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1972-05-11 第68回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      川上 為治君     重宗 雄三君      矢野  登君     林田悠紀夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 林田悠紀夫君                 平泉  渉君                 星野 重次君                 吉武 恵市君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 野々山一三君                 矢山 有作君                 松下 正寿君        発  議  者  佐々木静子君    委員以外の議員        発  議  者  鈴木  強君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        国 務 大 臣  竹下  登君    政府委員        警察庁刑事局長  高松 敬治君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省保護局長  笛吹 亨三君        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        自治省行政局選        挙部長      山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        内閣官房首席内        閣参事官     翁 久次郎君        防衛庁防衛局調        査課長      半田  博君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求め  る決議案鈴木強君外四名発議) ○恩赦法の一部を改正する法律案鈴木強君外五  名発議) ○犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (外務省の機密漏洩問題に関する件)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨十日、川上為治君及び矢野登君が委員を辞任され、その補欠として重宗雄三君及び林田悠紀夫君が選任されました。     —————————————
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案及び恩赦法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、発議者から趣旨説明を聴取いたします。鈴木君。(拍手
  4. 鈴木強

    委員以外の議員鈴木強君) 提案者を代表して、ただいま議題となりました沖繩恩赦から選挙違反者を除外することを求める決議案件につきまして、提案趣旨を御説明申し上げます。  清潔で民主的な選挙によって国権の最高機関である国会を構成することは、議会制民主主義擁護基本原則でございますことはいまさらあらためて申し上げるまでもございません。しかるに、今回の沖繩返還にあたり、政府は、昨日官房長官記者会見でも言明しておりますように、大規模の恩赦を行なう意向を明らかにし、その中に公職選挙法違反者を含めようとしているのでありますが、いやしくも恩赦によって選挙違反者が免罪されることは、腐敗選挙を助長することになりまして、絶対に許せないことだと思います。  過去の経緯にかんがみましても、恩赦選挙違反者を含むことにつきましては世論の強い反対がありましたにもかかわりませず、恩赦対象に大量の選挙違反者を含めてきたのでございます。このことはしかも国民政治不信を増幅させ、国会の権威にどろを塗り、議会制民主主義を空洞化させてきたことは明らかな事実でございます。  今回も沖繩返還にあたり、重ねて選挙違反者を免罪するがごときことあらば、沖繩返還の真の意義を曲解し、沖繩の心を踏みにじるものと言わなければなりません。  よって、沖繩施政権返還に伴う恩赦対象から公職選挙法違反の罪を除外するよう、政府に強く勧告しようとするのがこの決議案趣旨でございます。  実は、この決議案の取り扱いにつきましては、私ども提案者といたしましては、委員会審査を省略して、直ちに本会議で議決されるよう求めたのでございますが、昨日の議院運営委員会で多数でこのことが否決されましたことは、きわめて遺憾、残念しごくでございます。よって、このような経緯もございますので、本決議案が本日、本委員会に付託されましたのでございますので、何とぞ以上の趣旨を御了承くださいまして、すみやかに決議案に御賛成、御可決くださいますようお願い申し上げる次第でございます。  どうもありがとうございました。(拍手
  5. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 佐々木君。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 ただいま議題となりました恩赦法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  恩赦は、沿革的には、君主の恩恵仁慈として行なわれことに淵源すると言われ、わが国におきましても従来は皇室の慶弔や国家的慶事に際して行なわれるのを常例といたしておりました。しかしながら恩赦は、むしろ、社会事情の変動や本人行状改善などが見られますため、もはや刑罰がその意義を失なったと認められますような場合に、その不合理の救済をはかるという方向重点を置いて運用されるべきものと信じます。  ところで個別恩赦につきましては、本人行状改善などが見られます場合にもっぱら刑事政策的な見地から行なわれるものとされておりまして、すでにその審査機関として中央厚生保護審査会も設置されており、内閣は同審査会の申し出を待って個別恩赦決定をすることとされております。  一方、政令恩赦に関しましては、こうした機関が設けられておりませず、もっぱら内閣決定にゆだねられているのが現状でございます。もとより、恩赦は憲法上内閣責任において行なわれるべきものであります。しかしながら、他面、今後におきまする政令恩赦は、さきにも述べましたとおり、刑罰がその意義を喪失したと認められますような場合に、公平の精神にのっとり、その不合理を救済するという方向にその運用の重点がおかれていくべきものと考えます。この見地よりいたしますと、内閣政令恩赦決定するに際しまして、内閣部外意見をしんしゃくする機会の存することが望ましいといわなければならないと思います。したがって、専門的意見と公正な民意を反映させるため、新たに、内閣政令恩赦に関しての諮問機関を設ける必要があると存念いたします次第でございます。  右の趣旨に基づきまして、この法律案は、内閣諮問機関として恩赦審議会を設け、内閣大赦または政令による減刑もしくは復権の決定をすることの可否及びこれらの恩赦内容に関する事項をあらかじめ恩赦審議会に諮問しなければならないことと定めました。恩赦審議会の構成につきましては、国民全体を代表する地位にある者、すなわち衆議院議員のうちから衆議院が指名した者八人、参議院議員のうちから参議院が指名した者五人、恩赦に関係のある行政機関の職員五人以内、裁判官のうちから最高裁判所が指名した者四人、国民の人権を擁護する地位にある者の代表として弁護士のうちから日本弁護士連合会が指名した者四人、及び良識を代表する者として学識経験のある者四人以内の委員をもって組織することと定めました。  以上がこの法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 以上で説明は終了いたしました。  ただいまの二法案に、前回質疑を行ないました犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案議題に加え、三案を便宜一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  8. 加瀬完

    加瀬完君 ただいま両提案者から御説明のございましたそれぞれの内容は、私どもからすれば至って必要なことであり、また適切なことであると思うわけでございますが、法務大臣はいまの御説明を承りまして、どういう御所見をお持ちでございましょうか。
  9. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 恩赦選挙違反を加えるなという問題につきましては、長い間いろいろ皆さんの御意見を伺っております。それにつきましては、もうすでにわれわれも最終決定の段階にありますが、まだ結論的なことに至っておりません。ただいまこの席で申し上げることは差し控えたいと思います。  それから次の恩赦についての審議会でありますが、御承知のように、恩赦制度本質から考えますと、まず第一点には、何と申しましても、政府責任においてやらなければならぬということであります。ただいまの提出されました案は、審議会諮問機関にすぎないということでありますが、しかし、やはり何らかの拘束をされ、またそれに従えば政府責任を免れるというようなことで、むしろどうも政府責任をのがれることに使われるというようなおそれもあります。それからまたもう一つの問題は、御承知のように、これは大衆討議でやるべき問題ではありません。まあ、大赦その他につきましては、もう全く突如としてそういう問題があらわれてくるということでありませんと、一時無法状態におちいる、そういうような混乱を招くわけでありまして、そういう意味からいたしますと、こういう審議会にかけて、そしていろいろ討論されるということにつきましては、なかなか秘密が保てないというふうにも考えられますので、私としましては、両法案、せっかくの御提案でありますが、賛成いたしかねるというふうに考えております。
  10. 加瀬完

    加瀬完君 恩赦権政府にあることを私ども否定をいたしません。政府責任で行なうことも当然であります。したがいまして、政府責任で行なうということは、その政府のおやりになることが国民の要望に一〇〇%かなうもの、合致するもの、こういう前提が当然なければならないはずであります。そうであるならば、政府それぞれの機関にも委員会なり審議会なりあるいはこういったような諮問機関というものは相当ある。決定政府にありましても、それぞれの国民の声というものを、諮問委員会を通して承るということは、政府責任で行なわなければならないだけに、より一そう必要になってくるわけです。こういう考え方が私は成り立つと思うのです。そこで問題は、恩赦性質というものは一体どういうものだ、その考え方が私は今回の恩赦のいろいろの取りざたを承りましても、政府において確認をされておらないのではないかと思われてなりません。そこで伺いますが、恩赦における先例は第一回の恩赦勅令二十四号ですか、この勅令二十四号には選挙違反が含まれておりましたか。政府委員でもいいです。含まれていたかいないかだけの答弁は。
  11. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) ちょっと御質問勅令二十四号……。
  12. 加瀬完

    加瀬完君 勅令二十四号、大正元年の……。
  13. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 大正元年の何の場合でございましょうか。
  14. 加瀬完

    加瀬完君 私は、政府委員が不準備ということをこの前も指摘したのですけれども恩赦等が行なわれるとするならば、その担当官恩赦令というのが、恩赦大赦令なり何なりに基づいていろいろ出たわけでありますから、その先例というものは十分調査があってしかるべきだと思う。この大赦令最初に施行されたのは大正元年勅令二十四号によって、その中では選挙違反は含まれておりませんね。
  15. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) どうもあまり古いところを勉強しておりませんでして、申しわけございませんが、記録は、当初のものはございませんです。ただ、ただいまおっしゃいました勅令二十四号というのは、大正元年の九月二十六日に明治天皇の御大喪に際して出された大赦令でございます。
  16. 加瀬完

    加瀬完君 その場合にも、その大赦令には選挙違反は入っておらないでしょう。
  17. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) それは私どものところにいま記録がございませんので、何が入っておったか、ちょっとあまり古いところのことを、記録もございませんので何とも申し上げかねます。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 少なくも恩赦を適用する場合、一体どういう犯罪内容を入れるべきか。特に選挙違反を入れるということについて、いろいろ意見もあるわけですから、いままでも最小限度大赦だけを押えても、大赦先例というものにいつから選挙違反が入ったか、そのくらいのことは検討の上、当然これは選挙違反犯罪を入れる是非について政府の態度というものは明確にしておくべきじゃないですか。私はこういう古いものを持ち出して質問をいたしますのは、きのうも大臣は、本院の議運で公平に扱うんだということを御主張になった。大赦令みたいなものでも最初自然犯などについても事こまかく政令できめて、大臣がよくおっしゃる期待せざる喜びを与えようと努力したあとが顕著だ。今度は、これは佐々木委員質問にあなた方はっきり答えられなかったわけですけれども、ほとんど選挙違反というものが大部分、九九%が選挙違反だという形の恩赦の適用をしているでしょう。これが公平と言われますか。これはあとで触れますけれども、そういう点から考えても恩赦性質というものをもっときびしく私は検討をすべきではないかと思うわけであります。予期せざる喜びを与えることは、これは恩赦について選挙違反だけを形式的に区別するということは論理的には矛盾をいたしております。予期せざる喜びをいずれの犯罪者にも与えるということもけっこうなことであります。その恩赦を私ども否定をしておりません。  しかし選挙違反者恩赦というものを当て込んで選挙違反をしているというのが現実でしょう。と言いますのは、昭和四十四年には三百八十三人であった自由刑罰金刑、これは四十五年の選挙になりますと千七十九人にふえている。四十六年度は概数でありますけれども二万五百八十五人というふうにふえている。だんだん選挙違反者を累増させるような形で恩赦が、極端に言えば選挙違反を黙認をするような形で恩赦が利用され、あるいは適用されているということになりましたら、この恩赦については選挙違反者を含めるか含めないかということは十分検討に値すると思う。確かにこれは政府一つ行政権能です。しかし、政府行政権能の中で自治省には正しい明るい選挙をするために予算が盛られ、各地域には中央にも地方にもそれぞれのいわゆる公明選挙本部が置かれて運動をしているんでしょう。そういう政府の行為と選挙違反やったって恩赦があればパーになるんだからだいじょうぶだ、というような風潮を助長することと矛盾をしませんか。選挙違反だけを恩赦から切り離すということは論理的には矛盾しているかもしれません。しかし、政府がやることですから、政府行政目的ということも大いに私は恩赦における一つ問題点にならなければならないと思う。だんだん腐敗選挙に持っていくようなそういう原動力を恩赦という作用によって政府が与えておるということになれば、それでもよろしいという議論は私は成り立たないと思う。そういう点を心配いたしますので、世の中では選挙違反というものを無制限に恩赦にしていることは好ましくないという意見が出てくるわけであります。恩赦をするのも政府権能かもしれないけれども、公正な選挙をさせるということもこれは政府権能でなければならないわけです。それが矛盾をしている。この点については大臣はどうお考えですか。
  19. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まず第一点として、恩赦が行なわれるということは、国家的な慶事があるということであります。国家的な慶事がいつあるかということが予定されるということは、まずあまりないわけでありまして、そういうような意味合いからすると、恩赦が最近多かったということは認めますが、しかし必ず何年に一回かあるというものではないのであります。  それから第二点としましては、選挙違反がだんだん多くなっておるということがはたして事実であろうか。これは必ずしもそうではないように思うのであります。むしろいろいろ調べたところでは選挙違反は減ってきておるのではないかということでありまして、この二点の前提が私どもとはちょっと考え方が違っているんじゃないか、こう思うわけであります。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 これはあなたのほうの局から出された資料ですよ。昭和四十四年自由刑七百三十二人、罰金刑二千三百五十一人、計三千八十三人。昭和四十五年自由刑千十一人、罰金刑九千六十八人、計一万七十九人。昭和四十六年概数自由刑千八百四十四人、罰金刑一万八千七百四十一人、計二万五百八十五人、こういうふうに判決を受けた者がふえているじゃないですか。減っていませんよ。激しい速度でとは言わないけれども、増加していることは、あなたのほうの資料が正しければそのとおりだ。その資料が間違っているというなら別ですけれども、これは間違いですか。
  21. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) ただいま御指摘選挙違反事件の第一審における有罪言い渡し人員でございます。これは当省から提出いたしました資料でございますが、これは裁判所調査を私どものほうで取り寄せまして提出した次第でございます。これによりますと、ただいま御指摘のとおり、昭和四十四年では三千八十三名、四十五年一万七十九名という第一審の言い渡し人員でございます。ところで、これは第一審における言い渡し人員でございまして、これは相当選挙がありましたあとの時期に第一審が言い渡たされているという点でございまして、この選挙があった年と、ない年ということを前提考えていかなければならないと考えるわけでございます。  そこで、おもな選挙につきまして、概数を私ども検察処理状況説明さしていただきたいと存ずるのでございます。おもな選挙といいますと、御案内のように、衆議院議員選挙参議院議員通常選挙統一地方選挙でございます。この三つに分けまして申し上げてまいりますと、衆議院議員選挙昭和三十八年の十一月に施行されました。総選挙におきまして検察庁が受理いたしました人員は五万二千百八十一名でございます。四十二年一月の衆議院議員選挙におきます選挙違反検察庁受理人員は二万八千五百五十五名でございます。四十四年十二月の衆議院議員選挙におきましては検察庁受理人員は二万五千四百七十五名でございます。かように衆議院議員選挙選挙のつど検察庁受理人員は減っております。  それから参議院議員通常選挙についても簡単に申し上げたいと思いますが、これは四十年七月の通常選挙検察庁受理人員は二万二千七百八十三名、四十三年七月の通常選挙は一万五千八百六十七名、四十六年四月の通常選挙は一万四百三十二名ということで、これも選挙のつど減っておるわけでございます。なお、統一地方選挙におきましても、過去三回の三十八年、四十二年、四十六年というものの検察庁受理人員を見てまいりますと、いずれも前回に比べて減ってまいっております。これは先ほど御指摘の、裁判所の第一審の言い渡し人員は御指摘のとおりの数字になっておりますけれども違反として検察庁が受理いたしました件数を選挙ごとに見てみますとかような数字になっているわけでございます。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 検察庁で受理されたものは一応違反容疑者も含まれているわけなんです。その中から確実に違反者として、犯罪者として確定をされたものは、これは裁判所数字ということになるわけです。で、選挙違反でありますから、四十四年に判決があろうが四十六年に判決があろうが、その前に大きな選挙があってこういう結果になったことは明らかです。あなたのほうで出したものじゃありませんか。——待ってくださいよ。公平に見て、選挙犯罪者としての数字裁判所の出したこれが正しい。ふえているじゃないですか、減っていませんよ。これは本論ではありませんから、ただ指摘だけしておきます。あなた方は自分で資料を出して、それを言うと、今度は受理したものは違いますと、受理した資料なんか出してないじゃありませんか。しかも佐々木委員の先日の質問に対しては、四十三年までで、四十四年以降は調査はしてありませんと、こう言っておる。何言っているんですか。問題はそんなことじゃないんです。大臣は政治的な立場があるからいろいろ答えるだろう。しかしあなた方は、刑事局長なりそれぞれの局長は、純粋な立場で事実を述べればいい。裁判所の出したこれは間違いありませんね。ほかのことを聞きませんよ、間違いあるかないか、それだけ。
  23. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 裁判所の出しました資料は間違いございません。
  24. 加瀬完

