崎局長がそういう意見を述べております。私もそれを読みましたが、要するに、国民福祉を重視しなければならぬいまの現段階で、物価政策というものを、いろんな経済政策の中で、その優先順位を高めるべきだ、こういう趣旨だと思います。それは、私はもっともな所論であると思いますが、その中で、この農業の今後の価格支持政策というものを少し洗い直す必要がありはしないかということを言っておりますが、それは私は局長の真意は、いろんな農業の価格支持政策の中で、たとえば直接の管理制度もございましょうし、また、価格差補給金制度、あるいは不足払い制度、いろいろありますから、その中で、最も今後の日本の農業にふさわしいような生産対策、あるいは価格支持政策をもう一度再検討する必要はないかというような見地から述べたものと思っておりますので、決して農業の重要性を軽視したり、そういう意図は毛頭ないと私は信じております。
  51. 工藤良平

    工藤良平君 私も、現在の日本農業の置かれている立場というものが国際的な部面からの観点からこの問題を十分に討論をし、日本農業の保護的立場との調整をはからなければならぬということももちろんわかるのであります。しかし、現状の日本農業の置かれている立場というものをやはり十分に知り尽くした中でその対策というものは当然とられるべきではないか、このように思っているのであります。  そこで、私はお聞きをいたしたいと思いますが、これ通産大臣にお聞きをいたしますが、先般円切りの問題から輸入品の価格引き下げの問題が提起をされてまいりました。この点、閣僚協議会でも議論をされておるようでありますけれども、この点お聞きをいたしたいと思います。
  52. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 円平価が切り上げられたわけでございますから、輸入品はそのまま下がることが当然でございます。輸入価格が引き下がり、消費者物価に寄与せしめるように努力をいたしておるわけでございます。閣僚協議会でも検討をいたしておりますし、閣議のときには、間々総理大臣から物価引き下げに対して具体的措置を進めるように、強い指示も受けておるわけでございます。通産省は追跡調査をずっとやっております。また、業界に対しても引き下げが行なわれるように、流通中間段階でこれが吸収されて引き下がらないようなことのないようにということの要請もいたしております。それだけではなく、実績割り当てということで輸入が行なわれておるために、物価に寄与することができないのであったならば、実績割り当てという制度そのものにもメスを入れ、輸入業者の拡大をはかるという措置さえもとっておるわけでございます。まあ相当、問題に対しては、下がっております。具体的に説明をせよということであれば、自動車その他一五%以上も下がっているものもございますので申し上げますが、まだ下がっておらないものもございます。これらの原因は、輸入先の国情もございますし、また石油等OPECの値上げの問題もございます。向こうで積み出すときのFOB価格が上がっておるということで、自由化をした、また関税を引き下げをした、それから円平価が切り上げられたというような幾つもの値下がりの原因をプラスをしても、輸入価格の下がらないものも中にはございます。しかし、私はだんだん下がっておる、輸入価格というものは、やがては円切り上げの分くらいは当然引き下がるものだという考えに立って行政指導を行なっておるわけでございます。
  53. 工藤良平

    工藤良平君 為替差益が各流通段階で吸収されて、消費者になかなか反映されないという御意見が非常に強いわけでありますが、特にその中で農産物に対するそういった面の批判が強いようでありますけれども、農産物の輸入品に対する通産省の考え方をお聞きをいたします。
  54. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほどの問題、一つ申し上げますが、円切り上げ及び関税引き下げ等に伴う輸入消費財の値下がり状況、クライスラーは一−三%の値下げ、十月一日実施。GMは一%ないし八%の値下げ、十二月二十日実施。フォードは三ないし五%の値下げ、一月一日実施。フォルクスワーゲン一−二%の値下げ、四月の一日実施。エヤコンについては、ウエスチングハウス三ないし一二%、ワールプール二ないし一〇%、一月の二十日ないし二十五日実施。こういう値下げもございます。ですから、先ほど申し上げませんでしたが、まだ万年筆、時計その他も下がっておるものもございますので、だんだん下がってくるということでございます。  なお、第二の問題、輸入の元請業者の問題に対しては、先ほど申しましたように、総輸入元というようなことで、アメリカその他輸出をするところの意思でなかなか下げられないというものもございます。それからもう一つは、先ほども申し上げましたとおり、実績割り当てという制度でございますので、新しい業者がなかなか入れないという問題があります。ですから、そういう問題に対しては、実績割り当てだけではなく、新しい輸入業者を拡大をするということを通知もしており、また、現にそのような措置をとっておるものもございます。いずれにしても、一括輸入というものに対しては、いま御指摘のような批判が非常に大きいということは事実でございますので、これに対する対応策は具体的に考えております。
  55. 工藤良平

    工藤良平君 実績割り当てであるために、業者の拡大ができないということが一つの障害だと、こういわれておるわけでありますが、逆にいうと、あまり業者が多過ぎて、複雑化して、場合によってはペーパー業者というものの存在というものが実質的に行なわれる、それが物価の上昇につながるということはないのか、その点についてお伺いいたします。
  56. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 輸入元請業者が多過ぎてというものはございません。多過ぎる極点というものは自由になるということでございますから、自由になれば競争は激しくなり、当然輸入価格は引き下げられるわけでございますが、なかなか世界的に新しい一つの形態でございますが、日本総代理店というようなことで、外国からの大きなものは、その国その国でもって輸出をする、向こう側からいうと輸出でございますし、こっちは輸入でございますが、輸入元をしぼるという傾向はあります。そこへ持ってきて、通産省では在来実績中心ということになっておりますので、やはり輸入窓口がしぼられ過ぎるという問題はございますが、多過ぎて値下がりの歯どめになっているという事実はありません。
  57. 工藤良平

    工藤良平君 これは、私かつて紅茶の問題で農水で議論をいたしましたときに、逆に中間でリベートだけを取って輸入業務をしているという業者があるわけでありまして、たとえば輸入農産物の取引の場合に、業者が非常に多いということがいわれておるのでありますけれども、その点実態はどうでしょう。
  58. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のような実態が議論になっておることは、私も承知をしております。輸入割り当て権を売買をするということで、実際は仕事をしておらないペーパー業者というのがある。特に、バナナの輸入とかいろんな問題に対しては、それはもう政治問題化したこともございますから、そういう事実は確かにあります。まあ通産省としてはそういう事実のないように、そういうものの整理をするように、実績という美名のもとに、そういう制度のもとにピンはねだけをやっておる、トンネルをやっておるというような状態、中間的なマージンを何段階も分けて取るというような状態は排除するようにつとめております。
  59. 工藤良平

    工藤良平君 つとめております、ということでありますけれども、それは依然として解消されていない。改善されていない。具体的にどうするつもりですか、示していただきたい。
  60. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そこらが非常にむずかしいところでございます。実績中心であるというのは、日米の繊維交渉でも実績をもとにしております。実績というのは、なかなかこれを破るということになれば時間もかかるわけでございますし、その弊害がだんだんと露呈をしてまいって、あなたがいま申されたような批判にこたえて、一つずつメスを入れるということになるわけでございますし、また批判がなくとも、通産行政の上で明らかなものは排除していくということで、私は、去年の七月からそういう姿勢で通産行政の改革を考えております。これは、ほんとうから言えば、割り当てではなく自由に何でも買えるのだと、完全に自由化をしておるなら別ですが、これは割り当ての一定のワクを与えておって、そして輸入価格を引き下げようとするならば、実績中心をやめて、これはワクを入札にしてしまうか、もしくは全部自由にしてしまえばこれはもう下がるにきまっております。昭和初年には、物が下がり過ぎて困るぐらい下がったのでありますから、これは下がるのですが、需要というものが非常にたくさんあるにもかかわらず、国内の状況もありますので、窓口をしぼっていく、しぼるということになると基準がなければしぼれないから、実績によってしぼるということになるので、弊害があることは事実であります。だから、ペーパー業者というようなことで、実際輸入業務を行なっておらないで、過去の実績を買い集めて商売をしておって一〇%も二〇%も輸入ざやを取っておるということが、事実問題にするということの確証があがれば、そういうものに対して処分を行なう、新しい業者にこれを割り当てるということを行なうのは当然でありまして、私はそういう姿勢であります。
  61. 工藤良平

    工藤良平君 それでは企画庁にもう一度お伺いいたしますが、農産物の七〇%程度の価格保証が行なわれているということが非常に重要だということを言っておるわけでありますが、そういった意味からお伺いいたしますが、消費者物価とそれから食料品価格の比較、食料品価格の中でも特に加工食料品——外食の増加というものが目立って、一般農産物というのは逆に低下傾向を私はたどっておるというふうに思っておるわけでありますけれども、その点についてどうでしょう。
  62. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 最近の消費者物価の中で、確かに食料品、特に野菜等は非常に値下がりをしております。それに対して外食費が一向下がらない、むしろ上がっておりますのは、むしろ外食費の中の人件費と申しますか、サービス的な意味の要素が非常に最近人件費その他で上がっておるという点をあらわしておるのかと思います。
  63. 工藤良平

    工藤良平君 農林省にお伺いしますが、農産物の生産指数、それから農産物生産者価格の指数というものはどういう経緯をたどっておるか、概略でよろしゅうございますが御説明いただきたいと思います。
  64. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 農産物の生産指数につきましては、この十年見てみますと、総合いたしましては一二五・八%というふうに伸びております。ただ、御承知のように、米は生産調整をいたしておりますのでむしろ停滞をいたしたわけでございます。野菜は一三七、くだものは一七六、畜産物は二七一というふうに選択的拡大の方向の品物は伸びておる、こういう状況でございます。  先生、もう一つ何でしょうか。
  65. 工藤良平

    工藤良平君 農産物の生産者価格指数。
  66. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) ちょっといまここに数字を持っておりませんが、生産者価格指数は四十三年ごろまでは相当な勢いで伸びてまいりました。そのために農家の所得も上がったということがございますが、米の生産調整、米価据え置きとか、それからその他の畜産物の生産増加というようなことから、かなり最近は停滞的になっております。
  67. 工藤良平

    工藤良平君 さらに農家所得、そしてその中の農外所得とこの農業所得との関連、その点を御説明いただきたい。
  68. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 農家所得は兼業の非常な増加によりまして伸びておりますが、農業所得は、四十五年度、十数年ぶりに前年度よりも減りました。四十六年度は、冷害等のこともありましてかなり減るのではないかということになっておるわけでございます。
  69. 工藤良平

    工藤良平君 農地価格の変動についてはどのような推移をたどっておりますか。
  70. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 農地価格の推移につきましては、最近までわりあいに伸びておりましたが、ごく最近の傾向を不動産研究所の統計、全国農業会議所の統計等で見ますと、最近、純農村の農地価格はわりあいに伸び悩み的な傾向になっております。ただ、都市近郊等の農地価格は、これは非常に伸びているというような、一般的な現状はさようでございます。
  71. 工藤良平

    工藤良平君 いま、ごくわずかな部分でありますけれども、農業の実態というものを見てみますと、非常に現在農業生産というものが低下傾向にある、農業所得も低下傾向にある。そういうことが言えるわけでありまして、そういった意味から、特に比較生産性の問題について、その点について、経済企画庁はどのように見ておられますか。
  72. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 比較生産性の点では、やはり下がっておると、こういうようなことでございます。
  73. 工藤良平

    工藤良平君 比較生産性において、これまた低下をしているわけであります。そういうような状況からして、私は、やはり農産物の価格の安定をはかる、安定的に供給をさせるという意味において、きわめて価格安定というものは重要であるということを主張したいわけでありますが、したがって、特に農業というものが、気象の変化あるいは生産の不安定というものから一時期、一品目を見れば非常に高騰するものもあるけれども、平均的には低下しておるという状態が出てきておる。そういうことを考えますと、私は、この農業の問題をもちろん外圧による問題のみからとらえていくということはきわめて重要であるし、この点について私たちは慎重に配慮し、農業というものを見詰めていく必要があると思うのでありますが、この点について総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  74. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 確かに御意見には同感でございます。しかしながら、やはり先ほど申し上げましたとおり、農業の生産性、これは高めなければいけません。そのために、ある程度国内生産との調整をとりながら、やはり輸入政策も同時に並行して行なわなければならぬ、こういう考えでございます。
  75. 工藤良平

    工藤良平君 もちろん私は、外国の農産物との関係、物価の問題については十分承知をするわけでありますが、そのために、一体日本農業をどうするかということになってくると思うのであります。  そこで、農林大臣にお伺いいたします。もちろんこれは総理に対してもお伺いをするわけでありますが、それでは、いま、日本農業に何を与えていけばいいのか。最も基本的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 具体的に何を与えていいかということはむずかしい問題があると思いますが、先ほどから御議論がありましたように、私は、日本の農業においては、国内、国外、非常にむずかしい問題をかかえております。  国際的には、いまの自由化の問題や円の切り上げ問題とかいろいろございます。ところが、国際的に比較しますと、日本の農産物は割り高でございます。でございますので、このままで自由化が進むということになりまするというと、日本農業というものは壊滅すると、こういうことから考えますと、しかし、そのままで置くというわけにもまいりませんから、できるだけ日本の農業生産が国際的競争力が保てるようなところヘ力を添えていかなくちゃいかぬ。しかし、これは全然そこまでいくというわけにはまいりませんが、その方法をしていかなくちゃいかぬ。  もう一つは、国内的にいいますと、農業の問題は消費者との関係もありまするし、需給のバランスがとれなくちゃいかぬ。需給のバランスをとって、生産が過剰なものは、ある程度、これ、生産を控える。足らぬものは自給度を増すというような方向で、これが自給度を増すような方向に力を添えていかなくちゃならぬ。で、自給度を増させるということになりますと、どうしても価格の問題がそれにからんできます。しかし、この価格の問題も、価格政策だけでやっていこうということはこれは国民全体の経済からむずかしゅうございますが、価格支持政策は行なわれなくちゃなりませんが、価格支持政策だけで農業を持っていけないということになれば、やはり一面において、農業の生産物の生産性を高める。そうして安く供給ができるというような方向に持っていかなくちゃならぬと、こういうことが考えられます。  もう一つは、いま御指摘がありましたように、農業収入よりも農外収入のほうが非常にウエートが多くなってきています。でございまするから、自給度を増して、農業の収入を増させるようにしなくちゃなりませんが、一面において、農外収入も得られる機会——そうでないと、第二種兼業農家というようなものが成り立ち得ません。でありまするから、工業の導入等においても就労の機会を与えて、あるいはまた収入の機会を多くして、農外収入もふやしていくということで所得をふやしていくよりほかはないと思います。  第四の考え方としては、やはり自然環境の問題が非常に強く言い出されておりまするし、農村というものは自然の環境を保持しておるところでございます。でありますので、公害をなくするようにし、一面、農業の持っている自然環境に寄与している面を、寄与面を強めていく。そして自然環境を保護するほうに、農村が、農業が協力していって、そうして日本の国の姿というものをいい姿に持っていくと、こういうようなことが農業に課せられている問題であると、こういうふうに思います。
  77. 工藤良平

    工藤良平君 まあ農業の基本として、いろいろなことが考えられると思いますが、まず、農業政策を考えろ場合には、一体、日本の国でどの程度の食糧を確保するかということがやはり基本になろうと思うのでありまして、佐藤総理は八〇%は確保したいと、このようにおっしゃっておりますけれども、四十六年の農業白書を見ますと、すでに自給率は七五%程度に下がったと言っておるのでありますが、現状のまま推移いたしますと、これは五十二年のあの目標はとうてい達成することはできないというふうに思うんでありますが、その点、総理、どうでしょう。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 少なくとも八〇%は維持したい、かように思っております。しかし、いままでの統計は、御指摘になったように、七五%あるいは七六%水産物を、魚を入れて初めて八一%、こういう数字になっておると、かように思います。そこで、ただいまも農林大臣から、るる生産費を国際価格と競争のできるようにしたいもんだと、こういう話で、いろいろ集約農業というような点について力を述べられましたけれども、私は、何といってもわれわれの食糧ですから、大事な食糧ですから、自給度は高めると、しかし、同時に、それが消費者に便するように、高いものでは困る、できるだけ安いものでなければならない。そうして、この場合は、明らかに言えることは、生産者また消費者だと、こういう立場でございますから、私は生産者と消費者を対立する立場に考える筋のものでもない、かように思っております。したがって、ただいまの消費者の立場に立って、農業の改革、これに積極的に取り組む、これが大事なことではないだろうかと思っております。  ただいまのところ、すべてを直ちに自由化するような方向には考えませんけれど、それにしても、もっと消費者本位に生産が改善されていかなければならない、かように思っております。したがって、私ども、財政あるいは金融あるいは税制等の諸点において、農業の自立また国際的な競争力を強める、こういう方向に立ち向かいたい、かように思っております。
  79. 工藤良平

    工藤良平君 農林大臣、お伺いいたします。  これからの目標として、特に果樹、野菜、畜産という方向に向けられているわけでありますが、畜産を進めていく場合に、たいへん大きな問題になっておりますのは飼料の輸入であります。で、畜産をふやして——もちろんこれは国際競争に勝つための努力も続けなければならぬわけでありますけれども、畜産を伸ばす、しかし、それは飼料の輸入をますます増大していくという非常に大きな問題があるわけでありますけれども、この点についてどうでしょう。
  80. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) もう私から申し上げるまでもありませんが、畜産等においての飼料も、濃厚飼料とか、あるいは草地等の飼料として、自給できるような飼料もございます。でございますので、国外から輸入していかなくちゃならぬものもあります。こういうものは、輸入先を一国だけということじゃなくてやっぱり多面化する。こういうことによって、なるたけ、国外の競争力というものを助長するというか、あおって、そうして、できるだけ安い飼料を輸入するのがいまの状況、それが一番いい状況だと思います。そういう方向へ持っていかなくちゃならぬ。自給のほうは、やはり草地造成というようなこと、こういうことなどもやはり団地的に相当大きく草地造成をやる。あるいはまた、米の転換等につきましても、田を畑に使えるようにして乾田化して草地をつくるとか、あるいは国有林の開放というようなことで、草地をつくって、そこで牛などを飼わせる、こういうような方法。ですから、飼料の種類によっていろいろ問題があると思いますが、それに適切な方法をもって飼料がまかなえるように、あるいは飼料が安く手に入れられるようにと、こういう方向へ持っていきたい、こう考えております。
  81. 工藤良平

    工藤良平君 畜産を進める場合に、飼料が非常に問題になるわけでありますけれども、もちろん私も、たとえばトウモロコシ一キロ百三十円の国内産を使うか、一キロ三十円の外国産を使うかといえば、それは経済的に見れば三十円を使うことは当然でありますけれども、ただ、いま言ったように、畜産をふやす、それに輸入がどんどんふえていくということになると、自給力は低下するわけでありますから、そこにやはり畜産振興における国内における対策というものが、いわゆる飼料の生産というものに相当な力を入れなければならぬということは十分に御理解をいただけると思うんでありまして、そういう意味からぜひ御努力をいただきたい。特に総理に、私はそういったことを考えてみると、いまの八〇%という自給率はオリジナルカロリーで計算してみますと、大体五〇%を割っているんじゃないかということまでも言われておるわけでありまして、そういう意味から、特に外国農産物の輸入という問題につきましては、ただ単に、私は国内農業を守るという視点からだけではもちろんございません。全体的な、総合的な考え方は必要でありますけれども、ぜひ、やっぱり日本の農業はそういう立場に置かれているという観点から、貿易の自由化については、総理みずからが、ぜひ私は慎重な態度をとっていただきたい。このことを、特にひとつ総理考え方をお聞きいたしたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、あえて、私、議論するわけではございませんよ。ただいまの日本農業の大事さ、これは島国でありますだけに、できるだけ自給度を高める、こういう基本的姿勢を持たなければならない。このことはもう多言を要しません。しかしながら、ただいま申しますように、国際価格と非常な開きがある。これは何としてもそのままにしてはおけない。だから、どうしたら国際価格に近づき、あるいは競争力を持ち得るようになるか、そういうことを考えなければいけないんじゃないか。そういう意味で、もっと消費者の立場に立っても農業というものと取り組まないと、ただいままでのような考え方ではいけなくなっているということを指摘するのでありまして、私はかつての重商主義の英国、これ自身が、農業は外国から依存すりゃいいじゃないか、安いものを買ってきたらいいじゃないかと、かように申しましたが、さきの戦争の結果、この重商主義の考え方が非常な訂正を要する、少なくとも、その国の国民の食糧、その大部分は国内で自給体制、それをとるべきだ、こういうことに目ざめたようでございます。私も、まさしく日本の場合においても、そのことが言えるんだ、かような意味において、やはりわが国の農業も、そういう方向に進まなければならない。しかし、そのためには何といっても、あまりにも国際価格と開きがあるようなことではいかぬ。これはどういうよう改善にすべきか、そこらにいろいろなくふうがされている、そのことを私は見受けるのであります。この制度をどんどん進めていって、自給度をある程度——どうしても大部分は国内産に依存する、こういうことにしたいと思います。ただいまの米については、そのとおりにできておりますが、それでもまだ外米が入っております。その他のものになりますと、ただいま議論された飼料、これなどになると大部分が外国のものだ。これは一つ牧畜ばかりではございません。養鶏、養豚等の飼料にしても外国から入ってくる、そういう状況ではこれはよくないと、ここらにくふうの余地が多分にあると、こういうことを指摘したいと思います。
  83. 工藤良平

    工藤良平君 農林大臣にお伺いいたします。  何といいましても、やはり農業の場合には、農産物の価格の安定が必要でありますけれども、米価の問題について、ことしの米価をお上げるにな意思があるかどうか、その点お伺いいたしたいと思います。
  84. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 生産者米価の問題では、再々私も御答弁申し上げておるのでございますが、いままで生産者米価は抑制するのだと、押えのるだ、押えるのだと言って、ここしばらくやってきました。しかし、私はこの態度はよくないと思う。やはり公共料金なども押える押えると言っていながら上げてきておるような現状でございます。でありまするから、公平の観念から言いましても、押える押えるということはいかがかと思います。しからば上げるのかということでございますが、それはまだきめておりません。御承知のように、生産者米価の決定は、経済事情とか、あるいは生産費とか、そんなものを基礎として算出して、それを米価審議会に諮問して、その上で決定するということでございまするから、そういう資料、材料を検討してからでないと、どういうふうにするかということはわかりません。でありますので、そういうことの検討の上において決定するということを、いまの段階では申し上げるよりほかありませんが、しかし、押えるという方針では、私はいけないと、こういうふうに考えております。
  85. 工藤良平

    工藤良平君 ぜひ、その点については農民の要請に答えていただきたいと思います。  それから、次の問題は、御承知のように、過剰米対策で米作の転換が行なわれました。しかし、それが野菜供給を安定化し得ない、あるいは畜産の飼料を増強し得ないという状態にあるわけでありますが、これらについては、もちろん流通機構なりあるいは価格の保証、いろいろの問題がありますが、私は、特に基本的な問題として、土地利用の総合性が欠如しているのではないか、基本的な問題だと思うのでありますが、この点について農林大臣の考え方をお聞きをいたします。
  86. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにお話のように、土地利用につきまして、農業面と、農業外の面との調整も十分でございません。たとえば、市街地の線引きなんかの問題もありましたけれども、これについても問題が残っております。農業だけの調整ということにつきましても、実は農業生産の国内的な地域分担、あるいは地域における適地適作の農産物の生産ということで、四十六年でしたか、五年でしたか、地域指標というものを出しまして、その指標もまだ下まで下がっておりません。国としての指標は大体つくりました。それを県でまた県内の適地適産の指標というものを、ガイドポストを進めていくわけになっておりますが、できている県もございますが、まだできていない県もございます。でございますので、まだ全県下、全国でそれができておるという段階ではございません。しかし、そういうものを進めていくと、これが自給体制を整えていく上にも必要であろうと思います。地域分担、ことに作物等の地域分担、あるいはそういうようなこともきめていくことが必要だと思いまして、これは進めております。そういう段階でございます。
  87. 工藤良平

    工藤良平君 土地の総合的な利用という観点に立って、私は特に個別水田のかんがい排水条件の不備というものが非常に大きな障害になっておると実は思っておるわけでありまして、そういう意味から、特に水田の豊度、いわゆる豊かさです。地味の問題でありますが、そういう増強は、当然米転作の土地条件の整備ということであり、米の反収増加は、食糧確保の視点では、米の減反の可能性というものを整備をしていくという図式はもちろん描かれてくるわけであります。それを転作、あるいは野菜の安定的供給ということに導く条件こそが、私は流通体制の整備、あるいは生産者価格安定というもののいろいろの施策の総合的な結集として大切なのではないか、このように実は思っておるのでありますが、この点についてもう一ぺんお伺いいたしたいと思います。
  88. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知と思いますが、土地の土質といいますか、土壌の検査等もしております。でございますので、やはり稲作なら稲作で、最も適したようにして、それで米の生産性が上がっていくことが必要でございます。それから、いまの転作につきましても、私は土地の利用関係からいって、実は土地改良などにつきましても、私は特に考えておるのでございますが、従来、明治初めからずっと土地改良は水田造成と、米をつくることにばかり集中してきました。おかげで、米が非常に生産が上がったわけであります。しかし、転換というような問題もありまして、この水田が畑作として使用できるように、乾田として使用できるような方向も、強力にこれから進めていく。田が畑になる、そうして、田としても使えるが、畑としても使えるということになっていけば、これが転換に非常に役立つわけであります、畜産のためにも、あるいは野菜のためにも。そうすれば選択的拡大の方向にも十分進め得るし、米の生産調整の転換面にも役立つと、こういうことで、土地改良なども、そういう土地の状況に応じて畑作地帯になるようなところはかんがいをよくして畑地帯としても、畑作としても使えるような方向に土地改良も相当進めていきたいと、こういうことでいまやっておる次第でございます。
  89. 工藤良平

    工藤良平君 そのような基本的な問題を進めながら、私は次の大きな問題としては、特に農村では若年農業労働者の確保というものと老人対策、これはきわめて重要ではないかと思うのでありますが、その点についてお考えをお聞きいたしたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 老人対策また若年労働、この二つがいまの農村における重大な問題だと、かように思っております。また、過疎地帯と、かようにいわれるところにおいてはなおさらこの点がはなはだしいと、かように思っております。いわゆる牧畜農業から機械農業に変わっておりますので、非常に労働力は減ってまいりましたけれども、ただいま言われるように、そのために老人でもあるいは若い人もきわめて少数で農業、現在の生産を維持するには事足りると、かような状況でございますから、そういう意味で、この点は片一方で進歩は見られるが、同時に過疎対策上もこれは一つの大きなほうっておけない問題だ、かように思います。でありますから、一面で兼業農家、こういうものも奨励せざるを得ないというのが現状でありますし、工場の配置等も適正であるべきだ、そういうことがいろいろ考えておられると、かように私は理解しております。
  91. 工藤良平

    工藤良平君 きょうは時間がありませんから、残念ながら内容に深く触れることができないわけでありますけれども、私は現在の農村の置かれている立場からいたしまして、生活環境、社会環境を整備していくということはきわめて重要だと思うのであります。それが国際競争力をささえていく一つの大きな支点になければならぬと思います。したがって、問題となりますのは西ドイツのエルトルプランというのが出されておりますけれども、これについて農林省としてはどのような評価をしているか、お伺いしたいと思います。
  92. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 西ドイツについては農林省からもいろいろ職員等を派遣いたしまして新しい農村計画のつくり方等を勉強してきております。農林省といたしましてもその点を参考にいたしまして直ちに全国的に事業化するのは非常にむずかしいわけでございますが、生産の基盤整備と生活の基盤整備を合わせました総合的な農村整備にパイロット的に着手しようという方向で今後進めていきたいというふうに考えております。
  93. 工藤良平

    工藤良平君 厚生大臣にお伺いいたしますけれども、厚生省としてもやはりこの老人対策の問題については一般的な問題ではなくて、やはり農業という視点からさっき言ったいろいろなもろもろの条件から当然いろいろな手だてが必要だと思うのでありますけれども、その点についてどうでしょう。
  94. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 農村における老人対策はいろいろの問題がございます。まず第一の問題は過疎の問題であります。第二の問題は農村における生活関係と、ことに老人の成人病対策、そういったようなことを中心といたしまして、老人の医療対策といたしましては、成人、老人の健康診査というようなものを中心に置いて今日進めておるわけであります。もちろん農村生活また栄養問題というものも老人の健康に大きな影響がございまするから、したがって、栄養の指導というような面も若いうちからやる必要があるということでやっておるわけでございます。
  95. 工藤良平

    工藤良平君 最後に質問をいたしますが、現在いろいろな農政が打ち立てられ、具体的におりてきておりますけれども、要は見通しの綿密な計画というものが私はきわめて要請されると思うのでありまして、その綿密な計画をつくるためにどうするか。やはり上意下達ではなくて、実際に農業を意欲的にやっている人たちの意見をどう吸い上げていくかということが私はきわめて現在の農業では必要ではないか。したがってそのような仕組みというものをこの機会にぜひつくる必要がある。この点について農林大臣の御意見を伺います。
  96. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私はそう考えます。いま、私のほうで団地的な農業、自作農から発展した自立農家の育成というようなことは、これは捨てる問題じゃない、いい問題でございますけれども、実際にはそれがなかなかいきません。そういうことを考えますと、再々お話がありましたように、兼業農家も含めて団地的に農業というものをやっていかなくちゃならない、これはなかなか農業者のためにも、日本の経済全体からいっての農業の役割りからいってもこれを進めていかなくちゃならぬと、こう思います。そういうことになりますと、どうしても組織化をしていかなくちゃならぬと思います。米の生産調整の問題もほんとうは組織化すれば、農業者自体がこれは考えることなので、政府が干渉することじゃないことなんです。そういう点から考えましても組織化が必要でございます。でございますから、団地の問題その他新しく農業をやっていくというためにPRといいますか、組織をしていくような指導をしていこうと、こういう予算も取っておって、そのほうに進めていこうと考えております。また、農業団体という組織もございますので、そういう組織との提携も十分やっていこう、こういう方針をいま進めておる次第でございます。
  97. 工藤良平

    工藤良平君 最後に、いまいろいろ私は質問をしてまいりました。まだまだこれは何日かけても言い尽くせないわけでありますけれども、農業は非常にたいへんな時期に来ておるし、農民みずからも真剣であります。ただ残念なことに現在の政治というものは選挙のためには農民のためだとは言いますけれども、ほんとうに農業に命をかけるという政治家が少ないのであります。私は、その農民の真剣な気持ちにこたえて、総理みずからもこの問題について真剣に農民に私は何かを与えていただきたい、こういうことを申し上げて私の質問を終わり、あと余った時間は上田君に譲りたいと思います。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう工藤君みずから経験され、またみずからがこの指導的立場に立っておられると、かように思いますので、私、そういう意味から私の意見を申し上げるというよりも、たいへん、質疑応答、これを通じまして私も非常に啓発されたと、かように喜んでおります。ことに、いまの農村の過疎状態に対して、これはもう医療機関をも含めて、あるいは教育問題、学校法の問題ですね、それらを含めて、これはたいへんな問題だと、かように思っております。いままでのところ一般の農村の考え方を取り上げろとこう言われておるもの、これが一人一人の農家ではなくて、やはり組合結成、これを急いでおると、かように思っておりますが、いまの農協自身がやや時代的に古い形に固定化されつつある、そこらにも、やはり殻を破るという、そして時代の要請にこたえる、こういうものでなければならないように思います。私はその点でまだまだ取り組むべき問題がいろいろある。そして先ほど農林大臣からお答えいたしました集団耕作、協業の問題、これなどもただいまの農協自身が積極的に音頭をとることによってこの状態も変わってくるだろうと思います。また、同時に、販売機構も持っておりますから、農協自身がその販売機構を十分にフルに働かすことによって、これが肥料その他の確保にも役立つだろうし、また同時に、生産物の売りさばき等についても、やはり農協等が今度は音頭がとれるのじゃないだろうか、かように思います。したがって私、農家の方々の御意見を吸い上げる機関としては、ただいまのところは不足はしていないと、しかし、それがやや古い形で固まる、それをやはりこわしていく、新しい息吹きをやはり吹き込んでいく、このことがどうも必要なんではないだろうか、かように思います。私は保守党ではありますけれども、そこらの新しい時代がいま目ざめつつあること、そのことは見のがせないと、かように思う次第でございます。これはひとつ党派を越えてただいまのような問題と取り組んで、そうして真に消費者、生産者が一体になるような農業に育成強化したいものだと、かように思っております。
  99. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で工藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  100. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、須原昭二君の質疑を行ないます。須原君。
  101. 須原昭二

