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1972-02-02 第68回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年二月二日(水曜日)    午前十時八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第四号   昭和四十七年二月二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  第二 参議院予備金支出の件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。二宮文造君。    〔二宮文造君登壇、拍手
  3. 二宮文造

    二宮文造君 公明党を代表して、さき施政方針演説などについて、内政中心に数点質問をいたします。  御承知のように、いま、いわゆるポスト佐藤論議がまことにはなやかであります。その意味では、この第六十八回通常国会は、転換期を迎えたわが国内政外交にわたる一切の論議が、ポスト佐藤論議の渦の中で進められることにその特色があると言えましょう。  昭和三十九年十一月九日政権の座について以来すでに七年余り、連続政権担当者として、わが国の戦前戦後を通じての最長記録を残した佐藤総理であります。総理にも、私どもにも、また国民各位も、それぞれの立場から万感胸中に去来するものがあると信じますが、また、こうしたおりからでこそ、政治とはどうあるべきかをともに再検討すべき絶好の機会かと思います。  総理、七年前、総裁公選に立候補したときのことを思い起こしていただきたい。総理は、声明文を発表して、第一に、池田首相所得倍増政策は大きなひずみを生じ、自主性のある外交は展開されず、池田時代は終わった、第二に、繁栄の中に失われた人間性を取り戻し、総合的な社会開発計画のもとに、家庭の主婦、中小企業、農民などに愛情のある政治を実現する、と天下に公約したのであります。国政の最高責任者を目ざす者として、まことに情感あふれた公約であります。しかし、問題は実行です、すでに七年の歳月は経過しました。そして、この声明文のきわめて少ない字句、たとえば「池田」というのを「佐藤」と置きかえただけで、そのまま今日の佐藤政治批判としてまかり通るのであります。総理には、戦後の幾多懸案事項を処理してきたとの自負心もありましょう。だがその前に、果たし得なかった公約国民の願望と期待に沿い得なかった点について、率直にその見解を明らかにしてこそ、責任者としての総理の襟度を示すものと考えます。また、今日、国民各位政治不信はきわめて抜きがたいものがあります。各種世論調査にあらわれた内閣支持率低下政党支持率に見る無関心層増加、あるいは選挙においての棄権率拡大など、国民不在の姿は日々に強まっております。一方、このような脱政治、脱政党の強い意識の中で、住民のみずからの手による公害反対消費者運動、そのほか、まことに多角的な反対運動全国各地で高まりを見せておりますことも周知のとおりであります。このことは、長期保守政権に対するむなしさ、政権交代とはいっても、しょせん、それは国民の手の届かない自民党というコップの中のあらしにすぎないではないかとの倦怠感、あわせて、私ども野党に対する無力感等々に基因するものであります。さきの声明に顧みて、またこの風潮に照らして、総理はどのように受け取られるか、まず、その所信を伺いたいのであります。  特に緊急の課題は、政治資金規正法の改正であります。もはや政党のエゴイズムで政治資金の規制を意図的に放置することは許されません。抜本的な改正案を提出して政党のあり方を世に問い、もってその政治責任を果たすべきであると思いますが、どうですか。(拍手)  なお、この際、沖繩返還にかんがみて選挙事犯の恩赦を検討しているやの風聞がしきりでありますが、これほど返還の意義を曲げるものはありません。あわせて総理見解を伺いたい。  さらに、憲法に規定するとおり、内閣総理大臣国務大臣を任命します。臨時行政調査会は、三十九年九月——総理就任直前でありますが——内閣の運営について答申をして、第一に、国務大臣には、内閣の統一ある行政を担当し得るような適材を充てること、第二に、戦後の国務大臣平均在任期間は九カ月であり、内閣政策及び行政方針継続性を阻害し、施策も近視眼的になりやすいことなど、改善を指摘をいたしております。総理は、この七年間に延べ百五十六名、重複を除いても百十名の国務大臣を任命し、大臣製造で新記録をつくりましたが、総辞職ないしは改造による各大臣在任期間は、順次、七カ月、一年二カ月、四カ月、一年、次も一年、一年一カ月、一年五カ月で、この臨調のせっかくの答申を無視した形となっております。また、放言などによる大臣引責辞職はあとを断たない状況であります。  また、佐藤内閣は、この七年間に、戦後の幾多の懸案事項を処理してきたといわれております。しかし、それは国民各位記憶に新しいように、国会において、すべて質疑打ち切りか、強行採決か、数を頼むいわゆる力の論理による結果であります。ILO八十七号条約批准農地報償日韓条約、二度にわたる健康保険法関係国鉄運賃改正国家公務員総定員法大学管理法防衛庁設置法地方公務員定年制法教特法さき沖繩返還協定等々、「寛容と調和」を宣言した総理であったはずですが、衆参両院において、無慮三十二回にわたって質疑打ち切り、採決を強行したのであります。ここで総理に伺いたい。  第一点は、総理国務大臣一体性並び指揮監督に当たるべき総理大臣責任をどう自覚すべきか。  第二点は、自民党総裁として、今後とも強行採決国会運営において欠かすことのできない必要悪かどうか。答弁をいただきたいのであります。  四十七年度一般会計予算は、景気と福祉の二本立てということで、十一兆四千七百四億円となりました。前年度に比べて二兆五百六十一億円の増加であります。十年前の三十六年度は、まるまる一年間の予算規模が一兆九千五百二十八億円であったことを思いますとき、いかに高度成長を遂げた日本とはいえ、インフレの姿をまざまざと見せつけるような大型予算であります。しかも、その中身は、戦時中の水準にまでふくらませた、一兆九千五百億円にものぼる国債発行と、物価高を調整するために必要な所得税一般減税の見送り、国鉄運賃国立大学授業料医療費など一連の公共料金値上げによる国民負担増加であります。  国民福祉向上は、言うまでもなく政府の義務であります。具体的には、社会保障の充実、公害対策の強化、物価安定の推進、社会資本整備がその内容と言えましょう。ところが、長い間の自民党政権のもとで生産第一主義、輸出至上主義の、いわゆる大資本、大企業向け高度成長政策のために押し流されて顧みられなかったのであります。当然の結果として生産設備はふえ、国民総生産は上昇し、輸出は伸び、日銀のドル資産は百七十億ドルをこえましたが、反面、エコノミック・アニマル、公害日本の批判を受け、農業は落ち込み、中小企業の倒産は激しく、社会保障は立ちおくれ、住宅公園下水道整備も進まず、国民生活は、政府の称する経済大国の名にはまことにふさわしくない現況であります。人間尊重経済成長のひずみ是正を公約した総理ですが、ことばだけを先取りしたのではないかとの印象を深くします。  そこで、社会保障について政府は、今回、老人対策飛躍的拡充とか、施設の充実、年金改善等々、福祉向上に遺憾のないことを期していると説明をしております。しかし、老齢福祉年金月額千円引き上げたとはいえ、ラーメン一ぱいが百円もするこの世の中で、一日当たりわずかに三十三円、支給月額は三千三百円であります。この老人福祉年金は、たしか昭和三十四年、月額一千円で発足をしたものと記憶をいたしております。その当時の予算は、たしか一兆ヨイクニ——一兆四千百九十二億円であったと記憶をいたします。一兆四千百九十二億円の予算のときに千円で発足したその国家予算が、ことしは十一兆四千億円です。単純に計算をしても、月額一万円になっても決しておかしくない。にもかかわらず、引き上げたとはいえ三千三百円であります。  老人医療費無料化も、国民各位の熱望によりまして、すでに全国三十七都道府県及び六指定都市各種の形で実施済みであり、飛躍的拡充どころか、これまでの施策の立ちおくれを追認したにすぎません。予算措置をするにしても、在来の制度に単に金額を積み上げるだけになっております。したがって、西欧各国水準に達するためにも、また国民の生きがいに寄与するためにも、早急に各般の社会保障計画を立案して、その達成に努力すべきであります。総理は、これらについて本年度中に長期計画を策定したい、このように答弁をされておりますが、当然のこととして、長期計画を立てるには、目標とその達成のための年次計画を含むと私は理解いたしますが、そう理解してよろしいかどうか、伺いたい。  また、政府老人対策は、斉合性がないといいますか、全くばらばらであります。たとえば、基準となる年齢の問題一つを取り上げてみても、厚生年金は六十歳から、国民年金は六十五歳から、老齢福祉年金は特例を除いて七十歳から、老人福祉法による健康診査は六十五歳から、そして医療費無料化は七十歳からとなっております。この点をどう是正するお考えか。また、老人福祉年金を、先ほど申し上げたような理由によりまして、せめて月額五千円支給に引き上げるべきであると思います。また、医療費無料化につきましても、その年齢を六十五歳に引き下げるべきだと思うのですが、どうでしょうか。  さらに、昭和三十四年国民年金法の制定とともに、わが国制度的には一応皆年金体制に入りました。ところで、拠出制国民年金はすでに年金支給の段階に入っておりますが、政府PR不足も手伝ってか、当時五十歳以上五十五歳以下で、高齢のために加入が任意となっておりました人たちおよそ百十万名が未加入となっているため支給を受けられない状況でありますが、これらの未加入者につきましても、そもそもが政府PR不足ということによったのでありますから、この際、特例による拠出制年金支給の道を開くべきだと思いますが、政府見解を伺いたい。  あわせて、人口構造老齢化現象出生率低下と軌を同じくするものであります。高額な出産費用負担は無視することができません。全額公費負担に踏み切るべきときであると思いますが、厚生大臣見解をお伺いしておきたいのであります。  今国会の焦点となります医療保険制度につきましては、たびたびの政府提案のように、ただ保険財政立場から小手先の対策にきゅうきゅうとして、結局は保険料値上げなど国民負担にしわ寄せするというのでは、論外と言うよりほかにありません。この際、総理の勇断をもって各制度間の総合調整を断行し、医療体系抜本的改革をあわせてはかるべきであると思いますが、所信をお伺いしておきたいと思うのであります。  福祉向上物価対策は不可欠であります。ところで、総理府統計局の速報によりますと、昨年の全国消費者物価指数年平均で六・一%の上昇となっております。総理、端的にお伺いしておきたい。銀行定期の利率は一年もので五・七五%であります。その間に物価が六・一%、一昨年のように七・七%も値上がりをしておりますと、育児にあるいは老後のためにと、将来への夢をつないで営々として貯金をしながら、その間にその利息も及ばないほど物価が上がっているのであります。この矛盾を国民各位が納得のいくように説明をしていただきたい。しかも、ことしは、一つ一つ列挙できないほどまさに値上げ洪水であります。特に今回の値上げは、公共料金メジロ押しで、いわゆる政府主導型であり、他物価便乗値上げを引き起こしやすいこと、上げ幅も大きく、また値上げの時期が集中しているなど、問題はきわめて深刻であります。その上、景気刺激大型予算が組まれた中で、政府は、四十七年度の消費者物価上昇率を五・三%と予測をしているようであります。政治を担当して最も重要なことは責任の所在であります。上昇率を五・三%とするためにはどのような対策をお立てになるのか、そしてその結果についてはだれがその責任をとるのか、この点、明確に答弁をいただきたいのであります。  また、大手業者が業界を牛耳り、あるいは各企業間の意思が通じやすくなっております。そこで勢い、企業間の協調、結果として管理価格が強まっております。現に、鉄鋼業界不況カルテル認可は、特定の商品に限るという解釈を越えた、独禁法運用の緩和と言わなければなりません。総理は、物価抑制立場から、競争促進政策をどう位置づけようとされるのか。  同様に、政府円切り上げに伴う輸入物資価格引き下げに期待し、その利益を消費者に還元して物価抑制に効果をあげようとしているようでありますが、輸入ウイスキーなどに見られますように、大手企業供給独占体制が現存して、値下がりの気配は一向に見られません。また、政府自体も、小麦による百二十億円の差額を食管会計の赤字補てんにしたり、あるいは食肉等につきましても調整金を多くするなどして、結局、その利益が消費者に還元される形にはなっていないのであります。輸入品価格追跡調査を実施するようでありますが、その値下げをどのようにして促進させるのか、あわせてお伺いをしておきたいのであります。  福祉向上への第三の問題点公害についてであります。すでに公害問題は世界的な課題となり、このまま推移をすれば三十年後には人類滅亡の危機さえもはらんでいるといわれております。また、わが国におきましても、各種公害はもとよりのこと、開発の美名に隠れた自然環境の破壊は目をおおうばかりであります。  今回の大型予算にもかかわらず、東京中心とする地盤沈下対策の一環としての観測井戸が、十本の要求額に対して五本分の千七百万円に削減され、光化学スモッグ原因究明のための実験調査費が、三億円の要求額に対してわずかに一億円となっております。  また、ごみ公害、ひいてはごみ戦争とまでいわれて、廃棄物処理に各都市はお手あげの状態であります。政府は、今回、五十一年末、ごみ戦争終戦を目ざして第三次廃棄物処理施設五カ年計画を立てて補助費八十億円を計上しておりますが、わが党の調査によりますと、焼却場の粉じんには、カドミウム、亜鉛、鉛等の重金属が多量に含まれている事実が判明したのであります。この際、地方自治体に対し、新規設備費並び施設改善費補助、プロジェクト・チームを編成してその研究費の援助、あるいは政府みずから研究機関を設置して対処すべきであると思うのでありますが、先ほどの光化学スモッグ対策等とあわせて政府見解を伺いたいのであります。  さらに、懸案の無過失賠償責任制度立法化はどうでしょうか。次の国会にはという答弁のままで貴重な時間を空費している間にも、川崎、四日市などにおきましては多くの患者の方々がとうとい命を失っているのであります。  政府は、大気、水質については考慮しているようでありますけれども、この際、公害基本法に定義した地盤沈下、騒音、悪臭などを含めた総合的な立法を検討すべきでありますが、これらについて総理並びに環境庁長官見解を伺いたいのであります。  また、宮崎県土呂久鉱山、あるいは宮崎県下の旧松尾鉱山等鉱毒事件はまことに重大であります。私ども調査によりますと、同様な事件は秋田県あるいは岐阜県などにも鉱山休廃止によりまして鉱毒流出が放置されたままとなっているのであります。政府は、この際、休廃止鉱山の総点検を実施してその対策を立てるべきであると思いますがどうですか。答弁をいただきたいのであります。  次に、具体的問題として、ポリ塩化ビフェニール、いわゆるPCBによる環境汚染健康被害についてでありますが、さきカネミ事件では認定患者千十四名、そのほかに二千名にのぼる潜在患者を出していることはすでに承知のとおりであり、まさに重金属以上に有毒であります。しかも、このPCB産業界全般にわたって現在野放しで使用されております。ノーカーボン紙印刷インキ洗濯機螢光灯、建材というように、まことに多方面にわたっているのであります。また、東京湾、大阪湾、瀬戸内海、琵琶湖、十和田湖というように、その汚染は広がっております。私ども調査をいたしました田子の浦の海底のどろからは四七〇〇PPMというおそるべき数値が検出されたのであります。  そこで政府にお伺いをいたします。  PCBによる汚染の実態をどう把握されているのか。PCB環境基準を制定する意図はないかどうか。また、人の健康に及ぼす毒性と残留基準を制定すべきであると思いますが、どうですか。  福祉向上の面から国民生活環境を立て直し、しかも、ドル・ショックによる不況からも一気に脱出しようというので、今回の一般公共事業費は二兆千四百八十四億円と予算総額の二割を占めております。中でも下水道は昨年に比べて四七・八%増、住宅一般会計だけでも二九・九%増、公園は同じく九七%増と、大幅に伸びたと政府説明をしております。しかし、下水道についてみますと、たとえこの状態で進んだとしても、現在の五カ年計画が終わる昭和五十年末の全国平均下水道普及率は、わずかに三八%にすぎません。住宅難世帯はいまなお三百万世帯、しかも、地価の高騰、高家賃、通勤に片道二時間もかかる遠距離団地増加であります。公園につきましても、四十七年を初年度とする都市公園整備五カ年計画が発足しますものの、今日、人口一人当たり公園面積は、東京では一・四二平方メートル、全国平均でも、二・四平方メートルで、都市公園法に定める六平方メートルにははるかに及びませんし、東京の場合、ニューヨークの十三分の一、ロンドンの七分の一、パリ、ハンブルグの四分の一であります。生活環境整備のおくれは歴然たるものがあります。そこで、公共事業の場合、特に問題となりますのは用地取得であり、せっかく入手したとしても土地代に二〇%かかるのは普通であり、道路、住宅となりますと、三〇%、四〇%もかかるといわれております。また、その土地価格の高騰がさらに物価を押し上げていることも事実であります。総理は、さき演説土地対策について触れておりますが、その構想を伺いたいし、また、ここで土地税制につきまして、投機抑制の面から、野放しとなっております法人所得についても規制すべきであると思いますが、この際、あわせて御説明をいただきたい。  また、土地並びに住宅政策総合調整と迅速な運用をはかるのは焦眉の急となっております。したがって、それに対応するため、総理府住宅対策本部を設置することを提案しますとともに、ニュータウン建設に伴う地元自治体財政負担の軽減、あるいは足の問題を解決しますために交通問題解決のための配慮がぜひとも必要であると思うのですが、どうでしょうか。  公園政策につきましては、事業費地元負担に依存するのでは、計画達成はまず困難であります。したがって、補助対象ワク拡大用地費補助率引き上げに努力すべきことは当然であります。また、国有農地で対象となる三千百七十五ヘクタールのうち、地方自治体公園学校等の用地として利用を希望しているのが四百六ヘクタールにのぼっていますが、この要望を受けて政府はどうなさるのか、見解を伺いたいのであります。  さらに水資源につきまして、政府調査によりますと、このまま開発を進めたとしても、昭和六十年には、京浜、京葉地域で年間三十一億トン、京阪神地域で同じく十九億トン、このほか仙台湾常磐郡山、備後、高松、東予、松山の六地域で水不足を生じ、全国で年間約五十五億トンの水の不足が予想されると警告を発しております。政府対応策を伺いたい。  なお、これに関連をしまして、今日、全国各市町村における水道料金はまことにばらばらであり、そしてまたその値上けが一連の問題とされております。たとえばその基本料金についてみますと、一番高いところでは、北海道の栗沢町では、基本料金が八立方メートルにつき九百八十円となっております。また一方安いところでは、宮城県鳴子町、長野県下諏訪町では、十立方メートルについて百円となっております。不均衡もはなはだしいと言わなければなりません。生活と水、水道料金がこのようにばらばらでは、決してよいと見のがすわけにはいきません。この際、住民負担の均衡をはかる意味でも、政府水道料金実態調査をし、補助金等調整措置によりましてこれを是正すべきであると思いますが、見解を伺いたいのであります。  さて、今回の予算案で注目しなければならないのは、一兆九千五百億円にのぼる国債発行であります。これは、一般会計に占める国債依存度は一七%になります。昭和四十二年十二月二十五日であったと思いますが、財政制度審議会答申による国債依存率は五%。以来、政府はこの方針を堅持してきたのでありますが、四十六年度の国債発行が、補正予算を合わせて依存率一二・六%になり、来年度はさらにこれを上回るわけであります。国債残高の累積に伴いまして、当然の結果として国債費の増額を見てまいりますが、これは財政硬直化に直接つながる問題であり、結局は国民税負担の増を指向するものと見なければなりません。現に四十七年度の国債費を見ますと、四千五百五十三億円となっております。前年に比べて四二・六%の伸びを示しているのであります。これを一般会計の歳出全体に占める割合で見ましても、四十年度の〇・三%から四十七年度は三・九%と上昇をしております。また、市場における国債価格を支持しているそのための管理政策というのも重要になってまいります。国債残高が累積すればするほどこの管理政策は重要になりまして、また、金利水準とのかね合いもきわめて大事な問題になってまいるのであります。  そこで伺います。政府は、このような国債に依存した財源調達に対する基本的見解を一体どのように考えるのか。さらに、将来にわたっての国債依存率を、どの程度を目標として運用をされようとしているのか。また、先ほどの国債管理政策のめどをどこに置いて進めるのか、説明を願います。  なお、税制につきまして、所得税国税全体に占める割合は、総理が就任した三十九年度は二六・五%、それが四十六年度は三二・一%と、総理在任の七年間に五・六%も伸びております。  一方、法人税は、同じく三〇・九%から三二・五%と一・六%は伸びておりますが、所得税の伸びと比べますと問題になりません。にもかかわらず、そればかりか、今日では所得税国税全体に占める割合法人税国税全体に占める割合は、ほとんど肩を並べる位置にあるのであります。  また、納税人口も千七百十八万四千人から、四十五年度でありますけれども、二千三百七十八万九千人と大きな増加を示しているのであります。これらの数字は、佐藤総理のもとにおける税制が、所得税に過重になっていることを端的に物語るものであり、所得減税必要性を指摘するものでありますが、国債、また税制について、それぞれ総理大蔵大臣答弁を願いたいのであります。  今後わが国が指向すべき外交姿勢につきましては、すでに先般わが党の竹入委員長から総括的に展望しましたので、私は当面する外交問題に限って質問をいたします。日米協力、そしてその友好親善わが国にとって重要であることは言うまでもありません。さりとて、総理の言うように、他のいかなる国との関係にも増してと、みずからの基本方針を固定化してしまうことは、アジアひいては世界の平和を新しい視点から見直し、あわせて日米安保体制も再検討すべきであるとの今日の流動的、多極的な諸情勢からも、あるいは日本が置かれております経済交流の諸関係の上からも、適切な表現ではないと思うのであります。見方によりましては、対米追随外交を権威をもって確認したことになるのではないかと私は心配をいたします。また、総理がしばしば口にする「変化に対応する」こともかえって至難になるのではありませんでしょうか、重ねて総理の真意を伺いたい。  また、わが国最大の外交課題は日中問題であります。しかも、竹入委員長が指摘をしましたように、日中国交回復はすでに論議の段階ではなく、実行の段階でありますが、中国側は復交の原則を明示をいたしております。いまは、抽象的な、あるいは期待するにとどまるような表現に終始することなく、日中復交交渉に当たるための総理のあるいは政府基本方針を明示することが必要なだけとなっております。にもかかわらず、竹入委員長が、中国を代表する唯一の正統政府は中華人民共和国であり、台湾は中国の領土の一部であることを認めるかどうか、日台条約廃棄という前提に立っての政府間交渉は全く考えていないのかどうかと答弁を求めたのに対しまして、総理は、中国は一つであるとしながらも、日台条約については政府間交渉の過程で考えると、従来のあいまいもことした説明を繰り返しただけであります。これでは誠意ある提案と言えぬどころか、口では急務であると言いながら、その本音は事態の解決を意識的に引き延ばすものと解釈せざるを得ません。重ねて、日台条約廃棄について総理見解を伺いたいのであります。  さらに、朝鮮問題につきましての竹入質問に対しましても、政府は朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策はとっていない、日朝議連の訪朝に対して不当な干渉はしていない、訪朝した日朝議連の共同声明については知らない、貿易代表部設置についても同様である、国連第三回総会における第一九五号決議は正当な決議であり、撤回については考慮していないと答弁をしているのであります。その答弁自体がすでに敵視政策につながるものではないでしょうか。アジアの緊張緩和、それぞれの国の平和と発展のために寄与すべきわが国の選択は、このような敵視政策を排して真に善隣友好への道を開くことにあります。朝鮮問題についての総理見解を重ねて伺いたいのであります。  また、沖繩返還は五月十五日と決定をいたしました。戦前戦後を通じて異民族支配のもとに苦難の道を歩んでこられた沖繩百万の県民各位に対し重大な責任を感じますとともに、今後とも基地撤去、新しい建設への努力をともどもに進めてまいらなければなりません。  