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1972-04-08 第68回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月八日(土曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  四月八日     辞任         補欠選任      世耕 政隆君     中村 禎二君      熊谷太三郎君     安田 隆明君      楠  正俊君     川野辺 静君      山内 一郎君     石本  茂君      佐々木静子君     須原 昭二君      三木 忠雄君     小平 芳平君      塩出 啓典君     沢田  実君      田渕 哲也君     木島 則夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 石本  茂君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 川野辺 静君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 高橋 邦雄君                 内藤誉三郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 上田  哲君                 大橋 和孝君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 小平 芳平君                 沢田  実君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 田渕 哲也君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  塚原 俊郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        行政管理庁行政        監察局長     小林  寧君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁防衛局長  久保 貞也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        福間  威君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省関税局長  赤羽  桂君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省畜産局長  増田  久君        食糧庁長官    亀長 友義君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        特許庁長官    井土 武久君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省住宅局長        事務代理     沢田 光英君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、三木忠雄君の質疑を行ないます。三木君。
  3. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、防衛問題について伺います。  まず最初に防衛庁長官に伺いますが、四次防のこの大綱が二月にでき上がったわけでありますが、ほとんどこの内容を見ますと三次防の延長で、まあ国民を納得させるような防衛構想というものは全然示されていない。そこで、防衛庁長官として四次防計画をどういう構想のもとで進めようとしているのか、この点についてまず伺いたいと思います。
  4. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘のように、四次防大綱というものは三次防の大綱とやや似通ったものであります。それが実は私どもから申しますると非常に重要な点であります。それは、元長官の中曽根君の時代に、十年を目途といたしまして、いわゆる第四次防衛計画というものをその七、八〇%達成しよう、これはまあ武器の面においても、いろいろ装備すべての面において。そういう長期計画に立ったわけであります。しかし、このいまの日本の置かれておる情勢から考えまして、十年を視点にして防衛計画を立てるということはいかがであろうか、こういう反省が私どもにありまして、今日の段階では、三次防の五カ年計画延長としての五カ年計画、すなわち三次防の終末時における装備というものを更新して、延長の上に、いま充実段階である自衛隊装備というものをだんだん固めていく、充実していく、こういう計画に立っておるわけであります。したがいまして、昭和三十二年にきめました国防基本方針、これをやはり基礎にいたしまして今後の防衛構想というものを練り上げていこう、これから実は十分慎重に検討をいたしまして概要をきめ、いわゆる内容をこまかに、すなわちまあ主要項目ということばを使っておりまするが、これをきめていきたい、こういう構想でございます。
  5. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、昨年示されたこの防衛庁原案ですね、これは全面的に考え直す、それから、その当時うたわれた新兵器等装備問題点についてはどの程度勘案しているのか、この点についてお伺いしたい。
  6. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 昨年防衛庁から発表いたしましたいわゆる新防衛計画、あれは四次防ということばをどういうものか避けてそういうことばを使っておったようでありまするが、これは、二月八日の四次防大綱というものがきめられた時点において完全に白紙になったわけであります。したがいましていまお示しの、しからば新たな構想としてどういうふうにいくのか、これについては、いましばらく時間をおかしいただきたい。これは経済見通し、まあ必ずしも防衛費標準として、GNPの一%以下ということが正しい一つ標準とは言い切れぬものがありますが、三次防の段階では、これが一つ標準になってまいりました。したがいまして、四次防というものが年度内に策定できなかった大きな理由としては、円の切り上げというような、経済基礎が変わった、しかも経済見通し、先行きが、非常に見通し難であるというようなことを背景にしまして、夏過ぎに五カ年計画をきめていこう、こういうことにしておるわけでありまして、まだ金額的にも、さだかにその根拠決定するという時期に至っていないわけであります。手さぐりの最中でありまして、これなどの決定を待ちまして、夏過ぎにはすみやかに決定をいたしたい、こういう計画でございます。
  7. 三木忠雄

    三木忠雄君 大蔵大臣に伺いますが、先般も、新経済発展計画の発表前の夏には四次防のスタートをさせたいと、こういうふうな答弁をされているのがあるのですが、具体的に大蔵大臣はそのような決意をされているのでしょうか。
  8. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 新経済発展計画は、ただいまのところ相当おくれる予定になっておりますが、私は、今年度こういういろいろ問題を起こしましたことは、防衛庁概算要求をする時期、八月にこの計画ができていなかったということからいろいろの問題を起こした経験にかんがみまして、やはり来年度の防衛予算概算要求があるまでには、四次防を曲がりなりにもこれを策定する必要がある、これが一番事態の混乱を避けることで、今年度の経験に照らしても、改善すべきことであるというふうに考えますので、そうしますというと、最終的な発展計画がかりにできませんでも、一応この主要の経済の、予測できるいろんな資料は整いますので、その大筋資料によって、私はやはりこういう四次防計画だけは少なくとも八月中にはこれを持つことがいいというふうに考えますので、経済計画のほうが若干おくれるようなことがございましても、計画大綱というものは大体見当のつくところまでは作業が進むことでございますので、私は四次防計画は、やはりその前後にはどうしてもつくりたいというふうにいま考えております。
  9. 三木忠雄

    三木忠雄君 まだ計画見通しが立たない、まあ大筋は立つという大蔵大臣答弁ですけれども大蔵大臣のほうは何か防衛庁長官より先取りしているような感じで、それほど早く四次防をスタートさせなきゃならないという、強い根拠か何かあるのですか、お伺いします。
  10. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 大蔵大臣の言っておられることは正しいわけでありまして、私ども経済見通しのおよその根拠見当、こういうものがつけば、やはりすみやかに策定をしていかなければならない。特に今度は、いろいろ議論になったわけでありまするが、四次防というものは事実上はない、こういうところで大蔵省予算査定が行なわれたわけであります。したがいまして今後、向こう五カ年間特に平素の自衛隊員訓練支障を来たす、こういうことが考えられる欠落分の新しい武器等々の補充を考えて、今度のいわゆる四十七年度防衛予算なるものが査定されておるわけで、したがいまして、これがもし空白になるようなことになりますると、必ず目に見えて訓練上大きな支障を来たすことになる。したがいまして、およその見通しがつき、五カ年計画を立てる根拠というものが見当がついてくれば、これはやはりすみやかに策定をいたしまして、外務大臣大蔵大臣その他関係閣僚等の御協議のもとに、国防会議議題にしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  11. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、この四次防は夏ごろまでに、概算要求までに大体五年計画をつくる。そうしますと、いろいろ重装備とか新兵器はあまり使われない。あるいは先般の海上防衛との関係もいろいろ防衛庁長官から答弁で述べておりますが、そうしますと四次防予算というこの五カ年計画は、前の計画から相当落ち込んで、低い数字になってくるのではないか、三次防の延長の、欠落部分を補充する程度に終わると、こう四次防の考えを見ていってよろしいですか。
  12. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 欠落分を補充するというだけではなしに、現在の自衛隊装備というものは、まだ充実段階にあります。しかしこれは、よく衆議院予算委員会でも議論になりましたが、確かに極東の緊張緩和方向というものは出ております。しかし、ベトナム等でもああいう形に、またゆさぶり返しておるというような形で、必ずしも緊張というものが緩和した、平和という姿に定着するまでには、相当まだ時間がかかると思いますが、五カ年計画ということになれば、そういうものも勘案して策定をしてまいりたいと思っております。いま金額をどの程度どうなるのか、これはもうしばらく時間をおかしいただきたいと思うのです。防衛庁試案といいますか、という形で発表しましたものより大きくなるということは考えられません。
  13. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、五カ年の中にたとえば重装備計画がいろいろな点で含まれてくるとしますと、この問題を国防会議にかけるといういろいろ政府見解が述べられているそうですが、こういう点を考えますと、この四次防の原案の作成、それから国防会議と、こういう段階になってきますが、その見通しについて総理のほうから伺っておきたいと思うのですけれどもね。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この国会を通じまして、ずいぶん防衛計画についてもいろいろお尋ねがありました。私は、国民防衛計画自衛計画、そういうものによほど理解を持ってくれたと、かように思っております。このことはやはり基本的な問題ですから、一日もゆるがせにはできない。しかし他の面も内政上非常に大事なことでありますし、また、自衛力だけで平和が維持できるものでもありませんから、外交、内政、また自衛力の整備、これは三つ合わせて初めてわが国の安全が確保できると、かように思っております。  そういう意味から、ただいまの国防会議、これも随時必要の際に開きますけれども、ただいまやっておる段階は、幹事会程度でただいま検討しております。これをさらに国防会議を開いて、そうして最終決定をする、こういうことでありますが、ただいまの状況では、まず国防会議懇談会を持って、そうしていろいろ話し合ってみることのほうが適当ではないかなと、かようにも思ってもおります。いずれ、そういう点は十分審議を尽くして、大事な問題でございますから、取り組んでまいるつもりでございます。
  15. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう一つ総理に伺いますが、そうしますと、最終的にこの四次防計画総理の手で大体つくられる、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、やっぱり私が口をきかなければならないように思っております。これは総理国防会議議長でございますから、そういう立場の話をしておるのでございます。
  17. 三木忠雄

    三木忠雄君 四次防の装備の中に、AEWあるいはRF4E等の問題が、いろいろ四次防の開発の中に、あるいは兵器購入の中に入っておりますが、まず、このAEWについての開発計画、これを四次防の計画の中でどういうふうに進めていこうとされているのかどうか、この点について。
  18. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) AEWは、レーダーがキャッチし得ないような、レーダーサイトでキャッチできない低空を来る攻撃に対しまして、機器を、これは積み込む搭載機器ですね、これを開発していこうというわけでありまするが、四次防は、開発をすることが目的でありまして、これをすでに完成をして採用をする、こういうことにはなりません。開発は、本年度予算にも頭を出しておりまするが、今後とも進めてまいりたいと思っておりまするが、これが順調にいけば採用することになりましょうが、順調にいかなければ、やはり輸入にたよるというようなこともあり得る問題であると考えております。
  19. 三木忠雄

    三木忠雄君 このAEW購入計画は、昨年の三月二十日の防衛会議でいろいろAEW決定が行なわれた。輸入にするか、あるいは国産開発するか、この問題が非常に論議をされたそうでありますが、原則としていま国産でやるという方向に決まっている、こう私は受け取っているわけですが、輸入はもう考えない、こう受け取ってよろしいですか。
  20. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) もともと非常に精巧、高度なものでありまするので、こういうものが開発できることは、日本精密機器産業にも非常なプラスになるということで、国産開発技術開発ということがきめられたわけでありまするが、これはやはりもう少し時間をかけて開発計画というものを見守ってまいりたいと思います。うまくできないのに無理に国産をするなどということは、今日までといえどもないわけです。それじゃ開発の経費というものはむだ使いじゃないかということになりますが、これはできるだけ日本技術を伸ばしていく上に、こういったところに国が意を用いて開発計画を立てていくということは、やはり大事なことだというふうに考えております。いま御指摘のような点においては、未定部分が相当ございます。
  21. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、国内で開発するとすると、どういう方式を用いて——何か聞くところによると、フェイズド・アレー方式を用いる、こういう話を私たちは耳にしているわけでありますが、これを用いると、専門家から言わせると、失敗をする危険というものが非常に濃厚であると、こういう話を私たちも聞いているわけであります。十年先を見込んで、国産まで開発してAEWを用いる必要があるか、どうか。輸入すれば七十億ぐらいで済むものが、百二十億もかけて何機も開発しなければならないということは、ある意味ではむだではないか。それほど十年先にAEWが必要であるかどうかということも、これは論議をしなければならない私は問題ではないかと思うのであります。そういう点に関して、納得のできない問題点が何点かあると思うのです。この点についてお伺いしたいと思います。
  22. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘のお考え方も、やはり一つ考え方だろうと思います。しかし、国産技術というものを伸ばしていく、特に日本というものは、だんだん国際貿易において、高度な技術がもたらした製品、これが要請されてまいります。どうしても、簡単なものですというと、たとえば繊維の自主規制の問題ではありませんが、だんだん後進国に市場を取られていく。そうなりまするというと、やはり高度な技術を持つ産業というものが日本自体産業体質に要請されてくるわけでありまして、多少の金はかかっても、やはり国産技術開発という点は重要だと思います。しかしこれは予算査定のときに、大蔵大臣それから外務大臣等から、将来この問題については君、なかなか慎重に考慮しなければならんねといった注意を受けたことを、私いまあなたの御質問で、思い出したわけです。ですから政府側としても慎重に配慮いたしておりまするので、いましばらく、ひとつ事の推移を見守っていただきたいと思います。
  23. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題について具体的なこまかな問題は、予算分科会でいろいろ質問したいと思います。  それからRF4E、特に四次防の中で、この攻撃戦闘機攻撃的な性格を持って、専守防衛から自主防衛に変って、攻撃兵器として見られているところのこのRF4E購入計画については、具体的にもう煮詰まっているのかどうか。
  24. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) RF4Eは、これは偵察機でございます。リコネサンスですね。ですから、これは今度、御承知のとおり疑義を生じまして、政府と野党との間に見解の相違があって、御承知議長裁定による凍結の対象になっておるわけでありまして、従来は下話が進んでおったわけでありまするが、ここにきて一とんざを来たしておるというのが現状であります。
  25. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、このRF4Eは将来調達する計画はないと、こう考えてもよろしいですか。
  26. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 四次防が策定されますると、これを議長に提示し了承を得た上、四次防が発足をする。その時点では、この凍結されたものは解除される。解除され次第、交渉の軌道に乗せたいと考えております。
  27. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、このRF4E生産メーカーであるダグラス社は、この夏には生産を打ち切る、こういうふうな話が出ているわけです。これをいろいろ見込みますと、特に日本だけの発注——自由諸国はもう発注しない、そうしてこの夏にはダグラス社生産を打ち切る、こういう状態の中で日本だけ発注するとなりますと、ますます大幅な値上がりが予想されるのではないか、こう考えるわけです。いわんやこのRF4E専守防衛を離脱しているようなこういう偵察機を採用するのは、私は見合わせてはどうかと、こうも思うのですが、いかがでしょう。
  28. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 非常に詳しく御存じでありまするが、製作は四十八年の十二月に打ち切る、こういうわけです。ところが偵察機としては、これは私も専門家ではありませんが、技術的に見て、積み上げてまいりました係の説明によりまするというと、やはり世界最高偵察機である。したがってドイツも、生産中止がなされることを承知の上で、現在十七機でしたか、相当な機数を発注しておるわけであります。で、現在は、ドイツ発注分がずっと継続して生産ルートに乗っておるわけでありますね。そのあとに日本発注分を引き受けよう、こういうことになっておるわけでありまするから、まあ、ちょっとおくれることは非常に痛かったわけであります。これはまたコスト高を招きましょうし、いろいろ商談の上で問題は残ると思いますが、やはり世界の偵察機をあまねく検討いたしました結果、これが最高である。このことは、技術的にも日本と同じように相当レベルの高いドイツが、もう生産を打ち切るということを承知の上で長期計画で発注しておる、この事実に見ても妥当であろうというふうに私は理解をいたしておる次第でございます。
  29. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、採用機数が幾分減ってくるのじゃないかと思うんですね。こうなりますと、その補充のために国産をまた新たに開発するとか、いろんな機種がまたふえてくるのではないかという私は心配がある。こうなりますと、開発費であるとか、あるいはパイロットの訓練であるとか、こういう点においてますます防衛費むだ使いといいますか、この点が私は考えられると思うのです。この点についてはどうお考えになりますか。
  30. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 今年度の機数には変わりはありません、四次防ができれば。将来これをどうするかということについては、御指摘のように、検討の余地があると思います。訓練上の支障ということはない、この方針は貫いていきたいと思っておりまするので、訓練上どうこうという問題は起きない、こう確信いたしております。
  31. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、沖繩自衛隊の配備の問題についてお伺いします。本来ならば、本日沖繩の自衛隊配備計画国防会議がやられる予定だったそうであります。総理の何か強い意向で沖繩の配備計画国防会議をおくらされたと、こういう理由ですが、この点は、何か総理が特別な意図されているところがあるのか、あるいは将来相当削減をし、いわゆる久保・カーチス協定を改定するという考えのもとに総理の強い意向があるのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  32. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私からちょっと、先に申し上げたいと思います。  沖繩の配備計画は、これは防衛庁長官限りで、あと最高責任者である首相に御報告を申し上げて決定をする、こういう方針で前任者以来きておったわけでありまするが、沖繩の重要性、特殊性、こういったことを考慮されまして、佐藤首相がこの参議院の沖特委員会で、沖繩配備も重要事項として国防会議の議を経よう、こういう発言をされました。もちろん、国防会議議長である首相の御発言でありますから、われわれもこれに同調をいたしておるわけであります。  それが、御指摘のように、きょう今朝、実は委員会開会に先立って国防会議の議を経ようということで開催予定であったわけであります。しかし、昨日ちょうど委員会の昼の休みの時間に、幹事会、これは各省次官等をもって構成されておりまするが、参事官会議、次官会議と、こう段階を経まして、三千三百名を三千二百名に、そうして最終的に二千九百名にしていこうというこの人員の配備計画、それから、とりあえず五月十五日の時点で六百名を配備しようと言っておりましたが、これは五〇%ほど削りまして、米軍から返ってまいりまして自衛隊が使ういわゆる隊舎その他の設備等を管理するための要員を四百名というふうにいたしまして、国防会議原案なるものがずっと、それぞれの機関を通ってまいったわけであります。ところが、総理はやはり沖繩の県民感情、諸般の情勢を考慮して、特に、前段の管理要員と言われるこの四百名等においては、もう少し考慮の余地はないか、まだ時間のあることであるし、慎重の上にも慎重に検討することが必要であろう、これはやはり沖繩県民感情ということばかりでなしに、極東の一つ緊張緩和方向等といったものも配慮しながら、なおひとつしさいに検討しろ、こういうお話があったわけであります。  したがいまして、そのことは首相の指示として正しい指示だと思いましたので、もう一度ひとつしさいに検討しよう、久保・カーチス取りきめによりまするこの人員は、しばしばここで申し上げておりまするように、ある程度の何といいますか、動かすこと、これはもうアレンジメントでありまするから、できます、こういう見解に立っておりまするが、しかし、アメリカ側と、施政権が戻ってきたあとの日本の局地防衛ということについて、当然、主権の存するところ自衛隊が受け持たなければならぬということについて、国際的にやはり話合ったものでありまするから、これを根底からなしくずしてしまうというようなことは、これはちょっとできない。国際信義の上からもまずいことであるというふうに思っております。したがいまして、これなども、まあいままでにもよほど減員をしたり、また配置を再検討したりということて検討を加えてきたわけてありまするが、なおなおしかしそれについてもできるだけの配慮をしてみたいというふうに考えて、昨日から即刻、作業にかかっておるというのが実情であります。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官から詳しくお答えいたしました。そのとおり、ただいま直ちに国防会議を開く、こういう段取りではなくて、さらに精査する、こういうことでございます。
  34. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、いまの防衛庁長官答弁から判断しますと、この久保・カーチス協定を大幅に修正するというようなことは考えられないと。私たちは、これは政府間取りきめの一つの久保・カーチス協定ではないかと、こう見ているわけです。そうしますと、この総理の強い意向、あるいは国際の緊張緩和のこの配慮から考えて、この久保・カーチス協定の条項から幾ぶんなりとも修正を加えなければならない点が出てくる、こう解してよろしいですか。
  35. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、ただいま申し上げましたように取りきめでありまして、アレンジメントしたわけです。アグリメントというほど強固な約束でもないわけですが、そうかと言って久保・カーチス協定というものは、ただあとの局地防衛を日本の主権の存するところ引き受けますというわけで、腰だめで話し合いをしたというわけのものでもありません。したがいまして、これを動かすということにつきましては、すでに当初計画よりは、半年以内にはりつける人員というものを約四百名近く減員をしたわけですね。これを、なおまたどういうふうにするかということについては、これはしばらく検討の時間をおかし願いたい、こういうふうに考えるわけです。  しかし、さっきも申し上げましたように、とりあえず建物を引き継いでいく管理要員というものは一体四百名が適当であるかどうかと言われるならば、検討の余地ありと。それからまた久保・カーチス取りきめも、何も条約的なやかましいものではありません。何べんもいうように、その根底からこれを変えるというようなことのできる、また権威のないものでもありません。したがいまして、どの程度なおこの上縮小することができるか、また、はりつけの時期というものを、これは沖繩の県民感情等も配慮いたしまして、最終的にはこうであるということをきめましても、配備をする時点をどういうふうに持っていくかというあたりは、これは自衛隊の配備計画もさることながら、政治的配慮ということも非常に重要な点だと思います。おそらく首相も、その政治配慮を考えて私どもに指示があったものと、こう受け取っておるわけでありまして、この点は十分慎重に検討をいたしまして、沖繩県民の了解を得て、やはり堂々と自衛隊が配備につき、そうして、本来の任務はもとよりでありまするが、民生協力の面においてもやはり喜んで迎えられるというような形になることが望ましいと考えております。
  36. 三木忠雄

    三木忠雄君 あまり時間がありませんので、あと何点かだけお伺いしたいと思います。  もう一つ沖繩の自衛隊が将来にわたって、特に、新五カ年計画の中に、この沖繩の自衛隊の使用基地が相当拡大されるのではないかという、この懸念があるわけです。したがって、この四次防期間といいますか、あるいは五カ年計画の間に、沖繩の基地をどの程度自衛隊が使用するのか、このことは五カ年計画、四次防計画の中に含めるのかどうか、あるいはそのことが国防会議にはかられるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  37. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自衛隊の基地を拡張する計画は、現在のところ考えておりません。かねて私どもが御審議に供しました範囲内で十分間に合うものと考えておるわけであります。ただ、今後米軍が大量に撤退をしたという場合に、さてどうするかということは、これはよほど先の問題でありまして、四次防計画内に基地を大拡張しなければならぬというような必然性は、現在のところございません。
  38. 三木忠雄

    三木忠雄君 外務大臣に伺いますが、この沖繩の基地の縮小計画、あるいは返還協定に漏れた基地がだいぶあるわけです。十数個所あります。こういうものの取り扱い、あるいは将来にわたっての沖繩の基地の縮小計画についての日米合同委員会ですが、これはいつごろ持たれて、どういうふうな計画日本自身が持っておるか、この点についてお伺いしたい。
  39. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 米軍の基地につきましては、ABC表に全部網羅してあります。基地でないものもあるわけですから、これはABC表には入りません。たとえば水道でありますとか、そういうようなものにつきましては、これはABC表とは別の問題であります。  そこで、提供いたすことになりましたA表の問題でありますが、これが基地整理縮小の対象となります。これにつきましては、返還が実現した後におきまして、日米双方において協議して整理縮小の実をあげる、こういうことに両方合意をいたしておる、こういうような状況でございます。しかし返還後を待たず、今日でも内々の話はいたしておるというのが率直な実情でございます。
  40. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題、基地問題の協定漏れの基地についてのこまかなことはきょうやりませんけれども、実際に約十二カ所ばかりの返還協定から漏れた基地があるわけです、ABCに記載されない。これは防衛施設庁から私いただいた資料です。現実にこの沖繩の基地が、返還協定のABCの基地の中に記入をされていない基地がだいぶあるわけですね。この問題等はやはり沖繩県民が非常に不安になっておる。将来どういう方向になるのだろうという考え方を持っております。あるいは特に水道関係の問題が、民生の関係で非常に重大な問題があると思うのです。これはここでこまかくやる時間がありませんのでできませんけれども、これは外務省としてもっと真剣になって、この返還協定に漏れた基地があることを防衛庁とよく打ち合わせしていただいて、具体的な手を私は打っていただきたいと思うのです。この点は、基地漏れはない、返還協定漏れはないとおっしゃらないで、具体的に私は資料を持っております。この点をどうか検討していただいて、沖繩県民の基地に対する不安というものをやはり解消していただきたい、こう思うわけです。  この点について答弁をいただいて質問を終わります。
  41. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 正確に基地というものですね、そういうものにつきましては、これはABC表に網羅されておるのです。しかし、基地じゃないけれども米軍が使用しておった施設というものがある、これをどうするか、そのことのお話だと思いますが、それは、水道など大かたのことがきまっておるわけですが、なお整理未済のものがある、こういうようなことであれば、十分検討いたしまして善処いたします。
  42. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で三木君の質疑ば終了いたしました。(拍手)     —————————————
  43. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、田渕哲也君の質疑を行ないます。田渕君。
  44. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は本論に入る前に、まず冒頭に、現在大きな問題となっております国家機密の漏洩と報道の自由の問題に関しまして、総理の所信をお伺いしたいと思います。  この問題はすでにいろいろ論議され、総理からの見解も伺っておりますけれども、かなり問題が錯綜し、混同されておるきらいがある。また、本質をすりかえられて論議しておるきらいもあると思います。  私はまず第一に、この問題が起こりました基本的な問題としましては、政府の姿勢の問題があると思います。国会での政府答弁を聞いておりましても、どうもなかなか核心に触れた明確な答弁が少ないように思います。これは政府が国会に対して——国会に対してということはすなわち国民に対してということでございますけれども、知らしめず、よらしむべし、こういう基本的な姿勢があるようにうかがえるわけです。たとえば沖繩基地の復元補償費の問題にしましても、この問題は、たまたまこういう事実があらわれたからわれわれに問題の真相がわかったわけでありますけれども、ほかにもこういう問題がたくさんあるのではないか、こういう疑惑を禁じ得ないのであります。私は、こういうところに現在の国民の政治に対する不信感というものが生まれてくる、また、国会の論議というものが非常に空虚である、国会というものが形骸化しておる、議会政治に対する不信感も生まれてきておる。ここに私は一番基本的な問題があると思うのでありますけれども、この点についての総理見解をお伺いしたいと思います。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国会論議が空疎だとは思いませんし、また、皆さんと政府との間の質疑応答が、これが形骸化しておるとも思いません。問題は、これは何と申しましても基本的には、言論は自由であり、またその表現も自由だ、そういうようなものは尊重されなければならない、そういう原則がちゃんと立っておるし、また国権の最高機関である国会、また行政の長である政府、そういうものもはっきりしておるという三権分立の形において、ただいまのような問題が審議されておる。したがって私は、現状において十分その目的は達しつつあると、かように思いますが、ただいまのような、形骸化だとかあるいは空疎だとか、こういう御批判はたいへん私は残念に思います。ただ問題は、事柄によりまして、政府は国益上これは秘密を守る、こういうものがございます。ことに外交の場合だと、どうも基本的な原則、これはもう明らかにする、しかし中間的な取り引きの問題あるいは交渉の過程、そういうものは、どうも明確にすると、相手方もあることだからこれはしない。できるだけそういうものは抜きにして、結論はしかしこれは公表していく。だから、最初の原則並びにあとの結論、そういうものは公表していく、こういうことで私は十分ではないだろうか。そして、ただいま申しますように相手方のあることですから、そういう事柄は国益に照らし、また同時に国家機密、こういうような観点でこれが公表されない、これはやむを得ないのじゃないだろうか、かように私は思います。ただしかし、もちろんさように申したからといって、行き過ぎがあると、これは批判の対象になる。また、政府は姿勢を正さなければならぬ、かように私は思います。
  46. 向井長年

    ○向井長年君 関連。  ただいま総理から、その問題につきまして政府のとっておる態度が正しいのだと言わんばかりの答弁がございましたが、私たちはこれは理解できません。なぜならば、佐藤内閣の、言うならば秘密外交という問題が、連日御承知のごとく新聞報道されております。しかしながら、これに対して国民は非常に疑惑を持っております。政府の言っておることが正しいのか、一般世論的に新聞が報道しておることが正しいのか、この点について非常に疑惑を持っておる。もとをただせば、これは何ですか、政府が今日までとってきた問題に対してかかる問題が惹起した。言うならば、外交には秘密があることもわかります、しかしながら国民の税金が、直接これが外国に払われるということになりますならば、これは秘密があってはならないのであります。そういう立場から考えますと、今回のこの秘密文書と申しますか、密約と申しますか、この内容を見ましても、明確に言っておるじゃありませんか。少なくともこれに対する財源まで心配してもらったことに対して、非常にアメリカは敬意を表するという形を出しておるでしょう。少なくとも、本来この三億二千万ドルという問題が、ほんとうに評価がそういう形になっておるのか、三億一千六百万ドルというものがこれがほんとうの評価であるのか、この問題について非常に疑問を持つ。こういう点から、佐藤内閣のいわゆる外交というものが、秘密外交だと言わざるを得ないと思います。  私は、そういう点から考えまして、たとえば、この問題が衆議院で問題になって、ただいま参議院でもこの論議を行なっておりますけれども、もしこれが問題にならない、また国会で十分取り上げられなかった場合に、少なくともこの蓮見事務官の行動については、私の想像でございますけれども、内々でおさめるか、あるいは行政処分程度で終わると思います。刑事問題までおそらく発展してないと思う。しかし、これが世論化したために、政府はこの問題を大きく取り上げて、しかも刑事問題、あるいは西山記者に対する逮捕、ここまで発展したことは、これは当然やはり私は政府の、今日までのこういうことを国民に知らしめなかったということに原因があると思うのです。それを私は指摘して、まず秘密外交という問題については、大きな責任を政府は持たなければならぬ。それを完全に刑事問題化して、これをすりかえようとしているところを、私たちは問題にしておるわけであります。連日この問題を提起され質問されても、同じことを総理なり外務大臣は繰り返しておる。国民は疑念で疑念で、この問題についてどうであるのか、明確に私は判断できないと思います。そういう意味におきまして、まず私は秘密外交に対する責任を追及したいと思います。その点について総理なり外務大臣答弁を願いたい。  続いて、関連でございますから申し上げますけれども、あわせて、やはり佐藤内閣の綱紀の弛緩という問題がここに私はあると思うのです。こういう問題を惹起した中においては、日常の綱紀の弛緩、乱れ、こういう問題を一つの問題として私は提起せざるを得ないと思います。この点についてどう責任を感じておるか。  第三番目の問題は、いわゆる新聞記者の取材の自由と報道の自由であります。少なくとも、西山記者が取材することは当然のことであります。やり方においていろいろの問題点はあるにいたしましても、取材というものは自由でなければならぬ。また、この取材が、どういう形でこれが報道されるかの問題は、これは記者のモラルの問題であって、したがってそういう問題に対して、今日、蓮見事務官とあわせて逮捕をしておるということについては、私は大きな行き過ぎてあり、不当だと言わなければならぬと思います。もしそれが経路を知るために……。
  47. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  48. 向井長年

    ○向井長年君 司直の手をわずらわしておるとするならば、これは任意出頭でいいのではないか、こういう感じを私はいたします。したがって、そういう意味におきまして、私はやはり総理なりあるいは外務大臣がみずから秘密外交に起因を発した問題であり、いまこれだけ世間を騒がせておるという問題につきましても大きな責任を痛感すべきだと思います。その点について、まず総理なり外務大臣答弁を聞きたいと思います。
  49. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 向井さんのいまお話を聞いておりますと、何か秘密外交がある、こういうようなお話でございますが、これは秘密外交ということは絶対にありませんです。つまり私どもは、国民説明をしておるその裏に、何か裏の約束をほかの国としておる、こういうようなことは絶対にありませんから、その辺は、ひとつ誤解ないように願いたいのであります。  それから、いわゆる秘密外交と外交の機密とは、これは区別して考えなければならぬ。いま問題になっておりますのは、外交交渉の経過の問題でありますが、経過を一々これを公表しておる、そういうようなことになりますと、外交自体ができないのです、これは。まあ、相手のあることである。日本の方と話をすると、それが一々漏れて発表される、そういうようなことになったら、どうして外交ができましょうか。私は、これはもう非常に大きな問題の存するところじゃあるまいか、そういうふうに考えておる次第なんです。秘密外交と外交の機密とは、これは区別して論じていただきたい、かようなことをお願い申し上げます。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまやっていることを秘密外交と、こう言ってきめつけられました。しかし私は秘密外交ではないと、ただいま外務大臣が答えたとおりであります。また向井君御自身も、外交に機密のつくことはこれはもう承知していると、かように言われております。だからそのことは、やっぱり政府説明していることと同じでございます。いわゆる秘密外交とは一体何なのか。国民には全然知らさないで独断でそれをやっている、こういうもの、これがいわゆる、ことばとしての秘密外交だと思っております。いまやっていることは秘密外交ではない、これは経過の問題だ、そういうものを一々発表すると、これは困るのだ、それはなかなかできないのだと、こういうことであります。その程度は向井君もちゃんと御了承でございますから、多くを申し上げる必要はないように思います。  その次に、いろいろお話がございましたが、私はどうも今回の問題につきまして、ただいま捜査の段階にあるものをこの際に説明しろと、かようにおっしゃっても、これは私はできないことだ。これはしばらく捜査当局にまかしておく。これはもう、私自身の関与することでもございません。だから、これはそれなりに捜査当局にひとつまかして、そしてこれがいずれ法廷で争われる、こういうような場合もあるでしょうし、そういうことで明らかになるだろうと思いますから、これはもう捜査当局にまかしておこうじゃありませんか。これが一つ。それが法治国家としても当然のことだろうと私は思います。ただいまのやり方が行き過ぎだとか、行き過ぎでないとか、そういう議論をする必要はないように私は思っております。  なお、この問題についてさらにお話があったと思いますが、どうも蓮見事務官の問題、さらに西山君の問題、これはただいま申し上げますように、捜査の段階だということで御了承をいただきたいと思います。  ただ、ここで私が申し上げたいのは、いままでもたびたび申したのですが、いま政府がやっていることは、問題をすりかえたと、こういうような御批判がありますけれども、それだけはないのですから。どこまでも言論の自由、表現の自由、取材の自由、それはもうそのとおりであります、しかし、その取材の自由にしても表現の自由にいたしましても、おのずから法治国家としては一つの限度があるという、このことを繰り返して申し上げておりますから、これは誤解のないようにお願いしておきます。  それから最後の綱紀の問題につきまして、私もこれはたいへんゆゆしい問題だと、かように思っております。しかし綱紀を非常にやかましく言うために、今度は取材を妨害する、こういうような問題に関連、発展しやすい議論でありますから、こういうことは、政府部内の問題と、取材の自由と、やっぱりこういうふうに分けて御理解をいただきたいと思います。
  51. 向井長年

    ○向井長年君 関連。
  52. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 向井君、簡単に願います。
  53. 向井長年

