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1972-05-12 第68回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十二日(金曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————    委員異動  五月十一日     辞任        補欠選任      野坂 参三君     加藤  進君  五月十二日     辞任         補欠選任      平井 太郎君     山下 春江君      吉武 恵市君     川野辺 静君      岩本 政一君     橋本 繁蔵君      重宗 雄三君     菅野 儀作君      矢山 有作君     神沢  浄君      鶴園 哲夫君     瀬谷 英行君      白木義一郎君     上林繁次郎君      松下 正寿君     中沢伊登子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 川野辺 静君                 木島 則夫君                 菅野 儀作君                 橋本 繁蔵君                 林田悠紀夫君                 平泉  渉君                 星野 重次君                 山下 春江君                 加瀬  完君                 神沢  浄君                 瀬谷 英行君                 野々山一三君                 上林繁次郎君                 中沢伊登子君                 加藤  進君    委員以外の議員        発 議 者    鈴木  強君    国務大臣       法 務 大 臣   前尾繁三郎君    政府委員       法務省保護局長   笛吹 亨三君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求め  る決議案鈴木強君外四名発議)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十一日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。  また、本日、松下正寿君、白木義一郎君、岩本政一君、吉武恵市君及び平井太郎君が委員辞任され、その補欠として中沢伊登子君、上林繁次郎君、橋本繁蔵君、川野辺静君及び山下春江君が選任されました。
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 昨日の鈴木強君の趣旨説明中、やや不適当な点がありましたならば、委員長において速記録を調査の上措置したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいいたします。     —————————————
  5. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案を議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 恩赦について一点だけお尋ねをしてみたいと思います。  恩赦が戦後七回にわたって行なわれたわけですけれども、その一回一回について、昭和二十年十月十七日に第一回が行なわれたわけですが、このときの総数、そしてそのうち選挙違反者数がどのくらいあったのか。これをその恩赦の行なわれた年度別にひとつその数について御説明願いたい。
  7. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 戦後の恩赦を順次申し上げます。  昭和二十年十月十七日、第二次大戦終局記念恩赦がございます。恩赦令減刑令復権令政令では三つ出ているわけでございます。該当者は全体を通じまして、四十二万三千七百九十六人、そのうち選挙違反関係は、これは大赦令該当だと思いますが、約七万五百名。  次に、昭和二十一年十一月三日、日本国憲法公布記念恩赦が行なわれました。このときも大赦令減刑令復権令でございます。該当者は全体で十六万八千二百五十四名、そのうち選挙違反関係、これも大赦令ですが、四千三百名、約四千三百名です。  それから次に昭和二十二年十一月三日、第二次大戦終局恩赦及び日本国憲法公布恩赦減刑令の修正という形で減刑令が出ておりますが、これの該当者は、減刑令だけでございますので四千七百五十名。これには選挙違反関係はございません。  それから昭和二十七年四月二十八日、平和条約発効記念恩赦が行なわれまして、大赦令減刑令復権令政令として出されました。該当者総数が百万四千四百九十二名、そのうち選挙違反関係が約三万九百名。  