北方領土返還については、すでに国論も高まり、どのように交渉の議題にのせるかということでありますが、政府がこれまでに正式あるいは非公式を問わず返還を求める意思を表明した千島の範囲はどうか。また、クリル・アイランドにつきましては、いわゆる北・中千島を含みますクリル・アイランドについては見解はどうなのか。これまでの経過をあわせて説明をいただきたいのであります。  最後にもう一点、経済交流についてでありますが、七〇年度のわが国国民総生産は約二千億ドル、世界貿易に占めるわが国の輸出のシェアは六・九%、輸入のシェアは一二%となっております。それが、計算によりますと、一九八〇年には、国民総生産は約八千億ドル、輸出のシェアは一一・一%に、輸入のシェアは三〇%に達するやに計算をされております。経済交流の原則を自由、無差別に置くことは当然としましても、これまでのような輸出主導型の高度成長路線を続けるということは、もはや至難と言わなければなりません。軌道の修正は当然必要でありますが、また同時に、資源の大半を海外に求めるわが国は、世界各地の資源供給国との間に、銅、鉛、ニッケル、ウラン鉱などにつきまして、ガットの場を通じて資源同盟を締結する、このような提案をする者もありますけれども、これらについて総理見解をお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二宮君にお答えをいたします。  御承知のように、私は政権担当の重責をになうにあたって、社会開発人間尊重の理念を掲げました。当時の社会環境と今日の状況を比較してみますと、社会の要請は依然として基本的な点で変わっておらず、社会開発人間尊重政治はますますその必要性を増しているように思います。二宮君の御指摘は、初心に返って福祉国家の建設に真剣に取り組むべきであるということであろうかと思います。私は、かねがね、福祉なくして成長なしということを申しているのでありますが、経済社会の発展に伴って、いわゆる高度先進工業国家の課題は、人間福祉の追求ということに帰着するものと考えております。国民福祉充実こそが経済の発展、社会の進歩の源泉となるものだということであります。明年度の予算編成にあたりましても、この思想の片りんが出ているものと自負しておりますが、各位の御協力、御理解によりまして、今後一そうこの目標達成に努力する所存でございます。  次に、政治資金規正法改正については、政治あるいは選挙を浄化したいと願う国民の期待にこたえる上からもこれを実現したいという考えに変わりはありません。しかし、過去三回改正案国会に提案しいずれも廃案となった経緯もあり、今度出すとすれば必ず成立するようなものでなければならないので、これまでの国会における論議等も十分考慮して、慎重に検討を続けているところであります。いずれ、各党間の合意が得られるような、実現可能な成案を得て提案をいたしたいと思っております。  次に、沖繩返還を記念して恩赦を実施するかどうかということについては、政府として現在まで何ら具体的な検討を行なったことはございませんが、申すまでもなく、恩赦は裁判の結果を変更するという重大な効果を伴うものでありますので、その実施につきましては特に慎重を期すべきものと考えております。  次に、国務大臣責任についてどう思うかとのお尋ねがありました。大臣の失言で国民の皆さまに多大の御迷惑をおかけしたことはまことに申しわけなく、私自身その責任を痛感しております。今後、内閣を引き締め、厳重に注意するとともに、心を新たにし、内閣一体となって政治責任を遂行し、国民の負託にこたえてまいる決意であります。  次に、国会運営の問題は、国民政治に対する信頼を高めるためにも節度を重んじなければならないと思います。審議を尽くし、その上で多数決の原理に従うという原則が確立されることが望ましいと考えます。強行採決はもとより好ましいものではなく、多数党として謙虚に反省しなければなりませんが、今後とも、与野党間において、審議を尽くすための真剣な努力が払われなければならないことは申すまでもありません。  次に、社会保障につきましては、政府はその充実施策の重点とする考えであり、現在経済企画庁で策定作業を進めている新しい長期計画におきましても、国民福祉向上に重点的に配慮してまいる所存であります。なお、具体的な計画の立て方につきましては、現在検討を重ねている段階であります。  次に、二宮君から、老人対策年齢基準がばらばらになっているとの御指摘がありましたが、老人対策は広範多岐にわたっており、その目的なり趣旨によって、各施策ごとに年齢に相違を生ずることはやむを得ないのであります。  なお、老齢福祉年金の額につきましても、老人医療費無料化についても、今回いままでにない改善を行なったことを十分評価していただきたいと思います。  次に、医療保険の抜本改正につきましては、現在その具体案の策定を急いでいるところでありますが、近日中に関係審議会に諮問の上、今通常国会に提案したいと考えております。  次に、物価の問題についてお答えをいたします。  二宮君御指摘のように、消費者物価上昇が長期にわたって預金金利を大幅に上回るような状態が続くことは、国民経済的に見ても決して好ましいことではありません。このため、政府としては、従来から物価安定とその解決に最善の努力を払っているところであります。今後ともそれを続けてまいります。  最近の消費者物価の動向を見ると、生鮮食料品、工業製品を中心に、その騰勢は鈍化を見せてきており、いままでにもたびたび申し述べたように、今後とも野菜等生鮮食料品の安定的供給の確保など、各般の施策を強力に推進することにしているので、来年度の消費者物価を五・三%の上昇に押えることは十分可能と考えております。物価の安定は国民生活の安定のため最重要課題の一つであり、政府としては今後とも責任を持ってその安定に取り組んでまいる所存であります。  また、お尋ねの管理価格等については、独占禁止法の運用をはじめ、競争条件を一そう整備することなどにより、その是正につとめる方針であります。  なお、お尋ねの輸入品価格の追跡調査につきましては、主要な輸入物資価格動向につきまして追跡調査を行ない、消費者への情報提供をはかるほか、輸入価格低下の効果が加工流通段階で吸収されることのないよう、調査監視機能の強化につとめるなどの対策を進めることとしております。  お尋ねの無過失損害賠償責任についての法案は、大気汚染と水質汚濁による損害をあわせて立方化する方向で目下鋭意検討中であります。  次に、土地対策についてお答えをいたします。  最近における地価の騰貴は、基本的には宅地需給の不均衡に基づくものでありますが、さらに、土地が投機の対象となりやすく、売り控えの傾向を生じがちであることがこれに拍車をかけているものと思います。したがって、土地問題を解決するためには、投機あるいは売り控えを抑制するための施策を実施するとともに、土地利用の計画、大量の宅地供給、公的土地保有の拡大などの施策を総合的に実施することが必要であります。このような考えのもとに、政府は、従来、計画的な土地利用対策税制対策、公共用地の先行取得制度の推進など、各般の施策を講じてきたところでありますが、今後さらに、それぞれの施策の強化について検討し、総合的な土地対策を推進する方針であります。  次に、御指摘の土地税制につきましては、いろいろと技術的な困難な問題があるようではありますが、土地問題は何とか解決しなければならない急務の一つでありますから、今後とも引き続き検討を続けたいと考えております。  次に、二宮君から、総理府住宅対策本部を設置してはどうかとの御意見がありましたが、政府は、いまのところ住宅行政のための機構改革は考えておりません。  次に、国有農地の利用につきましては、公園用地、学校施設用地等の公共用途に極力活用されるよう、その売り払いについて十分の配慮をしているところであります。  また、将来の水不足対策として、産業の地方分散の促進等によって水資源の有効利用をはかるほか、広域的、長期的な展望に立った先行的な水資源開発及び合理的利用を進める方針であります。  全国水道料金でありますが、これを一斉調査してその間の調整をはかれとおっしゃること、これはまことに意義のあることでございますので、政府としても、これにつきましては十分考えたいと思っております。  次に、国債政策運営にあたっては、従来から長期的な財政の健全性、そのときどきの経済情勢、財政需要、財源事情等を総合的に勘案して適切な運営を行なってきたところであり、今後ともこの考えに変わりはありません。  次に、所得税の減税は、経済、財政事情をよくにらみ合わせながら、今後とも努力してまいりたいと考えております。  なお、税制につきましては、大蔵大臣から補足してお答えすることといたします。  次に、外交問題について、日米協力の維持増進がわが外交を固定化し、流動する国際情勢への対応を困難にするのではないかとのお尋ねでありますが、私はさようには考えておりません。わが国の平和と安全を確保し、わが国経済の発展と繁栄を達成していくためには、これまでと同様、今後におきましても、米国との間に緊密な友好と協力の関係を維持していくことが何にも増して必要であります。国際社会は目下大きく流動しつつあり、わが外交もこれに即応して、柔軟かつ多元的に展開することが要請されていることはお説のとおりであります。そのためにも、日米関係をゆるぎない堅固な基礎の上に決定的なものとしておくことが不可欠と考えるものであります。国際情勢が流動し複雑化すればするほど、日米両国の世界に対する責任と役割りはますます重きを加え、日米間の提携のきずなは一そうその必要性を増すと思うのであります。緊密で、かつ安定的な日米関係の上に立って初めて真に実り多い多面的外交が推進できるのであります。この意味におきまして、私は、わが国にとって今後とも米国との関係は、他のいかなる国との関係にも増して重要なものと確信するものであります。  次に、日華平和条約の問題につきましては、北京政府が従来からこの条約の破棄を主張していることは十分承知しておりますが、わが国としては、これをそのまま受け入れることのできないことは繰り返し明らかにしてきたとおりであります。この点につきましては、北京側にも種々の言い分があると思いますが、いずれにしても、この問題は、今後日中正常化のための政府間の話し合いが行なわれる過程の中で取り上げられ、議論されるべき問題であると考えます。話し合いを通じて妥当な解決が見出されることを心から望む次第であります。  北鮮との関係につきましては、わが国は、引き続き韓国との友好協力関係を維持増進していくことを基本方針としておりますが、しかし、これはもちろん北朝鮮敵視政策をとっていることを意味するものではありません。わが国と北朝鮮との各種の交流につきまして、これが朝鮮半島の緊張緩和に資することを期待しつつ、国際情勢の推移を見守りながら、今後とも慎重な態度でケース・バイ・ケースに対処していく方針であります。  次に、千島列島については、対日平和条約第二条(C)項に、日本がこれに対する一切の権利、権原及び請求権を放棄する旨が規定されております。歯舞群島及び色丹島については、一九六五年の日ソ共同宣言により、日ソ平和条約締結後にわが国に引き渡されることになっております。また、国後、択捉の両島については、わが国の固有の領土であり、わが国としましては、従来から一貫してその返還をソ連側に要求してきておるところであります。  最後に、わが国経済の長期的な発展をはかるためには、貿易の安定的な拡大が不可欠でありますが、今後わが国の貿易を推進するにあたっては、その質的な改善と国際摩擦の回避につとめることが肝要であると考えます。特に貿易面におきましては、輸出構造の知識集約化の推進、市場の多角化、輸入政策の積極的な活用等をはかり、さらに国際ラウンドの推進等、自由貿易を基調とした新たな国際経済秩序の確立に協力してまいらなければならないと考えております。  次に、わが国は資源の大部分を海外からの輸入に依存しておりますので、御指摘のように、資源供給国との協調関係を維持強化することが必要であると考えます。お尋ねの資源同盟問題につきましては、供給の安定化と供給地域の分散化という両面の要請を比較検討することが必要でありますので、今後資源保有国の動静を見ながら検討を続けてまいりたいと思います。  以上、私からお答えをいたしました。その他の点につきましては関係大臣から答弁することにいたします。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手
  5. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 社会保障関係の御質問に対しましては、総理からほとんどお答えがございましたので、お答えのなかった一点を私から申し上げます。  それは、拠出制の国民年金の任意加入が認められているにもかかわらず、その対象者でまだ百十万人ほど未加入者がある、これに対して特別の道を開く考えはないかというお尋ねでございますが、御承知のように、この五カ年、年金任意加入、この制度を四十五年に開きまして、そしてPRにつとめているわけでございますが、御指摘のように、百十万人余りまだ未加入者がございます。本年でその加入の期限が切れますので、本年中にできるだけPRにつとめましてその数の少なくなるようにいたしたいと存じます。同時に、どうしても任意加入をしないという方に対しましては、これは福祉年金を、総理もお答えになりましたように、今後さらに増額をはかりまして、そしてその必要性にこたえたい、かように思うわけでございます。(拍手)    〔国務大臣大石武一君登壇、拍手
  6. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 最初に、地盤沈下対策のための観測井の予算についてのお尋ねでございます。御承知のように、地盤沈下がいま日本の各地に起こりまして、しかも大規模に起こりまして、いろいろと環境を破壊しておりますことは重大な問題でございます。何とかしてこれを防いでまいらなければなりませんが、なかなかその原因がまだわかっておりません。おそらくは地下水の、ことにその大量のくみ上げが原因であろうということは大体予想されておりますが、どのような機序でその地下水の移動が行なわれるか、まだ十分にわかっておりません。いま現在、各県におきましては、そのような究明のために観測井を掘っておるところもございますけれども、何せ技術と予算が少ないためになかなか思うようにまいりません。そこで、明年度の予算には幸いに観測井設置費補助が初めて認められたわけでございまして、これは地盤沈下対策に大きな意義があるものと喜んでおる次第でございます。もちろん予算は多いに越したことはございませんけれども、来年度の五本の井戸を掘るということについても、基本的な調査はできるわけでございます。この補助を十分に活用いたしましてこの基礎的な観測を行ないまして、四十八年度からは総合的な、継続的な調査を行なってまいりたい、一日も早くこの原因を究明いたしたいと考えておる次第でございます。  それから光化学スモッグ対策として予算が少ないというお話でございましたが、これはごもっともでございます。ただ、この光化学スモッグがいま非常な勢いでふえてまいりまして、いろいろな影響を及ぼしておりますので、何とかしてそのわからない原因を早く究明いたしたいと努力いたしておるわけでございます。四十六年度におきましては幸いに、昨年の暮れでございますが、予備費から一億二千万円をいただきましたので、これで航空機による立体調査と、それから移動用スモッグ・チェンバーをいまつくっておる最中でございます。本年度は一億円の予算で人体の健康への影響とその発生源の調査についてこれを努力してまいりたいと思っております。御承知のように、さらに環境庁には今回三億五千万の研究調整費が計上されておりますので、もし足りなければここからその費用を使って十分に効果をあげてまいりたいと考えておる次第でございます。  それから廃棄物について、地方公共団体に処理設備の新設、改善の費用の補助を行なえということでございますが、これは御承知のように、昨年はこの補助が四十四億円でございましたが、本年は八十二億円、約倍近い額にふえておりますので、この金を十分利用いたしまして、厚生省とよく連絡の上に、地方自治体廃棄物処理施設の設備が円満にまいるように努力してまいりたいと思います。  また、カドミウムとか亜鉛のような有害な物質をどのように処理したらいいかということでございますが、残念ながらまだよい処理方法がございません。いまのところはため池を掘りまして、その底を漏らないように、浸透しないようにして、そこにためてふたをしておるのが現状でございます。はなはだこれは残念でございますが、この程度の日本の研究でございます。これを一日も早く解明して、これをりっぱに処置してまいるように関係各省庁ともよく研究を進めてまいりたいと考えております。  それから地盤沈下対策光化学スモッグ対策廃棄物処理対策の処理推進のために政府みずからの研究機関を持ったらよかろうというお話でございましたが、これはありがたいおすすめでございます。ただ、こういうものを、基礎的な研究を行ないますれば、膨大な大きな総合的な知識なり人力が必要でございます。したがいましてこれは、民間といわず大学といわず、すべてのあらゆる関係ある機関を動員して、総合的な基礎研究を進めることが一番大事だと考えております。そういう意味で、政府みずからの機関だけではとうていこれはできませんので、そのような広い総合的な英知を集めたいということでいま努力いたしておるわけでございます。しかし、御承知のように、政府みずからもこれを手をこまねいているわけにはまいりませんので、御承知のように、政府公害研究所が昭和四十八年度から活動することになっておりますので、一日も早くこれを進めまして、一緒にともに進んで、総合的な究明をいたしたいと考えております。  それから休廃止鉱山の鉱毒の総点検を行なえということでございます。御承知のように、この休廃止鉱山からいろいろな汚水が流れておりまして、水質をひどく汚濁しておりますことは御承知のとおりでございます。われわれはこれをこのまま見のがしてはおりませんけれども、現在では水質汚濁防止法の規制にはかかっておりません。幸いにこれは原則として鉱山保安法で規制されておりますので、通産省がいろいろ努力しております。研究をされておりますので、さらに今後とも通産省とも十分に連絡をとりまして、一日も早くこの規制が行なわれるようにしてまいりたいと考えております。  それから、だいぶございますが、PCB汚染の問題でございます。このPCBというのは、御承知のように、絶縁油とか熱媒体として広く使用されておりますが、非常に安定性の強いものでございますので、これが一度環境が汚染されたり、人体に入りますと、分解をせずに、非常にこれを取り除くことがむずかしいものでございます。したがって、これは何とかして十分に注意しなければなりません。幸いに通産省の努力によりまして、いわゆる開放性のPCBはいま製造をやめ、使用もされておりません。閉鎖性の、つまり外へ漏らないような容器内で使うPCBだけはどうしても必要でございますが、それも十分にその処理なり管理につきましては指導が行なわれまして、間違いのないように努力しておる現状でございますけれども、何せその実態がよくわかっておりません。残念ながら、このPCBの分析の方法さえまだ確立しておらない現状でございます。したがって、一日も早くこの研究を進めまして、この分析の方法をきめ、実態調査いたしまして、人体への影響、その他環境汚染の問題を究明をいたしたいと考えておる次第でございます。残念なことに、御承知のようなカネミ油症事件問題がございまして、あれがいわゆる生体実験の第一号になりました。残念でございますが、あの程度のものしかございません。一日も早く実態を確かめることに努力してまいりたいと考えておる次第でございます。  それから、この毒性の残留性基準でございますが、これは厚生省と十分に連絡をいたしまして、一日も早くそのような基準をきめてまいりたいと思います。  それから無過失賠償責任制度でございますが、先ほど総理からお話がありましたように、大気、水質の関係の損害についても十分にこれは考慮いたします。ただ、今回提案しようと考えておりますこの法案は、いわゆる人間の健康被害についてのみのものでございます。もちろん、将来は財産とかその他についてもいろいろと考えてまいらなければなりませんけれども、そういうものは実態がほとんどよくわかっておりませんので、とりあえず今回は、まず人間の健康についてのみこの制度を確立してまいりたいと考えておる次第でございます。  以上で答弁を終わります。(拍手
  7. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 厚生大臣から答弁の補足があります。斎藤厚生大臣。    〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手
  8. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 答弁漏れをいたしましてどうも申しわけございません。  二宮議員が、わが国出生率低下人口問題の点から御憂慮になっておられますことにつきましては、かねがね敬意を表している次第でございます。昨年の児童手当制度も、その一助にもなろうかと思って児童手当の制度を施行いたすことに相なったわけでございます。おっしゃいますように、分べん費を公費で負担をしたらどうだという御意見でございますが、私は、ただいまの医療保険の中で現金給付として出産手当を給付をいたしておりますが、今度の改正、先ほど総理がおっしゃいました健康保険その他の医療保険制度の給付の改善の中で、これを少し引き上げたい。こういう方法によって御趣旨の点を実現をいたしたい、かように考えておりまして、公費負担の点はちょっといまのところ考えておりませんが、それによって必要を満たしたい、かように思うので御了承をいただきたいと存じます。  なお、環境庁長官からお答えがありましたPCBの人体に及ぼす影響、私のほうも重大な関心を持っておりまするので、環境庁と一緒になってできるだけ早く基準をつくり上げたいと、かように思います。(拍手)    〔国務大臣西村英一君登壇、拍手