    ○向井長年君 いま秘密外交の問題について、外交にも防衛にも機密がある、こういうことは私は認めておるわけです。しかし、事国民の税金を使う、いわゆる金を海外に出す、こういう問題については、秘密があってはならないということを言っておるのです。いま現に、今日のこの問題については、非常に四百万ドルというのは疑惑を抱いております。私が新聞を通じて外務省の極秘文書の公文を見たときに、だれが読んでもこれはそういう形にとれるのです。読んでみましょうか。わかってないでしょう。この中で、「本大臣より日本案を受諾されたしと述べたところ、大使より米側としては日本側の立場は良く分り、かつ、財源の心配までしてもらったことは多としているが、議会に対し「見舞金」については予算要求をしないとの言質をとられているので非常な困難に直面している」と述べております。あわせて最後のところで、「本大臣より重ねて何とか政治的に解決する方法を探求されたく、なお、せっかくの三億二千万ドルがうまくいかず、三億一千六百万ドルという端数となっては対外説明が難しくなる旨言いおいた。」、こういうことを言われておるんですよ。そうであるならば、私は明確に、この金の問題がここに明確にあらわれてきておるわけです。この文章を見たときには、だれが見てもこれは日本が肩がわりして請求権問題を解決するというように解釈せざるを得ない。ここに私は機密外交の、しかも財源が伴う問題については国民に知らせなけりゃならぬということですよ。そういう点を、やはり機密には限度がある、しかしながら、国民の金を使う場合においては、これは明確にしなけりゃならぬ。これは幾ら外務大臣が、三億二千万ドルだ、請求権問題はこれは別です、入ってませんと、こう言われても、この内容の文章を見たときに、どうですか。これは常識ある人が、だれが見たかって国民はそう感じますよ。この点をあなたたちは言おうとせずして、そうではないんだ、そうではないんだと、こう言っているんじゃないですか。この問題を取材し、国民に知らすというのは、当然の私は義務だと思います。
  54. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 向井君、簡単に願います。
  55. 向井長年

    ○向井長年君 これに対して、私は政府がすりかえておるということを言わざるを得ない。どうなんですか。
  56. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) しばしば申し上げておるんですが、この交渉の経過におきまして、三億二千万ドルというものがまずきまったんです。それと並行いたしまして復元補償交渉というものが行なわれておった。そこで、わが国といたしましては、三億二千万ドル、これはきまったものであるけれども、復元補償費なんというものをそこへ含めておるという意思は一切持っておりません。それに対しましてアメリカ側のほうでは、三億二千万ドルいただくのはありがたい、ありがたいが、しかし、日本側から言われるところの復元補償、これにつきましてはアメリカの国会で非常な抵抗がある、そこで、何らか日本側から書簡でも発出いたしまして特に頼むと、こういうような意思表示がほしいんだということを中心といたしまして、いろんな論議が行なわれた、その経過がその電報にあらわれておるんです。そういうようなことを御理解願って、その電報をごらんになりますると、非常にはっきりしてくるんじゃあるまいか、そういうように考えておる次第でございます。  先般も申し上げましたが、この三億二千万ドルがきまるにあたりましては——私は大蔵大臣です、当時は。しかし、私はなるべく支払う金が少ないほうがいい。そこでずいぶん渋いことを言っておったんです。そこで、私はわざわざ総理のところへ呼び出しを受けまして、そして愛知外務大臣の前で、福田君、この三億二千万ドルを了承せよ、こういうことだったんです。そのことはアメリカといたしましても非常に多としておる、そのことがその電報ににじみ出ておると、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  57. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 向井君、関連ですから簡単に願います。
  58. 向井長年

    ○向井長年君 私はそれは了解できないんですが、それは経過はいろいろあると思います。経過はあるにいたしましても、これはアメリカからとるならば、やはり日本でその四百万ドルの財源はつくってくれた、こういう形の解釈ですよね。そうでしょう。そうすると日本は、いやそんなものはやっていないんだと言いながら、実際はこういう形で積み重ねたという——三億一千六百万ドルの評価のやつをそれだけ積み重ねたと、こういう懐疑を私たちは持たざるを得ない。また政府も心の中ではそれを思っておると思うんですよ。特にこれ、民間であってみなさい、必ずそういうことがある。いろんな商業上の取引の中で、金は一緒ですから、どういう名目を使おうとこれはかまわないと、こちらはそう信じている、そちらはそう信じなさい、これと同じことじゃありませんか。私は、政府はそうあってはいけないと思う。そういう点からこの問題を私は指摘している。幾ら言いわけをしようと、国民はそう解釈しませんよ。これだけはっきり申し上げておきます。
  59. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  60. 向井長年

    ○向井長年君 それからもう一点は、取材の問題についてでございますが、先ほども私が質問いたしましたように、これが国会で問題になり、あるいはまた世論を大きな問題として惹起しておる。したがって刑事事件になったんでしょう。もしこれがならないで、外務省当局で蓮見事務官が何らか漏洩したということになれば行政処分で済んでおるかもしれぬ、あるいは訓戒で済んでおるかもしれぬ。しかしこれがここまで発展したということば、少なくともこの問題が明確になって、国会で、しかも世論化した、そこで刑事事件に発展せざるを得なかったという、これが私はすりかえだと言うんです。外務大臣、どうですか。少なくとも蓮見事務官なり彼の漏洩問題については、もしこれが問題にならなかった場合においては刑事事件まで発展しますか、おそらくしないと私は思う。おそらく行政処分か何かの中でおさめられる問題だと思う。この点どうです。
  61. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 外務省の電報がそのまま外部に漏れたと、こういうことは、これは重大なる問題であります。こういうことが反復しますと外交はもうできません。外国からはわが国を信頼すると、そういう信頼感は全部失われてしまいます。これは非常な問題です。私は国家公安委員長じゃありませんから私の常識の考え方を申し上げますが、これは非常にそれだけの重大な問題、これは外務省の内部規律だけの問題じゃない。私どもが黙っていても、あるいは国会でこれが論議されないでも、国家公安委員会はこれは発動する、こういうような性質のものであると、こういうふうに理解しております。
  62. 田渕哲也

    田渕哲也君 国会の審議のあり方について見解を述べたいと思いますけれども、憲法六十二条には御承知のように国政調査権というものがあるわけです。この国会の国政調査権と、もちろん政府には行政の機密というものがあるのは当然だと思います。これとのかね合いをどうするかというのが非常に重大な問題だろうと思います。何でもかんでも行政の機密ということで国会の答弁が核心に触れないということならば、国会の審議というものは非常に上っつらなものになってしまう。この点について私は先ほど申し上げましたように、ややもすれば国会の論議が空疎だというのは、政府がほんとうに言うべきことをあまりにも言わない、隠し過ぎるからではないか、こう考えるわけですけれども、この国政調査権と行政機密のかね合いをどうするが、この点について総理見解を伺いたいと思います。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も皆さんと同じように国会議員でございます。したがって国政の調査権、これは私もよく知っております。また私は内閣総理大臣でもありますが、行政の長でもございます。ただいま日本が採用しているものは三権分立、かように言われております。お互いにそれぞれ守る守備範囲はあると、お互いに侵さないと、こういうことはあります。しかしお互いが自由かってにやるわけのものではないと思います。幾ら行政だと申しましても、行政だけが独立して、そうしてかってなことをやっていいわけのものではないと思います。また国政の調査権と申しましても、事柄によりましてはやはり公開でやる場合と秘密でやる場合と、いろいろの方法があるようでございます。だからそれぞれがそれぞれの分野を守り、お互いに乱さないようにして初めて三権分立も守られるんじやないか、かように私は思っております。
  64. 田渕哲也

    田渕哲也君 証言法というのがあるわけです。議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、これの第五条には、公務員が証人の場合には、当然行政の機密ということを聞かれる場合がある。その場合には監督官庁の長の許可が要る。長が許可しない場合は、さらに議院がその証言を求めた場合には、内閣が声明を出さなければならない、拒否する場合ですね。内閣が、これは国の利益に重大な影響があるから国会で答弁できないという声明を出さなければならないということになっております。もちろんこの証人の立場と政府委員の立場と同一ではないと思いますけれども、しかし、私は行政の機密というものはあくまでもそれを公表することが国の利益に重大な影響がある場合に限られるべきだと思う。しかし、私はいままでの国会の論議を見ておりますと、必ずしもそうではない。むしろ、内閣にとって都合の悪いこと、野党に知らしたら都合の悪いこと、つつかれたら都合の悪いことは全部隠してしまう。私はこの内閣にとって都合の悪いことと国の利益に重大な影響があることとは全然別だと思うのですが、この点いかがですか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのような観念的な問題として区別なさること、これは観念的に私もわからないではございません。しかし、問題は、どういう事柄が国家の機密あるいは国益であるかどうかという問題、それにつながることじゃないだろうか、かように思います。各人がそれぞれの立場で、いやこれは国益、これは国益と、こう言って国益論争やっておりましても、それはなかなか最終的にはきまらない。こういうものが一体だれによってきめられるかと、こういう問題に落ちつくのじゃないかと、かように思っております。これはまあ昨日も、そういう観点に立って、私は一応私なりの御説明をしたはずでございます。これらの点は、もう一度速記も御検討願いたいと思います。
  66. 田渕哲也

    田渕哲也君 今回、新聞記者の取材の内容が国会において露呈したわけです。これは取材源が漏れたということで、非常に遺憾であると思います。また、その取り扱いについても、必ずしも適切でなかった面もあろうかと思います。しかし、どうしてこういう問題が起きたかというと、国会で幾ら聞いても具体的な証拠を突きつけなければなかなかどろを吐かないというのがいままでの現状であります。去年の沖繩国会での横路議員の質問に対しましても、具体的なものが突きつけられてないから政府はうそを言って逃げておるのであります。吉野局長答弁、明らかにうそである。これは、この証言法からいうても、虚偽の証言をすれば、これは刑罰に相当するわけですね。私は、こういうような姿勢が、新聞記者の取材したものがこういう場で暴露するのは不適当だと言われますけれども、こうしなければ国会でほんとうのことが言われないのなら、こうせざるを得ないんじゃないですか。この点どうでしょうか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 外交の交渉の経過はなかなかこれを申し上げにくいんだということは、先ほど申し上げたとおりなんです。その申し上げにくい問題につきまして、まあ電報をちらつかせながら、個々具体的な問題についてお尋ねがあった。お尋ねがありましても、これは申し上げることができないんです。できないんでありまするからできないと、こういうふうにはっきり言ったほうがよかったと思う。それを、そういう事実はありませんでしたと、そういうことはありませんというような答弁をしたことは、私はいささか表現において妥当を欠いたと、こういうふうに存じまして、先般も遺憾の意を表明いたしておる、こういうことなんでございますが、とにかく、問題の性質は、これはもうお答えすることができない、どういう表現を使おうがお答えすることができないという性格のものであった。それをまあ、そういう意味合いにおきまして、そういう事実はないんだというようなお答えをした。そのしかたにつきまして私は妥当を欠くものがあると、こういうふうに考えてはおるんのでありますが、自今そういう問題につきましては十分気をつけてまいりたいと、かように存じます。
  68. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が申しておるのは、この問題は一つの例てあって、この問題に限りません。すべてのことがそういうふうにやらなければ、政府はなかなかほんとうのことをしゃべらない。毒ガスの問題にしてもそうです。核基地の問題にしてもそうです。常に野党が具体的な証拠をさがし回って突きつけなければほんとうのことを言わない、知らぬ存ぜぬで全部過ごすと、こういう姿勢を改めてもらわなければ、私は国会の論議がやっぱりねたをつかんできては政府のあげ足をとるというふうにならざるを得ないと思うのですね。これではほんとうの意味の政策論議はなかなかできないのじゃないかと思うのです。したがいまして、この証言法でもきめられたこの精神は、政府答弁できないものは最小限、国の利益、国の機密ということに限定されるべきであって、もっと私は国会には率直な答弁というものをやるようにしていただきたい。この点総理見解をお伺いしたいと思います。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 田渕君のただいまの御意見は、ごもっともだと思います。政府関係するものにいたしましても、ある程度どうしても秘密を要するものがございますから、一々申し上げかねる、こういうものはございます。けど、それについては、あるいは秘密会議を開くとか、あるいは特別な方法で、書類は配付はしないけれども、あるいは秘密理事会を開くとか、いろいろ聞き出す方法もあるようでございます。また、そういう事柄でやはり国会の運営もされるように、それぞれの理事諸公がいらっしゃるんですから、そこらで十分ひざを突き合わせて相談願えれば、政府自身もいままでのような態度ではいかぬ、そのおしかりはごもっともだと、やっぱり将来の問題としてくふうさるべきものだと、かように思います。
  70. 田渕哲也

    田渕哲也君 この問題を契機にして、一部には、もっと機密の保持を厳正にやるべきだということから、機密保護法というものを制定すべきだという意見も出ておるかに聞いております。しかし、私はこれは日本の平和国家、民主国家としての性格からするならば逆行であると思いますけれども、この点どうお考えになっておりますか。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの機密保護法をつくれということと、ただいま問題になっておる事柄と、これは関係を結びつけて考えるとずいぶんむずかしいことになるだろうと思います。私は、しかし、国家の機密、さようなものはございますから、やはり機密保護法はどうしても必要だろうと思います。これはしかし、今回で特にそういうことを申し上げるのではございません。これはかねての私の持論でございますから、さように御了承願います。
  72. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、機密保護法制定については考えられておるということですか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 具体的にはただいまはございません。
  74. 向井長年

    ○向井長年君 関連ですから簡単に申し上げますが、佐藤総理、きのうのほかの議員の質問に対して、総理は、この問題を契機とし、あるいはこの問題も含めてであろうと思いますけれども衆議院において、内閣として責任をとりたい、そのとる時期はしばらく時間をかしてほしい、こういうことを言われておるわけですね。これは、責任をとるということは、やはり少なくとも、今日までのあなたがなさってこられた沖繩問題をめぐって、自分たち国民に対して相済まぬことをしている、こういうことの裏書きになると思うのです。したがって、私はそういう問題はやはり明確にしなければならぬということと、責任をとるという責任のとり方についてどう総理は考えておられるのか。たとえば、この国会の終末に総理みずからが引退すると、こういうことを表明されるものであるのか、それとも他の責任の方法があるのか、これ、ひとつ明確にしていただきたいと思う。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が衆議院段階政府の所信表明をいたしました。私はもうそれだけで、また各党もそれより以上に聞かないと、こういうことでありますから、ただいまのように進退の時期を聞いても、それはたぶん佐藤は答えぬだろうから、さようなものは聞かないと、こういうことでございまして、私はそれが当然のことではないかと思います。ただいま参議院でそういうような話が出ましたけれども、その時期は私が申し上げるべき筋のものではないと、かように思っております。私が総理である限りにおいて、総理である限りにおいて、その時期においては最善を尽くすと、かように御理解をいただきます。
  76. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、ここで佐藤内閣の政治責任の問題を少しただしたいと思います。今日外交問題、国際外交の面でもまた国内経済内政の面でも非常に大きな転換期を迎えております。かつてなかったような大きな転換期だと思います。ところが残念ながら、国会の審議を通じましても、あるいは総理大臣が発表されるいろいろの問題を見ましても、私はこの大きな転換に対処する姿勢というものが欠けておると思います。したがいまして私は佐藤内閣が一日も早く退陣されるのが国益に沿った道ではないか、このように考えておるものでありますけれども、まあ総理もその辺につきましては決意を固められておるのではないかと推測いたします。しかしこの残された期間、どれぐらいの期間になるか、そう長くはないと思いますけれども、この期間に佐藤内閣がこれだけはやらなければならないと考えておられるものは何であるか。その決意をお聞きしたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、佐藤内閣の使命、これは大きくしてはわが国運、これを進展さすことだし、国民の福祉を充実さすことです。これが政治全般の大目的、それにつながっておると、かように御理解をいただきたいし、またそれに向かって各省とも全力を注いでおるのが現状でございます。こまかな問題点で、あるいはただいまの物価問題あるいは公害問題等々あると思いますが、そういうことよりもやはりわれわれがこの際に明らかにできることは、政治の目標、それを明らかにすることだ、かように思っております。
  78. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はここで佐藤内閣にやっていただきたいこと、国民としてやっていただきたいことは何であるかと言いますと、昭和三十九年よりすでに七年間余り非常に長期の政権を担当してこられました。その間に成果があったことも私は否定はいたしません。しかし、いろいろ欠陥、問題点があったことも事実であります。私はそれをやはり明らかにして次期政権に対する一つの指針としていただくことが必要ではないか、このように考えるわけであります。その中で私は、数々の問題がありますけれども、まず一番大きな点は、過去七年間の間担当されてきました佐藤内閣の一番大きな欠点は国家目標あるいは国民目標の欠如にあったと思います。最近の連合赤軍の問題にしましても、若者の心の荒廃を見ましても、私は国の理想、国民の目標というものが明らかでない、こういうところからさまざまな乱れを生じておるのではないかと思います。この点についてはどう考えられますか。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私の表現したこととあるいは田渕君の表現されることと違っているかもわかりませんが、私もそういうような点を考えるべきだと、かように思っております。したがって別にただいまの御意見は私自身謙虚に聞き、同時にたいへん政府としては鞭撻を受けておると、かように思っております。ありがとうございました。
  80. 田渕哲也

    田渕哲也君 総理としては日本の国家目標をどういうものに置くべきだとお考えですか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いつも口を突いて申しますように、日本は自由を守り、平和に徹すると、このことばに尽きるように思います。
  82. 田渕哲也

    田渕哲也君 私もそれには同感であります。やはり日本のこれからの進むべき道は、世界平和のために貢献する、それから世界人類の福祉のために貢献する、言うならば日本経済発展をあくまで世界に脅威を与えない、世界のためにプラスになるために使うということではないかと思います。それから福祉、これも単に日本国民の福祉を考えるという狭い立場だけではなくて、もっとグローバルな福祉の実現、こういうものに日本人の力を使うべきではないか。やはりそういう大きな目標を掲げてそれに結びついた政策を具体的に出していただく必要がある。このための政策としましては、これは私見でありますけれども、まず第一点としましては平和外交、第二点としてはやはりバランスのとれた経済発展、第三点としては福祉社会の建設、世界の福祉を考える前に日本自体やはり福祉社会というものを建設する必要がある。さらには世界の福祉のための経済援助、こういうことを柱にすべきだと思うわけでありますけれども、この点について総理はどうお考えですか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も異論ございません。そのとおりでございます。
  84. 田渕哲也

    田渕哲也君 それではその中の、まず平和外交について二、三お伺いをしたいと思いますけれども、平和外交のポイントはどこに置くべきだと思われますか。
  85. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どこの国とも仲よくすることであります。(笑声)
  86. 田渕哲也

    田渕哲也君 私も同感であります。(笑声)ただ、もう一つ加えるならば、世界の平和を守るためにはやはり国連機構の充実ということに日本が力をかすべきではないかと思います。この点いかがですか。
  87. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私もそのとおりに考えまして、国連は非常に大事な機構である、これがますます拡大する、そうして最終的にはもう世界じゅうで軍備がないというところまで行くような機構になってもらいたいと、こういうふうに念願をいたしております。特にそういう間におきましてわが国は特異な立場にある。つまり経済的には非常に大きい。しかし軍備を持つと言うに足る軍備を持っておらない。持たんとすれば強大なる軍備を持てる、核兵器まで私は持てると思うのです。しかし、持たんとすれば持ち得るそういう立場にあるわが日本が、軍備も持たない、平和的に世界じゅうと仲よくするという姿勢で臨む、これは国連社会において非常に私は貴重な存在である、こういうふうに考えております。その貴重な立場に立ちまして国連中心外交を大いに展開したいと、かように考えております。
  88. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、これは念願だけではだめなので、実績でやはり示してもらいたい。たとえば国連に対する分担金を見ましても、一番最近のもので、日本は全体の五・四%の負担であります。これは日本経済力から言うならば、他国に比較すれば少ない金額である。たとえば日本のGNP対比で見ますと、アメリカは日本の約五倍のGNPを持っておるけれども、国連の分担金は約六倍である。フランスは日本の七割五分しかGNPはないけれども日本より一割たくさんの国連の費用を負担しておる。イギリスは日本の六割であるけれども、GNPが六割であるけれども、国連分担金は日本より多い。こういう姿勢では国連中心の平和外交を進めるといっても、口先だけで実体は伴っていないと思います。この点分担金をもっとふやすべきだと思いますけれども、いかがですか。
  89. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は国連に対しまして拠出金、分担金、さようなものをかなり払っておるのです。そのことは国連においても高く評価されております。しかしわが国の経済力がここまで来たということになりますると、もっとふやしていいと思います。また、ふやすべきである。しかし急にというわけにも財政上まいりませんから、これは逐次そういう方向でふやしていく、これはそのとおり考えております。
  90. 田渕哲也

    田渕哲也君 日本の防衛力は、当然のことながら、GNPに比べた比率では各国に対して小さいわけです。私はこれは平和憲法のたてまえから当然だと思いますし、またできる限り小さくすべきだと思いますけれども、私はその分を、外国に比べて負担が少ないわけですから、私はその分は外国よりたくさんの分担金を負担する、また経済援助についてもふやしていく。世界の目標は、平均がこれだからこれまでふやせばいいという考え方だけではなくて、もう一歩進めて、軍備に対する負担のかわりに国連の充実とか、経済援助の充実をはかる、そういう面でもっと積極的になるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 田渕さんのお話を承っておりますと、まさに私が考えているとおりのことをおっしゃっておられる。国会議員が全部そういう御理解をいただきますと、私はたいへん日本の世界における立場、こういうものが進んでくると思います。つまり、わが国はこれだけの経済力を持っておる。持っておるけれども、外国は国民生産に比べましてまあ二%、三%、少ないところでもそのくらい軍備に使っておる。あるいは、大きいところになりますと六%も使っておる、こういうことです。わが国はわずかに〇・九%の自衛隊しか持っておらぬと、こういうような状態です。ですから、そこに余りが生ずる。その余りを一体どういうふうに使っていくのかということが私は日本国が当面する大きな選択だろうと、そういうふうに思うんであります。私はその選択の前に立ちまして、これはもう自衛力を増強する、強大な軍備を持つ、こういう方向にあってはならない。日本は、歴史がたどったように、経済大国が軍事大国に相なっちゃ相ならぬ。そのかわりに世界に誇るべき福祉日本をつくる。同時に、余力をもちまして世界のおくれた国々に貢献をする。そこにこそ私は日本国の、また日本国民の、日本民族のとうとい世界的使命というものがあるんじゃないかと、こういうふうに考えておるわけであります。全く同感であります。深く敬意を表します。
  92. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務大臣と私と考え方が同じというのはけっこうだと思いますけれども、私はそれだけでは困ると思うんですね。なぜならば、外務大臣というのは国の外交政策を実行する権限と義務を持っておられるわけです。考え方が同感だからということで済ませられては困ると思うんです。具体的に実行してもらわなければ困るわけですね。その辺どうですか。はっきりここで約束してもらいたいと思うんです。
  93. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 考えているばかりじゃないんです。そういうふうな方向を実践をいたしておる。つまり、持たんとすれば持ち得るところの強大な軍備を持つというような考え方は持っておらぬじゃありませんか。それから、そのよって生ずるところの余力、これはいま国内のわれわれの生活環境を大いに改善しようという努力をしている。これはいま世界一の規模でわが国の国内建設というものは進んでおるわけなんです。これは、つまり福祉社会の基盤となる生活環境を整えるという問題です。それからもう一つはどうだと、こう言いますると、海外経済協力、これは強大なあのアメリカ——アメリカはその強大な経済力に比べますると非常に貧弱な援助しかしておりません。わが国はどうかというと、国際社会が待望しておるところの一九七五年までにはGNPの一%というのを、すでにもう〇・九%まで実行しておる、こういうような状態です。まさに着々と田渕構想が進んでおる、こういうふうに御理解願います。
  94. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はどうもそうは思えないんですね。日本がいままでやってきた政策というのは、やっぱり日米安保体制の中で、アメリカのかさの下で、軍備に対する負担を少なくしてぬくぬくと育ってきた。そして、その経済的な余力を自分の国の経済発展にがむしゃらに突っ込んできたのが事実ではないか。私は、平和外交というのはそういう消極的なものじゃないと思うんですよ。世界平和のために、あるいは世界の人類の福祉のために、もっと積極的に前向きの姿勢を出すことじゃないかと思うんです。国連の分担金だけではなくて、経済援助にしてもやっと世界の、いまのところ政府援助は世界の平均までいっておりません。何とかもうしばらくしたら世界の平均まで達しようかという、非常に人のあとからついているようなことで、これは平和外交とは言えないと思うんですね。ただ単にアメリカとの安保体制の中でじっとしてきたにすぎないと思います。私は、これは打ち破って、平和的な面でもっと日本経済的な力を使ってもらいたい、こういうことを言っておるわけですよ。
  95. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まさにおっしゃるようなことを着々とやっておるんです。ただ一つ国際社会に対してあまり大きな顔ができない問題は、政府開発援助、これが少ない。そこで、きのうも関係閣僚会議を開きまして、UNCTADに臨む態度を協議したわけですが、この点はひとつ積極的にやろうじゃないか、勇気ある態度を持ってこのUNCTAD会議に臨もうじゃないかということをきめたわけでありますが、まあ財政負担、つまり税の要る問題でありまするから、そう急にいくというわけにはまいりません。まいりませんけれども、とにかくこの量的な問題につきましては、世界の国に先がけまして、わが国はもう一九七五年にGNPの一%までいくべしという目標がある。それに対しまして、今日すでに、一九七二年ですよ、もう〇・九五%までいっておる。これはもう世界各国から非常にこの点は評価をされておるんです。私は、自信を持って国際社会に臨んでいいという状態にあると、こういうふうに確信をいたしております。
  96. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、世界における日本の立場がどうとか、世界からどう評価されるかと、そういう発想自体がすでにうしろ向きだと思うのですよ。  私は、ここで総理にお伺いしたいと思うのですが、私は、やっぱり平和外交というのは、日本の国の力を使うというのは国民にそれだけの負担を求めることです。海外援助にしても、国連に対する分担金にしても、それだけ国民の犠牲によってやることですね。それはやっぱり国民に訴えることが必要だと思うのですよ。これは、国の理想というものがあれば、国民目標というものがあるならば、私は国民がついてくると思います。だから、ただ単にいまのような消極的な平和外交じゃだめだと思いますがね。この点私は、国民にそういう負担を訴えても、世界平和のために、世界人類の福祉のために、政府は頼むということを言うべきじゃないですか。いかがでしょうか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その辺はちょっとむずかしい問題があるんです。わが国は明治百年をこえたわけでありますが、この百年のうち、前七十年間というもの、これは、何というか、軍国日本です。そこで、国力の大半というものが軍事力に投入されております。一番中心をなす鉄について言えば、わずかな鉄の生産が七割まで軍事力に投入をされてきた日本です。予算で言いましても、四割五分までは軍事費だと、そういうような状態だったわけです。そこで社会資本の整いというものがたいへんおくれちゃった。今日そのおくれの取り戻しをしておるという段階です。しかし、考えてみますると、わが国は非常な特異体質の国でありまして、ソビエトロシアあるいはアメリカと違いまして、資源を国内に持たない、その重要資源のほとんど大部分を海外からこれを求めるという国なんです。これは非常にほかの国と違っておると思うんです。その資源を求めなきゃならぬという立場、その資源を加工いたしまして、世界じゅうにこれをまた売りさばかなければわが国の経済発展はないという立場もあるわけなんです。そうすると、世界じゅうが平和で繁栄しなければ、わが日本の立場というものは存立し得ないわけなんです。そういうことを考えますると、世界を平和にする、世界を繁栄、発展させること、これがわが国の立場からも非常に必要なことになってくる。同時に、私は日本の立場を考えなくともそうだと思う。いくさを捨てたわが日本国が世界にいかにして貢献するかというと、やっぱり世界じゅうをしあわせにして、世界じゅうを平和にする、そのために貢献をする、そういうことだと思う。わが国益と、また同時に世界に臨むわが国の使命、そういうものがわが国の場合には幸いにして一致してくるんです。非常に私はしあわせなことだと、こういうふうに思う。そういうふうな考え方、これはまあけちくさいというようなことをおっしゃいますが、そうじゃない。非常に大きな立場で世界に立ち臨んでおるということ、このことを心から御理解願いたい、かように存じます。
  98. 田渕哲也

    田渕哲也君 総理にお尋ねしたいと思いますけれども、私が最初に国家の理想とか国民目標とか申し上げたのは、やっぱり日本の国が世界のために役に立っておる、そのために日本国民は何をするか、こういう自覚があって初めて日本人としての誇りが出てくると思うのですね。いまのように、ただ単に経済発展のGNPがどうなったからといって、それで国民が誇りを感ずるかというと、私はそうじゃないと思います。その意味で、私は、佐藤内閣が国民に対してそういう国民の使命感というものを示さなかったのではないかというような気がします。この点についていかがでしょうか。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 過去において、国民に対して、国民の使命感、それをもっと鮮明にしろと、そういうことを欠いたんではないかと、こういうことですが、私もそういう点がある、かように思わざるを得ない。やはり日本国民としての反省がここで要求される。たとえば経済問題にいたしましても、エコノミックアニマルということばがわれわれの通用語になっている日本の実業界、そういう批判を各国から受ける。私は、ことにそのことばよりも大事なことは、国家的なエゴイズム、これがある限りにおいては、ただいま田渕君の御指摘になるようなそういう高度の理想国家にはなかなかならない、かように思っております。したがって、さような事柄、ただいまの一国のエゴイズム、そういうものを払拭する、そういう態度で政治を運営していかなきゃならない。そうすれば、エコノミックアニマルというような忌まわしいことばはわれわれの耳に入らなくなってきて、日本はやはりその使命をよく理解し、そうしてほんとうに世界の発展、福祉、それにつながっていくと思う。その努力は大いに尊敬する、また感謝すべきだと、こういうことになるだろうと思います。私どもやはりそういう方向に持っていかなきゃならぬ。そういう意味で、先ほど来田渕君が御指摘になったことは、これは私も反省せざるを得ないとお答えいたします。
  100. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、平和外交のもう一つのポイントである、どの国とも仲よくするというこの面についてお伺いしたいと思いますけれども、世界の情勢がいま非常に大きく変わりつつあります。ニクソンの訪中によりまして、いままでのいわゆる東西対立というものが終わりを告げつつある。そうして、極端に言うならば米・中・ソ・ヨーロッパ、さらに日本も加えた五極体制的なかっこうになりつつあります。私はこの中で、やはり従来の対米偏重から脱皮すべきではないか、そのように考えるわけですけれども、私はまず総理にお伺いしたいと思いますが、これから外交上日本のとるべき位置といいますかポジションといいますか、特に日本を取り巻いておる米中ソとの関係日本はどの辺に位置すべきだとお考えか、お伺いしたいと思います。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはなかなかむずかしい基本的な態度であります。私はいままでの日米間の関係、これを軸にして、この関係にゆるぎを来たさないようにし、両者の間に疎隔を来たさないように一そう緊密化をはかっていくべきだと、かように思います。これがまた私の施政方針演説でもありますし、また米国においても同じことを申しておりますし、米中会談はやりましたが、やはりニクソンもその点は強調しておりますし、この点ではただいまのところうまくいっていると、かように思います。一部では、米中ソ、この三極に等距離で外交を進めていけと、そういうお話もございます。これも一つの見識だと思っておりますが、私はその等距離外交と申しますよりも、われわれが重点を置いてやはりはかっていくもの、これがやはりいまのところでは米国中心——これはしかし米国追随ではございません。でありますから、中国対策にいたしましても、アメリカはアメリカの行き方があり、日本には日本の行き方がある。これは明らかにサンクレメンテで相違を双方で認めたはずであります。これは、日本の独自性はやっぱり貫かなければならない、かように思っております。  ただいまのように基軸、同時にまたわれわれが均衡を保っていくべき方向、そのことはいまの、以上の二点で尽きるかと、かように思います。
  102. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務大臣にお伺いしますけれども総理答弁もございましたけれども、私は、いままではやはり日米安保体制ということで、日米が非常に緊密な関係にあった。それから、中ソはややもすれば若干遠い距離にあったと思います。しかし、先日のニクソンの外交教書にも見られますように、日米関係は調整しなければならない時期に来ておると思います。やはりアメリカべったりの姿勢からだんだん座標を移して、中ソに近い、アメリカからは若干距離を置くことになるかと思いますけれども、そういう方向で軌道修正というものが必要な時期ではないかと思いますが、この点いかがですか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、しばしば申し上げておりますように、世界は多極化時代に入った、多極化時代に入ったという認識で多極化外交を推進すべきである、こういうふうに考え、その方向の施策を進めておるわけです。  そういう間にあって、どういう個々の状態が出てきておるかということを考えてみますると、日米の関係、これはいよいよ緊密であります。ただいま総理から申し上げたとおりであります。が、ソビエトロシアとの関係はどうだと、こう言いますると、先般グロムイコ外務大臣との間に第二回定期協議が行なわれる。非常に友好的な雰囲気でありまして、今後日ソ関係というものはかなり改善をされていくという見通しを持っております。それから、問題は日中関係なんです。これは、中国は日本とほんとうに隣同士である、しかも中国との間には古い長い歴史がある、そういう国です。それが国交正常化されておらぬということはまことに残念なことなんです。この問題をとにかく解決しなければならぬ、これが当面課せられておるところの最大の問題である、こういうふうに考え、あらゆる努力をいま傾注しておる、これが実相でございます。  しかし、わが国の立場といたしますると、それら三国ばかりを見詰めておるというわけにもまいりません。遠いヨーロッパでありまするけれども、ECというものが、英国が加入してくることになった。そうすると、政治的にも経済的にも非常に強大な発言権を持つような国になる。これとの間に国交の調整というか、そういうふうなことを行なわなければならぬ、関係の増進をはからなければならぬ、こういうふうに考えております。そういう基盤に立って、また開発途上国に対する任務を尽くさなければならぬ、そういうふうに考えておるわけでありまして、ニクソン訪中によりましてアジアの状態というのは非常に変わってきた。個々に言いまするといろいろ問題がありまするけれども、大局的に見まして、中国を封じ込めるというアメリカの政策が対話の政策に移ってきたわけでありまするから、これはわが国に対しましても非常に大きな影響を持つわけであります。  それらの状況を踏んまえまして、軌道の修正ということにどういうふうにお答えしたらいいか、非常にむずかしい問題でありまするけれども、結論的に申し上げますると、世界は多極化してきておる。その多極化した世界情勢に対しまして、多極化外交に転換するという方向へ軌道を修正しておると、かように御理解願います。
  104. 田渕哲也