それから、昭和三十一年十三月十九日国際連合加盟記念恩赦が行なわれまして、そのときは政令としては大赦令が出ざれたわけでございますが、該当者は六万九千六百二十七名、そのうち選挙違反関係が約六万九千五百名。  次に、昭和三十四年四月十日、皇太子殿下結婚記念恩赦が行なわれまして、このときは復権令だけが政令で出されております。該当者が四万五千七百九十七名、そのうち選挙違反関係が約一万二千二百名。  次に、昭和四十三年十一月一日、明治百年記念恩赦が行なわれまして、政令としては復権令が出されました。この該当者は非常に多数にのぼりまして、ちょっと数字は厳格なところつかめておりません。一千万以上の該当者がございますが、証明書などを発行いたしました者につきまして数を申し上げますと、十四万八千七百三十二名、このうち選挙違反関係が約六万七千名。  以上でございます。
  8. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますとね、内容にちょっと触れてみたいと思うのですけれども、昭和二十年の恩赦でいきますと、総数が四十二万三千あるわけですね。そのうち選挙違反者が七万五百だと、そうして二十一年の恩赦には総数が十六万八千、選挙違反関係が約四千三百。で、ずっと下がりまして、この国連加盟、三十一年の十二月に行なわれた恩赦、これは六万九千六百二十七名、そのうち選挙違反者関係が六万九千五百二十五と、こういうふうに見てみますと、内容に非常に隔たりがあるわけです。これはどういう根拠でこのような内容隔たりがあるのか、その点ひとつ明らかにしてください。
  9. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 昭和二十年の終戦記念恩赦における大赦令該当でございますが、御承知のように、大赦令は罪を特定いたしまして赦免するわけでございますが、これは非常にたくさんございまして、これを全部読み上げると非常にたいへんなことになると思うのですが、刑法の中でも不敬罪。それから内乱関係外患関係外国元首に対する暴行、脅迫、侮辱関係。それから外国国章損壊等。私戦の予備陰謀中立命令違背安寧秩序に関する罪。刑法関係ではこういったものが入っております。  それからあと陸軍刑法関係海軍刑法関係、これは全部じゃございませんが、陸軍刑法海軍刑法の中から大部分が入っております。  それから治安警察法違反新聞紙法違反出版法違反選挙罰則違反。それから戦時刑事特別法関係。それから戦時経済統制関係法令、これがまたたくさんございます。そういった統制関係などが入っております。  それから、減刑令はこれは除外するものだけが規定されて、その他のものは減刑該当するという形式をとっておりますが、除外された罪名は強盗に対する罪、それから外患に対する罪、建造物放火通貨偽造強姦致死傷尊属殺人尊属傷害致死尊属遺棄あるいは尊属逮捕監禁、それから強盗関係。これは単純強盗を含んで強盗関係強盗殺人強盗致傷強盗強姦致死、そういった刑法における凶悪な犯罪なども除外してございますが、そのほかに陸軍刑法海軍刑法の中でも若干のものを除外いたしております。  それから、復権令におきましては、対象罰金以上、したがいまして罰金、禁錮、懲役、全部でございますが、罰金以上を全部対象といたしております。  それから、二十一年の憲法公布記念恩赦の場合も、これも非常に大赦令も相当大幅に出たわけでございますが、ただいま申し上げたのとやや似た非常に広範囲なもので、これを重複しますとまた時間もかかりますから、その程度でひとつごしんぼう願います。  それから、減刑令につきましても、大体同じような凶悪なものを除外するという形をとっておりますし、復権令対象がやはり罰金以上全部ということになっております。  それから、平和条約の場合も、そのように相当広い範囲のものを拾い上げておりますが、この場合はさらに大赦令におきまして、占領政策に、占領中のいろんな関係法令に違反したものを大赦令救済するという形で大赦令が出ております。  そのほかに、減刑令につきましても、先ほど申しましたのと大体似ております。  復権令は、これは先ほどと同じように罰金以上全部ということになっております。福さらに、国際連合加盟昭和三十一年の十二月の場合には、これは大赦令が出ておるわけでございますが、大赦令内容は、対象になりますものは、公職選挙法に違反する罪、それから旧刑法の二百三十三条から二百三十六条、それから政治資金規正法に違反する罪、地方自治法の罪、それから最高裁判所裁判官国民審査法に違反する罪、こういったものが大赦令対象にしてございます。国連加盟のときの政令はその程度でございます。  このように、いろいろそのときの恩赦も、どういう意味において恩赦が行なわれるかということによっていろいろ取り上げ方が変わったものだと考えております。
