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1972-04-04 第68回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月四日(火曜日)     午前十時二十七分開会     —————————————    委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     石原慎太郎君  四月三日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     大橋 和孝君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君  四月四日     辞任         補欠選任      古池 信三君     青木 一男君      土屋 義彦君     山本 利壽君      古賀雷四郎君     小笠 公韶君      河田 賢治君     渡辺  武君      野末 和彦君     喜屋武眞榮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 石原慎太郎君                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山本 利壽君                 上田  哲君                 大橋 和孝君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  塚原 俊郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省年金局長  北川 力夫君        農林大臣官房長  中野 和仁君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        通商産業省鉱山        石炭局長     莊   清君        郵政省貯金局長  石井多加三君        建設省住宅局長        事務代理     沢田 光英君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  三案の取り扱いにつきまして理事会において協議いたしました結果、次のとおり意見が一致いたしました。  すなわち、総括質疑の日数は七日間をめどとし、質疑総時間は千五十六分とすること、その各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ三百八十四分、公明党百二十八分、民社党及び日本共産党はそれぞれ六十四分、第二院クラブ三十二分とすること、でございます。  なお、質疑順序につきましては、とりあえず本日は、お手元にお配りいたしました刷りもののとおり、日本社会党自由民主党の順に各一名の質疑を行なうことにいたしたいと存じます。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、これより総括質疑に入ります。羽生三七君。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 佐藤総理予算委員会質疑をかわすのも、今回があるいは最後かと思いますが、ところで、総理政治責任につきましては、昨日の衆議院におきまして、わが党の成田委員長はじめ各党の代表がそれぞれ見解を明らかにされましたので、私はこれを繰り返すことを避けさせていただきます。  ただ一言つけ加えさしていただきたいことは、政治責任を明らかにするというだけではなく、外にあっては米中会談など大きくゆれ動く国際情勢、内にあっては輸出優先型経済から福祉型へと大きく転換を迫られている日本経済軌道修正という問題など、これを中心政局転換して、七〇年代における日本の進路について、衆議院を解散して国民に信を問うべきであると私は考えております。それが憲政の常道であると思います。その政局転換の構想については、本日午後、わが党の成田委員長が具体的にその見解を明らかにすることになっておりますので、私はここでは避けさしていただきます。  本論に入る前に、もう一つこの機会に伺っておきたいことは、けさの朝日新聞に出ておりました例の外務省機密文書についての、だれかを刑事責任として告発するようにも言われておりますが、この経緯を外相からひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先般、衆議院予算委員会で、外務省機密電報漏洩しておる事実が明らかにされたわけであります。そこで外務省では、部内でいろいろ調査をした。そして犯人というか、漏洩した当事者が申し出をしたのです。しかし、それだけではどうも全貌がつかめないというので調査をしておったのです。ところが、けさ五時半、安川審議官付蓮見喜久子という女性事務官が警視庁に、私が漏洩いたしましたと、こういう自首をいたした。そういうことでありますので、この問題の処置は、これは警察当局において取り調べると、こういうことになった次第でございます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 これは私、いささか筋違いではないかと思うのですね。それは、そういう政府としての立場もあるでしょうが、むしろ衆議院で究明されたように、問題の本質を明らかにすることが中心であって、個人のああいう行為について、刑事責任をとってこの問題を本質をうやむやにすることは私筋違いだと思いますが、いかがですか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 問題の本質につきましては、これは衆議院予算委員会において十分御審議をいただき、政府はその見解を明瞭にいたしております。しかし、機密漏洩をしたということ、これはまた別の問題であります。公務員がその守るべき立場、それを守らないで、そして機密を漏らしたと、これは私は別個の問題として明らかにしておかなけりゃならぬ。明らかにすることは、これは政府責任でもある。こういうふうに考えておりまして、決して、あれとこれを混同をする、そういうようなけちな考えは持っておりませんです。
  9. 上田哲

    上田哲君 関連。  三十一日に暫定予算審議が行なわれまして、その際、私からこの秘密文書漏洩と称する点について、外務省あるいは検察当局の間で犯人追求というような形でのプロセスが進んでいるのではないかということを質問いたしました。その際外務大臣答弁は、ただいまの御答弁とはなはだしく食い違っております。私どもが了知しているところでは、蓮見事務官は三月三十一日、つまり参議院で暫定予算質疑が行なわれ、具体的にそうした追求本人のもとに進んでいるのではないか、こういう質疑を行なっていた当日であります。つまり外務大臣はその時点で、ただいま御説明になったような事態を十分に知っていたはずです。ただいまのお話によりますと、今朝五時半ごろようやくわかったんだと。これは、はなはだしく事実を曲げて御説明なさるものでありまして、私ども考えでは、これは明らかに事実がわかっていることを、これもまた国会の、国会対策上のかけ引きを重視して、具体的に衆議院予算が通過をするその時点まではあえて表面化させないということであったとしか思えません。すべてが、この機密文書取り扱い自身国会かけ引きだけの問題であったと、われわれは非常に怒りを持つのでありますけれども、こうした問題についても根本的に、本来国民に明らかにすべき事実を曲げて、政府国民に、国会に表面的なことばで問題をすりかえてきたということの上に、しかもまた、この問題についてすら国会かけ引き上、わかっていた事実を今日まで伏せている。しかも、ある種の段取りを重ねた上で、本人自白だと、自首だと、こういうふうに問題をすりかえるということは、二重のすりかえとして私たちは許せないと思います。  われわれもこの問題については、そうしたすりかえ自身を重視して、強く戦う決意を持っておりますし、態勢も持っております。つまり、具体的なわれわれとしての調査も進めようという態勢になっております。そういう事実と照らし合わしてみると、ただいまの外務大臣の御答弁は、必ず後に私ども追及の中で、再び食言行為となるべき事実を含んでいると思います。この際ひとつ、事実は、けさどうなったということではなくて、三月三十一日の時点、それからいわゆる捜査を進めていた前の時点引き戻して、明断に御答弁をいただかなければならないと思います。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は、衆議院予算委員会で問題になったその翌日でありましたか、安川審議官付蓮見事務官安川審議官に対しまして、私が漏らしました、こういうことを言ったんです。その報告は聞いております。しかし、安川審議官といたしましては、これがはたして蓮見事務官一人の問題であるかどうか、この辺がつかみがねる、こういうことで、いろいろ関係のありそうな人に聞いておった。その関係のある人の中には、もう在外勤務になった人もおるのです。そういうような状態で、今日まで真相はつかみ得ない。そういう状態で推移した。その間において今朝五時半に、蓮見事務官警察当局自首した、こういうことでございまして、食い違いも何もありませんから、その辺は誤解ないようにお願いしたい、かように存じます。
  11. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 私からもお答えをさしていただきますが、今朝午前五時半ごろ、蓮見女史が同僚の山田氏に連れられまして自首してきたということでございます。私らは、この事件は純粋な国家公務員法違反刑事事件として捜査を進めてまいりたい、かように考えておりまして、御了承願いたいと思います。
  12. 上田哲