  9. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 二宮さんから、下水道住宅公園、しかも公園等につきましては具体的にかなりこまかい数字をあげてのお話がございました。その他、水問題も出ました。いろいろ建設行政に対してたくさんな御意見が出たわけでございますが、そのうち公園整備のことでございますが、実は都市施設のうちで最もおくれておるのは公園施設でございます。したがいまして、今回、公園整備のために都市公園整備五カ年計画を策定することもお話があったとおりでございます。  従来、公園に対しては、公園補助対象、これが全施設のうちで二一%、補助率が三分の一、こういうことであったわけでございますので、都市計画をしまして公園の絵はかいてありまするけれども、なかなかできなかったのでございます。今回のこの五カ年計画におきましては、したがいまして、補助対象を四〇%に上げまして、補助率をまた施設は二分の一にしました。用地費は従来どおり三分の一でございます。児童公園は、用地費補助対象外でございましたが、今度は補助対象の中に入れたのでございまして、国費の率は従来の倍以上になろうかと思っております。必ずしも私はそれで満足はいたしませんが、従来の倍以上でございまするから、公園施設は緊急に私は整備されるものと確信をいたしておる次第でございます。  次に、住宅はできるけれども交通機関が非常に不便じゃないか、あるいは交通機関がないじゃないかというお話もございましたが、実は大規模の宅地開発の事業をやりますと、最も私たちが要望されるのは、公共公益施設に対して当該地方公共団体が金がたくさん要るということで、財政が非常に困るということと、もう一つは住宅のために交通機関が不整備であるということでございます。したがいまして、従来も大規模の宅地開発につきましては、やはり事業主体がおもになりまして長期の立てかえの制度をやっておるとか、あるいは補助率の引き上げをやるとか、いろいろやっておりまするが、さらに四十七年度におきましては、これをそれぞれ補助率の問題あるいは補助の金額の問題等を相当強化をいたしておるつもりでございます。具体的な例といたしまして、現在進行中でございます大きい住宅団地は、御案内のとおり多摩のニュータウンでございます。あるいは泉北のニュータウン、あるいは千葉のニュータウン等ございまするが、これらにつきましてはそれらの公益公共施設整備することについても力を入れておりまするが、この交通機関につきましてはそれぞれ新しい補助制度をつくりまして、少なくともそこに住居をかまえる人の交通機関に対しては満足のいくようにしたいということで、新しい制度で交通機関の整備をいたしたような次第でございます。よろしく御了承をお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  10. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 総理の御答弁に補充してお答えいたします。  財源の調達を国債に依存するということは、御指摘のように財政の体質に関係する問題で、慎重を期すべきものであると考えます。要は、そのときどきの経済事情と財政事情と、その活用のしかたによるものであると思いますが、今回の場合は、数年も続いた好況期に順次拡大してきた公債発行限度の、余裕というものをこの不況のときに活用して、需要を喚起しようとしたものでございますので、公債政策の、これはもう基本に従ったもので、適切な財政運用であったと思われます。けれども、一七%の依存率ということは、これはもう異常なことでございまして、平常の場合に考えられる依存率ではございません。したがって、来年景気が回復する、経済情勢が変化するに従って、この依存率は切り下げをしなければならないと思っています。で、もし来年公債の依存率を切り下げることができなかったというようなことでしたら、これは昭和四十七年度、これから行なおうとする私どもの財政政策が、これは失敗であったということになるでありましょうし、来年度の公債依存度は、そういう意味政府施策のバロメーターの役割りをするものではないかと、私は思っております。また、公債の残存高の累増によって今後の管理政策がむずかしくなるという御指摘もございましたが、そのとおりでございまして、いま国民所得について大体七%前後の累積国債の比率でございますが、まあ西ドイツの三〇%とかイギリスの六〇%というものに比べますというと、まだまだ日本の公債発行高というものは少ないのでございますから、特に困難な管理政策にぶつかっているというわけではございませんが、しかし、これはやはり将来、額はどんどん累積するものでございますから、それをうまくやってのけるためには、やはり無理しないで市場で消化できる範囲にとどめるということ、それから円滑に市場で消化し得るようなやはり条件を整えるということ、それから国債をはじめ公社債がやはり円滑に発行でき、これが流通できる市場の育成ということを十分に心がける必要があると思いますので、今後の問題としては、依存率を下げることと、いま言ったような問題に配意するということが重要であろうと思います。  その次、税の問題がございましたが、これはもう所得税を漸次下げる、これは累進構造を持っておる所得税でございますから、国民所得水準が上がれば、上がるによって税は累進していく性格を持った税金でございますので、これは年々減税をやるべきものであるというふうに私どもは考えています。したがって、この四十七年度もこれはりっぱに減税をやりまして、今度の国会に審議をお願いするはずのを前国会で繰り上げて審議をお願いしたということでございまして、本年度の所得税減税効果は二千五百三十億円に及んでおるということで、いままでの自然増のあり方に比べて、例年に比べて大体均衡を失していない所得税の減税になっておると思います。今後も引き続き減税をはかるつもりでございますが、御承知のように、課税最低限ということになりますというと、アメリカに比べて夫婦子供二人で大体三十万程度、日本のほうがまだ低いということでございますが、フランスと大体同じで、ドイツ、イギリスに比べたら課税最低限は、日本の標準家庭のほうが二十万円も最低限が高くなっておるということで、この点は一応の水準まできていると思いますが、今後はやはり課税最低限の問題と、累進構造が特に強くなっておりますので、やはり、率の問題についても漸次調整するということをかねて行なう必要があるのじゃないかというふうに考えております。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 向井長年君。    〔向井長年君登壇、拍手
  12. 向井長年

    ○向井長年君 私は、民社党を代表いたしまして、さきに行なわれました総理の施政方針はじめ外務、大蔵、経企、それぞれの大臣の報告に対しまして、まず、佐藤内閣政治姿勢をはじめ外交内政の基本について質問をいたしたいと存じます。  本論に入る前に、総理はじめ政府にお願いしておきたいことは、私の質問政府与党対野党としての論議ではなく、現在国民が痛切に考え、感じている観点から率直に質問をいたしますので、これに対して政府も、今日まで誤りがあるとするならば、きょうから始まる国会で十分国民の意見を取り入れていくよう、まず冒頭に希望して本論に入りたいと思います。  第一に、自民党佐藤内閣政治姿勢についてでありますが、あなたは長年にわたり内閣を担当されてまいりました。その間、あなたが率いる閣僚が、憲法に反する言動をはじめ、法律に抵触する言動、あるいは国民を誹謗、他党を侮辱する等の発言をめぐって、野党の責任追及に対し、そのつど更迭してこられたのであります。昨年あなたが内閣を改造して以来、四人の閣僚と自民党党籍を持つ衆議院副議長の更迭が先般なされておるのであります。放言をした閣僚が辞任をすればそれで責任は済む、ということでは済まされない、簡単な問題ではないのであります。国民の声として、自民党あるいは佐藤内閣の根本的な体質の問題である。あるいは、長い間多数の上にあぐらをかいてきた、全く無秩序な佐藤内閣であると断ぜざるを得ないのであります。この一連の失態について総理は重大な責任を問われておると思います。総理、総裁としてのこの責任を何と申し開きをされますか、まずお伺いをいたしたいと思います。  次に、政治姿勢の第二点は、藤山処分問題についてであります。総理はたびたび、自民党内の問題であると言われております。私は自民党内政干渉をするものではありません。しかし、これは党の問題として済まされない問題であります。ということは、政府自民党はただいま日中国交回復の糸口を模索しておられるとき、自民党内ではまっ先に中国と接触を深め、しかも、超党派の日中議連会長として国交回復のために今日まで努力されておる藤山氏こそ、総理、総裁としても自民党としても高く評価すべきではありませんか。この措置は日中国交樹立に逆行するものであり、国際問題に端を発した問題であり、日中議連に対する挑戦であり、断じて黙視することはできないのであります。私は声を大にして佐藤総理に忠告をいたしたいのであります。これにつきましては答弁は必要ありません。  次に、外交問題につきまして総理、外務大臣質問をいたします。  昨年七月のニクソン大統領の訪中決定を転機として、中国の国連参加、さらにニクソンの日本、フランス、英国、西ドイツ、カナダ等の首脳との会談、そうして二月二十一日からの訪中、五月の訪ソと、国際情勢は目まぐるしく激動いたしております。そうして、その特徴は、戦後の世界秩序が再編成の時期を迎えていることであります。特に米中ソ三国がそれぞれの世界政策を展開し、しのぎを削っていることは周知のとおりであります。こうした中にあっていまわが国が問われていることは、非核武装の経済大国であるわが国が、今後いかなる国家目標に立ち、どのようにしてグローバルな政策を展開するかにあることは多言を要しません。特にこれまでとってきた向米一辺倒の外交路線と輸出第一主義の経済路線がもはや国際的に許されなくなった現在、この基本路線の転換と、それにかわり得るグローバルな政策の確立はまさに焦眉の急務であります。私は具体的な外交、防衛問題の質問に先立って、まず総理が、以上述べた点についていかように考えられ、またどのような政策を展開されんとするのかお伺いいたします。  総理は去る一月六、七日の両日、アメリカのサンクレメンテにおいてニクソン大統領と会談され、その際の共同声明等を通して、日米両国間の相互信頼と相互依頼を強調されております。しかし、結論からいって、戦後日米関係がこれほど悪化した時期はありません。特にアメリカは、頭越しの米中接近、さらにはニクソン・ドクトリン、沖繩返還等によって、いわば平和の使徒としての役割りを演じつつあるのであります。しかしその反面、日本はどういう立場にただいま置かれているのでありましょうか。それは単に頭越しのショックを受けただけではありません。たとえば沖繩返還に伴う久保・カーチス協定等によって自衛隊の大規模な配備を約束づけられ、そのため、わが国は、いわゆる軍国主義復活の具体的証例として中国などから非難される等、いわばアジアの悪役を演じさせられている羽目となっております。平和の使途とアジアの悪役、これでどうして対等の信頼関係と言えるのでありましょうか。また、アンダーソン秘密文書として暴露されたアメリカ大使館筋における見解をはじめとする米国政府並びに議会におけるいわゆる日本核武装論の台頭はきわめて重大であります。これはまさに対日不信の象徴にほかなりません。これで、どうして総理の言うように相互理解と言えましょうか。総理が最も重視し、対米追随という国民批判を無視してしがみついてきたアメリカとの関係が、このようにいまや戦後最大の危機に直面していることは、悲劇というよりもむしろ喜劇と言うべきでありましょう。総理はこれをどのように受けとめられているのか、お伺いいたしたいのであります。  次に、中国関係についてお伺いいたしますが、米中ソの三極時代が本格化しつつある現在、好むと好まざるとにかかわらず中国との国交正常化は不可欠の課題であります。これなくしてわが国が三極時代に対応することはできません。これは台湾の蒋総統との信義ということを越えた問題であり、蒋総統との信義のためにわが国の国益をそこない、わが国が国際的に孤立化することは断じて許されません。このことは総理自身がかつて認められたことにほかなりません。すなわち、総理が去る三十九年十一月初めて政権を握られたとき、その記者会見で総理は、当時問題となっていた日韓交渉と並んで、中国問題は佐藤内閣の最大の使命と大みえを切られ、さらに付言して総理が言明されたことは、「蒋総統が終戦時に示した好意が日本国民の生き方を縛るものとは考えない。蒋総統にはたいへん感謝しているけれども、そういう感情論でこの問題を片づけることはできない」と決意を披瀝されておるのであります。自来七年有余を経ましたが、最大の使命であったはずの中国問題はほとんど全く前進しないどころか、国民世論に反して、池田内閣よりも悪化しているのが現実であります。総理はこの政治責任公約違反をどのように考えていられるのか、所信伺いたいのであります。  そこで、現在必要なことは、百の議論でなく、一つの具体的行動であります。特に中国に対して延べ払いに対する輸銀資金の使用、ココムの全廃、円元決済の実現、あるいは航空、郵便等の業務協定の締結がそれであり、また、国連における中国非難決議の廃棄、あるいは各種国際機関への中国招請もその一環であります。これらの具体的行動を一つ一つ積み上げていくことが日中相互理解の大前提であり、中国の対日不信を解消するかぎであると私は確信いたしますが、総理は、在任中これらの課題のうちどれとどれを解決せんとしているのか、お伺いいたしたいのであります。  なお、福田外務大臣は、昨年末からたびたび、中国問題についてはまっ正面から取り組みたいと言明されているが、これまた、何からどのようにして具体的に取り組むのか、御意見を伺いたいのであります。  次に、日ソ関係でありますが、先日来、ソ連のグロムイコ外相会談による共同声明は、日ソ関係の新しい発展を切り開くものとして私は評価いたします。特に平和条約交渉は、当然北方領土交渉を含む点で、一歩前進と言えると思います。しかし、その内容は難問題ばかりなのであります。三極化時代において日ソ関係は新たな重要問題を帯びてきたと思います。  ここで一点、北方領土問題についてのみお伺いいたします。総理は、記者会見等を通じて、沖繩返還が確立した今日、次の問題は北方領土の返還であり、訪ソ予定のニクソン大統領にも依頼した、と述べておりますが、総理は、在任中この問題についてどこまで努力されんとしているのか、また、それを含めて、この際訪ソされるように聞いておりますけれども、いつごろの予定であるのか、所信を承りたいのであります。  次に、沖繩問題について一点だけお伺いいたします。それは通貨交換問題についてであります。復帰を目前にして、この問題はまことに深刻な一途をたどり、混乱に拍車がかけられているのが現状であります。特に、被害の深刻なのが民間労働者であり、このままでは物価上昇し、賃金は実質的に低下することは必至であります。この問題に対して経営者側は、政府方針がきまるまではどうにもならないと答えられておりますが、このために民間労働者がストライキをもって一ドル三百六十円での通貨交換と、それに基づく賃金の読みかえを要求していることは、むしろ当然と言わなければなりません。われわれは、これ以上沖繩県民に対するいたずらな犠牲をしいてはならないと考えます。政府としても、勇断をもって沖繩県民の要求にこたえるべきではありませんか。今後の具体的な方針伺いたいのであります。  外交問題で最後に伺いたい点は防衛問題、特に今回の防衛予算についてであります。第四次防衛計画は、政府部内にも異論が多く、しかも、いまだ正式な手続が踏まれず、未決定の現状にあることは周知のとおりであります。しかるに、今回の予算案では、いわゆる四次防原案の主要項目のごとくに認められる等、実質上、四次防がひとり歩きをせんとしていることは、まさに言語道断と言わなければなりません。しかも、緊張緩和に向かわんとする国際情勢に逆行することは明らかであります。また、これは防衛庁設置法に違反するものと考えますが、総理の明快な答弁を要求いたしまして外交問題は終わります。  続いて内政問題全般についてお伺いいたします。外交問題と同じく、国民の関心はポスト佐藤、すなわち、佐藤政治では期待できない新しい政治を求めているのであります。私は、佐藤総理の背後にある政府並びに自民党のみならず、野党全体の各位とともに、わが国内政の長期的構想につき、この壇上から論議したいのであります。私はこの観点に立って論点を四つにしぼり、総理及び関係大臣伺います。  第一点は、三百八円レートに切り上げた今後のわが国経済体制のあり方についてであります。総理は一月十八日のテレビ対談で、「円切り上げはまだちょっと足りないようだ」と発言し、翌々日竹下官房長官が、「再切り上げを意図したものではない」と訂正をしております。また二十六日には大蔵大臣は、「各国通貨の再調整は今後数年間起こらない」と講演しております。これら一連政府見解では、わが国の円レートは三百八円で当分安定という、きわめて楽観的過ぎるものがあるが、これではたして今後のわが国を取り巻く国際経済認識と言えましょうか。わが国の前途について国民に真実を語る政治姿勢と言えましょうか。  私は佐藤総理に次の三点につき伺いますが、あなたは、サンクレメンテにおける日米共同声明において、今後の新しい国際経済づくりにつきアメリカと基本的に協調すると約束し、一月二十九日の施政方針演説においても、特に日米提携を強調されております。ところが、あなたがサンクレメンテ共同声明を通じて構想せんとしているジャパン・ラウンド、すなわち、わが国の国際経済政策の基本構想、その実現を目ざす対外交渉準備、これに関連する国内経済政策体制の基本方針、これらがさっぱり示されていないことはまことに遺憾であります。総理自身、堂々と国民に示すべきではありませんか。  さらにまた、本年は日米通商交渉は開かないとはいえ、これは明年は再び激烈な国際経済交渉の年になるということであります。その明年に向けて、アメリカは依然として国際収支改善が進まないと推定されます。わが国は、政府自身が認めるように、明春の外貨保有が二百億ドルに達するほど輸出ドライブが続くことは明らかであります。かくして、明年の国際交渉、特に、日米交渉の背景は、昨年十二月の円切り上げドル切り下げ当時の状態が再現するおそれが強いのであります。国民はこれを憂慮しております。あなたはこの点について国民説明する責任があると思いますが、どうか。  もう一点、今後の国際通貨体制は、各国間の不均衡をすみやかに是正し調整するために、小幅かつひんぱんに平価調整が必要となることをわが国も予想し、それに備えて、国内経済の弾力性強化につとめなければならないのではないかと思います。これが金融上、産業上の基本政策となるのではありませんか。総理大蔵大臣所信をそれぞれお伺いいたします。  第二点は、物価と税金を中心とする国民生活問題についてであります。私から申し上げるまでもなく、民主政治とは、国民に納得のいく、わかりやすい政治でなければなりません。わかりやすい政治にするためには、長期的な政治方向と長期政策構想を具体的に提示し得る政治でなければならないのであります。物価政策並びに税金政策に関し、佐藤政治は毎年の風向きが違う。国民政治不信を招くのは、大臣のひんぴんたる交代にあるのではない。口先では常に物価安定と減税を唱えているけれども、実際は値上げ続きで、国民負担の過重こそが政治不信の最大の原因なのであります。佐藤総理、あなたは昨年末の円切り上げに際して、今後は国民福祉向上に力を入れると公約し、明年度予算編成は福祉優先予算であると自称しているが、一方では、今月はタクシー料金、郵便料金、医療費、三月は電報、四月は国鉄料金、大学授業料と、公共料金値上げが続々と予定されているのであります。しかもあなたは、公共料金値上げは利用者負担の原則と主張しているけれども、公共的事業の料金はいずれも独占価格でありまして、一方的に消費者に押しつけられ、消費者である国民は他の消費方法を選択することはできないのであります。昨年、一昨年は公共料金引き上げを控えたが、本年は爆発的な値上げをせざるを得なくなったと言われているが、しからば、過去二カ年に、国鉄経営、健保会計、また国立大学運営についてどれほど運営上の改善がはかられたのか、本年の値上げを極力抑制する努力がどれほど今日まで払われてきたのか、私はお伺いいたしたいのであります。  さらにまた、あなたは昨年の臨時国会補正予算所得減税をしたから、明年度は減税の必要なしと言われたが、先ほども大蔵大臣がそのような意味のことを答えられておりますけれども、これはとんでもない悪例をあなたが残すことになります。私は、高福祉が確保されておれば高負担もやむを得ないと信じますけれども、現在のように国民福祉社会資本もきわめて不満足な状態においては、政府は、毎年度の予算編成にあたって税制改正はまっ先に所得減税を考慮すべきではありませんか。何ゆえ減税を見送ったのか、その理由を伺いたいのであります。  また、物品税改正は、アメリカからの輸入大型車のみの減税案であり、現行の物品税課税の矛盾を一切見送っておるのであります。この理由も伺いたいのであります。  私は、ここで公共料金の個々にわたって言及する時間がございません。総括的な対策のみにつき申し上げたいと存じますけれども、国鉄、政府管掌健保、食管会計のいわゆる三K赤字については、そのうち合計一兆円程度の赤字を低利長期の交付公債として、民間金融機関の支払い準備金等の積み立て金によって購入せしめ、赤字を凍結していくことこそが——このような思い切った施策の断行以外に三K赤字の解消を目ざす長期施策はつかみ得ないではないかと思いますが、この点、いかがでありましょう。  なお、政府が赤字公債発行もあえて辞さないという背水のかまえのほかにいまや物価抑制の方途はないと私は思うのであります。総理大蔵大臣、経企長官のそれぞれの所信伺います。  第三は、ただいま申し上げました赤字公債の発行に関連し、今後の財政のあり方についてであります。明年度の十一兆予算は、二兆円に近い公債発行と、所得減税なし、並びに、国鉄、健保等の公共料金値上げによって初めて編成が可能になったと言われております。この十一兆円予算は、不況に対する景気浮揚と福祉優先のための社会資本充実を目的として編成されたと言われるが、私は、この問題について、順を追って三点だけ伺います。  第一点は、予算編成の経過を見ると、大蔵原案を手直しする公開調整財源がわずか一千百億円、すなわち、大蔵官僚の作成した予算規模のうちわずか一%にも達し得ない金額が閣僚間で予算手直し得る調整財源にすぎないのであります。骨格予算と称する大蔵原案は、既定経費の総花式増額予算であるにもかかわらず、これを一%スケールでしか手直ししないという中で、厚生省の予算要求でもあらわれておるように、老齢福祉年金月額五千円を目標に、明年度は三千八百円に引き上げ要求に対して、わずか手直しされて三千三百円にすぎなかったのであります。しかも、十一月からの実施であります。これが福祉予算の目玉項目として、鬼の首でも取ったように宣伝されているけれども、私は大蔵大臣伺いたい。骨格予算案は、予算大綱として、予算額の概算をもって閣議で編成すべきであり、これに基づいて大蔵原案を作成されるものでなければなりません。この慣行が確立しないと予算国民のものとならないのであります。大蔵大臣所信伺います。  次に、厚生大臣伺いますが、福祉優先予算の編成という絶好の機会に臨み、なぜ当面五カ年の社会保障充実計画なり特別会計予算制度なりを提案し、これを予算編成に先行せしめなかったのか、お伺いいたします。  次に、再び大蔵大臣伺いますが、現在ほど外貨蓄積が多いときこそ福祉優先に切りかえるチャンスだという意見は、外貨が多ければ、国内消費をふやしても国際収支悪化の心配が当分の間ないというだけで、安易なインフレ政策にすぎない。政府の明年度予算編成は、巨大な外貨蓄積によりかかったインフレ継続予算にすぎない。私も、現在の外貨蓄積を背景に三K赤字解消のためには一兆円赤字公債を発行せよと主張したいのでありますけれども、私はここで強調したいことは、いまこそ経済活動を硬直化させている官僚なわ張り制度、三K赤字等を是正する制度改革の決断を下すときではないかと思います。このような制度改革のための先行出資の予算編成なら、私は赤字公債も許されると思います。堂々と財政法を改正すべきであって、大蔵大臣のこの問題についての所信伺いたいと思います。  最後に、第四の論点として、当面するわが国制度改革として、土地制度改革についての総理見解伺いたいのであります。現在の国民生活上の問題点は、消費物価のうちの住宅費、公害、交通禍等の都市問題にあるが、それの根本にある問題点は、土地価格高騰土地所有の絶対的な私有権にあります。あなたも土地制度改革の必要を述べられております。今国会に、市街化区域内の土地売却に届け出義務を課す新立法政府提案されると聞いておりますけれども、この点について伺いたいのであります。民法第二百六条には、「所有者ハ法令ノ制限内ニ於テ自由ニ其所有物ノ使用、収益及ヒ処分ヲ為ス権利ヲ有ス」と規定されております。このような所有としての土地所有を制限する法令には土地収用法その他があります。基本理念、基本法概念として、他の財物のように、生産され消費される品物でない土地に関する限り、土地は所有者の任意に利用すべきものではなく、社会的必要性によって利用されるべきであるという土地使用社会化に関する基本法を提案すべきではありませんか、お伺いいたします。  もう一点、われわれ民社党が土地制度改革の具体案を議員立法として出したときには自民党は協力されるか、自民党総裁としてお答えいただきたい。  以上、私の質問を終わりますが、最後に、私自身の反省を含めて、政府並びに議員各位に申し上げたいことは、アメリカの核のかさ、アメリカのドルのかさのもとにわが国経済成長し得た時代はもう終わったのであります。わが国が自力で自主的に国際協調を念じつつひとり歩きする時代が始まったのであります。お互いにこの壇上における論点は、率直に将来を先取りする政策論議国民の合意実現の場となるよう私は強く熱望いたしまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 向井君に最初お断わりを申し上げておきます。たいへんお尋ねが多岐にわたっておりますので、むしろお尋ねの時間よりも答弁のほうの時間が長いかと思います。その点はお許しを得たいと思います。  まず、政治姿勢についての御意見がありました。政治運営におきましてはある程度の試行錯誤はやむを得ない面があり、常に謙虚に反省を行なうべきであると私は考えております。私は、広く国民の各界各層の御意見を聞き、これを政治に反映したいと念願しているものでありますが、今国会におきましても、各党の御意見、御主張を十分承り、できる限りこれを施策の各面に取り入れ、相携えて国民政治に対する信頼を高めてまいりたい、その所存でございます。  御指摘のとおり、今日、国際社会は多極化の方向に向かって大きく流動しつつあります。この間に伍してわが国はいかなる政策を展開していくかとのお尋ねでありますが、私は、わが国の今後のあり方は、まず内にありましては、豊かな福祉社会を建設すること、外にあっては、あくまでも自由を守り平和に徹するとの立場に立ち、世界の諸国家との協調と融和のうちに国の安全と繁栄をはかるということに尽きると考えます。国際社会におけるわが国の地位と役割りは今日ますます重きを加えつつあり、わが国は世界の輿望と信頼にこたえて、一そう責任ある行動をとっていかなければなりません。同時に、強大な軍備や核武装を放棄し、国際協調を通じて国の安全と繁栄を確保していこうとするわが国独特の行き方を深く自覚し、世界の中の日本として節度と自制をもって前進していかなければならないと考えます。  米国との間に緊密な相互関係と協力の関係を維持することが何にも増して重要なことは言うまでもありません。