    加瀬完君 大臣に伺いますがね。かりに違反者が、今度の恩赦によって選挙違反者が救済されるにいたしましても、ほとんどその恩赦の適用される九九%が選挙犯罪者だということになっては、これは悪質選挙を助長することにならないという保証がどこにありますか。そういう考慮は政府としてはどうなすっておるんですか。
  25. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 選挙違反がほとんど大部分を占めておるということは、私、率直に言いまして必ずしも賛成はいたしません。しかし、まあ選挙違反を除くかどうかということについては十分検討いたしたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、恩赦という問題なり本質から考えてまいりますと、恩赦によって助長するということは、私はそうたくさんある事例ではないんじゃないか。まあやはり恩赦によってむしろ将来を戒めるというのが恩赦制度でございます。そういう意味合い恩赦というものを考えていく、かように思っておるわけであります。
  26. 加瀬完

    加瀬完君 恩赦によって助長されぬということを一応おいても、選挙違反がふえているということは事実ですね。裁判所の統計の示すとおり、それならば、政府のもう一つの義務である公明選挙を進めるというためには、選挙違反がふえているという現実に対して、さらに選挙違反者を救済するような恩赦を無制限に行なうことが、適当か適当でないかという検討は当然されるべきじゃないですか。この点はどうでしょう。
  27. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 選挙違反を除くべきかどうかということは、もちろん検討していかなければなりません。ただ、選挙違反恩赦のために助長されるとは私は考えないのであります。その点はまた選挙違反そのものにつきましても、文書違反とか、そういうのが非常に多くなりつつあるんじゃないか。選挙のやり方、態様というものが非常に変わりつつあるんじゃないかということは、私、考えられますので、まあそういう点も十分検討していきたいと思います。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 助長されないといっても、選挙違反は激しい率でふえている。少なくともいま一般の国民世論というものは、公正な選挙をさせるためには選挙違反者というものに対して無条件な恩赦による復権なり、あるいは係争中のものをゼロにしたりするようなことはすべきではないと、こういう傾向が強いでしょう。一方、正しい選挙を進める政府責任者が、いま選挙違反は問題にするほどのことはありませんと、選挙違反なんというものはもうほとんどさがしたってありませんという状態なら別ですが、現実犯罪者がふえている。それにブレーキをかけないで、これを救済する。これは積極的にも消極的にも助長することになるでしょう。きのう大臣のお話を承っておりますと、選挙違反政治犯だと、こういう御発言があった。そうすると、今度の恩赦自然犯にはきびしいけれども選挙違反政治犯だからこれは軽く見るんだと、こういうお考えがあるんですか。
  29. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういう意見もあるというのでありまして、私が選挙違反政治犯だと、現在のことであります。ただ、沿革的に申しますと、まあ選挙違反というものをかなり国事的な犯罪考えてきたことは事実でありますし、また、だんだんそうでなくなりつつあるということも私は事実だと思います。ただ、要するに、おそらく選挙違反というものが、非常に何といいますか、がっちりした制度選挙制度がなってまいりましたら、私はむしろ刑法の中に規定して、むしろ自然犯と同様な考え方を持つべきではなかろうか。しかし現段階においてそこまで国民の意識が行っていないということは、まあ現実にはそうでなかろうかと思っております。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 また刑事局長に伺いますがね。改正刑法準備草案の中にこの選挙違反自然犯として一部認められるような考え方があったんじゃないですか。
  31. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 御指摘のとおり改正刑法準備草案には、「第五章」というところで、「公の選挙及び投票に関する罪」といたしまして、現在公職選挙法で犯罪とされております犯罪のうちで、選挙妨害関係の事犯とそれから投票買収、選挙運動の報酬の授受、それから買収資金の交付、それから投票の偽造、それから偽計投票と、これだけのものはこの刑法に規定すべきじゃないかというような考え方から、この改正刑法準備草案のほうでは一応案ができておったわけでございます。ところで、これを参考案といたしまして、当初法制審議会で刑法の全面改正を審議いたしてまいったわけでございますが、その刑事法特別部会の審議におきましてはいろいろと議論がありましたのでございますが、結果的には、今回の刑法の全面改正の草案にはこの選挙の関係の章は入れないでおこうと、入れないというふうに刑事法特別部会の決定がありまして、現在の改正刑法準備草案の案にはこれは除かれておりまして、依然として公職選挙法のほうでやっていこうという考え方に相なっております。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 しかしまあ学者の定説としては、大体その選挙違反のひどい点は、これは刑法の中に入れるべきだと、こういう意見が強くなってきておりますね。刑法の中に規定されるということになれば、これは自然犯という見方が成り立ちますわね。今度の恩赦もその自然犯的なものは、これは除外すると、自然犯的でない軽度のものは救済をするというならわかる。ところが、今度の恩赦の、新聞等で伝えられているところによれば、自然犯はほとんどこれは除外しているでしょう。自然犯的な犯罪事実のもっとひどいものでも選挙関係になれば、これは全部適用するということになっているんです。公平の精神で行なうということになりますが、つり合いは一つもとれてないじゃないですか。大臣この点はどうでしょう。
  33. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまのお話の点、われわれもこれから検討して十分考えていきたいと思っておりますが、ただいまいろいろ申し上げる段階でないと思います。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 十五日には少なくとも施行されるであろうものが、その前には閣議でもいろいろ話し合いがあるでしょう。閣議に出る今日の時点において、省内でそれらのことが検討されておらないというはずはない。どういうものを当てるか、どういうものを当てないかということを聞いているんじゃない。  あらためてそれじゃ伺いますが、自然犯選挙関係の犯罪と公平がとれておりますか。とるというお考えでおやりになることになりますか。これはお考えですから承ります。
  35. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 従来から申しておりますように、できるだけ公平にいきたいという考えを持っております。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 できるだけ公平にするということになりますとね、それじゃ自然犯はどう扱いますか。選挙違反でいわゆる自然犯的な、具体的に言うならば刑法準備草案の中に規定されているような選挙違反犯罪については除外をしますか。お考えはどうですか。これはどうなるかということを聞いているんじゃない。大臣としてのお考えはどうなんです。
  37. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま検討中でありますので、そういう具体的な問題についてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃ具体的じゃないですよ。あなたのお考えはどうだと聞いている。どうなるかならないかということは、これは内閣できめることで、あなた一存でいかないだろうけれども、あなた個人のお考えはどうだと聞いている。個人の考えがないということはないでしょう。
  39. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私の責任をもってやっているんでありますから、ただいま個人的な意見を申し上げることだけは差し控えたい。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 責任のある法務大臣個人としてのお考えでけっこうですよ。
  41. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 個人と法務大臣と区別していま申し上げるわけには、それは通常の場合でありましたら何ですが、ただいま検討中であり、早急にきめなければならぬわけではありますが、それをただいま申し上げることは遠慮さしていただきたいと思います。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 検討中といったって恩赦をやるということを、はっきりこれは内閣機関が発表しているんじゃないですか。中身だって相当出ている、これは新聞。これは中身のことはあとで聞きますけれども、これが二月も三月も前だったら検討中で通りますよ。いま検討中ということは、あなたはそうおっしゃりたいでしょうけれども検討中にしてもあなたのお考えというものははっきりしているわけです。  具体的に聞いていきます。この間提案のありましたいわゆる審議会の強化の法案は、これは結局、犯罪者予防更生法を強化することによって、これから行なわれるような恩赦法というものを具体的に強化していくということでございますか。
  43. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは、あくまで常時恩赦につきまして、恩赦制度を活用していきたいというのが私の念願でありまして、そういう意味で従来、まあ率直に言って非常勤というのは何だか片手間にやっており、また別の収入がなければやっていけぬじゃなかろうかと、それにはやはり専念してもらいたいという考え方のもとに、実は将来私は全員常勤の人にしたいという考えでありますが、まあ大蔵省との折衝の過程において、まあ委員長だけということになって非常に残念に思っておるわけであります。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 犯罪予防更生法の目的は、「犯罪予防の活動を助長」することだと書いてありますが、これは犯罪者予防の活動を助長することもその一つだというように承ってよろしゅうございますね。
  45. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 第一条に書いてあるとおりでございます。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 また、「公正妥当な制度」を定めることも、目的の一つ考えてよろしゅうございますね。
  47. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) そのとおりでございます。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 以上のことは、恩赦の適正な運用をはかる内容でもあると認めてよろしいですね。
  49. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 犯罪者予防更生法で規定しておりまする恩赦は、いわゆる個別恩赦の件を中央更生保護審査会に権限を与えておりまするので、この点は個別恩赦につきましての恩赦の適正な運用をはかると、こういうふうに規定しておると考えております。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 それはあなた、審査会の仕事はおっしゃるとおりですからこれは当然のことですよ。そうすると、犯罪者予防更生法の第一条にこの法律の目的として「犯罪予防の活動を助長し、」とありますね。今度のように、いままで行なわれたし、これからもおそらく行なわれるであろう選挙恩赦がああいう大幅に行なわれるとすると、これは犯罪予防の活動を助長することになりますか。恩赦の九九%が選挙違反者ということが犯罪予防の活動を助長することになるという理由をひとつつぶさに述べてもらいたい。
  51. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 犯罪者予防更生法の立法趣旨といいますか、犯罪者予防更生法が意図しておるところはこの第一条に規定しておるとおりであります。この犯罪者予防更生法で規定しておるのは、ただいまの中央更生保護審査会の問題、それから地方更生保護委員会の問題、それから保護観察所の問題、またこれらに関するいろいろな権限、機能の問題を規定しておるわけでございまして、ただいまの犯罪の予防をはかると、犯罪予防の活動を助長するという問題は、主として保護観察所の権限の中に規定しておりまする、この法律で申しますと、犯罪者予防更生法の第十八条の二号のところで、「犯罪の予防を図るため、世論を啓発指導し、社会環境の改善に努め、」云々と規定しておりまして、こういった意味で犯罪予防の活動を助長するということが第一条に規定されておるのでございます。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 あなたのほうでいま提案をしているこの法律案は、この中には、犯罪予防の活動を助長するということがきちんときめられているでしょう。これはお認めになっている。いま出されている法律では、犯罪予防を助長する、これは日本語としてはなはだ不適切なことばですけれども、助長というのはそういう意味には使われておらないでしょう、ことばの性質は。それは別といたしまして、あなたのほうのきめられている文言どおり言うなら、「犯罪予防の活動を助長」するという法律を出しておるのに、いま政府行政権能として行なおうとしている恩赦あるいはかつて行なった恩赦、これは犯罪予防を助長しているんじゃないでしょう、犯罪を助長しているんでしょう。そういうことをやってよろしいかということなんですよ。
  53. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この常時やっております恩赦、それとまた違った関係でいわゆる政令恩赦という問題が起こるわけでありまして、これは何も常時行なうわけではないわけでありますし、一定の期間をおいて必ず行なうというものではないのでありまして、要するに国家的慶事をみんなで喜び合って、そして再出発していこうという気持ちのもとにこれも犯罪の予防に資していこう、こういうことでありますし、本来の、もとより犯罪を助長するというような考え方のもとにやるわけではありませんし、やはり政令恩赦というものも現実に存在し、憲法で認められておるところでありまするから、その趣旨に従ってできるだけ犯罪をなくすることに資していきたいと、こういう考えのもとにやるわけであります。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 大臣内容はお答えになりませんけれども犯罪者予防更生法対象になるような犯罪者に対しては、政令恩赦の幅というものはごく狭いでしょう、いま言われているとおりだとすれば。ところが、選挙違反者に対しては、いままでの例を——これからの例を言うわけにはまいりません、いままでの例を言ったって九九%以上のものは恩赦法の適用によって選挙違反者というものをみんな救済している。そうなってくれば、あなた方の言う公平の精神はどこにもないでしょう。犯罪者予防更生法を強化をして、何とかその犯罪者でも更生をして、犯罪はしたけれども救済をしなければならないという者に対して、そういう者の喜びを早急にかなえてやろうという内容でしょう。一方、そういう法律を出しておきながら、恩赦対象というものに対しては非常にブレーキをかけている。自然犯とか殺人とかというものはだめだということでブレーキをかけている。世の中に流す害毒は、一人の人を殺すというのと選挙違反で悪質なことをやるというものと軽々しくこれを高低つけられますか。人の命を奪うということは最高の罪悪かもしれませんけれども、間接的に人の生命、財産を脅かすということに選挙違反はなるでしょう。しかし、そういうものが大臣の言う国事犯というものには私はならないと思います。そういうワクの中でこれだけを救済していく、こういうことでは政府の方針というものが一致しておらない、こう言わざるを得ませんよ。  そこで、あらためて聞きますが、こういうやり方では、いままでのような恩赦法のようなやり方で選挙違反だけをパーにするということでは、犯罪予防ではなくて、犯罪を累増させていく施策というほかないでしょう。きのう大臣は、一つ一つ個々の問題を考えるということではなくて、一般的に恩赦決定すべきだと、こういうお話があった。一般的にということになりますと、これはだめ、これはいいという選別はできないから、国事犯的なものだから選挙違反は一般的ということで全部政令の中に入れておるということになろうかと思いますが、そういうお考えですか。きのうの議運での大臣のお答えが聞き間違っているといけませんので念を押します。個々の問題を考えるのでなくて、総括、一般的に恩赦決定するというお考えは間違いございませんね。
  55. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ある具体的な、だれだれのこれを救済しようとか、あるいはある事件で新聞に出ているからそれを救済する、あるいはそれを除くというような非常に具体的な考え方はこれはとらないということでありまして、もとより事柄の性質あるいはいろんな、まあ選挙違反にしましてもいろんな態様があると思います。非常に複雑なもの、そうでないもの、いろいろあるわけでありまするから、そういうことを頭に描きながらやっていくということはわれわれの心がけていくべき問題だと、かように思っております。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 もし、そうであるなら一切をなしにするというのではなくて、選挙法そのものを政府責任をもって改正するという段取りをすべきでしょう。たいして犯罪にするほどのことではないというものが選挙法で犯罪になっておるというなら、その元の選挙法を改めることが先でしょう。それには内閣一つも手をつけておらない。正しい選挙をやりましょう。政治資金規正法を厳格にしましょうと言っても何もやらないでしょう。それで選挙違反が出れば恩赦という方法でこれは全部なしくずしに復権をさせていく、これではだれが考えても恩赦というものを選挙違反の帳消しに使っておる、政府権能でそういうことをしておると考えざるを得ないじゃないですか。この選挙違反を助長させておる結果について政府責任を感じないんですか。
  57. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まだ選挙違反を含めるとか含めないとかいう問題はあれでありますが、いずれにいたしましても、率直に申しまして、助長するという考えでやっていないことはこれはもちろんでありますし、また、反対にむしろそれによってみんな更生してもらいたいという考え方をもって恩赦に臨んでおることは事実であります。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 それはけっこうですよ、原則は。原則はいいですよ。ところが、犯罪者予防更生法対象になるような犯罪者に対しての救済はいままでの恩赦では行なわれておらない。行なわれたのは選挙違反者だけです。選挙違反者に対しては大幅に救済の方法になるけれども、いままでの恩赦では。一般の犯罪者に均てんするところがはなはだ少ない、これではあなたのおっしゃるようにならないのじゃないか。  そこで、自治省選挙担当者がいらっしゃっているそうですから伺いますが、自治省はいわゆる正しく明るい選挙の運動というものを推進しておるわけでございますが、選挙違反があなた方の運動をやめてもいいほどなくなっておりますか。
  59. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ただいまの御質問でございますが、大きな選挙のたびにそれぞれ犯罪の検挙件数等の増減はございます。ただ全体として見ますときに、なお一そうの政治啓発をやる必要があると思います。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 政府の一部では一そう選挙違反撲滅の運動、啓蒙運動と合わせて犯罪予防の運動を、これから正しい選挙が行なわれるようなことをしなければならないということを痛感している。ところが、その政府の方針にはずれた犯罪者に対してはけっこうでございますよ、もうあなたはだいじょうぶですという救済の方法を、今度は知りませんよ。いままでは行なってきた、これから行なうことについては聞きません、いままで行なってきた。九九%が恩赦によって救済をされておる、こういうやり方は正当だと、合理性があると大臣はお考えになりますか。これからのことは聞きませんが、いままでのことを聞いているんだが。
  61. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) いままでの恩赦は、当時の方々の考え方としては、それぞれその当時の意味を持っておったんだと思います。現在において、あるいは選挙というものに対する観念がだんだん変わってきておることは事実でありますし、現在どういう態度をもって臨むべきかということは、これからの問題でありますが、だんだん恩赦のやり方にしても変わってきたことは事実だと思います。
  62. 加瀬完