    田渕哲也君 ソ連との関係は非常に友好ムードが促進されまして、年内にも平和条約交渉が始まろうとしております。ところが、一方で、中国との関係というものもこのソ連とのからみで非常に微妙な問題を持っていることも事実であります。この中国、ソ連とわが国との関係といいますか距離、どのようにしていくべきだと考えられますか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国もまたソビエトもわが国の隣邦であるので、この両国ともわが国は仲よくしなければならぬ立場にある。一番理想を申し上げますれば、ただいま非常な世界の大問題になっておる中ソの対立、これが解消される、そういう状態がたいへん好ましいのでございまするけれども、現実はなかなかそうもいかない。そこで、わが国の外交といたしますると、なかなか機微の問題が出てくるわけでございまするけれども、この両国ともに仲よくしていく、こういう姿勢でこの両国に対しましては臨むべきである、かように考えます。
  106. 田渕哲也

    田渕哲也君 ということは、中ソとわが国との距離は大体等距離で考えていくということですか。
  107. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 等距離というと非常にむずかしいのですね。何かものさしがあってそれではからなければならぬかと、こういうようなことにもなるわけでありますが、等距離という意味が、この両国とも同じ考え方というか、同じ姿勢をもって仲よくしていくということであるといたしますれば、まことにそのとおり考えておると、こういうふうに御理解願います。
  108. 田渕哲也

    田渕哲也君 現在このソ連との友好ムードに比べますと、やはり対中国の問題は非常に困難な問題を含んでおると思います。特に政府は、中国との政府間交渉を早く回復したいということを述べておられますけれども、具体的にどうするか、この点はなかなか具体案が出てこないようであります。現在民社党の春日委員長以下の訪中団が中国へ参っておりますけれども、春日委員長の報告によりましても、また、先日帰国されました日中議連の藤山さんの報告にしましても、やはりこの三原則を承認しない限り相手にしない、アヒルの水かきなんといっても相手にしないと、こう言っております。そのかわり原則を承認すれば話し合う姿勢はある。ただ、いまの佐藤政府はだめだ、誠意がないからだめだと、こういうことを言っておるようでありますけれども、こういう状態の中で具体的にどう打開されるつもりか、外務大臣見解をお伺いしたいと思います。
  109. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国に対しましては、わが国は非常に明瞭な姿勢を示しておるわけであります。つまり中国は一つである、中華人民共和国は中国を代表する政府である、台湾は中華人民共和国の領土であるとの中華人民共和国の主張に対しましては理解を示す、こういうことです。そういう認識のもとに、中国との間に国交の正常化を始めたい、打ち立てたい。国交の正常化というものはどういうことであるかというと、これは国家承認も含む、あるいは外交関係の設定も含む、大使の交換も含む非常に広範な意義を含んでおるわけでありまするが、その国交の正常化のための政府間接触をいたしましょうと、その政府間接触が始まりますければ、もろもろの両国間の諸問題はこれは解決されると、こういうふうに考え、そういう姿勢を中国側に対しまして間接的ではありまするけれども示しておるというわけであります。それに対しまして、いまこの対日三原則というようなお話があります。これはおそらく中華人民共和国を唯一正統の政府と認めよとか、台湾は中華人民共和国の不可分の領土と認めよとか、あるいは日華平和条約を破棄せよとか、そういうようなことを田渕さんはおさしになっておるんじゃあるまいかと、こういうふうに思いますが、私はそれがわが国によって承認されなければ政府間接触は始まらないと、こういうふうには考えておりません。わが国がただいま示しておる姿勢、これにつきましては、これは話せばわかる、これは少し努力をいたしますれば、中華人民共和国におきましても必ず正しい理解を示してくるであろう、そういう考え方のもとに、ただいま政府間接触を目ざしていろんな話、ルートを通じまして中国の理解を求めるという努力を進めておる、こういうことでございます。
  110. 向井長年

    ○向井長年君 それにちょっと関連して。  総理外務大臣にお伺いするんですが、いろんな手段を講じてやはり話し合いの場を持ちたい、こういう意欲を持っておられると思います。  そこで、いま民間外交というかあるいはそれぞれの各党なりがそういう意味政府間接触を深めようという立場からいろんな行動を起こしておると。これに対する政府の評価はどうお考えでありますか。特に、わが党の春日委員長がただいま訪中をして、政府間接触を一日も早くできるような方途を講じたいということで、中国側といろいろと接触を深めておるわけであります。こういう中で、政府は、これはわが党だけじゃありません、各党なり経済人も行っておりますが、そういう形で、一日も早く政府間接触を深めたいという希望のもとに接触をいたしておると思います。この点に対して、まず政府の基本的な評価をお聞きします。  それからもう一つ、ただいま、いい悪いは別として、政府からいえばどういう感じを持っておるか知りませんけれども、超党派的に日中議連というものを持って、藤山さんが会長で、これまた日本の国交正常化のために努力をされておりますが、わがほうはすでに議連を通じ、あるいは各党を通じて中国に行って、そういう形をとっておりますが、少なくとも、議連という名前になるかどうか別としまして、中国の政治家、要人もわが国に来て、それぞれの人たちと話し合ってもらいたい、こういう要望をひっさげておると思います。こういう場合に、政府はこれに対してどう対処されるか。心よく迎え入れて、総理なりあるいは外務大臣も接触を深めるというような態度をとろうとするのか、この点に対してお聞きいたしたいと思います。意見でございます。
  111. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 春日委員長の訪中の評価、これは春日委員長から報告を承ってから申し上げることにしていただきたいと思います。間違ったことを申し上げちゃまことに申しわけございませんから、しばし御猶予を願いたい。しかし、一般的に申し上げまして、民間の方、あるいは政界の方、いろいろ中国を訪問される。それにつきましては、高くこれを評価し得るものもあります。また私どもの立場といたしまして評価し得ないものもある。評価し得るものはどういうことかといいますると、わが国のほんとうの立場を、わが国政府のほんとうの立場を北京政府に勇気を持って説明してくださる方、この方々に対しましては、私は深い敬意を表します。逆に、これは極端なことでありまするけれども、中国側の言い分をただ単にわが国に対しまして取り次ぎをするというような向きもまあ、なしとしないのでありまするが、そういうものに対しましては、私はそう深い評価はいたしませんでございます。  それから日中議連の答礼といたしまして、わが国に中国の訪日団が来るというようなお話でございますが、まだ私はその話を聞いておりませんけれども、具体的な問題になりますれば、もちろん私ども日中国交打開につきましては熱意を持っておるのですから、そういう認識のもとに対処したいと、かように考えております。
  112. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  113. 向井長年

    ○向井長年君 外務大臣、そういうことはまだ決定じゃなくて、そういう意向を議連では中国側に話をしておるわけなんです。そこで、そういう場合に迎え入れる姿勢というものがどうかということをいま聞いたんですが、まだ決定じゃありませんから。それともう一つは、もし来る場合において、たとえば中国の飛行機が日本に来ると、こういう場合においての、政府はどういう形で迎え入れるか、認可されるか。言うならば了解されるか、こういう点もあわせてこの際聞いておきたいと思います。
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) あたたかくお迎えいたしたいと、かように考えます。
  115. 田渕哲也

    田渕哲也君 中国問題でもう一問だけお伺いしたいと思います。  わが国が中国との国交正常化を進める上で一番大きな問題は、やはり台湾問題であろうと思います。台湾とわが国との関係があるために政府もいろいろ苦慮されておることだろうと思いますけれども、私は、今後の政府考え方として、台湾をどう処理するつもりか、この点についての構想をお伺いしたいと思います。  いままでの、中国と外交関係を樹立した国の例を見てみますと、台湾との関係から見るならば、大体四つくらいのカテゴリーに分かれるのではないか。  まず第一は、ソ連その他の社会主義国で、初めから台湾とは関係のない、台湾を無視しておる国である。第二は、中国との国交回復にあたって台湾との国交を断絶した国、これはスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、スイス、パキスタン、セイロン、オランダ、こういう国があろうかと思いますけれども、第三はテークノート方式、カナダとかイタリアはテークノート方式、もちろん台湾との国交は持っておりません。最後の四番目は、台湾に触れずに国交回復をした国、フランスとかイギリス、まあ、フランスの場合は後ほど台湾が断交しております。イギリスの場合は、一時領事館を置いておりましたけれども、最近引き揚げた。このいずれの例を見ましても、やっぱり台湾との関係を絶たなければ、中国との国交は回復できないということが言えようかと思います。わが国の場合、一体どういう可能性というものを考えておるのか、考えられるのか。また、わが国の政府としてはどういうかっこうで中国との国交回復が望ましいと考えておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  116. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、領土帰属の問題でありますが、それがいま第三、第四というふうにあげられたケースじゃないかと思います。これにつきましては、わが国は先般の衆議院予算委員会で統一見解を示しております。わが国は台湾の帰属につきましては発言し得る公的な立場にはない、しかしながら、台湾が中華人民共和国の領土であるとの中華人民共和国の主張につきましては、これは理解し得る、こういうことなんでございます。ことばはそのままでないかもしれませんけれども、趣旨はそういう意味の統一見解を発表しておるわけであります。で、これに関連いたしまして、カナダと中国の間でたいへん論争がありました。結局、約二年間の論争がありまして、そしてカナダが中華人民共和国を承認するという時点になってやっとテークノート方式というものが打ち出された、そういう状態でございます。  わが国とカナダとが違いますのは、わが国はまだ承認関係には入っておらないんです。その承認関係に入っておらないそのずっと前の段階におきまして、カナダよりは進んだ、テークノートよりは進んだ理解を示すという態度をとっておる、こういうことでございます。  それから日華平和条約の問題、この問題につきましては、わが国は中華民国との間に合法的に相互で結んだこの条約が現存をしておる、こういう状態でありまするから、今日この段階で平和条約を廃棄する、こういうことは言い得ない立場にある。しかし、私はまあ先ほども申し上げたんです、日中国交打開をぜひやりたい、やるについては、中華人民共和国は中国を代表する政府である。その政府と交渉するんです。しかもその交渉する対象は何だというと、日中国交の正常化である、こういうことなんです。そこでもう非常に幅広い問題がわが国から打ち出されておる、こういうことなんで、私はその姿勢でもう少し話しますると、中華人民共和国におきましても、わが国の立場というものについては理解を示すであろうと、こういうことを確信をいたしております。
  117. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 田渕君の質疑の途中でございますけれども、質疑を一時打ち切りまして、午後一時再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  118. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、田渕哲也君の質疑を行ないます。田渕君。
  119. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、防衛問題についてお伺いをしたいと思いますけれども、最初に、防衛の基本原則について総理大臣にお尋ねをしたいと思います。  この国会は、四次防の先取り問題をめぐりまして、また、その他の多くの部分がわが国の防衛のあり方について費やされております。これは、現在、平和憲法があるにかかわらず、佐藤内閣の防衛政策というものが数々の点で疑惑を招いておるからだと思います。最近、中国だけではなくてアジア諸国の間でも、わが国の軍国主義化へのおそれと警戒が増大しております。私はここで、平和憲法に基づいたわが国の防衛のあり方のその基本原則、さらに限度というものを明らかにして、国民やまた他国に対して疑惑や脅威を与えない、こういうことが必要だと思いますけれども、わが国防衛の基本原則、また限度というものについて明確にされるべきだと思います。これについての総理見解をお伺いしたいと思います。
  120. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先に私から御答弁申し上げます。  わが国の防衛の基本原則、これは、昭和三十二年に策定をいたしました「国防基本方針」、これを現在も踏まえております。で、そのことは、四次防の大綱をきめまするときにこの方向を採用していこうということで確認をいたしております。  念のために読み上げますと、これは「国防の基本」という四次防大綱の第一に、「わが国の国防国防基本方針——これは昭和三十二年五月二十日閣議決定であります。これ「にのっとり、近隣諸国との友好協力関係を確立し、国際緊張の緩和を図る等の外交施策と、経済的、社会的発展を図るに必要な内政諸施策とを講じるとともに、日米安全保障体制を基調として、侵略を抑止する防衛力を整備し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守ることを基本方針とする。」と、これはまあ簡単な文章でありまするが、相当検討の上、意を尽くして書き上げたものであります。  それから、防衛力の限界についてでありまするが、これは御承知のとおり、第一には憲法上の制約があります。これは他国に積極的脅威を与えるような武器は持たない、海外派兵はしない、この大原則を踏まえておるわけであります。政策的には、かねて国会でも決議をされました、合意でありまする非核三原則、これをとっておることは、これはもう申し上げるまでもありません。そして、一つの大きな限界として、徴兵制度はとらない、あくまで志願制でいく、このマンパワーに限界を持っておるということは、何にも増して防衛力の限界としてきわめて自衛的なものである、こういうふうに申し上げることができると思います。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官から詳しく申し述べました三十二年に決定した国防に関する基本方針、これを変更する考えもございません。また、さような作業も一切しておりません。現状においても、一切定められたとおりでございまして変わりはございません。したがって、他国はともかくとして、国内に日本の軍国主義化、かような疑問を持たれること、これ自身が政府としても国民に十分理解さす、そういう点に欠くるところがあるのじゃないか、かように思って反省しつつ、さらに国民の理解を深める、こういうことにつとめておる次第でございます。
  122. 田渕哲也

    田渕哲也君 三十二年に定められた防衛の基本原則というものは確かにございますけれども、きわめてこれ抽象的なんですね。それから憲法の規定ではこれは明確にしてありますけれども、それにもかかわらず、わが国の防衛力というものがどんどん増強しつつある。こういうなしくずしに既成事実をつくりつつあるところに他国の脅威、脅威感、また国民の疑惑というものが生ずると思うのです。私が申し上げておるのは、この際、再度そういう基本原則を補足するもの、補完するものとしてでもけっこうですから、もう少し具体的な制約というものを明示する必要があるのではないか、こう考えるわけですけれども、この点について答弁をお願いしたいと思います。
  123. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の点は、四次防策定等にあたりましても十分勘案をしてまいりたいと思います。ただ、基本方針というものはそんなに変わるべきものではないと思います。中曽根防衛庁長官のときに、この基本方針を再検討しようというわけで再検討した時期もあったわけでありまするが、やはり結論的には、いま申し上げました昭和三十二年にきめた「国防基本方針」、これが妥当であるということで、また党におきましても、政府におきましても、これに戻った、こういう経緯があります。  なお、具体的にとおっしゃる線につきましては、時々刻々国際情勢も変わりまするので、十分留意をいたしてまいりたいと思います。
  124. 田渕哲也

    田渕哲也君 それでは四次防の大綱についてお伺いしますけれども、ニクソン・ドクトリンあるいは米中接近、沖繩返還、このように五年前と比べて非常に大きな変化があります。また、アメリカの駐留軍も、日本における駐留軍は五年前から比べて約一万人以上の減少を見ておる。アジアにおける各種の米軍も撤収を続けております。こういう情勢の変化がある、一方では米中接近による緊張緩和がある、こういう情勢変化を四次防の大綱にはどのように反映さしたのか、具体的にお伺いをしたいと思います。
  125. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 米中接近は、これはしばしば申し上げておりまするように、緊張緩和方向を確かに顕著にした好ましい状況であると思います。しかしいこれが一度の会見によって、にわかに平和の情勢がもたらされたというふうに判断することはいささか早計ではなかろうかと思います。しかし、これが平和として定着していくことは、私どもにとっても、日本にとってもきわめて望ましいことでありまして、これは外交的にそういう形で推進され、平和的な定着情勢にまでなることを望むものであります。しかし、もともと日本の自衛隊というものは、仮想敵国を求めてこれに対応をするというていのものではなくて、通常兵器によって局地戦に耐え得るもの、自分の国は自分で守る、この大原則は言うまでもありませんが、あくまで防衛に徹する、こういうたてまえで整備されつつある段階のものでありまするので、一度の米中会談が行なわれたからといって、にわかにこの計画自体の根底に大きく影響がもたらされる、こういうものではないと思います。しかし、御指摘のように、五カ年計画でありまするから、五カ年のうちには、これはやはり米中の関係というものも確かに一つ方向が出てくることは見通されます。したがって、そういうものも勘案しながら、今後四次防策定にあたっては十分ひとつ詳細に分析をして、そういったものも織り込みながら成案を得るようにいたしたいと思います。
  126. 田渕哲也

    田渕哲也君 四次防の規模、どの程度のものをお考えか、再度ここで確認をしたいと思います。
  127. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはまだ検討中でありまして、いま、にわかに申し上げる段階には至っておりません。これは、御承知のとおり、年度内に策定ということを決定しながら国会に出し得なかった。そういうことがいろいろな疑義を生んだりする遠因にもなったわけでありまするが、やはり経済のある程度見通し、こういったものを十分勘案しながら具体的に策定をしていきたいと思います。ただ申し上げられることは、三次防の延長としての五カ年計画である。この五カ年計画は、三次防末期の装備を維持更新するとともに、足りない分を充足していく程度のものである、これは率直に申し上げることができます。
  128. 田渕哲也

    田渕哲也君 金額的には、概算どれぐらいですか。
  129. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 金額的に概算がどれくらいということは、これがなかなかきまらないわけなんです。要するに、GNPの一%以下、こういうことが三次防段階一つ標準になっておりましたですね。私は、この標準が必ずしも妥当なものだとは思いません。一つの要素ではあるが決定的なものではない、こういうふうに考えます。GNPがどんどん伸びていけばこれは際限のないものです。これはいつもよくこういう席で御質問があるとおりです。したがって、一つの重要な要素ではあるが、三次防当時にはこれが一つの尺度になっておったとすれば、やはり経済見通しが立ってから、およその見当がついてから、数字的ないわゆる主要項目、数字等をきめていくのが妥当である、こういうことで延期せざるを得なかったわけですから、もうしばらく時間をおかし願いたいと思います。
  130. 田渕哲也

    田渕哲也君 大体新聞等では五兆三千億程度のものを考えておるということが報道されております。この点はどうですか、大体その見当ですか。
  131. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは中曽根試案なるものが出されまして、そのあとを受けた私どもの同僚の西村直己前防衛庁長官が、経済的な変動もあり、また成長率のスローダウンということも考えられるということで、五千億程度正面兵力において減額をしよう、こういう構想を立てられた、これが何となく伝わっておるというわけでありまして、私ども一つのそれはめどではあろうというふうに思いますが、もともと経済の、さっきから申し上げておるおよその見通しが立った時点できめたいと思いまするので、四次防試案なるものが白紙に戻れば、この五千億減額という問題も当然白紙に戻っておるわけでありまするから、一つの有力な参考資料ではありまするが、今後十分そのあたりも参考にはいたしまするが、詳細検討をしてまいりたいと思います。
  132. 田渕哲也

    田渕哲也君 大体われわれの想定するところでは、五千億余りというぐらいに考えておるわけですけれども見当としてはそれぐらいでいいわけですね。そうすると、三次防のときに二兆三千億、今度は三次防の引き継ぎであるといいながら五兆三千億、私は、三次防大綱と変わらない四次防大綱を出しておきながら、金額においては倍にふくらむわけですよ、この点はどうなんですか。
  133. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 武器というものは、御承知のとおり、だんだん高性能なものが要請されております。しかも相対的なものでありまして、たとえばきのう閣議できめましたあのLST、すなわち輸送船でございます。今度沖繩に円・ドル交換の円を運び、また交換をされたあとのドルを持ち帰るわけですが、あのLST自身が八ノットというわけですね。これはもうその辺のフェリーボートや瀬戸内を走るような客船に比較しましても、まことにどうも比較にならない古いものであります。したがって、現在、輸送機C1というのが問題になりましたが、あれに対称する輸送機は、C46というMAPでアメリカから提供を受けた輸送機であります。これなどで沖繩に参りますると、入間から出て板付で給油をして、そしてあの沖繩まで七時間はたっぷりかかる、どうかすると八時間かかる。うっかりすると、何かエンジンが飛んだなんていうような事故があったりという、まことに古い兵器に手入れに手入れを加えて今日保持してまいりましたのが自衛隊の兵器でありまするので、そういうものを時流に合った兵器に更新しようといたしますと、どうしても金額的には御指摘のように伸びざるを得ない。これはひとつ御了解を願いたいと思います。
  134. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、時代の進歩、変化に伴って兵器が近代化される、こういうために金を使われるわけであります。言うならば、防衛力の増強といいますか、相手国といいますか、外国においても兵器の進歩があるわけですから、それに対応した質的な変化、向上をやるけれども、絶対的な防衛力の向上——まあ絶対的と言うと、これ、語弊があるかもわかりません。他国との、相対的に見て防衛力の規模というものは三次防のときと変わらない、こういう前提ですか。
  135. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 何せまだ発足をしまして、ようやく二十年というわけで、防衛力は十全のものとは思えません。現在、その充足の段階でございますから充足はしていくわけですが、かつての中曽根試案に盛られたような、十年計画で相当な装備をする、こういう考えはないわけで、先ほど申し上げたとおりに受け取っていただいて差しつかえございません。
  136. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、国民が疑惑を持つ、あるいは他国が脅威を感ずるというのは、防衛の基本原則あるいは三次防、四次防の大綱、こういうものは大体変わらないのに実際に予算がどんどんふくれ上がる、また防衛力が増強される。これなら、なしくずしに既成事実をつくられるということになるわけです。こういう面について一番疑惑とまた警戒心を持ってるわけですね。だから、一番初めに申し上げたことは、やっぱり防衛の基本原則としてこの限界というものを明らかに明示してやる必要があるのではないか。そういうことをしないで、なしくずしに既成事実をつくるということに非常に大きな警戒心を持っている、この点についてどうですか。
  137. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いま私ちょっとここに数字を持っておりませんから、さだかに記憶はありませんが、ちょうど私十一年前に、いまから言うと足かけ十二年前ということになりましょうか、その防衛庁長官をしましたときの防衛費と現在とは、約五倍です、予算の伸び率においては。当時一兆七千億ぐらいが十一兆四千億というような数字になっておるわけで、そういうふうに予算全体から見ますると、この数字の上ではそんなに防衛費というのはふえていない。特に本年は、沖繩の対策費というものを除外すれば、例年よりも伸び率は少なかった。こういうわけでありまするので、これは御了承を願いたいと思います。
  138. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、この国会で一番問題になりましたこのシビリアンコントロールの問題について、まず総理にお伺いをしたいと思います。  これは、衆議院議長あっせんというものが出て、一応衆議院のほうは軌道に乗ったわけですけれども、ところが、この議長あっせんの内容ですね、特に三項目、四項目について、その後具体的な政府の施策というものがないように思うわけです。これはどう考えておられますか、お伺いをしたいと思いますが。
  139. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) シビリアンコントロールにつきましては、今後も寸分の疑いのないように十分ひとつ留意をしてしっかりやれということで首相からも激励を受けております。議長の裁定で、たとえば国防会議等をどうするか、これを内容を充実すべきだという、あの場合一つの仲裁案が出ております。したがって、政府といたしましても、これは総理を中心にしまして国防会議を検討する方途を講じたい。これはいずれ総理からお指図があるものと私ども思っております。  それからもう一つは、何といいましてもシビルコントロールの中心は、これは国会にあると思います。国民コントロールという意味ですから、国民の代表である国会が防衛問題をやはり支配していただく。ここに一番大きなシビルコントロールの意味があると思いまするので、国会に防衛委員会をつくって、防衛問題とともに、そこで法案も審議していただく。予算も八千億円を上回るというようなことになってまいりました以上は、やはりそういう専門の委員会が設置されて、堂々とそこで国民にわかるように議論されることがきわめて望ましいと思いまするが、これはもとより国会のことでありまするので、各党間においてぜひお話し合いを願いたい。民社党においてはすでに御賛成を得、しかも法案も当然審議をする場にしよう、こういうことで、私ども与党でありまする自民党とも、この委員会に関する限りは全く意見が一致しております。そういう点でぜひひとつこれを御推進願いたいものだと思います。  なお、内部部局等の綱紀の粛正につきましては、今後も十分ひとつ留意をして、かりそめにも不安感を国民に抱かせるようなことのないようにしてまいりたいと決意をいたしております。
  140. 田渕哲也

    田渕哲也君 国会に常任委員会を置くことは必要だと思いますけれども、単に委員会を置いただけでは私は必ずしも十分じゃないと思います。やっぱり国会のコントロールを強めるためには、少なくとも防衛の長期計画は国会の承認事項とすべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  141. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この長期計画におきましては、御承知のとおり、三次防の場合でも金額的には上限下限をきめまして、多少弾力的にこれを策定いたしました。しかも、三次防におきましても内政諸費とのバランスをとってと、こういうことを言っております。したがいまして、この計画については、これはひとつ政府におまかせをいただくと、国会は、当然この裏づけになりまする金額等を通じまして詳細な審議をわずらわすことにもなるわけでありまするので、いまの御提議については、直ちに賛成ですというお答えができませんが、一つの御提案として承っておきます。
  142. 向井長年

    ○向井長年君 関連。
  143. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 向井君、簡単に願います。
  144. 向井長年

    ○向井長年君 防衛庁長官、いま田渕委員の質問の答えで——少なくともこれは外務大臣も聞いていただきたいのですが、まず日本の防衛という問題については、まず日本経済、外交、防衛と、これは表裏一体でなけりゃならぬと思うのですよ。そういう立場から考えますならば、今後の防衛計画という基本的な問題についてはそういう問題に大きく影響するかもしれません。したがって、いまの田渕君の質問の中で言われておることは、これはやっぱり国会の承認事項全般にわたる問題じゃないか、こういう立場からこれをとらえているわけですよ。したがって、この問題については、ひとつ詳しく外務大臣なり、あるいは大蔵大臣もあわせて検討の素材に値すると、この点についてどうお考えですか。
  145. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 向井さん御指摘の点は、まさにそのとおりだと思います。そういうことで国防会議の正規のメンバーに外務大臣なり大蔵大臣があるわけでありまして、この経済、外交というものを度外視して、防衛計画というものは成り立たないと思います。十分留意して措置をとりたいと思います。
  146. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の防衛計画策定する、推進する、そういう際におきましては、外交上の配慮も十分加えなけりゃならぬ、そういうふうに考えております。
  147. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務大臣にお伺いをしますけれども、平和外交をわが国の基調とする限りにおいては、やっぱり防衛力というものは最小限にとどめるべきだ。また、それにいろいろな制約があってしかるべきだと思うのですね。その制約の中の重要なものに、私はシビリアンコントロールというものがあると思います。だから、他のものよりもむしろきびしい制約を防衛については設けるべきではないか、それが他国には脅威を与えない、ここの一つの大きな論拠になると思うのですね。そういう意味から、少なくとも、防衛の長期計画は国会の承認事項にするぐらいの踏み切りが必要だと思いますけれども、いかがですか。外務大臣総理と両方からお伺いします。
  148. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 防衛計画は、これは非常に大事なものでありまするから、これは国防会議というものがあります。なお、その上に閣議というものがある。それで基本的な考え方策定いたしまして、それにつきまして年次、年次の予算が編成される、こういうことでありますから、予算の編成にあたりまして国会に提出いたしまして十分御審議をいただくというたてまえになっております。そのたてまえでいま田渕さんのおっしゃられる御趣旨は貫かれるんじゃあるまいか、さように見ております。
  149. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は予算案の審議ということで言っているんじゃなくて、やっぱり防衛のもっと基本構想についての論議が国会で行なわれ、そして国民の代表である国会の承認を受ける必要があるのではないか。そのためには長期計画を国会の承認事項にしろ、こういうことを申し上げておるわけです。
  150. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは先ほど申し上げましたように、「国防基本方針」にのっとって防衛政策を五カ年計画策定していくわけです。これはやはり政府の責任において決定をしていく、そういう性格のものだと思います。そうして国会が当然、今後委員会ができなくても、内閣委員会等においてその構想を示せと、こういうことに従来ともなっておりまして、そういう場で審議を受けるわけです。また、いま外務大臣答弁にもありましたように、毎年予算措置をすることによってこれが予算委員会でやはり討議をされる、こういうことに仕組みはなっておるわけでありまして、現在の場面に、念には念を入れよ、こういう御意見としてはよくわかりますが、いまの方法が間違っておるとは思いません。十分留意をして今後ともひとつ防衛問題策定等には慎重を期して、そして御審議の場に出せるものは出すという形でまいりたいと思います。
  151. 田渕哲也

    田渕哲也君 総理にお伺いをします。防衛の基本はやっぱり国民合意だと思うんですね、そうすると、防衛の基本方針についてはやっぱり国会の論議をして、やはり合意というものをできるだけ幅広くつくる必要があるのではないか。内閣が策定してそれを形式的に国会の承認をとる、こういうことでは私はいかぬと思いますけれども、まあ、衆議院予算委員会では長期計画を国会にかけることについて考慮するということの発言があったように記憶しておりますけれども総理見解をお伺いしたいと思います。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛庁長官外務大臣がお答えしたとおりですね、私は予算の御審議をいただいている、そういう機会に、いままでのところは、防衛基本計画あるいは長期計画についてもお尋ねがあり、またこれについて政府は余すところなく答えておる、かように思っております。そうして、先ほど来話をしているように、これから特別な委員会が設けられれば、なおさら専門的にそういう点をさらに掘り下げる、こういうことになろうかと思います。私はどの政策にいたしましても、国民の理解を得なければならない問題でございますが、ことに国防の問題が国民と遊離する、国民の生活あるいは経済活動と遊離する、こういうことがあってはならないと、かように思っております。基本的には外交、内政、防衛、これは一体の問題であると、かように考えておりますから、先ほどからの御議論を聞いておりまして、別に矛盾もなければ、対立した考えでもない。これはもういまの制度でも十分論議は尽くせると、かように思いますが、何かさらにもっと特別な委員会を設けられると一そうその点が徹底するのじゃないだろうかと、かように思っております。
  153. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、産軍癒着の問題について防衛大臣にお伺いしたいと思います。  今回の四次防先取り問題でもやはり産軍癒着が陰にあるということが取りざたをされております。わが国のこの平和憲法の趣旨から見て、特にこの産軍癒着ということは最も警戒しなければなりませんし、その排除に意を用いなければならないと思います。やはり産業界の圧力で軍備の規模が決定されたりあるいは防衛計画に影響が与えられるということはゆゆしい問題である。  そこで防衛庁長官にお伺いしたいのでありますけれども、自衛官の天下りの実態というものを明らかにしてもらいたい。
  154. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 産軍癒着ということは、これはもう絶対あっちゃなりません。ただ、現在の日本産業界の実情から申しまするというと、全鉱工業生産に占める兵器の比率はわずかに〇・四%。防衛庁の指定工場として航空機製作などをしておりまするあの三菱重工にして、三菱重工の生産量の四%以下というのが兵器産業の実情であります。特にまた海の場合、船などの場合は、まさに売り手市場でありまして、防衛庁の自衛艦建造をいたしまする場合には、非常に査定がさびしくしてありまするので、引き受け手が少ないというような事態すら惹起しておりまして、この産軍癒着などという表現にはほど遠い実情であることを率直に申し上げられます。いま上級幹部が指定工場等にどういうふうに就職しておるかという点は、政府委員から申し上げます。
  155. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 昭和三十八年から現在、九年間の間におきまして一佐以上の者で退職した者が約二千人おりますが、そのうちの三分の一の六百三十八人がいわゆる防衛庁の登録会社と申しますか、関連産業に就職いたしております。
  156. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは氏名並びに行き先企業を明らかにできますか。
  157. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 現在防衛庁の調達実施本部に登録されておる約千五百の会社に就職した人が六百三十八名でございまして、まあ具体的に小さな会社一々わかりませんけれども、少なくともこの大企業につきましてはおおむねの数字はわかりますので、その点は後ほど資料としてお届けいたします。
  158. 田渕哲也

    田渕哲也君 数字だけではなくて、だれがどこへ行ったかという、その氏名までわかりますか。
  159. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 私のほうがあっせんしました者につきましては、あっせんの段階においてどの会社に行っておるかということはわかります。しかしながら、その後その人がどういう地位につき、あるいはもうすでに退職されておるかということにつきましてはさだかにいたしておりませんが、大体の、大きな会社で私のほうであっせんした将、将補なり、一佐の方につきましては、その氏名はわかりますので、御必要でございましたならば資料としてお送りいたします。
  160. 田渕哲也

    田渕哲也君 数字だけの資料はもらっておるのですがね、この氏名を明らかにできないということで手に入らなかったわけです。これはあとでもらえますね。
  161. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは御審議に供する意味でできるだけ明らかにしたいとおります。
  162. 田渕哲也

    田渕哲也君 数字だけ見ましても特にこの将官、将補、一佐、そういうふうに分けて計算しますと、地位の高い者ほど登録会社に就職する率が高いわけですね。私はここに非常に大きな問題があると思うのです。特に将官の場合は登録会社に就職する率が全体の離職された方の中で六割以上である。六割——六一%。非常に高い率が登録会社に就職されているわけです。私はここに非常に大きな問題があると思うのですね。  それから公務員の営利企業への就職の制限というのは、国家公務員法百三条であるわけです。それから自衛官の場合には自衛隊法第六十二条である。この規定を比べてみましても、国家公務員法のほうがややきびしいわけですね。自衛隊のほうは防衛庁長官の承認でできるというようなことになっています。この点、いかがですか。
  163. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自衛隊の場合は御承知のとおり若年停年制をとっております。一番この退職する率の多いところは二佐、一佐、これはもう五十三歳が一佐の場合でも停年になっておりますると、その子女の養育盛りである。どうしても二度のつとめをしなければならぬということで職場をあっせんしておるのが現況であります。で、もちろん役員等になることはこれは法的にも禁ぜられておりまするので、顧問であるとか、まあ比較的その会社の中枢からは遠い職場に配備されるというようなのが実際の状況であります。もちろん、この指定工場というか登録会社、しかも、その有力会社に自衛官が就職をする。特に高級幹部が就職するという点等につきましては、今後極力疑惑を避ける意味で十分配慮をしたいと思います。
  164. 田渕哲也

    田渕哲也君 私に特に一般公務員の場合と自衛隊の場合と比べて条件の差もあろうと思います。だから、ほかの会社へ就職することについてある程度の自由というものは保障すべきだと思いますけれども、ただ特にこの登録会社に対する就職については、やっぱりきびしい制限とチェックがなければいかぬと思うのです。現実に将官の六割も登録会社に就職しておるというのは、どう考えてもちょっと異常ではないかと思います。その意味で私は自衛隊法を改正して、特に登録会社への就職の制限の規定をきびしくすべきだと思いますけれどもいかがでしょうか。
  165. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の点等については十分検討したいと思いますが、全体の数字から申しますとどういうことになるのか、これは詳しく政府委員から答弁させます。
  166. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) まあ六割という数字がどこから出たかわかりませんので、まあ実際そういうことはないと私は思っております。  それから、ただいま先生御指摘の点は、確かに再三国会でも御指摘を受けておりますので、防衛庁としましては自衛隊離職者就職審査会というものを防衛庁の附属機関として法律をもって設けたい。そしてとかくの疑惑を受けないように厳正な審査をするという意味におきまして、現在防衛二法改正案の中に自衛隊離職者就職審査会の設置をお願いいたしておるのでございます。
  167. 田渕哲也

