○田代富士男君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま提案
理由の
趣旨説明がありました
国鉄関係二
法案につきまして、
総理並びに関係各大臣に若干の
質問をいたします。
さて
佐藤総理、あなたが
総理に就任した
昭和三十九年十一月には、東海道新幹線が開業してすでに二カ月たっており、たいへん好評を博しておりました。
鉄道出身の
総理としても、まことに鼻高々ではなかったかと思います。しかし、同時に
昭和三十九年は、
国鉄が今日のようなばく大な
赤字を生み出した第一歩の年でもありました。以来
総理は、在任八年近くになりますが、その間、
国鉄財政はついに好転することができなかったのであります。現在では
国鉄の
累積赤字は八千億円をこえ、
長期借り入れ金は実に三兆円となり、その一日の支払い利子が何と六億円以上という、まことに信じられないような数字が示されております。もしこれが民間企業であるならば、すでに倒産のうき目にあっていることは間違いありません。
国鉄がこのような財政危機を招いた根本原因は何か、また、労使の相互不信や、たび重なる踏切事故、あるいは新幹線反対運動等は何を意味するのか、このような
国鉄問題の本質にメスを入れることは、そのまま、今日の佐藤政権の体制にメスを入れることになると
確信するものであります。
国鉄に関する問題点を大きく二つに分けるならば、一つは、
わが国における
総合交通体系との問題であり、二つには、
国鉄自身の内部問題であります。
今日、
国鉄の
赤字財政の最大の原因は、モータリゼーションの著しい進展があげられます。一般道路や高速道路の発達と関連して自動車が何の規制も受けないまま野放し状態で増加しております。中でも、トラックの性能はすばらしく向上し、
鉄道輸送に比較して迅速性に富み、小回りがきき、相当の大きさの荷物まで
鉄道にかわって輸送できるようになりました。そのため
国鉄は、戦前、戦後を通じてすべての輸送機関に対して優位を誇ったいわば
鉄道万能の時代がありましたが、現在の
国鉄は、次第にその首位の座を引きずりおろされてしまったのであります。しかも戦後の民間航空の発達は目をみはるものがあり時間、距離を大幅に短縮し、
国鉄に大きな脅威を与えました。こうした現象は、
昭和三十年代、
国鉄が
黒字を続けていたころからすでに予想されておりました。先進諸国においてもその例が見られたのであります。しかしながら、
政府は、今日まで日本全体の輸送体系の中における
鉄道、自動車、航空機、内航海運、カーフェリー等のバランスを考えず、特に
国鉄に対しては無為に過ごしてきたことは明らかであります。その結果招来した
赤字は、あくまでも、
政府において解消すべき
責任があると思うのであります。
政府は、陸、海、空、それぞれの輸送機関の特徴を十分に生かし、その中に占める
鉄道の
役割り等、輸送体系のあり方をもっと明確に示すべきではないでしょうか。その一つの考え方として、
政府は、
さきに「
総合交通体系について」と題し、その大綱を発表したのであります。ところが、これと表裏一体の関係にある新全総が再検討を求められているおりから、この際、
政府は、現在の
総合交通体系を改め、より具体的で説得力のある
総合交通政策を
確立すべきではないかと考えるものであります。その
総合交通政策の中には、今日の
国鉄がかかえている財政問題をはじめとする諸問題をも十分に考慮すべきであると考えますが、
総理並びに
運輸大臣の
方針を
お尋ねいたします。
次に、
さきの
国鉄財政再建推進
会議によって、
鉄道の将来の方向として示された三つの
分野、すなわち、
都市間旅客輸送と中長距離大量
貨物輸送、さらには
大都市通勤・
通学輸送についてであります。
国鉄は、この三つの方向に、この三年間どれほどの
伸びを示すことができたというのでありましょうか。中でも
大都市の
通勤・
通学者が毎日悩まされているラッシュについては、一体どのような
対策を立ててきたのか全く疑わしい限りであります。これらの点について、
運輸大臣はいかがお考えでありますか、お伺いいたします。
また、特別
措置法の
改正についてお伺いしたい。
この
法律が三年前に
成立したとき、
政府は、この
法律を基本に
昭和五十四
年度を目標
年度として、今後の十年間の
政府と
国鉄の経営
努力を
国民の前に約束したのであります。ところが、今回の
改正に至っては、三年前よりも
国鉄にとって諸条件はよりきびしいものになっているにもかかわらず、
現状の認識はおろか、発想の転換においてすら、進歩の
あとが見られないのであります。これでは、また三年たったら同じ
改正を繰り返すことは必至であり、これによって私は、
佐藤内閣に
政策なしの感を一そう深めるに至ったのであります。
そこで
政府にお伺いしたいことは、
財政措置法
改定の真の意味は何か、また、
改定せざるを得なくなった
政府の反省とその
責任をどう考えておらられるのか、また、三年前「これで
再建のめど立った」と言明した
政府の
発言を三年後の今日どのように考えておられるか、
総理並びに
運輸大臣にお伺いいたします。
次に、
国鉄の内部問題についてであります。
まず第一に、
国鉄自身の
合理化とは何をさしているのか、また、それはどのようなスケジュールで実行されるのか、昨年はマル生運動で労使間にさらに大きなみぞを生じ、ついには職員局長の更迭にまで
発展したのであります。最近においては、
国民に多大の迷惑をかけたATS闘争についてもきびしく
世論の
批判があったばかりであります。経営危機の
国鉄にとっていまが最も大事なときであり、何よりも労使の団結と
協力がなければ、この危機を乗り越えることは不可能なはずであります。こうしたときに、人員の削減については、労働組合との間にいかなる