    加瀬完君 確かに変わっている。だんだん悪く変わっていますよ。恩赦ばかりやって救済をする。それもだんだん悪くなる。変化でもよくなる変化と、悪くなる変化がある。  そこで基本的なことを聞きますが、これは釈迦に説法でございますが、議会政治でありますから、したがって、議会政治を構成する議員国民の真の代表でなければならないということは、これは自明の理であります。そうすると、議員が正しく選ばれなくて、いわゆる選挙違反という形で議員が選ばれることが好ましいこととお考えですか。
  63. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 当然これは好ましくないことで、それは言をまたないところです。
  64. 加瀬完

    加瀬完君 たいへん失礼なことを伺いますが、それならば正しい選挙が行なわれなくては正しい議員、りっぱな議員というものを選ばれるという根底はないでしょう。そうすれば政治家全体の責任といえばそれまでですけれども、特に政府、政党は正しい選挙をするということにお互いが責任を感じなきゃならないということは御否定なさらないでしょうね。
  65. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もちろん正しい選挙が行なわれることを望んでおりますし、当然そういうふうな方向で努力すべきだと思います。しかし、恩赦という制度は、率直にいままで何回も申し上げておりますように、何も定期的に行なうとか、そういうものじゃなしに、思わざる国家的な慶事というものをチャンスにみんなに更生の機会を与えるというのが趣旨でありまするから、、そういう趣旨に沿って考えていくことは、これは当然のことだと思います。
  66. 加瀬完

    加瀬完君 恩赦は歴史的に見れば、予見できない皇室や国家の慶事というもので行なわれてきた。このごろはそうではないでしょう。国連、それから今度の沖繩返還に伴えば当然恩赦があるということを見越して、明治百年もそうだ。大体個個の選挙は次の恩赦にかかるんだから思い切ってやってだいじょうぶだと、こういうことで、いわゆるプロというものは行動をしているわけですね。ですから世論恩赦を見越しての公然たる選挙違反という、選挙運動は見のがすべきではない。したがって、恩赦があるからといって、恩赦の論理そのものからいえば、個々に犯罪によってこれは差別をつけるべきものではないけれども、しかし国の方向からして、政治のあり方からすれば、これは選挙違反だけは恩赦からは除いてもらわなければ困るという世論になっているんじゃないですか。大臣は各方面の意見も聞かれたというが、私がいま申しておるようなことをあなたはどこからもお聞きになりませんでしたか。
  67. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もちろんそういう御意見もありますし、また、しかし、恩赦があるから選挙違反やってやろうという話はあまり聞いたことはありません。
  68. 加瀬完

    加瀬完君 それはあなたの選挙だけが特別いいからですよ。大体そういうことは定説ですよ。  そこで犯罪者予防更生法の中の一条の二項に「すべて国民は、前項の目的を達成するために、その地位と能力に応じ、それぞれ応分の寄与をするように努めなければならない。」こういうことがありますね。これは犯罪者予防更生法趣旨だけではなくて、私ども政治家はもちろんのこと、政府はもう言うまでもなく、すべての国民がこれは世の中に犯罪がなくなりますように地位と能力に応じて応分の寄与をするのが当然なことだと思いますが、大臣はどうですか。恩赦の関係については違いますか。大臣、あなたに聞いている。大臣、答えてください。御否定なさらないでしょうね。——聞いていないのに答える必要はない。聞いていないですよ。
  69. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 委員長の指名がございましたので……。
  70. 加瀬完

    加瀬完君 あんな無礼な話はない。聞いていないよ。法案内容を聞くなら答えてくださいよ。一般論の問題、これは調べなくたって答えられる。
  71. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまお話の質問の要旨がはっきり私もわかりにくいのですが、第二項に書いてあるその地位と能力に応じ、応分の寄与につとめなければならない、その文字どおりだと思います。
  72. 加瀬完

    加瀬完君 これは恩赦をやるかやらないかについても、大臣はあるいは内閣は当然やはりこの趣旨を尊重して措置されるべきだと思いますが、この点をお認めになりますね。
  73. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この法文に書いてあることについては、私何ら異議はないのでありまして、当然われわれもそういう考え方でつとめていかなければならないと思います。
  74. 加瀬完

    加瀬完君 提案者佐々木議員に伺いますが、今度のいわゆる取りざたされている恩赦、あるいはいままで行なわれた恩赦による選挙違反の救済、これは私が伺いましたような趣旨に沿っておると思われますか。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 ちょっといま急な御指名でしたので、もう一度おっしゃっていただきたいのでございますが。
  76. 加瀬完

    加瀬完君 犯罪者予防更生法の一条の二項には「すべて国民は、前項の目的を達成するために、その地位と能力に応じ、それぞれ応分の寄与をするように努めなければならない。」とありますが、これは単に犯罪者予防更生法だけではなくて、すべての社会の犯罪に対して当然国民としてはこういう考えを持たなければならないことになるであろう。恩赦法の適用なんかについても大臣としては当然これは考えるだろうと言ったら、考えますとこう言った。そこで、いままで行なわれた恩赦による選挙違反者の救済というものは、はたして犯罪者をなくする、犯罪予防の活動を助長するというために役立つような趣旨が生かされておったか……。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御質問でございますが、いままで現実に行なわれておりました恩赦の実情というものは、遺憾ながら、およそこの法の精神に沿いかねるものであるというふうに思います。
  78. 加瀬完

    加瀬完君 でありますから、提案者は、決議案でこの問題をはっきりさせようとしたり、あるいは恩赦法の一部を改正する法律案によりまして、それぞれ国民意見を聞くようにと、こういう御提案をなさったと思うわけでございますが、そこでもう一点聞きますが、いままでのような、選挙違反者だけを九九%も救済するというようなやり方をしてまいりますと、大臣のたびたび御説明なさいます公平の精神というものが維持されているとお認めなさいますか。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣はたびたび公平の原則ということを強調されておられますが、恩赦対象が、いま御質問にございましたように、非常に公職選挙法違反の救済のみに片寄っているということは、公平の原則にはなはだしく違反しているのではないかと思います。
  80. 加瀬完

    加瀬完君 それで、大臣に伺いますが、これは局長でもいい、毎日新聞によりますと、「対象となる罪種は「公職選挙法」「政治資金規正法」「地方自治法」「入国管理法」「関税法」「食管法」などで、殺人、放火など一般刑法が対象としている罪種は政令恩赦に含まれない。」と、こう報道をされておりますが、いわゆる自然犯は除外をするという原則で行なわれることになるんですか。あなた方の部局の相談の経過においては、こういう問題はどう話し合いされたか。
  81. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 毎日新聞がどのような根拠で書かれておるのか、私は全然存じません。今回の沖繩の記念する恩赦につきましては、先ほど来大臣から答弁のございましたように、ただいま検討中でございますので、何をどうするかということはまだきまっておりません。
  82. 加瀬完

    加瀬完君 これ、もう一つ局長に聞きますが、公平を失しないようにすべきだという原則は確認いただけますね。
  83. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) それはそのとおりであろうと思います。
  84. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、大臣に伺いますが、まあ五月の十五日に恩赦が出されると仮定をいたしましたときに、十四日の判決のあったものは、あなた方がやりたがっている選挙違反だけを対象にしている五月十四日の判決のものは、これは救済されますね。——十六日の判決のものはどうなりますか。救済されないとすれば、はなはだしく均衡を失しますね。公平の精神に欠けるということになりませんか。
  85. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 政令恩赦につきましては十五日が基準日であります。しかし、ただいまのようなお話で、そういう点まだ煮詰まっておりませんが、公平を期する必要のあるものについては個別恩赦考えていくというようなことになろうかと思います。
  86. 加瀬完

    加瀬完君 新聞を言うと、どこからそんなことを書いたか知らないとおっしゃるから、新聞は言いません。それは個別恩赦でやると。そうすると、その個別恩赦は、期間はどのくらいの、五月十五日と仮定されて、五月十五日以後どれくらいの期間に判決があったものについて個別恩赦をするということになりますか。  こういうことを聞きますのは、この前は、恩赦令が出ましてから一年くらいたった者に対しての個別恩赦をしておりますね。人によっては、期間は無制限にやるということになりますか。一応申し出やなんかという期間が切れて、はるかに長期にわたっての——一年近くとしましょう、なってからね、恩赦令によって復権をしている、こういう事実がありますよ。どこにめどを置くのですか。個別恩赦の要求をすれば、選挙違反に限っては、全部、期限を問わずに恩赦を適用すると、こういうことになりますか。これは局長でもいい。
  87. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 政令恩赦というものは——これは今回の恩赦とは関係なしに一般的に申し上げますが、基準日をきめまして、基準日までにどうあった者がどうというような規定のいたし方をしておりますので、そこに必ず限界ができまして、先ほどおっしゃいましたように、その前日の者は救済されたが、それより一日おくれたがために救済されないという結果が、これは結果的にどうしても政令恩赦というものは出てまいるわけでございます。したがいまして、先ほどもおっしゃいましたように、それでは公平という点からは欠けるじゃないかというような配慮もございまして、若干の問題は、よく、政令恩赦が出されましたときに、特別記念恩赦といって、一般個別恩赦ではございまするけれども、その記念恩赦として、基準をきめて、それをある程度救済するということもいたすのでございます。しかしながら、恩赦というのは、政令恩赦あるいはその特別記念恩赦だけではございませんで、常時恩赦を実施されております。それが今回御審議仰いでおりまする中央更生保護審査会でございますが、したがいまして、選挙違反に限らず、何の事件でございましても、常時中央更生保護審査会では恩赦審査をいたしておるわけでございます。前の——いつのことか存じませんが、復権令が出たあと一年もたったあとまだそんなものがあるじゃないとおっしゃいますけれども、これは、別に、復権令とかそういうものとは関係なしに、いろいろな事件の個別恩赦が常時出ておりまして、中央更生保護審査会審査し、恩赦相当であると認めたものは法務大臣を通じて内閣のほうに申し出る、こういうことをして常時恩赦が行なわれておるわけでございますので、ただいま御指摘の面はそういった面じゃないかと思いますが、そこの点は具体的にわかりませんのでちょっと申し上げかねますが、そういうような仕組みになっております。
  88. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっと関連。  これは保護局長でけっこうですがね、いまの質疑を聞いておりますと、もう十五日恩赦ということが予想されるそういう現在の時点でなおかつ、内閣の権限だということで具体的な考え方をいま全然お示しにならぬので、私どもは、一体内閣がどういうふうにお考えになっておるかということをなるべく知りたいと思います。  そこで、明治百年恩赦のときに、公職選挙法違反関係の恩赦を具体的にどういうふうにやられたか、逐一御説明願いたいのです。
  89. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 昭和四十三年十一月一日を基準日といたしました明治百年記念の恩赦におきましては、政令といたしましては復権令が出されたわけでございます。この復権令の内容は、もう御承知のことだろうと思いますが、第一条で「次に掲げる罪について一又は二以上の罰金に処せられた者で、昭和四十三年十一月一日(以下「基準日」という。)の前日までにその全部の執行を終わり又は執行の免除を得たものは、その罰金に処せられたため法令の定めるところにより喪失し又は停止されている資格を回復する。ただし、他に罰金以上の刑に処せられているときは、この限りでない。」といたしまして十一の犯罪をあげておりますが、一が「公職選挙法に違反する罪」でございます。二が「旧刑法第二百三十三条から第二百三十六条までの罪」、三が「政治資金規正法に違反する罪」、四が「地方自治法第七十四条の四の罪」、五が「最高裁判所裁判官国民審査法に違反する罪」、六が「物価統制令に違反する罪」、七が「地代家賃統制令に違反する罪」、八が「食糧管理法に違反する罪」、九が「食糧緊急措置令に違反する罪」、十が「道路交通法に違反する罪」、十一が「自動車の保管場所の確保等に関する法律に違反する罪」、こういったことに規定されておるわけでございます。
  90. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは私も十分調査しておりませんがこういうことをやられちゃおりませんか、基準日から三カ月以内に罰金刑が確定すればそれを復権の対象とする、こういう便法をとられているでしょう。
  91. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 便法といいますか、ただいままあその第一条の初めだけを申し上げましたが、第二項におきまして条文を読み上げますと、前項に掲げる罪について基準日の前日までに一又は二以上の罰金に処せられその一部又は全部の執行を終わらず又は執行の免除を得ていない者で、基準日から起算して二月以内にその全部の執行を終わり又は執行の免除を得たものは、その執行を終わり又は執行の免除を得た日の翌日において、その罰金に処せられたため法令の定めるところにより喪失し又は停止されている資格を回復する、」こういうのが二項にあります。それから第三項では「第一項に掲げる罪について基準日の前日までに略式命令の送達、即決裁判の宣告又は有罪、無罪若しくは免訴の判決の宣告を受け、基準日以後にその裁判に係る罪の一部又は全部について一又は二以上の罰金に処せられた者で、基準日の前日までに確定した罰金については基準日から起算して二月以内に、その他の罰金については基準日から起算して三月以内に、その全部の執行を終わり又は執行の免除を得たものについても、前項と同様とする。」こういうのがありまして、二項では、基準日の前日までに罰金が確定しておりましても執行が終わってないものは二カ月以内に執行を終えれば復権する、それから第三項におきましては、基準日の前日までに略式命令の送達とかその他第一審の有罪の判決の宣告がありましたものにつきましては、基準日以後に裁判が確定して三カ月以内に納めたものは免除、その翌日において復権する、こういう規定になっております。
  92. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっともう一つ。いま私それ実際なら見せてもらってやったほうがいいんですが、関連だから気のついたことだけ申し上げておるんですが、いまの御説明を聞いただけでも公職選挙法違反がいかに広範に救済をされておるかということが実証されるわけでしょう。そういうふうにお考えになりませんか。
  93. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) これは公職選挙法だけに限った条文じゃございませんで、先ほど読み上げました復権令の第一条の第一項に掲げております罪全体について同じ取り扱いをいたすことになっております。
  94. 矢山有作

