○和田静夫君 私は、
日本社会党を代表して、
昭和四十七
年度地方財政計画並びに
地方税法改正案について、若干
質問をいたします。
いわゆるドルショック、
円切り上げ問題を契機にして、
産業重点から福祉重点へ、輸出貿易
中心の資源配分から公共部門
中心のそれへという政策転換は、いまや世論と化しておりますし、
政府もまたその必要性を強調してきたところであります。しかるに、この政策転換のかなめである地方自治体の
財政状態は一向に変わっていないばかりか、不況のあおりを食いまして、きびしい
財源不足におちいっているのであります。
私は、
政府がいま述べた政策転換をほんとうになそうとするのであったならば、従来からの積み上げ数値の上にまた数値を積み上げるというやり方で済むものではなく、地方自主
財源の増強という方向でのかなり抜本的な税
財政制度の改定、
財源再配分の
措置が必要であったと思うのであります。この点について、まず
総理の御所見をお聞きをいたしたいと思います。同時に、ごみ戦争、打ち続く
公害を前に、
総理の地方
財政についてのビジョンを伺いたいと思います。
次に、超過
負担の問題であります。
昭和四十七
年度地方財政計画においては、投資的経費のうち、
国庫補助金を伴わない一般事業費、特別事業費、いわゆる単独事業費についても相当の額を算入したとされております。一般事業費の伸びは二〇・二%、特別事業費のそれは二四・五%でありますから、
財政事情悪化のもとでなるほどと言ってあげたいところでありますが、そこに明確な数値の虚構性があるのであります。現在、地方議会は
御存じのとおり、来
年度の
予算審議に入っておりますが、その
内容を一部伝えられるところによって見ますと、国庫補助、
負担金の増大に伴い、地方
予算の面において公共事業費が増大をし、また、単独事業費の確保についても相当努力している
あとがうかがわれるにもかかわらず、国がみずから国と地方との間における
財政秩序を踏みにじっている結果、膨大な超過
負担をかかえて単独事業費が有効に本来の
目的に沿って使用され得ない。すなわち、単独事業費が補助事業に食われてしまうという
状況であります。もちろん、このような傾向は今日始まったことではありませんが、来
年度は国の補助事業が
国債を
財源としていること、事業量が膨大なことなどの事情により特に顕著になっているのであります。しかも、土地価格に対する政策不在、資材費の値上がりなどを
考え合わせますと、超過
負担の圧迫はますます増大していくものと思われます。昨年末、全国知事
会議は、地方超過
負担の解消のための補助金
改善に関する要望書を提出をしました。その中で、なお、二千億円をこえる超過
負担があると
指摘をしております。中でも、警察行政費補助金にかかわるもの、公立文教施設整備費補助金にかかわるもの、これがたいへん大きいのでありますが、この問題について国家公安委員長、文部
大臣の所見を伺うと同時に、超過
負担解消についての
大蔵、自治両
大臣の
考え方を明確にしていただきたいと思います。
次に、地方債増額に伴う問題であります。
昭和四十七
年度の
政府の地方
財政対策におきましては、起債のワクは四千九百億円も増額されており、地方債計画の規模は一兆七千億円という大型計画となっております。この増額分四千九百億円のうち三千五百億円は
財源不足対策分であります。すなわち、本来なら
地方交付税をもって付与される
財源を削って、地方債に切りかえた分がこの中に含まれているのであります。
地方交付税算定における単位費用の据え置き、事業費補正の削減などにより、二千五、六百億円もの金が地方債に切りかえられているということであります。少なくともこの分については、将来国の
予算で
措置すべきである。現に
昭和四十一
年度の特別事業債に対しては、後年、償還交付金
制度が設けられているのでありますから、この点について
大蔵大臣の明確な前向きの答弁を期待をいたしたいと思います。
また、増額された起債は、都道府県、大
都市を重点に配分されることとなっております。東京都及び大府県、大
都市は、税収等が著しく落ち込んでいるにもかかわらず、一般
財源の補てんは皆無にひとしく、
都市的投資需要の多くは起債にたよらざるを得ない
状況なのであります。これらの地方団体の歳入構成において一般
財源割合が低下をし、地方債比率が高まるということは、一体何を意味するでありましょうか。起債許可権が自治省にある以上、それは地方自治体に対する国の行
財政的干渉を深めるということであります。このことは、一昨年、職員ベ・ア問題で起こった美濃部都知事に対する自治
大臣の干渉に見るまでもなく、ひとしく自治体関係者が不満としているところであります。言うまでもなく、地方自治法二百五十条は、「当分の間」の
措置として起債許可
制度を規定しているのであり、「当分の間」がいまや二十数年になろうとしているとき、自治
大臣は、直ちにこの条文を削除し、地方自治の本旨にのっとった
制度を確立すべきであると私は思いますが、
いかがですか。
いま、きびしい住民的監視の中で、自治体が無
原則なことをやるような状態には置かれていません。しかも、
金融市場においては資金がだぶついています。こうした中で、地方自治体に、自由に借金する権利さえ与えられていないということは、たいへんおかしな話でありますが、
総理のこの点についての率直な御意見を承りたいのであります。
次に、
地方税法の
改正案に関連してお尋ねいたします。
昭和四十六年七月
税制調査会の「
長期税制の
あり方についての
答申」は、「
法人税の
負担水準を見ると、
昭和三十年代に比べ引き下げられており、また、欧米諸国のそれに比べて必ずしも高いとは言えない