    ○須原昭二君 私はいま大きな問題になっております日本の荒廃した医療の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、その前段で一、二点外交問題等々についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  きのうの朝の新聞報道によりますと、岩国から南ベトナムに向けてアメリカの海兵隊とF4ファントム戦闘爆撃機が緊急増派されたと伝えております。日本本土の米軍基地から直接戦闘行動に出る場合は当然事前協議の対象となると私たちは理解をいたしております。重大な問題です。事前協議があったのかどうか、その点を明確に御答弁を願いたいと思います。
  102. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事前協議はございませんです。ただし、数日前にアメリカ政府のほうから、岩国基地の飛行隊を中心としまして駐とん部隊を南方に移動させると、そういう通報がありました。そこで問いただしたんですが、これは戦闘作戦命令を受けておらぬと、したがって事前協議の対象とすべきものじゃないと、こう考えると、ただし、そういう重要な問題でありますから通報しますと、こういうことでございます。
  103. 須原昭二

    ○須原昭二君 戦闘行動に出ないというお話でありますが、現実には南ベトナムで戦闘行動に出ておるのです。その点が重大なんです。事前協議がなかったということは、このアメリカの、本土におけるところの基地というものが、アメリカ軍によって自由に使用されておる、そうして出撃が自由である、こういうところに大きな問題があるわけであって、この点は米国に対して、アメリカに対して抗議をすべきである、私はそう思いますが、どうですか。
  104. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本の基地を利用しまして戦闘作戦行動をする、これはまさに事前協議の対象となるわけであります。しかしながら、戦闘作戦行動をするということじゃないんです。つまり、その時点におきましては、戦闘作戦行動の命令を受けておらない、南方に移動する、それからいずれかの地点において戦闘作戦行動に移るかもしらぬ、そういう状態でありますので、ただいまの日米間の関係からいいますると、これは事前協議の対象にはならぬと、そういうことです。
  105. 須原昭二

    ○須原昭二君 まさにその御答弁は私は詭弁だと思うのです。この点では私たちは納得できません。このような状態では、事前協議というのは形だけであって、実質的には事前協議はないにひとしいと言って過言でないと思います。どうですか。
  106. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の基地を利用してそこから戦闘が行なわれるあるいは爆撃が行なわれる。そうすると、わが国は報復爆撃を受けるかもしらぬ、そういう心配があります。そうじゃないのです。わが国の港を出るときにおきましては、これはまだ何らの戦闘態勢じゃない。それが他の地点に移動する。その、他の地点から今度は爆撃に移ると、こういうようなことになりますると、その地点が基地になる。そういうことでございますので、私どもは、これは事前協議の対象ではないと、こういう理解でございます。
  107. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連。  外務大臣に伺いますけれども、その海兵隊なりF4ファントムが日本の基地を出るときには、戦闘命令を受けておらない、したがって、事前協議はなかったんだ、こういう趣旨の発言だと思うのですがね。そこでお伺いしたいのは、一体どの時点で戦闘作戦命令を受けたかということを、外務省としては確認できる手段、方法があるのですか、その点。
  108. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 少なくとも岩国を出る時点におきましては、これは戦闘作戦行動かと、こういう質問をしておるのです。それに対しまして、そうじゃありません、まだそういう命令を受けた部隊ではありませんと、こういうことをはっきり申しております。
  109. 矢山有作

    ○矢山有作君 はぐらかさんでください。あんた、戦闘作戦行動ではないとおっしゃったのは、岩国を出る時点で戦闘命令を出しておらないから、南方に移動さしただけだから、したがって戦闘作戦行動ではないと、こうおっしゃったわけでしょう。そうすれば、岩国を出る時点で戦闘命令を受けておったか受けておらなかったかということを日本政府は確認をする手段があるんですかと言っているわけです。それがないのに、岩国を出る時点では戦闘命令を受けておらなかったから、また、アメリカは戦闘命令を出しておらないと言ったから、南方に移動さしただけだから、戦闘作戦行動に出たとして事前協議の対象にはならぬのだというのは、あなたのほうで、アメリカの言うことは何でもかんでもまるで真実だと信じていくという従来の体質をそのまま持ち続けておる証拠になるわけです。その点を聞いているのです。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカ政府に確認を求めておるわけです。その確認を信頼をする。そのほかはない。どういう内部組織になっているか、これは私どもにはわからぬ。しかし、アメリカ政府——わが信頼するアメリカ政府がそう言っているのですからそれを信頼する、そういうことでございます。
  111. 西村関一

    西村関一君 関連。  私はいままで関連に立っておりませんが、総理に御質問するのは総括のときでありますので、私はあえて関連質問に立ったわけであります。  それは、ただいま須原委員からまた矢山委員から質問がございました事前協議の問題でございますが、いままで事前協議の対象となった事例がはたしてあったでございましょうか。いまのような質疑と外務大臣のお答えの中におきましても明らかでございますように、明らかにベトナムの戦闘行為に派遣されておる、すでにその態勢に入っておるということが報道せられておりますのに、これが事前協議の対象にならないということは問題だと思うのでございます。その点が一点。  それから二点は、レアード・アメリカ国防長官の発言あるいはジーグラー報道官の発言等によって見られますように、アメリカの姿勢はベトナムに対してますます強い姿勢を示しておるのであり、ベトナム戦争が終結に向かいつつあるかのごとき印象を一般に与えておりましたやさきに、ますます拡大していく公算が出ておるのであります。ハノイ、ハイフォンの爆撃もあり得るというようなことを言っておるんであります。十七カ年に及ぶところのアメリカとベトナムとの戦闘がいまなお終息しないで拡大の一途をたどっておるということは、われわれとしてもこれは看過することのできない現実でございます。アメリカとパートナーシップをとっておる佐藤政府といたしましても、この戦争のためにアメリカの経済は破局に向かっておりますし、アメリカの国威も大いに失墜をいたしております。この時点におきまして、政府はこのベトナム戦争をどのようにこれを受け取っておられるか、どのように日本政府としてはアメリカに対して対処するお考えを持っておられるか。  そして三つ目には、佐藤・ニクソン共同声明の中において、ベトナム和平が沖繩返還予定日までに実現しないときには、「そのときの情勢に照らして十分協議する」。つまり、再協議の事項がございます。総理は「インドシナ地域の安定のため、果たし得る役割を探求している」という文言がございます。これはポスト・ベトナムの経済協力の点を意味しておるかと思いますけれども、この時点においてどのように戦争を終結せしめるかということに対して真剣に総理はお考えになっておられるんじゃないかと思うんでございます。その点を私は伺いたいんであります。  いまのままで、いまのような事前協議の取り扱い方では、結果的にはアメリカのベトナム戦争に加担するということになるかと思うんでございます。こういうようなことを続けておりまする限りにおいて、ベトナム側は絶対に屈服しないばかりか、日本に対しても、日本の佐藤政府に対しても、大きな疑惑と反対の意思を表明するであろうということを私は心配するんであります。その点、外務大臣と総理大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず事前協議の過去のケースでございますが、これはそういうことはございませんでした。ベトナム半島につきましては、私ども非常にこれを心配しておるんです。昨年の暮れまでの状態では、アメリカの撤兵が相次ぐということになり、これはいい傾向になってきたなと、こういうふうに判断をしておった。そういうような中において、南北ベトナム両方において和平をこいねがうと、こういう空気も出てきたわけであります。さればこそ、西村先生もたいへん御心配になって、みずから北ベトナムにおもむかれましたが、政府においても三宅課長を派遣すると、そういうような行動をとると、非常に積極的な行動をとってきたわけなんです。ところが、米中会談がことしになって行なわれる、そういう時点が来たわけであります。私はこの米中会談の成り行きを見ておりまして、非常に実は内心心配しておったんです。アメリカに対しましても、私はその点を率直に私の見方として指摘をした。ということは、北ベトナムはこの米中会談に対しましてあまりいい感じを持っておらない、そういうふうに思ったのであります。そこへ持っていってソビエト・ロシア、これも非常な重大な関心を示す。そういうようなことを総合して考えますると、これは米中会談がアジア聖体としては緊張緩和の雰囲気をかもし出す。しかし、事、ベトナムにつきまして、これはそう簡単なわけにはいかないんじゃないか、そういうふうな判断をしておったんです。そのやさきに今回の事態になった。私は非常にこれは不幸なことであると、こういうふうに思います。しかし、早くこれが終結をいたしまして、そうしてパリ会談が再開される、そうしてジュネーブ協定の精神に従って南北の間に和平が実現をする、これをこいねがっております。そうしてわが国といたしましても、その間におきまして何か尽くすべき役割りがありますれば何とかいたしたい。これは西村さんと同じ気持ちでおります。  なお、ニクソン・佐藤会談におきまして、沖繩に関して返還問題に関連する協議が行なわれると、こういうことになっております。しかし、これは沖繩返還の実態がどうなるか、ベトナム状況がどういう変化を及ぼすかということについての協議でありますが、私どもは今日のこのベトナムの状態、これは沖繩返還の実態には影響はあるまい、こういう判断をいたしております。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外務大臣から詳しくお答えいたしましたが、私からつけ加えることはございませんけれども、事前協議の対象となったことはないと。しかし、私のほうで疑問があれば随時協議はできるのでございますから、当方で問題を提起しても差しつかえないことでございます。したがって、この点では先ほど来言われるような点が一つの問題でございますから、これは十分随時協議の形で相談を持ちかけたいと思います。  また第二の問題、これはたいへん私、残念に思うのですが、ニクソン大統領の訪中——やはり北京もこれについて関心を示しておると、また、パリでは片一方で平和交渉が行なわれていて、しかし、ニクソン大統領の訪問と同時にこれも中止になったと、こういうような状況であり、今回の新聞の報道を見る限りにおいては、どうも北からの非武装地帯への攻撃、これがきっかけになっておるようでございますし、その南下を防ぐ、こういう意味で南のほうのベトナム軍、同時にまたアメリカ軍、これが共同防衛と、こういうような立場で立ち上がっておると、かように新聞を見る限りにおいては私は理解せざるを得ないように思います。  それから第三点の問題につきましては、ただいま申し上げたとおり——外務大臣がお答えしたとおり、私はこれによって沖繩返還があらためて協議されるような問題だとは考えておりません。
  114. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡潔に願います。
  115. 西村関一

    西村関一君 ただいま総理及び外務大臣から御答弁がありましたが、来たる十五日にキッシンジャー特別補佐官が日本にやってくると伝えられております。その時点におきまして、いま国会においても問題になっております事前協議の対象にはならないという政府の見解でありますけれども、こういう事態に対して、はっきりした国民の意思を代表して、ベトナム戦争終結のためにパリ会談に戻れということを強く要望してほしいと、こう思うんでございます。そういう点につきまして、なお私はいまの御議論に対しまして言うべきことは多々ございますが、関連でございますから私はこれ以上申しません。ただその一点だけ最後に政府の見解を承っておきたいと思います。
  116. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) キッシンジャー補佐官の来日は、キッシンジャー補佐官自身がアジアにつき、特に日本についての知識が少ない、友人も少ない、この際に日本に対する理解を深めておきたいという、そういう趣旨でやってくるんです。公的な任務は一切持ってきません。しかし、私の尊敬する西村さんのせっかくのお話でありますので、私も会談をする機会がありまするから、私自身の見解といたしまして、ベトナム和平を早く実現すべき旨の要請はぜひいたしてみたいと、かように考えております。
  117. 羽生三七

    ○羽生三七君 簡単に一点だけ……。  事前協議の場合、必要があれば日本から随時協議を求めることもできると、こういうことではそのとおりであります。ところが、随時協議を求めましても、アメリカ側は日本の港を出るときにはそういう意思はなかったと、こう言えば、これでおそらく終わりになってしまいます。そこで、私は、こういう問題をお考えいただきたいと思います。つまり、日本の港を出たときには全く実質上戦闘行動を起こさなければならぬような客観的な条件は何もなかったと。これはまあ問題外であります。ところが、最初から日本の港を出るときから作戦行動を持つ意思を十分意思を持ちながら、しかし、アメリカとしては、日米関係等を事前協議の問題を考慮して、ある一定の地点に行くまでは命令を発しない、これが慣行になっていまおるんですが、なれば、これは永久に事前協議はあってもなくても同じことであります。かつて偵察機が朝鮮で撃墜されたときに、原子力空母エンタープライズを主力とする二十数隻の大艦隊が佐世保を出たときに、私は緊急の質問をしたことがあります。それでも事前協議の対象にならないとお答えになった。ですから、こういうことでいくならば、すべて全く言われるごとく事前協議は空洞化であります。そこで、私は、安保を急に改定しようなんといったって、これはできそうもありませんから、あらためて協議を求めて、いま申し上げたとおり、実際上港を出たあとに戦闘作戦行動を行なったような場合、そういう場合におけるこの問題の取り扱い方について一度日米間で根本的な意見の交換をする必要があると思います。これは本来なら事前協議に関する基本的な問題を改定しなければいけませんが、それはいま急に申し上げても無理でしょう。しかし、日米間の意思を統一して、結果的には戦闘作戦行動に加わることは明らかであるが、日米間の事情を考慮して、港を出ときだけその命令を発しないという、つまり、結果的なことはもう明白であるのにもかかわらず、そういうやり方をいましておるわけですね。これについて私はすみやかに日米間で何らかの問題の解決をはかるような意思統一をしなければ、この事前協議というものは全くあってもなくても同じことであります。日米安保条約の歯どめといわれるこの問題の根本にかかわる私は重大な問題だと思う。これは真剣にお考え直しいただかなければ、全く安保条約というものは、それだからこそ危険で即時やめたほうがいいという議論になるのはこれは当然なことになる。これが歯どめとおっしゃるのなら、歯どめに値するようなことをするにはどうしたらいいかをあらためてひとつお聞かせをいただきたい。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは抽象的に言うといろいろ議論もありましょうが、この具体的な問題、それに突き当たりますと、これは事はそう簡単な結論は出ないんです。つまり、岩国からF4戦闘機隊がフィリピンに移駐をする。これはどういう趣旨かというと、おそらくベトナムの情勢が緊迫化しておる。それに対して体制がえをアジア全域にわたって米軍がやっていると、こういうことなんだろう。しかし、今度は、そのフィリピンの基地からはたして出撃というか戦闘行動に移るのか移らないのか、その辺はまたベトナムの状況にもよってくるわけなんだろうと思う。そういうようなことで、いま、羽生さんは、岩国を出るときには戦闘行動に移るんだ、そういう意思があるんだと、あるんだが、日米安保条約の関係があるので、それであえてしないんだと、そういう命令をあえて出さないんだと、こういうような受け取り方をされておりますが、必ずしもそういうケースじゃないように私は考えるわけです。さればこそ、アメリカ政府は堂々と情報提供をしておると、こういうふうな状況なんです。しかし、事前協議の運用の問題、これは総理からもいまお話がありましたが、まあ客観情勢というものがだんだん変わってきておる、そういうふうな状況のもとにおいてどういうふうにこれを運用していくか、これは一つの問題点であると、こういうふうに考えます。事前協議全般にわたりましてまたこれから検討をするという時期になろうかと、かように考えます。
  119. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま先輩の羽生さんから一応新しい提案が出ておりまして、運用について今後日米で十分話し合えと、こういうことですから、これは後に問題を残したいと思います。  いま一つ新聞報道ですが、これは一昨日の午後竹下官房長官機密保護の問題について記者会見をされております。佐藤総理が個人としてかねて国家機密保護法の必要を感じていることは確かです、しかし、これができるかは国民社会的な背景が熟することが必要であると、こう語っておられるのですが、まだ立法作業に入っていないからいいということでこれを看過するわけには私はまいりません。なぜならば、そうした意識をもって現実の政治を運営するかしないかでは大きな違いがくるからであります。百歩譲って、いや、万歩譲って、かりにも国民社会的にその必要が高まった、その段階総理が初めて機密保護法が必要だと発言するならともかく、必要だという前提に立って政権をあるいは政治を運用するならば、これはいま持っておられる絶大な政治権力のもとでいかようにも世論操作が私は可能であると思います。したがって、八日の発言は世論操作開始の私は進軍ラッパではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも発言のしかたもなかなか勇壮な進軍ラッパというようなことばを使われますが、さようなものでは絶対にございません。これは私が平素考えていることがやりとりの場で偶然に出たと、かように御理解をいただきます。
  121. 須原昭二

    ○須原昭二君 かつて、総理は、国民に国を守る気概を持てと訴えて、ばく然とした国民の共感を得て、あの日米安全保障条約の自動延長を強引に乗り切った。最近では、軍事力の増強、特に四次防の予算の先取りなど、勇み足がきわめて露骨になってきたと思うのであります。こうした過去の国を守る気概を持てというわれわれの経験からして、私としては世論誘導の底流と見なさざるを得ないのです。特に、先ほども機密というものは政府がきめるものだ、政府の一方的な考え方である、こういうふうに指摘をされているだけに、私は非常に心配でなりません。平和の時代に生き、平和を志向する限り、機密保護は、国や政府秘密国民からおおい隠す以外の何ものでも私はないと思うのです。国民を見ざる聞かざる言わざる、三猿の猿にするのである、こう言わざるを得ないし、また、知らしむべからず寄らしむべしという権力政治の再現であると私は思う。したがって、民主主義の日本の現状においてきわめて重大な発言だと思うわけでありますが、総理発言を撤回するよう私は要望したいと思います。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだ具体化しておりませんから、これは撤回するとかしないとかいう問題でもないと思っておりますが、私は、しかし、ただいま言われるように非常な誤解があれば、これは撤回するにやぶさかじゃございませんけれども、私の頭の中を変えるわけにもまいりませんから、これはひとつお許しを得たいと思う。で、それは偶然のことで私がたまたましゃべったということですが、具体化はしておりません。また、もちろん閣議にもはかったような問題でもございませんから、その辺に誤解のないようにお願いしたい。
  123. 須原昭二

    ○須原昭二君 撤回するにやぶさかでないという発言でありますが、しかと本気で私は受けとりたいと思いますが、いいですか。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この種の問題は慎重な上にも慎重でなければならないと、そういう意味でおしかりを受けることは、私も甘んじてお受けいたします。
  125. 須原昭二

    ○須原昭二君 善意に解釈をして、次の本題に入りたいと思います。  私は、医療の荒廃が叫ばれておる今日、医療制度の改革が検討されなければならない。   〔委員長退席、理事西田信一君着席〕 まず、現状をつぶさに見きわめる必要があると思います。そういう点から今日の医療制度の問題点についてお話を聞きたいわけであります。まず、健保法の改正に関連をして厚生大臣にお尋ねをいたしたいのですが、健保改正案は赤字対策である。この赤字対策の中で数年におけるところの今日の赤字の状態をどう掌握されているのか、御報告を願いたいと思います。
  126. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 健保の改正問題は、ただいま提案をいたしておりますのは政管健保の財政対策でございまして、これは、おとりようによっては、あるいは赤字対策と、こういうことを言われても、さようであろうと思います。いますぐ追っかけて御提案を申し上げ御審議を願いたいと考えておりますのは、保険全体を通じてのあり方という面からの改正をお願いをいたしたいと、かように考えておるわけであります。  そこで、政管健保の財政対策をやる必要があるという点につきましては、御承知のように、政管健保は、いわゆる被保険者の保険料の基準になる標準報酬が比較的低い、そして高年齢層も抱えているというようなことから、財政的に非常に窮屈になってきております。そこで、この制度のままでいくと仮定した場合に、どうしてこの赤字を克服していくかということが要点になっておるわけでございます。もちろん、保険経済全体から考えまして、これは、政管健保あるいは組合健保あるいは国民保険全部を通じまして、やはり今日の疾病構造の変化、あるいはある意味におきましては経済の発展に伴うそれが国民の健康に及ぼす影響というようなものも影響をしているであろうと考えます。また、日本の年齢構造が非常に中高年者あるいは老人が多くなっている。そうすれば、やはり疾病にかかる率も多くなってくる、療養費も多くなってくるというようなことも影響するであろうと考えます。   〔理事西田信一君退席、委員長着席〕 全体の医療対策といたしましては、やはり国民の健康の保持、疾病の予防ということにも重点を置いて、そしていわゆる狭い意味の医療にかかるということもできるだけ少なくしていくという方策も肝要であろう。また、適切な医療を適切に与えるという意味から、医療の供給体制を整えることも肝要であろう、かように考えまして、さらに引き続いて医療の供給体制、これは健康の保持、予防、それから疾病に対する治療、それからリハビリというものを含めまして、そういう供給体制を整えるための医療基本法も近く御審議をいただきたい、かように考えているわけでございます。
  127. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま赤字の内容について額を聞いたわけですが、これはもう正式に提案をされてからひとつ質疑をいたしたいと思います。  したがって、いま予防という問題が、よくことばに出てまいりました。今日、日本の医療制度は、治療が先行しておる。私は予防が先行しなければならないと思うわけです。特に、三十年には百人に対して三・八人、今日では百人に対して十五人というような有病率になっておる。このままで行くと一億総患者でないかというようなことばさえ飛んでおるわけですが、一オンスの予防は一ポンドの治療にまさるという外国のことわざがあります。進んだ国はすべて予防的健康管理が進んでおる、これが医療の重要なポイントになっているわけですが、日本は予防が二の次になっている。予防先行、予防重点について基本的にどうお考えになっておるのか、その点について総理からひとつ御説明を願いたいと思います。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はたいへん健康体ですが、ただいま御指摘のように絶えず予防に注意していると、このことははっきり言えることでございます。やはり、いまの予防、これは特別なワクチンなどもずいぶん発見また普及いたしております。しかし、このごろは種痘等がいろいろまた問題になってくると、こういうことでもあるし、あるいはかぜの予防注射、これなどもいろいろ問題になっておる。こういうことで、予防というものも簡単ではございませんが、しかし、予防の大事なことは私が申し上げるまでもないところであります。また、そういう意味で、やはり国家的な問題としてこれをまず取り上げられる、このことは、私自身健康に恵まれておるだけに、その点は強くみずからが理解し、また、そうなくてはならない、かように思っております。
  129. 須原昭二

    ○須原昭二君 総理は、余裕もありますし、そういう立場にありますから、一週間に一回ずつ健康診断を受けられておる。だから御健康なんだと私は思うのです。あなたではできるけれども一般国民はできないのですよ。特に、日本では、学生児童なんかは学校保健法、あるいは労働者では労働基準法、あるいはまた老人は老人福祉法、あるいはまた乳児、妊産婦は母子保健法、こういうふうに健康診断が不十分ながらできております。しかしながら、自家業者、あるいはまた特に日本の人口の多くを占めておる主婦の健康診断というのは、健保も適用されておりませんから放任をされております。これを法制化する気持ちはございませんか、その点をお尋ねをしておきたいと思います。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 厚生省でいろいろ研究しておるだろうと思います。まあ全般的に法制化することはいかがかと思いますけれども、特殊なものについて法制化する、そういう計画があるかどうか、さらに厚生省からその点について具体的に答えさせます。
  131. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまおっしゃいますように、職場における健康の管理、これはその職場職場によって健康管理をやらなければならない当然のニードがあることは御承知のとおりでございます。また、学校等においては集団的に集まっているわけでありますから、そういう意味から学校の衛生管理が必要でございます。自営業者や各家庭における衛生管理をどうするかという問題であろうと思いますが、これはとにかく一定の集団のところにいるわけでございませんから、やはり日ごろからの衛生というものに注意をさせるように、いわゆるそういった意味の社会教育といいますか、これを推進してまいらなければなりません。  特に健康管理のさらに必要なあれとしては健康診断というものもございますが、これは、おっしゃいますように、必要に応じて、今日、あるいは乳幼児の健康診断、妊産婦の健康診断、あるいは成人、老人の健康診断というようなものを特に強く進めているわけであります。したがって、一般の健康診断を定期的にやるという問題につきましては、これは今後十分検討をしていかなければならないと考えておりますが、そういうような方向で、おっしゃいますようにふだんの健康管理というものが非常に必要であると、かように考えます。特に、今日のような都市構造あるいは産業構造ということになってまいりますると、その職場に働いている者だけでなしに、その周辺に住んでいる人たちの健康管理というものも特に考えてまいらなければなりません。したがって、そういう仕組みを各地方地方においてやってもらえるような仕組みを考えてまいりたい。その基本を、先ほど申しましたいわゆる医療基本法の中に取り入れまして、いまおっしゃいますような方向で健康管理を推進をいたしたいと、かように考えております。
  132. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、特に婦人が、妊産婦なんかの死亡率というのは世界第一位なんです。こういうことからして、主婦の公費の健康診断を法制化をせよと、こう要望いたしておるわけです。この点について御答弁をいただきたいと思うんです。  それからもう一つ、健保の赤字対策、これは非常に金を入れることばかり考えて、支出の適正なる運用がなされておらないような気がするわけです。その点についてどうお考えになっておられるのか、対策のほどをお示しを願いたいと思います。
  133. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 妊産婦の健康診断は、厚生省といたしましては、将来無料で健康診断のできるような方向に進めたい、かように考えてその方向に進んでいるわけであります。  後段におっしゃいました点、ちょっと聞き取れなかったんでございますが。
  134. 須原昭二

    ○須原昭二君 主婦の無料の健康診断の制度を法制化したらどうかと、こういうことです。
  135. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 主婦の無料の健康診断——主婦と申しましても、先ほどの妊婦はそういうような扱いにいたしたい。ところが、一般の人の健康診断というものは、これは地域的に、先ほど申しました健康管理の地域組織を考えて、その中において考えてまいりたいと、かように考えます。もちろん、その場合には、これは公費の健康診断という方向になると、かように考えます。
  136. 須原昭二

    ○須原昭二君 支払い基金の問題点に入っていきたいと思いますが、今日のレセプトの明細書ですね、これのチェックは、全部チェックされているかどうか、この点について現況を御報告をいただきたい。
  137. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) レセプトの枚数が年々多くなってまいっております。当初からではございますけれども、これを一枚ずつ点検をするということができればけっこうでありますけれども、あまりにも数が多いわけでございますので、実情といたしましては、抜き取り的にチェックをしているというのが現状でございます。
  138. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、書面だけの審査で、診療内容についてはノー・チェックでありますか。
  139. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) これは、レセプトによりまして抜き取って、そしてこの診療内容は不当である、ということは濃厚過ぎると、いわゆる乱療ではないかという点を重点に置いて進めているわけでございます。
  140. 須原昭二

    ○須原昭二君 私のほうへ入っております資料によりますと、診療内容については、ほとんどその件数が出てきておりません。特に基金法の中で、その審査委員は保険者、診療担当者、公益代表の三者で構成されております。しかし、すべてがお医者さんです。お医者さんを全部が悪いというわけではございませんが、同業意識が先行して、適正なチェックができておらないのではないか。この点について御答弁を願いたい。
  141. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 御承知のように、この審査委員会は三者構成になっておるわけであります。しかしながら、専門的な知識を持った者ということであれば、これは医学、診療に直接間接に経験のある者が当たらざるを得ません。私は、いまの診療レセプトのチェックのしかたにつきまして、機構の上においてそうあやまちはないと、かように考えますが、先ほど申しましたその抜き取り検査というような点において、もう少し審査に当たる人員、スタッフを増加をする必要がある、かように考えてこれを増しているわけであります。一般的に申しますると、そういう抜き取り検査の中から、どの医者が大体こういう傾向であるというようなところに着眼をいたしまして、そうして実際のその医師を、何といいますか、集中的に審査の対象に持っていくというようなやり方をいたしておるわけであります。なおこの点につきましては、今後も御趣旨のように十分配慮をしてまいる必要があると、かように考えております。
  142. 須原昭二

    ○須原昭二君 抜き取りとおっしゃいますけれども、事務審査委員一名に対して大体かかえている数字が一万通ですよ。こういうことで、抜き出すといってもたいへんなことなのであります。こういう点をまず御指摘をいたしておきたいし、ただ、計数上の間違い、過誤だけを調べている程度で、診療内容のチェックはほとんど不可能になっております。特に過誤請求の多いものは、売薬医療の名が示しておるように、薬価基準におけるところの計数の違いが圧倒的に多いわけです。特に審査委員の中においては、国保の中には保険薬剤師は入っておりますが、社保には入れておらないのです。なぜ入れないのですか。
  143. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 国保には特に入れ、そして政管健保には特に入れないというような考え方でやっておるわけではございません。したがいまして、適当な者があれば、適当なように、今後さらに選任をしてまいります。ことにスタッフにおいても、そういう意味で選任をしてまいりたいと、かように考えます。
  144. 須原昭二

    ○須原昭二君 この社保の中にも入れるようにひとつ考えたいというふうに受け取りたいと思います。それでいいですね。  それで先に進みます。保険庁では、昨年、年に四回全数チェックを点検せよと指示せられております。指示されておるのですから、現実にやっておらなければならないのですが、現実はどうなっていますか。
  145. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 各保険事務所において全数のチェックのできるようにということを指示をいたしておりますが、人数の関係その他によりまして、ただいまは七割程度までやれるようになっていると、かように言っておりますが、これを全部チェックできるような方向に持ってまいりたいと、かように考えます。
  146. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、全国の事業所は二百二十二カ所です。給付専門官百六十九名、一般職員二百六十名、そしてアルバイトを含めて九百二十九名です。事業所当たり一人か二人、アルバイトを含めても三人か四人なんです。そして一カ月の件数十万から十一万の——私の地元の中村保険事務所というところは、十一万も三人くらいでやっておるわけなんです。それで七割もできるはずが——先ほどの御答弁は、私は現実をお知りになっておらないのではないかと思うわけです。行政管理庁は、定員五%の削減を一律にやられております。社会保険事務所もそうです。この点は矛盾をしませんか。
  147. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 定員の削減は、全般的には平均五%の削減という方針でやっておりますが、その各省庁の行政需要の増減に対しましては、これにマッチするように、それぞれの担当省庁と打ち合わせまして、そうして適当な数を確保するように努力を続けておるわけでございます。
  148. 須原昭二

    ○須原昭二君 社会保険庁の四十五年の事故件数が六十九万三千件、点検効果額三十八億六千九百万円、こう言っておられます。職員一人当たり四百万円の金が返ってくるのですよ。ですから職員をもっとふやして、そして抽出ではなくしてどんどんこれを調べれば、もっと過誤率はたくさん出てくると思う。こういう点におけるところの支出の適正な運用というものは、できておらないと言っても私は過言ではないと思う。やはり定員削減といっても施策の軽重、ものの順序を問うて、そして行うなべきだと思うのですが、その点はどうですか。
  149. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 定員の削減につきましては、御指摘のとおりでございますから、そういう方向でそれぞれの担当省庁と打ち合わせをして進めておるということでございます。
  150. 須原昭二