    田渕哲也君 この六割という数字は昭和三十八年から四十六年までの合計です。合計の将官のやめた方が百九十八名。そのうち百二十二名が登録会社に就職されております。それから一佐以上の合計ではこの期間に二千二十五名の方がやめられて、三十一%の六百三十八名が登録会社に就職されておる。私は特に将官——地位の高い人ほど登録会社への就職率が高くなっておる。この点を問題にしておるわけです。  それから防衛二法の改正ということで言われましたけれども、審査会を設けてもそれでやっと人事院並み、一般公務員並みになるわけですね。私はもう少し制限を設けなければいけないような気がしますけれども、どうですかね。
  168. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 疑惑を招くことがあってはなりませんから、その点は御趣旨の線に沿って十分検討をいたしたいと思います。ただ、いま御指摘になりました資料を私ちょうど秘書が持ってまいりましたが、なるほど百二十二人、これは約十年間ですか——九年間ですね。九年間で百二十二人が登録会社に就職をしたわけですが、もうとても九年間そのままじっとしておるわけじゃありませんので、これは新陳代謝でもあるわけですね。その点はひとつ御了解を願いたいと思います。  それから、その百二十二人の多数の中で役員待遇を受ける者はわずかに十二人、これはもう全くその一割にも満たないと、あとはもう全部嘱託であるとか、その他の閑職である。むしろ自衛隊幹部を今後どうするかということは、あわせ真剣に考えてやらなければならない。特に若年停年制であるだけに深刻な問題のように思います。御趣旨の点は十分取り入れてまいりたいと思います。
  169. 田渕哲也

    田渕哲也君 九年間に百二十二名ということでありますけれども、私はそれはいまおられるかどうか別にしましても、とにかくやめられた方の六割がまずこの登録会社に就職されておる。そこには現職中に何らかのつながりがあったか、あるいはこれからの先の利用度を見越して登録会社が就職させたか、そういう結びつきがやっぱりあると思うのですね。だから、防衛庁長官がそう言われましたけれども、それだけで問題は解決しないと思います。だから、この点についてはもう少し慎重に検討していただいて現在の状況を改善してもらいたいと思います。
  170. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあ、彼ら上級幹部の場合は、非常に技術的に見ましても優秀、有能な者がおるわけです。ですから、その防衛庁との利害のつながりというだけではなくって、やはり技術的なつながり、それから経営者がよく孫子の兵法を勉強しろなんといってここ数年前まで一つの流行みたいな傾向がありましたが、案外実戦の経験を経た、なるほど結論としてはまあ敗北をし、戦争の方向は間違っておったわけですが、やはりかつて軍隊の指導者として相当な実績を持っておるという者が、経営にその社員訓練等において非常に役に立つ、こういうことは聞いておりまするので、就職しておる者が直ちに防衛庁との利害関係で結びついておると、こういうふうにお考えいただくのは、現在就職しておりまする者の実力という点から申しましてかわいそうなような気がいたします。ちょっと余事でありまするが、つけ加えます。
  171. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は現在就職しておる方がどうこうということは申しておりません。ただ、これから先、こういう状態が続くと産軍癒着が起こりやすいから、未然に防ぐ意味においてですね、このように六割もの方が登録会社に就職するというような事態を改めるべきだ、こういう主張をしておるわけですから、よろしくお願いしたいと思います。
  172. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御趣旨の点、よくわかりました。
  173. 田渕哲也

    田渕哲也君 それからもう一つ、この防衛生産、防衛装備の発注状況ですけれども、これは昭和三十八年から四十五年まで統計をとってみますと、上位五社あるいは上位十社さらには上位二十社、こういうものの占めるシェアがだんだんふえてきております。四十五年はこれは航空機の発注の関係で特殊な事情で少しダウンしておりますけれども、四十四年では上位五社で実に四四%のシェアを占めておる。この集中が強まってくるというのも、私は産軍癒着にとっては警戒すべきことだと思います。この点、いかがですか。
  174. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 上位五社、まさにそうでございますね。四十五年は上位十社の場合は大体三七%程度だったと記憶いたしております。これはなるべく広く小工場等も重視していくということが望ましいわけでありまするが、要請される兵器の性能というものが非常に技術的に高度なものですから、そういう形になっておりますが、御指摘される意味はよくわかりまするので、今後留意してまいりたいと思います。
  175. 田渕哲也

    田渕哲也君 それでは次に国鉄の問題についてお伺いをしたいと思います。  まず初めに総理にお伺いをしますけれども政府は国鉄運賃の大幅値上げを行なおうとされております。現在この円切り上げ下の不況下にあって、しかも、その不況の中での物価上昇というものが国民の生活を大きく圧迫をしております。また、公共料金が軒並み値上げになりつつある。こういう中でさらに国鉄の運賃の大幅の値上げを行なわれるということは、物価対策としてもまた国民生活の圧迫の上からいっても最悪ではないかと思います。しかも、国鉄再建には私は運賃値上げが絶対不必要だということは申し上げませんけれども、運賃値上げ以外なすべきことがたくさんあります。一つは政治の問題、政府の必要な助成が十分であるかどうか、政治路線といわれる赤字路線の措置がどうか、さらには、国鉄内部の経営努力の問題、こういう問題にたくさん問題を蔵しておるにかかわらず、大幅の運賃値上げによって再建をはかろうとするのは、国民にしわ寄せをしようとするこういう政府の姿勢があらわれておると思いますけれども、この点を考え直していただきたいと思いますけれども総理見解をお伺いしたいと思います。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鉄道運賃を上げざるを得ないということは、私もまことに残念に思っております、結論から申しまして。  ところで、ただいまも御指摘になりましたように、それが公共料金である、政府がもっと一般会計で援助すれば事柄のつくようなものではないかとか、あるいはまた、国民の足だと、さような意味からいって、この値上げが国民生活を圧迫するものだと、こういう観点、この二つの点から見ましても、上げることについては私どもも十分慎重でなきゃならないと、このことはよくわかります。ことに、ただいま御指摘になりました政治の面でさらに合理化の積極的な点について政府自身にも考うべきものがあるんじゃないかと、あるいは、地方閑散線、いわゆる赤字線、そういうものが政治的に使われているんじゃないかとか、あるいはまた、一般補助の問題、これあたりも増額すべきじゃないかとか、かような御指摘は、一々ごもっともだと思っております。政府もそれなりに実は努力したものであります。これはいわゆる公共料金のうちでも鉄道運賃などは最も国民生活に直結すると、さような意味で、この値上げが国民生活に悪影響を与えないようにするためにいろいろ慎重にくふうされたと。くふうしてみましたが、しかし、やっぱり事業そのものを存続させなければならない必要なものだと、かように考えますと、やはり運賃、これまた一般価格形成と別なものではございません。最終的には上げざるを得ないと、こういう意味で御審議をお願いすることになったわけでございます。
  177. 田渕哲也

    田渕哲也君 運輸大臣にお伺いしますが、この運賃値上げについて運輸審議会に諮問されました。運輸審議会が諮問を受けたのが一月の二十一日、わずか二十三日の審議で、二月の十二日に申請どおりに値上げを認める、こういう答申がされたわけです。私は、これでは、運輸審議会のあり方に非常に疑問を持たざるを得ない。こういう短時日の審議で重大な運賃値上げを答申した。私は、これは運輸審議会の構成に大きな問題があると思うんです。現在七名の委員ですけれども、そのうち、まあ会長は別としまして、委員の中の三名が元運輸官僚である。一名が元国鉄労働組合の役員である。一名は現職の運輸事務次官である。つまり、五名は当事者なんですね。こういう者の構成でこの運輸審議会がほんとうに国民的立場で公共の利益の立場に立った御意見番の役割りが果たせるかどうか、ちょっと疑問だと思いますけれども、いかがですか。
  178. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの御質問でございますが、運輸審議会が、二十三日、非常に短時間でやったじゃないかという御質問でございます。しかしながら、運輸審議会は常設機関でございまして、日夜運輸省に参っておりまして鉄道その他一般の運輸の問題を研究している次第でございまして、また、今回の国鉄の再建計画につきましては、半年前から私どものほうでも十分検討をいたしております。したがいまして、運輸審議会といたしましても十分検討をさしておる次第でございます。具体的の運賃値上げにつきましては二十三日でございますが、例の三十四年でございましたか、四十一年でございましたか、そういったような例に見ましてもほぼ大体同じような期間でございます。その間におきまして、七回学識経験者の参考人の会合を開いております。また、公聴会もやっている次第でございます。しかし、公聴会のやり方等につきましていろいろ御批判をいただいた次第でございますので、そのやり方等につきましては今後十分に検討してまいる次第でございますが、しかしながら、それまでにおきまして審議につきましては十分に尽くしたつもりでいる次第でございます。  また、御承知のとおり、運輸審議会は運輸省設置法で決定をされておりまして、重大なる認可許可の問題につきまして運輸大臣の決定に誤りなからしめるように公平な態度でやるべしということになっている次第でございまして、しかも、運輸審議会の委員は、ただいまお話がございましたとおり一人は法曹界、一人は労働界ということでございまして、あとは大体その経験者をもって充てるのが妥当ではないかということでございまして、これは総理大臣の任命ではございますが、国会の御承認をいただいている人事でやっている次第でございまして、鋭意そのつもりでやっている、次第でございますので御了解を願いたいと、こう思う次第でございます。
  179. 田渕哲也

    田渕哲也君 ただいまの運輸大臣の御答弁でありますけれども、私は、この審議会の構成をやっぱり変えて、たとえば利用者の代表を入れるとか、もう少し広く各界の代表を入れたほうがより適切な答申ができるのではないかと思いますが、この改組についてお考えはないかどうか、お伺いしたいと思うのですが。
  180. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 重ねての御質問でございますが、実は、諮問内容が非常に専門的にわたっておりまして、路線の決定であるとか、あるいは運賃の決定であるとか、いろいろやはり専門的の分野が多い次第でございますので、できるだけやはり専門の経験を有する者というものが委員になる。そのかわり、公聴会その他におきまして一般人の感覚、国民の感覚というものを取り入れてやるのがしかるべきじゃないかということでございますので、将来の人選等につきましては総理大臣がおきめになり、また、国会の御審議御同意を得る次第でございますから、ただいまの御意見につきましては尊重いたしまして人選に当たるつもりでございますが、私の考えといたしましては、公聴会におきまして十分にその意見を反映させ得るように改善をしていけばいかがかと、こういうふうに思っている次第でございます。
  181. 田渕哲也

    田渕哲也君 まあ公聴会という話ですが、非常に形式的な公聴会をやっても、あんまり効果がないと思うのですね。だから、私は、この審議会——これは運輸審議会だけでなくて、各種審議会にこういうことが当てはまると思いますけれども、もう一度そのメンバーを洗い直してもらいたいと思います。  それから次に、赤字線の廃止の問題ですけれども、これは赤字線の廃止が遅々として進んでおりません。そして、四十五年度の国鉄の監査報告によりましても、廃止にあたって地元の理解と努力を得るよう努力することはもちろんであるけれども、情勢によっては運輸大臣の公正な判断で結論を出せというような趣旨のことが書いてあります。私は、赤字路線廃止は、たとえいかなる路線であっても、地元の人にしてみれば反対するのは当然だと思います。だから、地元の完全な合意ということでは赤字路線というものはなかなか撤廃しにくいのではないか。だから、ある程度運輸大臣の公正な判断でやるということも必要ではないかと思いますけれども、この監査報告の指摘をどう考えられますか。
  182. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの御指摘でございますが、大体においてごもっともと思っている次第でございます。しかしながら、国鉄が国民の陸上の大動脈として、国民の足として、ただに幹線のみならず、地方線におきましても、相当重要な役割りを占めている次第でございまして、先般来、衆議院委員会におきまして、国鉄再建の小委員会をお持ちをいただきまして、各党におきまして御審議をいただいた次第でございますが、その際におきましても、この閑散線の廃止につきましてはいろいろの論議を呼んでいる次第でございます。ただいまお話がございましたが、少なくとも地方の代表たる人々の意見をやはり尊重いたしまして、これを説得し、これに了解を与えるという配慮は必要ではないかと思う次第でございます。しかしながら、国鉄があることが経営上、国民経済上、好ましくない、これはだれが見ても不合理であるというものは、これはやはり勇敢にこれを処理すべきだと思いまして、今回の措置におきましても、私ども、地方閑散線ということを私どもでもって認定をいたしまして、それによりまして整理をしてまいりたいというふうに考えている次第でございまして、今日国鉄の企業努力の一環といたしましても私どもそういう点は十分に考えておりまして、鉄道網の形成の問題、また代替輸送の完備の問題、あるいはまた国土総合開発の問題、その赤字線経営によります国鉄経営の問題、いろいろ勘案をいたしまして、御趣旨に沿ったような、しかも民主的に地方住民に御納得をいただいて、できるだけ極力その閑散線の整理には当たってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  183. 田渕哲也

    田渕哲也君 この赤字廃止路線、廃止すべき赤字路線を決定された基準をお伺いしたいと思います。
  184. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうの諮問委員会で、昭和四十三年に、八十三線区、二千六百キロの意見を出しましたが、その基準をごく概略申し上げますと、二つの基準がございます。一つは、旅客並びに貨物の輸送量によりまして、旅客一日何人、貨物一日何トンということでもって約七千キロの線路を選びまして、その後、大体九つの条件によりまして、たとえば、雪害の問題、あるいは一般の道路の問題、バスあるいはトラック等の代替輸送の問題その他、九項目によりましてそれをふるい分けまして、そして二千六百キロをきめたわけでございますが、今後運輸省がなさろうとしている標準も大体それに近いものではないかというふうに承っております。
  185. 田渕哲也

    田渕哲也君 赤字線の基準はいまお話しになったとおりですけれども、現在この赤字線の廃止が叫ばれる一方で、新線がどんどん建設されております。しかも、この新線建設の中では、廃止を勧告された八十三線につながるものが非常に多いのであります。工事線五十二線のうち、十五線は廃止勧告された八十三線に連続するものである。また、五十二線のうち、鉄道輸送が有利だというデータのあるものがわずか六線区、このような新線建設が進められるというのはこれは非常に矛盾があると思うのですけれども、新線建設の基準というものは一体どこに置いてやられるのか、お伺いをしたいと思います。
  186. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの御指摘でございますが、新線建設の基準と申しましては、鉄道網の形成、そうしてまた代替輸送の問題、また陸上の他の輸送機関との経済の比較、また国土開発計画、また今回出ました工場再配置の問題、それらを勘案をいたしまして、鉄道としての大量輸送の特性があるかないか、鉄道として存続する価値があるかないかということを判断の重点といたしましてやっていくつもりでございまして、ただいまお話しがございましたそのうちにいわゆる国鉄の諮問委員会の勧告につながる線があるんじゃないかというお話でございますが、いわゆる短絡と申しまして、線路と線路をつなげることによりまして一貫鉄道の路線がそれによりまして鉄道としての価値が上がるというようなものにつきましては、これはむしろそれによりまして地方住民の利便にもなりますし、国家経済全体から見てもいいと思うものはそれをやっていくつもりでございます。ただ、私ども、新線を計画をいたしましても、その後におきまして、炭鉱が廃止になる、その他経済事情によりまして、むしろ輸送需要が激減する、そうしてまた代替輸送が非常にできてくるというようなものも事情の変更である次第でございますので、ただいまの御趣旨にも沿いまして、そうして十分慎重に検討いたしまして、重点的にこれを設置を認めていくというつもりでいる次第でございます。
  187. 田渕哲也

    田渕哲也君 工事中の新線の状況を見てみますと、私は、廃止すべきだとされた八十三線の基準をさらに下回るものがたくさんあると思うのです。これは諮問委員会の意見書にも出ておりますけれども、大部分は廃止すべきだという線よりまだ下回った基準なんですね、一日の輸送される輸送量が。だから、これは全くそういう基準を無視して新線建設が進められておると思うのですけれども、この点はどう考えられますか。
  188. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 実は、国鉄の諮問委員会で廃止すべきものだときめました八十三線、二千六百キロ、これはまだ運輸省ではオーソライズしていない次第でございます。経理その他の面からいたしましてそういったものは廃止すべきだといたしましても、代替輸送の問題、あるいはまた地方開発の問題その他で再検討を加えるべきものがあるんじゃないかということでございまして、その点は国鉄当局もその点を認めておりまして、ただいませっかく再検討をしているところでございます、それらを勘案いたしまして、また、今日、均衡あるところの国土の再開発のために、どうしてもその方面におきまして過疎過密を格差をなくなすということがいま内政上の一番大きな問題でございます。そういう点につきまして、ただいま現在におきましては鉄道輸送につきます需要量は少ないが、将来必ず多くなるという見込みのつくもの、いわゆる開発線につきましては、やはり考えなくちゃならない点もあるのじゃないか、そういう点も勘案をいたしましてやっていくつもりでございますので、御了承願いたいと思う次第でございます。
  189. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、いままで線路を廃止する場合には、代替輸送の問題とか、そこに住んでおる人が困らないか、そういう配慮は当然しなければならないと思います。ところが、新しく線を引く場合、明らかに鉄道輸送に適していないところがたくさんある。鉄道よりも自動車のほうがいいとか他の交通機関のほうがいいということがデータではっきりあらわれているところがたくさんあるですよ。こういうところで新たに用地を買収して線路を引いておるわけです。これはどういうわけなんですか。
  190. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) それらの御指摘になりましたような点につきましては、ただいま再検討を命じている次第でございます。事情の変革によりましてそういう点も出てきたろうと思いまして、せっかく再検討を命じている次第でございまして、ただいま御指摘のように、いかにいたしましても、代替輸送もでき、そうしてまた、国民経済からいたしましても陸上バス輸送その他の輸送方法がいいというようなところにおきましては、断じてこれはつくるべきものではないと、こう考えている次第でございますので、その点は十分慎重に検討をいたさせまして、御趣旨のように敷設さしてまいるつもりでおります次第でございます。
  191. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは、去年の予算委員会でも同じような問題が問題になっているわけですよ。そうして、一年たっても全然状況が変わっていない。相変わらず赤字路線がどんどんつくられているわけです。こういう問題を放置しておいて、国鉄の経営内容が悪いから運賃値上げしろと言うても、国民は納得できませんよ。もっとはっきりした答えを出してください。ほんとうにこの基準を見て鉄道に適しないものは、すぐ工事を中止すべきですよ。どうなんですか、それは。
  192. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 再三の御質問でございますが、御質問の趣旨は十分私どもも心得ているつもりでございます。したがいまして、それらの御指摘がございました点につきましては、具体的に検討をいま命じている次第でございまして、いやしくも国民の税金をむだ使いさせないように、鉄道の特性があるかどうか、大量輸送に適するかどうかというような点を十分勘案をいたしまして新線建設を進めさせるつもりでございますので、御了解願いたいと思う次第でございます。
  193. 田渕哲也

    田渕哲也君 これはまあ抽象的な答弁だけじゃなかなか納得がいかないですね。したがいまして、撤廃する線路の基準より下回るものはつくるべきじゃないと思いますね。しかも、いまある線路は、ランニングコストで計算すればいいわけです、新たに設備投資する必要ないわけですから。新線建設の場合は、これから全部の費用がかかるわけでしょう。だから、基準はもっと高い基準のものでなければ新線建設はすべきじゃないということになると思うのです。ただ、少なくとも撤廃する赤字線の基準を下回るものについては、すぐもう工事はやめてもらいたいと思いますけれども、どうですか、この点。
  194. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま御指摘の点は、十分勘案をいたしまして、その点を検討させている次第でございますので、しばらく御猶予を願いたいと思う次第でございます。
  195. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、この新線建設の決定のしかたに非常に問題があると思うんですね。これはまあ鉄道敷設法という大正十一年にできたあの古くさい法律があるわけですけれども、これも国会で再三論議されておりますけれども、その中で、どの線を着工するかきめるのは、どうするんですか、どういう経路できめるんですか。
  196. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) これは、経路といいますと、大体におきまして、運輸省におきまして国鉄とも十分協議をいたしまして、そしてその路線をある程度計画をいたしまして、これを鉄道建設審議会にかけまして、鉄道建設審議会の御決定によりましてきまる次第でございます。
  197. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、この鉄道建設審議会も非常に問題があると思うんです。二十七名の委員のうち、十一名が国会議員である。しかも、この大部分が自民党の大幹部がずらりと顔を並べておるわけですね、総務会長、政調会長、幹事長。まあ、言うなら、これは選挙対策向けの我田引鉄なんですね。だから、この鉄道建設審議会の構成を抜本的に変える必要があると思うんです。この点、いかがですか。
  198. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 御承知のように、鉄道建設審議会は、鉄道敷設法の法律できめられている次第でございます。すでに皆さまの御審議をいただきました鉄道敷設法にきめられている次第でございまして、国会議員から何名、それから現職のたとえば運輸政務次官、事務次官、あるいは大蔵事務次官というのも列記されている次第でございます。また、民間の鉄道あるいは漁業あるいは金融その他の委員を選ぶということも列記されている次第でございまして、ことに国会議員は国民の代表でございまして、これも国会の御指名によりまして内閣がこれを任命するという制度になっている次第でございまして、いま一番地方の実情に明かるい国民の代表である国会議員がこれを除くという——これを入れることが可であるという鉄道敷設法の精神にのっとっている次第でございまして、その点は御了解を願いたいと思う次第でございます。
  199. 田渕哲也

    田渕哲也君 答弁は納得できませんけれども、時間が来ましたので、あと少しだけ国鉄総裁に国鉄自体の経営努力についてお伺いをしたいと思います。  去年は、いわゆるマル生運動で非常に大きな騒ぎが起こりました。これはまあ生産性向上運動の進め方に若干問題があった、間違っておったということで反省されて、しかし、正しい意味生産性向上運動は必要だ、だからこれはやるんだということを委員会の答弁でもされました。その間約二カ月ほど時間をほしいということでありましたけれども、いま、どうなんですか、生産性向上、正しい意味生産性向上運動は再開されておるわけですか。
  200. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いわゆる生産性の向上につきましては、昨年いろいろ問題を起こしまして、その後私のほうでも考えまして、まずテキストの再検討ということで、再検討を終わっておりますけれども、その後の国鉄をめぐる情勢がだいぶ変わりまして、われわれといたしましては、やはり現時点におきましては新しい世紀の新しい国鉄をつくるんだという考え方に立たなければいけないということによりまして、やはりそれには何と申しましても企業内の有形無形の努力の結実がなければいけないということで、その時点に立ちまして、もう一ぺん過般の運動を違う次元から見直して、いま新しい国鉄づくりの一つの一環としてこれをとらえてまいりたいということで、現在私自身が検討中でございます。
  201. 向井長年

    ○向井長年君 委員長
  202. 徳永正利

    委員長徳永正利君) もう時間が過ぎたから、これでかんべんして、田渕君。——もう時間が過ぎてあれだから。ひとつ関連は……。
  203. 向井長年

    ○向井長年君 ぼくは前の委員会で聞いた問題なんです。
  204. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 向井君、一問、簡単に願います。
  205. 向井長年

    ○向井長年君 総裁、前の年末の国会で私はこの問題を取り上げて総裁の答弁を聞いておるんです。したがって、マル生運動といいますか、国鉄再建運動、これについては少なくとも二カ月後には再建をしたいと、こういうことを明確にこの場で約束されたはずなんです。それが今日、新しく次元を変えて考えたいと言っておられるけれども、ここで答弁されたことはうそですか。少なくとも国民が国鉄に対する問題は相当大きな課題として考えておるんです。したがって、その問題は、やはり過去において間違っておったからやめるというのか、あるいはまた、そういう問題はやらなくてもいいんだというのか、こういう点はどうなんですか。国会で答弁されたことをくつがえされるなんというのはおかしいと思うんだ。理由を明確にしてください。
  206. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 昨年末御質問のありましたこと、よく覚えております。私は、あの節も申しましたとおり、私のほうの職員が国鉄の利用者に対して誠意を持つこと、国鉄に対して愛情を持つこと、これが私の経営哲学であり、また純粋な生産性運動の基調であるということを申し上げました。その考えには全く変わりはございません。それを新しい国鉄をいまこれから御審議願おうとする新しい再建の中にどう組み込んでいくか、その一環としてどうこれを取り上げていくべきかということにつきましては、二カ月という期限を申しましたけれども、もう少し私はゆっくり考えたい、もうしばらく考えたいという意味で再開をしておらないわけでございまして、決して私自身の考えが変わったわけではございませんので、あくまでもこれは国民のために国鉄を再建する運動として私はいずれ全体の再建計画の中の一環として取り上げてまいります。
  207. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、国鉄の現在の状況から見たら、生産性向上というのはやはりやらなければならないと思いますし、そういつまでも考えておるだけじゃ困ると思うのですよ。国民は運賃の値上げを来月からでもやられるということを迫られているわけでしょう。肝心の国鉄総裁がいつまでも考えておられたら困るわけですよ。なぜそんなに考えなければならないのですか、その原因を教えてもらいたい。
  208. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 国鉄再建については、いろいろ考え方があるわけでございまして、私自身は、先ほど申しましたとおり、私自身の経営哲学としての一つ考え方を持っているわけでございますが、それをもう一ぺんもっとよく検討し、しかも、新しい時代の新しい国鉄にふさわしいものにするためには、いろいろな方々の意見をもう少し謙虚に慎重に聞きたいというのが私の気持ちでございます。
  209. 田渕哲也

    田渕哲也君 最後に、もう一つだけ念を押したいと思いますが、どうも国鉄のいまの内容は、私は非常にもたもたしていると思うのです。国民に値上げを要請するだけの内部体制がないと思うのです。たとえば、過員というものがある。過員というのは、合理化の結果余った人員の配置転換の問題だと思いますけれども、これもスムーズに処理されていないようでございます。一部の職場で非常にたくさん人員が余っておるということも聞いております。こういう問題の処理にしましても、非常にひまがかかり過ぎる。それから最近は職場の秩序が非常に乱れておる。暴力事件が多発しておる。また、順法スト等の職場内部の乱れによって利用客に非常に迷惑をかけておる。こういう現状で国民に値上げを納得しろと言っても、納得できないと思うのです。これはやはり国鉄の経営当局がしっかりしていないからだと思う。もっと責任を持って経営をやってもらいたいと思う。国民の国鉄なら、国民に納得のいくような経営をやってもらいたいと思う。内部でどうもくさいものにふた的な、あるいは事なかれ主義的な、親方日の丸的な、こういう感覚を早くなくしてもらわないと、国民は値上げは納得できません。この点について総裁の決意、見解を聞いて、私の質問を終わります。
  210. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いま御指摘の点につきまして、いろいろ御心配をおかけしまして、まことに申しわけないと思います。ただ、私といたしましては、四十五万のマンパワーをどうしたら結集して新しい時代に突進できるかということに焦点を合わせましていろいろ努力をいたしておりますが、現実の問題として必ずしも順調に進んでいないということは、御指摘のとおりでございます。しかし、全力をあげて信賞必罰、新しい道に向かって進んでいくということをはっきり申し上げます。
  211. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で田渕哲也君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  212. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、岩間正男君の質疑を行ないます。岩間君。
  213. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、報道自由の問題、ベトナム問題、核の問題について質問したいとい思います。  まず、報道自由の問題ですが、今回の外務省の機密文書事件で政府がとってきたいままでの一連の措置は、沖繩協定という日本の将来にとって重大な交渉で、国会と国民を欺く佐藤内閣の犯罪的屈辱的な行為が明るみに出たために、これを刑事事件にすりかえ、権力的に言論、報道の自由を弾圧しようというものであって、本末転倒もはなはだしいと思うのであります。そこで、われ一われは、これを断じて許すことができない。その点について、私は、以下具体的に総理にお聞きをしたいと思います。  第一に、政府は、今回の文書を外交交渉上の機密文書だと称していますが、一方で、政府は、密約はなかった、最終的には協定の線できまったということを言っているのです。それなら、沖繩協定審議の過程で、当然こうした資料を国会に報告すべきであったと思います。これは外交上の機密にしてはならないそういう種類の文書でないかと思うのでありますが、この点について総理はどうお考えになりますか。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来しばしばこれに答えておりますが、秘密にすべき問題だと、かように考えておりますので、遺憾ながら岩間君の考え方と私は異にしております。
  215. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言っていますが、今回明るみに出たこの外務省の文書は、単に外交交渉上の経過が漏れたといった問題でありません。その内容こそが問題だ。たとえば復元補償費四百万ドルを日本側が肩がわりしたことも、アメリカ側の担当官マッケロイ氏がこれに対しまして「日本政府が米側に支払う三億二千万ドルの中に含まれている」と最近言明していることでもこれは明らかです。これらは国民にとって無視し得ない屈辱的なものであります。当然国会に明らかにして論議すべき問題だと思うのです。これを徹底的に明らかにすることこそが国益に沿う道だと考えますが、これに対してどう考えますか。
  216. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 最近、アメリカのマッケロイですか、とかいう人が、何か三億二千万ドルの中に四百万ドルが含まれておるというようなことを言ったというようなことでありますが、私もちょいとそういう報道を聞いたんです。そこで、直ちに本人に確かめましたところ、さようなことは申しておりませんと、それは報道の間違いでございましょうと、こういうことですから、ひとつそのように御理解のほどをお願い申し上げます。  なお、この交渉の経過につきましては、二月半にわたりまして延々あの沖繩協定国会におきましてずいぶん詳細に説明をしております。さらに一一電報まで差し示して御説明をする、これは今後の外交交渉上非常に支障のあることでありまするから、それはできないことである、これもるる申し上げておるところでございますので、ひとつ御了承のほどを願いたいと、かように存じます。
  217. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、具体的に聞きましょう。  この電報の中に、これは五月二十八日に愛知外相からマイヤー氏に送った、それが牛場大使に伝えられた電報です。これによりますと、「財源の心配までしていただいたことは多とするが」とある。この財源というのは何をさすのですか。
  218. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 交渉の過程で三億二千万ドルを日本側から支払いますということがきまったわけです。一方、今度はアメリカ側からの取り分もある。これが復元補償であります。そういう交渉があった。それで、財源まで御心配願ってありがとうございますがというのは、おそらく三億二千万ドルというこの多額の金額を日本側が了承した、これをさしているんじゃないか、私はそう考えております。
  219. 岩間正男

    ○岩間正男君 外務大臣、この電報を読みましたか。
  220. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに読んでおります。
  221. 岩間正男

    ○岩間正男君 この電報の先に何と書いてあるか、はっきりしているじゃないですか。この電報には請求権とはっきり書いてある。そして「本大臣より、日本案を受諾されたし」云々というのがこの電報の内容であります。したがいまして、これは三億二千万ドルという全体の額にはならぬじゃないですか。請求権の範囲内ということになりましたなら、これは当然補償の問題でしょう。その点は、どうして三億二千万ドルになるのですか。
  222. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 三億二千万ドルというのは、これは請求権の問題とは何も関係ないです。わがほうから支払う額の総額なんです。この請求権というのは、そうじゃなくて、アメリカのほうからわがほうの取り分なんです。それは別の問題であります。したがって、別の問題として論議されておった。アメリカ側は当初この請求権の支払いにつきましては非常に渋ったのです。しかし、一方において三億二千万ドルがきまった。そこで、日本側の要求も考えなければならないかなあと、こういう心境に立ち至った。その経緯がそこに書いてある、こういうふうに御理解を願います。
  223. 岩間正男

    ○岩間正男君 この電報にいろいろなことを書いて、「三、請求権」、そしてそこになにが出てくるのですよ。この問題をめぐっていままで関連をやっていないために多くの方が質問されたけれども、明らかでない。請求権の範囲内のことについて言っている。当然、この四百万ドルというのは、これは明らかに請求権の賠償、補償の、つまり見舞い金、それだけの問題になるわけです。あんた、これで読んでおりますか。読んでいるでしょう。そんなごまかしはきかないはずです、これは。
  224. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その電報の部分は、アメリカ側からの支払うべき請求権です。これが論議になりましたものですから、それが出ておる。しかし、全体たくさんの電報があるのです。その一部だけがそこに出ておる、こういう性質のものですから、そこに請求権と書いてある。それは請求権の問題だけに触れておる問題である。これは当然のことだろうと思う。そういうふうに私どもは理解をしておりますが、要するに、三億一千六百万ドルというものがきまってその上に四百万ドル上乗せした、そうするといま疑惑のような問題になりましょうが、そうじゃないのです。三億二千万ドルというものがまずきまって、かたがたこの請求権交渉があったと、こういうことなんです。これはほんとうに間違いない事実でございます。そういうことをすなおに考えていただきますれば、よくおわかりのことかと、かように存じます。
  225. 岩間正男

    ○岩間正男君 いま国民の前で交渉経過を明らかにしているんですよ。そして、はっきり請求権とその中にこれが出てくるのでありますから、あなたの答弁は絶対これは当たりません。
  226. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはもう何回も説明申し上げたことですが、これは見方につきましては、見解の相違と、こういうふうに申し上げるほかありませんです。
  227. 岩間正男

    ○岩間正男君 事実の問題だ。見解の問題じゃないですよ。あなたそんなごまかしで国民——このためにこの期に及んでごまかしてはなりませんよ。
  228. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は国民をだまかしておりません。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 だれが読んだって、これはもう公知のことですよ。ちゃんと請求権と書いてある。その中に出てくる問題ですから、この四百万ドルというやつは明らかに見舞い金、あなたは三億二千万ドル財源、そんな一般論でやっていましたが、これは明らかに間違いだということを認めなきゃおかしいですよ。
  230. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 見解の相違がある。そこで、一方のほうの見解を押しつける、それは少し御無理な御注文じゃございませんでしょうか。私がるる申し上げているとおり、三億二千万ドルというものがきまったのです。かたがた四百万ドルの問題を論議された、そのいきさつが電報に書いてある、こういうことでございます。
  231. 岩間正男