    上田哲君 二点だけしぼってお伺いをいたしますが、外務大臣は、問題の蓮見事務官が、具体的に申し上げれば、涙を流して、つい私がこういうことをいたしましたと、ことばの正確なところは別といたしまして、その事実を認めた、こういう状況があります。これは三月三十一日というふうにわれわれは理解をしております。われわれはここで審議をしていて、外務大臣答弁を求めたその日そのものだというふうに理解をしております。  そこで一点は、外務大臣は、蓮見事務官からそういう事実の表明があったということを、三月三十一日段階大臣自身を含めて外務省当局として知っていたのかどうか。外務省自身として三月三十一日の時点でその事実を、蓮見事務官の名前とともに御存じであったのかどうかということが一点、明確にしていただくこと。  もう一点は、この問題を刑事事件並みの問題として追及をされる態度国家公務員機密保持責任を全うしなかったという側面から問題にされるということは、まことに本末転倒でありまして、私たちは、政治姿勢の問題として、本来国民に明らかにしなければならない問題を国会答弁の上ですりかえていた、問題はそちらのほうが非常に重要であると思います。したがって、外務省当局ないしは政府姿勢としては、第一にまず、本来国民に明らかにすべき、国益というのは私たちはそのことだと思いますが、本来国民に明らかにすべき政府政治姿勢の問題としての怠慢さ、間違い、そうした問題の反省をし、追及をする、政府自身に向けてです、こういうことを先にされるべきであり、国家公務員機密保持の問題ないしは刑事犯上の問題などということは、少なくとも順位としてそのあとでなければならないし、本来、それは政府自身の負うべき政治責任の中に含まるべきである、こういうふうに考えます。いやしくもその順序を逆にして、刑事責任というような形で個人に向けての責任追及ということを先にされるということは、まことに間違いだと思います。その順序をきちんとされるかどうか。  この二点を明確にお答えをいただきます。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一点の、蓮見事務官漏洩したということを言っておるということは、三十一日の前に知っております。そういう情報報告を受けております。情報だけですよ。私はまだその段階で、蓮見事務官がはたして漏洩したのかどうか、そういうことについては心証を得ておらない、そういう状態であったわけであります。  それから第二点の問題は、これは衆議院でも、ずいぶん盛んに、論議をされた、どうも沖繩協定には裏取引があるのじゃないか、その責任をどうするのだと、こういう話です。それに対しましては、政府見解十分説明をいたしております。私は、国民もこの状況はよく理解をしておると、こういうふうに思います。しかし、その問題とは別に、国家公務員がですよ、皆さん方がおつくりになった国家公務員法違反して、国家機密漏洩する、これは別な問題としてどうしても究明しなければならぬ問題である、そういうふうに思います。で、これは別の問題といたしまして究明を要する、こういうふうに存じておりましたが、しかしながら、本人が今朝自首をいたしたということで、検察当局のまた警察当局の手によってこの真相は明らかにされるであろう、また明らかにされることを期待をいたしておる、かように考えております。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 関連ですから、私は、いまの答弁を聞いておってこまかいことにいろいろ疑問を感じますけれども、それは言いません。ただ、持って回った言い方をしないで簡単に申し上げるのですが、この軍用地復元補償の問題については、沖繩国会における政府答弁は、これはアメリカ側が支払うのだという答弁に終始したわけですね。それは御記憶ですね。ところが、この秘密電報の問題が暴露されてからのあなたの答弁は、どうなりましたか。こちらがとにかく向こうに金を三億二千万ドル渡した、言うならば三億二千万ドル渡したその中から、この軍用地復元補償を払うか払わぬかは向こうのかってです、私のほうは知らないと、こう言っているわけでしょう、つづめて言うならばね。そのことはどういうことかというと、沖繩国会のときには、軍用地復元補償はあくまでもアメリカに払わせるのだと言っておきながら、秘密電報が暴露された時点においては、向こうが払ってもいいし、こちらが払ってもいいというようなあいまいな答弁になってきたわけです。このことが、秘密電報で暴露された事実が裏にひそんでおるという裏づけになりませんか。私はこのことが重大だと思う。これが一つ。  それからもう一つは、私は本来なら、こういった交渉経過というものは、国会であれだけ問題になったのですから、一部始終を明らかにすべきだと思う。アメリカに払えと請求をしておるけれども、要求をしておるけれどもアメリカがどうしても払わないのだということを、やはり国民の前に明らかにする、沖繩の返還というものはそういうものだということを、国民にわからせるということが必要だと思う。ところが、百歩譲って、あえてそれがあなた方にできなかったにしても、最終的にきまった段階で、こちらが払うのか向こうが払うのかわからぬ、つまり向こうが払うかもしれないその金は、こちらから渡してやった金から払うのかもしれないというようなことになるのであれば、あくまでも向こうに払わせるのだといって断言すべきじゃない、こちらから渡してやった金で向こうは払うかもしれませんということをやはり答弁すべきじゃないですか。ところが、それは一切言わない。あくまで向こうに払わせるのだということをあなた方は答弁なさった。これは明らかに国会答弁が、国会を欺瞞し国民を欺瞞しておることなんですよ。このことはどうなんですか、この責任は。それが第二点。  そうして、これらの経過考えてみると、政府がとっておる態度政府が口にする国益というのは、国会対策上あなた方に都合の悪いことは、みんな国益だということで隠している。そうして、それがばれたならば、そのばれた根源を追及して、その人間に責任を持たせる、こういう態度であるわけです。これは国益なるものを党利党略のために利用することです。こんなことは、まさにこのことのほうが国益を害する。そのことの認識を、あなた方ははっきり持たなければいかぬですよ。それをあいまいにしておいて、漏れたルートを徹底的に追及して、これに自白を強要して、そうして告発する。これでは、公務員秘密を守る義務というのをあなた方は乱用しておることになりますよ。このことをはっきりしてもらいたい。三点です。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 矢山さんは衆議院予算委員会の冒頭をお聞きになっておられたかどうか、存じませんけれども、私どもは、もう終始一貫同じことを言っているのです。つまり、復元補償の財源として四百万ドル提供いたしました事実はありませんと、こういうことを言っているのです。これは終始一貫変わらないところでございまするから、そのとおり御了承願いたい。  それから、経過につきまして国会から質疑があった、それに対しまして、まあお答えができなかったわけです。これは、外交交渉にはいろいろな機微な問題があります。相手方の立場もあります。そういうことを考えますと、これは一々経過一つ一つを申し上げる、こういうこともできない問題が多々あるのです。その点もまた御理解願わなければならぬと、こういうふうに考えております。  それから第三点は、先ほどもお答え申し上げましたけれども、私ども沖繩協定には裏取引はありません、こういうことをはっきりと申し上げておるわけです。しかしこの機密漏洩の問題、これは、それとまた別の問題なんです。何にしろ、私どもはこれをすりかえよう、そんなけちな考え方は持っておりません。そうじゃない。これは国家の意思として国家公務員法というものがある。皆さんもその法律については御審議を願ったはずだ。その法律違反をした行為、これについては、これは徹底的に糾弾をしなければならぬ。そうして再びそういうことが起こらないようにしなければならぬ。これこそが私は政府責任であると、こういうふうに考えておるわけなんでありまして、この辺は、まあしかし今朝自首という行為がありました、そして司直の手に移りましたものですから、司直の手によって明らかにされるであろうと、こう思いまするし、また明らかにされ、これが機縁となって今後こういう事態が起こらないようにということになることを切に期待しておる。それが私は政府の当然とるべき態度である、かように考えております。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 もう一点だけ。  外務大臣、私あなたに言っておることは、沖繩国会のときには、軍用地復元補償日本が持つのじゃない、あくまでもアメリカ側に払わせるのだと、こう言いましたねと言ったら、あなた、うんうんと言っていたね、いま。そのとおりでしょう。ところが、この問題が表に出てからのあなたの答弁は、変わってきているでしょう。変わってきている。アメリカにあくまでも払わせるんで、アメリカが払うのだというそのことだけの断言でなしに、アメリカが払う場合にはその金はどこから出すのかわからぬという、あなたはそういうニュアンスの答弁をしておるわけでしょう。そうすると、この四百万ドルについての考え方は、どちらにでもあなた逃げられるような答弁をしておる。その点においては、沖繩国会における答弁とこの問題が暴露されてからの答弁では変わってきておる。そのことが、そういうようなことを故意に隠そうとしてきた政府の、悪らつな考え方をうちに秘めておる証拠ではないかと、こう言ったわけです。答弁要りませんよ。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、またあとに同僚議員が明らかにすると思いますので、本論に入ります。  まず最初に、米中会談関連しまして、台湾問題からお尋ねをいたします。  米中会談と米中共同声明について私が感ずることは、まず中国のように原則を重んずる国が、この重要問題で簡単に妥協はできなかったであろう。またアメリカについて言えば、台湾問題で終局的には何らかの了解を与えたにしても、それを共同声明に盛り込むほど時間的要素を無視することはできなかったのではないか、こういうことであります。もちろん、台湾問題についてアメリカが明確にできなかったのは単に時間的距離だけであって、その終着点は明白であることは決定的であると思います。しかしアメリカは、台湾問題について決定的表現を避け、いわば日本でよくいわれる出口論のような立場をとりながらも、しかもなおかつ米中会談を可能にし、さらに友好的な話し合いができたのはそもそも何であるのか。一方、日本は最初から態度を明確にしなければ日中政府間接触が困難なこの現状、この日米間の相違を総理はどのように、この違いはどこにあると判断されるのか。まずこの点から承っておきたい。これは総理から承っておきたい。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その前に一言。  米中会談と、私どもが期待しております日中会談とは、本質的に違うのじゃないかと、こういうふうに思います。アメリカは、サンクレメンテ会談におきましても、わがほうに対しまして非常にはっきり言っていることがあります。それは、一つは対台湾政策はこれは変更いたしません、こういうことです。それから第二は、台湾に対する軍事的約束、これは最後まで履行いたします、こういうことを言っておる。それから、そういう立場に立ってこの米中間の関係の改善をはかると、こういうことを言っておるわけなんです。今回上海で出されました共同声明を見ましても、関係の改善ということを言っておる。つまり、この米中関係の行き方というものはいわゆる積み上げ方式、ワルシャワ会談が行なわれております、またキッシンジャーの訪中が行なわれております、それに続いてニクソン大統領の訪中が行なわれておる、それをまた踏まえまして政府の要人の接触がある、あるいは文化人あるいは報道関係者、学者等の往来が始まる、こういうようなことです。いわゆる積み上げ方式なんです。わが国のとっておる態度はそれと違のです。月中国交正常化の大きな旗を掲げているわけです。日中国交正常化ということは何だといえば、国交の正常化であります。これは先々は、話がまとまれば国家承認までつながっていく、そういう問題なんです。そこが非常に違うのです。わが国は最終的な目標を示しておる。アメリカは積み上げ的で行って、その先どういうふうになるかこれを処置しようというので、日中の接触のしかた、米中の接触のしかた、そこには基本的な対中アプローチの違いがある、こういうことなんです。この違いのあることは、サンクレメンテ会談でも総理と大統領との間で十分論議されまして、中国に接触する、それはお互いにこれはアジアの平和というところを考えますると大事なことだ、これはやりましょう。しかしその接触の方法について違いがあるということにつきましては、これはお互いに主権国家として認識し合おうじゃないか、そういうことにいまなっておるわけでありまして、その辺に両国の立場の違いがある、こういうふうに考えます。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣から詳しく説明をいたしましたので、私からまた話をいたしますと、その間に相違ができても困りますから、たぶん、ただいまのお話で御了承願えるだろうと思っております。私は、いまのアメリカは今日までずいぶんワルシャワその他の場所でも会談を持ち、公式、非公式いろいろ接触をして、そしてキッシンジャーが二回も北京を訪れて、そしてニクソン大統領の中国訪問と、こういう形になったわけであります。しかし民間人は、スノーその他の特別な要務を帯びている記者諸君は出入りしておりますが、常駐はしておらない、あるいはまた貿易自身も進んではおらない、こういう状態でございます。日本の場合は、いわゆる外交的交渉はいたしておりませんけれども、しかし実際には人的な交流は行なわれておる。相手国から日本を訪問する者は非常に限られておりますけれども日本から出かけるのはたいへん自由に、相手国も引き受けてくれております。また貿易自身も、非常な多額にただいまのところでは拡大されております。それらのことを考えると、日中間の問題は、どうしても国交の正常化をはかるべきその段階だと、私どもはかように考え、これをできるだけ理解していただくようにあらゆる努力をしている、これが今日の実情でありまして、アメリカのニクソン大統領の北京訪問とは違った意味合い、そういう意味合いで私どもはただいま、国交の正常化についてその道が開けないか、それを探っておる、またそれを努力しておる、これが現状でございます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 この日米間の対中接触の相違というものを明確にしないと、判断を誤ることになると思います。これはもちろん大局的戦略的立場でいうと、中国にとっては対ソ関係などから、当面、日本よりもアメリカとの関係改善により多くの利益を見出しただろうと思います。しかし、問題を台湾問題に局限して考えるならば、日米の中国に対する歴史的な条件が全く違っているということであります。つまり原点に戻って考えると、アメリカはかつての中国との同盟国です。日本は侵略国であります。この大きな相違があるわけですね。この歴史的過程が決定的に違うのですから、アメリカのようなアプローチのしかたで日本が同じ成果をあげ得るはずがないのです。いくらアヒルの水かきをやってもだめであります。アプローチのしかたは根本的に変えなければ、これはだめだということであります。つまり米中共同声明で、台湾問題について米中がショッキングな表現をしなかったということで、胸をなでおろしているようでは困るのです。アメリカはどうあろうと、必要なことは、日本自身はどう対処するかということではないかと思います。アメリカの時間かせぎに同調するようなことではなく、日本は独自の、日華条約廃棄あるいは解消——ことば、用語はどうでもよろしゅうございます。しかし、これに決着をつけるのが、そういう選択をするのがいま要請されておる緊急の課題ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま原点に返れと、こういうことを言われておる。私もそのとおりだと思っております。連合国、その一員である中国、また当時の戦争をした敵国である日本と、これは違っておると思います。そうしてサンフランシスコ条約、それに中国の代表が招かれなかった。ここに歯車の食い違いが生じた、かように私は考えます。そうして、サンフランシスコ条約には中国の代表は招くことができなかった。これは連合国の間の意見が一致しないからであります。そしてその当時、サンフランシスコ講和条約、それに引き続いて私どもは日華平和条約を結んだ。その際の選び方、また、その際の条約の案文のつくり方等については非常に注意が払われておる。案文自身も、条約自身も実情に沿っておると思います。また当時の状況ならば、私は中国の代表として中華人民共和国ではなしに中華民国を選んだこと、これは当時の承認国の、国際的に承認している数から見ましても、また国連における地位等から見ましても、これはそれなりに評価してしかるべきではないかと、私は吉田総理の選ばれた道を支持するものであります。でありますが、しかし、国連において昨年のような決定がされ、中華民国は追放される、こういう段階になってくると、その事態は変わってきている。国際情勢は明らかに変化を来たしておる。この状態をやはりわれわれも見守っていかなければならない。過去においてもいろいろ日中間の問題を処理してまいりましたが、今度ははっきりした、この国連の認識が相違がありますからその線で努力すべきだと、かように考えておる次第でございまして、その点では政府間に別に考え方の相違はございません。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 条約解釈は、この際省きます。  衆議院での統一見解では、台湾問題について日本は発言する立場にはない、そう言っておりますが、発言する立場にないものがどうして中国と政府間接触ができるのですか。これが第一。  また、統一見解では、積極的に日中国交正常化に努力するとしながら、中国の国連各機関への参加については、日本は賛成ではなく、全部棄権をしておる。こんなやり方で、どうして積極的な努力をするというのか。これは統一見解ですね。全く違うじゃありませんか。こんな政治姿勢でいいですか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一点は、統一見解において、わが国は台湾の帰属について発言する立場にはないと言いながら中国と接触がなぜできるのかと、こういうことのようでありますが、あの統一見解というのは、これは台湾の帰属問題だけについて言っておるわけなんです。中国の地位、そういうものについて何ら触れるところはない。私どもは台湾の帰属問題は発言する立場にはないけれども、しかし、ただいま総理がるる申し述べましたように、いまや国連に加盟した中国である、この中国を、つまり中華人民共和国を交渉の正式の相手方とする、そうして、中国を代表するものは中華人民共和国であると、こういう立場に立って政府間の接触を始めましょうと、こう言っておる。この立場で期するところは何かと言うと、国交の正常化なんです。国交正常化を目ざしての政府間接触である。国交正常化といえば、これは広範な内容を持つわけでありまして、そこで大体その意味するところはおわかりじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、あくまでも私ども立場は、これは、領土問題、これについては発言する立場にはない、しかし、中国、それと接触する、これは別の問題である、こういうふうにお答えをいたします。  それから、第二の、国連の諸機関において日本が棄権という立場をとっておると。事実、そのとおりです。国連関係機関は十三ありますが、そのうち、たしか七つでありましたか、すでに国府と中華人民共和国との入れかえが行なわれておりますが、その際全部私どもは棄権という立場をとってきた。わが国の一票がどういうふうに作用するかという、そのきわどいところでありますると、たいへんいろいろの複雑な考え方も出てくるわけでありますが、そういう状態ではない。そういうケースにおきまして私どもは棄権というような立場をとったわけでありますが、まだあと六つ残っておる。その六つに対してどういう立場をとるかと、こういう問題がわれわれの前にあるわけなんです。これも、まあ、とにかく長年のつき合いのある国民政府というものもある。そういう国民政府立場、そういうものも考えると、このわが一票が全局を支配するというような重大な問題というようなケースでない限りにおきましては、まあ、棄権という態度、これが精一ぱいのところじゃあるまいか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 そんなことで日中政府間接触ができるんならお目にかかりたい。  ところで、日本は最近、バングラデシュの承認、ハノイとの接触、それからモンゴルとの国交というように、最近よく言われる、いわゆる迂回作戦というか、中国周辺のいわゆる回廊外交を展開しております。これに対してはさまざまな批判があります。中国封じ込め政策ではないかと言う人もおる。しかし、私は、評価すべき点は評価いたします。しかし、問題は、この多極化した時代に多角的な外交が必要であることは当然であるけれども、しかし、そういう日本のいまやっておるような外交の総和が対中打開を実現できるわけではない。一国の外交をやる場合には、おのずから私はそこに優先順位というものがあると思います。その優先順位をどうするか、その選択を誤っては私はならないと思います。もちろん、恒久的な優先順位なんというものはありません。私は、現時点においてどういう優先順位が必要かということを申し上げておる。従来接触のなかった国々と接触に努力することは、それなりに、先ほど申し上げたように評価いたしますけれども、この際は、この対中問題は条件闘争ではないということです。何か、条件闘争的に考えておったら、たいへんな間違いですよ。だから、そういう発想ではなしに、あくまで、当面はやはり対中打開が主目標であるという、そういう発想に立って問題の解決をはかるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはお話のとおりであります。わが国が当面している外交の最大の問題は何であるかと、こう申しますれば、これは日中国交の打開であります。これに全精力をかけなけりゃならぬ。しかし、中国の問題だけに取り組んでおればわが国の外交はそれでいいのかと言うと、そうじゃない。いま、羽生さんも御指摘のように、多極化時代です。世界じゅうを見回して、世界じゅうの国と仲よくするという立場も、またとらなきやならぬわけでありまして、そういう問題はそういう問題としてこれを片づけていかなければならない問題である。ただ、それが中国政策に著しく悪影響を持つというような場合におきましては、これは慎重に考えなければならぬ問題であろうと、こういうふうに思いますが、バングラデシュの問題にいたしましても、これはもう、中共を承認しておる国で、ずいぶんバングラデシュを承認をしたわけなんです。そういう段階で、わが国がバングラデシュを、まあ、おそからず、あるいは早からずという中途の段階において承認する、私はこれは妥当な措置であったというふうに考えまするし、この措置によって中国政策に悪影響を及ぼしたというふうには考えておりませんです。  それから、モンゴリアのことを御指摘がありましたが、これは、一昨年の夏、自由民主党のモンゴリア訪問団が行きまして、そうして親善友好を進めると。その際にモンゴリアのほうから強く要請があったわけなんです。その要請を踏んまえまして、主として賠償問題というものをどういうふうに扱うかということをモンゴリア政府に確かめてきたわけなんですが、先般、賠償につきましては一切これを要求しないと、こういうことが明らかになりましたので、モンゴリア承認ということと大使交換ということに踏み切ったわけなんです。しかし、これとても、中国政策に悪影響があるかというと、中国は昨年すでに大使をモンゴリアとの間に交換をしておる。こういうような状態でありますので、この承認が中国政策に悪影響を及ぼしておるというふうな認識は全然持っておりませんです。  何か、どうも、日本の最近の外交が中国を封じ込めるのだというようなことを言う人がありますが、全然そういうことはありません。わが国の最大の課題は日中国交打開にある、これはかたくそういうふうに信じておりますから、ひとつ正しく御理解のほどをお願い申し上げます。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つ、私、気になることは、日本政府の対中姿勢の中に、中国の言うなりになりたくはない、こういう姿勢、そういうふうに言っておるように見られるのですね。これは、自主独立という点なら私は全く同感です。どこの国であろうと、相手の国の言うなりになる必要は毛頭ありません。ただ、台湾問題について言えば、たまたま中国の主張は、いままさに日本が選択しなければならない、その課題と合致しておるということじゃないんでしょうか。それは、たまたま一致しておるということですね。中国の言うなりになるということとは根本的にこれは違うと思うんです。だから、相互内政不干渉の原則に立って、日中国交回復後、是は是、非は非として、自主独立の外交を堂々と展開すればよろしい。だから、この場合は、中国の言うなりになるということとは全く違うのである。それはたまたま日本が選択すべき課題と一致しておると、そういう理解でないと、これもたいへんなあやまちをおかすことになると思いますが、いかがでありますか。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中国におきまして間接的に言っていることを聞いております。それは、第一は、中華人民共和国を中国を代表する唯一正統の政府と認めよ、第二は、台湾は中華人民共和国の不可分の領土であると認めよ、第三は、日華平和条約はこれを廃棄せよ、こういうことを言っておる。それをそっくり認めたらどうかというのが羽生さんの御意見であると、いまは聞いたんでありますが、そういうようなことを、いま日本が、中華民国つまり国民政府との間に正常な国交を持っておる段階において、言えるか言えないか、これは私は御理解願える問題じゃないかと思うんです。私どもが言っていることは、中華人民共和国は中国を代表する政府である、その中華人民共和国との間に国交の正常化を行ないましょうと、こう言っておる。これで大方のことがわかってくるのじゃないか。インプリケーションというものは非常に幅の広いものである、こういうふうに思うのです。私は、そういう日本が置かれておる台湾にある国民政府との立場、そういうことを考えまするときに、それは精一ぱいの今日この時点における言い回しじゃあるまいか、そういうふうに思うのであります。  そういうむずかしい立場にあるわが日本が、中国がこう言うからそれを全部初めから承認しなければ国交の正常化は始めませんよ、まあ全部中国の言うところを聞いて、そうして国交正常化交渉に応じなさいという言い方、それは私はちょっとお考え直し願ったほうがいいんじゃないか、そういうふうに思うのです。私は、これは、日本には日本立場がある、日本立場を正当に理解してもらいたいが、その理解というものは私は必ずできると思うのです。その理解の上に立って両国間でぶつかる、そうすれば、もろもろの問題が、そうむずかしいことはない、解決されていくということを確信しております。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 全く問題をすりかえて、顧みて他を言っておる感じがするんですが、ところで、ニクソン大統領は外交報告の中で、国際関係において重要な選択、政策転換に伴う苦痛は不可避である、こう言っております。中国問題に対する現在の局面は、答弁のニュアンスを少し変えたとかどうとか、そんなことで解決するような問題じゃありません。結局は総理の決断いかんです。ただ、総理にその時間的余裕があるかどうか、これは問題ですね。しかし、在任中どれだけの期間あるかわかりませんが、それだけの決断ができるかどうか。これは、そこに将来の有力後継首班候補が並んでおるようでありますが、これはあとの方々にも言えることですよ。だれが後継首班になりましょうとも、この決断をしない限り、断じてこの対中打開は成功しない。決断できますか、総理は。これはそれだけにかかっていますよ、いまや。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われるような御趣旨で私どももこれと取り組んでおります。ただいまの状況は、いままでは、台湾にいる国府、これと友好親善関係を結んでおります。今日、中国の代表は中華人民共和国だと、そうしてまた、中国は一つだ、こういう形になって、二つの政府があるという、そこに矛盾を感ぜざるを得ない。だけれども、現状における姿、また将来のあるべき姿、こういうところには、ひとつ解決し、関係者同士で話し合っていかなきゃならない問題がある、かように思っておる次第でございます。私どもは、やはり、中国は一つだ、二つの中国、この陰謀にはくみしない、また、国交の正常化もはかっていこう、このいわゆる三原則と言われておるもの、これはそのまま、私どももそのまま引き受けてまいるつもりでございます。中国敵視政策はしない、また、ただいま言うように、二つの中国の陰謀にはくみしない、また、国交の正常化をはかるという、この三原則、これはそれなりに私どもも評価し、努力をしておる。また、言われるような五原則、これもまた別に問題はございません。私どもも、そのとおりだと、かように思っております。私は、ただいまも、これではとてもだめだと、こういって羽生君からしかられましたけれども、私は、それぞれの国がそれぞれの立場があるし、また、それぞれの歴史がある、その過去の歴史を無視して、直ちに現状においての取り計らいというものは、これはできるもんじゃないだろう、かように思いますので、そういう意味では十分意を尽くすことが何よりも大事なことではないか、かように思っております。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 決断がなければ解決しないと思いまするから、問題を次に進めますが、ところで、日本は台湾に対してはどうしておるのですか。気休めを言って、結果的には相手側の不信を買うようなことをせずに、堂々と理のあるところを誠意を持って説いたらどうですか。台湾とはどういう関係にあるのですか、現在。気休めを言っておるのじゃないですか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民政府に対しましては、国会において皆さんに私どもから申し上げているような、この対中政策、つまり中華人民共和国との間に国交正常化交渉を行なう、そういう方針のもとに政府間接触を行なうことを考えておるということは、るる説明してあります。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 ところで、この日中平和条約については政府はどう考えておるのか。従来、政府答弁では、日華平和条約によって戦争状態は終結したものと考えるとか、あるいは将来日中関係が全般的に改善されていく過程で自然に解決されると期待する、これが政府態度ですね、今日までの。しかし、国交正常化にあたっては、平和条約締結が必要であることを、せめて認めるべきではないかと思います。いかがでありますか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 平和条約を日中両国間に締結すべしという議論があることは私も承知しております。しかし、わが国は国民政府との間に日華平和条約を結んでおる、そういう立場に、まああるわけであります。この日華平和条約によりまして日本と中国との間の戦争は終結した、こういうふうに解釈をいたしておるわけであります。ですから、あらためて中国との間に平和条約を結ぶ必要はないというのが私ども立場です。ただ、いま申し上げましたように、そういう、中国側に平和条約締結というような要請もあるというような情報も聞いております。ですから、そういう問題こそが、日中国交正常化のための政府間接触、その場において論ぜられるべき問題である。わが国の主張にもわが国の立場はある、主張はあると申し上げておる。その一つは、ただいま申し上げましたこの平和条約の問題に関する点でもあります。しかし、相手には相手の主張がある。そこで、これをどういうふうに調和させるか、こういう問題炉政府間接触の問題である、そういうふうに考えておるのであります。ですから、結果として、あるいはどういう結論が出てくるか、これは私ここで予言はできませんけれども、まあ、相手のある話し合いでありまするから、わが国の主張ばかりにこだわっておるというわけにもいかない場合も、あるいはあるかもしらぬ、そういうふうには考えます。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 政府は、政府間接触ができた場合に何を言うかだけを言っておるのですね。問題は、いま政府間接触を可能ならしめるにはどうしたらいいかということなんです。全くその問題の次元を取り違えておると思いますね。ですから、その問題に先ほど来私が申し上げるような基本的な見解をとらない限り、政府間接触というものは生まれないであろう。これは、これ以上問答しても意味がありませんから、次の問題に移ります。  一九六九年の日米共同声明、この台湾条項、その形骸は残っているものの、実質的には私はあまり意味がなくなったと思う。これは廃棄できなければ、日本独自の単独の声明を出したらどうでありますか。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一九六九年の日米共同声明、これは、あの時点における台湾海峡、また朝鮮半島、これに対するわが国の、またアメリカの、両方の見解、そういうものが述べられた、まあ歴史的な事実となっておるわけであります。しかし、その後、昨年の七月十五日にニクソン大統領の訪中発表がある、また、それがことしになって実現をされておる、こういうことで、アジアをめぐる諸情勢というものは非常に変わってきておる、そういうふうに考えるのです。まあ、国一つ一つこまかく言えば、いろんな問題があるけれども、大局的に見ますると、これは緊張緩和の勢いというものが出てきておる。