    ○須原昭二君 これは増員をするように、ひとつ要望をしておきたいと思います。とりわけ、ことしの一月から児童手当の徴収、あるいはまた自賠の請求権の事務が多く加味されて、下部の職員は非常に困っているわけです。その点で、ぜひとも増員をされるように要求をいたしておきたいと思います。  さらに点検の内容でありますが、資格の喪失後の受診、あるいは本人と家族との違い、あるいは他の保険分など、いわゆる事務的チェックに基づく過誤であって、いわば被保険者だけが監視されている状態であるということで、その点についてどうお考えになっておられますか。
  151. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 大体現状は、いま御指摘のような点が主になっておる、これは率直に認めざるを得ません。今後さらに、診療の内容にわたってまでもっと審査のできるようにやってまいりたいと、かように考えております。
  152. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまの答弁でひとつしっかりやっていただきたいと思いますが、質疑の結果として言わなければならないことは、診療報酬は点数の出来高払い制度であって、営利が無限に保障されていると言っても私は過言でないと思うわけです。したがって、赤字対策は、収入面だけ考えて赤字はなくならないと思うのです。こういう支出の適正な運用を、私たちは特に要求をいたしておきたいと思います。  さらに、診療内容についてでありますけれども、保険医療における薬は非常に使い過ぎておるのではないかと実は思います。三十五年五月の調べでは、薬代は二一・五%だと、四十四年五月には四一・九%、二倍にふくれ上がって、そして四十五年の五月には四四・八%になっているわけです。これは諸外国と比べてまさに——諸外国では二〇%前後といわれておるんですが——日本は二倍以上の薬が使われておるわけです。この現実についてどうお考えになっておられるのか。
  153. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) どうも私も率直に申しまして、少し薬の使い方が多いのじゃないかという感じがまあいたします。これはしかし、議論する者から申しますると、日本のいわゆる診療報酬の薬以外の技術料その他の点数が低過ぎるので、したがって、薬との比率がそういうようになると、こういう説明もあるわけであります。  そこで、日本の薬の使用量が全人口に比べて、他の国と比較してどうであるかという検討もいたしてみております。ところが、この検討によりますると、他の先進国の一人当たりの薬の使用量と日本における一人当たりの薬の使用量とそう大差がないということでございまして、したがって、点数表が他の先進国におけるものよりも若干低いということは、率直に認めなければならないのであろうと、かようにも考えます。
  154. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも、現実をよくつかんでおられないように、私は、聞こえます。もう少し現場のほうをよく見きわめていただきたいと思うのです。特に薬の中で言いたいのは、請求と実体が違っておるということです。全部のお医者さんが悪いというわけではございませんが、代替請求というものが非常に多いということです。たとえば、アリナミンFのかわりにダイチア25というものを使っている傾向が非常に多いわけです。薬価基準が安い仕入れのものを高いアリナミンFの薬価で要求をしている、こういう傾向があるわけで、ここにも二つそれを持ってきておりますが、実際は同じようなかっこうをしておりますから、受けるほうはだれでも同じだと思っておりますけれども、こちらは、このアリナミンと違うのです。そういう点を現実にどうチェックをされているのか、私は非常に疑問です。かつて四十四年でしたか、アリナミンFの保険請求が百四十億だ、しかし武田薬品が販売をしているのは、その半分の七十億だ、こういう現実がいまなお続いておる現実を厚生大臣はどうお考えになっておられるのか。
  155. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) そういうものは、発見次第これは司直の手にゆだねまして、一種のこれは詐欺でございますから、そういう面で事件として処理をいたしてまいっております。そうしてこういうものをできるだけ発見するようにつとめているわけでございます。
  156. 須原昭二

    ○須原昭二君 もっと私はこの問題についてお尋ねをいたしたいのです。たとえば、薬の投薬基準がありますね、その点はどうなっていますか。
  157. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 一般的に投薬基準をつくって、そうしてこれを守らせるようにいたしております。これもおっしゃいますように、その基準に合わないような投薬をしているというものにつきましては、適正な処置をいたしているわけでございます。全部手が回っているとは、先ほどのような状態で、申しておりませんけれども、しかしながら、そういうものがあれば、やられるということによって、自戒をさせるようにいたしているわけでございます。
  158. 須原昭二

    ○須原昭二君 いや、投薬基準がどうなっているかということですよ。一回二日分ですよ、内服薬は。外用剤は一回五日分が基準になっているのです。しかし、一般の医療機関は、一回に対して一週間も与えているのがたくさんあるのですよ。残った薬を、どっか買ってくれないかといって戻してくることがあるのですよ。そういう現実をどう考えておられるのかと質問しているのですよ。
  159. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) おっしゃいますように、投薬基準は原則は二日分、必要があれば二週間までよろしい、こういうことになっているわけであります。  そこで、いまおっしゃいますようなはなはだしいものにつきましてはこれをチェックをするようにいたしておると、かように考えます。
  160. 須原昭二

    ○須原昭二君 現実にそれをきびしくひとつやっていただかなければ、薬の使い過ぎ、それはひいては薬害に結びつくわけです。その点をひとつ十分に考えていただきたい。  もう一つは、濃厚医療の問題です。本人と家族との医療内容が違っているのです。この点は、同じ人間でありながら家族と本人との医療内容が違うというのはおかしいと思うのですが、その点はどうですか。
  161. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) この点は私は、家族については自己負担分がある、本人については自己負担分はない。もちろん一部負担がありますけれども、これはごく僅少であって限られているというところに原因があるというように大づかみには考えております。
  162. 須原昭二

    ○須原昭二君 この際、明らかにしておきたいと思うのですが、社会保険庁が出した資料ですよ、基金が。これは四十六年十月の資料によると、甲表の外来、被保険者分は四百六十九・三点ですね。それから被扶養者分は二百八十六・五点、いわゆるその差二百二十二・八あるわけです。約半分の差があるのです。このように家族と本人との医療内容が違うということは、おかしいんですよ。こういう点は、本人はこう全部個人負担でないから、基金から金もらえるからどんどん不必要な医療をやっておる、こういう点に問題があるといわなければならないんです。こういう問題は、私は診療報酬の支払いの状態が、診療医師が悪いからじゃないのです。医療の技術料を適正に評価していないところに問題があると言わなければなりません。特に例をあげて言うならば、盲腸の手術なんか千二百九十点、一万二千九百円です。子宮外妊娠なんかは一万五千四百円です。こんな、あまりにも低過ぎるんです。ですから、こういう薬あるいは濃厚医療によってマージンをあげなければいけないという現実を政府はどう考えておられるのか。
  163. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) そこで診療報酬のいわゆる合理化が必要なわけでございまして、先般の診療報酬の改定にあたりましても技術料、ことに手術料は二倍に上げるというので、技術料を主にして上げたわけでございます。今後その方向に進んでまいりたい。ことに調査をやって薬価基準との相違の点は、これは技術料に今後積みかえていくという方向を中央社会保険医療協議会においても認めておりまするし、その方向によって処理してまいりたいと、かように考えております。
  164. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまの、私から資料を提供したんですが、正式にひとつ政府のほうからこの本人と家族の違い、この点を資料として出してください。そして、時間が来たようでありますから一応……。
  165. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 資料の点は、よろしゅうございますか。——資料は出すそうでございます。  須原君の質疑の途中でございますが、午後一時三十分再開とすることといたしまして、休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  166. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、須原昭二君の質疑を行ないます。須原君。
  167. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほどは、濃厚医療、薬の使い過ぎという問題について指摘をいたしましたが、これは、要は、お医者さんの技術料がきわめて低くて適正に評価されておらない、そういうところに一つの大きな問題点があるわけです。いま一つは、薬価の点数システムを廃止してこれを技術料に改革をしなければならぬと思います。したがって、診療報酬体系と調剤報酬体系とを二本立てにして、この際、根本的に検討すべきだと私は思いますが、厚生大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  168. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまも、御承知のように、診療報酬体系は薬価と別にきめられているわけでございます。そこで、その診療報酬の点数をきめるにあたりまして、いまおっしゃいますように、できるだけその技術料その他診療報酬に見合う点数に合理的に変えていく必要があると、かように考えます。その方向で中医協の意見も聞き、厚生省も逐次改正をそのたんびにやっておるわけでございます。まだ、完全と言うわけにはまいりません。さらにその努力を重ねてまいりたいと、かように考えます。  薬価のほうは、これは薬価の実勢に見合うように薬価基準をきめていくという方向できめておりますが、この薬価基準のきめ方については、御承知のように、いわゆる九〇バルクラインできめておりますが、この九〇バルクラインが適当かどうか、ただいま九〇バルクラインというのが中央社会保険医療協議会においても定着した考え方ではございますが、これが絶対なものでないという御指摘もあろうかと存じますが、要は、実勢と、それから医療の薬価基準、これを実勢に合うようにきめていくということが必要でありまして、毎年そのために実勢調査をやり、その実勢調査に合うように基準の引き下げをやっているというのが現実でございます。
  169. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、いま薬価の問題が出てまいりましたから、この問題点に移りたいと思います。  実は、全国自治体病院協議会というものがありますが、御存じですか。
  170. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 存じております。
  171. 須原昭二

    ○須原昭二君 ごらんをいただくとよくわかると思うんですが、自治体病院が株式会社をつくって医薬品のあっせんをいたしておるわけです。その価格をここに一覧表にしたわけでありますが、薬価基準を一〇〇とすると、五四・七%の価格、三十社百二十七品目の平均価格です。いかに薬の価格がでたらめであるかという一例をここにお示しをしたわけです。よくごらんになっていただきたいと思います。  そこで、厚生大臣は、抜き打ち調査をすると衆議院予算委員会でしたか断言をされました。具体的な調査方法はどういうことですか。
  172. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 薬価基準をきめますための資料として実勢調査をやります。その実勢調査は一定の月を指定をしていままでやっておったわけであります。いままでそれだけでやっておったわけでありますが、その後の実勢調査の変動というようなものをさらに織り込んで薬価基準をきめていくというやり方をやってまいりたい。そのためには一定の月の基準だけでなしに、その後の変動も織り込む、そのためには抜き打ちといいますか、随時実勢をつかむための調査をやってまいりたいと、かように申しているわけであります。
  173. 須原昭二

    ○須原昭二君 随時あるいはまた四月には定期調査があるわけでありますが、自計、他計と称して聞き込みあるいは申告制のような調査のしかたで実勢価格をつかまえることは私はできないと思う。立ち入り権を持たなければならないことを私たちはかねがね主張しておるのですが、その点はどうなっておるんですか。
  174. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) おっしゃいますように、確実にということになると、不意に立ち入り検査をやる。そして、そのときの売買の書類等も検査をするというようなことにならないと、おっしゃるようなことが十分できないと思います。しかし、このことは非常にむずかしいことでございますので、できるだけいろんな資料から実勢を判断をしていくというやり方、まず当面そこから入ってまいりたいと、かように考えております。
  175. 須原昭二

    ○須原昭二君 非常に考慮されておると言われますけれども、立ち入り権がない以上、ただ聞き込み、あるいはまた申告制のような状態では、実態はつかめないと思います。したがって、先ほどの資料にありますように、五〇%の、約過半数の、半分の利ざやがあるわけでありますが、こうしたものを認めていくのか、その点を御答弁を願いたいと思います。
  176. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまこの表をちらっと拝見しただけでございますが、どういう薬についてどういうようになっておるか、もう少しこれは詳しく伺ってみませんとこの差額というものはわかりませんが、同じ品目の薬でありましても、先ほど申しますように、基準は同種類の九〇バルクラインできめておりますから、したがって、薬価基準よりも低い薬を購入する診療所、病院等もあるでありましょうし、あるいはそれよりも高いものを使わなければならぬという場合にはそれを使うというものもあるであろう、かように考えます。しかし、この数字がどうしてこういうように起こってきたかという点をもう少し検討をいたした上でないと御答弁いたしかねると思います。
  177. 須原昭二

    ○須原昭二君 これは実に秘密文書です。秘密がよくはやります。実は、昨年八月の、この全国自治体病院協議会、これは社団法人ですが、これが株式会社をつくっているわけです。そのときの会長名の秘密通達文書ですが、ここでいわれておるところの新ルートとは何ですか。医薬品供給のルートでありますが。
  178. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私は、ただいま拝見しただけで、この新ルートというものはいかなるものであるか、的確には存じません。存じませんが、おそらく想像いたしますのに、メーカーが問屋それからそれの先へという、いわゆるメーカーの持っている流通機関を通さないでということであろうと、かように考えます。たとえば問屋が薬をかかえている、その場合にいろいろな関係でこれを安くどこかに放出をするというような場合があり得る、そういうようなものを考えているのではなかろうかと、かように考えます。  そして、なお一言つけ加えておきますが、こういうルートによって医家が薬を買い入れるということになりますると、これがやはり薬価の実勢調査の中に織り込まれてまいりまして、薬価基準をきめる際の一つの低くする材料になるということであると、かように考えます。
  179. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、これは関係者以外に絶対漏らさないでください、こう明記をされておるわけです。そこで、その新ルートとは何か、具体的に御表示がないのですが、もうすでに御存じならば、この流通過程について御調査されることが当然の厚生省の任務であると思います。にもかかわらず、現実にはつかんでおらない。特に流通ロットを消したものがある。わざわざ消すとはどういうことなんですか。
  180. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいまおっしゃいました流通——意味がちょっとわからないのですが……。
  181. 須原昭二

    ○須原昭二君 ロット番号だよ。薬にこの番号が書いてあるでしょう。
  182. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) それはどういう意味か、ちょっと私はいま即座ではよくわかりません。
  183. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 政府委員にだれかわかる人おる……。
  184. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 薬にはロット番号というものがございまして、これはメーカーにはいつつくったものであるということがわかるようになっております。したがいまして、これは法律上要求されておりまして、そいつを消すことは薬事法違反でございます。
  185. 須原昭二

    ○須原昭二君 いやしくも公的病院が使う医薬品が流通ロットをわざわざ消して落としておるということは、どういうことなのか。これを不明確にすることは、いわゆる薬の品質が保証できないということであります。特に、かつて、にせアリナミンが市場に出たことがあるわけです。こうしたものがもし搬入された場合に、今日の剤型からいって、この不良品、にせであるということがわからなくなってしまうのです。そういう問題はどうお考えになっておるのですか。
  186. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 薬事法できめられておりますロット番号を消すということは、先ほど申し上げましたように薬事法違反でございますので、こういう点は厳重に取り締まるべきだと思います。
  187. 須原昭二

    ○須原昭二君 自治大臣、どうお考えになっておりますか。
  188. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 当面の担当者は厚生省でございますが、御指摘のありました点、自治体病院につきましては、自治省といたしましても、公立病院でございますから、多大の関心を持っておりますので、よく検討さしていただいて善処さしていただきたいと存じます。
  189. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうしてこういうロットを消すかというと、実はこの自治体病院共済会の株式会社は現金問屋から買っている傾向があるわけです。メーカーが換金のためにあるいはまた故意に流しておる現金問屋を通じて、そういうところにルートがあるのでありますから、したがって、不明確にせざるを得ないのです。特に現品添付あるいは値引き、今日では薬は現金が添付をされております。そういう状態では、私企業はいいけれども、公的機関では現金が添付されては困るから、収賄になるから、そこで株式会社ができたと私たちは想像せざるを得ないのであります。この株式会社ができておることについて、衆議院予算委員会において、厚生大臣は、好ましい傾向だと御答弁をされております。どういうことですか、こういうことは。
  190. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私は予算委員会で、新しいこういう株式会社ができてそれが薬価を下げるという役割りを果たすならば好ましいと、こういうことを申し上げたわけであります。ただ、この秘密文書を拝見いたしますと、どうも薬事法に違反する点もあるようでありまするし、必ずしも好ましくない点もあるようでございます。私は、今日の薬のいわゆる流通ルートというものはそのままでいいかどうかということについては、まだ検討の余地があるであろうと存じますが、とにかく、今日の医薬品は、御承知のように、それぞれの会社が非常に競争をして販売をしているわけであります。したがって、できるだけ値下げ値下げにという競争をやっているわけでありますから、メーカーの薬を販売するについては、できるだけその販売経路のために使わなければならない中間費用を縮小してやろうという努力をみずからしているように、かように考えるわけであります。しかし、それにもかかわらず、こういう株式会社が出てきて、そして、さらに医薬品を同じものを安く提供できるというならば、これは私は望ましい。しかしながら、それをやるについて、薬事法違反をやったり、あるいはそのほかのいわゆる国民の衛生、治療その他に影響を及ぼすようなことがこの会社において行なわれるということでありますれば、その点はこの会社に対して厳重に臨まなければなりませんし、これは厚生省でこの株式会社を認可をしておりますが、場合によっては認可を取り消す場合もあり得ると、かように考えます。
  191. 須原昭二

    ○須原昭二君 自治大臣にお尋ねをいたしますが、この文書によりますと、品物到着後一週間以内に徴収をする。北陸方面の自治体病院の事務長あるいは責任者が東京へ来て現金でこの仕入れをいたしております。地方財政法からいって、こうした現金買いにひとしい購入方法が正しいかどうか。指名競争入札が原則であると私は思うのですが、自治大臣はどうお考えになりますか。
  192. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) いま御指摘になりましたように、公共団体が行ないます現金支払いあるいは物品購入の方法は、財政法におきまして指名競争契約ということが原則になっておりまして、これに異なる場合はケース・バイ・ケースによりまして許されておる。いま御指摘になりました分がこのケースに当てはまるかどうか、ただいま聞きますところで私は精査いたしておりませんが、十分検討すべき問題であろうと考えます。
  193. 須原昭二

    ○須原昭二君 その点は厳重にひとつ処置をしていただきたいと思うのですが、全自病が株式会社をつくった大きな理由のものは、実はほかならぬ全自治体病院、国立病院でもそうでありますが、その大半が独立採算制によって赤字であるということなのです。薬の差益を少しでも多くして赤字の穴埋めをしようとする一つの発想から出てきておるといって私は過言ではないと思います。この発想はまた必然的に薬をたくさん使う、乱用につながる薬害の危険性を私ははらんでおると言わざるを得ないのですが、その点はどう御理解をいただいておりますか。
  194. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) ただいま御指摘になりましたように、公立病院がたいへん経営に苦しんでおることは、御承知のとおりでございます。四十五年度の決算においてながめましても、六〇%に当たる団体が単年度赤字として百四十億近くの赤字を出しております。また、累積赤字も、七百余りの事業体の中で四百七十にのぼる団体、金額にいたしまして三百六十億、このような赤字経営に苦しんでおります。いろいろの問題がございますが、この経営難のためにそういった問題が起こり得る原因になっておる、御指摘のとおりであろうと思います。
  195. 須原昭二

    ○須原昭二君 特にその赤字の問題で触れておきたいのですが、国公立の病院の五〇%以上が赤字になっています。公的病院は四〇%、医療法人病院が二〇%、個人病院は全日本病院協会の調査だと一つの病院が赤字だということになっておる。だから、この際、国民の命や健康を最優先に考えるならば、自治体病院、国立病院の独立採算をはずすべきだ、こう私は思います。同時にまた、私立の病院にはベッド規制をはずしておいて、公立病院だけにベッド規制を強いているところに問題があると言わなければならない。この二点について厚生大臣はどうお考えになっておりますか。
  196. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 公立病院がなぜ赤字がよけいできるかと、この原因を厚生省としてもいろいろ検討をいたしております。公立病院の人件費の関係は私立病院よりも高いのか低いのか、高い人件費をどうして払わなければならないのかといったような事柄もございましょう。また、経営努力という点もあるであろうと、かように考えます。全般的にいって病院経営がいま苦しいといわれておりますのは、やはり物価、人件費に伴うだけの診療報酬制度にまだ成り切っていないという点にあるであろうというので、先般も診療報酬の改定をやったわけでございます。いまの病院のベッドの規制につきましては、これは公立病院は、やはり一般の私立病院の経営について、これを、何といいますか、困らせないようにというような趣旨からそういうようになっておるのであろうと、かように考えます。国立病院も公立病院も、しかしながら、赤字が出やすいからというて完全な独立採算ということではなくて、ある程度一般会計から公立病院におきましてもまた国立病院におきましても費用の負担をしているというのが現状でございまして、そこらは実情に応じて適当にやっていく必要があるというので指導をいたしているわけでございます。
  197. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、薬を多く使っておるデータを一つ示したいと思うのですが、国公立病院の薬の投与傾向が非常に強いのです。全日本病院協会の資料、二月二十日の資料でありますが、収入に対する支出のうち、医薬品費は全体で二五・八七%。個人の病院が二二・五九%、公的病院が二六・三八%、国公立がずっとふえて三二・五二%——一般よりも一〇%も高いのですよ。そういう差益をつくりあげておきながら、株式会社をつくって、そして、ある国公立の病院の事務長——これははっきり言ってもいいのですが、後ほど示しましょう。事務当局ができるだけ薬を多く使え、そうしないと赤字が出て困る、多く使えと指示している病院があるのです。こういう実態を厚生大臣あるいは自治大臣はどうお考えになっておるのですか。
  198. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 自治体病院、その他国公立病院が特に薬をよけい使うように指導しているということは、私ただいま初めて耳にいたしました。ただいまあげられました数字等も十分検討をいたしまして、この点について善処をいたしたいと、かように考えます。
  199. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 公立病院の経営難の問題の中には、いろいろの原因があろうと思いますが、診療報酬の問題、あるいはいま御指摘になりました病院の配置並びに規模の問題、または医師の確保難のような問題、いろいろあろうと思いますが、根本的に私は診療報酬の問題を改善していただかなければならないと、このように考えておりますので、今後とも関係各省とお話し合いいたしまして、その方向に進めさしていただきたいと思います。  独立採算のお話がございましたが、御承知のとおり、公営企業金融公庫には水道のごとく当然入れられておりませんけれども、利用者が明らかであるという点から、基本的には利用者に負担をしていただくという考え方で、一応独立採算というものを基本といたしておるという姿でございますが、公営病院の場合におきましては、単に医療の問題治療の問題だけでなく、須原委員指摘になりました予防の問題、看護婦の養成の問題、あるいは緊急対策、救急医療の問題、こういった一般行政事務を行なうこともございます。また、不採算制であってもこれを行なわなければならないという使命もございます。これらの点につきましては、一そう特別会計、一般会計からの繰り入れという点の負担区分を明確にいたしまして経営難の改善をはかっていかなければならないと、このように考えております。このために、四十六年度におきまして二百八十億ほど組みましたその分を、四十七年度におきましては三百五十億に上げまして、一そう合理化して、経営難を解消する一助にもしたいと、そのように計画さしていただだいております。
  200. 和田静夫

    ○和田静夫君 関連。  厚生大臣並びに大蔵大臣にお聞きをしたいのですが、いまの論議を通じて一番私たちが考えなければならないのは、日本の病院やあるいは診療所を含めて全体の医療の中で、自治体病院というのは一体何かという問題について深刻に今日考えてみる必要がある、そういうふうに思うんです。で、過疎地帯といわれるところの自治体の首長たちがいま一番悩んでいることは、御存じのとおり、病院、診療所の運営をいかに確保していくか、その能力があるかないかが、町長、村長になり得るかどうかといわれるような形で問われるところまできているわけです。で、私たちはこういうことを考えた場合に、日本の医療制度の根本に今日たいへん多くの問題が存在をしている。その中で、何としてでも私たちは基本的な問題についてもっと突っ込んで考えてみる必要がある。その基本的な問題の一つは、いま須原委員が述べたところの独立採算制によって阻害をされているところの、言ってみれば、自治体病院の運営であります。医者たちは、御存じのとおり、都市へ都市へと集まっている。したがって、地域におけるところの医療というものは、自治体病院をとりでとして、あるいは診療所をとりでとしてようやく維持をされていく。この実態に目をつぶるわけにはいかないのです。したがって、地方自治法の第二条六項における自治体固有の業務として、このことを明確にすることが今日一番緊急な問題として私は存在をするんだと思う。その辺を厚生省は一体どういうふうにお考えになるのか。さらに、関連でありますから多くを語りませんが、病院の人的な構成部分に対しての必要経費、こういうものについては、一般会計からすべてを見ていくのが私はあたりまえだと思う、一歩譲っても。こうなってきますと、そのためには、大蔵省がもっと目を開いて国からの財政援助を大きくしていく、そういう努力をすべきであって、自治大臣がいま述べたように、努力が皆無だとは言わないけれども、現状との照合においては、そんなものはまさに焼け石に水であるという事態について大きく佐藤総理も目を開いていただきたい。みずからが健康であるからといって、このことを放置するわけにはいかないと思うのです。たとえば、厚生省が六十歳以上の寝たきり老人に対するそういう措置を含んで幾ばくかの予算要求をする、それがむざんにも切り捨てられていくというような状態ですね、この予算編成の中において。そういう中に、いま私が基本的に触れた問題に目を向けない佐藤内閣の本質があるのではなかろうか。その辺について大蔵大臣はどのようにお考えになるのか。さらに、先ほども厚生大臣の公的医療機関のベッド規制についての答弁、これはたいへん不満であります。私たちは、医療法七条の二、これは明確にはずされるべきである、そういうふうに考えます。これをはずすことによって、もう少し自治体病院の、あるいは公的診療機関のベッド規制がはずされることによって、ある意味では、赤字解消への経営努力の一つというものもそこからは生まれる。そこを閉じておいてどうしようというのですか、その辺を明らかにひとつしてもらいたい。  そかれらもう一つは、看護料金の問題ですが、四十七年の二月から一類から特まで設けられました。最近の事情の中において結核患者をひとつ考えてみます。地方をお歩きになったらよくおわかりになると思うのでありますが、今日結核患者が累増をしているのは御存じのとおり、われわれ年代以上のそこにこちら側を向いて並んでいる年齢の方々に多くなってきているのであります。それは、戦後におけるところの、言ってみれば、結核の完治までの十分な療養がなされなかった。そうして生活のために、将来どうなるのだろうという不安を残しながら仕事をされてきた、それが再発をしてきた。そして再発をした結果、多くの病が併発をする、こういう状態になってきています。よって、寝たきりのままの結核患者というのがたいへんふえてきているわけです。ところが、寝たきりのままの結核患者が併発病を持っているが、その主病が結核なるがゆえに、御存じのとおり、看護婦の条件というものが削られて、特も一もはずされている、こういう状態に置かれています。こういう運営では私はいけないと、こう思うのでありますが、これらに対するところの対策をどのようにお考えになっているのか、一緒にお答えを願いたいと思います。
  201. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 地方公営病院は、御指摘のように、原則として独立採算制もしくは特別会計のたてまえでいま運用されておりますが、これは治療を受ける人が地域的に限定されておりますので、したがって、各地域地域によって条件がみな違う、画一ではございません。したがって、この経営上の責任というものは、やはり原則としてその地方団体、地方の住民というものに第一次的にはあるというふうに考えて、そこに責任があることははっきりしておりますが、各地方団体ごとにいろんな努力をいたしましても、人件費の高騰そのほかで、みな一様に経営難になっておるという状況でございますから、政府は従来、この設備の整備と、それから看護婦養成所の運営というような点について財政援助をしておりますし、また、本年の二月の医療費の改定におきましては、一般診療所の一一・何%という引き上げに対して、病院は特に一六%以上というような特別の考慮を払うというようなことで、国の配慮はいたしておりますが、いまのままでいきますというと、地域によってこれは経営が非常に合理化によって切り抜けられるところもあると同時に、過疎地帯とかというようなところで、地域的にはどう努力しても経営がむずかしいというようなところが出ておりますので、これを国が画一的な財政援助をするという方法はできませんし、個別援助というようなことになりますと、いろいろむずかしい問題がある。今後の研究問題だと思います。
  202. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 公的病院のベッドの規制の問題につきましては、いまベッドの規制全般にわたりまして医療審議会で検討いたしております。ただいまおっしゃるような点も考慮に入れながら、ベッド数の規制の問題を再検討いたしておりますので、その結論を得て、適正に実施をいたしたいと、かように考えます。  それから、結核病院の患者の基準看護の問題であろうと存じますが、これは病院ごとに、その基準看護をどう適用するかは、患者の重症な状態の者が多いか少ないか、そういうような点を見まして、そして病院ごとに基準看護の基準をきめておりますので、できるだけ実情に合うようにやってまいりたいと、かように考えます。
  203. 須原昭二

    ○須原昭二君 総理、非常に健康の問題については関心を持っておられるようですが、こうした公的病院のあり方について、私たちは好むと好まざるとにかかわらず、今後は医療はどんどん社会化を進めていくんだと私は思います。そういう点について、やっぱり公的病院に対しては国がどんどん助成をしていく、そういう点が私は必要ではないかと思うが、基本的にどうお考えになっておられますか、お尋ねしたいと思います。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、たいへん真剣に取り組んでおられる問題、公的医療機関のあるべき姿、ことにこの薬と医療の実態という、まあこれは公的であろうが、診療機関全部に共通するたいへんむずかしい問題だと、かように考えております。それがやはり、公的機関でただいまのように赤字が出ているから、それを薬のほうでその赤字を埋めるとか、そのためにいろいろの、不正とまでは申さないにしても、どうも思わしからざる現象が出ておると、こういう御指摘に対しては、深く私どもも思いをいたして、かようなことが繰り返されないように、ここらで何かしっかりした方途を考えなきゃならないと、かように私は思います。ただいまそれぞれ厚生大臣や自治大臣から説明がございますけれども、どうも納得がいかない、こういうものもございますから、そういう点で、御指摘になりましたようなことを含めて、前向きの姿勢でこの問題と取り組みたい。これはやっぱり、国民の健康を守る、そのために、公的機関、私的機関も同様ですが、これら医療機関と十分取り組む、こういう姿勢が望ましいと思います。
  205. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、時間の関係がございますから先へ進んでまいりますが、保険医療における薬代が、先ほど申しましたように、諸外国が二〇%、わが国においてはその二倍以上の四四・八%、こういう高い数字を示している。同時にまた、日本人は薬好きと言われておりますが、これは体質ではないんです。おくれた日本の医療制度の矛盾から私はきているもんだと思う。したがって、国民皆保険の現在、保険で使う医薬品というものは、私は、きわめて公共性が高いと言わざるを得ないんです。したがって、私は何らかの形で、国が製造、管理、供給を一貫して統括する必要がある、こう思いますが、その点はどうお考えになりますか。
  206. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 薬の製造から販売といいますか、配布のルートまで国がこれを管理をするということは、必ずしも私は適当ではないと、かように考えます。やはり薬の製造にいたしましても、販売にいたしましても、自由競争を原理にいたしておりますわが国の経済体制におきましては、やはりこの方向が望ましい。ただ、それによって起こるところの弊害はためていかなければなりません。したがいまして、薬のいわゆる薬効あるいは副作用、そういう点を厳重に考えて、まず薬の販売については厳重な認可制度をとる。そしてまた、そこから起こってまいった副作用が出てくるという場合には、これをとめるというような、この薬事行政の強化はさらに必要があると、かように考えますが、しかし、製造、販売一切を国で管理をするという考えは、私のほうは持っておりません。
  207. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、私はここに四つの薬を持ってきているのですが、これはエーザイムという腸用剤、カリクレイン、これも腸用剤、そしてここにあるのはコンビチーム、これも腸用剤、胃で溶けないように、そして腸で溶けるようにしてある薬です。しかし、これはすべて腸でも溶けずに排便と一緒に出てしまう。こういう品質の管理がなされていないんですよ。こういうものを、高い薬代を払って国民は飲まされているんです。何らかの形でここでチェックをしなければいけないんです。その点はどう思いますか。
  208. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) それは、品質の管理というよりも、そういう薬の薬効を十分確めるということであって、したがって、現に製造、販売を許している薬につきましても、その薬効の再調査をただいまやっております。そういう面で、薬効がないという薬につきましては、すでに認可をしておるものも将来取り消してまいる、かような考え方でおります。  ただいま御提示になりました薬につきましては、具体的には私は存じませんが、後刻取り調べてみたいと思います。
  209. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) ただいま御例示の薬については、一般的には、全部実測値等をとらせるとか、あるいは試験方法をきめますとか、一応チェックをしております。しかしながら、個々の薬についてなおそういう実態があるということでありますれば、さらに十分検査その他を厳重にしたいと、かように考えます。(「腸で溶けるかどうか確めてみなさいよ」と呼ぶ者あり)
  210. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまこちらで言われているように、ほんとうに腸で溶けるか溶けぬか確めてみよと、こうおっしゃいますが、それを厚生省は知っていますか。
  211. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 各薬につきましては試験方法をきめておりますので、それによりましてつくられてあるわけでございます。そういう具体的な問題につきましては、さらにその製品をいただきましてチェックをいたします。
  212. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  いませっかく須原君がいろいろ質問されているんですが、はっきりしたことがわからぬままに次次といってしまう。その薬は、胃で溶けないで腸までいって、腸で溶けて効果があるような話があったと、こういう話をした。それが実は腸でも溶けないで下へ出ていってしまうというのは、言ったのは、ほんとうなんですか、うそなんですか。ここに薬が出ているんだからわかるでしょう。ほんとうにそうなのか、うそなのか。須原君が言っていることは、ほんとうなのか、うそなのか、それだけ聞かしてください。いやいや厚生大臣、わからぬでしょう、あなたでは。
  213. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいま御提示になりましたこの薬は、もし腸で溶けるというのに腸で溶けないということであれば、それは何とか処分をしなければなりません。しかしながら、腸で溶けるということを表示してやっておるものを、溶けないのに、そういうことをいままで認可しているはずはないと、かように思うわけでありますが、しかし、御提示になりましたから、この薬自体についてさらに調査をいたします。
  214. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君、簡単に願います。
  215. 松永忠二