二宮君にもお答えしたとおり、今後国際社会が多元化し複雑化すればするほど、日米両国の世界に対する責任と役割りはさらに重きを加え、日米提携のきずなは一そうその必要性を増すものと考えております。さらに、日米関係の維持増進は、単に日米両国にとって利益となるのみならず、アジア、ひいては世界全体の緊張を緩和に導き、人類すべての繁栄と福祉を増進する上におきましても欠かすことのできないものであります。  次に、経済面におきましては、もはや偏狭な自国中心主義は許されず、世界の中の日本として、他国の利益を増進しつつ自国の利益の伸長をはかること、世界とともに発展し繁栄することが必要となっております。このような見地から、わが国として通商経済関係の多角化をはかるとともに、秩序ある輸出自由化や特恵供与等による輸入の増大につとめてまいりましたが、今後ともこの政策を一そう推進し、あらゆる諸国との間に繁栄を分かち合ろようつとめていく所存であります。  久保・カーチス協定やアンダーソン記者の暴露記事等、日米間の問題についていろいろ懸念される筋もあるようでございますが、私は、ただいまの状況におきましては、日米間において誤解のない状況に、過日のサンクレメンテの会談によりまして、十分話し合いを遂げたことをこの機会に皆さまに御報告申し上げます。  次に、中国問題につきましては、繰り返し述べてきたとおり、この問題はわが国にとってきわめて重要な外交問題であり、国民各層がこれに重大関心を抱くのは当然であります。わが国は、中国大陸との間にも、また台湾との間にも、他の諸国とは比較にならぬほど深い歴史的関係があるので、中国問題に関しさまざまな意見が出てくることも自然であります。政府としては、各方面における建設的意見を十分尊重しながら、中国問題に関し、できるだけ国民的合意が形成されるよう努力したい考えであります。具体的行動について述べれば、政府は、日中国交が正常化されていないにもかかわらず、従来から一貫して日中間の相互理解を深めるため、日中間の人の往来に関する制約をできるだけ取り除くようつとめてまいりました。また、日中貿易の拡大、発展を促進する方針をとり、今日、両国間の貿易額は年間往復九億ドルの規模にも達しております。その他、各種の実務的な関係についても、これが円滑に処理されるよう、できる限りの支持と協力を与えてまいりました。政府としては、今後とも日中間によき隣人としての関係が樹立されていくよう配慮していく方針であります。  また、日中間の重要課題である国交正常化の問題につきましては、正常化のためには政府間交渉が当然の前提であり、そのため、政府としては、国交正常化の問題のみならず、双方に関心のあるあらゆる問題につきまして政府間の話し合いを行なう用意があり、北京政府がこれに応ずることを期待している次第であります。  北方領土の問題につきましては、先般来日したグロムイコソ連外相との話し合いで、日ソ平和条約締結に関する交渉を本年中に行なうことに合意を見ました。私としては、北方領土問題がこの交渉を通じて解決の方向に前進し、日ソ両国の関係がより確固たるものに発展することを強く希望しており、このため全力を尽くす考えであります。私のソ連訪問については、適当な機会があれば訪問したいと思っております。  復帰に伴う沖繩の民間産業の賃金の切りかえは、個々の産業、企業の実情に応じて当事者間の話し合いで処理されるべきものであります。なお、当事者間で特に取りきめがなされない場合は、賃金だけに特別の比率を用いることは困難でありますから、一般の比率によってドルから円へ換算されざるを得ないものと考えております。  次に防衛関係予算の問題でありますが、四十七年度予算は四次防の決定前に編成されておりますので、防衛の関係におきましては、三次防事業の継続的なもの、さらに、現有勢力を当面維持するために必要な経費を計上しております。原則として、沖繩祖国復帰に関するものを除いては、新しい四次防の構想に基づく増強は差し控えていることを御理解いただきたいと思います。また、現在の国際情勢には緊張緩和のきざしが見え始めていることはまことに好ましいことでありますが、わが国としては、アジアの緊張緩和を促進するためにも、引き続き防衛努力を続けることが必要であると、かように考えております。  最近の世界貿易の動向を見ると、ややもすれば保護主義的傾向や経済ブロック化の傾向が助長されているようであります。世界貿易の一そうの拡大をはかるためには、ガットの標榜する自由、無差別の原則が重視されなければなりません。かかる観点から、わが国は、昨年十一月ジュネーブで開催されたガットの第二十七回総会において、多角的貿易交渉の早期実現の必要性を強調し、多くの国の支持を得ております。今後、総合的な海外貿易政策をさらに積極的に推進し、次期交渉開催のための好ましい雰囲気を醸成することに努力するとともに、米国、EC等の主要国と協力して、ガットの場において行なわれている各種の多角的交渉に対する準備作業を促進したいと考えている次第であります。これが、いわゆるサンクレメンテにおいて日米間で交渉されたいわゆるジャパン・ラウンド、こういうものではないかと思っております。  向井君は、来年が再び激烈な国際経済競争の、経済交渉の年になるという見通しをお持ちのようでありますが、私は、米国経済の回復につきましては、向井君ほど悲観的な見方はしておりません。さらに、ガット等の場における各種の多角的交渉の準備が進むにつれて国際経済も安定に向かい、日米間の問題も漸次解決されていくものと、かように考えております。  次に向井君は、今後、小幅かつひんぱんな平価調整を予想しておられるかのようでありまするが、政府はそのようには考えておりません。国際通貨調整後の新しい環境のもとで、わが国は対外均衡の確保をはかるため、積極的かっ機動的な財政金融政策運用や対外経済政策の一そう強力な推進をはかることとしており、こうした経済運営により、わが国の国際収支は今後次第に均衡に向かうものと予想しておるのであります。  次に向井君は、公共料金の引き上げについて意見を述べられましたが、料金の改訂によりまして事業の収支が長期的に安定し、その事業に期待されている公的サービスの適正円滑な供給が行なわれることが、長期的に見て国民福祉の増進にも資するものであります。また、たびたび申し上げているように、来年度の所得税減税は繰り上げて年内減税としたものであり、見送ったというのは当たらないのであります。この点は誤解のないように願いたいと思います。さらに、来年度におきましては、所得税年内減税の際改正の見送られた個人住民税の課税最低限の手直しを中心に、地方税において約一千億円の減税を行なうこととしており、国民負担はかなり軽減されることになっております。  次に、値上げを抑制するためどれだけの努力をしたかとのお尋ねでありました。国鉄は、再建計画に基づきまして、各面の近代化、合理化、簡素化に極力努力しておりますが、国におきましても、財政措置の強化につとめていることは御承知のとおりであります。  健保につきましては、制度の抜本改正について、すでに審議会の答申を得ておりますので、近く所要の法案を提出したいと考えております。  国立大学の授業料は、昭和三十八年以来据え置かれておりますので、今回改定することといたしましたが、これに伴って、研究条件の改善、奨学資金の増額等もあわせて行なうこととしております。  次に、向井君から、所得税減税を見送ったとして、おしかりがありましたが、見送ったのではなく、先ほど申し上げたとおり、繰り上げて実施したと考えるべきものでございます。  物品税につきましては、御指摘のような意見のあることは承知しております。しかし、今後における税制のあり方や、現在の財政事情から見て、その大幅な減税は困難な面がありますので、今回は物品税の見直しは見送らざるを得なかったものであります。御理解をいただきたいと思います。  次に、三K赤字凍結というお尋ねの御趣旨は、公共料金抑制のために財政援助を行なうべきであるということと思いますが、財政資金による安易な赤字補てんは国民相互の受益と負担の不均衡を生ずることとなりますので、私は適当な方法ではないと思います。  社会保障充実の五カ年計画あるいは予算編成等につきましては大蔵大臣から、また、財政法の改正についても大蔵大臣からお答えすることにいたします。  そうして、最後に、土地利用の合理化のため私権制限の必要があるとの御意見には、私も全く賛成であります。同感の意を表します。土地問題の重要性にかんがみ、今後とも、各方面から建設的な意見の出されることを歓迎したいと思います。  なお、各党一致した法律案の提出等につきましては、政府はこれを尊重することは、議会制度のもと、当然のことであります。  以上申し上げます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  14. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。  私に対する向井さんの御質問、私の名前をあげての御質問は、日中問題についてであります。  向井さんは、日中問題につきましては、あるいは輸銀の問題とか、円元決済の問題とか、そういう一つ一つの事例をあげられまして、いわゆる積み上げ方式というものを主張されたというふうに受け取ったのであります。私は、この積み上げ方式はもとより大事な問題である、そういうふうに考えます。したがいまして、輸銀の問題につきましても、これはケース・バイ・ケースであるけれども、他の国同様に前向きに対処するということを申し上げておるわけであります。また、円元決済の問題につきましても、これは当事者間の議が熟しますれば、政府はこれを容認をするという態度をとっておるわけであります。さようなことで、一つ一つの積み上げ、これも非常に大事な問題であるというふうに考えます。  しかし、日中間の問題は、もっと大事な問題、また、もっと大事な段階に来ておるという認識であります。もう日中両国、この政府間におきまして接触を開始する、この間に横たわるところのそういう決済の問題だとか、まあ金の問題だとか、もうそういう問題じゃない。もっともっと大事な問題をもう決着をつけるべき段階に来ておると、こういうふうに考えるわけでございます。私が、正常化にまっ正面から取り組むと、こう申しておるのはその意味でございます。日中国交の正常化、これはわが国といたしますると非常な政治的な決断の問題でございます。そういう決断をいたしたわけであります。その正常化のためにこそ政府間接触を始めよう、こういう方法論まで提起しておるわけであります。話せばわかるということがありまするけれども、これは日中間でほんとうに話し合いますれば、中国から提起されている諸問題も、あるいはわがほうから提起されるべき諸問題も、これも日中間で妥当に理解され結論されると、さように考えております。さようなことで、何とかして一日も早く日中間に政府間接触を始めたい、そういう呼びかけをしておる、さようでありますので、まあ、ひとつ中国政府におきましても、わがほうの熱意を深く理解されまして、何とか応対をせられたいと、かように念願をいたしておりますので、向井委員におきましても、ぜひともわがほうの立場を理解されまして御協力をせられるよう切にお願いを申し上げる次第でございます。  なお、私に対しまして——いま名前をあげての御質問ではありませんが、質問要旨のほうに、外交の基本路線はどうか、あるいは日ソ領土問題はどうかというようなことが書いてありますが、これは総理から詳細にお答えがしてありますので、省略さしていただきます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  15. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  今後の国際通貨体制は小幅かつひんぱんな通貨調整が必要となると思うがどうかというお尋ねでございました。  ちょうど、この月曜日にOECDの専門部会というものが開かれておりまして、通貨調整後第一回の会合でございますが、そこでいろいろ意見の交換が行なわれたようでございます。まだ正式の報告に接しませんからわかりませんが、そこでいろいろ出た各国の意見を言いますというと、まず、通貨調整の効果というものは大体二年ぐらいかからなければわからないものだ、それまでははっきりした効果が出ないだろうと、したがって、短期的な視野でいろんな事態の評価をすることはできないということから始まりまして、各国のこれからの動きを見通した結果、ある国の国際収支は依然としてまだ改善されない状態が当分続くだろう、ある国の国際収支は依然としてまだ黒字が増大していくことだろう、しかし、一九七二年の下期ごろになったら各国の経常収支がそれぞれ望ましい方向へ向いていくことだろうというようなことが話されたということでございます。  で、各国はそれに対してどういう態度をとるかということについては、もう短期的ないろいろの変動についてどうこうするんじゃなくて、当分各国それぞれが自分の国の責任において内外政策をよくやって、そうしてこのせっかくきめた基準レートを変更しない、これを信認する方向へみな努力しようというのが各国の態度であったようでございますので、したがって、そういう国際的な空気から見ましても、また、ああいう通貨調整というものは、多国間の協調と合意によってでなければできないことでございますので、再びこれを動かすということは簡単な仕事ではございません。各国が別々にやることもできませんし、また、そろってこういう多国間調整を二度やるということも困難なことでございますので、私は、おそらく今度の通貨調整は、相当長い間変更されないものだろうというふうに考えております。  そうしますというと、そういう通貨問題に対して、今後どういう財政金融政策をとるかというお尋ねが次にございましたが、そういたしますというと、やはり対外均衡達成をはかっていくために、現在の国際収支のゆとりというものをやはり活用して、国民福祉のための政策を思い切ってやるということと同時に、経済協力の拡充とか、あるいは自由貿易の推進というような、国際経済との調和をはかっていくことが、やはり政策上一番必要なことだろうと思います。特に、何といっても不況を解決しないというと、輸入をふやすことができませんし、輸出圧力を縮めることもできませんので、不況克服ということによって国際均衡を回復するということに専念することを当面の基本方針とすればいいんではないかと思っております。したがって、対外政策としてきめたあの八項目も、ここで全面的にこれを実施するという態度を持続していくべきであろうと考えております。  その次は、所得税の問題ですが、これはもう何回も答弁いたしましたとおりでございます。  それから、予算編成についての御意見でございました。大蔵原案をつくる前に、予算大綱というような骨格予算を閣議できめるというような段階を設けて、それからこの大蔵原案をつくるというような、官僚編成の予算を避けるということに思い切ったくふうをこらすべきだというような御意見でございましたが、大体、実際のところはそういうような方向になっておると思います。と申しますのは、まず予算編成の前には閣議を開いて、概算要求のしかたを閣議で相談する。どういう範囲において、どういうやり方で各省は予算の要求をするかということをまず閣議で申し合わせて、その申し合わせに従って、各省庁は概算要求を八月三十一日までに大蔵省に提出するということにしております。提出された概算要求の説明を聞きながら、この原案の作成に取りかかるわけでございますが、その際、各省の要求の中には大臣の意向がもうすでに入っておりますし、また、各諸方面、各政党そのほかの御要望も、概算要求のときにはすでに入っておるということでございますので、したがって、この予算の中に閣僚の意見が全然入っていないということはございません。しかも、この原案の作成の作業ができますというと、最後にまた閣議を開いて、来年度の経済の見通しと、それからさらに予算の編成方針というものを閣議できめて、これによって大蔵原案が内示されるという順序を経ておりますので、おっしゃられたように、もう閣僚の意見は一%も反映していないというようなことは、これは実際ではございませんで、最後にいろんな御意見の調整をする一定の額を調整費として残しておくというだけであって、この調整費がたくさんあるようだったらかえって予算編成は問題であると。これは当然それまでにいろんな閣僚間の折衝が行なわれて、最後の調整費でございますから、この幅は少ないのがほんとうはいいんだということになりますので、この幅の少ないことによって、閣僚の意見も入っていないような官僚予算だというふうにきめつけることは私はできないんじゃないかというふうに考えます。(拍手)    〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手
  16. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 私へのお尋ねの公共料金の問題は、三K赤字問題を含めてすでに先ほどの総理の御答弁によって尽くされておると存じますので、繰り返しますことを避けたいと存じます。  このように個々の公共料金の問題を取り扱うことのほか、この際、国民経済全体の中における公共料金のあり方についてもっと基本的な考え方をお示しして国民の合意を求める努力がこの際肝要であると存じます。この観点から、近く物価安定政策会議の審議を経ましてその基本的方針を決定いたしまして、広く国民各位の御判断を仰ぎたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手
  17. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 予算編成の前に当面の五カ年計画ぐらいの社会保障充実計画なり、あるいはまたこれを実施するための特別会計制度なりを作成して、それによって予算編成をすべきでなかったかというお尋ねでございますが、なるほど政府で公認をした全体の社会福祉五カ年計画というものをまだ樹立をいたしておりませんが、しかし、先般の予算編成にあたりましては、社会福祉施設の五カ年計画施設職員の待遇向上の三カ年計画、ごみ屎尿処理の五カ年計画、国立療養所整備の五カ年計画、あるいは医師、看護婦等の充実の五カ年計画、そういった計画をもとにいたしまして、これを完全に実施をするという考えのもとに立ち、また、そういう計画のないものにつきましても、特に手薄であった老人福祉対策あるいは身障者の対策、全面的な福祉予算の底上げというようなことを念頭にいたし、老人の福祉年金につきましても、二カ年で月五千円の年金というものを目ざして、本年は千円アップというようにいたして、ある程度の計画をもって予算を要求し編成をいたした次第でございます。  全体の社会保障充実の軌道切りかえによるいわゆる全体の新全総計画は企画庁をもとに本年度立てられるわけでありますから、この中におきまして社会保障充実の将来のあり方もきめてまいりたいと、かように考えます。  これらを実施するために特別会計を設けたらという御意見でございますが、社会福祉全体の充実のための特別会計方式というものは私はいまにわかに賛成を申し上げるわけにはいかないと思いますが、その構想につきましては、またあらためて向井議員の御意見も伺って参考にいたしたいと存じます。しかしながら、こういうものはやはり一般会計で見るべきものではなかろうかと考えますが、なお御意見は十分後刻承りたいと存じます。(拍手
  18. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) これにて休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時九分開議
  19. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。野坂参三君。    〔野坂参三君登壇、拍手
  20. 野坂參三

    ○野坂参三君 いま、わが国は内外ともに重大な岐路に立たされ、国の進路と政治の革新を求める国民の声はますます高まっております。佐藤総理施政方針演説で、いまこそ発想の転換を行動に移すべきときであると申されましたが、その内容を見ますと、転換どころか、依然とした対米追随と、一そう露骨な大企業奉仕の政治姿勢を貫き、そのもとで危険な軍国主義復活の道を進もうとしておられます。しかし、国民の大多数が切実に求めているものはこのような道ではありません。アメリカからの真の独立、平和と民主主義生活向上を目ざす新しい政治への大胆な転換を求めているのであります。私は、日本共産党を代表し、この国民の切なる願いの上に立って、総理並びに関係大臣質問いたします。  第一は、わが国とアジアの安全と平和についてであります。総理は、日米間の緊密な協力こそがわが国とアジアの平和と繁栄に寄与するものだと言っておられます。しかし、何を根拠にこういうことを言われるのか。現実にアジアを見れば、アジアの平和を乱しているのは、インドシナ諸国に対するアメリカの侵略行為ではありませんか。最近のニクソンの八項目の提案も、北爆などの戦闘行為の即時停止を約束しておりません。また、全面撤兵をうたってはいますが、アメリカの要求にベトナム側が合意することを条件として、撤退期限を明記しておりません。これでは緊張緩和に役立たない単なるごまかしの提案にすぎないではないでしょうか。ところが政府は、日米協力ということで、アメリカのベトナム侵略戦争を一貫して支持してきました。そうしてこのベトナム戦争でかなめ石といわれている役割りを果たしてきた沖繩基地の機能を、施政権返還後も変えないと総理はアメリカに約束しました。このこと一つ見ても明らかなように、対米追随路線のもとでの日米協力は、アジアと日本の平和と安全を脅かすものでしかありません。総理が真に緊張緩和を望まれるならば、まずアメリカのベトナム侵略に対する日本の一切の協力、援助、これをやめるべきです。そしてアメリカに対し、北爆の即時全面停止、米軍のベトナムからの無条件全面撤退、及びベトナム問題はベトナムの人民にまかせること、とれらを強硬にアメリカ政府に要求すべきだと思いますが、総理答弁を求めます。  さらに、アジアと日本の平和と安全にとってきわめて危険なことは、沖繩協定によって、日本の主権と独立を侵害している日米安保条約が長期に維持され、その侵略的な性格が一そう強化されていることであります。サンクレメンテ会談以後急速に動き出した、沖繩を含めた日本全土の基地の再編は、このことをはっきりと示しております。政府は、これが単に米軍基地の整理縮小であるかのように述べておられますが、そうではありません。現に横田基地はさらに拡張され、横須賀がアメリカ第七艦隊の母港にされようとし、沖繩のKC130給油機を岩国基地に移して、同基地の海兵隊緊急出撃部隊の行動力が一そう拡大されるなど、アメリカにとって戦略的に重要な基地は一そう強化されております。また、立川、厚木など自衛隊が移駐する基地は、アメリカと共同で使用され、日米共同作戦態勢が強化されております。そして、沖繩施政権返還の条件となっている韓国・台湾条項によって、日本全土が、ベトナムだけでなく、朝鮮、台湾にもそのほこ先を向けた侵略の基地にされるのであります。四次防による自衛隊の増強こそ、こうしたアメリカのアジア侵略態勢の再編強化に呼応したものではありませんか。これこそアジア人をアジア人と戦わせるニクソン新戦略に日本を組み込んで、日本にきわめて危険な役割りを果たさせようとするものにほかなりません。いまや国民の大多数は、わが国がこのような危険な対米追随の路線を切りかえて、どのような軍事同盟にも加わらない中立の立場に立つことを求めております。そのためには、日米安保条約を廃棄して、日米軍事同盟体制に終止符を打つことが必要です。そして、ベトナム、朝鮮、中国など、いまだに国交を回復していないアジアの国々と、平和五原則に基づく正常な国交関係を結ぶべきであります。総理は、一昨日、韓国との国交関係を理由に朝鮮民主主義人民共和国の承認を拒否されましたが、これは、アジアの緊張緩和を促進するという総理のことばが全くの偽りであることをみずから証明するものじゃないでしょうか。総理見解を求めます。  次に、特に強調しなければならないことは、わが国がいまアメリカへの従属のもとで、いわゆる軍事大国への道を進んでいることであります。総理は、日本は軍事大国にはならないと、こう言われておりますが、事実は全くその反対を証明しております。たとえば、自衛隊が最強時の帝国軍隊にまさる通常火力を装備していることは、総理も御存じのように、すでに三年前に愛知前外務大臣も認めております。そして、四次防で自衛隊が対外攻撃力を一そう強化して、通常兵力で米ソに次ぐ近代装備を備えることは必至であります。軍事費の面でも、ここ数年来の防衛予算伸び率は世界最高です。そして四次防末には、年間二兆円近い膨大な軍事支出が国民に要求されるようになるのは明らかです。これがどうして「国力、国情に応じた自衛力」などと言えるでしょうか。  さらに、わが国は、東南アジア諸国に対するどん欲な経済進出を進め、アメリカのアジア侵略政策を軍事的にも経済的にも補強しております。さらに国内では、自民党や財界には憲法改悪を目ざすいろいろの動きがあります。また、議会制民主主義は、御存じのように踏みにじられております。