そういうことで、特に台湾海峡をめぐる情勢というものははなはだしく緩和されてきておる、こういうふうに思うのであります。したがいまして、台湾海峡をめぐる客観情勢というものの変化があるということは、これは私はそのとおりであるというふうに思いまするけれども、しかし、だからといって、まだ米中関係が固定化したわけじゃない。アメリカは、まあ台湾に対するところの軍事的な約束は守る、こういうふうに言っておる。そういうような事実もあります。万々一ということがあるかもしれない。そういう際に台湾海峡で起こった非常な事態というものがわが国の安全に無関係なものであるかというと、そうじゃない。やっぱり台湾海峡の火の粉というものはわが国もかぶるおそれがある、そういうこともまた考えておかなけりゃならぬというふうに存じますと、先の先はともかくといたしまして、今日この時点で台湾海峡がわが国の安全に重大な問題であるという認識を、これを変えるというわけにはいかぬと、こういうふうに考えます。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、少し自分の意見をまじえて質問したいと思います。  米中会談本質的な緊張緩和を意味するかどうかというと、私は、少なくとも当面、米中の和解であることは間違いないが、これが直ちに根本的な緊張緩和とは見ておりません、私自身は。日本にとって必要なことは国際情勢そのものを——客観的条件ですね、これを正確に把握して外交政策の判断の材料とすることは必要であるけれども日本が主体的にどのように対処して、どのような選択を行なうかということが私は重大であると思います。米中は一応平和五原則で合意をしました。つまり、世界で最も激しく対立しておった米中が、イデオロギーや体制の違いを武力によって戦場で解決するんではなしに、テーブルの上で、話し合いで解決の道を探ろうということで両国間の引き続いての接触が合意されたわけです。しかし、米中和解が一応成立をしても、現にアメリカはベトナムでの戦争を、北爆を強化しておる。また、中ソの冷戦は一そう激化しております。このような現状から米中和解が世界の流れの本質的な変化に直ちにつながるとは私は考えません。しかし、重要なことは、このような流れを活用し、発展させて緊張の全面的な緩和、流れの本質的な変化を実現させる契機として有効に作用させることではないかと思うんです。米中での合意、平和五原則というようなものがその他の国では不可能、適用できないということはないと思います。問題は、情勢を客観的に見るだけではなしに、緊張緩和の徴候があればそれを積極的に生かして、活用して発展させていくような外交政策をどう展開していくかにあると思います。これは、ぜひ総理から……。これは防衛問題——きょうは私は触れません、同僚がやりますから。これは、防衛力を増強するか、他の平和手段を選ぶかの基本的な課題に関係すると思います。さらにあとから申し上げますが、まず、この点についてお伺いいたします。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま羽生君が指摘なすったように、私はこれは同感でございます。私の基本的な姿勢は、絶えず平和に徹するということを申しております。ただいまの状況自身は、その平和への、アジアに平和が来そうだというか、平和への緊張緩和、そういうきざしが出ている、これは確かでございますから、その情勢をさらにわれわれの力によって強めていく、そうして真の平和への道をたどる、こういうことであるべきだと、かように私は思っております。ただいま御指摘になったのがそういう意味ではないだろうかと思います。しかし、なかなか複雑でございまして、いまのベトナムにおける北爆、これはまた、最近のこの一週間ばかりはずいぶんきつい状況になりつつあるようでございます。こういうような点はたいへん私どもも心配にたえませんけれども、総体から見ると、やはりアジアに平和が招来されること、また、それにはさらに積極的にわれわれも努力しなければならぬこと、御指摘のとおりであります。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 四次防問題で、日本はあらためて安全保障のあり方を問われておると思います。この機会に日本は従来の固定した発想から脱却して、安全保障について、より幅広い道を選択しなければならぬと思います。つまり、自衛隊の増強や力の政策の拡大だけに安全保障の道を求めるんではなしに、緊張の要因そのものを除去する、それをどうして除去することができるか、これを実現させるために私は強力な外交活動の展開を要請したいと思います。結局、力の政策は、これは際限のない力の拡大に通ずることは必至であります。そこで、私は、日本周辺諸国との不可侵条約の締結を提案したいと思います。これは全保障の一つの道であると思います。一片の条約に何の価値があるかというような従来の固定した観念から脱却をして、これはある特定の国だけではなく、たとえばソ連、中国等と個別的に条約を結び、さらにアメリカとは安保にかわる新しい条約、これは安心ができなければ、日米友好条約でもいいと思います。それを結んで、これら諸国を包括する太平洋集団安保が望ましいのではないかと思います。具体的には、もっとあとから申し上げます。ところが、残念なことには、中国とは国交がない。ソ連とは国交はあるけれども平和条約がない。また、朝鮮については北との関係が阻害されております。防衛力の増強だけに安全保障を求めるのではなくて、具体的に緊張の要因そのものを除去するという意味で、その意味で中国との国交回復をすみやかに行なって、同時に、日中不可侵条約を締結する、日ソ平和条約を締結して日ソ不可侵条約を締結する、さらに朝鮮半島につきましては、この緊張緩和の努力に応じて、緊張緩和の情勢に応じて新しい選択を行なう、こういう問題が日本の外交の基本的な目標として掲げられるべきではないかと思う。私はこれは一朝一夕にできるとは思いませんよ。しかし、長期にわたって日本の安全保障を考える場合には、これは安全保障の一つの重要な柱になるのではないでしょうか。防衛力の増強だけにたよっておる日本外交に対して、私は新しい選択を政府に求めなければならぬという見地からお尋ねをしております。御見解を承りたいと思います。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 羽生さんのおっしゃられること、私は賛成です。現実の問題とすると、なかなか容易なことじゃありません。まあ、日中間につきましても、まだ政府間接触も始まらぬ、しかし、その政府間接触が始まった過程におきまして、お互いにひとつ不可侵条約を結ぼうじゃないかという話があれば、私どもは積極的にこれは賛成してしかるべし、そういうふうに考えます。また、日ソ間には領土問題というむずかしい問題がある。まあ、これを解決しないと平和条約さえも締結できませんけれども、それらが解決されて、やはり不可侵条約を結ぼうじゃないかという話があれば、これも私どもは積極的に受けて立つべき問題である、そういうふうに考えます。さらにそれが拡大しまして、これは日・米・中・ソ集団安全保障体制というようなものが考えられるというお話でございますが、これも実現性はまだなかなかむずかしいんじゃなかろうか、ことに中ソが今日のような状態であるという際に、それだけの幅を持った安全保障体制というのはむずかしいのじゃないかというふうに思いまするけれども、これも理想としては、できますればたいへんけっこうである。ただ、私は一言つけ加えますが、わが国は、いま憲法の規定があります。また、有史以来初めていくさに負けた日本人、もう再び戦争はすまいという国民的なコンセンサスがある、そういうようなことを考えまするときに、自衛隊は増強します、しますけれども、これがわが国に対する侵略の抑止力として十分であるかという、そうじゃない、その間隙というものがある、その間隙に対しましてはわが国はまあ政治思想を同じくするアメリカの力にこれを依存しなければならないという立場があるので、日米安全保障条約の存在を否定するという前提でそういうことを考えるのは今日妥当ではない、こういうふうに考える次第でございます。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 日ソ平和条約の交渉が年内に始まることは決定的だと思いますが、さきの日ソ定期協議でグロムイコ外相との会談を通じて、平和条約締結は有望とお考えになりますか。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 平和条約交渉は、即、領土確定交渉と言ってもいいかと思うんです。平和条約でありますから、まあ、あるいは経済の問題も、あるいは科学技術の問題も、文化の問題も、いろんな問題が討議され条文化される、こういうことでございまするが、まあ実体は何といっても北方領土の問題です。これがまあこの条約の主体をなすと、こういうふうに思うわけであります。そう考えまするときに、ソビエトロシアがとっておる立場、これはかなりきつい、そういう状態下において平和条約が、締結交渉が始まりまするけれども、さて、その簡単に動くものであるかどうか。これにつきましては、そう楽観はいたしておらないんです。ただ、今回、第二回日ソ定期協議が行なわれました。その定期協議を通じて見まする限りにおきましては、ソビエト側におきまして、この平和条約交渉、つまりその背景となるところの領土問題これにつきましては微妙な変化が出てきておるということは私は申し上げて差しつかえないんじゃないかと思うんです。いままでは、あの領土問題は、これは解決済みだ、解決済みだの一点張りで来た。それがとにかく、平和条約交渉を始めましょうと、先方もその内容は領土問題であるということはよく承知しておるはずです。その承知しておるはずのソビエトロシアがそういう態度に出てきた。こういうことは、私は、この平和条約交渉、その中に占める大きな問題である領土問題について微妙な変化が認められると、こういうふうな気がしまするけれども、必ずしも前途楽観はしておらない。国民全体の御協力を得まして何とかひとつこの問題を実現をさしたい。なるべく早く平和条約を締結し、北方領土を回復したいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 私も、先ごろ河野参議院議長と訪ソして、ほぼ同じような感触を受けてまいりました。ところで、平和条約がかりに締結された場合、先ほど外務大臣は、先方から話があれば不可侵条約はけっこうだとおっしゃいましたが、それは間違いございませんか。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 間違いはございませんです。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 これは、ブレジネフ書記長が最近の演説の中で、国家間の関係は武力不行使を原則としようということを言っておる際ですから、私はちょうどいい機会だと思います。ぜひ進めてもらいたいと思います。  それからこのアジアの集団安保という問題ですね。これはブレジネフ書記長がさきに提案された問題です。実は、この問題も、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長と私は会談の中でこれに触れました。しかし、私は、アジアの集団安保には中国が参加しなければ意味がないと、中国が参加しないアジア集団安保というものは意味がないと思う。ところが、先ごろ、米中会談で双方が平和五原則に合意をいたしております。これは日中の問題じゃありませんよ。米中の関係で平和五原則に合意をしておる。また、ソ連は、いま述べましたように、ブレジネフ書記長が武力不行使を提唱しておる。もし日本がアジアにおける安全保障を真剣に考えるならば、中国、ソ連とすみやかにこの平和条約を締結して、真の意味でのアジアの安全保障体制というものにレールを敷いたらどうかと思います。今日はその最もいい私は機会ではないかと思う。つまり、できるできぬはなかなか非常にむずかしい問題でしょうが、少なくともそういう意図を持って積極的にレールを敷いていくということ、そういうことを私はぜひやってもらいたいと思う。いかがでありますか。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのとおり、できるできないは別としてというか、理想というか、長い目標といたしましては、まさに羽生さんのおっしゃるとおりの方向で外交政策を進めていくことが妥当であると、そういうふうに考えております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、次は朝鮮ですが、これは南北朝鮮です。南北朝鮮については赤十字レベルではあるが、接触の機会が起こっております。それからまた、国連でもこの問題に新しい検討が加えられると思います。この南北朝鮮についての平和的統一は望ましいと考えるかどうか。そういう情勢が発展していくならば、私は、最終的には日、米、中、ソ等の中にやはり朝鮮半島を加えての集団安保が適当だと思う。しかし、それはとにかくとして、現在のこの朝鮮半島の動きを見て、平和的統一が望ましいものとお考えになるかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 朝鮮半島は終局的には統一されるということが最も望ましいと、そういうふうに考えております。一つの民族が二つの国に分かれておる、これは民族の悲劇である、こういうふうに考えておる次第でございます。で、当面は何としても、この南北に分かれておるというのはこれは現実です、現実ではありまするけれども、その間にこの緊張状態、これが存在する、これも事実なのでありまするから、この緊張が緩和される、統一される、その過程においては逐次緊張緩和という状態が実現されるということが望ましいというのがわが国の見解であると、こういうふうに御理解願います。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 次にですね、この日中の局面打開は、まあ時間の問題と思います、これは。そう長い将来ではないと思います。そこで、日中国交回復が実現すれば、当然台湾は中華人民共和国の領土となることは、これは当然でありますね。もしそうなれば、日米安保の極東の範囲に関する統一見解昭和三十五年二月のこの政府統一見解は修正が必要となると思いますが、これは間違いございませんね。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中国交正常化の過程でどういう話し合いがありますか、その話し合いも見なきゃならぬ、また、米中の関係がどういうふうになるか、そういうことも見なきゃならぬ。そこで、いろいろな角度から総合いたしまして、もう台湾海峡には一切事は起こらない、また中国は一つである、こういうような事態になりますれば、これは、安保条約の適用、その問題はその時点において考えなきゃならぬ問題である。これはもとよりわが国だけできめるわけにはいかぬ。相手、つまりアメリカ政府があります。それと話し合わなきゃならぬ問題でありまするけれども、これはアメリカ政府と話し合うべき問題になってくると、かように理解しております。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 安保との関連はあとから承ります。  いまの、つまり台湾問題が、台湾が中国の一部として問題がすべて解決した場合には、その統一見解というものは当然修正さるべきものと思いますが、これは理論的にあえて質問するまでもないほど明白だと思いますが、よろしいですね。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日米安全保障条約の適用の問題ですから、相手方がある、アメリカ政府であります。このアメリカ政府とそういう方向で話し合いをするべき問題である。ただ、羽生さんがおっしゃったようないろいろな前提がありますから、前提がまあ大事なのでありまするが、その前提の上に立てばそういうことになると、こういうふうに考えるわけであります。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 解決した場合にはいいでしょう。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ええ。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 いやいや、これはもっと明確にしてくださいよ、台湾問題、台湾が中国の領土の一部として明確に、もう台湾というものが中国と一緒になった場合ですね、この場合には、ここにあるこの統一見解の修正は当然ということです。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりです。つまり、台湾が中華人民共和国の一省であるというようなことになれば、これはもう当然、私は安保条約の適用の範囲から除外されるという方向でこれはアメリカ政府と話し合うべき問題である、こういうことを申し上げておるわけであります。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 これは明らかになりました。  そこで、次に韓国ですがね。ことしの国連総会で、もしこの南北両朝鮮が招請されて、基本的な問題が解決した場合、この韓国も、極東の範囲からこれは消えていいわけですね。間違いありませんね。これは解決した場合の話ですよ。解決しないときを言っておるのじゃない。解決したときには、当然これもはずされることになる。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その国連でどういう解決があるのか、これがもう非常にはっきりしない問題なんです。ですから、これはまあはっきりしない問題を前提といたしまして、その際に安保条約の適用がどうなるかというようなことはちょっとお答えいたしがたいのでありますが、御了解願います。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 これはですね、当然国連で解決するという場合にはすべて問題なしということになって、特に韓国条項を掲げて安保を適用しなければならぬということはなくなると思います。ところで、この場合、私どもの基本的立場は別として、安保解消論という基本的な立場は別として、政府立場からいっても、いまもお話ありましたように、安保四条の極東の平和と安全に関連するこの問題については、当然この安保条約というものは再検討しなければならぬということになると思う。つまり範囲が変ってくるんですから、当然再検討の時期になると思いますね。私は、いますぐ解消と言っておるんじゃない。政府立場からいっても再検討しなきゃならぬ時期に遭遇すると思う。当然だと思いますが、いかがですか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げたように、わが国は自衛力を持つ、それには限度がある。そこでわが国に対する戦争抑止力は十分でない。その不十分を補うために安保条約というものは存在するわけなんです。ですから安保条約、また安保体制と言ってもいいかもしらぬ。これは私どもとしてはこれを堅持すると、こういう方針でございまするけれども、その適用につきましては、客観情勢の変化に応じまして弾力的に考えていくべき問題であると、かように考えております。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 これは弾力的にも何にも、当然私は議題となるべきもので、またそれをやらなければ政府は怠慢だと思います。  ところで、これは話がちょっととんでもないところに飛んでいくんですが、キッシンジャー補佐官が日本に来られた場合に何を話をされるんですか。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) キッシンジャー補佐官は、かねて、日本は大事な国だと、しかるに対日知識が非常に私は乏しいんですと、また日本に友人が少ない。これを是正しておかなきゃならぬ。そういうようなことでずいぶん前から日本を訪問したい、したいと言っておったんです。しかし日本を訪問するのはそういうことであって、何も交渉案件とかそういう政治上の案件をかかえて行くわけじゃないんだと、こういうことであったわけでありまするが、今回岩佐凱実富士銀行会長の主宰する日米経済協議会の招きに応じまして、日本を訪問をすると、そういうことになったわけです。しかし、まあキッシンジャーといえば、いまアメリカで重要なお方でございまするし、また世界にもいろいろ影響を持っている方です。そういう方でありますので、この機会はいい機会でありますので、総理大臣もキッシンジャーと会談をされると、こういうふうに申されております。私もお目にかかると、こういうふうに存じておるんですが、まあ総理大臣が何を申すのか私は存じませんけれども、私は日本国のあり方、つまり平和日本と、こういう日本政府の基本的な姿勢、これにつきまして十分キッシンジャーにもお話申し上げ、またキッシンジャーのそれに対する感触等も伺ってみたいと、こういうふうに考えております。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 私はキッシンジャー補佐官が来られた場合に、何か様子を聞かしてもらうというような態度でなしに、特に台湾問題について相手は時間かせぎをやりますよ、アメリカは。それで先ほど申し上げたように、日本も胸を撫でおろすというようなことでなしに、少し先ほどちょっと触れましたが、安保の再検討、太平洋集団安保ぐらい大きいところ、次元の高いことをやったらどうですか。私はキッシンジャーはそういう向きの人だと思う。ちょうどいい機会だと思いますね。こんな、向こうの様子を伺って、それで日本の台湾に対する態度をきめるなんて不見識なことをやってもらいたくない。そんなことはないと思いますが、いかがですか、これ、どうもやりかねないような気がしますが。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあキッシンジャーが来て、向こうでどういうものを持ってくるか、これはまた別です。しかし当方で最も必要なのは、キッシンジャーの持っておる該博なる国際情勢の知識です。これをやっぱり基本的には私どももキッシンジャーから受け取りたいと思います。その場合にやはり中心になりますものは、私どもがアジアに国する国でございますから、そういう意味で台湾の問題あるいは中国の問題、その他一般の問題、これらが一番関心の深い問題であると。この点ではしかし前回ニクソン大統領の北京訪問、その前にサンクレメンテでずいぶんひざを交えて話をいたしました。その際もキッシンジャー補佐官は大統領のそばについておりましたから、これはもうきわめて少数でひざをつき合わして話し合ったと、こういう事柄でございます。だから今回来れば、ただいまの用向きが岩佐君の経済委員会の問題だろうが、私と会う機会がございますから、たいへんけっこうな機会だと、かように思っておりますので、これを十分生かす、そういう意味ではこれを活用したいと、かように思っております。その際に、ただいまの羽生君の御注意など、これはいい材料のように思いますから、そういう意味でじっくりと話をしてみます。しかしこういう話は、あとでどういう話をしたか詳細に話をしろと言われましてもなかなかできない問題でございますので、先に回った話をするようですが、その点はあまりお尋ねにならないように前もってお断わりしておきます。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つ、いまのに関連したことですが、近くルーマニアのチャウシェスク氏が来られますが、これは主としてどういう会談になるのか。お差しつかえなければ——それまで総理がおられるかどうかまあその辺は別として、どういうことでこういうふうになったのか、事情を聞かしていただきたい。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) チャウシェスクルーマニア国家評議会議長が来たる五月の二十九日来日、そして六月の二日まで滞在と、こういう予定になっておるんです。ルーマニア議長との間にいまどういう問題について討議をするという予定はきめておりませんです。まあこれから先あることですから、両国間でどういうことを話し合うということですね、これをきめていくと、まだ率直に申し上げまして何も話し合う事項について整理はしておらぬというのが実情でございます。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 話がちょっと横道にそれましたが、続いてお伺いしたいことは、このASEAN諸国——東南アジア諸国連合です。これはこの前も一度お伺いしたことがありますが、さきに外相会議を開いて東南アジア中立化構想を明らかにいたしました。あのときは外相会議ですが、近く首脳会議を開こうといたしましたが、いま停とんをいたしております。しかし、これはインドシナ三国、ビルマ等を加えて広範なアジアの中立化構想を打ち出しているわけですね。こういうものを積極的に生かすべきではないかと思うんですが、いかがでありますか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もただいま羽生さんのおっしゃることを聞いておりまして、たいへんけっこうなことじゃないかと、アジアの国々が平和を目ざしまして中立化構想だとか、こういう話、これはたいへん私どもの外交姿勢に合致する問題であって、そういう話が具体化されるということはこれは歓迎いたしております。ただわが国はASEAN諸国の一員じゃございませんものですから……。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 それはわかります。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これを横からとやかく言うわけにいかぬ、そういう立場でございまするけれども、何かそういういい機会でもありますればこれは前向き、積極的な立場で対処すると、こういう姿勢でございまするから、そのように御理解願います。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 横から口を出すわけにはいきませんが、しかるべく対処してそういう方向を伸ばすような外交努力が必要だということを申し上げているわけですね。  それから次に、ASPACは発展的解消というような意見も出ておりますね。私はやはり積極的にこの際は、新しいアジアの環境づくりのために発展的に解消したほうがいいと思いますが、いかがでありますか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一部——部というか、ある一つの国が羽生さんのおっしゃるようなことを言っておるというような話も聞いております。しかしこれは多数の参加国のある問題で、一つの国の意見できめるというわけにはまいらぬ。まあとにかく、このASPACという会議は、これは軍事的な意味合いというものは全然持っておらないんです。これは平和的建設ということを目ざして参加諸国の間で話し合おうという会議でございますので、これをいま解消するというのもいかがでございましょうか。わが国といたしましてそのリードをとるというのもこれもいかがであろうかと、かような感じがいたしております。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 これはいろいろな意味で誤解されやすい性格で、たいしてプラスにならない会議であります。私は発展的に解消することのほうが望ましいと思いますが、これは要望にとどめておきます。  次に、中国の核開発が漸次進んでおりますが、しかし中国抜きの軍縮交渉というものはあまり意味がないと思います。ところで、ジュネーブの軍縮委員会でわが国の西堀代表は、中国の軍縮委員会への参加こそ急務である、こう言っております。他方、中国は国連で、完全な核兵器禁止とそのための世界首脳会議開催を提案しております。政府は、現在の段階において中国が軍縮委員会に参加する可能性があると考えるかどうか、それの見通しはどうなのか、どう考えておるのか。  それからもう一つは、その実現のために具体的に何らか考えられておる方策があるのかどうか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  73. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核軍縮は人類が当面しておる最大の問題と言ってもいいと思うんです。その最大の問題に対しまして、わが国は非常に特異な立場にある、また貴重な立場にあると思うんです。つまり、わが国は核を持たんとすれば核兵器まで持てるというくらいな経済力を持っている国になっておる。そのわが日本国があえて核兵器は持ちません非核三原則を国是としておる。こういうことは、私は、核軍縮に向かって非常に強い発言をなし得る立場にある、こういうふうに考えておるわけでありまして、今回西堀大使が赴任するに際しましても、このことを十分踏まえて諸活動に当たってもらいたいと、こういうふうに申し上げておるわけでありますが、今日の現状におきましては、とにかくわが国の隣国である中国が核兵器を持っておる、しかもその軍縮委員会には入っておらぬ、こういうようなことで、世界の核軍縮、これ自体に対しまして非常に大きな障害になっておる。そういう状態でありますので、西堀大使が中国の核軍縮会議参加を要請するというのも、これはもう当然のことであろうと思いまするし、今後ねばり強くこの方向の施策を進めていかなければならぬ立場にある。平和を標榜する中国のことでありまするから、私は、それを理解するんじゃないか。まあもちろん、それはソビエトの出方あるいはアメリカの出方、いろいろ見てのことでありましょうけれども、そういうムードが出てくる。そういう際におきましては、中国もこれに対する参加を拒否し続ける、こういうふうには考えません。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 西堀発言の中にはアジアでの軍縮ということを提唱しておりますね。これは外務大臣は御存じかどうか、あれだけジュネーブの軍縮委員会で演説をぶつんですから、何か具体的なものがあってのことだと思いますが、内容を聞かしていただきたいと思います。
  75. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) お答え申し上げます。  西堀大使の演説の趣旨は、もしアジア諸国にそういう動きがあるならば、日本もこれに積極的な寄与と申しますか、お手伝いをしたい、こういう趣旨の演説をしております。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 積極的な案を自分で持っているわけじゃないんですね。
  77. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 現在の段階では持っておりません。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、かりに、これはすぐの問題でありませんが、軍縮が現実に進行する場合、その場合には日本の自衛隊も当然縮小の対象になると思いますが、これはよろしゅうございますね。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その問題は、各国とのバランスの問題ということを十分考えなければならぬ問題です。わが国の自衛隊は、申し上げるまでもございませんけれども、わが国力に対しまして非常に小さい規模のものである。GNPから言いますれば、実に〇・九%である。アメリカなんかは六%、そういうような状態です。他の先進諸国におきましても三%、四%、こういう状態です。そういうことですから、自衛隊をどういうふうにするか、これはそういう強大な軍備を持っておる国がどういう態度をとるか、それとの相対的関係においてきめらるべき問題である。これを全部軍備をみんななくしてしまおうというような際に、わが自衛隊だけががんばる、そういうような理由は毛頭ありませんと、かように考えます。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 世界がそういう大勢になった場合に、日本だけは除外してもらうなんというのは全く筋の通らぬ話で、それが防衛問題と私は重要な関連を持つと思います。これは、私は、必ず世界がそういう軍縮構想を打ち出した場合には当然日本も同調すべきである、これは要望しておきます。  それから、政府昭和四十五年二月核防条約調印にあたって政府声明を出しましたね。これは批准のための条件ということであります。この条約が発効してすでにもう二年もたっているわけでありますが、そのときに出した条件は満たされておると考えるのかどうか、日本は批准をどうするのかお聞かせいただきます。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核防条約調印にあたりまして、特にわが国はこの平和利用を阻害することのないように、保障ですね、これを平等にしてもらいたいということを声明をいたしておるわけなんです。この声明が実現できるかできないか、これが非常に問題です。わが国は核兵器を持つという意図はございませんけれども、しかし核の平和利用はぜひともこれは有効にやっていきたい、こういうふうに考えておる。その保障措置が一体どういうふうになるか。いまユーラトムとの間に原子力委員会がその問題について話し合いをいたしております。この話し合いがどうなるか。それなんかは一つの基準になろうかと思うのですが、それなんかと日本が不平等な形において扱われるというようなことになると、これはもう重大な国益への影響、そうなってくるだろう、こういうふうに思うのです。でありますので、ぽつぽつ非公式、ごく非公式な検討というか、あるいはその検討に基づいての国際原子力機関との接触、これはやっておるのです。やっておりまするけれども、この核防条約による正式な予備交渉、これはまだ始めておりませんです。私どもは、この核防条約は非常に大事なものでありますので、これの正式の予備交渉をいつ始めるか、この予備交渉が始まりますると、一年半で本式交渉を始めなければならぬということになりまするので、ただいま非常に慎重にかまえておるというのが現状でございます。
  82. 西村関一