    ○矢山有作君 いま私どもが最大の問題にしているのは公職選挙法違反事件なんですよ。それを問題にしておる。公職選挙法違反の問題を取り上げて言っているわけです。ほかの問題に私はここから先も触れていない、そこのところを焦点をぼかさないで話をしてください。いまのようなやり方でいっても、これほど世論のきびしい批判を受けておる、公職選挙法違反に対する恩赦がきわめて広範に適用されるではないかと。これではますますあなた方が強調する公平の原則から逸脱するではないか、このことを指摘したいわけです。率直にこちらが言っていることを受けとめて、それに対して率直なる答弁をするというのがあなた方の任務ですよ。そのときどきで、答弁で、ことばの先でごまかすようなことはやめなさい。国会というのはことばの先でごまかし合いをやるところではないのだから、事実を明らかにし、その事実に誤りがあるならそれをただしていく、そのために努力するところが国会の場じゃないですか。どうなんですか、政府委員として。いいかげんなことを言っておってはだめだよ。きわめて広範でしょうが、公職選挙法違反事件に対する恩赦の適用が。
  95. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 明治百年記念恩赦の場合には、復権令がそのような罪を取り上げて復権さすようにしたものでございまするから、公職選挙法関係も相当な数字が出ております。これが数字が一番多いのは道路交通法違反でございます。ですからこれは公職選挙法だけを取り上げてやったとはいまから考えてもそうも考えられないわけでございまして、数から申しますと、道路交通法違反が一千万人以上の数が出ておりますから、数から言えばこれは圧倒的な数が道路交通法で出ております。
  96. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなた方は全く率直でないね。道路交通違反をもってきて選挙違反に対比してものをいえば、これほど交通地獄だといわれている情勢の中で道路交通法違反事件が多いのはわかり切った話じゃないの。そういう議論のすりかえをやってはだめだというのです、議論のすりかえを。いま問題にしておるのは公職選挙法違反恩赦の中に含めることはけしからぬという話をしておるわけですよ。そういう観点からものを考えた場合に、なるほど道路交通法違反その他と同じような取り扱いをしておるにしても、公職選挙法違反に対してきわめて広範な恩赦が適用されるではないかということを、その問題点指摘しておるわけですよ。ああ言えばこうというような問題の焦点をぼかすような議論をしなさんな。どうかね、保護局長、そういう焦点をぼかすような議論をしてはだめですよ。
  97. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) ちょっと御質問趣旨がわからないのでございますが。
  98. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう一ぺん言いましょう、質問趣旨がわからなければ。われわれがいま問題にしておるのは、明治百年恩赦あるいは今回の沖繩恩赦で予想されるであろう恩赦の範囲の中に公職選挙法違反を含めている、しかも恩赦対象になる者の中で公職選挙法違反が九〇%以上占めるという実績もある、こういうようにまさに恩赦というものは公職選挙法違反を救済するために行なわれておるようなものではないかと、しかもそのことが世論のきびしい批判を受けておる、したがって、私ども公職選挙法違反事件を恩赦対象に含めてはならぬということを議論しておるわけですよ。そういう議論をしておるときに、たとえば明治百年のときの恩赦対象公職選挙法違反事件をどういう形で加えたかという話を聞いてみると、他の案件と同じではあるけれども、きわめて広い範囲で加えておるではないか、そのことは間違いではありませんかと言っておるんです。何も道路交通法違反の問題と比較してどうこう言っておるわけではないんですよ。
  99. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) ただいまの御質問趣旨がよくわかりましたが、それならそのとおりでございます。
  100. 加瀬完

    加瀬完君 そのとおりに重ねて恩赦のたびごとにやってきたんだが、今度もまた恩赦令が施行されますときに重ねて公職選挙法違反者というものだけを救済をするということに結果においてはなる、そういうやり方を局長としては御賛成なんですね。
  101. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 御賛成と言われても、私何もまだ申し上げておりませんので何ですが、今回の沖繩復帰記念恩赦につきましては、先ほども申し上げましたように、まだきまっておりませんので、何とも申し上げる段階ではございません。
  102. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ、これは済んだことだから言えるだろうと思うのですがね。保護局長、あなたは保護局長という立場からお考えになって、明治百年の恩赦のときに、いまあなたがそこでお読みになったような、広範な公職選挙法違反恩赦対象に加えたことが、これは適当だと考えておられるのか適当でないと考えておられるのか。これは済んだことに対する保護局長としての見解として私は言えると思いますよ。適当だと思いますか。それとも不適当だと思いますか。
  103. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) これは昭和四十三年当時の内閣が慎重に御審議になりましておきめになったことでございますので、適当にやられたものだと考えております。
  104. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ保護局長としてはそのくらいの答弁しかできないのかもしれないね、そばに大臣もおることだし。  そこで、大臣のほうどう思いますか。いま保護局長説明されたのはよくお聞きになっておったと思うのですよ。公職選挙法違反についてきわめて広範に恩赦対象になった、明治百年恩赦のときに。このことをいまあなたが法務大臣という立場考えられて適当だとお思いになるかどうか。これはあなたなら言えると思うのですがね。
  105. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 広範と言われるとあれですが、まあ選挙違反を含めなければあれでしょうが、選挙違反も含めるということになるとこういうことになるんじゃないかと考えるわけですが。
  106. 矢山有作

    ○矢山有作君 法務大臣、そんなとぼけちゃいけません。あなたにそうぬけぬけととぼけたような答弁されますとこっちのほうがびっくりするので、公職選挙法違反がどういう形で恩赦対象になったかということは、いま一条の一項、二項、三項と保護局長がお読みになったのですから、それをごらんになって、なるほど広い範囲にほとんど公職選挙法違反というものはこれで全部救済をされる形になっておると、広過ぎるとお考えにならないかと言っているのですよ。これほど広範にこれを救うことが、世論のきびしい批判の前に同じようなことをあなたがもしおやりになると考えておられるならこれはたいへんなことなんで、だから明治百年記念のときの恩赦のやり方に対する、公職選挙法違反恩赦のやり方に対するあなたの考え方を聞いているわけです。道路交通違反なんか関係ない。
  107. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういうことを言っているわけじゃないんですが、要するに問題は、選挙違反を含めるか含めないかということで、含めるということになると、公平なり何なりの点からただいまのような結論になったんじゃないかなと、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  108. 矢山有作

    ○矢山有作君 いいですか。悪いですか。いいとお思いになるのですか。悪いとお思いになるのですか。
  109. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは善悪は当時の事情をただしてみないとよくわかりません。いまからそれを批判するべき私には資料も何もないわけでございます。
  110. 加瀬完

    加瀬完君 まあ大臣が適当な答えをするのは前尾さんだけに限らないからこれは別にとがめませんが、局長政府委員はもう少し的確にお答えをしていただかなければならないと思うのですよ。私は法務委員というのはあまりやったことはないのですけれども、ほかの政府委員のほうが法律専門家であるあなた方よりも的確な説明をいたしますね。  私たち法案一つもやらないというそしりを受けては困りますから、この犯罪者予防更生法の新旧対照表というのがありますね、これの第七条に「(委員長及び委員の服務)」というのがありますね。この中に「委員長は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」とある。この積極的に政治活動をしてはならないということは、具体的にどこから先のことをすれば積極的ということになるのですか。どこまでのところは積極的でないということになるのですか。こういう不明確な規定というのが一体規定になりますか。
  111. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 犯罪者予防更生法一部改正法案の第七条にそのような条文があるのでございますが、これは委員長が今度常勤にしていただきますために、常勤の特別職公務員の処遇に関しまして、これは国家公務員法の適用が直ちにございませんので、いずれも特別職の公務員につきましては、常勤の特別職国家公務員につきましてはこのような規定を置いておるのでございます。そういたしますと「積極的に」といいますと、それじゃどの程度の政治活動をしてはいけないのであろうかということに相なりますると、これは一般職の国家公務員に規定されております制限とはまた違いまして、それよりもいささかゆるいものであるということに定説はなっておりまするけれども、それぞれを職責に応じてきめていくべき問題でございまして、一般職にきめられているあの範囲の中からどこからどこまでだというような規定にはなっておらないのでございます。
  112. 加瀬完

    加瀬完君 だからさっぱりわからないというんですよ。なぜ政治活動をしてはならないときめられないのか、普通の公務員のように。「積極的」というのは、消極的なことならやっていい——あなた方が考える消極的なことというのはどんなことをやっていいのか。積極的なことをやっていけないというのはどういうことを積極的と言うのか。その具体的な基準がなくてこんなことをきめたって空文でしょうが。
  113. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 先ほども申し上げましたように、各種の特別職常勤公務員につきまして、同様の規定が設けられておるのでございますが、それがすべてそれではそれぞれの特別職の種類によりましてそれぞれの職務が違いますので、一がいに、これは同じことばで用語を使っておりましても一がいに言えないのでございますが、この中央更生保護審査会の今度の常勤になります委員長につきましては、一般職の公務員に課せられております国家公務員法第百二条によりまする人事院規則一四の七の規定がそのまま当てはまるわけではございませんが、またそのとおりを制限をするわけではございませんが、これに比較的近い活動をしてはやはり制限されるというように解釈しております。
  114. 加瀬完

    加瀬完君 いまその法文の内容なんかが、いろいろ文字なり文体なり文章なりというのが問題になっておりますけれども、法務省ですから、もっと的確なことばを使っていただきたいと思うのです。説明してもわからないようなことばでしょう。具体的には、あなたいまいろいろ説明されたけれども、どこまでやっていいか、どこからやるべきかということの説明一つもない。これはまあ、ただ指摘をしておきます。  最後に、いろいろ御答弁はなさっていらっしゃいますけれども公職選挙法違反者対象恩赦が行なわれるということは、これは既定の事実と推測されます。そこで世間ていもあって大赦令みたいな形でやるとは思われませんので、そうなってくると、それぞれの個々についての公平の原則というのがそこなわれる公算が非常に多く予想をされます。それで、恩赦を施行するについて、公平の原則を貫くという点で現在どういう点が考慮をされ検討をされておるか、この一点にしぼって、局長でもけっこうです、お答えをいただきましょう。
  115. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 今回の沖繩記念の恩赦につきましては、先ほど来大臣からも私も申し上げましたように、現在検討中でございまして、まだきめてございませんので、具体的にどういった点をどうだということについてはこの際はひとつ差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
  116. 加瀬完

    加瀬完君 どういう犯罪対象に対してどうするということを聞いているんじゃないんですから、公平の原則を守るということについてはどういうことが現在検討されてきたか、あるいはおるか、こういうことです。たとえばということで、こういう問題を検討しました、こういう問題も検討しましたということをおっしゃってくれればいい。
  117. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) たとえばということで申し上げますと、具体的な問題になってまいりますので、この際ひとつ差し控えさせていただきたいと思います。
  118. 加瀬完

    加瀬完君 これは犯罪者であろうとなかろうと国民の側からすれば、公平の原則というのが守られるか守られないかというのは一つの大きな心配だ。あなた方が、単に公職選挙違反者だけを対象に私どもはやっておるんじゃなくて、一般の犯罪者に対してもこうこうこうやっておりますと、すべてが予期せざる喜びを感ずるように私どもは施策を進めておりますということであればうなずける。ここまできて恩赦はするということは政府も明言している。一部新聞に報道されている。それは知りませんと。知りませんなら、少なくもワクをしぼって、公平性を保つという点からいってどういう点だけは私ども主張しています、今度の恩赦一つの筋にしたいと思いますといったようなことを説明されてしかるべきだと思う。
  119. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま先ほど来いろいろお話がありますが、問題点をいろいろと指摘されておるわけでありまして、そういう点についてもわれわれいろいろ検討をしておるところでありますし、またできるだけ公平なものでなければならぬという考え方については何ら変わりなしに検討いたしておるわけでありますが、遺憾ながらこの恩赦というものの性質上、ただいまいろんな具体的なことを申し上げるということができないことははなはだ遺憾に思うわけでありますが、いずれにいたしましても、皆さんのいろいろ御意見については私十分拝聴しながら検討対象としてやっておるつもりでありますので、その点はお許し願いたいと思います。
  120. 加瀬完

    加瀬完君 しつこく私が質問いたしておりますのは、恩赦法が制定されますとき、選挙違反というものをこの対象にすべきかすべからざるかということが議論されましたか。あるいは先例から見ても公職選挙法違反というものは恩赦から除外されておったじゃありませんか。それがこのごろは恩赦というと選挙違反が主軸を占めるようになってしまった。あらためて伺いますが、立法の趣旨はあなた方はどう受け取っておるんですか。その当時の立法の趣旨の中に選挙違反も含めて考慮すべきだというような説明なり、あるいは審議の過程でそういう議論が行なわれましたか。いまの公職選挙法違反などは除外さるべきであるというふうな議論はなかったんですか。これは局長でもけっこうです。
  121. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) まずただいまの恩赦法が制定されましたときの立法の趣旨でございますが、これは昭和二十二年でございますね、当時の帝国議会にかかっておるわけでございます。恩赦法制定の立法趣旨として述べられておりますものを要約いたしますと、旧憲法下におきましては、恩赦は天皇の大権事項でありまして、したがって、その方式、効力、手続は勅令をもって定められていたが、現行憲法では内閣決定し、天皇が認証することに改められましたこと、また、恩赦が裁判の結果を変更するという重大な結果を伴うことなどを考慮して、恩赦に関する基本的な事項は法律をもって定めるのが相当であるとして立法に及んだものであるということが提案趣旨として当時の記録に残っておるわけであります。  それからただいま御質問の、当時立法の段階におきまして、帝国議会の審議の段階におきまして、選挙違反について論議されたかということでございますが、これは当時の議事録を若干見たのでございまするけれども選挙違反を除くとか除かないという議論は一つも出ていなかったと考えております。
  122. 加瀬完