  10. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますとね、昭和三十一年の国連加盟の場合の恩赦ですが、これは大赦令ということで六万九千六百二十七名、それに対して選挙違反関係が六万九千五百二十五名、これはほとんどが選挙違反関係だということが言えるのですが、いまお話しになったことからいいますと、これはあくまでも選挙違反者関係だけを対象にしたのかという、こういう感がするわけでありますが、この点どうですか。
  11. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 先ほど読み上げましたように、このときの大赦令公職選挙法関係と、あとはそれに関連するといいますか、それに類似の法令違反関係だけでございますから、それだけを取り上げたことになるわけでございます。
  12. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、恩赦目的は、どういう目的のもとにこれを行なおうとするのですか、大臣
  13. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 御承知のように、恩赦政令恩赦個別恩赦があります。政令恩赦というのは、国家慶事あるいはまあ不幸の場合もありますが、国家の大きな行事に対して、お互いに喜びを分かち、あるいは悲しみを分かつとともに、それに応じてある恩恵が与えられ、その恩恵に浴して、今後再出発といいますか、新しい考え方をもって、そして二度と再犯を起こさない、こういうような意味合いをもって恩赦が行なわれるわけであります。まあ以前はそれが主体であったと思います。しかし、最近になりまして、まあいわゆる個別恩赦、要するに刑罰は一般予防として非常に肝心なことではありますが、その人その人ができるだけ個別的に適当な処遇を得られ、できるだけ早く社会に復帰させるというので、個別的に適切な処置をとっていくということでありますが、ただ、非常に裁判の効力を左右するものでありまするから、これはいわゆる恩赦審議会でありますか、それによって、最も適切にできるだけ社会に早く復帰させる。またそれが適当であるかどうかという審査をやっていくものでありまして、その両者が、現在の恩赦という制度でありますが、まあただいまいろいろお話のありました選挙違反というものについても、選挙違反というものが社会的にどういう意味を持っておったかということもだんだん変わりつつあると思います。以前はまあ全くの純粋な国事犯であるというような考え方であったかと思いますが、現在においては、純粋な国事犯であるという考え方を持つ方はそう多くはないと思います。と申しまして、いわゆる自然犯と申しますか、凶悪な犯罪とも違うというのが、現実における、現在の選挙違反に対する考え方ではないか。そういうような選挙違反そのものに対する考え方も、時代の推移とともに、変わってきつつあることは私認めるのであります。この政令恩赦あるいは個別恩赦、そういうものを含めてまた、現在の段階社会情勢、そういうものをも十分考え、そして、一番適切な恩赦を行なうということが、この際にあたって考えるべきことではなかろうか、かように思っておる次第であります。
  14. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私がいまお尋ねした点は、いわゆる三十一年の国連加盟のときの恩赦、これは六万九千六百二十七、それからこれに対して選挙違反関係が六万九千五百二十五だという、これはあくまでもわれわれが考えた場合に、またわれわれでなくても、多くの人が考えた場合に、これは選挙違反者だけを対象にしたものではないか、こう感じられるわけです。そこで、いま恩赦目的等大臣からお話があったわけでありますが、そういう目的からいうならば、他の年度を見た場合には、もっと広く、恩赦適用範囲が広げられておるわけです。このときはなぜこの選挙違反者関係がほとんどであったかという、その理由根拠についてお尋ねをしているわけです。
  15. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 平和条約発効ということを、純粋な政治的な、まあ復帰してきたときというので、政治的な問題について再出発させようというような意図であったかと思います。私、当時、これに関与いたしておりませんからよくはわかりませんが、そういう考え方のもとに行なわれたものだと思います。
  16. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣がその当時関与していなかったからよくわからぬと、こういうことではもうこれ以上質問のあれはないわけですけれども、そうなりますと、恩赦目的ということよりも、何か政治的な配慮、それに基づいて行なわれたというふうにしか感じられない、その点をどういうふうに考えられるかお答え願いたいと思う。
