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1972-06-06 第68回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月六日(火曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————    委員異動  六月五日     辞任         補欠選任      松下 正寿君     中村 正雄君  六月六日     辞任         補欠選任      中村 正雄君     松下 正寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 岩本 政一君                 林田悠紀夫君                 平泉  渉君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 野々山一三君                 矢山 有作君                 中村 正雄君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        国 務 大 臣  竹下  登君    政府委員        防衛政務次官   野呂 恭一君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        内閣官房首席内        閣参事官     翁 久次郎君        法務省矯正局総        務課長      平井 清作君        法務省保護局総        務課長      重森 幸雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査(外務省の  機密漏洩問題に関する件)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨五日、松下正寿君が委員辞任され、その補欠として中村正雄君が選任されました。     —————————————
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、これにより質疑に入ります。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 矢山有作

    矢山有作君 罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案について二、三御質問を申し上げたいと思います。  昭和二十三年に罰金等臨時措置法が制定された際、罰金全般についてすみやかにその整備を行ない次期国会に提出するようにという強い附帯意見が述べられて、その際、政府は、これに同意する旨の答弁がなされておりますが、以後二十数年間にわたってこの問題が放置されておるようでありますけれども、その理由は何かということをお伺いしたいと思うのであります。国会で明言されたことを二十数年間にわたって放置をされておるということは、まさに国会軽視典型ではないかという気がいたしますので、この点について御所見を述べられたいと思います。
  5. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 特別法に関しましては、率直に申しまして、御承知のように、当時はインフレが非常に高進しておるときでありました。その後におきましてだんだん落ちついてはまいりましたが、一面、特別法罰金の額というものについてそのときそのときに確かに、違った金額といいますか、その時点におけるバランスはかなりくずれているんじゃないかと思います。ただ、やはり、当時から新しい刑法、そういうものを考えてまいっておりますので、その刑法との、罰金とのバランスも考えながらいかなければならぬというようなことがついに延び延びになってきたのではなかろうかと思います。その点におきまして、今回におきましても、特別法におけるいろいろな罰金については、実際申しますと非常にまあ今回は臨時措置でありまするから荒っぽいものであります。したがって、刑法が制定されましたあかつきにおきましては、当然もう一ぺんすべてを洗い直して、最もバランスのとれた罰金額というものを考えていかなければならぬと思っておるわけでありますが、それにしましても、この臨時措置法におきましては、遺憾ながらその点をあとに譲っておると、これは率直に申しまして、この中間にありました措置をとるわけでありまするから、やむを得ない措置でありまして、今後十分その点は——われわれも知りながらやむを得なかった、こういうような状況にあるわけであります。
  6. 矢山有作

    矢山有作君 いろいろ理由をおっしゃいましたがね、まあ経済事情変動等がその当時なかなか激しかった、したがって全体に、罰金刑について洗い直しをするのがむずかしかったという意味のことが一つじゃないかと、そういうふうに聞いたわけです。それからもう一つは、その当時から新しい刑法を考えておったのでそれとの関連においてできなかったんだ、この二点に大体集約されるんだと、私はそういうように解釈するんですが、そうすると、私は、国会での政府答弁というのは非常に無責任だと思うんですね。その二十三年当時に、罰金等臨時措置法がつくられた。その当時は、まさにインフレ高進の最中で、経済的に非常に不安定なときであったということはもう御承知のとおりです。それからもう一つは、お話のように、当時から刑法改正で考えておったとおっしゃるのであったら、その二つの前提を踏まえるならば、なぜ罰金全般についてすみやかにその整備を行なって次期国会に提出するようにとの強い附帯意見の開陳があった際に、その事情を明らかにして、なかなか国会のそうした要望にいま沿いがたい事情にあるんだということを明白にされなかったんですか、そのときには政府は、これに同意するむねの答弁をしておられる、明確に。こういうように、そのときどきの答弁で処理しておけばよいというような政府姿勢あり方というものが政治を堕落させるし、そしてまた国会立場をなくするということになっておるんじゃないですか。この点は、私は、いまのような軽々しいお話では見過ごすことはできぬと思うんです。どうなんです、これは。
  7. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 何ぶんその当時のことでありますから、私もよく事情は存じません。しかし、そういう点において、やはりその当時、直ちに当然バランスのとれたものに直すべきであったと、いまから考えますと思いますが、その点ははなはだ遺憾であると、私は当時の事情はわかりませんが、そう思うわけであります。ただ、今回の措置におきましても、率直に言いますと、その後に、いろいろ特別法罰金はそのときそのときの事情が勘案されておりますので、全体として同時点に見ますとやはりバランスがとれていない。その点は、できたら是正したいわけでありますが、しかし、いま直ちに、新刑法草案もまだ通過もいたしておりませんし、またそれを先取りをするということは非常に危険なわけでありますので、この際は一時的の処理をせざるを得なかったということ、今回の措置についてはそういう事情にあるということだけは、これは申し上げることができると思います。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 私は大臣、まあその当時大臣でおられなかったというあなたのことばからしても、これ以上追求してもしようがない問題だとは思いますが、しかしながらこれは、私は政治姿勢として問題だと思うんです。まさにこれは無責任政治典型じゃないですかね。その当時、経済事情変動ただならなんだということも、あるいは刑法改正が容易でないということもわかり切った話でしょう。であるなら、国会でこういう軽々しい約束をすべきじゃないんですね。そのときどきでかってなことを言うておいて、今度大臣が変わったら、あれは前の大臣のときだ、おれはよくわからぬのだ、これで済むというのなら、こんなお粗末な話はないですよ。そんなことは許されないんじゃないですかね。特に百歩を、千歩譲って、大臣がおかわりになってその当時のことはわからぬとしても、事務当局というものはその当時のいきさつというものを十分承知してかかっているはずなんですね。事務当局としても、大臣補佐という立場から言うなら、すこぶる怠慢じゃないですか、どうですか刑事局長。こんなでたらめな答弁しておっていいんですか。あなたのような法を守る立場にある者が、口から出まかせの答弁をしておって過ごしておっていいんですか。
  9. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) この罰金等臨時措置法の御審議に際しまして、特別法の罰則をすみやかに整備するという趣旨の政府答弁のあることは承知いたしております。その意味におきまして、今回、二十数年後にこの整備法案を提出いたしますことは、法務省事務当局としても申しわけないと考えておるわけでございます。ただ、私、当時の事情を今日推察してみますと、先ほど来大臣答弁なさいましたインフレの急速な高進、それから刑法全面改正という問題は、もちろん基本的にあったわけでございますが、私どもこの時期を、弁解になるかも存じませんが、いま振り返ってまいりますと、やはり新刑訴への移行の直前の時期でございまして、まず何よりも新刑事訴訟法の運用ということに大きな精力を費しておったんではないかと思います。その他、もろもろの法律と新しい制度の切りかえということで、たいへん事務当局としても多忙であったということが、弁解にはならぬかもしれませんけれども、そういう幾多の困難な事情もあったことは容易に推察できるところと存じます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 言いわけはよくわかります。ただ、今後の問題として、政治不信を買うような出たとこしのぎ答弁はしないということだけははっきりしていただきたいのです。一たん国会であなた方が公式におっしゃったことは、やっぱり二十年たとうが十年たとうが、蒸し返されてくる場合があるわけですから、そのときに文句言われて、それでいままで済んできたからそれでいいんだと、こういうことの惰性に流れないようにしてほしいのです。私どもは、皆さんと論議するときは、皆さんのほうも、はたしてこの問題ができるのかできないのかという確信を持った上で、できることはできる、できないことはできない、そのできない理由は何であると、明白にしていただきたいと思うのです。そこでお互いの間に信頼関係があるのであって、その出たとこ勝負でかってな答弁をされておって、あとはほっぽらかしというのでは、これは私は非常に問題だと思いますから、その点は、大臣は特に与党の非常に有力な方ですから、今後の与党政治あり方として十分反省していただきたいと思います。  次に移りますが、昭和四十六年の十一月の法制審議会刑事法特別部会刑法全面改正に関する答申原案によりますと、その第三十八条で、罰金は一万円以上とする、それから第四十一条で、科料は五百円以上一万円未満とする、という規定を設けておるようです。一方、今回の罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案においては、第二条で罰金は「四千円以上とする。」、科料は「二十円以上四千円未満とする。」としており、この法律案は最近の法制審議会で了承されたものだと思います。ほぼ同じ時期に同じ法制審議会における罰金科料に関する結論がこのように一致していない、その理由は一体那辺にあるのか、私どもとしては疑問にたえないのです。さらに言うなら、昭和三十六年に改正刑法準備草案がつくられておるようでありますが、このときには罰金は五千円以上と、こういうふうになっておったと聞いております。こういうようにそのときどきで、罰金の額が何を基準としておるのか、さっぱり国民にもわれわれにもわからぬようなきめ方がなされるということに、この例を見まして非常に大きな疑惑、疑問を感ずるというか、わからないのです、その理由が。そのことをおっしゃっていただきたいと思います。
  11. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) たいへん技術的な点がございますので、先に技術的な点について御説明申し上げます。  まず、この昨年の十一月二十九日に法制審議会刑事法特別部会で採択されました刑法改正草案につきましては、ただいま御指摘のとおり、罰金は一万円以上、科料は五百円以上ということになっております。この改正草案考え方は、すべてこの刑法あるいは刑事法というものを全部洗い直すという立場に立ちまして、罰金金額につきましても、この法律が施行されるようなときにおいては、この罰金というものの額は一万円以上とするというのが相当であろうという論議が決定されたわけでございます。そこで、これはまた、先ほど御指摘のように、その参考案になりました準備草案は、これは罰金は五千円以上といたしておるわけでございますが、準備草案ができましたときとこの改正草案ができましたときの間には、約八年間の時の経過があるわけでございまして、これは時の経過というものを前提にして、五千円を一万円というふうにしたものと解しておるわけでございます。で、いずれにいたしましても、改正刑法草案におきましては、現代における理想的な刑罰体系というものを考えた場合には、これは罰金は一万円以上である、料科は一万円未満五百円以上である、とするのが相当であろうという、刑事法というものを前提にして考えた議論であろうと思うのでございます。  ところで、今回のこの御審議願っております改正案は、かような刑法全面改正ができますまでの応急的と申しますか、過渡的な法案としての意味を持っておるわけでございます。今回のこの法案におきましては、現行刑法体系というものをそのまま維持いたしまして、もっぱら経済的事情というものを考えて、現行刑法とこの将来できます新刑法との間の応急的なつなぎの役をするという考え方でできておるわけでございまして、今回の案におきましては、現行刑法の定める法定刑というものを現下経済的事情との関係において考えたものでございまして、これは一応四倍、罰金は四千円以上という線になったわけでございまして、この考え方は、今回の改正案法制審議会に諮問いたしました場合に、ほとんど同じメンバーの方が改正刑法草案特別部会委員でございましたが、その先生方刑法全面改正へのつなぎとてはこの四千円というもので限界づけるのが相当であろうということで刑法との関係はそれでよろしいとい考え方になっておるわけでございまして、私ど 事務当局といたしましても応急的なつなぎという点で考えますならば、現時点ではこれが相当であろうと考えておる次第でございます。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 御説明を聞いておると、これはほんとう罰金を何ぼにしたのが一番いいのかというのは、これは議論を詰めていくと、ほんとう基準になるようなものはなかなか見出だし得ないのじゃないかと思うのです。いまの御説明を聞いておると、将来刑法等が全面的に改正をやられたときには一万円以上がいいのだ。しかし現在の状態つなぎとして考えるならば、四千円ですか、そのほうがいいのだ、こうおっしゃるのだけれども、それには私は、そうかなというふうにはなかなかならぬだろうと思います。いまの経済情勢を考えたときに、はたしてこの四千円というものがほかの要素を一切抜いて罰金額として刑罰機能というものを十分発揮できるのかどうか、この点私はやっぱり問題が残ると思います。それで四十六年に刑法改正草案をつくったときにいたしましても、やはり現在の経済事情というものを踏まえながら将来を見通して罰金額をきめたのだろうと思う。そうしますれば、暫定措置にいたしましても、刑法改正草案が直ちに一年や二年でできるという見込みはいまのところ常識的に見てあまりないのじゃないか。そうすればこの罰金等臨時措置法も、ここで改正をいたしましてもまあ数年ぐらいはやはり実行されるのじゃないか。そう考えてくれば、私はやはり同じような扱いの、やるという立場も出てくるのではないか、そういうふうに思うのです。しかしこれは幾ら議論をしましても、先ほど言いましたように、基準というものがこれが正しいという基準はないのですから、おそらく水かけ論に終わるだろうと思います。しかしこのやり方を見ておっても、どうも罰金額のきめ方がそのときどきできめられておって、悪く言えば出たとこ勝負、そういう感じを受けることだけは申し上げておきたいと思います。それは水かけ論ですから、次に質問を移します。  今度の罰金等臨時措置法改正提案説明で、本法を制定して以来二十数年を経過した今日、「刑法その他の刑罰法規に定められ 罰金及び科料額等現行のままにとどめておきますことは、これらの財産刑刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、」云々と言っておりますが、刑罰としての機能を低下させないという立場から今回の罰金額改正のみでよいのであろうかどうか。これが一つの問題だと思うのです。しかしながらその他の要素を全部抜きにして額だけについて考えてみましても、今回の改正では不十分だとする議論があるように承知しております。すなわち、四十六年の刑法全面改正に関する刑事法特別部会の案、これは先ほど言いましたように、罰金でいうなら一万円以上でありますが、これでさえも現在の貨幣価値の点から見て、あるいは所得水準の点から見て、あるいは消費水準の点から見て、さらにまた最近の刑罰が寛大化されつつある、こういうような状況から見て少し低過ぎはしないか、低過ぎるということは、一つの方向としては、罰金刑というものの機能を低下させることになるんではないか、こういう議論があるようであります。これに対しての御所見を承りたいと思います。
  13. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 現在において、もし改正刑法のような考え方でいくなら、低すぎることはこれはもう申し上げるまでもありません。ただ、現在、草案のそのままの考え方を取り得ないことは先ほど来申し上げておるわけで、現行刑法体系のもとに罰金額を上げると、こういう考え方に立ちますと、もし現在の草案のレベルまで上げていったとして、草案が通ればよろしいが、また草案の中でもこれは一律に上げておるわけではありませんので、そういう意味から言いますとまあよく六倍というようなことが言われておりますが、草案の場合、そこまでいって、今度は草案が通りました際に引き下げなければならぬと、こういうようなことになりましては、これは公平の原則に反するわけであります。  で、ただいまのところ非常に困っておりますことは、上限がつかえてしまって、一律に悪平等的に上限になっておるというような状況でありますし、いわゆる司法の連続性といいますか、結局、期間が短い間には、やはり前の罰金額とも比較して、あんまりとっぴに、四倍になったらすぐ四倍かけるというものではなしに、漸次上がっていくということが考えられますし、またそうでなければならぬ。こういう点から考えていきますと、先ほど来お話がありましたが、私はまあ、二年、三年で刑法改正せられないにしましても、もうすでに草案もできて、最後の段階の法制審議会にかかっておるわけであります。いずれにいたしましても、五年あるいはその程度についてまかなっていくというものでなければならぬし、またそれで十分ではないかと、こう考えてみますと、結局、六倍ということにいたしますと、これは非常に、いろんな将来の引き下げとかいうような問題が起こりますと困るわけであります。その中間的な現在から考えますと、まあ昭和三十年から考えて所得が四倍というようなことも言われて、事実そういうふうになっておるわけでありますが、そこらをつかまえていけば、とにかく五年間ぐらいの間は、いわゆるこれは罰金には上限と下限があるわけでありますから、その間において十分まかなっていけるということで考えておるわけであります。したがって、理想的な体系からいえば低過ぎると、こういうことにはなると思います。ただ、いま申し上げたような事情からいたしますと、さしあたって現行刑法を動かすという意味からいたしますと、四倍で十分まかなえると、こういう見通しを持っているわけであります。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 私は、罰金刑というのは非常にむずかしいと思うんですよね。罰金の額が低いから上げりゃいいんだという議論も、一面的に、それをそのままそうだと言うわけには私はいかぬと思うのです。というのは、罰金は、その科せられる人によって、それが金持ち貧困者であるかによって、私は非常にこれは影響が異なってくると思う。したがって、罰金額を引き上げるのがいいんだというような一方的な議論罰金の寡額が引き上げられると、これは貧困者にとっては私はたいへんな苦痛であろうと思う。ところが、多額のほうが少々引き上げられてみたところで、金持ちにとって、これはもう罰金刑などというのは、私はそれほど大きな負担ということにはならぬ。こういうふうな面があると思うんです。だから、罰金の額をどうするかというのは、私はこれは刑事政策的に見て非常にむずかしいものだというようなことを、しろうととしても感じておるわけなんですが、そこで、最近、罰金刑機能が低下した、罰金刑を科せられても別に何とも思わぬというのですかね、いわゆる威嚇力がなくなったというのですか、そういうことが盛んに言われておるようです。これは一体どういうところに原因があるのか、ただ単に私は罰金額の問題だけではないのではないか、こういう気がしておるのですが、これは専門家刑事局長のほうの御所見を承りたいと思います。
  15. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 罰金刑の現在における刑罰としての機能でございますが、これは、主として刑法犯について申し上げますと、刑法犯のうちでは、いわゆる頭打ち現象が出てきておるわけでございます。で、一番刑法犯で多いのは、御案内のとおり交通人身事故事犯でございます。刑法の二百十一条の業務過失傷害でありますとか業務過失致死罪でございますが、これには選択刑として懲役または禁錮刑がございますけれども罰金刑は五万円以下ということに相なっておるわけでございます。で、そういたしますと、お手元の資料にもその統計を出してありますけれども罰金刑につきましては、致死の場合にはもう三万円以上五万円以下という間に、すべてのといいますか、大多数の刑が集中いたしてしまう。それで、五万円では間に合わないという場合には、これは本来選択刑としての懲役刑または禁錮刑にまいるわけでございますけれども、しかし裁判所におきましては、これは本来はやはり懲役刑あるいは禁錮刑にいくべき事案ではなくて罰金刑で処断すべきものであると、そういう事案に対しまして、この法定刑は五万というようなワクがございますために、やむを得ず、五万であるとか三万であるとかいう科刑をいたしておるわけでございます。  そういうふうにいたしますと、やはり法定刑ワク内の罰金刑でございますから、五万以上は何ともできないということになりますと、これは現下経済状態から見て、わずか五万かというようなことに相なってまいりまして、ここに、罰金刑としての機能を低下さしておるという顕著な現実があるわけでございます。同様に、住居侵入罪でございますとか、傷害罪でございますとか、そういうものにつきまして、やはり現行刑法法定額ということを前提にいたしますと、どうしても罰金刑としての機能が低下してまいっておると、かような現状になっておると思います。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 そこで私は、これはそういうことを主張しておる学者もおるようですが、罰金刑をあまり乱発し過ぎるとかえって社会的効果が薄くなるというような現象が出てくるんではないか。そこで、識者によれば、あまり罰金刑を現在のように——たくさんありますね、それをそのままにしておかないで、むしろ罰金刑を整理をして、かつて交通事犯について交通反則金制度がつくられたように、行政秩序罰にできるものは置きかえて、そうして残ったもの、それを罰金刑とむしろ自由刑とを選択できるような形にしておいたほうが効果が大きいのではないか、こういう議論をやっておる人もあります。私も、考えてみると、なるほどなという気がするわけです。最初から罰金刑だけだと、いま言ったように、罰金刑刑罰機能というものが非常に低下をしておるので、これは私は、少々額を上げたところで、現在の経済情勢からいったらたいしたものではない。それからもう一つは、少々額が多くても、罰金刑なら金を払えば終わりじゃないか、こういう意識がやっぱりありますから、そうしますと、罰金刑というのはむしろあまりそう多くしておかないで、先ほど言ったように、これはむしろ整理をして、そうして罰金刑と自由刑とを選択して科せられると、こういうようにしておいたら、案外これは効果が大きい面が出てくるのではないか。この議論を私はそうだなという感じがするのですが、その辺の所見はどうですか。
  17. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまのお話、確かに私も同感だと思います。率直に言って罰金金額の問題ではなしに、罰金を課せられるという不名誉さ、そういうものがあるから罰金刑というものが意味あるわけであります。ところが、だれもかれも罰金になるというようなことでは、罰金というものに対する不名誉さがだんだん薄れてしまう、これはもうおっしゃるとおりであります。ただ問題は、これは新しい草案として考えます場合には、私はそういう考え方も取り入れていくべきだと思います。ただまあ現在の、現行刑法という面から言いますと、やはり法の権威を失しないためには、まああまりにも二十三年と現在と比較しまして、浮き世離れした罰金をかけるということが、いかにも逆に法の権威を失墜するような感じもいたしますので、この際は、上限に集中しているそういうような点を是正して、そしてまあこれならというところで改正すべきである、かように考えたわけでありまして、その点は御了承願いたいと思います。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 私もいまの、先ほどの議論は現在での議論としてではなしに、将来刑法等改正を踏まえての議論としてやってみたわけです。そういった方向で考えていくのも一つの今後の罰金刑に対する考え方ではないか、こういう気がしております。  それから、もう一つ罰金刑は実際上先ほども言いましたように、貧富の差によって刑の効果に大きな差異が生ずると思うんです。罰金刑貧困者にとっては、これは死活問題になることがありますし、したがって、ときによっては自由刑以上の威嚇力を発揮することがあると思います。ところが、金持ちにとっては、通常名誉に触れる以外は多くの効果をあげ得ないとされる、この欠点をどうして是正するか。これは刑の公平性という立場から、私は何らかの方法が、現在の罰金刑を科する場合でも考えられなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに思っておるんですが、この点はいかがですか。
  19. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 御指摘のとおり、罰金刑をもって処断をするという場合には、被告人といいますか、犯人の財産状態というものとの関係において考えられなきゃならぬと思うのでございます。現在、現実におきましても数多くの道路交通法違反というようなものは、これはあまりにも数が多過ぎまして、おそらく裁判所において一々被告人の財産状態というものを審査するだけのいとまがないと思うのでございますが、その以外のいわゆる一般刑事犯の罰金という場合には、十分に各裁判におきまして、被告人の財産状態というものをよく考えまして、その貧富の差からくる不公平性というものを極力除いて、そこに公平性を保っていこうという考え方から裁判が行なわれているものと考えておるわけでございます。  で、その点につきましては、罰金刑の本質にかかわる問題でございますので、この改正刑法草案のことを申し上げて恐縮でございますが、改正刑法草案におきましては、その第四七条におきまして、その2項で、「刑の適用においては、犯人の年齢、性格、経歴及び環境、」云々ということで、そういうものを十分考慮して刑を盛りなさいということをいっておるわけでございまして、環境という中には経済状態をも含んでおるのだというふうに説かれておるわけでございます。こういうことで犯人に対して、犯人の財産状態による不公平性を極力除いていこうと考えておるわけでございます。  なお、よけいなことかもしれませんけれども、最もこれを理論的に公平を保っていこうということならば、これは諸外国で、二、三の外国で日数罰金制というものを採用いたしておるところがございます。一律に罰金何日に処すというふうに裁判をいたしまして、そして各被告人に応じて君の場合には一日が幾らに当たるということで、その換算額のほうで差をつけていくという制度も二、三の国ではございます。この日数罰金制というものも一つの理論としては十分考えられるわけでございますが、これはあまりにもまた繁雑になるという観点から今回の刑法改正草案においても採択はされてないわけでございますが、この罰金刑の公平性ということは、十分に運用において考えられておることと存じます。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 罰金の公平性の問題で日数罰金制の問題というのは、私も二、三の国々でも採用されておるという話を聞いておりますが、これはやっぱり将来の問題として罰金を科する場合にいろいろめんどうなことはあるとは存じますが、しかし罰金刑の公平性をできるだけ確保していくという立場からも私は前向きで検討されるべき問題ではないか、こういうふうに思いますので、その点はひとつ今後の刑法改正等に当たって検討をするという考え方で進んでいただいたらと、こういうふうにこの点は要望しておきます。  それからもう一つ罰金刑の公平性をできるだけ救済する立場というふうに表現してもかまわぬのじゃないかと思いますが、罰金の延納なりあるいは分納ということがこれは制度として採用されておる国もたくさんあるようですし、それから改正草案にそのことがたしか採用されるようになっておると思いますが、それからもう一つは、実際にはこの延納、分納は法にはなくて、運用の面で行なわれておるというふうにも聞いております。そこで、延納、分納というものが実際にどういうふうな形で行なわれておるか、罰金刑に対する延納、分納が認められておる全体の比率と言っていいわけですが、それはどの程度になっておるか、そういう点がおわかりになりましたら……。
  21. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 罰金の延納、分納でございますが、これは、この分納につきましては、現行刑法におきましてもその第十八条の6項でございますか、「罰金又ハ科料ノ言渡ヲ受ケタル者其幾分ヲ納ムルトキハ」ということで幾分を納めるということで、この文句から分納というものを認めておるわけでございます。それから延納につきましては、現実におきましては検察官が罰金の徴収をいたします場合に、犯人の経済状態というものを十分考えまして、その申し出があります場合には、支払い期限というものについても妥当な考慮を払っておると思います。そういうのが現実でございますが、これが現実にどのような形で分納というものが行なわれておるかという点につきましては、これはなかなかこの調べがつかないのでございますが、ある一定期間の、しかも古いのでございますが、私どもの法務総合研究所で過去におきまして一応東京、関西の昭和三十五年四月の一ヵ月間に略式命令がございました、道交法違反以外のもの、それから法人が被告人になっているものを除くという、きわめて限定した一ヵ月間の罰金の裁判のありましたものにつきまして、さかのぼってずっとその完納状況というものを見てみたわけでございます。わずか一ヵ月間の、しかも東京だけの問題でございますが、この割合を見てまいりますと、大体二、三回でこの罰金を納める、二回または三回で納めておるというのが一応のこの標準的な数になっておると思います。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 十八条の6項ですか、これは承知しておりますが、罰金を言い渡したときに最初から検察官のほうで分納させるとかあるいは裁判官のほうで分納させるというふうな措置をとっている例はありますか。
  23. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 現在は罰金刑が確定いたしましてその徴収をいたします検察官が、その徴収に際して相手方との関係措置をとっておるわけでございまして、裁判の場合にはあらかじめこういう措置はとっておりません。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 罰金刑は、先ほども言いましたように、これは対象者が金持ち貧困者とかいうことで非常に効果というか、その人の受ける影響が大きく違ってくると思います。したがって、延納は認められておらないようですが、分納はいまのお話で十八条の六項でやっておるのだということで、実際面においては検察官のほうで考えておられるようですけれども、これはやはり私はできるだけ分納制度を活用することによって、罰金刑の持っておる公平性を欠く点を補正する努力を現行法においてもやっていただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  それから次は、労役場留置処分の状況はどうなっておりますか、罰金科料について。
  25. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 労役場留置の執行状況でございますが、一番新しい統計が、昭和四十五年がございます。で、四十五年について見てまいりますと、罰金の、既済というふうに検察庁で処理いたしました人員が百七十万五千三百九十五人でございます。そのうちで労役場留置処分を受けました者が三千二百二十名でございます。そして、これはこの全体の〇・二%に当たる、千人に二人という数になっております。この〇・二%という数字は、昭和四十年代におきましてはおおむね〇・二%ということになっておりますが、昭和三十年代、特に三十年代の初めのころにおきましては、もう少し率が高くて、〇・六ぐらいの数字を出しておる年もございます。おおむね最近は〇・二という数字でございます。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 科料の場合はどうですか。
  27. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 科料のほうにつきましては、昭和四十五年で、科料刑で既済となりましたものが合計で三千四百十九名でございますが、そのうち労役場留置の処分を受けました者は十二名でございます。で、この割合は〇・三五%という数字になっております。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 短期自由刑というやつは、私ども聞いておりますのは、犯人の矯正にあまり役に立たないと。むしろ短期間自由を束縛して刑を科することによってかえって悪いことを習って悪くなる傾向があること。したがって、短期自由刑というものは、これはできるだけ科さないほうがいいんではないかと、こういう傾向が最近の傾向だというふうに聞いております。そういう中で短期自由刑にかわるものとして罰金刑が重視されてきておると、こういうような傾向もあるというふうに聞いておりますが、もしそういう前提に立つならば、罰金刑が払えないからといって労役場留置とこういうことになると、いま言いました精神とはまさに逆行するような刑になってくると思うのです。そういう点ではいかがですか。
  29. 平井清作