司法制度に対しては、政府が目に余る干渉を行ない、また、最近の小中学校の教科書については、一切の戦争批判の記述を抹殺して、戦争を美化するような改定を行なってきております。  以上のような事実は、日本がアメリカに追随しながらも、軍事大国、すなわち軍国主義の道を進んでいることをはっきり示すものではないでしょうか。総理、あなたはこれらの事実を否定されますか。もし否定されるならば、たとえばファントム戦闘爆撃機やミサイル護衛艦など、他国に対する攻撃能力を備えた一切の兵器は保持することをやめるべきです。総理答弁を求めます。  さらに、政府は憲法の平和条項を次々に拡大解釈しておりますが、いかなる名目であろうが、自衛隊を海外に派遣または派兵することは憲法上許されないと思いますが、総理はどうお考えになりますか。絶対にしてはなりません。このことを総理は確約できますか。御答弁を求めます。  さて、第二に、わが国のいわゆる軍事大国化と一体となっている政府の経済政策についてであります。  いま、円の大幅切り上げと不況、世界一の物価高、低賃金、公害、交通地獄、住宅難、劣悪な社会福祉、こうした中で国民の大多数はあえぎ苦しんでおりますが、その原因はどこにあるか。一言でいえば、自民党、財界、高級官僚、この三者が一体となって対米追随と大企業奉仕の経済政策を行なっているところにあります。そのことは四十七年度の予算案を見ても明らかです。政府は、軍事費を急速に膨張させて兵器産業界にばく大なもうけを保障し、また、計画中の四次防では、防衛庁による兵器発注高は二兆円をこえるといわれ、そのおもな受注者は三菱重工、川崎重工などの巨大軍事企業です。しかも、来年度から三菱重工で量産に入る超音速高等ジェット練習機は、当初一機四億円と見積もられていましたが、何と一挙に十四億円、三倍以上にもはね上がっております。これこそ、政府が死の商人たちの要求をまるのみにしていると言っても言い過ぎではないと思います。このような四次防をやめて、その資金を国民生活向上に回すことこそ福祉優先の政治ではないでしょうか。御答弁を求めます。  さらに政府は、昨年のドルショック、円の大幅切り上げで、労働者、中小零細業者、農民、特に沖繩県民に大きな犠牲をしいながら、他方、大銀行、大商社にはドル投機で大もうけをさせ、さらに、石油業界だけでも年間千六百億円も入る為替差益はそのままに見のがしています。その上、来年度予算では、造船業界などに四千億円の差損があるとして、その大部分を補償する特別の救済措置までもとろうとしております。このように目に余る大企業奉仕の政治が行なわれているのは、自民党政府が財界によって育てられ、あやつられて、彼らの政策を忠実に執行しているところに根本原因があると思います。そして、これが政治を腐敗させ、汚職の原因にもなっております。財界からの自民党と各派閥への政治献金は年々膨張しております。このように財界から多額のきたない金をもらっていて、どうして大企業物価のつり上げを押えたり、あるいは公害企業の厳重な規制ができるでしょうか。絶対にできません。そこで、私は、すべての会社や団体からの政治献金を一切禁止する真の政治資金規正を直ちに確立すべきことを要求しますが、これに対する総理見解はいかがでしょうか。また、総理、財界からあなたの派閥に贈られた献金は、四十六年度上半期だけでも二億円以上にもなっております。総理は昨日、みずからにはきびしくしていると言われましたが、今後、このような献金を、まず総理自身が率先して辞退することを国民の前に約束できますか。はっきりお答え願いたい。  第三の問題は、国民福祉社会保障の問題についてであります。  総理は、施政方針演説で、高度の福祉国家を建設すると言っておられます。ところが、来年度予算案で社会福祉社会保障関係費の占める割合は、四十六年度と同じ一四・三%にすぎず、全くふえておりません。その上に、政府はまたもや健康保険の赤字を理由に保険料を大幅に引き上げるとともに、受益者負担ということで、医者にかかるたびに一部負担金を取るなど、健康保険の大きな改悪を行なおうとしております。国民は何もすき好んで病気になるのではありません。政府の今日までの国民生活無視の政治に大きな責任があると私は考えます。  総理、いまあなたがやろうとしておられる健康保険の改悪は、国に社会福祉社会保障向上を義務づけた憲法第二十五条をまっこうから踏みにじるものであることを御存じでしょうか。そこで、私は具体的なこの問題についての提案をいたします。  まず、保険料を引き上げ、一部負担を強める健康保険の改悪をやめるべきです。そうして、国と大資本家の負担をふやし、大もうけをしている大製薬会社の薬価を引き下げ、これによって健保財政の赤字をなくして、被保険者本人と家族の医療を十割給付にすべきであると考えます。診療報酬は医師の技能を重視し、適正に引き上げ、国の責任で医療施設と要員を確保し、国民すべてが安心して医者にかかれるようにすべきだと私たちは考えます。これを提案します。総理、いま政府が行なおうとしている健康保険改正を中止して、私の提案を実行に移す意思がありますかどうかをお伺いします。  次に、老人福祉の問題についてであります。  最近、人口の老齢化が進み、老人問題は切実な社会問題、政治問題としてその抜本的な対策が迫られております。政府は、国民生産資本主義世界第二位と誇っておりますが、老婦人の自殺率も世界第一位ということは何と皮肉なことではありませんか。社会の建設に汗水流して働いてきた老人の余生を大事にし、生きていてよかったと喜ばれてこそ真の政治であり、人間尊重政治であるということができます。政府は、この十月から老齢福祉年金を一カ月三千三百円に引き上げると盛んに宣伝しておりますが、一体この金額で一人の人間が生活できるとでもあなたは思っておられるのか、もちろんできるものではありません。そこで、私は、六十五歳以上の老人にさしあたり月二万円を支給し、三年以内に少なくとも三万円に引き上げ、所得制限を大幅に緩和する必要があると考えます。これに対する政府答弁を求めます。  特に私が六十五歳以上としたのは、現在、六十六歳から六十九歳までの老人は、国民年金福祉年金も受けられないという法制上の欠陥があるからです。政府は、直ちにこれを是正すべきであると思いますが、いかがでしょうか。  次は、わが党が一貫して主張してきました総合的社会保障制度の五カ年計画をつくる問題であります。経済企画庁の発表によっても、わが国の社会福祉は欧米諸国に比べておよそ十年もおくれており、これに追いつくためには、今後五年間で三十兆円の財政支出が必要だと言われております。ところが政府は、大企業本位の道路、港湾などの総額約四十兆円にも達する五カ年計画を次々に打ち出しながら、社会福祉社会保障については今日まで何らの年次計画も立てておられません。今回政府は、野党の追及を受けて初めて計画を立案するかの考えを明らかにされましたが、問題はその内容です。  それは、まず、国民各層の要求に基づいて、貧困と失業、病気、身体障害者と不幸な老人などの生活の苦しみを解決する総合的なものでなければなりません。そしてまた、国民負担によるものではなく、国家と資本家の負担によって行なわれるべきものであります。政府は、こうした原則に基づいて計画を立て実行する意思があるかどうか、総理にお尋ねいたします。  最後に、総理も御承知のように、東京、京都、大阪の老人対策などの福祉行政公害対策などは、あなたの政府よりもはるかにすぐれております。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。それは決して地方自治体と中央政府との違いから生まれたのではありません。それは、東京、京都、大阪の政治が革新的で、かつ国民本位であり、他方、佐藤内閣政治国民不在、大企業本位である、この違いから生まれたことは何人も否定することはできません。  今日の重大な時局にあたって国民が真に求めているものは、まず佐藤内閣の退陣はもとより、単なる政府の交代や政策の手直しではありません。国の進路を根本的に転換し、政治の姿勢と政策を真に革新することを求めているのであります。このことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 野坂君にお答えをいたします。  野坂君は、日米間の緊密な協力関係がアジア平和の撹乱要因であるとの御意見をお持ちのようでありますが、私には全く理解ができません。立場の相違もありましょうが、私は、日米の緊密な協力関係は他のいかなる国との関係にも増して重要であり、日米両国の友好と信頼の関係が、アジア、ひいては世界全体の平和と繁栄にとっても不可欠であると考えております。ベトナム問題に関しても、私は、ベトナム和平のためにきわめて積極的な提案を行なった米国及びベトナム政府の勇断を高く評価するものであります。これを機会に和平会談が軌道に乗り、一日も早く和平が達成されることを強く希望いたします。また、その他わが国の平和的援助計画も停止しろということでありますが、これは私はやめるわけにはいかないと思っております。平和的な援助は当然国際的にすべきだと思っております。また、ベトナム問題はベトナム人にまかせろ、米国は直ちに北爆を停止しろ、その点をアメリカに申し入れろ、こういうことでございますが、私どもは、ただいま戦争には関与したくありませんし、ただいまの状態でけっこうだと、かように考えております。  次に野坂君は、サンクレメンテ会談で本土と沖繩の米軍基地の再編強化が合意されたような言い方をされましたが、行っておったのは私でありまして、さような事実は全然ございません。また、安保条約を廃棄して中立政策をとれとの御意見でありますが、政府にはこれまたそのような考えはございません。政府としては、国力、国情にふさわしい自衛力を整備するとともに、米国との安全保障体制によってわが国の安全を確保するという従来からの基本的立場を堅持してまいります。ベトナム、朝鮮などと平和五原則に基づいて国交を回復せよとの御意見でありますが、これは御意見を御意見として伺っておきます。  次に、わが国が軍事大国になることがあれば、アジアのみならず、わが国の平和と安全をも脅かすものだとの御意見には私も同感であります。しかし、わが国が軍事大国になるようなことは絶対にありませんから、御安心を願います。また、ファントムやミサイル護衛艦について御意見を述べられましたが、わが国の防衛力は憲法の規定に従い、国の独立と平和を守るための自衛力の限界にとどまるもので、決して他国に脅威を与えるものではないのであります。なお、海外派兵を行なう考えはございません。これははっきり申し上げておきます。  北朝鮮についてのいろいろの御意見がありましたが、これはすでに他の質問者に答えたとおりでありますから、省略さしていただきます。  次に、向井君にもお答えをしたとおり、四十七年度防衛関係予算は四次防が未決定の段階で編成されましたので、三次防の継続事業、従来装備の更新にかかるもの、人件費等の当然必要な経費に限り計上するとの原則に立って編成されており、四次防の新規構想に基づく増強は差し控えております。防衛予算を全面的に削除することは考えておりません。御了承いただきます。  次に、通貨調整に伴う為替差損、差益の問題につきましては、巨額の損失をこうむることとなるものにつきましては、税制上の特例措置を講ずることとしております。また、利益を受けるものにつきましては、最終消費者への還元をはかるため、特別課税をすることは適当でないと考えております。  次の御質問は、政府の経済政策と、それとの関連における政治資金規正の問題であります。わが国は、自由貿易と自由経済の原則に基づいて対外経済政策を展開しております。日米間の経済交流が活発なのは、日米両国相互にそれだけの市場が存在し、相互の国内需要に見合う製品製造の手段を持っているためであります。それはあくまでも需要と供給の相関関係であって、これを対米追随とする御指摘は全く的はずれであると私は思います。また、そのことをいきなり政治献金の問題に結びつけるのはかなり飛躍があると思いますが、またその数字は、ただいま訂正されましたのでこれはあげません。二兆円と言われました。私びっくりいたしましたが、その後二億円と訂正されましたので、これはそのとおりと申し上げておきます。政治資金規正の問題で申しますなら、これまでの国会における議論等も十分考慮し、各党間の合意が得られるような、実現可能な成案を得るべく努力しております。政党本位の金のかからない選挙を実現するための方策につきまして、選挙制度審議会の審議をお願いしているところでもありますから、その推移も注意して、しかる上でこの問題と取り組んでまいります。  次に、現在、医療保険の抜本改正の具体案策定を急いでおりますが、これにつきましても御提案がございました。近日中に政府関係審議会に諮問の上、今国会に提案したいと考えております。なお、政府管掌健康保険の財政対策は、抜本改正への円滑な移行を確保するために必要な措置であると考えております。御提案どおりには私は賛成いたしません。また、六十五歳以上の老人に対する老齢福祉年金の額につきましても、今年度月額千円という大幅な引き上げを行なうことといたしました。これにつきましても具体的な提案がありましたが、直ちにこれに賛成するわけにはまいりません。老後保障における年金の役割りはますます重要性を増していることから、今後とも年金制度全般の改善充実につとめてまいる考えであります。社会保障制度充実につきましては、四十七年度において国民生活の質的充実を最大の課題とした福祉の画期的拡充を内容とする新しい長期計画を策定する予定でありますので、社会保障の拡充につきましても、この計画の中で政策の方向を明らかにしてまいる考えでございます。  最後に、東京、京都、大阪三都府における社会保障制度は、よほど政府よりも進んでおる、あれは革新的の結果だ、こういう御指摘でありますが、これは御意見は御意見として承っておきます。(拍手)    〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手
  22. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) お答え申し上げます。  総理からほとんど意を尽くしてお答えがありました。そこで、担当者として補足いたしまするならば、なるほど防衛予算が例年に比べて多くなった、一九・七%の伸びであります。昨年は一七・八%の伸びでありました。しかし、これはあくまで沖繩の施政権の返還に伴う、昨年暮れ御審議をいただきました公用地等取得のために、このワクが大きくなったものでありまして、この経費を除けば、一六・四%の伸びでしかありません。防衛庁自体としての沖繩関係費を全部まとめて取り去れば、何と一五・八%というわけで、例年よりも、実は二%減というのが今度の私どもの防衛庁予算の実体でありまするので、このあたりは御理解を願いたいのであります。で、われわれは一億の国民と主権の存するところ、自衛力は持つべきである。しかし、これはあくまで自衛に徹する自衛隊、専守防衛と、こういうことで講和後二十年余にわたって自由と平和を確保してまいったわけでありまするので、今後もこの方向に沿って努力をしてまいりたいと思っております。御指摘の海外派兵などは、もちろん考えておりませんので、この席を通じて確約することができます。  それから、総理からもちょっとお答えがありましたが、要するに、兵器産業に非常な大もうけをさせておるんではないか、こういう御質問でありまするが、現在、大もうけなどということは、これは当たらない。その証拠に、私ども現在、この兵器産業に関係しておる会社の総生産、それに占める兵器生産の比率というものを出してみますると、その関連会社の総生産のわずか四%が兵器生産というわけであります。よく話題になる三菱等におきましても、総生産額の六%という形であります。それは、全然もうけがないと言いながら、実業家のことですから、もうけておるでしょう。しかし、この段階で大もうけということは私は当たらない、むしろ、技術開発という点に重点があると思います。そればかりか、たとえば、F104Jというライセンス生産等の場合でも、国鉄新幹線を建造する場合に非常に役に立っておる。こういうことを考えまするというと、やはり私は、国産技術を伸ばしていくという現在の政府のとっておる方針は正しいと思うものであります。  以上、お答え申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 林虎雄君。    〔林虎雄君登壇、拍手
  24. 林虎雄

    ○林虎雄君 私は、日本社会党を代表して、さき佐藤総理大臣施政方針演説に対し、主として国内関係の諸問題を中心質問をいたしたいと存じます。    〔議長退席、副議長着席〕  私が第一に伺いたいことは、この昭和四十七年度予算案ときわめて重要な関連を持つと思われます昭和四十八年度、つまり次年度の予算編成についての見込みであります。来年のことを言えば鬼が笑うといいますし、一見奇異に感じられるかもしれません。また、これは質問の最終にとも思いましたが、あえて冒頭に取り上げましたことは、私なりの理由があるからであります。  提案されました昭和四十七年度予算は十一兆四千七百四億円、財政投資五兆六千三百五十億円という規模で、これに地方財政計画約十一兆五千億を加えれば空前の大規模予算となります。もっとも地方財政は国の予算と重複する面がありますが、ともかく超大型予算で、いささか選挙対策のにおいもしないでもありませんが、それはさておき、この予算案は、不況ドルショックにより落ち込んだ景気を浮揚せしめることを期待したものと思われますが、はたして所期の目的が達せられるかという点に疑問を持つものであります。それは、政府も必ずしも確固たる自信は持っていない節がうかがえるからであります。すなわち、去る一月二十日、木村経済企画庁長官が日本商工会議所常議員会において、もしこの予算景気が浮揚しない場合には、赤字国債を含む補正予算を組むことを考えている旨の言明がなされているのであります。このことは、政府の自信のなさを端的に示しているものと考えられるのであります。問題点は、歳入において公債金一兆九千五百億円に対し、歳出で累積した償還分の国債費が四千五百五十億円と約四分の一に近いので、実質的効果では一兆四千九百五十億円であります。この上、木村長官の発言のように赤字国債が増発されるならば、財政インフレに拍車がかかり、財政の硬直化、財政の破綻が予想されるのであります。佐藤総理が近く退陣されると巷間伝えられておりますが、言うまでもなく、政治国民生活の将来にわたっての責任を避けることはできないものであります。したがって、昭和四十八年度の予算編成見込みは、昭和四十七年度の政策予算の平年度化、物価高騰、担税力の低下等々の要因によって、さらに大型の赤字国債の発行が余儀なくされるおそれがすでに昭和四十七年度予算案に内包されていることを思うときに、昭和四十八年度予算編成ははたして編成ができるのか、たいへんなことになるのではないか、そして国民生活は一そう脅かされるのではないかという点を憂慮するものでありまして、このことは私の杞憂にすぎないのかどうか、総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたいと思うのでございます。  次に、お伺いいたしたいのは、さき施政方針演説の結びで総理が述べられました「いまこそ、発想の転換を行動に移すべきときであります。」とのおことばは、私にとってたいへん印象的でありました。だがしかし、総理演説では、発想の転換を行動に移すと思われる新しい進路というものは何一つ感ぜられないのであります。発想の転換とは何を指向しているのであるか、さっぱりわからないのであります。すなわち、依然として対米依存、対米追従の姿勢はそのままであり、国内政策もまた同じように大資本、大企業中心方針を変えておらず、不況から脱却して再び経済成長を続けていくという発想で、ただ申しわけ的に老齢者を主とした社会保障費が若干増加された程度であります。国民の期待しておった所得税減税や、緊急を要する中小企業対策や、貿易の自由化に伴い転換と再編成が迫られております農業政策についても、何らうなずけるものは見当たらず、発想の転換を行動に移すというおことばとどのような関連を持っているのか、その点を明らかに示していただきたいと思うのであります。  私は、どうも総理の言われる日本の進路がいまだあいまいであり、いま日本の置かれている国際的立場がどこにあるのかという根本的な認識が欠けているのではないかと思わざるを得ないのであります。たとえて申しますならば、あたかも佐藤さんがかじとりをしている日本丸が、暗夜の荒海の中で羅針盤がこわれ、かじを失い、進路を見定めることができず、いたずらに波浪にほんろうされ、右往左往しているような感じさえ受けるのであります。私は、複雑な国際情勢の中における日本の位置をしっかりと定めることが先決であると思います。それには、いまの船にたとえれば、まず北極星を発見することであります。北極星が見つかるならば、おのずからいま立っております位置を見定めることができるのであります。そして進路も明らかになるはずと思うのでありますが、日本丸のかじとりは、いまだ北極星を発見できないのではないかと思わざるを得ないのであります。  私は、まず従来の対米追従から脱却し、自主独立の方針を明らかにして、いまや巨大化し、新しい進路をとろうとしているヨーロッパ、特にEC諸国との密接な連携、中国、ソ連、北鮮とのすみやかなる国交回復への努力促進、発展途上国に対する無条件援助と貿易の積極化等をはかり、あくまでも平和への進路をとるような発想の転換が必要と思われるのであります。あらためて申し上げるまでもなく、世界の平和の道は国連中心であります。百三十余国の加盟国を持つ国連に対して、日本経済大国となったとはいえ、いまだ軍国主義的であるとか、エコノミック・アニマルであるとかいうそしりと印象を払拭させなければならないのであります。それには具体的な方向を示すことが必要であり、日本に対する信頼感を高めることが緊要であります。そして、より多数の国々との友好と支持を受けるようにすべきであります。景気浮揚一つについても、依然として大企業中心政策では、再び円の切り上げ措置をとらざるを得ない事態となり、日本が孤立化を余儀なくされるようなことのないことを私は強く希望してやまないのであります。ここに発想転換の要諦があると思われるのでありますが、総理の、発想転換を行動に移すという対内対外政策の考え方について御所見を承りたいと思うのでございます。  次に、経済、物価政策についてお伺いをいたします。  私は、いま国民の最大関心事は物価の安定であると思います。ところが、物価は上がる一方で、政府物価見通しは当たったためしがありません。来年度は一斉に公共料金値上げを打ち出し、その幅も、三十九年の値上げ幅に比べて実に大幅となっております。昭和四十五年度の経済白書によれば、公共料金を一割引き上げれば直接影響だけで物価を二・八%引き上げ、間接影響を加えれば三・八%の引き上げとなると計算をされております。まさに国民物価増税を強制されておることになろうと思います。私は端的にお伺いいたしますが、物価は、はたして政府の言う五・三%に押えられるのであるかどうか、押えられるとするならば、どのような根拠がおありなのか、明確にしていただきたいのであります。総理は、物価の安定は最重点課題の一つであると言われております。しかし、その佐藤内閣が、一方では公共料金の引き上げを行ない、物価高に拍車をかけようとしておるのであります。公共料金を引き上げながら物価安定とはどのような関係があるのか、矛盾はしていないのか。国民は納得のできる政府説明を、この国会を通じてお聞きしたいと考えていると思うのでございます。この際、明確な所信を承りたいと存じます。  物価に関連して土地問題についてお伺いをいたします。とりわけ土地対策については、政府はこれを放置しておいて物価の抑制をすることは、それは不可能ではないかと思います。政府は高度福祉国家建設への軌道修正を唱え、もろもろの公共事業を企図しております。特に道路、鉄道、港湾、空港、通信網と、立ちおくれている社会資本充実方針を示しておりますが、それは当然としても、ここに大きな抜け穴があると思います。すなわち土地問題であります。いま地価の高騰は、御承知のように、限りなく続いておるのであります。たとえば道路建設にしても、用地買収費が予算のたぶん二〇%程度を見込んでおると思いますが、この程度で買収できる土地などはきわめてわずかであろうと思います。きわめて僅少であります。はなはだしいのは、都市近郊においては用地買収費が八〇%にもなるのではないかとさえもいわれておるのであります。これでは一部の地主を太らせるだけで、投資効果は全くあがらないのではないでありましょうか。このようなことでは、税金のむだづかいと言われてもしかたがないと思われるのであります。このような基礎的な土地対策を、なぜ、なおざりにしていたのか。なぜ積極的な対策が打ち出し得なかったのか。もろもろの社会資本充実の上に大きな影響を持つ土地対策に手が染められておらないというところに、私は不審にたえない点を感ずるのであります。この際、総理の率直な御所見を承りたいと存じます。  次に、公害問題、環境破壊等についてお伺いいたします。