    松永忠二君 それはいま言うような検討するとかなんとかという筋合いじゃないので、そこにちゃんと名前も書いてあるんだから、そうなのか、そうでないのか、返事をすればいいんですよ。
  216. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 具体的に薬の提示がございましたので、この薬を検査いたします。ただ、一般的には、須原先生がおっしゃいましたように、腸で溶けるようになっておりますけれども、個人差がございまして、やはり溶けない場合もあるいは例外的にあろうかと思います。  なお、薬につきましては、具体的に検査をさしていただきます。
  217. 須原昭二

    ○須原昭二君 問題は、製薬企業がつくった品物は書面で提出されて、書面の上で検査をして、それで許可をしているんですよ。ですから品質がわからないんだ。メーカーにまかせっきりなんですよ。そこに問題がある。したがって、これは日本薬剤師会がこの調査をしてロット番号が書いてありますから、そのロットについての薬を一ぺん検査してください。そのように薬の製造から管理、供給に至るまで、今日でたらめです。したがって、薬はたくさんつくられる。大量生産をやられる。そしてそれを国民に飲ましていく。そういうことでもってメーカーはもうけているんだ。したがって、薬の需要と供給のバランスをはかり、無用の薬の大量生産を規制すべきです。同時にまた、いわゆるぞろぞろ品目、バルクラインが九〇だといっておりますが、ぞろぞろ品目の続出を防いで、有効性、安全性、品質、これを国が管理をして、検査をする必要があります。混乱をした流通過程、どうですか、薬の流通の過程、何本あるんですか。この流通の過程を一元化することです。そして原価計算に立ち入って、その薬の適正な評価をする。そういう、国が一貫して医療用薬剤を統括しなければならないと思います。そういう点で、われわれは医療用薬剤公団をこの際つくれ、こういうことを要求したいんですが、総理大臣、どうですか。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私も薬のことはわかりません。しかし、これもたびたびこの委員会で問題になっているのですから、いま言われる程度じゃなくて、もっと検査は厳重にやられているかと思います。ただ、書類だけで検査しているとすれば、これは確かに不十分だと私は思いますが、薬務局長、どうかね、この点もう少しはっきりした実情を話してみてください。
  219. 須原昭二

    ○須原昭二君 総理大臣が御質問されておりますように、薬のこの品質を許可するときにどう調査されていますか。書面でしょう。
  220. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 具体的に製品を検査する場合もございますし、それから自家検査等のいろいろの試験方法を厳重にやっている場合もございます。両方ございます。ただいま先生御指摘になりましたように、やはり品質の検査につきましては、現在よりも制度を厳重にする必要がある、こういうふうに考えます。
  221. 須原昭二

    ○須原昭二君 これから厳重にするようなことではいけないのですよ。だから、公団形式で国が統括しなければいけない、その点を指摘をしておきます。時間の関係がありますから先に行きます。  最近の薬の薬禍、副作用、こうしたものの報告が公開をされません。なぜ公開をされないのか。
  222. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 副作用につきまして、いわゆるモニターから報告がある、あるいは大学の先生の報告があるというような場合には、これを検討をいたしまして、そして薬事審議会にかけて、その薬をどうするかということをきめているというのが今日の現状でございます。したがいまして、進んで一つのあるデータが出たというだけで公開はいたしておりませんが、しかしながら、時々薬事審議会にこのことを知らせて、そこで検討をするという仕組みになっておるわけでございます。
  223. 須原昭二

    ○須原昭二君 したがって、これは公開をするのが原則であると思います。これはメーカーをかばうことになる。したがって、この際、資料を全部提出していただきたいと思います。  さらに、要指示薬について聞いておきたいと思うのですが、要指示薬というものは薬事法に規定をされておっても、医療法あるいはまた医師法には規定がありません。百四十六品目、約千種類の薬剤が指示薬に指定をされておりますが、指示する者がその制度を知らない、商品の名を知らない、それで指示が出ますか。
  224. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) ただいまの要指示薬品の問題でございますが、要指示薬品につきましては、必ずその旨を薬品に書いております。したがいまして、これを使う医療担当者側も承知しているわけでございます。
  225. 須原昭二

    ○須原昭二君 あとで論議をいたします。  ここでまた一つ出てきました。薬局に売っていない薬というものがありますか。
  226. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 薬事法上、薬局では必ず売られることになっています。ただ、薬局の規模によりまして、やはり全部の薬を売るということは考えられません。
  227. 須原昭二

    ○須原昭二君 避妊薬は禁止をされましたか。
  228. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 現在、わが国では、避妊薬という名目で許可をした薬はございません。
  229. 須原昭二

    ○須原昭二君 それが売られているのです。計画出産を希望される方へ、この薬は薬局に売っておりません、医師、看護婦に御相談ください。——公的病院でこういうチラシが出ているのですよ。日赤の病院ですよ。何を管理しているのですか。
  230. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 公的病院でそういうふうなチラシを配っているということは、私は初めてお伺いします。ただ、一部の病院でそういうふうなうわさを聞きましたので、メーカーのほうには厳重に注意をいたしました。
  231. 須原昭二

    ○須原昭二君 まさに医療行政はでたらめですよ、厚生省がやっていることは。たとえば、このEPホルモン——月経周期変更剤でありますが、こういうものは健康な女性がレジャー、旅行の際にときどき使用するものです。医師が副作用がある、ないということを予見できますか。判定の基準はどこにありますか。
  232. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) ただいまのEPホルモンでございますが、これは先ほどの御質問にありましたいろいろ副作用の多いものの一つでございます。したがいまして、昨年の十二月にこれを要指示薬品としまして厳重な管理下に置いたわけでございます。と申しますのは、先生御指摘のように、この公的病院でまでもこういうふうなことをやっていろいろ問題を起こしている。これは、いわゆるEPホルモンは、非常に副作用が強くて、外国でも相当問題になっています。したがいまして、たとえば血栓症を起こすというようなことで非常に問題になっておりますので、今回こういう措置をとったわけでございます。
  233. 須原昭二

    ○須原昭二君 いや、判定の基準があるかどうかと言って聞いているのです。同時に、いま一つ、指示が必要なら、その前提に立って診断が私は必要だと思う。その点はどうですか。
  234. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 医師が指示するわけでございますから、当然必要だと思います。
  235. 須原昭二

    ○須原昭二君 診断が必要だというならば、診断があれば、薬を投薬するお医者さんは、今度は指示ではなくて処方せんに変わってくるのですよ。だから指示というのはあり得ないのですよ。その点はどうですか。
  236. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 最近は健康保険が非常に普及いたしまして、処方せんもいろいろ増加しております。ただ、薬局の普及が、先生御承知のように、適正配置条例とか、そういうものでいろいろ制限をされております。また、いなかのほうには場合によっては薬局がない地域もございます。そういう点で、原則的には、先生の御指摘のような方向を私は認めますけれども、やはり現在では要指示薬制度も必要ではないかと、かように考えます。
  237. 須原昭二

    ○須原昭二君 この要指示の問題については、昭和二十三年ですか、医薬分業が行なわれているところのアメリカの実情を導入した、いわゆるGHQの命令によってつくられたものであって、非分業である今日の日本の現状に合わないものです。そういう合わない制度をいまなお維持し続ける、こういう点に一つの問題点があると思うのです。ちょうど私に言わしむるならば、まぼろしの要指示薬制度、こう言わざるを得ないのですが、その点はどうお考えになっていますか。指示書が出ておりますか。
  238. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 医薬分業の制度がなかなか進展をしていないという御指摘でございますが、そういうふうな点からしましても、あるいはまた薬局が十分普及していないという地域もあることからいたしましても、やはり要指示制度の必要性は私は若干あると、ただ、だんだん減ってはきておりますけれども、なお撤廃するには至らない、かように考えております。
  239. 須原昭二

    ○須原昭二君 要指示は出ているかどうかということを聞いているのです。
  240. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 出ております。
  241. 須原昭二

    ○須原昭二君 どれだけ出ていますか。
  242. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 件数につきましては、私ここに資料を持ち合わしておりませんけれども、いずれ調査をいたしまして出します。
  243. 須原昭二

    ○須原昭二君 指示書はほとんど出ていないと私は思うんです。そういうところに問題があるんです。そして、さらにお尋ねをいたしますが、このたび、十二月の二十七日、御用おさめの前日、突然また、要指示薬九成分、これを追加指定されました。いつ、どこで、どの機関でこれを決定をしたのか。
  244. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 昨年の暮れに、先生御指摘のように、三つのグループの要指示を指定したわけでございます。これはいずれも、数年前から副作用が非常に強く、関係者の間では早く要指示にすべきだという議論が強かったものでございます。学会等でもたびたびそういう要望がございまして、そして昨年の暮れに厚生省のほうでこれを決定したわけでございます。
  245. 須原昭二

    ○須原昭二君 厚生省で決定したんですか。
  246. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 厚生大臣が指定をいたしました。
  247. 須原昭二

    ○須原昭二君 この要指示の決定については、昭和二十三年六月二十二日の議事録を見ていただけばわかるわけです。衆議院では、衆議院の社労委員会で、中央薬事審議会の答申できめるべきであるという附帯条件がついておる。そして、それ以後ずっとそういう形で行なわれておる。今度は突然官僚だけの手によってきめられてしまった。そういう点についてどう思っておられますか。
  248. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 要指示薬品の指定につきましては、従来とも厚生省の行政当局だけで指定をいたしております。ただ、それまでの過程で、いろいろこれは議論がある問題でございますので、当然薬事審議会等で自主的に議論は行なわれております。
  249. 須原昭二

    ○須原昭二君 中央薬事審議会で論議がなされておるというけれども、常任理事会にはかっておりません。副作用調査会という下部末端のその段階で、使用上の注意書に添付したらどうだろうとかいう議論があっただけで、何もその結論が出ておらない。副作用のおそれがあるものは指示薬にしておいたほうがぶなんだ、何も学会の意見も聞く必要はない、そうした官僚独善、国会無視、責任のがれではないか、この点はどうですか、大臣。
  250. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) まず私から。  要指示薬品の指定につきましては、先生、すべて薬事審議会へかけるような慣例になっているというお話でございますけれども、その点はそうではございません。で、この問題につきましては、やはり審議会あるいは学会その他で十分議論がなされまして、私どもとしては、行政当局として責任を持って指定しているわけでございます。
  251. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) ただいま薬務局長がお答えをいたしましたとおり、薬事審議会の副作用部会なり、あるいは学会等で、この薬は副作用が多い、したがって、ただ患者が医者の指示も処方せんもなしにその薬を買って、そして乱用するようなことがあっては、健康の保持上支障がある、かように認めて、いままで厚生大臣が指定をしておったわけでございます。先般、昨年の暮れにいたしましたのも、またその線に従って、これは副作用が相当多いと、かように認定をいたして、要指示薬に指定したわけでございます。
  252. 須原昭二

    ○須原昭二君 国会決議との関係はどうなんですか。国会の意見は反映されませんか。
  253. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 薬事審議会に諮問をして、その上で要指示薬にするようにという御議論が二十何年かにあったということでございますが、その後、いろいろその後の歴代大臣も検討してまいったと思うのでありますが、薬事審議会の諮問事項ということでなくっても、副作用が多いと、こう考えた場合には、指示薬にきめたほうがいいという方針でまいっておりましたので、私もその方針をそのままとってきておるわけでございます。
  254. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほども申し上げましたように、厚生省は、薬の副作用、薬害というものがどういうものであるのか、その報告については公開しない、そして正式な機関にもかけずに闇から闇へ葬り去っていく。こういう傾向というものは、やはり民主的な国家の運営からいって、きわめて官僚独善のやり方だと私は思います。そういう点についてわれわれは責任を追及しているのです。同時にまた、今日の医薬品の分類というものはきわめて多岐にわたっております。今日の医薬品の分類はどうなっておりますか、薬務局長
  255. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 分類にもまあいろいろ分類のしかたがございますが、一般的には、認可の場合には、医療用医薬品と一般用医薬品が出ております。
  256. 須原昭二

    ○須原昭二君 さらに、劇薬、毒薬、一般薬、あるいは配置薬、いろいろ分類のしかたがあるわけです。きわめて多岐にわたって、しろうとには全然わからない、そういう状態になっておるわけでありまして、この際やはり医薬品の分類を正しく規定をすることが必要だと思います。たとえば処方による薬、処方によらない薬、さらに処方によらない薬の中でも薬剤師でなければ売れないもの、あるいはOTCの中でも薬種商の皆さんあるいはまた一般販売業でも売るもの、そういう分類をやはり明確にすべきだと私は思います。この点について、私は、医薬品の分類を科学的にやり直す必要があると思うのですが、その点はどうお考えになっておられますか。
  257. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 分類につきましては、やはりその医薬品の分類をする目的によって私はいろいろ違ってくるかと思います。ただいま一例を申し上げますと、先生いま処方せん薬とそれ以外に分けたらどうだという御提案でございました。これも一つの方法だろうと思いますけれども、やはり薬の中では、処方せんによって出す場合であっても、一般の町の薬局で買えるという場合もございます。したがいまして、そこはなかなか、区分はその目的によっていろいろ研究をしなれけばいけないと考えております。
  258. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は、専門的な立場からいって、これは分類を科学的にやり直すべきである、こういうように実は思います。  さらに、政府は、今度健保の赤字対策法案に並んで、あとから出てくるそうでありますが、医療基本法案、あるいは抜本法案の作成に当たっておられます。この点について、医薬分業をうたっておられますが、それは本気でやる気があるのですか、厚生大臣。
  259. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 本気でやる気がございます。
  260. 須原昭二

    ○須原昭二君 本気でやるかやらないかは、あとからひとつ御指摘をいたしたいと思います。  医薬分業の問題は、私がいまさら言うまでもなく、明治初年医制が初めて日本でしかれた際に、当時薬剤師が少ない、薬剤師が充足されるまで当分の間医師が調剤をする、この当分の間が、何と今日まで百年間置き去りにされておる問題点であります。一世紀にわたる懸案事項です。世界の文明国はすべて医薬分業であります。なぜ日本が医薬分業がおくれておるのか、まず厚生大臣から御所見を承りたいと思います。
  261. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) これは、日本のいままでの医療のあり方というものが、さようにしからしめておったと存じます。明治の初めごろ、医薬分業法案を国会に出そうとしてこれがつぶれた、これは明治三十二、三年ごろであったと思います。その後、医薬分業がやかましく言われてまいったが、なかなかできない。そこでやっと、十何年前ですか、医薬分業を原則にするというように法律が改正になりましたが、しかし、当分の間例外を認めることができるということになって、今日にまいっております。そこで、方針といたしましては、やはり医薬分業は国民の健康保持上必要であるという考え方から、まず医薬分業をするのには、その受け入れ体制と申しまするか、これを整えなければならないということでやってまいってきておるんでありますが、なかなか遅々として進まない。そこで、今度の改正案では、まず政令で必要な都市を指定してまいって、一定期限内に必ず行なうというまあ最後の線を引いて、その時日内に受け入れ体制も整えるということを推進していこうと。そうでもしないことには、薬剤師会におかれてもいろいろ受け入れ体制を整備につとめておられますけれども、これもなかなか遅々として進まない。それで、薬剤師会等とも私のほうはやかましく言っておるんでありますが、これについても最後、背水の日時をきめて、そしてやらなければ、いつまでたってもなかなか遅々として進まぬというので、まあ背水の線をそこへ引こうというのが今度の考え方でございます。
  262. 須原昭二

    ○須原昭二君 きわめてまだ解理に苦しみますが、昭和二十三年のときに戦後初めて医薬分業の問題が国会で論争されました。時はGHQ——占領軍の指示によって、アメリカにならって分業実施の勧告があったわけですが、そのときのこの論争の中で、実は薬事法の改正では、医師みずから調剤すればいいという解釈で、分業の本質がぼけてしまっておるわけです。さらに、昭和三十一年ですか、先ほど厚生大臣が申されましたが、この際にも、薬事法改正のときには八項目の除外例——医師は処方せんを発行しなければならないと明記づけてありながら、八項目の除外例が本旨になってしまって、これまた現実には分業は名ばかりになっておるわけです。先ほども申し上げましたように、供給に至る過程において、薬剤師が学理的な薬学的な見地からこれをチェックするということが、国民の医療に大きな貢献を果たすわけでありまして、医師みずからだとか、あるいは八項目の除外例の適用によって、医薬分業が今日行なわれていない現実、チェックシステムが完遂されておらない問題点について、厚生大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  263. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 一つには、いままでの伝統といいますか、やり方を改めることが非常にまあむずかしいというこれは実情、一つには、やはり薬局その他の受け入れ体制が遅々として進まない、この両方に私はあると思います。しかし、このままでいけば、やはり遅々として進まぬわけでございますから、そこで、一定の日時をきめて、それまでにその地域においては受け入れ体制も完備をするように、そしてこのためには、やはり薬剤師のさらに再教育ということも必要でございましょう、それらも含めまして、その一定期限内に実現をさそうと、かように考えているわけでございます。
  264. 須原昭二

    ○須原昭二君 実はキノホルムのスモン病が大きな問題点になりました。キノホルムのこの薬局方においては、〇・五ミリグラムですか、この基準があったわけですが、日本ではこれが十倍も多く使用されてるわけです。他国ではですね、諸外国ではまだキノホルムを使ってるところもあるんです。それにもかかわらず日本がそうしたスモン病がたくさん出てきておる問題はどこにあるのか。これは言うまでもなく、国やメーカーが副作用を予見し得なかった、そこに大きな問題もありますけれども、いま一つは、先ほど薬価の問題あるいは流通の問題で示したように、そうした体系からお医者さんが大量投与、長期投与をやってるところの医原性疾患である、医原性病である、こういうふうに私たちは指摘をしなければならないわけです。したがって、薬を指示する者と投与する者との分離システムというものの完成しない限り、私たちは日本の国民の健康を守ることはできない、そういう要素を見のがすわけにはまいらないと思うんですが、今日の現況においてその非分業というものを看過することができますか、いいと思っておられますか、その点を簡単でけっこうですから御説明願いたい。
  265. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) いわゆる非分業をそのままにしておいてはいけないと、かように考えまして、思い切って一定のデッドラインを引いて、それまでに完成をさせるというように法律を設けていただきたい、かように思っているわけであります。
  266. 須原昭二

    ○須原昭二君 もう一つは、医薬分業の重要性というものは、保険医療に示す薬代が諸外国の二倍以上なんです、先ほど申し上げましたように。そうしたものは、薬を指示する者と投与する者とが同一である。だから、薬価の差益で利潤を生み、大量投与への道をというような弊害を生み出しているわけです。今日の薬禍、副作用を起こしている原因はここに、チェック・システムがはっきりしておらないところに問題点があると言わなければなりません。  いま一つは、たとえば、皆さんも御経験だと思いますが、二つ以上の病院の科に通院をする人、今日日本では一カルテ一処方です。したがって、二つのお医者さんにかかっていると同じように薬をもらってくるわけです。そういうところには過剰投与、あるいはまた重複投与、配合禁忌という危険性が常に存在をしておるわけです。さらにまた、医師の調剤をした薬と、もう一つは自分がOTCとして自分で薬局で買ってくる薬を併用した場合も、同じような危険性を生み出すわけです。したがって、国が薬剤師の国家試験をやって免許を与えているのですから、せっかくのこの薬剤師の薬学的評価による、判断するチェック技術を十分に活用することが、医薬品の安全性を確保し、そうして、国民の命と健康を守る道につながると私は思うのです。そういう点について、御討論を聞いておられます総理大臣は、医薬分業の必要性についてどうお考えになりますか。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 医薬分業、私の耳に入りましてからももうすでに相当久しくなっております。したがいまして、これはもっと進めなければならないと、先ほどの厚生大臣がお答えしたとおり、政府も真剣にこの問題と取り組んでおると御承知願います。
  268. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、現実の問題として現行法規の疑義についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  医師みずからが調剤すると規定されておりますが、このみずからとはどういうことか、監督権も入るのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  269. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 医師みずからということは、やはりみずからであって、監督権はございません。みずから調剤をするか、そうでなければ処方せんを書いて薬局で薬剤師に調剤をさせるかということでなければならぬと思います。
  270. 須原昭二

    ○須原昭二君 現実にはそうなっていないのですよ。別室で診療に当たっておいて、片方のお部屋で薬を看護婦さんや御婦人がやっておられるのです。医療監視員というのか、あるいは薬事監視員としてその監視をしておるのかどうか、こういう点は全然なされておらないのではないか。
  271. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 医療監視員の制度が御承知のようにございまして、そして医師法等に規定をされている事柄が守られているかどうかということを監視をいたしているわけでございますが、ただ、いまおっしゃいますように、その個々の日常の行為まで毎日監視するというわけにはなかなかまいらないと思いますが、しかし、どうもあそこの診療所は、あるいはあそこの病院はそういう疑いが多いというようなときには、重点的にそういう点も監視をしなければならないと、かように考えますが、常時しかしそこに付き添って見ているわけではございませんから、なかなか目の届かないところもあるだろうと思います。
  272. 和田静夫

    ○和田静夫君 関連。ちょっといまの問題で……。  みずからの解釈が明らかになりましたから、したがって、医療監視員が現在どれだけいますか、それが一つと、その医療監視員によってみずから医師が投与をしていない、投薬をしていない、そういう状態が過去においてどういう形で摘発をされ処理をされましたか、明らかにしてください。
  273. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 医療監視員の現在の数は、昨年の九月現在におきまして三千五百三十九人でございます。  第二の点で、その医療監視員がいたしましたときに、過去におきまして医師みずからが調剤をしないでやらしたものについて告発をしたりチェックをしたかという点につきましては、ただいま斎藤大臣もお答えがございましたが、告発をしたような件数はその件についてはないと私は記憶いたしております。また、そこまで十分な監視が行き届いているとは申し上げにくい段階であると率直に思っております。
  274. 和田静夫

    ○和田静夫君 いま言われたのが実情だと思う。したがって、厚生大臣、言ってみれば、法律は死んでいるわけです。こういう状態についてどういうふうに措置をされるつもりですか。あなたの厚生行政上の責任をどういうふうに一体おとりになるつもりですか。
  275. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) どうも最近特に多くなってきたように感じられまするにせ医者の問題にいたしましても、私は医療監視というものをいままでよりももっと強くやらなければならないとかように考えまして、新しく指導方向を打ち出しているわけでございます。一言で言えば、いままで、医者は大体医師法も守るであろう、あるいは医師会の自主的な統制といいますか、監視といいますか、そういうものにまかせるということが多かったのではないであろうかと、かように考えますが、しかし、このまま放置することができませんので、したがって、医療監視の制度もまたやり方ももう少し実効をあげるようにさせていかなければならない、かように考えまして、そして府県の衛生部等を中心にこの点を強く強化をいたしつつあるわけでございます。
  276. 須原昭二

    ○須原昭二君 この問題については、全然やっておられないのですよ。医療監視員で告発をしたのは、過去、年に一回くらいです。警察のほうの医療法の違反は、実は年々二百件から三百件ずつある。医療監視員というのはまさに何もやっていない。したがって、今日自己規制のない医師集団といいますか、医師の皆さん、そうしたものが特権性が認められて立ち入れないというのが現況ではないでしょうか。そういうところに医療の荒廃がある、こう言わざるを得ないと思うのですが、その点は厚生大臣はどのようにお考えになっていますか。
  277. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 監視員には立ち入り権が認められております。したがって、実際は立ち入りもやっておると思います。立ち入りを拒否された例もないと思いますが、しかしながら、いまおっしゃいますように、必ずしも完全な監視ができていたかというと、そうは言えない点があると、これは率置にさように私は認めます。したがって、これを強化をさすようにいま指示をいたしておるわけでございます。
  278. 須原昭二

    ○須原昭二君 実態をつかんでおられないようです。したがって、実態を調査して、後ほど資料でけっこうですから提出を願いたいと思います。委員長、お願いします。
  279. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまの資料要求、よろしゅうございますか。——よろしいようでございます。
  280. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこでまた分業に戻りますが、分業、分業といってかけ声ばかりで百年間過ぎてきたんです。したがって、処方せんについても、処方せん発行の義務がありながら、昨年よりも六万枚減っているのです。保険の請求薬局の数が減っているのです。こういう現実を踏まえて、受け入れ体制、受け入れ体制と言われるけれども政府としてこの受け入れ体制についてどのような力を加えておるのか、こういう点について若干質問いたしたいと思うのですが、この処方せん発行の義務についてどのように行政指導をなされているのか。
  281. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 処方せんの発行の義務について、特に指導というのは実際私はやっていなかったと思います。やはりいままでやっておりました指導は、各地方で薬局の受け入れ体制を整えるということについていろいろとまあ実際上指導をしておったということでございますが、しかしこれも、受け入れ体制側のいわゆる薬剤師関係のほうでも相当力を入れてきておられることは事実でございますけれども、そうたいしたものではございません。したがって、これはやはり法律的にむしろ強制的にやるようにする以外に道がないと、かように考えまして、先ほど申しますような法律の改正をやりたいと、かように考えておるわけでございます。
  282. 須原昭二

    ○須原昭二君 厚生省は何もやっていないということですね。  そこで、医療金融公庫がありますが、この受け入れ体制の一環としてお尋ねいたしますけれども、薬局の整備をするために長期金融は最高額幾らですか。
  283. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 医療金融公庫の御指摘の点は、長期運転資金のことかと存じますが、薬局の場合は五十万円が限度でございます。
  284. 須原昭二

    ○須原昭二君 違うじゃないですか。二十万円でしょう。
  285. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) たいへん失礼いたしました。二十万円でございました。
  286. 須原昭二

    ○須原昭二君 二十万円でしょう。こんな受け入れ体制を薬局側に要求しておいて、二十万円の長期運転資金の貸し出しというようなばかな話はないですよ。子供の小づかいとは言いませんけれども、二十万円で何ができますか。これで受け入れ体制をつくれつくれというのが間違っていると思うのです。どうですか。
  287. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 先生御承知のように、ただいまの長期運転資金は二十万円でございますが、たてまえとしまして公庫でいろいろ融資をして、新設または新しく増築をした、こういうときの当初の薬剤の購入等に充てると、こういう趣旨のものでございます。決して私ども高いとは存じません。  それから薬局につきましては、その他の融資については、一般の診療用と金利あるいは種類、そういったものについては差はございませんが、いわば調剤所というところに融資をする、こういう形でございますので、その面積等が一般に比べて非常に低いと、こういうことでございます。ただ、いま御指摘のように、いままでの実績からこういうことでやってまいっておりますが、今後、本来、医薬分業を進める上で調剤所の整備、こういったことが非常に強くならなければならぬということであれば、われわれもそれに合わせて十分検討してまいりたいと存じます。
  288. 須原昭二

    ○須原昭二君 そこで、期限を切って分業の時期をきめて、そしてそれまでに受け入れ体制を整えよと、こういうふうにいかなければ、私はいつまでたっても分業は成り立たないと思うのです。薬剤師会の意見を聞きますと、ウナギのかば焼きのにおいだけかがされて、いつもどんぶりは出てこぬと、こういうのが意見なんです。ですから、どんぶりを先に出しなさい。ですから、来年の四月一日から十大都市は医薬分業をするんだ、それまでに体制を整えろ、整えない薬局は認可をしないぞ、調剤薬局にしないぞと、こういうような方向に積極的に臨まれることを私は要望したいのですが、厚生大臣、どうですか。
  289. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私も医薬分業は非常に大事だと思いまして、前のときにも薬剤師会等にもずいぶん働きかけまして、今度も——今度は薬剤師会長は新しくなりましたので、さらに薬剤師会長とも話を進めているわけであります。したがって、薬剤師会でこうもやれば早く医薬分業ができる、それをやるためにはこういうようにしてほしいというものがあれば、何でも言うてきてくれと言うて、むしろ私のほうから薬剤師会に、医薬分業の推進のできる方途をまず出してくれと、こちらのほうでも知恵をしぼっているんだがなかなかいい知恵がないということでやっておるわけで、今度の薬剤師会は会長はじめまあ非常にいま乗り気になってきているわけでございます。そこで、いまおっしゃいますように、最後に、一定の時日をきめて、それまでにその地域はしなきゃならないと、こうしない以上はなかなか進まないということを考えまして、須原さんのおっしゃるとおりの法案をいま準備をいたしておるわけです。これをいま審議会に諮問をいたし、一つの審議会からは答申が出てまいりました。私は、これをぜひ法律として通していただきたいと、かように考えております。
  290. 須原昭二

    ○須原昭二君 最後ですが、医療制度について、いま総理、お聞きをいただいたと思うのですが、薬の面においても、診療の内容についても、まさに多くの問題点を持っているわけです。まさに日本の医療制度は古代医療制度だと言っても私は過言ではない。そういう点で、抜本的に思い切った対策が私は必要だと思います。特に日本の憲法は、国民の健康を最優先に取り上げておるわけ。ですから、その点を十分に踏まえて、特にいまマスコミによくいわれておりますが、一億総患者とよくいわれておりますが、こういうことになってはだめです。ですから、ぜひともこの医療制度の改革のために大いに決意を、勇断をふるっていただきたいと思います。基本的に最後に、医療にどう対処されていくか、決意のほどをお示しをいただきたいと思います。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だんだん厚生省におきましても、この改革の姿勢を明らかにしつつあるように受け取りました。私は、須原君の先ほど来の御質問、同時に御意見を交えての建設的な御批判、お尋ねにつきまして、私も大いに胸を打たれるものがございます。政府をうんとひとつこの際、御鞭撻賜わりますようお願いいたします。
  292. 須原昭二

    ○須原昭二君 では、質問は、あと上田さんのほうへ、残り時間を……。
  293. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で須原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  294. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、上田哲君の質疑を行ないます。上田哲君。
  295. 上田哲

    上田哲君 貴重な時間を譲っていただいた同僚議員に感謝しながら、総理、いかなる犠牲を払っても断固として言論の自由を守り抜く決意で御質問をいたします。  この数日間、わが国の国会の中でこれほど言論の自由の問題が論議されたことはありません。そのことは、それだけこの民主主義の基本の問題が深く鋭い危機に瀕していることを物語っていると思います。総理は、この民主主義の基底にかかわる問題について、時間切れの答弁切れなどということではなくて、この総括質問中に十分にお答えになる御用意がおありになりますか。
  296. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上田君、ただいまの御意見どおり、言論の自由、これはまあ表現の自由とあわせて民主主義の基底だと、かように私も考えますので、十分御意見を聞かしていただきたいと思います。
  297. 上田哲

    上田哲君 あなたのこの数日問、あるいはそれ以前の一連の言動によって、すべての記者諸君が、これでは仕事ができない、しからば、どのような決意を込めても政府に向かって言論の自由を貫き通していこうという気持ちでいることについて、どのようにお考えでしょうか。
  298. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私がいろいろの意見も交えて皆さん方と討論もしております、やりとりもしております。しかしながら、基本的に言論を圧迫するとかというような考え方はございませんから、言論の自由、これは尊重すると、同時にまた、表現の自由も御自由でございますし、これまた尊重しなければならないと、かように申しておりますから、それらの点では、せっかくの報道関係者が意気阻喪しないように、私は心から望んでおります。
  299. 上田哲

    上田哲君 昨夜の西山記者の釈放は、言論活動に対する政府にきびしい反省を求められたものと思いますが、いかがですか。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、西山記者の逮捕をめぐっていろいろの問題がございました。しかし、その西山記者を即時釈放すべしという弁護士会の申し入れもありましたが、準抗告と申しますか、これもありましたが、決定決定として受け入れられた、私は、いまの法秩序は守っておると、かように理解をしておる。それより以上に私が論評すべき何ものもございません。
  301. 上田哲