    説明員(平井清作君) 刑の執行に関する技術的な問題になりますので、私のほうからお答えさせていただきます。  罰金を完納することができない者を「一日以上二年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス」と、かような現行刑法の規定があります。これを受けまして、監獄法第八条では、労役場はこれを監獄に付設する、こういうことになっております。そういたしまして、労役場に留置された者はどういう処遇を受けるかと申しますと、同じく監獄法第九条によりまして、受刑者に準じた扱いといいますか、処遇をされることになります。そうしますとはっきり申し上げまして、詐欺とか窃盗とか強盗という罪名で収容された者と一緒に処遇される、作業をやるのかと申しますと、そうではございませんで、監獄法施行規則というものがございまして、労役場留置者は他の懲役受刑者と分界してといいますか、収容する場所を異にしまして、そうして収容し作業をやらせる、かようなことになっておりますので、先生がおっしゃるような、他の質の悪い犯罪者からの悪影響といったようなものは一応ここで遮断できると、かように考えております。以上でございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 処遇の点については、そういうふうな配慮がされておるということはけっこうです。ところが先ほど言いましたように、短期自由刑を科するというのは、むしろ受刑者のなんですか、改善というのにはあまり役に立たないと。むしろ従来は短期自由刑というものが刑の中の中心になっておったけれども、最近はそういうことから、これにかわって罰金刑というものが重視されてきだしたという立場からすれば、私は罰金が納められなくなったから、これをあと戻りさせて、また監獄に入れるのだということは、これまさに自由の拘束ですから、幾ら他の受刑者と分界をして悪影響を受けないようにやっているといっても、これはたいへんなことだろうと思うのです。そういう点は私はいささかやはり問題があるのではないかという気がするわけです。そこでこれを救う方法としては、やはり考えられるのは、私は、たまたま刑法には仮出場の制度等もありますから、これらをひとつ大いに活用して、できるだけ罰金刑を受けた人が罰金を払えないからといって、自由を拘束されるといったような過酷な処遇を受けないような方法というものはないか、こういうふうに思うのですが、またそれがどの程度行なわれているかということ等についても、ひとつお話いただきたいと思います。
  31. 重森幸雄

    説明員(重森幸雄君) 仮釈放には仮出獄それから仮退院、仮出場とございますが、仮出場の申請件数は最近年々減少いたしております。昭和四十一年は二十五名ございましたが、四十五年には十名だけでございます。そのうち九名が許可になっております。四十五年の数字でございます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 まあきわめて事務的なお答えになったのですが、私の言わんとしているのは、罰金刑が納められないからといって、それに代えて自由を拘束する労役場留置ということが問題ではないかということを言っておるわけです。だからこれに対する見解を聞かしていただくほうがいいんです。
  33. 平井清作