    ○岩間正男君 国民の目をごまかしちゃだめですよ。はっきりしていますよ。そんなら、三億二千万ドルにきまったのはいつです。日にちを言ってください。
  232. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 三億二千万ドルが最終的にきまりましたのはもちろん協定をサインしたときでございますが、五月二十八日の少し前ごろから、日本が第七条に従って払う金額につきましていろいろ交渉がございました。そして、結局、資産の引き継ぎのために一億七千五百万ドル、労務費のために七千五百万ドル、それから核撤去等を考慮して七千万ドル、こういうふうに一応きまりましたわけでございます。ところが、その経緯におきまして、ことに五月の二十八日の愛知・マイヤー会談におきまして、それがきまったにもかかわらず、先方は、再びともかく四百万ドル何がしかの一これは具体的には行政裁判できまるわけでございますから、はっきりした額はわかりませんが、大体復元補償の先方が払うべきものにつきまして、アメリカの議会に対してそれだけの金が請求しにくくなってきた。したがって、日本側から何とかアメリカの議会に対して言いわけのできるような方法を考えてほしい。そこで、たとえば三億二千万ドルにつきまして、日本側は非常に努力をしてきめてくれたことはありがたいが、しかし、できたらそのうちの一部を、たとえばこの復元補償のための補償分だというようなことを明らかにしてくれるようなことをやってくれないかと、こういうことを先方は言い出してきたわけですね。そこで、それに対して、わがほうは、それは困る、ともかくこちらは三億二千万ドルもお金を払う以上、おまえさんが復元補償のために四百万ドルの金が出ないというのはおかしいじゃないか、したがって、そういうことはのめない、こういうようなことを言い合ったわけでございます。そのやりとりの一部がその電報の文章になっておるわけでございます。
  233. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなつじつまを合わせるような話じゃだめなんで、あなたはいまサインしたのが最後だと、こう言った。三億二千万ドル、そうでしょう。その前に四百万ドルの話がずいぶん出ているわけでしょう。そういう点で時日を聞いている。何日に一体そういうことをきめたのか。さっきから言っておるからね。外務大臣はしょっちゅう言っておるわけだ、先にきまったのだと。先とは何日、これが明確にならないで国民に言いわけできますか。
  234. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  235. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 日を聞いているのだ。はっきり言ってください。
  237. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) これにつきましては、先方と何回も交渉がございまして、そして五月の中旬から下旬にかけてわがほうの一応三億二千万ドルできめようという気持ちが出てきたわけでございます。で、その愛知・マイヤー会談の直前にわがほうの腹づもりがきまったと、われわれはこう覚えております。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 調印した日は。
  239. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 調印した日は、六月十六日でございます。したがって、六月十六日に最終的にはきまったわけでございます。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちゃんと記録しているはずだから、わかるでしょう。持っていらっしゃい、ここへ。——記録をとってないということ、そんなことがありますか。
  241. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  242. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  243. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうルーズなものですか、外交交渉というものは。
  244. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 外務省の記録にないかと、こういうことです。
  245. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) このころの交渉及びわれわれの内部の打ち合わせは、ほとんど記録が、公式な記録というものは残念ながら残っておりません。というのは、各省との話し合い、それからわれわれ自身の先方との話し合い、こういう形が大部分でございまして、したがって、それを一々記録にとっておりません。しかしながら、この電報文にもあらわれておりますとおり、愛知・マイヤー会談の際にわがほうがわがほうの腹づもりとしてそのことを言ったと、その意味では今回明らかになりました五月二十八日の電報は、その一端を記録しておるわけでございます。
  246. 岩間正男

    ○岩間正男君 驚くじゃないですか。聞けば聞くほど驚く。これだけのことが記録にも残されないでいくところに秘密外交の正体があるんじゃないですか。国民はこれに対して判断するでしょう。  もう一つ、これに関連して聞きますが、三億二千万ドルの内容というのはどういうものですか。
  247. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは協定に書いてあるとおりでありまして、一括して三億二千万ドルであります。しかし、その一括の背景といたしましては、資産の承継、これがおおよそ一億七千五百万ドル、それから労務費七千五百万ドル、その他七千万ドルあります。これは核の撤去あるいはこれから米軍が基地を引き揚げていく、そのときに施設をただで日本に置いていく、そういうことを考慮したものであると、こういう御理解を願います。
  248. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは解釈、説明が変わってきていますが、その中で積算の基礎のあるものは……。
  249. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 正式の積算の基礎というわけではございませんけれども、一応のめどといたしましては、資産承継一億七千五百万ドル、それから労務費七千五百万ドル、これは一応の計算をしてあります。
  250. 岩間正男

    ○岩間正男君 だんだん根拠がくずれてくるのですね。積算の基礎のあるのは、さきの二つの、資産買い取り、そして退職金。しかし、核の撤去費七千万ドルは高度の政治判断というのがいままでのあなた方の答弁。その中に四百万ドルがそっくり入っておるんじゃないですか。国民は常識でだれでもこう考えますよ。どうです。
  251. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 七千万ドルは、これは核の撤去並びに米軍がこれから引き揚げていくその際にその施設をわが国に無償で残していく等のことを考慮いたしました高度の政治判断としてきめた額であります。四百万ドルは入っておりませんです。
  252. 岩間正男

    ○岩間正男君 知らぬ存ぜぬでまかり通れる問題ではないと思うのです、この問題をもっと明細にしなければ。私はこのような外交交渉の一端をこの電報で質問したわけですが、しかも、こういう文書、秘密電報というのはたくさんあるでしょう。この前で言えば、愛知外務大臣は、国会討論会で、そういうものは百数十通もある、それは、機密、それから極秘、秘、こういうことだという。その中には、当然、私は、国会最大の問題、核に関する問題があるだろうと思う。さらに、事前協議の問題に関するものもおそらくあるだろうと思う。さらにまた、特殊部隊に関する問題もあるだろう。あるいは韓国条項、台湾条項、極東条項、こういうものに関する問題もたくさんあるだろう、そういうふうに考えざるを得ないのです。なぜかというと、国会のあなたたち答弁は、絶えずアメリカの当局者の向こうでの言明と食い違っておる。これはしばしばわれわれが経験したところです。したがいまして、私は、この機会にこの内容を明らかにするのが当然だと思うのです。ところが、これをしないで、機密だ、秘密だということで記者まで逮捕するというようなことを考えますというと、これは政府にうしろ暗いところがあると、こう言われてもしかたがないではないですか。
  253. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いろいろ具体的な事例をあげましてのお尋ねでございますが、私の知るところでは、韓国条項、台湾条項、そういうものについての論議は私はなかったと思います。その他の、核の問題とか、いま御指摘の諸問題については、論議があったと思う。これはもう当然だと思います。しかし、それの一々の電報を御披露いたしまして説明するわけにいかぬ。しかし、電報は御披露いたしませんけれども、長い長い沖繩国会におきまして、ずいぶんその経過なりあるいはこの結果なりを御説明申し上げているわけなんです。決して秘密も何もありませんですから、特に結果につきまして裏取引があったんだとか、あるいは秘密協定があるんだとか、さようなことは断じてありませんから、御心配なくひとつ御理解願います。
  254. 岩間正男

    ○岩間正男君 信用できないと国民は言っているのです。断じてありませんと言った裏からどんどんこうくずれてくるんだから、沖繩国会での言明がみなくずれてきているのだから、国民は疑うのはあたりまえです。そういうことですから、こういう機密とかなんとかといってごまかしてはいけない。ことにさっきの問題は、国の財政、国民の金ですね、これが何ら精算の根拠も示されないで、どこに使ったかわからぬ、こういうことではわからぬ。国民が関心を持ち、この内容を究明するのは当然です。政府はこれを明らかにする義務がある。これがどうして一体こんな機密などと言えるものか。政府は秘密外交でないと言うなら、その実績を示すべきだと思いますが、これは佐藤総理大臣にお伺いします。
  255. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の外務省は秘密外交はやっておりませんです。秘密外交は断じてこれを排斥いたしております。ただ、交渉の経過だけは相手のあることでもある、それが一々漏れるということでありますれば、これから外国との話し合いはできない。これはもう岩間さんも御了解できるんじゃないかと思うのです。その経過の一々を申し上げにくいということだけを言っている。つまり、外交には機密はある、こういうことです。しかし、それは秘密外交とは断じて違う問題であると、こういうことでございます。
  256. 渡辺武

    ○渡辺武君 関連。関連して一言伺いたいと思います。  総理大臣は、ここ数日来、取材活動の自由も法の範囲内であるという趣旨のことを盛んに強調しておられます。そこで伺いますけれども、いま刑法上の責任を問われている記者の取材活動に関係した秘密なるものの範囲、それからまた内容などは、法で特定されているかどうか、この点をお伺いしたい。
  257. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 西山記者に関する事柄は、ただいま捜査中でございますから、私は何にも申し上げるわけにはまいりません。
  258. 渡辺武

    ○渡辺武君 法で特定されているかどうかということを伺っているのです。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げたとおり、西山記者に関する限り、私が申し上げる、そういうことは段階でないと御了承願います。
  260. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、あらためて伺います。国家公務員法の百条でいわれている秘密、職務上知ることを得た秘密というものの範囲や内容、これは法で特定されておりますか。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法制局長官から、はっきり法律的なお答えをいたします。
  262. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  秘密の内容が法で特定されておるかと、こういう御質疑のようでございますが、これは国家公務員法の百条をごらんになればわかりますように、秘密の保持について秘密を漏らしてはならないということが書いてあるわけでありまして、この国家公務員法上において、秘密の中身が何であるかということは書いてございません。
  263. 渡辺武

    ○渡辺武君 秘密の範囲が法で特定されていないと、もしするならば、総理大臣の言う取材活動についての法の範囲というのは、どの法の範囲になりますか。
  264. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げたとおりに、国家公務員法で特定されておるかという御質問でございました。国家公務員法の中に特に本件の場合に関連したような事項につきまして中身が規定されているわけではございません。ところで、この秘密——国家公務員法上の秘密、あるいは一般に秘密の内容は何であるかというのは、この間、松井委員からもお話がございましたが、これは学説、判例上なかなか問題の存するところでありますが、昭和四十四年でございましたか、東京高裁あたりの判決によりますと、秘密の指示をされた物で、しかもその内容が刑罰をもって保護するにふさわしいもの——ことばは正確ではないかもしれませんが、そういう趣旨のことがこの判決でいわれております。大体においてそういう考え方でいいのではないかと思います。  それからまた、本件に関する関係における問題は、先ほど総理大臣の御答弁のごとくに、私どもこれについて云々する立場に現在ないということを申し添えさしていただきます。
  265. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、まことにこれは抽象的な範囲です。つまり、どの範囲まで取材したら刑法上の罪を問われるかという、その範囲がはっきりしていない。そういう秘密なるものを取材したということで、いま二人の国民が刑法上の罪に問われているのです。これは法律上の重大な問題です。しかし、法律上の問題にとどまらずして、特に報道の自由、言論の自由にかかわる重大な問題です。しかも、きのうの政府側答弁を伺っておりますと、問題の秘密なるものの範囲は各省の内規に基づいて局長がきめるということになっている。こんなことで取材活動が制限されるということになれば、秘密の範囲は政府の都合で幾らでも広がる。しかも、政府は、いま岩間議員の質問でも明らかなように、アメリカに対する屈辱的きわまりない外交折衝、その中身を知られないために、今度のようなことで二人の人間を逮捕するということなんです。これは報道の自由、言論の自由に対する侵害そのものじゃないですか。このままでいけば、かつての戦争中の言論統制に道を開くことになると思いますが、どうですか。
  266. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 秘密の範囲というものが不明確であるということでございましたが、本件の場合について詳しく申し上げる必要もないと思いますが、この西山記者の場合には、国家公務員法の百十一条——申し上げるまでもないと思いますが、百十一条で秘密漏洩の行為をそそのかす行為についての責任問題というのが問われているわけであります。実際にそういう百十一条の適用対象になるかならないか、これはむろん捜査当局なり、あるいは刑事事件になった場合には裁判所が決定することになりましょうが、だからといって新聞の取材活動の自由が阻害されておるというのは、多少問題ではないかと思います。これまた、わざわざ申し上げるまでもないと思いますが、これも四十四年の高裁の判例でございますが、新聞記者としての取材活動であったとしても、そのゆえに絶対無制限に許容されるものではないと、その手段方法は法秩序のもとに他の法益を侵さないように行なわなければならないと、ちょうど先日の問題になっておりました倫理綱領にあるようなことが判決の内容にも示されております。そういう意味で、確かに法秩序のもとに、他の法益を侵すということはいけないけれども、そうでない限りは、取材活動の自由というのはあるということは申し上げるまでもないところであります。
  267. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 岩間君。
  268. 渡辺武

    ○渡辺武君 一問だけ。
  269. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 関連ですからその辺で。岩間君。
  270. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問だけ。
  271. 徳永正利

    委員長徳永正利君) じゃ、ごく簡単に一問。
  272. 渡辺武

    ○渡辺武君 その国家公務員法の秘密の範囲なるものは法で特定されていない。局長の判断で伸びたり縮んだりするものなんだ。そういうものをたてにとって、そうして取材活動を制限する、これが問題なんだ。つまり、このことは、国家公務員法というものを使って、そうして政府の都合のいいように言論を封殺しようということにほかならない。明確なこれは政治的弾圧です。このような弾圧はやめて、そうして、いま刑事上の罪に問われている二人を直ちに釈放すべきだと思いますが、どうですか。
  273. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 警察といたしましては、この事件は、いわゆる西山氏の取材活動が、法で許されておる範囲を逸脱しておるという容疑がきわめて濃厚でございますので、その点の捜査を続けておるのでございまして、決して取材の自由を束縛しておるとか、侵しておるとかいうことには該当しないと考えておりますので、いまの時点では釈放する意思はございません。
  274. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど総理は、機密保護法の問題について質問があったのに答弁して、国家の機密、さようなものはございますから、やはり機密保護法はどうしても必要だと思います、こう答弁しておる。ただし、この事件ではしないと、こういうことでありましたが、この点、一体どういうことなんでしょうか。民主国家で、国民の利益を守る以外に、そのような秘密というようなものは、これは存在しないと思う。憲法の精神からいって、このような機密保護法をつくるということは、これは断じて許されないと思うんですが、どうですか。
  275. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず、岩間君に誤解のないように願っておきますが、ただいまのこの段階で機密保護法云々ということは、どうもいま展開されておる秘密文書漏洩事件と関連があるようにとられると、たいへん私も迷惑ですから、それは全然関係なしだと、こういうことで御理解を願いたい。  そういう立場に立って、国家の機密、これはやはり保護するというものがなければならない。これはやはり、民主国家にそういうものがあるでしょう、他の国においては。これは民主主義の国ですよ。また、共産主義の国には、はっきりそういうものがあるですね。そういうことを考えると、私は、そういうものは必要じゃないかと、かように思っております。どうぞ御賛成願いたい。まだしかし、ただいまの段階政府は腹案を持っておるわけじゃございませんから、誤解のないようにお願いいたします。
  276. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまはつくらないが、しかし必要だと、こういうことですね。私は、憲法のたてまえから、日本の憲法のたてまえがはっきりしていますから、そういう点から、こういうものはつくるべきじゃない。それを、政府のやることははっきりしているじゃないですか。たとえば、安保条約をめぐるところのたくさんの機密なものがあります。これは協定という名前をつけたり、あるいはまた覚書、あるいは合意書、ことにこの合意書のごときは、国民に知らされないのが数十あるわけでしょう。私もその一つを明らかにしたことがあります。スパイ協定の問題です。こういうものこそ国会の議決が必要だということをわれわれ共産党は主張してきました。この方法をはっきりとるべきだと考えますが、いかがですか。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君のただいま御指摘になりましたこと、ちょっと私つかみがねたんですが、時間をはずしてけっこうですから、そのままでもう一度おっしゃってください。
  278. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それじゃ岩間君、立って。時間に入れませんから、立ってやってください。
  279. 岩間正男

    ○岩間正男君 じゃ、ゆっくりやりましょう。そういう公認の時間ならこれはよろしい。(笑声)  当然、憲法のたてまえからいえば、ことに安保条約なんかをめぐって、国民に知らされないたくさんの秘密取りきめがあります。これは、われわれ国会での長い間でこの問題をいままで指摘してきました。たとえば交換公文、あるいは協定という名前、取りきめという名前、ことに日米合同委員会の合意書のごときは、これは八十幾つあるはずでしょう。そうして約二万ページにわたるといわれております。その中の一つを、かって私は、基本労務契約として、いわゆる黒い霧のスパイ協定ということで、たいへん大きな問題にしたことがございます。米軍にいろいろなスパイを提供しておる、そういう実態が明らかになっている。その後、この協定の中身のいろいろな職種を変えたりして、問題をごまかしております。したがって、当然私は、憲法のたてまえからいうならば、こういうものを国会にかけて、その議決をはっきりとる、そういうたてまえをとらなければならないんじゃないか。これは機密保護法をつくるよりもはるかに重要な課題じゃないかと、こういうことを主張しておるのでございますから、はっきり御答弁願います。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見は私誤解はしていないつもりです。ただいまのような御意見もあることを考え、これからつくる法律には、十分注意してまいるつもりです。
  281. 岩間正男

    ○岩間正男君 それのほうが重大ですよ、機密保護法とか、そういうことではなしに。  それでは、私は、時間の関係から次の問題に移ります。  ベトナムの問題ですが、米中首脳会談の結果について、さきに佐藤総理、あなたは、対決から対話の時代に移り、アジアの緊張緩和に資するところ大である、こういうふうに言っていられます。福田外相も、アジアに緊張緩和の勢いができた、これを歓迎し推進したいと述べてこられました。ところで、現在のインドシナを中心とするアジアの情勢が、ほんとうに緊張緩和方向に向かっていると思われますか、どうですか、お伺いします。
  282. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 米中会談の影響につきましては、これはいろいろある、事こまかに点検しますと、緊張緩和と反対な方向の現象も見られる、こういうことを申し上げておるわけであります。しかし、大局的に見まするときに、何といっても、中国封じ込め政策をとってきたアメリカが対話の姿勢をとり出した、こういうことでございまするから、これは大きな勢いといたしまして、緊張緩和の雰囲気をかもし出しておる、こういうふうに見ておる、そういうことを申し上げておるわけであります。
  283. 岩間正男

    ○岩間正男君 最近の情勢が緩和の方向に向いているかというんですよ。そういうふうにお考えになるんですか。
  284. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 個々具体的な地域について見ますると、問題のあるところもある。特に私はベトナムのことを指摘しておるわけなんです、ベトナムのようなところもありますと。しかし、大きな動き、大勢といたしましては、緊張緩和の空気をかもし出しておる、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  285. 岩間正男

    ○岩間正男君 ベトナムが本格的なああいう攻撃を始めた。そういう中で、あなたがそういうことを言っていられる。  ところで、米中共同声明によると、アメリカは、アジアと世界の緊張緩和とか、平和共存ということを説いて、ベトナム問題については、米国の一貫した目標は、会談で解決することである、こう言っています。はたしてそれなら、現在ベトナムは、緊張緩和とか話し合いによる解決などの状態にあると思いますか。
  286. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、少し長い目でベトナム問題をながめるとき、またインドシナ半島をながめるときに、これは、動きといたしましては、緊張緩和、こういう方向に向かっておると思います。しかし、まあそこまで至る過程において、まだいろいろ紆余曲折はある、こういうことは避け得られないと思います。その避け得られない紆余曲折の一つが今日のベトナムの状態である、かように理解しております。   〔委員長退席、理事西田信一君着席〕
  287. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあニクソンは、緊張緩和とか平和五原則などという口当たりのいいことを言いながら、訪中期間中も大規模な北爆、南爆を繰り返し、その後それがますますエスカレートしているのです。われわれ調べましたが、二月中だけでも百三十九回の北爆、一月から三月までの北爆回数は昨年の六倍にのぼっています。また、会談による解決などと言いながら、三月二十四日、ニクソンの直接指示でアメリカは一方的にパリ会談を無期延期させたではないですか。このように、米中会談から一カ月余りしかたっていないいま、ニクソンの緊張緩和がいかに欺瞞に満ち満ちたポーズであったかということが明らかになったと思うのですが、この点いかがですか。
  288. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 米中会談の及ぼす影響につきましては先ほど申し上げたとおりでありますが、この米中会談が行なわれるその前におきましても、私はそういう感想を持ったのです。つまり、地域的には緊張緩和と逆な影響も出てくるかもしらぬ。私は、特にベトナムにつきましては、これはその逆な動きの一つというふうな見方をしておったのです。つまり、この米中会談に対しまして、北ベトナムは非常な反発を示したわけなんです。それから同時に、ソビエトロシアも米中会談につきましてはかなりの警戒心を抱いたと、こういうふうに想像される。そういうことを総合いたしまして、このベトナム半島に及ぼす米中会談の影響というものは、これはなかなか容易ならざるものがあるだろうというようなことを予想しておった。それが予想したとおりのことになってきたわけです。しかし、それだからといって、米中会談が全体としてアジアの大勢に対しまして緊張緩和の勢いをかもしだしたということを否定することはできない、こういうふうに思います。
  289. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、会談で解決するとニクソンは言ったわけでしょう。ところが、会談で解決する、その具体的な実態がこういうことなんだ、これは欺瞞だろう、こう言っているわけですよ。さらに、どうか、ここ一週間のベトナムの情勢の緊迫化、こういうものについて、これはどういうふうに政府はつかんでおられますか。
  290. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、北越軍が中立地帯を越えて南進をしておる。それに対して、南ベトナム軍並びに米軍がこれに反撃を加えておる。事態は非常に重大化しておる、こういうふうに見ております。私どもといたしましては、すみやかにこういう状態が解決され、パリ会談も再開されて、ジュネーブ会談の精神で、この半島全体の問題が解決される日が一日も早くと、こういうふうに念願しております。
  291. 岩間正男

    ○岩間正男君 人ごとのようなことを言わないでください。日本関係が深い全アジアが非常にいま大きな衝撃を受けているのです。ここ一週間のベトナムの情勢の緊迫化、南ベトナム北部での解放軍の猛攻に対して、敗北を取り戻そうと、アメリカはアジア地域に配備していたすべてのB52をベトナム爆撃に投入し、さらに新たに二十機を増派した。トンキン湾に第七艦隊の空母群を出動させ、一九六八年の北爆停止以来最大の規模の激しい爆撃を行なっております。現に昨日の一日だけで四百三十九波の爆撃が行なわれているんですよ。この大規模な北爆について、政府は一体どう考えておられるのですか。これは佐藤総理も聞かしてください。
  292. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ベトナム半島で行なわれる戦闘行動について、わが国といたしましては何も手出しをするよすががない今日の現状であります。たいへん残念なことでありまするが、率直に申し上げまして、そうなんです。しかし、われわれの心情といたしましては、この半島に一日も早く平和が到来するように、そうしてジュネーブ協定の精神でこの協定が結ばれるようにと、こういうことを念願をいたしておるのです。そういうことで、私どもの手だては乏しゅうございまするけれども、機会がありますれば、そういう方向の努力を積み重ねていきたいと、こういうことが私ども考え方でございます。
  293. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことをあなた言っておりますがね、ここで非常に重大な問題は、アメリカのベトナムでの軍事干渉強化、侵略戦争の拡大には、沖繩をはじめ日本本土の基地から直接進撃が行なわれていることです。まさに、アジアと日本の平和と安全にとって重大な、これはゆゆしい事態が起こっている。日本政府はこの事態に対して、アメリカから何らかの通知や連絡を受けていると思いますが、どうですか。
  294. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 空軍が日本から飛び立ってどっかへ行ったという通報を受けております。これはベトナム地域じゃございませんです。フィリピン方面のようでありますが。   〔理事西田信一君退席、委員長着席〕  それから、これは新聞で見たんで、その後確かめてみたんですが、横須賀の第七艦隊所属の艦艇が、これは西のほうへ向かって出航したと、こういうことを確認をいたしております。
  295. 岩間正男

    ○岩間正男君 驚くべき答弁ですよ。結局アメリカから何の通知も報告もないというのですね。
  296. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 空軍が南のほうへ移動するということにつきましては通知がありました。しかし、艦艇につきましては何らの通知はありませんです。
  297. 岩間正男

    ○岩間正男君 何月何日です。どういう通知です。通知内容
  298. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 空軍につきましては、四月六日の日に通報がございました。艦隊につきましては、先ほど福田大臣のお答えのとおりでございます。
  299. 岩間正男

    ○岩間正男君 知らぬは政府ばかりなりですか。これは直接もうベトナムに向かっている。トンキン湾、そこに行って、もう空爆、あるいはもう艦砲射撃を始めている。あるいは途中に行っている。そういうことだと思うんで、これ全然通知もない、これは驚くべきことだと思うのです。ことに、これは日本の横須賀からニクソン大統領の作戦命令を受けて、これは直接出撃している。  それではお聞きしたいんですが、三日、横須賀港から出動した米七艦隊の空母艦船、その隻数、名称、トン数、艦載機数、乗り組み員、こういうものをここで示していただきたいと思います。
  300. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 横須賀を出ましたと思われます艦艇は巡洋艦、これはオクラホマシティ、約一万トン、乗員が一千六百人ばかり。それから攻撃空母でコンステレーション、排水量が六万トン、搭載航空機数が約八十機、乗員数で五千人。それから駆逐艦でジョンポールジョーンズ、排水量で約四千トン、乗員数は約三百人であります。
  301. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのほかに空母バンコックですね、これが三月三十一日に出航してましょう。これはどこへ行ったんです。
  302. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 私どもで見ております、おそらく南方に向けたであろう空母としましてはコンステレーションで、あとは護衛艦、潜水艦などがありますが、空母は必ずしもこのうちに入っておりません。
  303. 岩間正男

    ○岩間正男君 何日に出たと思われます。
  304. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 答弁が不足だったの。
  305. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) はい、いま質問がありましたので。
  306. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 質問はきちんとして、ぼくが整理しているんだから、直接的な取引は、さしの取引はいけませんよ。
  307. 岩間正男

    ○岩間正男君 何日にこれは出撃したんですか。
  308. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 四月三日であります。それから潜水艦は四月五日であります。
  309. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つ聞いたね、さっきお答えのないのがあるから、バンコック、この前水兵がアメリカ大使館に逃げたやつだ、バンコック。空母バンコック。
  310. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 答弁の補足があれば補足してください。補足がなければ、私の言うとおりにやってください。補足があれば補足をやってください。
  311. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) バンコックはわかっておりません。あとで調べて御返事いたします。
  312. 岩間正男

    ○岩間正男君 いかに緊急に出撃したかということは、きょうの朝日新聞によりますというと、水兵三十人を積み残して行ったというんだな、これほど緊急に行った。それがしかも、これは大統領の作戦命令です。これは明らかにしかも、日本の施設、区域から直接戦闘作戦行動への出撃です。当然事前協議の対象にならなきゃならぬと思うのですが、アメリカ政府側からこのような話が全然なかったのですか。
  313. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 本件につきましてはアメリカ政府に確かめましたが、戦闘命令は受けておりません。したがいまして、事前協議の対象とは相なりません。
  314. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、どうしてこれ、確かめるのです。アメリカの信頼ということだけじゃ話にならぬでしょう。米兵三十人も積み残していくようなこの緊急の態勢に対して、そんな、のんかんなこと言ってられますか。
  315. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ですから、わざわざアメリカ政府にこれは戦闘命令を受けた出動であるかということを確認したわけなんです。ところが、そういうまだ段階には入っておらぬ、こういう回答です。こういうことであります。
  316. 岩間正男

    ○岩間正男君 当然これは事前協議の対象にしなきゃならぬ緊急事態。日本国民の平和と生命に関する問題でしょう。アジアの平和にも関する問題。当然日本政府の態度としては、きびしくそういう問題について明らかにしなきゃならぬ。しかし、アメリカから言ってこなきゃ絶対受けられないのがいまのこれは事前協議の性格ですか、そうなっておるんですか。
  317. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、わが国の施設、区域から戦闘命令を受けて出撃をする、こういう際にはこれは事前協議の対象になる。ところが、そういう対象となるべき性格であるかどうかということをアメリカ政府に確めたところ、戦闘命令は出しておらぬ、こういう回答であることを申し上げておるわけです。
  318. 渡辺武

    ○渡辺武君 関連。
  319. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 渡辺君、簡単に願います。
  320. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは、アメリカ大統領から戦闘命令を受けていることは、これは明らかだと思うのです。アメリカ政府がワシントン特別行動部会を招集して作戦を練って、三日にはニクソン大統領の直接作戦命令が出されて、そうして急遽出動した、こういうことが新聞にもはっきりと書かれておる。日本政府がこれくらいのことを知らないはずがない。しかも、日本の港から出た第七艦隊、これが直接に、飛行機を飛ばして爆撃しているだけじゃない、艦砲射撃までやっている、そういう状態。政府昭和三十五年の安保特別国会で、「第七艦隊は在日米軍とは言えないが、日本の施設、区域を使用して戦闘作戦行動する場合は、事前協議の対象に入ってくる」というふうに答弁している。この見解政府はその後変更なさったのか。この見解に基づくならば、当然これは事前協議の対象になるんじゃないかと思うけれども、どうですか。
  321. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 事前協議の対象となるべき事項についての見解は、その後何らの変更はございません。今回はそういう情報、つまり、横須賀基地から米艦隊が出動した、こういう話がありますので、アメリカ政府に、この艦隊に対しましては戦闘行動を命じたものであるかどうかを確かめたわけなんです。確かめたところ、そういう事態にはまだ立ち至っておらぬ、こういう回答があるので、したがって事前協議の対象にはならぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  322. 渡辺武

    ○渡辺武君 直接艦砲射撃までやっているのですよ。日本の港から出ている。直接艦砲射撃までやり、そうして飛行機を飛ばして爆撃までやっている。これを戦闘行動と見ることができないのですか。おかしいですよ。
  323. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) ベトナム周辺でそういった情勢があることは、新聞では承知いたしておりますけれども、正式の情報を受けておりません。
  324. 渡辺武

    ○渡辺武君 実際、直接戦闘行動に参加しているのに、アメリカからそういう情報がないということでもって何ら事前協議に持ち込もうとしない、こんな態度、許すことできますか。昨年中の沖繩国会で、政府は、返還後の沖繩には安保条約がそのまま適用され、直接戦闘作戦行動は事前協議の対象になるので、ベトナムヘの自由出撃ということは一切なくなるということを繰り返し答弁しております。ところが、沖繩から出ているだけじゃない、日本本土の基地からも出ている。しかも、直接作戦行動に、戦闘行動に参加しているのにもかかわらず、いやアメリカからそういう通告がないからということで事前協議にもかけない、こういうことでは事実上アメリカの自由出撃という状態になるのじゃないですか、どうでしょうか。
  325. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 横須賀を出港する時点の問題です。この時点におきましては、まだ戦闘作戦行動という状態じゃない、戦闘行動の指令をもらっておらぬ、そういう状態なんです。それが、たまたまベトナム水域において戦闘行動に参加した、こういう情報がある。この情報は、いま防衛局長が言うとおり、確認はされておりませんけれども、しかし、私が申し上げておりますることは、横須賀を出るその瞬間におきまして戦闘作戦行動の指示は受けておらぬ、したがって事前協議の対象にはならない、こういうことです。
  326. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまのような言い方でいくと、基地のときにもう戦闘が始まっていなければならないような言い方ですね。久保局長、新聞で知ったということは重大問題だよ。こんなことで防衛局長つとまるか、どうなんだ、あなたの見解を言ってください。
  327. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは政治問題ですから私からお答えしますが、これは私自身も新聞で知っておるわけでございます。だから防衛局長もまあこれは当然なわけでして、いま外務大臣がしばしば申し上げておりまするように、やはり日米安全保障条約の事前協議という事態もあるし、日本が平和を求める国家であることはアメリカもよく知っておりますから、この日本の基地から戦闘行動を起こすなんというようなことは、信頼関係にあるアメリカとして、これはとうていやり得ないところだというふうに私理解をいたしております。したがって、日本の基地から出ましても、たとえばフィリピンに寄るとか、あるいはしかるべき基地に寄って、それから戦闘行動に入るということは、これはどうも日本には関係のない問題だと思っております。
  328. 岩間正男

    ○岩間正男君 念のために久保局長もちゃんと見解を述べておきなさい。
  329. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 私どものやれる範囲とやれない範囲とがございます。したがいまして、現地の情報はやはり若干おくれて私どもの手元に届きます。そこで、今日の状況で私の了知をしておる範囲では、正式にそういった情報を私は存じておりません。
  330. 岩間正男

    ○岩間正男君 足元の、しかも日本の玄関からアメリカの空母が出て行く、それを日本防衛庁長官が知らなかった、防衛局長が知らなかった、これで済むと思っておるのですか。これがまさにいまの日米安保条約の内容じゃないですか、具体的な。つんぼさじきに上がっておるのじゃないですか。こういうことでは、いついまのような解釈で事前協議なしにどんどん自由出撃され、そういうことを手放しでやることになると思うのです。この問題は重大な問題ですよ、いま足元で起こっておる問題なんだ。どうなんですか。
  331. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これも外務大臣からの答弁で尽きておると思いますが、われわれは専守防衛であります。しかも、平和を求めておる国であります。アメリカはそれを百も承知なはずです。しかし、日本の基地からいきなり戦闘行動に入っておるというようなことがあれば、これはやはり日本側から抗議をするとか、しかるべき措置をとるということはありましょう。しかし、現在の時点ではそういうことはない、これは外務大臣がお答えをいたしておるとおりてございます。
  332. 岩間正男

    ○岩間正男君 世界とアジアの緊張緩和だ、平和共存だ、平和五原則だ、そうして交渉であくまでやるんだ、それがいま一日に何百機の戦闘機をベトナムで展開しておるんだ、それがどうして一体、そういうようなアメリカに対して、アメリカは日本が平和を守る国だということを知っておるんだ、そういうような手放しのあなたの答弁ですね、こういうことで国民が了承すると思いますか。どうなんです、一体。佐藤総理に伺いたいと思います。
  333. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 日本の基地から戦闘行動に入ったとは思いません。このことを申し上げたわけでありまして、もしかりそめにもそういうことがあれば、これは外務省を通じて厳重に抗議をする。こういうことはあり得るということを申し上げておるわけでございます。
  334. 岩間正男

    ○岩間正男君 随時協議だってできるじゃないですか。外務省何やっている、国会対策だけじゃだめですよ。
  335. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) もし日本の基地から戦闘命令を受けて作戦に行動する意図を持ちまして出撃をするということでありますれば、これはもう当然事前協議の対象になる。今回のケースはそうじゃないのです。米軍の艦隊にいたしましても、あるいは空軍にいたしましても、通常の出動をしておる、それが途中においてあるいは戦闘作戦命令を受けるかもしれない、そういう事態なんです。とにかくわれわれのアメリカとの約束は、わが国の施設、基地を利用いたしまして戦闘をする、こういう際には事前協議の対象になる、こういうことでありまして、その他の以外のことにつきましては、これはそういう約束はしておりませんです。
  336. 岩間正男