    上田哲君 一つのチャンスだと申し上げます。西山記者が釈放されたという、この機会総理は、先般の北アイルランドの紛争のときに、イギリス軍があやまって記者を捕えて、さらに謝罪してこれを直ちに釈放したように、総理は、東京地裁決定によって釈放をせざるを得なかったのではなくて、元来政府は一刻も早くみずからの手で釈放すべきである、そういう見解を表明すべきであった。こういう見解を御表明なさることによって、いま全マスコミ、全世論に渦巻いている暗雲を一掃しようとするお考えはありませんか。
  302. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと英国の場合と違うのではないか。私は、捜査当局がやっておるそのとおりで、政府が関与することは望ましくないと、また、捜査当局に対して捕えろというような、逮捕についても相談もいたしませんが、また、釈放しろと、こういうことも政府自身が指示する筋のものではないと、これはもう、それぞれちゃんときまりがございますから、そういう手続を踏んでやられたと、また、それが望ましいことではないかと、かように思っております。
  303. 上田哲

    上田哲君 それでは伺いますが、蓮見事務官は自首ですか、告発ですか。
  304. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 蓮見事務官につきましては、外務省のほうからは、明朝蓮見事務官が出頭したいと言っている、それで、ついてはその捜査は今後警察にお願いしたいと、こういう依頼がございました。で、この点につきましては、これを告発と解するのかどうかという問題ですけれども、口頭による告発と同様な効果を持ったものであるというふうに私どもは考えております。
  305. 上田哲

    上田哲君 おかしいじゃありませんか。政府の報告は、自首でありました。
  306. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 自首、つまり厳格な意味における自首、つまり法定減刑を必要とするような自首というものと、あるいは一般に言われている警密が呼ばないのにみずから出頭したという自首というものとの相違でございます。これが厳格に法定自首になるのかどうかという点については、問題があると私は考えております。
  307. 上田哲

    上田哲君 だめですよ。答弁になりません。こんなでたらめなことで人を逮捕するんですか。
  308. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 本人の出頭と本人の逮捕というのは、これは別問題でございます。
  309. 上田哲

    上田哲君 自首によって、告発によって、いずれによって逮捕したのかと聞いているんです。
  310. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 本人は警視庁に任意出頭し、外務省からは捜査の依頼があったと、こういうことでございます。
  311. 上田哲

    上田哲君 告発じゃないんですか、告発と言ったでしょう。
  312. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) それは、刑事訴訟法上の告発は、文書によるものと口頭によるものと両方が認められている。で、その口頭による告発と同じであると、こういうふうに私どもは考えております。
  313. 上田哲

    上田哲君 そうすると、政府の初めの御報告は間違っていたことになります。
  314. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 当初、外務大臣が自首とおっしゃったのは、私どもは、そういう厳密な意味の法定自首ではなしに、本人が進んで出頭したと、そういう意味でおっしゃったものだと理解しております。
  315. 上田哲

    上田哲君 こまかい技術論を言うのではありません。自首という形式をとらせたという実質に問題があるのでありまして、いかにも事務官を大事にしているというような、かばっているというような表現の中で、しかし、同僚議員が質問いたしましたように、そこにしわ寄せをさせているというような感じすら受ける。そういう形が私は問題だと思う。そこに、西山記者を逮捕し、そして十日間の勾留をつける、こういう形が出てきたのであり、そして東京地裁の釈放という形になってくるという、検察側からすればぶざまな形というものが招来される結果になった。  この際、明らかにしていただきたい。百十一条ではなくて、窃盗によって、刑法によってその捜査の幅を広げ、国政調査権を刑法の網をもって押え込もうという意図があったのではないかという見方もあります。窃盗はどうしますか。
  316. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 昨日の東京地裁決定は、犯罪の容疑事実についてはすべてこれは認めている。ただ、そういうふうに罪状が明らかに現在までなっておるんであるから、今後勾留を続ける必要はないというのがその理由でございます。  それから、窃盗の問題につきましては、先般も私申し上げましたが、たとえば窃盗あるいは窃盗に準ずるような、そういう違法的な要素の強い取材方法、あるいは窃盗の教唆、あるいはそれに準ずるような行為の教唆というふうな違法性の強い取材方法それが取材の方法を逸脱していると、かように申し上げたわけでございます。
  317. 上田哲

    上田哲君 窃盗をやるんですか、やらないんですか。
  318. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 現在のところ、考えておりません。
  319. 上田哲

    上田哲君 わかりました。非常に狭められた時間でありますから、その一言が聞ければ次の問題に移ります。  国益であります。国益とは国民の利益であって、政府の利益と同じものではない。七日の委員会で、政府は、国益とは国民がきめるものであって、政府が一方的にきめるものではないという見解をお出しになりました。このことは一応評価します。しかし、本日の官房長官の見解は、全くこれから百歩遠ざかったものと言わなければなりません。もし国益というものを最終的に政府がきめるということになるのであれば、国益は再び国家公務員法に従属するというような形になってしまいます。いかがですか。
  320. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国益論争になりますと、これはなかなかむずかしいです。それはもう最終的には国民がきめると、こういうことで一応わかったようですが、それでは国民の一人一人みんな違うんじゃないかと、こういうこともあろうと思います。私は、そのいわゆる客観的妥当性のある国益と、こういうものが客観的妥当性が見つかるかどうか、そこらに一つの問題があろうと思います。したがって、私ども国益だとかように考えても、社会党の方は、さようなものは国益じゃないと言われるかもわからないし、また、甲の国民は、ああ政府の言っていることは国益に合致するりっぱな意見だと。しかしまた、乙は、そうじゃないとか、これはまあ非常にむつかしいことだと思います。どういうようにしてこれをきめるか、これはいろいろ議論があるところで、まあ竹下君のような表現のしかたもその一つかと思います。問題は、絶対に多数の支持を得ているからそこらに国益代表するものがあるんじゃないかと、こういうのが竹下君の言い分じゃないかと思いますが、必ずしも、多数の支持を得たからといって、それで客観的妥当性が証明されたと、かように言うのには論理的飛躍があると私は思いますので、これは、抽象的にはわかったことでございますが、具体的な国益論争、これをきめることはなかなかむずかしい。そこらに皆さん方の各方面の批判、そういうものが形の上に出てきたら、それがやっぱり望ましいことではないか、かように私は思っております。  いま、大新聞だけで、どうも政府の言っていることは国益に反すると、かように申したから、これは国民代表の意見だと、かように言われても、これも飛躍があるように私は思います。しかしまた、評論家自身がいろいろ議論を載せておられる。その中には賛否両論ございますから、それらのものをやっぱり考えていく。(発言する者あり)私は、しかし、これで、いま不規則発言がありますが、選挙に該当すると、かような問題ではないように思っております。
  321. 上田哲

    上田哲君 国益の内容の概念規定を問うているのではないのであります。もっと言えば、国益の内容の概念規定ないしは基準の設定ということが誤りなんでありまして、総理のことばをかりれば、政府なり、社会党なり、どれでも同じ、そうしたものによって基準を設定されてはならない。国民の意向にゆだねるものが国益でなければならない。これがあるべき姿であります。
  322. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その点は私が指摘したとおりでございますが、一応わかったようだが、なかなか具体的な問題になるとただいまのことでは解決がつかないんじゃないかと、かように私は思っております。
  323. 上田哲

    上田哲君 総理が私の考えと同じであれば、官房長官のお考えは百八十度違うのであります。
  324. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまの御質問でございますが、総理大臣がおっしゃいましたことと私が言っていることは、趣旨において同じであると理解をいただきたいと思います。  まず、国民の意向にゆだねるものが国益であると、私もそのとおりであると思います。で、私が申し上げましたのは、国民代議制の今日において、国会というものがある、そうしてまたそこで指名をされて——多数とは申しておりませんが、指名をされて内閣というものが組織されておる、それなりの論理体系というものは一応続くものであると御理解はいただけるものと思うと、しかし、そういう論理体系は、むしろ国益が一政権、一内閣によってその利益として理解をされがちである、したがって、それだけに、国会という十分な監視機関であり、そしてまた報道機関という世論機関がある、その中におのずから私は良識あるものが判断されるであろうと、このように非常に注意してものを申し上げておるつもりであります。
  325. 上田哲

    上田哲君 その御見解は、行政目的ないしは広げて政治目的と国益との概念の混同であります。そう思いませんか。
  326. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっともう一ぺん、質問の趣旨がよくわからないそうですから、時間はあれしませんから言ってください。  不規則発言が多いようですから、お静かに願います。
  327. 上田哲

    上田哲君 ただいまのお考えは、政府の行政目的というものと国益との概念の混同であると申し上げるのであります。
  328. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、行政目的というものも国益を離れては存在いたしません。そしてまた、私ども考え方、また各党の考え方も、いわゆる国民の利益はどこにあるかということがすべて根底になって論理体系が成り立っておる、このように私は理解をいたしております。したがいまして、私が申しました一つの積み立てた論理というものが、決して単なる行政目的という機構的な中で申し上げたわけでなく、十分国家利益という広範な中で申し上げたと、このように理解をいただきたいと思います。
  329. 上田哲

    上田哲君 国家利益の基準を政府が設定することがいけないのであります。
  330. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 当然私は、これは行政にいたしましても、政治にいたしましても、国益の存するところを踏まえて行なわれなければならない、しかしそれを最終的にきめる者は国民である、この理解はきちんと私なりに承知いたしておるつもりであります。
  331. 上田哲

    上田哲君 それならばけっこうでありますから、七日の朝総理が表明をされました御見解に統一をしていただく、いかがですか。
  332. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 七日、上田議員に対して総理がメモをもとにしてお答えになりました、その考え方が基本であり、もとよりそれが統一したものであると、このように理解をいただいてけっこうだと思います。
  333. 上田哲

    上田哲君 総理、いかがですか、よろしいですか。一言言ってください。
  334. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま官房長官答えたとおり、これが政府の見解でございます。
  335. 上田哲

    上田哲君 しっかり確認をいたしておきます。  一歩進めて——そうしますと、私は、より少ない政府機密と、より多い公開討論の中に国益が増進されるべきものだ、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  336. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には私もそのとおりだと思います。そこでこそ民主主義の基盤であると総理が申されたゆえんもそこにあろうと、このように思います。
  337. 上田哲

    上田哲君 ことばとしてはたいへんけっこうでありまして、ぜひひとつその方向で進んでいただくように、この確認を私は大切にしておきたいと思います。  そこで、次に移ります。次に出てくるのは機密の問題であります。機密機密といいますけれども政府自身がうそをついているということがあります。政府は、機密文書はないんだということを、そういううそを再三にわたってついてきたと国民は思っております。吉野アメリカ局長だけでも、十二月七日の衆議院沖特連合審査で四回、十二月十三日の衆議院沖特で六回、うそをついております。吉野さん、うそをついた理由は何ですか。
  338. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 先般もこの席で申し上げたとおり、私の昨年の十二月、沖特の委員会における発言は、部分的に非常に不穏当な点がございました。で、この理由は、先般外務大臣も説明したとおり、その沖繩交渉のやりとりに関する部分につきましては、われわれといたしましては、相手方もありますし、いろいろのデリケートな点もございますから、したがって、本来言い得ないということをはっきりと申し上げればよかったわけでございますが、しかしながら、その点をついにはっきり申し上げずに、知らないとか、そのような資料は全般ないと、こういうようなぐあいにお答えした次第でございます。この点につきましては、重ねて御了解をお願いいたします。
  339. 上田哲

    上田哲君 御了解じゃないですよ。御了解とは何ですか。吉野さん、御了解ではない、国民にわびたまえ。何が了解できるか。うそを了解する国会があるか。うそを了解しろとは何だ。申しわけなかったと言いたまえ。
  340. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) この私の発言が問題を起こしましたことにつきまして、はなはだ遺憾に思っております。この席をおかりしまして深くおわびいたします。
  341. 上田哲

    上田哲君 外務大臣、国民が、いろいろな意見はありますけれども、いま吉野さんと同じように、あなたに一言聞きたいことばがある。やっぱりあなたも、ことばじりの問題ではなくて、国民に向かってうそをついた、いまのようにおわびいたします、これはやっぱりフェアに聞きたいと国民は思っています。いかがですか。
  342. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題につきましては、私は、衆議院でも、参議院でも、たいへん遺憾な表現であったと、こういうことで、遺憾の意を表しておるわけなんです。なお、私はかりじゃない、そういうことも含めまして、総理も先般、衆議院において遺憾の意を表明しておる。これでひとつ御理解を願いたいと、こういうふうに思うんです。ほんとうに、申し上げますが、たいへん沖繩国会における政府委員のあの言い方、これはまあ、一々皆さんから電報をちらつかせながら聞かれます。それに対して、これは答えられませんと、こうはっきり言えばよかった。それをそうでなくって、そういう事実はありませんというような答弁をいたしたことにつきましては、これを深く遺憾としております。
  343. 上田哲

    上田哲君 私は、この政治家の心情として、フェアにおことばを伺いたいというのが国民の気持ちだと思うんです。いかがでしょうか。
  344. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたとおり、私もこれを深く遺憾とし、なお総理大臣も、先般、衆議院において所信の表明をしておる、こういうことを繰り返して申し上げます。
  345. 上田哲

    上田哲君 外務大臣は、そのとき言えないと言えばよかった、そういうふうにことばの問題として遺憾の意を表明されておられます。しかし、問題はそれだけではないと思うんであります。三通の電報によって四百万ドルのからくりというのはだれの目にもこれは明らかであります。外務大臣は、これは経過であって結果ではない——一つの論理であります。しかし、結果でなければいいんでありましょうか。経過であればこのようなことでいいのでありましょうか。この電文を明らかにされた国民は、明らかにこれを見ることが国民の利益であったとみんな思っています。見ないことが不利益であるということの理解をしています。それほどこの経過の内容そのものが、国民にとって利益をもたらすような内容ではない、国民に知られては困る政府の利益であったという理解を今日しております。結果でなければいいのではない。このような経過があったことについて、やはりそれを伏せていたことについて、外務大臣は国民に謝すべきだと思います。
  346. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 外交交渉であり、相手があることです。ですから、その途中ではいろいろのやりとりがある。これを一々公表する、これじゃ交渉ができませんです。また、この沖繩返還協定ばかりじゃない、今後の外交交渉にも支障のある問題になってくる。そこで交渉の経過は、これはなかなか開示できない問題である、こういうことを申し上げておるのです。しかし、結論において裏はない、秘密協定はありません、こういうことを申し上げておるわけであります。
  347. 上田哲

    上田哲君 経過はあれでよかったとお考えですか。
  348. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経過につきましては、事実が示しておるとおりその経過があった、これを私、承認いたします。
  349. 上田哲

    上田哲君 正確に答えてください。経過はよかったかと、よかったと思うかと言っているのです。
  350. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経過がよかったか悪かったか、これは判断のむずかしい問題ですが、ああいう経過があったということは事実であり、そういう事実、これはもう経過ですから、経過としてこれを承認をする、こういうふうに申し上げておるわけです。
  351. 上田哲

    上田哲君 東京地裁決定に即して伺うが、今日、三通の電文は秘密でありますか、ありませんか。
  352. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 秘密を解除いたしました。
  353. 上田哲

    上田哲君 それでは伺います。五月八日、六月九日以降、あの経過からどのような経過をたどってそれと違った結果にたどりついたか、御説明いただきます。
  354. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あのあとで愛知外務大臣に対しまして、愛知書簡を発出せいと、こういう要請があった、それを愛知外務大臣は拒否した、こういうことで協定文に相なっておる、こういうふうに御理解を願います。
  355. 上田哲

    上田哲君 よくわかりません、密約があったのではないか、経過自身で国民を裏切っていたのではないか、この疑惑が深まる一方であるということを申し上げざるを得ませんが、それらを含めてあなたの下僚の吉野アメリカ局長も、申しわけなかったと国民の前で、ここで言った。やはり、どうでしょう、フェアにそれはあなたにとって同じ気持ちにはなれないものでしょうか。
  356. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 適切な表現でなかったということを遺憾としておるのです。しかし、裏取引があるとか秘密協定があるとか……。
  357. 上田哲

    上田哲君 そういうことはいま言っていません。
  358. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういうことにつきまして言っておるわけじゃないのです。その表現の問題につきましては、私もこれを遺憾としておる。繰り返し申しております。
  359. 松永忠二

    松永忠二君 関連。少し、時間もないし、詰めているので。  この前私が質問して、結局、財源を心配してありがたかったということは事実だと、こういうことになったわけです。財源を心配してもらってありがたかったという事実は、これは日本の国にとって利益だったのですか、あるいは不利益だったのですか。
  360. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財源の心配をしたというか、三億一千六百万ドルという数字が出てきまして、それに対しまして、四百万ドルの財源を与えますから補償をしてくれ、こういう内容にはなっておらないのです。三億二千万ドルというものがまずきまって、一方において復元補償交渉があった、こういうことなんです。その三億二千万ドルという額、これにつきましてはアメリカは満足の意を表した、その辺の雰囲気がそういうことばで出てきておるのじゃないかと私は考えておる、こういうことを申し上げておるわけです。
  361. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君、簡単に願います。
  362. 松永忠二

    松永忠二君 だいぶこの前長くそこをやって、皆さんいろいろ御批判もあったのですけれども、そこだけは認めたのでしょう、ここだけは。これは事実だと言ったじゃないですか。「財源の心配までしてもらったことは多としているが」ということは事実だと、こう言っているのです。結局、いわゆる復元補償の財源というものは心配をしてもらった、こういうことは事実なんでしょう。うそですか。
  363. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう電報があることは、そのとおり事実でございます。これはしかし、その内容を、そういう事実がどこから出てきたかということをただいま私が説明したと、こういうことでございます。
  364. 松永忠二

    松永忠二君 それはおかしいですね。そうすると、この電報は正しい、真実だ。しかし、この電報の表現は、これは事実ではない、こう言っているのでしょう。この電文は事実です。しかしこの電文の、この「財源の心配までしてもらったことは多としている」ということは事実ではありませんと言っているのですよ。あなた、どっちがほんとうなんですか、どっちが。
  365. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この電報のあることは事実であります。しかしその電報の意味するところは、三億二千万ドルという満足すべき財源が与えられたということに対する評価である、こういうふうに私は申し上げているわけであります。
  366. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君、簡単に願います。
  367. 松永忠二

    松永忠二君 最後に。ただ、そうなってくると、これは、この電文のあることは事実だけれども、電文の中のことは事実ではないということをいま言われた。経過としてもこれは事実ではないですか。——いやいや、あなたに言っているのですよ。そんなこと何も聞く必要はない、こんな簡単なこと、一番中心のことを何も局長に聞く必要はない。この電文は事実だと、しかしこの内容は事実ではない、と。経過でもないのですか。そういう経過でもないのですか。そこをはっきりしてください。
  368. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つまり三億一千六百万ドルというものがきまって、それに積み上げまして四百万ドルというものを加えたのだという経過はないのです。三億二千万ドルというものがまずきまって、そうしてそれをどういうように説明するかというアメリカ側の事情があったと、こういうことは事実であります。
  369. 松永忠二

    松永忠二君 これはちょっと疑義があることだから、時間の制限もあることだし申しわけないけれども……。  そうすると、この「本大臣より重ねて何とか政治的に解決する方法を探求されたく、なお、せっかくの三億二千万ドルがうまくいかず三億一千六百万ドルという端数となっては対外説明が難しくなる旨」、これはほんとうですか、うそですか。そういう交渉経過はあったのですか、なかったのですか。
  370. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはアメリカ側の事情なんです。まさに私が言いましたアメリカ側の事情である。
  371. 松永忠二

    松永忠二君 「本大臣」ですよ。
  372. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つまりアメリカ側が、三億二千万ドルを二つに分けて、そうして四百万ドルはこういうふうな日本側の要求に基づいた復元補償費だと、こういうふうに説明しようとした。それは困ります、私どものほうはそういう考えは持っておりません、こういうことで愛知書簡を断わったと、これが真相でございます。
  373. 松永忠二

    松永忠二君 そういうことになると、これはこの電文は事実だ、事実だけれども、いわゆる「財源の心配までしてもらったことは多としている」というそのことは経過にもなかったし、事実にもないのだと。それから「三億一千六百万ドルという端数となっては対外説明が難しくなる旨」、答えたのは、こっちの大臣ですよ。こっちの大臣が答えた。「旨言いおいた」と。「本大臣より重ねて何とか政治的に解決する方法を探求されたく」というふうに言った。そういうことの、これは経過としての事実ではございません、ただ三億二千万ドルという数字だけは事実ですと、こうあなたおっしゃるのですね。
  374. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三億二千万ドル、わがほうは承知した。それに対してアメリカ側は、そのうち、じゃ四百万ドルを復元補償にやりましょうかと、こういうふうな意見を出したようであります。そういういきさつのあったことは事実なんです。しかし、結論においてそうはなっておらぬ、こういうことを申し上げているわけです。
  375. 松永忠二

    松永忠二君 経過としては事実だということははっきりしている。
  376. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  そうするとですね、四百万ドルは、返還協定四条の3によって自発的にアメリカ側が支払わなければならないことになっておりますですね。そこで、三億二千万ドルの由から払ったといえばそれまでですが、しかしアメリカの予算教書ですか、その中に四百万ドルの支出というものは出てこなければいかぬわけです。今度出なければ、次の議会に出なければそれはおかしいことになりますですね。それはどういうことになりますか。
  377. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはアメリカ局長からお答えをいたさせます。
  378. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 交渉の経過でございますから、私から簡単に説明さしていただきます。  まず第一に、この電報にあらわれておるやりとりは、その背後にある何回もの事務当局のやりとり、それが背景になっておりますし、また、愛知・マイヤー会談におきましても、もっと深いいろいろのやりとりがあったわけです。それを簡単にこの電報で要約しているわけでございますから、したがって、そういうものを度外視して、この点だけで解釈していただくとはなはだ誤るおそれがある、こういうことでございます。  それから、やりとりでございますから、いろいろのことを言い合いまして、相手を納得させようとしているわけでございます。そこで結局、その問題の本質は、三億二千万ドルがきまったと、それはその前の項に書いてありますように、大蔵大臣も同席の上で三億二千万ドルについて了承を得たということを愛知大臣が言っているわけでございます。ところが、このころになりまして明らかになってきたことは、アメリカ側がアメリカの議会に対し、その復元補償に対する金が請求できなくなってきたと、こういうことでございます。したがって先方は、何とかしてそれについて説明のつくような方法でひとつ日本側に妥協してくれないかと、こういうことで、たとえば三億二千万ドルを二つに割って、三億一千六百万ドルと四百万ドルに分けてくれないかとか、いろいろ言ってきたわけなんです。(「前の、財源を感謝するということはどういう意味だ。」と呼ぶ者あり)財源は、これはこの前も福田大臣が説明をしたように、三億二千万ドル、総理と了承の上きまったということをさすと、われわれはこの全体のコンテックスから見て読んでおりますが、われわれとしましては、のみならず彼らに対しましては、ともかく四百万ドルがないと急に言い出したものに対して、それはおかしい、われわれはアメリカ側に三億二千万ドルも払うわけじゃないか、したがって、金がないというのはおかしいじゃないか、われわれの金の中ですぐにアメリカが、たとえば労務費とかあるいは核の撤去費とかいうようには使わない金もあるじゃないか、たとえば資産の継承のための一億七千五百万ドルという金は、まるまる使える金じゃないか、したがってこの金で払ったって払えないことはないじゃないか、だからその三億二千万ドルも払う以上、金はないということはおかしいじゃないかと、こういうような議論をしたわけでございます。したがって(「それじゃ、前のありがたいということばが出るわけがないじゃないか。」と呼ぶ者あり)それは、先ほど言いましたように三億二千万ドル、その前に大蔵大臣と同席の上きまったと、こういうことをさしているんだろうと思いますが、いずれにせよ、いろいろのやりとりがあったわけでございます。要するに、金はどこから出ようと、われわれとしてはそれは探求しない、ともかく四条3項の規定を日本側の提案するようにのんでほしい、先方は、四条3項の規定を日本側の提案するようにはのめないと言ってきたわけですね。そこで、愛知大臣から手紙がほしいとか、いろいろなことを言ってきたわけでございます。しかし、それは全部断わって、結局、現在のような……(「あとのは説明にはなっているけれども、前のは説明にならぬでしょう」と呼ぶ者あり)
  379. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと、せっかく説明しておるんですから、しまいまで聞いてください。(発言する者多し)お静かに聞いてください。
  380. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) そこで……(「向こうはかってに説明さしておいて、そうしてあとぼくがやれば……」と呼ぶ者あり)
  381. 徳永正利

    委員長徳永正利君) どうぞ、説明して。
  382. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) いずれにせよ、この交渉の過程という問においてはいろいろの議論が言いかわされるわけでございまして、それは必ずしも事実とは同じではない、それは結局、相手を説得するための手段であることも大部分である、結局まとまったところは現在の協定以外にはないと、こういうことでございます。なお、その復元補償の金がいかなる形で米側から支払われるかということは、これは、われわれとしてはアメリカ側の問題である。したがっていかなる方法で支払われるかわれわれは知らない。過去においてこの復元補償の費用は、アメリカの軍事費から支払われてきただろうと、われわれは想像しております。しかしながら、今度のこの協定に基づく復元補償がいかなる費用で払われるか、日本政府としては関知しないところでございます。
  383. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連。  いまの話を聞いておりますと、結局吉野局長は、いろいろと持って回ったような説明をしておられるけれども、結論としては、日本が金を出してやって、その金でアメリカから軍用地復元補償の金を払わすと、こういうことを言われているわけですよ。それで、それが四条3項の協定の中に明示されてない、まさにこれは密約です。これが一つ。  それからもう一つは、先ほど来上田君の質疑に対する問題ですが、いまの吉野局長の説明を聞いておると、この牛場駐米大使あて愛知外務大臣発の電報は存在するし、そしていろいろな交渉の経過はあったが、それをまとめたものがこの3項としての請求権問題に要約されて書かれておる、こういうことでありますから、そうすると、衆議院段階でいろいろこうした内容について質疑が繰り返されたその中で、こういう経過、内容というものは一切否定されてきたわけです、吉野局長も、それから外務大臣も。そうすると、この内容自体に対して否定をして、そんなことは全然ないとおっしゃった、この内容に対するうそ一つ。それからもう一つは、こういう電文なりメモなり、あるいはこうしたもの、何というのか、メモとか電報だとか、それから会議録だとか、そういう形に残るものは一切ない、口頭、電話でやったと、こうおっしゃったのだから、その点についてうそを言った。二つうそを言っているわけですよ。内容に関連する部分うそ、それから文書の存在それ自体を否定したことのうそ、この二つのうそが重なっている。だから、単に表現の問題で片づけられてはわれわれは納得はできない。表現の問題ではない。これは内容にわたってまでもうそを言っている。文書の存在も否定した点でうそを言っている。二重のうそを言っているわけですよ。外務大臣、たいへんなことだ、これは。
  384. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず内容でありますが、内容にこれは裏もうそもありませんです。これは先ほどから申し上げておりまするとおりであります。要するに、先ほどどころじゃない、これは去年の沖繩国会から申し上げておるんですが、三億一千六百万ドルというものが出て、それに四百万ドルを上乗せをいたしましたと、これは一言も言っておりません。いま吉野局長の説明をそういうふうにおとりになったと、こう言うのですが、だいぶ飛躍したおとりの仕方であるというふうに存じます。ですから、内容についてうそをついたなんというようなことは全然ありませんから、その辺は、はっきりとひとつ御理解を願います。  それから第二の問題ですね、メモはあるかということにつきまして、メモはありませんと、こう言ったと。これは答えられませんと、こう申し上ぐべきところを、ありませんと言ったこと、それから電報の問題でありますが、電報を打ったかというのに対しまして、全部電話で済ましておりますと、これも事実と違うわけでありますから、これも真実を伝えておりませんけれども、しかし吉野局長の言わんとするところは、幾ら聞かれましても、これは交渉の経過であって申し上げることはできない、しょせんは皆さんの御期待には沿い得ないものなんだと、そこでこれは、そういう事実はありません、こういうような答弁になったと、こういうことを御理解いただきたいのだと、こういうことを先ほどから申し上げておる。
  385. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委員長
  386. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 竹田君、簡単に願います。
  387. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも、ずっと聞いていて全然わからないわけであります。国民も、おそらく私この点については全然わからないと思う。しかしあなたは、裏も何もないと、こう言われる。そして先ほどの話では、三通の電報に限ってはこれは極秘扱いを解除したと、こう言っておる。しかし愛知前外相は、この間に百十数通の電報があったと、こう言っている。おそらく、私は、その他にも、議事録なりメモなりが内外において書かれていると思う。国民全体が、このくらいわからないのですよ。一体この問題が国益に反するかどうかという判断国民がするべきものであるということは、先ほど総理が言ったとおりなんです。そういたしますと、国民全体がこんなに疑問だということであれば、いままでのこの沖繩返還に伴う三億二千万ドルの一切の交渉資料をここで公表して、私は国民の疑惑を明らかにするのが政府役割りだと思う。いままでの一切のそうした交渉記録、電報を含めて一切、資料として国民に提示をして、この問題のほんとうの裏があったか、なかったか、国民全体にとって三億二千万ドルが国益であったかどうか、こういう判断を私は外務大臣として仰ぐべきだと思うのですが、どうですか。
  388. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は報道の自由は、これは民主社会において非常に大事なものだと思います。したがって取材の自由なる活動、これも大事なことである、こういうふうに思います。しかし、それには限度がある。私どもはいま外交交渉をやるのです。これからもどんどんどんどんとやらなければならない。そういう際に、一々その交渉の経過が公表されなければならないということになったら、交渉は成り立たぬです。そういうことをひとつ御理解願いたい。かるがゆえに、交渉の経過を全部ここでさらけ出せ、こう言われましても、それはできないことである、こういうことを申し上げておる。
  389. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは上田君、本論にひとつ入ってください。
  390. 上田哲

    上田哲君 答えが出ていない。いまの回答が出ていないですよ。
  391. 徳永正利

    委員長徳永正利君) じゃ竹田君、関連ですから簡単に、もう一問だけ願います。
  392. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 簡単ですが、わかっていないのですからね、相手が。
  393. 徳永正利

    委員長徳永正利君) いまの質問にはちゃんと答えていると思いますよ、ぼくは。
  394. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私の質問は、新聞記者がこれをすっぱ抜きをやったということを言っているんじゃないんですよ、私は。十二月の国会からことしの国会にかけて、国民はたいへんこれについて疑惑を持っているということですよ。電文そのものではないんですよ。全体としていまや疑惑を持っていると言うのですよ。国民がこれほど疑惑を持っているものについて、しかも交渉は終わっている。現在の段階では終わっていると思う、交渉は。しかも批准までしている。こういう段階において、いままでの、これだけのよくわからない交渉経過というものは、私は、資料をつけて国民にその疑惑を解くというのは政府責任だと思う。その点を聞いているのです。アメリカに対して、これだけ国会でももめているし、国民もまたこれについては疑惑を持っているのだから、この資料は公表すると通告をすればいいことである。なぜ、それをしないかということを聞いているのです。
  395. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 交渉の経過、これを公表することは非常に困難な問題です。これは済んだことではありまするけれども、まあ主としてこの電報が資料として残っておりますが、電報はコードの関係にも響いてくる、こういうようなことを考えますると、電報自体にも問題がある。それからアメリカ政府が一体この交渉の経過の公表に賛成するかどうか、それからそれに、かりに賛成を得たにいたしましても、これが今後の交渉にどういう響きを持つか、そういうようなことを考えまするときに——先ほど私は三本、機密解除をしましたと申し上げましたが、あれは誤りでありましたから、二本でありましたから、そのとおり御了承願います。まあ交渉の経過が一々、あとにいたしましても公開されるというわが日本国とどういう話し合いをするか、こういう態度の変化というものが見られるだろう、こういうふうに思うのです。そういうようなことから、結論的に申し上げますと、私ども国会を通じてるる説明をしておる、これで国民に御理解を願う、こう言うほかないと思います。
  396. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  397. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  398. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) まさにその点が、アメリカとしては最終段階になって非常に困った点であるわけでございます。それであればこそ、最初四条3項の規定をそのまま認めておきながら、最後になって、その米側が何とかアメリカの議会に対して説明のつくような方法を考えてくれといってきたのが、今度の交渉の経緯であるわけでございます。しかしながら、わがほうは先ほど申しましたように、最終的にはこれを断わったわけでございます。その経緯においては、先方を納得させるためにいろいろのことを言いました。たとえば三億二千万ドルともかく払ってあるのだから、お金がないということでこの四条3項の補償が払えないのはおかしいじゃないか、こういうことでございます。まあ、いずれにせよ最終的には四条3項の規定が、これはわがほうの当初案でございますが、そのまま通りまして、そうしてこの協定が落着した、こういうことでございます。
  399. 徳永正利