    説明員(平井清作君) 確かに先生のおっしゃるような短期自由刑の弊害というのは、古くから言われておる説でございまして、たいへん有力な説でございます。と申しますのは、短かい期間刑務所に収容することは、その収容者に対する矯正ということを考えた場合に、全人格的な働きかけをするチャンスがない、期間が短か過ぎる、こういうようなことが言われ、かつ、一方におきましては、その他の受刑者、ことに再犯者などからのよからぬ影響をこうむることが多いので、短期自由刑というのは好ましくないという学説がございます。しかし、一方では、短期自由刑をもっとインテンシブに利用すべきではないか、こういう説もありまして、現にこれを行なっておる国もあるやに聞いております。それはどういう者に対して適用しているかと申し上げますと、比較的非行性と申しますか、犯罪性の軽微な、進んでおらぬ者に対しまして、質の悪い犯罪者と別なところで、ショック療法と申しますか、三S主義と申しますか、一つの反射効果をねらったような形で短期間に処遇効果をあげるというような方法がかなりとられております。したがいまして、罰金刑と申しますと営利犯とか比較的軽微な犯罪に対して加えられる制裁でございますので、比較的軽微な犯罪、つまり犯罪者の質的に犯罪の進んでおらない者にということになりますか、そういう者に対しましては、罰金刑を科す、しかも完納できなければ短期処遇というもので、それでいけるんじゃないか、こういうことが裏打ちできるんじゃないか、私どもこんなふうに考えておるわけでございます。したがいまして、先生の御疑問に全面的に答えられたかどうか、ちょっとまだじくじたるものがございますけれども、そういう考えもあるということを御紹介しておきたいと思います。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 あなたにいま御説明いただいた後者の考えをとるとした場合に、やはりわれわれが日本の現在の制度で考えなければならぬのは、監獄の中に労役場付置というやり方はやはり問題があるのではないか。これは幾ら分けてやっておるといいましても、一つ入れ物の中でおるわけですから、これは凶悪な犯罪者の影響を全然受けないということはないでしょうし、だから、もしあなたの後者の考え方をとるとするならば、これは労役場というものを監獄に付置するのでなしに、別個の方法を考えるということはできないか。この点は私はさしずめ検討できる問題ではないかと思うんですが、その点どうですか。
  35. 平井清作

    説明員(平井清作君) たいへん示唆に富んだ御意見かと思いますが、現実に労役場に留置される者の人数を数字的にこう洗ってまいりますと、昭和四十五年の統計でございますと一年間に百八十六名しかおりません。それから少しさかのぼりますと、たとえば昭和四十一年をとらまえてみますと四百三十一名でございました。それが歴年だんだん減ってまいりまして、四十五年で百八十六という数字を示しております。したがいまして、全国にわずか百八十六名という数の収容者でございますので、特別の施設をつくって収容して処遇するというのは、若干合理的でないというか、経済的でないという考え方も入ると思いますので、やはりもよりといいますか、刑務所に付設して、そうしてその他の受刑者と分離して処遇するということにならざるを得ないんじゃないか、こういうふうなことを考えておるわけでございます。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっとうっかりしていましたが、いま百八十六名というのは四十五年に百八十六名の者が労役場留置になっておったと、こういう意味ですか。
  37. 平井清作

    説明員(平井清作君) 四十五年の年度末です。年度末をとらえてみた場合、その時点で百八十六名ということなんでございます。ですから、全国まあ刑務所だけをとってみますと、刑務所といいますか行刑施設だけをとってみますと、現在沖繩を含めまして七十三ございます。七十三に対して百八十六ということでございますので、単純に割り算してみても二人余りということでございます。その程度の人数でございますので付設でよろしいのではないか。全国のどこかに一つ二つ特別の施設をつくって遠方から送致するというふうなことは、たいへん合理的、経済的でもないし、また家族の面会等につきましても不便が多かろうと、かようなこともお考えいただきたいと思います。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 その辺はむずかしいところでしょうね。四十五年に労役場留置処分を受けた者は三千二百二十人、こういうことなんですが、これは四十五年を通じての話でしょうから、それからいまの百八十六名というのはおっしゃった一時点をとらえての話ですからそれはわかるのです。ところが、一年間を通じて三千人以上の者が労役場留置になっておる、こうとするなら、ある時点では百人や二百人あっても労役場留置ということで監獄に付置された施設に収容されて、まあ処遇をされておる者の受ける影響というのはかなりの人数になっているわけですから、そこでおっしゃるような家族の面会の不便等いろいろあるという気もしますが、やはり監獄付置よりも特別な施設をこしらえたほうがいいのではないかという気もするし、しかし家族の面会に遠方に行くのはかなわぬじゃないかという議論もあるし、そこら辺私もどっちがいいということはなかなか断定的なことは申し上げかねますけれども、しかし大ざっぱに考えた場合、どうも監獄に付置されたところに収容されるということはあまりよくないという気がします。そこで私は特別な施設がつくられぬとするならば、そういう労役場留置というのはできるだけこれは避けていくという意味からして、仮出場の制度というものを活用すべきではないか、こういうふうにも考えてくるわけなんですが、その際仮出場を受けておる者の数というのは、先ほどおっしゃった非常に申請する人の数も少ないし、それに応じて申請を受理された人の数も少ないわけですが、これは私はもう少し積極的に仮出場制度を活用するような方策というものは立たぬものですか、これはやはりこの制度を活用するかせぬかというのは、私はやはり制度への取り組みの姿勢だと思うのです。
  39. 重森幸雄