    ○岩間正男君 国会で説明がつけばそれでまかり通ると思っている、これが日本佐藤内閣治下における政治の通性です、体質なんだ。途中で命令を受けたんだ、何べん同じことを言うのです。あなたは、その限界はデリケートだ、こういうことをいままで言いました。また今度も、限界だ、デリケートだと言うのでしょう。しかし、事前協議というものは、これは一回もやられないのです。こういうかっこうで、実際は日本の基地がアメリカ軍の自由出撃基地になっている何よりの証拠だ、具体的に。われわれは、沖繩協定の調印によって、現行安保がアジア安保に変質することの危険を口をきわめて指摘してきました。その指摘の正しさが、残念ながらいまこうして実証されているのではないですか。
  337. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 沖繩の基地には本土における基地の規制がそのまま適用されるということでありまして、沖繩の返還前の状態がわが本土の基地に適用される、あるいはそれが波及するというようなことは、これは断じてありませんから、御安心願います。
  338. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことをあなた言っているのですけれども、事前協議の通告もない。そうして首都東京の玄関先の横須賀から直接出撃がなされている。日本の基地が無断でベトナム戦争に直接使われている。これでは全くのつんぼさじきです。国民の知らない間に、いつ戦争に巻き込まれるか、これではわからないじゃないですか、こんなことが許されていいんですか。
  339. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) かりそめにも戦争に巻き込まれるようなことがあってはならないと思います。現在のベトナムとの情勢で日本が戦争に巻き込まれる、そういう憂いは寸毫もありませんので、これは御安心を願いたいと思います。
  340. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたがそう言っているだけだ、わかるものですか。これはしかも本土のことですが、沖繩ではどうです。沖繩では、たとえばここ一週間の間に嘉手納にいる約三十機のKC135の空中給油機が、グアムから飛んでくるB52の給油、これが四月に入ってから非常に激増している。午前に五回、午後七回に及んでいます。また、キャンプコートニー、キャンプシュワーブにいる第三海兵師団ですが、これがもう外出禁止です。出動の準備を始めている。具志川村の天願軍港、これは米陸軍第二兵たん軍団の弾薬庫、これもしょっちゅう送るところですが、この輸送作業が全軍労のスト中にもかかわらず活発化している。これはほんの一例です。われわれの知り得た一例ですけれども、これが五月十五日を前にしての沖繩の現状ですよ。これについての総理見解をお聞きしたいと思います。
  341. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだ五月十五日になっておりませんです。きょうは四月八日でございます。そういうことで御理解を願いたいと思います。
  342. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは、沖繩には命をかけたと言われているのですが、どうですか。いま沖繩はこうなっている。
  343. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣が明快にお答えをいたしました。
  344. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、こういうでたらめな答弁を聞きました。これは話になりません。  最後に、政府はアメリカ政府に次のことを厳重に抗議すべきだ。日本の基地をアメリカのベトナム干渉に使わしてはならない。南爆、北爆を即時中止して、アメリカ軍はインドシナから全面的に撤退すべきだ。佐藤総理の責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  345. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君の御意見は御意見として承っておきます。私はしかし、こういう事柄については、一国の責任のあるニクソン大統領がいるのですから、大統領のやることで、私どもがとやかく言う、干渉すべき問題ではない、かように思っております。
  346. 岩間正男

    ○岩間正男君 干渉の問題ではない。自分の問題なんだ。国民の問題です。答弁があったら言ってください、なければいい。
  347. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  348. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  349. 岩間正男

    ○岩間正男君 答弁をしたくないのか、できないのか知りませんが、それでは時間の関係で次に進みましょう。  私は、次に、アメリカの第五空軍の核管理機構についてお伺いしたい。沖繩の核が五月十五日までに完全に撤去されると言っていますが、その中身は何々ですか。
  350. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 五月十五日及びその以降において沖繩に核兵器が存在しないということをはっきり申し上げますが、その中身は申し上げられません。
  351. 岩間正男

    ○岩間正男君 知らなくて言えないんですか、知って言わないんですか。
  352. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中身につきましては知らなくて申し上げられないのであります。
  353. 岩間正男

    ○岩間正男君 情けないね。情けない感じがする。  それじゃ、核爆弾はむろんのこと、核運搬手段はどうなるのか。また、核の管理、指揮、監督する、そういう管理機構というふうなものは、これはどうなるのか。
  354. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 核兵器並びにこれにもっぱら関連のある施設、これは全部撤去されることと思います。
  355. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、指揮管理する何は……。
  356. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 立って……。
  357. 岩間正男

    ○岩間正男君 核管理機構はどうなります。
  358. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 問題の本質は、事前協議の対象になるべきものが撤去されるということであろうと私は思います。したがいまして、いま外務大臣が言われたようなものの範囲がそれに当たるわけでありまして、指揮管理機構ということ、あるいは運搬手段と申しましても、たとえばミサイルのような運搬手段は、当然これは核弾頭以外のミサイルというものは存在しないわけでありますから、当然その中に入りますけれども、たとえばF4のような戦闘機というものは、運搬手段といえば運搬手段でありましょうが、通常爆弾を搭載するという通常の使用方法がありますから、かりにこれを運搬手段としましても、撤去の対象になるべき筋合いのものではないと私は考えます。
  359. 岩間正男

    ○岩間正男君 指導、監督、指令する、そういう管理機関です、聞いているのは。
  360. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 常に最高指揮官があります。最高指揮官がないわけはありません。そこで、その核兵器に直接関連するようなもの、そのものはおそらく撤去の対象になるだろうと思いますけれども、それ以外の任務を持っておるもの、そういった指揮管理機構というものは当然存続されるであろうと思います。
  361. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは重大ですね。名称は、核という名前を使わなくても、実際核と関係のあるもの、さようなものは残る。そうすると、これは完全撤去ということになりますか。
  362. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) それは完全撤去ということば意味によろうと思いますが、やはり事前協議の対象になるべきものが完全に撤去されるというふうに解すべきであろうと思います。
  363. 岩間正男

    ○岩間正男君 頭脳中枢ともいうべき核管理機構を抜きにして、一体核戦略というものは成り立つと思うんですか。
  364. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 核戦略という意味からは、管理機構をなくして核戦略は成り立つはずはありません。  ただ問題は、そういったような一般論ではありませんで、沖繩から除かるべきものは何であるか。そうであれば、事前協議の対象になるべきものが除かれるというのが通常の解釈ではなかろうかと私は思います。
  365. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、ここで、東京・府中にある米第五空軍が核兵器点検を含む安全点検団を一昨年沖繩の嘉手納基地に派遣したことを、政府はこれは知っているかどうか、伺いたいと思います。
  366. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 承知いたしておりません。
  367. 岩間正男

    ○岩間正男君 これも知らないか。何にも知っているのはないんだね。何を知っているのか。  ここに「第三一三航空師団および嘉手納基地所属部隊の年次安全管理点検計画書」という文書があります。日付は一九七〇年七月十三日——十七日、これは第五空軍司令部安全管理部によってつくられたものです。この文書をもとにわれわれが調査を進めた結果、非常に重大な事実が判明しました一それは、東京・府中にある米第五空軍司令部に傘下の核部隊の指揮、管理、技術指導に従事する核機構が確立されており、またこの司令部には複数の核兵器担当将校が常駐しているという、その事実がわかったのです。しかも、それが沖繩協定調印を境にして質的にかえって強化されているという、こういう事実も判明しました。政府はこのことを知っておりますか。
  368. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 承知いたしておりません。
  369. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまこの文書を、時間の関係から要約してみます。そうすると、  一、日程、七〇年七月十二日横田基地を出発し、十三日から点検を行ない、十七日に再び横田に戻っている。  二、点検団はマレー・マークス大佐以下二十五名からなり、そのうち三人が核兵器安全管理小班に組み入れられている。小班の責任者はジョン・C・アリソン少佐で、それにジョン・B・スターク大尉とゴードン・L・チルダーズ曹長となっております。  三、点検を受ける部隊、それには、第三一三航空師団、それに伊江島で現在も引き続き核攻撃訓練を行なっている第十八戦術戦闘航空団、さらにこの十八戦術戦闘航空団のF105やF4に弾薬を供給している第四〇〇弾薬整備部隊、それに爆発物取り扱いの六〇三軍需空輸支援部隊など、七部隊が指名されています。これは過般の衆議院で行なわれたわが党の不破書記局長沖繩の核についての追及の際の軍団名とも一致しており、いかにその指摘が正しかったかを証明するものであります。  四として、さらに点検項目を見ますというと、これは十七項目からなっている点検手引きがこれに記されております。その中には、「核兵器安全計画は、第五空軍教範一二七の一に示された規定にそって実施されているか。」とか、また、「二人制」や「単独立ち入り禁止地帯」、「特別保安区域の手続きは理解されているか、また守られているか。」とか、さらに「密封された証明書のシステムの管理と処理は、統合参謀本部刊行物一三の規定にそうものとなっているか。」など、ことこまかに記しております。  大体以上のようですが、沖繩の嘉手納基地にある核兵器の点検に、首都東京・府中にあるアメリカ第五空軍の核兵器専門の将校、下士官が出かけている。これは、沖繩の核基地は府中の第五空軍によって指揮、管理されているということにほかならないのであります。この重大な事実を政府はどうお考えになりますか。
  370. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 私からは軍事的な面での解釈をいたしたいと思いますが、第五空軍はもちろん日本に永久に常駐するわけではございません。やはりアメリカとしては、世界的にこれを使用するというたてまえのもので、当分の間日本あるいはその周辺にあるわけでありますが、そもそも抑止力といたしましては、核兵器を持っているだけではいけませんで、それを常に使用し得る態勢にあること、あるいはそれを使用し得る意思があるということ、そういう姿勢にあることによって核戦争が回避されている、抑止力になっている。これはアメリカだけではなくって、ヨーロッパでもそうでありまするし、ソ連でもそうである。ただそういうことであるということと、核弾頭が持ち込まれているとか、あるいは核戦争が現実に起こるとかいうことではありません。明らかに、そういう態勢が抑止力になっているということと、それからそういうものが核戦争を導くということと、区別して考えるべきだろうというふうに思うわけであります。したがって、日本の場合に核兵器あるいはそれにつながるものというものは除外さるべきでありましょうが、その核点検でありまするとか、核の安全、あるいは核の訓練、核攻撃を受けた場合の訓練といったような部隊があっても、これは私は米軍の組織としてはおかしくないんじゃないか。しかし、それを現実に日本で行使するかどうかということとは、おのずから別問題であるというふうに思います。
  371. 岩間正男

    ○岩間正男君 新島の模擬爆弾の訓練のときも同じことを言った、まあ訓練はしているが使わないんだからだいじょうぶだと。同じことでしょう。機構は置いている、しかしこれは使うんじゃありませんから差しつかえないと。頭脳は置いている。こんな一体ばかな答弁がありますか。そういうことで一体国民をこれは瞞着してはらなぬと思うのであります。しかも、この機構は拡大されているのですね。この将校、下士官たちは、現在も第五空軍に勤務しています。スターク大尉は立川基地の三七九五のAに、チルダーズ曹長は関東村の二五八のA米軍住宅に住んでいる。こういう事実も判明しております。現在使われている第五空軍の電話帳、これによりますと、スターク大尉は現在少佐に昇進し、作戦局に籍を置いています。また、チルダーズ曹長は、軍需資材局弾薬部の弾薬技術課に勤務している。その弾薬技術課には、爆発物処理係と核兵器係が置かれている。しかも、ここで重大なことは、七〇年八月発行の電話帳には、この核兵器係というものはなかった。それが七一年発行の電話帳には、はっきり核兵器係というものが新たに登場してくる。これは昨年の沖繩協定調印前後のできごとです。一体これは何をさすと思うんです。沖繩返還で核の全面撤去が大きく宣伝されているやさきに、足元の本土東京では、反対に米軍の核兵器の管理機能がこれは強化されている。政府はこの重大な事実についてこれをどうお考えになりますか、総理大臣の見解を伺いたいと思うのであります。——これは先にあなたが言ったら、あと総理に答えてもらいたい。
  372. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) たぶん、いろいろ例をあげて言われますが、これは私、核兵器を持っている国が訓練をする、またいつでも使い得るような訓練をする、これは当然なことだと思うんですね。たとえばソ連邦においても、これはICBMのいわゆるスイッチがいつでも入るように配備されておるということと何ら変わりはないと思うんです。核保有国というものはいつでも使い得る。ところが、これは使わないところに戦争への抑止力があるわけであります。現に、いまベトナムの協力戦争についてのお話がずっと出ておったわけでありまするが、ベトナムの争いがもう十年に及びまするが、アメリカは核兵器を使ったことは絶無である。こういうことから見ても、この訓練をするということと、いつでも使い得る態勢にあるということとは、これは全然違います。また、そういうことによって日本が巻き込まれることがあってはなりませんし、またそういう不安はないというふうにわれわれは確信をいたしております。
  373. 岩間正男

    ○岩間正男君 何という答弁です。撤去されると、沖繩の核を撤去するんだというやさきに、東京のどまん中にこのような機構が拡大されていることをどうだと聞いているんですよ。そんな一般論を聞いているんじゃありません。
  374. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっと、さっきのお答えにそれじゃ補足をいたします。  沖繩の核兵器については、施政権が返還されるとき点検をするということは、首相とニクソン大統領がサンクレメンテで合意をされたところであります。  それから、府中の御指摘は、これは訓練上のものであるというふうに理解いたしております。
  375. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君からせっかくこれは貴重なる資料を提供されまして、私も実は初めて見たものです。これは事前協議の対象点ではございません。随時協議ができるのでございますから、この中身を十分検討します。その協議の対象として随時協議する、その上で明らかになると、これが説明のできることもありましょうし、説明のできないこともあると、かように御理解をいただきます。私のほうでほうってはおかないと、それだけを申し上げておきます。
  376. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく、以上述べたように、アメリカ第五空軍司令部には、その機構の中に、核部隊を点検、管理、指揮、監督する核中枢が拡大強化され、常時その機能を発揮しつつあることが明らかになった。いま総理答弁がありましたが、これはできるだけ、これに対しての処置の問題を、次のこれは委員会ででも明らかにしてください。  そこで、お聞きしたい。現在第五空軍の管理している空というものはどこどこです。空、空域。
  377. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 緯度はちょっと覚えておりません。緯度、経度は覚えておりませんが、第五空軍は、日本、韓国、それから沖繩、そういう地域でありまして、ノース・ウエスト・パシフィックと俗称されている空域であります。
  378. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、沖繩の核は撤去される、日本には核がない。韓国にはどうなんですか。
  379. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 日本は、もちろん本土及び沖繩について、これは日米安保条約に基づいて事前協議の対象になっている。その場合に、核を持ち込ませないというたてまえになっておりまするから、韓国の問題は日本の問題ではございません。
  380. 岩間正男

    ○岩間正男君 いや、あるかないかと聞いている。核が置かれているか——防衛局長でしょう、あなた。わからないの、どうなの。
  381. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 韓国に核があるかどうかということにつきましては、数年前、韓国の新聞で騒がれたことがありましたが、米軍はノーコメントという回答であったそうでありまして、その後わかっておりません。
  382. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、あなたたちの言い分では、沖繩、本土には核がない、韓国はわからない。そんな地域に、核管理中枢だけが置かれて強化されている。おかしいじゃないですか。
  383. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) これはちっともおかしくないのでありまして、たとえばNATOで西独空軍というもの、これはもちろん核爆弾を使えるようにあらゆる訓練をいたしております。しかしながら、当然、西独空軍は核弾頭は持っておりません。アメリカがこれを管理をしておる、別個のところに保管をしておるというのと、ちょうど似たような関係でお感じになればよろしいわけで、第五空軍は核戦争ができるような準備はしておる、しかしながら核爆弾その他は別のところに保管するというようなありようがあっても、決しておかしくはないと思います。
  384. 岩間正男

    ○岩間正男君 おかしくないという頭がおかしいと私は思うのですね。そうでしょう。大体そういうことを言っていますけれども、それは何かいまのような協定でもあるのですね、密約、協定、また問題になってくる。
  385. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 日本の関知するところではありませんから、協定のありようがございません。
  386. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本の関知しないことですか、第五空軍が府中にあるということは。
  387. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 私が言おうとしましたのは、在日米空軍が核弾頭、核爆弾を持っていないことは、これは確実である。しかし、どういうような訓練をするか、また本土外のどこに核弾頭を置くのか、それは米軍のことである。日本が密約を結んで、そういうことを協議する必要の範囲のものではあるまいと、こういう意味で申し上げたわけであります。
  388. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまあ外務大臣にお聞きしましょう。こういう密約があるのか、ないのか。
  389. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 密約は全然ございませんでございます。
  390. 岩間正男

    ○岩間正男君 だいじょうぶでしょうね。また国会であとでこれは出てきたりしたら、どうなんです、だいじょうぶかね。密約はありませんと去年沖繩国会で答えたことは、いまはだめになった。
  391. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 密約はありませんです。
  392. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなら、何も約束がないなら、第五空軍の核管理機構は即時撤去さしたらどうです。そういくわけでしょう、ないんなら。
  393. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 毎度申し上げることでありますが、第五空軍はやはり世界的にどこへでも移動できると、その際に核の準備ができているという態勢をとっておるということが、抑止力としては非常に重要なことでありまして、それは核爆弾を持っておるということとは違うことであります。ですから、西独空軍も核爆弾は持っておりませんけれども、しかしながら核戦争に備え得る準備だけはしておるというのと似た関係にあると思います。
  394. 岩間正男

    ○岩間正男君 すると、非核三原則というのがあるでしょう。そうすると、これはまあつくらない、持たない、持ち込ませない、そう言っているんだけれども、司令部だけは本土の中に置いても差しつかえないということですか。これは政治的な問題なんですから、非核三原則はあなたの何じゃないでしょう。あなたのほうは技術なんだからな。非核三原則は政策だと言っているんだから、あなたの答弁の範囲じゃない。少し身分——分をわきまえなさい。
  395. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 一応説明聞いてから、適当なまた御答弁を……。
  396. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) 司令部に存在しますものが核を使用する場合に、それを点検するとか、あるいは安全の訓練をやるとかというような組織があっても、その組織そのものを撤去するということには必ずしもならないのではないかと私は思います。
  397. 岩間正男

    ○岩間正男君 頭のないからだがどうして動くんです。頭のないからだがどうして動くことができるんです、核頭脳のない……。
  398. 久保貞也

    政府委員(久保貞也君) たまは持っていなくても頭は常に持っておきたいというのが部隊の組織であろうと思います。
  399. 岩間正男

    ○岩間正男君 証明されている。どうです。ほんとうに、国民の皆さん、これ聞いているんですよ。からだはなくても頭だけは持っていたいと言う。大臣答えてください。だめですよ、そういう技術屋に聞いて……。
  400. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま政府委員がお答えしたとおりでございます。
  401. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう情けないなあ。これがシビリアンコントロールの正体でございます。
  402. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  403. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  404. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうです。だから、そういうことですから、これがアメリカの核のもとにある限り、これはやむを得ないというんでしょう、おそらく。われわれはアメリカの核の傘のもとでの非核三原則というものは全く何の効果もないということを指摘してきました。今度の事実は全くそれを裏づけていると思うのです。どうでしょう。
  405. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それはたいへんな違いだと思います。日本の国是として非核三原則というものを堅持しておる。アメリカは核保有国です。だから、いつでも使い得る態勢にソ連邦、アメリカなんていう国はあることが核を使用させない一つの大きな抑止力になる。これはやはりちっとも矛盾をしないと思います。  それから、私、念のために申し上げておきますが、さっきサンクレメンテの合意を点検すると申しましたが、これは核がないということを確認すると、こういう意味でありまするから、誤解を生ずるといけませんから、ちょっと念のために申し上げておきます。
  406. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言ってますが、まあ結局、この問題はここで明らかになったことは、沖繩日本本土その他の第五空軍管轄地域には、依然として核が隠されているか、それとも有事の際いつでも核を持ち込むことのできる態勢を常時これは確保しているということをはっきり物語っているのですね。これは認めざるを得ないと思いますが、外務大臣、いかがです。
  407. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは認めるわけにはまいりません。つまり、核は持たず、つくらず、持ち込ませず、これはいかなる場合においてもそういう態度をとるわけです。ただ、私どもは、この三原則が安全保障条約を前提としておるんだということを御理解願いたいんです。もしこの安保条約というものが前提になけりゃ、私どもは核攻撃に対しまして抑止力というものを持ち得ない。そこで、どうしても核の脅威に対する不足を補うというためには安保条約を必要とすると、こういうことです。どうもその辺の基本的な理解が岩間さんと私どもは全然違う。そこで食い違いが出てくるんじゃあるまいか。私どもはまる裸になるわけにいきませんです。核という、核兵器というものが今日存在をする。この核兵器の存在する世界情勢の中で、これに対する抑止力を持たなけりゃならぬというのは当然の備えじゃないかと、そういうふうに考えております。
  408. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、核機構の撤去を迫ることのできないそういう態勢の中で、まあ結局あなたが説明したとしても、これは始まらないと思うのです。ことに、私は第五空軍というのをよくここで見直さなきゃならぬ。これは東北アジアの空に長く君臨しています。そうして絶対的に空を支配しているということは、一昨年のあの「よど」号事件で国民は痛いほど知らされたんです。そうですよ。ここでも二年前に論議された問題です。それがいま核部隊の中枢としての機能をますます強化している。しかも、それが首都東京のどまん中にある。万が一有事の際に核部隊の中枢である司令部はまっ先に敵の攻撃を受ける危険にさらされないという保障はありますか。このような重大な事実について、政府は真剣に考えたことが一体あるのか。いままでの答弁を聞くというと、全くこれは国民のこういう心配、こういう憂い、当然のこれは知る権利、こういうものが侵されていると思うのでありますけれども、いかがでしょう。あらためてまた総理のお答えをいただきたいと思います。
  409. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 有事の場合であろうが、平時でありましょうが、いかなる場合におきましても非核三原則というものは貫き通す。しかし、その前提といたしまして日米安全保障条約、これを私どもは必要とするわけであります。それによって初めて核による抑止力を持ち得るという日本になると、こういう理解でございます。
  410. 岩間正男

    ○岩間正男君 安保条約はあのようにしり抜け、事前協議はしり抜け、そういうことを実証したあとでそういうことを言っては話になりません。これは総理にお答え願いたいと思う。  最後にしますが、日米両国政府間の協議を私はこの問題で直ちに開くべきであると思います。われわれは日本の安全を脅かすすべての米軍基地とその軍隊の撤去を要求するものでありますが、政府はとりあえず第五空軍の核管理機構の撤去を要求すべきだと思いますが、いかがでしょう。
  411. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日米安全保障条約、これを私どもは必要とすると、どうも日本共産党は廃棄しろと、こういうような立場でいらっしゃるようであります。ただいまの御議論もそういうところから出ております。これは基本的な態度の相違だろうと思います。これはどこまでまいりましても並行線ですから、さように御承知願いたい。私は、ただ国民として、この日米安全保障条約がいかにわが国の安全に役立つか、それだけをはっきり国民も理解してもらい、同時にまた、非核三原則、これは政府は責任を持って守ると、このこともはっきりしておると、さような上で日米安全保障条約は必要だと、かように御理解をいただきます。
  412. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で岩間君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  413. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、工藤良平君の質疑を行ないます。工藤良平君。
  414. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、本予算委員会におきまして、総理をはじめ各大臣に対しまして、主として農業問題、とりわけ混迷と進路を失った農民に対しまして、これからの農業のあるべき姿、さらに長期安定的に農業が営めるような方針を示していただきたい、こういう観点から質問をいたしたいと思っているわけであります。ただ、今日非常に重要な外務省の問題、機密事項の問題について問題が提起されておりますので、この点について若干時間をさきまして御質問をいたしたいと思っているわけであります。  まず最初に、先ほど総理は機密保護法の問題につきまして発言がございました。この点につきまして御質問をいたしたいと思いますが、この点は特に、上田議員の質問に対しまして、国益とは何か、国家機密はどうしてきめるのかという問題については、佐藤総理の御意見を聞いたところであります。もちろん、それについては、国家機密は行政府自身がきめるものであるけれども、これにも妥当性がなければ批判を受けることは明らかで、その場合は改めていかなければならない、また上田議員の主張いたしました、最終的には世論が判断をするとの御意見についてもこれを傾聴すると、こういうことをおっしゃったのでありますけれども、そういう点からいたしまして、私は、総理が先ほど発言をいたしました機密保護法をつくるべきだという考え方については大きな疑問を持つわけでありまして、再度お伺いいたしますけれども、その点に対する真意をお聞きをいたしたいと思います。
  415. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国の公益、国益、これはやはり守られなければならないと、そういう意味から、その機密に関する事柄は保護さるべきものではないかと、まことに単純な発想から出ているものでございます。しかし、この問題がこの機会に提起されたと、かように考えられると、これは困るのでございますから、これは誤解のないように、ただいまの問題とは関連はございませんということをはっきり申し上げたことと、並びに、本案については別に草案を持っておると、こういう段階ではありません。これまた誤解のないようにお願いをしておきます。
  416. 工藤良平

    ○工藤良平君 国家の機密というものを政府側の意向だけで判断をするということはきわめて問題があると、私どもはそのように考えているわけであります、これは国民的な見地からものを見るということが私どもの立場から当然だということも主張してまいっているわけでありますが、そういった意味から、私はこの機密保護法の問題はこの問題を契機として佐藤総理の胸の中に出てきたと、表現的に出てきたと、このように私は考えざるを得ないのでありますけれども、その点についてもう一度お伺いいたします。
  417. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この機会にただいまのような機密保護法というような考え方を持つと——ただいま工藤君が御指摘になったとおりです。誤解を受ける危険が多分にあると、かように思いますから、私が現時点で問題になっておる事柄とは全然関係はありませんとわざわざ断わっておるのはその点であります。
  418. 工藤良平

    ○工藤良平君 それではもう一つお聞きをいたしますけれども総理は、この機密保護の問題が、刑法改正にあたって機密探知罪が、憲法の戦争放棄あるいは戦力不保持のわが国においてどういう立場で考えられなければならないかと、こういう問題が提起をされ、機密探知罪が刑法の中に組み入れられるということについては問題があるということからこれは日の目を見なかった、こういう経緯があるようでありますけれども、当然そのことを承知の上で佐藤総理は先ほどの発言をなさったと私は理解をしてよろしゅうございますか。
  419. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さようでございます。日本に守られなきやならない機密、これがある、しかも国益に関する事柄だと、そういうものがどうも公になりがちだと、何かそこらに一つの網をつくっておかなきゃならないんじゃないかと、かように考える、これは私のもともとの持論でございます。
  420. 工藤良平

    ○工藤良平君 そうすると、もともとの考え方であるとするならば、これは単独法として佐藤総理は当然考えている、このように理解してよろしゅうございますか。
  421. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 単独法として考えるべき筋のものだと。もちろん、しかし機会が到来しなければそういうこと——これはやっぱり機が熟すという、そういう意味でございます。
  422. 工藤良平

    ○工藤良平君 現在の新憲法のもとで、表現の自由、公開の原則を憲法にうたっております。過去の治安維持法などの言論統制に対する強い反省となって現在の憲法というものがつくられ、それに基づいて法の運営が行なわれておると私は思っているのでありますが、そういった意味から、御承知のように、国会の会議におきましても公開の原則というものがうたわれている。あるいは裁判所におきましても、政治犯罪あるいは出版に関する犯罪、または憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審については常にこれを公開しなければならないという問題があるわけであります。そういった意味から、この機密保護法というようなものを単独の立法として考えるということは憲法上からもきわめて問題があると私は思うのでありますけれども佐藤総理の再度の御答弁をお願いをいたします。
  423. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま問題は具体的に提案しておるわけではございません。私の頭の中にあることを申したのです。これ具体化すれば、ただいまのような御批判また御意見も十分述べていただく、その機会、展開される議論の機会がないわけじゃございませんから、どうか御安心の上、十分御検討を願いたいと思います。
  424. 松井誠

    ○松井誠君 関連。  いまの点に関連をして総理にお伺いをいたしたいと思います。総理は、いまの御答弁を聞いておりますと、機密保護法制定の構想を述べた事の重大さというものをあまり意識をされていないんじゃないかと私は思うんです。いま工藤委員からお話がありましたように、今度できた刑法の改正草案に最初予定をされておったあのスパイ罪というのが取りはずされてしまった、防衛上の重大な機密、外交上の重大な機密、それを探知しようという犯罪をつくろうとしましたけれども、それがとうとう削られて出てきたわけなんです。その経緯を一体首相は御存じなんでしょうか。つまり、これが言論の自由というものに対する正面からの挑戦だ、そういうことでとうとう日の目を見なかったわけです。言論の自由というのは憲法の基本的な人権のかなめでもありますし、戦後の解放の思想のいわば焦点でもあったわけです。したがって、それに対して挑戦するというのは戦後の大きなこの体制を変えるということになる。ですから、この改正草案をつくった人たちというのは必ずしも進歩的な人ではございません。むしろ良心的な委員が辞任をするというような経過があって、残った人たちが、なおそれでさえもこのスパイ罪というものをつくることができなかった。それなのに首相は、それをいわば今度は単独立法で復活させようというようなことを軽々しく言われるわけです。そういう経過を御存じの上で言われるとすれば、事はきわめて重大であります。八年間の置きみやげにしては、どう考えてもこれはふさわしくない。あるいは、そういう経過を御存じなくて言ったとすれば、軽率この上もない。どちらにしても、私は、あの機密保護法についての今朝来の御発言は取り消されてしかるべきだと思う。御意見を伺ってまいりたいと思います。
  425. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは取り消すというような筋のものではございません。私のただいままでの考え方を申し上げたのであります。ただいま具体的になっておれば、それはもうまっ正面から御批判をいただいて当然ですから、それはもう皆さん方の御自由ですけれども、ただいまのところ、私の考え方、それに入って取り消せと、これはちょっと行き過ぎじゃないか、私はそういう御発言こそ取り消されてしかるべきじゃないかと思っております。
  426. 松井誠

    ○松井誠君 ですから、私は、総理が発言をされたその問題の持っておる重要性というものを御存じないのではないかということをお尋ねをしたわけです。ただ雑談で私人がものを言うのならば、何も私はそういうことを申しません。一国の首相が、そして率直に言うならば、これから去って行かれようとするあなたが、そういう重大な問題についてあえて発言をされるというその姿勢、私はそれを問題にしたい。したがって、私はやはり取り消しを要求する権利があるし、義務があると思う。そういう意味で申し上げました。あえて御答弁は要りません。
  427. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連。  私は佐藤総理に憲法をもう一ぺんよく読んでいただきたい。この言論、出版の自由というものが新しい憲法で基本的人権として明記されました。これは、もちろん明治憲法にも言論の自由というものはあったわけです。しかしながら、お互いに戦前の経験を振り返ってみると、いわゆる公共の福祉という名に隠れてきびしい言論弾圧が行なわれた経験もわれわれは持っているわけです。その厳粛な批判の上に立って、今度の新しい憲法というものが私はつくられたと思う。そうするなら、私はその憲法の考えておる精神というものをあなたに思い直してほしい。あなたは、私がそういうようなことを言うと、おそらく憲法の十二条あたりを引き合いに出して、あるいは十三条あたりを引き合いに出して、公共の福祉云々で逃げられるだろうと思う。それは間違いです。さらに、私は、もしあなたがそういう考え方でおられるなら、ひとつ十一条を読んでいただきたい、十一条をね。十一条には、「國民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障すの基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び將來の國民に與へられる。」となっている。さらに、もう一つ読んでいただきたいところがある。それは、わざわざ第十章に最高法規という章を設けてどういっておるか。九十七条です。「この憲法が日本國民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と、こうなっております。ということは、みだりに公共の福祉の名で言論や出版の自由を押えてはならぬ、そういうような、それを押えるような機密保護法のごときものをつくってはならぬというのが、これが憲法の精神です。その精神は、戦前の、私が先ほど述べた深刻な反省から出発しておるわけです。このところをあなたによく考えてもらいたい。そして、先ほど松井委員指摘されましたが、あなた、もうやめるまぎわになって行きがけのだちんにそういう重大な問題を軽々しく口にすべきではない。あなたは一議員としてのあなたじゃないんですよ。この前も私は言いましたが、一国の内閣総理大臣です。一国の内閣総理大臣が憲法の精神を十分にわきまえないで軽々しい言動は慎んでもらいたい。私は、その軽々しい言動はあなたが取り消されるべきだと、私は重ねてこのことを強く要求します。
  428. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢山君の御意見は私も謙虚に承っておきます。ありがとうございます。
  429. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  端的にお伺いをいたしますが、先ほどの総理の御答弁では、機が熟していないからという御発言がありました。一体、機が熟せば直ちに機密保護法を制定すべきだとお考えになるのか、それが一つ。  それから、総理は、今回の西山記者逮捕問題には関係がないのだということを強調されているが、かりに今日機密保護法が存在をしていたら、西山記者の逮捕はそれによって逮捕されることになるのだというふうにお考えになるのか。  第三点、今日機密保護法というような法律がない場合でも、今回の問題で世論の不安というものは非常に大きな政府の設定する秘密によって押しひしがれているという危機感に立っております。再三同僚委員が申しましたように、しかもなおこの時点総理が機密保護法の制定を望まれるような発言をされたことは、大きく世論に対して不安をかき立てるのだということについてどのようにお感じになっておられますか。
  430. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 誤解のないようにということを前置きして、ただいま具体化しておるわけではございませんし、また、そういうものが私は必要だと、こういうことを申し上げたのでございます。ところで、ただいま、その機が熟した、どういうときですか、こういう話ですが、これはもう皆さん方の御賛成を得れば、これは機が熟した、かように考えます。また、もしもそういう法律があった場合に、これが西山記者を逮捕する、そういう事件になるか、ならないか。また、ただいまの公務員法の違反、そういうようなことになるか、ならないか。これらはすべて捜査当局のやることでございます。
  431. 上田哲

    ○上田哲君 国民の不安はどうですか。
  432. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第三点。ただいま申し上げましたように、この問題自身は、私は具体的に申したわけじゃございませんから、ただいまあるわけじゃございませんので、またそういう草案を提案しているわけでもございません。
  433. 上田哲