今日の公害の蔓延は、何よりも政府の姿勢そのものにあったと思います。これまでの重化学工業中心、とりわけ石油コンビナート中心開発と廃棄物の大量たれ流しが環境を破壊し、さらに民間企業のもうけ本位の安上がりの生産開発体制がこれに輪をかけたことは明らかであろうと思います。このような環境破壊と汚染拡大する開発が進められてまいったのは、従来の新産都市計画であり、また、新全国総合開発計画によって大型開発計画の推進にあったことは疑いないと思うのであります。巨大都市への人口集中が、経済の発展を上回る速いスピードで進んだからであります。特に、都市施設整備住宅生活関連施設、ごみ処理、上下水道等の問題など、人間らしい生活の基本条件の整備は放置されてしまっているという点であります。私は、このような立場から、何よりも新全国総合開発計画を再検討し、巨大工業開発計画を取りやめ、環境破壊と自然の食いつぶしを未然に防ぐとともに、国民生活全体の視野から考え直すべきときであると思います。政府はすでに新全国総合開発計画改正に取り組んでいると伝えられておりますが、改正するとすれば、その基本方向はどのようなものか、また、いつ改正をされるのか、お伺いいたします。同時に、工業立地規制を含めて、企業に対する規制をどのように強化しようというお考えか、公共施設整備の観点からも重視していただきたいと思うのであります。また、懸案の無過失賠償制度などは一体どのようにいま進められておりますか、あわせてお伺いをいたしたいと思います。  次に、中小企業政策についてお伺いいたします。戦後わが国経済成長は驚異的な発展を遂げ、いわゆる経済大国の一つとなったのでありますが、日本の産業構造の特異性は、中小企業が圧倒的に多いということであります。すなわち、全産業に占める率は、昭和四十四年度の統計でも、九九・四%、働く人々が全従業員の五六・七%となっております。大企業の下積みとなり、幾多の不利な制約を受けながら、日本経済成長をささえてきたのは実は中小企業であると私は断じて差しつかえないと思います。昨年来のドルショックによって、貿易量の低下による犠牲はまたまた中小企業に転嫁されておるのであります。企業のシステムは、大企業はおおむね部品を下請に出して製品化しているのが常識でございます。不況となれば、大企業は製品を持っておりますから、直ちにダンピング的にこれを換金ができるのであります。下請業者は部品を持っておりますが、部品では商品にもならないのであります。ダンピングもできないわけであります。いま下請業者は売れない部品をかかえて惨たんたる状態に置かれておることは、大臣も御承知であろうと思います。しかも、下請代金支払遅延等防止法という下請業者を守る法律が先年制定されておるにもかかわらず、今日全く空文化されております。これをまた政府みずからも放置しておるありさまで、法治国家においてこのような実情が許されていいのかどうか、結局は大企業の恣意のままに置かれておると言わざるを得ないのであります。昭和四十七年度予算案にしても、中小企業対策費はわずか六百九十億円で、前年度よりも百二十億の増程度であります。ドルショックによる犠牲の最も大きい中小企業にわずか六百九十億円の予算で、何が一体中小企業対策かと言いたいのであります。閣内きっての実力者といわれております田中通産大臣は、中小企業に対しどの程度の熱意を持って今後の方針を打ち立てていくか、その具体策をどのように考えておられるか、お伺いいたしたいと存じます。  私は、通産省傘下にある中小企業庁が通産省と密接不離の関係にあることは承知しておりますが、いま申し上げますように、親企業と下請企業関係というものは、ときによっては利害が対立することが往々にしてあるわけであります。それが同居しているところに私は問題があるのではなかろうか。大企業中心の通産省の仕事、そのもとに中小企業庁があるというところに、私は問題の根拠があろうと思います。わが党がかねて主張しておりますように、この際、中小企業省を設けて、全産業の過半数を占める中小企業に対し、きめのこまかい施策を行ない、もってわが国産業の正常な発展に寄与することが適切だと思うのであります。中小企業省設置に対してのお考えを、これは総理にお伺いいたしたいと存じます。  最後に、教育のあり方についてお伺いいたします。申すまでもなく、教育は未来を創造する次代をになう青少年の人間形成の基本の場であります。ところが、これまでの教育の実態は、経済運営と同様に、産業予備軍を育成するための安上がり教育に終始した傾向がございます。この点はきびしく反省をする要があると思います。特に高等教育に対する国の経費等に例をとってみましても、諸外国に比べてまことに貧弱なものがあります。これをカバーしてきたのが父兄の重い負担でありましょう。日本の大学就学率は二割に及び、欧米の一割に比べて高い水準を示しておることは、これは誇ってよいことではあろうと思います。けれども、反面、国民所得に対する大学の公教育費は、アメリカの一・四三%、西ドイツの一・〇四%に対し、日本は〇・七九%にすぎないのでありまして、日本の就学率が欧米の二倍でありますから、パーセンテージはさらに低下することになります。このような低い教育費を持っているのであります。その上、小中学校、高等学校、大学を通じて教育者の待遇はきわめて劣悪であります。未来を創造する青少年の教育とは、新しい時代に備える科学、技術、文化、情操を教え、国の社会経済の発展に寄与せしむるとともに、複雑多岐にわたって流動する国際社会の中に置かれている現代においては、すぐれた日本人をつくることであるとともに、また、国際人としての確固たる基礎を与えることが大切であると思います。しかるに、最近の教育社会の混迷は、御承知のように、目をおおうものがございます。この原因は一体何だろうか。ゆがんだ高度経済成長がもたらしたものもあるいはありましょう。また、核家族化した社会環境にもまた一因はあろうかと思いますが、しかし、せんじ詰めれば、国の文教政策が由来せしめたものと言うべきであろうと思います。すなわち、低い待遇による教育者の一般的質の低下傾向であります。端的に申し上げますならば、現代社会においては、大学以上の課程を経た優秀な人材は、いわゆる待遇の高い経済界や官界に進んで、重要な教育社会に身をささげようとする者はきわめて少ないということは否定できない現象でありましょう。特に私が指摘したいことは、教育者として高い誇りを持って次代を創造する人々を社会に送ることが何にも増して崇高な使命であることを感じ、優秀な人材が他の社会よりもむしろ率先して教育社会に魅力を感じ、生きがいを感じて進んで入ってくるというような環境をつくることが第一であろうと思います。そのためには、中央教育審議会が答申しているような職務職階制を導入し、管理体制強化のみを目的とした見せかけの給与引き上げでなしに、真に誇りある社会的地位と他の社会よりも高い待遇を与えることが、義務教育から大学を通じて、これを早急に具現することが焦眉の急ではないかと思います。私は、日本の長い将来を考えますとき、この際、政府は、従来の慣習といいますか、従来の惰性を一てきいたしまして、思い切った予算を文教予算に計上し、もって教育者の地位と待遇を引き上げるべきだと考えますが、これは、総理と文部大臣に御所信を承りたいと存じます。  以上述べてまいりましたが、私のお尋ねいたしました点を要約いたしますならば、第一に、これからの予算編成は、場当たり的でなく、長期展望に立っていくべきではないか。第二、世界がかつてない歴史の転換期にあたって、確固たる日本の進路を国民に示すべきである。第三として、物価対策に真剣に取り組むとともに、これに関連して、社会資本充実に対し効果的行政を進める必要と、放置したままの土地対策をすみやかに立てること。第四として、公害、環境破壊に対する国の姿勢を正すことが急務であり、新全総の改正にあたっては企業側に傾斜しないよう前向きの方針で進むこと。第五として、中小企業わが国の産業を大きくささえている実態にかんがみ、積極的政策を樹立するとともに、中小企業省の設置を強く要望すること。第六として、長期展望のもとに、青少年の教育に対し、教育者の質的向上をはかるため、その待遇改善に勇断をふるうべきである。  以上の六点でございます。総理はじめ所管大臣からの誠意ある御答弁をお伺いして、質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 林君にお答えをいたします。  質問の第一は予算の効果についてでありますが、昭和四十七年度予算は、すみやかな景気回復を目ざして積極的な規模の拡大をはかっており、御指摘のように、近年にない積極型の予算であります。このような大型予算は、四十六年度の公共事業の追加及び所得税の年内減税の効果と相まって、十分な景気浮揚効果を発揮し、わが国経済は、おそくとも来年の後半には安定成長の軌道に乗るものと考えております。このように来年度後半には景気は回復すると見込んでおり、四十七年度に、さらに景気刺激のための補正予算を組まなければならないというような事態にはならないと考えております。また、景気回復後は税収の伸びも回復してくるでありましょうし、また、財政規模、歳出内容も経済の動向に即応したものとなるので、四十八年度予算編成が、御質問のようなたいへんな事態になるとは私は考えておりません。  次に、発想の転換ということを私が初めて申しましたのは、四十三年九月の岐阜における一日内閣であったと思いますが、今日わが国においては、政治、経済、社会の各分野でその必要性が痛感されていると思います。私としては、もはや発想を転換するばかりでなく、これを行動の転換に結びつけていかなければならないと考えております。林君の御問質の趣旨に従って申すなら、いまやわが国は国際社会において、政治的にも、経済的にも大きな影響力を及ぼすに至っております。したがって、その責任と役割りもきわめて重くなっていることを自覚しなければならないと思うのであります。諸国民の願いは、恒久平和の確立であることは申すまでもありませんから、この問題における日本責任と役割りは当然平和維持という面に指向されなければならないと思います。具体的には、開発途上国への援助、自由貿易の推進、国際経済関係の推進、日中関係の正常化、日ソ平和条約の締結などであろうと思います。また、国内的には、来年度予算案にその片りんを見せておりますように、今後、高度福祉国家建設に邁進することであります。  次に、物価公共料金引き上げ等の問題につきましては、先ほど公明党の二宮君、さらに民社党の向井君にお答えいたしたところでありますので、まことに失礼でありますが、省略さしていただきたいと思います。ただ、この機会に申し上げますことは、五・三%の目標、これは達成できる、このことをはっきり申し上げておきます。  また、土地対策につきましても、これまた二宮君にお答えしたので、これも省略さしていただきます。  次に、新全国総合開発計画は、今日の環境悪化の問題の根本原因は国土利用が大都市など一部の地域に偏在している点にあるという認識に立ち、その是正を通じて国土の利用を抜本的に再編成し、公害のない豊かな国土の実現をはかることとしたものであります。この点では林君の御指摘のとおりであります。計画策定後の諸情勢を見ると、経済の成長率等において計画の想定とやや食い違いが見られますが、これに対しては、計画を改定するより、実施面で対応していきたいと考えております。  なお、大規模工業開発の実施に際しては、十分な事前調査と総合的な土地利用計画の策定などにより、自然の保護、保存を含めた環境施策に万全を期し、豊かな環境の創造につとめてまいる所存であります。林君御指摘のとおりであります。  お尋ねの無過失損害賠償責任につきましての法案は、今国会に提出する予定であります。  中小企業政策は国の最重点政策の一つでありますが、これを現在の通産省から切り離して、独立した中小企業省としてその施策を推進したほうがいいかどうかは議論のあるところと思います。これまでも林君と同様な意見を述べられた方も数多くありますが、私としては、経済の国際化という観点から、中小企業行政は当面産業行政と一体となって運用されるほうが望ましいと考えております。林君もその点は御指摘になりましたように、中小企業のうちの部品だけではなかなかそれは商売が成り立たない、こういうふうに言われましたが、そのとおりであります。やはり産業行政と一体として考えるほうが中小企業のために望ましいことだと私は思います。  最後の問題で、教育問題についての林君の御意見には私も同感であります。教育は国の大本であり、また、教育の成否は教師のいかんにかかっております。したがって、教師に人材を得、安んじて教育に当たらせることはきわめて大切なことであります。その一環として教師の待遇の改善が必要であると考えておりますが、これは教員養成制度改善とも関連があるので、それらを十分勘案しての改善に努力したいと考えるものであります。  以上お答えをいたします。ありがとうございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  26. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  今回提出しました予算案のこの弾力的な運営によって不況が克服されるだろうということ、それから、補正予算は組まなくても済む事態になるだろうということをいま総理からお答えになりましたが、この点は同感であります。  また、来年度——四十八年度の予算編成は、もし不況が克服されるならば歳入状態も変わってきますし、編成難に追い込まれることはないであろうという御答弁でございましたが、問題は、私は本年度よりも、四十八年以後の長期財政の点にいろいろあると思いますので、この点について林さんがいろいろ意見を述べられましたことは、非常に貴重な御意見として敬意を表したいと思います。私たちも来年からの問題を非常に心配しております。と申しますのは、福祉政策というものは、一ぺん乗り出してしまうとあとへは引けないものであって、非常にたくさんの財源を要するということでございます。その場合に、もし本年度において安易な方法をとって、不況克服という至上命令のためといって赤字公債の踏み切りをしたら、私は四十八年度以後のいろんな問題を誘発するということをおそれまして、で、国会というところは、失礼でございますが、減税というものについては非常に御理解をいただいて賛成を願えるんですが、増税というものは、私の経験ではなかなかこれは認めてもらえないものでございますので、一たん赤字公債を発行するというところへ踏み切りますというと、この福祉財源を要するというときに、公債の姿勢を正すとか、あるいは節度を戻すということは非常にむずかしいことで、これからほんとうのインフレが始まっていくということを私どもは非常におそれましたので、今度の予算編成におきましては、どんなことがあっても赤字公債は出さないという方針からこの編成に当たったというのが実情でございます。私も、せっかく円の切り上げをやって円の価値を上げておきながら、インフレのもとをつくって円の価値を台なしにしたんでは、どうもこれは非常に感心したことになりませんので、この点だけを特におそれて用心したつもりでございますが、もしそうだとしますというと、それではこの不況が切り抜けるかという問題になるわけでございますが、国債だけが不況を救うゆえんでございませんで、要するに、公経済が民間資金をどう吸収し、活用して、そうしてこの浮揚力をつけるかということでございますので、公債以外に、かわるいろいろの方法がたくさんございますので、それからの措置は全部動員するということをしておりますので、したがって、さっき総理から答弁されましたように、この下半期には必ず私は不況は回復してくる、したがって、補正予算の必要に迫られないで済むというふうに考えております。また、何としてもそれは済ませなければいけないというふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手
  27. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 第一のお尋ねは、公共料金の引き上げと政府の五・三%来年度消費者物価上昇率との関係でございます。公共料金消費者物価に及ぼす影響が、四十七年度におきましては例年より大きいことは事実でございます。しかしながら、公共料金の引き上げを極力抑制的に取り扱うという基本方針は今後とも変わらないところでございまして、一般物価の情勢も最近鎮静化しつつあること等から考えますと、今後各般の政策努力を傾注することによって、四十七年度の消費者物価上昇率を見通しの五・三%の範囲内におさめることは十分可能であると考えます。  次に、日本商工会議所における私の発言についてお触れになりましたので、この際、発言の真意について一言だけ御説明申し上げたいと思います。  私は、その講演の中で、当面わが国経済の重要課題景気の回復である。今回、大型予算の編成に公債政策の活用並びに効果的な予算執行によって、おそくとも本年秋口には景気は回復に向かうであろうと、こういう見通しをしておりますが、万が一にも明年度内にも景気が回復しない、依然停滞状況を続けるようなことがあれば、国民経済的にもまた国際収支調整上からもまことに憂慮すべきことである。そのような事態が生じた場合には、昨年秋、補正予算を必要としたような場合もあり得るであろうということを、仮定の問題として、かつ個人的意見としてお話しした次第でございます。御了承願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手
  28. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ドルショック等により、不況下にある中小企業に対する予算等、対策いかんという問題に対してお答えを申し上げます。  ドルショック、円平価の調整等、中小企業をめぐる環境はきびしくなっておることは事実でございます。特に、輸出関連中小企業にとりましては相当な影響があるものと考えられます。政府は、かくのごとき緊急事態に対処するため、昨年、臨時国会に、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律なるものを制定をお願いしまして、金融、税制等救済措置を講ずることにいたしたわけでございます。  なお、四十七年度予算では、国の中小企業対策費といたしましては、御指摘のとおり、六百九十七億円を計上いたしております。対前年度比は一二〇・四%でございます。なお、繊維の特別対策費を計上いたしておりますので、これを合算いたしますと、一五〇・三%、こういうことでございますから、前年度予算の五〇%余増しを計上いたしておるわけでございます。また、中小三金融機関には六千九百十六億円という財政投融資の措置をいたしておりまして、その上、所要の税制改正等を行なうことにいたしております。  なお、中小零細企業等に対する重点的な問題を一、二申し上げますと、特に四十七年度中の重点事項といたしまして、中小企業の構造改善、転換対策等を推進をいたします。次に、中小企業公害対策充実するため、金融と技術対策等を拡充してまいるつもりでございます。なお、第三としましては、環境変化を最も強く受ける小規模企業に対しまして、経営改善普及事業、小規模企業金融の拡充等につきまして重点的に努力を傾けてまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣高見三郎君登壇、拍手
  29. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 林先生にお答えいたします。  たいへん御激励をいただきましてありがとうございました。私も、教育界に人材が魅力を持って入ってくれることを心から念願をいたしております。これは総理がお答えになりましたように、教員養成制度の問題もきわめて大切な問題でありまするし、現職教員の研修の問題とあわせ考えなければならない問題であると存じます。昨年五月、いわゆる教職調整額を国会において議決いただきまして、本年一月一日から施行いたしまして、その際に、あわせて特殊業務手当の範囲もきめ、金額もきめて施行いたしておるわけであります。けれども、これは決して教員処遇が非常によくなったという性質のものではございません。中教審が答申をいたしておりまする、一律に三〇ないし四〇%の給与の引き上げをやれという答申がございますが、これは今後の問題として、私どもいま、昭和四十四年から、教職員の処遇に関してどの範囲でどうすることが一番いいかということで、教員の生活実態等につきましても相当幅広く、深い調査をいたしております。今年はこれを分析いたしまして、来年度からひとつ——再来年度からになりますが、本格的に処遇改善の方途を講じていきたい、かように考えております。ただ、念のため申し上げておきますが、中教審の答申のいわゆる五段階給与というものは見せかけだというお話でございましたけれども、これは職階制のみに対する給与の改善ではございません。長期の研修をいたしました、研修の成果を踏まえました教員に対しましても特殊な処遇をしようという案であるということをあわせて御了承をいただいておきたいと存じます。(拍手)     —————————————
  30. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 中村波男君。    〔中村波男君登壇、拍手
  31. 中村波男

    ○中村波男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、林質問と重複するきらいはございますけれども、四十七年度の予算案の性格、物価問題、農産物の自由化問題等について質問を申し上げたいと存じます。  私たちは、ドルショック及び円切り上げ後のわが国の経済政策のあり方としては、従来の大全業優先、産業偏重、GNP第一主義、すなわち高蓄積一本やりの路線を改め、国民の命と暮らしを守り、福祉向上させる政策への切りかえを強く求めてまいりました。言うなれば、公害対策の欠除、消費者物価対策の不在、低賃金構造、社会資本社会保障の立ちおくれなどの社会のひずみを是正するには、金、外貨準備高百五十二億三千五百万ドルをかかえている現在こそ、絶好のチャンスだと考えるのであります。しかしながら、予算案は、総選挙気がまえの政局不安にあおられまして、一般会計において十一兆四千七百億円を上回る超大型となりました。こんな無定見な放漫財政で四十八年度予算はどのようにして組むのかと、大蔵官僚の中からでさえ強い批判が出ているほどの、あとは野となれ山となれという予算編成の姿勢は、佐藤内閣の末期的症状が予算をおかしたといわれていることをはなはだ遺憾に思うのであります。  さて、政府予算編成を前に掲げた方針は何かといいますと、国債発行規模が一兆五千億円、そうして景気刺激のため、所得税中心に五千億円の減税、公共事業は、市町村道や老朽公営住宅の改造、下水道整備などの生活関連投資にもっぱら重点を置く。歳入面では、ギャンブル税の創設、租税の特別措置の手直しによる増収などの方針がすべてくずれ去っていったのは、党内部の有力者や財界の圧力に屈した結果だといわれており、また、大蔵原案は、一般会計に、俗にいう隠し財源一千百億円を用意し、財投会計では公募債借り入れ金と資金運用部回収金などで二千四百億円を増額し、為替差損対策、国際交流基金、恩給費等々におおばんぶるまいを行なった結果として超大型予算となったことは周知のところであります。政府予算編成の二本柱であった不況克服と福祉向上は看板倒れとなり、不況克服に主眼が置かれたのであります。したがって、公共投資拡大に力点がかかり、公共投資の中では、生活関連投資より産業関連投資に重点を置くという従来の路線を踏襲し、資本の論理に忠実なものとなっているのであります。このことは幾ら政府が否定をいたしましても、予算の内容を見れば私は一目瞭然であると存じます。公共投資を中心予算額をふやすには二兆円近い国債発行が必要となり、これを政府は建設国債だと強弁していますが、それは政府が名づけ親となっているだけでありまして、実質的には赤字補てんのための国債であることには変わりがございません。そこで大蔵大臣にお聞きいたしますが、国債の日銀引き受けという事態も考えられまするけれども、それを避けたといたしましても、直接、日銀引き受けの形を取らず、資金運用部引き受け分をふやしまして、運用部は手持ちの国債を日銀に売却して資金調達を行なうことになりますれば、それは実質的な日銀引き受けでありまして、このような事態は絶対に起こさないと確約ができるのかどうか、その所信のほどをお伺いいたします。  次にお聞きいたしたいのは、国の一般会計公共事業費約二兆一千五百億円を土台にし、地方自治体、財投負担分などを含めた総公共事業費は、私たちの試算では四兆五千億円程度、そのうちの用地費は少なくとも一兆五千億程度でなかろうかと見ておるのであります。見込み違いがありまするならば御指摘をお願いいたしたいと存じます。とにかく膨大な財政資金の放出は土地投機を誘発し、さらに全般的な物価上昇への起動因となるおそれが多分に考えられます。このような心配を私たちは持っておりまするけれども、これまた大蔵大臣はどう見ておられるのか、お伺いをいたします。  