    委員長徳永正利君) アメリカの予算の経理、答弁できる……。
  400. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) そこで、予算のどの項目に入るかということでございますが、この点につきましては、われわれはあえて相手を追及しなかったわけでございます。というのは、協定をした以上、協定に従って先方が支払ってくる以上、どこから彼らが金を支出しようと、これはわれらの関知するところではございません。
  401. 上田哲

    上田哲君 四百万ドルは、三億二千万ドルの中からアメリカが支払うという、最後の了解メモがあるはずでありますが、これは出せませんか。
  402. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) これは先ほどからも申しておりますように、われわれは絶対応じなかったわけでございます。したがって、そのようなメモはございません。
  403. 上田哲

    上田哲君 解除した二通はどれで、あと一通はどれですか。
  404. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) お答えいたします。  往電の二本は、衆議院のときに吉野アメリカ局長が横路先生と照合いたしまして、それでまた、ある新聞にも発表されておりましたので、公開されましたということで解除いたしました。来電につきましては、いまだ照合を終えておりませんし、公開もされておりませんので、まだ解除の手続をとっておりません。
  405. 上田哲

    上田哲君 新聞に出てしまったから解除するというのは、一体ずいぶんずさんな理由ではありませんか。
  406. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 公開になりましたので、もう極秘に置いておく必要がなくなりましたので、解除いたしました。
  407. 上田哲

    上田哲君 新聞に出たことによって、公になったことによって、どんな国益が損じられましたか。
  408. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカからまだ直接な反響はありません。これは率直に申し上げます。ありませんが、これからの日本の外交のやり方、これにつきましてはかなりの影響があった、こういうふうに思います。つまり、お互いでざっくばらんに外交官は話し合うのです。そのざっくばらんに話し合った一々が、これが世の中に出ていく、こういうようなことになると、ああ日本とはざっくばらんに話し合えないじゃないかと、こういうような印象を与える。これは私は、当の相手方であるアメリカばかりでないと思うのです。第三国にもそういう影響があるであろう、こういうふうに見ておるわけであります。
  409. 上田哲

    上田哲君 総理の統一見解のように、国益国民判断をいたします。これは、公開されたことは国益だと国民は思っております。そういう意味では、もし政府がそれに対抗し得るならば、どういう国益が損じられたかを具体的にわれわれに対して提示すべきものだと思います。  ついでに聞きます。百十数通といわれる電文は、いつ解除されますか。
  410. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 百十数通という電報と申しますのは、私、どの電報かわかりませんが、解除するつもりはございません。
  411. 上田哲

    上田哲君 何言ったのですか、ちょっと最後、聞こえなかった。
  412. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 公開されておりませんし、解除するつもりはございません。
  413. 上田哲

    上田哲君 公開されることが国民の利益だと考える。政府がそれを拒む限り、取材の自由はどうしても守られなければならないことになりませんか。
  414. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、先ほどからも、また前々からも申し上げておるんですが、報道の自由、これは民主主義の大原則である、こういうふうに思います。したがって、取材の自由もこれは尊重されなきゃならぬ。しかしこの取材の自由も、法令の範囲内でそういう制約、つまり公共の福祉、こういう制約下に置かれるべきであると、こういうふうに思うんです。それで、政府が外交政策を進めていく。それに支障のあるというような理由をもちまして秘密とされておる、それが漏洩されるというようなことは、これは重大なる国家利益に反する問題である、そういうふうに考えます。
  415. 上田哲

    上田哲君 法令が取材者を拘束するとしても、その取材者によって、さらに高い憲法レベルの法益が国民にもたらされる場合、どちらが正しいのですか。
  416. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 憲法のもとに行政はあるわけですが、行政のあり方につきましては基準がきめてある。つまりこれが法律であります。皆さんが御審議をなすっておるわけなんです。その制約を受ける。これは当然のことであると、こういうふうに考えます。
  417. 上田哲

    上田哲君 国民主権のわが国で、永久に主権者秘密にしておく秘密というものが、あり得るでありましょうか。
  418. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、永久にと言うとどうかと思うんですが、外交関係なんでは、二十年、三十年、あるいはもっと長く機密とされるという事例が非常に多うございます。
  419. 上田哲

    上田哲君 外務大臣は、永久の秘密ありということを御答弁になったと思いますが。
  420. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうようなものもあろうかと思うんですが、私は二十年、三十年、あるいは四十年、そういうような長い期間秘密にされるというものも多々ある、こういうことを申し上げておるわけです。
  421. 上田哲

    上田哲君 はっきりしてもらわなきゃ困ります。国民主権の国で、国民に永久に秘密にしていく秘密があるとするならば、政府国民に最後まで知らせない条約を結ぶことができるはずです。それをどう保障しますか。
  422. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 外交の経過につきまして一々これを申し上げる、これが国民にどういう問題があるか、それよりは、外交の経過は機密にしておく、そうしてわがほうの利益になるような交渉の妥結ができるということこそ、私は国民は喜んでくれるんじゃないか、そういうふうに思います。  なお、外交につきましては相手のあることです。あるいは相手ばかりじゃない、第三国への影響もある。そういうことを考えますと、どうしても外交には一定の機密性というものが保持されなければならない、こういうふうに考えます。
  423. 上田哲

    上田哲君 外交交渉に対する国民の知る権利は、その結果と過程の双方に及ぶべきものだと思いますが。
  424. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過程につきましては、これは、私はできる限りこれを公表していいと思うんです。しかし公表してはならぬものがある。つまり相手方です、相手方との約束の取りつけないもの、これは公表するわけにはいかぬ。しかし、−その交渉の結果につきましては、これは包み隠すことなく、一切がっさいさらけ出して国民の御理解を願わなければならぬと、こういうふうな見解です。
  425. 松永忠二

    松永忠二君 関連。  そうすると、今度の場合の交渉過程が明らかになったことは、国益に反するのですか、国益に反しないのですか。
  426. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ今度の場合、問題になっているのは三億二千万ドルでありますが、これは私はいい交渉ができたと思っているのです。ずいぶん多額のものを要求された。それからマスコミの間にも、四億ドルじゃないか、五億ドルじゃないかというような憶測が行なわれたのです。それが三億二千万ドルで済んだということ、これは私はたいへんいい結果であったと、こう考えております。
  427. 松永忠二

    松永忠二君 いや、そうではなくて、この電文で示されているように、財源を心配してもらってありがたかったがとアメリカの大使が言い、あるいは、いろいろな政治的な配意からいって、端数を出してはどうもぐあいが悪いと日本の大臣が言ったと、こういう経過が明らかになったことによって、三億二千万ドルという数字がきまるにあたって、アメリカ側が、そういう面からいうといわゆる復元補償の金を出すということに非常に困難である、また抵抗もあった、日本がそれを主張した、しかし三億二千万ドルという総額がきまっているのだから、その中から出せるじゃないか、こう言ったと、こういう交渉経過が明らかになったことによって、いかにこの復元補償の金を出すことが困難であったかということもわかるんじゃないですか。同時にまた、私たちからいえば、実は財源を心配してもらってありがたかったということは、総体的に三億二千万ドルの中にあるじゃないか、出しなさいと、こういったその交渉の過程の中で三億二千万ドルがきまることについて、やはり四百万ドルという金が相当関連を持って三億二千万ドルがきめられたといういきさつの経過を考えてみると、実は三億二千万ドルという数字の中にもやはり相当検討すべき問題があるという事実もわかってきたわけです。同時に、またこれは四条3項に自主的に払うといっているけれども、財源を心配してもらってありがたかったということになれば、交渉の中で結果的には財源を心配したようなことも考えられるのではないかという、複雑な外交交渉というものが国民の中に明らかになったわけです。また、そういう中で、あなた方からいえば政府は非常に努力をした、こう言うのでしょう。そうすると、この電文が明らかになったことが国益に反するという理由は、何にもないじゃないですか。明らかになったことによって国益が害されるどころか、事実、国益にプラスしたものがあったと判断をするのが当然でしょう。あなたは国益に反すると考えるか、国益にプラスしたと考えるか、そこだけを言ってくださいよ、聞いていることを。
  428. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 松永さんは、どうも三億一千六百万ドルがまずきまって、そして財源提供をして三億二千万ドルにした、こういう前提でのお話ですから、私は、にわかにあなたのお話には賛同はできないんでありますが、しかしこの論議を聞いて、私は国民に、ずいぶん外務大臣はがんばったな、こういう印象を与えておると、こういうふうに思うんです。それから、この機密が漏洩したことに伴いましてどういう不都合が起きておるかと、こういいますると、これはまあわが国のとにかく機密というものは保たれなかった、こういうことについての対外信用、これについては絶大なる私は反響を生んでおると、こういうふうに見ております。
  429. 松永忠二

    松永忠二君 もう一つ。それはあなたの一方的な解釈だと私は思うんですよ。これは、この交渉経過が明らかになったことによって、私たちは国益、つまりこういう交渉経過の中にいろいろな問題点があったことが明らかにされて、そうしてこの四条3項というような問題にもいろいろな交渉経過があった事実がはっきりしてきた。政府は、知らぬ存ぜぬとこう言ったけれども、これはこういう交渉経過の中から出たものであるということが明らかになったのだから、しかも、この秘密はいまにして解くということは当然なことだといって、機密を解いているわけでしょう。したがってこういうものを、経過が明らかになったことによって一そうその経過が明らかにされてきた。国益というものは、私はこれによって知る権利国民に与えられて、国益を増すという結果になった。こういうことを積極的に西山記者が努力をして、いろいろな方法を使ってやったこと自体も、ここに国民の知る権利を確保するという意味において、いわゆる功績といいますか、そういう意味の高い価値を持った活動であったということになるわけです。これを全然否定してしまうならば、西山記者取材権なり、あるいは報道の自由なり表現の自由にうらはらになっている問題を全部、否定をするということになると思うのですよ。  だから私たちは、あなたがおっしゃったとおり、交渉経過が明らかになったとこう言ったので、いわゆる日本に対する信用の失墜というような面があったと、こういうお話だけれども、むしろ逆に、その間の日米の間の交渉経過が明らかになったことによって、国民はより確実に沖繩交渉の経過を明確に知ることができた。そういう意味において国益にプラスをした面が非常に多かったという認識を私たちは持たなきゃいけない。あなたも国益にプラスをした面があったということについては、全然ないというのか、あるというのか、そこだけを答えてください。
  430. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国益を損じたか損じないか、それだけ答えよという話でありますが、そうすると非常に一方的になっちゃうんです。つまり、経過が明らかになったと、明らかになったという点は評価さるべきである、こういうふうに思います。しかし同時に、国が機密としたその事項が漏洩した、こういうこと、これは行政秩序の非常な大きなマイナスであると、こういうふうに思うわけなんです。そういうデメリットもある。またその結果、国際社会に及ぼすところの影響、今後のわが国の外交姿勢、外交のやり方、そういうものに対する影響、これもばく大なものがあると、こういうことを申し添えます。
  431. 上田哲

    上田哲君 国民の信頼を失うこととアメリカの信頼をかちとることと、どちらが大事ですか。
  432. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、これは比較の問題じゃないと思います。私は別に、これで国民の信頼を失ったというふうには思っておりませんです。われわれの行なった交渉には、決して裏はありませんです。秘密も何もありませんです。結論は全部国民に、いさいに報告してある、そのとおりである、こういうふうに思っております。
  433. 上田哲

    上田哲君 新聞に出たからといって秘密を解禁できる程度のものであれば、これをもっと大きく範囲を広げて、機密を公開すること自身が政治の信頼を回復することだと思うのです。主権在民の国に、国民に最後まで隠しておかなければならない秘密はないのだという、あたりまえな立場に立って総理、すぐにとは言いませんけれども一般原則として、今後外交機密についても一定の期限を付しても、最終的には必ず公開をするという慣行を確立すべきだと思いますが、いかがですか。
  434. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと結論には、私、別ですが、いまの外交の問題になりますと、いままで多く言われているのは一々の経過、交渉、それはなるべく発表しない、これは秘密だというのが各国のこれはもう原則のように実は思います。しかし、本来の基本的な外交姿勢、これは国民理解がなければいけません。これははっきりさす。また、途中のいろいろの交渉経過は、先ほど来外務大臣が言っているように、これはできるだけ内密にする。しかし結論ができたら、それはまた公表して、そうして国民の支持を得る。こういうように、どうも交渉の過程を全部さらけ出すというのは、いままであまりない仕組みのように思います。
  435. 上田哲

    上田哲君 いつかは出しますね。いつかは出しましょう。
  436. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いつかは出してもいいんですがね、とにかくいまのような問題は……。
  437. 上田哲

    上田哲君 すべて秘密はないと、最後まで。
  438. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最後には、また、そういうものが永久に、未来永劫にと、かようには私申しませんけれども、おそらくそのうちに経過の問題なんかは、焼却その他の方法で資料がなくなっている場合もございますから、永久に外に出ない場合もありましょう。私は大体そうしたものじゃないかと、かように思います。外交というもののこれは性格ですから、その辺は御理解をいただきたいと思う。
  439. 上田哲

    上田哲君 やがてなくなってしまえばいいだろうというのはたいへん困る。私は原則のことを言っている。いまの問題ならば直ちに出せということを沖繩交渉に言いたいんですが、外交慣行をつくろうじゃないか、秘密があっては最終的にはならないのだということを、しっかり確認しようじゃないかと言っている。
  440. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私と上田君の相違はそこなんです。慣行をつくろう、発表するという慣行をつくろうというのが上田君のお説ですが、私は、中間の問題は、その経過は公表しないというのが原則でございますということを言っているので、しかしそれは、最後までとは申しておるわけじゃございませんが、大体の取り扱い方としては、経過は発表しないというのが普通の原則でございます。それを申し上げている。
  441. 上田哲

    上田哲君 一定の期間を付しては公表しようというんですか。  不満ですが、知る権利について御意見を承ります。知る権利が憲法レベルの基本権である、こういうここをお認めになったことは前進であったと思います。今後ゆらぐことのないように、再度確認をしておきたいと思います。
  442. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 知る権利、これを認めたことは前進だと言われるが、後退しないようにとおっしゃるんですか——。これはもうすでにはっきり承認しているんですから、別に変わったことを申し上げるわけではございません。しかし、知るといったからといって、これは全面的に何でもかんでもというわけじゃないということは、もう御承知のとおりでございます。
  443. 上田哲

    上田哲君 時間を節約するために、総理に前もってデータがお渡ししてありますけれども、わが国の知る権利というものがたいへんおくれている、知る権利意識というものが。そこで西ドイツのシュピーゲル事件やイギリスのサンデー・テレグラフ、西ドイツのペッチ事件等についての御見解を求めておりますので、御回答ください。
  444. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、この資料を私も秘書からいただきましたが、なかなか、外国でどういう事件が起き、その内容もよくわかりませんし、またこれを、私がなまはんかな状態理解している程度でこの際に、この委員会でお答えすることはいかがかと思いますから、外国の事柄ですし、これは答弁は預からしていただきます。
  445. 上田哲

    上田哲君 一言申し上げておけば、これらすべて、政府機密、軍機をスクープした記者たちが、裁判によっていずれも無罪になっているということであります。アメリカの情報自由権法、西ドイツのボン基本法第五条、各州の出版法、これらはすべて自由な世論を育てるための前提の権利として、知る権利というものが認識をされております。あるいは、政府情報源への接近の権利ということが通説になっております。こういう認識からすると、日本の知る権利の意識というものはかなりおくれている。早くこの意識を成熟させなければならないということを私は強調したいのですが、いかがですか。
  446. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 過日も答えましたように、これはもう、国々によりまして必ずしも一致はしておらないと思います。私ども、おそらく知る権利の最も徹底しているのはドイツ、その次は日本だろうと、かように私は思いますが、共産国など、なかなかそうはいかないと、かように思います。これらのことをもやっぱり踏んまえて、そうして一方的な判断だけしないで、こういう問題なかなか重大な問題ですから、やはりそこらの問題もお考えを願いたいと思います。
  447. 上田哲

    上田哲君 総理理解を示されたという表情なのでありますから、この際具体的に、一、二点だけ申し上げておきます。  五日の審議で、西山記者は取り調べられたら堂々と答えよと、私はこれはたいへんまずい発言だと思います。ニュースソースを秘匿するのは記者の絶対のモラルでありまして、この発言はすべての記者に対して取材の自由を踏みにじると、こういう発言に受け取られるのであります。この際、ひとつ、理解を示される具体的な例証として、この発言は取り消されるがよかろうと思いますが、いかがですか。
  448. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう、言ってしまったものを取り消すと言わないで——やっぱり、話ができないこと、あるいはしゃべれないこと、それはそれぞれが守る、これは当然のことだろうと思います。取材ソースをしゃべらないという、これはもう広報に携わっている諸君の基本的な考え方といいますか、モラルだと、かように私は思いますから、それはそれなりに私も理解していると、かように御理解をいただきたいと思います。
  449. 上田哲

    上田哲君 総理の御発言は、しかと承りました。  もう一つ、五日の午後、取り調べの内容について政府にも知る権利があると、こういう御発言がありました。一市民の立場としての総理は、当然、私と総理、同じように知る権利はあります。しかし、総理が司法権を使って、司直の手を使って知る権利というものを行使してはならない。これは混同だと思うんであります。総理が知る権利があるという言い方は、たいへん誤解を招きますので、お取り消しをいただきたい。
  450. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の知る権利は、司法権をも使ってと、かような意味ではございません。私は、司法権を使った、そういう——関与せず、私自身が関心があるということです。私自身が知りたいと、かようなことを申したんです。そのために司法権をも使ってと、かようなことは申しませんから、またその辺は誤解のないようにお願いをいたします。ことに、皆さん方に、政府が何も知らないじゃないかと、しばしば言われるんです。それはもう、政府は、そんなことじゃないんです。それはやっぱり……(発言する者多し)
  451. 上田哲

    上田哲君 それはだめですよ。その話と違うじゃないですか。
  452. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それと違うとおっしゃるけれども、何でも政府が知らなきゃいけないと……。
  453. 上田哲

    上田哲君 もっと大事な話ですよ。まじめに答えてください。
  454. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、まじめに答えている。だから、司法権、これを、捜査権まで使って云々と、これはございません。
  455. 上田哲

    上田哲君 そういうことと違う。
  456. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) はい、それはございません。
  457. 上田哲

    上田哲君 総理立場と個人の立場を区別してください。
  458. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) はい、その点もはっきりいたしておきます。
  459. 上田哲

    上田哲君 新聞倫理綱領について、私どもは、政府が有権的な法律解釈をここに加えることはいけないんだということを申し上げたわけでありますが、総理は、倫理綱領にも批判の自由がある、そして新聞協会見解との考え方のズレについては預からしてほしいと、こういうことでありました。これについては何か御見解が生まれましたか。
  460. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、最近は招待を受けませんが、最初、倫理綱領ができてしばらくの間は、政府にも、新聞のあり方、新聞週間等でそれぞれの標語を掲げて、そうしてPRをしておられる、それらについては私どもも関心を持っていた。また、それで協力しているつもりでございます。だから、そういうことなら、それはそれなりに評価していただいていいんじゃないか。私は、もう政府と新聞がいつでも対立抗争する立場だと、かようには私理解したくありませんし、また理解しておりませんから、そういう意味で報道機関の反骨精神もそれは高く評価いたしますけれども、必ずしもそればかりじゃいかぬだろうと、かように思うので、そこらはやっぱり報道関係として十分にその職責を果たされるように、その使命を達せられるように私どもも便宜をはかるべきだと、かように思っております。
  461. 上田哲

    上田哲君 政府は、新聞倫理綱領の第二項の「ハ」で「何者かの宣伝に利用されぬよう厳に警戒せねばならない。」というところをあげて西山記者の行為を批判されたんであります。これがそのとおりでありますと、横路議員が国政調査権を使って政府に迫った論旨が実は宣伝であったというようなことになってまいります。この辺は非常に論理的におかしい解釈になってきます。総じて、この新聞倫理綱領についてはまあ不介入ということが当然でありますけれども、いろいろ詰まってまいりました先ほど来の話の中で、この部分はもう少しきちっと詰めなければならぬと思うんであります。いかがですか。
  462. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうでしまうか、私は私なりにそれを理解したと。これはもう新聞協会のモラルです。しかし、こうして国会の場でやりとりをしていると国民はどういうようにこれを批判するか、それらの批判は国民にまかしたほうがよろしいんじゃないでしょうか。国民判断に待つと、こういう態度が私は望ましいことじゃないかと、かように思います。
  463. 上田哲

    上田哲君 ひとつ、この部分はできるだけワクを広げて、この機会ですから、いろんな意見も聞いてみたいと私どもは思います。委員長にもお願いをするんでありますが、できれば、ひとつ、これはわれわれの党の最後の質問者でありまして、一番初めに総理に御見解をただしたように、この総括質問の中で、この基本的な問題をあとに譲らずに、きちっとしておきたい、こういうふうにも思いますので、わずかな時間しかありませんが、学識経験者、そして新聞協会の関係者等を招いて、その意見を聞きたいと思うんですが、お取り計らいいただけませんでしょうか。
  464. 徳永正利

    委員長徳永正利君) これは理事会において協議いたします。
  465. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっと関連して、一つだけ。  いまの提案の問題は、関連を済ましてすぐ御相談をいただきたいと思いますが、一つだけ私は、この際どうしても明らかにしていかなきゃならぬ問題があると思っております。それは、この問六日の大橋質問の際の上田関連質問に対する法制局長官の答弁であり、さらにまた、それに賛成された総理考え方を確かめておきたいんですが、私も正確にどういう発言をされたかというのを調べておりましたので、おそくなったわけですが、調べてみますと、こういう発言をしておられるわけです。「憲法による基本的人権といいますか、制限は、法律によってこれを制限するのが当然のことであります。」——中を略します。「基本的人権の外部的制約といいますか、言い方はいろいろありましょうが、その制限が法律をもってなされることは当然のことであります。」——こうおっしゃっているわけなんです。したがって、あなたの考え方というのは、要するに、憲法にきめられた基本的人権であろうが、それは法律できめてしまえば、これはどんな制限でもできるんだという解釈に立っておられると私はお見受けしておるんですが、この解釈というのは、私は、新憲法のもとにおいては成り立たぬ解釈ではないか。なるほど、旧憲法を私も調べてみました。旧憲法時代なら、あなたのこの解釈は成り立とうかと思います。参考のために申し上げます。旧憲法、いわゆる明治憲法の第二十九条に、「日本臣民ハ法律ノ範圍内二於テ言論著作印行集曽及結社ノ自由ヲ有ス」、こうなっております。これの規定のしかたと、今度の新憲法における基本的人権の保障の規定のしかたというのは基本的に違っていると私は思っている。明治憲法は大陸法系の流れをくんでおる。新憲法は英米法系の流れをくんでおる。この立場はあなたは御存じだと思うんですが、そこで、あなたの見解を私は十分承っておかぬと、これはたいへんだ思いますので、承らしていただきます。
  466. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法制局長官に答えさせます。
  467. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  いま御指摘の点、特に明治憲法と現在の現行憲法との違い、これは全くおっしゃるとおりでございまして、明治憲法は、まあ一がいに言えば法律の留保があった、新憲法には、まあこれも概して言えば、そういうものはない。したがって、昔は、昔の憲法のもとでは、法律でもって制限をすればそれが憲法のもとでまかり通ったということがあることはあったわけでありますが、新憲法は、むろんそういうわけにはまいりません。それは百も承知で申し上げたわけでありますが、あのときの御質疑が、何か、法律で制限されていることが憲法レベルの、何といいますか、理念かなにかによって、むしろ法律のほうが引っ込むんではないかというようなたぐいの御質疑があったような気がいたします。それはそれといたしまして——私も十分な記憶がございませんので、それはそれといたしまして、独立にお話しをいたしますれば、そのときに外部的制限というか、内部的制約というか、というようなことばも使ったと思いますが、いずれにしましても、現行憲行法の基本的人権というものが絶対無制限のものではない、そこには制約があることは認めざるを得ない、その制約は何によってなされるかというと、命令やなにかによってされるのじゃなくて、形の上では法律によってあらわれてまいると、そういうことを実は申したわけであります。で、そのことは、たまたま私はここに持っておるんでありますが、これは国際人権規約でございますが、これはまだ日本は批准しているわけでもございませんけれども、これに情報入手の自由というようなものが出ておりまして、それには一定の制限を加えることができる、ただし、この制限は法律によって定められる、というようなことがありますが、それと同じ趣旨で申し上げたつもりでございます。私の言い方が不十分であって誤解をされたのではないかと思いますが、むろん、私は、旧憲法と新憲法における人権の保障の点の重大なる相違、これは十分に心得ているつもりでございます。
  468. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いろいろ回りくどい説明をされましたが、私どもは六日の日のあなたの発言を読んでみると、私がいま読み上げたとおりでありました。したがって、こういうものの考え方というのは、旧憲法下における基本的人権に対する解釈のしかた——だから、これは間違いなら間違いであるということを、いろんな付属物はよろしいから、明確にさしていただきたい。特にその点を明確にされておきませんと、新しい憲法では、御承知のように、八十一条に違憲立法審査権がありますね。これは、あなたの言うように、憲法に規定されておるものでも、なんでもかんでも全部法律で制限できるのだということになると、この違憲立法審査権というのは成立しなくなりますからね。それらのことも考えながら、要らぬことを言わないで、明確に、この間のあなたの答弁は間違っておったなら間違っておった、明治憲法下における基本的人権保障と新憲法下の基本的人権保障は根本的に違うのだ、ということをはっきりしていただきたい。そして総理も、この間、あなた、法制局長官の意見に賛成だったんです。あなたの答弁も、はっきりさしておいてください。
  469. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) よけいなことを言うなというお話しでございましたが、ごく、きわめてあっさりと申し上げたいと思いますが、いまの憲法の十二条に、基本的人権は、「国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とありまして、これが乱用にわたったり、あるいは公共の福祉のために利用する責任に反してこの行使をするようなことなりますと、これはもう一々申し上げるまでもなく、法律でいろいろな制限が現にあるわけでございます。それはどういうことかというと、いまのような憲法十二条あたりからくる基本的人権の持つ制約、それを法律によって制限しているわけでありまして、そのことを私は申し上げたわけであります。で、法律が、もしその制限を、憲法が所期するところの、あるいはやむを得ないものとしているところの制約をこえた制限があれば、これは違憲の法律になります。もとよりそうでございます。それは先ほど申し上げた趣旨で、これは私どもの仕事のいろはのいの字でございますので、それを間違えていることはないのでございますが、しかし、もしも意味が御指摘のように解されるものであるとすれば、それは間違いでございます。
  470. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の信頼する法制局長官炉ただいまお答えをいたしましたその趣旨と私は同じことを考えております。
  471. 矢山有作

    ○矢山有作君 これで終わりますから。  佐藤総理ね、いま、法制局長官の解釈は信頼するとおっしゃるのだが、その解釈を法制局長官が述べられておるときに慎重に聞いておっていただきたいのです。この間の六日の解釈は、これはたいへんなことなんですよ。やはり法律で規制できない、そういう公共福祉でも規制のできない、そういう基本的な人権というものが存在をする、そういう思想に立って新しい憲法はつくられた。そこに初めて違憲立法審査権というものが成り立つのですからね。だから、みだりに公共の福祉でもって基本的人権の制限はできないという基本的な考え方は、はっきりしておきなさいよ。法制局長官、いいですね。
  472. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま矢山君が言われる「みだりに」という、そのみだりにさようなものが制限される、それはそのとおりでございます。それは法制局長官も間違いはいたしません。これはもう、前の旧憲法時代の法制局長官ではございませんから。
  473. 矢山有作

    ○矢山有作君 頭はそうらしいよ。
  474. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だいじょうぶですよ。
  475. 和田静夫

    ○和田静夫君 委員長
  476. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 和田君、一問にしてください。
  477. 和田静夫

    ○和田静夫君 私、ちょうど理事会が開かれているようですから、私の発言中に。御存じのとおり、憲法が保障する記者取材活動の問題と国公法違反の問題というのは、純法律論にはたいへん問題がある。したがって、理事会を開いて参考人の招致などの取り扱いを要望しておきました。その答えが返ってきていませんから、いま理事会が開かれるときに、私の問題を一緒に処理をしてください。
  478. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  479. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  何かありますか。
  480. 上田哲