  17. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 国連加盟恩赦の行き方がよかったか悪かったかという問題について、現在われわれが批判するあれはありませんが、ただ私が現在にどういうふうに活用していくかということになりますと、多少それは考えが違うわけでありまして、多少どころではない、非常に違うかもわかりませんが、いずれにいたしましても、現段階において恩赦という制度をいかにして活用していくか、その目的先ほど来申しておりますように、またただいまお話しのように、政治的と申しましても刑事政策的な政治的配慮もありますし、いろいろな問題を考慮に入れて、そしてできるだけこれを純粋なものにし、また先ほど来申しておりますように、今後恩赦によって再犯をするという気持ちを持たずに更生していくということに活用していくということは、できるだけそういうことでありたいという考え方を持っておるわけであります。
  18. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 最後に、今月の十五日に沖繩が復帰するわけですが、そのための恩赦、これが行なわれるであろう、こういう立場から私ども決議案等を提出しているわけですけれども、いままでのお話の中からいろいろ感ずるものがございますけれども、この沖繩恩赦について、その内容といいますか、いま大臣からお話あったように、前回はタッチしていなかったからわからぬかもしれないけれども、今度は現大臣としてこの内容についてどういうような内容を含めた恩赦にするのか、その点ひとつ明らかにしていただきたい。もう十五日に沖繩は返ってくるわけですから。
  19. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦という制度の性質を考えますと、これが事前にいろいろとわかってしまったのでは恩赦という意味からはずれるものだと私は思っております。したがいまして、この五月十五日、もう数日後に行なわれるわけでありますが、そのときには内閣責任を持ってやるわけであり、またそれに対していろいろと御批判を願うことはこれはやむを得ないことでありますが、いずれにしましてもその事前にいろいろなことを申し上げるということは、従来からいろいろ御質問がありましたが、具体的内容については全然これは申し上げておりませんので、その点はいまも勘弁していただきたいと思います。     —————————————
  20. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) この際、委員異動について報告いたします。  本日、鶴園哲夫君、矢山有作君及び重宗雄三君が委員辞任され、その補欠として瀬谷英行君、神沢浄君及び菅野儀作君が選任されました。     —————————————
  21. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 他に、御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  23. 原文兵衛

    原文兵衛君 私は、自由民主党を代表して、この決議案に反対の意を表明します。  恩赦は、御承知のとおり、憲法第七十三条において、一般行政事務の外に内閣が行なうべき事務として、外交、予算編成と並んで規定されているものでありまして、あくまで内閣責任において行なわれるべきものであります。  この決議案を見ますと、沖繩復帰に伴う恩赦対象から公職選挙法違反の罪を除外するよう政府に勧告せんとしておりますが、立法府が行政府たる内閣責任に属する事柄について、このような具体的な内容を持った決議を行なって行政権行使を制約するようなことをするのは、三権分立のたてまえに照らして差し控えるべきものと考えます。  以上の理由によって、私はこの決議案に、反対いたします。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は日本社会党を代表いたしまして、賛成の意見を述べるものであります。  本決議案理由にありますように、清潔で民主的な選挙によって国権の最高機関たる国会を構成するということは議会制民主主義を守るという上できわめて重要な事柄であります。主権在民日本民主政治を生かしていくためには、清らかな選挙、公正な選挙こそ、何にもまして尊重されなければならないことであり、腐敗した選挙、利権や金銭などによって動かされた不正な手段による選挙というものが、いかに政治を暗いものにし、国民生活をこんとんとした腐敗の中におとしいれているかということは、いままでの内外の歴史をみてもあまりにも明らかなことであります。  しかるに、最近わが国においては選挙違反犯罪が多く、かつ多様化しておることはきわめて顕著でございまして、最近検察当局公判請求を行なっているものだけをあげてみましても四十四年十二月、衆議院選挙関係で二千五百二十七人、四十六年四月、いわゆる統一地方選挙関係でも五千七十九人、四十六年六月、参議院選挙関係で七百九十二人、合計実に八千三百九十八人の多数に及ぶといわれております。これに略式命令による罰金有罪判決を受けた者は三万五千人以上に及ぶといわれており、全部で最近の違反者のみだけで四万人近い選挙違反犯罪者が続出しておるわけでございます。