もう一つの問題点は、すでに新聞で報道されておりますように、公共投資を当て込み、土地の先回り買い占めが横行し、土地の値上がりに拍車をかけているのであります。この動きから見てまいりましても、またまた土地が大幅な値上がりをすることは、今日の常識でございます。もう一つの隘路は、金はついたが、これをこなす人がいない等々から、予算の積み残し、消化不良となる危険が大きいと私は見ているのであります。さらに、これらの地価つり上げの影の立て役者は銀行だともいわれているのでありますが、これを何らかの方法で規制することを政府は考えられないのでしょうか。  以上、私は公共事業費に関連して地価問題を取り上げ政府見解をただしましたが、元来、国民平等に与えられる土地が、一部の階級の利益となって騰貴を続け、その陰で国民大衆が泣かされているということは何としても許されないことであります。総理は、この政治責任をどのように考えておられるのか、私への答弁を通じて国民の不満にこたえていただきたいと存じます。  これから質問する内容は、物価問題でございます。国民はいま、大津波のような値上げ攻勢の前にさらされ、ひとのみにされようとしています。すなわち、国鉄運賃をはじめとする全面的な公共料金の引き上げによって、公共料金主導型、つまり政府主導型の消費者物価上昇の年になることは必至でございます。しかるに政府は、ことしの消費者物価上昇率を、四十六年度の六・一%より〇・八%も低い五・三%と見込んでいるのでありますが、これはあまりにも作為的で、子供だましの数字と言うべきであります。ほんとうに政府は五土二%以内に押えることができると考えていられるのか、すでに答弁がありますので答えはわかっておりまするけれども、その根拠をもう少し具体的に示していただきたいのであります。言うまでもありませんが、消費者物価指数の中に占める公共料金のウエートは大きくて、しかも、それが一般物価への心理的な効果や便乗値上げを誘発することはすでに実証済みで、だからこそ、経済団体、専門家等のほとんどが六%以上を予想し、また、一月二十四日付の朝日新聞は、ことしの消費者物価は四十年の七・四%をさらに上回り、戦後混乱期を除けば最高の物価上昇率記録しそうだと指摘をいたしております。木村経企庁長官は、公共料金が要求どおり上がるとすれば六・四%となり、一・一%の差は政策努力で下げるほかないと述べ、物価高騰を半ば認めておられるように感じます。言うまでもなく、ことしは公共料金改定のラッシュによって、消費者物価高騰することは火を見るより明らかであります。総理施政方針演説の草稿を見て、「もっと物価対策に力点を置く表現を」と手直しを命じられたとか。総理に直書をしたい。国民総理演説には聞き飽きています。こうする、ああするということばはもはや国民のほとんどが信用しないと申し上げても私は言い過ぎではないと思うのであります。百万言を費やして政策を飾り立てることだけはおやめになることです。そうは申し上げましたものの、私は、去る二十九日の施政方針演説の中で特に物価対策については大きく期待を寄せていたのであります。率直に申し上げて、期待はみごと裏切られ、七年間の繰り返しにうんざりしたとしか言いようがございません。しかしながら、総理は、施政演説の中で、「今回の通貨調整を物価の安定に役立たせるため、食料品を中心にする輸入増大をはかり、これら輸入品の価格低下と相まって、高まった円の対外価値と輸入力を国民生活の上に活用していく所存である」と述べられました。経企庁が円切り上げによる物価引き下げ効果を計算した数字によりますと、消費者物価で一・三%、卸売物価で一・五%から二%ということであります。だが、追跡調査では、流通、加工段階で雲散霧消し、計算数字とは大きな隔たりがあるといわれておるのでございます。この実態については、木村経企庁長官に説明を求めますと同時に、輸入品の流通対策や監視体制についてお聞かせを願いたいのであります。  私は、ぜひ政府に実行してもらいたいことがございますので、それをここに提案し、それに対する総理の所見を承りたいのでございます。それは何かと申しますと、政府の輸入麦の円の切り上げによる差益を消費者に還元してもらいたいということでございます。昭和四十七年度の食管特別会計予算によりますと、食糧用麦は三百四十七万トン、買い入れ価格は九百七十七億円、飼料は二百三十四万トン、買い入れ価格は六百億円となっており、この差益金は、低目の一〇%と見ても百五十七億円以上になるのでありまするから、二百億円を突破することは明らかであります。正確な数字はひとつ農林大臣から御報告を願います。農林省は切り上げ幅を一〇%として食パンは一斤について五十一銭、うどんは一玉二十六銭程度であるから、値下げをしても卸や加工段階で吸収され、消費者価格の引き下げには通じないなどの理由によって値下げは考えていないと伝えられております。でありますから、総理に私は直訴に及んだわけであります。農林省の態度、方針が私の聞いたとおりであり、また、総理がそれを許しておられるといたしますならば、総理の言われた円の対外価値と輸入力を国民生活に活用するなどということは取り下げていただきたいのであります。なるほど、パン一斤ではささいな金額でありましょう。問題は、物価引き下げに対する政府の熱意を具体的に示すことであります。それを実行に移したことによって、金でははかることのできない力が働くということを考えていただきたいのであります。そのほかにも、食管会計、畜産振興事業団、糖価安定事業団などにも相当の差益金が出る見込みでありますが、これらは国内生産との関係を配慮する必要もありますので、本日は輸入麦に限って意見を申し上げましたが、総理答弁メモにはどのように書いてあるかわかりませんけれども、勇断ある御答弁を期待してやみません。  続いて、経企庁長官にお尋ねしておきたいのは、さきに指摘いたしましたように、公共料金主導型の物価上昇になることは必至で、その公共料金全体の上昇率は、終戦直後の時期は別にいたしまして、最も上昇した昭和四十一年度の六・二%を大きく上回るのは確実であります。おそらく一〇%以上の上昇率記録するのではないかと私たちは試算をいたしておるのでありますが、経企庁としてはどのように見込んでいるのか、明らかにしていただきます。今後の問題として、公共料金並びにこれに準ずる値上げメジロ押しであります。特に電力料金、都市ガス、中小都市のタクシー料金、各種電車、バス料金等の値上げについては、経企庁長官はどのように対処されるのか、お聞きしたい点であります。さらに、政府の言う受益者負担の原則とはいかなる内容を持っており、何を意味するのか、具体的に説明をお願いいたします。  つけ加えてただしておきたいのは、政府公共料金への対応のしかたについてであります。政府は、赤字が出れば、これを値上げ、すなわち受益者負担でまかなう、だからこそ、国鉄運賃値上げの一年繰り上げ、さらに三年目ごとに行なうことを条件に政府が投資する、このような発想こそ転換をしてもらいたいのであります。総理におことばをお返ししたいのであります。このような対応のしかたは問題をあとにおくらせ、改革を引き延ばすばかりか、悪循環を引き起こし、結局国民に犠牲をしいることが落ちであります。総理からは、公共料金に対する基本的な方針について御説明を願います。  次の質問は、消費者米価の物統令適用廃止についてであります。まずお聞きしたいのは、米の物統令廃止の目的はどこにあり、その結果だれが得をし、だれが損をするかということを政府が明確にされませんと、消費者の不安は消えないし、消費者団体の反対は一そう強まることを覚悟すべきでございます。この際にお話をしておきたいと思いますのは、廃止反対の意見書を決議した自治体は、大阪、愛知をはじめ八府県、百六の市町村に及びまして、すでに二百万をこえる反対署名が行なわれていることでございます。  さて、米の物統令廃止は、一昨年末、四十六年度予算編成の大詰めの段階で、四十六年十一月一日の新米穀年度から廃止することを政府自民党が申し合わせ、それが今日延期されましたのは、四十六年産米が低温、長雨による不作が予想されたため、物統令の廃止による消費者価格のばね上がりをおそれて延期したことは隠れのないことであります。四十六年産米の作柄は予想よりさらに悪かったために、調整在庫は二十五万トンに減少しておるのであります。このように需給事情が窮屈になった中で廃止に踏み切ったのは、別な意図が隠されていることについては、あとで私は指摘をいたします。  われわれが物統令廃止に反対する大きな理由は、必ず米価が値上がりするからであります。私が指摘するまでもなく、物統令が現存している今日でも、配給米の格上げ、混米、やみ米への流用が半ば公然と行なわれ、特に自主流通米制度が新設されてからは、これに拍車をかけていることは政府は百も承知のはずであります。このことは、不作などを口実に、機会さえあれば値上げをしようとする下地ができていることを示し、全部とは言いませんけれども、商業道徳が極度に乱れていることからしても、価格統制から米をはずせば、悪徳商法が大手を振ってまかり通ることを私たちは心配するのであります。政府は、値上がり防止策として、現行配給米と同価格の標準米を設けることにいたしております。ところが、政府米にも味や品質に応じて値段をきめる品質格差を導入するということになるのでありますから、結局、標準米には商品価値の低い米が回ることは明らかであり、さらに標準価格米の品質と量をどうやって確保するのか。もしこれが完全に確保され、厳密に守らせることができますならば、現行と同じということになるのであります。このように値上がり防止対策は矛盾に満ち、疑問だらけであります。政府は流通業者の競争条件の整備を打ち出し、それには、六大都市人口増加三%以上の地域で開業を認めるというのでありますが、しかし、その数はごく限られたものになることは明らかであります。したがって、自由競争としての条件整備とは言いがたいと思うのであります。これでは米屋の地域独占はびくともしないし、米屋の組織力からして価格協定が行なわれるのではないかと疑問視する向きが多いのは当然であります。  まだまだただしておきたい点は幾つもありますが、限られた時間でありますから、質問を急ぎます。  政府の米の物統令廃止の真のねらいは、米価全体の価格を押し上げて、なしくずしに食管制度の解消をはかろうとするものでございまして、さらに重大なことは、米価の値上がりが消費者物価の値上がりを誘発することでございます。したがって、この際、米の物統令適用廃止の撤回を政府に強く要望し、この問題に対する質問を終わりますが、質問した事項につきましては、農林大臣、経企庁長官から明確な答弁をお願いをいたします。どうしても物統令適用を廃止するのでありますならば、米は国の独占事業の対象であり、国民生活上きわめて重要な消費物資でありますから、財政法第三条の特例に関する法律は当然これを廃止し、米価は財政法の原則に立って国会の議決を経ることが本来の政治の姿と考えるのでありますが、この点について大蔵大臣見解伺います。  次に、円の切り上げと農産物の自由化対策についてお伺いをいたします。昨年来続けられてきました懸案の日米通商交渉は、去る一月二十六日合意に達し、その内容は、オレンジ、果汁、牛肉の輸入ワクの拡大をはじめ、子牛は関税割り当て制度で五千頭まで無税とするなど、アメリカ側の要求を大幅に認めて妥結いたしました。農林省は、この程度ならばたいした影響はないと高見の見物ときめ込んでいるようでありますが、農業団体は、なしくずし自由化であるとし、米政府の圧力に押され、日本の農業事情を無視して決定した政府政治姿勢に大きな不信と怒りをぶちまけているのであります。私も、今回の交渉は日米農業戦争の幕あけであって、来年以降さらにこの戦いは熾烈となり、正念場を迎えると考えているのであります。元来、アメリカが円の大幅の切り上げによって通貨調整を行なうことは、本来の目的は貿易の調整にあったものでございまして、したがって、貿易の自由化をたての両面として日本に強く押しつけてきたのでございます。アメリカの農林水産物の輸出総額八十億ドルに対しまして、日本への輸出は二十億ドル、二五%を占め、いわば日本はアメリカの農産物にとってこの上もない市場であり、お得意でございます。アメリカがヒステリックなまでに農産物の自由化を迫ったのに対しまして、政府は、輸入ワクの拡大、関税引き下げで自由化を回避する作戦をもって応戦し、貿易交渉の一年間休戦ということで一息入れたのであります。しかし、輸入ワクの拡大は明らかに自由化と隣合っておりまして、自由化後の通りをよくする婚前交渉だと指摘する者がありますが、全くそのとおりでございます。政府は、自由化は一応阻止した、今後も阻止していく、しかし、物価対策として輸入ワクの拡大は役立つと巧妙な理由づけを行ない、四十七年度予算案には国際競争力をうたい、幾つかの自由化対策を打ち出しているのであります。しかし、その内容たるや、生産対策抜きの価格、流通偏重となっており、自由化対策ではなく、自由化受け入れ対策と言うべきものであります。農産物の自由化は十年前から問題となってきているのに、政府は小手先の対策でお茶を濁し続けてきた結果、農民は常に被害者の立場に立たされっぱなしでありました。たとえば、三十九年に自由化されたレモンは、自由化当時の十五倍、六万トンと輸入量がふえ、価格も、四十一年の一キロ当たり百三十円から次第に値上がりをし、四十六年には百七十三円になったことは御承知のところであり、そのあげく日本のレモン栽培は壊滅したのであります。  ここで考えてみなければならないのは、ことしの四月、農産物の残存輸入制限は二十八品目となり、フランスの三十九品目より少なく、西ドイツ、イギリス並みとなるのに、日本の農業だけが自由化攻勢の標的になっていることは、日本品が世界市場を席巻している反動だと私は見るのであります。言いかえますならば、輸出第一主義の犠牲に農民が供せられておるのであります。しかしながら、国際化時代を迎え、貿易の自由化は世界の大勢となってきました今日、日本だけが自由化をいつまでも拒否することに困難があり、また、国内的には、生鮮食料品を中心とした消費者物価高騰によって、消費者からは安い海外農産物を輸入せよという要求があり、いわば腹背に敵を受けているだけに、事はまことに重大と言わなければなりません。ところが、私は問題は一つであると思うのであります。アメリカは日本消費者のために自由化を要求しているのでは決してないのであります。あくまでも自国の利益をはかっていることを見落としてはならないのであります。まずオレンジの自由化を考えて見ますと、アメリカの総生産量は七、八百万トン、生産原価はキロ当たり二十円以下であるのに対しまして、日本のミカンの総生産量は約三百万トン、生産原価は四十数円であります。また、牛肉は世界的にも不足をしており、国連食糧農業機構の牛肉の需給見通しによりますと、一九七五年には二百八十万トンから四百三十八万トンの供給不足になると報告しております。御承知のように、アメリカは肉牛生産においても世界一でありますが、それでも自給ができずに六十万トンを輸入しているのであります。そのアメリカが自由化を迫るのは不可解と言わなければなりません。私が言いたいのは、オレンジ、果汁、牛肉などが自由化されれば壊滅的な打撃を受けることは言うまでもありませんし、消費者も、最初は安いものが手に入るとしても、だんだんと値段がつり上げられてくることは、かつてのレモンや牛肉の自由化で経験済みであります。  以上、私は円の切り上げと輸入自由化を別々に考える見方がいかに甘いものであったかを指摘し、円の大幅切り上げによって農業の国際競争力が一そう低下した中で、今後、アメリカはその生産力にものをいわせて日本に自由化を強要し、農産物を売り込み、貿易収支の改善をはかろうとしている点を具体的にあげまして、これに対応できる日本農業の転換を強く求めたつもりでございます。  総理、米以外の農産物の自給率は六九%に落ち込んだことは御存じでしょうか、一億国民の食糧を安定的に確保することは国民経済上不可欠であり、そのためには、小手先でなく、長期展望の上に国民食糧の自給見通し、基本的食糧の確保、国際競争力をつける農産物の明示などの緊急課題政府はどのように対応しようとされているのかを、総理からは総論的に、農林大臣からは各論的に所見を承ります。  最後に交通問題について、関係大臣所信をお伺いいたします。交通事情をやゆして、うんとお急ぎの方は地下鉄で、次にお急ぎの方はお歩きを、お急ぎでない方はタクシーかバスでという話がありますが、全く都市交通の混乱と渋滞は目に余るものがあります。今回、政府はタクシー料金の大幅な値上げを行ない、その条件として、乗車拒否絶滅、サービス改善を付したと言われておりますが、しかし、国民は、それは値上げの言いわけ、口実にすぎないと、全然信用はしておりません。そこで、地下鉄の値上げも時間の問題で、値上げは確定的であります。言うまでもなく、地下鉄は安全、敏速、確実な交通機関として、ますます大衆の足は地下鉄にたよらざるを得ないのが現実で、純然たる公共交通機関となっていることは御承知のとおりであります。したがって、政府は、大都市における国民の足を守り、交通緩和をはかるために、地下鉄の公共交通機関としての役割りを位置づけ、公共投資を基本に運営できるように措置すべきだと私は考えますが、その所見をお伺いいたします。  さて、今日の行き詰まった空、海、陸の交通を効率的に安全かつ便利に運用していきますためには、諸方策を総合化し、体系化することが緊急な課題であります。しかるに、政府の交通対策には全く見るべきものはなく、ばらばら行政の見本であります。しかし、政府も昨年末、ようやく総合交通体系をまとめました。それがこの本でありますが、ある専門家は、まぼろしの交通体系だと酷評しております。私も、寄せ木細工の作文で具体性を欠き、ただ受益者負担の原則の確立だけが象徴的であります。  時間がまいりましたので、具体的な指摘は次の機会に譲るといたしまして、前にも申し上げましたように、交通問題の多くは行政の多元化から来ているといわれております。とにかく、政府は曲がりなりにも総合交通体系をつくったのでありますが、しかしながら、いまだに行政の一元化に手をつけていないようであります。私たちといたしましては、交通省もしくはそれに準ずるような主管機関をつくるべきだという意見を持っておりますが、これに対する政府方針をただしまして、質問を終わらせていただきます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中村君にお答えをいたします。  最初は物価の問題であります。まず、これまでもたびたび申し上げてまいりましたように、政府は、最近の物価動向、円切り上げの影響等から見て、一部公共料金の引き上げを見込んでも、各般の政策努力を通じて、四十七年度における消費者物価上昇を五・三%にとどめることは可能であると考えております。  次に、公共料金についての考え方でありますが、政府は、公共料金については従来から極力これを抑制することとしております。しかしながら、公共料金といえども経済社会活動の中の価格体系の一部を構成するものである以上、長期にわたる固定化によりまして国民経済全体の適正な資源配分に支障を来たしたり、公共サービスの量的不足と質的低下によって国民福祉が阻害されることのないよう配慮していくことも必要であります。したがって、このような考えに立って、物価動向を勘案しつつ必要最小限度の値上げを認めることはありますが、公共料金値上げを極力抑制するという政府基本方針には変わりはありません。物価の安定は国民福祉向上を目ざす政府の重要な政策であり、政府は今後ともその安定に最大の努力を傾ける決意であります。  次に、地価騰貴等の土地対策につきましては、公明党の二宮君にお答えしたので省略させていただきます。  また、公共事業の消化が困難ではないかとのお尋ねですが、用地については、かねてから先行取得につとめ、昭和四十七年度当初においては相当量の用地を確保し得る見込みであります。また、工事の設計等においても、コンサルタントの活用など、民間の協力を得て実施するので、公共事業は十分消化し得るものと考えております。  次に、中村君から、政府の管理小麦については円切り上げ分を消費者に還元すべきではないかとの御質問がありました。主食用小麦の政府売り渡し価格は、国際価格の騰落にかかわりなく、原麦を安定した価格で供給するたてまえで、食管法上も、家計費や米価との関係などをしんしゃくして決定することとしております。したがって、麦の輸入価格低下しても直ちに政府売り渡し価格を引き下げるということにはなりませんが、小麦の政府売り渡し価格については、今後とも家計の安定にも配慮しつつ適正に決定してまいりたいと考えております。  次に、わが国農業の基本的役割りが国民の必要とする食糧を安定的かつ効率的に供給することにあることは言うまでもありません。また、食糧供給にあたっては、国内生産が可能なものは極力国内でまかなうことが望ましいと考えます。このような観点から、政府はさらに一そう農政の強力な推進につとめ、国際競争に耐え得る近代的な農業の確立をはかるよう、一段と努力を傾けてまいる考えであります。  わが国に対する農産物自由化圧力が強いのは日本の工業製品の輸出に対する報復措置ではないかとのお尋ねでありますが、私は必ずしもそのようには考えておりません。そもそも自由化の推進は、他国からの要請や圧力を加えられて、それによって行なうというべきものではなく、本来、国益増進の立場に立って自主的に進めるべきものと考えます。もちろん、自由化によって大きな影響をこうむる部門については十分な配慮を加えるべきことは当然でありますが、自由化が長期的な国益に資するものであることを見失ってはならないと思います。他方、わが国輸出に関しても、高度化した産業経済と、わが国を取り巻く国際経済環境を考えますと、今後は、輸出構造の知識集約化や市場の多角化等、輸出の質的な改善と国際的摩擦の回避に十分意を用いてまいらねばならないと考えます。  以上、私からお答えをいたしました。その他の問題は所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  33. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 国債発行の場合、日銀の引き受けという事態にならなくて済むかということと、もう一つは、資金運用部が一たん引き受けておいて、これをすぐに日銀に売却する、実質的には日銀引き受けと全然変わらないような措置になる事態は考えられないかというお話でございましたが、ただいまの金融緩慢の状態から見ましても、市中消化の原則はりっぱに貫けるというふうに考えます。  その次は、公共事業執行の過程において、土地を取得する困難さから、地価を上げたり、あるいは公共事業執行に支障を来たすような事態を起こさないかという御心配でありましたが、この心配は十分ございますが、すでに昨年、公共事業費の繰り上げ使用をやったり、あるいは追加予算をやったときに、この問題についてはもういろいろな経験をしておりまして、公共団体の土地の先行取得というようなことについてもいろいろの努力をいたしました結果、ただいま、はっきりした数字はわかりませんが、公共団体の持っておる先行取得の土地価格の額が一兆円以上に及んでおるといわれておりますので、そういうような点から考えてみましても、何とかこの公共事業の執行は支障なくやっていけるのじゃないかと考えます。しかし、土地問題は重要でございますので、この公示制度とか、あるいはいまとっております先行取得の制度とか、いろいろなことをやって、土地制度の合理化ということをやらなければ、確かに公共事業の執行には一つの支障が来るんじゃないかと思います。  それから、米の値段を国会できめたらどうかということでございましたが、財政法三条の特例に関する法律を廃止するかどうか、物統令に関して廃止するかどうかということは、ただいま財政審議会で審議しておるところでございますが、かりにこれが廃止されましても、私は、米の値段をきめるのは国会でなくて、いまのように米価審議会の意見を聞いて政府がきめるということで一向差しつかえないんじゃないかと思います。(拍手)    〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手
