○玉置和郎君 いまのお話にありましたように、そうした国々が
日本に対してたいへんな期待を寄せておる。そうして
日本にわざわざ特使を送ってくる。そういうものは一体私は何かということをこの際
国民の
皆さんに知っていただきたい。それは
日本の国はいろいろなことをいわれますが、何としてもやはり非軍事
国家であるということですから、そうして大きな政治的意図を持たない、いわゆる手がよごれていない。これがやはりそうした国々が
日本に対する大きな期待を寄せておる一番大きな原因ではなかろうかと思うのでありまして、これはいままで私らにいたしますと、黙って聞くばかりでありまして、
佐藤内閣はもう軍事内閣みたいなことをいわれておりましたが、こういう例を見ましても私ははっきりわかる。このことを一言、余分なことでありましたかわかりませんが、申し添えたいと思います。
さて、日中
関係の論議でございますが、これには正当な議論と同時に非常に感情的な議論が多いのであります。ことにムード的な意見が支配的になりつつあることは、わが国の将来にとって憂うべき現象であると
考えます。いまここに
昭和十五年から十六年、だいぶ古い話でありまして、私なんかちょうど中学生であったのであります。すなわち、三国同盟成立時代の新聞と
衆議院の
予算委員会における当時の会議録、これは
総理、持ってきておりますのであとでよく見ていただきたいと思います。これを一回見てください。まだ資料がたくさんある。整理しております。その資料によりますと、そこには最近のいわゆる北京の中華人民共和国が国連に参加をする前後、それからニクソン大統領が訪中をする前後、そういうものをこの新聞で集めております。そういうときの論調、そういう特派員の記事を集めております。また
昭和十五年から十六年にかけての
日本の代表的な新聞の日独伊三国同盟に関する論評、それからまたドイツの記事、イタリーの記事、これを集めております。それを見てみますると、そこにも書いておりますようにヒットラーを礼賛をいたしております。そうしてある新聞なんかには一面のまん中でわざわざ囲みを使って大きく「ヒ総統わが
国民に呼びかけん」というようなことを書いております。それでまた、その隣りには「同盟の世界史的意義」というのが載っておりまして、そこをちょっとまためくってみますと、「ナチス外交の真髄」、ベルリンの特派員がわざわざ特電でもってこちらに寄せております。そこには「神速・各個撃破の妙諦」、「日独
関係の強化の急務」、「獅子吼するヒトラー総統」という写真まで大きく出ております。また、「三国同盟は自然の勢」、「同志
国家の血盟」というふうな書き方でもって歴史の必然性であるごとく書いております。また、イタリーの問題に触れましては「ム首相けふ獅子吼」、「対英完勝近し」——戦争してイタリーは完全に負けた。それをその当時「対英完勝近し」と書いて、ガイダ氏の論文の特に特電でもってわざわざあげております。私は、この欧州大陸諸国との親密な
交渉接触をあおりあげております当時の新聞というものを見まして、まあ大胆な推論かもわかりませんが、これはお許しをいただきたいと思いますが、とにかく、国内政治の協調体制がくずれてきたときに、わが国は大陸諸
国家群に目を向けております。その大陸諸
国家との
関係がまた深まったときに
日本に危機が訪れるという繰り返しのあることをここで指摘したいのであります。わが国はもともと自由開放的で、経験を重んじ、気宇壮大な海洋民族
国家であります。一方、大陸諸
国家の精神構造は、専制的・思弁的なものが多く、また往々にして権力主義的、全体主義的な傾向にある国々が多いのであります。これはしょせんは他国と領土を接していることから必然的に起こるものかもわかりませんが、そうした大陸諸
国家に、自由開放型の海洋民族であるわが国が傾斜をしていくときに、日を経ずして摩擦を生じていることに注目したいと思うのであります。
またもう
一つは、わが
国民の
国民性という問題であります。戦後のいわゆる最近の新聞、それを見ていただきましても、また戦前の新聞を見ていただきましてもわかりますように、どうも
日本国民の
国民性の欠陥というものは火山的であり、台風的であって、せっかち過ぎる、付和雷同過ぎる。これは推論でありまして、私の判断で、いや、そうではない、違うという意見もあるかもわかりません。私はそういう欠陥を持っておると思います。そのために、一羽の水鳥が飛び立てば何十何百羽の水鳥がゆえなく飛び立つごとく、朝野をあげて大陸的全体主義へとなだれのごとく殺到しているのでありまして、かてて加えて、そのことが歴史の必然性であるがごとき論評がなされております。どうですか、
総理、ごらんになりまして、ちょうどそこの記事は
昭和十五、六年ごろの日・独・伊三国同盟があたかも歴史の必然性であり、新しい世界の大勢のごとくいわれた当時のわが国の情勢と現在の日中論議が、歴史は繰り返すのことわざのとおり、あまりにも軌を一にしているのに驚くものであります。私も日中
関係が一日も早く正常化されることを熱願する一人です。かつ、このようなことを言えば、いまもちょっとここで聞きましたが、日中
関係に水をさすものだとかいうことで確かに御批判もあり、大騒ぎをする勢力のあることも十分知っておりますが、あえて申し上げなければならない。私はそれほどにこうした風潮はわが国の大きな危機としてとらえておるからであります。
総理の御所見を承っておきたいと思います。