    説明員(重森幸雄君) 御質問ごもっともな点多々ございますが、仮出場になる前に労役場に留置されましたならば、直ちに保護者等が罰金を納めまして、それで直ちに仮出場じゃなくて本出場になってしまうというケースがきわめて多いと想像されます。そしてまた仮出場の制度では、地方更生保護委員会の職権による審議はできないというたてまえになっておりまして、それから普通の仮出獄事件等でありますと委員が対象者に面接することが義務づけられておりますけれども、仮出場の場合にはそれがないということ、それからまた仮出場者に対しましては保護観察を行なう制度が裏づけされておらない、野放しになってしまうわけでございます。したがいまして、仮出場者がいろいろな違反をやったにしても、この仮出場を取り消すということも制度上ないというようなことから、自然と仮出場の申請件数が減ってくるというわけでございまして、先ほど数字的に申し上げましたとおり、十人のうち九人は申請があれば許可しておるというふうな状況でございますので、先生の御意見もっともな点がございますが、いろいろな理由からこのような少い現状になっておるというふうに考えられます。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 実情を聞いてみますとなるほどという気もいたします。なるほど、ずるけて罰金を払わずにおって、労役場に入れられたとたんにだれかかわって罰金を払うというケースも確かにあるでしょうね。ですが、やはり払えない人に対して仮出場の制度を運用しにくい点を、職権審理はできないとか、その他いろいろおっしゃったんですが、私はできるだけ罰金刑についてはいろいろ現行制度上の制約はあるかもしれませんが、仮出場制度が活用されるように努力をやはりしていただきたい、そうしないと罰金が払えないから自由拘束というのはいまの刑罰の傾向からするならばむしろ逆行だと思いますので、やはり将来できるだけ先取りをしていくという方向でこのやり方に対してもひとつできるだけ御検討願いたいと思います。  それから次に、全然質問を移したいと思うんですが、いま本年度予算で補導援護費十六億七千万ほどになっておりますね。それから罰金科料の収入が二百五十六億二千万ぐらい計上されておるようです。罰金科料でこれだけたくさんな金が入る。また罰金科料を受ける件数も非常にこれは大きいということもあります。そうすると、これは犯罪を犯してこれだけたくさん金が入る。私は犯罪をできるだけ予防するように、あるいは犯罪を犯した者がすみやかに更生し、社会に復帰できるように、そういう面のあり方というのが、いま言いました補導援護にわずか十六億七千万円という状態を見ても非常にさびしいのではないかという気がいたします。特に更生保護の問題等については、更生保護会ですか、これにほとんどまかせられておるような状況のようですし、それに対する補助金もきわめて少ないようであります、それからまた保護司の関係の費用が、これはいかに微々たるものかということは、これは犯罪者更生保護法でしたかね、それの一部改正のときに論議をされたところ。さらに保護観察官の数が少ない。総じて保護観察体制の弱体ということも論議されたことがあります。私は罰金科料の収入がこれだけたくさんあるなら、少し犯罪防止、あるいは更生援護、こういった方面にどうしてもっと金をお使いにならぬのかという気がするわけです。なるほど使途を特定されてない歳入ですから、何も罰金及び科料の収入だから、そうした方面に使わなければならないことはないんだということはあるでしょう。あるでしょうが、少なくとも罰金科料で二百五十六億というばく大な収入があるなら、やはりもっと犯罪者の更生保護関係、そういった方面に、こんなお粗末な状態でなしに、どんどん経費を出して、そして更生援護の体制を強化すべきだと思うのですが、この点はどうなんでしょう、これは大蔵省に聞いたほうがいいかもしれませんがね。
  41. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 罰金収入は、率直に申しまして罰金収入がないほうがいいわけであります。罰金があるからという理由で保護施設、あるいは保護司、あるいは更生施設というものを考えるわけにはまいりません。しかし、従来から、どうも法務省に大蔵省が金を出さなかったということは、もう率直に認めなければならぬところでありますし、その点は将来の問題としまして、法務省ももう少し十分大蔵省を説得して、私今後におきましても、できるだけ援護して、今後大いに予算だけは十分つけるようにという努力をいたしたいと思っております。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 私も罰金科料の収入は少ないほうがいいんでございまして、これが大きいことを歓迎しておるんじゃないんですが、しかし、そういう罰金科料を将来少なくしていくという上からいっても、やはりこういう犯罪に関係する収入がこんなにばく大にあれば、これを犯罪を減らす、そういう対策の方向に使わせろと言って——多少へ理屈になる、かもしれませんが、大蔵省あたりにもう少しこういう方面に目を向けさせる、そういう努力を有力な法務大臣、ぜひやっていただきたいと思います。  それから、これはちょっと私は大蔵省を呼んでおいてお聞きしたほうがいいと思うのですが、従来罰金とかかわりのあった問題ですから簡単に聞いておきたいのですが、例の交通反則金の問題ですね。この交通反則金というのは、これは相当ばく大な金額になっておると思うのです。四十七年度の予算で三百十五億六千万ですか、相当ばく大な交通反則金の収入があるわけですが、これも私は別に交通事犯の多いことを望むわけではないのですけれども、これだけのばく大なその交通反則収入があるということは、交通事故がいかに多いか、それによって被害を受けておる人がいかに多いかということを証明するものだろうと思うのです。そういう点から言うなら、いま一つの社会問題とも言うべき大きな問題になっておるのは交通遺児の問題なんですね。ところが交通遺児の対策としては私はきわめていまの状況というのはさびしいものではないか、こういうふうに考えております。これはもちろん法務省の直接の関係ではないとも思います。先ほど言いましたように、大蔵省に聞くべき問題かとも思いますが、従来罰金ということであったものが交通反則金になったという経緯からして、この交通遺児の問題と交通反則金のかかわりの問題について御所見を承っておいたらと思うわけです。私はこれだけばく大な交通反則金の収入があるなら、いま社会問題になっている交通遺児対策に強力な体制をとるべきではないか、こういう考え方から申しているわけですが、いかがでしょう。
  43. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 技術的なことでございますが、それからまた私の所管ではございませんが、一応答えさせていただきます。  交通反則金の収入の状況でございますが、警察庁の調査によりますと昭和四十五年で百六十億五千七百万円ばかりあるようでございます。四十六年が二百十五億八百万円ばかりあるという統計になっておるわけでございますが、この反則金の使い道につきましては、私ども仄聞いたしておりますのは、この反則金制度ができましたときの道路交通法の改正がございますが、その六条の附則の七項にこの使い道が書いてあるわけでございます。「国は、当分の間、交通安全対策の一環として、」云々の「反則金に係る収入額に相当する金額を、毎年度、政令で定める道路交通安全施設の設置に要する費用に充てさせるために、交通安全対策特別交付金として、交通事故の発生件数、人口の集中度等を考慮して政令で定めるところにより、都道府県及び市町村に交付するものとする。」ということで、反則金に相当する金額をこのような形で都道府県及び市町村に交付しておるという規定になっております。これが制度でございますが、その運用の実際については私どもの所管でないわけでございます。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 おっしゃるとおりです。そういうふうなことになっております。ところが私はまあこれは皆さんの所管でないので、先ほど言いましたように、大蔵省に聞くべき問題だと思いましたが、しかし、まあせっかくのこういう機会ですし、特に交通遺児の問題というのはたいへんな問題になっていますから、そこで交通事故に関係のある交通遺児の問題、したがってその交通反則金の使途については、今後交通遺児対策ということで考えられないだろうかということで、大臣の御所見、どういうふうにお考えになるかということを聞いてみたかったわけです。  御存じのように、交通遺児の対策としては、交通遺児の就学援助制度があって、交通遺児育英会というのに自動車損害賠償責任再保険特別会計の保障勘定から補助をしておるようです。で、四十四年度から四十六年度の間、毎年二千万円、四十七年度から四十九年度の間毎年三千万円、合計一億五千万円です。これを基本財産として交通遺児の育英に充てる、こういうことになっておるのですが、私ちょっと調べてみましたところが、交通遺児育英会の計画で考えていったら、遺児の救済にはどうしても四十億円以上必要なんだと、こういうことのようです。そして現在育英会では十億円を各種の補助金でまかない、三十億円を募金等に仰いでおるのだ、こういうことのようでありますが、現在の経済界の情勢からして、なかなかこれだけの金が集まらぬのではないか、こういうことが非常に心配されておるようです。そして大蔵省の見解といたしましては、交通遺児に対してだけ特別な対策をするというために一般会計から支出をするのはいかがなものか、こういう見解のようであります。しかしながら、少なくとも御案内のように交通遺児というものが四十六年の五月二十日現在の調査で六万人をこえておる。そしてしかも、交通遺児の場合は突然に働き手の父親を失って非常な環境の変化にさらされているわけで、非常な生活上の困難を伴うわけです。非常に、こういう交通遺児の問題に対して、私はあまり技術的なことにとらわれないで、積極的な施策というものを考えるべきではないか、こういうふうに考えましたので、そういうところから交通反則金たくさんあるんじゃないか、どうしてこういうものを、もちろん先ほどお話に出ましたように、道路交通安全施設の整備もいいけれども、さしずめ非常にみじめな状態にある交通遺児の救済に本格的に取り組めないだろうかという気がいたしましたものですから、法務大臣に一度御所見を承ってみたかったということで持ち出したわけです。御所見を承りまして私のきょうの質問をこれで終わりたいと思います。
  45. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 反則金の使途という点になりますとまあ反則の起こらないような原因ということに金を使うというのが、一番合理的なように政策を考えるのが当然だと思います。しかし、交通違反によって起こった事後処理、それに使っても別に理論的におかしくも何でもないわけであります。大蔵省からいえば一番効率のいいことを考えるわけでありましょうが、私は理論的には同様に考えていい問題だと思う。今後ただいまの御趣旨に従って私も努力をいたしたいと思います。
  46. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ちょっとお伺いします。罰金未納者に対して労役場留置処分をする場合の関連でありますが、一番長いのはどのくらいのものでしょうか、その点をひとつわかっているならば……。
  47. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 昭和四十五年四月から四十六年三月三十一日のこの一年間の状況を見てまいりますと、総数で二千九百十一名という労役場留置の執行がなされております。そのうちで約半数の千三百人ばかりは途中で金を納め出ているという形になっておるのでありますが、この二千九百十一名のうち六ヵ月以上この労役場におったというものはわずか九名でございます。ほとんどこれは六ヵ月未満ということで出ているわけでございまして、特に一月未満というものが千八百人ばかり、一月未満ということで労役場留置の期間というのは比較的短いのが現状でございます。
  48. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 本案に対する質疑は本日はこの程度とし、午後二時零分まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  49. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) これより法務委員会を再開いたします。  検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、長官、非常にお忙しいようですから、できるだけ問題をしぼって、三点に中心を置いてお伺いして、あとまた時間がございませんでしたら別の機会に御出席——これは委員長及び理事の皆さんにも私ちょっとお願いをしておきたいと思いますけれども、私が求めましたことはですね、動機というのは、御承知の、沖繩返還にからむ秘密漏洩事件の西山君及び蓮見君の逮捕、起訴というものに関連——まあ関連というか、その問題の扱い上先に質問のあったものに関連をいたしまして出たものでございまして、この委員会であれもこれもというようなやぼを言うつもりは毛頭ございません。つまり、検察及び裁判等に関する調査という点を重視して進めますので、今後について若干の疑問が大臣及び長官の時間などでまださらに残るという事態が起こるかもしれませんけれども、その趣旨をひとつ誤解のないように受けとめていただいて、機会を与えていただきたいことをお願いしておきます。  それでは、最初に外務大臣にお伺いしたいのでありますけれども、何回かの質問を通しまして、官房長官の御答弁によれば、社会通念上、常識上必要のある秘密というものがある。それは次官会議の申し合わせによれば、国益を守る、国の安危に関すること、国損を与えることがあってはならないというたてまえに立って秘密というものを守るし、秘密というものがあるのだ。それが結果として、もし漏洩ないしは漏洩を教唆するということになりますと、法務省刑事局長答弁によれば三種類あって、一つは、いわゆる形式的秘密で足りるとした、形式的な秘密でもそれが有罪なんだという公務員法の判例がある。それから第二は、いわゆる実質的秘密に限るという見解で判決が出ている判例がある。第三は、実質的にも形式的にも秘密であるとして、国家公務員法違反の成立を認めた判例がある。この三種類がある。そこで、これは、まあ残念ながら防衛庁長官いらっしゃいません。ただし、同席された官房長官がいらっしゃるのでまあ伺いますけれども刑事局長のかつての答弁によりますと、たとえば取り扱い注意というようなものでも、これはいわゆる実質的秘密であれば有罪、つまり刑罰によって保護されるのだという表現がある。防衛庁長官は、部外秘及び取り扱い注意は、これは秘密ではありませんと、こういうふうに言われました。それから運用上からいたしまして、秘密会及び委員会で、官房長官は、秘密といえども秘密会などを通して最善を尽くし、誠心誠意を尽くして説明し、了解を求めることを通して、憲法六十二条にいう国政調査権というものの尊厳を保障したい、そういうふうに答えられている。これは記録をごらんいただけばおわかりだと思います。おそらく官房長官は私に何回も言われたので、おそらくそんなことを言った覚えはねえなんと言ってキャンセルするなんて、そんなことは絶対おっしゃらないと、私は、人間政治家、政府のスポークスマンたる官房長官竹下登さんという人を信頼していますからあえて申し上げます。  そこで官房長官と外務大臣に伺いたいのですが、官房長官がこの間秘密会においでいただいて、つまり問題になりました外務省の文書取り扱い規則というものも秘密であるというわけで、私はあのとき全文ぐらいはせめて読んでいただけるかと思ったのです。ないしは全文を読み、補足すべきは補足されるべきかと思いました。なぜそういうことを言いますかというと、防衛庁の側では実存する——これはいいか悪いかは別として、実存する機密、極秘、秘に関する実物を提示されまして、そうして説明をされてこれが秘密です、これが機密です、これが秘、極秘ですと言われたわけです。内容を受け取る側としては、どう受け取ったかどうかは本人の判断ですけれども、外務大臣ね、おたくの省ではこの文書取り扱い規則といえども、申し上げたように、むにゃむにゃむにゃむにゃということでございます。これでは官房長官のおっしゃることとも違う、精神とも違う。防衛庁長官が言われたこととも違う。辻刑事局長ですかが答弁されたこととも歴然と違う。なぜでしょうか。あなたは、外務省のとりあえず、ほかのことは別といたしまして、文書取り扱い規則をなぜ、かりに官房長官のおっしゃる説をとったといたしましても、秘密会——私は秘密会といっても秘密委員会ではないんで文句はありますけれども、秘密理事会でさえも十分な説明をなされないほどですから、憲法六十二条をあなたは御存じなんだろうから、たいへん申しわけないけれども、あなただけが、憲法をあずかっているとすれば、行政権だけが先行しているということになる。あなたが、総理大臣になられるかもしれないあなたが、そういうふうにおっしゃるというのでは私はどうも残念でしょうがない。一体どういうふうにお考えになりますか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は憲法第六十二条を承知しております。そしてこれに基づく国政調査権、これは極力尊重しなければならない。また、そういう立場において協力をいたす考えでございますが、ただ、いま具体的な問題であります外務省の秘密保全規則ですね、これは他の省とちょっと違ったところがあるのです。つまり、一般の秘密保全規則のほかに、秘密の管理規定のようなものがあるのです。これをたとえますれば、電信には暗号の処理をどういうものがあります。その暗号の処理をどういうふうにするとか、その辺のことがありまして、そういう処理のしかたというものについては、これはもう相当国際社会でも関心を集めておる問題でありまして、これを秘匿する必要がある、こういう意味であります。これはわずかな部分でありますが、その部分を除きますれば、これは一般の各省と同様のものでありますから、これはもう公開をというか、皆さんにごらん願って一向差しつかえない。で私は、どういう答弁になっておるか、よくまだ正確に承知いたしませんけれども、その秘密の部分、少数の部分でありますけれども、これをよく秘密の理事会等でごらん願って、そうして皆さんの御心証を得ると、こういう方法でいかがでありましょうかと、こういうふうに思うわけであります。  それからもう一つ私は考えております。それはしかし、いずれにしてもこういう文書の問題が論議されることになったこの機会に、一般の秘密保全規則、これは各省にみなあるわけでありますが、その部分だけにいたしまして、暗号の扱いをどうするというような、これは全く技術的な部門なんかは削除いたしまして、そうして新秘密保全規則というものをつくるのも一案かと存じまして、そのための作業を命じて、それを完了いたしておると、こういうことであります。まあどこまで御要請でございますか、御要請に対しましてはできる限りこれは憲法の規定にしたがってお答え申し上げたい、かように考えております。   〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕
  52. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、まことに申しわけないですけれども、あなたの御趣旨はおおむねわかりました。  あらためて私申し上げたいのですが、昭和二十一年十二月十九日、第九十一回帝国議会衆議院国会法案委員会というのがございました。この委員会で、国会法百四条というものについて次のような説明政府側からしておるわけです。読み上げます。本条は、「新憲法第六十二条に対応する条文でありまして、「内閣、官公署その他」と申しますのは、これは会社及び個人も含んでおるわけであります。またたとえ秘密な書類といえどもその提出を求めることができるのでありまして、その秘密な書類を審査する場合には、秘密会を開けば足りることであります。秘密なるが故にこの提出を拒否することはできないものと解しております。」——秘密といえども——この書類は、秘密なるが故にこの提出を拒否することはできないものと解しておりますと、これは政府答弁です。竹下官房長官、あなた、その当時どういう人でありましょうか。まさに国権の主権者たる国民である。その主権者たる国民として、堂々と国政調査権というものを実行する国会法百四条というものについて、政府がみずから以上のように説明をなさった。でありますから、私の案ずるところ、国政調査権との関係というものが、そこで三権分立と言われる行政権と立法最高府たる国会、そうして司法権者である裁判所ですか法曹機関、裁判所といったほうがいいのでしょうね、そういうものとの間における均衡、同等の条件が保障されたものであるということと受けとめて国会法百四条というものはできたのであります。  で私は、ただいまの速記録のみならず、この周辺の速記録を全部、あなたお忙しいから見なかったかもしれませんが、あるいは御存じないかもしれませんが、全部調べさしていただきました。歴然とそういうものであります。私の解釈というか、私が述べたものであります。そこでそういう観点から、一体、官房長官、何回か私の質問に答えられたんでありますけれども、いまの事実、私が読み上げたものとあなたは比較してどういう御感想でしょうか。行政のスポークスマンということばをよくあなたはおっしゃられます。内閣のスポークスマンとして、一体どういうお考えでしょうか。外務大臣は一体どういう見解をお持ちでありましょうか。それから公務を実行的に処理しておる、執行している辻刑事局長も、いまあなたが答弁されたものとの関係において、百一条というものが三種類あるといわれている裁判の判例も、言うならばこの国会法百四条というものができあがったときの解釈——解釈というんじゃない、まさに説明です。これなんですから新憲法が生きてくるんです。と言われたそのものとの関係において、今日までの判例の立場から三種類ということを先ほど御指摘いたしましたが、それはどういうふうにお考えでしょうか。  それから翁参事官、あなたは官房長官を補佐して、この前ここに「国家機関に関する各種の機密の基準」というものをお示しになりました。これが一体どういう関係になるか。つまり、先ほど外務大臣に伺いました問題にもからむが、秘密会といえども規則も見せない、読ませない、読まない。そういうこととの関係において、あなたは一体、この昭和二十一年十二月十九日の新憲法制定のときの審議及び国会法制定のときの議論と比較をしてどういうお考えでしょうか。この四人の方にそれぞれ見解をお聞きしたい。
  53. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昭和二十一年十二月十九日の速記録は、実は野々山さんはずいぶん御勉強でありますが、私は読んでおりません。そこで、私も読まないで答弁をするということでございますが、しいて感想を述べろ、こういうことであります。私は、国会法というものの百四条について、趣旨として国会法としての立場からそういう説明がなされ、その種の議論はやはり原則論としてあり得たではないかと、こういう感じがいたしております。そこでその後、これは現実問題として、国会の運営の歴史の中でお互いがいろいろ知恵を出しあったりしながら、秘密会というものそのものがなかなか定着をしていない。そして先般来お許しをいただいて、秘密理事懇談会というようなところで私どものなろう限りの、いわば国政調査権への協力という姿勢をおとりいただいたことを心から感謝をいたしておりますが、一方、国会法とはまた別に、確かにそうした秘密会あるいは秘密理事会あるいは秘密理事懇談会、こういうようなのが正式にある名称ではございませんものの、そういうところに素材をできる限り提供して国会審議に協力していくというのは基本的にそうあるべきであると私も思っておりますが、かといって秘密会であればすべての秘密文書を提示できるかということになりますと、事柄によってはその要求に応じられないものがあるということは私は否定できないところであろうと思います。内閣がその任務を遂行していく上において、ある事柄を秘密として秘匿することが国益に合致する場合があるということも、具体例ではいろいろの予測ができますものの、これは否定できないところであろうと思いますので、それだけに国会法の大筋の精神にのっとって対処すべきであるが、一方、議院証言法というものが職務上の秘密についての公務員の証言拒絶ないし内閣声明制度というものを定めているところからいたしましても、大局論における国会法の精神と、そして内閣が行政を進めていく上に秘匿することが国益に合致する場合があるということは、私は法律的にも両立し得るものではなかろうかと思います。ただ、素朴に、先ほど外務大臣の御答弁にもございましたように、いわゆる国会の国政審議権というものに対し、まああらん限りの、できるだけの協力をしていくということは、これは当然まず基本的にわれわれの念頭に置いていかなければならないことである、と、このように考えます。
  54. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も二十一年十二月十九日の速記録というものは読んでおりません。おりませんが、まああの当時は異常な雰囲気のもとのころだったと、こういうふうに思うのです。当時、いまの現行憲法の制定には反対だった人々の相当の多くの人が、現在は平和憲法の擁護というようなところまで変わってきておるその変遷があります。そういうようなことで、私は、二十一年十二月十九日の政府答弁を引用されましたが、やはり今日は今日の時点に立って事を考える必要があるのじゃないか、そういうふうに思うのです。そういう立場からいいまして、結論といたしましては、ただいま官房長官からきわめて明快なお答えがありましたが、そのとおりに私も考えております。
  55. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) この前の法務委員会で官房長官から申し上げました「国家機関における各種の秘密の基準」、これをつくりました趣旨は、四十年の次官会議の申し合わせに基づきます秘密と申しますのは、秘密の種類については言及いたしませんで、極秘、あるいは機密、秘というように、秘密の重要度、行政を遂行する上に必要な重要度に応じてその分類をしておるわけでございます。その後各省が、御指摘のように、秘密、極秘以外の秘密書類、たとえば部外秘とか、取り扱い注意、しかも実質上秘密文書に該当するようなものを各省の事情によってつくっておるというようなことがございましたので、この際行政遂行上必要な秘密というものをできるだけ明確に分類し、そしてそれ以外の秘密に該当しないものについては、従来の取り扱いを整理いたしたい、その一つの指標になろうかということを念頭におきまして、現在各省庁で秘密として扱っておりますものを、先日申し上げましたように、外交、国際経済、防衛に関するもの、あるいは個人の秘密に関するもの、あるいは職務の特殊性に由来するもの、また、一定期間を限って秘密にする必要があるものというように分類いたしまして、これを各省庁にお示しをいたしまして、できる限り安易に秘密文書を作成しないで、今後この基準をある程度指標にして秘密の扱いを厳重にしていただくという趣旨でつくったものでございます。
  56. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 私が先般の当委員会におきまして、国家公務員法百条の職務上知ることのできた秘密、あるいはこれと同様の規定をいたしております自衛隊法五十九条の職務上知り得た秘密、これに関連して、裁判例としてはどういう裁判例があるかという、機密漏洩との関係における裁判例をお答え申したわけでございます。それには、いずれも下級審の裁判でございますが、先ほどお述べになられましたような三つのタイプの裁判例があるということを申し上げたのでございまして、それとただいま御議論になっておりまする国政調査権に基づく資料の提出ということとはまた違った、おのずから違った面があるというふうに考えているわけでございます。
  57. 野々山一三

    野々山一三君 お時間がないようですから、外務大臣先ほどおっしゃられた秘密というものについて区分を——一般的秘密と特殊な秘密というような用語だったと思いますが、用語というか私はそう受けとめたんですけれども、それ自体も実は問題があるんですが、この秘密というものについてまず根本的にいままでの態度は、私一番悪いところは外務省。第二番目に悪いところが、政府関係機関でいけば電電公社。なぜか。扱い上外務省は悪いんです。全然秘密会であるのに出さないんですからね、そうでしょう。  そこで、いまおっしゃられたように、秘密というようなものがあるかないかは別といたしまして、官房長官も述べられたように、いわゆる国益、国損に関するもので局限された秘密というものは存在するかもしれない。そういうものについては言われない、述べられない、示されないこともある云々、こう言われたわけですが、それについては後ほど私の見解を述べたいと思いますが、まず第一に伺いたいのは、あなたも、外務大臣おっしゃった国政調査権、つまり憲法六十二条及び国会法百四条、そういうものの精神を立法する立場から整理をしたい、こうおっしゃったわけですね。頭を縦に振っていらっしゃるからそうだと思いますけれども、それならば、私は少なくとも、ごく常識的、一般的な議論として、たとえば私流に仮称すれば、国政調査権を発動されてもこの秘密にしなければならぬものがあるかどうか。その限りにおいて秘密というものが存在するならば、存在するというところが私はごく常識的なだれもが納得する限界だろう、こう思います。そういう立場であなたのところの規制も変える、運用も指定も変える。それから今度は運営上、議会に対して、これはこれこれですが、国政調査権を発動されても秘密にせざるを得ないというならば、これは現行法上、言うならば、通称証言法というその法律の五条による救済——救済というかお断わりをするという、そういうこと以外にないわけです。そういうような取り扱いをなさるかどうか。そういうように解釈を、あなたのことばを私流に読めばそう読めるんで、そこのところを私が申し上げたような見解でよろしいかどうか伺いたい。
  58. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は先ほどから申し上げているとおり国政調査権はこれは尊重すると、したがってこれには、その調査には協力をする、こういう考えです。ただ、国益の見地から考えまして、秘密事項がある、その際の措置をどうするか、こういう問題でありますが、この秘密のものにつきましてもできる限り御協力をしなけれりゃならぬと、こういうふうにまあ考えておるんです。その方法としては、あるいは秘密理事会でありますとか、あるいは秘密会だとか、まあそのときそのときの情勢で、事情で方法は違いましょうが、とにかく御協力するそういう努力をしなければならない。しかしそういう心がまえであるにもかかわらず、どうしてもこれは開示できない、これを開示することはこれは国益に反する、こういう問題がこれはまああるであろう、こういうふうに思うんです。で、そういう際には開示いたしたくないと、こういうのが私の気持ちであり、それはまた皆さんによって御理解を願えるように、これはこういう実情で開示できないのだということを秘密会になり、また秘密理事会なりで御説明する、それで御納得を願う、こういうのがやっぱり現実的な国政の運営というものじゃなかろうか、そういうふうに思います。
  59. 野々山一三