    西村関一君 ただいまの西堀大使の発言に対する羽生委員の意見と質問がございましたが、西堀大使の、「アジアの諸国が賛成するならばアジア軍縮会議を開くべし」、こういう見解の表明でございます。私は、政府が進んで日本においてこの会議を開くべく努力をせられることが必要ではないかと思うのであります。日本こそこのようなアジアにおける軍縮会議の主導的な役割りを果たすべきである。特に核を含むところのアジア軍縮会議というものを主導すべきではないか、そういうことのイニシアチブをとるべきではないかと思うのでございます。その点政府の御見解を伺いたいと思います。もう少し進んでやるべきではないかというふうに思います。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 理想論としては、アジアに広範な軍縮が実現されるということは、これはもうほんとうに望ましいことです。しかし、アジアにはソビエトロシアという強大な軍備を持った国もおる、また中国というこれまた強大な軍備を持った国がおります。それらの国々がどういう態度を示すか。そういうことを考えますと、アジア全体の軍縮会議を開きましてもこれがどういう成果を生みますか、この辺もなかなか見通しのむずかしい問題です。まあ、理想とすれば、ぜひアジアに関係を持つ諸国が軍縮会議を持って軍縮を行なう、これはもうほんとうにそう思います。しかし、現実問題とするとなかなか前途は容易ならざるものがある、そういうふうに感じております。
  84. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 羽生君の質疑の途中でございますけれども、午後一時十分まで休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  85. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、総予算三案に対する羽生三七君の質疑を続行いたします。羽生三七君。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 中国はみずから先に核兵器を使うことはないと、こう言っております。またソ連も一九六六年、コスイギン首相が、ジュネーブ軍縮委員会にメッセージを送りまして、自国領土内に核兵器を持たない国に対して核兵器の使用を禁ずる条項を核防条約に入れる用意がある旨を声明して、また他の核保有国が応ずるなら、最初に核兵器を使用しないことを誓うと、こう述べております。私はさきに訪ソして、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長と会った際に、さきのソ連の発言の趣旨は今日もなお生きているかどうかをただしました。それに対して、その発言は今日もなおかつ生きていると、こういう答えでありました。だから双方、みずから先に核兵器を使う意思はないと言っておるのですから、西堀代表がジュネーブの軍縮委員会で抽象的な発言をしておるんではなしに、先ほども聞けば何も具体案はないようですから、こういう問題を提起して、核兵器保有国がそれぞれすべて核兵器をみずから使うことのないという宣言を取りつけるような、そういう努力をジュネーブ軍縮委員会でやるべきで、何も実りのないような、ことを言ってもだめですから、そういう問題を提案したらどうかと思います。これは私、双方そういうことを言っておるんですから、まことにいい機会だと思います。いかがでありますか。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核の問題は、これはなかなか核保有国にとりましても取り扱いのむずかしい問題じゃないか、そういうふうに思います。そういう中において、私は核は持っているけれどもまつ先には使いませんと、こう言う。それは言うこと自体に価値はないとは申し上げませんけれども、やっぱり核を保有しているということにたいへんな問題があるんじゃないか、そういうふうに思うんです。私どもは核兵器を保有し得る能力があるにもかかわらずこれを持たない、こういう国でありますから、このわが国の発言というのは私は非常に迫力を持った貴重な発言であると、こういうふうに思うわけであります。そういう立場を踏んまえまして、とにかく、この人類の敵であるところの核兵器、これを絶滅するというためには、あらゆる機会、あらゆる場をとらえて努力しなければならぬというふうに思いますが、いま羽生さんの御提案のことも、ひとつよく整理をいたしまして、そういう言い方がいいかどうか、これは考えてみたいと、かように存じます。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 本来なら中国が核軍縮の問題で、核軍縮首脳会議を提唱しておるんですから、何らかの形でそういう会に参加すればいいのですが、非常にむずかしい条件があるので、中国の参加を求めるのはどういう条件を満たせばそれが可能なのか、そういう問題、もっと検討しないと、ジュネーブでいま言っているような抽象的なことではだめだと思います。積極的にそういう問題に取り組まれることを要求をいたします。これはぜひやっていただきたいと思う。  それから、これと、核の問題に関連して、これ、ちょっともとに戻るようなことになるんですが、さきの沖繩国会で私が核撤去の検証の方法について、サンクレメンテで日米会談どこまで詰めるかと、具体的にただしました。それに対して外相は、これらの問題についてはいま話し合いを進めている最中だ、サンクレメンテ会談で結論を得たいと、こう答えております。沖繩国会における衆議院の決議もあり、参議院でのこの場所においての言明もありました。したがって、実際に何らかの方法でこの核撤去の問題並びにその検証の方法が具体的に取りきめになったのかどうか、明らかにされたのかどうか、この機会にひとつ御発表をいただきたい。
  89. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私がお答えを申し上げたとおり、サンクレメンテ会談におきましては、この問題を提起いたしまして、アメリカ政府といたしましては、沖繩返還時におきまして、沖繩に核はないと、こういうことの保証を与えるということになったわけでございます。その保証をどういうふうな形にしますかということにつきましては、その後日米外交当局者の間で話し合ってきております。大体の方向は出てきておるんですが、アメリカ政府の名においてロジャース国務長官が日本政府を代表する福田外務大臣あて書簡を発出してそのことを明らかにする、こういうことになりそうでございます。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、それは撤去を検証することも含まれておりますか、そのロジャース書簡は。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 検証のことは含まれておりませんです。核がないということの確認であります。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 いやそれでは、それこそ今度の国会のさまざまな問題と同じように一方通行みたいなことになりますから、私は何らかの形で日本に検証の道を開く、機会を開くことを要求いたします。これはぜひ考慮しておいていただきたいと思います。  それからその次は、これは通産大臣、実は通産大臣がチリーのサンチャゴで開かれるUNCTAD会議に日本代表として出席されると思っておりましたが、どういう御都合か、お取りやめになったようでありますが、そこで、愛知前外相が行かれるようでありますが、問題が通産省所管でありますので、ひとつこういう問題、考えていただきたいと思います。  それは、国連は一九七〇年代を軍縮と開発の十年と銘打っております。これは昨年十一月にウ・タント国連事務総長の軍備報告に強調されております。要するに、いまや世界は軍事費を開発に回すべきときである、こういうことであります。そこでこのUNCTAD会議における日本政府考え方ですが、第一に、この四次防を基本的に考え直して国内のひずみ是正と低開発国援助に振り向けること、この費用を、できるだけ。それから、日本からの武器輸出は絶対に行なわないことを確約すること、こういうことを方針として、UNCTADで世界各国が軍事費削減に踏み切ること、削減部分の一定比率を低開発国援助に振り向けること、それから武器輸出を規制すること、こういう問題について各国に同意を求めるよう呼びかけてはどうかと思います。ことしは日本がいろいろな誤解を受けているので、特にこれは絶好な機会だと思いますが、通産大臣はいかがお考えになりますか。
  93. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 武器輸出につきましては、武器輸出三原則がございまして、ほとんど輸出をしておらないということでありますので、日本がこのような提唱をするということよりも、日本は武器輸出というものをほとんどしておらないということを明確にすれば足ると思います。  それから防衛費の問題でございますが、防衛費はこれは各国に比べて非常に低いわけであります。国民総生産の〇・九ということでございますので、日本に要求されておるもの、日本が現に行なっている低開発国援助というのは〇・九三%でありますから、大体防衛費以上のものを援助しておるということでございます。ですから、これを削減して四次防やめてというようなことは、ちょっとどうもメリットがあるのかないのか。ないような気がいたします。今度の問題で一番問題になりますのは、低開発国、非常に数が多いわけでありますので、どうしても国民総生産の一%を早急に達成したいということが一つございます。それからもう一つは、量もさることながら質の問題が問題になっております。いまDACで平均の数字は政府援助が〇・三二だと思いますが、日本はその中で〇・二三でありますから、日本の援助をもっと質的に向上させよということが開発途上国からの集中的な攻撃材料になると思います。しかしこれには理由がないわけではないわけで、理由があります。これはアメリカなどは軍事援助に付随をする援助がありますので、どうしても政府援助ベースが大きくなるということでございますし、拡大ECの国々などは、かつて四分の一世紀以前には植民地としての特別な事情がございましたので、債権確保のためにも政府ベースの援助が多くなる、こういう問題があるわけでございます。ですからこういう数字を比較するには、日本と台湾、日本と韓国というような状態、それからもう一つ日本がかつて賠償の責めに任じておりましたときに、賠償に付随する援助というものは質的には政府援助が多かったわけでありますから、そういう理由を十分述べて、そして理解を得なければならないと思いますが、しかし結論的には、七〇年代に〇・七まで政府援助ベースを上げようというのが最終的には決定されると思いますので、日本もそういう問題に対しはやはり基本的には賛成をするということになると思います。まあいろいろな低開発国の原材料だけ持ってくるというのではなく、現地合弁というようなことで開発方式を変えたり、ワンセット開発に出したり、その国自体の工業化がはかれるような問題、具体的にいろいろな問題が出てくると思いますが、今度は日本の発言、日本の賛成、反対の態度というものは相当注目される重要な会議であろうと、こう思うわけでございます。いま御指摘の端的な三つの問題、第三の問題は別にしましても、その防衛費、四次防はやめてどうというような問題はなかなかどもう通用するかどうか。これはあなたの御発言は愛知首席代表には十分通じておきますが、四次防をやめてということではなく……。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 削減してです。
  95. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 四次防を削減するというよりも、やはり〇・二三である政府ベースの援助の質をやはり平均値まで上げるということに賛成するほうが日本の発言としてはメリットが多い。こう考えております。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 これはあとに経済問題の際にお伺いしますが、日本の現在の経済動向、輸出の状況等から見て、日本経済の将来と関連して、おそらく私は発展途上国からきびしい批判を受ける時期が必ず来ると思います。そういう意味で、将来に備えても、いまのようなレールを敷いておくことが好ましいという考えからの発想でありますが、これはお考えおきいただきます。  次に、政府としては、北ベトナム承認をめざしながら、その第一歩として通商代表部を設置する考えはないかどうかいかがでありますか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 北ベトナムに対しましては、先般、外務省の三宅課長を派遣をいたしております。個人の資格であります。そこで、先方の経済関係者といろいろ会談をさしたわけであります。非常に友好的な雰囲気だというのでありまするが、その際、通商代表部を設置しようと、お互いに設置しようじゃないかというような話題は出なかった。向こうからの希望もまたなかった。また、おそらく北越といたしましても、そこまで日越関係が発展はしておらないという見通しじゃあるまいか。そういうふうに見ておるわけでありまするが、今日、そういう状態でありますので、通商代表部を設置するというのは、ただいまこの段階では考えておらぬというのが率直なところでございます。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 日本のベトナム戦争への協力等から、向こうが積極的にそういうことを先に要求することはないと思います。日本みずからが問題提起をするかどうかということであります。  ところで、南ベトナム政府へのテコ入れをするような援助は、やめるべきだと思います。もし民生安定に限るというならば、同様の処置を北ベトナムに講ずべきである。最近何らかの処置を考えられておるようでありますが、それはけっこうでありますが、これに、南北に私は差別をつけてはいけないと思う。これも将来に対する布石という意味でありますが、そういう差別なしに、民生安定に限るならば、同様の処置をする考えはありませんか。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ベトナムの南北状態が緩和されるように、そういうことを念願いたしまして、わが国といたしましてもできる限りの処置をとっておる。そういうようなことで、とにかく南越とは非常に接触があるのです。北越とは微弱であった。そこで、この微弱であった北越との関係をひとつ進めてみたい、そういうことで、まず、人の往来です。三宅課長が行った。今度、かなりの規模の経済視察団がただいま来日中でございます。そういうようなことで、だんだんと接触もしておる。そうしますと、わが日本が、南北の和平に対して何かお役に立ち得るような立場をつかみ得ないとも限らぬと、こういうふうに考えておるわけでありますが、経済の援助につきましても、逐次、漸を追うてそういう方向に持っていこうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。何せ北ベトナムと南ベトナムは、わが国に対する外交上の立場が違うものですから、その違いに基づく違いは出てくる。しかしわが国としては、イデオロギーを超越して、どこの国とも仲をよくしていきたい。ことに南北は悲劇的な対立をしておる、こういう際でありますので、この悲劇的の解消ということにつきまして、何らかお役に立てばと、こういうのが私ども立場でございます。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、ポスト・ベトナムの復興基金構想というものがあるようですが、これ、ひとつ構想があったらお聞かせいただきたい。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ベトナムその他インドシナ三国、これはもう長い間の戦乱状態で、たいへんな疲弊状態だと思うのです。戦争が、さて終了いたしましたというその後におきまして、これをどういうふうに復興していくか、これはえらい金のかかる問題である、こういうふうに考えております。また、アジアの先進国工業国としてのわが国が、これを傍観視することはできない。私どもは、進んでこの復興には協力して差し上げなければならぬ立場にあると、こういうふうに考える。その際に、どういう機構がまた必要になってくるかということは、まだこの段階では固まってはおりませんけれども、二つの考え方がいま、まあ模索されておる。  一つは、アジア開発銀行がある。そのアジア開発銀行に特別な部局というか、ファンドといいますか、そういうものを設けまして、これを中心にファイナンスをしていくという考え方。それからもう一つは、たいへんな大きなダメージでございまするから、特別な基金をつくって、そうしてこの基金を中心にして復興を進めていくという、そういう考え方があるんです。これは一長一短だと思います。  アジア開発銀行方式でいきますれば、これはアジア開発銀行というもとがあって、そうしてインドシナについて特別の配慮をするというのですから、一つ考え方です。ところが、アジア開発銀行という大きな領域をながめての機構、そういうものでございまするから、それが十分にインドシナ半島に行き届いためんどうができるのだろうかという弱点もありゃしないか。半面におきまして、インドシナ開発基金という独立の基金を設けますると、これは行き届いたことはできます。できますが、アジア開発銀行があるというそういう際に、二重機構になりはしないか。また、一から始めるのでありまするから、実際問題としてそう簡単にスタートできないのじゃないかというような欠陥も論ぜられるわけであります。いずれにいたしましても、和平の実現があるまでにはそれらの考え方がまとまるであろうし、まとまった際におきましては、わが国としては積極的にこれに参加するというかまえでございます。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。  それからもう一つは、先ほどもちょっと触れましたが、朝鮮問題ですが、おそらく、ことしの国連総会では何らかの変化が起こると思います。いまもお話しのように、南北ベトナムの関係で、それぞれ日本との立場では差がありながらも、かなり融和的な考えを北には持っておいでになります。同じように北朝鮮につきましても、もっと積極的に私は緊張緩和の努力をすべきだと思う。人事往来等についてもそうですが、そのお考えは、積極的な意思をお持ちになっているかどうか、伺っておきたいと思います。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま南北朝鮮の間におきましては、一面において対決の態勢ではございまするけれども、また他面において緊張緩和の模索、これがかなり強力に進められておる、こういうふうに見ておるわけであります。そういう間において、わが国がどういうふうに対処するか。やはり南北朝鮮の間に緊張緩和の勢いが出てくること、また緊張緩和の一筋がずっと続いていくこと、これを期待し、もしわが国においてそういう方向において協力し得るところがあれば、それに協力するということが基本姿勢でございます。  通商の面におきましては、そういう間におきましてどうするか、非常にこれはデリケートな問題でありますが、民間ベースでさしあたりこれを進めていくということにしておる。ただし、人事、文化あるいはスポーツ、そういう面での交流、特にスポーツ、文化の交流、これはかなり前向きでこれに対処していってしかるべきかと、こういうふうに思います。そういう交流、接触を北との間に持ちながら、南北の形勢に対処する、これが当面わが国のとり得る最善の道ではあるまいか、そういう認識でございます。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題の終わりに——あとから経済問題に移りたいと思いますが——次の問題をぜひただしておきたいと思います。  これは昨年末の沖繩国会でも言ったことでありますけれどもアメリカ日本の負担を加重させるという政策の中で、対中接触を深めていると思います。少なくとも私はそう思っている。すなわち、アメリカ沖繩基地の機能を当面ダウンさせる見通しは全くない。また、第七艦隊も、やがてその拠点を横須賀に持ってくる公算が大きい。これは決定したわけじゃないけれども、公算が大きい。また、日米共同声明の台湾条項もそうでありますが、要するに、アメリカは中国封じ込め政策の前線ラインを日本列島にまでに後退させる。後退させて、そういう条件を一方でつくりながら対中接触を進めているということであります。  だから、日本の対中打開はこの一両年が最も大切な時期といわれるのでありますが、そういう重要な時期にアメリカは、いま述べたような政策背景のもとで対中接解の条件を整えておる。問題はこれだけではありません、ほかにもいろいろな要因がありますけれども、このことは逆に言えば、日本はそれだけ条件を悪くしているということであります。アメリカの対中接触は自由でありますけれども、また、歓迎すべきことであります。同時に、日本は対米関係において、よりフリーハンドを確立すべきではないか。これは非常に重要なことだと思う。特に私は、キッシンジャー補佐官が来たときはぜひそういう問題についても解れてもらいたい。それは頭越しの外交をやりました、アメリカは。頭越しをやっても日本はどうせついてくるだろうという安易感がアメリカにはあると思う。必ずあると思います。ですから、それは何もあえて私はアメリカ側にすべて反対しろ、抗議しろというのではありません。しかし、いまの世界の多極化のこの条件の中で、もっと日本がやはりアメリカに対して外交上のフリーハンドを持たなければ、思い切った外交ができないということを、あまりに私は痛切に感じる。この問題について、ぜひお考えをいただきたいと思いますが、御所見を承ります。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) サンクレメンテの会談におきましても、中国問題に非常に時間を費やしたわけであります。その中国問題への考え方といたしましては、日米とも、中国を国際社会の外に置くということは、アジアの平和、ひいては世界の平和のためによろしくない、これは日米両国とも相携えて中国と接触しようじゃありませんかと、こういうことなんです。しかしその接触の方法は、主権国家としてお互いに違ってもこれはしようがないじゃないかということを、両首脳は確認し合ったのであります。重大な中国についてそういう状態だ。ですから、他の国々につきましても、もう大同小異というか一日米おのおの、考え方は同じにいたしましても、この外交の方式につきましては、違うところがあっても差しつかえないんだということを確認し合ったのです。  だから、であればこそバングラデシュ、これはアメリカは今日なお承認しない。それに先立ちましてわが日本国は、これを承認をしておる。モンゴリアはどうだというと、モンゴリアにつきましても、わが国はこれを、アメリカとは違った、まあ国交、外交使節の交換ということをやっておる、こういうようなことでありまして、まあとにかくいま多極化時代です。ほんとうに私は、昨年ごろから世界の情勢が変わってきておるのです。もうソビエトのことも中国のことも、あるいはヨーロッパのことまでも考えてやらなきゃならぬ。こういう時代でありまするから、そう一々全部が、考え方から方法論までアメリカと同じでなければならぬ、こういうような状態でないと思うのです。私どもはそういう認識のもとに世界に臨んでおると、こういうふうに御理解を願います。
  106. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。  いま朝鮮の問題についていろいろお話があって、南北統一という方向に行くということは賛成だし、緊張緩和に協力をしたい、こういうお話があった。そうしてまた、文化あるいはスポーツ、技術等の問題について交流をする、こういうことについて前向きで検討したい、こういうお話があった。いますでに、もう外務大臣も御承知のとおり、これはクラレのプラントの問題、あるいはまた倉紡のプラントなどについて、北の朝鮮民主主義人民共和国が日本との間に商談を進めて、一番問題な点は、技術者が日本に入れないということが一番問題になっていることは御承知のとおりと思う。すべてが、電報とかあるいは文書による一つの取引ではなくて、プラントというふうなことになれば当然工場を見、実際のものを見て話し合いをするということが必要であるので、いまのような前向きの姿勢でこういう問題を解決するということ、そうして南北の朝鮮の統一のためにはできるだけの協力を、同じ状態にすることはできないとしても、やはりその実情に即してそういうふうな協力をしようというようないまの回答等を通じて見ると、特に私たちは、この北朝鮮との貿易にあたって、技術者が日本に入ってくるということを認めなければ、いま言ったような趣旨の問題は解決ができないのじゃないかということを強く感じているのであります。しかし、この点については、私は福田外務大臣中心とした外務省に障害があって、むしろ通産省側ではこれを積極的に、あるいはできるところから手をつけていこうじゃないかというようなことが考えられているのに、そういう点について、むしろ前向きの解決をなされないというような状態を承知をしているのであります。  しかし、こういう問題については、いま言った基本の線から考えるならば当然今後解決をしていきたい、また、少なくもそういうことを基本と考えるならば、日朝の貿易の拡大という面から考えてみても、少なくも、技術者が日本に入り込んできて、そうしてその現実の調査ができるような状態の中で商談が成立をすることの必要というものを、各業界も痛感をしているのであります。こういう点について、積極的な解決の御意思なり意図を持って現実にやられているのか。それとも、そういう商談は、実はそういうことは話があっても、それはどういう支障からそれができないのか。この点についてひとつ、いまの御答弁の基本の線に沿って、私は少し疑問がありますので、お答えを願いたいと思うわけです。
  107. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) クラレから技術者を入れたい、それからさらに引き続いて何がしかのプラントの商談をやってみたいという話を聞いております。しかし、先ほど申し上げましたように、私は何とかして南北の間に融和、緊張緩和の勢いを見出したい、そういうふうにしたいというふうに考えておるのです。  しかし現実はどうかというと、韓国におきましては非常事態宣言まで発しまして、国民の士気の高揚をはかっておる、こういうような状態であります。そういう状態のもとにおいて、いま北鮮との間に政府が介入いたしまして商談を進める、こういうところまでいきますると、かなり日韓関係にこれが重大な影響を及ぼす、こういうふうに判断をいたしておりまして、その辺の扱いにつきましては、慎重にかまえておるのです。これは性急にやっては事をしそこなうと思うのです。やはり漸を追って、そうして着実にそういう道程をたどるという行き方を選ぶ。いまかりに、韓国を刺激するような大きな行動をとるというようなことになって、日韓関係がごたごたする、そういうことになって、はたして南北朝鮮問題にいい響きがあるか。私は決してそうじゃないと思うのです。その辺を十分、デリケートな問題としてよく承知をしております。そういう理解の上に立って、ずいぶんこれは苦心はいたしておるんです。  私が申し上げましたような姿勢、方向、そういうものに、漸を追うて着実に進めていきたいというのが私の考えでございます。
  108. 松永忠二