しかも、これら多数の公職選挙法違反犯罪を犯した人たちの中には、犯行当時においてすでに前回明治百年恩赦に引き続いてこの沖繩返還に伴う恩赦が当然に予測されておったものであり、その予測に基づいていずれ沖繩恩赦によって救われるというきわめて安易に法を軽視し、じゅうりんして選挙違反を犯し、不正な選挙に加担してきたものがかなりの数に及ぶということがその現実の姿であります。  しかも、この五月十五日付で行なわれることがきまっているといわれる沖繩復帰記念恩赦においても、政府はすでにその対象者に大幅な選挙違反者を予定しており、前述恩赦に匹敵する大赦なみ救済をはかっているというようなことがすでに予測されているのでございますが、このような恩赦制度の悪用、一部の者のためのみの乱用というものがはたして許されてよいのでありましょうか。このようなことが内閣権限として無制限に行なわれることは、実質においては内閣自身国会が定めたところの公職選挙法を無視することになり、あるいはこの違反行為を助長しているということにさえつながるのであります。このことはとりもなおさず内閣自身の手で日本議会政治を腐敗させ、堕落させようとしていることをはっきりと物語っていると思います。  恩赦は沿革的には君主の恩恵、慈悲として行なわれたことに起源を発しているものでございます。わが国においても、従来は天皇や皇族の慶弔、国家的慶事に際して行なわれてきたものであり、沿革的にも恩赦権主権に付属する権限とさえいわれております。旧憲法下においては、主権者たる天皇天皇権限において恩赦が行なわれてきたのであります。新憲法においては、主権国民に存することが宣言され、国政は国民の厳粛な信託によるものであること、その権威国民に由来し、その権力は国民代表者行使し、その福利は国民がこれを享受することが高らかにうたわれているのであります。恩赦権内閣権限に属することと定められたわけでありますが、その恩赦権限行使主権者たる国民権威に由来し、国民総意に基づいて行使しなければならないことは、けだし当然と申さなければなりません。(「そのとおりだ」と呼ぶ者あり)  前述のごとく、今日、選挙違反制度によって流されている害毒はきわめて顕著であり、また根の深い悪質なものであります。美しい澄んだ海が、いまやヘドロの泥海と化してきつつあると同じく、いな、それ以上にその汚濁の根は深く、これによって流される猛毒日本政治中枢神経を大きくむしばもうとしているのであります。  今回の沖繩恩赦選挙違反者を除外せよ、その叫びはいまや国民の大多数の世論であることはあまりにも明白です。ここ連日のごとく各新聞は、従来からの選挙違反者を目当てにした恩赦をきびしく批判し、国民は、こうした政治を害する猛毒を持った選挙違反犯罪者恩赦という免罪符を得て、ぬけぬけと幅をきかして横行することに、きびしく心からなる怒りを訴えているのであります。国民総意によってつくられた公職選挙法を踏みにじった、よごれた手をした人たちが、またまた大手を振って選挙に加わってくるということは、選挙をいよいよきたないものにし、このきたない選挙によって選ばれた人たち政治に加わるということは、とりもなおさず国の最高機関たる国会権威を失墜させ、国民政治に寄せる信頼を阻害させること、火を見るよりも明らかなことであります。  さきの国連加盟恩赦政令恩赦対象になった、いま上林委員からもお話ございました六万九千六百二十七名のうち六万九千五百二十五名、実に九九・九%以上までが選挙違反者で占められていること、明治百年の個別恩赦においても七五・九%が選挙違反者で占められている事実を注視するならば、何をかいわぬというところであります。  現今の恩赦制度は、法の公平な運用、刑事政策的に見ても、処罰する必要のなくなった者あるいは誤判の救済など、人権尊重社会政策的な意義から用いられねばならないということは、法務大臣自身がしばしば御自分の口から述べられているところでありまして、この本来の恩赦精神にのっとり、正しい恩赦を行なうことこそ国民すべての望むところであります。この理想に基づく、この精神に基づく恩赦運用と全く相矛盾するところの選挙違反者をその対象から締め出し、日本議会政治民主政治の清潔な正しい運営を保障することこそ行政機関に課せられた重大な責任であると信ずるのであります。憲法第九十九条、国務大臣国会議員、公務員の憲法尊重擁護義務の規定から見ても当然そうあらねばならないと信ずる次第であります。  良識の府である参議院法務委員会において、その権威国民の信望にこたえるためにも、全会一致をもって本決議に御賛同くださることを心より切望し、賛成の討論といたします。(拍手)