    野々山一三君 私はよくわかりませんけれども、二つのことをちょっと申し上げながらもう一ぺん相すみませんが見解を求めたい。  一つは、蓮見君の例の機適漏洩という問題ですね。それからそれをそそのかした西山君、いずれもまあ逮捕され、結果として起訴された。これをどうしたことなのだという経過を佐々木委員から質問をされた際に述べられたことは、国公法百条に基づく秘密というものに値すると考えられるので捜査を要請したというわけです。要請がございましたから、検察当局が数時間後に動いたというふうに、私は国民の一人として考える。要請がなかったらどうだろうかということなんです。これはあとでまた議論がございますから、その点を、なかったらどうなっただろうかという非常に大きな疑問を持っておるということを述べながら第二の問題に移りたい。  国政調査権は守りたい。その尊厳を保障したい。そのために運用をしたい。そういう気持ちでいきたいとおっしゃるわけですが、私はことばどおり受け取めたいのです。あなたも語るに落ちないかと心配をする。なぜか。昭和二十一年十二月十九日に国会法百四条の規定が大池説明員の手によって説明された。それを審議して国会法百四条というものはきまった。それはそのときの状況でありましてと、いまはいまとして感ずるのはあたりまえですと、——おてんとうさんが何日か回りますとことばが変わって運用が変わってくる。これは私は非常な悲劇を生むと思います。これが私みたいな者が、医者からも禁止されている者がこれ延べ十時間もここで秘密というたった二文字で質問しなければならない重大な問題です。ここに新聞がございます。私が問題にしたからかどうか知りませんが、秘密という判こ、秘という判こを押したものは全部これは燃やすことになったと新聞に書いてございます。これこそまさにあなた方がなした行為が燃やされるわけですから重大な国損ですね。金銭の多寡ではございません。事実でしょうね。ここに問題がある。  本質問題に触れましょう。たとえばずっと昔の昭和十何年——十年ごろですかありましたつまり支那事変、満州事変の前に日本は一体何をやったでしょうか。一九二八年、昭和三年、張作霖爆死事件というものがありましたですね。これは二十年も秘密——二十年もというか二十年近くも秘密としてやられたわけです。その結果何が起こったでしょう。あなたも経験をされたでしょう。私も三十キロで、栄養失調で帰ってきました。八十二名の同年兵はたった二人しか生きておりません。私ともう一人。死にました。あなたはお元気でたいへんけっこうでした。そういう、つまり満州事変を起こし、日中事変を起こし——日中戦争を起こし、太平洋戦争を起こし、たくさんの民族が死に、人間が死に、財産が破壊されて日本は世界的にたいへんな被害をこうむった。たった張作霖事件を秘密という二文字で扱った結果の日本の歴史的な悲劇であります。こういうことを繰り返したくないとお答えになるでしょう。私はそう信じたい。これは第二問であります。見解を聞きたい。  それから第三番目に、官房長官に聞きたいんです。このいま手元に持っておりますものは、秘密という文言を用いている法律の規定の定義というものであります。あなたが官房副長官の時代につくられた、直されたといわれる、つまり次官会議決定による秘密取り扱いというあれには、秘密というのは二種類で極秘と秘なんだ、その中で最も問題なのを機密にするというわけです。それが発展をして部外秘、取り扱い注意、人秘ということになりました。たった二文字がなぜ六項目の内容になるんでしょうか。もう一回聞きたいんです。  そしてこれは外務大臣にも聞きます。機密という文字を法律上全部調べました。二つしかありません。それは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法、この中には歴然と機密という文言があります。しかもこれは、見解を述べて相済みませんが、率直に申し上げて、合衆国軍隊の機密、日本の機密じゃございません。合衆国軍隊の機密。だから法律に書いてあることがおかしいんです、第一。けれども、まあ機密という文言があります。これは官房長、やめたらどうです、こういう部分は。法律に書いてない文言を使って人を監獄に入れる。あなたの論をもってするならば、そういうものに対して規則があればアプローチする人間があり、それを防がなければ国損——国益に反することがあると、ことに外務省、防衛庁においてはあたりまえだと、こうおっしゃるわけです。法律に書いてない文字をなぜ使うんでしょうか。見解をあらためて聞きたい。これが第一の機密という問題。  第二の機密。外務省関係ですね、外務公務員法、これの第十九条「外交機密の漏えいによって国家の重大な利益をき損したという理由で懲戒処分を受けた場合におけるその処分についての行政不服審査法による不服申立ては、国家公務員法第九十条第一項の規定にかかわらず、外務大臣に対してしなければならない。」、これは刑罰によることに触れられているとは私はどうも思えませんけれども、ここに機密という文言がございました。これ以外はないんです。あったら教えてください。いますぐ教えてください。  第三番目にあるやつがある。電電公社です。電電公社の文書取り扱い規則というやつに「機密文書」という文言がある。これは外務大臣、あなた将来のことがありますから、ちょっと長くなりますが申し上げましょう。  第一ページ、これは私が求めた関係文書取り扱い規則というものを出してくれといったときに出てきた第一回、これは全くうそのものです。規則に書いてないものが第何条と書いてあります。バッテンがついている。第二回目に出てきたもの、これです。つまり、「参議院法務委員会要求資料の提出について」、これにも機密という文言は全然ありません。そして機密という事件は件数でいったなら非常にわずかです。秘密というものは、ここに印影がございますが、秘と書いてある、これ一つだというんです。調べました。あなた方の、翁参事官の指摘される基準というものなら何十何万件秘密があります。人秘もあります。取り扱い注意もあります。部外秘もあります。機密もあります。なぜこういう資料をあなた方は、官房長官お出しになったんですか。第三のうそです。第四のうそもいま申し上げました。第五のうそです。  ようやく本物が出てきました、コピーが。そうしたらこの規程をずっと見ますと、歴然とここに「機密文書」というのがある。全く国会を無視しているもはなはだしい。そうでしょう。外務大臣、そう思いませんか。五回目のうそです。そこで私は委員会で詳細を指摘しようと考えました。けれどもいろんな経緯もあり、時間もかかるのでやめた——やめようとした。そのためにどういうことが起こったか。一職員が来ました。うその説明をしました。文書課長が来ました。うその説明をいたしました。そこで私は、そんな人に会ったってしようがない、最高幹部である人に会いたい、その人が歴然と言うならばその答えを信じて委員会で言うことはやめましょう、きょうやめましょう。これ以上は言いません。  この三つしか機密というものはないんです。電電公社には一体機密なんというものがあるんでしょうか。電電公社を組織する法律に機密なんというものがあるでしょうか、憲法に機密というものがあるでしょうか。外務省には機密という、外務公務員法にはありますけれども、全然性質が違いますよ。しかも翁参事官に、官房長官に言いたい。先ほど申し上げたMSA特別措置法と概称しましょう、通称しましょう、この第六条に書いている機密というものがあります。合衆国の云々という機密、そしてその中に条件が明示されておりますよ。読みましょうか。おわかりでしょう。「(合衆国軍隊についての別表に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画若しくは物件で、公になっていないものをいう、以下同じ。)」、つまり条件であります。そして別表にいうというのは歴然と何々何々であると、あなたが書いて示されたものは何々と例示等——等とは何です、等とは。等とは何です。あなたの解する等というものを聞きたい。官房長官いかがです。えらい渋い顔をしていらっしゃるけれどもどうです。あなた、私の日本語わかりますか。官房長官、私日本語しゃべっているつもりですがわかりますか。
  60. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) よくわかります。
  61. 野々山一三

    野々山一三君 わかる……。わかったらひとついまの見解を述べてください。以上四つの点について述べてください。
  62. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 第一点は西山事件ですね。これについて外務省の捜査依頼がなければこれはどういうふうになったのだろうかというお尋ねですが、まあこれは私は同じ結果になっておるんじゃないかと思います。当時の実情は、蓮見事務官が事の意外の発展に驚きまして、それでまあ自首したいと、こういうふうに言ってきておるのであります。ですから捜査依頼がなかろうが自首したいという事実で検察、警察当局の捜査は始まったであろう、こういうふうに思います。  それから次は張作霖爆破事件等を引用されまして秘密外交の行く末ということについてどう思うか、こういうお話でありますが、ああいう形の秘密外交というか秘密処理、こういうことが行なわれては断じて相ならぬ、こういうふうに思っております。まあしかし私ども外務省の仕事は人と人との話し合いが主軸になるわけです。その話し合いの一つ一つのことばまでが、これが漏れたということになったら、もう話し合いということはほとんどできないんじゃないか、そういうふうに思うんです。その辺にまたむずかしさがあります。それからもう一つはかけ引きがあるわけです。全部カードをさらけ出して、そして交渉する、そんな交渉はありませんよ。これはやっぱりカードはカードでどこまでもポケットに入れておいて有効適切にこのカードを使うということを考えなきゃならぬだろうと思います。そういうことも御理解いただけるんじゃないか、そういうふうに思います。秘密、いわゆる秘密外交があってはならないけれども、その外交の執行上秘密があるということ、これはもうどこの国でもそういうことであって、ひとりわが国がわが国の道を行くというわけにはまいらぬ問題ではあるまいか、そういうふうに思います。  それから機密ということばの問題でありますが、外務公務員法第十九条の外交上の機密、これは一般的に秘密保持を要するというような意味でありまして、これ機密という文字を使ったから、これが重い、軽いと、こういうような秘密性の濃度を表現するものではないと、こういうふうに解釈されております。
  63. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはただいまの御質問の最後の部分でございます「国家機関における各種の秘密の基準」で「例示」の際、「外交交渉の過程における訓令報告等」という例示をしておることは事実であります。厳密に書きますならば、在外公館からの報告、在外公館に対する訓令一つ一つ、たまたまたとえば国際会議に行っております政府代表、特派大使等——やっぱり等がつくわけでございますが、いっぱい代表がおるもんでございますから——に対する訓令というように一々例示をすべきであるということも私には理解できますが、一般的に訓令、報告等がどういうものを相手にして出されるかということを一々例示しなかったというだけでございますので、これは他意は別にございません。  それから第一のうそから第五のうそまででございますが、このうそと申しますか、いわばこれは資料提出に対する熱意の欠除ということであろうと思います。これにつきましては、野々山さんがここで十時間の時間をかけて御議論なすって、その鞭撻の結果が御理解いただける資料提出となったということでひとつ御理解を賜りたいと思います。私どものほうといたしましても、たびたび申しますように、まことに手不足な役所でございますが、それなりに精一ぱいこの資料の要求に対してはこたえるだけの努力はいたしました。しかしまだ御不満の点があることも私も報告を受けております。それらについて、要は、野々山議員御指摘の、いわゆる国政調査権に対する政府の協力の姿勢というものが御鞭撻によって、かくして向上していきますならば、いわばうそといわれるものがだんだんなくなってきた、それなりに実効が上がった、それなりに私どもも一生懸命にこたえたと、このように御理解をいただければ幸いであります。
  64. 野々山一三

    野々山一三君 外務大臣、おそれ入りますがね、先ほどのあなたのことばをもってすれば、いわゆる一般的ということですね。十九条、外務公務員法の、というようなもの、それからうんと、何としてもとおっしゃったような趣旨ですね。そういうものとは別にする。そこで私は、たとえば国政調査権に関する秘密ということばがいいかわかりませんがね。率直に申し上げて、それは官房長官も、いま言われたように、いろんな交渉のときに種本まで全部出して、それを国会で全部言っといてからやるという場合と、やらない場合と運用上あるだろうということは私もわかります。しかし結果については、これは了解を得なければいけませんね、国会の。そうでしょう。それをやらなかったのがうその根本だといわれた、機密漏洩事件といわれた沖繩返還協定に関する申し合わせでしょう。ありませんと言っていた。そこで現物を出した。一、二の三で秘密理事会に出したわけですよ、われわれ。あなた御存じかどうか知りませんが……。何で一、二の三で出さなければいかぬのですか。いま私の秘書が来ておりますから、すぐ持ってこさせましょうか。一二の三だなんといったら、ほんとうにすぐにおこりますよ。誠心誠意、それにこたえますということをおっしゃるわけですから、おっしゃることを保証する、担保する、規則を変えるということがなければいけないということは、この際はっきりお答え願えませんか、次にぼくは質問を進めたいので。
  65. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どういうことですか。
  66. 野々山一三