実情にある。今後、わが国の経済が相応の成長を続けるとした場合、
法人税については、税体系上少なくとも従来と同じ役割りを期待すべきものと
考える」と述べ、
法人税の増強を示唆しております。資源配分を、公共投資、特に社会福祉に重点的に行なうという政策転換の要請の中で、いまこそ
法人税を増強し、その分を
住民税法人税割りに回すべきだと
考えます。わが党は、道府県民税
法人割りの標準
税率百分の五・八を百分の八に、市町村民税
法人税割りの
税率百分の九・一を百分の一五に
引き上げるべきだという
考え方を持っておりますが、この点について自治
大臣はどのようにお
考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
総理、冒頭述べましたように、あなたがほんとうに
産業中心から福祉
中心、という政策転換を行なおうというのであるならば、なぜ
法人税を増強し、それを
住民税に回すという具体的
措置をおとりにならないのか。そうでもしない限り、
産業投資需要に若干でも抵抗することはできません。円の再切り上げという
事態になるであろうということを、私は、ここではっきりと警告をしておきます。それとも、円の再切り上げは絶対にないと
総理は断言をされますか。明確な答弁を求めます。
次に、
事業税。今回、二以上の都道府県にまたがって、事務所または事業所を設けて事業を行なっている電気供給業にかかる
事業税、その道府県間の案分
方法を改定して、発電所所在府県に税配分を厚くし、
公害対策費に充てさせようとしているようでありますが、このことによって、東京都を
中心とした大
都市財源が減るのであります。
税制調査会の「
長期税制の
あり方についての
答申」も「
地方税源とくに
都市税源の
充実」をうたっているところでもあり、こうした
措置をとる以上、何らかの
都市税源
充実の方途が示されるべきだと思いますが、自治
大臣、お答えをいただきます。電気ガス税については、池田
総理以来、
佐藤総理も、この場で、私のかつての
質問について、悪税であることを認めつつ、しかし、いまだに
廃止に至っていないことはまことに遺憾であります。それならばせめて、製品単価三%以上のものに対する特例
措置ぐらいは
廃止すべきではありませんか。電気ガス税を地方
財源確保の面から
廃止できないのであるならば、それならばいっそ観点を変えて、大口電気使用者は特約料金で一般家庭より安くなっている不公平を取り除いて、そこから浮いた分を地方
財源に回すか、一般家庭の
負担軽減措置に回すか、その点について重ねて自治
大臣の御所見を承ります。
最後に、自治
大臣に
質問いたします。
私は議員
生活を始めて三年間、地方
財政計画額と実際の決算額との一兆円をこえる開きを地方
財政計画の存在理由にまで突き詰めて何回か問題にしてきたつもりであります。これに答えて自治省は確かに若干の
改善措置をとったようであります。しかし自治省が、この問題をまさに官僚的に、計画策定技術上の問題に解消しているために、根本にかかわることが直されておらないのであります。計画額と決算額の開きは相変わらず一兆円をこえたまま、一向に縮まる気配がないのであります。ここに、この問題の根本にかかわることの
一つとして、職員定員の扱いをあげることができます。すなわち、地方
財政計画は、職員定員について、国の政策に準じ、きわめて形式的に三年間五%減の定員削減を計画に織り込んでいることであります。しかるに、自治体の仕事は現実に
御存じのとおりにふえていっており、したがって、職員数もふえていっている。公務員数の増大は、行政
改革の荒療治が断行されない限り避けられないというのが先進諸国の例ではありませんか。行政
改革には何ら
佐藤内閣は手がつけられないくせに、観念的に、形式的に五%削減などと言っている。これが
佐藤内閣であります。それをまたまた形式的に地方
財政計画に織り込んでいるのでありますから、計画と実態とが遊離するのがあたりまえでありましょう。最近二、三年ごとに行なわれる規模是正と称する数値の置きかえ
措置がなかったならば、一体どういうことになるでありましょうか。地方
財政計画などなくなっているのではないでしょうか。すなわち、計画上、清掃関係職員や
公害関係職員の数について若干の増加を見込んでも、地方で毎年一万人に近い削減をきわめて
機械的に行なっている。したがって、給与関係経費を
中心に、計画と実態は非常な規模で離れることになります。そうすると計画そのものの存在理由が問われるというので、規模是正というつじつま合わせをやる。こうしてやっと命脈を保っているのが地方
財政計画ではないでしょうか。三年間定員五%削減の五%という数値にどういう理論的根拠があると言われるのでしょうか。どういう科学的実態調査が介在していると言われるのでしょうか。そして、これを
機械的に織り込んでできた地方
財政計画上の数値を、どうして誇らしげに理論数値などと呼ぶことができるでしょうか。気どった言い方はこの際やめるべきであります。
私がここで問題にしたいのは、地方
財政計画の策定技術上の形式性や、官僚的に気どった言い方ではもちろんありません。私が真に問題にしているのは、こうしたやり方でつくる地方
財政計画によって地方自治にワク組みを与えようとする自治省の官僚的意図であります。政治的意図であります。自治
大臣、こうしたやり方を改めるつもりはありませんか。特に、
佐藤内閣になって初めて専門的な知識をお持ちになっている自治
大臣の登場でありますから、あなたがこのことをやらなかったならばできないのだと私は思うのであります。
私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