    上田哲君 一言、本日の佐藤総理への質問と御答弁を通じて、本質的にはほとんど解明されたとは私は思っておりません。言論の自由を守るためには、もっときびしい御見解を賜わらなければならないと思いますが、貴重な時間を一わが党としてはこれが最後の時間でありますので、貴重な時間を後に譲りまして、お取り扱いは理事会におまかせいたしたいと思います。終わります。
  481. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 上田君が多少の時間を残されまして一応本日の質疑を終了されました。     —————————————
  482. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、小平芳平君の質疑を行ないます。小平芳平君。
  483. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいまの上田委員の質問に関係しまして、最初に佐藤総理に伺いますが、この沖繩返還協定極秘文書の、そしてまた、国民の知る権利という、この問題が提起されて以来の佐藤総理発言が非常に感情的であったり、あるいは思いつきであった点があったのではなかろうか。たとえば、挑戦があれば受けて立つとか、あるいは新聞倫理綱領を持ち出したり、あるいは機密保護法を云々というようなことを総理はみずから提起する、そして閣内からもそういうことは反対だというような意見も新聞に報道される、したがって、総理はそういうような、感情的になって問題の本質をずらしてしまうようなことなく、もっと総理は、ことばの上では国民の知る権利を保障する、言論、出版の自由を保障するとおっしゃるわけですから、口では。ですから、そういう感情的なものに流れることなく、いかにして具体的に国民のその権利を保障していくかということを表明すべきじゃないかと私は考えますが、いかがでしょう。
  484. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小平君から、私の答弁が少し感情に走っている、こういうことでたしなめられましたが、別に私、感情的にこの問題を取り扱っておるつもりはございません。ただ、いろいろの問題が行き違いがございますから、事柄が大事な問題でありますだけに、また基本的な問題でありますだけに、はっきりものを言わないと、どうも誤解を受けるんじゃないだろうかと、かように実は思うんです。たとえば、いま提起されました新聞倫理綱領の問題、これは倫理綱領の問題を私がここへ引き合いに出すのもおかしいと、こう言われればそれまでですが、しかし、新聞社のほうでその倫理綱領までつくっておられる、その倫理綱領から見ても、私は新聞人ではないが、それに、はたしてそのとおりやられているだろうか、こういう疑問があるんだと、こういうことを実は申したのです。  また、挑戦ということばを使いましたが、私が使ったのではなくて、実は毎日新聞の編集局長が先に、この問題を取り上げたあの小さな所見の中に、この問題は政府の、政府権力の報道の自由に対する介入であると、またこれは政府の挑戦と受け取ると、こういうようなことばがありますから、私は挑戦されて政府が黙っている手もないだろうと、こういうことを申し上げたんです。だけど、そういうことも、だんだん話が進んでくるとおそらく双方に誤解はないはずでございまして、おそらく大事な問題——言論の自由は守られなきゃならない、また取材のソース、そういうものは極秘に保たれなきゃならない、かようなことは、もう大体定着してきた議論だと、かように私思っておりますから、そういうような問題がやはり一応問題提起されないと、一方的な意見だけで押しまくられても困るんです。私どもは書くほうは、持ちませんから、新聞紙じゃなかなか書いてくれない。しかし、この国会でしゃべることだけは、国民には政府は何を考えているかというのが伝わると、かように思いますけれども、どうも新聞紙に出てくるところでは、私どものなかなか真意は十分に伝えられないと、こういうこともございます。これはもう、しばしば私どもの考えたこと、また言っていることが趣旨が変わって表現されている、こういうこともございますから、こういう点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  485. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が誤解をしているわけではなくて、総理がみずからの発言を打ち消しているわけでしょう、次々と。取り消したり、そういうことなら取り消しますとか。秘密保護法についてもそうですね。あるいは閣内からもそういう意見が出たということが新聞に報道されている。したがって、そういう取り組みではなくて、問題の本質は憲法の保障する言論の自由であり、報道の自由であり、したがってその自由を将来とも守ります、政府は尊重しますということを、具体的に表明すべきではありませんか。
  486. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 言論の自由、またその取材の自由、こういうものは尊重する、これにやぶさかではございません。  また、秘密保護法の問題をいま引き合いに出されましたが、私はあの発言についてもはっきり申し上げましたのは、私はもともとそういう持論を持っているんですと、しかし、ただいま具体的にそういう問題を提案するとか、こういう状態ではございません、だから、腹案があるわけではございませんと、こういう話をしたようです。これは誤解のないようにお願いしたいと、かように申したのでございます。ただ、私が総理であるがゆえにそういうことをしゃべるのはいかんと、こういう意味のおしかりは受けておりますから、それはまたそれなりに私自身が評価しておる、こういうことでございます。だから、その点はもう十分評価しておりますが、ただいま言っていることは、別に問題をどんどん変えたとか、あるいは取り消したとかいう部類には入らないんじゃないだろうか、かように思いますが、いかがですか。
  487. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。簡単に二点だけお伺いしますが、いま機密保護法の問題について総理からお話がございました。まあ、いまずっと議論されておるこの秘密という問題と、それから公開という問題、それから民主主義というこの三つは、非常にどう調整するかということはむずかしい問題であるとは思いますが、総理はいま、もともと私は機密保護法をつくれという持論を持っておったと、そういうように言われましたが、結局そういった考え方ぶ底流にあるから、先ほど来いろいろ秘密外交という問題が出たり、あるいはこういう議論が出てくると各省庁における機密の扱いがきびしくなる、こういうふうになってくるわけでありますので、やはり、あくまでもこの民主国家においては公開ということが私は原則であると。総理の場合は秘密が何か一番もとのようであるようで、そちらが非常に強い印象を受けるわけです。あくまでも公開が原則であって、非公開、いわゆる機密ということはむしろ例外である、これが私は民主国家としては正しいんではないか。で、もしそういった例外としての非公開を認めるならば、それを認めるに足る明確な理由がなければならない。こういったことがやはり基盤になければならないと思うのですが、どうも総理考え方、発想法というものは、どちらかというと機密が強くなっておる、そういう印象を受けないではないわけです。  この際はっきりとお伺いしたいんですが、公開ということが原則、その上に立った上で、非公開のものについては例外としてそれを認める。しかし、それには理由が明確につけられなければならぬ。この原則にぜひ立っていかなければならない。  もう一つは新聞倫理綱領の問題について関連でありますが、やはりこれは一つの自主規制的なものであると私は思いますが、この自主規制という問題について、やはり公権力がこの自主規制の形式を利用して事前にいろいろな言論活動というものを抑制するようになれば、これは公権力の自由への介入で、これは憲法違反になる、こういうことははっきりしておるわけでありますので、もちろん御意見を言われることはけっこうですが、先日来のずっと総理のことば、おやりになっておることをずっとまとめていきますと、どうも新聞倫理綱領を非常に批判をされておるということが、やはり間接的にそういうった公権力が自主規制という形をどんどん進めて、そうしてその自由というものを奪っていくのではないか。これはいろいろな検閲、教科書検定の問題とか、あるいは放送番組の問題とか、いろいろいま議論されておるおりだけに、私は危惧を感ずるわけです。この自主規制ということに対しては、そういう形を利用して公権力がいわゆる表現の自由というものを奪っていくということは絶対しないと、この辺ははっきりしていただかないと困る。その点で、総理の言動というものは非常に気をつけていただかなければいけないと、こう思うわけですが、その二点について。
  488. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一の、公開が原則だ、秘密はその例外だ、かように私も考えております。これでは別に食い違いはないようです。  第二点の倫理綱領の問題、みずから倫理綱領をきめる例、それならば当然、その範囲内の方々はそれは守られるだろう。みずからきめた憲法、こういうものを、これはどうも憲法が守られないようではこれも困りますから、そういう意味で私がそれを批判したからといって、それを引き合いに出したらといって、私は、引き合いに出すべき筋じゃないと、こう言われることにはなかなか承服いたしかねます。
  489. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ちょっと関連。  自主規制の新聞倫理綱領の問題ですけれども総理はちょっと逆行しているように思うんです。私ども基本的に考えると、現在は、いろいろな報道にしても映画にしても、自主規制をやっておられる。その自主規制自体が国民の知る権利を押えるんではないかというような意見もあるんです。それは検閲に通ずるというような、そういう声もあるわけなんです。そういうような世論から見ていくと、そういう傾向に現在あるときから見ると、この自主規制自身を総理が引き合いに出されて、こういうふうに言っているからというふうにおっしゃることは、私は、総理立場からすると、どうしても公権力というふうにしか見られないというふうに思うわけです。そういう点で、もう一度、いまの答弁ではちょっと逆行もはなはだしいと思いますし、それではやはりそれを利用してということを感じないわけにいかないんです。もう一度言っていただきたい。
  490. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 倫理綱領、これは新聞協会みずからがきめられた、最初おきめになったものを、三十年に補正した、こういうような経過もたどっております。また、私ども、ただいまのような批判をすることが、これはけしからぬとおっしゃるなら、これはまた補正されるかもわからぬが、これはとにかく法律じゃないんですから、それはもう向こうのやることですから、これは私ども、とやかく言う筋じゃないと、かように思っております。
  491. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、そう長い時間この問題でやるつもりはありませんが、要するに、秘密を減らせばいいわけでしょう。いま秘密が多過ぎるわけでしょう。だから、官房長官は先ほど政府秘密は減らす方針だと言われたが——ちょっと聞いてください。——けれども、実際にはふやしているじゃないですか。この問題が国会で論議されて以来、中央官庁ではどうも秘密をふやしているような気配がある。そういうことを具体的にしていかなくちゃならない。そうじゃありませんか。
  492. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題が起きてから、秘密がふえましたか。私は感じないですがね。さようなことがあろうはずはない。また、なかなか、いまの英知に満ちた記者諸君が、さような状態だったらほうってはおかないと思います。だから、その辺は御心配ないように願いたいと思います。ただ総体的に見れば、世の中がだんだん複雑になってまいりますから、やはり秘密機密事項、そういうものもだんだんふえてくるだろうと、かように思います。もう、いままではあまり問題にならなかったけれども、事業会社の機密というようなものも、やはり競争会社に取られないようにという、ずいぶんくふうもされておるようでございますから、われわれの考えなかったような機密事項というものもふえてきていると、かように御理解をいただいてしかるべきだと思います。
  493. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほど総理が答弁された、政府の真意が伝わらないというのといまの御答弁とが関連しているように思うんです。秘密がふえていないとおっしゃっているんですけれども、これは事実上この委員会で取り上げて、それでいたしました後には、それまでは取り扱い注意のものであったものが秘密に変わっている、その次から。そういう、秘密になってきちゃっている、だんだんだんだん。はっきり申し上げると、政府に都合の悪いことが全部秘密になっているんじゃないか。政府の利益ということを、秘密とかいう事項にしているんではないか。これは勘ぐって申しわけないんですけれども、そういう点ははっきり申し上げると、政府から与えられる一方的な情報、それだけが伝わればいいんだというふうにも一見受け取れるわけです。  ですから私は、一つは、秘密がふえてないということは事実問題としてうそではない、これから先、総理としてはそういう秘密ははっきりと減らしていかれる気持ちかどうか、公開の問題で。もう一つは、先ほどのように、そういうようにふえてくるということは、一方的に政府情報だけを、真意を伝えるために提供するというのか。記者が懸命に取材をすると、その場合に取材されたものについてどうこういうことはないのかあるのか、この二点だけお伺いしたい。
  494. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 閣議は開きますけれども、その席で私、秘密をふやせというような指示もいたしませんし、また各省の取り扱い方をどんなにしているかということも聞いておりません。在来からやっておるとおり、まかしてございます。したがってただいまの点は、まあ私が答えるか——最高の責任者ですから、答えるのが当然だと思って先ほど来答えておるのですがね。しかし、各省でまちまちの扱い方をしておるでしょうから、それは特に秘密がふえたと、そういうようにお感じになる個所、どういうところにあるのか、そういうところを具体的にもっと話をしてもらったら答えやすいかと思いますが、私は先ほど来申すように、民主主義の基底、これは公開の原則である、これは非常にはっきりしていますから、だから秘密はこれは例外だと、かように申し上げておるので、これはそのとおり行なわなければならないと、かように思っております。  また、いままでの報道機関と接触する関係、これはそれぞれございますから、その機関を通じてその報道が行なわれる、こういうことは望ましいことであり、またそれが徹底するゆえんでもある、かように考えます。私など、ずいぶん佐藤番というのがついていておりますが、ときどき廊下で会見をしたりしますが、それはどうも間違いやすいようですから、これはやっぱり官房長官が正式な会見をする、そのほうが望ましいように思っております。
  495. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。具体的に問題を言います。
  496. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 矢追君、簡単に願います。
  497. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま総理が具体的にと言われましたので、私一つだけ。防衛庁長官ちょっとおやすみになっていますけれども(笑声)私がこの予算委員会で、ちょっと古い話になりますが、防衛問題をやったときでありますが、そのとき、実はある資料を手に入れましたが、それは取り扱い注意の判こが押してあったわけです。その次に、同じものをどういうふうになっておるかということを調べようと思いましたら、秘密に変わっておったわけです。全然取れなくなっちゃったんです。そういうことが具体的に、特に防衛庁関係では、国会で追及されるとすぐにレベルが上がるという、そういうことを、これは一例でありますが、しばしば言われておるわけです。だから、今回こういう問題が議論されておりますので、防衛庁長官に要望したいことは、とにかく公開の原則で先ほど総理も認めると言われましたから、やはりこれは国防の問題が一番多いんじゃないかと思いますが、しかし、日本の場合の国防の秘密と諸外国とは全然違う。西ドイツですら私は違うと思います。最も自由なのは現在西ドイツでありますけれども、向こうは再軍備をしておるわけです。わが国はしてないわけです。そういう点でやはり防衛庁が一番問題になるのではないかと思いますので、これに対する防衛庁長官の見解と、総理にもう一度確認したいのは、まかすのではなくて、この際にやはり機密というものをうんと減らして、さっき総理は公開と言れたのですから、これを明らかにするということに前向きにひとつお願いしたいと思います。以上です。
  498. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) お答え申し上げます。  御指摘秘密書類につきましては、従来検討してみますと、やはり数が多過ぎる。これは私もそれを認めております。したがいまして、日米安全保障条約に基づく、特にアメリカ軍に対して迷惑のかかるような機密事項というものは、これは国際信義の上から当然守られなければならぬと思いますが、国内的には、これはやはり国会の審議の場に極力出していく。これは、私は出し得るものは出せるような便宜をはかってまいりたいと思います。御趣旨の点はよくわかります。
  499. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 秘密事項の多い官庁は防衛庁と外務省だろうと思います。ただいま防衛庁長官から答えたように、これもできるだけ秘密というようなものを減らしていこうと、かように努力するということを申しましたが、やはり基本的にはアメリカが関係しておる日米安全保障条約、その関係でアメリカに迷惑のかからないようにと、こういう配慮が払われておる。このことはやっぱり防衛庁の業務がアメリカ、米軍、それに関係があるということで、そこに多いということを一応御了承おき願いたいと思います。また外務省の問題につきましては、先ほど来申しますように、交渉の過程の問題、これは秘密機密にするというのが原則でございますから、大体交渉の途上において、それを一々明らかにするということは避けるべきだ、かように取り扱い方も一致しているようでございます。どうかその二つは特別な例でございますから、御了承をいただきたいと思います。
  500. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、総理秘密ということは、政府の都合が悪いから秘密に扱うんだというんではなくて、国民の利益のために、たとえば個人の秘密とか、そうした国民の利益中心にもう一ぺん検討し直すべきだ、このように総理が指示すべきではありませんか。
  501. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのように、私が最初申しましたように、閣議を開きますけれども、あまりその点は指示をしておらないんです、いままでの在来のやり方で大体間違いない、かように思っておるものですから。だけれども、いまのように御注意があり、ふえたとかいうような御批判がある、こういうことなら、あらためて次官会議等もございますから、そういう会議で十分その中身を審議して、そして必要より以上の秘密事項を起こさないように、数をふやさないように整理すべきだ、その方向で指導したいと思います。
  502. 塩出啓典

    塩出啓典君 関連。  いま総理秘密を減らす方向で検討すると言われたのですが、先般三木委員の質問に対して、秘密の基準ぐらいは明らかにしろ、外務省はその秘密の基準を秘密だというんですね。それはもちろん、私はそういう秘密に関する取り扱いそのものが出せなくても、やはりこういうものが秘密なんだという、そういうやっぱり、たとえば人事に関する問題は発表になるまで秘密だ、これは国民は納得できると思うんです。だからやはり各省ともこういうものを秘密にするということを、これはもちろん暗号なんかは、これはまずいけれども、そんなものは出さなくてもいいんですから、それは概念だけでもやはり国民の前に明らかにしていくのが私は当然じゃないかと思うんですが、そういう点で、先般外務省は秘密の基準も秘密だ、それじゃさっぱり何もわからない。都合の悪いことを全部秘密にされているんじゃないか、そういう感じがするわけですが、そういう姿勢を改めて、基準はやっぱり国民が納得するものを公表すべきである、そう思うんですが、総理、どうですか。
  503. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御意見は、なかなかむずかしい取り扱い方の問題のように思います。しかし、いまの発表前の決定人事、これは極秘だとか、あるいは処罰だとか、そういう人事に関するもので、発表のできないことは、これも御承知のようですから、多くは申しませんが、そういうことをも含めて、とにかく次官会議等で一度十分検討してみることにいたします。
  504. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ私はこれから公害について質問をいたします。公害について特に最初に休廃止鉱山の公害について質問をいたしますので、各大臣に要求は出してありますが、次々と各省関係が出てまいります。  初めに通産省から——、通産省はどのような休廃止鉱山の点検をなさったか、あるいは私が特に休廃止鉱山に対する総合的な公害対策、これは全国にありますから、私は全国の対策を明らかにしていただきたいのですが、島根県の笹ケ谷鉱山、この島根県の笹ケ谷鉱山を具体的な例として引きながら、この休廃鉱の現状、あるいは農業被害、井戸水の被害、健康被害等について進めていきたいと考えます。したがって、最初に通産省から総点検の結果を御報告いただきたい。
  505. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公害のあるなしにかかわらず、鉱山というものは一体どのくらいあるのかといいますと、大体六千個所といわれております。こまかいもの、鉱山として落とせるものもありますので、まあ五千個所ともいわれております。五千個所から六千個所、これは長いのは、千年の余もさきのものもあるわけでございまして、通産省には五千個所ないし六千個所の事情を全部調べてはございません。しかし、これはもう休廃止鉱山といえども、この際全部調べたいということで、私から強く事務当局に命じまして、各府県、各市町村等と連絡をとりまして、まず、鉱山の実態が何県の何郡にどういう鉱山がある、その歴史を調べなさいということで、いまそういう作業をいたしております。中にはそういう通達を受けて、初めてあすこにもあったというようなものもあるわけでありまして、部落単位でもこの際明らかにしたい、こういうことでございます。  また具体的な問題としては、去年から五十九の砒素鉱山等に対しまして、これは通産省と県との間で一つずつ全部調査をいたしました。この中で問題がないもの、問題があるもの、また対策を必要とするもの等、こまかく調査をいたしております。これらの問題に対して御要求があれば資料として提出をいたしてもけっこうでございますし、私がお答えを申し上げてもけっこうでございます。  先ほど御指摘にございました笹ケ谷鉱山、島根県の鉱山でございますが、約六百年前から続いておるものでございます。本件につきましては四十六年、去年鉱業権者が鉱業権を入手したということがございまして、実際公害の問題に対しては指摘をしておりますが、鉱業権者は非常に、六百年も昔からのものでありますということで、みずから法律に基づく工事の施工業者の責任を持ちながらも、積極的ではありません。近く通産省は本件に関しては法律に基づく命令を出して工事を行なわしめよう、こういうことまでいたしておるわけでございまして、短い間ではございますが、相当軌道に乗った調査を進めておるというのが現状でございます。詳しいことが必要であれば、事務当局をして説明をいたさせます。
  506. 小平芳平

    ○小平芳平君 概略大臣からのお答えでわかりますが、通産省ではそうした休廃止鉱山の中でも、特に環境破壊のはなはだしいものが数カ所わかっているはずです。その中の一カ所が、いま私の指摘する笹ケ谷鉱山なんです。そして事務当局からでけっこうですから、通産省として笹ケ谷鉱山の分析をしておられますが、どういう結果になっていますか。
  507. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 笹ケ谷鉱山はただいま大臣からお話ございましたように、非常に歴史の古い鉱山でございますが、   〔委員長退席、理事西田信一君着席〕 この鉱山につきまして現在問題のございますのは、一つは稼行のときに使いました坑道の掘進の際のズリを捨てておる、それから精錬、選鉱その他でできましたからみ、それからスライムというふうなものを堆積させておるという問題と、それから坑内から出てまいります坑廃水、それから捨てております有害鉱物を浸透して出てきます排水、この二つに問題があるわけでございます。現在、堆積物について申し上げますと、約二十二万立米以上の堆積物を鉱山内の各所に堆積いたして、おるわけでございますが、この堆積物の崩壊等に問題があるのが一つでございます。  それからもう一つは、浸透水の問題でございますが、この各所にあります堆積物の間から出てまいります浸透水の中には、おもに砒素について排出基準をオーバーしておるところが三カ所、それから鉱山内を流れます川の中に入るわけでございますが、川が三つございまして、笹ケ谷川、それから豊稼川、砥石川、この三河川あるわけでございます。このうちの砥石川につきましては、これは自然汚染でかなり砒素の濃度が高いわけでございます。あとの二つの川につきましては、鉱山から出てまいります坑廃水の中の砒素のために一部環境基準をオーバーするところがあるわけでございます。利水点におきましては、砥石川の川の水は環境基準を若干オーバーをいたしておるわけでございます。他の二つの川につきましては環境基準すれすれにおさまっておるように私どもは見ております。  以上でございます。
  508. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ちょっと訂正をいたしますが、いま笹ケ谷鉱山の鉱業権を取得したのが昨年だと言いましたが、これは金ケ峠鉱山でございまして、いまの鉱山は昭和四十六年十月に鉱業権者は本鉱山の仕事を放棄したということでございますので、また法律に基づく命令を出そうというのも別の鉱山でございましたので、いまの事務当局の説明で訂正させていただきます。
  509. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの久良地局長の説明は非常に抽象的ですが、九州の廃鉱で、砒素鉱山で分析をしましても、こうした廃棄物ですね、九州で分析したのは、三万あるいは五万PPMというものが出ているのです。私たちが採取して岡山大学の小林純教授に分析を依頼した結果は、ごらんのこの白い粉は一七万PPMです。一七%。それからこちらの黒いものは一一万PPMです。一一%が砒素なんです。こっちは一七%が砒素なんです。絵で見ると白と黒ですけれども、とともに、いま二万立米と局長が言われましたこうした鉱滓が、山と積まれている。この中の茶褐色のものを分析した結果は三万四千PPMです。三・四%が砒素なんです。これが何万立米か、しろうとには見当がつきませんが、これは一山をおおっておるわけです。  鉱業権のことについて大臣からお話がありましたが、砒素を掘っているところ、掘ったところ、あるいは銅を掘ったところはきわめて複雑な大きな山なんです。そうしてここにありますのが、いま局長の言われた積んであるところから流れ出る川です。この流れ出る川は分析の結果は環境基準の約百倍、四・六PPM。いまの通産省の説明では利水地点で若干上回るなんと言っておりますが、四・六PPM、百倍のこういう水が絶えず流れ出ている。そういう点をまず頭に置かれて、そうして通産大臣に、私たちはこうして具体的な調査結果で質問をいたしますので、私は通産大臣からもっと具体的な対策をお尋ねしたいのです。  そしてこの川が流れていきますと、これを最初ごらんいただきますと、たんぼはもう使えないのです。次から次へたんぼはつぶしているのです。なぜか、お米がとれないからです。これもたんぼはつぶれています。こういうように、いまの最初の二枚は山間部ですが、この場合は平地において、要するに利水地点どころか、米どころの平地へ出てからもなおかつたんぼをつぶして杉の苗を植えております。ごらんください。したがって、通産省から最終的な対策をお聞きする前に農林省から、このようなたんぼの被害に対してどんな手を打ってこられたかお尋ねしたい。
  510. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいま御指摘の場所についての具体的な御答弁は私もできませんが、農林省が公害による農作物の被害についての地域の調査についての件を申し上げます。  農林省では、土壌汚染の状況を把握するために、昭和四十六年度からカドミウム、銅、亜鉛につきまして全国に約四千四百地点の定地観測地点というものを設けまして、土壌の汚染、農作物の被害につきましての調査を実施しておるところであります。四十七年度からは新たに前記三重金属のほか砒素、鉛についても土壌汚染調査を実施することとしております。廃鉱から排出されまする重金属等による農作物被害等につきましても、土壌汚染の一環として調査を実施しておる次第でございます。右の四十六年度の調査結果は、目下関係各県におきまして取りまとめ中でございます。  砒素につきましては、昭和四十七年度の調査結果を待って、問題の重要性にかんがみまして環境庁と、関係省庁とも協議の上、土壌汚染の実態を今後一そう的確に把握することといたしまして、これに基づきまして、土壌汚染につきまして土壌汚染防止上に基づく必要な対策を講じておる。こういうことでございます。
  511. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林省では、こうしたたんぼの鉱毒被害に対して、日原という町とそれから津和野町という町なんですが、この両町に被害を及ぼすのですが、島根県ではすでに昭和二十八年あるいは昭和二十七年に農業試験場において研究ができているわけですよ。いまから十年前のこの島根県農業試験場における結果報告によりますと、いまのままでは米はできないと報告しているんです。にもかかわらず十年間何をやってたかということなんです。これはいま今日、去年のたんぼです。稲株をとってみますと、わりあいよくできた稲株とまるっきりできていない稲株と、ごらんください、同じ一枚のたんぼがこうなっているんじゃなくて、悪いほうのたんぼは一面に悪いわけですから。こういうことを十年間もほうっておいて、地元では町長を先頭に何回も東京へも陳情に来ているのに、何一つ対策が進まないとは何ですかと、それを尋ねているわけです。
  512. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 農林省といたしましては、ただいま大臣から御答弁がございましたように、一般的な方針といたしましては、砒素につきましては昭和四十七年度から定点調査をやりまして、対策についての十分な調査をしたい。  なお、お話がございました笹ケ谷地区につきましては、昭和四十六年度から三カ年計画で排土、客土等により被害の防止効果がどれぐらい出るかと、あるいは水質、土壌及び作物の調査分析等を行ないまして、そういった調査を行なった後に的確な対策をとりたい、こういうふうに考えております。
  513. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから佐藤総理総理の御出身の山口県にもあるわけですよ。これは先ほど田中通産大臣のおっしゃった金ケ峠鉱山というのが、総理の郷里の山口県においても砒素の鉱毒によってたんぼがさっぱりだめだといって困っていらっしゃる農家がいらっしゃる。またすぐお隣りの、いま私が指摘しているこの津和野町におきましては、ごらんのとおりあれじゃ米は取れません。こういうことが十年前に初めて——役場の歴史によりますと鉱毒を訴えているのは明治十七年です。九十年前です。九十年前から問題が起きて、そしてしかも昭和二十四年には廃鉱になって、そして廃鉱になった当時から米が取れないじゃどうしようもないというところで島根県が調査をやって、それでこんなに砒素があっては米はできないと県の調査が訴えているのが十年前です。にもかかわらず、いまごろ農林省では四十六年か四十七年から三カ年計画で調査をやるというんでしょう。そんなことをやっていてどうなりますか。いかがですか御意見は。
  514. 内村良英

    政府委員(内村良英君) ただいま御指摘がございました笹ケ谷地区の砒素の鉱害につきまして、農林省の農地局が知りましたのは昭和四十四年でございます。そこで四十六年から三カ年で調査するという調査地点に選んでいるわけでございます。
  515. 小平芳平

    ○小平芳平君 こういうの知らないですか。これは昭和二十七年、昭和二十八年です。
  516. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 私どものほうの土地改良を行ないます農地局が知ったのは昭和四十四年でございます。
  517. 小平芳平

    ○小平芳平君 これを知らない……。  したがいまして、私たちが調べた結果では、その平野部になっているたんぼ、平野部になっているたんぼの土から砒素が沢田房吉さんという方の所有しているたんぽからは三九五PPM、白木秀一さんという方のたんぽからは三五〇PPM、こういう砒素が検出されている。じゃ農林省では、このたんぼから米ができると思いますか、どうですか。
  518. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 砒素が土壌中に含まれている場合には根腐れ病が起こりまして、それによって非常に減収が起こるということははっきりしております。ただ何PPMの場合にはどれくらい減るかというのは、これは土壌の条件等もございますし、農業生産のことでございますからその他の条件もあるわけでございます。その辺のところにつきまして、現在いろいろ調査をしたいということで考えております。
  519. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、この押し問答を繰り返してもやむを得ないので、すみやかに土壌汚染防止法を適用して客土していただきたい。
  520. 内村良英

    政府委員(内村良英君) 土壌汚染防止法の適用につきましては、調査の結果を待って、環境庁とも十分相談して、なるべく早くそのような措置をとるように努力したいと、こういうふうに考えております。
  521. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林大臣と環境庁長官からいまの点についてお答えいただきたい。
  522. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話を聞きますと、実際私は、まだ実際に知っておらなかったのでございますが、お話を聞くと、PPMの含有量、まあ砒素ならば二から一〇が平均でありますが、それ以上うんとこえているわけでございますから、たいへんこれは作物なんかに害があることははっきり私はまあ想像できます。でございますので、よく調査して、できるだけ早い機会に対策を講じさしたいと思います。
  523. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) この笹ケ谷は御承知のような石見銀山の、これは元祖でございますから、ずいぶん古い歴史を持っております。したがいまして、その間にずいぶんひどい破壊が行なわれたと思います。これにつきましては、ようやくこのような問題に関心を持ちましたのが去年おととしからでございました。残念でございますが、そのような政治の現状でございました。したがいまして、いま非常におしかりを受けている状態でございますが、何とかしてできるだけの努力をいたしまして、まず基礎的な十分な調査を行ないまして、土地あるいはその場合、人間の健康その他につきましても調査を行ないまして、十分の対策を今後強力に立ててまいりたいと考えます。
  524. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理、先ほど発言なさらなかったですが、山口県にもそういう砒素の廃鉱があり、島根県にもそういう廃鉱があり、まだたくさんあります。いかがですか、少しのんびりしてい過ぎませんか。
  525. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのようなお話を聞くと、これはもうほんとうに驚きにたえない、その一言でございます。しかも最近はお米がたくさんできていると、こういうので、ただいまのような点が、りっぱな土地にこれが改良されないでそのままほうっておかれている、こういうようなことではないだろうかと、こういうことも非常に心配の一つに考えざるを得ないのであります。そうして過疎地域はますます過疎になり、これについて何らの対策もない、こういうことじゃないだろうかと、かように思います。地方に農地局もあり、またそれぞれの職員に事欠くというわけじゃございませんから、もっと実情を十分把握することが何よりも大事なことじゃないだろうかと、かように思います。
  526. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや総理、すみやかにこのような土壌汚染に対して、米が余っている、余ってないの問題じゃないですよ、いま私の提起している問題は。農家収入ゼロじゃないですか。すみやかに総理から指示をしていただきたい。
  527. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 承知しました。
  528. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうして、井戸がだめになっていますね、これはいかがですか、井戸が。先祖伝来使っていた井戸が、砒素が出て使えなくなっている。その実情を御報告願いたい。
  529. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) やはり井戸水にも高濃度の砒素が検出されております。したがいまして、これはもう厚生省の補助を受けまして昭和四十六年度末からいまその長野地区、それから豊稼といいますか、この両地区におきましては簡易水道の設置工事を開始しております。四十七年度中には通水を、近接の日原町ですか、こういう地区にも水道の設置を行なうという検討中でございますので、はなはだ申しかねますが、ごく近いうちにはきれいな水を供給することができると考えます。
  530. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、厚生大臣あるいは自治大臣からお答え願いたいですが、何の不注意もないのに、廃坑が山にあるために井戸が飲めなくなっちゃう、使えなくなっちゃう、こういう場合の簡易水道建設の経費は何らかの方法で、既定水道法にきまっているとおり以外に国がお金を出すべきだと思いますが、いかがですか。   〔理事西田信一君退席、委員長着席〕
  531. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) こういった地区の簡易水道につきましては、特に優先的に補助をつけるという方針によりまして、ただいま環境庁長官から述べましたように、四十六年度で二カ所、四十七年度さらに県の計画に従って二カ所、補助によって住民に対してはその簡易水道の布設について自己負担のないような措置を講じております。そのためには県も補助を一般の簡易水道よりもその倍を出すということにいたしまして実施をいたしているわけでございます。
  532. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 簡易水道につきましては国の補助事業としておりますことは、いま厚生大臣から述べられたとおりでございますが、当地区の簡易水道、四十六年度計画は簡易水道で千七百六十五万円、飲用水供給施設で七百七十五万円、国庫補助が五百八十八万円、この国庫補助も普通は四分の一でございますが、三分の一という財政支出に応じての最も有利なものを持っております。それで普通十分の一、島根県では簡易水道に対して県費補助をしておりますが、それも特に倍額にいたしまして補助をし、残額の地元負担金は簡易水道の場合八百二十万、供給施設の場合三百万それぞれ起債を自治省におきまして許可いたしまして、地元負担金と申しますか、それらのないように四十六年度に措置をさしていただいた。引き続き四十七年度も厚生省を通じてそのような措置がなされるものと、かように考えております。
  533. 小平芳平

    ○小平芳平君 自治大臣、その地元負担金がないように処置がとれないのですかと、こういう質問をしておる。
  534. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) ただいま申しましたように、それだけの事業費千七百六十五万円、国庫補助と県費補助と起債とでほとんど全額出しておりますので、地元負担とする差額は簡易水道のほうで四万円、それから飲用水供給施設で九万円程度を地元の町が持つという姿でございますので、町といたしましても、財源は全部国、県並びに地方債というもので持たしていただいたという姿で四十六年度措置しておるということを述べさしていただきたいのでございます。
  535. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、先ほど大石長官がちょっとおっしゃった健康被害ですが、やはり相当な健康被害が出ていると私たちは見ておりますが、どのような報告になっておりますか。
  536. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いま私たちが持っております報告は、昭和四十五年の十一月、十二月にわたりまして、長野地区と豊稼地区両地区の全住民を対象に健康調査を県でいたしております。その住民は六百三十七人でございますが、調査対象は四百八十九人と約八割近い人が受診しております。その中で十六人が精密検査を必要とするということになりまして、鳥取大学の医学部にこれを委託いたしまして、昭和四十五年の十二月から翌年——昨年の五月にかけて、頭髪、つめ、血液の検査を行なっております。その結果は、昭和四十六年の五月六日に、砒素による影響は認められないという県の公式発表が行なわれたのでございますが、しかし、私どもも、いままでほうっておいて申しわけないと思いますが、これにつきましては、もう少し十分な詰めを行ないまして、検討してみたいと考えております。
  537. 小平芳平