    野々山一三君 要するに、言いましょうか、具体例を言いましょうか。これは官房長官にも悪いし、翁さんにも悪いのですけれども、たとえば訓令なんというものがございますね。訓令なんというのは秘密にしなきゃいけない、こうおっしゃる。私はたとえば何の何々さんが外交交渉にいらっしゃるあるいは何とか会議で演説をなさる、日本を代表してですね。そのときに秘密が漏れるというような話は、一体多くの場合特別職の人ではないでしょうか。一般的公務員なんという人がそういうものを、素案の素案の素案の段階ならあるでしょう。きまったものがあるわけないでしょう。それをいわゆる秘密という、機密という、国家機関における秘密の基準に関する法律、こういうふうにおっしゃるならば非常におかしな話です。それを立証するために具体例を言いましょう。これはどうしたって直してもらわなければおかしいのですよ、官房長官。住宅金融公庫の問題が私から指摘されましたですね。一見秘密がある。こういう文書が出てきました。あなたの、つまり官房長官のもとを通して私のところにきたわけです。    「秘密文書の件数について。   当公庫の出先機関におけるものを含めますと、昭和四六年度の場合、全体で下記のとおりとなりますので、報告いたします。       記 ○秘   工事入札関係       四件 ○部外秘 貸付審査関係  一八七六六二件 ○人秘  人事関係        八四件   なお、貸付審査関係の一八七六六二件は、公庫の貸付業務に関して得た特定の者の資力、信用にかかわる内容のものでありますので、部外秘の取扱いをしているものです。」  こういう文書が出てきましたので、そこでいろいろ聞きました。結論として、三点が明らかになりました。五月二十七日です。  一 規則による秘ではなく、公庫内部の運用上のもの(取扱い)である。  二 部外秘、人秘はいわゆる「秘密」ではない。  三 「秘」文書取扱い規則によるもので罰則による刑罰は受けない。  こういうわけです。そして「総務課長高橋進」とサインをしていらっしゃいますよ。  そうすると、これは外務大臣にゃ直接関係があるかないかわかりませんが、関連をいたしておりますからお許しをいただきたい。たとえば「個人の秘密に関するもの」というIIのランクに属するもののうち一番上にある「公庫の貸付業務に関して得た企業の業務内容」、これは翁参事官、あなたつくったものでしょう。それが、これには、秘密ではないのです、と、こう書いてあるのですよ。こういうものが国鉄からも出ました。労働省からも出ました。全部出てくるのです。  それから、長くなって相済みませんが、根本的にこれは直してもらわなければいかぬから真偽の意味を含めて申し上げますからお許しをいただきたいと思います。全項目にわたって、私は全部調べましたよ。あなたのほうから示されたものを、たとえば癩病の方がある。その人の人権に関するものというならば、これはこういうIIのランクに「特殊な病気に関する療養所への入所決定通知」というものがございまして、これはたとえば現在性病予防法、精神衛生法等々がございまして、国公法によらなくてもいいようになっていますね、そうでしょう。それからたとえば次の段階へいきましょう、法務省関係のあることでありますが、たとえば裁判、審決、審判等の評決というものに関しては裁判所法、裁判官分限法が、裁判官弾劾法という法律などがありまして、これによって私は当然裁判所の秩序維持という観点からそういう法律が行政処分をもってこたえるということになっていくでありましょう。  こうやって並べてまいりますと、たくさんございますよ。各種の法律によって全部、公務員法百条にすぐ、本人か——外務大臣お話によると、たとえば蓮見君の場合、自首しますと言ったから、要望しようとしまいとそれは当然そうなったでしょうと、こうおっしゃいますけれども、これはまさに判断の問題だとも言えるでしょう。判断の問題だとも言えるでしょうからあまり言いたくはないですから、もとへ返りますが、あのものを、つまりあの機密文書と俗に言われているもの、機密漏洩行為と言うんでしょう。そのことを現物をもって示さなければ、あなたのほうでは審議に応じます、誠心誠意、秘密を明らかにいたしますとおっしゃっても、できないわけでしょう。  そこで私はこの前、防衛庁長官に聞きました。たとえばこの文書の中にございます武器の性能諸元、こういうものは秘密だ、こういうものはアメリカ及び日本の場合もそうですけれども、海軍なら海軍の海軍年鑑という文書で明らかになっているじゃありませんか。ところが日本ではこれを問題にすると全部秘密だから出せません、こう言います。これをつくっている業者、これは性能諸元を知っていなければ仕事になりませんわね。業者たる国民でさえ知っておるものをなぜ国会が求めても資料が出ないのか、出せないのか、非常に疑問があるでしょう。たいへん長いおしゃべりをしましたけれども、その中で問題点を言えば四つほどあります。それぞれお答えをいただきたいと思います。
  67. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 詳しく私もちょっと整理をいたしてみなければ判然とお答えできませんが、まあ武器の性能諸元というようなものは確かに武器製造業者はこれを知っておる、これは事実であります。そこでそうしたものに対するお互いの信頼感ということでその業界自体に秘密が保てない場合はおのずからそこへ発注することがなくなるでありましょうし、したがって、そういう武器の製造業者自身はその諸元を知っておるから、だから武器の性能諸元等について国会等の要求があればこれを出すべきものであるという議論につきましては、やはり防衛上秘匿する必要があるという場合、その諸元についてその製造業者が知っておるから主権者たる国民の代表にはすべて知らすべきだという議論にまで結びつけることは私も判然と割り切れないものがあるというふうに思います。そこにはおのずからの信頼関係が存在しておるのではなかろうかというふうに思うわけであります。  それから、「公庫等の貸付業務に関して得た企業の財務内容」というものは、公表されると当該企業の信用を危うくするおそれがあるという意味において私は秘密であるという認識をいたしております。ただ、いま野々山さんおっしゃいました、公庫の総務課長が秘密ではないと、それはいわゆるその一定の時期がたった場合に、それが秘密として秘匿しておく必要がなくなるという意味であるとすれば私にも理解できるところでありますが、その最もホットな段階においてはやはり当該企業の信用という問題について秘密であるべきものではなかろうかというふうに理解をいたすものであります。  さて、それと基本的なお話でございますが、この際お答えをしておきたいと思ったことは、先般の野々山さんの御質疑以来、最近各省に指示いたしました内容というものは、四十年の事務次官申し合わせの趣旨を徹底するために、さらに五月二十六日各省庁に通知をいたしましたのは、いわれております人秘は、秘密文書の極秘のうち秘に属するものとして取り扱うこと、その人秘にいたしましても人事に関するいろいろなことが調査されておるわけでありますが、いわゆる人事異動というようなものはもとより発令されたら秘密性というものはなくなってしまうというふうに思いますので、人事に関する秘であることを——そこでお許しをいただきたいことは、人秘という印形は、その人秘という判こは、秘ではあるが、人秘というのは非常に数が多いから、人秘とは秘であるという認識のもとにその印形そのものは残しておってよろしいと、まあこういう、実は残しておいて差しつかえないと、こういう指示をいたしたのであります。  それから従来の部外秘または取り扱い注意であって実質上秘に該当するものは、今後は部外秘、取り扱い注意という取り扱いを廃止して秘として扱いなさい、その必要のないものはやたらと部外秘、取り扱い注意というきめ方は避けられたい、秘密文書として取り扱う必要はないが、業務の遂行上慎重な取り扱いを必要とする文書については取り扱い注意、〇月〇日まで不公表、部内限り等、取り扱い上の注意を明記する。いわゆるこれはたとえて申しますならば、〇月〇日に、外務省で申しますならば両国のおおむね借款その他合意したと、しかし発表がたまたま外交上の慣例で〇月〇日〇時という打ち合わせをしている場合は、それまでは取り扱い注意という形、不公表という形は任務の遂行上慎重な取り扱いを必要とするという意味において注意を喚起するという意味で明記するのは適当である。  それから課長に準ずるものは課長相当職以上の者に限定すると、こういうことと、さて一定期間に限り秘密文書とすることをもって足るものについてはその期間を明記する。申し合わせによりその期間が経過したときは秘密の取り扱いは解除されたものとされる、というふうに、この間来の御質問に対しまして、五月二十六日付をもって一応内閣官房いわゆる参事官室首席内閣参事官名をもって各省へ通知書を出しました。これが最近の御鞭撻に対してあらためてとった措置であります。そうした中にわれわれの精神の存するところを御理解を賜わりたい。以上でございます。
  68. 野々山一三

    野々山一三君 官房長官、まことに相すまぬのですけれども、この間あなたが代表されてこの委員会に出された「国家機関における各種の秘密の基準」、あれは、新聞社の方はお見えですけれども、どの新聞を見ても全部政府がきめたというふうに書かれておりますね。ですから、あなたがいまのような答弁をなさらなければならなくなってしまったんじゃないかということを感ずるのです。しかし、そういうことでは私は変な類推をしたくなるんですよ。こういうふうにきめたから書いてくれよと言うたかどうか知りませんが、そうきめたから書いてくれよというニュアンスを非常に強めて発表されればそうなる。これは、ですからそういうことはやめにして、あなたもこの委員会で数次にわたって約束されたように、基準については、審査をして、そうして刑罰上の保護を受けるものは何か、いわゆる行政上の処分を受けていくものは何かというようなふうに、公正にして、委員会のあるいは国会審議権というもの、調査権というものを保障する、つまり憲法六十二条を保障するということでなければいけないと思うんです。なぜそう言うか。たとえば公務員というのは、憲法に書いてありますね。公僕であって特定の者の利益を代表しちゃいけないというような趣旨のことが書いてありますね。そういう憲法からいって、公務員は公僕であるという地位は憲法で保障されております。あなたの都合、佐藤さんの都合、福田さんの都合でというわけにはいきませんね、これは。ですから、そういう観点から見ても当然局限されていくべき性質のものである。それが今日では乱用されている。だから、私からも言っているこういうことだということをとくと御理解をいただいて、再検討しますということを、この際、この委員会にはかって再検討しますということを約束してくださいということが私の質問の第一です。  それから第二は、例示を申し上げましょう。これはある機関の場合ですが、秘密が非常に少なくて、そんなばかなことはないではないかと私はこの委員会で指摘をいたしました。そうしたら、文書でこれもおたくを通して出てまいりました。読み上げましょう。何々機関「においては、昭和四十七年五月十五日に提出した秘扱文書のほか、これに準ずる取扱いにしているものには、次のようなものがある。」、「人事に関する文書」、昭和四十六年は二百件ほど。それから二番目、契約に関するもの、これはつまり予定価格ですね、これが約六千件。これは中央だけだそうです。で、約というのですよ。それにこういう付記があります、「以上の文書は、」、つまり文書取り扱い上の秘密という文書、あなたのほうで言われる秘密という文書ですよ、ここ誤解のないように。この「文書は、社会通念上、業務運営上当然秘扱いに準じ」——よく覚えておいてください。「秘扱いに準じた取扱い(封印)にするのが妥当であるので、秘扱いとほぼ同様の取扱いをしている。」、こういうわけです。外務大臣関係がありますので、たとえばあなたの意思を代表して、ある特別職の人が出席されて、日本を代表しての演説をされる。つまり訓令についての見解を述べるという場合に、いわゆる封印をしてあなたがお渡しになる。それを向こうへ行って読まれる。それはいわゆる公務員法上、あるいは外務省公務員法上の秘密とは言わないというふうに解されるわけだし、そういう運用ができる。そうならば、私も納得できるわけです。そうしてさらに、「これに対する違反については、〇〇職員は、〇〇法上、」の秘という、秘密というものではございません、ないと。「懲戒処分に附することがある。」——「ことがある。」のです。翁参事官、どうです。あなたはたいへんりっぱな方だと私は信じます。しかし、そういう私が調べておるように、いまも幾つかの機関の名前を並べましたけれども、全部公式な文書でこういうふうに話をしておると出てくるのです。そして疑いのあるものについては全部規則を変えますということを総裁なり何なりが私のところで約束をしていかれるのです。あなたのほうでは、あの基準に関する云々というもので指示したとおっしゃるけれども、私には、責任者たる総裁、副総裁が来て、あるいはその筋の長、つまり官房長みたいな人が来て、これは規則を変えますと言うんです。そしていま読み上げたようなものをすると言うんです。なのに、一体あなたが、あんなことを野々山言ったのはけしからぬといっておこるのですか。私は、おこったら、ほんとうにおこったらよろしい。私もおこりますよ。官房長官、いかがですか、見解を聞きたいのです。  ですから、この基準について、あなたのほうでは試案としてお出しになった気持ちは私はわかると、この前申し上げました。けれども、私がこうやって調べた——あなたはスタッフかないとおっしゃるけれども、私は野々山一三、一人だけですよ。法律なんか全然知らない秘書しかおらぬです。夜の三時、四時まで勉強しましたよ。あらゆる学者の意見も聞きましたよ。あらぬふ弁護士さんの意見も聞きましたよ、私の手の届く限り。そうして社会通念上言うならば、これこれが云々だということを言われたんですよ。あなたと違いがあるのは、あなたは権力者だ。要するに佐藤政権のスポークスマン。行政権を担当しておるという地位以外に何ものもない。何ものもないと言っちゃたいへん無礼な話ですけれども、ほかに何かありますか。お金持ちかどうかは知りませんよ。ないでしょう、憲法上から言ったら。この際、虚心たんかいに私は私の指摘しているこの基準というものを変えなさい、もう一回改めなさい、その機会をこの委員会に保証しなさいということを第二に求めたい。  それから第三に、先ほどあなたの答弁の中にございました指定権者というものがある。江崎防衛庁長官は、秘密というものをこの委員会に出すか出さないかの判断は大臣がすべきである、こうおっしゃいました。裏を返せば、秘密というものを決定するのは大臣だということばに、あの江崎防衛庁長官のことばをおかりすればそういうふうに解するのが私は常識である。私の日本語を知っている知識からいけば、だれでも通用することばだと、こう思いますが、いかがでしょう。  そこで、あえて補足いたしましょう。課長及び課長を補佐する者、それが秘密と言ったら、もう出ないのです、この委員会に、この国会に。どの委員会でもそうです。こういうことですから、野々山一三なんという者が、こうやってあなたを指摘せざるを得ないんですよ。いかがでしょう。私はこの際、指定権者というものは大臣にするということで考えるということを、この際見解を求めます。私の不勉強な段階で、ある種の作文をつくりました。その中に、大臣、次官、事務次官、政務次官ということばを書きました。いろいろ考えてみましたが、結局防衛庁長官が、公式に大臣が判断をするのが当然です、そして、その大臣は行政機関を代表して国会審議権というものの尊厳を守るという観点から、誠心誠意、御納得をいただく手段を講ずるというのが当然ですと、こう答えられたのです。それを竹下官房長官、あなたはこの際実行されていいじゃないでしょうか。そのことをつけ加えて、この三点についてはっきりした見解をお聞きしたい。
  69. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 最初の基準については、このいわゆるお手元で御議論いただいております「国家機関における各種の秘密の基準」と、そしてI、II、III、IVとありまして、それぞれ例示を出したものであります。で、これにつきましては、率直に申しまして、私どものほうで整理してこういうものをつくったわけでありますが、新聞社が、政府が大体これをきめたということは別に私の会見で申したわけでございませんが、この委員会に多数な優秀な記者諸君が傍聴いたしておりまして、それでこの資料をもって政府基準と考えて報道した、このように思います。  ただ、問題は、野々山さんがかねて御指摘になっておる秘密で、これは刑事罰に価する、これは行政罰に価する、こういうのを確然たる基準を設けるというのは、これは検討はいたしました。なかなか実際問題として困難であります。それはなぜかならば、やはり個々のケースによって非常に違うからであるというふうに理解せざるを得ないと思うのであります。したがって、これは刑罰をもって保護されるものであるか、これは行政罰に価するものであるというような点につきましては、なお検討をさしていただきますが、確然たる基準として御提示するまでの自信は、今日のところ確然とはない、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。いずれにしてもそうした一つの指標をお示ししたわけでございますから、秘密自身を減らすということには、今後とも努力をいたすべきである、このように考えるわけであります。  それから参議院法務委員会要求資料として、日本国有鉄道が追加で五月二十六日に提出した書類であります。実はこれにつきましては、私の手元、いわゆる内閣官房を通らないで、直接提出した。それは決して私は国有鉄道を責める考えはございません。御指摘をいただいたので、私もなるほど国鉄にはたいへん契約に関する入札価格等々のものがあるはずだが、そういうものが四十六年度にほとんどないということはおかしいと疑問を持っておりましたので、それら六千件等々を急いで追加提出した、こういうふうに見受けます。  ただ私もここでわかりましたことは、いわゆる国有鉄道、すなわち、政府関係機関の中においては、これらのものがもちろん契約に関する文書等はある一定の期限がきたら秘解除されるべきものでありますが、これが扱いの上で秘扱いではなくて、秘扱いとほぼ同様の取り扱いで封印をするというふうな扱いになっておるということは、これは私もいま初めて知りましたので、これらはよく検討した上で、やはりせっかくいま手の届いた、いわゆる政府部内、そしてこれを関係機関にまで推し進めていくということは、なお今後われわれの努力する課題であるし、また努力しなければならない課題である。このように御指摘を受け、痛感をいたした次第であります。  それから江崎長官がここで答弁をいたしましたのは、少なくとも秘文書等々において、国会でいわゆる提出を求められた場合は、それは秘文書を提出する、いやこれならばもうすでに提出してもいいんじゃないか、あるいはこれは少なくとも秘密会をお願いしようじゃないかという判断は、提出するにあたっての判断は、大臣自身が判断をすべきである、こういう御見解を申し述べられたと思うのであります。だからといって、今度は秘文書そのものの指定権者というものが、全部大臣にあると申します場合、率直に言って末端の入札価格に至るまでの問題になりますので、考え方によれば、大臣の意図を受けてそれぞれ現場の課長等が、その委任事務を行なっておるというふうな御理解ならば、一つ一つ大臣みずからの手でもって、行政責任はいつでも存在するわけでありますけれども、秘扱いの指定権者になるということは、実質上困難なことではなかろうかというふうに思うわけであります。ただ、江崎大臣が申しましたごとく、国政調査権に対して十分な協力をするという立場において、そういう秘文書の国会提出問題については、大臣のところへ上げてこい、こういう指示をなすっているという姿勢をお述べになった、こういうふうに私も理解いたした次第であります。
  70. 矢山有作

    矢山有作君 いままで質疑を聞いておりまして、私自身としてもちょっとはっきりさしておきたいというのが、二、三ありますので、簡単にお伺いいたします。  まず福田外務大臣にお伺いしますが、先ほど野々山君が言っておりました、国会法の審議の際に、政府側の見解が示された、それはいま言われましたが、国会法第百四条、「本条は現行議院法第七十四条及び新憲法第六十二条に対応する条文でありまして、「内閣、官公署その他」と申しますのは、これは会社及び個人も含んでおるわけであります。またたとえ秘密な書類といえどもその提出を求めることができるのでありまして、その秘密な書類を審査する場合には、秘密会を開けば足りることであります。秘密なるが故にこの提出を拒絶することはできないものと解しております。」、こういうふうに二十一年の十二月十九日に第九十一帝国議会衆議院の国会法案委員会において、大池説明員から言われておるわけであります。ところがこれに対する見解を求められたのに対して福田外務大臣は私の聞き間違いかもしれませんが、この解釈はその当時の解釈であって、いまの時点においては、この解釈は変わっておるというふうに解せられるような御答弁だったと思いますが、その点いかがですか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は法律論を申し上げておるんじゃないんです。野々山さんが感想を求めましたから、率直に私お伺いいたしておりまして、私なりの感想を申し上げたのであります。法的見解は法制局のほうからお答えを申し上げます。
  72. 矢山有作