    ○松永忠二君 いまのお話で、プラントの輸出にあたって輸銀延べ払いをやれと、そういうことをまず認めようというようなことであって、それは政府に少し関連があるから、少し検討中であるということなら、まだそこにも話がわかる。しかし、民間ベースで行なわれるいわゆるこういうものは、商取引の日朝貿易にあたって、すべて技術者の入国を許していないという事実があるでしょう。私は、政府が介入するということではなくて、そういう民間のベースにおけるこういうふうな商取引の場合でもそれを認めていないということは、単に日韓関係だけを強調することになると思うんであります。これは日韓の関係も大事でありますけれども、米中の接近は、その次にもう米朝のいわゆる問題の解決に関連を持ってくる問題であるし、また一方、いわゆる南北の統一の問題等も進められている状態の中で、非常事態宣言の見方も一体これはどこに視点があるかということについてもいろいろ議論のあるところです。事実、外務省あたりも、これが国内の事情に基づく問題であるという把握をされて見解を示しているわけなんです。しかし一方、日韓の関係を重視するという考え方もわかる。しかし同時に、いま言ったとおり、差別をつけていわゆる分離に、片側を援助しないというような基本の立場にも立って考えていって、統一への方向へ向けていこうということであるとすれば、当然そこに政府ベースとして延べ払い制度をまず朝鮮に認めるということにやや支障があるとしても、あるいはこれすらも一歩解決をする方法があるのではないかと思うけれども、それじゃあ民間のベースにおける商取引の場合において、貿易において技術者を入れ込むことを認めるということがなければ、あなたの言っていることは支離滅裂じゃありませんか。だから、政府が介入するとか政府が関与するとかということなら、それは延べ払い問題については、それは一応私も後ほどこの問題は聞きますけれども、まあまあ、ここで短い時間でありますからそれはひとまずおいて、そんなら民間ベースにおけるいわゆる取引の場合に、全部を電報やあるいは手紙でやっている現状を打破するためには、技術者の来朝くらいは認めるという基本の態度を示すべきじゃないでしょうか。この点をお尋ねをしているわけです。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そこに問題があるわけなんです。つまり、技術者の入国、これは政府がこれを認めるか認めないかそういう権限があるわけでありますが、認めるということになりますれば政府がそこに介入をすると、こういうことになる。そういう事態が、いま南北関係の非常にデリケートな段階で、はたしてそれがいいものであるかどうか。実は、まあ率直に申し上げますと、この技術者の問題につきましては韓国でもたいへんな関心を持っているんです。私はそういうことにつきましては逐次これを解決していきたいと思います。思いますが、いまこの時点でそこまで踏み切るということは妥当でない、こういうことを申し上げておるわけでありまして、私も十分考え、頭にあることでありますから、その辺で御了承を願いたいと存じます。
  110. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題についてけさほど来私が申し述べてきたことは、まず緊張の要因そのものを除去するための強力な外交活動の展開ということであります。つまり、緊張の要因そのものを除去しなければ、防衛力を際限もなく増強するということに安全保障の政策というものはすべて集中されるという、そういうことを私は指摘したわけです。そこで、この安全保障に対する一連の問題提起について政府が積極的な対応策を示すことを私はぜひ要請したい。そうでなければ、結局、防衛力の増強だけが安全保障の唯一の道という、こういう発想となって、今国会生起したようなさ主ざまな混乱を引き起こすことになる。私は、今度だけじゃないと思う。将来も、もしそういう発想ですべて防衛力の増強だけに安全保障を託するというような考え方であるならば、必ずやいろいろなところに混乱が起こると。これは手続上の問題や単に技術的な問題ではありません。安全保障の本質的な問題だと思います。そういう意味で私は政府本質的な問題についての検討と反省を求めて次の経済問題に質問を移したいと思います。
  111. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は安全保障という見地から見まするときに、非常に特異体質の国だと、こういうふうに思います。つまり、世界の大国であるアメリカ、ソビエト、こういう国々と違いまして、わが国はわが国に重要資源を持たない。そのほとんど大部分を外国に依存をするという国柄でございます。そういうわが日本としてみると、これはもうアジアはもとより、世界じゅうが平和でなければわが国に平和はない。わが国の存立はできない。それから、わが国はその重要資源を使いましてこれを商品化して世界じゃうに売りさばいてたつきを立てると、そういうたてまえの国であります。したがって、世界じゅうが繁栄しなければわが国に繁栄はない。私はほんとうに心から思うのでありまするが、これは、わが国の繁栄というものはひとりわが国だけの繁栄ということではできない。わが国の安全保障というものは、やはり世界の平和と世界の安定、繁栄の中にこそ求めるべきものであると、こういうふうにまあ考えるのであります。したがって、経済大国になった、経済力は相当なもんでございまするけれども、このわが日本は軍事大国への道は選ばないと、こういうことであります。まあ、とにかくわが国は軍事力に用いないところのその余力を世界じゅうに分け与えて、そうして世界を繁栄させる。その繁栄を背景として世界に平和がもたらされる。その平和と繁栄の中に日本の安全を求める。これがわが国の私は安全保障政策の基本でなければならぬ。そういうふうに考えておるわけであります。しかし、ただ現実の問題として、そういう大きな世界的立場を踏んまえますると同時に、この現在の世界情勢というものも見なければならぬ。世界じゅうがほんとうに平和愛好国ばかりであれば問題はありませんけれども、しかし、どういう、いつかなるときに乱暴者があるいは不心得者が出ないとも限らない。それに対しても備えを持たなければならぬという立場にある。これがわが国の自衛力であり、また安全保障体制である、こういうことでございます。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 経済の問題に移るつもりでありましたが、いまの問題で一言私の意見も——これは質問じゃないですよ、——意見を申し述べさしていただきます。  安全保障に絶対なんということはないんですよ。これは相対的な問題です。私どもは、とある日、何も理由もないのに、この四方海に取り巻かれる日本に対して外国が理由なき攻撃を加えてくるようなことは、われわれが予見し得る近い将来はないと思っております。私は、永久ということばは使いません。予見し得る近い将来は、ない。しかし、理由があれば別ですね。それから、その理由が、むしろ外国に、日本にかかわりのない他国の戦争なんかに、外国に対して基地を提供しないことのほうがより安全ではないか。だから、そういうことを中心とするような防衛政策は考え直すべきではないかということで、日本の安全をどう考えるかということについて私たちはあなた方の人後に落ちるものではありません。安全の方法が違うということです。これはやがて歴史がこれを証明すると思う。将来の歴史、長いこれは時代にわたるかもしれませんが、歴史が必ず証明すると確信を持っております。これは答弁は要りません。次の問題に移ります。  経済問題ですが、政府は経済見通しの中で、「四年有余にわたる長期繁栄のあと、四十五年秋からの急速に景気後退過程にはいったが、経済活動は現在なお停滞を続けている」と、こう述べておりますが、この考え方は、現状を単に循環過程としてとらえているように思います。それからまた、経済見通しではさらに、「国際通貨不安は、ようやく回復の兆しをみせていた景気の先行きに大きな影響を与える」と、こう述べている。この点も、国際通貨危機は単に景気回復の時期をおくらせただけだという理解かと思います。これを要するに、日本経済は、日本経済の成長力は変わらない。一時的な後退であって、通貨問題がからんだために若干長期化したにすぎない。そういう認識ではないかと思う。まず、この日本経済の今日の局面に対する政府の基本的なこの見解からひとつ伺わしていただきます。
  113. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 確かに現在の景気後退、いまお示しになりましたような短期、中期的な経済循環、これはございます。ございますが、今回の景気後退は、従来の景気後退局面と違いまして、もういまや日本経済の体質が変化した。また、わが国を取り巻く国際環境と申しますか、そういう状況の変化に基づくものが非常に大きいというような認識に立たざるを得ない、こう考えております。
  114. 羽生三七

    羽生三七君 こういう問題の議論は非常に長い時間を要しますので、特にいまの問題について反論はいたしません。問題は、政府の経済見通しや経済に対する見方は数量的モデルによる計算や景気動向指数にとらわれて、歴史的な観点を欠いているように思うのです。私は昨年の本委員会で下村治氏の説を引用、紹介しながら、今日の過程は単なる循環ではなく、日本経済の成長パターンの変化に関連する問題ではないかということを質問したことがあります。最近、政府も、財政主導型とかあるいは福祉優先とか言われますけれども、結局はパイを大きくして、それを分配面で若干従来より福祉面に多く配分するというにすぎないんではないかと思われます。今日の日本経済は、福祉の増大がなければ成長しないような経済体質になっているように私は思う。これはいまの企画庁長官の答弁の中にも若干その意味が含まれておりましたが、この経済体質の変化を政府は一体どの程度認識しているのか。私は民間設備投資が要らないと言うのじゃありませんよ。そうではなくて、それはもちろん必要な——経済の自動回転で伸びる点もあるでしょう。あるいは政府の刺激政策で伸びる点もあるでしょうが、それはとにかく、いまの経済体質は、福祉の増大そのものが実は経済の成長につながるような体質に変わってきておるという、そういう御理解はなさいませんかということです。
  115. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 確かにいま御指摘の点も私ども同感でございますが、ただ歴史的に見ますと、敗戦から立ち直って、いままでの経済力を身につけた。これは私はやはりわが国の経済そのものの宿命的な体質というのがございまして、したがって、従来の経済成長第一主義、確かにデメリットもございますが、ここまでわが国が繁栄してきて、いまやそういう経済政策を転換可能ならしめた経済力と国際収支のゆとりというものは、やはりいままでの経済政策があながち私は誤りではなかったということの証左ではないかと思いますが、しかし、もうここまで参りますと、いままでの経済政策は大きくこれを転換しなければならぬような時期に立ち入っております。そこで、いま申し上げたような経済力あるいは国際収支のゆとりを踏まえて、大きくこれからの経済運営の基本態勢というものを転換していく、こういう時期に際会している、そういう認識を持っております。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 私は日本の経済のたどってきた過去の成長の事実そのものを全面的に否定しているわけじゃないのです。現在の局面をどう認識、どうあるべきかは今後の問題に関連するわけですね。そこで四十七年度予算案は、これは福祉型予算、あるいは輸出優先型予算から福祉型への軌道修正予算と言えるのかどうか。これは大蔵大臣でしょうか。
  117. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は軌道修正予算と言えると思います。で、それは、たとえば公共事業費の中においても、従来、産業基盤の整備費というものの占めておった比率と、今度の予算を見ましても、生活環境の整備に対する公共投資というものの比率というものが従来と相当変わってきているというようなこと、それから社会保障費の配分におきましても、まあなかなか半年、一年で大きい転換を遂げるわけにはまいりませんが、たとえば老人対策を見ましても、医療の無料化というものと老齢福祉年金、今年度の予算ではたとえば二百十億円前後というものでございますが、これは実施を少しおくらせているというためであって、来年度からは、平年化した場合には千五百億円のこれが施策になっていく。そういうものが今度の予算には各所にございますし、明らかに軌道修正だけは今回の予算では私は行なわれているという気がします。
  118. 羽生三七

    羽生三七君 私は、残念ながら軌道修正とは言えないと思うのだ。軌道修正とは何かということになりますと、結局、問題の本質は、予算面で少しこの福祉関係費をふやしたというだけではなしに、資源配分そのものを変えなければ真の軌道修正にはならぬのではないか。そういう処置をとらないと、私は円の再切り上げが起こるような状況がまた継続すると思うのです。そうは思いませんか。
  119. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算においてはこの国民福祉の配分ということに気をつけると同時に、税制・金融面においてもこのことを考えなければなりませんが、たとえば住宅政策にいたしましても、予算は千五百億円でございますが、財投は一兆円以上を振り向けるというようなことで、そういう金融政策というようなものともからんで資源配分というものをやはり私どもは相当考えておるつもりでございますので、これがもっとはっきり税制、金融、予算と、この三つがほんとうに一体になって全体の配分が変わるということは望ましいことと思いますが、なかなか今年度だけでこれを実現するというわけにはいきませんでしたが、その軌道というものは今年度の予算で大きく転換されて修正されていると思います。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 私は金額の問題には具体的に解れるつもりはなかったのですが、そういうことでいきますと、たとえば四十七年度予算を見ると、伸び率は確かに福祉面が多いことは事実であります。福祉面の伸び率は従来に比べて伸びております。しかし、配分比率を見ますと、たとえば公共事業費に占める生活環境施設費は二千九百十六億円で、四十六年度に比べて八百五十七億円の増であることはこれは事実であります。しかし、産業基盤整備費は一兆三千七百十八億円、増加額は二千六百五十四億円で、福祉面のちょうど三倍であります。だから、福祉面の配分が、単に伸び率だけではなくて、増加額でも見るべきものがあるようにしなければ私は福祉型ということは言えないと思います。それは分母が小さいんですから、それは私が言うとおりにはなかなかならぬと思うが、それにしてもその差があまりに大き過ぎると思いますが、この点はいかがですか。
  121. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば三十五年前後に比べますというと、産業基盤の整備費は公共事業費のうちで七十何%という比重でございましたが、これは現在六七%くらいに今度は落ちておりまして、一方、生活環境に関連した公共事業は八%以下でございましたのが、今度は一五%前後と、公共事業費の中に占める比重は明らかに変わっておりますし、この傾向をさらにここ一、二年努力するということによってこの姿が直っていくだろうと私は考えます。
  122. 羽生三七