    ○上田哲君 それだけでも国民が不安を感ずるだろうということ。
  434. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは、そういう方もあるでしょうが、そうでない方もあります。御安心願います。
  435. 工藤良平

    ○工藤良平君 先ほどから御意見がありますように、この問題は国民全体に対する非常に重要な課題であります。問題であります。したがって、この点については、ぜひ総理の慎重な配慮を私は要望いたしたい、このように思います。  それでは、次にお伺いをいたしますが、外務大臣にお伺いいたします。これは私、先般も関連質問でお伺いしたわけでありますけれども、蓮見さんの処分の問題について、即決即断で、公務員にとりましては最大の処分であります懲戒免職という処置をなされたようでありますけれども、これは事が非常に、機密の問題にいたしましても、まだ非常に論議が行なわれている過程でありますし、しかも刑事問題として提起されている、こういうようなことから、当然これは休職という立場をとって問題の成り行きを見るということが——最高の処分を科していく公務員の立場からすれば非常に大切なことではないかと思うのでありますが、その点についての御意見を伺います。
  436. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その点は種々検討いたし、また手続についても間違いがあっちゃいけませんから、人事院のほうとも協議をいたしまして、そうしてきめたわけであります。とにかく、いま取り調べの段階ではございまするけれども、本人がもうあれを漏らしたのだ、私ですということを非常にはっきり申し上げておるわけです。しかも、それは警察に申し上げておるばかりじゃない、上司の者にも申し上げておる、こういうことでございまして、事は非常に重大な問題である、そういうような見地から懲戒免官という手続をきめ、これを本人に通告をいたした、こういう次第でございます。
  437. 工藤良平

    ○工藤良平君 そのような処分をするとするならば、その上司である各関係の方々に対しましても、公務員法百一条職務に責任を持つという義務、そしてまた公務員法第一条に基づく、私はこの事項の問題について当然同時に行なわれるべきが至当ではないかと思うのでありますが、その点について。
  438. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 他の者の責任、これにつきましては、ただいま調査をいたしております。これも一々、この方をどういうふうな扱いをするか、これもはっきりした理由づけをしなきゃならぬ。また、量定等はその理由づけによって違ってくるわけでありまするから、いま私、慎重に調べておるわけでありまするが、まあ大体数日中には結論を得たいと、かように考えております。
  439. 工藤良平

    ○工藤良平君 数日も期間を必要といたしますか。すでに一番下の公務員が処分をされているわけでありますよ。しかも、問題はきわめて明確だと、こう言っているわけでありますよ。
  440. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 蓮見事務官の責任は非常に明確です。しかし、それがどういう経過を経て漏洩されたか、それに関連いたしましてどういう監督上の責任があったかと、こういうような問題ですね、これはしばらく情勢を調査してみなけりゃはっきりしたことは言えぬと、こういうふうに思うのです。これはやっぱり、行政処分でありましても、これは個人の人権に関する問題でありまするから、これは慎重にやらなけりゃならぬ。それから、その量定です。これもかなりいろいろな量定があるわけですから、そのいずれを適用するか、これも慎重に考えなけりゃならぬ。しかし、なるべく早いほうがよかろうと、こういうふうに存じまして、数日中には結論を得たいと、かように考えております。
  441. 工藤良平

    ○工藤良平君 数日中にその処分が出たとするならば、外務大臣のみずからの責任の問題については総理に一任をしてあるということでありますが、その点、総理としてはいかがでございますか。
  442. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外務大臣の進退、すべて私が預かっております。
  443. 工藤良平

    ○工藤良平君 その預かっておる処分についてはどうするのかということを私は聞いているわけです。
  444. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はこの問題で外務大臣をやめさすというようなことは考えておりません。一体どういうような行政処分が適当であろうか、そういうようなことを考えておると、これだけはっきり申し上げておきます。
  445. 工藤良平

    ○工藤良平君 国民の納得する行政処分をするかどうか。
  446. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国民の納得する行政処分をいたします。
  447. 工藤良平

    ○工藤良平君 外務大臣に言ってるんじゃなくて、外務大臣に対して総理大臣がどうするかということです。
  448. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) おそらく納得されるだろうと思います。そういう処置を私はとります。
  449. 工藤良平

    ○工藤良平君 ややもいたしますと、公務員の処分というものが下級公務員にしわ寄せされて、上級公務員の責任が今日までほとんど免れてきたというのが実態であります。私も下級公務員としてそういう経験があるわけであります。したがって、このことを私は強調したい。その点についてぜひ私は佐藤総理の厳然たる態度を望みたい。もう一度。
  450. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外務大臣の監督上の責任につきましては、私も十分これは究明する考えでございます。
  451. 工藤良平

    ○工藤良平君 さらにもう一つ、西山記者の逮捕の根拠と理由というものが依然として私どもはあいまいだと考えているわけであります。この問題については、閣僚の中におきましても、たとえば農林大臣が発言なさっておるようでありますが、私、全く農林大臣の考えと同感でありますが、この点について国家公安委員長のひとつ御意見をいただきます。
  452. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) お答えいたします。  私らは、警察のほうといたしましては、西山記者の取材の方法、手段が法によって許された範囲を逸脱しておるという容疑がきわめて濃厚であるという観点に立って捜査を進めておるものでございます。
  453. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  これまでの政府の御答弁で、西山記者の逮捕の理由と根拠がたいへんあいまいになってまいりました。これまでの御答弁をまとめてひとつお伺いをいたしますが、まず国家公務員法百十一条を適用して逮捕したということは、これまでの御答弁で、国家公務員法というものが実は政府機密の保護法にすぎないということが明らかになったんです。国民の利益を守るためにはむしろこれを阻害するものである、こういうことが明らかになってくる以上、百十一条の適用は本来の趣旨を逸脱乱用して保護すべき法益を誤ったものだ、こういうふうに考えなければならないと思います。東京弁護士会や東京第二弁護士会の一部見解では、刑法三十五条にいう正当な業務活動を罰しないという保護を受けるべきだ、こういう見解があります。これはいかがでありましょうか。  それから、それにもかかわらず百十一条の適用を強行して十日間の勾留を求めた、裁判所の勾留理由の開示は来週になるだろうと思いますけれども、一般に勾留理由は、自殺、逃亡、証拠隠滅ということになります。この場合は、言うまでもなく、第三の証拠隠滅ということにしかなりようがないでありましょう。そこで昨日、高松刑事局長は、二人の供述に食い違いがあるからだ、これが勾留請求の理由だというふうに御答弁になったのであります。総理、しっかりお答えをいただきたいんでありますが、そうなってまいりますと、この捜査の最大のねらいは、証拠になるべき——これは公判維持のためにも非常に重要だと思うんですが、その証拠のコピーが家宅捜索によっても出てこない。したがって、捜査の最大の重点はそのコピーを手に入れることに向けられているのではないか。西山記者からのコピーの流出のルートを追及するということに重点が置かれているということは、総理は記者団に対して、そこが知りたいと言われているところでも明らかだと思うんでありますが、まさにこれは政治的意図をもっての捜査段階に入った、こういうことになるのではないか。この二点について総理お答えをいただきます。
  454. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もともとこの事件は捜査段階です。われわれがとやかく言うべきではないと、かように思っております。  しかして、また、私自身が知りたいこと、これは私も皆さんと同じように、知りたいことは知る権利があると、かように思っておりますので、それがやっぱり知りたい。しかし、このことと捜査当局のやっている捜査とこれは結びつけると、私がたまたま総理だから、総理が何か指示したのだろうと、かように言われることは迷惑ですから、さようなことはございません。ただ私が知りたいという、そのことを率直に言っただけです。  以上二点お答えいたします。
  455. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  456. 上田哲

    ○上田哲君 二点のお答えがないんで、第一点の、東京弁護士会と第二弁護士会の見解についてはどうかということを、ひとつ総理でなくてもそれはお答え願いますが、総理にひとつしぼってお伺いする分は、総理自身は、きのうの午前中までは、新聞に書くのなら正当な取材活動だと御答弁でありましたのを、昨日、杉原委員の質問に対して、記事を書いていたことを認めるとおっしゃったんです。そうなってまいりますと、もう百十一条の適用は無理になってまいりますし、さらにこれをもって拡大した目的の捜査をすることはさらに無理になってまいります。そこで昨日の、これは高松局長にも伺いますが、高松局長は窃盗容疑ということを示唆されました。刑法二百三十五条の適用を示唆されたものと私は考えざるを得ないんでありますが、もはやこれは一種の別件逮捕であり、見込み捜査だと、こう断ぜざるを得ないと思います。ここで総理は明確に、このような論点が明らかになった以上は、政府としての政治判断を明らかにされて、西山記者に対しては直ちに釈放をすべきであります。蓮見事務官に対しては行政部内の内部規律の問題としてのみ扱う、こういう態度を御見解として明らかにさるべきだと思います。
  457. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一の問題、これはもう先ほど東京弁護士会その他の御意見をも含めてお答えしたつもりですが、捜査段階のことは私がとやかく言うべきものでない、これはもう捜査当局の関与することですし、またそれにまかしてあることですから、私がとやかく言うことではない、このことをはっきりまた重ねて申し上げておきます。  それから第二点のほうは、これはいわゆる新聞に出ていた、このことは私は知らなかったんですが、しかし、これは時期が、六月の段階と今日問題になっている段階で、これはずいぶん時間的に相違がありますね。そうして、六月のときに新聞紙で使ったその資料が、また今度は別なときに他の方向に流されたと。これだからやはり、問題を、どうも疑問を持つのは当然じゃないでしょうか。私は、大体最初は新聞には出ていないと、かように思っておりました。しかし、その点は訂正してございますから、これはもう御指摘のとおり、その点は訂正いたしますけれども、もうそれだけで済むわけじゃないので、その後その材料が他の方法で使われている。このことをやっぱり、それがモラルの問題だろうが、とにかくそういう事態であるから、そのことが問題でございます。
  458. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 第一点の、百十一条についての保護法益を誤ったんではないかという御質問でございますが、百十一条は、御承知のように、百条の違反に対するそそのかしその他の行為でございますが、そういう百条の機密漏洩に対する教唆を罰する、そそのかしについて言えばその教唆を罰すると、こういう規定でございます。したがって、それを守る法益は依然として国の法益である、国家法益である。それから三十五条との関係につきましては、たとえば、この前もちょっと申し上げました北鮮帰還協定に関する秘密漏洩事件というのが前にございました。で、これの四十四年の東京高裁の判決でも、ちょうどこの本人、被疑者の一人が朝鮮人商工団体連合会、商工新聞社記者ということで、それで自分の研究、それから新聞記者としての取材活動の一環として行なわれた正当な行為であるから、したがって刑法三十五条による適法性を欠くものだと、こういう控訴の趣意に対しまして、第二審の東京高裁の判決は、これは被告人の本件の所為は、みずからが、「法が刑罰をもって禁止する犯罪行為をあえて行なったものである」から、「これを目して、刑法三五条にいわゆる正当行為であるということはできない。」と、こういう判決を下しております。  それから第二番目の逮捕、勾留の理由でございますが、いま自殺とおっしゃいましたが、自殺は逮捕、勾留の請求の理由には現行法上なりません。証拠隠滅または逃亡のおそれということがございますが、本件につきましては、証拠隠滅のおそれがある。それは、二人の被疑者の間に通謀のおそれがある。いろいろ自供もまだ食い違っておりますし、そういう点で、それから事前のいろいろの若干の問題もございまして、通謀のおそれがあるというのが、あるいは通謀による証拠隠滅のおそれがあるということが逮捕あるいは勾留の理由でございます。  それから、昨日私、窃盗ということを申し上げましたが、これは先ほど国家公安委員長からも御説明ありましたけれども、報道の自由、あるいは取材の自由ということも、それはおのずから法の許す範囲の活動でなければならない。たとえば、窃盗というふうな行為、あるいは窃盗でなくても、脅迫でも恐喝でも同じことですけれども、そういうふうな刑法に触れるような方法による取材というふうなものはやはり認められないと、そういうことの例に窃盗ということを申し上げたわけでございます。で、本件の場合につきましては、まあそういうものの、国の機密文書のコピーをとるということが窃盗に当たるかどうかはやや疑問がありますけれども、しかし、そういう婦人の秘書に対して非常に、まあ二回も三回も拒絶したようでありますけれども、それに対してなお執拗にそれをそそのかしてこれを提供させた、そういう行為は、国の文書の内容を盗み取るという形の行為で、窃盗にやや近い形を持っている、かような意味で窃盗ということを申し上げたわけでござい  います。
  459. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。  委員長、これは重大な問題を含んでいるので、どうせいずれまた機会を改めてやるわけでありますが、ただ、そのまず第一点としてですね、新聞に一度使ったんだと、それは私はわかったけれども、その時期は前であって、そうしていままたそれをほかの方法に使うというところに問題があるというような言い方をするわけでありますが、これはもう明らかに誤りであります。つまり、新聞に出していろいろと訴えたけれども政府はこういう事実はない、そんなことはないと言っていたことによって、この事実を国民に訴えるということができなかった、明らかにならなかった。明らかにここに欺瞞性があるという考え方から、その後、その国民に知る権利を正しく行使するために、他の手段方法によってこれを訴えたわけなんです、これは、新聞記者でありといえども、これをですね、やはりその手段方法を使うということは、私は合法的な方法であろうと思うのです。それをですね、この時期が違っているから、方法が違うから、これはその方法が誤りであり、法を犯すものであるというこの考え方は、全く私は誤りだ。そういうことであるならば、正しいことを国民に知らせるという、こういう知る権利を、報道するというその報道の権利すらこれは否定をするものであって、重大な私は誤りであろうと思うのです。  それから、第二点の問題については、これは明らかに、西山記者を逮捕したのは百十一条の容疑で逮捕をしているわけであります。しかも、この百十一条については、御承知のとおり、教職員の勤評の問題などとのことがあって、単なる教唆、犯罪行為が起こらないこの教唆については、これを刑事罰の対象としないということも、すでに判決が出ているわけです。したがって、この教唆ということについては、百十一条適用については非常に慎重を期し、また刑法の刑事罰の適用が非常にできないものであるという事実は、もう最高裁で判決が出ている事柄である。しかも、こういう形をとったやり方を全然否定するということは、いわゆる新聞記者の取材の自由というものを、取材権という実体を明確に総理が理解をされてないということにも私はなると思うのです。これでは、これから新聞記者が取材ができないではないかということを広く訴えているのも、私は当然だと思うのです。ただ、百十一条の問題についてはですね、簡単な関連でこれを明確にすることはできません。したがって、今後これは明らかにいたしますけれども、当初のまず第一点については、明らかにこれはいまの答弁は誤りだ。そうしてまた第二点については、この教唆を記者に適用することは、今後の取材において非常な大きな影響があって、このこと自体についてとうていこれを容認することはできないというのが、つまり取材をしている記者の関係の総体的な意見であるという事実をも知っていながら、軽々しくそういうことを言うということについては、私たちは納得ができません。この法的な詰めについてはその後やるといたしまして、この点についてひとつ答弁をしていただいて、そうして審議をひとつ軌道に乗せていただきたいと思うのであります。あまりつまらぬことは——つまらぬと申し上げては失礼でありますけれども、非常な影響のあることを関連でぽっぼっと言われることについては、私は慎んでいただきたいと思うのであります。
  460. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一の問題についてお答えをいたします。  御承知のように、六月十九日でしたか、十八日でしたか、記事になっております。しかし、それはそのまま済んでおります。しかし、その後、これは国会の審議の段階で出てまいって、初めて蓮見事務官がこれを自白しておる。蓮見事務官が自白したところに問題が発展性を持ったわけであります。だから、新聞紙に出ておった段階では、これは問題になっておりません。そのことをやっぱり十分御理解いただきたいと思います。これで私に対するお尋ねは、お答えができたかと思っております。
  461. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君簡単に願います。
  462. 松永忠二

    ○松永忠二君 それは違うんですよ、私の言っているのは。蓮見事務官の問題について、そこへ出てきたこと、それとの関連のことを言っておるのではない。つまり、新聞記者が新聞に取材したものを発表し、時期がおくれて別の方法でこれがいわゆる明らかになったからといって、これは全然別個なつまり方法によってやられたんだから、それもいわゆる罪として問われるというような筋合いではない。しかも、現実に最初の反響については、そういう記事を出しても、何ら政府答弁については変化がなかった。こういう中で、これを正しく伝えるということからして、方法を変えたことについて異議があるというお話だったので、私はそのことを申し上げたんです。方法を変えて訴えることも、また新聞記者への取材において違法であるのかどうか、こういう点については、私はそういう違法性を問われる何らの根拠もないということを申し上げているのです。蓮見事務官と西山氏との問題について、私は蓮見氏がどうであるとかこうであるとかと言っているわけじゃありません。ただ、西山氏が蓮見氏から取材したその方法については、百十一条で、私たちは、教唆というけれども、それには該当しない。しかし、このことについては、論議をなお詰める必要があるけれども、最初のことについて、こういう時期をおいて方法を変えて訴えること、そのこと自体が罪に問われるという筋合いではないということを私は主張し、そのことを明確にすればいいわけであります。
  463. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはもうおっしゃるとおり、それで西山君が取り調べを受ける、こういう段階ではないと思います。だから、あの新聞記事が出た、それで事柄が済んでおれば問題はなかったと思っております。しかし、私はその当時は新聞記事を非常に大事にして、そのことを、こうもあるじゃないかというのをその例として申しましたが、これはやっぱりその記事にはなっておった。したがって、私が指摘したことは、必要がなかった。しかし、蓮見事務官が逮捕される、そうして自白する、そういうときに、やはり法の範囲内で取材されたかどうか、そういうことがただいま問題になって捜査されている、捜査段階になっておる、かように私は理解しております。
  464. 松永忠二

    ○松永忠二君 委員長、これは大事なことだから、ちょっと一言。
  465. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは大事なことですから十分…。
  466. 松永忠二

    ○松永忠二君 私の言うのは、時期をおいて表現、つまり新聞に載せないで別個の表現をとってやることが、法に問われるということにはならないし、それは表現の自由である、こういうふうに考えるんだが、そのことは間違いないと思うが、総理もそれは賛成できるだろうか。
  467. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その辺は問題ないことだと思っております。しかし、いずれにいたしましても、ただいま捜査段階でございますから、捜査機関においてそれらの点が明確になることだ、かように思っております。
  468. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連。
  469. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に、矢山君。
  470. 矢山有作

    ○矢山有作君 高松刑事局長に聞きたいんですが、あなたは西山記者をどろぼうにしておるんです。窃盗の法律用語の意義を言うてくれませんか。とんでもない話だ。弁護士に聞いたけれども、弁護士も知らぬと言うておる。
  471. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) よく似たような事件に、大日本印刷の……。
  472. 矢山有作

    ○矢山有作君 窃盗の意義を言うてくれればいいんだよ、法律用語の意義を。窃盗というものの法律用語としての意義を言ってくれればいいんだよ。
  473. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 意義を申し上げるために……。
  474. 矢山有作

    ○矢山有作君 例を引かぬでもいい、意義を言ってくれ。
  475. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 例を申し上げたい、判決の事例を申し上げたい、こういうことでございます。
  476. 矢山有作

    ○矢山有作君 君は法律の専門家だろう。
  477. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 財物を窃取するの窃盗と申します。
  478. 矢山有作

    ○矢山有作君 窃取——窃取とはどういうことだ。
  479. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) ひそかに取るということです。
  480. 矢山有作

    ○矢山有作君 ひそかに取る……。
  481. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 盗み取るということです。
  482. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと整理をしますから。君、説明をしてください。
  483. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) はい。  それで、前の東京地裁の判決によりますと、これは大日本印刷の会社における稟議決議一覧表をコピーをして、それを相手に渡したと、こういう事件でございます。本件の場合によく似ている形でございます。これについて争われましたのは、そのリコピーをした感光紙一枚の窃盗なのか、それとも稟議決裁表自身の窃盗なのかということが争われまして、それに対して第一審の東京地裁では、「同社の機密書類を同社所有の感光紙に同社の複写器を使って複写し、これを社外に持ち出したものであるから、全体的にみて、単なる感光紙の窃取ではなく、同社所有の複写した右稟議決裁一覧表を窃取したものと認めるのが相当である。」と、こういう判決が出てございます。ただ、この点につきましては、きのうも申し上げましたように、反対論もございます。私どもとして、この点について窃盗ということでいけるかどうかということについては、さらに検討を進めていくということでございます。
  484. 矢山有作

    ○矢山有作君 二百三十五条とだいぶ違うじゃないか。
  485. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) その点は、これからいろいろ状況を調べてまいりまして、さらにそれを検討してまいりたい。
  486. 矢山有作

    ○矢山有作君 あのね、あなた蓮見事務官の問題と西山記者の問題と混同してものを言っちゃいかぬよ。西山記者は蓮見事務官から受け取っておるんだよ。ただ、その受け取る場合に、あなたはこう言うておるんだよ、きのう。婦人秘書に対して、婦人秘書が何度も断わるのを、あえて頼み込んでもらった、これは実質的に窃盗だと、こう言っておるんだ。おれは西山記者の場合を言っておるんですよ。窃取というのは、人に知られずにひそかに取るやつが窃取です。西山記者をどろぼうにしちゃいかぬ。
  487. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 私が申し上げましたのは、そういう行為は、いまの判決その他から考えてみましても、内容を盗み取るということになる、それだから窃盗に近い行為であると、こう申し上げたわけでございます。
  488. 矢山有作

    ○矢山有作君 何が内容を盗み取った——そのことは紙に書いてあったんだろう、複写か何か知らぬけれども。それを断わるのを頼み込んでもらったという、それをあなたは窃盗だと言う。そんな窃盗がどこの世界にあるか。しろうとみたいなことを言いなさるな。
  489. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) そそのかしたということが西山記者の構成要件です。そのそそのかしたということの中身は、それが窃盗とそう差のない悪質なやり方である、かように申し上げたわけでございます。
  490. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの話は話として聞いておきますが、あなたは少なくとも刑事局長だ。刑事局長という以上は、法律は勉強してきたはずだよ。全くしろうとでもわかるような窃盗というものの法律的な意義すら知らないじゃないか。それでよく刑事局長つとまるね。私は西山記者の場合を問題にしておるんですよ。西山記者は蓮見事務官に頼み込んだかどうかしらぬが、蓮見事務官から受け取っておるんだ、こっそり蓮見事務官の机の引き出しからだれにも隠れてすうっと持って帰ったんじゃないんだよ、間違っちゃいけませんよ。
  491. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) そそのかしということの解釈の問題になってくると思うんですけれども、たとえば権限のある者と新聞記者が話をして、そこでその中身をいろいろ聞いた、あるいは書類をもらったという場合、あるかもしれません。そういうふうな場合、いわば自発的に交付を受けたというふうな話の出た場合というものについては、たとえばくれませんかという程度のことがあっても、それはとうていそそのかしにはならないということは、当然であろうと思います。したがって、そのそそのかしということのためには、たとえば金品を供与してそそのかすとか、あるいは何か弱点を握ってそそのかす、あるいはそういうふうな一つの違法的な形が考えられる。一つの、私が申し上げましたのは、そういう秘書という書類を扱うだけの者、それに対して中身をコピーをして自分にほしいということを要求するというふうな行為は、新聞記者の取材方法としてはとうてい正常な取材方法とは思われない。したがって、これは、そういう行為はまさにそそのかしに該当する、かように申し上げているのです。
  492. 矢山有作

    ○矢山有作君 そそのかしとぼくの言う窃盗を混同しちゃいかぬじゃないか。じゃ、あなたはこういう解釈なの。こういう解釈なのか——西山記者が蓮見事務官に窃盗をすすめたという解釈なの、そういう解釈なのか。
  493. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 国家公務員法百条は、機密漏洩というのが構成要件でございます。西山記者が機密を漏洩することをすすめた、こういうことでございます。
  494. 矢山有作

    ○矢山有作君 それがなぜ窃盗だ。なぜそれが窃盗なんだ。関係ないじゃないの。はっきり言いますけれども、こっちの問題にしておるのは、西山記者をあなたが実質的に窃盗だと言ってどろぼうにしたことを問題にしているのですよね、こっちは。今度はあなた、そしたら、そそかしだと。何だと、それで文句を言われると、今度は百十一条だと、こう言う。おかしいじゃありませんか。
  495. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) いえ、きのうから私の答弁は一貫しているつもりでございます。
  496. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 一貫してきちっと言ってください、きちっと。
  497. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 正式に窃盗に問えるかどうかは、まだ問題が残っている。そういうことについては、ただ一審の判決にはこういうものがあるけれども、その点についてはまだわれわれとしては問題を残している。しかし、事柄の性質からいうと、中身を窃取したというのと、中身をリコピーで写したというのと、現物をそのまま持ってきたというのとは、そう、実際的な効果においては変わらない行為だと、そういう違法な行為をそそのかした、したがって百十一条の対象になるんだと、かように申し上げたわけでございます。
  498. 矢山有作

    ○矢山有作君 刑事局長、百十一条と窃盗は違うじゃないか。窃盗についてやっているのだ。刑事局長、あなた、百十一条はそそのかしだろう。何をそそのかしとあなた言っておるのだ。何をそそのかしたか。だから、あなたに聞きたいのは、なるほど秘密を漏らすことをそそのかしと言うのだから、これは窃盗とか云々の問題でないでしょう。あなたが言ったのは、窃盗と言ったわけだ。だから、あなたは、頭の中に、西山記者が蓮見事務官にコピーをとってこい、盗んでこいと言って教唆したと、こういうふうな予断を持っておるのかと言っているのです。
  499. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 機密を漏洩するという態様の中には、いろんな態様がございましょう。口で言うのもありましょうし、それから書類を盗むというのもありましょうし、それはいろいろあると思います。それで、そそのかしということのためには……。
  500. 矢山有作

    ○矢山有作君 何をそそのかしたか。
  501. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 機密を漏洩することをそそのかした。
  502. 矢山有作

    ○矢山有作君 機密を漏洩することをそそのかしたということは、直ちに窃盗になるわけがないじゃないの。
  503. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) ただ、その場合のそそのかしということが、先ほど松永議員もちょっとおっしゃいましたけれども、そそのかしということが非常に無制限に広く何でもかんでもがそそのかしになるのではない。それはやはり、正常な取材活動として認められる範囲の程度の言動は、それはそそのかしにはならないが、しかし、違法性の強い行為については、それはそそのかしの態様になるというふうに私は申し上げたつもりでございます。
  504. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっと整理します。これは、ああいうような法律の専門家かなんか知らぬが、さっぱりわけのわからぬ、こっちの的をはずしたようなことを言いよるんじゃ、解決つかぬから……。私は、あなたのやり方というものは、婦人秘書からしつこくもらうことを、くれくれと言って——しつこく言ったか言わぬかそれは知らぬよ、しかし、そうしつこくくれくれと言ってもらった、そのことをあなたは実質的に窃盗だと言っているんだ、きのうの答弁は。そういう窃盗というものはありませんぞということを私は言っているわけです。もし、あえてあなたがそれを窃盗だ窃盗だと言うとするならば、ことさら窃盗容疑でひっかけようとする底意があなたにあるということをぼくは指摘しておきます。それできょうはやめます。これ、解決つかない。
  505. 工藤良平

    ○工藤良平君 ただいまの論議のように、西山逮捕の問題については大きな疑義が残るわけでありまして、直ちに私は釈放することを要求をいたしたいと思います。  それでは次に、これまた農業に入る前に一つ問題がありますので……。春闘の問題について、三月三十日の衆議院予算委員会で、今次春闘に関しまして、労使で十分話し合ってほしいという発言を政府のほうはいたしておりますが、その意味するところは一体何か、その点をお伺いいたします。
  506. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 遠方で聞きづらかったんですが、春闘での話し合いということがどういうことであるかという御質問ですか。——お答えいたします。  今度の春闘は、非常にきびしい経済情勢の中にあって、労働組合側は、福祉優先というか、生活防衛という立場から作戦を変えたというか、戦術転換でかなり高額の要求をいたしておることは、御承知のとおりであります。また一方において、経営者側は、今日のきびしい経済情勢の中からなかなかそれには応じられないという態勢を示しておることも、御承知のとおりであります。それで、すでに新聞にも報道されておりまするように、いろいろの計画も持たれておりまするし、いわゆる春闘シーズンに入りかかっております。そこで、私が申し上げましたのは、労働省といたしましては、これをこうせいという段階にはありません。また、そうすべきものでもないと考えております。両者がいま置かれているきびしい経済情勢をよく見きわめて、話し合いで円満な解決をするよう望むという発言を利はいたしたのでありまするし、今日におきましても、労働大臣としては、今日の段階ではそういう考えを持つのが正しいと思っております。
  507. 工藤良平

    ○工藤良平君 民間はともかくといたしまして、公共企業体の場合にもその考え方については変わりないか、お伺いをいたします。
  508. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) いまの御質問は、おそらく当事者能力の問題に触れてくると思います。この間も、官房長官とともにその代表者の方にお目にかかりました。当事者能力について御批判があることはよく存じております。昨年あたりからやや前向きの形はとられてはおりまするが、これでは満足ではございません。しかし、やはり当面においては話し合いをなさって、あとは政府なり関係各省、そこに当事者能力を持たせる努力というものは、われわれとしても一生懸命いたしまするけれども、現実問題としてどうなるか、それはいまの段階では申し上げられませんから、やはり前提として話し合いを進められるということが一番望ましい姿であると私は考えております。
  509. 工藤良平

    ○工藤良平君 すでに公労協では二月の末から三月にかけまして要求が出されているわけでありますが、公共企業体の場合、具体的に話が進んでいないようであります。で、問題の解決が混乱をするということは非常に憂慮すべきことでありますので、そういった意味から、予算審議との関係政府が発言を押えているということではないかということが言われておるのでありますが、そういう事実はございませんか。
  510. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) そういう事実はございません。また、来週の金曜日でありまするか、代表の方にも会うことになっておりまするが、私は常においでになる方のお話はよく承っております。いま御指摘のような事実は全然ございません。
  511. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういたしますと、予算審議の過程にありましても、当然紛争解決のために努力を行なわなければならない、このように考えて指導していく、こういうことでございますね。
  512. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) そのとおりでございます。
  513. 工藤良平

    ○工藤良平君 昭和三十九年に政府は公共企業体の当事者能力回復に努力をする旨言明いたしてきているわけでありますけれども、現在もそれは変わらないか。また変わらないとすれば、いかなる努力をしてきたか。また今後やっていくか。先ほど若干御説明がありましたけれども、再度その点をお伺いをしておきたいと思います。
  514. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) これは政府の各省にまたがる問題ともなってまいりまするので、大蔵省をはじめ関係各大臣ともよく御相談をいたし、両者の言い分を聞きまして、労働大臣としてとるべき措置はきまってくると思いまするが、やはりあくまでも原則は、話し合いを進めていただくということをたてまえといたしております。
  515. 工藤良平

    ○工藤良平君 この種の問題につきましては、特に現在の景気浮揚策といたしましても、労働者の賃金を高めて生活を高めてやるということは非常に重要な問題であろうと思いますから、政府の格段の努力をお願いをいたしたいと思います。  それでは本題の農業問題に入りたいと思いますが、まず最初に、佐藤総理はすでに衆議院の審議の段階におきまして、農業に対する熱意のほどを仄聞をしておるのでありますけれども、再度、その点について論議に入ります前に、佐藤総理の熱意を私はお伺いをいたしたいと思います。
  516. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ日本は本来農業国、瑞穂の国と、こういうようにいわれたものでございますが、しかしなかなか最近そうはいかなくなって、必要な食糧にいたしましても、水産——魚、魚介類を入れて初めて自給度八一%という程度になっております。いわゆる農産物——魚を除くと、七五あるいは七六、そういうような自給度でございます。私は、ずいぶん山の多い、耕地面積の狭いところではありますけれども、もっと何とかして食糧の自給度を高める、まあただ単に米麦に限るわけではございません。蔬菜も果樹も、さらに畜産も盛んにいたしまして自給度を高める、こういうことであってほしいと、かように思っておるわけであります。いろいろの問題がありますが、最近やられておるような集団農業、これがよほど効果をあげておるのではないだろうか、そうしてまた輸送方法等にも、いわゆるまあフェリーボートができまして、あるいは九州と東京、あるいは北海道と東京、こういうように、大消費地と生産地と、これを直結する、こういうような道が開かれて、よほど改善されつつあると、かように思いますけれども、それにしてもまだまだ低いと、かように思うのでございます。やはり生産度を高めるという、そのためにいろいろのくふうをしなければならない。農業の協業化、これはどうしてもやっていかなきゃならないと、かように思っておりまするし、また多角経営の方向に進んでいく、そういうようなことでいろいろ指導し、効率のいい農業、そうして自給度を高める、こういうことであってほしいと、かように思っておる次第でございます。したがいまして、最近の農産物の輸入問題等とも関連して、一面生産者を育成強化すると同時に、消費者に便するような措置をとってまいりたいと、かように思っております。
  517. 工藤良平

    ○工藤良平君 今日の農業の問題を考える場合に、国際的な分野からの農業に対するいろんな問題についても、私は当然重要な課題だと思っているわけであります。これらは後ほど論議を進めてまいりたいと思いますが、さしあたって、いま緊急な問題として出てきております物統令の問題についてまずお聞きをしてまいりたいと思うのでありますが、この点について、政府は物統令廃止によって財政的な負担は変わらないと、こういうことを衆議院予算委員会で発言をなさっておるわけでありますが、その点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  518. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 物統令の撤廃に伴いまして、特にそれによって政府の売り渡し価格を引き上げるとかというふうな意味で財政負担を軽減すると、かようなことは考えておりません。
  519. 工藤良平

    ○工藤良平君 財政負担が変わらないとするならば、あえてこの物統令から除外をする、このことの意義について疑問を持つのでありますけれども、その本来の、なぜ物統令から除外していくのかという問題についてもう少しお聞かせをいただきたいと思います。
  520. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 物統令適用を廃止いたします趣旨は、御承知のように、米の需給事情が非常に緩和をいたしまして、消費者のほうでも米の品質に対する選好というのが非常に高まってきております。そういうような状態のもとにおきまして、従来のような、品質と申しましても政府が売る場合の品質は、御承知のとおり物理的性質だけで等級をきめているわけでございまして、いわゆる味とか銘柄というようなものはいままで政府の検査規格にはないわけでございます。また、そういうものを政府の手でつくるということは非常にむずかしい問題でございますので、むしろこれは自由な価格形成を行なわせることによって、米の品質差というものに応じた価格の形成をはかるという考えでございます。もちろん、これは当然品質差による価格というものが行く行くは政府の売り渡し価格にも反映をする。また消費者、生産者に対しましても銘柄格差という問題が出てくる。当然これは良質米の増産、良質米の生産の刺激ということにも相なろうかと思います。さようなことをわれわれは物統令撤廃の趣旨と考えている次第でございます。
  521. 工藤良平