    矢山有作君 福田外務大臣、一々外務大臣が法制局長官に見解を求めなければ、こういうものに対する自己の見解を述べられぬというに至っては、これは行政をやられる場合にいろいろお困りになる場合がたくさん出てくるんじゃありませんか。これ百四条、国会法の百四条というのは、この解釈は法律論として間違っておるとお思いになるんですか。これはきわめて重大なことですからね。外務大臣、これは笑いごとじゃないですよ。この百四条をどう解釈するかということによって、秘密というものと国政調査権との関連に対する根本的な相違が出てくるんですから、したがって、私がいま読んだような、これは私は国会法第百四条に対する法律解釈だと思うんです。これは変わったとお考えになりますか、このとおりの解釈とお考えになりますか。これは大臣、このくらいの解釈ができないと……。
  73. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私はこれはあまり研究したことはございませんから、率直に申し上げますが、法的な見解は申し上げられません。ただ、私の気持ちを申し上げますれば、外務省には外務省の機密がある、何と言われても出せない場合がある、こういうことを申し上げておるわけなんです。そういうことから、そういう私の気持ちから言いますると、世の中もずいぶん変わっておるから、こういうまた二十一年当時は、今日想像もできないような世の中であったわけでありまするから、その当時の状態がどうであったのであろうか、そういうまた状態において、政府委員の発言というものが、どういう環境でどういう気持ちでなされたのであろうか、そういうことを思い浮かべながら、私は私なりの感想を申し上げた、こういうことなんです。法的な見解は法制局のほうから申し上げます。
  74. 矢山有作

    矢山有作君 外務大臣国会議員であると同時に、外務省という行政官庁の最高責任者です。いわゆる外務省という行政機関の最高の地位におられる方ですからね。そうすればやはり行政の運営にあたって、準拠しなければならぬのは憲法なり法律でしょう。その憲法なり法律の解釈がわからないということで、行政の運営が責任をもって果たされるんですか。あなたのように、次期の総理、総裁に擬せられている人が、そんないいかげんな答弁をされたのでは、これはたいへんですわね。そういうことでこの国会がしのげる、そういうことで日本の行政が行なわれるというところに、今日の政治の悲劇があるんじゃないでしょうか。私は、国政調査権と秘密という問題に関するこの当時の解釈というのは、私はやはりいまでも正しい解釈だと思いますよ。私はいま外務省に、どうしても知らしてならぬ秘密があるのかないのか、それを知らせることがいいのか悪いのかという議論をしているんじゃないんです。法律解釈としてどうお考えになりますかという見解を求めている。もし外務大臣がどうしてもおわかりにならぬということになれば、外務省には法律解釈の専門家もあるはずですから、その専門家のほうの解釈を求めましょう、外務大臣はその補助を得ながらやっておられるんでしょうから。
  75. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指名を受けたわけではございませんが、きょう、そうした問題について若干予測しておりましたが、実は昭和二十一年の十二月の答弁を私は正確に読んでいないことは先ほど申し上げたとおりでありますが、それから一年後にいわゆる議院証言法というものがやっぱりできておる。そこに私はおのずから、いわゆる公務員の証言拒絶ないし内閣声明の制度というものが定められたことも、また、そのいわゆる秘密というもの、国益のために秘匿しなければならない秘密というものがあり得るということが時代の要請の中に定められたのではなかろうか。ただ、私なりに感じますことは、その当時、率直に、解放された民主国会国会法というものが論議された場合には、あくまでも国会至上主義的環境の中に当然議論され、そして私は、当時の法律解釈はそれなりには定着しておったんではないか。しかし、そこに矛盾があったからこそ、それから一年後に議院証言法ができてきたではなかろうかと、こういうふうな経過を実は感じながら、その十二月の答弁は率直に言って読んでおりませんでしたけれども答弁資料を若干用意しておったということであります。
  76. 矢山有作

    矢山有作君 関連ですからあまり時間をとることもできませんが、じゃあこの問題は、外務省という行政官庁の最高責任者の外務大臣には法律解釈ができぬそうですから、これはあらためて法制局長官の出席を求めて法律解釈を聞きましょう。まあ、あなたも一々わからぬときには法制局長官によくお尋ねになって、誤りのない行政運営をやっていただきますように、まあ希望しておきます。  それからせっかく官房長官が答弁に立たれましたから、私は官房長官にまず基本的なことをお伺いしておきたいんですが、憲法の六十二条ですね、国政調査権。これがつくられたこの立法趣旨というのか、それをどういうふうに解釈しておられますか。
  77. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) あくまでもその国政調査権というものは、まあ私も国会議員といたしまして、立法府にある、まさに三権分立における固有の権限、そしてまた、行政行為そのものを監視監督する役目を主権者たる国民にかわって行なっておる場合、国政調査権というのは、国会に、国会としての立場から十分それが生かさるべきものであるし、そして逆にまた、いま政府立場でお答えいたしますならば、それに対しては可能な限りの協力をすべきものであると、基本的にそういうふうには理解をしております。
  78. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると 一口で言ってしまえば、いまの憲法というのは国民主権の立場に立っておりますわね、その国民主権をささえる大きな柱がこの国政調査権だとこういうことになりますね。——一言で答えてください、時間がありませんから。
  79. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そういう理解でけっこうであります。
  80. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、私は、原則的には、国会の中で政府当局、行政当局が秘密というべきものはないと、この原則に立たなきゃならぬ。ところが、いままでの論議を聞いておると、国政調査権なるものが国民主権の中でどういう位置づけをなされておるのかということの基本的な認識がすっ飛んでしまって、まず、行政の中には国会でも明らかにしてはならぬ秘密があるんだという、そういう基本的な立場に立って議論が進められているような気がするんです。これは私は本末転倒だと思う。原則を例外にし、例外を原則にしちゃ困る。ここのところの認識がないから、あなた方ができるだけ国会に対して物事を知らせまいとする姿勢が出てくるわけです。そしてまた、それが都合よくやれるようなしかけになっておる。それが国会法の百四条で、もうすでに論議されておりますように、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」この規定を政府与党はうまく使っているわけです。そして議院なり委員会においていろいろな文書その他の提出を求められた場合に、いまの議院内閣制というものを悪用して、そして多数でもってそれの提出を拒否する、こういうような態度がとられておるんじゃないか。ここらの点も私は反省してもらわなくちゃならぬ。そういう態度をとることが、今度は官僚のほうに反映をして、官僚の独善的な性格から、できるだけ他に知らせない、自分たちだけが知っておこう、こういうような秘密主義が生まれる。そういう悪循環になっておる。この辺の認識をはっきりとしておいてもらいたい。そうしなければ、幾ら議論をしてみても、それであなた方がこの国会の場では耳ざわりのいいことを言ってみても、私はいままでの秘密主義の行政の姿勢は改まらぬと思う。それでは国民主権というものは根底から崩壊しますよ。その認識だけは私は明確に持っていただきたいと思います。そして、さらにまた時間をいただければ具体的な問題についてもお伺いしたいと思いますが、関連質問ですからこれでやめておきます。長官の見解を求めます。
  81. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この国民主権を支えるものである、その原則は私も原則であると思います。したがって、私自身、例外を原則とし原則を例外にするというような基本的な考え方はございません。そのことは、原則的に矢山さんと相違がないと思っております。ただ、政府与党が多数で拒否するとか、いろいろなお話がございましたが、自由民主党という政党はたいへん自由で民主的な政党でありまして、そういうことをやる政党ではないと私も誇りを持って所属いたしておりますが、議院証言法をはじめとしてそうした制度そのものが存在をしておるということは、大きく国民主権を支える柱であると同時に、そのようなものも存在するという、国家の安全と平和のために必要なことがなお存在しておるということ自体はやはり認識賜りたいと、このように思います。
  82. 野々山一三

    野々山一三君 外務大臣時間がないようですから、この辺で最後に、注文といいますか、見解を述べて、次の機会に答える機会をつくってもらったらいいと思います。先ほど、一番最初に述べられた外務省の文書取り扱い規則さえも秘密であるということの、これは必ずしも適当じゃないかのごときお答えがあったわけですけれども、これ自体をどういう扱いにするかは、理事諸君の御協議にまかせる——まかせるというか相談しながらするとして、示してもらいたい。  それから第二は、いわゆる国益、国損、安危というところが官房長官が終始述べられておる秘密というものなんです。秘密ということばだけじゃ不正確でして、機密、極秘、秘——秘密、部外秘、取り扱い注意、人秘というものになるわけですけれども、これは、正確に、ようかんを切ったようにぴしゃっといかないにしても、まあ、これならば間違いないわいと、つまり、MSA特別措置法なんかには、項目がぴしゃっと——等なんという字はないですね。ないですね。——そういうようなものであるならば、私は、まあという感じがするんです。そういうものを正式に外務省として示されるということが必要だと思います。  第三には、いろいろな秘密があるんだということを強調されましたけれども、その間秘密理事会で、官房長官の許しを得られるならば秘密会でひとつよく説明をしてその真意を述べ、国民を代表する国会の国政調査権の尊厳を守りますと、こう答えられたわけですけれども、それの実行はなされたんですと私は受けとめてもいいんです。しかし、残念ながら外務省については私は全然よろしゅうございますというふうには申し上げられない。大臣事情を御承知でないと思いますから関係当局、事務担当者ともよく相談をして次の機会によく述べてもらいたい。これはそれの関連で西山及び蓮見君の問題にかかわってまいりますからそういうことを注文し、見解を述べます。  それから先ほど来のお話で、官房長官も外務大臣もおっしゃられたんですけれども、たとえば航空機なら航空機の性能諸元、武器の性能諸元というようなもの、これは総称的な表現ですわね。私はせめて件名ぐらいが示されないと、何件ございますという、お宅ですと、去年ですと十万五百八十八件。十万五百八十八件ありますということだけではどうもどんなにりこうな人でもそれが何であるかわかりませんね。そうすると、申しわけないけれども、その中身を知りたいというアプローチが起こるのはあたりまえでしょう。それが結果として警察当局なり、法務当局をして言わしめるならば機密漏洩とかというような問題に発展する。そして公務員は国民から批判される。行政権は万能じゃないか、こういう議論に発展するわけですね。ですからせめて件名くらいは述べられるというようにして、そしてその中身については秘密会ということがあり得べきではないか。  五番目に申し上げたいのは、官房長官もお時間ないようですから最後に聞きたいんですが、あなたは昭和二十一年の十二月十九日の国会法特別委員会でやられた記録もごらんにならないくせに——わざわざ「くせに」と言います——その後に起こった証言法審議のときにはかくかく——だれに教わったんです。もとの国会法を——あなたはいつでも「私も国会議員です」とおっしゃる。そのあなたが、「国会議員である」とおっしゃるその口から、「国会議員として憲法六十二条を守っていく誇りを持っています、野々山一三君に負けないつもりです」、こうおっしゃる。負けないつもりでいらっしゃるあなたが、証言法というものを審議した過程の理論を持っていらっしゃる。それならば、私は見解になりますけれども、あなた方が、いつも矢山君からも指摘をされ、皆さんからもよく指摘をされますが、出てきていただいてお答えをいただくのはいわゆる政府を代表してという地位ですね。あなた方の最も信頼していらっしゃるんではないかと思うアメリカなどでは何々長官といえども全部証人ですね。私は三十何歳、三十一歳ぐらいのときに何回か労働運動を指導している私が国会に証人として呼ばれました。そしてある現役の衆議院議員の人ですけれども、「「昔軍隊いま総評」という、それをやっておるのはおまえではないか」と罵倒されました。私はおこりませんでした。証言法というものを運用するという考え方を一ぺん検討なさったらどうでしょうか。なぜか。あなた方は、まことに申しわけないですけれども、いろんな機会にいろんなことをお答えになるが、その次の機会になって調子が悪いと「キャンセルしたい」、たいへんけっこうなことばをお使いになりますね。それでは国会というものはほんとうにその場当たりだということになりますね。私はですから速記録あるいは記録、私の推論というような場合には推論ということをわざわざこの委員会でも述べておる。それくらいわれわれは追及するということばがあるならば、追及するということばで私ども指摘をされるならば、追及する以上は責めを負う、憲法に対して責めを負う、国民に対して責めを負う、国会に対して責めを負う、それは当然な地位だと思います。責任だと思います。そういう観点から私は証言法というものについても、運用についてもっとお考えになることが正しいのじゃないでしょうか。残念ながらこれ一言つけ加えますけれども、あの証言法による拒否権を発動されたのは、佐藤総理の汚職事件ですね、あれ一回ですね——あれ一回ですね。そういうことを考えてみますと、あれを運用されるというような措置——君、官房長官はいろいろ勉強していらっしゃると思うから、横っちょから言わないほうがいいんじゃないですか。何時間も私に答えられたのですからね、十分知っていらっしゃる。お忙しい中でもよく知っていらっしゃる。そう横っちょから口を入れぬようにしてください。しかも官房長官は政府を代表するスポークスマンだとおっしゃる、そういう人にくちばしをあまりいれないほうがいいです。そういう態度があるから矢山君が指摘するように秘密の指定権者が広がり、秘密が広がり、悪用され、秘密といえば国会の調査権さえも否定されるということになる。ちょっと余分なことを言いました。その点についてもとへ戻って、証言法というものの運用などについてもお考えなさるという機会があってもいいし、最後にあなたは先ほどお答えになったからそれを信じたいと思います。基準としてあなたのほうからお示しになったものについてさらに御検討なさるというお答えを信じ、この委員会に検討した結果を示していただきたい、こういう希望です。お答えをいただきたい。
  83. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず外務省の文書取扱規程、これは中に、先ほど申し上げましたように、暗号の取り扱いをどうするかという部分があるのです。それにまた類した案件がありまして、これは各省と非常に違う点であり、また暗号の取り扱いをどうやっているかというようなことは世界でもかなり注目をするところなんです。そういうようなことでこれを公開をするということがむずかしいのです。しかし、国政調査というようなことでありますれば秘密会あるいは秘密理事会、そういう場においてごらんを願いたいし、またいろいろ個々の論議を顧みまして、外務省の文書取扱規程を各省並みにしたらどうだろうかということを考えております。そうしてつまり秘密の管理規程ですね、その部分、暗号だとかそういうような関係の部分を取っちゃう、そうして公開ということにすればこれは刑事法令なんかとの関係がうまくいくのじゃないか、そんなふうにも考える。そういうことを文書取扱規程の改定を命じ、大体その改定作業が完了しておるというのが現状でございます。それで御満足がいただけるのじゃないか、かように存じます。  それから第二には、秘密の種類区分、これの基準をというお話でございますが、はっきりした機密分類基準というものはないように私は思いますが、そこでこれはたいへんいいことだから私どもとしてはひとつそういう基準をつくるということを考えています。せいぜい努力していくということにいたします。
  84. 野々山一三

