○
佐々木静子君 私は
日本社会党を代表いたしまして、賛成の
意見を述べるものであります。
本
決議案の
理由にありますように、清潔で民主的な
選挙によって国権の
最高機関たる
国会を構成するということは
議会制民主主義を守るという上できわめて重要な
事柄であります。
主権在民の
日本の
民主政治を生かしていくためには、清らかな
選挙、公正な
選挙こそ、何にもまして尊重されなければならないことであり、腐敗した
選挙、利権や金銭などによって動かされた不正な手段による
選挙というものが、いかに
政治を暗いものにし、
国民生活をこんとんとした腐敗の中におとしいれているかということは、いままでの内外の歴史をみてもあまりにも明らかなことであります。
しかるに、最近
わが国においては
選挙違反の
犯罪が多く、かつ多様化しておることはきわめて顕著でございまして、最近
検察当局が
公判請求を行なっているものだけをあげてみましても四十四年十二月、
衆議院選挙関係で二千五百二十七人、四十六年四月、いわゆる
統一地方選挙関係でも五千七十九人、四十六年六月、
参議院選挙関係で七百九十二人、合計実に八千三百九十八人の多数に及ぶといわれております。これに
略式命令による
罰金の
有罪判決を受けた者は三万五千人以上に及ぶといわれており、全部で最近の
違反者のみだけで四万人近い
選挙違反の
犯罪者が続出しておるわけでございます。しかも、これら多数の
公職選挙法違反の
犯罪を犯した
人たちの中には、犯行当時においてすでに
前回の
明治百年
恩赦に引き続いてこの
沖繩返還に伴う
恩赦が当然に予測されておったものであり、その予測に基づいていずれ
沖繩恩赦によって救われるというきわめて安易に法を軽視し、じゅうりんして
選挙違反を犯し、不正な
選挙に加担してきたものがかなりの数に及ぶということがその
現実の姿であります。
しかも、この五月十五日付で行なわれることがきまっているといわれる
沖繩復帰記念恩赦においても、
政府はすでにその
対象者に大幅な
選挙違反者を予定しており、
前述の
恩赦に匹敵する
大赦なみの
救済をはかっているというようなことがすでに予測されているのでございますが、このような
恩赦制度の悪用、一部の者のためのみの乱用というものがはたして許されてよいのでありましょうか。このようなことが
内閣の
権限として無制限に行なわれることは、実質においては
内閣自身が
国会が定めたところの
公職選挙法を無視することになり、あるいはこの
違反行為を助長しているということにさえつながるのであります。このことはとりもなおさず
内閣自身の手で
日本の
議会政治を腐敗させ、堕落させようとしていることをはっきりと物語っていると思います。
恩赦は沿革的には君主の
恩恵、慈悲として行なわれたことに起源を発しているものでございます。
わが国においても、従来は
天皇や皇族の慶弔、
国家的慶事に際して行なわれてきたものであり、沿革的にも
恩赦権は
主権に付属する
権限とさえいわれております。旧
憲法下においては、
主権者たる
天皇が
天皇の
権限において
恩赦が行なわれてきたのであります。新
憲法においては、
主権は
国民に存することが宣言され、国政は
国民の厳粛な信託によるものであること、その
権威は
国民に由来し、その権力は
国民の
代表者が
行使し、その福利は
国民がこれを享受することが高らかにうたわれているのであります。
恩赦権は
内閣の
権限に属することと定められたわけでありますが、その
恩赦権限の
行使も
主権者たる
国民の
権威に由来し、
国民の
総意に基づいて
行使しなければならないことは、けだし当然と申さなければなりません。(「そのとおりだ」と呼ぶ者あり)
前述のごとく、今日、
選挙違反制度によって流されている害毒はきわめて顕著であり、また根の深い悪質なものであります。美しい澄んだ海が、いまやヘドロの泥海と化してきつつあると同じく、いな、それ以上にその汚濁の根は深く、これによって流される
猛毒は
日本の
政治の
中枢神経を大きくむしばもうとしているのであります。
今回の
沖繩恩赦に
選挙違反者を除外せよ、その叫びはいまや
国民の大多数の世論であることはあまりにも明白です。ここ連日のごとく各新聞は、従来からの
選挙違反者を目当てにした
恩赦をきびしく批判し、
国民は、こうした
政治を害する
猛毒を持った
選挙違反犯罪者が
恩赦という
免罪符を得て、ぬけぬけと幅をきかして横行することに、きびしく心からなる怒りを訴えているのであります。
国民の
総意によってつくられた
公職選挙法を踏みにじった、よごれた手をした
人たちが、またまた大手を振って
選挙に加わってくるということは、
選挙をいよいよきたないものにし、このきたない
選挙によって選ばれた
人たちが
政治に加わるということは、とりもなおさず国の
最高機関たる
国会の
権威を失墜させ、
国民の
政治に寄せる信頼を阻害させること、火を見るよりも明らかなことであります。
さきの
国連加盟恩赦で
政令恩赦の
対象になった、いま
上林委員からも
お話ございました六万九千六百二十七名のうち六万九千五百二十五名、実に九九・九%以上までが
選挙違反者で占められていること、
明治百年の
個別恩赦においても七五・九%が
選挙違反者で占められている事実を注視するならば、何をかいわぬというところであります。
現今の
恩赦制度は、法の公平な
運用、刑事政策的に見ても、処罰する必要のなくなった者あるいは誤判の
救済など、
人権尊重と
社会政策的な意義から用いられねばならないということは、法務
大臣御
自身がしばしば御自分の口から述べられているところでありまして、この本来の
恩赦の
精神にのっとり、正しい
恩赦を行なうことこそ
国民すべての望むところであります。この理想に基づく、この
精神に基づく
恩赦の
運用と全く相矛盾するところの
選挙違反者をその
対象から締め出し、
日本の
議会政治、
民主政治の清潔な正しい運営を保障することこそ
行政機関に課せられた重大な
責任であると信ずるのであります。
憲法第九十九条、
国務大臣、
国会議員、公務員の
憲法尊重、
擁護義務の規定から見ても当然そうあらねばならないと信ずる次第であります。
良識の府である
参議院法務委員会において、その
権威と
国民の信望にこたえるためにも、全会一致をもって本
決議に御賛同くださることを心より切望し、賛成の討論といたします。(拍手)