協力体制を組むつもりなのか。また、
赤字線については、今後どのように考えていくのか、
総理並びに
運輸大臣にお伺いいたします。
次に、わが党の調査によっても明らかになったように、
国鉄の所有地には、全国に数多くの未利用地がありました。また、先日の参議院決算委員会においてわが党議員から指摘があったように、不法に占拠されたまま二十数年にわたって放置されていた土地があります。しかもその額は、時価数百億円というばく大なものであります。これは、
国鉄が明らかに財政問題について真剣に考えていない証拠ではありませんか。
国鉄は土地問題に限らず、みずからが真剣に財政問題に取り組んでいかねばならないと思います。
総理並びに
運輸大臣の御
所見を承りたいと思うのであります。
次に、
国鉄運賃が
値上げされると
国民生活が著しく圧迫されることは間違いありません。今日の
国鉄の財政危機は、どこまでもその原因をつくった
政府と
国鉄が
責任を負うべきであります。なぜかならば、経営をまかされているのは
国鉄自身であり、それを監督すべき立場にあるのは
政府だからであります。その
政府は、
物価高に悩む
国民にいかにしてこの
運賃値上げを納得させるつもりなのか。また、
値上げは、乗客の利用を抑制し、所期の収入があがらないのは過去の例からも明らかであります。
値上げが
再建にあまり寄与できないのではないかと考えるが、
総理並びに
運輸大臣にお伺いいたします。
この三年間、
国民は高い
運賃を
負担してきました。この
国民が果たしてきた
責任分担に対して、
政府として報いるためにも、そしてまた今後の
運賃値上げを抑制するためにも、
政府は抜本的な財政援助の
増額をすべきであります。しかし、
国鉄並びに
政府は、この三年間にどれほどの
努力を払って
国鉄再建のために尽くしてきたでしょうか、
総理並びに
運輸大臣にお伺いいたします。
また、
国鉄財政がこれほどまでに疲弊したその
責任はどこにあるのか。
政府が財政援助をしなければならなくなったことは、むしろおそきに失したのではないか。なぜもっと早い段階で財政援助に踏み切ることができなかったのか。現在、
国鉄において関係企業への進出等についていろいろ検討されていると思いますが、このことについて
政府が何らかの援助をしていくべきではないか。また、
総合交通政策確立の上からも、財政援助こそその推進力となるのではないかと考えるものでありますが、
大蔵大臣並びに
運輸大臣にお伺いいたします。
鉄道に対する
政府の財政援助については、たとえばフランス国有
鉄道においては、
政府が
欠損の全額を補てんする
方針をとっております。
わが国にこうした
政策が
確立されていないこと自体、
政府の大きな
責任問題でもあると考えるものであります。少しばかりの援助をもって事足れりとするような考えを改めるべきであると思いますが、
総理並びに
大蔵大臣にお伺いいたします。
次に、
受益者負担についてお伺いします。
運賃は、あくまでも
国民生活の安定を大前提に、その
負担能力に応じおのずから限界を設けてしかるべきであると考えるものであります。それを
受益者負担ということで説明しようとするのは、明らかに不合理なものと言わざるを得ないのであります。なぜならば、直接の受益者だけでまかなわれている施設あるいは企業は少なく、運輸に関するほとんどの設備なり基本的施設は国の力によって建設、維持されているのが通例であります。空港、港湾、道路、その他幾らでもあげることができるのであり、
受益者負担をたてにすることがいかに不合理な論理であるか、これほど明々赫々たるものはないと強く訴えるものであります。
受益者負担に関する限界について、
総理並びに
大蔵大臣の
所見をお伺いしたい。
次に、並行私鉄との格差についてお伺いします。私鉄との著しい
運賃格差を生ずる今回の
運賃値上げは、いまでさえ混雑のひどい私鉄にますます乗客が殺到し、ラッシュ時におきましては、もはや殺人的な混雑度になることは火を見るよりも明らかであります。また逆に、こうしたことが私鉄
運賃の再
値上げにつながることも明らかであり、その他の
交通機関においても
値上げの要求があり、
国民生活は苦しくなる一方であります。
政府は、
国鉄の
運賃値上げが及ぼす影響について、直接、間接にどのようにあらわれてくると考えておられるのか。また、それらについてはいかなる
対策を持っておられるのか。
総理並びに
経済企画庁長官にお伺いいたします。
次に、新幹線についてであります。
今月初めには、
鉄道建設
審議会も開かれ、これによって全国新幹線時代の第一歩を踏み出したと言っても過言ではありません。しかし同時に、新幹線にはさまざまな問題が未解決のまま残されております。新幹線公害といわれるものであります。
政府は、地域に及ぼす振動、騒音、電波障害、地盤沈下、また都市
計画の変更等に対して、いかなる解決策をもって臨まんとしているのか。また、次の問題は、いわゆる建設費とその後の経費のあり方であります。経費のかさむ新幹線を健全に経営し、安全快適な旅行を保障するには、どうしても
政府が十分な援助の手を差し伸べていかなければならないことは言うまでもないことでありましょう。
政府は、この二つの問題点について、すなわち、公害と建設並びに経営について、明快なる
方針を持っておられるのかどうか。
総理並びに
運輸大臣に御
所見をお伺いいたします。
以上、幾つかの問題点を指摘いたしましたが、問題はこれにとどまりません。まだまだ考えなければならないことも多々あると思いますが、
政府の明快にして、真摯なる御
答弁を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