    野々山一三君 出しますか。
  85. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) もしでき上がりますればごらんに入れます。  それから秘密文書はずいぶんあるわけでありますが、大体三〇%くらいこれを整理するという方針でございます。その残った案件の中にどんなものがあるんだと、こういうことのお話でございますが、それはまあ一々全部を申し上げるというのもたいへんなことでありますから、例示的に、こんなものが残っておる、秘密ですという例をお示しすることにいたします。以上であります。
  86. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 最後、第五番目の私に対する御質問でございますが、二十一年十二月の答弁も読まないくせして議員証言法ということの経過を言っているじゃないか。確かに読まないくせに言っております。ただあの場合、いわゆるそういうことに対しての感想を述べよとおっしゃいましたので、その感想を述べたということでありますので、私が議員、今日この議員証言法なるものにのっとって、できるだけ国政調査権に対して協力をすまいというような考えは全くございません。考え方としては、先ほど来申し述べておりますとおりであります。  それから「昔軍隊いま総評」——これ違いました。これは当時の議論の話であります。これは私には関係ないことであります。  それから、指定権者が広がることによって、安易に秘文書が作成されていくという、これは基本的な御指摘に対しては、私は江崎大臣が申された、これは国会に提出する際の姿勢ではございましたが、これは私は政治姿勢としては正しいと思います。したがいまして、先ほど来申しておりますように、課長以上ということに限定して、さらに五月二十六日首席参事官名をもって出しましたものに準拠して、一そう減らしていく方向で努力したいと思っております。なお基準の問題につきましては、これはいずれまでが刑罰によって保護され、いずれまでが行政処分の対象になるとかということについては、非常に個々のケースによってむずかしいと私は思います。しかし、御鞭撻でございますので、外務大臣からもお答えしましたように検討してみたいと思います。その結果、これは野々山さんあんまり御満足のいくようなものができませんでしたという場合があり得ても、その精神にこたえて私は検討はすべきであると、このように思います。
  87. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。  いまお話伺いましたので、整理をする意味でお伺いをいたしますが、いままでは秘密条項というものが非常に多過ぎたんではないか。ことばにきぬ着せず申し上げるなら、秘密ということに便乗をして、秘密にしなくてもいいことまでも秘密にしたというきらいがなかったか。そういう御反省のもとに、今回若干整理をしたということと解してよろしいか。いま、しかし、官房長官からお示しいただいたものでも、まだまだもっと整理をする、あるいは条件整備をする問題があるんじゃないか、こういう御指摘があったわけでございますが、今後もさらにこの委員会で問題になったような点を検討をして厳密な整理をさらに進めると解してよろしいか。これが一点。  それから秘密条項というものが、外部に対して秘密にするということだけでなくて、国会法等に、法律に規定されております国会への資料提出というところまで秘密というワクをはめて、資料の提出を拒んでいた傾きがありますが、これは先ほどから論議に出ております秘密会なりあるいは理事会並みの秘密会なりという形のいろいろ方法はあろうけれども国会に対しては、請求されたものは、これは原則として提出をする、今後はそう解してよろしいか。  それから第三の問題は、いま御説明がありましたけれども、国民の大きな権利に関係する問題でありますから、一課長が秘密決定をすればそれが秘密になって、国民の知る権利を束縛するということでは不当ではないか。少なくとも責任者である大臣が決定すべきものではないかという点は、まだ大臣が決定をいたしますというお答えはいただいておりませんが、この点は野々山委員矢山委員指摘のように、決定する以前の作業はそれぞれの下部機関がやるにしても、決定は大臣の責任において行なうべきだと思いますが、これは御了解いただけるかどうか。  それから、官房長官はお役人の出身でありませんから、御感想をいただきたいのでありますが、機密保護法のあったころの官僚の独善主義といいますか、優先主義といいますか、これがいまもって慣習として残存しておらないか。少なくとも先ほど指摘がありましたように、国会に対しましては一切を十分な審議の資料として提出をする。国家の利益を国会議員がそこなうようなことがあるならば、それは国会議員の責任でありますけれども国会議員が大体国家の利益をそこなうであろうということで、あらゆる問題を秘密にして温存させておくというのは、これは官僚の独善主義ということになりまして、その傾向が私は非常に大きな、何といいますか、慣習として残っておるんじゃないかと思いますが、これはぜひ、もしそういうことがありましたら、官房長官のお力でこういう際にきれいにぬぐい去っていただきたいと思いますが、以上の点、お答えを賜わりたいと思います。
  88. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 加瀬委員長指摘のとおり、大体昭和四十一年の事務次官通達の際も、やたらと秘文書が多過ぎるという反省に基づいてできたことは事実であります。したがって、今度はこの秘密という問題が、秘密漏洩事件を契機といたしましていろいろな角度から議論されたわけでありますけれども、少なくとも本委員会においては現象的な問題でなくして、かなり詰めた議論をいただいたわけであります。その間、その背景として持っておりましたのは、やはりやたらと秘が多過ぎるという反省は、四十一年のときの後の追跡調査が行き届いていないだけに、さらに反省を深くしてこれに対処したと、こういうことでございます。で、この委員会で詰めた議論をいただきましたので、引き続きそうしたものを減らすという方向で私は努力すべきであると、このように感じた次第であります。  それから、資料提出につきましては、原則としてもちろん提出すべきものであると、こういうふうに私も理解をいたしております。  その間、これは私がかねて考えておりまして、今度それが本委員会でもお取り上げいただいたわけでございますが、秘密会、秘密理事会あるいは秘密理事懇談会、そういうのは国会法、議事規則にない名稱のものもございますものの、そうしたものの活用ということが、この知る権利に対して知らす義務を背負っているわれわれとしては、非常にありがたい措置であると、だから、そういうことをしてでも、できるだけ国政調査権に対しては努力をすべきであると、このような反省に基づくところの見解を持っておる次第でございます。したがって、この資料提出に関しましては、原則としていかがかという問題については、江崎国務大臣がお答えしましたように、最終的にいかがするかというのは、大臣自体が判断すれば、おのずからそこには秘密会とか秘密理事会という方向も出てくるのではなかろうかと、こういうふうに理解をいたすものであります。  それから、最終のいわゆる国民の権利に対して課長さんが判こを押しちゃえばそれで済む、これは考えようによればその大臣の権限を委任を受けておるということでは理屈はつかぬことはないと私も思います。そしてまた問題によっては、たとえばされば入札価格を全部大臣が判こを押すべきものであるかあるいはまたこの出先の異動に対しても大臣がそこまでやるべきものか、またそういう問題はおのずから社会通念上、これはなるほど出先の責任者でいいものだということは、私はおのずからできてくるのではなかろうかと思います。  それでまたいわゆる毎日のように私ども読んでおります出先の大使館等からの電信でございますが、電信等は来た限りにおいては、受け取ったものはやはり外交上の問題であるから秘という理解のしかたであげてまいります。あげてまいります中で、まあ秘でないものはそのつど何というのですか、紙が変わって途中で秘でないものになってくる場合もございます。そういうことで全部を大臣が秘密であるかいなかを判定するということは、にわかにそのとおりにいたしますという答弁は、私としては問題が多いだけにそれだけ踏み切ったお答えをする自信が今日ございません。ただ精神そのものは私にも理解できるところであります。  さらに今度は秘密保護法のあった時代、実は私幼少のころでありまして(笑声)、あまり知りませんが、いずれにしても私は秘密保護法というものから若い時代に受けたある種の印象というようなものはございますけれども、秘密保護法という問題は別といたしまして、そういう秘密独善主義というものが跳梁ばっこすることはわれわれの力で断固として阻止すべきであるというふうには理解をいたしております。加瀬委員の御質問に対しまして、整理して必ずしも正確な答弁にはならなかったかと思いますが、お答えした次第であります。
  89. 加瀬完

    ○加瀬完君 大臣が、一切がっさい入札の秘密まで大臣がきめろということではありませんで、これは野々山委員が前から指摘しておりますように、ある程度委任事項というものは前もってきめられると思う。いまは秘密にすることがたてまえで、秘密でないものが例外というような傾きがありますが、そうではなくて、秘密でないことがたてまえで、秘密というものはよほど限定されたものということになりますと、これはやはり一応の基準というものはきちんとつくって、それで委任事項として処理をするにしても、原則は大臣が責任を持って秘密か秘密でないかというものは決定をするという基本的な態度は、大臣の、何といいますか、ところできめるという形をとっていただきませんと、いまのオール秘密的な慣行というのはなかなかなおらないと思います。これは御検討をお願いをいたします。
  90. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御趣旨の点は十分私も理解できますので、検討の課題とさせていただきたいと思います。
  91. 野々山一三

    野々山一三君 もう一つ基準の問題で何回も出てくるのは、入札云々ですけれどもね。私まだそういう意味で言うならば、各省庁全部取り扱いを一ぺん聞きたいのです、冷厳に。これは封印をするというのはたいていの場合封印ですよ。それをまだあなたが入札のことをこれは当然だなんというようなことで、刑事局長の言うところの刑罰によって処分する、そんな考え方をとっていらっしゃることはこれはもう問題じゃないんですね。全部私言いましょうか、読みますよ。私の見解を一時間かかっても、あなたの書いてある、あなたの法制局から出てきたものに対する私の法上の見解、実体上の見解、翁首席参事官は実際の仕事をやっていらっしゃらないが、私は全部仕事をやってきていますから、全部実物を述べて指摘をしますよ。これはそういうものなどは落とさなければだめなんです。秘密という国益、国損という観点でしょう、あなたのおっしゃるのは。ですからそういうものはいわゆる封印すればいいのですよ。封印して渡せばいいのですよ。それが漏れたら、これは何で漏らしたと、これはお前背任、そして何とかをもらえば横領であり、収賄であり、贈賄であり、別な刑法の罰を受けるでしょう、いかがですか、法務省刑事局長、そういうものじゃないですか。それをこの基準の中に混淆されていらっしゃるということは歴然たるものですよ。だから一例を私は申し上げておるにほかならない。それから、たとえば海軍年鑑なんというようなものは、これは歴然としてアメリカは公開しておるのに、日本はなぜ秘密ですか。アメリカ追随と言うとあなた方はいやなことばでしょうけれども、私も使いたくないことばですけれども、使わざるを得ない。こんなことはもっとしぼる——しぼると言うとおかしいが、局限することができるものなんですね。  そして各省庁は現にやっておるのをなぜ、あれほど私が先ほどから申し上げておるのに実際の文書まで読み上げて申し上げておるのに、何で官房長官がんばらっしゃるのか、何で同じことを答弁されるのですか、何で聞こえないのですか、何であなたは耳に入らないのですか、何であなたは私の言っておることがわからないのですか。よくそういう観点から、くどいようですけれども、再検討されたものをお示しください。そしてあなたが前に約束されたように、この委員会で十分に審議をしていただいてということであります。私の言うとおりのことが通らないかもしれませんが、けれどもこれほど現実に存在している、秘密じゃありませんと言っている、封印でよろしゅうございますと言っている、そういうものまであなた方の基準の中に入れてこれがこれなんだとおっしゃることは、これはどうもあなたもいろいろなお仕事をなさっていらっしゃった経験からいって、こんなことばがわからない、こんな精神がわからない方では私はないと思うのですよ。ぜひそういう意味で提示をしていただきたい。  それからもう一つだけ、これはあなたもお時間がないから申し上げておきますよ。付随的な問題のように聞こえますけれども、あなたはこの前イギリスの何とかという人の学説をお取り上げになりました。かつてイギリスにプリヒューム事件というのがございましたね、陸軍大臣ですか、日本でいうと、陸相が事件を起こした。これは虚偽の証言をしたということのほうが問題になって秘密を漏らしたということは二の次だと、そうでしょう。そして最後は内閣までおやめになったわけですね、政権までかわったわけですね。これくらいあなたの御利用なさる学説の持ち主の国、所属の国イギリスでは、国会というものの地位が——地位が高いと言うと語弊があるかもしれませんがいわゆる立法府たるものの地位というものは高いのです。このことを——あなたの横っちょに一ぱい白いバッジをつけていらっしゃる人がいる。これはどういう人でしょう。私はよく名前も覚えたくない。これらの諸君にあなたはよく答弁させる。ものを聞く。これらの諸君が問題の矢山君の言うところの指定権者たるべき地位にあると思われる。これらの諸君に訓告をしながら私に答弁をしてください。  私の言っている意味は、うそを言ったのは何か、この問題に関連してうそを言ったのはだれか、これが第一。第二は、つまり虚偽の発言をしたのはだれか、はっきり答えてください。あなたは、きっとあるのに、申し上げることはできませんと言えばよかったのにありませんと言ったのは不当でございました。この前お答えになりました。こんなことばじゃだめですからね。だれがうそを言ったか、そこでこういう問題が起こったかということをはっきりしたいんです。こんなものは簡単なことです。私は政権の問題についてまでここでとやかく言いません、本会議かあるいは予算委員会へ行ってやりますから。だれがうそを言ったか。そのうそは何だったか。秘密でしょうと思いますけれども、秘密だと答えてもらえばいい。このことを第二に質問をあらためてして、たくさんの問題についてあらためてお出し願えるというお答えですから、私はそれを期待するし、信頼をするし、委員会の皆さんも、必ずせっかくのあなたの、提出もしよう、説明もしよう、できるだけりっぱなものをつくろう、そして了解の得られるものにしたいというお答えですから、そういうものをつくり上げる委員会の機会をつくっていただきたい。これは理事の皆さんにも要望しながら、委員長にも願いながら、二つの答弁をいただいて、質問は保留したいと思います。
  92. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 第一の点につきましては、いわゆる日本国有鉄道が入札価格等について封印扱いにしておるということは、率直に言って先ほど申しましたように、きょう初めてわかりましたので、ひとつこれも検討の中に入れさしていただきたいと思います。  それからイギリスの国会というものの峻厳さということ。幸い私が申しましたハロルド・ニコルソンさんもイギリスの労働党と下院議員でございますので、たいへんいずれもけっこうな立場であろうと思います。  それからうそを言ったやつはだれだと、こういうことであります。私が今日まで答弁をいたしておりますのは、予算委員会の場あるいは本会議の場等において、これについての問題は一応各党間の間でそれなりの公式見解は出ておるというふうに理解をいたしておりますが、私自身が重ねて申しておりますことは、あの場合、総理自身の答弁にもございますように、言えませんというのが正確な答弁であったであろうと。しかし、言えないということは、今日のわが国の国会議論の中では、言えないということは、すなわち何らかの悪いことがあるのではないかという再質問を誘発すると。したがって、それが定着をしていないだけに、言えませんと言わないでありませんと言ったと、その責任に対しては十分痛感をいたしておりますという答弁をもって野々山さんの御質問のお答えにさしていただきたいと、このように思います。
  93. 野々山一三

    野々山一三君 だれが、あるのにないと言ったか。それを私はうそと言う。虚偽。それはいかがですか。だれですか、ないと言ったのは。うそを言ったんじゃないですか。あなたの答弁は、あなたのおことばは十分に私も聞こえます。十分了解します。私の聞いていることと違うことだけは間違いない。何べんでも聞きますよ。
  94. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは野々山さん、私の答弁をもってなるほど野々山の質問に答えんとする努力をしたなあと、こういうふうに理解をしていただきたい。このように思います。なお今後とも基本的に努力をいたします。
  95. 野々山一三

    野々山一三君 努力をしたなあということばはわかりました。だけれども、うそはだれが言ったんですか。うそはだれが言ったんですか。うそはだれが言ったんですか。うそはだれが言ったんですか。うそはだれが言ったんですか。うそはだれが言ったんですか。何回でも言いますよ。
  96. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) うそはだれが言いましたかと、こういうご質問になりますと、率直なところ、これは野々山さん、私が何省何局何の太郎兵衛が申しましたということをこの機会に御答弁申し上げなくても、野々山さんの御指摘の点は十分理解できますので、御寛容を賜わりたいと思います。
  97. 野々山一三

    野々山一三君 あなたのお答えが、その記録になって出ますか。いや、あなたのお答えは、だれがだれをして、何の太郎兵衛がどうしたといったことであなたはおわかりでしょうと言われたことは字になりますよ。字になりますよ。だれがどういうことでうそを言ったかと聞いている。内閣総理大臣佐藤栄作という人が、あるのにないと言ったということじゃないですか。違いますか。予算委員会や他の委員会でどう答えたかということは問題じゃないですよ。各党間で話し合ったというんなら、それも私は問題じゃない。参議院の議員会長いらっしゃるけれども、そんなことは問題じゃない。私は国会議員として聞いているんです。  もう一回聞きます。だれがあの沖繩返還問題にからむ事実、存在している密約について、世上機密事件といわれているそれについて、あるのにかかわらず、ないと言ったか。それはうそではないか。うそはだれが言ったか。このことはあなた、よく言われる内閣の官房長官ですよ。それを聞いているんですよ。速記録に残るように言いなさい。速記録ではわかりません。
  98. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはそうした御質問に対しては言えませんと答えるべきであったと。それを文書はありませんと答えたということに対して、国会の場で陳謝をし、そしてその責任をそれぞれの立場でとられた今日、私として野々山委員のお許しをいただけるならば、この際だれとだれとだれはこうでありましたということをここで再度繰り返すことはお許しをいただきたいと、このように申し上げているわけであります。
  99. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  100. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 速記を起こして。
  101. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、あれほど何回か申し上げているのに言えないというんなら、私は次の機会に私がずばり申し上げておることについて答弁してください。それならば、せっかくあなたも時間がないようですから、この際質問を保留いたして、きょうは終わりたいと思います。
  102. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十八分散会