  34. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 最近の消費者物価の動向を見ますと、昨年十月以降、騰勢は鈍化しておりまして、ちょっと数字を申し上げますと、昨年四月から十二月まで、すなわち第一四半期から第三四半期までは、前年は七・五%の上昇でございましたが、今回は六・二%と鈍化しております。特に季節商品は、生鮮食料品を含めまして大幅な低下、前年同期が二一・八%に比べまして、このたびは三・一%という鈍化ぶりでございます。ことしに入ってからの動向を見ましても、天候条件や景気動向の影響が出まして、引き続き低落傾向をたどっております。したがって、昭和四十六年度の消費者物価上昇率政府改定見通しの六・一%を下回ることはほとんど確実と見込んでおります。このような物価情勢の中で一部の公共料金の改定が行なわれるわけでございますが、確かに昭和四十七年度における公共料金消費者物価に及ぼす影響が例年より大きいことは事実でございます。しかしながら、やむを得ず公共料金を引き上げる場合におきましても、その引き上げ幅、実施時期については、特に今後も慎重に取り扱うことといたしております。公共料金消費者物価全体に占めるウエートは一万分の千二百五十七であり、決して小さくはございませんが、しかしながら、これを長期にわたって公共料金が固定化することは、先ほど総理がお答えいたしましたとおり、国民経済全体の均衡と公的サービスの円滑化をはかるという見地から、はなはだ適当でない場合もありますので、真にやむを得ないものについては最小限度の引き上げを行なうことといたしております。  次に、輸入品価格低下を末端の消費者価格に反映させるためにどういう具体的なことをやるかというお話でございます。これは、すでに四十七年度の予算にも計上いたしましたが、今回は、各省庁の物価担当の行政官をはじめ、民間モニターも動員いたしまして追跡調査をいたします。その結果によって行政指導や監査、あるいは場合によりましてはこれを公表するということも考えたいと存じます。  次に、米の物統令適用廃止につきましては、後ほど農林大臣からお答えがあると思いますが、その実施に際しましては、販売機構の合理化等の十分の関連措置を講じ、消費者米価の値上がりが出ないようにいたしたいと思います。  最後に、地下鉄に対する国の財政投資が必要ではないかというお尋ねのようでございます。地下鉄運賃を含め、公共料金は、本来、特定のサービスに対する対価としての性格を持っております。その意味では、そのサービスを享受する受益者が、それに要する適正な費用を負担するのが原則でございます。公共料金というだけの理由で、直ちにすべてを一般納税者の負担とすることは適当ではないと考えます。しかしながら、地下鉄につきましては、これが公共交通機関として果たす役割りはきわめて大きいのでございますので、従来からその建設費について約二分の一の補助を行なっておりますが、四十七年度の国の予算におきましても百三十二億円を計上する等、多額の財政援助を行なっているところでございます。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手
  35. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 小麦の輸入が、円の切り上げの結果、価格が下がりますが、政府がどういうふうにそれを売り渡すかということにつきましては総理から答弁がございました。消費者に対してどういうふうな関係があるかということにつきまして、私のほうから御答弁申し上げます。  外国産の小麦の管理に伴う食管支出額が、円切り上げが行なわれなかったとした場合に比べてどれだけ低下するかということにつきましては、なお、今後の国際需給の動向とか、輸出国側のFOB建て値の調整等の動きを見きわめていく必要がありますが、その支出額の低下見込みを織り込んで四十七年度の予算を編成しておりますが、大体七十億程度と推定されます。麦の二次製品の製造原価中に占める玄麦のコストの割合は低いのでありまして、まあパン、めんとも約三割程度でございます。製品段階では、政府負担額の軽減では、たとえばパン一斤五十円について七十銭程度にしか当たりません。末端価格を効果的に引き下げることに直ちになり得ないのではないかという点もございますので、この問題等はなお検討をいたしたいと思います。  物統令の廃止の理由は何かということでございます。物統令の適用を廃止するのは、米の品質に対する消費者の関心が高まっておることにかんがみまして、米の品質に応じた価格形成をはかって、品質に応じた選択の自由、良質米の供給の増大に資そうとの趣旨によるものでありまして、現在の政府の配給米と同質の米を供給することに何ら変わりはございません。また、一般より低い価格で提供される徳用米等の配給は今後も続けるつもりでございます。物統令は御承知のとおり、戦後、占領中に、マッカーサー司令部においてポツダム政令として制定されて、いまこれを適用しておるのは米とふろ屋のふろ賃、それに工業用アルコールだけでございます。でございますので、いまのような理由でこれを廃止しても、食糧管理法によりまして消費者の米価等につきまして適当に政府が米を管理している以上、処理していけると思いますので、この統制令の適用を廃止することにいたしたわけでございます。  農産物の自由化でございますが、この農産物の自由化につきましては、私はこう考えています。日本の農業はお話しのように自給を目的とした農業でございます。アメリカのように輸出農業、輸出産業というふうになっておりません。でありますので、自由化というものは私は賛成でございますが、農産物については、日本の農業の体質が改善できない間はなかなか自由化に沿っていくというわけにはまいらぬと思います。でございまするから、いまお話しの牛肉とか、オレンジとか、果汁、こういう自由化というものは、日本の農業の立場からいいまするならば、これは自由化に応じられない、こういう態度で進んでおります。しかし、この自由化は世界の趨勢でございますから、いつまでもこれを自由化しない、自由化しないと言ってがんばっているわけにもまいりません。でありまするから、日本の農業の体質も改善しなくちゃならぬ。その体質を改善して国際競争にも耐え得るような農業にしなくちゃならぬ。同時にまた、国内の日本の農業からいいましても、消費者との関係がありまして、需要と供給のバランスがとれなければ、これは日本の農業というものはなかなかこれから成り立っていきません。ですから、米のようなものは供給が大いにございますから、これは生産調整をする。また、供給の足らぬものは、これを供給がふえるようにやっていかなくちゃならない。それには、どうしても国際的にも国内的にも農業の生産性が上がるようにしていかなくちゃなりません。そのために尽力をしてきておるのでございますけれども、さらに一そうそのために尽くしていかなくちゃならぬ。一言でいえば、このいままでの農業の体質を改善するために日本の農業というものを団地化していく、個人個人ではなかなかやっていけません。団地化してやっていく、これは、畜産でも、果樹でも、あるいは米でもそうであります。そういう方向でこの団地化をして、そうして農業の国際的競争力も高め、そうして農業自身の生産性も高めていく、こういう体質改善をやっていくということが必要だと、こういうふうに考えて、本年度の予算においてもそういうふうに組んでおるのでございます。(拍手)    〔国務大臣丹羽喬四郎君登壇、拍手
  36. 丹羽喬四郎

    国務大臣(丹羽喬四郎君) 私に対する御質問は、地下鉄につきましてはすでに経企庁長官から御答弁がございましたので、総合交通体系につきまして私から御答弁を申し上げる次第でございますが、御承知のとおり、総合交通体系は昨年の暮れに政府におきましてようやくまとめた次第でございます。御指摘がございましたように、最近、陸、海、空におきまするところのいろいろの輸送需要というものは非常に大きく変化をしてまいりました。陸、海、空、旅客並びに貨物の輸送状況のバランスも非常に大きく変化しつつある次第でございまして、したがいまして、それらに対応するところの総合施策を的確に確立をいたしまして、そうして利用者に便利になるような方策を漸次打ち出していかなければならない次第でございます。これらの要請に応じまして、運輸省といたしましても、機構を抜本的に検討いたしまして、これの改革をいたしまして、利用者本位の運輸サービスを実施するに適当な機関としての構成をしていきたい、こういう意見を持っておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  37. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 山田勇君。    〔山田勇君登壇、拍手
  38. 山田勇

    ○山田勇君 私は第二院クラブの山田勇であります。衆参両院を通じて、第六十八国会政府演説に対して最後の質問者となるわけでありますが、何ぶん持ち時間がきわめてわずかでありますので、重点的な質問内容になると思いますが、答弁される各位におかれましては、その点十分に私の意とするところを御賢察願い、国民の一人一人にわかりやすく納得のいく明確な御答弁をまずもってお願いする次第でございます。  まず、総理に幾つかの質問をいたしまして、過去から現在に至る政治責任、さらに今後の政治姿勢を国民の前に明らかにしていただきたいのであります。  さて、本年になりまして各新聞などマスコミによる世論調査が幾つか発表されましたが、その中で、佐藤内閣に対する支持率につきましては、そのいずれもが二三%ないしは二四%というきわめて低い支持率となっております。これは、かわりばえのしない長期政権の末期的症状に対する国民の意思の反映であり、国民福祉をなおざりにし、大企業優先の政治を推進してきた佐藤内閣への国民のあいそづかしともとれるのでありますが、このまま推移すれば、これはただ単に佐藤内閣不信だけの問題にとどまらず、久しく叫ばれている政治全体に対する不信に一そうの拍車をかける結果になることを憂慮するものであります。  また、ある新聞の調査では、議会制民主主義の原点とも言える選挙制度に対し、現在のままでは国民の意見が政治に正しく反映されていないとする批判者が約七割にも達して、ることが示されておりますが、これは注目すべき問題であります。総理は、今回の施政方針演説の中で、選挙制度政治資金規制について一言も触れておられません。かつて、小骨一本抜かないと大みえを切った政治資金規正法改正は、いまだにたな上げにされたまま、それとうらはらに、自治省から定期的に発表される政治献金の内容は、企業や財界からの献金が年ごとにばく大な額にふくれ上がり、企業政治の癒着が醜く映し出されております。「金のかからない選挙の具体案を求める」と第七次選挙制度審議会発足に際しあいさつしたのは、ほかならぬ佐藤総理でありますが、その総理が率いる自由民主党が選挙に際して最も多額な金を使うことは周知の事実であり、大きな矛盾と言うほかはありません。せめて政治資金のガラス張り公開の義務を求める声すら、むなしく打ち消されております。口先だけの改革を叫ぶのではなく、すみやかに今国会改正案を提出すべきだと考えますが、総理所信をお聞かせいただきたいのであります。  また、衆議院の定数是正、参議院地方区の定数の矛盾、いずれも改正が叫ばれて久しいのですが、何がゆえにいまだに放置されているのか。現行の選挙制度に対する不信の声がちまたに満ちあふれているとき、納得のいく説明が聞きたいのであります。  なお、選挙に関連して一つお聞きしますが、それは沖繩返還に伴う恩赦の問題であります。総理は、この恩赦を行なう意思があるのかないのかが第一点です。また、行なうとすれば、前回の明治百年恩赦のような大量の選挙違反者を対象に含むのかどうかが第二点でありますが、民主社会における選挙の重要性を考えるとき、選挙違反者を安易な方法で許すことは許されません。ここで、恩赦から選挙違反をはずすことを明言していただきたいのであります。  最近、大臣の失言や衆議院副議長の放言が国民のひんしゅくを買っておりますが、これは、保守独裁とも言える長期政権にあぐらをかいたおごりと、政治家が国民に対する奉仕の精神を忘却したあらわれでありますが、総理政権担当の最高責任者として、また連帯の責任を認識するならば、当然、トカゲのしっぽ切りとたとえられているような当事者だけの首切りに終わることなく、総理自身が国民の前に進退を明らかにすべきであると考えますが、いかがでしょうか。いままで伺いました一連の問題はきわめて重要な問題で、安易に処理したり放置していては、戦後、長年にわたり築き上げてきた民主社会に大きな禍根を残すおそれのあることを十分肝に銘じるべきであります。  さて、次の問題は地方自治の基本に触れると思われますので、総理の御意見を聞かしていただきたいのでございます。すなわち、中央から地方の自治体へ役人が出張する。その際、自治体が公費で接待する。その接待の儀礼の範囲が問題となり、昨年末、名古屋地裁で判決のあった豊田市訴訟についてでありますが、自治体が交付税や補助金の配分で国から強い締めつけを受ける結果、必然的に、中央官庁の反感を買っては自治体の円滑な運営ができないとして、地方へ出張に来る中央役人に対してややもするとエスカレートした接待をする。その内容について行き過ぎがあるとして豊田市の一市議が訴訟したわけでありますが、判決では、社会通念の範囲を越えないもてなしは自由裁量で認められたものの、芸者を含めた宴会は行き過ぎとされました。自治省当局は、旅費、宿泊費、日当は出張費として支給されているのだから相手に負担させるのはもってのほかと言っていますが、問題は、中央官僚の権力主義が憲法で保障された地方自治を侵害している例証として重大であると考えますので、特に総理の率直な御意見を賜わりたいのであります。  次に、沖繩返還に関して若干の質問をいたしますが、総理演説の中で、沖繩の返還の功績について自画自賛のニュアンスにもとれる表現をされておりますが、私はたいへんこれが気になるのであります。これは言うまでもなく、沖繩県民が、戦禍による荒廃、その後の長い苦しい占領下での人権を踏みにじられた悲惨な生活を耐え忍び、その中からわき上がった祖国復帰への血のにじむような努力、これが原動力となり復帰が実現するのであります。この県民の努力を総理がどのように評価するかによって沖繩に対する政府の態度にも大きな差異が出てくると思うのであります。四半世紀にわたる沖繩県民の平和への切なる願いを考えるとき、核兵器撤去、基地縮小についてまだまだ疑問の余地が多い中で、その上に沖繩県民の半数以上が反対する自衛隊の大量配備は、沖繩県民の意思を無視するのもはなはだしいと言うほかはありません。本日、グアムから横井庄一さんが、沖繩の人々より一足先に日本に帰ってこられました。軍国主義の犠牲となり、われわれの想像に絶する苦しい生活に耐えられ、祖国日本に帰ってこられました。私たちはその御苦労に対し、心からあたたかい手を差し伸べることは言うまでもありません。沖繩の人々も、この横井さんの苦しみにまさるとも劣らぬ長い苦しい生活を耐え忍んで復帰の日を迎えようとしています。総理は、この沖繩の人々の苦労をくみ取り過ぎる以上にくみ取って沖繩対策を推進すべきであります。総理の御所見をお伺いいたします。  次に、大蔵大臣予算編成の姿勢についてお伺いいたします。予算編成は国家行政の大きな支柱となるものであり、国民ひとしく関心を寄せるものであります。例年その編成過程で、各種の圧力団体の行動や、常軌を逸した陳情行為がマスコミをにぎわし、また、ただ単に大臣に花を持たせるだけの大臣折衝など、国民の目から見れば血と汗の結晶の税金が、大多数の国民とは無関係につかみ取り、山分けされているような印象をぬぐい去ることができないのであります。公平な税の配分を願う国民の願いはむなしく打ち消され、政治不信だけが大きく広がっていきます。大蔵省当局は従来の悪慣習を打ち破り、き然たる態度で予算編成に取り組み、厳正、公平な予算案国会審議の場に提出する義務があると思うのですが、最も基本的なことを忘れた現状について、大蔵大臣の決意と所信をお聞かせ願いたいと思います。  これで最後になりますが、わが国は、総理の発言にもありますように、福祉国家への転換を意図しております。福祉の面については、一応制度的にも体系的にも先進国並みに整ってきたとは言われるものの、先日も私の家に、ある身障児をかかえたおかあさんが参りまして話しますのに、別の子供が幼稚園に入る年齢になったが、幼稚園の入園手続をするのに、身障児をかかえていては、並んで夜通し順番を待つことができない、幼稚園の数さえ多ければこんな心配もないのだがと、こう嘆いておられました。これはほんの一例でありますが、総理の通達一つによっても、身障児をかかえた方の児童は優先的に幼稚園に入れるという一つの通達で事済むことが数多くございます。これからは、より一そうきめのこまかい福祉行政政府が総力をあげて推進することが、国民から不信をぬぐい去り、真に人間性豊かな社会をつくることになると考えるのでありますが、総理所信を承って私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国民政治に対する信頼を高めていくことは、私どもに課せられた重大な使命であります。みずからの姿勢を正すとともに、国民福祉優先の政策を果敢に遂行していかなければなりません。私は、今後さらに勇断をもってこの課題に取り組む決意でありますから、何とぞ理解ある御協力をお願いいたします。  政治資金規正法改正の問題につきましては、先ほど公明党の二宮君にお答えいたしましたので、省略さしていただきます。  次に、衆議院議員及び参議院議員地方区選出議員の選挙区制、選挙区別定数と人口との間に不均衡のあることは御指摘のとおりであります。しかし、これをどのように改めるべきかということになると、総定数をどうするかという問題や、現行選挙区制や選挙制度をどうするかという根本問題と切り離すことのできない性格のものと考えますので、根本的な改善策につきまして検討することが必要であると思います。目下、選挙制度審議会におきまして選挙制度の根本的な改善策の審議が行なわれております。政府としては、その結果を待って、その結果によりまして改善に着手したいと考えております。  次に、沖繩復帰に伴う思赦を実施するかどうかということにつきまして、政府としては何ら具体的な検討を行なったことはございません。申すまでもなく、思赦は裁判の結果を変更するという重大な効果を伴うものでありますから、その実施につきましては特に慎重を期すべきものと考えております。  次に、山田君から、最近のいろいろ放言その他について私の責任を追及されました。私が申し上げるまでもなく、およそ民主政治の理念につきましては、いろいろな角度から見ることができるとは思うのでありますが、その一つとして、政治家は国民に奉仕する精神に徹するということがあげられると考えるのであります。大臣等の放言によりまして国民の各位に御迷惑をおかけしたことは、まことに遺憾であります。私もその責任を痛感しており、この機会に深くおわびするものであります。今後とも当内閣の人心を引き締め、その責任を果たしてまいる所存であります。  国家公務員がその職務の執行にあたって国民に不信の念を抱かせるような行為があってはならないことは申すまでもありません。特に、職務上関係のある者との接触にあたって、会食その他の疑惑を招くような行為を慎むべきことにつきましては、閣議決定等によって職員の注意を喚起してきているところであります。このことは、御指摘のように、地方自治体に対する場合でも決して例外ではないと考えております。政府としては、今後ともあらゆる機会を通じ、官庁綱紀の粛正について一そうの努力をいたす所存であります。  沖繩の祖国復帰のために沖繩百万同胞がいかに努力してこられたかは、われわれすべてが承知しているところであります。私はこの機会に、あらためて沖繩県民の努力に対し心から敬意を表したいと思います。  また、お触れになりました横井庄一君、ただいまもうすでに東京に帰ってこられたと思いますが、横井さんにいたしましても、二十八年の長い間、孤独に耐えて、そうして、御労苦あるにかかわらず、よくその生命を続けられたことは、私は心から敬意を表し、同時はまた、心からお喜びを申し上げる次第であります。私は、この人間愛という点については共通するものがある、かように考えておりますので、横井君ばかりの問題でもないだろうと私は思います。すべてに同じ気持ちでこういう問題に取り組むのはこれは当然だろうと思います。戦中戦後を通ずる沖繩県民の、平和を求めて多大の犠牲を払ってこられたこの努力に対しましては、当然のことでありますが、政府としても、長年にわたるこの御労苦にこたえるために、明るく平和で豊かな沖繩県づくりに全力を尽くす所存であります。  復帰後の沖繩の核兵器撤去及び基地縮小の点につきましては、これまでしばしば国会で明らかにしてきたところであり、国民の皆さまの御理解を得ているものと思いますが、本年一月のサンクレメンテにおける私とニクソン米大統領との会談の結果、これらの問題について一点の疑問も差しはさむ余地がなくなったものと確信しております。  自衛隊の沖繩配備計画は、沖繩の本土復帰後、同地域における防衛及び民生協力の責務をわが国が当然に負うことになるのに伴うものであります。もちろん、沖繩県民の一部に自衛隊の配備に反対のあることは承知しておりますが、国の防衛には国民の理解と支持が必要でありますので、部隊の配備にあたっては、県民の支持が得られるように、なお一段の努力を払ってまいりたいと考えております。  最後に、福祉国家の建設について具体的の例を述べられました。幼稚園に入ろうにも心身不自由な子供をかかえていてはなかなか立っているわけにもいかない。私はその例からも、福祉国家建設ということは、口先だけではなく、たいへん骨の折れる問題である、きめこまかな手当てをしない限りこれはできるものではないと思います。これは山田君の御指摘のとおりであります。私どもも、そういう方向において国の政策をさらに進めてまいる考えでございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  40. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) いま、国民の各方面の陳情とか、あるいは圧力団体の動きとか、閣僚折衝のやり方を見ておると、国民と無関係予算が配分されるというようなお話でございましたが、私はこの見方には賛成できません。と申しますのは、現状を見ますと、こういう圧力団体の動きとか、あるいは国民各層、各団体の陳情というものは、政府よりもただいまでは各政党へ強く集中しているというのが現状だろうと思います。と申しますのは、民主政治である以上、その姿として私は決してこれは悪い姿ではないというふうに考えています。したがって、各政党ではこの要望を取りまとめて予算編成前に政府へ要請してまいります。野党の方は政策審議会でこれを全部まとめて持ってまいりますし、与党は政調会でこれを取りまとめて政府に要請するという形で、そうして政府案が最後にできるものですから、政府案は国民各層の要望、意見が取り入れられてつくられるというのが実際でございますので、国民に無関係につくられた予算であるということは、どこにもそういう片りんはないものと私は思っております。  また、いま議会政治の現状からいいましたら、与党が責任を持って政治を行なっている以上は、与党の政策政府が実行するのでなかったらこれは意味がない。したがって、私どもはいま、予算折衝、閣僚折衝の場に与党の政策責任者を立ち会わせているということをやっておりますが、昔ならこれは行政権に対する介入であるとか、非常に役人がきらったものでございますが、しかし、そうではない。社会党が天下を取ったら社会党の政策を実行すべきでありますし、与党が政治をやっている以上は、与党政策を実現するために政府が与党と一緒に予算を組むということは当然でありまして、したがって、いまのようなやり方が私は間違っていない。ですから、何か大蔵省はき然としてということを言われましたが、き然としてというのは、国会の意向とか政党の意向を聞かないでやれというようなちょっと印象がございますが、そうじゃなくて、そういう点でき然とするということは昔の役所のやったことで、いまは政党の意見を聞くことが国民の意見を聞くことだと思いますので、いまのような予算編成で私はいいんじゃないかと思っております。(拍手
  41. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  42. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第二 参議院予備金支出の件を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長鍋島直紹君。    〔鍋島直紹君登壇、拍手
  43. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 ただいま議題となりました参議院予備金支出の件について御報告申し上げます。  今回御報告いたします本院予備金の支出は、昭和四十五年十二月二十六日から昭和四十六年十二月二十八日までの間に支出されたものでありまして、支出額は、昭和四十五年度分百一万二千四百円、昭和四十六年度分五百万円、合計六百一万二千四百円であります。  これは在職中に死亡されました議員の御遺族に対しまして弔慰金として支給されたものであります。  これら支出につきましては、そのつど議院運営委員会の承認を経ておりますが、ここに国会予備金に関する法律第三条の規定により本院の承諾をお願い申し上げる次第であります。(拍手
  44. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  本件は、委員長報告のとおり承諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。よって、本件は承諾することに決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会