    加瀬完君 それは天皇の大権のときの大赦ですら選挙違反は除いておったという先例がありまして、制定の当時は、恩赦の主役が公職選挙法違反者だという前提審議をする者の中にもほとんどなかった。それでこの問題は議論をされなかったと私どもは当時の人から伺っておるわけでございます。  時間がなくなりまして、最後は述べましたけれども最初大臣が、恩赦法の一部を改正する法律案につきまして、その必要がないというお答えがあった、これは参議院においては、衆議院のほうに回ってからは通りませんでしたけれども、各会派とも賛成をして通った事実があるんです、同様趣旨のものは。ですから当時は大臣の属するところの自民党も参議院においては賛成をされたわけです。これを政府として拒否する理由は何にもないでしょう。審議会をつくって適当なアドバイスを受ける、とるとらないは政府の権限ですから、そういう一つ機関があって恩赦というものについても政府権能ではありますけれども、一部国民の批判があるというなら、その国民の批判の側の意見を十分聞いてそれから恩赦の完全な適用をしていきましょうという参考機関を設けるのにやぶさかであっていいはずはないでしょう。そういう御趣旨でそこに提案なされたものと思いますので、反対ですではなくて、これは前向きに検討をして、政府のじゃまをしようというのではなく、国民の声を正式の機関を通して伺っていただきたいと思いますが、いかがですかということです。御賛成をいただきたいと思いますが、重ねて伺います。
  123. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 政府意見としてきまったものではありません。私個人の考えますところによって、また現在こういう審議会が設けられていない理由ということを考えてみますと、ただいま申し上げたような秘密性の問題、責任の問題、そういうような問題点がいろいろありますので、その問題点が多いことを申し上げたわけであります。もとより御提案になっておるわけでありまするから、それをきめられるのは国会でありますが、私の個人的な意見をただいま申し上げたにすぎませんから、その点は御了承願いたいと思います。
  124. 加瀬完

    加瀬完君 大臣がおっしゃるように、個人的意見とおっしゃるけれども、法務大臣ですから法務大臣としての万全を期するためにそういう正式な諮問機関というものがあってしかるべきだという御見解を私はおっしゃっていただきたかったと思うわけでございます。政府責任とおっしゃいますが、確かに恩赦令政府責任でおやりになる。その結果、選挙違反者が大量赦免になって選挙がますます腐敗するということについては何も責任を問わないということでは、私は政府責任ということにはならないと思うのです。  で、提案者鈴木議員に、特にこの決議案を出されて御賛成をいただいたわけでございますので、いま法務大臣の御見解をお聞きいただきまして、私は決議案なりあるいはこの恩赦法の一部を改正する法律案なりというもののますます必要を通感したのではないかと思われますが、ひとつ御所見を承って終わりといたします。
  125. 鈴木強

    委員以外の議員鈴木強君) 私はこの席から加瀬委員質疑を伺っておったのでございますが、加瀬委員のおっしゃることは、非常に現在の国民の気持ちを率直に言われていると思うのでございます。それに対して政府側からいろいろと御答弁がございまして、なるほどその理屈に合ってることですからそのとおりお答えが出るかと思うと、どうも問題をぼかしてしまうというような質疑応答の内容でありましたことを非常に残念に思います。われわれが恩赦から公職選挙法違反の方々を除外すべきであるということは、過去八回行なわれてまいりました戦後の恩赦の実施の内容等をよく調べてみまして、あまりにもこれではひど過ぎる。憲法第四十一条にある、国会は国権の最高の議決機関であるというこの最高の権威を保持するためには、やはり選挙違反をしたような人たちがおらないことがこれは当然のことであって、われわれ同僚でありましたけれども、たとえば小林章君だとか黒住君だとかいった、ああいった組織的計画的な、まことに許すことのできないような大がかりな選挙違反が出たときに、国民はこれをどう見るでございましょうか。われわれも同僚としてバッジをつけていることが恥ずかしいくらいに私は思いました。それで国会が国権の最高機関であるとか言ってみたところで、国民は何だという気持ちになるのはあたりまえでございます。ですから国会というのが権威をなくしていく、国民から遊離をしていく。これではいけないというので私たちは、あまりにも過去の選挙違反に対する恩赦のやり方が露骨ですから、そういう意味で今回の沖繩恩赦の際には、いろいろと批判を受けているこれらの問題を払拭して、そして国民の皆さんから権威ある国会として意義づけたい、そういう趣旨でございます。したがって、決議案もそのことでありますし、私も恩赦法の一部改正の提案者になっておりまして、同様な趣旨から、ここにせめて最小限度国民の批判を率直に受けて是正していくのにはこういう方法がよろしいので提案をしたのでございます。何も政府の専決権、行政権を奪い取ろうと思うものでもなんでもありません。加瀬委員のおっしゃっているように、政府の専決事項でありましても、各省にはたくさんの審議会が持たれて、そこでより国民の皆さんの意見を聞いて、主権在民、ほんとうにいまの民主憲法に沿えるような形で、一人でも多くの国民意見を聞いていくということからいろいろ審議会が持たれていると思うわけでございます。ですからそういう趣旨でございまして、別に他意はないのでございます。より英知を集めて国民の批判を受けないようにりっぱな恩赦をしていただきたいということでございます。今回ランパート恩赦といわれているものを見ましても、アメリカ側二名、琉球側二名、四名の恩赦審議会というのがございまして、そこでやはりアドバイスを受けていろいろ慎重にランパートさんに意見を述べておる。それを受けて恩赦をやったというようなことも私たちは聞いておるわけでございます。まさに民主主義の進んだアメリカのやり方だと私は思うのでございます。そういう意味においてここに提案された、特に加瀬委員の御指摘恩赦法の一部改正については、大臣が個人的な意見をおっしゃったのですが、私は率直に言って不満です。これはもう大臣は最後におっしゃったように、当然これは議会がきめることでございますから、あのときの答弁は、法務大臣として国会の御審議の経過を待つというふうにやられるのが一番適切だと思いましたけれども、何かぽんと先に言われましたので、法務大臣の正式の見解と聞きました。しかし、いま訂正されまして個人的な見解と言われましたが、それにしても少し残念です。まあそういうふうな気持ちを率直に私は持っております。三十二年四月十日、第二十六回国会のときにもこれは内容はほとんど変わりません、ただ審議会の構成が多少違うだけでございまして、同様の審議会をもってよりりっぱな恩赦をやってもらうというので満場一致これは自民党も当時賛成されまして、参議院で可決されている歴史的な事実があります。そういう事実をどうも無視されたようなかっこうで、個人的意見としても述べられたことは非常に残念に思うわけでありまして、どうかそのことを——何も私はそのことをとりたてて言うわけではございませんので、ひとつそれはそれとして大臣の気持ちもわかりましたので、政府側としてもこの審議を見守っていただいて、できるならそういうふうなほうにいくように御助言をいただけたらむしろ非常に幸いだと思うのでございまして、この機会に、法務大臣前尾さん御出席ですから、そういうことを私からもお願いしたいくらいでございます。  どうぞ皆さん、参議院は良識の府でありまして、二院制をとっております今日、過去の歴史を見ても、そういうことは非常に不十分であるかもしれませんけれども、良識が発揮されているわけですから、各党派を越えてこれはぜひ御賛成をいただきたい。かようにお願いするものであります。どうもありがとうございます。
  126. 矢山有作

    ○矢山有作君 保護局長に伺いますが、昭和四十三年十一月一日の復権令で何らかの事情で救済がなかった者について、さらにこれを常時恩赦として救済をしておる件がありますね。そのように聞いておりますが、どうですか、これは。
  127. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 明治百年記年恩赦に行なわれました復権令、それからそのときに同時に出されました特別恩赦基準がございますが、ただいまおっしゃいました常時恩赦というのは、それ以外の常時恩赦という御趣旨でございましょうか。ちょっと質問趣旨をお尋ねいたします。
  128. 矢山有作

    ○矢山有作君 言い方が悪かったからもう一ぺん言い直しましょう。明治百年恩赦のときに特別恩赦として出願された事件のうち、出願期限その他の関係で形式的な要件を欠いておったために、常時恩赦として救済している例があるでしょう。これはどのくらいありますか。
  129. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 明治百年記念恩赦として出願されました事件のうちで、そういった形式的な要件を欠きましたために常時恩赦のほうに回されて審議された事件がございます。それが昭和四十四年に六百四十件、四十五年に三十九件ございます。
  130. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから見てみますと、先ほどあなたが御説明になったように、四十三年の復権令で第一条の二項、三項を適用し、さらにその前の三十四年のときの復権令を見ましても、やはり相当広範な救済をやっているわけですよね。これを適用していけば何じゃないですか、裁判所でまだ確定をしてないでね、係属中のものまで適用されてくるようになるわけです、私はそういうふうに思うのですがね。おそらく判決確定しないで、判決の確定しないやつは係属中ですからね、係属中のものまで救済されるということになりますね、これを適用されれば。そういうような広範な適用をやり、しかもさらに形式的要件を欠いたからといって常時恩赦のほうに回してさらにこれを救済をしていくと、こういうように公職選挙法違反の救済についてはきわめて手厚い方法がとられておる。このことは私はやはり現在世論公職選挙法違反事件を恩赦対象とすることにきびしい批判があることの根拠だと思うのですよ。これは従来こういうことをやっておるのですからね、私どもはやはりまたこれをやるのじゃないか、こういう心配が出てくるのは当然なんですよ。先ほど来大臣は、恩赦というのは常時あるのではないのだから、何ら犯罪助長にはならぬと言われますけれども、たとえば明治百年の恩赦にしたところで、今度の沖繩恩赦にしたところで恩赦がありそうだということは数年前からわかっておるのですよ、数年前から。これは政治的な関心を持っている人ならだれだって知っている。だからそういう状態の中で選挙が行なわれるわけです。だから今度は沖繩恩赦があるのだから、今度はいついつ、たとえば四十三年には必ず恩赦があるぞ、ことしで言うならば四十七年には必ず恩赦があるぞと、これは沖繩恩赦と、こういうことで恩赦公職選挙法違反事件が全部救済されるということになれば、これは違反してもかまわぬから当選すればいいのだという根性になって選挙をやりがちになってくることは、これは私は否定できないと思う。こういう意味で加瀬委員は、こういう恩赦のやり方では、それは公職選挙法違反を助長する形になるということを指摘したと思うのですね。この点は大臣はよく腹に入れてこれだけきびしい問題になっているわけですから、今度の沖繩恩赦に対処していただきたいということを希望しておきます。
  131. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 保護局長にちょっとお聞きをしますが、これは法律の内容について不明確な点があるのでお聞きをするわけですが、恩赦法の関係ですね、御承知のように、恩赦については政令恩赦とそれから個別恩赦——いまお話がありました常時恩赦と申しますか——があるわけですが、調べてみると政令恩赦の場合には第二条に大赦のことが規定してある。それから第六条に減刑のことが書いてありまして、第九条に復権のことが書いてあるようです。それから十二条がすなわち個別恩赦——常時恩赦のことですが、これはもちろん大赦が抜けておりまして、特赦、特定の者に対する減刑とそれから刑の執行の免除と復権のことが書いてありますが、そこで政令恩赦の中で、ちょっと見ようが悪かったかどうかわからぬが、抜けておるのが特赦の規定ですね。第四条に規定がありますが、これが特赦で、それから第八条に刑の執行の免除の規定がありまして、これは政令でいかれるのかいかれないのか、これはちょっと条文を見てもわかりにくいのですが、その点をちょっとお伺いいたします。
  132. 笛吹亨三

    政府委員笛吹亨三君) 特赦は、有罪の言い渡しを受けた特定の者に対して行ないますので、これは政令、一般恩赦ではやりません。個別恩赦だけでございます。それから刑の執行の面でも同様でございまして、これは一般的恩赦ではございませんので、政令ではやりません。個別恩赦だけでございます。
  133. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 三案件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時四十九分開会
  134. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) これより法務委員会を再開いたします。  検察及び裁判の運営等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  135. 野々山一三