    ○工藤良平君 消費者がおいしい米を食べたい。ところが現在の政府の制度では、そのおいしい米を消費者に渡すということがなかなか困難である。したがって、この物統令の除外ということによって、自由に価格が形成をされ、売買されていく、好みに応じて売買されていくということだというようにいま理解をしたわけでありますが、そうすると、私はこの現物を総理、農林大臣、長官に見ていただきたいと思うのでありますが、これに価格の見分けがつくかどうか。長官、見て——食糧庁長官専門家だからそれを見てくださいよ、違うか。
  522. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) まあ、こうして見ましても、非常にむずかしい問題でございます。現物だけでは、特に精米にいたしますと非常に判定がむずかしいのでございます。ただ、御承知のように、精米にも規格がございまして、一等、二等という規格がございますので、その規格に該当したものを売る。いままでも配給米の規格として、製品として売ることになっておりまして、専門家が鑑定をすれば、精米の規格一等、二等ということはわかるはずでございます。ただ、うまいかまずいかということになりますと、現在の政府の規格では、そのような味の判定までするような規格は持ち合わしておりませんし、またこれは、事実、消費者が料理をして、それによって食べてみなければわからない。また食べる方によっても評価が違ってくるというのが米の持っている性格でございます。
  523. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういう理論構成については私もわかります。しかし、消費者が一々この米を専門的に見るわけではないのであります。佐藤総理、それを見ていただきたいと思いますけれども、それに価格の差、等級の違いがあると思いますか。
  524. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) まあ、これはなかなか私どもしろうとではむずかしいことでございますが、しかし、長年そういう米の検査に従事しておる人から見れば、この優劣ははっきり判定がつくというふうに考えます。
  525. 工藤良平

    ○工藤良平君 私も、かつて米の検査をしておりましたので、私はこれを、なぜそういうことを言っているかといいますと、私が買えばそれはわかるかもわからない。しかし、佐藤総理亀長長官自身だってこれが私はいま即断できないと、このように思うのですが、ましてや、消費者ができるかどうかということを私は聞いているのです。できると思いますか。
  526. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 米の優劣という問題でございまして、当然これは物理的な基準からいえば、砕米の多いもの、あるいは搗精度の黒いものは劣るということに相なります。ただ、言うまでもなく、しろうとに見ただけでいわゆるうまいまずいということを判定することは、非常にむずかしいことだと私は思います。  そこで、御質問の趣旨は、おそらく消費者がどうしてそれでは選考するのかということでございますけれども、消費者というのは、ある程度販売店の顧客でありますけれども、そこで従来とも買っておる米がうまいかまずいかということがおそらく消費者の食べてみての判断の基準であろうと考えます。そこで、おそらく食べてみてということでは困るというお話であろうかと思いますが、私どもは、そういうことでございますから、現在でも米の販売につきましては、これはいわゆる企業制限、営業の制限をして、登録制度ということで、だれでも米が売れるという制度はまだとっておらないわけでございます。また、標準価格米とかいろいろな形で、やはりこれは物の価格に応じた値段が適正に形成されるように各般の指導につとめておるわけでございます。
  527. 工藤良平

    ○工藤良平君 おそらく総理といたしましても——山中総務長官にこにこしておりますけれども、おそらくわからないと思うのです。大臣にこれを配って、あとで札を入れてもらってもいいんですけれども、それがもし当たりましたら私賞品をあげてもいいと思うのですが、それは不可能だと思うのですね。不可能だと思います。しかし、私はこの米を——なぜこういうことを言うかといいますと、一つは、一カ月前に、政府標準米といわれる現在の配給米であります。千五百二十円の配給米であります。一つは物統令が廃止された後に私が自炊用の——いましておりますから、自炊で買った自主流通米の米であります。十キロ当たり二千二百円の米であります。私は、それを比較をしてみますと、全くいろいろな条件が同一であります。同じ俵から出てきたような米であります。それが一方千五百二十円で買われ、それが逆に二千二百円で売られていくという状態がいま現実に生まれようとして——すでに生まれているわけであります。私はこのことを指摘したいのであります。長官、同じ品質の米が、食べてみても変わらない米が一方千五百二十円で、一方二千二百円で売られている。財政局に国の支出は変わらないかもわからないけれども国民の負担というものは五割近い大きな支出が含まれているということについてどう考えるか。
  528. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 政府の配給米をお召し上がりになって、片方は自主流通米、値段は高いと思いますが、ほとんど味が同じであったと、そういうことはあり得ると思います。なぜかと申しますと、現在御承知のように自主流通米というものは全体の、いわゆる市場、農家の販売する量の約二割程度でございまして、政府の買い上げる量が八割でございますから、政府のほうにもいわば決してまずい米ばかりではない、相当いい米が来るということであります。ただ、自主流通米のほうがどちらかといえばいいものばかりが多いということであります。でありますから、同じもので自主流通米に出されるものとそれから政府に売られるものと、農家なり農協の段階としても両方あるわけでございます。自主流通米のつくられました趣旨は、いわゆる米の需給とともに、いわゆる制度的にも自由の長所を取り入れる、生産者にも政府買い入れ価格以上の値段で農協が農家から買うことができる。また、市場においても、配給米よりも高い値段で売ることができるというところから、自然これは良質の米が集まっておることは間違いございません。しかし、先ほど申し上げましたように、量的に見まして、政府の中にも、やはり同じようなものが政府に来るわけでございまして、そういうものにつきましては、両者の間に品質は変わらないということがあり得るわけでございます。ただ、片一方は高くて片一方が安いのはどうかということでございますが、御承知のように、配給米のほうは財政負担をしておるという関係でございますが、そこへまいりますと、食管といたしましては、やはり自主流通米というものが農家の手取りも増加するという観点から、できるだけこれを促進をいたしたい。また同時に、それは財政負担の軽減にもつながるということでございます。ただ、家計的な面から申しますと、現在の政府標準価格米あるいは従来の配給米の価格というのは、家計費の面から言えば、非常に率から言っても負担から言ってもきわめて低い率であると、かように考えております。
  529. 工藤良平

    ○工藤良平君 佐藤総理、私先ほど品質の問題お話を申し上げました。しかも、このような同じ品物でありながら価格が違うということについて、総理どのようにお考えでございますか。
  530. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかしろうとには米の質を見分けることは困難だと思います。ことに、白米にした場合に、精白度の相違もありますから、ただ単に小さい砕き米と申しますか、そういうのが多い少ないだけではきまらないだろうし、また、色が白いからこのほうがおいしいだろうと、こうも言えないだろう、かように思いますので、しろうとにはむずかしいことではないだろうか、かように私は思います。
  531. 工藤良平

    ○工藤良平君 したがって、この米が卸の段階で産地銘柄なりあるいは品種銘柄ということでそれぞれ評価をされたといたしましても、消費者の段階ではその判別はきわめてむずかしい。これが宮城県のササニシキですよと言われて初めてああそうですかということに気づくのが私は普通ではないかと思うのですよ。ですからきわめてむずかしい問題があると思う。それを物統令からはずして自由にした。価格には国民の負担が逆にふえていく、こういう状態が生まれてくるわけでありまして、この点については、私はこれからの農業政策の重要な一つの基本的な考え方でもありますからただしているわけでありまして、佐藤総理その点お答えをいただきたいと思います。
  532. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかく同じ——値段は相違してもおいしいものを食べたい。非常にわかりいいのは、すし米とすし米でないもの、これは区別して食べて、もう味がすっかり違う。そういうことが、ただ白米に精米したその度合いで直ちにわかるというわけではないと思う。やっぱり小売りの段階で、これは産地は新潟です、あるいは北海道ですと、こういうふうに言ってくれればこれはわかりますが、なかなかそこまで言わないとむしろしろうとはわからない。北海道の場合はある程度しろうとでもわかろうかと思いますけれども、しかし、いまの新潟とあるいは宮城、その関係になるとこれはよほどわかりにくいんじゃないか、かように思います。
  533. 工藤良平

    ○工藤良平君 ここでどこの米がおいしいとか、あるいはまずいということになりますと、これはたいへん重要でありますから、その点については触れませんけれども、先ほどお話のようになかなか判別がむずかしい。しかもそれがいま言う別の価格で売られていくということ、しかもそれは政府米が、五百八十万トン政府が買って、そのうちの五百五十万トンを一般の消費者の配給にのせていくということなんですね。ところが、今回出されている標準価格米と自主流通米として回されていく米、それからさっきお話がありましたけれども、その自主流通米は二百三十万とか二百十五万トン程度だからたいしたことはないということでありますけれども、五百八十万トンのうちの五百五十万トンが自主流通米としては絶対に回っていかないと、こういうことになるのでありますか。
  534. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 物価統制令のありました時代は、政府の売却した米はすべていわゆる配給統制の、物価統制の適用を受けておったはずであります。それ以外の米は自主流通米ということでありまして、物価統制令が撤廃されました後は、もちろん供給源としては政府の売却した米と自主流通米とがございます。しかし、実際に米屋が販売をする段階におきましては、政府から売却したもののうち消費者の欲する量、これは全量ではないと思います。消費者の欲する量は、標準価格米として従来の統制価格以下で必ず売る。それ以外の政府の売却した米は、自主流通米とまぜて適当な製品をつくって販売しても差しつかえない。自主流通米につきましても、自主流通米単体で販売してもけっこうでありますし、政府米と混合して適正な値段で売却しても差しつかえない、かような制度になるわけでございます。
  535. 工藤良平

    ○工藤良平君 政府の食管法に基づいた指定業者に売却する価格はどのようになりますか。
  536. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 政府が卸販売業者に販売いたします価格は、従来物価統制令があった時分と同じ価格で販売をすることにいたしております。  ただ、この四月からは人件費も上がるであろうということで、従来よりもさらに一俵六十円引いて安くしておりますが、考え方としましては、それに白米の搗精賃、小売りマージン等を加えても結果的に標準価格米の値段になる、そういうふうな一応の試算で従来の政府売却価格の水準は変えない、かような考えであります。
  537. 工藤良平

    ○工藤良平君 指定業者に売却する場合の価格は従来と変わらない、逆に若干下がった、こういうことなんですね。ところが、政府が売却した米が、二千二百円という——あるいは二千三百円でもいいわけであります、自由でありますから、売ってよろしいわけです。違反にならなくなってきたわけです。そういたしますと、千五百二十円で標準価格米で売るものと、二千二百円か二千三百円でも売れるということになりますと、これはたいへんなマージンというものが、もうけというものが出てくるわけでありますが、これはどうして規制していくわけでありますか。規制はしなくてもいいわけですか。
  538. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 政府の売りました価格、標準的に想定をいたした価格よりも高い価格で売れれば売るということはあると思います。しかし政府は、先ほどうまい米、まずい米という話が出ましたけれども政府が売りますのは、いわゆる物理的規格で売りますので、その点も従来と同じでありますから、買い入れた卸業者は消費者の好みによって下げて売るものもあれば、高くして売るものもある、そういう操作がこれは当然営業の態様としてあり得ると思います。  ただ、異常に高くならないか、全部が値上げするようなことにならないかというようなことにつきましては、私ども先般来御説明申し上げましたように、従来の登録制というもとで、従来の米屋だけの独占価格におちいらないようにということで、営業者の新規参入であるとか、あるいは大型精米等でコストの軽減をはかるとかいう措置を講じておるわけでございます。物統令——すでに四月一日に撤廃をいたしましたが、最近の動きを見ましても、米価が上がっておるという報道はどこにもないわけでございまして、きわめて安定をしておる、かように考えております。
  539. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま米価が安定をしているということでありますが、これは今日まで自主流通米というものが二千二百円、二千四百円で売られてきた。それと比較して、それをオーバーしていないということであって、千五百二十円で買われていたものが、現実に政府の米が二千円や二千二百円で売られても、もう何も規制はないわけでありますから、私はそこにたいへん大きな問題があると思う。その点はそれでいいわけですか、もう一ぺん聞きます。
  540. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 従来物統令というものがありまして、それで売らなければ、いわば刑事罰を科するという制度であったわけでございます。まあ、いまここで申し上げるのもどうかと思いますけれども、それがはたして規定どおり刑事罰が科されていたかどうかという問題は、御承知のとおりであろうと思います。ただ私ども、そういうふうなかりに米屋が非常に利潤を多くする、あるいは独占価格的なことをやるというようなことにつきましては、私どもは物統令撤廃後はそのようなことができないような経済環境をつくる、できないような新規業者の認可あるいはコスト軽減方策、かような経済環境を整備して、従来のような刑事罰というものはなくなったけれども、それにかわるべき経済環境を整えて対応をしていく、かような施策もとっておるわけでございます。
  541. 工藤良平

    ○工藤良平君 この論議だけでひまをとりましてもたいへんでありますから、佐藤総理、いま私が話をしましたように、非常に問題があるわけであります。したがって、この点については、やはり消費者に安定的に安い食糧を与えてやるということが、食管法の本来の趣旨でありますから、その食管法そのものは生きているわけでありますから、あらゆる部面からその価格の上昇については行政指導で規制をすべきだ、私はこのように思うのでありますが、その点に対する総理の決意をお伺いいたします。
  542. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはまあ規制できればたいへんけっこうですが、なかなか規制だけでもいかぬと、かように思います。  もう一つは、米は、これは常食でございますから、どこそこの米屋はたいへんいい米を提供してくれる、わりに安いですよ、お値段も、というような話が直ちに伝わる。これは非常な、何と申しますか、広告ができる、無料広告ができる筋のもののようです。また買った米が非常に質が悪いと、また値段が不当に高いと、必ずそれは主婦の仲間でも話し合いの種になる。そういうことで、やはり競争的な立場に置くほうがむしろ望ましいのではないだろうか。私はそういう点もあるように見受けるのでございます。ただいま食糧庁がとっておる政策、これは必ずしも悪いほうばかりじゃない、そういう意味において、やっぱり消費者に喜ばれておる面もある、こういうことは見のがせないように思います。
  543. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういうことになりますと、また問題が起こってくると思うのであります。特にさっき食糧庁長官からお話がありましたけれども、競争原理を入れたから価格は上がらないだろうと、こう言っておるのでありますけれども、確かに競争原理は入れた、しかし米屋というのは零細であります。零細なものにさらに競争原理が入ってきて、さらに零細化していくという状況の中から、人件費やその他の関係で、逆に言うと、値上がりが起こるという可能性も競争原理の中に起こってくるのでありますが、その点についてはどうですか。
  544. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それには、そのもとをやっぱり政府から出す。そこにその小売りの段階でも、ただいまのような競争原理を採用することによって、利益こそあれ、悪のほうはまず救われると私は思います。
  545. 工藤良平

    ○工藤良平君 もしこれらの問題について配給上、価格上問題が起こった場合には物統令をさらにもとに戻す、こういう考え方があるか、あるいは上限価格というものを、少なくとも政府が売る米については、上限価格というものをつくらざるを得ないというかっこうに私はならざるを得ないと思うのですが、その点どうですか。
  546. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) まあ、その撤廃後の事情を見ましても、私ども今後、米の操作という点には非常に従来研究も重ねてまいりましたし、おそらくそのようなことはないと思います。法制的にはかりに——かりのお話で、そういうことがあった場合にどうするのかということでございますが、物価統制令をいまさら持ち出す必要はないと私ども考えております。食管法は、御承知のように、政府の売り渡し価格に関する規定だけでございますので、小売り価格に関しては特にきめなければならぬという規定はございません。ただ食管法に、必要があるときは価格の統制をすることができるという一般的な条文がございますので、もしそういうことになりましても、物価統制令に返るという必要はなかろうと考えております。
  547. 工藤良平

    ○工藤良平君 これらについてはなお問題を残しますから、分科会等で議論をしていきたいと思います。  そこで、防衛庁長官にお伺いいたしますが、防衛庁には一括して米が売却をされておるわけでありますが、年間どの程度消費しておりますか。
  548. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 防衛庁が食糧庁に対して割り当て申請を行なっておりまする米の数量は年間約二万八千トン、これは精米であります。自衛隊用の米は政府直売でありまして、各駐屯地等が、食糧事務所の指定をいたしておりまする指定買い受け人、卸売り業者でございますね、を通じて購入をしておるわけであります。購入の価格は、内地精米は十キログラム当たり千五百十円、これは四十三年十月一日からの値段でございます。
  549. 工藤良平

    ○工藤良平君 食糧庁として売却をした米は幾らですか。
  550. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) ただいまの防衛庁長官の答えと同じ数字でございます。
  551. 工藤良平

    ○工藤良平君 間違いありませんか。
  552. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 訂正をいたします。いまのは防衛庁から申請のあった数字でございまして、その点は間違いございませんが、売却は二万二千トンでございます。
  553. 工藤良平

    ○工藤良平君 食糧庁は二万二千トン、防衛庁は二万八千トン、これは私は資料をいただきましたけれども出ているわけでありますが、これはどういう食い違いが生じているわけでありますか。
  554. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) ただいま長官からお答えいたしました数字は、食糧庁に対して割り当て申請いたしました数字でございます。この申請に基づきまして現実に各駐とん地が購入いたすわけでございますが、その購入した実績は二万二千トンということになるわけでございます。
  555. 工藤良平

    ○工藤良平君 売却の価格は幾らでございますか、農林省。
  556. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 防衛庁に売却いたします場合には、防衛庁と食糧庁と協議をいたしました指定買い受け人というのがございまして、これが食糧庁から買いまして精米にいたしまして防衛庁に納入をするという形に相なっております。食糧庁が売り払います価格は、防衛庁の価格が一般の消費者価格と同じになるようにという計算でいたしておりまして、千五百十円が防衛庁——これは一般の消費者の全国の平均と同じでございますが、十キロ当たり千五百十円になるように計算をいたしておるわけでございます。私どもがこのような数字から逆算をいたしまして、搗精賃それから指定買い受け人の手数料というものを控除したものを政府売り渡し価格といたしておるわけでございまして、政府が一般の家庭用の卸に売る価格よりは若干高くなっております。これは小売りを通さないということもあるのでございまして、そのような考え方決定をいたしておるわけでございます。
  557. 工藤良平

    ○工藤良平君 防衛庁は、この一括購入をした米をどのようにして支給しているか。あるいは、営外居住者なりそういう者に対する扱いはどうしているか。
  558. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 防衛庁、自衛隊で無料支給いたしておりますのは、営内居住者だけでございます。営外居住者は、各家庭で調達しますし、場合によっては営内で資金を出しまして有料で食事をするということになっております。
  559. 工藤良平

    ○工藤良平君 そうすると、営内で支給する者については、それぞれの給料から差し引いているかどうか、その点。
  560. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 自衛隊は、給与法によりまして、曹士クラスの自衛官に対しましては食事を無料で支給するということになっております。ただ、自衛官の俸給をきめます場合には、大体そのもとになるのは警察官の給与でございますが、それにいろいろな操作を加えて自衛官の俸給を定めております。その際に、食事が無料で支給されておるという実態を十分前提にしまして自衛官の俸給表を設定いたしておるのでございます。
  561. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは、一括防衛庁のほうから食事の経費として支払われているわけでありますが、したがって、私は、食管法第四条に基づく売却、これについて若干疑義を持つのでありますけれども、この第四条の内容とその関連について。
  562. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 食管法第四条は、都道府県知事に登録したる販売業者もしくは農林大臣の指定したる者に売り渡すということになっております。登録販売業者と申しますのは、これは一般の家庭配給を行なう卸でございます。それから農林大臣の指定する者というものは、直売をするというような場合に、あるいは小売りを通さないで売るというような場合に行なっておるのでございまして、防衛庁、矯正施設というようなそういうところが指定買い受け人を選定をして、農林省と協議の上、形式的には農林大臣が指定をして売却をいたしておるのでございます。
  563. 工藤良平

    ○工藤良平君 この第四条の趣旨からいたしまして、物統令を除外した今日において、当然コスト価格で売却をすべきだと私は思うのでありますけれども、その点についてはどうですか。
  564. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) コスト価格ということを私ちょっとわかりかねるのでございますが、もし食管のコスト価格ということでございますれば、これは御承知のように生産者から十五万円で買って、さらに経費がかかっておりますからトン十六万、いわば財政負担をしないでという御趣旨でございますれば、これは十キロにいたしますと二千円近くなるかと思いますが、私どもとしましては、現在の第四条の政府売り渡し価格は消費者及び家計の安定を旨として定むべしということがございまして、それは第四条の第一項の売り渡しの相手方によって差別があるとは言いがたいと、かように考えます。
  565. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、国が支出するこの種の価格については、当然政府管理経費を含めて今後売却すべきではないかという議論を持つのであります。これはなぜかといいますと、食管法のたてまえ、食管会計というたてまえからいたしまして、そうすべきではないか。そうしないと、食管赤字の累積というものが、すべて、食管さらにそれが農民のしわ寄せという形になるわけでありますから、そのことを私は言っておるのでありまして、佐藤総理、その点はどうでしょう。
  566. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) ちょっと聞き漏らしたので、間違っておればまたお答えいたしますけれども、コスト価格で売れということでございますけれども、これは、御承知のように、第四条には、米の登録販売業者もしくは農林大臣の指定する者に売り渡す、その売り渡し価格は消費者及び家計の安定を旨として政府の売り渡し価格を決定すべしと書いてあるのでございまして、政府がたまたま登録販売業者を通さないで大量であるから指定買い受け人に売っておるという場合に、法規上差別ができるかどうかという問題が私はあるのではないかと思います。  また、御指摘の点がよくわかりませんが、自衛隊等の場合にはこれは糧食費が全部財政負担であるから、食管の会計の健全からいえば、それを財政で負担をして食管にその分を繰り入れても国の財政支出としては同じじゃないかというふうな観点から、食管の健全性という点に特に着目をしてそういう御質問であろうかと思いますが、第四条の規定から申せば、家計の安定という点においては変わりがないのでございまして、農林大臣の指定する者は必ずしも政府ですべて財政を負担しておるものとは限らないのでございまして、自衛隊、矯正施設以外にも指定する者で原材料用等で売っている場合もございますので、やはりこれは第四条二項の食管法の規定は当然かぶってくるのではないかというふうに考えます。
  567. 工藤良平

    ○工藤良平君 食管の解釈というものがそのつどそのつど適当にやられているのであります。そこを私は問題にしたいと思うのです。  それでは、総理にお伺いいたしますが、いま過剰米の処理の法案ができまして処理をいたしているわけであります。正直申し上げまして、四十二年産米から四十五年産米の米の処理をするのでありますけれども、それに一体どれくらいの金が必要なのか御存じでありますか、総理。知らないなら知らないでいいです。
  568. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一兆一千億程度じゃなかったかと思っております。
  569. 工藤良平

    ○工藤良平君 過剰米の処理について一兆一千億以上の実は金を必要とするのであります。これは、私、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、私、記憶が新しいのでありますけれども、四十三年に過剰米の問題が出まして、大蔵省から自由米という制度が出てきたのであります。その際に、作付制限か自由米をとるかという議論が行なわれました。その際に、食管法の法の統一的な解釈として政府見解が出されたのは、食管法には米を全量買うという規定はない、こういうことが統一見解として出されたのであります。私は、そのときに指摘をいたしました。自主米というものは量の規制にはならない。したがって、大きな問題が今後起こりますよという指摘をしてきたのでありますけれども、今日までそのことが、結局、法の解釈としてきちんとならなかった。二兎を追う者は一兎をも得で、結局、一兆一千億という——むだ金と言うとこれはたいへん語弊がありますけれども、そういう金を余分に使わなければならぬという、状態になってきた。このことについて、総理、いかにお考えですか。
  570. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、とにかく国民の食糧、大事な問題ではございますが、しかし、むだ金は使わないようにしなければならない。ここらにも、私は、農政の基本的態度において検討すべきものがあるだろうと、かように思います。
  571. 工藤良平

    ○工藤良平君 一兆一千億という、余った米の処理に使ってきたということ、それを、四十三年が無理としても、四十四年から、農業に力をつけるという意味において、あるいは当時言われておった、外国農産物に対する対抗策としても考えなきゃならぬと言われておった、そのことに、当然、その財政的な資本投下が行なわれてしかるべきでなかったのか。そのことが、私は、もし行なわれているとするならば、今日もちろんそのこと自体で解決するとは思いませんけれども、やはり、農業の新しい芽を引き出す芽を引き出す一つの何かが出てきたのではないか、こういう実は気持ちがして、残念でならないのでありますが、佐藤総理、この自由米の問題について、今後、消費者あるいは農業の問題について大きな影響が出てきたときに、どのような措置をとられるお考えなのか。
  572. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ農政の面で、減反運動その他がやられております。また、同時に、おいしい食糧を確保する、こういう立場でいろいろ農林省も努力している最中でございます。そういう意味で、十分実効のあがる政策を政府もとるつもりでございますから、各界各層の御協力をお願いしたいと思います。
  573. 工藤良平

    ○工藤良平君 この問題については、非常に大きな問題でありますから、また日にちを改めて、私は、その問題をさらに改善する方向で検討していきたいと思っているわけであります。  次に、私は、農業の今日的な重要な課題の中で、自然環境の保全ということが非常に重要な課題だと思うんでありますが、この点に対して、総理、どのようにお考えですか。
  574. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これが新しい問題で、もしも農薬の使用というものに制限を加える、こういうことになると、いままでの米の生産、これにも大変化を来たすんだろう。しかし、農薬の使用制限、これは当然やらなければならない、そういう段階に来ておりますから、それとあわせて、生産がどういうことになるか、そこらの見込み、見積もりも十分正確を期していかなければならない、かように思います。
  575. 工藤良平

    ○工藤良平君 具体的な問題として、これは農林大臣にお伺いいたしますけれども、土壌の汚染というものが非常に進んでおります。これはやはりこれからの農業を進めていく上において重大な問題でありますが、具体的に進める過程の中で、農林省としてどのような問題が出てくるか、その点をお伺いしたいと思います。
  576. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 国民の健康上からも非常に大事なことでございますから、汚染地区というものも指定されています。その汚染地区において土地改良などをするときに、汚染米などが生産されないように、そういう土地改良などの施行方法といいますか、施行方法をきめまして、そういう汚染地区の指定場所に土地改良などをする場合にはそういう施行法によってやる。しかも、補助率といいますか、負担率を普通の土地改良などよりも多くしまして、地方団体も農民も負担することになりますが、結果的には、生産者、農民の負担がほとんどないように、地方機関とも指導してやっていきたいと、こういうふうに方針をきめて進めております。
  577. 工藤良平

    ○工藤良平君 この土壌汚染の問題については、すでに、土壌汚染防止法、それから鉱毒対策事業として行なわれておるわけでありますけれども、いま大臣から、たいへん前向きの御意見をいただいたのでありますけれども、現実に自己負担というものがあるかないか、その点を明らかにしていただきたい。
  578. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 現実に自己負担がないというきめにはなっておりません。自己負担はあることにはなっています。しかし、一般の土地改良などよりは非常に少なくなっております。そこで、先ほど申し上げましたように、自己負担がないように地方団体等で負担してもらうように指導していますから、結果的には自己負担がほとんどないような形で土地改良などを施行する、こういうふうな結果というか、いきさつになると思います。
  579. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは環境庁長官にお伺いしますが、土壌汚染防止法による補助率は幾らでありますか。
  580. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ちょっとお待ちを願います。
  581. 工藤良平

    ○工藤良平君 それでは、環境庁長官、基本的な問題で、特にさっき申し上げましたように、土壌汚染というものは非常に進んでいるわけであります。その土壌汚染防止法の中で規定をされておる重金属はカドミウムまたはその化合物ということになっているのでありますが、現在たいへん問題になっているPCB、あるいは砒素、そういったものについても、当然これに含め、拡大をしていくべきではないかと思うのでありますが、その点に対する御意見をいただきたい。
  582. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) お話のとおり、現在土壌汚染防止法の中にある有害物質はカドミウムだけでございます。いずれ、ごく近く——いま中央公害対策審議会に諮問しておりますが、近く銅をこの物質の中に加える方針でおります。しかし、お話のように、やはり砒素とかあるいはPCBというものは、これは重大な問題でござまして、確かに有害なことは十分に了解されます。したがいまして、いずれこういうものも、できるだけ早く検討いたしまして、それを有害物質の中に加える必要があると考えておりますけれども、ただ、残念ながら、必ずしも的確な内容がまだわかっておりません。実態がよくわかっておりませんので——いろいろなその実態、どのように土壌が汚染されているのか、その実態はどうであるか、それがどのように植物の中に入っていくのか、それがどのように植物から人体の中に影響するのかというようなことがほとんどわかっておりませんので、はなはだこれは申しわけない次第でございますが、早急にこういうものはできるだけ研究調査いたしまして、早い機会にこれも加えてまいりたいと考えております。
  583. 工藤良平

    ○工藤良平君 補助率は。
  584. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 補助率の問題でございますが、公害防止特別事業ということで土地改良をやっております。都道府県で地域指定をいたしまして、そこで都道府県で知事が対策計画を立てる、その対策計画に基づいて土地改良事業をやります場合には、御承知と思いますけれど、かんがい施設あるいは農用地の客土、こういう事業をやるわけでございます。その場合に、補助率は、事業者負担があります場合には事業者負担の残額について、ない場合には事業費につきましてこの補助率を適用するわけでございますけれども、施設につきましては三分の二、その場合に、都道府県に三〇%、これは条件をつけまして負担するようにしてまいりたい。それから農用地の場合には五五%、これは一般より非常に高くなっております。これも都道府県が当然条件をつけて三〇%以上負担するというようなことで現実に運用をしてまいることにいたしております。
  585. 工藤良平

    ○工藤良平君 この土壌の汚染の問題については、その汚染の経路、さらに因果関係、非常に複雑な問題であります。したがって、汚染されているということをいち早くキャッチして、それに万全の対策を講ずるということが大切であります。  ただ、問題は、非常にもう廃鉱、休山になって久しい、しかも、相手もどこかわからないという実態が実はあるのでありまして、そういう意味から考えますと、当然、これは国なりあるいは地方自治体の中でその工事の負担をしていって、そして因果関係がはっきりした段階でその原因者から金を取るなり、そういうことをすべきではないか。そのことによって、土地改良事業ができない、苦しんでいる農家の人たちがたくさんあるのでありますが、それについての基本的な考え方をぜひ示していただきたいと思います。
  586. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ただいまの工藤委員のお考えで大体私も同感でございます。ただ、その前に、その前提として、どのような害があるのか、どれほど人体に影響あるのか、そういうこともまだはっきり確かめておりません。その重金属あるいはPCBそのものも、まだ、いろいろなメカニズムなり、いろいろな作用がわかっておりませんので、まずこれを先にとらえることが一番大事ではないかと考えております。なお、その上で、その費用負担とか、そういうような補償の問題については、お考えに大体同感であります。
  587. 工藤良平

    ○工藤良平君 原因を流しておるほうの通産大臣にひとつお伺いをしたいのでありますけれども、実は、先日、私のほうの馬上金山、これは古く、以前から廃鉱になっておる鉱山——まさかと思っておりましたけれども、実は基準をはるかに上回る濃度の砒素が検出をされました。たいへん大騒ぎになっておるのでありますけれども、先日実は公害の委員会で、重金属の点検を早急にやり、さらにその対策を万全を期していただきたいということを、ちょうど出席がなかったので環境庁長官を通じてお話を申し上げたのでありますけれども、その対策について、ぜひひとつ熱意のほどを示していただきたいと思います。
  588. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 鉱山の鉱害につきましては鉱業法で無過失責任まで追及できるようになっておるわけでございますが、鉱山の歴史は非常に古く、全国で廃鉱になっているものを合わせますと約六千カ所くらいと推定をせられるわけでございます。その中で、無資力で、もうすでに責任を追及できないものが大半でございます。鉱業権を継承したものは過去の鉱害でも負担しなければならないように鉱業法では明定をされておりますが、しかし、問題になっておるものは、もうすでに、長いこと問題にはならなくて、そしていま調べてみるとたいへんだということが各地に起こっておるわけでございます。土呂久などはその非常に大きな例でございます。いま、通産省の通産局で全部これを調べるといっても、なかなかたいへんでございますが、通産局長をして、府県、それから地方、部落等、長い歴史がありまして、地方自体はその実態を承知をしておりますし、これが鉱害の歴史も記録があるわけでございますから、そういう人々に呼びかけながら、地方公共団体とも十分連絡をとりながら、実態調査を至急明らかにしたいということでございまして、実態が明らかになっているものについては、府県、地方公共団体等とも力を合わせながら鉱害の除去の施設を行ない、特に今年度は、金額としては小さなものでございますが、去年の九千万余に比べると三倍近く予算も計上いたしておるわけでございます。しかし、この問題は、この程度予算じゃ片づくものではありません。事態が鮮明になるとともに抜本的な施策を行ないたい、こういう考えであります。
  589. 工藤良平

    ○工藤良平君 総理にお伺いをいたしますけれども、この公害の問題については、人命の観点からいたしましても重要でありますし、特に私は農業のサイドから、ものを申し上げているわけでありますけれども、狭い耕地の中で、しかも肥沃な土地がよごれて、最終的に犠牲を受けるのは農民であります。したがって、先ほど各大臣からお話がありましたように、事業をいたしますにも、やはり自己負担というものはどうしても伴うのでありまして、少なくとも私は、この種の問題については、災害の復旧のように、自己負担がないような形で国の措置が必要ではないか。原因のはっきりしたものは、もちろん原因者から取ればいいわけでありますけれども、その点については、当然これは国がぜひ責任を持っていただいて、そういう措置を講ずることが当面の重大な課題ではないかと思いますので、総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  590. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公害の問題は、いろいろ各地で各種の問題を引き起こしておると思います。原因者、加害者のはっきりしているものは、これはもうそれを追求すればよろしゅうございますけれども、なかなか複合原因者、また同時に、わからないとか、また、先ほどは古い休坑鉱山の話が出ておりますが、そういうものが、もう経営者もいない、どこへ行ったかわからない、そうなってくると、これらのあと始末の問題がなかなかむずかしい問題になってきます。どうも、ある程度地域住民の負担になってもこれはやむを得ないものもあるでしょうが、しかし、できるだけこういう問題については国が処置すると、こういうような大綱と申しますか、大きな方向だけは打ち出すべきじゃないだろうか、かように思います。
  591. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 工藤君の質疑は途中でございますけれども、残余の質疑は明後日に回すことにいたしまして、明後十日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会