    羽生三七君 四十七年度予算編成にあたって政府が宣伝これつとめたのはこの福祉の問題で、その意味は、資本の立ちおくれを回復するという面にウエートがあったように思うのです。もちろん、私はそれが福祉を高めることに、つまり、社会資本の充実が福祉を高めることにつながることは、これは当然だと思います。それとともに、今日の日本の現状は、いわば所得面での福祉の必要性をより重視しなければならぬと思うのであります。ここが、単に予算面で福祉関係費を少しふやすという問題と、私がこれから言う所得面での配慮が必要だということにかなり性格上の違いが出てくるわけですね。たとえば、大幅所得税減税、給与の改善、年金や医療の充実というような、狭義の福祉というか、所得面の福祉というか、その呼び方はとにかく、そういう範疇の政策が特に必要と思われるわけです。要するに、現在の局面は、個人消費支出が伸び悩んでいるということでありますから、個人消費支出を高めるような政策が必要だということであります。だから、総需要がどれだけかというよりも、総需要の内容、その構造的変革が緊要な課題ではないかと思う。つまりここが、蔵相がいま軌道修正と言われたし、私は福祉面での予算は若干ふえておるには違いないが、しかしそれは、本質的な意味の軌道修正とは言えない。真の軌道修正とは、いま私が述べたような面についての配慮がもっと必要だと、私はこう考えている。いかがでありましょう。
  123. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりだと存じます。ことに、単なる福祉政策プロパーの考え方だけでなくて、これを今年度の予算一つの目的としております不況対策というような面から見ましても、減税の効果というものよりは、社会保障給付費の増額というほうが実際には効果があるというようなことになりますので、私どもは、減税と同時に、この給付をふやしたい、たとえば生活保護費の問題にしましても、年金類の問題にしましても、これをふやすことに努力したつもりでございますが、この方面の施策というものが、これからは特に私はいろんな意味で必要だというふうに思います。
  124. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、四十六年度の経済成長率及び四十七年度の政府見通しにつきまして、田中通産相と木村経済企画庁長官との間に若干の違いが見通しについてあるようですね。この数字は、ここで私が一々あげなくとも、先ごろそれぞれ新聞に出ておりました。上半期と下半期、それとその実績見通しと、四十七年度の見通しとの関係等について、両大臣からそれぞれ御所見を承りたいと思います。
  125. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 去年の後半からことしの年初にわたりましては、私と木村経済企画庁長官の間には幾ばくかニュアンスの違いがありました。しかし、いまになりますと、現時点になると、政府の統一見解の数字にほぼ一致をいたしております。これは立場の相違でございまして、当然そういう見通しになるわけであります。大蔵省それから経済企画庁は、過去の数字というものを非常に重要いたしますし、また在庫は一巡をしてくれば、鉱工業生産も上がってくるということで、景気の浮揚の見通しにつきましては、過去のパターンをそのまま踏襲をして計算をすれば数字は上向きになります。私は、通産省へ参りまして、実態を見まして、非常に実態の悪いことがよくわかったわけであります。それは減反政策は米だけではない、鉄鋼もしかり、パルプもしかり、また肥料もしかり、それからポリエステル工業もしかり、もうほとんどが設備過剰という状態であります。設備過剰であるだけではなく、公害問題が急速に出てまいりましたので、操業を中止をしなければならないというような状態もございます。そういう意味で、いままでのような状態で、在庫一巡をしたから、景気が浮揚するというような見方はどうしてもとれなかったわけでございます。今度は、相当長期的な不況ということがまず感じられました。そこへ持ってきて、平価調整でありますから、平価調整のほんとうの影響は一年ないし、一年半と、こういうわけでありますから、私は日本においても、いまのように、輸出のために国民総生産が相当上がっておるという面から見まして、輸出がいまのままで伸びるとも思いません。そういう状態で、多少の立場の違いがあることは、私は、景気浮揚は後半にずれ込む、場合によっては来年の第四四半期——一−三月にずれ込むおそれがあるという見通しでございました。経済企画庁、大蔵省当局では、ことしの後半から第三四半期には景気は浮揚するだろうと、こういう見通しでありましたが、比較的低い数字でもって見ておりましたから、現時点においては、私と経済企画庁長官の考え方には食い違いはありません。
  126. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま、通産大臣からお答えしたとおり、通産大臣との間に違いというほどのことはございません。ただニュアンスの相違、私のほうは、どちらかと申しますと、マクロの経済指標であります。通産大臣は、やはり企業そのものの現実の需給ギャップ、そういうものからお考えになる、これはもう当然の立場でございますので、いま通産大臣からお答えしたとおり、違いというようなものではございません。
  127. 羽生三七

    羽生三七君 政治問題では統一見解というものがありますが、この種の問題で、無理やり数字を合わせる必要はないんじゃないでしょうか。私はやはりある程度の違いがこれはあるものと思います。私は、通産省の見通しのほうが当たるんじゃないかという、そういう感じがいたします。  そこで、この政府見通しのとおりの、四十七年度ですね、七・二%の成長を実現できる確信があるのかどうか。景気回復は確実で、四十七年度の補正予算で再びてこ入れする必要というものは絶無かどうか、自信があるかどうか。これは景気の問題をあまり的確なことを言うのは、もちろんなかなか困難なことでありますけれども、しかし、これは非常に現在の局面で、私がこれから質問する上でも、また日本の経済全体についても重要なことであると思いますので、お伺いしたい。
  128. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) まず、昭和四十六年度、もう過ぎたことですが、経済成長率は私どもは四・三%、実質で。という見通しをしておりました。最近一月から三月のいろいろな経済指標、出荷、生産あるいは卸売り物価の趨勢を見ますと、どうもこの点では四・三%を上回って四・六ぐらいにいくと、これはいずれ数字が出ることですが、大体そのような見通しを固めております。しかしながら、四十七年度に入りますと、やはり輸出の鈍化もございますし、また民間設備投資意欲も一向上がってこないというようなことも考えまして、ただそれに、それをカバーする官公需、財政政策の効果がずっと出てまいります。そういう面からとらえてみますと、私どもは、昭和四十七年度の上半期は、依然として後退局面が続くと、あるいは景気が回復過程に入っても、これは底固めというような表現が当たるような、底入れではなしに、底固めというような状況が続くだろうと思います。しかしながら、昭和四十七年度の下半期に入りますと、相当これが加速の過程に入りまして、通じて昭和四十七年度の経済成長率、実質で見通しのとおり七・二%、これは私ども達成は決して過大ではない、こう考えております。
  129. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣、絶対補正は必要ないと確信されますか。
  130. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年、予算編成のときには、大体十二月のときの経済見通しをもとにして予算の編成がされておりましたが、あのときの政府の予想よりは、経済の底固めができているような気がいたしますので、私は先月ごろまでは七・二%というのは容易なことではないと、よほど努力しても、これは無理だというような気持ちを持っておりましたが、最近になりまして、いろいろな一連の経済指標が明るくなってきましたので、この分なら今度の大型予算が現実に動き出す、そして効果を出してくるなら、あるいはそのくらいの成長率を達成できるのではないかと、最近はそういう気がいたします。
  131. 羽生三七

    羽生三七君 さきの補正予算、今度の四十七年度の本予算、こういうものを通じて景気が回復してきた場合に、それは持続性があるかどうかということですね。それは引き続いて成長を維持する、そういう意味の持続性を持っているかどうか。その景気回復の主要な柱は一体何なのか。もしその要因に持続性がなければ、また明年も大型予算を組まなければならぬことになると思いますが、そうしなければ景気維持ができないということになるかもしれない。だから、いま底固めで、これから景気は上昇期に向かうというのでしょう、後半から。それは持続性を持っておると確信をお持ちになれるのかどうか、これをひとつお聞かせ願いたい。——大蔵大臣がいいんじゃないですか。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、昨年来の予算措置、金融措置によって、不況がかりに回復するということになりますと、これは従来の設備投資型の経済回復ということではないということになろうと思います。国民福祉の向上という方向への一つの切りかえ予算は、これは昔と違ってすぐに生産力の増加というものをもたらしませんので、したがって、大きい経済成長率——もとの輸出中心、民間設備投資中心の成長政策時代の成長率は達成できないとしましても、福祉予算というものを中心にしてできた一定の成長率というものは、私は、案外、率は少なくても、むしろ経済としてはかたくなっているものだというふうに思いますので、これはある程度持続性を期待してもいいんじゃないかという気がいたしております。
  133. 羽生三七

    羽生三七君 その場合、公共投資はもちろん必要でありますが、その内容を吟味することもまた私は必要ではないかと思うのです。これはまあ一つの提案みたいなものですが、今日の場合、老朽の校舎や保健所や病院などの徹底的改築をやられてはどうか。これは改築ですから、土地取得のための費用は要りません。だから、事業分量は非常に多くなるわけですね。しかも、これは今日の国民の要望にもこたえることができるし、さらに景気に対しても速効性があると思う。そういうことをおやりになったらどうかと思う。何か、文部省に聞くと、学童の給食の食器を新しくするだけでも一千億くらいの需要が出るそうですね。ですから、これはちょっとこまかい話になりますけれども、つまり、そういう発想がないと、ただ公共事業というのが従来だけの観念にとらわれておると、これは土地取得のために事業分量でいえばまことに少ないものになるし、多額の経費を要する。しかも、景気の速効性はない。だから、それを、私は従来の公共投資も否定はいたしませんが、いま私が申し上げたようなことについても十分配慮があってしかるべきではないかと思う。これは文部大臣も関係があることだから、ひとつ聞かしてください。
  134. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) たいへん御理解のあるおことばでございまして、ありがとうございます。実は、私のほうには八百八十万平方メートルにのぼる危険校舎を持っております。建築初年度を一万点といたしまして、毎年減耗率を百五十点ずつ減してまいりまして、四千五百点に達したときに、初めて危険校舎、老朽校舎ということになるわけであります。ところが、戦後の建築物の中には、素材そのものが非常に悪くて、老朽校舎じゃなくて、若朽校舎もたくさんあるわけであります。私は、先生のおっしゃるように、波及効果の一番高いのはこれらの学校の建築に思い切って金をかけることじゃないだろうかと考えておるわけでありまして、御趣意を感謝申し上げます。
  135. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣、金を出しますか。
  136. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お説のとおりだと思います。ことし相当やっているはずでございますが、数字がもしございましたら、数字で説明いたしますが、ことしはその費用を相当強化しております。
  137. 羽生三七

    羽生三七君 こまかいことの説明はよろしゅうございます。また分科会等でお聞きすることにいたします。  年金のスライド制はどうでありますか、これはお考えになりませんか。この前、福田さんの大蔵大臣時代に、物価上昇を前提とする羽生さんの質問は敗北主義だと言われたことがあるが、あなたは大蔵大臣から外務大臣になったけれども、依然として物価上昇は続いているが、年金のスライド制はお考えになりませんか。
  138. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 御承知のように、年金の機械的なスライド制ということになりますと、技術的になかなかむずかしい点がございます。したがって、機械的にスライド制にいく前にまず、物価、人件費、生活水準の向上と、それを見合って年金を大幅に上げていく必要があると、かように考えているわけでございまして、来年度もその方針で年金の大きな改革をやりたいと、かように考えております。
  139. 羽生三七

    羽生三七君 新経済社会発展計画の改定といいますか、とにかく新しい経済計画の作業が現在進行しておると思います。その骨子は、先ほど来私が述べてきたような形での福祉政策、そういうものになるのかどうなのか、その骨格というものをぜひこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  140. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いまお述べになりましたとおり、今回の新経済社会発展計画の大きな柱といたしましては、当然、内外の均衡を達成するための、内にありましては国民福祉の向上、外にありましては国際収支の均衡、国際協調の増進と申しますか、そういうものを柱にしております。
  141. 羽生三七

    羽生三七君 この前の四十六年度補正予算の際に、私がこの席で質問をしたことの中に、もしいままでの高度成長を福祉型予算にした場合にはどの程度の成長率になるかという、これは計算のしかたはむずかしいが、試算をしてくれてはどうかという注文を出しましたが、先般、経済企画庁としてではないが、どこか中の一部局でこれについて作業したように聞いておりますが、そういうものはできておりますか。
  142. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 一部の新聞に出ましたのは、全くこれは作業中の試算でございまして、経済企画庁としての結果ではございませんが、ただ、当然考えられますのは、そういう社会資本、特に生活関連社会資本の充実、あるいは社会保障における振替所得の増大、そういうことを柱にする経済運用をやります上においては、かつてのような急激な経済成長率というものは望み得べくもない。当然、これは、結果でございますが、結果として減速するであろう。それが、一体、八%になるべきか、八・五%になるべきか、そういう具体的な数字については、これから作業で固めていくと、こういう過程でございます。
  143. 羽生三七

    羽生三七君 その場合、新聞報道によれば、三つの型が出ておりました。そこで、そのこまかい——こまかいといいますか、最終的な作業というものは容易なことではないでしょうが、大体の予想として、今後しばらくの間の日本経済の成長率は、実質ほぼどの程度と想定し、また、どの程度が望ましいとお考えになるか、そういうことについては何かお考えがありますか。
  144. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 私は、経済成長率等を初めから何%なら望ましいか望ましくないかということを設定するのはあるいは順序が逆ではないかと思います。当然やるべき経済政策の運営をやって、しかる後にどういうような経済成長率が出るか、むしろそういう結果として見るべきではないかと、こう思います。しかしながら、そういうような経済政策をやる上において、いまの日本の経済が置かれた現状におきまして、どういう結果が出るかということ、これはある程度推測しなければならぬ。その際に私ども考えておりますのは、まず、かつてのような一〇%あるいは一二%というような実質経済成長率はもう望み得べくもないし、また、そういうことではいま申し上げた二本の柱が達成できないというようなことにもなります。したがって、これは望ましい望ましくないでなしに、結果としていま推測できるのはおよそ八%から九%ぐらいではないかと、これはもう単なる推測でございます。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、現在、わが国の輸出の水準は非常に高くて、円切り上げ後も輸出は対前年同月比で二〇%前後伸びております。このままの趨勢が続くかどうかは別として、現在はそういうところです。他方、輸入は停滞していることは、これは言うまでもありません。この輸出入ともたぶん当分はこうした形が続くのではないかと思います。そうだとすると、政府の四十七年度経済見通しで、通関ベースで対前年度比、輸出が八・六%の増で、輸入は一五%の増となっておりますが、この見通しは完全に狂うと思われるが、どうでありますか。これでいきますと、輸出の伸びを半分以下に落として、輸入の伸びを五倍近く伸ばさなければ、政府見通しのようにならぬことになりますが、どうでありますか、この点は。
  146. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは、まあ、見通しというよりも、今度はその程度に日本の経済を持っていこうという一つの意欲的な数字でございます。いまの数字をそのまま引き伸ばしていったならば日米交渉が再開になるわけでありますし、日本の貿易収支につきましては、もういろんなところから注目をされておるわけでございます。前年度は約八十億ドルの貿易収支の黒字であります。これが、今度は、通貨調整のだんだん影響が出ますし、日本の経済も七・二%平均に持っていくというのであります。いま四・七%ぐらいに試算されておるわけでございますから、五%と見ても、後半一〇%近くならなければ七・五%程度の成長はできないわけであります。ですから、そのように景気を押し上げていくということでありますので、輸入はふえ、輸出は減るんだと、こういうことでないと、これはもう国際的にも相当非難を受ける、まあいろいろな要求が出てくるということでありますし、望ましい姿ではないということで、人為的に輸出をうんと押えて輸入をふやすというわけにはまいりません。これは、私は、おおむね輸出・輸入のバランスは最終的には年間通ずればそうなると思います。それは、ただ、輸出はなかなか落ちませんが、輸入をふやすことはできる。これは、いま現地で滞積をしておってトラブルを起こしておるような鉱石を引き取ったり、それから十五日しかない石油を六十日に備蓄をすればどうなるかというような問題をいましさいな検討を続けておりますので、そういう意味で、輸入は人為的に伸ばすことができる、こういう考えでありますので、まあ、明らかにされておる数字そのものではないにしても、貿易収支のバランスは、示したような状態にせしめたい一つの願望でもありますし、政策目標でもあります。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 いまの趨勢でいくと、いわゆる外貨二百億ドル台を突破するのはもう必至だと思いますが、どうですか。二百億ドル台というものは、日本の外貨、日本の円問題と関連して、危機ラインと思われますが、どうですか。  時間がないので続けてやりますが、それから円再切り上げというような問題が起こった場合に、具体的にどう対処するのか。  それからもう一つは、円再切り上げを防止するために、当面の政策もさることながら、さきにも触れましたように、日本経済のパターンそのものを変えるような軌道修正がぜひ必要ではないか。そういう場合に、好ましき——そうしなければ、私は幾らでも外貨が蓄積していくと思います、このままでいけば。その場合に、昔は、よく、適正外貨量ということがよく言われましたね。だから、いま、政府は、適正外貨はどの程度が必要とお考えになるのか、いまでもそういうものがあるのか、こんな時代にはそんな適正外貨なんという考え方はないのか、あるとすればそれはどの程度のものか、ひとつお聞かせ——これは大蔵大臣ですかどちらですか、お聞かせいただきたい。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に適正外貨がどれくらいかという基準というものはございませんが、ただ、御承知のように、いま外貨が非常に蓄積しておりますので、そのうちで、まあいま百十億ドルぐらいがまだ流動性を維持した準備資産として運用しておりますので、そう多く持つ必要はないと思いますので、六十億ドルぐらいは流動性を確保するということにして、そのほか六十億——百十億ドルの約半分、それから今後これにふえる外貨というようなものは、もう流動性ということを考えないで、別の活用方法を考えようという方針で、いまいろんなことを考えており、すでに実施しておりますが、最終的にはやはり法令の改正ということによって最もよく活用される場面もあると考えますので、いまはそういう点の検討にまで入って、通産当局といま勉強しているところでございますが、大体そのくらい、六十億ドルぐらいを確保しておいて、あとは活用するというような、それくらいのめどの方針をいま立てておるところでございます。
  149. 羽生三七

    羽生三七君 いまの二百億ドルを突破して再切り上げが起こるような心配はないか、確信があるかということは……。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、もう、外貨が蓄積するということは、それだけ対外不均衡ということでございますので、これを直すことをするよりほかございません。そのためには、もう内需を大きくするということでございますので、これは、いまの大型予算、これが早く動くことによってある程度私どもの所期の目的は達せられると思いますので、そういうことによって内需を刺激し輸出圧力を減らして輸入をふやすということによって外貨が異常に蓄積するという事態を避けるということ、それから為替管理そのほかの考慮によって短資が流入してくることを防ぐというような、一連の外貨がそうやたらに蓄積しない方法をとると同時に、蓄積した外貨の活用によってまた輸入が増進され、対外不均衡が直るような措置がこれによって講じられればいいと、二つに分けて、蓄積を事前に防ぐということと蓄積されたものの活用という二つに分けた外貨政策をやっていきたいと考えております。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 つまり、要するに、外貨がたまってから外貨減らしを考えるという、そうでなしに、外貨そのものがこんなめちゃくちゃな蓄積をしないような、たまることをチェックするようなオーソドックスな政策が必要だということ、それを考えていただかぬと、これはもう際限のない矛盾に逢着をいたします。  そこで、そういう場合に、いわゆるスミソニアン体制、これに満足されておるわけですか。このような情勢に即してアメリカはきびしい黒字国に対するいろんな要求を突きつけるようでありますが、日本としては将来どのような国際通貨体制が望ましいと考えるのか、そういう問題について何らかお考えがあったら、ひとつこの機会にお示しをいただきたいと思います。
  152. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通貨調整のあとでOECDの第三部会の会合というようなものが持たれたり、また、この六月には、十カ国蔵相会議の代理会議も開かれて、一番最初の代理会議としてその後の問題の情勢報告が行なわれるというようなことが言われておりますが、いままで各国の会合で見られた空気によりますというと、どこの国でもこの通貨調整の効果が一年や二年の間にすぐに国際収支にあらわれるということはない。これは相当ゆっくり出てくるものでありますから、短期的な現象でこれを不安視したりなんかする必要はない。で、日本はまだ依然としてこの黒字傾向は続くであろう。米国も、経済は上向きになったとは言いながら、米国の国際収支は依然としてまだ赤字基調が続くだろうというようなことは各国もこれを認めておって、それによって円の切り上げとかなんとかということを迫ってくるというような空気というものは、いまのところはございません。先般パリの新聞にいろいろこの間の会議のときの空気が出たそうですが、これは向こうからの連絡によりまして事実はそういうことではなかったということでございますので、この問題について円の切り上げを迫られるというようなことはないし、迫られてもこれが簡単にできる仕事ではございませんので、その点のいたずらな心配をする必要はないと思いますが、しかし、問題は、この前の会議でも言われておりますとおり、これから国際会議で論議しようとする問題が、安定的な為替相場を守り、通貨交換を確保するための適切な手段、そのための各国の責任の分担と、それから金、ドル、SDRの役割り、国際流動性の適正量と為替変動幅拡大の再検討と、それから為替相場の弾力性、短期資本移動の対策、これだけをひとつ今後各国これを課題として相談しようと、こういうことになっております。したがって、この相談をこれから国際的にしなければなりませんが、その場合に一番先に問題になるのは、どういう場でこの相談をするかということで、この土俵がいまきまっておりません。これをきめることが一番先だと思いますが、その場合、私どもは、従来の国だけできめるのではなくて、開発途上国の国も加わってもらって、これは将来の国際通貨の問題でございますので、やはりもっと拡大された場できめられることは日本としても賛成でございますし、その方向で努力したいと思います。  それからそこで出る議題はいま言ったような問題でございますから、各国ともこれはきわめて利害関係が多くて、そう簡単に結論の出る問題ではないと思います。特に最近いろんなところで報道されるところによりますと、米国は米国の赤字が、なくなるような仕組み、そういうメカニズムを国際通貨制度の上で何か保障するようなことを考えたいというようなことを考えているという情報がいろいろございますが、これはまだどこの国へも提案されたことではございませんし、それはなかなかむずかしい問題で、そうなりますというと、国際通貨の運用の責任が一にかかって黒字国の責任になるというようなことでございますので、これはそう簡単にいく問題ではございません。したがって、わが国としましては、いままで一国の通貨に非常に負担をかけ過ぎておったことから国際通貨不安が起こった過去のことから見まして、今度は、そういう過去の欠陥を是正しようとしますなら、どうしても、ドルと金とSDRのこれから果たすべき役割りというようなものについてしっかりした考えをわが国も研究して一つ考えを持って、こういう会議に積極的に臨んでいって、将来の国際通貨の安定のために各国が共同で支持できる一つの通貨制度を確立するということに骨を折らなければならぬ立場にわが国も立たせられておると思うのございますが、問題がたくさんからまっておりますので、これからの通貨問題を中心にした国際会議はなかなかたいへんで、そう簡単に通貨制度がうまく各国によってきまっていくというふうには私はいまのところ考えておりません。一つ一つ解決していくよりほかには方法がないのじゃないかというふうに考えております。
  153. 羽生三七

    羽生三七君 私は、問題は、むしろ、これは日本の財政のことですが、四十七年度以降に問題があると思うのですね。たとえば、経済成長率を、先ほどお話のあったように、実質八・五%ないし九%、名目で一三・五%程度と見て、一般会計予算の伸び率を四十一年——四十六年の五年間の平均一七・一%と考えて、租税負担率の自然増を五年間で一%程度ふえると見て、公債発行必要額は、これで計算すると、五十二年度で五兆八千億ないし五兆九千億、それから四十七年度から五十二年度までの発行額の累積は二十一兆九千億という計算になります。これは単純にこういう計算が出てきます。とにかく私はむしろこれから非常にむずかしい情勢になると思いますが、今後の日本財政のあり方、税の自然増収が必ずしも望ましくない、経費はふえる、公債だけに依存するのか、どういうことが今後の日本財政に形が考えられるのか、この機会にお示しをいただきたいと思います。
  154. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国民福祉の向上という方向をとります以上は、今後財政の果たす役割りというものが非常に重くなっていくということは必至でございますし、その場合に、これを公債政策の活用によって対処するかと申しますと、そうは簡単にこれはいかないことでございますので、私は、やはり、よくいわれておる高福祉高負担の原則で、何らか国民の所得水準の向上に従って負担の若干の増加、これはすでにこの前の経済社会発展計画でも二%前後の負担増加ということをいっておりますが、税制調査会においてもそういうことがいわれておりますし、やはり所得水準の低いときは負担増ということは負担減が強過ぎることでできませんが、ようやく日本経済の成長力から見て国民の生活水準がここまできた。このことは福祉政策への転換の条件ができたということもまた一面言えるでしょうし、条件ができたということは、ある程度そのための若干の負担増ができるときということにもなろうと思いますので、そういたしますというと、そういう財政計画のうちで負担増というものも考えた総合計画をこれから立てなければ、福祉政策への転換というのは、口では言うべくして、実際はやれないで行き詰まってしまうということを私は考えますので、これは公債政策だけにたよるというようなことはこれから考えないので、別個なそういう問題の角度の考慮も入れなければならないだろうというふうに考えております。
  155. 羽生三七