    野々山一三君 先般の質問を通して私の求めておる資料要求というものがもっと明らかにされなければいけないという趣旨で、この間相当長時間にわたって質問をさせていただいたわけですけれども、その結果約二十日間、それで速記録が届きましたのはおとといでございますね。その速記録と私が質問を通して求めた資料がどういうぐあいになっているかということを、先にちょっとこれは委員長並びに理事さんに知ってもらわないと、この問題の処理ができないのでちょっと申し上げますので、そのことを前段に申し上げ、ひとつ見解を求めたい。要求をいたしましたものはたくさんございますけれども、この中で議事録がないからこれでいいんでしょうねといって事務当局から、つまり専門員室及び参事官室から伺いが立てられた、私のところへ。私は、速記録を土台にしてそれは調べてもらわなければ困る。一つ何々で質問資料要求をしたわけではないのだから、それで全部出ていくべきものであるにもかかわらず出てこないから質問を通して明らかにして、それに答えてもらいたいということであるから、これだけじゃ困ると言ったんですが、だけれども、出てきたのはこれでいいですかときたから、私はこれは一つの参考にはするけれども、これじゃ困るということを明らかにしたんですが、そういう経過がある。それで実際にそれじゃその事務当局からこれでいいですかと言ってきたものの中で出たものはどうか。これには五件、細密に言うと八件なんですけれども、出てきたのは五件なんです、二十日間で。それから質問を通してこれは出していただけますねと、出しますと言ったものの合計を言いますと十八件あるわけです、十八件。裏を返して言うと十三件はいまだに出ていない。これはたいへん申しわけないんですけれども、全部速記録がないから速記録のもとを記録部から持ってきたから、それによって全部手はつけてありますから間違いない。これは二十日間かかっても出てこない。一体これはどういうことなんだろうか。会期は三百六十五日のうち何日あるんですか、あと何日国会の会期があるんでしょう、いまのところ五月二十六日までですね。そうするとあともう十何日ですけれども、これは二十日間も待ってなおかつ十八件のことが約束されているのにかかわらず五件しか出てこない、十三件は出てこない。その中で明々白々約束されているものも出ていないというのが実情なんです。これは委員長質問の前に委員長がおまとめになった、これは委員会として資料の提出を求めるということであったので、私は質問を留保して次の機会にということにしたわけです。結局私は、委員長はじめ委員会は、関係当局に無視された。もっと突っ込んだ言い方をすると、国会審議権をまるきり問題にしてないということではないかと思うんです。これは委員長並びに国務大臣としての法務大臣がいらっしゃるので、こういう事情についてひとつまず見解を承りたい、これが第一。  それから第二に、資料というものが非常に不完全である。まったく、出せばいいじゃないかという態度である。これはひとつ私は、官房長官あとで見えるから、——誠心誠意善最を尽くして出しますと、それこそが審議権を守ることであり、私は、国会議員として、また官房長官として当然の権利である、そこに誇りを持っているから国会議員としてやっているんだとおっしゃったわけですけれども、実際はどんなものが出ているかということをちょっと申し上げなければならない。皆さんのところに行っているかどうか知りません。私は全員にこれを配れと言ったんです、委員部を通して。  これは件名別に拾ってみますと、全部拾ってみました。これだけございますけれども、これだけではありません。これは一件に対する、つまり、秘密が解除されたものの中の代表的なものとして出されたものである。いいですか、これを見てみましょう。法務省は「司法書士認可に関する選考試験問題」、それが解除されている。それが一体「次官会議申合せ」に賛成するかしないかは別として、「国益に」云々ないしは「損害を与えてはいけない」、「重大な」云々というものにどうして合致するのか。外務務で言うならば、たとえばこれはやや中身的なもので「ネパールに対する農業物資の援助に関する日本国政府とネパール政府との間の書簡の交換に関する閣議決定(案)」、こういうようなもの。外務省は試験ではございません。演説の原稿です。あるいは条約に基づくものというようなものですから、まあまあ。今度は大蔵省へまいりますと何にもありません。それから文部省へまいりますと、「昭和四十六年度大学入学資格検定試験問題の決定について(伺)」というそういうものしか出ていない。試験の問題についての伺いというのです。これが国益とどういう関係があるでしょうか。こういうものを出せばいいではないか。  これは私は根本的にこの際意見を述べておきたいけれども、根本的にこれを次官会議でいうところの機密及び秘密というものだという文言及び概念でもってとらえるべきものであるかどうかということさえも全く疑わしい性質のものであるし、この資料そのものを出す態度というものは全く問題にならない。これでは私が二時間半もこの間言った趣旨というもの、あるいは官房長官や法務大臣が回を重ねて、これでは不適当だと思う、誠心誠意やりますと言ったものに値するものでしょうか。厚生省は「薬剤師国家試験問題」、そういうものです。それから農林省「八郎潟中央干拓予定地入植者選定第二次審査筆記試験問題」、そういうものです。第二は「外国産食糧(麦)の買入価格予定について」、これは価格の問題ですから多少は、秘密がいいかどうか、国益云々に関することかどうかは別として、あれですけれども、通産省、「対華円借款の使用期限の延長等に関する交換公文案について」。運輸省、「ノルウェー・ウィロック通商海運大臣の意向についての(意見具申)」ということですから、原稿の原稿の原稿というたぐいのものでしょう。しかし、これも試験問題でないことだけは間違いないでしょうな。多少価値がある——価値があるというか、秘密と主張される価値があるのかもしれません——かもしれませんという程度です。郵政省、「無線従事者国家試験の試験問題の決定について」、つまり試験。労働省、やっぱりこれは同じもんですね、「労働金庫の検査及び調査決定について」。建設省、「昭和四十六年一級建築士試験の合格者の決定について」、これが「秘」ですな。  ——というふうに並べてまいりますと、みな——ここのごときは、これはごらんいただけばわかる。法務大臣、ちょっと見てくれ。この紙が、あなた見えますか。——見せましょうか。これは、赤い字が書いてあるのは全部これ試験なんですよ。全部試験なんですよ、全部試験なんです。全部試験です。試験問題。これが、一体国益・国損に、どういう関係があるのでしょうか。「次官会議の申合せ」であるあの二項の——よしあしにかかわらず、一体試験問題というものを、これは試験問題ですから前に漏れてもよろしいということにはならない。それを秘密、国益・国損という文言でもって規定づけるような性質のものであるかどうかについては、議論はありますよ。ありますから、官房長官は、再検討しましょう、それには法制局長官のもとで試案をつくって、皆さんの意見を聞きます、その案を出しますと、こう言った。それで、社会通念上適法なもの、こうおっしゃった。それと一体——委員長にもごらんいただいていい。これは試験問題ばかりです。これが一体、資料と言えるでしょうか。まずそういう、私が根本に言うこの秘密問題という問題以前の問題として、国会が要求した秘密問題の中で解除されたというものの中の事例を現物をもって、件数をもって明らかにしなさいと言った。それで出てきた、ものは。確かに、出さないとは私は言いません。出したけれども、この中身が、この「次官会議の申合せ」に言うような性質のものと、どういう関係があるんでしょうか。それを適法だとお考えになるんでしょうか。  もう一回読み上げましょうよ。「秘密文書の基準及び種類」、「秘密文書は、昭和四十年四月十五日事務次官会議申合せに基づき、次に定める基準により、極秘及び秘の2種類に区分され、それぞれ当該文書に極秘及び秘の標記が付される。」、「極秘」とは「秘密保全の必要が高く、その漏洩が国の安全、」——「国の安全、」「国の安全、」ですよ。——「利益に損害を与えるおそれのあるもの。」——国の……損害を与えるおそれがある。試験問題が出たら、国の損害が起こりますでしょうか。秩序が乱れる、管理が乱れるという日本語なら、私はまあまああると思いますね。これが一体どうして国の損害に影響を与えるのでしょうか、2番目に「秘」。これは、「極秘に次ぐ程度の秘密であって、関係者以外に知らせてはならないもの。」、これ、この第二の、その国益・国損にかかるもので、「国の安全」にかかわるものに次ぐものだという性質のものでしょうか、この試験問題は。だれの常識から考えたって、私はこういう資料をもっともらしい顔をしてここに持ってきて、これが資料でござんすとおっしゃるのがよくわからぬのです。まず根本的に第二はそこの点について、ここまで詳しく言ったのだから見解をまず述べてもらいたいと思います。  そうして第三番に言うことは、速記録で、厳密に私は速記録を十回くらい読みましたよ。全部しるしがつけてありますよ。これは人の名誉に関することに及んではいけないから、全部私なりに調べてみました。そうしたらこうなりますわ。書いてあることに対して全く、手はついておるが不十分というものが歴然たるものは、政府関係機関というものには一つも、私はあれほどやかましく言っているのに一つ資料が出ていない。政府関係機関の中でも、たとえば防衛施設庁というようなものはあれは政府関係機関ですか、何ですか、あれ部内でしょう。行政機関でしょう。ただの一言も出てない。何にも書いてない、この資料の中に。この一覧表の中にだって何にも書いてない。皆さんのところにだって行っているはずです。防衛施設庁というものは何にも書いない。機密も、秘密もくそもない。何にも書いてない。外務省もそうだ。なぜ出さないのか。なぜ触れないのか。もっと悪口を言えば、出す気がない。野々山のやろうがうるさいことを言うからしょうがない、まあ適当なものを出しておけ、そういう態度でしょう。私は大臣にはそういう失礼なことは言いませんけれども、三番目に言うことは、ここに呼んでおる政府委員諸君に、生まれた日から今日までの経歴、学歴、職歴、そして日本語というものがどういうもので、人のこういう公開の席上におけるやりとりというものがどういうもので、どういうふうに意識するか、全部一人一人答弁してもらいたい。そうしなければ、これほどばかげたことが起こるんですよ。これほど私はおこらなければならぬ理屈はないと思うけれども、あまりにもひどいから言うんです。あまりにも資料というものを求めた者に対して政府を代表する官房長官が、あれほど誠心誠意最善を尽してやります、それがわれわれの行政権に対する国会、つまり国会調査権というものに対応する、また自分も国会議員としての地位を、誇りを持ってやっている立場なんだから、そこまでことばを使って言われた意味というものを解したならば、事務当局の諸君は、一体何という態度でこの国会委員会質問資料要求、そういうものに臨んでいるのかということなんです。まずこの三つだけを冒頭に答えていただきたい。  これは根本的に、委員長にも繰り返して申し上げますけれども委員会として、国会として、与党とか野党じゃないと思いますよ。国会としてかくかくしかじか資料を求めますといった、国会調査権に基づいて資料は要求されたのだ。にもかかわらず、申し上げたような現状になっている事実というものを土台にしてほかの審議ができますか。私はこの前も指摘したのだ。国会議員なんというものは課長が、この証拠によると、秘密というふうに押せば秘密ですからしゃべれませんと言われればそれで一切口がいれられない。偉そうなことを言って、バッジつけてこうやっているだけだ。そんなら憲法五十一条やめちゃったらいい。憲法五十一条に挑戦しているのが政府委員であり、事務当局である。そういうことになるのじゃありませんか。この根本について、まず委員長も見解を明らかにしていただきたい。委員長だけで困るならば、ひとつ理事の諸君も委員長を中心にして見解を明らかにしてもらって、同時にまた私の質問大臣以下関係者が答えていただきたい。それがなければ次の質問に入れません。そのことを申し上げておきます。
  136. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 野々山君からこれは当委員会におきまして、政府当局の内閣官房長官等に対する要求の処理等につきましては、私どもも迅速にこの当委員会に提出され、そして要求者である野々山君の手元に行くというようなことでおったんですけれども、またそれにつきましては、なお委員部を通じましても、関係各省に要求して、それで急がしたわけでございます。ただいまお話を承ると、あまり御期待に沿うような、数量的にも資料は来ていないという御不満、私もまことに遺憾だと思っております。それからなおそのせっかく提出されたこの資料等につきまして、内容資料としての、あなたの御指摘になったような試験問題等々で、常識的に言ってもちょっとおかしいと思います。そんなような資料が提出されただけだということの御不満は重々わかります。したがいまして、今後さらにこの問題につきまして、当理事会におきましても、あらためて打ち合わせしまして善処したいと思います。  また、きょうは先般資料提出についての約束をいただいた官房長官がおいでになりますので、その上でひとつ野々山委員からあらためて確認し、またあらためて要求していただきたいと、このように思うわけでございます。
  137. 野々山一三

    野々山一三君 第二、第三の問題について答えてください。
  138. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実はこの資料については、私みずからは知らなかったわけで、官房長官のほうから出したわけでございますが、ただいまお話の試験問題だけに集中しているということで、中身を拝見しますと、まさにそのとおりで、これでは率直に言って資料にならぬとおしかりになるのはごもっともだと思います。
  139. 野々山一三

    野々山一三君 第三はどうです。きょう出席している諸君は全部名前出ているから、全部言ってください。もうここまでくると、それこそ日本語知っているのか、速記録というものを読めるかどうかわからない人たちが、みずから政府委員と言われたって、これはなんぼ議論したって、意味ない。身分証明します。身分審査します。ちょっと出席の政府委員の名簿を持ってきて……。
  140. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 政府委員、どなたかいまの野々山委員からの御質問に対して御返事いただきたいと思います。
  141. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 四月二十日の当法務委員会におきまして、野々山委員から仰せのありました各省庁から提出すべき資料につきまして、確かに官房長官が提出するようにお約束をしたわけでございますが、官房長官のお答えに基づきまして、内閣参事官室といたしまして、各省庁に直ちに御連絡申し上げましたわけでございます。先生には私のほうの参事官が伺いまして、御趣旨を承わり、今日までに提出いたしました資料は、お手元にございますように、各省庁の秘密文書取扱規程、秘密という文言を用いている法律の規定の例示、秘密文書の種類、種類別件数、それから解除された秘密文書の件数並びに具体例、秘密文書の決定権者及び保管方法、以上につきまして当委員会を通じて、各省庁から提出のありました資料をお出し申し上げたわけでありますけれども、なお速記録に基づきまして、さらに必要な書類を提出すべく速記録ができ上がりまして検討いたしましたところ、先生の御指摘のとおり、われわれが当日委員会承知いたしました以外にありましたことがわかりました。たとえば、先ほど御指摘のありました政府関係機関等の資料につきましては、速記録によってあらためてこれは出すべきであるというように承知をいたしまして、現在各省庁にたいへんおくればせながら連絡をいたしている次第でございます。  なおその間、先生と私ども参事官との折衝のお話し合いの過程におきまして、いろいろ御注意がありましたことも事実でございまして、できるだけその御注意に基づきまして、各省庁には御連絡を申し上げてきたつもりでございますけれども、なお、ただいま御指摘のように、いろいろ不備不足のあった点につきましては、今後努力を申し上げるということで、官房長官のお答えになった趣旨にも沿うように努力をいたしてまいりたいと存じておる次第でございます。
  142. 野々山一三

    野々山一三君 いま大臣も言われた試験問題ばかりみたいなものじゃ、とても君の言うとおりのものじゃないという御弁解ですけれども、その件数別に見ますと、たとえばあれですね、外務省なんというのは極秘、秘というのは、この前は何か秘というだけで束になって十万五百八十八でございます。それが今度二つに分けられて極秘、秘ということになってきた、出てきているものは四件ですよ。それがたとえば、愛知さんが何々会議における演説の草案というようなもの、それが極秘ですよ、それは解除された事例の中の一つ、一体大臣いかがでしょう。あまりとがった言い方をするのもあれでしょうけれども、常識的に見てどうなさるおつもりでしょうか、遺憾だったということだけでは、これは審議になりませんね。どうするか言明されなければ困る。それでなければ先ほどの参事官の御答弁のように努力します、二十日間かかってようやくいま言ったような百のうちの二か三くらいに値するものしか出てこないんですからね、いつまでに出すんですか、どういうものを出すんですか。それでなければ、これは秘密というものの是非は別ですよ、賛否は別ですけれども、いまあなた方の常識でいうと、外務省では十万五百八十八件ある、その中の四件が愛知さんがどっかでしゃべる演説の原稿文であるというようなもので、二十日間待ったらそれだけだ。  あなたにもう一ぺん聞くけれども国会は何日一年のうちに開かれるんですか。そのうち二十日間というものは何日の何%の比重になるんですか。そういうことをこれはあなたに聞かなきゃ、えらい申しわけないけれども、努力しますということばでは、これは信用できませんよ、これはいかがでしょう。与党——与党というか、ほかの議員さんだっていますが、何回も言うようだけれどもあと十何日しか会期はないですよ。その速度でいったら、いままでかかった日数より短いんですからね、残った会期。いつまで出していただけますか。私はおとといも質問云々というお話がありましたけれども、お伺いしたんです。二日間待ってもらわなければ質問するかしないかわからない。何人いるんでしょうか、こういうことをやる人間が行政機関には。努力しますということばで世の中ずっと通れるというなら、憲法五十一条は何と理解されるんですか。そこにまで触れて見解を。そしていつまでに出すということを明らかにしてもらいたい。  それから、あなたのいまの答弁に食いついては悪いけれども政府関係機関というものが出ていません。たとえばというのがありました。私がわざわざたとえば防衛施設庁というようなものがあるが、これは関係機関なんですか、政府機関なんですかという質問をしたんです。お答えになっていないでしょう。これはだれがつくったんです、このこれは。防衛施設庁なんという名前はどこにも、日本じゅうさがしたってないや、この紙切れに。防衛施設庁なんという名前はどこにもない、見てごらんなさい。実際せっかく要求している。言っていることは、記録を見ましたらわかりましたと言っていながら、わしがわざわざ言うても、それにも触れない、何の資格があってそういう態度をとるんですか。野々山質問だから問題にしないというなら、そう言いなさい。阿部委員長質問なら答えるというなら、そう言いなさい。はっきり言いなさい。きれいごとなんか言ったってしようがないんだから、そのことに、ついて答えてもらいたい、両方から。
  143. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 私どもといたしましては、もうできる限り努力してまいったつもりでございます。なお、先ほども申し上げました、政府関係機関資料につきましては、確かに速記録によって確認をいたしましたので、直ちにその範囲並びに連絡すべき各省庁についてただいま至急提出できるように進めておるわけでありまして、今国会中にはと申しますか、今週じゅうにでも各省庁にすみやかに提出するように依頼しようと思っております。  さらに、先ほど御指摘のありました防衛施設庁でございますが、これは各省庁の一覧表の中に外局——国務大臣を長としない外局はその省庁の中に含めてございますので、件数も防衛施設庁の場合には防衛庁の内数としてあがっているわけでございます。
  144. 矢山有作