    ○小平芳平君 砒素による影響はないどころではないのです。こうした砒素を焼いていた人は特有の斑点、からだじゅうに斑点ができている。そうした元従業員は、私たちが確認できた従業員だけでも十七名。この十七名の方は、大体ぜん息、結核、けい肺、手足のしびれ、こういうものを数多くの人が訴えていらっしゃる。したがって、関係ないという発表があったから、というような簡単な受けとめ方ではならない。環境庁長官と労働大臣、こうした元従業員に対する救済をどうなさるかをお答え願いたい。
  538. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いまのお話を承りましても、やはりそのままにほうっておけないと思います。十分に島根県庁と連絡をとりまして、もう少し詰めを行ないまして、もっとさらに精密検査を行なったらどうか。いろんな十分な打ち合わせをいたしたいと考えます。
  539. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) ただいま環境庁長官が説明したように、砒素による影響がないという報告も私はいただいておりまするけれども、私のほうの立場といたしましては、検診の結果まだ該当者というものは実はまいっておりません。しかし、これが判明いたしますれば、労災法の適用を受けるということになれば、所要の補償の措置はとらなければならないと考えております。
  540. 小平芳平

    ○小平芳平君 特になくなった従業員——労働大臣、もう一ぺんお答えいただきますが、なくなった従業員の方を追跡して調べてみますと、確認された方が十四名。十四名の方の死亡診断書は肺ガン等の呼吸器系統が十四名中六人、胃ガンが一人、変死が二人。それから五十歳代でなくなった方が五人。三分の一は五十歳代でなくなっていらっしゃる。ところが、確認された方は、遺族の方がその地域に住んでいらっしゃる方だけがいまわかるのであって、実際には若くしてほかの県から働きに来た人はつかみようがないわけです。そうして山にたくさんのお墓があります。その石碑には「広島県住人」というような簡単な石碑が建っているにすぎない。こういうような労働環境についての労働大臣のお考えをお聞きしたい。
  541. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) ただいまの島根県の例をいろいろ拝聴いたしました。この前小平先生からは、宮崎県の土呂久・松尾でしたか、やはり同じようなお話を承りましたが、先ほど申し上げましたように、いまのところ労災法の適用を受ける、検診の結果そういうものを受けるという該当者は、私のところにはまだ報告がまいっておりません。しかし、環境庁長官がなお詳細に調査するということでありまするので、いずれそれらとの関係——ことにこの問題は関係五省で協議会も設けられております一農林、通産、環境、労働と厚生。ですから、その結果をまって私のほうとしてなし得べきことは、先ほど申し上げましたような労災法の適用、それからいまおっしゃったなくなられた方、これは私らの聞いておるところでもまことにお気の毒な状況にあるけれども、やはりその土地の者じゃなくてよその県の方が非常に多いという報告も受けております。したがって、その確認ということについて非常に困難であるというようなことを知事並びに関係者からも承っておりまするが、やはりこれは何らかの方法で、いまのようなお写真のような悲惨な状況もありまするし、また、それでなくなったということになりますると、これまたたいへんな社会問題でもありまするから、非常に調査は困難と思いまするが、前に宮崎でいろいろお話があったように、あるいは原形復旧してその形でもって実験したらどうかというようなお話も承りましたが、それとこれは別です、いまのは死亡者の問題でありまするから。しかし、いまの段階では、私が何人あってこれがどこでというようなことをお答えする資料はまだ持ち合わせておりません。しかし、関係の県の知事その他関係者とよく御相談いたして、なるべく身元を明らかにしていきたいと思っております。
  542. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、文部大臣、この激甚地区をかかえている畑迫小学校という小学校があります。その小学校の校長先生は、四十五年に赴任をされた。そして、すぐ気がついたことは、体位がいかにも悪いこと。そこで、校長先生がよく比較検討してみたところが、この激甚地域の子供さんは確かに悪い、身長、体重、胸囲ともに町の平均から、県の平均から比べて、学校全体の平均から比べて、体位が悪い。そこで、校長先生が体育というものに非常に力を入れて、特に夏は水泳をすすめた。ところが、その水がまたよくないというところから、澄んでいるときの水を分析してもらったら〇・〇八PPM、環境基準をこえちゃっている。濁っているときの水は〇・一四PPM、環境基準の三倍程度に汚染をされている。さあ、せっかくの校長先生の水泳もだめになっちゃった。しようがない、何とも。ブールでも建設する以外方法がないということになってしまった。こういうような小学校の現実に起きている問題について、大臣、いかがですか。
  543. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  島根県の沢谷流域の河川、三つばかりあるようでありますが、いまお話の畑迫小学校、この体位を調べてみた結果、非常に悪い、ことに水泳をやらせるとなお悪いというところから、昨年八月、島根県に依頼をされまして調査をされたところが、御指摘のような砒素の検出ができました。直ちに水泳をやめさせたのでありますが、私は津和野をよく知っておるのでありますけれども、あの山紫水明のところで子供が泳いだためにからだが悪くなった。そのために水泳をやめなければならぬということになった。まことに気の毒だと思います。ことしの三月に津和野町から水泳プールの新設が申請されております。補助事業の対象として実は取り上げることにいたしております。この種の公害関係の地域につきましては、特に私は優先的に補助事業の対象として取り上げたい。昨年まで二十億の予算でございましたが、ことしはおかげさまで三十五億の予算を皆さんに御審議をいただいておるところでありまして、この種のたくさんの公害地域があると思います。できるだけ優先的に取り上げてまいりたいと存じております。
  544. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、通産大臣、そういうふうにだめになるもとがこの鉱山廃坑なんです。  もう一つ、通産大臣から、具体的に、全国の問題になりますが、昭和四十七年度、どういう措置をなさるか、大蔵大臣からもお答えいただきたい。
  545. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 五千ないし六千の鉱山のうち、大体通産省で鉱害防止上問題があり、精査を必要だと考えられるのが千五十鉱山でございます。しかも、昨年から土呂久鉱山による砒素事件が起きましてから、五十九の鉱山に対して一斉調査を行ないました。その結果、二鉱山を残しまして、これは降雪のためできなかったのがございますが、二鉱山を残して一−三月にほとんど終了いたしました。問題のないと思われるもの二十五鉱山、調査未了のもの四鉱山、問題のあるもの三十鉱山、この三十鉱山のうち、亜砒酸の精錬がまが残っている鉱山は二十二鉱山、水質が基準をこえておるもの七鉱山、ズリ等の堆積物の流出防止措置を要するもの十五鉱山と、こういうふうにしてだんだんわかってきておるわけであります。私が通産省に参りまして山形の鉱害処理の問題の陳情を受けましてから、予算を見ましたら、九千万円ということであります。九千万円ではどうにもならぬということで、二五%などと言わないでということで、大蔵省側の理解を得まして三倍にしてもらったわけであります。まあ三倍にはしてもらいましたから、率から言うと非常に大きいわけでございますけれども、この三倍でとても千五十鉱山をやれるわけはないわけでございます。ですから、通産省、それから県、市町村等といま密接な連絡をとりながら、まず調査をする、そうして至急調査を行なったものに対して、鉱山別に、鉱業権者のないもの、鉱業権者があっても無資力なもの、いろいろなものがありますから、それに対して具体的処方箋を書くということが一番急を要することでございます。ですから、ことしは予算は三倍になりましたし、その後に調査を行なって、四十八年度以降、関係地元と十分連絡をしながら、協力をしながら、これらの問題を具体的に片づけるスケジュールを立てるということに重点を置きたい、こう思っておるわけでございます。
  546. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま通産大臣がお答えになったとおりでございます。御承知のように、鉱害防止につきましては、鉱業権者が義務を持つという、いわゆる原因者負担の原則を貫いているのが現行法制でございますが、現在の状態を見ますというと、もう鉱業権がなくなってから五年以上たっているものとか、五年以内であってもなくなったり破産したりしたものでもう鉱害防止工事をする能力のないもの、また工事をさせることが不可能なものというようなものがたくさんになった現状であり、しかも、そのための鉱害というものがたくさん起こってこれはもう看過できないという状態でございますので、昭和四十六年度から、休廃止になった鉱山の鉱害防止工事に対する補助金制度というものを新たにつくりまして、この防止工事を地方団体がもし行なうという場合には国が三分の二補助するという制度をとって、さっき通産大臣が言われておりますように、ことしは昨年の三倍近い予算をもってこの充実をはかるというようなことをいたしておる次第でございます。
  547. 小平芳平

    ○小平芳平君 その国が三分の二というのが不合理ではありませんか。国が許可した、監督をした鉱山ですよ。それが、いま、たんぼがだめ、井戸がだめ、水泳もできない。惨たんたる被害をいま現に起こしている。通産大臣は、調査調査と言われますが、調査するまでもなく、現実に被害が次次と発生している地域が何カ所かあるじゃありませんか。こうした問題は、国が三分の二なんて言っている必要はないと思うんです。とともに、また石炭の場合は、その法律があるわけでしょう。その石炭の場合を御説明していただくことと、この休廃鉱に対する特別の立法が必要なら、早く準備をして、次の国会へ出して、根本的な解決をはかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  548. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあお気持ちはよくわかりますし、姿勢もそうでなければならぬと思いますが、しかし、これは部落、それから市町村、県、国というものが一体にならないとなかなか理想的なものができないわけでありますし、鉱害復旧すればいいというだけではなく、改良復旧という問題もありますから、やはり私は地元が、地方自治団体というものは、国が全部やればいいということではないわけでありますし、特に原形復旧というだけではなく、改良復旧の理想を貫くということでありますので、地元が主体になり、国がこれに対していまお述べになったような精神で助成をしていくということが、やっぱり方法としてはオーソドックスだと思います。ただ、三分の二がいいのか、四分の三がいいのか、五分の四がいいのかというのは、災害の問題ではだんだんと率を上げ、最後は沖繩一〇〇%というものもあるわけでございますから、いろいろ具体的なものを調べて、そして府県ではできない、できないけれども、被害は非常に大きい、こういうものであれば、当然国のウエートが大きくなるわけでございますし、これから府県、大蔵省、通産省、また関係省とも十分連絡をとりながら万全を期してまいりますから、きょうのところは、まあこういうことで御了承いただきたい。
  549. 小平芳平

    ○小平芳平君 立法は要らないですか。
  550. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 立法は、まず現行法の運用でやってまいれると思います。また立法の必要があるかないか、これは調査をしてみないと、まあ土呂久の問題とか、いま御指摘になった問題とかいうのがありますけれども、実際千五十というものに、この前の御発言から半年くらいの間で、これだけの調査を進めるということは、相当なスピードを上げてやっていることは事実なんです。ですから、取り組む姿勢が非常に積極的であるということは御理解いただかなければならぬと思うのです。なんでも国が一〇〇%やるということだけでいいものでもありません。私は、そういう意味でやはりまず調査を行なって——調査ということ、調査、調査といって、在来のようにじんぜん日を送るということではないのです。これはやはり実情をつかんで適切な対策を立てる、こういうことでなければ、国民の血税を使うわけでありますし、理解を求めなければならぬということで御理解いただきたいと思います。
  551. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理、特別立法はなぜ必要がないのですか。
  552. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 必要はないというのではございません。必要があれば立法をお願いいたします。しかし、実態をいま調査中でございますし、現時点におけるものは、いまちょうど大蔵大臣の述べましたように制度ができております。制度ができておりますので、休廃止鉱山の実態、公害の状況等がつまびらかになって、必要があれば立法を拒むものではありませんし、そういうときには適切な立法をつくりまして、皆さんの御審議をいただくという姿勢でございますので、いまの段階においては、どういう立法をつくるのかということもわからぬで立法いたします、そう無責任なことは申し上げません。
  553. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、その立法の問題と、国庫負担の問題ですね、三分の二で固定する必要はないわけですから、特にこうした大きな廃鉱だと、どれだけ金かかるかわからないですよ。そういう点を至急検討いただきたい。  それから次に、住民の健康診断について環境庁長官からもう少し具体的に承りたい。とともに、また厚生大臣から、砒素による健康被害は、森永砒素ミルクで、厚生省は経験があるわけですから、その点について厚生大臣はどのような考えを持っていらっしゃるか。
  554. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) せっかくの御質問でございますが、いま正確な、どのような手段で、どのような範囲でやるかということは、ちょっとお答え申しかねます。もう少し県と十分に打ち合わせいたしまして、その結果、できるだけの精密な的確な健康診断なり、そういう対策を立ててまいりたいと考えております。
  555. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 砒素によるいわゆる健康阻害の問題、おっしゃるように、森永ミルク事件がその一つの例でございます。このときにとったミルクの中に包含されておった砒素の量というものはわかるわけでございますが、一万二千人の患者の中で、死亡した者が百二、三十人であったと思います。その後治療等を加えてまいったのでございますが、後遺症というものはないであろうと当時言われておったのでございますが、昨年あたりから、いや後遺症があるという学者の発表もありいたしまして、岡山県を中心に関係府県でその後の追跡調査をただいまやっております。近く各県で結論が出るであろうと、かように存じます。すなわち、当時砒素ミルクを飲んだ人たちが、その後健康をどの程度阻害をしているかという実態的な調査が近く浮かび上がってくるものと、かように考えております。
  556. 小平芳平

    ○小平芳平君 砒素ミルクについては、もう少し質問がありますが、ちょっと前後しましたが、この休廃鉱の公害防止について、治山治水の面から農林省、建設省はどのような対策を持っておられるか、お尋ねしたい。
  557. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 治山治水は、災害は自然的災害を基礎としております。でありますので、人為的な災害につきましては施行者とか、そういう方面から救済の方法をとらせるような措置をとりますが、しかし、その原因がわからぬ、そういう場合におきましては、農林省としても災害を防除するとか、復旧するとか、そういう方法をとる、こういうことでございます。
  558. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 河川行政をやっておる場合に、特に水の量よりも質の問題が大事になってきました。そこで河川の計画をやる場合は、その河川の特性を考えなければいかぬ、その特性のうちには、いま言いましたような廃鉱という問題もございまして、廃鉱でなくても、現在企業しておる場合で、河川にいろいろの悪影響を及ぼしておる場合もあるわけでございます。したがいまして、建設省としては、十分この河川行政に新たなひとつ注意をしなければならぬと思っております。御指摘がありましたこの島根県の川ですが、あれは江川の上流でございまして、非常な上のほうでございます。したがいまして、これは直接に河川のほう、私のほうがあずかってはおりませんが、これは関係省でそれぞれいまやっておるのです。私のほうでも十分気をつけたい。また山口県の場合は、あれは厚東川の上流でございまして、これも非常な山の中でございまして、いずれにいたしましても、今後廃鉱にせよ、あるいは現在その企業しておる場合でも、水質の保全につきましては十分注意をして、河川計画をやりたいと、かように考えておる次第でございます。
  559. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間がありませんので、ちょっと御答弁に不満ではありますが、次にまいります。  先ほどの厚生大臣が報告された、森永砒素ミルクの問題のときに、後遺症はなかろうと——後遺症の心配はないとか、引き続き治療を受ける者は後遺症ではなく原病の継続であると、こういうような報告を厚生大臣に出されたわけでしょう。これについて厚生大臣は、現在の心境としてはどう受けとめておられますか。
  560. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 私が申し上げましたのは、かつて砒素ミルク事件を起こした当時、それからしばらくの間の状況を申し上げました。一昨年でしたか、砒素ミルクの影響が今日でもあると、後遺症もあるというまあ医師の発表がございまして、したがって、これは捨ておけないということで医療調査班を設けまして、そして当時の砒素ミルク患者といわれる人たちの調査を関係府県でただいまやっているということでございます。私は、今日の状態では、全然後遺症がないとか、その後健康にもう影響していないというようには思っておりません。相当程度のものがあるであろうと、かように考えますが、いま医学的に十分な研究体制のもとに調査をいたしておるわけでございます。
  561. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、もう二つ質問いたしますが、この砒素による健康被害、後遺症があるといま大臣はお述べになりましたが、それを環境庁のほうと打ち合わせていただきたいと思うのですね。これから住民の検診をやる場合に、砒素による後遺症かそうでないかということですぐ問題になっちゃう。あの土呂久でもそうです。あっさり砒素に関係ないというふうに発表されちゃうと、非常に住民には救済の道がなくなっちゃうわけです。その辺を、砒素ミルクで経験のある厚生省が十分に打ち合わせしていただきたいことが一つ。  それからもう一つは、この砒素ミルクの被害者を守る会の方が厚生大臣に面会をされた。そうして被害者の名簿を厚生省へ森永から提出させるように、そうしてこの名簿はしかるべき研究機関なりに渡すように、それからまた原爆手帳に準ずるような手帳を企業につくらせて、そうして将来の救済措置をとってほしいと、こういうようなことについては厚生大臣はどう考えますか。
  562. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 環境庁も同様でございますが、特に厚生省は国民の健康を守るという本旨から考えまして、そういった砒素の健康に及ぼす影響、また後遺症その他の問題も国民の健康という立場から、何といいますか、憂いのない悔いのない資料といいますか、研究を進めてまいりたいと、かように考えます。したがいまして、そこから出てまいりました資料は、環境庁の公害防止のいわゆる基準をきめられます場合にも、その他の施策にも非常に役立つものと、かように考えます。したがって、環境庁と厚生省は、そういった健康を守る面におきましては意見のそごのないように、しかも、それは厚生省のデータを尊重してもらいたいという態度で臨んでいるわけでございます。今後もさようにいたしたいと思います。  なお、砒素ミルクの患者同盟の方々が先般もお見えになりました。いまおっしゃいますような陳情もございました。したがいまして、当時いわゆる砒素ミルクを使用したという方々の名簿をいままで森永乳業で持っているわけでございますが、これを森永側も厚生省において保管してもらうことに異存がないと、先般、社長が申してまいりました。さようにいたしたい。そして、これは貴重な資料でございますから、それをもとにいたしまして患者のその後の健康状態も十分調べてまいりたい。また、患者同盟の方々は、そういった人たちに対して、砒素ミルクを飲んだといういわゆる手帳みたいなものがほしいということでございます。森永はこれを出すにやぶさかでないといいますが、厚生省なり県なりの権威のあるものをもらいたいということでございます。私は、それらの人たちが希望をされるなら、される方々には、それは交付してあげていいのじゃないか。そして、それを持って医者にかかる場合にも、私はこういうあれでありましたということによって医者にかかるということが、将来の健康保持上も適当であろう、そういう方向で考えたい、かように考えます。まあ、いままで砒素ミルクから起こった健康被害の救済といいますか、救助といいますか、損害補償といいますか、これは明らかに私法上の問題といたしまして森永が負担すべき問題でありますが、しかし、厚生省は、そういう公正な立場で指導助言をいたしておりましたけれども、もう少し厚生省が中心になって、主導的な立場でやってほしいという意向であろうと、かように察しまして、今後厚生省の、まあ指導助言というよりは、むしろ厚生省の主導的な立場においてこの問題を処理してまいりたい、そして森永乳業もそれに同調して、必要な金を出すという方向に持っていきたい、かような考え方でまいりたいと思っております。
  563. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどの名簿はどうされますか、提出された名簿は。その点について。
  564. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 厚生省が責任を持って保管をし、そしてその名簿を今後の追跡調査に十分役立てたい、かように考えます。それは厚生省自身に保管をしておきますか、本人のいる府県に保管させますか、そういった技術的な面は検討いたしてまいりたいと思っております。
  565. 小平芳平

    ○小平芳平君 では次に、同じく砒素の問題ですが、アルミの製錬過程で大量の砒素を含んだスラッジが出ます、ボーキサイトからアルミナをつくる過程で。これはどうなっておりますか。通産省と水産庁から明らかにしていただきたい。
  566. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) アルミを製錬いたしますときに、ボーキサイトからアルミナをつくるわけでございますが、その製錬過程で赤泥と申します非常に微細な土壌状の廃物ができるわけでございます。これにつきましては、現在五工場あるわけでございますが、そのうちの三工場につきましては、これは海岸の埋め立てに使用をいたしておるわけでございますが、二工場については海洋投棄をしておるわけでございます。この赤泥と申しますのは、非常に微粒と申しますが、粒子の小さいものでございまして、海洋に投棄をいたしましたとぎに、沈降のスピードその他については問題が若干あるわけでございますが、私ども成分その他から考えまして毒性はないというふうに考えておるわけでございます。赤泥の量といたしましては、現在、年間約百三十万トン近い量が出るわけでございますが、そのうちの約五五%は埋め立てに使用し、四五%を海洋投棄をしておるという状況でございます。
  567. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 御承知のとおり、日本軽金属の苫小牧工場の赤泥投棄が問題になりまして、私どもも水産研究所を動員いたしまして赤泥の調査をいたしたわけでございます。その際、化学的な成分につきましての分析を調査機関に依頼いたしましてその結果を得たわけでございますけれども、これによりますと、総水銀あるいはカドミウム、こういったものの含有量はほぼ地殻の成分と同じでありますという結果を得ております。ただし、私どもが現在、日本軽金属が三宅島の周辺に投棄いたしておりますところの赤泥をとってまいりました、その赤泥だけでなく、苫小牧工場で使用されるボーキサイト、こういった中に、少量ではございますが、砒素の含有量が地殻の成分に比べて多いという結果を得ております。ちなみに、数字で申し上げますと、赤泥中に含まれておる砒素は七九PPM、ボーキサイトは一二ないし六二PPM、地殻の成分は通常五PPMと、こういわれております。
  568. 小平芳平

    ○小平芳平君 水産庁がそんなことじゃ困るじゃないですか。地殻の成分が五で、この水産庁の分析が七九なら、それでもう十何倍でしょう。十四倍ぐらい。ところが、通産省へ持っていった分析結果には、七九じゃないんだね、はるかに高いものが含まれているということを通産省はわかっている。それを水産庁は、たいしたことないわ、低いわなんて言っている。その辺はどうですか。
  569. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 私どもの調査によりまして分析結果を依頼した結果は、先ほど申し上げた数字でございます。
  570. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省は。
  571. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 私どもが現在持っておるデータは、これは一つの例でございますが、一〇〇ないし二〇〇PPMの砒素が含まれておるというふうなデータがあるわけでございます。これは原料にいたしますボーキサイトの中の砒素の量によって違ってくるわけでございますので、水産庁のほうでおとりになりました資料は先ほどの御発表になった数値であったのではあるまいかというふうに考えております。
  572. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、それを限りなく太平洋に捨てていること、これについてどう考えますか、政府は。これがその赤泥です。通産大臣。
  573. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 赤泥はアルミナをつくる過程においてできるものでございまして、鉱滓と同じわけであります。ですから、生産をとめない限り出るわけであります。そうすると、一般土壌とこの赤泥との間にどのくらいの差があるかということに対しては、これは非常にこまかく分析をさしております。いま御指摘のございましたように、一部の検査では高い数値のものがあるということもございますが、もうこの問題は、量が非常に大きいものですから、これはもう長い年月あらゆる角度から分析をしておることは、もうそのとおりでございまして、赤泥に対しては、苫小牧の日本軽金属の問題が出ましてから、まあこれは溶けないものではあるけれども、しかし海洋投棄をすることによって漁業問題としては支障があるじゃないかという問題が提起されてから、急速にこれらの問題、勉強が始まっておるわけであります。異物は口の中にのんでもすぐ吐き出すんだというような議論から始まって、いまは非常に専門的な分析を行なっているわけでございまして、結局、海洋投棄よりも埋め立てに使うことがよろしいということで、現在のところ申し上げますと、海岸埋め立てに使うものが六十九万トン、これは年であります。これは総量の五五%、海洋投棄は五十七万トン、これは四五%、こういうことでございまして、これは住友化学、三井アルミ、日本軽金、昭和電工横浜というようなところでございまして、埋め立てができるところは、これはコンクリの擁壁をつくってきちっと埋め立てればいいのでありますから、水銀鉱山のダムをつくるのと同じことである。これは銅の鉱滓を密閉して埋め立てるということと同じことでありますから、これには問題がない、こういう感じでございます。海洋投棄という問題は、いままでのように方法と距離が問題であります。ですから、それはいままでよりも非常に倍も三倍もあるところへ行って海の底に沈めよう。しかもいま、汚穢船と同じようにして、船の底がわっと開くようなものであったものを、パイプでもってずっと下まで下げて、魚がいないようなところまでパイプで下げながら、コンプレッサーでもってわっと出していくというような技術開発を行なっているわけでありますから、いまのところアルミナ製造をやめない限り鉱滓は、赤泥は出るわけであります。で、いまの時点においてはいろんな成分があります。分析表、私ここに持っておりますが、いずれにしても一般の泥の中と何ら変わらないというようなものでございますので、慎重を期するということで万全の処置をとるということでいるわけであります。  もう一つは、これをどこか使えないかということで、骨材に使おうということで、これはポリエステル工業の中で、鉄にかわるものと同じことであって、これは骨材に使えないはずはないというところで、ことし一億数千万円、通産省からも助成金を出して、骨材にすることが一番望ましい、私もそう思っております。そういうことで、いま技術的な使用法を考えておる。まあ最終的にはまだやはり問題があるというなら、これは日本でつくる量を減らす以外にないということで、今度はアルミナをつくるまでの間、外国でつくろう、これを外国でつくれば日本は悪くても外国はいいのかというのじゃなく、外国は、これは原鉱石を日本に提供しておるのでありまして、現地でつくることを日本に求めておるのでありますから、日本に鉱石を全部持っていってつくることは望ましくない、これを半分は現地で製錬をするようにという要求があるわけでございますから、そういう意味で、豪州、それからインドネシア、マレーシア等で相当部分のものがつくれるように合弁会社に出資をいたしておるわけでございます。この出資の比率その他の内容は、全部データがございますから、いずれお届けをしてもけっこうです。そういうことで、これ以上、アルミナ製造過程において出るものですから、日本まで持ち込んできて、それが日本のためになるものならいいけれども、それをまた太平洋のまん中まで持っていって捨てなければならぬというようなものなら、持ち込まないほうがいいじゃないかという、非常にこの問題に対しては半年間、私も勉強したのです。通産事務当局もいろいろな角度から勉強しまして、公害問題で国民に迷惑をかけないように、魚は迷惑はなくとも、実際において魚が寄ってこなくなっちゃ困るということまで言っておりますので、そういう専門的なところまで勉強を進めておるわけでございますので、まあひとつ御理解をいただきたい。
  574. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産大臣、利用する道を考える、これはけっこうだと思いますよ。  それから次に、通産大臣、これからの国内の工場はアルミ製錬工場をどんな場合に許可するのか、際限なく許可するのか、それとももう許可しないのか、それが一つです。  それから次に、法務大臣か法制局長官か——廃棄物処理法というものがある、海洋投棄は規制している。しかるに、二〇〇PPMの砒素を含んでいるものを何十万トン、何百万トンも海に捨てる。すっと海底になんか沈みません。そのために見ていただいたのです。ばあっと海洋汚染をする。こういうことは廃棄物処理法違反になるのかならないのか、そういう点。  それから、環境庁長官、今度の人間環境会議に臨む政府の姿勢として、いまのような問題をどうお考えになるか。
  575. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) この赤泥につきましては、われわれもずいぶん、北海道の苫小牧に日軽金の工場ができますときからいろいろと問題にしておりました。そのあとに、われわれはこの廃棄物処理法の基準を政令で規制をしたわけでございますが、そのときには、できるだけ海洋投棄をやめさしたいという考えで、原則として陸上で処理ということをきめてございます。しかし、通産大臣からお話がありましたように、現実には海洋投棄以外に方法のない工場もいま動いておりますので、これを直ちにとめさせるわけにまいりませんので、そのような原則のもとにこれは一応認めてまいったわけでございます。しかし、やはりわれわれはこれをなるべく海洋投棄さしたくございません。したがいまして、御承知のように、海域の指定をいたしまして、それがある程度海面に捨てられましても漁業その他に大きな影響を与えないような、たとえば親潮とか黒潮のもっと外側に、深い、千五百メートル、二千メートル以下の海域に捨てさせるとか、そのような規制をいたしたわけでございます。さらに指導いたしまして、苫小牧の日軽金の赤泥も、これは陸上で処理することに方針がきまったのでございます。これはいま清水その他二工場がございますけれども、これはいま通産大臣のお話がありましたように、いずれは現地で処理をしてアルミナの形で日本に持ち込むようになるだろうと思います。そういう時代の早く来ることをわれわれも望んでおるわけでございます。  で、この人間環境会議に、まあ私が参りたいと思っておりますが、この赤泥の問題を直ちに全部取り上げますと——いままだそこまで考えておりませんが、その他いろいろな、イタイイタイ病なり、それからあるいは水俣病その他の問題につきましても、はっきりと実態をやはり世界に示しまして、二度とこのような問題の起こらないようなひとつ参考にいたしたいと考えておる次第でございますので、この赤泥の問題につき産しても、いろいろとこれから検討してまいりたいと思います。
  576. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) この赤泥が発生するようなアルミナまでの製造は、できるだけ許可をしないということであります。そのためには、先ほど申し上げましたが、豪州ではキンバレー開発計画——年二百四十万トン、これは三七%資本参加をしておりまして、入手可能量は九十万トンでございます。それからアルコアの開発計画——年百二十万トン、資本参加、入手可能量二十万トン。それからもう一つ、ウェーバー開発計画——二百万トン、資本参加であります。インドネシア、ビンタン島開発計画、これは年四十万トンであります。ガーナの計画にも参画をしております。こういうことでありますので、四十七年度に輸入が二三%、国内産が七七%だったわけでありますが、これがだんだん減りまして、五十五年には輸入が四一%、国内産が五九%と、これは逆転していくわけでありますので、赤泥問題はそれまでかからなくても、骨材としてこれを活用する。それはめんどうなことではありません。私自身もそういうことをやったこともありますから、そんなことは、いまのプラスティック廃棄物の骨材利用と同じことであって、これはそんなに時間のかかる問題ではない、こう思いますので、赤泥問題は一般の公害問題の中では解決しやすい問題だと、こう見てもいいと思います。
  577. 小平芳平

    ○小平芳平君 国内に許可するのですか。
  578. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 許可はなるべくしない。全然しないということを申し上げていいかどうかわかりませんから、原則的に増設を許可しないというぐらいで、きょうのところは……。
  579. 小平芳平

    ○小平芳平君 法律違反はどうですか。
  580. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) この処理の法律上の問題につきましては、所管の局長から答弁させたいと思います。
  581. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) お答えいたします。  赤泥は、これは無機物の汚泥ということになっておりますので、原則としましては廃棄物処理法の政令によりまして海へ捨てることができるということになっております。ただ、御指摘のとおり、砒素その他の有害物資が若干とはいいながら含まれているということでございますので、その関係はどうかということになるわけでございますけれども、現在の廃棄物処理法の政令によりますと、水銀等の有害物資を含むものというような、含む汚泥につきましては、コンクリート固型化等の処理をしたものに限りまして海洋へ投棄できるということに形式上はなっておるわけでございます。ただ、問題は、この「含むもの」という解釈でございますけれども、当時私ども制定をいたしました時代におきましては、自然界に一般存在するレベルのもの、これはまあ含むということはいかがかというふうに考えますし、また、これは溶融、溶出等をしないというように、生活環境を汚染をしないようなもの、おそれの少ないもの、そういうものを含むというふうに解釈するかどうかという点については多少問題があるのではなかろうかというふうに考えております。ただ、政令の運用といたしましては、「含むもの」と書いてあるということにつきましては、多少疑義がないわけではございませんので、私どもは至急再検討いたしまして、この政令につきまして必要があれば改正をいたしたいというふうに実は考えておる次第でございます。
  582. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。  通産大臣にお伺いしたいのですが、前回ここで沖繩アルミの件を私伺ったのですが、いまの赤泥の問題から、前回は、公害施設等の問題に非常に金がかかる、その点についてはトン当たりの十分な手当てをして、損害というものがないようにしたいという答弁があったわけです、ここで。いまのような今度は海洋投棄の問題等があると、処理方法においていままでよりよほど考えなきゃならない、こういうことになるわけです。処理方法がきびしくなればなるほど設立は困難になる、その点についての基本的な方針をお伺いしたい。
  583. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、日本では、アルミナを製造し赤泥を排出をするような事業を新たに認可をしないということを基本的に考えておりますと、こう申し上げたわけでございます。沖繩はアルミナを輸入をしましてアルミナの電解だけをやるわけでございますので、赤泥は生じないということでございます。
  584. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、小平君の質疑の途中でございますけれども、次回の委員会は、明十一日午前十時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十八分散会