    羽生三七君 高負担では困るのですよ。それは財源は他に適当な方法があると思いますね。防衛費の削減も一つだし、あるいは交際費課税、租税特別措置法の改廃、その他たくさんあります。ギャンブル税もその一つでしょう。そういうことをやることを私は要求しておるので、高負担を言っているわけではない。  しかし、時間がないので、これで終わりますが、私は、七〇年代の日本の経済のあり方を考えた場合に、ローマ・クラブが言っておるように、無限の成長は不可能だという、人類はやがて重大な危機に遭遇するであろうという、この提言をわれわれは真剣に考慮すべきではないかと思います。そういう意味で、ほんとうの意味の人間尊重のそういう経済の仕組みが実現されることを私は心から期待しておりますが、きょう私の経済の問題全体を総覧されて総理はどういうふうにお考えになるか、最後に総理の所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も終始おとなしく伺っておりましたが、私自身でなかなか理解のできかねる点もございました。しかし、終始真剣に、また、わが国のあり方等についてのたいへん示唆に富んだお尋ねであった、また、御高見の開陳だったと、かように私は判断いたします。
  157. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。  せっかくいま羽生委員が軌道の修正が必要だということや具体的にいろいろ質疑をされて、これからおそらく本予算委員会で各委員からこの問題の詰めたいろいろ議論がなされると思うのであります。したがって、それに関連して、冒頭、ここのことだけをお聞きをしておきたいと思うのであります。  これは新聞にもちょっと出ておりましたけれども、あなたが一番初め総理になられて国会に立たれて言われたことばがあるのです。この中で、内政について、「私は、人間尊重の政治を実現するため、社会開発を推し進めることを政策の基調といたします。」というようなことを述べされた。それだけじゃなくて、次の国会では、「経済社会の安定した繁栄のもとに、国民ひとしく豊かな生活を享受する高度の文明社会の建設こそ、政治の理想であり、われわれに与えられた歴史的課題であります。」というようなことを言われたわけです。それからたって七年、いまここに、また、社会福祉、社会資本の投資に軌道の修正をしなければならないということが強調され、そういう中で予算案が重点的に組まれているというようなことに対して、総理は、こういう最初の総理に就任をされて社会開発、人間尊重、豊かな社会の国民の生活を約束をして、これがここに至ってなお軌道の修正が必要だということについて、みずから省みて、どういうところに一体あなた自身は欠陥があったと考えておられるのか、どういう反省をここにいまあらためて持っておられるのか、このことを私はお聞きをして、今後また審議の際にこれに関連をしてわれわれの考え方を述べたいと思うのでありますが、この点については所信の表明の中にも述べられてはおらないわけであります。したがって、ここでそういう問題についての関連したことについてのいわゆる反省というものをどうお持ちになっているのか、これを最後に私も関連してお聞きをしておきたいと思うのであります。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘になりますように、私は総理になってからちょうど八年目、また八回目の予算編成でございます。その間においてずいぶん日本の経済も変わってくるし、また、お互いの生活状態もそれぞれ変わってまいったと思っております。私は、それなりにその間の変化は評価してしかるべきではないかと思っております。しかし、私は特に重点を置いた人間尊重、こういうものが、なかなかそう、口の先では人間尊重と申しますけれども、それが具体的にわれわれの希望するような状況にはなかなかいっておらない、このことを認めざるを得ないのであります。いま羽生君から先ほど来いろいろ御議論のありました軌道修正を必要とするのではないかと、こう言われたこの状態は、私の抽象的な人間尊重の予算、人間尊重の政治と、こう言ったときと、現状においては中身はずいぶん変わっておると思います。これはおそらく松永君も同様の御意見ではないだろうかと思います。私どもは、そういうような観点で、現状の実際の実情をも把握して、そうして前進すべきではないかと、かように思っておる次第でございます。
  159. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わります。
  160. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で羽生君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  161. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、玉置和郎君の質疑を行ないます。玉置和郎君。
  162. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 この際、所見を述べる機会を与えられましたことを、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。  総理は、戦後の重要課題でありましたILO、日韓条約、建国記念日、また沖繩の返還、こういった大きな問題を次々解決されたのであります。私は、古来わが国の宰相の中で最もすばらしい実績をあげられたと常々高く評価しておるものであります。ところが、最近に至りまして、国民が政治を退屈なものとして考えるようになってきております。また、政治を客体としてながめるような状態も出てきております。これはわが国の将来に対して憂うべき現象であると思います。ことに、今次の衆議院予算委におきます一連のもたつき、これなんかは景気浮揚を期待しておりました多くの国民に対していら立ちを与えました。さらに、福祉社会の充実をこれまた期待をしておりました国民に対しても、これはたいへんないら立ちを与えたのであります。また、最後のほうで、外交機密に関する問題、これが暴露されました。そうして、きょうの正午のニュースでありまするが、NHKのほうで一この外交機密を漏らしたのは、実は、さっきも外務大臣からもお話がありましたが、外務省国家公務員である。その中にまた新聞記者の方が介在をしておるということ、こういうことを実際に知りましたときに国民は、一体何をやっておるのか、おそらくあ然としておるのであります。こういう状態につきまして、総理はどのようにとらえられておりますのか、お伺いをいたしたいと思います。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしい質問でございます。私は、いままでも、国民とともに民主政治、これを遂行してきている、かように考えております。どうも、基本的に、わが国の場合においては、まだ民主政治が十分成熟したと言えない面があるのではないか。ただいま国民が退屈さを覚えておる、こういう言われ方をされると、いかにも政治が国民の生活と遊離しておるかのようでございます。また、われわれがこの国会を通じていろいろ審議をし、論戦をかわし、そうして時に政府を鞭撻し、叱咤し、また、政府みずからも皆さん方の御意見を聞きながら、やはり国民生活の向上をはかっていこうという前進をつとめておる。しかし、そういうことについての理解が十分ないとしたら、これこそ私はまことに残念なことだと思います。私は、戦後の状態といたしまして、各党ともそれぞれが新しい憲法のもとにおける民主政治の主体、その自体、それを十分把握しながらただいま前進をしておる最中ではないかと思っております。そういう点において、これはやはりそれぞれがイデオロギー的なものはあるにいたしましても、それなりに国民大衆はこれを理解し、批判し、判断をする。これはやはり国民のための政治、国民とともに政治をすると、こういう態度が望ましいのではないかと思っております。私は、そういう意味から、一部国民が退屈を感じておると、こういう言われ方は、玉置君の平素の主張から見ましてもやや私もあまり理解いたしかねます。この点はやはりそういうことがあってはならないのです。お互いがやっぱり反省して、国民に退屈感を与えない、国民そのものの政治だと、こういうような理解をやはり国民に持っていただくということが望ましいのではないかと、かように思っております。  また、一部の外交機密が漏れたと、こういう問題について、これに関係するものがいろいろあるというような御批判でございます。これはまあ御批判は御批判として、私どももそのまま受け取らなきゃならないと思いますが、もともと外交についてはやはり機密があるという、これはやはり国際信義を維持する上からどうしても守らなきゃならないものがあるだろうと思います。しかし、そのために最も批判を受けやすいのは、われわれが秘密外交をやっている、こういうようなことと、外交にある機密そのものは守るということ、これを一緒にしてそうして批判すると、とんでもない間違いが起こるんじゃないだろうかと、かように私は思います。そういう意味から、ただいま、秘密外交、これは今日の事態において政府ももちろん考えておりませんし、また、国民もそういうことは許さないと私は確信をしておりますから、そういうことがあってはならない。もしも、そういう点があれば、政府みずから深く反省し、そうして国民の協力を得る、こういうことでありたいと、かように思います。
  164. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理のいまのお話を聞いておりまして、私は、自身、自民党本部のほうにつとめておりましたので、その当時のことをいま思い浮かべておったのであります。初代の鳩山さん、二代目の石橋さん、三代目の岸先生、そうして四代目の池田総裁、こうした方々に直接本部員として仕えてきたものであります。それだけに、私は、このいまの総理を含めて、五代の総裁になるわけでありますが、一番印象深いのは、政治の頂点に立たれる方が、国民の共感を呼ぶという、こうした問題に取り組まれたときの感動でございます。  鳩山総理が、自民党の総裁として、日比谷の公会堂で第一声をあげられました。そのときには、確かに友愛の哲学を説かれたはずでございます。四海みなはらからなんだ。あの、片足がびっこで、そうして歩行にも困難を感ずるような鳩山総裁が、四海はらからという友愛の哲学を説かれたときに、満堂を埋め尽くしておった人々はたいへんな拍手をしたものであります。  また、次に、石橋総裁のことでありまするが、短期間でございました。しかし、私は、石橋さんが最初の一声をあげるときにお供したものであります。そのとき、石橋さんは、やじもずいぶん飛んでおりましたが、そのやじを飛ばす赤旗を持った人たちを前にして、そうして、今日は内閣総理大臣石橋としてではなく、また、自由民主党総裁石橋としてではなく、一個の日本人石橋として、湛山和尚、いわゆる宗教実践家として、親愛なる日本人、いわゆる皆さん方に訴えたいという話をしたことがあります。そうして顔面を紅潮さして、首筋から耳の裏までまっかになって、真剣に話しかけられました。総理がちょうど沖繩問題で一心不乱になられた真剣そのものの姿とあのときは同じだったと思います。そうしたときに、やじっておった人たちも、いつの間にかまた赤旗も捨てられて、割れるような拍手だったんです。  私は、国民の共感を呼ぶ、いわゆるブームというもの——総理は、いまさっきお話をなさいまして、玉置君に何だったか言われましたが、総理は確かにその立場でいままでにない実績をあげられた。いかに野党の方が抗弁しようが、これは事実であります。しかし、ただ一つ残念なことは、私は自民党の党員として、このブームというものがどうも出なかったという点、これはあとに外務大臣も通産大臣もおられますので、後学のためにひとつこの際に総理見解をはっきり示していただきたい、こう思うのであります。   〔委員長退席、理事西田信一君着席〕
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まさしく、ただいまのように、国民の共感を得るというそれは、確かに御指摘になりますように、国民の中に飛び込まないと、そうして国民とともに解け合う、そこに初めて共感を呼ぶものがあるだろう、かように私は思います。そういうことがないというその御批判は当たっておるだろうと思います。
  166. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いや、総理は非常に謙虚でありますので、全く私ごとき者の話にそういう立場で答えられましたこと、これは私たち政治をやる者にとってこれからたいへんな手本になると、こういうふうに受け取らしていただきます。  さて、国民のための政治姿勢に言及するときに、もう一つ大きな問題は、福祉国家建設論でありますが、ここに一つの例を示したいと思います。  それは、一九五四年に米国のサンフランシスコの近くでカルホンという博士がネズミの実験をやっておるんです。十メートル四方の箱の中に雄二十匹、雌二十匹のネズミを入れて、そうして、えさも水も巣をつくる材料も十二分に与えております。そうして、犬やネコが外から入ってこないように完全防衛です。また、獣医師を一人つけまして病気に対する予防措置も行なっております。言うならば、食も住も保健も防衛も完備したいわゆるネズミの福祉社会であります。さて、この中で二十匹対二十匹のこのネズミがどういうことになったかといいますと、二十七カ月でネズミ算でいきますとちょうど五千匹になるんだそうであります。ところが、二十七カ月たってその中をしさいに見ましたら、おとなのネズミがわずか百五十匹しかおらなかったというのであります。これにはびっくりした。そこで、もう一回実験をやり直してみた。そうすると、ネズミというものがネズミの本性を失っておる、そうするとこういう状態が出てくるということがわかったのであります。  ことに、その中で、特に著しい特徴が二つ出てきております。これは最近のヒッピーだとか赤軍派にも通ずるので私は特にこれを取り上げた。一つのグループは病的なグループでありまして、仲間から遠ざかって、そうして、すみのほうで数匹かたまって、昼間、仲間のネズミが走り回っておるときでも、ごろごろ寝ておるんだそうであります。仲間のネズミがえさ箱にたかりまして、そのえさが飛んできたら、薄目をあけて近くに飛んできたえさだけぱくぱくっと食っておるというんです。これはヒッピーですよ。もう一つのネズミは、興奮をしまして一日中せかせかせかせかと走り回っておるんです。いわゆるヒステリーです。これは仲間が確認をした階級順位というのを全く無視してかかっております。そうして、集団を組んで仲間が確認したいわゆるボスに対して命がけでかかっていっておる反体制派であります。そうして、それだけじゃないんです。この辺から赤軍派に似てくるのでありますが、単にボスにかかっていくだけでなしに、自分たち仲間同士で死闘を繰り返すんです。そうして、勝った者は負けたネズミを完全に食べ尽くしてしまうんです。これがいわゆる赤軍派です。  私は、何もネズミと人間の生活を一緒にするわけではありません。しかし、経済的福祉国家建設がすべてのように語られる昨今の風潮を見るにつけて、人間の本性というものを失わしめては真の福祉はあり得ないと考えるからであります。人は確かにパンのみにて生きるにあらずでありまして、人間としての真の幸福はみずからの生涯をかけて精一ぱいに生きることであると思います。したがって、いままでたびたび論議されてまいりました福祉国家論も、ただ単に経済的福祉の増大だけではなく、さらに高い次元に立って国民すべてが生きがいを感じ得るような目標を政治の上で善し示す必要があるのではないでしょうか。プラトンやヘーゲルのことばにありますように、政治、国家そのものの中に、純粋で高度の倫理性を持つことが、より大切なことではないでしょうか。この点に関して総理の御所信をお示し願いたいと思います。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんまじめなお尋ねでございますし、これはもう高度の倫理性、その結論には私は問題はございません。ただ、ただいま人間とネズミを例におあげになりましたけれども、これは動物の場合と人間の場合は違う。その違いを、ただいまの一つの理想を持てとか、高度の倫理性を持てとか、生活の一つの生きがい身感じろとか、こういう表現で、人間の場合には示すことができる。しかし、動物にはそういうことがないという、そこらに、一緒に自然のままの姿だとは申しましても、人間の場合はそういうことではいけないんだというわけでございます。だから、私、いま玉置君のお話を聞きながら、えらい実験の話を知っておられる。その実験は確かにわれわれが参考にすべきものだと、かように思います。しかし、これは動物の世界である。また、これは人間じゃないんだ。そこらに本質的に相違がありますから、同じ生き物ではあるけれど、それを例にとって云々するわけにはいかないだろうと、かように私は思います。とにかく、いままで、私どもは、万物の霊長、こういう言い方をされてきた。高度の倫理性ということを言われてきている。ここらにまた、お互いが、生きがい、あるいはしあわせを求めると、こういう場合も、単なる動物の場合とはよほど違うのじゃないかと、かように考えますので、形の上ではいわゆる何もかも恵まれて福祉国家だと、かように言われるけれど、彼らにとってはそれは福祉国家ではない、彼らはおそらくもっと自由にさしてくれるそのことが彼らの福祉国家であるかもわかりません。いま言われるような過保護の状態のもとにおいて彼らの福祉国家はできておらない。人間の場合はまた違うんです。そこらは誤解はないだろうと思いますが、そういうふうに私は考えます。
  168. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ネズミと人間は違うということは私も申し上げたはずでありまして、これは当然のことであります。そこで、人間である、これはもちろん日本人の問題でありますが、これはやはり何としたって精神的なもの、いわゆる理念的なもの、これをやはりこの際に重視をしてほしい。そのためのまくらとしてネズミを例に引いたのでありまして、誤解のないようにしていただきたいと思います。  さて、昨年でございますが、両陛下がヨーロッパに訪問をされました。外国の新聞、雑誌が筆をそろえてその誠実なお人柄と高潔な品位に言及をされまして、まことにすばらしい評判であったことを思い出します。わが国の長い歴史と伝統の中心になってきた精神的原型は、決して軍国主義や帝国主義、いわゆる覇道ではございません。天皇みずから春の野に出て若葉をつむという万葉集の歌にもありますように、国民とともに生き、ともに憂い、人間的魅力をもって人々の心のささえとなる王道の精神であります。  私は、終戦から二十七をけみした今日、わが民族の精神的原型という問題について、政治家も国民も虚心になって考えてみるべき時期にいまきているんじゃないか。それは、わが国民が飢餓と貧困に支配されて苦しめられているときには、何よりも経済的な豊かさが第一でありました。その経済的繁栄がこのように達成をされた今日において、精神的な空白にあえぐ人々は、すでに何のための豊かさかという問題すら提起しているのであります。そして、豊かさの次に来るものを提供し得ない政治に対して人々は背を向け、あるいは人人をして一そうむなしさへと追いやっているのが事実でございます。論語にも、衣食足って礼節を知るということばがございます。豊かさの次に来るべきものは礼節であり、モラルであり、道義であると思います。この際、抜本的な構想をもって、道義国家、こういう考え方を政治の上で顕現していくべき時期に私はきていると思う。この前、私は、四十年の選挙のときに、日本は、観光国家となるか。芸者ガールだとか富士山を売りものにするような日本ではだめだ。しかし、次に来るGNPを誇るような日本であってもだめだということを言った。しかし、今日、私が四十年の選挙のときに自身が言ったことがやっぱり当たってきておるというふうに考えますだけに、この問題について総理の確固たる所信をお伺いをしておきたいと思います。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、たいへんいまの時代の方にはわかりにくい、たとえば覇道ではない王道だと、また、高い道義国家を建設するんだと、こういう言われ方をされております。まあ、私どもも、いまの時代にわかりいいことばから言えば、高いモラルを持てと、このことはわかりいいだろうと、かように思います。しかし、いま御指摘になりましたように、王道あるいは道義国家と、こういうような哲学的な思想を含めて、これを国民に呼びかけた場合に、どういうような理解を示すか。私はむつかしいことばこそ使いませんけれど、政治はやはりそういうものではないかと、かように私自身考えております。でありますから、われわれが選ぶ道は、もっとわかりやすい、卑近な国民生活の向上と、こういうことは申しておりますが、また、われわれの安全、これはどこまでも確保しなければならない。そうして平和にいこうと、こういう意味から、必要な自衛力は持ちますと、こういう言い方はしております。しかしながら、それが、覇道、覇権争い、そういうものでない、どこまでもいわゆる昔の人が唱えていた王道、そういう形でわれわれの理想は伸ばされていかなければならないと思います。ただいままた、道義国家と、こういうことばを言われました。いま忘れられている、理解しようともしない、そこらにほんとうのよさがあるのではないかと思います。どうも、私は玉置君がお若いにかかわらず、七十歳である私がわかりいいようなことばを使われたことに、私、たいへん敬意を表するのですが、やはり年にはよらない、やっぱりこれはいいことはいいこと、いつまでも守り育てていきたいものだと、かように私は思います。
  170. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 さて、常々、生命尊重を政治の根本義であるとされます佐藤内閣にありまして、重要な問題の一つであろうと私が思います優生保護の問題であります。  ここ二年前のこの本委員会でも、白井先輩から質問をされましたし、また、同じく先輩の鹿島俊雄議員からも質問されましたが、この優生保護に対しまして、すでにあのときから二年が経過をしておるのであります。そうして、当時、厚生大臣でありました内田先生が、単に厚生省内部の検討にとどめることをしない、必ずこの問題を討議をしていく場を設けたい。いわゆる前向きの答弁をされたのであります。こういった意図がどのように具現化されておるのか、この際に具体的な経過と内容について厚生大臣に伺っておきたいと思います。
  171. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 優生保護法の問題は、玉置委員のおっしゃるのは、おそらく、その中の人工中絶の問題であろうと、かように考えます。二年前に、厚生省が実態調査をやり、その直前に内閣でも世論調査をやっていただきました。その結果を見ますると、達観をいたしますると、いわゆる人工中絶というものに対する考え方は、まあ一般的に言って、人命の尊重、胎児を人工的に中絶することは悪であるという意識が非常に薄いと、国民全体的に薄いという感じでございます。これは、優生保護法の中に、人工中絶の道を認めたわけでありますが、その実際は、範囲を逸脱して行なわれている事実もあるし、そしてさらに一つは、やはり自分たちの生活を豊かにしたい、子供を育てるよりも、精神的あるいは物的な面をあれしたいという、ちょうど日本の経済成長が始まったころからの一般の風潮がしからしめたという点もあるであろうと思いますが、いずれにいたしましても、この人命尊重という面を、これをもっと徹底させなければならないと。ことに優生保護法の中で、経済的な理由で母体の健康が維持できたいときには中絶してもよろしいという規定がございますが、今日社会福祉が叫ばれ、そして児童福祉、その他も、まああるいは生活の保護の面も相当整ってまいりました。これで完全とは言えませんけれども、しかし経済的理由で人工中絶してもよろしいという、そういう考え方自身は、やはり生命尊重に反する考え方に通ずるものと、かように考えます。したがいまして、こういう点をぜひ是正しなければならない。  同時に、人工中絶をどうしてもやったほうがいいという面もございます。たとえば、妊娠中にいろいろな医学的な問題から、奇形児が生まれるであろう、重症の心身障害児が生まれるおそれがあるというような場合には、これは、生命の尊重とは言いながら、そういう方々は一生不幸になられるわけでありますから、こういう場合には、新しく人工中絶を認める必要があるのではないか。さらに、優生保護法の中で、家族計画、いわゆる妊娠調節の規定が——規定というか、これをもっと普及をするようにという規定がございます。そういった家族計画を健全にやっていく。ことに、第一子の子供は、これは非常に大事な子供であるというようなことを強調し、妊娠中絶、人工中絶をやらないで、家族計画によって、そして理想的な家庭を持つという方向に進めていくというような方向に、ぜひ改正する必要がある、かように考えまして、ただいま関係方面と折衝中でございます。したがって、この折衝が済みましたら、できればこの国会にぜひ提案をいたしまして、皆さんの御審議の上、ぜひ通過をお願いをしたいと、かように考えて、その調整を急いでいるわけでございます。
  172. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いま厚生大臣から、るるお話がありまして、この妊娠中絶に関する優生保護の一部改正、これが近く政府提案の形で出されるということ、まことにうれしい限りでございます。  そこで、総理にお伺いをいたします。さきのこの委員会で、私もちょうどここで聞いておりましたが、総理は、本問題を単なる人口問題だとか、若年労働者の確保だとかという形でとらえることは、これは間違っておると、何としても政治の根本は、生命の尊重だと、こういう観点からとらえるべきだというお話がありまして、私たち深い感銘を受けたものであります。そうして、言うばっかりでなしに、みずから水子の供養の先頭にお立ちになりまして、秩父の山奥まで、御夫妻そろってお出かけになっておられます真剣な総理の、そうした生命尊重という態度に対して満腔の敬意を払っておりまするが、この問題について再度御見解を承っておきたいと思うのでありますが、よろしくお願い申し上げます。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来の御意見、お尋ねの中にも、これ、やはり関連するのじゃないかと思います。最近の乱れ、セックスの問題、ことに生命尊重、これがどうもそのままことばどおりに守られていない。そういうところにも堕落があり、やはり社会秩序の破壊もあり、いろいろの犯罪にもつながると、こういうように指摘ができるのではないかと思っております。ただ、先ほども厚生大臣が申しましたが、優生保護、まあそういうほうからこの問題に取り組む、そういう方もあります。しかし、私は、ただいま御指摘になりますように、もっと生命の尊厳、それは胎児のうちから、まあ片一方で胎教ということばがあります。胎児の間から教育をする、その感じを持ってその胎児を大事にするところにやはり将来性があるのだと、生まれた子供もしあわせになれるのだと、こういってやはり胎教というものを盛んに唱えておる人もあります。私は、一面で、わが国が堕胎天国だという、そういうたいへん忌まわしい、また耳にする、口にするすらたいへんいやなことばを言われております。これは、先ほど来の優生医学というか、そういう意味からも、乱用されているんじゃないかと、こういうことがあってはならないように思います。私は、子供を労働の観点から、労働充実から、それを大事にしろとか、そういうのではございません。ただいま申し上げますように、社会秩序の乱れ、そこらにやはり関連があるんではないかと、さように考えるがゆえに、やはり胎教ということを大事に考える。まあ、そういうことを考えると、いわゆる家族計画、これなぞはあまり功利的に考えるべきもんじゃないと実は思っております。でありますから、一応理論的には合うようだが、これはもっと、自然の授かりものとして、われわれが大事にしていくと、こういうことが必要ではないだろうかと、かように思っております。  たいへん堕胎あるいは中絶という、まあ、いわゆるそういう不幸な方々を祭りたいという、水子供養をしたいという、そういう奇特な方がありまして、それがただいま御指摘になりましたように、秩父の奥に水子地蔵尊を建立すると、私のところにも相談に見えましたので、私も、生命は大事にすべきだと、また、こういうところに大事にする、しがいのある仕事だと、かように実は思って、わずかながら力をかしておると、こういうことであります。私は、いまの問題も、すべてをそこに結びつけることは、これも行き過ぎでございますけれども、どうも最近の諸悪の根源の一つに、ただいま言われるような点がある。これは何としても悪を除く、こういう意味で取り組むべき筋のものだ、かように私は思っておる次第でございます。
  174. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 午前中お立ちになりました社会党の羽生先生から、だんだんのお話がありましたが、従来の米ソ両勢力の共存体制がくずれまして、国際政治が多極化してきておること、このことは外務大臣も述べられたとおりでありますが、この中ソ封じ込めを目的としました日米安保条約の性格が変化してきておると私自身考えております。その一つは、日米安保条約の効果の一つは、日本の核開発への意欲を食いとめることであると、一月十三日でありましたか、在日米大使館当局者が述べております。こうした説明は、まだこれはさだかでございませんが、私たちの聞くところでは、ニクソン大統領の前に訪中したキッシンジャー補佐官からも、向こうのほうに語られておるというふうなことも私たちは耳にしております。このことは、アメリカとしては、日本に核のかさをさしかけて、その抑止力圏内にとどめておくことが、すなわち日本をして核武装をささない、そういう大きな歯どめになるんだ。また、中国にとりましても、このことは軍事大国を警戒しております以上、たいへん好都合であるというふうな、こういう見方も実はできるのでありまして、それだけに、米国の核のウイングの中におることがわが国の安全であるとされた日米安保体制は、私はまあ極言するようで恐縮ですが、こういう意図が露骨に見えてきておる。そういう段階でも半永久的に続けるのかどうか、この点について外務大臣見解を承りたいと思います。
  175. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 世界各国で、経済大国になったわが日本がどこにいくんだろうと、過去の歴史におきまして経済大国は軍事大国になった、そこで、日本も軍事大国へと向かっていくんじゃないかという見方をする者がおるわけであります。同時に、また、アメリカあたりでは、一部の間に、学者なんかの間に、日本は軍事大国化すべきである、そういうような意見も述べられておると、まあ私もいろんな意見を承知しておるんです。今度の米中会談でそういうような議論にどういう影響があったかと、こう申しますと、これは私の見方でありますが、私の見方では、日米安保条約は、中国側から見ますると、これはかなり批判の対象であったと、こういうふうに思います。つまり、アメリカが中国封じ込め政策をとった、その手先として日米安全保障条約を背景に日本が一役を買ったと、そういう角度からの日米安保条約批判、また、日本に対する批判というものがあったと思います。ところが、その封じ込め政策の御本尊が北京と手を握ったと、そういうことでございまするから、中国のわが国に対する見方、特に安保条約に対する見方というものは、かなり変質しておるのではあるまいか、そういうふうに思います。  まあしかし、それはそれといたしまして、いま世界情勢が動いておる、そういう中において安保体制をどうするんだと、これを訂正するのかというようなお話でありますが、先ほども私は申し述べましたが、わが国は有史以来初めていくさに負けた、もう再びいくさはいたすまいというのが、私は国民的のコンセンサスだと思います。それからまた、特に核につきましては、これはもう世界史上初めて核の洗礼を受けるという、日本はそういう特異な立場に立っておる、核に対するアレルギーというものは、世界一、どこの国よりもわが国において強いわけであります。それから同時に、わが国は憲法第九条というものを持っておる、いやしくも他国を脅威するような軍備は持たないと、こういうことになっておる。ですから、わが国の防衛体制には、おのずから、みずからの努力において限界がある。しかし、わが国はわが国を守らなければならぬというのも、これも、これは民族の責任だと思うのです。その足らざるところをどうやって補うかというと、これは、私は、現実の政治を考えてみる場合に、安保条約以外に求めるものはどこにもない、こういうふうに考えますので、いろいろ世界の情勢は動いておりまするけれども、安保体制は、これは堅持していかなければならぬ、これは私の確信するところでございます。
  176. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 日本がまあ経済成長を非常に早いテンポで続けております。それだけに、最近になりましたら、米国のほうが、日本の経済成長を続けておることに対して、どうも迷惑視しておるんじゃないかと、こういう感じが私はうかがわれます。で、片や北京のほうは、これがまた、軍事大国に移行しておるのではないかと、現在また、そうして軍事大国になっておるということから、たいへんな警戒心を強めております。このことが、アメリカにとりましても、北京にとりましても、日本の経済成長という一つの問題をとらまえて、この利益というか、片一方を押えていくという利益という点において私は一致すると思います。そこで、この北京とワシントンの間で話し合いが、まあこの前ニクソン訪中によってできました。そうしますと、そのときには、私も、これはまだどんなことか、表向きの報道がありませんからわかりませんが、われわれが、そういった問題に対する権威といわれる人々から聞いたところでは、どうもこの両者の意見が一致をするところは、ベトナムに対する問題、これに対してアメリカのほうは北京に、何とかして早期に解決をしてほしいと言うし、また北京のほうはワシントンに対して、日本の経済成長が台湾に対する長期固定化の支援体制、これをチェックできないものかというふうなところで両者の利益が一致したんだというようなことも聞きましたが、私はこういうところが、これからの日米安保というものを考えていく上にとって非常に重視をしていかんならぬところじゃないか、こう思います。それだけに、先ほど羽生先生も触れられておりましたが、多極構造のもとにおけるこの日本の外交というものは、多くの国との交渉ができるような、いずれの国ともテーブルに着けるような状態をつくっていく、また、自由貿易というものを国是にしておりますわが国にとりまして私は当然のことと思います。こうした配慮について、外務大臣は先ほど羽生先生に対しても答弁がありましたから、私は答弁を求めませんが、これに関連をしましてバングラデシュの問題これをお伺いしておきたいと思います。  で、パキスタンは西と東にもともと分かれておりましたが、このもともとのパキスタンの人口構成は御承知のとおり、西が四四%、東が五六%でございます。東のほうが多い、いまのバングラデシュのほうが多いわけであります。ところが、人種の違うせいか、役人も軍人も産業界も、いわゆる支配階級の人々はほとんど西パキスタンで占められておったのであります。また、諸外国からのパキスタンに対する援助、東と西を含めての援助でございまするが、その八〇%が西パキスタンで使われておった、東はわずか二〇%であった。こういう差別待遇を撤廃しよう、そうして、ベンガル人の独立をということで、ラーマンさんの率いるアワミ連盟が民主的な選挙で圧倒的な勝利をおさめたその直後に、西パキスタン軍の死の作戦というか、が始まったんでありまして、三百万人の人が殺されたと聞いております。また、一千万人の難民がインドに逃げたとも聞いております。悲劇のバングラデシェでありましたが、インドのてこ入れでどうにかこうにか独立をした、私はこの独立を非常に喜ぶものであります。  しかし、独立はしたものの、現在、食うに食なく住むに家なく、ダッカの職業安定所なんかには朝明けますと五千人からの人が押しかけておるということを聞いております。こういうふうに困っておるこのバングラデシュの人々に対して、今次のこの国会でもあまり多くの論議がかわされていない。ベトナムだ、北京だ、大騒ぎをする人がたくさんあります。ところが、こういったほんとうに困っておる人々に対して論議がされないというのは一体どういうことなのか。さらにまた、差別をなくしよう、そうして民族の独立、いわゆる解放ということを口にしておる北京が、なぜこのバングラデシュ——ベンガル人のこういった運動に対して武力弾圧に加わったのか、私は大きな疑問を持つものであります。まあ、わが政府はこうしたバングラデシュに対し、米国や中華人民共和国におもねることなく、いち早く承認をした、先ほど外務大臣がお話しになったとおりでありますが、私は、戦後の自主外交として大いにほめられていいと思います。そうして、特使を送られた。その特使が帰ってきて、すでに総理大臣も外務大臣もその帰朝の報告を聞いておられると思います。その帰朝報告を聞きまして、あのバングラデシュを二分するところのジャムナ川、これに、日本とバングラデシュの平和と友好の橋とラーマン首相が名づけたそうでありますが、こういう橋をかけたい、日本にぜひ力をかしてほしい、こういうことを言っておるそうでありますが、こういった問題を含めて、この困っておる、しかも悲劇を味わって、いま独立の意気に燃えておる。しかし、現実には非常に力の足りないベンガル人の人々に対して、これだけ力を持ってきたわが国がどのような具体的な援助の措置をされるのか、この際、総理並びに外務大臣に承っておきたいと思います。
  177. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) バングラデシュ外交につきましておほめにあずかりまして、たいへんありがとうございました。そこで、バングラデシュの問題は、国会等におきましてあまりにぎやかには論議はされておりませんけれども、しかし、政府におきましては、この国との関係というものを、つまりインド亜大陸という関係を踏まえまして、非常にこれを重大視いたしておるわけであります。先般、自民党の早川代議士等が親善使節としてかの地を訪問いたしました。どこへ行きましても早川万歳というような非常な歓迎を受け、感銘を受けてまた帰ってきたわけでありますが、その報告によりますると、いまもちょっとお話がありましたが、とにかくあの一週間の印・パ戦争で三百万人の死者が出。三百万人の死者ということは、これはもうほんとうに想像に絶する、ちょっと三百万人ということは信じられないような数字でございまするけれども、それにしてもたいへんな死者だったろうと思う。また、難民が二千万まだ存在しておる、こういうような状態。そのような状態を聞きますると、アジアの隣国というか——一国としてのわが国は、これを黙って見ておるわけにはまいりません。そういうようなことで、すでに人道上の立場からの無償援助、あるいは米を送る、あるいは肥料を送るというようなこともやっておりまするけれども、いよいよバングラデシュは国をなしたと、わが国もこれを承認したと、こういう関係になったわけでございますので、そういう基礎の上に立ちまして、バングラデシュ新興国家が健全に育つように、もしわが国においてできることがありますればこれに協力をしていく。まだ具体的に先方の意向は表明されておりませんけれども、先方よりプロジェクト等についてお話がありますれば十分これを検討いたしまして、何とかしてさような私どもの心持ちを示したいと、かように考えております。
  178. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 羽生先生、先ほど優先順位の問題のお話がありました。私は、これはもっともなことだと思います。そこで、七億の人口を有する中国大陸の人たちも私は大切にしなければならないと思います。これは非常に近い。しかし、昔から日本に唐、天竺ということばがあるのです。これは何かといいますと、昔からなぜあるかといいますと御承知のとおり、日本文化というのは天竺から唐に、唐から日本へと流れてきたものだと私は判断をしております。それだけに、アジアの問題を考えるときには天竺と唐と離して私は考えられない。どうしてもやはり六億の人口を有するこのインド亜大陸の問題、これはやはり真剣に日本が取り上げていくべきであろうと、こう思います。で、それはなぜかといいますと、印・パ戦争のあと、米中の勢力が後退をしております。その間隙を縫ってかどうかわかりませんが、とにかく前からソ連が進出をしておりましたが、さらにソ連の勢いが前にも増してインド亜大陸に大きな影響を落としております。こういうときに、何としてもやはり日本がこのインド亜大陸というものを重視をして、積極的な自主的な外交をインド亜大陸に対して展開をすべきである、こう考えるものでありますが、これはひとつ総理外務大臣両方に承っておきたいと思います。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まことにごもっともな御意見と拝聴いたしたわけです。いまヨーロッパのほうは、ともかくイギリスがECに参加する、こういうような状態で安定状態、またソビエトとヨーロッパの状態も、これもまあ均衡の状態というふうに一応見られるわけです。ただ世界じゅう見まして、やはりアジアが一番まだ不安な状態にある。その中において、いまお説のように大きな問題となるのは中国をめぐる諸問題、またインド亜大陸をめぐる諸問題である、こういうふうに見ておるのであります。まあ歴史的にインド亜大陸とわが国とは非常に関係が深いわけであります。しかも、いまこの亜大陸にはインドがある、あるいはパキスタンがある、またバングラデシュができた。三つの国がありまするけれども、それぞれの国がみんなわが日本に対して非常に親近感を示しておる。そういうようなことを考えますると、われわれもまたこれにこたえる態度をとらなければならぬ、こういうふうに思うのであります。過去におきましても、わが国はそういうような観点から、これは国際コンソーシアムのもとにおいてではありまするけれども、すでにインドに対しては七億一千万ドルの経済援助をいたしておるわけであります。七億一千万ドル、これはわが国の対外経済援助からいうと、ほんとうに指折りの額になるわけです。またパキスタンに対しましても二億五千万ドル、多額の援助をいたしておる。こういうような状態でありますが、ただいま申し上げました事情もありますので、これからもインドとはほんとうに仲よくしていきたいという考え方のもとに、いろいろ経済、文化あるいは技術各方面の接触を持ちたい、かように考えております。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さきにバングラデシュのラーマン首相の使いに会いまして、また最近ブットパキスタン大統領、その使い、特使に会いました。また、わが国からは早川君はじめ二、三の方々がバングラデシュを主にして、さらにインドに出かけて帰ってまいりました。この付近の外交、ことに援助につきましては、たいへん最近は忙しい状況になっております。また、そういう意味からも実情の把握が十分にできておるように思っております。また、さきにはケネディさんも、これは上院議員ですか、アメリカのバングラデシュの難民救済委員長としても出かけて、その帰国の途次私のところへ立ち寄られて、そして実情を詳細に報告されている。ただいままだ完全には印・パの関係が調整はされておりません。しかし、もうすでに戦争はいま現実には行なわれておらない。印・パ直接に話し合うことも可能な状況だと思います。しかし、なかなか双方がどの段階でも、またどこででも話し合おう、こうは言っておるが、実際にはそれが行なわれておらない。また、国連自身これを中心にしてバングラデシュの救済、同時にパキスタン自身、西パキスタンにおいても救済を要するような実情にある。こういうことでございますから、国連の積極的活動を待っておるというのが現状ではないだろうかと思います。私は、わざわざ特使が日本まで出かけて、そうして実情を話しているということは、申すまでもなく日本の積極的な援助を願っておるんだと、かように考えておりますので、外務大臣、大蔵大臣等々と相談をして対策を立てておると、こういうのが実情でございます。いずれにいたしましても、ただいま御指摘になりますように、過去においても日本は多大の借款その他を援助いたしておりますが、今度のバングラデシュの独立、さらにまたサイクロンですか、あの災害の復旧その他についてさらに積極的な態度を示す、そういう際にきておるのではないか。そうして日本がアジアにあるという、そういう意味でまた日本をたよりにしておる、それに報いるべきではないか。ただいまの天竺、唐、こういう昔から言い伝えられておるその点を思い起こしながら積極的に援助すべきだと、かように私ども考えております。