    ○矢山有作君 いま話を聞いていると、速記録を見てからどういう資料提出の要求があったということを知ったというお話のようですがね、大体皆さんここへたくさん何しに来ておられるのですか。私もたくさんの委員会を歩いてみましたけれども、大体質疑をやりおるときに、大体はこちらが資料要求をし、委員長が、ただいま要求の資料は提出できますかと言われたものは必ずそこへ並んでおられる方がメモされて帰って、そうして出してこられるはずですよ。一体、この間の質問、私は欠席しておったからどうなっておるか知らぬけれども会議録ができるのを見て初めてその資料を要求されておるのがわかったというようなことでは何しにここに来て並んでいるんですか、皆さん。しかも官房長官自身が提出を約束した資料なんでしょう。そういう政府委員の態度というのか、あるいは説明員として出ておられる政府関係の役人の皆さんがそういうことであるということは、官房長官すらないがしろにしておるじゃないですか。野党をなめるだけじゃない、あなた、大臣もなめているんじゃないですか、与党もなめているんじゃないですか、そんな怠慢なことじゃ困りますよ。そして少なくとも資料を出すときには、その資料が現在はどうしてこれだけの資料しか手に入らなかった、残った資料についてはどういたしますということを言ってくるのが常識じゃないですか。しかもそれを何にもやっていないんですね。そんななめた審議というのはありませんよ、委員会をなめた審議というのは。法務大臣、あんたおそらくこの間のその野々山委員資料を要求されたときにも出ておられただろうと思うのですがね。そういう政府委員の態度というものは、法務大臣、あなたを目の前に置いて、あなた自体をなめておる話ですよ、あなたも国会議員なんですから。席は国会議員として、大臣になっておるんですから、そういうようなことじゃ困りますよ。野々山委員がおこるのはあたりまえの話ですよ。おこっているんじゃないよ、審議をやるためには必要だから言っている。そういう怠慢に対して、これはいけませんということを申し上げておるんです。これはこの問題については大臣と、あなた、参事官として出ておったならば、その間のいきさつというのをきちっと説明して、そうして悪いところはわびる、そういう説明なんかも国会というものの立場考え、あんた方の立場考えた態度をとってほしいと思いますね。
  145. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 四月二十日の当委員会に私も末席を汚しておりまして、野々山委員の御指摘になった資料要求については、私なりにメモをいたしたつもりでございます。しかしそのときに御要望のありました資料の中身についてなお大事をとりまして、参事官室の参事官を伺わせまして、お忙しい中をるるお伺いをし、また御説明もいただきまして、そしてできるものから逐次資料を整えて先ほど申し上げました五点の資料を各省庁から提出いただいたのでございます。  その際に私の書き漏らした中に、政府関係機関というものがございました。この点についてはたしか五月の六日、失礼いたしました、四月の終わりごろに先生からもたしか政府関係機関があったはずだという御指摘がありまして、それではなお速記録ができ次第調べまして、直ちにそういうことであれば確認の上各省庁に依頼するようにいたしますということを申し上げたように聞いております。したがいまして速記録ができますと、直ちに参事官室にそれをいただきまして一々検討いたしましたところが、先生御指摘のとおり、この政府関係機関についての部分が、われわれが各省庁に連絡した中から落ちておりました。この点はおわびを申し上げる次第でございます。
  146. 野々山一三

    野々山一三君 外務省は何ですか、何ですかという抽象的な言い方ですけれども政府行政機関でしょう、違いますか。あえて次にそのことを言いますけれども、全部出しますと言ったのは官房長官です。外務省の「が」の字もついていませんね、外務省の規則だけ。外務省のがの「字」もありません。議会の決定ですから、どういうことか知りませんが、出さなければなりません。決定をひっくり返す何かがあるんですか、ないでしょう。外務省は出ていない。
  147. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) ただいま御指摘の点は、おそらく各省庁秘密文書取扱規程のことではなかろうかと思いますが、この規程は各省の中で外務省だけはこの規程自体が「秘」扱いになっているというように伺いまして、これは資料の中に入っておらないのでございます。
  148. 野々山一三

    野々山一三君 聞いたか聞かないかは君のかってな判断ですよ。委員会政府を代表して答弁されたのは官房長官、出しますと言った。そのときにあえて官房長官発言された要旨を思い起こすと、たとえば暗号などもあり、あるいは国際的な関係もあって、中を出すとそれがまた取り合いっこになってしまうことなどあるので慎重にしなければならないけれども、——ということはありましたけれども、出すということについては変わりのない発言なんです。いまあなたがかってな判断をしただけだ。いま、私に言わせると、生まれて初めてあなたのことばから、外務省は秘密取り扱い規則が秘密だということになっているから出せませんと、かってなことを言った。官房長官政府を代表して、出しますと言った。あらためて聞くけれども官房長官発言否定するのですか。否定するか、しないかを……。
  149. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 否定するつもりは毛頭ございません。
  150. 野々山一三

    野々山一三君 それならば当然出すのですか。
  151. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) これは、お出しになる各省庁の判断かと存じます。
  152. 野々山一三

    野々山一三君 そういうことになりますと、また議論になりますよ。この、あなたのほうから出ている、私が求めた、だれが秘密というのを指定するかという地位を、つまり「決定権者及び保管方法一覧表」というのを出しなさいと言って出てきた。それで一番下には課長というのが秘密と言えば出せないことになるのです。各省庁の規則を一ぺん全部読み上げてください。その中にはもっとひどいのがある。課長及びそれに準ずる者——準ずるとはなんです。課長心得というかってなものも、準ずるといえば準ずるだ。そんなものは職制上、何もない。公法上何もない、準ず者は。それが「秘密」と言ったら、それで秘密ですよ。いかがですか。  秘密ということばについてもう一回、秘密とその関係、いま参事官が答弁したことにからんで、これはいろいろな関係法律を全部、秘密というものに対する関係法律を全部抜粋されて出ていますから、それを管理される立場にあるのは罰則によって保護されるということですから、法務省、警察庁、検察当局、それが最後にそれによって、これは秘密と書いてあるから「秘」であるということで告発することができますね。そういう関係なので、当然、法務大臣及び刑事局長にもそのことについて聞きたい。これは土台の話になって相済まぬけれども、この根本が解決しない限りは、これは何でも秘密と言えば秘密なんです。参事官のいまの答弁がああいう答弁である限りは、当然、刑事関係者である、窓口である刑事局長もお見えですから、そういうことによって当然刑事上の処置を受ける、あるいは罰則によって保護されるということを何回も答弁されているのですから、その関連を明らかにしてください。当然の義務があります。
  153. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 内閣のほうから御提出されました資料の中に、秘密という文言を用いている法律の規定の例示がございます。この内容にございますとおり、いろんな法律でこの秘密をそれぞれ保護いたしております。この秘密の保護をいたします方法といたしまして、秘密を漏らした場合に罰則をもって保護している法律もございますし、当該関係者に対して一つの訓示的な意味でこの秘密の漏示を禁止しているのもあるやに思うのでございます。罰則をもって保護しております条項につきましては、当然この罰則の適用の際に法律の趣旨に従いまして何が秘であるかということがそれぞれ具体的事件に即して判断されるべきものであろう、かように考えているわけでございます。
  154. 野々山一三

    野々山一三君 その問題については答弁が不十分ですから、私はあらためて官房長官がお見えになってから確めたい。  たとえば先ほど言った防衛施設庁ですか、あれは関係機関でもあり、防衛庁という範疇の中に入る、こういうお話でしたね。そこで防衛庁の調査課長ですか、お見えですから聞きますけれども、この出てきております一覧表によりますと、防衛庁なら防衛庁だけとりますと、極秘と秘だけしかない。機密の中の庁秘というのが七百四十九件ある。つまり、だから平たくいえば機密、極秘、秘という三種類しかない、こういうことですか。
  155. 半田博

    説明員(半田博君) そのとおりでございます。
  156. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、この前の委員会のときにお見えだったかどうか私知りませんが、機密、極秘、秘、取り扱い注意、部外秘、この五段階あるということを、件名をあげて指摘をしたのですけれども、それは私の間違いですか。
  157. 半田博

    説明員(半田博君) 以前におきましては部外秘というものはございましたけれども、これは三十三年の訓令によりまして機密、極秘、秘とこの三段階に区分けられております。秘でございませんけれどもそのほかに取り扱い注意というのが訓令上規定されているということでございます。
  158. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、取り扱い注意というものは、いわゆる法条に言う秘という範疇には一切入らないということですか。
  159. 半田博

    説明員(半田博君) 一般的に申し上げますとそういうことになると思います。
  160. 野々山一三

    野々山一三君 一般的にということばでなくて、私は一般的にとは聞いてないので、そのものずばりで答えてください。
  161. 半田博

    説明員(半田博君) これは判例の立場その他がいろいろございますので、いわゆる実質秘というもの、実質的に秘であれば刑罰法規で保護するに足りるというような判例というのも一部ございますので、そういう意味で一般的にと申し上げたのでございますが、大体、取り扱い注意は秘に入らないと解釈していただいてよろしいと思います。
  162. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、取り扱い注意というものを書かなかったのは完全に秘じゃないというふうに解していいわけですね。
  163. 半田博

    説明員(半田博君) 秘の程度に至らないものでございます、取り扱い注意と申しますのは。
  164. 野々山一三

    野々山一三君 それではずばり言いますけれども昭和四十六年度業務別計画取り扱い注意、四十六年三月というのがありますけれども、そういうのはありますね。
  165. 半田博

    説明員(半田博君) その文書私ども手元にございませんのであれでございますが、業務計画それ自体は秘になっております。その取り扱い注意となっているのはおそらく概要か何かではないかと思います。
  166. 野々山一三

    野々山一三君 うそを言っちゃいけませんよ。現物がありますよ、現物があります。君の言っていることと違うんだ。現物がある、現物が。これは現物じゃないというのですか。
  167. 半田博

    説明員(半田博君) ちょっとお見せいただけますか。
  168. 野々山一三

    野々山一三君 君、見せくれとえらそうなことを言うけれども、そういうものはないと、しかし同時に、表明したことは違うだろう、ぼくの言った名前と。昭和四十六年度業務別計画、だからそうじゃないということばを使ったんで、そうじゃないという表現を名称として使ったんですね。こういうものは君に簡単に見せるわけにはいかぬのだ。野々山のやろうどこかから盗んできたのかと言われると困るからね。うそを言わないではっきりしなければ、幾らどんな表をつくってこられても、この間から私がやかましく言っているように、私ども調査権を持っているという抽象的表現の中に生きているだけなんですよ。いまのあなたのことばのやりとりで言えば、このことだけでもって何百日でもやらなければならない。あるいは手段を講じてでも持ってこなければならない。そうして中身は、私はこれは内閣委員会なりあるいはその他の委員会で、予算委員会でやるのが本来でしょうから、中身のことについてはそんなに触れないことにしますけれども、ぼくが言おうとする本質は、国会における審議権というものが君のいまの答弁によって全部消えてしまうんですよ。消えませんか、その表現一つによって。ここに出てくる関係……と言っては悪いが、報告書、資料と称するもの、それだけでもって消えてしまうでしょう。
  169. 半田博

    説明員(半田博君) 業務計画について私が直接指定したりしておりませんので、ちょっとその点自信はないと思うのでございますが、あるいは業務計画の一部分が取り扱い注意として出ていることがあるかもしれませんが、その点は調査をいたします。
  170. 野々山一三

    野々山一三君 調査をするということばというのは、非常にあなた方にとっては便利なことばですけれども、四月二十日からきょうまで何日かかりました。私はまことに申しわけない話だけれども、余分なことに触れますけれども、これは速記の原文ですよ。あなた方はもしまじめにぼくの質問に対して適切な資料を出そう、一つ何々をよこせと言ったわけではないのですね。質問によって求める資料内容を明らかにしてくれと言った。委員長からそういうお話で私は発言をする機会を与えられた。いつまでたっても出てこない。だから私は全部これは手で書いた速記なんですよ。一字も違っていないと思う、活字になっているものと。これはすでに先月に私の手元に入っているのです。あなた方は努力しますなんということばでもってそれを済ませばそれでいいというならば、もう一ぺん聞くけれども、あなたの地位は何ですか、国家公務員でしょう。国家公務員であったら国公法上にいう職務専念の義務を果たしたかどうかということを聞かざるを得なくなる。私みたいなそういう専念の義務とかなんとかに縛られていない人間だってこういうものをつくっている。そしてあなた方を指摘しているわけです。どうするのです。
  171. 半田博

    説明員(半田博君) 先ほど申し上げましたように、私どもとしては、秘密の指定権者が各局の各局長、課長ということになっておりますので、それぞれ連絡をとりまして誠意を持って調査したつもりでございますけれども、その業務計画につきましては、私が手にする権限がないものでございすまから、この点は再調査をいたしましてお答えを申し上げたいというように存じます。
  172. 野々山一三

    野々山一三君 私は身がってな話で申しわけないですけれども、また十六日の日に手術することになっておりまして、こういううそのことで長い時間やることについてはほんとうに自分をかわいがろうという気持ちだったらできないことです。いま官房長官がお見えになったから、官房長官に対して私が同じことを質問することは避けさしてもらいたい。全部官房長官によく話をして、官房長官から総括して答弁してください。いやなら私はやりますよ、命がけでもやりますよ。
  173. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 衆議院会議がございまして、たいへんおくれました。  いままで、少しここで首席参事官からレクチュアを受けましたので、確かに、野々山委員指摘資料の提出について、関係機関についての資料提出が、参事官室も努力をいたしましたものの、まだまいっておりませんことは、私も遺憾に思います。で、可及的すみやかに関係機関の文書取扱規程はお出しするということをここでお約束をいたしたいと思います。  それから外務省の問題につきましては、先般の委員会でもお答えをいたしましたが、こいねがわくは、野々山委員の御了承を得、また、委員長でお取り計らいをいただけるものなれば、その問題については、後刻理事会で御検討をいただき、理事会で私ども立場を御説明を申し上げることができれば幸いでございます。これは、まあ私のほうからのお願いでございます。  それからいわゆる秘密の定義というやつでございますが、何回か、私も、委員会やら討論会で、申しておるところでありますが、秘密そのものは、結局、その事柄の漏洩が国民の利益、国家の安全等に損害のおそれのあるものを——というふうな、逆な形からの定義づけをいたしております。秘密とは、少し、その事柄の漏洩という事態が国家利益をそこなうおそれがあるという説明のしかたでございます。ただし、この問題につきまして、各省庁の業務の実態から見て、されば具体的な基準をどこできめるかということになりますと、これは、画一的にこれをきめることは、確かに非常に困難な点が多くございます。したがって、具体的基準をここで示せとおっしゃいましても、そのことは、残念ながら、明瞭にお答えする能力を持ち合わしておりません。  それから、先般来申しておりますように、今回の本委員会等でのお取り上げ方等に鞭撻されて、私どもとして、いわゆる秘密取り扱いの解除と、そういうところへ視点を合わした努力は、今日、その検討を指示しておる段階でございます。  必ずしも、野々山委員の御質問に整理してお答えできたかどうか、私も中途から参りまして、わかりませんが、一応、いま私が整理いたしましたところで、お答えを申しておきます。
  174. 野々山一三