  25. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、公明党を代表して、本決議案に対し、賛成の討論を行ないます。  政府は、今回の沖繩返還にあたり、恩赦を実施する旨を明らかにしました。しかし、その内容については厳として口を閉ざして語らず、事前に発表することがその秘密性を害するという考え方は納得できない。過去における恩赦において大量の選挙違反者が赦免されているという事実に対し、法務大臣国会においてその感想さえ述べることを拒否している。これは明らかに国民を盲目にし、侮辱する以外の何ものでもありません。みずから公明選挙を標榜し、選挙違反をきびしく取り締まる方針を打ち立てている政府・自民党が、一方において、もしその権限を乱用して選挙違反者を大量に赦免するような恩赦を実施することがあれば、まさに自己矛盾であります。  国民の基本的人権を真に擁護するためには、民主政治の基盤ともいうべき選挙について、その公正を害するがごとき選挙違反者の赦免は許されるべきものではありません。もし、今回行なわれようとしている沖繩恩赦において、選挙違反者に対する恩赦が適用されるようなことがあれば、政府に対する国民の不信は言うに及ばず、国政全般に対する不信を呼ぶ結果となり、加えて、恩赦を当て込んでの悪質な選挙違反を助長させ、腐敗政治に拍車をかける結果になることは明らかであります。  以上のような理由により、沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める本決議案に賛成するものであります。(拍手)
  26. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私は、民社党を代表いたしまして、沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案に対し、賛成の意向を表明いたします。  政府は、来たる十五日の沖繩本土復帰を国家的な慶事とし、政令恩赦を行なうことをすでに発表しております。私どもは沖繩百万の同胞が二十七年間に及ぶ異民族支配から脱却し祖国に帰ることを慶祝して恩赦が行なわれることについて、それ自体に異議を差しはさむものではありません。  問題は、この恩赦、すなわち国家的慶事にかこつけ、選挙違反者救済を最大のねらいとした政府・自民党のお手盛り祝儀になるおそれがあるということであります。したがって、私どもはこのような恩赦のやり方は断じて容認できないのであります。すでに国民世論はこのことに強く反対し、近々正式決定されるでありましょう恩赦内容にきびしい監視の目を光らせております。もしこれを無視するならば、いよいよ国民政治不信を助長するでありましょう。  政府・自民党の中には、選挙違反は破廉恥犯ではない、一種の行政犯であるから寛大に処置すべきだとされておりますが、見当違いもはなはだしいと言わなければなりません。選挙は、国民が国政や地方政治に参加する最も重要な権利の行使であり、これによって民主政治の土台が築かれるのであります。したがいまして、選挙のルールに違反した者はきびしく罰せられるのは当然であり、恩赦が、かりそめにも民主政治の土台を切りくずし、選挙違反を助長するような作用をしてはならない、私はこのような観点から、本決議案が承認されるべきであると強く主張いたしまして、賛成の討論といたします。(拍手)
  27. 加藤進

    加藤進君 私ば、日本共産党を代表して、本決議案に賛成の討論を行なうものであります。  そもそも沖繩の返還を機に選挙違反者恩赦対象にするなどということは、国民の納得しがたいことであります。しかも、このようなことが公然と行なわれるということは、国の基本である民主主義、とりわけ議会制民主主義を侵す重大な内容を持つものであると言わなくてはならぬと思います。  そもそも恩赦法そのものが制定された昭和二十二年の時期において、制定当時の議事録その他が今日存在しないというようなことを口実にしながら、この恩赦法の対象として、選挙違反を行ない、しかも買収、贈賄等々を通じて汚職、腐敗の泥沼に国の政治をけがしてきたこのような選挙違反者に対して、これを恩赦対象にするなどということは明確に規定されておらないはずであります。ところが、このことを口実にし、理由にしながら、時の政府は権力を利用しながら、彼らの思うままにみずからの政治における野心を満たすために、彼らに必要なこのような恩赦を、買収、贈賄等々のいわば汚職者に対してこれを行なうということをあえて行なってまいりました。  私たちは、沖繩恩赦を通じて、今後このようなことが二度と行ない得ないように厳格な措置をとることを今後要求しながら、本決議案に対して全面的に賛成し、この趣旨に基づいて政界の浄化、議会制民主主義を真に守り抜く立場をはっきりさせていただくように、私ども決意を表明するものであります。(拍手)
  28. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 他に御発言、御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  30. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 少数と認めます。よって、本案は賛成少数により否決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時十二分 散会