  181. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いまのお話にありましたように、そうした国々が日本に対してたいへんな期待を寄せておる。そうして日本にわざわざ特使を送ってくる。そういうものは一体私は何かということをこの際国民皆さんに知っていただきたい。それは日本の国はいろいろなことをいわれますが、何としてもやはり非軍事国家であるということですから、そうして大きな政治的意図を持たない、いわゆる手がよごれていない。これがやはりそうした国々が日本に対する大きな期待を寄せておる一番大きな原因ではなかろうかと思うのでありまして、これはいままで私らにいたしますと、黙って聞くばかりでありまして、佐藤内閣はもう軍事内閣みたいなことをいわれておりましたが、こういう例を見ましても私ははっきりわかる。このことを一言、余分なことでありましたかわかりませんが、申し添えたいと思います。  さて、日中関係の論議でございますが、これには正当な議論と同時に非常に感情的な議論が多いのであります。ことにムード的な意見が支配的になりつつあることは、わが国の将来にとって憂うべき現象であると考えます。いまここに昭和十五年から十六年、だいぶ古い話でありまして、私なんかちょうど中学生であったのであります。すなわち、三国同盟成立時代の新聞と衆議院予算委員会における当時の会議録、これは総理、持ってきておりますのであとでよく見ていただきたいと思います。これを一回見てください。まだ資料がたくさんある。整理しております。その資料によりますと、そこには最近のいわゆる北京の中華人民共和国が国連に参加をする前後、それからニクソン大統領が訪中をする前後、そういうものをこの新聞で集めております。そういうときの論調、そういう特派員の記事を集めております。また昭和十五年から十六年にかけての日本の代表的な新聞の日独伊三国同盟に関する論評、それからまたドイツの記事、イタリーの記事、これを集めております。それを見てみますると、そこにも書いておりますようにヒットラーを礼賛をいたしております。そうしてある新聞なんかには一面のまん中でわざわざ囲みを使って大きく「ヒ総統わが国民に呼びかけん」というようなことを書いております。それでまた、その隣りには「同盟の世界史的意義」というのが載っておりまして、そこをちょっとまためくってみますと、「ナチス外交の真髄」、ベルリンの特派員がわざわざ特電でもってこちらに寄せております。そこには「神速・各個撃破の妙諦」、「日独関係の強化の急務」、「獅子吼するヒトラー総統」という写真まで大きく出ております。また、「三国同盟は自然の勢」、「同志国家の血盟」というふうな書き方でもって歴史の必然性であるごとく書いております。また、イタリーの問題に触れましては「ム首相けふ獅子吼」、「対英完勝近し」——戦争してイタリーは完全に負けた。それをその当時「対英完勝近し」と書いて、ガイダ氏の論文の特に特電でもってわざわざあげております。私は、この欧州大陸諸国との親密な交渉接触をあおりあげております当時の新聞というものを見まして、まあ大胆な推論かもわかりませんが、これはお許しをいただきたいと思いますが、とにかく、国内政治の協調体制がくずれてきたときに、わが国は大陸諸国家群に目を向けております。その大陸諸国家との関係がまた深まったときに日本に危機が訪れるという繰り返しのあることをここで指摘したいのであります。わが国はもともと自由開放的で、経験を重んじ、気宇壮大な海洋民族国家であります。一方、大陸諸国家の精神構造は、専制的・思弁的なものが多く、また往々にして権力主義的、全体主義的な傾向にある国々が多いのであります。これはしょせんは他国と領土を接していることから必然的に起こるものかもわかりませんが、そうした大陸諸国家に、自由開放型の海洋民族であるわが国が傾斜をしていくときに、日を経ずして摩擦を生じていることに注目したいと思うのであります。  またもう一つは、わが国民国民性という問題であります。戦後のいわゆる最近の新聞、それを見ていただきましても、また戦前の新聞を見ていただきましてもわかりますように、どうも日本国民国民性の欠陥というものは火山的であり、台風的であって、せっかち過ぎる、付和雷同過ぎる。これは推論でありまして、私の判断で、いや、そうではない、違うという意見もあるかもわかりません。私はそういう欠陥を持っておると思います。そのために、一羽の水鳥が飛び立てば何十何百羽の水鳥がゆえなく飛び立つごとく、朝野をあげて大陸的全体主義へとなだれのごとく殺到しているのでありまして、かてて加えて、そのことが歴史の必然性であるがごとき論評がなされております。どうですか、総理、ごらんになりまして、ちょうどそこの記事は昭和十五、六年ごろの日・独・伊三国同盟があたかも歴史の必然性であり、新しい世界の大勢のごとくいわれた当時のわが国の情勢と現在の日中論議が、歴史は繰り返すのことわざのとおり、あまりにも軌を一にしているのに驚くものであります。私も日中関係が一日も早く正常化されることを熱願する一人です。かつ、このようなことを言えば、いまもちょっとここで聞きましたが、日中関係に水をさすものだとかいうことで確かに御批判もあり、大騒ぎをする勢力のあることも十分知っておりますが、あえて申し上げなければならない。私はそれほどにこうした風潮はわが国の大きな危機としてとらえておるからであります。総理の御所見を承っておきたいと思います。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま三国同盟当時の新聞を持ち込まれまして、そうして御意見を交えてのお尋ねでございます。ややどうもみずからが自主的な判断を下さないで、どうも付和雷同していると、こういうような批判もあるのではないかと思っております。私は、過日金沢大学の学長である中川善之助先生がどうも、取り上げられた問題は私ども納得のいかない公害の問題ではありますが、どうも無批判で署名し、あるいは無批判で動く、これこそ大衆の暴力ではないかと、こういうような送別の辞をされておりますが、私は、ただいま御指摘になったような点があの中川先生の卒業生に対する告別の辞とよく似ておる。そういう見方があり、それがわれわれ日本人の欠点でもあると、だからその点を十分注意して、そうしてわれわれみずからの判断によってみずからが行動すると、こういうことでなければならないと、かように私も思うのでございます。私それについては、やはりマスコミその他にも注文したいような気がいたしますけれども、何よりも大事なことは、みずからの行動をみずからが律しないでただムードで動くと、そういうことがあってはならない。   〔理事西田信一君退席、委員長着席〕 それこそ間違いのもとだと、かように私は思っております。先ほど、どうもムードがわかない、人気が出てこない、これは佐藤内閣の欠陥ではないかというおしかりのあったばかりでございますが、私はそういう意味で、みずからやっぱりこういう問題との取り組み方、そこにはみずからの責任において取り組むべきものがあると、単純にムードだけで行動は起こさない、このことを申し上げまして、ただいま同じような気持ちで最近のできごとを心配している一人であることを表明しておきます。
  183. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 この日中論議を進めていく際に、どうしても触れなければならない問題は、報道の自由に関することであります。これは重大なことであります。日本の新聞が終戦直後に、全新聞社参加のもとに新聞の自由の原則や新聞の持つ公正、責任、誇り、品格、指導性等々に関して新聞倫理綱領を制定していることは御存じのはずだろうと思います。この新聞倫理綱領の第一条には「公共の利益を害するか、または法律によって禁じられている場合を除き、新聞は報道・評論の完全な自由を有する。」とあります。また、「この自由は実に人類の基本的権利としてあくまで擁護されねばならない。」ともあります。私たちのこの日本の社会では当然のことと考えますが、この点について総理の御所見をまずお伺いをしておきたいと思います。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまちょっと他を整理しておりましたから、あるいはお尋ねと少し違うかわかりませんが、私が聞いたところでは、いまの新聞の報道の自由あるいは発表の自由また表現の自由、そういう事柄について私の所信をお尋ねになったかと、かように思いますが、そうですか。
  185. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうです。倫理綱領、いま大体御存じだと思いますが、これをまくらにしたいものですから聞いております。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 倫理綱領、私、たいへんりっぱなものだと、かように思っております。新聞の秋の新聞週間、これはそのとおり私もけっこうだと思っております。
  187. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、ここに「文芸春秋」の四月号と「経済往来」の四月号を持ってきておりますが、この中の新聞報道に関する衛藤氏や三好氏の論文、また調査報告をお読みになっておられますか、お伺いいたします。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたいへんけっこうな論文だから読めと、こう言って私のところに届けた方がございますけれども、私まだ目を通すまでには至っておりません。
  189. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 たいへんお忙しい総理でございますので、おそらくそうだろうと思いましたので、私は衛藤さんの書かれた論文よりも、三好さんの書かれたこの調査報告、これを大体要点だけここでお話を申し上げて、あと総理見解を伺いたいと思います。  御承知のように、衛藤瀋吉東大教授は著名な中国研究家であります。そうした大家だけに、中国問題に関するわが国の新聞の報道と世界の主要新聞などと対比させながら、いかにわが国の新聞報道が片寄っているかということを明快に分析、整理しておるのがこの論文でありまして、私たちが読みまして、実はびっくりしたのであります。  さらに、この「経済往来」に書かれております、評論家であります三好修氏の「新聞はこうして北京に屈服した」との調査報告がございます。この題名ですでに明らかなように、中国問題に関するわが国の新聞報道が何がゆえに偏向してきたかということについて、三好さんはもともと新聞人でありますが、新聞人自身がその良心に誓って偏向の背景と要因を追及しているというのが、私は非常にこれはりっぱだと思います。この勇気をたたえるとともに、新聞人がみずからの報道の自由と公正を守り抜こうとする姿勢こそが、わが国の新聞の自由の大道への強い復元力を示すものとして私は評価をしたい。まず、この点について総理のお考えをお示し願いたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のところへ来られて、衛藤博士と三好君の論文を読めと言われた方が、特に三好氏のほうを、実際の実情がはっきりするからこれだけはどんなに忙しくても読みなさいと、こう言われて、実は昨日その雑誌を届けられたばかりでございます。昨日は夜おそかったものですからそのままになっております。
  191. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そこで、三好氏の報告を、先ほど申しましたように簡単に触れてみたいと思います。  一九六四年、LT記者交換体制によって日中記者交換が実現した経過や、某紙の特派員が毛沢東主席を漫画化したということで、また、ある新聞社が本社企画としてチベット秘宝展の開催を計画したことは、二つの中国の陰謀だとの理由で、また、ある通信社がアジア通信連盟の総会を東京で開催したということで、テレビのほうでは台湾特集を放映したというかどにより、相次いで北京の特派員が——それぞれの社の特派員が追放された経過などを克明に報告しております。  さらに重要なことは、六八年の日中覚書貿易協定が結ばれる際に、新聞協会が全く関知しないうちに、第一に、中国側の政治原則の受諾を前提として記者交換を行なうこと、第二に、交換記者の人数について秘密協定が結ばれていたということであります。しかも、協定を結んだ当事者は、この事実を三年余の間、新聞協会に何らの連絡もしていなかったというのであります。  すなわち、わが国の新聞報道が中国問題に関して大きく偏向してきたのは、一つには中国側による規制であり、第二には激しく競争する日本の新聞が、北京特派員を出したいばっかりに、中国側の覚えをよくするために、ときには自主規制をしてきておること等がよく報告されております。その中でも、私なんかもびっくりしたのでありますが、北京側からあやまれ、罪謝せよと言われれば、簡単にあやまっている某新聞の姿などがそこに描かれております。これなど、政治権力の御意見番をもって自負するものの真の姿ではないと思いまして、二度も三度もその個所を読み直したものであります。また昨晩は、マスコミ関係者の方からでございますが、この委員会でぜひと、北京特派員の天皇と言われる方の存在についてかなりの資料を私のところへ持ち込んでいただきましたが、私は、これはまあプライバシーに関することでもありますし、私自身確かめておりませんので、その好意だけはこの席上で感謝しておきまして、後日に確かめてからやってみたいと、こう思っております。  こういう状態では、これは日中の両国のために私はよくないのじゃないか。真相を知らないのを、これを迷いといいます。それだけに日中外交の私はこれは基本に関する問題でもあり、また貿易協定の中にこの問題が出てきておりますだけに、この際、外務大臣、通産大臣にこのことについてお聞きをしておきたいと思います。
  192. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、貿易協定の中に新聞の協定が織り込まれておったということを存じませんでしたが、要するに私は、いま日本の国は言論が自由である、こういうようなことで、まあその結果正しい世論が形成されると、そういう大きなメリットを持っていると思うのです。しかし、新聞というものは、それだけにまた、自由を与えられるその自由の裏には責任というものがあると思うのです。責任というものも私はまた、言論界というものが痛感しておかなければならない問題であると、そういうふうに考えております。まあ私もその事実関係をつまびらかにしませんので、率直な所感を申し上げにくいのでございまするけれども、言論の自由があるということは非常にけっこうなことである。しかし、その自由なる裏には必ず責任というものが存在しなければならぬわけである。それでなければ自由は成立し得ないのだと、こういうふうに考えておるということだけを申し上げます。
  193. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私は、その事実はただいま知ったわけでございますが、公の権力を与えられておるものは真実を報道することがつとめである、真実以外のことは申さない、報道しないということが原則でなければ、その特権はおのずから与えられなくなるわけでありますから、しかも、民族が長い歴史の中で非常に困難な問題を解決しなければならないという事態に至っておるときでありますから、やはり正確な事実を伝えてもらいたい。そうすることが国益を増進するゆえんでもあり、また、報道機関が新たに評価されるゆえんでもある、こう考えます。
  194. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いま通産大臣からもお話がありましたとおり、新聞はこれはたいへんな権力を持っている。それだけにより自由であり、公正でなければならぬ。私は今日、新聞は第四の権力とさえ言われておるのでありまして、いまお話し申し上げましたように、たいへんな影響力を持っております。それゆえにこそその倫理綱領が高らかにその倫理をうたい上げておるのだと思います。しかるに、その新聞がかりそめにも外国政府によって規制を受けたり、あるいは相手の歓を得るために、もし、みずからの筆を折るというようなことが事実とするならば、すでに、いま通産大臣の言われたように、新聞は公器としての資格を失っているばかりでなく、社会に対してはかり得ぬ大きな害毒を流していることとなり、断じて許さるべきでないと思います。  日中関係の今後のあり方については、さまざまな立場があるとしても、新聞の自由はいかなることがあっても守られなければならぬし、自由なる新聞こそ新聞の生命であると思うのであります。私がなぜこれを言うかといいますと、新聞が健全であるということ、これは何としても自由なる国家、そうして、より民主的な国家のこれは一番の基礎なんです。したがって、この問題に関しては私たちは徹底的な事実の究明をはかる必要があると思うのでありますが、総理の御見解を承りたいのであります。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 真正面から議論されると、玉置君の言われるとおり、これは別に私、とやかく申し上げることはできません。もう全くそのとおりだと言わざるを得ないんですが、ただ問題は、いまデリケートな関係にあります日中間の問題であります。日中間の問題をやはり正常化するという、そういう意味において、私どももいろいろ気をつかっておりますが、おそらく民族間の問題として、各紙ともこれにはずいぶん気をつかっておることだと、かように想像するものでございます。私は、それだけに苦労が多いことだろうと思いますが、それだけに、やっぱり大事な点は、正しい報道だけはしていただくと、それでなくちゃならないと、かように私は思います。したがって、事柄の性格上いろいろ気をつかっていると、そのことについては理解するにやぶさかでございませんが、それだけに、また一面たいへんなことですよ、それが間違うと。とにかく、国内においてもみんな北京、北京に行くというようなことにもなるから、そこらのところは、やっぱり適当にブレーキもかかり、同時にまた、積極的な基本的な姿勢も正していただきたいと、かように私は期待をしたいんです。特にそういう意味からは、極端な報道は最近においては非常に慎まれておるんではないだろうかと、かように私はその点では喜んでおります。ただ国会におきましても、政府皆さん方に、どうも真実を報道しないといっておしかりを受ける部分がございますが、新聞も正確に知っておるだけを報道してくれたらもう少し国民も判断がつくだろうと、こういうこともございます。そういうような気がいたしますので、その点をも私はつけ加えておくが、しかし、大事なことは、日中間の国交の正常化をはかりたいという国民の願望、そういう意味で書きたいことも書けず、やはり文章も、筆をとりましても鈍るんじゃないかと、かようにその立場についても同情するものがやはり一部あるということだけ申し添えておきたいと思います。
  196. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 玉置議員の御質問に関連して、質問を二、三させていただきます。  日本国民大衆は、何ものにも片寄らぬ自由で公正な報道のもとに、中国を知り、中国を考え、中国に関するさまざまな感情と意思を持つ権利があると思います。この自由と権利はいかなる外交交渉の犠牲にもなるべきものでないと私は思いますが、衛藤論文にもあるように——私は、実は丸の内のコレスポンデンス・クラブのメンバーで、あそこで外国人記者と日中問題について話をしますと、日本と外国の新聞の報道のギャップをそのたびに感じております。このたびの衛藤論文並びに三好論文を見まして、すでに幾つかの調査や事情聴取の結果、どうやらそれが事実と判断せざるを得ない状態でありますが、これは必要とあらば、もっと時間をかけて詳しく御報告させていただきますけれども、この問題をさらに突っ込んで十分調査するために、さきに、報道の自由を守る議員懇談会がその後発足いたしました。やがて超党派的に呼びかけて、この問題を究明したいと思いますけれども、その運営に関して二、三御質問したいと思います。  ここに、ある記録がございます。これは新聞協会の中のメモで——このごろ機密文書ばやりですけれども、これは決して法を犯してまでかすめ取ったものでなしに、あくまでもこの問題を憂うる有志が喜んで提出してくれたメモでありますが、ここにしるされたことは、昭和三十九年当時、外務省情報文化局長の曽野氏が、大平外務大臣が訪中する松村謙三氏に北京に伝えるべく話した未承認国中国への記者派遣の条件の大要を、新聞協会の幹部に話しました。その外務省側の意思は、文書になっております。外務省のそのときの見解は、記者交換はあくまで公平平等な条件でないと認められない。そして、あくまで新聞協会を通した交換でなくてはならないということでありますが、それが三好論文にあるとおり、最初の覚え書き貿易の共同声明というものに妥協をしいられ、その取引として、秘密に、自民党の二人の国会議員によって秘密協定として設定された。それが二年半新聞協会に隠され、帰国した西園寺公一氏によって明るみに出、初めて新聞協会に通達された。新聞協会はこれを聞いてがく然といたしましたが、なぜか、その後もこれを国民大衆に知らすことがなかった。明らかに六八年の覚え書き貿易共同声明以来、日本の中国における報道は、政治三原則を受け入れ、しかも、九人九社のワクが無断で五社五名に限られております。これは明らかに内閣は違いますけれども政府の日中記者交換に関する基本的な指針と違った状態だと思いますが、そうして、これは決して好ましくない状態だと思いますけれども、これについてどうお考えですか。もし、内閣がかわったにつれて、現佐藤内閣がこの日中交換の記者の条件というものに関する基本的な指針を御変更になった事実があるならば、その理由を伺いたいと思いますし、その事実がないならば、明らかに政府の指針と異なる今日の日中記者交換の状況というものをいかにお考えか、総理大臣並びに外務大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  197. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中記者交換につきまして、実は私もあんまり勉強しておらないために、適確なお答えができないで、まことに申しわけない次第でございますが、先ほど申し上げましたように、つまり、新聞というものは非常に大きな影響力を持っておる、それだけに責任を痛感してもらわなければならぬと、こういうふうに思うんです。  それから、国と国との関係ですね、ことに未承認国との関係におきましては、これは、私どものもう基本的な原則といたしまして、報道は自由で相互的であると、こういうことであります。その報道の自由が制約をさえ受けるということでありますれば、これは非常にゆゆしい問題である、こういうふうに考えます。  なお、私も、そういう問題につきまして勉強をひとつさしていただきたいと、かように存じます。
  198. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 私は、日本と中国の真の親善あるいは国交回復は、あくまでも公正な、そして自由な報道の上に成り立つべきものだと思いますが、そのためには、この二人の自民党議員が、新聞協会にも無断で、まして国民大衆にも無断でとり行なってきた日本と中国の記者交換の条件、つまり秘密協定なるものは、これが明るみに出た限り、あくまでも白紙還元さるべきものであると私は思いますけれども、この点いかがでしょうか。  ちなみに申し上げますが、在日中国人記者の保証人は日本の新聞協会であります。この協会が、日中交換の非常にゆがめられた条件に不服で、つまり白紙還元するということで保証人を取り消すならば、中国の記者は向こうにお帰りにならなくちゃいけないということになるのじゃないかと思いますけれども、この問題は別にしても、いずれにしても、この非常にゆがめられた記者交換の一方的な条件設定というものは、あくまでも真の日中親善のために、明るみに出た限り、白紙に還元さるべきものだと私は思いますけれども、いかがですか。
  199. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど総理が、いま日中関係はきわめてデリケートな段階だと、こういうふうに申し上げましたが、私は、総理同様、非常にデリケートな段階だと思います。そうして、かなり日中関係の正常化、そういう方向へ向かっての歩み、これが進んできておると、こういうふうに思うんです。しかし、この日中関係というものは、先ほど玉置さんからお話がありましたが、ムード、そういう問題で解決されるということになると、非常に危険です。私は、これはもう冷静に両国の関係が長続きするような状態において解決されると。それには、ほんとうに両国の情報というものが正確にかつ平等に伝えられ合わなければならない、そういうふうに考えるわけでございます。たいへん残念でありますが、いまの秘密覚え書きというものをまだ見たこともございませんので、それに対する判断を申し上げるわけにはまいりませんけれども、なおよくそういうものを見せていただきまして、私どもの判断を固めさしていただきたい、かように存じます。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確かに最初は、いまの日中問で記者交換は十名ずつだと、かように私も思っております。それがいつの間にか五名になっている、最近は五名からもさらに減っていると、かように聞いておりますが、これはどうもいままで人を得なかったために、いろんな事情があって減ったと、かように理解すべきではないかと、かように思いますが、本来のある姿で、こういう問題が解決できればそれにこしたことはございません。しかし、ただいまも申し上げるように、ここで話し合うことがはたして好意的な解決を導くかどうか、それも一つの問題だと、かように思いますので、この問題はどうかこの辺で御了承を願いたいと思います。
  201. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いま総理からも外務大臣からも、日中関係というのは非常にデリケートだという表現がありました。それだけにまた私は、総理並びに外務大臣が日中論議に関してデリケートな表現を使っておることをここで指摘をする失礼を許していただきたい。それは、まず私事を申し上げて恐縮です。私が中学校を出まして、北京に入学をするために行ったわけであります。そのときに駅に迎えにきた先輩が一番最初に言うたのは、「おい玉置君、シナと言うなよ、中国と言え、チヨングオと言え」と、こう言うた。このことは、中国というのはこれは地名なんです。それだけに、中国という地名で表現をされる範囲に台湾を含むことはこれは当然なんだ。一つの中国という場合と、主権国家の中華人民共和国というのとは、おのずからこれ異なるものであります。中国は一つということがよく言われますが、その一つの中国に中華人民共和国の主権の及ばない——現実の姿としてですよ、台湾に国民政府がいまもある。また、法律論から言っても、台湾は現在立法、司法、行政という三権が確立されておる。そのもとにおいて、一千五百万人近い人々が生活をしておる。とにかく生活も安定をしておる。こういう台湾というものが、すなわち、北京の統治権、主権の及ばない台湾というものが、はたして中華人民共和国の領土といえるのかどうか、純粋法律論から考えてもおかしい。ましてや、中華人民共和国が領土権があるということなんかはこれはおかしいのであります。その点まだ北京のほうの最近の表現のほうが私は法律論にかなっておると思います。不可分と、こう言っている。しかし日本国会日本のマスコミでは当然のごとく言っておる。これなんかはもう一回法律論をやるべきだという私は見解を持つものであります。  もう一つ、これは国交回復、国交回復、こう言っております。これは中華人民共和国と日本と国交を始めたことがありますか。北京のほうは、園田直先生の衆議院予算委員会における代表質問にもありましたが、継承国家論というもの、いわゆるこの北京というものが、中華人民共和国というものが国民政府に対する革命政権なんだ。その革命政権である中華人民共和国が、国民政府が結んだところの一切の外交的な条約、そういったものは守らぬと、こう言っておる。そんなものは完全に無効だと言っておる。そういうときに国交があったと私は認めない。これがあたりまえのことなんだ。それを国交回復、国交回復とばかり言っておる。この辺は学のない者が言うことであります。それだけに、この北京と日本との関係は、目下国交を結ぶための、国交を開始するための努力を双方が真剣に行なっておるというのが、私は正しい表現ではなかろうかと思うのであります。こういう一つの中国というあいまいな表現法といい、国交回復というふしぎな日本語の使い方といい、法律論を無視した……、法制局長官そうでししょう、法律論からいえばそうですよ。この法律論からいったら全くナンセンスな領土だとか領土権ということばの使い方といい、私はふしぎでならないんでありますが、こういった問題がかえって国際間における論議を混乱させておる。いたずらに混乱させておる。この点について、私は反省をしてほしいと思う。そこで、外務大臣のお考えをお示し願いたいと思います。
  202. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一は台湾の領土帰属の問題、そういうことかと思います。で、この問題につきましては、すでに政府としては統一見解を出しておるわけであります。その統一見解は、ことばが多少、いま正文を持っておりませんから違うかもしれませんけれども、台湾は中華人民共和国の領土であると主張する中華人民共和国の主張は、中華人民共和国が国連に参加をした、またカイロ宣言やポツダム宣言、そういうようないきさつ、そういうものから考えまするときに、これは理解できると、そう主張することは理解できると、こういうことでございます。同時に、わが政府は、中国は一つであると、こういうふうに申しておるわけであります。そのときの中国というのは一体どういうことかといいますと、これは地理的に、まあ中国というのはチャイナというようなことで、大陸も含めば台湾も含むと、そういう意味であることはもちろんでありまするけれども、政治的意味において私どもは発言をしておるのです。中国は一つである。それはやはり国として中国は一つである。こういうようなことを意味しておる。ただ私どもは、この一つであるべき中国に二つの政府がある。台湾島に国民政府が厳として存在しておる、こういうことは事実である。これを全然否定すると、こういうような考え方は持っておらない、こういうことをお答え申し上げます。  それから、いま国交回復ということばを使ってまぎらわしいと、こういう話でありまするが、中華人民共和国との間の関係、これは、私どもは国交回復というふうには言っておりませんです。わが国はすでに国交につきましては全中国を代表いたしまして国民政府との間に日華平和条約を締結しておる、国交はすでにある、全中国に対してあると、こういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、国交回復、こういうことばを使うことは妥当でない。私どもは国交回復ということばを使っておりません。中華人民共和国との間の国交の正常化と、こういうことばを使っておる、こういうふうに御理解願いたいと存じます。
  203. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 次に、この日中論議の最後として、台湾問題に触れてみたいと思います。私は台湾に、実はこの一月確かめに行って来たんです。四年ぶりに台湾に行ったのでありますが、それはなぜかといいますと、今日あることを私は予期しておったのでありますが、台湾には、先ほども新聞の報道の自由というところで触れましたが、日本の新聞社、通信社の特派員は一人もいまおりません。よく注意をしてごらんになりますとわかりますように、新聞の台湾報道というものは、全部香港経由、また、アメリカの通信社のものを載せております。また、フランスの通信社のものを載せたりしております。それだけに、いまも言いましたように、この目で一回確かめたい。もうそんなことばっかり読んでおると、台湾はいまにも沈没しそうな、台湾はなくなってしまいそうな、そういう記事ばっかりでありまして、ぜひこの目でと思って行って来たのであります。そうして、あちこちかなりの時間をかけて飛び回りましたし、また、蒋介石さんの息子であります蒋経国さん、次期の実力者と言われておりますが、この方とも実際ひざを交えてこの問題について会談をしました。特に私は若手のこれからの人、いわゆる政界、官界、財界——現実には仕事をしております。それはいかに否定しようと現実には仕事をしておる、将来もまた仕事をしようとしておる。そういう人たちに対して精力的に会談を重ねてまいりました。おもなものは四つございます。第一番は国共合作があり得るのかということ。第二番目はアメリカの第七艦隊が引き揚げて、また台湾にあるアメリカ軍事顧問団が引き揚げて、そうしたのちに台湾の防衛は可能なのか。第三は本省人と外省人の関係はどうか。四番目は国連脱退後の台湾の経済はどうなのか。こういった点にしぼって話し合ってきたのであります。その一つは、この国共合作でございますが、過去の苦い体験からわれわれが命ある限り国共合作はあり得ぬということを言っておりました。当然のことだと思います。第二番目は台湾防衛でございますが、すでにこの第七艦隊の主力は台湾海峡におらぬということを彼が言っておりました。そうして、大陸に対する台湾からの偵察飛行というか、これもいまほとんどやめておる。また、中国大陸におけるこの北京のほうの兵力配置、詳しく図でもって説明を聞きました。これはほんとうかどうか、私は軍事専門家でないからわかりませんが、帰って来て日本の軍事評論家いわゆる権威者と言われる方に聞いてみましたら大体当たっておるということを言っておりました。それはソ連国境で大体どれくらい、北ベトナム、それからラオス、ビルマ、ずっとインド、パキスタンのあの付近にどれくらい、また大陸の内部にどのくらい、海岸線にどれぐらいという兵力配置でございましたが、こういう兵力配置からしても、また現在の国際情勢からしても、将来の見通しからしても、台湾攻勢ということになりますると、現在台湾に六十万の精強な軍隊がおる。この武器も非常に優秀だ、海を渡って台湾を攻略しようと思うならば、少なくともその兵力の二倍ないし二倍半の力が要る。そういうものが集められるはずがない。また、保有する艦船の勢力からしましても、とうてい漁船を集めてもそれだけの兵力というものを台湾に渡すわけにはまいらないということを彼らは詳しく説明をしてくれました。これも私は帰って来て聞いたのでありますが、まず大体当たっておると言う。それだけに、おそらく台湾に対する武力進攻というものは私は起こし得ないのではないか。起こさないのではなくして、起こし得ないのではないか、こういう考え方も実は持ったのであります。  第三の本省人と外省人の問題は、最近非常にうまくいっているということを私はこの目で確かめてまいりました。  第四の経済問題でございますが、国連脱退後、確かに台北においてかなりの動揺があった、ドル買いがあった、金買いがあった、円買いがあった、そのときに、蒋経国さんが言っておりましたが、われわれは日本にならったんだ。アジアのある国のように軍事大権を発動したり、非常時宣言をしたり、そういうことをやらなかったんだ、手持ちの金を市中にすぐ開放して、そうして安定をさしたんだ、これなんか日本に学んだということを言っておりました。また、ニクソンさんが訪中しましたその直後に、台北の証券市場が混乱をしたことは、これは事実であります。一時閉鎖をしました。しかし、きのう私は台北における証券市場を電話で確認したのでありますが、旧態に復しております。そうして、隆々と発展しております。これが事実なんです。こういう事実が一つも報道されない。それだけに、このことを裏づける資料としてこのことを言いたいと思います。それは国連脱退、ニクソン訪中という事態にもかかわらず、米国、オーストリア等が台湾に巨額の投資を行なっておる。そうして西ドイツ、オランダ、こういう国もまた投資をいま行なおうとして準備をしておる。このことを一体どう見るのですか。これらの国は日本と違って、北京のこともよく知っております。もし台湾が北京政権下に入るならば、北京は土地と生産手段が国有でございます。それだけに北京の支配下、北京の主権が及ぶとなったならば、これは取り上げられるということはわかっておる。しかし、こうした現実投資をしておるということは、これはそういうことはあり得ないという大前提に立ってやっておるのではないだろうか、この点について総理見解を承っておきたいと思います。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま台湾へ出かけて台湾の実情をつぶさに分析され、そうして御意見を交えてのお話でございます。私も、ただいまおっしゃったことはそのとおりだと、かように思います。
  205. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 私は、時間があったら防衛問題を少し掘り下げてやりたいと思いましたが、これはもう時間がありません。  そこで、通産大臣にお伺いしておきたいと思います。通産大臣に従来から西豪州の問題あるいはこの豪州全体の問題でいろいろお世話になっております。大蔵大臣もそうでありますが、先般の日ソ経済会議でチュメニの油田の開発協力が大きな話題になっております。私は、このチュメニの問題を考えていくときには、北サハリンの天然ガスの開発でわが国が苦い体験を持っておりますことを思い起こすわけであります。また原油価格や決済方法に明確さを欠いております。また原油の硫黄性も高いということも聞いております。さらに、大事なことは政治的に中国を刺激するということであります。それだけに慎重な配慮が加えられなければならないと思います。私は、この際、視野を大きく転じて、西オーストラリアで発見されました油田、硫黄性の低いロー・サルファーの油田、それからまたばく大な天然ガスに着目してはどうかという意見を持つものであります。さらに、原子力利用協定が日本との間に結ばれておりまするが、こうした技術導入を約束したオーストラリアに対して、ウラン資源開発やまたさっきの天然ガスの開発等で、せめてたくさん持っている外貨の中から十億ドルぐらい思い切って貸してやったらどうか、私は、こういう考え方を持つものでありまするが、特にこの前にトンチン首相がわざわざやってまいりました。通産大臣も会われたということでありますが、このトンチンさんに私は昼飯を食べながら聞かされたのでありますが、日本ほど国際信義を重んずる国はないと信じておった。ところがどうも契約違反が最近ひんぱんとして行なわれる。先ほど通産大臣はそうした積み残してきた鉄鉱石の問題にも触れておられまして、それに配慮しているのだということを聞きましてほっと安心をしたのでありまするが、白豪主義をとっておった豪州が、とにかく白豪主義を捨てて、そうして日本に対しては「二階の上等のお客さん」とまで表現して、大へんな友好関係を増進さしているのが事実であります。私は、先ほどの多極化構造の外交姿勢としても、この問題は積極的に取り上げるべきだと思います。こうした国際信義を踏まえて、そうしてこの問題に対して具体的にどのように対処されるのか、この際、御所見をお示し願いたいと思います。
  206. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 西豪州の油田及び可燃性天然ガスの鉱区は非常に有望であるということでございまして、その後、石油開発公団また産業界等にも連絡をとり、いま調査をいたしております。これはブルネイのガス田などとは比べものにならないほど非常に有望なものでございますので、積極的に調査を進めておるわけでございます。  それからトンチン首相がおいでになりましたときに、私も会いまして、日本側の事情を説明いたしておきました。鉄鉱石は約四千六百万トンが四十六年度の引き取り契約量でございますし、ことしは五千三百万トンというところでございますので、西豪州としては一番のお得意でもある。また、日本としても鉱石輸入先としては最も大事にしなければならないところであることは申すまでもないわけであります。鉄鋼の生産は一億二千万トンといっておりましたのが八千八百万トンという程度まで四十六年度は下がっておるという事態から、鉱石の引き取りも九五%というような状態になっておったわけでございますが、これは契約に上下合わせて一〇%ですか、そういう余裕もあるわけでございますが、しかし、ものは話し合いということで十分話し合いをいたしておりまして、いまのところ先方側も了解を示しておるわけでございます。しかし、私は、きょうも商工委員会でもいろいろ質問をいただいたわけでございますが、そのときも述べましたように、いま景気が浮揚しない状態でございましても、先ほど経済企画庁長官が述べられたとおり、一〇%に近い成長がやはり考えられる。一〇%以上の潜在経済力は持っているわけでございますし、そういう意味でトラブルを起こさないように、非鉄金属に対しては三億五千万ドルばかりの融資の道を講じましたが、いま大蔵大臣と外貨の活用その他に対して具体的に想を練っております。そうして、私が去年七月通産大臣就任のときから、外務、大蔵、通産で考えようと言っておりました国際経済調整がいまより必要なときはないわけであります。同時に、具体的には外貨の活用という問題が目の前にあるわけでございますので、この鉱石の引き取り、また現地で貯蔵する場合の新しい構想、その他備蓄の問題もあわせながらいま検討いたしておりますので、相手国に迷惑をかけないような状態日本が一番信用できるというこの歴史的な事実を持続すべく最善の努力をいたします。
  207. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で玉置君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会