    野々山一三君 官房長官、申しわけないですけれども、もう一ぺん一言だけ繰り返しますけれども、あなたも、忙しいから事務当局にやらせるんでしょうけれども、一ぺん速記録をよく見てください。私が、委員会を通して、君の質問資料要求の趣旨を明らかにしてくれということで、この前、あなたにもおいでを願って、言ったわけですから。一つ何々、一つ何々ということは言ってないですけれども、速記録によると——全部私は、これは精査しましたよ。あなたのところの部下職員だか何だか知りませんが、私は、これ、ごらんに入れましょうか。この印刷物と違いますけれども、これ、全部記録部から出させましたよ。情熱さえあれば……。あなたに質問したのは、四月二十日でしょう。
  175. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そうであります。
  176. 野々山一三

    野々山一三君 きょうまで何日かかりました。私全部これ原文のものをつくりましたよ。こちらに言わせると、参事官に言わせると、速記録が出てきたのはきのうです、きのう出てまいりましたから読みましたら、足りないところ一ぱいあります。それであなたおっしゃるようなそういう答弁で、気持ちはわかりますよ。あなたという人、私はわかるだけに信用できないですよ。実際の数字を言いますよ。もう一ぺん、いままでに要求したものは、事務当局からいったのは六件、これでいいですかという話でした。速記録で確かめなければ私はいいとは言えない。けれどもこれとこれとは少なくとも追加してもらわなければならぬことだけは明らかだということで、ちょいちょい出てきたものを追加してもらったことは確かだ。けれども、出てきたものはまあまあと認定されるものは五件です。提出されないものが十三件です。官房長官自身が私と質問で約束されたものがたくさんありますけれども、その中で六件は出ていません。初めてあなたの名前をここに出します。一つも出ておりません、あなたが約束されたものは。あなたは事務当局になめられているのか、無視されているのか、野々山のことだからいいじゃないかということなのか、見解をお聞きしたい。そしてその資料といもうのは不足または不完全なものの内訳が、政府関係機関でいうならば外務省、先ほど申しました防衛施設庁なんというのはいろいろな理屈をつけられたけれども政府部内ですよ。全然出ておりません。しかも——聞きたまえ。三種目、つまり機密、極秘、秘以外にない、こういうことを言っているけれども、実際は私は種目別にこう並べて、年次別変化の状況を指摘をして、あなたにその変化の状況及び理由を明らかにしなさい、秘密が広がっているではないかということを言ったことは御記憶があるでしょう。そのように、たとえば防衛施設庁というものなんかは明らかにこれは部外秘ないしは取り扱い注意というものが現物がございますよ。あなたのほうがくれたんじゃないけれども、私は持っております。どろぼうだというのならここで逮捕しなさい。しかもあの答弁によれば、事実に基づいてそれは刑罰に処せられることもある。そんなら秘密じゃないか。捜査課長の答弁によればそういうことだ。そういうことはこの資料の中には全然出てないですよ。件数も、種目も並んでいない。そういうのが外務省ほか二件ある。それから今度は資料を出す態度だ。あなたが先ほどお見えにならぬときに、私はあなたの態度というものについては文句を言うつもりはないけれども、気持ちをちょっと述べた。三原則というものはあなたが指摘をされて、ある段階までは秘密にする。ある時期がきたら云々、ある時期がきたら解除する、そして本質は、できるだけ公開をするということはたてまえだということで、御指摘を私は受けて立つ、そしてあなたができるだけ公開するというふうにおっしゃったけれども、これを一ぺんごらんいただけますか。いま法務大臣に見てもらったが、この中の八割は試験問題です。大学入学試験問題。これを秘密にするということ自体が私は採用試験の取り扱いについてというような、常識的に言うなら、試験問題が前の日にどこかにいったらよくないということは、あなたの言われた社会通念上の問題である。それをあなたの言う国益を害する、国に損害を与えるとかいうものじゃない。資料提出の態度を問題にしているんですけれども、これだけたくさん持ってきたんだ。重たいけれども一つ一つごらんにいれます。外務省は十万五百八十八件で、たった四件出てきているんです。愛知さんがどこかで演説した、そのときの演説の原稿だ。それを私が指摘するのは、そういうものでも出せというから出せばいいじゃないかと、非常に悪いことばですが、野々山の程度だから出せばいいじゃないかということで処理されているのか。あなたの意思とは違って、あなたは誠心誠意努力をして、国会の権威というものを、調査権というものの地位を守るためにということばを使われたわけです。そのことばを無視して出てきたのが試験問題だけだ。薬剤師の国家試験という試験問題、いかにも適当にやっておけばいいじゃないかという、そういう態度じゃ、それを少々常識的に言うならば、適当にごまかせばいいじゃないか。行政権者はすべてを持っているんだ。それをきめるのは課長以上だ。課長以上じゃない、課長及び課長に準ずる者、これはみんな規則に書いてある。あなたはそれを御承知ですか。準ずる者というふうに書いてある。準ずる者とは何だ。課長心持ちというか心待ちというか、そういう者まで準ずる者かといえばそうかもしれない。そういう者を広くいえば、もう国会では審議ができない等々を合わせて見ると、十三件資料出てないですよ。あらためて言いましょう。私は記録で明らかにした限りにおいて、問題にすべきものは十三件まだ出てない。すみやかにというようなことをおっしゃらないで、気持ちはそういうことで、しようがないじゃないかというかもしれないけれども、せめて病人のわたしだって、連休中こういうものを記録部へ言ってつくらしたんです。官房長官わかりますか、私の言っているのが。何ですか、あなたの配下の諸君がそういうことをやらないで、記録をきのうもらったから、それを見たら手落ちがありました、それでいいんですか。ちょっと私審議に入れない。あらためてもう一回聞きますよ。それが一つ。  それから先ほど外務省の問題については、理事会で何とかいう話なんですけれども、あなたはこの間政府関係機関の云々については出します。きょうになったら言いかえるのですか。あなたは口は幾つあるんですか。私はあなたとは長い、十年もおつき合いしておるから、あなたという人間を信じていた。あらためて私のあなたというものを見る見方をこわさないでください。この間約束したことばどおり出してください。約束してください、外務省含めて。私は理事会云々という話なので、私は理事じゃないので、要求した時点で私は何にも関係ない会議で文句を言われちゃ困りますけれども、だから私はこの間わざわざあなたがそういうことを言うかもしれないと思ったわけでもないが、秘密委員会ないしは秘密理事会でということばさえも使って、あえて内容を精査してこれが秘密だというようなことになるという客観的な答えの出るような審査ができるようなことにしようじゃありませんかとあなたに言ったはずです。そういうことをつけ加えてあらためて見解を承ります。  それから三番目には、防衛施設庁に部外秘というのがあるんですよ。もう一度繰り返しますが、あるいは取り扱い注意というのがある、現物持っている。事実に基づいてそれが犯罪になる場合もあるというんだな。それだと結局は、いわゆる法律上の秘密ということばに縛られる、それを漏洩したということになると刑罰上の保護云々ということばによって、本人は逮捕されるかもしれない、拘禁されるかもしれない、裁判というものを受けなければならないかもしれない、その結果無罪になったといえども、その間をその人は償い得ないことになるんですよ。それがおそれがあるということば、あなたが副長官のころでおきめになったことば、おそれということばの中にみんな入っている。あの申し合わせの中にあるおそれということばの中にみんな入っておる。入っておるというよりも、ひっかけられる、そういうことばが入って運用されているところに問題がある、見解を聞きたい。  そうしてあなたは最後に、そういうものについては、私自身はいま十分な材料持ち合わせていないので、法制局なり内閣法制局に頼んで原案をつくって、そうして皆さんの御意見を聞いて、適正な処置をしたい、そういう資料を出しましてこのことをお答えになったんですね、約束なさったんですね。それはやりますかどうですか。もう一ぺん念のために以上四つのことを聞きます。
  177. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず政府関係機関等のものが、今日提出されていない、これは怠慢であります。おわびをいたします。そうして御趣旨に沿って早急に提出をいたします。  それから外務省の文書取扱規程そのものが秘密になっておる。したがいまして、これの取り扱いにつきましても、私は前回委員会で外務省文書取扱規程そのものが秘密でなければならない理由については申し述べましたが、これを資料として提出することにつきましては、先ほど申しましたように、野々山委員の御了解を得られるならば、それについての扱い方は委員長のほうで御協議いただければ幸いである、このように思っております。端的に申し上げまして、資料として外務省の文書取扱規程について当委員会に提出をいたしますということには、いささか私も抵抗を感じておるということを率直に申し上げます。  それから四月の二十日以来今日までの時日がありながら、私がこの場でお約束をいたしましたことにつきまして、十分御納得のいただく資料の提出がなされていないということについても、すなおにおわびをいたします。そうして、これにつきましては、私の役所、私の役所ということばは語弊がありますが家来、家来じゃございませんが、大体人のいない役所でございまして、頭悩だけでものを処理する機構が非常に多いわけでありますもんですから、その点は確かに事務的に野々山委員のスピードについていっていないと私も思います。したがって、首席参事官がきょうは出ておりますので、首席参事官が野々山委員に直接お伺いをして、それぞれ納得のいく資料が提出されるような背景をまず整えたいというふうに思います。以上でございます。
  178. 加瀬完

    加瀬完君 委員長、ちょっと関連して。  誤解があるといけませんので申し上げますが、野々山委員のいま指摘しております点は、あらためて新しい問題を提起をして、それに政府のほうの答えがないということを申し上げておるわけではない。官房長官がお約束をくださいましたので、そのお約束をいただいた件だけははっきりとお出しをいただけるのではないかと、こういう御期待をいたしておりましたところが、結局出されたものは、それが秘密か秘密でないか判断をするまでもない、試験問題みたいなのがたくさん来た。そもそも、この質問前提は秘密ということが漏洩したということで、犯罪の被疑者となって、御存じのような問題に発展した。で、秘密か秘密でないかということはどこかということになると、非常に簡単に秘密という判こが押されればそれが秘密と、それが取り扱いの不注意によっては犯罪対象にされるということでは、各省間にもまちまちな秘密の段階が、食い違いがございますし、それから国の利益を保護するということで秘密を守るということにいささかも反対をするものではないにいたしましても、個人の人権というものがそういう美名のもとにいろいろと侵害をされるということがあっては困る。そこで、各省間の一体秘密という内容はどういうものかということをつまびらかにして、問題の究明をしたいというのが、資料を出していただきたいという前提であったわけでございます。それに対しまして、繰り返すようでございますが、大部分出たものが試験問題、こういうことでは少しも、質問者の意思というものは全く踏みにじられたという感じを受けるのは当然だと思うんです。そして肝心なものは、聞いておりませんでした、承っておりませんでしたということでは、これは官房長官のお答えになったことと、現実回答として出された資料が全く違っておりますので、これは一体官房長官はどういう指示をしたのか。あるいはこの間お約束したことは一体どのように伝達していただいたのかということで、重ねて伺うということになったわけであります。それで、いらっしゃる前に矢山委員のほうからも指摘があったわけでございますが、どうもこの委員会資料の提出ということに非常にちゅうちょがあるというか、悪く言えば怠慢というか、要求した資料がさっぱり出されておらない、そういうこともありまして、重ねて野々山委員発言になったわけであります。ですから、ことさらに野々山委員が、隠しているものを野々山委員だけに出せとか、またそういうものを出してもらって何か事にしよう、こういうものでないということをひとつはっきり御認識いただいて、官房長官のこの間のお答えのような線で、それぞれ担当官も協力をして出していただかなければ、これはやはりいまの野々山委員の御指摘のようなことが何回も何回も繰り返されてもしかたないと思うのです。これは議事進行みたいなことになりますが、それらの間をもう一度あらためて、この前お答えになっていただいたことがお答えとして出てきておりませんので、どうしてくれるのかという点を野々山委員に御回答をいただきたいと思うわけです。
  179. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 非常に私もよく理解をさしていただきました。確かにこう整理したものを見ましても、資料として提出したもの、確かにしていないものがございます。これは野々山委員のスピードに内閣官房がこれについていけなかったと、こういうことでありますので、これはおわびを申し上げます。したがって、やはりこの整理したものにつきましては、誠心誠意資料として提出するよう努力をいたします。  なお、これは理事会等で参考に、私自身が内容を読み上げることによって、そういうものが秘密の取り扱いになっておる一つのサンプルであるというような形も、あるいはものによってはとらしていただかなければならないものもあるかもしれません。もう少しこれは時間をいただきまして精査をしていきたいと思っております。が、先ほど家来もおらぬ役所なんというのはあれは取り消しをいたしまして、行政機構全体があるわけでありますから、あれは私の失言でありましたが、内閣審議室という有能な機能をフルに回転いたしまして、御要望に沿うように、これは一生懸命努力をさしていただきます。
  180. 野々山一三

    野々山一三君 一生懸命努力するということばにもうこれ以上、ことばですからあれですけれども、とにかくこれは私は火炎びんの質問をちょっとしただけで、あとはみなこればっかりで、資料要求の資料がまとまっていない。あなたの約束したことだけがやられていないから質問するというばかげた——ばかげたというか、非常に残念だ。しかし、本日国会調査権を否定しておるということですから、否定しないようにするということをあらためてもう一回約束してもらいたい。
  181. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 大体私自身国会議員でありまして、国会調査権というものをこよなく主張をし続けて今日に至っておるのであります。たまたま本日現在、内閣官房長官という席にありますが、国会審議権というものを尊重するというその限りにおいては、野々山委員にまさるとも劣らずというと少し語弊がありますが、その情熱は全く同一であると、このように御理解をいただきたいと思います。そういう姿勢の上に立って、いま私の機構の中にあります内閣審議室をフル回転をいたしまして、出せるべきものは出す。そして参考に私が理事会なりで朗読することによってお許しをいただくものはお許しをいただくというような区別をして御要望に沿いたいと、このように思います。
  182. 野々山一三

    野々山一三君 私は細部にわたってたくさん質問したい。つまりこの間の二回にわたる質問でなお釈然としないものがたくさんございましてよくわからない。いまの長官の言われることがそのとおり実行されるものと私はこの際確信をして、それを待ちたいと思います。その上で秘密及び秘密という文言に基づいて諸般の取り扱いがなされる、それについての次官会議を含めて再検討しなければ、長官が指摘されるような国会調査権というものは、一課長及び準ずる者の判こによって全部制限されてしまうということがあるわけなんですから、そのことに触れて審議する機会を早急に与えてもらいたい。そのときまで保留するということにしたいと思います。
  183. 加瀬完

    加瀬完君 いま質問者からそういう提案があったわけでございますから、そのようにお取り扱いをいただきたいと思いますが、どうも質問者の要求する要点がつかめておらないようでありますから、野々山委員の手元にある速記録を十分ごらんをいただいて、それで個人といいますか、野々山委員に回答のできるものは回答していただく、それで、官房長官のおっしゃるように回答できないのは報告をするということでありますから、理事会に野々山委員の出席をこれは委員長にお許しをいただきまして、そこで官房長官から口頭で発表するものは発表していただくという手続をとっていただきたいと思いますので、委員長にお願いいたします。
  184. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) いま野々山委員及び加瀬委員からのお話、よくわかりました。そのように取り計らいをいたします。  本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十一分散会      —————・—————